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1994/06/20 第129回国会 参議院 参議院会議録情報 第129回国会 商工委員会 第7号
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1994/06/20 第129回国会 参議院

参議院会議録情報 第129回国会 商工委員会 第7号

#1
第129回国会 商工委員会 第7号
平成六年六月二十日(月曜日)
   午前十時一分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 六月十七日
    辞任         補欠選任
     角田 義一君     北村 哲男君
     風間  昶君     浜四津敏子君
 六月二十日
    辞任         補欠選任
     北村哲男君      角田 義一君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
   委員長          中曽根弘文君
   理 事
                沓掛 哲男君
                真島 一男君
                谷畑  孝君
                井上  計君
   委 員
                倉田 寛之君
                斎藤 文夫君
                野間  赳君
                吉村剛太郎君
                一井 淳治君
                北村 哲男君
                村田 誠醇君
                藁科 滿治君
                小島 慶三君
                古川太三郎君
                山下 栄一君
                橋本  敦君
       発  議  者  橋本  敦君
   国務大臣
       通商産業大臣   畑 英次郎君
       国 務 大 臣
       (経済企画庁長
       官)       寺澤 芳男君
   政府委員
       経済企画庁長官
       官房長      涌井 洋治君
       経済企画庁国民
       生活局長     坂本 導聰君
       経済企画庁国民
       生活局審議官   塩谷 隆英君
       通商産業大臣官
       房長       牧野  力君
       通商産業大臣官
       房総務審議官   江崎  格君
       通商産業大臣官
       房商務流通審議
       官        清川 佑二君
       中小企業庁計画
       部長       村田 成二君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        里田 武臣君
   説明員
       法務省民事局参
       事官       升田  純君
       厚生大臣官房審
       議官       市川 和孝君
       厚生省薬務局企
       画課長      矢野 朝水君
       農林水産大臣官
       房審議官     本田 浩次君
       建設大臣官房審
       議官       梅野捷一郎君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○製造物責任法案(内閣提出、衆議院送付)
○製造物責任法案(橋本敦君発議)
○参考人の出席要求に関する件
    ―――――――――――――
#2
○委員長(中曽根弘文君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十七日、角田義一君及び風間昶君が委員を辞任され、その補欠として北村哲男君及び浜四津敏子君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(中曽根弘文君) 製造物責任法案(閣法第五三号)及び製造物責任法案(参第二号)を一括して議題といたします。
 まず、製造物責任法案(閣法第五三号)について政府から趣旨説明を聴取いたします。寺澤経済企画庁長官。
#4
○国務大臣(寺澤芳男君) 製造物責任法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 製品に起因する事故から消費者を保護するためには、事業者、消費者双方の自己責任をも踏まえつつ、事故の防止及び被害の救済から成る総合的な施策を講じる必要があります。製品の欠陥に起因する事故が発生し北隣の被害救済については、民法第七百九条に基づいて紛争解決が図られることとなっておりますが、同条は過失責任の原則に立っており、被害者は製造業者の過失の存在を立証しなければなりません。
 しかしながら、大量生産、大量消費の現代社会においては、製品の安全性確保は製造業者に依存する度合いが高まってきており、被害者の円滑かつ適切な保護という観点から、製品関連事故の分野において過失責任の原則を修正し、欠陥責任の考え方による製造物責任制度を導入すべきであるとの指摘がなされるようになってまいりました。
 製造物責任制度の導入については、社会経済への影響など幅広い観点からの検討が必要であることから、政府といたしましては、関係審議会等において鋭意検討を重ねてまいりましたが、同制度の法制化を進めるべきであるとの結論が得られましたので、本法案を提出することといたした次第であります。
 次に、この法案の要旨を御説明申し上げます。
 第一は、製造物責任の導入であります。具体的には、製造業者、輸入業者等が、みずから製造、加工、輸入または一定の表示をし引き渡した製造物の欠陥により他人の生命、身体または財産を侵害したときは、過失の有無にかかわらず、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずるものとすることであります。ただし、いわゆる拡大損害が生じていない場合における欠陥のある製造物自体の損害については除外することとしております。
 第二は、免責される場合を定めたことであります。具体的には、研究開発及び技術革新の阻害の可能性に留意し、製造物を引き渡したときにおける科学または技術に関する知見によっては欠陥の存在を認識することができなかった場合に製造業者等を免責する開発危険の抗弁を認めるほか、一定の場合に部品、原材料製造業者の免責を認めることであります。
 第三は、責任期間を定めたことであります。具体的には、製造業者等の責任を早期に安定させることや欧米諸国の動向等を考慮して、製造業者等が製造物を引き渡したときから十年間とし、蓄積損害等については、損害の性質に応じた被害者の救済を図る観点から期間の起算点を損害発生時とすることであります。
 加えて、法の目的、欠陥の定義等を明らかにし、国民にとってよりわかりやすい法律となるよう所要の規定を置いております。
 以上がこの法案の提案理由及びその要旨であります。
 何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
#5
○委員長(中曽根弘文君) 次に、製造物責任法案(参第二号)について、発議者橋本敦君から趣旨説明を聴取いたします。橋本君。
#6
○橋本敦君 ただいま議題となりました製造物責任法案につきまして、その提案理由と趣旨を御説明申し上げます。
 現代社会の大量生産、大量消費のもとで、製品の欠陥による被害から国民の生命、身体、財産を守るとともに、損害の発生に対し迅速かつ適切な賠償が受けられるようにすることは、安全で豊かな国民生活を確保するための今日の緊急課題であります。
 ところが、現在、これらさまざまな製品は高度で複雑な技術と製造方法で生産され、これらの製品の安全性や欠陥に関する情報は事実上製造業者の手に独占されており、そのため、欠陥商品による被害の損害賠償訴訟を起こしても、消費者に欠陥や過失の立証責任がある現行法のもとでは消費者が泣き寝入りしているのが実態であります。
 こうした事態を解決するためには、欧米諸国では既に確立されております無過失賠償責任を柱とする製造物責任法の制定は広範な国民の要求であります。
 日本共産党は、抜本的な被害救済とその予防を図るため本法律案を提出いたしました。
 次に、その趣旨を御説明申し上げます。
 第一に、製品の欠陥が原因で他人の生命、身体、財産に損害を与えた場合は、その製品の製造業者は過失の有無にかかわらず損害賠償の責任があるとするいわゆる無過失賠償責任を明確にしております。さらに、製造業者などがその欠陥製品を流通に置いた当時の科学技術の水準ではその欠陥が認識できなかった場合は免責されるといういわゆる開発危険の抗弁は、政府案とは異なり、被害者救済を実効あらしめるためにこれを認めないこととしております。
 第二に、弱い立場の消費者の利益を公正に守るため、消費者が製品を普通に使っていたのに予期せざる損害を受けたときは、その製品の欠陥であると認めることとし、したがって、製造業者などが具体的反証をしない限りその製品の欠陥と損害に因果関係があるものと推定する規定を設けております。
 なお、政府案では規定されておりませんが、本法律案では、製品に関する指示、警告などの表示がつけられていなかったり、それが不適切である場合も欠陥に含めることとし、また損害発生時の欠陥はその製品を流通に置いたときから存在していたと推定する規定も設けております。
 第三に、製造物責任に関する訴訟では、被害を受けた消費者の過酷な立証責任を軽減する必要があります。そのため、裁判所は製造業者に対しその製品の欠陥の立証に必要な資料の提出を命じることができるとする情報の開示義務の規定を設けました。この点も政府案にはありませんが、被害者救済のためには合理的な措置であると考えます。
 第四に、製造業者などが製品に責任を持つ期間でありますが、政府案の十年に対して、民法の不法行為の原則どおり二十年とし、さらに蓄積性のある被害についてはこの制限を外すこととしております。
 以上のほか、被害の確実な救済とあわせて、経営基盤の弱い中小企業のため政府管掌の中小企業製造物責任保険制度の創設、欠陥情報の公開制度、被害予防対策の充実強化等について政府の努力義務を規定いたしております。
 以上がこの法律案の提案理由とその趣旨でございます。
 何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
 以上であります。
#7
○委員長(中曽根弘文君) これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#8
○吉村剛太郎君 政府提案の製造物責任法案に関連いたしまして質問をさせていただきたいと思います。
 ただいま政府側から、経企庁長官から趣旨の説明がございました。また、先般通産大臣からもそれぞれ提案理由の説明があったわけでございます。まさに私も同感でございまして、世界に冠たる今日の経済大国日本、それはまた大量生産、大量消費でもあるわけでありますが、それだけに消費者に提供されます製品も高度化し、また複雑化しておるところでございまして、提供されます製造物の欠陥から消費者の生命、身体また財産に対する被害も広範多岐にわたっておるところでございます。
 趣旨説明にありましたように、今日では民法七百九条で解決が図られておるということでございまして、私も了承しておるところでございますが、申されましたように、同条はあくまでも過失責任の原則に立っており、被害者は製造業者の過失の存在を立証しなければならないという、被害者、消費者にとりましては大変困難な立場に立つわけでございます。
 まさに、戦後今日までの生産第一主義といいますか、つくって、海外に輸出しよう、それによって国の経済を高めていこうという生産第一主義、これはこれとして戦後の瓦れきの中から今日まで来る一つの方法としてはまあまあ間違っていなかった、このように思うわけでございますが、今いろいろと世の中は変化をしてきておりまして、生産者サイドから消費者サイドヘ視点を転換しなければならない、このような時代にもなってきておるところでございます。
 そういう面からいきますと、政府が提案されました消費者の被害救済のための、俗に言われておりますこのPL法といいますもの、二十年も前からいろいろと検討されておったわけでございますが、今回この導入、提案ということで実現を見たわけでございまして、これはもう大変意義あるものだと私なりに高く評価もさせていただいておるところでございます。
 そこで、長い経緯と論議を重ねてまいりましたこのPL制度でございますが、その論議の経過、背景、理念また哲学、そういうものから入りたいと思います。その点につきましての政府の答弁、通産大臣にお願いしたいと思いますが、お考えをお述べ願いたいと思います。どちらでもいいです。
#9
○国務大臣(寺澤芳男君) 委員御指摘のように、大量生産、大量消費の現代社会においていかに消費者を保護するかということは大変大事なことであります。
 今回、製造物責任制度をどうして導入するようになったかということを簡単にまず御説明したいと思います。
 欠陥製品による被害者の救済というこういう観点から、製品関連事故に係る損害賠償に関する責任要件を過失から欠陥に転換することによって被害者の立証負担を軽くするということが製造物責任制度導入の目的であります。
 次に、製品に起因する事故から消費者を保護するためには、事業者、消費者双方の自己責任原則を踏まえつつ、事故の防止及び被害の救済のための総合的な施策を講じる必要があります。本法案は、この消費者被害防止、救済策の一環として製造物責任制度を導入するものであります。
#10
○吉村剛太郎君 製造物責任制度といいますものは、既に欧米各国で導入されておる、このように承知もしております。これだけ経済が国際化しております今日において、他国のそういう制度との調和といいますものも大変必要であろう、このように思うところでございますが、諸外国のこの制度の現状、並びに、今般提案されましたこの制度と諸外国の制度との調和の問題についてお聞きしたいと思います。
#11
○政府委員(坂本導聰君) まず、国際的な点でございますが、アメリカでは一九六〇年代から判例の展開によりまして欠陥を要件とする製造物責任が一般化してきております。しかし一方で、懲罰的賠償制度あるいは陪審制度、弁護士成功報酬制度などの、特異な民事司法上の制度のもとで、訴訟件数の増加、評決額の高騰、訴訟結果の不確実性が問題となったこともございまして、一九八〇年代以後、懲罰的損害賠償等についての連邦における基準の統一と訴訟コストの抑制を図ることを主眼とした連邦統一法の制定を目指した動きが続けられておりますが、まだ実現されておりません。
 他方、EU諸国では、一九八五年七月に製造物責任に関するEC指令がEC閣僚理事会において採択されましたことを受けまして、EC指令に基づく立法化が進展し、これまでにフランス、スペインを除く十カ国において立法が完了しております。また、EFTA諸国でも、EC指令とほぼ同一内容での立法化が行われております。さらに、フィリピン、オーストラリア、中国、台湾などアジア・太平洋諸国でも、欠陥を要件とする製造物責任立法がなされております。
 また、御指摘の国際的調和について内容という面から申し上げますと、本法案は、開発危険の抗弁を認め、あるいは推定規定を置かず、責任期間について引き渡し時から十年間を原則とするなど、その主要な点においてECとの調和がとれている、国際的にも十分な内容になっているものと考えております。
#12
○吉村剛太郎君 先進国でございますアメリカにおいて、往々にしてこの製造物責任制度の導入によりまして一部製品の生産停止とか企業の新製品開発に対する意欲の減退、またそれがひいては社会の進歩を阻害するというようなことにもなるわけでございますが、そういうものが見られるというようなことも聞いております。それは生産コストの上昇とか生産活動に大きな影響を与えるわけでございます。
 アメリカにおきます。そういうことの現状と、今回この政府提案の製造物責任制度の導入によりまして日本がまた同じような轍を踏むおそれもなきにしもあらずだ、このように考える次第ですが、その辺の当局の見解をお聞きしたいと思います。
#13
○説明員(升田純君) 委員御指摘の点は、アメリカにおいて訴訟が多発した、乱訴社会になるおそれが我が国でもあるんではないかというような点であろうかと思います。
 まず、本法律案は、製造物の欠陥により人の生命、身体または財産に被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償責任の要件を過失から欠陥に転換することによりまして、従前の裁判例における実務上の工夫を取り入れ、法的安定性を高めようとするという点もあるわけでございます。この立法によりまして我が国に訴訟を起こす風潮が強まり、訴訟が多発し、乱訴社会に傾斜する、そういった可能性は低いと思われるわけでございます。
 製造物責任が取り入れられました米国におきましては、一時期訴訟件数が急増いたしまして、製造物責任危機と呼ばれる弊害が生じたと聞いておりますけれども、その原因は、弁護士の数が多いということ、弁護士の成功報酬制度、懲罰的損害賠償制度、陪審制度等、我が国とは異なる米国の固有の司法制度によるものであるということが指摘されておりまして、この観点からも、製造物責任制度の導入によりまして我が国に御指摘のような弊害が生じるという懸念はないものと考えております。
 なお、我が国と司法制度が比較的類似しておりますヨーロッパ諸国におきましては、製造物責任制度の導入の後に委員御指摘のような弊害が生じたというぐあいには聞いておりません。
#14
○吉村剛太郎君 アメリカの社会、特に司法制度、また弁護士の数の違いなどによってアメリカと日本とは一概に比較できないというような答弁だったわけでございますが、逆に例えば弁護士の数が少ないから当然被害請求できる立場の人がそういう訴訟を起こせないというようなおそれはないですか。
#15
○政府委員(坂本導聰君) 御指摘のように、例えば少額の被害の場合に、裁判所に弁護士を通じてお願いするということは金額的にも非常に問題があって恐らく提訴しないんだろうと思われます。そういったような場合に御指摘のような被害者が救済されないということは一方で大きな問題がございますので、そういった裁判外での少額被害等の救済を図る必要がある。したがいまして、そのために各省庁の既存の関係機関を活用してそういった問題に対応できるようこの法案と並んで整備していく必要があろうと考えております。
#16
○吉村剛太郎君 わかりました。
 続いて、現行の国の製品安全規制というものがございますし、行政上の被害救済の諸制度があるわけでございます。このPL制度と消費者を保護するということでは最終的な目的は同じでございますが、この制度の導入と今日ありますこれらの措置との関係、役割、分担をするのかどうか、そういう点について当局のお考えをお聞きしたいと思います。
#17
○政府委員(清川佑二君) 国の安全規制と、そして他方ではこのPL法の関係でございますが、国の安全規制につきましては、全体として最低限の安全のための規制を行っているわけでございます。これに対しまして、この製造物責任法は裁判規範としての法案でございまして、この双方につきましては補完関係というような形で関係をするわけでございます。このような関係でございますので、両者は相まって消費者、被害者の保護に役立つものと考えております。
#18
○吉村剛太郎君 人的な被害の救済方法としては、今日健康保険または労働災害補償保険等の社会保険制度があるわけでございます。今と似たような質問になりますが、このPL制度の導入によりましてこういう保険制度との関連はどうなりましょうか。
#19
○政府委員(清川佑二君) 現在、製品事故に関する損害賠償の確保に関する制度といたしまして、一般的な社会保障制度のほかに、民間の保険会社による生産物賠償責任、いわゆるPL保険と言っておりますが、あるいはまた民間団体が自主的に行う各マーク制度、例えばSGマーク、STマーク、SFマークといった略称がありますが、このような諸制度が整備されているわけでございます。
 生産者あるいは製造業者が損害賠償責任に備えてどう対応するか、基本的には各事業者の経営判断にゆだねられるべきものでございますが、新たに一般的な制度、共済制度のごとき制度を創設することにつきましては、いろいろ弊害も考え得るところでございます。
 このため政府といたしましては、引き続き製品の安全性の確保などを講じた各般の事故防止対策を講じ、また製品事故が発生した際の損害賠償の確保につきましては、先ほど述べましたような既存の諸制度が一層活用されるよう制度の周知徹底、適切な運用、情報の提供に努めてまいりたいと考えております。
#20
○政府委員(坂本導聰君) 御指摘の例えは健康保険制度等との関係でございますが、このPL法案によって救済されない場合もございます。例えば、製造物に当たらない、あるいは欠陥に当たらない、あるいは開発危険の抗弁によって免責される、そういう場合の被害者につきましては、委員御指摘のように、健康上の被害があればそれは健康保険、あるいは先ほど御指摘のような諸制度があってそれによって救済される。しかしまた一方で、仮にこのPL制度の対象になるということになれば、とりあえず健康保険制度で救済を受けておいて、制度間で求償していくという関係になろうかと思います。
#21
○吉村剛太郎君 消費者の方の救済という点では今いろいろお聞きしたわけでございますが、一方生産者側は、特に資力が弱い中小企業に関連してでございますが、当然のことながらこのような欠陥製品を生まないというのがまず何といっても大前提だ、このように思いますが、現実問題としてなかなかそうもいかないというときに、やはりそういう資力が弱い立場の中小企業がもし欠陥を指摘され、賠償責任を負わされた場合十分に対応できないというようなことも考えられるわけでございます。
 先般の新聞報道によりますと、日本商工会議所が中小企業生産者を対象といたしましてPL法導入に対応して共済制度を設立しようというようなことも言われておるわけでございます。
 まず、そういう資力が弱い中小企業がどのような影響を受けていくか、またどう対応していくと思われるか。また、一つの方法としては共済制度といいますものを当局としてどのように指導、育成されるか。その点についてお聞きしたいと思います。
#22
○政府委員(村田成二君) 先生ただいま御指摘のように、中小企業の場合には、大企業に比べまして資金的た意味でも、あるいは技術的な意味でも、人的な意味でもいろいろ指摘されている不利性が残念ながらあるわけでございます。ただ、こういった製造物責任に関します法制の場合、その中小企業の不利性のゆえをもって法案の対象外にするというのもまたこれ論理必然的におかしいわけでございまして、できるだけこういった中小企業に円滑に対応してもらうというのが何よりも一番必要なことだと考えておる次第でございます。
 先生御指摘のように、特に資金的な面、万が一事故が生じましてそれによりまして求償された場合の資金的な面につきましては、先ほど来答弁の中にもございましたように、いろいろな賠償責任保険制度、民間の保険制度がございます。そういった民間の保険制度も含めまして、これから一年間の猶予期間もございますので、中小企業の現場の実態を踏まえながら私どもとしましては最大限最善のシステムをつくってまいりたい、相談してまいりたい、かように存じておる次第でございます。
 一部新聞報道におきまして先生御指摘の商工会議所による共済制度の構想等々が報道されておりますけれども、そういった点を含めまして、団体の自主性あるいは民間のいろんな保険制度、その絡み合いの中で一番最適のシステムをつくってまいりたいと考えておる次第でございます。
#23
○吉村剛太郎君 当然この制度の導入によりましていわゆる生産者サイドの方も敏感に対応していく、このように思います。と同時に、それに対応できる体制を整えていくであろうと思う次第でございます。そういう中で、やはり業界とか、まあどういう形になるのか、地域単位になるのか知らないけれども、共済制度といいますのは当然考えられる一つの方向ではないか、こう思う次第でございます。
 ただ、この共済制度といいますものが余り強固に行き過ぎますと、共済は掛金をするわけですから、それがコストアップにつなかったり、またそれによって安心することによって品質改善とか技術開発とかそういうものに対して非常に怠慢になるというようなおそれもあるんではないか、こう思う次第でございます。
 そういうものを考えますときに、これはある意味では民間サイドのことですから余り行政が介入するということは問題であろうか、このように思います。だから、どうしろこうしろではなくて、そういう場合を想定したときに当局としてはどういうことになるであろうかなと、お考えがあればちょっとお聞かせいただきたいと思います。
#24
○政府委員(村田成二君) 先生ただいまいみじくも御指摘のように、そしてまたよく御案内だと思いますが、共済制度の場合には、コスト的な面、それから先生御指摘のいろいろな問題点があるわけでございます。
 ただ、いずれにいたしましても私どもといたしましては、いろいろな民間におきます既存の保険制度を含めまして、しかも中小企業の実態に即しまして、できるだけ実質的に消費者の方の被害の救済と、それから生産者、供給者としての経営の健全性と両方相まって担保できるようなシステムにつきまして、各企業あるいは中小企業団体を含めまして相互に知恵を出し合いまして、いろいろだ議論を積み重ねた上で最も適切な制度をつくれるように努力してまいりたい、かように考えております。
#25
○吉村剛太郎君 いずれにしましても、本法の趣旨は消費者の被害を救済するというところにありますが、一方では生産者側も健全にそれだけの力がないとこの制度は生きてこないわけですから、その辺を本当に留意してやっていかなければならない、このように思うところでございます。
 もう一つ、それぞれの製品に国の基準がございますね。しかし、その基準に合致しながらも事故が起きた場合、これは業者の責任、過失であったということになるのか。国の基準どおりにやった場合に起きた事故ですけれども、その場合に国の責任になるのかどうか。その辺についてちょっとお聞かせいただきたいと思います。
#26
○政府委員(清川佑二君) 吉村委員御指摘の国の基準でございますが、多く行政上の製品の安全規制、こういった基準がございます。これらは製品事故の防止を目的として、製品の製造販売に際して充足すべき最低基準を定めた取り締まり規定でございます。不適合の場合には事故が発生しなくとも製造販売の禁止あるいは罰則の対象となるようなものもあるわけでございますが、これらは、ある意味では企業の製品安全対策、あるいはまた消費者が製品を購入、使用する際の評価のガイドラインとして大変重要な意味を持っているわけでございます。
 しかしながら、他方この製造物責任法との関係で考えますと、製造物責任の方は民事上の問題でございます。製品事故が発生した場合の救済のためのルールを定めているものでございますから、製品安全の規制と代替関係にあるものではなくて、相互に補完した立場にあるものでございます。
 このように意義、目的を異にいたしておりますので、安全規制に対する適合不適合の問題、これは規制対象製品の事故に係る損害賠償訴訟の際の欠陥判断に際しては重要な考慮事項の一つになると考えますが、しかしながら訴訟の場合には、製品にかかわるあらゆる事情を総合的に考慮して判断される個々の製品の欠陥の有無について問題とされる技術水準とはまた異なるものであると考えます。
 したがいまして、行政上の安全規制の適合不適合と欠陥の存在の問題、この二つは必ずしも一致するわけではございませんので、安全規制に適合していても裁判上損害賠償をすることがあるということは、判例においても同様の考え方にあるかと考えます。
#27
○吉村剛太郎君 そろそろ各論に入りたいと思いますが、衆議院段階でも大変議論の的になりましたいわゆる輸血用血液について少しお聞きしたいと思います。
 つい四月までですか、中央薬事審議会また国民生活審議会の答申にありますように、輸血用血液、特に全血製剤と血液成分製剤については製造物とはみなさないというような形でずっと進んできた、このように了承しております。厚生省もそれまではそういう見解ではなかったかなと推測をするわけでございますが、それが急連製造物であるというような認識に立たれ、こういう形の提案になったわけです。
 血液といいますものは、考えようによれば大変いろいろな意味を含んだものでして、ある方から献血を受ける、そして凝固しないように抗凝固剤を添加して保存して、また輸血をするというようなことで、私の感覚ではちょっと製造物という範疇にはなかなかはまらないんではないかな、こんな感じがするわけです。
 どういう経緯と理由で製造物という範幅に入るようになったのか、お聞かせいただきたいと思います。
#28
○説明員(矢野朝水君) 輸血用血液製剤の取り扱いでございますけれども、今御指摘のございましたように、私どもは中央薬事審議会で審議をお願いしておったわけです。この中央薬事審議会の審議の過程におきましては、血液というものは生体機能の一部を補充するものである、こういうことから製造物にはなじまないんじゃないかというのが中央薬事審議会の多数意見であったわけです。もちろん、製造物に該当する、こういう御意見もございまして、中央薬事審議会では多数意見、少数意見、両方が併記されておるわけでございます。
 私どもはこの多数意見に沿いまして法案の制定作業に入ったわけでございますけれども、政府全体における法律の制定過程におきましては、これは民法の特例でもございますし、法制的観点から検討も必要である、こういうことでございまして、そういう検討を進めた結果、この輸血用血液製剤につきましても、今御指摘のございましたように血液に保存液ですとか抗凝固剤を加えておる、あるいはこれは血液バッグに入って流通に置かれておる、こういうことからこれはやはり加工された動産である、製造物の定義に該当する、こういうことになった次第でございます。
#29
○吉村剛太郎君 抗凝固剤ですか、それが添加されておるということ、また流通に置かれておるということ、そういうことからこれは製造物だという認識を持たれたということでございますが、今議論の的になっております臓器ですね、臓器移植いたしますが、その臓器も、私は専門家じゃありませんが、やはり防腐用の保存液といいますか、そういうものを添加して保存するということでございます。同じ人間の体内からとった臓器と血液ですから、これはやはりどちらも生むのだ、こう感じるんですが、じゃ臓器と血液の境目は何かということをちょっとお聞きしたいと思います。
#30
○説明員(矢野朝水君) この臓器も血液も工場で大量生産するというわけにはまいりませんで、人間の体でしかできない、こういう点では確かに似ておる点はあるわけでございます。
 ただ、臓器の場合は、提供者とそれから患者さん、これはたくさん患者さんが待っているわけですけれども、その一対一の関係をよく調べて、それで提供があった場合に必要な患者に移植される、まさしく医療行為の一環である、こういうことが言えようかと思います。ところが、輸血用の血液製剤の場合につきましては、これは薬事法に定める医薬品でございますし、それからこれは大量にストックをしている、バッグに入れて流通する、こういう点がやはり基本的に違うんじゃないかと。
 したがいまして、臓器につきましてはこの製造物という概念は確かに当てはまらないと思いますけれども、血液製剤につきましては製造物に該当する、こう考えておる次第でございます。
#31
○吉村剛太郎君 血液も、献血者というのははっきりしているわけですね。それから輸血を受ける人、それはもちろんだれからどうしたというのは当人同士は知らないかもわかりませんけれども、しかしちょっと調べればすぐわかるわけです。ナンバーをつけてあるはずですから、だれからの血をだれさんが受けたと。そういうことであれば臓器の場合と一緒じゃないでしょうか。
 それと、先ほど血液が製造物という範疇に入るというもう一つの理由に、流通に置かれておるということをだれかが言われたわけですけれども、この血液といいますものは日赤が一手に扱っておりますし、輸血学会も製造物にはなじまないというようなことを専門的な見地からも言っておられるわけですね。それはまさに学術的な自然科学の分野での見解ではないかと私は思うんです。
 今おっしゃった流通に乗っておるというようなことは、これはある意味では社会科学の見地ですよね。社会科学の見地からいくと、流通に乗っているからこれが製品だという見方、私はそれも一つ大変大切なことだと思いますが、やはり医学という中で、自然科学の中で論じていってどうなんだという煮詰めをしていかなければならぬのじゃないか、こんだ感じもするわけです。
 一方、この血液といいますのはまだ複雑なものを持っているんじゃないかと私は思います。輸血を絶対受け付けないという宗教団体がありますね。この人たちは輸血は受け付けないが薬は飲むんですよ、薬は製造物だから。しかし、血液というものについては別の観念を持っているわけです。ということは観念の世界を持っているわけです。
 今我々がここで論じております、血液はどうかというようなこと、それから法律の問題、これは社会科学の分野の討論をしておるわけです。純然たる医学、自然科学の分野でどこまで煮詰めがされておるのか。またさらに、血液というのはそういう観念的な問題も持っておるわけです。ある方はこれは政策判断だと、このような論も私の耳に入っております。じゃ、その政策判断は、そういう自然科学の分野も観念の分野も抜けてしまって、それで政策判断でいっていいのかどうかというところに私は非常に一つの疑問を持っているわけです。
 私は、今C型肝炎その他で苦しんでおられる患者の方々を本当に一日も早く救済しなければならない、こういうことで、総論的にはこのPL法といいますものについては、消費者の被害を救済するということでは大変評価もしておるところです。
 しかし、それだけに慎重な審議をしなければならないときに、厚生省も四月まで恐らくこれは製造物にはなじまないという見地でこられたと、このように聞いておりますし、純然たる学会がこの問題についてやっぱりなじまないという結論を出しておった。それがここで急遽わずか二カ月ぐらい前に製造物の方の範疇に入ってしまったというところに大変大きな疑問を持つわけでございますが、今申しましたような形の中で、やはり血液は製造物ですか。
#32
○説明員(矢野朝水君) この輸血用の血液問題につきましては、私どもが検討に着手しましたのは昨年の六月でございまして、医療界の方々あるいは消費者代表の方、法曹界の方、産業界の方、非常に幅広い分野の方々にお願いして検討を進めてきたと。そういう中で、先ほど申し上げたような多数意見、少数意見があってこれは一本にまとめることはできなかったわけでございます。さらに、ことしのこの答申を受けた以降、今度は具体的な法律制定作業というのが入りますので、先ほど申し上げたような法制的観点からの検討、これがより重要になったわけでございます。
 そういう中で、いろいろな議論がございましたけれども、法律上の取り扱いとしましては先ほど申し上げたような理由で製造物に該当する、こういう判断に至ったわけでございまして、これが厚生省を含めた政府の統一的な考え方でございます。
#33
○吉村剛太郎君 政府はそういう判断だということでございますが、私も医者の友人が大変多うございまして、この週末に帰りまして数人の医者、それも大学教授クラスを含めまして現場の医者にいろいろこの件について聞いてみました。中には、血漿分画製剤ですか、これも含めてこれは製造物じゃないという専門家もおられます。しかし、ほとんどが全血製剤と成分製剤はこれは生むのだな、製造物というのにはなじまないなという意見でございました。これは私の周囲の数人でございますから、これが全部ではないと思いますが、少なくとも専門家がそういう判断をしている、学術的にもそういう判断をしておる、自然科学の分野でそう判断をしておる。
 しかし、私もよくわかるんですよ。早くこの法律を制定して困っている人を救わなくちゃいけないということはわかる。しかし、これを製造物に入れてしまうのはちょっと荒っぽ過ぎるんじゃないかなという感じが私はしてならない。
 さらに、先ほど申しましたように、この血といいますものはまだ大きな意味を含んでおる。これはちょっと例えば悪いが、兄弟杯なんというのは杯の中に血を垂らしてお互いが飲み合う、それによって精神的なつながりを強めるというような、こういう観念というのもあるんですよね。先ほど言いましたように、ある宗教団体は輸血を受けないんです。薬は飲むけれども輸血を受けない。そういう観念の分野までを考慮に入れてそういう判断をされたのか。
 もしそれを本当にスキップした判断であれば、これはほかに大変大きな問題を私は導くんじゃないかと思います。すべてをそういうことで断じていくということは、ある意味では大変危険な発想ではないかという気も私はするから、今ここでまだまだ論議を煮詰めていただきたい、こう思っておるわけでございます。
 そういう自然科学の分野でどこまで煮詰められたのか、それをどこまで厚生省としては認知されておるのか、了承されておるのか、またそういう観念の分野は果たしてどうなのか、ちょっとお聞かせいただきたい。
#34
○説明員(矢野朝水君) 血液に対する思いというのはいろいろな考え方があるわけでございまして、私どももこの問題につきましてはいろんな面から検討を行ったわけでございます。
 そこで、最終的に一番医療界の方々が心配されていることも、要は輸血用の血液製剤が製造物に該当する、そしてまた先ほどおっしゃったように、ウイルス肝炎もまだかなり発生している中でウイルスの混入がすべて欠陥に該当する、こういうことになりますと血液の安定供給にも支障が生じるんじゃないか、こういう危惧もあったわけでございます。
 したがいまして、こういった輸血用の血液製剤の安定供給に支障が生じることのないよう、そういういろいろな努力も必要でございますし、あるいは法律の中の仕組みといたしましても、欠陥の判断、欠陥の定義規定になるわけでございますけれども、そういった中で今申し上げたような血液製剤の安定供給に支障が生じないような手だてを講ずる、こういうことによりまして、製造物に該当したとしましても問題はないんじゃないか、こういうことにしたわけでございます。
 具体的に申し上げますと、これは欠陥の定義に該当するわけでございますけれども、輸血用血液製剤の欠陥につきましては、次のような製品の特性等の事情を総合的に考慮し判断する必要があるということで、まず第一点としましては、生命の危機に際して使用されるものであり、他に代替する治療法がなく極めて有用性が高い。第二に、輸血によるウイルス等の感染や免疫反応等による副作用が生じるおそれがある旨の警告表示がなされておる。三つ目に、輸血用血液製剤は世界最高水準の安全対策を講じた上で供給されているが、技術的にウイルス感染や免疫反応等による副作用の危険性を完全には排除できない。したがいまして、現在の科学技術水準のもとで技術的に排除できないウイルス等の混入や免疫反応等による副作用は欠陥に該当しないものと考えておる。こういう政府の見解をまとめまして、国会でもそういう答弁をする、あるいはこれからも周知徹底を図っていく。こういうことによりまして、本法の制定に伴って血液の安定供給に支障が生じることがない、こういうふうに努力していきたい。
 それからまた、血液の安全対策とか供給の安定ということで、これは国と日赤、都道府県が一体となってこれまで進めておるわけでございまして、いろんな点でこういった努力をこれからも引き続き講じていきたい、こういうことを考えておるわけでございます。
#35
○吉村剛太郎君 そんな論議にはまだ入っていないんですよ。まだ入り口の問題で、もう入り口を通り抜けてそこまで飛躍してしまいますと私は何も言えないんですが、またちょっと戻りまして、まず、先ほど言いましたように専門的な医学界の見解はどうなんですか。
#36
○説明員(矢野朝水君) この輸血用の血液問題につきましては医学界にもいろいろな御意見がございます。輸血学会の考え方が先般取りまとめられたということはもう先生も御存じのとおりだと思います。いろんな医学界の御意見もあります。それから、日本赤十字社としてもこれはまた末端にいきますといろいろ不安を抱いている、こういう方も少なくないわけでございます。
 したがいまして、私どもとしましては、こういった医療関係者、日赤の関係者にも、この立法の趣旨、内容、先ほど申し上げたような欠陥の概念とか欠陥の解釈とか、こういったものをこれからもよく周知徹底といいますか、よく御相談をして御理解を得るための努力を進めていきたいと思っております。
#37
○吉村剛太郎君 今の答弁ではこれから努力を進めていきたいというふうに聞こえましたが、少なくとも法案を提出するその以前にそういうことは当然済ませておかなければならない作業じゃなかったのかな、こう思うんですね。そういうことから考えますと、今ここでこの血液を製造物に入れてしまうということはちょっと拙速にすぎやしないかな、こんな感じも私はするわけでございます。
 じゃ今度は、当然これから国会で論議されなければならない臓器の問題、これも先ほど申しましたように観念の世界も含めた問題です。私は臓器と血液というのは、これは同じ生体からとってくるものですから、人間の体からとってくるものですから、これは基本的には同じものだ、こう認識しております。これはどなたも私は異論はないと、これはもうそのとおりですからね。異論はないというときに、この臓器とまた血液との区分がはっきりしない。
 また、我々が国会で論議する、法律にする、そういう社会科学の分野というのも、これはあるところでは政治が決断しなければならない問題もあろうかと思いますが、しかしこういう人間の生体にかかわる、体にかかわる問題、それからさらに精神まで、観念まで及ぶような問題について、何かこの法律を出すまでの作業が十分だったのかなという感じがしてならないんですよね。したがって、今御答弁いただいても全然がみ合わないんです。だから私もこれ以上質問のしょうがないんですよ、もう時間もないことだし。
 ということは、厚生省でいろいろと議論があったのかもしれませんけれども、少なくともやっぱり煮詰めが足らないんじゃないかな、こんだ感じが私はして仕方ないんですけれども、何か御意見あれば。
#38
○説明員(矢野朝水君) 私どもは、この中央薬事審議会の答申をいただいた、それから法案の制定作業に入っていったわけでございますけれども、そういう過程で関係者に理解を求める努力は私どもなりにいろいろしたわけでございます。ただ、医療関係者の全体といいますか、完全にその御理解を得るに至っていないということは、これは率直に反省しなきゃいかぬことだと思います。
 したがいまして、先ほど申し上げたようなこの立法の趣旨なり欠陥の判断の考え方なり、あるいは血液の安全対策、安定供給のためにさらに一層努力をする、そういう中で関係者の御理解をさらに深めていただく、こういう努力を進めていきたいと思っております。
#39
○吉村剛太郎君 立法の趣旨、それから立法後のいろいろな効用、これはもうよくわかっておるんですよね。ただ、そっちへ行くまでの入り口の問題を今論じておるわけでして、どうしても入り口を通過しないんです。だから議論が全くかみ合いません。それを通り越して、入り口を通過してまた質問したいことがいっぱいあるんですけれども、ところがそこまで入れないんですね、残念ながら。
 これは解釈のしようによっては、じゃ政治というのが、政策というのが何でもかんでも、自然科学も観念も切り捨てていいのかということにも、大きく言えばそういうことにもつながってくるんです、きょうはこういう問題ですけれどもね。
 だからちょっと委員長、全然がみ合わないので、これ以上私の質問を続けられないんですよ。ちょっと協議してもらいましょうか。かみ合わないんだ。
#40
○委員長(中曽根弘文君) ちょっと速記をとめてください。
   〔速記中止〕
#41
○委員長(中曽根弘文君) 速記を起こしてください。
 それでは、厚生省の方でただいまの吉村委員の質問に対する見解を再度御検討いただいて、まとめていただいて次回の委員会のときにまた御答弁いただければと思います。
 吉村委員の質問は保留ということで、次に進みたいと思います。
#42
○北村哲男君 日本社会党の北村でございます。
 私は、このPL法につきましては特別の感慨がございます。実は、私ごとですけれども、四年前から社会党のPL法、製造物責任法の議員立法に携わって、一年半前にやっと社会党案をつくって国会に上程したんですけれども、解散やら何やらで廃案になりました。そして、昨年細川内閣ができたときに、細川内閣の一つの政策の目玉としてこのPL法をつくるということがありまして非常に喜んだと。そして、連立の皆様方と協議をしながらやっとこの法案をつくり上げてきた、その連立プロジェクトのメンバーの一人でもあります。そういう意味におきまして、とても親しみというか感慨があるんでございます。
 経済企画庁長官、前の久保田長官も非常にこれに熱を入れられまして、ぜひこの国会でつくり上げてほしいという遺言といいますか、あれは遺言と言いませんけれども、そう言われて去られた。そして、新しくなられた寺澤長官も非常に熱心に取り組んでおられるとお聞きしまして、私としてはぜひこの国会において立派なものができるということを確信しております。
 ところで、この製造物責任制度の意義と立法策定に至るまでの経緯、そして法の目的についてまず長官から御意見をいただきたいと思います。
#43
○国務大臣(寺澤芳男君) まず、北村委員の製造物責任制度導入についての今までの大変な御熱意に対して、本当に敬意を表します。
 今の御質問ですが、大量生産、大量消費の現代社会においては、製品の安全性の確保というのは製造業者に依存する度合いが非常に高まってきております。最近、被害者の円滑かつ適切な救済という観点から製造物責任制度を導入すべきであるという意見が方々から高まってまいりました。
 製造物責任制度の導入については、社会経済への影響など幅広い観点からの検討が必要であるということから、政府としては国民生活審議会、そのほかのいろいろな関係審議会等において検討を重ねてまいりました。そして、その法制化を進めるべきであるとの合意が得られました。したがって、この法案を提出しているわけであります。
 この法案が導入されることに伴いまして、被害者の円滑かつ適切な救済が図られるということとともに、事業者においても一層の製品安全性の向上への努力が払われ、それが国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展につながっていくものと期待されております。
#44
○北村哲男君 ありがとうございました。
 この立法の意図、目的ということに関連しまして、この法律案で最も大切な点は製造物とは何かという点だと思います。
 この製造物とは何かという点に入る前に、この製造物という点について、あるいはそれに関連する問題にもなるかと思いますけれども、EC指令あるいは外国と比べてこのPL法案が遜色のない内容であると自信を持って言えるかどうかということについてお伺いしたいんです。
 そのお聞きする意図につきまして、オーストラリアで一昨年、一九九二年七月にPL法の成立を見ております。そこで問題になった点は、立法する際の政府の意図は、被害を受けたオーストラリア人がヨーロッパ人よりも劣った地位に置かれないようにすることにある、あるいはオーストラリアの消費者がEC指令に基づいて権利を行使するヨーロッパの消費者よりも劣った地位に、立場に置かれてはならないとの政策目標があるという大目標を掲げて立法した経緯があります。
 我が国においても、日本の消費者がEC諸国、オーストラリアの人たちよりも劣った地位に置かれるのではないか、そうではないという確信を持った立場、その点についての御説明をお願いしたいと思います。
#45
○政府委員(坂本導聰君) 基本的には、今回御審議いただいております法律案はEC並みの内容となっておりますが、しかし、我が国の社会経済の状況を踏まえまして多少の違いがございます。それを御説明させていただきます。
 一つは、今回お願いしております本法では、長期の期間制限に関しまして蓄積損害等について被害者救済のための特別の規定を置いているということでございまして、これはEC指令にはございません。
 それから二つ目には、本法では免責額あるいは責任限度額は認めておりませんが、EC指令では免責額を設定しておりますし、また責任限度額を置くことを認めております。
 それから三つ目には、本法では拡大損害がある場合には当該欠陥のある製造物も賠償の対象範囲となるのに対し、EC指令では当該欠陥がある製造物自体は対象外でございます。
 それから四つ目には、EC指令では物損につきましては通常個人的な使用または消費に供される性質のもののみ賠償の対象となっておりますのに対し、本法律案ではこのような限定を加えておらず、事業用についても欠陥と相当因果関係のあるものは賠償の対象となっております。
 それから五つ目には、EC指令では製造業者、輸入業者及び表示製造業者を対象としておりますが、本法ではこれらのほか、当該製造物の製造加工等の事情から見て実質的な製造業者と認めることができる表示をした者を責任主体としております。
 しかし六つ目、他方では、EC指令では真の製造業者を特定できない場合に販売業者に補充的責任を課すこととしておりますが、本法ではこのような責任を認めておりません。
 以上のようなものがございますが、基本的には責任期間を十年とする、あるいは開発危険の抗弁を認める、推定規定は置かないという点におきましてECと同一の内容になってございます。
#46
○北村哲男君 今、非常に詳しく説明をされたんですが、総じてオーストラリア政府が言ったようにヨーロッパの人たちと、あるいはオーストラリアの人たちと比べて日本の消費者が劣位に置かれるということはないと伺ってよろしゅうございますか。
#47
○政府委員(坂本導聰君) 基本的には同一内容で、日本の消費者が不利に扱われることはないと考えております。
#48
○北村哲男君 それで一つ安心といいますか、大きな点は通り越したと思います。
 ところで、本案の審議が進行するにつれて、先ほど自民党の吉村委員も指摘されたように、輸血用の血液製剤が製造物の対象とされるかどうかということが議論の焦点になっていると思います。あとの点については、もうほとんど皆さん同意だと思っております。
 六月十一日に発表された日本輸血学会の声明では、輸血用血液製剤の特徴が十分理解された上での議論が尽くされてないんじゃないかというふうな御指摘もなされているようですけれども、私自身は、昨年十一月に発表された中央薬事審議会やあるいは昨年十二月十日の国生審の報告に基づいて十分議論を尽くされてきたつもりと思っておるんです。そこで、まだそういう御指摘があるならば、少しそれについて詳しく入っていきたいと存じます。
 まず、輸血用血液製剤について、PL法を実際制定している世界各国においてこれをどのように扱っているか。よその国でほこれを別扱いにしているのか、あるいはPL法に含めているのかということについての御説明をお願いします。
#49
○説明員(矢野朝水君) このPL法を制定している各国、ヨーロッパ諸国が中心でございますけれども、輸血用の血液製剤も対象から除外されておりません。製造物の範囲に含められております。
#50
○北村哲男君 私の知った範囲でも、この輸血用血液製剤をPL法の対象から外しているという国はいまだないというふうに聞いております。
 これに関連しまして、日本では日本赤十字がほとんど独占的に輸血用血液製剤をつくって頒布しているということがありますので、赤十字社は世界共通の基盤を持っているところでありますので、ひとつ日本赤十字社の原則というものをちょっと言いまして、共通点を見ていきたいと思います。
 すなわち、これは世界共通なんですけれども、赤十字の基本原則によりますと、「赤十字社は、国籍・人種・宗教・社会的地位または政治上の意見によるいかなる差別もしない。」と、その公平性と世界性を高らかにうたっておるわけです。我が国のPL法が外国と比較して差別に当たるような取り扱いにならないように、参考までにこれを申しておきたいと思います。今言われたように、既にPL法を制定した世界の国では輸血用血液製剤をPL法の対象にしておるということですので、この点についても世界の各赤十字社と同レベルに扱っていただきたいというのが私の考えでございます。
 ところで、本法すなわちこの法案で輸血用の血液製剤を当然のこととして製造物として対象にしておられますけれども、そしてその製造者は製品の欠陥についての責任を負うと、この法律案によると結論的にはそうなるんです。あたかも、このPL法をつくることによって今まで責任を負わなかった業者、すなわちこれは赤十字社になると思うんですけれども、その責任のなかった者がこのPL法によって突然責任を負うような誤解を受けているような感じがするんです。
 したがって、お聞きしたいのは、現在の民法上ではこの輸血用血液製剤について責任はどうなるのかということについて、法務省の方から、今の法律すなわち民法でございますが、民法によってはどういう責任を負うのかということについての説明をお願いしたいと思います。
#51
○説明員(升田純君) 現行の民法の不法行為制度は過失責任の原則をとっているわけでございますけれども、ただいま委員御指摘の血液製剤によりまして事故が発生しました場合には、その被害者は製造者であります日本赤十字社に対しまして不法行為に基づき損害賠償を請求することができるわけでございます。
 この場合、損害賠償が認められるかどうかにつきましては、日本赤十字社の過失の有無が重要になってくるわけでございますけれども、従前の裁判例によりますと、医薬品事故におきましては過失の前提であります注意義務の基準を最高の水準にとっておりまして、血液製剤も医薬品でございますので、このような裁判例の流れに従って過失の有無が判断される、こういうことになろうかと思います。
#52
○北村哲男君 そうしますと、現在の過失の理論で到達していることとPL法が考えておる欠陥責任ということとそう変わりはないというふうにお聞きしてよろしいんでしょうか。
#53
○説明員(升田純君) 一般論としてはなかなか申し上げにくいんですが、やはり裁判になりますと個々の具体的なケースによって判断される、こういうことになろうかと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、従前の裁判例を見ますと非常に高度な注意義務の水準というのが設定されておりまして、そういう流れに従って過失の有無というのが判断される、こういうことになろうかと思います。
#54
○北村哲男君 わかりました。
 いずれにしても、現在でも当然にその欠陥があった場合には責任を問われるシステムになっているということだけは確認できると思います。
 次に、この輸血用血液製剤が問題になっておりますけれども、輸血用血液製剤とはどういうものなのか、その概要なんです。すなわち、全血液製剤と血液成分製剤二つがあるように思われますけれども、それはどういうものであって、その二つはまたどういう種類に分かれておるのか。そしてまた、使用量と申しますか、全血液製剤は実際にどのくらい使われておるのか。また、成分製剤がどのくらいの量使われているかということについての概要をお願いしたいと思います。
#55
○説明員(矢野朝水君) 輸血用の血液製剤は二種類ございます。これは血液が血漿と血球から成っておるわけでございますけれども、血液の全成分を含みますのが全血製剤でございます。それから、それ以外に赤血球、血漿、血小板といった成分があるわけでございまして、この成分ごとに分けられた血液成分製剤がもう一つございます。
 それから、使用量でございますけれども、これは単位数ではかっておりまして、二百、ミリリッターの献血の血液から製造された製剤量を一単位、こういうことで計算しております。平成五年の供給量で見ますと、トータルで一千七百三十万単位ということになっておりまして、うち全血製剤が六十四万単位、これは三・七%でございます。それから赤血球製剤が五百十七万単位、二九・九%。血漿製剤が五百十七万単位、二九・九%。血小板製剤が六百三十二万単位、三六・五%ということになっております。
#56
○北村哲男君 正確に聞いていればよくわかるんでしょうけれども、概要として今、大体年間千五百万単位とおっしゃいましたけれども、千五百万単位というと、どのくらいのものが製造されておるのかということについて簡単にお伺いさせていただきます。
#57
○説明員(矢野朝水君) 二百十万リッターでございます。
#58
○北村哲男君 大体想像しますと、私が聞いたところでは牛乳瓶千五百万本分ぐらいということでよろしいんですか。
#59
○説明員(矢野朝水君) さようでございます。
#60
○北村哲男君 それから、今どのくらいの種類があるか。というのは、私があえて聞いてみたいのは、全血製剤あるいは成分製剤は空もので生きたものと同じなんだというふうな言い方をされておるんですが、この日赤から出た「優しい心、献血。」というところから見ますと、全血製剤で三種類、すなわち保存血液CPD「日赤」というのと、C・P・D加新鮮血液、それからヘパリン加新鮮血液、三種類ある。そして、今度は、血液成分製剤となると、赤血球M・A・P「日赤」以下十一種類にわたってそれぞれ分かれておるわけですね。
 これを感覚的に見まして、それぞれプラスチックバックが違って、単なる血だというふうな感覚から見てそれと見れるのか。あるいは、各種にそれぞれ用途を分かれたように人の血を分けてつくったものについてはどうも工業化された一つの精製品、製造品というふうな感覚を受けるんですけれども、その辺についてはいかがというのは質問としてはおかしいかもしれませんけれども、そういう意図で聞いたものです。
 血液成分製剤についは十一種類に現在分かれて精製され、そして販売されている。そして全血製剤については三種類。つまり、全血製剤というのは全く血そのものに近いものというふうに聞いてよろしゅうございますか。
#61
○説明員(矢野朝水君) 輸血用血液製剤といいますものは、今委員の御指摘にもございましたように、全血製剤、成分製剤、いろんな種類がございます。見た目にも色が違うものがございますし、あるいは表示も違います。それで、それぞれの製剤ごとに薬価基準で価格が決められておる、医薬品として流通しておる、こういうことでございます。したがいまして、製造物の定義に該当するということを先ほど来申し上げておるわけでございます。
#62
○北村哲男君 私もこのパンフレットを見まして、新鮮血液というのがここにありますけれども、バックに赤い血が入っておりますが、濃厚血小板あるいは新鮮凍結血漿となりますと、これはもう本当に黄色いジュースのようだ色のものですよね。これを医薬用品として見ることはできるにしても、やはり感覚的に血だというふうな感じを到底受けないような感じがするんですけれども、まあそれは私の意見でございますが、そういう意見を述べまして次の質問に移りたいと思います。
 次に、全血製剤と血液成分製剤はいわゆる製品として製造されておると言われておりますが、日本ではどういうところでつくられているのか。幾つかの会社あるいは団体でつくられておるのか、あるいは一つの団体でつくられておるのかという点についてはいかがなものでしょうか。
#63
○説明員(矢野朝水君) この輸血用の血液製剤、昔は日本でも売血制度がございました。そういう中で民間会社がそれを供給する、そういう実態もあったわけでございますけれども、今日ではすべて献血で賄われております。製造業者としては日赤だけということでございます。
#64
○北村哲男君 そうすると、全国津々浦々の病院あるいは家庭で使っておる輸血用血液製剤はすべて日赤製品というふうに聞いておきたいと思います。
 ところで、本法案によりますと、輸血用血液製剤はいわゆる製造物に当たると再三言っておられますけれども、この輸血に携わったお医者さん、これは製造物責任を問われることがあるんだろうか。あるいは献血する人、ちょっと誤解かもしれませんけれども、製造物というと製造したのは人間ですから、献血者である成人、これは非常に素人の議論で申しわけありませんけれども、献血者に何らかの責任があるのか。すなわち、自分が病気を持っているのに黙って献血してしまった、責任があるんじゃないかという誤解もあるかもしれませんので、お医者さん、献血者あるいは採血に携わる人、それそれにこのPL法による責任があるかどうかについての御説明をお願いしたいと思います。
#65
○説明員(矢野朝水君) 本法による製造業者が責任主体になるわけでございますので、医師とか採血に携わる看護婦さんとか、あるいは献血者、こういった方々は製造とか加工行為は行っておらない、こういうことでございまして、医師とか献血者が製造物責任を問われることはないということでございます。
#66
○北村哲男君 輸血用血液製剤は代替性がないという特性があります。その代替性のないものはほかにも抗がん剤など数多く存在すると思いますけれども、代替性がないことが製造物の対象から除く根拠になるかどうか、これも日本輸血学会の方からの御指摘もあるようなんですけれども、その点についてどうお考えになるか、説明を願いたいと存じます。
#67
○政府委員(坂本導聰君) 一般論でございますから、私から答弁申し上げます。
 一般に、他に代替するものが存在するか否かということは、その欠陥の有無を判断するに当たっての考慮事項、総合的に考慮される一つの事情ではございますが、製造物に該当するか否かということは直接関係ございません。そういうことでございまして、欠陥と製造物、二つの対応が違うということでございます。
#68
○北村哲男君 私は、思いつくものでは抗がん剤なんかは代替性がないんではないかと思うんですけれども、もしそのほかにわかるものがありましたらどういうものがあるか。抗がん剤はいかがなんですか、それに当たると思いますか。
#69
○説明員(矢野朝水君) がんにつきましては特効薬というのはまだまだないわけでございまして、いろんな方法でいろんな薬が使われているわけでございますけれども、この抗がん剤ですとかあるいは免疫抑制剤、こういったものは薬の中でもなかなか代替性がない、こういう部類に属するものじゃないかと思います。
#70
○北村哲男君 どうも余りはっきりしないようですけれども、その点は私も余りほかのことを今思いつきませんので、次の質問に移ります。
 輸血用の血液製剤は異なった献血者から得られた血液であって、これは均一たり得ないという事情がございます。一般にその製品に避けられないばらつきがあるものはほかにも考えられますけれども、その点についてこの法律案ではどのように評価されるのか。そして、こうしたばらつき、均一性がないこと、それぞれの製品に個性があることということは、その製造物の対象からは除く根拠になるかどうか、その点についてはどうお考えになっておられますか。
#71
○政府委員(坂本導聰君) 御質問は一般論でございますから、私からお答え申し上げます。
 ばらつきそのものは製造物の範囲に該当するか否かの判断とは関係ございません。しかし、製品にばらつきが避けられないものかどうか、そういったものは欠陥に該当するかどうかのときには考慮事情として判断されるものと考えます。
#72
○北村哲男君 今の答弁で大体わかるんですけれども、再度、この製造物責任法は現代医学で規定されている以上に画一的なものを要求しているかどうかという点についてはどのようにお考えになるか、さらにお聞きしたいと思います。
 あるいはもう一つ、それが欠陥判断において考慮する事情になるかどうかをもう一度お聞きしたいと思います。
#73
○政府委員(坂本導聰君) この法律案において最終的に責任を問われるかどうかということは、三点あろうかと思います。一つは、まず第一に第二条の製造物と言えるかどうかということでございます。その次に、第二条の二項で欠陥に該当するかどうかということでございます。さらに欠陥に該当したとして、開発危険の抗弁で抗弁できるかどうか、こういう点があろうかと思います。そして、血液の場合について特に申し上げますと、血液はやはり血液またはウイルス等に加工を加えた製品であるということからこの第二条一項の製造物になり、血液製剤は製造物の対象になります。
 しかし、輸血用血液製剤というものの欠陥というものを判断するに当たっては、先ほど来御議論のありましたように、生命の危機に際して使用されるものであり、他に代替する治療法がたく極めて有用性が高い、あるいは輸血によるウイルス等の感染や免疫反応等による副作用が生ずるおそれがある旨の警告表示がなされている、あるいは輸血用血液製剤は世界最高水準の安全対策を講じた上で供給されているが、技術的にウイルス感染や免疫反応等による副作用の危険性を完全には排除できない、したがって、現在の科学技術の水準のもとで技術的に排除できないウイルス等の混入や免疫反応等による副作用は欠陥に該当しないものと考えている、これが今の御質問に対するお答えであろうと思います。
#74
○北村哲男君 先ほど同じようなことを言われたと思いますが、輸血用の血液の供給は献血者の善意に支えられておりまして、国と日本赤十字社が共同で行っている非営利事業である、これはもう明らかなことだと思います。ところで、こういう理屈が果たして血液はPL法製造物の対象外にすることの理由になるかどうかということなんです。血液の供給が善意によって支えられて営利とは無関係のボランティアによる拠出ということが製造物であるかどうかということの判断に関係あるかどうか、これについての御説明をお願いしたいと思います。
#75
○政府委員(坂本導聰君) 当該製造物の原材料が有償であるか無償であるか、あるいはその製造物を製造する業者、事業者が営利事業あるいは非営利事業であるかどうかを問わず、継続し反復して供給されるというものであれば製造物責任法の対象になります。
#76
○北村哲男君 次に、日赤は非営利事業を行っている団体でありますけれども、これが非営利事業であっても製造物であることに変わりがない、私はそう思っておるんです。しかし一般的に言えば、生産品でいわゆる利益を得ている者、その者が危険を負担するんだという考えもあると思うんですけれども、そういう営利、非営利事業であるということがすなわち血液製剤が製造物であることと関係あるかどうか、この点についての御説明をお願いします。
#77
○政府委員(坂本導聰君) 先ほど答弁申し上げましたように、その製造物の製造主体が営利事業であるか非営利事業であるかということは関係ございません。したがいまして、国や地方公共団体が非営利で供給している製造物であっても製造物責任法の対象になります。
#78
○北村哲男君 ところで、日赤で製造された血液製剤は、これは有料なんですかあるいは無料なんでしょうか、あるいはどのくらいするんでしょうか。
#79
○説明員(矢野朝水君) この日赤が製造いたします輸血用の血液製剤につきましても、これは薬価基準で価格が公定されております。有料で取り扱われているということでございます。
#80
○北村哲男君 先ほど何万単位という言い方をされておりましたけれども、一単位が大体二百ccというふうに聞いておりますが、一単位大体どのくらいするんでしょうか。
 そして、通常、輸血治療を行う場合にどのくらいの単位の血液製剤を使うのかについての御説明をお願いします。
#81
○説明員(矢野朝水君) 一人当たりの輸血量につきましては、その疾病の状況によってさまざまでございます。交通事故などで大量に出血した場合には大量に使わざるを得ないということでございまして、一人当たりどのくらい使用しているかということについては特に明確なデータがあるわけではございません。
 それから価格でございますけれども、先ほど申し上げましたように、全血製剤、それから成分製剤もたくさんあるわけでございまして、それぞれ個別に価格が設定されておるわけでございます。例えば全血製剤の場合ですと、全血液CPD「日赤」、これは二百二十八ミリリットルでございますけれども、一袋五千三百四十円。それから、血液成分製剤ということで一つ申し上げますと、新鮮液状血漿「日赤」八十ミリリッター、これは一袋五千百円となっております。
#82
○北村哲男君 何かの統計によりますと、私の記憶なんですけれども、大体普通は一単位から十単位ぐらいの治療がほとんどであるというふうに聞いております。もちろん先ほどの交通事故なんかで大量に使う場合、一概には言えないというお話があったんですけれども、通常の治療で一単位から十単位ぐらいがほとんどを占めるというふうに聞いてよろしゅうございますか。
#83
○説明員(矢野朝水君) 御指摘のとおりでございます。
#84
○北村哲男君 もう一つ。この輸血用血液製剤の事業は非常に公共性が高いというふうに言われておりますが、その公共性が高いということが果たして製造物の対象外にするということの根拠になり得るかどうか、その点についてはどうお考えになるか御説明をお願いします。
#85
○政府委員(坂本導聰君) これも一般論でございますから私からお答え申し上げますが、公共性もやはり製造物か否かの判断には関係ございません。したがって、国や地方公共団体が行う事業、非営利の事業であっても製造物に該当すればこの法律の対象になります。
#86
○北村哲男君 次に、献血はほとんど善意の人たちによって支えられているわけですけれども、輸血の血液製剤をPL法の対象、すなわち製造物とするとより厳格な検査をしなきゃならぬ、欠陥のないようにしたくちゃならないために、現在よりもさらに詳細な問診をしたりして個人のプライバシーにまで介入をしていかなきゃならないというふうな御意見もあるようですけれども、現在どのような形の問診を行っているのか。いわゆるそのチェック状況について、私の調べたところでは今でも多項目、およそ十数項目にわたる問診を行った上で慎重に採血をしているように聞いておりますけれども、それがさらに個人のプライバシーにまで踏み込んでいくような事態にたるおそれがあるかどうかについての御説明をお願いしたいと思います。
#87
○説明員(矢野朝水君) 現在、献血者につきましては、御指摘のように問診を実施しているところでございます。問診項目は細かく申し上げますと二十項目ぐらいになるわけでございまして、過去の輸血歴とか既往歴、こういうものを中心にいたしまして、感染等の危険性のある血液を排除しているわけでございます。特に、最近エイズ感染のおそれがあるということでございまして、こういうエイズ感染のおそれのある方につきましてはより細かな問診を実施しております。
 それから、さらに厳格な検査が必要になってくるのではないか、こういう御指摘が各方面であるわけでございまして、こういった問診のあり方につきましては、今後私ども、このPL立法を踏まえましてこれから検討していかなきゃいけない課題である、そういう認識をしております。
#88
○北村哲男君 このPL法導入によって果たして献血者に影響があるかどうかという点について、厚生省あるいはそちらのお役所の方でも、世界各国でPL法を導入されたところの調査に行かれたと思います。私自身も一昨年ですか、ヨーロッパを調査してまいりまして、経験上、全血液製剤をPL法の対象にしたことによって献血者が減る、具体的に言うと影響があったかどうかという点については何の報告もなかったし、あるいはそのほかの記録を見ましてもそういう報告がないようです。
 お調べにたった限度で結構ですけれども、世界各国でPL法の対象にしたことによって献血事情に影響があったかどうかということについてはどのように認識しておられるわけですか。
#89
○説明員(矢野朝水君) EC諸国につきましては、PL法が導入されているわけでございまして、輸血用血液製剤も製造物の対象になっておるわけですけれども、特にEC諸国におきまして供給不足等の問題が生じだということは伺っておりません。
#90
○政府委員(坂本導聰君) 経済企画庁におきましても、EC諸国につきましてPL法が導入されたことに伴い経済社会的た影響がどう出ているか、平成三年、平成四年に調査を行いましたが、まず全般的に大きな影響は出ていない。それから、ただいま厚生省からお答えがありましたが、血液事業にも影響が出ているという報告は受けておりません。
#91
○北村哲男君 それでは、少し細かい問題になりますけれども、輸血用血液製剤が製造物であるかどうかという論点の一つとして、抗凝固剤が入っているではないか、入っているから製造物だ、いや入っていても非常に少量であるから影響はないんだという双方の言い分もあるかと思います。
 私の調べたところ、現在のCPD液と言われる全血製剤はクエン酸ナトリウム、あるいはクエン酸、ブドウ糖、燐酸二水素ナトリウム水和物等を加えたものだというふうに言われておりまして、しかも、日赤の報告によると、血液百ミリリットルに対して十四ミリリットルないし三十ミリリットルの抗凝固剤を入れる。
 そうすると、大体一五%から三〇%もの抗凝固剤を入れておるわけですけれども、果たしてこういう状態を見て何の添加物もないんだというふうにとても言えないような感じがするんです。これは私の意見ですが、お役所の答えはだから当然製造物だと言われると思いますけれども、お答えはもう結構です。
 ところで、今言ったような抗凝固剤については輸血用血液製剤にはすべて混入するのか、混入しないこともあるのか、この点についてはどうなんでしょうか。
#92
○説明員(矢野朝水君) 輸血用血液製剤につきましては、すべて抗凝固液とか保存液、こういったものを混合しております。
#93
○北村哲男君 そうすると、この抗凝固剤を入れることによって、血液というものは本来体外に出れば凝固する性質のものであると思うんですけれども、これが体外に出ても抗凝固剤とまざり合って凝固しない性質のものになる、すなわち物の性質が違ってくるというふうに思えるんです。あるいは言い方によっては新たな属性を加えたと。同じものであるけれども、本来自然体においては体外に出れば凝固するものがしたいというのは、物の性質が違うという見方もあるし、あるいは新しい属性を加えたものだと思うんですけれども、その点についてはどのようにお考えになっているか、御意見を聞かせていただきたいと思います。
#94
○説明員(矢野朝水君) 輸血用血液製剤といいますものは、これは医薬品として利用しているわけでございます。医薬品として血液本来の性質が果たせるように凝固を防ぐあるいは変性を防ぐ、こういうことのために凝固液あるいは保存液を加えておるわけでございます。したがいまして、こういったものは先ほどから申し上げているように加工された動産ということで製造物の範囲に該当する、こういう認識をしております。
#95
○北村哲男君 この全血液製剤はすべて今はプラスチックバッグ入りというふうに聞いておりますけれども、以前はこれはガラス瓶等にも入れられておったというふうに聞いております。しかも、液状のままで無菌的な容器に入れておくことが全血製剤については必要不可欠なものである、他に方法がないとも言われております。
 ところで、無菌的容器にはかってはガラス瓶があったということで、有名なPL法の判例の中には、これは外国の例ですけれども、ドイツでレモネード瓶事件というのがありました。直接関係はありませんけれども、このレモネード事件というのは、子供が炭酸飲料のレモネードのケースからレモネードをとろうとしたところ突然瓶が破裂して右目を失明したということで、製造物責任を問われた事案であります。
 やはりこれと同じように、血液製剤においても無菌容器がどうしても保存や移動のために必要なものであるならば、これらも当然血液製剤と一体となってPL法の対象にたると思うんですけれども、その容器に例えば有毒物質があったようだ場合、あるいはその保存液に危険なものが入っておったような場合、こういう場合はどのように考えておるわけですか。
#96
○説明員(矢野朝水君) この輸血用血液製剤につきましては、保存液、抗凝固液等を加えてプラスチック製の血液バッグに封入されておるわけでございます。したがいまして、今御指摘のございましたように、容器自体に不良品とか欠陥がある、あるいは保存液とか抗凝固液に不良品があった、こういった場合はその製造物責任の対象にたる、こういう場合も欠陥としてはあり得るということを考えております。
#97
○政府委員(坂本導聰君) 今厚生省から御答弁申し上げましたが、その場合には、最終製品たる血液製剤を供給した日赤とともに、その抗凝固剤等をつくったメーカーも同時に製造物責任法の責任の対象にたるわけでございます。
#98
○北村哲男君 わかりました。
 いわゆる生むの論争というのがございます。先ほども吉村委員の方から血液は空ものではないかというふうに言われて、生むのだから製造物の対象から外すべきであるということを言われました。また、同じようなことを先般宮崎委員が参議院本会議の代表質問でも言われましたけれども、どういう意味で生ものというふうに言っておられるのか、その意味は私自身いまひとつはっきりしないんです。
 というのは、全くの未加工自然生成物であれば、このPL法は加工製造された動産を対象にしているんですから、そもそも問題外なわけですから何も問題にされる必要はたいんです。そういう意味で生むの、自然生成物と言っておられるのか。それではもう議論のらち外、議論をする必要はないというふうに思います。逆に、全血製剤は空ものであるけれども製造物だ、製造物だけれども政策的に特別扱いしてくれというふうな意見、それならばわかります。政策論争として果たしてどうだろうか、私は後者であろうと思うんですけれども、その辺を明確にして議論を進めていった方がいいと思うんです。
 私はその点についてさらに言うたらば、空ものであるから製造物でないのかという論法が成り立つ。生ものであっても加工品というのは幾らでもあると思うんです。ですから、この全血製剤は空ものかどうかが製造物に入るかどうかという議論ではない。おわかりですよね。したがって、生むのであっても加工品かどうかということをまさに言うべきであって、私はずっと言っているように、また委員の言っておるように、生むのであってもこれは加工品なんだ、だから対象なんだというふうに言っている。
 そこで、その辺は私自身は理解しているつもりですけれども、それが代表質問でも言われると、私は思わずそれはおかしいと大声で叫んで、聞いておられた方もおったと思いますけれども、そこはちょっと違うんじゃないかというふうに思わず叫んでしまったんですけれども、まだ誤解があるとするならばその点についてひとつ、加工の概念というものをまず聞いておきたいと思います。その辺はいかがでしょうか。
#99
○政府委員(坂本導聰君) 製造物責任法案におきましては、製造物の対象となる製造物とは製造または加工された動産とされております。一般に、自然生成物は基本的には自然の力を利用して生産されるものであることから未加工であり、本本案の対象から除外されております。加工か未加工かの判断につきましては、法概念上、加工とは一般に動産を材料としてこれに工作を加え、その本質は保持させつつ、新しい属性を付加し価値を加えることを意味すると解されておりますが、具体的には個々の事案に応じて、当該製造物に加えられた行為を社会通念に照らして評価し、判断されることとたるものと思います。
 今御指摘の、生むのの概念は必ずしも明確ではございませんが、一般論で申し上げれば、仮に空ものと呼ばれるものであっても、先ほど申し上げましたような加工が加えられた動産に当たれば本法の対象になるということでございます。
#100
○北村哲男君 定義としては非常によくわかりますが、先ほど私が、血液に一五%ないし三〇%の抗凝固剤を入れて、しかも体外に出ても凝固しないものをつくっているということは属性の変化ではないかというふうに言いましたけれども、今の解釈からいいますと、全血製剤はその加工に当たるというふうに言えますか。
#101
○政府委員(坂本導聰君) 加工に当たると解しております。
#102
○北村哲男君 まだまだ議論が足りないという吉村委員の指摘もありました。私どもの質問する時間も余りありませんが、ここでしつこいようですけれどもさらに私は聞いておきたいという点があります。
 私は、輸血用血液製剤は製造物であるという確信をしておりますが、その理由として次のように考えております。
 一つは、日赤では多量に、つまり千五百万単位もの製剤をされて、みずから血液製剤というふうに称しておられます。製剤でございます。二番目に、全血製剤あるいは成分製剤ともに医薬品としての厚生大臣の製造許可を受けております。三番目に、日赤はこれらの血液製剤の製造業の業としての許可を受けております。四番目には、それぞれの適用や利点が異なっておって多くの種類の血液製剤ができておるという点、そして先ほども言いましたけれども、少量の抗凝固剤ではなくて一四%から三〇%にも及ぶ抗凝固剤を加えているではないか。これらの理由から、私は加工品だということはもう間違いないというふうに思っているんです。
 今の点について少し詳しくお聞きしたいと思いますが、まずこの全血製剤は医薬品としての製造許可を厚生大臣から受けていると言いますが、これは薬事法だと思いますけれども、薬事法の製造許可の目的はどういうものでありますか、その点についての説明をお願いいたします。
#103
○説明員(矢野朝水君) この医薬品の取り扱いにつきまして、薬事法は承認制度それから許可制度、二つとっておるわけでございます。
 承認制度といいますのは、その医薬品自体が有効性、安全性に問題がないかどうかということをチェックいたしまして、問題がたければ承認を与えるというものでございます。
 それから許可といいますのは、そういった承認を受けた医薬品をつくるについて、構造設備ですとか人的な基準とかこういったものを満たしているかどうかということをチェックいたしまして許可を与える。その場合に、まず業態の許可ということで、日赤の場合に当てはめますと日赤自体の製造業の許可というのがございまして、さらに個々の輸血用の血液製剤、個々の品目ごとの許可ということで二重の許可が必要になってくるわけでございます。
 こういった承認、許可といいますものは、日赤の製造します輸血用血液製剤について、いずれも厚生大臣の承認なり許可を受けておるということでございます。
#104
○北村哲男君 そうしますと、厚生省としてはこの輸血用血液製剤は医薬品である、すなわち薬であるというふうなことで許可をしておるということでございましょうか。
#105
○説明員(矢野朝水君) 御指摘のとおりでございます。
#106
○北村哲男君 次に、薬事法による製造業、業としての許可の目的は、多分、生産過程の安全性、あるいは検査体制の確保等々によって大量に生産するものの安全性を図るために業としての許可を与えていると思いますけれども、厚生省の立場として薬事法による業としての許可の目的を本件との関係について御説明をお願いしたいと存じます。
#107
○説明員(矢野朝水君) 薬事法におきましては、医薬品の品質、有効性、安全性の確保の見地から医薬品の製造を行おうとする者は許可を受ける、こういうことになっております。日本赤十字社も、輸血用の血液製剤等の製造を行っておりますので、薬事法上の製造業者となっております。
#108
○北村哲男君 そうすると、やはりこの業としての許可は、日本赤十字社が全血製剤という薬を製造する業者として許可をされているというふうに聞いてよろしゅうございますか。
#109
○説明員(矢野朝水君) おっしゃるとおりでございます。
#110
○北村哲男君 次に、これも一つの論点でございます。
 先ほど、吉村委員から臓器と同じではないか、だから臓器が対象にならない以上血液も対象にすべきではないというふうな御質問をされました。私は、確かに近い点もあるかもしれないけれども、相当違っている部分があるというふうに考えますので、私の意見が果たしてどれだけ正しいかどうかわかりませんが、ひとつ比べてみたいと思います。
 それは、臓器移植と輸血を比べますと、例えば臓器移植はある一人のドナーから一人の患者へという非常に特定性があるということ、それに対して輸血は、一方で日赤で大量生産して大量に供給しているという不特定性それから多量性というものがあります。非常に少数であるのと多量、それから特定性と不特定性。
 二番目に、臓器移植の場合はドナーと患者とのマッチングが重要である、ぴったり合うかどうかということが問題なんですが、それに比べて輸血については、医師は個々の製剤を選択しないで血液型、そういうものとの問題さえ一致すればいいわけで、製品そのものについてはタッチできないという点の違いがあります。
 三番目に、臓器移植では、例えばアイバンクあるいは骨髄バンクなどありますけれども、その必要の都度提供しているところがありますけれども、一方、血液の方は在庫を大量に持っておる、それから例えば一年間も保存できる成分製剤すらあるという点。これは一つのものとそれから製品との違いを明らかにするものであろうと思います。
 さらに、臓器移植の場合は臓器の安全性とか適合性の判断はすべて医者に任されております。しかし、製剤の場合の安全性は日赤が完全管理しておりまして、医師には、その適用について、見てこれはちょっと古いたとかなんとかいう点については別ですが、中身についての責任は全くありません。
 そういうふうな差があるもので、どうもやっぱり血液については医薬品に近いというふうに思うんです。その点について、輸血用血液と臓器移植は同じ次元ではとらえるべきではないんではないか。すなわち、製造業者によって大量に生産され供給され、しかしとてもリスクの大きい製品であるからこそPL法によって守られたきゃならないと思うんですけれども、その点について厚生省あるいはそのほかの御意見はいかがでしょうか。
#111
○説明員(矢野朝水君) 臓器と輸血用の血液というのは、似ているところもございます。いずれも人間が人工的につくれない、工場で大量生産できない、人間の体の中でしかできない、こういう点では共通性があると思います。しかし、輸血用の血液につきましては、これは医薬品でございますし、大量生産されまして大量に流通に置かれておる、こういったところがやはり一番基本的に違うんじゃないかと。
 したがいまして、輸血用血液製剤につきましては先ほど来申し上げておるようなこともございまして製造物に該当する、一万臓器につきましては製造物というのはなじみにくいんじゃないか、このように考えております。
#112
○北村哲男君 これは似ているところも違っているところもありますので、必ずしもこれが絶対的な基準とは私も申すわけではありませんが、随分印象としては違うという感じがしています。問題は私は、臓器移植は医療サービスという点に重点が置かれるということ、それから輸血については業として反復して製造し販売しているという点の違いが大きくあるというふうに考えます。その点は当然のこととして、私の意見として申し上げておきたいと思います。
 次に、先ほどちょっと聞き忘れたんですが、薬事法上の問題は先ほど聞きましたけれども、そのほか、薬事法以外の法律で輸血用血液製剤を医薬品として取り扱っている法律はあるでしょうか。
#113
○説明員(矢野朝水君) 法律は二つございまして、一つは採血及び供血あっせん業取締法というのがございます。これは日赤のような採血業者について必要な規制を行っておるという法律でございます。この中で輸血用の血液製剤は薬事法の医薬品と、こういう定義が行われておるわけでございます。それからもう一つは、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法ということでございまして、この中でも薬事法の医薬品の概念を援用しております。
#114
○北村哲男君 次に、輸血は救命のために行われる重要な補充療法であると、これは当然のことで、そうだと思います。しかし、そうした事情が果たしてこの輸血用血液製剤が製造物であるか否かの判断の資料あるいは対象になるかどうかということについてはどのようにお考えになりますか。
#115
○政府委員(坂本導聰君) これも一般論でございますので、私からお答えいたします。
 ただいま御指摘のありました、ある製品が救命のため緊急避難的に使用されるというその事情、そのことは本法案の製造物に該当するか否かどば関係ございません。しかし、欠陥を判断するという際には総合的に考慮される一つの事情になるものと考えております。
#116
○北村哲男君 ただいま救命のために行われる重要な緊急の補充療法であるということが欠陥の判断の際に影響があるというふうに言われましたが、その点についてもう少し詳しく御説明をお願いします。
#117
○政府委員(坂本導聰君) この法律案の第二条第二項におきまして、「「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮してこ欠陥に該当するか否かを判断する考慮事情になってございますが、この特性の中にはいろんな個々の製品がございまして一律に論じられないということでございます。
 そして、ただいま御指摘のありましたような緊急避難的に使用されるというそういう製品の特性というのは、やはりこの特性の中で考慮され、欠陥に該当するか否かの一つの重要な基準になると考えております。
#118
○北村哲男君 わかりました。
 私もこういう議論がどうしてされるかなという気持ちがあったんですけれども、しかしこの議論、すなわち救命のための重要な緊急の補充療法であるというその理由は、今言われたように、対象物にするかどうかの議論ではなくて、対象物にした上で、しかしこういう大事な仕事であるから緊急的なものは欠陥に当たらないんだということでPL法の対象から外されるということは大いにあり得るんだと、そういうための議論としては重要な議論だというふうにお伺いしてよろしいわけですね。
#119
○政府委員(坂本導聰君) そのとおりでございます。
#120
○北村哲男君 ところで、スクリーニングの話なんですが、ウイルススクリーニングの検査はもう日進月歩というふうにそれはどなたも当然のこととわかっておると思いますけれども、例えば現代医学では感染初期や一部の異変株の検出は不可能とされておると言われております。病原ウイルスの混入している血液を完全排除はできないし、未知のウイルスの混入については排除できないとも言っておられますが、今、既知すなわちわかっているウイルスでも現在の技術では排除できないという事情もあるんでしょうか。
#121
○説明員(矢野朝水君) 肝炎のウイルスの関係でございますけれども、わかっておりましても現在の科学技術の水準では完全にそういったウイルスを排除できない、こういう場合がございます。
#122
○北村哲男君 このPL法におきますと、その場合はどういう形で救われるんでしょうか。救われるというのは、やってもスクーリニングできない、わかっていながらスクーリニングできない、しかしそのために例えばC型肝炎になった、そういう場合に責任は問われるんでしょうか。
#123
○説明員(矢野朝水君) ただいま御指摘の問題といいますのは、欠陥に該当するかどうかということが一つあろうかと思います。これにつきましては、先ほど来申し上げておることですけれども、輸血用の血液製剤につきましては次のような製品の特性等の事情も考慮する必要があると考えております。
 一つは、生命の危機に際して使用されるものであり、他に代替する治療法がなく、極めて有用性が高い。二つ目に、輸血によるウイルス等の感染や免疫反応等による副作用が生ずるおそれがある旨の警告表示がなされている。三つ目に、輸血用血液製剤は世界最高水準の安全対策を講じた上で供給されているが、技術的にウイルス感染や免疫反応等による副作用の危険性を完全には排除できない。したがいまして、現在の科学技術の水準のもとで技術的に排除できないウイルス等の混入や免疫反応等による副作用は欠陥に該当しないものと考えているということでございます。
 したがいまして、現在の科学技術の水準のもとで技術的に排除できない、そういったウイルスが混入しておった、そのために肝炎にかかった、こういった方についてはPL法の導入によりましても製造業者が製造物責任を問われることはないと考えております。
 そういった場合の被害者の救済ということが先生の御指摘の趣旨だと思いますけれども、この問題につきましては、こういった輸血用の血液製剤というのは命を救うためには使わざるを得ない、ほかに代替的な治療法がない、こういう点が一方でございます。他方では、技術的に完全に危険性を排除できない、したがいましてその危険性を承知でも使わざるを得ない、こういう事情があるわけでございます。
 したがいまして、この問題につきましてはそういった危険性を患者さんにも負担していただく、こういうことが現時点ではやむを得ないことではなかろうか、こう考えております。
#124
○北村哲男君 今、C型肝炎の話がありましたが、私どもも輸血に際して一番の心配事はB型肝炎あるいはC型肝炎であって、これは防ぎ切れないものもあるというふうに言われておるんですけれども、このB型肝炎あるいはC型肝炎の対策としてどのような検査をやっておるのか、そして現実にどのくらいの症例があるのかについて御説明をいただければと思います。
#125
○説明員(矢野朝水君) 肝炎対策といたしましてはいろいろな方法をとっているわけでございます。
 一つは問診でございまして、これは肝炎にかかったことがあるかどうか、あるいは六カ月以内に急性肝炎の患者と接触したことがあるかどうか、こういったことでいろんな問診をやっております。そういう中で危険性がある方の血液については排除をしておるということでございます。
 それからまた、B型肝炎対策といたしましては、HBs抗原ウイルスの検査、それからHBc抗体の検査をやっております。あわせまして、肝機能検査、いわゆるGPTの測定でございますけれども、この検査をやりまして三十六単位以上の血液は輸血用から排除する、こういうことをやっております。それから、C型肝炎対策といたしましては、平成元年の十二月からでございますけれども、HCVの抗体の検査をやっております。
 こういう問診なり検査なりを通じまして肝炎の発生をできるだけ防ぐ努力を重ねてきておるわけでございますけれども、そういう中でB型肝炎につきましてはほぼ完全に危険性は排除されております。しかし、C型肝炎を中心とする非A非B型の肝炎につきましては、残念ながら現在でもまだ発生が見られます。ただ、これは先ほど申し上げました平成元年のHCV抗体検査以降随分減ってまいりまして、従来七%程度だったわけですけれども、現在は一%程度に減少しております。
#126
○北村哲男君 確かに、現時点においては排除できないウイルス等についても、今の御説明にもあるように過去にできなかったものが現在ではかなり少なくなっておる、そうすると近い将来にはそれについての完全対策ができるというふうに考えるんです。
 ところで、その場合に、現在そういうものもPL法の対象にしておけば技術が進めば解決できるということで、もしこの対象にしていないとするとどうなるか、その点についてはどのようにお考えですか。
#127
○政府委員(坂本導聰君) これも一般論になりますので私からお答えいたします。
 この法律の第二条の定義の第二項において、欠陥を判断する際の考慮事情として「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、」、それからもう一つ「その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の」とございまして、この時期が一つ重要になります。
 したがいまして、先ほど来厚生省が答弁申し上げておりますように、血液製剤については、現在の科学技術の水準のもとで技術的に排除できないウイルス等の混入や免疫反応等による副作用は欠陥に該当しないものと考えているということでございまして、仮に将来排除できるという科学技術の水準になればその時点では欠陥に該当する、しかし、今の時点でこれを製造物の対象から外しますと将来とも製造物責任法の対象にはならないという意味でございます。
#128
○北村哲男君 ということは、現在しておいた方がむしろ科学技術の水準に合うというふうに聞いてよろしゅうございますか。
#129
○政府委員(坂本導聰君) これは非常に難しい御質問でございますが、こういう法律ができることによって、あるいはこの定義の当該製造物を引き渡した時期が考慮事情になることによって、科学技術の水準の向上に努力が重ねられるであろうということは期待し得るものと思います。
#130
○北村哲男君 まずい質問に対しては立派な御回答をいただきまして、どうもありがとうございました。
 ところで、輸血用血液製剤は医薬品副作用被害救済制度の対象にはなっていないわけですよね。これは谷畑委員も大分質問されました。そうなると、なぜ対象になっていないかということの簡単な御説明と、私の考えでは、なっていないならなおさら被害者救済のためにはPL法の対象にすべきであると思うんですけれども、その点についてどのようにお考えになりますか。
#131
○説明員(矢野朝水君) 医薬品副作用被害救済制度は、医薬品の副作用被害者に対してメーカーの社会的責任で救済をしているという制度でございます。
 その場合に幾つかの医薬品が実は対象になっておらないわけでございまして、代表的なものは抗がん剤、それから免疫抑制剤、それから輸血用の血液製剤でございます。これは非常に重篤な副作用が発生する危険性が非常に高い、しかしほかに代替的な治療法がないということでございまして、危険性を承知で使わざるを得ない。したがって、こういった場合の被害につきましては、そういった危険性は患者さんにある程度負ってもらうというのもやむを得ないんじゃないか、こういう趣旨で対象から除外されておるわけでございます。
 それから、副作用被害救済制度の対象となっていないんだからPL法の対象とすべきじゃないか、こういう御意見につきましては、これは製造物に該当するか否かという製造物の定義があるわけでございますので、それによって判断すべき問題であるというふうに私どもは考えております。先ほどから申し上げているように、いろんな薬液を混入する、バッグに入れて流通に置かれておる、こういったことから製造物の範囲に該当して製造責任の対象になる、こういうふうに考えております。
#132
○北村哲男君 血液製剤による被害についてはもちろん民法による救済はあり得るんですが、そのほか特別の救済制度は存在するんでしょうか。
#133
○政府委員(坂本導聰君) 血液製剤にかかわらず、この製造物責任法によって責任を負わないということになりますと、被害者はどうそれに対応するのか、こういう御質問だろうと思いますが、これは一般的にもとへ戻って医療保険制度、あるいは年金制度というもので解決していかざるを得ないものと考えております。
#134
○北村哲男君 私の血液製剤についての質問もほぼ終わりに近づきましたけれども、私は結論的に、PL法は、人の手が加わった大量生産の上供給される製品を広くカバーできる法律であるということが本来の意義であるというふうに思っておるわけです。製造、加工の概念も、これは社会的なものあるいは一つの法律概念であると思っております。そして、法律の趣旨は、製品供給の安全性確保と公平、効率的な被害の賠償にあるというふうに考えます。したがって、そういう立場から供給者に責任を課す制度であると思うんです。
 そこで、輸血用血液製剤だけを取り出してこれを政策的に除外することは、このすべての商品を広くカバーできるという製造物責任法の趣旨、目的を覆すものになって、これだけ例外を認めることによってこの法律の根幹を害するようになる。単に政策的にこれだけ取り出せば、ちょっと例外を設けておけばいいという問題ではなくて、このPL法自体の存立にかかわる問題になる。例えば自動車貿易が今なくなったら日本は大変なことになる、これは国益に反する、米はどうなるということでそれぞれ外していくということになって、この一点が大変重要な問題であるというふうに考えるわけです。その点についての御見解をお伺いしたいと思います。
#135
○政府委員(坂本導聰君) この法律の第二条第一項におきまして、「「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう。」ものとする、ここには政策的配慮を入れるべきではない。つまり、客観的に法解釈で対応すべきものと考えております。その次に第二項で、欠陥に該当するかどうか、これも政策的配慮というよりも一つ一つの製品を判断して欠陥に該当するかどうかという、やっぱり法律的に解釈すべきものと考えております。強いて政策的にという御指摘であるならば、それは第四条の第一号あるいは二号で開発危険の抗弁あるいは部品提供の中小企業者等の立場を免責事由として規定している、これは政策的配慮だろうと考えております。
#136
○北村哲男君 私の質問もほぼ血液製剤のことだけにたってしまいましたが、最初に申しましたように、血液製剤が最近になって問題になりましたが、今までの経過の中ではそれ以外の点については与野党ほとんど問題なく進んで、早くこの法律をつくろうということが、大きく言うならば国民全体の悲願であるというふうに考えてきました。したがいまして、本日はこの血液製剤だけに限らず種々の質問を本当はもうちょっと広い意味でしたかったんですけれども、できなかったことについておわびを申し上げます。
 最後に、お待たせしましたが、畑大臣にお伺いしたいんですが、畑通産大臣はかつては農水大臣をしておられて、ウルグアイ・ラウンドの米交渉たんかで大変御苦労された。このPL法においても、農産物はヨーロッパの諸国ではオプション規定になっておりまして、多くの国、約半分の国が農産物は外せというふうなことで、これは趣旨が違う、別の意味もあるんですけれども、外しておるということもあります。そういう意味で、大変前々からも御関係のある大臣であられました。
 通産大臣としてPL法導入にかかわったことについて特別の感慨もおありと思いますけれども、一つお伺いしたいのは、この製造物責任制度の導入に当たってその周知徹底、関係諸措置をどのように講じていかれるのかという点についての通産大臣の御決意を伺いたいと存じます。それによって私の質問を終わりたいと思います。
#137
○国務大臣(畑英次郎君) 私は、このPL法案の展開に当たりましては、まずいささか失礼な言い分になるかもしれませんけれども、国民各界各層の方々に意識改革をお願いする。そういうことをベースにする中にございましてのいわゆる産業界、あるいはまた消費者サイド、そしてまた行政サイド、それそれがこの意識改革の中からの与えられた責任といいますものを果たしていくことによって初めてこのPL法案の本来意図した趣旨といいますものが生かされてくる、こういうように受けとめさせていただいておるわけでございます。
 具体的に申し上げれば、産業界は、当然のことでございますがより安全な製品の供給、消費者側におきましては製品の正しい選択と使用、そしてまた行政はそれに対応する的確な役割を果たしていく。御指摘がございましたとおり制度内容の周知徹底、あるいは下請対策を含む中小企業対策、消費者教育、啓発、めり張りのきいた安全規制、表示取扱説明書の適正化、裁判外紛争処理、事故原因究明体制などの整備、情報の提供等々が行政サイドの責任である。こういう認識に立って、いわゆる生産者、消費者と相まって本法の成立の趣旨を生かせるような取り組みがこれからの我々の責任である、かように受けとめさせていただいております。
#138
○北村哲男君 どうもありがとうございました。
#139
○委員長(中曽根弘文君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時二十七分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三十一分開会
#140
○委員長(中曽根弘文君) ただいまから商工委員会を再開いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、北村哲男君が委員を辞任され、その補欠として角田義一君が選任されました。
#141
○委員長(中曽根弘文君) 休憩前に引き続き、製造物責任法案(閣法第五三号)及び製造物責任法案(参第二号)を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#142
○沓掛哲男君 製造物責任法案について質問いたします。
 私は今までたくさんの法案についてこういうところで質問をいたしましたが、今回の法案ほど問題のある、そして重要な課題のある法案はないと思います。私なりに相当の勉強もしてまいりました。したがって、両大臣には、大臣として国会議員としてまた国民の一人として、そういう立場でぜひ聞いていただきたいというふうに思います。
 それから、特に厚生省関係の質問が中に入ってきますが、この問題は非常に重要な課題ですから、本当は厚生大臣にも来てもらって、厚生大臣の判断もぜひひとつお聞きしたいと思うんです緊急的なものは欠陥に当たらないんだということでPL法の対象から外されるということは大いにあり得るんだと、そういうための議論としては重要な議論だというふうにお伺いしてよろしいわけですね。
#143
○政府委員(坂本導聰君) そのとおりでございます。
#144
○北村哲男君 ところで、スクリーニングの話なんですが、ウイルススクリーニングの検査はもう日進月歩というふうにそれはどなたも当然のこととわかっておると思いますけれども、例えば現代医学では感染初期や一部の異変株の検出は不可能とされておると言われております。病原ウイルスの混入している血液を完全排除はできないし、未知のウイルスの混入については排除できないとも言っておられますが、今、既知すなわちわかっているウイルスでも現在の技術では排除できないという事情もあるんでしょうか。
#145
○説明員(矢野朝水君) 肝炎のウイルスの関係でございますけれども、わかっておりましても現在の科学技術の水準では完全にそういったウイルスを排除できない、こういう場合がございます。
#146
○北村哲男君 このPL法におきますと、その場合はどういう形で救われるんでしょうか。救われるというのは、やってもスターリニングてきたい、わかっていながらスターリニングできない、しかしそのために例えばC型肝炎になった、そういう場合に責任は問われるんでしょうか。
#147
○説明員(矢野朝水君) ただいま御指摘の問題といいますのは、欠陥に該当するかどうかということが一つあろうかと思います。これにつきましては、先ほど来申し上げておることですけれども、輸血用の血液製剤につきましては次のような製品の特性等の事情も考慮する必要があると考えております。
 一つは、生命の危機に際して使用されるものであり、他に代替する治療法がなく、極めて有用性が高い。二つ目に、輸血によるウイルス等の感染や免疫反応等による副作用が生ずるおそれがある旨の警告表示がなされている。三つ目に、輸血用血液製剤は世界最高水準の安全対策を講じた上で供給されているが、技術的にウイルス感染や免疫反応等による副作用の危険性を完全には排除できない。したがいまして、現在の科学技術の水準のもとで技術的に排除できないウイルス等の混入や免疫反応等による副作用は欠陥に該当しないものと考えているということでございます。
 したがいまして、現在の科学技術の水準のもとで技術的に排除できない、そういったウイルスが混入しておった、そのために肝炎にかかった、こういった方についてはPL法の導入によりましても製造業者が製造物責任を問われることはないと考えております。
 そういった場合の被害者の救済ということが先生の御指摘の趣旨だと思いますけれども、この問題につきましては、こういった輸血用の血液製剤というのは命を救うためには使わざるを得ない、ほかに代替的な治療法がない、こういう点が一方でございます。他方では、技術的に完全に危険性を排除できない、したがいましてその危険性を承知でも使わざるを得ない、こういう事情があるわけでございます。
 したがいまして、この問題につきましてはそういった危険性を患者さんにも負担していただく、こういうことが現時点ではやむを得ないことではなかろうか、こう考えております。
#148
○北村哲男君 今、C型肝炎の話がありましたが、私どもも輸血に際して一番の心配事はB型肝炎あるいはC型肝炎であって、これは防ぎ切れないものもあるというふうに言われておるんですけれども、このB型肝炎あるいはC型肝炎の対策としてどのような検査をやっておるのか、そして現実にどのくらいの症例があるのかについて御説明をいただければと思います。
#149
○説明員(矢野朝水君) 肝炎対策といたしましてはいろいろな方法をとっているわけでございます。
 一つは問診でございまして、これは肝炎にかかったことがあるかどうか、あるいは六カ月以内に急性肝炎の患者と接触したことがあるかどうか、こういったことでいろんな問診をやっております。そういう中で危険性がある方の血液については排除をしておるということでございます。
 それからまた、B型肝炎対策といたしましては、HBs抗原ウイルスの検査、それからHBc抗体の検査をやっております。あわせまして、肝機能検査、いわゆるGPTの測定でございますけれども、この検査をやりまして三十六単位以上の血液は輸血用から排除する、こういうことをやっております。それから、C型肝炎対策といたしましては、平成元年の十二月からでございますけれども、HCVの抗体の検査をやっております。
 こういう問診なり検査なりを通じまして肝炎の発生をできるだけ防ぐ努力を重ねてきておるわけでございますけれども、そういう中でB型肝炎につきましてはほぼ完全に危険性は排除されております。しかし、C型肝炎を中心とする非A非B型の肝炎につきましては、残念ながら現在でもまだ発生が見られます。ただ、これは先ほど申し上げました平成元年のHCV抗体検査以降随分減ってまいりまして、従来七%程度だったわけですけれども、現在は一%程度に減少しております。
#150
○北村哲男君 確かに、現時点においては排除できないウイルス等についても、今の御説明にもあるように過去にできなかったものが現在ではかなり少なくなっておる、そうすると近い将来にはそれについての完全対策ができるというふうに考えるんです。
 ところで、その場合に、現在そういうものもPL法の対象にしておけば技術が進めば解決できるということで、もしこの対象にしていないとするとどうなるか、その点についてはどのようにお考えですか。
#151
○政府委員(坂本導聰君) これも一般論になりますので私からお答えいたします。
 この法律の第二条の定義の第二項において、欠陥を判断する際の考慮事情として「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態こ、それからもう一つ「その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の」とございまして、この時期が一つ重要になります。
 したがいまして、先ほど来厚生省が答弁申し上げておりますように、血液製剤については、現在の科学技術の水準のもとで技術的に排除できないウイルス等の混入や免疫反応等による副作用は欠陥に該当しないものと考えているということでございまして、仮に将来排除できるという科学技術の水準になればその時点では欠陥に該当する、しかし、今の時点でこれを製造物の対象から外しますと将来とも製造物責任法の対象にはならないという意味でございます。
#152
○北村哲男君 ということは、現在しておいた方がむしろ科学技術の水準に合うというふうに聞いてよろしゅうございますか。
#153
○政府委員(坂本導聰君) これは非常に難しい御質問でございますが、こういう法律ができることによって、あるいはこの定義の当該製造物を引き渡した時期が考慮事情になることによって、科学技術の水準の向上に努力が重ねられるであろうということは期待し得るものと思います。
#154
○北村哲男君 まずい質問に対しては立派な御回答をいただきまして、どうもありがとうございました。
 ところで、輸血用血液製剤は医薬品副作用被害救済制度の対象にはなっていないわけですよね。これは谷畑委員も大分質問されました。そうなると、なぜ対象になっていないかということの簡単な御説明と、私の考えでは、なっていないならたおさら被害者救済のためにはPL法の対象にすべきであると思うんですけれども、その点についてどのようにお考えになりますか。
#155
○説明員(矢野朝水君) 医薬品副作用被害救済制度は、医薬品の副作用被害者に対してメーカーの社会的責任で救済をしているという制度でございます。
 その場合に幾つかの医薬品が実は対象になって動はこの法案の導入によってどういうふうに変わると予測されておられますか。
#156
○政府委員(清川佑二君) この法案を成立させていただいた場合に、認識の高まりあるいは企業の対応、消費者教育の充実などが期待されるわけでございますが、これによりまして、まず消費者につきましては、安全性に配慮した商品選択やあるいは表示取扱説明書に沿った適正た商品使用などが一層進むものと考えられるわけでございます。
 また、最近の消費者の皆様方の意識の変化を踏まえますと、制度導入によるアナウンスメント効果もございまして消費者が申し出るクレームが増加することは考えられますが、このようなクレームの中には本来取り上げられて救済されるべき潜在的なものであったクレームが含まれてくるものと考えられるわけでございます。
 また、企業につきましては、これまでも安全な製品の供給を目指して努力を行ってきた企業が多いと考えておりますが、今後より安全な製品のチェックを行うために、一つには設計から製造、出荷に至る各段階において安全性のチェックをさらに強化する、あるいはまたアフターケアの強化、さらには表示取扱説明書の充実などの安全性向上対策を一層充実されるということが期待されるわけでございます。
 このようなことから、企業、消費者、それぞれ期待される自己責任のもと、安全で住みよい社会の実現につながっていくものと考えております。
#157
○説明員(市川和孝君) 製造物責任制度が導入されることによりまして、消費者被害の救済の道が拡充されるわけでございますが、これによりまして、医薬品の製造業者の場合におきましては、医薬品等に関します情報の収集提供あるいは警告表示の充実あるいは安全性や品質確保対策の強化など一層の被害防止措置がとられることが期待されると思います。
 また、製造者の責任を法律上明確にすることに伴いまして、製造者による被害防止対策の充実と相まちまして、医師、歯科医師あるいは薬剤師等の自覚を促し、医薬品等のより一層の適正な使用が推進されることが期待されるところでございます。また消費者におきましても、医薬品の副作用等に関する関心が高まって、より適正な使用が消費者サイドにおいても推進されるということが期待されるものと考えております。
#158
○沓掛哲男君 消費者政策のあり方を中心にお尋ねしたいと思います。
 第一問ですが、PL法で規定している製品の欠陥に起因する消費者被害がどんなふうに起こっているのか、その被害の現状について通産、厚生、農水省から簡単にお願いします。
#159
○政府委員(清川佑二君) 通産省では昭和四十九年から事故情報収集制度を実施しているところでございます。
 これは家庭用電気製品ですとか燃焼器具あるいは身の回り品、レジャー用品等々、通産省の関係する消費生活用製品についての情報収集制度でございますが、これによりまして人的被害が生じた事故あるいは人的被害が生じる可能性が高い物的事故、あるいはこれらの事故の生ずる可能性のある重大な欠陥が発見された場合などを対象として情報を収集いたしております。最近の製品事故の実態をこの事故情報収集制度で見ますと、総件数は年間約四百十件程度となっており、ここ数年事故の件数はほぼ横ばいとなっております。
 事故の原因につきまして、産業構造審議会の審議に際しまして実施した消費者、企業を対象とした調査で見ますと、製品に原因があるのは三分の一、使用者に原因があるのは約二割ないし四割という調査結果とたっております。これを平成三年度の事故情報収集制度で見てみますと、専ら誤使用あるいは不注意な使い方によるものがおおむね三五%、専ら設計、製造上に問題があったというものが二九%程度となっており、産業構造審議会の分析と同様の傾向を示している状況でございます。
#160
○説明員(市川和孝君) 医薬品につきましては、作用と副作用が裏腹に存在しているというようなものでございますが、その副作用の被害の実態というものにつきましては必ずしもすべてを把握できているわけではございませんが、医薬品の副作用被害につきましては現在救済制度というものが設けられております。
 これに対しましては毎年二百件程度の新規の請求が行われておりまして、その八割から九割が救済給付の対象となっているところでございます。その内容につきましては、皮膚の障害、薬物性の肝臓の障害、あるいは薬物性のショック等が主なものでございます。
#161
○説明員(本田浩次君) 食品につきましては、国民生活センターだとが調査した被害の主な例といたしまして、下痢などの中毒症状、異物混入による歯の損傷などでございます。また、いわゆる健康食品によるものが目立っております。
 食中毒につきましては、発生件数は長期的には減少傾向にありますが、患者数は横ばい傾向となっております。また、死者数は最近大幅に減少しておりますが、食中毒の一五%はその原因が判明していないという状況にございます。
 食品につきまして企業に寄せられる苦情のうち、大部分は包装不良でございますとか異味異臭など商品自体に問題があるものでございまして、健康、身体、財産などに被害を受けたという苦情はごくわずかであるというふうに承知しております。
#162
○沓掛哲男君 次に、製造物等の欠陥による消費者被害を防ぐ、あるいは軽減のためにどのような対策を今までとってきたか。また被害者救済としてどういう措置を講じているのか。これは通産省と厚生省にお願いします。
#163
○政府委員(清川佑二君) 製品事故による被害防止につきまして、通産省といたしましてこれまで事故の未然防止及び再発の防止から大きく三つの点で施策をとってきております。
 一つは、製品特性あるいは業種業態に応じました、そういった製品に応じました安全規制、これを実施しているところであります。もう一つは、家庭用品品質表示法等によりまして安全性、品質あるいは性能につきまして表示の規制を行って消費者にわかりやすい形にしているわけでございます。第三は、事故情報収集制度につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、この制度によりまして事故情報を収集し提供するという施策を講じているわけでございます。
 そして、以上の施策の実効を高めるために、市場に流通しております消費生活用製品を対象といたしまして、安全性の確認あるいは事故の再発防止などに反映させるために製品事故情報の分析を目的といたしまして、さまざまな商品を購入いたしまして商品テストを実施しているということを実効を高める観点から行っている次第であります。
#164
○説明員(市川和孝君) 医薬品の安全性を確保いたしますことは、本行政にとりましても大変重要な課題でございます。
 まず、医薬品の承認審査に当たりましては、中央薬事審議会におきまして専門家によりまして厳格な承認審査を行い、事前の安全性の評価を実施しておるところでございます。また、市販後におきましても、製薬企業に副作用情報の収集を義務づけますとともに、国みずからも全国の病院に副作用の情報収集等をお願いいたしておりまして、副作用モニター制度と呼んでおりますが、このような制度によりまして全国の医療機関や製薬企業から副作用の情報を収集いたしまして評価し、安全対策に努めているところでございます。
#165
○沓掛哲男君 次に、事故原因の究明についてお尋ねしたいと思います。
 被害者は製品の欠陥の存在や欠陥と損害の因果関係について証明責任を負うことになりますので、被害者にとって利用しやすい原因究明機関が必要と思います。
 現在、都道府県、政令指定都市等に設置されている消費生活センターや衛生研究所、保健所がそれなりに役割を果たしております。また、民間の原因究明機関として、電気製品について日本品質保証機構、日本電気用品試験所、スポーツ、レジャー用品について日本文化用品安全試験所、ガス燃焼機器について日本ガス機器検査協会、石油機器について日本燃焼器具検査協会等があります。しかしながら、テスト技術者の人材不足、テスト設備の不足、テスト費用の高額化等の問題が指摘されております。
 事故原因の究明機関の整備に対する考え方、官と民の分担のあり方なども含め、具体的措置内容についてお尋ねいたします。これは企画庁と通産省にお願いします。
#166
○政府委員(坂本導聰君) 御指摘のように、本法案が成立しても、過失から欠陥に変わるということであって、欠陥の証明は原告が行わなければならない。したがって、原因究明というのが御指摘のように重要な問題になるわけでございます。
 したがいまして、この点につきましては、関係審議会における検討におきましても、製品事故に係る紛争の円滑かつ適切な解決、その際の被害者の証明負担の軽減、さらには同種の事故の再発防止等の観点からその必要性が指摘されてきております。政府としては、本法律案の提出とあわせまして、その整備を積極的に推進していく考えでございます。
 具体的なあり方といたしましては、御指摘のように、国の機関等における原因究明、検査分析能力の拡充強化、民間検査機関等の原因究明に係る受け入れ体制の整備、御指摘の消費生活センター等からの問い合わせに対する国の機関等の紹介、あっせん体制の整備等を積極的に推進していくこととしており、政府としてもそのための予算措置を本年度予算案において計上させていただいているところでございます。
 具体的には、通産検査所、農林水産消費技術センター、交通安全公害研究所等の国の機関や国民生活センターにおいて、被害者の証明負担を軽減するための原因究明や検査分析を行うための拡充強化を図ることでございます。さらに、専門的な知識、ノウハウを有した民間検査機関等について原因究明の受け入れ体制の整備を行うこと。さらには、通産検査所あるいは農林水産消費技術センター等、国の機関や国民生活センターが、各地の原因究明機関を結ぶネットワークのかなめとして、消費生活センター等からの問い合わせに対して適切な機関を紹介、あっせんできるような体制整備を行うこととしております。
#167
○政府委員(清川佑二君) 原因究明体制の具体的なあり方といたしまして、国民経済上のコストの負担、あるいはまた専門的な知識、知見、ノウハウを有した既存民間機関あるいは人材を活用するといったような形で、官民の負担も考えながら極力既存機関あるいは人材を活用しながら体制整備を進めていくことが必要であると考えております。
 具体的には、一つには通商産業検査所というものが通産省関係にございますが、これら経験とノウハウのある公的機関による原因究明体制の拡充強化といった公的な機関の拡充強化。なお、これにつきましては、通産省関係の検査所につきまして平成六年度には大幅な予算要求をいたしているわけでございます。
 また第二に、民間検査機関でございますけれども、原因究明に係る知見、ノウハウがある既存の民間検査機関の活用のための受け入れ体制を整備するということが必要と考えております。先ほど御指摘がありましたような日本品質保証機構、あるいは日本電気用品試験所、日本文化用品安全試験所、日本ガス機器検査協会、製品安全協会等々、既存の機関がそれぞれ専門分野を持ってございますので、これらの機関の能力を十二分に活用する方向で考えているわけでございます。
 第三に、原因究明能力を有する民間の検査機関あるいは大学の研究室などの機関に関する情報の提供、あるいは製品分野ごとの整理したデータベースの構築といったことを踏まえまして、これらの機関を紹介しあっせんする、いわゆるネットワークを組むというような体制の整備を考えているわけでございまして、これらを含めまして平成六年度の予算要求に組み入れているわけでございます。
#168
○沓掛哲男君 次に、簡易迅速な紛争解決の促進の観点から質問いたします。
 真に消費者被害を救済していくためには、裁判になじまないような比較的少額の被害等に係る紛争について簡易迅速に解決していくことも重要であり、裁判外の紛争処理機関の整備充実を図ることが重要であると思います。これはまた、製造者等にとっても製造物責任制度の導入による紛争解決コストの増大を緩和するために役立つものでもあると思います。
 さて、裁判外紛争解決体制や原因究明体制の整備についてどういうタイプの機関がよいかということですが、公平申立て多くの製品分野を網羅できるという面で行政型製品横断的な紛争処理機関がまさるでしょうが、反面、役所的で手続が重く、製品分野ごとの専門的知識が十分でないという短所もあります。これに対して、民間型製品分野別紛争処理機関も考えられますが、この場合、技術的、専門的知識を備えた人材の確保も含め、関連業界の有する技術的な知見やノウハウの蓄積を活用できるという長所がある反面、公平性、中立性の確保に問題があると思います。
 そこで、公平で申立てそして専門性をも有している、そういう第三者機関というようなものが必要ではないかと思いますが、こういう裁判外紛争解決体制、あるいは今申しましたようなこういう機関についてどういうふうに考えておられるか。これは通産、厚生、企画庁にお願いします。
#169
○政府委員(清川佑二君) 裁判になりますのは我が国におきましては一番最後の段階でございます。また、少額被害の問題などは広く相対交渉で解決できることが望ましいということもございます。そのようなことから、裁判外の紛争処理体制の具体的な考え方といたしまして、一つには、少額被害などにつきましては広く相対交渉、そしてまた地方の消費生活センターあるいは苦情処理委員会など、消費者が身近に利用できる、活用できる既存の体制を一層活用していただくということをまず考えております。
 そして、これらによりまして解決できないような難しい案件につきましては、そのニーズに応じまして、それぞれの製品分野ごとに専門的な知見を活用した体制を中立性、公平性の確保を図りだから整備していくことが必要であると考えております。
 このような考え方から、一つには、国及び国の地方機関の消費者相談窓口についで、専門家を配置するというような形で専門的な知識、ノウハウが活用できるようにする。そして、通産検査所など原因究明能力を有する機関との連携強化などによりまして相談、あっせん体制の充実を図っていくということも考えているわけでございます。また、必要に応じまして製品関連の技術専門家、こういったエキスパートを派遣して都道府県などの紛争処理機関に対して協力を行うことを考えているわけでございます。
 他方、民間の活力を活用する。民間にはそれぞれ大変なノウハウ、技術的な能力もございます。それぞれの製品分野ごとの体制整備に当たりまして、紛争解決の手続と結果が消費者にも納得のいくような中立公平なものであることがこういった制度の信頼性の確保のために必要であると考えます。そしてまた、被害救済の実効を高めるということになると考えますので、審査体制の中立性あるいは判断基準につきまして通産省としては一定の要件をガイドラインとして示すというようなことも考えて、中立性、公平性をもとに民間活力を活用した体制を図ってまいりたいと考えております。
#170
○説明員(市川和孝君) 医薬品におきます副作用被害につきましては、先ほど申し上げました民事責任とは切り離しまして、医薬品の副作用被害救済制度によりまして比較的簡易な手続におきまして迅速な救済を図っているところでございます。
#171
○政府委員(坂本導聰君) 委員御指摘のように、裁判に至らない前の少額被害というものは裁判外で解決されるということが非常に多いものと考えられます。その場合に、先ほど通産省が答弁申し上げましたように、相対交渉を初め各種のいろいろな解決手段があると思います。
 ただ、委員御指摘のように、国あるいは地方公共団体という行政機関が行えば中立性、公平性は確保されるわけでございますが、一万それだけの大きな組織をつくるということもまた別途の問題がございます。一方、民間の紛争処理機関というものはそれなりの専門性を持っておりますが、公平性、中立性についていかがかという問題もございます。
 したがいまして、そういったおのおのの制度は、排他的ではなく相互に補完的に機能していく必要があるわけでございまして、相互の長所、短所を踏まえつつ、その長所を生かすべく考えてまいりたいと思っております。
#172
○沓掛哲男君 相互の特性を生かして補完的にやるということですが、各省庁的な機関があるわけですけれども、そこへ一々行ってもなかなかわからないので、どこか中央でそういう紹介をしてくれたらさっと行けるとか、そういうようなことを、大変情報ネットワークが進んでいるんですから、お金をかげないでいろいろたそういう機能をこれから利用できるようにしてもらいたいというふうに思います。
 次に移りますが、製品の高度化、複雑化、今後の国際化、高齢化を考えると、消費者への情報伝達が従来にも増して重要とたってくると思います。今後、表示取扱説明書の適正化についてどのように取り組もうとされているのか。通産、厚生、農水省にお願いします。
#173
○政府委員(清川佑二君) 沓掛委員御指摘のとおり、今後の社会におきましては高齢化あるいは国際化が大変進行してまいります。他方では製品が高度化し、複雑化し、難しい製品も多くなってくるわけでございます。
 このようなことから通産省では、表示取り扱いの説明、これが消費者の保護のために極めて大切であると考えております。産業構造審議会の答申におきましても、表示取扱説明書の適正化を推進する必要性が指摘されているところでございます。このため、通産省では本年早々から表示・取扱説明書適正化委員会を設けております。この委員会には、民間の検査機関あるいは経済団体、製造業者も入っているのは当然でございますが、学識経験者あるいは消費者団体の関係者、広告、企画の関係者などあらゆる分野の方々に入っていただいて検討を行っているところでございます。
 具体的には三つの分野について検討しているところでございます。一つには、製品分野を横断的、統一的に考えて表示取扱説明書のガイドラインを考えるということでございます。第二には、個別の製品ごとに表示取扱説明書の適正化のガイドラインを考えるということで、今年度はカラーテレビについて検討をいたしているところでございます。第三に、警告表示の統一化のための基準を策定するという検討をいたしております。
 警告表示につきましては、例えば感電をする、毒物である、爆発性がある、腐食性があるといったような危険の種類がございますが、このような危険の種類と危険の程度、これに応じまして、表示の方法はシンボルマークですとか色ですとか文字の大きさたどを考えたから、かつ国際的にも同様の動きがございますので、これらと整合性があるような形で表示についての統一的な基準をつくることを検討いたしているわけでございます。
 このような検討を行いまして、成果につきましては順次取りまとめて公表し、産業界にも御協力を要請していくことといたしております。
#174
○説明員(市川和孝君) 医薬品につきましては、医薬品の企業に対しまして、製品のいわゆる添付文書というものがございますが、この添付文書に副作用の種類だとかその内容、発現頻度等に関する情報、さらには使用するべきではない患者などについての情報を記載するように従来から対応をしてきたところでございます。
 医薬品の非常に複雑な使い方を要するもの、あるいは人口が高齢化してくるというようなことでお年寄りが間違いがないようにしていくということは大変重要なことでございます。医薬品の安全な使用を確保し、また適正な使用を推進する観点から、添付文書の内容等につきましては、一層理解されやすく、また的確な表現となるように検討してまいりたいと考えております。
 また、厚生省では従来から薬局等に対しまして、いわゆる服薬指導と申しますか、患者さんに薬を渡すときの説明につきまして十分行うようにということを指導してまいりましたが、そういった際に使われるマニュアルづくり、個々の医薬品について患者さんにどう説明したら一番よく理解していただけるかという、そういった目的でのマニュアルづくりも進めているところでございます。
#175
○説明員(本田浩次君) 食品事故を防止する上で、食品の保存方法、使用方法などにつきまして情報が十分かつ正確に消費者に伝えられることは大変重要な問題であるというふうに考えているところでございます。このために、JAS法に基づきまして、すべてのJAS規格及び品質表示基準におきまして保存方法についての表示の義務づけを行う方向で検討しているところでございます。
 しかし、食品につきましてはもともと非常に多様なものでございますので、JAS規格及び品質表示基準だけで対応することは大変困難でございますので、農林水産省といたしましても、本年度から食品の取り扱いに関する表示につきましてその表現方法たどを充実させるためのガイドラインを取りまとめる方向で検討を行うこととしているところでございます。
#176
○沓掛哲男君 では次に、条文に基づいて質問していきたいと思います。
 まず最初に、PL法の対象となる「「製造物」とは、製造又は加工された動産」と定義されていますが、まず一番目、修繕、運送、保管等のサービスや無体物がこの対象から除外されている理由は何でしょうか。文言が動産で入らないということではなくて、根源的になぜ入れないのかということを企画庁説明してください。
#177
○政府委員(坂本導聰君) 製造物責任が発展してきた背景を考えますと、製造物に関する民事責任としての製造物責任の対象物は、基本的には人為的な操作や処理がたされ、引き渡された動産を対象とするのが適当であり、本法では御指摘のように「製造又は加工された動産」と定義しております。したがいまして、サービスや無体物は動産に当たらず、製造物の対象から除外されます。
 サービスは相対で取り引きされることが一般的であるため、契約責任により対処可能であることでございます。
 また、無体物のうち電気につきましては、サービスと同様契約責任により対処可能であること、電気以外の無形エネルギーについては、エネルギー発生機器の形態で流通しており、当該機器について製造物責任を問うことにより対処可能であること、またソフトウエアについては、それが組み込まれた製品について製造物責任を問うことが可能と考えられることの理由から除外しているところでございます。
#178
○沓掛哲男君 次に、未加工の農産物が除外されている理由。
 バイオテクノロジーを使ってつくった農産物もたくさんあるでしょう。また、化学肥料を使った水耕栽培による農産物などもいろいろあると思いますが、こういう農産物で被害が出たことはありませんか。
 それから、食品の加工と未加工の区別もなかなか私たち消費者にはわかりにくいんですが、それを私たち消費者にもわかりやすいようにいろいろな方法で、先ほどガイドラインをつくるとかいろいろおっしゃっていましたが、そういう面もひとつ努力していただきたいと思いますが、農水省にお答えをお願いします。
#179
○説明員(本田浩次君) 御質問は三点あったかと存じますけれども、順次お答えいたします。
 まず、製造物責任法案におきましては、製造物責任の対象とたる製造物とは、「製造又は加工された動産」とされております。未加工の農林畜水産物は基本的に自然の力を利用して生産されるものでございますので、本法案の対象から除外しているところでございます。
 次に、バイオテクノロジーによってつくられました農作物、化学肥料で水耕栽培されている農作物によって被害が出たかどうかという点でございます。これらの作物によって消費者に被害が出た例は私どもとしては承知をしてございません。なお、バイオテクノロジーによってつくられました農作物、化学肥料で水耕栽培されました農作物につきましても、基本的に自然の力を利用して生産されるものでございまして、製造または加工された動産には当たらたいというふうに考えているところでございます。
 それから、加工か未加工かの判断でございますけれども、具体的には個々の事案におきまして、製造物に加えられました行為などのもろもろの事情を考慮いたしまして、社会通念に照らして判断することとなるというふうに考えているところでございます。
 一般的に、煮る場合でありますとか、いる場合、焼く場合などの加熱、それから塩漬け、薫製などの味つけ、それから粉をひく場合、ジュースなどに搾汁する場合などは製造または加工に当たると考えられるのに対しまして、一方、単なる切断でありますとか、それから冷凍でありますとか冷蔵、乾燥などにつきましては基本的には製造または加工に当たらないと考えているところでございます。
 加工と未加工の区分につきましては、できる限り明確に区分がわかるように努める必要があるわけでございますが、いずれにいたしましても法概念としての抽象性は避けられませんので、細部につきましては実際の制度運用の積み重ねにゆだねざるを得ないと考えているところでございます。
 私どもとしては、今後におきまして説明の場でありますとか解説書などを通じまして、できるだけ事例を紹介するたどによりまして消費者にわかりやすくなるように努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
#180
○沓掛哲男君 次に、不動産はなぜ除外したか。このお答えは、いわゆる製造または加工された動産ではないからというお答えは困ります。それは法律ができてしまってからあなた方が運用することであって、ここでは法律をつくるわけですから、なぜそういう製造物責任の対象にしなかったかということを根源的に説明してください。
 例えば、一番トラブルの起こりやすい建て売り住宅について見ますと、住宅建設にかかわる業者と流通を経て当該建物を取得した者、すなわち消費者との関係は、本法の動産の製造者と消費者との関係に近いと思いますが、どうなのでしょうか。
 それから二番目として、不動産を構成しているアルミサッシとかガラス窓とかドアというのはこの法案の対象になるんでしょうか。それから、プレハブのようにすべて部品で構成されるものは、全体としては対象にならぬが、個々の部品は対象になるということでしょうか。建設省にお願いします。
#181
○説明員(梅野捷一郎君) 最初の、PL法から除外した理由でございますが、製造物責任制度が妥当する分野としては、大量生産あるいは大量消費というような形態が当てはまる最終製品たる動産ということを一般的には考えて、そこから出発しているというふうに考えているところでございます。
 一方、住宅を含みます不動産につきましては、耐用年数が非常に長いというようなこと、あるいはその間に徐々に劣化をしたり、あるいはその間の維持補修というようなことを十分に考慮する必要があるわけでございまして、トラブル等の関係でも考慮する必要があるわけでございまして、そういう点からも、ここでいう不動産と動産との間には性格に基本的な違いがあるということで本法案の対象には含められなかったという経緯でございます。
 また、さらにテーマでございますトラブルに対する救済の問題でございますけれども、これにつきましても、不動産については契約責任による救済がもともとなじむということと、第三者に対する被害につきましては民法の七百十七条の土地工作物責任による救済手段というものが既に用意されているわけでございますし、消費者保護の手段としては整っているというふうに認識をしているということでございます。また、このような考え方につきましては、EC諸国などにおきましてもおおむね同様の考え方に立っていると思われるわけでございまして、製造物責任の対象外とされているところでございます。
 また、住宅の中の一部を構成いたしますアルミサッシとかドアとかそういう部品に相当するものでございますけれども、最終的な住宅になりました段階でそれはまさに不動産の一部を構成しているわけでございますので、それを含んで全体が不動産ということになるわけでございますが、製造者、例えばアルミサッシの製造者から製造または加工されて引き渡しをされた時点、その段階までは動産であったというものに当たるわけでございますので、その段階につきましては本法案の対象として該当するというふうに考えるわけでございます。
 そういうことでございまして、これらの引き渡しをする時点までの動産であったアルミサッシあるいはドアその他についての欠陥により他人の生命やそういう被害が出た場合においては、この法律に従った製造物責任を負うという形にたるというふうに考えるわけでございます。
 それから、プレハブ住宅は、今の例で申し上げましたように構成要素としていろんな部品が大変多いという意味では、今回の動産の対象にたるようなケースが非常に含まれた最終製品としての不動産ということになるわけでございますけれども、最終的には住宅そのものは敷地の形状でございますとか需要者の嗜好、そういうことによりまして個別の平面計画とか設備の計画とか、そういうものを個々に詳細に取り入れながら個別受注生産としてやっていく性格が他の一般の住宅と同様に強いわけでございますので、他の不動産と異なるものではないというふうに考えているところでございます。
#182
○沓掛哲男君 では、これから血液製剤についてお尋ねしたいというふうに思います。
 両大臣にもぜひ聞いていただきたいと存じます。
 輸血用血液も加工された動産として本法の対象物とされておりますが、次の理由によりぜひ除外していただきたいと思います。
 その理由を申し上げていきたいと思いますが、まず第一に、輸血用の全血製剤、血液成分製剤は、人体から採取した生血で、必要とされる人へ輸血するまでの間凝固しないようにするためクエン酸などを含む少量の抗凝固剤を混和したものであり、血液の成分、性状を生血のまま維持しようとするものであります。また、これらの輸血は、生体機能の一部を補充、移植するという性格を有するもので、臓器移植と同じ次元でとらえるべき医療行為であります。
 なお、輸血用の血液には次のような特徴があります。
 一つ、緊急不可避のときにのみ使用されるもので、代替品がございません。二つ、他人の血液である以上、完全に一致した血液というものはありません。ある人には安全でも、血液型や血漿たんぱくのわずかな違いにより重い免疫学的な副作用が起こる危険性が常にあるものであります。三番目、輸血用血液の混入ウイルスのスクリーニング検査は、日進月歩ではありますが、感染初期や一部の変異株の検出は不可能で、病原ウイルスが混入している血液を完全に排除することは現在できません。恐らく将来にわたってもできないと思います、次々に変わっていくんですから。
 私の血液は、親からもらったものに私が何十年か生きているうちに抗生物質を入れたりいろんなことをしていますから変化している。また、輸血する相手も変化している。その間で全く一致しておれば絶対支障はないけれども、必ず違ったものを入れるんですから、いわゆる確率論的にかなりの確率で事故が起きるというのは当然で、そのことは未来永劫続くものだというふうに私は思っております。
 それから次に、輸血用血液は善意の献血により非営利団体である日本赤十字社のみが国の方針により供給しているものであります。皆さんも輸血されるとこういうカードをくれますね、このカード一枚。牛乳選ぶかジュース選ぶかだけでみんな二百cc出しているわけですよ。世界でも特殊たそういう献血で、献血できるのは日赤だけ。したがって、日赤だけが製造していて、それも全部無料でやっているという特殊な国であると思います。
 さて、こういうふうな特殊性を有する輸血用の血液製剤をPL法の対象とした場合の問題について二つ申し上げます。
 一つは、完全に安全な血液を追求するため、ウイルス感染症の危険性を減らすべく個人のプライバシーにまで踏み込んださらに詳細な問診が必要となります。献血という微妙な行為にのみ依存している輸血用血液の供給に支障を来すおそれが強いと思います。日赤側も強くそのことを訴えております。非常に微妙なバランスのもとにこの献血というのがなされているんだというふうに思います。
 したがって、私に、おまえエイズになったことがないかとか、いろんなことを言ったら私もやりません。やるのは団体でやるんですね。ことしはどこどこの市町村で献血が少ないから、ひとつこの会社でお願いしますとか、このグループでお願いしますというのに引きずられてみんな行ってやるという、私ら自身も断る理由があったら断りたいというふうに思う、そういう献血の状態だと思っていただければと思います。
 それから二番目、完全に安全な血液というものはなく、ある程度の確率で危険のある輸血用血液は、医師の判断とその責任において適用を最小限に絞り、適正に使用されるべきでありますが、PL法の施行により必然的に多発する輸血に関するトラブルが医師の即断的判断に影響を与えることが危惧されるのであります。
 皆さん方、大病を思って非常に重い患者を入れる病室に入ったことがある方はわかると思います。私も二十六歳のときに敗血症で八カ月、金沢大学の伝染病棟に入れられました。毎日死者が出るんで、私も夜よく眠れませんでした。そういうときの医者の対応というものを私はじっと八カ月見てきたんですけれども、医者というものはわがままな人たちです。本当にわがままだたという不満もありました。しかしまた、重患に対して彼らは寝食を忘れて助けてくれる、そういう立派なところもありました。
 しかし、医者にもピンからキリがありました。私が最初にかかった主治医というのはもうキリの方でございましたから、そのときは敗血症であるということがわからないで、異常だというので伝染病棟に入れられていたんです。そこで、次に谷野さんという名医が来られて、この患者にアクロマイシンを使ってみろということで、私はアクロマイシンを二日いただきました。熱は四十度がずうっと一カ月ほど続いていたのが七度台にぱっと下がりました。ところが、キリのその医者は、七度台になったら、ああ風邪程度かということでそのアクロマイシンをやめました。二日やめたらもどのように戻りましたが、今度は前のような投与をしても絶対下がりませんでした。
 そして、大学の医学部の教授というのは一週間に一遍しか来ないんですね。あとは、こう言っては悪いけれども、インターンみたいなのに任してあるんですよ。その谷野医長が来て、なぜこんなことをしたかと言われて、その主治医は困っておりましたけれども、そのとき谷野さんの決断は三倍のアクロマイシンを使いなさいということでした。そしてそのとき私に、いいですねという念を押されました。もう私も四十度がずうっと続いて意識がもうろうとしておりますから、結構ですということで、そして三倍のアクロマイシンをずうっと二カ月ほど投与して、その後また五カ月の療養を経て元気な体に戻りました。
 私は、あのときの谷野さんの決断、普通の量の三倍を投与するという、そういう決断というものが多くの非常に重体にある人を救ってくれるんだなというふうに今も深く感謝いたしております。
 そういうことから見ると、医者というものはわがままなものがその前提にあります。そして、これで日赤で何かトラブルが起きたとすれば、いろいろ訴訟があれば当然医者もまた呼び出される。医者が呼び出されるトラブルというものを彼らは嫌うでしょうから、輸血するのでまたトラブルが起こっては困るということで、医者の判断がいろいろ影響されるんじゃないか。現に参議院にも宮崎さんというお医者さんがいますが、彼にも聞いてみると、ああ、それならほっておくよ、人は死ぬだけだよと、こういうふうに彼はよく言います。そういうふうに医者というものもまた非常に微妙な立場におられる、そういう人たちに対して非常にマイナスにたるようなことをすべきではないのじゃないかと思います。
 これから具体的に質問に入らせていただきます。
 輸血用血液に関する専門家集団である中央薬事審議会が平成五年十月、また平成五年十二月の国民生活審議会の消費者政策部会の報告では、輸血用血液をPL法の対象とすることは適当でないと答申いたしております。まず最初に、いわゆる審議会の答申というものをどのように受けとめられているのか、この場合でなくて一般的で結構ですが、審議会の答申をどのように受けとめられているのかを厚生省と企画庁にお尋ねいたします。
#183
○説明員(市川和孝君) 先生ただいま御指摘のように、中央薬事審議会におきましては、輸血用血液製剤につきまして、生体機能の一部を補充、移植するという性格を有することなどから製造物責任法の対象とすべきでないという考え方が示されたわけでございます。同時に、中央薬事審議会におきましては、やはりこれは製造物の概念に含まれるのではないかという御意見も少数意見としてはございまして、この審議会の報告書では両論が併記された形になっているわけでございます。
 その後、政府全体におきまして検討を進めました結果、輸血用の血液製剤は、血液に保存液あるいは抗凝固液等を加えたものであることから、加工された動産であるということで本法案の対象とされたものでございます。
 先生の御指摘の審議会の答申につきましては十分尊重すべきものではございますが、本法案が民法の特則であることなどから、法案作成過程におきまして政府部内の調整が必要となったものでございます。
#184
○政府委員(坂本導聰君) 委員御指摘のように、国民生活審議会の平成五年十二月の報告では、「全血製剤及び血液成分製剤はこ「製造物責任の対象とすることは適当ではない。」という御意見になってございます。
 私ども、基本的には国民生活審議会あるいは関係審議会の基本的な御意見を尊重しながら本法律案を作成してまいりましたが、その後政府部内で議論をいたしました結果、今厚生省からも答弁がございましたように、本法は民法の特則を定めるものであるということから、その民法の特則において過失を欠陥に切りかえるその対象を何にするか、それが製造または加工された動産であるという定義づけをした結果、その血液製剤についても本法の対象になるということになったわけでございます。
#185
○沓掛哲男君 先ほども申し上げましたように、文章がこうたったからそれを入れたなんて、そんなばかげたことを言ってもらっちゃ困るんですよ、ここは国会なんですから。国家国民のためにどうしたら一番いいか、国民の幸せをどうして守るか、いわゆる大量生産、大量消費時代において何の過失もない人が非常に不幸にしてそういう被害を受ける、そういう人の救済をここで頭に置いているのであって、文言でやってみたらこうなったからそういうものが入っているという、ここはそういうばかげたことを言うべきところではないんです。場所を間違えているんです。そういうことをきちっとつくるのがここなんですから。
 そういうことじゃなくて、なぜ中央薬事審議会や国民生活審議会という専門の方々がお集まりで、そしていろいろ議論した結果――それは世の中一人や二人は反対しますよ、どんなことをしたって。十人いて十人オーケーということは世の中にありません。もう全部に、十人の人に一万円ずつ配っても必ず文句は出るんですよ。世の中に一〇〇%ということはないですよ。ですから、少数の意見があっても、それぞれの中央薬事審議会また国民生活審議会という大変重要な審議会においてそういう結論を出したものを、どうしてあなた方は簡単に、文言で片づけるべきものじゃないでしょう、ここは国語審議会じゃないんですから。
 そこで、もう一度答えてください。どういう理由でなったんですか。私も、審議会でやったけれどもこれこれこういう理由で変えたという合理的な理由さえ説明してくれたら当然それに従いますよ。しかし、あなた方の言うようなそういう説明では納得することはできません。もう一度よく答えてください。
#186
○説明員(市川和孝君) 先ほど申し上げましたように、輸血用の血液製剤につきましては、献血者からいただきました血液に保存液、抗凝固液等を加えて、血液バッグに入れましてそれが流通をしているということで、これは加工された動産に該当するということで本法案の対象とされたものでございます。
#187
○政府委員(坂本導聰君) 先ほど申し上げました国民生活審議会の意見は、そういった審議会の意見を踏まえて政府部内で調整をして具体案をつくるべし、こういう御意見にたっているわけでございます。
 例えばどういうことがあるかと申し上げますと、これは製造物の対象にはなるけれども、欠陥という点で考えれば、現在の科学技術の水準のもとで技術的に排除できないウイルス等の混入や免疫反応等による副作用は欠陥に該当しないものと考えているわけでございます。仮に、技術的に排除できるものもこの製造物の対象から除外すればPL法上はすべて救済の対象から除外されてしまうということになって、かえって問題が生ずるものと考えているところでございます。
#188
○沓掛哲男君 私が参議院の第六控室でこの法案を聞いたのは坂本局長からお聞きしたんです。そしてあなたの説明ですと、いや、製造物の対象には入っても欠陥というところで免責されるんですから、結果的にはそういうのはたいんですよという説明でした。ですから、それは同じことたら結構だというふうに私は思いました。
 それから、いろいろ聞いてみるとそうじゃなくて、そういういわゆるウイルスが私に入って私がC型肝炎になったら、その事案について、そういう我が国における最高水準の科学技術の知見でもそれは防げなかったということを証明しなきゃならないんですね。そういう一つ一つについて何か事故が起こったらそれを証明してやっていかなきゃならない。これはまた大変なことなんですね。そして、今の科学技術でそういうことがわかるわからないという議論をやってごらんなさい。これは大変貴重な年月を要するものだと思います。
 いわゆる全血製剤とかあるいは血液成分製剤というものが、ウイルスとかそういうものであっても、当然その最高の水準でやっているということだから包括的に免責するというんならそれはわかります。そういうことはできないはずです。そこで一つ起きたならば、その一つ一つの事案について一々、まあ裁判になるかどうか、そしてそこで最高の水準でやっていたということで初めて免責になるんです。その労力たるや大変なことだというふうに思います。そんな簡単にいわゆる欠陥のところで免責される、そういうことではないと思いますが、どうですか。
#189
○政府委員(坂本導聰君) この製造物責任法案では、まず一つ、この対象が製造物に該当するかどうかが二条一項の定義でございます。そして、二条二項におきましてはどういう場合に欠陥になるかが書いてございます。
 もう一方、第四条に免責事由とございまして、その一号で開発危険の抗弁が認められております。そして、この第四条一号の開発危険の抗弁は、まさしくおっしゃるように製造者がその開発危険の抗弁を主張するわけですから立証負担を負うということになりますが、第二条二項の欠陥というところでは、「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他」云々を、「事情を考慮してこと、考慮事情でございまして、必ずしも製造業者がそれを立証するということになるわけではございません。
#190
○沓掛哲男君 もちろんそれも議論しなきゃなりませんが、私が最初に質問しているのは、中央薬事審議会そしてさらにこの国民生活審議会で決めたことに対して、今あなた方の説明では納得できません。もう少し具体的に、なぜこういうだめだというのを、こういうふうにいろんなところを設けたからと言うけれども、その設けたことによって全部免責されるんならいいけれども、一つ一つの事案についてやっていかなければならないことでしょう。そのことをもう一度確認し、もう一度答弁してください。
#191
○政府委員(坂本導聰君) そもそも製造物の対象から外すという政策判断を仮にいたしますと、除去できるような欠陥であっても、事、血液製剤については対象外になると。あるいは、現在の科学技術水準では除去ができないけれども、将来この科学技術水準は推移いたしますのでまた変わりますが、将来とも製造物責任法の対象にならないという逆の問題があるわけでございます。
#192
○沓掛哲男君 じゃ、現在その対象になる病気というのはどういうことですか。それは例えば、今入れるいわゆる抗凝固剤とかあるいはパック、そういう工程でそういうものが入ってくるということを意味しているんでしょうか。
#193
○説明員(市川和孝君) この法律で対象になってまいりますものは、バッグの不良に起因する場合、あるいは保存剤、抗凝固剤の不良から発生する場合もございますし、それからそのほか既に検査法が確立しております例えば梅毒のようなものでございますが、そういうものが万々一汚染があって検査に漏れてきたというような場合には本法の対象になるものと考えております。
#194
○沓掛哲男君 今のように抗凝固剤を入れパックにする、そういう過程でそういうものをなくすることができるんじゃないか、日弁連の杉浦さんはそういう意見もいろいろ言っています。それから、将来検査が確立してこういうものがなくなるとそういうものが除外できないと言っております。
 ところが、こういういわゆる抗凝固剤とかパックに入れる過程において細菌が入ってきたりたんかする確率とか、あるいは既にちゃんともう検査、研究開発が終わってそういうものから入ってくるという確率は恐らく何万分、何十万分の一という極めて低い確率なんですね。そして一方、今ここで生血から入ってくるいろんな病気というのは数%という実に驚くべき高い率だんですね。
 今から十年、二十年前ですと、心臓をやるとたくさんの血を使うからほとんどの心臓を手術した人は何らかの障害をみんな受けていたんですね。随分最近でも、B型肝炎ですと三〇%ぐらいの死亡率という驚くべき率だったんです。現在だって三%という数字が出ていますけれども、それははっきりしたものですから、恐らく障害としては数%のものが出てくるでしょう。
 一万のものは何万分の一ですよ。こっちはいわゆる百分の三とか四とかいう驚くべき数値たんですよ。ネグレクティブル的なものをつかまえて、だからこの基本的なものをこちらへ引きずってくるという、そういう論理はないんですよ。国家国民のための幸せというのはそんなむだを惜しまずする必要はないんですよ。そういう何万分の一のことはネグればいいんですよ。いろいろ確率的に言って、今議論しているものも何万分の一ならいいんですけれども、これは実に高い確率でだれという責任もない人に襲いかかってくる驚くべきことなんですよ。それが医学、医者の世界で行われている。
 じゃ、何でやるのかといえば、率が四、五%あっても、それによって九十何人という人が助かるんですよ。輸血はただやるんじゃない。今死ぬか生きるかの人を助けるためにやる。その中で不幸な人が三人、四人は死んでしまうんですよ。しかし、九十何人の人が助かるからやるという大変異常なものなんですよ、この輸血というのは。
 それを今、紙パックや凝固剤、そんなところから入る欠陥なんというものは何万分の一ですよ。そして、既にわかったものはきちっと検査していって、それのミスなんというのは何万分の一ですよ。そういうものとこれとを一緒にして本末転倒したようだ形で入れるべきではないと思いますが、どうですか。
#195
○説明員(市川和孝君) 先生御指摘の、例えば肝炎のような場合でございますが、特にC型肝炎につきましては、先生御存じのとおり従前は検査法もございませんでした。それが平成元年十二月から、我が国の場合には世界に先駆けましてHCV抗体の検査を導入いたしまして、さらにその後、試薬の精度が高まってまいりましたものが実用化されたことに伴いまして、平成三年十二月からはその試薬により検査を実施しているわけでございます。
 これによりまして、相当程度肝炎に感染するおそれのある血液が排除されるようになってまいりました。現在の段階では、しかし大体一%程度がやはり依然として感染の危険性があるというふうに言われておりますが、そのように技術の進展につれましてより安全な血液というものが出てきているわけでございます。
 今回の法律におきましては、先ほど来お話が出ておりましたが、輸血用血液製剤の欠陥につきましては、次に申し上げますような製品の特性等の事情を総合的に考慮して判断する必要があると考えておるわけでございます。
 その一つは、生命の危機に際して使用されるものであって、ほかに代替する治療法がなく極めて有用性が高いという点でございます。二つ目は、輸血によりますウイルス等の感染や免疫反応等による副作用が生ずるおそれがある旨の警告表示がなされているという点でございます。三つ目の点は、輸血用血液製剤は世界最高水準の安全対策を講じた上で供給されているが、技術的にウイルス感染や免疫反応等による副作用の危険性を完全には排除できないという点でございます。
 したがいまして、現在の科学技術の水準のもとで技術的に排除できないウイルス等の混入や免疫反応等による副作用は欠陥に該当しないものと、このように考えているところでございます。
#196
○沓掛哲男君 ここに、「「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態こ、「当該製造物を引き渡した時期」云々を考慮して「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。」というふうにたっていますが、しかしこれは一つ一つのそういう副作用による障害が起きて、その障害の事案ごとにこのことをきちっと証明していかなきゃならないわけでしょう。
 そうするとこれは、もう既に相手は死んでいるわけですよ。死んでいるかもうほとんどどうにもならぬ状態になっている。そういう欠陥をとらまえてどうだこうだと言っても技術上はできないことじゃないですか。そういうことが実際にできますか。
#197
○説明員(市川和孝君) 本法につきまして政府部内で種々検討をいたしました政府のサイドにおきます統一的な考え方ということで御説明申し上げているわけでございますが、この考え方につきましては、十分国民初め医療関係者にも今後御説明を申し上げていく必要があると考えております。
#198
○沓掛哲男君 それはとても納得できるわけじゃないんですが、先ほど経済企画庁の局長が、将来にわたってこうしておけば研究も進んでいくじゃないかということを言われました。
 私は、国の研究機関に五年いて研究していた者です。その研究者からいえば、いわゆる経済的罰則を重くして、そしてそれによって影響を受けるというのは何らか悪いことをしているとかそういうことですよ。研究者というのは純粋ですよ。そういう純粋な人はそんなものがあったからやっているんじゃない。やはり、この血液をどうしても清くして、そして現実に必ず毎日毎日死んでいるそういう人を何とかして救おう、そういう使命感に燃えてやっているので、このものが法律に入ったから一生懸命やる、そうでないからどうと、そういう問題のレベルのものとは全然違っております。それだったらもう全然見当外れです。
 そこで、今のことももちろん納得しませんが、では血液を対象とすることによって利益を得る人がいるんですか。どういう人が利益を得るんですか。このことをお尋ねします。これは企画庁でも厚生省でも結構です。
#199
○政府委員(坂本導聰君) 現在、民法の不法行為はすべての製品につきまして過失というものを賠償の理由としておりますが、この法律は、過失という主観的な概念から欠陥という客観的た概念に変えるということでございまして、その面で原告側の立証負担が軽減されるという意味を持っており、その面で輸血用血液製剤についても同様のことが一言えると思います。
#200
○沓掛哲男君 これは過失と無過失ではもう天と地なんですよ。延長線上だから同じ、前も入っていたから同じということじゃないですよ。
 ここで実際に私が被害者になった場合、今までであったら過失だからなかなか難しかったけれども、無過失だということだから私は日赤を訴えます。しかし、日赤の方では、今の開発危険の抗弁権がありますから、ここで当然やりますね。それはそんな悪いものを出しているわけじゃないですから、たまたま今偶然当たっちゃったんですよ、私に弾が。そうすれば、この開発危険の抗弁権で当然日赤はやりますから、これはもう医学で難しいものになれば時間もかかるし、また向こうは勝ちますよ。とてもこちらの方はそういうものに対して、日赤を相手にして闘えるものじゃありませんよ。
 ですから、実際のところやりやすくなったといったって、相手は巨大な日赤であり、そして日赤に恐らく過失とかそういうものは、過失はもちろんですが、無過失的なものも私はないと思います。必ず向こうは開発危険の抗弁で対応してくると思いますよ。そうすれば私は負けてしまうから、私には何の利益もない。日赤にとってみれば大変なエネルギーもかかるし、私自身も弁護士を雇ってやれば大変なエネルギーがかかって、どこも利益を得る人はいないんじゃないですか。
#201
○説明員(升田純君) ただいま現行の民法のもとでどういうぐあいになるかというお尋ねの点でございますけれども、現行の民法の不法行為責任は、もちろん御承知のように過失責任の原則をとっているわけでございます。血液製剤によりまして事故が発生し、その被害者が損害の賠償を求めるという場合に、製造者であります日本赤十字社に対しまして、不法行為に基づき損害賠償を請求することができることはもちろんでございます。
 この場合、損害賠償請求が認められるかどうかは、御指摘のように日本赤十字社に過失があったかどうかという判断に左右されることになるわけでございますけれども、従前、医薬品事故の裁判例におきましては、過失の前提であります注意義務の基準というものが、最高水準の基準というものが採用されておりまして、血液製剤ももちろん医薬品に当たりますので、もし損害賠償請求訴訟が提起されました場合には、このような裁判例の流れに従って過失が判断される、こういうことになろうかと思います。
#202
○沓掛哲男君 従来はそうですね。しかし、血液の問題で訴訟を起こして日赤が負けたという例がありますか。厚生省、わかったら教えてください。法務省でも結構です。
#203
○説明員(市川和孝君) 輸血用の血液製剤につきまして、従来医療機関が訴えられた例はございますが、日赤が訴えられた例はないと聞いております。
#204
○沓掛哲男君 過失ではどうですか。
#205
○説明員(升田純君) 従前公表されました裁判例で、日本赤十字社が血液製剤につきまして損害賠償請求を提起された例というのは承知しておりません。ただし、今厚生省からも御指摘ありましたように、医師が医療過誤の中で血液の問題につきまして損害賠償請求された例もございますし、また国が国家賠償法に基づきまして損害賠償請求をされたという例があることを承知しております。
#206
○沓掛哲男君 それは医療行為を行う医師の話で、今ここではいわゆる血液そのものを議論しているわけです。生血というものはそれぞれみんなばらばらなんですよ。そういうものに欠陥があるとかなんとか、あるいはそれをつくるときに過失証明なんというのはできるものじゃないと思いますよ。この血どこにどうと言われたって、みんな違うんだから。その証明の仕方というのはまず非常に不可能的に難しいと思います。
 しかし、今度はだからこそ過失を無過失責任、欠陥だけれども無過失責任にしたといってみても、その証明する難しさは、ここで開発危険の抗弁がまたできているわけですから、これは当然日赤はこれによって抗弁するでしょうし、恐らくそういうものと私ら個人が対抗できるものではありません、それはもう大変難しい問題ですから。
 ですから、被害者も実質上は何らそういう賠償はされない、日赤の方もそのままだと、そしてお互いに物すごいお金と時間とエネルギーを使う。そして何にもないんじゃないですか。これを入れることによって本当にだれか利益を得る人がいるでしょうか。これからずっと五年間、十年間を頭に置きながらそういう利益を得る人がいるでしょうか。
#207
○政府委員(坂本導聰君) 個々のケースによって個々に具体的に判断されるわけでございますが、しかし、過失から欠陥に、主観的な過失概念から欠陥という客観的事実に変えることによって原告側の立証負担は血液製剤にかかわる全体を通じて非常に軽減されるということ。それからまた、個々の判決においては客観化等でかなり高度の注意義務を課されている例もございますが、しかし現実の判例においてはばらつきがある。しかし、今回この法律ができることによって欠陥という客観的事実になりますので、個々の裁判のばらつきも少なくなるということが期待されるわけでございます。
#208
○沓掛哲男君 この生血と、皆さん方の議論している薬剤とかそのほかのものと、事故の起きる確率とかそういうものはけた違いに違うんですよ。生血というのは物すごい高く起きてしまうものです。ですから、少し便利になるといったって、それはもう程度がたかだか知れていて実際の行動にはあらわれてこないんですよ。
 ですから、現に考えてごらんなさい。私が日赤の生血でそういうものを受けたと。そして日赤を訴えたって、日赤はこの開発危険抗弁で堂々とやってきますよ。現に打った血はもうないんですから。そういう私に注入した血はない。同じ電気冷蔵庫なら、この電気冷蔵庫が事故を起こしたといったって同じものは幾つもあるんですからそれで客観的にどうだこうだとやれるんですが、私に注入してくれた血液はもう世界じゅう歩いたってそういうものはないんですよ。
 そういうないところで議論して私がいろんなことを説明する。それは向こうの方が打ったときに何かのデータ持っているから、それを持ってやるんじゃ太刀打ちできるものじゃないんですよ。私の方は今までの過失じゃなくて無過失的な欠陥でいいというから今までよりは確かに便利にはなったけれども、その水準がけた外れなんですよ。そこでこの問題が非常に重要視されているんですよ。
 ただ、また次のいろいろ問題も聞きたいので、これは両大臣、こういうことをぜひしていただきたいと思うんですよ。それは薬についても、確かに先ほど来から出てくるように、あれは医薬品副作用被害救済・研究振興基金というのがあります。薬によって副作用を受けた人、その人はこの基金からそういう損害賠償を大変容易にしてもらえる。この原資というのは、薬屋さんが売ったお金の一部とそれから大蔵省からお金を出してもらってやっているんです。しかし、ここには血液は入っていないんです。なぜここに血液は入らなかったんですか。もう一度ちょっと説明してください、厚生省さん。
#209
○説明員(市川和孝君) 輸血用の血液、抗がん剤あるいは免疫抑制剤というようなものにつきましては、大変重篤な病気に使われるわけでございますけれども、一方でこれにかわるものもない。しかも、これらのものは相当強い副作用をもたらす可能性が大きい。そういった考え方から、これらによって生じます危険については、やはり患者さんに負担をしていただくこともやむを得ないのではないかという考え方から医薬品の副作用被害救済制度から除外されているということでございます。
#210
○沓掛哲男君 もう一度お願いするけれども、まとめて申し上げれば、中央薬事審議会とか国民生活審議会、そういういわゆる日本の権威の人が反対している、適当でないと言っている。また、いわゆる医療に関係する輸血学会とか外科学会とか医療学会とか日赤、そういうところが全部反対しているんですね。
 ですから、おまえら全部反対しているのならどこかから、アメリカからでも輸入するかということはできないものなんです、この生血というのは。それなら、この間公共料金を凍結したように、じゃ年内はおまえやめておけというわけにもいかないんですよ。きょう、今晩、毎日毎日必ず事故が起きてこれは使われているんですよ。そういうものですから、ここでいろいろするよりも、何としても救済対策をとってほしい。
 それは、幸か不幸か知りませんけれども、日赤はただで、私ら献血されてとられると、牛乳ですかジュースですかと言うから、ジュースやと言うと、ジュースを一本もらって飲んで終わるんですよ。そういうものがたくさん入っている。それを今度は当然有料で輸血しているわけですから、その輸血した際に一人分何千円かオンして、そしてそれを集める。足りない分は、これはまた薬と同じように大蔵省に頼んで、そしてそのお金を集める。そして何の責任もない、しかし必ず今毎日毎日こうして輸血によって死んでいかなきゃならない、あるいはもう一生涯いわゆる不幸な障害者として過ごさなきゃならない、そういう人にやっぱりちゃんとそういうお金を与えられる、そういうシステムをぜひつくってもらいたいというふうに思います。
 これは両大臣にひとつお願いしますので、通産大臣それから総括の企画庁長官、ぜひぜひこの実現のために全力を挙げてやっていただきたい。そのことがまたこのPL法案が大いに生かせる、そういうもとにもなると思いますので、総まとめですから企画庁長官ひとつ決意をお願いします。
#211
○国務大臣(寺澤芳男君) 沓掛委員のおっしゃるように、ここは参議院の商工委員会、私も参議院議員でありますので、あくまでも国民の健康そして豊かな生活のために我々一生懸命に議論しているということは委員と全く同じであります。私たちも、この製造物責任制度の導入が円滑に行われ、制度本来の趣旨が実現されるとともに、それがよりよいものとして定着していくためには、やはり製造業、消費者を初め関係者によってこの制度が正しく理解されてこそ初めて生かされるものと思います。
 いろんな問題が委員御指摘のようにあります。その問題一つ一つについて我々も真剣に取り組み、私は薬の問題についてはぜひ委員のお考えを厚生大臣にもお伝えし、一つ一つ検討していきたいと強く思っております。
#212
○沓掛哲男君 ありがとうございました。ぜひひとつ両大臣にお願いいたします。厚生省も帰って厚生大臣によく伝えていただきたいと思います。
 ちょっとここで時間を取り過ぎてしまったので、次の問題に移らせていただきます。
 次は、欠陥の定義については、消費者団体は細かくするとその証明が難しくなるので反対、製造者側、例えば経団連等は、恐らく何でも欠陥にされては困ると思ったのでしょう、欠陥の概念を具体化、明確化することを強く求めておりました。これらにどう配慮されたか。
 同時に、PL法の第二条二項で定義されている欠陥は国家賠償法での瑕疵とどう違うのか、説明していただきたいと思います。企画庁お願いします。
#213
○政府委員(坂本導聰君) まず、御指摘の欠陥の定義でございますが、この法律上、第二条第二項におきまして、「「欠陥」とはこ「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。」ものとすること、そしてそれを考慮する事情として、「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮してこと、こう書いてございます。
 このことは、一方において、この法律が裁判規範であると同時に行為規範としても機能するわけでございますから、できるだけ欠陥の概念を明確化すべきであるという考え方がございます。そういう面で明確化する必要がございます。しかしながら、一方で余り具体的に個別に書き過ぎますと個々の事案ごとにその判断も異なってまいりますので、ここではその重要性あるいは共通性等を考慮して、ここにございます「特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期」というふうに規定しているわけでございます。
 それから、国家賠償法第二条の瑕疵との関係でございますが、今申し上げましたように、欠陥とは製造物が通常有すべき安全性を欠くことを示す概念であり、広い意味での広義の瑕疵に含まれますが、安全性とかかわる損害を生じないような単なる品質の瑕疵は本法における欠陥には該当せず、本法の対象とはなりません。また、国家賠償法二条第一項の瑕疵につきましては、「営造物の設置又は管理しの瑕疵とされていることから、その内容が設置または管理を行う者の注意義務違反なのか、あるいは営造物の客観的性状なのかについて、学説あるいは判例も必ずしも確定していないと承知しておりまして、この点で行為者の主観的事情が基本的に問題とされない欠陥とは完全に一致しているものではないと解しております。
#214
○沓掛哲男君 通産省にお尋ねします。
 欠陥の定義に当たっての考慮事情は、産業構造審議会や国民生活審議会の報告書では九つありますが、本文では三つに減らした理由をお尋ねします。
#215
○政府委員(清川佑二君) 欠陥の定義の問題でございますけれども、この法案につきましては、製造物の欠陥による被害が生じた場合の賠債の規定がございますので、欠陥の概念がいかなるものであるか、裁判の規範であると同時に、事業者あるいは一般の皆さんにとってどのような製品をつくればよろしいかといった行為規範となるわけでございますので、極力わかりやすくしてほしいというメーカーからの要請がございました。委員御指摘のとおり、産業構造審議会、国民生活審議会等におきましては九つの項目を列挙しているわけでございます。
 他方、争点の拡散あるいは立証負担の増加というようなことにつながらないようにするために調整の必要がございまして、製造物責任の要件の判断の際の代表的な考慮事情について、共通性、重要性、または両当事者にとって中立的な表現になることを念頭に、本法案第二条第二項における欠陥認定に当たっての考慮事情として、御指摘のとおり、製造物の特性、通常予見される使用形態、そして第三に製造業者によって製造物が引き渡された時期の三つを例示したものでございます。
 したがいまして、ここにいう三つの例示の中に九項目の概念が含まれておりまして、第一の製造物の特性とは製造物自体が有する固有の事情でございますが、そこには製造物の表示のほかに製造物の効用・有用性、価格対効果、被害発生の蓋然性とその程度、製造物の通常使用期間・耐用期間だとが含まれているわけでございます。
 第二の通常予見される使用形態の中には、製造物の合理的に予期される使用、製造物の使用者による損害発生防止の可能性などが含まれるわけでございます。
 第三の製造事業者等が当該製造物を引き渡した時期とは、当該製造業者が当該製造物を引き渡した時期における事情でございますので、製造物が引き渡された時期、あるいは技術的実現可能性などが含まれるわけでございます。
#216
○沓掛哲男君 法務省に二つ質問を出していましたが、これ一緒にお答えいただきたいと思います。
 まず、被害者は製品より受けた損害、製品の欠陥、その損害と欠陥の因果関係の証明責任がありますが、被害の迅速な救済という観点からも消費者の証明に係る負担の軽減が必要だと思います。実はここでは推定規定が入っておりませんが、なぜ推定規定を置かれなかったのか。また、こういう被害者の証明がしやすいように何かお考えかどうか。それから引き続いて、この法律では拡大損害がたい場合には対象とならないことになっておりますが、その理由もあわせてお答えいただきたいと思います。
#217
○説明員(升田純君) まず、最初の点でございますけれども、現行の不法行為制度におきましては、製品事故が発生いたしました場合、被害者といたしましては製造業者の過失の存在を立証しなければならないということにたっております。現代の大量生産、大量消費の時代におきまして製品の製造過程が複雑化、高度化、技術化しておりますので、この過失というものを立証することは著しく困難になっておるというところで、本法律案におきましては、その主観的な事情であります過失を客観的な物の性状であります欠陥に変換するということによりまして、まずその立証負担を容易にしております。
 続きまして、なぜ欠陥因果関係、欠陥の存在時期に関して推定規定を設けなかったかというお尋ねでございますけれども、次のような理由によるわけでございます。
 まず、製品に起因します事故は、本来は個々の製品の特性、事故の態様など多くの要素が関係しておるものでございまして、個々の事案の相違を捨象いたしまして法律上一律に一定の事実からこれらの事実を推定する規定を設けますことは、被害者の立証負担の軽減という目的を超えてしまうおそれがあるということでございます。
 次に、個々の事案ごとの事情を問わずに一般的に欠陥あるいは因果関係などの存在を推定するだけの、そういったことを根拠づけるだけの経験則が存在しないということもございますし、またこのような推定規定を設けますことは、不法行為一般の体系を混乱させかねないということがございます。
 さらに、欠陥因果関係の推定規定につきまして、諸外国において製造物責任を導入しました例を見ますと、例えばEC理事会指令などでもそういった推定規定を設けていたいということがございます。
 なお、被害者の立証の負担につきましては、個々の事案の内容ごとにそういった内容に即しまして、経験則あるいは事実上の推定などの柔軟な活用によって適正かつ公平な立証負担の軽減を図ることができますし、これまでの裁判実務におきましてもこれに沿った処理がされてきているということでございます。今後も同様な処理が行われていくということが期待されるわけでございます。
 続きまして、拡大損害の点でございますけれども、委員御指摘のように、本法律案におきましては拡大損害が発生していない場合には製造物責任が適用されないということとされておりますが、これは大体次のような理由によるわけでございます。
 まず、歴史的に見ますと、製造物責任が拡大損害のてん補を目的として発展してきたものであるということがございます。
 また、製造物に欠陥があったとしましても、拡大損害が発生しておらず、その製造物の欠陥によって生じた損害がその製造物自体のみにとどまる場合には、欠陥と欠陥には至らない品質上の瑕疵との区別が事実上微妙で困難な場合が多いということでございます。
 また、拡大損害がない場合にも製造物責任を認めることといたしますと、品質上の瑕疵に関する不当なクレームのためにこの制度が乱用されるおそれがあるということも指摘されております。
 また、品質上の瑕疵につきましては契約責任によって救済できるということもございますので、当該欠陥製品のみに損害が生じた場合には、被害者といたしましては瑕疵担保責任あるいは債務不履行責任を販売者に対して追及することができることになっておりますので、被害者救済にも欠けることはないと考えております。
#218
○沓掛哲男君 次に開発危険の抗弁についてお尋ねいたします。
 PL法の第四条第一号の「引き渡した時における科学又は技術に関する知見によってはこの知見とはどの程度の水準をいうのか。それは大企業と中小企業で異なるか。自分の置かれた環境でなし得る限り努力して得られる水準ではいけないのかということを企画庁にお尋ねします。
 そして、続いて通産省に、中小企業でも創意工夫しすばらしいアイデアで新製品を生み出しておりますが、情報は大企業に比べて著しく劣っております。もし大企業のみ救われ、中小企業は免責されないということになると、中小企業の力が十分発揮できず、大企業が大変有利になる法律ということではないでしょうか。
#219
○政府委員(坂本導聰君) 御指摘の本法第四条におきますところの知見とは、大規模製造業者とかあるいは中小企業製造業者とか特定のものの有するものではなくて、客観的に社会に存在する知識の総体を指すものと解しております。したがいまして、製造業者が大企業である場合と中小企業である場合とでその内容が異なるものにはならないものでございます。
#220
○政府委員(清川佑二君) 第四条第一項の開発危険の抗弁は、これは抗弁の一種でございますから、裁判時において当該製造物が欠陥を有すると判断される場合に被告が立証を行うことによりまして、製造物の引き渡し時における科学または技術の知見によってこれを認識することができなかったと客観的に認められたときにその被告を免責するというものでございまして、この認識は客観的な存在でございます。したがいまして、この抗弁はある時点での客観的科学技術の知見の存否の立証という挙証の問題でもございまして、訴訟実務の問題として、個別の企業の規模あるいは能力、こういったものに直接的な関係はなく中小企業であっても訴訟専門家の助けで対応し得るというものでございます。
 ただ、委員御指摘の、中小企業は一般に人的な能力も限られ技術についての水準も限られるものがある、これをどのようにするかということは非常に重要な問題でございまして、通産省、中小企業庁といたしましても、中小企業の技術力の向上に意を尽くしております。従来から中小企業庁におきまして、都道府県の公設試験研究機関あるいは中小企業事業団等の関係機関と一体となりまして技術指導、技術研修、技術開発、産学官の交流、異業種交流等の技術力向上対策を実施しているところでございまして、今後ともこのような努力を続けてまいりたいと考えております。
#221
○沓掛哲男君 免責されればその製造業者は助かったということでいいんでしょうけれども、被害者はどうなるんでしょうか。救済される手段がないんじゃないでしょうか。
#222
○政府委員(坂本導聰君) 開発危険の抗弁が認められましても、製品を流通した後に製品の欠陥が明らかになった場合には、その時点から製造業者等は当該製品の危険性の公表あるいは指示、警告、場合によっては一時販売停止あるいは回収が求められ、これらのことを行わなかったために事故が発生したことにつき過失があれば現在の民法の不法行為によって責任を負うことになります。
 また、開発危険の抗弁が認められるか否かにかかわりませず、特定分野の被害救済を確実かつ迅速に行う行政上の救済制度として医薬品副作用被害救済基金による被害者救済制度があり、同制度は製造物責任制度が導入されても民事責任の対象となり得ない健康被害について救済の道を開いております。
 さらに、負傷、疾病の療養や障害、死亡に対する保障制度として、ほとんどすべての国民を対象とした健康保険制度、年金保障制度あるいはこれに類する労働者災害補償制度があり、これらの制度の活用によって適切な救済が図られるものと期待しております。
 なお、部品、原材料製造業者の抗弁につきましては、ここも免責されるわけでございますが、通常欠陥ある部品、原材料を組み込んだ製造物も欠陥になりますので、その製造物の製造業者が賠償責任を負うものと考えられ、被害者救済の上で特に問題はないと考えております。
#223
○沓掛哲男君 今できるものばかり言ってくださったのですが、できないものもあるんでしょうから、できないものに対してもいろいろ対応をまた考えていただきたいと思います。
 それから次に、親会社と部品をつくる下請企業との間の損害賠償の分担の公平性は法第四条二号で十分と考えるか、親会社の優越性をどの程度理解しているか、それから下請がPL保険に加入した場合、そのコストを価格に転嫁できるか、そのための何か対策は考えられるか、これは時間の関係上通産省だけでお願いします。
#224
○政府委員(村田成二君) 今、先生お尋ねの点、二点あったわけでございますが、まず、第一点から申し上げますと、法制的な整理は整理としてあるわけでございますけれども、実際のいろいろな現実の取引の中ではいろんな対応が出てくるであろうと思っております。
 具体的に、例えば例示的に申し上げますれば、親事業者が自分の地位を利用しまして下請の製造業者に不当に責任を押しつけるような行為というのが抽象的にはあり得るわけでございます。そういった場合には、これは公正取引委員会の方からお答えするのが適切かもしれませんが、私どもといたしましては、優越的な地位の乱用ということで例えば独占禁止法違反にたるというふうに考えております。
 また、不当な契約に基づきまして親会社が下請企業に求償していく、あるいはPLの保険料等の下請事業者への不当な押しつけを行うというふうなことになりますれば、これは下請代金の減額や買いたたきといったようなことになるわけでございまして、先生御案内の下請代金支払遅延等防止法にも違反するわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、公正取引委員会とも協力いたしまして、こういった事態が生ずることのたいよう下請代金法上の調査あるいは検査というものを今後とも厳しくやっていきたい、かように思っております。
 また、現実問題としまして、先生御指摘の四条第二号、「製造業者が行った設計に関する指示」というところも、きちっとした文書による指示ないしは明確な指示が行われませんと下請企業者にとりまして非常に不利な状況が出来するわけでございまして、そういった点につきましても、下請企業振興協会等々を通じまして下請企業の皆さんに注意喚起を図ってまいると同時に、親企業に対しましても厳格な指導をやっていきたい、かように思っております。
 それから、先生御指摘のPL保険の点でございますが、親企業のPL保険につきまして、今お答え申し上げましたように、これを下請代金絡みで転嫁していくとすれば非常に問題が多いわけでございます。こういった点を下請企業、親企業、それぞれの現実的な関係を踏まえまして私どもとしましては遺漏なきを期してまいりたい、かように存じております。
#225
○沓掛哲男君 次に、賠償されるべき損害の範囲についてお尋ねいたします。
 大損及び物損につき、個人的なものは当然ですが、事業者すなわち企業に生じたものも対象になるのか。例えば、数万円のテレビを買ってきて、立派な工場がそのテレビのために延焼して全部何億円か何十億円なくなってしまった場合、その延焼したものもみんな対象になるのかどうか。その辺についてもお尋ねいたします。
#226
○説明員(升田純君) 本法律案によります製造業者等が責任を負う損害賠償の範囲につきましては、現行の民法の不法行為に基づきます損害賠償請求の場合と同様に、民法四百十六条の規定を類推適用して、実務上いわゆる相当因果関係の法理によって決められることになるわけでございます。
 そこで、民法の不法行為に基づく損害賠償請求のもとにおきまして、事業者に生じた損害がどのように取り扱われるかという点でございますけれども、事業の内容、得べかりし利益の内容、性質、事故の態様、被害者と加害者との関係などの諸般の事情を考慮いたしまして、まず通常損害であるか特別損害であるかという区別、さらに予見可能性の有無という二段階の判断の枠組みを通じまして、その不法行為と相当因果関係にあるかどうかということが判断されまして、相当因果関係のある場合にのみ損害の賠償が認められるわけでございます。その結果といたしまして、個々の事案の内容に即しまして常識的な範囲での損害の賠償がこれまでも認められてきているところでございます。
 製造物責任が認められます場合にも同様な考え方によることになるわけでございまして、本法律に基づきまして製造物責任により損害賠償請求をする場合、それが認められる場合におきましても、その事業者に生じた損害を除外しないからといって損害の範囲が不当に拡大するというおそれはないものと考えております。
 なお、委員御指摘の事例につきましては、今申し上げましたように、諸般の事情が考慮されて判断される、その結果常識的な範囲内で損害賠償が認められるということになろうかと思います。
#227
○沓掛哲男君 次に、保存条件が非常に重要となる食料品のように、製造から消費者の手元に届くまで多段階の流通過程を経るものについて事故の原因をいかに特定するのか。これは主に食料品ですから農水省にお尋ねいたします。
#228
○説明員(本田浩次君) 委員御指摘のとおりに、食品は多段階に流通するものでございますので、食品被害の原因究明につきましては十分な体制をもって行う必要があると思っております。
 農林水産省といたしましては、関係省庁とも連携を図りながら全国十カ所の農林水産消費技術センターにおける食品分析などを中心として原因究明を行うこととしております。このため、農林水産消費技術センターにおきます検査分析体制の整備充実、検査機器の整備による検査分析能力の一層の強化を図りますとともに、食品事故に係ります消費者相談内容の分析、評価の体制の整備によりまして原因究明のための情報の蓄積を図っていくことが重要であると考えております。
 また、原因究明機能の強化のために、食品事故に関しまして関係省庁、都道府県などとの連携の強化にも努めてまいりたいと考えておるところでございます。
#229
○沓掛哲男君 実は、次に行政規制等のかかわりについて十問ほど用意していたのです。これも非常に重要なので、また後日時間をとっていただいて質問させていただきたいと思います。
 本日は、そのまとめとして、先ほどから何回も申し上げましたように、中央薬事審議会、国民生活審議会というそういう権威のあるところで決めていただいたもの、またそういう供給側のすべての人たちが全部これをやってはいけない、これをやったら大変なことが起きると言っているこの法案でございます。こういう過程がいろいろあります。先ほど私が代替的に申し上げた新しい救済制度を設けることによってそういう人たちにも納得いただげるような、やはり法律である以上、ある非常に重要な分野の人が大変不満を持って、特に医療関係の人がもう全員不満を持っておられたのではこれはおちおち病気もできないという大変なことになります。そういう方々への対応もこれから十分御配慮いただきたいことをお願い申し上げまして、両大臣のこれからの決意についてお尋ねして終えたいと思います。
 通産大臣からよろしくお願いいたします。
#230
○国務大臣(畑英次郎君) 本法案につきましては、事極めて画期的な要素を含んでいる反面、いろいろ新しい懸念される、そしてまたこれからの実態の展開の中で解決をしなければならない諸要素が含まれておるというようにも考えておるわけでございます。
 ただいま沓掛先生御指摘の点につきましては、先ほど経企庁長官の方からお答えを申し上げましたとおり、厚生大臣等々にもお伝えをしながら、先生の御意見を十分論議させていただきたい、こう考えております。
#231
○国務大臣(寺澤芳男君) このPL法案というのは、私ども、消費者を守るという意味で非常に大切な法案だと思っております。しかしながら、やはり国民の中に不安があるとすれば、それは徹底的に取り除く、そしてこの法案の趣旨をよく理解していただくということはとても大事なことだと思っております。ぜひ皆さんの御審議をよろしくお願いいたします。
#232
○小島慶三君 本日は、両大臣においでをいただきまして、まことにありがとうございます。御多用中のところを恐れ入ります。
 私は、この法律が提案されたということに対して、人知れず非常な喜びを禁じ得たいものでございます。といいますのは、これは私の造語でありますが、ピューマノミックス、人間経済というようなことを十数年前から主張してまいりました。要するに、システムとか機械とかあるいは情報とか、その中にともすれば埋もれようとする人間の復興といいますか、それが私のいわばうこの信念なんでありますが、そういうことにある程度共通したものを持つ日本新党に年がいもなく投じましたのも実はその思いからでございます。
 日本新党におきましては、御承知のように旗印として生活者主権といったようなことを第一に掲げております。私はその生活者主権の部会長でもございまして、この主権の部会は規制緩和とそれからPL法という二つの大きな課題を抱えまして、そしてPL法につきましては専門委員会をつくりまして、それでほかの各党との折衝、そういうことを始めましたし、また勉強もしたわけでございます。
 そこで、このPL法というのは、社会党さん、公明党さん、あるいは共産党さんからも既に法案が提出されておりますし、それから各省の審議会、国民生活審議会、産業構造審議会あるいは法制審議会といったようだ各省の審議会でもだんだんと議論が重ねられてきております。そういうことで問題の幅というのをだんだんはかってきているわけでありますが、例えば製造物の概念、欠陥の定義、立証の責任あるいは開発危険の抗弁、いろんな点で七、八項目ほど話の突き合わない面がございまして、そういう点で与党各党とも、PL法プロジェクトというものにおきましてもかなりいろんな難しい議論が出てきてまいりました。
 その間に各省の事務方の方でも勉強を重ねられまして、私はとても今国会に提出するようなスピードでまとまらないんじゃないかと思っておったんですが、最終的に各省の調整がつきまして、それでこういう形で法律ができる。しかも、法三章とよく言いますけれども、法六章という非常に簡潔な形で法律がまとめられる。ヨーロッパの経験も、あるいはアメリカの経験も十分にくみ取って、そしてまた日本の独自の可能性というものも織り込んで、かなり見事な法律であると私も評価をしております。
 ただ、これからの問題に課せられていることが非常に多いと思いますので、本日は幸いこの画期的な法案を提出されました両大臣がおられますので、企画庁長官、通産大臣、ひとつこれからの抱負のほどを、あるいは決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
 それからもう一つは、この法律には、今申しましたように非常に簡素な法律ではありますが、それだけに今後の事実の形成といいますか蓄積といいますか、それに課されている問題がかなり多いし、それに対するいろんな措置、こういったものについてもやはり相当な覚悟でこれからの準備をやっていかなければ、一年間の猶予期間、これで果たして万全を期し得るのかどうか、その辺についてもひとつ所信をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
#233
○国務大臣(寺澤芳男君) 小島委員の御指摘のように、このPL法というのは非常に画期的な消費者保護の法律であって、我々としても全力を挙げて取り組んでまいりました次第です。
 現在、大量生産、大量消費の社会において、製品の安全性の確保のためには被害者は製造業者にどうしても依存する度合いが強まってまいります。そういう被害者を救わなければならない、そういう観点から、今までの損害賠償に関する責任要件を過失から欠陥に転換するという非常に大きな意味合いを持った法律であります。そういう意味で委員御指摘の、これからこの法律のみならず、製品に起因する事故から消費者を保護するためには事業者、消費者双方の自己責任原則をも踏まえつつ、事故の未然の防止あるいは再発の防止及び迅速、確実な被害の救済という総合的な施策をやはり講じる必要があります。
 この法案は、消費者被害防止・救済策の一環としての民事責任ルールを変更することを目的としたものでありますが、政府としては、これとあわせて裁判外紛争処理体制あるいは事故原因究明体制等々の整備などの関連する諸施策の充実強化をこれから積極的に進めていきたいと思っております。
#234
○国務大臣(畑英次郎君) ただいま小島先生から御指摘を賜りましたとおり、我が国における国民生活の中におきましては画期的な法案と、こういうように位置づけをさせていただいておるわけでございますが、従来から申し述べさせていただいておりますとおり、この法案を中心としまして、生産者側も消費者側も、そしてまた私ども行政サイドにおきましても、ある意味におきましては意識改革をやっていかなければならない、そういうような意味合いでの行政対応もこれまた必要ではないかなというように考えるわけでございます。
 生産者側におきましてはより安全な製品をつくっていただく、消費者側におきましては的確な選択といいますもの、あるいは使用上のいわゆる注意事項等々にやはりそれなりの自己責任という意味合いの中から的確な対応をしていただくこともこれまた必要ではないかなということも考えるわけでございます。そういうような意味合いでの行政サイドのこれからの取り組みといいますものは、ただいま小島先生から御指摘がございましたように、一カ年間の猶予期間、これを十二分に使いますことはもちろんでございますが、その後も引き続き努力を重ねていかなければならない。
 問題は、事故の未然防止あるいはまた再発防止、そしてまた万が一事故が起きた場合の迅速かつ確実な対応と被害の救済、こういうことが求められる今日の姿ではないかなというように考えるわけでございます。さような意味合いにございましては、当然のことながら行政サイドにおきまして制度内容の周知徹底、あるいは下請対策を含む中小企業対策、消費者に対する教育、啓発の問題、そしてまためり張りのきいた安全規制、表示取扱説明書の適正化等々といったような問題に従来以上に力を入れていかなければならない、さような責任を私どもも持たさせていただいておるというように考えるわけでございます。
 小島先生御指摘のとおり、人間性豊かな経済のありようといいますものを念頭に置いて対応を進めていくべきであろう、かように考えております。
#235
○小島慶三君 どうもありがとうございました。これからもこの画期的な法律の推進にひとつ力をかしていただきたいと思います。
 問題は、やはりこの法律の実施の過程にあると私は思っております。
 私のことで恐縮ですが、前に私、水質保全法という法律の作成を命ぜられたことがございまして、このとき五庁十一省、非常に多くの省庁が集まって、水質の保全についてどうしたらいいかという基本法みたいなものをつくったわけでございます。しかし、これは世評によるとざる法だと言われたんです。実際がどう担保されるのかということでかなり議論があったんですが、その関係でそういった法律ができましたものですから、やはりアナウンス効果というものもありまして、各省それぞれこの水質の保全についての例えは水質基準だとかいろんなものをこれから着々と準備されて、そして一つの今の水質行政の体系になっているというふうに思っております。
 恐らく、そういうことがこのPL法につきましてもこれから起こってくるのではないかというふうに思われるんですけれども、それは先ほどの大臣の御説明でそういう関連するすべてに目配りよくこれからやっていかれると思います。
 それはさておきまして、この法律での問題点として我々危惧しておりましたのは、要するに欠陥概念というものが法律ではそれほど詳細には書いてございません。したがって、欠陥というものは、恐らくこれから時間的な経過を経て逐次具体性をもって形成される、そういう概念だというふうに私は思うんでございますが、しかしそれをジャッジするのはこれは裁判所の務めであろうというふうに思うので、それでちょっとお尋ねをしたいんです。
 今後判例の中で形成されるということでありますが、そういった概念形成の具体的な手続を進めるためにも裁判の場で的確、豊富な情報を持たなければいけないのではないかというふうに思うわけでございます。そういう点から見ますと、例えば証拠開示制度といったようなそういう裁判所で判断の基礎になるあらゆる情報が集められるということがまず第一に必要なことではないかというふうに思われるんですけれども、これにつきましては法務省、おいででございましたらお答えいただきたいと思います。
#236
○説明員(升田純君) 裁判におきましては、必要な証拠が提出され、それによりまして真実が明らかにされる、その真実の上に立ちまして適切な判断がなされる、これが何よりも重要であるということは言うまでもないところでございます。
 そこで、委員御指摘の証拠開示制度の問題でございますけれども、現在法務大臣の諮問機関であります法制審議会の民事訴訟法部会におきまして、平成二年の七月から民事訴訟手続の全面的な見直しの作業が続けられております。その中で証拠収集手続の見直しも検討の対象とされているところでございます。
 我が国の証拠収集手続につきましては、証拠が一万の当事者に偏在する事件における証拠収集の手段としては十分でないという指摘がなされております一方で、アメリカのディスカバリー制度のように広範かつ極めて強力な証拠収集手続を設けますと、この手続の利用に膨大な費用と時間を要するといった大きな弊害があることも指摘されているところでございます。そこで、法制審議会の民事訴訟法部会におきましては、アメリカのディスカバリー制度に見られるような弊害が生ずることがないように配慮しながら、我が国の証拠収集手続を充実したものに改めるという方向で議論が進められているところでございます。
 なお、訴訟におきまして被害者の立証負担というものが問題になりますのは、製造物責任に基づきます損害賠償請求に特有な事柄ではございませんので、民事裁判手続の一般の問題として検討すべきであるというぐあいに考えております。
#237
○小島慶三君 どうもありがとうございました。
 それから、続いて通産省の方にお伺いしたいんです。
 裁判の方ではそういうふうにして逐次最適な情報が積み上がっていく、それによって概念もはっきりさせていく、こういうことになると思うんです。そこにいくまでに製造者と消費者あるいは生活者とのその双方にやはり必要な情報が集まって、お互いにイコールバランスの上で話が進められるという手順が最初に必要なんだろうと思うんですけれども、製品関連事故に係る情報の収集、分析、提供といったようなことにつきまして政策的にどのような措置をお考えになっておられるか、お伺いをいたします。
#238
○政府委員(清川佑二君) 小島委員御指摘の製品事故に係る情報の提供でございますけれども、これは御指摘のとおり、行政における安全規制の反映、あるいは企業における製品安全向上対策の活用、そしてまた消費者にとりましても適切な製品選択、適正使用に資するわけでございまして、いわば公共的な財産でもあるというふうに考えるわけでございます。
 このため通産省といたしましては、昭和四十九年以来、事故情報収集制度を実施いたしておりまして、従来もこのような情報の収集、提供に努めているところでございますが、さらに今後の問題といたしまして、第一に、地方自治体あるいは産業界、消費者などの広範な協力をいただきまして、現在の事故情報、危害情報等の収集制度を通じた情報の収集、これをさらに一層強化していくということとしたいと考えております。
 そして、第二に、事故情報を分析をするということが重要でございますが、通商産業検査所その他国の機関、あるいは消費生活センターなどの地方自治体の機関、そしてまた民間検査機関も活用いたしまして、さらに必要に応じまして実際上商品を市場から調達いたしまして商品テストを実施することによってその充実を図っていくことといたしております。このために所要の予算措置を平成六年度予算においてお願いをしているところでございます。
 そして第三に、このような事故情報収集制度によりまして収集され、あるいは分析された一般的な製品事故情報につきましては、これは極力広く公開をするということで考えております。
 行政情報につきましては、平成三年十二月の行政情報公開基準がございます。これに配慮しながら適時適切にこの提供、公開に努めるというような形で進めてまいりたいと考えております。
 また、さらにつけ加えさせていただきたいわけでございますが、安全な消費生活のためにはやはり消費者の側での知識水準が上がるということも極めて重要でございます。提供された情報がきちんと把握されるということのためにも、学校教育などの場におきまして極力消費者教育が行われることが重要でございますので、そのような冊子を作成する、あるいはまた高い水準の知識を持った消費生活アドバイザーを学校に派遣するなどいたしまして、このような側面からの学校教育の充実にも協力をさせていただくというような形で製品事故に係る情報の収集、分析、提供、そしてその活用に通産省として力を挙げているところでございます。
#239
○小島慶三君 どうもありがとうございました。
 それからもう一つお尋ねしたいのは、これは本朝来先生方の皆さんの御質問の中にもありましたけれども、この法案というものをスムーズに実施をしてその効果を拡大していくということのためには、やはり関係者の理解ということが極めて重要であるというふうに思うわけであります。
 私どもは、方々回りましてこのPL法案についての意見のようなものをいろいろ聴取する機会がかなりあったんですけれども、何といっても不必要な不安ということが非常に大きいんですね。ちょっとこういうものを厳密にやられると仕事がうまく進まなくなるんじゃないかというふうなことがかなり懸念されておりまして、やはりこの面の懸念を払拭するということがまず第一に必要なことではないかと思うんです。特に中小企業の場合がこの点一番大きいと思うんです。
 そういった不安を除くための取り組みと申しますか、こういう点についてどのようにお考えでありますか、これをお伺いしたいと思います。
#240
○政府委員(村田成二君) 実は、このPL法案作成に向けて、もちろん正規の産業構造審議会あるいは国民生活審議会で議論が行われてきたわけでございますが、私ども中小企業庁といたしましては、先生御指摘のとおりいろいろな不安感が中小企業者の中に随分とございました。そういったこともありましたものですから、同時並行的に、非公式にいろいろな中小企業関係者を含めまして十数回にわたるいろんな勉強会、あるいは末端へのいろんな周知徹底の方法について議論をしてまいったわけでございます。
 もちろん、現段階ではそういうことを努力してまいったわけでございますけれども、現在お願い申し上げております平成六年度政府予算案におきましても、先生御指摘のようにいろいろな方々にこういったPL制度についての正確な認識をまず持ってもらうことが必要である、それからまた、それによって予想される事態の発生につきましてもどういうふうな対応が必要か、どういうふうな準備をすればいいかという点についても十分知悉してもらうことが必要であるという観点から、いろいろだ予算計上をさせていただいておるところでございます。
 具体的に申し上げますと、一つは商工会あるいは商工会議所を通じまして、現在予算案では二百カ所を予定しておりますが、そういった基礎的な知識あるいは品質の向上、さらには一般的な紛争処理の機関へのアプローチの仕方等々、こういったことをこういった講習会等を通じまして周知徹底を図ってまいりたい、こういうふうに思っております。また、行政の実務に携わっておられます地方公共団体の皆様あるいは中小企業関係の団体の皆様に対しましても、中小企業事業団等を通じまして今申し上げましたような周知徹底を図っていきたい、こういうふうに存じております。
#241
○小島慶三君 どうもありがとうございました。
 それから消費者の関係につきましては、これは企画庁の方にお尋ねした方がいいと思うんですけれども、消費者教育といいますか、私は場合によってはケーススタディーというものをやる、あるいはそういった欠陥に対する救済、この辺をめぐって一種のトレーニングみたいなものをやる必要もあるんじゃないかと思っておるんですけれども、この消費者に対する教育あるいは啓発、こういったものについてはどのようにお考えでございましょうか、お尋ねをいたします。
#242
○政府委員(坂本導聰君) 製品関連事故による消費者被害を未然に防止するためには、製品の安全性が確保されるということとともに、製品が消費者によって適切に使用されるということが重要であります。製品の安全使用に関する消費者教育の必要性がここにあるわけでございます。またさらに、事故が発生した場合においても、円滑な救済が確保されるよう消費者が被害救済を受けるための手段あるいは紛争解決の規範についての基本的な知識を持つことも必要であり、その結果合理的な判断力も必要になってくるわけでございます。
 このため、御指摘のように消費者への情報提供の一層の推進を図るとともに、製品の基礎的な知識や取扱説明書、マニュアルの読み方等についての冊子を作成するなど、製品安全に係る消費者教育、啓発の充実を図ってまいりたいと考えております。そのことによって自己責任原則のもとにおけるPL制度の充実が図られるものと考えております。
#243
○小島慶三君 どうもありがとうございました。
 製造業者あるいは消費者その双方にわたって企画庁、通産省の、あるいはそのほかの各省のチームワークによりましてできるだけ的確な情報が交換され、対策がさらに練り上がっていくことを期待いたします。
 最後に、私一つだけ企画庁長官にお尋ねをしたいと思うんです。従来の消費者保護というのはこれは企画庁を中心としていろんな対策が練り上げられていると思うんですけれども、このPL法施行ということと、それから従来の消費者保護のいろんな法律、制度、こういったものとの関係、この辺はどのようにお考えか、ひとつ承りたいと思っております。実は私も、さっき申しましたような生活者主権の関係で生活者主権確立基本法といったようなものを内々研究しているわけでありますが、もしそういうものについてお考えがあれば承りたいと思います。とにかく従来の消費者教育との関係、この辺をひとつお尋ねしたいというふうに思います。
#244
○国務大臣(寺澤芳男君) 消費者行政の推進に当たりましては、委員御指摘のように消費者保護基本法、これに基づいていろんな施策が今まで講じられてまいりました。この法案も、製品の安全性に関する消費者利益の増進を図るための施策として、消費者保護基本法の精神を踏まえたものであります。経済企画庁としては、今後とも生活者、消費者重視の観点から、この消費者保護基本法の精神にのっとり、関係省庁、地方公共団体等々と連携をとりながら消費者行政を積極的かつ総合的に推進してまいりたいと思っております。
#245
○小島慶三君 終わります。どうもありがとうございました。
#246
○山下栄一君 PL法の制定の意義につきましてはきょう何度も両大臣からお話があったのでございますけれども、私も、今回の産業全般また国民生活に多大な影響を与える重要法案で、特に多くの省庁にまたがりまとめ上げるのは大変難しいこういう法案が今日国会提出にこぎつけられたことにつきまして、本当に感慨無量の気持ちでいっぱいでございます。
   〔委員長退席、理事沓掛哲男君着席〕
 我が党の取り組みにつきまして、まず少し冒頭お話しさせていただきたいと思います。
 公明党は、国として国民生活審議会が取り組み始めました昭和五十年の初め、この直後の昭和五十五年より政策審議会で研究をし始めまして、平成二年二月、製造物責任法案要綱を作成いたしました。そして、平成四年五月二十七日に党独自で法案を第百二十三国会に提出したわけでございます。そして昨年八月、政権交代後、連立与党内にPL法プロジェクトチームが設置されまして、昨年十二月より五カ月間にわたりまして我が党の倉田衆議院議員がプロジェクトの座長として法制化に向けて取りまとめの努力を進めてまいりました。この間関係各省庁より関係審議会における検討結果をヒアリングするとともに、産業界、消費者団体、労働界、法曹界等広く意見を聴取いたしました。そして本年四月の初め、与党としての最終案、そしてさらに政府法案が取りまとめられまして、四月十二日に国会に提出されたわけでございます。
 百二十三国会に党独自法案を提出して以来九二年を経た今日、ようやくPL法が日の目を見ようとしておりまして、消費者保護、救済の道が大きく開かれることにつきまして本当によかったな、こういう思いでいっぱいでございます。
 こうした経過を踏まえまして以下質問させていただきますが、まず法制定の意義につきまして私は以下三点認識しておるわけでございますが、大きく考えますと一つは消費者重視、生活者重視の流れを定着させる。また、第二は海外主要国で欠陥責任制度の導入が進む中、国際調和に資することができる。そしてまた第三に、製造業者、消費者双方の自己責任原則の強化を図り、規制緩和の推進の基盤を整備することができる等々が考えられると思うわけでございます。この法案の取りまとめの軸となられた経済企画庁長官に感想を簡潔にお願いしたいと思うわけでございます。
 と同時に、日本のPL法導入が国際社会に及ぼす影響、特にいまだ導入されておりませんアジア各国に大きな影響を与えるのではないか、こういうふうに思うわけでございますが、これの見解を少しお聞きしたいと思います。
#247
○国務大臣(寺澤芳男君) まず、この法案の意義については、とにかく大量生産、大量消費の現代社会において本当に被害者を守るというそういう観点から画期的と私は思います。法案が今皆さんの御審議を経ているわけでありまして、私もこの成立を心から願っております。
 それから、国際的な立法状況とか現在の状態を簡単に御説明申し上げます。
 まずアメリカですが、一九六〇年代から判例の展開によりまして欠陥を要件とする製造物責任が一般化しております。他方EU諸国では、一九八五年に製造物責任に関するEC指令が採択されたことを受けまして、加盟各国での立法化が進展しております。また、EFTA諸国でもEC指令とほぼ同一内容の立法化がたされております。さらに、フィリピン、オーストラリア、中国、台湾などアジア・太平洋諸国でも欠陥を要件とする製造物責任立法がなされているものと理解しております。
 本法案は責任要件を製造業者等の過失から製造物の欠陥へと変更するものでありまして、諸外国の立法がほぼ準拠しておりますEC指令と基本的に同様の考え方を採用しております。国際的な制度調和の観点からも有意義なものと考えております。
#248
○山下栄一君 ありがとうございます。
 次に、通産大臣にお聞きしたいと思うんですけれども、PL法の導入が今後の通産省の産業政策に与える影響について簡単にお伺いしたい。簡単で結構でございます。
#249
○国務大臣(畑英次郎君) 今回のPL法の成立が図られますと、先ほど来申し上げておりますとおり生産者側、産業界におきましてはより安全な製品の供給、そしてまた消費者側におきましては製品の正しい選択と使用、そしてまた行政サイドの私どもにおきましては法の趣旨の徹底、そしてまた正しい法の運用ということができます条件整備、こういうことに全力を挙げるわけでございます。
 これは当然これからの二十一世紀へ向けての日本の国内産業の、そしてまた消費者のお立場に対する対応としての取り組みでありますとともに、国際社会での調和といいますものを、あるいはまた貿易等々の取引の中から相手国側のいわゆる産業界に対する安全性の確立等々にも貢献をしていかなければならない、そういう要素をも含んだ今回のこの法案の趣旨であろうというように受けとめまして、そういうような意味合いでのいわゆる期待されるあるべき姿をダイナミックに展開をしていかなければならない責任を負っておる、こういうように受けとめさせていただいております。
#250
○山下栄一君 消費者の立証負担軽減の観点から原因究明体制、また裁判外の紛争処理体制につきましてお伺いしたいと思います。この件につきましてはきょう沓掛委員その他からもお話があったわけでございますが、具体的にお伺いしたいと思うわけでございます。
 まず、原因究明機関の整備についてでございますけれども、消費者が身近で安心して利用できる、特に地方レベルの原因究明機関として消費生活センターの役割が期待されておるわけでございますけれども、人の面の質と量、また商品テスト、分析テスト等の機器、非常に貧弱で非常に古い、極めて不十分な体制であると聞いておるわけでございます。今回のPL法導入につきまして身近に利用できる機関として非常に消費生活センターの充実が求められると思うわけでございますけれども、特に経企庁といたしまして都道府県への働きかけ、また機器整備のための国としての支援をどのようにお考えか、具体的にお伺いしたいと思います。
#251
○政府委員(塩谷隆英君) 各地の消費生活センターは消費生活、消費者の生活の場に近いところで原因究明を行っておりまして、消費者にとっては利便性が高い機関でありますけれども、委員御指摘のとおり人員の手薄さ、機器の老朽化等、体制が必ずしも十分とは言えない状況にございます。このため経済企画庁といたしましては、各地の消費生活センターにおける原因究明機能を充実強化するために、商品テスト機器整備のための交付金を都道府県等に交付することとしているところであります。
#252
○山下栄一君 地方レベルでございますが、この原因究明機関として消費生活センター以外にどのような機関が考えられるかということ。それと、この消費生活センターとそれ以外の今お聞きしました機関相互の連携そして協力体制、これも強化していく必要があると思うわけでございますが、それの取り組みについてお伺いしたいと思います。
#253
○政府委員(塩谷隆英君) 都道府県におきましては消費生活センターのほかに工業技術センター、衛生研究所、農業試験場等の各種試験研究機関や保健所等が設置をされておりまして、原因究明等の役割を果たしております。
 各地の消費生活センターの人材、設備等では対応できないような製品事故につきましては、これらの原因究明機関等との間で苦情処理テストを依頼したり、アドバイスを求めたりすることができるように連携体制を整備していく必要があると考えております。このため、国の機関や国民生活センターにおきましても、各地の原因究明機関を結ぶネットワークのかなめとして、消費生活センター等からの問い合わせに対して適切な機関を紹介、あっせんできるような体制の整備を行うこととしております。
#254
○山下栄一君 地方レベルの、消費生活センターと同じく都道府県内のその他の民間検査機関とか大学とか、その横の連携をしっかりとつくっていく必要があると思うわけでございます。この辺の国としての指導と申しますか働きかけといいますかをしっかりお願いしたいと思いますし、今審議官からお話ございましたように、国民生活センターから地方へというネットワークづくりも大変重要だと思うわけでございます。予算も計上されていると思うわけでございますが、その辺の強化拡充をどうか具体的に、計画的にお願いしたいと思います。
 特に、国レベルにおきましても国民生活センター、また通産省所管の通産検査所、先ほどから何度も言われましたですけれどもこの原因究明体制、技術の問題とか予算措置とか、これについても強化拡充をお願いしたいと思うわけでございますが、具体的に取り組みがございましたら、国民生活センターまたは国レベルの諸検査機関の充実について経企庁、通産省両方からお願いしたいと思います。
#255
○政府委員(塩谷隆英君) 国民生活センターといたしましては、第一に商品テストのための設備、機器の整備、第二に原因究明のための商品テスト実施体制の強化、第三に商品テスト情報の収集、提供システムの構築などを図ることによりまして、各地の消費生活センターにおける対応が難しい製品事故に関する原因究明について国民生活センターが引き受けられるようにその体制を整備してまいりたいと考えております。
#256
○政府委員(清川佑二君) 通産省におきましては、原因究明体制、このためにはネットワークを構築し、かつ施設の整備、能力の拡充が大切と考えておりまして、各地の消費生活センターあるいは役所の消費者相談室のようなところから相談が来るわけでございますが、これらについて相談に乗る体制、そしてまたこれを含めて処理をする体制が必要であるということで拡充をいたしているわけでございます。
   〔理事沓掛哲男君退席、委員長着席〕
 第一に、通商産業検査所におきましては、平成六年度の予算におきまして安全基盤の整備に関する技術のデータ取得、分析あるいはその蓄積、試験評価方法の開発等、安全基盤の整備関係業務について大幅な予算の増額をお願いしているところでございます。
 また、民間研究機関の受け入れ体制を整備することによりましてノウハウを有する既存の民間研究機関が活用されるということは極めて大切でございますので、通産省関係の予算も新規にお願いをしているという状態にございます。
 また原因究明の能力を有する大学研究室あるいは民間の検査機関、こういった各機関、これが各地域におきまして存在いたしておりますので、地域ごと、あるいは製品分野ごとに活用され得るような状態にすることが必要でございます。このような各地の原因究明機関の実態調査、そしてそのデータベースを図るための予算につきましても平成六年度の予算要求でお願いをしているところでございまして、このような施策を総合的に推進して、原因究明体制の整備をお願いしたいと考えております。
#257
○山下栄一君 地方から国への原因究明の要請が来た場合なんですけれども、どういう場合にその要望を受け入れるかという対象の選定等の基準、これはそれぞれ国民生活センターまたは通産検査所等におありだと思うんですけれども、この辺もこれから整備したり、また見直しをする必要があるのではないか。その場合の費用負担はどうなってくるのかということです。こういう要望の受け入れ基準と費用負担の現状、また見直しにつきまして、それぞれお聞きしたいと思います。
#258
○政府委員(塩谷隆英君) 国民生活センターにおきましては、各地の消費生活センター等からの依頼に基づきまして年間四十件程度の苦情処理テストを実施しております。苦情処理テスト対象事例の選定に当たりましては、重篤な人身被害に係る案件及び類似事故が多発するおそれのある案件等、公共性の高いものを優先することとしております。今後、製品事故に係る原因究明を効果的かつ効率的に実施するために苦情処理テストの実施基準をさらに明確化する等、運営体制の整備を図っていくこととしております。
 費用負担の問題につきましては、苦情処理テストは事故の重篤性、多発性を考慮して公共性の高い事例を優先的に取り扱っておりますので、国民生活センターの事業予算により実施をしております。製造物責任法施行後においても、主として公共性の高い事例を対象として原因究明を実施することになろうと思いますので、依頼者に経費の負担を求めないことを原則とすべきであるというふうに考えております。しかしながら、個別被害の救済等多様な要請に対処するために、この原則を踏まえつつ、原因究明における国民生活センターと依頼者との費用負担のあり方等についても今後検討してまいりたいと考えております。
#259
○政府委員(清川佑二君) 通産省におきます各種の試験、検査でございますけれども、事故情報あるいはその製品にかかわります事故というものは、その再発を防止するために極めて重要な意義を持っております。消費者にとりましても重要な意義を持つと同時に、また製造業者にとってもその改善が必要でございます。行政にとっても安全のため必要でございますので、いわば事故情報あるいは事故の原因究明というのは公共の財産に類するものと位置づけているわけでございます。
 そのようなことから、先ほどの説明と重複いたしますけれども、通産省におきまして、製品事故の原因調査、分析ということにつきましては、消費者相談窓口あるいは各地の消費者センターなどから相談があったもの等々で把握したものにつきまして行政上重要であると判断するものにつきまして選択をいたしまして、種々の商品テスト、これは市場から買い求めた形で行うわけでございますが、このような形で予算措置を講じ、製品事故の原因の調査を行うことといたしているわけでございます。
#260
○山下栄一君 費用負担はどうですか。
#261
○政府委員(清川佑二君) したがいまして、この費用につきましては、行政の必要に応じて行っているということもございまして、委託をいたしまして私ども通産省として費用を出して行っているわけでございます。なお、一般的な訴訟その他に関係しまして何らかの形で民間の方がなさっておられるというもの、これはまた民間の方々あるいは消費者の方々のみずからの費用によって行っていただくということになりまして、私どもは行政上の必要に応じてみずからテストを行うということにいたしております。
#262
○山下栄一君 この原因究明体制の問題につきましても、猶予期限は一年ということでございますので、これから地方と中央それぞれの、国民生活センターまた国レベルにおきましても通産検査所、その他の各公益法人の検査機関等、やはりこのネットワークのかなめというのがございましたですけれども、具体的にそのネットワークづくりを整備する必要があるのではないかと思いますので、その辺の強化をしっかりとお願いしたい、このように思います。
 次に、紛争処理体制でございますけれども、特に都道府県レベルの消費生活センター、相対交渉で解決できなかった問題を処理するというそういった対処でございますけれども、先ほどありましたように人員の面、人の手当ての問題で非常に厳しい状況があると。常勤でないとか、また具体的な専門的な知識がとてもなくて対応できないとか、そういうことがございまして、非常に実態は寂しい状況にあるのではないかと思うわけでございます。
 この消費生活センターのこういう相談体制の強化という観点から、各地の消費生活センターの設置状況、予算、また相談員の現状がどうたっておるのか。また、今後この紛争処理能力を向上させるために相談員の待遇改善、また相談能力向上のためのさまざまな研修等、中央からの派遣による指導とかさまざまな手当てが必要になってくると思うわけでございますが、その辺の国としての取り組みにつきましてもあわせてお聞きしたいと思います。
#263
○政府委員(塩谷隆英君) 消費生活センターは、主として昭和四十年代後半から大幅に増加をいたして、昭和四十八年度にはすべての都道府県に設置をされております。昭和五十年代以降は市または区立のセンターを中心として増加をいたしておりまして、平成五年四月一日現在、全国で三百三カ所となっております。
 予算につきましては、平成五年度当初で消費生活センター費三十六億円が計上されております。これは経済企画庁の調査でございます。
 また、各地の消費生活センター等で消費者苦情の処理に当たっておられるのは消費生活相談員を中心にしておりますが、この方々は主婦を中心といたしておりまして全国で約二千二百名配置をされております。
 消費生活相談員の雇用形態は、約九割が非常勤の職員等で占められております。その充実を図るべきではないかという御指摘でございますが、各地の消費生活センターにおきましては、消費生活相談員により消費者苦情の処理が行われておりまして、その内容は近年複雑化、高度化してきておりまして、相談業務に携わる相談員にも高度な知識と能力が求められております。このため、相談員に対します研修制度の充実、あるいは消費生活専門相談員資格制度というものがございますが、この制度の定着を図ることにより相談員の能力、資質の向上に役立てていきたいと考えております。
 また、相談員の待遇につきましては各自治体が自主的にお決めになる事項でございますけれども、経済企画庁といたしましても、専門相談員資格制度の普及定着等を通じて待遇改善が実現していくように努力をしてまいりたいと考えております。
#264
○山下栄一君 各地方レベルの消費生活センターの現状についてお話があったわけでございますが、とてもPL法の制定に伴って具体的な身近な消費者の相談を処理できるような体制になっておらないという厳しい現実があるのではないかと思うわけでございます。国として直接厳しい指導などできないかもわかりませんけれども、基本的には各自治体の、都道府県の強い取り組みということが非常に重要になっていくと思うわけでございますが、やはりこの辺の大きな理解を広げながら国としても積極的な働きかけをぜひともお願いしたいと思います。
 次に、消費生活センターレベルの紛争処理というのは、相談に乗る、苦情を処理するというまだ相対交渉を補助するというふうな段階だと思うわけでございますが、これで解決できなかった問題を処理できる地方レベルの体制があるのかということでございます。特に、裁判外の紛争処理体制という観点から、安心して公平中立の観点から身近に利用できる、さらに裁判に準じた能力を持った組織ということで、私は都道府県にある苦情処理委員会というのが非常に今後重要な働きをするべきである、このように考えるわけでございます。
 その苦情処理委員会につきまして少しお話を聞きたいと思うわけでございますけれども、これは各地域の条例によりまして設置されておる、このようにお聞きしておるわけでございますが、実態はほとんど機能していないということも見聞しております。現在、都道府県における苦情処理委員会の設置状況、開催回数また問題点、これをどのように認識されておるか、お願いしたいと思います。
#265
○政府委員(塩谷隆英君) 苦情処理委員会は現在、四十七都道府県中四十四都道府県、政令指定市におきましては十二市中七市において設置をされております。
 開催状況でございますが、一部を除きおおむね年に一、二回程度開催されているか、または開催実績のない都道府県が多くなっております。
 苦情処理委員会は身近な場所に存在する機関として消費者にとって利便性の高いものではありますが、問題点といたしましては、第一に製品関連技術など専門的事項に対応し得る人材や紛争処理事例等の蓄積が十分でないこと、第二に公益性の観点から紛争が選別をされておりまして、製品関連の個別紛争処理そのものを行う体制になっていないこと等があると認識しております。
#266
○山下栄一君 形としては設置されるようになっておるわけでございますけれども、今お話ございましたように、年に一回とかそういう実態になっておる。また、苦情処理委員会のメンバーにつきましても名誉職等でございまして、具体的に専門性とかそんなことを考えていきますととても機能しておらない、そういう実態ではないかと思うわけでございます。
 この苦情処理委員会の地方における紛争処理機関としての役割はこれからPL法導入によりまして大変期待されておりますし、さまざまな審議会答申におきましても苦情処理委員会の活用が言われておるんですけれども、現実はとてもそういう状況じゃない。この活性化のために国として積極的な対策、指導を考えていく必要があると思うわけでございますが、この点につきまして御見解をお願いいたします。
#267
○政府委員(坂本導聰君) 御指摘のように苦情処理委員会はそれなりの役割を果たしておりますが、しかし人材等が十分でないということもございまして、製品関連技術等の専門的事項にいかに対応するかが大きな課題となってきております。このため政府といたしましては、必要に応じて製品関連技術専門家等を派遣するなど、都道府県等の苦情処理委員会等に対する支援の強化について検討しているところでございまして、消費者が身近に利用できる紛争処理機関として一層の活用を図っていきたいと考えております。
#268
○山下栄一君 寺澤大臣、今のやりとりをお聞きになりまして、原因究明機関、紛争処理機関もそうでございますが、特に地方レベルの体制が非常に弱体であるということをお感じになったと思うわけでございますけれども、この紛争処理、原因究明機関の整備が緊急の課題である、このように感ずるわけでございます。これを強化拡充を図るという観点から長官の御所見をお聞かせいただきたいというふうに思います。
#269
○国務大臣(寺澤芳男君) 委員御指摘のように、一番大事な裁判の外の紛争処理体制あるいは事故原因究明体制、これが十分でないというふうに私も認識しております。大変突っ込んだ御質問ありがとうございました。御指摘のように、製造物責任制度の導入に合わせまして、被害者が利用しやすい制度の整備を積極的にこれから推進していきたいと思っております。
#270
○山下栄一君 長官、前向きの御答弁をどうもありがとうございました。国を挙げての整備体制をどうぞよろしくお願いしたいと思います。
 最後に通産省にお聞きしたいと思います。
 先ほどから何度も出ておりますけれども、中小企業に対する支援ということでございます。製品の品質管理強化それから安全性向上のための設備投資が特に中小企業レベルでも非常に緊急の課題であると思うわけでございますが、その対応の面では資全力からなかなか難しい面もあるわけでございまして、国として財政支援が必要であると思うわけでございますが、具体的にお聞きしたいと思います。
#271
○政府委員(村田成二君) 製品の安全性の向上に関します中小企業の努力を支援すべく、私ども、平成六年度予算案で要求を申し上げておるわけでございます。
 具体的に御紹介申し上げますと、これは金融上の支援ということを中心に行いたいと思っております。中小企業金融公庫及び国民金融公庫から、特に現在は年四・三%でございますが、製品の安全性の向上を図るための設備投資を行おうとする中小企業に対しまして、このような低利の融資制度を創設すべく予算計上させていただいている次第でございます。
 なお、既に六年度の税制改正につきましては、国会の方の御了解が得られたところでございますけれども、やはり設備投資に関連いたしまして、中小企業の新技術体化投資促進税制、いわゆるメカトロ税制でございますけれども、その品目追加を行いまして、安全性向上にも資する設備につきまして七%の税額控除あるいは三〇%の特別償却制度というものを拡充強化しているところでございます。
#272
○山下栄一君 ありがとうございました。
#273
○橋本敦君 続いて、私から質問をさせていただきます。
 最初に、政府が今回この製造物責任法案を提出したことの意義に触れておきたいと思うのであります。
 といいますのは、この経過には御案内のとおり二十年に及ぶ市民の皆さんを初めとする貴重な運動の経過がありました。製品の欠陥による被害の救済のために製造物責任法を求める運動は、カネミ油症事件あるいはスモン訴訟など多くの市民の犠牲と苦労の上に積み重ねられた経過の上に立っているわけであります。ところが、その間一貫して産業界あるいは政府は反対もしくは消極的な姿勢をとってまいりました。それを押し切って今回、民法の不法行為の原則である故意または過失を欠陥に変更させて、今回の法案を政府に提出させる、こうなったわけでありますから、それ自体私は大きな国民の運動の成果であるというように思います。この運動に真剣に取り組んでこられた被害者、消費者、弁護士その他関係者や団体の皆さんの長年にわたる御努力に私どもも敬意を表する次第であります。
 その上に立って政府案を検討いたしますと、私どもの立場では、真の被害者救済という観点からは不十分な点があると考えざるを得ないという立場で、日本共産党の法案を本会議にも趣旨説明を行い、本日も理由を述べさせていただいて提案をしたわけであります。
 そこで、そういう立場でお伺いをする第一の問題でありますが、政府の政治姿勢に関連をして法案第一条について伺っておきたいと思うのです。
 この法案の第一条では、「被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」と規定されております。我々日本共産党案では被害の救済を図ることを最大の眼目とし、それを貫いて被害の救済を図るために、「製造物の欠陥による被害の予防及び消費者の保護に資することを目的とする。」というように、この法案の基本目的を被害者の救済、保護ということに一貫して規定をしておるわけであります。ところが、政府案で「国民経済の健全な発展に寄与する」という文言がどうして必要なのであろうか、なぜこの規定が必要なのかということが我々の立場での一つの問題でありました。
 といいますのは、政府も御存じのように、環境基本法、公害基本法が制定される際に、公害患者の救済、その予防と同時に経済発展との調和ということが大議論になりました。つまり、産業界の利益に反しない範囲でしかやらないのかという疑問が提起をされたわけであります。そうであっては被害者保護の目的を貫徹することができない。
 そこで、この法案の第一条の目的に、「国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与する」という文言をわざわざ入れたという趣旨はどこにあるのか。被害者保護だけでよかったのではないかどいう点について、その基本的なお考えを伺いたいと思うのですが、いかがでしょうか。
#274
○政府委員(坂本導聰君) この法律案における第一条の目的の中で、「被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」と規定しております。本法の直接の目的は、製造物の欠陥により被害が生じた場合における被害者の保護を図ることであり、もって以下に述べられる国民経済の健全た発展は被害者の保護を図ることによって達成されることが期待されている内容を示しているものでございます。
 そこでは、製造物責任の導入によってもたらされる裁判の争点の明確化、判例の水準の平準化といった裁判に与える影響はもとより、製造者、消費者双方の製品の安全性に対する意識の変化、裁判外におけるクレームの処理の円滑化、あるいは製造者はより安全性の高い商品の供給に努力されることが期待される、さらには国際的に調和のとれた制度の確立といった効果も期待されるということで、この規定を入れているところでございます。
 またなお、被害者の保護を図りではなく消費者の保護を図るということはいかがかという点でございますが、被害者に限らず、例えば自動車の事故によって直接の自動車の運転者ではない人も影響を受ける場合もありますので、むしろ消費者の保護を図るよりも被害者の保護を図るという方が広い概念になると考えております。
#275
○橋本敦君 わかりやすく言えば、私が指摘した問題については、被害者の保護を図るというのがあくまでこの法の基本的な規範的内容であり姿勢であり、それが眼目だと、このことははっきり御答弁いただいたことと理解してよろしいですね。
#276
○政府委員(坂本導聰君) 御指摘のとおりでございます。
#277
○橋本敦君 大臣に一言これに関連してお伺いしたいのは、法律の第一条は多くの場合その目的、基本理念をうたっておりますが、これは単に抽象的な理念というだけでなくて法律を解釈する場合の規範的内容を決める、あるいは運用する場合の行政上の指導も含めた運用の基準を決める、そういう意味で極めて重要なものとして目的、第一条というのは理解しなきゃならないわけですね。
 したがって、私が今議論したように、この法案については、財界の利益優先はもちろんそういうことはないと、被害者保護を中心に置いた法案として政府もこれを含めて運用するということについて間違いはないというお話ですから、大臣としてもその点の御答弁をいただきたい。まさにそれは立法者の立法意思ということを明確にしていただく上で必要だからでありますが、いかがでしょうか。
#278
○国務大臣(寺澤芳男君) 政府委員が御答弁申し上げたとおりでありまして、国民経済の健全な発展を目的とするということは、産業界に配慮したものでも被害者の保護と対立矛盾するものでもなく、これによって本法の解釈及び運用が被害者に不利な形でなされるわけではないのであります。あくまでも本法の直接の目的は、被害者の保護ということに力点を置いているのであります。
#279
○橋本敦君 わかりました。そういう政府のお考えを了としながら、次の質問に移ってまいりたいと思います。
 その次の問題は、欠陥の概念規定の問題であります。
 この問題については、いろいろ長い議論の経過があるわけでございますが、欠陥とは何かということについて、政府の法案第二条によりますと欠陥の定義につきましては、「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情」、こういった文言が入ってくるわけであります。そういうものを考慮した上で、「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」、こう規定されております。これの解釈、実際の運用はどうなるかということが極めて多くの問題を含むわけであります。
 我々日本共産党案は、この点については極めて明確に、言ってみればだれが読んでも明確に解釈されるように規定したつもりでございまして、「通常予期される使用に際し、消費者が正当に期待し得べき安全性を欠いていること」というように明確にしております。つまり、このことは、御存じのとおりに、消費者の皆さんや国民の議論の中で定義については消費者期待基準を取り入れて、そしてそれを明確にすることによって救済を迅速かつ適正にやっていくという、そういうことを踏まえているわけであります。
 ところが、政府の法案では、今私が指摘したような定義を明確にする上でかえって明確でたい、欠陥の定義を決めるのにどういった点が考慮されるのか、それ自体不明な条文が入ってきているというのが一つの問題であります。
 そこで、問題の経過があるのは言うまでもありませんけれども、九三年十二月十日の第十四次国生害消費者政策部会の報告で、欠陥の概念は裁判規範であると同時に製造者、消費者それぞれにとっての行為規範としても機能するものであることから、欠陥の有無の予測可能性を高めていく観点からも、欠陥の判断の基準ないし要素を、EC指令が例示しているもの以外にも重要なものとして、製品の効用・有用性、製品の価格対効果、技術的実現可能性、被害発生の蓋然性とその程度、使用者による損害発生防止の可能性、製品の通常使用期間や耐用期間、いわゆる大要素とも九項目とも言われる、これが望ましいというこういった報告をしているわけですが、この報告との関係が私の質問の内容であります。
 つまり、こういった国生審が出した欠陥概念のこのような要件、要素については、政府案はこれを削除してしまった。これを削除して欠陥概念を明確にするようにしたということで評価されている向きもあるんですが、なるほど文言ではそれが消えた。しかし、今私が指摘したように、政府案の四つの要件の中ではこれと類似もしくはこれに相当するような要素が結局入っているのではないかという疑問を抱かざるを得ないのであります。
 そうなりますと、欠陥という概念の定義について、これが消費者期待基準で言われているような明確性を欠くものとなって被害救済にマイナスになるのではないかという心配をするわけですが、政府としてはどうお考えですか。
#280
○政府委員(清川佑二君) 本法案におきましては、欠陥による被害が生じた場合の損害賠償を定めているわけでございまして、したがいまして欠陥の概念というものは裁判の規範であると同時に、また、消費者あるいは事業者一般にとってどのような点を考慮すればよいのかといった行為規範ともなるわけでございまして、極力わかりやすくするということが一つ大きな要請とたっているわけでございます。また同時に、これが裁判という関係になるわけでございますから、争点が拡散しないように、あるいは立証負担が増加するというようなことのないようにという被害者の救済の要請とがあるわけでございまして、この調整が必要となるわけでございます。
 製造物責任の要件の判断の際の代表的な考慮事情につきまして、共通性、重要性、そしてまた両当事者にとって中立的な表現となることを念頭に工夫を行って、この本法案第二条第二項におきまして、欠陥に当たって御指摘の三つの考慮事情、すなわち製造物の特性、通常予見される使用形態及び製造業者によって製造物が引き渡された時期の三つを例示しているわけでございます。
 ここに言っております製造物の特性といいますのは製造物自体が有する固有の事情でございます。先ほど御指摘のありました製造物の表示のほかに製造物の効用・有用性、価格対効果、被害発生の蓋然性とその程度、製造物の通常使用期間・耐用期間などが挙げられるわけでございます。なお、通常予見される使用形態という概念の中には、製造物の合理的に予見される使用、製造物の使用者による損害発生防止の可能性が挙げられるわけでございますし、第三の引き渡し時期に関しましては製造物が引き渡された時期あるいは技術的実現可能性など、九項目のうちのそれぞれがこの三つの概念の中に含んで挙げられるわけでございます。
 したがいまして、先ほど御指摘のありました製造物の表示はこの製造物の特性の概念の中に含まれているわけでございますが、このような概念を総合的にかつウエートづけを考慮して、個別の裁判におきまして裁判所において欠陥の有無が判断されることとなるわけでございます。
#281
○橋本敦君 ですから、今の御答弁で明白なように、私が指摘したとおり、国生審の報告にある要素が結局はこの定義の中に含まれているということが明らかになってくるわけですね。
 その点で注目してほしい問題は、経団連の副会長で経済法規委員長でもあった歌田勝弘氏が、日刊工業新聞のインタビューに答えて、審議会や与党プロジェクトチームで申し上げてきた欠陥概念の明確化、推定規定の排除、開発危険の抗弁、責任期間十年の四点がある程度取り入れられたとこう言って、財界の意見が取り入れられたことを得々と言っておられるわけです。だから、この点で、先ほど被害者を救済する立場を基本にして解釈、運用するとおっしゃったけれども、この第二条の概念の中には財界のこういう意見が滑り込んでいるということ、この問題について私たちは軽視ができないと思うんです。
 そもそも欠陥ということについて言いますならば、通常の使い方をしていたにもかかわらず事故が起きるということ、すなわち消費者が正当に期待する安全性をその製品が欠いていること、これが基本であるはずです。だから、そういう意味で消費者期待基準のこういった考え方はEC諸国でも通用しておるし、アメリカでもそういった内容の法規制、判例がそういう方向に出ていることは御存じのとおりです。
 だから、そういう意味では、この法案は第二条でできたわけでありますが、第一条でおっしゃったように、この概念の定義、解釈、運用についても消費者期待基準に示された世界及び我が国のこういった世論をしっかりと踏まえながら不当に欠陥概念をあいまい化しない、そして被害者救済に欠かないようにやっていくという、こういう立場をきちっと踏まえてほしいと思いますが、いかがですか。
#282
○政府委員(清川佑二君) 欠陥の概念の明確化につきまして、先ほどのお答えと重複するわけでございますけれども、この欠陥という概念は新たに導入される概念でございまして、主に裁判規範として機能するわけでございますけれども、やはり事故の防止あるいは裁判外での紛争処理に当たっても種々勘案される行為規範としても機能されるわけでございます。そのような意味では、消費者にとっても企業にとっても予測可能性あるいは透明性を高め、そしてこれによりまして製品の安全性向上につながるという意味では製品事故の未然防止にも極めて重要なものであると考えるわけでございます。
 先ほど特定の団体の関係者のお話の御紹介がございましたけれども、中小企業団体のような団体におきましても、やはりどのようなことがこの欠陥という概念に当たるのかということを明快にしてほしいという、そのようないわゆる弱小の中小企業にとっても重要なことであると指摘されております。
 したがいまして、この欠陥の概念、先ほど申し上げましたような九つの概念を含めて三つの例示をつくっておりますけれども、極めて重要なものであると考えております。
#283
○橋本敦君 十分私は納得できる答弁だとは思わないんですが、消費者期待基準ということがこの製造物責任法を進めていく上でどれほど重要なものとして論ぜられてきたか、時間がありませんから諸外国や我が国での論議はもう繰り返しませんが、政府案には消費者期待基準を明確に採用していないという問題について検討すべき問題があるということを指摘して、次に進みます。
 その次の問題は表示の問題であります。
 ご存じのように我が党案は、提案説明をさせていただきましたように、この表示の問題も重視をいたしまして、当該製造物に係る説明、指示、警告その他表示を欠いている、あるいはその表示が不適切であることによって消費者が正当に期待し得べき安全性を欠くことのある、そういった場合も欠陥に含めております。これはEC指令でも入っているはずでありますが、なぜ政府案ではこれを外したのでしょうか。
#284
○政府委員(清川佑二君) 委員御指摘のECの指令におきましては、製造物の外観、それから合理的に予期することが可能であった製造物の使用、そしてまた製造物が流通過程に置かれた時期といったものを含むすべての事情を考慮した上でとございまして、ECの指令の中には確かに表示についての、あるいは外観についての規定があるわけでございます。
 この表示の概念につきまして、本法案におきましては製造物の特性という概念は例示されておりますけれども、この製造物の特性という概念は製造物自体が有する固有の事情でございまして、製造物の表示、ほかに製造物の効用・有用性、価格対効果、被害発生の蓋然性とその程度、製造物の通常使用期間・耐用期間などをこの製造物の特性という概念の中に含んでおりまして、今御指摘の表示につきましてはこの製造物の特性の概念に含んでいる次第でございます。
#285
○橋本敦君 今、非常に重要な御答弁をいただきました。
 表示はおっしゃるように外しであるけれども、しかし、製造物の欠陥及び製造者の責任を判断するという事情の中では当該製造物の特性とそのこととの関係で考慮していくべき筋だということでありますから、適切な表示を欠く、あるいは表示そのものがない、こういったことで安全性を欠いている場合にはそれは製造物製造者の責任の重さということとの関係で考慮するというお話でありますから、そういう点は一つの重要な今後の運用に係る答弁だと私は思います。
 しかし、それは解釈、運用の問題でありますから、我が法案が指摘しておりますように、あるいはEC指令がはっきりしておりますように、表示を欠くことも欠陥だと規定することが、それは解釈の余地なく明確になるという意味で私は大事な問題であろうというように依然として考えておるわけであります。
 そこで、結論として、これを含めて消費者期待基準を採用しなかった理由をわかりやすくおっしゃっていただきたいと思います。
#286
○政府委員(清川佑二君) 製造物の欠陥につきまして三つの例示があるわけでございますが、製造物の特性、そして予見される使用形態、その製造業者が製造物を引き渡した時期その他すべてを勘案して製造物が通常有すべき安全性を欠いているということをいう、ということでございまして、客観的な形で製造物の安全性の問題を個々に規定することはできるというふうに考えております。
#287
○橋本敦君 わかりました。
 そうしますと、消費者期待基準を採用したとは言わないが、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること、これが定義の問題で欠陥の基本的中身だと。それ以上に定義をいろいろ書いております。総合的判断に帰するという状況はそれなりにいろいろおっしゃいましたが、消費者期待基準は明確に採用したとは言わないけれども、欠陥についての一番大事な問題はその当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることだという趣旨の答弁があったものということを了解いたしまして、この点はそういうものとして政府の解釈を見ていきたいと思います。
 そこで、委員長、この次に私は開発危険の抗弁についてお尋ねしたいんですが、ちょうどあと三分では中途半端になりますので、きょうはこれで終わらせていただいて次回に譲りたいと思います。
#288
○委員長(中曽根弘文君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。
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#289
○委員長(中曽根弘文君) 次に、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 製造物責任法案(閣法第五三号)及び製造物責任法案(参第二号)の審査のため、明二十一日の委員会に参考人として全国商工会連合会専務理事辛嶋修郎君、東京都地域婦人団体連盟事務局長田中里子君、帝京大学法学部教授川井健君及び国立国際医療センター総長高久史麿君、以上の四名の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#290
○委員長(中曽根弘文君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時五十七分散会
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ソース: 国立国会図書館
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