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1994/12/08 第131回国会 参議院 参議院会議録情報 第131回国会 厚生委員会 第11号
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1994/12/08 第131回国会 参議院

参議院会議録情報 第131回国会 厚生委員会 第11号

#1
第131回国会 厚生委員会 第11号
平成六年十二月八日(木曜日)
   午後二時三分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 十二月八日
    辞任         補欠選任
     前島英三郎君     松谷蒼一郎君
     川橋 幸子君     今井  澄君
     西山登紀子君     林  紀子君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         種田  誠君
    理 事
                清水嘉与子君
                宮崎 秀樹君
                菅野  壽君
                横尾 和伸君
    委 員
                石井 道子君
                尾辻 秀久君
                大島 慶久君
                大浜 方栄君
                佐々木 満君
                前島英三郎君
                松谷蒼一郎君
                今井  澄君
               日下部禧代子君
                竹村 泰子君
                堀  利和君
                勝木 健司君
                萩野 浩基君
                高桑 栄松君
                林  紀子君
     発 議 者      横尾 和伸君
     発 議 者      勝木 健司君
   国務大臣
       内閣総理大臣   村山 富市君
       厚 生 大 臣  井出 正一君
   政府委員
       内閣官房内閣外
       政審議室長
       兼内閣総理大臣
       官房外政審議室
       長        谷野作太郎君
       外務省総合外交
       政策局国際社会
       協力部長     高野幸二郎君
       外務省総合外交
       政策局軍備管
       理・科学審議官
       事務代理     杉内 直敏君
       外務省アジア局
       長        川島  裕君
       外務省北米局長  時野谷 敦君
       厚生政務次官   狩野  勝君
       厚生大臣官房長  山口 剛彦君
       厚生省保健医療
       局長       谷  修一君
       厚生省社会・援
       護局長      佐野 利昭君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        水野 国利君
   説明員
       外務大臣官房審
       議官       高野 紀元君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
○原子爆弾被爆者援護法案(横尾和伸君外一名発
 議)
○高齢者福祉・医療の充実に関する請願(第二号
 )
○被爆者援護法の早期制定に関する請願(第六号
 外三八件)
○社会福祉施設整備の国庫補助に関する請願(第
 一二号)
○児童福祉法の一部改正に関する請願(第一八号
 、外九件)
○年金制度改悪反対に関する請願(第二四号外一
 件)
○年金制度の改善に関する請願(第三〇号外一件
 )
○国民健康保険制度の改革に関する請願(第三一
 号外一四六件)
○原爆被害者援護法の制定に関する請願(第七〇
 号外三五件)
○年金制度改善に関する請願(第八三号)
○児童家庭対策長期プランの策定と保育制度の充
 実に関する請願(第二二号)
○国民本位の公的年金制度改革に関する請願(第
 一四九号外五四件)
○臓器移植法案の廃案に関する請願(第二三六号
 )
○保育制度の改善と充実に関する請願(第二五五
 号外一件)
○男性介護人に関する請願(第二五八号外五件)
○重度心身障害者とその両親又はその介護者及び
 寝たきり老人とその介護者が同居入所可能な社
 会福祉施設の実現化に関する請願(第二五九号
 外六件)
○医療・年金・福祉の改善に関する請願(第三九
 〇号外一一件)
○国民健康保険組合育成強化等に関する請願(第
 四〇一号)
○カイロプラクティック・整体術等、あん摩マツ
 サージ指圧類似行為の規制・取締りの徹底に関
 する請願(第四二〇号外二三件)
○公的年金制度改書・拡充に関する請願(第四六
 九号外一一件)
○公的年金制度の抜本的改善に関する請願(第四
 八〇号外二件)
○公的年金制度及び医療・福祉制度の改善に関す
 る請願(第四八三号)
○国民年金を始め公的年金制度の改善に関する請
 願(第四八四号)
○社会保障の拡充に関する請願(第四八五号)
○年金制度の拡充に関する請願(第四八七号)
○人口肛(こう)門・人口膀胱(ぼうこう)造設
 者に係る身体障害者福祉法の運用改善に関する
 請願(第五〇一号外七件)
○年金制度の抜本的改善に関する請願(第五一四
 号)
○臓器移植法案廃案に関する請願(第五三〇号)
○医療保険による良い入れ歯の保障等に関する請
 願(第七八五号外一件)
○安心して暮らせる社会保障の充実に関する請願
 (第八七七号)
○寒冷地における重度障害者対策に関する請願
 (第八九五号外二〇件)
○身体障害者への携帯電話の貸与に関する請願
 (第八九七号外二三件)
○介助用ホイスト・水平トランスファの支給基準
 緩和に関する請願(第九〇三号外二三件)
○重度障害者のケアハウスの設置に関する請願
 (第九〇四号外二三件)
○脊(せき)髄神経治療の研究開発促進に関する
  請願(第九〇五号外二三件)
○脊(せき)髄損傷者の入院時における付添看護
 人に関する請願(第九〇六号外二三件)
○重度頸(けい)髄損傷者に対する人口呼吸器支
 給に関する請願(第九〇七号外二三件)
○医療制度の対策と改善に関する請願(第九〇八
 号外二三件)
○在宅障害者の介助体制確立に関する請願(第九
 〇九号外二三件)
○重度障害者の所得保障充実のための障害基礎年
 金の増額に関する請願(第九一〇号外二三件)
○無年金障害者の解消に関する請願(第九二号
 外二三件)
○乳幼児医療無料制度の確立に関する請願(第九
 二六号外一件)
○骨粗しょう症予防のための健診体制の充実に関
 する請願(第九二七号外一件)
○戦時災害援護法の制定に関する請願(第九六八
 号)
○国民医療の改善等に関する請願(第九七〇号)
○公衆衛生対策の強化に関する請願(第九七一号
 )
○慢性関節リウマチのプール療法に関する請願
 (第九八二号外二件)
○障害者の自立の促進と親・家族負担の軽減に関
 する請願(第一四九八号)
○保育制度の拡充に関する請願(第一五七四号外
 一五件)
○原爆被爆者援護法の制定に関する請願(第一七
 四四号)
○継続調査要求に関する件
○委員派遣に関する件
    ―――――――――――――
#2
○委員長(種田誠君) ただいまから厚生委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、川橋幸子君及び西山登紀子君が委員を辞任され、その補欠として今井澄君及び林紀子君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(種田誠君) 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律案及び原子爆弾被爆者援護法案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○勝木健司君 総理、御苦労さまでございます。
 それでは、時間も限られておりますから。
 この私どもの参議院におきましては、昭和四十九年の第七十二国会で原子爆弾被爆者援護法案を私どもと社会党さんと共同して提案、提出をいたしまして、それ以来これまで十六回ほど提出をいたしてまいったわけであります。平成元年の第百十六国会、そして平成四年の第百二十三国会におきましては原子爆弾被爆者等援護法案が可決されるに至っておるわけでありますが、参議院におきまして可決されたこの重みをどのように総理として受けとめておられるのか、まずお伺いをいたしたいと思います。
#5
○国務大臣(村山富市君) 今、委員からお話がございましたように、これまで社会党、公明党、民社党等々、野党の皆さんがそれぞれ協力し合い、御努力をし合いまして、参議院において被爆者援護法案が今お話がございましたように二回にわたって可決をされております。
 これは、原子爆弾の惨禍を再び繰り返してはならないという強い決意を表明する、表示する、同時に、今なおその後遺症に苦しんでおられる被爆者の方々に対して万全の援護対策を講じようという趣旨のものでございまして、私はその可決されたことは大変重いものであるというふうに受けとめております。
#6
○勝木健司君 そこで、政府提案の本法案におきましては、その前文に「原子爆弾の惨禍が繰り返されることのないよう、恒久の平和を念願するとともに、国の責任において、原子爆弾の投下の結果として生じた」云々ということを記されておるわけでありますが、この国の責任」とは一体どういう意味なのかということであります。この「国の責任」というのは国の戦争責任をも意味するものかどうかということをお尋ねいたしたいということであります。
#7
○国務大臣(村山富市君) 今回のこの法案におきまして「国の責任においてこという表現を盛り込みましたのは、被爆者対策に関する事業の実施主体としての国の役割というものを明確にしたものでありまして、原爆放射能という他の戦争被害とは異なるその特殊の被害に着目をいたしまして、被爆者の方々の実情に即応した施策を講ずるという国の姿勢を新法全体を通じる基本原則として明らかにしたものでございまして、これはあくまでもこの援護対策を講ずる主体が国の責任にあるんだということを明記したものであるというふうに御理解を賜りたいと思います。
#8
○勝木健司君 それでは、これまでの原爆二法は果たして国の責任で行われておらなかったのかというような理屈も成り立つんじゃないかと思うわけでありますが、その辺についてはどうですか。
#9
○国務大臣(村山富市君) 国の責任でもちろんやってきたわけでありますけれども、今申し上げましたように、これまでやってまいりました原爆二法をさらに補強し強化して、しかも亡くなられた方々に対して弔慰金を出すとか、あるいはまた新しく慰霊等施設をつくるような事業を行うとか、そういうものも盛り込んで、そして総体的に国がきちっとこの事業主体としての責任を一層明確にするといって補強強化したものであるというふうに御理解をいただきたいと思います。
#10
○勝木健司君 現与党の一員であります総理の属しております社会党は、国の戦争責任を明確にするためにも国家補償による被爆者の救済の必要があるということで、国家補償の精神に基づく被爆者援護法制定を従来より私どもとともに主張してきたわけであります。旧連立与党におきましても、プロジェクトチームにおきまして十数回にわたる議論を重ねた結果、社会党を中心に検討を進めてきたわけでありますが、今回私どもが提案をいたしております被爆者援護法は、ここでの成果を踏まえたものであるわけであります。
 過去におきましても、先ほども言いましたように二度にわたる参議院においての可決、社会党と私どもで提案した国家補償をうたった被爆者援護法が可決をされたという経緯などを見ますと、今回政府から提出されました被爆者援護法には、「国の責任においてこということは書いてありますけれども、国家補償というものが明記をされていなければおかしいんじゃないかというふうにも考えるわけでありますが、社会党委員長でもあります村山総理の社会党委員長としての御認識はどういうふうに持っておられるのか、お伺いをしたいというふうに思います。
#11
○国務大臣(村山富市君) 先ほどの答弁の中で弔慰金という言葉を使いましたけれども、それは特別葬祭給付金の間違いですから、謹んで訂正をさせていただきます。
 この場で社会党委員長としての答弁をすることが適当であるかどうかということについてはいささか問題があるんではないかと思いますけれども、せっかくの御質問ですからお答えをしたいと思いまするが、今御指摘のございましたように、社会党も野党時代一緒になって被爆者援護法を提出してきた経緯がございます。したがって、社会党がこれまで制定を主張してきた原子爆弾被爆者援護法と必ずしも今回の法案は一致をしておりません。それはもう率直に私は認めたいと思います。
 ただ、これまでそうして努力してまいりましたけれどもなかなか実現できなかった、何とかもう被爆五十年を迎えてこの際決着をつけたい、こういう強い熱意から、与党三党であらゆる角度から検討し議論をして、そして当面実現可能な最善の策ではないかという意味で結論を出したものでありますから、そういう経過についても御理解を賜りたいというふうに思います。
#12
○勝木健司君 前回の委員会の中で厚生大臣も言われておりましたけれども、今回の政府提案の被爆者援護法は、自社両党が連立の枠組みだけは崩したくないとの理由から歩み寄った結果の政治的妥協の産物ということで、今の総理の発言もそれがにおったように思うわけでありますが、なぜかねてからの主張であった国家補償が欠如したのかということであります。
 社会党は、自社連立政権を維持するためにこれまで多くの基本方針の転換も既に行ってきておられますけれども、今回国家補償という言葉を捨てたのもその政策転換の一環であるのかどうかということで、そうだといたしますと、国家補償の被爆者援護法の制定を望んできた多くの被爆者の方々に対する裏切り行為にもつながりはしないかというふうにも思うわけでありますが、もう一度御見解をお願いしたいと思います。
#13
○国務大臣(村山富市君) 妥協したものではないかというお話でございますけれども、これは表現の仕方によってまたいろいろ解釈も違うかと思いますけれども、先ほども申し上げましたようにこれは連立政権ですから、ですからそれぞれの党が持つ主張は私はあると思います。
 しかし、その主張は主張として、見解を述べ合いながら、その党が持っている見解だけが唯一絶対に正しいとは言い切れぬわけですから、したがってあらゆる角度からあらゆる問題点を出し合って、そして検討し分析し協議をした結論として、今お互いに合意できる最善の策は何なのかという意味で、慎重な上にも慎重な検討を重ねた結果出された結論だと、私はそういうふうに考えております。安易に妥協してやったんだなんということになりますと若干誤解もあるかもしれませんから、その点はそういうふうに私は御理解をいただきたいというふうに思っております。
 それから、国の戦争責任というもので補償するということになりますと、これはやっぱり一般戦災者との関係等々もございましてなかなか難しい問題が派生をするんではないかと思うんです。ですから、核というものに対して、もう二度とこんなものを繰り返してはいかぬのだという国民の強い悲願、それから放射能というその特殊性等々にかんがみて、この際特別立法をこしらえて、国の責任というものも明確にして対策に万全を期すと同時に、今後二度と繰り返すことのないようなそういう手だてもしっかり国民の意識としてつくり上げていこうではないか、私はこういう意味で考えられた結論であるというふうに思いますので、そのように御理解をいただければと思います。
#14
○勝木健司君 今よりも一歩前進するという意味ではわからないことはないわけでありますけれども、しかしそうすることによって今までの基本的な考え方、社会党さんの従前の考え方なりあるいは今までの国の方針が、具体的な点において整合性というのがなくなって、ある程度考え方が変わったんじゃないかという点が二、三あろうかというふうに思うわけでありますが、以下それについて質問させていただきたいと思うわけであります。
 昭和五十三年三月の最高裁判決で、原爆医療法については、戦争遂行の主体であった国がみずからの責任によってその救済を図るという一面をも有するものであるということで、実質的に国家補償的配慮が制度の根底にあるということは否定できないこととされておるわけであります。また、五十五年の厚生大臣に対する原爆被爆者対策基本問題懇談会での厚生大臣に対する答申においても、国は原爆被爆者に対して広い意味における国家補償の見地に立って措置を講ずるものというふうに明確に記されておるわけであります。
 原爆医療法とかあるいは原爆特別措置法を引き継ぐものとなるこの被爆者援護法においては、その性格がこの最高裁判決あるいは基本懇の答申より後退するものとなってはいけないというふうに思うわけでありますが、私は後退しておるんじゃないかと思いますが、この点についての見解をお伺いいたします。
#15
○国務大臣(村山富市君) 今回提案されておりまする政府案は、国家補償の考え方などの点で、先ほど申し上げましたように、従来社会党が主張しておりました点と異なるものがあることはもうこれは否定し得ないものだと私ども思っております。
 ただ、今申し上げましたように、いろんな角度からいろいろな問題点を出し合いながら慎重な上にも慎重な検討を加え、広島、長崎等々の実情も十分踏まえた上で出された最善の策だというふうに私どもは申し上げておるわけであります。
 これは具体的には、今御指摘のありました原爆被爆者対策基本問題懇談会の考え方に基づきまして、恒久の平和を念願するとともに、国の責任において被爆者に対する保健、医療及び福祉にわたる総合的な被爆者援護対策を講じ、あわせて国としての原爆死没者のとうとい犠牲を銘記しようとするものでございまして、私はこの基本懇の考え方を踏まえて今度の案というものはつくられておるというふうに理解をいたしております。
#16
○勝木健司君 それならばもっと具体的に、やっぱり我々の対案で出しておりますように、国の責任においてこの死没者への弔意を何らかの形で盛り込むことが重要なのではないかというふうに思うわけでありますし、現在の原爆医療法あるいは原爆特別措置法という中でも国家補償的配慮が制度の根底にあると、そういう特別の立法も既に存在しておるわけでありますから、国民にとっても違和感はなく受け入れられてきたという経緯があるんじゃないか。
 よくこの委員会の中でも、一般戦災者との問題ということで整合性とか波及するとか、そういうことを何かちょっと懸念されておるように聞こえるわけでありますが、私どもはそういう懸念は当たらないんじゃないかということで、一般戦災者との問題は別問題であるということでやはり分けて考えるべきじゃないかというふうにも思うわけでありますが、被爆者の方々はあくまでもこの国家補償が明記されたものであるということを求めておるわけでありますので、これについての見解をお伺いいたします。
#17
○国務大臣(井出正一君) この間の委員会でも申し上げましたが、国家補償という用語につきましてはどのような概念を指すものか確立した定義がないわけでございまして、被爆者に対する給付を内容とする新法におきましては、この表現を仮に用いますと国の戦争責任に基づく補償を意味するものと受け取られる可能性が強いわけであります。
 これまでの御審議の過程で、野党の方の対案についても提案者の方からは、結果責任を認めた基本懇の考え方に基づくものであって、これまでかつて提案されてきた原子爆弾被爆者等援護法案のように国の戦争責任を認めたものではない旨の御答弁がなされていることも申し上げておきたいと思います。
 そしてまた、国家補償という用語を使った場合には、被爆者に対しまして今申し上げましたような戦争責任の問題が出てまいりますと、やはりどうしても一般戦災者との均衡上の問題が生じざるを得ないわけであります。それらの理由を考慮しつつ、今回の新法におきましては国家補償という文言を盛り込むことは適当でないと考えた次第であります。
#18
○勝木健司君 社会党委員長としての村山総理にお尋ねをいたしますが、現在、戦争の被害者に対する補償は軍人軍属等のような国家との間に一定の身分関係があった者に限定されておるわけであります。一般の国民に対しては、国との身分関係がないという理由から何らの社会保障的措置もとられてきておらないわけであります。
 しかしこれについても、戦時諸法制による強制的な動員体制からすればほとんどすべての国民が国家権力によってその任務につくことを強制されていたという考えから、一般戦災犠牲者全体に対して何らかの補償等の対応が必要ではないかという社会党さんの従来の主張、戦時災害援護法案を提出しておられたように承っておるわけでありますが、この法案は今後一体どうされるおつもりなのか。今後、こうした考え方を捨てられるのかどうかということも御見解をお伺いしたいというふうに思います。
#19
○国務大臣(村山富市君) 今お話がございましたように、戦時災害援護法案を昭和四十八年の第七十一回国会以降昭和六十三年の第百十四回国会まで、当時の社会党が共同提出していることは承知をいたしております。
 この問題を社会党が今後どう扱っていくかということにつきましては、これは社会党内でもこれから検討、議論されなきゃならぬ課題であるというふうに私は認識をいたしております。ただ、今の連立政権のこの状況の中で、これを具体的な検討課題として取り上げることは必ずしも妥当性がないというふうに認識もいたしております。
 ただ、社会党としてではなくて政府として考えなきゃならぬことは、さきの大戦に関してすべての国民が何らかの犠牲を余儀なくされたというのは、これは当然だと思います。その国民のすべてに対して何らかの補償をするということはこれまた大変至難なことでございまして、なかなかできにくいことですから、一定の前提条件がある者について、当然やらなきゃならぬ者については補償をするということにならざるを得ないのではないかと思うんです。
 したがいまして、基本的には国民の一人一人にそれぞれの立場で受けとめていただかなければならない問題であるというふうに考えておるところでありますから、そうした全体的な問題についての御理解をいただきたいというふうに思います。
#20
○勝木健司君 もう余り時間もありませんので、あと二点ほど質問をさせていただきたいと思います。
 来年の戦後五十年に向けて、与党戦後五十年問題プロジェクトにおいて検討がされておるというふうに伺っておるわけであります。しかし、本被爆者援護法は戦後未処理問題の重要な問題でありながら、先ほどから私もるる質問をさせていただいておりますが、本被爆者援護法案の提出経緯が、連立政権の維持というもののために本来の法案のあるべき姿を少し歪曲されてはおらないか、あるいは妥協の中から提出されていることを私どもは考えざるを得ないわけであります。
 果たして、現内閣で今後数々の戦後処理の問題を解決するのは難しいのではないか、形だけの解決になるのではないかというふうにややもすれば危惧するわけでありますが、この点について総理の見解を求めたいと思います。
#21
○国務大臣(村山富市君) これは、もう戦後五十年を迎えるわけですけれども、数々の懸案事項で解決のできなかった問題が幾つかあるわけです。与党と野党との見解の違いとか、あるいはまたなかなか国民的なコンセンサスを得ることができなかったとか、いろんな要因と背景があると思います。
 しかし、もう戦後五十年を迎えようとしておるこの時期に、いつまでもそうした問題を引きずっていくことは必ずしもよくないのではないか。したがって、少々の困難があっても、ひとつこの内閣で、そうした積み残されておる問題について、処理のできる問題については処理をし、解決できる問題については解決をして、そして五十年を節目にして、未来の五十年に向けて本当に平和を志向した立場でもっと前向きに進めるような、そういう状況をつくろうではないかという意味で、三党間で今真摯な議論をしておるところでありますから、私は何らかの形で処理をし、決着をつける問題についてはこの際決着をつけて、そしてこの戦後処理に当たりたい、こういうふうに考えて決意をいたしておるところでありますから、そのように御理解をいただきたいというふうに思います。
#22
○勝木健司君 当然、今回のこの被爆者援護法一つですべてが解決するわけじゃないわけでありまして、この間まで来ておられました中国残留邦人の問題とか、あるいは戦没者の残存遺骨の収集問題とか、解決に向けて一層の努力が望まれるような問題がいまだに残っているわけであります。
 今後のこういう戦後処理問題に対して、総理がより一層のリーダーシップでこのプロジェクトも含めて進めていっていただきたいというふうに思うわけでありますが、戦後処理問題についての態度をきちっと明確に述べていただきたいというふうに思います。
#23
○国務大臣(村山富市君) 今お話のございましたように、戦没者等の慰霊事業や中国残留邦人等に対する援護施策は、今お話もございましたように終戦から五十年目を迎えようとしている今日でありますから、なお力を注いでいかなければならない重要な課題であるという認識については委員と全く同感であります。
 戦没者等の慰霊事業につきましては、御遺族を初めとする関係者の方々の高齢化もだんだん進むわけでありますから、そうした方々に十分こたえていくために、遺骨の収集、慰霊巡拝等についても一層の充実や工夫を図りながら、この施策を今後さらに強力に推進をしてまいらなきゃならぬというふうに思っておりまするし、中国の残留邦人等に対する援護施策につきましても、昨年十二月、早期の帰国希望者が向こう三年間に全員帰国できるように受け入れ計画を打ち出したところでもございます。
 さらに、本年四月には中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律というものも制定されておりますから、本年十月から施行されたこと等々も踏まえながら、中国の残留邦人等の早期帰国及び日本社会への円滑な定着、自立の促進に今後とも一層力を入れていかなきゃならぬというふうに考えているところでございます。
#24
○勝木健司君 終わります。ありがとうございました。
#25
○高桑栄松君 高桑でございますが、それでは質問させていただきます。
 総理に質問をさせていただくチャンスはなかなかめぐってきませんので、なるべく丁寧にと思いますが、時間もございますし、若干途中を飛ばして結論的な質問をするかもしれませんので、御容赦願います。また、勝木委員の質問とダブるところもありますので、適当に私も取捨選択したいと思います。
 最初に、米国の郵政公社のキノコ雲切手シリーズの発売についてお伺いをいたします。
 十二月三日の新聞に、村山首相は「こんな国民感情を逆なでするようなことは困る」と反発した、こう書いてあります。国民感情を逆なでするという、国民感情とはどういうことをおっしゃったんでしょうか。どういうものを国民感情と言われたのか。どの程度のことなのか、いいと思っている人もいるかもしれませんので。ただ、これ内容がわかりませんので、国民感情とはいかなることか。それから、困るというのはだれが困るのか。総理が国民に対して困るのか、世界に対して困るのか。困るというのはだれに対して困るのか、承りたい。
#26
○国務大臣(村山富市君) 困るという言葉が適切な言葉であったかどうかということについては、私も今お話を聞きながらもっと適切な言葉があったんではないかというふうに思われる節もあります。
 ただ、原爆投下は、あれだけの広範な人々の生命を一瞬にして奪うわけですし、破壊をし尽くすわけですから、こんなことをやっぱり二度と繰り返してはならぬという国民の強い悲願がある、これは唯一の被爆国としての悲願がある。この国民の気持ち、感情に対してこれは逆らうものだ、こんなことはしてほしくないという気持ちを言いたかったわけです。
 これは、そんな気持ちだけではなくて、あらゆる機関を通じてアメリカに対しても日本国民のそういう気持ち、感情ということについては申し上げてありますから、そのことも含めてこの際報告をしておきたいというふうに思います。
#27
○高桑栄松君 困るという言葉では困るんですね。これは私が読んだ範囲で言えば、困るんじゃなくて怒ったとか怒りを発しているとか、何かやっぱりそれに対して抗議を厳重に申し込むという姿勢が要ると思うんです。困るというのは本当に頭を抱えて困っているように見えますよね。だから、困るという表現では困る、こういうふうに申し上げておきたいと思います。
 それから、今のお話で国民感情というのは私やっぱりよく理解できなかったんですが、大江健三郎さんの「あいまいな日本の私」というのがございます。日本語はというのか、日本人はというのか、日本人はそういう論理の構成にならされているというのか、とにかく日本語はあいまいです。論文を書いてみるとわかるんです。主語がないとか単数と複数がはっきりしないとか、もうさっぱりわからぬのが多いんですよ。日本語を英語に課そうとすると非常に困るんです。これは単数なんだろうか、複数なんだろうか、主語がない。僕らもそうですね。それは何とかですと言うけれども、私はとかというのがないんですよ、あなたはなのかどうかわからない、大変あいまいなんですね。そこで、国民感情というのがあいまいな表現ではなかったか、私はこう思います。
 それで、今お話を伺っていますと、原爆の何が問題なのか、そこに怒りを発しているわけですが、大量虐殺、殺りくということをおっしゃったように思いますが、それでよろしゅうございますか。そういうふうに理解してよろしいですね。
 それでは、一つ私の意見を申し上げます。
 確かに一発の原爆が、広島、長崎、それぞれ十万人の人を一発で殺りくした。しかし、三月十日の東京大空襲でもやっぱり十万人が死んでいるわけです。ただ、一発であったか一千発であったかの違いがあります。だから、大量虐殺という意味ではこれは本来原爆を非難することにならないんじゃないか。唯一のとおっしゃいますが、唯二であったらどうなるのか、複数であれば言わないのかということですね。こんなことは私はないと思うんです。唯一の被爆国だから文句を言うんじゃなくて、原爆そのものがどういうものであるかということが私は問題だと思うんです。
 ですから、総理にたまにはレクチャーをしておきたいと思いますので、今簡単にレクチャーをさせていただきます。
 一九八二年に、W・L・ラッセルという人が、数百万匹のマウスを使いまして、十年以上の年月をかけて放射線障害の遺伝的研究を行っております。遺伝だけじゃありません、第一次障害も入ってくるわけです。十年かけたというのは、マウスの一代を三年といたしますと三代まで影響を調べたということであります。
 細かい話はやめまして結論を申し上げますと、どんな微量の放射線であっても、その放射線が性細胞を傷つけ障害を起こしたら、それは遺伝子異常として人間の突然変異が増加してくる。そして、これが遺伝子プールの中に一たん入ると簡単に排除ができない。それは次第に蓄積されていって、蓄積というのは爆弾だけじゃありませんよ、一般のものもみんな入ります。原発の異常があって飛び出りゃ問題になると思います。チェルノブイリのあの異常も、何日間がたったら日本にも放射能ちりがやってきています。ですから、原爆だけが問題なんじゃなくて放射能のことを今言っているわけですが、それが一挙に落ちたのが長崎と広島であると。
 したがいまして、これを書いている人のを読みますと何遍も書いてあるんです。どんな微量な放射線であっても遺伝子に異常を起こしたら、それはプールされて二代目、三代目、四代目とつながっていく。二代目、三代目、四代目がだんだんひどくなるんじゃないんですよ、その遺伝子がだれかと結合したときに出るということでありますから。
 あるシンポジウムで、ロシアから来た女性の発言者が言っていました。広島の人とチェルノブイリの人が結婚したらたちまち遺伝子異常が起こる確率が高くなる。それですよ。二代目、三代目とだんだん薄れるかというと薄れないんですね。ラッセルの実験がそれを言っているんです、ずっと続いていくと。もっと細かいことありますけれども、時間がありませんから。
 したがいまして、確かに一発で爆心地から二百五十メーター離れたところの銀行の石段に腰かけていた人が、あっと思ったら蒸発して、いない、人影だけが残っていた。人影の石というのが展示されている。それくらい高温でありエネルギーがすごいわけですね。だから、一発で十万人も殺したわけです。確かに大変な殺りく兵器でございます。
 しかし、さっき申し上げたように、一発でも千発でも効果は同じなのではないか。ですから問題は、放射能が人類の遺伝子異常となって、それが永久にプールされていって人類の遺伝子異常、突然変異が次第に確率を上げていきますぞと、これが最も問題とすべき場所である。
 もちろん大量殺りくは問題です。では、少量殺りくならいいか。そんなことはないでしょう。同じことですよね。ただ、余りにもひどいということはありますね。しかし、それは余りにもでありまして、同じわけですよ、結論的に言えば。だから、一般の兵器との違いは、放射能が遺伝子異常を引き起こして、人類のプールの中で排除することができなくなるということを言っているんです。
 ですから、私はこれは党議拘束を離れまして、今までは公明党・国民会議と、今はちょっと何だかよくわからなくなりましたけれども、党議拘束を受けていないという立場で申し上げますが、私は原爆攻撃というのは人類に対する犯罪だと思っているんです。これは許せない、告発をしてほしい、私は医学者としては。それは百十六回、百十八回ですか、あのころ私も社会党の皆さんと一緒になって野党側の議員提案で、医学を担当いたしましたから、それで勉強いたしました。拳々服膺いたしました。今またそれを勉強して、失礼ですが、総理にレクチャーをちょっとさせていただいたと。
 総理、やっぱり遺伝子のことは御存じないような気配でしたね、お返事は。ここが私一番大事なところだと思うんです。ですからそういう意味で、アメリカの報道が「アトミックボムズヘイスンウオーズエンド」と書いてあります、確かに。戦争終結を早めたと。時間的に見ればそうかもしれないという我が国の外務省もあるようですけれども、それをそうであるとすれば戦争肯定論ですよ。戦争終結を早めるのであればどんな兵器を使ってもいいのかということになりますね。毒ガスだっていいんじゃありませんか、もし縮めるんであればそうだと思います。ですから、そういうことは成り立たないと思うんです。
 きょうのテレビだったかでもそれをまた言っていましたね、アメリカの報道官の言葉として。やっぱり時間的に言えばというか、現実で言えば原爆は戦争の終結を早めたと。この後の一般質問で私は外務省に答えてもらいますけれども、原爆が落ちたから慌ててポツダム宣言を受諾したのではないようですからね、日本は。もっと前からそれはスタートしています。
 ですから、私に言わせれば長崎になぜ二発目を落としたか。もう日本はバンザイしていましたから、どうしようもないわけですよ。飛行機がない、鉄砲がない、竹やりで戦車のけつをつつけなんというのが我々に言われた軍の方針ですからね。竹やり持って戦車のしりをつつけということですよ。何の意味がありますか。そんな人間を相手に何にもしなくたっていいわけです。なぜ八月九日に長崎にも落としたか。ちょっと言い過ぎになるかもしれませんが、私個人のそういう考えもあるということを言っているんです。
 アメリカはいろんなところで動物実験をやってきています。ハードもソフトもやっていますよ。つまり、生物にどんな影響を与えるかも実験してきています。しかし、人間実験はしていない。最初の実験第一号が広島であった。もう一発やってみたい。どんな効果が出るのか、地形が違いますしね。私は、動物実験を日本人をモルモットにして長崎でやったと考えたいくらい腹が立っています。あれだけのことをどうしてもう一発やったのか。ソビエトが参戦したのは八月九日ですからね。もうどうにもならないときになぜとどめを刺すんだと。とどめを一遍刺しておいて、もう一度刺したようなものじゃないですか。
 だから総理、国民感情を逆なでするようなことは困るなんという困る表現はしてもらいたくないですよ。しっかり怒ってもらいたいということであります。
 大分これに時間を費やしてしまいましたが、次に、総理、一つまたお伺いいたします。
 国家補償に基づく被爆者援護法というので、先ほど来勝木委員からいろいろ質問がございましたし、お話もお返事も承りましたけれども、国家補償という文字が新しい援護法案から抜けたということで被爆者は裏切られだということを新聞紙上では伝えております。社会党は重大な政策転換を次々に行ってきておりますが、今回は国家補償に基づく被爆者援護法というネーミングを捨ててしまうのでしょうか。これをもう一度伺いたいと思います。
#28
○国務大臣(村山富市君) 委員の高い見識でいろいろレクチャーいただきましたことを心からお礼申し上げます。
 私も言葉足らずでありましたけれども、先ほど被爆者援護法の際にお話を申し上げましたのは、原爆というのは大量殺りく兵器であるし、同時に放射能という特性に着目をして、一般の戦災者とはやっぱり違う扱いに立ってこれは見直す必要があるんではないか。同時に、こんなことを二度と繰り返してはいかぬという国民の意思を表明する意味でも大事なことだというふうに申し上げたつもりでありますから、そのように御理解を賜りたいと思うんです。なお、今、遺伝子の問題やらいろいろお話を承りまして一層その意を強くいたしました。
 国家補償という言葉をあえて使わなかったのは、やっぱりいろんな意見がありまして、国家補償という言葉の解釈、概念というものが必ずしも明確になっていないという面があるわけです。したがいまして、もっと定義が明確になるような形でもって示した方がいいという意味で国の責任というものを明確にして、今申し上げましたような原爆というものの持つ特性に着目をして、そして援護法を制定した。いろんな角度から検討した結果、今考えられる範囲で国民的な合意の得られる最善の策ではないか、こういう意味でこの法案は提出されておるというふうに受けとめて御理解をいただきたいと思います。
#29
○高桑栄松君 国家補償の概念がはっきりしないと今おっしゃっていましたが、確かにはっきりしないのかもしれませんが、私は法律屋さんの意見を今引用しようと思っているんです。
 国家補償の概念に、講学上のというから、講義をする学問上のという意味でしょうか、講学上の概念として三つある。一つは、国の不法行為によって起こされた損害を賠償する、国の不法行為です。それからもう一つは、国の適法行為によって起きた損失を補てんする、補償するというのがあるわけです。三番目が、違法、適法にかかわらず国家の作用の結果として起きた被害を救済するというこの三つがある。やっぱり学問ですから、この三つについて考えてみたいと思います。
 国は不法でなかったと言っているはずです。適法ではない、適法であったとは言わない。そうすると、国家作用の結果として起きた被害の損失を補償しようとするのがこの補償の精神じゃないんですか。そうだと思いますが、いかがでしょうか。
#30
○国務大臣(村山富市君) 今、委員からお話もございましたように、国家補償の考え方につきましては大体四つぐらいに分類されておりますね。
 今お話のありました一つは、不法行為責任に基づく損害賠償、これは国家賠償ですね。それから、適法行為だけれども、その適法行為に基づいてやったことが結果的に損失を与えた、その損失に対して補償するという場合ですね。それからまた、使用者として命令をして、指示をして、何か仕事をしてもらった、そこで責任が生じたという場合の補償、こういう場合が三つ目として挙げられておるわけです。それから、結果として何かが起こった場合に、その結果に対して補償するという結果補償。私は、基本問題懇談会の考え方というのはこの結果責任に対する補償ではないかと思うんですね。
 そういう意味から申し上げますと、原因は問わないけれども、この結果に対して国が責任を持ってやりなさいという意味で言われておると思いますから、したがって、その基本懇の考え方に基づいて、その結果に対して国が責任を持ってこれだけのことをしようじゃないかといって今回の法案がつくられておるというふうに御理解をいただきたいと思うんです。
#31
○高桑栄松君 いや、総理、よかったと思いますよ、僕はそう思っていますから。しかし、結果責任を認めるという概念のもとは国家補償なんですから、国家補償をするのでなかったら結果責任を負う必要はないわけです。したがいまして、やっぱりこの中には国家補償の精神がある、それがベースになっている。そして、それは被爆者が、金の額ではないんだ、国がそれを補償してくれるという精神が欲しかった、金の額が多ければいいと言っているのではないということが私はポイントとして大事だと思うんですね。
 そこで、特別葬祭給付金というのがあります。これは死没者に対する弔意をあらわすものではないかと。もしあらわすものでないとすれば、弔意をあらわしていないという現行制度の欠陥は何ら是正されないことになります。したがいまして、まず国として弔意をあらわすものではない、つまりこれは生存被爆者対策なんだ、こういうふうに明言されますか、いかがでしょうか。
#32
○国務大臣(井出正一君) 私が先にちょっとこの法案提出者として申し上げまして、また後で総理の方から。
 原爆の投下から被爆者対策の充実を見るまでの間に亡くなられた方が経験された苦難は想像に余りあるものがございます。特別葬祭給付金は、被爆後五十年、来年でございますが、のときを迎えるに当たって、こうした死没者の方々との苦難をともに経験した御遺族であって、御自身も被爆者としていわば二重の犠牲を払ってきた方に対し、生存被爆者対策の一環として国による特別の関心を表明し、生存被爆者の精神的な苦悩を和らげるために支給しようとするものでございます。
#33
○高桑栄松君 やっぱり奇妙な話ではないかと思うんですよ。葬祭というのはお葬式の葬祭ですから、葬祭給付金というのは被爆者であるとかないとかにかかわらないと思うんですよ。言うなれば葬祭をする喪主、そういう人に弔慰金を出すのであって、被爆者である遺族全員に十万円ずつ出すというのは、論理的に非常にこれは説明ができないんじゃないかなと。私もなるべく政府側で考えて見たんですけれども、論理が出てこない。私はいつも質問するときには、政府側がどういう答弁をなさるかと考えながら質問を考えますから。
 ですから、これは大変不明な話であって、遺族の生存している被爆者対策であると明言しなきゃだめなんじゃないですか。特別葬祭給付金ではない、これは遺族の生存被爆者対策である、そうではないですか。でなかったら全員に渡すことはない、喪主一人でいいわけです。いかがでしょうか。
#34
○政府委員(谷修一君) 事実関係のことでございますので、私からお答えをさせていただきたいと思います。
 先ほど来大臣からも御答弁をさせていただきましたように、政府案で言います特別葬祭給付金というものは、みずからも被爆者として原爆放射能による健康障害に伴う特別な苦難をともに経験したという、いわば二重の特別な犠牲を払ってきた者に対して、その精神的な苦悩を和らげるという観点から、今おっしゃいますように生存被爆者対策の一環として考えたものでございまして、いわゆる亡くなった方あるいはその遺族に着目をするということは給付金の性格が弔意金的なものになるというような考え方から、生存被爆者対策ということで現在生存されている被爆者というものに着目をした制度でございます。そういう意味で、先ほど先生の御質問にもありました弔慰金という性格ではないわけでございます。
#35
○高桑栄松君 やっぱりあいまいですね。弔慰金という性格ではないが弔意をあらわすものだと言ったように聞こえましたけれどもね。だから、そういうあいまいさが、大江健三郎さんでなくても、私は日本語のお話は非常にあいまいだと思うんです。最初の方を聞いているとイエスだなと思ったら、終わりになったらノーであると言っているわけなんですよ。これはだめですよ。
 それから、遺族であることに限るという、二重の苦しみと言うけれども、やっぱり葬祭と書くからには、お祭りをあるいは先祖のそういうものを慰めるような儀式をやってきた方々に差し上げるのが今までの常識的な話です。全員に渡すというのは論理が成り立たない。
 もう時間がありませんので、せっかく総理大臣がおいでになっておられますので、最後に、私は今いろんなことを申し上げましたけれども、やっぱり被爆者援議対策は早急に私たちが、先ほど来総理も前質問者の勝木さんも言われていましたけれども、旧野党時代には一緒になってやってきた、何とか早くしてあげたい、来年五十周年を控えて何とかいいものをと思ってまいりました。
 私はいろんな不満を申し上げました。間違いと思われるものも指摘いたしました。しかし、そういうことも勘案していただいて、これはこれで終わったのではなくて、ようやく援護法が第一歩を踏み出した、新しい法律が第一歩を踏み出したということで、今後、被爆者の声を反映できるよりよいものに逐次改正をしていっていただきたい。そういうことに対する総理の決意をひとつ伺いたいと思います。
#36
○国務大臣(村山富市君) 委員の言われる意味もよく理解ができることであります。ただ、先ほど来答弁申し上げておりますように、当面いろんな意見がある。その意見を総合的に踏まえて、今後のいろんな問題点も絡ませながら、今国民的なコンセンサスの得られる最善の策ではないかということで結論を出して法案を提案いたしておるわけでありますから、それはそれなりに御理解を賜りたいというふうに思うんです。
 それから、今お話もございましたように、来年は被爆後五十年という年を迎えるわけでありますから、被爆者の方々の高齢化も進んでいるという事情も踏まえながら、今回の政府案に基づき、今後引き続き国の責任において保健、医療及び福祉にわたる総合的な対策を講じながら、被爆者の方々の福祉の一層の向上を図らねばならぬという決意で取り組みたいというふうに思っていることだけは申し上げておきたいと思います。
#37
○高桑栄松君 終わります。
#38
○林紀子君 私は広島に住んでおります。被爆者の願い、被爆者の声を受けて、総理に質問をいたします。
 原爆郵便切手問題をめぐって、アメリカの原爆投下をどう見るか、これが改めて問われております。昭和天皇は、原爆投下はやむを得ないことと述べました。そして、自民党政府も被爆国民の政府でありながらそういう態度をとってきました。ですから、ブッシュ前大統領が広島、長崎への原爆投下は正しかった、こんな暴言を吐いたときにも、当時の宮澤内閣はこれに抗議しない、こういう態度を表明してこの発言を事実上容認いたしました。ですから、こういう態度をとってきたから今度の原爆切手発行のような事態になったということも言えるのではないかと思います。
 そこで私は、社会党の委員長として総理になられた村山総理に、一番根本的なことをずばりお聞きしたいと思いますが、アメリカの広島、長崎への原爆投下をどうお考えになっていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
#39
○国務大臣(村山富市君) これは許しがたいことである、絶対に認めてはならない、また二度とこんなことを繰り返さないようにしなきゃいかぬというふうに考えております。
#40
○林紀子君 当然のお答えですけれども、そうしますと、今までの自民党政府がとってきたそういうアメリカヘの態度は誤りであった、そのことをきちんとおっしゃっていただくことができるわけですね。
#41
○国務大臣(村山富市君) 自民党政府がとってきた、自民党自体がとってきたことに対して私がここでコメントする限りではないと思います。これは、自民党には自民党の考えがあって言ったことだと思いまするし、正確に自民党がどういう態度とどういう方針を示しておる、これに対してどうとるか、こういうことでもありませんから、私が今ここで自民党のことについてとやかく言う立場にはないということは御理解を賜りたいと思います。
#42
○林紀子君 間違っている、許せないことだというその言葉を受けまして、それでは次に質問をしたいと思います。
 核兵器使用は国際法違反であるという問題ですが、既に陳述書を提出した国、三十五カ国あるそうですけれども、このうち二十一カ国が国際司法裁判所に対しまして、核兵器使用は国際法違反とするという陳述を行っております。羽田前内閣は、実定法上違反とまでは言えない、こういうことを記述して大変国民から大きな怒りを買い、反撃を買いました。そして、この部分だけは削除をいたしました。
 村山総理はこの問題についてどうお考えになるか。今からでも遅くはないわけですから、追加の意見書を提出して、日本政府の立場、核兵器使用は国際法に違反している、アメリカの原爆投下は許せないというお答えですから、当然こういう立場になると思いますが、いかがですか。
#43
○国務大臣(村山富市君) 私は正確に答えたつもりですけれども、国際法に違反しているという言葉は使ってないんです。ただ、こんなことは許されることではないと、だから二度と繰り返してはならないと、こう言っているわけです。
 国際法に違反をしているかしていないかということについては、やっぱりいろんな国によって見解に違いがあるんですよ。ですから、そういうことで結論づけてみることについては余り意義はないんではないかと私は思うんです。
 ですから、政府は今度国連に対して、核兵器の究極的な廃絶に向けた核軍縮に関する決議というものを出して、そして若干の棄権はございましたけれども、大多数の賛同を得て議決をされておりますけれども、そういう日本政府の核兵器に対する態度というものは明確にしておるということで私は足りるんではないかというふうに考えております。
#44
○林紀子君 今、総理が言われました国連に日本が提出した決議といいますのは、核兵器を究極的になくす、そういう内容を含んでいる決議ですね。
 ですけれども、私が与えられている時間は大変少ないので、そのことの論議を始めますと大変時間をとってしまいますので、ひとつこの核兵器使用は国際法違反であるという問題について、社会党の立場がどうであったか。ことしの九月に大会を行いまして、その中で特別決議を行っていらっしゃいますね。「日本政府が国際司法裁判所に対し、「核兵器使用の違法性」を明確に打ち出すように積極的に働きかけることを求める。」、社会党の決議はこうなっておりまして、この決議は採択をされたわけですね。
 社会党の委員長という立場で先ほどお答えもありましたけれども、このことについてはそれではどういうふうに責任をおとりになるのですか。
#45
○国務大臣(村山富市君) 社会党の委員長で社会党が決議をしたことは私は守りたいと思います。
 ただ、この連立政権の中で社会党の言い分が一〇〇%実現できるならこれは連立政権の意味がないんで、単独政権でもいいわけですね。しかし、それはやっぱり三党にはそれぞれ三党の言い分があるわけですから、その言い分を十分踏まえた上で、お互いに今合意できる点は何かという最善の結論を求めて三党で協議していくと、この経過をたどりながら出していく結論については、政府として協議した結果、合意ができればそれを実行していくということになるんであって、この席上で今の連立政権の立場に立った私に対して、社会党の委員長としてどうかと、そういう質問をされれば、私はそういう答弁をする以外にはないというふうに思っています。
#46
○林紀子君 総理は、そういうことでは個人としては核兵器投下は間違っている、原爆投下は間違っていると言い、社会党の決議にも責任をとると言われているけれども、連立政権の総理となったらそれと全く違うことをやる、これは本当に言いわけになってしまうのではないかと思うわけです。
 そして、もう一つ私が申し上げたいのは、社会党のこの決議といいますのは、「あくまでも「国家補償に基づく被爆者援護法」を早期に制定させるため、全党一丸となり全力を挙げる。」、こういうこともおっしゃいましたね。ですから、私はそういう意味では本当にこの被爆者援護法、国家補償の立場に立ってということを被爆者の方々は心から求めていらっしゃるわけですし、この国家補償の立場に立ってという意味は二度と核戦争を起こさない、核兵器を使わせない、被爆者だけではなく日本国民の大きな願いも含まれているわけですね。
 ですから、そういうことを考えましたら、これは昭和六十年に厚生省が被爆者実態調査を行いましたけれども、被爆者の皆さんの第一の願いは何か、それを書いてもらったところ、一番の願いというのが恒久平和、核廃絶ということを挙げているわけですね。まさにこの願い、これを実現するために国家補償の立場に立つ被爆者援護法をつくっていくのは当たり前ではないかと思いますが、どうですか。
#47
○国務大臣(村山富市君) 先ほどから申し上げておりますように、社会党は社会党の主張を持っておりますし、それから自民党は自民党の主張がある。さきがけの皆さんにはさきがけの主張がある。それぞれの主張を出し合って、いろんな角度からいろんな問題点を出し合って議論をして、そして国民的なコンセンサスを得て、一番いい、今できる可能性のある合意点は何かということをそれぞれ求め合ってやってきているわけですから、したがってそのことについては私は御理解をいただけるのではないかと思うんです。
 今まで野党として援護法案を通してきたけれども、参議院では議決されたけれども、衆参通じて国会ではなかなか実現できなかったんじゃないですか。それをいろんな意味も含めて、この際、来年は五十年を迎えるんだから、何らかの結論を出して決着をつけようではないかといって真剣な審議もし、議論もした結果、合意点を求めて出した結論でありますから、当面考えられる最善の策である、最善の法案であると私は考えておりますから、そのように御理解をいただきたいというふうに思うんです。
 それから、核兵器の問題についても、これはあの広島、長崎の現状を考えた場合に、国民の感情としても国民の気持ちとしても、先ほど高桑先生からもいろんな角度からのお話がありましたけれども、これはやっぱり許してはならないものだというふうに思いますし、あれだけの大きな破壊力を持っていますし、殺傷力を持っておりますし、同時に放射能というものは後々まで遺伝をしていつまでも消えないものだというようなことを考えた場合に、これはもう人道上どんなことがあっても許してはならないものだという意味で私は申し上げているところでございます。
#48
○林紀子君 それでは最後に、一点お伺いしておきます。
 キノコ雲を描いた原爆切手問題ですけれども、この件につきまして、広島県の原爆被害者団体協議会理事長の伊藤サカヱさんは、「きのこ雲の下でどんな悲惨な状況があったのか、理解せず、原爆投下を肯定的に評価する米国人の意識が問題だ。」と激しい怒りを表明されております。
 今なお三十三万人の被爆者は原爆後遺症に悩まされ、がんの恐怖と闘いながら多くの方々は貧しい生活を余儀なくされているわけです。ですから、この被爆者の心情と唯一の被爆国である我が国国民の感情を代表して、このキノコ雲の下で犠牲となった多くの被爆者の存在があるのだ、この苦難を示す資料を添えてアメリカに抗議をするお考えはありませんか。
#49
○国務大臣(村山富市君) これは先ほども議論をいたしましたけれども、既に二日の日に栗山駐米大使から米国国務省に対しまして、今ここで議論されているような議論も踏まえて強い国民の感情というものを伝えると同時に、この扱いについてどうなっていくかということに対して重大な関心を持って今注目しているという段階でございまして、いろんな機会を通じてそうした皆さん方のお気持ちというものはアメリカ政府に伝えて、強い意思を反映していきたいというふうに考えています。
#50
○委員長(種田誠君) 村山内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。
#51
○高桑栄松君 では、早速質問に入らせていただきます。
 今までの続きみたいなものでございますから、最初に外務省に伺いたいんですが、米国の郵政公社、キノコ雲切手の関連なんですが、我が国がポツダム宣言受諾に対する行動を開始したのはいつごろでしょうか。広島に原爆が落ちたのが八月六日、長崎が八月九日、ポツダム宣言受諾の方向で交渉を開始したのはいつごろなんでしょうか。外務省、お願いします。
#52
○説明員(高野紀元君) お答え申し上げます。
 公開されておりますいろいろな資料によりますと、一九四五年七月二十六日、米英中三国がポツダム宣言を発出いたしました。さらに八月八日、ソ連がこれに参加をいたしました。
 これに対し日本政府は、八月十日の閣議において同宣言に対する方針を決定いたしまして、同日に方針を旧交戦国に伝達しました。これに対しまして、四カ国政府の名における米国政府の回答というものが八月十三日に参りまして、日本政府はこの回答を踏まえ、十四日の閣議において同宣言の受諾を最終的に決定したというふうに承知しております。
#53
○高桑栄松君 それは公式見解なのかもしれませんが、閣議決定というふうな。巷間伝えるところによると、事前に手探りでというか、何とかならないかというふうなことで交渉を開始したというふうに私なんかのぼんやりした記憶というか、情報ですよ、これは情報と言えないかもしれませんが、そんなふうに新聞なんかでも書いてあったように思いますけれども、それは自信がありませんが。
 外務省は公式文書の出された時点で物を言っているんでしょうね。事前にそういう根回し的な交渉は開始していませんか。そんなこと私はないと思うんだが、いかがでしょうか。
#54
○説明員(高野紀元君) 私として今すべての事実について承知していると考えておりませんので、そういう範囲内でお許しいただけたらと思いますが、今申し上げましたとおり、ポツダム宣言そのものは一九四五年の七月二十六日に発出されまして、それに対してどう反応するかということについて種々の議論が日本政府部内にあったということは、当時の種々の資料から明らかになっております。
 その七月二十六日以前にポツダム宣言の関連で何らかのやりとりがあったということは、ポツダム宣言という形において何かあったということは、私は今承知しておりません。
#55
○高桑栄松君 先ほどのお話だと、七月二十六日にポツダム宣言が出た、これを受諾するかどうかといういろんなことがあったと思います。
 そして、八月六日に広島に原爆が落とされて、八月八日がソ連参戦でしたね、そうおっしゃいましたね、八月八日。
#56
○説明員(高野紀元君) ソ連が八日にポツダム宣言への参加をいたしまして、九日より対日参戦をするという宣言をいたしました。
#57
○高桑栄松君 時間的な問題を今どこかで詰めてみたいと思ったんですが、今のお話ではしっかり詰めることはできないけれども、ただ日本の戦闘能力はほとんどゼロに近いくらいまで落ちていた、それは我々自身が内部で知っていたわけです。
 そして、ソ連が参戦をしたと同じ日かなんかにまた長崎に落とされたということを私が先ほど申し上げたのは、ちょうどこのチャンスを逃しては人間に対する原爆実験のチャンスを失うと思ったのかなと思うくらい明快な事実があるのにもかかわらず、これを落とさなかったら日本が負けないというのではないのであって、負けることはもうはっきりしていたときの話ですから。
 ですから、これは私は一発がいいと言っているのじゃありませんが、広島の後もう一回落としたということは、アメリカの意図というものをやはり非常に複雑な気持ちで批判をしたいと私は思ったわけです。
 したがいまして、「アトミック ボムズ ヘイスン ウオーズ エンド」という言葉がそのとおりとれるのかどうか。もしとれるとすれば原爆肯定論になるのではないか、そういう話になるのではないかという意味でこれを取り上げて、先ほど総理にも質問をしたわけであります。
 その次に、国の責任ということをたびたび手をかえ品をかえて皆さんも質問をなさっていますし、私もそのつもりでやっているんですが、国の責任ということで前文の方で、国の責任において、被爆者に対する保健、医療、福祉にわたる総合的な援護対策を講じ、あわせて国として死没者のとうとい犠牲を銘記するために制定すると書いてある。
 そうすると、日本語のあいまいさと先ほどから言われているわけですが、「国の責任においてこという文章でずっと流れていくのは、「総合的な援護対策を講じこここまでは間違いなく係るわけですが、その次、後段の「あわせてこというところはどうも「国の責任」がそこに係らないのではないかと読めるのですがいかがでしょうか、御見解は。
#58
○政府委員(谷修一君) 「国の責任においてこという表現をこの前文に設けましたのは、先ほど来申しておりますように、被爆者対策に関する事業の実施主体としての国の役割を明確にするということでございます。
 今おっしゃいました後段の部分でございますが、平和を祈念するための事業につきましては、国そのものがみずから直接事業を実施することによって、国民が原爆死没者全体に対して持っておられます追悼の気持ちというものを表明するものであるということから「国として」という表現をとったものでございまして、当然、国の責任において平和を祈念するための事業を実施するという趣旨には変わりはないと思っております。
#59
○高桑栄松君 そうすると、平和祈念事業というのは国の責任でするというふうに言っているわけですね。
#60
○政府委員(谷修一君) 国の責任において、国の事業として行うということを言っているつもりです。
#61
○高桑栄松君 この辺、国の責任論というのが先ほど来言われているわけですが、法律で何かを制定して国の責任のないものはないわけで、国の責任としてというのをあえて明記するとすれば、それはどのような意味を持っているのかということにむしろ非常に大きな意味があるわけであります。
 そこで、所得制限のところですけれども、諸手当に関する所得制限を今回撤廃した、この撤廃した意味というのは何でしょうか。
#62
○政府委員(谷修一君) 従来、被爆者に対する諸手当の所得制限につきましては、特別手当など健康障害と原爆放射能との関連が比較的薄い場合に支給される一部の手当について所得制限が設けられていたわけでございますが、全体として被爆者の方々が高齢化をしてきた、それに伴いまして当然のことながら身体的あるいは精神的な状況が変化をしてきているといったような被爆者の置かれた状況の変化に対応いたしまして、被爆者対策の上での一層の福祉の向上を図るという観点から所得制限の撤廃を行おうとしたものでございます。
#63
○高桑栄松君 いわゆる社会保障制度を見ますと、所得制限が全くないという制度はないんじゃないでしょうか。ないという制度はあるんでしょうか。
#64
○政府委員(谷修一君) 社会保障制度全体についてちょっと今資料を持っておりませんが、恐らく非常に少ないんではないかと思います。
#65
○高桑栄松君 そこで問題にしたいのは、所得制限を撤廃するということは所得とは関係なく補償するということですから、これは国家補償の精神のあらわれではないか、こういうふうに読むわけですが、いかがですか。
#66
○政府委員(谷修一君) 先生の御質問になられたことに関連しては昭和五十三年の最高裁判決の中で、この制度の根底に国家補償的配慮があるということを述べて、それの具体的な例として「資産状態のいかんを問わず常に全額公費負担と定めていることなどはこ云々というようなくだりがあることを指して言っておられるんだと思いますが、この最高裁の判決というものは、もちろん現行制度について具体的に特にこの点を挙げてこういう国家補償的配慮があるということを指摘しているわけでございまして、私どもはこの最高裁判決のこと自体をもちろん否定する立場ではございません。
 ただ一方、被爆者対策を進めていくということの中で、基本悲報告書に述べられているような被爆者対策の基本的な考え方というものに沿って私どもとしては今回の法律もお願いをしているということでございまして、この所得制限の撤廃を行うということ自体は、先ほど申し上げているような被爆者の高齢化等の実態を踏まえて、健康の保持、増進あるいは福祉対策を一層進めていくということでございます。
 そういう意味で、私どもがここで言っております所得制限の撤廃というのは、国の戦争責任を認めるという意味での国家補償の考え方ではございません。
#67
○高桑栄松君 何だかあっちこっち行ったり来たりでございますけれども、結果責任は認めるから補償をする、違法、適法ではなくて、戦争という行為のあった結果としての補償をする、これは国家補償のカテゴリーに入っているわけです。それで、この国家補償の精神にのっとっているということは最高裁の判決に出ている、したがって国家補償の精神があるんだ、それに基づいたものだということを今言いながら、国家補償ではないと言い張るところが、イエスと言っておいて、そうかそうかと思ったら後でノーになってしまうということではないのかと思うんです。
 私は、所得制限を撤廃したということは、いわゆる社会保障対策ではなくて、これは国家補償という精神にのっとって所得制限を撤廃したというふうに解釈せざるを得ないと思うんですが、これはどうでしょうか、もう一度。
#68
○政府委員(谷修一君) 言葉としては、「国家補償的配慮」という言葉と、それから「広い意味における国家補償の見地」という二つの言葉がこの被爆者援護対策をめぐっては過去に使われているわけでございます。
 五十三年の最高裁判決に言う「国家補償的配慮」とは具体的にどういう考え方であるかということについては、少なくとも私どもが理解する限りは述べられていないんではないかというふうに思います。ただ、具体的な一つの例として先ほどの所得制限の問題に触れておられるということがあると思います。
 一方、先生が今お使いになられました国家補償の精神という、言葉はちょっとあれでございますが、「広い意味における国家補償の見地」ということは基本問題懇談会において使われ、それは非常に長い文章ですけれども一つの説明としてされている。その背景は簡単に申し上げれば、原爆放射線による健康障害というのが一般の戦争損害とは一線を画すべき特別の犠牲であるということに着目をして、広い意味における国家補償の見地に立って実態に即した対策を講ずるべきであるというふうに述べられているわけでございます。
 ただ一方、基本懇におきましては、広い意味における国家補償の見地に立って対策を講ずるといっても、それは戦争遂行に関する国の不法行為責任を是認したりあるいは賠償責任を認めるという趣旨ではないんだということも述べられているわけでございます。放射線による健康障害について、原因行為の違法性の有無にかかわらずその被害に相応する補償を認めるという趣旨である、そういうことを述べているわけでございます。そういう意味で私どもは、この国家補償の概念との関係につきましては基本懇報告書にありますような考え方に沿って今回の新法というものを一応考えているということでございまして、国の戦争責任に基づくものではないということを申し上げているつもりでございます。
 一方、国家補償という言葉そのものについては、先ほど総理と高桑先生との御議論の中にもございましたように、いわゆる講学上の言葉ないしは多義的な言葉でございますので、非常に限られた字数の中で意味、内容というものを明確にすることを求められております法文の中で、国家補償というものが国のどのような責任に基づく補償を意味するのかということを明確にすることは非常に困難ではないかというのが法制上の考え方でございます。
 そういう意味から、再々申し上げておりますように、今回私どもが提案をしております政府案におきましては、国家補償という言葉を盛り込むことは適当ではないんじゃないか、またこの新法の内容というものが、いずれにいたしましても原子爆弾の被爆によって被害を受けられた方に対するいろんな意味での給付、医療、福祉、保健、そういったもの全体に対する給付というものを内容としているということから考えても適当ではないんではないかということで盛り込まなかったということでございます。
#69
○高桑栄松君 言葉の解釈とか法律論争をやっているととても私では手に負えませんので、これはこれくらいにいたしますが、前に申し上げましたけれども、広い意味で国家補償とおっしゃっているのが狭い意味ではそれがなくなるということはないのであって、広い意味でと言ったら全体にわたっているというふうに解釈できるわけで、その中に個々のものは違うんですということはあり得ないんですね。だから、そこは言語としては広い意味でこれにのっとったものだと言っておいて、狭くなったらそうでないというわけにいかないわけですよ。
 ですから、そういう点では余りあいまいに、法律の専門家でないから相手が余り答えられないと思って言われたんでは困ります。私は、法律といえども常識論の世界で一応対応できると思っているものですから、それで社会通念として考えられると言っているんです。政府は、国家補償ということをもう使わないということでどうも突っ張っているんじゃないかと、突っ張りイズムではないのかなと思っているわけで、しかしその頑固さを国際場裏でもひとつやってもらえればいいんだが、よくわけのわからぬことでは困るのであります。
 このくらいにしないと時間もあれですから、その次に参りましょう。
 特別葬祭給付金というのもこれもたびたび出ております。私だけではございませんが、いろんな先生方の御質疑の中でも、政府は、これは生存被爆者対策であって弔慰金ではないと、こう答えておられます。被爆者の方は、金ではなくて国の弔意の表明が欲しいと、こういうことを言っております。
 これは先ほど申し上げましたように、政府側は弔意ではないと、弔意表明を拒むことを頑張っているように見えてしまうんですね。弔意を表明した方がいいのではないかと私はむしろ思うんですけれども、大臣に改めてこれを伺いたいと思うんです。弔意表明を拒むことを頑張っているように見えると、大臣も頑張っていますかといつも聞いているわけで、いかがでしょうか。
#70
○国務大臣(井出正一君) ただいまの先生の御質問につきましては、先ほど総理の方からも御答弁があったところでございますが、要するに、現行二法では救われない四十四年四月一日以前に亡くなられた、そしてさかのぼって昭和二十年八月六日あるいは九日に亡くなられた方まで対象にしたい、そういう亡くなられた方に対する関心はもちろん持っているわけでございます。
 と同時に、再三これも申し上げているんですが、一般戦災者との整合性も考えなくちゃならぬ、こういった意味合いから弔慰金という性質のものではない、これは基本懇でもそういう解釈をとられた、これにのっとったつもりであります。
#71
○高桑栄松君 これは何遍も質疑応答が繰り返されておりますから、私はやっぱり弔意をあらわすべきものと考えたいと思いますけれども、次に参りましょう。
 調査研究の件で、国は、放射能に起因する身体的影響及び疾病の治療に係る調査研究をするという努力義務を規定しているわけでありますが、この身体的影響及び疾病の治療の両者に研究対象、研究の目的を限定した理由はどういうことなんでしょうか。
#72
○政府委員(谷修一君) 被爆者の問題あるいはお願いをしております法案につきましては、原爆放射能に起因する健康被害、その結果として起きます健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害であるということにかんがみて各種の対策を実施してきたわけでございます。そういう意味から、特に今回、放射能に起因する健康被害に関する調査研究について、国として推進の努力規定を設けるということにしたものでございます。
#73
○高桑栄松君 私は先日来申し上げておりますが、遺伝的影響の方に大きなウエートをかけて考えているわけでございますが、これまた新聞でございましたけれども、この間は、放射能漏れの影響というものを疫学的に調査をしようとするときには事前の疫学調査がベースになると。つまり、何にもないときにどうであったかというのを見ておいて、それとの比較になっていくと。この疫学調査というのはそう簡単にできるものではないという意味で申し上げたんですが、そういうことでふだんの調査をしておかなければならないということであります。そういうことが新聞にもわざわざ、事前の疫学調査を蓄積する必要があるということを論説のようにそこで指摘してありました。私もそう思っておりましたので、一応私が思っているというだけではどうかと思いましたので、人の話も引用させていただいたわけでございます。
 したがいまして、遺伝的影響の調査というものも研究を進めていかなければいけない。つまり、ふだんにないかもしれない、出ないかもしれない、そして出ていないようだという話があるわけです。確かに、一万分の一の確率で遺伝子が障害をされているのがあったそうです。これは二代目になったら半分になるか、三代目になったら四分の一になるかというのではない、このままいくん一ですから。だから、一万分の一は何ぼ伝わっていっても一万分の一の障害としていくわけです。それがどこかでもう一つ別な一万分の一と一緒になったときに一万分の二になる、遺伝というものはこういうことでありますから、そういう意味では二世になかったからないんだというわけにはいかないと思うんです。だから、三世になったときどうなるんだろうか。三世のことは厚生省のを見ると賛成してくれてないですよね、二世で終わっているんですよ。それで、遺伝的影響調査というのは本来ずっと続けてほしいわけですね。
 だから、広島なんか長くやっておって出ておりますけれども、しかし胎内影響みたいな小頭症なんかもはっきり出ているわけです。だから、そういうことは明らかに見えるものと、遺伝影響のように遺伝異常が蓄積されていくんだと、これは確率論的にはかなり何代か見ていかないといけないということなんですね。
 それから、実験研究の結果はそれがなくなることはないと言っているわけですからなくならない。だから、その人が死んでしまって遺伝子を伝えなければなくなりますけれども、そうでない限りなくならない。大臣は聞いておられたと思いますが、女性の場合はまた話がちょっと違うという話をいたしました。そういうことがあるわけでございます。
 だから、私は思うんですけれども、被爆者の子孫は他人が見てわからないようなプライバシーみたいなものがやっぱりあるだろうかと、私にはちょっとわからないんで、単純に医学的に言っても、本人たちは三世であると言いたくないとすれば大変難しいことになります。しかし、二世、三世、四世の方々で少しでも不安があって診てもらいたいという人があったときには、それを受け入れてやることが法的には必要なのではないだろうか。もちろんプライバシーを守っていくという人権考慮が必要であります。私の聞いている範囲では、被爆者の子供、孫等にやはり不安を抱いている人が多いというふうにも聞いております。
 したがいまして、二世に対する健康診断の予算措置はとられておりますからこれははっきりしているわけですが、これを充実して、三世に対しても四世に対してもやっぱり継続されてこれを延長していく必要がある、こういうふうに思います。そういうことで、どうお考えか、ちょっと承りたいと思います。
#74
○政府委員(谷修一君) 子孫への影響ということに関して、先ほど来あるいは前回の委員会のときから高桑先生にいろいろ教えをいただいているわけでございますけれども、先生も御承知のように、現在の放射線影響研究所、またその前身のABCCの時代から、いわゆる遺伝学的な影響調査というのはかなり大規模に実施をしてきております。
   〔委員長退席、理事菅野壽君着席〕
 いわゆる生殖細胞の突然変異というものがもしあらわれるとすれば、流産だとかそういう妊娠の異常とか奇形の増加から出てくるのではないかというようなことから、昭和二十三年から二十九年にかけて、一万五千人の被爆者で妊娠された方と五万五千人の対照者群を調査しております。両者問に差は認められていなかったわけでございます。
 それからまた、性染色体に影響があるという場合には出生時の性比に変動が出てくるのではないかというようなことから、これにつきましても昭和二十三年から三十七年にかけて約四万七千人の子供を対象にして調査をいたしておりますが、性比の変動は認められてきておりません。
 また、遺伝的な影響を形体的にとらえるということの指標といたしまして、身長、体重などのいわゆる成長と発達ということにつきましても、昭和四十年以来約二十万人にわたる調査をやってきております。特にそういったことについての異常はまだ認められておりません。
 その他、死亡率ですとかあるいは染色体異常といったようなことについても引き続き研究をしてきておりますし、また一九八五年以降はDNAについての研究を継続しております。これはまだ継続中でございます。
 いずれにいたしましても、そういったような遺伝的な影響ということにつきましては、先ほど私が申し上げました、また先生もお触れになりましたこの四十条の規定の中で当然やっていくものだというふうに理解をいたしております。
 ただ、具体的な健康診断ということについてもお尋ねがございましたが、一応私どもは現在、被爆二世の方に関しましては希望者に対して予算措置で健康診断を実施しておりますし、これにつきましては今後も事業を継続していくことにいたしておりますけれども、遺伝的な影響ということについてこれからも研究的にはやっていくつもりでございますが、三世の方について現時点で健康診断をやっていくということは考えておりません。研究ということで幅広くいろんな調査は引き続き継続をしていくということでございます。
#75
○高桑栄松君 今申し上げましたが、私の読んだ本の中にも書いてあるんですね。差がないからないのではない、差が出るようなコンビネーションではないから出てこないだけの話だと。有意の差がないから遺伝影響はないんですと言うわけにはいかない、これはもうしっかり覚えておいていただきたいと思います。
 それと、さっき申し上げましたが、二世に対する予算措置はしてあるが、二世の遺伝欠損、遺伝障害というのは三世にも薄まっていくんじゃなくてそのままいくんだということでありますから、やっぱり何らかの予算措置をとって対応していってほしいと、私は医学の立場でそういうふうに考えます。
 それでは、私の一番最後の方で、高齢化対策と予算の問題というか予算措置というか、ちょっとお話を聞きたいんです。
 まず、高齢化に着目した総合的援護対策というふうに銘打ってあるわけですが、何でも高齢化に着目したというのは各省大抵あるんじゃないかと思うんですけれども、特に厚生省は高齢化に着目したのがほとんど全部であって、全部と言っちゃ失礼でございますが、非常にウエートが高まってきている。
 今度、被爆者の場合の高齢化に着目した新規施策というのはどんなものをお考えでしょうか、大臣。
#76
○国務大臣(井出正一君) 確かに、高齢化社会の到来云々で厚生省はその対策に今大変追われているところでございますが、特に被爆者対策につきましては、もう生存被爆者の皆さんの平均年齢が六十五歳ぐらいに達していらっしゃるという意味では大変な高齢に達していらっしゃるわけであります。
 したがいまして、それに力を入れていかなくちゃならぬ、充実をさせなくちゃならぬというわけでございますが、具体的には、従来、手当という金銭給付にとどまっていた福祉施策につきまして、相談事業や居宅生活支援事業など具体的なサービスを提供する福祉事業面の施策を新たに法律に位置づけることといたしましたし、あわせてこうした事業に対する国の補助規定を設けることとしております。また来年度からは、例えば相談事業を全都道府県で実施する等の事業の改善を検討しておりまして、今後とも福祉事業の一層の推進を図っていかなくてはならぬ、こう考えておるところでございます。
#77
○高桑栄松君 今のは高齢化に着目した施策ですか、高齢化に着目した部分でございますか、今大臣おっしゃったのは。
#78
○政府委員(谷修一君) 現在、いわゆる予算措置としてやっております福祉事業というのは、今大臣も申し上げましたように相談事業、それから身体上あるいは精神上の障害がある被爆者に対する居宅生活支援事業、つまりデイサービスですとかデイケアといったような事業、あるいはホームヘルプというような事業、ショートステイそれから原爆養護ホーム等に入所させる事業ということでございます。
 いずれにいたしましても、こういったような事業は被爆者の方々の高齢化に伴って需要は増してきているわけでございます。そういう意味で、相談事業を全国に拡大する、またホームヘルプ、デイサービス、ショートステイというような事業を従来から予算の増額を図ってきている。また来年度は、これはまだ予算の上での話でございますが、デイサービス事業に対して痴呆性老人の加算というふうなものを考えたらどうかというようなことを考えておりまして、今先生おっしゃった意味での高齢化だけではございませんけれども、被爆者の方全体が高齢化をしているという事実には着目をしていかなきゃいけないと思っております。
#79
○高桑栄松君 これは、日本全体の高齢化が進んでいますから、日本全体の福祉対策は高齢化に着目をしたと、さっき申し上げたのはそういうことですね。わかりました。
 その次に、あと一、二伺いたいんですが、健康管理手当の認定期間が三年ないし五年というふうになっているわけですが、この認定を更新するときの手続というのが、多くの疾病は慢性的であって症状に余り変化がないのではないか、それなのに三年とか五年でまた手続をするというのはそれこそ高齢の方には大変手続が面倒だから、これを撤廃するなりさらに延長するなりのお考えはないでしょうか、いかがでしょうか。
#80
○政府委員(谷修一君) 御承知のように健康管理手当というのは、造血機能障害などの一定の障害を伴う疾病にかかっているという状態にあることを支給要件にしているわけでございます。したがって、こういったような状態が引き続き継続をしているかどうかということを確認するために一定の認定期間というものを定めているわけでございます。
 ただ、この認定に係る手続につきましてできるだけ簡素化を図っていかなきゃいけないということで、今お触れになりましたように、平成三年度には、従来一年間でありましたものを三年に、また三年間でありましたものにつきましては五年というような形で疾病の種類に応じまして延長をいたしまして、その限りにおいてかなり大幅な簡素化を図ってきたということでございます。今直ちにこれについて認定期間を廃止するということは、私どもとしては、この手当というものの性格上難しいということをぜひ御理解いただきたいと思います。
#81
○高桑栄松君 先ほどの所得制限とちょっと似通っているんですが、医療特別手当の一部及び特別手当は収入として認定をされて、生活保護に関しては事実上の支給制限となっている。
   〔理事菅野壽君退席、委員長着席〕
しかし、これは被爆に起因したということでありまして、そういう特別な疾病、負傷に対する出費でありますから収入認定を適用するというのはおかしいではないかということであります。いかがでしょうか。
#82
○政府委員(佐野利昭君) これは先生もよく御承知いただいているところでございますけれども、生活保証といいますのは、基本的には生活をしていくために最低限度賄われなければならない費用を補てんする制度でございます。したがいまして、生活費として充当されるような性格のものが入っておりますと、それは当然収入認定されなければならないということになろうかと思うわけです。
 原子爆弾の被爆者につきましても、原子爆弾の被爆者として特別の費用が必要な部分、それにつきましてはこれは収入認定の対象外といたしているわけでございます。例えば今お話がありましたように、医療特別手当の中の医療手当的な部分、あるいは介護手当ならば介護手当の部分でありますとか、あるいは保健手当、小頭症手当というような各種特別な費用として必要な部分につきましては、これは収入認定の対象外にいたしております。
 また、原子爆弾の被爆者として特に配慮しなければならないような生活費上の加算、例えば栄養補給をしなくちゃいかぬとかいうような形の部分につきましては、これは放射線障害者加算というような形で生活保護の認定基準の上でほかの生活保護の方よりも高い基準に上乗せをしております。
 そういうような形でやっておりますけれども、普通の生活水準を維持するために必要な部分の生活費的な部分につきましてはどうしても収入認定をせざるを得ない、こういうことになっております。
#83
○高桑栄松君 それでは、一番終わりに大臣にちょっと伺っておきたいと思うんですが、原爆小頭症の患者というのは社会的にも日常生活面でも自立が困難であることは、これは明らかでございます。患者もそして介護をする親も高齢化が進んできております。こういうことを考えますと、将来の養護を含めて終身保障制度というふうなことを新たに確立すべきではないだろうかというふうに思いますが、もう対象も限定されておりますからやれるんじゃないかなと思うんです。大臣、いかがでしょうか。
#84
○国務大臣(井出正一君) 原爆小頭症の方々が背負われている苦しみは察して余りあるものがございまして、本当にお気の毒だと考えております。それらの小頭症の方々に対しましては、医療特別手当にあわせて原子爆弾小頭症手当を支給することにより、生活上の経済的負担の軽減を図っているところでございます。さらに、障害の程度に応じまして介護手当の支給や障害福祉年金の支給を行ってきておるところでございます。
 それぞれ具体的に、そう数の多い皆さんじゃないものですから、どの程度そういうのが支給されているかちょっと省の方で調べてもらったんですが、一番少ない方で受領月額十四万五千百円、多い方で十九万六千百五十円ですか、あるいは十八万円台の方もいらっしゃいますが、合計しますと今それぐらいの支給がなされておるわけでございます。こういったものもそれに応じてまた今後とも増額していく必要も出てくると思いますし、あわせて保健、医療あるいは福祉にわたる総合的な援護対策を推進していかなくちゃならぬ、こんなふうに考えておるところであります。
#85
○高桑栄松君 ありがとうございました。
#86
○萩野浩基君 外務省の方、御苦労さまでございます。
 私、昨日は参考人の方々の意見を聞いたわけなんですが、その前の質疑のときにちょっとあいまいな点を残しましたので、そこはやはりきちっとしておきたいと思いますので、お伺いしておきます。時間も限られておりますから、前回のとき中途半端なやりとりで終わってしまいましたので、ひとつはっきりしておきたいと思います。
 私があのときに申し上げたかったことは、今回の被爆者援護法に関して、日本が世界に対してどういう態度をとっていくかというところのアングルから質問したわけです。
 きょうはたまたま十二月八日、お釈迦様にとれば成道会といって悟りの道を開かれた日で、宵の明星を見て悟りを開かれた。だけれども、ある意味からするとこれは大変なことで、日本があの泥沼の戦争に突入した十二月八日、パールハーバーサプライズアタックネバーフォーゲットパールハーバーというような言葉が残っている。また、そういう日にこの委員会でこれが決められるというのは、何かここに因縁があるような感じがいたします。
 いずれにしても、今までの悲願であったわけですから、この被爆者に対するよりよい法律が制定されて平和への第一歩になればと、私はそう願っておりますので、この前は大分厳しくやりましたが、きょうはソフトにいきたいと思います。
 それで、少し前回の問題を整理して質問してみたいと思います。私が、前回申し上げたかったのは、世界的な核軍縮、核は今現にあるわけですから、それを何としても軍縮するためにイニシアチブをとらなければならない、それに対して政府はどのようにしておるかということが一点でございます。
 それから、究極的な核廃絶ということ、政府でも使っておりますけれども、究極的な核廃絶というのはそれまでのプロセスという問題、もう絶対に核を持たないという、究極的と言えばそれまではあっても仕方がないという解釈になります。
 それで、「ジャパン ジ アムビキュアス アンド マイセルフ」と言われたと思いますが、けさ方、私は衛星放送で聞いておりましたが、大江健三郎さんの話の中で、この「あいまいな日本の私」と。日本はそれが美徳である面もあると思うんです、余りイエス、ノーをはっきりしないところに。どうもどうもなんという、これは英語に直せば一体どう直したらいいかといつも私は思っているんですが、だけれども、国際社会の中で平和を築いていくのには、やはりはっきりするところははっきりしていかなきゃならない。きょうはそういう平和への新たな一歩になればと願っております。
 そういう意味で、核廃絶に向けての具体的な施策はどのようなものが今考えられるのか、私も一生懸命考えておりますが、この前も一生懸命そういうことをやっておられるように外務省の方でもおっしゃいましたので、まず整理してこの二つの点を簡単に御答弁をお願いします。
#87
○政府委員(杉内直敏君) 我が国は唯一の被爆国として、核の惨禍が二度と繰り返されることがあってはならないと心から願っておりまして、非核三原則を堅持するとともに、核軍縮、核不拡散の推進に努力し、核兵器の究極的廃絶に向けて着実な核軍縮を進めていくことが本当に必要なことであるというふうに考えております。
 このような観点から、我が国といたしましては、ただいまニューヨークで開催中の国連総会第一委員会に、核兵器の究極的廃絶に向けた核軍縮決議というものを日本が単独で提案したわけでございますけれども、圧倒的な多数で採択されるに至りました。
 また、すべての核兵器保有国に対し一層の核軍縮努力を行うよう促していくとともに、全面核実験禁止条約交渉、これが当面非常に重要なことだと考えておりますので、この早期妥結に向けて貢献をし、また旧ソ連の核兵器廃棄支援というようなものもございますけれども、こういった支援等を通じまして着実な核軍縮を進めていくために積極的な努力を展開していく所存でございます。
 先ほど先生、究極的廃絶ということであると、それは核兵器があってもいいというようなニュアンスになってしまうということをおっしゃったわけでございますが、私どもとしては、ただいま申し上げましたように、確かに現下の情勢のもとではこれは一歩一歩進めていかなければならないわけでございますけれども、あくまでもこれはあってはならないものということで、そちらの方向で今後とも努力していきたいと考えております。
#88
○萩野浩基君 ネバーユーズ アトミック ボムとやっぱりはっきりしないといけないと思いますので、これは釈迦に説法ですけれども、外務省の方には。
 大体私が質問を始めたのは、朝日新聞が国際司法裁を取り上げておったのが、あいまいな態度の国として日本が挙がっておったというところがこの前の質問の入り口だったわけでございますから、今後におきましては、くれぐれもこのファジーな態度、アムビキュアスなビヘービアはとらないようにぜひともお願いしておきたいと思います。
 それで、もう一つお伺いいたしますが、今おっしゃいましたように、いろいろとこれまで日本も努力されてきていると思うんですが、核不使用決議、核を絶対に使ってはいけないというような決議が何回もされておりますが、そんなに古くはあれですから、大体一九六〇年代で何回ぐらい決議されておるんですか。
#89
○政府委員(杉内直敏君) お答えいたします。
 核不使用に関する決議というものは、これはその都度内容に若干の異同はあるわけでございますけれども、大まかに言いまして、一九六一年に最初に出されて以来これまで二十三回決議が採択されてきておると思います。ただ、一番最後の方につきましては、まだ今の国連総会の第一委員会でそれが採択されたという段階でございます。これも入れまして二十三回でございます。
#90
○萩野浩基君 私の方に資料をいただいたのにもそのようになっていますが、私はこの中で大変残念なことは、安保条約が批准されたのは、私安保のときはよく覚えておりますが、大学一年生でしたので、その次の年に、核は使用しては相ならぬというのを日本はそのとおりだというので賛成しているんですね。
 調べてみますと、賛成はあと見当たらないんですが、そうでございましょうか。
#91
○政府委員(杉内直敏君) 御指摘のとおりでございまして、一九六一年に賛成いたしましたが、それ以降の決議につきましては、反対というものもありますけれども、おおむね棄権してまいっております。
#92
○萩野浩基君 同僚の委員の皆さん方も考えていただきたいんですが、今、原子爆弾の悲惨さというものを我々は総括しようと、この戦後五十年の中で。大変これは世界に対して我々恥ずかしい気がするわけなんですが、核は使ってはいけないに賛成したのはたった一回であって、いや使用してもいいという反対の決議が二回あるんですよ。これは一九八〇年と八一年のこの二回なんですね。あとは無関心、放棄というのが二十回。これが一九八四年にもそうでありますし、この後も。これは、私は決して外務省を責めるというんではない、我々みんなが姿勢を正さなきゃいけないと思いますので申し上げるわけでございます。
 日本が今までそういうようであったというのは、この戦後五十年を契機に、もちろん原爆で亡くなった方、それ以外にいずれにしても戦争で亡くなられた方、特にその戦争の中でも、私は前回も申し上げましたが、戦争を始めた人、支援した者、戦った者、そういう者よりももっとそうではない、その状況の中で最も弱い人にツケがいくというのが戦争の歴史が我々に教えるものだろう、私はそのように思っております。特に核の問題は大変、普通の兵器ではないということをここで皆さんの議論の中でもう十分立証されてきたと思いますので、今後におきましては外務省においてもどのような態度をとるかというのは、やっぱりきちんとした、これは自分たちは官僚であるからというんではなくて、日本の国のすべてが抱く私は理念であり考え方であろう、そのように考えております。
 もう答弁いいです。大臣に一言、急で申しわけありませんが、せっかくこの法案の成立というのを機会に、我々はお互いにやはり誓い合う、血で血を洗う戦争というのは二度と起こさないと、そういう第一歩にすべきだと考えておりますので、その点お願いいたします。もし外務の方から何か補足することがあったら、その後で。
#93
○政府委員(杉内直敏君) 先生が今御指摘になりましたように、最初の決議には日本として賛成したわけでございますが、これは核の惨禍が繰り返されてはならないと、そういう道義的な姿勢としまして賛成したわけでございます。それ以降の決議について棄権いたしましたのは、これはそれぞれの決議の内容がまた少しずつ違っているわけでございますけれども、やはり個々の核兵器を廃絶していくということはもちろん極めて重要なことで努力していく必要があるということを先ほど申し上げたわけでございますけれども、与えられた現実の国際情勢の中で少しでも前進する方向でやっていくということがやはり本当に必要なことではないかというふうに考えております。
 これらの決議につきましては、例えば核不使用のための条約化会議を直ちに招集してこれを署名というところまで持っていくというような、この実現可能性というような点につきまして、これは実際問題として直ちに進めていくことについては問題があり得るのではないかというようなことで、そういった考え方から棄権してきたということを申し上げたいと思います。
#94
○萩野浩基君 いや、そうなると私、またもう一遍振り出しに返ってやらなきゃならなくなってくるんですがね。それぞれ状況はあると思うんです。日本はアメリカとの安保条約は結んでおりますし、乱そういうのもわかっております。それぞれ状況の関数として外交というのは行われていきますしね。
 だけれども、私は基本姿勢として聞いているんであって、その辺を十分踏まえておいていただきたいということで、大臣お願いします。
#95
○国務大臣(井出正一君) きょう十二月八日、私はまだ小さくてその日のことは記憶にありませんが、先ほど先生お述べになられたように、この日にこの被爆者援護法が、しかも委員会の最終日というんでしょうか、で御審議が進められているということに私も感慨を覚えるものであります。
 悲惨な原爆が投下されて、もう二度と再びという思い、また戦争がいかにひどいむごいものかということを国民すべてが考えたはずですし、特にその中で核兵器というもののむごさ、ひどさ、これはもう世界のだれよりもわかっている日本であると思います。
 その日本が、今先生御指摘あるいは外務省の方からも答弁ありましたが、この核兵器の不使用につきましてきちっとした態度もなかなかとれないで今日まで来たというのは、あの敗戦の後、すぐに東西の冷戦構造に巻き込まれちゃったということもあるかもしれません。しかし、その東西の対立の結果大変な軍拡あるいは核開発が進みながら、それをもてあますといいましょうか、もうお互いにこれくらい愚かなものはないということにやっと人類は気がついて軍縮も始まったところでございますから、時間は確かにちょっとかかり過ぎちゃいましたが、まさにこの五十年というのを契機にその方向に向かって日本ももう一度決意を新たにしていかなくちゃなりませんし、また世界に向かってそういう声を発信していく必要があると、こんなふうに考えております。
#96
○萩野浩基君 大変ありがとうございました。さすがは厚生大臣で、もうこれはイデオロギーの問題ではなくて人間存在の基本的問題として、核は使ってはならないというスタートにしていけばと、私はそのように思っております。
 じゃ、質問は勝木先生に移ります。
#97
○勝木健司君 それでは、先ほど総理にも質問しましたが、その続きを質問させていただきたいと思います。
 原爆特別措置法による葬祭料と本法案の特別葬祭給付金の関係について、先ほど高桑先生からもありましたけれども、お伺いをいたしたいと思います。
 これまで原爆特別措置法では、昭和四十四年四月一日以降に死亡した被爆者の遺族で葬祭を行う者に対して葬祭料が支給されておったわけでありますが、ここでは遺族が被爆しているかどうかは問題とされておらなかったわけであります。しかし、今回の政府提案の本法案においては、葬祭料を創設する前の昭和四十四年三月三十一日以前に死亡した被爆者の遺族に対し特別葬祭給付金というものが支給されることになるわけでありますが、問題はこの特別葬祭給付金が支給される遺族はみずからも被爆者である者に対してのみ支給する、そういう点であります。
 この特別葬祭給付金の支給が、葬祭料でも区別をしていなかった遺族が被爆者であるか否かといった点によってなぜ区別をされるのかということ、区別をせずに支給するのが当然じゃないのかということでありますが、これについての見解を求めたいと思います。
#98
○国務大臣(井出正一君) この点につきましては再三御質問をいただいて、その答弁もまたある意味じゃ繰り返しになるわけでございますが、現行の葬祭料は、被爆者が亡くなった場合にその葬祭を行う方に対して葬祭料を支給することにより、生存されている被爆者が日ごろ有している死に対する不安感などの特別の精神的な不安を和らげようとするものでございます。今回の特別葬祭給付金は、死没者の方々の苦難をともに経験した御遺族であって、御自身も被爆者としていわば二重の特別の犠牲を払ってきた方に対し、生存被爆者対策の一環として国による特別の関心を表明し、生存被爆者の精神的苦悩を和らげようとするものでございます。
 したがいまして、両者は生存被爆者対策という点で共通のものであり、こうした観点から、特別葬祭給付金の支給対象者を被爆者健康手帳を所持している生存被爆者としたものであります。
 したがいまして、この対象にならない方々もいらっしゃるわけでございます。この方々に対しましては、原爆死没者慰霊施設の設置など平和を祈念するための事業を実施することによって、国としてのとうとい犠牲を銘記し追悼の意を表してまいりたいと考えているわけでございます。
#99
○勝木健司君 さらにこの特別葬祭給付金についてお尋ねをいたしますが、この給付対象である遺族の範囲は、死亡した者の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹とするとされておるわけでありますが、こうした被爆者である二親等以内の遺族全員に対して支給するというのは一体どういう理由なのか。親族の数の多い少ないによって受け取る総額が異なるというのは、これまでの原爆特別措置法による葬祭料と比較いたしまして明らかに不公平ではないかということで、私どもは死亡した者一人につきといった明確な支給対象とした方が公平であるというふうに考えますが、見解をお伺いいたします。
#100
○国務大臣(井出正一君) 現行の葬祭料は、被爆者が亡くなった場合その葬祭を行う方に対して葬祭料を支給することによって、生存されている被爆者が日ごろ有している死に対する不安感などの特別の精神的な不安を和らげようとするものであることは先ほど申し上げたとおりであります。今回の特別葬祭給付金は、亡くなった被爆者と苦難をともにした御遺族であって、御自身も被爆者としていわば二重の犠牲を払ってきた方々に対して給付を行うことによって、生存被爆者の精神的苦悩を和らげようとするものであります。
 したがいまして、生存被爆者対策という制度の枠組みで見れば葬祭料と特別葬祭給付金の対象者の間には公平が確保されているものでございまして、支給対象者となる遺族の数のみに着目して不均衡が生じているとの御指摘は当たらないものと考えるものであります。
 野党の方で出されている対案において提案されている特別給付金につきましては、死没者に着目して支給するという点でやっぱり一般戦災者との間に不均衡を生ずるという観点からは基本的な問題が含まれているんじゃないかな、こんなふうに思っているところであります。
#101
○勝木健司君 私どもは、特別葬祭給付金の支給というのが定義づけなりあるいは位置づけがどうも不明確じゃないかというふうに思いますし、かつまた、著しく政府案の方が均衡を欠いたものであるというふうに考えるわけであります。政府案では今までなかったような新たな差別とか不公平が生じはしないか、また被爆によって亡くなられた方のみたまの尊厳を傷つけるという結果にもなりはしないかということで、そういった意味では被爆者援護法の精神と反するものになりはしないかというふうに思います。
 このように、現行制度と比較して位置づけが不明確であり、整合性がなく、かつ著しく均衡を欠いておるということで、被爆者にとっては不公平感の強い法案というのを政府案として提案されていることについての見解を再度お伺いしたいというふうに思います。
#102
○国務大臣(井出正一君) 不公平だという御指摘でございますが、再三申し上げておりますように、私どもは、生存被爆者対策の一環として国による特別の関心を表明し、生存被爆者の皆さんの精神的な苦悩を和らげようとする観点から提案しているわけでございまして、不公平な扱いとは考えておらないわけでございます。
 なお、広島、長崎におきまして人類史上初めての核の惨禍の犠牲となられた方々に思いをいたすべきことは当然であります。そこで、原爆死没者の方々全体に対しましては、国としてそのとうとい犠牲を銘記し追悼の意をあらわす観点から、原爆死没者慰霊等施設の設置など平和を祈念するための事業を実施してまいりたいと考えておりまして、今回の新法においてこの平和を祈念するための事業を法律上明記しているところでございます。
#103
○勝木健司君 今、死没者に対するお答えがありましたけれども、原爆被害が他の戦争災害とは異なる原爆放射能による健康障害であること、あるいは被害者が高齢化しておられるということにかんがみて、私どもは被害者全員に被爆者年金等を支給すべきではないかと思いますし、またこの特別葬祭給付金とあわせて遺族に対する遺族年金等も支給すべきだというふうに思いますが、今後こういった点についても当然検討して、政府案についても検討していただきたいというふうに思います。
 私どもの参議院におきましても過去二度可決をいたしました被爆者援護法の中には、被爆者年金制度が盛り込まれておったわけであります。そうした中にあってこの年金制度の必要性を一体どう考えられておるのか、また政府提案の法案の中に年金制度が盛り込まれていないのはなぜなのかということを改めてお伺いしたいというふうに思います。
#104
○政府委員(谷修一君) 原爆の被爆者対策というのは、他の戦争損害とは一線を画する特別の犠牲ということに着目をし、被爆者の方々の放射線による健康障害ということに着目をして各種の施策をやっているわけでございまして、その中で健康管理手当あるいは医療特別手当、また小頭症手当等の手当の支給を行うことといたしているわけでございます。
 これらの手当につきましては、基本的な考え方としてそれぞれの手当の支給に該当するような健康状態ということに着目をして手当という形にしているわけでございまして、そういう状況が継続するということを前提にしたいわゆる年金方式という形はとらなかったわけでございます。
 一方また、遺族年金ということにつきましても今お話がございましたけれども、基本的な考え方として放射線による健康障害、そういう状態にある被爆者の方に対して手当を支給するということでございますから、そういう状態にないいわゆる遺族一般の方に対して年金を支給するあるいは手当を支給するということは、現在の制度の趣旨ということからいっても、また一般戦災による被害者との均衡という問題からいいましても、基本的な問題があるというふうに私どもは認識をしております。
#105
○勝木健司君 それでは、今話が出ました健康管理手当等ということでありますが、本援護法の成立に伴いまして現行の健康管理手当等に設けられておりました所得制限が撤廃されるということになるわけであります。これは私どもも歓迎をすべきものだというふうに思いますが、これによって現在所得制限から給付がなされておらない方々は一体どのくらい解消されるのか、また所得制限の撤廃によって財政的にはどのくらいの影響を受けると試算をされておるのか、お伺いをいたしたいというふうに思います。
#106
○政府委員(谷修一君) 所得制限の撤廃によって新たに手当を受給できると見込まれる人数でございますが、従来所得制限というのがございましたので、毎年所得の状況ということについて資料を提出していただいているわけでございます。その資料から平成六年六月現在ということで試算をいたしますと、新たに手当が受給できる人数は約二千七百人というふうに見込まれております。
 また、その影響額でございますが、現在の法案につきましては来年の七月実施ということでいたしておりますので、七月実施ということで約八億円程度というふうに見込んでおります。
#107
○勝木健司君 次にお伺いをいたしたいと思いますが、この被爆者援護法の制定は単に被爆者の方々が生きていくために必要という、当然必要でありますが、それだけではなく、やはり平和国家として我が国が本当の意味で戦争を放棄していく、核を使用しない、核使用に反対をしていく国家としての位置づけを明確にしていかなければいけないと考えるものであります。
 被爆者援護法は、そういった意味では決して過去の問題ではないんだということで、将来に向かって建設的な内容であるべきであるわけでありますが、戦争に対する反省、そして平和に対する決意というのが当然必要になってくるだろうというふうに思います。この点について厚生大臣はどのように考えておられるのか、お伺いをしたいと思います。
#108
○国務大臣(井出正一君) 被爆者対策を所管する厚生大臣といたしまして、再三申し上げておりますが、核兵器の使用は人道主義に反するものであって二度と繰り返されてはならないことと考えております。
 核廃絶への願いは、被爆者のみならず世界で唯一の被爆国である我が国国民の願いであり、今回の法案におきましても、核兵器の究極的廃絶と恒久の平和を念願することを盛り込んであるのもそうしたところからでございます。
#109
○勝木健司君 先ほどもありました平和祈念事業についてお伺いをいたしたいというふうに思いますが、この平和祈念事業についてどういった趣旨で行っていかれるのかということ、そしてどういった実施方法を考えておられるのかということをお伺いしたいというふうに思います。
 私どもが懸念いたしますのは、来年末に建設予定でありました戦没者追悼平和祈念館のことであります。この祈念館は、日本遺族会が政府に要望したのが契機となりまして懇談会において検討された、そして戦没者追悼の意を表して、戦争に関する歴史的事実を後世代に客観的に伝える、そして国民の平和を希求する心を内外に伝えるものとするというふうに伺っておるわけであります。
 聞くところによりますと、最近この諮問機関の委員から内容の見直しを求める要求が出されておるやに聞いておるわけであります。せっかくの事業が、その進め方のまずさからか、遺族の方々の心を逆に傷つけるようなことになっては問題ではないかというふうに思うわけでありますが、この点も含めて、祈念館の進行状況についてもお伺いしたいというふうに思います。
#110
○政府委員(谷修一君) 平和を祈念するための事業につきましては、原爆による死没者のとうとい犠牲を銘記し、かつ恒久の平和を祈念するということで、原爆の惨禍に関する国民の理解を深めていく、それから被爆体験を次の世代に伝えていく、それから原爆による死没者に対する追悼の意をあらわすといったような事業を行おうとするものでございます。
 具体的には、原爆死没者慰霊施設の設置を行うということで、広島並びに長崎におきまして設置の検討を行ってきております。この施設につきましては、慰霊や平和祈念といった事業に加えまして、国内外の情報の収集を行うことによりまして、資料、情報の継承の拠点にする、あわせて国際協力あるいは交流等によります国際的な貢献を行う拠点にしていきたいと、このように考えております。
 現在、具体的な内容については検討を行っておりますが、この検討の過程におきまして、地元の広島市あるいは長崎市の方並びに被爆者団体の代表の方にも入っていただきまして、御意見を伺いながら現在検討をしているところでございまして、今後ともそういったような方針で具体化を図ってまいりたいと考えております。
#111
○政府委員(佐野利昭君) 戦没者追悼平和祈念館の建設の状況でございますけれども、これにつきましては既に予算をお認めいただいておりまして、工事の着工に必要な諸手続もすべて事務的には終了いたしております。また、こういった発注も既に実際は終わっておりまして、いつでも着工できる態勢にはなっておるところでございます。
 しかしながら、この建物の建設に当たりまして、デザイン等がはっきり周辺に示された段階で、一部の地域の住民の方々から当該地域の景観との調和の観点からいろいろな御意見が出てきております。これにつきましても、その前に町内会等の諸手続につきましてはいろんな条件などをいただいておりますけれども、一応の御了解を得たところでございます。さらになお、建物の形態等につきまして一部の方々からかなり強い御意見が出ております。
 景観との調和の適否につきましては、これはかなりの程度主観にかかわる問題でございますので、すべてについていわゆる万人に御了解のいただけるような形で果たしてそれがセットできるかどうかということにつきましてはいろいろと問題はあるわけでございますけれども、皆様から期待されまた希望を持ってつくっていただけるようなものにしなければならないという観点からいきますと、余りそういうことでトラブルを生じて着手するということにはいろいろと問題があろうかと思います。
 現在のところは、その計画につきまして周辺の方々等に十分御理解をいただけるように説得に努めているところでございますけれども、今の段階におきましては必ずしも十分な成果を上げていない状況で、まだ着工に至っておりません。
 そのような過程の中でいろいろな御意見がまた各方面から提起をされておりまして、その建物が建つ前の段階から中における企画、展示の内容等につきましてもやはりいろいろな御意見が今出ているところでございます。これらにつきましては、これからの運営に当たりまして十分厳正中立な立場から御議論いただくという仕組みをつくってまいりたいと考えております。
 そういったまたま着工がおくれているという現実を踏まえ、なおかつ、これからのあり方につきましてもいろいろな御議論がまた再度生じているという実態も踏まえまして、私どもといたしましては、さらに遺族の皆様方の御希望に沿う形を踏まえつつも、今後の取り進め方について再度慎重にまた検討させていただきたい、こう考えております。
#112
○勝木健司君 最後に厚生大臣に、この平和祈念事業については当然被爆者の方々の意見も十分配慮しながら進めていっていただきたいというふうに思うわけであります。
 今後の具体化についてでありますけれども、現在広島と長崎ということで存在しておるわけでありますが、こうした従来よりある事業との関係はどう考えておられるのかということ、また事業にかかわる財源についてもどう考えておられるのかということをあわせてお尋ねをして、質問を終わりたいというふうに思います。
#113
○国務大臣(井出正一君) 原爆死没者慰霊施設につきましては、地元の広島市、長崎市や被爆者団体の御意見をお伺いしながら、慰霊や平和祈念、国内外の情報の収集、あるいは国際協力、交流等による国際貢献といった事業を行うことを検討してきたところでございます。
 御指摘のように広島、長崎には既に平和記念館など各種の施設もありますので、こうした施設と重複しないように、例えば国内外に散在する資料を総合的に把握できるような機能、あるいは死没者に関するさまざまな情報が検索できるような機能、また国際協力のコーディネーターとしての機能、国でなければできないような機能を持たせる方向で検討をしてまいりたいと思いますし、予算につきましても、平成三年度よりこの基本構想の検討を行うための予算を計上しており、平成六年度におきましては管理運営計画の検討費というものを計上して今検討しておるところであります。
#114
○勝木健司君 終わります。
#115
○林紀子君 私は、後半は放射線の影響と原爆症認定の問題についてお伺いしたいと思います。
 初めに、大臣にお伺いしたいのですが、ちょっと説明が長くなりますけれどもお聞きいただきたいと思います。
 放射線被曝者医療国際協力推進協議会の編集による「原爆放射線の人体影響一九九二」という本がここにございます。これは、現在の放射線医学では最新そして最高レベルの論文が集大成されているものと言われているわけですけれども、この中でこう述べられています。「原爆放射線の人体への後障害のなかで最も重要なものの一つは悪性腫瘍の発生である。」、そして「白血病は一九五〇年頃より、甲状腺癌は一九五五年頃、乳癌、肺癌は一九六五年頃より、胃癌・結腸癌・骨髄腫は一九七五年頃より有意な増加が認められている。被爆者集団の年齢増加とともに各種腫瘍における発生頻度増加の推移が明らかである。」、放射線と悪性腫瘍、がんの関連についてこう総括しているわけです。
 一つだけ具体例を挙げますと、「乳癌は被曝十年後頃より増加しはじめ、二十年後には有意の増加がみられている。乳腺組織に被曝した線量ともよく相関している。また、被曝時年齢が十歳未満であった女性にも放射線関連乳癌が過剰に発生しており、被曝時年齢が若い人ほど乳癌リスクが高い傾向にある。」、こういうふうに書かれているわけですが、私はこれを読みまして大変ショックを受けました。本当に息もできないほどだったわけです。本法案の前文では、「生涯いやすことのできない傷跡と後退症を残し、不安の中での生活をもたらした。」というふうに書いてありますけれども、本当にそのとおりだと思うわけですね。
 被爆者はがん発生の恐怖と同居しながら生活をしていかなければならない、このことを銘記して、大臣、被爆者を見詰めて施策を立てていく必要がどうしてもあると思いますが、いかがでしょうか。
#116
○政府委員(谷修一君) 今、先生からがんの問題について特に中心にお触れになりました。
 被爆者の方々のがんに対する不安ということに関しましては、被爆者健康診断ということの中でがん検査を取り上げておりまして、胃がん検査あるいは肺がん、子宮がん、今お触れになった乳がん、また平成四年度から大腸がんというようなものも健診の項目に加えております。またあわせて、放射線とがんとの関連ということにつきましては、その関連についての解明あるいはがんの治療に関する調査研究ということを進めているところでございます。
#117
○林紀子君 大臣もこうした実務的なことというのはなかなか全部は把握なさっていらっしゃらないことと思いますけれども、これから御質問すること、局長の方が中心にお答えいただくと思いますけれども、どうぞぜひお聞きいただきまして、こういう実態なんだということを御認識いただきたいということも初めにお願いしておきたいと思います。
 現行医療法の八条、本法では十一条になるわけですけれども、原爆症認定は厚生大臣が審議会の意見を聞いて決定するというふうになっております。私が被爆者やお医者さん、ケースワーカーの皆さんから聞きますと、以前は二キロ以上の被爆者でも認定されていたと聞きます。ところが、最近では一・五キロ以内の人しか実態的には認定されなくなっている。一・五キロ以内に限る、入市被爆者は多発性骨髄腫と白血病に限る、こういう基準があるのでしょうか。
 厚生省は以前と比べましてだんだんこの認定を厳しくしている、こういう傾向があるんじゃないかという声が出ておりますけれども、いかがでしょうか。
#118
○政府委員(谷修一君) いわゆる原爆症の認定ということでございますが、被爆者の方のうち、放射能に起因して負傷あるいは疾病にかかった方に対する措置ということで、今お触れになりましたように原子爆弾被爆者医療審議会というところで被爆者の方の被爆の状況、それから現在持っておられます疾病の状況というものを科学的な知見に照らして総合的に判断をしていくということでやっているわけでございます。
 基本的には、その方のその当時浴びられた放射線量がどの程度かということを推定し、かつまた、現在持っておられる病気の状況ということとの関連ということを見ていくわけでございますが、申請件数に対します具体的な認定件数ということで申しますと、昭和五十年からの資料でございますけれども、申請件数に対する認定件数というのは四〇%前後ということでほぼ一定しておりまして、特に最近何か厳しくなったということはないんじゃないかというふうに考えております。
#119
○林紀子君 そういうふうにおっしゃいますけれども、実質は一・五キロが基準になっているんじゃないかという資料というか、リストがあるわけですね。
 例えば、昭和七年生まれの男性で、この方は長崎で二キロ地点で被爆をなさいました。肝臓がん、これで申請をいたしましたら、起因する可能性を否定できる、こういうことで却下されました。また、昭和十年生まれの女性、広島で二・二キロの地点で被爆して、直腸がん、これも起因する可能性を否定できると却下されました。また、昭和七年生まれの男性、広島で一・七キロの地点で被爆をした。胃がんです。これも起因する可能性を否定できると却下されまして、これは今異議申し立て中だということなんですけれども、これは全部がんなんですね。がんでも却下される。私は初め、えっとびっくりしてしまったわけですけれども、入市被爆者などは多発性骨髄腫と白血病以外は認定されないということになっているそうです。
 こういう傾向に対しまして、被爆者などの関係者からは大変大きな不満が表明され、異議申し立てもたくさん出ているということは御存じのことだと思います。ですから、がんでも却下される、それじゃ一体どんな病気だったら原爆症の認定が受けられるのか、こういう声が上がっているのは当然だと思いますけれども、いかがですか。
#120
○政府委員(谷修一君) 先ほど申しましたように、いわゆる原爆症の認定は放射能に起因して負傷あるいは疾病にかかっているかどうかということの判断が求められるわけでございますが、がんということについて、もちろん放射線との関係が強いものもあればあるいは関係が否定されるというものもございます。
 具体的に先ほど先生も資料でお触れになりましたけれども、放射線影響研究所の今までの研究成果の中でも、それぞれの疾病に応じて原爆放射線との関係で非常に強い関係を持つというもの、それから弱い関係がある、それから関係がないという幾つかの疾病に分類をされております。これは、がんの中でも悪性腫瘍と悪性腫瘍以外の腫瘍、それから免疫の異常あるいは染色体の異常等々幾つかの分類がされているわけでございまして、その強いということの中でも被曝線量に非常に明確に関係しているというようなことから、弱いという統計学的な有意差がどうかというようなところまで分類をされております。
 もちろん、これらの研究成果というのは現時点での話でございますから、今後の長期的な研究によってこれらがさらに変わっていくということはあるにしても、そういったようなすべてのがんが放射能によって起きたかどうかということを一律に言ってしまうというのはなかなか難しいのではないか。したがって、どうしてもその方のその当時おられた状況なり浴びた放射線というものの推定をし、それから今具体的にお挙げになりましたようながんの種類ですとか状況というものを専門家が判断をして認定せざるを得ないということを御理解いただきたいと思います。
#121
○林紀子君 そういうやり方では、やっぱり被爆者の方たちは納得できないと思うわけです。しかも、この認定申請というのは本人が立証責任を持っている。本当に大変な中で、いろいろな書類をそろえて、お医者さんにこの証明を書いてもらって、そして申請をする。そうすると、先ほどの例で読み上げましたけれども、起因する可能性を否定できるという一言で何の説明もなく却下をされてしまう。大変ひどい話だと思うわけです。そして、審査にも時間がかかり過ぎるために、死んでからようやく認定された、こういう例もあるわけです。
 入市者に対しましては、先ほどの「原爆放射線の人体影響」、この本でもこう述べているわけです。「とくに爆発直後のもうもうたるチリの中にいた者をはじめとして、後日死体や建築物の残骸処理などで入市して多量のチリを吸収した者は、国際放射線防護委員会が職業被曝者について勧告している最大許容負荷量以上の放射能を体内に蓄積した可能性がある。」。
 そしてまた、放影研の理事長の重松逸造さんは、先日衆議院の広島の公聴会で公述に立たれましてお話しくださいましたけれども、「放射線の人体影響は、まだまだ不明な点が少なくない。」、こういうふうに述べていらっしゃるわけです。
 今、局長も科学的にということを盛んにおっしゃいましたけれども、これは現時点での研究成果だということをおっしゃっているわけですね。現時点の研究成果といいますと、先ほどもこの本にも出ておりましたけれども、一九七五年ごろより胃がんや結腸がんや骨髄腫というのが多く見られるようになった、関連が明らかになってきた。じゃ、それ以前の方たちというのは、原爆の放射線の影響で、胃がんで、結腸がんで、骨髄腫で亡くなった、そういう方たちはそのときまではだめだったわけでしょう。
 そういうことを考えましたら、疑わしきは救う、そういう立場で行政は当たっていくのが当然ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
#122
○政府委員(谷修一君) もちろん、今先生もお触れになりましたように、現時点でのいろいろな科学的なデータの積み重ねというものをもとにして判断せざるを得ないということでございます。
 ただ、先ほど来お触れになっておりますすべてのがん患者について被爆者であればそれは認定をされるということは、お気持ちはわかるのでございますが、やはり放射線との関係ということについて全く考えないでいいかどうかということでございます。
 それから、先ほどもちょっと申しましたように、放射線との関係がかなり弱いというふうに言われているがんもありますし、非常に強い影響があるというふうに言われているがんもあるわけでございますから、具体的な放射線とその方の持っておられる病気との関係ということは、やはり個別の例ごとに専門家に検討をして御判断いただくという方法をとっているわけでございます。
#123
○林紀子君 私の方も繰り返しになりますけれども、「放射線の人体影響は、まだまだ不明な点が少なくない。」、こういうことを一番の専門家がおっしゃっているわけです。
 ですから、私はここで大臣にお伺いしたいんですけれども、こういうことであれば、本当に全部の研究が明らかになったときに初めて被爆者を救っていくということになったら、被爆者が全部亡くなってしまった後に、こういう研究成果でわかりましたと、こういうことが出たってもう間に合わないわけなんですね。ですから、本当に厚生省は、被団協の方々がすべてのがん患者は認定すべきだ、してほしい、こういうことを言っているわけですけれども、この意見も考慮して温かく救済する、そういう立場をとるのが当然だと思いますけれども、大臣のそういう温かい立場というのをぜひ表明していただきたいと思います。
#124
○国務大臣(井出正一君) 原爆放射線と疾病との関連の判断には、ただいま局長が御答弁申し上げましたように、高度な専門的な知識を要するものがございますので、その認定は学識経験者による原子爆弾被爆者医療審議会の先生方に御判断をいただいておるわけでございます。この審議会において、可能性のある皆さんには原爆症としての認定がなされておるわけでございまして、先生おっしゃるように被爆者の方でがんの方すべてを原爆症に認定せいと、一律に認定することはこの制度の趣旨にやはり合致しかねるんじゃないかな、私はこう考えるものであります。
#125
○林紀子君 今、厚生大臣お答えいただきましたけれども、きょうは被爆者の方たちもたくさん傍聴していらっしゃいます。今の大臣の言葉は、被爆五十年、この時点に至ってこの法律ができる、そういうことを契機に本当に温かい言葉を待っていたと思うんですけれども、今のお答えというのは大変被爆者の方たちにも冷たいものだったということを指摘せざるを得ません。
 そして、あと少々時間がありますから、最後にお伺いしたいのですが、国家補償の精神に基づく被爆者援護法の制定要求というのは、前回の委員会で我が党の西山議員の方も指摘をいたしましたけれども、行政当局からもいろいろ要望が出ております。
 厚生省も御承知のように、広島、長崎の両県知事、市長、議長などで構成する広島・長崎原爆被爆者援護対策促進協議会、いわゆる八者協ですね、陳情書が毎年提出されているわけですけれども、ことし七月の陳情書が私の手元にありますが、この第一には一被爆者年金制度等の創設」というのが書かれておりまして、その中の一に「被爆者年金の支給」、二に「弔意事業の充実」、これを要望しているわけです。この二の「弔意事業の充実」の方については、一部は本法案で取り入れられたわけですが、一番肝心の被爆者年金創設、このところをどうして取り入れなかったのか、そのことをお聞きしたいと思います。
#126
○国務大臣(井出正一君) 実は、年金にせいという御意見もこの委員会でしばしば御質問の中でいただいたところでございますし、これも八者協からことしの七月ですか、陳情書もちょうだいしてあることも私は承知しております。
 しかし、その都度お答えしておりますように、原爆被爆者に対する諸手当につきましては、放射線による健康被害という状態にある被爆者の実態に即して支給しているところでございまして、この手当を年金化することは、被爆者の健康障害の状態を問わずに一定の給付を継続することとなってしまうため年金化は行わなかったところであります。
#127
○林紀子君 援護ということを名づけた法律をつくるからには、やはり被爆者の皆さんの願いから出発するのは当然だと思います。今のお答えも被爆者の皆さんを絶対納得させられるものではないと思うわけです。本当に被爆者の願いを真剣に受けとめてほしいということを強くお願いいたしまして、私は質問を終わります。
    ―――――――――――――
#128
○委員長(種田誠君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、前島英三郎君が委員を辞任され、その補欠として松谷蒼一郎君が選任されました。
    ―――――――――――――
#129
○委員長(種田誠君) 他に御発言もないようですから、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#130
○委員長(種田誠君) 御異議ないと認めます。
 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律案の修正について林君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。林君。
#131
○林紀子君 私は、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律案に対し、日本共産党を代表いたしまして、修正の動議を提出いたします。その内容はお手元に配付されております案文のとおりでございます。
 これよりその趣旨について御説明いたします。
 来年、広島・長崎被爆五十周年となりますが、国家補償に基づく被爆者援護法の制定は、被爆者はもとより、二度と原爆の悲劇を繰り返してはならないと誓う広範な国民の長年にわたる切実な要求です。このことは、被爆者援護法の自治体決議・意見書が二千四百六十五自治体に達し、援護法を求める署名の提出が一千万を突破したことでも明らかです。
 原爆による被害は、通常兵器によるものとは違い、放射能、熱線、爆風などによって一瞬にして多くのとうとい命を奪い、生き残った人にも今なお深刻な被害を被爆者本人はもとより、その子や孫にまで及ぼしています。一九六三年の東京地裁判決が認めているように、アメリカによる広島、長崎への原爆投下は、都市への無差別攻撃や不必要な苦痛を与える兵器を禁止した国際法に明確に違反する行為です。日本はアメリカに賠償を要求する権利があったにもかかわらず、一九五一年のサンフランシスコ平和条約で請求権を放棄してしまいました。また、原子爆弾の被害は、国が戦争を遂行した結果生じたものです。そうである以上、日本政府が再び被爆者をつくらない決意を込めて原爆被害に対する国家補償を行うのは当然のことです。
 政府案は、原爆二法を一本化し、名称を援護法として、諸手当支給に対する所得制限を撤廃しています。また、特別葬祭給付金を原爆投下時の死没者にさかのぼって支給することにしていることは評価できる前進です。
 しかし、国家補償の理念が明記されなかったこと、死没者への弔意を示す特別葬祭給付金支給対象を被爆者手帳を持つ遺族に限定する、被爆者年金も実現しなかったなどの問題点を残しています。戦争の国家責任を明確にして謝罪と補償を行い、将来の不戦の誓いを込めた国家補償法とするため、次の修正を提案します。
 本修正案は、本院で二度可決された被爆者援護法を基本的内容とするものです。
 修正の内容をごく簡単に申し上げます。
 第一は、政府案の前文を削除し、新たに国家補償として被爆者及びその遺族を援護することを目的として明記します。
 第二は、死没者の遺族に対する弔意金として、死没者一人につき百二十万円の特別給付金を支給します。
 第三は、全被爆者に年金を支給します。その額は、最低三十九万九千六百円とし、最高八百十万千八百円を超えない範囲内で障害の程度に応じて支給することとしています。
 その他、認定疾病医療等を受けている被爆者に対し、月額十万円の範囲内で医療手当を支給上ます。介護を受けている被爆者に対して、十二万円の範囲内で介護手当を支給します。また、旅客会社の鉄道乗車を無賃扱いとする被爆二世、三世に対する措置等を講じています。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#132
○委員長(種田誠君) ただいまの林君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。井出厚生大臣。
#133
○国務大臣(井出正一君) ただいまの日本共産党の御提案による修正案については、政府として反対であります。
#134
○委員長(種田誠君) これより原案並びに修正案について討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#135
○萩野浩基君 私は、新緑風会、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました政府提出の原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律案に反対、横尾和伸君、勝木健司君外五十八名提出の原子爆弾被爆者援護法案に賛成の立場から、以下の討論を行います。
 その第一の理由は、政府提出の法案が、その理念において現行原爆二法よりも後退している面を見るからであります。
 被爆者が原爆放射線障害という他の一般戦争の被災者に見られない特殊な被害を受けているという点に照らして、被爆者対策は社会保障制度という側面をあわせ持つ複合的性格を有していると考えられます。
 この考えは、昭和五十三年の最高裁判決において次のように明確に判示されております。
 原子爆弾の被爆による健康上の障害がかつて例をみない特異かつ深刻なものであることと並んで、かかる障害が逃れば戦争という国の行為によってもたらされたものであり、しかも、被爆者の多くが今なお生活上一般の戦争被害者よりも不安定な状態に置かれているという事実を見逃すことはできない。原爆医療法は、このような特殊の戦争被害について戦争遂行主体であった国が自らの責任によりその救済をはかるという一面をも有するものであり、その点では実質的に国家補償的配慮が制度の根底にあることは、これを否定することができないのである。
 また、昭和五十五年の厚生大臣に対するいわゆる基本懇の答申においても、「国は原爆被爆者に対し、広い意味における国家補償の見地に立って」「措置対策を講ずべきものと考える。」と述べられております。すなわち、結果責任として戦争被害に相応する相当の補償を認めるべきだという趣旨であります。
 しかしながら、政府案はこのような判断はせず、他の一般戦災者に対する対策との均衡と調和などを考え、法律案の理念を「国の責任においてことのみ示すにとどまっております。しかし、被爆者のこうむった特別の損害の発生原因とそれに対する法的評価、並びに国等の公権力主体の活動と被爆者のこうむった損害との関連性の有無という点をどうとらえるのかが本法の最大の論点とされなければならないのに、政府案ではこの点に言及されていません。
 政府案が「国の責任においてこと示す部分は、被爆者の貧困や疾病等による生活の困窮という現実の事実状態のみをとらえて、憲法第二十五条の要請にこたえ、国が事業主体となって社会保障制度として措置するということのみを意味すると解されますが、それでは前に挙げた最高裁判例や基本懇の答申よりも著しく後退した立法措置であると指摘しなければなりません。
 この件に関し、対案では、現行原爆二法が施行された後に示された最高裁や基本懇の答申などの有権的判断、すなわち現行原爆二法について単なる社会保障制度と考えるのは適当ではなく、実質的に国家補償的配慮が制度の根底にあるとの点を厳然と根底に置いて立案し、これを前文に明記しております。
 第二の理由は、政府提出の法案にある特別葬祭給付金が理論的、理念的にも全く説明のつかない措置であり、また現実に被爆者に差別を生むという点で到底許しがたい措置であるからであります。
 この給付金は、被爆者手帳を持っている者のみに一人当たり十万円を支払うというものであります。これは、委員会の審議、また参考人からの聴取でも明らかになりましたように、二重の分断、差別につながるおそれが明らかであります。
 その一つは、同じ被爆者の遺族でも、手帳所持者とそうでない人との間の分断であります。例えば、一家全滅したが本人は学童疎開で被爆を免れ、手帳を所持していない原爆孤児、また他府県から学徒動員され広島、長崎で被爆した人の父や母もその支給を受けられません。明らかに分断、差別を生むものであります。
 二つ目は、このような措置は、昭和四十四年四月一日以降亡くなった被爆者に特別措置法により支給されている葬祭料は、遺族の手帳所持の有無にかかわらず葬祭を行う者一人に対し十万円を支給されることになっております。
 このたびの政府案の特別葬祭給付金は、昭和四十四年三月三十一日までに亡くなった被爆者の手帳を保有する遺族に対しそれぞれ十万円を支払うものであって、新しい措置だと言えます。しかし、昭和四十四年四月一日という時点をもって、その前と後で全く異なる扱いをする合理的理由はなく、かえって重大な差別が生じ、原爆被爆者対策を広い意味における国家補償の見地に立って考える基本懇の言う公平の原則とは著しくかけ離れたものである生言わざるを得ません。
 私どもの提出した対案では、特別給付金は現行の措置法が制定された昭和四十四年以前に亡くなられた方につき葬祭を行う者一人に十万円を支給しようとするものであり、理念において前後に差別はありません。対案の方が公平の原則に明らかに乗っていると言えます。
 これは、ともに被爆の経験を持ち、ともに長きにわたり病と闘いながら不安な日常生活を送り、または被爆者のための援護の充実のために行動し、そして二度とこのようなことが起きないようにと念じ続けてきた同胞たちの死亡に対し、ひとしく国家的関心の表明として給付を行うことになっています。高齢化しつつ今日なお被爆の影響や死に対する不安と闘いながら日常生活を送る被爆者にとって、何よりも心安らぐ措置と確信するからであります。
 最後に、この法律はどこまでも被爆者援護法であります。被爆者の悲痛な願いこそ最も大切にされなければなりません。昨日の参考人の質疑は涙なくしては聞けないものでありました。同じ被害を二度と起こさせないためにも、世界平和と核爆弾絶滅のために、その一歩として私どもの提出した対案に賛成し、政府案に反対の討論といたします。
 以上です。
#136
○委員長(種田誠君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律案について採決に入ります。
 まず、林君提出の修正案の採決を行います。
 本修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#137
○委員長(種田誠君) 少数と認めます。よって、林君提出の修正案は否決されました。
 次に、原案全部の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#138
○委員長(種田誠君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#139
○委員長(種田誠君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#140
○委員長(種田誠君) これより請願の審査を行います。
 第二号高齢者福祉・医療の充実に関する請願外六百六十八件を議題といたします。
 これらの請願につきましては、理事会において協議の結果、第一二号社会福祉施設整備の国庫補助に関する請願外百九十二件は採択すべきものにして内閣に送付するを要するものとし、第二号高齢者福祉・医療の充実に関する請願外四百七十五件は保留とすることに意見が一致いたしました。
 以上のとおり決定することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#141
○委員長(種田誠君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#142
○委員長(種田誠君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#143
○委員長(種田誠君) 継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。
 社会保障制度等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#144
○委員長(種田誠君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 なお、要求書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#145
○委員長(種田誠君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#146
○委員長(種田誠君) 委員派遣に関する件についてお諮りいたします。
 閉会中の委員派遣につきましては、その取り扱いを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#147
○委員長(種田誠君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時十一分散会
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ソース: 国立国会図書館
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