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1995/11/30 第134回国会 参議院 参議院会議録情報 第134回国会 外務委員会 第9号
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1995/11/30 第134回国会 参議院

参議院会議録情報 第134回国会 外務委員会 第9号

#1
第134回国会 外務委員会 第9号
平成七年十一月三十日(木曜日)
   午前十時八分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 十一月二十九日
    辞任         補欠選任
     畑   恵君     福本 潤一君
     照屋 寛徳君     清水 澄子君
     小島 慶三君     武田邦太郎君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         木庭健太郎君
    理 事
                笠原 潤一君
                野沢 太三君
                寺澤 芳男君
                矢田部 理君
    委 員
                大木  浩君
                田沢 智治君
                武見 敬三君
                成瀬 守重君
                矢野 哲朗君
                田村 秀昭君
                高野 博師君
                福本 潤一君
                川橋 幸子君
                清水 澄子君
                立木  洋君
                武田邦太郎君
                佐藤 道夫君
   国務大臣
       外 務 大 臣  河野 洋平君
   政府委員
       人事院事務総局
       任用局長     栗田 久喜君
       防衛庁防衛局長  秋山 昌廣君
       外務大臣官房長  池田  維君
       外務大臣官房審
       議官       谷内正太郎君
       外務省総合外交
       政策局長     川島  裕君
       外務省総合外交
       政策局軍備管
       理・科学審議官  河村 武和君
       外務省総合外交
       政策局国際社会
       協力部長     朝海 和夫君
       外務省アジア局
       長        加藤 良三君
       外務省北米局長  折田 正樹君
       外務省欧亜局長  浦部 和好君
       外務省中近東ア
       フリカ局長    法眼 健作君
       外務省経済局長  原口 幸市君
       外務省条約局長  林   暘君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        大島 弘輔君
   説明員
       内閣官房内閣内
       政審議室内閣審
       議官       徳重 眞光君
       内閣官房内閣内
       政審議室内閣審
       議官       渡辺 芳樹君
       法務大臣官房審
       議官       古田 佑紀君
       厚生大臣官房審
       議官       丸山 晴男君
       労働省職業安定
       局次長      坂根 俊孝君
       建設省住宅局民
       間住宅課長    内田 俊一君
       自治省行政局公
       務員部公務員課
       長        猪野  積君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条
 約の締結について承認を求めるの件(内閣提出
 、衆議院送付)
○国際情勢等に関する調査
 (あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際
 条約に関する決議の件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(木庭健太郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨二十九日、小島慶三君、照屋寛徳君、畑恵君が委員を辞任され、その補欠として武田邦太郎君、清水澄子君、福本潤一君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(木庭健太郎君) 次に、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の締結について承認を求めるの件を議題とし、これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○笠原潤一君 自民党の笠原潤一でございます。
 あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約でありますが、私は、大臣もおられますし関係の執行部の方もおられますので、フリートーキング式でいきたいと思うんです。
 これは非常に重要であり、かつ長い歴史の、人類始まって以来いろんな問題が出てくる差別の問題ですから、この一片の条約でこれが終わるというわけじゃないと私は思うんです。これはもう本当に底知れぬ深い長いいろんな歴史があるわけですから、そういう点からいって、これをどうだ、あれはどうだったというと、ありとあらゆる人種差別が余りにも広範でかつ深刻でもあるわけですから、そういう点を含めながら、私としては私の思い、あるいは大臣はどのようにお考えになっているか、あるいは外務省当局あるいは皆さん方はどういうふうに思い、また経験されておるか、あるいはどういうふうに将来的に思考されるかということをまずお尋ねしようと思っています。
 したがって、あらゆる形態の人種差別というものは一体何であるかということでありますが、大臣、ひとつお考えがあったら所見を聞きたいと思うんです。
#5
○政府委員(朝海和夫君) あらゆる形態の人種差別と申しました場合、この条約の一条に定義がございますが、人種、皮膚の色、世系、民族的もしくは種族的出身に基づく区別、排除、制限、優先、そういうことでございまして、それが政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識したりすることを妨げたり害したりする目的または効果を有するものと定義されているわけでございます。形態としましては、まさにかっての南アにおけるようなはっきりした形の差別の問題もございますし、さまざまな形態のものがあろうかと考えております。
#6
○笠原潤一君 この条約の意味するところは、もともとは今おっしゃったように南アであるとかアメリカであるとか、いろんな形で、特に皮膚の色による人種的差別というのが一番大きな問題だと思うんです。
 自分の経験でいいますと、私は一九五〇年代にアメリカにおりました。そして、有名なアーカンソー州リトルロックでのセグリゲーション、いわゆる黒人の生徒が初めてアメリカ最高裁判所のブラウン判決によって、白人と黒人を共学にしなさいという法律ができたんです。
 私は、そのときたまたまアメリカにおって、そしてハイチの黒人、黒人と言うと失礼でありますが、ハイチの人間と一緒に旅して回ったんです。そしてリトルロックへ入りました。バスのデポへ入ったんです。そこの中は御承知のようにホワイト、カラード、二つに分かれているわけです。私は、当時のことですから、一体どちらへ入ろうかなと思いましたが、でも白人のところへ入っていったんです。そうしたら、彼は黒人ですけれどもついてきたわけです。そうしたら、そのときもうあっという間に白人に、いえば当時はKKKという組織がありましたが、本当にあっという間に殺人に遭うような非常に厳しい状況に私は立たされた。もう一目散に逃げ出したんです。しかし、私はよかったんです。特にハイチの黒人に対してウエートレスが、ブラック、おまえは出ていけ、ニガーだと、こうやるんですね。
 私は北部にいましたから差別があるということは知っていましたが、最初にいたバーモントなんかは黒人の方はほとんどいなかったのですが、ずっと回ってその強烈な、私は事実体験しましたから、そのときに果たして人種差別のいかなるあれかということが本当にわかりました。
 そして、そのバスを見ましたら長距離のグレイハウンドで、仕事がないものですから南部から北部へどんどん行くんですよ。バスのデポの黒人用の待合室では本当に鈴なりの人が待っているわけです。グレイハウンドはどうかというと、五十人乗りで、四十人は白人用、十人が黒人用なんです。だから、黒人は何日待っても乗れないんです、白人の席はがらがらと。こういう体験を私は実際してきまして、いや、これはもう早く直さなきゃなと。
 しかし、それから三十数年後にアメリカへ行ったら、何と白人の男性が黒人の女性、あるいは白人の女性が黒人の男性と手をつないで歩いている、こういう光景を見ました。しかし、考えてみればこの最高裁の判断でこういうことになっていったんだから、確かにこれはすばらしいと。この条約はもう既に昭和四十年に国連総会において全会一致で採択されているわけです。私がアメリカにおって以来十数年たってからの話です。
 先般も実は南ア連邦へ行ってきました。ソウェトにも入りました。聞きしにまさる国だったけれども、しかし一流ホテルの中で何と白人も黒人も一緒になってやっておられまして、南アへの制裁も確かに厳しい制裁であったけれども、こういう形になったということを大変に私は歓迎しているわけです。
 今ようやく私どもは経済的には世界一の大国になってきましたが、しかし考えてみますと、我々日本人自体もかつては大変な差別を受けてきた。第二次世界大戦において日系人がどういうところに収容されたかということは、もう大臣も御存じだと思うんです。
 実はこの前、日本へ南アの上院の御一行がおいでになった。そのときの議長代行をやられた方にお会いいたしました。その人が、やっぱりアフリカの中でも部族間の対立があるんです、部族間同士でまたディスクリミネーションといいますか差別がありますと。だから、こういう同じ世界の中でこれだけあるんです。人種間のみでなくて部族間も、国内だっていろんな問題、これはもう世界じゅうで恐らくはかり知れない差別があると思うんです。今や比較的差別の少なくなった日本ですけれども、しかしまだあると思うんです。非常に深刻な差別もあります。
 そういうことを考えあわせますと、今や世界に冠たる経済大国、世界一のODAをやっている国です。大臣の考え方、日本国政府の考え方というのは私はある意味で、今もまだありますけれども、それでも随分乗り切ってきた国ですから、そういう点について大臣の所見をお伺いしたいと思うんです。
#7
○国務大臣(河野洋平君) 我が国は、国連中心外交といいますか国連中心主義というものを主張して、国際社会における唯一の普遍的な組織たる国連を我が国外交の最も重要なものとして位置づけてきたわけであります。その国連の中において、今、笠原先生からお話がございましたけれども、さまざまな人種あるいは民族、そうしたものが一堂に会して国際的な平和を目指して努力をする、そういう作業をしているわけでございます。国連においてこの条約がいち早くできたのはむべなるかなと思うわけでございますが、その理想に向かって我々も努力をしなければならないと思っております。
 議員の皆さんからはそれぞれ、この条約が国会に提案をされて、こうした状況になるのに三十年間も時間がかかったということでおしかりをいただくこともあろうかと思いますけれども、この条約をこうして御審議いただくこととはまた別に、我々はそうした人種的偏見というものを超えて解消していく努力、それは今お話しのように、政府は政府なりに国際的にODAその他を通じて、あるいはまた外交政策を通じて克服する努力をしてまいりましたし、国民の皆様はそれぞれ日常生活の中でもそうしたことを時には体験し、時には考え、こうした問題を解消する努力をしてこられたと思いますし、またしていただかなければならないというふうに思います。我々人間として最も重要な問題の一つというふうに私は考えております。
#8
○笠原潤一君 今、大臣としてのお考え方、それからまた行動に移すということは、すなわち日本国がODAを通じながら、いろんな国際援助をやりながらそういうことをなくしていく、こういう運動をしておられることは大変に敬意を表するし、それが実行に移されることを望んでおりますし、また実行に移しておることも事実であります。
 南ア連邦においては、南ア制裁では我が国が一番初めにこれを行ったわけですから、そういう点では非常に高く評価されるわけです。したがって、特にこの中で人種隔離、これが行われているところは今非常に少なくなってきました。それからアパルトヘイト、これも確かに南アではもう完全になくなりつつある。内にあってはまだわかりませんけれども、表面的にはなくなりつつある。慣行を防止するというのはこれは大変なことだと思うんです。しかし、これはあくまでも我が国も努力しなきゃならぬ、そういうPRをしなきゃならぬ。でありますので、そういう実践活動をするためにはどういう方法がいいかこの点についてひとつまずお伺いをしたいと思うんです。
#9
○国務大臣(河野洋平君) もう議員がお話しになりましたように、こうした問題を克服するためには教育あるいは広報活動による周知徹底、そうしたことが重要であろうと思います。とりわけ教育の徹底というものは重要だろうと思います。教育によって克服をするということになると少し時間がかかるのじゃないかという御心配もあろうかと思いますけれども、しかし徹底して克服するためにはやはり徹底した教育によって克服することしかないのではないか。広報活動とともに教育、これは子供の教育もそうでございますし、大人の教育ももちろんそうだと思います。こうしたことを政府としては一生懸命やらなければならぬというふうに考えております。
#10
○笠原潤一君 そこで、第四条の同及びxは人種的優越又は憎悪に基づく思想のあらゆる流布、人種差別の扇動等を法律で処罰すべき犯罪であることを宣言することと規定している。我が国は、これらの規定に基づく義務を完全に履行することは、日本国憲法のもとにおける集会、結社及び表現の自由その他の権利の保障と抵触するおそれがあるため、それらの権利と抵触しない限度においてこれらの規定に基づく義務を履行する旨の留保をすることとすると。
 したがって、こういう問題が我が日本国憲法のもとにおける結社及び表現の自由その他の権利の保障と抵触するということですが、ちょっとここら辺がわかりにくいんですよ。これは非常にいいことなのでありまして、我が国の憲法には私は何ら抵触しないと思うのでありますが、どうしてこれを留保しなきゃならぬのかという理由が私はちょっとわからないんですが、その点についてお尋ねをしたいと思うんです。
#11
○政府委員(朝海和夫君) 確かに第四条の問題は、憲法論、法律理論としてかなり難しい問題でございます。ただ、憲法の保障する集会、結社、言論の自由、これらは非常に基本的な権利でございまして、それを不当に制約することにならないかという問題がございます。例えば、文明評論でございますとか政治評論でございますとか、そういった種類の言論まで不当に萎縮させることにならないか。そういう点を慎重に考えました結果、留保することにしたものでございます。
#12
○笠原潤一君 わかりました。それは確かにそういう点もいろいろあろうかと思うんです。
 そこで私は我が国の差別の問題、人種的というかあらゆる差別ですから、その問題についてお尋ねしたいと思いますが、時間がありませんから簡単に申し上げます。
 あらゆる差別ということになると、いろいろな差別が私は日本の国に厳然とあると思う。しかし、だんだんそれが克服されつつあることもまた事実です。そういうことも我々は認識しておりますし、そういう差別が永劫になくなっていくということを期待しているわけです。
 同時に、日本人が例えば外国人に対して差別的な考えを持っていないかどうかということになりますと、私はないとは言えないと思います。それは、日本人が他の外国人、例えば白人に対する考え方あるいは同じアジアの人間に対する考え方、いろいろあろうと思うんです。しかし、そういうものが世代の違いといいますか、我々の世代から今の若い世代になってまいりまして随分変わってきたことも事実です。そういう偏見もなくなりつつある。私は、そういう意味で非常に好ましいことだと思う。それはやはり何といっても教育の問題に尽きると思うし、そしてお互いに国際交流を通じて溶け合うことが私は一番大事だと思うんです。
 不幸なことに隣国の韓国との間にいろんな問題がありました。これはもう事実であります。そして、お互いに何といいますか違和感があってそういう問題が起きた。私は、特に東南アジアの中といいますか、アジアの中で日本と韓国というのは一番何かぎすぎすしているような感じがするんです。これは東南アジアの各国、台湾とかタイとかマレーシアとかミャンマーとかあるいはシンガポールとかいろんな国の方々と韓国との間に何か一抹の、一衣帯水であるけれどもそこに何か違和感というか差異があり過ぎるものですからね。
 しかし、これもだんだん私は、大阪、神戸等で居留していらっしゃる韓国人の人たちと我が国の者とが非常にうまく溶け合いつつある。非常に大きな前進だと思うし、将来はもう私はそういうものがなくなっていくと期待しておりますし、そうなっていくと思います。したがって、そういうことに対する国際間のコミュニケーションといいますかそういうものが本当に広範に行われること、私はこれが一番大事だと思っています。
 特に、国際交流ということになれば外務省の果たす役割は大変大きいわけですから、その点についてひとつ大臣初め皆様方の考え方、それから特にそういう行動規範、規範と言ってはおかしいかもわかりませんが、そういうものを一刻も早くつくって、お互いに彼我の考え方の差異をなくしていくような私は努力をしてもらいたいと思うんですが、その点についてひとつ大臣にお伺いをしたいと思います。
#13
○国務大臣(河野洋平君) 議員御指摘のとおり、文化交流あるいは国民レベルの交流というものは極めて重要だと思います。全くいわれのないといいますか根拠のないにもかかわらず何らかの先入観などを持って見る目が違うなどということは、実体に触れる、実像に触れることによってそれがいかに間違ったものであるかということをみずから知ることができると思いますし、またそれぞれの持つ文化に触れることによって理解も深まるということもあろうと思います。
 中には、特別にすぐれた人物が例えばスポーツの分野にいる、あるいは学術、文化の分野で特別すぐれた人物が、傑出した人が出てきて、その人を見ることによって、あるいはその人と接する、あるいはその人の情報を聞くことによって、また先入観というものが変わってくるというようなこともあろうかと思います。交流をするということは、確かにこうした問題克服の大きな一助になるということは私もよく理解できますし、その点については外務省としてはできる限りの努力をすることは当然のことだと思います。
#14
○笠原潤一君 どうもありがとうございました。
 これをもって、私の質問を終わります。
#15
○高野博師君 それでは、若干の質問をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、先般、当委員会でイスラエルのラビン首相の葬儀にどうして総理が出席しなかったのかということに関していろんな議論があったんですが、外務大臣の方から元総理よりも現職外務大臣の方がプロトコル上、上だと、こういう発言があったんですが、あれはプロトコル上で言いますと元総理の方が上だということになっておりますので、これは訂正しておきたいと私は思っております。
#16
○国務大臣(河野洋平君) 私はプロトコルを申し上げたのではありません。実質的な外交という意味では外務大臣が意味があるということを申し上げたわけであります。
#17
○高野博師君 ラビン首相の葬儀はまさに外交だと思います。その外交的な儀式に元総理が行くかあるいは外務大臣が行くかということで、どちらが要するに重要かということであれば、これは元総理ということになっております。
#18
○国務大臣(河野洋平君) これはそれぞれの御評価でございますから、自分のことで多少言いにくうございますからこれ以上申し上げるつもりはございません。評価はそれぞれあろうかと思いますが、我が国にとって中東外交を進める上で、今、何をしてくることが大事か何が最も重要かという判断をした上で総理あるいは官房長官が御相談の上の御判断でございますし、私自身もそれが正しいと思って行ったことでございますので、これ以上私は申し上げるつもりはございません。
#19
○高野博師君 私もこれ以上言うつもりはありませんが、少なくともプロトコル上は上ということになっております。
 それでは、人種差別撤廃条約に関して二、三質問をさせていただきます。
 この条約については、もう三十年ほど前に国連総会で全会一致で認められたということですが、なぜ今これを批准しなくてはいけないのか、簡単で結構でございますのでお答え願います。
#20
○政府委員(朝海和夫君) この条約はあらゆる形態の人種差別を撤廃するということでございまして、政府としましても至極当然のことと考えているわけでございまして、できる限り早期にこの条約を締結することが重要であると考えてまいったところでございます。
 ただ、この条約につきましては、先ほども御指摘がございましたような第四条と憲法の言論、結社の自由との関係といったような困難な問題がございましたことも事実でございまして、それらについて慎重な検討をした結果、あるいはその間、多数の国がこの条約を締結しているということも考慮の上、今回この国会に提出して御承認を求めることとしたわけでございます。
#21
○高野博師君 要するに、なぜもっと早くできなかったのか。第四条を留保するということでないとこれは批准できないということはかなり前からわかっていたはずだと思うんですが、この点についてはどうでしょうか。
#22
○政府委員(朝海和夫君) 御指摘のとおり、四条の問題が極めて困難な問題であることはかねてから承知をいたしておりました。ただ、難しい問題ではございますけれども、先ほども申し上げましたような法律理論上の問題もございますので、どういった対処の仕方が可能であろうかということについて相当時間を費やしましたけれども、じっくりと検討してきたということでございます。
#23
○高野博師君 この基本的人権の尊重という人類普遍の原理にかかわる重要な条約、これについては他の先進諸国あるいはアメリカ等についても、アメリカについては去年の十月に批准したということでありますが、ほかの国についてはかなり早い時期に批准しているわけで、こういう条約についてはもっと日本政府は積極的に取り組むべきではなかったか。第四条の問題はよくわかっておりますけれども、国内的な事情も含めてもっと早目にイニシアチブをとって世界に示すべきではなかったかなという感じがいたします。
 この条約に関連して新たな立法措置は必要ないということですが、第一条の人種差別の定義の問題はありますけれども、条約の本来の趣旨からいうとあらゆる差別をなくすということではないか、そう私は解釈をしておりますが、我が国において差別的な状況が存在するのであれば、政府はこれを契機に差別を撤廃すべく努力をしていただきたいと思います。特に、同和問題、アイヌの問題、在日外国人の権利の問題等、衆議院でも議論があったようでございますが、誠意を持って取り組んでいただきたいと思います。
 ところで、この条約は第十四条で個人の通報制度、申し立ての制度をとっています。締約国自身が個人または集団からの通報を受理して審査すると。この人種差別撤廃委員会の権限を承認する旨の宣言をしていなくてはいけないわけですが、これは日本はやっておりませんが、どうしてでしょうか。
#24
○政府委員(朝海和夫君) 御指摘の第十四条の問題でございますが、これも注目をすべきであると考えております。ただ、この十四条が規定しておりますように個々人が人種差別撤廃委員会に申し立てを行うことにするかどうかにつきましては、そういったことが司法権の独立との関係でどういう問題があるんだろうか司法権の独立を侵すおそれがあるのではないかといった日本の司法制度全体との関係で慎重になお検討すべきことかと思っておりまして、こうした点も含めまして関係省庁と現在慎重に検討しているところでございます。
#25
○高野博師君 それでは次に、この条約とは直接的な関係はないんですが、実は先般の沖縄の少女暴行事件、これの被疑者というか被告が黒人だということですが、この被告の家族から黒人だから日本側へ引き渡したんではないかというような抗議があったという報道がありましたが、この事実関係はどうなっているでしょうか。
#26
○政府委員(折田正樹君) 十一月七日に被疑者三人の家族が米国で記者会見を行いまして、これらの被疑者は無罪である、黒人であるがために差別的な扱いを受けている、米当局からの協力を迫られ、米外交の犠牲になっている等の発言を行った旨の報道があったことは私どもとして承知しております。
 他方、アメリカ側政府の対応でございますけれども、この報道に関連いたしましてアメリカの国防省は、同じ日の定期記者会見におきまして、被疑者の人権は保護されていると考える、アメリカ政府は三人の被疑者に対して日本人弁護士をつけた、それから被疑者の日本国当局への引き渡しは地位協定の通常の手続に従って行われた、それから人種的な要素がかかわっているとは全く思わないというふうに米政府の当局は申しております。アメリカ側政府自身も本件裁判につきましては十分フォローしていると考えておりますけれども、今申された報道のような見方は明確に退けているということでございます。
#27
○高野博師君 米国では御承知のとおり人種問題等については、シンプソン裁判に見られるように、非常にデリケートな問題であります。したがって、この事件について被疑者家族を含む米国側に日本の司法当局とかあるいは政府に対して不信を抱かせないようにできる限りの情報提供等が必要ではないか、被告、被疑者の健康状態も含めて調査、審理、あるいはこういう可能な情報の提供をすることが大事ではないかというふうに考えます。法の厳正な適用は当然必要であると思いますが、この事件を契機に日米安保問題というようなことまでが人種問題という渦に巻き込まれないよう外交的にも十分配慮して対応すべきではないかと思います。大臣の御所見を伺いたいと思います。
#28
○国務大臣(河野洋平君) この問題は、議員御指摘のとおり、法に基づいて厳正に措置されるべきものと考えております。身柄の引き渡しについても、法に基づいて、起訴後、身柄の引き渡しということになっております。そうした点で、今御心配のようなことは何らないというふうに承知しております。
#29
○高野博師君 それでは、若干時間がありますので、ほかのテーマについてお伺いします。
 APECの評価でございますが、私はこのAPECは総理が自画自賛しているという感じを持っております。通産省、外務省を含めて官僚がおぜん立てしたものに乗っかって無難に乗り切っただけではないか、そういう印象を持っております。総理はおられませんけれども、総理のリーダーシップでなされたものは何があったのかということをちょっとお伺いしたいと思います。
#30
○国務大臣(河野洋平君) APECの大阪会議の評価は、総理がおっしゃっておられるように、我が国が議長国としてイニシアチブを発揮して、例えば行動指針でありますとかAPEC経済首脳の行動宣言でございますとか、最終的にさまざまな取りまとめが行われたわけでございます。このことは何も我が国総理が述べておられるだけではなくて、参加国がそれぞれ今回の大阪APECに対する評価を帰国後されております。そうした評価を伺いましても、今回の大阪APECに対する評価はかなり高いものというふうに見て何ら差し支えない、こういうふうに私は思います。
 そのことが、もちろん大阪APEC会議に至るまで外務省、通産省を初めとする各省庁が参加をして、各国のそれぞれのシニアオフィシャルの方々と連絡をとり議論を重ねて基礎的な理解を深めていったという努力、作業、そういったものがあったということは、これはもう当然認めるべきだと思います。例えば、閣僚会議においてあるいは最後の首脳会議において果たした閣僚あるいは首脳の議長としての役割というものも評価をしていいものと私は思っております。
#31
○高野博師君 このAPECに関連して、クリントン大統領が訪日を中止したということですが、この理由は国内的な事情があるということなんですが、外務省はこれをどういうふうにとらえているでしょうか。
#32
○国務大臣(河野洋平君) 今の議員の御発言でございますが、クリントン大統領は日本訪問を拒否されたことはございません。これはアメリカの国内事情によって日本訪問が延期になったということでございまして、この点は明確にしておかなければならないというふうに思っております。
 事実、アメリカの国内事情によりまして大統領は当初予定していた日程すべてを実行することがなかなか難しくなった、したがって日程を短縮してでも日本訪問をしたいという御連絡でございましたが、いよいよ最終的に、議員御承知のとおりアメリカの内政事情があってどうしても今回は日本訪問を延期せざるを得ないということになって、村山総理あてに極めて丁重な電話連絡があって、今回の訪日は延期されたという状況でございます。
#33
○高野博師君 私は、この訪日を延期された本当の理由というか本音のところは、クリントン大統領が村山総理とこれからの十年先、二十年先の日米安保体制も含めた日米関係の非常に重要なテーマについて話してもしょうがないというような、そういう本音を持っているんではないか、というのは、日米安保についても、この間まで日米安保反対、基地返還と言っていた政党が政権をとった途端にこの政策を変えた、こういう党の党首と話してもしょうがないというような本音があったのではないか、私はそういうふうに個人的には見ております。
 このAPECの関係で日韓首脳会談がありまして、その中で歴史認識の共同研究をこれから進めていこうというようなことが合意されたわけですが、私は、この歴史的な事実ということについては日本側も知っている情報をもっと明らかにすべきではないかもっと情報公開をすべきではないか。先般のといいますか、この間の戦争については、戦争そのものは侵略戦争ではない、しかし侵略的行為はあった、こういう見解をとっているわけですが、侵略的行為とは一体何をしたのかあるいは事実関係を知らなくては正確な認識はできない、そういうふうに思っておりまして、ぜひこの歴史認識の共同研究の中で全部洗いざらい事実関係を公開すべきではないか、私はそう思っておりますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
#34
○国務大臣(河野洋平君) お答えを申し上げる前に前段の議員の御所見について、大変恐縮ですが、ちょっと私から一言申し上げたいと思います。
 クリントン大統領の訪日延期が、何か村山総理と安保条約その他の問題について話をする意味がないから延期したのではないかという御推測をしておられますが、これはさまざまな推測はそれぞれあろうかとは思いますけれども、事実関係をもう少し正確に申し上げれば、クリントン大統領の訪日は、APEC大阪会議に出席をし、その後、東京に図られて国賓として首脳会談を行うという日程になっているのであって、あそこで村山さんと会うことは余り意味がないから来ないということで、APECのその他の閣僚と会うチャンスをすべてそれだけの理由で放棄するというようなことは私は考えられないことではないかと思うんです。
 それは、あの場には中国の江沢民主席を初めとして多くの首脳が来ておられるわけでありまして、アメリカの大統領としては、日米首脳会談を行うということも極めて重要な要素であると同時に、APECの会合で各国の首脳と会うということも極めて意味のあることと考えるのは当然のことであって、それを含めて村山総理と会う意味がないということだけを理由に延期したのではないかと考えるのは、根拠が極めて薄いというふうに私は申し上げていいと思います。
 後段の日韓の問題については、アジア局長から詳細申し上げたいと思います。
#35
○政府委員(加藤良三君) 日韓の歴史共同研究の文脈でございますけれども、これはAPEC大阪会合の際に行われた日韓外相会談で孔外務部長官から、歴史認識の問題について相互理解と友情を築くために民間の自由で客観的な立場からの共同研究を政府が支援することとしてはどうかという趣旨の発言がございまして、これに対して河野大臣から、それは建設的な提言であり賛成するという趣旨を述べられた、これがまず文脈でございます。
 こういう民間レベルで行われる研究活動に政府がどういう支援をするかという具体的な方途について今検討を進めているところでございますけれども、いずれにしても、これは韓国と日本との両方の国民の自主的な努力、それから学者的良心に従って歴史全体の流れの中で客観的に日韓の関係を取り扱うということでございまして、こういう民間による研究の成果なんかを非公開にするということは全く最初から考えていないわけでございます。むしろ、それによって両国国民の歴史認識というものが積極的な意味で深まるということを期待しているわけでございます。
#36
○高野博師君 クリントンの訪日中止というか延期に関しては、村山さんと話してもしょうがないというそれだけの理由で来なかったとは私は言っておりません。その一つの理由としてそういうことも考えられるんではないかと、そう思っているということであります。
 もう一つ、これは外務省の所管ではないと思うんですが、この間、自衛隊のミサイルの誤射事件がありました。あれについて、総理自身のところにこの情報が行ったのは六時間後だったという報道があります。この自衛隊の、特にミサイルという近代兵器にかかわるようなこういう事件が総理のところにすぐ届かないというのは、まさに官邸を含めた政府の危機管理体制に問題はないかということを感じます。その体制の問題ではなくて、むしろ危機管理意識というものが欠如しているのではないかというふうに私は思っております。あるいは社会党の党首であるために自衛隊に対してある種のアレルギーがあるのではないかというようなことも含めて、もし外務省でお答えできるのであればお答え願いたい。
#37
○国務大臣(河野洋平君) 所管外のことでございまして、どうお答えをしていいかわかりませんが、私の承知している事実だけを申し上げたいと思います。
 自衛隊機の事故発生後、あの事件については直ちに連絡は官邸に来ていたことは事実だと私は承知しております。総理秘書官のところまでその事故についての連絡は来ておったというふうに私は聞いております。それがどういう事情、どういう判断から総理に直接伝わらなかったか。あの当時は、御承知のとおり、国会では本会議、委員会がずっとございまして、本会議でAPECの報告、あるいは午後はたしかちょっと正確には忘れましたが、午後の本会議にも総理はずっと答弁席に座っておられるというような事情がございました。もちろんメモをお渡しすることができなかったわけではございませんが、しかしそうした状況があったということだけを私は承知しております。
 あと、総理が自衛隊にアレルギーがあるかというのは、総理の方にあるから情報が伝わらないということは私は論理的に正確でないと思いますし、総理は御承知のとおり自衛隊の記念日その他に訓示をし、その他行事にすべて出席をしておられるということもございますし、日米首脳会談の際にはしばしば安保条約の堅持ということを言っておられるわけで、私は議員が御指摘のようなことはないであろうというふうに思います。
#38
○高野博師君 一言。この情報は官邸には届いたけれども総理には届かなかったというところに問題があるのではないか、私はそう思っております。
 時間がありませんので、これで終わります。
#39
○清水澄子君 外務大臣にお尋ねします。
 今回のこのあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の批准は、我が国の人権尊重のための政策がさらに一歩前進することを意味しておりますから、大いに私は歓迎したいと思います。しかし、この条約が国連で採択されてから三十年目でございますし、そして百四十六番目の締約国として批准の運びとなったわけですから、これは必ずしも名誉あることとは言えないと思います。言いかえれば余りにも遅過ぎたと思うわけです。
 そこで、私がまず政府に望みたいのは、この条文の前文に掲げられている精神、この条約に対する精神、特にここでは世界人権宣言を引用して、「すべての人間は生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳及び権利について平等であること並びにすべての人がいかなる差別」を受けることもなくという条約の精神が掲げられて始まっているわけですけれども、これから国内でそういう差別を撤廃していく人権の政策を実施していくという立場に立ちましたときに、私はここでやはりこの条約の基本精神というものについて大臣にそのお考えを確認しておきたいと思います。
 この条約の前文と、同時にその条約に先立って採択された人種差別撤廃宣言、そこにやはりこの条約の基本精神があらわれているわけですけれども、まず第一に、「差別の撤廃は人権尊重の基礎にすえなければならない」、それが一番重要な課題であるということが明記されています。それから第二には、「差別は非常に非科学的なもので、いかなる意味においても合理化できない」。そして第三点には、「差別は、社会の平穏と世界の平和を脅かす重大な問題」である。そして第四には、「差別は差別されている人びとだけでなく、差別している人びとの人間性をも損なう」。大体この四つの基本精神が提起されているわけです。
 私は、今後、このことが国内並びに私たち多くの国内の日本人の人々にもそういう意識が本当に徹底していくならば、普及されるならば、それは私は日本の社会は本当の意味でこういう人権関係の条約を批准していく大きな意味があると思うんです。
 そこで大臣は、この条約の四点にわたる基本認識、この条約の精神、このことについてどのように認識していらっしゃるかお答えいただきたいと思います。
#40
○国務大臣(河野洋平君) 私は、この条約の精神というものを尊重いたします。
 私は、子供のころから教育を受けて、そしてどんな人とも差別なくつき合うということを教えられてまいりました。それは子供のころには難しいことではありませんでした。しかし、それが大人になると、子供のころにはなかなか思いもつかなかったようなことがあるということがだんだんわかってくるわけです。しかし、大人の世界にあるさまざまな問題というのは、それだけに克服できるというふうにも私は思います。
 この問題は、政治にかかわる人間にとって極めて重要な問題でございますから、私も誠心誠意この方向に向かって努力をしなければならないというふうに思っております。
#41
○清水澄子君 それでは、その四つの差別を撤廃していくための基本認識というのはまさに同意されるということでございますね。
 そこで次の質問に移りますけれども、この条約の批准に当たりまして、外務省は、新たな立法措置は要らない、そして予算措置も必要としないという前提でこの条約の批准が提起されているわけですけれども、この条約の第二条の一項と二項を見ますと、この内容が今後そういう差別をなくしていくためにあらゆる手だてをしなきゃならないという非常に積極的な措置が示されていると思います。
 そこで、外務省はそういう意味からもこの条文の解釈、特に二条の一項、二項に当たってどのように解釈をしていらっしゃるのか、お尋ねします。
#42
○政府委員(朝海和夫君) この条約を締結するに当たりまして、あるいは条約一般を締結するに当たりまして、政府の側としては国内法制との整合性を確保することにしておるわけでございます。
 そこで、この条約について申し上げれば、この条約を実施するに当たって新たな立法措置が絶対必要であるということではないということでございまして、逆に申し上げれば、現在の法律がこの条約に積極的に抵触している点はないという立場でございます。また、予算措置に関連しましては、この条約を締結したからといって例えば拠出義務であるとかそういうものが新たに生ずるものではないという立場でございます。
 ただ、先ほど来大臣から答弁申し上げておりますように、この条約で定められているところの人種差別の撤廃、あるいはこの条約の前文の精神で明確にされているところのあらゆる種類の差別の撤廃、このためにはさらに努力していくべきものとは考えております。
 そこで、この二条との関係では、「すべての適当な方法により遅滞なくとることを約束する。」と書いてございまして、関係の省庁におかれて必要と判断するのであれば、それぞれの所管の法律を見直したり、あるいは必要があれば新たな予算措置も講じるということは当然あり得るところでございますし、それをあらかじめ否定しているという趣旨では全くございません。
#43
○清水澄子君 それでは、今後、この条約を批准した上で、特にこの条約の二条、七条というのは締約国の義務が課せられていますね。やはり国内法または政策の中でそういう人種差別を非難したり差別撤廃を促進していく義務があるわけですし、それから既存の法律とか規則並びに慣行を検証していかなきゃならないという作業、義務が伴ってくると私は思います。また、中には差別を禁止する措置を法的にもまた政策的にもとらなきゃならない。二条、七条は特にそういうことを含んでいます。五条などは物すごく具体的に提起されているわけですが、今後そういう人権を徹底していくときには、全般的な体制といいますか、それを普及していく手だては当然伴ってくると思うんですね。
 そういうことについては、外務大臣、この条約を批准するに当たってやはり我が国の人権意識や政策をより充実していきたいという御決意をお持ちかどうか、その点についてひとつ御抱負を述べてください。
#44
○国務大臣(河野洋平君) 当然、国としてあるいは公の機関としてやらなければならない、努力しなければならないものがあると思います。教育の面で、あるいは周知徹底のための努力というものが必要であるとすれば、当然やっていかなければならないと思います。
 ただ、この条約ができて初めて我が国がこの人種差別の撤廃を始めるのではもちろんなくて、これまでもこうしたことがあってはならないという基本的な考え方が我が国には基本的にはあるわけです。基本的人権の尊重というものは、我が国憲法の中でも極めて大事な柱、最も大事な柱と言っていいかもしれません。こうしたことを我が国は基礎としてやってきているわけですから、ここで条約をこの国会で御承認をいただいたから改めて初めてこれに取りかかるということではないわけです。
 しかし、まだまだやらなければならないものもあるということは私は否定をいたしません。したがって、そうした問題については周知徹底をせしめる、あるいは教育によってそうした問題を克服する努力というものはしていく必要があるだろうと、こう思います。
#45
○清水澄子君 基本的にはそうであっても、実際にそうであるかどうかということは、人権を尊重する社会にしていく、差別をなくしていくということは、そういう新たな認識とやはり政策がどうしても必要になると私は思いますので、そのことをあえて大臣に確認しておいたわけです。
 途中で時間が短くなってしまいましたので、きょうお願いしている各省庁の皆さんにいろいろ御迷惑をかけるかもしれません。もっとたくさん内容を知っていただきたいと思ったんですが、非常に時間が短くなってちょっと不十分なんですが、それではこれからいろんなことをお尋ねしたいと思います。
 そこで、まず法務省にお伺いします。
 法務省は、今度のこの条約の批准に当たって、第四条の(a)と(b)の適用については憲法で定める集会、結社及び表現の自由その他の権利と抵触しない限りで義務を履行する旨の留保を行っていると思います。それもいろいろ意見はあるんですが、それはさておいて、かといって人種差別とか差別を助長したり扇動することがいいというわけではありません。ですから、そういうことに対して刑事法など現行法制度の中でどのような措置がとれるものなのか、お伺いします。
#46
○説明員(古田佑紀君) お答え申し上げます。
 ただいま議員御指摘の人種差別の助長の宣伝あるいはそういう団体の禁止、こういうふうなものが人種差別撤廃条約の中に盛り込まれているわけでございます。
 現行法でどのようなことが刑事法上可能かということを申し上げますと、このような人種差別を助長するような宣伝活動あるいは扇動行為などにつきましては、これは事例にもよることにはなりますけれども、他人の名誉を毀損するというふうなケースも間々あるわけでございまして、そういうふうな場合には刑法で名誉毀損罪で処罰することも可能な場合はございます。また、それが非常に過激なもので、暴力行為、これを教唆するというふうなものでございますれば、刑法の例えは殺人でありますとか暴行、傷害、こういったものの教唆として処罰することも可能でございます。
 また、団体につきましては、こういうふうな団体が仮に破壊活動防止法上の暴力主義的破壊活動を行う団体に当たるという場合には、同法によりまして、一定の要件のもとにその活動の制限あるいは解散、それからその処分に反します個人の行為を処罰するというふうな対応が可能でございます。
#47
○清水澄子君 それでは、厚生省にお伺いいたします。
 今、この条約の中身を見ますと、第二条一項(c)には、「各締約国は、」「人種差別を生じさせ又は永続化させる効果を有するいかなる法令も改正し、廃止し又は無効にするために効果的な措置をとる。」とあります。その場合、「人種差別」という中には民族差別も種族の差別も入っているわけです。先ほどそれらはほとんど抵触しないというお答えであったんですが、ここでは北海道の旧土人保護法なんという名称、ネーミングすらも言葉にすることがはばかられるわけですけれども、この北海道旧土人保護法はこの条約の締結によってどういう関係になりますか、お答えください。
#48
○説明員(丸山晴男君) 北海道旧土人保護法につきましては、明治三十二年に土地を無償で下付しまして、農耕を奨励するなどいたしましてウタリの人々の生活の安定を図ることを目的として制定をされたものでありますけれども、その後、生活保護法の制定など他法施策の充実に伴いまして、下付地の処分の制限、共有財産の管理に関する規定を除いて既に実効性を失っており、また実効性を有する規定につきましても、共有財産として現在管理されているものは現金百四十四万円ということでございまして、法律全体として今日その存在意義を失っております。
 また、従来から特に旧土人という名称が呼称としていかがかというような御論議がございまして、当時の用語としての適切不適切は別にして、今日の常識的なことで考えますならば、やはり適切ではないだろうというふうにも考えております。この法律につきましては、廃止の問題が出てまいっておるわけでございます。これにつきましては、アイヌ新法の制定という問題も別途ございます。これと同時に行ってはどうかという関係方面からの御要請もございます。
 本年三月から内閣官房長官のもとで開催されておりますウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会においての検討結果を踏まえまして、適切に対処してまいりたいと考えております。
#49
○清水澄子君 廃止するのが当然だという考え方は、もう皆さん共通に認識されていると私は思いますから、これは廃止していかなきゃならないものと思います。
 そこで内政審議室にお尋ねいたしますけれども、現在アイヌ新法の制定について検討されていると思うんですけれども、この条約の第二条の二項の状況により正当とされる場合には特別の措置が必要だというこのことは、結局この条約の実効性を確保するためのアファーマティブアクションに相当する考え方を示していると思うわけですが、これはまさにウタリ民族に適用されると思います。
 そこで、今、どういうふうに検討が進み、その新法制定の見通しはどうなのか、お答えいただきたいと思います。
#50
○説明員(渡辺芳樹君) ただいまの御質問にお答え申し上げます。
 御指摘のとおり、今後のウタリ対策のあり方全般にわたりまして幅広い検討をいただくためにこの春から官房長官のもとで有識者七名によるウタリ対策のあり方に関する有識者懇談会というものを開催してきております。現在までに六回の会合を重ね、さらにこの十月の末にはこの懇談会として北海道の現地三カ所の視察をとり行ったところでございます。
 この懇談会は、この春以来約一年をかけて法制度のあり方を含めた今後のウタリ対策のあり方、その基本的な考え方について御検討をいただくこととしておりますので、御指摘のアイヌ新法の問題、こういう御要請が関係者の間にあることは十分承知しておりまして、そうした問題につきましては、本懇談会の結論を踏まえて政府として適切に対処してまいりたい、かように考えております。
#51
○清水澄子君 一日も早い新法制定を要求しておきます。
 次に労働省ですけれども、この条約の実効性の確保にやはり関連してお聞きしたいんですが、第五条には差別なくすべての市民的権利の領有を定めているわけです。
 そこで、定住外国人への就職差別などをよく耳にいたしますが、労働法のどの条文が就職差別を禁止する条文なのか、通達などを含めてお示しいただきたいと思います。
#52
○説明員(坂根俊孝君) お答えします。
 外国人労働者につきましては、職業安定法第三条によりまして、職業紹介、職業指導などにつきまして国籍等を理由として差別的取り扱いを行うことが禁止されております。
 労働省としましては、同法の精神に立ちまして、従来から人権にも配慮しつつ適正に対処しているところでございます。特に、過去において就職差別が問題とされた事例の多い在日韓国一朝鮮人の方々の採用に関しましては、都道府県知事あて通達に基づきまして、事業主に対する就職説明会の機会などを通じて、応募者本人の適性及び能力を中心に公正な採用選考を行うよう事業主への指導啓発に努めているところでございます。
 さらに、定住外国人を含め外国人労働者の雇用管理等を適切に行わせるなどのために、外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針というのを作成しまして、外国人労働者を雇用しようとする事業主に対しまして必要な指導援助を行っているところでございます。
 いずれにしましても、今後とも定住外国人の就職差別を防ぐために事業主への必要な指導等を強力に実施していく考え方でございます。
#53
○清水澄子君 労働基準法や職業安定法には国籍条項はないわけですね。すべての人たちの基本的権利を法律的に保障しています。しかし現在、自治体とか公務員関係がむしろおくれていると思うわけです。
 特に自治省にお伺いをしたいと思いますけれども、最近、東京都のある保健婦さんが、自分はもっと仕事の可能性を広げたいということで管理職の試験に出願したところが、それは拒否されたわけです。しかも、その内容は全然法的なものではなくて、昭和二十八年に内閣法制局の見解でもって、公権力の行使または国家意思の形成への参画に携わる公務員には日本国籍が必要という自治省見解、これがいまだに生きているわけで、これは全然法文として明文化されているものではないのにもかかわらず、この考え方でずっと各自治体が今規制されているわけですが、今回のこの条約の批准に伴って自治省はこのような差別的な扱いに対して今後やはり指導を改めるという作業を開始すべきだと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
#54
○説明員(猪野積君) 自治省は従来から、地方公務員法上、日本の国籍を有しない者を地方公務員として任用することについて、直接の禁止規定は存在いたしませんが、公務員の当然の法理に照らして、地方公務員の職のうち公権力の行使または地方公共団体の意思の形成への参画に携わる者については日本の国籍を有しない者を任用することはできないが、それ以外の公務員となるためには日本国籍を必要としないと解してきたところでございます。
 この公務員の当然の法理に基づく外国人の任用制限は国籍に基づく区別でございまして、本条約で言うところの人種差別には該当しないものでございます。したがいまして、本条約批准後も、従来同様、公権力の行使または地方公共団体の意思の形成への参画に携わる地方公務員については外国人を任用することはできませんが、それ以外の医療技術系などその任用が公務員の当然の法理に反しない職種につきましては、外国人の採用機会の拡大に努めるよう引き続き地方公共団体を指導してまいりたいと考えております。
#55
○清水澄子君 ここで論争できませんが、非常に権力的な答弁の仕方ですね、今の答え方は。間違っていますよ。今まではこうだったんだけれども非常にこういう障害が起きている、それから国際化の時代ですからもっといろいろ検討しなきゃならない課題が出ているんだということをお認めになって、そしてやはり今後こういう人権条約を批准していく際に一つ一つこれまでのあり方、運用等も検証してみたいという、そのくらいの考えは示されなければ、この条約批准と何の関係もありませんという、私はそういう答弁の意識に問題があるということを指摘して、おたくの方はもうこれで結構です。
 それで、もう時間がないんですけれども、外務大臣、そういうところを改めていかないといけないと思うんです、人権というのは。日本の場合はみんな縦割りで、それぞれの法理論なり従来の慣行をとにかく維持しようとする姿勢の方が、私は行政の窓口でも今日的な状況に合わなくなっているというのがいっぱいあると思います。それをみんなで改めていく。私自身もそうなんですよ。自分も自分の意識をやっぱり変えなきゃいけないということを含めて、こういう人権という問題は私はみんなで考え直すことが必要だということで議論をしていきたいと思います。
 そういう意味では、次に人事院にお聞きしたいんですけれども、ここはさらに就職上の差別というのがありまして、民族的な偏見に基づく差別の撤廃を民間に求められているわけですが、私は政府や自治体、むしろそういう公的機関が率先して差別をなくしていく努力が必要だと思います。そういう点で人事院の考えを、この条約の批准に即して今後改めていきたいという気持ちがあれば述べていただきたいと思います。
#56
○政府委員(栗田久喜君) お答え申し上げます。
 外国人の任用問題につきましては、先生からも先ほど御指摘ございましたように、従来から内閣法制局の見解としての当然の法理というものがございまして、それに基づいて運用させていただいておるわけでございます。
 もちろんその反面として、公権力の行使とか国家意思の形成への参画、そういうものに携わらない職種については外国人にも門戸は開放されておるわけでございまして、現実に私どももできるだけそういう人を採るように指導しておるわけでございます。それで採用されている状況になっております。それからまた、近年におきますこの国際化の状況の中で、特に大学教官それから研究公務員につきましては特別法をつくっていただきまして、それで外国人にも門戸を開放したというような経緯もございます。
 この点に関しまして、それでは諸外国の状況はどうなっておるかということを私どもちょっと調べさせていただきました。イギリス、ドイツなんか特にそうなんですが、私どもよりもむしろ厳しい国籍要件を持っているところが多くございまして、欧米先進諸国でございますが、これはやはり自国または他国の国家主権の尊重という基本原則といいますか、そこから来ているものでございまして、ですからそういう点はやはり国家公務員である以上譲れない一線というものがどこの国にもあるんじゃないかというふうに考えております。
 先生の言われます定住外国人ということにつきましては、この定住性ということに着目してもう少し要件を緩和するというあれができないかという御趣旨は私どもは十分理解できるのでございますが、一方ではそういう厳しさを要求されるこの問題につきましては、従来とっておりました当然の法理との関係もございまして、困難な問題があるということは御理解いただきたいというふうに思います。
#57
○清水澄子君 ぜひ検討をしていただきたいと思います。
 次に、建設省にお伺いします。
 さっきの質問と同じ趣旨ですけれども、この条約は公的な生活の面での私人間の差別の禁止を求めているわけです。しかし、例えば外国人が賃貸住宅を借りるときにはよく断られるというケースが日本の中には非常に多いわけです。ですから、このような差別を禁止する住宅関連法規の条文というのはあるのかどうか、お尋ねします。
#58
○説明員(内田俊一君) まず、公営、公団等の公共賃貸住宅につきましては、それぞれの根拠法で手続が定められております。これを受けまして、具体的には特に外国人の入居者資格に関しましては、永住許可を受けた方についてこれを認める、それから外国人登録を受けた方についても可能な限りこれを認めるようにという住宅局長からの通達で運用しておりまして、具体的にかなりな実績も上がっているというふうに承知をいたしております。
 それから民間賃貸住宅でございますが、これのうち住宅金融公庫融資等を受けている者につきましては、例えば住宅金融公庫法の体系の中で、住宅に困窮をしているといったような資格を満たしている方の正当な入居の申し込みを拒否してはならないとしてございます。これを受ける形で、先ほどの公共賃貸住宅と同様の指導を公庫に対して私どもは行い、公庫の融資の窓口で実際に公庫の融資を借りて賃貸住宅をお建てになる方にこの趣旨を徹底しております。
 それ以外の一般の民間賃貸住宅につきましては、法的には借地借家法ですとか民法といった民事法の世界になるわけでございますが、建設省といたしましては、貸し主の団体等を通じて外国人の入居制限をしないようにこういう啓発、指導を行っているところでございます。
#59
○清水澄子君 公営住宅にはそういう差別禁止的な規定、規制があるけれども、民営の住宅の場合にはなかなか建設省としては関係できないということですね。ですから、今後これは啓発、教育、行政指導。行政指導でやっていただけますか、民間の大家さんたちにも。やっぱり人権意識というのはそういう形で広げないと、慣例としてみんなそう思っていますからね。
#60
○説明員(内田俊一君) 行政指導というよりは、例えばパンフレットでございますとかそういったもので貸し主の団体を通じて、あるいは講習会等の場で趣旨の徹底を図っておりますし、条約の批准を受けてこの取り組みをさらに強化したいと考えております。
#61
○清水澄子君 できないというんじゃなくて、ぜひひとつお願いしたいと思います。
 次に、外務大臣にお尋ねします。
 この条約の七条というのは、締約国は人種差別を初めあらゆる差別をなくし、この条約の目的及び原則の普及のために教授、教育、文化及び情報の分野での効果的な措置を求めております。そういう意味でもこれは学校教育、社会教育の場での人権教育というのは非常に重要になってくるわけです。
 それにいたしましても、こういう字面で読んでいるときはみんなわかるわけですが、やっぱり一番わかっていないというのは意外と高級官僚のところが多いんですね。教える先生がいないんですよ、人権教育といっても。ですから、何よりも私はこの人権問題に深くかかわりを持つ警察職員とか司法職員とか裁判官、地方公務員、国家公務員、それから教員自身も含めて、やはりこういう条約の趣旨の啓蒙、教育を図っていく必要があると思います。意外とそうなんですよ。これは今は人種差別だけですけれども、女性差別でも、あらゆる差別の人権意識というのはあるようでなかなかそれは幾ら徹底しても私は徹底し過ぎというのはないと思いますので、その点についての外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
#62
○国務大臣(河野洋平君) 先ほども御答弁申し上げましたように、私どもは、今回の国会審議を通じてそれぞれいただきました御注意その他も重く受けとめまして、でき得る限りの広報活動等を通じての周知徹底に努めたいと思っております。とりわけ議員が今お話しになりました幾つかのいわば公務員に対する教育といいますか、そういう点につきましては、これはある意味でターゲットがはっきりしているわけでございますから、この周知徹底は十分方法はあるわけでございまして、でき得る限りの努力をいたしたいと思っております。
#63
○清水澄子君 そこで、今度は内閣内政審議室にお伺いしたいんですが、ことしは人権教育の国連十年の一年目に当たると思います。これは一月一日から開始されているんですが、日本の国内ではこれに対する動きが今までは余り見えなかったわけですけれども、私はやっぱり日本が国際社会の中で人権尊重を特に外交の基本にも据えていかなきゃいけないと思いますし、そういう意味でもそれこそ他に先駆けて取り組んでいくべきだと思っているわけです。
 そのためには、やはり総理を本部長とした人権教育の国連十年の推進本部を設置して、そしてその統括的な事務局が設置されなければこれも非常に難しいと思いますけれども、そういう意味で政府の取り組みはどういう状況になっているのか。そして同時に、今後これは国内行動計画を策定することを義務づけているわけですけれども、その国内行動計画というのはどういうものをいつごろ設定していきたいと考えていらっしゃるか、お答えください。
#64
○説明員(徳重眞光君) お答え申し上げます。
 人権教育のための国連十年の推進体制あるいは国内行動計画についてのお尋ねでございますけれども、政府におきましては、これまで関係省庁の連絡会を開催し、本件についての取り組みについて協議をしてまいったところでございますけれども、人権教育の重要性にかんがみまして、関係行政機関の緊密な連携協力による推進体制を、今御指摘のような総理を本部長とする推進本部も念頭に置きながらできるだけ早い機会に整備をし、適切な取り組みを行ってまいりたいというふうに考えております。
 また、国内行動計画の策定の問題でございますけれども、まず政府としての推進体制を整備した上、関係省庁と協議しながら鋭意取り組んでまいりたいと考えております。特に、人権教育につきましては幅広い視点から取り組む必要があるということでございますので、関係省庁とも連絡をとりながら鋭意検討していきたいというふうに考えております。
#65
○清水澄子君 ぜひ急いで積極的に進めていただきたいと思います。
 その国内行動計画の中には、当然これまでのグローバルな国際的なあらゆる人権問題の会議で決定されてきた、確認されてきた、日本も署名をしてきたそういうあらゆる人権関連の規範、そういうものをやはり普及宣伝する、そういう目的があると思います。今度の条約の精神は当然だと思いますが、女性差別撤廃条約、それから特に国内に存在している差別、それには部落差別がありますし、それから在日外国人の差別もあります。そういう問題を取り上げながら国内行動計画に含めていくということをぜひ確約していただきたいと思います。
#66
○説明員(徳重眞光君) 人権教育十年のための取り組みにつきましては、非常に広範な分野の人々を対象に、あるいは視野に置きながら教育研修あるいは宣伝、情報提供などの活動をしなければならないということになっております。
 今、委員の御指摘の人権関係の国際的な条約あるいは宣言、こういうものの周知徹底ということも重要な事柄でございますので、これから国内行動計画を策定するに当たりまして、関係省庁と十分連絡をとりながら協議をしてまいりたいというふうに思っております。
#67
○清水澄子君 それでは、河野大臣、第一条に「この条約は、締約国が市民と市民でない者との間に設ける区別、排除、制限又は優先については、適用しない。」とあるわけでして、これは我が国でいえば国籍の問題を理由にして結果的に差別をされている民族差別などこれに入るわけなんですね。ですから、こういう問題につきましても、今後やはりそういう問題をなくしていくんだという明確な御認識をいただきたいと思います。
 そして同時に、我が国には在日外国人、とりわけ韓国・朝鮮籍の人々への差別というのは非常に根深いものがあります。そしてまたアイヌ差別、部落差別、そういう日本の中での固有の歴史性や独自性を持った差別、身分差別もまだまだ残っているわけですね。そういうことがこの日本の社会に存在しているということはみんな認めていると思います。ですから、それを早くなくしたいというのがやっぱりみんなの共通の認識だと思いますが、その点は私は外務大臣も同じ考えであると受けとめますけれども、その辺のお考えを伺います。
 同時に、この条約の第九条は、この締約国は条約発効後一年以内にこの条約の諸規定の実現のために国内的にどういう措置をとったかということを国連に報告することが義務づけられております。この報告の主体はどこになるんでしょうか。それから、報告のスケジュール、さらに報告が国内の実態を誠実に反映した客観的で公正な内容になるということを約束していただきたいと思いますので、その点について大臣のお答えをいただきたいと思います。
#68
○政府委員(朝海和夫君) 後段の点についてまずお答えを申し上げます。
 この条約によれば、御指摘のとおり日本政府は報告書を提出することになっておりますが、その提出先はこの条約に基づいて設置されているところの人種差別撤廃委員会でございます。
 その報告書の内容につきましては、もちろんこの条約締結後の問題でございますけれども、当然のことながら公正な内容のものとする方針でございます。
#69
○清水澄子君 大臣どうぞ、最後に先ほど確認したことを。
#70
○国務大臣(河野洋平君) 前段の議員の御意見をしかと受けとめさせていただきます。
#71
○清水澄子君 終わります。
#72
○立木洋君 同僚議員も問題にされたわけですが、国連でこの条約が採択されて批准に至るまで三十年かかったと。この点について今までの政府の御説明によりますと、同条約の四条の処罰規定と憲法の二十一条とのかかわりにおいてこれに抵触する懸念があるというふうな理由が説明されてまいりました。だけれども、今回の場合、これを留保して批准するということになったわけですね。だから、三十年もかけて考えないとそういう留保をするという結論が出なかったというのは、私は何びとも納得させることのできない理由だと思うんですよ。本当のところは一体何なんですか三十年もかかったのは。
#73
○国務大臣(河野洋平君) 私は外務大臣を拝任してまだ一年半にしかなりませんが、少なくとも私の知るところでは、とにかく今回こうして国会に御審議をお願いするような状況になりましたのは、村山内閣であったということが非常に大きな理由であろうと思います。これまでは羽田内閣でも細川内閣でもできなかった。もちろん、それ以前もいろいろございましたけれども。
 しかし、今回村山内閣で、総理から私に、この問題はしっかり取り組んでぜひ片づけるようにという御指示がございまして、前の前の前田法務大臣と私とで、この問題をとにかくしっかりやろうという御相談をいたしました。その後、田沢前法務大臣にもそれが引き継がれて今日に至っているというふうに私は思います。
#74
○立木洋君 内閣がかわったからというのもそれは一理かもしれませんけれども、私はそうとは思わないんです。
 調べて見ますと、国連が中心になって作成された人権関係諸条約というのは二十三本あります。そのうち日本政府が国会で批准したのは八本ですよ、三分の一。それから、労働者の権利にかかわるILO条約は全部で百七十六本あるんだけれども、批准したのは四十二本ですよ、四分の一足らず、こんな状態。これで、先ほど人権問題については日本としては努力してきたとおっしゃるけれども、国際的に重要な問題として採択されてきた人権問題にかかわる条約がこんな程度しか批准できないような状況だったということは、やっぱり人権問題に対してもっと本腰を入れるということの必要性を私は指摘しているんじゃないかと思いますけれども、その点についての御認識は同感ですか。
#75
○国務大臣(河野洋平君) もし必要なら、詳細は事務当局から御説明をさせます。
#76
○立木洋君 いや、結構です、詳細は。大臣の考えだけで結構です。
#77
○国務大臣(河野洋平君) 私の認識では、例えば人権関係の二十三条約という御指摘でございますが、その中でも我が国がやるべきもの、やるべきものとやらなくてもいいという言い方はちょっと適当でないかと思いますが、非常に急いでやるべきものとあるいはプライオリティーがそう高くないものという言い方がいいでしょうか、そういうものが中にあって、私が見てみましても、日本社会にとって非常に重要だと思えるものと若干プライオリティーで違いのあるものというのがやっぱりあるんだろうと思います。
 私は、今回のものは非常に重要だと思いますが、二十三の中にはいろいろなものがあるというふうに思っておりまして、事務当局としては誠心誠意、できる限り緊急度の高いもの、それから国内的な調整ができるものから逐次国会にお願いをしているというふうに私は認識しております。
#78
○立木洋君 ここにそれを持ってきています、何を批准して何を批准していないか。これは一々議論していたらまた長時間になりますから、私は河野さんがおっしゃった内容については同意できない。つまり、重要なものだけは早くやったんだけれども、重要でないものだからおくらせておるというふうな言い分については私は同意できないということだけ指摘しておきます、これは議論すると大変長くなりますから。
 それで、人種差別にかかわる問題についてこれまで閣僚が発言する、それから著名な政治家が発言する、これは非常に多いんですね。こうした発言が繰り返されるのについてはあなたはどうお思いになり、どうしてそういうことが繰り返されるのか。ここに全部あります、この数年間に閣僚や政治家が行った人種差別に関するもの、これ全部個人名を挙げて私は言おうとは思いません。だけれども、こういう問題が繰り返し起こっているという原因についてあなたはどうお考えになるのか。
#79
○国務大臣(河野洋平君) それぞれの御発言にはそれぞれの原因といいますか場面があって、それを私が一々説明することはとても不可能でございますが、総じて申し上げれば、私は極めて残念なことだというふうに思います。
#80
○立木洋君 私は名前は申し上げません、個人の問題をどうこうしようという意味じゃありませんから。だけれども、これを見てみますと、日韓併合は韓国にも幾らか責任がある、中国ではまだ穴の中に住んでいる、アメリカの労働者の質も悪い、三割程度は文字が読めない、アメリカには黒人やプエルトリコやメキシカンなどそういう者が相当いて、平均を見たら非常にまだ低い、アメリカはクレジットカードが盛んで、黒人なんかがいてもう破産だ、あすからは払わなくてもいいなんと言ってあっけらかんだ。だれが言ったか皆さんおわかりでしょうけれども、名前は言いません。
 そして、アジア人の女性があそこに立っているので、善良な今までの住民に対しては大変評判が悪い、例えば悪貨が良貨を駆逐するというか、アメリカに黒が入って白が追い出されているようなものだ、南京虐殺事件はでっち上げじゃないか、侵略のやり合いが戦争だ、アジアは戦争のおかげで植民地支配からほとんどの国が独立した、植民地時代には日本が韓国にもいいことをした。
 だれが言ったということは言いません。しかし、こういうことをお聞きになって、いわゆる政治家、閣僚等がこのような発言をなさっている根本的な問題点というのは一体どこにあるというふうにお考えになりますか。残念だということはお聞きしましたけれども、ただ残念だではなくて、何でこんなことが繰り返されるのか。
#81
○国務大臣(河野洋平君) 今の御発言あるいは発言者を類型的に分けて、そしてこういうことがそれらの原因であろうとか、基本的にこういう問題があるからだろうとかという言い方は非常に難しいと思います。
 ただ、申し上げられることは、私は、指導的立場に立つ方の御発言としては極めて残念なことだし、外務大臣の立場から申し上げれば極めて遺憾な御発言だということは申し上げていいと思います。
#82
○立木洋君 私はこの数年間全部調べてみますと、政治家だとか日本の閣僚が民族的な差別の発言をしているのはアジア民族、黒人あるいは黄色人種で、白人に対して差別した発言というのは極めて少ないんです。あるいはほとんどないと言ってもいいかもしれない。なぜアジアの諸民族や黒人なんかに対する侮辱的、差別的な発言が日本人の中で多いのか。この点についてはどうでしょうか。
#83
○国務大臣(河野洋平君) 議員は、過去にさかのぼって大変丁寧にいろいろお集めになったわけですけれども、私にはよくわかりません。いろいろそういう具体的な例を挙げてお話をなさる方は、場所によって、それから話す内容によっていろいろな例を挙げられるのであって、それがそのときにどれを例に挙げられるかというのは、恐らくその話の内容とか言わんとする目的をより強調しようとなさっておられるのだろうと思いますが、ちょっとそれ以上は申し上げようがございません。
#84
○立木洋君 私はいろいろ考えたんです。この問題は私たち日本民族といいますか、つまり日本人全体の歴史観に対する正確な認識の問題と私はかかわりがあると思うんです。
 例えばこの問題に関して、かつて日本が侵略をしただとか植民地支配を行ったということに対する反省の弁というのはありますね、いろいろと閣僚だとか何かの。しかし、本当に一歩突っ込んで見た場合に、日本はあの当時いいことをした、だから日本は指導者意識なんだと、日本民族というのは。だから指導する責任があるとかいう民族的な優越感、ここで言う差別の問題と裏返しですよね。
 そういうことと、アジアの諸民族、いわゆる経済的に非常におくれた民族を見て、非常に汚れた汚い状態に置かれていると。ああいう人々に対して、それを民族として、人権として尊重するというふうな観点よりも、やっぱり一等、一つ下に見るという認識と私は無関係ではないと思うんですよ。これは歴史観の問題と私は深いかかわりがあるんじゃないかなと。その問題を、ここで私は個別的なお名前を申しませんけれども、そういう考え方を強く持っている方はとこういう発言が多いんです。
 私は河野さんのも調べてみようかと思っているんだけれども、調べてみても出てくるかどうかわからないから調べてみませんでしたけれども。
#85
○国務大臣(河野洋平君) むだなことはおやめなさい。
#86
○立木洋君 本当にこれは歴史観の問題として、日本民族が世界的に人権を尊重する国だ、尊重する民族だと言われるようになるためには、日本が過去の歴史に対する十分な反省、そこから民族としてどういう教訓を酌み取ってどういう歩みをしていかなければならないのかといったら、過去の優越的な思想だとかいわゆる他民族を一歩見下げた考えだとか、こういうものにはならなくなっていく。そういう教育のあり方、政治界のあり方、それが非常に私は大切だというふうに思うんですけれども、この点については幾分同意していただけるんではないでしょうか、私は個人名を挙げていませんから。いかがでしょう。
#87
○国務大臣(河野洋平君) みずからを優位に置いて差別的な発言をするということは、もうそれ自体決していいことではないと思うんです。みずからが優位であるということを自他ともに認める場面で、そうでない者に対してあたかもこういう人たちはといってそのグループ全体にレッテルを張るというやり方は極めて卑劣だというふうに私は思います。その相手が白人であろうとその他の人たちであろうと同じだと私は思うんです。
 それは決していい例ではないので私は言いたくないのですが、議員が白人に対してはそういうことがないとおっしゃるから……
#88
○立木洋君 極めて少ないか、ほとんどないか。
#89
○国務大臣(河野洋平君) そうでないことを強いて一つ言えば、例えば相撲の世界なんかそうですね。相撲の世界などはかって少し違うということを、ややそういう響きを持った言い方で言っていた時代があった。しかし、今やもうそういう時代ではありませんね、とにかく最高位をとっているわけですから。そうなると、なくなってくるわけです。つまり、自分が優位ではないということがだんだんわかってくると、おのずからそういう言い方はなくなってくるわけですが、ですから、この部分については自分が優位だと思うと、そうした響きの発言が出てくるということではないでしょうか。
 したがって、全部をひっくるめて言うと、それは議員もレッテルを張るのと同じで、あなた自身もレッテルを張りかけているわけで、そういうもの全体にレッテルを張って先入観を植えつけるということはやるべきでないというふうに思います。
#90
○立木洋君 ですから、私はこの問題、全般的なことを、名前を挙げて個々の例を挙げて言ったんではなくて、一般的な傾向としてこういう傾向があることについて私は厳しく警告を発する必要があるということをこの条約を批准するに当たって特に痛感したわけです。ですから、結局、言うならば多民族を一方的に侮べつ、侮辱したり差別したりすると同時に、特定の民族に対してあるいは特定の対象に対して卑屈になったり言うべきことも言わなくなるだとかいうふうなことがあってはならないということもその裏返しとしては当然のことだろうと私は思うんです。そのことについては御同意をいただけるだろうと思って、この一般的な問題に関する発言はこれで終わります。
 ただ、私は河野さんに前々から宿題を一つ残しているんです。中国に対する侵略あるいは植民地等々の問題に関する態度の問題で、私は今言いましたように日本民族としての優越感があるんではないかというふうな一般的な問題を提起したわけですけれども、ことしの四月二十七日にこの外務委員会で旧日本軍の中国での毒ガス使用について質問いたしました。そして、河野大臣はそのときに、いずれにしろ「事実を確認することがまず大事です。事実が確認されるということが大事だと思います」というふうにおっしゃった。
 そこで私は、四月の質問の際には、防衛庁の防衛研究所図書館にこういう資料がございます、それについてもお調べいただきたい、それから同時に、外務省として単独でそれができないのならば防衛庁とも協力をしてお調べいただきたいというふうに申し述べてから既に半年余りがたちました。それをお調べになったのかどうなのか、お調べになったとしたらその結果はどうだったのか、その点について。
#91
○政府委員(秋山昌廣君) ただいま先生から御指摘のありました資料も含めまして防衛研究所に保存されている戦史資料によりますと、旧軍が製造しておりましたその種類とか量ですとか場所ですとか使用状況、そういったものについての調査というふうに私は理解しておりますけれども、それについて御報告いたしたいと思います。
 まず、旧軍が製造しておりました化学剤でございますけれども、大きく分けて二つある。一つが非致死性の化学剤、それからもう一つが致死性の化学剤というものでございます。非致死性の化学剤としては、催涙剤あるいはくしゃみ剤あるいは発煙剤ということでございます。それから、致死性の化学剤といたしましては、窒息剤、びらん剤、血液剤ということでございます。そして、旧軍はこれらの化学剤を発煙筒、手りゅう弾、迫撃砲弾、りゅう弾砲弾、爆弾等に充てんいたしまして兵器として実用化していたものと承知しております。
 それらの製造量に関しましては、前回も御説明いたしましたが、陸軍造兵廠のもとで昭和七年から昭和十六年まで製造されたとして記録されているものは以下のとおりでございます。砲弾約百三十六万発、爆弾約一万九千発、発煙筒約二百十三万個、化学剤三千三百七十トン。
 それから、十七年以後の製造量でございますが、記録が断片的でございまして、旧軍が昭和二十年の終戦までに総量としてどれだけの化学兵器を生産していたか把握することは実際上不可能でございました。
 それから、旧軍による化学兵器の製造場所でございますけれども、主として広島県大久野島に建設された工場で製造が行われたと推定いたしておりますが、これ以外にも砲弾等への充てんを行う工場などが各地にあったとの情報もございます。ただ、その全体像は明らかにはできませんでした。
 それから、旧軍がくしゃみ剤などの非致死性の化学剤を充てんした兵器を使用したことは防衛研究所に保存されております戦史資料から明らかでございます。しかしながら、旧軍がイペリットなどの致死性の化学剤を充てんした兵器を実際に使用したか否かにつきましては、資料が断片的でございまして確認することが不可能でございました。
 以上でございます。
#92
○立木洋君 これは防衛研究所からコピーをもらいました。今、公表されています。
 ですから、今言ったように非致死性の問題についてはこれは完全に使用されたと。それから、致死性の問題についても断片的にそれは使用されたという材料はあるということです。ですから、旧日本軍が毒ガスを使用したということについては、外務大臣、今の防衛庁の答弁でお認めになりますね。
#93
○政府委員(秋山昌廣君) ただいまの先生の御質問の中に致死性についての御発言がございましたが、我々はその致死性の化学剤を充てんした兵器につきまして調べましたところ、それを実際に使用したか否かについては資料が断片的でございまして、確認することは不可能でございました。
#94
○立木洋君 とりあえず非致死性の問題については、使用されたということについては、大臣、お認めになりますね。ちょっと発言してください。
#95
○国務大臣(河野洋平君) ただいま秋山防衛局長が調査報告を申し上げたとおりでございます。
#96
○立木洋君 今、防衛庁がおっしゃった非致死性のくしゃみあるいは嘔吐剤の問題ですが、これらの問題に関しては一九二五年のときには禁止されておったんですよ。そして、一九三〇年、三一年、この問題が国際法に違反するかどうかという、つまり日本であか筒だとかあか弾として言われていたもの、これについて日本政府は、これは国際法に違反する毒ガスであるということを明確に認めているわけです。
 ですから、あなたは非致死性とおっしゃったけれども、これを大量に使えば多大な死傷者が生まれるという材料もこの中にあります。ですから、それを非致死性という形で逃れるという言い方は正当ではない。ましてや、国際法に違反しているということを日本政府は一九二五年の当時認めていたわけですから、このことの経過について私は詳しく述べました。
 一九一九年にドイツは、毒ガスを使った者に対して、今後毒ガスの製造、貯蔵、使用をしてはならないということを決めた。一九一九年にそれに署名したんですよ、日本政府は。署名しておきながらその一九一九年に本格的な毒ガスの研究所を発足させたじゃないですか。そして、それが使われたんです、現に。ですから、これは非致死性だからといって国際法違反を免れるものではないということだけは私は指摘をしておきたい。
 それから同時に、時間がないから先に進めて申し上げますけれども、致死性の問題について言うならば、御承知のように当時、当時というのは戦前ですが、日本軍の化学戦に関する調査研究、訓練の責任ある陸軍習志野学校で作成した資料に「支那事変ニ於ケル化学戦例証集」というのがあります。これには中国前線で日本軍が化学兵器を使用した五十六例の実例が出されております。これは私、コピーをここに持っています。ここにちゃんと書いてある。「支那事変ニ於ケル化学戦例証集陸軍習志野学校案」というのがあります。これはどこから入手をしたかというと、アメリカの国立公文書館にこれが保管されております。アメリカの国立公文書館の国際検察局文書の一つとして、五十六例の中国戦線での日本軍の使用した例が書かれてあります。
 この中には、きい黄弾、日本の呼称で特に俗に言われているきい剤だとかきい弾だとかあか弾だとかあか筒だとかいうふうな言いようがされていたわけですけれども、このきい弾というのは何かというと、かつてはイペリット、今は名称が変わっております。それからルイサイトとか現在の毒ガスをすべて禁止する、化学兵器を全部禁止するという禁止例の中の一つに入っております。
 こういう内容を全部見てみますと、結局くしゃみだとか嘔吐剤というのがあか筒、あか弾、それからきい弾、きい剤なんと言われるのがびらん性の致死性毒ガスです。これはかつてはイペリットと言われていましたけれども、現在は精製マスタードです。それからルイサイト、これは現在の化学兵器禁止条約の表1、毒性化学物質として禁止されている物質の中に入っているものです。これが既に使用されたというのがこの中に五十六例あるんです。習志野学校で出されている、アメリカの公文書館に保管されているものです。
 これについては、一九四一年十月の宜昌攻防戦で師団が中国軍に包囲されて危険な状態になったときに、一九四一年の十月七日から十一日にかけてきい弾千発、あか弾千五百発を使用して敵に対して大打撃を与えたというふうな戦例が、これ全部地図入りで書いているんです。そして、そこで何発使ったか、どういうふうな使用方法をしたのか、全部書いてあります。
 それから、これはこの問題だけでなくてさらに申し上げますと、山西省の太行山脈で一九四二年二月八日から十五日まで第三十六師団がきい剤をもってせん滅した、そして約半数以上を死亡せしめたというふうなものもあります。あるいは、河南作戦で第十二軍第三十五師団が撤収作戦に際してきい剤三百三十万トンまいて中国軍の進路を封鎖した。これらのものは中国において致死性ガスが使われだということが明確に証明されている例証なんです。これは部分的な証拠だからだというふうなことではなくて、私は、この五十六例があるアメリカのその文書を入手してきちっと対処すべきだと。
 この問題に関しては、もう時間がないから結論に入らなければなりませんけれども、この文書は今日改めて問題になったんではなくて、一九八四年、この問題が問題になったんです。当時の安倍国務大臣は、こういうことが報道されて私は大変なショックを受けたということを述べられて、これは「一つ過ちを犯しておるだけに」という言い方をしています。「一つ過ち」というのはどういう意味か。これは安倍さんおいでになりませんからわかりませんけれども、そう言いながら、この問題については「いろいろと実態をもう少し明らかにする必要があると思います。」というふうにその当時も述べられました。そして、しかしこの問題については「中国との間でそういう問題について話し合うということになっておるわけではございませんけれども」と、こういうふうにも述べておられます。
 ですから、この問題について、日本がいわゆる国際法に違反して使用したということと同時に、致死性の毒ガスをも使用したということも明確な例証としてあるわけですから、これも集めて日本政府としてこの問題に対して、中国に対してこういう毒ガスを使ったということが国際法に反し、日本の旧軍のあり方としては極めて遺憾であったということをやっぱり明確にし、中国に対して何らかの対応をとる必要があるだろうというふうに私は考えるんですが、最後の点については、最後になるかどうか、時間が余ればもう一問聞きますけれども、大臣、今の私の見解についての御所見を述べていただきたい。
#97
○国務大臣(河野洋平君) 防衛庁では、今御指摘になられた資料などを参考にさらに事実関係について御検討になると思いますが、私は今の議員のお話を伺って、やはり非常に重要な問題だというふうに受けとめました。
 これは既に条約もできていて、遺棄化学兵器の処理についても我が国として責任を負う立場に当然義務としてあるわけでございまして、今お話しのものがそうした遺棄されて残っているかどうかということはまだよくわかりませんが、もしそうであるとすれば、それはひとつ検討しなければならないであろうというふうに私は思います。今のお話をきちんと受けとめて私としては考えたいと思います。
#98
○立木洋君 済みません、最後に一分だけ、まだあるようでありますから。
 新聞の報道によりまして、旧日本軍が中国に残留した化学兵器の調査に行かれたということはもう大臣御承知のとおりですが、この調査の中で、いろいろ調査した結果、ハルバレイにおいて旧日本軍がきい弾と呼んでいたびらん性のマスタード、ルイサイト、混合剤の砲弾やくしゃみ弾も確認されたというふうに既に調査に行って発見しているんです。ですから、この問題は現在でも残っているんです。現に向こうに運び込まれている。
 先ほど防衛庁の方では、どれぐらい生産されて、どれぐらい持っていって、どれぐらい使用したかというのは、数量については明確ではないかもしれませんけれども、この問題については、日本が本当に人権を尊重し、かつての問題について、御承知のように従軍慰安婦の問題等が後々出てきましたね。それについてやっぱり政府が明確な態度をとるということが重要であったと同様に、この問題については、この条約の検討の期間に政府としてもしっかりとした対応を必ずして、中国側に対する何らかの対応があって私はしかるべきだということをも明確に述べておきたいというふうに思います。
#99
○政府委員(加藤良三君) 中国との関係では、日本として旧日本軍が中国に遺棄した化学兵器の処理について誠意を持って対応していく考えだということを累次伝えておりまして、最近ではAPECの際に行われた日中外相会談の際に、河野大臣から銭其シン外相に同趣旨を明確に述べておるところでございます。
 現に、九一年六月、九二年六月、これは視察でございますが、九五年二―三月、九五年五―六月、九五年九月、五回にわたって視察と調査というものを行ってまいりまして、その過程で、今、立木委員がおっしゃられたような事実関係も把握されているわけでございますが、さらに九六年度以降、本格的な調査というものを進めたいと考えておる次第でございます。
#100
○立木洋君 ただ、使用については日本政府は明確にしていないんです、毒ガスを中国で使ったと。非致死性、致死性の毒ガスを使って中国人民に多大な犠牲を与えたということについては述べられていない、公には。このことだけ指摘しておいて、その点についての明確な態度をとられるように重ねて要望しておきたいと思います。
#101
○武田邦太郎君 私は、人種差別撤廃条約については賛成でございますので、きょうは前々回まで発言してまいりました日米安保の問題について結びをつけたい、こういうふうに思います。
 毎々申し上げますように、日本はアメリカと対等の親友になるべきだし、なり得る。ところが、日米安保条約のある限り、アメリカは日本を守ってやる、日本の識者もそうでありますが、多くの人たちはアメリカに守ってもらわなければ日本は安全を期し得ない、こう思っておる限りにおいては対等の親友にはなり得ないというのが私の基本的な考え方であります。
 なぜ日米安保が必要であるか。理由は三つあると思います。
 一つは、中国や北朝鮮が危ない、こういうことでありますけれども、日本もアメリカの傘の中に入っておると思われておりまして、その限りにおいては、万々ないとは思いますけれども、仮に火ぶたが切られた場合、日本、特に沖縄は核戦争の最前線にさらされる。こういうことでありますので、これは理由にはならない。
 第二は、アメリカがアジアから中東にかけて、具体的に言えば中国からイラクにかけて武力をもってにらみをきかす。この軍事戦略の最大の拠点が沖縄である。そういう意味では日本を守る意味は極めて薄い。これまで国際紛争あるいは民族紛争を武力によって根本的に解決し得たというケースは一つもありません。ことごとく失敗している。このゆえにアメリカが沖縄に根拠地を持って武力をもってそうそうにらみをきかすという世界戦略の基本について、親友として心から忠告をしたい。武力をもってやることはやめろ、少なくともやめることを理想とすべきだと、こう言うべきじゃないかと思うんですね。
 第三番目は、いわゆる瓶のふたであります。日本がまた武力をもって、軍事大国となって侵略してこないか。これは我々から見ればとんでもない話でありますけれども、それを近隣諸国は深刻に憂えているという現実は放置をしておくわけにまいりません。日本は本当の平和国だ、二度と我々を脅かすことはないだろうと思われることを我々は念願しなきゃならぬのでありますけれども、日米安保のもとで日本の軍事力がどんどん高度化していることは眼前の事実でありまして、その限りにおいて近隣諸国が非常に危機感を持っておるということはまことに無理のない話です。
 以上三つの問題について挙げましたが、私は唐突にやめてしまえなどという乱暴なことは申しませんけれども、その前提として、日本がまず言い出して、少なくとも今後三十年、日本、中国、アメリカ、できれば韓半島といいますか朝鮮半島といいますか、二つの国も中に入って三十年の相互不可侵条約を結んだらどうだろうか。これもまた容易に進むことはないと思いますけれども。
 今申しました日米安保条約が非常に危険きわまりないものだ、しかも日米の間に、きょう盛んに問題になりました差別がある、国家の差別がある。こういう厳然たる事実の前に、何とかして不可侵条約を結ぶということになれば、これは基本的には戦争の脅威が人類社会からなくなる出発点にもなりますし、また非常に憂い深い韓半島の二つの国が一体化する重大な条件がそこにあらわれるということになるわけでありますので、そういうことが唐突に出された問題として検討の価値がないのか、一歩退いて熟慮する価値があるのか、こういうことについて大臣のお考えを伺いたい。
#102
○国務大臣(河野洋平君) 安保条約の役割についてはいろんな議論があると思います。今、議員がお話しになりました三つの効能といいますか役割の中で、瓶のふた論というのもよく言われる一つですけれども、私は日本人として、安保条約があるから日本は危なくない、日本が軍事大国化をしないのだ、あるいは軍事力をもって出てくることはないのだ、日本がそういうことにならないのは安保条約があるからだなどと言われることには非常に抵抗を感じます。
 私は、日本の国が軍事大国化しないのは、あるいは軍事力によって何かしようとしないのは国民の意識の問題であって、安保条約によって瓶にふたがされているからではないということははっきりとそうした瓶のふた論をおっしゃる方には申し上げなければならないと思います。
 我が国は、国民の意識、国民の総意によって現在の憲法というものが維持されている。その憲法が維持されているということは、とりもなおさず軍事力によって国際的な紛争を解決しようという意思を持たないということになっているわけで、安保条約の効能が瓶のふただというこの問題については、私は日本人のプライドにかけて、いや、それはそのとおりですと言うわけにはいかないというふうにまず思うんです。
 それから、確かに議員がおっしゃるように、軍事力によって問題が解決されることはないという御指摘がございました。今回のボスニアの問題を見ても、私はボスニアの和平が本当に意味があって、これもまだまだどういうことになるか十分注視する必要があるとは思いますけれども、しかし和平が達成をされたあの最後の場面は、確かにテーブルに着いて、二十一日間も指導者がテーブルを囲んで真剣に考えた結果和平というものが達成せられた、このことは間違いのない事実でございます。
 しかし、そこに至るまでに、では一体どんなことがあったかということもまた考えてみなければなりません。そのことは、プラスもありました、もちろんとうとい人命をたくさん失うという大変なマイナスもございました。しかし、そこに至るまでに、例えばNATO軍が果たした役割というものは評価すべきなのかすべきでないのかとか、いろいろな角度の議論というものはあるだろうと思うんです。したがって、私は、確かに議員がおっしゃるように、恒久的に問題を解決するのは軍事力によるものではないだろうと思います。最終的にはやっぱり政治力といいますか、人間同士が英知によって問題を解決するということが一番いいということは全く合意いたします。
 しかし、例えばイラクがクウエートに攻め込んできてしまった。そのときに言葉だけで問題が解決できただろうかというと、それはなかなかそうはいかなかったかもしれません。つまり、いろいろな場面を考えてみるに、お説のとおり全く軍事力というものを論外にして議論をするというわけにはなかなかいかないのではないかというふうに私は思います。
 それから、我が国周辺の問題についてもまだまだ透明度が足らない、不透明な部分が多い、不確実な部分が多いということも否定のできないことでありましょう。それを、我々はできる限り透明度を高めてほしいということを主張し説得をしても、それは徐々にそういうことが進むかもしれませんが、いっそうなるかということについては我々にはしかとした期限は切れない状況でございます。
 ということになれば、我々はやっぱり、政治にかかわり責任を持つべき立場にある人間は、与えられた前提条件の中で最善の選択をしていかなければならないのではないかというふうにも思うわけでございます。私は、与えられた前提条件、しかもそれが直ちに変えられない前提条件であるならば、やはりその前提条件の中における最善の選択をする、そういう努力が必要だろうと思います。
 最後に、議員お話しになりました三十年程度の相互不可侵条約について努力をすべきだという御提言は、それをどことやるかという問題がございます。例えば、日中平和友好条約の中には、相互に不可侵ということはもう既にうたわれているわけでございます。
 いずれにせよ、国連を初めとする国際場裏ではお互いが相互不可侵であるということはそれぞれが確認をされているわけで、いや、それは一般的なものであって、バイ、二国間で、あるいは議員のおっしゃるように三国で改めてやるということに意味があると。これはやや精神的なといいますか、意味が私は全くないとは申しませんが、既に相互不可侵条約というものの持つ重さというものについては、それぞれがいろいろな経験から感じていることもあって、ただ単にそのことだけでは私は十分ではないのではないか。むしろ、国際社会の中における相互依存関係をもっと深めていくことによって、お互いがチェック機能を持つことができるというふうに私は思っております。
#103
○武田邦太郎君 もう時間が参りましたが、現職大臣の御発言としてまず満足すべきかと思います。なお、この問題は、完全に吹っ切れた問題でありませんので、心の一端におとどめおきいただければありがたいと思います。
 終わります。
#104
○佐藤道夫君 私からは条約の第四条につきましてお尋ねしたいと思います。政治論ではなくて法律論として受けとめまして、法律上この条約をどう解釈するか、そういう観点からお答えをいただきたいと思います。
 最初に、議論の素材として、先ほど立木委員の質疑の中にも出てまいりましたけれども、過去の政府高官の人種差別的発言についてちょっと述べさせていただきたいと思います。私は立木委員とは違って遠慮がないものですから実名を挙げてはっきりさせた方がよかろう、こう思います。
 まず、中曽根さんの発言。当時首相でありました。日本は高学歴社会で知的水準が高い、アメリカなどは黒人とかプエルトリコとかメキシカンとかが相当多くて平均点から見ると非常にまだ低い、こういう発言です。
 次は渡辺美智雄さん。自民党の政調会長でありました。日本人だと破産は重大に考えるが、米国の連中は黒人だとかがいっぱいいて、うちはもう破産だ、あすから何も払わぬでいい、それだけなんだ、ケロケロケロケロ、アッケラカーのカーだよ、こういう発言であります。しかし、これは今になってみますと、日本人は金融機関から何十億、何百億と借りて払わない、そのしりぬぐいを何か公的資金でやるということを大蔵省は言っておりますから、こういうことを言えるのかどうか今ちょっと疑問になってきていると私は思います。
 それから最後は梶山さん。当時法務大臣でありました。これは、新宿の街頭を視察した際に外人女性を認めましての発言だと思います。悪貨が良貨を駆逐する、アメリカに黒が入って白が追い出されたように外国人女性があそこに立っているので善良な居住者にも評判が悪い、こういう発言であります。
 端的に申し上げますと、こういう発言が第四条(a)項の人種的優越に基づく思想のあらゆる流布に該当する発言ではないかというふうにも思えるわけです。よってもって、法律で処罰すべき犯罪であるということになるのかどうか。条約の解釈上どうなるのか。
 かつてのナチスのように、ユダヤ人は人種的に劣るから撲滅しろとか、ああいう大がかりな人種差別が行われることはまずないだろうと思います。むしろ、折に触れてのこういう一国の指導者たちの、そういう立場にある人の発言が国際的な問題の種になりまして、日本はあれを放置しているのか、なぜ処罰しないんだと。いえ、あの条項は留保しておりますから処罰できませんと。それならすぐ法律をつくって対応すべきではないか、こういう議論になってくるんだろうと思います。
 よってもって、今のお三方の発言が条約の批准後に行われたとすればこの同項に違反することになるのかどうか、お教え願えればありがたいと思います。
#105
○政府委員(朝海和夫君) 御指摘のような種類の発言が行われたとすれば、先ほど外務大臣から申し上げましたとおり残念なことではございます。ただ、これが日本の法体制のもとで処罰に当たるようなことなのかどうか。それにつきましては、先ほど法務省の方から、名誉毀損に当たるかどうかとか、あるいは殺人、傷害に当たるかどうかといったような点の説明があったとおりでございます。
 御質問のこの条約締結後どういうことになるかということに関しましては、日本はこの第四条につきましては憲法の範囲内で実施しますという留保を付しております関係上、人種差別的なような発言が日本の制度のもとで処罰に当たるかどうかは、それが脅迫に当たるか、名誉毀損に当たるか、殺人等に当たるかといった点に基づいて検討されることになるのではなかろうかと考えております。
#106
○佐藤道夫君 全然すれ違いの答弁になっておるんです、遺憾ながら。
 私が言いましたのは、この同項の人種的優越に基づく思想のあらゆる流布に当たるかどうかと。もし当たるとすれば、我が方は留保しておりますけれども、この条約によりまして仮に法律をつくったとすると、法律で処罰すべき犯罪である、これに該当するのかどうかということを聞いておるのであって、現行法の名誉毀損になるとか、そんなことを言って聞いているわけじゃないんですよ。勘違いしないようにきちっと答えていただきたいと思います。
 中曽根発言などは明らかに、日本人は優秀である、アメリカの一部の人たちは知的水準が劣る、これは人種的優越に基づく差別的な発言ではないかと、こう思われるわけです。渡辺発言も、これも、日本人は経済的に非常にしっかりしている、しかしアメリカの黒人はもう金なんか借りても払わない、そういう連中であるからしてと、こういうことだろうと思います。
 こういう発言がこれからもまた行われる可能性が絶対ないとは言えないものですから、この条約の上でどういうふうに取り扱われることになるのか。そんな条項は日本国は留保しているから答える必要はないんだということでは済まないと思います。条約上どういうふうに考えるのかそこのところをお尋ねしているわけです。
#107
○政府委員(朝海和夫君) 一般論としてしかお答えできません。なぜならば、どういう種類の発言がどういう状況の中で行われたかによってその法的性格は変わってくるだろうと思います。
 ただ、そうした前提の中での一般論として申し上げれば、例えばでございますが、少数の人のいる場合で、いわば私的会話の中でそのような人種優越とも言えるような発言が行われたといったような場合、あるいはそういった種類の発言であっても、繰り返して行われているのかそれとも一回だけと申しましょうか、たまにしか行われないのか、そうしたことによって思想を流布しているかどうか、扇動しているかどうかといった判断の仕方もまた変わってくるんではなかろうかと考えております。
#108
○佐藤道夫君 次の設例なんですけれども、ある町で東南アジア系の人たちが相当数住むようになりまして、町の人たちは汚いとか不潔だとか風紀が乱れるとか、こういう話をするようになったと。それを受けとめて、町の指導者の立場にある人がこの町から外国人には出ていってもらおうという呼びかけをした。町の集会所がなんかに大勢集めまして会をつくって、外国人を追放しようというふうな話が始まりまして町民に参加を呼びかける
 こういうことになると、この(b)項の「人種差別を助長し及び扇動する団体」、この団体への参加を呼びかける行為として法律で処罰すべき犯罪であるということに条約上解釈されるんじゃないか、こう思うんですけれども、いかがでしょうか。
 こういうことは大いにあり得ることだと思います。現にある町村では非常に迷惑をしているから外国人たちに出ていってもらいたいという声も聞いておるわけですから、将来の問題として多いにあり得ると思います。いかがでしょうか。
#109
○政府委員(朝海和夫君) 御指摘のような諸点は、実は外務省としては有権的な意見を述べる立場にございませんが、一般に、今おっしゃられたような状況があって、それが破壊活動につながる団体を構成するような状況であるといったものだとするならばでございますけれども、現在の法制度の枠組みの中での対応が想定されると考えられます。
#110
○佐藤道夫君 よくわからないんですけれどもね。私は別に破防法のことを言っているわけじゃないんです。そういう町民大会が開かれて、町の決議として、もう外国人に出ていってもらいたいと決議をして、町民みんな立ち上がってそういう運動をしようと、こう言っている場合に、この条約の上からどう見るのか、それだけのことなんですよ。有権的な解釈はどこでするのかわかりませんけれども、所管は外務省ですから、外務省さんの立場でどう考えるのか、それだけのお答えで結構です。
#111
○政府委員(朝海和夫君) 個々の状況によって考えざるを得ない性格の問題だろうと思います。ただ、この条約前文の精神ということがしばらく前の委員の御質問の中に出てまいりましたけれども、この条約の前文の精神に基づいてあらゆる種類の差別をなくそうということであれば、おっしゃられたような状況が生じるということは決して望ましいことではないと考えております。
#112
○佐藤道夫君 終わります。
#113
○委員長(木庭健太郎君) 他に御発言もなければ、本件の質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。――別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の締結について承認を求めるの件に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#114
○委員長(木庭健太郎君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、本件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#115
○委員長(木庭健太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#116
○委員長(木庭健太郎君) 国際情勢等に関する調査を議題といたします。
 この際、矢田部理君から発言を求められておりますので、これを許します。矢田部理君。
#117
○矢田部理君 私は、自由民主党・自由国民会議、平成会、日本社会党・護憲民主連合、新緑風会及び二院クラブの各派共同提案に係るあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約に関する決議案を提案いたします。
 まず、提案理由を御説明いたします。
 提案理由。
 あらゆる形態の人種差別の撤廃を目指す本条約の締結についての承認を本委員会において行うに当たり、我が国として、今後とも国際人権の促進に寄与していく決意を明らかにするとともに、我が国に存在する被差別部落問題やアイヌ問題、定住外国人問題など、あらゆる差別の撤廃に向けて、引き続き努力を重ねていくことが肝要であると認識し、次の決議を提案する。
 以上がこの決議案を提案する理由であります。
 次に、決議の案文を朗読いたします。
   あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する
   国際条約に関する決議(案)
  あらゆる形態の人種差別の撤廃をめざす本条約の締結は、国際社会及び我が国における人権
 政策の確立と人権尊重の取組の強化において、きわめて有意義である。
  政府は、本条約の締結に当たり、次の事項に
 つき誠実に努力すべきである。
 一、我が国に存在するあらゆる差別の撤廃に向
  けて、一層の努力を払うこと。
 二、あらゆる形態の人種差別の撤廃を達成する
  ため、本条約の規定に従って、必要な国内措
  置を十分に講ずること。
 三、本条約の内容が広範な分野に及ぶことにか
  んがみ、条約の運用に当たり、関係行政機関
  の緊密な連携を確保するとともに、広く国民
  に対し、本条約の趣旨及び内容の周知徹底に
  努めること。
 四、人種差別撤廃委員会に提出する報告書は、
  適正なものとするとともに、提出後、速やか
  に国会にも提出すること。
 五、学校教育、社会教育、公務員の研修の分野
  で、あらゆる差別の撤廃のための広報活動及
  び人権教育を重視し、その実施体制の確立を
  図ること。
 六、未批准の人権に関する諸条約の締結につい
  て、その検討を促進すること。
  右決議する。
 以上であります。
 何とぞ、御賛成くださいますようお願い申し上げます。
#118
○委員長(木庭健太郎君) ただいまの矢田部理君提出の決議案の採決を行います。
 本決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#119
○委員長(木庭健太郎君) 多数と認めます。よって、本決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、河野外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。河野外務大臣。
#120
○国務大臣(河野洋平君) ただいまの御決議に対して所信を申し述べます。
 政府といたしましては、ただいま採択された御決議の趣旨を踏まえまして、日本国憲法が保障する法のもとの平等の原則を十分に尊重し、今後ともいかなる差別もない社会を実現すべく誠実に努力してまいる所存であります。
#121
○委員長(木庭健太郎君) 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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