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1994/11/01 第131回国会 参議院 参議院会議録情報 第131回国会 文教委員会 第3号
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1994/11/01 第131回国会 参議院

参議院会議録情報 第131回国会 文教委員会 第3号

#1
第131回国会 文教委員会 第3号
平成六年十一月一日(火曜日)
   午前十時五分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         松浦 孝治君
    理 事
                南野知惠子君
                森山 眞弓君
                会田 長栄君
                浜四津敏子君
    委 員
                井上  裕君
                木宮 和彦君
                世耕 政隆君
                田沢 智治君
                上山 和人君
                肥田美代子君
                本岡 昭次君
                森  暢子君
                乾  晴美君
                江本 孟紀君
                北澤 俊美君
                木暮 山人君
                及川 順郎君
                橋本  敦君
   衆議院委員
       修正案提出者   片岡 武司君
   国務大臣
       文 部 大 臣  与謝野 馨君
       文部大臣官房長  佐藤 禎一君
       文部大臣官房総
       務審議官     雨宮  忠君
       文部省生涯学習
       局長       泊  龍雄君
       文部省初等中等
       教育局長     野崎  弘君
       文部省教育助成
       局長       井上 孝美君
       文部省高等教育
       局長       吉田  茂君
       文部省体育局長  小林 敬治君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        青柳  徹君
   説明員
       法務省民事局参
       事官       小池 信行君
       法務省人権擁護
       局総務課長    渡邉 一弘君
       外務省総合外交
       政策局国際社会
       協力部国連行政
       課長       旭  英昭君
       大蔵省主税局税
       制第一課長    福田  進君
       厚生省児童家庭
       局家庭福祉課長  大泉 博子君
       厚生省保険局保
       険課長      渡辺 芳樹君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○私立学校教職員共済組合法等の一部を改正する
 法律案(第百二十九回国会内閣提出、第百三十
 一回国会衆議院送付)
○教育、文化及び学術に関する調査
 (児童の権利条約等に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(松浦孝治君) ただいまから文教委員会を開会いたします。
 私立学校教職員共済組合法等の一部を改正する法律案を議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。与謝野文部大臣。
#3
○国務大臣(与謝野馨君) このたび、政府から提出いたしました私立学校教職員共済組合法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容の概要を御説明申し上げます。
 私立学校教職員共済組合の給付については、共済組合設立以来、国公立学校の教職員に対する給付の水準との均衡を保つことを本旨とし、逐次改善が進められ、現在に至っております。
 今回は、最近における社会締済情勢にかんがみ、公的年金制度共通の措置として、厚生年金保険法及び国家公務員等共済組合法における改正に倣い、私立学校教職員共済組合法に基づく長期給付について、平均標準給与月額を改定する等の給付の改善を図るとともに、賞与等を標準として算定する長期給付に係る特別掛金を徴収する等の措置を講ずるほか、国家公務員等共済組合法の準用により六十歳以上六十五歳未満の者に支給する退職共済年金について段階的に報酬比例部分に相当する給付に移行させる措置を講ずる等所要の改正を行うため、この法律案を提出することとしたものであります。
 次に、この法律案の概要について申し上げます。
 第一に、掛金及び給付の算定の基礎となる標準給与の上下限を、下限については八万円から九万二千円に、上限については五十三万円から五十九万円に引き上げることといたしております。
 第二に、育児休業をしている組合員が組合に申し出をしたときは、当該組合員が負担すべき掛金を免除することといたしております。
 第三に、長期給付に要する費用に充てるため、新たに賞与等を標準として特別掛金を徴収することといたしております。
 第四に、年金額の改善を図るため、年金額の算定の基礎となる標準給与の月額について、いわゆる再評価を行うことといたしております。
 また、私立学校教職員共済組合法は、給付関係規定について国家公務員等共済組合法の関係規定を準用することとしております。
 したがいまして、別途今国会に提出されております国家公務員等共済組合法等の一部を改正する法律案における六十歳以上六十五歳未満の者に支給する退職共済年金の見直し、在職中の年金の一部支給の仕組みの改善、雇用保険法による基本手当と退職共済年金との調整、雇用保険法による高年齢雇用継続給付と退職共済年金との調整、退職共済年金の配偶者に係る加給年金の額の引き上げ等の年金額の改善、障害共済年金の失権時期の改善、退職共済年金の加給年金の対象となる子等の年齢要件の改善、遺族共済年金と退職共済年金に係る調整の改善及び短期在留外国人への脱退一時金の支給の措置については、これらの措置に関する国家公務員等共済組合法の規定を準用することにより、私立学校教職員共済組合法においても同様の措置を講ずることとしております。
 以上のほか、所要の規定の整備を行うことといたしております。
 最後に、この法律の施行日につきましては平成六年十月一日といたしておりますが、育児休業者に係る掛金の免除及び賞与等に係る特別掛金の徴収については平成七年四月一日とする寺といたしております。
 以上が、この法律案の提案の理由及び内容の概要であります。
 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださるようお願い申し上げます。
#4
○委員長(松浦孝治君) 次に、本案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員片岡武司君から説明を聴取いたします。片岡武司君。
#5
○衆議院議員(片岡武司君) 私立学校教職員共済組合法等の一部を改正する法律案に対する衆議院の修正につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 第一は、退職共済年金と雇用保険法による基本手当等との調整の実施時期を平成十年度からとし、必要な整理を行うこと。
 第二は、本法律案の施行日を公布の日に改めるとともに、第一の修正に伴う施行期日の修正を行うほか、平均標準給与月額の再評価については平成六年十月一日から適用することとする等施行期日等について所要の整理を行うこと。
 以上であります。
 何とぞ御賛同を賜りますようお願いいたします。
#6
○委員長(松浦孝治君) 以上で趣旨説明並びに衆議院における修正部分の説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次発言を願います。
#7
○木宮和彦君 ただいま文部大臣から、私立学校共済組合の一部改正案が提案されまして、趣旨説明が行われました。
 私は、まず最初に、本法案につきましては全面的に無論賛成でございますが、ただ知りたいことも若干ございますので、後半に後ほどお尋ね申し上げたいと思っております。
 その前に、こういう機会でございますので、きょうは大蔵省あるいは国税庁の方もいらっしゃっていると思いますので、二つだけお尋ねをいたしたいと思います。
 一つは、これは昨年の三月二十六日、当委員会におきまして刈田貞子議員が、私立大学の受託研究費に法人税を課するかどうかという問題を質問されました。その節、森山文部大臣が答弁されておりまして、文部省としては大学が多様な要請を受け入れて積極的に研究活動を展開していくために推進すべき制度と考えていると、こういう御答弁をされました。この趣旨が生かされているのか、その後の経過につきまして文部省にお伺いをいたしたいと思います。
#8
○政府委員(吉田茂君) 私立大学における受託研究の税制上の取り扱いでございますが、これは先生御案内のように、平成六年度の税制改正要望として改正の要望を行ったわけでございますが、これは結果として実現はしなかったわけでございます。
 さらに、平成六年の八月に私学関係団体から文部大臣に対しまして受託研究を非課税とするよう御要請がございまして、それを踏まえまして、平成七年度の税制改正要望として文部省から大蔵省に対しまして、私立大学の行う受託研究を非課税とするように現在要望を行っておるところでございます。
#9
○木宮和彦君 それでは、今度は大蔵省にお尋ねいたします。
 森山文部大臣がお答えになりましたが、その後で説明員の国税庁の濱田さんが、私立大学のいわゆる受託研究というものは請負業だと。これは法人税法施行令第五条の三十三の事業に該当する「事務処理の委託を受ける業」であると、こういうふうに答弁されている。だから、これは収益事業であるから税金を課するのは法としてはやむを得ない、こういう御答弁のようでございました。
 しかし、私よく考えていただきたいことは、まず教育事業そのものが、本来の目的がこれはサービス業でございまして、教育を行う受託業みたいなものでして、本体がそれをやっていて、しかもその本体に附属する研究、要するに受託研究費というものがそれに含まれないというのはどうも論理的にいっても非常におかしいんじゃないか。
 今までの事例は、学校法人会計基準がございますが、いわゆるこれは文部省令でございますが、会計基準にのっとらないでそれぞれの研究室でやっていたからこれは受託だというのか。あるいは、本来学校の帰属収入として全部入れて、その中で処理されていてもなおかつこれは学校以外の収益事業であるというぐあいに大蔵省はお考えなんですか。その辺ひとつお伺いしたいと思います。
#10
○説明員(福田進君) 先生が今御指摘のように、学校法人につきましては、公益的な活動を目的とする団体であるという点に配慮いたしまして、原則として課税しないこととしております。ただ、財団法人、社団法人、学校法人と同様でございますが、これらの公益法人でございましても、税法で言っておるところの一定の事業を行っている場合には、その事業から生ずる所得、これはあくまでも利益が出た場合でございますが、事業から利益が出ますれば、その利益、所得に対しては法人税をいただく、こういうことになっているわけでございます。
 御質問の学校法人の受託研究につきましても、これは請負業に該当するものとして課税されているわけでございます。なお、利益が出た場合でございましても、学校法人の場合には、御案内のように、その半分につきましてはこれは課税しない、無税で公益活動に充てることが認められております。
 さらに、法人税率、課税があると申し上げましたが、その法人税率につきましても、一般の法人の場合が基本税率でございます三七・五%であるのに対しまして、二七%とかなり大幅に軽減されているわけでございまして、このように特別の配慮がなされていることをまず御理解いただきたいと思います。
 なお、余談でございますが、学校法人の場合に、今申し上げましたように一定の請負業、委託研究でございますか、その場合に、事業を行っていただいて収益から費用を差し引いて利益が出ない場合には当然課税関係が発生いたしませんが、収益から費用を差し引いて利益、所得がある場合でございますので、それなりの御負担をしていただくのがむしろ当然ではないかと考えている次第でございます。
#11
○木宮和彦君 そうしますと、指定寄附というのがありますね。学校法人に対してある会社が指定寄附をする。ちゃんと、目的は経費でもいいんですから、振興会を通すなりして指定寄附というものをやった場合には、バイパスじゃないです、そこへ寄附をして、その範囲内で受託研究をやる。これは合法なんですか。
#12
○説明員(福田進君) 公益法人等に対する寄附金のうちで、広く一般に募集される、教育または科学の振興等公益の増進に寄与するための支出で緊急を要するものに充てられるということが確実でございまして、大蔵大臣が指定した場合には、これは先生御指摘のように、指定寄附金として法人からの寄附でございますと全額が損金に算入されます。個人の場合には一定の、基本的には所得の二五%という制限がございますが、損金に算入される、こういう取り扱いになっております。
#13
○木宮和彦君 文部大臣、私立大学のいわゆる研究、受託研究に限りませんが、これからは産学協同ということが盛んに言われるし、またそれをやらにゃいかぬ、国立てもやらにゃいかぬと私はそう思っているんです。
 税金だからそれは取る方に言わせれば当然だと思いますけれども、しかし、それによってそういう芽を摘んでしまうというようなことになりますと、将来それが何十倍、何百倍で税金に返ってくるんだから、私どもは政治家でございますので、そこら辺の見解をもう少し大きな目でもって、それに名をかりてどこかの議員さんが領収証を乱発して税金逃れ、そういうのは厳罰に処するべきだと思います。
 本来必要な先端産業であるとかあるいはその他委託産業、これから未解決の部分についての受託研究というのがあると思いますので、うまくいけばこれにこしたことはございませんが、まずくいくこともたくさんあるわけでございますので、その辺について文部大臣の御見解をちょっとお伺いいたしたいと思います。
#14
○国務大臣(与謝野馨君) 今お話がございましたのは、二種類のことを大蔵省から答弁されたんだろうと思います。
 一つは利益処分として物を寄附する、お金を寄附する場合と、経費として大学に支出する場合と、こういう二つのことを説明されたわけでございますが、先ほど高等教育局長からお話し申し上げましたように、私どもとしては大学でのいろいろな研究を進める上で、いろいろな受託研究等を含めまして、民間の資金が大学の研究等に潤沢に供給されるという税制上の仕組みもまた必要だと思っております。
 そういう意味で、平成七年度の税制改正要望におきましては、先ほど高等教育局長から御説明を申し上げましたような一定の優遇措置をするべきだということを目下財政当局に要望しているところでございます。
#15
○木宮和彦君 ぜひひとつ、この私立学校に対する研究につきまして、助成こそすれ、それによって受託研究で潤沢に金が回っても、それをいいかげんな使い方をしたんじゃこれはやっぱりとんでもない話で、これは税金をうんと取ってもらって結構だと思いますが、事研究に関してはひとつできるだけ、大目に見ろとは青いませんけれども、将来のことを考えて、やっぱりある程度振興していただきたいというのが私の考えでございます。
 次に、実はこの間、私の学校へ税務著が十年に一遍ですか、三年に一遍だか定期検査に参りました。大変結構なことだと大いに歓迎した、私は一回も立ち会いませんでしたけれども。それで、最後にいろいろ講評もいただきました。おおむね言うことないという話でございまして、私も大変喜んでおります。
 今の税務署はもうちゃんとしていまして、本会計には全然手をつけないで、PTAだとかあるいは生徒会だとか、もう一つ、補講といいまして、朝早く先生が来て、ボランティアのつもりで一生懸命朝一時間受験勉強をさせたり、午後も授業が終わってからやったり、こういうときに父兄が、ただやらせるのほかわいそうだから少しやってくれよと校長に金を集めてやって、それを校長がやった人に分けてあげる。大した金じゃない、一時間八百円ぐらいだと思いますが、それを見つけまして、これはすぐ税金をよこせというわけです。
 それはやりましたけれども、しかしそこまで、国家予算でほかに何兆円も変な金を使っているところもあるんですから、私はその辺はやっぱりある意味においては、大目に見ろとは言いませんけれども、これを本会計に入れますと校長の権限がなくなっちゃうし、やっている人も楽しみがないし、奥さんに対するへそくりもなくなっちゃうんで、これはもうちょっと税の処理の仕方について考えてもらいたいと、私はそう思います。
 それからもう一つ、これは私はどうしても許せないことなんですが、私の学校の教員あるいは職員の子女に対して、自分の学校へ来ると授業料を免除する。全部免除するわけじゃございません。五年までの人は、高等学校以下は授業料半分、入学金は四分の一。それから十年以上になると全額授業料はただにして入学金は半分だと。大学はまだその半分ずつだと。大学に行くときには半分しか免除しません。入学金も四分の一です、十年以上でも。これは幼稚園、小学校、中学校、私のところは一貫でずっと大学までありますので、そういう規定をつくってございます。
 ところが、それがいわゆる現物給与であって、これは所得とみなすといいますか、これは何でだと聞いたところが、要するに非課税所得につきまして所得税法の中の第九条に、「次に掲げる所得については、所得税を課さない。」と書いてある。「学資に充てるため給付される金品(給与その他対価の性質を有するものを除く。)」と書いてある。だから、おまえが来れば手供の授業料をただにしてやるからうちの学校へ来いというのなら話は別ですが、うちの学校へ来いとは言ってないんです。来たい人はどうぞ入れてあげますよと、中には落とす人もありますから。
 むしろ教員の子供が進んで自分の学校で学ぶということは、やはり対外的に学園の信用といいますか、自分の学校へよこさないような教師がいるようではこれは私は非常にまずい。こう言うと怒られますけれども、ちょっと怒らないでください。日教組の委員長とか幹部が私立学校へよこしたという例はたくさんあるんですよ、正直言って。それはやっぱり日本の教育のためにはよくない。自分のおやじの行っている学校にその子供を通わせる。信用して、うちの学校はいいんだからという、それがやはり私立学校が振興していくいわれだと思うのでございますが、これについてどうでございますか。
 もしそういうことが、本当に所得としてその先生からまた追徴するということになると、私は断じてこれは許せないと思うんですが、大蔵省のお考えをどうぞ。
#16
○説明員(福田進君) 今先生の御質問は、私立学校の職員の子女の方々がその職員、お父さん、お母さんの勤務される学校の学生さんで、その子供さんの授業料が免除されている場合に、その授業料に相当する部分を職員の給与所得として課税しておりますけれども、これを非課税にすべきではないかという御主張であればという前提でお答えいたしますが、お子様が学生でいるその職員につきまして、投薬料相当額の免除という経済的な利益を享受されているのはこれは客観的な事実でございます。また、授業料の免除は、その学生さんがその職員のお子さんであると、その理由でなされていることでございますから、その利益は給与そのものであるということになるわけでございます。
 このような利益になぜ課税しているかといいますと、逆に課税しない場合を考えますと、同じ所得を持っておられる方につきまして、学生さんがその職員の子供である場合とそうでない場合、所得が同じであるのに税負担にアンバランスが生じるということで、税負担の公平確保の面からこのような取り扱いをしているわけでございます。
 なお、先生の御指摘の点は、私が今御説明申し上げましたケースになるのか、それとも執行の段階でこの規定、先生御指摘の所得税法第九条の十四号でございますが、「学資に充てるため給付される金品(給与その他対価の性質を有するものを除く。)」、逆に言うと、これは所得税を課するということでございますが、「及び扶養義務者相互問において扶養義務を履行するため給付される金品」、これに該当するかどうかというその解釈の問題であるのか、そのどちらかだと思いますけれども、いずれにいたしましても、この法律の解釈としては私が今申し上げたとおりでございます。
#17
○木宮和彦君 解釈の問題だと私は思いはず。多分これは取られないと思います。もし取られるようだったら私は育英財団をつくりますよ。そうするとまた、文部省が特殊法人一つふえまして、今文部省だけで千七百ぐらいあるそうですが。要するにそういうことが、それじゃ合法的に上げるには仕方がない、常葉育英財団をつくって、そこへ寄附したり財界からもらって、そして子女も入れ、ほかのやつも入れ、スポーツのうまいやつも入れてと、こういうことにならざるを得ないんですよね。
 屋上屋というのはまさにこのことでございまして、やはりそこは、国税庁としては厳しく税金を取るのは大変結構なことでございますが、しかしその中において、やはりまだ若いですからね、福田さんみたいに立派な人ばっかりいないんで、若い人はきちょうめんにやっちゃうもんだからおかしくなっちゃうんですよね、世の中。ぜひひとつその点を御考慮に入れて、各現場の税務署にいろいろの面で指導を賜りますようにお願いいたします。どうぞ、それで結構でございますから。
 それでは次に、共済組合の今回の法律につきまして若干お尋ね申し上げたいと思います。
 きょうはたしか共済組合の方はお見えになっていないと思いますが、その所管である文部省の方に、間接的ではございますがお尋ね申し上げたいと思います。
 まず第一に、今回の法律につきましては、私は何の異議もございません。ただ、むしろ逆に、私立学校共済組合がこれからずっとうまく機能していくかどうかということを非常に私は心配をしている方で、応援団でございますので、その点を御理解いただきたいと思います。
 まず最初に、バブルがはじけちゃいましたので、二兆円ものいわゆる共済組合の年金の資金があると思いますが、その運用についてどのようにしていらっしゃるのか、現状はどうなっているのか、その辺をお伺いいたします。
#18
○政府委員(雨宮忠君) 長期経理の資産の運用状況についてのお尋ねでございます。
 委員から今御指摘のように、平成四年度決算におきます保有資産総額は二兆八十二億円ということでございます。
 その資産の構成でございますけれども、最も多いのが投資有価証券、それから信託、生命保険、私学振興財団への貸し付け等のいわゆる資産に相当するところでございまして、これが八六・三%ということでございます。それから、不動産関係につきましては四・四%ということでございます。また、それ以外の、不動産の取得以外の事業に対する貸付金、これが九・三%、こういうことでございまして、ほとんどがいわゆる保険、有価証券、預貯金等、こういうものの資産になっておるわけでございます。
#19
○木宮和彦君 この運用利回りについては、たしか文部省令で五・五を下回らないようにというそういう省令があったと思うんですが、今は銀行預金というのは非常に低いし、五・五が維持ができない場合もあるかもしれませんが、その対策は考えていらっしゃいますか。
#20
○政府委員(雨宮忠君) 今御指摘のように、運用利回りにつきまして五・五以上ということでございますが、平成四年度におきましてはその運用利回りは平均五・六九%ということでございます。
 ただいま御指摘の長期経理の総資産に対する資産の利率というものは、年五・五%を下回らない範囲内において運用しなければならないという規定になっているわけでございます。
#21
○木宮和彦君 時間もございませんので、なるべく簡単に御答弁願いたいと思います。
 次に、共済組合の一元化というのが今問題になっておりますが、その前に、被用者年金制度間の調整事業というのがございまして、言ってみれば、わかりやすい言葉で言えば、豊かな共済組合は貧乏な共済組合に金を融通するという、やっちゃうんですか、あれは。もらう方はいいですよね、鉄道共済、たばことか。ところが、出す方は、厚生年金、まあ厚生年金は定年も若いし、ある意味においては有利な年金だと思いますからこれはいいとしましても、私学共済などは幼稚園の先生みたいに零細な組合員が多いんですが、そこですら年間二十億円平成五年から六年にかけて拠出をしているわけでございますね。
 これは逆に言うと、ある意味においては、一生懸命節約、けちけちゃって、そして運用して自助努力したところが、自助努力しない、そう言うと怒られますが、国鉄にしてもその他の共済組合にしても、やめるときに二号も三号も上げて、それを基礎額にして年金を決めたりした、今はそんなことはないと思いますが、過去のそういうもののツケが今日に回っているような気がするんです。
 共済組合ですから、一元化も私は大事なことだし、またそこへやるのも結構なこと、国家的な要請もあると思うし当然なことだとは思いますけれども、しかし、やはり一面においては、みんな一緒にやれば、ちょうど赤信号みんなで通れば怖くないみたいなもので、ともかくそれは困るんで、やはりそれぞれの共済組合が自分で努力したものは自分の組合員のためになるという、そういう姿勢を貫いていくことがこれからやっぱり必要な気がしますが、その辺、文部省はどうお考えですか。
#22
○政府委員(雨宮忠君) 公的被用者年金制度の間におきましていろいろな差異があるわけでございますけれども、特に給付と負担の面でそれぞれそう大きな差異がないようにということで一元化を進めてきたわけでございます。
 それぞれの制度、それぞれの伝統なりあるいは経緯というものがあるわけでございますし、また今先生御指摘のようにそれぞれの制度の努力をしてきたという歴史もあるわけでございまして、今公的年金制度の一元化の問題につきましてはその懇談会におきまして種々検討をなされておるわけでございますけれども、それぞれの制度におきますそれらの要素というものも当然勘案されてしかるべきであろうというように考えておるところでございます。
#23
○木宮和彦君 ぜひひとつ、せっかく努力している共済組合には、文部省としても相当主張していただかないと、これはやはり困ったことだと思います。
 ところで、法律によりますと私学は全部加入することになっておりますが、まだ加入をしていない、あるいは拒んでいると言ってもいいですか、長期短期ともが二十九校で、短期のみが十四校、長期のみが四校、こういう実態がございます。その経過について、また将来の見通しについて、これは今さら入ってきてもらっても困るのかもしれませんけれども、その辺はどうなんですか。
#24
○政府委員(雨宮忠君) 御案内のように、私立学校教職員共済組合自体は昭和二十九年に発足をしたわけでございます。
 この法律の国会審議の過程におきまして、その当時既に厚生保年金あるいは健康保険との選択加入制ということが関係団体からも強く要望されておりました関係上、私学共済法の附則の上で、場合によっては選択加入してもよろしいという趣旨の規定が盛り込まれたわけでございます。そういう経緯を経まして、私立学校教職員共済組合に入らずに厚生年金または健康保険を選択する旨文部大臣に申し出た学校が百七十一校あったわけでございます。
 その後、私立学校教職員共済組合自体の発展と申しますか、そんなこともございまして、未加入校からやはり私立学校教職員共済組合に入りたいという希望等もございまして、それらの要請を受けて、約二十年後でございますけれども、昭和四十八年の第七十一回国会におきまして議員修正によりましてもう一度門戸を開くという措置がとられたわけでございまして、その措置によりまして百十二校が私学共済組合に新たに加入したわけでございます。しかし、委員御指摘のように、四十七校が依然として未加入のまま現在に残っておるという状況でございます。
#25
○木宮和彦君 この問題もいずれまた、例えば日本を代表する慶応だ早稲田だというのは入いってないんですよ。これは我々できると思ってやったんでしょうけれども、また逆に、いろんな自分の権益を侵されるということでやったと思いますけれども、この問題もやはり大いに反省してもらう、あるいはそれでもって突っぱねるか、これはやっぱり文部省の態度としてはしっかりしていただきたいと、私はそう思います。
 それから、共済組合には年金とかあるいは医療とかいうだけではなくて、いろんな業務がございます。サービス業務がございます。組合員の研修とかあるいは宿泊所いろいろございますが、この中の宿泊所の経理ですが、これは施設収入と保健経理からの受入金、恐らく赤字だからこれを受け入れたんだろうと思うんですが、それで支出の方は職員の給与と飲食材料費などがあると書いてありますが、これは黒字になっていますが、これは実際のところどうなんですか。宿泊所の民間的な損得計算をしたらどの程度赤字なのか黒字なのか、それはわかりますか。
#26
○政府委員(雨宮忠君) 私学共済におきます宿泊施設の経営状況についてのお尋ねでございます。
 現在、北海道、宮城、東京、それから愛知、大阪、広島、九州と七カ所にいわゆる私学共済の経営しております会館がございます。平成四年度の収支状況を見てまいりますと、そのうちで黒字になっておりますのが東京、大阪、広島の三つでございまして、残る四つが赤でございますが、合計いたしますと一応黒ということになっておりますけれども、委員御指摘のように、宿泊施設の経営につきましては今後楽観を許さないものがあるということは感じておるところでございます。
#27
○木宮和彦君 まだたくさん質問したいんですが、時間も参りましたようですのでこれで終わりますが、宿泊施設につきましても私は若干御意見具申し上げたい点もございます、ここでは申し上げませんが。いずれまた、できましたら共済組合の責任者と我々と懇談でもさせていただければ大変意義があるのではないかと思います。よろしくお願いいたします。
 終わります。
#28
○本岡昭次君 私学共済年金制度の改正について質疑を行う前に、今回の年金制度全体の改正に当たっての基本的な考え方について若干質問をさせていただきます。
 この年金改正のうたい文句は、二十一世紀の超高齢社会を活力ある長寿社会として人生八十年時代にふさわしい年金制度とする。いま一つは、六十歳引退社会から六十五歳現役社会へ移行させるということであります。このうたい文句なり基本的な考え方は私も異存はございません。しかし、改正の内容がそのとおりになっているかどうか。私が見る限り、まだまだ多くの問題を抱えておると考えます。抜本的な、理想的な改革となかなか言えないという状況であると認識をいたしております。
 そういう立場から、今回の年金改正は、人生八十年時代、六十歳引退社会から六十五歳現役社会の実現に向けての出発点である、これからが大変だという認識が必要であると考えますが、大臣の御認識を伺っておきます。
#29
○国務大臣(与謝野馨君) 今回の私学共済年金制度の改正は、被用者年金制度の中核でございます厚生年金保険法や国家公務員等共済組合法の改正措置に倣って講じるものでございまして、公的年金制度横並びの措置でございます。
 その改正の基本的視点は、第一には、二十一世紀を活力ある長寿社会にするため、高齢者の雇用の場の確保を初め、社会経済全体のあり方が問われている中で、年金制度もこれに対応し、人生八十年時代にふさわしいものに見直していくことにあります。第二には、高齢化社会、高齢化の進展に対応して、年金制度を長期的に安定させるため、給付と負担の均衡を図るとともに、将来の現役世代に過重な負担が生じないようにすることであるというふうに考えております。
#30
○本岡昭次君 私の尋ねましたのは、その中身は私が言ったわけで、そのことが完全にできている年金改正だと思っていない。要するに、そういう理想に向かってスタートを切った年金改革だと私は思うが大臣はどうですか、こう聞いておるんだから、そうであるのかないのかということをお答えいただいたらいいんですよ。
#31
○国務大臣(与謝野馨君) 当然今回の改正だけで事が済むものではございませんで、将来にわたって年金を安定したものにしていくためには、今後やはり幾多の工夫、改善をしていくことも必要になってくる場合がありますし、むしろそういう必要性に迫られるというふうに予想していくことの方が私は正しいのではないかと思っております。
#32
○本岡昭次君 もう少し積極的に年金問題に対する認識を持っていただきたいと思いますが、時間がありませんので、次の問題に入ります。
 六十歳引退社会から六十五歳現役社会へというこのうたい文句と私学共済の実態、今後の取り組みについて伺います。
 そこで、私学共済でありますが、現在の雇用の実態、六十五歳現役社会へというこの問題に向かって、私学共済に加入している学校の雇用の実態、特に定年制との関係はどうなっておりますか。
#33
○政府委員(雨宮忠君) 私立学校の定年の状況についてのお尋ねでございますが、平成四年初めに実施いたしました文部省調査によりますと、定年制を設けているものの割合でございますが、学校単位でいきますと七三・四%、それから教職員単位で見ますと九二・〇%という状況でございます。また、定年制の適用を受けている教職員全体の職種別の平均定年年齢は、教員が六十二・七歳、事務職員が六十二・二歳、平均で六十二・五歳ということになってございます。
 また、これを特に教員につきまして学校種別ごとの平均定年年齢ということで眺めてみますと、大学が六十六・四歳、短大が六十六・二歳、高校が六十二・二歳、幼稚園が五十七・一歳ということでございまして、いわゆる最多定年年齢は、大学、短大が六十五歳、そのほかが六十歳、こういう状況でございます。
#34
○本岡昭次君 資料を見ますと、私学共済に入っている組合員が四十三万一千三百三人、それから長期給付の年金掛金負担者は三十八万七千九百七十九人となっておりまして、その差が四万三千三百二十四人であります。このほとんどは国公立の学校で六十歳まで働いて定年退職後、国公共済制度、地方共済制度の組合員として年金を受給されながら私学に働いている六十歳を超えた教職員ではないかと私は推測をしております。
 また、今もお話にありましたように、私学の実態は既に六十五歳現役社会にもう移行しつつある実態であるというふうに見ております。今後、六十五歳現役社会の目標に向かって、各業種、他の雇用関係のところでかなり困難な状態があると思いますが、私学が全体的な六十五歳現役社会の先進的な取り組みで牽引車的な役割を私は果たせる実態にあるのではないかと思いますが、大臣の御認識を伺いたいと思います。
#35
○国務大臣(与謝野馨君) ただいま政府委員から御説明申し上げましたような状況でございますが、私立大学、短大の場合は高齢者の雇用の点では比較的恵まれた状況にあると言えるのではないかと考えております。しかしながら、高校以下の私立学校などの場合、まだまだ私学関係者の努力を求めていく必要があるのではないかと私は認識をしております。
 高年齢者の雇用機会の確保の問題は、文部省のみならず政府全体で取り組んでいかなければならない重要な事項であると認識をしております。
#36
○本岡昭次君 文部大臣が雇用関係の問題また定年制の問題を直接具体化していく立場にはないとわかっております。しかし、年金の責任者ということから、今おっしゃいましたような立場で六十五歳現役社会へのリードをお願いしたいと思います。
 それでは次に、遺族年金の併給調整について伺います。
 今回の年金改正では、女性の年金について一定の前進は見られております。しかし、決して十分ではありません。そこで、働く女性の年金権と遺族年金の併給調整の問題について伺いたいと考えています。
 私の地元から年金問題でいろいろ私に問い合わせが来るんですが、その多くが遺族年金の問題なんです。
 一つ例を言いますと、平成三年三月に公立幼稚園の園長を最後に五十五歳で退職された。この人は二十七年間掛金を払い続け、この時点で、わずかばかりではありますけれども自分の年金を受け取っておられた。ところが、平成四年九月に御主人が交通事故で亡くなられ、現役の小学校の校長だったんですが、その段階から自分の年金と夫の遺族年金のどちらを選択するかという羽目に陥りました。そして、この方は結局、自分の年金よりも夫の遺族年金を選択した方が多いので、夫の遺族年金十七万円を選択して現在生活しておられるんです。そこで、この方が、金額の多い少ないじゃなくて、自分の年金を放棄せざるを得なくなったことに納得ができない、悔しいと言って訴えておられます。
 この私学共済でも女性の年金問題でこういうことが起こる状況もかなりあると思うんですが、私学の共済を受給しておられる方で、自分の年金をもらわずに夫の遺族年金を選択しているという女性受給者はパーセントで言えばどのぐらいありますか。
#37
○政府委員(雨宮忠君) 私学共済の退職共済年金と遺族共済年金の両方の受給権を有している者でございますけれども、平成四年度末の数字では百五十一人ということでございますが、そのうち今先生おっしゃいましたように夫の方の遺族共済、夫の方のものの四分の三という方をむしろ選んだ者、これが百二十三人ということでございますので、八一%、八割強が遺族共済年金の方の受給を選択している、こういう状況でございます。
#38
○本岡昭次君 大臣にお伺いしたいんですが、感想で結構ですから。金額が多い方をとるというのはそれはそれでいいわけですが、自分の年金権を放棄して夫の遺族年金に頼らなければならない、選択する女性の気持ちというものがわかりますかというふうに私は尋ねられるんですよ。共働きをして、専業主婦と同じように育児、家事を全部こなして、そして一生懸命頑張って将来の年金生活に備えて年金の掛金を営々と掛けてきた。にもかかわらず、自分の年金を放棄せざるを得ぬというこのことですね。
 私も、気持ちはわかるけれども、制度がそうなっているから仕方がないだろうと、こう言うんですが、仕方がないでは済まぬと言われたときに非常に困るんで、それで、ぜひ一週質問のときに大臣にその気持ちを聞いてくれと、こう言うんです。私は、その悔しさはわかります、だからそれを解決するには何かいい方法があるか考えてみますと言っておるんですが、どうですか、大臣、やっぱりこういう自分の年金権を放棄せざるを得なかったというこの女性の気持ちがまずわかるところからこの問題の解決のスタートをせないかぬと私は思うんですが、ちょっと大臣のお考えを。
#39
○国務大臣(与謝野馨君) 詳しくは政府委員から答弁いたさせますが、本岡先生のところにそういうお話をされに来られた女性の方のお気持ちは私は十分過ぎるほどわかりますし、特にその女性御自身が掛金を掛けていた実績というものがあるわけでございますので、そういう気持ちに当然なるであろうということは十分過ぎるほど理解をすることができます。
#40
○本岡昭次君 そこで、そういう気持ちを酌んだ形であろうと思います。今回の改正で遺族年金に新しい選択項目が追加されたということになっておりますね。それは、自分の基礎年金と自分の退職共済年金の二分の一に夫の退職共済年金の二分の一を合算した額を新しく選択できますということで、AかBかCかということになりましたね。この場合、夫の退職共済年金の二分の一より自分の退職共済年金の方が多い場合は、夫の遺族年金選択より有利だというふうに資料にはなっております。
 そこで、現に夫の遺族年金を受給されている方が先ほど言ったように八十何%かおられるということですが、その方たちが新しい併給措置、自分の退職共済年金の二分の一、それから夫の退職共済年金の二分の一というものを合算して自分の基礎年金と合わせたときは、例えば私学共済の場合は前の遺族年金よりもほとんどの人が多くなりますか、実態として。細かいことはよろしい、おおよそのことでよろしい。
#41
○政府委員(雨宮忠君) 今先生御指摘のように、新たに第三の選択肢が設けられたわけでございまして、それはどういう場合に有効かと申しますと、今先生も御説明がございましたように、妻の平均標準給与の額が夫の平均標準給与の額よりは低いけれども、夫の平均標準給与の二分の一未満にはなっていない場合、言いかえますと、夫の方が妻よりは多いけれども妻の二倍以上ではないという、そういう状況のときに第三の選択肢が有効になってくるということでございます。
 これが私学共済の場合に具体にどの程度働くかということについては、まだ私ども具体のデータを持っておりません。
#42
○本岡昭次君 私も試算してみたんです。先ほど言いました十七万という人は、これによると十八万円になるんではないかというふうなことで、大体一、二万円ふえるというふうに理解して間違いありませんか。
#43
○政府委員(雨宮忠君) おっしゃる程度かと思います。
#44
○本岡昭次君 そこで、新しい措置を選択の一つに加えた理由は何ですか、一言で言って。
#45
○政府委員(雨宮忠君) 今回の改正案の思想は、委員の御指摘にもございましたけれども、共働き世帯が増しつつあるという状況の中で、女性が共済に長年加入してきているという加入実績を年金額に反映させる、その道を一つ余計に開くというところに思想があろうかということでございます。
#46
○本岡昭次君 それであるならば、二分の一というふうにここでされているわけですが、そうした金額を三分の二にするとか四分の三にするということは、物の考え方として別に不合理ということにはならないですね。
#47
○政府委員(雨宮忠君) ちょっと表現が難しゅうございますけれども、白紙の議論としてどういう併給をするかということにつきましては、いろんな考え方があろうかと思うわけでございまして、今本岡先生が御指摘のような選択も全くないわけではないかとは思います。
 ただし、昭和六十年の大きな年金改革におきまして、一人一年金という思想をもちまして、一人が複数の種類の年金を同時に受けるということはやめようではないかということで年金改革が行われてきているわけでございます。これにはもちろん、基本的には年金財政が厳しくなってきているという状況が背景にあるわけでございます。したがいまして、そういう全体の流れからいたしますと、今先生がおっしゃいました四分の玉とか、あるいは三分の一とかという選択というのはなかなかとりにくいのではなかろうかというように考えております。
#48
○本岡昭次君 だから、二分の一ということで自分の年金の中からも受給できるようになったという点は、考え方の点からも金額の上からも改善であると実態的に私も評価します。
 そこで、それで十分かということを私は申し上げているわけです。一人一年金という考え方をどんどん遂行していく立場で物事を考えていくのか、あるいはまた年金を受給する金額を少しでも多くしていくための方法論としてそういうことが考えられているのか、それからまた財源との関連なのか、いろいろ複雑な関係が私はあろうかと思いますが、もし一人一年金ということを遂行していくならば、共働きの主婦の対極にある専業主婦の年金の問題をきっちり整理しなければ、一人一年金の問題というのは解決しないと私は思うんです。
 だから、そこは非常に複雑に絡みながら、これからこの問題の解決に向かって時間をかけて関係する方の納得と合意を得ていかなければならぬと思います。年金の中で、心理的な面において、また金額的な面において不平等、格差というものを意識しながら生きていく高齢社会というのは、これはもう暗い、嫌な社会になると思いますからね。
 そこで、その二分の一ということを私は自分なりの試算で四分の三とした場合に金額的に一体どうなるのかというと、その場合はさらに二万円程度ふえて、十七万円と先ほど言った方であれば二十万円の年金をもらえるということになる。しかし、それは本人の個人の年金よりも多くなるんですね、その場合は。
 そうしたときに一人一年金としていかがなものかという理屈が、自分の年金と遺族年金を依然としてやっぱりもらうんだというシステムの中でいく。しかし、その前提は、女性が働いた場合には男性の賃金のいつも二分の一くらいしかない、そして年金の受給額が低いから絶えず遺族年金の対象になるんだというそこのところの問題の解決が依然としてできないわけで、実態の関係で本当に難しい問題だと私は思うんです。
 だけれども、難しくともこれは、女性が自立して働き、そして結婚し子供を産み育てるということと年金という問題、そうでない人との関係をどうするかということは幾ら難しくとも解決に向かって頑張らなければならぬ問題ではないかと私は思っているわけです。
 私学共済の対象者は先ほど聞きますと非常に少ないようでございますけれども、私学共済は私学共済なりに、実態の中からどうすることが一番いいのかという問題についての検討を今後なお一層進めていただけたらということを私は思っておりますので、大臣にひとつ御感想をいただいて、この質問は一応終わりたいと思うんです。
#49
○国務大臣(与謝野馨君) 本岡先生の御指摘は非常に私は正しいのではないかと思いますが、今回の改正は一歩前進であるという点で御評価をいただきたいと考えております。
#50
○本岡昭次君 また機会を見まして、この問題を私自身もどうしたらいいかということをきちっと考えて、そしてそれを政策的に提示して、またこの場で論議をしてみたいと、こう思っております。
 それで、この年金改正と直接関係がないのかもしれませんが、次の点を質問いたします。
 それは、遺族年金の受給額と政管健康保険被扶養者認定基準の問題なんです。これは一方が改善されれば必ずそういう税金だとか、社会保険の被扶養者になるのかならぬのかという問題がいつも絡んできます。そういう点であります。
 そこで、これも一つの実例であります。
 七十二歳になられる遺族年金受給者が、これは私学共済ではありませんが、現在遺族年金を月額十四万二千八百三十三円受給しています。ところが、これが月額十五万円、年百八十万円になると息子さんの健康保険の被扶養者から外されてしまうと、これは政管健保の被扶養者になっているわけですが。この十四万二千八百三十三円というのはもうぎりぎりのところで、十五万円に達すると、そうした高齢者の方が被扶養者から外されて、そして自分で国民健康保険に掛けていかなければならぬというようなことになるようです。
 この百八十万円という上限ですが、年金額が上がるにつれてこれも今後百九十万円、二百万円というふうに上げていく関係にあるのか、いやもうこの百八十万円は上限で、そこを越せば自分で国民健康保険に入ってくださいというふうに割り切っていこうというのか。これはずっと続いていきますよね、改善の問題と。ここはどうですか、お考えを聞かせてください。
#51
○説明員(渡辺芳樹君) 先生御指摘の点につきましてお答えを申し上げます。
 健康保険における被扶養者というのは、被保険者によって主として生計を維持されているということを法律上の要件として各保険者が認定するというのが基本ルールでございますが、この被扶養者の認定基準というのは実際の収入に着目して判断をしていただくことにしております。その際、現在は一般の被扶養者の方の場合には真二十万円未満、六十五歳以上の方などについては百八十万円未満、こういうふうに現時点でなってございます。そのあたりが今御指摘の点だと思います。
 先生御指摘のように、今後の年金額の上昇、あるいはいろいろな雇用保険の動向、あるいは国家公務員給与の動向等、あるいは税制も含めてでございますが、この問題については関連する諸制度が非常に多うございますけれども、それらの動向を見て、また関係審議会や関係者の方々の御意見を聞きながら、その額のあり方について見直すべきときは見直していくというのが今までのルールでございます。
 本日の時点で申し上げますと、直ちに現在のこの百二十万円、百八十万円というルールを引き上げるというような予定は、現時点ではまだございません。この点よろしくお願いします。
#52
○本岡昭次君 大体わかりましたが、六十五歳未満の方はわかるんですけれども、もう年金生活に入った方が年金が改善されることによって上がっていく。しかも、働くということはほとんどもう不可能で年金のみに頼っている人の収入と、他から収入を得ていて金額を超すという場合と、国が社会保障的に物を見ていく場合は考え方をそこは少し弾力的に私は運用してもいいんじゃないかというふうに思うんです。株券を持っていてその利子があるとか、そのほかの収入を得て百八十万円を超える、年金そのものだけがその上限を突破するという場合に、果たしてそういう機械的なことでいいのかということを私は強く思いますので、そういう弾力的運用問題をぜひとも省内で検討していただきたいということを強く要望しておきます。
#53
○説明員(渡辺芳樹君) 若干お時間あるようでございますから、失礼いたします。
 この被扶養者のあり方、認定基準の問題につきましては、私ども国会の質疑の中での与野党のいろいろな御要請もございまして、平成四年度に特にパート労働者を中心としての検討会を省内に設けさせていただいて勉強させていただいたことがございます。そのときも関係諸団体の代表など、学識経験者を含めて御審議いただいたわけでございますが、結論から申し上げますと、特定の方向を得ることが非常に難しい問題だと。したがって、やはり諸般の情勢をよく見ながら引き続き検討し、見直すべきときに見直せというような、大変難しい宿題を最後にいただいたところでございます。
 と申しますのも、その背景といたしまして、今先生御指摘のように、高齢者、年金受給者の被扶養者の認定基準の問題と、それから若年の被扶養者の認定基準の問題、本当に全部仕分けして別々に考えていいのかどうかという点が一つございます。
 それから、そもそも若年者まで含めて考えますと、例えば低所得の被保険者という方々が政管健保の中にも国民健康保険の中にもたくさんございまして、パート問題も視野に入れながら考えると、むしろ社会保険を適用していく、被保険者にしていくということの方が正しいのではないかという御意見もいただいております。一方、あるところまで所得が上がったら急に変わるという点もこれは問題だと。このあたりをどのようにとらえていくかというのはやはりそのときそのときの度重な審議が必要ではないかというような御意見だったように思われます。
 そういう面で、私どもも諸般の情勢を見ながらこの問題について引き続き検討しておりますが、先生の御指摘も踏まえて、特に具体の、個別のケースでどういうような扱いがよいのかという点については改めて勉強させていただくということにしたいと思っております。
#54
○本岡昭次君 もう時間が来ましたので、一言大臣にお願いを申し上げて終わります。
 私が初めに言いましたように、やっぱり人生八十年時代、そして超高齢社会、これを本当に活力あるものに、豊かなものにしていくということは年金だけではだめでありまして、医療の問題そしてまた介護の問題等々で総合的に福祉全体を向上させていかなければならぬわけであります。大臣も閣僚の一人として、この年金改正を契機にひとつ積極的な対応を要望いたしまして、私の質問を終わります。
#55
○木暮山人君 新緑風会の木暮でございます。
 初めに、今回の法案は私学教職員を初め関係者にとって大変関心のある事柄が盛り込まれていると思いますが、この法案を取りまとめるに当たりまして、文部省として私学関係者の意見等をいろいろと聴取なさったかなさらなかったか、また聴取したその内容等についてどんな問題があったかお伺いしたいと思います。
#56
○政府委員(雨宮忠君) 今回の法案の作成に至る手続についてのお尋ねでございます。
 今回の法案の作成に当たりましては、文部省の中に設けられております私学共済年金研究会、これは平成三年度から設けられたものでございますが、学識経験者、学校法人関係者それから組合員関係者で構成されたものでございますが、その研究会の意見を聞くとともに、私学共済組合の運営審議会、これは法令上の審議会でございますが、この審議会、それから関係団体といたしまして全私学連合の事務局長会議等に出向きまして、説明を行いまして意見を聞いておるわけでございます。
 私どもといたしまして、全体として御理解をいただけたものと、こういうように理解しておるものでございます。
#57
○木暮山人君 その内容について何か具体的にひとつお話し願えればと思いますが。
#58
○政府委員(雨宮忠君) 多くの議論といたしましては、改正法案の内容、どういう改正を行おうとしているかという質疑が中心でございました。
 全体の空気といたしましては、年金制度の長期的な安定、それから他の年金制度とのバランスの問題等々から、給付の問題、それから負担の問題それぞれかかわってございますけれども、今回いずれにつきましてもやむを得ないのではないかということとして理解をいただいたものというように理解しておるわけでございます。
#59
○木暮山人君 もう一つそこに関連させていただきまして、これはやっぱり年金とかこういうものに関しましては、今現在の作業のやり方としていろいろとシミュレーションをやってみるのも一つの方法じゃないかと思うのでございます。そういう問題等をきっとおやりになったかと思うんですが、先ほど本岡先生が御質問なさった内容等においても、五年後、十年後、それはよくわからないよというけれども、一応何かそういうものに対してシミュレーションをやった結果、確固としてこれはいいよというようなことに結論が出てこの法案をつくったものか、そこら込もう一つ関連して御答弁願いたいと思います。
#60
○政府委員(雨宮忠君) もともと今回五年に一度の財政再計算期に当たっているという要素が一つあるわけでございまして、ここに至ります社会経済情勢の変化、例えば賃金の上昇でありますとかそういうようないろいろな要素の変化を勘案し、また高齢化というような今後の年金財政に及ぼす影響等々も勘案いたしまして、新たな掛金の負担あるいは給付内容というものはどうあるべきかということにつきまして種々勘案した上での法案ということでございます。
 シミュレーションというお言葉がございましたけれども、具体にどこまで確定的な形で行えるかというのはなかなか難しい問題でございますけれども、それぞれの要素につきましてできるだけ的確な見通しの上に立った推測に基づいての考えに従ったというように考えておるわけでございます。
#61
○木暮山人君 どうもありがとうございます。
 次に、制度改正の具体的内容についてお伺いしたいと思います。
 年金額の改正措置の一環であると言われる標準給与の再評価について、従来の名目賃金の上昇率から実質賃金の上昇率を基準とすることとしているが、年金受給者にとっては受給額のふえる従来方式の方がよいものと考えられる。この点についてはどんなお考えでございましょうか。
#62
○政府委員(雨宮忠君) 率直に申しまして、先生御指摘のように、年金を受ける立場からいたしますと従来方式の方が有利でございます。
 ただし、今回あえてこのような案にいたしておりますのは現役世代というものが掛金を負担していて、それが現在の受給世代を支えておるという構造の中で、現役世代の名目賃金の上昇率を支給額の上昇ということにそのままの形で反映させるのがいいのかどうか。これはもちろん年金財政自体がだんだん厳しさを増してきているという背景があるわけでございますけれども、そのことにつきまして、やはり保険料負担でありますとかあるいは税金の負担でありますとか、今後決して軽くはならない。そういう状況の中で、むしろ現役世代の可処分所得というものに着目して年金給付の水準というものを考えていく方が適当ではないか、こういう考え方に従って、従来方式を変えまして実質、いわゆるネット所得というものをもとにして再評価はじょう、こういう考え方になっているわけでございます。
#63
○木暮山人君 今回の改正は、年金額の増額改定を初めとして今後組合員の掛金負担にも影響を及ぼすものと考えられます。この改正によって果たして掛金率はどのようになるのか、また私学共済の年金財政自体が将来どのようになるのか、ひとつ見通し等をお伺いしたいと思います。
#64
○政府委員(雨宮忠君) 私学共済の財政再計算によります掛金率の改定時期は来年の四月を予定しておるわけでございます。現在、その日程をもとにしまして新たな掛金率の改定ということに向けての作業をしておるところでございます。したがって、現時点でまだ作業中でございますので具体の数字を申し上げることは差し控えたいと思うわけでございます。
 しかし、前回、ちょうど五年前でございますけれども、掛金率の引き上げ幅が千分の十六であったということでございまして、全体の高齢化の状況あるいは年金財政の状況等から考えまして、余り具体に申し上げることは控えたいとは思いますけれども、その千分の十六からそう遠い数字に落ちつくということは考えにくいのではないかということでございます。
#65
○木暮山人君 負担面の点でもう一点お伺いいたします。
 今回の改正で新たに設けられるボーナスを対象とした特別掛金についてでありますが、特別掛金の率は政令で定める範囲内において定款で定める割合としているのは何ゆえですか。また、これらの具体的な率はどのようになるのか、ひとつお伺いしたいと思います。
#66
○政府委員(雨宮忠君) とういう形で掛金率を定めるかということにつきましては、他の共済制度と同様の仕組みをとっておるということでございます。
#67
○木暮山人君 次に、制度の改正項目のうち外国人への一時金の支給措置について質問したいと思います。
 まず、この外国人への脱退一時金制度の創設の趣旨はどのようなものなのかお伺いしておきたいと思います。
#68
○政府委員(雨宮忠君) 日本におりまして仕事をしておる外国人の方が大勢いらっしゃるわけでございます。外国人の脱退一時金制度というものを今回設けようとしているわけでございますけれども、これは公的年金制度共通の問題として従来からあったわけでございます。日本に短期間在留する外国人につきまして、例えばある企業に勤めて厚生年金に加入して掛金を払っている、しかし短期間の在留の後に帰ってしまうということによって受給資格をそのままなくしてしまって、いわば掛金が掛け捨ての状況になるという、そういう状況に対しまして何とかならないかということに対する暫定的なと申しますか、一つの解決策として出てきたわけでございます。
 これは、具体には組合員期間が六カ月以上で日本国籍を有しない方でありまして、組合員期間などが二十五年未満である者に請求によって脱退一時金を支給する。この請求は戻ってから二年以内ということでいいわけでございますけれども、それらの方々に脱退一時金という形での一時金を支給する、こういうものでございます。
 脱退一時金の額自体は、その方の組合員期間に応じまして、その期間の平均標準給与月額にそれぞれの組合員期間のくくりに応じました率を適用いたしまして算出したものを支給する、こういう仕組みでございます。
#69
○木暮山人君 それで、現在私学の教職員としてどのぐらいの人数の外国人が勤務しているか、その実態等について御存じでしたらお伺いしたいと思います。
#70
○政府委員(雨宮忠君) 文部省で調査いたしましたところでは、私立学校の教職員としまして現在約四千五百人の外国人の方が在籍しているものというように承知しておるわけでございます。ただし、それらの方々のすべてが今回の脱退一時金の対象になるかどうかということでございますけれども、四千五百人のうちの何割かの方々は日本に永住が見込まれているという方も含まれておりまして、すべての方々がその脱退一時金の対象になるということには必ずしもならないということでございますが、かなりの外国人の方々が対象になり得るということでございます。
#71
○木暮山人君 その四千五百人の外国人、それは結構なのでありますけれども、いろいろそのランクがあると思うんです、永住する方と五年ぐらいで帰る方と二年ぐらいの方、また短期間でお帰りになる方。そこら辺はどんなふうになっておるのかということと、もう一つ、どこの国から一番たくさん来ておいでになるか、そこら辺がわかりましたら。わからなかったら結構であります。
#72
○政府委員(雨宮忠君) 滞在期間別のデータは現在持ち合わせてございませんけれども、国別の数字で申し上げますと、四千五百人のうらで最も多いのがアメリカでございまして約千五百人、それからその次が韓国等の方々でございまして約一千四百人でございます。あとイギリス、中国、カナダ等々の国でございます。
#73
○木暮山人君 どうもありがとうございました。
 外国人への脱退一時金制度は、これまでの掛け捨ての状況から大きな前進が図られたものと考えられます。やはり抜本的な解決のためには、我が国と外国との年金の相互通算の仕組みが必要と考えられます。私学共済のみの問題ではないが、文部省としては今後どのようにこれを考えておいでになられるのか、お伺いしたいと思います。
#74
○政府委員(雨宮忠君) 非常に大きな問題でございまして、先生も今御指摘のように文部省限りでどうこうということではございませんが、確かに国際間の年金上の通算と申しますか、適用関係がスムーズにいくというのは非常に重要なことでございます。本来ならば、先生御指摘のように、二国間あるいは多国間で国際的な年金の一種の通算協定のようなものがあるというのが多分理想的なんだろうかと思うわけでございます。
 まだ日本とどこかの国との間でそのような協定というのは結ばれておらないわけでございまして、年金制度の差異その他の要因が絡んでおることかと思うわけでございますけれども、厚生省を中心としました年金通算協定に関する検討状況、各国との折衝の状況等を見守りながら、その検討の過程で文部省といたしましても適切に対処してまいりたい、かように考えておるところでございます。
#75
○木暮山人君 普通、学生の単位の問題とかそういう問題については今相当進んでおりまして、外国の単位が国内にも通用してきておりますが、この年金とかそういう相互の通算の問題等について実際に話は今起きておりますか。それとも、全然何もなくて今からというふうなところですか、お伺いしたいと思います。
#76
○政府委員(雨宮忠君) 厚生省から仄聞したところでございますけれども、いっとき西ドイツとの間でできかかったというぐらいに話が詰まった状況もあったやに聞いておるわけでございますが、ドイツ国内での東ドイツとの統合というようなことがございまして、その後動いていないというような状況を承知しております。
#77
○木暮山人君 次に、今回の制度改正のほかに、私学共済年金保制度を取り巻く重要な問題として年金制度の一元化の問題があります。昭和二十九年に創設された私学共済組合は、加入学校数並びに組合員数ともに順調に伸びてきているところであり、現在では他の年金制度と比較して最も安定した制度と聞いております。この私学共済の存作意義についてどのように認識しておられるのか、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
#78
○国務大臣(与謝野馨君) 先生御高承のとおり、我が国の学校教育におきましては私立学校は極めて重要な役割を担っております。私立学校の教職員が安んじてその職員を果たすためには、これらの教職員に対する福利厚生制度を整備することが必要であることは言うをまちません。このため、教員は全体の奉仕者であり、その身分は尊重され、その待遇の適正が期せられなければならないとの教育基本法第六条の趣旨に基づき、国公立学校教職員の共済制度との均衡に配慮して昭和二十九年に私学共済組合が設立されたところであります。
 私学共済組合は、設立以来逐次教職員の福利厚生の充実に努めてきたところであり、このことにより私立学校教育ひいては我が国の学校教育の振興に大きく寄与してきたものと認識をしております。
#79
○木暮山人君 どうもありがとうございました。
 最後に、私ども、私学共済は各種の福祉事業を実施していると聞いておりますが、現役組合員の理解を得るためにも福祉事業について今後さらに充実すべきであると考えますが、文部省の考え方についてひとつ御意見をお伺いしたいと思います。
#80
○政府委員(雨宮忠君) 私立学校教職員共済組合におきましては大きく分けまして三つの事業を実施しておるわけでございまして、いわゆる健康保険に相当します短期給付の事業、それから厚生年金に相当する長期給付の事業、それに加えまして各種の福祉事業を実施しているわけでございます。
 現在実施しております福祉事業といたしましては、一つは組合員の保健を目的とします保健事業、例えば人間ドックの実施などがその例でございます。また、先ほどもお尋ねがございましたけれども、宿泊所の経常に関します宿泊事業も実施しております。それから、台東区の下谷に病院を持っておりますけれども、病院施設の運営に関する医療事業、それから組合員の貯金の受け入れあるいは積立共済年金に関します貯金事業も実施しておるわけでございます。また、例えば組合員が住宅を取得しようという場合の住宅貸付事業など、一定の事由に相当した場合の貸付事業というようなことなどを福祉事業として実施しているわけでございます。
 先生今御指摘のように、各種の多様な福祉事業あるいはサービスというものを提供するということによって現役の組合員の理解がより深まるということもございます。そもそもそれがまた共済組合の目的でもあるわけでございますけれども、現在掛金を払っている組合員の福利厚生を図るという上で福祉事業というのは大変重要なものでございまして、今後とも充実が必要であろう、かように認識しておるところでございます。
 福祉事業につきましては、多様でかつ量的にも質的にもよいものが提供されるというのがもちろん一番いいわけでございます。ただし、それもまた学校法人あるいは組合員の掛金で負担されるということになっておる関係上、おのずと限界もあるわけでございますけれども、その範囲内でできるだけの充実に努力するのが適当であろう、かように考えておるところでございます。
#81
○木暮山人君 時間でございますから質問をこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
#82
○及川順郎君 今回の法改正につきましては、これは提案のときから私たちもこの水準まではということで一緒に作業し勉強してきた経緯がございまして、一歩前進でこの内容については異論を持つものではございませんけれども、若干関連で明らかにしなければならぬ点につきまして時間の許す限り質問をさせていただきたいと存じます。
 今回の年金法改正にかかわる論議、衆議院からの論議をずっと見ておりまして、基礎年金の部分で、つまり国庫負担率を現行三分の一から二分の一へ段階的に何とか引き上げていくべしという思いの中には、その主な理由といたしまして年金財政の長期的安定が一つあったと思います。それからもう一つは、やはり超高齢化社会に向けて、言うなれば年金制度への不安、将来どうなっていくのかというものに対する不安がある。この不安というものを被保険者の気持ちから除去して年金制度に対する信頼の確保が必要である、こういう考え方があったわけでございます。
 この基本的な理由の底流にあるものというのは、基礎年金の部分だけではなくて一階の上に乗せられる比例部分ですね、この部分においても無縁ではない時代的要因といいますか、制度に課せられた要因であるというぐあいに私ども受けとめておるわけでございます。
 この私学共済年金の設立の趣旨にかんがみますと、非常に今日までの御努力もありまして潤沢に運営がなされている。こういう状況はあるんですけれども、今申し上げました長期的財政の安定化、さらにはまた年金制度への信頼確保という観点から、この共済の年金受給者に対してその所管である文部省としましてどのような姿勢で臨んでおるのか、この点についてまず御質問をさせていただきたいと思います。
#83
○政府委員(雨宮忠君) 私学共済の現状でございますけれども、組合員数、これは長期給付分掛金を負担しておる者に限って申しますと約三十九万人、年金の受給者数が約三万人ということでございまして、組合員数を母数としたいわゆる成熟度、これが八・六%ということでございまして、他の公的年金制度に比較いたしまして成熟度が大変低いということでございます。したがって、それだけ比較的ゆとりがまだあるということでございます。
 また、積立金につきましても約二兆円の積立金を持っておるという状況でございまして、これらの状況を反映いたしまして、長期給付にかかります本人負担の掛金率が現在千分の五十九という状況でございます。本人負担はそういうことでございますけれども、これが他の例えは厚生年金保険ということになりますと、事業主負担を合わせまして保険料率が一四・五%というようなことと比べましてもかなり良好な財政状況であるというのが基本的に言えようかと思うわけでございます。
 しかしながら、組合員数の規模ということを考えますと、ここ五年、非常に大ざっぱに申しまして一年間に約一万人程度ずつ組合員数がふえておるという実態があるわけでございまして、こういう伸びというものが私学共済組合のいわば若さを支えておるという側面があるわけでございます。しかし、今後いわゆる少子化というようなことで児童生徒数もどんどん減りつつあるわけでございますし、それは当然組合員数の規模ということにも影響いたしますし、また私学経営あるいは私学教職員の報酬等の勤務条件というものにも影響してくるわけでございます。
 今後、将来のことを考えますと必ずしも楽観をしているわけにはまいらないわけでございまして、将来の負担ということを考えますと、やはりできるだけ現役世代でなし得る負担、これも他の年金制度に比べて必ずしも多くはないわけでございますけれども、なし得る負担、適切な負担というものを求めつつ、私学共済年金の財政の健全化というものは今後ともよほど注意していかないとぐあい悪い状況になるのではないか、かように考えておるところでございます。
#84
○及川順郎君 今の御答弁の中で、少子化、生徒数の減少が一方であって、それで一方では教職員がふえているというんですね。この状況というのは、普通は生徒数が減っていけば教職員はそれなりに減少傾向を示していくという常識的な考え方になるんですけれども、この現象をどういうぐあいにごらんになっておりますか。片方は減っているのに片方はふえている。
#85
○政府委員(雨宮忠君) 私どもといたしましては、例えば高等教育機関を例にとりますと、現在でも十八歳人口は減りつつございますけれども、私立の高等教育機関についての新たな設置というものはまだあるわけでございます。また、幼稚園段階におきましても、三歳児の幼稚園教育というレベルにおきましてもまだ拡充されつつあるというような状況がございます。
 そんなことで、少子化が直ちにそのまま減少ということにまだつながつてはおらないわけでございますが、いずれこれは響いてくるのではなかろうか。高等教育機関の学生定員の問題につきましても、今までずっと拡充あるいは拡大が図られてきたこと、それが今後とも続くであろうとはやはり考えにくいだろうというように考えておるところでございます。
#86
○及川順郎君 それから、今回の上昇率ですけれども、平成元年度水準に比べて報酬比例部分が一六%、それから物価スライドに対して実質的なアップ率は三・四%という状況の数値が示されているんですけれども、基礎部分を含めまして、年金受給者にとりましては、言うなればパーセントで言われるより金額的に実質とのぐらいになるのかなという、こういう方が非常にわかりいいんじゃないかというような思いがするわけですけれども、実際に受給者が年金を受けるトータルな面で金額的に比較しますとどのぐらいになりますか。
#87
○政府委員(雨宮忠君) 最近年金を受け始めた男子の平均的なケースで見てみますと、例でございますけれども、平成五年度二十一万五百円という支給を受けていた者が、今年四月からの物価スライドで一・三%アップいたしまして二十一万三千三百円という数字になります。これが、本年十月からの、これは本法律が公布されて施行されたということを前提に考えるわけでございますけれども、法律改正措置によりまして三・九%アップの二十二万一千六百円という数字になろうかと思うわけでございます。
#88
○及川順郎君 それから、先ほど来お話が出ておりますけれども、運用面においては非常に成績がいいわけですね。共済組合の状況を今までのデータで見てみますと、公的年金として厚生年金、国家公務員等の共済組合につきましては連合会や日本鉄道、日本電信電話、日本たばこ、さらには地方公務員共済組合等と比較をしてみまして、いただきました資料で私の方でちょっと計算してみたんですけれども、収入総額に対する運用収入でございますが、私学共済の場合とほかの方を比べますと、例えてみるならば、厚生年金は一五・六%、それから国家公務員、連合会だけを出してみますと一五・六%、地方公務員共済で二二・一%、これに対して私学共済は三二・一%ですね。保険料収入に対する運用収入、それから年金給付費に対する運用収入を見ましても非常にダントツで私学共済はいいわけです。
 自助努力ということが先ほど来のお話でございますが、具体的にこういう面で力点を置いてこのような結果が出ているという、こういう御説明ができますか。
#89
○政府委員(雨宮忠君) 具体にということになりますと種々の方策を有効にとってきたということになろうかと思うわけでございますけれども、やはり基本的には私立学校教職員共済組合がまだ発展段階にあると申しますか、伸び盛りにあるという状況が背景になっているのではなかろうかというふうに考えております。
#90
○及川順郎君 もう時間があれですから、大臣、運用収入が非常にいい、こういう状況。しかも、そういう状況を背景にしまして、共済組合として教職員に対する福利厚生に力を入れていこう、こういう思いも非常に強いわけですよね。
 そういう状況の中で、やっぱり公的年金の一元化というのはこれは一つの流れとしてあるわけでありまして、昭和五十九年の閣議決定以来、御承知のような経緯を経まして、当初の予定ですと、たしか平成七年度一元化を目指してというこういう目標もあるわけですね。こういう年金一元化という流れがある。
 しかし、現場では、同僚委員からも質問が出ておりましたけれども、運用の健全なところが吸収合併される形で非常に大変なところの負の遺産もしょい込まなきゃならないんじゃないか、こういう不安がある。だから、本当は、一元化ということは反対はできないけれども、この私立学校教職員共済組合の被組合員としてはこのままでいっていただいた方がいいという声も耳にするわけです。そういう被保険者の人たちの気持ちを酌みながら、年金一元化の方向へどのようなかじ取りをされていこうとしているのか、大臣の率直な御意見を承って私の質問を終わりたいと思います。
#91
○国務大臣(与謝野馨君) 結局は一元化の方向に進むということだろうと思いますが、その一元化をどういう方法でなし遂げるかということは今後の課題でございます。
 しかしながら、紆余曲折を経ながら、やはり方向としては先生御指摘のように一元化の方向に向かう。ただその場合、先生のお話の中にありましたように、私立学校共済は大変健全性を維持しながらやってこられた。そういう関係者の御努力があったわけでございますので、一元化するについては、そういう関係者の過去の御努力を評価するような方法の一元化が私は望ましいのではないか、そのように思っております。
#92
○橋本敦君 続いて、私から質問させていただきますが、今回の法案の最大の問題点は、国民にとって年金の満額支給開始年齢を六十歳から六十五歳に繰り延べる、これが一つの重要な問題であります。この問題について村山首相は、安らかに老いていかれる社会、こういったことをおっしゃいましたが、果たしてこれでそういった状況になるのかどうか、重大な疑問があるわけです。
 そこで、端的にまず最初に伺いますが、六十歳から六十五歳までの間に部分年金を支給する、こういうことでありますが、私学共済の場合、報酬比例部分のその部分年金は大まかに言って平均してどれくらいになるか、つまり、私の見当では満額年金の半分程度ではないかと思うのですが、まず、この点いかがですか。
#93
○政府委員(雨宮忠君) 六十歳代前半期の退職共済年金につきましては、委員御指摘のように、いわゆる定額部分というのをやめていきまして、段階的に報酬比例の部分年金に移行させるということになっておるわけでございます。
 その水準が現行のものと比べましてどれぐらいになるのかということでございますけれども、報酬比例部分が個人個人の現役組合員時代の給与水準に応じて定められるということから一概に申し上げかねるところもあるわけでございますけれども、おおむねのお尋ねでございますので申しますと、大体半分程度になるのではないかというように考えられるわけでございます。
#94
○橋本敦君 私の指摘したとおりでありますが、さらにこれを具体的に検討してまいりましょう。
 現在の私学共済の一人当たりの平均退職年金金額、これは組合員期間二十年以上でも大体月に十九万円程度ではないかと、こう判断いたします。そうしますと、その半分ですから十万足らずになりますね。二十年未満という方もたくさんいらっしゃるわけで、この場合にはどうなるかということになりますと、月に五万円程度ということになりますから、その半分程度となりますと二万数千円ですね。これで果たして老後の安定的生活の基盤たり得るかというと、これはもう絶対にそうはならない。五万や十万以下ではどうにもならないわけであります。
 とりわけ女性の場合はまた深刻でありまして、組合員期間二十年以上でも、賃金差別がございますから現在月十六万円弱ということで、その半分といえば八万円程度になってまいりますから、男性よりさらに低くなってくるわけですね。
 こういうわけですから、本来の満額年金でも生活はぎりぎりという現状でありますのに半分になるということになりますと、これは生活不安の増大であることはもう言うまでもありません。
 ですから、こういった問題を、将来の安らかに老いていかれる保障ということならば、さらに改善することこそ求められているときに、まさにこれは逆行ではないかということがまず重大な問題でありますが、大臣はこの点いかがお考えでしょうか。
#95
○政府委員(雨宮忠君) 今回の改正のねらいの大きなものの一つに、委員御指摘のように、六十歳代前半期の年金の扱いというのが大きなものとしてあるわけでございます。
 考え方といたしましては、六十歳までは賃金あるいは給与を主体に生活していく。年金による生活は六十五歳以降。六十歳から六十四歳までの間、いわゆる六十歳代前半期におきましては、雇用を含めまして多様な生活設計を行ってその間を過ごしていくというような考え方でやっているわけでございます。
 確かに、御指摘のように、六十歳代前半期の年金額そのものを考えたときには従来に比べて厳しいものが出てくるわけでございますけれども、雇用等も組み合わせましてそこを乗り切っていくということがやはり今後の年金財政上の要請でもございますし、また今後の高齢化社会を迎えて現役世代の負担ということを考えてみた場合も、やむを得ない方向ではなかろうかというように考えるわけでございます。
#96
○橋本敦君 ですから、今、審議官お話しのように、部分年金だけで老後の生活が保障されないということをお認めになった上で、六十五までは雇用を加えて多様にやっていくということが考え方だというふうにおっしゃいました。そこで、六十から六十五歳までの雇用というのが次に問題になるわけですね、今おっしゃったとおり。
 現在、我が国の一般的な労働事情を考えてみますと、例えばこの六月に労働省が発表した雇用管理調査結果速報というのがございますが、一律定年制を採用している企業のうちで定年年齢が六十一歳以上がどれくらいあるかというと、わずか七%にしかすぎないんですね。これは労働省の速報です。
 特に五千人以上の大企業になりますと、大企業ほど長く定年を延ばして雇用すればいいと思うんですが逆でありまして、五千人以上の大企業になりますとたった一・七%ではるかに低いんですね。今後六十一歳以上定年へ改定の予定がある企業を含めてみても全体としてわずか九・三%にすぎませんが、五千人以上の大企業ではわずか一・七%と変わりません。
 だから、厚生年金全体として、あるいはまた日本の働く国民にとって、今審議官がおっしゃった六十五歳までの雇用というのは、これは実は保障されていない大変な状況なんですね。こういう保障がないままこういった満額支給六十五歳からにしていくという、そこのところがまさに重大な問題であります。
 そこで、私学の問題について具体的に考えてまいりましょう。
 私学の問題については、本岡委員から先ほども御指摘があったんですけれども、私学の現状として平均で大体どれくらいに定年がなっているかということが問題になりますが、現在六十五歳定年となっているのは大学、短大、そこらあたりで、それ以外の高校、中学あるいは幼稚園の教員の場合に定年は大体どういう現状であるか、改めてもう一遍この点を具体的に答弁してください。
#97
○政府委員(雨宮忠君) 定年制の適用を受けております教員について見てみた場合に、学校種別ごとで、大学の場合六十六・四歳、短大が六十六・二歳、高校が六十二・二歳、幼稚園が五十七・一歳ということでございます。また、最多定年年齢は、大学、短大が六十五歳、そのほかが六十歳ということでもございますので、今、委員御指摘の六十五という線で考えてみた場合に、大学、短大につきましてはそれを既に超しておるという状況でございますので問題が少ないかと思うわけでございますが、高校以下につきましては六十五以下、あるいは幼稚園の場合には六十以下ということでもございますので、雇用という点でいろいろ今後努力すべき課題が残っておるということは言えようかと思うわけでございます。
#98
○橋本敦君 その点は先ほど大臣からも、今後その問題は重大な課題だという御指摘があったとおりですね。
 最近、総務庁の統計局が、厳しくなった定年後の雇用環境ということで分析しているんですが、政府自身の最近の労働力調査をもとにした計算でも、六十歳を過ぎますと一体どれくらいの有効求人倍率になるかということですが、これは六十から六十四歳までは〇・〇八倍、十二、三人に一人しか仕事がないという現状ですね。これはもう政府の統計でも明らかです。
 ですから、本当に雇用の裏づけなしには暮らすことができないよとお認めになったんだが、その雇用が実は私学の教員の場合でも、おっしゃったように大学、短大を除いてはこれはもう極めて厳しい環境の中にあるわけです。
 そこで、私は、特に今おっしゃった幼稚園の教員の場合、平均してこれは六十になっていないことはお認めになったとおりですが、これについて余国私立学校教職員組合連合が昨年金国の百四十の幼稚園の調査をした調査結果が出ておりますのでこれに基づいて見ますと、五十五歳定年が一四・七%、五十歳定年が五・二%、四十五歳定年が四%、四十歳定年が一・三%もあるんですね。また、ひどいところでは、結婚したら退職していただきますよというところも一・三%ある、こういうわけです。
 今幼稚園の平均が五十七・一歳だということをおっしゃいましたが、個々具体的にこういう実態であるということについて文部省としては実態を調査あるいはその他いろんなことで把握しておられるんでしょうか、どうですか。
#99
○政府委員(雨宮忠君) 個々の定年の状況につきまして調べていることはございません。
#100
○橋本敦君 そういう実態も正確に把握しないまま、言葉だけで六十五歳までの雇用を確保しながらこの年全体制に入っていくと言ったって、それはだめですよ。そういう実態も踏まえて一体どうなのかということを真剣に私は考える責任があると思うんですが、そういう責任を果たしておられないのが極めて遺憾であります。特に、私立幼稚園の場合は、働きたくても働けないという実態があるということを私は指摘をしておきたいと思います。
 この私学教職員組合連合の昨年の調査で、私は非常に注目をしたんですけれども、働きたくても働けないという回答、これが具体的に出ているんですね。
 それを具体的に言ってみますと、夢を持って仕事についた、幼稚園の先生になった。しかしながら、働きたいけれどもやめたいという気持ちが強くなったということで、まず第一に挙がっているのは仕事の割に給料が安いという、こういう深刻な実態がある。それから二つ目は、超過勤務が多くてしかも残業手当がつかない幼稚園が多いということ。それから三つ目には、子供に対する行事その他がたくさんあって、家に持ち帰る仕事が多くて自分の時間がとても少ないということがある。こういう実態が報告されておるわけです。そういうわけですから、労働条件それ自体が現在働いていても大変なんですね。
 試みに調べてみますと、この実態調査では、九三年度の短大卒の私立幼稚園教員の初任給は十三万八千八百四十七円、一般企業の短大卒初任給平均は十六万五千円、これに比べて二万六千円も安い、こういう状況です。一般企業の高卒平均が十五万六百円、こう出ておりますが、これにも及ばない、こういう状況にあるわけです。
 したがって、十分に労働基準法が守られていないという、そういう幼稚園の職場がかなりあるということもございまして、この問題については軽視できない現状が現にあるわけです。
 それで、文部待の学校教員統計調査報告というのが、これが一九九二年度で出ておりますけれども、この私立幼稚園の教員について平均勤務年数がどれくらいになっているかちょっとお知らせください。
#101
○政府委員(吉田茂君) 先生御指摘の幼稚園の本務教員の平均勤務年数でございますが、私立については平成四年度の統計では七・四年という数字でございます。
#102
○橋本敦君 ちょっと済みません、委員長。
 これ資料見ていただくと、私のこれでは五・一年になっているんですが。
 もう一遍答弁してください。
#103
○政府委員(吉田茂君) 調査年度とか数字のとり方の差が数字によってあるいはあるのかもしれませんが、四年度の本務教員、これの平均勤務年数は七・四年という数字を私ども抱擁しております。
#104
○橋本敦君 私は、私の手元の資料で五・一年と申し上げたんですが、仮に七・四年としても、私立幼稚園の場合、平均勤務年数はそういうわけで七・四年と、こうなっているんですよね。
 ですから、先ほども指摘しましたけれども、勤務年数二十年以上二十年以下と分けるところか、平均七年しか勤めていないという実態があり、しかも賃金が安いという実態があり、ここで部分年金と、こうなりますと一体どうだということになって、月額二万数千円程度になるでしょう。
 そういうことで、それじゃ雇用はどうかとなりますと、今お話ししたように、すべての労働者について言えることですが、雇用は求人倍率その他最近の資料を見たってそう簡単にできるわけじゃない。本当にもう野放しで生活危機にさらされるという、こういう実態がここから出てくるではないかという深刻な問題があるわけですね。
 こういう問題について大臣はどう考えるかお伺いをしたいと思うんですが、どうですか。
#105
○政府委員(吉田茂君) 私立幼稚園の先生方の今のお話の勤務年数なりあるいはそのほかいろいろの労働条件ということを考えてまいりますと、文部省でそういった勤務条件について直接関与するという立場にはないわけでございますが、しかしながら幼稚園教育の普及、振興という非常に重要な役割、私立幼稚園の役割を見ます場合に、やはり私立幼稚園の自主的な教育条件の改善、こういったものを支援するための助成なりそういった振興策の推進に私どもとしては今後さらに努力してまいらなければならないというふうに考えておるところでございます。
#106
○橋本敦君 私が指摘した問題に大臣以下政府委員の方は的確にどなたも答えられないわけですよ。それは答えられないでしょう、こういう実態で放置されたらどうなるかという問題。ですから、この年金の今度の改正というのは私は大反対なんですよ。
 今おっしゃいましたけれども、私立幼稚園の勤務条件の向上に協力するということですが、現在一クラスの人数は四十人を基準としておるわけですが、これは実際は一体どれくらいになっているかということです。
 先進国はどれくらいになっているかと調べてみますと、先進国では一クラス十五人というのが大体平均です。フランスが十五人、ドイツが二十人ないし二十五人、アメリカも二十人から二十五人、イギリスは十三人。まさに一人一人の子供たちに目を届かせて、大事に大切に育ててやるという思いがこういうことからもうかがえますが、日本では基準が四十人のままだと。これだけでも大変な教育条件のおくれではないか。せめて三歳児、これは大変手間がかかりますから、この三歳児だけでも基準を下げて指導をしていくという、こういう考えはありませんか、文部省。
#107
○政府委員(野崎弘君) 設置基準では、御指摘ございましたように「一学級の幼児数は、四十人以下を原則とする。」、こういうことで定めておるわけでございますけれども、やはり幼児にきめ細かい教育が行えるようにするということで、平成二年度から学級定員を三十五人以下にするということを奨励してきておるところでございます。
 設置基準自体をどうするかということにつきましては、現在、幼稚園の教育環境の整備のあり方について調査研究協力者会議を設けておりまして、そこで幅広く検討していただいているわけでございますけれども、一学級の幼児数等、設置基準にかかわる事項につきましても検討が行われているわけでございまして、その検討結果を踏まえて条件の整備に努めてまいりたいと思っております。
 ただ、年齢別に基準を設けるということにつきましては、私どもはやっぱり、幼稚園設置基準というのは最低の基準でございますから、その中で各設置者がどうするか。例えば、年齢別に幼児数を決めるというようなこともこれは設置者ができるわけでございますので、やはりその辺は設置者の工夫に任せた方がいいのではないか。つまり、年齢別に基準をつくったときに、三歳児から今度は四歳児に上がったときに、年齢別の基準が違うことによってそごが出てくるわけでございますので、それじゃそのあたりをどうするかとかいろいろなことがございますので、その辺はやはり基準上ということではなしに、各設置者の判断にお任せするというような考え方で臨んでいるわけでございます。
#108
○橋本敦君 私もぜひとも三歳児以下の基準をと言ったのではなくて、全体が下げられないなら、せめてまずそこをしたらどうかという、こういう意味も含めて申し上げたんです。
 ですから、今三十五人という現在の指導、これについても検討するという方向で議論をしているというお話ですから、諸外国、先進国の状況も言ったとおりですが、全体としてもっともっとゆとりのある幼稚園児教育ができるように、基準についてもそういった方向で検討の努力をするというようにおっしゃったと理解してよろしいわけですか。
#109
○政府委員(野崎弘君) 今、幼稚園設置基準が「四十人以下を原則とする。」、こう書いてございますので、これをどうするのかということについて協力者会議で検討していただいておると、こういうことでございます。
#110
○橋本敦君 それをどうするかというのは、どっちに向いてどうするんですか。四十人以下と書いてあるのはわかっているんですよ。それをどうするかというのは、五十人以下にするというのはそんなの話が全然違うわけでね。どっちに向いて検討しているのかという文部省の指導的姿勢が問われているので、どうなのかと聞いているんですよ。これは趣旨わかるでしょう。
#111
○政府委員(野崎弘君) さっきもお答えいたしましたけれども、設置基準はそういうことで書いてある。ただ、現実の指導は三十五人以下になるように、奨励できるように、いろいろな保育室の増築を行う場合の補助、あるいは教職員配置につきましての地方交付税の措置というあたりにつきましては、制度改正を行いまして現実に学級定員の引き下げというようなことも行われております。
 現在、三十五人以下の学級数の割合というものが平成五年度で九〇%を超えているわけでございますので、そういう実情等も十分踏まえながらこの調査研究協力者会議において検討をしていただいていると、こういうことでございます。
#112
○橋本敦君 なかなかはっきりした文部省の姿勢が出ないが、せめて四十人を三十五人以下にする可能性もある方向の協力者会議の議論がなという感じがぼやっとわかるような答弁でございましたが、私はもっと積極的に幼稚園児教育について文部省が指導的責任を果たす方向で姿勢をはっきりさせてほしいということを要望しておきたいと思います。
 最後の質問になりましたが、私学共済の問題についてもう一点伺いますが、運営審議会の問題であります。
 この第十二条第二項で、運営審議会の委員は共済組合員、学校法人、学識経験者の代表から構成すると、こうなっておるわけですが、この組合員の代表の問題で指摘をしておきたいんですが、私学共済組合の運営審議会の委員名簿を見ますと、組合員関係では労働組合関係の人が代表に入っていないんです。法人役員関係、学識経験者関係以外に組合員関係というのがありますね。こういう三つの基準で出てくる。ところが、公立の共済組合運営審議会委員の名簿を見ますと、組合員代表としては日本教職員組合の書記長、それから中央執行委員の方が二人、労働組合の方が組合員の代表として三人入っておられる。私はこれは合理的だと思うんですよ。
 なぜ私共済の運営審議会には、労働組合が全国的にも組織されそれぞれの学校にもあるのに、組合員関係の代表として労働組合代表を入れないのか。これはやっぱり入れていただくことが共済の本当の発展や福利厚生の充実といった面で公平を期して進めていく上でも妥当性を持っていると思うんです。公立学校の場合にやられているのに私学の共済の場合にやられていないのは、私はこれは納得できない。この点について是正をしてほしいと思いますが、いかがですか。
#113
○政府委員(雨宮忠君) 私学共済組合の運営審議会の構成でございますが、今御指摘のように二十一名の委員から成っておるわけでございます。組合員関係、法人関係及び学識経験者のいわゆる三者構成となっておるわけでございまして、他の共済組合の場合にはいわゆる労使の、使用者側と労働者側という形での二者構成となっているというのとは若干趣を異にしているわけでございますが、いずれにしましても、それぞれ七名の委員が文部大臣によって委嘱されているわけでございます。
 このうちで組合員関係、それから法人関係の委員につきましては、私立学校側の意向を十分に酌むために、私学共済組合の発足以来のことでございますけれども、私学固体の推薦によって委員を委嘱しておるということでございます。現実には全私学連合、これは私学全体の振興を図ることを目的としておりまして、学校法人の役員だけではなく、学長それから教職員を含むいわば学校全体が加盟員となる団体によって構成しているわけでございますけれども、この全私学連合に推薦をお願いしておるということでございまして、この推薦を得て組合員を代表するにふさわしい者が委嘱されている、かように考えておるところでございます。
#114
○橋本敦君 改善是正の方向を検討してもらいたいという私の質問に対して答えてもらっていないですよ。現状の説明はもう私わかっているから、今後の改善の方向として検討してもらいたいと言っているんですよ。何だったら大臣に答えていただいてもいいんです。
#115
○政府委員(雨宮忠君) 今申し上げたような仕組みを通じまして、制度発足以来支障なく健全な運営が行われているというように考えておるところでございまして、現在のような運営審議会の体制で問題なかろうというように考えておるところでございます。
#116
○橋本敦君 問題なかろうと言ったらこの次またやりますけれども、そんなことないですよ。公正を期して、運営上当然こうした労働組合の組合員の要求も法律ではちゃんと吸収できるように聞くシステムができているのに、なぜできないか。これはおかしいです。大臣いかがですか。
#117
○国務大臣(与謝野馨君) 今政府委員が答弁したとおりでございます。
#118
○橋本敦君 終わります。
#119
○委員長(松浦孝治君) 以上をもちまして質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#120
○委員長(松浦孝治君) 御異議ないと認めます。
 それでは、午後一時より再開することとし、休憩いたします。
   午後零時十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時開会
#121
○委員長(松浦孝治君) ただいまから文教委員会を再開いたします。
 教育、文化及び学術に関する調査を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#122
○肥田美代子君 よろしくお願いいたします。
 子どもの権利条約が批准されましてから六カ月以上がたちました。この条約は、一口で言うならば、大人と子供がどうしたらいいパートナーになり得るか、そのための手引書だと言ってもいいと思うんですね。ですから、できる限り子供たちの日ごろの暮らしの中にひたひたとしみ込ませていくような、そういう対策が必要だと思うんです。
 ところが最近、PTAとか先生方の集まりに参りますと、こういう質問が出るんです。子どもの権利条約をどうやって教えたらいいかわからないんです、子供に知らせていくいい方法を教えてくださいとか、何か手引書みたいなものがないだろうかとか、あげくの果ては肥田さん書いてくださいよ、そういうようなことまでおっしゃるわけです。文部省は周知徹底するためにそれなりの指導をしていらっしゃると思いますので、その辺について、まず伺いたいと思います。
#123
○政府委員(野崎弘君) 条約につきましての政府全体としての周知は、外務省が中心になってやっておるわけでございます。そういう意味で、私どもも外務省と協力しながらいろいろな形での周知をしておるわけでございます。
 もちろん、大人のみならず子供にも周知することが大事なわけでございます。外務省で子供向けの条約のリーフレットを作成いただいたわけでございますので、その作成に協力するとともに、学校現場へ速やかに配付するよう、そしてまた積極的に活用されますように各都道府県教育委員会等を指導しているところでございます。
#124
○肥田美代子君 じゃ、外務省のつくったパンフレットを文部省がお配りになったということですね。特別、文部省としては独自のものを今後ともおつくりになりませんか。
#125
○政府委員(野崎弘君) 実際にこの児童の権利条約を教える場というのは、教科で言いますと、中学校の社会科の公民的分野とか、あるいは高等学校の現代社会とか政治・経済、家庭一般などの多くでこれを取り上げる形になるわけでございます。したがってまた、教科書にもそのようなことが既に記述をされております。これらの教科の時間のほかに、道徳とか特別活動においてこれを適宜取り上げるわけでございますけれども、やはりその辺は各学校におきます工夫ということでいろいろ取り組んでいただくことが大事だと、こう思っておるわけでございます。
 条約の基本的な考え方は既に五月二十日付で事務次官通知を発出しておるわけでございますので、そういうものを活用いただくほか、各種の広報紙とか刊行物、そういうものも出しておりますので、そういうものも参考にしていただきたい、このように思っております。また、教育委員会の担当者あるいは教員を対象といたします各種の会議とか研修会でその趣旨の徹底を図っておりますので、ぜひそういうものを活用しながらそれぞれの学校の実態に応じた指導をお願いしたい、このように思っております。
#126
○肥田美代子君 けさ、こちらに参ります途中で小学校に寄ってみたんです。そして、外務省がつくられたパンフレット、ポスターがどこにあるかなというふうに探したんですが、見当たらないんです。それで教頭先生にお尋ねしたら、随分前に玄関の掲示板に張ってあったけれども、あれは一月ごとに交換しますので、既に取り払いましたとおっしゃるんですね。こういう感じでいいんでしょうか、広報する立場としては。どうでしょうか。
#127
○政府委員(野崎弘君) これは各クラスにも配付できる部数を各学校に配っております。具体的には、それぞれの学校の学級数にプラス一部を足しまして配付をすると。全体でいきますと約八十万部の配付をしておるわけでございまして、それを現実にどうするかは各学校で御判断いただくわけでございますけれども、私どもとしては、教室や廊下等に適宜掲示するなど積極的な活用について要請をしておるところでございます。
 個々具体の実態がどうかということは私どももまだ把握しておりませんけれども、ぜひそういう積極的な活用ということにつきましては今後とも指導を続けてまいりたい、このように思っております。
#128
○肥田美代子君 私も各クラスに一枚ずつあると思っていたんです。ところが、きょうの学校の先生がおっしゃるには、二百七十三名の学校でしたけれども、二、三枚は参りましたとおっしゃるんです。ですから、少し現場の状況が文部省が把握していら保つしゃるのと違うんじゃないかなという気がしますので、その辺もう一度見直していただきたいなと思うんです。というのは、やはり子供たち一人一人がこれを知ることによって少しずつ子供自身の暮らし方というものが変わっていくものだと思っておりますので、とりわけこのことについてよろしくお願いしたいと思います。
 それで、権利条約が日本で批准されて、これは本当に私たちうれしいことなんですが、ただ学校現場では今大変に子供の権利が阻害される事柄が起こっております。いじめによる自殺ですが、私が報道を見ましただけでも、この六月から九月までの間に五件、他にも私が見落としておるかもしれませんけれどもございます。それらはいじめによる自殺らしいという報道でございますが、その報告は事後受けていらっしゃいますか。
#129
○政府委員(野崎弘君) 個別に新聞等で話題になった事件、そういうものにつきましては事情をお聞きして把握に努めておるわけでございます。先生御指摘の平成六年度、今年度の案件でございますと、今年度終わったところで全体的に県から、どういう事由であったかとか、そういうことを表にまとめて報告をいただくことになっておりますので、まだ県からは件数としてどうかというような報告は来ておりません。
 ただ、具体的に個々の事件が新聞等で出ましたときには、県としてどういうような把握をしているのか、そういうことにつきましては個別に事情を聞いておると、こういうことでございます。
#130
○肥田美代子君 お言葉を返すつもりはないんですけれども、年度が終わってから数が出てくる、そういうような悠長な話じゃないと思うんですね。ですから、一回ずつの事案についてどのように調査されたのか、まず具体的にお話しいただけませんか。
#131
○政府委員(野崎弘君) 先生先ほど五件ほどという御指摘がございましたけれども、私どもも、これはいろいろ新聞記事等で出ました岡山県総社市の事件、あるいは愛知県安城市におきます事件、その他それぞれ県から事情をお聞きし、県におきます対応につきましてもお話を伺う、こういうことで臨んできておるわけでございます。
#132
○肥田美代子君 聞いたというのは多分電話でお聞きになったと思うんです。文部省というのは子供さんを預かっているんですよね。そういうときにもし自分の子供がそういう目に遭ったとしたらどうなさるかなというふうに思うんです。その対応が余りにも他人事過ぎないかなという気がするんですが、どうでしょうか。
 責めるつもりはないんです、我々にも責任はありますから。お互い大人としてこれは責任をとっていかなきゃいけないと思いますのですが、文部省としてもう少し積極的かつ迅速な調査、対策をすれば、六月から九月までの間に五件もじゃなくて一件であるいは済んだかもしれないと私は思うんです。いかがですか、大臣、個人的なお考えでも結構ですからお願いします。
#133
○政府委員(野崎弘君) 対応の話でございますが、御存じのように、例えば児童生徒の自殺というような形で記事になったとしても、それがいじめによるというようなことですと、いじめた者が一体どういう者であったかとか、いろいろな事実関係が参るわけでございます。私どもといたしましては、そういう事実関係をできるだけ県の教育委員会を通じまして伺うわけでございますけれども、それには場合によると刑事事件と申しますか、警察の方も絡んでこなきゃならない、そういうようなこともあるわけでございます。
 小中学校の場合ですと、具体的には市町村の教育委員会が学校を直接管理しておるわけでございますので、市町村の教育委員会が現実にどういう対応をしたか、そしてまた、市町村の教育委員会からしますと各学校における対応がどうであったかというように、大変この問題につきましてはいろんなところが絡んでまいりますので、私どもといたしましてはできる限りの方法によりまして事情をお伺いしておるわけでございますけれども、やはりそこには一定の限界があるということでございます。
#134
○肥田美代子君 今、一定の限界があるとおっしゃいましたけれども、私はこういうことに関して本当に限界があるのかなという気がするんですよ。ですから、文部省としては、例えばすぐにその現場にすっ飛んでいって、いろんな方の話を聞くべきですよ。亡くなった子はもう物が言えないわけですから、いじめた方の証言しか聞けないわけですが。やはり教育委員会であるとか文部省であるとか、そういう第三者的な立場に立つ人がもっと素早くその現場に行っていろんな調査をなさることが、これからの事件を防ぐために必要だと思うんですね。
 文部省に調査というか、委員会からどういうような報告があったかとお尋ねしたら、「本事件はいじめによる自殺と思われるとの報告があった。」と一行だけなんです。やはりもっと文部省が、それこそもう今後いじめによる自殺者を一人たりとも出さないという、そういう確固たる省を挙げての何かができないものですか。それともこれからも、私たちの限界があります、教育委員会にそれを指導していますという程度のことで終わるんでしょうか。
#135
○政府委員(野崎弘君) もちろん、先生の熱意も十分、私どももそういう熱意で取り組んでおるわけでございますが、例えば山形の例の痛ましい事件にいたしましても、専門の機関がこれを調査しても、やはり実際に関与した方々にとってはいろいろまた別の御意見もあるというようなことでございまして、こういう問題というのはそれぞれの当事者でいろんな主張があるわけでございます。警察の問題であれば警察が絡んできますし、あるいは法務当局が絡んでくるようなこともあるわけでございますので、そういう関係の方々が一生懸命やりながらも、しかし関係者の方々の中にはまだ釈然としないというような気持ちが起こるようなのがこの事件ではないかと思うわけでございます。
 私どもは決してこういう事件を真剣に取り組んでいないとか、そういうことではないわけでございます。できる限りの事実関係をつかみ、対策を講じなきゃならない、こういうことでございますけれども、やはりそこで現実に事件を目撃しているわけではございませんので、当事者にとってはいろんな意見がその場に出てくる。したがって、県の教育委員会の方の報告もなかなか一概に割り切れない、そういうような形で出てこざるを得ないんではないか、こんなふうに思っておるわけでございます。
#136
○肥田美代子君 基本的にいじめというものはあっちゃいけないとか、あり得べきはずもないという、そういう感覚に教育委員会も文部省も立っていらっしゃって、どうしてもそういう事件を隠そう、隠そうという方向にいって潜在化されてしまっているんじゃないかと思うんです。
 子供たちの暮らしを見ておりますと、いじめられ、いじめながら育っていくという面もございます。ですから、そういうことが本当は当たり前で、常にあり得ることだという発想からしますと、そういういじめられている状況というのを先生がいち早く把握されて、それにどう対応して処置していくかということをお考えになれば、こういうことはこれほどの大変な悲劇には結びつかないと思うんです。その辺は、あり得べきものじゃないという感覚にお立ちになるのか、常日ごろ子供の生一活の中であり得べきことだと思われるのか、一体どっちですか。
#137
○政府委員(野崎弘君) 私どもも、そういう事件はあり得べきものであってはならないわけでございまして、今後とも一件も起こさないようにもちろん努力をしなきゃならないわけでございます。
 今先生、担任の先生がまずしっかりということで、これは私ども全く同じ気持ちでございます。従来から学校が一体となって取り組むということで、校長先生一のリーダーシップのもとに学校が取り組んでいただいておるわけでございますが、そういうことになりますと、どうも担任の先生の責務と申しますか、そういうものが必ずしも強調されないというようなことがございまして、昨年末の通知の中では、担任の先生がまずしっかりとこの問題に取り組んでほしいと。
 昨年の調査では担任の先生がそういういじめの発見の端緒になったというのが大体三割程度でございますので、やはりそういうことではなしに、担任の先生が常日ごろの子供たちの行動を見ながら的確に把握していただきたい、こういうことで指導をしておるわけでございまして、その辺の考え方はまさに先生と同じだと、このように思っております。
#138
○肥田美代子君 私は普通にあることだと思っているんです、いじめというのは。ですから、ちょっと文部省の見解とは違うと思います。
 それで、日ごろあることだからそれをどういうふうに処置するかということが問題であって、あるべきものじゃないという考えに立ちますと、やはりどうしてもそういう事件を隠さなきゃいけない、そういうことになるんじゃないかというふうに私は思います。
 それでは、子どもの権利条約に関して各省庁でいろんな広報事業というか、広報の仕事をしていただいておりますけれども、あと数分しかございませんので、厚生省と法務省のなさったことについてと、それから今後どういうふうになさろうと思っていらっしゃるか、簡単に御説明願います。
#139
○説明員(大泉博子君) 権利条約の広報というふうに承りましたけれども、平成六年度、私ども、外務省からいただきましたパンフレット等でございますが、全国で十八万部を都道府県を通じて各施設あるいは児童相談所などの機関に配付しております。これらの広報資料は施設などの研修会に大いに利用されているところでございます。
#140
○説明員(渡邉一弘君) 法務省におきましては、本年八月一日から子どもの人権専門委員というものを設置いたしまして、その周知を図るためのパンフレットを本年度は十万五千部作成いたしまして、子どもの人権専門委員が設置されております全国十の都市におきまして配付中でございます。配付の方法は法務局の窓口に備えたり、人権擁護委員あるいは市町村役場、教育委員会、学校に配付しております。
 また、人権擁護のための活動をこれまで法務省は行ってきているわけでございますけれども、子供の人権問題に関しましては、法務省といたしましては、児童の権利条約の趣旨をも盛り込んだ子供の人権に関する啓発パンフレットを作成、配付することを現在検討しているところでございます。
#141
○肥田美代子君 せっかく外務省がとってもいいポスターをつくってくださったわけですから、こういうのを、例えば各省が版下だけ借りてお互いに融通し合いながらどんどん印刷して出していくという方向に行ってほしいと思うんですけれども、法務省いかがですか。
#142
○説明員(渡邉一弘君) 外務省からパンフレットは法務省の広報連絡室の方に配付していただいているというふうに承知しております。現在どのように配付しているかどうか、私承知しておりませんけれども、活用していきたいと思っております。
#143
○肥田美代子君 文部省にお願いがあるんです。厚生省も法務省もそれなりに頑張っています。しかし、文部省は子供たちを預かっている現場の責任者ですから、できることなら手引書のようなものをつくっていただいて、人権を最も阻害するいじめによる自殺のようなことが学校現場で再び起こらないように、そういうことを一人一人に教えていってほしいと思います。パンフレットをつくればそれでいいというものじゃありません。やはり先生方を通じて子供たちに十分知らせるために、文部省はしっかりした何か前向きな方策を練ってほしいと思うんです。
 今後積極的にしていただくことを信じながら、最後に文部大臣の御意見を聞いて終わりたいと思います。よろしくお願いします。
#144
○国務大臣(与謝野馨君) いじめの問題は、児童の権利条約の問題である以前に、やはり先生がいみじくも御指摘になられたように、そういう現象というのは皆から実はございまして、私自身の子供のころを考えても、いじめっ子、いじめられっ子というような表現もあったくらいですから、そういう現象は昔からあったと思いますが、今のような限度を超えたものでは昔はなかったと私は思っております。それはいろんな原因に起因していると思いますが、背は兄弟がたくさんの中で育った子供が多くて、家庭の中でそういうものの訓練がある程度なされていたという説もあります。
 しかし、これは学校教育の中だけでは解決できない問題でして、やはり保護者あるいは御両親が、日ごろのしつけの問題、物の考え方の問題あるいは道徳の問題として、弱い者をいじめるというのは正しくないということを子供にしっかり教えるというところから始めなければならないと思います。
 そういう教育は学校の先生も子供に対して日ごろいろいろな場面で教えていく必要があると思いますし、また目に余るそういう行為が行われているような場合には、現場の教師あるいは校長先生が迅速に対応していくということも必要であると思います。また、不幸にしてそういうことが起きた場合には、やはり私ども文教行政をあずかる者がそういう一つ一つの事件を大切に受けとめて、その後の教訓として十分生かしていくという態度が必要なのではないかと思っております。
#145
○上山和人君 日本社会党・護憲民主連合の上山和人でございます。
 今の肥田委員の質問と関連させながら、私は子どもの権利条約問題に絞って御質問を申し上げます。四十分という時間の制約がございますから、お答えになる方もどうかひとつ要領よく簡明にお願い申し上げます。
 子どもの権利条約の批准案件が承認されましたのはことしの三月二十九日の参議院本会議でありますから、それから七カ月余りが経過しております。そして、効力を生じたのは五月二十二日ですから、それから五カ月余りが過ぎております。この間は、今肥田委員が質問をされましたように、初期の段階ですからとりわけこの条約の理念、精神、趣旨などの内容をどのように子供たちあるいは教職員を初め関係者に知らしめるか、これが一番の重要な課題だと、特に今の時期には思います。
 そこで、肥田委員から文部省にも質問がありましたけれども、文部省が何をしようとしているか、これまで何をされたかについてはある程度わかったんですけれども、文部省の主体的な独自の広報活動はほとんどおやりになっていない。外務省がパンフレットを百万部おつくりになったのを、たしか文部省で八十万部お引き受けになって、各学校のクラスにまでそれが届くように配付する計画であるというのが六月二十二日のこの委員会の質問の段階では明らかにされておりますけれども、その後どうそれが行き届いているのかということについて案じておりました。
 今の肥田委員の質問に対するお答えはありましたけれども、肥田委員がけさ訪れた学校を見ても、もう学校自体に一枚も張ってないということです。そして、クラスに全部行き渡るような枚数をその学校は受け取っていないんじゃないかという御指摘もありました。効力を生じてから五カ月もたっているんですよ。この大事な時期に一体文部省独自として何をなさろうとしているのか、全然見えないんですよ。これからどうするかということについて文部省の今の段階でお考えになっていること、準備していらっしゃる計画等がありましたらお答えいただきたい。
#146
○政府委員(野崎弘君) 既に先生御存じのとおり、五月二十日付で次官通知を出しております。また、文部広報とか文部時報その他の各種の広報紙、刊行物を利用して積極的に条約の趣旨とか規定の内容等を周知しております。また、いろんな研修の場がございます。そういう場で条約の趣旨、内容等について周知を図ってきておるわけでございます。
 私どもの基本的考え方は、本条約の趣旨というものを教育活動全体を通じて基本的人権尊重の精神を徹底するということで臨んでいただきたいというのが基本的考え方でございます。この条約に掲げられておりますことは、基本的人権の尊重を基本理念といたします憲法、教育基本法、こういうものと軌を一にしておるわけでございますので、そういう意味では今までも各学校におきまして積極的に取り組んできていただいておるわけでございますので、そういうものにつきましてさらに一層の御努力をお願いしたいということが私どもの趣旨でございます。
 そういう意味では、この条約について手引書というような考え方ではございませんでして、従来生徒指導の指導資料とかいろんなものを出しておるわけでございますので、そういう精神を各学校で十分生保がしていただくということがやはり条約の趣旨を生かす一番大きな方向ではないか、このように思っておるわけでございます。
 条約そのものをどうかということになりますと、これは外務省を中心といたしまして政府全体で取り組んでいるわけでございますから、そういうところでおつくりいただいたものを学校の方に配付するとか、いろいろな形で我々も積極的に取り組まなきゃならぬわけでございますが、実際に学校におきます教育というのは、条約の個々がどうかということではなしに、やはり条約の精神というものをいろんな教育活動の場で徹底していただきたいということで、学校、そして都道府県教育委員会、市町村教育委員会の指導に当たっているところでございます。
#147
○上山和人君 局長の今のお答えについては納得できない面があります。今言われるのは原則ですよ。学校の教育活動全体を通して子どもの権利条約の理念も精神も知らしめるんだと、それはもう教育の原則ですよ。でも、条約の内容そのものなどは余り取り扱わないんだという趣旨の話に聞こえましたけれども、それは見当違いじゃないですか。
 例えば、条約の中に子供の権利としてどういうものが盛り込まれているかということについて、子供たちにもよく知らしめないといけないと思うんです。そういう条約の中にある具体的な内容等について、子供たちにも、お父さんやお母さんにも、もちろん教職員にも、さらには子供たちにかかわるいろんな公務員についても周知させる。これは大変重要なことなんですよ。
 このことを幾らお尋ねしてもそれ以上の答えは返ってこないかと思いますけれども、今後のことのためにあえてお尋ねをいたします。
 子どもの権利条約が国連で採択されたのが一九八九年ですが、日本ではことしの三月二十九日に参議院本会議で批准案件が承認されております。それまでの間には百五十カ国以上の国がもう既に批准を済ませて、この条約をずっと適用してやってきているわけです。したがって、私どもから見ますと、外国は大変先駆的ないろんな施策を進めているわけですよ、子どもの権利条約の広報活動にしましても。日本では四年も五年もおくれているわけですから、これはいろんな事情がありましたけれども、そういう先発している外国の教訓に学ぶということはお考えになっていないんですか。
#148
○政府委員(野崎弘君) 条約をどういう形でそれぞれの国の中で生かしていくかということはそれぞれの国の状況があるかと思うわけでございまして、条約というのはそういういろんな状況にある国の中をどう統一的に考えるかということで条文ができていると思うわけでございます。私どもとしては、この条約の趣旨というものを現在の日本国憲法、そういうもとでどう生かしていくか、こういうことで積極的に取り組む必要がある、このように思っておるわけでございます。
#149
○上山和人君 それは、その国々で主体的に国の実態に応じて考えるのは至極当然ですよ、おっしゃるように。でも、先発しているたくさんの国があるわけですから、主体的にいろんなものを計画し考えていく場合にも、そういうものは参考になさるべきじゃないですか。日本ではおくれている分だけ、私は先発している外国の諸施策以上に有効なものを編み出すことができるんじゃないかと思っております。
 今文部省が把握なさっていらっしゃる外国の、これは学校に限定しますけれども、子供たちを対象にした啓蒙啓発活動等、広報活動についてどのように実態を把握していらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。
#150
○政府委員(野崎弘君) 条約でございますので基本的には外務省の方でお答えいただくのが適当ではないかと思うわけでございますけれども、私どもがそういうところを通じて承知している範囲内では、北欧諸国とかフランス、イギリス等多くの国では条約の内容を紹介するパンフレットを作成し、学校、図書館等の関係する施設に配付しているというようなこと、あるいは一部の国ではフォーラムを開催するとかセミナーを開催するというようなところもあると、こういうようなことを伺っているところでございます。
#151
○上山和人君 もう少し具体的につかんでいらっしゃるんじゃないかと思いますけれどもね。
 今おっしゃったように北欧ですね、この北欧の国々の特徴というのは、例えばスウェーデンは、六歳から八歳までを一つの対象にする、次は九歳から十二歳まで、そして十三歳から十八歳までと、六歳から十八歳までの子供たちを年齢別に三つに区分しましてきめの細かいパンフレットをつくってやっているわけです。それから、デンマークも同じように六歳から九歳、十歳から十二歳、十三歳から十六歳と、やっぱり子供たちを三つの年齢別に区分しましてきめの細かい対応をしたパンフレットをつくって指導しているわけですよ。これは一つの年齢別パンフとでもいいましょうか、そういう広報活動のタイプだと思うんです。
 ほかに、子供たちを参加させる参加型広報活動というのがあります。例えばエクアドル、コスタリカ、こういうところでは子供投票というのを行っているわけです。子どもの権利条約に盛られている子供の権利を示しながら、あなたにとって一番大事な権利は何か、何だと思うかと子供たちに考えさせながら投票させるといったような子供投票。エクアドルでは十八万人以上の子供たちが参加したし、コスタリカでは四十八万人近くが参加しています。子供たちを参加させる参加型キャンペーンといいますか、そういうものを大変工夫してやっています。また、パラグアイでも同じようにいろんな取り組みがあります。これは一つの参加型キャンペーンです。
 さらには、例えばエルサルバドルでは子どもの権利条約をテーマにした特別な切手を発行している。切手を発行して広い啓発運動の素材にしているわけです。そういう工夫もしているわけですよ。あるいは電気や水道や電話事業などの公共事業の領収証に子どもの権利条約に関するスローガンを刷り込んで啓発の素材にする、これもエルサルバドルの取り組みです。さらにはまた、例えば子供の権利に関する詩や絵画などのコンクールを実施したりしていますよ。
 さらに、メキシコではどうかというと、条約の中身をカードに盛り込んで読めるようにして、子供が楽しんでゲームをしながら子どもの権利条約の内容を理解する、そういうカードゲームといいますか、そういうものを工夫しています。またスペインでは、子どもの権利条約に子供たちが親しむことができるように五十種類以上のゲームを準備していると言われているわけです。
 そういう外国の例が実際にあるわけですから、日本はおくれた分だけ、その分を取り返すぐらいの気持ちで外国のこういう例に学ぶべきだと私は思うんです。その準備がほとんどないように聞こえるんですよ。日本は日本でちゃんとやるんです、それはそのとおりです。でも、主体的にやるについても、そういうほかの教訓を生かして大事にすることは重要でしょう。
 これはもう局長にお尋ねしてもなかなかうまくいきませんので、文部大臣、こういう外国の実例を私なりに、これは端的な少ない例ですけれども、御紹介申し上げました。こういうことをお聞きになりながら、これから文部省としてこの重要な問題をどのように子供たちにあるいは教職員にも広めていくか、知らしめていくかという広報活動について、その点に絞りましょう、大臣のお気持ちを今の段階でお聞きしたいと思います。
#152
○国務大臣(与謝野馨君) 児童権利条約に書いてありますことは、日本国憲法あるいは教育基本法あるいはその他の教育関連法規とまさにその内容、考え方は軌を一にしているものでございまして、児童権利条約の加盟国になったということをもってして教育関連法規の改正は必要なかったわけでございます。
 具体的に学校の現場等で子供のあり方等々はいろいろな教育体験を通じて学ばれることでございまして、もちろん児童権利条約について学ぶということも大事であろうと思いますけれども、日本国憲法に書かれております基本的人権を初め、教育基本法の中のいろいろな精神等々を具現化していく過程の中で、またその一環として、そういう児童権利条約というものが私は存在していると思っておりますので、児童権利条約だけを取り上げてそれを教えるということではなくて、やはり日本の憲法に書かれておりますいろいろな国民の権利、義務、そういうものを教育課程全体を通じて、あるいは義務教育、さらには高等学校、大学等の教育を通じて児童生徒に知っていただく、こういうことが大切なんだろうと思っております。
#153
○上山和人君 私の質問に直接には余りお答えになっていないんですけれども、私が御紹介申し上げたのは外国の例ですよ。そういうものを今ほんのわずかですけれども御紹介申し上げました。そういうことをお聞きいただいておりましたから、お聞きになりながら――全然参考になりませんか。そういう抽象的、原則的なことはみんなわかっているんです。
 そういうことを申し上げているんじゃなくて、肥田さんが指摘をしたように、今子供たちは悪戦苦闘を強いられていますよ、みんな。子供たちをめぐるそういう状況の中で、新しい時代を迎えようとしている今、この条約が批准され、効力を生じて本当によかったと思っている。この問題は、成立をしただけでこれが具体的に広がらない、広められない、その効果が上がらないじゃ何にもならないんですよ。おっしゃることはよくわかるんです。文部大臣がおっしゃるとおり。原則的にはそのとおりですよ。でも、それをもっと有効に効果を上げるためにも、外国の例が示しているような取り組みがあっていいんじゃないですか。そのことについて全くお触れになっていませんから。
#154
○国務大臣(与謝野馨君) それぞれの学校現場で国民の基本的な権利や義務というものを教える、あるいは社会のいろいろな制度等を教えるという機会は、学校現場でいろいろな創意工夫が私はあってもいいのではないかと思っておりますし、児童権利条約等についての理解も、そういういろいろな創意工夫の中で子供たちが知ることになるということが私は自然であろうと思っております。
#155
○上山和人君 それは、学校が独自にまた創意工夫を出して編み上げていくのは基本的に一番重要でしょう。でも、文部省としても、国の一つの施策として考えることはさらに重要じゃないですか。もう時間がありませんからその次に移りますけれども、新しい大臣におなりになったんですから、ぜひそういう観点で今後は積極的に考えていただきたい。
 赤松前文部大臣は、六月二十二日のこの委員会の質疑に対する答弁で、この条約がどんなに重要かというのを認識している、学校の隅々にまでこの条約の理念、精神、趣旨、内容が行き渡るように願っていると答弁をなさいました。これは引き継いでいらっしゃると思いますから変わりないと思います、大臣の認識としては。ですから、そういうものを具体化することこそ行政の務めだと思いますから、御検討いただきたい。
 続いて、関連して御質問申し上げます。
 私は、さきの通常国会の予算委員会のときから、そして前の政権の文教委員会のときから一つの提案をいたしております。それは、こどもの日というのが五月五日にあります。こどもの日の行事の一つとして、子供たちにこの子どもの権利条約を周知させるような広報活動といいますか、子どもの権利条約関連の行事を定着させるようにしたらいかがですかと御提案申し上げているんです。
 この前のときは、たしか私は、来年は一周年だから一周年記念事業を企画してはいかがでしょうかというふうに提案をいたしました。やっぱりコンスタントに、これは単年度、一過性に終わるような企画だけではだめだと思います。こどもの日というのがせっかくありますから、こどもの日を中心にして、こどもの日の行事の一つとしてこの問題を取り入れるようにしたらどうでしょうかと、そういう趣旨の御質問をいたしました。
 赤松前文部大臣は、大事なことだと思いますから、どういうふうにそれができるか考えてみますという趣旨の御答弁をなさいました。引き継いでいらっしゃると思いますが、それをお引き継ぎになって文部大臣はこの問題についてどのようにお考えですか。
#156
○国務大臣(与謝野馨君) こどもの日に子供が遊べないような行事をつくると子供から権利を侵害していると言われかねないと。何も固定的にこどもの日にそういう行事をやる、そういう問題ではないんだろうと私は思っております。
 ただ、先生が御指摘になったように、この条約には児童権利条約の内容を大人も知っていなければならないし、子供も知っていなければならないということが書いてあるわけでございますから、やはりいろいろな教育の課程、また年齢による子供の発達段階に応じていろいろな場面でこういうものの存在を教えるということは確かに必要でございますが、そういう行事を通じてという固定的なことではなくて、やはりそれぞれの学校で、日本の憲法を含めまして、日本国民が持つ、あるいは外国人を含めた日本に居住されている方々が持つ基本的人権、また一人一人の権利、義務のあり方について教えていくということが大事であると思っております。
 冒頭から申し上げておりますように、児童権利条約は私どもの国の日本国憲法を中心とした諸制度と考え方は全く軌を一にしているわけでございますので、私は全体としてとらえていくのが正しいのではないかと思っております。
#157
○上山和人君 心外な御答弁なんですよね。
 こどもの日が制定をされたのは、これは国民の祝日に関する法律の一つですから昭和二十三年の七月二十日だと思います。したがって、明くる年の昭和二十四年の五月五日からこどもの日というのが始まっております。そのときに文部次官通達で行事例が示されて、こどもの日の行事について指導が行われていますよ。押しつけろと言っているわけじゃないんですよ、文部大臣。何もそういう企画をすると子供に押しつけるから子供から憎まれるなんという話じゃなくて、こどもの日の行事の一つとしてそのことを取り入れたらいかがですかと言っているわけです。
 具体的には、子供国会を開くのはどうでしょうか。都道府県から子供の代表を国会に集める、そして子供国会を開く。都道府県議会では、市町村の代表を県議会に集めて半日ぐらい子供議会を開いて考える。そういう子供国会なり子供議会というのを考えてみるのも一つの方法ではないですかという趣旨の問題提起も私はしているわけです。
 これは余り長いお答えじゃなくて簡潔に事実に即してお答えいただきたいんですが、昭和二十四年の文部次官通知、通達ですか、行事例を示された指導内容の中に私が申し上げている具体的な子供国会なり子供議会に通じるような指導内容があるんじゃないですか、ちょっとその点だけおっしゃってください。
#158
○国務大臣(与謝野馨君) 行事例といたしましては、その項目七に「都道府県市町村において、こどもの代表を選抜し、国会及び地方議会に対して、こどもの代表を送り、こども希望協議会あるいはこどもと母の協議会等を開く。」、こう書いてございます。
#159
○上山和人君 十項目にわたってこの文部次官通達は行事例をお示しになっています。文部大臣は、今行事をするのは子供から憎まれるの何のと言われますけれども、冗談じゃないですよ。とても心外です。昭和二十四年四月十四日の次官通達で十項目にわたる行事例をお示しになっていますよ。その七項に、今大臣がお読みになりましたように、「都道府県市町村において、こどもの代表を選抜し、国会及び地方議会に対して、こどもの代表を送り、こども希望協議会あるいはこどもと母の協議会等を開く。」と、行事例の一つですよ。
 私は、何もこれがあったから子供国会や子供議会を提起しているわけじゃないんです。でも、やっぱり考えるべきことだということについては、これは次官通知の行事例を見ながら、私が提起をしていることは今まで文部省が考えてこられたことにちっとも反するものでもないし、同じような発想で考えてきたんだなと思って意を強くしています。二十四年からもう何年たちますか、何にも具体化されていないんでしょう。
 鹿児島県には具体的な子供議会の例がありますよ、文部大臣。鹿児島県菱刈町というのが昭和五十四年からことしまで引き続き十六回、子供議会を毎年夏休みを利用して開催しております。子供たちの町内の小学校、中学校、高校生の代表十八名を集める、また同数の傍聴者を学校に依頼して集める。そして、午前中は町長に対する質問、いろんな問題提起をさせる。その結果、例えばあそこに街灯をつくってほしいと子供たちが言う、街灯を整える。あそこにガードレールを設置してほしいと子供たちが訴える、町長は喜んでガードレールをつくってやる。そういうことが十六年続いているわけです。鹿児島県ではそういう例があるものですから、ほかの市町村も少しずつこれを取り入れるように進んできておりますけれども、地方の自治体でこんなにも熱心な、創造的な取り組みが行われているんですよ。
 この子どもの権利条約が発効している機会に文部省も少し目を覚まされたらどうですか。十項目にわたる指導例を示しながら、行事をするのは子供たちからどうのこうのと言う。文部大臣の答弁にならないでしょう。
 時間がありませんが、しかも、文部大臣、世界子どもの日というのがありますね。これについてはんの一、二分で今の文部省の取り組みをちょっとお聞かせください。
#160
○国務大臣(与謝野馨君) 世界子どもの日は国連決議に基づいておりまして、それに基づきまして各国が適宜定めることになっております。我が国の場合は五月五日のこどもの日を世界子どもの日とすると、これは閣議了解でございます。その趣旨を生かしながらさまざまな行事等が行われております。
 特に、世界子どもの日の趣旨にちなんだものといたしましては、例えば世界の子供たちのための国際協力の観点から、五月五日から児童福祉週間の期間を活用したユニセフ等が行っている募金活動に対しまして、バザー活動や開発途上国の子供たちのパネル展の開催などの形で協力するといった取り組みが考えられております。
 以上でございます。
#161
○上山和人君 世界子どもの日というのをほとんど現場の先生方も御存じないですね。これはもう率直な実態ですよ。昭和二十九年秋の国連総会で決議をされまして、それぞれの国の実情に応じていつを子どもの日と定めるかは各国にゆだねられました。日本では昭和三十一年五月五日から、今おっしゃった閣議了解に基づいて世界子どもの日が設定されて行事が行われるようになっています。以来、もう何十年たちますか。世界子どもの日というのは閣議了解で、五月五日のこどもの日に合わせて、日本独特のこどもの日と国連の採択に基づく世界子どもの日と兼ね合わせて行事を行うというふうにされて今日に及んでいます。世界子どもの日は国連の決議に基づくものですから国際的なものですよ。
 したがって、国際的な子どもの権利条約を、そういう世界子どもの日にもなっている五月五日に行事の一つとして取り入れる努力をするのは、日本のこどもの日の趣旨に照らしてもごく自然な、今まで文部省が行事例として指導なさってきたことにもかなうし、私は非常に画期的なことだと思います。
 このことは、赤松前文部大臣は何ができるか考えてみますとおっしゃったんですよ。私は与謝野大臣になってその答えから後退することはあり得ないと思っていますから、ぜひ大臣、御期待申し上げておりますから、こどもの日の子供国会のことあるいは地方議会における子供議会のこと、ひとつ真剣に考えてみていただけませんか。
#162
○国務大臣(与謝野馨君) 赤松前文部大臣の御答弁申し上げたことから後退をしているわけではございません。そういう児童権利条約というのはまさに存在しているわけですから、いろいろな行事の過程でそういうものを広く子供たちにも知る機会が提供されるということの重要性は先生が御指摘されるとおりだと思っております。
#163
○上山和人君 抽象的ですけれども。
 これは局長、お願い申し上げたいんですけれども、広報活動も何より今重要だし、それは単年度あるいは一過性のものにとどまっていては何にもならないとは言いませんけれども実効が上がらないということもよく御理解のことだと思いますから、どう広報活動をコンスタントに、それはおっしゃるように学校が主体的に創意工夫を凝らして全体の教育活動を通して広報活動するのが一番理想ですけれども、それを促進するといいますか、インパクトを与えながらもっと実効の上がるように指導するものを文部省としても真剣にこれからお考えいただきたいということが一つです。
 もう一つは、子供のことにいろいろかかわる職種の人たちがいます。例えば、警察官あるいは弁護士や法律家の皆さん、あるいはケースワーカーといったような職種の人たちは子供に直接かかわる分野でいつもお仕事をなさっていらっしゃる。子供たちを守る立場にある人が子供をいじめたり虐待したりするケースというのがないわけじゃないものですから、特に警察官とか法律に携わる法の執行人、裁判官の皆さんを含めてでしょうか、さらにはケースワーカーの皆さんとか、そういう子供たちにかかわるお仕事をなさっていらっしゃる公務員の皆さんについても、教職員だけでなくて、これらの広報活動を通じて啓蒙啓発することは大変重要だと言われておりますので、これはどの省の仕事になるかわかりませんけれども、十分ひとつ今後真剣に御検討いただきたい。次の機会に、何カ月かたったら、またその経過をお尋ねいたしたいと思います。
 それから、もう一つお願い申し上げておきたいのは、広報活動だけじゃなくて、カリキュラムの中に子どもの権利条約を取り入れるべきだという主張、これは局長はよく御存じだと思う。そういう提起があることは十分御承知のはずでありますから、そのことは外国にもいろんな取り組みがある。まだ国連の方でもこれは勧告というレベルにはなっていないように思います。カリキュラムの中にというところは国連の勧告のレベルにはまだ至っていない。しかし、これから二年後の権利委員会で日本の調査をなさる場合には、必ずカリキュラムの中にどうしているかという質問は国連の権利委員会から出てくると思います。必ずと言っていいほど私は出てくると思いますので、何もそれがあるからというわけじゃありませんが、カリキュラムのこともぜひ真剣にお考えいただけないでしょうか。
 時間が足りなくて、私の質問の仕方も不手際がありまして思うようになりませんでしたし、心残りもいたしておりますけれども、大臣御就任なさってまだこれからですから、真剣にひとつお互いに考えてみたいですね。この条約の問題だけはお互いにフォローしながら、前向きにぜひ、大臣にも期待しておりますから。また、いろいろなものを通じて御意見も申し上げますけれども、文部省当局の局長を初め皆さんもぜひこのことを真剣にこれからも追求してくださいますようにお願い申し上げまして、きょうはひとまず質問を終わらせていただきます。
#164
○木暮山人君 前回に引き続きまして、ひとつ質問させていただきます。
 前回は野崎局長さんにいろいろと御配慮をちょうだいしたのでありますが、要はいわゆる学界の通説、こういう言葉で日本の教科書検定というものが基本的に考えられてきていると。しかし、それは非常に苦しいお立場はよくわかるのでありますけれども、まず第一に、昭和六十年三月七日、第百二回国会衆議院の予算委員会第三分科会第一号の議事録を拝見させていただきますと、高石政府委員の御答弁等を見ますと、なかなか大変なことがたくさん書いてあるわけです。
 一つ抜粋して言いますと、「特に歴史教科書を検定するに当たってはやっていない。」。価値観を一つ一つの事象等に当てはめては考えていない。「一般的な学説として言われている通説、それから公的機関で発表された形のもの、それがそのとおり正しく記述されておれば検定をパスする、こういうような仕掛けになっておるわけでございます。」という答弁をなさっていて、それが一貫してずっと今日にまで来ておるわけであります。
 そこで、いわゆる近隣アジア諸国条項の問題と絡みまして検定の適正というようなことを考えますと、それだけでは通らないと思うのでありますけれども、聞きにくい言いにくい、文部省では大変なお話だと思いますが、前回も申し上げましたけれども、例えば南京事件などというのがちゃんと歴史の教科書に載っておりまして、これが今使っている教科書であります。
 この教科書の中に、「その死者の数は、数週間の間に、市街地の内外で、女性・子どもをふくむ一般市民で七〜八万、武器を捨てた兵士をふくめると、二〇万にもおよぶといわれる。」と、こういうことが本にちゃんと書いてあります。
 ところが、学界の通説とかなんとかといういろいろな理屈が立たないような資料がございまして、その資料を委員の先生に、また大臣にも局長にもひとつ聞いていただきたいと思ってわざわざ時間をとらせていただきました。これを聞いてどんなふうにお考えになりますか。
 まず第一に、南京事件というのは学説によると二十万で、もうみんな殺しちゃったよと、こういうことでありますが、当時の
 南京市は、周囲三一キロメートル、総面積三八平方キロの城さい都市で、東京・世田谷区の五分の四、都市でいえば鎌倉市より狭い都市です。昭和十二年十二月十三日、日本軍が占領したときの人口は約二〇万人で、これらの市民は、米英独など白人十五人からなる「南京安全区国際委員会」が管理する安全区(難民区)に全員収容されていました。ここには一発の砲弾も打ち込まれず、一件の火災もなく、日本軍によって保護されました。
 この国際委員会が十二月十三日から翌年の二月十九日までの間に日本大使館あてに提出した日本軍の非法行為を訴えた公文書は六十一通がありますが、それを見ても殺害事件は四十九件だけです。また金陵大学のスミス教授が多数の大学生を動員して、三月から四月にかけて戦争被害状況を調査していますが、それによると便衣兵まで加えて、日本軍による被害は死者二、四〇〇人であります。
 また日本と戦った国民党国防部長何応欽上将の軍事報告にも、当時の中国共産党の軍事雑誌等にも、南京虐殺に関する記事など一行も見当りません。当時国際連盟の議題にもなっていません。要するに東京裁判で、日本軍の非人道性を糾弾するため、ナチス・ドイツのアウシュヴィッツの大虐殺と比肩する虐殺だとして作られた事件なのです。ということで、まだまだ続くわけであります。
 今度その中身でありますけれども、正確を期するために、
 この時、日本軍は、婦女子や子供を含む、おびただしい数の中国人を殺害し、ナンキン大虐殺として諸外国から非難を浴びた。しかし、日本の一般国民はその事実を知らされなかった。その死者の数は、数週間の間に市街地の内外で婦女子を含む一般市民で七〜八万、武器を捨てた兵士を含めると、二〇万にもおよぶといはれる。と書いてあります。
 私は、このような問題でより正確を期するために、その時の文献を集めてみました。
 南京が陥落したのは昭和十二年十二月十三日であります。十二月一日、南京市長の馬超俊は市民に布告して「日本軍は迫って来た、南京は戦場になる、未だ避難出来ないで残った市民は全員安全区に移住せよ」と厳命したのです。南京のちょうど中心部、ここは大使館・各大学・病院・高等裁判所等もある官庁街ですが、その一画三・八平方キロを「南京安全区国際委員会」が統轄していました。この国際委員会はアメリカ人七人、イギリス人五人、ドイツ人二人、デンマーク人一人の計十五人によって構成されており、これらの第三国人は、おおむね反日感情の強い当時の所謂敵性国人でした。
 南京市長はこの委員会に市民の食糧として米三万担、麦一万担、資金十万両と警察官四五〇人を託し、自分は蒋介石総統、宗美齢、何応欽、白票穂等政府並びに軍首脳と共に十二月七日前後に漢口に脱出、逃避しました。この頃になると南京の役人や金持ちは殆ど逃避して残ったのは細民ばかりでした。十二月九日、南京を包囲した松井軍司令官は降伏勧告のビラを飛行機で散布し、十日正午まで停戦を命じます。しかし、中国軍は降伏を受入れず、激しい戦闘の未、十三日未明、南京城南方の諸門が陥落、約五万といはれた中国軍は雪崩を打って北方を流れる揚子江を渡って浦口方面に逃げます。その途中にあるのが先程申上げた安全区です。
 この安全区に便衣に着換えて遁入した兵は、六〜七千人といはれています。その証拠に彼等が脱ぎ捨てた軍服や靴、ゲートルが中山路に延々として散乱していたといはれます。武装して逃走した大多数の兵隊は、北方への出口の把江門が内側から土嚢で閉ざされていたので、十八メートルもある城壁から、慌てて紐やゲートルを結んで伝はって降りるなどパニック状態が起きて、ここで大勢死んでいます。更に佐々木支隊が迂回して包囲殱滅戦となり、小舟や桴で敗走する敵は折りから遡行してきた我が第十二艦隊によって撃滅されたのであります。この時の大量死体が後に南京大虐殺の火種となったといはれています。しかし、勿論これは戦闘行為であります。
 日本軍は占領翌日の十四日から、市内の掃討戦に入るのですが、松井軍司令官の命により、安全区の街路に歩哨を立てて、無用の者の出入りを禁じて、ここを保護しました。同時にここに潜入した便衣兵約二千人と多数の隠匿兵器を摘発し、便衣兵はこれを処刑しています。御存知の通りゲリラ兵や便衣兵の処刑は戦時国際法の認めるところであります。
 こういうぐあいに、東京裁判の却下したいわゆる証言の文書の中に、こういうものは東京国際法廷に上げられなかったわけですね。しかし、こういうことを、ちゃんとした事実、南京の金陵大学の学生が調査した。そしてまた、向こうの市長さんが逃げるに当たって人民にとお金と米を国際委員会に委託した。それで国際委員会が報告書を出しているんですね。その報告書を見ると、三月に出したんでありますが、まことに立派なことが書いてあるんですね、報告書には。
 この大虐殺というのは、最後に国府軍、要するに蒋介石の軍隊が逃げるとき、南京の市民をいわゆる疎開と申しまして、日本では徴兵、中国では疎開と言いますね、徴兵を。それを四カ月の間に三度もして約五万人ぐらいの男を徴兵したわけです。その人たちが一緒に逃げようとした。それを逃がさずに逆に城内に追い返した。そのとき一万人近く中国兵が自分で機関銃で掃射した。それで、逃げる中国の人たちを日本の海軍が、いわゆる今度は国府軍の、そういう人たちを置いて逃げたその人たちを砲撃して静めた。それが大変虐殺の火種になった。
 こういうことなんでありますけれども、こういうことは全部却下された。しかし、却下された後で、キーナン検事も皆さん口をそろえて、東京裁判は正当なものではなかったというようなことも言っております。
 しかし、今、日本のいろんな教科書の中には、先ほど申しましたように二十万人云々の問題があります。人口が二十万しかいないのに、どこから二十万連れてきて、またどこへ二十万人埋めたか。そういうことが学説とかそういうものにないんだけれども、前回言った国旗みたいにひとり歩きしまして大変なことになると思うんです。私はこういうことを本当は言いたくないけれども、黙ってここにいればずっとこれからもひとり歩きしまして、これが事実に近いものになってしまう。私がここで問題を提起しておけば、うん、それは木暮の言っているのが本当だよと、学者というのは何やっていたんだと。
 また、子供にそれを教育する、二十万人殺したんだ、おまえのおじいさんは、お父さんはと。子供だって嫌がってこんなページは見たくなくなる。歴史の本なんて見たくもないよというようなことになって、勉強嫌いになってしまう。こんなことになったら、これは先日大臣がおっしゃったようなことにも通じ、またきょうの児童憲章のいわゆるそういう問題にも皆通じていると思うんですね。
 でありますから、こういうことについていつまでもいわゆる学界の通説、これは局長さんが学界の通説と前回一生懸今おっしゃっていましたけれども、今私の申し上げたのは学界がわからない本当の真相でありまして、通説とどちらがどうなるか、そこいら辺をちょっとまず御意見を伺わせていただきます。
#165
○政府委員(野崎弘君) これは前回もお答えをさせていただきましたが、南京事件の犠牲者数につきましてはいろんな議論があることは事実なわけでございます。
 したがって、教科書を記述してくる場合に、これはあくまでも執筆者が記述してくるわけですが、その記述してくる場合に具体的な数について触れない、こういう教科書もあるわけでございます。現実に、中学校ですと八件の教科書ございますが、具体的な記述がないのが二件ございます。それから高等学校になりますと、五十件ございますが、そのうち二十一件は具体的な記述をしていない、こういう記述もあるわけです。
 一方、執筆者があくまでも概数を挙げたいというような場合に検定としてどうするかということになりますと、検定の基本的なスタンスというのは記述の欠陥を指摘する、こういうことをスタンスにしてやっておるわけでございます。
 記述の欠陥というのは一体何か、こういうことになりますと、特にこういうさまざまな主張があるというような場合におきまして、学界において学問的な根拠を有するものとして受け入れられているそういう学説に基づきまして記述がなされていると、こういうものについては許容する、積極的に意見をどうするということじゃなくて、そういうものを許容している、こういう姿勢で臨んでいると、これが教科書検定の今のやり方でございます。
#166
○木暮山人君 その続きをひとつ申したいと思います。
 私は、教科書検定そのものの姿というものをもう少し考えて、日本の将来のためとか日本の教育者の将来のスタンスとかというものを含めた上でいろいろとやっていただきたい。
 それで、その続きはこんなことになっています。
 日本軍は占領翌日の十四日から、市内の掃討戦に入るのですが、松井軍司令官の命により、安全区の街路に歩哨を立てて、無用の者の出入りを禁じて、ここを保護しました。同時にここに潜入した便衣兵約二千人と多数の隠匿兵器を摘発し、便衣兵はこれを処刑しています。御存知の通りゲリラ兵や便衣兵の処刑は戦時国際法の認めるところであります。
 さて、この安全区に集まっている全市民の数は、松井大将の陣中日記に「約十二万人」と記録されており、ドイツの新聞記者や捕虜の証書によると「十五万人」といっていますが、安全区国際委員会の公式記録は「二十万人」となっています。つまり実数十二万から十五万で、公称は二十万人であります。この安全区には一発の砲弾も爆弾も撃ち込まれず、一件の火災もありませんでした。平穏無事だったのです。
 これを喜んだ国際委員会のラーべ委員長は委員会を代表して、日本軍に対して感謝の書簡を認めているのです。
 更に金陵大学病院のマッカラム医師はその日記の中で次のように述べています。因みにこれは東京裁判でも朗読されています。「日本軍は礼儀正しく、しかも、敬意を以て私共を処遇してくれた」「日本兵が支那人を助けたり、支那人の赤子を抱きあげているのを見た」「日本軍の手によって難民達に米が分配された」「七〜八名の大変立派な日本兵が病院を訪れ、病人に与える食べ物や、私達が一か月も食べてない若干の牛肉と百斤の豆を持って来てくれた」と述べているのです。
 国際委員会の書記長であるスマイス博士も調査報告で「難民。区内は火災も無く平穏であった」「住民の殆どは、ここに集まっていた」と述べており、例の幻のフイルムで有名になったマギー牧師でさえ「安全区は難民達の天国たつたかも知れない」と述べているのです。
 このことは、当時、同盟通信社の特派員であった故・前田雄二氏も『世界と日本』昭和五十九年四月号で「所謂南京大虐殺というのは、二〜三十万人という数は別としても、主として住民婦女子を虐殺したというものだ。ところが、殺されねばならない住民婦女子は全部”難民区”の中にあって日本軍の警備司令部によって保護されていた。私の所属していた同盟通信社の旧社屋はこの中にあり、入城四日目には私達全員はこの支局に居を移し、ここに寝泊りして取材活動をしていた。即ち難民区は私達の生活圏で、既に商店が店を開き、日常生活を回復していた。住民居住区の情報は逐一私達の耳目に入っていたので、万はおろか、千、百を以て数えられる程の虐殺が行なはれるなどあり得る筈はなかった。非戦闘員の大量虐殺は無かった。これがさも事実であったかのやうに伝えられ、教科書にまで記載されていることは看過していい事ではない。何故歴史が歪められたのか、それは戦後の東京裁判史観に因るものだろう」
 こんなふうに述べておりまして、これは南京大虐殺というのはもう一度どこかで、これが悔しかったら何か学会でも開いて、余り古くなったら、もう五十年六十年たつと証人がいなくなる。今だったらまだ南京城に一番に突入した人たち、森王さん、そういう隊長もみんなそろっておいでになるから、今なら結構こういう汚名を、禍根を残さずに済む時期でありますから、私はできるならこれはやっぱりみんなこの委員会で、文教委員会のような立派な委員会があるんだから、ここでこういう問題を、悔しいかもしれないけれども、私が見つけてきたんだから、こういうものを、だからぜひともこれを問題にして、ひとつ何か考えてもらいたいと思うんですね。これは大臣に聞くのもあれなんですけれども、局長さん、どんなものですか。
#167
○政府委員(野崎弘君) 文部省が別に学説をどうのこうのというわけにはまいりませんで、やはり実際に教科書が記述されたときに、教科書調査官というのがございます、そういう方々に専門的に今の状況がどうなっているかというようなことを研究していただくわけでございます。また、そういうことを受けまして、教科用図書検定調査審議会におきましても厳正に審査をいただいて検定を行っておるわけでございますので、今のそういう検定の仕組みということをひとつ御了解いただければと思っでございます。
#168
○木暮山人君 済みません。時間が余りないところをばたばた言っていますもので、申しわけございません。
 それで、私はこの南京の問題とか侵略とかそういう問題を歴史の教科書に書いた人に、いわゆる近隣アジア条項があるからもうそれは見ぬふりをして検定放棄しなくて、もう少し大きい目をあけて見てもらいたい。
 それで、人に言わせりゃ、こういうことになっているんですよ。
 昭和63年10月3日教科書発行会社の三省堂が、昭和62年度の検定合格済みとなっていた英語教科書中「第一三課 戦争」の項全部を取り止めて、「マイ・フェアレディ」という詩文に差し替える申請を文部省へ提出して受理された。
 これは何が書いてあったかというと、こんなもの見た人はいないと思うんですけれども、それも私がちゃんと見つけてきたんです。こんなことが書いてある。
 ドストエフスキーの小説の中のトルコ兵士の残虐行為をマレーシアの日本軍にすり替えて書いたものであった。それは、「マレーシアで日本の兵士が幼児を泣きさけぶ母親からひったくり、空へ投げ上げて落ちてくるところを銃剣で突き刺した」
ということが日本の教科書の中に英文で出ていた。これを三省堂さんが自発的にマイ・フェアレディという詩に書きかえさせてもらっている。
 それと同時に、こんなような例で結構なんですけれども、南京の大虐殺、これだって今私が言ったように、これはちゃんとした資料なんですよ。冗談で言っているわけじゃない。
 これを見ますと、ここで、「新しい社会 歴史」の本、今これ通用しているんですよ。この本に書いてあることを、マイ・フェアレディじゃないけれども、ひとつ訂正するような気構えにおいおいなっていくと思います。
 特に今の政権、総理初め、国旗のこと、日の丸のこと、自衛隊のこと、これは全部もう終わっちゃった。今度はこれをもう少し拡充していくんだと。まだこの歴史のところまで来ませんもので、いずれ文部大臣の方に総理の方から何らかのさたがあるとは思いますけれども、そのときは、この委員会で前もってそんなような問題があったよとひとつお知らせ願いたい、かように思います。
 時間でございますので、私の質問を終わらせていただきます。御無礼しました。
#169
○浜四津敏子君 それではお尋ねいたします。
 初めに、子どもの権利条約についての周知徹底の取り組み、それから広報につきましてお伺いする予定でしたが、同僚議員の方から大変詳しい質問がなされましたので、外務省にせっかくいらしていただいたんですが、この問題については簡単に伺いたいと思います。
 これは外務省がつくられたポスター、全国の小中高の各クラスに配付できるようにということで百万部おつくりになられたわけですね。それともう一つは、外務省はこの条約の訳文つきの小冊子を五万部、全国の教育委員会に配付されましたね。済みません、外務省に対しましてはこの確認だけで終わらせていただきます。
#170
○説明員(旭英昭君) そのとおりでございます。
#171
○浜四津敏子君 ところが、ことしの九月十四日付の朝日新聞によりますと、これは「子どものための電話相談・子ども一一〇番」がアンケート調査をしたそうですが、その結果を公表したこういう記事が載りました。それによりますと、子どもの権利条約を知っている小学生は五割、中学生は何と一割、高校生は三割。大分格差があるわけですが、平均しますと三割の子供たちは知っている、しかし十人中七人は知らない、こういう結果が出ております。
 文部省、先ほどいろいろこの周知徹底、また広報に取り組んでおられる、こういうお答えがありましたが、このアンケート調査の結果をどのように受けとめておられますでしょうか。
 それから、この程度しかまだ知られていないということですが、やはり今後さらに周知徹底、それから子どもの権利条約の内容について子供たちに十分理解してもらえるようなさらなる取り組みが必要だと思いますが、いかがでしょうか。
#172
○政府委員(野崎弘君) 児童生徒一人一人がどうかというあたりまで私どももなかなか調査が行き届いておりませんので、どの程度一人一人の児童生徒が権利条約について知っておるかということは把握していないわけでございますけれども、現在、外務省のそういうポスターとか、あるいはいろんな研修会で先生方にこういうものの周知徹底を図っておるわけでございますので、各学校におきましてもそういうことに基づきましていろんな場で教育をしていただいておると思うわけでございます。
 私どもといたしましては、もちろん今までの活動だけで足りるというふうには考えておりません。これからもいろいろな研修の場とかそういう中で十分な周知徹底を図っていきたいと思っております。
#173
○浜四津敏子君 それでは、次の質問に移らせていただきます。
 子どもの権利条約二十八条には、初等教育は義務的で無償のものとする、また中等教育は無償教育導入あるいは財政的援助などの措置をとる、こういう内容のことが定められております。
 ところで、先日の新聞報道によりますと、大蔵省は小中学校の教科書無償制度を有償化へ向けて見直す方針を固めた、これを七年度予算編成で実現を目指す、こういう報道がありました。文部大臣は所信表明の中で義務教育教科書無償制度を堅持する、こういうお立場を表明されました。これは子どもの権利条約の定める義務を誠実に遵守履行される内容の表明だというふうに思いまして、私たちもぜひ応援させていただきたいと思っておりますが、文部大臣、この大蔵省の方針についての御見解、そして御決意をお聞かせいただきたいと思います。
#174
○国務大臣(与謝野馨君) その大蔵省の方針というのはあくまでも新聞報道でありまして、そのようなことは確認をしておりません。
 義務教育教科書無償の制度は昭和三十八年度以来実施しておりまして、義務教育無償の精神をより広く実現するとともに、次代を担う児童生徒の国民的自覚を促すなど、教育的意義が大きいものと認識をしております。文部省としても、この制度の意義、重要性にかんがみ、今後とも堅持してまいりたいと思っております。
#175
○浜四津敏子君 この報道によりますと、大蔵省はこの義務教育教科書無償制度を有償化に向けて見直す、この方針に加えまして、さらに二つの方針を検討しているというふうに報道されております。
 一つは、私立高校などに対する経常費補助を削減する。それからもう一つは、義務教育の事務・栄養職員の給与の一般財源化を検討する、こういうふうに報道されているわけでございます。そして、七年度予算編成で文教予算の圧縮につなげたい考えであると、新聞ではこのように報道しております。
 これは、文教予算というのはむしろ拡大すべきものであって、削減の方向を考えているというのは大変問題だというふうに私は思いますが、これについても、ちょっと事前通告しておりませんが、大臣の御感想ありましたらお聞かせいただきたいと思います。
#176
○国務大臣(与謝野馨君) 私立学校助成については、昨年度一部地方交付税に回したということは事実でございますが、平成七年度の概算要求においてはできるだけそれを回復するように努めまして要求をしたところでございます。したがいまして、先生が御懸念されているような私立高等学校等の助成が削減の方向に向かうあるいは一般財源化の方向に進むということは私どもの目指しているところではなく、むしろ私立高等学校等の助成を充実させていくというのが私どもの方針でございます。
 第二番目の栄養士等の問題は、これは大蔵省はそのように言っていると新聞で報道されておりますけれども、私ども文部省の方針は、従来の方針を堅持していくというのが私どもの方針でございます。
#177
○浜四津敏子君 ぜひともその方向で御尽力いただきたいと思います。
 次に、子供の虐待についてお伺いいたします。
 子どもの権利条約十九条には、国は親などの虐待から子供を守るための適切な措置をとるべきもの、こういうふうに定めております。虐待されている子供たちを発見し、保護し、助けるための系統的そして統一的な法制度その他の制度が今の制度の中には存在しておりません。
 現在、虐待されている子供がいることを仮に周りの人が知ったとしても、どこにどう通報すればいいのかわからない、あるいは通報して逆恨みされるのも困るので結局何もしない、こういう事例が多いというふうに聞いております。仮に通告があって児童相談所で保護するという場合でも、児童福祉法の三十三条は一時保護だけでございます。
 また、二十七条の施設入所排置をとる場合には親権者の同意が必要でありまして、仮に親権者の同意を得て入所措置をとったとしても、親がその同意は取り消す、自分が引き取ると言った場合には、仮に親のもとに帰せばまた虐待されるということがわかっていても引き取りに応ぜざるを得ない、こういう状況でございます。
 また、親権者の同意が得られない場合には、二十八条によりまして家庭裁判所から措置承認審判を得て養護施設などに入所できることになっておりますけれども、この場合にも親権は一時的に停止しているとは解釈されておりませんで、したがって親から引き取り要求があれば帰さざるを得ない、こういうことになっております。
 そこで、親権の一時停止の制度化が必要であるということが従来から指摘されているわけでございますけれども、現在は民法八百三十四条の親権喪失宣告の制度のみでございます。その前の仮処分も確かにありますけれども、これも十分に機能しているとは必ずしも言えない状況でございます。
 また、申し立て権者は親族、児童相談所長も申し立て権者になっておりますけれども、親族の場合は、これもなかなか核家族化で申し立て権者になってくださる人がいない、あるいはかかわりになることを恐れる。また、児童相談所長も最近この十年間てたしか一件だけ、こういう状況だったと思います。つまり、現実にはこの親権喪失の制度というのはほとんど利用されていない、利用できない状況になっております。
 これは法務省に伺いますが、こういうことで、裁判所も親権の全面的な喪失ではなくて一時停止であれば決定を出すことにも抵抗は少ないんじゃないかというふうに思いますが、民法の一部改正、現在家族法の改正が審議されておりますが、本来この中で検討していただきたかったことではございますが、現在検討されているのかどうか、あるいは今後検討される御予定があるのか、どういう状況になっておられるのかお伺いしたいと思います。
#178
○説明員(小池信行君) 御指摘の親権の一時停止、一時制限の問題につきましては、これは私どもこういう制度をとった場合にどのような問題が生ずるのかということにつきまして現在地独をしているところでございます。
 今のところ私どもが承知しておりますのは、この制度を仮に採用いたしますと、やはり基本的には今御指摘の親権喪失宣告制度及びそれに伴う保全処分、この制度との間の重複を避けるということと、この制度との間の整合性をいかにして保つかということが基本的な問題になろうかと思います。
 具体的な問題を申しますと、一つには、一時的な親権の停止あるいは制限をするための実質的な要件、どういう事由があれば制限あるいは停止するということになるのか。それから二番目は、今先生も御指摘になりました申し立て権者の範囲をどうするのか。三番目には、一時停止すると申しましてもその期間をどうするのか、どのような基準で定めをするのか。それから四番目には、親権が一時たりといえども停止された場合の子の保護、子の財産管理やあるいは身上を監護する人は一体だれが担当するのか。特に単独親権者である者につきまして一時停止、一時制限がされたような場合には、これはまた一時後見人というような新しい制度をつくるという必要があるのかどうか。
 さらには、これは制度全般に通ずることかもしれませんが、この制度が乱用されるというおそれや、あるいは国家権力が過度に家庭生活に介入するというようなおそれがないかどうかということ、そういうような点が問題になろうか。さらには、こういう制度を組み立てた場合に、この制度が果たして実効的に作用するものであるかどうか、そういうようないろんな広がりのある問題を持った事柄であるというふうに認識をしております。
 今御指摘がありましたように、現在法制審議会の身分法小委員会におきましては、婚姻、離婚法制の見直し審議を行っております。したがいまして、親子法の関係は直接の対象ではございません。ただし、夫婦の問題と親子の問題というのは密接な関連がございますので、やはり審議の過程で親子法の問題、特に親権のあり方について問題が指摘されております。
 先生御指摘のようなこの親権の一時停止、一時制限というような問題も、現に法制審議会で指摘をしておられますそれらの親権の問題とあわせて、今後その検討の取り扱いを決めていくということになろうかと思います。
 以上でございます。
#179
○浜四津敏子君 あと一点法務省にお伺いいたします。
 新聞記事等によりますと、子どもの権利オンブズマンの制度を開始することにした、こういう報道がなされましたが、この制度の具体的な内容はどういうことなのかお伺いしたいと思います。
#180
○説明員(渡邉一弘君) お答えいたします。
 子どものオンブズマンというのは、いわゆる愛称として使用させていただいておるわけでございますけれども、正式には子どもの人権専門委員という言葉を使わせていただいております。オンブズマンというのは、広く国民にこの制度を周知していただくために愛称として使っている言葉でございます。
 法務省の人権擁護機関は、従来から、いじめ、体一割、不登校児問題などの子供の人権問題に取り組んできたわけでございますけれども、児童の権利条約の批准を契機に、子供の人権に適切に対処するためにこれに重点的に取り組む機関の充実強化が求められていたことにかんがみまして、人権擁護委員の中から子供の人権を専門的に取り扱う子どもの専門委員を指名し、子供の人権問題に取り組むこととしたものでございます。人権擁護委員の中から百六十七名の子どもの専門委員を全国十都道府県に八月一日をもって指名しております。
#181
○浜四津敏子君 指名は済んで、これが実際に動き始めるのはいつごろになるんですか。
#182
○説明員(渡邉一弘君) 既に八月一日に指名を終わりまして、それぞれ各地で具体的な取り組みを始めているところでございます。
 従来も取り組んできたわけでございますけれども、具体的にこれから取り組もうとしている職務の内容といたしましては、子どもの人権相談所では子どもの人権二〇番を開設して子供の人権についての相談に応じ、あるいは子供会等と連携いたしまして座談会を開催したり、子供に対するアンケート調査を実施し、子供の人権問題の情報の収集に努めますとともに、子供の人権が侵害されているおそれがある場合には法務局と連携して調査を行い適切な措置をとりたいと考えております。
 また、専門委員としての活動を通じて得られました情報を子どもの意見あるいは子どもの人権専門委員だよりなどに取りまとめまして、学校あるいはその他関係機関及び地域住民に配付するなどいたしまして、地域の実情に応じた効果的な活動を進めてまいりたいと考えております。
#183
○浜四津敏子君 法務省、ありがとうございました。もう結構でございます。
 次に、厚生省に伺います。
 今般、厚生省は、子供への虐待に対応するためにアドボケーター、子供の援護、代弁者制度を始めることとしているというふうに報道されておりますが、既にこの制度は始められているんでしょうか。また、この制度の具体的な内容についてお伺いいたします。
#184
○説明員(大泉博子君) 児童虐待のケースにつきましては、先ほど先生が詳しくおっしゃいましたように一般的には児童相談所において調査指導を行いまして、必要に応じて養護施設の入所措間が行われているわけでございます。
 アドボケーター制度、先生がおっしゃったアドボケーター、児童権利擁護者と私ども訳しておりますが、この事業は平成六年度、今年度から新たに始めたものでございます。内容は、民間の養護施設が持っております専門性を活用いたしまして、正式な事業の名称は都市家庭在宅支援事業と申しますが、この事業の実施を始めたところでございます。
 この事業は、養護施設におきまして、児童の育成について豊富な経験と知識を持っている児童指導員でございます児童福祉アドボケーター、先ほど申しました児童権利擁護者でございますが、この方が中心となっていただいて児童の養育に不安や悩みを持つ御家庭からの相談に応じるとともに、地域の児童委員の方々や保健婦さんの協力によりまして児童側の視点に立った家庭の訪問援助などの活動を行うものでございます。
#185
○浜四津敏子君 済みません、ちょっと聞き落としましたが、これは既に開始されているんでしょうか。
#186
○説明員(大泉博子君) 実際の開始は、ちょっと今、予算の成立が遅かったせいもありまして、年内には実施が始まるということでございます。
#187
○浜四津敏子君 ありがとうございました。
 ちょっと時間の関係で次に移らせていただきます。
 不登校の子供たち、登校拒否の子供たちの問題について時間が許す限り伺わせていただきます。
 昨年の文教委員会においても質問させていただきました。その際、文部省側から、学校外のいわゆるフリースクールに通うための交通費について通学定期の適用を認める通達につきまして、その通達の徹底を図るという御答弁をいただきましたが、その後どのようにこの通達の徹底をしておられますでしょうか。また、その結果、利用者はふえているんでしょうか。
#188
○政府委員(野崎弘君) 今御指摘の通知につきましては、昨年の三月十九日付で各都道府県教育委員会等に対しましてその通知をしたところでございまして、実際にこの通知によります通学定期乗車券制度の適用というのは昨年の四月一日からだったわけでございます。
 この通知につきましては、各種会議等におきまして周知に努めてきているところでございます。昨年の御質問の後におきましても、都道府県教育委員会の生徒指導担当指導主事連絡会議等におきましてこの趣旨の徹底を図ったわけでございます。
 今、利用者がどうかということのお尋ねでございますけれども、利用者の具体的状況等についてはちょっと把握をしていないわけでございますけれども、なお今後ともこの周知の徹底を図っていきたいと思っております。
#189
○浜四津敏子君 それから、適応指導教室という取り組みを始められましたが、この成果があったのかどうか。成果というのをどのように考えておられるのかお伺いいたします。
#190
○政府委員(野崎弘君) 不登校児の適応指導教室ということで、どうしても学校に通えないということでございまして、そういう子供を教育センターとかその他のところでいわゆる適応指導教室というものを設けて学校に帰れるように指導してきたわけでございます。平成六年五月の調査では全国で三百八十四カ所ということで、年々設置の箇所数がふえてきております。それだけ登校拒否児童生徒の数もふえているということで、そのこと自体は大変憂慮すべきことなわけでございますけれども、そういう適応指導教室におきまして適切な指導が行われることによりまして学校へ復帰する者の割合もふえてきているのではないか、このように思っております。
 具体的な数字で申しますと、平成四年度中に学校嫌いを理由といたしまして三十日以上欠席した公立の小中学校におきます登校拒否児童生徒数、これは約七万二千人あったわけでございますけれども、この指導の結果、年度内に登校することができるようになった子供の数が二万三千人、全体の三分の一は年度内に登校することができた、こういうことがございます。
 なお、適応指導教室におきます指導のあり方等につきまして調査研究委託事業というのを実施しておるわけでございまして、平成四年度におきます事業を委託したところは四十九の適応指導教室があるわけでございます。そこの状況を見ますと、学校に復帰した者の割合が小学校で四七%、半分近くが学校に復帰した。中学校ですと約三六%というような状況になっているわけでございますので、それぞれの教室におきましては真剣に対応していただいている、このように考えております。
#191
○浜四津敏子君 時間が参りました。大変ありがとうございました。
#192
○橋本敦君 子どもの権利条約の批准に関連をして質問をさせていただきますが、まず最初に、私は学校施設における子供の安全確保の重要性について指摘をしたいと思います。
 児童、子供の最善の利益を守るという、こういった条約の基本理念からしても、一番大事な子供たちの安全を守ってやるという問題は何よりも基本的なベースメントだろうと思うんです。ところが最近、学校でいろいろな事故が起こっておる状況がありまして、私が承知しておるだけでも次のとおりであります。
 ことしの三月には、京都の亀岡市の小学校で、一年生の児童が焼却炉に落ちて死亡するという痛ましい事故がございました。先月の七日には、埼玉県の大宮市の小学校で、六年生の児童が吹き抜け構造のガラス屋根を踏み破って七メートル下の一階ホールに転落をして、全身を打ってかわいそうに重体となるという事故が起こっております。九月七日には、埼玉県の中学校で、突風が吹きまして窓ガラスが割れて七十三人の生徒及び教師がけがをするという突発事故も起こっておりますし、九月の二十日には、今度は静岡県の中学校の倉庫にあったプールの消毒に使う次亜塩素酸カルシウムが化学反応を起こしまして煙が発生して、教師たち七人がのどの痛みを訴えて病院に運ばれるという、こういう事故が起こっているわけであります。
 こういった私が指摘したような事故があった事実については文部省も御承知と思いますが、間違いございませんか。
#193
○政府委員(小林敬治君) はい、そのとおりだと思っております。
#194
○橋本敦君 そこで、この問題についてでありますが、子どもの権利条約の第三条は、今指摘しましたように、第一項で児童の最善の利益を主として考慮しなきゃならないという大事な課題として取り上げておりますが、その第三項で具体的に、締約国は児童の保護のための施設、これらにつきまして特に安全及び健康の分野に関して権限のある当局の設定した基準に適合することを確保する、こう言って明確にしております。
 そこで、文部大臣に要請をしたいのでありますが、この条約の批准をしたという今日の事態において、全国の小中学校においてどれくらいの危険箇所があるのかないのか。危険箇所があれば、それの是正のために早速適正な指導と援助が必要だと思いますが、大事な子供の安全ということを、条約批准の今日を契機に、思い切って全国的に総点検的な調査を文部省の指導でやっていただく必要があるのではないかということを私は考えるんですが、このことを強く要請したいと思いますが、大臣の御所見はいかがでしょうか。
#195
○国務大臣(与謝野馨君) 学校教育におきましては、安全な環境のもとで児童生徒の事故を未然に防ぎ、子供たちが伸び伸びとした学校生活を過ごせるようにすることが極めて重要でございます。各学校では、学校保健法に基づき、施設及び設備の定期の安全点検を毎学期一回以上行うとともに、日ごろから日常的な施設設備の安全点検を適切に行い、必要に応じて修繕する等危険を防止するための措置を講じることとされており、文部省としては、この規定に則し指導を行っているところであります。
 文部省といたしましては、一人一人を大切にした教育を充実するため、今後とも安全な環境の維持と事故の防止が図られるよう努めてまいりたいと考えております。
#196
○橋本敦君 大臣おっしゃった適切な指導というのは結構ですが、定期的な点検ということをさらに重点的に、その面について点検を思い切ってやっていただきませんと、私が指摘したような事故が起こった後では遅くなるわけですね。したがって、児童の安全については特段の配慮と点検を十分に行うように改めて指導を狭めていただきたいと思いますが、いかがですか。
#197
○政府委員(小林敬治君) 今大臣が答弁されましたように、文部省ではかねてから学校保健法の規定にのっとりまして定期点検及び日常の点検を怠らないようにということで御指導申し上げてきたわけでございますが、にもかかわらず先生御指摘のような事故が現にあるわけでございます。ですので、私どもとしては、今後ともそうしたことがなくなるように一生懸命努力してまいりたいと思っております。
#198
○橋本敦君 じゃ、次の問題に移っていきたいと思います。
 言うまでもありませんが、子どもの権利条約は、子供を権利行使の主体者としてとらえたという点で画期的な意義を持っております。その権利の主体者としての子供がまさに成長発達段階に応じて全人格的に健やかにゆとりを持って育っていくという、こういった環境整備を教育行政の場でつくっていくことが条約を批准した措置に沿う当然のことであります。
 そこで、この条約の理念、目的に関連をして学習指導要領との関係、学校五日制問題について話を進めさせていただきたいと思います。
 最初に伺いますが、文部省としてはこの子どもの権利条約締結を契機に推進すべき施策の一つとして学校五日制の導入を挙げておられると思いますが、その趣旨はどこにありますか。
#199
○政府委員(野崎弘君) 児童の権利に関する条約ということよりも、むしろかねてから学校週五日制ということは文部省の取り組むべき課題ということで考えてきたわけでございます。やはり子供たちに判断力、そしてまた、みずから考えて行動する力、こういうものを養うためには、ゆとりのある生活ということが大事であろうと。特に、土曜日というものをみずからでどう行動するかというようなことで、余りほかからいろんなことを言わずに、子供たちがみずから何をするかということを考えていくような時間というものを確保する必要があるんじゃないかということで、これにつきましては協力者会議を設け、段階的に実施することが適当であるということで平成四年九月から月一回の学校週五日制を実施してきているところでございます。
#200
○橋本敦君 御趣旨のとおり伺って結構だと思います。
 子どもの権利条約の第二十九条で、条約の締結国は、教育が「児童の人格、才能並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させる」ということを、これを理念として掲げ、目標としているわけですね。それを子供の権利行使の主体者としての人格を尊重しながら進めるとすれば、今局長もおっしゃったように、まさにゆとりのある教育を保障してやるということがその基本的なあり方として大事になってくるということ。だからしたがって、学校五日制の問題はその意味で権利条約の基本理念を進めることと結びついて今日的大事な課題になっているというわけですね。
 そこで、問題は、今局長がおっしゃったように、ゆとりのある教育が著しく阻害される、過密な教育内容によって学習についていけない子や落ちこぼれやあるいは不登校児を大量につくり出すという、そういう事態になっていくということになれば、これはまさに子どもの権利条約の理念に反するという事態になる。
 そこで、私は今問題になっております学校五日制の問題と学習指導要領との関係において、本当にゆとりのある教育になっていっているのかどうか、そこのところを十分に検討を深めて今日見ていかなくちゃならぬというように思うわけであります。
 この問題で文部省もいろいろ調査をしていると思うんですけれども、学校五日制の実施を月二回やるという学校で、調査研究協力校でいろいろやられましてその状況が公表されたわけでございますけれども、教科の授業時間数を確保することを最優先にして学校行事を削減した学校、これが一体どれくらいあったか、明確にお答えいただけますか。
#201
○政府委員(野崎弘君) 月二回の学校週五日制の研究を六百四十二校でしていただいたわけでございますが、授業の上乗せというような面で考えますと、高等学校で三一%、中学校で五二%、小学校で四二%の学校におきまして、休業日となる土曜日以外の曜日の授業時間をふやしているという、こういう例がございます。
 しかし、その場合でも過当なりの増加授業時数ということで見ますと、高等学校、小学校とも七割を超える学校で一単位時間以下にとどまっております。中学校では過半数の学校で一単位時間以下にとどまっていると、こういう状況でございます。
 今、学校行事についての御指摘があったわけでございますけれども、学校行事につきましては、高等学校で五五%、中学校では八五%、小学校では九〇%の学校で授業時数を削減している、こういうことでございまして、これはいろいろな工夫の中でより効果的な学校行事を実施しようということで、それぞれの学校で御工夫をいただいたのではないか、このように考えております。
#202
○橋本敦君 端的に言えば、小学校では学校行事の削減が九〇%の学校に及んでいるということですね。そして、普通の曜日での授業の上乗せが小中高ともかなり進んでいるということです。だからしたがって、ゆとりのある教育という、こういった方向を目指すとはいうものの、実際にはこの文部省の実験調査によりましても、児童生徒の学習負担については以前よりも増加したという回答が小学校で四一・五%、中学校で四五・三%に上っているという、こういう現状があるという問題であります。
 だからしたがって、この問題に対してどう解決をしていくかということの一つの問題として、学校での現行の学習指導要領を五日制に見合って見直す必要があるのではないかという、こういった議論が当然出てくるというのも、これもまた必然的な私は傾向だと思うのであります。
 そこで、文部省に伺いますけれども、現行学習指導要領の見直しあるいは五日制に関して、ゆとりのある教育を目指すという立場からこの指導要領に関して意見を述べている地方自治体の議会の議決数が昨年末現在でどれだけになっているか、文部省は把握していらっしゃいますか。
#203
○政府委員(野崎弘君) 今お尋ねの地方公共団体の議会の意見書などが五百六十九件寄せられております。これは本年八月現在でこれだけあるわけでございますが、ただ内容はいろいろでございまして、学校週五日制というものの完全実施というようなことを考えながら学習指導要領の見直しというようなことを求めているものもあるわけでございますので、一概には言えないわけでございますが、学習指導要領改訂、見直しということでとらえますと五百六十九件、こういうことでございます。
#204
○橋本敦君 地方自治体が地域の教師やあるいは父母、こういった声を反映して全国で五百六十九件の学習指導要領に関する見直しを中心とする意見書の採択あるいは議決をするというのはかってない事態だと思うんですね。だからしたがって、この問題が教育現場でいかに重大な問題として地域住民や父兄から、教師から取り上げられているかということはわかります。これはやっぱり私は文部省としても無視してはならぬと思うんですね。
 五百六十九件もありますから中身を全部ここで述べるというようなことはとてもできないんですけれども、例えば群馬県新里村の意見書では、「落ちこぼさないと思えば教科書の積み残しを、残すまいと思えば落ちこぼしを、子どもたちの学習権と教師の良心が踏みにじられる思いだ。」という、そういった現場教師の痛切な悩みと声も紹介をされております。
 そしてまた、北海道の釧路町議会の意見書ですが、「文部省は、一方では「新学習指導要領に示す教育水準を維持せよ」と言いつつ、他方では「子どもの学習負担を増やすな」」、ゆとりのある教育をという指導をしているけれども、これが整合性あるようにしていくためには、新学習指導要領の見直し、地域の条件整備等、ここに力を入れることが極めて大事だ、その対応を要望すると、こういった当然の指摘も出されているわけであります。
 このことは、これだけの五百六十九という自治体に及びますから、いわば社会的な問題にもなるという姿を反映して、例えばことしの十月八日の朝日新聞の社説では、「学校改革につながる五日制を」ということで主張にまで取り上げております。これは大臣もお読みになったと思いますけれども、先ほど局長がお答えになった文部省のモデル調査の実態、ここから主張を展開しているわけであります。
 この結果に基づいて「土曜休みの分の授業時間を他の曜日に上乗せしたり、ゆとりの時間を削ったりする形で、従来どおりの授業時間を確保しようとする傾向が根強い。」ことが読み取れるということを前提にしまして、「時間のやり繰りのために、スポーツや文化的な催しを削減し、また半数を超える小学校で遠足をやめているなど、子どもの健全な心身を育てるという点からは首をかしげたくなるような動きも見逃せない。」、こう指摘をして、「このような実態をみると、やはり五日制を前提としていない現行の学習指導要領のもとでは、さらに週休を増やすことには無理がある。完全な五日制に見合うように教育内容を改めるため、指導要領の改訂をできるだけ繰り上げて行うべきだ。」、こういった主張も出てくるありさまですね。
 そういうわけで、大臣もこの間の当委員会での議論の中で、この五日制を完全に行うとすれば学習指導要領の見直しも必要になってくるという面での御見解はお述べになったんですが、今私が指摘したようなこういう実態から見て、この見直しは早く行うのが正しいのではないか、五日制を全面的に施行する以前に既にこの見直しということの必要性が具体的にこのように出てぎているのではないかということも踏まえて、この要望されている学習指導要領の改訂、見直し問題、これについて大臣の御見解を伺いたいと思います。
#205
○国務大臣(与謝野馨君) 学校週五日制を二回実施するということにつきましては、先生御承知のとおり六百余の学校でいろいろなデータをとってくださったわけでございます。この前提は現在の学習指導要領を前提としておりまして、それを学校の教育課程の中で消化できるかどうか、そういうことも研究をしていただいておりますし、またこれが児童生徒あおいは保護者、そういうものにどういう影響を与えるかということもデータをとり、研究をしていただいたわけでございます。したがいまして、学校週五日制二回実施ということに相なりますときには現在の学習指導要領を前提としたものでございまして、二回を実施するときに学習指導要領を改訂するということは文部省としては考えておりません。
 ただ、完全に学校週五日制を実施する場合には、前回もお答えを申し上げましたように、学習指導要領を当然のごとく改訂し、完全に実施した場合に応じた内容のものとするということは、私ども現時点では必要なことであると考えております。
#206
○橋本敦君 じゃ、時間が来たので終わりますが、この問題は引き続きまた議論させていただくこととして、大臣のおっしゃる月二回までは現行のままでいいというそのことについては私は異論があり、検討をさらに十分深めていただきたいということをきょうは要望して、質問を終わります。
#207
○委員長(松浦孝治君) 本日の調査はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時十五分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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