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1994/11/09 第131回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第131回国会 労働委員会 第2号
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1994/11/09 第131回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第131回国会 労働委員会 第2号

#1
第131回国会 労働委員会 第2号
平成六年十一月九日(水曜日)
    午前十時六分開議
出席委員
  委員長 松岡満寿男君
   理事 赤城 徳彦君 理事 大野 功統君
   理事 長勢 甚遠君 理事 二田 孝治君
   理事 東  祥三君 理事 大石 正光君
   理事 宮本 一三君 理事 岩田 順介君
      加藤 卓二君    藤尾 正行君
      古賀 正浩君    武山百合子君
      佐藤 泰介君    田邊  誠君
      永井 孝信君    山元  勉君
      宇佐美 登君    寺前  巖君
      岡崎 宏美君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 浜本 万三君
 出席政府委員
        労働大臣官房長 伊藤 庄平君
        労働省労政局長 七瀬 時雄君
        労働省労働基準
        局長      廣見 和夫君
        労働省婦人局長 松原 亘子君
        労働省職業安定
        局長      征矢 紀臣君
        労働省職業能力
        開発局長    中井 敏夫君
 委員外の出席者
        文部省高等教育
        局大学課長   近藤 信司君
        労働委員会調査
        室長      松原 重順君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月九日
 辞任         補欠選任
  池田 隆一君     佐藤 泰介君
同日
 辞任         補欠選任
  佐藤 泰介君     池田 隆一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 労働関係の基本施策に関する件
     ――――◇―――――
#2
○松岡委員長 これより会議を開きます。
 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長勢甚遠君
#3
○長勢委員 おはようございます。
 このたびは、労働問題について長年にわたって取り組んでこられましたその道の大ベテランである浜本先生が労働大臣に御就任になられまして、村山内閣、一番国民の方々が心配をされておる雇用問題を初めとする問題に取り組む姿勢がここにもうかがわれると思います。ぜひ、大臣の識見をもってこの難問にすばらしい成果を上げていただくように、心から御期待を申し上げるものでございます。
 当面一番大きな問題は、雇用不安ということであろうと思います。雇用問題については、御案内のとおり、バブルの崩壊に伴う長引く不況の中での失業者の増大、こういう問題がございますし、さらに、中長期的な高齢化の問題、また産業構造の変化に伴う問題等々たくさんの要素が絡んでおるわけでございまして、大変難しい時期になっておるということは御承知のとおりでございます。
 当面の失業予防等については、大変な御努力でそれなりに対応はされておると思うわけでございますが、景気はやや回復基調にあるとはいえ、まだまだ先行き不安ということで、特に新規就職者、学卒者については社会的な大きな問題となっておるというのが現状でありますし、また、先行き不安の中で大変に皆さんが不安を感じておられる。そういう中で政府の方でもいろいろ会議等もやられておるようでございますが、いま一つぴんとこないと思っておるのが一般の見方ではなかろうか、こう思います。今こそ労働行政がさすがというところを見せていただきたい、こう思うわけでございますが、現在の雇用情勢をどのように見ておられるのか、また、それに対してどういう意気込みでおいでになるのか、ひとつ明確な御答弁をお願いいたしたいと思います。
#4
○浜本国務大臣 浜本でございます。先ほど長勢先生から温かい励ましのお言葉をちょうだいいたしまして、恐縮をしております。何しろ素人でございますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
 お尋ねにつきまして簡単にお答えを申し上げたいと思います。
 最近の雇用失業情勢につきましては、九月の有効求人倍率が〇・六四倍と、八月よりも〇・〇一ポイント上昇をしておりますが、このところ一進一退の推移をいたしておるところでございます。また、完全失業率も三カ月連続で三・〇%になるなど依然として厳しい状況が続いておるものと認識をいたしております。
 今後の見通しにつきましては、景気の動向によるところが非常に大きいわけでございますが、御承知のように、雇用の回復というのは景気の回復よりも一般的におくれるという状況でございます。したがいまして、このところしばらくは厳しい状況が続くものだというふうに認識をしておる次第でございます。
 こうした状況に対応いたしますために、労働省といたしましては、もう先生も御承知のように、総合的な雇用対策といたしまして、雇用支援トータルプログラムを実施しておるところでございます。これによりまして雇用の安定に努めておりますが、最近は求職者が滞留しているところから、特に労働省といたしましては、離職者の再就職促進に重点を置いた取り組みを推進しておるところでございます。
 また、新規卒業者の就職をめぐる状況につきましては、大学等新卒業者は、学生職業センターにおける求人数が前年に比べまして約二割減少しております。また、九月末日現在の高卒者の就職決定率も前年同期よりも四・二ポイント低下をいたしておりまして、五四・八%にとどまっておるような状況でございます。したがいまして、これも非常に厳しい状況であるというふうに認識をしております。
 こうした状況に対応するため、私自身といたしましても、中央地方の事業主団体等に対しまして、直接、求人枠の拡大を要請いたしたところでございます。また九月一日には、先生も御承知のように、東京ドームで約一万三千人の学生の方々に集まっていただきまして首都圏就職面接会を開催をいたしました。そして二千人以上の学生の方々が内定を得るという状況になったわけでございます。さらに今後とも、多くの都道府県で継続的に面接会を開催してまいる予定でございます。
 高校、中学新規卒業者につきましては、全国の公共職業安定所におきまして、学校等教育機関との連携を十分図りながら、求人の確保、選考会の開催等に全力を挙げてまいりたいと思っております。
#5
○長勢委員 いろいろ工夫されて御努力をいただ
いておることはそれなりに評価をするものでございますが、同時に、これからどうなるんだろうということを企業の側も労働者の側もみんな不安に思っていることは事実であります。ただ、今失業率が三%ということは、今から十数年前を考えるとこれは大変なことだという印象でございますけれども、しかし、現実に昔の失業時代に比べて、例えば最初のオイルショックのとき等に比べると、深刻感というものは、現在は、不況の中では、それほど当時に比べれば雰囲気的にはなかったのかなというふうにこれは感じとして思うわけであります。
 しかし、今問題なのは、それ以上にじわじわと来ておるこの円高というか、あるいは産業の空洞化というか産業構造の変化の中で、今よりもむしろこれからが心配だということが、具体的ではないけれどもみんなそう感じておって、そういうことが例えば学卒の採用に関しても高齢者の問題についても大きな影響を私は与えておると思うのであります。そういう意味で、当面の雇用対策は、もちろん今やっておられますように一生懸命やってもらわなければなりませんが、同時に、この産業の空洞化あるいは産業構造の変化というものを見通した中での先取りした雇用対策というものを明確に国民の方々に示すことが、今労働行政に課せられた最大の役割であり義務である、このように私は思うわけであります。
 ただ、もちろん産業にしても雇用にしても行政が強制的に行うものではございませんから、大変な知恵と御苦労が要るわけでございますけれども、特に雇用創出ということが昔から言われておるわけでございますが、なかなかはかばかしい政策が確立されないというのも現実であります。こういう時代こそ、少し従来の視点を変えて、思い切った労働政策の転換というものを私はぜひ構想していただきたいな、こう思うわけであります。
 特に、高齢者の問題もあり、また、一方で若手労働力の不足ということもあるわけでございますから、日本の産業構造の中で、労働力の配分というものについての労働省の考え方、政府としての考え方というものにもう少し明確な取り組みをし、確立をしていっていただくことが私はこれから大事なんじゃないか。その点が従来からの労働行政にやや欠けておったのじゃないかなという反省も私はしておるわけであります。ぜひそういう点についても御見解を伺いたいと思います。
 同時に、従来からもこういう問題があったわけで、特に国全体というよりも、特定の不況業種が社会全体に大きな影響を与えるという時代がございました。そういう問題について、今までも特定不況業種等の雇用の安定に関する特別措置法等も制定をされてきた経緯があるわけでございますが、これももうじき期限が来るというふうに思っておりますが、今までやってきたことの見直しも含めて、これからの産業の空洞化あるいは産業構造の変化に対応する雇用対策のあり方について御見解をお伺いをしたいと思います。
#6
○浜本国務大臣 円高や国際化の進展等によりまして産業構造の変化が行われます。産業別の労働力の構成が大きく変化することが予想されるわけでございます。今後、一部の業種におきましては雇用量の減少が余儀なくされ、企業外への労働移動が避けられない場合があるというふうに思っております。
 このような場合、先生の御指摘のとおり、新しい分野の開拓による企業内での人材活用、また失業なき労働移動のための企業の取り組みが非常に大切になってきておると思います。
 そこで、今後の希望のある政策というふうなお話でございますので、労働省といたしましては、産業別の雇用対策である特定不況業種雇用安定法が来年の六月三十日に廃止期限を迎えることになります。この特定不況業種における離職者の動向等から見まして、特定不況業種雇用安定法に基づく対策を今後とも継続いたしますとともに、そのような中で失業のない労働移動を支援するということが大切になってきておると思います。そういう観点から必要な施策を新しく検討していかなければならないというふうに思いまして、来年度の新しい方針の中に盛り込んで対策を講じようとしておるわけでございます。
#7
○長勢委員 特に、こういう雇用状況の中で大変深刻なのは、私はやはり中小企業であると思うのです。雇用調整等それなりの企業は対応ができてまいりましたが、中小企業ですと雇用調整をすれば、極端に言えばそれは単純に事業の廃止と同義語に等しい場合も多々あるわけでありますし、まして大企業が海外に移転をする、あるいは海外から部品の調達をすることがどんどん進むということになりますと、その影響ははかり知れないものがあるわけであります。
 そういう意味で大変に不安を感じておる。そういうところで、単に企業内にとどめておくという対策だけでは役に立ちませんし、それ以上に、将来的に中小企業というものが成り立たなくなっていってしまう。どうしても、労働者の質の向上も含めて、また、そういう中小企業の方々が次の段階に行けるように、それなりの対策を大胆にやっていかなければならないと思うのです。
 今、人を切るというよりも、中小企業にとって一番大事なことは、恐らく資金繰りだろうと思うのですね。大変大ざっぱな話でありますが、これも雇用を守るという意味では大変大事なことでありますから、直接的に雇用ということだけでなくて、そういうことについても目を向けたことを労働行政の一環としてでも私はやったっていいんじゃないか。それを、これはどこかの役所の仕事ということで、あなた任せで、いよいよ失業者が出たときだけ労働省が出ていくということでは私は間に合わないのじゃないかという気すらいたしております。ぜひそういう意味で、中小企業に働いている方々を守るためにも、中小企業の実態に即して、余り今までのやり方にこだわらずに、私は労働政策の範囲でやれるものを拡大解釈してでもぜひ目を向けていただきたい、こう思います。
 例えば、雇調金の扱いにしても、私は、規模によって補助率等はいろいろ配慮はされておりますが、そうではなくて、中小企業に特別の要件を設ける、例えば円高による、あるいは海外への進出による影響というカウントを中小企業だけについて考えるとかということもあり得ると思いますし、そういう点も含めて中小企業対策にひとつぜひ力を入れていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#8
○浜本国務大臣 親企業の海外進出、下請再編の動きなど、中小企業を取り巻く環境は大変厳しいものがあると思います。その雇用の安定に一層配慮しなければならないということは、委員御指摘のとおりだと思います。
 中小企業をめぐるこのような厳しい状況を踏まえまして、特定不況業種雇用対策の拡充を検討していく中においても、中小企業や下請事業者に対して十分な配慮が行われるような取り組みをしておるわけでございます。
 また、地域における雇用機会の創出は今後ますます重要な課題でありますので、地域関係者が一体となった雇用機会の開発の取り組みを支援いたしますとともに、地域雇用開発助成金等、まあお金の話が出ましたのですが、各種助成金制度の活用を通じまして今後とも地域における雇用機会の創出にさらに積極的な取り組みをいたしたいと思っております。
 さらにまた、企業が実施する計画的な能力開発に対する援助や、公共職業能力開発施設における技術革新や地域ニーズに応じた訓練科目の設定により、地域の雇用開発の基盤となる優秀な人材の育成にも努めてまいりたいと思います。
#9
○長勢委員 大臣の御見解、そのとおりでございますけれども、やはり中小零細になればなるほど、労働行政として考える範囲に限定したやり方ではなかなか対応できないわけであります。例えば能力開発のお話もありましたが、能力開発に限定したやり方で労働省的な目で見ても、それに対応できる企業というものはないわけでありますから、もう少し幅を広げた形で、緩やかな形で、実態に合った形でやっていかないと、これは労働省
の所管であるとかないとかということに目くじらを立てていると全然実態に合わない話になっていくわけであります。
 それから、雇用創出にしても、新産業の育成ということが言われておりますが、中小企業もたくさんの知恵を持っておるわけであります。それは資金の問題もあり、人の問題もありますが、それを縦割り、横割りして各省それぞれにあれだこれだとやっていっても、結局、使う方は一つも役に立たない。私は、雇用を守るという立場から相当そこらの垣根を払って、労働省の全精力をそういうところに向ける方策をぜひ政府全体でも考えていただきたい、このことをお願い申し上げたいと思います。
 また、もう一つ、年金の問題も大変議論になっておりますが、これからの高齢者の問題が大変みんな不安を感じておる大事なことであります。
 私は、やはりこれから六十五歳年金時代になる、そういうときに、私自身定年延長法の立案に当たった一人でございますけれども、六十五歳まで同じ企業で継続雇用されていくという考え方だけでいいのだろうかということを当時から疑問に思っております。新しい雇用慣行というものを六十五歳時代に向けて、これは行政だけでやることではありませんが、社会全体で見直していかなければうまくいかないんじゃないか。そういう意味で、先ほども申しましたが、高齢者と若年者のすみ分けということも考えていかなきゃならないだろうし、それは企業内で考えるのではなくて社会全体で考えるのが私はいいんじゃないかなと思います。
 そういう意味で、例えば、これから派遣法の見直しもしなきゃならないわけでありますが、高齢者の派遣については少しそういう意味でも考えてみるとか、これからの雇用慣行のあり方、例えば退職金の問題だとか、労働移動を円滑にするといっても、現行の雇用慣行ではそれを阻害する要因もたくさんあると思うのです。そういうことについて何か御見解があれば、お示しをいただければありがたいと思います。
#10
○浜本国務大臣 高齢者の問題が非常に重要であることは委員の御指摘のとおりでございます。特に、今後の急速な高齢化の進展に対応いたしまして我が国経済社会の活力を維持していくためには、二十一世紀初頭までに、希望すれば六十五歳まで現役として働けるような社会を実現していくということは、御指摘のとおり大変必要なことだと思っております。
 そのため、労働省といたしましては、さきの通常国会で改正されました高年齢者雇用安定法に基づきまして、六十歳定年制を基盤とした六十五歳までの継続雇用の推進を柱としながら、高齢者の就業ニーズの多様化に対応するため、高齢者が多様な形態によって働くことができるようにするための施策や、労働者の早い段階からの職業生活の設計を援助するための施策を実施することといたしております。また、さきの通常国会で改正をされました雇用保険法に基づきまして、高齢者の雇用継続を援助、促進するため、高年齢雇用継続給付を支給することによりまして、六十五歳までの雇用機会の確保に万全の体制を確立してまいりたいと考えております。
#11
○長勢委員 まだまだ考えなきゃならない、またそのデータも整理をしなきゃならない時期だと思いますが、これはもうみんなで考えなきゃならぬことでありますから、ぜひ大いに大胆に取り組んでいただきたいと思います。
 そこで、今お話のありました高年齢雇用継続給付でございます。これはみんな大いに期待をいたしているわけでございますが、これが十分政策効果を上げていくためにも、実務が円滑に進められなければ何にもならないわけであります。窓口が混乱をしたり事務が滞ったりするようではどうもなりません。しかし、これは私は大変な業務量になるだろうと思います。今も、現在既に失業給付の受給者が大変ふえておるわけで、皆さん大変御苦労されておられるわけでございますが、来年四月からこれを実施するとなると、相当の体制を整備しなければならぬ。
 これは予算に関連をすることでありますから、政府・与党としても、我々も御支援を申し上げたいと思いますが、どんなことになるのか、これの万全を期す上でどういう方策を考えておられるのか、御説明をいただきたいと思います。
#12
○浜本国務大臣 高年齢雇用継続給付は、高齢者の雇用の促進という今後の国の基本的課題に対処するため、大変重要な制度だというふうに認識をしております。
 そのため、高年齢雇用継続給付が的確、円滑に実施され、制度の趣旨に沿って十分利用がなされるよう、事務の合理化、能率化を図る一方、必要な人員を確保することが必要であると思っております。私の計算では平年度百三十万人の給付をしなければならぬということになっておりますので、各省庁の御理解を得るなど、実施体制の整備に全力を挙げてまいりたいと思っております。
#13
○長勢委員 百二十万人もの支給事務を円滑にこなすということは大変なことだと思います。むやみやたらに行政改革という言葉もはやっておるようでありますが、これはもうそういうこととは別に、何しろやるものはやらなければなりませんから、ぜひ頑張っていただきたいとお願いを申し上げます。
 また、これは労働省だけの問題ではございませんが、これからの高齢化社会の中で一番深刻なのは、やはり高齢者の介護の問題であります。両親等が寝たきりになる、あるいはぼけられるということで、もう家庭も崩壊に近いという話もたくさん聞くわけでございまして、いろいろな面からこの問題に対処していかなければなりません。特に、働いている方々の立場等を考えますと、なかなか仕事とこの問題を両立させるということは極めて現実に難しいという実情を我々もよく聞くわけでございますし、大変心配をしております。
 何かデータによりますと、離職した雇用者で、その理由が家族の介護、看護のためというものが八万人以上に上っておるということも聞いております。これはこれからどんどんふえるだろうと思います。そして、意外に思ったのは、その一割が男性である。恐らく、男性が介護のために離職をするというのは、これはデータがありませんが、奥さんが倒れられて、その介護のために会社もやめて奥さんのために尽くすということでありますから、日本の男性もなかなか見上げたものだなと感心をしておるのでありますが、これはまた逆に言うと、社会の一番役に立つ時代の方々でもありますし、本人にとっても社会にとっても大変デメリットが大きい深刻な問題であろう、こう思うわけであります。
 そういう中で、今労働省では介護休業制度の法制化を議論されておると聞いております。いろいろな問題もあるわけでございますが、ぜひ、これからの高齢化社会のために、介護休業制度を定着をさせていくという努力を一生懸命やらなければならない時代だなと私も思っております。ぜひこれから、今御審議中、御検討中と聞いておるわけでございますが、介護休業制度の法的整備についての進捗状況なりあるいは大臣の御決意なりをお伺いをしたいと思います。
#14
○浜本国務大臣 介護休業制度について深い御理解をいただいておりまして、心から感謝を申し上げたいと思います。
 介護休業制度は、高齢化、核家族化が進展する中で、介護を必要とする家族を抱える労働者が引き続き働き続けるためには重要な制度であると理解をいたしております。したがいまして、この法制化につきましては、重要な課題として認識をしておる次第でございます。現在、関係審議会におきまして、専門家会合の研究結果というのを参考にしながら、介護休業制度の法制化を含む有効な普及対策について検討を行っていただいておるところでございます。
 私といたしましては、委員と同様に、次の通常国会を視野に入れて審議会の議論がまとまることを強く期待をいたしておるような次第でございます。
#15
○長勢委員 どうもありがとうございました。
 村山内閣が一つ一つ立派な成果を上げるということが必要な時期であります。労働大臣のまた労働省の御健闘、御活躍をお祈りして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
#16
○松岡委員長 東洋三君。
#17
○東(祥)委員 おはようございます。東洋三でございます。
 これまで、公式の場で浜本大臣就任に対してのお祝いの言葉をかける機会もありませんでしたので、改めて、この多難な時期、労働大臣御就任まことにおめでとうございます。と同時に、大変な大転換期でございます。種々議論されておられますとおり、この労働行政、さらにまた世界の中の日本、また日本の中における産業構造転換に伴う種々の課題が山積しているこのときに、労働大臣という大変な職務につかれ、その難題に直面されていくことに対し、心から敬意を表する次第でございます。
 また、労働委員会におかれましては、労働行政、労働問題に精通されている方が、諸先輩が多くいられます。私は、労働委員会に入りまして初めて質問させていただきます。約五つの課題について、時間のある限り質問させていただきます。
 まず初めに、雇用保険制度の改正について御質問させていただきます。
 御案内のとおり、さきの通常国会におきまして雇用保険制度の一部が改正されました。先ほどお話がありましたとおり、雇用継続給付制度の創設に伴いまして、高年齢継続給付及び育児休業給付それぞれの対象者の人数は大体どれぐらいになるのかと予想されているか、まずこの点についてお答え願いたいと思います。
#18
○征矢政府委員 先生御指摘のように、雇用保険法を改正いただきまして、雇用継続給付につきましては来年の四月から実施することになっているわけでございます。したがいまして見込みの人数になりますが、高年齢雇用継続給付につきましては、これは御承知のように、五年間にわたって継続して給付するというのが基本的な考え方でございます。したがいまして、これが五年間たちました平年度ベースで最大限効果を発揮したと仮定した場合に、年間約百十六万人ぐらいと見込んでおります。それから、育児休業給付につきましては、これは原則一年間でございますが、これにつきましては最大で年間約十四万人、合わせまして約百三十万人という数字を見込んでいるところでございます。
#19
○東(祥)委員 これらの雇用継続給付制度の創設及び失業給付の改善によりまして、全体のシステムがより複雑に変化していくことになるのではないのか、このように思います。そしてまた、今御答弁していただきましたとおり、約百三十万人の方が対象者になり、五カ月後の来春より対応していかなければならない、そういうわけでございます。
 また、これは当時与党であった私どもが全力で取り組んだ制度でもあります。第一線の現場である公共職業安定所等で本システムが機能的に動くように十分の配慮の上、体制の整備に万全を期してほしいと要望をいたしますが、現状並びに大臣の御決意をお聞きしたいと思います。
#20
○浜本国務大臣 先ほどは東委員から温かい励ましのお言葉をいただきまして、まことにありがとうございました。微力ですが、全力で頑張りますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 お尋ねの件でございますが、雇用継続給付は、高齢化、少子化が急速に進展する中で、高齢者雇用の促進、育児環境の整備及びこれに基づく後世代の健全な育成という今後の国の基本的課題に対処するため、大変重要な制度であると考えております。
 そのため、雇用継続給付が的確、円滑に実施され、制度の趣旨に沿って十分な利用がなされますように、事務の合理化、効率化を図る一方、必要な人員の確保のため、関係省庁の御理解を得るなど、実施体制の整備に全力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。よろしくお願いします。
#21
○東(祥)委員 次に、雇用対策について御質問させていただきます。
 先ほど大臣の方からもお話があったことに関連するわけでございますが、まず、先週、本年三月の新卒者の就職状況が七〇%であるという非常に厳しいデータが文部省の方から出ました。景気が徐々に回復に向かっているといっても、リストラを行って事業の再構築を行っている企業が多い昨今の状況から勘案すれば、学生が今までと同じ希望職種を求めていたのでは、なかなか事態の打開は難しいのではないのか、このように考えますが、この点について大臣はどのようにお考えですか。
#22
○浜本国務大臣 この点につきましては、まず学生の就職活動状況を見ますと、委員御指摘のように、イメージの重視とか企業の安定性への志向などから、事務系職種や大企業への就職を希望する傾向が見られております。これは御指摘のとおりだと思います。
 しかしながら、来春に大学等を卒業する方々に対する企業の採用動向を見ますと、事務系職種や大企業を中心に採用数が減少しております。そういうことを考えますと、学生が職種や企業の規模などにとらわれ過ぎますと、就職はさらに厳しいものになるというふうに理解をしておる次第でございます。
#23
○東(祥)委員 本年六月に雇用政策研究会の出しました中期雇用ビジョンがあります。この中期雇用ビジョンにおきまして、特に成長が見込まれる分野として、医療福祉分野で二〇〇〇年までに百万人以上の関係従事者の増加、教育分野での六十万人の増加、住宅分野での三〇%の市場拡大などが挙げられておりますけれども、これらのことについて具体的な根拠をお示しいただけますか。
#24
○征矢政府委員 今後の国際化の進展あるいは技術革新、規制緩和等によりまして大きな変化が見込まれる中におきまして、二〇〇〇年ごろまでの中期的な見通しということでございまして、産業、雇用の姿あるいはそれに基づきます政策の方向性につきまして、私ども、御指摘のように、学識経験者によります雇用政策研究会に検討をお願いしまして、それが中期雇用ビジョンという形で六月にまとめられたものでございます。
 これによりますと、今言いましたような一定の規制緩和などの構造改革あるいは社会資本の整備等が行われることを前提としまして、それから一定のモデルでごく大まかな分野につきましての二〇〇〇年に向けての計算をしたものでございます。
 その結果によりますと、サービス業では、高齢化の進展あるいは産業の高度化などによりますビジネス支援分野などの拡大によりまして、一九九三年から二〇〇〇年にかけて三百八十万人程度の増加が見込まれる。あるいは建設業におきましては、公共投資の拡大や良質な住環境へのニーズの高まりなどによりまして、同じく二〇〇〇年にかけて八十万人程度増加するという見込みでございます。その他、特に成長が見込まれる分野といたしましては、情報通信分野では、これは郵政省の推計でございますが、光ファイバー網の整備によりまして、一九九〇年から二〇一〇年にかけまして二百四十万人程度の雇用創出、あるいは医療福祉分野におきましては、シルバーサービス分野、医療関連サービス分野の需要の拡大などによりまして、二〇〇〇年にかけまして百万人程度の増加、教育分野におきましては、生涯教育、企業における能力開発への需要拡大などによりまして、二〇〇〇年にかけて六十万人程度の増加などを見込んでいるところでございますが、これは先ほど申し上げましたように、一定の前提を置きまして、一定の計算でそういう見込みをしているというものでございます。
#25
○東(祥)委員 中長期的な問題といたしましては、今御指摘のありました五つの分野、医療福祉の分野、住宅分野、情報通信分野、教育関連分野、環境分野の成長というのは大いに望まれると思いますし、また私自身も期待しているところでございます。
 医療福祉の分野においては、生活者優先の社会あるいはまた高齢化社会を考える上で必要不可欠でありますし、また住宅については、もう言うまでもなく、ウサギ小屋と言われる日本の住宅事情を、質、量ともに改善していかなくてはなりません。また、情報通信・ソフト関連はますます発展が見込まれておりますし、生涯学習の浸透、あるいはまた地球環境の問題である環境問題の取り組み等、これら五つの分野は、将来を見詰めると新たな価値と重要性が生じてくる、このように私も思っております。これらにおける若年層の就職に向けて一体何ができるのか、これが最大の課題なのだろう、このように思います。
 労働省は、大臣の所信表明演説では、大規模な面接はやっていこう、こういうふうには述べられているわけですけれども、こういった分野に若者たちを、若年層の方々を就職に向けていくために一体何をやろうとしているのか、またどのように取り組まれようとしているのか、その点についてお聞かせください。
#26
○浜本国務大臣 中長期的ビジョンの中で、雇用が減少する分野、それから増加する分野、先ほど局長からお示しをしたとおりでございます。それに対して学生にどのようなことをしていくのかというお話なのですが、私ども労働省といたしましては、学生の職業選択に資する正確でわかりやすい情報を学生職業センター等を通じて提供いたしますとともに、職場見学等を織り込んだガイダンス事業など職業意識の啓発の推進にも努めてまいりたいと思っております。
 今後とも、こうした対策の積極的な推進を通じまして、若年者の個性と能力が十分発揮される活力のある経済社会づくりに努めてまいりたいと思っております。
#27
○東(祥)委員 きょうは文部省の方にも来ていただいております。高等教育局近藤課長に来ていただいておりますが、文部省は、学生がこれらの分野を学べる教育制度の整備について、今おくれていると思うのですけれども、いかに取り組まれていこうとされておりますか、御見解を賜りたいと思います。
#28
○近藤説明員 お答えをいたします。
 我が国が今後あらゆる分野で活力を維持し積極的に世界に貢献していくためには、学術の振興と人材の養成を担う大学の役割がますます重要になってきている、このように認識をしているわけでございまして、文部省におきましては、各大学が、産業構造の変化、技術革新でありますとか情報化、高齢化といったそういう社会の変化あるいは国民の要請に適切に対応してその教育内容・方法を改善充実できるように、平成三年に大学教育の基本的な枠組みを規定をしております大学設置基準を改正をいたしまして、例えば、各大学が多様で特色あるカリキュラムを編成することを可能にするために、授業科目の区分でありますとか学部の種類の例示を廃止をしたわけでございますし、生涯学習の進展に対応いたしまして、昼夜開議制の実施などの制度の柔軟化を図ったわけでございます。
 現在、こういった制度改正を受けまして、各大学では、カリキュラムの見直しでありますとか授業の質の改善に積極的に取り組みますとともに、社会福祉学部、情報文化学部、環境理工学部といった、これまでの伝統的な学問分野にとらわれないで社会のニーズにこたえた総合的あるいは学際的な学部学科を積極的に開設していこう、こういう動きが現在各大学で見られるわけでございます。
 文部省といたしましては、今後ともこういった社会的な要請に十分注意を払いながら、各大学におけるそういった大学教育の改善に向けた取り組みを積極的に奨励あるいは支援をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
#29
○東(祥)委員 今年の九月の時点で我が国の全体の失業率は、先ほど御指摘になりましたとおり、三%でございます。しかし、十五歳から二十四歳の若年層の失業率は何と五・七%、うち男性のみが六%となっております。未就職卒業者いわゆる就職浪人の方を含めて、日本の将来を担う若者たちが就職に対しての明るい希望が持てない現状にあるわけでございます。
 一方、公共職業安定所に提出されました来年三月の大卒時の採用計画書によりますと、対前年比の伸び率は増加しております。大卒者では約四四%増、短大では約一五%増、高専では約一七六%増、専修学校で七%増。他方、これらの事務系にかかわった場合、大卒は約四%減、マイナス四%、短大約マイナス二九%減、専修学校はマイナス三六%城となっております。また九四年−九七年までは、団塊の世代の二世の層が多数大学を卒業することになっております。
 そうしますと、直近のこの三年間、何らかの対策をとらなければならなくなってくるのではないのか。単なる事務職等だけではなくて、将来成長が見込まれる分野への就職の奨励がぜひ必要である、このように推察するわけでございます。この点に関して労働省の見解並びに具体的な取り組みについてお尋ねいたします。
 と同時に、九八年以降は新規学卒者が少数になる、こういう状況でございます。九八年以降、どのように見通しされているのか、この点についてもあわせて御見解を賜りたいと思います。
#30
○浜本国務大臣 多分、団塊の二世時代のことについてお尋ねだろうと思います。
 御指摘のとおり、今後数年の間は、団塊の世代二世とも言われる昭和四十年代後半に生まれた層が大学等を卒業して労働市場に参入する時期に当たることになると思います。一方で、景気の低迷等の影響もあり、労働力需要に影響が出ると思います。この両面から見まして、新卒者の就職環境は厳しいことが予想されるわけでございます。事実、平成六年の三月新卒者につきましては、総務庁の労働力調査によりますと、学卒未就職者の数が四月には十五万人に達しておるというふうに報告をされております。九月は若干減少いたしまして、七万人ということになっておるようでございます。
 労働省といたしましては、未就職卒業者問題の重大性にかんがみまして、七月、全国の学生職業センターに未就職卒業者相談コーナーを開設いたしまして、これらの方々の求人の開拓、きめ細かな職業相談、職業紹介等の実施を講じたところでございます。未就職卒業者につきましては、労働省といたしましては、来年度においても企業との合同選考会を継続的に行うなど、円滑な就職を全力で支援してまいりたいと思っております。
 なお、私といたしましては、就職できていない方々に対しましては未就職卒業者職場体験プログラムというようなものをつくりたいと思いまして、今一生懸命検討しておるところでございます。
#31
○東(祥)委員 未就職者体験プログラム、どういうプログラムですか。
#32
○浜本国務大臣 これは、就職してない方々に対しまして、企業に体験入社をしていただきまして、そこでいろいろな研修をしていただいたり職業に対する理解を深めていこうというものでございます。
#33
○東(祥)委員 次に、労災保険について質問させていただきます。
 昨年の八月、悲しい事件がございました。御案内のとおり、出張帰りの企業の幹部が新幹線の車内で刺殺されるという痛ましい事件がございました。このようなことは二度と起こってほしくないとだれもが願っているわけでございますが、本件でお亡くなりになられました方の労災申請について、先日認められないという結果になった、このように聞いております。大変に残念に思いました。労災認定された場合とこれが認められない場合とを比較いたしますと、残された御遺族のことを思うと暗たんたる気持ちにならざるを得ません。
 労働大臣、本件は何ゆえ認定されなかったのでしょうか。
#34
○浜本国務大臣 これは当該基準監督署で認定をしたものでございますから、事務局の方からお答
えをさせていただきたいと思います。
#35
○廣見政府委員 今先生お尋ねの件でございますが、確かにこの被害者の方は大阪へ出張されまして、その帰りの新幹線でこの事件に遭われたということでございます。この方は、全く見知らぬ第三者の人に突然ナイフで刺されたということになっておりまして、出張の帰りということではございますが、そういった見知らぬ第三者から業務と関係なく突然殺害されたということでございます。
 こういったことは確かにあってはならないことではございますが、業務出張ということにつきましては、このような危険が一般的に通常伴うものではないということから、業務との関係を認めないということで、監督署の方では業務外というふうに判断を下したものでございます。
#36
○東(祥)委員 労働基準監督署の判断だということで、浜本大臣、事務局の方からの答弁を依頼されて、私はそれを受けましたが、極めて重要なことを局長はおっしゃっているのだろうというふうに思います。
 昨年八月の新幹線「のぞみ」での殺人事件というのは、業務出張したのです。そしてその途上で、今局長がいみじくも言われましたけれども、第三者から、見知らぬ人間から結局殺害、刺殺されてしまって死をもたらした。私は、問題は、第三者、知らない人間であろうがどうであろうが、加害者という視点はないんじゃないのか。あくまでも業務上、業務で行ったその過程で起こったのか、また業務を遂行する途上で起こったのかどうなのか、また業務とその事故との関係性はどうであったのか、業務遂行性が認められる以上、当然、業務をしている結果として事故が起こっているわけですから、この点についてどうなのか。
 今重要なことを言ったのですね。第三者、知らない人がやった。いろいろな事故が起きますよ、業務をしている途中。私が、例えばどこかの出張で、政治の仕事で、また公務として世界じゅういろいろなところを回ってきているわけですけれども、そこで、もし命をねらわれる場合、第三者からねらわれるという場面もあったかもしれないし、ないかもしれない。第三者を特定するということはできないわけですね。それを、第三者、知らない人間から殺されてしまった、だから労災認定を受けなかった、こういうふうに言われているというふうに解釈してよろしいですか。
#37
○廣見政府委員 ある災害が業務上であるか業務外になるのかという判断の問題でございますが、私ども、確かにまず第一は、その起こった災害、被災の方が業務を遂行中であったかどうか、これから議論が始まる、こう思っております。実際の事件は九九%までは確かに、あるいはそれ以上が業務遂行中であれば業務上の災害として労災の認定を受けられる、通常はそのようなことでございます。ただもう一つ、業務遂行中ということと、その事件、事故が業務との関連、業務に起因しているかどうかということも判断する必要がある、私どもはそう考えて解釈いたしております。
 と申しますのは、この労災保険と申しますのは、労働基準法によります事業主の使用者責任、何らかの事故があったときに使用者は賠償の責めを負わなければならない、したがって事業主の責任を追及できるようなものに対して労災保険をする、こういう形で考えております。それが基本であろうと考えております。
 したがって、業務遂行と同時に、その業務の起因性が必要である、こういう判断から、今申し上げましたような事例につきましては、業務の出張のお帰りの途中であったということではございますが、業務との関係が、もう一つの業務起因性ということが認められない、こんなようなところから、そういうようなものについてはやはり事業主の責任をなかなか追及していくわけにはいかない、こういう基本的な考え方から、労災につきましてもその二つの観点から判断する、したがって今の事件は、結論といたしますと業務外と判断した、こういう形になっております。
#38
○東(祥)委員 今、世界的には極めて少数派が立脚する視点に立って局長は説明されました。業務遂行性というのはアライジング・イン・ザ・コース・オブ・エンプロイメント、雇用途上で生じてくるという意味で業務遂行性というふうにいいます。業務起因性というのはアライジング・アウト・オブ・エンプロイメント、雇用から生じてくる、これです。この二つの要件を二つとも満たしていない限りだめだと労働局長は、簡単に言えば、おっしゃっているわけでございます。
 イギリスはこの二つの要件を備えておりますけれども、ちゃんと日本よりもっと広い解釈をしています。フランスはさらに両方のうち一つでも満たされればそれはいいではないかというふうに言っています。
 しかし問題は、本当に今局長が言われたような起因性というものを明確にすることができるのかどうかなのかという問題に関しては、第一次的には業務遂行しているのかどうなのかというのが最大の基準になるのだろうというふうに私は思います。
 支店長は、「のぞみ」で殺害された、刺殺された方は幹部でございます。支店長です。そして業務で出張して、その帰りでございました。グリーン車に乗っているわけです、支店長だから。支店長でなければ多分グリーン車に乗ってないんじゃないですか。それはまさに業務から起因してグリーン車に乗っていたから、まさに監督局長がおっしゃられる業務に起因しているから殺害されてしまったのではないですか。
#39
○廣見政府委員 この事案につきましては、今先生のお話の事実関係はまさにそのとおりでございますが、業務起因性という解釈につきましては、その業務にある危険が一般的に内在しているかどうかということから業務との関連を見ていく、ある業務を行うことがそういう労働災害を起こす危険性がある、こういうことが基本になります。
 したがって、その危険が一般的にあるのかどうかということも重要な判断基準になってまいるわけでございまして、今のこの事件のような場合には、一般的に業務出張でこのような、今のケースのような危険が通常伴うものとして、危険が内在していると考えるのが普通がどうか、それで事業主の責任を追及していくことが妥当かどうか、こういうところから判断しているということを私どもの考え方としてとっている、これを御理解いただければ、こう思うところでございます。
#40
○東(祥)委員 いや、理解できません。通常業務に危険が内在しているか……
#41
○松岡委員長 ちょっと待って、東さん。労働大臣。
#42
○浜本国務大臣 技術的なことにつきましては過去のいろいろな基準等がございまして、私の方からはなかなか申しにくいわけでございますが、私が就任いたしましてから、「のぞみ」問題を初めといたしまして、マラソン選手の死亡問題あるいはまた過労死の問題など、労災の認定問題をめぐりまして各方面に大変関心が高まっておるわけでございます。昨今はマスコミにも非常に長時間取り上げられまして、関心を集めておるところでございます。したがって、私といたしましても、この機会に、世間一般の常識という観点から、認定をめぐる問題について整理してみることが必要なのではないかというふうに思っておるような次第でございます。
 そういう観点から、事務局に対しまして、早急に問題点の整理、検討を行うように指示をしておるところでございます。その検討も今進められておりますので、その検討後の結果については、また報告をさせていただきたいと思いますので、この問題につきましては、その辺で御質問をお許しいただきたいと思います。
#43
○東(祥)委員 今の大臣の発言に関しては、後から要求しようとしていたことで、その問題点がどこにあるかということを今ここで明確に一つの例として明示しているのでありまして、ここで問題点がクリアになると思うのです。それに基づいて大臣が多分判断できることもあるのではないのか。
 一般論として申し上げているわけではありません。一般論としては、当然その労災認定基準の検討という大きなテーマがあります。それは一生懸命やっていただきたいと思うわけですけれども、ここで今、問題点をクリアにしているわけですから、それを聞いておいていただいて、そして大臣の判断に基づいて、この問題は正鵠を得ているのかどうなのか、これを判断していただきたい。そのために質問させていただいているわけでございます。
 局長は、大変重要なことをおっしゃっています。業務に危険が内在しているのかどうか、これが一つの起因性を判断する重要な要素になるというふうに言っているわけです。こういう新幹線「のぞみ」で起きたような事件を、業務に危険が内在しているのかどうなのか、これはわかるはずありません、普通の出来事ではないわけですから。それに対してどういう判断を下すのかというのがまさに細心の注意を払って考えなければならない問題で、経験則に基づいて判断できるものではないというふうに思います。
 そこで、これは認められたケースですけれども、甲府信用金庫誘拐殺人事件というのがありました。不幸な出来事でございましたが、幸いなことに労災認定は認められました。なぜ認められたのですか。
#44
○廣見政府委員 確かに、甲府信用金庫の職員の誘拐殺人事件につきましては、結論といたしまして、業務上と監督署の方では判断したわけでございます。
 それは、この亡くなられた職員の方は、上司の指示によりまして取材を受けるという事実がございました。ということは、その限りにおいては当然業務の遂行性があるというのが一点でございます。
 それからもう一つは、この職員の働いておりました信用金庫、これは多額の現金を取り扱う金融機関ということでございまして、こういったようなところに従事する者の業務ということでは、やはり強盗あるいは身の代金目的の誘拐、こういったような事件も起こり得るわけでざいまして、こういう金融機関から何らかの形で金銭を強奪する、ねらわれる、こういう危険性がやはりそこに内在しているのではないかというところから、もう一方の、先ほど来申し上げておりますような視点につきましても、やはりこれは業務との関連ということを判断し、全体として業務上の災害である、こういうふうに判断したものでございます。
#45
○東(祥)委員 これもおかしいですね。要するに、職種の違いによって労災の適用が異なってしまうのかということを局長みずからがおっしゃっているわけです。金融機関というのはお金をたくさん扱うから、当然そのお金目当てで危険が他の職種の人よりも異なるだろう。問題は何なのかといえば、結局、一番初めに局長が言われたとおり、上司からある意味で業務命令の一環としてインタビューを受けなさい、ちゃんと業務の範囲内におさまっているからだと思うのです。
 もし、その金融機関に勤めていることそれ自体が危険を内在するということであるならば、そこから業務起因性を引き出そうとするならば、例えば金融機関にお勤めになっているある方が個人で旅行する、そしてそのときにたまたま何らかのことで誘拐し、もし殺人にいってしまう。そのときは業務遂行ではないわけですから、たとえ職務上そういうものが内在していることがあったとしても、結果的に労災認定はされないというふうになるわけですね。
 だとするならば、何が問題なのかというと、基本的には上司から業務ですよと、やっていることは通常やっている業務とは全然違いますね、金融機関の中で金融業務をしているわけではありません。業務から離れた仕事、ただ、上司から命令されてやっているので、業務の一環として認められているということです。
 したがって、局長が言われようとしているのは、業務の遂行上は、これはそうだ、それに基づいてどういうふうに判断するかというのを、今度は加害者の立場から立って、そしてこの労災認定、否かというものを判断しているわけです。一方においては、新幹線の「のぞみ」においては、第三者の加害者、全くわからない人だ、そういう人が全然不特定多数の潜在的な被害者を明確に殺人に至らしめるということはないのではないのか、こういう論点でお話をされているのだと思うのです。
 私が申し上げているのは、あくまでも出張という明確な業務です。出張という明確な業務で、そして仕事をし、帰ってくる途中、また支店長、幹部である、これも業務上から由来する問題ですね。グリーン車に乗っていた、そしてたまたまそこでこのような事件に遭ってしまった。起因性は十分あるではありませんか。それに対してノーだと言っているわけです。浜本大臣、いかがですか。
#46
○浜本国務大臣 労災保険というのは、労働基準法上の使用者の災害補償責任を基礎としているものでございます。したがって、業務と無関係に、たまたま業務遂行中に発生した災害についても、業務従事中ですね、業務の従事中に発生した災害についても労災保険で補償することは、使用者の災害補償責任を超えるというふうに労働省としては考えておるわけでございます。したがって、業務上と認定することは適当でないというのがこれまで労働省がとってきた考え方であるというふうに思います。
#47
○東(祥)委員 浜本労働大臣は、今の話を伺っていて、どのようにお感じですか。労働省の今までの見解というのはそうだから、僕は今この問題を提示しているわけです。おかしいのではありませんかと申し上げているのです。いかがですか。
#48
○浜本国務大臣 そういうことを念頭に置きながら、労働省の担当者の方で十分検討させた上で認定したものだというふうに私は思っております。
#49
○東(祥)委員 今大臣は、業務上とは関係ないところで起きたものに対しては労災は認定されないと。ところが、通勤途上にもし何か問題が起こった場合、事故が起きた場合、通勤上の災害として認められるのですよ。直接業務とはかかわり合いなくても、昭和四十八年ですか、正確に覚えておりませんけれども、通勤途上で起きた事故に対しては災害が認められるわけです。
 私は、この問題に関しては労災が認められるべきだ、このように主張しているわけですけれども、もしそれが認められない場合であったとしても、では、通勤上という、これは自宅と仕事場、仕事をする手前ですわ、仕事をする事前の段階です。そこで災害が起きた場合、事故が起きた場合、ちゃんと補償されるというふうになっているのですよ。
 ところが、今僕が問題にしているのは、出張という明確な業務ですよ。この問題に対しては、局長、通勤途上の災害としても認められないのですか。
#50
○廣見政府委員 確かに業務遂行、業務中であるかどうかというのは第一の最も重要な判断要素であることは、これはもう先生御指摘のとおりだと思いますし、我々もそういうふうにやってまいりました。
 今のお尋ねの通勤途上の災害のケースでございますが、これで考えてみますと、通勤の途上ということは、その途中における災害は通常、労働災害、労災として業務上になる、一般的にはそうだと思います。ただ、それも通勤の途上で、仮に、ケースとして何が適当かちょっとすぐは適当なものは思い浮かびませんが、例えば、何かの事故がある、通勤の乗った電車に何らかの事故があってけがをするというようなことになってまいりますと、そういったようなものはやはり通勤の途上に通常危険としてある、そういう危険は通勤に伴うものとしてこれは常識的にも内在している危険、こう考えられる。したがって、業務の遂行中、業務に行く途中ですが、通勤というのを特別取り出して法律的に保障しておりますので、通勤の途上ということとそういう危険性が内在するということをあわせ、実態的には判断されて、実態的にはほとんどの場合は通勤途上であれば災害になる、
こういうことでございます。
 ただ、もしも、これはもしもの事例でございますが、「のぞみ」のようなケースが仮に通勤途上にあったときに、そういうようなことの場合は、果たして第三者に不幸にして刺し殺されるというようなことがどういうふうに判断されるのか、こういうふうになってまいりますので、そのときには、先ほど申し上げておりますような、業務にその危険が内在しているかどうか、それをやはり業務の起因性ということの観点から判断せざるを得ないのではなかろうか、一般的にはそのように私ども解釈してきたということでございます。
#51
○東(祥)委員 局長及び大臣、大臣は優しい、優しいというか、当然当たり前のことを理解してくだされる大臣だろうというふうに僕は思っているんですが、九九%業務遂行上である、一%よくわからない、そういう問題であるならば、疑わしきは救済する、そういう立場に立つのか、疑わしきは救済せずという立場をとるのか、こういう議論になってきてしまうかもわかりません。極めて重要なことだと思うのですね。
 なぜ、通勤途上で起こる事故、この場合、通勤途上に「のぞみ」で起こったようなことの場合、また僕は問題になるんだろうというふうに思います。果たして通勤途上の災害として認定されるのかどうなのか。問題はまさに、それは局長のお立場としては確率でもって考えていかなければいけません。通勤する以上、これは山手線を使ったりまた別の電車を使う、事故が当然発生するものだ、過去の例がある、それに基づくならばこれは通勤途上の事故である、こういうふうに判定することができるのではないのか。
 今論じている問題というのは、あってはならないことです。あってはならないことが起きてしまった、これからあるのかどうなのかもわからない、なくしていかなくてはいけない、そういう問題です。また、交通事故に関しても鉄道事故に関しても、これも本当はあってはならないのですけれども、現実の問題として起こってしまう。その上で、経験に基づいて、そしてこういうものが昭和四十八年に認められているわけですね。まさにその出発点に立っているのか、これでもうなくなるのか、そういう問題が多分、新幹線「のぞみ」の場合に提示されている問題じゃないのか。そのときにどういう視点でもってとらえるのか。九九%業務遂行上ですよ。それはお認めになりますか。
#52
○廣見政府委員 その点につきましては、先生おっしゃるとおりだと思います。実際、いろいろな形で業務遂行中に起こったこの事故を見てみますと、九九%なのか九九・五%かわかりませんが、もうほとんどがおっしゃるとおりそういうふうに業務上の災害である、こういうふうに判断されると思います。
 ただ、私ども申し上げておりましたのは、ベースは基準法の使用者の責任だということは、やはり使用者に責任が遣及されていくことが可能なものが労災保険によって担保される、労災で保険する、こういう形でございますので、当然のことながら私ども、労働者の立場に立って労働者の保護を進めるという観点からも、当然それを行政の第一義のあれとして考えていかなければならないところではございますが、労災保険の仕組みというのは、そういう事業主の使用者責任を追及する、それがベースになっているというところからくる一定の解釈上の制約も、これは制度の性格として持たざるを得ないところがあるというところから、業務遂行中でありましても、業務従事中でありましても、事例とすれば本当にごくごく例外的なケースとして、業務上と判断されないようなケースも今まではやはり幾つかあったということであり、今まさに先生が問題として取り上げられておりますこのケースは、多分そんなところであろうかと思います。
 ただ、これはもちろん個別ケースの問題でございますし、「のぞみ」の件につきましては、現にその判定を受けられた方が不服として、現在審査官の方に不服申し立てをなさっておられます。したがって、当然それはそれでまた判断がなされていくことになるケースだということを申し上げさせていただきたいと思います。
#53
○東(祥)委員 局長、よくわかってくださっているんだろうと思います。でも、なぜ、撤回してあげればいいじゃないですか。また、今おっしゃられたとおり、これから審査会ですか再審査……(廣見政府委員「審査官です」と呼ぶ)審査官、または民事訴訟、こういうふうになっていくんじゃないですか。過去に撤回されたケースというのはたくさんあります。データもあります。一〇%くらい撤回されているというケース、年度もありますし、それだけ局長言われているのですから、局長が判断するのではなくて、浜本大臣、お話を聞かれて、九九・五%はわからないと言っている。大臣、どうぞ。
#54
○浜本国務大臣 個別ケースの問題でございますから、私の方から今議員の御質問に、そうしますとかそうしませんとかいうことをお答えすることができませんが、今の段階は、平成六年九月十二日に遺族から労災保険審査官、埼玉労働基準局に処分の取り消しを求める審査請求がなされておるところでございます。したがって、そこで十分審査をしていただきまして、その結果を得たざるを得ないというふうに思っております。
#55
○東(祥)委員 過去に、労災の認定が却下されてその後民事訴訟で認定されたケース及び不服申し立てで最終的に認定されたケースについて御説明願えますか。
#56
○廣見政府委員 今、不服申し立てがなされてどういう形になっているのか、過去のケースをお尋ねでございますが、必ずしも私、個別の数字その他実績、今資料を持ち合わせておりませんので、細かい数字はちょっと記憶いたしておりませんが、当然監督署、具体的には署長が認定処分を行うわけでございますが、これに対しまして審査官に不服申し立てが行われる、あるいは審査会の方に再度また申し立てが行われる、あるいは行政訴訟に持ち込まれて裁判上の判断がなされてくるというケースも過去には十分ございます。それで、原処分、すなわち監督署長の認定が覆される、判断がひっくり返されるというケースも一定のパーセント、割合であることは事実でございます。
#57
○東(祥)委員 例えば、平成五年度ですと、審査官請求件数九十六件中四件、これは取り消されているわけですね。却下されたものが今度認定されている。それが再審査請求にいきますと、平成五年度はゼロでございましたが、これは審査会でなかなか認められるというのは少ないみたいなんです。次に、行政事件訴訟の推移というところで考えますと、例えば、平成二年ですと五十一件、そのうち十一件、これは却下が撤回されて認められているわけです。約二〇%。平成三年度六十八件中十五件、平成五年度五十三件中十七件。
 今、局長との話を、私は法律家でもありませんし、よくわかりませんけれども、議論をさせていただいても、事実の認定に関してはほとんど差がないわけです。問題はどこなのか、評価になってくるわけです。どのようにこの問題を見るかという視点になってくるわけです。多分、ここで撤回されているというのも、その評価に基づいて転換してくるのだろうと私は推察いたします。
 そういう意味で、残念ですけれども、また浜本大臣ならばまさに状況を観察していただいて、また議論を聞いていただいて、やはりこれはおかしい、また局長みずから九九・五%これは疑わしい、そういうことを言ったとしてもなかなか撤回することができない、ここに僕は残念さを覚えますけれども、もうこれ以上議論をしていっても水かけ論になってしまいますので、今回はこれで引き下がります。
 あと二つの問題について議論しなくちゃいけないのですけれども、これでもうやめます。時間が中途半端になってしまいます。
 本日は大変ありがとうございました。またどうぞよろしくお願いします。
#58
○松岡委員長 宮本一三君。
#59
○宮本委員 宮本でございますが、最初に、浜本
労働大臣に御就任おめでとうと申し上げたいと思います。特に労働政策あるいは労働問題に対する国の対応、こういった問題が、ちょうど日本の経済が今大きな転換期に差しかかっているだけに、本当に大事な問題を提起いたしております。そういう時期に大臣御就任でございますので、非常にお忙しいと思いますし、また責任は重大だと思いますけれども、これからの労働政策、本当に我が国の最も重要な問題でございますので、頑張っていただきたい、このように思います。
 それで、いろいろ質問をさせていただきたいと思っていますが、既に何人か御質問の中に似たような問題もございますので、できるだけそれを避け、また角度を変えてやってみたいと思います。
 最初に、産業の空洞化の問題について大臣にお伺いしたいと思います。
 確かに、この間発表されました十一月の月例報告でも、景気は緩やかではありますけれども回復に向かっている、こういうような報告がなされておりまして、ややうれしく存ずるわけでございますけれども、しかし、実態はなかなかそう容易なことではないと思います。
 特に為替レートの動向が非常に怪しくなっておりますし、きょう恐らく結果が出るわけですが、アメリカの中間選挙の結果いかんによっては、また円高が一段と進むのではないかなというような心配も出ているような状況でございますし、その点非常に我が国の、特に製造業を中心にして円高との絡みあるいは国内のいろいろな要因の影響を受けるわけでございますけれども、生産拠点を海外に移転するような事態が非常にふえてまいっております。このこと自体、決して海外投資が活発になることを責めるわけじゃございませんが、そのことがひいては我が国国内の産業の空洞化、これが懸念される心配が大きくなるわけでございます。
 これが一つの流れとしてやむを得ない、だから付加価値の低い労働集約的なものが海外に行ってしまうのはしょうがないので、付加価値の高い資本集約的なものが国内に残ってしっかりやればいいんじゃないかといったような理論もあるわけではございますけれども、なかなかこれは、労働集約的な産業で今現に働いている多くの我が国の労働者の問題を考えますと、そう簡単に理論どおり了解するわけにはいかぬ。
 私はこの点で非常に心配をいたしておりまして、確かに海外進出、大事でございますが、それとの関連でこれからの我が国の国内の労働の問題、特にそういった海外への進出に伴う空洞化といいますか、特に生産、製造業を中心としたような空洞化に対応して、一体大臣、どのような基本的な政策で臨まれるか、ひとつお伺いしたいと思います。
#60
○浜本国務大臣 お答えいたします。
 今後の国際化の進展でありますとか技術革新、規制緩和等により大きな変化が見込まれる中で、二〇〇〇年ごろまでの産業、雇用の姿やそれに基づく政策の方向性につきまして、労働省では、学識経験者から成ります雇用政策研究会に検討を依頼いたしまして、ことしの六月に先ほどからお話が出ておりますような中期雇用ビジョンを取りまとめているところでございます。
 これによりますと、規制緩和などの構造改革等が行われることを前提にした場合、今後二〇〇〇年に向けて、製造業におきましては生産拠点の海外移転や生産性の向上によりある程度の雇用需要が減少すると見込んでおりますが、一方で、サービス業や情報通信分野、住宅並びに医療福祉分野などでは大幅な雇用需要の増加が見込まれておるところでございます。したがって、全体といたしましては労働力の需給はほぼ均衡するものと中期ビジョンでは報告されておるわけでございます。
 ただ、このような産業構造の変化のもとで産業間の労働移動を余儀なくされるケースも多くなってくることが見込まれております。今後は、こうした労働移動に伴う社会的な痛みをできる限り小さくするため、失業なき労働移動を支援するという観点から、必要な施策を盛り込んだ特定不況業種雇用安定法の改正につきまして検討を進めておるところでございます。
#61
○宮本委員 ありがとうございます。今大臣お答えいただいたように、製造業である程度減少することはやむを得ないかもしれぬが、サービスあるいは情報、医療といったような別の分野での雇用の創出、そういうものを考えると、何とか中期ビジョンでは労働機会の確保ということはできるのじゃないだろうかといった見通しをちょうだいいたしました。
 確かにそういう形で労働の、雇用の機会がふえていただくことを望むわけでございますが、ただそれだけに、高度情報部門あるいはハイテク、マルチメディアといったような、こういうテクノロジー分野での雇用機会の増大ということに期待が持てるし、また事実、日本はその分野では既に世界のトップを走っているということでございますが、同時に、高齢化の問題を一方で考えなければいけない。
 労働の供給サイドでの変化といいますか、これがやはり非常に心配でございまして、確かに、全体として一方の方の減少をカバーするような、新しい進んだ分野での雇用機会の創出ということでカバーしていけるような、数字的にはそんなめどが立つとしても、そこで働いている個々の労働者を見てみますと、特に高齢化した労働者の場合に、そういった一つの職場から新しい非常に先進した、進んだ分野への労働のシフトということが果たしてスムーズにいくのかどうか。
 これがいかないと非常に大きな摩擦失業という問題が出てまいるわけでございまして、大臣今言われたように、失業なきシフトといいますか、これは確かに大事なことでございますが、これは現実の問題として、一体どうやってそのようなシフト、失業なきシフトを確保するか。新しく卒業してくる人たちが新しい分野へ行くというのは、これはわかるのですけれども、もう既にある職場で長年働いてきた方々で、そこからまた新しい職場への移転ということを、これを何とか実現しないと、どうしても摩擦的失業というか、構造変化に伴う失業というものが、一方では需要があるのに満たせないという問題があるような気がいたします。
 この点について、ちょっと技術的になるかもしれません、局長で結構でございますが、どのような対策を考えておられるか、ひとつお願いしたいと思います。
#62
○征矢政府委員 御指摘のとおりの大変重要な問題があるわけでございまして、労働、雇用面からいきまして一番いい形は、先生も御指摘いただきましたように、構造変化により産業が変わっていく際に、その産業間の労働力移動が世代間の交代による労働力移動という形で、セットで変わっていけば問題がなくて済むわけでございますが、現実には、変革、変動のテンポの問題がございまして、そのギャップが大きくなればなるほど、御指摘のような途中で転換しなければならない労働者の方々が出てくる可能性があるわけでございます。
 これにつきましてどうするかという問題につきましては、これはなかなか難しい問題でございますが、先ほど大臣がお答え申し上げましたように、当面、特定不況業種の労働者雇用安定法の改正で考えておりますのは、どうしてもそういう事態が空洞化等が進む中で見込まれることが予測されますので、その際に離職を余儀なくされるケースが出てくる。それを避けるために、失業という形を経ないで移動できるような対策、まあ当面一つくらい考えられるわけでございます。
 一つは、労働者を受け入れてくれるサイドの企業、これは今後の発展産業ということでございますが、具体的に現実になかなかそこまでいかない場合には、そういう形でなくとも、いずれにしても受け入れてくれる企業について、それに対する一定の受け入れのための助成をいたしまして、移っていただく。それから、もう一つの問題は、その際に、当然仕事が変わるわけですから、その間にその職業訓練をやりまして新しい仕事につけ
るような形にする、そういう職業訓練についての助成をすることによって、移っていただく。こういうような対策を検討しているところでございます。
 ただ、現実には、御指摘のように、いろいろな構造変化あるいは複雑な状況の中でどううまく対策を取り組んでいくかというのは非常に難しい課題でございますが、そういう対応を今後考えてまいりたいというふうに思っております。
#63
○宮本委員 ありがとうございました。
 今、局長からアンサーいただいたように、できるだけスムーズに、失業を出さないような形でシフトがうまくいくようにあらゆる手を打っていただきたいと思いますし、特に受け入れ産業への助成、これはやはりできるだけ的確に実現していただかないと、どの企業も、若いそしてそういった先端技術に今から適応しそうな人をとりたいし、そしてそういった新しいタイプになかなかすぐにはなれにくいそういう高齢者についての受け入れということになりますと、どうしてもちゅうちょしますから、そこはひとつ政策面で助成していただきたいと思います。
 また、これは難しい話ですけれども、長年やってきた仕事と違う仕事への職業訓練ということも非常に難しいことではございますけれども、こういった過渡期の経済、そこでの対策でございますので、ぜひともひとつ御努力をお願いしたいと思います。
 その関連もありますが、ひところ非常に景気がいいときは、労働力不足をカバーするために外国人労働者を相当大量に受け入れ、これは裏から入ったりいろいろありますけれども、最近のように、失業率も三%になってくるというようなこと、また求人倍率も落ちておりますし、こういう状態になってきますと、もう要らないということで追い出しにかかってしまうわけでございます。
 この問題は非常に難しいので、一概に言えないのですけれども、しかし他方、企業の側からいいますと、中小企業なんかの場合には、特に単純労働者を中心にして、現在でも何とかもう少しそういったたぐいの労働力が欲しいなといったようなことをよく耳にするわけでございます。この問題は、就業機会の少ない高齢者とか女子のパートの職場ということとぶつかりますから、そこらは非常に難しい問題ではございますけれども、これは政府としてどう考えていかれるのか。
 これからの二十一世紀に向けての日本の労働問題のあり方の中で将来非常に大きなウエートを占めてくる外国人労働者の問題だと思いますし、一方では社会問題も含んでまいりますだけに、この辺でかなりはっきりとした外国人労働者受け入れについての政府の方針を、景気がいいから欲しいということで数年前かなりわあっと受け入れましたが、逆に国際的な非難を浴びるような形で追い出すことにもなるし、ここはひとつ政府としても腹を決めて、この基本政策を考えてもらいたい。
 そんなことで、大臣にひとつお答えを願えればありがたいです。
#64
○浜本国務大臣 お答えいたします。
 外国人労働者の受け入れ問題に対する我が国の基本方針というのは、平成四年七月に第七次雇用対策基本計画というのが閣議決定をされておるわけでございます。現在はその方針に基づきまして対応しておるということでございます。その内容によりますと、専門的、技術的な分野の外国人については可能な限り受け入れることとするが、いわゆる単純労働者の受け入れについては十分慎重に対応することとされておるわけでございます。
 特に、いわゆる単純労働者の受け入れにつきましては、国内で雇用機会が不足しておる高齢者、先生の御指摘の高齢者、それから女子パート労働者を圧迫するおそれがあるし、我が国経済社会に広範な影響を及ぼす問題でありますので、労働省といたしましては、今後とも多様な角度から慎重に検討する必要があるものと考えております。
#65
○宮本委員 ありがとうございました。
 専門家とか特殊技能者、そういったものほかなり積極的に受け入れるけれども単純労働者は慎重にやるという基本方針、これは確かに今言ったような我が方の職場を圧迫する問題でございますだけに非常に慎重な判断が要ると思いますが、しかし、最近の欧米諸国の動きを見ておりますとかなり外国人労働者が入ってきている実態がございますので、そこら辺も踏まえてこれからの対応に誤りなきようにひとつ御判断願いたいと思います。
 この間も、完全失業率が三%、数カ月続いているような話が今出ておりましたけれども、これとの関連で、完全失業ではないのだけれども、やや失業と受けとめていいのではないかと思われるような、雇用調整助成金の対象になっているような方の数が、これは具体的に例えば最近の時点でのデータでいいのですけれども、どんな状況になっているのか、ひとつ局長からでも結構でございますがお願いします。
#66
○征矢政府委員 雇用調整助成金の利用状況でございますが、これはなかなか数字で見るのが難しい面もございますが、公共職業安定所に提出されましたこの実施計画によりまして見ますと、雇用支援トータルプログラムによります雇用調整助成金の拡充措置を実施した後の平成五年度の第四・四半期、この時期がピークでございまして、休業につきましては、延べ人日で約二百五十八万人日、対前年同期比一二四%、相当大幅な増でございます。教育訓練につきましては、延べ人日で四十四万人日、出向につきましては、これは人数でございますが約二千八百人ということで、大変増加したところでございますが、その後減少してまいりまして、平成六年の第二・四半期、最近時点におきましては、休業が約百三十七万人日、教育訓練が二十八万人日、出向が人数で約千七百人ということでございまして、これは、この雇用調整助成金制度は景気の動向と相当敏感に反応するものでございまして、一部の業種等におきまして業況の回復傾向が見られることに伴って、利用が全体としては大幅に減少しているところでございます。
#67
○宮本委員 平成五年の第四・四半期がピークみたいでして、それからちょっと減っているような数字ですが、これはちょっと、二百五十八万人日と言われたかな、ちょっとわかりにくいのですよ。要するに、何人ぐらいが大ざっぱに言って失業状況にあるというか、雇用調整助成金の対象になっている人を、その人日という計算ではちょっとぴんとこないのだけれども、何か、ずばっと言って何人ぐらいなのかなというようなめどはつきますか。
#68
○征矢政府委員 実は、例えば休業で見ますと、企業におきましては、月に一遍あるいは三日とかそんな形で二足の人数をやっておりまして、全体を例えば一日やるケースもあれば、一定の人数を働く場所によって休むケースもありまして、そういうものを人数と日数と掛け合わせて二百五十八万人日というふうに出しているものですから、これは頭数で幾らというのに割り戻すのが非常に難しくて、正確に出すのは困難でございまして、それでこんな数字で申し上げているところでございます。
#69
○宮本委員 はい、結構でございます。
 ちょっと時間もあれですが、介護の問題についてお伺いしたいと思うのです。
 この間も、ちょうどレーガン大統領が自分はアルツハイマーの初期だということを言っておられました。非常に勇気のある発言だし、確かに、大きな問題だということを彼自身がみずから世界に示したということで、本当に大問題だと思いますが、これから我が国も本当に考えていかなければいかぬし、既に二百万人近い人が介護を必要とするというデータも聞いております。今後、ふえてくることはあっても減ることはないだろうと思いますだけに、この介護の問題、非常に難しい問題だと思います。
 いろいろありますけれども、現状では家族の方に負担がかかっている、どうしても家族の方の負担にかかり、かつ、そのために仕事との両立が難しくなってきているというような実情を踏まえますと、何とかこれは考えてもらわなければいかぬ
というふうに思うわけでございますが、介護休業制度の法制化も含めて、一体大臣、この問題にどのように対処されるか、ちょっと。
#70
○浜本国務大臣 労働者にとりましては、家族の介護と仕事をどう両立させていくかということは、議員御指摘のように非常に重要な問題だと思っております。介護を必要とする家族を抱える労働者が仕事が継続できるよう、仕事と介護との両立支援対策を強化することが非常に大切だと認識をしております。
 そのためにどういう措置をとっておるかと申しますと、一つは、介護休業制度をとりやすく、また職場復帰しやすい環境を整備することが大切だと思います。第二番目は、介護を行う労働者が働き続けやすい環境の整備をすることも必要だと思います。また第三は、介護のために退職した者に対する再就職の支援対策も必要だと思います。このようにいたしまして、仕事と介護の両立支援対策の充実を図ってまいりたいと思います。
 さらに、法制化の問題でございますが、重要な課題と認識しております。現在、関係審議会におきまして、専門家会合の研究結果を参考としながら、介護休業制度の法制化を含む有効な普及対策について検討を行っていただいておるところであります。私といたしましては、その結果を踏まえまして対応してまいりたいと思います。
#71
○宮本委員 この問題、ひとつ大臣しっかりと検討していただきたいというふうに思うわけでございます。
 時間もございませんので、最後に改正雇用保険法の施行に対する体制整備の問題に触れたいと思いますが、御承知のように雇用保険法が改正されまして、高年齢雇用継続給付が創設されたわけでございますけれども、この給付は、少子化する社会あるいは高齢化する社会の到来に適応するために我々が与党であったときに立案し、我々の方で要求した非課税の問題という取り扱いにもなったわけでございますが、今後の高齢化社会の中で六十五歳までの雇用継続を援助、促進する給付として非常に大切であり、また大いに評価するものであります。
 この給付は来年の四月一日から実施されることになっておりますし、具体的にこういう問題が新たにスタートいたしますと、そのことに伴う支給事務といいますか事務量が非常にふえることは確かでございます。私も大蔵省におるときに、新しくいろいろな制度ができたときにそれに対応するための事務量の計算などをやったことがございまして、それだけにこの問題、大変な事務量になるような気がいたすわけでございます。それだけに、この実施に備えて万全の体制を労働省としてもしいていただかなければいかぬと思いますし、人員の配置とか、いろいろな問題が大きくなってくると思います。
 現在の労働省の各機構で人が余っているわけでは決してないわけですから、さらに新たな仕事がふえてまいりますから、確かに行革の必要性はあるわけでございますけれども、事は労働者の問題でございますし、雇用法にかかわる本当に大事な問題だけに、ぜひとも執行面で事務的な支障のないような対応を大臣にお願いしておきたいと思いますので、ひとつ大臣、その辺お答え願えればありがたいと思います。
#72
○浜本国務大臣 高年齢雇用継続給付は、高齢者の雇用の促進という今後の国の基本的課題に対処するため重要な政策課題だと思っております。
 そのため、高年齢雇用継続給付が的確、円滑に実施され、制度の趣旨に沿って十分な利用がなされるよう、事務の合理化、効率化を図る一方、必要な人員の確保のため関係省庁の御理解を得るなど、実施体制の整備に全力を挙げてまいりたいと思います。委員の御指摘のように、育児休業制度の給付を考えますと、百三十万人の給付ということでありますから、非常に大切だと思いますので、一生懸命人員の確保に努力してまいりたいと思います。
#73
○宮本委員 ありがとうございました。
 以上で終わります。
#74
○松岡委員長 寺前巖君。
#75
○寺前委員 今も今日の雇用情勢の問題についていろいろ論議されておりました。私も連日の新聞なりいろいろな情報を見ておって、つくづくこのままでいいんだろうかということを感じますので、きょうは許される時間の範囲内で質問したいと思います。
 総務庁の九月の労働力調査によると、完全失業率は三カ月連続で三%になった。三カ月連続で三%台に乗せたのは、現在の方式で統計をとり始めた一九五三年以来初めてだ。やはり異常だということを言わざるを得ないわけです。完全失業者数は二百一方、前年同期に比べて二十九万人の増となっている。
 この春から社会的に大きな問題になっておる新規学卒者の就職問題は、文部省の学校基本調査によれば、大学生の就職率は七〇・五%で、これも一九五一年以降最低の水準だ。この分野でもやはり同じことが言える。そのうち女子学生の就職率は六七・六%になる。さらに高校生はというと、労働省の資料を見ますと、大変な数字がこの前出ていました。九月未時点で五四・八%という資料が出ていました。日本高等学校教職員組合が実態調査をされた内容がきょうの新聞に載っていました。それを見ると、時点が十月末時点になっていますが、七二・九%で、これも前年同期の七七・一五%と比べると四・二五ポイント低いという数字が出ています。福島県のごときは半分に満たない四八%だとか、北海道は五二・四%だとか、あるいは大阪、京都などは六〇%前後などと数字が出てきています。こういうふうに見てくると、やはり今日の政治の分野において一大問題の一つだということはやはり言わざるを得ない内容であろう。
 それだけに私は、この前、労働大臣が第百三十一国会に当たってのあいさつをしておられたものを注目して聞いていたわけです。この内容をちょっと改めて読み直してみますと、最近の雇用失業情勢については、有効求人倍率、完全失業率とも依然として厳しい状況だ、労働省としては、雇用支援トータルプログラムの実施により、雇用の安定に一定の成果を上げてきておるが、今後は特に、離職者の再就職促進に重点を置いた取り組みを強力に推進してまいりたいということが触れられている。また、やむなく必要となる労働移動については、できるだけ失業を経ることなく行われることが、社会にとっても個々の労働者にとってもよりよい対処のあり方であると考えており、このための積極的対策を、こういうふうに大臣はおっしゃっていた。私は、これでいいんだろうかなということをつくづく感じますので、きょうは三つの点について聞きたいと思うわけです。
 今、大企業、自動車、電機などに代表される分野では生産拠点の海外移転が進められている。国内では、採用の抑制ばかりでなく、リストラだといって人員削減が行われているのが今の進行状況だ。鉄鋼の大手五社の従業員数を見ると、一九八五年九月末には十九万三千九百四十八人であったものが、ことし、九四年三月末になると十六万二千八百十五人と、約三万一千人、八五年当時の六分の一が減っている。鉄鋼の分野だけを見ると、こういう数字も出てくるわけです。
 そこで私は、現に進んでいる問題点について、こういう対策をする上において重要だなと感ずる問題について、先ほど言いましたように三つの点で聞きたいと思うわけです。
 今行われている内容の特徴点として出向・転籍という問題が、新日鉄を見ても川鉄を見ても神戸製鋼を見ても全部出てくるわけなんです。そこで私は、改めてこの転籍、移籍という問題について、言葉ではえらいきれいごとに聞こえるけれども、要するに首切りということではないのかなというふうに思うのですが、この点についてどういうふうに見たらいいんでしょう。
#76
○廣見政府委員 事実の解釈という面もあろうかと思いますので、私からお答えさせていただきたいと思います。
 今先生お尋ねの転籍あるいは移籍ということで
ございますが、これは私ども一般的には、今生きている現在の労働契約を合意によって解約し、次の先での新しい労働契約を締結する、こういう手段で行っているという形か、あるいはまた労働契約上の使用者の地位を譲渡する、こういう手段によって行われる、こういうふうに解釈するか、いずれかの性質を持っているものだろう、このように思っております。
#77
○寺前委員 ということは、要するに、契約しておったものを解雇して、そしてちゃんと解雇の手続をとってまた新しいところと契約するというやり方になるわけですね。
#78
○廣見政府委員 そこの場合、今先生、実質上の解雇ではないか、こういうようなことでございますが、ポイントといたしますと、いずれにしろ労働者の同意が必要である。転籍、移籍について労働者の同意を必要とするというのが、学説あるいは判例の一般的な考え方であるというふうに私どもは理解いたしております。
#79
○寺前委員 同意が要るということをおっしゃいました。それで、民法の六百二十五条の権利義務の一身専属性の問題を見ても、私は、そういうふうにきちんとしなければならないというふうに思うのです。
 ところが、現に行われているこの本人の同意ということについて、実際は同意をせざるを得ないというようなやり方が行われているというふうに私は思うのです。
 例えば、ここに私は、これは川鉄かな、こういう通知書を持っています。「移籍による退職について(通知)」という文書がある。これを読みますと、「あなたは、平成六年九月未日付をもちましてこ何やら「への移籍をお願いすることとなりました。つきましては、下記のとおり手続きをお願いしたく、ご通知いたします。」といって、日時を決め、場所を決め、「その他」というところに「当日は、印鑑をご持参ください。」要するに、移籍に伴う具体的な取り扱い等に関する説明を以下のとおり行いたいので、万障繰り合わせて来てください。こういうふうにこれからあなたと話をしたいのだ、移籍させるんだよ、そのためには判こを持ってきなさい、こうなったら、私は、そういう通知を出してしまったら、移籍についての相談じゃなくして問答無用という圧力をかけることになっているのではないだろうか。これは何かそういうふうに出ていました。
 神戸製鋼の場合を見ても、会社側はこういうふうに書いていますね。「万一、対象者の方の了解が得られなかった場合は、形式的には当社に復職していただくが、当社の要員事情から当社に雇用の場はなく、新たな出向先の業務に従事していただくことになります」といって、嫌やと言ったって雇用の場はなくなりますよと。こういうふうにいってみると、一たん雇っている人間が長年の間にいろいろな事情が生まれているものを、問答無用で、要するにそこに行かなんだら仕事がなくなってしまいますよというような、いわゆる圧力をかけるというようなやり方は、これはもう強制的な解雇に等しいやり方になるのではないだろうか。
 私は、こういう事態が現に進んでいるということを考えたときに、質問はここからなんだ、労働省はこういう問題について、労働者に対して、先ほどおっしゃったように、本人の同意なしには強制的な首切りはできませんよという話を、移籍という以上は自覚をきちんとお知らせする、そういう権利があるんですよ、そういう保障があるんですよということを何かポスターにするなり、あるいは何かそういうようなことを書いたものをやったらどうなんだろうかなというふうに思うのですが、どうもそういうふうに転籍問題が、労働省のパンフレットの中にはそういう問題が触れてあるというのはちょっと私見当たらぬのですが、今日、移籍問題というのが大きなこういう経営体で問題になっている以上は、その点の権利をみんなに教えるというのが労働省として必要なのではないだろうか。大臣、いかがでしょうか。
#80
○浜本国務大臣 恐らく大きい企業になりますと、労働組合というのがありまして、労使が労働契約なり、あるいはこういう問題に関する協定があるのではないかというふうに思っております。そういう協定がありましても、労働者の同意が必要であるというふうに私は理解をしております。
 なお、そういうことについて、労働省としてもう少し親切に知らせる機会をつくったらどうか、こういうお話なんでございますが、その点につきましては、これまでもいろいろな角度から労使の皆さんにお知らせをしておるようには思うのでございますが、なお不十分ならば、検討してみたいと思います。
#81
○寺前委員 これは、ことしの三月に作成された「厳しい経済情勢下での雇用・労務管理の留意点」という労働省がお出しになったものがあるのです。これを見たって出てこないのです。
 僕は、今大臣おっしゃったように、そのぐらいのことはやっていると思ったので、あえて調べてみたら、ないので、やはり行政というのは今直面している問題の中で、これを教えてみんなに知らせておくということが大事だという点について積極的に取り上げるという点で、今御検討なさるとおっしゃいましたから、速やかに御検討いただくことをまず第一にお願いしたいというふうに思います。
 次に移ります。
 鉄鋼大手はこういう転籍制度を使って人減らしをしようということが、きょうの新聞を見ておりましてもまた出ていました。これは日本経済新聞を見ますと、新日鉄は九四年から九六年にかけてコスト削減三千億円、人員削減数七千人、NKK同じく千七百五十億円、五千八百人、住友金属九三年から九五年、千五百億円、四千三百人、川鉄九四年から九六年、二千百億円、四千六百人、神戸製鋼九三年から九五年、一千億円、三千八百人、こうやって鉄鋼大手五社のリストラ計画というのがきょう新聞にばんと出ていますわ。
 こういうことを見ても、私は、こういう問題についてどうするのだろうかということの問題として、今雇用調整助成金という制度がある。この雇用調整助成金を見るとどういうことになっているのか。
 九三年度の場合の姿を見ると、三百八十四億六千万円余りの金が出ている。そのうち、私なりの調べをやってみると、ざっと五分の一が鉄鋼関係に使われるということになると、八十億から九十億ぐらいの範囲が恐らく九三年度で出されているということになるのでしょう。
 私は、こういう雇用調整金、今度使う場合には、雇用調整金の趣旨は、何のためにこれが存在しているのかというその基本をきっちりと押さえておく必要があるというふうに思うわけです。この雇用調整金というものが、目的がやはり失業の予防、その他雇用の安定を図る、こういうふうに書いてある。
 ところが、現実にこの雇用調整金を使って、その結果はどうなるかというと、先ほど言いましたように、大量の人が首切られているというようなことになってしまっていると、この雇用調整金は大手企業が一時的に上手に処理するための手段にしか使われていないじゃないか。結局、それは失業の予防、その他雇用の安定を図るという目的から外れていくじゃないか。だから私は、そういうことになってくるから、労働省としては、これを出した以上は、失業計画を立ててそしてほうり出していくというようなことはやめなさいとか、そういう調査に入るというようなことをやるべきではないだろうかというふうに思うのですが、大臣いかがでしょうか。
#82
○征矢政府委員 ただいま御指摘ございました雇用調整助成金制度についての考え方を申し上げたいと思います。
 この制度につきましては、景気の変動等によりまして事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が労働者の雇用維持を図る場合に、その賃金負担の一部を助成することによって、労働者の失業の予防を図ることを目的とした制度でございまして、そういう観点からこの制度を運用しているところ
でございます。
#83
○寺前委員 労働大臣に聞きたいのは、雇用調整というのは結局失業者をつくっていくのを時間的に調整していくだけの話になってしまって、これだけの金を使ってまでやっていくんだったら、それは失業者を出さぬように、雇用の安定を図っていくために考えなければいかぬじゃないか。だから、初めからリストラの計画を立てておいて、さあもうほうり出してしまうんだ、それのやる過程を企業の側の立場から見るというのじゃなくして、待てよ、労働者をほうり出していくという計画のもとでこれが使われていくというようなことでは困るというような角度から、調査し指導していくということが必要なんじゃないだろうかということを、ちょっと大臣に聞きたいと思います。
#84
○浜本国務大臣 雇用調整助成金の趣旨につきましては、職業安定局長からお答えをしたとおりでございます。したがって、その趣旨、目的に沿った利用が行われるように、特に、雇用調整助成金の支給を受けておる企業には慎重な態度を求めておるわけでございます。雇用調整助成金の支給を受けながら労働者の解雇が行われるなど最悪の事態に至ることがないように、利用の多い業種業界団体に対しまして労働省は要請を行い、団体傘下各企業に対して理解を求めておるところでございます。こういうことはもうあらゆる機会をとらえて適正な活用をしていただくようにお願いをしておるところでございます。
#85
○寺前委員 それでは、もう時間の関係がありますが、最後にお聞きしたいのですが、こうやって片一方では計画的に労働組合と話しながらも、個人の権利というのは保障しなければいかぬという点で、労働大臣もお答えになりました。
 ところが今度は、例えば大阪の枚方市に宇部興産の枚方研究所というのが百十二人の従業員がおってあるんです。この研究所は一九六一年につくられて、現地採用された人もたくさんおるし、もう勤続三十年以上という人もできてきているのに、来年の七月には移転、閉鎖するということが発表されている。工場が閉鎖されれば、親の看護や子供の教育のことを考えると退職せざるを得ない人が次々に出てくる。
 労働省は、こうした工場閉鎖という事態に対して、労働組合との間に合意がされないものが会社の都合だけでやられていくというようなことになっていくと、これは困ったことになるじゃないか、結果が三十人以上の離職者が生じた場合には、大量雇用変動の届け出をして、それに対する職業紹介をするというような受け身の姿勢ではなくして、労働組合とよく話しなさいということを積極的に指導すべきではないかというふうに私は思うのです。いかがなものでしょうか。
#86
○七瀬政府委員 一般論でございますが、先生おっしゃいましたように、事業所を閉めるというような問題が出てまいりますと、雇用の問題、労働条件にいろいろ影響が出てまいりますので、労使間でよく話し合いをしていただくということ、そして話し合いで解決していただくことが一番いいのだ、そういう考え方で対応しております。
 ただ、具体的には、工場を閉めるという提案をするに至った経緯等いろいろございますし、当事者が一番よく御存じであるわけでございますので、当事者間で解決をしていただく、それがなかなか難しい場合には労働委員会なりなんなりという、そういうために けられた機関を利用していただくということで」ざいまして、あくまで基本的には当事者でよく話し合って解決していただくというスタンスで対応しているところでございます。
#87
○松岡委員長 時間がもう来ておりますから……。
#88
○寺前委員 はい、時間が来ましたので、最後に、今の話の締めをやっておきたいと思うのですが、今の会社に限らず、最近は大企業の海外への生産の移転とか国内の事業の縮小などについて、ずっといろいろ行われています。そういう場合に、事前に国や自治体に計画を提出させて公表するとか、その計画が雇用や地域経済にどのような影響を及ぼすかについてアセスメントを実施し、必要に応じて計画の中止、変更を勧告するとか、さらに都道府県知事に調査勧告権を保障して、企業に労組、地域住民、自治体との協議を義務づけさせるとか、与える影響が労働者に対しても大きいし、その地域産業、地域の経済にも大きいし、いろいろな事態も生まれてくる。
 だから、最近EUでは、そういう問題について各国で対処するところの立法措置をやれという問題まで出てきているわけですね。だから、私はそういう意味で、日本の国だって、何かそういう労働組合との間にいろいろやるというだけではなくして、その地域全体にそういうような立法措置をとって、そう簡単に工場閉鎖をやったり大きく海外へ出ていくことができないような、そういうことを同時に考えるというようなことをやるべきではないだろうかというふうに思うのですが、大臣の見解を聞いて終わりたいと思います。
#89
○浜本国務大臣 自由化の時代に、なかなか議員の御質問に対するお答えをすることは難しいと思うのでありますが、とにかく企業には労働組合もございまして、労使がよく協議をいたしまして物事を決めていただく、こういう原則があるというふうに思いますので、ぜひそういう方向で問題の解決をしていただくようにお願いをしたいというふうに思います。
#90
○寺前委員 終わります。
#91
○松岡委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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