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1994/10/27 第131回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第131回国会 税制改革に関する特別委員会 第4号
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1994/10/27 第131回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第131回国会 税制改革に関する特別委員会 第4号

#1
第131回国会 税制改革に関する特別委員会 第4号
平成六年十月二十七日(木曜日)
    午前九時七分開議
出席委員
  委員長 高鳥  修君
   理事 石原 伸晃君 理事 江藤 隆美君
   理事 中馬 弘毅君 理事 町村 信孝君
   理事 加藤 六月君 理事 津島 雄二君
   理事 二見 伸明君 理事 早川  勝君
      甘利  明君    小此木八郎君
      大島 理森君    金子 一義君
      川崎 二郎君    木村 義雄君
      岸田 文雄君    栗原 裕康君
      近藤 鉄雄君    斉藤斗志二君
      塩谷  立君    橘 康太郎君
      谷  洋一君    長勢 甚遠君
      西田  司君    野田  実君
      蓮実  進君    林  幹雄君
      藤井 孝男君    穂積 良行君
      堀之内久男君    御法川英文君
      安倍 基雄君    石田 勝之君
      今井  宏君    太田 誠一君
      北橋 健治君    左藤  恵君
      須藤  浩君    谷口 隆義君
      村井  仁君    山名 靖英君
      山本 幸三君    山本 孝史君
      伊東 秀子君    池田 隆一君
      今村  修君    遠藤  登君
      北沢 清功君    永井 哲男君
      鉢呂 吉雄君    渡辺 嘉藏君
    五十嵐ふみひこ君    田中  甲君
      佐々木陸海君
 出席国務大臣
        大 蔵 大 臣 武村 正義君
        厚 生 大 臣 井出 正一君
        自 治 大 臣 野中 広務君
 出席政府委員
        大蔵省主計局次
        長       伏屋 和彦君
        大蔵省主税局長 小川  是君
        大蔵省証券局長 日高 壮平君
        国税庁次長   松川 隆志君
        厚生大臣官房総
        務審議官    太田 義武君
        厚生省老人保健
        福祉局長    阿部 正俊君
        厚生省児童家庭
        局長      佐々木典夫君
        厚生省年金局長 近藤純五郎君
        自治省財政局長 遠藤 安彦君
        自治省税務局長 滝   実君
 委員外の出席者
        地方行政委員会
        調査室長    前川 尚美君
        大蔵委員会調査
        室長      中川 浩扶君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月二十七日
 辞任         補欠選任
  金子 一義君     川崎 二郎君
  近藤 鉄雄君     御法川英文君
  塩谷  立君     長勢 甚遠君
  谷  洋一君     岸田 文雄君
  西田  司君     橘 康太郎君
  野田  実君     蓮実  進君
  林  義郎君     大島 理森君
  藤井 孝男君     林  幹雄君
  穂積 良行君     木村 義雄君
  村山 達雄君     栗原 裕康君
  山中 貞則君     斉藤斗志二君
  池田 隆一君     今村  修君
  渡辺 嘉藏君     鉢呂 吉雄君
同日
 辞任         補欠選任
  大島 理森君     谷  洋一君
  川崎 二郎君     金子 一義君
  木村 義雄君     穂積 良行君
  岸田 文雄君     林  義郎君
  栗原 裕康君     村山 達雄君
  斉藤斗志二君     小此木八郎君
  橘 康太郎君     西田  司君
  長勢 甚遠君     塩谷  立君
  蓮実  進君     野田  実君
  林  幹雄君     藤井 孝男君
  御法川英文君     近藤 鉄雄君
  今村  修君     池田 隆一君
  鉢呂 吉雄君     渡辺 嘉藏君
同日
 辞任         補欠選任
  小此木八郎君     山中 貞則君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 所得税法及び消費税法の一部を改正する法律の
 施行等による租税収入の減少を補うための平成
 六年度から平成八年度までの公債の発行の特例
 等に関する法律案(内閣提出第二号)
 所得税法及び消費税法の一部を改正する法律案
 (内閣提出第三号)
 平成七年分所得税の特別減税のための臨時措置
 法案(内閣提出第四号)
 地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出
 第五号)
     ――――◇―――――
#2
○高鳥委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、所得税法及び消費税法の一部を改正する法律の施行等による租税収入の減少を補うための平成六年度から平成八年度までの公債の発行の特例等に関する法律案、所得税法及び消費税法の一部を改正する法律案、平成七年分所得税の特別減税のための臨時措置法案、地方税法等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
 開会に先立ち、改革所属委員に事務局をして御出席を要請いたさせましたが、御出席が得られません。
 再度理事をして御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。
 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
#3
○高鳥委員長 それでは、速記を起こしてください。
 再度御出席を要請いたさせましたが、改革所属委員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。甘利明君。
#4
○甘利委員 既に定刻を四十分近く過ぎておりますけれども、いまだに改革の皆さんが出ておいでになりません。多分新しい党名選びその他でお忙しいんだと思いますが、良識ある共産党が出ていらっしゃっておりますので、私の質問を始めさせていただきます。
 きょうは総理がおいででいらっしゃらないのでちょっと残念なんですが、アメリカでの村山内閣に対する評価が百八十度変わった、もちろんこれはいい方にでありますけれども、そういう記事が先日、ニューヨーク・タイムズに載っておりました。大蔵大臣、ごらんになりました。――まだ。ニューヨーク・タイムズの十月の二十三日付「ザ・ムラヤマ・サプライズ」という表題、「村山の意外性」ということで載っておりますけれども、書いてあることは、日本の社会・保守連合政権は六月には正反対のもの同士の連合として皮肉をもって、うまくいくわけがない連合として嘲笑された。しかし現実のところ、この村山政権は驚くほどうまく機能している。ほぼ毎週のように内閣の危機が発生した昨年の冬と春にかけてのころとは明瞭な違いを際立たせており、安定多数を確保している。新政権は合衆国と限定的な貿易に関する合意を結ぶなど、十分な結束力を持っているように見受けられる、こういうふうにアメリカの評価が百八十度変わったわけでありまして、これはいいことだと思います。
 先日の本委員会での総理の答弁を拝見をしていましても、本当に安心して聞いていられる。最初はちょっとはらはらしましたけれども。先般はまさに総理の独演会の様を呈しておりまして、大蔵大臣も安心して見ておられると思いますのでも、政治家というのは大体得意な分野で失敗しますから、総理が税制が得意になってきたというときには、油断がないように、そばで大蔵大臣はしっかりと注意をしていただきたいというふうに思います。まだこの内閣は当分もってもらわなければ困りますから。
 最近は、租税特別措置、特に企業租特に対する批判というものが随分とかまびすしい。いろいろと議論を起こしております。最初に大蔵大臣に伺いたいのですけれども、大蔵大臣は、租特は不公平税制というふうにお思いですか。
#5
○武村国務大臣 不公平税制の定義はきちっとしたものはないのかもしれませんが、かなり幅広くとらえますときには、租特のすべてではありませんが、租特の中にもそういう要素を持ったものがあるというふうに私は理解されているのではないかと思っております。もちろん、税制全体のことを指しているわけではございますから、不公平税制即租特というわけではないと思っています。
#6
○甘利委員 御案内のとおり、租税特別措置というのは政策税制でありますね。最も安いコストで、しかも効率的に政策誘導をしていく、そのための措置なわけですね。国内的あるいは国際的な状況の変化に機敏に対応していく、そういうふうに対応していく、政策誘導していくための一つのツールであるわけですね。これは大臣もよく御存じだと思います。
 考えてみますると、日本というのはハンディキャップ国家です。企業が立地をするという観点から見ますと、確かにハンディキャップが多いですね。地価は高いですし、人件費は世界一高い。それで、必然的に公共料金も、比較をすれば高くなっている。その上に法人税も世界で一番高いわけですね。高コスト社会というふうに言われています。もちろん、当然改革をしなければならない部分というのはありますけれども、それをやったとしても、少なくともコストは、自然要因がありますから高くなっているわけであります。
 そういう、言ってみれば負荷を最初から背負って、なおかつ戦いに勝っていかなければならないわけなんですね、日本の企業というのは。そのためには、よそと同じことをしていたのではとても勝てないわけですよ。より生産性を上げて、より技術開発をして、より環境政策を先取りして、より競争力をつけていかなくては、こういう高コスト社会では、他に伍して勝ち抜いていくということは、これはできないですね。外に逃げ出さないであえてつらい苦しい戦いに挑んでいかせるための、あるいはこういうふうにあってほしいと世の中が思っている方向に導いていく、誘導していくための措置が租特の重要な部分なんですね。
 確かに大臣も、一概に言えない、部分的にはあるよということをおっしゃいました。税の、何というのですかね、普遍性ということから考えると、その一部でも曲げることには確かになるかもしれないと思うのですね。しかし、曲げたそのロスを補って余りある税制だと私は思っております。ですから、これを不公平税制だという一言で片づけちゃうというのは、これは絶対にしてはならないことだと私は思うのですよ。
 昨今は、いろいろな場所での議論を聞いておりますと、富の配分の議論というのはたくさんある。富の配分の分配論というのは、たくさん、いろいろ議論をされている。しかし、肝心かなめの富の創出の議論がなおざりにされているのじゃないかというふうに思われます。
 租特というのは、長い目で見ますと、配分をする原資たる富を創出するための政策だということが言えると思うのです。つまり、かなり大胆を言い方をしますと、税の増収を長期的には図るための税の減税であるというふうに考えられる一面がある。私は、そういう観点から、最近議論されています租特性悪説、この風潮を改めていかなくてはならない、租特の正当な評価をしていかなくてはならないという思いが非常に強いのです。大蔵大臣は、そういう点はどう考えられますか。御所見を。
#7
○武村国務大臣 私も、租特のすべてが悪いなどとはもちろん思っておりません。おっしゃったとおりそれぞれ、沿革もございますが、一つ一つの租特にはそれなりの立派な名分がございます。環境改善でありますとか、技術振興でありますとか、あるいは地域開発でありますとか、そういう政策目的を実現するために、あえて例外的な措置として租特が設けられている。これは国会で審議をされて、法律として実現を見ているわけであります。
 しかし、時の流れとともに、一定の役割を終えているものがないだろうかということは、絶えず問いかけてみる必要があります。一般的に言ういわゆるスクラップ・アンド・ビルドといいますか、新たな租特をまた設けることも必要でありますし、これまでの、延長してきた租特をここで思い切って廃止をするという勇気も必要でありまして、そういう意味では、租特全体を否定するものではありませんが、絶えず租特に対しては一つ一つ精査をして、役割、効果等について十分な論議をして見直しの対象にし続けていくということは、大変大事なことではないかというふうに思っております。
#8
○甘利委員 租特は、いい悪いという分類で分ければ、いい方だと思うのですね、いい方。では何がいけないかというのは、大臣おっしゃったように、その租特がちゃんと当初設定したときの使命を果たしているかあるいは果たし終わったか、あるいは新しい使命を果たしていくべき必要性が、新しい租特がこういう点で必要か、そういうおっしゃったようなスクラップ・アンド・ビルド、その見直しをちゃんとやっているかやっていないか。やっていなかったら悪いし、やっていればいい。租特本体は必要があって設定をされたものである。だから、租特イコール性悪説的な発想というのは慎む必要があると思います。
 この間、過去の租特のスタートと終了の一覧表をちょっと見てみました。かなり、やはりスクラップ・アンド・ビルドをいろいろやっているのですね。国策自体が時代によってかなり変わってきております。
 よく私は引き合いに出すのですけれども、通商の実態を記した通商白書というのがありますよね。日本の最初の通商白書というのは昭和二十四年に発行されているんですよ。今の立派なものから比べたら、本当にわら半紙の小冊子ですね、ぺらぺらぺらっとめくるともう終わっちゃうという。それを私、現物を見ました。非常に興味深かったのは最後のページなんですよ、最後のページ。
 最後のページにどういうふうに書いてあるかというと、要するに、我が国は、国内経済を切り詰めても輸出に回さなくちゃならない。つまり、輸出か死かである。資源がない国ですからね。国内経済を切り詰めても輸出に回して外貨を稼いで、それで調達しなくちゃならない。輸出振興政策だったんです。で、租特も輸出振興に向けてどうあるべきかというのが主流だったんですね。
 今は、この間まで通産省の標語は「手を結べ輸入で世界の国々と」というんでしょう。輸入振興。全く百八十度変わっているわけですね。租特自体も、輸入をどうやって振興していくか、製品輸入促進税制を初め、転換しているんですよ。時代時代によって役割を担ってきている。一覧表を見ますと、ちゃんとでき上がって終了して、新しいのができて終了している。きれいにある程度はスクラップ・アンド・ビルドが、かなりの部分できているんです。
 租特で長いものもありますよ。研究開発に関する租特なんというのはかなり長いですね。しかしそれは、いってみれば本来日本の環境からして、人件費が高いわ地価が高いわ、いろんな意味で、高コスト社会の中で生きていくためには高付加価値政策をとらなくちゃならない。言ってみれば、特別措置というよりも基本政策に準ずるようなものですよね。だから長く続いている。やっぱりそれぞれかなりちゃんと理由があるな。大事なことは、租特は悪いんじゃなくて、時代時代の見直しとかあるいは創設とかをちゃんとやっているかどうか、そういう作業が行われているかどうかという観点だけだと私は思うのですよ。
 この間、ある上場企業の副社長と話をする機会がありました。その企業は、近々ポルトガルに進出するんだと。で、もうポルトガルの近郊に土地を手当てをしているんだそうです。数千坪と言っていましたよ。甘利さん、幾らぐらいだったと思いますかと聞かれましたから、相当安いんでしょうね、そうやって大胆に行くんだからと言ったら、四千円ですよと言うんですよ、四千円。ああ平米四千円ですか、それでも安いですねと言ったら、全部で四千円だと言うんですね。おまけに向こうの政府は、十年間税金を払わなくていいですと。たった一つだけつけてきた条件は何かというと、そのかわり現地の人間の雇用四百人を保障してください、これだけだと。
 だから、その企業の重役は、もうこれからは生産拠点は日本には一カ所だけしか置きません、あとは全部海外にシフトしますと。一カ所置くというのは、将来、日本経済ががたがたになって一挙に円安に振れたときに、生産拠点を一カ所だけは残しておいた方がいいから、その保険で置くだけです、あとは全部海外展開をしますと。まあするでしょうね、これだけ条件がよかったら。
 今までしなかったのは、主に労働力の質の問題だったと思うのですよ。日本の労働力の質はいい、外はかなり悪いからこれを教育していくのが大変だ、だからコストは高くても日本の方がまあいいなと。しかし、海外の労働力の質はどんどんよくなっていますよね。特にアジアはもう急激に資質が向上していますよ。そうすると、こういうハンディキャップを背負って日本にいようというぎりぎりの思いが崩れちゃうのですよ。
 そういう中で何とか支えるというのが、だから、ここで頑張っていくためにはいろいろ努力をしなくちゃならない、その努力に向かっためには、努力をした人にはインセンティブを上げましょうというのが企業租特なんですよね。そういう原点で設定をされてきたし、これからもそういう点で見直しは行われるべきだと思いますけれどもね。
 ほっておけば、悪条件を強いられる国内から脱出しようという企業は後を絶たないですよ。それで、脱出する力もない企業しか残れないということになりますね。つまり、競争力のある企業は全部日本から出ていって、競争力のない企業が残るということになりかねないと思うのですよね。それに何とか歯どめをかけなくちゃならない、それに資するための租特でなきゃならないというふうに思っております。
 今産業、特に製造業の空洞化にちょっと触れましたけれども、この製造業の空洞化と一体で言われている危機が資本市場の空洞化ですよね、大臣もよく御承知おきだと思いますけれども。現実にこれは同時進行をしているわけですよ。
 大蔵大臣は、この資本市場の空洞化に対してどういう見解をお持ちですか。
#9
○武村国務大臣 日本の資本市場も取引高、参加者の数等からいって世界の三大市場の一つとまで言われてきたわけでございますが、それなりの大きな役割を果たしてはおりますが、最近、おっしゃるように空洞化という言葉が製造業だけでなしに金融市場までささやかれるようになってきておることは承知をいたしております。
 いろいろ大蔵省としましても実態を把握するために努めているところでございますが、いろんな要素が絡み合っていることは事実でございまして、ただ、現象面としては、東証の外国部における上場企業の数が減ってきているということや、ロンドン市場で日本株の売買が行われ始めたということなどが事実として起こっているわけであります。
 見ようによっては、例えばロンドンで日本株の取引が行われるということは、それはそのまま外国のディーラー同士の取引じゃなしに、ロンドンで取引が行われますと結果的にはそれがまた日本の証券会社を通じて整理されていくことが大半だそうでありまして、むしろそういう意味ではそれほどマイナスの影響が出ていないという見方もあります。あるいは、一層国際化を促進している、日本の市場の国際化を促進しているという要素にもつながっているわけでありまして、一つ一つきちっと見詰めてまいりませんと、まだ断定的なことは言えない状況ではありますが、いずれにしましても、この事態は所管の業界の動きとして真剣に目を向けていかなければいけないという思いであります。
 東証の上場件数が減るというのも、御承知のように、日本の株全体がバブルのピークに比べると十分の一ぐらいに大きく取り扱いの額が減ってきております中で、そういう意味で一層日本の投資家が外国企業に投資することの魅九を失ってきている。全体に十分の一に下がっていますから、当然その比率でいつでも、外国株に対してもそれだけの関心がぐんとダウンしておりまして、そういうことが数を減らしている一つの一番の根拠でもあります。いずれにしましても、実態調査、さまざまな現象の実態調査、そしてその要因の分析に努めてまいりたいし、適切な措置を図るべく努力をさせていただきたいというふうに思っております。
 詳細、場合によっては証券局長から。
#10
○甘利委員 日本の投資家が全体に意気消沈をしているというのはそうなのですけれども、世界じゅうの投資家が同じにそうかというと、違うのですね。アメリカは相変わらず活発なのですね。日本が非常に縮こまっている。ここに一つの問題があるのですね。
 空洞化を考えるときに、産業の空洞化も確かに深刻ですが、資本市場の空洞化というのはより深刻だと思う。それは何かというと、産業の空洞化というのは目にはっきり見えるし、時間がかかるのですよ。目に見えるというのはなぜかというと、外に出るには工場を建てる、あるいはそのために敷地を手当てする、人の手当てをする、これは時間がかかるし、具体的に目に見えるのですよ。ところが、資本市場の空洞化というのは目に見えづらいし、場合によってはあっという間に移動するのですね。だからこれは非常に深刻だし、しっかり見ていないと危険だなというふうに思うのであります。
 今、我が国の産業政策上に一番深刻な問題と言われているのは、御案内だと思いますが、起業率、つまり開業率ですね、業を起こそうという起業率とそれから廃業率、やめちゃう、廃業率の逆転現象なのですね。つまり業を起こそうという比率が減って、業をやめたり、あるいはもちろん倒産したりする、その比率の方が上回ってしまっている、これが非常に深刻な問題です。開業率は、かつて我が国も七、八%ありました。しかし、今は四%しかありません。ちなみに、アメリカでは開業率が一二%ぐらいあります。
 日本の既存の企業が成熟化をしてきています。成熟化をしてきますと、どうしてもやはり成長力というのが落ちできますよね。高齢化社会がそうであるように、活力が落ちてくる。そこで、新しい分野とか新しい業態の企業が生まれてくるということが新しいエネルギーを生み出して、それが成長力になっていくということに産業の実態はなるのですけれども、その新しいエネルギーが起きてこないわけですね。
 どうして起業率、つまり開業率が上がらないかというと、幾つかの原因がありますね。
 一つは、事業意欲がないのですね。言い方をかえると、起業率を上げるための要素といえば、一つに事業意欲が存在をすることということが挙げられるし、二つ目はアイデアとか技術のシーズが存在をすること。何もないところに業を起こすわけにはいきませんからね。意欲があること、シーズが存在をすること、それからもう一点が、事業化するための資金が存在をすること。つまり、起業率が上がるための要素というのはその三点があるのですね。
 考えてみますと、日本はこの三点が全部そろっているのですね。同じ人が全部持ってはいないでしょうけれども、国内にはその三つがちゃんとあるのですね。この三つがありながら開業率が上がらないというのは、逆な見方をすればはっきりしますけれども、企業家精神が尊重をされないような社会ではないか。あるいは、起業、業を起こしてもメリットがないのだ、税制上の制約その他が諸外国に比べて日本の方がきついからメリットがないというようなことが言えると思います。
 しかし、何といっても一番大きい理由は、店頭公開市場が閉鎖的なのですね。この間の本会議で野党質問もありました。あの部分は私も、あの質問内容に賛同する一人であります。広く資本を調達する場が開かれていないというのが最大の原因なのですね。
 ちなみに、日本で会社を起こしてから店頭公開できるまでの年数をアメリカと比較をすると、日本は二十七・二年、アメリカはたった五年ですからね。一年で店頭登録された超優良企業もありますね。たしかマイクロソフトはそうだったと思います、記憶をしておりますけれども。日本では、新規の上場企業数というのは、若干ふやしましたけれども、週三社から五社、アメリカは週十二、三社ですよ。日本では店頭登録会社というのは五百三十社、アメリカはNASDAQ、ピンクシートを初め全部合わせると二万社以上あるのです、けた違いに。
 要するに、この新規事業創造部分がアメリカの活力を担っているのですね。日本は既存の企業がもう成熟化して、言ってみれば高齢化社会を迎えていますから、新しく担っていくエネルギーが生まれてこなくちゃならないのです。それが成長力なのです。そこの部分がぎゅうっと締められちゃっているから、だから問題があるのですね。信用力とかあるいは担保力がなくても、すぐれたアイデアとか技術力あるいは成長力があれば、必要なときに必要なだけの資金を調達できる、そういうパイプが、要するにアメリカにはあるけれども日本にはない。
 再度申し上げますけれども、アイデアとか技術のシーズというのはあるのですよ。私は中小企業関係をずっとやってきましたから、具体的事実をいっぱい知っています。この間、私の地元の大和市というところで、商工会、これは二十万都市の日本最大の商工会でしたけれども、これが商工会議所になったのですよ。それを、なることをちょっと払お手伝いした関係で、当時の工業部会長さん、ある会社の重役さんですけれども、その方が、商工会議所に入っていただくためにずっと事業所を手分けして四千社回ったのです。
 その人は今二代目の会頭になっておられますけれども、私のところにいろいろ報告に来られるのですよ。そのときに言われたことは、私もこうやって企業経営して何十年もきましたけれども、実に驚いたと。日本の中小企業というのはすごい技術やノウハウを持っているということを改めて感じました、四千事業所を回ってみて、四、五十人の、おやじがやっている小さい会社、そのおやじさんがすごい技術を持っているのですよね、だけれども、残念ながら宝の持ち腐れで、その技術をどう事業化に生かしていいか、全然すべがわからないのですね、そういうことを私に真っ先に報告してこられたのですよ。
 もうそれこそたくさんある中小企業の中に、びっくりするような技術を持っているところというのはいっぱいあるのですよ。その技術を生かせば新しい業だって起きるのですよ。起こすために何がないかといったら、金がないのですよ。だけれども、日本には金はあるのですよ。政府にはないかもしれないけれども、個人金融資産というのは一千兆とも言われていますね。アメリカは二千兆だ。人口をあれすると、アメリカと同じだけバックグラウンドがちゃんとあるのだ。
 技術シーズもある、お金もある。何が足りないか。それが結びつくお見合いの場所が整備されていないのですよ。店頭公開市場というのは、本来リスクマネーを調達する場所として当初は考えられたはずなのですよ。ところが、有形無形の行政指導なりなんなりで、結局三部上場市場になってしまったのです。一部、二部、三部。
 店頭公開というのはリスクマネーを調達するところだから、アイデアや技術力、そういうシーズで勝負をかける、そこでそれを見込んだ資金がそこに集まって業をどんと起こす、そういう場だったのに、店頭公開市場に登録するためには、登録する必要がないぐらい立派にならなきゃ登録ができないという矛盾が起こっちゃっているんですね。この間の本会議でも大臣はこの件、答弁されていましたけれども、こういうことに対して、大臣どういうふうにお考えですか。
#11
○武村国務大臣 今、大和市の中小企業の大変明るい話は勇気づけられるお話であります。
 いずれにしましても、空洞化という大きな壁にぶつかっている日本経済がさらに元気を取り戻すためには、新しい産業をどう数多くこの国で起こしていくことに成功できるかにかかっているというふうに言われているわけであります。そういう意味で、私どももそのことを経済構造政策としても最大限重視をしなきゃならないというふうに認識をいたしております。
 さて、アイデアとか知恵とか、材料はいろいろあるというお話であります。金の確保ができないところに大きな壁があるんではないかという御指摘でございました。金だけ、金の調達だけが、ニュービジネスやベンチャービジネスがこの国で起こりにくい状況だとも言い切れないと思いますが、しかし、それにしましても、御指摘の店頭公開市場のあり方については、お話の趣旨は十分踏まえて私どもも努力をしていかなければいけないというふうに思います。
 ただ、いろいろ調べてみますと、アメリカのいわゆるNASDAQというのですかの基準と日本の店頭公開市場の基準とどれだけ違うんだろうかという一覧表もあるわけでありますが、概観いたしますと、日本にそれほど大きな厳しい制約があるわけではないというふうにも言えるわけです。
 御指摘がありましたように、本年六月より、それまで週二、三社であった新規公開は週三ないし五社にペースアップしてきております。平成六年の公開会社の数は百六十社、平年度ベースでは約百八十社に、かなり大幅に広がっているということも事実であります。しかし、先ほど御指摘のアメリカの数と比較いたしますとまだほど遠いというのも事実であります。
 私は概括的にお答えを申し上げましたが、政府委員より少し補足させていただいてよろしゅうございますか。
#12
○日高政府委員 少し補足的に説明をさせていただきます。
 まず最初に申し上げたい点は、店頭市場というものも株式市場の一つでございますから、御承知のように、一昨年の夏に、最近でいえばボトムになりました一万四千三百円台まで株式市場が低迷をし下落をしていった。そういう状況のもとで、同じ株式市場の一つである店頭市場についても、当然のことながら非常に小さなものになっていってしまったということは否定できないわけでございまして、現在の状況は、その一万四千三百円台のボトムに達したときから徐々にマーケットが取り直しをしてきている、そういう状況のもとで、店頭市場についても現物の株式市場の状況を見ながらその拡大に努めてきている。先ほど大臣がおっしゃられましたように、今のペースでいきますと平年度ベースで百八十社ぐらいということになりますが、それは、今までの最高といいますか、いわゆるバブルのときの平成二年の、一番の年間の最大店頭公開数というのが百四十一社でございますから、それを考えれば今のペースというのは相当大きなものになってきているということをまず御理解を賜りたいと思います。
 それからもう一点、委員が御指摘になられました、企業が設立されてから店頭公開までの時間に相当かかっているではないか。これは、おっしゃられるとおり、平均すれば三十年前後ということで非常に長く時間がかかっていることは事実でございます。
 ただ、それぞれの状況をよく分析をいたしてみますと、例えば大企業の子会社等で、設立後相当の期間を公開する意思がないということで、設立後二十年以上たってから初めて公開のための準備を始めるといったケースも多々あるわけでございます。
 ただ、委員御指摘のとおり、時間がかかり過ぎるではないかという御批判があることも事実でございますので、先般、証券業協会において、ことしになりましてから店頭公開をした企業、これは今までのところ九月までで六十八社でございますが、その六十八社についてどういう状況であったかということを調べましたところ、企業が店頭公開の意欲を持ち始めて、それで証券会社の公開引受部に初めて接触をしてから実際に公開するまでの期間は、平均して五年でございました。それから、いよいよ公開の意思を固めて公認会計士等と監査契約を結ぶ、それから公開するまでの期間は平均三年十カ月でございました。したがって、一概に、確かに起業時から比べれば非常に長いという状況はございますが、そもそも企業に公開の意欲がいつの段階で生まれてくるか、その辺の状況もカウントしていただければありがたいなというふうに思います。
 ただ、先ほど大臣申し上げましたように、中小企業がいろいろな形で資金調達をする、その道をできるだけ確保していかなければならないということは私どもも十分認識をいたしておりますので、先ほど申し上げたような、例えば現在の株式市場がかなり低迷を続けているわけではございますけれども、そういう状況の中で、先ほど申し上げたように店頭公開のペースを大幅に引き上げてきている、そういう状況にあることだけ御理解を賜ればありがたいと思います。
#13
○甘利委員 証券局長は非常に巧みな言い回しでほとんど差がないとおっしゃっていますけれども、これは、店頭公開、登録する意欲を持ってからは余り変わらないじゃないか。それは変わらないですよ。どのくらいの力を蓄えなければ絶対できないというのをちゃんと知っているのですから、その企業は。だから、そこの力を蓄えるまでに時間がうんとかかるんですよ。それは一切カウントしないで、準備ができてから本当に登録するまでの期間は同じじゃないですか、そういうことをあなたはおっしゃっているんですよ。これは全く違うんですよね。
 それで、大臣は一覧表をお持ちで、アメリカの店頭公開、典型的な例はNASDAQですが、NASDAQと日本の店頭市場と一覧表で比べてみてそんなに変わらない。変わらないのですよ、そんなに。私もよく知っています。表向き基準というのは変わらないのです。一部変わるところがあるとすれば、NASDAQは利益を出していなくても成長力を認められれば登録できるのですけれどもね。そこはかなり大きな違いですが、ほかは余り変わらないでしょう。
 しかし、NASDAQではその表どおり、建前どおりにちゃんとできるのです。日本は絶対にできません。その建前どおりで登録した会社なんか古今東西一社もありません。できないんですよ。これはまさに、そこに有形無形の大蔵省の行政指導があるからなんです。これは恐らく否定をされます。絶対やっていないとおっしゃるでしょう。私は同級生に証券会社に行っているのが何人もいます。法人部長をやっているのもいます。現場から声が上がってきていますけれども、絶対にやろうとしてもできません。これは、実態を私は知って、調べておりますから。これは、恐らく反論はされるでしょうけれども、そうではないのですね。事実、ハードルが、見えないハードルがはるかに高く設定してあります。
 大事なことは、店頭登録市場というのは一部、二部と違うんですよ。趣旨が違うんです。これはハイリスク・ハイリターン市場なんです。そう言うと必ず大蔵省がおっしゃるのは、投資家保護はどうしてくれるんですかと、投資家保護は。それは、一部、二部市場と似たようなものですというふうに誤解を与えるからいけないんですよ。ここはハイリスク・ハイリターン市場ですという看板をちゃんと掲げればいいんですよ。それと、もちろん上場詐欺その他があってはいけませんから、情報公開はきちんとさせる。そのための法的な整備も必要でしょう。それに、虚偽の申告をしたらペナルティーはうんと科せる。そうやってそういう事件を防ぐための担保をしていく。だけれども、基本的には自己責任原則ですよ、この場は、ということを看板を掲げなくちゃいけないんですね。
 そうすれば、その店頭登録しようとする会社がどれくらいの潜在成長力を持っているのか、どれくらいしっかりした会社が、コンサルティングの業態もちゃんと生まれてくるんですよ。ベンチャーキャピタルの仕組みもちゃんとできてくるんですよ。もとができてないから、周辺が整備されていませんとおっしゃるので、それは一番もとをちゃんとすればいずれできてくるんですから。
 これは別に答弁は必要ありませんけれども、その実情は、大蔵大臣もしっかりと把握をしていただきたいというふうに思います。
 随分前置きが長くなりましたけれども、ここで細かい税の部分の質問をちょっとさせていただきます。
 いわゆる消費税の中小特例について伺いますけれども、この中小特例を語るときに、益税論議というのが必ず言われますけれども、大蔵大臣、益税って何ですか。
#14
○武村国務大臣 消費者が支払った消費税相当額のうち事業者の手元に残っているもの、こういう定義を持っております。
#15
○甘利委員 今回の改正で中小特例が相当切り込まれましたよね。おさらいの意味で、その内容をちょっと説明していただけますか。
#16
○小川(是)政府委員 今回の改革におきましては、これまでのさまざまの御議論を踏まえまして、公平性、中立性と簡素性との間のバランスを図る観点から、中小特例措置について幾つかの大きな抜本的な改正を行うことを予定いたしております。
 まず第一点は限界控除制度でございます。この制度は、消費税導入に伴う納税事務の負担の増加に対応するなどのために経過的な考え方で設けられたものでございますが、納付すべき税額を計算した上で、それを軽減するあるいは納めなくていいという制度でございまして、益税を発生させているという批判にこたえる観点から、この際、思い切ってこれを全面的に廃止をするというのが第一点でございます。
 第二点といたしましては簡易課税制度でございまして、相対的に規模の大きい事業者には、やはり本則計算で売り上げ、仕入れ両方とらえて納税額を計算していただくというのが本来の姿であると考えられます。そこで、今回の改正では、簡易課税制度の適用上限を四億円から二億円へと半分の水準まで大幅に引き下げることを予定いたしております。
 第三点といたしまして、いわゆる事業者の免税点制度がございます。年間の課税売上高三千万円以下の方については納税者になっていただかないで構わないという制度でございますが、この課税売上高が三千万円を超えるか以下かというのは、当該事業年度の始まる前々年度で判定をすることにいたしております。この結果、新しくつくられました法人、会社のような場合には、その年の売り上げが大変大きな、何億、何十億になりましても、二年間は免税事業者ということになることになっておりました。今回の改正では、一方、三千万円の水準は維持することとしながら、新設法人のうち資本金一千万円以上の方については最初の年から免税事業者を適用しない、つまり、課税事業者として二年間は納税義務者になっていただきまして、三年目からは、二年前の実績で免税点の適用を受けることもできるということにいたしております。
 以上のとおり、中小特例制度につきましては、相当思い切った大幅な改革を御提案しているところでございます。
#17
○甘利委員 継続的な免税事業者、年商売り上げが三千万円以下の事業者については切り込まれたと思いますか。
#18
○小川(是)政府委員 特定の事業者が長年にわたって三千万円以下であるという規模の方については、これまでも、これからも変わらないわけでございますけれども、およそ事業者の方の売り上げは通常の経済の拡大とともにふえていくというふうに考えますと、同一の事業者の売り上げがふえるに従いまして三千万円を超えるということになりますので、次第に、免税点を据え置いておくということによって課税事業者に移る、その意味では課税事業者へ対象がふえてくる。少なくとも免税点以下の事業者の売り上げあるいは対象者が相対的にふえていくということはないというのが、据え置きの考え方がもたらす効果であるというふうに考えております。
#19
○甘利委員 ちょっと間違っているんですね。ちょっと間違っている。確かに、GNPがふえていくに従って当然事業規模は拡大していくから免税事業者は減ってくる、これはそのとおりです。そこはそう変わるけれども、免税事業者について切り込んでいないというのは、これは間違いだと私は思います。
 なぜならば、今回の改正で限界控除制度というのがなくなったでしょう。限界控除制度というのは、計算式によって公然と益税を認めている制度じゃありませんか。それは、なぜ公然と認めているかというと、公然と免税事業者に益税を認めているから、それより上の者にも、一定の減額率は掛けるけれどもある程度ソフトランディングさしていこうという計算式でしょう。今度は限界控除はなくなっているんですよ。つまり、一切その部分では認めませんということになっているんですよね。
 同時に、免税事業者に対して適正転嫁指導というのが行われるんでしょう。今までは公然と、それはまあいろいろ計算にかかわる費用ですから、最大でも年間十八万円です、いろいろ計算にかかわる、納税義務者じゃないけれども計算にかかわる、仕入れにはかかってくるんですから、いろいろな煩雑な作業もあるでしょうよ、だから、最大は年間十八万だけれども、まあ目をつぶりましょうという思いがあったはずですよ。だから限界控除制度があるんでしょう、ソフトランディングが。計算式によってある程度公然と認めている制度があるんでしょう。今度はそれをなくした。そして、適正転嫁指導をした。大いに切り込んでいるんじゃないですか。そう思いませんか。
#20
○小川(是)政府委員 ただいまの問題は、免税点以下の事業者の方が、これまでも免税事業者ではあるけれども、消費税の名のもとに三%相当額の価格の引き上げが認められていたと考えますと、今後は適正な転嫁指導をいたしますから、その部分がなくなりますということであろうかと思います。
 しかしながら、消費税が導入されてこの五年間、いろいろな御議論、社会的な指摘というところから、免税事業者の方々はその価格形成の場において消費税を、仕入れにかかる消費税負担額を転嫁するというのは当然だけれども、消費税のいわば名のもとにそうした価格の引き上げをすることは避けなければいけないというのが次第に進んできていると存じます。したがいまして、先ほど申し上げました益税が発生しているかといえば、事業者の方々はそこのところを避けるように行動をしておられるというふうに次第になってきておられると考えております。
 したがいまして、免税点三千万円以下の方々については、今おっしゃられたような意味では、何か新しい負担を求めるという実は制度改革をしているわけではございませんで、むしろ、今回の税率の引き上げに伴って、その免税事業者の方は仕入れにかかる負担の増加だけを価格転嫁する、消費者の方にも受け入れていただく、そういう形で消費者、事業者へ向けてPRをし、御理解を求めていくというふうに考えているところでございます。限界控除の廃止が免税点以下の事業者に対して直接御負担を求めるというものではないという点は、改めて御理解をいただきたいと思うわけでございます。
#21
○甘利委員 時間がなくなりましたので次に移りますが、要するに、今回の改正は免税事業者には何らさわっていないというのは間違いなんですよね。適正転嫁指導を含めて、ちゃんと今度は益税がないようにしていきますよという姿勢がもう出たのですよ。だから、免税事業者の益税論議というのは従来と同じようなスタンスで議論されるべきではないというのが私の主張であります。
 自治大臣、大変にお待たせをいたしました。大臣に何点か伺いますが、今回の税制改革は、地方税でいいますと、一方で住民税減税がなされて、もう一方で地方消費税というものが導入された、これは御案内のとおりでありますけれども、今回の改正で税収のバランスはどうなりますか。
#22
○野中国務大臣 地方税の直間比率につきましては、税制改正の前、すなわち特別減税を除きました平成六年度の当初見込みにおきましては、直接税と間接税の割合は八九%対一一%となるわけでございます。これに、今回の税制改革による個人住民税の制度減税分及び今委員お話しの、お願いいたしました地方消費税の創設によります増収分を加えて一応試算をいたしてみますと、その割合は八九%から八三%になり、そして、間接税の割合が一七%になりまして、そういう見込みで、結果的には六ポイント程度の増加になると考えておる次第であります。
#23
○甘利委員 私の地元の神奈川県は、昨年、つまり平成五年度から交付税の交付団体に転落をいたしました。御案内かもしれませんが、神奈川県には十九市あります。この十九市のうち交付団体は横浜と横須賀と三浦の三市しかありません。横浜があるというのはよく驚かれるのですけれども、ずっと交付団体です、御迷惑をおかけしていますが。十九市のうち三市しか交付団体がない、最近、座間が日産の関係で加わりましたけれども。ですから、かなり自治体としては健全経営の自治体なんですね。そういう健全経営の市町村を抱える県が交付団体に転落したというのですから、これは相当なマグニチュードなんですね。問題も内在をされています。
 ちなみに平成三年の税収は一兆一千億円でした。税収総額ですね。二年後の平成五年には九千億になっているのですよ。二年間で実に二〇%ダウンしているのですね。大幅ダウン。税収の内訳でいいますと、法人二税、つまり事業税と県民税ですが、法人二税を見ますと、平成三年には四千八百十億円、つまり、税収総額の四四%。平成五年には三千二百四十二億円、三五・五%です。かなり急激な変動ですね。ふえる分にはもちろん構わないのですけれども、これだけ前年比で落ち込んできますと予算が組めないのですよね。予算が組めない。つまり、景気変動の影響をもろに受ける法人二税が県税収入の大宗を占めているからなんですね。今次の改正で、四%の消費税の二五%相当、つまり一%ですね、消費税の五%のうちの一%が地方消費税として設定をされた。県当局はかなりこれはほっとしております。
 大臣は、地方税の税収構造のあり方についてはどういうふうにあるべきだというふうにお考えですか。
#24
○野中国務大臣 委員御承知のとおりに、都道府県の税源というのは法人所得課税に非常に偏っておりまして、先ほど数字で示されましたような直間比率の構造になり、特に法人課税に偏っておりますために景気に左右されるところが非常に多いわけでございます。
 現行の地方税は、さきの抜本改正のときに、甘利委員もう御承知のように、電気ガス税等いわゆる間接税が廃止あるいは縮小、こういうことをされましたために、直間比率は国税以上に大変直接税に偏った形になっておるわけでございます。そういう点から考えますと、これから、より景気の情勢によって年度間の税収の変動が著しく生じないような状態というもの、すなわち、不安定な状態を解消する方向で地方税というものは考えていかなくてはならない。
 地方分権が時代の大きな流れとなり、要請となっておるわけでございまして、また、高齢化が一層進んでいく中で、住民に直接近い地方公共団体の仕事が特にふえてくるわけでございます。こういうことを考えます上、地方税の充実とあわせまして、先ほど申し上げましたように、安定的な地方税の体系を確立することが重要な課題であると考えておるわけでございます。
 そのため、地方間接税のウエートを高めまして、所得、消費、資産に対する課税がより均衡のとれた地方税制の体系になっていくことを目指しまして努力をしていかなければならないと思うわけでございます。その意味におきまして、今回地方の税体系の一つのあり方として地方消費税の導入が図られましたことは、委員御指摘のとおり意義あることだと存じておる次第であります。
#25
○甘利委員 直間比率問題がよく言われますけれども、直間比率の問題は国よりも都道府県、地方の方がより深刻だということだと思います。質問通告を残しておりますが、時間が来ましたので、これで終わります。
#26
○高鳥委員長 これにて甘利君の質疑は終了いたしました。
 次に、伊東秀子君の質疑に入ります。伊東君。
#27
○伊東委員 伊東でございます。
 今自治大臣がお答えになりましたので、それと関連がありますので、まず自治大臣からお伺いしたいと思うのですが、今回地方消費税を創設した。今の御答弁でも、安定的な地方の財源の確保のために地方間接税のウエートを高めていきたいというようなお考えをお示しになられたわけですが、一方では、非常に各都道府県、消費にアンバランスがある。で、今までは、消費譲与税の場合ですと人口や従業員数に比例して配分されていたわけですけれども、これが消費量に応じてということになると、人口に比して消費の少ない地域は非常に格差を生じさせるのではないかというような心配も一般に言われているわけでございますが、その辺はどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。
#28
○野中国務大臣 今回お願いをいたしております地方消費税につきましては、お説のとおり、その消費課税としての性格にかんがみまして、「各都道府県ごとの消費に相当する額」、これは委員御承知のように、各都道府県の小売年間販売額とその他の消費に相当する額、例えば総務庁でやっておりますサービス業基本調査等を通じまして把握をするわけでございますが、これに応じまして、いわゆる今申し上げました「消費に相当する額」に応じて都道府県間においてその税収を清算するということにいたしております。その場合は、清算の基準となります「消費に相当する額」、先ほど申し上げましたいわゆる「消費に相当する額」というのは、それについての指標の正確性あるいは客観性ということを十分考慮しなくてはならないわけでございます。そういうものを考慮いたしまして、指定統計を使用して算定することといたしております。具体的には、商業統計によります小売年間販売額とその他のサービス等に係る消費に相当する額との合計額によることといたしております。
 こういう数値を用いてまいりますと、今委員御心配のような、人口の多いところあるいは消費の非常に――まあ税金が偏っていくんではないかということは、私は、住民税よりはこの方が非常に偏らない姿になってくると考えておる次第でございます。
#29
○伊東委員 素朴に考えますと、例えば東京とか大阪とか、あるいは東京、大阪は人口も多いのでまあいいと考えましても、地方都市で、例えば新幹線が通ったために急激に消費地として盛んに栄えてきている。しかし人口がそれほどそれに伴って爆発的にふえたかというとそうでもない。そういう、近隣の県からもそこに消費に集まってくるような、急激に商業都市として栄えたようなところのアンバランスもやはりあるのではなかろうかというようなところを、もう少しわかりやすく、その今御心配がないということを御説明いただけたらと思うんですが。
#30
○野中国務大臣 十分説明ができない部分は政府委員に答えさしたいと思いますが、地方消費税は都道府県の消費に相当する額に応じまして清算をすることにいたしております。したがいまして、都道府県の清算後の収入は地域の消費の実態を反映したことになります。現行の消費譲与税が先ほど委員御指摘のように人口と従業員数を用いて配分をされているのに比べますと、各都道府県の消費の大きさに応じまして増減収も出てくることは事実であろうと思っております。
 ただ、全国どこでも一定の消費活動が行われていることを考えますと、清算後の収入の都道府県間の偏在度は、先ほど申し上げましたように住民税に比べますと小さいものになってくるというように考えておる次第でございまして、大都市圏に集中するということはないと存じておる次第であります。また、今回の税制改革で減収となります都道府県が生ずる可能性もあるわけでございますので、その場合は、地方団体の財源補てんにつきましては、先般大蔵大臣と協議をいたしましたように、地方交付税を含めて全体として地方税財政のシステムの中で財政運営を考え、それぞれの府県財政の運用に支障がないようにやってまいりたいと存じております。
#31
○伊東委員 もう一つ。今後、地方分権が本格的に論議され実施されていく、そういう状況が生まれるわけですけれども、地方分権というときに、行政の中核的部分を自治体に移していこう、それで、国には、例えば外交とか防衛とかあるいは教育とか通貨とか、本当に中枢の統一した基準を持たなきゃいけないような部分については残すけれどもという考え方が今出てきているわけでございますが、そういう場合に、今までの日本の行政機構のあり方というのが中央集権を当然の前提にしてきた。地方に権限を大幅に移していくということであれば、地方間接税を充実させていくというよりも、もう抜本的に税制そのものを大きく変えなきゃいけない。その場合、単にもう地方消費税が例えば取りやすいからというような考え方ではなしに、税体系そのものも変えなきゃいけないんじゃないかと私は思うわけでございますが、その辺に関してのお考え、自治大臣、大蔵大臣、ちょっとお聞かせいただけたらと思います。
#32
○野中国務大臣 これはむしろ大蔵大臣にお答えをいただいた方がいいと思うんでございますが、御指名でございますので、私からとりあえずお答えを申し上げたいと思います。
 委員御指摘のように、地方分権の推進や、特に、民族がかつて経験したことのない高齢化が急速に進んでいく中で、一番身近な地方公共団体が地域福祉の拡充に努力をしていかなくてはならないわけであり、また、地方分権の本旨はそこにあると考えるわけでございます。したがいまして、委員御指摘のように、地方税におきましては、安定的な税体系を確立をいたしまして地方税を拡充強化するというのが、地方分権に対する最大の課題であると考えておる次第であります。
 このような地方税源の充実強化に当たりましては、国、地方の税源配分のあり方を、委員今御指摘ございましたように、根本的に洗い直し、考えるということでなければならないし、幅広い観点から私は検討されなければならない重要な事項であると認識をしておるわけであります。地方制度調査会あるいは税制調査会等の御審議を煩わしつつ、地方分権の推進状況等も踏まえながら、分権という趣旨に沿った、委員が御指摘になりましたような抜本的な税制が構築されるように対処をしてまいりたいと考える次第であります。
#33
○武村国務大臣 お話しのように、中央政府の権限を地方政府に移譲をすることが地方分権でございますから、権限、事務を移譲すれば、当然財源が伴わなければなりません。そういう意味で、地方分権全体の論議の中で、国・地方を通ずる財政のあり方、これは、税だけに限らず交付税制度や補助金制度も絡まってこようかと思いますが、そういうところまで一番広い意味では論議の対象にしていかなければいけないというふうに思っております。
#34
○伊東委員 それで、今回の税制改革のことで大蔵大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、今回の税制改革、大変いろいろな要素を加味したぎりぎりの選択であったのではないかという気持ちもあるんですが、やはり、若干いろいろあいまいさとか、今後の税の理念という意味ではよく見えない部分もあるということになるのではないかと考えているわけでございます。
 まず、今回の税制改革は、一番目には景気対策、とにかく何とか個人消費を伸ばしたいとかあるいは取引を活性化したい、ストックデフレと言われているこの今の状況の対策として出てきたのじゃないか。二つ目に、またそこに高齢化対応ということが出てきている。さらに、こういったものと同時に、これまでの税制の中で重税感を持っている中堅所得者層の累進構造を緩和しようという、この三つの目的で税制改革が行われたというふうに今般の審議の中で出てきていると思うのですが、若干この目的に私は矛盾があるのではなかろうかというふうに思うわけでございます。
 と申しますのは、高齢化対応、高齢化社会に向けての財源をどうするかということと同時に、世代間の負担の格差をなくしていこう。つまり、高齢化時代、二〇二五年が一番ピークに達すると言われておりますが、そこの本格的な高齢化時代の現役世代の負担を軽減するということで、その二〇二五年に向けての現役世代というと今の三十五歳以下の人たち、二十代、三十代が中心になるわけでございますが、こういう人たちの負担を軽減するということを考えるならば、全体の、現在から二〇二五年に向けて二十代、三十代の人たちが生涯ずっと支払うであろう所得税とか社会保険料の負担の総額と、その二十代、三十代の人たちが生涯で受け取る、政府から受け取る受益、その差がどうであるか。
 今、税金やあるいは社会保険料の負担に比べて受益をどれだけもらっているか、今後もどれだけもらうかという総額で考えた場合に、今五十代、六十代の人たちあるいは今もう年金を受給している人たちが二十代、三十代に比べて恩恵が多い、総体として。そういう構造があるわけですね。当面の生活、子育て、ローンを抱えて大変だということはあるのですけれども、次の若年世代との世代間の大きい、総体的なそういう配分というのを考えたときには、今年金をもらっている人たち、あるいは今後もらうであろう今一千万以上ぐらいの給料をもらっている人たち、つまり四十代後半から五十代の人たちの方が非常に総体としては恩恵が多い構造になってしまうのではないか。
 とすれば、間接税に移行する、つまり直間比率を見直すということのもとに消費税を今後も値上げするとすれば、その格差は開くことになる。やはりこの二十代、三十代の人たちは、今の税制改革ではネットでいけば増税になると言われている。大蔵省の試算でも、六百万以下は今回は増税になりますよということをはっきり言っておりますし、各マスコミ等では、それが七百万と言ったり八百万と言ったりされているわけでございますが、そういうことを考えると、所得税の累進度ということをやはりもう少し維持しないと、この二十代、三十代、今低所得者の人たちの今後の一生涯を通じての負担というのはやはり重いことになって、世代間の公平ということに反するのじゃないか。
 つまり、高齢化対応として今回のように所得税を恒久的に減税、累進構造を緩和する形の所得税減税の政策をとり、それが高齢化対応なんだ、二〇二五年の現役世代にもそれが優しいんだというのは、非常に理論としても矛盾しているのじゃないかと私は考えるわけでございます。
 同じような考え方を大阪大学の八田達夫先生がおとりになっていらっしゃいますけれども、そういう意味では、私は、高齢化社会イコール直間比率の見直しイコール消費税へのシフトという考え方は、ちょっと根本的にやはり考えなきゃいけないのじゃないかなという疑問を持っているわけでございます。見直しの対象として、制度減税の部分、二兆円の景気対策というかそういう部分は別としましても、三・五兆円の制度減税の部分、ここはもう恒久的にずっと維持する考えなのか、あるいは、今のような考え方のもとに、とりあえず三年間所得税減税ということを打ち出した対応として考えているのか、その辺の方向性を少しお述べいただけたらと思うのですが。
#35
○小川(是)政府委員 最後のお尋ねにつきましては、大臣からもお話がございますと思いますので、最初の問題として提起されたところにつきまして、ちょっと御説明をさせていただきたいと思います。
 二つの問題が提起されているというふうに思っております。
 まず一つは、おっしゃるように、高齢者が非常に多くなる社会へ向けて租税負担率あるいは社会保障を含めた負担率が上がっていくであろうという単純な部分を考えますと、これはどなたの生涯の負担率が上がっていくことを意味しているかと申しますと、極めて明らかなことは、現在の高齢者からだんだん年の若くなる方に従って相対的に生涯の負担率が上がっていくということを意味しているわけでございます。そういたしますと、若く生まれてこられる方、今の若年者の方、これから生まれてこられる方の負担率が非常に高くなるであろうということでございますから、できる限りその負担率の上昇を緩和するためには、今から皆さんで、負担を各世代が今までよりは少し持とうかということを全体としては考えなければいけないのではないかというのが、第一の問題であろうかと存じます。
 つまり、現在の高齢者、現在の若年老及び将来生まれてくる人たちの間で、今のうちから負担の分任を考えましょうというのが一点であろうかと存じます。そのことは、現在の高齢者の方にも消費税という負担を通じて負担をお願いをするという問題を提起しているというふうに考えます。
 もう一つの問題、二つ目の問題は何かと申しますと、同じ人が生涯の間ある一定の負担をするといたしましても、どういう形で年をとるまでの間負担をするという形を描いたらいいだろうかという点でございます。
 現在の税制は、所得税、とりわけ累進課税に大きく頼っているところからいたしますと、既に御案内のとおり、どうしても中堅層あるいは老年に入る前のところが一番所得が大きいというところから、そこに負担が大きく行っているのではないか。したがって、同じ負担を想定いたしましても、若いときから高齢者に至るまで、もう少し税負担が生涯を通じてバランスよく負担するということが考えられないかということでございます。
 このどちらの問題も、我が国の税体系の中で、累進課税をどちらかというと緩和し消費に対する課税を充実していくということが、今の二つの問題に対する一つの方向、こたえる方向ではないかというのが、高齢化社会を迎えての税体系のあり方の議論であったと存じます。現実に、今申し上げましたようなことは、政府の税制調査会におきましても、専門委員でいらっしゃる学者の方から、いろいろな仮定の置き方によって違ってまいりますけれども、そういったことが示唆されているというふうに存じます。
 八田先生の御指摘になっておられることは、非常に今の短期の、今何歳でおられる方にとってこうではないかという、今委員の御指摘の長いタームで考えるというよりは、今どういう変化が生ずるだろうかという御指摘ではないかというふうに考えるわけでございます。
 累進あるいは制度の改革の問題は、ただいま申し上げましたようなことに、ある意味では、所得税のあり方としては、今後の恒久的なあり方としてこたえる制度改革、三兆五千億の減税として御提案をしているというものでございます。
#36
○伊東委員 今の答弁に関してなんですが、要は全生涯を見たときに、今の二十代、三十代が、自分が国に支払うものより受益が少ない。ところが、今の四十代後半、五十代、六十代の人たちの方が、支払うものより年金の受給率の方が上回っているよということなので、今この税制改革で手当てしようとしている、つまり恩恵を与えようとしている人こそたくさん負担してもらわなければいけないのだ。簡単に言えばそういうことなんですよね。
 そうすると、それに対して、所得税の累進構造というのはそれにこたえるものなんじゃないかなという一つの問題提起なのですが、それを全般に、みんなに広く薄く消費税にシフトしましょうということは、今の若年世代に本当に優しいのかというか、優しくないのではないかという問題提起でございまして、その辺はやはり根本的に今後、今のこの税制改革をもう細かくどうこうということではないのですけれども、基本的な物の考え方として、所得税の減税イコール消費税シフトというこの考え方はやはりちょっと、現役世代には最も酷なんだよということを私は提起したいわけなんですよね。
 ですから、今累進構造を緩和する層というのを、とにかく今八百万とか一千万とか一千五百万とか二千万という層が大変だという部分、それは実感としてあるかもしれないのですが、OECD等の所得税の比較を見ましても、二千万以下は、日本は先進諸国の中では所得税率は高くない。それで、平均所得税率を見ましても、この前大蔵省からいただいた資料の中にもございましたが、平均所得税率、フランスに次いで日本は主なOECD加盟国の中では低いというようなこともございます。
 ですから、その辺を、一般に今取りやすいところから取ったじゃないかと言われるところは、基本的にこういったところに問題があると私は思いますし、全体の受益と負担という世代間の格差の問題の解消には、必ずしも消費税シフトが現役世代に優しいのではないということをやはり頭に置いた上で、今後の根本的な税制というのは考えていただきたいということでございます。
 その点で、ちょっと大蔵大臣にももう一度お伺いしたいと思います。
#37
○武村国務大臣 私も八田先生の論文は読ませていただきました。一理あるなと思って読んでおりましたが、局長がお答えしたように、今の世代、現在の例えは四十代後半ないし五十前後の方々だけの損得勘定をとらえれば、まさに一理あるというふうに私もうなずきながら読んだのでありますが、私どもはもう少しロングタームで、この福祉日本を支えていくために、特定の階層や特定の世代に負担が偏ることのないようにしていきたいということが基本でありまして、いろいろ議論はあるかもしれませんが、少なくとも今回の改正もそういう基本に立って、中堅層に焦点を当てた累進税率の緩和をやらせていただきたいということであります。
 しかし、累進税率をなくするわけではないので、なおしっかり累進税率は残っているわけでございますから、緩和をする、偏りを正すということが基本でございますから、どうでしょうか、今の若い世代の方は当然やがては中堅層になっていかれることも含めると、そしてまた中堅層を越えてリタイアして老齢時代を必ず迎えるということを考えると、全体でとらえた場合、今数字で議論はされているわけではありませんけれども、私は、情緒的な表現でありますが、とにかくみんなが支えていく福祉の日本を目指していくべきだ。いわゆる先ほど申し上げたように世代間のバランスといいますか、わかりやすく言えば全世代がそれなりの負担をして、最終的にはみんな年をとっていくわけでありますから、日本民族の老後をしっかり支えていく、こういう国をつくっていこうということが基本であります。これは伊東先生も同感だろうと思うのですが、その基本に立って、今、私どもはその一里塚になる、この第一歩になると信じてこの案を提案をいたしているところでございます。
#38
○伊東委員 そうしますと、今回、年収六、七百万円以下の人たちにとっては、ネットで見ると増税になっていくという状況の税制改革の中で、低所得者に優しい政策とは何なのかということを考えた場合に、課税最低限を引き上げるという方法を今回とったわけですね。
 そうすると、本来、課税最低限を引き上げると低所得者に優しいというふうに非常に直接的に思いがちだけれども、消費税にそのかわりシフトしていって、所得税から消費税に移していく、そして課税最低限は引き上げていくというやり方が本当に低所得者に優しいのかというのは、やはり疑問じゃないかという問題提起もあるわけなんですね。つまり、将来の税収の増収が必要ならば、各種の今の所得の控除をむしろ整理して、そして消費税率を引き上げるよりもむしろ、課税最低限は結果的には引き下げになるかもしれないけれども、所得税の増税をしてやった方が低所得者には有利だよという考え方もあるわけで、課税最低限というのは、世界で見ましてもかなり日本は高い状況にある。
 ですから、低所得者に優しいイコール課税最低限の引き上げというこれまでの図式といえばいいのでしょうか、こういったことではない、もっと根本的な、所得税と間接税の割合の状態全体の中でのこういった検討というのも、私は必要な時期に来ているのではないかなと思うわけでございますが、その辺はいかがでございましょうか。
#39
○武村国務大臣 そこは、大変大事な問題提起をしていただいているというふうに感じながら拝聴いたしました。
 御承知のように、今回の論議におきましても、課税最低限は引き上げるべきかどうかというところから出発をいただいたと思うのでありますが、既に国際的には相当高いレベルになっておりまして、そういう状況から、むしろこれは下げるべきだという主張もあるわけでございます。そのことと今おっしゃった消費税との絡みで、いわゆる低所得者にとってどっちが得かという議論は当然あるのかもしれませんが、前回の税制改革も今回の税制改革も、かなり大幅な減税と消費税の創設やアップと一体で改革を提案をいたしておるものでございますから、そういう提案にならざるを得なかったんでありますが、そうなりますと、すぐに各所得階層別に損得計算というのが比較をされまして議論の対象になってしまいました。
 で、別にこれを分けるべきだとは言いませんが、将来は恐らく、必ず減税と増税が一体で処理されるとは限らない時代も来るわけでございますから、前段の伊東委員のお話のように、みんなが支え合うにしても、どういうふうに負担をしていったらいいのかという基本に返った議論は、これからむしろ減税と増税一体でない場で、改めて私どもも真剣にしなければいけないというふうに思っております。
#40
○小川(是)政府委員 ただいまの御指摘の問題は、昨年の政府税制調査会での議論の中でもまさにそういった議論がございました。何が我が国の所得税について負担の累増感をもたらしているんだ。せんだっても御指摘がありましたように、我が国の負担率は全体として見れば低い。それは、課税最低限が非常に高くて、そして最低税率が低い、そこから最高税率に向かって非常に早く駆け上がっていくというところにあるということでございます。
 この解決の方法といたしましては、おっしゃるように課税最低限を思い切って下げる、そして最低税率を上げる、上の方はそのままにしておくという形は、一つの滑らかな負担の累増をもたらすわけでございます。また同時に、それは大変大きな増収をもたらすわけでございます。
 それで、その現象を端的に申し上げますと、例えば年収五百万円のところで、今度の改革後で所得税、住民税合わせまして日本では十七万五千円でございます。アメリカではこれが七十万八千円でございます。イギリスや何かになりますと百万円を超えるわけでございます。千五百万円、三倍の所得になったときに、日本では改革後で三百五万円でございます。そういたしますと、十七万五千円の負担に対して、所得は三倍、税は十八倍にふえるわけでございます。アメリカはと申しますと、この三百五万円より確かに多くて四百二十万でございます。ですから、負担率は日本がここではなお低いんですが、七十万に対する四百二十万というのは六倍しかふえない。ですから、アメリカの場合は所得が三倍のときに税負担は六倍、日本は同じ三倍のときに十八倍にふえる、こういうふえ方が負担累増感でございます。
 解決の方法は、委員御指摘のような思い切ったこれは増収策を伴う、したがって消費税率を上げないでも済むではないかという問題。それとも、そうした負担を特に中低所得者、せっかく前回直しました減税層を大きく増税する形はいかがだろうか。やはりこの累増感のあるところを直しながら、しかも先ほどのような御議論で、所得税と消費税のあり方を見直すということにしてはどうか。しかし、残念ながら課税最低限を上げないで済ませるというのは、理屈ではあるけれども、消費税を上げるときには次善の策として考えてはどうかというのが、税制調査会での議論でございました。
#41
○伊東委員 今の議論は、今後消費税を取りやすいところから取ってという、消費税にすぐシフトするという問題なのか、あるいは所得税、日本のこの所得格差がアメリカや欧州に比べて低く、そういう意味では平等な社会をつくってこられたということにおける所得税の果たしてきた役割というのは非常に重要なわけで、今言ったような非常にきめ細かい所得税の論議というのもあわせて行わなければいけない。もう消費税を上げてそして課税最低限を上げれば低所得者にも優しいんだという図式的なのは、実は消費税が上がると、低所得者ほど消費支出が多いというのも今の日本の実情ですね。
 これも総務庁の統計局の家計調査なんですけれども、例えば実収入が非常に低い層ほど消費支出の割合が高い。これは、月収が二十六万二千八百七十一円のTの階層の人は消費支出が二十万七千九百八十七円というふうに、全収入に占める消費の割合が高い。ところが、月収が百一万二千九百八十七円の方は五十五万二千八百七十九円、つまり半分しか消費していない。すると半分はストックに回っていくわけですけれども、消費税を値上げしていくということは、その低所得者がこういう消費性向が高いということも考えるならば、やはり非常に問題があるわけで、その辺の所得税の持つ、今言った課税の最低限をどう考え、累進の急激さをどう緩和するかというようなこと、それと財源の問題と絡んでくるわけですから、基本的にこの消費税シフトの方向へ行かない、こういった論議をきちんともっともっと深めてもらいたいというのが今回の問題提起でございます。
 それからもう一つ、これもやはり与党税調や政府税調でも論議になったと聞いておりますけれども、やはり高齢化時代の財源の問題をどうするかというときに、雇用、つまり課税ベースをふやすということ、つまりその時代の働き手をどうふやしていくかということも非常に大きな問題でございまして、女性の雇用、フルタイムの雇用ということは大変重要な課題になってくる。今、女性の多くがパート労働者で、しかもこれが百万円の壁とかいろいろな問題があって、フルタイムにいかないで女性の労働条件を下の方に引っ張っているという問題があるわけですね。
 この辺、税制等、そろそろもうやはりどうするかということを考えなきゃいけないんじゃないか。女性もきちんと課税もし、フルタイムできちんとした収入を得て働くという方向性を考えるのか、まだ今のように配偶者控除、配偶者特別控除、何かそういう家計補助的な、あるいは夫に従属的な、そういう形の、そして課税ベースというか課税の主体にはならないというような方向性をこのままにしておくのか、これは非常に重大な問題だと思うんですが、その辺のお考えについて、まあ論議もされたということですし、論議の経過と、それからお考えを伺いたいと思います。
#42
○小川(是)政府委員 ただいまの問題につきましては、かねて主としてパート就業者に対する課税の問題として、さまざま議論がされてまいりました。
 問題は、委員御承知のとおり、パート、とりわけ奥様がパートへ就業されますと、御本人につきましては、いわゆる給与所得控除の定額控除と、御本人の基礎控除というものによって納税者になるかどうかが決まる。給与所得控除の最低保障額が六十五万円ある。従来の、改正前の基礎控除額が三十五万円であるということから、あわせてパートに出たとき、年間収入が百万円までであると、御自身が納税者にならないで済むということが一つでございます。
 もう一つの問題は、今度は夫の側が通常の勤務で給与所得者である場合に、配偶者控除の問題がございます。百万円も収入がありながら、配偶者控除を認めるというのはおかしいような感じがされるかもしれませんけれども、これは、配偶者控除を認めるときに、あるいは扶養控除も同じでございますが、奥さんや子供さんにわずかな所得があったときに三十五万円の配偶者控除や扶養控除を認めないこととするというのは、いかにもバランスを失するのと、執行上もそれはたえられないところでございます。そこで、この控除の適用のときに、奥さんに三十五万円までの所得があるときには配偶者控除を御主人に認めようという制度になっているわけでございます。
 その結果どういうことが起こるかと申しますと、パートに出た奥さんの稼ぎが例えば百三万円になったといたしますと、奥さんの所得は給与所得控除の六十五万円を引いた残りの三十八万円ということになりますので、御本人が三万円について所得税を負担するのはやむを得ないといたしましても、御主人の方で配偶者控除の三十五万円がなくなる。そのために、ちょっと所得がふえたときに手取りが家庭で逆転するという問題が長くございました。
 長い説明になりますが、前回の抜本改革のときに配偶者特別控除という制度を設けまして、新たに三十五万円の控除額を設けました。この控除額は奥様の稼ぎに応じて次第に減っていくという形になっておりますので、ただいま申し上げたような逆転問題はなくなったわけでございます。そこで、パートにお出になった方の税制上の問題はなくなったわけでございまして、別途社会保険料とかその他配偶者手当の問題とかいうのはございます。
 今回の税制調査会ではどういう議論が行われたかと申しますと、むしろ今度は、今御指摘にあったように、御婦人が働きに出ていっている状況が多くなっている。それで、働かない方が配偶者特別手当というものがついて、より税負担が軽減されるということでいいんだろうかという御議論がございました。今回はいろいろ御議論の上、「女性の就業に対する税制の中立性を損うこととなっているとの指摘もある。
 このような問題は、人的控除の基本的なあり方に関わる事柄であるので、今後、引き続き検討していく必要がある」という形で、中長期の社会的な状況も踏まえての税制上の検討課題だなというのが今回の税制に関する議論の経過でございます。
#43
○伊東委員 もう一つ、じゃ大蔵省にお伺いいたしますが、景気対策としての今回所得税減税ということで、国際公約みたいになってこのようになっているわけですが、むしろ私は、土地や株の取引の活性化をどう図ったらいいかという意味の政策減税というのをもっともっとやるべきじゃないかというふうに実は思っておりまして、例えば不動産の譲渡益税の買いかえ特例を全面的に復活するとか、不動産取得税、登録免許税を廃止するとか、あるいはもう取引にかける印紙税を廃止するとか、こういったことをやはり考えることも景気対策としては必要ではなかったのかと思うんですが、その辺はいかがお考えなんでしょうか。
#44
○武村国務大臣 景気対策としてもあるいは減税政策としても、いろいろな減税のアイデアはあり得ると思います。
 今お話しのような、今地価税はおっしゃいませんでしたけれども、衆参通して地価税の見直し、廃止論とか、有価証券取引税の廃止論とか、こういう問題、これは空洞化にも絡まっておりますが、そういう議論もございましたし、今御指摘の土地の長期譲渡益課税を下げるという御提案もございます。
 今印紙税とか登録税までおっしゃっていただいたので、これはもう財政を預かる大蔵大臣としては、どんどん財源が減っていく話でございますから、財政論としても一つ一つ詰めていきますと容易でないという感じを強く抱くわけでありますが、ただ、二兆円減税するなら所得税でなしにほかの税目の方がより効果的であったのではないかという御指摘だろうと思います。この辺は少し、まあことしの特別減税、事前にいろんな議論がありましたけれども、やらしていただいてそれなりの効果があったということで受けとめておりますが、そのことも踏まえて考えますと、これはまあ一つの減税のとらえ方であったと私どもは思っているわけであります。
 ほかの税目との比較、ほかにも法人税の減税とかいろいろな問題があるわけですが、やや専門的になりますから政府委員から補足をさせていただきます。
#45
○小川(是)政府委員 ただいま御指摘のありました諸問題につきましては、大臣からもお話がありましたように、印紙税、登録免許税といったものを含めまして、まず、基本的に資産の取引あるいは資産所得を発生するものにかかる税でございます。したがいまして、取引にかかる税がいかにあるべきかという問題と、もう一つは、所得、消費、資産の税体系という観点から、資産をお持ちの方あるいは資産所得の捕捉という観点から補完的に行われている取引課税という面が非常に多くございますので、そういった面から、将来とも財政問題のほかに検討を要する問題ではないかというふうに存ずる次第でございます。
 いま一つは、こういったものが現実の景気、あるいは経済取引ということと税がどれほど関係をしているかという点については、これまでもさまざま御議論がございます。経済の問題とともに、今のような資産課税の問題、それから財政問題、こういったものを将来とも幅広く検討すべき課題ではないかと受けとめております。
#46
○伊東委員 それから、宗教法人、公益法人への課税の適正化の問題なんですが、この前ちょっとだけ触れたのですけれども、今回、平成六年度の改正で公益法人等に対する課税の適正化、損金算入限度率を所得の、今、これまで百分の三十だったのから百分の二十七に引き下げたというようなことで、増収分が二十億出ているというようなことを私、大蔵省の方から伺っているのですが、本来、収益事業であれば、その事業主体が公益法人であろうと宗教法人であろうと収益というものに着目すれば、全部、一〇〇%課税してもいいじゃないか。つまり二七という損金算入を認める根拠は何なのかということにもつながってくるわけで、これをそのような収益という点に着目して考えれば二百億の増収ということが出てくるわけですが、その辺について、何ゆえにこの損金算入限度額という制度を設けているのか、あるいは今後どういう方向に考えていこうとしているのか、その辺をお聞かせいただけたらと思いますが。
#47
○小川(是)政府委員 公益法人等に対する課税につきましては、公益法人等が公益事業を行う、学校であるとか社会福祉であるとか宗教であるとか公益を行うということで、一般的には非課税「しかし収益事業については課税をすることにしているわけですが、本来の公益事業にその稼ぎを回すということであれば、その分については寄附金と見て、一般の会社の方の稼ぎが寄附に回ったときよりはややそこは配慮をしてよろしいのではないかということでこういう制度がつくられでおりまして、一般の公益法人の場合には三〇%までということになっております。
 ことしの改正のときには、この公益法人の収益事業に対する法人税率そのものを引き上げていくという考え方と、この損金算入額をむしろ縮めていくという考え方と議論が行われまして、結果的には、この損金算入額を学校法人や社会福祉法人の五〇%というのは残したまま、それ以外のものについて一割縮減をするという考え方で、三割から二七%に縮減したというものでございます。
 将来とも、この公益法人の収益事業に対する課税のあり方は、こうした税率水準あるいは損金算入限度額あるいは収益事業の対象といったものについて、今後ともいろいろな角度から御議論をいただき、検討をいただく課題であるというふうに思っております。
#48
○伊東委員 これは非常にやはり今社会問題になっているんじゃないかと思うのですね。一部の宗教団体がもう不動産を非常に多く取得している、そしてそれがまたいろいろな政治にも介入、介入というとおかしいですけれども、政治にも大きな力を及ぼしてきているというようなこともあるわけで、やはり今言った根本、それが本当に寄附という形で今の時代にその収益を見ていいのかどうか。法人税が国際的に非常に高いために国際競争力を弱めているという実態もあるわけで、法人税をやはり下げていくというのは日本の今後の方向性として考えなきゃいけないし、あるいは法人税も一律課税というんじゃなしに、いろいろもう少しきめ細かに考えなきゃいけないんじゃないかという時代を迎えている今、こういった大変な収益を上げている宗教法人や公益法人が、そのまま寄附として損金算入を存在させるとかあるいは別途の法人税率上の扱いを受けるということは、根本的にここでやはり見直しをしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。
 それから最後に、厚生大臣にお伺いしますが、先ほどは高齢化社会に向けての税収のあり方で、もっと今、今後も受益が若い世代よりも多い方々も負担してほしいという、税収上、負担してほしいという趣旨から私は質問したのですが、今後の方向性として、今度はその受益の中身、やはり資産格差が高齢にいくほど開いてきている。つまり、若い人の、若年世代の同じ世代の資産格差よりも、四十代、五十代、六十代と高年齢になるに従って資産を持てる者と持たない者の格差がどんどん開いているというのが今の日本の実態になってきている。とあれば、持てる富裕な高齢者の方々の、受益といえばいいんでしょうか、社会保障の中身についても、年金とかあるいは医療、さまざま総合的に考え直す時期が来ているんじゃないかなと私は思うわけでございますが、その辺はどのように御検討していらっしゃるんでしょうか。
#49
○井出国務大臣 我が国の公的年金制度は、保険料の拠出に応じた年金を支給することを約束して国民全員に加入を求めているものでございます。個々人の実情を把握して給付等を行ういわゆる福祉とは異なりまして、年金制度は約二千八百万人にも及ぶ受給者に対し、いわば定型的に給付するものでございまして、所得や資産に応じて年金の支給を停止することは実務上困難であることに加え、保険料を納付したにもかかわらず、所得や資産が多いため年金の支給を制限することについて、果たして国民の合意が得られるかどうかといった疑問もございまして、その取り扱いについては慎重に判断をしていかなくちゃならぬ、こう考えております。
 また先生、かなり逆進的な制度になっているんじゃないか、こういう御指摘でございますが、厚生年金制度について申し上げれば、保険料の算定の対象となる所得については上限が設けられておりまして、月額五十三万ですか、それを超える収入は保険料の賦課の対象とはなっておりません。この結果、年金額にも反映されないことに相なります。現役時代高い所得を得ている者が非常に高い年金を受けるということになっているとは必ずしも言えないんじゃないかなと思いますし、もう一つ、年金額は収入に応じて計算される部分、すなわち報酬比例部分と、加入期間に応じて計算される部分、定額部分から成っておりまして、この定額部分がありますため、低所得の者ほど年金給付率は高くなるという所得再分配効果もあわせ持っているというふうに考えております。
#50
○伊東委員 それからもう一つお伺いしますが、今回の税制改革で五千億円、社会保障関係に充てられることになったわけです。子育て支援ということもその中に入っていると思うのですけれども、私のところには、今学童保育で子供を預けているお母さんとかあるいはそこで指導している指導員の方々からいろいろ陳情が来ておりまして、私も実は子供を三人学童保育に預けて働いてきたのですけれども、本当に学童保育というのは、民家のあいたところの本当に狭いところを、我々母親がバザーやそういうもので資金を稼ぎながら、賃料から、それから保母さんの人件費の負担から、さまざまな、子供たちのおやつ代からと、本当に大変な思いで子供を、学校から、小学生の低学年の子供が終わって母親が帰るまで預けるわけですね。
 そうするともうそこで預かっている子供たちも非常に大変な状況ですが、それ以上に指導員の方々の給料は安い。それから子供の数に応じた指導員の数を我々母親が負担できないということで、大変労働過重、低賃金、しかもその施設というのはみんな自分たちでやっているだけに、広いところも借りられず、快適な環境どころか大変な劣悪な環境で子供を見てもらうというのをずっとやってきたわけですけれども、今、子育て支援、子供が、この少子社会になってきた。
 就学前の保育所というのは、ある程度、国も力を入れてこれまでやってくださいましたが、学童保育というのは全然、やはり余りに光が当てられていないじゃないか。ここをある程度公的な、補助金という形で出すだけじゃなしに、公的な責任ということをやはり考えていかないと、この少子社会における、就学前の子供だけじゃなくて、学校へ行ったときの方が悩みは深いのですよ、本当に。子供が学齢前のときには保育園がある、しかし学校に行ったらもうどうしようかと、それでやめる女性が結構多い。そういう問題を抱えておりますので、これは私は大変今後方を入れなければいけない問題だと思っておりますが、そのあたりに関してはいかがでございましょうか。
#51
○井出国務大臣 先生おっしゃいますように、近年の少子化傾向に対応して、安心して子供を産み育てることができるような環境づくりを進めていくことが重要な政策課題となっております。とりわけ、共働き家庭の増加に対応して、子育てに伴うさまざまな負担感を解消するため、きめ細かな育児支援サービスを充実し、仕事と子育ての両立を支援していくことが極めて重要であると考えております。
 その中で、昼間、家庭に保護者がいない小学校低学年の子供については、放課後児童対策事業、いわゆる学童保育でございますが、それを実施することによりまして、地域の児童クラブにおいて放課後から夕方までの健全な育成指導を進めているところでございます。まあ先生、十分じゃないという御指摘もいただいておるわけでございますが……。
 それで、今回の税制改革の措置でございますが、これは少子対策の方では、平成九年度一千億でございますが、一応三歳未満の低年齢児童の保育の定員増等、必要最小限の保育対策に充当することとされていると承知しております。
 したがいまして、この放課後児童対策事業につきましては、厚生保険特別会計の児童手当勘定を財源として従来推進してきているところでございますが、今後とも財源確保の工夫をしながら、児童クラブの数の増加とか、あるいは指導員の配置を手厚くするといった等、施策の充実に努めていくつもりでございます。
#52
○伊東委員 今の問題は、本当に働く女性にとっては深刻な問題でございますし、子供が小さいときに与える精神的な状況、身体的な状況がその後の発達に非常に重要だということを考えますならば、ぜひともこの学童保育における指導員の方々の身分保障とそれから施設の改善、こういったところへ重点的に、やはり今後予算あるいは施策の重点化に力を入れていただきますよう最後にお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
#53
○高鳥委員長 これにて伊東君の質疑は終了いたしました。
 この際、暫時休憩いたします。
    午前十一時四十一分休憩
     ――――◇―――――
   午後四時三十二分開議
#54
○高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、一言申し上げます。
 去る二十四日の委員会において、一部混乱を惹起いたしましたことは、まことに遺憾に存じます。今後とも十分な協議を通じて、委員会の円満な運営に努めてまいりたいと存じます。
    ―――――――――――――
#55
○高鳥委員長 この際、お諮りいたします。
 公聴会の開会につきましては、十一月二日開会の予定でありましたが、諸般の事情により、来る十一月七日月曜日に開会することに変更するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#56
○高鳥委員長 起立多数。よって、そのとおり決定いたしました。
 次回は、来る三十一日月曜日午後一時委員会、正午理事会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時三十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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