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#1
第142回国会 本会議 第24号
平成十年三月三十一日(火曜日)
    ―――――――――――――
  平成十年三月三十一日
    午後一時 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 原材料の供給事情及び水産加工品の貿易事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
 真珠養殖事業法を廃止する法律案(内閣提出、参議院送付)
 国民健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
    午後一時四分開議
#2
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(伊藤宗一郎君) この際、新たに議席に着かれました議員を紹介いたします。
 第百十五番、九州選挙区選出議員、東順治君。
    〔東順治君起立、拍手〕
     ――――◇―――――
#4
○田野瀬良太郎君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
 内閣提出、参議院送付、原材料の供給事情及び水産加工品の貿易事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案、真珠養殖事業法を廃止する法律案、右両案を一括議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。
#5
○議長(伊藤宗一郎君) 田野瀬良太郎君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。
    ―――――――――――――
 原材料の供給事情及び水産加工品の貿易事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
 真珠養殖事業法を廃止する法律案(内閣提出、参議院送付)
#7
○議長(伊藤宗一郎君) 原材料の供給事情及び水産加工品の貿易事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案、真珠養殖事業法を廃止する法律案、右両案を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。農林水産委員長北村直人君。
    〔北村直人君登壇〕
#8
○北村直人君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 初めに、両法律案の主な内容について申し上げます。
 まず、原材料の供給事情及び水産加工品の貿易事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。
 本案は、水産加工業をめぐる情勢の変化等にかんがみ、法律の有効期限を平成十五年三月三十一日まで五年間延長するとともに、平成十年三月三十一日までの間において、外国政府による水産加工品の衛生規制の強化に即応して緊急に行われる水産加工施設の改良等に必要な資金の貸し付けを行うことができることとし、あわせて、法律の題名を水産加工業施設改良資金融通臨時措置法に改めることとしております。
 次に、真珠養殖事業法を廃止する法律案は、最近における真珠養殖事業をめぐる状況にかんがみ、真珠養殖事業法を平成十一年一月一日をもって廃止することとしております。
 両法律案は、去る三月十三日参議院から送付され、二十七日本委員会に付託されました。
 委員会におきましては、本日島村農林水産大臣から両法律案の提案理由の説明を聴取し、質疑を行いました。
 質疑を終局し、まず、原材料の供給事情及び水産加工品の貿易事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。
 次いで、真珠養殖事業法を廃止する法律案について討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、両法律案に対し、それぞれ附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(伊藤宗一郎君) これより採決に入ります。
 まず、原材料の供給事情及び水産加工品の貿易事情の変化に即応して行われる水産加工業の施設の改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案につき採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
 次に、真珠養殖事業法を廃止する法律案につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#11
○議長(伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 国民健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#12
○議長(伊藤宗一郎君) この際、内閣提出、国民健康保険法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生大臣小泉純一郎君。
    〔国務大臣小泉純一郎君登壇〕
#13
○国務大臣(小泉純一郎君) 国民健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 今回の改正は、近年の高齢化の進展等に伴い、市町村国民健康保険における退職者に係る老人医療費拠出金の増大、老人加入率が著しく高い市町村国民健康保険の保険者数の増加を踏まえ、医療保険制度等の抜本改革が行われるまでの間において、老人医療費拠出金について現行制度のもとにおける所要の見直しを行うとともに、医療保険制度への信頼の確保と医療費の適正化に資するため、診療報酬の不正請求の防止のための措置及び病床過剰地域等における保険医療機関の指定のあり方等に関し、必要な措置を講ずるものであります。
 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、老人医療費拠出金に関する見直しであります。
 老人医療費拠出金については、現在、市町村国民健康保険が一般被保険者の保険料等によって負担している老人医療費拠出金のうち、退職者に係る部分について、その額の二分の一を退職者医療制度を通じて被用者保険に負担していただくこととするとともに、老人医療費拠出金の算定に用いられる老人加入率の上限を現行の百分の二十五から百分の三十に改めることとしております。
 第二は、診療報酬の不正請求の防止に関する措置の強化であります。
 まず、診療報酬の不正請求等の不正行為を行ったことにより保険医療機関の指定等が取り消された場合に都道府県知事が再指定等を行わないことができる期間を、現行の最長二年間から最長五年間に改めることとしております。また、診療報酬の不正請求に係る返還金に対する加算金の割合を、現行の百分の十から百分の四十に改めることとしております。
 第三は、保険医療機関の病床の指定等に関する改正であります。
 都道府県知事は、病床過剰地域内の病院等について、新たな病床の全部または一部について保険医療機関の指定を行わないことができることとしております。また、都道府県知事は、既存の保険医療機関を含め、医師等の従業者の人数が厚生大臣が定める基準に満たないときや、適正な入院医療の効率的な提供を図る上で保険医療機関として著しく不適当であると認められるときは、病床の全部または一部について保険医療機関の指定を行わないことができることとしております。
 第四は、国民健康保険組合及び国民健康保険団体連合会の予算について、都道府県知事の認可を届け出に改めるほか、市町村国民健康保険の事務費負担金の一般財源化に伴う所要の改正を行うこととしております。
 最後に、この法律の施行期日でありますが、退職者に係る老人医療費拠出金の負担方法の見直しについては平成十年七月一日、老人加入率上限に関する特例の見直しに係る事項及び市町村国民健康保険の事務費負担金に関する事項は四月一日、診療報酬の不正請求の防止に関する事項、保険医療機関の病床の指定等に関する事項及び国民健康保険組合等の認可の見直しに関する事項については公布日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日としております。
 以上が、国民健康保険法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 国民健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#14
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。遠藤利明君。
    〔遠藤利明君登壇〕
#15
○遠藤利明君 私は自由民主党の遠藤利明です。自由民主党を代表して、国民健康保険法等の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 我が国の社会保障制度は、国民皆保険、国民皆年金を初めとして、国民生活の安定と福祉の向上に極めて重要な役割を果たしてきました。さらに、我が国経済の成長とともに年々充実が図られ、国民皆保険が達成された昭和三十六年には約二千五百億円であった国の社会保障費が、平成九年度には約十四兆六千億円へと、およそ六十倍にも達しております。
 しかし、我が国経済の現状は低成長の時代に入っており、二十一世紀の少子・高齢社会をだれもが安心と豊かさを享受できる社会としてつくり上げていくためには、社会の基盤を支える社会保障制度を安定した効率的な制度として再構築していくことが極めて重要であると考えます。社会保障の構造改革に取り組む決意のほどを、総理及び厚生大臣にお伺いしたいと思います。
 さて、本法律案の内容についてお伺いしたいと思います。
 本法律案の第一の柱として、老人医療費拠出金の負担の見直しが掲げられております。老人の医療費については、老人保健制度の趣旨にもありますように、国民がこれを公平に負担し合うことが大原則であります。現在高齢化がさらに進行している状況を踏まえ、その見直しをどのように行うのか、厚生大臣にお伺いしたいと思います。
 また、今回の改正規定にもありますように、老人医療費拠出金の見直しは、二十一世紀においても皆保険制度を維持し、安心で良質な医療提供体制を確保していくための、医療保険制度の抜本的な改革が行われるまでの間の当面の措置とされております。
 さらに、今後の高齢化の急速な進行を踏まえますと、高齢者医療制度の抜本的な見直しが必要であり、昨年取りまとめられた与党の医療保険制度改革協議会の指針においても、医療保険改革の重要な柱の一つとしております。そこで、今後、高齢者医療制度の見直しをどのように進めていくのか、厚生大臣にお伺いしたいと思います。
 次に、診療報酬の不正請求に関する対策についてお伺いいたします。
 昨年、大阪府の安田病院による二十億円もの不正請求、ことしに入って東京都の眼科病院による八億円の不正請求など、医療機関による診療報酬の不正請求事件は、貴重な国民の負担によって賄われている医療保険制度に対して、国民の信頼を根底から揺るがしかねない問題であります。今回の法案ではどのような措置を講じようとしているのか、厚生大臣にお伺いしたいと思います。
 ところで、一人当たり医療費は県によって大きなアンバランスを生じておりますが、北海道や西日本の一部の地域など、ベッド数が多い地域は一般的に医療費が高いと言われています。今後ともすべての国民がひとしく医療の恩恵を受けられるようにするためには、ベッド数の過剰地域にさらに病床をふやすことについては慎重に対応すべきものと思います。今回の改正法案では、病床規制に関する措置をどのような考え方に基づいて提案しているのか、厚生大臣の見解を伺いたいと思います。
 さて、医療保険制度は、国民の制度に対する信頼と納得があってこそ成り立つものであります。そのためには、何よりも医療費のむだや非効率を徹底的に排除し、国民が納得の上、医療費の負担をしていただけるような制度にしなければなりません。
 そこで、診療報酬制度のあり方や薬価基準のあり方等を含め、いかにして効率的な医療保険制度を再構築していかれるのか、また、抜本的な改革はいつごろをめどになされるのか、総理及び厚生大臣にお伺いしたいと思います。
 医療保険制度をめぐる課題はまさに山積しております。例えば、私の地元山形県は、まじめな県民性によるものか、国民健康保険の収納率は全国第一位と極めて良好であり、地域の医療費も比較的安定的に推移していますが、全国的に見て、医療費の額や保険料負担等を含め、制度間、地域間の相当なアンバランスが生じているのもまた事実であります。
 私は、社会保険の一元化を図ることがどうしても必要であると考えておりますが、さらに、地域住民、保険者、医療提供者を含めた国民各層がその適正な運営に努力していけるような仕組みを構築していく必要があると思います。総理及び厚生大臣の強いリーダーシップのもとに抜本改革がなし遂げられることを強く希望し、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#16
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 遠藤議員にお答えいたします。
 まず、社会保障構造改革についての御質問でありましたが、御指摘のとおり、高齢化の進行に伴う国民の需要の変化に適切に対応するとともに、社会経済との調和を図りつつ、効率的で安定した制度を構築していく必要があります。そのため、医療改革を初め年金制度改革、介護対策などに総合的に取り組んでいこうといたしております。
 次に、効率的な医療保険制度の構築についてお尋ねがございました。
 二十一世紀の本格的な少子・高齢社会におきましても安定した公平な医療保険制度を堅持していくためには、医療費のむだや非効率を徹底的に排除するような措置を講じながら、将来の若い世代の負担が過重にならないように、医療保険制度と医療提供体制の両面にわたって抜本的な改革を実現させる必要があると考えております。
 残余の点につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣小泉純一郎君登壇〕
#17
○国務大臣(小泉純一郎君) 遠藤議員にお答えいたします。
 第一の、社会保障の構造改革に取り組む決意いかんでありますが、ただいま総理がお答えしたとおりでございます。
 老人医療費拠出金の負担の見直しの趣旨についてのお尋ねですが、今回の見直しは、近年の人口の高齢化等に伴い、市町村国民健康保険の加入者に占める退職者の割合が増大していること、老人加入率が著しく高い市町村国民健康保険の保険者数が増加していることから、医療保険制度等の抜本的な改革が行われるまでの間においても、現行制度のもとにおける老人医療費拠出金の負担の見直しを行おうとするものであります。
 高齢者医療制度の見直しについてですが、少子・高齢社会においても公平で安定した制度を構築するため、高齢者医療制度を含む医療保険制度の抜本改革については平成十二年度を目途の実施を目指しており、医療保険福祉審議会において現在行われている診療報酬体系及び薬価基準制度についての議論がまとまり次第、高齢者医療制度の見直しについても審議に入っていただくこととしております。
 診療報酬の不正請求についてでありますが、不正請求は、国民の医療保険に対する信頼を損なう重大な問題であり、厳正に対処する必要があるという考え方に立ち、今回の法案においては、その防止のための措置を強化することとしております。
 具体的には、保険医療機関の指定取り消しが行われた場合に、都道府県知事が再指定を行わないことができる期間を現行の最長二年から最長五年へと延長するとともに、不正請求があった場合の返還金に対する加算金の割合を現行の一〇%から四〇%に引き上げることとしております。
 病床規制についての御質問ですが、医療の分野においては、供給が需要を生むことが指摘されており、実際に、病床数と入院医療費の間には強い相関関係が認められています。
 このため、今回の法案においては、病床過剰地域における病院の開設に当たって、都道府県知事が、医療審議会の意見を聞いた上で、開設の必要がないものとして医療法に基づく勧告を出した場合には、保険医療機関の指定に当たって、病床を制限する等の措置を講ずることとしているところであります。
 効率的な医療保険制度の構築についてのお尋ねでありますが、これは先ほど総理もお答えしたとおりでございますけれども、将来の若い世代の負担が過重とならないように、医療費のむだとか非効率を徹底的に排除することが大事である。
 このため、診療報酬体系、薬価基準制度の見直し、老人保健制度の見直し等、制度全般について抜本的な改革を実現させることが必要と考えております。現在、医療保険福祉審議会の制度企画部会において診療報酬体系及び薬価基準制度の見直しについて審議をいただいているところでありまして、十分に審議を尽くした上で改革に取り組んでいく決意であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#18
○議長(伊藤宗一郎君) 城島正光君。
    〔城島正光君登壇〕
#19
○城島正光君 私は、新党友愛の城島正光でございます。
 民友連を代表いたしまして、ただいま提案のありました国民健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、橋本総理並びに関係大臣に質問を行います。
 現在、先進諸国において、高齢社会のもとでの社会保障と経済、財政の調和が大きな課題となっております。例えば、EU諸国では、マーストリヒト条約を背景にして、財政と社会保障のあり方が論じられております。米国では、高齢化に伴う医療、年金給付の増大と厳しい財政状況を背景に論議が展開されているわけであります。
 一方、我が国においては、極めて残念ながら、二十一世紀に向けてどのような社会保障制度を確立するのか、その姿、ビジョンが今もって示されておりません。それどころか、昨年の医療保険制度の改正において、当面の財政危機を回避する名目で、患者負担の引き上げや政府管掌健康保険の保険料率の引き上げで、国民へ二兆円もの負担増を押しつけ、財政構造改革法も社会保障改革のビジョンを示すどころか、これまた負担増だけ国民に押しつける内容であると思います。現在、国民の多くが、橋本内閣の改革で、本当に国民の側に立った年金、医療、福祉などの社会保障改革ができるのかどうか、大きな不安と疑念を抱いていると思います。
 そこで、まず橋本総理にお伺いいたします。
 今回の改正案は、財革法に沿って老人医療費拠出金の負担の見直しで三百六十億円、老人加入率上限の特例の見直しで二百億円の削減など、まさにつめに火をともすような苦労の跡がにじみ出た改正案であります。しかし、本来、社会保障制度は、先進諸国で行われているように、その国の歴史的経緯や経済、財政との調和を参酌して議論すべきものであります。ところが、この政府提出の改正案は、社会保障関係費の、初めに対前年度増三千億円未満ありきであり、すなわち財源捻出のための改正案であって、単なる国民への負担の押しつけであり、社会保障改革と呼べるものではないというふうに思います。総理が火だるまとなって行っている改革とは、財政赤字削減のため、取りやすいところから取るといった国民への負担の転嫁にすぎないのではないでしょうか。総理の御所見をお伺いいたします。
 第二に、このようにつめに火をともすような法案を出しながら、その一方で、先日、自民党は、補正予算を想定した十六兆円規模の総合経済対策の基本方針を決定しています。このような選挙対策ともいえるばらまきの補正予算を組む余裕があるなら、例えば、国民に負担を強いる五百六十億円の老人医療拠出金の負担の見直しなど行う必要は全くないのではありませんか。仮にこのような補正予算を組むのであれば、今回の改正案は当然撤回をし、提出し直すことが政治の王道であります。
 橋本総理は、先週の参議院予算委員会において、財革法改正に前向きに検討していく考えを述べたとされております。しかし、閣僚間で、そしてまたその時々で、本予算、補正予算、財革法、その前提としての経済状況に対する見解が余りにもばらばらであり、まさに閣内不統一であり、国民は、だれの、いつの発言を信じたらよいのか全くわかりません。この際、橋本総理は、内閣の責任として、この場で、国民の前に、本予算、補正予算、財革法、その前提としての経済状況に対する明確な見解を提示すべきであります。
 橋本総理は一体補正予算を組む意思があるのかないのか、明快なる御所見を求めます。その場合、財革法を改正するや否や、本法案を出し直すや否やについても、国民の納得のいく御説明を求めます。
 同様の視点で、小泉厚生大臣にお伺いいたします。
 小泉大臣は、先週の二十七日、閣議後の記者会見において、橋本内閣では財政構造改革法は改正すべきではない、法律をまとめたときの原点を忘れてはいけないと発言したと報じられております。本法案と、財革法、自民党の補正予算を想定した十六兆円規模の経済対策についてどうお考えなのか、御所見をお聞かせください。
 第三に、本法案の具体的な改正項目について、小泉厚生大臣にお伺いいたします。
 まず、本法案を提出するに当たり、医療保険福祉審議会の答申では「今回の諮問がなされたことは誠に遺憾であった」また、社会保障制度審議会では、「提案が拙速の嫌いがあり、」などの、本法案に対する否定的な見解が陳述されております。このような意見を今回の法案にどう反映させたのか、論議が尽くされたのか、手続上問題はなかったのか、お伺いしたいと思います。
 次に、財革法によれば、来年度以降も財政対策のために社会保障関係費の縮減を断行することになります。平成十一年度、十二年度も財源捻出のために社会保障関係費の縮減を行うのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
 また、本法案の退職者の老人医療費拠出金の見直しについては、国庫負担などを削減することにより、被用者保険の負担を増大させるという内容のものであります。
 しかし、健保組合の約七割が赤字であるという現状を考えると、この国庫負担の削減分は最終的に被用者が負担することになり、また、老人加入率上限の見直しについても同様に、最終的には被用者が負担することになり、結局、これらの改正は、単に国庫負担金の削減分を被用者保険に肩がわりさせたものと断ぜざるを得ません。その一方で診療報酬の引き上げを認めるという無定見な方針であると言わざるを得ないと思いますが、厚生大臣の御見解を伺います。
 また、昨年の健康保険法の改正において、政府・与党は、医療保険制度の抜本改革案を提示することを事実上約束したはずであります。その改革案は今国会に提出されるのでしょうか。厚生大臣にお伺いいたします。
 また、本法案では、病床過剰地域において、新たな病床の全部または一部を保険医療機関の指定等を行わないことができるとされております。
 しかし、この病床規制は、新規参入を規制し、既得権益の擁護であるとか、既存の病院が適正な医療サービスを行っているかチェックする仕組みを確立すべきであるとか、国民が医療機関のサービスの質を判断できるよう医療情報を開示すべきであるといった指摘があります。現実には、病床の指定についての訴訟問題さえ生じております。このような指摘や問題に対し、本法案はどう対処しようとしているのか、具体的施策をお聞かせ願います。
 あわせて、安田病院事件などの反省から、保険医療機関の指定取り消し期間を二年から五年に延長していますが、国民から信頼される医療サービスを提供するには、事件を起こさない防止体制も極めて重要であります。この問題に対する政府の監視、監査の強化策をお聞かせいただきたいと思います。
 第四に、第二次臨時行政調査会を契機に定着してきた国民負担率の概念の適否についてお伺いいたします。
 財革法では国民負担率を五〇%以内に抑えるとしておりますが、国民負担率は、単に租税負担と社会保険料負担の国民所得に対する比率であって、政府の質が全く問われない概念であります。私は、OECD統計が租税負担と社会保障負担を分けて分類しているように、本来、租税と社会保障は分けて考えるべき性質のものであると考えます。正村公宏専修大学教授は、「二十一世紀の経済システム」の中で、小さな政府であっても、安かろう、悪かろうの政府であってはならないと断じております。
 私は国民負担率の概念のすべてを否定するものではありませんが、この概念を用いるのであれば、政府は、そのことによってどのような国家をつくろうとしているのか、社会保障制度は将来どうなるのか、そのビジョンとプログラムをセットで用いるべきであります。少なくとも、国民負担率の数字からすべての議論を出発することだけは、何としても避けねばならないというふうに思っております。
 このような視点で今回の国保法等の改正案を見たとき、この改正案はビジョンなき単なる財政対策であり、安かろう、悪かろうの国家、ややもすると、これから出てくると言われている補正予算を考えると、高かろう、悪かろうの国家となる危険さえ予測できます。国民負担率と社会保障改革の関係を小泉厚生大臣はどうお考えなのか、明確なる御所見をお聞かせいただきたいと思います。
 最後に、社会保障改革のあり方と社会保障制度のあるべき姿についてお伺いいたします。
 視点を世界に転じますと、福祉の概念は大きな転換期、歴史の分水嶺にあると言えます。イギリスのブレア首相は、依存の福祉から自立の福祉への転換を説いております。今、我が国に求められているのは、財革法や国民負担率が示すような単なる数字のつじつま合わせの改革ではなく、ブレア首相が説くような骨太の哲学、理念を持った改革であります。そして、これをなすには幾多の困難があることは当然であり、その克服は我々国会議員の責務でもあると思います。そのためには、政治とは究極の精神活動であると言われるように、骨太の改革を断行し得る高貴なる精神がこの国会にはぐくまれなくてはなりません。橋本内閣の行ってきた数字合わせのための改革、政府・自民党の補正予算論議に見られる利益誘導政治、選挙対策では、骨太の改革は決して行い得ないと思います。
 そのため、私は、自立した個人が共生する社会を目指し、税・財政、経済の調和のもとに社会保障改革を断行すべきであると考えます。改革の第一歩は、明確な理念、ビジョン、あるべき姿を国民に示し、まず政府自身が血のにじむ努力をした上で、必要ならぎりぎりの段階で国民に負担を求めるという姿勢を示すことであると思います。改革は、党利党略のためにあるのではなく、国民のために、二十一世紀の日本を切り開くためにあると思います。
 社会保障制度改革の理念とビジョン並びに今後の社会保障制度のあるべき姿を橋本総理並びに小泉厚生大臣にお伺いし、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#20
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 城島議員にお答えを申し上げます。
 まず、今回の改正案は社会保障改革と呼べないのではないかという御指摘をいただきました。
 この法律案は、医療保険制度の抜本改革が行われるまでの間において、現行の制度のもとで老人医療費拠出金の負担のあり方について所要の見直しを行うこととしたものであります。医療保険制度の抜本改革については、平成十二年度を目途の実施を目指し、全力を挙げて取り組んでまいる所存であります。
 次に、補正予算を編成するのかというお尋ねでございました。
 政府としては、現在御提案をし、参議院において御審議をいただいております十年度予算、これに関連する法律案を早期に成立をさせていただき、早期に実施に移すことが今何よりも大切と考えておりまして、これらの一日も早い成立に何とぞ御理解を賜りたいと考えております。
 また、財政構造改革法を改正するのかというお尋ねをいただきました。
 財政構造改革の必要性は何ら変わるものではない、私はそう思っております。
 同時に、経済金融情勢の変化に応じて臨機応変の措置を講じる、景気の回復を図る努力をすることも当然のことでありまして、財政構造改革と景気対策が二者択一の問題ではない、タイムスパンの異なるもの、本院におきましても繰り返し御答弁を申し上げてまいりました。
 なお、本法案を出し直すかというお尋ねもございましたが、最初に申し上げましたように、本法案は、老人医療費拠出金の負担の公平化を図り、あわせて診療報酬の不正請求の防止などの措置を講ずるものでありまして、早期成立をぜひお願いを申し上げたいと考えております。
 次に、社会保障制度改革に対するお尋ねがございました。今後のあるべき姿という御指摘であります。
 少子・高齢化の進行に伴う国民の需要の変化に適切に対応するとともに、給付と負担の均衡がとれ、かつ、経済活動と両立し得る効率的で安定した制度を構築していく必要があると考えております。こうした考え方に基づいて、引き続き、医療、年金制度等、制度全般にわたる構造改革に取り組んでまいりたいと考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣小泉純一郎君登壇〕
#21
○国務大臣(小泉純一郎君) 城島議員にお答えします。
 財政構造改革法と補正予算、そして本法律案の関係についてのお尋ねですが、財政構造改革法については、昨年国会に提出した際の経緯やそのときの覚悟を思い起こすべきではないかと私は思います。私は、橋本内閣は財政構造改革法を改正すべきではないと思っております。
 また、補正予算につきましては、先日発表された総合経済対策は、与党が現下の我が国経済の状況は極めて厳しいとの認識のもとで新たな対策を提案されたものと承知しております。いずれにせよ、政府としては、平成十年度予算案を御審議いただいているところであり、速やかな予算の成立をお願いしているところであります。
 一方、本法律案は、医療保険制度の抜本改革が行われるまでの間においても、近年の人口の高齢化等に伴う老人医療費拠出金の負担の公平化や医療費の適正化の観点から所要の措置を講ずることとしたものであり、財政構造改革や補正予算の論議のいかんにかかわらず必要な改正案であると考えております。
 本法律案の提出手続についての御質問でありますが、老人医療費拠出金については、平成七年改正法附則において三年以内を目途として見直しを検討することとされていたことから、新たに設置した医療保険福祉審議会において御審議をいただきました。昨年十一月から審議を開始し、予算編成までの間に審議会でまとめていただいた論点整理を踏まえ、政府として、改正法案を作成の上、審議会に諮問し、答申をいただいたところであります。この間においても、できるだけ十分な審議をしていただけるように審議会の運営に努めたところでありますが、今後とも十分な審議が行われるよう、審議会の運営に配慮してまいりたいと考えております。
 平成十一年度及び十二年度の社会保障関係費の予算編成についてですが、財革法の規定により、平成十一年度及び十二年度の社会保障関係費については対前年度おおむね二%増以内とすることとされており、大変厳しい枠となっておりますが、この規定に従い予算編成する必要があると思います。
 老人医療費拠出金の見直しと診療報酬改定の関係についてでありますが、老人医療費拠出金の負担の見直しについては、近年の人口の高齢化等に伴い、市町村国保の加入者に占める退職者の割合が増大していること、老人加入率が著しく高い市町村が増加していることを踏まえ、所要の見直しを行うこととしたものであります。
 一方、診療報酬改定については、最近の医業経営の実態や、物価、賃金の動向等を勘案し、中医協における審議の状況も踏まえ、人件費、物件費の上昇への対応分として一・五%の改定を実施することとしたものであります。
 医療保険制度の抜本改革についてのお尋ねですが、医療保険制度の抜本改革については、与党医療保険制度改革協議会の取りまとめた案にのっとり、平成十二年度実施を目途としております。現在、医療保険福祉審議会において国民的な見地から審議が行われており、診療報酬体系及び薬価基準制度から議論を始めていただいているところであります。引き続き医療保険福祉審議会で十分に審議を尽くした上で、審議会としての意見がまとまり次第、所要の法改正に取り組んでいく考えであります。
 病床規制についての御指摘でありますが、今回の措置は、病床過剰地域において、都道府県知事が開設の必要がないとして中止勧告をした医療機関だけでなく、医師等の数が医療法で定めた基準を著しく下回る既存の医療機関等も対象とするものであり、医療保険の効率的な運営のために必要な措置であると考えております。
 診療報酬の不正請求についてでありますが、不正請求は、国民の医療保険に対する信頼を損なう重大な問題であり、厳正に対処する必要があるという考え方に立ち、今回の法案においては、その防止のための措置を強化することとしております。
 また、審査機関や保険者からの情報提供や医療監視の結果、問題があった医療機関等を重点的に選定して指導監査を行うとともに、老人医療費の適正化の観点から、老人病院に対する重点的な指導監査を行う等の措置を講ずることとしております。
 国民負担率についてですが、国民負担率は、国民経済の中で公的な主体の活動が占める比重を示す指標として意義があり、国民経済の活力を維持するためには、公的な主体による活動を国民経済全体の中で一定の範囲内にとどめることが重要と考えております。このような観点を踏まえ、制度の効率化、合理化を進め、将来にわたって国民の生活の安定を支えることができる社会保障制度を構築してまいります。
 社会保障制度改革についての御質問ですが、今後、少子・高齢化の急速な進行に伴う費用の増大が見込まれる中で、高齢者介護や子育て支援などの国民の新たな需要に適切にこたえつつ、社会経済と調和した、将来にわたって効率的で安定した制度を確立することが必要であると考えております。
 このような考え方に立って、医療、年金等の制度全般にわたる改革に順次取り組んでまいります。
 以上であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#22
○議長(伊藤宗一郎君) 福島豊君。
    〔福島豊君登壇〕
#23
○福島豊君 新党平和の福島豊でございます。
 平和・改革を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました国民健康保険法等一部改正案について、総理並びに関係大臣に御質問をさせていただきます。
 具体的な問題点について御質問をする前に、財政構造改革法によって課せられた社会保障費に対するキャップの問題並びに今後の社会保障制度改革についての御見解をお尋ねいたしたいと思います。
 平成十年度予算の編成に当たりましては、社会保障費の自然増八千億円に対して、これを三千億円にとどめるという大変大きな制約が課せられました。この自然増における五千億円の削減を実現するためには、さまざまな制度改正が盛り込まれなければなりませんでした。私どもが予算の審議においても繰り返し指摘をいたしました、児童扶養手当の所得制限の強化、また公費負担で行われていた難病患者の医療への自己負担の導入など、さまざまな社会保障制度の削減策が講じられております。
 しかし、予算案が衆議院を通過する前から、与党からは大型の補正予算編成についての声が聞こえてまいりました。
 こうした動きに対しましては、当然、予算委員会、厚生委員会で批判の声が上がりました。大型の補正予算をするつもりがあるのであれば、さまざまな形で社会保障制度の削減策を盛り込んだ平成十年度の予算案そのものを見直すべきではないかという批判であります。まことにもっともな批判であります。
 しかし、総理を初めといたしまして閣僚の皆様の御答弁は、平成十年度予算案は最善のものと考えるという逃げの一手に終始したわけであります。そして、衆議院を予算が通過して極めて短期間のうちに、自民党から補正予算を想定した大型の景気対策に取り組むという発表がなされました。
 総理は自民党の総裁であります。政府としての立場と、党の立場を使い分けられることは、理屈としては成り立ち得ても、国民の目には詭弁としか映りません。
 改めて、補正予算を組むつもりが最初からあったのであれば、平成十年度予算を修正すべきであったと総理には申し上げざるを得ません。大変に失礼な表現でございますが、終始一貫して欺瞞的な答弁をなされた責任をどう考えられるのかお答えをいただきたく思います。また、事態が変わったというのであれば、一体、何が変わったというのか御説明をいただきたいと思います。
 また、小泉厚生大臣は大変に御苦労をなされて平成十年度の予算編成に取り組まれたと伺っております。予算委員会、厚生委員会で、大臣は補正予算の編成についての質疑に対して、そういうことであれば話が違うと言わざるを得ないと御発言になっておられます。今ここで改めて、発表された大型の補正予算を前提とする景気対策について、小泉大臣はどのようにお考えかお尋ねをいたしたいと思います。
 また、財政構造改革法の改正についての議論もなされております。財政構造改革法のもとでこの国保法改正案も出てきたとも言えるわけでございます。予算編成とのイタチごっこのような制度改正を細切れに重ねていくことは、制度の複雑化を生むだけではなく、国民の制度に対する信頼感を低下させるとの指摘があります。
 むしろ、求められているのは、細切れの制度改革ではなく、信頼性と持続性のある抜本的な制度改革であります。この点については、社会保障制度審議会の答申でも、「財政対策を優先した改正を繰り返すことは国民の社会保障制度全体への不信感を強めることにもなりかねない。」と批判いたしております。
 今、財政構造改革法を改正するのであれば、社会保障関係費に関しては、その増加に対して一定期間のモラトリアムを設け、キャップの制約のもとでの細切れの制度改革を行うのではなく、期間中に抜本的な改革の実現を要請するように改めるべきではないかとの指摘もあります。
 厚生大臣として、財革法の改正をどのように考えておられるのか、また、改正があるとすればどのようなものであるべきか、お考えをお尋ねいたしたいと思います。
 次にお尋ねをいたしたいことは、国民負担率の考え方でございます。
 国民負担率の考え方は財革法における財政運営上の一つの基本的な考え方となっておりますが、これは必ずしも世界的に共通の概念ではないことも知られております。
 また、国民負担率にかわって純負担率というものを唱える論者もおります。これは負担と給付の差を評価する考え方であります。
 高負担と言われるスウェーデンでは、一九九二年の負担率は五一%に対して、社会保障給付率は三七・八%であり、その差は一三・二%にとどまります。しかし、日本の負担率は二九・二%で低いようでありますが、給付率も一一・四%と低く、その差はむしろスウェーデンよりも高く一七・八%となります。
 これは社会保障を支える負担が大きいと言われながらも、日本の場合にはそれ以外の公共投資などを含めた負担こそ高水準であるという事実であります。
 財政構造改革というと真っ先にやり玉に上がるのは社会保障の負担でありますが、むしろ国民にとっては負担から給付を差し引いた純負担こそが問題なのであり、ここに大きくメスを入れるのでなければ、本当の意味での財政構造改革にはなり得ないと考えます。(拍手)
 二十一世紀の少子・高齢社会において、社会保障制度を安定して維持していくためには、抜本的な制度改革が必要であるという点では私も同意見でございます。しかし、財政構造改革と称して社会保障給付を含め一律にこれを削減するというのであれば、誤りと言わざるを得ません。むしろ、純負担率を引き下げるための施策をまずもって行うことこそが必要であると考えます。この点についての総理並びに厚生大臣のお考えをお尋ねいたしたいと思います。
 次に、医療保険の抜本的改革の見通しについてお尋ねをいたします。
 今国会に提出が予定されておりました健康保険法改正案、いわゆる日本型参照価格制度の導入を断念したとマスコミでは報道されております。平成十二年度を目途にする抜本改革の第一段階と言われている改正案であります。政府として、今国会での提出を断念したのかどうか、また、断念したとすれば今後の見通しはどうなるのか、明快な御答弁を求めます。
 私は、抜本的医療制度改革の中核は、老人医療制度をどうするのかという点にあると考えております。現在、さまざまなアイデアが提案されております。高齢者のみの独立した医療制度をつくるというのも一つの考え方であります。また、退職後も組合健保への加入を継続するという考え方もあります。さらに、地域で一本の保険制度とするという考え方も提出されております。
 いずれにしても、保険料の三分の一近くが拠出金として老人医療に回るような間接的な財政調整によって老人医療の財源を確保する制度を維持していくのは、今後難しいとだれもが考えているのは事実であります。今回の改正のような細切れの制度改革を繰り返していては限界があります。社会保障制度についても造詣の深い総理は、どのようにこの点についてはお考えか、御所見をお伺いいたしたいと思います。
 また、先ほどの薬価制度の見直しについても、実現はなかなか難しい、それが現実だと思います。平成十二年度に向けて、果たして抜本的な改革をやり遂げることができるのか、懸念しているのは私だけではないと思います。重ねて、この点についても総理の御決意をお伺いいたしたいと思います。
 次に、改正案について何点かお尋ねをいたします。
 まず、最初にお尋ねをいたしたいのは、今回の結論に至る審議の経緯についてであります。
 日経連、連合、健保連の三団体からは、平成十年度の医療費関連予算案に対する共同声明が昨年末の二十二日に表明されました。その中では、「この決定は、医療保険福祉審議会並びに中央社会保険医療協議会における審議を無視し、正当な手続きを欠いた一方的なものであり、医療制度及び医療保険制度の抜本的改革を遅らせるその場しのぎに他ならない。」と厳しい姿勢で批判をいたしております。
 また、社会保障制度審議会の答申でも、「老人医療費拠出金に関する事項も抜本改革の課題の一つであり、今回の諮問案がその一環であると理解できないことはないが、予算編成上の緊急措置的な面が強く、国民の納得を得るうえで、提案が拙速のきらいがあり、抜本改革との関係も明確ではない。」と批判的な評価を同じく下しております。
 政策決定の不透明さはさまざまな事柄で指摘されるところでありますが、三団体からのこの批判に対してどのように受けとめておられるのか、厚生大臣のお考えをお尋ねいたしたいと思います。
 今回の法改正の一つのポイントは、老人加入率の上限を二五%から三〇%へ引き上げること、また、退職者医療制度老人医療費拠出金の負担を健保組合に半分負担してもらうことにより、国保の負担を相対的に軽減し、健保の負担を引き上げ、同時に国庫負担の軽減を図るという点にあります。
 先ほどの三団体からは、この点についても、「医療費の負担者である企業・労働者・保険者を代表し、老人医療費の負担構造の歪みをますます拡大することとなる被用者保険への負担転嫁」には反対であると表明いたしております。
 厚生省は、薬価の引き下げ、さらには昨年の法改正による自己負担の大幅引き上げが医療費を大きく抑制していることから、全体としては各制度においても財政的には負担が軽減されると説明しておりますけれども、経済状況が低迷する中で、組合の中には財政状況が厳しいところも数多く存在いたします。健保組合の財政状況並びにこの改正による負担増がもたらす影響についてどのような見通しを持っているのか、また、厳しい財政状況に置かれた組合に対してどのように対応する考えであるのか、厚生大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 また、今回の法改正には、老人医療費拠出金の制度改正とともに、不正請求に対する罰則の強化、過剰病床地域における保険医療機関の病床の指定の見直しが第二のポイントとして盛り込まれております。
 不正請求については、確かに悪質な不正請求を行った場合には厳しい対応が必要であるという点については私もこれを認めますが、しかし、すべてが不正請求ではありません。過誤請求と言われるように、誤って請求する場合もあります。こうした事例と故意の不正請求とは区別される必要があることは言うまでもありません。加算金についての罰則も、一〇%から四〇%に引き上げられるわけですから、診療報酬の審査における評価というもののあり方が公正公平であることが今まで以上に必要であります。この点についての厚生大臣のお考えをお尋ねしたいと思います。
 また、医療計画上の病床数の制限を図るための保険医療機関指定の拒否という新たな規制手段の導入についてお尋ねいたします。
 保険医療機関指定の拒否という手段は都道府県知事の判断によって下すことができるとされておりますが、問題は都道府県知事の意思決定の透明性がどれだけ保障されるかということであります。このような極めて強制力の強い権限の行使に際しては、その意思決定のプロセスが明確でなければならないのは論をまちません。今回の法改正においては意思決定の透明性について十分に保障されているとは私には思えません。この点についての厚生大臣のお考えをお尋ねしたいと思います。
 また、地域医療計画についてもお尋ねいたします。
 必要病床数の考え方自体は、医療提供体制についても一定のコントロールが必要であるという意味において、私も基本的に賛成いたしております。しかし、問題は、既存の計画が今日的な医療のニーズに十分こたえ得るものであるのかという点であり、また、医療機関同士の競争による質の向上が求められる今日にあって、この計画自体が競争阻害的なものとなっているのではないかという点であります。
 医療計画における必要病床数については、特定の目的の場合にはその枠により制限されないこととなっておりますが、救急医療や小児医療に対しての体制の充実、また療養型病床群の位置づけなど、時代に即応した機能的な供給体制が構築されるように、抜本的な見直しが必要であると考えます。
 また、医療計画自体は、経済的な観点からは参入規制ともとらえられるわけですが、医療の性格から、一般的な市場経済の原則がそのまま適用されるとは私も考えておりません。しかし、その中にあって既得権益が発生し、質的な向上を目指す競争が阻害されることは防がなければならない課題であります。その意味でも見直しは必要であります。厚生大臣のお考えをお尋ねいたします。
 最後に、先日報道されました健康保険証へのICカードの導入についてお尋ねをいたします。
 現在までにさまざまな試みがなされてきておりますが、なかなか全国的な体制となるには至っておりません。どういった情報を書き込むのか、また、読み取りの機器はどうするのかといったさまざまな論点があることは承知をいたしております。私は、ICカードの導入に当たっては、最初からさまざまな機能を盛り込むのではなく、むしろできるだけ最初はシンプルにして、徐々にバージョンアップをしていけばよいと考えております。当初は、重複診療や重複投薬をチェックするぐらいの機能でスタートすればいいのではないかと思います。
 いずれにしても、情報技術を医療制度改革の強力なツールとして活用していくことが重要であります。この点について、厚生大臣のお考えをお尋ねいたします。
 以上、改正案も含め、より広い観点でお尋ねをさせていただきました。経済の低迷の中で、失業率の上昇、就職難は国民の不安をひときわ大きなものといたしております。それをさらに増幅しているのが、年金、医療、介護という社会保障制度への不安感でございます。補正予算を組むよりもさらに大切なことは、国民の不安を払拭することであります。そのためにも、社会保障制度に対する信頼感が損なわれることがあってはなりません。国民の声を聞きながら、二十一世紀においても安定して運営が可能な社会保障制度を構想し、実現することは、政府の最大の課題であると言っても過言ではないと思います。その意味で、財政至上主義に安易に流されるのではない、未来を見据えた政府の対応を求め、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#24
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 福島議員にお答えを申し上げます。
 まず、補正予算を編成するのであれば、予算を修正すべしという御意見をいただきました。
 政府としては、現在御提案し、参議院で御審議をいただいております十年度予算やその関連法案を早期に成立させていただき、早急に実施に移すことが今何よりも大切、そうお願いを申し上げて、これらの一日も早い成立に何とぞ御理解をいただきたいと存じます。
 次に、国民負担率と社会保障給付率の差である純負担率を引き下げる施策が必要ではないかという問題の提起をいただきました。
 国民負担率と社会保障給付率の差を引き下げる施策、この国民負担率につきましては、経済の発展や社会の活力を損なわないように、極力その上昇を抑制していくことが必要だと考えております。こうした観点を踏まえながら、財政構造改革の当面の目標の達成に資するよう、歳出全般についてめり張りをつけながらも、一切の聖域なく歳出構造の見直しを進めてまいりました。
 なお、社会保障給付につきましては、高齢化の進展に伴い、その増加が見込まれる中であります。社会保障構造改革を進めていくことにより、制度の効率化、合理化を進めながら、必要な給付を確保してまいりたいと考えております。
 また、老人医療の財源についての御意見をいただきました。
 高齢者の医療費につきましては、高齢者自身の自助努力のほかに、若年世代の支援により、全国民が公平に支え合う仕組みを基本と考えております。このような考え方に立ち、今後の少子・高齢化社会において、財源的にも公平で安定した制度を構築するための制度改革に精力的に取り組んでいく考えでございます。
 また、医療保険の抜本改革についてのお尋ねがございました。
 二十一世紀の本格的な少子・高齢社会におきましても、国民だれもが安心して良質な医療サービスを受けることができるような医療保険制度を堅持していくためにも、制度全般にわたる抜本改革を平成十二年度を目途に実施することを目指して、全力を挙げてまいりたいと考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣小泉純一郎君登壇〕
#25
○国務大臣(小泉純一郎君) 福島議員にお答えいたします。
 補正予算についてですが、私は今のところ話は聞いておりません。先日発表された与党の総合経済対策は、与党が、現下の我が国経済の状況は極めて厳しいとの認識のもとで新たな対策を提案されたものと承知しております。いずれにせよ、現在十年度予算案を審議しているところでありますので、速やかな予算の成立をお願いしたいと思います。
 財革法の修正についてでありますが、私は、財革法の修正は橋本内閣では必要ないと考えておりますので、どうお答えしていいのか、お答えのしようがありません。いずれにしても、財政構造改革の必要性は、現在においても将来においても変わりないと考えております。
 純負担率の引き下げが必要との御質問ですが、国民負担率は、国民経済の中で公的主体の活動が占める比重を示す指標であり、経済の活力を維持していくためには、極力その上昇を抑制する必要があると考えています。現在、少子・高齢化の進行に伴い、社会保障給付費の割合の増大が見込まれる中で、将来にわたって安定した制度を構築していくためには、必要な給付を確実に保障しつつ、制度の効率化を図るなど、構造改革を進めることが必要であると考えております。
 医療保険制度の抜本改革については、与党医療保険制度改革協議会の取りまとめた案にのっとり、平成十二年度実施を目途としております。現在、医療保険福祉審議会において国民的な見地から審議が行われており、診療報酬体系及び薬価基準制度から議論を始めていただいているところであります。引き続き医療保険福祉審議会で十分に審議を尽くした上で、審議会としての意見がまとまり次第、所要の法改正に取り組んでいく考えであります。
 今回の改正案の決定過程についてですが、老人医療費拠出金については、平成七年改正法附則において三年以内を目途として見直しを検討することとされていたことから、医療保険福祉審議会において、昨年十一月から御審議をいただいたものであります。改正法案は、審議会における論点の整理を踏まえ作成し、審議会への諮問、答申という手続を経たものでありますが、今後とも、制度改正に当たっては、広く議論を公開しながら、国民が安心できる政策決定となるように十分配慮してまいりたいと考えております。
 健康保険組合の財政状況についてですが、平成八年度の決算においては約七割の健康保険組合が赤字を計上しており、平成九年の健康保険法改正により好転は見込まれるものの、依然として厳しい状況にあると認識しております。今般の制度改正における拠出金の見直しは、健康保険組合に対しては負担増となりますが、薬価の引き下げ等の医療費の適正化によって、健康保険組合の保険料負担は平成十年度において約四百三十億円の縮減となる見込みであります。
 今後、二十一世紀の本格的な少子・高齢社会においても、安定した公平な医療保険制度を堅持していくため、医療保険制度全般にわたる抜本的な改革を実現していきたいと思います。
 診療報酬の審査についてですが、支払基金等における審査の適正を期するため、審査は、診療担当者代表、保険者代表及び学識経験者の三者で構成されている審査委員会が合議体で審査を行っているところであります。審査については、今後ともその充実強化を図っていくこととしております。
 保険医療機関の病床指定についてですが、今回の法案では、都道府県知事が保険医療機関の病床を指定しない場合には、地方社会保険医療協議会の議決によらなければならないこととなっております。地方社会保険医療協議会は、法律に基づき保険者や被保険者等の代表、診療担当者の代表及び公益代表の三者構成となっており、適正な審議が確保されているものと考えております。
 医療計画についてですが、昨年十二月に成立した医療法改正により、療養型病床群の整備の目標及び救急医療に関する事項についても必ず定めるなど、その充実を図ることとしております。
 また、必要病床に関しては、行政改革委員会規制緩和小委員会の最終報告でも指摘をいただいておりますが、急性期病床、慢性期病床の区分、必要病床数の枠内での新陳代謝が促進されるような開設許可のあり方の見直しなどについて、医療提供体制の抜本的改革の中で検討し、医療の質的な向上を図ってまいります。
 医療保険の被保険者証へのICカードの導入についてですが、平成七年度より、熊本県八代市において医療保険カードの導入実験を実施してきたところであります。本実験の結果等も踏まえ、本年十月から被保険者証のカード化を本格的に進め、加入者の利便の向上や医療保険制度運営の効率化等を図ってまいります。
 以上であります。(拍手)
    ―――――――――――――
    〔議長退席、副議長着席〕
#26
○副議長(渡部恒三君) 鰐淵俊之君。
    〔鰐淵俊之君登壇〕
#27
○鰐淵俊之君 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま議題となりました国民健康保険法等の一部を改正する法律案につきまして、橋本総理並びに小泉厚生大臣に質問をいたします。
 まず、社会保障改革のあり方について、総理にお尋ねいたします。
 国民が抱く社会保障の将来への不安については、総理も既に受けとめているはずであります。少子・高齢化の進展を背景に負担増が続いていく中で、将来の国民負担率は五〇%を超えるという推計や、医療費の値上げで幾ら家計に負担がふえるかという予測、そして現行制度によると若年層の年金の受け取りの総額は負担の総額を下回るという推計など、社会保障にまつわる情報が報じられるたびに、本当に年金は受け取ることができるのか、質の高い医療は今後とも維持できるのかといった不安と疑問が交錯しております。つまるところ、現行の制度では、世代間の信頼と支える力に国民が自信を持てなくなっているということであります。
 だからこそ、この不安を解消するために、簡素で明確な将来の社会保障像を具体的に述べることが緊要の課題であります。国民が社会保障像をはっきりと認識でき、将来の生活に不安がないことが、また経済回復の一つの大きな要素であると考えます。総理の社会保障に対する考え方を、国民に対して具体的に述べていただきたいと思います。
 また、将来の社会保障と関連して、今後の医療のあり方について質問いたします。
 景気低迷の中にあっても国民医療費は伸び続け、現在では年間二十九兆円を超えております。また、今後の高齢化により、その費用はさらに増大することは明らかであり、保険財政は悪化の一途をたどっていることは長い間言われ続けております。
 これに対して、昨年医療費の自己負担引き上げと薬剤費の一部自己負担が導入され、さらに財政構造改革法による社会保障費削減を背景に三千二百十億円の国庫負担の圧縮を迫られました。これによって、平成十年度の国民医療費は前年度より下回ることになります。
 医療費を抑制することは重要な課題であることは間違いありません。しかし、その手法について問題があるのではないでしょうか。つまり、保険料と負担を引き上げ、財政構造改革があるからという理由で緊縮財政で締めつけを行い、その結果として医療費抑制にこぎつけるという方法では、医療改革の理念が果たして国民に理解されるでしょうか。
 医療に対する問題点は、他にもたくさんあります。例えば、医療に関する物やサービスの統制経済的価格システムでは価格競争は行われず、かえって非効率、癒着、不正の弊害を生み出すものです。過去の医療事件も、多くはこのシステムを悪用した産物であります。
 これらの対策として、一定の競争原理がなじむ部分で公正な競争システムを導入することや、チェック機能の強化によって効率化は果たせると思うのです。また、医療、薬剤情報の積極的な情報公開や、患者による選択の余地を提供するといった医療提供体制の充実、さらには、未然に疾病を防ぐための予防医療の充実強化によっても医療費の抑制の効果が得られると考えられます。
 つまり、今一番求められているのは、信頼ある医療制度体系への抜本的な改革なのです。負担財源のつけかえや小手先の手直しによって、医療を供給する医師側、医療保険を運営し維持する保険者側、実際に患者として診療を受ける被保険者側のお互いが不信を持ち、それが制度不安、社会不安へとつながっているのです。医療のあり方自体を見直し、それに伴い制度を簡素化し、わかりやすいものにしていくことが医療費抑制化の第一歩だと思いますが、これについて厚生大臣の見解をお伺いいたします。
 次に、本法案の中身について、数点質問いたします。
 第一に、老人保健拠出金、退職者医療拠出金の負担の見直しについてお聞きします。
 今回の見直しは、拠出負担の適正化とはいうものの、単なる算術的な負担のつけかえにすぎません。市町村国保のみならず、健康保険組合でさえも赤字に悩んでおります。その大きな原因は、増大していく高齢者医療への拠出制度にあることは言うまでもありません。将来の若年世代の拠出負担増は必至であり、この改正で効果をもたらすのは、一時的に国庫負担が減少するくらいであります。目先の負担調整では何も解決しない問題であり、医療保険制度そのものの信頼を落としていくばかりです。
 我々としては、高齢者は適正な自己負担と社会全体との協力によって支えていくべきと考えており、その財源の基本的部分は拠出金ではなく税で行うべきだと主張しております。高齢者医療について国家が果たすべき役割と財源の負担のあり方について、厚生大臣にお伺いいたします。
 第二に、保険医療機関の病床指定等に関して御質問いたします。
 現行医療の性質として、供給が需要を生む現象、つまり病床をふやすほど患者がふえると言われるものがあります。この性質から、法的根拠によって病床過剰地域での病床供給を制限しようというものです。この方法は、確かに医療費抑制にある程度の効果があるとは思うものの、幾つかの問題点も指摘されます。
 まず、たとえ病床過剰地域でも、参入の自由の制限を行うことには、既存医療機関を有利な状況に働かせるという弊害があるのではないでしょうか。すなわち、地域医療の固定化により癒着の機会を与え、本来の病床数制限以上に参入の機会が阻まれる可能性があるということです。
 もう一つ疑問に思うのは、地域医療と地域介護との連携の問題、そのはざまに挟まれた人たちの問題であります。
 昨年、介護保険法がとりあえず可決されましたが、その受け皿となる施設は、新ゴールドプランの途上でもあり、多くの地域ではいまだ整備不十分であります。医療と介護との明確な機能分担が十分に行われていない中で、社会的入院は解決されず、一方では供給過剰という理由でカットしてしまうことは、本当に医療を必要とする人はどこへ行けばいいのでしょうか。
 さらに、病床数で医療費の抑制を行うのではなく、他の方法の強化で抑制を行うことも可能だと考えます。例えば、本法案に盛り込まれた不正な診療報酬請求に対する罰則の強化ばかりでなく、レセプト審査の強化、指導医療官による監視の強化等が考えられますが、これらについて厚生大臣の明確な答弁をお願いいたします。
 次に、本法案と抜本改革との関係について質問いたします。
 本法案は、抜本的医療改革が行われるまでの間と前置きし、提出されました。また、医療制度の抜本的改革の時期について、介護保険のスタートである平成十二年度をめどに実施できるよう、所要の法案を提出する予定としております。
 例えば、改革の柱の一つである薬価制度及び診療報酬制度の改革について、今国会中の法案提出の予定がありました。しかし、まとめ切れずにこれを先送りにしようという動きが出ております。開始時期まで時間がないのに、改革の柱がこれほど簡単に倒れることになれば、抜本改革は到底できません。そして、本法案は見せかけの改革にだまされた法案となってしまいます。結局、負担増と赤字体質だけが残ったということにもなりかねません。制度改革の実施という約束が余りにもあいまいであります。抜本的改革をうたう法案はいつになったら提出されるのか、改革の手順をどのように進められるのか、厚生大臣にお聞きします。
 最後にもう一度、社会保障のあり方について、総理、厚生大臣に申し上げます。
 私は、少子・高齢社会はそれほど悲観する社会ではないと思うのです。そのかぎを握るのは、自立した個人という社会を築くことにあると考えます。自立した個人というのは、若者、高齢者それぞれが生き生きとした生活を送ることにあります。自分が生き生きとした生活を送るというのは、個人によって考え方が異なるものです。高齢者にしても、仕事を続けていくことが生き生きとしていると思う方や、趣味や学習にいそしむことが生き生きとすると思う方がいるわけであります。そのような多様な個人の生活の実現の努力に対して報われるものがある社会をつくること、そしてその中で、国としてどのように支援していくのか、そのために具体的にはどのように改めなければならないのか、それが構造改革であり、その生活の中で想定できない将来の不安に対して国として国民をどのように支えるのか、それが社会保障の構造改革であります。
 また、健康は個人の努力で守り、大切にしていかなければならないものです。しかし、もしも個人の努力にもかかわらず病に伏したとき、安心して支えてもらえる制度があること、それが医療制度改革の基本でなければなりません。この安心の確保が消費を促し、社会を活性化させ、経済成長につながるものと私は確信いたします。
 全く経験しなかった超少子・高齢社会というものに対応するためには、並大抵な勇気と決意なくしては構造改革は実現しません。単なる数合わせや目先の利益と調整にとらわれないかたい理念と視点が必要です。総理並びに厚生大臣におかれましても、医療改革を含め、社会保障改革は国全体の構造改革の一環であることをどうか忘れることなく、それに取り組む決意についてお尋ねしたいと思います。
 最後に、一言、小泉厚生大臣に質問いたします。
 先ほど城島議員の質問にもございましたが、大臣は、自民党が財政構造改革法を改正する方針を決めたことに対し、橋本内閣で改正すべきではないと述べたそうであります。至極当然のことであります。景気対策より財政再建を優先させ、我々の強い反対を押し切って財政構造改革法を強引に成立させたのは橋本内閣であります。その舌の根も乾かないうちに法律の改正を言うことは言語道断であります。この法律を改正するなら、橋本内閣は、まずみずからの政策の失敗を認め、国民を欺いてきたその政治責任を明確にすべきであります。政府・与党の中には、政府の責任を逃れさせるために議員立法で改正を図ろうとする動きがあると言われておりますが、これほど国民を愚弄するものはありません。我が国は議院内閣制の国であり、政府・与党一体であります。橋本内閣の責任は明白であります。
 小泉厚生大臣は、今後とも橋本内閣で改正すべきではないという方針を貫く決意か、あるいはまた、議員立法での改正があったにしても断固反対していく方針かお伺いし、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#28
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 鰐淵議員にお答えを申し上げます。
 まず、社会保障に対する考え方というお尋ねがございました。
 少子・高齢化が進展する中で、セーフティーネットとしての役割は私は今後一層重要になると考えております。そして、国民が安心できる制度を構築しなければなりません。そのため、国民の需要の変化に適切にこたえるとともに、経済との調和を図りながら制度の効率化を進めるなど、社会保障構造の改革に取り組んでおります。
 また、超少子・高齢社会というものを悲観するに当たらずという御意見のもとに、社会保障の改革についての決意のお尋ねがございました。
 少子・高齢化の進行に伴う国民の需要の変化に適切に対応するとともに、経済社会との調和を図りながら、効率的で安定した制度を構築していく必要があることは言うまでもありません。そのため、二十一世紀に向けた国全体の改革の一環として、医療改革を初め、年金制度改革、介護対策などに総合的に取り組んでまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣小泉純一郎君登壇〕
#29
○国務大臣(小泉純一郎君) 鰐淵議員にお答えいたします。
 医療のあり方自体を見直し、それに伴い、制度を簡素化してわかりやすいものにしていくべきだとの御指摘でありました。そのとおりだと思います。抜本的な改革は平成十二年度からの実施を目指しており、現在、関係審議会において審議を進めていただくなど、抜本改革の実現に向けて取り組んでいるところであります。
 高齢者医療制度のあり方についてですが、少子・高齢社会においても高齢者の医療を支えていくことのできる公平で安定した制度を構築するため、国として精力的に取り組んでいかなければならないと考えております。また、我が国は、従来から自己責任を基本としつつ、相互扶助による社会保険方式を中心に医療や年金の制度を築いてきており、高齢者医療の財源についても、適切な公費負担と組み合わせながら社会保険方式を中心としていくことが適当と考えております。
 病床規制について幾つかの御指摘がありましたが、今回の措置は、都道府県知事が、病床過剰地域であり開設の必要がないとして中止勧告をした医療機関や、医師等の数が医療法で定めた標準を著しく下回る既存の医療機関等を対象とするものであり、医療保険の効率的な運営のために必要な措置であると考えております。
 なお、医療費のむだや非効率を徹底的に排除する観点から、今回の法案に盛り込んだ診療報酬不正請求の防止対策の強化とともに、レセプト審査の充実や老人病院等に対する指導監査の強化を行うこととしております。
 医療保険制度の抜本改革につきましては、平成十二年度実施を目途としております。現在、医療保険福祉審議会において、国民的な見地から、診療報酬体系及び薬価基準制度の見直しについて議論をいただいているところであります。これらの議論がまとまり次第、所要の法改正に取り組んでまいりますが、同審議会としては、引き続き高齢者医療制度の見直しについて審議に入っていただくこととしております。
 社会保障改革全般についてのお尋ねですが、急速な少子・高齢化の中で、国民生活の安定を保障する社会保障の役割は今後一層重要になると考えております。このため、社会経済と調和した効率的で安定した制度を確立することが必要であると思い、このような基本的な考え方に立って、介護保険制度の創設に引き続き、医療制度改革、年金制度改革など、制度全般にわたる構造改革に取り組んでまいります。
 最後に、私の財政構造改革法に関する発言を取り上げられましたが、過日記者会見で、橋本内閣で改正すべきではないと述べたそうだという話ですが、そのとおりであります。
 昨年財政構造改革法を国会に提出した経緯やその際の覚悟というのを我々はもう一度思い起こすべきではないか。橋本内閣で財政構造改革の改正をする必要はないと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#30
○副議長(渡部恒三君) 辻第一君。
    〔辻第一君登壇〕
#31
○辻第一君 私は、日本共産党を代表して、国民健康保険法等の一部を改正する法律案について、総理並びに厚生大臣に質問をいたします。
 昨年四月の消費税の引き上げ、引き続く九月の健保改悪により、医療の現場では、ぐあいが悪くてもお金がかかるから病院には行けないと受診中断、抑制がかつてなく広がっています。京都では、六十四歳のひとり暮らし、旅館に勤めていた女性が糖尿病でインシュリンの自己注射をしていましたが、九月以降負担が二倍以上になって十月から中断、十二月二日には自宅で意識を失い倒れていたのを友人が見つけ、緊急入院しましたが、左足を切断せざるを得なかった例など、深刻な事態が広がっています。
 厚生省は当初の医療抑制効果を約八千八百億円と見ていましたが、予想をはるかに上回る一兆三千億円に及んでいます。しかも統計の実績で見ると、九月より十月、十月より十一月と一層受診が減少しています。社会保障の制度を切り刻む政府の冷たい政治の前に、じっと耐えている国民の姿があらわれているではありませんか。このようなかつてない国民犠牲に加えて、財政構造改革法に基づき、さらに国の医療費負担を平年度ベースで七百億円以上削り込むというのが本案のねらいであります。
 以下、法案について質問いたします。
 まず第一は、退職者に係る老人医療費拠出金の負担の見直し及び老人加入率上限に関する特例の見直しについてであります。
 本法案は、国民健康保険が負担している退職者に係る老人医療費拠出金のうち、その二分の一を被用者保険に負担を転嫁し、その結果、三百六十億円国の負担を削減するというもので、医療保険制度の抜本改革までの間の措置だとしています。
 退職者医療制度は、その発足時に我が党が指摘したように、国の負担がなく、各保険制度で負担しており、制度間のあつれきを引き起こさざるを得ません。国保における老人加入増加による財政悪化もまた、国の負担を減少してきた結果であり、国の責任は重大であります。
 本法案は、国の責任を果たすどころか、財政構造改革法のもと、強引に国の医療費負担を削減するというものです。国保財政は軽減されるものの、長期的には被用者保険は財政悪化を招き、加入者の保険料引き上げにつながるのではありませんか。労働者への負担転嫁はやめるべきであります。総理の明確な答弁を求めます。
 第二は、国保の事務費三十四億円の一般財源化についてであります。
 これまでも削減してきた事務費に関する負担金を全廃するものですが、現行国民健康保険法発足に当たって、政府みずからが、国民健康保険に対し、従来の単に国が助成するにとどまるものではなく国の責任において行うとして、補助金から国庫負担金と名称を改めた経緯を完全に無視するものであります。政府は、「社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする。」これは国保法第一条ですが、と明記された国保法にのっとり、国の責務を果たすべきではありませんか。総理の所見を伺います。
 質問の第三は、新たに過剰病床地域での新規病床規制や、既存の保険医指定等の見直しを行うことについてであります。
 医療費を抑制するために、法律によって病床過剰地域や基準に見合わない医療機関などを規制の対象にする医療統制は、国民が医療にかかる機会、医療を受ける権利を抑制することにつながることは明白であります。このような医療統制はやめるべきではありませんか。総理、はっきりとお答えください。
 第四は、法案提出に当たって審議会での意見を無視したことであります。
 厚生省の医療保険福祉審議会運営部会が厚生大臣に一月二十九日に提出した答申書には、この老人医療費拠出金の見直しについて賛否両論が併記され、しかも「当部会における審議が十分でない状況下で政府の案がまとめられ、今回の諮問がなされたことは誠に遺憾」と、政府の強引な手法に強い批判が記されるという異例のものとなっています。
 審議会の従来のルールを無視し、しかも委員の多くも関係団体も納得しないものを国民に押しつけるのは許されないことであります。この経過に政府として反省する点はないのか、今後もこのような民主主義を踏みにじる強圧的態度を続けるのかどうか、厚生大臣の答弁を求めます。
 第五には、九八年度予算において老人医療費の伸びを極力抑えるとして六百十億円の削減を行い、診療報酬改定では老人の六カ月以上の長期入院の是正を図るとしていますが、これは高齢者の病院追い出しに直結するものであります。現在、特別養護老人ホームの待機者が約十万人に上る中、病院を追い出された高齢者に対し、国はどのように責任を負うのか、総理のお答えをいただきたい。
 最後に、国民の命と健康が脅かされる現状がありながら、大手銀行のためには三十兆も投入し、さらにゼネコン型の大型公共投資などの十六兆円規模の追加景気対策が計画されるなど、財革法は完全に破綻しています。ところが、社会保障の分野においては財革法の忠実な執行に努め、今後も九七年度以上の、社会保障予算を連続して削り込むとしています。その一つが、この国民健康保険法改正案であります。
 今、国民の多数が求めているのは、社会保障、医療、教育、中小企業、農業など国民生活を支える分野を容赦なく削減する財革法の改正ではなく、廃止であります。財革法に基づく本法案の撤回であります。政府は、この国民の声にこたえるべきではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。
 日本共産党は、国民本位の医療保険財政の再建と医療保障制度の拡充を目指して全力を挙げることを表明し、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#32
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 辻議員にお答えを申し上げます。
 まず、被用者保険の負担増についてのお尋ねでありますが、平成十年度におきましては、薬価の引き下げなど医療費の適正化により、被用者保険の負担増にはならないと見込んでおります。また、長期的には、医療保険制度の抜本的な改革を行い、制度の安定化に努力してまいります。
 次に、国民健康保険の事務につきましては、地方公共団体の事務として同化定着をしておりますことから、地方分権推進委員会の第二次勧告におきましても指摘をされており、その事務費につきましては一般財源化すべきものと考えております。
 次に、病床規制についての御指摘がございましたが、今回の措置は、都道府県知事が医療審議会の意見を聞いた上で、病床過剰地域であり開設の必要がないとして中止勧告をした医療機関や、医師などの数が医療法で定めた標準を著しく下回る医療機関などを対象とするものでありまして、国民にとって必要な受診を妨げるものではないと考えております。
 次に、長期入院をしている高齢者の処遇に対するお尋ねがございました。
 介護を主な理由とした一般病棟での長期入院については、医療資源の効率的な活用のみならず、患者本人の適切な処遇の観点からも問題が多いと考えており、国としては、患者が心身の状態に応じて適切な処遇が受けられるよう、適切な診療報酬上の対応に引き続き努めてまいります。
 最後に、財革法を廃止すべきであり、それに基づく本法案も撤回すべきという御指摘をいただきましたが、本法案は、老人医療費拠出金の負担の公平化を図り、あわせて診療報酬の不正請求の防止の措置を講ずるものであり、早期成立をお願いいたしたいと考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣小泉純一郎君登壇〕
#33
○国務大臣(小泉純一郎君) 辻議員にお答えいたします。
 本法案提出に当たっての審議会運営についての御指摘についてであります。
 老人医療費拠出金については、平成七年改正法附則において三年以内を目途として見直しを検討することとされていたことから、新たに設置した医療保険福祉審議会において御審議をいただきました。昨年十一月から審議を開始し、予算編成までの間に審議会でまとめていただいた論点整理を踏まえ、政府として、改正法案を作成の上、審議会に諮問し、答申をいただいたところであります。この間においても、できるだけ十分な審議をしていただけるように審議会の運営に努めたところでありますが、今後とも十分な審議が行われるよう、審議会の運営に配慮してまいりたいと考えております。(拍手)
#34
○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#35
○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時四十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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