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1994/11/25 第131回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第131回国会 本会議 第13号
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1994/11/25 第131回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第131回国会 本会議 第13号

#1
第131回国会 本会議 第13号
平成六年十一月二十五日(金曜日)
    ―――――――――――――
  平成六年十一月二十五日
    正午 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 検査官任命につき同意を求めるの件
 原子力委員会委員任命につき同意を求めるの件
 公正取引委員会委員任命につき同意を求めるの
  件
 公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同
  意を求めるの件
 公安審査委員会委員任命につき同意を求めるの
  件
 社会保険審査会委員任命につき同意を求めるの
  件
 中央社会保険医療協議会委員任命につき同意を
  求めるの件
 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件
 電波監理審議会委員任命につき同意を求めるの
  件
 地方財政審議会委員任命につき同意を求めるの
  件
 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律案
  (内閣提出)及び原子爆弾被爆者援護法案(
  粟屋敏信君外六名提出)の趣旨説明及び質疑
    午後零時五分開議
#2
○議長(土井たか子君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 検査官任命につき同意を求めるの件
 原子力委員会委員任命につき同意を求めるの
  件
 公正取引委員会委員任命につき同意を求める
  の件
 公害健康被害補償不服審査会委員任命につき
  同意を求めるの件
 公安審査委員会委員任命につき同意を求める
  の件
 社会保険審査会委員任命につき同意を求める
  の件
 中央社会保険医療協議会委員任命につき同意
  を求めるの件
 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件
 電波監理審議会委員任命につき同意を求める
  の件
 地方財政審議会委員任命につき同意を求める
  の件
#3
○議長(土井たか子君) お諮りいたします。
 内閣から、
 検査官に佐伯英明さんを、
 原子力委員会委員に田端米穂さんを、
 公正取引委員会委員に柴田章平さんを、
 公害健康被害補償不服審査会委員に中門弘さん及び野崎貞彦さんを、
 公安審査委員会委員に柳瀬隆次さん及び山崎恵美子さんを、
 社会保険審査会委員に大澤一郎さんを、
 中央社会保険医療協議会委員に森蔦昭夫さんを、
 運輸審議会委員に飯島篤さんを、
 電波監理審議会委員に河野俊二さんを、
 地方財政審議会委員に荒尾正浩さん、佐藤進さん、塩田章さん、竹村晟さん及び宮尾盤さんを任命したいので、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。
 まず、検査官、公正取引委員会委員、社会保険審査会委員及び中央社会保険医療協議会委員の任命について、申し出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(土井たか子君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。
 次に、原子力委員会委員、公害健康被害補償不服審査会委員、公安審査委員会委員、運輸審議会委員、電波監理審議会委員及び地方財政審議会委員の任命について、申し出のとおり同意を与えるに賛成の皆さんの起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#5
○議長(土井たか子君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。
     ――――◇―――――
 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律案
  (内閣提出)及び原子爆弾被爆者援護法案
  (粟屋敏信君外六名提出)の趣旨説明
#6
○議長(土井たか子君) この際、内閣提出、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律案及び粟屋敏信さん外六名提出、原子爆弾被爆者援護法案について、趣旨の説明を順次求めます。厚生大臣井出正一さん。
    〔国務大臣井出正一君登壇〕
#7
○国務大臣(井出正一君) ただいま議題となりました原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 我が国は、世界唯一の原子爆弾の被爆国として、原子爆弾の惨禍が繰り返されることのないよう、核兵器の究極的廃絶と世界恒久平和の確立を全世界に訴え続けてまいりました。また、被爆者の方々に対しましては、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律に基づき、医療の給付、手当等の支給を初めとする各般の施策を講じ、被爆者の健康の保持増進と福祉を図ってきたところでありますが、高齢化の進行など被爆者を取り巻く環境の変化を踏まえ、現行の施策を充実発展させた総合的な対策を講ずることが強く求められてきております。
 こうした状況を踏まえ、被爆後五十年のときを迎えるに当たり、恒久の平和を念願するとともに、国の責任において被爆者に対する保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講じ、あわせて、国として原爆死没者のとうとい犠牲を銘記するため、この法律案を提出することとした次第であります。
 以下、その主な内容について御説明申し上げます。
 第一に、この法律におきましては、特に前文を設け、法制定の趣旨を明らかにするとともに、国の責任において総合的な被爆者対策を実施することを明確にすることとしております。
 第二に、被爆者であって、広島及び長崎で被爆し葬祭料制度の対象となる前に死亡した者の遺族である方に対し、特別葬祭給付金を支給することとしております。
 第三に、国は、原子爆弾の惨禍に関する国民の理解を深め、その体験を次の世代に伝えるとともに、原爆死没者の方々に対する追悼の意をあらわす事業を行うこととしております。
 第四に、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関
する法律に基づく各種の手当等につきましては、これを引き続き支給することとしておりますが、健康管理手当等の手当に現在設けられております所得制限につきましては、これを撤廃することとしております。
 第五に、福祉事業の実施及びこれに対する補助を法定化するとともに、原子爆弾の放射能が身体に及ぼす影響についての調査研究を促進するための規定の整備を図ることとしております。
 以上のほか、各種手当等の支給とともに、被爆者対策の柱となっております医療の給付につきましても、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律に基づく施策を引き続き行うこととしております。
 なお、この法律の施行期日は、平成七年七月一日としております。
 以上が、この法律案の趣旨であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#8
○議長(土井たか子君) 提出者斉藤鉄夫さん。
    〔斉藤鉄夫君登壇〕
#9
○斉藤鉄夫君 私は、ただいま議題となりました原子爆弾被爆者援護法案につきまして、改革を代表して、その提案の趣旨を御説明申し上げます。
 昭和二十年八月、広島市、次いで長崎市に投下された原子爆弾は、一閃両市を焦土と化し、実に三十万人余のとうとい命を奪ったのであります。
 人類史上初の原子爆弾被爆国となった我が国は、このような非人道的な悪魔の兵器ともいうべき原子爆弾の惨禍が、地球上のいかなる地点においても再び繰り返されることのないように、真摯な祈りを込めて、核兵器の究極的廃絶と恒久平和の確立を全世界に訴え続けなければなりません。
 この原爆による被害は、通常の爆弾等地のいかなる兵器による被害とも比べることのできない特異な質的損害及びはかりがたい量的損害をもたらしました。
 すなわち、核爆弾破裂時に放射される強烈な放射線、熱線及び爆風は、その複合的効果によって、大量かつ無差別に市民を殺傷し、あらゆるものを破壊し尽くしました。また、爆発時に空中で生成された強い放射能を持つ核分裂生成物いわゆる死の灰は、地上にちりや黒い雨となって降り注ぎ、奇跡的に一命を取りとめた人たちにさらなる放射線被曝を与えたのみならず、体内に入り込んで深刻な放射線体内被曝をもたらしたのであります。被爆者は、この世の出来事とは思われない焦熱地獄を身をもって体験し、放射線被曝による生涯消えることのない傷跡と原爆後遺症に苦しみ、子孫に対する影響におびえ、一層健康破壊が進む中で老い、貧困や孤独に悩まされつつ、半世紀が過ぎようとしているのであります。また、被爆直後の急性原爆症に加えて、白血病、甲状腺がん等の晩発性障害があり、これらは、被爆後数年ないし十年以上経過してから発生するという恐ろしい特異性を持つものであり、この点が一般の戦災による被害と比べ際立ったものと言うことができるのであります。
 このように、被爆者の健康上の障害がかつて例を見ない特異かつ深刻なものであることを考えれば、国は社会保障の観点から被爆者対策を講じなければならないことは当然でありますが、昭和五十三年の最高裁判決が判示するように、かかる特殊な戦争被害の原因をさかのぼれば、戦争の遂行主・体であった国の行為に起因する被爆によって、健康が損なわれ、生活上の危険ないし損失が生じたものであるという観点に目を閉じることは許されません。つまり、原爆医療法及び原爆特別措置法のいわゆる現行二法も社会保障と国家補償の二つの側面を有する複合的性格を持っているということであります。このことは、前述の最高裁判決では「国家補償的配慮」という言葉で表現されております。また、昭和五十五年の原爆被爆者対策基本問題懇談会の報告書では「広い意味での国家補償」という表現になっております。したがって、原爆被爆者対策が国家補償的配慮に基づいて行われるべきということの国民的合意は形成されていると言わなければなりません。
 改革は、かかる事実を直視して、国家補償的配慮を制度の根底に厳然と据えて、葬祭料制度発足前に亡くなられた原子爆弾死没者の遺族に対する特別給付金の支給を含め万全の援護対策を講じ、あわせて、国として原子爆弾による死没者のとうとい犠牲を銘記するための事業を行うため、この法案を提案することとしたものであります。
 以下、本法律案の概要を御説明申し上げます。
 まず第一は、健康管理及び医療の給付であります。
 被爆者の健康管理のため毎年健康診断を行うものとするとともに、被爆者の負傷または疾病につき医療を受けたときは、当該医療に要した費用を限度として、一般疾病医療費を支給することといたしました。
 第二は、被爆者年金を支給することであります。
 被爆者の健康障害の程度に応じて年額最低二十万四百円から最高六十万円、原子爆弾の放射線の影響による小頭症の患者である者にあっては五十五万九千二百円を加算した額までの範囲内で年金を支給し、年金額は物価スライド方式による改定を行うものとし、その他、医療手当、介護手当を所要の者に支給することとし、これらの給付についてはすべて所得制限を行わないことといたしました。また、被爆者が死亡したときは、葬祭を行う者に対し葬祭料を支給することといたしました。
 第三は、特別給付金を支給することであります。
 葬祭料制度発足前に亡くなられた原子爆弾死没者の遺族に対し、国家的関心の表明として、また核兵器廃絶の祈りを込めて、特別給付金として十万円を二年以内に償還すべき国債をもって交付することとしました。
 第四は、福祉事業として、相談事業のほか、居宅において日常生活を営むに必要な便宜供与事業及び養護事業を行うことといたしました。
 第五は、平和祈念事業を行うことであります。
 国は、原子爆弾によるとうとい犠牲を銘記し、かつ恒久平和を祈念するための事業を行うこととしました。
 第六は、厚生大臣の諮問機関として原子爆弾被
 爆者援護審議会を設けることとしました。
 第七は、国は、この法律の規定により都道府県が行う事業に要する費用の全部または一部を補助することとしました。
 第八は、放射線影響研究所の法的な位置づけを明確にするとともに、必要な助成を行うこととしました。
 なお、この法律は平成七年七月一日から施行することとするとともに、現行の原子爆弾被爆者の医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律を廃止することといたしました。
 以上が、この法律案の提案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律案
  (内閣提出)及び原子爆弾被爆者援護法案
  (粟屋敏信君外六名提出)の趣旨説明に対す
  る質疑
#10
○議長(土井たか子君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。山本孝史さん。
    〔山本孝史君登壇〕
#11
○山本孝史君 私は、ただいま議題となりました原子爆弾被爆者援護法案につきまして、改革を代表して、政府、改革の提案者双方に質問をいたします。
 戦後五十周年を迎えようとしている今日、世界の歴史上、人間の行為の結果としては最も悲惨な被害を受けられた被爆者に対し、その援議を目的とする本法案が提案されたことは、大変意義深いものがあります。
 被爆者の長年の強い要望にこたえるとともに、二度とこのような悲惨な結果を生み出さないためにも、今回ぜひともこの問題の解決を図るべきであるという立場から、以下具体的な内容について伺います。
 第一に、総理のこの法案に対する基本姿勢についてであります。
 政府案は、原爆兵器の残虐性、原爆被害の悲惨さ、特殊性について十分な理解がなく、理論的にも多くの矛盾があります。このような結果に至ったのは、社会党と自民党が政権維持を第一義として妥協案をまとめたからであり、社会党の従来からの主張、公約であった国家補償の精神に基づく援護法からはほど遠い内容になっています。
 社会党は、税制改革でもほんの申しわけ程度の福祉対策の充実と引きかえに消費税率の引き上げに応じており、年金改正においても従来からの強い主張であった国庫負担率の引き上げに関しであいまいな形での決着に応じており、村山政権発足後は、政権維持という名目のために、従来からの公約、主張を次々と脱ぎ捨てていっているのであります。
 「思想は流行の衣服ではない」と言われます。社会党の思想や理念は、次々と脱ぎ捨てることのできるものであったのでありましょうか。そして、今また、政権維持のため被爆者援護法という衣服を脱ごうとしているのであります。
 村山総理、あなたは、社会党のこのような姿勢に全く痛みを感じられないのか、被爆者の願いに背を向けるこのような姿勢に全く痛みを覚えないのか、伺いたいと思います。
 第二に、政府案は、「国の責任において」援護措置を講ずるとしていますが、この言葉こそ妥協の最たるものであり、全く意味不明の言葉であります。現行の原爆二法は国の責任で行ってきたものではないのでありましょうか。すべての法律による措置は、国の責任で行うものではありませんか。
 特に、今回「国の責任」という言葉を加えた意味、並びにこれによって理論的にはいかなる措置がつけ加えられるのか、厚生大臣の明快な答弁を求めます。
 改革案では、「国家補償的配慮に基づき」措置を講ずるものとしていますが、その意味と理論的根拠、またその理念について提案者の所見を伺います。
 第三に、新たに創設する給付金の支給対象の問題についてであります。
 政府案の特別葬祭給付金は、被爆者の間に支給を受ける者と受けない者という新たな不公平を生み出し、被爆によって亡くなった霊の尊厳を傷つけるものと考えます。なぜ支給対象者を手帳所持者に限定したのでありましょうか。学童疎開の間に肉親が被爆し帰郷がおくれて手帳を所持していない原爆孤児や、戦地において終戦を迎え帰国したとき肉親の被爆死を知った者などには、なぜ支給されないのでありましょうか。
 さらに、現在、特別措置法施行後死没した被爆者に対して葬祭料が支給され、これは遺族のうち葬祭を行う者一人に支給されておりますしかるに、今回の政府案は、葬祭を行う者に限らず、手帳を所持する二親等内の遺族全員に対して支給するものとしていますが、これは著しく均衡を欠く措置と言わなければなりません。
 政府は、特別措置法以降の事案についても、今後同様の措置をとるつもりがおありなのか。以上の給付金に関する疑問について、厚生大臣の明快な御見解を伺いたいと思います。
 改革案の特別給付金は現行葬祭料の遡及適用と位置づけられており、政府案のような問題や不公平は生じないものと思われますが、特別給付金の意味、内容について提案者の答弁を求めます。
 最後に、改革の提案者に本法案の提案に至る経緯について伺います。
 改革案と政府案は、現行二法を一本化して援護法とするという考え方、各種手当の所得制限の撤廃など、私が質問してきた重要な論点を除いた具体的な内容の面では多くの点で似通ったものとなっています。
 改革案は、昨年の細川政権時に社会党も含めた旧連立与党でプロジェクトチームをつくり、羽田政権時にも社会党の参加を得て継続し、七カ月、十数回にわたる慎重な議論の末にまとめた被爆者援護法案大綱を法案化して、提出に至ったものであります。改革の提案者は、この問題の解決に向けて中心的な役割を果たしてきたものと考えますが、法案提出に至る経緯及び成立に向けた決意を伺いたいと思います。
 イギリスの哲学者バートランド・ラッセルは「将来の戦争は勝利に終わるのではなく、相互の全滅に終わる」と予言しました。冷戦が終了した今日でも東欧やアフリカでは民族間の悲惨な局地戦争が続いており、核不拡散条約があるにもかかわらず核保有国はふえるおそれさえあります。
 被爆者援護法が、核のない平和な世界の建設に向けての大きな一歩となることを強く期待して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣村山富市君登壇〕
#12
○内閣総理大臣(村山富市君) 山本議員の質問にお答えをいたします。
 質問の要旨は、政府の提案は社会党の従来からの主張である国家補償の精神に基づく援護法からは遠い内容になっているのではないかというお尋ねであります。
 政府・与党は、広島と長崎の被爆者の方々の悲願を踏まえ、同時に、広く国民の皆様が持っておられる核廃絶の願いに思いをいたし、戦後五十年の節目に当たるこの機会にぜひとも立法化を実現したいという共通の認識に立って、法案作成に向。けて真剣な論議を積み重ねてまいりました。その上で、最終的には御提案申し上げております内容で政府・与党の合意形成が図られたものでございます。
 政府案は、核兵器の究極的廃絶の決意を新たにし、原子爆弾の惨禍が繰り返されることのないよう、恒久の平和を念願するとともに、国の責任において被爆者に対する保健、医療及び福祉にわたる総合的な被爆者援護対策を講じ、あわせて、国として原爆死没者のとうとい犠牲を銘記しようとするものでございまして、被爆者対策を大きく前進させるものと考えております。ぜひ皆様の御理解をいただきたいと思います。
 政府側の残余の質問につきましては、厚生大臣から答弁をさせます。(拍手)
    〔国務大臣井出正一君登壇〕
#13
○国務大臣(井出正一君) 山本孝史議員の御質問にお答えをいたします。
 まず、国の責任についてのお尋ねでありますが、今回の新法は、被爆後五十年のときを迎えるに当たり、高齢化の進行など被爆者を取り巻く環境の変化を踏まえて、現行の被爆者対策を充実発展させ、保健、医療及び福祉にわたる総合的な対策を講じるものであります。
 新法において「国の責任において」という表現を特に盛り込むのは、こうした制定の趣旨を踏まえ、一つには、被爆者対策に関する事業の実施主体としての国の役割を明確にし、二つ目には、原爆放射能というほかの戦争被害とは異なる特殊の被害に関し、被爆者の方々の実情に即応した施策を講ずるという国の姿勢を、新法全体を通じる基本原則として明らかにしたものであります。
 このような考え方を踏まえ、新法においては、現行の原爆二法を一本化するとともに、医療、手当等の各施策を援護の施策として総合的に位置づけること、被爆者の高齢化の状況を踏まえ総合的な対策を行う観点から福祉事業の実施を法定化すること、原爆放射能の人体への影響についての調査研究に関し国の推進義務等を法定化することなどの内容を盛り込んでいるところであります。
 次に、特別葬祭給付金の支給対象者についてのお尋ねでありますが、今回の特別葬祭給付金は、被爆後五十年のときを迎えるに当たり、死没者の
方々の苦難をともに経験した遺族であって、自身も被爆者としていわば二重の特別の犠牲を払ってきた方々に対し、生存被爆者対策の一環として、国による特別の関心を表明し、生存被爆者の精神的苦悩を和らげるものであります。したがって、こうした観点から、支給対象者を被爆者健康手帳を所持している生存被爆者としたものであります。
 また、この特別葬祭給付金を支給されない死没者や遺族の方々に対しては、原爆死没者慰霊施設の設置など平和を祈念するための事業を実施することにより、国としてそのとうとい犠牲を銘記し、追悼の意を表してまいりたいと考えております。
 三番目に、特別葬祭給付金と葬祭料との均衡についてのお尋ねでありますが、現行の葬祭料は、被爆者が亡くなった場合に、その葬祭を行う方に対して葬祭料を支給することにより、生存されて、いる被爆者が日ごろ有している死に対する不安感などの特別の精神的な不安を和らげようとするものであります。今回の特別葬祭給付金は、亡くなった被爆者と苦難をともにした遺族であって、自身も被爆者としていわば二重の犠牲を払ってきた方に対して給付を行うことにより、生存被爆者の精神的苦悩を和らげるものであります。
 したがいまして、生存被爆者対策という制度の枠組みで見れば、葬祭料と特別葬祭給付金の対象者の間には公平が確保されているものであり、支給対象となる遺族の数のみに着目して不均衡が生じているとの御指摘は当たらないものであろうと考えます。したがいまして、葬祭料制度適用後の死没者の遺族について今回の給付金を支給することは考えていないところであります。(拍手)
    〔冬柴鐵三君登壇〕
#14
○冬柴鐵三君 改革が提案する原子爆弾被爆者援護法案の基本理念についてお尋ねでありますので、私からお答えを申し上げます。
 改革案については、その前文に明記されておるとおり、基本理念は「国家補償的配慮に基づき」措置を講ずるというものであります。
 原爆被爆者対策の基本理念を考える上で重要な二つめ文献をまず示さなければなりません。
 その第一は、最高裁判所昭和五十三年三月三十日判決であります。この判決は、「被爆者のみを対象として特に原爆二法が立法された所以を理解するについては、原子爆弾の被爆による健康上の障害がかつて例をみない特異かつ深刻なものであることと並んで、かかる障害が逃れば戦争という国の行為によってもたらされたものであり、しかも、被爆者の多くが今なお生活上一般の戦争被害者よりも不安定な状態に置かれているという事実を見逃すことはできない。原爆医療法は、このような特殊な戦争被害について戦争遂行主体であった国が自らの責任によりその救済をはかるという一面をも有するものであり、その点では実質的に国家補償的配慮が制度の根底にあることは、これを否定することができないのである。」と説示いたしております。
 第二は、昭和五十五年の厚生大臣に対するいわゆる基本懇の答申であります。これには、「国は、原爆被爆者に対し、広い意味における国家補償の見地に立って措置を講ずべきものと考える。」と述べ、その「広い意味における国家補償の見地に立って」とは、その意味は、「今次戦争の過程において原爆被爆者が受けた放射線による健康障害すなわち「特別の犠牲」について、その原因行為の違法性、故意、過失の有無等にかかわりなく、結果責任として、戦争被害に相応する「相当の補償」を国が認めるべきだという趣旨である。」と答申しているのであります。
 改革の法案は、基本的にはかかる有権的判断に依拠して立案したものと言えます。
 従来、政府は、現行原爆二法による対策において、他の一般戦災者に対する対策との均衡と調和などをおもんぱかる余り、国家補償法理の側面に目をつぶり、特別の社会保障制度であるという見解をとってきました。しかし、基本懇の答申を受け、昭和五十六年四月七日、この衆議院本会議場において、園田厚生大臣は「基本懇から、単なる社会保障制度ではなく、「広い意味における国家補償の見地に立って講ずべきである」との意見をいただいておりますので、政府は、これを尊重しながら検討してまいりたいと思います。」と、政策を転換したかに見える答弁をされたのでありますしかるに、今国会に政府が提出した原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律案は、再び従来の政府の立場に戻り、これを牢固として貫き、法律案の指導理念を「国の責任において」とのみ示すにとどまっています。
 しかし、被爆者のこうむった特別の損害の発生原因とそれに対する法的評価、並びに国等の公権力主体の活動と被爆者のこうむった損害との関連性の有無などという点をどうとらえるのかが本法の最大の論点とされなければならないのに、政府案ではこの点に言及されていないのであります。政府案が「国の責任において」と示す部分は、被爆者の貧困や疾病等による生活の困窮という現在の事実状態のみをとらえて、いわば憲法二十五条の要請にこたえ社会保障制度として措置することを意味すると解されますが、それでは、前に掲げた最高裁判例や基本懇の答申よりも著しく後退した立法措置になっていると指摘しなければならないのであります。
 我々改革の提案する法案の理念は、原爆被爆者が、この世の出来事とは思われない熱線及び爆風による焦熱地獄を体験し、奇跡的に一命を取りとめたものの、放射線被曝による生涯消えることのない傷跡と原爆後遺症に苦しみ、死の影におびえつつ過ぎた半世紀という悲惨な事実を直視し、これに措置を講じなければならない理由を考究して得た結論が「国家補償的配慮に基づく措置」なのであります。
 一般的に国家補償の概念は、いわゆる講学上の概念で、違法な行為に係る損害賠償、適法な行為に係る損失補償、そして適法違法を問わない国家作用による結果責任の救済の三つの概念を包摂するものとして用いられております。
 冒頭述べたとおり、本法案前文において国家補償という話を「国家補償的配慮に基づき」という形で用いておりますが、これは現在の原爆二法について、単なる社会保障制度と考えるのは適当ではなく、「実質的に国家補償的配慮が制度の根底にある」あるいは「広い意味における国家補償の見地に立っている」と指摘した最高裁判決あるいは基本懇の報告と趣旨を同一に用いているものであります。
 以上、答弁いたします。(拍手)
    〔初村謙一郎君登壇〕
#15
○初村謙一郎君 山本孝史議員の質問にお答えをいたします。
 昭和四十四年改正されました原爆被爆者に対する特別措置法により、被爆者が放射線の影響によりまして日ごろから死に対する特別な不安感を抱いていることにかんがみ、不安な日常生活を余儀なくされている被爆者に対する国家的な関心の表明といたしまして、原子爆弾の傷害作用の影響に関連があると思われる原因により死亡した場合、その葬祭を行う者一名に対し葬祭料が支給されてまいりました。
 被爆者援護法制定に向けて政府案が新聞等の報道により知らされて以来、多くの被爆者の方から、政府案の被爆者援護法にある特別葬祭給付金、遺族一人に対しての十万円の給付はなぜ被爆者手帳所有者のみとするのか納得ができない、被爆者手帳を持たない遺族には支給しないというのは同じ原爆遺族を分断することになり不公平きわまりないという声を多く聞いております。
 また政府案では、一死没者に対し遺族全員が被爆者手帳を有し、おのおのが特別葬祭給付金請求した場合にそれぞれに十万円が支給されるということでありますが、原爆被爆者対策を広い意味における国家補償の見地に立って考えるという、基
本懇の言う「公平の原則」とは著しくかけ離れた、ものであると言わざるを得ません。
 私ども改革の特別給付金は、直爆死された方、また現行の特別措置法が制定された昭和四十四年以前に亡くなられた方で、葬祭を行う遺族の方にも支給しようとするものであります。これは、ともに被爆の経験を持ち、ともに長きにわたり病と闘いながら不安な日常生活を送り、または被爆者のための援護の充実のために行動をし、そして二度とこのようなことが起きないようにと念じ続けてまいりました同胞たちの死亡に対して国家的関心の表明として給付が行われることは、高齢化しつつ今日なお被爆の影響や死に対する不安と闘いながら日常生活を送っておられる被爆者にとりまして、何よりも心安らぐ処置と言えるのであります。
 また、この考え方の根底にありますのは、二度とこのような核兵器の惨禍を繰り返さないという強い祈りでありまして、強い決意であります。さらに、これは、同じ原爆死没者でありながら葬祭料の支給を受けることのできた方とできなかった方との均衡にも配慮して行うものであります。
 被爆五十周年を前に、地球上の唯一の被爆国として、これからも世界平和に貢献する国家として、核兵器の廃絶に祈りを込めて、特別給付金を含む被爆者援護法改革案に対し、議員各位の御賛同を賜りまするようにお願いを申し上げます。(拍手)
    〔高木義明君登壇〕
#16
○高木義明君 山本孝史議員にお答えをいたします。
 改革として法案提出に至る経緯及び成立に向けた決意はどうかとのお尋ねでございました。
 私たちは、議員御指摘のとおり、昨年の十二月以来、旧連立与党のプロジェクトチームで十数回の議論を踏まえたものでございます。この中では、新しい観点に立って、原子爆弾による被害の特殊性にかんがみ、現行二法の執行状況、国や地方の対応がとも十分に精査をいたしました。また、特に被爆者団体の御要望も聴取し、長年にわたる被爆者の悲願をかなえ、今日までの議論の決着を図るものとして、来年の被爆五十周年に向けて援護法の制定を目指してきたのであります。
 もちろん、具体的な法案要綱の検討に当たりましては、日本社会党案なども十分に考慮してきた経緯があり、その意味において、与党の皆さん方にも私たち改革の案に御賛同いただけるものと認識をいたしております。(拍手)
 毎年、炎暑の中、八月六日の広島、九日の長崎の原爆の日に思いを寄せて、私どもは、ぜひとも改革案を今国会中に成立させたい、こういうかたい決意でございます。(拍手)
#17
○議長(土井たか子君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#18
○議長(土井たか子君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四十八分散会

ソース: 国立国会図書館
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