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#1
第142回国会 本会議 第41号
平成十年五月二十一日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十九号
  平成十年五月二十一日
    午後一時開議
 第一 債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律案(内閣提出)
 第二 建築基準法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第三 社会保障に関する日本国とドイツ連邦共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(参議院送付)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 日程第一 債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律案(内閣提出)
 日程第二 建築基準法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第三 社会保障に関する日本国とドイツ連邦共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(参議院送付)
 橋本内閣総理大臣の第二十四回主要国首脳会議出席等に関する報告及び質疑
 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律案(内閣提出、参議院送付)及び検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)の趣旨説明及び質疑

    午後一時四分開議
#2
○議長(伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律案(内閣提出)
#3
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第一、債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。法務委員長笹川堯君。
    〔笹川堯君登壇〕
#4
○笹川堯君 ただいま議題となりました債権譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律案について、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、債権流動化を初めとする法人の資金調達手段の多様化の状況にかんがみ、法人による債権譲渡を円滑にするため、債権譲渡の第三者対抗要件に関する民法の特例として、法人がする金銭債権の譲渡等について登記による新たな対抗要件制度を創設するとともに、その登記手続を整備する等の措置を講じようとするものであり、その主な内容は次のとおりであります。
 第一に、債権譲渡の対抗要件の特例として、法人が金銭債権を譲渡した場合には、債権譲渡登記ファイルに債権譲渡登記をすることによって、債務者以外の第三者に対する対抗要件が具備することを認めることとするものであります。
 第二に、債務者を保護するため、債権譲渡登記の効力を債務者に及ぼすためには、個別に債務者に対する通知または債務者の承諾を要することとするものであります。
 第三に、債権譲渡の登記の手続や登記事項の開示方法等、新たな債権譲渡登記制度に関する規定を設けることとするものであります。
 以上が、この法律案の要旨であります。
 委員会においては、去る十五日下稲葉法務大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、これを終了し、昨二十日討論、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#5
○議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#6
○議長(伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 建築基準法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#7
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第二、建築基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。建設委員長遠藤乙彦君。
    〔遠藤乙彦君登壇〕
#8
○遠藤乙彦君 ただいま議題となりました建築基準法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、規制緩和、国際調和、安全性の一層の確保及び土地の合理的利用の推進等の要請に的確に対応した新たな建築規制制度を構築するため、民間機関による建築確認検査制度の創設、建築基準への性能規定の導入を初めとする単体規制の見直し、建築確認の円滑化のための新たな手続制度の整備、中間検査制度の創設、一定の複数建築物に対する建築規制の適用の合理化等の措置を講じようとするものであります。
 本案は、去る四月二十四日の本会議において趣旨説明が行われた後、同日本委員会に付託され、五月六日瓦建設大臣から提案理由の説明を聴取し、十五日質疑に入り、参考人から意見を聴取する等慎重に審査を行い、昨二十日の委員会において質疑を終了、討論、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対して附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#10
○議長(伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第三 社会保障に関する日本国とドイツ連邦共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(参議院送付)
#11
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第三、社会保障に関する日本国とドイツ連邦共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。外務委員長中馬弘毅君。
    〔中馬弘毅君登壇〕
#12
○中馬弘毅君 ただいま議題となりました日独社会保障協定につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 我が国政府は、従来からドイツ政府との間で、両国間の人的交流に伴って発生する公的年金保険制度への二重加入等の問題に関する協議を行ってきましたが、この問題の解決を図ることを目的とする協定を締結することでドイツ政府と一致し、平成七年九月以来、このための政府間交渉を行ってきました。その結果、協定案について最終的合意に至ったので、平成十年四月二十日、東京において本協定の署名が行われました。
 本協定は、日独両国間における公的年金保険制度への二重加入等の問題の解決を図ることを目的とするものであり、その主な内容は、年金保険制度への強制加入に関しては、就労が行われている国の関係法令のみを適用することを原則としつつ、一時的に相手国に派遣される被用者等の場合には、原則として五年間は自国の法令のみを適用すること、また、一方の締約国の年金を受給する権利を取得するために必要とされる資格期間の計算に際しては、他方の締約国の年金保険制度に加入していた期間を通算すること等であります。
 本件は、去る五月十三日参議院より送付され、翌十四日に外務委員会に付託されたものであります。
 外務委員会におきましては、同月十五日小渕外務大臣から提案理由の説明を聴取し、二十日に質疑を行い、引き続き採決を行いました結果、本件は全会一致をもって承認すべきものと議決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
 本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。
     ――――◇―――――
 内閣総理大臣の発言(第二十四回主要国首脳会議出席等に関する報告)
#15
○議長(伊藤宗一郎君) 内閣総理大臣から、第二十四回主要国首脳会議出席等に関する報告について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣橋本龍太郎君。
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#16
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 十五日から十七日まで英国バーミンガムで開催された第二十四回主要国首脳会議について御報告いたします。
 昨年のデンバー・サミット以降に発生したアジアの通貨・金融危機は、本年のサミットにおいて焦点の一つとなりました。特に、先日来大きな展開を示しているインドネシア情勢に関しては、当然ながらサミットで活発に議論されましたが、その結果、我々は、人命の損失を深く懸念し、当局と市民の双方に暴力の高まりを回避するよう呼びかけるとともに、経済改革プログラムの履行を完全に支持し、さらに、インドネシア当局に対し、必要な改革の迅速な実施を呼びかける声明を発出しました。
 なお、本日、スハルト大統領が辞任し、ハビビ副大統領が新大統領に就任する旨の発表がございました。
 アジアの経済情勢に関する議論の場で、私は、総額四百二十億ドルに上る我が国の支援策につき紹介するとともに、G8諸国として引き続き精神、物質両面で危機克服努力への支援を継続すること、アジア経済危機を契機として保護主義が台頭しないよう警鐘を発すること、また、良好なファンダメンタルズを持つアジア諸国経済は、苦渋に満ちた調整期を経つつも、やがて必ず力強く復活するであろうと国際社会が信じることが今日最も重要である旨強調しました。これらの点は、国際資本移動のモニタリングなど、国際金融システムの強化に関する私の主張とともに、各国首脳の賛同を得、一連の文書に反映できたことは幸いでありました。
 また、世界経済の現状に関する討議の中で、私は、現下の我が国の経済運営につき、第一に景気回復に向けた減税と社会資本整備による内需の拡大、第二に不良債権問題の本格的な処理と金融システムの強化、第三に構造改革の実行という三つの柱につき説明し、その早期実施に向け、必要な補正予算や減税法案を既に国会に提出していることを述べました。こうした我が国の総合経済対策は主要国首脳から強い歓迎を受けましたが、このことは、必ずや日本経済に対する内外の信頼を高める結果となるものと確信しております。
 グローバルな経済問題としては、アジア経済のほか、貿易、開発、環境、エネルギーが取り上げられ、私からは、第二回アフリカ開発会議への協力要請、国際寄生虫対策、京都議定書の実現に向けた取り組みの継続と途上国の自主的参加慫慂の重要性等に言及しました。
 ブレア首相が特に重点を置かれた雇用については、深刻なアジアの失業問題に言及しつつ、神戸会議が提起した活力ある雇用社会の実現や新規産業の育成等の重要性を指摘し、国際組織犯罪については、特に薬物、なかんずく覚せい剤対策の重要性等を指摘しながら、国内、国際両面にわたる取り組みを強化していく決意をいたしました。
 インドの核実験問題について、私より、インドに対しては一連の核実験を非難し、新規円借款の停止を含む強い措置をとり、同時に、パキスタンに対しては最大限の自制を呼びかけるとの我が国の立場を説明し、G8としてのメッセージが強くかつ明確なものになるよう主張しました。
 また、今次サミットの機会に、米国、ロシア、英国、ドイツ及びイタリアと二国間の首脳会談を行い、共通の関心事項につき、有意義な意見交換を行いました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
 内閣総理大臣の発言(第二十四回主要国首脳会議出席等に関する報告)に対する質疑
#17
○議長(伊藤宗一郎君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。福田康夫君。
    〔福田康夫君登壇〕
#18
○福田康夫君 自由民主党を代表いたしまして、先般行われましたバーミンガム・サミットについてお尋ねいたします。
 今回のサミットは、ブレア首相のイニシアチブのもとで、外相、蔵相が同席せず、本当に首脳だけの会議となりました。このような開催の方法は、外交あるいは経済の専門家が不在のため、例えばユーロ以後をにらんだ世界経済の枠組みとかアジア経済対策という問題について、突っ込んだ議論ができなかったのではないかと懸念されますが、反面、首脳同士の信頼を増すという利点もあったと思います。総理は、今回のサミットのやり方を、従来方式と比較してどのように評価されますか。
 また、今回のサミットは、ロシアが最初から最後まで参加したG8サミットになりました。貿易、開発等の国際経済問題についてはロシアも議論に参加したと承知いたしておりますが、議論は十分かみ合ったのでしょうか。
 また、ロシアの参加により参加国の数が拡大しましたが、現在急速な経済発展を遂げ、政治的にもウエートを増している中国のサミット参加について、総理はどのようにお考えですか。これまでのところ中国は参加の意思表明をしておりませんが、要望が出れば認めるべきではないでしょうか。
 次に、サミットの焦点の一つであったアジア経済について伺います。
 アジアの経済危機の原因については、ある程度安定して定着していた日本の直接投資と比較し、一九九三年に世界銀行がアジアは世界の成長センターと称して以来、欧米諸国がこぞって短期資本の投資を急増させ、また、昨年夏の情勢の変化により急激に流出させたことによるものと考えられます。こうしたことを考慮すれば、あたかもアジアの経済危機の主な責任が日本にあるかのような議論は間違っていると考えますが、総理の御所見はいかがでしょうか。また、こうした点とも関連し、総理はアジア経済に関し、サミットの場においてどのような主張を行ったのですか。
 また、経済危機のアジアに対し、他国が投融資をちゅうちょする今こそ、日本が円の融資をふやして円経済の比重を高めるよい機会ではないかという説がありますが、どのようにお考えでしょうか。
 次に、我が国の経済対策に関する討議につきお尋ねいたします。
 日本は各国首脳から経済対策につき多くの注文がつくのではないかというのが、サミット開催前のマスコミの予想でした。しかし、それは全くの杞憂に終わったのでありますが、これは、総理が我が国の総合経済対策と経済の現状について十分説明をし、納得を得たからだと思います。
 そこで、お尋ねしたいことは、日本経済については議論らしき議論が行われたのでありましょうか。もしそうであれば、どのような点につき議論があったのか、具体的に御説明ください。
 今次サミットにおきましては、二度の核実験を行ったインドに対して、G8としていかに対応するかが主要な議題の一つとなったと聞いておりますが、本件に関するサミットの結論はどのようなものであったでしょうか。
 パキスタンはインドへの制裁の強化を望んでおるようでありますが、日本としてはインドが伝統的に大変親日的な国であることを考慮に入れるべきであります。今回の各種措置についてもきちんとすべきことはもちろんでありますが、同時に、大局的な日印関係の観点も失わずに対処されることを望みます。インドとの交流を縮小、断絶するがごとき動きがあるとすれば、インドの孤立感を深め、かえって同国の核依存を強める結果になると思われますが、いかがでしょうか。
 パキスタンが対抗して核実験を行うことを防ぐためには、インドへの毅然たる姿勢が重要であることは言うまでもありませんが、同時に、パキスタンとの徹底した話し合いにより解決の努力を図るべきと考えます。また、インド及びパキスタンに日本として説得力を持って核不拡散体制への参加を促すためには、我が国の核軍縮・不拡散に対する基本的姿勢を明確にし、特に日本としては、この際、米ロなどの核保有国に対して一層の核軍縮を訴えていくべきではないかと思いますが、総理のお考えはいかがでしょうか。
 最後に、インドネシア情勢と日本の対応について伺います。
 インドネシアの情勢は、スハルト大統領の辞任という新しい段階を迎えました。大統領の英断を歓迎するとともに、アジアの大国であり、一貫して親日的であるインドネシアに対しては、日本はよき相談相手としての役割を継続していくことが重要と考えますが、総理は、今後の日・インドネシア関係につきどのように考えますか。
 日本として今回の事態に当たり重要な問題は、インドネシアからの邦人の出国でした。政府の対応について後手後手に回っているのではないかとの批判もありましたが、実際はかなり順調に進んだのではないでしょうか。既に、昨二十日朝の時点で一万三千人以上が出国し、残留されている約四千名強の邦人の方についても、計算上では出国できる十分な体制が組まれていることを承知しております。
 また、外務省が発出する海外危険情報は、昨年十二月に、それまでの三段階のものから五段階のものに改定し、国民にもわかりやすいものになったことは評価すべきものと思います。今回のインドネシアにおける邦人の安全対策について、政府としてのこれまでの対策をどのように自己評価し、また、今回の反省を踏まえ、今後どのような取り組みを考えるべきでしょうか。
 以上、バーミンガム・サミット及び関連する事項につきお尋ねいたしました。総理の御所見をお伺い申し上げます。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#19
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 福田議員にお答えを申し上げます。
 まず第一に、今回のサミットのやり方についてのお尋ねがございました。
 今回のサミットは、外相会談、蔵相会談を事前に行い、首脳だけで親密な雰囲気の中での会合を行い、アジア経済等の少数の課題について、準備プロセスを経て論点を整理し、その上で焦点を絞って集中的に議論をすることができ、また、インドネシア情勢、インドの核実験といった焦眉の問題にも時間を十分割くことができ、実りが多かったと考えております。
 なお、ロシアの参加も私は有意義であったと考えております。
 次に、中国のサミット参加についてのお尋ねがございました。
 これは、中国側が希望されるかどうかという問題がまずありますけれども、一般論として申しますならば、サミットのメンバーシップ拡大については、メンバー間で十分に議論をし、その上で結論を出す種類の話であると考えております。
 次に、アジア経済危機の原因についてのお尋ねがありました。
 御指摘のとおり、アジア経済危機は、アジア各国が高度成長の際に行った自発的な借り入れによる短期資本の急激な流入等、さまざまな要因によって起こったものであり、我が国に主な責任があるかのような議論は、危機の背景を正確に理解しておられないものと考えております。また、我が国のアジアからの輸入額は米国に次いで第二位でありますが、人口一人当たりの輸入額にするとはるかに多く、日本は第一位であります。その意味で、従来からアジアの経済発展に十分寄与してきているものと考えております。
 今回のサミットでは、引き続きG8としてアジア各国の改革努力を支援するとともに、その経済回復に対する国際的な信認を与えることの重要性を指摘し、各国の賛同を得ることができました。
 次に、アジア地域に向けた円の融資についてのお尋ねがございました。
 通貨危機に陥りましたタイ、インドネシアといった国に対し、我が国は、円借款の供与を行うなど、これまで積極的な支援を行ってまいりました。また、円の国際化に関しては、こうした円の公的な使用に加えて、金融システム改革などを通じ、円の利用が進む環境を整えてまいりたいと考えております。
 サミットでの日本経済についての議論というお尋ねをいただきました。
 私は、我が国の現下の経済運営について、第一に景気回復に向けた減税と社会資本の整備による内需の拡大、第二に不良債権問題の本格的な処理と金融システムの強化、第三に構造改革の実行という三つの柱について説明をし、その早期実施のために、必要な補正予算や減税法案を既に国会に提出していることを述べました。これに対して、主要国首脳から強い歓迎を受けた次第であります。
 次に、インドの核実験に関するお尋ねでございますが、今次のサミットは、首脳声明において、インドの核実験を非難するとともに、インドに対し、無条件にNPT及びCTBTに従うこと等を求めました。我が国としては、御指摘のとおり、大局的な日印関係という観点から、同国との対話、交流は継続していきたいと思います。しかし、今回のインドによる核実験は、核兵器のない世界を目指す国際社会全体の努力に対する挑戦であり、唯一の被爆国として全く容認できるものではなく、ODAの大綱原則にかんがみても、新規円借款の停止などを内容とする強い措置をとった次第であります。
 我が国の核軍縮・不拡散に対する基本姿勢につきましては、御指摘のとおり、核保有国に対し一層の核軍縮を訴えていくことは重要であります。我が国としても、米ロに対し、戦略兵器削減条約プロセスのもとでの核軍縮を促しているほか、そのほかの核兵器国に対しても、核兵器を削減する努力を一層強化するよう呼びかけております。
 次に、インドネシアについてのお尋ねがございました。
 今後の日本・インドネシア関係についてでありますが、本日スハルト大統領が辞任し、インドネシアは今後新たな体制に移行することとなりましたが、我が国としては、インドネシアにおいて一日も早く経済の回復と民生の安定が実現するよう期待しており、我が国としても、インドネシアの国民のこのような改革努力に対し、引き続きできる限りの協力を行ってまいりたいと考えております。
 インドネシアでの邦人の安全対策につきましては、政府は、インドネシアにおります在留邦人の安全確保に最大限の努力を払っております。幸い、これまで邦人の方々には生命にかかわるような危害を受けられたこともなく、一万人以上の方々がこの十五日間に無事出国しておられ、政府の対策が功を奏したと考えております。
 本日スハルト大統領が辞任をされましたけれども、さらなる対応については、これからしばらくの事態の進展を見きわめながら検討を続けてまいりたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#20
○議長(伊藤宗一郎君) 横路孝弘君。
    〔横路孝弘君登壇〕
#21
○横路孝弘君 私は、民主党を代表して、ただいま報告のありました先進国首脳会議並びに関連する重要施策について、橋本総理に質問をいたしたいと思います。
 まず、バーミンガム・サミットの重要案件として議論された我が国の経済運営について質問をいたします。
 共同声明では、世界経済の成長を継続するためにはアジア市場の早急な構造改革が欠かせないと強調されています。言うまでもなく、アジア市場の中にあって我が国が果たすべき役割は非常に重要であり、その意味においても、我が国経済が健全かつ力強い発展を続けることが必要であります。
 総理は我が国の経済対策は強い歓迎を受けたと喜んでおられますけれども、それは、今まで、サミットなどの国際会議のたびに、我が国は消費税を上げても景気にさしたる影響はないとか、不良債権問題はめどがついたと約束をし、そのたびに常に期待を裏切られてきた各国が、本当に景気回復という効果が出るかどうか見てみようという冷ややかな反応にすぎないことに総理は気づいていないのではないでしょうか。
 日本経済は、本年三月の失業率が三・九%、有効求人倍率は〇・五八倍と最悪の数字を示したように、昨年の急激な国民負担増を引き金とした景気の後退は、金融危機、消費不況の深刻化という下降の悪循環となっており、政府の後手後手の対策によっていまだ底入れの展望は見えておりません。需要不足、需給ギャップの拡大への対策が当面の最大の課題であって、現状では下降悪循環をとめることはできないと思うのであります。
 一九九七年度の成長も、十―十二月期で前期比マイナス〇・二、多分トータルでマイナス〇・四から〇・五ぐらいになるでしょう。今のままでは一九九八年度も、アジア金融危機の影響や消費マインドの萎縮、貸し渋りの継続などの要因で、多くを期待することはできません。要するに、単発的な景気対策を超えた、系統的かつ中長期的な展望に立つ本格的な政策展開が不可欠となっているのであります。
 継続的な家計負担の軽減により消費マインドの好転が期待できる恒久的な減税の早期実施、福祉後退の心配を打ち消す制度改革のあり方、将来の活力につながる生活雇用重視型の新しい社会資本の整備や二十一世紀にふさわしい人的能力開発や社会経済のインフラ投資が、今こそ必要であり重要であります。日本経済の現状についての総理の認識と考え方を明確にしていただきたいと存じます。
 さて、今回のG7では、日本が特に不良債権問題の解決と構造改革の促進の重要性を対外的に約束したことを盛り込んでおります。
 そして、総理は、イギリスにおいて記者団に、これから本気で取り組んでいかなければならない、これをやり遂げないと本当に信頼を取り戻すことはできないし、ここできちんと処理できなければ本当にどうしようもないと述べ、抜本処理に全力を挙げる方針を表明した、このように話されたという新聞報道を読んで、私はびっくりいたしました。バブルが崩壊して不良債権問題が深刻化して、一体何年たっているのでしょうか。これから本気でとは一体何事ですか。ただただあきれるばかりであります。
 金融機関が金融機能を発揮できるようにするためには、金融機関自身の経営効率化によって不良債権の償却を積極的に進めることが必要であります。そのために、貸付債権や担保不動産の売却市場の整備や、特定目的会社、SPC方式による貸付債権などの証券化を図って、債権流動化の推進を図ることが必要であります。
 政府の総合経済対策で示された不良債権処理のためのトータルプランは、我々がさきに主張した日本版RTCなどの強力な機関が盛り込まれず、効果は疑問であります。また、最近のみどり銀行の債務処理も失敗したケースであります。政府は、不良債権処理を検討するための新機構を設置するという方針を明らかにしておりますが、それこそ、今回のトータルプランが不十分であることを裏づけるものであります。
 アメリカは、明確なルールに基づいた透明な処理、不良債権の流動化、金融機関の監督を質、量ともに向上させる必要性の三点をサミットの場で指摘をしておりますけれども、この指摘を含めて、不良債権処理にどのような対策を講じていくのか、総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 次に、金融システムの改革と金融行政のあり方についてお伺いいたします。
 魅力ある国内金融マーケットを確立するために、金融機関は、情報の開示を推進するとともに、護送船団行政からの脱却や、市場原理と自己責任原則に基づく利用者重視の業務運営を行うこと、改革を進める上で発生する国民経済コストを最小限に抑え、さらなる雇用不安や経済不安が発生することのないように環境整備を進めることが必要であると考えます。
 同時に、金融機関の再編は、従来のような密室裁量行政により進めるのか。あるいは、これまでの反省を踏まえて透明なルールに基づいて進めていくのか。金融機関の再編についての総理の明確なお考えをお聞かせいただきたいと思います。
 次に、アジア経済危機についてお伺いいたします。
 総理は、アジア経済危機に対して総額四百二十億ドルという各国で最大の支援をしていると強調されたそうですが、日本の援助よりも、輸出先として市場を提供する方が、アジアの経済目的には効果的であります。我が国の円安がアジア諸国へ大きな打撃を与えているのであります。
 サミットでのアジア経済の議論では、あくまでもIMF主導の経済改革が必要との論議に終始したようです。しかし、IMF主導下の経済構造改革を推進する中で、韓国、タイ、インドネシアの人々は厳しい現実に直面をしております。これらの国の失業率は二倍から三倍になり、韓国では現在百二十万人、タイではこの二年で五十万人から二百万人へ、インドネシアも現在九百万人に達すると言われております。しかも、これらの国は社会保障制度が十分ではなく、失業保険制度などのセーフティーネットがないのが現実であり、あっても、恩恵を受ける国民の数は少なく、給付額も十分ではありません。
 今回のインドネシアの暴動の直接の発端は、IMFプログラムの一環である公共料金の引き上げでした。こうしたアジアの現実を踏まえて、IMFプログラムの見直しが必要であると思いますが、総理はどうお考えでしょうか。また、総理は、IMFプログラムを実行するに当たって、社会的弱者に配慮すべきだと主張されたとのことでありますが、これは、プログラムの内容を変更すべきということなのでしょうか。また、他の国から賛同を得られたのかどうか、明らかにしていただきたいと思います。
 私は、アジアの通貨不安に対して、貿易・通貨問題でアジア諸国との協力関係を一層緊密にしていくことが望ましいと考えます。
 今後、アジア域内での為替切り下げ競争や伝染病的な短期資本移動を回避して、相互共存関係をつくっていくには、地域内における為替の安定が不可欠な条件となります。このままビッグバンを実行すれば、日本とアジア諸国はドルとユーロの谷間になり、外資のえじきになっていくのではないでしょうか。アジア版のIMFを速やかにつくる必要があると考えますが、総理の見解をお伺いいたします。
 さて、今回のサミットで初めて本格的に、雇用と社会的一体性ということが戦略的に取り上げられました。これは、一連の雇用会議、すなわち、九七年十月のOECD労働大臣会議、神戸会議、そして本年二月のロンドン雇用会議で議論されたものを、成長、雇用可能性、社会的一体性としてまとめたものであります。
 欧米諸国は、今日までさまざまな規制の撤廃に取り組み、効率的で競争の激しい市場をつくり上げてきました。しかし、その結果、社会は二極化が進み、特に中間層が減少し、三分の二社会と言われる社会、すなわち失業がふえ、労働意欲をなくす人々がふえ、三分の一近くの人々が社会的に疎外されている状況が生まれつつあると言われています。
 こうした中で、生涯雇用を含む長期雇用と良好な雇用機会が強調されているのです。日本も、雇用問題はよそごとと言っている状況ではなくなってきていると思います。
 私は、橋本総理の改革の一番大きな問題は、改革を進めた結果どんな日本の社会になるのかという構想が全くないということであります。あるのはただただ自己利益の最大化を追求する人々から成る市場モデルであって、そこには社会が欠落していると言わざるを得ないのであります。
 グローバルスタンダードが大切、雇用の流動性をと言っているうちに、日本やアジアの伝統的な地域社会がさらに崩壊し、人々がばらばらになるのではないか、社会の一体性や連帯感はどうなるのか。サミットでブレア首相が提起しているこの問題は、これからの日本とアジアの問題と考えられますが、総理はどう受けとめられたのか、御所見を承りたいと思います。(拍手)
 次に、インドネシア情勢についてお尋ねいたします。
 本日、スハルト大統領が辞任を表明いたしました。それは、三十数年にわたる側近政治、軍の支配、一族の利権支配といった体制が余りにも長く続いたことへの民衆の怒りの前に辞任せざるを得なかったわけでございますが、賢明な選択だったと思います。
 そこで、ハビビ副大統領が大統領に就任したわけでありますが、インドネシアの長期的な安定と繁栄のためには、政府が国民と対話をより深め、さらに開かれた政府の実現や政治改革を断行していくことが重要であると考えます。スハルト大統領の辞任がこうした改革を加速することにつながることを期待をしております。
 我が国としては、インドネシアの政治改革、経済改革にできるだけ協力をすべきと思いますが、政府は今後、この事態をどう受けとめているのか、これから政府としてインドネシアの政治改革、経済改革にどんな協力をしていくのか、お伺いをいたしたいと思います。
 次に、インドの核実験とその影響についてお伺いいたします。
 インドが、我が国や国際社会による再三の抗議にもかかわらず、二度にわたって地下核実験を実施したことに対し強い憤りを覚え、核拡散と軍拡競争を引き起こすことを憂慮しているものであります。
 冷戦期の超大国間の核競争は、冷戦の終えんとともに核保有国と非核保有国の対立という構造に形態を変えました。インドの核実験実施で、いわゆる核疑惑国は核武装を断念していないという事実を突きつけられた感がいたします。三月にインドに誕生したバジパイ政権は核保有を選択肢とする安全保障政策を発表し、四月にパキスタンが北朝鮮のミサイル技術を導入し、中距離弾道ミサイルの発射実験を行い、今回、インドは二回にわたる核実験を実施いたしました。そして、パキスタンはインドに対抗して核実験を実施することを示唆しております。
 今後、核開発や大量破壊兵器の軍拡競争は、インド、パキスタンを中心とした南アジア地域だけでなく、核開発をもくろむ他の国々、例えば中東や北東アジアにも波及するおそれがあります。核拡散はまた、偶発的な核戦争のリスクを引き上げることになります。今回の一連の動きは全世界に対する脅威であると認識し、深刻に受けとめなければなりませんが、政府はどのように認識しているのか、総理の御所見を伺います。
 また、世界は核拡散の新たな時代に入り、米国が主導する核拡散防止体制は崩壊したと考えざるを得ません。現行の核不拡散体制は、核保有国が核兵器を保有したまま非保有国に不拡散を強いるという不平等なものだということを理由に、インドは核不拡散条約にも包括的核実験禁止条約にも署名しておりません。
 今日、核不拡散体制を立て直すには、この問題を棚上げせずに検討するべきだと思います。まず、何より核保有国が大幅な核軍縮を進めることであります。核保有国は、アメリカ、ロシア間の軍縮交渉以外の努力は何も行っておりません。また、同時に、非核国家の安全保障のために、ノー・ファースト・ユース体制の確立や非核地帯の拡大など必要であります。カットオフ条約交渉の早期開始や全世界的な核兵器の使用禁止、廃絶、核拡散防止に向けて、日本政府はどのような努力をなされるのかお伺いをいたします。
 そうした核政策を踏まえ、インドとパキスタンに対し、国際社会が結束して厳しい態度で抗議あるいは牽制するとともに、日本も独自に働きかける必要があると思います。サミットでの共同声明は、制裁措置の発動をめぐって意見が一致せず、非難声明にとどまりました。日本としては国際社会の歩調を整えるためにどのような提案をしていくのでしょうか、お伺いをいたします。
 日本はインドに対して新たな円借款の差しとめなどをしていますが、ODAの全面見直しなど断固たる態度を示すべきではないでしょうか。パキスタンは核実験を断念すると表明しておりません。今後どのような形で説得を続けるのか、総理の所見をお伺いいたします。
 さて、最後にロシアのエリツィン大統領との会談についてお伺いいたします。
 北方領土についての川奈における総理の新提案は一体どのようなものなのか、明らかにすべきではないでしょうか。秘密の約束ができるわけでもあるまいし、四島は日本の主権ということを前提にすれば、国境線をはっきり引いて、あとは施政権をロシアにある期間認めるという内容以外あり得ないと思いますが、いかがでしょうか、明らかにしていただきたいと存じます。
 橋本総理は七月の日米首脳会談、十一月の日ロ首脳会談に向けて張り切っていらっしゃるようでございますが、残念ながら、あなたには日本の代表として外国に出かける資格はないと思います。最近の世論調査では、総理の国民の支持率は二〇%台です。このことをどう受けとめられておられますか、総理の率直な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#22
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 横路議員にお答えを申し上げます。
 まず第一に、サミットにおける我が国の経済対策の評価に関する御質問がありました。
 私は、我が国の現下の経済運営につき、第一に景気回復に向けた減税と社会資本整備による内需の拡大、第二に不良債権問題の本格的な処理と金融システムの強化、第三に構造改革の実行という三つの柱について説明し、その早期実施に向け必要な補正予算や減税法案を既に国会に提出していることを述べました。これに対し主要国首脳から、私自身が予期していなかったぐらい強い歓迎を受けました。このことは意義が多かったと思っており、国会の御協力をも心からお願いを申し上げます。(拍手)
 次に、総合経済対策についての御議論がございました。
 今回の総合経済対策におきましては、社会資本の整備と減税による内需拡大のほかに、不良債権問題を本質的に処理するための総合的な施策を柱といたしております。また、新規事業に積極的に取り組んでいく個人やベンチャー企業の育成、中小企業等への金融対策に重点を置いております。さらに、厳しい雇用情勢、雇用の先行き不安にこたえるために、雇用の安定、労働移動の円滑化、中高年齢者や女性の就労意欲にこたえる施策を行うこととしております。
 今後、不良債権の本質的な処理を円滑に行うことにより、また構造改革を進めることにより、我が国はその潜在的な力を発揮し、個人と企業が主役となる力強い経済を実現することができると考えております。
 金融システムの安定化や不良債権対策についてもお尋ねがございました。
 金融安定化二法の活用など、預金者保護と金融システムの安定性確保に万全を期していく中で、今後、金融機関の不良債権問題についてはSEC基準並みのディスクロージャーの強化、不良債権処理の環境整備策などを講じ、断固たる決意でその本格的な処理に取り組んでまいります。
 また、金融行政のあり方や金融機関の再編についてお尋ねがありました。
 我が国の金融行政については、ディスクロージャー制度の整備拡充や早期是正措置の導入など、現在、自己責任原則の徹底と市場規律を基軸とした客観的なルールに基づく、公正かつ透明な金融行政を目指しているところであり、この中で、金融機関の再編についても、各行の経営判断により進んでいくものと考えております。
 次に、IMFのプログラムはアジア危機への対応としては不十分ではないかというお尋ねがございました。
 IMFは、各国の直面している経済困難、経済情勢の違いに配慮しプログラムを作成するように努め、また、必要であれば、その後も調整を施してまいっております。我が国としても、IMFプログラムがより各国の実情に即したものとなるよう、今後とも努力をしていきたいと考えております。
 社会的弱者に配慮すべきだと主張したが、これはプログラムの内容を変更すべきということか、各国の賛同は得られたのかとの念押しをいただきました。
 既に私どもはそうした主張をなし、現にIMFは必要があればプログラムに調整を施してきており、我が国自身、プログラムが各国の実情に即したものとなるよう、積極的に発言もいたしております。こうしたプログラムの修正は、サミットにおいても各国の賛同が得られております。
 アジア版IMFをつくるべきではないかとのお尋ねもいただきました。
 昨年、我が国の積極的な推進のもとに、アジア通貨の安定のために、IMFを中心として各国が協力し支援を行う枠組みとして、マニラ・フレームワークが策定をされました。我が国としては、このような枠組みの中で、今後ともアジア通貨の安定のために積極的に貢献していきたいと考えております。
 また、雇用情勢の現状と見通し並びに施策についてのお尋ねをいただきました。
 雇用情勢は、三月の完全失業率が過去最高の三・九%となるなど、厳しさが増しております。このため、総合経済対策の実施により景気の回復を図るとともに、その一環である緊急雇用開発プログラムを実施してまいります。これらにより、今後の雇用情勢は改善するものと考えております。
 また、日本やアジアの地域社会が崩壊し、社会の一体性や連帯感が薄れていくという御意見をいただきました。
 サミットでも議論がございましたように、人々が就労の場などを通じ国の繁栄に貢献し、またこれを共有する機会を享受することが重要だと考えております。このためには、働く意欲のある方々すべてが就労できるよう支援を行っていくことが、社会的一体性を醸成する上で重要であると考えております。
 インドネシア情勢についてもお尋ねをいただきました。
 本日、スハルト大統領が辞任され、ハビビ副大統領が新大統領に就任されました。早急にインドネシアの状況が安定に向かうよう新たな体制が機能することを期待をいたしております。我が国としても、インドネシアの政治的、社会的混乱が一刻も早く克服され、経済の回復と民生の安定が実現されるよう希望しており、そのために引き続き協力をしてまいります。
 次に、インドの核実験に端を発した一連の動きに関する認識についてお尋ねをいただきました。
 我が国は、これを、核実験禁止、不拡散体制の強化という国際社会の努力への挑戦であり、また、この点は議員が御指摘されたことに同感でありますけれども、地域及び国際的な平和と安全に悪影響を及ぼすものとして深刻に受けとめております。こうした立場から、インドに対しても、新規円借款の停止などの厳しい措置をとってまいりました。
 また、パキスタンに特使を送りましたが、本日、その報告を昼の休憩時間に受けたばかりであり、今後とも努力を続けてまいります。
 核廃絶に向けた我が国の対応についてもお尋ねがありました。
 我が国としては、核兵器のない世界を一日も早く実現することを目指して、核兵器国による一層の核軍縮を求めるとともに、世界の大多数の国の支持を得ているNPT体制の強化、CTBTの早期発効、カットオフ条約交渉の早期開始のような、現実的かつ具体的な核軍縮措置を積み重ねていくことが重要だと考えております。
 インドの核実験に対しての対応を繰り返されましたけれども、我が国としては、G8など各国とも協議しながら、インドに対し、核実験及び核開発の即時中止、NPT、CTBTの無条件での締結を粘り強く主張していく考えでございます。
 パキスタンについては、今申し上げましたように、登外政審議室長を派遣し、最大限の自制を求めたところですが、引き続き各国とも協力しながらこうした努力に努めていきたいと考えております。
 次に、日ロ首脳会談についてのお尋ねがございましたが、今回の首脳会談でエリツィン大統領は、川奈会談で私の行った提案について現在検討中であり、回答は秋の私の訪ロのときに行いたいと述べられました。この提案に大統領の理解が得られて、交渉が進展することを期待をいたしております。
 なお、交渉の内容については、私の行った提案を含め、ロシア側との申し合わせもあり、明らかにできないことを御理解いただきたいと思います。
 日米首脳会談及び日ロ首脳会談に関し、おまえに出席する資格はないという御指摘をいただきましたが、私は、例えば日米首脳会談について、日米関係を強化するだけではなく、国際情勢、さらに急展開しつつあるアジア太平洋情勢についての日米間の政策協調を確固たるものとしたいと考えておりますし、日ロ関係においては、首脳レベルを含めた間断なき対話を継続し、政治、経済、文化といった各般の交流を深めていくことは極めて重要だと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#23
○議長(伊藤宗一郎君) 池坊保子君。
    〔池坊保子君登壇〕
#24
○池坊保子君 新党平和の池坊保子でございます。
 私は、平和・改革を代表し、ただいま議題となりましたバーミンガム・サミットに関する総理報告に対し、質問させていただきます。
 今回のサミットの主要課題は、まさに緊迫したアジア情勢にありました。昨年秋からのアジア全体に波及した経済危機、とりわけ日本経済の深刻な不況が世界に及ぼす悪影響。それに加えて、経済危機から引き起こされたインドネシアの政治、経済社会の混乱。そして、まるでサミット開催の直前のタイミングをはかったようなインドの核実験、インドの核実験が問題を表面化させた隣国パキスタンや中国などとの近隣アジアの安全保障問題、さらには核兵器の不拡散問題。今、多くの問題はアジアに集約されているように感じた中でのサミットでした。
 その意味では、今回ほど我が国の存在が大きく問われたことはありませんでしたし、また、アジアの最大の経済大国として、世界第二の経済規模を誇る国として、日本の役割が期待され、その果たすべき責任、リーダーシップがこれほどまでに求められたサミットは今までなかったと思います。
 私は、今回のサミットでは、冷戦崩壊後において日々目覚ましい発展を遂げておりますグローバルな資本主義、言いかえれば市場万能とでもいうべき現在の国際経済社会がもたらす光と影、そうした諸問題に対して、人類の未来に大きな責任を持たれる方々が十二分に論議を尽くされるのだろうと大きな期待を持って注目しておりました。インドネシアを初めとしたアジアの経済危機、我が国日本の経済不況、そして実はアメリカの経済的な好況も、すべてそうしたグローバル資本主義の進行と深い関連性を持つものと理解したからでございます。
 しかしながら、そうした期待に反して、残念ながら私は、サミットがその本来の役割を十分に果たせたとは言えない、むしろ正面から議論することを避けられたのではないかとさえ思っております。少なくとも我が国に関しては、世界に対して鮮明に発信すべきであったメッセージが、経済の問題にしても、インドの核実験に端を発した核廃絶の問題にしても、明確には伝わらなかったと申し上げたいのです。その原因は、橋本内閣のこれまでの政策運営に対して、各国からの信頼がない、あるいは限りなく薄いということが強く感じられます。
 サミットにおける政治指導者としてのアピール度において、さすが橋本総理、さすが日本との局面は報道からはついに伝わりませんでした。一体何のために参加されたのか、国民にはよく理解できなかったのではないかと存じます。総理御自身は、サミットの成果を強調されたようでございますが、サミットの総括に関しいかが御認識か、改めて総理の御見解をお伺いしたいと存じます。
 次に、緊急の課題であります日本経済に関する議論の経過について伺います。
 四月に行われましたG7においても、またプレサミットでも、日本経済に対する厳しい注文が相次ぎ、バーミンガム・サミットでは最大の中心課題となることが想定されておりました。なぜ世界がアジアの危機並びに日本経済の危機に深い危惧を抱くのか、それぞれなりに大きな事情を抱えているからであることは言うまでもありません。アメリカやヨーロッパが金融、貿易の両面でアジアの経済危機によって経済が直撃されることを考えましたら、世界の各国から日本発、アジア発の世界恐慌が強く懸念されている現状は至極当然のことと思います。
 日本バッシングともいうべき世界のいら立ちは、そうしたことに対して、これまで余りにも日本政府の認識が甘く、その対応が鈍過ぎて、率直に言って、みんなあきれてしまった結果だと思っております。(拍手)橋本内閣が内外に対する責任よりもみずからの政権維持を優先された、少なくとも各国はそう評価したのです。だからこそ、橋本内閣が切り札といたします総合経済対策に対し、これまで市場は全く評価せず、円安、株安の状況が続き、各国の評価も大変に低いものに終わっているのだと思います。クリントン大統領も、消費者マインドにどれぐらいの影響を与えるのだろうかと懸念を表明しております。
 過去七十兆に及ぶ景気対策と超低金利政策にもかかわらず、なぜ消費者心理や投資者心理は好転しなかったのか、金融機関以外の一般企業の不良資産をどう処理するのか、国際競争力が低い産業部門をどうするのかといった日本問題に答えを出せたわけではありません。我が国が世界に対して今なすべき最大の責務は、経済回復に尽きると思います。アジアと日本の再生、それは我が国の内需回復にかかっていると言わざるを得ないのです。
 その意味から、今我が国にとって最も必要なことは、規制の撤廃・緩和など経済の構造改革を断行し、土地の流動化を速やかに図って不良債権を早く処理することだということは申し上げるまでもありません。そして税制面からは、少子・高齢社会への準備、国際的なバランス、経済効果などの点から恒久減税が不可欠だと考えます。その意味からは、サミットにおける指摘は全く正しかったのです。
 結論から申し上げれば、今回のサミットにおいて、我が国の対応に期待と注目が集まった割には、持っていった十六兆円という巨額なお土産も、風袋ほどには中身を評価されず、逆に今後のさらなる恒久的な改革を国際公約せざるを得なかったと思います。お土産を持たなければサミットに出席できないというのも情けない話だと思います。そもそも十六兆円の対策は、参議院選挙を意識したものであり、支持基盤に配慮したものであって、内外の希望にこたえるものにならなかったことが大きく影響していると考えます。
 バーミンガム・サミットを終えた橋本総理は、金融機関が抱える不良債権の処理に全力を挙げる方針を表明されましたが、十五日、破綻した兵庫銀行を引き継いだみどり銀行の経営が行き詰まり、阪神銀行に吸収合併されることになりました。公的な資金導入をする金融機関の破綻処理は、公正でなければなりません。しかし、みどり銀行をめぐる大蔵省を初めとする関係者の対応は、余りにも不透明な上に無責任です。不良債権の処理がその時々の事情に左右されれば、これからの破綻処理に大きな混乱を来すことは必至です。
 これから総理は、銀行の自己査定によれば七十七兆円にも上ると言われる金融機関の不良債権を、どのように処理されていくおつもりなのか。今回のようなあいまいな処理では、国民は納得がいかないと存じます。大蔵省に金融危機に対応する権限を任せておくわけにはいかないという気持ちです。この吸収合併が、総理が全力を挙げて取り組むこれからの不良債権処理の第一歩であるとしたら、先行きは真っ暗と言わざるを得ません。
 私は、総理はおやめになるべきであり、それこそが日本国民の幸せですなどという失礼なことを申し上げるつもりはございませんが、まじめに誠実に生きている国民に納得のいく、希望の持てる施策がおありなのか、明快に御見解を伺いたいと存じます。(拍手)
 次に、インドネシア情勢について伺います。
 インドネシアの情勢については、その経済危機には、直接的な引き金の一つとして、我が国の経済的低迷とその対策のおくれが一因をなしていることは事実だと思います。橋本内閣は、その責任を重く受けとめるべきだと考えます。
 と同時に、クリントン大統領が厳しい対応をしているにもかかわらず、総理は、スハルト大統領が本日辞任するという緊迫した状況の中にあったにもかかわらず、その認識が全然おありにならなかったのではないかと思います。新大統領となったハビビ氏が今後どのような方針で事態の収拾と改革を進められるのか、しばらくインドネシア国内の動向を注視していく必要があると存じます。
 今後、注意深く混乱の鎮静化の動向を見守り、在留邦人の安全に万全の態勢を確保するとともに、できるだけ速やかに事態収拾を図られ経済危機が回避されるよう、日本としての支援のあり方を早急に検討すべきであると存じますが、総理はどのようにお考えでございましょうか。
 また今回も、日本政府の対応の遅さにいら立つ邦人の声が聞こえてまいります。日本政府が臨時便運航を発表した十六日の時点で、アメリカ、カナダは既にチャーター便二機を使って第一陣八百人をタイなどにほぼ輸送し終え、北欧諸国並びにシンガポール、タイでも速やかに国民を国外退去させているにもかかわらず、これらの国に比べて日本は後手後手に回っているだけでなく、この緊急のときにもかかわらず、日曜日に閣僚の多くが地元に帰り東京を留守にしているのは、危機意識が希薄と言われても仕方がないと存じます。
 また、情報不足に、大使館に電話するより日本の友人に聞く方がずっと早い、政府に何も期待できないのは日本では当たり前のことかもしれないなどと、情報不足と政府への不信が不安と混乱を倍増させているのは、カンボジアのときと同じと言えます。何ら改善は見られません。総理の危機意識をお伺いしたいと存じます。
 十八日、自衛隊機を派遣されましたが、政府のなすべき第一の責務は、国民の生命の確保にあると存じます。また、民間機の派遣を遅滞なく実施し、あわせて政府専用機並びに自衛隊機を派遣すべきであると存じます。自衛隊機派遣に当たっては自衛隊法に基づく正規の派遣とすべきですが、総理はどのようにお考えでいらっしゃいましょうか、伺いたいと存じます。
 インドの核実験についてお伺いいたします。
 インドの核実験については、国際社会の核兵器廃絶の流れに逆行する行為であり、まさしく世界の平和建設に対する重大な挑戦だと思っております。しかし一方、サミット参加国の多くは核保有国でもあり、この問題についてはできる限り刺激せずに避けて通ろうという姿勢が共同宣言を通してもうかがえました。
 しかし、我が国は、言うまでもなく核兵器の悲惨さを身をもって体験した唯一の被爆国であります。いかなる国のいかなる核実験についても強く反対し、断固たる抗議の姿勢を明快にすべきではなかったでしょうか。核兵器廃絶についても積極的にリーダーシップをとって、厳しい非難の声を上げて、核廃絶の流れを広く深くつくっていくべきだったと思います。
 その点で、サミットでは、インドに対する経済措置、核廃絶を毅然と主張すべきであり、核廃絶に対する総理の熱意と信念はどこにも感じられなかったのが実感です。英仏ロは独自の見解を打ち出したのに比べ、ただアメリカにつき合っただけとしか思えません。総理はどのようなメッセージを発信されたのでしょうか、お伺いいたします。
 日米首脳会談の冒頭、クリントン大統領から橋本総理に対して、七月ごろを期して訪米の招請があったとのことです。
#25
○議長(伊藤宗一郎君) 池坊保子君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
#26
○池坊保子君(続) 私は、すぐに二つのことが頭をよぎりました。
 一点は、橋本総理個人ではなく、日本の総理への招請なのだということです。二点目は、国内において弱体化している橋本内閣の参議院選挙後における保証を日本側から要請したのではないかということです。どちらにしても、何を言っても、これ以上のものは出てくるはずがない。これ以上の日本バッシングは、かえってアジアの経済にとってもアメリカの経済にとってもよくないということの判断だと思います。総理はどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
 また、エリツィン・ロシア大統領が二〇〇〇年のサミット開催を日本に譲るように求めたのに対し、私は、一国民として恥ずかしい思いがいたしました。今回から正式メンバーになったロシアに開催地を変更できる資格が備わっているとは思えません。北方領土欲しさが総理のお顔にあらわれていたのではないでしょうか。領土問題を背景に駆け引きが今後も熾烈になる中、総理の確たる外交姿勢が問われることを申し添えます。
 そして、最後に、私は、国際社会の中で日本人が生きていくためには、私たちは人の意見を謙虚に聞く、その度量の深さこそが必要だと思います。政治家が政治家としての尊厳を保つために、人の品格を損ねるようなやじがなく、野党の質問にもちゃんと耳をかすべきと思い、質問を終わらせていただきます。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#27
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 池坊議員にお答えを申し上げます。
 まず、バーミンガム・サミットについて、みずからの評価、総括という御質問をいただきました。
 私は、今回のサミットは、まさにアジア経済、インドネシアの危機、そして直前に飛び込んできたインドの核実験というものが大きなテーマになり、アジアからの唯一の参加国として積極的に参加をするとともに、事前に、例えば小渕外務大臣にASEANを回っていただくとか、アジア各国の意見を聞いた上で臨みましただけに、議論の方向づけにそれなりに貢献できたと考えております。
 次に、金融機関の不良債権処理についてのお尋ねがございました。今回のみどり銀行のようなあいまいな処理は納得がいかない、みずから陣頭指揮をとるつもりかというお尋ねをいただきました。
 私は、今回のみどり銀行の処理、これはその設立の特殊な経緯、あるいはその他の要因があった処理策と考えておりますが、現在、金融機関は不良債権の早期処理に積極的に取り組んでおりますし、政府としても、金融機関が不良債権をバランスシートからきちんと落としていくなど、本格的な処理を進めさせるべく、この問題に積極的に取り組んでまいります。
 次に、インドネシアについていろいろな角度からのお尋ねをいただきました。
 我が国としても、インドネシアの経済危機の克服のために、IMF等と緊密に協調しながら必要な支援を行ってまいりました。同時に、IMFとインドネシアの間が非常に困難な状況になりましたとき、インドネシアの姿勢をも変え、またIMF自身の姿勢をも変えさせ、その方向づけを定めるなど、必要な協力を続けてまいったつもりであります。
 本日、スハルト大統領が辞任をされて、ハビビ副大統領が新大統領に就任しました。我が国としては、現在のインドネシアの政治的、社会的混乱が一日も早く克服されて、国民経済の回復と民生の安定が実現されるよう心から期待いたしますが、議員御指摘のように、注意深くこれからの情勢を見守っていかなければならない、それは御指摘のとおりであります。
 次に、インドネシアの邦人救出について御意見をいただきました。
 政府としては、早い段階から情勢を注視しながら万一の場合に備えた準備を行ってまいりましたが、十五日、事態の深刻化を踏まえ、官邸対策室を設置し、閣僚レベルの関係会議等を開催し、対策について協議してまいりました。現地の各公館も、情報収集、邦人保護に万全を期すために、二十四時間体制で全力を挙げて努力をいたしており、バーミンガムへの外遊中も含め、私自身も常時報告を受け、必要な指示を与えてまいりました。政府として適切な対処をしてまいったと思います。
 次に、自衛隊機の派遣についてもお尋ねをいただきました。
 政府は、まず民間航空会社の臨時便と政府のチャーター便の運航の確保に努めてまいりました。さらに、邦人の出国手段の確保に最善を尽くすための措置の一環として、自衛隊機をシンガポールに移動させました。自衛隊機の移動については、自衛隊法第百条の八を根拠とした準備行為として実施したものであります。インドネシアへの派遣は、今後の情勢を見きわめながら対処していきたいと考えております。
 次に、今次のサミットにおける、インドの核実験に対するお尋ねがありました。
 私は、インドに対するメッセージは強くかつ明確なものであるべきことを主張し、その結果、首脳声明において、インドの核実験を、国際的な平和と安全に悪影響を及ぼす、そうしたことで非難をすることとなりました。唯一の被爆国として、核廃絶の意思を首脳声明に反映できたと考えております。
 なお、お言葉に逆らうようでありますけれども、インドの核実験後の我が国の対インド制裁措置、これは米国に先立って独自に決定したものであります。これは時間を調べていただければおわかりいただけることでありまして、米国につき合っただけ云々、この御指摘は私は当たらないと思います。
 次に、潜在的核保有国への働きかけについても御意見をいただきましたが、核兵器のない世界を目指して現実的かつ具体的な措置を着実に積み重ねていく必要性、これは幾ら努力を払っても、それで足りるというものではありません。我が国は、従来から、NPT及びCTBTをいまだ締結していない国に対し、可能な限り早期の締結を働きかけているところであり、これからもそうした働きかけを粘り強く進めてまいりたいと考えております。
 次に、クリントン大統領が訪米の招請をした理由、意義をどう考えているのか。議員のお考えとは異なりまして、私は、個人的な友情を深め、アジア太平洋地域の平和と安定の基礎としての日米関係を一層強固なものとするために招請をしていただいたと考えております。
 また、エリツィン大統領が二〇〇〇年のサミット開催を日本に求めたのは、北方領土欲しさが顔にあらわれていたのではないかというお尋ねをいただきました。
 日本の総理として、旧ソ連、ロシアの首脳と交渉するときに、北方領土を返してほしいという願いが顔にあらわれていなかったら、私はその方がおかしいと思います。そして、そうしたこととは異なり、二〇〇〇年サミットをロシアで開催したいという同大統領の要望に対して、私は、真剣に伺うが、開催地は既に決まっている、順番に決まっている、日本だけで決められる話ではない、G8で議論する必要のある話であると答えました。本件の扱いは、当然ながら、他のG8諸国と議論をしながら、慎重に検討されるものと考えます。(拍手)
    ―――――――――――――
#28
○議長(伊藤宗一郎君) 中村鋭一君。
    〔中村鋭一君登壇〕
#29
○中村鋭一君 私は、自由党を代表いたしまして、総理のサミット会議出席の件につき質問をいたします。
 総理、あなたは日本国民の代表としてバーミンガム・サミットに出席をなさいました。あなたの行動の一つ一つが、すべて日本国民を代表する行為であり、意思表示であり、あなたの発言の一言一言が日本国の国益を左右するのであります。
 その意味で、サミットは先進国の首脳同士の真剣勝負の場であり、まさにおのおのの国の最高リーダーとしての資質、力量、貫禄が問われる場であります。
 「外国の交際は国の安危に関し、使節の能否は国の栄辱に係る」とは、明治四年に岩倉具視が特命全権大使として米欧回覧に出発をしたときに、三条実美公がはなむけとして贈った言葉でありますが、橋本総理が一国の総理として国の安危と栄辱を一身に担って、日本の代表たる自覚と気概と矜持を持ってサミットに参加されたとは、私にはとても思えないのであります。
 これは今回のサミットだけに当てはまるものではありません。失礼ながら、総理の資質が根本的に問われる問題なのであります。両手を広げて肩をすくめてみたり、他国の首脳に片目をつぶってウインクをしてみせたり、ボリスと私はとか、ビルにこう言ったらリュウと答えたとか、総理独特のパフォーマンスのつもりかもしれませんが、そのような瑣末な態度を見せるのが首脳外交ではないのであります。
 去る二月五日の本会議で、私は、あなたは日本の総理としてこの難局を乗り切るにはいかにも軽過ぎると苦言を呈しました。この日の質問に対して、自由民主党から、私を懲罰に付するとの動議が提出されておりますが、たまたまそのままになっているように承知をいたしますが、あえて、私は総理のその場限りの軽々しさについて、再び同様のことを申し上げねばなりません。
 単に、格好をつけてと苦笑いで済ませる問題であればまだ許すこともできましょうが、日本国民として看過できない過ちを橋本総理は既に幾つも犯しているのであります。夫のいる中国人女性と交際をし、その夫からそれが離婚の原因だと裁判で指摘をされたり、その女性を通じて特定の病院に二十六億円もの巨額のODAを供与したとの疑惑が持たれたり、英国の大衆紙に簡単に謝罪文を投稿したり、橋本総理の姿勢は日本国の国家としての尊厳、日本人としての誇りを傷つけるものであり、国益を損なうものであると指摘せざるを得ないのであります。いずれこれらの問題につきましては、友党ともども腰を据えて取り組ませていただくことを、この際指摘をいたしておきたいと思います。
 さて、サミットではロシアのエリツィン大統領が、日本で開催される予定の二〇〇〇年サミットをロシアに譲ってほしいと提案したことについて、総理は真剣に検討する考えを示したと伝えられますが、なぜ総理はその場で明確に拒否の意思表示をしなかったのですか。
 考えてもみてください。今回から正式メンバーになったロシアに、開催順を変更できる資格が備わっているはずはないじゃないですか。自分の任期の残るうちにサミットを開催したいという権力を私視するような提案に乗ることは、橋本総理自身が権力を私することにほかなりません。二国間の懸案の解決とサミット議長国の問題は全くこれは別の問題であり、国際的にも説明のつくことではありません。理不尽な要求を断固その場ではねつける気概がなければ、あなたは、そしてあなたに代表される日本国民は、世界からなめられ続けるのであります。
 以上の点について、総理の御所見があれば伺います。
 この際、北方領土の返還問題についてお尋ねをいたします。
 先般の川奈での会談において、北方領土についていかにも光明を見出したように喧伝されておりますが、実は、事態は何も変わっておりません。ロシアの議会も国民も、ロシアの報道もその気配を示していないのであります。これらが政権基盤の軟弱なエリツィン大統領と政権末期の橋本総理との二人だけの演技とするならば、国民にとってこんな不幸なことはございません。
 なるほど、九月に回答すると言われたようでありますが、それは問題を先送りし、ニンジンをぶら下げ、日本の経済協力をかち取ろうとする巧妙なロシア外交に乗せられて、総理自身が一方的にいわゆるいいふうに考えているのにすぎないのではありませんか。
 さきの日ロ首脳会談に同席したネムツォフ・ロシア第一副首相は、日ロの世論が全く食い違っている現状では妥協を探るのはほとんど不可能だ、このように述べ、また、エリツィン大統領が首相代行に指名したキリエンコ氏も領土返還反対を明言したと言われています。四月初めに全ロシア世論調査センターが行った全国調査によりましても、回答者の七六%が北方領土の日本への返還に反対という結果が出ております。
 総理、五十数年前、我が国の敗色が濃厚となり、軍も国民も疲弊のどん底を行進しております最中に、ソ連は一方的に相互不可侵条約を破棄し、後ろから襲いかかるという卑劣な行為によって、多くの日本国民はその犠牲となったのであります。さらに、歴史的にも国際法上も完璧な日本の領土である北方の島々を、ロシアは、理不尽にも一方的にじゅうりんし、これを奪ったのであります。
 このことに対し、ロシアの大統領からきちっとおわびがあったのか。極寒の地でとらわれの身となり、長く強制労働を余儀なくされた同胞の屈辱の涙に対して、あなたは思いをいたされたことがありますか。エリツィン大統領と一緒にはっぴを着て太鼓をたたいているあなたの姿を見て、私は、苦い思いを禁ずることができませんでした。あなたは、これが体を張った外交だと思っておられるかもしれないが、国民の多くは、どんなに情けない思いでこれを見ていることでしょう。
 日ソ不可侵条約の一方的な破棄に対し、橋本・エリツィン・プランを進める上でも、このことが最初の出発点でなければならないのであります。これらについて、総理の見解をお伺いしたい。実際に問題は前進すると考えておられるのか、そうであるならばその根拠は何なのか、明確にお示しをいただきたいと思います。
 さて、今回のバーミンガム・サミットは、アジアの経済危機、インドの核実験、インドネシア情勢と、アジア問題が中心課題となったにもかかわらず、アジア唯一の参加国である我が国の主張を十分反映させることができなかったことは、まことに遺憾であります。
 アジアの経済危機克服の最重要課題は、言うまでもなく、我が国自身の経済再建、景気回復であります。
 総理は、G8終了後、日本の経済対策に批判があるかと思ったが、よく思い切った、できるだけ早く国会の承認を得て実行に移してほしいと応援を受けたと記者会見で語ったそうでありますが、この対策は規模だけを売り物にしており、それだけを見れば、各国首脳が評価するのはこれは当然であります。それを素直に喜んでいる総理大臣に日本経済のかじ取りができるか。答えは否であります。
 議長声明には、我が国の不良債権問題の早期解決、金融システムの強化が盛り込まれましたが、政府が金融三法の枠組みによる処理の仕方を改め、経済政策を根本的に転換しない限り、この問題の解決を図ることは不可能であります。
 いずれにせよ、市場からの信頼を失った橋本内閣の退陣と経済再建戦略の構築こそが経済再建の第一歩でなくてはなりませんが、この点について、総理の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
 次に、インドの核実験への対応について伺います。
 インドが、地下核実験を二十四年ぶりに実施し、さらに、核実験根絶のための呼びかけを各国が行ったにもかかわらず、再度核実験を強行したことは、世界の核軍縮、核管理の流れに逆行した極めて遺憾な行為であると言わざるを得ません。
 この見地から自由党は、五月十五日に政府に対し、アジア唯一の参加国として、インドの行為をバーミンガム・サミットの主要議題として率先して取り上げるよう求めたところであります。
 しかるに、サミット直前になって、国際社会へ挑戦するかのように行われた今回のインドの核実験に対し、当然、断固たるG8の意思を特別声明に盛り込み、主要国が一致して、これ以上の核開発を断固阻止する構えを打ち出す必要があったにもかかわらず、インド非難は、地域問題の特別声明の一項目として扱われ、独立した声明とはなりませんでした。そればかりか、ペナルティーが必要だと総理自身が強調しておられたにもかかわらず、制裁措置についても何の合意も行うことができなかったのであります。
 インドは、早速、この結果に満足を表明いたしました。核実験の正当化に動く姿勢を見せる一方で、パキスタンは、対抗措置といたしまして、核実験に踏み切る姿勢を一層強めていると言われています。私自身、村岡官房長官にお目にかかって、しっかりやってくださいと御激励申し上げたにもかかわらず、このような結果には、まさに失望の念を禁じ得ないのであります。
 また、私どもがインド大使の召還を申し入れ、官房長官は近々帰国させるとのお話でありましたが、十六日に帰ってきた大使は、五日間滞在しただけできのうまたインドへ帰った、こういうことでありますが、これではとても召還と言えるものではありません。政府は何のためにインド大使を呼び戻し、また帰したのか。
 また、総理は、当初の目的どおり、インド政府に対して断固たる意志を示すことができたとお考えか、また、今後この問題にどのように取り組むのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
 次に、インドネシア情勢について伺います。
 緊迫するインドネシア情勢は、サミットの主要議題の一つとなりました。サミットでは、インドネシアの危機を乗り越えるために政治改革を求める特別声明を採択し、第一に当局と民衆双方に自制を求め、第二にIMFの改革プログラムを実施することが信認と成長回復のための唯一の方法とし、第三に経済改革だけではなく政治改革もまた求めているところであります。
 橋本総理は、スハルト大統領を助けるとか助けないとかではなくてこれは世界経済の問題だとして、改革支援継続の必要性を強調されたと言われますが、折から、本日午前、スハルト大統領は辞任の意思を表明し、ハビビ副大統領が新大統領に就任をされました。こういった状況の急変を踏んで、インドネシアに対する特別声明等をどのように評価されておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
 また、インドネシアの邦人の帰国について、政府はまたも、準備行為という法治国家としてあるまじき対応によって自衛隊機を海外に派遣をいたしました。
 私どもは、カンボジアの邦人帰還が問題となり、自衛隊機を準備行為として派遣したときも、このような行動を法律に基づかないで行うのは問題であるとして政府の対応を批判し、この見地から、我が党独自の自衛隊法の改正案を提案をいたしました。しかし、政府・与党はこれを一顧だもせず廃案にしたのであります。そして、今回またも、準備行為というあいまいな形で自衛隊に任務遂行を命じたのであります。
 さらにまた、適用法の根拠もあいまいな海上保安庁の巡視艇を既に海域に派遣しております。
 経済といわず、外交といわず、国民の安全といわず、政府は、いつまでこのような場当たり的な措置を繰り返すのか。継ぎはぎだらけのパッチワークはもういいかげんにしていただきたい。支離滅裂はもうたくさんであります。総理のお考えがあるならば、お聞かせを願いたい。
 橋本総理、あなたの政権は、まさに沈まんとするタイタニック号であり、あなたはその船長であります。あなたを支えるべき一部の船員たちは、船長の目を盗んで逃げ出そうとして、ボートに乗るタイミングをうかがっております。あなたの政府の支持率は、今や大きく喫水線を割っているではありませんか。
 外交は別もの、政争は水際までといいますが、水際までも何も、沈没寸前の橋本内閣に、政権担当能力は既に失われたというべきであります。いずれ、我々は、心ある議員集団の意思を示す機会はあると思いますが、まず、先立って、一刻も早い橋本総理の辞任を要求いたしまして、私の質問を終わるものであります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#30
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 中村議員に御答弁を申し上げます。
 まず、二〇〇〇年のサミットの議長国に関する御質問がありました。
 日ロ首脳会談のときにエリツィン大統領から確かにこの提案が出、それは私は真剣に受けとめるけれども、全体のルールの話だから全体で話し合うという必要があるだろうということを申した、それは当たり前のことだと思います。
 次に、日ソ中立条約の破棄についてお尋ねがありました。
 ソ連の対日参戦が日ソ中立条約違反であることは申し上げるまでもありません。その上で、五六年の日ソ共同宣言で日ソ間の戦争状態は終結しております。
 また、敗戦当時、私は小学校の二年生でしたが、シベリアに抑留された多くの方々が大変過酷な労働条件のもとで大変苦労しておられたこと、それは子供心にもよく記憶をいたしております。成人いたしましてから、そうした方々の何人かにもお目にかかったこともございます。その上で、エリツィン大統領は、九三年の訪日の際、シベリア抑留問題を全体主義のあしき遺産と位置づけると同時に、ロシア政府と国民を代表し、この非人間的な行為に対して謝罪の意を表明されております。
 次に、橋本・エリツィン・プランを進める上でもこの問題が出発点というお話でありますが、今申し上げましたように、一九五六年の日ソ共同宣言により日ソ間の戦争状態は終結しているのであります。そして、全般的進展のために平和条約を締結し、日ロ間の完全な正常化を図るとともに、橋本・エリツィン・プランと呼ばれています協力関係を着実に進めることを含めて、さまざまな分野における協力と関係強化を図るべく、鋭意取り組んでおります。
 北方領土問題についてロシア国内にさまざまな意見があり、議論があることも承知をいたしておりますが、このような問題をめぐる外交交渉は、静かな雰囲気のもとで両国政府の間で進めることが極めて重要だと考えております。政府間では、平和条約交渉について、いわゆるクラスノヤルスク合意に基づき進めていくことで完全に一致しており、今後とも鋭意交渉を進めていく考えであります。
 次に、経済再建策について御指摘がありました。
 今般政府が行おうとしている総合経済対策は、当面の景気の回復のための内需拡大と、景気回復の足かせとなっている不良債権問題の本質的な処理を目指すものであります。同時に、かたくやり遂げようと決意している構造改革を踏まえ、それに沿う内容といたしております。私の責任は、構造改革を推進しながら一刻も早く景気回復を実現することにある、そのように考えておる次第であります。
 今次サミットについての議論、何点かにお尋ねがありました。
 まず、インド政府に対してどういう意思を示し得たか。
 私は、インドに対し強くかつ明確なメッセージを発するべきこと、またG8以外の諸国にも呼びかけるべき旨を主張しました。その結果、首脳声明において、インドの核実験は国際社会の努力に逆行し、また国際の平和と安全に悪影響を及ぼすものとして非難するとともに、他の諸国にも同様の懸念を示すことを要請することとなりました。
 今後の対応についてもお尋ねがありましたが、我が国としては、引き続きインドに対し、核実験及び核兵器開発の中止、NPT、CTBTの無条件での締結を粘り強く主張してまいります。
 駐インド大使は、今後の対応につき協議するため一時帰国をさせましたが、我が国の不拡散に向けた強い意思を直接インド政府に伝達させるため、協議終了後速やかに帰任をさせました。
 次に、インドネシアの情勢に対するサミット特別声明についてのお尋ねがありました。
 本日、既に御承知のように、スハルト大統領が辞任し、ハビビ副大統領が大統領に就任することが決しておりますことが報道されております。そして、このプロセスにおいて、私どもは、インドネシアの経済改革への努力を支援していく必要、同時に、政府、軍、学生、一般民衆の間の混乱が拡大しないことを願い、当事者間の自制を求めるという二点を特別声明の中に盛り込むべく努力をいたしました。今回混乱がなくここまで参りましたことを、私自身としてはほっとしており、この状態が最後まで続いてくれることを願っております。
 次に、自衛隊機を準備行為として派遣したという御意見をいただきました。
 今般の自衛隊機のシンガポールへの移動は、外務大臣からの依頼を受けた場合にインドネシアの在留邦人などの輸送を速やかに実施し得る体制を確立するため、防衛庁長官が、自衛隊法第百条の八を根拠とする準備行為として実施を命じたものでありまして、シビリアンコントロールの観点からも全く問題はないと考えております。
 最後に、退陣せよという繰り返しの御要求をいただきました。御忠告に心からお礼を申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#31
○議長(伊藤宗一郎君) 中島武敏君。
    〔中島武敏君登壇〕
#32
○中島武敏君 私は、日本共産党を代表して、バーミンガム・サミット報告について、総理に質問いたします。
 第一に、インドの核実験をめぐる問題であります。
 インドが、世界じゅうで強まった批判を無視して二度にわたる核実験を強行したことに、我が党は断固抗議するものであります。
 核不拡散条約の不合理な体制を正しく解決するには、核兵器の全面禁止を緊急に実現する以外に道はありません。しかし、サミット共同声明は、我々諸国は拡散を防止するための最前線であると述べ、核独占体制の維持を絶対化しました。総理、この立場に立ち続ける限り、新たな核実験と核兵器保有の企てを阻止するためのイニシアチブがとれる道理がないではありませんか。五カ国だけが核兵器を持つ権利があり、他国には認められないという主張で本当に相手国が納得すると思いますか。総理の認識をお聞きいたしたいと思います。
 しかも、橋本総理は、核兵器の廃絶要求さえしなかったではありませんか。唯一の被爆国日本の総理が核兵器廃絶という旗印をサミットで掲げられないというのは、どういう理由からですか。なぜ核兵器を一日も早くなくそうと言えないのか、御所見を伺いたい。
 第二に、インドネシアの邦人輸送に当たって航空自衛隊の輸送機六機をシンガポールに派遣した問題であります。
 経過からいえば、政府の対応は、自衛隊機を派遣することばかり考えてきたと断ぜざるを得ません。
 事実経過は、十四日午後、在インドネシア日本大使館が緊急事態対策本部を設置しましたが、この時点では、日本国内の民間航空機、船舶の借り上げ交渉の話は一切出ておりません。一方、アメリカは、同じ十四日に、外交官のうち緊急を要しない者については民間機で出国するよう勧告し、対応いたしました。これに比べて日本の判断と行動には著しいおくれがあったと思いますが、総理の答弁を求めます。
 問題は、十五日になって日本航空と全日空に臨時便の派遣を要請したとはいえ、ガルーダ航空やマレーシア航空など外国航空機による輸送確保に万全な手を尽くさず、自衛隊機の派遣準備だけはしっかりやってきたということであります。事実、防衛庁が自衛隊輸送機や政府専用機の派遣に向け準備を進めていることが十三日に明らかになりました。なぜ政府は早い段階で内外の民間航空機を確保しなかったのですか。
 総理、自衛隊機を派遣させることがどんなにアジア諸国民を警戒させるか、それを承知の上で今回の行動を指示したのですか。昨年七月のカンボジアからの邦人輸送を口実に自衛隊機をタイに派遣したとき、カンボジア政府が不快感を示しただけでなく、韓国や中国などアジア諸国から厳しい批判があったことをもうお忘れになったのですか。今回も、インドネシア外務省が十八日に、現段階で軍用機を派遣する必要はないと不快感を表明しています。
 邦人輸送が必要とあれば、内外には調達できる民間航空機がたくさんあり、また、多数を輸送できる民間船舶もあります。自衛隊機の派遣ではなく、こうした民間の航空機や船舶を広く対象にして検討すべきではなかったかと思いますが、総理の答弁を求めます。
 第三に、総理はサミット終了後の記者会見で、焦点の一つとなった日本経済の問題について、総合経済対策、不良債権処理や金融システムの強化、構造改革の三つの柱を説明し強い歓迎を受けたとして、市場でも景気効果がほとんどないと断定されている総合経済対策を強行しようとしていることであります。
 この総合経済対策の最大の問題は、財革法では公共投資関係費も含めて一切の聖域なし、一律カットと言っていたものを、前年度当初予算比でマイナス七・六%からプラス二五%に伸ばしたことであります。公共投資はもともと聖域扱いにしていたのか、それとも抑制方針を転換したのか、お答えいただきたい。
 さらに、社会保障は、今年度八千億円の自然増のうち五千億円がカットされたまま、補正でもそれは復活されておりません。総理、公共投資を二五%ふやしながら、なぜ社会保障は抑えたままなのか。その理由をただした我が党議員に総理は答えていません。明確なる答弁を求めるものであります。この際、国民生活に犠牲ばかり強いる財政構造改革法をきっぱりと廃止することを強く求めるものであります。
 橋本内閣の九兆円負担増などによって、国民の消費マインドは極端に落ち込んでいます。ところが、政府のやろうとしていることは、二年限りの時限的な所得減税であります。これでは、期限が切れた後は、事実上の増税であります。個人消費を刺激するには、一時的な所得減税より恒久減税の方が効果があることは明らかではありませんか。恒久減税を検討するのかしないのか、答弁を求めます。
 もともと所得減税は、所得税の納税に関係のない高齢者や低所得者には恩恵がありません。また、一定部分を貯蓄に回すことなどの限界があります。これに対して、消費税の減税効果は抜群であります。その効果はすべての国民に及び、消費を直接拡大し、低所得者の購買力を引き上げ、中小企業の営業を助けます。我々は消費税の廃止を目指していますが、少なくとも、今直ちに消費税を三%に引き下げるべきであります。十八日にまとまった時事通信の世論調査でも、景気対策として何を望むかとの問いに、消費税引き下げが五九・三%でトップ、公共事業の上積みは一〇%台にとどまっています。総理、今こそ景気回復の最大の決め手である消費税の減税を決断すべきではありませんか。(拍手)
 不況と失業が日本列島を覆っています。今、政治に光が欲しいという声は満ちあふれております。しかし、総理、各種世論調査でも明らかなように、あなたは国民の支持を失っています。橋本内閣は直ちに退陣すべきであります。さもなくば、衆議院を解散し、国民に信を問うべきであります。
 我々は、消費税三%への減税を初め、国民の願いをかなえる内閣をつくることを目指して全力を挙げることを宣言し、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#33
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 中島議員にお答えを申し上げます。
 まず、核兵器不拡散条約についてお尋ねがありました。
 核軍縮促進のためには核兵器の拡散を防ぐことが必要不可欠であり、我が国はこの条約を重視しております。また、核兵器のない世界を一日も早く実現すべきだとのお考えには全く異存はありません。そのためにも、核不拡散条約を堅持しながら、現実的かつ具体的な措置を着実に積み重ねていく必要があると考えております。
 また、インドネシアの在留邦人救出については、政府は、それまでの検討を踏まえ、十五日から、広く民間航空会社の臨時便、政府のチャーター機等についての手配を開始いたしました。その結果、十七日、最初の臨時便がジャカルタを立っており、各国に比べておくれがあったとは考えておりません。
 なお、自衛隊機については、万一の緊急時に際し、邦人の出国手段を確保するための措置の一環として移動させたものであります。
 次に、今回の補正予算について、公共投資を聖域扱いとし、社会保障を抑制したままとなっているという御指摘であります。
 今回の総合経済対策及び補正予算におきましては、内需拡大を図るとともに、二十一世紀を見据え、豊かで活力のある経済社会の構築に向け、真に必要な社会資本等を整備しようとするものであり、その際にも、少子・高齢化の進展等に対応するための福祉、医療、教育などの国民生活に密接に関連する分野等に事業費を重点的に配分することといたしております。
 財政構造改革法を廃止せよという御意見でありますが、私はその点には賛成ができません。このため、御審議をいただいております改正法案につきまして、財政構造改革法の基本的な骨格である主要な経費に係る量的縮減目標の仕組みと財政健全化目標を堅持しつつ、その時々の状況に応じて、いわば緊急避難的に適切な措置を講じ得る枠組みを整備するために、必要最小限の修正にとどめております。
 次に、所得課税及び消費税減税についてのお尋ねがございました。
 個人所得課税につきましては、諸外国と比較して低い個人所得課税負担の水準、税率構造、各種の控除のあり方あるいは資産性所得課税や年金課税など、さまざまな論点について幅広くきちんとした検討を行い、公正、透明で国民の意欲の引き出せるような制度改正を目指してまいります。
 また、消費税率五%への引き上げを含む税制改革は、少子・高齢化の進展という我が国の構造変化に税制面から対応するものとして、我が国の将来にとって極めて重要な改革だったと考えております。消費税率の引き下げは考えておりません。
 最後に、退陣あるいは解散せよという御批判がありました。御意見としてちょうだいをいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#34
○議長(伊藤宗一郎君) 畠山健治郎君。
    〔畠山健治郎君登壇〕
#35
○畠山健治郎君 私は、社会民主党・市民連合を代表し、先般バーミンガムで開催されましたサミットに関するただいまの総理の報告に関連し、今後のサミットのあり方並びに日米関係、インドの核実験、インドネシア問題を中心に幾つか御質問を申し上げたいと思います。
 先進五カ国で出発したサミットも、今やロシアも正式な一員となって八カ国に拡大しました。このようなグローバル化したサミットにもかかわらず、インドでは核実験が行われ、さらにインドネシアでは、スハルト体制に対する国民の不満が爆発し、本日辞任するなど、世界の政治経済に対する危機は拡大する様相を呈しております。先進八カ国の協調が誇示される一方で、こうした危機に有効な対策を提示できないことは、サミットが果たす国際的役割に一つの黄信号をともしていると言えば、果たして言い過ぎでありましょうか。
 ただいまの総理報告を伺っても、我が国の経済対策に対する国際的理解を得たと自賛するばかりでは、国際経済危機の発信源であるアジアを代表する我が国としては、いささか重厚さに欠け、アジア諸国はもちろん、世界の発展途上国の賛同は得られないのではないでしょうか。石油危機を背景に開催された第一回のランブイエ・サミットからロシアの加入によってグローバル化した今日、今後のサミットに求められる課題は、国際的な経済不安の解消に先進国が自国の利害をどれほど従属させるか、そのために八カ国がどれほど協調するか、ここに最大の課題があると考えます。今後のサミットのあり方について、総理の御見解をお伺いいたします。
 インドネシアの民主化、経済安定にどのように寄与するか、最大のODA援助国である我が国の行動に世界は注目しております。我が党は、スハルト大統領の退陣と民主化を求める市民、学生を支持するとともに、大衆の基本的人権を無視する権力は必ず腐朽、荒廃することは歴史の示すところであることを重視して強調しておきたいと存じます。
 先ほどの報道によれば、スハルト大統領はみずから辞任することを表明いたしましたが、大規模な流血に至る前に辞任を決断したことについては、これを心から歓迎いたしたいと思います。
 しかし、副大統領に権限が委譲することとワンセットの辞任は、依然、今回の辞任がスハルトなきスハルト体制の温存とも言えなくもありません。そうした側面を持つ今回の辞任のもとで、果たしてインドネシアの政治的不安定が解消され、民主国家として新たな出発を保障するものとなるか、予断を許しません。
 いずれにしても、政治的安定と経済の回復、安定とは表裏一体であります。こうした視点から、政府は、今後も、慎重かつ重大な決意を持ってインドネシア政府に当たる必要があると考えますが、新たな情勢を踏まえた総理の決意のほどをお伺いいたしたいと存じます。
 これとあわせて、IMFによるインドネシア資金援助の問題についてお尋ねいたします。資金援助に当たって、IMFは極めて厳しい経済構造改革をインドネシアに求め、総理もまた、それを遵守するよう、先般インドネシアを訪問し、スハルト大統領に要請しております。しかし、開発独裁体制によってごく一部の特権層が富の大半を握り、貧富の差が著しい同国において、厳しい経済構造改革を突きつけるときそのしわ寄せはどこへいくでありましょうか。総理は、さきの訪問に当たって、果たして考えたことがおありでしょうか。経済構造改革を促す政治的、社会的主体性が同国にないにもかかわらず、厳しい援助条件を突きつけたことが、今回の市民、学生のスハルト大統領退陣要求の契機となっておることは明らかであります。この点からも、民主化を基本とする政治改革を促すこととセットにならなければ、いかなる援助も意味がないと思います。
 その点で、今回のサミットはもとより、さきの総理のインドネシア訪問も肝心の点が欠けていると考えますが、総理の御見解を承りたいと存じます。
 冷戦体制が崩壊し、国際関係に、国家中心の力の論理から道義的要素を中心とする新たな行動原理が生まれかかろうとしているやさきに、インドが再び国家中心の力の論理に逆戻りするかのような核実験を行ったことに対し、我が党は、この場をおかりして強く抗議をするものであります。
 そこでまずお伺いいたしますが、一九九五年十一月、村山内閣において閣議決定された「平成八年度以降に係る防衛計画の大綱」において、我が党が強く主張して、「核兵器の脅威に対しては、核兵器のない世界を目指した現実的かつ着実な核軍縮の国際的努力の中で積極的な役割」を果たすことが明文化されております。
 一方、軍縮・不拡散のための条約としては、まずインド、パキスタン、イスラエルを除く百八十六カ国が加盟するNPT、CTBT、カットオフ条約あるいはIAEA等の条約やレジームがありますが、それら条約において、唯一の被爆国である我が国が、さきに示した大綱方針に沿って、これまでどのようなイニシアチブを払ってきたのか、また今後どのように取り組むつもりなのか、総理の御見解をお伺いいたしたいと思います。
 総理は、サミットにおいてインドに対する制裁措置を主張し、新規円借款停止などの措置を講ずることを決定しておりますが、果たしてこれが核軍縮に対して我が国の果たすべき課題のすべてでありましょうか。
 最も大切なことは、CTBTが示す核クラブ国の核兵器廃絶をいかに現実化するかという国際的な道義を確立すること、これがまず第一に求められているのであり、CTBTを裏で支えているのはこの論理ではないでしょうか。この論理を国際的に現実化する我が国のイニシアチブこそ、唯一の被爆国たる我が国の課題ではないでしょうか。この認識とそれに基づく具体的行動のないまま、いたずらに援助停止を叫んで恫喝しても、新たな核保有国あるいは願望国の力の論理への逆戻りはとめられません。
 この点で総理の御見解をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#36
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 畠山議員にお答えを申し上げます。
 まず、今後のサミットのあり方についての御意見をいただきました。
 主要国首脳会議は、議員が御指摘になりましたような自国の利害をどれほど国際的な経済不安の解消に従属させていくか、そのための協調ができるかといった御指摘の点も含めまして、そのときそのときに世界が直面する重要な問題についての意見を交わし、政策調整を行う場として有効に機能してまいりました。
 今回のサミットにおきましても、例えば、ロシアが入っていない状況でインドの核実験の議論をする、G8化した場面で議論を行う、私は、やはりG8化したことにそのメリットはあったと考えております。今後の国際社会の進むべき方向を論議する上でも、私は、G8化したサミット、それはまたそれなりのよさを発揮し、能力を発揮することができるもの、そのように考えます。
 次に、インドネシアの民主化についてのお尋ねがございました。
 本日、スハルト大統領が辞任し、ハビビ副大統領が新大統領に就任をいたしました。これは、インドネシア憲法に定められた手続によったものであります。そして、そのもとで、私どもは、インドネシアの状況が早急に安定に向かうよう期待をいたしております。
 我が国としては、現在のインドネシアの政治的な、経済的な混乱が一刻も早く克服をされ、国民経済の回復と民生の安定が実現されることを心から期待をいたしておりますし、そのために引き続き努力もしてまいりたい、協力もしてまいりたいと考えております。
 また、インドネシア経済についてお尋ねがございましたが、現在インドネシアの実施しておりますIMFプログラムは、与党三党の政調会長に御同行いただきながら、私が三月中旬、スハルト大統領と会談をいたしましたその論議などを通じ、社会的弱者に配慮すべく修正、強化をされました。そして、その社会的弱者に配慮すべく修正、強化されましたプログラムが、実行に移されている状況であります。
 本日、大統領の交代ということがあったわけですが、やはり私は、政治、経済改革いずれもがきちんと推進をされる、インドネシア社会が安定を取り戻すことを強く期待しておる次第であります。
 次に、我が国の核軍縮努力についてお尋ねがありました。
 我が国は、現実的かつ具体的な措置を積み重ねるための努力として、NPT体制の強化、CTBTの早期発効、カットオフ条約の早期交渉開始、IAEAの保障措置体制の強化などに尽力をいたしております。このような努力の一環として、カットオフ条約に関する専門家会合を開催をいたしましたが、今後も、防衛計画の大綱なども踏まえながら、核軍縮のための努力を継続していきたいと考えております。
 また、核廃絶に向けた課題について、そのイニシアチブこそ、唯一の被爆国である日本の課題だという御指摘をいただきました。
 核兵器のない世界を実現するには、現実的かつ具体的な措置を着実に積み重ねていく努力が必要であります。我が国は、昨年七月に率先してCTBTを批准いたしましたほか、国連総会に、究極的核廃絶に向けた核軍縮決議案を提出するなどのイニシアチブを発揮しております。
 今申し上げましたカットオフ条約の専門家会合、これは、五月の十一、十二の両日、ジュネーブで技術的な問題を含む議論をする会合を主催したばかりでありますが、こうした努力を地道に積み重ね、今後とも、核兵器のない世界に向けた努力を進めてまいりたいと思います。(拍手)
#37
○議長(伊藤宗一郎君) これにて質疑は終了いたしました。
    〔議長退席、副議長着席〕
     ――――◇―――――
 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律案(内閣提出、参議院送付)及び検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)の趣旨説明
#38
○副議長(渡部恒三君) この際、内閣提出、参議院送付、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律案及び検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生大臣小泉純一郎君。
    〔国務大臣小泉純一郎君登壇〕
#39
○国務大臣(小泉純一郎君) ただいま議題となりました感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律案及び検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 まず、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律案について申し上げます。
 明治三十年の伝染病予防法の制定以来百年が経過し、この間の医学・医療の進歩、衛生水準の向上及び国民の健康・衛生意識の向上に伴い、コレラによる死者が年間十万人を超えるといった事態を見ることはなくなりました。その一方で、国内においては、一昨年にいわゆるO157感染症の流行が社会問題となり、また、世界に目を向ければ、エボラ出血熱等これまで知られなかったいわゆる新興感染症が出現し、国際交流の活発化に伴い国内に持ち込まれる危険性が高まっております。さらには、近い将来克服されると考えられてきたマラリア等が再興感染症として再び問題化するなど、感染症が新しい形で人類に脅威を与えてきております。
 また、伝染病予防法は、強制的な予防措置が既に不要となっている感染症を法定伝染病として法律に位置づけている一方で、エボラ出血熱等の世界的に問題視されている危険な感染症が法の対象とされていないこと、感染症の予防措置に関し、感染症が発生した事後の対応に偏っていること、患者に対する行動制限に際し、人権尊重の観点からの体系的な手続保障規定が設けられていないこと等の点で、時代の要請にこたえることができないものとなっております。
 こうした状況を踏まえ、総合的な感染症予防対策の推進と、これに伴う医療の充実を図るために、今般、この法律案を提出した次第であります。
 この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、感染症の予防のための施策は、感染症の患者等の人権に配慮しつつ、総合的かつ計画的に推進されることを基本理念とするとともに、感染症の患者が良質かつ適切な医療を受けられるよう必要な措置を講ずるよう努めなければならないこと等を国及び地方公共団体の責務とし、また、感染症の患者等の人権が損なわれることがないようにしなければならないこと等を国民の責務とすることとしております。
 第二に、国は感染症の予防の総合的な推進を図るための基本指針及び特に施策を推進する必要がある感染症についての特定感染症予防指針を定め、都道府県は感染症の予防のための施策の実施に関する予防計画を定めることとするとともに、所要の感染症に関する情報の収集及び公表に関する規定を整備することとしております。
 第三に、この法律案による措置の対象となる感染症について、その感染力、感染した場合の重篤性等による危険性に応じて類型化することとしております。
 第四に、感染症の類型に応じて、健康診断、就業制限及び入院の制度を設け、患者の人権の保護を図るための手続規定を整備するとともに、この法律案に基づく入院医療の提供体制を整備し、その入院費用について、医療保険各法による医療給付と公費の組み合わせにより負担するための規定を定めることとしております。
 第五に、感染症の類型に応じて、その発生及び蔓延の防止のために感染症の病原体に汚染された場所や物件の消毒、猿その他の動物に係る輸入検疫等の必要な措置について定めることとしております。
 第六に、未知の感染症であって、その感染力、感染した場合の重篤性等に基づき危険性が極めて高いと判断されるものを新感染症と位置づけ、これに迅速かつ的確に対応できるよう、国と都道府県の密接な連携のもとに、蔓延の防止のための入院等の措置を定めることとしております。
 なお、性病及び後天性免疫不全症候群については、おのおのこれまで個別の法律に基づき対応してまいりましたが、これらの法律の制定以降の医学・医療の進歩、これらの感染症に関する正しい知識の普及等の状況の変化を踏まえ、今後は、この法律案の中で必要な対応を図ることとし、性病予防法及び後天性免疫不全症候群の予防に関する法律についても、伝染病予防法とあわせて廃止することとしております。
 次に、検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 近年、海外においてはエボラ出血熱等のこれまで知られなかった感染症が出現し、国内においては生活様式の多様化に伴い感染機会が増大しており、感染症を取り巻く環境は大きく変化しております。
 さらに、国際間の人や物の移動の活発化や、航空機による輸送の迅速化に伴い、外国から新たな感染症が持ち込まれる危険性が著しく増大しており、国内への感染症の侵入防止のための施策の充実及び国内における感染症対策と連携した対応が求められております。
 こうした状況を踏まえ、総合的な感染症の予防対策の推進の一環として、国内に常在しない感染症の侵入を防止するため、検疫の対象となる感染症や狂犬病対策における対象動物の追加等所要の見直しを行うこととし、今般、この法律案を提出した次第であります。
 この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
 まず、検疫法の一部改正につきましては、検疫業務について、国内の新たな感染症対策との整合性を図り、検疫の対象となる感染症として特に危険な感染症を追加し、また、検疫所長が厚生大臣の指示に従って新感染症に対する検疫を行うことができるようにするとともに、隔離及び停留について所要の見直しを行うこととしております。
 さらに、検疫所において、出入国者の求めに応じて診察や予防接種を実施するとともに、外国における感染症情報を出入国者に対し提供することとし、さらに検疫所と都道府県との連携を図ることとしております。
 狂犬病予防法の一部改正につきましては、狂犬病の予防のため、輸出入検疫、狂犬病の発生時における獣医師の届け出措置の対象動物として、現行の犬に加え、猫等を追加することとしております。
 これら二法の施行日につきましては、一部の事項を除き、平成十一年四月一日としております。
 政府といたしましては、以上を内容とする法律案を提出した次第でありますが、参議院におきまして、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律案に対して、次のとおり修正が行われております。
 第一に、国及び地方公共団体の責務として、感染症の病原体等の検査能力の向上を加えるとともに、必要な施策を講ずる場合においては感染症の患者等の人権に配慮しなければならないこととし、国の責務として、感染症の病原体等の検査の実施を図るための体制の整備を加えることとされております。
 第二に、四類感染症及び指定感染症の範囲について、既に知られている感染性の疾病に限定されることを明確にすることとされております。
 第三に、国が定める基本指針に定める事項として、感染症の病原体等の検査に関する事項及び感染症の患者等の人権の配慮に関する事項を位置づけることとされております。
 第四に、この法律の規定について、この法律の施行後五年を目途として、感染症の流行の状況、医学・医療の進歩の推移、国際交流の進展、感染症に関する知識の普及の状況その他この法律の施行の状況等を勘案しつつ検討し、必要があると認められるときは、所要の措置を講ずるものとすることとされております。
 以上が感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律案及び検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律案(内閣提出、参議院送付)及び検疫法及び狂犬病予防法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)の趣旨説明に対する質疑
#40
○副議長(渡部恒三君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。家西悟君。
    〔家西悟君登壇〕
#41
○家西悟君 ただいま上程されました法律案につきまして、民主党を代表し、総理並びに厚生大臣に質問いたします。
 伝染病予防法が制定されて以来、百一年の歳月が経過いたしました。伝染病予防法は、抗生物質など積極的な治療手段がない時代に、患者を隔離することによって感染防止と社会防衛を図ろうとしたものであります。医学の進歩や衛生水準の向上など感染症を取り巻く現状が大きく変化した今日においては、既に対応することができないものとなりました。
 また一方、エイズ予防法は、多くの血友病患者や市民団体がその制定に反対したにもかかわらず、いわゆるエイズパニックの中で強行に、私たちの思いとは全く逆の法律として施行されました。当時の厚生省の担当者は、この法律は患者さんのためになる法律ですと説明しました。しかし、私たちは、この法律は差別や偏見を生む法律だと懸念を持っていました。現実に、HIV、エイズの差別を引き起こした大きな要因になり、患者団体から、この間、法律の廃止もしくは医療、福祉を保障する法体系への転換を強く求めてきました。
 また、性病予防法においても多くの差別的条項が含まれており、患者のケアという視点を欠いているなど問題を抱えております。
 そこで、これら三法が今日においては機能しなくなった現状をどのようにとらえ、法案を制定されようとしているのか、まず総理に質問いたします。
 私自身、血友病患者であり、輸入血液製剤によりHIV、B型肝炎、C型肝炎に感染しております。身をもってこの国の貧困な医療実態と今日まで闘ってきた一人として、少し話をさせていただきます。(拍手)
 歯科診療を受けたくて大学病院から紹介された歯科医院において診療拒否に遭った経験も私自身はあります。また、仲間の中には、通院は許されるが入院は断られたり、外来で点滴をしているとまくら元で、エイズの人間が来たら困ると医療従事者に言われるなど、いわれなき差別と偏見の中で、満足な医療も施されることなく亡くなっていき、その上、死亡診断書には別の病名が記載され、ひっそりと葬儀を済ませ、人目を避け、暮らしてきた家族たちの気持ちを知っていただきたいと思います。
 こうした医療忌避は、実際に行われてきた事実です。いかに医療法において良質かつ適切な医療を提供する医師の責務が明記されようとも、現場においてはその内容が伴っていないと言っても決して言い過ぎではありません。
 社会防衛と称して患者を強制隔離し、患者、家族の尊厳を踏みにじってきたらい予防法が二年前に廃止されました。その際、ハンセン病患者やその家族に多くの苦しみを与えてきたことについて、当時の政府が陳謝の念と深い反省の意をあらわしたことは記憶に新しいところです。
 今まで、重篤な感染症の患者に対しては、人権の尊重のウエートが多少軽くなっても危険性回避を優先的に考えなければならないという発想が先行してきましたが、結果として、偏見や差別を助長してきたことも事実であります。そして、本法案によってエイズ予防法は廃止されようとしていますが、これからの感染症予防医療法においては、らい予防法、エイズ予防法のようなことがあってはならないと思います。過去に対する反省があってこそ、新たなものが生まれるものと考えます。
 HIVに関して具体的に言うと、一九八三年の段階でウイルスは同定され、一九八五年には検査もできるようになり、感染源は血液、体液、母乳によって感染すると知られていたにもかかわらず、まるで空気感染や接触感染するかのように言われ、一九八八年、エイズ予防法は制定されました。こういった事実を踏まえ、エイズ予防法の制定は現在でも適切であったと考えているのか、端的に御答弁いただきたいと思います。
 そして、私たちHIV感染者の気持ちを知っていただきたいと思います。
 感染の拡大を一番恐れているのは、当事者である私たちです。自分たちのような思いを二度と繰り返してはいけないのです。ただ単にエイズ予防法が廃止になるというだけでは、私たちは納得ができません。さきに申し上げましたように、差別、偏見の中、無念の死を遂げた多くのエイズ患者、現在苦難の闘病生活を続けている患者に対し、総理から反省と謝罪の言葉を述べていただきたいと思います。
 その上で、その旨を法文に明記することを強く求めるものであります。
 以上の点について、総理の明快な答弁を求めます。(拍手)
 次に、厚生大臣にお伺いいたします。
 さきに報告された公衆衛生審議会の意見と法案のそごについて質問いたします。
 上程された本法律案には、らい予防法やエイズ予防法の制定に関する過去についての反省が全く見られません。また、良質かつ適切な医療を提供するという医師の責務について、審議会の基本的方向性が全く抜け落ちております。医療法に明記されているから必要ないなどということは、私の経験から全く言えないと思います。
 これらの答申が示した精神を意図的に削除したのはなぜか、厚生大臣にお伺いいたします。
 また、政府は良質かつ適切な医療は一体何であると考えておられるのか、お尋ねいたします。
 例えば、私どもHIV感染者は、内科治療のみならず口腔外科、眼科、皮膚科等多岐にわたる治療を必要としています。それと患者の精神的ケアも必要であります。それは他の感染症患者も同じことが言えると思います。
 医療体制の整備について、具体的にどのように考えておられるのか明らかにしていただきたいと思います。
 次に、患者の権利とインフォームド・コンセントに関しお伺いいたします。
 条文中、入院勧告に際し、地方公共団体の職員が厚生省令で定める事項を書面で通知することとされていますが、これは医師が行うインフォームド・コンセントとは全く別のものだと思います。
 また、新感染症の診断に際し、医師に都道府県知事に対する届け出義務を課しておりますが、肝心な患者本人に対しては、個人の情報を管理する権利を明記しておりません。
 HIVのことでいえば、告知されなかったために配偶者に感染させてしまい、告知しなかった医師に対し、一言本当のことを言ってくれたならば配偶者への感染は防げたのにと亡くなるまで言い続けた患者がいたことを知っていただきたいと思います。
 丁寧な説明と説得、そして同意に基づいた治療が求められる時代において、この法律は甚だ適切を欠いていると言わざるを得ません。
 医師の責務と患者の知る権利について厚生大臣はどのようにお考えになっているのか、御答弁をお願いいたします。(拍手)
 次に、新感染症と指定感染症についてお伺いいたします。
 まず、新感染症について、厚生大臣の権限が明確でなく、発生した地域により知事の判断がまちまちになる可能性が大いに考えられます。強制入院を伴う措置であり、一歩間違えれば患者の権利侵害にもつながりかねない問題ですので、国の責務を明らかにすべきと考えますが、いかがでしょうか。
 また、参議院での審議において、感染力が弱い疾病を新感染症にすることはないと答弁されていますが、条文においては全く明確ではありません。HIVのような病気が新感染症に当たらないと確信できるかどうか、御答弁いただきたいと思います。
 一方、指定感染症については、公衆衛生審議会の意見では全く触れられていない概念でしたが、本法律案で唐突に要件を出されたのはどのような理由に基づくのか、納得のいく御答弁をお願いしたいと思います。
 最後に、法の適正手続という観点から見解をお伺いいたします。
 憲法は、何人にも法定手続を保障しており、それが感染症の患者であることを理由に例外とされたり、人権をないがしろにされることは許されません。
 入院勧告や強制入院の措置に対する不服申し立ての制度について、正当な第三者機関へ審査請求できず、手続保障が全く不十分であることに対してどうお考えになるのでしょうか。
 また、感染症協議会の位置づけも不明確のところが見られます。憲法が国民に保障する権利を満たしていると厚生大臣は考えておられるのでしょうか。
 国民の命と健康を守るということは、患者を隔離し、社会防衛を貫くことではありません。WHOからも、人権とコミュニティーの利益とは対立しない、人権の保護と公衆衛生の目標は対立するものでなく、お互いに補完するものであるとのメッセージが発せられております。このことについて厚生大臣はどのように受けとめておられるのか、お伺いしたいと思います。
 どうか、私たち感染者の気持ちを理解していただきたいし、私たちの声に耳を傾けていただきたい。私たちも社会の一員として社会の中でともに暮らせるような法律に制定されることを願います。
 以上、本法律案の主な問題点を当事者である私の目線から指摘させていただき、明快な答弁を求め、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#42
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 家西議員にお答えを申し上げます。
 御自身の体験を踏まえながら、今真剣に述べられた御質問、御意見、感染症患者の皆さんの人権に対する配慮の重要性、改めてさまざまなことを考えさせられました。
 私の郷里、岡山県には、ハンセン病の療養所がございます。長い間島と本土との間は、わずかな距離でありますが、船の行き来しかありませんでした。これが橋でつながれましたとき、入園者の方々が泣いておられたのを、今思い起こしております。
 現行の伝染病予防法、エイズ予防法等を廃止して新法をつくるその考え方、これは、近年の、新興・再興感染症の出現や、患者等の方々の人権に配慮する、そうした社会的な要請に的確に対応するために新法を制定しようとしております。
 特に、患者の方々への人権の配慮については、新法の基本理念、国及び地方公共団体の責務等の規定として明記をいたしております。
 また、エイズ予防法の制定は現在でも適切であったと考えているか、反省、謝罪すべきだという御意見をいただきました。
 エイズ予防法、昭和六十三年に制定されました当時、日本の国内においてこの病気の特性その他十分な知識が、我々を含めて存在したとは思っておりません。そして……(発言する者あり)いや、ですから、ちょっと聞いてください。そして、治療法がない、あるいは急速な拡大が懸念される、そうした声が確かに社会の中に大きく存在をしておりました。今となって、専門家があったことを私どもも承知をしております。その検査の方法があったということも、後に我々は知る機会を得ました。しかし、当時、一般的には、私は十分に知られていたとは思えません。それだけに、当時としてはやむを得なかったと思いますけれども、今振り返れば、私たちが後悔すること、反省すべきこと、その上でおわびを申し上げることは、振り返って、あったと思います。そして、その気持ちを率直に私は、議員を通じて申し上げたいと思います。
 その上で、今回の法案は、人権の配慮、あるいは良質かつ適切な医療の提供、この言葉の定義についても議員から御質問がありましたけれども、国の責務等を盛り込むこと、さらにこれらの趣旨を、入院の手続や感染症指定医療機関制度、さらにはエイズ等を対象とした特定感染症予防指針において具体化し、御指摘のような御意見を生かしたものになっていると考えています。
 残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣小泉純一郎君登壇〕
#43
○国務大臣(小泉純一郎君) 家西議員にお答えいたします。
 公衆衛生審議会が示した意見と法案の内容の相違についてですが、まず、らい予防法については、廃止に当たっての反省等の経緯について十分に考慮し、新法案においては、患者の人権への配慮を条文中に盛り込み、入院の手続規定の整備等を行っております。また、良質かつ適切な医療を提供するという医師の責務については、医療法にも規定しているほか、新法案において、国及び地方公共団体が医師等の協力を得ながら、良質かつ適切な医療の提供を図っていくこととしております。
 良質かつ適切な医療と医療体制の整備に関するお尋ねですが、良質かつ適切な医療とは、医師等と患者の間の信頼関係を前提として、患者の心身の状況を十分考慮しながら、総合的な医療サービスを提供することであると考えております。また、医療体制の整備については、専門の医療機関を感染症指定医療機関として指定し、その際の指定要件を定めることによって、質の確保を図っていくこととしております。
 患者の知る権利についてですが、病名を含めて診療内容等を患者に知らせることは当然と考えており、患者と医師との関係については、医療に関する基本原則を定める医療法に、医師等の責務として、医療の提供に際し適切な説明を行い、患者の理解を得るよう努めるべきことを規定しております。また、御指摘のとおり、本法案においては、都道府県知事が入院措置等を行う場合には、書面で通知を行うことになっております。
 新感染症に対する国の責任についてですが、新感染症が発生した場合には、現地の実情に即して措置等をとる必要があることから、一次的な判断を都道府県知事が行うこととしております。この場合、厚生大臣は都道府県知事に対し技術的指導、助言を行うことにより、国の責任を果たしてまいりたいと考えております。
 HIV感染症のような病気が新感染症に該当するかどうかについてですが、新感染症は、未知の感染症であって、感染力や罹患した場合の重篤性から判断した危険性が極めて高い感染症が対象となると考えております。したがって、エイズのような感染力の弱い病気が新感染症とされることはないものと考えております。
 指定感染症についてですが、公衆衛生審議会における検討の中で、その法的取り扱いについて具体的な審議が行われています。また、審議会の意見書においても、予想されない感染症に関してその都度所要の措置を的確に講ずる必要性が指摘されており、指定感染症は、これを制度化したものであります。
 不服申し立て制度についてですが、この法案に基づく行政処分については、一般の行政不服審査法が適用されるほか、三十日を超える長期入院患者からの不服申し立てに厚生大臣が五日以内に裁決を行う特例規定を認めるなど、より患者の人権に配慮した特例的な手続を設けております。また、感染症の診査に関する協議会は、学問的、専門的な意見を述べる諮問機関として今回新設したものであります。これらにより、より客観的で公正な判断が行われるものと考えております。
 終わりに、世界保健機構のメッセージに関連してですが、公衆衛生の目標と感染症の患者等の人権への配慮を両立させることが重要と認識しておりまして、この法案の基本理念等において、その旨明記しているところであります。
 以上であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#44
○副議長(渡部恒三君) 西博義君。
    〔西博義君登壇〕
#45
○西博義君 私は、自由党を代表しまして、ただいま趣旨説明のありました感染症の予防と患者の医療に関する法案等二法案について、橋本総理大臣、小泉厚生大臣に質問をいたします。
 まず初めに、感染症対策における危機管理の観点から質問をしたいと思います。
 我々は、阪神・淡路大震災、日本海重油流出事故等、引き続き起こった大きな災害から多くのことを学ぶことができました。我が国では、災害・事故対策上、準備の基準となるべき被害及び規模の想定が非常に低く設定され、対応のための資機材の不足やシステムの未整備が明らかになるとともに、大きな災害等に関しても基本的には地方自治体が対処することとなっているため、国が主導的に対応できず、初動体制のおくれが問題となってまいりました。
 私は、新進党時代、自衛隊など国の持つ人的、物的資源を利用して取り組まなければならないような大災害や大事故、防疫など、国民の生命や財産、健康に多大な悪影響を及ぼすとき、国がリーダーシップをとれるように災害対策基本法を抜本的に改正するとともに、首相の権限強化や、内閣が安全保障の観点から危機を管理するだけではなく、災害、緊急事態に即応できる体制づくりを提案してまいりました。
 さて、本法案において、感染症への対応は、現在の災害への対応と同じで、地方自治体が行うという仕組みとなっております。今申し上げましたように、これでは大規模な緊急事態には再び問題を生ずることは明らかであります。そこで、この法案で想定されている体制で、重大な感染症が発生した場合、国はリーダーシップを十分に発揮できるとお考えか、総理にお伺いいたします。
 感染症が発生した場合、それに感染した物件への対処、処理につきましては、消毒、封鎖、焼却という方法が考えられます。大部分の感染症の病原体は、これら消毒、封鎖、焼却によって蔓延の防止が図れると考えられております。問題は、感染力が非常に強く、対応に緊急性を要する感染症が発生し、感染した物件を焼却した方がよいと判断された場合、その運搬や焼却施設など、対応する施設、体制が整っているのかどうかということになります。
 例えば、現在、産業廃棄物の一種として、血液や使用済み注射針など、感染性病原体を含むあるいは含むと思われる産業廃棄物を扱う業者がいますが、重大な感染症にかかわる物件の処理についてもそうした業者に委託するということをお考えなのか、厚生大臣にお伺いいたします。
 私は、こうした作業を初め、感染症患者の速やかな移送などを考えると、国の指示のもとに動く、感染症にかからないよう専門的に訓練され、装備の整った組織がぜひとも必要ではないかと考えます。この点については、ここでは指摘にとどめたいと思います。
 次に、感染症情報に対する正しい知識の認識とその施策についてお聞きしたいと思います。
 新種の感染症が流行したときの国民の一種のパニック的な反応は、患者の人権問題に発展するおそれのある問題であります。HIVやエボラ出血熱発生時の国民の反応、O157や新型インフルエンザなどは記憶に新しいところであります。患者の人権侵害を防ぐ観点からも、法案に盛り込まれた国、地方公共団体の責務としての感染症に関する正しい知識の普及などのための必要な措置、国民の責務としての、感染症に対する正しい知識を持ち、感染症の予防に努め、感染症の患者等の人権を損なわないようにすることの規定は、実効ある施策として展開されねばならないと思われます。
 しかしながら、エイズ予防法にも見られたように、国民の責務としての正しいエイズへの理解と、人権の配慮といった政府の啓発活動は必ずしも十分ではなく、薬害エイズ患者への対応は常に後手後手に回る始末でございました。実際に、先日我々が要求したエイズ予防法に関する予備的調査では、エイズ報道が「エイズパニック的な現象をもたらした。」と報告をしております。そうした中で、厚生省の具体的な対応は大変鈍かったのではないでしょうか。
 これらの点から、法案に記されている責務としての正しい知識の普及に関してはその実効性が疑われますが、政府の責任は重大であります。パニックをあおる可能性もあるこの情報伝達に関して、どのように対応をしようと考えているのでしょうか。既に具体的な指針は用意されているのでしょうか。小泉厚生大臣に質問をいたします。
 次に、今までの厚生行政と人権の考え方について質問いたします。
 現代の感染症対策は、近年のHIV、O157のほか、かつて知られていない新しい感染症の出現、撲滅可能とされていた結核やマラリアなどの疾病の再興、さらに、薬剤に耐えられるMRSAといった薬剤耐性菌に代表される、医療技術革新ゆえに発生したともいえる新たな感染症への対策が必要とされています。また、国際交流の活発化、交通機関の発達等により、感染症が拡大する速さは格段に増し、機動的な感染症対策も求められるようになりました。
 また、現行の伝染病予防法は、制定後、実に百年以上が経過しており、医学、医療の進歩、公衆衛生対策の向上や人権の配慮の高まりから見ても実態に合わないものとなり、本法案がこれからの感染症対策に関する我が国としての基本的なあり方を示すものと位置づけられ、提案されております。しかし、実情と乖離する伝染病予防法等の法律や、また、これらに基づく強制隔離や就業制限といった厚生行政により人権が侵害され、患者の皆さんに耐えがたい苦痛を与えた事実は変えることはできません。
 二年前廃止されたらい予防法に関しましても、戦後普及した治療薬によって既に隔離の必要性はなくなっていたにもかかわらず、法律を長い間変えなかったため、患者や家族への偏見、差別を助長してきました。法律が廃止され、強制隔離の呪縛から解放されたといたしましても、長い間患者さんたちが味わった苦痛はそう簡単に消えるものではありませんし、患者は高齢化し、偏見を恐れ、社会に踏み出すことが難しくなっています。また、このような厚生行政による被害は、エイズやO157でも繰り返されてきました。
 昨年の公衆衛生審議会の基本問題検討小委員会の報告でも、過去におけるハンセン病患者などへの差別や、らい予防法の存続などで患者、家族の尊厳を傷つけたことに対する深い反省が必要であると記されております。新しい感染症対策の基本フレームを構築する新法の基本理念において、過去の感染症対策に対する率直な反省と謝罪の文言を明確に盛り込むことが必要ではないでしょうか。(拍手)過去のものとして葬り去ることをせず、新法ではこの教訓を明確に反映させなければなりません。明確な答弁をお願いいたします。
 また、入院や就業制限を行うことに際して重要なことは、患者、家族に対して、なぜ入院や就業制限を行うのか、具体的にはどのような措置をとるのかといった説明を十分に行い、納得が得られるインフォームド・コンセントの確立を強く要請しておきたいと思います。
 次に、感染症指定医療機関の選定のあり方と医療提供体制等についてお聞きいたします。
 特定感染症指定医療機関については厚生大臣が、一種、二種感染症指定医療機関については都道府県知事が指定することになっていますが、それに伴い施設の整備など財政上の課題があります。
 また、拠点病院として指定されることで、感染症を取り扱う病院として一般患者から嫌がられる可能性もあり得ます。この問題は、本来はきちんとした安全管理によって払拭されるものですが、残念ながら、イメージとして常につきまとう問題であります。実際、平成九年に総務庁行政監察局が発表した調査結果報告によりますと、エイズ拠点病院として県からの選定要請に医療機関が同意しない例があるとされています。その理由としては、診察にかかる経費の高さのほかに、拠点病院として公表されることに伴う一般患者減少の懸念があるのではないかとされています。
 これらの前例を踏まえると、新法の指定医療機関の決定の手続に関しましても、医療機関の同意が得にくい場合が考えられますが、お答えをいただきたい。また、指定医療機関とすることで、施設整備に関する支援などはどのようになるのでしょうか。あわせて小泉厚生大臣に質問いたします。
 最後に、これから感染症対策は、国内だけでなく、国際的な取り組みが必要との認識で、政府は国際的な協力体制をつくられようと努力しておられるようです。
 そこで、感染症の研究、治療、教育を担う機関として、必ずしも日本に置く必要はないと思いますが、アジア地域に感染症の研究センターを日本が出資して、世界各国からの研究者が利用できる機関の設立を提案したいと思います。総理に御意見をお聞きして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕
#46
○内閣総理大臣(橋本龍太郎君) 西議員にお答えを申し上げます。
 まず第一点は、重大な感染症の発生した場合の国の対応についてお尋ねでありました。
 本法案におきましては、感染症の発生に対して、国のリーダーシップのもと、都道府県知事が対応するものとしております。具体的には、国があらかじめ基本方針を示すとともに、未知の感染症等重大な感染症の発生に際しては、原因究明や機動的対応につき、都道府県に対し、積極的に指導助言を行っていくこととしております。
 次に、過去の感染症対策に対する反省と謝罪についてのお尋ねをいただきました。
 先刻家西議員にもお答えしたところでありますが、らい予防法の廃止に際し、反省、謝罪を表明した経緯、これまでの感染症対策についてのさまざまな御意見などを十分考慮し、新法案の基本理念に患者の人権への配慮を規定するとともに、人権保障の観点から、患者の入院等につきまして各般の手続規定を明文化いたしました。
 最後に、感染症に関する国際協力についての御提言をいただきました。
 私としてもその重要性を認識しており、先般バーミンガムで開催されました主要国首脳会議におきまして、感染症の重要な分野であります国際寄生虫対策のための研究と人づくりの拠点に関する提言をしたばかりであります。今後、御提言の趣旨も踏まえながら、感染症分野での国際協力の推進に努めていきたいと思います。
 残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣小泉純一郎君登壇〕
#47
○国務大臣(小泉純一郎君) 西議員にお答えいたします。
 物件の焼却等の措置に関してですが、物件の処理としては消毒が基本でありますが、焼却を要するような事態は極めて限られていると思います。しかし、今後新法の施行に向けて、御指摘の産業廃棄物業者への委託を含め、厚生省令等に対応方法を規定するなど、都道府県を指導してまいりたいと考えます。
 感染症に関する知識の普及のあり方についてですが、国民が不安に陥らないように的確な情報を提供していくことが極めて重要であります。正しい知識の普及、情報の収集、提供等を行っていくこととしております。特に、大規模な感染症の発生時には関係機関の連携等により正確な情報を的確に国民に提供できるよう、国が策定する基本指針等に盛り込んでいきたいと考えております。
 感染症指定医療機関に関するお尋ねでありますが、良質かつ適切な医療を提供できる医療機関を確保していくことは極めて重要な問題であると認識しておりまして、そのため、医療従事者の研修の充実、関係機関の連携体制の構築に努め、感染症指定医療機関の理解が得られるよう努めるとともに、その設備、運営等に要する経費を国が補助するなど支援をしていくこととしております。
 以上であります。(拍手)
#48
○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#49
○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時二分散会

ソース: 国立国会図書館
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