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1994/11/16 第131回国会 参議院 参議院会議録情報 第131回国会 科学技術特別委員会 第3号
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1994/11/16 第131回国会 参議院

参議院会議録情報 第131回国会 科学技術特別委員会 第3号

#1
第131回国会 科学技術特別委員会 第3号
平成六年十一月十六日(水曜日)
   午後一時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 十一月九日
    辞任         補欠選任
     足立 良平君     長谷川 清君
     古川太三郎君     乾  晴美君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         高桑 栄松君
    理 事
                河本 三郎君
                志村 哲良君
                西岡瑠璃子君
                矢原 秀男君
    委 員
                井上  孝君
                鈴木 栄治君
                二木 秀夫君
                前島英三郎君
                守住 有信君
                穐山  篤君
                稲村 稔夫君
                瀬谷 英行君
                三上 隆雄君
                泉  信也君
                乾  晴美君
                長谷川 清君
                西山登紀子君
                國弘 正雄君
   国務大臣
       国 務 大 臣
       (科学技術庁長
       官)       田中眞紀子君
   政府委員
       科学技術政務次
       官        関根 則之君
       科学技術庁長官
       官房長      新  欣樹君
       科学技術庁科学
       技術政策局長   石井 敏弘君
       科学技術庁研究
       開発局長     沖村 憲樹君
       科学技術庁原子
       力局長      岡崎 俊雄君
       科学技術庁原子
       力安全局長    笹谷  勇君
   事務局側
       第三特別調査室
       長        堀籠 秀昌君
   説明員
       科学技術庁長官
       官房審議官    青江  茂君
   参考人
       動力炉・核燃料
       開発事業団理事  井田 勝久君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○科学技術振興対策樹立に関する調査
 (科学技術振興のための諸施策に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(高桑栄松君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る九日、足立良平君及び古川太三郎君が委員を辞任され、その補欠として長谷川清君及び乾晴美君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(高桑栄松君) 次に、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 科学技術振興対策樹立に関する調査のため、本日の委員会に動力炉・核燃料開発事業団理事井田勝久君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(高桑栄松君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(高桑栄松君) 科学技術振興対策樹立に関する調査を議題として、科学技術振興のための諸施策に関する件について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○志村哲良君 私は持ち時間が十分でございますので、二つの件に関して御質問を申し上げたいと思います。
 せんだって大臣の所信を拝聴いたしましたが、科学技術の諸般の問題について非常に御立派な所信であったと考えております。そのような中で、一つはきく六号の問題、もう一つは、これはございませんでしたが、原子力船「むつ」に関する問題に関してお伺いをいたします。
 私は、科学というのはまず理論が構成され、これが実験によって確認される、またこの実験が次なる理論の展開に大きく寄与していく、理論と実験というのは相互に渡り合って科学のあるいは技術の発展を進めていくものであると考えるものであります。
 ただ、宇宙の問題に関しましては、理論づけは皆さん大変すぐれた方々がなさいますからこれはできるわけでしょうが、実験となりますと大変これは大がかりな実験にまたざるを得ない。もちろん室内の小さな実験もあるのかもしれませんが、例えばロケットの打ち上げというようなことになりますと大きな実験になります。そんなことが今まで再三行われてまいりましたが、私はその中で大きな事故というようなものが見当たらなかったような気がいたします。
 ただ、せんだってのきく六号、これは必ずしも成功だとは言えない、静止軌道に乗せることができなかったということでありますので成功だった。とは言えないかと思いますが、これをマスコミその他が宇宙のくずだとか宇宙のちりになった、五百何億が宇宙のちりになってしまったというようなことを言っております。そんなことを聞くと、今、楕円軌道の中を一生懸命回っておるきく六号が何かかわいそうなような気がしてしょうがないのであります。このことに関してお伺いをしたい。
 もう一つ、原子力船「むつ」というのは、かつてこれがつくられましたときに、言葉が悪いかもしれませんが、いじめられっ子のようにどこに行ってもかしこに来てもいじめられて、非常にあの原子力船「むつ」は寂しい思いをしたのではないかと考えております。この「むつ」が、お聞きいたしますと、今度大型海洋研究船ですか、名前は間違いがあるかもしれませんが、として新しく出発をすると伺っております。この「むつ」の新しい姿に関して、簡単で結構でございますからひとつお聞かせを願いたいと思います。
 以上の二つをお伺いするものであります。
#7
○国務大臣(田中眞紀子君) お答え申し上げます。
 今ほどの志村先生の御意見は、ロケットにいたしましてもそれから「むつ」にいたしましても、科学といいますと無機的なものというふうにとらえられがちでございますけれども、大変情を持っていらして、かわいそうだというふうな、もったいないといいますか、そういうふうな表現をなさっておられて、まさしくそういうふうな気持ちが私は科学技術に携わっている私どもみんなの姿勢であるべきだなと思って今御意見を拝聴しておりました。
 殊に、私もきく六号の打ち上げも種子島で実際に拝見いたしましたし、また原子力船「むつ」につきましても、むつ市に行きまして、今係留中で、ちょうど真ん中の原子炉の部分、切断して抜き取るという作業が今後始まるそうでございますが、実際に乗船をして見せていただきました。いずれも、ロケットの場合も「むつ」の場合もですけれども、実際に製作にかかわった方々、それから「むつ」の場合は長いこと船に乗っておられた船員の方やら食堂の女性たちとかそういう皆さん、それからロケットも実際に製作なさって打ち上げの緊張を経験なさった方々は非常に思いを込めておられて、すべての方々がよかれと思って一生懸命努力をなさった成果でございます。そういう中から、やっぱりこれをむだにしないように、どういうふうにして今後上手に生かしていくかということはもう基本であろうかと思います。
 まずそのことを前段に申し上げましたが、きく六号につきまして、結局、報道では宇宙のごみになるのではないかみたいなお話もございましたけれども、そういうことはございまぜんで、委員御案内のとおり、静止軌道には入らずに今、楕円軌道を周回しておりますのですけれども、結局、科学の進歩というものにはむだというものはどうしても出てくることもあり得るわけでございまして、そのこと自体のふぐあいが生じたことも、それもまた次のステップの布石として生かしていくというような姿勢、努力が重要であろうかと思います。
 今回も、アポジエンジンのふぐあいがあって、その後、今度バンアレン帯を通過したためにまたまたいろいろと実験がうまくいかなくなりました。それから一週間前の報告、私も頻繁に報告を聞いておりますけれども、一週間前ですと観測データ機器に今度は故障が生じたそうでございますが、それらも、やはりそういうふうなことがあり得るということがあった場合にどう対応するかという教訓として、皆様が鋭意努力をなさっているというふうに承知いたしております。
 ただ、いろいろふぐあいがある中でも、新たな軌道に投入した後には、光通信なども実験の一部としてできるものは取り組んでいきたいということではございまして、現場の研究者や技術者が精いっぱい御努力をなさっていらっしゃいます。結果的に、宇宙開発委員会の長期ビジョン懇談会がございますけれども、それにもあるとおり、新しい宇宙技術の開発のために国際協力というものは当然重視して今後取り組んでいくという基本姿勢に変わりはございません。
 それから、「むつ」につきましても、先ほど申しましたような形で名誉が挽回できるようになって本当によかったなと思っておりますが、平成九年を目途にして就航できるように、運用が再開できるように、開始できるように皆様が今御努力をなさっておられるところでございます。
 そして、テーマが四つほどございまして、海洋観測船として地球規模の海洋の諸現象の解明に役立てるようにするということを目的としておりまして、この新しい改造された海洋船の特徴は、長期間にわたってどのような悪天候でありましてもかなり多種多様な多くの機材を搭載して、そして海洋を、世界じゅうの海を回ることができるということでございますので、いろいろと珍しい実験等も可能であるというふうに聞いております。大学や関係省庁が協力をしていろいろな実験を遂行していくというふうに聞いております。御期待いただいてよろしいかと思います。また御指導いただきたいと思います。
 ありがとうございました。
#8
○志村哲良君 今の御答弁を聞きまして、非常に私は心うれしく、きく六号にもよかったなと、原子力船「むつ」にも本当に苦しんだけれどもよかったねと語りかけたいような思いもいたした次第であります。
 ありがとうございました。
#9
○河本三郎君 自民党の河本でございます。きょうは大臣よろしくお願いいたします。
 まず最初に、大臣、就任以来積極的に科学技術の振興に取り組んでおられます。約五カ月がたとうとしておりますが、その間のこれまでの率直な感想をひとつお聞かせいただきたいと思うんですが。
#10
○国務大臣(田中眞紀子君) お答え申し上げます。
 私は、科学技術庁といいますと、どうしてもやはり原子力ですとかそれから宇宙開発、海洋というふうなことが中心かと思っておりました。自分で選挙運動を通じまして今回立候補いたしますときにも、豪雪地帯の出身でございますので除雪というふうなこと、それから障害者の問題、お年寄りの問題等を自分で政治テーマにしていろいろとやっていきたいというふうな思いがございました。それから農業の問題等もございますが。
 そういうことと科技庁の扱っていることはちょっと関係がないのかなというふうに初めのころは感じておりましたんですけれども、この四、五カ月間の経験の中で、そうではなくて、例えば身障者の福祉機器の開発でございますとか、あるいは除雪なんかでもソーラーパネルの利用というふうなことも考えられますでしょうし、それから農業の肥料等についても、品種改良もそうですけれども、いろいろと役立つものがたくさんできてきているというふうなこと。また、そういうことのための研究が、理化学研究所の視察なんかでも大変よくわかったんですけれども、稲の品種の改良もございますし、あらゆる分野に科学技術というものが役立つんだというふうなことが非常によくわかりまして、すばらしいジャンルのところであるということの認識を深めました。
 そのほかまたお尋ねがあれば個別にお答え申し上げます。
 大体そんなところでございます。
#11
○河本三郎君 それでは次に、八GeV・SR、SPring8についてお尋ねをいたします。
 私の地元でございます兵庫県の西播磨というところでございますが、科学技術庁によって世界最大、世界最高性能の大型放射光施設八GeV.SRの建設が進められております。兵庫県が同時に進めております播磨科学公園都市の中核研究施設としても、世界に誇る、世界の一線の研究者が集う施設になる、こういうふうに期待をしている者の一人でございます。
 当初は平成十年の完成予定でございましたが、関係者の皆様方の御努力によりまして平成九年度の一部共用開始というところまできております。さきの通常国会においても、全会一致で特定放射光施設の共用の促進に関する法律が成立したところでございますが、現在早期完成と積極的な共用の促進に向けて着々と準備が整いつつあります。
 SPring8、これの整備と共用の促進について大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
#12
○国務大臣(田中眞紀子君) これは、総建設費用は千百億円でございまして、原子力研究所と理化学研究所が協力して今建設に当たっております。
 そして、基礎研究はもとより、広範な分野の研究に役立つということでございますが、私も来春ぐらいにはぜひ視察をさせていただきたいと思っております。
 と申しますのは、海外からお客様、大使もそうですが、お見えになりますと、このSPring8の建設状態はどんなだろうかというお尋ねを頻繁に受けまして、大変世界から関心を持たれている施設であるということを私も認識をしたからでございます。
 その放射光の利用研究につきましては、自分でまだ行って説明も聞いておりませんものですから役所のペーパーでございますが、私も実際はどういうふうなことに役立つか専門的なことがわからないものですから調べさせていただいたんですけれども、簡単に申しますと六つございます。
 一つは、原子とか分子の構造解析や分析による素材とか材料の開発ができる。ということは身近なことに非常にフィードバックしていくことができるんだなということがわかりました。大変興味深く思っております。
 それから、生物や生体機能維持に関与している各種のたんぱく質の構造を解析するというふうなこと。
 それから三つ目は、化学反応の反応過程を連続的に観察、解析することによっていろいろと化学反応のプロセスがどんなかということがわかる。
 それから四つ目は、高温高圧などの密封された状態などそういう特殊な環境条件下において物質がどのような挙動をし、構造がどのように変化していくかというふうなことも解析ができる。
 五つ目は、エックス線を撮るときですけれども、二種類の波長を瞬時に切りかえて、例えば心臓をエックス線撮影することができて、従来の診断法より格段に安全で簡便な撮影ができて診断に役立てられる。
 それから六つ目でございますけれども、放射光に含まれている波長の短い光を利用することによって材料の超精密な微細な加工ができるということで、これも専門の方にいろいろお話を伺いますと大変興味深うございます。
 そういうふうなことが世界の方にも認識されていて、この放射光施設の完成が待たれているということは大変私はすばらしいことだというふうに思っております。
#13
○河本三郎君 ありがとうございました。
 大臣は、先ほど志村先生の質問にお答えになったように、「むつ」も見られた、HUロケットの打ち上げも視察されたということでございます。来春に西播磨を見学したい、こういうことでございますが、これは御案内のとおり国家的プロジェクトでございまして、アメリカでも、それからフランスのグルノーブルですか、あそこでも同じような施設が間もなく共用開始になると聞いておりますので、そういう意味でも地元の市町長、そして住民は大臣の視察を大変楽しみに心待ちにしておりますので、早い機会に視察をしていただきたいと思います。
 それでは次に、先ほど申し上げましたように、兵庫県における科学技術振興の中核的な存在になるこの施設でございますが、地域において科学技術振興が図られることは日本全体の科学技術の振興にとっても極めて重要であると考えております。
 そこで、地域における科学技術の振興についてお尋ねいたしますが、特に基礎的研究、これを積極的に進めていくためには、地域における多様な科学技術資源の育成、その活用が不可欠である、このように思っております用地域のニーズに密着した地域特性、地域の個性に即した科学技術活動の発展が必要であると考えておりますが、大臣のこれに対してのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
#14
○説明員(青江茂君) 御説明申し上げたいと存じます。
 地域におきましての科学技術の振興という問題は、先生ただいま御指摘になりましたとおり、いわゆる地域の活性化というものに役立つということはもとよりでございますが、同時に国全体の科学技術の水準向上というものにも大変大きな役割を果たすものという認識に立ってございまして、そのような観点から、地域におきましての科学技術の振興の推進のための諸施策というものを講じてきておるという状況にあるわけでございます。
 一例を申し上げますと、今先生がおっしゃった地域のポテンシャルを生かした研究、地域に根差した研究というものを進めるべく、振興調整費というものを活用いたしまして、生活・地域流動研究推進制度というものを設けたりいたしまして推進をしておるというところでございます。と同時に、これは何も科学技術庁だけの問題ではございませんで、通産省でございますとか農林省、こういったところでも広範な活動、施策というものが展開されてきつつあるという状況にございます。
 一方、地方公共団体側におきましても、その科学技術の振興ということに対しましての関心というのはとみに近時高まってきてございまして、審議会を設けるでございますとか、構成するというよりも再編成するとか、諸般の活動というものが強化されつつあるというのが今の現状であろうかというふうに思うわけでございます。
 というふうな状況を踏まえまして、先般、この六月でございますけれども科学技術会議に対しまして、二十二号諮問「地域における科学技術活動の活性化に関する基本指針について」という諮問をいたしたところでございまして、科学技術会議での審議が今着々と準備が進んでおるというふうな状況でございます。この科学技術会議での審議の状況、こういったものを勘案しつつ、さらに関係の施策というものを強化してまいりたいというふうに考えているところでございます。
#15
○河本三郎君 ありがとうございました。次の御答弁のときはもう少しゆっくりお願いします。
 次に、国際的な研究者の交流ということについてお伺いをいたします。
 科学技術をめぐる環境というものが急速に国際化をしております。国境を越えた研究活動、これが不可欠な今日、国際的な研究交流を積極的に促進するということは極めて重要でございますが、アメリカなどの先進国、それと日本の研究者の交流については、まだ日本から海外へ出かける研究者が大変多いと聞いておりますが、これは大臣、よろしくお願いします。
#16
○国務大臣(田中眞紀子君) わかっている範囲でお答えを申し上げさせていただきます。
 フェローシップにつきましては六十三年に創設をされておりますけれども、今委員がおっしゃったように、確かにこちらから出ていく方が多過ぎてはおります。大変不十分な状態で、今後拡張していかなければならないんですが、現実には中国とかマレーシアとか、それからアメリカとはかなりいろいろな具体的な契約がありまして技術者の受け入れ、生徒さんの受け入れもいたしております。
 もう少し詳しいことにつきましては、役所の方から御答弁申し上げます。
#17
○説明員(青江茂君) 補足的にちょっと状況を御説明させていただきます。
 いわゆる科学技術研究者交流におきましてのインバランスという問題につきましては、従来より諸外国からも指摘がございまして、私どもといたしましてもその辺の是正のための努力というものを逐次やっておるんでございますけれども、そのためにSTAフェローシップといった制度を設け、そしてその拡充を図る。また、文部省サイドでは学士院ベースでの仕組みというものの強化を図るといった種々の努力をやっておるんでございますけれども、今の状態と申しますのは、大変残念ながら、構造的な状態というのを大きく改善することがまだ十分にでき得ていないという状況にございます。大体バランスとしまして一対十といった割合でこのところ推移をしてきておるということでございます。
 したがいまして、今後、既存の仕組みというものをさらに充実するといったものを通じ、加えて、外国からお見えになりますと、どうしても日本ということでございますと日本語というハンディキャップがございますので、その辺の生活面を含めたきめ細かい手当てというものもあわせ講じながら充実を図ってまいりたい、かように考えているところでございます。
#18
○河本三郎君 ありがとうございました。
 次に人材の問題でございますが、科学技術の振興にとって研究者や技術者などを養成、確保することは重要な課題であると考えます。これから我が国が一層の科学技術の振興を図っていくためには、これまでにも増して人材の確保、養成に努めていく必要があると考えております。しかし、生産年齢人口が今後急激に減少することが予想される中で、最近では若者の科学技術への関心の低下に対する懸念が指摘されております。科学技術系人材のこの状況については厳しいものがあると考えております。
 アングルを少し変えてみますと、高校での物理の履修率、これは選択制だと聞いておりますが、一九八〇年代では八〇%近かった。しかし、現在は三〇%まで落ち込んでおります。理科系人気の低迷、これは教師の空洞化、こういう指摘もされておるわけでございますが、物理を選択する生徒が減り、教師の新規採用を控えてきた結果、二十歳代の物理の教師がゼロという現状もあるわけでございます。生徒の理科離れが教師を減らし、それが生徒の科学への関心を薄れさせるという悪循環に陥っている、私はそのように考えております。これは企業の方にも多少責任があるとは思うのでございますが、この科学技術系人材の養成、確保、これについて御意見をお聞かせいただきたいと思います。
#19
○国務大臣(田中眞紀子君) 私もその問題は大変ゆゆしいことだと思っております。この科学技術離れの問題は、私は基本的には入り口の問題と出口の問題があろうかと思っております。
 入り口の問題と申しますのは、確かに子供たちが学校で受験戦争に巻き込まれるために、もう三年生以上になってくると、観察とか実験とかいうもの、本当はおもしろいんですが、基本的にこういうことというのは、子供が驚きを持ったり、興味を持ったり、不思議に思ったりすることがきっかけなわけです。そういう感性が豊かなときに受験戦争がどんどん迫ってくるものですから、実験というふうなことをしなかったり、観察をしてレポートを書く、何でだろう、どうしてだろう、おもしろいとか不思議だというふうなものを十二分に満足させないような教育体制になってしまっていると思います。
 私は子供を三人育てておりますけれども、九つ年が違いまして、最初の子供のときと下の子供のときでは理科の実験の数が減っています。そういうふうなことが保護者会で親から意見が出ますと、先生がおっしゃるには、火を使ったり薬品を使うと事故が起こる。そうすると親がうるさい。それからもう一つは、子供たちが過保護に育っているせいか片づけをしないために器具がなくなってしまう。こういうことを現場の教師からじかに聞いております。それから後片づけをしない。家が勉強をしなさい、休みなさいしか言わないものだから、自分がやったものを散らかしてしまって、先生が残った時間に片づけをしなきゃいけなくなってきて非常に負担がかかる。これが小学校の理科の先生の私が実際に聞いた言葉なんですね。以前はそんなことはありませんでした。だんだんそれが低年齢化してきています。
 ですから、こういうふうなことは、文部省がやはりカリキュラムを見直していく、ゆとりの教育とか言いながらも、文部省自体が基本的なことによほど手をつけられないとゆとりは生まれてこないし、子供の科学離れというものは入り口の部分でとめられないと私は思いまして、先日、そういうお手紙を文部大臣にお出しして、一緒に教育現場を見に行こうというふうなお話をしております。視察に来るから急にきれいにしちゃえなんてやられちゃ困ると思っていますけれども、そういうふうなことは非常に急務だろうと思います。
 それから出口の部分は、今度は研究者とか大学、大学院でございますけれども、これは施設が大変お粗末なそうでございまして、科技庁に私が伺うようになってから、しょっちゅう大学の先生方とお目にかかって伺いますが、やはりもう非常に粗末である。それから、社会に出ても給与面、待遇そのほかでも余りよくなくて、科学技術離れを起こしていてゆゆしいことであるということを伺っておりますので、その両方から、やはり社会が支えていくような体制を総合的につくっていかないと簡単にはできないことだろうと思っていますし、早くこの問題に手をつけております。
#20
○河本三郎君 全体のカリキュラムを見直さないと子供に負荷がかかる、こういうことだと思います。
 ちょっとこれは通告をしていないんですが、今後十五年で技術者、研究者、技術者に限られるんでしょうか、四百五十万から五百万人ほど不足するという予測結果があるんですが、この辺どなたか御答弁いただけますか。
#21
○政府委員(石井敏弘君) 今後の技術者あるいは科学者等の需給予測につきましては、科学技術庁から技術士会に委託いたしまして調査をいたしたところでございます。将来の予測でございますから、非常に難しいんでございますが、いわゆるGDP等の予測をケース@、ケースAといったような形態で調べておるところでございます。
 今現在一九九〇年の時点で見ますと、科学者、技術者の需要の状態というのは、約二百三十五万人ぐらいでございますが、これが二〇〇〇年になりますと、GDP成長率三・八%といたしました場合は四百九十八万、ケースAの二・八%のGDP成長率といたしますと四百七万といったような数字になっております。さらに、これが二〇一〇年になりますと、上の場合で八百三十万、下の場合でしたら一・七%というようなことでございます。
 一方、供給は現在の大学等のあれを引き伸ばせば当然計算できるわけでございまして、二〇〇〇年には三百二十八万人、二〇一〇年には三百八十九万人というようなことで、二〇〇〇年の時点でも七十万ぐらいの不足、下の場合でもそのような状態、二〇一〇年の場合は百七、八十万人の不足の状態というようなことでございます。
 今後、科学技術系人材の養成、確保ということが非常に重大な課題になってくるということでございまして、先ほど大臣の答弁にございましたように、青少年にもっと科学技術に目を向けてもらうといったようなこと、あるいは興味を抱いてもらう、こういったことがいろいろと学校教育等の場でも必要でございましょう。さらに、現在科学技術会議の場でいろいろ議論がなされておるところによりますと、家庭での教育ということも重要であるし、社会全体がそういった環境を創出していくということが重要といったような各種の指摘をいただいておるところでございます。
 科学技術会議におきまして現在審議いたしておるところでございまして、近く科学技術会議の方から答申が出る見込みでございます。政府といたしましては、このような答申も受けまして、関係省庁一体となって必要な施策を講じていくべきものと、かように認識しておるところでございます。
#22
○河本三郎君 ありがとうございました。
 次は、研究開発と規制緩和についてお尋ねをいたします。
 研究開発の分野でも、効率的、効果的な研究開発を進めていくには研究開発活動を制約するような規制はできるだけ排除していくべきだと思っております。十月八日の日経新聞で、政府が研究開発活動に影響を及ぼす政府の規制を洗い出す調査に着手したという記事が掲載されておりました。政府のこういった動きについて大変関心を持っておる一人でございますが、この研究開発と規制緩和について検討されているものをちょっとお願いいたします。
#23
○政府委員(石井敏弘君) 先生ただいま御質問の研究開発と規制緩和の関係でございますが、いわゆる規制というものが研究開発活動を抑制するという場合が当然あり得るわけでございます。逆に規制があることによって促進される場合もあると。例えば、公害規制等が厳しく行われた結果、日本の自動車のそういった技術が非常に進んでプラス面があったというようなこともございます。
 要するに、規制というものが抑制する場合、あるいは促進する場合、いろんなケースがあるというような観点から、今後、私ども研究開発を効率的あるいは効果的に推進していくためには研究開発と規制との関係について十分検討し調べなければならない、こういうような認識を持っておるところでございます。
 このためには、まず研究開発と規制との関係の実態把握が必要であるということで、科学技術活動に対します阻害要因でございますとか促進要因を抽出するといったようなことをやりまして、今後、研究開発の成果の普及にかかわる推進方策等、あるいはこの研究開発と規制との関係の実態というものの基礎資料を得るということで科学技術振興調整費をもって現在調査を進めておるというところでございます。
#24
○河本三郎君 局長、規制のために促進された技術もあると。規制のために抑えられた、そういう端的な例はございませんか。
#25
○政府委員(石井敏弘君) 現在そういったことの調査をいたしておるところでございます。これまで調査したところによりますと、例えば、建築基準法等の改正によりまして我が国の耐震設計の方法といったようなものが変えられたということがございますが、そういった場合に、細かく基準値を定めるということ自身が研究開発を場合によっては阻害する、あるいは出てきた成果が社会になかなか適用されないといったような実態も明らかになってきておるところでございます。
 またそれが、例えば建築基準法のやり方が性能規制的な性能保証的な規制の形態になればどうなるかといったようなこともあわせ建設省あたりで勉強されておられますが、そういったような形態になると技術のレベルアップを図るというような意味においては非常に弾力性のある規制体系になる。そのかわり、逆にそれを規制するやり方自身が非常に難しい、チェックするのが難しいとか、いろんな問題が現在勉強の過程でも明らかになってきておりまして、今後さらに具体的ないろんなケースについて阻害要因あるいは促進要因というものをもう少し勉強させていただきたい、かように考えております。
#26
○河本三郎君 次は、政府の研究開発投資の倍増ということでお聞きをしたいんですが、基礎研究の推進、これは大学、国立試験研究機関の強化など、政府の果たすべき役割は大きいものでございます。しかし、日本の政府研究開発投資額負担割合は、対GNP比で見ましても欧米の先進諸国との比較においては極めて低い水準にあります。科学技術政策大綱では「政府の研究開発投資額をできるだけ早期に倍増するように努める。」という方針が出されておりますが、この達成に向けて大臣の決意をお聞かせいただきたいと思います。
#27
○国務大臣(田中眞紀子君) 本当にこの科学技術の振興のための研究開発投資というものは未来への先行投資であるという位置づけをしておりますし、村山内閣も大変力を入れておりますので、最大限に、倍増とまではいかなくてもぜひ拡大をしていかなければいけない、拡充をしていくべきものというふうに全閣僚が認識をしているというふうに私は承知しております。
 確かに、基礎研究については依然と伸び悩みの状態にありまして、これも何とかしなけりゃいけないわけですから、限られた予算の中でどれだけのものを確保できるかということは、私も皆様のお力添えを得て何とか頑張っていかなければいけないと思っておりますし、政権によってこういう研究開発費の増減が左右されたりするようなことがあってはいけないというふうに思っておりますので、いろいろとまた今後努力もいたしますし、お力添えを賜りたいと思っております。
#28
○河本三郎君 ありがとうございました。
 そこで、研究開発投資だけでもこれは十六の省庁にまたがっている、このようにお聞きをしております。私は、科学技術の発展と教育、この二つが日本の次の最重要課題である、このように確信をしている一人でございますので、この十六省庁にまたがるややこしいやつを一本化できればこれほどうれしいことはないんですが、次の質問に参ります。
 次は、海洋調査研究の今後の取り組み方でお聞きをいたします。
 海洋は地球表面の約七割を占めます。大気中の二酸化炭素や地球全体の熱、物質の貯蔵、移動に大きな役割を果たしております。気象、気候の変動に大きな影響を与えている、このように考えられておりますが、地球規模の海洋の諸現象の解明、気候変動、地球温暖化等の解明を目的とした海洋調査研究に積極的に取り組むことが必要であります。国の内外の研究者から、海洋観測手段を整備開発して海洋調査の研究基盤を充実していくということが切望されているところでございますが、大臣の決意をお聞かせいただきたいと思います。
#29
○国務大臣(田中眞紀子君) 河本先生が大変関心を持っていらっしゃる海洋のことでございますから、私もいろいろと鋭意勉強をさせていただきました。
 「しんかい六五〇〇」とか、私なんか以上に当然河本委員がよく御存じでいらっしゃると思いますけれども、それから先ほど言いました「むつ」の利用というものもございますし、それから「かいこう」などいろいろやっております。これもやはりいろいろな世界との協力というものが必須でございますし、どのようなことを研究するかということにつきましてはたくさんあります。
 それから、多分今後お聞きになるかもしれませんが、海の波のエネルギーの活用とか、海に関することはいろいろとたくさんのマターがありまして興味が尽きないところでございますけれども、やはり予算も限られておりますし、なかなか厳しい面もございます。これもやはり関係機関が連携しなければならないんですが、かなり上手に組み合わさっているところもありますし、役所の縦割りの中でなかなか緊密でない部分もあるような感じもいたしますので、この辺をもう少し、やはり私は、運輸省やら気象庁やらすべて関連ある問題だと思いますので、ぜひ一度そういう関係者と会を持って、先生方にも御出席をいただきまして、一度海洋問題というものはよく勉強をする会が欲しいというふうに考えております。
 具体的な現在の取り組み状態については、事務当局からお答え申し上げたいと思います。
#30
○政府委員(沖村憲樹君) 海洋開発の対象でございますが、今大臣御説明されたとおりでございまして、我が国全体では海洋開発審議会、総理大臣の諮問機関でございますが、そこで全体の方針を御討議いただきまして、そのもとに関係各省庁が連携をとりながら研究開発を進めさせていただいております。この海洋開発審議会の窓口は科学技術庁で務めさせていただいておりまして、全体の調整も今大臣申し上げたような点もあるかと思いますけれども、事務当局としてはいろいろ努力しながら調整に努めながらやらせていただいているところでございます。
 ちなみに、全体の予算でございますが、平成六年度で約六百四十二億円が海洋関係の予算でございます。これには科学技術庁でありますとか農林水産省、通商産業省、運輸省等々全体の予算でございます。
 以上、御説明申し上げました。
#31
○河本三郎君 ありがとうございました。
 次は、海洋調査研究における国際協力でございます。
 本年六月からの海洋科学技術センターとアメリカ随一の海洋研究機関ウッズホール海洋学研究所の共同調査研究において、「しんかい六五〇〇」の潜航調査によりまして大西洋中央海嶺の活動状況を初めて確認するなど、国際協力のもとで非常に貴重な成果が得られたと聞いております。
 海洋国家である日本としてもさらに国際貢献を進めていくべきであると考えますが、海洋調査研究におけるこれからの国際協力、今後の進め方についてお尋ねをいたします。
#32
○政府委員(沖村憲樹君) 今、河本先生御指摘いただいたとおりでございまして、ウッズホールとは中央海嶺潜航調査行動計画、MODE94というのを大西洋と太平洋両方で始めさせていただいております。
 海洋研究につきましては、先生御指摘のとおり、海そのものが国境がございませんで地球全体に非常に大きな影響を及ぼす重要なところでございますので、その調査研究は基本的には国際協力を中心にしながらやっていかなければいけないという認識でやらせていただいております。
 具体的には、二国間協力では、今御説明申し上げました日米協力のほかにフランスとは南太平洋における日仏共同海洋研究計画というものも進めさせていただいておりますし、日米、ヨーロッパ等ともいろいろ協力させていただいております。
 そのほか、多国間協力といたしまして世界海洋観測システム、GOOS計画というのがございますが、これはユネスコのもとの政府間海洋学委員会、IOCといっておりますが、ここが中心になりまして、世界各国が参加をいたしまして全地球の海洋観測をやっていこうということでございます。これは一昨年でございますか、ブラジルで開かれましたUNCEDにも取り上げられた計画でございます。
 また、このほか世界海洋循環実験計画でありますとか世界海洋フラックス研究でありますとかいろいろな研究計画が進められておりまして、今後とも海洋は国際協力を十分わきまえながら進めさせていただきたいというふうに考えております。
#33
○河本三郎君 次に、無人探査機「かいこう」の現状と今後について質問をいたします。
 「しんかい六五〇〇」、これは現在世界で最もすぐれた有人潜水調査船でございます。今後とも本船を世界の研究者とともに活用して、人類のフロンティアである深海に対してはさらに挑戦をしていかなければいけない、このように考えております。
 ことしの三月でしたか、無人探査機「かいこう」があと一歩というところで、これはデータ伝送装置とお聞きしておりますが、これにトラブルが発生をしてマリアナ海溝の深度世界記録を更新できなかったと聞いておりますが、深海探査、これは各種資源の調査やプレート運動、火山活動の動きを知る上で大変重要であります。この「かいこう」の現状と今後の予定について教えていただきたいと思います。
#34
○政府委員(沖村憲樹君) 先生今御説明いただいたとおりでございまして、非常に残念でございますが、ことしの三月にマリアナ海溝で深度一万九百メートルの実験をした際にデータ伝送系のトラブルが生じました。これはその後原因究明をいたしましたところ、その直接の原因は、一万九百メートルと申しますと非常な水圧でございまして、それによりまして入れておりました光ファイバーに異常な圧力がかかりまして、データの伝送がちょっととぎれたということでございます。
 この対策につきましてもめどが立っておりまして、現在これをもとに施策を講じております。具体的には、来年一月から総合試験を開始いたしまして、二月からまた再びこの世界最深のマリアナ海溝に潜るという計画を進めさせていただきたいというふうに考えております。着々と準備をさせていただいております。
#35
○河本三郎君 先ほど志村先生の質問の中にきく六号のお話がございましたが、御答弁では、きく六号、これは宇宙のごみになったわけではなくてかなりの実験が可能であると。多少は安心をしておりますが、もう少しどういう実験ができるのか、ちょっと教えていただきたいと思うんですが。
#36
○政府委員(沖村憲樹君) 具体的なことにわたりますので、ちょっと私の方から御説明させていただきたいと思います。
 このきく六号プロジェクトでございますが、大きく分けまして三つほど目的がございました。
 一番目の目的はHUロケット、この試験機の性能の確認でございますが、これにつきましては、打ち上げをごらんいただきましたように、私どもとしましては一〇〇%成功したのではないかというふうに思っております。
 二番目の大きな目的でございますが、これは我が国で初めて二トン級の大型の静止衛星というものを作製いたしまして打ち上げましたものでございまして、この衛星の構造体の技術、この中にはいろいろあるわけでございます。例えば、非常に軽い材料を使いました構造をつくるとか、大型の太陽電池のパドルを広げてみる、あるいは三軸、この大型の二トン級での姿勢の制御を行うとか、いろんな実験を含めてやらせていただいております。これにつきましては今のところいろいろ性能を確認いたしまして、おおむね順調にこの実験を進めさせていただいておるところでございます。
 ただ、御案内のように、この一部であります二液式アポジエンジン、これにつきましては失敗をいたしましたので、現在、宇宙開発事業団と宇宙開発委員会におきまして原因の調査を進めさせていただいているところでございます。
 それから、衛星に積みましたもう一つの大きな目的であります高度な衛星通信技術の実験を行うという点でございますが、基本的にこれに積み込みました各種機器の性能確認、これにつきましては全部できております。ただ、これを使いましての通信実験につきましては、軌道が当初予定しました静止軌道ではございませんで、楕円軌道になっております関係上、全部ができないという状況でございまして、これから鋭意関係者で努力をいたしますが、ある程度できない部分が出てまいるというような状況になってございます。
 いずれにしましても、今後ともこの衛星の活用を大いに努めてまいりたいと思っておるところでございます。
 それから、静止軌道じゃない楕円軌道、これも我が国としまして初めての経験をいたします軌道でございますので、今後この楕円軌道を利用いたしました幾つかの技術的な知見というものもこの際獲得していきたいということで関係者努力をいたしておるところでございます。
#37
○河本三郎君 かなりの実験が可能であると、こういうふうに理解をしてよろしいんでしょうか。
#38
○政府委員(沖村憲樹君) はい。
#39
○河本三郎君 それで局長、今御答弁いただいたんですが、今回のふぐあいの原因がアポジエンジンの二液式の調整弁のふぐあいだと、故障だと。これ以外にも何か原因究明をされているんですか。
 私ごとで恐縮なんですが、友達同士で話をしておりますと、二液式の調整弁が悪いということを発表されておる以外にも何かふぐあいがあるのかということも聞いておるんですけれども、わかる範囲でお答えをいただきたいと思います。
#40
○政府委員(沖村憲樹君) 今回、静止軌道に投入できませんでした原因はアポジのふぐあいでございますが、その打ち上げの前後におきまして、まず種子島におきまして、打ち上げに係る通信系統の装置に一部ふぐあいがございまして打ち上げを延期させていただいたという点が一点ございます。
 それから、打ち上げましてアポジエンジンを吹かす直前でございますが、太陽電池パドルを太陽の方に向けます太陽センサーというのがございますが、太陽センサーと地上との通信のやりとりに際しまして、一部コンピューターのソフトが人為ミスと申しますかそういう点がございまして、うまく通信のやりとりができなかったという点がございます。
 これら全体につきまして宇宙開発委員会、宇宙開発事業団双方で、どういう原因であったか、どうしたらいいかということは、今、原因、対策を検討させていただいているところでございます。
#41
○河本三郎君 最後に、大臣にお伺いをいたします。
 大臣は、所信表明でも「未来担当大臣として、夢を実現し、新しい文化や経済活動を創出するためにも、積極的に科学技術の振興を図ります。」と表明をされておられました。それは私も全くそのとおりだと思いますが、それにはやはり技術立国、ここの原点に戻らなければいけない、このように考えております。
 技術立国、この旗を再び高く掲げるには、研究者が伸び伸びと想を練って実験を重ねることができる研究環境そして基礎技術教育の強化が不可欠である、このように思っております。日本を代表する国立大学でさえ、その研究室と整備の貧弱さは目を覆うほどでございます。日本は国家百年の投資として、科学技術の発展と教育のために予算を倍額にすることを本気で考えるべきだと、このように思っております。技術と教育には幾ら税金を使っても構わない、このように思います。これはやっぱり日本が生き延びるためのコストだと思います。
 そこで、来年は戦後五十年という大きな節目でございます。戦後処理も重要でございますが、それだけではあすの日本は語れない、このように思っております。そこで、大臣の誇りを持った、次の世代に引き継いていくための必要な科学技術振興政策について、最後に大臣の決意をお伺いしたいと思います。
#42
○国務大臣(田中眞紀子君) 大変御示唆に富むいい御指摘をいただいたと思って感謝申し上げます。
 河本先生がおっしゃったとおりでございまして、まだ四カ月ぐらいの経験でございますけれども、私はこの科学技術庁でお仕事をさせていただいて、そしていろいろな現場を見せていただいて、専門の方々それから一般の方々の御意見、お手紙等もございますし投書も来ています。そういうものを見ていまして、やっぱりこれはもう本当に人と予算というものが一体でないと、両輪にならないと物事は前へ出ないと思っております。
 そして、予算も少ない面はあるかもしれませんけれども、やはり使い方に問題があって、それは率直なところ縦割り行政というものがかなりネックになっているのではないかということを思いまして、我々国会議員がどうやってそれを前に推進していくかと。専門家や役所の皆さんの力をかりて前へ出していくかと。これは私はやはり政治家の意識の問題だろうと思います。
 ですから、内閣でもこういう話は大変よくいたしますんですけれども、今度文部大臣と御一緒すること、それから、私この間は厚生大臣と別件で御一緒いたしましたけれども、やっぱり政治家が一丸となって力を出して、方向性を出して、予算の配分もそうですが、一省庁の利益ではなくて、全体に国をどちらの方向へ持っていくかという長期ビジョンに立って、与野党を超えて一緒にやっていかないといい方向性は見出せないというふうに思っております。そのための本当に率直な忌揮のない御意見を今後とも皆様からぜひ賜りたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 ありがとうございました。
#43
○河本三郎君 終わります。
#44
○稲村稔夫君 社会党の稲村稔夫でございます。
 大臣の就任以来の精力的な現場をごらんになって歩くそのバイタリティーにも心から敬意を表しながら、また今、河本委員の最後の御質問にお答えになっているその見識等にも本当に敬意を払い、同感だなと思いながらきょうは御質問を申し上げたいと思います。
 最初に、長官が先日述べられました所信、その中で私は、「生活者を中心に据えた科学技術の振興」という言葉に大変共鳴を覚えたわけであります。雰囲気としては私、本当に共鳴をしているのでありますが、しかし、さて生活者といったときに一体どういうふうに考えたらいいんだろう。生活者の理念といいましょうか、これはやっぱり視点の置き方によっていろいろと違いが出てくるということにもなりますので、その辺、大臣はどのようにお考えになっているのか、まずお聞かせをいただければと思います。
#45
○国務大臣(田中眞紀子君) お答え申し上げます。
 稲村先生の御質問状をちょうだいしてから、私も自分なりに生活者ということを整理してまいりまして、それをきのうの夜一枚紙に書いたのですけれども、さっきからばたばた探しているんですがどうもうちに置いてきたらしくて、乱雑な家庭環境なものですから、我ながら一生懸命まとめたなと思ったんですが、また改めて機会があったらぜひ申し上げたいと思います。
 私のちょっと寝不足な頭の中で申し上げられることは、私は基本的に生活者と申し上げていることは、視線を低くだけではありません。要するに、生活者というのは、地球上にいる人類、人間の幸福にどのように科学技術が役立っていくかということでございます。日本人だけとかいうような視線を低くだけではありませんし、また高く上げ過ぎてばかりもおりませんし、全体を立体的に包含して、どのようにして、いわゆる原子力なんか特に安全とか平和ということを言われますけれども、トータルな意味でもって人間が英知をいいエネルギーを出して、自分たちを幸せにして前へ出していくかと。それを次の世代にどうやってバトンタッチしていくかということが命題だろうというふうに思っております。これが基本的な私の理念といいますか考え方でございます。
 具体的に申し上げれば、先ほどもちょっとお答え申し上げた中に関連ございますけれども、例えば福祉器具の問題でもありますし、それから医学に利用するですとか、そのほかもう先生方の方がよく御存じのとおり、食品関連でございますとか、防災ですとか、そのほかいろいろなことがたくさんございます。あるいはエゴマテリアルを環境に優しくというふうなことでもって開発していくとか、そういうふうな日常の生活、それも海外との交流によって役立てることができる。
 と同時に今度は、では地球環境、これも大変しょっちゅうあらゆる機会に言われる言葉でございますけれども、この宇宙とか地球とか海洋もすべてですけれども、そういうすべてのものをどうやって守っていくか、環境に優しくしていくかというふうなもっと謙虚な気持ちでもって、人間が生かされているんだ、宇宙の中での一つの生き物としてどのようにかかわっていくかという視点、これはかなり大きなものだと思います。そういう視点も常に頭に置かなければいけない。
 それから三つ目は、政治家でございますのでやはりこういう科学の利用というものが、東西冷戦時代もあったわけですけれども、人類全体の対立構造ではなくていい方向に持っていくために政治的に必ずうまく利用できるものなんですね。それは人類の英知だと思いますので、それを専門家の技術と結びつけていくことを政治家として使命の一つにしたいというふうな観点で生活者と申し上げました。
#46
○稲村稔夫君 今の大臣のお答えの中で、特に、人類の観点に立ってということは非常に大事なことだと私も共鳴を覚えております。そしてまた、それだけに私も今度は与党で御質問申し上げるわけでありますから、そういう観点を深めていくことがそれこそ我々にとっても重要な任務だというふうにも思いますし、今後大臣とこういう問答が何回も繰り返されるように心から期待をしながらきょうの質問をさせていただきたいというふうに思っております。ただ、きょうは私の持ち時間四十分、もうそれも少し経過いたしましたから時間がございません。
 次に、私の要望をこういう機会で恐縮でありますけれども、申し上げておきたいと思うんです。
 それは、実は大臣の地元でもございます、私の地元でもある新潟県の柏崎の原発の立地の問題、この地盤の問題については随分心配がありまして、いろいろと今までも何回も議論をしてまいりました。さらに裁判にもなっております。そして、なかなか政府御自身がお調べになってもらいたいと思うことをお調べになっていただけなかったために質問主意書などというものを何回も出させていただくというようなことがございました。今回も質問主意書を出しております。これは本来であれば、原子力委員会としての見解の問題とか、安全委員会の見解の問題だとかということになるとこの本委員会の問題なんですけれども、この質問主意書は通産の方の関係のことになっております。
 質問主意書には、閣議で確認をされた形で私どもは返答いただくことになっておりますので、多分閣議で一度了解の手続をとられると思いますが、どうぞ科学的な観点から客観的に、先ほど言われた大臣の哲学をもってそれが反映されたような答弁が私のところへ返っていただけますように、大臣からもぜひこれはお力添えをいただきたい、こんなふうに御要望申し上げておきたいと思います。
 これは要望でございますので特別お答えは要りません。
 そこで、これから私がいたします質問はかなり技術的あるいは事務的、少し細かい点にもわたってまいりますので、その辺のところはどうぞ大臣にはやりとりを聞いていただきまして、きょうとは申しませんけれども、これから先のやはり判断の材料としていろいろと頭の中へ置きながら間違いない科学振興政策というものを進めていただけますようにということをお願い申し上げる次第であります。
 そこで、まず科学技術庁に伺いたい。
 我が国は原子力基本法があって、自主、民主、公開の三原則というものを踏まえているわけでありますが、この自主、民主、公開の三原則に基づいて、今、動燃事業団が建設を申請いたしましたRETF、動力炉燃料再処理に関する施設の問題、これにかかわって、計画について幾つかの疑問点があるわけでありますが、これは直接な疑問は動燃に伺うといたしまして、この建設に当たって、自主、民主、公開の原則というものをどのようにとらえておられるのか、このことをまずお伺いしておきたいと思います。
#47
○政府委員(岡崎俊雄君) 原子力開発利用を進めるに当たりましては、原子力基本法に定められておりますとおり、民主、自主、公開というこの原則を厳しく守っていくということが私どもの任務であろうかと思っております。
 このような観点から、先生御指摘の動燃事業団が今計画を進めております核燃料リサイクル機器試験施設、RETF施設につきましても、そのような考え方に基づいて計画がつくられ、その計画が今実施されようとしておる、このように認識をしているところでございます。具体的には、原子力委員会が定めております今度の長期計画の中にもこのRETFの位置づけであるとか目的であるとか、こういったものについては明確な位置づけのもとに進められておる、このように認識をいたしております。
#48
○稲村稔夫君 その点については、これから動燃に伺いたいと思っております幾つかの問題点もないとは言えないわけであります。かなり重要な問題を含んでいるというふうにも思います。しかし、これは動燃とアメリカのDOEとの事務的な契約あるいは協定ということであるから、条約とは違って国会での議論の必要はない、こんな形になっていると思うんです。
 しかし、重要な問題点を持っているというようなことになれば、これは公開の原則というものを踏まえていったら、民主の原則、国会で論議するというのは民主の一番基本的なものなんですから、それだけにそういう重要なものは、仮に法律的な何とかがあるからないからということを別にいたしましても、基本原則にのっとれば、国会で一応了解を求めるとか、国会での議論を一応通すとかということが必要なのではないかと思うんですが、その辺はいかがですか。
#49
○政府委員(岡崎俊雄君) 先生、動燃事業団が米国のエネルギー省との間に結んでおります高速炉の燃料の再処理にかかわります共同研究に関する取り決めの点を御指摘いただいておるわけでございますけれども、この取り決めは、国会の御承認を経て締結されました政府間の取り決めであります日米の原子力協力協定に基づいて行われておるわけでございまして、この日米原子力協定に盛られております平和利用の担保でありますとか、あるいは機微な技術を移転しないとか、こういった点はもちろん十分国会の御審議に沿った内容であると認識しておるわけでございますし、他方、その政策については、先ほど申し上げました原子力の政策であるとかあるいは予算の中身において十分御審議をいただいているものと理解をいたしております。
#50
○稲村稔夫君 それでは動燃事業団の方に伺いたいと思うんです。
 グリーンピースがアメリカのDOEに対して行った資料の公開要求、これに対して動燃の方から、商業的価値を有するから公開には反対であるという回答を行ったということであります。これは科技庁を通じていただきましたエネルギー省の公式発表の中でも、エネルギー省が公開をしない理由の中でそのようなことが触れられていると思うわけでありますが、これは真意はどういうところなんですか。
 もし商業的価値があるということであれば、商業的価値ですから、そうすると、その技術は他に移転することもあるということになりますね。
#51
○参考人(井田勝久君) ただいま先生の御質問でございますが、グリーンピースからDOEに対しまして本件について情報公開がありました。私どもとしては、基本的に公開できるものは公開するということでございますが、ただいまお話がありましたように、商業的価値を有します機微情報につきましては、これは米国の情報公開法におきましてもこういうものは開示しなくていいという免除規定があるわけでございまして、私ども米国の法律事務所とも相談しまして、その商業的価値を有すると判断いたします燃料解体機の設計図書については公開しない、このように回答したわけでございます。
 今先生、商業的価値云々、こういうことでございますが、この情報につきましては今直ちにこれを利用するということはございません。しかし、長期的に見ますれば、こういった高速炉がかなり使われますと高速炉再処理という事業も民間段階に至るわけでございまして、動燃といたしましては、その段階にはこれを有償で技術移転したい。やはり国の税金をとっておりますので、技術移転につきましてはちゃんとした対価をとるという方針があるわけでございますので、そういうときにこれは価値がある技術であると判断いたしまして、そのような措置をとったわけでございます。
#52
○稲村稔夫君 これは特許の問題なんかと同じようなもので、そういう商業的価値ということになりますと、それを移転するときは対価をとるというのは当たり前のことであります。
 そうすると、これはまず国内でそういうことは考えましょう。そうして、そうなればこれは国内だけではないですね、商業的価値ということからいけば。そうすれば、例えば、北朝鮮は今アメリカとの関係で再処理技術は入れないような形でありますから、そこには売るという意思は出てこないんでしょうが、韓国に売りましょうとかあるいはロシアに売りましょうとかということも将来あり得るわけですか。
#53
○参考人(井田勝久君) この原子力技術は、一方では機微技術というような判断があるわけでございまして、機微技術につきましては、やはり第三国に移転という問題が非常に大きな問題でございます。したがいまして、そこは商業的価値があっても機微な技術がきちっと守られる、こういう担保がなければその移転はできない、このように考えておるところでございます。
#54
○稲村稔夫君 ちょっと待ってください。そうすると、機微技術があるということはお認めになった。機微技術ということになると、これは日米原子力協定との関係では違反になる部分は出てきませんか。
#55
○参考人(井田勝久君) その点につきましては、私ども日米原子力協定のもとでこの研究をしました際には、そういった機微技術の移転はないと考えているわけでございます。
 ただし、この技術は長期的に、そういった再処理技術ということでございますのでその意図によっては非常に問題がある場合もあるわけでございますので、その点については、国家間の移転の場合にはやはり原子力協定のような縛りの中できちっとした利用ができるという担保が必要かと、このような状況であろうかと思っております。
#56
○稲村稔夫君 この協定を結んだときは機微技術だとは思わなかった、なっていなかった、しかし機微技術である可能性はあると。というのは、アメリカのエネルギー省自身も機微技術についての見直しをすると言っているのでしょう、いろいろと。そして、六十日以内にグリーンピースには回答するということもプレス発表しているわけですね。
 そこで、そうすると科学技術庁、科学技術庁から私がいただいていた書類の中にもそういう旨の、アメリカ・エネルギー省の発表などがあったということをそれぞれお認めになっているようでありますが、そうすると六十日以内というともう過ぎていますが、これはアメリカのDOEはどういうふうに対応をされたのか、ちょっと教えていただきたい。
#57
○政府委員(岡崎俊雄君) 先生御指摘のとおり、本年の九月にグリーンピースからの指摘を受けまして、アメリカのエネルギー省はグリーンピースからの指摘がありました件について調査をし、さらに機微技術を定めるガイドラインについて検討をする、その検討結果を六十日以内に公表する、このように発表したことはもちろん私どもも承知をしております。
 しかしながら、確かに六十日をほぼ経過していると思われるわけでございますけれども、まだアメリカからそのような結果が公表されたということはございませんし、実は昨日、DOEの人が私のところにも参りましたけれども、まだ検討中である、このようなことでございました。
#58
○稲村稔夫君 そこで、動燃事業団にまた伺いたいのでありますが、おたくとアメリカ・エネルギー省との間で締結された契約の内容はどういうものがあるのか、私も本文をいただいたり仮訳をいただいたりいたしました。検討もさせていただきました。また、これにはアペンディックス1というものも中にくっついておりましたので、そのアペンディックス1もいただきたいということで要望いたしましたら、これも英文のままでまだ仮訳はいただけませんでしたけれどもいただきました。
 これをざっと読ませていただいた中で、特にアぺンディックス1の方で大変気になる部分がございます。多分、これをお出しになったときにはもうそのことを検討しておられて、きょうはどういうふうに答えようということはちゃんと相談してこられたんだと思いますけれども、その中にありますのは、特に動燃事業団が人材を派遣して共同研究に当たられたのはアメリカの国立オークリッジ研究所ですね。
 そのオークリッジ研究所に、再処理の技術についてはいろいろとアメリカの軍事的な技術が応用をされた、その集積をされたものがオークリッジに移転をされているというふうに見て差し支えない、そういう内容の部分がありますね。例えば、サバンナリバープラントですね。技術と経験というものがオークリッジに相当集積をされたというようなことをこの附属文書、アペンディックスの中でちゃんと言っているわけですね、明らかにされているわけです。
 そうすると、この再処理技術というものは、アメリカのそういうプルトニウムを利用する軍事技術のその技術の中の一部を、一〇〇%とは言いません、その中のエキスの幾つかの部分をずっと取り入れてきている、こういうことになるのではないかと思うんですが、その辺はいかがですか。
#59
○参考人(井田勝久君) たしかこのアぺンディックス1には、サバンナリバーの運転経験に基づいているというような記述がございます。私たちもどういうことかということでいろいろ調べましたら、この情報は既に公開されている情報である、印刷物としてまとめられたものもございます。要するに、こういった公開されたレポートがそういうふうに反映されているところでございまして、公開されないような機微な技術ということはこれには含まれていない、このように承知している次第でございます。
#60
○稲村稔夫君 そういたしますと、公開をされている技術ではあるけれども、アメリカには今商業用の再処理施設というのはないわけですね、研究もないわけです。そうすると、軍事用に行われた技術が移転をされる、差し支えない部分は公表されていると、こういう形なんだと思うんですが、その辺は間違いありませんか。
#61
○参考人(井田勝久君) これが結ばれたのはまだ今と状況が違うときでございます。いつかと申しますと、一九八七年当時、この当時におきましては、先生御承知のように、クリンチリバーの際の商業用の大型の再処理施設はやめるということになっておりましたが、アメリカの中ではまだまだ将来を見越しまして、アメリカというのは私もそのとき随分幅の広い国だと思いましたけれども、各国立研究機関で民生用の再処理研究は着々と続けられていたわけでございます。しかし、その中の炉としまして、FFTFというようなかなり私たちの持っております常陽の四倍ぐらいも大きいような高速炉の試験施設もございます。そういう施設から出ますMOX使用済み燃料を利用いたしまして将来の民生用の再処理研究というのをアメリカは進めていたわけでございます。
 したがいまして、私どもとしましては、当時のアメリカのそういった民生用の研究開発、そういうものと協力しようということでございますので、軍事的な機微技術という形ではない、民生用の技術で協力している、こういうことであろうかと思います。
#62
○稲村稔夫君 機微技術であるかどうかということについては、これからガイドラインの見直しの結果が発表されてくることによってまたわかってくる、判断の物差しができてくる、こういう側面もあろうかと思います。
 ただ、今御答弁をいただいていてまたひょっと気になりますのは、サバンナリバーというのは軍事技術のあれですから、そこの積み上げというものを民生用に利用しようと、そういう側面があった時代に共同研究になった、こういう歴史的な経過なんだろうと思うんです。そうすると、その共同研究をやっているうちにアメリカはもう民生用プルトニウム路線から撤退をしていったと。ということになって、そこで共同研究の成果というものは、これは動燃も誇りを持って、私たちの技術と知恵もそっちへ移転している分もあるんですよとおっしゃるんだろうと思うんですね。
 そうすると、我が国のそういう再処理技術を、今度はアメリカが軍用炉の再処理というものに利用できないという歯どめはどこかにあるんですか。
#63
○参考人(井田勝久君) これは日米原子力協定上、機微な原子力技術は移転されないということになっておりまして、米国政府におきましても機微な原子力技術の移転はしないということで対応している、私どもそういうふうに考えておりますので、そういうことはないというように考えているところでございます。
#64
○稲村稔夫君 それは、これから移転をするということであれば機微な技術でということで線を引くことは比較的やりやすいと思うんですね。しかし、もう共同研究は終わったんでしょう。終わったんですよね。こっちはもう建設に入ろうと言っているんです。もう共同研究の成果はできてお互いに共有しているんですよ。お互いに共有しているのに、じゃどうやってそれに線を引くんですか。
#65
○参考人(井田勝久君) アメリカの技術成果はアメリカにあるわけでございますが、これはあくまで政府の約束で、その技術というものが機微な技術は移転しないということになっておりますので、そのように取り扱われていると私ども考えているところでございます。
#66
○稲村稔夫君 私は聞きながらますます疑問ばかりいろいろとまた広がっていくんです。
 そこで科学技術庁に伺いたいんです。こういうふうにかなり重要な部分で疑問というのはあるんですよ。自主、民主、公開の三原則に照らしていって、やっぱり心配になるところは明らかにしていかなきゃならないということになるんですね。そうすると、条約そのもの、例えば日米原子力協定そのものを信用しなさいよ、あといろいろとやっていくものは任せておいていいですよということにはならないんじゃないですか。やっぱり心配が、それがないんだっならないで、それを明確にしていくということが民主、公開の原則の大事なポイントなんですよ。ということであれば、事務的であるからとか、民間同士のやっていることであるし条約があるからとかというようなことで済まされないと、そういう側面を持っていると思うんです。
 今後の取り扱いについてどのようにお考えになっているか、お答えをいただきたいと思います。
#67
○政府委員(岡崎俊雄君) 先生もう十分御承知のとおり、少なくとも日本において原子力基本法に基づいて今の御指摘の三原則、平和利用を厳しく守っておるということについては当然のことでありますし、さらに加えて、繰り返して大変恐縮でございますけれども、動燃事業団とDOEとの協力の大もとになっております日米間の原子力協力協定におきましても平和利用を厳しく守っていくということがうたわれておるわけでございますので、この平和利用については何ら私ども、これが厳しく守られているということについて、これを十分御説明を申し上げないといかぬと思いますし、これからもその努力は続けたいとは思いますけれども、その点について我々は十分確信を持っているということは、恐縮でございますが申し上げさせていただきたいと思います。
#68
○稲村稔夫君 とんだところに確信を持たれたって困るんですよ。検討違いの確信というのは困るんです。やっぱり、気になることというのは、これは全部明らかにしていくというのが公開の原則であり民主の原則なんです。それですから、なお確かめたいんです。
 そうすると、RETFの技術というものには、言ってみれば核兵器開発にかかわってきた技術というものがやっぱりかかわっているんです。これは全然ないと言えないんです、オークリッジそのものの施設にはその経験が組み込まれているんですから。ですから、軍事か民生かと、ここの線の引き方というのは非常に面倒なところがあるんです。それだけに神経質にならなきゃならない問題があると思うんです。
 今、動燃さんの方のお答えを伺っておりましても、アメリカ側を確かに信用してというそのことは、それは動燃さんの立場でなっているのかもしれない。しかし、共同で研究した成果はお互いに共有しているんですから、アメリカ自身でも持っているんです、共同の研究の成果として。そうしたら、言ってみれば我々のノウハウ、知恵、技術とかというものが軍事用のものに使われないという保証はないんでしょう。そして、それをしていませんということをあなた方が本当にアメリカに確かめなきゃ、本来であれば確かめて、そんなことは絶対させないということをきちんとしなきゃならぬのです。それをやっていますか。
#69
○政府委員(岡崎俊雄君) 少なくとも、この協定下において、あるいは動燃事業団との取り決めにおきまして、機微な技術は移転されないということは繰り返し御説明申し上げております。
 さらに、それぞれの協力の成果が平和目的に限るということは、日本のみならずアメリカにおいても、この日米協定上交換されたそういった情報とか技術そのものが平和利用に限られるということは日米の原子力協定上明記されておるわけでございますので、日本政府はもちろんのこと、アメリカの政府においても十分それが守られている、このように認識をいたしておるわけでございます。
#70
○稲村稔夫君 私はこれで納得をしたというふうになかなかまいりません。それこそ、先ほど大臣がお答えになっていた生活者を中心に据えた科学技術の振興というその基本的視点、人類を一番の基礎に置いた哲学の面から見ていってもいろいろと問題点が残るんではないかというふうに思います。この点は、機会があればまたさらに確かめていきたいというふうに思います。
 時間もありませんので、あとはちょっと私の地元とかかわりがありますことを伺いたいと思います。動燃さん、どうもありがとうございました。
 それで、私の地元の新潟県に新潟日報という新聞がありまして、実はその新聞に全面広告でこういう、これは科技庁にもコピーを差し上げましたからごらんになったと思います。こういう一面広告が出たんです。広告というのはほんのちょっと載っているだけで、むしろここのところに企画が新潟日報の広報部なんて書いてありますから何か新潟日報広報部と間違えるような形になっているんですけれども、広告です。
 ただ、ここで私が伺いたいと思いますのは、講演をされた方、人の名前は今言いませんけれども、講演をされた方が大変ショッキングな講演をなさっているんであります。
 といいますのは、放射線によって異常のある子供が生まれたというようなことはないとか、放射線が原因で遺伝的にふぐあいのある子供が生まれたという事例は一つもないとか、それから、一日に五ミリシーベルトを一回、一生の間、人にずうっと当てていっても何ら影響がないということが学問的に実証され報告されているなどということが書かれております。これは、実は原子力委員会の専門委員の方でありますので、そこで、これは政府としてこういう学問的見解にお立ちになっているのかどうか、それを伺いたいんです。
#71
○政府委員(笹谷勇君) 放射線によるがん発生等の健康に対する影響につきましては、広島、長崎の原爆被爆者を対象といたしました疫学調査等により得られております科学的知見におきまして、ちょっと専門的で恐縮でございますが、低線量、二百ミリシーベルト以下でございますが、では有意な影響は認められていないということが報告されております。
 また、放射線による子孫への遺伝的影響についても、原爆被爆者の健康調査においてその被曝線量が高線量であっても被爆者の子孫に遺伝的影響はあらわれていないとされております。これは、国際放射線防護委員会の勧告、一九九〇年の勧告が出ておりますが、その中でも触れられておりまして、学術的な観点から権威ある中身だと思っております。私どもはこういうような観点で安全行政を進めているわけでございます。
 ちょっと長くなって恐縮でございますが、もちろん安全規制をやる場合には、低線量域においても影響は発生し得るという安全側の仮定に立っていろんな放射線防護の関係法令の数値を取り入れております。
#72
○稲村稔夫君 そうすると、この間労災認定された嶋橋さんは、あれは一体一日に何ミリシーベルトを受けていた形になりますか。一年間で幾ら受けていたから労災に認定されたんですか。あるいは福島原発で労災認定第一号がありましたが、あれは一年間に何ミリシーベルト被曝をしていたんですか。
#73
○政府委員(笹谷勇君) 恐縮でございますが、現在、正確な数値を持ち合わせてございませんので、数値については御説明できませんが、労災認定というのは、労働者救済という観点から、その数字については私ども安全規制を行っております線量限度とはまた異なった体系の数字と私ども承っております。
#74
○稲村稔夫君 大体、学問的と実際に受けているものと異なっているなんて変な話がありますか。
 嶋橋さんの場合は五十・六三ミリシーベルトの被曝ということになっているんですよ。その前の第一号の方は四十何ミリシーベルトでしたかという形でありますからね。新潟市で開かれたこの今の広告の中で言っておられること、一日五ミリシーベルトですよ。そうしたら、この労災で亡くなった方は、これは線量にしたら十日分でということになるわけですよ。
 それからもう一つは、今国際的な防護委員会ですか、でのことも言っておられましたけれども、そこでは自然放射能などというものもいろいろとあるから閾値というのは決められないんだという見解も出ているんですよ。そういう問題などを全然無視している。それから、あるいは僕は、前の原子力局長は外務委員会で三時間私がいただいたときに随分やりましたからよく御存じのはずですけれども、セラフイールドの問題。これは父親が被爆をしていたら子供に白血病が出ているという疫学的な検証ですよ。そういうものはあるんですよ、いろいろと。
 だから僕は、推進の立場に立っていろいろと物を言うことはそれは決して否定をするんじゃないけれども、しかし少なくとももう一方で、いろいろと問題点がある点もきちんと踏まえた上で物を考えていただくのでなきゃおかしいと思うんですよ。
 私は、原子力委員会の専門委員の中にこういう方がおいでになるということ自身、私自身は随分問題だと思うんです。だけれども、それ以外に放射線防護委員会なり放射線審議会委員もやっておられる。そういう人の立場には一方的な人だけを任命すればいいというのが行政の委員会のあり方かどうか、その辺のところを明確に伺っておきたいんです。
#75
○政府委員(笹谷勇君) ちょっとお言葉を返すようで恐縮でございますが、新聞等に記載されております数値等に関しましては、どういう手違いでこういうことが生じたか理解できませんが、先ほどお話がございました一日一回、一生の間云々の表現は、これは中身が間違っておりまして、記者がこう書き違えたのか、その点……
#76
○稲村稔夫君 これは新潟日報からきちんと質問状が出て、そして新潟日報ではちゃんと本人に確認をしたと言っているんです、このことで。
#77
○政府委員(笹谷勇君) 確かに基調講演の要旨は確認をさせていただいたようでございます。ただこれも、確認をしたものよりは大幅に紙面の都合だと思いますが簡略化されておりまして、必ずしも意を通じるものではないというようなことを伺っております。また、その下の方の記事については一切チェックさせていただいていないという私ども報告を受けておりまして、この数字については何らかの間違いだと思っております。
 それから、審議会の任命の基準でございますが、学識経験者につきましては、科学的、客観的観点から放射線の安全について十分な検討を行うことができるような放射線防護に幅広い知見を持った方ということで選択させていただいております。
#78
○国務大臣(田中眞紀子君) せっかくの稲村先生のお話、しり切れトンボになりましたが、私は一言だけ総括といいますか、意見を述べさせていただいてよろしゅうございましょうか。
 先ほどのDOEのことにつきましても、それから日報の記事につきましても、私も大変よく議論を聞かせていただいて勉強になりました。このようにこの原子力の問題というのは、やっぱり世界じゅうであらゆる方が大変ナーバスになっておりますし、またこれの安全それから情報の公開ということが基本ですが、その言葉を空洞化しないためにも、今まで先生方が国会において、また現場の方々もチェック・アンド・バランスで常にチェック機能を十二分に果たしてくださったおかげで、今日まで安全に原子力が利用されて三十年以上になりますけれども、そういうふうな機能を果たしていただいていると思います。
 やはり変に守勢に回るとかそういうことではなくて、こういうことも含めまして議論の場で透明性を図って、また委員の任命等につきましても厳しくやはり確認をして、御意見等も伺いながら人選も進めたいと思っております。
 ありがとうございました。
#79
○稲村稔夫君 どうもありがとうございました。
#80
○乾晴美君 民主改革連合の乾でございます。よろしくお願いいたします。
 まず、向井さんの宇宙実験のことについてお伺いしたいと思うわけですが、そこにいらっしゃる関根政務次官も御一緒に、現地時間のことしの七月八日に参りました。予定どおりの十二時四十三分にスペースシャトルはすばらしい轟音とともに美しい閃光で宇宙に向かって飛び立っていきましたけれども、私も現地で見せていただきまして非常に感動した一人でございます。周りに研究者なんかもたくさんいらっしゃいまして、カウントダウンが始まりますと、よし行け、頑張れというような感じで、我が子を宇宙に上げていくような、そういう光景も見られまして、まさにそういった宇宙のフロンティアに向かって人類が挑戦していくという非常に力強いものを感じて私も感動したわけなんです。
 このプロジェクトというのは、我が国初の女性宇宙飛行士として向井千秋さんが参加し、向井さんは十五日間にわたってそのすばらしい任務を果たしてきたわけなんですが、私は、宇宙実験は科学的価値だけではありませんで、人々の生活も非常に豊かにしていくというところで、これから新しい科学技術の分野に発展していく可能性が十分あるだろうなというように思っております。むしろ積極的に進んでいった方がいいと思っている者ですけれども、その成果というのが国民一般の方々に余り知れ渡ってないんですね。なぜイモリを四匹も宇宙に持っていって、それがどうしたのというような感じにとられている部分があるわけなんです。
 そこで、大臣に伺いたいと思うんですけれども、この向井さんの行った宇宙実験の成果といいましょうか、その意義といいましょうか、そういうものについてどのようにお考えでしょうか。
   〔委員長退席、理事志村哲良君着席〕
#81
○国務大臣(田中眞紀子君) 乾先生も政務次官と一緒にいらっしゃってさぞ感動なさったと思いますが、御案内のとおり、世界の八十一のテーマを持っていきまして、日本からは十二のテーマを持っていかれました。そして今現在、結論的には、解析中でございますし、先月でしたかアメリカの宇宙飛行士と一緒に向井さんが科技庁に来られましたときに私も真っ先にあの解析状況を伺いましたけれども、まだトータルなものはできていないので全部終わった段階で発表なさるというお返事があったことをまずお伝え申し上げます。
 そうした研究について私が感じておりますことは、ヤモリだイモリだと日本はそればかり言っていますのでそんな感じがいたしますけれども、私は、個人的に非常に身近に思っておりますことは、新しい金属メタルですか、そういうものを持っていらして新しい素材をつくるというふうなことを最初から私は大変興味を持っておりました。そういうものができ上がることによって、医療機器にいたしましてもそうですし、それから原子力の、例えば高レベルの廃棄物が返ってきた場合のストックするケースであるとか、例えば原子力の分野だけに限りましてもそうです。そのほかいろいろな面でもって新素材ができるということは画期的なことだと思います。そういうことになるのだということのキャンペーンがないといけない。
 それから、もっと身近なことでは骨粗鬆症ですか、我々女性に関係のあることですけれども、背骨が曲がってくる、そういうふうなカルシウム不足の問題につきましても宇宙へ行ってそういうことの実験をなさってくると。骨で身長が伸びたが、帰ってきたらまた縮んだとか言っていましたけれども、そういう問題についても身近なこととして研究を無重力状態でやってこられるということが医学の発展に結びつくというふうなこと、もっとほかのジャンルのことをわかりやすく説明していただければよりよかったんではないかと思いますし、また我々もそういうキャンペーンを機会をとらえてやっていくべきではないかというふうに考えております。
#82
○乾晴美君 来年の夏にその成果が発表されるということでございますので、私も大いに期待させていただきたいというように思います。
 やはり今、大臣もおっしゃいましたように、こういった宇宙実験と生活が密着した部分もあるんですよということをもっとより熱心にアピールしていただいた方が国民の理解も深まりますし、そういった科学技術についてもいろいろ興味もわいてくると思いますので、よろしくお願いしたいというように思います。
 この向井さんというのは、非常にすばらしい方だと私は尊敬をいたしておるわけなんですけれども、仕事場は宇宙というようなことをキャッチフレーズに頑張ってこられたわけなんです。こういった宇宙という新しい環境を利用して何ができるのかということが非常に重要になってくるというように思います。こういった米国の方々と一緒に、性を越えて、そして国を越えて一緒に共同研究してきたという感じは非常にすばらしいというように思っております。こういった向井さんという個人に対して大臣の評価はどのように考えられていらっしゃるでしょうか。
#83
○国務大臣(田中眞紀子君) 個人に対しては、本当にすばらしいの一語に尽きます。
 ですが、今回のこの宇宙ロケットの打ち上げ、チームのほかの方にじかにお目にかかり、そしてテレビで打ち上げの状態、進行、進捗状況を見て、そしてまた、役所で書類でも報告を聞きまして、トータルで総合的な感想を申し上げたいと思います。
 人間は、一人ではどんなにすばらしくても何もできないということだと思います。それは宇宙飛行士たちのチームワークだけではなくて、それを支えた地上の方々、それからチューンアップしている方々、機材をつくった方々、あらゆる人がもう本当に大きなチームでもって善意が集まってやっぱりつくったものだと、その集積であったというふうに思います。
 その中で、ただ頑健な健康を持ってトレーニングをしたというだけではなくて、彼女たち、彼女はもちろんですが、ほかの方も皆さんが科学者で、そうして自分がハンドルできるものがしっかりあって、自信に裏づけられていて、科学に対する信頼をすごく持っておられるんですね。これはすばらしいと思います。じかにお目にかかったときはすごいなと思いました。
 地上にいるスタッフに対する信頼感、それから自分たちの能力に対する信頼感、そういうものが非常にいい力を持っておられて、そういうものが相乗力としてよく働いた結果だろうというふうに思いますので、政治家もやっぱり足ばっかり引っ張らないでお互いにいいエネルギーを出して、国をよくしていくというのは私どもの心構え一つではないかというふうに思いますが、そういうことの非常に象徴的な出来事だと思って私は拝見しておりました。感動いたしました。
#84
○乾晴美君 私がお尋ねしているその本当の意味は、やはり女性というのは科学に弱いのではないか、物理に弱いのではないか、数学に弱いのではないかといった、そういった偏見といいましょうか、そういうものも見事に払拭してくださったということで、殊さら女性、女性と言うわけではないんですけれども、私は、向井さんの果たした役割も大きかっただろうというように申し上げたかったわけでございまして、これから科学技術の分野に対しても女性を勇気づけたということで申し上げたかったわけです。
 ことしも女性の就職が非常に厳しゅうございまして、男女雇用機会均等法ではありませんけれども、どうしても女性もいろんな分野へ入っていくということを望んでいるわけなんですけれども、そういった分野にどれぐらい女性が活躍できるんだろうか。現実に今、向井さんの後へ続く人たちがどれぐらいいらっしゃるんだろうかということでお伺いしたいと思うんです。科学技術の女性の活躍状況についてちょっと教えていただきたいと思います。
#85
○政府委員(石井敏弘君) 科学技術分野におきます女性の活躍の現状でございますが、総務庁統計等で調べておるところによりますと、自然科学系の研究者全体に占めます女性研究者の割合というものは、一九九二年では五・九%、三万一千人の女性が活動されておられるわけでございますが、これは約十年前の一九八〇年の時点で見ますと、女性研究者は一万二千人でございました。
  〔理事志村哲良君退席、委員長着席〕
 研究者全体に対する割合で見ますと四・一%ということでございますが、一万二千人が三万一千人ということで、十年強の間に約二・五倍というような形でその参加、活動ということが進んできておるというのが現状でございます。
#86
○乾晴美君 それでは、米国、アメリカでは非常に女性の社会進出が進んでいるというように聞かせていただいておりますけれども、この科学技術の分野において米国はどのような現状なのか、そしてそれを日本と比較してどうなのかということでちょっと教えていただきたいと思います。
#87
○政府委員(石井敏弘君) アメリカの場合の御質問でございますが、アメリカの自然科学系における研究者の中で女性研究者が占める割合は、私どもが手元に持っておる数字は一九八六年、若干古うございますが、その割合は九・五%というような現状でございまして、先ほど言いましたように、九二年ベースで五・九%というような比率を見る限りにおいては我が国の場合は非常に低いと。もちろん、原因そのものには両国の社会風土の違いその他いろんな問題もあろうかと思いますが、現実に低いというのは否み得ないというふうに認識いたしております。
#88
○乾晴美君 先ほど大臣も私のことを知っていただいてありがたかったんですけれども、私も科学技術政務次官をさせていただきましたときに、たくさんの女性研究者そして技術者に科技庁の方に集まっていただきましていろいろ意見交換をさせていただいたんですけれども、とにかくそういった分野にもっと女性が入っていかなきゃいけないな、重要な部分を占めていくべきだろうなというように痛感させていただいた次第なんです。とにかくもっと女性が科学技術の方にも入っていけるような、そういう施策といいましょうか、今後、科学技術庁としてはどのような対策をお持ちなんでしょうか。
#89
○国務大臣(田中眞紀子君) 私は、率直なところ、まだそこまで頭が回っておりませんで、先輩はさすが鋭いところを御指摘なさったなというふうに思っております。
 女性がということですが、いろんな分野で活躍なさっていてもなかなか光が当たらないといいますか、報いられない方がたくさんおられると思います。それには、一つは、自分の経験から申しましても、結婚して育児の期間が長かったりしますとやっぱり時間がとられてしまって、科学だけに限らずちょっと政治に疎くなるような時期があります。育児休暇の問題でありますとか、あるいはフレックスタイムを導入したらいかがかとか、そのほか託児所、保育所、そういうふうなところの整備ということもあるかと思います。
 子供と母親というのはすごく大事な目に見えないつながりというものがあって、そういうものが確立てきないと、母親が若い時代に知的な好奇心、肉体的にも元気で走り回れる時期というのがあって、そういうときに――お尋ねとは少し話がずれるかもしれません。済みません、よろしいですか。要するに、そういうときに失うものというのは結構大きいんじゃないかということを私、常に思っております。ですから、それよりもむしろ社会的な評価ということになりますと、もう少し目配りをされなければいけないんだろうというふうに思ったりするんですが、現段階で私もこの問題をもう少し整理して考えさせていただかなければならないなというふうに思っております。
 向井さんの先ほどのすばらしさはわかりますし、これは男の人もなかなか恵まれない人は結構いるんですよね。ですから、これはちょっと正直なところ余り上手にお答えできなくて申しわけありません。
#90
○乾晴美君 こういった女性科学者がもっと活用できる環境づくりというのが私は大事なんだろうなというように思っております。
 だから、いつも女性、女性ではありません。先ほど河本委員の方からも若者の科学技術離れということが指摘されておりましたけれども、全般的に科学技術というのが非常に高度化されたり難しいというようなことで、なかなか科学に興味を持てない時代が来ているんだろうなと。その若者の科学技術離れをどうすればこちらへ引き戻せるかというような特効薬はないんだろうというように私も思っています。ですから、地道にいろいろな機会をとらまえて体験させ、あるいは実験していくことが大事だろうと思うんです。
 先ほど河本さんもSPring8のことをおっしゃっていましたけれども、平成九年にでき上がるというんですが、私も実は政務次官のときに見学させていただきましたら、私のような科学技術に非常に無知な者でも感動するんですね。ああ、ここから六十一の光が取り出されるのかということで、行くとよくわかるんです。あれが完成されて、建屋がきちっとできてしまうとそういうところは全部伏せられてしまってわからなくなってしまうんじゃないかと思うんですね。しっかりああいうところも宣伝なさって、学校の先生方やいろいろな方に見学に行ってもらえるようなPRをしっかりすると生きた教育ができますし、感動すると思います。
 もう一つ、やはりそんな特効薬ではないだろうと思うんですけれども、科学技術館とか、今、徳島県では徳島県子供科学体験施設というのをつくろうとしているわけなんですけれども、これはまた全国的にもそういうことをやっているだろうと思うんです。この間長官も科学館を見においでになって、お役所仕事は皆中途半端てしょうがないなというようなことをおっしゃったそうでございますが、こういった施設、科学館の活性化に対する科学技術庁の取り組みを伺わせていただきたいと思います。
#91
○国務大臣(田中眞紀子君) 本日、乾先生の御質問にあるということも承知しておりましたし、それから、私も科技庁長官就任と同時にぜひ見たい都内の施設の一つでございましたので、先週の水曜日に行ってじっくり拝見してまいりました。その御報告も兼ねることになります。
 要するに、全国でもって三百二カ所科学技術関連のこういう博物館があって、そのうち六十二は連携協議会というものに加盟しているそうでございますので、私も早速事務方におろしました。私の結論、印象はそのペーパーに載っているとおりでございまして、役所仕事全部がむだだとは申しませんで、あの中が非常に中空であってどうにもならないというふうな感じがいたします。三十年前にでき上がって二十二億円もかけたものであるのに、そのままほとんど展示品も直していないという信じられないような状態でございましたので、私が感じていたよりもっと厳しいことを見学していた子供たちからも反応として聞きました。ですから、こういうむだなものはどうするのかということは即下へ私はおろしました。
 一つ私が提案いたしましたのは、振興局等の若い役人の方と、きょう結果を聞きましたら六人と決まったそうですが、私とじかに話をさせていただきたい。そして、実際に若い役所の方々、官僚が何を考えているか、何を希求しているか、子育でもなさっていると思いますから、そういう方の意見も聞いて、そしてそれをこちらから発信していくということもしたいと思います。こちらから出ると同時に、あちら側、要するに連携協議会に加盟しているところにじかに、そちらの方で情報交換とか展示物の巡回はするというふうにうたってはありますが、実際には多分やっていないだろうことは今回見てすぐわかりましたので、そういうものを促進するようにもうおろしてございます。
 要するに、科学好きの人の底辺を広げていくということをしないと、感動を呼ばないところには何も進歩はないんですね。人が集まらないのであそこでバーゲンセールもやったなんということを聞きまして、本当にがっかりいたしました。
 一つ私が感動したのを申し上げますと、何とかという映画をやっておりまして、それは視覚的にも音響的にもすばらしくて大変感動いたしました。そういう、どこに照準を当てて、子供に当てるのか、それからもっと大きな人に利用してもらうかというものをはっきり整理していきたいと思っております。請う御期待でございます。
#92
○乾晴美君 力強いすばらしいお答えをいただいて非常にうれしく思います。
 科学技術館もそうなんですが、私も先ほどちょっとSPring8のことを申し上げました、けれども、見学させていただきました筑波研究学園都市の中にありました防災科学技術研究所だとか宇宙開発事業団筑波宇宙センター、それから海洋科学技術センター、そういうところを見せていただきましたが、本当にすばらしいパネルや、実際によくわかりやすいように説明のいろいろなものができておりまして、これはここへ訪れる人だけが見るともったいないなということも思いましたので、そういうことを同時に、科学技術館もつくるし、現在あるいろいろな施設にももっと呼び込んでいただきたいということが私の意見でございます。
 その次に、がん対策について少し聞かせていただきたいと思うんです。
 これも私は、昨年の九月九日に、千葉県千葉市稲毛というところの放射線医学総合研究所の方に寄せていただきましたけれども、重粒子線を使ったすばらしいあれがありました。対がん十カ年戦略だとかいろいろ言っておりますけれども、すばらしいところまで来たなというような実感を持っておりますが、現在どのような進捗状況なんでしょうか、知らせてほしいと思います。
#93
○国務大臣(田中眞紀子君) つい最近の細かいことについては事務当局から御返事申し上げますが、私も放医研に行ってまいりました。そして、あの段階で三人の方の治療をやっていらっしゃるという状況を伺ってまいりまして、科技庁は、このかん対策につきましてはかなり先行的に努力をしてきておりまして、厚生省や文部省とも連携をとってきているというふうに聞いております。
 現在の状況につきましては、事務当局から具体的にお返事を申し上げたいと思います。
#94
○政府委員(岡崎俊雄君) おかげさまで放射線医学総合研究所が建設を進めてまいりました重粒子線のがん治療施設がこの春に完成をいたしまして、この六月から実際の患者さんに治療を行っていくという臨床試行に入りました。六月から八月にかけまして三人の方、頭頸部のがんに対して臨床試行を開始して八月に終わったわけであります。医学的な所見についてまだいましばらく解析に時間はかかるわけでございますけれども、これまでの経過は大変順調である、このようにお伺いをしておるわけでございます。
 さらに、その成果を踏まえまして、この十月から脳腫瘍でありますとかあるいは肺がんといった部位をさらに追加するとともに、ぜひ人数もふやしていくべく今努力をいたしておるところでございます。
 こういった成果を踏まえて、できるだけ多くの方に利用していただくように努力をしてまいりたい、このように思っております。
#95
○政府委員(沖村憲樹君) 科学技術庁におきますがん対策でございますが、今、大臣が御説明いたしましたとおり、文部省、厚生省とともに対がん十カ年戦略の担当官庁といたしましてやってまいりました。ことしからは、がん克服新十カ年戦略ということで、鋭意がん対策について進めてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
 具体的には、今御説明がございました放医研の重粒子がん治療装置のほかに、理化学研究所におきましてがん遺伝子等の基礎研究でございますとか、科学技術振興調整費を用いまして、関係省庁と一緒になりまして、がん細胞の転移機構等の解明といったような基礎研究につきましても大いに研究を進めさせていただいているところでございます。
#96
○乾晴美君 ただいまがんのことについては聞かせていただきましたけれども、生活に密着した科学技術ということをスローガンに挙げておいでのようでございますので、そのほかの取り組みについて、ございましたら教えていただきたいと思います。
#97
○政府委員(沖村憲樹君) 生活に密着した科学技術といたしまして、ただいま御説明いたしましたがん対策のほかに、食品成分データの整備でございますとか、あるいは地震予知研究等の防災・安全対策でございますとか、人間特性の解明研究といいましたソフト研究、そういったことも大いに進めさせております。来年度につきましても、大臣の御指示もございまして、いろいろ強力にこれを進めさせていただきたいというふうに考えておるところでございます。
#98
○乾晴美君 私、時間がなくなってきたんですけれども、冒頭に向井さんのことを申し上げました。向井さんが非常に偉大な業績を残されたというように思っています。私は、向井さんに対する評価というのは、あまた研究者がいる中でとにかく七人選ばれた、その中で選ばれたのがたまたま日本人でありたまたま女性であったというところにその偉大さと、それから九年間にわたる宇宙への夢の情熱を燃やし続けたというこのすばらしい情熱と、しかも四十二歳という年齢にもかかわらずチャレンジしていった、そして女性の私たちに勇気を与えた、本当に満幅の敬意と尊敬をしているわけなんです。
 七月二十日の衆議院の本会議で大臣が向井さんのことをおっしゃったらしいんですが、その後で新聞を見ましたら、その後の答弁で、はつらつ長官眞紀子さんとかの中で、優しい夫の存在だとか、向井さんと共通点は優しい夫とか、宇宙飛行士の陰に夫ありとか、いかにも何か、非常に見ていて残念だなと思うのは、そういうことがいけないというのでなくて、夫の優しさもさることながら、毛利衛さんのときは妻をこのように評価してくれたかなというと、妻の話は一度も聞かれなかったと思うんです。それは、やっぱり男女平等な世界になっていないな、ここで夫を殊さら言わなきゃならないということがまだまだ男女参画型社会にはなっていない証拠の一つのあらわれだなというように私は非常に残念に思っています。女性が一つの仕事をすると女性の評価になるような世界が一日も早く来るように念願しております。
 そういうことで、私の質問は終わらせていただきます。
#99
○矢原秀男君 公明党の矢原でございます。
 長官の格調高い所信表明の中から六点ほど選んで質問したいと用意をいたしております。時間の都合と重複等もございますので、一つ一つをこなしていきたいと思います。
 私、用意いたしておりますのは、先ほどからも同僚委員の皆さんからお話がございますように、第一点は科学に対する人材という問題、第二点は八GeVの問題、第三点は重粒子に関するがん治療の今後の問題、第四点は太陽エネルギーというものに資源の少ない日本の国はさらに努力をしていかなくてはいけない問題、その次には核融合の問題等々を用意させていただいております。
 まず第一点でございますけれども、具体的な問題から伺いたいと思います。
 私も国会から同僚の皆さんと全国のいろんな各分野の優秀な方々のところへずっと前からお伺いをしたことがございます。印象に残る一つは、東北大学の西澤先生のお話を伺いながら科学に対する自分の考え方というものを二、三点感じたわけでございます。一つは、日本ではどうしても基礎科学の研究というものが軽視されている。二番目には、あの方は光ファイバーの論文等々を学会に発表しようとしたけれども学閥の関係でできなかった。しかしアメリカがそういう問題を採用した。話の中で私が要約している問題でございます。その次には、予算の少ない問題等々の話を伺いながら私なりにこういうことかなという感じがしたわけでございます。
 やはり基礎研究というものは、どうしても先進諸国と比較していかなくてはいけない、こういうことになるわけです。日本とヨーロッパ、そしてまた日本とアメリカ、こういう基礎研究水準の比較というものが出てくると思うんですが、その基礎になるものは、一つはライフサイエンスの問題、二番目には物質・材料系の科学技術の問題、三番目には情報・電子系の科学技術の問題、四番目には海洋、地球科学技術の問題、こういうふうに当局の皆様も常に懸案として考えていらっしゃると思うのでございます。
 まず、基礎研究水準の日米比較の中で、今私が申し上げた四点の基準、日本優位の問題、米国優位の問題等についてお話を伺いたいと思います。
#100
○政府委員(石井敏弘君) 主要先進国との研究水準の比較といったようなことで、先生ただいま基礎研究分野におけるライフサイエンスとか物質・材料、あるいは情報・電子、海洋、地球科学技術分野における日米あるいは日欧との比較というような御質問をされたわけでございますが、私ども先端科学技術者に対する調査といったようなことで、今先生御指摘の各分野につきまして、現在日米と比較した場合どうか、日欧と比較した場合どうかということで、日本が優位な場合は一点、日本が劣位にある場合はマイナス一点というような形で点数をやりまして、これまで調査いたしたものがございます。
 それによりますと、まずアメリカとの比較でまいりますと、ライフサイエンス分野におきましては、日本の場合は対アメリカとの関係ではマイナス〇・九、物質・材料系ではマイナス〇・五、情報・電子系ではマイナス〇・六、海洋、地球科学技術分野ではマイナス〇・七ということで、押しなべてすべてが非常に低いという状況でございます。
 一方、ヨーロッパとの比較というものについていいますと、ライフサイエンス分野ではマイナス〇・三、物質・材料系ではマイナス〇・一、海洋、地球科学技術分野ではマイナス〇・四、ただ一つ情報・電子系の科学技術分野におきましては日本が〇・三というようなことでございまして、アメリカとの比較に比べますと日本は比較的上位といいますか、上ではございますが、それにしても情報・電子系を除いてはやはりヨーロッパと比べてもなお低いというような現状でございます。
#101
○矢原秀男君 長官、今答弁いただいたわけでございますが、やはりこの研究水準の日米、日欧比較の中で、日本は今申し上げた具体的な四関係でも非常に低い。ヨーロッパとでは、今お話伺いましたように、情報・電子系の科学技術では日本が優位に立っているようでございますけれども、資源の少ない日本の国で、やはり技術を中心として教育から産業、そうして世界に貢献すると、そういう立場から見て、昔のGNPでいきますと非常に高い日本の国としてこういう面で何か欠けているものがあるんではないかなと思うんですけれども、長官感じていらっしゃることがありましたら一言伺いたいと思います。
#102
○国務大臣(田中眞紀子君) 矢原委員がもう十二分に御指摘なさったとおりですし、御認識は正しいと思っております。
 基礎と応用と開発の中で、今までは応用に力を入れてきました。当然予算の措置もそちらの方に偏っていまして、そして欧米に追いつき追い越せという形でやってきたと思います。これからはやはり余裕が少しできてきたわけでございますから、国際的な社会の中で現状をよく、今の統計、局長がお話ししたようなものを踏まえまして、基礎的なところに予算を投じて、少しでも多くの人々の関心をそこに集める。またそれをやらないと科学技術離れというものも解決しませんし、人材の育成というものはできないというふうに思っております。そのために鋭意努力をいたしますので、御指導いただきたいと思います。
#103
○矢原秀男君 また、私これを比較するのは余りうれしくないんですけれども、主要国のノーベル賞受賞者、これ自然科学部門だけを資料としていただいたわけなんです。日本が五人、アメリカが百七十人、ドイツが六十人、フランスが二十四人、イギリスが六十六人、その他の国で九十九人、合計四百二十四人というのが受賞者の数ですね。
 これを戦後と最近というように分けて見ますと、戦後一九四六年から一九九四年、日本で五人、アメリカが百五十一人、ドイツが二十四人、フランスが八人、英国が四十一人、その他が五十四人、合計二百八十三人。最近の十年間では、日本が一人、アメリカが三十六人、ドイツが十人、フランスが三人、イギリスが二人、その他が七人、合計五十九人ですね。
 私、これを見ておりまして、ノーベル賞というのはこれはいろんな審査とか過程がありまして、ノーベル賞を受けなくても立派な方は幾らでもいらっしゃるわけでございますけれども、この数字を見ながら私も感じることは、やはり科学技術というものを積極的に振興するためには、二十一世紀以降の、まず教育、そしてそれからの生い立ちということになりますと、五カ年計画であるとか十年計画であるとか、そういうふうな科学技術の指標というものが私は必要になるんではないかと。そういう顔をきちっとやはり見せる必要がある、こう思うんですけれども、こういう点については、序としてはどういうふうな形で進めていらっしやるのか、伺いたい。
#104
○政府委員(石井敏弘君) 先生ただいま御指摘のとおり、ノーベル賞等で見られるように、日本の場合、先ほども言ったような統計等をあわせましても基礎研究分野が非常に低いといったようなこと、さらに二十一世紀あるいは当面の日本の置かれた立場を考えても、科学技術に対して非常に力を入れなければならないと。
 こういうようなことで、政府といたしましても、既に科学技術政策大綱というものを定めて、全体が計画的、総合的に進んでいくようにということで、基本的な考え方を明らかにいたしております。この政策大綱の中におきましても、人材の問題を初めといたしまして、研究開発基盤の整備でございますとか、あるいは研究開発投資の拡充といったようなことでできるだけ早い段階に政府の研究開発投資額を倍増しようといったような方向を明らかにいたしておるところでございます。
 また、基礎科学分野の振興と同時に、重要な研究開発分野につきましても、それぞれ研究開発基本計画を定めてそれに基づいて推進していくというようなことを定めております。これまでにも物質・材料系でございますとかライフサイエンス分野でございますとか、いろんな重要分野につきまして逐次研究開発基本計画を定め、これに基づいて関係各省庁一体となってその推進に努力しておるというのが現状でございます。
#105
○矢原秀男君 今、私申し上げております一つの観点は、科学技術を主要国の国際比較で国力と研究活動という二つに分けて見ましたときに、九二年度ですけれども、日本は国民総生産、GNPは四百七十兆円です。アメリカが七百五十五兆円。またヨーロッパではドイツが二百二十八兆円、フランスが百六十兆円、イギリスは百三十五兆円です。こういう国力という立場、これは単純計算やいろんなことが各国でございましょうから、単純的に私も見ているわけでございます。
 そういう中で、それぞれの国の研究活動という予算の面を見ておりましても、日本の場合は政府の負担率、これが一九・四%、各省庁の自然科学関係を集めますと二兆七千億ですね。日本は一九・四%ですね。アメリカは八兆六千億円に対して政府負担の割合というのは四三・三%。ドイツは二兆二千億に対して政府の負担率は三六・六%。フランスは一兆九千億に対して四九・五%。イギリスは一兆円に対して三四・二%ですね。そうなると、日本の政府負担というのは一九・四ですから先進諸国で非常に低い。
 では、民間はどうなっているのかといいますと、民間は日本は十一兆二千億円で八〇・五%、アメリカは五六・七%、ドイツは六一%、フランスは四三%、イギリスは五〇%でございます。これを日本の立場で見てまいりますと、政府と民間の負担額というものが本当は、これはもう逆となれば政府はちょっと負担し過ぎますけれども、政府の負担と民間の負担というのはやはり五〇パー、五〇パーであるとか六、四であるとか、せめて六、四近くにならなければいかぬのではないか、こういうふうに数字の立場から私は見るわけでございます。そうしていかないと、やはり日本の今後にもう大変な問題が出てくるんではないかと。
 今までも科学技術離れというものがデータで全部出ておりますけれども、データで見ておりますと小学生のときは非常に意識が高い。しかしそれが小から中、高になると低下をしている。もう青少年の場合、七〇%近い小学生の科学に対する意識というものが高校のときには最近ではもう二〇%ぐらいに落ちている。逆に、五十歳以上の方々の意識が非常に高くなっている。
 こういうふうなことで、私も非常に心配をしているわけでございますが、民間と政府のバランス、私が今五カ年計画とか十カ年計画というものを国民の皆さんの目に見えるようにと言っておりますのは、やはりこういうふうな形のものがございますのできちっとしていかなければならない、こう思うわけでございます。
 政府と民間の対比というのを今後日本はどういうふうなバランスでいくのか。単年度でこういう数字が出ましたというのか、それとも五カ年や十カ年計画の中で民間と政府の割合は自然科学に対してはこうなんですよというふうなことをやった場合に、政府としてはやはり民間と政府というもののパーセント的なバランスはどうするのか、こういう点ほどうなんでしょうか。
#106
○政府委員(石井敏弘君) いわゆる研究投資につきましては、先生御指摘のように我が国の場合、国全体、官民合わせまして十三兆九千億、そのうち政府は二兆七千億ということで一九・四%ということでございます。このような官民間の比率というものが果たしてどうなのか、諸外国に比べて低いではないか、このような御指摘でございまして、私どもも基本的にそのような認識を持っておるところでございます。
 ただし、官民の負担割合といいますか、それぞれが努力をどのようになすべきかということで、私どもこの約十一兆円にわたる民間の研究投資そのもの、これは我が国の経済活動を活力あるものにするということで大変いいことではないかと。やはり今後とも民間における研究開発活動がより活発になっていくということはひとつ非常に重要な課題であると認識いたしておるところでございます。
 したがいまして、単にその比率がどうということだけで直ちに言えないんではなかろうか。特にここ数年の世の中の景気後退というようなことを背景といたしまして、民間における研究投資が減少傾向になった。こういうようなことから、我々、民間の活力というものに対して憂えておるところでございます。
 ただし、民間の研究投資が落ちたということで数字的に見ますと、政府の負担割合は逆に伸びておる、割合が高くなったというような傾向にあるわけでございます。それで、じゃそれがいいのかと、決して私どもそれをプラスという評価をいたしておりません。
 したがいまして、先生御指摘の官民負担割合というのも一つの大きな指標である、こういうふうな見方をすると同時に、やはり一つのまた別の見方をいたしまして、政府全体の研究投資というものが、先生先ほどおっしゃいましたように、二兆七千億円というものは対GNP比で見てまいりますと〇・五七%、政府はGNPの約〇・六%ぐらいしか研究投資をやっていない。これに対して諸外国はどうかといいますと、アメリカは一・一%、ドイツも〇・九七%といったようなことで、政府は対GNP比で研究投資約一%ぐらい投じておる。
 これに対して、日本の場合は〇・六%というような数字で、この数字はやはり低いんではないかというようなことで、結論的には先生もおっしゃったようにもっと政府の研究投資を拡大すべきであるということで、先ほども答弁させていただきましたが、平成四年に定めました政策大綱におきまして、「時々の財政事情を踏まえつつ、政府の研究開発投資額をできるだけ早期に倍増するように努める。」ということを明らかにいたしておるところでございます。
 したがいまして、この早期倍増というものを達成いたしますと、対GNP比を見ましても一%近くになるんではなかろうか。もちろんそのときのGNPが幾らであるかということにもよりますが、感じとしてそういった方向になろうというように考えておるところでございます。そのようにいたしますと、先生御指摘の政府負担割合も多分もっと高まっていってよりよい形になるんではないか、かように考えておるところでございます。
 いずれにいたしましても、単年度だけでその問題を論ずるわけにはいかないというのは御指摘のとおりでございまして、政策大綱でも「できるだけ早期に」ということで、もちろん財政状況を踏まえなければいけないということではございますが、そのようなことで、大綱に基づいた研究投資の拡充の路線で政府は全体として努力を積み重ねておるというところでございます。
#107
○矢原秀男君 時間がオーバーしておりますので、これで終わらせていただきます。
#108
○西山登紀子君 私は、女性の科学者、研究者の地位の向上について質問をいたします。
 科学技術庁は平成五年の七月に、女性研究者の現状に関する基礎調査、こういうのをおやりになっております。それを見てみますと、大学入学志願者のうち、男性の理学部や工学部の志望者は減少しているんですけれども、女性の場合は増加をしております。そして、工学部志願者は前年度を下回った年はなく、一九九一年、九二年は女性の入学志望者は法学部、経済学部よりも増加数が大きくなっている、そして女性の大学受験生の理工系離れの兆候は見られない、こういうふうに科学技術庁の基礎調査は述べているわけです。
 先ほどもお話にございました向井千秋さんが日本で最初の女性宇宙飛行士になって活躍をされたわけですけれども、これも女性の活躍を示す明るいニュースなわけですよね。
 そこで長官にお伺いしたいわけですけれども、先ほどもお話がありました青少年の科学離れ、これが今問題になっていますけれども、こうした女子学生の意欲を生かす、花を開かせる、さらに女性の科学者、研究者の地位の向上、研究条件の改善などを図ることは、日本の科学技術の発展の上からも極めて重要な課題であると考えますけれども、いかがでしょうか。
#109
○国務大臣(田中眞紀子君) 西山委員の御指摘のとおりであるというふうに思っております。
 冒頭に、きょう開会のときに、私、科学技術離れを少しでも防ぐためにはどうするかというお話がありましたときに、入り口の部分の初等中等教育の段階及び出口で大学教育のことを申し上げましたが、さらに加えて幅広く人材を確保していくということでは、今や女性の能力がどうであるとか関心度が違うというふうなことは、西山先生が今おっしゃった結果を見ましてもわかるわけでございまして、むしろ関心のある方はおられるので、男女の差ではありませんので、やはりもっと機会を、女性が働けるような環境づくりといいますか、そういうふうなことに努力をしていくべきであろうというふうに認識いたしております。
#110
○西山登紀子君 そこで、女性の研究者の実態を見てみますと、大学に勤める女性の研究者は、平成六年度、九四年度の学校基本調査によりますと二万一千九百九十一名いらっしゃるわけです。十年前と比べますと五千八百七十六人ふえているわけですけれども、この構成比率を十年前と比べてみますと一二・七%から一四・二%、わずかですけれども増加をしております。
 処遇はどうかと見てみますと、この科学技術庁の基礎調査によりますと、自然科学系だけを取り出してみますと、大学の教官のうち女性は七・二%、全体の中で女性の教官は七・二%を占めているわけです。わずかですけれども占めています。
 それでは職名別構成はどうかと見てみますと、男性の場合は、教授が二九・六%、助教授二一・六%、講師一三・三%、助手は三五・五%です。女性の職名別構成はどうかといいますと、教授は六・七%、助教授は一〇・二%、講師は一二・八%、助手は七〇・三%、こういう実態です。
 私の地元は京都ですけれども、京大の女性の研究者の方にお会いをして実情を聞いてまいりました。九三年には京都大学の全教官二千六百九十四名中、女性はわずか四%、百十名。その内訳はといいますと、教授はわずか七名、圧倒的多数、七割が助手でございました。
 こうした状況というのは、残念ながら、国立大学の方が女性に厳しくてこういう傾向がより顕著にある。しかも、ここ数年変化の兆しは見られていません。ですから、残念ながら、まだ女性の科学者の能力や業績が十分評価されているということは言いがたいのではないか、いわばこれは大きな社会的な損失ではないかと考えますけれども、どうでしょうか。
#111
○政府委員(石井敏弘君) 女性研究者の能力等が十分に評価されていないといったような御指摘でございますが、先ほど大臣の答弁にもございましたように、要するに、女性の能力というものは一般的な評価と実際の評価というものが離れている場合というものは十分にあるわけでございまして、現在、科学技術会議におきまして人材部会というところで科学技術系人材の養成、確保というようなことについて審議をいたしております。
 この六月に既に中間報告が出ておりますが、こういった中におきましても、社会の一部において女性は科学技術に向かないんだといったような誤った認識もある、科学技術の分野は逆に男女の性別にかかわらずそれぞれの能力に応じた活動ができる分野であるといったような指摘もなされており、そのような一部の誤った認識を取り除いていくべきであるというような指摘もなされておるところでございます。
 いずれにいたしましても、男女の性別にかかわらず意欲のある人間がその持てる能力を十分に発揮して、かつその業績が公正に評価される社会環境を整えていくということは極めて重要なものと認識いたしておるところでございまして、科学技術分野におきましても、このような観点を踏まえつつ科学技術会議等の答申も近くいただくことになっておりますので、そういった点も踏まえて今後十分に対応していきたいと、かように考えておるところでございます。
#112
○西山登紀子君 それで、日本学術会議も昭和五十二年、六十二年の政府への要望に続いて、ことしの五月に改めて「女性科学研究者の環境改善の緊急性についての提言」というものを出しております。非常に立派なものです。「女性が科学研究に参加することによって、科学の一層の発展が期待される。」というふうに述べておりまして、「科学、特に基礎科学の領域での優秀な人材の確保のためにも、女性科学研究者の研究環境の整備が急務となっている。」と、このように述べて、九つの提言をしております。
 そこで、科学技術庁にお伺いします。
 この中間報告、科学技術系人材の確保に関する検討の中間報告を出しておられて、基本指針を出すお考えだというふうに聞いております。この中間報告を見せていただきましたけれども、学術会議の提案の緊急性と重要性と比べてみますとなお検討の余地があるというふうに考えるわけですけれども、この提言を十分に生かした基本指針を期待したいと思いますが、いかがでしょう。手短にお願いいたします。
#113
○政府委員(石井敏弘君) ことしの六月に先生御指摘の科学技術会議の中間報告が出ておりますが、さらにその後、科学技術会議におきましては審議を進め、この十二月に答申を出すべく現在作業が進んでおるところでございます。
 いずれにいたしましても、科学技術会議におきましては、学術会議の提言のみならず広く関係方面からいろんな意見が出ておる、こういったものも踏まえ、かつ学術会議のメンバーも科学技術会議の部会等で十分に発言の機会もあり、こういった広い観点から、女性の活用といいますか、活動がよりできるような観点からの提言が近くなされるところでございます。これまでのあれからいいまして、先生おっしゃいますように、女性が働きやすいような環境とか、あるいは先ほど言いましたような一部の誤った認識を変えていくとか、こういった事柄について幅広く提言がなされる方向で現在審議が進んでおるところでございます。
#114
○西山登紀子君 十分に期待をしておりますので、よろしくお願いをいたします。
 そこで、最後に長官にお伺いしたいと思いますが、私も学術会議のこの九つの提言に沿って二つ提案をしたいと思うんです。
 その第一は、科学技術庁の基礎調査では十六人の女性研究者の聞き取り調査も行っております。この調査のまとめの部分で「広範な分野で活躍をしている女性研究者の実態すべてを網羅しているものではない。」というふうに自己分析をしておられまして、さらに、「女性研究者の現状をより正確に把握していくことが必要であろう。」、「女性研究者の状況については、今後とも継続的に調査していく必要がある。」、このようにこの基礎調査は述べているわけであります。
 私も共働きをしながら三人の子供を育ててまいりましたけれども、京都大学の女性研究者の方にお伺いいたしますと、女性研究者の場合には出産やそれから育児、両親の介護、こういう問題と研究の両立、さらには就職、昇任の性差別など格別に不利な環境の中で、しかし研究には大変な努力をして頑張っているというのが実態でした。
 そこで提案なんですけれども、女性科学者の実情を、数の分析だけではなくて、女性研究者が研究活動を進める上の障害は何か、その改善の方策や希望、それから全体として実態を把握することができるような調査をぜひ行っていただきたいというのが第一点です。
 それから第二は、学術会議の第七番目の提言に、科学研究費補助金制度などの研究助成制度を特に女性科学研究者の観点から見直すことを挙げているわけです。これはどういうことかというのをちょっと聞いてみますと、女性の場合は講師も多いわけだけれども、非常勤講師なんかがいて、非常勤講師なんかの場合には研究費がおりないというような実態があるようです。こういうようなことからも、さまざまな角度からこれを見直そうということを言っているわけですね。
 大変結構なことだと思いますし、特に文部省なんかでよく研究をしていただかなければいけないことかなと思うんですが、民間では、例えば女性の研究活動を奨励するための猿橋賞というようなものもあるわけです。
 何かいい方法はないかなと思って科学技術庁にお伺いしてみました。科学技術庁長官賞というものがあるんですね。その受賞者の中にそれでは女性がどれぐらい入っているか、受賞しているかということで調べていただきました。科学技術庁はそういう一覧表を持っていないということで、一人一人女性を拾って過去五年間にわたって調べてくださいました。これは年間千人程度の方がもらわれるんですが、何と女性の数は二%弱です。二%弱。この五年間を比べてみますと大体二十人前後で、その数はふえておりません。むしろ平成六年度は平成二年度に比べると減っているというような状態なんですよね。
 ですから、その中でもう少し女性に光が当たるようにしていただくわけにはいかないか、あるいはもっといい方法はないか。もらわれた方は大変な励みになるというようにも聞いておりますし、女性の研究者の方にお伺いしますと、経歴書にどんな賞をもらったかということも書く欄があるそうです。女性の研究者がそういうことを励みにできるような何か方法があればいいなというふうに思って、そういうことを考えていただきたい。
 時間の関係で、済みません、最後の質問も同時にさせていただきます。
 科学技術庁の長官として、例えば閣議などで、学術会議の九つの提言を生かして政府として積極的に検討して対策をとるように、女性の科学者、研究者の地位の向上のためにぜひ働いていただきたい、その決意のほどをあわせてお伺いをいたします。
#115
○国務大臣(田中眞紀子君) 西山先生の大変細かいデータを挙げてのお話には私も感銘を受けましたし、私がすべきことは何かよくわかりました。すなわち、閣議でも、より以上に積極的に具体的なことで発言もいたします。
 それからもう一つは、賞をいただく、そういうふうなことは確かにはっきり励みになりますし、先日も叙勲等があっていろいろ私も経験いたしましたけれども、また逆に、子育ての期間に母親が底辺をもっと広げて、母親、女性が科学というものに常に関心を持ち続けるような日本の教育なり社会環境ができ上がるということは大変大事だと思います。なぜならば、そういう母親の関心が子供たちの興味を引き出して、小さなうちから科学というものに関心を持たせるということもできると思います。
 片や、今、先生御指摘のこと、大変重要だと思いますので、鋭意努力をいたします。
 ありがとうございました。
#116
○國弘正雄君 時間に大変限りがありますので、私は長官に負けないくらいの大声でひとり言を申し上げますから、お耳を煩わしますけれども、ひとつ後で多少の御意見を求めたいと思います。
 私がひとり言を申し上げるのは、定性的なテーマと言っていいと思います。定量的な計量的な数字を挙げて云々ということよりも、むしろ定性的なテーマということになろうと思います。
 テーマは二つございまして、一つは既に矢原委員もお尋ねになったノーベル賞ということにかかわっておりまして、要するに、これは基礎研究・純粋研究対応用研究あるいは製品関連研究といったようなもの、そのどちらに力点を置くのかという問題、そして、科学技術庁という役所についていうならば、科学に力点が置かれるのか、それとも技術に力点が置かれるのか、その両方にいわば等分的に力点が置かれるのかというようなことにもなろうかと思います。
 二番目のテーマは、「これまでも力を入れてきたものの中に地震予知があります。」と長官の先日所信を表明なすった中にございますので、地震予知に関連してちょっと伺いたいと、かように思います。
 まず第一にノーベル賞ということについてでありますが、先ほどのお話の中には出てまいりませんでしたけれども、十一月というのはノーベル賞の季節なんですね。ほとんど日本の歳時記の中に入っているといってもいいと思います。
 大江健三郎さんがこの間文学賞をとった。我々としては大変喜びにたえなかったし、彼が戦後民主主義者とみずからを措定してくれたことは、私、同じ戦後民主主義者を自負する者として大変快哉を叫びました。ただ、大変寂しかったのは、物理、化学、医学という自然科学の分野において、八七年以来この方、ことしもまただれも受賞されなかったということであります。
 実は、ことしは化学賞の受賞者が出るのではないかという予測が行われておりました。今、アメリカのコロンビア大学におられる有機化学の大変な大先生で中西香爾さんという方がおいでになりますが、この方はつい先ごろアメリカの最も権威のある全米アカデミー科学賞の化学賞を受賞なさった。そして、この全米アカデミー科学賞をとった人というのは非常に多くがノーベル賞をとるものですから、中西先生があるいはことし久しぶりに、八七年以来久方ぶりにノーベル賞受賞に輝くのではないかなとちょっと思っておったものですから、残念至極でありました。
 そこで、先ほども矢原委員もおっしゃいましたけれども、あるいは乾委員も、それから河本委員もそういう趣旨のことをお触れになったと思いますが、日本というのは何といったって経済大国ですよね。世界に冠たる経済大国でありますし、工業技術大国でありますし、教育大国でありますし、あるいは研究大国であるかもしれない。昨今は政治・軍事大国にも足早になっているという状況であります。こういう世界で有数の大国、嫌な言葉ですけれども、大国が事ノーベル賞においてはまことに小国でしかないというのはいささかもって面妖ではないかというふうに思うんです。
 私が関係しておりましたあるアメリカの大学なんかは、いっとき二十人ぐらいのノーベル賞受賞者を抱えておりまして、石を投げればノーベル賞に当たるみたいな感じがあったわけです。もちろん、私はノーベル賞がすべてだなどとは全く思っておりませんし、例えばノーベル経済学賞受賞者を二十一人擁するアメリカの経済が必ずしも我々より二十一倍立派だということではございませんから、ノーベル賞すべてなどというふうに考えるほどナイーブではありませんけれども、アメリカ人の自然科学者の中で百七十人以上、それからイギリスやドイツも六十人以上、フランスがたしか二十四人とか、ロシアが十人とか、イタリアが七人とかということと比べると、ありとあらゆる意味において大国である日本がわずか五人しか自然科学分野ではおられないというのは大変に寂しいことだと思うんです。
 ノーベル賞というのはすべてではないまでも、自然科学なら自然科学の分野で道なきところに道をつけて、そして荒れ地にくわを入れたと、そういうクリエーティブなイノベーティブな仕事に対して与えられる賞でありますから、そういう分野においてやっぱり日本人は余り知の国際貢献をしてこなかったのではないかと。国際貢献というとすぐPKO、PKFという話になってしまうんだけれども、私は、日本のできる国際貢献というのは知の国際貢献であるべきだというふうに思うんです。
 その意味においては、大変寂しいし、それから面妖だし、長官、どのようにこのあたりをおぼしめしておいでになるか、そしてその理由は那辺にあるとお考えか、もしお考えをお聞かせいただければ幸いです。
#117
○国務大臣(田中眞紀子君) 國弘先生から大変鋭いお話がありまして、知の国際貢献をしてきていないとおっしゃられてみると、私もノーベル賞の数には決して拘泥するものではありませんけれども、もう一回よく考えてみなければいけないなということを思っております。
 ただ、戦後、経済成長というふうなことで一生懸命経済活動に国民を挙げてエネルギーを使ってきたと思いますので、やはり今こそ本当にしっかりと、自分たちの子孫だけではなくて、世界にどうやって貢献できるか、どうやって幸せというものは構築できるか、地球を大事にできるかという観点で、一人一人が、小さな人の教育だけではなくて、今現在生きている我々も応分にやっぱり荷物をしょって考えて、知恵を出していくべきだろうというふうに思います。
#118
○國弘正雄君 その中西香爾教授が、この方はコロンビア大学に今おられるんですが、かつて東北大学の教授をしておいでになりました。有機化学の世界的な大家なんですね。日本の大学の講座制、特に旧帝国大学系の講座制というものにうんざりして、そしてアメリカに難を逃れられたという方であります。
 この中西博士がこういうことを言っておられます。
 一つは、日本がこういうふうに基礎科学の分野においておくれをとっているのは、みずから研究経験のない、いわば法学部出身の官僚が予算を握っているからだ、こういうふうに言うんですね。彼は、しかし、科学技術庁については触れていないんです。幸いなことに文部省について触れているわけですね。文部官僚に対して大変手厳しい批判を加えておいでになる。こんな、みずから研究経験のない、体験のない人たちが法学部的な知識だけで科学技術分野における、あるいは文教の分野における予算を握っているのはおかしい、文部省はすべからく解体されるべきである。大変激烈なことを言っておいでになる。
 それから、第二点は教育に関してなんですけれども、大学に入るだけですっかり燃え尽きてしまうような、息切れしてしまうような現在の入試制度というものは、これはやっぱり全廃されなければならない。自分が今教えておいでになるアメリカの大学、長官もアメリカで勉強なさったわけですけれども、大学へ入って猛勉強するアメリカと大学へ入るともうすっかりくたびれ果ててしまっている日本との間には格段の相違が出てくるんだというようなことを言っておいでになります。
 それから、その問題についてもう一つ、これは中西さんじゃなくて東京大学の前の総長の有馬さん、物理学者ですけれども、有馬前総長は、どうも日本は研究戦力としての、あるいは頭脳集団としての博士号受領者の数が非常に少ないのではないかということを指摘しておいでになります。有馬先生によりますと、理学博士号受領者の数はイギリスやアメリカの約十分の一でしかない、それから工学分野においてすらアメリカの三分の一でしかない、つまりそういう頭脳集団というものを我々の社会が十二分に持っていない、あるいは育成してこなかったということに問題があるというようなことをおっしゃっておられるんですが、そのあたりについても長官のもし御意見を承れればと思います。
#119
○国務大臣(田中眞紀子君) やはり、敗戦後なかなか知恵が回らなかったので、もっと早くにみんなが「百万人の英語」をよく聞いていればよかったのかなと思ったりしておりますけれども、御指導いただきたいと思います。
#120
○國弘正雄君 うまく何かとったりを食らわされたような感じで、しかし大変恐縮しています。
 そこで、地震の問題。
 もう時間がないんですけれども、地震の問題は、ぜひ長官在任中にこのことについては何か一つの治績というか業績を上げられて、さっき請う御期待どおっしゃいましたけれども、私としてはお代は見てのお帰りという感じで、長官の手腕に期待をさせていただきます。
 日本が世界に冠たる地震大国である、火山大国である、あるいは都市文明型の都市集中型大国であるということはもう今さら申し上げるまでもありませんが、どうも地震関係の専門家にいろいろ伺いますと、ミサイルがいつ飛んでくるかわからない、にもかかわらずそれを迎え撃つだけの、何といいましょうか、レーダー態勢というものが十分に整備されていないところか、大変に貧寒そのものだというようなことをおっしゃるわけですね。私も何かそんな気がする。
 地震予知の予算というのは、今どれぐらいなんでしょうか、そして、その地震予知の予算を例えば四隻のイージス艦合わせて五千四百億円という国防費、防衛費というものと比べて、軍事費というものと比べて、一体どういうことになっているのか、ちょっとお知らせください。
#121
○政府委員(沖村憲樹君) 予算でございますので、私の方からちょっと御説明させていただきたいと思います。
 政府全体合わせまして、平成六年度の地震予知関係の予算は百六億円でございます。この構成でございますが、科学技術庁が約三十六億円、そのほか文部省、通商産業省、運輸省、建設省、郵政省等が地震予知にかかわっておるところでございます。
#122
○國弘正雄君 百六億円というのは、数年前と比べるとかなり長足の進歩を遂げたと言えると思うんですけれども、しかし、例えばイージス艦四隻が五千四百億円だというのと比べると、これはもうまことにもって貧しい予算でしかない。例えば地下の微妙な鳴動を検査する深い穴を一本掘るのに二十億円ぐらいかかるということになると、仮に日本の全地震予知予算をその穴を掘るために全部つぎ込んだとしても、五本掘ったらおしまいというような貧しさだということなんですね。
 そこで長官、この間、もしできたらお目通しいただきたいということで、一九三四年にかの寺田寅彦が「天災と國防」という、私はこれは大変すぐれた論文だと思いますけれども、物しまして、とにかく日本にとって最大の敵国は天変地異なんだ、これがもう本当に日本のような国にとって、最後通牒も何もなしに突然襲来する、国家を脅かす敵としてこんな大きなものはない、怖いものはないということを言いました。あるいは、文明というものは進めば進むほど天災による被害の度合いも累進的にふえてくるんだと。
 寺田寅彦は、安政の大地震というのは幸せだったと。つまり、それだけ都市化もないし、いわば人口も稠密でないし、自動車だのガソリンスタンドだのという危なっかしいものもないしということで、そういう趣旨のことを述べておりますが、あの「天災と國防」という論文をごらんくださって何か特に御感想があったらお漏らしください。
#123
○国務大臣(田中眞紀子君) まず、この本を読むようにお薦めいただいてありがとうございました。
 この中で私が一番ずばり言っているなと思いましたパラグラフといいますか、ところは、「科学的国防の常備軍を設け、日常の研究と訓練によって非常時に備へるのが当然ではないかと思はれる。」と、こういう言葉をもう寺田寅彦さんが、これは昭和何年でございましたか、九年ですよね、におっしゃっておられるんですね。
 そして、「かういふ此の世の地獄の出現は、歴史の教ふる所から判断して決して単なる杞憂ではない。」ということは、本当に家庭内でも言われていて、ことしも渇水があったり、それから地震が北海道であったり、台風は毎年のことでございますが、渇水のときにはこの内閣はかしこくも、予算がないこともありますけれども、財政状態が厳しいのでダムなんかつくっていられないから、それではということで建設大臣が今あるダムのしゅんせつをしようではないかというふうなことを言い出しました。
 それから、私どももみんな閣議で本当に頭を抱えまして、海水の淡水化というものをやっぱり考えるべきではないかと。これがどうなっているか、またフォローいたします。海水のことは、私は、この内閣議でもって一カ月くらい前にはどうなりましたかというお話をいたしましたけれども、WTOの話などいろいろ話が錯綜していまして、閣議の後の懇談会の時間が限られておりましたのでチェックをもう一回入れておりませんけれども、この二つのことをやはり確実にしたいと思います。
 ただ、台風、これは災害ですけれども、この天気というのは、台風が来ないように扇風機で向こうにやるわけにもいきませんし、豪雪地帯が少し道路をつくっても解決するわけでもないし、お天気というものを人間が変えられない、雨が欲しくても科学的に雨を降らせられないということに通じるものですから、究極の科学技術の進歩というものではないかというふうに思っておりまして、常に念頭にはありますけれども、なかなか難しいなというふうに思っております。
#124
○國弘正雄君 委員長、もう時間がないんですが、最後に一言だけつけ加えることをお許し願いたいと思います。
 さっきの寺田寅彦じゃありませんけれども、近代社会になればなるほど天然災害の被害が大きくなるんだ、累進的にふえていくんだということの一つの例ですけれども、私、昔調べまして、関東大震災のときに一府三県、東京府それから他の三県に全部でどれだけ自動車の数があるか確かめたんです。当時たったの三千台しかないんですね。ところが、今回一都三県にどれぐらい登録された車の数があるかというと、数年前に調べたときには千二百五十万台ぐらい、今は恐らく千五百万台ぐらいあるんじゃないでしょうか。その分だけガソリンスタンドも多うございましょうし、高速道路その他が四通八達しておりますし、そんなこんなを考えると、やっぱり近代化されて高度ハイテク化した都市であればあるほど天然災害に弱いという話が出てくると思うんです。それが一つ。
 それからもう一つ。最後。
 もしこの東京地区に大きな地震があるといたしますと、例えば国際金融の中心としての東京、あるいは国際為替あるいはいろいろな債券とか証券とか、そういったようなものの世界の一大中心地としての東京が大打撃を受けるということになりますと、これはただ単に東京なり日本なりの被害にとどまらずに、世界経済全体に対して物すごく大きなマイナスの影響を与えるだろうと思うんですね。
 一九八九年の六月号のマンハッタンというアメリカの雑誌が特集をいたしまして、東京大地震がいかにウォール街と世界経済を崩壊させるかというそら恐ろしいようなタイトルのシナリオを書いております。これはいつか長官にお届け申し上げたいと思いますので、もしお暇な折にお目通しいただければ大変に幸いだということを最後に申し上げて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
#125
○委員長(高桑栄松君) 私も一言感想を申し上げたいと思います。
 きょうは、委員会の質疑応答、私も自分の立場上質問ができませんでしたが、大変楽しく、また本当にいい質問とお答えであったと私は承りました。私も質問したいような部分たくさんございましたが、本件に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二分散会
ソース: 国立国会図書館
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