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1994/06/21 第129回国会 参議院 参議院会議録情報 第129回国会 商工委員会 第8号
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1994/06/21 第129回国会 参議院

参議院会議録情報 第129回国会 商工委員会 第8号

#1
第129回国会 商工委員会 第8号
平成六年六月二十一日(火曜日)
   午前九時三十分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 六月二十日
    辞任         補欠選任
     下条進一郎君     宮崎 秀樹君
 六月二十一日
    辞任         補欠選任
     角田 義一君     千葉 景子君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         中曽根弘文君
    理 事
                沓掛 哲男君
                真島 一男君
                谷畑  孝君
                井上  計君
    委 員
                宮崎 秀樹君
                吉村剛太郎君
                一井 淳治君
                千葉 景子君
                村田 誠醇君
                小島 慶三君
                古川太三郎君
                山下 栄一君
                橋本  敦君
   政府委員
       通商産業大臣官
       房総務審議官   江崎  格君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        里田 武臣君
   参考人
       全国商工会連合
       会専務理事    辛嶋 修郎君
       東京都地域婦人
       団体連盟事務局
       長        田中 里子君
       帝京大学法学部
       教授       川井  健君
       国立国際医療セ
       ンター総長    高久 史麿君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○製造物責任法案(内閣提出、衆議院送付)
○製造物責任法案(橋本敦君発議)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(中曽根弘文君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨二十日、下条進一郎君が委員を辞任され、その補欠として宮崎秀樹君が選任されました。
 本日、角田義一君が委員を辞任され、その補欠として千葉景子君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(中曽根弘文君) 製造物責任法案(閣法第五三号)及び製造物責任法案(参第二号)を一括して議題といたします。
 本日は、両案審査のため、お手元に配付いたしております名簿の四名の方々に参考人として御出席を願っております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。ただいま議題となっております両案につきまして、皆様方から忌憚のない御意見を承りたいと存じますのでよろしくお願いをいたします。
 なお、議事の進め方でございますが、まず参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただいた後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。また、発言の際はその都度委員長の許可を受けることになっておりますので、あらかじめ御承知おきください。
 それでは、辛嶋参考人からお願いをいたします。辛嶋参考人。
#4
○参考人(辛嶋修郎君) 全国商工会連合会専務理事の辛嶋でございます。
 諸先生方におかれましては、日ごろから商工業、とりわけ中小企業の振興、発展に関しまして御支援、御協力を賜りまして厚く御礼申し上げます。また本日は、私にこのような発言の機会を与えていただきましてありがとうございました。
 私ども商工会は、主として町村において事業を営む商工業者を会員とする地域の総合経済団体でございます。商工会が都道府県ごとに集まりまして県連合会を形成しまして、それから県連合会が集まりまして全国連合会を形成しております。
 商工会の会員は全国で約百十二万事業者でございますが、小規模事業者、小規模事業者と申しますのは法律上従業員が製造業者の場合二十人以下、商業・サービス業の場合には五人以下、そういう小規模事業者の比率が九三%、中小企業のうちでもいわば小規模零細企業の集まり、こういうふうに御理解いただければ幸いだと存じます。
 中小企業におきましては、従来から国の安全基準などによりまして安全な製品の製造、流通に十分配慮しつつ、国民生活の向上等に努めてきたところでございます。
 御高承のとおり、中小企業は技術、資金、人材等各種の面で大企業に比べ脆弱な体質を有しておりまして、通産省の産業構造審議会や経済企画庁の国民生活審議会におきまして、製造物責任制度の導入に関する検討が行われておりました段階から、各種の機会をとらえて中小企業の実態や影響ということに十分考慮されるよう要望申し上げたところでございます。
 本国会に上程されております法案につきましては、これまで私どもが申し上げてきた意見がかなり盛り込まれた内容だと思いますが、中小企業の立場から一言申し上げますならば、これ以上の内容でありますと中小企業は対応できないいわゆる限界の線で取りまとめられたというふうに私どもは思っております。
 具体的に申し上げますと、まず第一に、開発危険の抗弁を導入すること。今日まで、中小企業は新製品の開発などにより消費者のニーズヘの対応を図り、みずから成長するとともに日本経済の発展に寄与したところでございます。しかしながら、危険発生予見の困難な欠陥においても企業に責任が問われることになりますれば、新製品の開発意欲が阻害されます。技術革新の停滞等によります不利益が消費者にも及ぶ可能性があるばかりではございません。ひいては産業活力の減退につながることが強く懸念されます。
 余談でございますが、日本の産業社会は最近非常に停滞ぎみである、こういうことが言われております。産業社会の活性化を支えているのは中小企業でございますが、最近の中小企業白書によりますと、開業率と廃業率という言葉を使っておりますが、昭和三十年、四十年代におきましては、事業の活性化が見られましたので開業率が廃業率を上回っていた。しかしながら、最近開業率と廃業率はほぼ同じ、とりわけ中小製造業におきましては廃業率の方が上回っている。
 こういうような状況下におきましてリスクに挑戦する中小企業のそういう芽を摘むということは、逆に言いますと経済の活性化が失われていくおそれがあるわけでございまして、そういう面からもこの開発危険の抗弁を導入するということは重要な課題ではないか、こう思っております。
 第二番目は、推定規定を導入しないこと。証明責任にかかわります推定規定に関しましては、欠陥の存在の推定、欠陥と損害の因果関係の推定等が挙げられますが、現行一般の不法行為や過失を要件としない賠償責任を課している特別立法におきましても法律上の推定は行われず、また推定規定は本来責任がないところに責任をつくり出すおそれがございます。したがいまして、推定規定の導入は、原因が特定されないまま製造業者に過度の責任が課されるおそれがございますので、それを回避する必要がございます。
 第三番目は、欠陥概念はできる限り明確化すること。欠陥概念を規定しない場合、欠陥そのもののあいまい化を招きまして製造業者が的確な判断、措置を講ずるということが困難になります。ひいては製品の安全性向上にも妨げになることが考えられますので、欠陥概念はできるだけ明確化するということをお願いしたいと思います。
 第四番目は、責任期間を十年とすること。製品の平均的な使用期間あるいは企業におきます製品のデータ保存の負担というものを考慮した場合、十年が妥当な期間というふうに考えられております。
 第五番目は、部品、原材料の製造業者につきまして、取引先の他の企業からの設計や指示に起因して発生した欠陥の責任を免責すること。
 以上、五点につきまして、いずれも法案に反映されており一応評価されるところでございますが、これらにつきましては変更が行われることのないよう特に御配慮をお願いしたいと思います。
 法案の内容も重要でございますが、法律の施行時期及びその猶予期間中の対応というのも重要な課題と私どもは考えております。
 私ども商工会地域の会員、製造業を対象といたしまして、本年一月に製造物責任に関しまして調査を実施しました。先ほど述べましたように、私どもの商工会会員は百十二万おりますが、そのうち製造業は約二十万です。二十万と申しましても、従業員が五人以下というところが約四分の三、十四万を占めております。ことし一月に行った調査は、まあ製造物責任という言葉がわかると言ったら語弊があるかもしれませんが、そのわかりそうな比較的大きな企業を商工会に頼んで調査いたしました。サンプル数というのは六百七十という形で非常に少のうございます。
 しかし、その六百七十の規模を見ますと、従業員が六人以上というのは約七割でございますから、先ほど従業員五人以下が四分の三と申し上げましたけれども、残った四分の一、比較的私どもで言えば商工会の会員では大きな企業です。多分皆様方が地元にお帰りになれば目立つ企業というか、町村で目立つ製造業というふうにお考えいただければと思いますが、そういう企業が対象となっております。
 このサンプル数六百七十の人々にいろんなことを聞きました。その中で、まず製造物責任という言葉を知っておるかということを聞きました。そうしましたら、製造物責任という言葉を余り知らない、あるいはほとんど知らないというのが約五割ございました。新聞であれほど書かれているわけですからかなり知られているんじゃないか、しかも従業員六人以上が平均でございますからと私どもは思っておりましたが、商工会の会員の人たちは余り知らない、こういうのが五割。
 それから、消費者からのクレームを自分のところで対応しているという会社が約二百七十四社ございます。全体の四割ぐらいございます。その消費者からのクレームを自社で対応しておるわけでございますが、そのうちの約四割はどこで対応するというふうに特に決められたセクションがないというような回答をいただいております。
 さらに、何かその損害賠償措置をとっているのかと、こういうような調査をあわせて六百七十社にしたのでございますが、生産物賠償責任保険を付保しているというのは五%、約五%の人しか生産物賠償責任を付保していないという状況にございます。
 したがいまして、この法案が成立後円滑に実施されますということのためには、中小企業にいたずらに不安感を醸成しないということが大きな課題となってきます。したがって、この猶予期間中に次のようなことが私どもにとっては重要なことじゃないか。
 まず第一に、中小企業への制度について啓蒙、普及を図ることでございます。本法の趣旨、内容について、だれにでもわかるパンフレットを作成していただく。そして、中小企業に対してPRする。そして、相談に乗るシステムをつくり上げる。こういう啓蒙、普及ということがまず第一に必要ではないか。
 第二番目は、事故が発生して責任が問われた場合、訴訟対策が大企業に比べて劣っている。先ほど申し上げましたように、約四割の企業はセクションがないわけでございますから、そうするとそのことが非常に大変になるわけでございますので、そういう意味で、訴訟対策が大企業に比べ劣っております中小企業に対しまして、対応が円滑に実施できるような事故原因の究明機関とかあるいは紛争処理機関というものを整備していただきたいというのが第二番目の要望です。
 第三番目は、私ども中小企業も、本法ができれば各種の安全対策を実施していくと思います。製品の生産管理あるいは管理体制、製品の安全性、事故の未然防止の向上等が行われるための新たな技術開発、機械、装置等の設備の設置等に関します税制、金融上の優遇措置を講じていただきたいというのが第三番目の要望でございます。
 それから第四番目でございますが、先ほど申し上げましたように、中小企業にとって過剰な負担にならないために、被害者救済の履行を確保するため、中小企業のために低廉で加入しやすい保険制度というのを充実していただけないか。生産物賠償責任保険に入っていますのは、先ほど申し上げましたように、現在五%という実態でございます。多分、こういう法案ができれば賠償責任保険に付保してくるというケースがふえると思いますが、中小企業が入りやすいような制度に充実していただきたいということでございます。
 以上、中小企業関係団体としての意見を申し上げてまいりましたが、中小企業におきましては、これまでも製品の安全対策や事故防止などの問題につきまして、製品の安全等のために諸規制を遵守しつつ、万全な体制で安全で良質な製品の供給に努めてきたところでございます。本法案のねらいとするところは基本的に認識されております。しかしながら、中小企業はこれまで申し上げたような実態でございますので、これらの現状を十分御理解いただきまして、特段の御高配を賜りますようお願いいたします。
 以上でございます。どうもありがとうございました。
#5
○委員長(中曽根弘文君) ありがとうございました。
 次に、田中参考人にお願いいたします。田中参考人。
#6
○参考人(田中里子君) 私は、東京都地域婦人団体連盟の田中と申します。
 実は、昭和六十一年三月までは全国地域婦人団体連絡協議会というところの事務局長をいたしておりました。全国組織というのは、北海道から沖縄まで全都道府県の地域婦人会の連合体が参加しております。そして、その会員数は五百万人、大変巨大な組織でございます。どこの地域にでもある、先生方の地域にも地域婦人会がおありと思いますが、一般主婦を対象とした組織で、農山村にもくまなくあります団体でございます。
 私が今事務局におります東京地婦連は、平成三年五月、消費者のための製造物責任法の制定を求める連絡会、私どもPL連絡会と言っておりますが、結成と同時に参加いたしまして、ほかの消費者団体、消費生活相談員の皆さん、そして学者や弁護士の方々と一緒に学習をしたり、欠陥商品一一〇番や国会請願など積極的に参加してまいりました。
 しかし、なかなか全国地婦連の方はそうは簡単にまいりません。先ほど申しましたように、巨大組織であります。しかも、保守的な層が大変多うございますので、みんなで話し合って立ち上がるまでには随分時間がかかります。そこが、実は昨年三月から運動を開始いたしまして、全国の町や村の婦人会の署名を集めました。地元の国会議員さんに請願運動を始めました。今やその地域の主婦たちも消費者のための製造物責任法早期制定実現がい言葉になっているという実情でございます。
 私がまず第一に冒頭に申し上げたいことは、今までの過失責任から欠陥責任に転換しての製造物責任法案、第一条の目的にはっきり書いてございますように、被害者の保護を図るを第一の目的としたこの法案に賛成し、全国の主婦たちの声を酌み取っていただいて、一日も早い早期制定を強くお願いしたいと思っております。
 私は、国民生活審議会の委員として、昭和五十六年十二月答申の製品関連事故による消費者被害の救済についての答申をまとめたとき、製造物責任法の立法化が消費者のみならず製造者にとってもプラスになることを痛感いたしました。安全性の確保が人間生活にとって最も重要な課題であり、製品の安全は生活をよりよくするためにあると認識したからにほかなりません。
 十年後、具体的な検討に入った平成三年二月からの国民生活審議会に設けられた製造物責任制度等に関する委員会、また四年二月からは産業構造審議会の総合製品安全小委員会、さらに四年十二月からは農水省の食品に係る消費者被害防止・救済対策研究会に参加しました。
 正確には、初めて被害者救済の答申が出されました国民生活審議会の五十年四月の答申からは、二十年間もいろいろな形で審議が進められております。消費者、産業界、そして中小企業の方々、学者、弁護士の方々、さらに国会議員、行政の方々の努力で、だれもが少しずつ不満を残しながら、生活者、消費者重視の経済社会に向けて関係者の合意が図られ、やっとまとまったこの法案、ぜひ大切に日の目を見せたいと切望しております。
 ここで、審議会の議論の中で、また前に触れましたPL連絡会の皆さんとの運動を通じて、消費者の立場からどうしても心配になることを三点ほど率直に述べさせていただきたいと思います。
 第一番に、第二条の2に当たる欠陥の定義のところです。製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者が製造物を引き渡した時期に絞られたことは、被害者の立証負担を重くしないという考えから見てまずは妥当なことと思いますが、運用に当たっては余り具体的に特定することを要求することのないよう、消費者の立証を困難にさせない運用をぜひともお願いしたいと思っております。消費者が事故に遭ったとき、社会通念上の主張、立証しかできないのは当然のことで、事実上の推定を柔軟に働かせることこそ製造物責任法の目的である消費者保護、つまり消費者の立証負担の軽減につながる重要なところでございます。
 同じく、製品を流通に置いた時期の欠陥の存在についても、ECで認められている欠陥の存在時期の推定が取り入れられなかったことは私どもにとっては残念ですが、せめて被害者に立証できる範囲は事故発生時の現象であって、事実上の推定や経験則の積極的な活用を望まざるを得ません。当たり前の消費者ができる範囲以上に立証負担を課すのでは、消費者被害の救済にはつながりませんし、この法案の趣旨に反するものではないかと思っております。
 二番目に、第四条では開発危険の抗弁を認めております。私たち消費者は人間をモルモットにしないでほしいと言い続けてまいりました。科学技術の水準の判断に当たっては、せめて世界最高の科学技術の水準によっても知り得ない場合についてのみの抗弁となるように運用してください。
 最近のマスコミをにぎわしておりますソリブジンの副作用による死亡例のように、メーカーには自己に不利な証拠を隠し通す悪弊がまだまだ残っているのではないでしょうか。あわせてこの法律が成立した際には、証拠開示制度の導入や情報公開法の制定に向けた検討をぜひ進めていただきたいと先生方にお願いする次第でございます。
 三番目に、今日の段階でこの法案の最大の焦点の一つになっている血液製剤について申し上げたいと思います。
 日本肝臓病患者団体協議会の声明にありますように、ウイルス肝炎患者の発生率は改善を見ているということでございますが、今なお発生し続けている現状ということでございます。何ら責任のない患者にこのような苦しみを与えるということに胸が痛くなってまいります。
 輸血用血液製剤であっても、凝固防止剤を加えるなど加工されているものと思っております。絶対に除外すべきではないと思います。ヨーロッパ各国の法律も輸血用血液製剤を除外しているところはありません。製造物責任法の対象にすることによって、むしろ血液製剤の安全性の向上、事故の未然防止に役立つものだと確信しております。
 いろいろの御意見があることも十分承知しております。政府の見解でも、現在の科学技術の水準のもとで技術的に排除できないウイルス等の混入や免疫反応等による副作用は欠陥に該当しないものと考えているとまで述べちれている以上、製品の特性は当然考慮されているのですから、これに加えてPL法の対象から除外する理由は全く見当たりません。
 以上三点申しましたが、この法案の周辺部分になりますが、この法案を消費者保護の目的に沿ったものに育て上げていくために、各地の消費生活センターやそれを支援する国民生活センターの役割について申し述べたいと思います。
 消費生活センターは、消費者の生活の場に近いところで相談や苦情処理テストを行ってくれる存在で、利便性の高い機関になっております。二十年の歳月を経てようやく消費者の身近な存在になったセンターの中に、原因究明や相談の体制を整備することが必要だと思います。国民生活センターの中に家電製品や自動車等の製品事故の相談を受けられる専門技術者、相談員の拡充、公正中立な紛争処理審査委員会の設置、公的・民間の検査機関や大学との連携も欠かせないものですが、特に原因究明に当たっては現在は病院の情報をとっておりますけれども、それに加えて警察、消防の協力体制をぜひとも確立していただきたいと思っております。
 各地の消費生活センターも頑張っておりますので、一番消費者の身近なところで苦情処理相談、そして製造物責任法に関する原因究明がなされるということも必要だと思います。各都道府県の頑張りを期待しております。
 企業に申し上げたいと思っております。
 企業は、製造物責任法の成立によってより以上に製品の安全性、品質管理に力を注がれることで消費者の信頼を増すことにつながってまいりますし、私どももそういうメーカーの商品を購入したいと思っております。先ほど辛嶋参考人から、中小企業の方々も被害の救済のことでいろいろ御苦労のあることを伺いましたけれども、消費者は最近中小企業の製品に魅力を感じておりまして、私どもも購入したいという品物を選ぶときに大小を問うことはございません。中小企業の方々も、被害の救済は企業の大小を問わずにぜひ当たり前のものとして受けとめていただきたいと思っております。
 企業の相対交渉を否定するわけではありませんが、消費者から見ると不透明な部分や公正を疑わせる部分がかなり多く感じられます。事故情報の公表など進んで実施していただくことが必要だと思っております。
 最後に、言い足りないところとか落ちているところがいろいろあると思いますが、やっとここまでまとまりました製造物責任法案を、皆様の御協力でぜひ無修正でこの参議院を通過させ成立させていただきたいと思っております。全国の消費者、私どもを支援している運動に参加しております数多くの人たちのその気持ちを先生方がわかってくださることと期待して、私の発言を終わらせていただきます。
#7
○委員長(中曽根弘文君) ありがとうございました。
 次に、川井参考人にお願いいたします。川井参考人。
#8
○参考人(川井健君) 私は現在帝京大学法学部に勤務している者であります。
 今から二十二年前でありますが、私の恩師の我妻栄先生から製造物責任研究会をやってみないかと言われまして、私はその幹事役を引き受けて研究会をスタートさせました。まだ、日本では余り研究が進んでおりませんでしたので、外国の制度などを検討したりしまして、途中で我妻先生は亡くなられたのですけれども、昭和五十年に製造物責任法要綱試案というものをつくりまして、日本私法学会のシンポジウムをしていただいた次第であります。それから約二十年もたったわけでありますが、いよいよ製造物責任法が現在大詰めにきておりまして、私としては感慨深いというところであります。
 製造物責任法要綱試案という昔つくりましたものでは三つの柱がありまして、一つは責任問題、つまりどういう場合に責任を認めるかという問題、それから二番目は履行確保、損害賠償の責任があるとしてもそれが確実に支払われる制度をどうするか、三番目は紛争処理ということで裁判制度の改善とかあるいはそれ以外の紛争処理をどうするかという手続的な問題、そういうことでやりましたけれども、今回の法案といいますのは責任問題に限定されております。履行確保は先ほどからお話の出ております保険ということになろうかと思うんです。それともう一つ、紛争処理をどうするか、あるいはそれに関連する原因究明機関をどうするか、こういう問題がやはりあるわけですけれども、これは今後法律以外のところで検討されるものと思っております。
 そこで、責任問題につきまして私の意見を述べさせていただきたいと思うんですけれども、まずは製造物責任を導入するということの意義について、わかり切ったことではありますけれども、もう一回もとに戻って考えてみたいと思います。
 現在、人々が製造物の欠陥から損害を受けたという場合、そのときに販売者を通り越して製造者に対して損害賠償を請求するという問題につきましては、御承知のように、民法の七百九条という不法行為の条文が適用されます。過失がなければ責任がないという考え方で定められた明治三十一年から施行されている民法によるわけであります。現在の商品の生産あるいは流通を考えますと、大量の商品生産が行われまして、また大量に消費されるという時代でありまして、そういう場合に安全性が欠けている場合に、契約関係のない製造者に対しまして被害者が損害賠償を請求するということはかなり難しいわけであります。
 そこで、現行の民法の七百九条の解釈を改善するというか、修正することによりましてこれまでの裁判例は対応しているわけであります。解釈といいますのは、一言で言えば過失を客観化するということでありまして、一つは予見の可能性がない限り責任がないということになりますが、その予見の可能性というのを一般的にとらえまして、その人の予見ではなくて一般的に要求される予見可能性、そういう基準を用いて予見可能性がなるべくあると、こういう解釈をする。
 それから、もう一つは、過失といいますと不注意というように主観的にとらえがちでありますけれども、これを結果の回避義務、不幸な結果が生じたその結果を回避する義務があるのにそれを怠った、こういう意味での客観的な解釈をするということで裁判例は対応してきたところであります。
 そういう裁判例の努力があるならば立法の必要はどうなのかという疑問が生ずるわけでありますけれども、しかしながらやはり過失概念を用いて予見可能性を問題にするということは、やはり証明の点で問題がある。それからまた、確かに解釈によって過失の客観化が行われておりますが、裁判のばらつきが生ずる可能性がある。それからさらに、過失概念を用いるということは、争点がそれだけ複雑になるということでありまして、これを欠陥概念に変えるならば争点が単純化されるであろう、こういう点で製造物責任法の立法のメリットがあるというふうに考えられるわけであります。
 そういうことで、今回の法案は過失責任から欠陥責任へと転換するという方向をとっているわけでありますが、この法案についての問題点は多岐にわたっております。しかしながら、私は四点に絞りまして若干の意見を述べさせていただきたいと思います。
 第一は、製造物の範囲という問題でありまして、この法案の二条一項に定めがありますけれども、これは動産という扱いになっております。製造、加工された動産ということであります。
 先ほど申し上げました製造物責任法要綱試案という昔研究会でつくりました試案におきましては、物を限定しない、不動産も含める、こういうことでありましたけれども、その後の検討の結果、あるいは外国法における立法の進展などから見まして、この製造物の範囲を限定しまして、いわば流通する動産に絞る、そういうのが現在の法案の考え方になっております。
 もちろん、そういうふうな絞り方をしたとしましても、個々的に生ずる問題につきましては種々検討すべき問題があるわけでありまして、先ほど御指摘のありました血液につきましても確かに問題がある。しかしながら、法律の定めの仕方としましては、これは一般的にそうなんですが、ある程度画一化ということはやむを得ないわけでありまして、画一的な基準をつくった上で、問題があればそれをどういう形で妥当な結論に持っていくか、こういう検討が必要だと思うわけであります。
 そういう意味で、今回、製造、加工された動産を製造物の範囲とするという一般的な考え方は、これは現在の内外の学説の動向あるいは立法の動向に従ったものとしまして妥当なものと考えております。
 第二の問題点としまして、欠陥の定義について意見を述べたいと思います。
 二条の二項に欠陥の定義がされておりますが、この定義につきましてはそもそも定義は不要ではないか、先ほど申し上げた民法の中にもいわゆる瑕疵という概念などがありますので、必ずしも定義はしなくてもいいのではないか、こういう考え方があります。先ほど中小企業関係で定義が必要という指摘がありましたように、裁判におきましてもあるいは裁判外の紛争の処理に当たりましても、どういう場合に責任があるのかということを明確にしておくことが必要であろう。そういう意味で、欠陥の定義を掲げることは必要なことだと考えております。
 その定義の仕方において、昔つくりました製造物責任法要綱試案におきましては瑕疵という民法上の概念を用いたのでありますが、この法案におきましては安全性の欠如という考え方になっております。これも二十年間の時代の推移がありまして、諸外国における立法の動向等から見まして、瑕疵から安全性へという転換がありましたのはやむを得ないというか、むしろ妥当なことだと思うのでありまして、これに賛成したいと思います。
 その際に、この定義におきましては、製造物の特性、通常予見される使用形態、引き渡し時期などの考慮事由というのが掲げられておりまして、この考慮事由によりまして最終的には欠陥の認定がされる。先ほど製造物の範囲につきまして画一的な基準を立てざるを得ない、そういうことを申し上げたんですけれども、さらに欠陥があるかどうかという段階におきましてはこのような考慮事由というのが働くわけでありますから、ある物についてそれが製造物になるとしましても、その製造物の欠陥があるとは言えない、したがって責任はない、そういう結果が出てくる可能性があるわけであります。このような考慮事由は結局はある程度弾力的な解決をもたらすものと思われるわけでありまして、これに賛成したいと思います。
 第三の問題点としまして、開発危険の抗弁につきまして申し上げたいと思います、
 製造物責任法要綱試案という昔の案におきましては、この抗弁は認めないという考え方であったのでありまして、私もそのような考え方をかつてとっていたところであります。しかしながら、専門家による研究会等の討議を経まして、現在ではこのような抗弁は必要であるというふうに考えております。もしこのような抗弁を仮に法律上認めないとしましても、不可抗力とかあるいはおよそ予見ができない問題についての責任が負わされるのは酷ではないか、こういう問題が必ず出てくるのでありまして、そういう主張は認めざるを得ないであろう。
 そうだとしますと、法律上どういう場合に抗弁が認められるのかということを明らかに定めておいた方がより紛争を合理的に解決することになるであろう。そういう意味で、開発危険の抗弁を法律の中に盛り込むことは必要なことだと考えております。これによりまして、先ほど申し上げた争点が裁判上も恐らく少なくなるであろう、不要な科学論争に陥るということが避けられることになるのではないか、こういうふうに考えております。
 第四は、推定規定という問題でありまして、先ほども田中参考人から御発言がありましたけれども、昔の製造物責任法要綱試案におきまして推定規定を設けまして、それ以来各種の案におきましては日本では推定規定が入っております。推定案というのが入っております。諸外国ではそうしたことがないのでありますけれども、この点につきましては、一昨年、総合研究開発機構、いわゆるNIRAという研究団体におきまして委託を受けて研究会を設けて、法律の専門家の間でこの推定を設けるべきかどうかを私は検討いたしました。
 その結果、やはり推定を設けるには問題がある。一つは、一般の不法行為、つまり民法の七百九条ほかの不法行為の場合と比べまして特殊な証明を、特殊狂扱いをすることになる。一般的なある効果を主張するための法律上の要件につきまして、一般原則を修正することになる。さらに、ほかの場合と比べまして法的に見てバランスを失する特殊扱いになる。さらに、仮に推定を入れるとしても推定をするために必要な事項の証明ということが要求されますので、余りこれは欠陥を証明するのと違いがないことになる。さらに、推定を入れるという場合には適正使用というようなことを証明しないといけないということになりますが、それがかなり客観的にはっきりした基準にならないので、合理的とは言えない場合が出てくるであろう。さらに、因果関係の推定ということになりますとほかに例がなくてかえって不当な結果になる、そういうことが考えられますので、私自身も現時点では推定規定は不要である、こういうふうに考えております。
 先ほど田中参考人からも発言がありましたけれども、事実上の推定という裁判官の判断の中で推定が行われるという問題、これは日本の裁判で従来からよく行われているところでありまして、事故が発生したときに欠陥があったということの証明がありますと、商品を流通に置いたときにも恐らく通常であれば欠陥があるだろう、こういうふうな判断を裁判官はするのが普通である。そういうふうな事実上の推定という考え方は大いに活用できるわけでありまして、これまでもそういうことは行われているので、それでよろしいのではないかというふうに考えます。
 以上四点を指摘しましたが、最後に、第一には、この法案は昔の民法を修正して現代社会の要請に合致するものである。第二には、国際的な観点から見ても、ECとかあるいはアメリカ合衆国の動向から見ても調和のとれたものである。第三に、他の公害その他の類似の被害との調和から見ても妥当なものである、こういうふうに考えまして、本法案に賛成したいと存じます。
 以上で終わらせていただきます。
#9
○委員長(中曽根弘文君) ありがとうございました。
 次に、高久参考人にお願いいたします。高久参考人。
#10
○参考人(高久史麿君) 私は、現在、国立国際医療センターにおりまして、管理職として直接患者を診ておりませんが、四年ほど前までは病院におりまして、血液の専門家と周りの人は言っておりましたけれども、血液の専門家として多くの血液疾患の患者さんの治療に直接当たってまいりました。この場に参考人として呼ばれましたので、率直な意見を申し上げたいと思います。
 今申し上げましたように、私は血液を専門としていたものですから、恐らく主として輸血用の血液製剤がこの製造物に当たるのかとか、そういういろんな問題についての意見を述べる必要があるんだろうと理解をしております。
 私は、基本的には消費者の保護の立場からこの製造物責任法に賛成であります。ただ、新聞紙上で輸血用の血液製剤が製造物に該当するという。ことを読みましたときには、正直言いまして少し驚きました。しかし、申しわけありませんけれども余り関心も払っておりませんでしたけれども、今回この場で参考人として意見を述べるようにと言われましたので、二、三の資料を拝見いたしましたところ、輸血用の血液製剤が製造物である理由として、輸血用の血液に保存液、抗凝固液等を加えたものであるということが述べられておりまして、それに加えて、運搬のときにプラスチックのバッグなどに入れるということから加工された動産であるというふうに定義されたと聞いております。
 もし、それ以外の定義があるとすれば私の勉強不足でありますけれども、これだけの定義で輸血用の血液製剤が加工された動産であるということになりますと、私が現在直接関係をしております骨髄バンクの場合でも、健康なドナーの方から骨髄液をとりますときには、当然、抗凝固剤を加えまして、それをプラスチックバッグに入れまして、そして骨髄移植を受ける患者さんの場に運びまして注射するわけでありますから、骨髄バンクの骨髄液も製造物に、全くおなじ定義なら、これだけの定義ならば当たることになりまして、私個人の意見としてはこれだけの定義ですと何となくなじまない定義のような感じをいたしております。
 それから、その他の資料として輸血用血液製剤の特性ということが述べられております。一つは、生命の危険に際して使用されるものであり、ほかに代替する治療法がなく極めて有用性が高い。これはまさしくそのとおりでありまして、医療の現場におきましては、手術の際に多量の出血をする患者さん、あるいは外傷のために血液を喪失して生命の危険がある方、あるいは非常に高度の貧血のために心臓や肺の障害が起こって、そのために生命の危険がある患者さん、そういう方を対象にして輸血を行うわけでありますから、ほかに代替する治療法がなく極めて有用性が高いということは間違いないと思います。
 次に、輸血によるウイルス等の感染や免疫反応等による副作用が生ずるおそれのある旨の警告表示がなされている。これは当然でありまして、輸血と申しますのは、御存じのように、他人の血液を直接血管の中に入れるという治療行為でありますから、当然さまざまな免疫反応が起こってくる。個人個人は全く別の抗原を持っているわけでありますから、極めて用心深く固定をいたしましても、あるパーセンテージでもって免疫反応等による副作用が起こってくることは間違いないと思います。
 一方、我が国の輸血用の血液製剤に対して世界最高水準の安全対策を講じた上で供給されていることも間違いないと思います。これは日本の輸血の現状はすべてが善意の献血によっているという世界で誇るべき体制でありまして、その善意にこたえるために、日本赤十字社におきましても世界最高水準の安全対策を講じていると私は信じております。
 しかしながら、同時に技術的にウイルス感染や免疫反応等による副作用の危険性を完全には排除できない。これは例えばウイルス感染にかかりましてもその抗体が出てくるまでにしばらく時間がかかるとか、あるいは現在の技術では発見できない免疫反応、免疫学的な相違による免疫学的な反応が起こってくる可能性は十分にあると言えると思います。
 したがいまして、現在の科学技術の水準のもとで技術的に排除できないウイルス等の混入や免疫反応等による副作用はこの欠陥に該当しないものと考えるという見解は、私は妥当なものだと考えております。ただ、現在の科学水準ということに関しては、個々の事例の場合にいろいろ個人個人によって理解あるいは見解の相違が出てくる可能性は否定できない、そういうふうに考えております。
 まだ時間的に余裕はありますけれども、私の申し上げたい点は以上であります。
#11
○委員長(中曽根弘文君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
 これより参考人の方々に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#12
○沓掛哲男君 四人の方々からそれぞれの専門分野での御意見をいただきまして大変参考になりました。
 そこで、順次御質問させていただきたいと思います。最初に辛嶋さんの方から質問したいと思いますのでよろしくお願いいたします。
 今、辛嶋さんの方から中小企業関係のお話で、開発危険の抗弁が今度の法案に入っているのでこれで中小企業は大変ありがたいんだというお話でございました。ただ、私気にかかるのは、このPL法第四条の開発危険の抗弁は第一号で「当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。」ということで、きのうのここで政府とのいろいろなやりとりの中で、この「科学又は技術に関する知見」というのは最高水準も言うんだと、それぞれの中小企業の立場というわけではなくて、そういう大企業とか中小じゃなく客観性を持った最高水準ということなんです。
 そうするとこれはなかなか中小企業では対応しにくいんじゃないか。逆に大企業にとっては大変いい抗弁かもしれないけれども、中小企業にとってはなかなかこれの立証は難しい。我が国の新しい開発というのは中小企業の人たちの英知でたくさん出てきているのに、また実際ではそういうものを中小企業が新しく開発しているのに、やはりこの抗弁のところで大企業は情報も多いからいざというときは対応できるが、中小企業はなかなかこの法律だけでは大変だなというふうに私はきのう思っておりました。それについてひとつ辛嶋さんの御意見をお聞きしたいと思います。
 それからもう一つ、いわゆる責任期間が十年で適当だとおっしゃったんですが、最近の新しい製品では耐用期間が五年とか七年とかというものが大変多いんですね。節約する奥さんがいて、御主人も含めて五年か七年の耐用年数のものをもっと長く九年、十年と使っているとなると、そこでまたいろいろな問題が出てくるんじゃないか。しかし、欠陥のときにいつからそれを使い始めたとかいう考慮事由に確かに入っているからいろいろ対応できるという意見もあるんでしょうが、その辺の責任期間についてのお考えを、今説明いただいた中からまずこの二つについてもう一度説明をいただきたいと思います。
#13
○参考人(辛嶋修郎君) 開発危険の抗弁につきまして、開発する際に中小企業がいろいろ勉強、研究するわけでございますが、その際私どもの会員である中小企業、比較的零細企業が多いわけでございますが、そういう場合は主として都道府県などにあります公設試験場、ああいうところと新しいものを研究していくというケースが非常に多うございます。したがいまして、ちょっと世界の最高水準かどうかは別としまして、通常のものであればノーマルな判断がされていくんではないか、こういうふうに考えている次第でございます。
 それから責任期間の問題につきましては、これは商品によってライフサイクルが違うわけでございますし、確かにそれほど危険性のないものと申しますのはライフサイクルが短いのかもしれませんし、実態に応じて考えていくべき性格のものではないか。まあ十年ということでまとめていただいたわけでございますので、その線に従って危ないものはできるだけ十年で対応していくというふうに考えていきたいと思っております。
 以上でございます。
#14
○沓掛哲男君 それでは次に質問を進めたいと思います。
 PL法を施行した場合、中小企業初め産業界がどんな影響を受けるかというようなことで、こういうようなことが影響を受けるんじゃないかなと思うことを私なりに並べてみましたので、それについて辛嶋参考人から御意見をいただきたいと思います。
 まず一つは、被害者からの損害賠償請求はアメリカでは相当ふえた例がございますが、激増しないか。それから、したがってトラブルがそれに伴って増大しないか。それから、いわゆるPL保険とかいろんなことが出てくるでしょう、そういうことに伴ってコストアップが起こらないか。そして、そのコストアップを産業界の人が価格に転嫁できるかどうか。それから、悪質なクレームが増大してこないか。また、景気への現下の影響はどうなのだろうか。それから、ECにおいて一部の国でこのPL法を導入した際、東欧からの輸入が減ってきました。そういうことで、我が国がそれとの対応で言えばアジアからの輸入減はないであろうか。
 以上が大体産業界、大、中あわせての質問ですが、中小企業固有だけのはまた次に質問したいと思いますので、きょうは辛嶋さんには産業界、経済界代表ということでございますので、今申し上げましたことを産業界の立場からいろいろお答えいただければと思います。
#15
○参考人(辛嶋修郎君) 当初、製造物責任につきまして議論されましたとき、私どもも製造物責任というのがどういう制度であるのかなかなか不鮮明でございました。したがいまして、先生が今御指摘のような、いわゆる製造物責任制度を導入すれば大変なことになるんじゃないかということで私ども危惧感を持ちました。
 しかしながら、この法案に限って見ますと、私が最初に申し上げました五点セットにつきまして明文化されております。したがいまして、そういうことを前提で考えれば、トラブルが急増するとか被害者から苦情が急増するとか悪質なクレームが出てくるとか、そういう懸念というのは私自身としてはないと考えております。
 しかしながら、私先ほども申し上げましたように、商工業者、中小企業とりわけ零細企業の方々が製造物責任という言葉を知っているかということに関しましても、五割の方は知らないという状況でございます。こういう制度ができた、こういう制度で具体的にどういう運用がされていく、あるいは業種ごとにどうなっていくというような、わかりやすいものを各業界に周知していただければそれほどトラブルということがあるとは思っておりません。
 また、PL保険によるコストアップがあるのではないか、こういう御指摘がございました。これにつきまして、最初に申し上げました私どもの中小企業六百七十社の調査をしたときも、先生御指摘のように、このPL制度を導入することに伴いまして影響があると言っていた人が八十六社ございまして、そのうちそういう生産物責任保険に入らなくちゃいけないのでコストが上昇する、こう言っていたのが五十二社ほどございました。これは一月の調査でございますが、やはりそういう意味で不安感があることは事実でございますが、こういう新しい制度ができたわけでございますから、それに基づいて不安感を払拭するということが重要じゃないかと思っております。
 それから景気への影響でございますが、こういうことから考えますと、不安感ということが一番重要でございますから、不安感が一掃されれば企業者のマインドが冷えるということは現状ではない、こういうふうに考えております。
 それからアジアからの輸入減、これはちょっとよくわかりませんが、それほど大きな変動が生じるとは思っておりません。
 以上でございます。
#16
○沓掛哲男君 続いて辛嶋参考人にお願いしたいんですが、中小企業固有の問題、今いろいろおっしやいましたけれども、私なりにこういうふうに思うので、また御意見をいただきたいと思います。
 東京商工会議所のアンケート調査では、PLの法制化に不安があると答えた企業は八七%でございました。その理由としては、クレーム処理専門の部門がない、それから法的な専門的知識を有した人材もこういう部門には大変不足している、それから設計、製造においても人的、技術的、資金的に余裕がない、それからまた事故再発防止のための情報収集その他の分析あるいは原因究明等の体制も大変弱い。こういうふうに中小企業は、今申し上げたような状況の中でいわゆる製造者に大変責任をとらせやすくなってくる、そういうときに大変大きな影響を受けるのではないかというふうに思いますが、これについてのお考えと、またそれに対する対策はこういうものが必要だということがあればあわせて御指摘いただきたいと思います。
#17
○参考人(辛嶋修郎君) 先生、東京商工会議所の調査を御引用なさいましたが、私どもがことし一月に行った調査におきましても、中小企業につきましては、現実に消費者からのクレームにどう対応しているか、こういう調査をしたわけでございますが、約四割は特に定められたセクションはない。したがって、こういう法案ができますとクレームがどんどん来て、そしてそれに対する人的、それから財政的な余裕がなかなかないという不安感があることは御指摘のとおりでございます。
 したがいまして、そういうことから考えますと、今度の法案を現実の場に引き戻した業種あるいは業態に応じたわかりやすいパンフレット、今までとどう違うのか、実際は各種の欠陥概念等が明確化されているわけでございますから中小企業の実態と比べてそれほど変わってはいないんじゃないかということを各般にPRしていただくということが必要不可欠だというふうに思っている次第でございます。
#18
○沓掛哲男君 それから、この法案にあります親企業と中小企業との関係ですけれども、法第四条の免責事由で、この第二号におきまして、「当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がない」ときには免責される、こういう条項があるんです。
 これは言いかえてみれば、親会社の設計に関する指示に従って子会社というか下請が一生懸命つくった、そしてその設計の指示に従ったことによって欠陥が出た場合、子会社、下請はその責任は逃れられる、免責される、したがって親会社の方になるということになるんでしょうが、通常、大変優越した地位にある親会社に対して、なかなか下請、子会社というのはそういうことを言いにくい環境にあるというふうに思います。
 それに対して法律がきちっとこうしてくれたということはありがたいんだけれども、現実問題としてはなかなか親会社が悪かったんだということが言いにくいように思うんですが、その辺の辛嶋さんの考え方、またそれに対してきちっと言えるようにするためには、いわゆる行政上さらにこういうようなことも必要だという御意見があれば教えていただきたいと思います。
#19
○参考人(辛嶋修郎君) このたび下請関係につきましてはこういうふうに明記していただきました。先生御指摘のとおり、なかなか下請というのが大きな声で親元に対して言えないということはおっしゃるとおりだと思います。そういうことからいいますと、やはり政府におかれましては、こういう規定がある、だから大丈夫なんだということを大きくPRしていくということが重要ではないかと思います。
 それとあわせまして、例えば私ども商工会には経営指導員というのがおりますが、経営指導員など現場で指導をしている人たちに対しても、そういう規定になっている、だから優位的地位の乱用がないようによく下請の人たちにも知らしめろ、こういうような指導をしていただければ、難しい問題ではございますが善処されるんではないか、こう思っております。
#20
○沓掛哲男君 では、次に田中参考人に質問させていただきたいと思います。
 参考人は長年にわたって消費者関係において大変功績のあった方で、何度がほかの会合でも先生からのお話をお聞きいたしました。
 そこでまず、このPL法との関連で、PL法に規定している商品の欠陥に起因する消費者被害の現状というものを、全国的でなくても、参考人の知っておられる範囲で、いわゆる製品の欠陥で起きておるような消費者被害の大きなものと申しますか、現状についてお差し支えない範囲で御説明いただければと思います。
#21
○参考人(田中里子君) 先ほど参考人としての発言の中にも申し上げましたように、私どもは、いろいろな消費者団体や消費生活相談員や弁護士の方や学者の方も交えてPL連絡会の中で欠陥商品一一〇番というのを実施しております。
 ついせんだって、四月に一一〇番を実施いたしました。どういう苦情が多かったかといいますと、いつもそうなんですがやはり家電製品、自動車、建物の苦情というものが、御三家というようなことを言いますけれども私どもの欠陥商品一一〇番には多く上がってきておりますので、そのあたりはこれからPL法が成立いたしましたときにある意味では被害の救済が速やかに行われることを期待したいというものでございます。
#22
○沓掛哲男君 今、最後に被害者の救済は速やかにとおっしやいましたけれども、消費生活を通じで被害者救済としてどういう措置を講じていったらいいのか。今までなされていたこと、またこれからこういうことを政府としてやってもらうことがこの法律の趣旨をさらに徹底させる、被害者救済に大きな効果が出るというようなことがございましたら御説明いただきたいと思います。
#23
○参考人(田中里子君) 被害者救済というのはもう二十年間の長きにわたる課題でございまして、私どもは今までできるだけ被害を受けた者が早く救済されるようにということを願っておりましたが、実は消費者として被害を受けましたときに苦情を持ち込むところというのはほとんどが販売店、メーカー、そういうところでございまして、その中の実態がなかなかわかりません。そういう意味では、相対交渉ということをよく言われておりますが、相対交渉の中で解決しているものも確かにあると思いますが、その実態が明らかでないので、先ほどの発言にも申しましたように、声の大きい人には大きく響くので大きく見舞金が出るのではないか、そんなような不公平感をぬぐうことができません。
 法律に基づいて損害賠償請求をするということが、今被害に遭った者たちにとって何よりも法律の根拠を持ってできるということが必要だろうと思います。今までも確かに損害賠償請求はメーカーの過失責任が認められればできたんですが、今欠陥責任に転換することが必要だというのは、メーカーの過失を消費者が判断するということは大変至難のわざでございますので、当然今回のPL法が成立することによって消費者としては被害救済ができる方向で進んでいくと思います。
 それに加えまして、消費生活センター、国民生活センターやいろいろ各地にあります公的な窓口、そういうところも苦情処理がそれに基づいてしやすくなる、PL法が成立することによってしやすくなるということが言えるのではないかと期待しております。
#24
○沓掛哲男君 そのためには、やはり事故原因の究明ということが非常に必要だというふうに思います。現在でも消費生活センターなど国あるいは県等で設けられたものもございますし、あるいは民間での原因究明的な機関としていろんなものがございますが、こういうふうな県等でつくっている消費生活センターや衛生研究所、保健所、そういうものがうまく機能しているのか。そういうところがこれではだめだ、足りないんだという御意見があればいただきたい。
 また、今民間の原因究明機関としてもたくさんございます。電気製品については日本品質保証機構とか日本電気用品試験所とか、そういうところがたくさんあるんですが、そういうものが消費者の立場から見てうまく機能しているのかどうか。もっとこういうことに一工夫しないと、せっかく法律をつくっても、今までの過失責任が欠陥責任になった、無過失責任になったといってもなかなか大変じゃないかというふうに思うので、まずそれについて一言田中さんの御意見をいただきたいと思います。
#25
○参考人(田中里子君) おっしゃいましたように、現在非常に機能しているとは言いがたい。機能している部分もございますが、まず第一に予算が不足しておりますし、専門的な技術を持っている技術員も不足しておりますし、それから相談を受けている消費生活相談員もある意味では給料も少なく、いろいろな面で非常に困難をしているということでございます。そういった面をこの法律施行にあわせて充実していくということがより被害救済が速やかにできる非常に大きなポイントだろうと思いますので、ぜひ先生方のお力をこの際おかりしたいというふうに願っております。
#26
○沓掛哲男君 田中参考人に最後にもう一つ、いわゆる表示関係についてお尋ねしたいと思います。
 欠陥としては普通設計上の欠陥とか製造上の欠陥それから警告表示の欠陥が挙げられておりますが、この中でいわゆる表示とか取扱説明について、消費者からこういう要請があるとか、また高齢化、国際化などの環境変化も踏まえてこういうふうにすべきではないかと。いろいろな製品に対する表示がたくさんあって、私らもいつできたのかと見たりするんですが、こういう表示に対して、高齢化、国際化なども踏まえてこうすべきだというような御意見がいただければと思います。
#27
○参考人(田中里子君) 議員のおっしゃいましたように、表示を見て消費者は品物を購入するということで、またその使用方法等もそこに書かれております表示を見て行うわけですが、余りに細かくたくさん書かれましても、年をとってまいりますと見にくいということもございます。
 警告表示については、今いろいろなところで検討が行われている。事業者の方もそれから役所の方も行っていると思いますが、警告表示はまずは一日で見てわかりやすい、そういうことが必要だろうと思います。表示をしていれば免責になるというものではございませんので、表示というものが消費者にとってどう読み取れるかということが必要だろうと思います。そういう意味では、表示をどうしたらいいかというのは、消費者も参加して一緒に事業者の方々とも行政の方々とも相談をしていくということがこれからますます必要になってくると思っております。
#28
○沓掛哲男君 また田中参考人には、今血液のお話がございましたが、それは高久参考人のところであわせてさせていただきたいと思います
 次に川井参考人にいろいろ御指導をいただきたいと思います。
 さて、大変ケース・バイ・ケースで差異があると思いますが、製品によって被害を受けた人が、その製造者を民法の不法行為で訴える場合と、このPL法による製品の欠陥を立証して行う裁判ではどれぐらいの差が出るんでしょうか。
 これはいろいろなケースがあると思いますが、テレビを買ってきて、そしてそのテレビの欠陥で私の家が焼けた、その点に対して私が訴えるというようなそうした場合、今までのいわゆる民法の不法行為で過失責任を追及する場合と、今回の欠陥で責任を追及する場合では、相当訴訟上私が有利なんでしょうか。どれぐらい違うのかがちょっとわかりにくいんですが、それはケース・バイ・ケースということですけれども、何かその辺で御指導いただけることがあったらと思います。
#29
○参考人(川井健君) 先ほど申し上げましたが、この法案によりますと、過失責任を欠陥責任とするのでありますので、基本的には原告である被害者は、被告の製造者等のいわゆる支配下にある製造物についての欠陥を証明する。それ以上過失についての証明は必要としない。その結果、先ほど申し上げましたように予見可能性という立証の必要はない。それからさらに、過失ということになりますと基準が必ずしも明確でないんですけれども、客観的な基準である欠陥という立証によって裁判が行われる。その結果、裁判が迅速に行われるということが期待できると思います。
 ただし、現在の裁判でも、先ほど申し上げたように過失責任のもとで過失の客観化ということが行われておりますので、実際に裁判をやってみて、この法律ができたから著しく裁判が迅速に進めちれるとか、そういうことがあるかどうか、こういうことはやってみないとわからないということがあるわけですけれども、少なくともただいまお話しになりました例で言いますと、原告の証明の対象が限定されまして、原告にとっては有利な裁判を展開することができることになる、こういうことが言えると思います。
 その他、基本的には先ほど申し上げた民法七百九条が基礎に控えておりまして、それを幾つかの点で修正している、必要最小限度の修正を図っているというのがこの法案でありますから、その他の点につきましては一般法である民法が適用されるということになります。
#30
○沓掛哲男君 裁判の話が出たので、それに引き続いて一言お尋ねしたいんですが、裁判まで持っていくと大変ですから、いろいろな事故については裁判外紛争解決体制というようなものが大変必要になってくるし、また実用的ではないかというふうに思います。
 その際の裁判外紛争解決体制としてどういうタイプの機関がいいのか。
 確かに公平申立て多くの製品分野を網羅できるという面では、行政型の製品横断的な紛争処理機関がいいんだというふうに私は思います。消費生活センターや苦情処理委員会がそれぞれありますが、反面、役所的で手続が重く、製品分野ごとの専門的知識が十分でないという短所もあると思います。
 これに対して、民間でも民間型製品分野別紛争処理機関がつくられている場合もございますが、こういう場合は確かに技術的、専門的知識、またそういう関連産業の有する知見やノウハウの蓄積、そういうものを利用できるという長所がありますが、反面、公正性や中立性の確保に問題があると思います。
 理想的に言えば、公平申立てかつ専門性を有している、そういう第三者機関的なものがいいんじゃないかなというふうに思いますが、いわゆる裁判にはならないけれども、その前の紛争処理機関的なものとして何か参考人のお考えがありましたらお教えいただきたいと思います。
#31
○参考人(川井健君) ただいま裁判外紛争処理機関の必要性という御指摘がありましたけれども、私も全く同意見であります。
 現在、日本では諸外国に比べて裁判所による紛争の解決の比率は非常に少ない。むしろ裁判外で解決されるケースが多い。仮に裁判になったとしましても和解で解決されるという例が圧倒的に多いのでありまして、これはいわば日本型の紛争の解決になろうかと思います。また、それがかなり合理性を持っておりまして、経費の節約とかあるいは時間の節約にもなっている、そういうことであります。例えば交通事故の場合につきましても、裁判所で解決されるのは非常にわずかでありまして、裁判外のただいま御指摘の中立的な機関による紛争解決というのが行われております。
 そういう意味で、この法律には紛争処理機関についての定めはありませんけれども、今後の問題としまして裁判外の紛争解決というのが促進されるということは必要なことだと考えております。
#32
○沓掛哲男君 大規模な損害が発生した場合における責任限度額がこれでは設定されておりませんが、いわゆる民法四百十六条である程度対応できるときのう法務省からの説明があったんですけれども、一体そういうふうにうまくいくのかどうか。川井先生は全部そらんじておられると思いますけれども、念のため一応四百十六条の一項だけさっと読ませていただきますと、「損害賠償ノ請求ハ債務ノ不履行二因リテ通常生スヘキ損害ノ賠償ヲ為サシムルヲ以テ其目的トス」というのがこの四百十六条、損害賠償の範囲ですが、これでうまくちゃんといくものなんでしょうか。
 例えばテレビが立派な大工場にあって、そのテレビでその大工場が焼けてしまったと。そうすると、何十億かかってつくった工場を五万円ほどで買ってきたテレビで賠償しろと言われたのでは、これは家電メーカーも大変だと思うんです。そういう質問をしたら、きのう法務省からこの四百十六条でうまくいきますという回答があったんですが、そんなにうまくいくものでしょうか。先生の民法の権威者としてのひとつ御見解をいただければと思います。
#33
○参考人(川井健君) ただいま御指摘の民法四百十六条という条文は、もともと契約責任といいましょうか債務不履行という契約上の債務の履行がない場合の定めですけれども、それが不法行為の場合にも類推適用されるという処理になっております。
 したがって、ただいま御指摘の例でいいますと、民法四百十六条によって処理するほかはないわけですけれども、四百十六条の一項というのが通常生ずべき損害といっておりまして、それは社会的に見て相当な因果関係にある範囲の損害、そういう制約がありまして、必ずしも全部ではないと。ただし、ただいま御指摘のようなケースですと、被害がかなり直接及んでおりますので相当額ということになろうかと思うんですが、一応相当因果関係に立つ範囲の損害の賠償を認める。これが第一項であります。
 もう一つ、第二項の方で特別事情によって生じた損害というやや特殊な損害というのがありますけれども、これは例外でありますので、当然賠償の対象になるわけではなくて、予見しまたは予見が可能であった、そういうことを要件にしまして賠償を認めると。
 そういうことで従来の各種の事故に今まで裁判所は対応しておりまして、これは欠陥商品に限らないのでありますけれども、各種の公害その他の事件につきまして対応しております。それとのバランスで、この欠陥商品の問題につきましても特に新たな問題が生ずるということではなくて、従来の処理で十分賄えるであろう、こういうふうに考えます。
 先ほどちょっと御指摘のありました賠償額の制限につきましては、国によってそういう伝統のあるドイツなどもありますけれども、日本では一般的にはそうした伝統はありませんし、憲法上の問題もありましてそういう制約をつけるのは必ずしも妥当でないというふうに考えております。
#34
○沓掛哲男君 では、高久参考人にお願いしたいと思います。
 まず、血液関係のことを中心にこれから進めたいと思いますが、日本薬事審議会は昨年の十月、また国民生活審議会は昨年十二月の答申で、いわゆる全血製剤、血液成分製剤をPL法の対象とすることは適当でないという答申を行っております。この答申を先生は適切だと思われるのか、不適切だと思われるのか。今度の法案の中にはいわゆる全血製剤、血液成分製剤も含まれるということになっているんですけれども、日本薬事審議会や国民生活審議会の答申が適当であるというふうにお考えか、問題があるというふうにお考えか、まずそれを教えていただきたいと思います。
#35
○参考人(高久史麿君) お答えいたします。
 非常に難しい御質問でありまして、血液製剤によっていろいろな副作用が起こることは事実でありますから、そのための被害者の方々の救済という意味では血液製剤をその対象にするということもやむを得ないという考えもあると思います。しかしながら、私が最初に申し上げましたように、この輸血用血液製剤に単に保存液あるいは抗凝固剤を加える、それをプラスチックバッグで運ぶということでもってこれを動産として製造物とすることについては私はなじまない、理解は難しいというふうに御返事申し上げたいと思います。
#36
○沓掛哲男君 また、この輸血用血液の供給側にある日本赤十字社、日本輸血学会、日本医師会、日本外科学会等も同じくこの法案に今の全血製剤等を入れることを反対しておりますが、先生も恐らくこの中の有力なメンバーとしてどこかに入っておられると思いますので、その真意はどこにあるのか教えていただければと思います。
#37
○参考人(高久史麿君) 私は日本内科学会に属しておりまして、内科学会も私の聞いている範囲では外科学会とあわせて反対をしたというふうに理解をしております。それから、医師会の方に属しておりますので、日本医師会もこの法案に輸血用血液製剤を入れることに反対であるというふうに理解をしております。
 私自身は今までは臨床の場で血液を使う方の立場にありまして、日本赤十字社さんとかあるいは輸血学会の方々のように現実に献血の事業に関係した、参加したことはございませんので、本当の実情というのは、申しわけありませんけれども私にはわかりません。
 しかしながら、輸血用血液製剤が製造物として認定されてPL法の対象になったときに、可能性でありますけれども、今行われています献血事業に何らかの影響を与えてくるということは考えられないわけではないと。その意味で日本赤十字社それから輸血学会それから医師会、日本内科学会、日本外科学会が、PL法にこの輸血用血液製剤を含むことに反対をしたのだと私は理解をしております。
#38
○沓掛哲男君 時間が迫ってきたのでちょっと飛ばしながらやりたいんですが、それでは高久参考人、輸血というのはどんな患者に行うんでしょうか。
#39
○参考人(高久史麿君) お答え申し上げます。
 輸血は、基本的には輸血を行わなければその患者さんの生命に危険がある、ですから逆に言いますと、輸血がその患者さんの生命を救う唯一の方法である場合に使われるべきであると思っておりますし、医療の現場においてもそのような形で使われていると理解しております。
#40
○沓掛哲男君 その際、輸血により患者が重大なダメージを受けることもあるということを知りながら決断するんでしょうが、そういう心境というのはどういうものでしょうか。私は、患者としてそういう立場にありましたので、そのときの医者の決断というのは大変なものだなということも患者として体験したので、あわせて質問させていただきます。
#41
○参考人(高久史麿君) お答え申し上げます。
 おっしゃるとおりですけれども、現実には輸血によって起こる重大な副作用というのは非常に頻度が低いことは間違いないと思います。ですから、輸血のたびごとに極めて重大な決意をしながら医師が輸血をしているとは私自身の経験からいいまして思いません。しかしながら、輸血は原則的にそれ以外の方法だと患者さんの生命を維持できない場合に行うものでありますから、やむを得ず輸血をするというのが現実の状況だと思います。
#42
○沓掛哲男君 この輸血による障害、被害がどれぐらいかというのはいろいろデータによって違うんですが、日赤のデータでは三%ぐらいと出ているんですね。私の周囲を見てみると、輸血して非常に障害の出ている人は多いんですよ。だから私は、死ぬか生きるかの患者ですから、恐らく輸血して死んでしまう人はいますね、そうするとそれはもう除外してしまうというような形で、将来ずっと残って障害が出てくる、そういう人だけのカウントじゃないかなというふうに思うんですが、実際はどんなものなんでしょうか。
#43
○参考人(高久史麿君) お答え申し上げます。
 輸血による副作用というのがどの程度をもって副作用とするかということはなかなか難しい問題があります。
 例えば、再生不良性貧血という非常に貧血の著しい患者さんですと定期的に輸血をしなきゃなりませんが、輸血を繰り返しますと、これは白血球の抗原のためにほとんど必ずと言っていいぐらい輸血の後に発熱を起こしてまいります。それから、じんま疹のようなアレルギー反応を起こす方もしばしばあります。しかし、多くの場合それは回復可能であります。
 生命に危険のある輸血の副作用といたしましては、免疫学的な反応によるものであります。その中で最も重篤なのは、多量の輸血をしましたときに白血球の反応によって、これは専門的になりますけれども、GVHDという副作用が起こってまいります。これは心臓の手術の患者さんに大量の輸血をしたときに起こることがあるのでありますけれども、その場合に、その副作用が一たん起こりますと患者さんはほとんど九〇%あるいはそれ以上の確率でもって死亡いたします。
 もう一つの重篤な副作用は輸血に伴うショックでありまして、これはもう非常にまれであります。時に御存じのように血液型を間違える、現場で操作を間違えたために起こってくる、そのために重篤なショックが起こることはあります。しかしながら、それは防ぐことは可能であります。
 GVHDの副作用というのは、これは全部の血液に放射線を当てると防ぐことはできますけれども、現実にすべての輸血用の血液に放射線を当てるということは現実的ではないというふうに輸血の関係者は申しております。
 以上であります。
#44
○沓掛哲男君 私は、自分が八カ月金沢医大の伝染病棟に入れられた経験、また私自身も医者になろうと思って第一局等学校では理乙におりましたが、そのときの同級生が厚生省の健政局長なんかをやっていた竹中君でしたけれども、そういう友達がたくさんいるので、私なりにはこういうふうに思っているんです。これを今やることには、供給側に絡む問題があるし、そしてそれを利用する医師側にも非常な問題が出てくるんじゃないかということがあります。そう言っていると時間がないので、これで。
 それで、今、田中さんがおっしゃった消費者側の立場から、ではそれを入れることによって実際上救済されるかというと、私は救済されないと思います。なぜかと言うと、ここにいわゆる欠陥というのがありまして、この欠陥の中でいろいろな考慮事由がございます。この考慮事由も言えば、日赤は必ずこれを考慮事由で証明し切ってくると思います。いまだかつて、きのうもいろいろ私質問したら、日赤に対してこの問題で訴えてきたところはないというぐらいでございますから。確かに今度の無過失責任、欠陥責任にしても、それで訴えやすくなりますが、訴えてもこれは日赤は全力を挙げてやると思います。
 そうすると、血液ほど私は証明しにくいものはないと思います。私の血液は親から、そしてまた私の代にいろんなものを入れて非常に変わって、そしてそういうものをまた変わった人のところへやって、そこに微妙な差があれば支障が出てくるというわけで、いざ問題が起きたときは私はもう死んでしまっていたり、血液がないということで、実際の問題として被害者救済にはなかなか難しい問題がある。一方、供給側にも大きな影響、そして医者が実際使うときにもいろいろ問題がある。
 私は、じゃ被害者を救済しないでもいいというわけじゃなくて、私の体験からいってもぜひ救済しなきゃならないというふうに思います。そういう面で、私は一番いいことは、現在、薬についていわゆる医薬品副作用被害救済・研究振興基金というのがございまして、御存じだと思いますが、薬品で副作用が起きたとき、そのときは薬をつくっているメーカーが拠出してくれたお金とそれから政府の出したお金で、そこで副作用に対していろいろ救済するためのお金を出してくれる。輸血についてもそういうものを設ける。そして何の責任もないのに死ななきゃならない、あるいは一生いわゆる身体障害、障害的な者として生活しなければならない、そういう人に裁判をやれというのも難しいことで、いわゆる欠陥の考慮事由をどうとか言ったって、これは私はできるものじゃないと思います。
 そしてまた、私自身、医者の世界も知っていますし、患者として、または友達を通じても、これほど強い団結をしている部門はありません。私も国会議員になって間もなく選挙のいろんな支障で少し障害が出てきました。それを地元で診てもらっていて、どうしてもこの医者は納得できないから東京の医者にかかると、そこで診てもらっていろんならその医者にもう一度話しなさいといって絶対診ませんね、医者は。どこかの医者にかかっていると言ったら絶対診ない。そういう難しい社会ですから、やっぱりこういうところで争ってみてももうとてもかなうものじゃない。
 私はそれよりも、きのうも各省庁に強く要求したんですけれども、いわゆる医薬品副作用被害救済基金のようなものを輸血に対してつくってもらう。つくる方法は幾つもあると思いますから、そういうものをつくることが一番じゃないかというふうに思います。
 これを入れたらいいと言う方の中には、いわゆるパックやあるいはまたそういう抗凝固剤を入れる、そういう人工的過程でその血液のいろいろ持っている障害をきちっと取り除けばいいじゃないかという意見がありますけれども、これはもともと生血なんですからさわってもらっちゃ困るんで、ほかの何かによって、今おっしゃったようないろいろなものを通すことによってやれば血液が変わってくるわけですから。
 現実的にはこの問題で私は今申し上げたことに力いっぱい頑張ってみたいというふうに思っておるわけでございますが、それについて田中参考人の御意見をいただければと思います。
#45
○参考人(田中里子君) 大変専門的な分野でございますので、私もわからないことだらけでございます。
 ただ、製造物責任法というこの法律の定義のところの第二条一項に「この法律において「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう。」と一行書いてございます。そういう中で、このPL法というのに例外をつくるということは非常に疑問がある。それで、血液製剤が製造物かどうかという御意見はいろいろ出ていると思いますが、また加工されたものではないかという意見も相当強く出ていると思います。
 私としては、政府の見解等を伺ってみますと、これは製造物に含まれるのではないかということを理解いたしまして、でも高久先生もおっしゃいましたようにいろいろ問題点があることは、何とかそのあたりは全般の合意が得られるように、政府の見解の中でも、ウイルス等の混入や免疫反応による副作用は欠陥に当たらないといった見解をお出しになっていらっしゃるということで、ぜひ全体のPL法の問題というものを、この問題の重要性は重々わかりますけれども、これで日の目を見ないということについては私は非常に残念に思っております。
 いろいろなやり方があると思います。議員のおっしゃいますような考え方もあると思いますけれども、両方おやりになったらいかがなんでしょうか。救済制度もぜひお考えいただければいいと思いますが、救済制度がすぐに出発してできるというものでもないと思います。PL法というのは何も血液製剤ばかりではございませんし、いろいろ対象が多いんです。
 血液製剤といえども十分な注意を払うということは何にも増して必要なことだと私は素人ですけれども思っておりますので、安全性の確保ということはお医者さんまた日赤、そういうところにおいても当然行われていいものではないだろうか、より安全性の確保と安全な血液製剤というものが出てくるのではないだろうか、法律は決してマイナスに向かうものではないと思っております。
#46
○沓掛哲男君 ただ、日赤の場合、日本の場合は特殊でございまして、外国はみんな血を買うんですけれども、日赤は全部ただで私ら献血しているんです。そうするとこんなカードくれますね。それで、牛乳を選びますかジュースを選びますかと言うので、私はいつもジュースと言って飲んでいる。献血はすべて日本は無料でやっているという、これは世界でもない大変異常なことなんです。
 そこで、私、最後に一言申し上げて終わりにしたいんです。
 要するに、お役人の信頼ということを言われました。私も長いこと役人をやっていたから、非常にまじめで立派な人が多いんですけれども、でもこの問題についてはやはり超専門家的なんです。そういう中央薬事審議会の人がみんなおかしい、そうしたら困るよと。また、それぞれの供給側の人が全員そう言っておられるんです。
 ですから、おまえたちそんなもの要らない、じゃアメリカから生血を買ってくるといっても、医薬品であり血液の中でもいわゆる血漿にしたものとかそういうものはいいんですけれども、生血というのは外国から持ってくるわけにはいかぬのです。我々の血を二十四時間とか何時間以内にどんどん使う。そういうものですからほかで代替性がないんです。あるいは政府がやった公共料金の凍結のように一年使うなと言ったって、毎日毎日事故者が出てこれは使わざるを得ない。
 そういう我々の生活というか命にも非常に重大なものがあるわけですから、やはり供給側の日赤が問題にしている、また使う側も非常にいかぬという、私はそっちの方を強く受けとめているんです。お役人の方は、私の体験からいって、この場合はそういう権威というか知識のある人は余りおりません。ですからどっちを信ずるかなんです。私もそういう面の専門家じゃありませんから、こっちの方がいいようだなという、そういうつもりなんです。
 それともう一つ。じゃ、それを入れたからといって、得する人が、益する人がだれもいないんですね。私が被害者になっても今のようないわゆる考慮事由云々で難しい。そしてまた、今度は日赤、今血液を製造して供給しているのは日赤しかありませんから、日赤とトラブルがあって、そして日赤がそういういろんな証明をやっていく。そういうトラブルだけが多くなって、今益するところが私はないというふうに思います。
 そういうことから私はぜひ今言ったような救済的なものを、難しいとおっしゃったけれどもそんなことはありません、これは決断すればできることですし、現に薬でもできているし、いろいろ私らもそういう仕組みをつくってきたものですから、そういうものに私は全力を挙げていきたい。問題ももちろんいろいろあると思いますけれども、私は決してここにそれを入れることがみんなの幸せになるとは思っておりません。しかし、この消費者保護というのは一番大切なことですから、全力を挙げてこの法案をいい形につくることでやっていきたいというふうに思っております。
 これについて、最後に高久先生からの御意見をいただいて終えたいと思います。
#47
○参考人(高久史麿君) 私も冒頭に申し上げましたように、PL法というのは極めて重要な法なんだと思っています。ただ、また同時に申し上げましたように、輸血用の血液製剤というのが製造物ということには非常になじみにくい。それから、新聞紙などを読んでみますと、この輸血用の血液製剤が入らないとPL法がだめになる、流れてしまうというような報道を見まして私は非常に困惑しているのが現状であります。
#48
○沓掛哲男君 結局、入らないから、入るから成るとかいうものではございません。
 四人の方、失礼な質問があったかもしれませんけれども、大変勉強になりました。ありがとうございました。
#49
○千葉景子君 きょうは、四名の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
 先ほど貴重な御意見を聞かせていただきまして、私も改めて大変勉強させていただきました。私、川井先生のいろいろな御本やあるいは論文なども読ませていただき、あるいは田中参考人、消費者団体の皆さんからもこれまでいろいろな御意見をちょうだいさせていただきながらこのPL法の制定に向けて私なりに努力をさせていただいてまいりましたので、これが国会に上程をされまして大変感慨深い、そんな気持ちがしているところでございます。
 また、その過程では、企業の皆さんやあるいは中小企業の皆さんのいろいろな不安やあるいは問題点なども聞かせていただいてまいりました。ぜひ、きょうの御意見なども参考にしながら、これが本当によりよい法律としてあるいはこれからの日本社会の一つの基盤として成立をし定着をしていくことができたら、そんなふうに思っているところでございます。
 そこで、先ほど参考人の皆さんの御意見をお聞きいたしますと、基本的には皆さんこのPL法制定については賛成といいますか御理解をいただいている、そういう立場であられようかというふうに思っています。ただ、それぞれからその立場立場に応じましていろいろな問題点、今後の御提言などもいただいたのではないだろうか、そう思いますので、それらに絡みましてそれぞれ何点がお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。
 まず、辛嶋参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。
 先ほどの御意見の中で、中小企業の皆さんもこのPL法が導入されてそう極端に困るということはないだろう、しかし多くの方がまだこの制度を御存じない、そういう実情もおありだというような御指摘もございました。そういう意味では、今後、特に中小企業の皆さんなどに対してこの法律を施行するに当たっていろいろな配慮をすべき問題点があろうかと思います。先ほどの御指摘でも、ぜひ積極的にパンフレットなどをつくって啓蒙をした方がよろしい、あるいは原因究明の機関などについての御指摘もありましたし、あるいは技術開発、税制、金融面での施策などの必要性も御指摘ありましたし、保険制度の面での問題点なども御指摘がございました。
 それぞれ私も十分わかるところでございますので、何かもう少し具体的に、例えばパンフレット、啓蒙活動についてこうした方がよろしいとか、原因究明の機関についてこんな形でつくったらよいのではないか、あるいは税制、金融などは例えばどんな形でのバックアップが必要か、何かそういう具体的な御提言などありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
#50
○参考人(辛嶋修郎君) 今度の法案、先ほども私どもが申し上げましたように、欠陥概念が明確化する等、そういう点について取り入れられております。
 ただ、先生御指摘のとおり、製造物責任という言葉自身がなかなか中小企業においてわかられていない、現実に理解されていないということが実態でございますので、まずその言葉を、普通の責任とどう違うのかという、まず自分の日常の業態においてどう違うんだろうということが身近にわかるものをつくっていただくということが必要じゃないかと思います。例えば、自分たちが下請をやっております、あるいは製造しております、そういうときにおいて、業種あるいは業態に応じて今までとどこが違うんだろうかということを細かくわかりやすく教えていただくということが、抽象的ではなくて具体的につくっていただくということが必要じゃないでしょうかという気がいたします。
 それから、そうしますと現実に自分たちがどういうふうに対応していけばいいかというメルクマールができてくると思いますね。そうすると、じゃおれのところはこういう実験設備がないとか検査設備がない、それじゃ検査設備を備えるあるいは検査していただこうか、こういう話になってくると思います。そういうふうになってくれば、当然のことながら、そういう検査設備等あるいは必要な実験設備等につきまして資金的あるいは税制的な措置ということが現実の問題として出てくると思います。
 それから、先ほど申し上げましたように、実際的にどう考えていくかということになりますと、そういう業種業態に応じたわかりやすいパンフレットができできますと、自分たちはまず大丈夫だろう、こう考える中小企業が多いとすれば問題ないかと思いますが、若干問題あるなということになりますと、それじゃ生産物賠償責任保険ですか、そういう保険に入りたい、こういうふうになってくる。
 ただ、今の保険といいますのは保険料率が非常に高こうございます。私ども中小零細企業からいいますと、私どもの会員、先ほど申し上げました製造業約二十万おりますが、売上高が大体二、三千万ぐらいでして、そのうち自分の、事業主の手元に残るのは三百万です。その中から自分の給料といいますか事業主の給料等を払っていく。そうしますと、その細かい三百万の中で、今度新しい制度ができた、それじゃ保険掛けなくちゃいけない、こうなるわけですね。売上高三千万で○・一%、三万円ですから、非常に高い料率だと。そういう実態でございますので、そこら辺がもう少し安いものができないとなかなか難しいな、こういうふうに思っているところでございます。
#51
○千葉景子君 それでは、引き続きまして田中参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。
 先ほどのお話からも、やはりPL法制定というのが消費者団体の皆さん、地域の皆さんにとって今は本当に合い言葉というぐらいになってきたということでございます。このPL法が制定をされることによって、これまでもいろいろな救済制度とかあるいはいろいろな紛争処理をする機関とか、なかったわけではないですが、しかしながら、このPL法が制定されることによってどんなふうに皆さん期待をされ、あるいは救済などについて違いが出てくるんだろうか。その辺について、このPL法制定の意義というものを改めてお聞かせいただきたいと思います。
#52
○参考人(田中里子君) 今おっしゃいましたように、私ども本当にPL法を長い間の夢として何とか実現へ一生懸命やってまいりましたが、それは、やはりPL法というのは裁判規範であると同時に、いろいろ答申の中にも書かれておりますように行為規範としても作用するものなんです。
 そういう意味では、裁判外の紛争処理機関もいろいろございますし、それから私どもの身近なところで相談に行く、先ほどから話題になっております消費生活センターとか、そういったところでこれから苦情処理を受けたり紛争解決を扱っていきますときにも、法律の柱がありますとそれに基づいてそこに携わっている人たちもやりやすくなる、行動もしやすくなりますし、そして企業の方もPL法ができましたときにこれに従って企業としてもルールを自分のところでも決めていくと思います。そういう意味で、本当に欠陥があったときには製造物の欠陥というものについては製造者が責任を負うんだというところが全体に徹底していくというふうに思います。
 それと同時に、法律ができますことによって、周辺のそういうセンターとか各種の公的な機関、通産省にもいろんな機関があると思います、各省に専門的な研究機関があると思いますが、そういった意味ではまたそちらの方も重点を置いてこの製造物責任に関する原因究明に当たっていくものだと思いますので、私は特効薬ですぐに何でもかんでもよくなるというふうに単純には考えておりませんけれども、長い目で見れば全体的にいいことだと。それは消費者ばかりが一生懸命にというものではなく、本当に企業も皆さん一緒になってやっていただきたいというふうに思っております。
#53
○千葉景子君 これは特効薬ではないというお話でございます。確かに私もそのとおりではないかと思いますが、やはりこの法律を有効に生かしていくためには、先ほど御指摘もございましたように原因究明の機関を充実させていくとか、そういう周辺の整備というんでしょうか、そういうことも不可欠であろうというふうに思います。
 そこで、これまでの御経験からもお尋ねをさせていただきたいと思うんですけれども、原因究明体制を整備するに当たって、やはりこれからは大変高度な技術、そういうものが必要になってくるだろうというふうに思うんですね。そうしますと、消費生活センターとかそういうところを中心にするというのも一つではあろうかと思うんですが、そのほかの高度技術などについては専門的な機関とか研究機関、そういうところとのネットワークとか連携とか、そういうことも大変必要になってくるのではないだろうかというふうに思います。
 そういう意味で、この原因究明の機関などについてどんな体制整備が必要だとお考えか。何かアドバイスがございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
#54
○参考人(田中里子君) おっしゃいましたように非常に予算の伴うもので、そして私たち消費者が望んでおりますのは、やはり公正中立な第三者機関というものが何にも増して必要だろう、そういうふうに思っております。そのためには既存の各機関、その中でも、先ほど発言の中にも入れておりますように、国民生活センターや都道府県にあります消費生活センターというのは、消費者と非常に身近なところにおりますだけに大きな役割があると思います。
 しかし、国民生活センターを見ましても専門的な技術の人たちというのは非常に少数ですし、消費生活相談員も本当に相談業務をきちっとどこまで専門的にできるかというのは、今もまだ発展途上かもしれません。まだまだこれからやるべき仕事がいっぱいあると思います。それから、いろいろテスト機器の整備も必要だと思います。
 それと同時に、先ほど申しましたように、事故情報収集能力というのが日本はアメリカなどに比べて随分欠けているように私は思います。そういう意味で、病院情報というのはもっと病院の箇所をふやして集めていく。
 それから、いつも壁にぶつかりますのは警察とか消防のところで、PL法絡みでいけば火災が起きたりそれから人にいろんなけががあったりとか、いろんなことがあります。そういったときに、本当に警察とか消防は立ち入っていろんなものを持っていくこともございます。そういうことで、協力体制がないと原因究明というのは非常にしにくいのではないかと思いますので、そのあたりを何とか壁を打ち破ることが必要だろうと思いますので、そういったところの御尽力をいただきたいと思います。
#55
○千葉景子君 今の御指摘、私も大変重要な点があろうかというふうに思います。
 先ほどの御発言でもありましたように、情報をきちっとお互いが対等に取得し合うといいますか理解し合う、あるいは証拠の開示をできる限りして原因の究明にも寄与するというようなことがないとなかなかうまくこの法律も働かないんではないだろうかというふうに思います。情報公開とか証拠開示について何か御要望といいますか、今も関連して御発言がありましたけれども、それだけお聞きをしたいと思います。
#56
○参考人(田中里子君) じゃ一言。
 日本はやはり情報公開ということについていろいろおくれているのではないだろうか。すべてにわたりましておくれているように思います。情報公開法がないということも大きな問題というふうに思います。
 それと、裁判をやりますときにも、それからいろいろ私どもが苦情を申し立てたりしますときにも、証拠を開示させる制度というのは大変不足している。私どもは、制度として確立していきませんと、せっかくPL法ができましてもある意味では非常にまだまだ裁判がやりにくいとか、裁判をやるだけがあれではございませんけれども、裁判外の紛争処理に当たっても証拠の開示ということは必要だろうと思いますので、証拠開示制度の導入とか、そちらのことにもひとつ精力的にお取り組みいただきたいと思っております。
#57
○千葉景子君 それでは川井参考人にお聞きをいたします。
 川井参考人におかれましては、二十二年前にこのPL法の制定に第一歩を踏み出されたというお話でございました。それからようやくここまでたどり着いたということでございますが、今回の法案の問題として先ほど四点ほど御指摘をいただきました。
 それにもかかわるわけでございますけれども、川井参考人は証明の問題について、特に流通開始時の欠陥の証明については、流通に置かれてから時間に応じて現実的な証明責任の分配を区切って考えるべきではないか、こういう御意見をお持ちであったのではないかというふうに思うのですけれども、この点については、今回の法律をごらんになってうまく機能するとお考えでしょうか。あるいは今後そういう問題点についてどのように取り扱っていったらいいか、御意見がございましたらお聞かせいただきたいと思います。
#58
○参考人(川井健君) ただいま御指摘がありましたように、私は昔の製造物責任法要綱試案をつくりました当時、欠陥の推定を一定の要件のもとに認めるべきである、こういう考え方を持っておりました。一定の要件というその要件をその後子細に検討してみまして、結局はその要件はかなり厳しいものがありますので欠陥の証明と大差がない、そういう意味で欠陥証明は原告がしなければいけない、こういうふうに考え方を変えるに至ったわけです。
 ただし、事故発生時の欠陥は原告が証明できるとしても、商品を流通に置いた時点の欠陥の証明ということはかなり難しい。それをどうするかという問題がありまして、その点について一種の推定規定をさらに設けて、欠陥時に存在する欠陥が流適時にも存在するというそういう推定をなお設けるかどうか。この点を個人的にも種々考えて、それが可能であればそれを立法するにこしたことはないであろう。ただ、それを立法するということになりますと、立法技術の上でかなり難しい問題がありまして他に例がないと。そしてまた、その種の問題は、一般的には先ほど申し上げた裁判の実務の上での事実上の推定として処理される問題であって、それを法律の中で明言するということはかえって裁判にも拘束を加えるのではないか、そういう意見もありまして、その点はかなり難しいであろう。
 先ほど千葉先生の御指摘の、ある程度流通において期間が経過するという場合に、一定期間欠陥の存在を推定するとか、そういうことは昔の要綱試案の中には盛り込んだ問題ではありますけれども、その後民事訴訟法学者等との研究会の検討結果も経まして、現在ではその点の規定を設けることは大変難しいので、この法案にありますような基本的な考え方、つまり事実上の推定を活用するという、これは法案にはあらわれておりませんけれども、その背後にある考え方でよろしいのではないかと考えております。
#59
○千葉景子君 よくわかりました。
 そうしますと、川井先生としては、やはり裁判上の事実上の推定というものを有効に生かして取り組むべきだというお考えというふうに理解してよろしいでしょうか。
#60
○参考人(川井健君) おっしゃるとおりでありまして、これは従来からも裁判所では行われておりますけれども、今後もそういうことが行われるであろうと期待しております。
#61
○千葉景子君 それでは、今回の法案の中で今大変重要な課題になっております輸血用の血液製剤の問題について若干お尋ねをさせていただきたいというふうに思っています。
 これについては、今回の法案では特に除外をするということではございませんけれども、除外をすべきだという御意見があるのも確かでございます。私のもとへもいろいろな意見を届けていただいておるのですけれども、日弁連などはこれは除外すべきではないというような御意見もあるようでございます。
 そこで、私も専門でないものですから、高久先生に二、三まずお尋ねをさせていただきたいというふうに思うんです。先ほどのお話で現在輸血用の血液製剤というのは一定の、それを加工品と呼ぶかどうかは先生の御意見では難しいというお話でしたけれども、保存液などをプラスして製造されるということですが、このような輸血用の血液について現在行われている検査ですね、どんなウイルスなどについて検査がされているのか。そして現在の検査技術で十分に排除し切れるといいますか、そういうものはどんなものか。あるいはそれをすべて除去するのはなかなか難しいというものにはどんなものがあるのか、ちょっと教えていただきたいと思います。
#62
○参考人(高久史麿君) お答え申し上げます。
 現在スクリーニングを行っておりますのはいわゆるエイズのHIVでございます。それからB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、それから成人不細胞白血病ウイルスといいまして、大人に白血病を起こすウイルスでございまして、これもスクリーニング検査を行っております。それから、以前から行っているものといたしまして梅毒のスピロヘータの検査を行っております。
 これらの検査によって疾患によるウイルス感染を完全に除外できるかといいますと、先ほども申しましたように、例えばC型肝炎ウイルスとかあるいはHIVのエイズの場合にしても、これは感染して一定期間たたないと抗体が出現してまいりません。ですから感染直後の方が、これはもちろん問診によって除外することを試みるわけでありますけれども、その方に正確に言っていただかないと、感染直後のエイズとかC型肝炎ウイルスの患者さんの血液をそのまま輸血してしまう可能性があると思います。
 それから、御存じのようにエイズウイルスは一九八〇年代の初めに見つかったわけでありますけれども、これからも未知のウイルスが我々の体の中にいて、それが患者さんの状態によって新たなウイルス感染を起こしてくる可能性は否定できないと思います。
 以上でございます。
#63
○千葉景子君 それから、抗原・抗体反応を利用した検査でございますと、感染してから一定の期間経過をしないと検出できないというものもあろうかというふうに思うんですけれども、この点については現在どのような対処といいますか対応をされているものでしょうか。
#64
○参考人(高久史麿君) お答えいたします。
 ほとんど対応ができない状態でございます。
#65
○千葉景子君 先ほど高久参考人の御意見では、どうも輸血用の血液製剤をこのPL法に製造物として入れるのは何となく腑に落ちないといいましょうか、そういうお話でございましたが、やはり輸血用の血液製剤についての安全性といいましょうか、これをいずれにしても高めていく。そして、それを供給する側も受ける側も安心できるということはもちろん当然必要なことであろうかというふうに思うんです。
 そういう意味で、この法律にちょっと何か無理といいましょうか、どうもなじまないようなところはあるけれども、これからの安全性を高めていくというような観点から考えて、高久さんとしてはどんなお考えをお持ちでしょうか。
#66
○参考人(高久史麿君) 輸血の安全性を確保するということは、おっしゃるように極めて重要なことでありますし、これは日本赤十字社を初め医師、輸血に関係する者すべてが努力すべきことであるというふうに考えております。そういう意味で、血液製剤がPL法に入るということもやむを得ないという考えも当然あると思います。ただ、私はそういう政治的な判断とか社会的な判断ということを別にいたしまして、一応これでも理工系が専門であります科学者個人として考えますと、輸血用の血液製剤が保存液とか抗凝固剤を加えたということで製造物と認定するのは無理じゃないかと。
 抗凝固剤とか保存液というのは、血液が壊れない、固まらないように入れているものでございますね。そうしますと、例えばガラスの機器がある、それを送るときに、周りにプラスチックのパックを入れて壊れないようにする、それからプラスチックの箱に入れて送るわけですね。保存液とか抗凝固液というのはちょうどガラス器具の周りに入れるパックのようなものでして、それがあるからといって、それじゃ中のものが製造物というのは理論的に私は非常に理解しにくいということを申し上げたわけでありまして、そういうことを申し上げたいと思います。
#67
○千葉景子君 最後になりますけれども、川井先生、この血液製剤の問題について先生に御意見がございましたらばお伺いをして、終わりたいと思います。
#68
○参考人(川井健君) 血液製剤につきましては、千葉先生のほか、先ほど来沓掛先生から種々御指摘がございまして、御意見など承りながら、おっしゃる趣旨は正当と申しましょうか、結論におきましてこれを法的にどう扱うかということは別問題ですけれども、おっしゃる趣旨は納得できるものがあると思っているわけです。つまり、その血液製剤を用いたことによって被害が生じた、そのときに日赤の責任を製造物責任として問うということは法律ができたからといって簡単にできるものではないと。
 この法律は、先ほども申し上はたように製造物の定義について画一的な基準を設けて、製造または加工した動産、こういう定義を掲げておりますので、その定義の上からすれば加工した血液もそれに入らざるを得ない。
 ただその場合に、それが副作用等を伴うからといって直ちに欠陥になるかというと、これは政府見解にもありますように欠陥には該当しない。したがって、結論的には被害者は責任を問うということはできないと。もちろん、献血をした人あるいは関与した医師の責任ということも問えない。もちろん、現行の民法の要件を満たして過失責任等があればまた別でありますけれども、慎重な検査等を行って生じた被害はやむを得ない。そのやむを得ない結果をどうするかというのは、これは法律ができてもこれによって救済するわけにもいかないものでありますから、沓掛先生のおっしゃった今後の問題として対応するほかないのではないか。
 今後の問題ということになると、この問題に限らず、一般的になお救済されるべき問題あるいは検討されるべき問題がたくさんあると思うんです。その全部について十分な手当てが行われることが本来望ましい。そういう制度をどういうやり方でつくるかということは、社会保障との関係もありますし、保障制度一般としてどういうふうに考えるかというかなり大きな問題になると思いますので、この問題に限定しないでもう少し視野を広げて検討することが必要ではないか、こういうふうに考えております。
#69
○千葉景子君 ありがとうございました。
#70
○小島慶三君 きょうは四人の先生方に御多忙中を御出席賜りましてありがとうございます。
 私の経験から少しお伺いしたいと思うんです。辛島先生と川井先生にお願いしたいと思うんですが、こういうことなんですね。
 私は三十八年に御家人崩れになりまして、ある部品メーカーの営業本部長とそれから国際本部長を兼ねるということで仕事をしたわけでありますが、本当に営業屋泣かせの最大のものはクレームなんですね、製品のクレームです。製品がベアリングとかステアリングという回転性のものでございましたから、これが事故を起こしますとやはりいろんな影響が出てまいります。
 そこで、会社としては自分の生命に関することでありますから、自己の社運に関することでございますから、生産過程を品質管理で何とか完全なものにしていくということはもちろんでありますが、会社全体を挙げてのトータルのクオリティーコントロール、TQCと言われておりますが、そういうことをやるわけでございます。これは多少コストはかがりましても、その方がむしろ安全ということから会社全体の信用を高める、要するに会社全体のリライアビリティーを高めるということで、これはもう不可欠なことでございます。
 しかし、その場合でもいろいろやはり欠陥といいますか、そういうものは避けがたい。非常に微細な欠陥でもこれは問題になります。殊に下請の場合には、これは単に自分でいいものができましたというので持っていくだけでは済まないわけでございます。それは親会社との関係あるいはアッセンブルメーカーとの関係で、これはそちらの方の設計、それからそちらの方の生産上の指示、それからそちらの方の例えは品質管理に関するシンクロナイゼーションといったようなことで、ほとんど親と子の関係というのは非常に密なものがあるわけであります。
 したがって、そういう点からどういうことが出てまいるかと申しますと、やはり欠陥が起きた場合の責任の所在というか、どこからどこまでが部品メーカーの責任で、どこからどこまでがそれを指示した親会社あるいはアッセンブルメーカーの責任であるかという責任の分解点が非常に難しいわけでございます。
 そういう点は具体的には従来は話し合いとかそういうものによって解決するよりしょうがないわけでありますが、そのために費やす努力というのは大変なものでございまして、私も正月の松の内に九回広島へ飛んでいったことがございます。ですから、そういうふうにこういったトラブルの解決というのは非常に私は難しいものがあるというふうに思っておるわけであります。
 一方では、そういったクレームはなかなか公にしにくい。やはり会社の社運に関するものでございますから、なかなかそういった事故情報というものは一般にはならないという点もあるとは思うんです。そういう点を考えますと、中小企業の場合に、殊に下請企業なんかの場合に、これは何かその辺の相談ができる機関といいますか、そういうものがあれば非常にいいですし、しかしそういうものを余り公にするということもどうかというちょっと矛盾した点があると思うんです。
 具体的に各地区の商工会あたりでいろいろそういう御相談にこれからはあずかることが多いと思うんですけれども、技術上の問題というのはなかなか難しくて一般的には立ち入りが困難であろうと思いますし、しかしそうかといって、いきなり今度の例えは欠陥についての原因究明とかそれに対する対応措置とか、そういったものを含めてのことになりますと、なかなか商工会のお立場でも問題に介入しがたいという点があろうかと思うんですけれども、その辺についてこれからどういうことが予想されるのか。例えば第三者機関をつくった方がいいのかどうなのか。
 その辺、いろいろ具体的な問題になると本当に私は難しい点が多いと思うんですけれども、ひとつ辛嶋先生からはそういったものに対する今後の対処の仕方、考え方、問題点、そういったものを御披露いただければありがたいと思います。
 川井先生からは、法律的には欠陥というものの形成過程というのは、欠陥というものが書いてあるだけで、具体的にはそれまでのプロセスが非常に難しいと思うんですけれども、何かその辺についての事前の準備と申しますか対策と申しますか、そういった点についてこういうふうな下請企業の例やなんかについてどういうふうにお考えか、これもお伺いしたいと思います。
 以上でございます。よろしくどうぞ。
#71
○参考人(辛嶋修郎君) 小島先生、よく実態を御存じなものであれでございますが、今までの日本経済が発展してきたという要素の一つに品質管理があると思うんです。ある意味では、大企業が下請企業に対して品質チェックをすると同時に、品質管理の指導をしながら日本経済はいい製品をつくるようなシステムができ上がってきた、こう思っております。その中で商工会、あるいは商工会議所でもそうでございますが、私どもには経営指導員というのがおりまして、そういう品質管理向上に向けましていろいろ知恵を授けるということをやっておりますし、また県連合会にはもう少し専門家であります、エキスパートバンクと称しておりますが、そういう優秀な技術屋さんをリテインしておきまして、そういうところで相談に乗る、こういうシステムをとっております。
 したがいまして、今度新しい製造物責任の法案ができたからといって、従来からも品質管理に努めておりますから、格別新しくそれに対応した機関というものをつくる必要はないと思いますが、ただこれから長い目で考えていきますと、より一層品質管理が中小企業にとっても必要になってくるわけでございますから、私は県などに設けられております公設試験場、何々県の工業試験場とか、そういうところがもう少しそういう中小企業の指導に高度な技術をもって当たっていただければいいなと思っております。
#72
○参考人(川井健君) ただいま小島先生から欠陥の形成過程と申しましょうか、法律的にどうなんだろうか、こういう御指摘がございました。
 欠陥につきましては、これを種々定義する方法というのはあると思うんですけれども、先ほど申し上げたように、昔は従来の民法の考え方に従って瑕疵という概念を用いて、現在のこの法案では安全性を基準にするということです。安全性というごとになりますとやや抽象的でありますので、製造者側にとってはどこまでのことをやればいいのか、その点が必ずしもわからない、こういう問題が出てくると思います。その点に関しましては、この法案では欠陥の認定についての考慮事由の例示がされておりますので、これを今後足がかりにして個々の具体的な製造物について、これは各業界においてマニュアルなどをつくって点検する、基準を設けて対応する、そういうことが必要になってくるのではなかろうかと考えております。
 この安全性についてもいろんな考え方がありまして、例えば消費者の期待する安全性、こういう考え方もあるわけですけれども、この法律というのはかなり中立的な性格を持っておりまして一般的に人が期待する安全性、客観的にこれを判断すると、したがって、世の中全体から見てもこの場合には責任を認めた方がいい、そういう趣旨の欠陥ということになるわけでありますので、そういうことを念頭に置いて個々の場合の基準をそれぞれ努力してつくるということが必要ではないかと考えております。
#73
○小島慶三君 私の質問は以上で終わりでございます。
#74
○山下栄一君 今参考人から各委員の質問に対しましていろいろお答えいただきましたので、私の方から何点か気がついた点を参考人にお伺いしたいと思います。
 まず、中小企業のこのPL法実施に向けての対応強化の問題でございますけれども、先ほど全国商工会連合会のアンケート調査に基づく報告がございましたけれども、なかなか具体的な備えが十分できておらない、まだまだこれからですというそういうお話がございました。特に、さまざまな製品事故が起こってからの対応、また消費者からのクレーム、こういうふうな問題に対する対応が非常に心配である、そういうお話もございました。この対応のための部署といいますか、窓口をつくっているそういう企業も非常に少ない、こういうお話があったわけでございます。
 まずこの問題につきまして、連合会といたしまして団体としての相談体制、こういうのをお考えなのかどうか。またそのために、例えば通産大臣が認定をしております資格制度、消費生活アドバイザー、こういう資格者を団体として設置していくお考えは、実際あるのかどうかわかりませんけれども、あるのかどうかということについて少しお聞きしたいと思います。
#75
○参考人(辛嶋修郎君) 商工会には経営指導員というのが配置されております。これら経営指導員が中小企業の指導に当たっておりますので、この経営指導員に対してできるだけこういう観点からも指導するように努めていきたい、こう考えております。
#76
○山下栄一君 この経営指導員の方で、先ほど申しました通産省のこの資格制度で資格を持っておられる方というのは何人かいらっしゃるんでしょうか。
#77
○参考人(辛嶋修郎君) 消費生活アドバイザーの資格を持っているのは何人かというのは存じ上げませんが、経営指導員は商工会に配置されております。私どもでいいますと約五千名近くございますので、それらが大いに知恵をつけながら指導していく。経営指導員は町や村にある商工会にいるわけでございますが、その上に県連ごとに今度は商工会を指導する専門指導員がおりまして、あるいは特別な技術を持った人たちをリテインする、エキスパートバンクと我々称しておりますが、そういう人たちがおりますので、そういう人たちの知恵をかりながらやっていきたい、こう考えております。
#78
○山下栄一君 連合会といたしましてこのような実際のクレームの対応のための体制づくりとしまして、中小企業の方々に研修、並びにそのような対応力を育成するための方法などをこれからお考えなのかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。
#79
○参考人(辛嶋修郎君) 私どもは、経営指導員というのが経営指導をしていくわけでございますから、経営指導員のまずレベルアップというのを図りまして、その経営指導員が個別の企業に対して指導していくということがベターではないかと思います。
 と申しますのは、中小企業の場合には、例えば中小製造業の場合でございますが、私どもの会員は年間二千八百時間ぐらい労働しております。したがいまして、研修会をやるといっても一々集まる暇がないというのが実態でございますから、経営指導員が行って個別に指導していくよりほかないんじゃないか、こう考えております。
#80
○山下栄一君 よくわかりました。
 PL保険の問題でございますけれども、先ほども保険料率が大変高いというのでなかなか実際は加入促進が難しいというふうなお話であったのではないかと思うわけでございます。加入状況も、先ほど五%というふうなデータがあるということでございます。ほかの加入しやすい制度を導入していただければというお話があったわけでございますが、連合会として例えば共済保険をつくっていくとか、中小企業団体としてのそういう独自の仕組みみたいなものをつくっていく、そのようなお考えはございませんでしょうか。
#81
○参考人(辛嶋修郎君) 先生御承知のとおり、保険というのは大数の原則が働くわけでございますから、できるだけ大数を使って保険料率が安くなる仕組みができればそういうのを大いに活用していきたいと思っております。連合会自身としては、そういう大数が働くということがあれば大いに協力していきたいと思っておりますけれども、ただ、PL制度に伴って直ちに生産物保険に入る企業がどのくらいあるのか、ちょっとそこはまだ確かに調査しておりませんので、これからの検討事項、こう思っております。
#82
○山下栄一君 次に、田中参考人にお聞きしたいと思います。
 私は大阪出身でございますが、一年前に我が党で大阪府の消費者行政の実態調査というのを行ったわけでございます。そのときに、大阪府に四十五の市町村があるわけでございますが、消費者から見て相談できる窓口、またはそういう相談員のいらっしゃる体制ができておるのかどうかということで調査をしたことがあるわけでございます。
 大阪の場合は、相談窓口は基本的に全市町村にある。ところが、具体的に独自の建物を持っておるところというのは約四分の一ぐらいである。また、相談員も二百人を超えておるわけでございますが、大半が嘱託である。いろいろ相談能力を持った、例えば消費生活相談員等の資格を持っておられる方はもう五分の一ぐらい、四十五人ぐらいであるというふうなことで、その相談員の方も大半が主婦の方が多いと。そういうふうなことがわかってきたわけでございますけれども、まして、法令の知識とか商品に対する専門知識もなくてなかなか具体的な相談ができる状況にはないという、そのような実態が浮かび上がってきたわけでございます。
 このPL法の実施に伴いまして、特に地方自治体レベルの身近に相談できる体制を抜本的に強化する必要があるんではないかというふうに思うわけでございますが、もう大変長きにわたりまして消費者運動に取り組んでこられました田中参考人が感じておられる身近な相談体制の面で全国並びに東京都の実情ですね、具体的にお感じになっていることがございましたらお聞きしたいと思います。
#83
○参考人(田中里子君) おっしゃいますように、全国的に見ても大阪よりももっと体制は低いというふうに思います。市町村に公的な窓口をつくって、そこで相談員が全部専門的に応じられるという体制ではなかなかありませんので、これは都道府県で十分に体制整備をしていただくことはもちろんなんですが、全国的なネットワークをつくっていくという、まず都道府県の中でもネットワークづくりが必要だと思います。
 大阪には大阪府にセンター、市にもセンターがもちろんおありと思いますし、相当専門的におやりになっていらっしゃる方々もありますから、とりあえずはそちらとネットワークを結んでいただくということですが、先ほどから申しておりますようにどう考えても予算が足りない。予算が足りないということはそれだけ人をそこに配置するわけにはいかないということにつながっていきます。消費者行政というのはいつも、特に不景気になってきますと地方自治体においても予算が少なくなれば少なくなっていくという現象もありがちなところがございますので、ぜひこうした法律の制定を機に予算の拡充にも努めていただきたいというふうに思います
#84
○山下栄一君 地婦連としまして独自に消費生活のリーダーを育成していくような取り組みみたいなものはあるのかどうかということをお聞きしたいのと、あと消費者の意識変革、啓蒙活動の取り組みをいろいろされていると思うのでございますが、例えば独自に商品テスト等をやるようなことはあるんでしょうか、お聞きしたいと思います。
#85
○参考人(田中里子君) 指導者養成ということは、これは団体の絶えずの課題でございますので、そういった意味ては私どもの地婦連も全国各地で指導者養成には力を入れております。
 今おっしゃいましたような例えば商品テストとか、そういうことになりますと、これは膨大な機器も必要ですし、民間団体というのは予算を持っておりません。特に、それぞれの地域の婦人会というのは予算上そう余り豊かなところがあるわけではございません。公的なそういった機関の整備をしていく、それの一つが地域で言えば消費生活センターがおありになるというふうに思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
#86
○山下栄一君 どうもありがとうございました。
#87
○橋本敦君 私に与えられた時間が大変短うございますので、簡潔にお伺いをさせていただきたいと思っております。
 まず、田中参考人にお伺いしたいのですが、これまでPL法についてたくさんの皆さんがいろいろと苦労なさり運動なさってまいりまして、もともと財界や政府には反対意見が強かったんですが、ようやくここまで来たということで、皆さんのこれまでの御苦労と御奮闘に私も敬意を表しておる次第でございます。
 このPL法でありますが、今まで皆さんの運動の中で、被害者の保護と救済を徹底させていくというそういう観点から議論された点を検討してみますと、一つは開発危険の抗弁は認めないでほしい、二つ目には欠陥と因果関係との間の推定規定、これも明確にしてほしい、さらには欠陥そのものについて、消費者期待基準を適用して、商品を普通の方法で使っていて予期しない損害を受けた場合には安全性を欠いて欠陥がある、そういうようにしてもらいたいという御意見もありました。さらには、情報開示義務で十分に知識が得られるように、また訴訟の中でも製造者に資料の開示ができるようにしてほしい、こういう意見がいろいろございました。
 今日の政府案ではそれらが十分入っていないわけですが、政府案にここまで来て賛成するということであっても、こういうこれまで議論され要望された問題点が入っていたならばもっといいのにという、そういう感じはお持ちでしょうか。いかがでしょうか。
#88
○参考人(田中里子君) おっしゃいますとおりに、私ども議員の今おっしやいました開発危険の抗弁は認めない、推定規定を導入せよ、消費者期待基準ということについては運動として随分続けてまいりましたし、審議会等でも発言をしてまいりました。
 ただ、法律というところになりますと、そこは各界各層がつくり上げていくものということで、私どもも主張はしながら、その中で先ほど発言しましたように開発危険の抗弁を認めるというならこういうふうにしてほしい、推定規定が導入されないけれども、事実上の推定をできるだけ柔軟にしかも消費者にとって立証負担の軽減につながるようにしてほしいということを言っておりますし、そういう意味では消費者期待基準に近いところへ持っていくような運用がされますようにこれからも運動も続けていきたいと思います。またそれぞれの行政にも、それから一番身近な消費生活センター等にも運動体としては大いに働きかけていきたいというふうに思っております。
#89
○橋本敦君 御趣旨といいますかお考えはそれなりによくわかりました。
 私ども日本共産党もこのPL法につきましては、きょうも政府案と一緒に審議をさせていただいております案として、今私が指摘したような政府案にはない規定を設けまして、開発危険の抗弁は認めない、推定規定を設ける、そしてまた訴訟における情報開示義務を規定する、こういった法案をつくりまして御審議をいただいておるところでございます。こうした問題について先ほど川井先生も専門的な立場で御意見をいただきましたわけですが、私どもの考えと残念ながら今申し上げました点で先生と意見が多少違っている点を感じながらお話を真剣に伺っておりました。
 先ほど先生のお話の中で、開発危険の抗弁を認めない、あるいは推定規定を認める、そういったことになりますと、これは法律上損害賠償ということで今日までずっと貫かれてまいりました一般原則の修正もしくは特殊な例外を認めることになろう、その点がどうか、こういうお話でございました。
 逆に言いますと、私はまさにその修正、それがPL法ではないのであろうか。企業が巨大な力で情報を集め、技術水準、それについて独占的に持っている中で、弱い消費者が今までの過大な立証責任から免れて、そして迅速かつ的確に損害賠償を受けるという、そのことをするためにまさに過失から欠陥に変わってきた。そのことを確実に進めていく上で、開発危険の抗弁なり推定規定なり情報開示義務なりという問題あるいは消費者期待基準という問題は、これはもう当然必要ではなかろうかという立場で私ども日本共産党法案をつくらせていただいたわけですが、それが先生のおっしゃるまさに一般原則の修正であるわけで、その修正が今日社会的に必要になっているという観点から、ここに私はPL法問題の運動の本質があり、問題の所在があるというようにとらえておるんです。
 大変時間が短くて恐縮ですが、そういう考え方であるということについて先生の御意見をちょっとお伺いしたいと思っております。
#90
○参考人(川井健君) 私のこれまでの検討の推移というのもございまして、昔考えました考え方をその後新たな研究会等で法律的に詰めて考えましたところ、推定規定につきましては先ほど申し上げたような法的な問題点がある。そしてまた、ぎりぎり何か法的な推定規定をさらに設ける余地がないか、個人的には随分考えてみましたけれども、一般的にはなかなか困難である、こういう指摘もありましたし、事故時の欠陥を証明した場合の流通開始時の推定、それは法文上書き方も大変難しいし、例もない、そういうところから、それにかわる事実上の推定ということでやむを得ないのではなかろうか。
 開発危険の抗弁につきましても、先ほど申し上げたような考え方でありまして、これはもともと否定してもいいのではないかと考えておりましたけれども、裁判で問題になればその問題が浮かび上がってくる、浮かび上がったときに訴訟の争点の単純化というような趣旨からこれは認めてもやむを得ないのではなかろうか、こういうふうに考えまして、私自身考え方が変わってきたところがあるわけでありますけれども、これは二十年間の検討の推移ということで御了承いただければと思っております。
#91
○橋本敦君 時間が来ましたので、最後でございますが、先生のおっしゃる二十年間の検討の推移ということはわかりました。私どもは逆に二十年間の検討の結果、より確実に救済をという立場で、逆にいえば先生のおっしゃった法律の一般原則の修正こそまさに大事ではないか、こう思っておりますので、その点をつけ加えさせていただきます。
 最後に一問だけ辛嶋さんにお願いしたいんですが、私どもも、中小企業の経営基盤の弱い立場の皆さんに対する大事な手当てとして政府管掌の保険制度、これをつくるように政府に義務づける法案を出しておるんですが、この保険制度が普及すると同時に、技術、欠陥あるいは製品、その他今日の経済界で通用する諸製品についていろんな情報を公開される制度、仕組みが社会的にあることが、中小企業の皆さんの製品開発や安全を守る責任を果たす上でも大事かと思うんですが、その点についてのお考えはいかがでしょうか。
#92
○参考人(辛嶋修郎君) 私ども比較的事業者が小規模零細企業でございます。売上高三千万円で、そのうち手元に残るのが大体三百万円でございますから、今度こういう制度ができますと、その中から保険料を払っていかなくちゃいけない、こういう仕組みになります。したがいまして、望むべくは保険料を払わなくてもいい制度というのがあれば一番いいのでございますが、今後いろいろ勉強していきまして、できるだけ小規模事業者に負担のかからないようなことを考えていきたい、こう思っております。
#93
○橋本敦君 終わります。
#94
○委員長(中曽根弘文君) 以上をもちまして参考人の方々に対する質疑は終わります。
 参考人の方々には、本日は御多忙のところを長時間御出席いただきましてまことにありがとうございました。貴重な数々の御意見を拝聴いたしまして、私どもまことに得るところ大きなものがございました。心から厚く御礼を申し上げます。委員会を代表し一言御礼のごあいさつといたします。(拍手)
 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後零時三十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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