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1995/11/22 第134回国会 参議院 参議院会議録情報 第134回国会 本会議 第13号
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1995/11/22 第134回国会 参議院

参議院会議録情報 第134回国会 本会議 第13号

#1
第134回国会 本会議 第13号
平成七年十一月二十二日(水曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第十四号
  平成七年十一月二十二日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の報告に関する件(APEC大
  阪会議等出席報告及びAPEC大阪会合を中
  心とする外交案件に関する報告について)(
  第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、国家公務員等の任命に関する件
 一、日程第一
 一、宗教法人法の一部を改正する法律案(趣旨
  説明)
     ―――――・―――――
#3
○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。
 この際、国家公務員等の任命に関する件についてお諮りいたします。
 内閣から、宇宙開発委員会委員に山口開生君を、中央更生保護審査会委員に深澤道子君を、電波監理審議会委員に岩男寿美子君を、
 日本放送協会経営委員会委員に池川順子君、齋川慶一郎君及び須田寛君を、
 また、労働保険審査会委員に藤村誠君を任命することについて、それぞれ本院の同意を求めでまいりました。
 まず、宇宙開発委員会委員及び日本放送協会経営委員会委員のうち須田寛君の任命について採決をいたします。
 内閣申し出のとおり、いずれも同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#4
○議長(斎藤十朗君) 過半数と認めます。
 よって、いずれも同意することに決しました。
 次に、中央更生保護審査会委員、電波監理審議会委員、日本放送協会経営委員会委員のうち池川順子君及び齋川慶一郎君並びに労働保険審査会委員の任命についで採決をいたします。
 内閣申し出のとおり、いずれも同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#5
○議長(斎藤十朗君) 総員起立と認めます。
 よって、全会一致をもっていずれも同意することに決しました。
     ―――――・―――――
#6
○議長(斎藤十朗君) 日程第一 国務大臣の報告に関する件(APEC大阪会議等出席報告及びAPEC大阪会合を中心とする外交案件に関する報告について)(第二日)
 去る二十日の国務大臣の報告に対し、これより順次質疑を許します。野沢太三君。
   〔野沢太三君登壇、拍手〕
#7
○野沢太三君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表いたしまして、先日御報告のありましたAPEC大阪会議につきまして御質問をいたします。
 まず、村山総理初め関係閣僚におかれましては、APEC大阪会議の運営に当たり、大変御苦労さまでございました。各国首脳を大阪に集めたこの大規模な国際会議が、目的を十分達成して無事終了しましたことをまず安堵いたしますとともに、議長国としての大役を果たされましたことに心より敬意を表する次第であります。
 また、事前の準備を初め、警備、おもてなし等の面でこの会議を支えられました多くの方々の労を多とし、皆様に対して心より感謝申し上げる次第でございます。
 戦後五十年の節目の年に、アジアの主要な国の指導者が日本に集まり、共通の目的によって結ばれ、二十一世紀に臨んで建設的な話し合いをされたことは、まことに有意義であったと思われます。特に、この会議が商都大阪で開かれ、各国の首脳に歴史と伝統と活力にあふれた大阪の皆様の心意気に触れでいただいたことは、APECの趣旨にかなうものと喜んでいるものでございます。
 また、先日行われました大塚清次郎先生死去に伴う佐賀補欠選挙におきまして、自民党公認の岩永浩美候補が見事当選いたしました。これは我が党の掲げた景気対策、外交政策、農業政策、さらには宗教法人法改正等の政策に対して御信任をいただいたものと考えます。御支援をいただいた国民の皆様に心から感謝申し上げ、今後とも一層の努力を傾注して御期待にこたえることをお誓いするものであります。
 さて、今回のAPEC大阪会議にクリントン米国大統領の御出席がいただけなかったことは、まことに残念でありました。大変に厳しい国内事情を抱えでやむを得ない御決断であったことはよく理解できますし、また、出席を見合わさざるを得なかったクリントン大統領こそ最も残念であったろうと思います。一部には、これによって会議の重みを欠くことになったとする意見もあるようでありますが、二年前にシアトルにおいて初めて非公式の首脳会談を呼びかけられ、APECの価値を高めたクリントン大統領の参加が得られなかったことによって、APEC大阪会議にどのような影響があったのかを総理にまずお伺いいたします。
 これまでのAPECの会議では、昨年のスハルト・インドネシア大統領、また、一昨年のクリントン大統領に見られますように、主催国首脳のイニシアチブが大いに発揮されてまいりました。今回の大阪会議でも、議長国である我が国のリーダーシップが強く求められておりました。村山総理初め、橋本通産大臣、河野外務大臣は、それぞれにその期待に十分こたえでいただいたものと思いますが、御自身、どのように評価されておられるのか、お伺いいたしたいと思います。
 今回の会議は、昨年ボゴールで合意された、先進国は二〇一〇年、発展途上国は二〇二〇年を目標に貿易・投資の自由化を進めるとのボゴール宣言を受けで、これを肉づけし、自由化の具体的な道筋を示す「行動指針」を採択することが最大のテーマであったわけでありますが、これが議長国日本のイニシアチブで達成できたことは、大いに誇るべきことであろうと思います。これによって、APECが理念として掲げてきた自由化は具体化へと踏み出し、自由化は構想の段階からいよいよ実行の段階へと移ることになるのであります。
 来年、フィリピンで開催される予定の会議では、この「行動指針」をもとに各国が行動計画を示すことになりますが、こうしたAPEC自由化の流れの中で今回の「行動指針」の合意はどのような意味を持つのか、その評価とあわせて、総理大臣並びに通産大臣にお伺いいたします。
 ところで、自由化に関しては、自由化の例外を認めるのかという点と、自由化の成果を域内域外に無差別に適用するのかという二つの原則が論争の焦点であったと承知しますが、これらはどのように決着したのでしょうか。
 例外を設けるかどうかの点、すなわち包括性の原則では、我が国は農業の自由化を例外とするよう求め、米国などは例外なき自由化を求めでいたわけであります。結局、「行動指針」の自由化原則の第八項では、「APECの各国・地域間の異なる経済発展水準と多様な環境を考慮し、自由化・円滑化のプロセスにおいて、そうした環境から生じる問題を扱う場合は柔軟に対応できる」ことがうたわれておりますが、これは我が国として農業の自由化を例外とする趣旨のものと受けとめでよいのでしょうか、総理に明確にお答え願いたいのであります。
 また、自由化の無差別原則では米国と中国の対立が特に激しかったと伺います。私は、APECにおける自由化は多角的な自由貿易体制と整合的なものであり、開かれた地域協力として世界経済の発展に資するものであることは言うまでもなく、APECにおける自由化の成果は、WTO協定に従って域外国に対して最恵国待遇にのっとって平等に与えるべきものと考えます。
 これに関して指針の第四項は、「APECの各国・地域は、域内で互いに無差別原則を適用するよう努力する。アジア・太平洋地域の貿易・投資の自由化の成果は、APEC域内のみならず、域外にも反映される」と述べでいるわけでありますが、一体、この問題はどのように各国の合意が得られ解決されたと理解すればよいのか、総理に御説明をいただきたいと存じます。
 いずれにしましても、自由化の包括性の原則といい、無差別の原則といい、かなり抽象的であいまいな表現になっていることは否めないように思われますが、これらの問題をめぐって、今後、各国間の意見が対立するような事態は全く予想されないと見でよいのか、総理の率直な御見解を承ります。
 今回の大阪会議では、「行動指針」の作成とあわせて、各首脳がそれぞれ自由化への真剣な取り組みを内外に示すために「当初の措置」を自主的に持ち寄り、我が国も議長国として、一部の産品についで関税率引き下げの前倒しや規制緩和措置などの前向きな「当初の措置」を提示いたしましたが、その具体的な内容と国内対策及びこれに対する各国の評価を閣僚会議のまとめ役として御苦労いただきました通産大臣にお伺いいたします。
 さて、APECは貿易・投資の自由化と円滑化とともに、経済・技術協力を大きな柱の一つとしておりますが、「行動指針」はこの点に関し、「自由化・円滑化に寄与する経済・技術協力を積極的に追求する」とうたっております。
 アジア・太平洋地域における持続可能な成長及び衡平な開発を達成するために、また、APEC諸国間の経済格差を縮小させ、この地域の国民の経済的、社会的福利を改善するためにも、経済・技術協力を一層推進することは必要なことでありますが、今後、我が国としてこの面での活動を具体的にどのように進めていかれるのでしょうか、お聞きいたします。
 特に、大阪会議では、APECの枠内での経済・技術協力を一層効率的にするために、相互支援及び自主性に基づく新たなメカニズムとして、PFPと呼ばれる「前進のためのパートナー」を導入し、活用することについて意見が一致したわけであります。それはどのような内容のものであり、どのような効果が期待されているのか、以上二点を総理に御説明願いたいと存じます。
 また、我が国は、経済交流や技術協力を行う予算として、今後数年間に合計百億円を支出することを表明いたしましたが、これによってAPECは財政面で飛躍的に強化されることになると思われます。もっとも、これまでAPECは強固な機構となることをあえで避けてきたわけでありますが、これから具体的な課題を円滑に処理し、継続性と発展性を持たせるためには、事務局の増強が不可欠であると考えられます。我が国が今回資金提供を表明したねらいはどこにあるのか、これによってAPECの運営に何らかの変化が生ずることになるのか、総理にお尋ねしたいと思います。
 APECの将来をめぐっては、宣言においで、アジア・太平洋地域の急速な人口爆発と急速な経済成長が、食糧不足、エネルギー需要の急増、環境汚染を生み出すであろうと予測し、このような課題をAPECの長期的な目標として各国・地域の共同行動を呼びかけておりますが、これらはいずれもまことに時宜にかなった指摘であると思います。これらの問題の解決のために我が国の積極的な貢献を願うものでありますが、総理の御決意のほどをお伺いいたします。
 賢人会議の議長であるフレッド・バーグステン氏は、大阪のAPECにおいで、紛争処理機関の創設と域内の金融危機等に対処する金融システムの構築を提案していますが、これについではどのような検討をいただけたのか、総理にお伺いいたします。
 また、今回設置されたビジネス諮問委員会の役割と位置づけはどのようなものであるか、通産大臣にお伺いいたします。
 さて、今回の大阪会議では、さまざまな形での首脳外交が展開されました。しかし、我が国が最も期待していた日米首脳会談は、クリントン大統領の訪日延期によって実現いたしませんでした。それにかわってゴア副大統領との会談が行れましたが、会談の成果をお尋ねいたします。
 特に、戦後五十年を契機に予定されていた日米安保再確認のための安保共同宣言は後日に見送られましたが、それによって日米関係が損なわれることがあっではならないのであります。我が国としては、一日も早くクリントン大統領の訪日を実現させることであります。大統領の来日はいつごろになるのか、また、日米安保の再確認は今後どのようなスケジュールで行われるのか、総理及び外務大臣にお示し願いたいと思います。
 また、総理は、クリントン大統領との会談の後に沖縄米軍基地の継続使用に関する代理署名を行うものと伝えられておりましたが、いつごろ代理署名を実施されるおつもりなのか、来年三月には使用期限が来る施設もあるのでありますから、かなり急がなければならないと思われますが、署名の時期についてお伺いいたします。
 さらに、沖縄県が求めている小学生女児暴行事件に関連した綱紀の粛正、再発の防止、被害者に対する補償、地位協定の見直しと基地の整理統合、縮小の問題などについではどのような話し合いが行われたのでしょうか。沖縄問題の作業は、クリントン大統領の訪日延期という事態にもかかわらず継続的に行われる必要があり、また、沖縄の皆さんの切実な要望を具体的に打開していくことが何よりも重要であります。このために日米間でどのような問題解決の前進が図られたのか、総理及び外務大臣にお尋ねいたします。
 最後に、日韓首脳会談についてであります。
 最も近い隣国である韓国との関係が今日のような状況にあることは、両国にとってだけでなく、アジア・太平洋地域全体にとってもまことに不幸なことであります。今回の首脳会談、外相会談においで、歴史認識、北朝鮮問題等についで率直な意見交換が図られ、外交上の行き詰まりがとりあえず打開できたと思いますが、関係改善にはさらなる努力が必要と考えられます。
 総理並びに外務大臣の所見をお伺いして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣村山富市君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(村山富市君) 野沢議員の御質問にお答えする前に、一言ごあいさつを申し上げたいと思います。
 去る十六日から十九日までAPEC大阪会議が開かれました。全日程を無事に終わり、成功裏に終わることができたと確信をいたしておりますが、皆さんの御指導と御支援に対しまして心からお礼を申し上げます。
 また、大阪府、大阪市、関係市町の知事さんや市長さん、あるいはまた職員の皆さん方から、加えて民間関係団体の皆さんからも献身的な御協力をいただきました。特に、大阪府警を初め全国の治安関係者の皆さんが適切な警備を行っていただくことによって一件の事故もなく最後まで無事に終わることができたこと、また、厳しい交通規制等もございましてあるいは御迷惑をおかけした関係の向きもあったのではないかというように思われますけれども、関係府・市民の皆さん方からは温かい歓迎をいただきまして、十八のメンバーの皆さんから私に対して、本当に大阪会合はよかったという評価もいただいております。そういう関係者の皆さん方に改めで心からお礼を申し上げたいと思います。
 この成功のために、ボゴール宣言を受けでこれからいよいよ行動の段階に入るという難しい問題を抱えながら、各国々の言い分も十分に聞きながら民主的な議論を尽くしてコンセンサスを得で、今回の「行動指針」なりあるいは首脳宣言をまとめるに至ったこれまでの関係省庁の職員の努力に対しましても、改めて心からお礼を申し上げておきたいと思います。本当に皆さんお世話になりました。
 以上を申し上げまして、野沢議員の御質問にお答えを申し上げたいと思います。
 最初の質問は、クリントン大統領の参加が得られなかったことによるAPEC大阪会議への影響に関するお尋ねでございますが、クリントン大統領の訪日延期は極めで残念な事態でございました。しかしながら、同大統領の代理としてゴア副大統領の出席が得られまして、率直で活発な意見交換を行うことができ、有意義な成果が得られたものと考えております。
 次に、大阪会議における我が国のリーダーシップについてのお尋ねでありますが、APECが、先ほど申し上げましたように、行動の段階に入り、各論についての検討が始まる中での調整は必ずしも容易ではありませんでした。その中で、我が国としては、各メンバーの意見をよく闘いで議論を尽くした上でコンセンサスを取りまとめ上げるという日本的なやり方を活用しつつ、議論の前進と取りまとめにリーダーシップを発揮し、各メンバーより高く評価されたことは、先ほど来申し上げたとおりであります。
 このようなリーダーシップの発揮により、バランスのとれた首脳宣言と、現時点で実現し得る積極的な内容の「行動指針」の取りまとめにつながったものと考えております。
 次に、今回の「行動指針」についての御質問でございますが、「行動指針」は、昨年のボゴール宣言でうたわれた自由で開かれた貿易及び投資という目標の実現に向けての具体的な筋道を描き、中長期的視点からAPECの今後の活動を律する戦略的な枠組みを初めで形成したものでございまして、これにより、APECは構想の段階から行動の段階に移行することになったと評価しているところでございます。
 次に、農業の自由化は例外がどの御質問でございますが、APECの自由化、円滑化の過程は、すべての分野、すべての措置を対象とするものであり、我が国の農業分野もその対象となります。
 他方、「行動指針」の柔軟性の原則は、メンバーの抱える多様な状況を考慮して、APECでの自由化、円滑化の過程で柔軟な取り扱いをしてもよいということでありまして、これは自由化、円滑化に関する対応、あり方、ペース等についで認められるものと考えております。
 かかる柔軟性は、我が国の農業分野についても認められるものでございます。これによって、自由化、円滑化を取り進めるに当たって現実的な対応が認められることとなっております。
 次に、無差別原則につきましては、我が国が議長国として最大限の取りまとめの努力を行い、米国や中国を初めとするすべてのAPECメンバーの間で合意を得ることができました。
 その結果、「行動指針」には、APECメンバーは、メンバー間における無差別原則を適用するあるいはそれに努めること、また、貿易及び投資の自由化の成果は、APECメンバー間のみならず、メンバーと非メンバーとの間の障壁をも実際に削減すること等が明記されることになりました。
 今回、APECメンバーの間における無差別原則の適用について明記されたことは前進だと思います。また、これは、APECは内向きの経済ブロックとなってはならない、APECの自由化は当然WTOの協定との整合性を確保すべきであるとの考えを反映したものであると考えております。
 次に、包括性の原則や無差別の原則の表現をめぐって、今後、各国間の意見が対立するような事態は予想されないのかとの御質問でございますが、「行動指針」の内容は、あいまいな表現というよりもむしろ実効性の高い現実的な路線を明確にしたものであります。
 いずれにいたしましても、今後、APEC各メンバーは継続的努力と緊密な協議を行いつつ「行動指針」を実施していくことになりますが、意見の対立が生じることのないよう意思の疎通を十分図っていくことになると、重く考えております。
 次に、APECにおける経済・技術協力の推進についての御質問でありますが、今次大阪会合で合意された「行動指針」では、経済・技術協力を貿易・投資の自由化、円滑化と並ぶ三本柱の一つと位置づけでおりまして、我が国としては、当該「行動指針」に盛り込まれた種々の分野での協力活動の着実な実施を図りながら、積極的に取り組んでいく所存であります。
 「前進のためのパートナー」は、APECにおける経済・技術協力を一層推進するため、各メンバーが相互支援と自主性の精神にのっとって、持てる資源に応じで協力プロジェクトの実施のために貢献する仕組みでございます。当面は、貿易・投資の自由化、円滑化を直接支援する協力に焦点を当でることになっております。
 次に、APEC中央基金への百億円拠出に関するお尋ねでございますが、我が国はAPECにおいで、「前進のためのパートナー」の円滑な推進を図りつつ、貿易・投資の自由化、円滑化に関連する協力事業を拡大するため、APEC中央基金に、必要に応じ適切な案件の形成を受ける形で、今後数年間で合計百億円を上限に拠出することを表明いたしました。それとともに、他のメンバーにおいても同様の観点から積極的協力がなされることを期待する旨呼びかけたものでございます。
 これは、APECにおいで貿易・投資の自由化、円滑化を推進するに当たって、これに関連する協力事業を推進することが喫緊の課題であるとの認識のもと、これを支援するために我が国としての貢献を図るべくイニシアチブを発揮したものでございます。
 なお、当該拠出自体がAPECの現在の運営体制に変化を及ぼすものではございませんが、かかる我が国のイニシアチブにより、APECでの貿易・投資の自由化、円滑化に関連する協力事業が一層促進されることが期待されているところでございます。
 次に、首脳宣言で言及された人口・食糧・環境・エネルギー問題についてのお尋ねでありますが、アジア・太平洋地域においては高い経済成長と人口増加が食糧、エネルギーへの需要を増加させ、環境への負担を高めでいくのではないかとの懸念が存在していることは皆さん御案内のとおりでございます。このため、今次首脳会議では、これらの問題についでアジア・太平洋地域を越えで地球的規模で検討する必要があり、APECにおいても長期的課題として議論をし、適切に対処していくことを日本から提案したところでございます。
 具体的な検討の進め方につきましては、各メンバーの意見を十分に聴取しながら決めていく所存でございます。
 次に、バーグステン博士が議長を務めるAPEC賢人会議の提言にある紛争仲介サービスについては、首脳宣言にもうたわれているように、各メンバー首脳は貿易摩擦を改善する方法を探求することに強くコミットしており、その具体的内容につきましては、「行動指針」においで、将来の進展に応じ紛争解決手段を発展させていく可能性につきさらに検討することになっております。
 また、本年四月のAPEC大蔵大臣会合におきましては、本年初頭のメキシコにおける金融危機の教訓等を踏まえ、IMF等において進められている諸方策の検討状況も参考としながら、国際的な資金フローや為替市場の安定を図るための討議が続けられでおるところでございます。
 次に、ゴア副大統領との会談においては、まず、今回延期となりましたクリントン大統領訪日をできるだけ早い時期に実現することで認識が一致いたしました。
 また、日米安保体制の重要性を改めて確認し合い、さらに私より、国民の広範な支持を得で日米安保体制を円滑に運営していくためにも、沖縄の施設・区域の整理統合及び縮小のため協力していくことの必要性を強調するとともに、「沖縄における施設及び区域に関する特別行動委員会」を正式に設置することに合意し、二十日、その第一回会合が開催されたところでございます。
 次に、クリントン大統領の訪日は、できるだけ早い時期に実現するべく、引き続き米側と具体的に日程を調整していく考えでございます。また、大統領訪日の機会には、これまでの日米間における安全保障面での対話の成果を踏まえながら、日米安保体制の重要性を首脳レベルで総括する共同文書を発出したいと考えておるところでございます。
 次に、署名代行問題については、十一月四日の知事との会談を初め、あらゆる機会を通じで沖縄県側と誠心誠意話し合いを行ってきたところでございまして、その中で、戦前、戦中、戦後を通じで沖縄が置かれてきた立場や、県知事が代理署名に至らなかった事情、背景等についで改めで理解を深めたところでございます。
 しかしながら、一方で、在日米軍に施設及び区域を提供することは我が国の条約上の義務であり、そのため、現在沖縄県知事が拒否している署名押印等の事務についで主務大臣たる私が代行するための手続をとることにつきまして昨日、政府として具体的手続に着手するとの方針を決定し、私から事務当局に所要の措置を進めるよう指示したところでございますが、皆さん方の御理解と御協力をお願い申し上げたいと思います。
 次に、先般の少女暴行事件との関連で、沖縄県が求めている諸問題の解決について日米間でどのような前進が図られているかとの御質問でありますが、政府といたしましては、このような事件の再発の防止、綱紀の粛正、被害者に対する補償、地位協定についての問題及び沖縄の基地の整理統合、縮小等の諸問題につきまして、沖縄の声に豆を傾け、真剣に取り組んできたところでございます。
 十九日の米国のゴア副大統領との会談におきましても、私の方から本件を提起し、重い負担を負っでおられる沖縄の方々の心情についでるる説明をし、先方からは、先般の事件についてのおわびの気持ちが表明をされました。
 次に、御指摘の各問題についての対応を御説明しますと、まず再発防止及び綱紀粛正については、このような事件はあっではならないものと考え、あらゆる機会を利用して米側に強く申し入れを行い、米側も「反省の日」の実施等種々の具体的な措置を相次いで実施したところでございます。
 また、この事件に関連して、地位協定のもとでの刑事裁判手続に関し、特定のケースについて起訴前に被疑者の身柄を日本側に引き渡すことを可能にするよう手続を見直し、その改善を図ることにつき、米側との間で先月合意を得ているところでございます。
 沖縄の基地の整理統合、縮小問題につきましては、十九日の私とゴア副大統領との会談においても、沖縄県民の強い要望をも踏まえ、日米安保条約の目的達成との調和を図りつつ、施設・区域のあり方につき検討を行うための「沖縄における施設及び区域に関する特別行動委員会」を設置することで正式に合意し、同委員会の第一回会合が二十日に開催されたところでございます。
 なお、被害者への補償問題につきましては、被害者やその御家族のお気持ちに十分配慮しながら、地位協定の規定に従って適切に処理されるよう努力してまいる所存でございます。
 次に、今後の日韓関係についてのお尋ねでありますが、最近、歴史認識の問題等をめぐり日韓間に困難な問題が生じ、事態を憂慮していたところでございますが、今般、韓国の金泳三大統領との首脳会談においで真剣かつ率直な意見交換を行いました。このような意見交換の結果、過去を直視した上で未来志向の日韓関係を築いていくことの重要性、対北朝鮮政策についての日韓間の緊密な連携の必要性につき日韓間で認識の一致を見、今後、日韓関係を前向きに進展させる端緒が得られたと考えております。
 私といたしましては、今般の成果を踏まえ、議員御指摘のように、日韓関係を前向きに発展させていくべく最大限の努力をしてまいる所存でございます。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
   〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(橋本龍太郎君) 野沢議員から四点のお尋ねをいただきました。
 まず、議長国としての我が国のリーダーシップについては、私は、今回の大阪会合の大変大きな成果でありました「行動指針」の策定が、ボゴールで掲げられました二〇一〇年あるいは二〇二〇年の自由で開かれた貿易と投資という政治目標、これを具体的な行動に移すための作業ということでありましただけに、この「行動指針」が絵にかいたもちに終わることのないように、現実を踏まえながら、実行できる政策指針を取りまとめるように努力をしてまいりました。
 こうした作業を進めるに当たりまして、必要とされる議長としての役割がどういうものか、これはいろいろな御議論があろうかと思います。私としては、透明性が高く、皆の意見をできるだけ吸収し、十分議論を尽くしていただくように会議を運営していくと同時に、必要に応じ議長としての明確な考え方を提示していくことが大切だと考えでまいりました。
 私としては、このようなことを念頭に置いて議事運営に努め、事務レベルで解決のできませんでした幾つかの問題についても閣僚レベルでの調整を行ったつもりであります。これに対する評価はむしろ他のメンバーの方々の評価にゆだねたいと、率直にそう考えております。
 次に、APECの自由化の流れの中で、「行動指針」合意というものの持つ意味及び評価についでお尋ねをいただきました。
 「行動指針」におきましては、自由化を、各メンバーの自主性を基本とする協調的自主的行動、全メンバーが一致協力して行う共同行動、そしてWTOなどの多国間での行動という三つの組み合わせによって進めていこうといたしております。
 この「行動指針」の大きな意義は、交渉とかあるいは拘束的な手段によるのではなく、自主性に立脚して自由化を進めるという、アジア・太平洋方式とでも申しましょうか、そうしたユニークな自由化の手法が「協調的自主的自由化」という形で正式に位置づけられたことだと考えております。
 こうした自由化は、今年直ちに着手されるものもございますが、将来のものにつきましては、各メンバーが来年のフィリピン会合にそれぞれの行動計画として持ち寄ります。この行動計画は、短期あるいは中期の自由化につきましてはできるだけ具体的な措置を、長期的には措置の大要と方向を定めるとしております。また、定期的にレビューを行うと同時に、これを踏まえて協議を行い、改善を図っていくこととしております。
 こうしたプロセスは、着実な、かつ最大限の効果を念頭に置いたものでありまして、実現性の乏しいアドバルーンを打ち上げるのではなく、現状を踏まえながら着実に自由化を進めでいこうとした方式であると考えており、これらの措置に関しましては各メンバーから相応の評価をいただけたものと考えております。
 次に、「当初の措置」についで御質問をいただきました。
 大阪会合の議長国という日本の立場、そしてそこでリーダーシップを発揮しながら域内の自由化の流れを一層加速していき、議長国にふさわしい「当初の措置」という視点からこれを作成したものであります。
 具体的には、繊維、化学品、鉄鋼、非鉄金属などの幅広い分野から六百九十七品目につきましてウルグアイ・ラウンド合意に基づく関税引き下げを二年程度前倒し実施をいたします。これらの品目は主にAPEC地域から輸入されておりまして、実行関税が引き下がります。
 また、APEC地域からのビジネス渡航者に対する数次査証発給基準というものを緩和すること、JISに関する海外検査機関の拡大などの五十項目の新たな規制緩和措置を実施いたします。これらの措置によりまして、一層、人、物の流れの円滑化が期待されると思います。
 さらに、これに加えまして、輸入促進策、貿易投資の円滑化に関する措置等も織り込んでおります。
 以上の我が国の「当初の措置」に関しましては、非公式首脳会議終了後、オーストラリアのキーティング首相からも記者会見においで絶賛をされるなど、各メンバーから相応の御評価をいただけたと考えております。
 最後に、APECビジネス諮問委員会の役割と位置づけについでお尋ねをいただきました。
 APECの活動におきまして、民間、産業界との緊密な連携は欠かせない非常に大切な要素であります。そして、過去二年間、太平洋ビジネス・フォーラムは極めて有意義な提言活動を行っていただきましたが、本年の閣僚会議におきまして、この経験を踏まえてAPECビジネス諮問委員会を設立することに合意いたしました。
 この委員会の役割としては、「行動指針」の実行くの助言、あるいは民間からAPECへの実践的な要望の提出などが期待をされております。そして、この委員会はAPECの正式な機関でありまして、委員の構成は各メンバーの首脳が中小企業を含めビジネス分野の幅広い利益を代表する方を任命することとなっておりますし、その活動報告は首脳・閣僚会議に提出することとされております。
 この委員会が設置されることによりまして、APECの活動と民間ビジネス活動というものが一層緊密に連携し、APEC活動の幅と深さがさらに拡大することを私どもとしては期待しているところであります。(拍手)
   〔国務大臣河野洋平君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(河野洋平君) 四点御質問をいただきましたが、既に総理がほとんどお答えになっておられます。
 APECが新たに行動の段階に入り、各論についての検討が始まる中で、調整は必ずしも容易ではありませんでしたが、その中で我が国としては、各メンバーの意見をよく闘いで議論を尽くした上でコンセンサスをまとめ上げるという日本的なやり方を活用しつつ、議論の前進と取りまとめにでき得る限りのリーダーシップを発揮したつもりでございます。各メンバーの御判断にもよりますが、私としては、一定の評価を受けたというふうに考えております。
 クリントン大統領の訪日に関するお尋ねでございますが、先ほど総理から御答弁のとおりでございます。十九日の村山総理とゴア副大統領との会談におきましても確認されましたとおり、できるだけ早い時期に国賓としての訪日を実現するため、引き続き日程の調整をしてまいりたいと考えております。
 また、村山総理とゴア副大統領との会談におきましては、日米安保体制はアジア・太平洋の平和と繁栄にとって引き続き重要な役割を果たしていくことが改めで確認をされました。クリントン大統領訪日の機会には、これまでの日米間における安全保障面での対話の成果を踏まえましで、日米安保体制の重要性を首脳レベルで総括する共同文書を発出したいと考えております。
 沖縄の問題でございます。
 私といたしましても、日米安保条約の円滑な運用のためには、国民の皆様、特に施設・区域周辺の住民の方々の十分な理解が必要である、そういう認識のもとに、先ほど総理から御答弁がございました各点につきまして全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。
 日韓関係につきましても総理から御答弁がございました。
 今般、首脳会談及び外相会談を行いまして、総理が述べられたとおり、今後の日韓関係を前向きに進展させる端緒が得られたと考えております。私といたしましても、今般の成果を踏まえましで、過去を直視した上で、未来志向で日韓関係を発展させていくべく最大限の努力を尽くしたいと存じます。(拍手)
#11
○議長(斎藤十朗君) 山崎順子君。
   〔山崎順子君登壇、拍手〕
#12
○山崎順子君 私は、平成会を代表し、先日行われましたAPEC大阪会議の御報告に対し、村山総理に幾つかの御質問をしたいと思っております。
 御承知のように、APECは、一九八九年、当時のオーストラリア首相ホーク氏の提唱によって発足して以来、いまだ六年という浅い歴史にもかかわらず、昨年のボゴール宣言で自由化目標が設定されるなど、開かれた地域協力を標榜しつつ、貿易・投資の自由化を奨励し、アジア・太平洋のみならず、世界の経済全体の発展を促進する実質的協議の場へと成長しております。
 そして、今回の大阪会議は、昨年のボゴール宣言でうたわれた、先進国は二〇一〇年、発展途上国は二〇二〇年の自由化という、自由化の理念を行動に移すための枠組みとなる「行動指針」を決定し、二十一世紀に向けたAPECの道筋を明確なものとするための会議でありました。
 我が国は、議長国として、参加各国・地域の経済発展段階の相違や経済的利害を調整しながら、アジア・太平洋の将来像を示しつつ、「行動指針」をいかにまとめ上げるか、大きな責務と役割が期待されたのです。
 このような期待は、「行動指針」や大阪宣言の採択によって一見達成されたかのように見受けられます。しかしながら、会議全体を通して見ますと、「行動指針」では自由化、円滑化の原則を掲げつつも、その過程で柔軟性を認めるなど、極めてあいまいな内容、玉虫色の決着となってしまったのではないか、それは単に問題を先送りにしたにすぎないとの批判もなされております。これはまさに決断をしない村山内閣を象徴しているのではないでしょうか。
 さらには、この「行動指針」を実行に移す際には、各国の自主性にゆだねる旨が大阪宣言で明記され、総理自身もこの点を記者会見で強調されておりますが、このような内容では、今後、実質的な自由化が促進されるでしょうか。
 総理は、各国の自主性を尊重するアジア・太平洋方式こそが最善の選択であるとのお考えのようです。しかし、議長国として、アジア・太平洋地域の将来像さえ描けていない上、自主性を言いわけにした今回の大阪会議の決定によって果たして実質的な自由化の促進が保証され得るのか、私は甚だ疑問に思います。まずは総理の明快な御説明をお願いいたします。
 次に、今回の大阪会議での総理のリーダーシップの問題であります。
 報道によれば、総理は、参加各国から日本のリーダーシップは高い評価をいただいたと力説されたとのこと。しかし、実際のところは、「行動指針」の字句修正に焦点が集まり、官僚の活躍ばかりが目立つ官僚主導によるAPECであったとの指摘がなされております用意見を聞き、文案の取りまとめだけのリーダーシップでは余りに情けないのではありませんか。それを超えてのリーダーシップ発揮があったのでしょうか。とでもそうとは思えません。
 APECは、その多様性が大きな特徴であると言われておりますが、その多様性を尊重する一方で、アジア・太平洋地域の将来像を明らかにしつつ自由化に向けての融合を図ることこそ大阪会議に期待されていたところであります。しかし、総理御自身の言葉でAPECを通じてのこの地域の具体的将来像が語られたことは、残念ながらありませんでした。
 大阪会議に向けて各国にイニシアルアクションを発揮するように求めた文書は、村山ペーパーとも呼ばれ、日本がリーダーシップを発揮する有効な手段になったと評価する面もあります。しかし、出そろったものは、文字どおり、玉石混交というより、自由化に向けて各国が及び腰であることを露呈させてしまっでおります。
 総理は、一体いかなる点でリーダーシップを発揮されたのか、率直な御見解をお伺いいたします。
 また、総理は、貿易・投資の自由化、円滑化を促進する協力事業として、APEC中央基金に数年間で総額百億円を拠出することを表明し、昨日の衆院本会議においては、首相としてイニシアチブを発揮したものであり、小切手外交などではないと自画自賛されましたけれども、我が国の真の協力事業とはもっと根本的なところにあっで、それを総理は全く認識していらっしゃらないのではないかと思います。
 アジアヘの協力事業の基本は、アジアの構成員として大きな経済比重を占める日本自身の正常な成長率を実現することから始めるべきではないでしょうか。貿易の拡大と自由化、なかんずく円建で取引の拡大による輸入拡大が大切です。これについて総理はお考えになっておられるのでしょうか。
 APECの中で比重の大きい我が国は、今、増大する失業と歳入欠陥を抱え、かつ底の見えない資産デフレに脅かされています。さらにその巨大な黒字の国際的還流もできない金融システムの危機に当面しているのです。そのような状況で、アジア・太平洋地域の真の意味での豊かな未来の実現のための行動が責任を持ってコミットできるものだったかどうか、責任ある回答を要求したいと考えます。
 こうした根本問題に目を背け、表面だけを繕おうとする村山政権の姿勢がより直接的に浮き彫りとなったのが、「行動指針」の核となるべき自由化の一般原則、そのうちの包括性の原則と農業分野との関係であります。
 確かに、農産物の自由化については、我が国を含め各国それぞれの国内事情もあり、早急な自由化を進める主張に対して一定の調整が行われることは必要であると考えます。
 しかし、その調整を行うべき議長国たる我が国が、当初の議長案の中で、最初に包括的自由化の大原則を掲げながら、分野ごとの特殊性に配慮し、分野ごとに異なる取り扱いを認めるとうたったために例外措置と受け取られ、米国や途上国の反発を招いたわけですが、会議をリードすべき我が国がスタート前から待ったをかけたと受け取られてしまったこのやり方を総理はどのように説明されるのでしょうか。
 また、今回のようなあいまいな表現は、農業経営の先行きを不透明なものとし、結果的に農家に対して不安感を与えることになると私は思います。この点いかがお考えになるか、あわせてお伺いいたします。
 次に、大阪宣言において、エネルギー需要の急増と環境汚染に対応するため、長期的視野に立つで各国が共同行動をとることを提言した点についてであります。
 このことは、一昨年のシアトル会議において当時の細川総理が提案した問題でもあり、今後、APECが貿易・投資の自由化に偏することなく、アジア・太平洋地域における持続的繁栄を確かなものとするため、早急に取り組むべき課題であります。
 しかし、具体策がなければ、エネルギーの安定供給と環境保護が、文字どおり、宣言のみに終わってしまうでしょう。食糧の問題も含めて、エネルギー、環境の問題は急増する人口問題と深くかかわり、これは女性の教育と地位の向上に解決の糸口があると思えます。百億円の協力事業が世界の貧困者の七割を占める女性の地位向上に使われ、この地域の人口問題に貢献できるのなら、私はむだ金にはならないと思います。
 この件も含め、今後、我が国が人口、エネルギー、食糧、環境の問題に対して具体的にいかなる貢献を行い得るか、その役割に対する総理の見解をお伺いします。
 この問題と関連して、環境保護や人権の問題におけるAPECとNGOとの連携、対話の促進についても伺います。
 今回の会議を前にして、開発と環境、人権との調和を求め、世界各国からNGOの代表が来日しました。彼らは、APECが経済問題を人権。環境問題と切り離して論じようとしていることを批判し、十五日には、APECが議題とする自由市場、貿易自由化のモデルは人々の発展と民主主義への願いを否定するとの声明を発表しました。
 APECの開かれた地域協力とこれによる経済成長のプロセスにあって、開発と環境、人権という問題は避けて通ることはできません。こうした課題について、今や国連主催の社会開発関連の会議においてはNGOが討議に参加することが普通になっており、市民による草の根の意見を反映させる場を提供することは必要不可欠ではないでしょうか。
 残念ながら、大阪会議ではNGOとの対話は実現されませんでした。アジア・太平洋地域の経済社会開発政策の透明性を高めるためにも、我が国は率先してAPECとNGOとの対話のパイプづくりに乗り出すべきです。総理の見解をお伺いします。
 さて、APECの今後についてですが、総理は、記者会見においで、APECが将来アジア太平洋地域の安全保障問題を協議する場へと発展していくことを是認する見解を示されました。この地域では、既に安全保障問題に係る多国間協議の場としてのASEAN地域フォーラムが発足し、我が国もこれに参加し、その役割を果たしております。また、米国との間では、日米安全保障条約に基づく二国間による安全保障体制を維持しております。
 総理は、安全保障に関し、APECがどのような役割を果たすことを想定しておられるのか、従来の制度との整合性をいかに考えでおられるのか、お伺いします。
 アジア・太平洋地域の安全保障に関連し、ロシアとベトナムをAPECに参入させることはお考えでしょうか。そして、この二国とAPECメンバー諸国に働きかけていく考えはおありでしょうか。さて、APECの非公式首脳会議は、シアトル会議で開設され、今回で三回目となりますが、十八カ国・地域の首脳が一堂に会し、アジア・太平洋地域の将来についで、ノーネクタイの打ち解けた雰囲気で忌憚のない意見交換を行うことは極めで意義ある会議であると考えます。今後ともこうした協議の場を持ち続けるためにも、会議を公式なものと位置づけるべきではないか、お考えを伺います。
 しかし、一方で、APECの機能、役割が増大するにつれ、その機構化、組織の肥大化、官僚化を危ぶむ声がありますが、この点に対する御意見もあわせて伺います。
 最後に、APEC国際会議を舞台に各国との間で活発に展開された首脳外交についてお聞かせください。
 残念なことに、クリントン大統領は来られませんでした。かわって来日されたゴア副大統領との間では、冷戦後のアジア・太平洋地域での安全保障問題をめぐって広範な意見が交わされたことと思いますが、日米安保の再定義をめぐる問題は今後どのように行う予定でおられるのでしょうか。クリントン大統領の一月訪日を実現し、その際に安保共同宣言を発表するとも伝えられますが、そのようなスケジュールであると理解してよいのでしょうか。
 また、沖縄米軍基地の整理統合、縮小問題は緊急の課題であります。少女暴行事件については、同じ年ごろの娘を持つ母親として激しい怒りと悲しみを感じます。沖縄県の人々の気持ちを十分に酌み、沖縄県の要望を最大限に尊重して、実施できるものは直ちに実施すべきだと考えます。この点についで、ゴア副大統領との会談でどのような結論が得られたのか、お尋ねいたします。
 日韓関係の修復では、今後、韓国側が提案した日韓共同歴史研究の支援について具体的に行っていくことが望まれますが、その研究機関はどうするのか、また、その成果はちゃんと公表なさるのか、総理と金大統領との間で具体的にお話しになられたのか、総理に具体論はあるのか、お聞きしたいと思います。
 いずれにいたしましても、APECは、アジア・太平洋地域の平和と安定にとって欠くことのできないものとして、特に経済を通じた協力の枠組みとして、今後ますます重要性を増していくことでしょう。しかし、今回の大阪会議では、我が国の外交の方向性と理念が余りにもあいまいであったと思います。我が国に最も必要だったのは、徹底的な規制緩和と市場開放を表明し、それこそがアジア・太平洋地域で生きる開かれた日本の態度であると宣言することではなかったでしょうか。
 APECのキーワードの一つである多様性は、決してあいまいさに通ずるものではありません。アジア域内並びにアジアから太平洋等を隔てた北米、中南米、オセアニアの国も含めた多様性を尊重しつつ、APECを平和と繁栄のために確固たる存在としていくべきではないでしょうか。
 村山首相は、「あいまいな日本」の「あいまいな私」を超えで、残された少ない在任期間、検討総理、検討内閣といった汚名を返上するような万全の努力をしていただきたいという希望を述べで、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣村山富市君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(村山富市君) 山崎議員の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、「行動指針」に言う自由化の促進についての御質問でございますが、「行動指針」は、アジア・太平洋地域に既に存在する自主的自由化への強い志向に基礎を置き、APECの共同作業を通じましてこれを助長するとともに、一定の分野での共同行動をも組み合わせたものでございます。この方式は、各メンバーの継続的努力と緊密な協議を必要とするものでありますが、アジア・太平洋という多様な地域においでAPECの自由化を進めるための実際的で効果的な方法であると考えております。
 次に、APECの自由化に向けたリーダーシップについてのお尋ねでありますが、今回合意されました「行動指針」は、貿易・投資の自由化への取り組みについては、この地域の多様性を踏まえつつ、当該地域にて進んでいる自主的な市場開放の流れを推進するAPEC独自の枠組みを提示したものでございまして、「行動指針」を議長国として取りまとめる過程は容易ではありませんでした。
 その中で、我が国としては、各メンバーの意見をよく聞いて議論を尽くした上でコンセンサス券まとめ上げるという日本的なやり方を活用して、議論の前進と取りまとめにリーダーシップを発揮し、各メンバーより高く評価されたと思っています。このようなリーダーシップの発揮により、バランスのとれた首脳宣言と、現時点で実現し得る十分積極的な内容の「行動指針」の取りまとめにつながったものと考えております。次に、APEC中央基金の設置についての御質問でありますが、これはAPECの重要な目的である貿易・投資の自由化、円滑化を推進するに当たって、これに関連する協力事業を推進することが喫緊の課題であるとの認識のもと、これを支援するために我が国としての貢献を図るべくイニシアチブを発揮したものであります。したがって、我が国の行う目に見える形の協力事業でありますが、他のメンバーにも積極的協力を呼びかけており、一体となってこの地域の豊かな未来実現のために行動するものであると御理解をいただきたいと思います。
 次に、貿易の拡大と自由化についてのお尋ねでありますが、我が国は従来から積極的な市場開放を通じて輸入拡大に努めてきているところでございます。今後とも、各般の輸入拡大対策を講ずるとともに、内需振興策や市場アクセスの改善を促進するための規制緩和等を実施し、思い切った輸入拡大を図ってまいりたいと考えております。
 また、円建で取引の推進のため、企業が積極的に努力していくことを歓迎するとともに、政府といたしましても、円の利便性を高めるための環境整備を行うことが重要であると認識をいたしておるところでございます。
 次に、議長国たる我が国が農産物を例外措置とすることを早々と示唆したことは問題だったのではないかとの御質問でございますが、我が国は、包括性の原則を重く受けとめでおり、APECにおける自由化、円滑化に対して例外分野を設けることを主張したことはございません。
 各国ともそれぞれ困難な分野を抱えているので、これらの分野の自由化について現実的な対応を認めることがAPECにおける自由化努力の信頼性を高めるとの観点から適切であると考え、自由化に当たって柔軟な扱いを認めるよう主張してきたところであり、かかる主張が不見識であるとの御指摘は当たらないと考えております。
 次に、柔軟性の原則の表現があいまいではないかとの御質問でございますが、この原則につきましては、各メンバーとの協議を重ねた結果、最終的にすべてのメンバーの合意を得て「行動指針」に明記されたものでございまして、農業生産者に対しても不安感を与えるものではないと考えております。
 次に、人口、エネルギー、食糧、環境についての御質問でございますが、アジア・太平洋地域においては、高い経済成長と人口増加が食糧、エネルギーへの需要を増加させ、環境への負担を高めでいくのではないかとの懸念が存在しております。このため、今次首脳会議では、これらの問題についてアジア・太平洋地域を越えで地球的規模で検討する必要があり、APECにおいても長期的課題として議論し、適切に対処していくことを日本から提案をいたしたところでございます。
 具体的な検討の進め方につきましては、各メンバーの意見を十分に聴取しながら決めていく所存でございます。
 次に、APECとNGOとの関係でありますが、APECの活動において政府以外のさまざまな意見を反映させていくことは重要であると考えておりますが、他方、APECは自由化等の喫緊の課題に取り組むべく活動を行っている段階であり、非メンバーである国や組織との関係については引き続き検討がなされることになっております。
 我が国としては、御指摘の点については、NGOの果たしている役割を念頭に置きながら、引き続きAPECメンバーと話し合っていきたいと考えでいることについて御理解を賜りたいと思います。
 次に、安全保障面でAPECが果たす役割についての御質問でありますが、APECは基本的に経済面での協力を行う場であり、この地域の繁栄と安定に寄与すべき役割を持っていると認識をいたしております。アジア・太平洋地域の全般的な政治・安全保障の枠組みとしては、ASEAN地域フォーラムが昨年発足したところでございまして、当面はこの組織を通じて地域の安保対話が促進されることが重要であると考えております。
 次に、APECへの新規参加問題につきましては、一九九三年のシアトル閣僚会議において、メンバーの追加の検討を三年間延期する旨決定しており、その期間が終了する来年以降、他のAPECメンバーとともに検討していく所存でございます。
 次に、APECの首脳会議の位置づけにつきましては、この会議は制度的な開催が決まっているわけではございません。また、非公式な雰囲気の中で首脳が自由に意見交換を行う場とされていること等の点にかんがみまして、我が国は非公式首脳会議と呼んでおります。かかる性格づけは今後とも維持していくことが適切であると考えております。次に、APECの機構についでお尋ねでありますが、今後ともAPECがその活動を拡大、進化させていく中で、組織のあり方につきましては、小規模で効率的な組織を目指すとの基本的考え方にのっとりつつ、引き続きメンバー間で議論していくことが重要であると考えております。
 次に、クリントン大統領の訪日につきましては、できるだけ早い時期に実現すべく日程を調整していく考えでありますが、大統領訪日の機会には、これまでの日米間における安全保障面での対話の成果を踏まえながら、日米安保体制の重要性を首脳レベルで総括する共同文書を発出したいと考えておるところでございます。
 次に、ゴア副大統領との会談においで、沖縄における米軍施設・区域の問題に関しどのような話し合いがあったのかとのお尋ねでございますが、この会談におきましては、私よりゴア副大統領に対しまして、重い負担を負っている沖縄県民の心情につきるる説明をし、日米安保体制を円滑に運営していくためにも、日米両国は十分に話し合い、日米安保条約の目的達成との調和を図りつつ、施設・区域の整理統合、縮小を推進する必要性につき強調いたしました。これに対し、ゴア副大統領からは、沖縄における少女暴行事件につき遺憾の意と深いおわびの気持ちを表明するとともに、施設・区域の縮小に関する我が方の要望についで理解を表明いたしました。
 また、この会談において、「沖縄における施設及び区域に関する特別行動委員会」を正式に設置することに合意し、第一回会合を二十日に開催したところであります。政府といたしましては、本委員会が十分な成果を上げられるよう、米側と協力しつつ、今後とも努力してまいりたいと考えているところでございます。
 次に、日韓首脳会談についての御質問でありますが、私から八月十五日の私の談話に示された我が国政府の歴史認識を披瀝し、また、過去を直視した上で未来志向の日韓関係を築くことの重要性につき、金泳三大統領と認識の一致を見ました。御指摘の民間レベルでの歴史共同研究につきましては、歴史認識を深めていく上で重要であるとの認識のもと、政府としてこのような民間レベルの活動を支援していくこととしたい旨表明したところでございます。
 次に、我が国が大阪会議で徹底的な規制緩和と市場開放を表明すべきではなかったか、APECを平和と繁栄のための確固たる存在としていくべきではないかとの御指摘でございますが、APECはアジア・太平洋の平和と繁栄のための重要なフォーラムであり、我が国は議長国としてこのAPECの進展に大きく貢献できたと考えております。
 また、我が国は、一層規制緩和と市場開放を進めることにより我が国の経済構造改革を推進していく決意であり、このことはさまざまな場で明らかにし、かつ実際上そのための具体的措置をとってきているところでございます。大阪会議におきましても、規制緩和や関税引き下げを含む実質的で広範な「当初の措置」を提示し、高い評価を得たところでございます。
 私は、就任以来、長年の懸案を次々と解決しておりまして、検討総理、検討内閣といった御指摘は当たらないことをはっきり申し上げておきたいと思います。(拍手)
#14
○議長(斎藤十朗君) 川橋幸子君。
   〔川橋幸子君登壇、拍手〕
#15
○川橋幸子君 私は、日本社会党・護憲民主連合を代表して、APEC大阪会議に関する報告について、総理及び通産、外務両大臣に質問をいたします。
 まず初めに、会議の御成功大変おめでとうございましたと申し上げたいと思います。
 村山総理は、首脳会議を主宰されるとともに、活発な首脳外交を精力的に展開されました。橋本通産大臣、河野外務大臣の両大臣は、閣僚会議の共同議長として「行動指針」の取りまとめに奔走され、それぞれ大任を果たされました。これまでの各党の御質問で大阪会議の意義や成果につきましては既に幾つかお答えをいただいておりますが、私からも改めで質問させていただきたいと思います。
 私は、今回の大阪会議についで、APECそのものの意義、成果とは別に、戦後五十周年の節目において、このようにアジア・太平洋地域の首脳が初めて我が国で一堂に会したこと自体に深い感慨を持つものでございます。会議の直前には歴史認識の問題等をめぐりまして外交上憂慮される事態も生じでおりましたが、総理が終戦の日に出されました総理談話などを軸にいたしまして関係修復を図られましたことは、国民世論もこれを支持し、アジアの中の日本という意識を大変強くすることになったのではないかと私は考えます。
 このほかにも、今回の開催が東京でではなく大阪であったことも極めて示唆的であったように思います。さらに、大阪宣言の採択につきましては、総理がおっしゃいますように、実際的で効果的なアジア・太平洋方式を日本のリーダーシップのもとに提示されたことも大きな意義があったと思います。
 以上のような観点から、総理の率直な忌憚のない御感想をお聞かせいただきたいと存じます。
 次に、「行動指針」の取りまとめに当たって御苦労いただきました通産大臣にお伺いしたいと存じます。
 調整の過程は必ずしも容易なものではなかったと、こうお伺いいたしましたけれども、最終的には合意をから得られたのでございます。ただ、一部には、妥協にこぎつけるために柔軟に進めるとか努力をするとかいった玉虫色の表現が採用されまして、このようないわばアジア的あいまいさが、今後、指針を計画へ移行させる段階では支障となるのではないかといった見方もあるようでございます。また、強制的な方法ではなく、自主的、自発的なアプローチこそがアジア的解決法であり、これを尊重することが大切であるというのならば、リーダー役としての日本がみずから率先垂範すべきだといった意見も聞かれるところでございます。
 これは評価が分かれるところでございます。批判ととる方もいらっしゃるかもしれませんが、私は日本への期待と、こう受けとめたいと思います。今後どのような取り組みを展開なさいますのか、通産大臣の所信をお伺いいたします。
 次に、APECの機能と役割についで、外務大臣にお伺いいたします。
 大阪会議が世界の注目を集めましたのは、この地域にダイナミックな世界の成長センターがあるからでございます。急成長の反面には不安要因もございます。巨大な地域に膨大な人口を抱えております。経済の発展段階や民主化の進展度にも格差が見られるところです。そして、これまでのところは多国間で協議をするといった経験や歴史が浅い地域でございます。
 このため、大阪会議では、人口、食糧、エネルギー、環境など、いわゆる地球規模の課題に対しましてAPECの役割が強調されたところでございます。他方、この点につきましては、リオの環境会議、カイロの人口開発会議、そしてこの秋開かれました北京の女性会議などの一連の世界会議が存在します。
 このような地球規模の課題についで、かねてより日本はそのイニシアチブの発揮に努めでまいりましたが、とりわけこのAPEC地域では、途上国の女性への支援が問題解決のかぎを握るのではないかと考えられております。
 APECは、これらの世界会議との整合性を保ちながら、NGOとの連携のもと、いかに効果的な取り組みを実行していくのか。今回の大阪会議では、APECが経済協議を基本的な役割とするために、このような社会開発の視点とかNGOとの連携とかといった配慮に少し欠けるうらみがあったのではないでしょうか。この点について、外務大臣にお伺いしたいと思います。
 次は、APECの将来像についででございます。
 APECは、EUやNAFTAなど世界経済のブロック化に対抗いたしまして、開かれた地域協力を目標に緩やかな協議体として出発したものでございます。この地域には、経済発展こそが平和と安定をもたらすといった現実もございます。一方、安全保障の枠組みとしましては、ARF、ASEAN地域フォーラムが主体的な機能を果たすという一応のすみ分けもできているわけでございます。
 このような経緯を踏まえますと、APECに安全保障についての協議機能を今持たせようとするのは余り賢明な選択ではないと思います。もちろん、今回印象づけられましたように、この地域の首脳たちが大変親しく率直に話し合うことは極めで有意義なことでございます。政治問題に触れることもごく自然な成り行きではないでしょうか。
 以上のような観点を含めまして、総理及び外務大臣の御所見を承りたいと存じます。
 最後に、沖縄米軍基地問題についてお伺いいたします。
 クリントン大統領の訪日中止は、やむを得ないこととは申しましても、まことに残念なことでございました。とりわけ沖縄の人々は、基地問題の解決がおくれるのではないかといった不安を持ったのではないかと思います。
 こうした不安を払拭するために、早速、総理は、ゴア副大統領との協議のもと、直ちに特別行動委員会をスタートさせるという措置をとられたところでございます。一年後の結論には基地縮小への沖縄の人々の願いを実現できますように、総理の御指導のもと、関係閣僚の格段の御努力をお願いしたいと存じます。総理の御答弁をお願いいたします。
 なお、昨日でございますが、一部マスコミから、政府が準備しております日米共同宣言の中には基地縮小の文言が盛り込まれていないという指摘がございました。官房長官は、盛り込まれているという訂正を求める記者会見を直ちに開いたところでございます。
 そこで、外務大臣に、なぜあのような報道になったのでしょうか、御存じでしたらお伺いしたい。日米協議の内容を含めて、明確な、正確な報告をお願いしたいと存じます。
 私は、日米安全保障体制のあり方についで、もっと国民的な議論が行われてよいのではないかと思っております。日米安保の再定義といい、それと表裏一体の新防衛大綱の策定といいましても、国民は余りその情報が知らされていないように思います。基地問題についで、沖縄に大変過度の負担を強いてきた現実をも含めましで、議論喚起に向けての総理みずからの御努力が私は望まれると思います。
 総理の見解をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣村山富市君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(村山富市君) 川橋議員の質問にお答えを申し上げます。
 APEC大阪会合の成果についてでございますが、首脳会議におきましては、「行動指針」と「APEC経済首脳の行動宣言」を発出するとともに、各首脳が持ち寄った「当初の措置」を発表し、成功裏に終了することができたと考えております。
 首脳宣言は、APECが行動の段階に入ったことを明らかにするとともに、「行動指針」の主要な要素を盛り込み、またAPECの長期的な課題として、人口、食糧、エネルギー、環境等の問題に対する取り組みの必要性を打ち出す等、APECの今後の進路を指し示す有意義なものとなりました。
 また、APEC大阪会合の機会にはさまざまな二国間協議などを行い、実りある意見交換を行うことができ、御指摘にもございましたように、我が国が緊密な関係を有するこの地域の首脳との相互信頼関係の強化を図ることができたと考えております。
 次に、APECで安全保障の協議は行わず、首脳の率直な意見交換の場とすべきではないかとの御質問でありますが、APECは基本的には経済面での協力を扱う場であり、御意見にもございましたように、首脳が率直な意見交換を行うことによってこの地域の繁栄と安定に寄与すべき役割を持っていると認識をいたしております。
 アジア・太平洋地域の全般的な政治・安全保障の枠組みとしては、ASEAN地域フォーラムが昨年発足したところでございまして、当面はこの組織を通じまして地域の安保対話が促進されることが必要であると考えております。
 次に、沖縄の米軍施設・区域の整理縮小に関する御質問でありますが、この問題につきましては、十九日の私とゴア副大統領との会談において、沖縄県民の強い要望をも踏まえ、日米安保条約の目的達成との調和を図りながら、施設・区域の整理統合、縮小につき検討を行うための「沖縄における施設及び区域に関する特別行動委員会」を設置することで正式に合意をいたしまして、同委員会の第一回会合が二十日に開催されたところでございます。
 政府といたしましては、日米安保条約の円滑な運用のためには、国民の皆様、特に施設・区域周辺の住民の方々の十分な理解が必要であるとの認識のもと、特別行動委員会においで十分な成果が上がり、沖縄における施設・区域の整理統合、縮小等の諸問題に進展が得られるよう全力を挙げて取り組んでいきたいと考えでいるところでございます。
 次に、日米安保体制についての国民的な論議を喚起すべきではないかとの御質問でありますが、日米安保体制を円滑かつ効果的に運用していくためには、幅広い国民の理解を得ることが何よりも必要であることは言うまでもございません。
 日米両国政府は、ここ一年間についで見ましてもさまざまな形での安保対話を集中的に行ってきたところでございますが、このような対話を初め、日米両国政府による作業の内容については、国民の皆様の日米安保体制に対する関心を高め、理解を深めるとの観点から、可能な限り公表してきたところでございます。
 政府といたしましては、さらに今後とも国民の皆様の広範な支持のもとに日米安保体制の円滑な運用を確保していくために、日米安保体制に関する国民の皆様の御理解と御協力を得るために一層努力をしてまいりたいと考えでいるところでございます。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
   〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(橋本龍太郎君) 川橋議員から、アジア的なあいまいさというものが今後「行動指針」を行動計画に移行させる際に支障とならないかというお尋ねをちょうだいいたしました。
 しかし、私どもは、今回の「行動指針」に関しまして、今後の自由化に向けてそれぞれのメンバーが自主的に自由化の行動計画を策定し、それを来年のフィリピンの閣僚会議に持ち寄ることとしております。
 そして、その行動計画の内容につきましては、メンバーの多様性ということにもかんがみまして、当初からすべての分野について詳細な内容を書き込む必要はありません、むしろ短期中期のものにつきましては具体的な措置を盛り込み、長期的なものにつきましては措置の大要と方向性を示せば十分であるというメンバー間に明確な合意を形成いたしておりまして、私は御懸念をいただくような事態にはならないと考えております。
 しかし、それだけに、日本が自主的、自発的なアプローチというものに対して今後どう取り組むかという御指摘は非常に大切な部分であります。そして、協調的自主性というものを主眼の一つとするAPECのアプローチにおきましては、首脳宣言においても強調されておりますとおりに、各メンバーの継続的な努力と強力な自制及び緊密な協議というものが必要であります。
 我が国としても、確固たる決意を持って「行動指針」を実施していく所存でありますし、この大阪会合におきましては、それぞれの首脳がAPECの自由化、円滑化には真剣に取り組むという決意を内外にお示しいただきますために自主的な自由化、円滑化のための「当初の措置」を持ち寄ったわけであります。
 日本の「当初の措置」につきましては、実質的であり広範なものとして、他のメンバーからも高い評価を与えでいただきました。今後ともこうした努力を継続してまいりたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣河野洋平君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(河野洋平君) 御指摘の人口、食糧、エネルギー、環境などの問題につきましては、APECにおいて長期的課題として議論をし、適切に対処していくことが必要であると考えておりまして、今次首脳会議におきましても総理よりその旨提案をされ、他のメンバーの賛同を得たところでございます。
 この問題につきまして当面は、現状及び将来を客観的に分析し、問題を特定することが必要であると考えておりまして、具体的には各メンバーの意見を十分に聴取しながら、さらにさまざまな立場や経験を踏まえて検討を進めていくことが必要ではないかと考えております。
 APECは、基本的に経済面での協力を扱う場でありまして、この地域の繁栄と安定に寄与すべき役割を持っていると認識をしております。アジア・太平洋地域の全般的な政治・安全保障の枠組みとしては、ASEAN地域フォーラム、いわゆるARFでございますが、昨年発足したところでございまして、これを通じて地域の安保対話が促進されることが重要と考えております。
 お尋ねの日米間の文書でございますが、御承知のとおり、クリントン大統領の訪日は延期となりまして、首脳会談、実質的な村山・クリントン会談は行われなかったわけでございます。この村山・クリントン会談が行われなかった以上、公式にこうした宣言文書が調整されてあるはずがございません。私の立場からすれば、御指摘の報道がいかなる根拠でなされたものか全く不明でございまして、私の立場からは申し上げる立場でないというふうに答弁をいたしておきます。
 ただ、御関心のある点について申し上げますれば、先ほども総理から御答弁がございましたように、村山・ゴア会談では、総理からいわゆる県民の心情をるる御説明なさるとともに、基地の整理統合、縮小についても言及をされまして、この点についてゴア副大統領も理解を示されたということがございます。
 そしてさらに、この会談では新しい協議機関が確認をされまして、翌二十日にはこの協議機関は発足を既にいたしております。その会議の冒頭で、私からも、沖縄の基地の整理統合、縮小はこの協議機関の討議すべき重要な問題であるということを申し上げまして、その会議において日米双方がこれを合意いたしていることを申し添えておきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#19
○議長(斎藤十朗君) 緒方靖夫君。
   〔緒方靖夫君登壇、拍手〕
#20
○緒方靖夫君 私は、日本共産党を代表して、APEC大阪会議と日本の進路にかかわる重大な問題について、村山総理並びに関係大臣に緊急質問いたします。
 APECのあり方は、日本とアジア・太平洋地域の現在と将来にとって極めで重大な問題です。それはこれまでの経過から明らかなように、経済、政治・安全保障の分野でアメリカのアジアヘの支配力の強化と、それへの日本の協力を本質的なねらいとするものだからです。
 ペリー米国防長官は、九月、アジアは世界で最もダイナミックな経済地域であり、アジアとの関係を増大させることが我々の死活的利益であると、アジアでの経済権益確保への強い決意を表明いたしました。APECがアメリカの思惑のもとに、その経済的利益を優先させる貿易と投資の自由化交渉の場にされてきたことは明らかです。そのために積極的に働いたのが日本政府であります。こうした対応が東南アジア諸国との矛盾を生み出したのは当然であります。橋本通産大臣は、調整の過程は必ずしも容易ではなかった、そのように報告しておりますけれども、調整が必要になった矛盾とは一体どのようなものであったのか、具体的に明らかにしでいただきたいと思います。もう一つ重大なのは、APECの安保化の問題です。
 クリントン米大統領は、十七日のインタビューで、APECを通して軍事的にも合意にたどり着けるよう各国がますます協力を深めたいと語り、APECに安全保障の機能を持たせる意図を示しました。これに呼応して村山首相は、これから回を重ねるに従って安全保障の問題でも論議がなされることは問題ないのではないかと述べ、クリントン構想を支持する極めで重大な態度を表明いたしました。
 APECを舞台にこうした地域安保機構に加わっていくことは、集団自衛権との関連でも、我が国の憲法の規定から絶対に容認できないことです。マレーシアのマハティール首相も、安全保障協議の枠組みとしてAPECを活用することに反対しているではありませんか。
 憲法に違反し、アジア諸国の意思にも反しでAPECを安保協議の場にしようとしていく、そういう立場なのかどうか、総理に見解を伺います。
 APECをめぐる動きは、安保条約の再定義、日米安保条約の地域的・地球的規模への拡大という危険な動きと連動しています。ナイ国防次官補は、我々が考えているのはNATOのような強固な日米安保体制だと述べでいます。日米共同声明案についての報道によれば、この案文の中には、基地の縮小という文字はなく、日米安保体制が二国間にとどまらず、世界の安全保障に重要な役割を果たしていくことを確認しています。
 総理に伺いたい。事実はどうか。日米安保が地球的規模に拡大することはないと断言できるのか。明確な答弁を求めます。
 こうしたアメリカの戦略は、今、大きな問題となっている沖縄と米軍基地の問題に直結しています。クリントン大統領は、十七日、四万七千の在日米軍は削減しないと断言いたしました。これを日本政府は認めるのですか。認めるならば、沖縄県民が求める基地縮小はできないではありませんか。答弁を求めます。
 村山首相は、十九日、アメリカのゴア副大統領との会談で、自分も日米安保体制の円滑な運用に責任を持って努めると誓約し、昨日、米軍用地の強制使用の代理署名をみずから行うと表明し、本日沖縄県知事に勧告書を送付するというのであります。これは米軍が基地をこれからも安心して使えるように、沖縄県知事が拒否している強制使用を総理みずからが推進するという、沖縄県民への敵対宣言ともいうべきものです。
 この手続は、知事への勧告、命令に続いて、沖縄県民の代表であり続けると表明している大田知事を被告の席に座らせるというとんでもないものです。万一、裁判に勝つでも、強制収用のためにはさらに市町村長や知事の署名が要るのです。該当地域の過半数の市町村長が、今度は絶対に署名しないと言っています。
 土地収用の執行までには二十数段階の手続が必要であり、来年三月末には使用期限が切れる軍用地が出てきます。さらに、来年五月九日までに裁決申請をしないと、もう一度振り出しに戻る手続のやり直しとなります。こうした手続そのものが、地方自治法にも私有財産権擁護をうたっている憲法にも違反するものです。
 総理、あなたはこの手続にどのくらい時間がかかるという見通しを持っているのですか。期限が切れれば不法占領となりますが、その隣どうするつもりですか。明確な答弁を求めます。
 あなたは、こうした手続のたびごとに基地反対の世論に挑戦することになります。九月以来わずかの期間に安保条約反対の世論が四〇%以上と急増し、産経新聞などの最近の世論調査でも、米軍撤退賛成が反対の三一%を大きく上回っで四四%となっています。総理、この世論の大きな変化をどう受けとめるのか、明確な答弁を求めます。
 APEC会議に関連してもう一つ伺いたいのは、この会議の直前、韓国及び中国から、日本政府の過去の侵略戦争の問題で、いわゆる歴史認識についで厳しい批判を受けた問題です。
 村山総理の韓国大統領あての書簡は、歴史の事実を謙虚に受けとめると言い、河野外務大臣は、歴史認識についで両国間の一致を見、今後、日韓関係を前向きに進展させる端緒が得られたと報告しています。
 政府は、具体的な事実の究明は今後のために有益でないと答弁し続けてきましたが、今度は朝鮮侵略、植民地支配の事実の検討を行ったと責任を持って言えますか。あなた方の言う歴史認識は、植民地支配の時期、日本は韓国によいこともしたという江藤前総務庁長官の発言だけを指しているのですか。併合条約は「法的に有効に締結され、実施された」という十月五日の参議院本会議での総理の答弁についてはどのような認識の一致を見たのですか。総理のこの認識に変わりはないのですか。総理、これらの点についで明確な答弁を求めます。
 総理の答弁に対しては、韓国国会が同条約を無効だと認めるよう日本政府に求めた決議を満場一致で可決するなど、重大な外交問題に発展いたしました。朝鮮植民地支配美化、正当化は、これまで一貫して日本政府がとってきた態度と結びついた根の深いものです。
 例えば一九五〇年五月三十一日の外務省文書「平和条約の経済的意義」は、植民地支配を、植民地に対する搾取政治と目されるものでなかったとし、逆にこれらの地域の経済的、社会的、文化的向上と近代化は専ら日本の貢献によるものであったとまで言っています。
 外務大臣、外務省は今もこういう認識なのですか。はっきりしてください。
 こういう認識こそ、アジアを初め世界から日本政府がいつまでも信頼されない理由ではありませんか。侵略戦争と植民地支配に対するこうした日本政府の認識と立場を根本的に改めることこそが、アジア・太平洋諸国から尊敬や信頼を回復する道であると確信します。
 総理にその所信を伺っで、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣村山富市君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(村山富市君) 緒方議員の質問にお答えをいたします。
 APECを安全保障協議の場にしでいこうとしているのではないかとの質問でありますが、一般論から申しますと、我が国としては、アジア・太平洋地域における安全保障のためには、日米安保体制を堅持しつつ、域内各国相互の信頼感を高めるためのさまざまなレベルでの政治・安全保障に関する対話、協力を重層的に推進することが重要であると考えており、これは憲法上何ら問題はないと考えております。
 他方、APECは基本的には経済面での協力について話し合う場でございます。アジア・太平洋地域の全域的な政治・安全保障の枠組みとしては、昨年、中国、ロシア等を含むASEAN地域フォーラムが発足したところでございましで、我が国としては、当面はこの組織を通じまして地域の安全保障に関する対話の推進に積極的に取り組んでまいる所存でございます。
 次に、クリントン大統領の訪日時に発出を予定していた共同文書の案文についての御質問でありますが、この文書の内容につきましては、先ほども外務大臣から御答弁がございましたが、大統領訪日の延期により米側との調整がまだ完了しておりません。したがって、このような報道についてコメントするには値しないと思っております。
 もっとも、沖縄における米軍施設・区域の問題につきましては、十九日の私とゴア副大統領との会談におきましては、私より、日米安保条約の目的達成との調和を図りながら沖縄基地の整理統合、縮小を推進する必要性につき強調いたしました。また、二十日の「沖縄における施設及び区域に関する特別行動委員会」の第一回会合におきましても、米側との間で整理統合、縮小を実効的に進めるための方策について真剣かつ精力的に検討を行うことで合意したところでございます。
 今後、クリントン大統領の訪日が実現をし、共同文書が発出をされる場合には、その内容はこのような進展を反映したものとなると考えております。
 また、日米安保体制の役割や性格を変更したり拡大したりする意図は全く持ち合わせていないことを、この際、明確に申し上げておきたいと思います。
 次に、在日米軍の兵力の水準と沖縄の施設・区域の整理統合、縮小の関係についての御質問でございますが、米国は、国際情勢に大きな変化がない限り、我が国に現在の水準の兵力を維持するとの立場をとっておりますが、このような水準の在日米軍の駐留を前提としつつも、さまざまな創意工夫と合理化によって沖縄における在日米軍の施設・区域の整理統合、縮小を行うことは可能であると考えております。
 今後、私とゴア副大統領との会談において合意されました特別行動委員会における協議を通じましで、日米安保条約の目的達成との調和を図りながら、本件についで進展が得られるよう懸命に努力をしてまいる所存でございます。
 次に、署名代行問題については、十一月四日の知事との会談を初め、あらゆる機会を通じましで沖縄県側と誠心誠意話し合いを行ってきたところでございます。その中で、戦前、戦中、戦後を通じまして沖縄が置かれてきた立場や県知事が代理署名に至らなかった事情、背景等について改めで理解を深めたところでございます。
 しかしながら、一方で、在日米軍の施設及び区域を提供することは我が国の条約上の義務であり、このため、現在、沖縄県知事が拒否しております署名押印等の事務についで主務大臣たる私が代行するための手続をとることにつきましては、昨日、政府として具体的手続に着手するとの方針を決定し、私から事務当局に所要の措置を進めるよう指示したところでございます。
 今回の一連の職務執行命令の措置につきましては、訴訟手続も含まれており、相当な時間がかかることも予想されますが、我が国として条約上の義務を履行できないような事態が生じないよう最大限の努力をしてまいる所存でございます。
 次に、日米安保条約に対する世論の変化をどう受けとめているかとのお尋ねでありますが、日米安保体制が我が国やアジア・太平洋地域の平和と安定にとって重要な役割を果たしていること、日米関係における政治的基盤となっていることは、改めて申し上げるまでもないことだと思います。
 政府といたしましては、国民の皆様の御理解と御支援を得て、日米安保体制が円滑かつ効果的に運用されていくよう引き続き努力を傾けてまいる所存でございます。
 次に、歴史認識についてのお尋ねでありますが、私といたしましては、過去の歴史を十分踏まえながら、朝鮮半島のすべての人々に対し、過去の一時期、我が国が植民地支配を通じて多大の損害と苦痛をもたらしたことについて、深い反省と遺憾の意を従来より表明しできたところでございます。
 また、このことも踏まえ、八月十五日の談話において、我が国の遠くない過去における国策の誤りを認め、また、我が国が行った植民地支配などについて痛切な反省の意を表し、心からおわびの気持ちを表明したところであります。
 また、十一月十四日、金泳三韓国大統領あての書簡において、右談話に示した考えに照らしつつ、日韓関係のこれまでの歴史についての認識をまとまった形で述べたところであります。
 今般の日韓首脳会談、外相会談においては、歴史認識の問題も含めて率直な意見交換が行われ、過去を直視した上で未来志向の日韓関係を築くことの重要性等につき日韓間で認識の一致を見たところでございます。
 私が金泳三大統領あて書簡で言及し、また、日韓首脳会談において言及いたしました歴史認識とは、以上のような内容でございます。
 十月五日の私の答弁につきましては、私としては、法的議論により、日韓両国民の努力により構築されてきた友好関係に水を差すようなことは本意ではなく、重要なことは、過去を直視し、未来に向けて日韓関係を一層発展させていくことと考えており、今般の日韓首脳会談においでもまさにその点につき日韓間で認識の一致を見たところでございますので、御理解を賜りたいと存じます。
 次に、侵略戦争と植民地支配に対する日本政府の認識と立場の根本的転換こそがアジア・太平洋諸国からの尊敬と信頼を回復する道ではないかとの御質問でございますが、歴史認識につきましては、本年八月十五日の談話で述べたとおりでございます。
 私は、アジア・太平洋地域、ひいては世界の平和を確かなものとしていくためには、何よりもアジアの近隣諸国等との間に深い理解と信頼に基づいた関係を培っていくことが不可欠であり、今後ともそのために努力を行っていく考えでございます。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
   〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(橋本龍太郎君) APEC大阪会議の過程で調整が必要となった矛盾は何かというお尋ねでありますが、APECは多様な考え方を持つメンバーの集まりでありますから、多くの考え方を一つのものに結実させていくというのは、それぞれのプロセスにおいて必ずしも容易でなかったことは事実です。
 例えば自由化の基本的な進め方に関する考え方を一つ例にとってみましでも、自主性にできるだけ重点を置いて自由化を進めるべきだという御意見もありましたが、交渉という要素をある程度APECに持ち込まなければ自由化が進まないという考え方もございました。我が国は議長国として、自主性というものを基礎にしながら協調して自由化を進めるという「協調的自主的自由化」という考え方を打ち出し、これによりメンバー内の意見の集約を図り、最終的に合意に達したわけであります。
 しかし、私は、APECの最大の特色というのは、その発展段階や考え方における多様性というものにあると。ですから、むしろこのような多様な考え方を調整していくこと自身にAPECの存在意義があると考えておりまして、今回の調整の過程における苦労というものはむしろ大変貴重なものであった、そのように考えております。(拍手)
   〔国務大臣河野洋平君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(河野洋平君) 御指摘の文書については私もその存在を承知しておりますが、この文書が当時どのような位置づけで記されたものか定かでございません。
 推察をいたしますのに、サンフランシスコ平和条約締結の交渉過程におきまして、連合国側に対する賠償の敗戦国日本に及ぼす経済的影響をできるだけ小さくするという観点からさまざまな理論構成を考えるという文脈の中で、御指摘のような表現が盛り込まれたのではないかというふうに考えられるわけでございます。
 いずれにいたしましても、ここに記されているような考えが現在の政府、外務省の考え方でないことははっきり申し上げておきます。
 サンフランシスコ平和条約、日韓基本関係条約の締結などを経まして、本年八月十五日の総理談話が発表されました。その中で、我が国が過去の一時期に植民地支配と侵略によって多くの国々、とりわけアジア諸国に対し多大の損害と苦痛を与えたとの認識に基づき、この歴史の事実を謙虚に受けとめ、痛切な反省の意を表し、心からおわびの気持ちを表明したというところでございます。(拍手)
#24
○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。
 これにて午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十五分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時一分開議
#25
○議長(斎藤十朗君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 この際、日程に追加して、
 宗教法人法の一部を改正する法律案についで、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#26
○議長(斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。島村文部大臣。
   〔国務大臣島村宜伸君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(島村宜伸君) 宗教法人法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 現行宗教法人法は、宗教団体に法人格を与え、自由でかつ自主的な活動をするための物的基礎を確保することを目的とし、憲法に定められた信教の自由と政教分離の原則にのっとり、宗教法人の自由と自主性、責任と公共性という二つの要請を基本としてその体系が組み立てられております。このような宗教法人の制度の基本は維持すべきものであります。
 しかしながら、宗教法人法が昭和二十六年に制定されて以来、今日に至るまでの社会状況や宗教法人の実態の変化にかんがみ、信教の自由と政教分離の原則を遵守しつつ、これらの変化に対応するための宗教法人法の最小限の見直しが必要となってきており、宗教法人法を改正すべきとの世論も高まっているところであります。このような状況を背景に、宗教法人審議会から、去る九月二十九日に「宗教法人制度の改正についで」の御報告をいただいたところであります。
 今回、この宗教法人審議会の報告も踏まえ、所要の改正を行うため、この法律案を提出することとしたものであります。
 次に、この法律案の概要についで申し上げます。
 第一は、所轄庁についてであります。
 複数の都道府県で活動を行う宗教法人の所轄庁は文部大臣に改めることが適当と考えられることから、他の都道府県内に境内建物を備える宗教法人及び当該宗教法人を包括する宗教法人の所轄庁を文部大臣とすることとしております。
 第二は、事務所備えつけ書類の見直しとその一部の写しの所轄庁への提出についてであります。
 宗教法人の財産目録等の書類については、その事務所に備えつけることが現行宗教法人法においても義務づけられておりますが、今回、宗教法人が作成し、事務所に備えなければならない書類として収支計算書等を加えるとともに、これらの書類の写しを毎会計年度終了後四月以内に所轄庁に提出しなければならないとすることとしております。
 なお、収益事業を行わない宗教法人で、一会計年度の収入の額が寡少であり文部大臣が宗教法人審議会の意見を闘いで定める額の範囲内であるものは、当分の間、収支計算書を作成しないことができることといたしております。
 第三は、信者その他の利害関係人による財産目録等の閲覧についてであります。
 宗教法人は、信者その他の利害関係人であって、財産目録等の事務所備えつけ書類を閲覧することについて正当な利益があり、かつ、その閲覧の請求が不当な目的によるものでない者から請求があったときは、これを閲覧させなければならないこととしております。
 第四は、宗教法人審議会の委員の増員であります。現行の宗教法人法で十五人以内となっております定員を二十人以内とすることといたしております。
 第五は、所轄庁の報告徴収及び質問についでであります。
 所轄庁は、宗教法人について、裁判所に対する解散命令の請求等を行うべき事由に該当する疑いがあると認めるときは、その業務等の管理運営に関する事項に関し、報告を求め、または職員に質問させることができることとしております。
 なお、この場合においては、所轄庁は、報告を求め、または職員に質問させようとすることについて、あらかじめ宗教法人審議会に諮問し、その意見を聞かなければならないこととしております。
 このほか、所要の規定の整備を行うことといたしております。
 以上がこの法律案の趣旨でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#28
○議長(斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。中曽根弘文君。
   〔中曽根弘文君登壇、拍手〕
#29
○中曽根弘文君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました宗教法人法の一部を改正する法律案につきまして総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 オウム真理教という宗教法人が引き起こした前代来聞の凶悪きわまりない一連の組織的犯罪事件は、我が国の社会を根底から揺るがし、海外にも大きな衝撃を与えました。さらなる驚きは、公益性を有すべき宗教法人により、猛毒サリンの製造、使用を初め、想像を絶する殺人や武装化が行われ、その動きや法人の実態が所轄庁において全く把握されていなかったことであります。
 宗教は人々の心に安らぎを与え、人々を救済するものである、国民一般はそのように考え、これほどの大規模で凶悪な犯罪行為の準備が着々と積み重ねられていたとは夢想だにしなかったのであります。これは宗教の名をかたり、宗教法人という資格を悪用した事件であり、私も社会生活における宗教というものについて改めで考えてみた次第であります。
 そこで、総理はどのような宗教観をお持ちか、神仏についてどのようにお考えか、今までの御自分の人生において宗教をどのように位置づけでこられたか、この際、総理御自身の日ごろからのお考えを承りたいと存じます。
 私は、自由民主党団体総局の女性・社会教育・宗教関係団体委員会の委員長として宗教団体との相互理解に努めてまいりましたが、今回の事件に大きな衝撃を受けると同時に、ほんの一部の心ない宗教団体のために、善意ある大多数の宗教団体までもが国民から誤解を受けることを心配いたしております。自由で健全な宗教活動が阻害されることのないように、これを契機に法の整備を図らなければならないと痛感した次第であります。
 さて、オウム真理教に対し宗教法人法による解散命令が出されましたが、解散命令の効果は法人格の喪失と法人財産の清算であり、これだけでは任意の団体としての活動まで完全にやめさせることはできません。したがって、このような空前絶後の凶悪事件の再発を完全に防止し、その根源を絶ち、そして社会の不安を解消するためには、政府は、政治的判断に左右されることなく、破防法の団体規制についで法と証拠に基づき厳正に適用すべきであると私は考えます。現在の検討状況とその適用について、総理と法務大臣にお伺いしたいと存じます。
 オウム真理教は特別異常なカルト集団でありますが、一部には、今まで宗教活動の名のもとに強引な資金集めを行い、無税のお布施を私物化したり選挙に投入したりしている巨大組織法人があり、また、人権侵害や詐欺的商法を繰り返してきた宗教団体もあり、今回の事件で国民の間に宗教団体に対する疑問が大きく広がってきでおります。
 一連の凶悪な犯罪や不正行為は宗教法人を隠れみのとして行われたものでありますが、最近の各種世論調査を見ましても、現行制度の不備を正し、宗教法人法を改正すべきであるとの声が八〇%以上を占めております。これは国民が政治や行政に対し、その果たすべき責任について厳しく問いかけているとも言えます。国民の批判を謙虚に受けとめ、国民の期待に迅速にこたえでいくことが政治の責任であることを我々は自覚しなければなりません。宗教法人法制定の昭和二十六年以降のさまざまな社会的変化、宗教法人の実態の変化に対応し、宗教団体の自由と自主性、責任と公共性という二つの要請を基本とし、信教の自由、政教分離の原則を遵守しつつ、現行宗教法人法の基本を変えることなく必要最小限の整備を行うことは、民意を代表する我々の責務であると信ずるものであります。
 しかしながら、個々の政治的思惑から、国民の声を尊重せず、この法律の改正に反対を唱える一部の政治勢力があることはまことに残念であり、遺憾のきわみであります。
 ところで、衆議院におきまして、法律改正と信教の自由、政教分離との関係がいろいろと議論されましたが、我々はここでもう一度政治と宗教との関係を振り返ってみたいと思います。
 ヨーロッパの歴史においては、宗教的権力が国家との間に激しい対立を生じたり、また、思想あるいは市民社会の自由を脅かしたことの反省から、政教分離の意味するところは、宗教から国家を守ること、すなわち宗教の政治への不介入という側面が強く見受けられます。一方、日本においては、政教分離とは、一般に政治から宗教を守ること、すなわち国家の宗教への不介入のことと言われ、宗教法人法も宗教の性善説を前提に構成され、現在に至っております。
 憲法二十条第一項では、信教の自由を保障し、政治の宗教への介入を禁止するとともに、その後段で、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」としています。ここで言う「政治上の権力」の解釈にはいろいろありますが、この後段についての内閣の見解は、宗教団体が国または地方公共団体に独占されている統治的権力の一部を授けられて行使することを禁止しているということであります。現在の世の中で、宗教団体が国や地方公共団体から統治的権力を授けられることはあり得ませんから、この宗教団体の政治上の権力の行使とは、宗教による立法、行政など政治への介入や支配と理解すべきものと私は考えます。
 したがいまして、私は、憲法二十条第一項につきましては、この際、内閣で検討を行い、信教の自由の保障と宗教の政治への不介入という解釈にすべきではないかと思います。政教分離と本二十条第一項の解釈についで、総理の御見解を承りたいと存じます。
 これに関連して、宗教の世界は指導者の地位が絶対であり、妥協や批判を許さない特質を持つことから、宗教組織が政治システムの中枢をコントロールするようになると、議会制民主主義から逸脱し、自由主義を破壊することとなります。この点についても総理のお考えを伺いたいと思います。
 オウム真理教は過去に真理党を結成し、教祖以下主要幹部が国政選挙に立候補いたしましたが、最終的には麻原を独裁的主権者とする祭政一致の専制政治国家を我が国に樹立することを目指していたと思われます。このような大事件を引き起こし、国家の治安を大きく脅かずに至るまで、日本国民の多くは政教分離の持つ重大な問題についで深く考えずに参りました。私は、本院におきましても、この機会に政治と宗教の分離について広く議論を行うべきものと考えます。
 ところで、憲法二十条の第三項では、宗教教育について規定をしております。現在、公立の学校教育におきましては宗教に関する教育が欠落をしておりますが、宗教というものが現存している以上、特定の宗教についでではなく、宗教とは一般にどういうものであるかということなどについで子供に教えていくということが大切ではないでしょうか。言いかえれば、自然や人間、宇宙等を支配している目に見えないものを大切にする精神を教えることになると思われますが、総理並びに文部大臣のお考えを伺いたいと存じます。
 この法律案の改正点は、文部大臣の御説明のように、五点ほどでありますが、宗教法人が法人格を得る場合には形式的審査を受ければよいことになっております。所轄庁に営利追求や政治目的のために宗教の名をかたって新たな申請が行われた場合、所轄庁はこれを防ぎ得るのでしょうか。認証の取り消しや解散命令を出せることにはなっていますが、一たん認証するとそれも事実上難しいのが実情であります。
 今後もこのような事態が憂慮されるのであれば、認証のあり方についで見直していくべきだと私は考えます。信教の自由と政教分離の原則を踏まえつつ、法律に違反したり反社会的な活動を行っている団体については、本当に有資格かどうか実質的な審査を行うことを検討すべきであると考えます。
 将来的にこの認証制度についで見直していくお考えがあるのか、文部大臣にお伺いしたいと存じます。
 次に、この改正案が成立した場合、行政上直ちにあらわれる効果としてどのようなものが考えられるのか。また、休眠状態の宗教法人などへはどのような影響があると考えられるのでしょうか。これらの点についても文部大臣にお伺いいたしたいと存じます。
 今回の改正を信教の自由の侵害につながるものであると唱える向きもあるようですが、この法律はあくまでも法人格という社会的立場を得で税制上の優遇措置を受けようとする宗教団体にのみ適用されるものであり、しかもそれは個々の教義に立ち入り正邪の判断を所轄庁が行うというものではなく、年に一度の収支報告と、利害関係者からの要請に対してのみ限定的な情報開示を可能とするものであります。これは公益法人としての責務を果たし公正な運営を行っている宗教法人にとりましては何ら問題を生じる可能性を見出せず、世の中の一般的な常識からすれば至極当然と思えるものばかりであり、オウム事件を教訓に、今、国民が求めている宗教法人の財務の透明性の向上と公益性の確保のためには欠くべからざるものと考えます。
 税制上の優遇措置の観点から見てみますと、日本では宗教法人として認証されれば自動的に税がかからなくなる非課税制をとっておりますが、日本と同様に政教分離の原則をとっている欧米諸国では、課税庁の審査で認められない限り課税される免税制をとっております。アメリカの制度を例にとりますと、免税特権を与えるかわりに、宗教団体が宗教施設で選挙運動や政治的集会を開いたり、宗教活動よりも物品販売などの収益活動が本業化している場合には、是正指導を行ったり免税資格を剥奪するなど、活動の公益性に対して厳しい目が向けられ、財務の透明度を高めるための規制が行われております。
 このように、欧米諸国と日本とでは宗教法人や宗教団体に対する税の優遇措置の適用方法は異なっております。今後、宗教法人に対する課税措置につき、政府としてこれを見直していくお考えはあるのか、総理にお伺いしたいと存じます。
 本法律案が提案されて以来、国民の中には、宗教法人の公益性を考えればさらに踏み込んだ改正を望む声もあります。それに対応するには、公益法人としての宗教法人はどうあるべきかという宗教法人の基本理念、国と宗教との関係はどうあるべきかというような根本的な論議を国民全体で一層深めていくことが大事ではないかと考えますが、総理のお考えをお伺いいたしたいと存じます。
 なお、本院におきましては、宗教法人法の改正に関連して、法人問題全般にわたり、より一層意見を集約していく必要があります。すなわち、公聴会により広く国民各層の意見を聞き、また、世界的な活動を展開している巨大単立宗教法人の最高指導者を初めとする宗教界の指導者、学識経験者の方々に参考人または証人としてお越しいただき、御意見を拝聴しつつ、十分な審議を行うことを強く要望いたします。
 最後に、本法律案は、法人格を取得し税制上の優遇措置を受ける宗教団体に対し、信仰と直接かかわらない世俗的事項についてのみ他の公益法人に準じた必要最小限度の規定を行うものであり、公益法人である宗教法人が活動の透明性を図り、その社会的責任を果たすためにも、一日も早い成立が求められでいるものであります。法律の改正とその適切な運用により宗教法人の活動が健全に発展いたしますことを切に望みまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣村山富市君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(村山富市君) 中曽根議員の質問にお答えを申し上げたいと思います。
 私の宗教観についてのお尋ねでありますが、宗教は人の心のあり方や精神文化に深くかかわるものでございまして、現在においても国民生活に広く定着したものとなっておると考えております。
 しかし、宗教の名のもとに引き起こされたオウム真理教の一連の凶悪事件は極めて遺憾でございます。私も、お盆や法事には仏様にお参りしたりお墓にお参りしたりいたしますし、同時に、正月やあるいはお祭りには神様にお参りをいたしたりします。ごく一般的な宗教観を持っているというふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、宗教というのは人の心に深くかかわるものでございますだけに、これからも大切にしていかなければならぬというふうに思っでおるところでございます。
 次に、破防法の適用につきましては、私がこれまで一貫して申し述べてまいりましたとおり、同法が国民の基本的人権に重大な関係を有するところから、その適用は法と証拠に基づきまして厳正かつ慎重になされるべきであると考えております。また、この手続は準司法的な手続としての色彩が強いものでありますが、破防法所定の団体規制の請求が一つの行政処分である以上、その適用に当たっては、総理大臣にも行政の長としての責任があるものと考えております。
 現在、公安調査庁では、本件に関し、破防法所定の団体規制の適用要件に合致するか否か等を慎重に検討している段階にあると承知をいたしております。
 次に、政教分離と憲法二十条との解釈についてのお尋ねでありますが、憲法第二十条第一項後段は、「いかなる宗教団体もこ「政治上の権力を行使してはならない。」と定めておりますが、ここに言う「政治上の権力」とは、一般的には国または地方公共団体に独占されている統治的権力をいうと考えられており、宗教団体がこのような統治的権力を行使することを禁止しているものでございます。したがいまして、宗教団体が政治活動をすることを排除している趣旨であるとは考えておりません。
 政府といたしましては、従来からこのような見解をとっているところでございます。
 次に、宗教教育についてのお尋ねでありますが、教育基本法第九条第一項において、「宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。」と規定されております。学校教育におきましては、宗教の持つ意義について理解をさせ、人間としてのあり方、生き方を考えさせることなど、宗教的情操の涵養に努めでいるところでございます。
 次に、欧米諸国と我が国では宗教法人等に対する税の優遇措置の適用方法が異なっているとの御指摘でございましたが、法人格の付与の仕組みなど諸制度の違いを反映しているのではないかと考えられます。したがって、欧米諸国の仕組みを直ちに我が国に採用することは慎重でなければならないと考えております。
 いずれにいたしましても、宗教法人を含む公益法人等に対する課税の適正化につきましては、今後、公益法人課税のあり方の問題として、軽減税率、収益事業の範囲、金融資産収益、みなし寄附金等の特例といった諸点について、その活動実態等を踏まえて、鋭意検討しなければならない課題ではあると考えております。
 次に、宗教法人法についでさらに踏み込んだ根本的な議論を国民全体で深めることが大事ではないかとのお尋ねでありますが、このたびの法改正は、社会状況の変化や宗教法人の実態の変化等に対応し、所轄庁がその責任を果たし、宗教法人がその自治能力の向上を図られるよう宗教法人制度の適正な運用を図るため、必要最小限の改正を行おうとするものでございます。
 私といたしましては、提出した法案についで速やかに御審議をいただき、ぜひとも今国会で成立をさせていただきたいと考えております。
 また、今後も社会状況の変化などに対応して必要な見直しを行っていくことは十分考えられるところでございましで、そうした際には、御指摘のような点についても議論が深められることが大切であると考えております。
 次に、宗教組織と議会制民主主義の関係についてのお尋ねでありますが、憲法では、国民主権を明定し、国民の参政権を保障しで議会制民主主義を採用するとともに、信教の自由を保障しでいるところでございましで、両者は両立し得るものと位置づけられております。
 また、憲法二十条では、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」といたしまして政教分離の原則が決められており、宗教団体が国または地方公共団体に独占されている統治的権力を行使することを禁止しているところでございます。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
   〔国務大臣島村宜伸君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(島村宜伸君) 中曽根弘文議員の御質問にお答えいたします。
 まず、公立学校における宗教教育についてのお尋ねでありますが、日本国憲法及び教育基本法においては、国公立の学校が特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動を行うことを禁止しております。しかしながら、教育基本法第九条第一項においで、「宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。」と規定されております。
 学習指導要領においても、宗教的情操教育に関連して、例えば中学校の道徳では、「自然を愛し、美しいものに感動する豊かな心をもち、人間の力を超えたものに対する畏敬の念を深めるようにする」、高等学校の倫理では、「人生における哲学、宗教、芸術のもつ意義などについて理解させ、人間としての在り方生き方を考えさせる」などと定めでいるところであります。
 今後とも、宗教的な情操を深めるための教育を充実することにより、心身ともに健全な児童生徒の育成に努めてまいる所存であります。
 次に、宗教法人の認証に当たっての所轄庁の審査についてのお尋ねでありますが、現行宗教法人法では、宗教法人の認証についで申請した団体が、一、宗教団体であること、二、規則が法令の規定に適合していること、三、設立の手続が法令に従ってなされていることの要件について審査し、その上で認証を行うこととしています。このように、宗教団体でないものが宗教法人になったり、法令に適合しない規則の作成や設立の手続がなされるのを防止しております。
 この場合、認証を申請した団体が宗教法人法第二条の宗教団体に該当するかについては、宗教団体としての実体を有するかを含め判断することとしております。したがって、当該団体が営利目的等の活動を主たる目的として行っていることが明らかな場合については、所轄庁は宗教団体性がないものとして認証すべきでないものと考えております。
 次に、認証のあり方及び認証制度の見直しについてのお尋ねですが、宗教法人法は昭和二十六年に制定されたものであり、それ以降、社会状況や宗教法人の実態の変化によって制度が実態に合わない面が生じており、オウム真理教事件を契機に国民からもその見直しを図るべきとの意見が高まっております。
 宗教団体が刑法その他の法令に反し、著しく公共の福祉に反するような活動を行っていることが明らかである場合には、認証すべきでないというのが当然の考え方であると思います。
 なお、今回の法改正は、信教の自由と政教分離の原則を遵守しつつ、宗教法人制度の適正な運用を確保するため、宗教法人審議会の報告も踏まえ、必要最小限の改正を行おうというものであり、認証のあり方については今回の法改正には含まれておりません。御指摘の認証のあり方の見直しについては、基本的な制度でもあり、今後、慎重に検討していく必要があると考えております。
 最後に、改正案の行政上の効果についての御質問ですが、このたびの法改正は、社会状況の変化や宗教法人の実態の変化等に対応し、所轄庁がその責任を果たし、宗教法人がその自治能力の向上を図れるよう必要最小限の規定の整備を行おうとするものであります。
 今回の法改正がなされれば、宗教法人の管理運営における透明性が高まるとともに、毎年度所轄庁に財務関係等の書類が提出されることにより、宗教法人の実態をある程度把握できることとなり、宗教法人の不適正な運営の防止に役立つものと考えております。
 また、収益事業の停止命令、認証の取り消し、解散命令の請求の事由に該当する疑いがある場合には、所轄庁が宗教法人から報告を求め、質問することが可能になり、所轄庁がその責任をより適切に果たすことができるようになるものと考えております。
 このため、御指摘のような休眠状態にある宗教法人に対しては、それを長期にわたりそのままに放置することがなくなるなど、所轄庁による適切な対応が可能になるものと考えます。(拍手)
   〔国務大臣宮澤弘君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(宮澤弘君) 破防法の適用につきましては、御指摘のとおり、法と証拠に基づきましで厳正かつ慎重に判断することが必要であります。
 そのような認識のもとに、公安調査庁では、法と証拠に基づいて種々の角度から最終的な検討を行っている段階にあると承知をいたしております。
 私といたしましては、できるだけ早く結論を得られるよう努めてまいりたいと考えております。(拍手)
#33
○議長(斎藤十朗君) 先ほどの中曽根君の発言につきましては、速記録を調査の上、議長において適切に措置いたしたいと存じます。
    ―――――――――――――
#34
○議長(斎藤十朗君) 勝木健司君。
   〔勝木健司君登壇、拍手〕
#35
○勝木健司君 私は、平成会を代表して、ただいま趣旨説明がありました宗教法人法改正案に対し、質問をいたします。
 我が国は、現在、内外ともに緊急かつ重要な課題が山積みをいたしております。課題解決のためには今こそ政治のリーダーシップが問われでいるにもかかわらず、前例踏襲、大勢順応、課題先送りの無責任な官僚主導の政治が続いております。
 国内における緊急課題は、何よりも景気対策であります。さらには、金融問題、沖縄問題、そして阪神大震災やオウム事件で問われました危機管理体制であります。にもかかわらず政府・与党は、今臨時国会の最優先課題として、オウム事件に便乗し、明らかに政治的意図を持って宗教法人法改正を強引にしかも性急に行おうとしており、極めで不当であり、まことに遺憾であると断ぜざるを得ません。
 衆議院特別委員会においては、審議がまだ不十分にもかかわらず、法案審議を強行に打ち切ってしまいました。この法案が、憲法に言う基本的人権の根幹であります信教の自由にかかわる法改正であること、宗教団体の大半も改正に反対をしており、慎重な対応を求めていること、この法案改正が即オウムの対策に役立つものではないこと等を考えるなら、政府・与党の性急にしかも強引に事を運ぼうとする態度は、議会制民主主義を破壊する以外の何物でもないと強く抗議するものであります。
 ところで、先般の閣僚懇談会において、武村大蔵大臣、江藤前総務庁長官、島村文部大臣、深谷自治大臣等閣僚の皆さんが、政府の憲法第二十条解釈についで、時代おくれの解釈ではないのか、政治への宗教の関与は政教分離を定める憲法二十条に抵触しているのではないかなどと、大出内閣法制局長官に対して次々に批判し、異論を唱えたとの報道がなされております。
 憲法解釈がその時々の与党勢力の都合で変えられ、ゆがめられるなど、もっでのほかであります。中でも憲法を守るべき大臣が解釈改憲を迫るなどは到底許されざる暴挙であります。そこで、再度、憲法第二十条の解釈についでここで確認をしておきたいと思います。
 昨年十月十二日に行われました衆議院の予算委員会においで、大出法制局長官は、一、憲法の定める政教分離の原則とは、信教の自由をより実質的に保障するため、国及びその機関が宗教に介入し、または関与することを禁ずるものである。二、憲法二十条一項後段は、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」と定めておりますが、ここに言われる「政治上の権力」とは、国または地方公共団体が独占している統治的な権力である。三、政教分離の原則は、宗教団体が政治活動をすることを排除するものではない。宗教団体の政治活動は、憲法二十一条のいわゆる表現の自由の一環として尊重されるべきである。憲法上、宗教団体は選挙運動などの政治的な活動が保障されていると、大要以上のように明確に答弁をされております。
 これらの憲法二十条に関する政府解釈を村山内閣は変えるおつもりなのか、総理並びに武村、深谷、島村各大臣、明確にお答えをいただきたいと思います。
 さらに、宗教法人法制定の趣旨についで、昨年十月二十七日の当参議院文教委員会においで、文部省は、第十回国会においで当時の文部大臣が宗教法人法の目的は宗教活動がしやすいようにすることであると答弁したことについては、現在も特段変更するような状況ではないと明快に答弁をしております。
 しかるに、総理は、法改正の目的について、認証した行政府が最低の責任を果たすためには宗教法人の実態把握の手段が必要である旨答弁をしておられるわけでありますが、このことは宗教法人法の制定の趣旨に反するのではないか。今回の法改正は、実態把握の名のもとに国家による宗教法人の管理監督の方向に向かっていることを強く危惧するものでありますが、総理に明快にお答えをいただきたいと思います。
 次に、今回の法改正の手続についでであります。私は、今回の法改正に至る一連の過程においで議会制民主主義を踏みにじる進め方がとられており、断じてこれを許すわけにはまいりません。
 総理は、さきの所信表明で、「政府としては、宗教法人審議会における制度のあり方についての慎重な検討結果を踏まえて、信教の自由と政教分離の原則を遵守しつつ、必要な法改正に取り組む所存であります。」と述べられておるわけでありますが、しかし、ごらんのように、宗教法人審議会の報告は、慎重審議との言葉とは裏腹の状況のもとで作成されたものであります。
 私どもの調査によりますと、その報告のまとめ方も、九月二十九日でしたか、会長一任をとることもなく閉会が宣言をされたわけであります。会長を除き委員の半数七名が異議を述べておるわけであります。具体的には本当のところはどうだったのですかということで、私どもは議事録の提出というのを再三求めておるわけでありますが、いまだに提出をされません。何か知られたら都合が悪いことがあるのでしょうか。提出できない理由というものを明確にお答えいただきたいと思います。
 政府は、制度を審議する審議会は原則公開するとみずからが決めでおられるにもかかわらず、宗教法人審議会の議事録を公開しないというのは、政府みずからがルールを踏みにじるものであり、これは国民への重大な公約違反と言わざるを得ません。その後の手続においても、各省庁間の法令審議がわずか一日しかとられでおらず、また、事務次官会議においても正式議題とされていないなど、前代来聞の異例ずくめの連続であります。正規の手続を無視してまでも拙速に事を進めた理由をお答えいただきたい。
 さらに、多くの宗教団体、学者、文化人等、反対もしくは慎重審議を求めており、しかも宗教団体としても自主的に改革を進めようとする動きが出てきておるところであります。また、閣僚の相次ぐ戦争発言と相まって、香港、中国、フィリピンなどアジア諸国においても、この拙速な法改正に対して、戦前の軍国主義の復活につながるのではないかとの危惧を表明しております。
 一例を挙げますと、香港の九月十四日付の新報紙では、戦後五十年、最後の謝罪、反省の機会さえもあやふやにごまかした日本政府と与党、その政府が宗教統制しようというのである、アジア諸国にとってこれほど危険なことはない、決して座視できないことだと述べでおります。
 総理は、これらの内外の声にどう答えられますか。答弁を求めます。
 今回の改正案は、一言で言いますと、宗教法人を国家の日常的な監視のもとに置くことを目指すものと言っても私は過言ではないと思います。宗教の自由、思想、信条の自由とは、不当に干渉をされないことだと思いますしかるに、国家の監視下に置くことによって、信仰を持つ人たち、今や、信仰離れから、信仰を持つ貴重な人たちの信教の自由を侵害するおそれは極めて高いと言わなければなりません。護憲を看板としてきた社会党の委員長でもあります村山総理にとって、到底是認できない内容ではないのですか。お伺いをいたします。
 第一の改正点であります所轄庁のあり方が、法案の目指すところをよく物語っでおるわけであります。総理自身も、文部省の所轄にしてやはり目が届くようにした方がいいと認めているとおり、所轄庁の権限強化とも相まって宗教法人への管理監督への道を開く第一歩となるものであります。
 総理は、現行法が所轄を原則として都道府県知事としたこれまでのいきさつを御存じでありますか。戦前の文部省の宗教界に対する統制を壊すことに最大の理由があったのではありませんか。現行法の基本的な思想をなぜ捨て去ってしまうのか、総理大臣、お答えを願います。
 書類の提出義務については、信仰の対象や宗教活動の内容といった情報を所轄庁が結果的に把握することになるとの問題点が明確になってくるわけでありますが、国家がこうした情報を管理しても憲法には違反しないのかどうか、答弁を求めたいと思います。
 また、報告の聴取及び質問権についてでありますが、戦前のあの忌まわしい宗教団体法十八条をまさに想起させるものであります。現行法でどのような不都合があるというのですか。文部省に思想警察の役割を担わせようとするのですか。明確にお答えをいただきたいと思います。
 利害関係人の閲覧請求権につきましては、宗教法人を無用なトラブルに巻き込むことが危惧をされておるわけでありまして、どのような情報をだれに対して開示するかは、本来、その宗教法人の自主、自律的な運営にゆだねられる問題でありまして、この規定は自主権、自律権を侵害するものではないのかと思います。お答えをいただきたいと思います。
 オウム事件の裁判が十月、十一月と連日のように行われておるわけでありますが、公判を通じて大規模テロ組織オウム教団の凶悪な実態が浮かび上がってきでおります。
 私たちは、改めてここまでオウム教団を放置してきた行政の責任が問われるべきであると考えます。と同時に、政府の対応の甘さを覆い隠すために、憲法に言う基本的人権の根幹を侵してまで宗教法人法改正問題のみにすりかえようとする、まさに選挙対策というか、政治的意図があるのか、政府・与党のこの姿勢の卑劣さ、アンフェアな姿勢に強い怒りと憤りを覚えるものであります。
 地下鉄サリン事件発生後、警察庁の対応、努力には心から敬意を表するものであります。しかし、警察法第二条にもあるとおり、警察の責務は、起こってしまった事件の捜査だけでなく、犯罪の予防も大切な柱であります。
 そこで、お尋ねいたしますが、第一に、二回目のサリン事件の防止ができなかったこと、そして第二に、治安のよい日本で毒ガス製造プラントの完成を許してしまったこと、これらの責任は厳しく問われなければならないと考えますが、自治大臣にお伺いいたします。
 オウム教団が上九一色村に進出したのは平成元年の八月、今から六年も前のことであります。この間に、サリン、VXガス等の化学兵器、ボツリヌス菌などの生物細菌兵器、覚せい剤、LSDなどの薬物、機関銃、レーザー銃等の武器製造が企てられ、実施されました。テロ組織をここまで見過ごしてきた責任は厳しく問われなければならないと思います。
 オウムの脅威にさらされ続けた波野村や上九一色村の住民の皆さんの苦しみ、坂本さん御一家、長野県松本市の河野さん御夫妻、サリンにより殺害されたり後遺症で苦しむ被害者とその御家族、財産を奪われ、拉致、殺された信者とその家族、これらの方々の無念さ等筆舌に尽くせぬ苦しみに思いをはせるとき、政府の危機管理体制の構造的欠陥が指摘、糾弾されて当然であります。
 私たちは、専門家等によるオウム事件検証のための総合的調査検証機関を設置すべきであると主張いたしておりますが、政府は現在どのような体制で根本的検証を行っておられるのか、総理にお伺いいたします。
 アメリカ議会は、オウム事件を国際的な重大テロ事件として、十月末日より二日間、公聴会を開きました。それまでに議会として、五カ月にわたり調査チームを日本、ロシア、オーストラリア等へ派遣し、独自の調査報告書をまとめております。日本で起きた事件に対する他国のこの取り組みに対し、肝心の我が国の対応は鈍過ぎるのではないのか。オウム事件の検証責任は、日本国民に対するだけのものではありません。国際社会への我が国の責任でもあります。米国議会の取り組みを総理はどのように考えておられるのか、お答え願います。
 オウム真理教を根絶するために、破防法の即時適用を私たちは主張いたしておるわけであります。宗教法人法による解散命令が確定いたしましても、任意団体としての活動が可能であります。根絶のためには破防法の適用が不可欠であり、衆議院の特別委員会でも、公安調査庁長官、法務大臣は、調査も最終の詰めの段階に来ておると明言をされておるわけであります。国民の不安を取り除くために、危機管理の最高責任者である総理に破防法適用の見解をお伺いいたします。
 最後に、宗教法人法の特別委員会の設置に私たちは反対でありますが、設置されました。本来、設置すべきは、オウム根絶、再発防止のための特別委員会であります。そして、冒頭にも申し上げましたとおり、金融問題、沖縄に関する特別委員会の設置であります。国民の生命、財産、生活を守るための国家的課題を見誤らないように政府・与党に強く要求し、総理の見解を求め、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣村山富市君登壇、拍手〕
#36
○国務大臣(村山富市君) 勝木議員の質問にお答えを申し上げたいと思います。
 政府は、当面必要な景気対策やあるいは金融不安に対する対策や諸般の課題はそっちのけにしてというような御意見がありましたけれども、そうした当面の課題についても精力的に取り組んでいることは御存じのとおりであります。誤解のないようにお願いいたします。
 憲法第二十条の解釈についでお尋ねでありますが、憲法第二十条は、信教の自由を保障するとともに、さらにその保障を一層確実なものとするため、政教分離の規定を置いているところでございます。このように、憲法の定める政教分離の規定は、信教の自由の保障を実質的なものとするため、国及びその機関が国権行使の場面においで、宗教に介入し、または関与することを排除する趣旨であると解しておりまして、それを超えで、宗教団体が政治活動をすることをも排除している趣旨のものではないと考えております。
 政府といたしましては、従来からこのような見解をとっているところでございます。
 次に、今回の法改正は、宗教法人法の制定趣旨に反し、宗教法人の管理監督の方向に向かっでいるのではないかとの御指摘でございますが、現行宗教法人法では、一たん認証されるとそれ以降、所轄庁が宗教法人の活動について知るための手段がほとんどなく、また、現行法に規定されている所轄庁の権限である収益事業の停止命令等の事由に該当する疑いがあると考える場合でも、これを確認するための手段が規定されておりません。
 このため、今回の法改正では、所轄庁が、宗教法人がその目的に沿っで活動しているか、その要件を備えているか等を継続的に把握し、所轄庁としての責任を適正に果たすことができるようにするとともに、宗教法人の管理運営の民主性、透明性を高めるための必要最小限の改正を行おうとするものでございます。
 このように、今回の改正は宗教法人法の適正な運用を図るためのものであり、宗教法人法の制定趣旨に反するものとは考えでおりませんし、宗教法人の管理監督をしようとするものではございません。
 審議会報告のまとめ方についてのお尋ねでありますが、審議会の関係規定に基づきまして、委員から互選をされた会長のもとで適正に行われたものと考えております。
 また、宗教法人審議会の議事録公開についてのお尋ねでありますが、同審議会は、これまで中立公正な発言を確保するとの観点等から、非公開を前提に審議が進められてきた経緯がございます。したがって、今回の審議に関する議事録を公開することは、宗教法人のプライバシーの保護や委員との信頼関係の点から適当でないと考えておりますので、御理解を賜りたいと思います。
 なお、宗教法人審議会は、行政処分不服審査等を審議することから、審議会の公開に関する閣議決定の対象外とされているものでございます。
 次に、法改正手続を拙速に進めたとの御指摘でありますが、宗教法人法改正案の作成過程においで、文部省は関係する省庁と必要な協議を行い、協議を受けた省庁においてはその内容等につき了解していると聞いております。
 また、同改正案については、事務次官会議で趣旨及び内容の事前了解を得た上で定例閣議においで閣議決定を行うとともに、閣議後最初の事務次官等会議で事後報告をしたものであり、手続上の問題はないと考えております。
 なお、本法案につきましては、多くの国民が宗教法人法の改正を求めており、このような国民の期待に迅速にこたえることが政府の当然の使命であると考え、今国会に提出をしたものでございます。
 次に、宗教法人法改正についてのアジア各国の反応についてのお尋ねでありますが、宗教法人法は昭和二十六年に制定されて以降、社会状況や宗教法人の実態の変化等によって制度が実情に合わない面が生じており、広く国民からも制度の見直しを図るべきとの意見が高まっていることは御案内のとおりであります。今回の改正法案は、信教の自由と政教分離の原則を遵守しつつ、宗教法人制度の適正な運用を確保するため必要最小限の改正を行おうとするものでございます。
 アジア諸国から宗教法人法の改正は軍国主義の復活につながるとの危惧があるとのお話でありますが、法改正の趣旨はただいま述べたとおりでございまして、日本政府にはそのような意図もないし、そのようなことは全くあり得ないことをこの際改めで内外に明らかにしておきたいと思います。
 本法案が信教の自由を侵害するおそれがあるのではないか、この点についての社会党委員長としての認識についてのお尋ねでありますが、現行宗教法人法は、信教の自由と政教分離の原則を基本とし、自由と自主性、責任と公共性のもとに全体系が組み立てられております。
 今回の法改正は、ただいまお答えしたとおり、現行宗教法人制度の基本を維持しながら、宗教法人をめぐる社会状況等の変化に対応し、所轄庁が現行法に規定されている責任を適正に果たすことができるようにするとともに、宗教法人の民主的運営や透明性を高めるために必要最小限の改正を行うものでございます。よっで、今回の法改正は信教の自由を侵害するものではないと考えております。
 次に、所轄庁についてのお尋ねでございますが、現行法では、宗教法人の所轄庁は原則として都道府県知事とされ、広域的な活動をしている包括宗教法人については文部大臣としております。これは、立法当時には一般的に宗教法人の活動範囲が狭く地域性が強かったこと等から、都道府県知事が所轄するものとしたものと考えます。
 今回の法改正は、昭和二十六年当時に比べ広域的に活動する宗教法人がふえたことに対応し、所轄庁が宗教法人法上期待されている責任を適正に果たすことができるよう、複数の都道府県で活動を行う宗教法人の所轄庁を文部大臣とするものであります。したがって、宗教界に対する統制を強めたり管理監督を行おうとするのではございません。
 次に、所轄庁が信仰の対象、宗教活動の情報を把握することとなれば憲法上の疑義があるのではないかとの御指摘でありますが、今回の法改正により提出いただくことになる書類は、宗教法人の財務会計等の状況を客観的に記載したものでございます。また、今回の法改正で財務会計等の書類の提出を求めるのは、宗教法人がその目的に沿って活動していることを所轄庁が継続的に把握し、宗教法人法の適正な運用を図るためでございます。
 このような書類の内容及び法改正の目的に照らし、宗教法人に財務会計等の書類の提出を求めても信教の自由の侵害につながるものとは考えでおりません。
 次に、報告聴取、質問権についての御質問でございますが、現行の宗教法人法は、収益事業の停止命令、認証の取り消し、解散命令の請求についての所轄庁の権限を規定しておりますが、所轄庁がこれらの規定の事由に該当する疑いがあると考える場合でも、これを確認する手段が規定されておりません。このため、現行の宗教法人法では、宗教法人が解散命令の請求等の事由に該当する疑いがある場合でも、所轄庁はこれを確認することが極めで困難であります。
 このため、今回の法改正では、先ほど申し上げました第七十九条、第八十条、第八十一条に規定する事由に該当する疑いがあると考える場合には、所轄庁は宗教法人に報告を求め、質問することができるようにし、所轄庁がその責任を適正に果たせるようにしようとするものでございます。
 また、このような法改正の目的及び報告を求め質問を行う内容からしても、今回の改正が戦前の宗教団体法につながるものではなく、信教の自由を侵害するものではないと考えております。
 次に、閲覧請求権についてのお尋ねでありますが、今回の法改正では、法二十五条の備えつけ書類の閲覧につき正当な利益のある信者その他の利害関係人に対して、備えつけ書類の閲覧を認めることとしております。今回の法改正は、信者その他の利害関係人の一層の利便を図るとともに、宗教法人の民主的運営や透明性を高めることにより、その適正な運営に資することを目的とするものでございます。
 また、その閲覧書類は、宗教法人の管理運営に関する事項を客観的に記載したものであり、閲覧できる者も、正当な利益があり、かつ不当な目的によるものでない信者その他の利害関係人に限定されておるのであります。
 このように、閲覧請求権を認めることは宗教法人のより民主的な運営や透明性を高めるためのものでございまして、宗教法人の自治を侵害したり信教の自由を侵すものではございません。
 次に、オウム事件の根本的検証体制についてのお尋ねでありますが、オウム事件につきましては、社会秩序を揺るがす重大かつ凶悪きわまりない事件であると認識をいたしております。
 一連の事件につきましては、今もなお捜査当局において徹底した捜査が行われております。同時に、警察等関係機関においてこの種事案の再発防止のために分析、対策の検討が行われているものと認識をいたしておるところでございます。
 次に、米国議会のオウム事件への調査の取り組みと我が国の対応についてのお尋ねでありますが、我が国の対応につきましては、ただいま答弁申し上げたとおり、今後とも関係機関を中心に鋭意推進してまいる所存でございます。また、本件につきましては、米国議会においても国際的重大事件としてオウム事件の積極的な調査、審理を行っているものと認識をいたしております。
 我が国といたしましては、オウム真理教の特異な活動の実態解明に努めるとともに、オウム事件で得た教訓を踏まえ、同種事案の再発を防止するため、捜査活動を通じまして得た情報を提供するなど各国と緊密な連携を図り、国際協力を推進してまいりたいと考えております。
 次に、オウム真理教に対する破防法適用についてのお尋ねでありますが、オウム真理教が引き起こした一連の事件につきましては、犯罪史上類を見ない極めで凶悪な犯罪であり、こうした事件を再び許すようなことは絶対にあっではならないものでございます。
 破防法適用につきましては、私がこれまで一貫して申し述べたとおり、同法が国民の基本的人権に重大な関係を有することから、その適用は法と証拠に基づき厳正かつ慎重になされるべきものと考えておるところでございます。
 特別委員会の設置等に関連をして御質問がございましたが、この特別委員会の設置等につきましては、まさに国会においで各党間で協議をいただくべき問題であると考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
   〔国務大臣島村宜伸君登壇、拍手〕
#37
○国務大臣(島村宜伸君) 勝木健司議員の御質問にお答えいたします。
 憲法二十条の解釈についてのお尋ねですが、憲法は、第二十条第一項前段で信教の自由について規定するとともに、それを実質的に保障するため、第一項後段及び第三項で政教分離の原則について規定しております。
 政府としては、この政教分離の原則については、国及びその機関が国権行使の場面においで宗教に介入、関与することを排除する趣旨であって、それを超えで宗教団体が政治的活動を行うことまで排除している趣旨ではないものと解しております。(拍手)
   〔国務大臣武村正義君登壇、拍手〕
#38
○国務大臣(武村正義君) 同じく憲法第二十条についての政府としての見解でありますが、総理も御答弁のとおりであります。
 ただ、一般論として申し上げますと、憲法の解釈の変更は安易に行われていいとは思っておりませんが、たからといって未来永劫不変のものではないと思います。世の中の変化、社会経済情勢の変化に伴って、各方面でさまざまな論議が行われることは当然のことであると認識をいたしております。(拍手)
   〔国務大臣深谷隆司君登壇、拍手〕
#39
○国務大臣(深谷隆司君) 勝木議員から憲法二十条についての見解のお尋ねがありました。
 既に総理を初めそれぞれの大臣から見解を申し述べられましたが、同じ内閣の一員として、同様の見解であるということをもって答弁といたします。
 それから、オウム真理教の問題につきましてただいま自治大臣に聞くとありましたが、これは所管は国家公安委員会委員長でありますので、その立場から御答弁を申し上げたいと思います。
 坂本弁護士事件、松本サリン事件が起こりましたときに、当該県の警察においては、重大な事犯と考えて直ちに捜査本部を設置いたしたのであります。自来、全力を挙げて捜査に没頭いたしてまいりました。
 申し上げるまでもなく、犯罪捜査というのは、証拠に基づいて、しかも捜査手続をきちんとした上で一歩一歩事実の解明のために努力すべきものであります。
 このたびのオウム真理教の事犯においては、物証が極めで乏しかった。同時に、宗教団体に名をかりたテロ集団であった。尊師と言われる指導者と弟子との間には狂信的な関係があって、これが集団で証拠隠滅であるとかさまざまな閉鎖性をもって捜査の妨害を行ってまいりました。
 しかし、そういう中におきましても、昼夜をたがわぬ警察官の献身的な努力によって、例えば指名手配八十七名でございましたが八十六名を検挙する、あるいは特別指名手配十七名を十二名検挙するというまれなる捜査の結果、多大の逮捕者をつかむことができで、今日のような状況にまで捜査、事件の解明が進んでまいったのでございます。
 私どもは、そのような経緯を踏まえて、警察官の努力には敬意を表し、一層事件の解明のために全力を尽くすように指示いたしているところであります。
 事件解明前に地下鉄サリン事件あるいは毒ガス製造プラントの建設を許しでしまったことはまことに残念なことと思っておりますが、この経験を生かして、これからオウム真理教団のような公共のさまざまな妨げになるような集団については適切な情報を収集し、必ず再発させないような努力を警察一体となって行うことを、今、誓い、頑張っているところであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#40
○議長(斎藤十朗君) 齋藤勁君。
   〔齋藤勁君登壇、拍手〕
#41
○齋藤勁君 私は、日本社会党・護憲民主連合を代表して、ただいま趣旨説明のありました宗教法人法の一部を改正する法律案に関して、総理及び関係大臣に質問を行いたいと存じます。
 最初に、今回の法改正の必要性、目的についでお尋ねいたします。
 オウム真理教による一連の事件を契機として、国民は、宗教法人は一度認証されると外部から全くその実態が把握できなくなるのはなぜかという疑問、そしてお布施の名目で集めた非課税の巨額な資金が凶悪犯罪に使われていたことへの怒りを感じたのであります。
 オウムに限らず、専ら収益事業を行う団体や詐欺的商法の横行、さらには脱税、宗教法人自体の売買など、宗教法人の不祥事も相次いでいるのであります。
 税の優遇を受ける以上、経理をオープンにし、みずからの公益性を明らかに示すべきだ、宗教法人法にも不備があれば見直しを行うべきだというのがまさに世論であります。こうした国民の声にこたえることが政治の果たす使命であると私は確信するものであります。総理の基本的な認識をお伺いいたします。
 宗教法人法の見直しについては、既に一九五八年に宗教法人審議会より、認証の基準を設ける、調査、報告の取り扱いを明確にするなどの答申が出されているところであります。もし当時この答申に対して政治が真剣に対応していたなら、今日の事態に対してもっと有効に対処できていたのではないかと残念でなりません。
 そこで、この一九五八年の答申が出された背景と、なぜ実現できずに今日に至ったのかについての経緯を、そして今回の改正案では当時の検討課題がどの程度達成されたのかについて、文部大臣にお伺いいたします。
 次に、信教の自由との関係についで伺います。
 今回の改正による所轄庁への財務書類等の報告、信者等への情報開示制度の導入は、現行法の基本を維持した上で所轄庁が現行法上期待されている最小限の責任と役割を果たすとともに、宗教法人側の適正適切な事務処理についての認識を促し、法人の自治と自浄の能力の向上にもつながるものと考えます。しかしながら、宗教界の中には、戦前の国家権力による忌まわしい弾圧の歴史を想起し、権力の介入に再び道を開くのではないかとの懸念も存在をしています。
 今回の改正内容についで、信教の自由との関係についてどのような検討を行ったのか、また、将来的な運用面も含めて懸念がないかどうか、総理より明確な答弁をお願いいたします。
 次は、財産保全措置についでであります。
 今度の改正案で残念なのは、解散命令に伴う財産保全措置が盛り込まれていないことであります。他の公益法人と異なり、宗教法人の場合は裁判所が解散命令を行うため、確定までに時間がかかります。したがって、解散請求の時点で財産異動の凍結など何らかの保全措置が本来必要であるにもかかわらず、宗教法人法には明確な規定がないのであります。これも法律の不備であると言えるのではないでしょうか。現に、オウムは解散命令を想定して財産隠しを着々と進めているのであります。特別立法を含め、法改正に向けて関係省庁の検討を急ぐべきと考えますが、文部大臣並びに法務大臣の御所見をお伺いいたします。
 さで、この際、宗教法人に対する課税の適正化についでお伺いいたします。
 通常の法人課税の実効税率は現在四九・九八%と言われておりますが、宗教法人等公益法人についての実効税率は、みなし寄附金制度などにより三〇%近くにまで軽減されると言われております。それが事実なら、本来の税率の半分近くまで割り込んでいることになります。政府としてはどのように認識されているのか、具体的な数字を明らかにされた上で御所見をお伺いいたします。
 私は、税の上で優遇がされるからには、税の公平性の観点と国民の税制への信頼を高める見地から、優遇を受ける宗教法人等自身が当然みずからを厳しく律しなければならないし、適正な納税義務も重く負うのではないかと考えます。とりわけ、最近国民の間に一部の宗教法人等に象徴される営利活動本位の姿勢に疑問が募っています。
 政府税制調査会の答申でも、公益法人課税の課題として、軽減税率、収益事業の範囲、金融資産収益に対する課税のあり方、寄附金の損金算入適用限度額の特例といった点についで検討すべしとされています。また、所得課税以外の地価税や固定資産税等の特例についても見直しの俎上にのせ、必要な検討をすべきであります。
 政府としても、国民的要望がどこにあるのか十分見据え、宗教法人等公益法人課税の適正化に積極的に対応し、国民の納得し得る改革案を提示すべきだろうと思います。大蔵大臣の御決意をお伺いいたします。
 次に、宗教活動と市民社会との調和のあり方、宗教と政治のかかわりについで伺います。
 行き過ぎた勧誘や資金獲得などの宗教活動のあり方や、宗教団体の政治活動にも国民は大きな関心を持っております。いわゆるカルト教団が引き起こす社会との摩擦や人権侵害への対処として、八四年に採択されたEC議会決議では、公益法人としての地位や免税特権を与える際の判断基準を示しています。未成年者の長期献身への勧誘禁止、献金や入信について熟慮期間を設ける、入信後の家族や友人との連絡の保障、脱会や外部の助言を受ける権利の尊重など、日本でも参考になる基準が多いと思われます。
 海外の対処例の研究や日本の宗教の実態把握に早急に取り組み、それをもとに認証における判断基準の明確化を検討すべきであると考えますが、総理の見解をお伺いいたします。
 また、宗教に関する情報提供や苦情相談などを行う自主的な組織として、宗教情報センターの設置を検討すべきなどの宗教法人審議会の貴重な提言をどう受けとめ、今後どのように具体化されるおつもりか、文部大臣の御所見をお伺いいたします。
 宗教団体の政治活動にはおのずから自制と自粛が求められるのであります。政治が宗教を支配することがあってはならないし、逆に宗教が政治を支配することがあっではなりません。この原則に立って政教分離のあり方についても根本に立ち返って論議をする必要があると考えますが、総理の御所見をお聞かせください。
 本改正案は、国民の常識の範囲内での見直しであり、必要最小限度の改正であります。一部に、なぜ急ぐのか、二、三年かけで議論すべきではないかとの意見がありますが、本案のどこに二年も三年もかけて論じなければならない問題点があるのでしょうか。本法案の速やかな成立を図った上で、宗教活動と市民社会との調和のあり方、宗教と政治のかかわりなど宗教政策の基本や信教の自由に深くかかわるテーマについては、じっくり時間をかけて論議を深めていくことが建設的な論議のあり方ではないでしょうか。
 特別委員会の審議に際しては、公聴会や参考人聴取を通じて幅広い視点からの意見を伺い、正確な事実認識に立つで、冷静かつ精力的に論議を進めるべきと考えますが、所管大臣として文部大臣に御感想があればお聞かせください。
 最後に、今後新たな法整備が必要とあらば、さらに論議を積み重ね、よりよい結論を導き出していくことこそが真に国民の負託にこたえる道であると考えますが、総理の御決意をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣村山富市君登壇、拍手〕
#42
○国務大臣(村山富市君) 齋藤議員の質問にお答えを申し上げます。
 今回の法改正の必要性、目的についての御質問でありますが、先ほど来申し上げておりますように、宗教法人法は昭和二十六年に制定されたものであり、それ以降の社会の状況や宗教法人の実態の変化によって制度が実態に合わない面が生じており、国民からもその見直しを図るべきとの声が高まっているところでございます。
 このようお状況を踏まえ、今回の法改正は、宗教法人がその目的に沿っで活動しているかどうか等を所轄庁が継続的に把握をし、所轄庁としての責任を適正に果たすことができるようにするとともに、宗教法人の管理運営の民主性、透明性を高め、真に信教の自由を保障しようとするものであり、必要最小限の改正を行おうとするものであっで、国民世論にこたえるものであると考えております。
 次に、今回の法改正と信教の自由との関係についてのお尋ねでありますが、今回の法改正の検討に際しましては、信教の自由と政教分離の原則を最大限尊重することとし、現行宗教法人制度の基本は維持することといたしております。
 主な改正点である例えば所轄庁の変更、備えつけ書類の提出義務、閲覧請求権、報告徴収・質問権は、所轄庁が現行法に規定されている責任を適正に果たすことができるようにするとともに、宗教法人の民主的運営や透明性を高めるために必要最小限のものであり、したがって今回の改正は信教の自由を侵害するようなものでは全くなく、将来の運用についても御指摘のような懸念はないものと考えております。
 次に、宗教法人法の認証制度のあり方についてのお尋ねでありますが、宗教法人法の認証は法に定める宗教団体の要件に該当し、かつ団体の規則、設立の手続が適法であるかどうかを所轄庁は審査をし、所定の要件を備えていると認めた場合に行われるものでございます。認証の判断基準の明確化等、認証制度のあり方については、基本的な制度でもあり、今後、慎重に検討することが必要であると考えます。
 なお、その検討に当たりましては、御指摘のように、我が国や諸外国の宗教事情についても必要な調査を行い、基礎的な情報の収集等も積極的に行っていくことが必要であると考えます。
 次に、憲法の定める政教分離の原則は、憲法第二十条第一項前段に規定する信教の自由の保障を実質的なものにするため、国及びその機関が国権行使の場合においで宗教に介入し、または関与することを排除する趣旨でございます。政教分離のあり方をめぐって議論が積み重ねられることは重要と考えますが、政府としては、今後ともこのような政教分離の原則を踏まえ国政に当たってまいる所存でございます。
 次に、新たな法整備についてのお尋ねでありますが、今回の法改正は、御指摘のように、宗教法人制度の適正な運用を図るため必要最小限の規定の整備を行おうとするものでございましで、本法案については速やかに御審議をいただき、ぜひとも今国会で成立をさせていただきたいと考えております。
 また、御指摘のとおり、今後も社会状況の変化などに対応して法整備を図っていくことは十分考えられることであり、これからも必要に応じで十分な議論を行い、よりよい結論を得るための努力を行っていくことが大切であると考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
   〔国務大臣島村宜伸君登壇、拍手〕
#43
○国務大臣(島村宜伸君) 齋藤動議員の御質問にお答えいたします。
 まず、昭和三十二年の宗教法人審議会の答申についての御質問ですが、昭和三十一年初頭、宗教法人による宗教活動をめぐって人権侵害や法令違反等の問題が国会においで取り上げられ、これに関しで決議や政府に対する申し入れが行われました。こうした決議等も踏まえ、昭和三十一年十月、文部大臣から宗教法人審議会に対して、「宗教法人法における認証、認証の取消等の制度の改善方策について」諮問を行ったものであります。
 これを受け、昭和三十三年に出された答申においては、認証、公告、責任役員制度の建前についで、今直ちにこれを改める必要はないが、運営上の事項等については改善すべき点があるとして、十一項目にわたる指摘がなされております。
 この答申については、さまざまな示唆に富むものでありますが、当時は、宗教界の反応を含む社会状況に対する認識もあって、この答申に基づく法改正は行われず現在に至っているものと承知いたしております。
 次に、今回の法改正と当時の検討課題との関係についての御質問ですが、昭和三十三年の宗教法人審議会の答申項目と今回の法改正の項目については、時代背景等も異なることから単純な比較は困難でありますが、例えば三十三年の答申においては、「宗教法人の業務の適正化を図るため、所轄庁は宗教法人の業務及び事業に関し、報告を求め、又はその報告について実情を調査することができるよう明記すること。」とされております。これに関連するものとして、今回の改正においては、所轄庁への財務書類等の提出や、収益事業の停止命令等の事由に該当する疑いがある場合の報告徴収・質問権を改正案に盛り込んでいるところであります。
 このほか、三十三年の答申においては、一般の信者の宗教法人の運営への関与や宗教法人審議会の機構の充実にも触れており、このたびの改正事項である信者等への情報開示や審議会委員の増員の考え方と相通じるところもあると考えております。
 次に、財産保全措置についての御質問ですが、財産保全処分の問題は、宗教法人法の解散命令制度と密接にかかわる問題であり、宗教法人審議会においても解散命令制度のあり方は検討すべき項目の一つに挙げられていたところであります。しかしながら、問題が複雑であり、検討にはかなりの時間が必要なことから、とりあえず優先的に審議すべき項目としては挙げられず、今回の審議会の報告では触れられなかったものであります。
 したがって、この問題は他の公益法人との均衡の観点等も踏まえながら、関係省庁とも連携を図りつつ、今後、慎重に検討されるべき課題であると考えております。次に、宗教情報センターの設置を検討すべきとの御指摘ですが、現在、国民の宗教に関する関心は高く、宗教に関する情報を提供したり相談に応じたりするような組織の設置を求める声が強くなっております。宗教法人審議会では、このような国民の要請が多いことを踏まえ、宗教家を初め弁護士や学識経験者などの関係者が連携協力しで、自主的に設置運営する宗教情報センターについで検討すべきとの提言がなされております。
 このセンターは民間で自主的に設置されることを期待するものでありますが、文部省といたしましても、平成八年度概算要求においで、宗教情報センター構想を視野に入れ、宗教全般にわたる情報の収集、提供等を行うシステムのあり方についての調査研究に要する経費を計上したところであり、こうした方面での検討を進めていきたいと考えております。
 最後に、特別委員会での今後の審議の進め方についての御質問ですが、宗教法人法は昭和二十六年に制定されたものであり、それ以降、社会状況の変化や宗教法人の実態の変化等によって制度が実情に合わない面が生じてきております。また、オウム真理教の事件を契機として、広く国民から制度の見直しを図るべきとの意見が高まっております。文部省としては、信教の自由と政教分離の原則を遵守しつつ、国民の期待に迅速にこたえるため、宗教法人法について必要最小限の改正を早急に行う必要があると考えております。
 したがって、本法案については、速やかに御審議いただき、ぜひとも今国会で成立させていただきたいと考えておりますが、参考人の問題など国会における審議の進め方については国会でお決めいただく事柄であると認識しでおるところであります。(拍手)
   〔国務大臣宮澤弘君登壇、拍手〕
#44
○国務大臣(宮澤弘君) 財産保全措置に関する特別立法についてのお尋ねでございます。
 現行制度のもとにおきましては、個々の債権者らが裁判所の仮差押命令を得まして、財産保全を図ることができることになっております。オウム真理教の財産に対しましても、現に一部でそのような措置がとられたと聞いております。
 御指摘のような立法につきましては、法人一般についで見ますと、法人の監督のあり方でございますとか、法人の解散手続のあり方、他の財産保全手続との整合性などの観点からいろいろ難しい問題がございます。慎重な検討を要する問題であると考えております。(拍手)
   〔国務大臣武村正義君登壇、拍手〕
#45
○国務大臣(武村正義君) 宗教法人に対する実効税率についてのお尋ねでございますが、社団法人、財団法人や宗教法人など、いわゆる通常の公益法人等については、寄附金の限度枠を満額使用したケースを念頭に置きながら一定の仮定のもとに試算をしてみますと、いわゆる実効税率は二八%強となります。御指摘のように、一般の民間法人の実効税率が四九・九八%であることと比較いたしますと、かなり優遇されているものと考えます。
 次に、宗教法人を含む公益法人等に対する課税の適正化についての御指摘でございますが、今後、公益法人課税のあり方の問題として、御指摘がございました軽減税率、収益事業の範囲、金融資産収益への課税、みなし寄附金の特例といった諸点を含めて、その活動実態などを踏まえながら積極的に検討をしてまいります。(拍手)
    ―――――――――――――
#46
○議長(斎藤十朗君) 阿部幸代君。
   〔阿部幸代君登壇、拍手〕
#47
○阿部幸代君 私は、日本共産党を代表して、宗教法人法の一部を改正する法律案について質問します。
 私の知り合いの中には、信仰を支えに毎日元気に暮らしでいるお年寄りや、反核平和運動に取り組む宗教家など、さまざまな宗教の信者の方がいます。日本共産党は、こうした方々はもちろん、国民すべての信教の自由と政教分離の原則を現在も将来も擁護することを党の綱領に明記しています。この立場から質問いたします。
 オウム事件は、我が党緒方参議院議員宅電話盗聴事件に関与した神奈川県警が、坂本弁護士一家の拉致事件を失踪事件と扱って真剣に取り組まなかったなど、警察や行政の側の怠慢が問題になりました。同時に、オウム事件は、現行宗教法人法の矛盾や不合理を浮き彫りにしました。
 そこで、まず宗教法人法の基本的性格についで伺います。
 そもそも宗教法人法とは、宗教活動の内容ではなく、法人としての財産の管理運営など、いわば世俗的な事項について定めでいるものであることは明白だと思いますが、いかがですか。
 この世俗的部分を現実に即しで改正することは、国民の圧倒的多数の声で、当然のことであり、それは憲法で保障された信教の自由と政教分離の原則を守ることとは何ら矛盾するものではないと思いますが、いかがですか。
 ところが、一部の巨大宗教団体や政党は、いまだに、宗教法人法は出生届と同じであり、ノーサポート・ノーコントロールなどと言って、行政は宗教法人に一切関与してはいけないと言っています。この議論に立ては、宗教法人法によるオウム真理教への解散命令にも反対ということになります。また、当初から社会的に大きな問題を起こしていたオウム真理教のような集団についても、出生届ということで宗教法人としての認証も当然であり、一たん認証したら認証取り消しはするべきでないということになるのです。全くの筋違いの論ではありませんか。
 次に、法改正の具体的内容についてですが、全国的な活動をしている宗教法人の所轄庁を文部省に移すことは、オウム事件の教訓に照らしても当然のことであります。この点について、文部大臣は既に、現行法でも文部省所轄の包括宗教法人である三百七十三法人から、「国家統制を受け、信教の自由を侵害されたという苦情などは聞いたことがありません。」と答弁しました。所轄庁の変更と信教の自由との関連についで、宗教法人法の本質上、政府はどう考えているのでしょうか。
 信者その他の利害関係人に対する閲覧による情報開示や所轄庁への報告等についても、宗教法人と所轄庁双方にとって当然かつ必要最小限の措置であり、現行宗教法人法の性格を変えるものではないことも当然ではありませんか。
 国家統制と信教の自由の侵害を危惧する宗教関係者の不安を取り除くために、以上の点についで総理並びに文部大臣の明快な答弁を求めます。
 オウム事件を契機に宗教法人のあり方そのものが問題になり、その中で宗教と政治のかかわりも大きな国民的議論を呼んでいます。それは宗教と政治の異常とも言える癒着の問題で、我が国の自由と民主主義の発展にとってゆるがせにできません。
 宗教者や宗教団体が広い意味での政治参加の権利を持つことは当然であり、反核平和運動や環境問題など、宗教団体がその性格にふさわしい課題と方法で社会運動、政治運動を行うことは好ましいことです。しかし、宗教団体が特定の政党と議員候補者の支援を機関決定して、共通の信仰に基づいて集まった信者一人一人の政治活動と政党支持の自由を奪うことは絶対に許されません。これは民主主義の初歩的原則であります。
 こうした民主主義擁護の立場から、今回の法改正について宗教弾圧だと異常に反応している創価学会の宗教法人としての域をはるかに超えた特定政党支持活動と選挙活動に疑問の声、批判の声が上がるのは当然ではないでしょうか。
 衆議院で我が党の正森議員は、創価学会の政教一致の問題を明らかにしました。先日の参議院佐賀補欠選挙でも、佐賀文化会館を初め県下八カ所ある創価学会の施設は、県外からも動員された数万の学会員の新進党候補支援の選挙活動の拠点となり、佐賀県外ナンバーの車両もあふれたと報道されている上、十一月三日の聖教新聞佐賀版では、池田名誉会長が「佐賀の地を勝ちで築かむ栄光の長者の城にと確固と楽しく」という叱咤激励の和歌を詠み送っています。
 総理は、宗教法人が選挙活動を行うことを主たる目的とすることは宗教法人法上予定されていないと答弁されましたが、異常とも言える特定政党支援の活動と選挙活動が宗教法人としてふさわしいものかどうか、さらなる見解を求めます。
 こうした政党と見まごうばかりの政教一致の活動を繰り広げている宗教法人に、ほかの公益法人同様に税制上の非課税措置などの優遇措置を与え続けでよいのでしょうか。
 宗教法人としての保護や課税上の優遇を受けながら、創価学会は全国一千と言われる文化会館や研修所を使って選挙活動を行っていますが、この施設の固定資産税は宗教施設ということで課税されてはいません。政党は固定資産税をきちんと払っています。これでは公平な選挙というのは保障されないのではありませんか。法のもとの平等に反するのではありませんか。総理並びに自治大臣の見解を求めます。
 宗教法人法の改正について、信教の自由の侵害だと声高に反対している創価学会では、脱会者に対して、「この世から消え去れ」とか「裏切り者、日本から出ていけ」など、常軌を逸した嫌がらせや脅迫が相次いでいるとの訴えがあり、私もその訴えを見て驚きました。百七十件に上るその訴えの中には警察に届け出ているものが二十五件もあります。被害者の会もつくられて活動しています。これではまさに出入り自由どころか、信教の自由が脅かされているのではありませんか。総理に伺います。
 最後に、宗教法人を隠れみのにしたオウム真理教の凶悪事件は国民に大きな犠牲と不安をもたらしました。十月三十日、東京地裁から解散命令が出されましたが、宗教法人法による解散措置と刑事罰を厳格に適用しで、オウム真理教の残忍きわまる犯罪行為の根を絶つことが重要です。そのためにも、清算人によって宗教法人としての活動を停止させ、活動拠点となっている施設、資産の管理や、現に画策されている財産隠匿工作の防止、被害者への弁償等を進め、さらに施設から退去する信者の社会復帰を援助する方策を立てるため、政府は、関係省庁会議を開くなど直ちに万全の対策を講ずるべきではありませんか。総理の決意を伺います。
 信教の自由はもとより、集会、結社、表現の自由を奪う憲法違反の破防法をオウムを口実に発動するようなことは断じであっではなりません。このことを指摘して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣村山富市君登壇、拍手〕
#48
○国務大臣(村山富市君) 阿部議員の質問にお答えを申し上げます。宗教法人法の規定する内容についてのお尋ねでありますが、宗教法人法の目的とするところは、宗教団体に法人格を与え、宗教法人が自由でかつ目主的な活動をするための物的基礎を確保することにございます。宗教法人法は、憲法の信教の自由、政教分離の原則から、宗教法人の宗教的事項についでではなく、法人としての管理運営に関する事項について規定しているものでございます。
 次に、今回の法改正と信教の自由との関係についてのお尋ねでありますが、今回の宗教法人法の改正は、昭和二十六年の法制定以来の社会状況や宗教法人の実態の変化に対応して、宗教法人制度の適正な運用を図るため、信教の自由と政教分離の原則を遵守しつつ必要最小限の規定の整備を行うものであり、所轄庁が現行法に規定されている責任を適正に果たすことができるようにするとともに、宗教法人の民主的運営や透明性を高めるものでございます。
 したがって、今回の法改正は、信教の自由を侵害するようなものではなく、信教の自由と政教分離の原則を守ることとは全く矛盾しないものであると考えております。
 次に、宗教法人法の基本的性格は出生届と同じでノーサポート・ノーコントロールであるとする議論についての御質問でありますが、宗教法人法は、宗教団体の目的達成に資するため、宗教団体に法人格を与えることを目的とするものであります。宗教団体が法人格を与えられたことに伴い、宗教法人の側としても、宗教法人の公共性に対応した公正な管理運営を確保する責務があると考えられます。そのため、宗教法人の管理運営について法律に所要の規定を置き、その適正を図ることとしているところでございます。
 ノーサポート・ノーコントロールということがどのような趣旨であるのか必ずしも明確ではありませんが、国として宗教法人に対して全く関与しないという趣旨であるとすれば、宗教法人法はそのようなものではないと考えております。
 次に、所轄庁の変更と信教の自由との関連についてのお尋ねでありますが、今回の法改正は、所轄庁が宗教法人法上期待されている責任を適正に果たすことができるよう、複数の都道府県で活動を行う宗教法人の所轄庁を文部大臣とするものであります。また、所轄庁が都道府県知事から文部大臣にかわっでも、宗教法人に対する所轄庁の権限の内容は全く同じであります。現在も広域的に活動している包括宗教法人は文部大臣の所轄でございますが、国による介入というようなことは全くありません。
 したがって、今回の法改正により所轄庁が文部大臣となっても、宗教法人の信教の自由を侵害するようなことは全くないと考えております。
 次に、備えつけ書類の所轄庁への提出及び信者その他の利害関係人による閲覧請求権についてのお尋ねでありますが、今回の法改正では、法第二十五条の備えつけ書類のうち一定のものについで所轄庁に定期的に提出を求めることとし、また、正当な利益のある信者その他の利害関係人に対して、備えつけ書類の閲覧を認めることとしております。これは所轄庁が現行法上の責任を適正に果たすことを可能にし、また、宗教法人の民主的運営や透明性を高めるためのものであっで、今回の法改正によって宗教法人法の性格が変わるようなことはございません。
 次に、宗教法人の特定政党支援活動と選挙活動が宗教法人としてふさわしいものかどうかについてのお尋ねでありますが、憲法の定める政教分離の原則は、信教の自由の保障を実質的なものとするため、国その他の公の機関が国権行使の場面においで宗教に介入し、または関与することを排除する趣旨であって、それを超えて宗教団体が政治的活動をすることを排除する趣旨のものではないと考えております。
 したがって、特定政党と宗教法人とがお互いに協力する事態があったとしても、そのことだけで政教分離の原則に反するとは言いがたいと考えています。
 ただし、宗教法人については、宗教活動を行うことを主たる目的とすることを要件として法人格を取得しているのでありますから、宗教法人が政治活動を主要な活動とすることについでは宗教法人法上予定されていないと考えておることはさきにも述べたとおりであります。
 次に、宗教法人に対する非課税措置についてのお尋ねでありますが、固定資産税につきましては、宗教の教義を広め、儀式行事を行い、信者を教化育成するという宗教活動の公益性にかんがみ、宗教法人の所有する土地や建物のうち、専ら宗教活動の用に供する境内建物及び境内地については非課税措置が講じられております。
 こうした宗教法人に対する固定資産税の非課税措置と選挙との関係についで、一般論として申し上げれば、宗教団体は政治活動を禁止されてはおらず、政党や候補者を支援することも公職選挙法の規定に従う限り行うことができるものであり、御指摘のような事例が、別途、宗教と政治の関係や公平な選挙の保障といった観点から論議がなされることはあろうかと思いますが、課税上の優遇措置の有無とは直接関係ないものと考えております。
 次に、宗教団体の脱会者が信教の自由を脅かされているのではないかとお尋ねでありますが、信仰の自由な選択の妨害は、宗教団体も含めいかなる場合も許されないものであり、自己の信仰に基づく行動であっても他人の信教の自由を侵害することは許されないものであります。
 また、宗教法人法は、「この法律のいかなる規定も、宗教団体が公共の福祉に反した行為をした場合においで他の法令の規定が適用されることを妨げるものと解釈してはならない。」と規定しているところであり、法律に違反するような行為に対しては、当該法律に基づき適正に対処されるべきものと考えるものであります。
 次に、オウム真理教の解散請求等に関連して万全の対策を講ずるべきではないかとのお尋ねでありますが、一連のオウム真理教による犯罪につきましては、社会秩序や治安情勢を大きく揺るがす卑劣かつ重大な事件であると認識しているところでございます。
 全国警察においても所要の捜査体制をとり、オウム真理教関係指名手配者の早期発見、検挙に努めるなど、徹底した捜査を行うことはもちろん、オウム真理教による凶悪犯罪の再発防止については、同教団の動向の把握に努め、また、現行法令を有効かつ的確に適用して万全の措置をもって臨む所存であります。
 また、解散命令の請求につきましては、現在、東京高等裁判所で教団が行った即時抗告についての審理が行われるところでございます。解散命令の決定が確定すれば、宗教法人は清算の目的の範囲内で存続するにすぎず、清算が結了すれば法人格を喪失することとなります。財産隠匿の余裕を与えないためにも、できるだけ早期に解散命令が確定するよう期待しているところでございます。
 さらに、信者等の社会復帰対策につきましては、政府として、御指摘もございましたように、関係省庁等の対応策を踏まえつつ、政府全体で連携を図り対応していくため、去る六月から関係省庁の局長から成る連絡会議を設置し、現在、山梨県等からの要望を踏まえ、多岐にわたる具体的諸問題についての検討を進めてまいる所存でございます。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
   〔国務大臣島村宜伸君登壇、拍手〕
#49
○国務大臣(島村宜伸君) 阿部幸代議員の御質問にお答えいたします。
 まず、宗教法人法の規定する内容についてのお尋ねでございますが、宗教法人法の目的とするところは、宗教団体に法人格を与え、宗教法人が自由でかつ自主的な活動をするための物的基礎を確保することにあります。
 宗教法人は、宗教的事項と法人としての管理運営に関する事項の二面の機能をあわせ持っておりますが、宗教法人法は、憲法の信教の自由、政教分離の原則から、宗教法人の宗教的事項についてではなく、法人としての管理運営に関する事項についで規定しでいるところであります。
 次に、今回の法改正と信教の自由との関係についてのお尋ねですが、今回の宗教法人法の改正は、昭和二十六年の法制定以来の社会状況や宗教法人の実態の変化に対応し、宗教法人制度の適正な運用を図るため、信教の自由と政教分離の原則を遵守しつつ必要最小限の規定の整備を行うものであり、宗教法人の自由と自主性、責任と公共性の要請から組み立てられている現行宗教法人制度の基本は維持することとしております。
 今回の宗教法人法改正の主な内容は、第一に、二以上の都道府県で境内建物を備えて宗教活動を行う宗教法人の所轄庁は文部大臣とすること。第二に、一定の信者その他の利害関係人に備えつけ書類の閲覧請求権を認めること。第三に、備えつけ書類のうち一定のものについて定期的に所轄庁に提出する義務を宗教法人に課すること。第四に、宗教法人が宗教法人法第七十九条第一項、第八十条第一項、または第八十一条第一項に規定する事由に該当する疑いがある場合に、宗教法人に報告を求め、質問する権限を所轄庁に与えることであります。
 これらは、所轄庁が現行法に規定されている責任を適正に果たすことができるようにするとともに、宗教法人の民主的運営や透明性を高めるためのものであります。
 このように、今回の法改正は、信教の自由を侵害するものではなく、信教の自由と政教分離の原則を守ることとは全く矛盾しないものと考えております。
 次に、宗教法人法の基本的性格は出生届と同じでノーサポート・ノーコントロールであるとする議論についての御質問でございますが、宗教法人法は、宗教団体の目的達成に資するため、宗教団体に法人格を与えることを目的とするものであります。そして、法人格を与えられたことに伴い、宗教法人の側としても宗教法人の公共性に対応した公正な管理運営を確保する責務があると考えられます。
 そのため、宗教法人の管理運営に関しては、責任役員制を設けるとともに、重要事項についで信者等に知らせるための公告制度を定めております。また、収益事業の停止命令、認証の取り消し、解散命令の請求など、所轄庁の権限が法律に規定されております。
 このように、宗教法人法は、所轄庁の認証により宗教団体に法人格を与える一方で、宗教法人の適正な管理運営を図るため、所轄庁の権限等、所要の規定を置いているところであります。
 ノーコントロール・ノーサポートいうことがどのような趣旨であるか必ずしも明確ではありませんが、この言葉が国として宗教法人に対して全く関与しないという趣旨であるとすれば、宗教法人法はそのようなものではないのであります。
 次に、所轄庁の変更と信教の自由との関連についてのお尋ねですが、御指摘のとおり、都道府県知事が所轄している宗教法人が複数の都道府県で広域的に活動をしている場合、その都道府県知事が活動状況を把握することは、オウム真理教の例を見てもおわかりのとおり無理があります。したがって、今回の法改正では、複数の都道府県で活動を行う宗教法人の所轄庁を文部大臣とすることといたしております。
 なお、所轄庁が都道府県知事から文部大臣にかわっても宗教法人に対する所轄庁の権限の内容は全く同じであり、また、宗教法人は、所轄庁がどこかにより活動が制限されるものではなく、自由にどこでも活動できるものであります。所轄庁がどこかを決める基準も、境内建物が二以上の都道府県にあるかどうかであり、外形的、客観的にとらえられるものとしております。
 したがって、所轄庁が宗教活動に対して何ら干渉するものではなく、信教の自由を侵害するものでは全くありません。
 最後に、信者その他の利害関係人に対する閲覧及び所轄庁への報告についてのお尋ねですが、今回の法改正により、備えつけ書類のうち一定のものについで所轄庁に定期的に提出を求めることとするのは、宗教法人がその目的に沿っで活動していることを継続的に把握し、所轄庁が宗教法人法を適正に運用できるようにするためのものであります。
 また、備えつけ書類を閲覧することについて正当な利益があり、かつ不当な目的によるものでないと認められる信者その他の利害関係人に対してこれらの書類の閲覧を認めることとするのは、これらの信者その他の利害関係人の一層の利便を図るとともに、宗教法人のより民主的な運営や透明性を高めるものであります。
 今回の法改正は、所轄庁が現行法上の責任を適正に果たすことを可能にし、また、宗教法人の民主的運営や透明性を高めるためのものであり、宗教法人法の性格を変えるようなものではないのであります。
 以上です。(拍手)
   〔国務大臣深谷隆司君登壇、拍手〕
#50
○国務大臣(深谷隆司君) 阿部議員から、宗教団体に対する固定資産税の非課税と選挙についての御質問がございました。
 一般論でございますけれども、宗教団体が政治活動を行うことは許されていることであり、政党や候補者を支持することももちろん許されていることであります。申すまでもなく、それは公職選挙法の厳しい規定に基づいでということでありますが、いずれにいたしましても、そのことと課税の優遇措置とは直接関係ないと思っております。
 なお、固定資産税について申し上げますと、宗教の教義を広め、儀式行事を行い、信者を教化育成するという宗教活動の公益性にかんがみて、宗教法人が所有する土地や建物のうち、専ら宗教活動の用に供する境内建物及び境内地については非課税措置が講じられでおるのであります。しかし、その施設が宗教本来の用に供しているかどうかは重要な問題だと考えております。この点は、宗教法人の各施設の利用の実態を見で、各市町村において判断さるべきものと考えます。
 私どもといたしましては、今後とも利用実態の適正な認定が行われるように必要に応じて市町村を指導しでまいりたい、そう思っております。
 また、宗教法人も含めた公益法人の法人所得税の問題については、税制調査会におきましてそのあり方について検討を要する、こういう話も出ております。ぜひ、一般の問題も含めて、今後、税のあり方については、税制調査会の審議の内容も含め、国会の議論と国民の声に耳を傾けながら検討すべき課題の一つと思っております。
 以上です。(拍手)
#51
○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五分散会
ソース: 国立国会図書館
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