1994/11/09 第131回国会 参議院
参議院会議録情報 第131回国会 科学技術特別委員会 第2号
#1
第131回国会 科学技術特別委員会 第2号平成六年十一月九日(水曜日)
正午開会
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委員の異動
十一月八日
辞任 補欠選任
乾 晴美君 古川太三郎君
長谷川 清君 足立 良平君
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出席者は左のとおり。
委員長 高桑 栄松君
理 事
河本 三郎君
志村 哲良君
西岡瑠璃子君
矢原 秀男君
委 員
鈴木 栄治君
二木 秀夫君
前島英三郎君
穐山 篤君
稲村 稔夫君
瀬谷 英行君
足立 良平君
泉 信也君
古川太三郎君
西山登紀子君
國弘 正雄君
国務大臣
国 務 大 臣
(科学技術庁長
官) 田中眞紀子君
政府委員
科学技術政務次
官 関根 則之君
科学技術庁長官
官房長 新 欣樹君
科学技術庁科学
技術政策局長 石井 敏弘君
科学技術庁科学
技術振興局長 工藤 尚武君
科学技術庁研究
開発局長 沖村 憲樹君
科学術庁原子
力局長 岡崎 俊雄君
科学技術庁原子
力安全局長 笹谷 勇君
事務局側
第三特別調査室
長 堀籠 秀昌君
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本日の会議に付した案件
○科学技術振興対策樹立に関する調査
(科学技術振興のための諸施策に関する件)
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#2
○委員長(高桑栄松君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。まず、委員の異動について御報告いたします。
昨日、乾晴美君及び長谷川清君が委員を辞任され、その補欠として古川太三郎君及び足立良平君が選任されました。
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#3
○委員長(高桑栄松君) 科学技術振興対策樹立に関する調査を議題としまして、田中科学技術庁長官から科学技術振興のための諸施策について所信を聞くことといたします。田中科学技術庁長官。#4
○国務大臣(田中眞紀子君) 第百三十一回臨時国会に当たり、私の所信を申し上げます。科学技術庁長官に就任いたしまして以来、私は、科学技術政策の責任者として、国民のために何をなすべきかについて考えてまいりました。
村山総理大臣は、科学技術の振興について、未来への発展基盤を整備することにほかならないとの認識を示されました。まさにそのとおりだと思います。
そして私は、他の先進国に類を見ないほど社会が急速に高齢化することが見込まれている我が国の将来に思いをはせるとき、真に豊かさを実感できる社会を構築し、誇りを持って次の世代に引き継いていくことが重要であると考えます。
天然資源に乏しい我が国において、このことを実現していくためには、唯一の資源とでも言うべき知的創造力、すなわち科学技術を積極的に生かしていかなければなりません。
二十一世紀が間近に迫っている今、創造性豊かな科学技術系人材を養成、確保し、創造的な基礎的研究を着実に推進するとともに、大型放射光施設(SPring8)などの研究施設設備の充実、研究情報ネットワークとデータベースの整備などの科学技術振興基盤の整備に力を入れる必要があります。
我が国初の女性宇宙飛行士、向井千秋さんが私たちに夢や希望を与えてくれた例を見るまでもなく、科学技術は、あらゆる分野で人類の新しい可能性、すなわち未来を切り開く力を持っています。私は、いわば未来担当大臣として、夢を実現し、新しい文化や経済活動を創出するためにも、積極的に科学技術の振興を図ります。
以下、科学技術政策上の諸課題について、具体的に申し上げます。
去る八月二十八日、我が国が全段自主開発したHUロケット試験機二号機により技術試験衛星Y型きく六号が打ち上げられました。この衛星は、HUロケットの性能確認、大型静止衛星技術の確立、次世代の高度な衛星通信のための実験などを実施することを目的として開発を進めてきたものです。このきく六号はロケットから無事分離されたものの、静止軌道に投入するためのアポジエンジンにふぐあいが発生したため、静止軌道への投入ができず、現在、衛星自体は正常に機能しているものの、楕円軌道を周回しております。
こうした事態を踏まえ、私が委員長を務めております宇宙開発委員会では特別調査委員会を設置し、原因究明と今後の対策等について調査審議を進めており、その結果を年内にも取りまとめる予定です。目下、宇宙開発事業団では、ふぐあい等の原因究明に全力で取り組むとともに、きく六号をできる限り有効に活用するため、関係機関とともに、運用、実験計画の見直しを行っております。
きく六号を利用した実験につきましては、所期の目標のすべてを達成することはできなくなりましたが、衛星本体の基本的な機器に関する実験はかなり行える見込みであり、また、通信実験についても、制約はあるものの、ある程度は可能となる見込みです。目下、宇宙開発事業団等関係研究機関の技術陣が精いっぱいの対応を進めており、私といたしましても、次のステップに向けて一歩でも前進するよう最大限の努力を払う所存です。
宇宙開発は、人類の新たな活動領域、フロンティアを切り開き、二十一世紀に向けて人類の発展基盤を形成するものです。今回の事態を教訓として、今後とも一層効果的、効率的な研究開発に心がけてまいりますので、引き続き皆様方の力強い御指導、御支援を賜りますようお願い申し上げます。
さて、私は、本年六月に科学技術庁長官に就任して以来、常に一国民、一主婦、すなわち生活者としての立場を忘れずに任に当たってまいりました。科学技術の進歩がいかに速いといっても、人間と調和のとれたものでなければならないのは当然です。私は、科学技術の恩恵の最終的な受け手である、生活者を中心に据えた科学技術の振興こそが重要だと思います。
このため、健康を維持増進するとともに、生活環境の向上、防災・安全対策の充実などを図ることとし、地震予知のための観測・研究や火山噴火予知に関する研究を初めとして、がん関連研究、ヒト遺伝子解析、食品成分データの整備、長寿社会に対応するための研究、人間特性に調和した科学技術に関する研究開発を進めるとともに、エネルギー研究開発基本計画に基づき、政府一体となって、太陽エネルギー、燃料電池等の未来エネルギーの研究開発の新たな展開に最大限努力し、国民生活に密着した科学技術を推進してまいります。
この分野で、これまでも力を入れてきたものの中に地震予知があります。
地震は、一たん発生すると人命はもとより社会経済に大変大きな影響を与えるものであり、十月四日に発生した平成六年北海道東方沖地震でも、各地に被害が発生いたしました。被災されました方々に対しましては、この場をおかりして、心よりお見舞いを申し上げます。
地震災害を防ぐためには、地震予知が大変重要です。現在、いわゆる東海地震については、発生メカニズムの解明が進んでおり、これまでの経験から地震の前兆現象が見出せると考えられておりますが、これ以外の地震については、観測データの蓄積も乏しく、発生メカニズムの解明も十分ではないため、予知は極めて難しい課題となっております。
このため、防災に関する研究開発基本計画に基づき、私が本部長を務める地震予知推進本部を通じて地震予知のための観測・研究を推進しており、今後ともその充実強化に努めます。
また、がん関連研究については、政府のがん克服新十カ年戦略を推進するとともに、放射線医学総合研究所において重粒子線がん治療装置を用いた新たながん治療法の研究開発を進めております。本年六月には実際の照射治療を開始、現在、臨床試行が順調に進んでおり、着実に成果を上げております。今後とも、治療法の早期確立を目指して臨床試行の本格的な推進を図るとともに、治療施設の整備等を進めます。
私は、去る九月、政府代表として国際原子力機関の第三十八回通常総会に出席いたしました。総会で、私は、二十一世紀社会における原子力平和利用の意義や核不拡散体制の維持強化を図ることの重要性を指摘しました。その際、北朝鮮の核開発疑惑に対する懸念を表明するとともに、核物質の不法取引問題について、各国が協力して積極的に検討を進めるべきことを強調してまいりました。
原子力は、供給安定性、経済性の面ですぐれているだけではなく、発電の過程で二酸化炭素等を発生しないので、環境に対する影響という面においてもすぐれており、我が国では既に総発電電力量の約三割を賄う基軸エネルギーとして位置づけられています。
この六月、原子力委員会が七年ぶりに長期計画を改定し、二十一世紀を見据えた原子力開発利用の基本方針と推進方策を明らかにいたしました。そこでは、我が国が原子力平和利用国家としての責務を果たすとともに、情報の公開、透明性の確保を図りつつ、長期的視点に立った核燃料リサイクルの着実な展開と放射性廃棄物対策の確立等を目指すべきことをうたっています。
今後とも、需要の増大が見込まれるエネルギーの安定供給確保は、政府の重要政策課題です。当庁としても、エネルギー供給の安定的な確保に責任を果たす立場から、平和利用の堅持と安全の確保とを大前提に、国民の皆様の理解と協力を得つつ、新長期計画に沿って原子力開発利用を着実に進めます。原子力は人類が生み出したすぐれた科学技術であり、大切に育ててまいりたいと思います。
以上、科学技術政策上の諸課題について所信を申し上げました。
科学技術は二十一世紀の礎を築く知的な営みであり、その成果は、私たちの次の世代、人類全体に対する偉大な贈り物です。海洋開発や地球環境、エネルギー等の国境を越えて各国が協力して取り組むべき課題など、世界有数の科学技術力を有する我が国が、その力を駆使して国際的に貢献すべき場面は、今後ますます拡大していくことと思います。
未来への先行投資である科学技術に課された重大な使命に思いをいたしつつ、科学技術行政の責任者として全力を尽くしてまいります。
委員長初め、委員各位の御指導、御協力を心よりお願いを申し上げます。
ありがとうございました。(拍手)
#5
○委員長(高桑栄松君) 以上で、所信の表明は終わりました。次回は、来る十一日、午後一時から開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。
午後零時十二分散会