くにさくロゴ
1995/03/10 第132回国会 参議院 参議院会議録情報 第132回国会 法務委員会 第4号
姉妹サイト
 
1995/03/10 第132回国会 参議院

参議院会議録情報 第132回国会 法務委員会 第4号

#1
第132回国会 法務委員会 第4号
平成七年三月十日(金曜日)
   午前十時十一分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 三月六日
    辞任         補欠選任
     國弘 正雄君     三石 久江君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         中西 珠子君
    理 事
                下稲葉耕吉君
                糸久八重子君
                荒木 清寛君
                平野 貞夫君
    委 員
                斎藤 十朗君
                志村 哲良君
                鈴木 省吾君
                北村 哲男君
                深田  肇君
                山崎 順子君
                翫  正敏君
                紀平 悌子君
                安恒 良一君
   国務大臣
       法 務 大 臣  前田 勲男君
   政府委員
       法務大臣官房長  原田 明夫君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  永井 紀昭君
       法務省訟務局長  増井 和男君
       法務省人権擁護
       局長       筧  康生君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   涌井 紀夫君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   堀籠 幸男君
       最高裁判所事務
       総局民事局長
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  石垣 君雄君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        吉岡 恒男君
   説明員
       防衛施設庁施設
       部施設対策第二
       課長       山口 金一君
       自治省行政局選
       挙部政治資金課
       長        鈴木 良一君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
○阪神・淡路大震災に伴う民事調停法による調停
 の申立ての手数料の特例に関する法律案(内閣
 提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(中西珠子君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る六日、國弘正雄君が委員を辞任され、その補欠として三石久江君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(中西珠子君) 次に、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○下稲葉耕吉君 提案されております法律案につきまして、若干の質問を申し上げたいと思います。
 実は、先日、大臣の提案理由説明を伺いました。私も当委員会に長いことお世話になっておるものですから感じたわけでございますが、どうも大臣の趣旨説明を聞いていると、どこかでか聞いたことのあるような説明だなと思いまして、前年の説明、さらにその前の説明、さらにその前の説明を調べてみました。そうしましたら、文章は全く同じで、違うところはどこが違うかといいますと、その時々の増員の人数が違うものですからそこだけ違うんですね。あとはもう一字一句、平成七年、平成六年、平成五年、変わらないんです。
 ただ、平成四年が破産事件というのが抜けておるだけでございまして、結局、平成五年以降破産事件がふえたものですから増員の理由の中にそういうふうに書いてある。しかし、平成五年、六年、七年金く同じで、人数が違う。人数はその時々の予算の関係で、総務庁あるいは大蔵省との折衝の過程で決まってくるものですから、そこだけが違う。
 そういうふうなことを見まして、さて、じゃどういうことなんだろうと。毎年のように、こういうふうに裁判所の職員の増員の法律案が提案されるんだけれども、果たしてじゃ、裁判所の判事さんを含めて職員の方々のあるべき裁判所像といいますか、これはどういうふうなものであろうかということをつくづく感じたわけでございます。
 最近、いろいろ重要な最高裁の判決というものが次々に出されております。そして、司法に対するマスコミの関心というのも大変多うございますし、国民の関心というものもぼつぼつわいているんじゃないかと思うんです。
 二割司法という言葉がございます。要するに、国民の人たちはいろいろ裁判所なりなんなりに訴えを起こしたいんだけれども、訴えを起こすのは時間がかかる、金がかかる、タイムリーでないというふうなことのために裁判に訴えないでいろんな形で解決しようと。
 かつて、私、昔、ある県の警察の責任者をやっていたことがあるんですが、暴力団が非常に力を伸ばしていました。で、どういうことだろうかと。暴力団が社会に定住する一つの理由の中に、仮に債権の百万円なら百万円の取り立てをしようというところで、できなくなっちゃった。私どもに相談があれば、それは裁判に訴えなさいと、こう言うんですね。ところが、仕事をなさっている方は、裁判に訴えるとまず時間がかかる、費用がかかる。ところが、百万円なら百万円の取り立てを暴力団に頼みますと、百万円丸々返ってこなくても七十万ぐらい返ってくる。その七十万のうち二十万を暴力団にお礼にしても、まだ五十万残る。これはすぐ使える。そういうふうなことだものですから、その辺に暴力団が残る理由、社会的に存在する理由。いいことじゃございませんよ。
 ということは、国民からこういうような司法、裁判というものが何か遠いところへ行っているような感じがする。そういうようなのが一般的な感じじゃないかと思うんです。
 それから、さらに最近の報道を見てみますと、例えばきのうも、三月九日、これは読売ですね、社会面のトップに「司法試験は変わるのか」、そうすると、弁護士会の中で対立があって、ふえ過ぎると仕事が減る、まあ弁護士さんの方もおられて恐縮でございますが、こういうふうな見出しで書いてございますね。
 それから、その前日の三月八日の日経の「春秋」のコラム欄、これも結局、裁判と国民が離れているじゃないかと、一度傍聴をのぞいてみてはいかがかというのがこれは結論。こう出ていますね。
 それから、まだいろいろございました。例えば日経新聞でございましたかにも、例えばロッキードの判決が二十年かかっております。何で二十年もかかるんだと。特に、最高裁は事実審理もしないのに八年もかかっている。八年といいますと、この記事によりますと、小学校に入学した子供が義務教育を卒業する、ぼつぽつ同じ年じゃないかと。その間、事実審理もしないで、この程度の判決を書くのに八年もかかるというのは、よっぽど最高裁の知能指数を疑う、こういうふうな記事が書かれているんですよ。
 そういうふうなことからいいますと、今、司法に対する国民の関心なりなんなりというのは、こういうふうに書かれてきておる。片や、毎年、提案理由は十年一日のごとく同じ表現で、同じ文章で、ただ人員だけが何人か変わっておるだけだ、と。
 そこで、私がまず御質問したいのは、実際、裁判所の職員なりなんなりというものは、現在の受理件数、これは民事、刑事ございますね、に対応して、そして国民が早い審判をしてほしい、早く判決を下してほしい、そういうふうなニーズにこたえるためには果たしてどれぐらい、今おおむね三千名ぐらいというふうに私記憶しておるわけでございますが、の裁判官の必要があるのかどうか、職員の必要があるのかどうか。
 もちろん、政治情勢あるいは経済情勢あるいは国際的な経済関係の問題、それを受けての犯罪の発生件数あるいは民事訴訟の提起の状態というふうなものは刻々変わりますけれども、一応の見通しを立てて、あるべき裁判所の像といいますか姿というものはどういうふうなことだというふうなお話を私は何回かしたことがあるんだけれども、ちっともそういうふうな反応がない。それで、十年一日のごとく増員してください。私どももいろいろな請願に対しまして、増員についてだけは全会一致で採決をしているというのが実情なんですが、その辺の基本的な問題について、まず最高裁判所の方から御答弁いただきたいと思います。
#5
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 大変多面的な考量が必要な、非常に難しい問題でございまして、簡単にわかりやすくというのはなかなか難しいのでございます。
 ただ、非常に抽象的に申し上げますと、裁判所の使命というのは事件の処理でございますので、やはり裁判所に持ち込まれます事件、量の面でもきちんと処理ができないといけないだろう。それからもう一つは、やはり処理の中身の問題でございまして、裁判所である以上、やはり中身自体正しい裁判をやっていかないといけないという点があろうかと思います。
 ただ、委員御指摘のように、今裁判所に一番国民の皆様から御要望が出ておりますのは、何としても裁判のスピードが遅いのではないか。今のような社会のテンポが非常に速くなってきておりますと、もう少し速いテンポの事件処理をやっていかないと裁判所というものの機能が本当に果たせないじゃないかという、そういう御指摘であろうかと思っております。その点はまことに、そういう御指摘、我々も問題であると痛感しておりまして、その点での改善を今いろんな方面で図っているところでございます。
 ただ、これ、それじゃ理想の姿というのはどういう姿なのか、数字で言えるのかといいますと、なかなか難しゅうございます。これはいろんな事件がございまして、例えば国民の皆さんが裁判所を御利用になります場合にも、専門家の弁護士さんをお願いしないで御自身で裁判所にお持ち込みになる事件というのがございます。これは主として簡易裁判所に提起されますようなごく簡単な事件でございますが、平均的な数字で申し上げますと、簡裁の訴訟事件といいますのは平均しますと二カ月から三カ月程度では判決まで行っておるわけでございまして、そういう意味では数字の上ではまあまあな数字だという見方もできようかと思います。
 それから、地裁の事件でありましても、全体の平均をとってみますと、裁判所に事件が起こされましてから十カ月程度では判決まで行っておるわけでございまして、これ自体も考えようによってはまずまずの線だという見方もできようかと思います。
 ただ、これ実は、何の争いもなく終わった事件も皆含めた数字でございますので、本当に、ある意味でその当事者間に相当の争いがある事件になりますとなかなかこうはまいりませんで、例えば証人を二、三人は調べないといけないというような事件になってまいりますと、平均的な感じでやはり二年くらいはかかっておるんじゃなかろうかと思います。
 我々、今一番問題だと思っておりますのは、こういうごく平均的な事件、争点の整理にもある程度時間がかかり、また証人についても二、三人の証人は調べないといけない事件、せめてこういう事件については一年ぐらいでは判決するようにできないものだろうか。そういうふうなことを考えまして、そのためにどういう施策を講じていったらいいかというふうなことを考えておるわけでございます。
 この施策としましては、もちろん増員だけではございませんで、今の民事の裁判のやり方自体、いろんな意味で変えていかないといけないだろうと思います。民事訴訟法の改正の論議というのは、そういう観点から、民訴の審理のあり方自体もう少し効率的なものに変えていこうということで今議論がされておるわけでございますが、そういうふうなものも踏まえまして、しかしゃはりある程度人員面での手当てというのも必要になるだろう、そういったところも見ながら、毎年増員をお願いしてきておるというのが現状でございます。
#6
○下稲葉耕吉君 この問題は、私はもっともっと掘り下げて、一つの哲学と言っちゃ言葉がオーバーかもしれませんが、何かそういうふうなものが欲しいというふうな感じがするんです。
 実態がなかなかわかりにくいんです。資料要求をいたしまして、資料を届けていただきました。例えば、最高裁の民事訴訟既済事件の平均審理日数というのをいただきました。そうしますと、みんな最高裁で十カ月以下という結論なんですよ。平成五年が九・三カ月、平成四年が七・六カ月、平成三年が七・七カ月というふうなことになっている。それから、刑事事件につきましても最高裁、大体六カ月未満で審理が終わっていると。私ども信用できないんですよ、率直に言って。それはなぜかというと、今おっしゃるように、着いて、はい、すぐということで門前払いの事件なんかが多いものだから、結果として平均六カ月未満になっているんです。
 そうすると、片や、こういうふうに「最高裁は」民主主義をひねくって「「官」主主義か」という見出しで、二十年もかかっている。しかも、先ほど申し上げましたように、最高裁の事実審理もない事件ですら八年かかっている。じゃ、八年と、この五・七カ月というのはどういうふうな関係があるのか。これは非常にまれな事件がというふうな感じがするんですよ。だからその辺のところを、五・七カ月だからいいんだというふうなわけには私は絶対いかないということだと思うんです。
 選挙関係のいわゆる公選法違反の問題については、各審百日裁判というふうなことでお願いしまして、大体そういうふうな方向で進んでおられるということは、これは実態として私どもわかるわけなんです。それは、選挙関係の違反というものは、裁判、裁判、裁判で逃げられちゃ困るというふうなことで政治家サイドでああいうふうな取り決めをしまして、そしてお願いして、そして各裁判所が御努力いただいているということはわかるんです。
 同じような形で、やっぱり公選法の事件ばかりじゃなくて、およそ裁判というのがスムーズにいくということが、迅速に進むというのが、国民の信頼を取り戻して、二割司法という言葉がなくなる、私は、基本的な根っこの議論じゃないだろうかと、こういうふうに思います。
 そういうふうな意味で、いつも申し上げることですけれども、ひとつ基本的にいろいろ掘り下げていただいて、そして国会なり国民に訴えていただくということじゃなかろうかと、こういうことをお願いいたしたいと思います。
 それで、大臣にお伺いいたしたいと思うんですけれども、大臣の立場で、法曹、裁判所と検察庁あるいは弁護士会、いろいろございます。どういうふうな形で法曹三者というのがあるべきかという議論があると思うんです。
 私どもは、それは裁判官、検察官、そして弁護士さんもまた不十分だと思うんです。殊に弁護士さんなんかにとって、外国と比べてみますと、まあアメリカは特別に多過ぎると思いますが、やはりなかなか人口当たりの弁護士さんの数というのを比べてみるとこれもう圧倒的に少ないし、あるいは検察官にしても果たしてどうだろうかというふうな感じがします。
 弁護士会の中でも意見がまとまらないというようなことのようでございます。片や、司法試験制度を改革して五百名だったのを七百名にする、あるいは七百名でいいかどうかという議論もある。もう少し合格しやすいためには、若い人たちを採るためにはどういう、制度を変えればいいという議論もある。あるいは合格者をもっとふやそうという議論もある。あるいは今の二年間の司法修習生制度がいいかどうかという議論もある。
 私は、そういうふうなものをやはり検討を深めて、そして国民のニーズにこたえられるような体制にいかに持っていくかということは大変大切なことであって、司法というものが国民から離れ過ぎている、それを何とかやはりもっともっと近づけるためにお互いに努力すべきじゃなかろうかと、このように思うんでございますが、時間も余りございませんので、ほかの質問の通告をいたしましたが、これでやめますけれども、最後にひとつ大臣の御答弁をお伺いしたいと思います。
#7
○国務大臣(前田勲男君) 大変耳の痛いお話も数多くいただいたわけでございます。
 いずれにいたしましても、我が国の社会が成熟化し、国際化が進展し、殊に国際化の中で契約化社会というのがこれからもますます進んでくるという世界の情勢の中に置かれた中で、今日の法曹界の抱える基本的な問題点を御指摘いただいたわけでございますが、まさに先生おっしゃるとおり、私もこの法務大臣という職をお与えいただきましてから、いかに国民と司法との距離が離れてしまっているかということを痛切に感じておる一人でございます。
 その中身については、まさに御指摘の中にもございましたが、例えば訴訟、裁判の長期化等ございまして、世間の感覚からいけば全く別世界の時間的感覚でとり行われ、中には、出た判決ももう既に時代が変わり空洞化をしてしまっている。まさに歴史の本を読み返すような時には感じすらいたすこともあるわけでございまして、こうした点がいわば国民の司法離れということにつながってきておるのではないかというような気がいたします。
 いずれにいたしましても、これからの時代に向けても、国民が正当な権利行使をするということ、これが阻害されるようなことがあってはならないわけでございますし、先ほど先生も御指摘ございましたが、司法以外のところで解決を図る傾向、私も関西方面は特にそういう傾向が強いことはもう前々から存じておりまして、裁判へ訴えて百万円早くもらうよりも、暴力団に訴えて先に何ぼか、何割がもらった方がいいという市民的風潮すら実はあることに大変残念な気持ちを持っておりまして、こうした意味では、少し話が飛んでしまいますが、今回の震災のいわば処理、解決につきましても、まさに法曹界のいわば真価を問われている大事な時期でもあろうというような気もいたしております。
 司法というのは、一般国民の目から見ると、何かはるか遠くにそびえる気高い山のような感じがして非常に近づきがたいと。また、身近な弁護士制度においても、やはり弁護士さんに相談したといういろいろアンケートをとりましても極めて、これもまさに二割台というような状況の中で、いかにやはり司法改革、国民のニーズに合った司法に向けて改革をしていくかという法曹三者のまさに心がけが基本に大きくなければならない、かように思っておるところでございます。
 具体的には、法曹養成制度等改革協議会等におきましてもこうした観点からいろいろ議論をいただいておるところでございますが、こうした基本の問題を常に問題意識を持って、この改革協議会等々におきまして三者それぞれの課せられた使命を尽くすべく努力をし、協議をし、そして具体的にしていかなければならない、かように感じておるところでございます。
#8
○下稲葉耕吉君 終わります。ありがとうございました。
#9
○糸久八重子君 社会党の糸久でございます。
 私は、この数年、裁判所職員定員法改正案の審査に携わってまいりました。国民の裁判を受ける権利を実質的に保障するためにも、本案に対しては賛成でございます。
 ただし、昨年の定員法審査のときにも問題点として提起をいたしましたが、裁判所職員の定員増には科学的な増員根拠がほとんど見られておりませんし、また説明資料も大変不親切であるのではないかというふうに考えます。
 趣旨説明を見ましても、「地方裁判所における民事訴訟事件の適正迅速な処理を図るため、判事補」を、そして、「地方裁判所における民事訴訟事件、民事執行法に基づく執行事件及び破産事件の適正迅速な処理を図る等のため、裁判官以外の裁判所の職員を」それぞれ何人増員すると述べているだけでございまして、どの程度事務量が増加しているのか、また増員数、積算の根拠がどうなっているのかそして今回の増員によってどの程度適正迅速な処理に寄与すると推定できるのか等々、現状と改正の効果をうかがわせる説明は全くなされておりません。
 また、巻末の参考資料を見ましても、増員理由や欠員状況は記述されておるのですけれども、本当の実態をうかがい知るような資料にはなっておらないわけでございます。各事件数の統計表や審理期間の統計につきましても、単純機械的な統計で、事件の質とかそれから傾向、それから審理の難易度等はそれからは把握できません。
 かつて衆議院でも、二年前でしたか、増員理由の科学性のなさとかあいまいさについても指摘があったようでございますし、また昨年の本委員会でも、資料を出していただかないとなかなか理解できないと下稲葉理事からの御発言もございました。
 最高裁判所当局には、今回の増員理由を実証的、科学的にまず説明をしていただきたい。各増員理由のほかに、定員積算の根拠とか、それから増員によります改善の見通し等を含めて御説明をいただけたらと思います。
#10
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 増員の積算というのは、委員御指摘のように非常に難しい、いろんな要素を考えてやらないといけない点がございますものですから、なかなか数字で割り切ることができない面がございます。
 ただ、ごく概括的に申し上げますと、例えば今回増員をお願いしております中に、地方裁判所における民事訴訟の審理を充実するために裁判官を十二名増員したいという要求がございます。これは、先ほどもちょっと申し上げましたんですけれども、地方裁判所の民事訴訟事件、現在の数値、資料の中にも挙げておきましたけれども、全事件平均ですと十カ月程度で終わっておるわけでございますけれども、例えばこれが、相手方が法廷に出頭いたしまして実質的に争いのある事件というふうなものになってまいりますと、現在でも全事件平均しましても十七カ月ということですから、一年五カ月程度でしょうか、それぐらいの期間を審理に要しているような状況でございます。
 これも、さらに何人か証人を調べないといけないような、争いの中身がより実質的な事件になってまいりますと、やはり審理に二年くらい要しているような実情であると。こういう点をやはりもう少し改善していかないといけないんじゃないか。
 ただ、例えばそれじゃ、今回十二人の裁判官を増員しました際、その審理期間というのはどの程度短縮するものだろうかといいますと、これなかなか予測が難しい点がございます。といいますのは、実はこの民事訴訟の審理の期間の短縮というのは、人をふやせばそれに比例して短くなるという面ばかりではございません。やはり訴訟といいますのは、裁判所とそれから当事者との共同作業でございますので、当事者なりその代理人の弁護士の方がどういう訴訟活動をやっていただけるかというところによってこれは随分変わってくるわけでございます。
 民事の訴訟ですと、時間がかかりますのは、やはり双方の言い分を整理いたしまして、どこが本当に争われているのかを整理するという、主張整理と申しておりますが、そこに時間がかかる。それともう一つはやはり、争いがありました部分につきまして証拠調べをする、証人調べをする、それが時間がかかる。
 現在の民事裁判のやり方というのは、どうしても、主張の整理にいたしましても証拠調べにいたしましても、期日を何回も重ねまして、ぶつぶつとといいますか小さく小分けをしてやるというふうな仕組みになっておるものですから、なかなか審理期間が短くならない。
 今考えておりますのは、そこを、争点整理ももうできるだけまとめて、一回ないし二回の期日でもうやってしまおう。それから証人調べの方も、あらかじめ二人なり三人なりの証人を同一の期日に呼んでおきまして、そこで一挙に調べてしまうような工夫をやりたいと。そういうふうなことがやれれば、先ほども言いましたように、証人を二、三人調べる事件でありましても一年程度あれば判決ができるという体制ができてくるんじゃないかというようなことを考えておるわけでございます。
 したがいまして、目標というようなことになりますとそういったところを目指したいわけでございますけれども、これは実は裁判官の数をふやしていけば必ずそういうふうになるというものではございませんで、やはり訴訟活動のあり方自体を変えていかないといけない。そのためにはやはり、現在法制審議会で議論されておりますような民事訴訟法の改正ということも考えていかないといけない。
 そういうふうな方策もあわせて考えながら、当面必要な裁判官数というものを考えていきますときに、この程度の数字をお願いしたいということで、この裁判官の必要数といいますか増員数を考えます場合には、やはり給源の問題もございます。
 実質上、判事補といいますのは、司法試験を通りまして二年間の司法修習を経ました者の中からしか事実上なり手はないわけでございます。現在の修習生の中から果たして何人ぐらいの方が裁判官になっていただけるだろうかという、そういうふうなところも見ながら増員数をはじき出しますと、今回お願いしておりますような十二名という程度の数字が出てきたという、そういうふうな経緯でございます。
#11
○糸久八重子君 調査室作成の資料によりますと、一九六二年から一九九四年までの間に判事は百八十人、それから判事補は百二十人、それから簡裁の判事が九十四人、裁判官以外の職員はこれ純増で千百九十一人増加しております。私は増員そのものに異を唱えるものではございませんけれども、効果ある増員であることが必要ではないかと、そう思います。
 そこで、毎年増員された定数の裁判官やそれから職員は具体的にどのように各裁判所に配置しているのでしょうか。
#12
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 私どもの方の裁判官の配置の方法と申しますのは、法律あるいは予算でお認めいただきました裁判官の総枠、これを全国の裁判所へいわば事務量に応じでできるだけ公平に分けていくという、そういう分け方をしております。したがいまして、基本的にはやはり各庁に年間平均しましてどの程度の事件が持ち込まれるか、その事件数を見ながら分けていくということになるだろうと思います。
 ただ、これはもう御理解いただけるかと思いますが、実は裁判所の各庁の事務量というのは事件数だけではなかなか決まってこない面がございます。例えば、同じ一件の事件でありましても非常に処理に手間のかかるような事件というのもございますし、新しく持ち込まれます事件はそれほど多くなくても、従前から長時間係属しておる事件の処理に非常に手をとられるという、そういう庁ではやはりその係属中の事件を処理するための人数というのも必要になってまいります。そういうふうなところを各庁ごとに、それこそ各庁と十分実情の御相談をしながら、私どもの方で全国に公平に分配させていただくということでございます。
 ただ、毎年増員をお認めいただきました人員というのは、そういう意味では相対的に繁忙な庁に振り向けられておるというふうに御理解いただいてよろしいかと思います。
#13
○糸久八重子君 昨年お伺いしたときも、相対的に何か都市部に多く配置をという答えだけで、余り明確なお答えではなかったようでございます。
 毎年度の配置定員というのは四月一日付で定められていると伺っておるわけですが、具体的には下級裁判所職員配置定員規程等によるものと理解をしております。国会には、増員要求は明らかにしていても配置定員については明確な答弁はなかったというのがこれまでの対応でございましたけれども、配置定員を公表するということは裁判所として何か対外的に問題があることはあるのですか。
#14
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 実は私どもの定員の決め方は、規程というふうなもので決めているわけではございませんで、何といいますかもっともっと流動的な決め方をしております。極端な言い方をしますと、その時々で各庁に配属になる裁判官なり職員の数がもう随時変わっていくという、そういう実情でございます。
 例えば、四月一日の時点では確かに新しい裁判官何名か任官いたしますので、その人たちをどの庁に配るかというときの決め方というのはもちろんございます。しかし、それ以後、例えば夏の時期に何名かの裁判官が例えば外国へ勉強のために留学するというふうな時期を迎えますと、やはりそれに伴います全国の裁判所の事務量の調整をやらないといけません。そういう際にはもう一度、裁判官の異動というふうなものも事務量に応じて考えていかないといけません。
 ですから、言ってみれば、常時、各庁に配られます定員と申しますか人員といいますか、それはその繁忙度なりなんなりの変化に応じて変わってきておるんだということでございます。そういう意味でございますので、何といいますか、一定の時点における固定した定員のようなものを示せと言われましても、事柄の性質上示せないということなんでございます。
 ただ、これは何も秘密にしているという意味では決してございません。例えば、具体的に申し上げますと、平成三年とそれでは平成六年の、去年の四月を比べてみますと、庁ごとに申し上げますと、例えば東京地裁というようなところは全国的にも非常に忙しい庁でございます。現に、東京地裁の場合はこの三年間の間で、数字で言いますと裁判官を十七名ふやしております。それから、書記官、事務官は合計三十三名ふやしております。それから、千葉地裁のような忙しいところでも、やはりこの三年間で裁判官七名、書記官、事務官九名をふやしておる、そういうふうな実情でございます。
 ただ、これはあくまでも四月の時点という一定の時点をとらえまして、それで一年前の現在員の数とその時点の現在員の数がどれだけ動いておるかという、その数字だけでございますので、これが固定的な定員という意味ではないというところを御理解いただきたいと思うわけでございます。
#15
○糸久八重子君 やはり私、冒頭申し上げましたけれども、事前に拝見すればだれでもある程度納得のいくような趣旨説明とか、それから参考資料があれば大変理解ができやすいんじゃないかなと思うんですけれども、できれば次回から、そんなに難しいものでなければそういった資料も一応添付をしていただきたいと思うのですけれども、大臣、いかがでございましょうか。
#16
○国務大臣(前田勲男君) 来年から参考資料提出等を心がけるべきであるという御指摘、先生のおっしゃるとおりであろうと思います。
 最高裁におかれましては、裁判所の裁判官あるいは裁判所職員の増員に関して、先ほど来御質疑ございましたとおり、その必要性あるいは充員の見込み等について、現実に合って的確に把握をされて適切に対応されてきているものと承知をいたしておりますけれども、いずれにいたしましても、御審議いただく折にできる限り御審議にこたえられるその資料というのは提出をしなければいけないと思っておりますし、ただいま隣で涌井さんに伺いましたところ、出していただけるということでございますから、来年は少し工夫のされた提案理由説明ができるものと、こう確信をいたしております。
#17
○糸久八重子君 よろしくお願いいたします。終わります。
#18
○荒木清寛君 私は、今回の定員法につきましてもちろん賛成でございますが、特に裁判官につきましてもっとふやすべきであると、そういう趣旨でいろいろと質問をさせていただきます。
 昨日来、いろいろ最高裁から資料を取り寄せて見ておるわけでございますけれども、一つ、根本的に疑問に思いましたことは、我々といいますか私などは、もう裁判官不足ということは一つの所与の前提として議論をしてきたわけでありますけれども、果たして最高裁はこの現状を、裁判官が不足しているんだ、そういう認識を本当にしているんだろうかというふうに思ったわけなんですね。
 その点の、まず、認識を最初にお聞きしたいと思います。
#19
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 何といいますか、一言で不足なのか不足していないのかと言われると、非常にお答えが難しゅうございます。我々の方といたしましては、やはり裁判所に提起されます事件を適正迅速に処理できるような、それだけの人数は何としても確保する必要があるということで従前から努力してきておるところでございます。
 ただ、何といいますか、そのための人員面の手当てというのがすべてではないというのが基本的な我々の認識でございまして、やはり事務処理の合理化でありますとかあるいは訴訟の運営の改善のための努力が必要であるとか、あるいはさらには、実は事件数の動向というのも最近、大ざっぱに言いますと、民事の系統の事件は確かにふえてはきておりますけれども、むしろ刑事の系統の事件というのはどんどん減っておるといいますか、かなり急激な減少の傾向を示しております。そういたしますと、裁判所の職場でも、従前と比べまして相対的に繁忙の度合いが強くなっているところもあれば、余裕ができているところもある。そういう場合は、やはり余裕のあるところから忙しいところへ人を動かすというふうな、そういう配慮も必要になるだろうと思うんです。
 そういうふうないろいろな方策を講じまして、しかしトータルとしてやはり必要なだけの人数というのはこれは増員していかないといけないなと。したがいまして私どもの方、このところ毎年のように何名かの増員をお願いしてきておりまして、着実な増員を続けてきておるというふうに考えておるわけでございまして、そういう姿勢は今後も堅持していきたいというふうに思っております。
#20
○荒木清寛君 それで、資料としまして裁判官の実数を出してもらったわけです。昭和五十八年、昭和六十三年、平成五年ということで出していただきましたが、定員数と比べますと、いわゆる定員割れが生じているわけです。昭和五十八年ですと三十名の欠員、六十三年ですと六十二名、平成五年で二十名という、定員との差があるわけでありますが、このいわば定員割れというのは、それだけの人員をそろえようとしたけれども結果的にできなかったという、そういう数字ですか。
#21
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 裁判官の定員は、確かに、欠員があることは委員御指摘のとおりでございますが、お出ししております裁判官の現在員は、十二月一日現在になっておるわけでございます。
 その理由は、委員御承知のとおりと思いますが、裁判官の場合には四月の段階ではほぼ定員どおり充員されますが、その後、六十五歳の誕生日が参りますと定年ということで退官いたしますし、あるいは途中で弁護士に転出するというようなことでおやめになる方もおるわけでございまして、徐々に裁判官の数が減少していくという状況になっております。その間、裁判官を年度の途中で補充するといたしましても、給源等の関係でかなり困難な状況がございまして、そのようなことから十二月一巳現在では欠員が生じております。ただ、この欠員は翌年の四月期になりますとほぼ充員される、こういう状況になっているわけでございます。
#22
○荒木清寛君 ということで、一応、定員は充足しているというふうに認識をいたしました。
 そこで、事件処理は圧倒的に地方裁判所が多いわけです。統計を見ましても、民事、行政の新しく受けた事件という数で見ましても高裁の三倍ぐらいあるわけでして、そういう意味じゃ事件処理の一番の主力部隊というのが地裁であると思うんです。
 私、この地裁の判事さんが、あるいは判事補さんでありますけれども、ここでは判事さんの数を論じてみたいと思います。といいますのは、単独で法廷を開けるのは判事さん、特例判事補という方もいらっしゃいますが、基本的には判事でありますから、この判事の数がどうかということが事件処理がスムーズにできるかどうかという一つの目安になるというふうに考えたからでございます。
 この点、判事の定員というのは、昭和六十二年から平成六年まで九年間、千三百六十人でふえていないわけです。ことしもふえていないわけです。判事さんは全然ふえない。ただ、判事といいましても家裁の判事も高裁の判事もおりますから、じゃ地裁の判事さんかどういう推移をしているかということが知りたかったわけでございます。
 そこで、これはもう法律で地裁の判事何名、家裁の判事何名というふうに決まっているわけではありませんから、実員数で見るしかないわけですね。
 そこで、資料を出していただきまして見てみますと、昭和六十三年と平成五年、平成五年から五年前という、そういう検討をしてみたわけでございます。そうしますと、昭和六十三年の判事の実員数は、地裁の判事の実員数が八百八十九人、平成五年が八百八十六人ということで、三入減っているわけですね。ただし、先ほどの説明をお聞きしますと、三人というのはほとんど誤差の範囲内でしょうから、要するに昭和六十三年から平成五年にかけて地裁の判事さんの数はほとんど同じであるという、そういう認識でよろしいでしょうか。
#23
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 地裁に発令されている判事の数が、昭和六十三年には八百八十九人、平成五年には八百八十六人ということで、ほぼ実数に変わりがないことは委員御指摘のとおりでございます。判事補につきましては、昭和六十三年に四百四十五名でありましたものが、平成五年には四百七十名となっておるわけでございます。委員御承知のとおり、判事補のうち五年たちますと職権特例というものがつきまして判事と同じ職務を行うことができるようになっておるわけでございまして、私どもといたしましては判事補の活用もやっているわけで、地裁全体での裁判官の数というのは二十二名ふえている、こういう実情になっているわけでございます。
#24
○荒木清寛君 これは通告はしておりませんが、二十二名判事補さんがふえたわけでありますが、いわゆる特例のつく判事補は何人ふえたかということはおわかりですか。
#25
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 現在のところ、その具体的なデータは持っておりませんので、もし必要ならば後ほど御説明に上がりたいというふうに考えております。
#26
○荒木清寛君 はい、結構でございます。
 いずれにしましても、二十二名地裁の裁判官の人員がふえたということではございますけれども、じゃ、昭和六十三年、その前年の数字をとりまして昭和六十二年から最新の平成六年、あるいはデータがない場合には平成五年で結構でございますけれども、その間に地裁の判事、判事補は二十二名ふえているわけでございますが、地裁で取り扱った事件がどのぐらいふえているのかということをお聞きしたいわけであります。
 そこで、いろいろデータはあるでしょうけれども、民事、行政事件及び刑事事件に分けまして、地裁で扱った事件がその間とのぐらいふえたかということをお聞きしたいと思います。
#27
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 地裁で扱います民事事件はいろんなものがございますが、やはり中心になりますのは訴訟事件でございまして、処理に一番時間がかかるといいますのが訴訟事件でございますので、代表的なものとしてその訴訟事件の数で比べてみるとどういう状況になっているかを申し上げますと、民事訴訟事件は昭和六十二年には十三万一千四百七十二件でございました。これは全国の地裁の合計でございます。それが平成五年には十五万四千二百七十件になっております。したがいまして、その間に二万三千件程度の増加があるということでございます。
 片や刑事訴訟事件の方はどうかと申しますと、昭和六十二年の数字が八万二千七百二十四件ございました。それが平成五年には全国合計で六万四千四百二十八件になっております。したがいまして、こちらの方は一万八千件程度でございましょうか減少しておるという、そういう状況でございます。
#28
○荒木清寛君 二万三千件ふえて一万八千件減ったわけですから、単純に差し引きしますと五千件しかふえていないというふうな話になると思うんですね。ただし、裁判官にとりまして民事事件と刑事事件のどちらの負担が重いかといいますと、確かに刑事事件でも非常に難しい事件は多いわけですが、概して言いますと民事事件の負担の方がずっと重いんではないかというふうに思いますが、そういう認識でよろしいですか。
#29
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 御指摘のとおりであろうと思います。やはり事件の処理に要します時間を見ましても、民事事件の方が全国平均で先ほど言いましたように十カ月というふうな数字が出ております。刑事事件の場合ですと平均いたしますと三カ月ないし四カ月程度で処理が終わっておりますので、やはり民事事件の方が相対的に刑事事件よりも一件当たりの処理に要する労力といいますかそれが高くなっているというのはそのとおりかと思います。
#30
○荒木清寛君 そうしますと、民事事件が二万三千件もふえているのに地裁の判事、判事補さんは二十二名しかふえていないと。これは非常にふえ方といいますか、裁判官の負担がこの間に物すごく重くなっているというふうに私は予想するわけでございますが、そういう認識でよろしいですか。
#31
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 確かに、件数だけで申しますと御指摘のような面もあろうかと思います。ただ実は、例えば民事の訴訟でございますと、訴訟のやり方といいますか、これがかなり従前に比べますと合理化されているといいますか工夫を重ねてきておる面がございます。したがいまして、必ずしも件数がふえたからそれに比例して裁判官の負担がふえてきておるということではないというふうに御理解いただいていいかと思います。
 といいますのは、例えば事件の処理に要します審理期間でございますが、これは法案の資料にもつけておきましたけれども、むしろ、事件はふえてはきておりますけれども、一件当たりの処理に必要な平均の審理期間というのは幸い、徐々にではございますけれども短くなってきております。それだけ処理の能率を上げれるような事件処理の方法が工夫されてきたというところであろうかと思います。
 したがいまして、事件数の増加に比例して負担がふえているという点ではなかろうかと思います。しかし、当然事件数がふえておることによる負担増があるということは否定できないところであろうと思います。
#32
○荒木清寛君 確かに、単純にその事件のふえた分だけそれに比例して負担が重くなったとは言えないと思いますけれども、何せ二万三千件でありまして、一人にしますと年間一千件ということですから、恐らく相当のしわ寄せが地裁の現場の裁判官に来ているのではないかというふうに思うわけなんです。ですから、私は、何とか地裁の判事、判事補をせめてふやせないかということを考えるわけでございます。
 そこで、ちょっとお尋ねしたいわけでありますけれども、いただいた資料によりますと、昭和五十三年から平成二年まで判事補の定員というのは六百三名で変わっていないわけです。この六百二名体制になったのは、一体これは何年からでしょうか。
#33
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 判事補の定員が六百三名になりましたのは、昭和五十三年度でございます。
#34
○荒木清寛君 そうしますと、十三年間、判事補の定員は全然ふえなかったということでございますね。当然、この判事補の採用がふえないということは判事の数もふえていかないということに将来的にはなるわけでございますけれども、これだけ、二万三千件も増加していくというそういう傾向の中で、なぜ判事補の定員はふやさなかったのかその時点でどういう見通しを持っておったのか。私はその辺から、将来を見通した裁判官の採用計画といいますか、配置計画に見通しの誤りがあったのではないかというふうに思うわけでございますが、その点はいかがでございましょうか。
#35
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) これ、何といいますか、非常に割り切った話をするようで恐縮なんですが、要するに裁判官の増員の場合、枠をお認めいただければ自由にふやせるものであれば、委員御指摘のように、事件数の動向を見ながらこの程度の数は必要だということで順次増員をしていくということができるわけでございますが、現実には、判事補というのは、先ほども申し上げましたように、司法試験に通りまして修習生の課程を経た者が主たる給源でございます。片や判事の方の給源といいますのは、その判事補で十年間実務経験を踏んだ者、それが給源になってくるわけでございます。そういったところから、実は判事ないし判事補の給源がどういう状況になるかというのは、その年度によって随分変わってくるわけでございます。
 今は幸い修習生もかなりふえてきましたし、景気の影響もあるのかもしれません、割がし裁判官になっていただける方がふえておりますが、かつての時期はなかなか弁護士さんの方が人気がよくてといいますか、裁判官の方にお誘いしてもなかなかなっていただけないという時期がございました。そういう時期ですと、実は判事補の定員の枠をふやしていただきましてもそれが埋められないというふうな時期がございます。
 そういう給源のようなところも見ながらやっておりますものですから、今言いましたような数字が出てくるわけでございます。
 長期的な見通しを欠いておるじゃないかと言われれば、そういう面がないわけではないんでございますが、給源という客観状況によってどうもその増員の可能数が制約されるという面がございますものですから、そういう現象が出てくるということをひとつ御理解いただきたいと思います。
#36
○荒木清寛君 そうしますと、その間も事件数の増加に伴い裁判官の増員の必要性はもちろん感じておったけれども、一方で供給側といいますか司法修習生の裁判所裁判官としての任官希望者ということを考えるとなかなか一気に定数をふやすというわけにはいかなかった、そういう理解でよろしいわけですか。
#37
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) そういう面もあろうかと思いますが、実は、この間、裁判官の増員をやってこなかったわけではございません。毎年のように何名かの裁判官の増員はお願いしてきておりました。ただ、その増員をお願いします裁判官の種類といいますか、それが、あるときは判事でありましたり、あるいは簡易裁判所の判事でありましたりという形でお願いしてきておるわけでございます。
 我々の方としましては、やはり裁判所の陣容といいますか、人的な陣容というのは、判事、判事補、簡裁判事、これを全部含めました裁判官の総数というところでやはりとらえるべきであろう。そういった観点からいたしますと、我々としてはこのところずっと、その総数につきましては着実に増員をお願いしてきておる、こういう認識でおるわけでございます。
#38
○荒木清寛君 次に、先ほども少しお話がございましたけれども、毎年毎年、定員法の改正によりまして裁判官の数が微増ではございますけれどもふえてきているわけでありまして、それ自体はまことに喜ばしいというふうに私は思うわけであります。ところが、裁判官の配置ということを考えますと、どうも大都市偏重といいますか、むしろ地方の方の裁判所は裁判官が減る傾向にあり、その減った分と定員のふえた分が大都市にどうも集中的に配属されているのではないかという懸念を持つわけであります。また、そういう指摘をする声もあるわけであります。
 私、全部の裁判所の実態調査をするというわけにもなかなかまいりませんので、きのう、私なりに考えまして資料要求をさせていただいたんです。その資料を見ましても、やはり大都市偏重じゃないかという感を持ったわけでございます。
 まず私が要求いたしましたのは、昭和六十三年から平成五年という先ほどの五年間を比較しまして、裁判官が減少した裁判所というのはどのぐらいあるかと。高裁本庁、高裁支部、地家裁本庁、地家裁支部と、いわゆる高裁以下の全部の裁判所につきましてお願いしましたところ、四十五片あるわけです。その総数は五十五人という報告でございました。
 その四十五庁の割り振りですけれども、大都市圏にどのぐらいあって、地方にどのぐらいあるのかという、そういう検討をさせていただいたわけなんであります。
 大都市をどういう設定をするのかというのは非常に難しいわけでありますが、私なりに考えまして、政令指定都市と三大都市圏というようなことを考えたわけです。具体的には、札幌市内、仙台市内、それから東京都全部、千葉県全域、神奈川県全域、名古屋市、それから大阪府全域、広島市、それから北九州市、福岡市という、今言ったのが大都市であって、それ以外を一応地方都市と、そんな厳密なものではありませんけれども、私なりに考えましてそういう定義をしたわけなんですね。
 そういう定義をしますと、減った裁判所は四十五でありますけれども、実に四十一が地方なんですね。大都市圏で減った裁判所は四つだけ、そういうことになるかと思いますけれども、そういう理解で間違いございませんでしょうか。
#39
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) まず、その前提でございますが、裁判官が減ったかふえたかというその読み方自体、私どもの方で少し御説明させていただきたいんですが、実は裁判官の定員と申しますか、それは我々の方は、先ほども申し上げましたように、年度で固定的にこの庁にはこれだけの裁判官を配置するんだという、そういう固定的なものを考えているわけではございませんで、これも随時、事件数ばかりではなくてそれ以外の要素で、その時々でいろんな変化が出てまいります。
 簡単に言いますと、例えばある庁で裁判官が一人病気になる、そういう場合にはどうしても、忙しい庁ですと、病気の方が事件処理をできない間、よそから人に来ていただいて、そこの人をふやしてしばらくの間事件処理に当たっていただかないといけない。こういうのもある意味では、裁判官がふえたという現象になってくるわけでございます。また逆に、例えば、裁判官としてそこに在籍はしておりますけれども、例えば外国へ勉強に行くとかというふうな人ですと、数はふえましても実戦力はふえていないという面もございます。しかも、そういうふうな異動というのは何も年度当初に限りませんで、年度途中にも随時頻繁に起こることでございますので、そういう意味で、裁判官がふえたか減ったかというのを固定的におとらえになって、その庁の事件処理体制に対して最高裁がこれだけの人数を固定的に割り振っておるというふうに受け取られますと多少正確でない点があろうかと思いますので、その点はひとつ御理解いただきたいと思います。
 そういう前提で、ただ確かに、例えば四月の時点の現在員というのを比べた場合、委員御指摘のように、五年前の四月の時点と最近の四月の時点、それで比べた場合に裁判官の数が減っている庁が御指摘のように四十五庁、五十五人あるということは、そのとおりでございます。
 ただ、これは、私どもの方としては大都市の方に人を振り向けるために地方庁から減らすというふうな政策をとっているわけではございません。これはあくまで事務量と申しますか、各庁の事務量に応じてそういう人の動きがどうしても出てくる面がございます。
 例えて言いますと、大都市といいますと代表的なのは東京だと思いますが、東京の家裁でありましても実はこの間に裁判官の数は減っております。これはやはり先ほども少し申し上げましたが、少年事件というのは全国的に今減ってきておりまして、これは地方、大都市共通の現象でございますので、そういうふうな影響で比較的余裕が出てきておるというところであれば、大都市についてもやはり裁判官は忙しいところに回すために人員を割いていただくということもやっております。
 したがいまして、あくまで事務量に応じてそういう機動的な裁判官の配置をしておるんだというふうに御理解いただければと思うわけでございます。
#40
○荒木清寛君 そうしますと、特に政策的に地方から都市部の方に裁判官の配置をシフトしていく、そういう考えを持っているわけではないわけですね。ちょっとその点をお伺いします。
#41
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) そのとおりでございます。
 地方の庁といいますと、例えば松江とか鳥取とかいう庁がございますが、ここは事件数は非常に少のうございますけれども、やはりそこでも民事、刑事のそれぞれ合議体を構成いたしまして合議事件を処理しないといけません。そうしますと、どうしても裁判官の数は単純に計算しましても民事の合議体三名、刑事の合議体三名、六名は必要になってくる。そういうことで、そこからは事件が幾ら減りましても裁判官の割きようがないわけでございます。
 そういった観点を入れまして、各庁の事件処理に必要な人員が幾らかということを計算しまして人数の割り振りをやっているわけでございます。特に、大都市庁に厚く、地方に薄くといいますか、そういう政策を持ってやっているわけではございません。
#42
○荒木清寛君 ぜひそうあっていただきたいと思います。
 私は、やはり、先ほどの話に戻りますけれども、民事事件の大幅な増加傾向を見ますときに、第一線裁判官の増員は決してもう十分ではないという感を強くするわけなんです。裁判官の中に、いわゆる現場で裁判をする裁判官と司法行政部門に携わる裁判官がございますね、充て判というふうに言っていらっしゃるようでありますけれども。最高裁事務総局、司法研修所、書記官研修所、調査官研修所、高等裁判所長官付というんですか、それから高等裁判所事務局長、こういうところにいわゆる行政部門の裁判官が配属されているわけですが、いただきました資料によりますと、平成五年、百三十二人です。
 裁判官の定数が千九百八十二人ですから、一割までいきませんけれども、六%強ということになるかと思うんです。私、ちょっと多いんではないかと、もう少し現場の方に回す、回すというと失礼でありますが、配置がえをすることができるのではないかという感を持つわけであります。行政部門でありますから必ずしも一〇〇%裁判官がやらなければいけないということではないんではないか、場合によってはそれ以外の裁判所職員の方に一部その事務を肩がわりしていただくこともできるのではないか、そういうことを思ったわけであります。
 私、裁判所の内部のことはよく知りませんので、これは私の感想なのでございますが、もう少し行政部門から現場の例えは地裁の判事とか高裁の判事とか、そういうところに回すということはできないんでしょうか。そうすれば少しでも事件処理の負担というのは軽くなるような気がするんですが、いかがですか。
#43
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 確かに、裁判官の中で裁判事務を担当していない者を、委員御指摘のように、充て判というふうに言っているわけでございますが、この数字は平成五年度では高裁長官の八名を除きますと百二十四名ということになるわけでございます。この百二十四名の中には実は最高裁判所の裁判所調査官が二十九名含まれておりますので、この二十九名を除きますと九十五名が司法行政に関与している裁判官の数ということになろうかと思います。
 そこで、委員御指摘の点は、その数を減らすべきではないかという点でございますが……
#44
○荒木清寛君 まあ、減らせないかということですね。
#45
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 減らせないかという点でございますが、この点につきまして私どもは、元来、裁判所の司法行政事務というものは、裁判所法上、裁判官会議で行うものというふうにされているわけで、この点が行政庁と違うわけであります。
 これらの事務の中には、裁判官の人事でありますとか、あるいは裁判所の施設等の裁判事務と特に密接な関係を有するものもあるわけでございますし、あるいは最高裁判所の場合には最高裁判所規則の立案というような点で法律知識を必要とするものが少なくないわけでございまして、裁判官会議を補佐するという事務総局においては、やはり裁判官の資格とか経験を有する者がそういう点の立案、企画の事務をやらざるを得ないという面があることは御理解いただきたいと思います。
 したがいまして、司法行政の重要事項の企画立案等をつかさどる職につきましては、現在では裁判官を充てているわけでございます。しかし、委員御指摘のように、訴訟促進を図るためにもできるだけ司法行政部門の裁判官を減らしまして裁判事務に回すことが必要であるというふうに私どもも考えておりまして、現状では事務総局の局課長はできる限り兼務で賄い、あるいはまた一般職の職員で賄えるポストはできる限り一般の職員を充てるという配慮をしているところでございます。
#46
○荒木清寛君 非常に限られた定員の中で司法行政も行い、裁判実務も行いと、非常な御苦労であることはもう重々承知をしておりますが、ぜひ効率的な配置ということをさらに御検討いただければと思います。
 もう一つ、この裁判官の定員の中には、定員に入っておって裁判実務を担当していないという方に訟務検事という方がいらっしゃるはずですね。
 法務省にお尋ねいたしますが、訟務検事の内訳といいますか、検察官出身が何人で裁判官出身が何人かという、その内訳を教えてください。
#47
○政府委員(増井和男君) ただいまお尋ねの件でございますが、現在訟務事務を担当しているいわゆる訟務検事と呼ばれる者の数の定員は二十九名であります。そして、そのうちおおむね七割が裁判官の出身者ということになっております。
#48
○荒木清寛君 訟務検事のお仕事の重要性ももちろん認識をしておりますが、私自身は裁判官の定員は圧倒的に足らないという認識に立っているものですからこれをお聞きするわけでありますが、その裁判官からの出向というんでしょうか、訟務検事になる方ももう少しその数を見直しをすると、で裁判実務を担当していただくというふうなことは考えられませんでしょうか。
#49
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 訟務検事を中心とする法務省との人事交流の点についてのお尋ねというふうに私ども理解しているわけでございますが、この点につきましては、裁判官を受け入れる先に、どうしても裁判実務の経験があり、法律に精通した人が必要であるという面が強いわけでございます。
 さらにまた、私どもにとりましても、裁判官が裁判官以外の職務を経験することは、その視野を広め見識を高めるためにも役立つと、こういう面があるわけでございまして、訟務検事あるいはその他の法務省の検事で一定期間仕事をしていただくということは、裁判所に戻ってぎてからも裁判官として見識を広め、仕事を有益にやるために役立っているという面があるので現状のようなことをやっているという点は御理解いただきたいと思います。
 ただ、委員御指摘の点は重要なことでございますので、私どもとしても考えていかなきゃならない問題ではあろうとは思います。
#50
○荒木清寛君 もちろん私は、そういう判検交流といいますか、そういうことの重要性ということはもちろん認識した上で質問をしているということは御理解いただきたいと思います。
 あと、裁判官をふやすとすれば、弁護士任官ということも重要な裁判官の供給源になると思うんですね。昨年、平成六年、どのくらいの弁護士任官の応募があり、何人採用されたでしょうか。
#51
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 平成六年度は、四月から十二月までの間に合計七人の弁護士を裁判官として採用しております。これはいわゆる弁護士任官制度という、弁護士会からの推薦によるものでございます。このほかに、弁護士から直接私どもの方に申し出て、裁判官に採用した人が二人いるという状況でございます。
 最高裁判所といたしましては、従来から、裁判官以外の経験を有する法律家の方が裁判所部内で活躍していただくということは非常に有意義なことであるというふうに考えておりまして、弁護士の方からも適任者であれば多数任官してほしいというふうに考えておりまして、今後とも裁判官にふさわしい資質、能力を備えた弁護士の方が多数任官を希望されるように期待しているところでございます。
#52
○荒木清寛君 多数の応募といいますか、採用を期待したいというお話ですが、現実には九名程度ということですね。弁護士も応募する人が少ないということが大きな原因ではないかと思うんですね。その点、もう少し弁護士任官をふやすように具体的に何かそういう努力というのはされていますでしょうか。期待されているというのはよくわかったんですが、そういう、もう少したくさんの応募者があるように最高裁としても何らかの努力をすべきではないかと思いますが、この点はいかがですか。
#53
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 弁護士の方から裁判官にふさわしい方がたくさん任官していただきたいと願っておりまして、弁護士会の方に協力もお願いしておりまして、弁護士会で行われます弁護士の裁判官任官説明会には私どもの職員が行って説明しておりますし、あるいは弁護士から裁判官になった人がその席上で体験を話すというようなことで、この弁護士任官制度についての理解を弁護士の方に得てもらうということで私どもも努力しているところでございます。
#54
○荒木清寛君 あと、裁判官をふやすとすれば、これは基本的には司法試験の合格者をふやすということ以外にないと思うんです、私は。
 今、この司法試験改革ということが盛んに論じられておりまして、これは大変に喜ばしいことであると思います。しかしながら、新聞報道等を見まして、その協議の内容を拝見いたしますと、裁判所として将来的に裁判官の定員はこのぐらいに持っていきたい、あるいは法務省として検事の定員はこのぐらいに持っていきたい、あるいは毎年の採用をこの程度にふやしたいという、そういう将来目標というのがこの司法試験改革の議論の中で出てないように思うわけなんですね。
 これは、そうしますと、司法試験の合格者はふえたけれども、全部それが弁護士に行ってしまって、裁判官と検事の増員には何もつながらないというようなことにもなりかねないわけでありまして、ぜひ司法試験改革の議論の中で、裁判所としてはこのぐらいの採用にふやしたい、あるいは法務省としてはこのぐらいの採用にふやしたいという、その将来目標を明らかにすべきであると思いますが、最高裁と法務省にそれぞれお伺いいたします。
#55
○政府委員(永井紀昭君) ただいま委員がお話しになりました法曹養成制度等改革協議会におきまして、我が国の法曹人口のあり方について真剣に協議を行っているところでございますが、その協議においては多くの委員から司法試験の合格者を倍増すべきであると、こういう提案がされていることも事実でございます。
 現在、協議を継続しているところでありまして、実は二、三日前もこれを熱心に協議をしていたところでございます。その協議の過程の中でございますのですべてを申し上げるわけにまいりませんが、裁判官、検察官、弁護士のいずれにつきましてもふやすべきであるということにつきましては多数の意見が述べられております。
 また、法務省委員からも、国民から検察に期待されている役割の重要性や検察官が繁忙であるということなどを勘案し、検察官の相当数の増員が必要であるという意見も明確に述べられているところでございます。
 今後とも、この協議会の場におきまして、国民的な見地に立った法曹のあり方につきまして協議が続けられていくものと承知しております。
 具体的な数という議論にまだ入っていないという段階でございます。
#56
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 将来の裁判官数をどういう数であるべきかというお尋ねでございますが、これは先ほども申しましたように非常に難しい面がございます。
 ただ、我々、これまでの増員の経過をごらんいただければおわかりいただけるかと思いますが、裁判官だけの数字で申しましても、昭和四十年以降、ですから三十年くらいということになりますか、その間に判事を百五十名、判事補を百五名、簡裁判事を七十九名、合計いたしますと三百三十四名の増員というのをお願いして実現してきていただいておるわけでございます。
 したがいまして、我々としては、着実に裁判官の陣容を強化していくといいますか、そういう必要があるということでこういう努力をしてきたわけでございますので、将来ともこういう姿勢で裁判官の増員に努めていきたいと思っております。
 ただ、将来、それでは何名の裁判官があれば万全の体制がとれるのかということになりますと、先ほども申しましたように、将来の事件数の動向がどうなるかという点も非常に読みにくい点がございます。法曹人口全体の増加が図られました場合に、それによって裁判所に持ち込まれます事件がどういうふうに変わってくるのかその辺も見定める必要があろうかと思います。それからさらに、現在民事訴訟法の改正論議で議論されておりますように、民事裁判を中心とします訴訟の運営のあり方がこれからどう変わっていくのか、その辺も見ながら必要な数というのを見ていかないといけないだろうと思います。
 そういう意味で、今の時点で将来、遠い先を見通しまして何名の裁判官が必要かということをはっきりした数字で出すということは、なかなか難しいという点でございます。
 ただ、委員御指摘のように、裁判所の事件処理体制を充実していくためにやはり人員増という点が一つ重要な政策になってくるという点はもう御指摘のとおりでございますので、その努力は継続していきたいと思っております。
#57
○荒木清寛君 この司法試験改革の出発点は、弁護士不足ということもあるでしょうけれども、どっちかというと裁判官、検事の数が足らないという大前提があったように思うわけです。今、合格者を千五百人にふやす、そんなような案も検討されているようでありますけれども、仮にそうなった場合には、裁判所としても毎年の採用数をこれだけにふやします、あるいは検察庁の方も検事の採用数をこれだけにふやしますという、そういう見通しをやっぱり示していただかないとこの司法改革の全体像というのははっきりしてこないのではないかという感じがするんですね。
 大臣には一言もお聞きしていませんので、その点一言何かコメントがあればお話しいただきたいと思います。
#58
○国務大臣(前田勲男君) 法曹養成制度等改革協議会で御議論いただいておりますが、いずれの皆様の御意見も、それぞれの分野においては増員するべきであるというお考えはあらかた一致をされておるところでございます。
 そこで、今、最高裁からもお話がございましたが、裁判官についてはなお充実をしていくためにはもちろん増員もなきゃならない。また、法務省といたしましても、特に国民から検察に対する期待というものあるいはこの重要性というものを踏まえたときに、やはり極めて検察官が忙しいということが現実の問題として私どもも肌に感じておるわけでございまして、現在、増員については倍増というような話も出ておるわけでございますけれども、その議論の基本的な取り組みの中には、裁判所の人的充実のための増員あるいは検察官の相当数の増員が必要であるという基本的な見地に立って取り組んでおるところでございます。
#59
○荒木清寛君 終わります。
#60
○翫正敏君 翫正敏です。
 裁判所の職員をふやそうという今回の法案に賛成であります。職員をふやすだけではなくて、先ほどからいろいろと議論が出ておりますとおり、裁判官そのものも増員をして、そして現状、裁判の審理に非常に長い時間がかかっているという、こういう状況を改革しなければ司法への国民の期待とか信頼というものはふえていかないと、そういうふうに思っているところであります。
 今回の職員の増員は数十人という単位でありますから、この程度の職員を増員しただけでは事件処理の迅速化が期待できるのかどうか疑わしい、そういうふうにもう言わざるを得ないので、やはり先ほどから議論が出ておりますように、裁判官の人をふやしてそして裁判に時間がかからないようにして、そして国民の人たちが裁判を受けやすいという環境をつくっていくことが大事だと思うんです。
 ややもすると現状というのは、裁判所に訴えても時間がかかるので、それで泣き寝入りをしようとか、それから先ほどの例ですと別の、司法でないところへ頼んで解決をしようとする、そういう誤った方法をとったりというふうなことが起こりかねないわけですから、そういう意味でこの問題は非常に大事だと、こういうふうに考えています。
 具体的なことでちょっと質問してみたいんですけれども、三月七日に最高裁の判決がありましたが、大阪府泉佐野市の市民会館を集会に使うことの是非を問う裁判の判決が最高裁から出ました。この判決が出るまでに、三月七日に判決が出たんですが、どれだけの時間を要したのかを説明してください。
#61
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 今、委員御指摘の判決でございますが、まず第一審は昭和五十九年七月十日に訴えの提起がされて、訴え提起から今回の終結まで約十年八カ月かかったということになっておりますが、内訳を見ますと、一審で約一年一カ月、二審で約三年五カ月、上告審で約六年一カ月かかっております。一、二審で約三十回の口頭弁論期日を要しているというのが実情でございます。
#62
○翫正敏君 この事件で結局、集会場を借りることができ保のかできないのかという、そういう決定を裁判で確定していただくまでに十年かかったということなんですね。
 この裁判がちょうど進行している最中に、実は私自身がこの集会場を借りようとして、私どもがと言った方がいいかもしれませんグループが借りようとして、そして借りられなくなったという事案がありまして、裁判を起こそうかというふうに思ったんですが、やはりそういうことをすれば時間がかかって解決ができないと。そうすれば、集会ができなくなれば不利益をこうむるのがこちらですから、そういうことではっきり言えばまあ泣き寝入りをするというようなことがあったんですけれども、そういうことに絡めてちょっと確かめておきたいんです。
 この三月七日の判決では、公的施設において集会を行おうとする場合に、それを、集会をその施設の管理者が拒否できる場合は、一般市民の生命や身体の安全が損なわれるような明らかな差し迫った危険が具体的に予見される場合に限る、こういう最高裁の判断が下されていると。そして、集会の目的や主催団体の性格そのもの、主催団体が平穏に集会を開こうとしているのに他の団体が妨害や阻止をしようとして紛争のおそれがある場合、こういう場合を理由にして公的な集会施設の使用を不許可にすることは、集会の自由を保障した憲法二十一条の趣旨に反して許されないとの判決が確定したと、こういう理解でよろしいでしょうか。
#63
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 今、委員の御指摘の判断がされていることはそのとおりかと思いますが、若干、論点が多岐にわたっておりまして、最終的には、結論といいますかそこを申し上げますと、公の秩序を乱すおそれのある場合を不許可事由として規定している本件の条例については、趣旨からいたしまして、「本件会館における集会の自由を保障することの重要性よりも、本件会館で集会が開かれることによって、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべき」であると、「その危険性の程度としては、」「明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要である」という判示を述べております。
 ただ、結論といたしましては、本件不許可処分につきましては、このような事態が具体的に明らかに予見されるということを理由とした不許可処分であるとして、不許可処分に違憲違法な点はないと、こういうことになっております。
#64
○翫正敏君 この事案そのものが、公的集会施設を団体に貸さないというこういう決定をしたことは憲法に違反しないという決定が出たんですけれども、そういうことだけではなくて、一般的に集会の施設を拒否できる場合はこういう場合であるということで先ほど私が申したような判決になっているということなんです。
 これを、法務大臣に一つ質問しておきたいんですけれども、政府としてどのように受けとめておられるか、お聞かせください。
#65
○国務大臣(前田勲男君) 御指摘の最高裁判所の判決につきましては、司法の判断として尊重すべきものと考えております。
#66
○翫正敏君 実は、こういう集会の公的集会施設を借りる問題についてこの裁判が進行している最中に、私どもの方の石川県の小松市で一九八八年、昭和六十三年に、防衛施設庁の補助金で建てられている小松市民センターという集会施設で基地反対の全国集会というものを開こうとしたわけですけれども、管理者である小松市長の竹田又男市長が、当時の市長ですが、我々の申請を却下したわけです。
 その集会の実行委員会では、憲法違反の疑いが非常に濃いというふうに思って裁判に訴えようというふうに考えたんですけれども、この垂オ込みをしたのが、当時の新聞の資料なんかを取り出して見ますと、一月に申請をして、そして二月に不許可の決定が出ている。行われる予定が六月十八日、十九日の二日間ということであって、四カ月しか期間がないので、その間に、貸すべきであるという判決が裁判所から出るということはとてもその四カ月では期待できない。仮処分とかいろいろ考えたんですけれども、それも、もしもその間に集会の期日が来てしまったら、全国の仲間に呼びかけているわけですから非常に困るということがあって、それでやむなく泣き寝入りという形でこの集会の名称を変更して、護憲平和集会というのに変えまして、それで小松市の方に申請をし直してこれは借りることができたという、そういうことがありました。
 これは私が体験した具体的事実なんですけれども、法務大臣、三月七日の判決内容に照らして考えた場合に、このような私が今説明したような場合というのはやっぱり当然貸すべきだ、貸さないというそういう決定をしたことは誤りであるというふうに思うんですけれども、大臣としていかがお考えですか。
#67
○国務大臣(前田勲男君) これは司法が御判断いただくことであって、ちょっと私の法務大臣の立場でコメントはお許しをいただきたいと存じます。
#68
○翫正敏君 防衛施設庁、来ていただいていると思いますが、このときにこの集会の中で、実は防衛施設周辺の整備、防衛施設庁の補助金によって各地に集会所が建てられておりますが、こういうことで同種の使用不許可の決定が出ている例が全国各地にあるという報告が出されて、これは非常に重要な問題だということで、これは大事な問題だから組織的に対策を講じて全国的に運動していかなきゃならないという、そういう意見集約になったわけなんです。
 防衛施設庁にお聞きしたいんですが、こうした防衛施設庁の補助金によって建てられている集会所の全国の数及びそれが属している自治体の数、それを示していただいた上で、このようなことを少なくても当時、今日までならなお悪いんですけれども、少なくても当時、防衛施設庁として各自治体に対して、基地の補助金によって、防衛施設庁の補助金によって建てられた、基地反対のための集会には貸さないという指導をしていたのではないかと思うんですけれども、その是非についてお答えください。
#69
○説明員(山口金一君) 御説明申し上げます。
 当庁は、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律等に基づきまして、防衛施設の設置運用により住民の生活または事業活動が阻害されると認められる場合において、地方公共団体が民生安定の見地から障害の緩和に役立つ施設の整備について必要な措置をとるときに、助成しております。
 このうち、当庁が補助事業として実施した公民館、特別集会施設等の平成五年度までの実績は約二百件でございます。
 また、これら施設の所在する地方公共団体の数は、七十六市、七十五町及び十三村でございます。
 引き続きまして、また先ほど御指摘ありました、当庁は防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律等に基づきまして先ほど申し上げた事業を実施しておりますが、当庁が補助事業として実施しました公民館、特別集会施設等の使用について、地方公共団体に対し御指摘のような指導はしておりません。当庁が補助事業で実施しました公民館、特別集会施設等の管理運営については、各地方公共団体が条例規則等を定め、使用していると承知しております。
#70
○翫正敏君 防衛施設庁としてはそういう指導をしていないけれども、管理をしている自治体の方が、七十六あるというお答えでしたが、この七十六の自治体がそれぞれの判断で、防衛施設庁からお金を出してもらっているんだから、そのもとである基地ですね、それに反対するような人たちには貸さないという方が運営上よろしかろうというふうに独自に判断して、それで貸さないということを各地で行っている、それがたまたま私の住んでいる田舎の町でもあったと、こういうふうにおっしゃりたいんでしょうけれども、私の立場からいいますと、そのときの集会の各地の報告などを見ましても、やはり防衛施設庁から各自治体に対して、基地反対の集会には、自衛隊反対という場合もありますけれども、そういうものにはこの防衛施設庁の補助事業の施設は貸さないようにという指導をしていたに違いないという、そういうふうに考えざるを得ない状況だったわけであります。
 それは水かけ論になりますからやめますが、とにかくこの三月七日の判決の趣旨に照らしましても、私たちが基地に反対をする、例えば自衛隊に反対をする、また基地の周辺の騒音に反対するとか、さまざまなことで集会を行おうとする場合に、防衛施設庁の補助事業によって建てられた集会所であっても当然使用することができるということを明言していただければ結構であります。
#71
○説明員(山口金一君) 御説明申し上げます。
 当庁は、補助事業として補助金を交付する際、補助事業完了後においても、善良な管理者の注意をもって管理するとともに、補助金の交付の目的に従って効率的な運営を図るよう指導しているところであり、御指摘のような指導をする立場にはございません。
#72
○翫正敏君 ちょっと、御指摘のような指導をする立場にはございませんというのは、今までそういう、貸さないようにとかというような指導はしていなかったということを言っていると思うんですけれども、つまり、貸すかどうかということは全くもって管理している自治体の判断であって、防衛施設庁はそれについてはノーコメントというか無関係と、こういうことをおっしゃるわけですか。それならそれで結構ですけれども。そうですか。
#73
○説明員(山口金一君) 御説明申し上げます。
 当庁といたしましては、建物等の助成ということはいろいろ御迷惑をかけておるので実施しておりますが、その管理運用につきましては各地方公共団体の御判断にお任せしているところでございます。
#74
○翫正敏君 終わります。
#75
○紀平悌子君 紀平悌子でございます。
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、若干お伺いをいたしたいと思います。
 まず、今年度の本法案の改正は、判事補十二名、裁判官以外の裁判所職員の二十四名増加を行うというものですけれども、この立法に当たっての基本的な事柄についてお伺いしたいと思います。
 例えば、裁判所でどのような分野に増員を必要とされているかなどの基本方針について、また裁判件数が増加している昨今、判事補の増員は十二名で足りますか、足りませんか。先ほどからもお話が出ておりますけれども、重ねて簡略にお伺いしたいと思います。
#76
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 今回の増員をお願いしております趣旨、大きく分けますと二つございまして、一つは事件の処理のやり方を今までよりも改善したいといいますか、効率的にしたいという点が一つございます。
 それは例えば、地方裁判所の民事訴訟事件の審理の充実改善を図りたいというのはそういう趣旨でございまして、地方裁判所の民事訴訟事件、今までよりも効率よく運用をしましてできるだけ早く処理できるような体制をつくりたい、そのためにはやはり裁判官の増員が中心になってくるということでございます。
 それからもう一つは、やはり事件の数の面でその増員が必要になってきておるという、そういう分野の事件がございます。それが執行事件と破産事件でございまして、こちらの方は法案の資料にもありますとおり、ここ数年非常に事件数が伸びております。この事件を的確に処理していきますためには、やはり人員面の手当てが必要だろう。
 この場合、実は執行事件とか破産事件といいますのは、処理の主体は書記官でございまして、いろんな書類をつくりまして当事者に送達いたしましたり、あるいは細かい配当表をつくりましたりというふうな、いわば事務的な仕事が中心になりますので、そういうところの事務処理体制を強化するために書記官を中心とした増員をお願いしておるということでございます。
 判事補十二名で足りるのかという点は、いろいろ見方があろうかと思いますが、我々としては、やはり人員増だけではなくて、審理の運営のあり方自体についてもいろんな工夫をやる、そういう工夫とあわせて実効を上げていくという意味で、とりあえず必要な数として十二名をお願いしておるということでございます。
#77
○紀平悌子君 裁判の件数増に関係しまして、現在、最高裁まで上がった事件で平均何年ほどで処理されておりますでしょうか、刑事事件と民事事件のデータでお教えいただきたいと思います。また、最長と最短をお聞きしたいと思います。最高裁、お願いいたします。
#78
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 最高裁まで行きました、三審を経過した事件でございますが、平成五年度の平均審理期間で見ますと、民事の場合、平均いたしますと六十一・六月という数字になっております。五年以上かかっておるということでございます。それから、刑事訴訟の場合は二十二・三月という数字でございますので、一年十カ月程度ということかと思います。
 最長と最短というのは、必ずしもそういう統計はございませんのですが、我々の経験的な数値で申しますと、最高裁まで上がってまいります事件でありましても、短い事件ですと、例えば一審を数カ月、高裁の方も二カ月程度あれば終わるし、最高裁へ参りましても一カ月か二カ月で終わってしまうという事件もございます。
 最長の事件というのは、過去いろんなものがございまして、例えば民事事件で言いますと、東京のスモン訴訟というのがございました。これは二十三年くらいの期間がかかっております。それから刑事事件では、有名な判例になりました名古屋の大須事件というのがございますが、こちらの方は二十六年以上も時間がかかっております。特殊な事件になりますと、そういう非常に長期を要しておる事件があるということでございます。
#79
○紀平悌子君 さきの質問と関連いたしまして、先ごろ、二月の二十二日でございましたか最高裁で田中角栄元首相が受託収賄罪に問われたロッキード事件丸紅ルートの上告判決が大法廷で行われました。首相の犯罪が発覚してから二十年目とか十九年何カ月とか、そういうふうなことで取りざたされましたけれども、確定というまでに非常に長い時間がかかっております。
 この二十年という時の経過について、一般論としてでございますが、精査にいろいろ、御調査あるいは御審査がなければ困るという一面もございますけれども、一般論としてやはり刑事事件の長期化ということは好ましいことではないと私は思うわけです。迅速な裁判を可及的に実現しなければならないという観点から、法務大臣の御意見をお伺いし、また最高裁ももし御意見があればお伺いしたいと思います。
#80
○国務大臣(前田勲男君) 具体的な事件に対する裁判の判決についてコメントはちょっと差し控えさせていただいて、 一般論として申し上げますと、御承知のとおり憲法三十七条に「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」と、こういうふうに基本的に憲法でもなっておるわけでございまして、少なくとも法務省、特に検察としても、裁判所を初めとして訴訟関係人の協力を求めながら審理の促進に努めていかなければならない、かように考えておるところでございます。
#81
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 現在の裁判所が抱えております問題は、やはり何といいましても裁判の迅速化ということであるという点は、もう御指摘のとおりだと思います。
 ただ、特殊な事件になってまいりますと、先ほど御指摘のロッキード事件のように、これは何といたしましても公判回数を相当開かないといけない事件でございまして、一審だけでもこれは二百回近く公判を開いておりますので、どうしてもそれだけの公判を開くということになりますとある程度の期間は必要になると思います。
 ただ、ごく普通の事件について、国民の皆様からごらんになって処理がもう少し早くできないかという声があることはもう十分承知しておりますので、人員の面だけではなくて、いろんな訴訟の運営の改善方策も含めまして処理の迅速化のための努力を続けていきたいと思っております。
#82
○紀平悌子君 もう今でお答えをいただいておりますように思いますけれども、私がこのことを伺いますのは、一つは水俣の患者さんたちの問題でございます。補償の問題でございますが、高齢化全部きれてしまいまして、平均もう七十歳に近いという年齢の方になりまして、問題が発生、公的にこれが認められましてからはもう三十八年、四十年近い時間がたっております。
 こういうことも考えますと、どんな方策を立てられていらっしゃるかということは、迅速を図られておるということで尽きるわけなんですけれども、一層この点について今後ともよろしくお願いをしたいということで、お答えは結構でございます。
 刑事事件の中で、特に政治家の犯罪が結審するまでに長期化するというのは、お人の名前は挙げませんけれども、いろいろございました。国民が政治不信を抱くということは、やはりこの政治家の犯罪の問題と非常に絡んでおるということに私は認識しております。この国民の政治不信というものは、やはり先ごろのロッキード判決が長過ぎたと、その間に幾つ事件が発生したではないかというふうな厳しい批判を浴びていると思います。
 このことと関連しまして、これはまた非常に卑近な例なんですけれども、政治資金規正法が昭和二十三年にできまして以降、これの閲覧ですね、届け出られてから一定の期間閲覧ということが許されております。これに関して最高裁で、ロッキード判決に続きまして判決が出た件でございますが、届けられた政治資金資料の閲覧についてコピーをさせてほしいというふうな有権者というか国民が、これが許されなかったということで、結局のところは最高裁で原告が敗訴をいたしました。
 このことにつきましての云々は、お答えは今、求めませんけれども、自治省にお伺いしたいんですけれども、かって私も、亡くなりました市川房枝参議院議員と一緒に政治資金の調査というのを昭和三十五年から始めております。そのころはコピーそのものも行き渡っていなかったという、役所にもコピーがなかったかもしれません。また、コピーが一台あってもそれは役所が使われるので、全部手書きで写してまいりました記憶がございます、事実がございます。その後、一時コピーをさせていただけたという経過がその途中にあったようなんですね。これは市川房枝の秘書がかわりましてからの話なんですけれども。また現在、コピーが許されていないということなんです。
 このことについては、情報公開というような事柄から、もしコピーがあいていたらコピーをさせていただくというわけにはいかないんでしょうか。今後ともそういう方針をお続けになるんでしょうか。それとも便宜をお計らいいただくというような、そういうふうなやわらかな対応をなさいますかどうか、お伺いしたいと思います。自治省にお願いします。
#83
○説明員(鈴木良一君) 政治資金の収支報告書についてでございますけれども、現行の政治資金規正法上、ただいまお話もございましたように、その要旨、これは毎年公表いたしております。それとあわせまして、その報告書を三年間でございますけれども閲覧に供するということになっているわけでございますけれども、ただ法律上、報告書のコピーにつきましては明文の規定がございません。そういうことから、私どもといたしましては従来からコピーについては認められないというふうに解釈をしてきておりまして、ただいま御指摘ございました今回の最高裁の判決も、基本的にはこのような政治資金規正法の趣旨に沿ったものであるというふうに理解をしております。
 ただ、いずれにいたしましても、実はこのコピーの問題につきましては、国会の各党におきましても検討がなされているというふうに伺っているところでございまして、今後とも私どもとしましてはその動向を見守ってまいりますとともに、私どもなりに勉強もしてまいりたいというふうに考えております。
#84
○紀平悌子君 国民の知る権利ということをここで理屈を云々申し上げるということもいたしませんけれども、私はなかなか、これを手書きで写せとか心眼でそれを写して大体こうだったというようなことでということでは、やっぱり有権者、国民が主権者である以上、政治資金規正法によって届け出られる内容というものが、これは真偽のほどが、果たして正しく届け出られているかどうかということは、これは時々御注意がございまして、届け出てないではないかということで再度届け直すというようなことがございますけれども、国民にとっては一年に一回新聞で知る以外ないわけですね。
 しかし、有権者としては、いわゆる参加ということ、そしてまた主権者としての参加をいたしますには、やはり政治のある意味では血流とも言われております政治資金のあり方について実態を把握したいという気持ちはあるわけですね。ですから、基本的にそういった制度が、コピーしてよいと書いてないからコピーをさせないということですか。書いてないことはさせないわけですね。ケース・バイ・ケース、いろいろこのことについてはあると思います。コピーさせている例もあると思いますし、また人がかわればさせるのかなということもあります。
 それで、私もちょっとコピーをお願いに行こうかなというふうに思っておりますのですが、これは議員であってもコピーはさせませんか。
#85
○説明員(鈴木良一君) 再度のお尋ねでございますけれども、御案内のように現行の政治資金規正法、政治資金につきまして収支の状況を国民の前に明らかにする、それによって政治活動の公明なり公正を期する、そういう性格を持っておるわけでございますけれども、一面でこうした政治資金規正法の規定と申しますのは政治活動の自由に対する一定の制約にもなる、こういうことでございまして、そのため私どももその解釈、運用につきましては法文に則しまして厳格に行われるべきであるというふうに考えているところでございます。
 そこで、コピーの問題につきましては、明文の規定が設けられていないということから、現行法上は認められないというふうに運用いたしているところでございます。
#86
○紀平悌子君 議員であっても、それは例えば国政調査権というふうなものがございますね。例えばそういうふうな立場からお願いをしてもだめでございますか。
#87
○説明員(鈴木良一君) 政治資金規正法の立場からは、特段、相手の方がどなたであろうと特別の規定等ございませんので、規正法上の立場からしますと、どなたから求められてもコピーには応じるわけにはいかないというふうに考えております。
#88
○紀平悌子君 終わります。
#89
○安恒良一君 私は大臣の所信に対して、二割司法の解消問題、特に長期裁判の根本原因が法曹人口の不足と予算の貧弱にあるということを前回指摘をして、その改善を大臣に促しましたし、また最高裁にも促しました。私は、国民にとって身近な司法にするためには、やはり裁判にかかる時間と費用とアクセスの面で個人が利用しやすいような改善がどうしても図られなきゃいかぬと思います。
 そこで、まず、きょうこの法案が出てきまして、私はこの法案に賛成ですが、どうも基本的な理念においてもしくは長期計画において、下稲葉先生も質問されましたが、裁判所の考えなり法務省の考えがすっきりしませんからまず一、二点聞きたいんです。
 第一点は、現在の裁判官、検察官、弁護士、これは国民一人当たりで見てバランスがとれていると思いますか、とれていないと思いますか、法務大臣にまずお聞きします。
 それから裁判所の方にも、裁判官、検察官、弁護士のバランスがとれていると思われますか。まあ検察官は結構ですけれども、弁護士と裁判官の数のバランスがとれていると思われますか。その点、とれているならとれている、とれていないならとれていない、簡単に答えてください。
#90
○政府委員(永井紀昭君) バランスがとれているかとれていないかということは、国民との人口比その他を比較法的に見たといいますか、二つの国との対比をして見ますと一つの指標になるのかなと。
 絶対的なバランスが何をもってバランスをとるかということは非常に難しいと思いますが、全体的に見ますと法曹全体、我が国はほかの、アメリカはやや法曹人口が多過ぎるという批判がございますが、イギリス、ドイツ、フランス等との比較において非常に少な過ぎるという、こういう全体的な問題があります。したがいまして、検察官につきましても、ほかの国との比較で見ますとやや少ないかな、こういう印象でございます。
#91
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 裁判所の立場から申しますと、弁護士さんの活動の全体を知っているわけではございませんので的確なお答えになるかどうかわかりませんが、ただ少なくとも裁判所の事件処理といいますか手続の関係だけから申しますと、例えば地方の庁ではなかなか弁護士さんがおられないために破産事件の管財人をお願いする方がいないとかそういうふうな点もございますので、そういう面ではもう少し地方の方にも弁護士さんがおられれば裁判所の事件処理はやりやすくなるかなという感じはいたします。
#92
○安恒良一君 次に、これも基本的な理念、最高裁の方に聞きたいんですが、どうも皆さんは裁判官の増員に対しては一貫して消極的であったのではないか。これは日弁連の資料の中で、平成元年五月二十二日の法曹協議会で、裁判所も有為な人材を多数確保する必要があることを一応認めたが、と書いてあります。同時に、依然として裁判官の不足によって司法運営上不都合を来していることはないとの認識のもとに、直ちに積極的な増員策を進めるほどの必要性は認めないという基本姿勢を崩していない、こう言っている。
 私は、きょう下稲葉さんとその他議員との議論を聞いておっても、あなたたちの中に積極的に、私は、裁判官の増員をしていわゆる長期裁判の解消をしよう、もちろんそれは数だけじゃなくて、裁判の進め方、司法の制度、予算全体関連しますよ。しかし、少なくとも積極的に裁判官を増員していこうという考えがあるのかないのか。なけりゃ、こんな法案出すことないんだよ、これは、毎年毎年。そこのところどうですか。あるかないかをはっきりしてください。
#93
○最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 裁判所の姿勢としまして、増員に消極的であるということは決してございません。先ほども申しましたように、四十年以降でも三百名を超える裁判官の増員をお願いしてきておるわけでございますので、今後も着実な増員策の実現に努力していきたいと思っております。
#94
○安恒良一君 口ではそういうことを言うけれども、現実には私は、本当にあなたたちが裁判官をふやそうという努力をされているかどうかという点について、まず私が今両者に聞きましたように、アメリカが三百二十人、イギリスが六百九十三人、ドイツが九百八十一人、フランスが千七百八十四人、日本が六千三百三十一人、これは裁判官、検事、弁護士、法曹一人当たりの国民数です。ですから、法務省も少し認められたように、私は日本の法曹人口は異常とも言えるほどこの数字が少ないと思うんですよ。
 ですから、その限りにおいて、それからまたバランスの点も考えてみますと、私は、諸外国とのバランスでいきますと、少なくとも国民六千三百人余に一人の割である今のバランスを、まず裁判官は五百人に一人、それから検察官は約千人に一人、弁護士は二千人に一人、これはたまたまいわゆるフランス、ドイツ、英国の国民一人当たりとの比率であります。これはかなりバランスがとれておる。しかし、裁判の仕組みとかいろんなことがありますから単純には言えませんけれども、私はやっぱりこれぐらいのバランスにいわゆる裁判官と検察官と弁護士というのを直す必要があるのではないかと思いますが、この点が一点。
 それから、これはもう具体的なことで聞きたいんですが、司法試験の合格者がこれからふえていきます。いわゆる一九九三年から四割増で、今後七百人で、これは来年度から具体的に出てくるわけですね。ところが、この二十年間で弁護士さんは五千人もふえています。裁判官は百人しかふえてないんですが、今度七百人になったときに、裁判官はそれに対してどの程度採用したいと思っているんですか。また、検察官はどの程度ふやしたいと思っているんですか。現実にもう来年から七百人、そしてさらに今議論が進んでおりまして、これでも足らぬと倍増論が、今、出ているんですね。しかし、まあ倍増論はまだ結論が出ていませんから、現実に来年から七百人になるんですから、その場合に、今言ったところをどうされようとしているのか、考え方を聞かせてください。
#95
○政府委員(永井紀昭君) ただいま委員の御指摘のありました裁判官、検察官、弁護士のバランスの問題でございますが、これは委員も御指摘ありましたとおり、これは各国の制度によって随分違いまして、例えばイギリスはいわゆる本判事はわずか千五百八十三人しかおりません。日本より少ないわけです。ほとんどが無給治安判事ということで、国の税金を払っていない方々が多く地方におられます。
 それから、フランスですと、検察官千三百四十三人いらっしゃいます。日本も本検事がいわゆる千百七十三人ですから、ほとんど同じでございます。もっともそうはいいましても、フランスはやはり捜査のあり方が違っていまして、予審判事という、裁判官が捜査をするというそういう仕組みになっておるものですから、むしろ検察官が少ないという形でございます。
 したがいまして、このバランスの問題は、非常に法制度のあり方からくるいろんな役割分担がありまして、何対何で正しいかどうかというのは非常に難しいんじゃないかと思います。
 それから、例えばフランスですと、実は判検事の任官者は二百なんです。毎年二百名ぐらいでございます。それに対しまして弁護士の養成は千三百人ぐらいやっているわけでございます。これもややフランスと日本は似ているんですが、そういう比率もあり得るということで、一概にこれが、どのバランスが正しいかどうかということはわかりません。
#96
○安恒良一君 七百人になったとき、どうするかというのを聞いているんです。
#97
○政府委員(永井紀昭君) それから、七百人になったときにどうするかという問題でございますが、これは現に任官希望者がどの程度出るかということに左右されるわけでございまして、ことし、検察官の任官希望者はやや、八十名近くいるのではないかということで、任官希望者がいない以上は揺れないという、こういう現実もあるということでございます。
#98
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 新任判事補の来年における採用数をどう考えているかというお尋ねでございますが、この新任判事補の採用につきましては、任官希望者の動向でありますとか、十年たちまして判事補から判事になる者の数、それから将来の裁判官の退官申し出の状況等を踏まえて検討する必要があるわけでございまして、また来年修習を終了する者は現在実務修習の途中でございまして、その多くの人はまだ裁判所での修習も行っていないという段階でございます。このような段階で具体的な数を申し上げることは困難であるということを御理解いただきたいと思います。
 ただ、裁判所といたしましては、裁判官にふさわしい人材はできるだけ多く採用したい、こういう気持ちがあるということは御理解いただきたいと思います。
#99
○安恒良一君 何を言っているんだね、君たちは。七百人になることはもう間違いないんだよ。現在、研修受けて、来年の四月からそれが実際に。そのときにただ単純に、いわゆる志望者がなければどうにもなりませんと、君たちは答えているんだよ。そんなことでバランスがどうしてとれるの。
 例えば、一つの例を挙げましょう。裁判官について、司法修習生が三十九期、採用されたときは百十七人なりたいと言ったんです。ところが、あなたたちが持ってきた数字は、終了時には六十五人でしたから六十二人採用しましたと。四十期は、百十八人に対して終了時には七十三人ですから、七十三人を採用しました、こういうのを持ってきているんです。
 私から言わせると、いわゆる司法試験を受けて採用されて研修所に入ったときに、たくさんの人がおれは裁判官になりたいと言っているんだが、それが二年の研修が終わった時点では数がこんなに少なくなって、それを任官しましたと言う。私は、そこにももう少し積極的な努力があってしかるべきじゃないかと。せっかく、おれは裁判官になりたいよと、司法試験を受かった人でそういう希望者がかなりあるわけです。ところが、現実に採用されるのは。
 私はやっぱりもう少し、なぜ裁判官になり手がないんだ、なぜ検察官になり手がないんだという、そこをあなたたち自身が考えて、私は私なりに提案を持っていますが、きょうはもう時間がありません。またこの次、議論をしますが。
 そういうことをして、少なくとも今バランスがとれていないということは事実なんだよ、バランスが。いろんな裁判の制度の違い、例えば私は、民事において西ドイツより日本が二倍かかる、何でかということで裁判所から説明に来てもらったけれども、わかりません。いろんなことを言っていましたけれども、二倍かかるという理由はわかりません。
 やっぱりその中の一つとしては、どうしても人の問題だと思います。それから、一つは予算の問題だと思う。ですから、もう少し意欲的に、下稲葉先生も言われたように、少し基本的な考え方を持ったらどうか。でないと、これは弁護士さんだけふやしたって問題は片づかないんですよ。弁護士さんもふやさなきゃならぬということで、今、議論されていますね。しかし、弁護士さんだけふえても、それに見合って裁判官と検察官がふえなきゃ、私は二割司法の解決は難しいと思うんです。
 これは事務当局に幾ら聞いたって平凡な、こっちがだんだん聞いておると腹が立ってくるような答弁だから、大臣、考え方を聞かせてください。
#100
○国務大臣(前田勲男君) 大変事務当局から、現実と言えば現実でございますが、やはり先生御指摘のとおり、今日、法曹三者、司法が置かれている状況というのは、国民から見ても二割司法という、決して理想的な姿でないことはもう重々、基本的な問題として取り組んでいかなければならないと思っております。特に国民から見まして、裁判を受ける権利の中で、やはり早く、安く、簡便にというのが何よりも大事なことであろうと考えておるところでございまして、そうした観点から立ちまして、今日の法曹三者間の人的なバランス等々も決して理想的な形にいってないことは、二割司法と言われる言葉一つ考えても事実である、そういう基本的な見地に立って考えていかなければならないと、かように思っております。具体的な細かい話に、急に小さな話になりまして、例えば検察官の確保の問題につきましても、もちろん法務省としてもるる、それぞれ、確保については努力をいたしておるところでございますけれども、現場の話を聞いてみますと、例えば修習が終わった年齢からいくと、結婚もされている、家庭も持っておられる方が多い。そうした中で、所得の問題、それにも増して、例えば転勤の問題等があって、どうしても検察官任官が回避されてしまう。現場の皆さんの言葉をかりれば、せっかく努力したけれども逃げてしまわれたというような苦労も実はあるようでございますが、いずれにいたしましても、法曹人口全体の推移も視野に入れながら法務省としてもできる限り積極的に、また理想を常に見失うことなく取り組んでまいらなければならないと、かように決意をいたしておるところでございます。
#101
○安恒良一君 もう時間になりましたから、私は、どうしたら検察官がふえるか裁判官がふえるかというのはまた改めて議論したいと思います。
 ただ、一言だけ言っておきますが、転勤問題がというのは僕はよくないと思うんです。今、民間は日本全国、世界各国にも転勤していくんですから、いわゆる転勤があるからおれは検事にならないとか裁判官にならないと。問題は、転勤に伴う待遇の問題であって、転勤自体は私は否定してはいけないと思います。このことだけ。
 それから、最後になりましたが、私は、出された、糸久さんからも言われたこの表のつくり方、中身を変えなきゃならぬ。私、たまたま、これの十七ページで、事務官、その他百九十一と欠員がありますから、その一覧表を出してもらって、初めてその中身がここに出てきたわけですね。そういうのを見ると、もう少しこの表は、百九十一の欠員はどういうところにあるのかということが一目瞭然にわかるように。それから、事務官が逆にこれは定員オーバーになっていますね。口頭では説明されるんですよ、これは書記官の試験を受けるために今勉強しておりますと。しかし、それはどのくらいおるのか、これをしないと、ここだけは二百四十二、定員増になっている。だから、こういう表の出し方は不親切です。
 だから、来年度からは、こういう表は我々が議論するのにすぐわかるようにつくっていただきたいということを申し上げて、終わります。
#102
○委員長(中西珠子君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。―別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#103
○委員長(中西珠子君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#104
○委員長(中西珠子君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
 午後二時まで休憩いたします。
   午後零時二十五分休憩
     ―――――・―――――
   午後二時開会
#105
○委員長(中西珠子君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 阪神・淡路大震災に伴う民事調停法による調停の申立ての手数料の特例に関する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。前田法務大臣。
#106
○国務大臣(前田勲男君) 阪神・淡路大震災に伴う民事調停法による調停の申立ての手数料の特例に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、阪神・淡路大震災による被害の状況にかんがみ、同震災に起因する民事に関する紛争の迅速かつ円滑な解決に資するため、当該紛争に係る民事調停法による調停の申し立ての手数料について特別の免除措置を講じようとするものでありまして、その内容は次のとおりであります。
 平成七年一月十七日において、阪神・淡路大震災の被災地区に住所等を有していた者が、同震災に起因する民事に関する紛争につき、同日から平成九年三月三十一日までの間に、民事調停法による調停の申し立てをする場合には、その手数料を免除しようとするものであります。
 以上が、この法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
#107
○委員長(中西珠子君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#108
○下稲葉耕吉君 午前に引き続きまして、特に大臣は本委員会から衆議院の方へ行かれたり、またお帰りになったり、いろいろ大変だと思いますが、緊急を要する法律案ということで、衆議院が可決されましてから速やかにこちらの方へ送っていただきまして、このような委員会を開くことになったわけでございまして、野党の皆様方も大変協力していただいて感謝いたしておるわけでございます。
 今さら大震災の問題につきまして申し上げることもないわけでございますが、私が特に関心を持っておりますのは、あそこは御承知のとおりに暴力団の非常に勢力の強い地域でございまして、関西の中でも特に兵庫県はそういうふうなところだというふうに承っておるわけでございます。
 その暴力団が人道的な立場から、大震災に際しましていろいろな救援活動をなさっておるということはマスコミに報道されておるわけでございます。余りマスコミに出ませんけれども私どもの耳に入ってくる情報ですと、やはりこういうふうな機会に勢力を伸ばそうということで、あそこに従来勢力を張っている以外の暴力団が入り込んでくるんじゃなかろうかというふうなことで大変警戒しているとか、あるいはまたこの際、利権を獲得しようというふうなことで水面下でいろいろ動き始めておる、あるいは不動産等の物件を物色しているというふうなこと等もあるわけでございまして、そういうふうな事案に対しまして、まず法務当局といたされましても十分ひとつ対応をぴしっとやっていただくようにお願いいたしまして、時間がございませんので数点の質問に入らせていただきます。
 まず、民事調停法によるこういうふうな調停の申し立て、現在まで何件ぐらいの申し込みがあったんでしょうか、まずそれをお伺いいたします。
#109
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 震災後、三月八日までの間に神戸地裁管内の簡易裁判所に申し立てられました震災関係の調停事件の数でございますが、七十六件でございます。
#110
○下稲葉耕吉君 わかりました。
 それには、この法律がまだ通っておりませんので、印紙を張って申請してあるのでございますか。
#111
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 大体は印紙を張って出されているようでございますが、消印をしないままで置いてあるのもあるというのが実情のようでございます。確認をいたしました。
#112
○下稲葉耕吉君 そうしますと、この法律が通りますとそれはどういうふうな取り扱いになりましょうか。
#113
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 民訴費用法に、納付義務がないことになりました場合には返還をするという手続が規定してございます。したがいまして、還付と言いますが、この還付の手続は当事者の申し立てにより開始をされ、申し立てに理由があると認められる場合には還付決定をするということになります。
#114
○下稲葉耕吉君 法律が制定されれば当然還付決定なさいまして、申し立てがあればというその辺の返事が私ちょっと気に引っかかるんですけれども、これはもう申し立てがあろうがなかろうが法律がそういうようなことですから、積極的に御連絡してさしあげて、そしてこういうふうなことだというぐらいの親切さというものがほしいと思います。
 そこで、大変アバウトな話で結構でございますが、全体といたしまして何件ぐらいの調停の申請が出されるようなお見積もりでございましょうか。
#115
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) ただいま、法律の規定をそのとおり申し上げたので冷たい回答になったかと思いますが、裁判所としては、例えば調停期日の機会等に還付を受けられる旨を説明するとか、あるいは還付の申し立てを適宜の方法でするように連絡をするか、配慮をしたいと思っております。
 今お尋ねの事件の関係でございますが、実はいろいろな試算のやり方があるかと思いますが、仮に関東大震災の例を参考にして計算をいたしますと、三千八百件程度という数字も出てくるわけでございますが、あくまでもこれは単純に倒壊家屋の棟数から比較した計算にすぎないわけでございまして、権利意識とか社会情勢等も異なっておりますので、それよりも多くの件数、例えば数千件から一万件程度の事件が申し立てられる可能性もあると考えておりまして、もっとも、これも確たる根拠のあるものではないというのが実情でございます。
#116
○下稲葉耕吉君 わかりました。
 そうしますと、それぐらいの仕事がわっとこう集中的に一定の地域に出てくるわけでございますが、それに対応する体制というものはどういうふうになさるつもりでございますか。
#117
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 体制といたしますと、人的な体制と物的な体制とございます。
 まず人的な体制につきまして申し上げますが、適正迅速に処理するために必要な人的手当てはしていきたいと思っております。そこで、調停委員につきましては、既に他の庁で調停委員をされている方をあわせて神戸地裁管内の民事調停委員にも任命をするという手続を進めております。例えば、大阪地裁・簡裁管内の所属の調停委員、大阪家裁所属の調停委員、神戸家裁所属の調停委員のうちで合計で百六十人を超える弁護士の調停委員から了解を得られておりますので、神戸地裁管内の民事調停委員に併任をするための手続を進めているところでございます。このほかに、新規に二十人を超える調停委員を任命する予定でございます。
 なお、裁判官等につきましても、大阪等の裁判官等を応援に派遣することを検討しておりますが、事件数の動向によってさらに適切に対処していきたいと考えております。
 それから、物的な面で申し上げますと、調停室の確保につきましても事件の動向を見ながら適切に対応していきたい。現在のところはそれほどの調停事件数と申すわけにはいきませんので、何とか現在裁判所にある調停室で足りておりますが、将来不足するような事態が生じた場合には、裁判所外の公共施設を利用しての調停事件の処理も考えていきたいというふうに思っております。
#118
○下稲葉耕吉君 それでは、最後にお伺いいたしますが、これもぴしっとした数字は出ないと思いますけれども、国はそういうふうなことのために幾らぐらいの減収になりましょうか。
#119
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 今回の特例法の考え方は、震災に起因する事件ということですので、新たに発生するべきものの手数料が入らなくなるということでございますが、これも調停事件数がどうなるかということにかかわりますのと、どういう種類の調停が申し立てられるかということによるかと思います。
 ただ、単純に例えば全国の地裁、簡裁の調停事件の一件当たりの申し立て手数料、これ平均しますと五千八百円ぐらいのようでございますが、これを参考にして、予想件数を例えば四千件と仮定いたしますと二千五百万円ぐらい、一万件と仮定いたしますと六千万円ぐらいということになろうかということで考えております。
#120
○下稲葉耕吉君 ありがとうございました。終わります。
#121
○北村哲男君 北村でございますが、引き続いて質問をいたします。
 私は震災の終わってからちょうど十日目、二十七日に一人で現地まで普通のバスに乗って行って、いろいろな場所を見て歩いて、そこで法律相談なんか、そのときはまだ法律相談体制は整っていなかったんですけれども、被害に遭った弁護士さんたちとお会いして、その後また、つい先週の土曜日に行きまして、今度は現実に法律相談を担当している何人かの弁護士さんに集まってもらって状況を聞きまして、どういうふうにすればいいだろうかと。あの人たちの悩みは、罹災都市借地借家臨時処理法が適用になったものの、それを説明はできるんだけれども、全然解決にならないと。
 例えば、百坪の土地に四軒の家が建っていたとします。四軒の人が借りていた。それで借家人は、二年以内に申し出れば優先借地権あるいは借家権がもらえるんですけれども、さて、一人が出したとしたらどの範囲でどこの位置の借地権あるいは借家権がもらえるのかということをさっぱり指導ができないと。結局、わからなければ裁判所に行くんだよと。すべてが裁判所に調停を申し立てるような仕組みになっているということになりまして、法律の説明はできるけれども現実の解決に全然ならないんだという悩みを聞きました。
 実際の相談件数も、あるところでは六千件も来ているというし、私が聞いた限りでは小中高の先生だけでも一カ月で千件の相談を受けていると。私が実際に法律事務所で話をしている間も、ばんばん人は来る、電話は来る、みんな借地借家の問題。考えれば、九万五千から十一万ぐらいの倒壊家屋があるということで、当然なってくると思うんですけれども。
 そこで、時間もないんですけれども、そしてしかも、今はどうしようもないので、とにかく相談を受けて、相手に対しては内容証明を出している。だから、今神戸では内容証明が飛び交っているんだと。それはすなわち、これからの調停はかなり大きな調停を予想される事態であるということなんです。
 そうすると、今、下稲葉先生の御質問の中で、大体場合によっては一万件ぐらいあると言われたら、調停委員が一人三十件ぐらいを受け持つとしても三百人は必要なんです。今、何か手だてをしたと言われておりますけれども、大体どのくらいを手だてをしておられるんでしょうか。
#122
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 現在、神戸地裁及び同管内の簡裁の民事調停委員数が四百人を超えております、四百十一人ぐらいだったと思いますが、そこへ先ほど申し上げました併任発令の分が百六十人を超える数御了解をいただいておる、さらに新規が二十人ということでございますので、六百人近くということになろうかと思います。
#123
○北村哲男君 わかりました。今の数で三十件と言いましたけれども、どうなるかわかりませんけれども、数としては恐らくかなりの数を用意されていると思いますが。
 それにしても、今度は、通常、調停といってもかなり難しそうな調停なわけで、今度はずるずると引っ張ってしまうとなかなか解決つかないということで、例えば選挙違反事件なんかは百日裁判ということを決めてかなり成果を上げておりますよね。この借地借家の関係の調停でも、百日裁判制度のような形のかなり強力な促進方を図ることはできないかということについてはどのようにお考えでしょうか。
#124
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 御承知のとおり、民事事件の場合は、相手方、当事者との関係もございますので、なかなか一概に迅速処理ができるかどうかということの断言はできませんが、事案が事案でございますので迅速処理ができるように、先ほど委員が御指摘になりました法律の趣旨等も参考にしながら、迅速処理を心がけていただくようにしたいというふうに考えております。
#125
○北村哲男君 調停委員の増員についてはよくわかりました。
 しかし、それに伴って裁判官とか書記官の職員の増員とか施設の確保もやっぱり検討されなければならないと思うんです。私どもも含めて現在までに実施した被災者からの法律相談によりますと、建築技術あるいは不動産の評価、鑑定士さんですね、それから税務関係あるいは金融関係の専門分野の知識を求められる場合が非常に多くて、とても法律家では対応できないわけです。
 そういうところから、そういう専門的知識の場合は、今の民事調停法あるいは調停規則でも、特に規則の十四条というのがありまして、「調停委員会は、必要があると認めるときは、当該調停委員会を組織していない民事調停委員の専門的な知識経験に基づく意見を聴取することができる。」、そういう専門家から意見を求めることができるという規定があるんですけれども、今回についてはそういう人たちをかなり結集して、常時そういう方々の意見を聞けるという体制をとる必要があるんではないかというふうに思うんです。その点につきまして、法曹三者なんかの協議を通じて、特に十四条なんかをもとにして、それを運用を図るという意味での対応ということを考えられないかと思うんですけれども、その点についてはいかがお考えでしょうか。
#126
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 専門家の知識の活用ということは、委員の御指摘のとおりだと思います。
 ただ、神戸地裁管内には従来から弁護士、不動産鑑定士、建築士、税理士、公認会計士など専門的知識を有する調停委員が相当数ございます。また、先ほど申し上げましたように、併任発令等も含めて弁護士さんが相当数また調停委員になっていただくという予定でございますので、こういう専門的知識が必要となる事件につきましては、これらの専門家調停委員にできる限り調停委員会の構成員になっていただきたいというふうに考えているところでございます。もっとも、調停委員会の構成員になるまでもなく、一時的な意見聴取で賄えるものにつきましては、ただいま御指摘のありました意見聴取の制度も活用すべきものと考えております。さらに必要が生じた場合には、専門家調停委員の増員も図りたいというふうに考えております。
#127
○北村哲男君 それから、人的体制と物的体制というふうにお分けになって先ほどの質問にもお答えになりましたけれども、関東大震災のときは現地調停ということをやられたようなんですけれども、現地調停というのはどういうことを、避難所の中につくるのかなという気もするんですが、裁判所だけでなくて自治体の中の部屋を確保するとかあるいは近県に広げるとかというふうな、そういう物的な体制というのはお考えなんでしょうか。
#128
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 関東大震災のときの取り扱いにつきましては、今委員から御指摘のあったとおりでございまして、臨時の出張所をかなりの敷設けられたということのようでございますが、今回の震災につきましては、臨時に事件処理のできる施設がどの程度あり得るか、またその必要性がどの程度あるかということを現在情報収集に努めておりますが、ほかに、先般来お話の出ております法曹三者震災対策連絡協議会の席上で、裁判所から法務省に対しまして、必要が生じた場合には法務省関係の施設の利用についても協力をいただけるよう依頼をしているところでございます。
#129
○北村哲男君 大臣にお伺いしますけれども、これほどかようにこれからの体制、まさにこれから法曹の出番といいますか、今までは確かに緊急な事態でありましたけれども、これからは皆さん方の生活を安定させるために、紛争を少なくするためにまさに法務省の出番だと思うんですけれども、それには法曹等の強い体制も必要であるし、またお金も必要だと思うんですよ。そういう予算措置等も含めて、もちろん今回についてはもうお安くしていただいた、ただにしていただいたと、とてもすばらしい案だと思うんですけれども、皆さん方の経済的負担を軽くするとともに、相当予算も含めた強力な体制が必要だと思いますけれども、その辺についての大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
#130
○国務大臣(前田勲男君) 被災地の状況もまさに復興という場面に移ってきておりまして、当初法律相談であったのが、いよいよ具体的な案件にかかってきております。そうした中、特に神戸の弁護士会館にはまだ避難所としてお使いいただいておる、大変そういう厳しい条件の中、何かと御尽力をいただいておりますことにまずお礼を申し上げなきゃなりません。
 特に、今るる御審議ございましたように、これからはその法律上の問題というのはかなり複雑になってまいりまして、借地借家、境界関係、境界の確定の問題、建築登記、区分所有等々極めて多岐にわたってまいりまして、相談あるいは調停、仲裁いただく作業量もふえてまいるということでございます。
 特に、国からの財政措置として今日も、今続けて努力もいたしておるところでございますが、法律扶助制度の充実ということが何よりも大事なことであろうと思っておりまして、今回の被災に伴う法律上の問題に対しても的確に対応できるように、財政上の措置というものを十二分に考えてまいりたいと、かように考えておるところでございます。
#131
○北村哲男君 終わります。どうもありがとうございました。
#132
○山崎順子君 今現在、被災地ではさまざまな相談にかかわっていらっしゃる弁護士さんやボランティアの方たちが大勢いらっしゃいまして、その方たちのお話では、やはり土地や住居、それから雇用をめぐるトラブルと相談が激増しているということなんですけれども、本来日本人は余り法的トラブルを好まないと言われております。ただ、皆さんから、自分たちの日々の生活が実は法律によって支えられている、いかに法律と自分たちの生活が深いかということを今回痛感したというような声も随分聞いております。
 そこで、今回の震災に伴う民事調停の申し立て手数料が免除されるという法律案は、なるべく訴訟には持っていかずに調停という話し合いの場で問題を解決していこうということで、私も大変いい案で大賛成でございますけれども、すぐに思い浮かんだのは、下稲葉先生、北村先生、お二人ともいろいろもう既に御質問なさいましたけれども、やはり調停委員の数は十分なのか、また調停室は足りるのか、そういったことがすぐ念頭に浮かびました。
 実は、東京簡裁の方で統合したこともございますけれども、調停室が足りなくて以前よりもとても調停の進みぐあいが遅くなったという苦情を随分弁護士さんたちから聞いておりまして、今回せっかく調停の手数料が無料になっても、速やかに調停ができなければ実態が伴わないということになりますので、ぜひ場所の確保ということ、それから調停委員の確保ということが大事になると思います。
 一応、調停委員の確保等はなさったということなんですけれども、質の問題と言ってはいろいろ語弊があるかもしれませんけれども、やはり家裁の調停委員をなさっている弁護士さんとか、今まで余り借地借家法等のケースはたくさん扱っていらっしゃらない方とかという方は、法律としては、知識としてはお持ちであっても、ケースをたくさん扱っていらっしゃらない場合はかなりいろいろ専門家でも面倒なところが出てくると思うんですね。ですから、弁護士さんとかというだけではうまくいかないケースもあると思いますので、ぜひその辺、研修とかそういったことも考えていらっしゃるのか、どういう形で質の確保をなさるのか。
 それからもう一つ、質の確保という点で、北村先生に御答弁なさったので重なるところはもう結構でございますので、別の件があれば。
 それからもう一つ、やはり働いている方たちは、震災のときじゃなくても一般のときにも調停を受けに行きにくいという時間的な問題がございまして、例えば今回のような場合、数が多くなることも考えますと、夜間調停とか休日調停とか、そういったものもどんどん取り入れていくべきではないかと私は考えております。
 それから、せっかくこの法律がもし施行されるといたしましても、多くの人に利用してもらうためにPRといいますかどういう方法を考えていらっしゃるのか。またその中には、神戸には随分外国人の方もいらっしゃると思うんですけれども、外国語、英文等によるPRや、また調停時の通訳などのことも考えていらっしゃるのか。
 この法律を有効に生かす手段として幾つかお聞きしましたが、手短にお答えいただければと思います。
#133
○最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) まず調停室の確保の問題でございますが、先ほども申し上げたとおりになるわけでございますが、基本的には、裁判所庁舎で足りない場合には地方公共団体あるいはまた法務省等の御協力も得て必要な数だけの調停室の確保を図っていきたいと考えております。
 それから、研修等のことについてのお尋ねでございますが、現在、この罹災都市借地借家臨時処理法の政令指定に伴いますさまざまな法律問題等を中心に、裁判官の間で担当者を決めて勉強してもらっております。その人たちが中心になって今後、調停委員等の研修に当たることになろうかと思います。
 それから、専門家の確保の問題につきましては、先ほど北村委員に申し上げたとおりでございますが、調停委員に既になっておられる専門家で足りない場合には、さらに専門家を補充する形での人的な手当てを図っていきたいと考えております。
 それから、夜間調停についてのお話がございました。実は、御承知のことと存じますが、夜間調停、現在やっておりますのは大阪と東京でございます。大阪簡裁では開庁した平成五年四月から夜間調停を実施しておりますが、申立人と相手方双方の希望が一致する必要もあるということから、実施件数は毎月数件程度のようでございます。それから、東京簡裁でも開庁した平成六年九月から夜間調停を実施しておりますが、これまでの実施件数は合計で四十七件であって、うち四十五件は八人の多重債務者の事件ということのようでございます。
 この夜間調停につきましては、このように、当事者双方の希望が一致しないと実施できないということ、それから当事者の身の安全を確保するという警備上の問題もございますので、その実施については慎重な検討が必要かと思いますが、多くの被災者が夜間調停を希望するという事情がうかがわれます場合には、その実施を真剣に検討しなければならないと考えているところでございます。
 それからもう一点、PR等のお話もございましたので、現在、裁判所におきましては調停に関するリーフレットを用意してございまして、地方公共団体の窓口等に備え置いていただいております。これは通常の民事調停事件ということを念頭に置いたものでございますが、早速に、今回の震災に伴って調停に対する需要がふえるであろうと思われましたので、追加配付をしたところでございます。
 さらに、今回の手数料の免除の特例につきましては、窓口等に掲示するなど理解をしやすいように、目につきやすいように工夫をしていきたいと考えているところでございます。
 なお、外国人の関係で若干お触れになりましたので申し上げますが、日本に居住する外国人は一般的には日本語を理解する者と一緒に生活をされているかあるいは日本語を理解する者の助けをかりて生活をされていることが多いということから、日本語を理解しない方が単独で裁判所の調停の受け付け相談窓口に来られることはほとんどないというふうに聞いております。
 このことは、神戸だけではなくて大阪や東京でも同様だというふうに聞いておりますが、仮に日本語を理解されない方が単独で受け付け相談に来られたり、あるいは調停の当事者になった場合でも、その者が英語をもし理解するのであれば、ある程度英語を話せる裁判所職員もございますので、そのような職員が対応することで対処できるかなと思っております。
 英語以外ということになりますと、常時通訳のできる人を待機させるということは実際上不可能でございますので、必要に応じて通訳依頼等の方法を考えていきたいというふうに考えているところでございます。
#134
○山崎順子君 例えば夜間調停などもそうなんですけれども、夜間の保育というのがあるんですが、あれもせっかくっくったけれども、利用者が少ないから余りほかのところに広める必要はないんじゃないかというお答えがよく行政から返ってくるんですけれども、現実には近くに保育園が夜間保育をしていないということでとても利用しにくいとかそういう声はたくさんお母さんたちから来ているんですね。
 ですから、調停の場合も、夜間調停が数が少ないからというのではなくて、なぜ少ないのかという原因をお調べになって、今回のようなときには特別に夜間調停や休日調停をふやせるような形にぜひ御検討いただきたいとも思いますし、それから外国語の件でもそうですが、多分来る人はわかっているだろうとか、そういう形ではなくて、前向きに御検討いただければと思います。
 時間がありませんのでもう一つ、先ほど法務大臣の方からも、法律扶助事業に対してぜひ予算をつけていきたいというようなお答えがございましたけれども、それで私もそのお答えを欲しかったので、ちょっと前段のところだけお話しさせていただきたいと思います。
 調停を利用する前に、やはり相談というものが大変重要なことになってきて、相談というのはやはり裁判所とか司法というものが縁遠い国民、私たちにとっては一番法律相談というのは身近な司法へのアクセスする機会だと思うんですね。
 その相談窓口が、実は三年前なんですが、私がやっております研究所で、これは簡裁じゃなくて家裁なんですけれども、家裁の調停委員と、それから行政の相談員と、それから弁護士さん、これは全国的に、そういった人たちに相談なり調停を受けたときに、どういう形態で、それからどういう態度だったか、それから受けてどうだったかというのを全部アンケート調査をしたことがあるんですけれども、残念ながら、弁護士さん、行政の相談員に比べると、調停委員の態度が一番悪いという結果が出てしまったんですね。もちろん人にもよると思いますけれども。
 例えば、言葉遣いや態度が余り好ましくなかったとか押しつけがましさや威圧感を感じたとか、その後、相談を受けた後の、調停を受けた後のその人自身の気持ちでは、すっきりしない、すっきりしたかというんで、いいえが物すごく多い。安心感が得られたか、これも反対が多い。また、自分の気持ちをわかってくれたと感じたかというのもとても否定的な答えが多いし、元気が出たというのの反対、いいえというのが圧倒的に多かったんですね。
 そうしますと、家裁と簡裁は違うということはよくわかりますけれども、だからといってじゃ、簡裁の方はすごくいいかということも余り考えられないんですが、被災地で家がなくなり、それから家族を失い、精神的にも大変な喪失体験をした方々が、もう何とか家のことくらいは、雇用の面では裁判所が助けてくれるんじゃないかと思って、今回の調停の費用も、申し立て費用も無料になる、ああこれはよかったと思ってせっかくお行きになっても、元気にならずに帰っていらしたらこれはどうしようもありません。
 まあ、物事は相手のあることですから、自分の思いどおりには解決しないとしても、よく聞いてくれた、ああこれですっきりした、元気になれたと思うようなことがとっても大事でございますので、この辺ぜひ配慮していただきたいことと、そういう意味で相談活動がとても大事ですから、法律扶助事業にぜひとも、今回の調停の無料だけではなくて、予算を立てていただきたいと、つけていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
 一言もし大臣あればお願いします。
#135
○国務大臣(前田勲男君) 調停の質の問題は別といたしまして、予算の面では法律相談が財政的な措置の中に入っております。考えております。
#136
○山崎順子君 ありがとうございます。終わります。
#137
○紀平悌子君 法務大臣初め法務省の皆様方、特に被災地の現場で住居を持たれて働いておられた方自身が非常にダメージを大きく受けていらっしゃいますにもかかわらず、さまざまな御努力をなさっていらっしゃることに大変敬意をまず表したい、お礼を申し上げたいと思います。
 さて、もうお聞きすることはほとんどないように思うんですけれども、私が阪神・淡路大震災、これは名前がいろいろ変わってまいりまして、今正式にはこういうことでございますが、初めてテレビでちょうど五時四十六分でございますか、その直後の状況、それからそれ以後の状況を見た感じというのは、五十年前のやはり日本の国土の受けました戦災の状況とほとんど変わらないということを、自分のそのときの経験と照らしまして思いました。
 さぞ、さまざまなことが起きていると思うんです。どれから手をつけていいかわからないというのが今の政府関係の皆様のお気持ちだと思います。
 法務省また裁判所におかれましては、この民事調停申立ての手数料の特例に関する法律案をお出しになって、緊急の一つの法律的な、法的な対策として出されておりますと思います。
 これはもちろん即賛成でございますけれども、ほかに震災対策としてとられた御処置というか、主なものだけでも結構でございますし、またこんなことも必要じゃないかと思われることをお伺いしたいと思います。
 所要時間五分でございますので、大体、私申し上げたいことはほかのもう委員の方もおっしゃってくださいましたので、被災者の皆様がこういった茫然自失、それから立ち直りかけている中で、どうやってこの法律的な措置を知るかということ、知らせるかということが一番大事なことだと思います。メディアの活用ということを十二分になさっていただきたいというふうに思います。
 今、全体のことを含めまして、時間の範囲内で結構でございますので、大臣の全体に対する御見解、それからもし補足的に今の質問に答えていただけましたら幸いでございます。
 以上です。
#138
○国務大臣(前田勲男君) それでは、まとめてお答えを申し上げたいと存じます。
 まず、震災後、被災住民の方の権利保全に対する不安感、これが非常に高まっておりまして、これに対応いたしまして罹災都市借地借家臨時処理法を二月六日に政令指定したところでございます。
 なお、この法律はふだんなじみのない法律でございまして、特に被災者の権利関係の保全の不安感の払拭という観点から、その周知徹底を図っておるところでございますが、何よりもまず弁護士を初めとした専門家の皆さんに御理解いただくことが肝要であるという観点から、大阪、神戸等々におきまして説明会をいたし、かつまた広報、周知徹底のパンフレット等も、避難所等々も含めて配布をいたしておるところでございます。
 また、特にメディアの活用ということもございまして、テレビ、新聞あるいはラジオ等々におきましても、この法案の説明等、非常に被災者の方にわかりやすく御説明を幾たびかいたしておるところでございます。
 なお、これから起こってまいりますいろいろ法律問題は極めて専門的、複雑多岐にわたってまいりますが、そういった観点からも、弁護士の先生を初めとした関係各位の皆さんにも、法務省あるいは建設省あるいは自治省等々からも御参加をいただいて、できるだけ権利の保全等、あるいは今回の都市計画等との関係等については詳しい説明をさせていただきたいと存じております。
 それから、法的ないろいろ手だても用意をいたしておりまして、今御審議いただいておるのもその一つでございますが、ほかに、これから多数出てまいりましょう、建物の滅失登記の負担の軽減する方法がないかどうか、あるいは今回の震災によりまして破産宣告の問題がございまして、破産宣告の猶予を二年程度行う特別立法、あるいは有限会社、株式会社の最低資本金制度の適用の猶予期間の延長、それからマンションの中でも特に全部消滅したマンション、これは民法上の手続に成るものでございますから、これらを区分所有建物の建てかえ要件と似たような条件にするというような法律、立法を現在用意、準備をいたしておるところでございます。
#139
○紀平悌子君 ありがとうございました。終わります。
#140
○安恒良一君 この法律、二つちゃんと規定されていて、一つは罹災都市借地借家臨時処理法に指定された地域と、それからいま一つは「阪神・淡路大震災に起因する民事に関する紛争」と、こういうふうにこれはなっているわけですね。
 それで、今まで七十六件あったというんですが、私が事務当局から聞きますと、主としてこの七十六件は借家に対する敷金の返還とか家屋の明け渡しとか修理の問題とか、そういう問題であったというふうに事務当局からは説明を受けています。まあこれから起こっている。
 そこで、ただ、「起因する民事に関する紛争」ということになると、この民事調停法を見ますと、今回の場合は宅地建物等の事件が非常に多いだろうと思いますが、この法律からいきますと、例えば農事調停という問題があります。まあ、これは神戸ですから少ないかもしれない。しかし、商事調停、商事の調停というのも僕は出てくるだろうと思いますね。それから、場合によれば私は交通関係の調停というのも出てくると思いますが、その場合に、「起因する民事に関する」、この「起因する」というところがどの範囲までどうするのかということになると思うんです。私は、何も厳しくやれと言っているわけじゃない。そうかといって、何でもかんでもこれ起因すると言われてもこれは困りますから、そこらについてはどのようなことを想定され、どのようにこの法律を今後運用されていこうとするのか、その一点だけを聞かせてください。
#141
○政府委員(永井紀昭君) ただいま、震災に起因する民事という文言の解釈はどうかという、こういう御質問でございますが、抽象的に言いますと、社会通念上、地震及びこれによる火事等の一連の災害と因果関係があると認められる民事上の紛争がこの中に含まれると思われます。
 具体的には、ただいま委員御説明されました賃貸借契約の敷金返還でありますとか修繕義務をどうするとか、あるいは地震により経営状態が悪化したことを理由とする債務弁済猶予の申し立て等、いろいろあろうかと思います。そのほかにも、地震等による事業の閉鎖、経営悪化などを理由とする解雇、採用内定取り消しをめぐる争いでありますとか、あるいは地震で倒壊した建物の跡地に無権限でバラックを建てて住んでいる者に対する明け渡し紛争でありますとか、いろんなことが想定されるわけでございます。
 そこで、問題は、これの判断は裁判所が専らおやりになることではございますが、裁判所の方に確認し、我々この法案を出す前提で討議いたしました結果、極めでできるだけ広く解したいと。明らかにこれは地震とは無関係であるというもの以外はできるだけ広く解して、余り非常識的に、こんなのは地震と関係ないよというものは受けないけれども、印紙を張ってくださいというのもできるだけ広く解したいと、こういうことを聞いております。
#142
○安恒良一君 それじゃ大臣、お願いしておきますが、今おっしゃったことで、できるだけ広くということですから、それなら、今さっき何か裁判所の人が広報については窓口に掲載するなんて答弁していましたけれども、そんなことじゃだめですね。やっぱりメディアを使ってできるだけ皆さんがこれが適用、活用できるような広報活動をきちっとしていただきたいと思います。よろしゅうございますか。
#143
○国務大臣(前田勲男君) 承りました。
#144
○委員長(中西珠子君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。―別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 阪神・淡路大震災に伴う民事調停法による調停の申立ての手数料の特例に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#145
○委員長(中西珠子君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#146
○委員長(中西珠子君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時四十八分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト