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1994/06/21 第129回国会 参議院 参議院会議録情報 第129回国会 法務委員会 第4号
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1994/06/21 第129回国会 参議院

参議院会議録情報 第129回国会 法務委員会 第4号

#1
第129回国会 法務委員会 第4号
平成六年六月二十一日(火曜日)
   午後三時四十七分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         猪熊 重二君
    理 事
                下稲葉耕吉君
                糸久八重子君
                平野 貞夫君
                荒木 清寛君
    委 員
                斎藤 十朗君
                志村 哲良君
                鈴木 省吾君
                服部三男雄君
                山本 富雄君
                栗原 君子君
                竹村 泰子君
                深田  肇君
                木暮 山人君
                翫  正敏君
                國弘 正雄君
                紀平 悌子君
                安恒 良一君
   国務大臣
       法 務 大 臣  中井  洽君
   政府委員
       法務大臣官房長  原田 明夫君
       法務大臣官房審
       議官       森脇  勝君
       法務省民事局長  濱崎 恭生君
       法務省刑事局長  則定  衛君
       法務省保護局長  杉原 弘泰君
       厚生省薬務局長  田中 健次君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        播磨 益夫君
   説明員
       大蔵省大臣官房
       議官       西方 俊平君
       大蔵省証券取引
       等監視委員会事
       務局特別調査課
       長        立石 久雄君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○更生緊急保護法の一部を改正する法律案(内閣
 提出、衆議院送付)
○商法及び有限会社法の一部を改正する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(猪熊重二君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 更生緊急保護法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#3
○下稲葉耕吉君 更生緊急保護法の一部を改正する法律案につきまして御質問いたしたいと思いますが、私はこの法案を拝見いたしまして、基本的には更生保護行政の前進のためにいい法案だな、こういうふうに思います。ただ、その前進と申し上げましたけれども、ささやかな前進でございまして、法案自体もあるいはまた法案を背景とする更生保護行政というふうなものももっとしっかりした基盤を持って推進されなければならないのじゃないかなというふうな感じを実は強く持っているわけでございます。そういうふうな観点から、気のついたことを御質問いたしたいと思います。
 まず、大臣の法律案の提案理由の中で、一ページの後から二行目でございますが、「更生保護会の施設の現状を見てみますと、社会福祉施設などは国民の生活水準の向上に伴って居住環境の改善が進んでいるのに比較しまして、」、要するに老朽化しておる、あるいは「十分な設備が整っていないなどの問題を抱えております。」というふうなことでございます。
 社会福祉施設について設備が不十分なことは私もよくわかるわけですが、問題は、更生保護会の事業に参加しておられる方、施設の責任者であったりあるいは賄い婦さんだったりするわけなんですが、「社会福祉施設など」云々ということでございますので、社会福祉事業と比べて給与面でどういうような関係にあるのか、まずその点をお伺いいたしたいと思います。
#4
○政府委員(杉原弘泰君) 社会福祉施設と更生保護施設の比較という観点についてのお尋ねでございますが、いずれも民間の事業として営んでいるという事業があるという点につきましては、同じような形態のものが多いかと思います。
 更生保護事業につきましては、御案内のように、これはすべて法務大臣の認可によりまして民間の団体が民法上の財団法人あるいは社団法人というような法律形態で公益法人として営んでいるわけでありまして、その事業について法務大臣が公益上の観点から種々の監督を行うという形になっております。そして、言ってみれば民間のよさを生かした更生保護事業を営んでいただいているというのが実情でございます。
 一方、社会福祉事業につきましては、私どもの知る限りにおきましては、国あるいは地方公共団体が直接営む形の事業というものもある反面、更生保護事業と同様に民間の公益法人として営んでいるといったものもかなりあるようでございます。
 そういう意味においては共通の基盤を持っておりますし、また事業の内容につきましても、言ってみれば社会的弱者についての保護という観点では共通するものがあろうかと思います。
 ただ、社会福祉事業の場合には、言ってみれば身体障害者とかあるいはそのほかのいろんな生活保護的な措置を必要とするような社会的弱者がいろいろございますが、そういった人たちに対する保護ということに限られるわけですが、犯罪者の更生保護事業の場合には、そういった福祉的な措置だけではなくて、やはり犯罪者の再犯防止という刑事政策的な目的がそこに一つつけ加わっているということが違うかと思います。
 それで、それに関する財政的な……
#5
○下稲葉耕吉君 僕が聞いているのは、処遇上例えば給与なりなんなりがどういうふうに違うか、それを聞いているんだから、長々しく答弁してもらわぬでもいい。
#6
○政府委員(杉原弘泰君) わかりました。
 費用の違いの点について申しますと、更生事業の場合には委託費という形で国が……
#7
○下稲葉耕吉君 結論だけ言ってください。結論だけ。
#8
○政府委員(杉原弘泰君) 支出をしておりまして、福祉事業の場合とも似通っていると思いますが、ただ施設改善という面についていいますと……
#9
○下稲葉耕吉君 施設のことは聞いていないんだよ。
#10
○政府委員(杉原弘泰君) 職員についての問題に限って申しますと、委託費という観点では同様の取り扱いをしているというふうに考えております。
#11
○下稲葉耕吉君 それはおかしいのであって、私どもがいろいろいただいた資料によれば、はっきり言って、更生保護会の責任者の給与と福祉関係の事業に携わっている人の一番低い人の給与を比べてみた場合に、更生保護会の方が少ないという数字を僕はいただいているから聞いているんです。
#12
○国務大臣(中井洽君) 大変御無礼をいたしました。
 先生、今、一番低い給与の方で比較しろ、こういうことでありましたが、調理員という方で比べますと、更生保護会関係では平均で六万五千円ぐらいでございます。福祉関係におきましては、同じ規模ぐらいのところの調理員というのを見ますと平均二十七万円ぐらいになろうか、こんな数字がございまして、かなり待遇面で格差があると考えております。
#13
○下稲葉耕吉君 私が、この法律は前進であるけれどもささやかな前進であると。大臣自身も大臣の提案理由の説明の中で社会福祉施設等との関係において言及されているから、私はそういうふうに聞いたんです。
 続いて、税制上の取り扱いは社会福祉関係と更生保護関係は同じですか。例えば、法人税だとか所得税あるいは相続税、そんな点はどうでしょうか。
#14
○政府委員(杉原弘泰君) 両者を比較してみますと、社会福祉法人と更生保護会の双方に認められているもので内容的に社会福祉法人の方が更生保護会よりも手厚い措置がなされている優遇措置といたしまして、収益事業を行った場合のその所得に対する法人税の課税所得除外率が異なっております。具体的に申しますと、更生保護会が収益事業を行った場合には百分の三十までが免税となるわけですが、これに対し社会福祉法人の場合は百分の五十までが免税となるという取り扱いになっております。
 それから、更生保護会には認められないが社会福祉法人だけには認められている優遇措置といたしまして、これは細かくなりますけれども、法人自体に関するものとしては道府県民税、地方税、都民税、市町村民税の免除というのがございます。それから、法人に対して寄附等をしたものに関するものとして所得税の特別控除がございます。
 こういった措置の違いがあるというふうに考えております。
#15
○下稲葉耕吉君 今御説明がございましたように、私は目標としては社会福祉のそういうふうな施設と更生保護事業というのは並んで進むみたいな形ではなかろうかなとかねがね思っているんですが、施設の面においてははっきりおっしゃっていますね。処遇の面でもそうですね。それから、今申し上げましたような税制上の面なんかでもいろいろな問題があるわけなんです。私はこういうふうな問題にやはり本格的にもっともっと取り組むべきじゃなかろうかというふうな気持ちを強く持っておりますので、申し添えておきます。
 そこで、更生緊急保護法の三条によりますと、「更生保護は、第一条各号に掲げる者に対し、その更生に必要な限度で、国の責任において、行うものとする。」と書かれておりますね。その「第一条各号」というのは、いわゆるここで言う更生保護の中身でございますね。そうしますと、第一条の各号でないいわゆる救護だとか援護、これは国の責任じゃないんですか。
#16
○政府委員(杉原弘泰君) 御指摘のように、更生緊急保護法三条では更生保護は国の責任において行うものとするというふうに規定いたしておりまして、救護及び援護、犯罪者予防更生法における救護、それから執行猶予者保護観察法における援護については特に規定しておりません。
 しかし、反面で、犯罪者予防更生法における救護というものにつきましては、これは保護観察所が更生保護会に委託することができるということになっておりまして、また執行猶予者保護観察所における保護観察中の者についてもその援護措置を更生保護会に委託することができるというふうになっておりまして、この救護及び援護というのは保護観察の一環として行われる国の業務でありますことから、国の業務の一環として行われる救護、援護を更生保護会に委託するということもただいま申し上げました更生保護と同様に国の責任で行われるというふうに考えております。
#17
○下稲葉耕吉君 それは、局長はそういうふうな御答弁をなさいますけれども、更生緊急保護法そのものにストレートには書いていないですね。ストレートには書いていない。
 今おっしゃいました犯罪者予防更生法、これの四十条の二項によりますと、「保護観察所の長は、その救護を行い、これに必要な費用を予算の範囲内で支払うものとする。」、そういうふうに書いてある。それから執行猶予者保護観察法の第六条の二項の中に「必要な援護を行うことができる。」、この程度の記述なんですね。そして、私どもがいただいたこの資料の中には、執行猶予者保護観察法の中には犯罪者予防更生法の中に書いてあるように、保護観察所の長は救護を行って必要な費用を予算の範囲内で支払うものとする、そういうふうな記述もない。どこかにあってそういうふうなことをされているんだろうと思うんですけれどもね。要するに、この更生緊急保護法そのものはあくまでも、更生保護事業といいますか、いわゆる更生保護が中心であって、救護だとか援護だとかいうのはつけ足しだったんですね。
 そこで、伺いますけれども、それは昭和二十五年、この法律が制定されたときには、いただいた資料を見ますと、例えば昭和四十年においてすら更生保護の方が救・援護より大体二倍とまではいきませんけれども、あくまでも更生保護というのが中心であったんですね。ところが、法務省からいただいたその付表の五の図を見てもわかりますように、更生保護は今や二三・六%で、救・援護が七六・四%になって、る そういうのが実態ですね。ところが、その法律そのものは救護・援護についてはあくまでもつけ足しの姿勢です。私はそこに基本的な、何といいますか、矛盾というか、いろいろな問題が介在されているんじゃないかと思うんです。更生保護については、今お話しいたしましたように国の責任であるとはっきり書いてあるんです。局長は、救護も援護も国の責任だとおっしゃるけれども そう、うふうな言葉は見当たらない。やはりその辺のところで、私は、実態が救護・援護がもう四分の三になっているという現状を踏まえてその辺の法令上の対応なり何なりというふうなものも整備される必要があるんじゃないだろうか。なるほど、更生緊急保護法が制定された昭和二十五年の段階においては、それは救護・援護ということは後からつけ加えたことかもしれませんよ。あくまでも中心は更生保護だったわけなんですが、今の実態はもう過半数、七十何%、これによると七六・四%が救護・援護の事業だと、こういうふうな実態です。
 この辺につきまして、更正保護事業が大事だとおっしゃるんなら、この際やはり全部洗い直してみて、そして現在の体制に対応するような法令の整備なりなんなりされるべきじゃないか。実態が変わっているんだから、昭和二十五年の段階にとどまっているべきじゃないんじゃないか。変なことを言いますと、大体そういうふうなところに法務省の、何というか、体質といってはおかしいけれども、世の中の流れにもうおくれておくれて対応するような姿勢というものが見受けられるんだけれども、いかがでございますか。
#18
○政府委員(杉原弘泰君) 結論的には先生の御指摘のとおりだと考えておりますが、若干敷衍いたしますと、この更生緊急保護ができた当時は、この更生保護事業というものを更生保護というものを業とする更生保護会というものを中心に据えて、そしてあわせてこの更生緊急保護法の一条にも規定しておりますように、犯罪者予防更生法上の救護、執行猶予者保護観察法上の援護も行うということを目的とする法律として制定されたものだと思います。
 その後昭和四十年代にその更生保護会の収容者の内容が逆転したということは御指摘のとおりでございまして、そういう意味におきましては、この更生緊急保護法で規定する更生保護会の本来予定していた業務の内容と実態とが若干ずれてきている。そしてこの規定ぶりにつきましても、確かに更生保護の対象者に対する更生保護と、それから救護・援護の内容を比較してみましても、実態は、実際は同様の保護的措置をとるわけでございますから、そういう意味におきまして、この三法の規定ぶりに若干ふぞろいな面があるということも私も御指摘のとおりだと考えております。
 したがいまして、こういう点につきましては今後なお検討をさせていただきたいというふうに考えております。
#19
○下稲葉耕吉君 大臣、いかがでしょうか。
#20
○国務大臣(中井洽君) 法務省の時代に沿わない姿勢というものがあるんじゃないかという先生御指摘の点につきましては、私もまだ着任早々で十分全体を把握しておりませんが、いささか感じているところでございます。
 この更生緊急保護事業の点におきましても、全国百カ所ある、そのうち採算がとれているのはどのぐらいだと言ったら、まあ一割だと、こういう返事がございました。この事業以外にも、保護司さんあるいは人権擁護委員さんの手当を含めて、大事な仕事だから、あるいは高尚な仕事だからボランティアでみんなやってもらうんだと、これが当たり前だと。こういうのが根幹にあって、しかもまた日本人が見事にやっていただいておる。それに甘えて、御指摘の福祉なんかがどんどん働いている人の待遇もよくなっている、施設もよくなっている、それにつれて民間の御理解もふえて寄附も集まる。こちらは民間の理解もなかなかいただけない、一部の特定の人たちが歯を食いしばって頑張る。法務省はそれを見て当然のごとく見ておるというような姿勢がなきにしもあらずだな、このことを感じているところでございます。
 これは、時代に合って本当に頑張っていただく人にお報いができる、そのことによってもっともっと充実した法務行政、これらが進んでいくことが必要じゃないか、こんなことを痛感をいたしております。
 微力ではありますが、今御指摘の点を含めまして、少しでも方向が出せるように予算の面を含めて努力を続けたい、こんな思いでございます。
#21
○下稲葉耕吉君 大臣のお気持ちを伺いまして、非常に頼もしく思いました。
 そこで、さらにお伺いしたいと思いますが、第三条の一項は今お読みいたしました。第二項に「更生保護は、保護観察所の長が地方更生保護委員会の監督のもとに、自ら行い、又は地方公共団体若しくは第五条第一項の認可を受けて更生保護事業を営む者」いわゆる更生保護会に「委託して行うもの」、こういうふうに書いてある。これが基本です。そうしますと、国が行うという建前が一つあるわけです。その次に地方公共団体です。一番最後に更生保護会に「委託して行うものとする。」、こういうふうに書いてあるんですね。そうすると、建前は国が行う、それから地方公共団体もしくは更生保護会に委託して行うということなんです。一番最後なんです、委託事業というのは。ところが、局長、実態はいかがでございますか。
#22
○政府委員(杉原弘泰君) 実態を申し上げますと、現在は国及び地方公共団体が営む更生保護会というのはございませんので、専ら継続保護につきましては保護会に委託して行っているというのが実情でございます。
#23
○下稲葉耕吉君 私は、大臣が今おっしゃったことが本当の気持ちでなければならない、こう思うんです。ボランティアの方々にお願いしてやっていただいている、本来国の責任で行わなければならないものをね。ところが、施設を改善するについても、今回やっと解けたんですけれども、大臣の改善命令がなければ施設の助成金が出ない。幾ら出ているかといったら、たかだか年間三、四千万円ですよ。今、おっしゃるように約百近い。それで施設一つできますか。それも大臣の勧告命令、改善命令が前提だと。これはもう世の中に通用しないんですよね。そういうふうなことがやっと今回改善されようとしている。だから私は、それだけでも前進だと、こういうふうに申し上げているんですが、そんなものじゃないんじゃないかというような気がするんですよ、むしろこちらからお願いしているわけですから。
 今お話が出ましたように、従事している職員の方々の給与も非常に福祉関係の施設に比べれば少ない。税制上の問題も、それはいろいろ優遇されているけれどもまだまだ問題がある。施設の面においてもまさしくそうだと。いろんな問題があるわけですから、やはりこういうような問題について、何と申しますか、社会のマスコミににぎにぎしく報道されることがないだけに片隅に追いやられている。それはしようがないんだと。それでいて、改善命令だとか何だかんだと。それはもうそういうような姿勢というのは、私は、こういうふうな更生保護行政の中でます基本的に考え直さなければならない点じゃないだろうか。そういうふうな中から、どういうふうなお手伝いができるか、お願いしていることについてどういうふうなお手伝いができるかというふうな形で取り組んでいただきたいというのが本音なんですよ。
 そこで、施設につきまして、今度こういうふうなことで一億四千万円ぐらいの施設助成のお金が出るようになった。これはすばらしいことです。そういうようなことで、たかだか一億四千万円のことで予算関連法律だ法律だと、こう騒いでいるんですけれども、これはもう本当にささやかな話だと思いますが、法務省としては何カ年計画かでこういうような施設を改善していこうというふうな御計画かなんかございますか。
#24
○政府委員(杉原弘泰君) 総じて言いまして、大幅な改築あるいは補修を要する施設が全国百ある施設の中で六十八ございます。その中で特に緊急に改善を要する施設が二十六ございますので、この二十六の施設は特にこれから五年間ぐらいの間にはぜひ改善をしなきゃならないという状況に至っておりますので、この五年間に二十六の施設を逐次改善をしていきたいというふうに計画をいたしております。
#25
○委員長(猪熊重二君) 質疑の途中でございますが、暫時休憩いたします。
   午後四時十三分休憩
     ―――――・―――――
   午後四時二十三分開会
#26
○委員長(猪熊重二君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 更生緊急保護法の一部を改正する法律案を議題とし、休憩前に引き続き、下稲葉君の質疑を行います。
#27
○下稲葉耕吉君 施設の問題についてお伺いしたわけでございますが、具体的に今二十数カ所挙げられましたけれども、金額にして幾らぐらいかかるのでございますか。
#28
○政府委員(杉原弘泰君) ただいま緊急に大幅な改善を要する施設として二十六施設あると申し上げましたが、総額にいたしまして約十五億、最低限で見積もって十五億という計算をいたしております。
#29
○下稲葉耕吉君 おかたい法務省が十五億とおっしゃるんですから、そんなものかなと思うんですけれども、施設の中にも大きなものもあれば小さなものもある、平均二十人ぐらいだというふうに承知いたしておるんですけれども、そんなもので済むのかなというふうな感じが実はするんですよ。
 ですから、もし私どもの言うことを御理解いただけるのなら、今度の法律の改正を契機にしまして、施設の補助といいますか、助成についてルートができたわけでございますから、それはもう大臣だとか皆様方が大変努力され、私どももそれを御支援するのにやぶさかじゃないけれども、実態を正確に把握されまして、例えば五カ年計画だとかあるいはいろいろあるだろうと思うんですが、そういうふうな面の改善を早急に計画され、予算ももう始まっていることだと思いますので、おやりになるようなお気持ちはございませんですか。
#30
○政府委員(杉原弘泰君) 私どもといたしましては、この二十六施設につきまして、単年度では到底これは予算事情も許しませんので五年間の計画で、随時民間のいろんな利用可能な資金事情も考慮に入れまして逐次改善を進めていきたいというふうに考えております。
#31
○下稲葉耕吉君 きょうは、私は基本的な問題を今お話ししたようなつもりでいるんです。そういうふうなことを基礎にいたしまして、具体的な各論を詰めていきますと、いろんな問題が出てくると思います。
 法制の問題にいたしましても、税制上の問題にいたしましても、あるいは、今のは施設の問題、これは施設費の助成ですが、そのほかに例えば委託費が約二十億ぐらい予算化されておりますね。そういうふうな問題も、今申し上げましたような形で、じゃどういうふうにしてやっていけばどういうふうな形に到達するのか。ただ予算のときどきだけに横並びで要求されて、これだけ上がりました、これだけ上がりましたということでは、結局は前進しないと思うんですよ。だから、そこにやはり発想を転換して、法務省としても、保護局だけの問題じゃなくて、この問題にも真剣に取り組むんだと。
 入国管理行政というものは、この前もいろいろ私申し上げましたけれども、あれも私はやっとここまで伸びてきたと思うんですよ。それは施設もどんどんふえました。場合によっては予備費でも出した。密入国者、難民とかどんどんふえたときにはそういうようなこともやったんですね。増員の問題にしてもそうです。それは関西で新空港ができるということで伸びましたけれども、それだけの問題じゃないんですよ。それま、やはり法務大臣以下法務省の方々が気持ちを一致され、そして入管行政というのは当時の国民の大きな世論にもなっていたという、そういうふうな御支援もあって、そして国会の皆さん方も御協力されて今日まで来ているわけなんです。
 私は、そういうふうな意味では、それは、法務省のいわゆる保護局の仕事というふうなものはまだまだ下積みですが、しかし実態は大変厳しい実態なんですね。その辺のところをささやかなパンフレットも見ましたけれども、そんなものじゃないんですよ。だから、その辺のところを訴えられて、そして御支持いただいて、そして何とか日の目を見るようにお手伝いをさせていただくということじゃなかろうかと思うんです。
 きょうはばたばたいたしましたが、それについて、まず局長、それから大臣の御答弁いただいて、私の質問をやめます。
#32
○政府委員(杉原弘泰君) ただいま下稲葉議員から、私どもの更生保護行政、特に更生保護会の置かれている実情についての大変温かいお言葉をちょうだいしまして、私ども感激しております。
 御指摘のとおり、大変厳しい事情にあるということは十分よくわかっているつもりでございまして、それなるがゆえに、今回もささやかながら補助金の要求を含めた法改正を企図したわけでございまして、この法改正と補助金を一つのてこといたしましてさらなる改善に努めていきたい。そのためには関係部局の一層の御理解もいただかなければならないというふうに考えておりますので、よろしくお願いをしたいと考えております。
#33
○国務大臣(中井洽君) いろいろと下稲葉先生から、長年にわたる御経験を通じての大変温かい御激励やら御教示をちょうだいしたと考えております。
 御指摘のように、更生保護で年間約三千人、救護・援護で約五千人の方がこの制度をお使いになられて更生の道を歩もうとされているわけでございます。社会の底辺を支える大事な仕事だ、このように認識をいたしております。
 しかし、これまた御指摘がありましたように、施設の面でのおくれ、給料面でのおくれ、あるいは税制面でのおくれ、あるいはまた今回の法律でようやく国が二分の一ぐらいの補助金を出せるということになりましたが、地方自治体が補助金を出すという制度にはなっておりません。民間篤志家の御寄附等をちょうだいしながら経営をやりくりしていただいているわけでありますが、こういう厳しい経済環境の中でなかなか御理解をいただけないこれらの事業の寄附というものが予定どおりいくのかどうかという心配等もございます。
 これらすべてを含めまして、トータルといたしまして、この法案改正を契機に少しでも前進ができますよう、法務省、全力を挙げて頑張ってまいりますので、先生初め委員各位の皆さん方の御支援のほどをお願い申し上げる次第であります。
#34
○深田肇君 他の委員会と重複したために先輩議員のお話を全部拝聴しておりませんので、ひょっとしますと重複したり、また的外れなことがあるかもしれませんが、御容赦いただきたいと思います。
 そこでまず最初に、この法律を読ませていただいたころから感じたことなんでありますが、先だってもちょっとお話し申し上げたのでありますけれども、この法律の更生緊急保護法という言葉の中の緊急という意味が私どもにはよく理解ができないんです。
 と申しますのは、提案理由の中にも緊急という意味が出ているとは思えません。同時にまた、その他、法律そのものをそれなりに読ませていただきましたが、緊急という意味がわからないのでありますけれども、後ほどいろんなお話をする中で感想的なものを申し上げようと思いますが、どうも更生保護という表現も含めて、市民社会との間では何か違ったイメージがあるような感じがしておるのでありますが、そのことと関係があるかどうかわかりませんが、緊急というのをわざわざ入れられた理由をまずひとつ伺っておきたい。そこから入っていきたいと思いますが、局長の方から御答弁いただきましょうか。
#35
○政府委員(杉原弘泰君) 更生緊急保護法に申します緊急という意味についてでございますが、更生緊急保護法の第一条には、犯罪前歴者がさらに罪を犯す危険を防止するため、これに対する緊急適切な保護に遺漏なきを期するということをその目的とするというふうに規定いたしております。
 この更生保護の措置とは、この更生緊急保護法の第二条一項にありますように、犯罪前歴者が、親族、縁故者などからの援助や公共の衛生福祉その他の施設から保護を受けられず あるいはそれらのみによっては更生できず、再び犯罪に陥る危険性があると認められるような窮迫した状態にある場合に、緊急にこれを救済するためにとられる援護措置という意味であると考えております。
 刑務所等から身柄の拘束を解かれた場合には、対象者によりましてはすくに当面の衣食住に事欠くような不安定な状態に投げ出されるというようなこともあり得るわけでございまして、その間に社会福祉の諸措置を受けるための手続をとる時間的な余裕もないといったことが多いわけであります。
 更生保護の措置は、このような場合に再犯防止という刑事政策的な観点から必要な緊急措置として行われるべきである、そういう趣旨からこの法律において緊急という文字が用いられておるというふうに考えております。
#36
○深田肇君 一応御説明をいただいた上で、大臣にちょっと伺っておきたいのでありますが、私、今回の改正そのものに反対するつもりはないのでありますけれども、いわゆる更生だとか保護だとかいうことを実り多きものにするためには、少しいろんな意味で考えてみたらどうかなという感じがします。
 その意味では、提案の趣旨の中にもありますように、国として本格的に行うんだ、国の責任で行うんだという言葉もありますから、寄り寄りいろんなことを考えると思いますが、今回提案されている施設に対する補助金以外の問題で、このいわゆる更生保護に関して何が最も大切で、こういったことをやるべきなんだというふうに、法務大臣はどのように考えておられるかをちょっと伺っておきたいと思います。
#37
○国務大臣(中井洽君) 私もいろいろと更生緊急保護のことを聞きまして、一番大事なことは、指導する職員のレベルアップ、また同時に、刑を終えて出てこられた人たちが自立、生活できるような温かい社会の受け入れ、このようなことが大事なことではないかと考えております。
#38
○深田肇君 さてそこで、実は先だってお話をいただく中で、ここに資料があるのでありますが、財団法人清心寮といいまして、私の住んでいる埼玉県の浦和市に新しい立派な建物ができ上がっていることを伺いまして、先日の土曜日、職員の皆さんお休みかなと思いながら、私どもの秘書には言葉の使い方をよく考えて、お休みのときに飛び込むんですから迷惑をかけちゃいけないからということを大変こちらは意識して、土曜日の午後一時からお邪魔をいたしてまいりました。そのときのことなども報告申し上げながら、感じたことを率直に一、二申し上げてお尋ねしておきたいと思います。
 建物そのものはもう文句ないですね。立派そのものですよ。後で伺えば、全国にある百のうち一番すばらしいというか一番新しいものができたんだから、ほかは大変おくれていて悪いんだということに話はなるかもしれませんが、できるときは町内会そろって反対運動がありまして、それは、言うなら刑務所を出た人だとか、それからいろんな意味で悩みを持っている子供たちが帰ってくるということもあって、大変な不安が地域的にあることは想像できますが、そういうことがあったんだろうと思いますが、町内会挙げて反対運動が起きて、そして約三年間ぐらいつくれなかったんですね。私どもにもいろんな意味での御相談が一般市民からあったということも思い出すのであります。
 でき上がってからの御連絡の行き違いがあったかもしれませんが、今回のことについては初めて伺って、行ってみますと、建物はもう本当に高級マンションですよ。立派なものだというふうに申し上げていいんだろうと思うんです。率直に申し上げますが、法務省なり保護の皆さんが財団法人でよくこれだけのものをつくられたなと思いながら中にずっと入りました。本当に立派なものだというふうに思います。
 外から見た雰囲気で言いますと、市民社会とはがっちり共存できる、信用も高まるだろうというものができ上がっておりますから、その点では何も言うことはないのでありますが、その中で、土曜日の一時だということで皆さん方と遠慮しいしい伺って話をしてまいりますと、これからがいろいろと質問したり、もっと施策をすべきだなと思いながら申し上げるのであります。
 埼玉県は、本来は二つあったんですってね。二つあったものが維持できなくなって、だめになって、数年たって市民の皆さんの方からそういう意味の必要性の要求運動が起きて、それで関係諸団体や自治体の協力を得て今回できたということが記録的にも明らかになるわけでありますが、四億二千万の金を自主的に集めたというんですよ。よくぞ集まったなというふうに率直に思いました。埼玉県の有志の方々が中心になって財団法人設立の許可申請から始まってこの四億二千万の金を集めた、そのいわゆる苦労話を聞いた上で、集めていただいた方にも感謝するし、お金を出してもらった方にも大変感謝することをしっかり申し上げた上で、私は、これから法務省や法務省の監督する財団法人清心寮、全国的に言えばいわゆる更生保護会は、いろんな意味において自覚をして目的達成のためにやるべきだろうというふうに思うわけでございますが、そこで、大臣が今おっしゃったことに関連して言います。
 私は、土曜日の一時に行きましたが、伺うところによると、その立派な建物の中に、定員は二十三名で、現在は成人が十一名で若い子供たちが三名で十四名しか入っておられないのでありますけれども、三百六十五日、二十四時間五人でやっているんです。大変ですよ、この労働力は。
 ここで具体的に伺っておくのは、いわゆる定員というのは保護をされる方の定員もあるんだが、そこで働く職員の定員というのは何か基準があるのかないのか。私の直感で言ったら、大変だなと思ったね。土曜日なんていうのは当然もっと休みになって  休めないですね、五人では一それで、いわゆる家族の方が、宿舎があって連れ合いの女性の方が食事の用意をするということで、二人でやっておられる。そのほかにもちろん役所の方が三人でいらっしゃって合計五人。五人で二十四時間で三百六十五日を全部、休みがとれますかという話をしたら、にっこり笑って 我々は献身的に世のため人のためにやるんですからとおっしゃっていたけれども、これは大変だなと。そうなると、ひょっとしたら言葉が強くなったり、ひょっとしたら子供たちやまだまだ悩み多き人たちに対していろんなことで当たることがないのかなと思うほど、我々の言葉で言う労働条件は悪いですね。これは御存じかもしれませんが。
 そうすると、何か基準があるのか、それともそれは自主的に自分たちでやることだから五億の金を六億でも集めて自分で賃金を払えということになっているのかどうか。これでは本当の意味の更生保護の成果は上がらないんではないかというふうに一つ印象として持ちましたので、何か基準があるかどうか。
 同時にまた 具体的なことで、一番いい建物の清心寮であの程度とするならば、全国的にはもっと苦しい状況があるんじゃないか。そうなると、そこにお世話になる方々、今お話があった何千名の方々が、いろんな意味で、言うならば社会復帰の前に大変な御苦労が精神的にもあるんではないかというふうに思います。
 関連して、経営状態も大変なようですね。それでどうやってやっていくんですかと聞いたら、仏さんにお仕えをしているお坊さんというのか住職というのか、その方々が中心になって千円の会費を取って歩いているんですね。そういう状況ですよ。
 そういうものであれだけの管理をするということで、もちろんその中に委託費がありますから、委託費とみずからの資金、それからああいうようなことで回すということのようですから、こうなってくると、どうしても委託費に依存してしまうんじゃないか。委託費の本来の目的はどうなるのか。しかも委託費は、定員の頭数でもらえなくて、入っている方の数だというんです。おのずから入った人だけの数が出ちゃうわけだから、そうすると、二十三人分もらって十三人面倒を見るんじゃないんだから、十三人分しかもらえないとなると、委託金を適当にという意味じゃないんだけれども、委託金でもやりにくいだろうということを聞けば聞くほど感じますね。
 そして、そこの館長先生は 伺ったら学校の先生のOBだということで、教職員の年金を基礎にして、加えて若干の手当をもらっている。それは五人の職員の中に入っている。皆そうだとおっしゃる。純粋にもらっているのは何名かというと、二人だという。五名のうちの二人が完全な給料。その完全な給料は公務員レベルですかと言ったら、これまたにこつと笑われて、我々は献身的にやるんですと。こうなると、我々の昔の言葉で言うと、長続きするだろうか。その人たちが本当に温かい気持ちで大きな気持ちで悩み多き大先輩や若き青少年たちに接触していけるんだろうか。一生懸命更生保護を行政指導、監督される大臣や局長は、そういう事実を御存じならほうっておいちゃいけないと思いますね。
 御存じないのなら、きょう以降、即、特別対策をしてもらいたいと思いますが、率直に今申し上げましたように、そういう基準だとか特別対策などがあるのかどうかについて、今後の方針に関連して少しお話を聞かせてください。
#39
○政府委員(杉原弘泰君) まず第一点、職員の給与の基準でございますが、法務省としては収容定員ごとに職員の数を指示しておりまして、収容定員二十人以下の施設につきましては標準職員数を四人といたしまして、主幹が一名、補導員が二名、調理員が一名。二十一人以上を収容する施設につきましては標準職員数を五人としておりまして、主幹が一名、補導主任が一名、補導員が二名、調理員が一名、こういうような職員の形態、数を一応標準としてその指導をいたしております。それに見合うところの委託費は、先ほど委員御指摘のとおり、収容者の数に応じて支出いたしておりますが、その委託費の中にこれらの職員数に応じた給与も含められております。
 実態といたしましては、今お話のありました浦和の清心寮の実情も私どもとしては報告その他を通じまして十分承知しているわけでございますが、経営がそんなに楽ではないということも十分認識いたしております。この問題につきましては、その実費のすべてを定員定額制というような形で出すような方式も諸外国にはあるようでございますけれども、我が国の場合はまだそこまでいっていないという実情にありまして、これは今後、御指摘の点も含めましてさらに検討をしなければならないことであろうというふうに考えております。
 ただ、一点だけ申し上げるならば、我が国の更生保護の行政というのは、これまで保護司制度も含めましていわば官民共同の体制で今日にまで至ってきたという伝統がございます。
 この官民共同というのは、こういった更生保護の仕事というのは役所だけ、つまり国の側だけですべてできるものではないという物の考え方に立っているわけでございまして、やはり犯罪者の更生保護というのはその地域の市民の皆様の御支援と御協力、理解がなければ完全に全うできる仕事ではないということで、この更生保護会につきましてもこれまではそれぞれの地域の保護司さんあるいは更生保護婦人会その他の更生保護関係者のボランティア的な御支援のもとに資金の造成も含めまして、いろいろ御協力をいただいてきたという実情にあります。
 ただ、そうは申しましても、今御指摘のようないろんな事情がありまして、それだけでは到底立ち行かなくなっているということも事実でございますので、そういう観点から少しずつこの保護会の財政基盤も含めて基盤を強化していかなければならないというふうに考えておりまして、今回の施設費補助金の要求というのもそういう努力の第一歩として御理解をいただければありがたいというふうに考えております。
#40
○国務大臣(中井洽君) 御視察をいただきまして、本当にありがとうございました。
 この法案改正で、これから五カ年ぐらいでどうしても直していかなきゃならない二十六の施設、お手伝いをして建物を新しくしていただく、この思いでおりますが、実は青森でも十数年間建物が建てられない、こういう問題が起こりまして、なかなか住民の御理解をいただくということが大変である、このことを実感をいたしております。
 同時に、古くからございますから、建った当時はちょっとへんぴなところであったのでありますが、住宅等が建ちまして、建て直すなら住宅街の外へつくれと、こういう住民のお声も強うございまして、これからも計画どおり、この予算どおりこれが進んでいくのかどうか、私どもはさらに住民各位のこの事業の大切さを御理解をいただくことが大事だと、このように考えております。
 同時に、先ほど下稲葉先生にお答えを申し上げましたように、本当に、働いている方がかつて法務省におったと、年金とこれと合わせてまあ自分のプライドでやってあげるよと、こういう方が多くおられまして、今のお話の宗教家あるいは学校の先生を含めて本当にボランティア精神で頑張っていただいております。しかし、それにいつまでも甘えてばかりいるわけにはいかないという実感を抱いておりまして、そういう献身的な御苦労に少しでも国としてもお報いできる体制、またそのことによってレベルの高い更生保護を目指していただけるよう努力をしたい、このことが率直な思いでございます。
#41
○深田肇君 時間の関係もありますから、浦和レベルは全国にどのぐらいあるのかを聞いてみたり、いろんなことを感じますけれども、それは別の機会にいたします。
 今お話が出ましたように、建物ができた、その中で職員を初めとしていろいろとお世話する方の献身性やその人たちの意識の問題も出たわけでありますが、その次は今お話が出ましたように地域との共存、調和ですね。
 それで、私はもっともっと地域のトラブルを聞いているものですから、つくる段階から地域に対して、なぜこの町にとは言わなくていいわけでして、この日本にどうしていわゆる更生保護が必要なのかというようなことを地域の皆さん方によくわかってもらう。そして、うちの町にそれができてトラブルも起きない、よその県から来た方なんだが、出てこられた方がたまたま三カ月、半年この町にいらっしゃる、その方と日常的に仲良くなっている、町でもにこにこ笑っている、町の運動会にも出てこられるというようなことが自然に行われるようになって、浦和の清心寮はいいものだと浦和の市民が思うようにどう市民的な活動の中でつくるかということが大事だと思うんですね。
 そのことが前から計画されて、そしてできたときもそれがされる、そして今日まで続いておれば、中に入っている本人たちの気持ちもいいだろうし、みんな協力できると思うんですが。
 このパンフレットなんかを見ましても、確かに一番最後のページに「地域社会と更生保護会」と書いてあるんです。保護会が何をするかということを書いて、地域の皆さんお願いしますということが書いてあるんですが、地域の皆さん、日本の国民がどのように今いわゆる人権国家として、あえてここで人権とか人道上という言葉を使わせてもらいますが、その意味でどうやってこの社会の一員として彼らを温かく迎えるか、それでは我々がどのように接触すべきなのかというような啓発啓蒙の文書はないんです。確かに書いてあるんですが、地域の方々から金品や寄贈や奉仕活動をいただいておりますという報告文書なんです。いただきたいと書いているわけじゃありません。いただいておりますなんですね。
 そうでなくて、いただく、いただかないの問題じゃなくて、それは皆のお互いの問題なんだと、お互い若いときに過ちを犯したとかいうことだと割り切って、どうやって一緒になって社会人としてやっていくのかというような市民の側の意識を変えるということを、法務省だけでなくて全政治のお互いがやらないと、人権国家だとか人道上の問題といってもうまくいかないのではないかということを感じます。
 それで、そこにいらっしゃるお寺さんだとか学校の先生方とお話ししますと、おっしゃるとおりだと大きくうなずかれて大変共感をしてお茶やお菓子をいただいて帰ってきたんですが、実はこの浦和のそういうことを感じ取られる清心寮のチラシの中でも書いていることは、もう大体決まってくるんですよ。保護会から言うのは、地域の皆さんの協力要請、地域への参加、それから地域へのサービス、いわゆる建物をつくって町内会の人に鍵を貸しますから会議室に使ってくださいというサービスだとかいうようなことはやるんですね。ところが、地域の人たちの中に偏見があったりということがあってはだめなわけですから、そこのいわゆる意識改革をどうするかというのを、これをこの更生保護会の人にやれというのは無理かもしらぬが、我々としてはそういうものをどうつくるか、むしろそういうものがこの町にあって、その町でお互いが楽しいピクニックや町の盆踊りも一緒にやるというのをどうつくるかということが、行政的にも、学校教育も、地域社会としても、どうつくるかということが大変大事なんじゃないかというふうに、立派な建物を見るだけに余計思いますね。こんな建物ができたからと満足してたらかえって結果的には悪いことが起こりやせぬかという感じがするので、その辺を一つ申し上げておきたいと思います。
 そんなことについてのひとつ御感想をいただければありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
#42
○国務大臣(中井洽君) 大変お心の込もった御提言、御忠告を賜りまして、ありがとうございました。
 私ども、これから各地区で施設のある御近隣の皆さん方に御理解をいただけると同時に、そこに短期滞在する者が地域住民の一員として受け入れられる、そういう雰囲気ができるように法務省としても努力をしたい、また、地域の皆さん方にも御理解をお願いしていきたい、それがこの事業を受けられる刑を終えた人たちの社会復帰をしやすくする一つの道でもあろうか、こんなふうに感じ
 ております。
#43
○深田肇君 保護局長、吉田淳一さんという方を御存じですかね。私なんか知らなかったんですが、元法務省保護局長という肩書きが入っているんです。その方が清心寮の会報にことしの正月に「年頭雑感」として言葉を寄せられているんです。保護局長をやられた方が、今、清心寮の理事になって具体的に地域の一人としてお世話をしているんですね。この文章、感銘しますよ。
 これは現保護局長もこういうお気持ちだと思いますが、どうも行政の方は金をつけると建物をつくることが優先のように思いますから、その意味合いで、ちょっと生意気なようでございますが、感銘したものですから吉田淳一先生のこの文章をちょっと御披露しますが、「我々更生保護関係者としては、この当面する諸問題に堅実だが柔軟な精神で今後一層努力する必要があると存ずるものです。それはともかく、更生保護会というのはやや暗い」、「やや暗い」と御本に書いてあるんです。「やや暗い生硬な用語のように思われてなりません。」、用語がよくないとおっしゃっていますね。私が最初に感じたことと緊急との絡みがありますが、そういうことをおっしゃっています。
 そこで、「英米のホステルやハーフウェイハウスという呼称に必ずしも範をとる要はないと思いますが、法令用語を離れ、何かより一般に親しみ易い通称、呼称を全国的に採用して世間に理解を深めてもらうのも一案ではないかと時折感じております。」、こういうのを読みまして、うれしいと思うし、ありがたいと思います。
 こういったことをお互いがしつかり受けとめてやることが大事なのではないかと思います。これだけ申し上げて、もうこのことについての御答弁はいただかなくていいでしょう、局長、もう局長も同じと思いますから、同じ心だというふうに理解をさせていただきます。浦和にいらっしゃるそうですから、大変我々としてはうれしいと思っていることを申し上げたいと思います。
 そこで、残りました一分間ほどお時間をいただきまして、直接この法案と関係ないのですが、これから社会に復帰いたしまして更生保護をやる人を一人私もお世話しているものですから、そのことにつきまして、法務大臣、ちょっとお礼を申し上げた上でごあいさつをしておきたいと思います。
 実は、法務委員長も御存じのとおり、先般の法務委員会で私の方で埼玉県の出身者の石川一雄さんのことにつきまして陳情を申し上げておりました。歴代の法務大臣にお話し申し上げて、もう三十一年たちますから何とか仮釈放してください、仮出獄させてくださいというお願いをしておったのでありますが、予算委員会との絡みで私が御質問する機会がなくなったのであります。
 その後の参議院の予算委員会で我々の同僚議員の質問に対して、大変温かい発言なりお言葉を法務大臣にいただいたことを先般訪朝して帰ってまいりました後伺いまして、新聞報道を見たりして本当にうれしく思っております。地元埼玉県を初めとして、全国の支援者も大変喜んでおりますし、本人の家族たちも本当に涙を流して喜んでいるようでございますので、ひとつこれからもよろしくお願いをいたしておきたいというふうに思います。
 その意味合いで、もしよろしければ家族や同時にまた支援をしてきた私たちに対して、この場で一言大臣からお言葉をいただけるならばうれしいと思いますが、いかがなものでございましょうか。よろしくお願い申し上げます。
#44
○国務大臣(中井洽君) 過般、当法務委員会の私の所信に対しまして深田先生から御質問通告もございまして、私どもも現在どうなっているかということを率直にお答えをさせていただけるかと考えておったわけでありますが、私の衆議院での委員会、本会議等の都合がありまして御配慮を賜り、質問がなくなり、先生は北朝鮮の方へ出かけられましたので、長年この問題に御関心をお持ちの先生の御質疑にお答えできなかったのが私は少し寂しい感じがいたしました。
 ただ、私どもは公平公正に今日までやってまいりましたし、お答えを申し上げたとおり、現在も粛々と手続が行われておるということを予算委員会で申し上げ、ただ私は一言、現在という言葉をつげ加えただけでございます。できる限りこういう手続が早く進むことを大臣としても希望いたしております。
#45
○深田肇君 どうもありがとうございました。終わります。
#46
○翫正敏君 翫正敏です。
 財団法人更生保護会というのは各都道府県において活動しているわけですけれども、施設の数が百カ所ぐらいあるというさっきお話がありましたが、一つ一つの施設が一つの財団法人更生保護会というものを形成しているんでしょうか。それとも、各都道府県に財団法人○○、例えば石川では石川更生保護会というのがあって、これは一つしか施設がないのであれなんですけれども、百カ所ということになると複数の施設があるところがあると思いますが、複数の施設があるところはどういうふうに財団法人との関係がなっているのか、説明してください。
#47
○政府委員(杉原弘泰君) 更生保護会は全国各都道府県に一団体以上設置されておりまして、現在全国で九十九団体を数えております。複数の施設を持つ団体もございますので、施設の数は合計百となっております。一つの県に一つ以上ということでございますので複数ある県もあります。例えば、東京では十八の施設がございます。大都市には複数あるところが多いわけで、そういうわけで合計百という数になっております。
#48
○翫正敏君 じゃ、九十九団体あるということは、九十九の財団法人更生保護会があるという、そういうことですね。
#49
○政府委員(杉原弘泰君) 九十九団体ございまして、二つの施設を持つ団体が二つございます。そうしますと百一になるわけですが、実は一つ、団体は存在するんですけれども施設がある事情で存在しない県が一県ありまして、そのために施設は百というふうになっております。
#50
○翫正敏君 こういう更生保護の施設ですからいろんな御苦労がそれぞれの施設であるだろうと思うんです。法務省で把握しているところで数カ所ピックアップしていただいてよろしいと思いますが、活動状況とかいろんな施設での御苦労の様子、そういうことを把握している範囲で説明してください。
#51
○政府委員(杉原弘泰君) 概況を御説明いたしますと、全体的に申しますと、更生保護会の施設の規模というのは定員百十名を超える大規模の施設もございますが、全体の六割までが収容定員二十人以下の小規模な施設であります。四十人以上のものは全部で八施設しかございません。先ほどもお話がありましたように、大体二十人前後が平均ということになろうかと思います。
 各更生保護会では合理的な処遇を行うために収容者の成人、少年別、男女別という形で保護いたしておりまして、男子の少年、成人混合の施設が最も多くて約六四%を占めております。もちろん、女子専用の施設も数は少のうございますがありまして、現在全国に七カ所あります。
 刑務所からの仮出獄者のうち三人ないしは四人に一人の割合で更生保護会に入っておりまして、これらの者、最近は家庭に問題がある者が非常に多くて、刑務所から仮出獄しても帰る家がないという者が多いために、仮出獄者中の帰住者のこの更生保護会の利用が大変多くなっております。そこでこの更生保護会がそういった仮出獄者の更生保護に対して果たす役割というのは次第に大きくなっているというのが実情でございます。
 具体的な保護会を幾つか挙げて説明をするようにというお話でございますが、例えば東京には十八ございますが、その中で変わったところと申しますと、二つぐらい収益事業を営んでいるところがございます。一つは清掃業、一つはパン製造業でございます。二つの施設とも二十名を超える中規模の更生保護会ですが、これらの施設では収益事業を営むについて、この更生保護会の対象者を労働者として使用するということではなくて、それとは別個に収益事業を営みつつ、その収益を保護会の費用に充てるという形で事業を営んでいるという保護会が二つございます。
 また大阪の方にも、自動車修理工場を持ちまして、これは少年対象の保護会でございますが、そこでは少年の訓練、教育という観点から対象少年の一部を本人の同意を得てそこで稼働させ、その勤労を通じて指導するというような形で事業を営んでいるというところもございます。これは非常にまれな例でございますが、特異な例としてそのようなものがございます。
 こういった収益事業を営む更生保護会というのは全部でたしか十八か十六でしたか、ちょっと正確な数字今思い出せませんが、そのぐらいの数ございまして、ほとんどは更生保護事業だけを営んでいるという実情にございまして、先ほど来話が出ておりますように、大体二十人前後の施設が多いわけなので、職員も四人から五人といったところで事業を運営しているということでございます。
 更生保護会が果たす役割が大変大きいと申しましたが、実際に全国的な統計データはございませんけれども、ある法務省の研究調査によりますと、この更生保護会に入っている者については入っている間の再犯率が非常に低いということで、やはりそういう研究結果から見ても、この更生保護会が再犯防止、社会復帰を促進する上で果たす役割は非常に大きいというふうに私ども考えております。
#52
○翫正敏君 収容者一人当たりの国からの国費というんですか、助成金というんでしょうか、わかりませんが、ちょっとその性格の説明を含めて幾ら出ているのかお話しください。
#53
○政府委員(杉原弘泰君) お尋ねの趣旨は、収容者一人当たりの政府の助成金ということでございますか。
#54
○翫正敏君 はい、そうです。
#55
○政府委員(杉原弘泰君) 助成金ということではなくて委託費という形で国庫、国から費用が出ておりまして、これは総額で二十億、年間二十億の金額が全保護会に出ております。
#56
○翫正敏君 一人の収容者に対して幾らかということです。
#57
○政府委員(杉原弘泰君) そうしますと、一人当たりということになりますとちょっと今計算をしないとわかりませんが、直ちには……
#58
○国務大臣(中井洽君) ちょっと先生の質問の意味を取り違えているんだと思いますが、食事つきの宿泊保護の場合には一人頭四千三百円、それから宿泊だけの保護という場合には三千百円、こういう形で委託をいたしております。
#59
○翫正敏君 それだけの委託費ではなかなか施設を運営していくのは大変でありますから、みんなそれぞれの施設は寄附金を集めるということで運営をしておられると思いますが、この寄附金を集めるということにどのような方々が協力しておられるのか、そんなような寄附金を集めておられる各施設の状況とか御苦労の様子とかというので把握していることがあれば説明してください。
#60
○政府委員(杉原弘泰君) 施設改善を中心といたしまして、更生保護会の自助努力によりましてかなりの寄附を受け入れて今日に至っているわけですが、その努力というのは、民間の助成団体あるいは地方公共団体からの助成ももちろんございますけれども、それ以外の民間の篤志家、企業も含めました民間の篤志家からの寄附をちょうだいしております。
 その仕事はそれぞれの保護会が所在する地域の更生保護関係者、具体的に申し上げるならば、保護司連盟の方々、それから私ども保護局の民間協力組織であります更生保護婦人会の方々、こういった方々が中心になりまして、それ以外の支援者ももちろん含めまして寄附集めをしていただいているということでございます。
 それから、そういった寄附集めにつきましては、この更生緊急保護法自体にも更生保護会が寄附を募集するということを想定いたしておりまして、そういう法の趣旨に従ってやっていただいているということになりますが、いろんな経済情勢からそういった寄附の受け入れというものも次第に難しくなっているという実情にあります。
#61
○翫正敏君 地域で保護司をしておられる方はほとんど無報酬に近いことで、少し国からお金は出ると思いますが、しておられるわけでありまして、それになおプラスをしてこういう施設に協力するために寄附金を集めたりするという活動までしておられるわけで、大変苦労しておられるというふうに思うんですけれども、寄附をされた人に対してはいわゆる税金の控除とかそういうふうな面でのことはちゃんと受けられるようになっているというふうに理解してよろしいでしょうか。
#62
○政府委員(杉原弘泰君) この更生保護会は、税法上、特定公益増進法人という取り扱いを受けまして、この更生保護会に対して寄附をなさいました方につきましては全額免除という取り扱いになっていると思います。
#63
○翫正敏君 近所から迷惑な施設があるということでいろいろ苦情が出たりという実例を聞いていると思いますけれども、そういう場合に、法務省という国の役所の立場でそういう周りの人たちに対して理解を求めるということ、そのような活動をしておいでになりますでしょうか。やっておられれば、どんなようにしておられるか説明してください。
#64
○政府委員(杉原弘泰君) 先ほど浦和の清心寮に関して深田委員から御質問があった際にも出たことでございますが、この保護会につきましては、残念ながら迷惑施設であるということで、この施設を新築あるいは大幅に改築する、移転するという段になりますと、やはり地域住民の一部から強い反対があるということが時として起きるわけで、そういうことに対して平素から私どもが機会をとらえて、例えば本年の七月一日から法務省が主唱して行われます「社会を明るくする運動」という運動がございますが、こういった機会に一つのキャンペーンとして、非行少年や犯罪を犯した人々に対する温かい理解というものを求めるために一般の国民の理解を求めるための一般的な全国的なキャンペーンを毎年行っております。
 この「社会を明るくする運動」というのは、本年で四十五回を数えるわけでありまして、全国的には四百万人余りを動員する大きな国民運動になっておりますが、そういった機会だけではなくて、その都度やはり問題が生じたときには、保護観察所の係官が地域の更生保護の関係者、例えば保護司さんあるいは更生保護婦人会の関係者などと相携えて、それぞれの問題の地域での個別的な理解を得るような説得といったものを現実には行っております。
#65
○翫正敏君 先ほど百一施設のうち二十六施設が極めて緊急な改善の必要がある施設であるということだったんですが、そういう二十六施設の実情はどうなんでしょう、私が石川県の金沢にあります石川更生保護会の方へ視察に行ってきましたところ、雨漏りしているという実情でありまして、大変緊急に直さにゃいけないということで、これから寄附集めもしたいというようなことをそこの責任者の方々が言っておられましたけれども、その二十六の改善を緊急に要する施設というのはそんなような感じなんでしょうか。
#66
○政府委員(杉原弘泰君) 御指摘のとおりかと思いますが、この石川更生保護会につきましては、そういう状況にかんがみまして近く施設を改善するという見通しで具体的に計画を進めさせていただいております。本年度予算でこの補助金がつきましたら、その一部をここに充てるという予定にしております。
#67
○翫正敏君 これで終わります。
#68
○紀平悌子君 更生緊急保護法の一部を改正する法律案につきまして、法務省及び法務大臣に質問申し上げます。持ち時間が九分でございますので、少し私が多くしゃべり過ぎるかもしれませんが、お答えの方は簡単にどうぞお願いをいたします。
 犯罪というものは社会における病理現象だというふうに言われておりますけれども、実際には罪を犯すのは同じ人間なのでございますので、犯罪とか非行を犯した者の自後の更生こそが本当に社会にとって必要であり、処罰そのものよりもむしろ力点を置くべきというふうに私は常に考えてまいりました。
 しかし、いわゆる更生保護につきましては、現実には民間の公益法人に委託をする、そういうふうな形をとっておりまして、施設面などでその老朽化等が非常に目立ってきているというそういう現実を踏まえての今回の改正案だと思いますが、保護施設に対する法務省の基準でございますけれども、概略そしてその運営状況に関しての法務大臣の御見解をごく簡単に承りたいというふうに思います。保護局長からどうぞお先に。
#69
○政府委員(杉原弘泰君) それでは、私の方から保護施設に対する法務省の基準についてお答えいたします。
 更生保護会が直接に保護事業として行う場合の基準は、更生緊急保護法の五条二項の規定するところに従いまして法務省令によって定められております。その内容は設備の基準、処遇の基準、職員の資格などを定めております。
 以上でございます。
#70
○国務大臣(中井洽君) 先ほどから御議論ありますように、施設的には大変老朽化が目立っておりますし、また厳しい勤務体制、報われない賃金体系など、職員の方々のボランティア精神に支えられてやっておるわけでありますが、しかし一つ一つの更生事業に関しては大変な熱意と実績を上げていただいておる、このように考えておりますが、犯罪も複雑化をいたしておりますし、なかなか難しい更生者も多くなってまいります。職員の皆さん方のレベルアップ等、今後とも図ってまいりたい、このように考えております。
#71
○紀平悌子君 先ほど埼玉県と石川県というふうに出てまいりましたので、じゃ私も言っていいかなと思いまして、カットしようかと思いましたけれども、熊本県の例をちょっと実態を申し上げてみたいと思います。
 熊本のは自営会と申します。熊本自営会と申しまして、これは非常に古い歴史を持っております。熊本監獄、昔の呼び名で呼びますと典獄ですね、典獄に佐藤元次郎さんという方がおられまして、大正二年に発起人になって、大正三年に事務所と収容施設を設立し、収容保護を開始したということなんです。その後、二十五年の五月に更生緊急保護法が施行されました後に、二十七年九月十日に財団法人としての認可を受けて今日に至るということでございます。
 それで、実態をつぶさに伺いましたところ、建築されて以来三十年を数える施設でございまして、とても埼玉県の例には及びません。熊本刑務所からの長期刑処遇施設出所者を多く保護するという特徴を持っております。九州地方では唯一の長期刑の処遇施設である熊本刑務所のすぐ近くにありますので、受刑者が非常にここへ入ったがる。入ったがると言うとあれなんですが、行き場のない方々が非常にここを希望されて長期刑処遇施設出所者の保護というのが特徴になっているということでございます。
 自己資金が足りないので、特に今、居室の窓枠とか屋上の給水施設等の補修、それの改善の必要がある。つまり雨漏りというか、先ほどの雨漏りと簡単に言えばそういうことなんですが、そういうふうな状況になっておりますことと、ちょっと驚きましたのは、ここは女性がおりませんで男性ばかりでございますが、四畳半に大の男が二人ということで、ですから昔で言えば五尺二寸ぐらいの方が二人四畳半に入っておられるという、そういう居室でございました。
 ここの整備というものは今回の改正によって端的に言えば非常に助かるということでございますが、ここら辺特に、緊急の二十六カ所とおっしゃいましたか、その対象に入っているんでしょうか、それともそれ以外の普通のところに入っているんでございましょうか。
#72
○国務大臣(中井洽君) 先ほどの深田先生、翫先生、また紀平先生と御熱心に御視察を賜り、問題点を御指摘を賜りますこと、本当にお礼を申し上げます。
 ただいまも熊本自営会のこと御指摘をいただきましたが、私どもの手元にもそのとおりの報告が入っておりまして、平成九年に改築を御希望のようでございます。
 ただ、平成九年に自己資金等がどのぐらい集められるかというところも見ながら、私どもはその二十六の一つと考えて対応をさせていただきたい、こんな予定でおります。
#73
○紀平悌子君 役員名簿と職員名簿を私たちここに持っておりますけれども、どういう方がというのはもう長くなりますので省きます。どういう立場の方がやっていらっしゃるかという役員の方は省きますけれども、ちょっと御年齢を見てみたんですね。そうすると、御年齢は六十歳以上の方が過半数であるということです。役員の方はよろしいにしても、特に職員の方なんですけれども、主幹、これは保護司の方でいらっしゃいますが、それから補導主任という方、これは元中学校の教頭で保護司でいらっしゃいます。それから給食員、この方はちょっと前の仕事を書いてございませんが、いずれも六十代の方で運営されているんですね。
 このことは、二十名の満杯の施設に入っていらっしゃる方々をいろいろお世話するには随分きつい年齢に入っているというふうに思っております。それから、こういうふうなお仕事につく若い女性でも男性でも今後どんどん出てこれるのであろうか。ほとんどボランティア同様の給与の中で、入れ物も大切ですけれども、特に待遇というか、待遇がよければいい方が集まるというわけではありませんけれども、やはり一定の条件のもとに優秀な人材も集まるということも一面の真理でございますので その辺のことは法務当局はどうお考えになっていらっしゃるんでしょうか。
#74
○国務大臣(中井洽君) 御指摘のことはよくわかります。
 ただ、更生保護という大事なお仕事をやっていただく以上、やはり人生経験も含めあるいは保護司さんとしての経験を含めて、そういう経歴やら識見、こういったものも大事になってこようかと考えておりまして、各地区でそういった方々が中心的におやりをいただいておるんだと考えております。
 ただ、給食の方に関しましては、先ほど福祉施設との給与の差等を申しましたが、この施設におきましては三食ともお入りになった方全部の食事をするわけでは先生御承知のようにないわけでございまして、そういった意味では短期間の食事ということで、かなり年齢のいった方でもやっていける。これに甘えてこういう状況になっておると考えておりますが、いずれにいたしましても、待遇改善やらを含めまして十分な処遇ができる方向へ向かって一歩一歩努力をさせていただきたい、このように考えております。
#75
○紀平悌子君 終わります。ありがとうございました。
#76
○安恒良一君 先ほどから同僚議員が聞いた中で答えられていない点をまずただしておきたいんですが、全国九十九団体、百カ所の更生保護会に対する政府の委託金は年間で二十億だと、そして残りはいわゆるそれぞれがボランティアその他寄附で集めて運営しておると。
 そうすると、残り、集められている金額は年間にどのくらいですか。
#77
○政府委員(杉原弘泰君) 総額でいいますと、収入総額が三十五億円。うち政府からの委託費が、割合ですが五二%、寄附金が九%、財産収入が八%ということになっております。
#78
○安恒良一君 そこで、大臣、こういう実態を御存じかどうか。ちょっと私は発想の転換をしてもらわなきゃならぬと思います。
 例えば北海道であれば、冬場は非常に寒いんです。そうすると、ここに入られる方は定員をぐっと割るそうですね。割りましたら、結局、定員によって委託費が出されていますので補助金が減るということになる。そうすると、そこで働いておる主幹以下の給与は一応世間体には公務員に準ずるとかこういうことでやっているけれども、それは減らさざるを得ないですね。そこで、そんなばかなことないじゃないかと聞いたら、いや実質減らすわけじゃなくて、その場合はさらに寄附金を集めて補てんする、こういうことを事務当局の方から聞いたんです。
 私は、大臣は盛んに職員のレベルアップと言いながら、給与定員が減ったらそれで自動的に給与が減って足らぬ分をほかから集めなきゃならぬという、こういう発想で、大臣が言われておるレベルアップができるのかどうかということが一つ。
 それと同時に、私は時間がありませんから固めて聞きますので答えていただきたいんですが、少なくとも更生緊急保護法の法律の目的では、まず更生保護というのは国の責任において行う事業であるということ、それから二つ目には我が国の刑事政策上の重要な機能を果たしている、この二つは明確なんですよね。そうしますと、もう戦後ずっと五十年間これやってこられていますが、私は、更生保護は官僚的発想で官僚だけでやるんじゃなくして官民共同でやらなきゃ実効は上がらぬとおっしゃいます、それはそのとおりだと。しかし、官民共同でやるということとお金を民側にかなり頼ってやるということは別なんですよ。ですから、少なくとも私は発想の転換を皆さんに求めたいと思います。
 どうもこれは政治の方にもあったかもわかりませんが、前回も私は諸外国のいわゆる法律扶助一欄表を示して、余りにも貧弱じゃないかと申し上げました。それから、きょう私はこれも考えますと、例えば一つは、今、施設についても盛んにおっしゃっていますように、二十六カ所十五億、二分の一が国の補助だというんですね。残りが集まらなかったらできないんですよ。二分の一はおまえさんたち集めてこいというわけです。そんなことでいいんだろうか。もうぼつぼつ発想の転換をおやりになったらどうか、このように思います。
 戦後五十年たってこれだけ経済大国になって、これだけの大規模な国家予算を持っているのに、こういうものの施設を直すのに半分はみんな篤志家から集めてきなさいよと。それから、職員の給与についても、定員を割った場合は寄附を集めて職員の給与を埋めなさいよと。そういう発想の転換がどうしてできないのか。
 というのは、日本の役人というのは非常に国家の利益を考え積極的で優秀だと言われているんです。ところが、下稲葉さんからも御指摘あったように、どうも法務行政というのは、後ろ向きとは言いませんが、意欲的に前向きに少し、例えば今私が申し上げましたように、今私が全体の予算をわざわざ聞いたのは、それぐらいの予算について、いわゆる事業そのものについては民間といろいろ共同してやった方が更生保護の実績を上げられるけれども、財政的なものについては、もうここまで来ると積極的にこの法律の原点である国の責任においてやるというふうにどうして前向きに、せっかく法律を改正なさるんだし、なされないのかと。今回二分の一と、残りの二分の一は、今も紀平先生の質問で、入っていますか、金が集まればと、こういう前提ですよね。あとの残りを。それではね。
 ですから、私は法務行政全体を通じて、率直なことを申し上げて、あれだと思います、三十八年間自民党が政権を担って、野党としてもいろいろやってきたが、率直に言って、こういう司法関係なんというのは余り応援団がいなかったと思うんですね、与野党とも率直なことを言って。どうしても、これはいい言葉じゃないんですが、票にはならぬという問題がよく言われる。大臣も御承知のようなことですね。その意味からいうと、なかなか、こういう更生行政とかそれから今さっきも申し上げた法律扶助とか、そういうことについてのいわゆる取り組みが私は国会議員も与野党を通じて弱かったと思います、率直に言って。しかし、もう少しいわゆる法務省なり大臣が意欲的に取り組まれるべきだ。特に、三十八年ぶりに革新連合政権ができて、あなたはそこの大臣ですからね。(「革新か。革新ではない」と呼ぶ者あり)いや、革新連合政権じゃなくて、連合政権です。ところが、連合政権の大臣なのですから、もうちょっと今申し上げたような司法行政全体について、五十年たっているんですから、基本的に見直して前向きにこんなことを提案してもそんなおかしいことではないんですよ。
 ところが、これを見ますと、法律を見ると、監督行政だけはお金は二分の一出すが口出しもする、こうなっているんですよ。口出しするなら、せめて金ぐらい全部。今さっき言ったように、これ総額で十五億あれば二十六カ所できるというんですからね。金を出して口も出すならいいけれども、金は半分しか出さない、口はどんどん簡単に出しますよ、これじゃ余りにも僕は法務行政としてお粗末だと思います。これ、お役人の答弁は要りません、どうせ積極的な発言ありませんから。局長答弁は要りません。あなたが大臣としてどうするか。
#79
○国務大臣(中井洽君) 法務大臣に就任をいたしまして、何人もの方から、法務大臣は選挙は弱くなるから十分気をつけるようにと御注意を受けております。
 それはともかくといたしまして、先ほどから諸先生、本当に御激励あるいはまたもっと前進をさせろという御叱吃をちょうだいいたしまして、感謝を申し上げております。
 たとえわずかな変化であるにしろ、二分の一、施設の改善に補助金を出せる、こういう法案が出たことも一つのスタートかと考えております。これを契機に、安恒先生からただいま御指摘を賜りましたような点を含めて、本当に胸を張ってこういうお仕事に従事をしてもらう、同時に、国の責任でやっております、そういうことが言えるような方向へ向かって私も法務省も最大限努力を続けていきたい、こんなふうに考えております。
 大変厳しい財政状況下にございます。なかなか難しい道だと考えております。どうぞ安恒先生初め皆さんの今まで以上の御協力をお願い申し上げる次第でございます。
#80
○安恒良一君 終わります。
#81
○委員長(猪熊重二君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 更生緊急保護法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#82
○委員長(猪熊重二君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 下稲葉君から発言を求められておりますので、これを許します。下稲葉君。
#83
○下稲葉耕吉君 私は、ただいま可決されました更生緊急保護法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲民主連合、新緑風会、公明党・国民会議、護憲リベラルの会の各会派並びに各派に属しない議員紀平悌子君及び安恒良一君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    更生緊急保護法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の諸点につき格段の努力をすべきである。
 一 更生保護が国の責任において行われるべきものであることにかんがみ、更生保護事業の健全な育成、発展のため、法整備を含めて制度の改善、充実に努めること。
 二 更生保護事業の充実を図るため、社会福祉事業との均衡にも留意し、被保護者に対する補導援護体制の強化に努めること。
 三 更生保護施設の改善については、緊急度、優先度を考慮して計画的かつ早期の実現を図ること。
  右決議する。
 以上であります。何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#84
○委員長(猪熊重二君) ただいま下稲葉君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#85
○委員長(猪熊重二君) 全会一致と認めます。よって、下稲葉君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、中井法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。中井法務大臣。
#86
○国務大臣(中井洽君) 更生緊急保護法の一部を改正する法律案につきましては、委員の皆様方には熱心に御審議をいただき、御可決いただきましたことに対し、心から御礼申し上げます。
 ただいまいただきました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分に踏まえまして、今後とも努力を重ねてまいりたいと存じます。
#87
○委員長(猪熊重二君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#88
○委員長(猪熊重二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#89
○委員長(猪熊重二君) 次に、商法及び有限会社法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#90
○服部三男雄君 私の方から法務大臣にお尋ねしたいと思います。
 今回の自己株式の取得規制の緩和という問題でございますが、この問題は従来からさまざまな議論をされてきたところでございまして、今回の改正でございますけれども、従来の議論に加えまして、政府の総合経済対策との関係が取り上げられてきたわけでございますが、法務大臣におかれましては、今までの純然たる商法上の技術的な問題ではなくて、経済対策という観点から見てどのような効果を期待しておられるのか、簡潔にお答えをお願い申し上げます。
#91
○国務大臣(中井洽君) 御指摘のとおり、自己株式の取得規制の緩和は、平成四年三月三十一日の緊急経済対策、同年八月二十八日の総合経済対策、平成五年四月十三日の「総合的な経済対策の推進について」の中においてそれぞれ取り上げられ、さらに平成六年二月八日の経済対策閣僚会議で決定された総合経済対策の中において、「課題を抱える分野における重点的施策の展開」という項目の中で証券市場の活性化のための施策として取り上げられてきたところでございます。
 今回の改正は株式制度の運営の適正化、円滑化を図ることを目的とするものでありますが、この改正により、使用人に譲渡するための自己株式の取得、株式の利益消却をするための自己株式の取得、株式の譲渡制限のある会社についての自己株式の取得の特例など自己株式を取得することができる場合が拡大されたため、今後の証券市場の活性化や会社の経営の安定化につながることがかなり期待されるものと考えております。
#92
○服部三男雄君 自己株式取得規制の緩和というのはかなり技術的な、また今までの会社法の中における問題等ございまして技術的な問題になりますので、これからの質問は法務大臣ではなくて、これは決して法務大臣は素人という意味で申し上げているのではなくて、技術的な問題でございますので法務当局、民事局長さんだと思いますが、にお尋ねしたいと思います。
   〔委員長退席、理事荒木清寛君着席〕
 まず第一に、自己株式の取得規制の緩和についてはこれまで長年にわたって経済界から要望されてきた問題と思っておりますが、今回の改正案につきまして経済界はどのような意見を述べているんでしょうか。
 例えば、取得事由を限定せず、かつ自己株式の取得だけでなく保有をも認めてほしいというような要望もあったように聞いておりますが、今後法務当局として自己株式の取得事由の限定についての見直しを行う考えがあるのかどうか、この二点についてお尋ねしたいと思います。
#93
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のとおり、自己株式の取得規制の緩和につきましては、かねてからさまざまな理由で緩和の要望が出ておりました。
 具体的にその必要性として挙げられておりましたものを並べてみますと、株主への利益還元の充実、従業員持ち株制度の運営の円滑化、ストックオプション制度の利用、余剰資金のより適切な運用、企業買収への対抗策、株式需給の適正化、株価の不当な低落への対応策、株式相互持ち合いの解消の受け皿、こういった必要性から主張されていたわけでございます。
 今回の改正は、自己株式の取得事由を従業員持ち株制度の運営の円滑化のため、それから株式の消却をするためということを事由とする取得規制の緩和を認めることにしたわけでございまして、一定の範囲に限定してこれを認めたということでございます。
 それから、今御指摘ございましたように、取得だけではなくて、自由に保有し自由に処分することができるという制度を認めてほしいという要請もございましたが、これにつきましても、そういう永続的な保有、自由な処分を認めるということになりますと、種々これまで指摘されておりました弊害を除去するということになかなか難しい問題があるということで、今申しましたような限度
 で認めるということにしたわけでございます。
 しかしながら 今回の改正によりまして、今申しましたようないろんな要請のうちストックオプション制度の利用という観点を除いては経済界の要求どおりということではありませんけれども、それぞれ相応の効果を期待することができるという内容になっているものと考えておりまして、経済界におきましても今回の改正案については現時点における改正としては相当なものとして一定の評価をいただいているというふうに承知をいたしております。
 なお、ストックオプション制度の利用につきましては、これはアメリカで利用されている制度でございますが、我が国において同じような要請が現実にあるかどうかというニーズの問題等もございまして今回の改正ではこれに対応することを見送るということになった次第でございます。
 そういうことでございまして、今回の自己株式の取得規制の緩和は現行法の厳格な規制を、一定の制限があるとはいえ、緩和へ向けて着実に一歩を踏み出したということでございまして、今後の取得規制のさらなる見直しにつきましては、この改正法のもとでの制度の運用状況とかあるいはそのほか会社をめぐる社会経済情勢の変化等を見た上で適切に対応していきたいというふうに考えているところであります。
#94
○服部三男雄君 法務当局も御案内と思いますが、我が国の株式会社の数というのは百三十万を超えると言われておるんですが、そのうち上場企業、いわゆる株式上場している会社というのは二千百ばかり、店頭登録というのが今ふえてきましたが、それでもわずか五百にすぎないわけですね。
   〔理事荒木清寛君退席、委員長着席〕
そうしますと、我が国における会社の大部分は非公開の中小規模の会社ということになるわけでございますが、このようないわゆる非公開の中小会社にとって今回のこの自己株式の取得規制の緩和というのはどのような意義を持つのか、経済の実態に即した改正としてマッチするのかということをお伺いしたいわけです。
#95
○政府委員(濱崎恭生君) 我が国の会社制度におきましては、株式の譲渡について取締役会の承認を要するという株式の譲渡制限を定款で定めるということが認められておりますが、中小規模の株式会社の大部分はそういう制度をとっております。いわゆる閉鎖会社というふうに呼んでおりますけれども、これは株式会社の中には、少人数の株主がその人的つながりのもとに会社経営を行う、そういうところに協調関係を乱すような株主が入ってくることを避けてそういう形で会社経営をするという要請が大変強いわけでございまして、そういう会社に適切に対応するということも商法の観点からは大切なことであるというふうに認識しております。
 今回の取得規制の緩和は、大きく言って三つの場合について認めることにしているわけです。そのうちの従業員に譲渡するための取得、それから消却をするための取得、これはいずれもそういった中小の閉鎖会社も利用することができるわけですが、閉鎖会社にとって特に意義がありますのは、株式の譲渡制限がある会社についての自己株式の取得規制の緩和ということであろうと思います。
 要するに、そういう会社において株主から株式をだれかに譲渡したい、これを承認してくれという申し出があった場合に、会社の方でその人は適当でないと思えばだれか適当な買い手を二週間以内という短い期間内に見つけなければならないということですが、そういう株式を買い受けてくれる人を、しかも適当と思う人をすぐ見つけるのはなかなか困難である。そういうことであれば結局承認せざるを得ないというような問題をぜひ解決してもらいたいということと、株主に相続があったような場合にたくさんの相続人が株主になるというようなことを解消するための受け皿としての自己株式の取得を認めてもらいたい、こういう要請が中小の会社からあったわけでございます。
 今回の改正におきましてはこういった要請に対応するという改正を実現するわけでございますので、そういう意味で中小規模の会社にとりまして大きな意義があるのではないかというふうに考えております。
#96
○服部三男雄君 株式会社制度というのは長い歴史があるわけですが、特に今は大衆キャピタリズムというふうになってきておりまして、株主が会社に出資をすることによって所有者になるという感覚よりもキャピタルゲインを得ようと、こういうふうにやや意識が変わってきています。
 特に我が国においては、我が国独特の風土というのがあるんでしょうけれども、株主に対する利益配当の面で余り優遇されていないという批判があるわけでございます。一方、その反面ということになるんでしょうけれども、会社を経営する、運営する方の代表取締役など経営者の都合が重視されているのではなかろうかということは長らくつとに指摘されてきたわけです。
 そういう観点から見ますと、今回の自己株式の取得規制の緩和というのは、株主の利益の保護という観点からはどのような評価を、あるいは目的を持っているんでしょうか。
#97
○政府委員(濱崎恭生君) 先ほど御説明申し上げましたように、企業からの要請の一つとして株主への利益還元という目的がありましたけれども、今回の改正によって会社が株式を買い取るという機会がふえたということ、それから例えば自己株式を取得してこれを消却することによって株主数が減少する、それによって将来の配当、一株当たりの利益がふえるのではないかという期待がされている、そういった点から、一定の限度でございますけれども、そういった目的にも資するものではないかなというふうに考えております。
 それから、今回の自己株式の取得を認めることによって株主の利益が損なわれるのではないかという懸念も指摘されているところでございますが、この点につきましても、すべての取得につきまして株主総会の決議を要件とするということにして、株主の意思に反してそういう取得が行われないということを担保することにしております。
 また、自己株式を取得する場合に、特定の株主からその株主に有利な条件で、相対的には他の株主に不利になるわけでございますが、そういう条件で会社が株式を取得することがないように、株式が公開されている会社にあっては必ず公開の市場で取得するようにという制限をしておりますし、株式が公開されていない会社につきましては、そういうことを考慮して特に総会の決議を特別決議によらなければならないということにするなどの措置を講じて、そういう株主保護の面でマイナス面が生ずるということがないようにという配慮もしているところでございます。
#98
○服部三男雄君 今回の改正が従業員の持ち株会とか会社の従業員に対してどのような影響、意義を有するのか、説明願います。
#99
○政府委員(森脇勝君) 御案内のとおり、従業員持ち株会といいますのは、会社の従業員が任意の団体を組織いたしまして、これが民法上の組合だとされているわけでございますが、従業員が毎月の給与あるいは報酬から一定額を持ち株会の方に拠出いたしまして、持ち株会でまとめて会社の株式を買いつける、そしてそれを保有する、こういう制度でございます。
 このような従業員持ち株会は昭和四十年以降急速に普及してきたというふうに言われておりまして、それにはそれなりのメリットがあるのであろうということが言われているわけでございます。
 まず、メリットとして挙げられている点は、傘下従業員の財産形成ということを通じまして従業員の福利厚生に資することができるという点でございます。さらに、傘下従業員が会社の株主になることによって会社の業績向上に対してインセンティブを与えられるというようなことが言われております。
 また、従業員にとってみますと、少額の資金を毎月積み立てることによって株式投資が可能になるという面がございます。また、毎月の給与からいわば天引きされるわけでございますのでその支出に直接関与しな、で済む、また取得した株式は持ち株会で保管するという形になりますので、従業員にとってみれば簡便な方法による株式投資が可能になる、あるいは毎月一定の資金で買うということにいたしますと、平均的に申しますと安い株価で株式を取得できるというようなメリットも言われております。さらに、会社にとりましては長期安定株主として確保することができるということ、あるいは株価の安定を期待できるといったようなことが挙げられております。
 今回の改正によってこれらの従業員持ち株会の運営の円滑化が図られるというように考えておるところでございます。
#100
○服部三男雄君 会社法で常に問題になるのが取締役による不正行為、これは非常に会社の財産に対する危険な行為でありますし、それがひいては日本の自由な資本主義の構成を乱すことになるということで常に問題になるし、社会的な事犯になった例も多々あるわけでございますが、今回の改正によりまして自己株式の取得が緩和したわけですから当然ふえてくるわけですね。それによって取締役の不正行為が増加するおそれがないのかどうか。そんなことになったのではせっかくの法改正が無意味になってしまうわけでありますので、今回の改正に対して取締役の不正行為を防止するための手当てを講じていくのかという点についてお答えを願います。
#101
○政府委員(森脇勝君) 現在まで自己株式の取得につきましては非常に厳しい規制を置いていたわけでございまして、その理由とするところは、これを自由に取得できるようにいたしますと会社資産の充実が害されるとか、株主の平等の原則が害されるとか、あるいは経営者の会社支配に利用されるおそれがあるといったような弊害が指摘されてきたわけでございます。
 今回この取得規制を緩和するに当たりましては、これらの弊害が生じないようにということに配慮しておるところでございまして、弊害を防止するための手だてといたしまして、取得財源を配当可能利益の範囲内ということで画しているという点、それから、利益消却の場合は別でございますが、取得数量を限定しているということ、あるいは保有期間を必要な期間に限定しているということ、さらに取得の手続であるとか取得の具体的な方法等についてかなり詳細な定めを置いているわけでございます。これらの規定によりまして、自己株式の取得及び保有に伴う弊害と言われてきたところを防止しようとしているものであります。
 さらに、改正法におきましては、これらの規制を設けても取締役がこれを遵守してくれない限り意味をなさないわけでございますが、これを担保する手だてといたしまして、取得財源を配当可能利益の範囲内に限っているわけであります。違法な自己株式の取得によって会社に欠損が生じたという場合には取締役に対して損害賠償責任を負わせる、そのための特則を設けまして過失の立証責任をいわば転換する、あるいは損害額を法定するといったような手だてをいたしております。
 またさらに、自己株式を違法に取得した場合の刑事罰でございますが、これは従来からある規定でございますが、五年以下の懲役または二百万円以下の罰金、情状によってはこれらの併科ということにされております。さらに、商法の規定に違反して株式の消却をした場合には百万円以下の科料という定めが既になされているところでございます。
 それから、これま改正法とは別でございますが、この法律が成立いたしました際には計算書類規則の改正を考えておりまして、自己株式の取得、保有、処分につきまして営業報告書においてこれを開示させる、これによって自己株式の取得、保有、処分についての透明性を確保しようというふうに考えております。
 また、重大なおそれのある弊害といたしましてインサイダー取引あるいは株価操縦について指摘されていたところでございますが、これらにつきましては証券取引法の方で手当てをするということにいたしております。
#102
○服部三男雄君 今回の改正案によりますと、会社の使用人に譲渡するための自己株式の取得と、それから利益消却のための自己株式の取得、いずれも定時総会の決議要件になっているんですが、その決議要件にしたのは何らかの意味があるのかどうか。といいますのは、現在の株主総会というのはもう著しく形骸化しておりますので当然株主総会の活性化ということを図らなきゃいかぬと言われていることは法務当局も御承知と思いますが、この要件にした意味を法務省ではどのようにお考えなのか、お伺いします。
#103
○政府委員(森脇勝君) 委員、今御指摘になられました今回許容することとする二つの自己株式の取得事由につきましては、いずれも定時総会の決議を要件としているわけでございます。
 これを要件といたしましたのは、自己株式の取得は配当可能利益の範囲内でやっていただくということでございますので、この自己株式取得にどれだけの資金を充てるかということによって現実に配当できる金額が制約されてくる場合がございます。このような関係で、自己株式の取得は会社の利益処分にかかわるものであるということで総会の決議ということを一つ考慮したわけでございます。
 さらに、配当可能利益が確定いたしますのは定時総会における計算書類の承認のときでございますので、この時点でどの規模のものにするか、どれだけの金額のものにするかというのを株主総会に確定していただくのが最も適切な時期であろうという判断をしたわけでございます。
 この二つの場合の定時総会の決議というのは取締役に対するいわば授権でございますので、それ以降その授権された範囲内で取締役が現実の買い付け時期、数量を選択する、こういうことになるわけでございます。
 このように株主の意思が自己株取得に反映するようにということでこうした規定を設けておりますので、委員御指摘のとおり、株主総会が活性化していなければ本来の意味での株主の意思の反映ということにはならないわけでございまして、いわばこれらの規定が意味を持たなくなってしまう、こういう事態も考えられるところでございます。
 株主総会は会社における最高意思決定機関でございますから、私どもといたしましても株主総会の活性化のために従来から商法中の諸制度の整備に努めてきたところでございまして、例えば昭和五十六年の商法改正におきましては、株主の議案提案権を新設する、あるいは取締役、監査役等に総会における説明義務を課するといったようなこと、あるいは株主権の行使に関して利益の供与を禁止するといった規定を設けてきたところでございます。
 今後とも株主総会が商法の趣旨にのっとって運営されますように、その趣旨の周知徹底に務めてまいりたいというように考えておるところでございます。
#104
○服部三男雄君 現行商法の二百十二条一項ただし書きに、定款に規定さえしておけば株式の利益消却はできる、こういうようになっているわけです。今回特に定款じゃなくて定時総会の決議での株式利益消却を認めたというのは、こういうふうにわざわざ改正されるぐらいですからこの現行法の二百十二条一項ただし書きで株式の利益消却が行われていなかったのではないかと。もしそうであるならば、その理由が何らかあるのかどうか、わざわざ改正した理由をお尋ねします。
#105
○政府委員(濱崎恭生君) 委員御指摘のとおり、現行商法二百十二条一項ただし書きに定款の規定に基づいて配当すべき利益をもって株式を消却するという制度が定められているわけでございますが、これまでこの規定に基づいて株式の利益消却がされたという事例を私ども聞いていない、実際にほとんどないということであろうと思っております。
 株式の利益消却というのは、発行済み株式の総数を減少させるものでございまして、段階的に会社の規模を縮小したり、ある、は経済情勢、会社の状況等に応じて株式数を調整するなどの場合においてその需要がある、その必要があると言われておりますが、それにもかかわらず現行の規定でこの制度が利用された例が従来ほとんどなかったということでございますが、それの理由として指摘されておりますところは、現行の規定は定款の規定に基づいてこれをすることができるというふうに定めておりますが、その定款の意義につきましての多数の考え方は、この定款は制度の性質上、原始定款、会社を設立するときに定めた定款であるか、あるいはその後定款変更をして新しくそういう定款をつくるということであれば株主全員一致による定款によらなければならない、こういう考え方が多数説であるということで、そのために現実にそういう定款が定められておらないということが根本的な原因であるというふうに言われております。
 さらには、利益消却をした場合のいわゆるみなし配当課税がかかる、これに伴って会社の方で消却に応じなかった残存株主にそのみなし配当課税分について源泉徴収をしなければならないというような制約もあったということも制度が利用されなかった理由の一つであるというふうに聞いております。
#106
○服部三男雄君 ここ数年、今回の改正を求める経済界の要望としまして、バブル崩壊後の株式の低迷ということが特にその理由になったのだろうと思うわけでありますが、今回の改正で株式の利益消却を認めることによって確かに容易になったわけです。容易になったのはやっぱり株価対策のためのねらいがあったのではないか、あるいはまた株式の利益消却をすることによって株価にどのような影響を与えることになるのかということを法務当局は分析、検討されましたでしょうか。
#107
○政府委員(濱崎恭生君) 今回の改正案におきまして、定時総会の決議に基づく株式の利益消却を認めようとしておりますのは、これは株式の利益消却というものが経済情勢あるいは株式市場の状況あるいは当該会社の状況に応じて株式の需給調整、そういった必要性から株式の利益消却をする必要性があると。それにもかかわらず、今申しましたように、現行の規定ではこれが実際上使えないということでございましたので、そういった観点から定時総会の決議に基づいてその利益消却をすることができることにするということが目的でございまして、委員御指摘の直接に株価対策のためにこれを改正したということではないということでございます。
 この利益消却によって株式数を減らすということが株価に対してどういう影響を与えるかということでございますが、これにつきましては両方の考え方がございます。
 それによって株価を引き上げるという効果を持つという御意見と、株式数は減るけれども、結局その取得した財源分だけは会社の純資産が減少するわけですから、一株当たりの持ち分の大きさというものは実質において変わらないのであるからこれは理論的に株価の変動をもたらすものではないという考え方もございます。総じて申しますと、純数学的と申しますか、理論的に申しますと後者の考え方、要するに株価に対しては中立であるという考え方が強いように思います。
 ただ、株価というものは、これは理論だけで決まるものではございませんで、いろんな事情によって決まってくるものでございますから、やはり発行済み株式総数が減るということによって将来の会社の成長を見越した場合の一株当たりの利益が高まるという期待があるということなどから株価を押し上げる要素になるという考え方もあるわけでございまして、また現実にもう自己株式の取得が広く行われておりますアメリカの例では、株式の利益消却が株価の下支えをするという効果があるといった報告もあるというふうに聞いております。
#108
○服部三男雄君 おっしゃるとおりで、今回の改正は本来は株価対策とかあるいは株式の流通とか、こういう株価低迷に対する対策という点ではニュートラルであるべきだと私も思います。一時の経済動向によって動かされるようなことがあってはならぬと私も思うんです。
 もう一つ、我が国の特に大会社における株式の一つの特徴として、これはアメリカサイドが貿易摩擦の観点から常に言ってきているところでありまして、日本がアメリカ的な一種のキャピタリズムをとっていないという一つの例として挙げるんですけれども、大会社間の株式の持ち合いということがよく言われているわけです。これは会社の系列関係とかあるいは株を操作しやすい。なぜなら流通する株が少ないわけですから。それが当然個人株主の減少を招くことによって株主に対する配当が少ないんじゃないかと、いろんな弊害を指摘されてきたわけであります。
 法務当局としては今回の改正はそういうことに対してニュートラルだとおっしゃっているんですけれども、この株式持ち合い問題とのかかわりではどういう効果を持つかということについてお尋ねいたします。
#109
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のように、資本関係のある会社間、あるいは取引関係にある会社間においてその提携関係を強固にするといったような目的で会社がお互いに株式を持ち合うということが我が国ではかなり広く行われておりますが、この株式の相互保有につきましては、アメリカ等の指摘はさておきましても、我が国の中においても御指摘のようないろんな問題があるという指摘がされているわけでございます。
 この相互持ち合い、相互保有の弊害の解消ということは商法にとりまして長年の懸案でもあるわけでございますが、この相互持ち合いによる弊害に対処するためにこれまでの改正におきまして、その持ち合いによって議決権の行使が歪曲化される、お互いに持ち合っている株式をお互いに議決権を行使することによって結局は会社同士が議決権を行使し合って全体としての議決権の行使を歪曲化するという弊害を防止するという観点から、昭和五十六年改正におきまして、子会社が親会社の株式を取得することを制限する、またある会社が他の会社から発行済み株式総数の四分の一以上の株式を保有された場合には保有された会社は相手方の会社の株式について議決権を行使することができないというような手当てをしたところでございます。
 ただ、それで相互持ち合いの問題が全部解決ということではございませんけれども、この相互持ち合いの形態というのは実にもう複雑多様なものでございますので、会社法上これを全面的に規制するというようなことはなかなか難しいというようなことで将来の研究課題になっているわけでございます。
 今回の改正のうちの定時総会の決議に基づく株式の利益消却を認めるという改正、これは委員御指摘のように、今申しました株式の相互保有の解消ということを直接の目的とするものではございません。
 ただ、これによりまして実際に株式の相互持ち合いをしている会社の間で一方の会社がその保有する相手方の株式を市場で売却した場合に、その相手方である会社がこれを取得して消却するということを容易に行うことができるということになるわけでございまして、その結果として株式の相互持ち合いの解消のいわば一つの受け皿としての機能を持つということが期待されているわけでございます。そういう形で、間接的ではありますけれども、株式の相互持ち合いの解消にも資するものであるというふうに考えております。
#110
○服部三男雄君 確かに商法というのは、商法、有限会社法、主に商法でしょうけれども、日本の資本主義の健全化という観点から大事な法律でありまして、昨年の当委員会で討議されまして私も質疑を行いました。
 しかし、経済というものは生き物ですから社会変動、国際関係、いろんな点で変わってくる。当然商法もそれに追随して適宜な、適正な改正をやらなきゃいかぬわけですけれども、今後法務当局としてどういった問題を取り上げていこうと考えておられるのか。大臣でも結構ですし、商法だから民事局長でも結構です。どちらかお願いいたします。
#111
○政府委員(濱崎恭生君) 今後の対応を申し上げる前に、これまでどうやってきたかということもあわせて申し上げた方が御理解いただきやすいと思いますけれども、法務大臣の諮問機関であります法制審議会の商法部会におきましては、これまで四十九年以来全面改正ということで順次部分部分に限って改正を実現してきております。昨年の改正も今般の改正案もその一環としてやってきているわけでございますが、今後もこれまで検討から漏れておりました事項を中心にいたしまして、さらに会社法の全体的な改正作業を継続していくということを予定しております。
 現在のところ、当面は会社の合併制度の合理化、それから新しい会社の分割法制の整備といったことを中心に検討を進めていきたいというふうに考えております。
 それからもう一つ、商法は明治にできた片仮名法でございますので、これを国民にわかりやすいという見地から平仮名、口語体にする必要があるだろうということでそのための、現段階まだ基礎的な研究の段階でございますけれども、そういうことで取り組んでおります。
#112
○服部三男雄君 私の質疑は終わります。
#113
○竹村泰子君 最初に、法案に入ります前に、これは通告していないんですけれども、質問というよりも激励と申しますか、きのうから盛んに刑法の改正が報道されております。
 全文を口語調にということで法制審議会が大変御苦労なさっていると。刑法に限らず、どの法律もそうなんですけれども、日本語で書いてあるのに日本人がわからない。明治時代につくられた法律もありますし、もう本当にこれは幾ら読んでもわからない。ここに新聞報道されているものも、勝敗ということを「輸羸」と書いてある、偽ることを「誣罔」と書いてあるそうでほとんど意味が通じないということで、できるところから徐々に改正を、わかりやすい法律にしていただけるということで大変期待をしております。それからもう一つは尊属加重規定、これも私どもかねてから憲法に違反するのではないかということで考えておりましたが、これの削除も審議会から出されている。
 これをお受けになりまして刑法改正を来年通常国会に提出をしたいというふうな御意向と承っておりますが、御決意のほどをちょっと大臣にお伺いしたいと思います。
#114
○国務大臣(中井洽君) 先生御指摘のとおりでございます。いろいろと御議論をいただき、また各界から御意見を賜る中でようやく考えをまとめまして、法制審議会へ昨日諮問をいたしたところでございます。
 当然のことと言えば当然のことでありますが、一刻も早く答申をいただいて、国会において御審議を賜るよう努力をさせていただきたい、このように考えております。
#115
○竹村泰子君 それでは商法改正に入りたいと思います。
 今回の改正は、株式会社について自己株式の取得規制の緩和を図って、それから有限会社についてはその自己持ち分の取得規制の緩和を図ろうとするもののようでありますが、自己株式の取得は原則として禁止し、例外的に取得を認める事由を追加するということがとられておりますね。自己株式の取得がこれまで厳しく制限されてきましたのは、いろいろな弊害があるんだ、その弊害の危険性が大きいからだと考えられてきたというふうに思います。規制緩和で自己株式の取得を広範に認めるのであれば弊害の防止を効果的に行っていくことが必要であるというふうに思いまして私も今回いろいろと調べてみましたけれども、時間がかかりますのでこちらで言わせていただきますが、次のようなポイントがあるのかなというふうに思っております。
 最初は、やっぱり会社の財産的基礎を危うくすることをこれまで危惧されてきた。それから二番目に、会社が株価操作をし、あるいは会社の内部情報を利用して自己株式の投機的な取引、つまりインサイダー取引を行うことにより株主投資家の利益を害することがあった。それから三番目に、取得の方法、対価のいかんによっては特定の株主だけを優遇する結果となり、株主平等の原則に反する。それから四番目に、経営者の会社支配の強化に利用されるということ。それから五番目に、買い占めの株を会社が高値で買い取る場合には、会社に財産的損害を与えるとともに、いわゆる俗に言う会社荒らしを助長するのではないか。こういったポイントが危惧されていたというふうに思うんです。
 そこで、大臣にお伺いをいたします。
 今回の改正でこれらの弊害は完璧に防止されるのでしょうか。大臣の法案の提案理由説明に「自己株式及び自己持ち分の取得規制を弊害の防止のための措置を講じた上で緩和する」というふうにおっしゃっておられますけれども、このことがきちんと防止されるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
#116
○国務大臣(中井洽君) 私は衆議院の大蔵委員会をかなり長いことやってまいりました。この問題につきましても大蔵委員会で各種論議が行われました。ただいま先生御指摘のような危惧の念が強く、なかなか自己株式の取得の問題禁止されたままで今日までまいりました。
 先ほど服部議員からも御指摘がありましたように、経済対策としての面、あるいは株式市場の世界化の中での日本の特殊性排除、こういった面を含めて議論され、そして先生御指摘のような諸問題についてそれぞれ対策を講じた上で今回の法律改正がなされる、このように考えております。
 法案の中で財源規制あるいは数量規制を課し、取得の手続として株主総会の決議を要件とし、さらに長期の保有を認めないとすることなどによって自己株式の取得及び保有に伴う弊害が生じないよう十分な措置を講じた、このように考えているところでございます。
 なお、証券・金融の不祥事に絡みまして衆参ともに特別委員会ができて、その中での議論を受けて東証あるいは業界それぞれが自己規制、自己反省の中で新しい規範をつくってきた、また同時に証券取引等監視委員会がつくられた、これら総合的な規制を含めて今回の法改正に至った、このように考えているところでございます。
#117
○竹村泰子君 弊害を防止していくという御決意なんですけれども、どうも私はそういうふうには思えません。大変心配性なんですよね。心配で仕方がない、こういうことをやって大丈夫なのだろうかと。
 昨年の商法改正も私法務委員会の中で随分いろいろと審議をさせていただきましたのですが、それでは私の思いますことを順に聞いていきたいと思います。
 ます、会社の財産的基礎を危なくするのではないかということにつきましては、利益による株式の消却のための自己株式取得の場合、配当可能利益の範囲内という財源規制はありますけれども、株式の総数についての数量規制がない。これはなぜなのでしょうか。実質的に相当大幅に自己株式の取得が認められることになりますよね。会社の財産的基盤を危うくすることにはならないでしょうか。
#118
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のとおり、利益消却のための自己株式の買い受けにつきましては取得することができる株式の数量規制は設けていないわけでございまして、財源についての配当可能利益の範囲内という枠内であれば株主総会の判断で取得して消却することができるということにしているわけでございます。
 今回収得を認めることとしておりますほかの二つの場合、使用人に譲渡するための自己株式の取得、それから株式の譲渡制限のある会社、いわゆる閉鎖会社の取得に関する特例の場合につきましては取得することができる株式の数量の規制を設けているわけです。これらの場合には、その制度の目的上、どうしても株式を一定期間会社が保有するということを認めなければならないわけでございますが そのために会社が余り大量の株式を保有するといわゆる経営者の会社支配ということを招くおそれがある、そのために余り必要以上の過大な取得を認めることは適当でないということを理由とするものでございます。
 これに対しまして、利益消却のための取得につきましては、取得した株式は遅滞なく失効の手続をとるということで会社が保有するという状態はないわけでございますので、保有に伴う弊害がないということでこの場合には数量規制をしておらないということでございます。
 会社の財産的基盤を危うくするという観点からは、商法は資本及びその法定準備金という形でこれを確保することにしておりますので、その許容を超える配当可能利益で取得して消却するという限りにおいては財産基盤を危うくするという弊害はないということでそういう制度にしているわけでございます。
#119
○竹村泰子君 遅滞なく失効の手続をしなければならないというふうになっているんですが、遅滞なくというのは一体どのくらいのことですか。
#120
○政府委員(濱崎恭生君) 遅滞なくという概念は現行制度のもとでの自己株式を取得した場合についても用いられている用語でございますが、これはできるだけ時間的間隔を置かない短い期間でという意味でございまして、一概にどれだけの期間というふうに申し上げることができないわけでございます。
 消却のために取得した場合には、取得した後株式を失効させる手続をとるということでございます。具体的には、取得した株券を破棄する、株券台帳から抹消する、あるいは失効した株式の番号を控えておく、そういった事務手続を要するわけでございますが、これは会社の内部の手続でございまして、それほどの期間を要するという問題ではございません。そういうことを考慮して、そういった会社内部の事務処理手続として通常要すると考えられる期間内にということで、あえて申し上げれば数日の期間があれば足りるというほどのものではないかというふうに考えております。
#121
○竹村泰子君 さまざまな弊害が予測される中で、決して見逃せないのがインサイダー取引ではないかと思います。
 きょう、予算委員会でも肥田議員が取り上げましたようですけれども、医薬品会社日本商事が昨年九月三日に抗ウイルス剤ソリブジンを発売後、最初の死亡例を確認した九月二十日から厚生省が副作用の被害を公表した十月十二日までの二十三日間、たったの二十三日間に自社株を売却していた同社の社員、家族は、本年六月十八日までの同社の社内調査によりますと、前副社長の相談役からパートの方まで合わせて百七十五人に上っていることが明らかになっています。
 これは朝日新聞が伝えていることなんですけれども、株数の総数は約三十八万六千株、百七十五人のうち十五人は厚生省が公表する前に何らかの形で副作用で死者が出ていることを知って売却したことを認めていると報道されております。その後の調査でこの十五人の方たちは二十三人となりましてふえました。さらに、この抗ウイルス剤ソリブジンについて日本商事と販売促進契約を結んでいる大手の医薬品会社エーザイの社員約十人も厚生省が副作用を公表する直前に日本商事株を売却したことが判明したと報道が伝えております。新聞がもう大きく伝えておりますので御存じのことと思います。九三年十月十二日午後二時に厚生省が公表しておりますけれども、これらの社員はこの日の午前中から午後二時までの間に売却をしていたということですね。
 今後順次聞いてまいりますけれども、きょうは商法の審議ですけれどもやっぱりこれは厚生省の御見解を聞かなくてはならないと私は思いました。事が国民の命にかかわっておりますし、厚生省の責任は非常に重い。きょうの昼間の予算委員会でも追及がされておりましたけれども、厚生省がこのことにもっと早くきちんと手を打って、ソリブジンと抗がん剤との併用をとめていればこの方たちは死ななくても済んだ方たちなのかもしれないということを思いますと、私はきょうはぜひ厚生大臣にお出ましをいただきたい。厚生大臣の責任はどうおとりになるのでしょうか。国民の命を預かり幸せを願うはずの厚生省が、こういう言い方をしたらいけないかもしれないですが、人を死に導いてしまった、至らしめてしまった。この責任をどうおとりになりますか、大臣のかわりにお答えください。
#122
○政府委員(田中健次君) ただいまお話しのソリブジンでございますけれども、経緯からお話をさせていただきたいと思います。
 ソリブジンにつきましては、承認申請時におきまして臨床試験の段階で一例の死亡例があったわけでございます。最近の新聞報道では三例の死亡例の報告があったように報道されておりますが、私ども厚生省に提出をされました資料では死亡例が一例でございました。
 この症例について治験に当たりました担当医らによりまして種々の角度から検討がされたわけでございますけれども、承認申請時に提出された資料では原因が特定できなかった旨の報告がございました。しかしながら、私どもの中央薬事審議会では、申請時に報告されておりました死亡例とそれから動物実験でも死亡の治験がございましたので、その辺も含めまして申請資料を慎重に検討いたしました。
 それで、ソリブジンとそれから抗がん剤の一種のフルオロウラシル系の抗がん剤、これを併用した場合、抗がん剤の血漿中の濃度を高めまして毒性を高進するものと判断をいたしまして、医薬品の添付文書につけます「使用上の注意」の相互作用におきまして、併用による副作用発現の仕組みの解説を行いました。さらに、併用を避けることという表現によりまして医療関係者の注意を促すということをもって対応するということで医薬品としての承認をしたものでございます。
 それで、日本商事では昨年の九月から発売を開始いたしましたが、私どもには昨年の九月二十七日に、ソリブジンを投与いたしました患者で副作用と思われる症状により死亡したとする報告が口頭でございました。そこで、私ども厚生省は、報告をされました症状と、それからソリブジン投与の因果関係の検討に不可欠な情報でございます患者の症状あるいは併用薬剤等につきまして至急調査して報告するように指示をいたしました。これが九月の二十七日でございます。
 十月六日に製薬企業より調査結果が文書にて報告をされました。その調査結果の報告と同時に、さらに二例の併用によると思われる副作用が報告をされました。これが十月の六日でございます。
 そこで、十月八日にそれまでに報告されました合わせて三例につきまして中央薬事審議会の副作用調査会におきまして検討をいただいたわけでございますが、これは抗がん剤との併用と副作用との因果関係が推定されたということのために、十月八日の夜に関係企業に対しまして、ソリブジンを使用している医療機関に対しまして直ちにフルオロウラシル系の薬剤と併用しない旨情報伝達するとともに、速やかに緊急安全性情報を配付を行うように指示をいたしたわけでございます。これが十月の八日でございます。
 十月八日は金曜日でございましたが、十月の十二日、火曜日の朝までに日本商事から同様の副作用がさらに四例報告されまして、同様の副作用の発生を直ちに防止する必要があると私どもは判断をいたしまして、ただいまもお話がございましたが、十月十二日の午後二時に報道機関の協力を得て医療現場に速やかに情報を伝達していただこうということで記者発表を行ったものでございます。
 その後、最近になりまして臨床試験の段階でほかに死亡例が二例あったという報道がございました。これまで企業から私どもに対しましてはこのような報告はなされていませんでしたことから、私どもといたしましては大変重大なことであるということで、去る六月十七日と十八日に会社に立入検査を行いまして関係者から事情聴取を行ったところでございます。それから、この薬の治験に関係をいたしました医師からも順次事情聴取を始めておるところでございます。
 こうした経緯でございまして、私どもといたしましては、中央薬事審議会において提出された資料の範囲内で慎重に審査をいたしまして、併用を避けることというふうな表現によりまして医師等への注意を喚起して発売を認めたということでございます。
 それから、先ほど申しましたように、市販後の事故の発生によりましても私どもは医療関係者への注意喚起をいろいろ図ってきたところでございまして、また日本商事はこれを受けまして、直ちに製品の出荷停止と回収等の措置がとられまして、その後は副作用事例の報告はなされておりません。
 長くなりましたが、こういう経緯でございまして、私どもといたしましては、国としてはその時点その時点で必要な対応をしてきたというものと考えております。
 それで、臨床試験中二名の死亡者がいたことが新たに判明し、非常にこれは重大なものでございますけれども、現在調査を進めておりますけれども、事実を把握した上で厳しく対処をいたしたい、このように思っております。
#123
○竹村泰子君 今の御答弁で、きょうのお昼の予算委員会でも肥田議員の質問に対して、局長は適切に対応したと答えていらっしゃるんです。大臣は今後大きな反省材料として立入検査など厳しく調査をするというふうにおっしゃっているんですけれども、そのようなことで済む問題ではないんですね。これは治験の段階で、つまり新しい薬が開発されたらそれを検査してみる、動物実験をやって、その後患者の皆さんを選んで第二相、第三相というふうに試験を重ねていかれる、この治験の段階で死亡していた人がいたということですね。
 それで、きょうは厚生委員会ではありませんから私は余りここに深く突っ込めないんですけれども、この東北の女性が八五年に乳がんの手術を受けて抗がん剤をずっと投与されていた、そして帯状疱疹の症状が出て八八年の十月から七日間、たった七日間です、東北大医学部付属病院でソリブジンを投与され、徐々に全身が悪化し、同十月二十九日に死亡されている。このことについて東北大学医学部の田上先生は、日本商事の担当者に対してソリブジンが抗がん剤の副作用を増強したか引き起こした可能性があり、毒性試験で調べる必要があると指摘したとおっしゃっておりますけれども、厚生省はこれをいつ知ったんですか。
#124
○政府委員(田中健次君) 私ども厚生省といたしましては、先ほど申しましたように、治験段階での死亡例の一例につきまして、これは治験に当たりましては臨床試験の実施基準というのがございまして、治験医師が班をつくりましていろいろと症例を検討いたすということになっておりまして、先ほど御説明申し上げましたように、この死亡の一例につきまして治験に当たりました担当医師が班で研究会を持ちまして詳しく検討をしたということでございます。
 しかし、その結果として因果関係が不明であったという治験総括医師等の判断で臨床試験のデータとして私どもに提出をされておりまして、私どもの中央薬事審議会ではその判断を尊重したということでございます。
#125
○竹村泰子君 私の質問は、いつ知ったのですかと聞いているんです。そして、これはことしの六月十六日の新聞ですが、きょうおいでになっているかどうか知りませんが、新医薬品課の藤井基之課長のコメントが出ているんですね。「臨床試験段階で三人が死亡していることは初めて聞いた。」と。初めて聞いたと、こういう大きな問題を。一人じゃないです。慈恵医大の新村先生も言っていらっしゃる。これは併用すると危険だよということは、医師の方から通告が来ていたはず。それは、医師はもちろん日本商事におっしゃったかもしれないけれども、厚生省にも当然言っていらっしゃると私は思いますけれども、その辺をもう一度聞きたい。
#126
○政府委員(田中健次君) 先ほどお話のございました東北大学のケースは、患者が死亡はなさっておりませんので、私どもとしてはこの情報を知りましたのは六月の十六日でございます。
#127
○竹村泰子君 私が言っておりますのは、東北の女性で十月の二十九日に死亡された方のことを言っております。
 厚生委員会及び予算委員会などでまたこういった問題はきちんと取り上げていかなければならないと思いますけれども、法務大臣、このことをきょうお聞きになりまして、法の責任者として、これは厚生省の問題ではあるかもしれないけれども、どんな御感想をお持ちになりますか。これから私、商法の方に入ってまいりますけれども、ちょっと短く御感想を聞かせていただけますか。
#128
○国務大臣(中井洽君) 厚生省の御担当でありますし、厚生大臣が我が党の大内啓伍さんでございますのでコメントをするのは差し控えたいと思いますが、何とも言いようのない情けない事件である、このように考え、亡くなった方の御冥福を心からお祈り申し上げたいと思います。
#129
○竹村泰子君 その亡くなられた方たち、死ななくてもよかったかもしれない方たちの御冥福を本当にお祈りしたいと思いますが、私ども国の政治の場に仕事をしている者としてお互いに大きな責任を感じる、そして特に厚生省の責任は非常に重大であると。
 私はこの事件を聞いたときにすぐ血友病の方たちのことを思いました。輸入された血液製剤がきちんと煮沸、加熱製剤であれば、今、日本のエイズの患者の中の七割五分ぐらいと言われている血友病の方たちはこういった本当に救いがたい重い病気にかかられなくても済んだ、そういう意味で厚生省の責任は非常に重大であると、強く警告をしておきます。必ずきちんと調査をなさって、立入検査をなさって、これは結果を国会にも報告をしていただきたいというふうに思います。
 日本商事がこのソリブジンの製造販売の承認・許可を受けた昨年七月から厚生省の発表があった昨年十月、そして今日までの日本商事の株価はどのように推移しておりますでしょうか。
#130
○説明員(西方俊平君) 昨年の七月の初めの株価でございますけれども、三千二百円台でございました。それから、八月から十月にかけましては三千四百円台からまた三千二百円台、さらに十月の初めには三千四百円台ということで推移してまいりましたけれども、十月半ば以降は下落傾向になりまして、十月の末には二千二百円になっております。なお、本日の日本商事の株価は千六百円で引けております。
#131
○竹村泰子君 百七十五人の人が売り抜けたことによって得た売却益、これは幾らになりますでしょうか。
#132
○説明員(西方俊平君) 個別の売買につきまして幾らで取得したかまで把握しておりませんし、これはもう個人のことでございますので数字を挙げることはできません。
#133
○竹村泰子君 しかし、売却益が調べられないということはないのではないかと私は思うんですが、これは今すぐと言ってもきょう質問通告をいたしましたからそれは無理だったのかもしれないですが、これは調べていただけますでしょうか。できますか。
#134
○説明員(西方俊平君) インサイダー取引の問題の御質問であろうかと思いますけれども、この調査に関する問題は、大蔵省の証券局ということではなくて、証券取引等監視委員会で行っているところでございます。私どもといたしましては、本件については正確な事実関係については承知しておりません。
#135
○竹村泰子君 それでは証券取引等監視委員会、お願いいたします。
#136
○説明員(立石久雄君) お答え申し上げます。
 御指摘の件につきましては新聞等マスコミで種々報道がなされていることは承知いたしておりますけれども、個別の調査に関することでございますので答弁は差し控えさせていただきたいというふうに思っています。
 なお、一般論で申し上げれば、新聞等で報道された問題につきましては証券取引等監視委員会として常に関心を持って情報収集等には努めているところではございます。
#137
○竹村泰子君 それはきちんと調べてください。きようには間に合いませんでしたけれども、できるだけ早い機会にお願をした、と思います。
 それから、日本商事の社員は二千五百人というふうに報道されているんですけれども、そのうち自社株を保有している社員は何人でしょうか。
#138
○説明員(西方俊平君) 私どもの方で個別の会社の従業員持ち株会なり、それから社員株主についての数字について把握しておりませんので答弁はできません。
#139
○竹村泰子君 これはちゃんと通告してありますよ。
 証券取引等監視委員会の方ではどうですか。
#140
○説明員(立石久雄君) 先ほど申し上げましたとおり、個別の調査に関することでございますので答弁は差し控えさせていただきたいというふうに思います。
#141
○竹村泰子君 報道されているんです、これ。新聞に出ていることをお隠しになってもしようがない。
 それでは、報道されていることが事実ではないと思っているのか、あるいは事実ではあるかもしれないけれども確認がとれてないから言えないということなのか、ちょっと一言答えてください。
#142
○説明員(立石久雄君) 今申し上げましたように、新聞等でいろいろ報道されていることは承知いたしておりますけれども、そういう報道内容についてこの場でいろいろお答えするのは個別の調査にかかわることでございますので答弁を差し控えさせていただきたいということでございます。
#143
○竹村泰子君 よくわかりませんね。もう報道されているし、そしてだれもがわかっていることなのにそれが言えないとおっしゃる。
 一体どこならちゃんとおっしゃるんでしょうか。国会を軽視してませんか、それ。
#144
○説明員(立石久雄君) 一般論で申し上げますれば、インサイダー取引につきましては監視委員会の犯則事件調査の対象とはなっております。したがいまして、犯則の疑いのあるものにつきましては、我々といたしましては予断を持つことなく調査を進めてまいることでございますけれども、今申しましたように、個別のいろんな調査に関することにつきましては、何度も申し上げて申しわけございませんが、答弁を控えさせていただくということでございます。
#145
○竹村泰子君 納得できませんね。
 それでは、報道されている数字が千六百人なんですよね、保有している人が。これは一般の会社と比べて保有率はどうですか。
#146
○説明員(西方俊平君) 従業員持ち株会の平均的な規模と申しますか、そういったことにつきましては、私どもの調査ではないんですけれども、全国の取引所協議会による調査がございまして、平成四年度の決算期末の時点でございますけれども、従業員持ち株会を実施している全上場企業の数は二千十一社ございます。それから、実施会社の加入者数は二百二十四万二千人でございまして、これで計算いたしますと、一社平均の加入者数は約千百十五人というふうになります。
 ただ、このいわゆる社員持ち株というその概念は、その従業員持ち株会によって自社の株式を取得した人と従業員持ち株会によらずに個人として自社の株式を取得した人、両方あろうかと思います。その点はつまびらかではございません。
#147
○竹村泰子君 だから、一般的に言って自社株の保有率は高いんですか、低いんですかと言っているんです。
#148
○説明員(西方俊平君) 記事にございますように、この千六百人というのは社員株主ということでもって報道されております。
 先ほど申し上げました千百十五人というのは従業員持ち株会に加入している数でございます。したがいまして、先ほど申しましたように、社員持ち株という概念と従持ち会の加入者というのは必ずしも一致しないものですから、その千六百人というのが高いか低いかというのは判断できないと、こういうことでございます。
#149
○竹村泰子君 それでは変えましょう。
 自社株を売買するときにはどんな手続をとるんですか。チェック体制はどのようになっているんでしょうか。
#150
○説明員(西方俊平君) 自社株を取得する場合につきましては、今までもインサイダー取引の問題というのは当然昔から問題にされておったわけです。それで今回証券取引法の方で手当てを行ったわけでございますが、従来、一般の株式についてインサイダー取引の規制を行うというようなことで、これは六十三年の証券取引法でもってその導入が図られたわけでございます。
 それで、この規制の構成要件というのは、法律の中にございますけれども、原則として会社関係者でありまして、上場企業等の業務等に関する重要事実を知った者、または会社関係者から上場会社等の業務等に関する重要事実の伝達を受けた者、これはいわゆる第一次情報受領者と言っておりますが、そういった方はその事実が公表された後でなければその会社の株券等の取引をしてはならないということでございまして、どのようなものが重要事実であるかなどにつきましては証券取引法とその施行令で明確に、かつ詳細に規定があるわけでございます。
 それで、インサイダー取引規制を守っていただくというような観点で、証券会社とかそれから発行会社はガイドラインを定めておりまして、その社員に対しますインサイダー取引規制、またガイドライン等の周知徹底に努めてきているところでございます。
#151
○竹村泰子君 いろいろあるようですけれども、基本的には証券取引法が改正されるわけで、そこできちんと規制がされるということらしいですけれども。
 私もこの報道などをいろいろ見ておりますと、さっきの株価のことでも、ソリブジンの発売開始から、厚生省が死亡を発表したときにどんと下がっているわけで、情報入手がどういうふうにされたのか。エーザイの方は、社員に対して前夜にファクスが入ったというふうな報道がされており、深夜に全国の支店、営業所にソリブジンと抗がん剤との併用で副作用による死亡事故が起きていることなどをファクスで連絡をしていたと。このことが証取法百六十六条で規制されている会社関係者となるのか、それから重要な事実と見るのか。
 そして、会社関係者といっても、役員やアルバイトの方、あるいは契約している弁護士や公認会計士、税理士、営業マン、銀行マン、元の社員、いろいろその関係者というのが想像されるわけですけれども、役員あるいは社員の奥さんや子供などの家族、友人、いろんなことでこの情報が知らされる可能性があるわけです。証取法では、この重要な事実として株式、転換社債、ワラント債、その他いろしろと挙げてしまして、主要な株主の異動、株式の上場廃止など企業の意思と直接関係のない事実もインサイダー情報と見られると。つまり、未公表の重要事実と見られるというふうに言っているんです。
 そうかといって、また重要事実を知る範囲というのはもっと広がっていくわけですよね。情報社会ですからいろんな書類が出回って飛び回ってしまう。シュレッダー処理を頼まれたOLの方が見てしまうとか、あるいは夜、飲みに行った会社の重役の方から話を聞いたそのお店の従業員たちが、知ってしまうとか、もういろんなことがあって、こうしたケースがすべて罰則の対象になるわけではない、適用除外規定があるというふうに言われますと、一体じゃどれが重要事実でどれがインサイダー取引だというのは非常に難しい。私ども素人ではもう本当にわからないと言いたくなってしまうんですけれども、この日本商事のケースはインサイダー取引になりますか、どうですか。
#152
○説明員(立石久雄君) 先ほども申し上げたことでありますけれども、一般論として申し上げれば、上場会社等の役職員等 会社関係者と呼んでおりますけれども、会社関係者が委員が今御指摘になられました法に定めるもろもろの重要事実の公表前にそういう事実を知って株券等の売買をした場合には当然インサイダー取引になるわけでありますけれども、個別事案に関することにつきましては、先ほどの段階でも申し上げさせていただいておりますけれども、お答えを差し控えさせていただきたいというふうに思います。
#153
○竹村泰子君 何にも答えてくれないんですけれどもね。
 現在、証券取引等監視委員会が調査中と、これも調査中ですかと聞いても多分言えないとおっしゃると思うんですけれども、調査中だというふうに私どもは聞いております。
 この監視委員会がインサイダー取引として告発した例は何件ありますか。
#154
○説明員(立石久雄君) 証券取引等監視委員会が発足して告発した事案といたしましては、株価操縦及び有価証券報告書の虚偽記載、この二件でありますけれども、インサイダー取引については委員会発足後はございません。
 なお、委員会発足前にインサイダー取引として二件の事件がございます。
#155
○竹村泰子君 その二件というのは、機械メーカー、マクロスの場合と現在のシーコムという会社の二件ということですね。
 このようにインサイダー取引の認定は非常に難しいですね。違法性の立証が困難です。このような制度のもとで自己株式の取得を広く認めちゃって、そして今回の法改正をしてしまって大丈夫なんでしょうか。私はとても心配。改正される証券取引法ではどのように規制されるんでしょうか。日本商事のような例は再発しないんでしょうか、大臣。商工委員でいらして大変こういったことにお強い大臣、どうぞお答えください。
#156
○国務大臣(中井洽君) 先ほどからお聞かせをいただいておりまして、もし新聞報道のとおりであれば、そしてまた死亡を知って、そして届けが公表される前に売り抜いた人が三十人ぐらいいらっしゃるというのが事実とするならば、常識的に言えばこれはもうインサイダー取引に当たるんだろうと私どもは過去の大蔵委員や商工委員の経験からいえば思いますが、現在法務大臣でございまして、弟が証券取引等監視委員会におりますので余計答えにくいところでございます。
 インサイダー取引につきまして、私どもはそれぞれの関係局が既に衆議院を通過し、参議院の委員会で御可決をいただいた今回の証取法の改正等で十分御対応いただけると考えております。アメリカのSECなんかにおきましては、いわゆる密告する、あるいは自分が罪をみんなしゃべっちゃうから勘弁してくれ、そのかわり他のものはやってくれというような取引が行われている司法制度になっておりまして、そういう意味では証拠も見つけやすい、また罪も簡単に見つけやすい、こういう形になっておりますが、日本の場合にはそういう司法取引という制度がないために先生御心配のような問題があろうか、このように考えております。
 私どもは今回の法律の改正によりましてさらに関係機関に頑張っていただく、このことを痛切に願うとともに、証券業界あるいは会社関係の方々が、こういう法律改正は世界の大きな流れの中、また経済対策、景気対策という面からも踏み込んだわけでありますから、一層モラルを高めて身を引き締めてこの法の精神に反するような行動がないように私からも強く念願をいたしたい、このように考えております。
#157
○竹村泰子君 弟さんが証券取引等監視委員会にいらっしゃるということですから、きょうも法務委員会その他で審議がされたんだけれども、ぜひ厳しくやるようにとお伝えをいただきたいと思います。
 それで、このような日本商事のような例が再発しないのかどうか、私はもうエスカレートしていくんじゃないかというのが非常に気になるところなんです。
 使用人という言葉が使ってあるんですね。さっきもここで使用人という言葉はどうかと、ちょっと差別的な用語ではないかという話をしていたんですが、従業員といいましょうか、従業員に譲渡する自己株式の取得がどんどん認められていきますと心配があるんです。
 「正当ノ理由」というのは一体何でしょうか。この自己株式の取得は、従業員の持ち株会や永年勤続の従業員に自己株式を譲渡することがなぜ正当とされるんでしょうか、教えていただきたいと思います。
#158
○政府委員(森脇勝君) 今度改正を予定しております二百十条ノ二におきましては、「会社ハ」「正当ノ理由アルトキハ使用人ニ株式ヲ譲渡ス為ニ」「自己ノ株式ヲ取得スルコトヲ得」と、こういう規定を考えておるわけでございますが、ここで「正当ノ理由アルトキハ」という文言がありませんと、従業員、使用人ですね、使用人のだれに対してでも譲渡するために取得できる、こんな制度を考えているわけではございませんで、当然にそこには一定の制約がある。これをあらわすものとして「正当ノ理由アルトキハ」というのを入れたわけでございまして、ここで考えておりますのは、最も念頭にあったものが従業員持ち株会、さらに永年勤続者あるいは功労者というものも考えられるであろうというように審議の中では考えてきたわけでございます。
 それで、この永年勤続者あるいは会社に対する功労者に対して譲渡するというのがなぜ正当な理由になるのかということでございますが、これにつきましては、やはりその使用人に対しての財産形成に資するという意味がございますので、広い意味で申し上げれば従業員の福利厚生施策の一環として位置づけられるということもできようかと思われますし、永年まじめに勤務した者、あるいは勤務上の功労があった者に対してこのような一種の報奨を与える制度をつくるということは使用人の勤労意欲が向上して、ひいてはそれが会社の業務の運営に資するということにもなるのではないかというふうに考えているところでございます。
 もっとも、これも使用人に譲渡するためには株主総会の決議が必要でございますので、株主総会においてこういった制度に基づいて永年勤続者あるいは功労者に株式を譲渡するということを説明した上で、株主総会の決議で承認されるという手続が必要でございまして、最終的には株主総会が当該理由の正当性を含めて自己株取得の当否について判断する、こういうシステムになろうかと思います。
#159
○竹村泰子君 余り時間がなくなってしまいましたので質問を少し残さざるを得ないのですけれども、今、株主総会のことが出ました。
 株主総会はそんなに、私どもは外から見ていて、私は何の株主でもありませんけれども、そんなに信頼できるものなんでしょうかね。かなり形骸化していると、厳しい言い方かもしれないけれども、かなり形骸化していてチェック機能を果たしていないんじゃないかと私は思いますが、偏見でしょうか。そこで、そのチェックをされる、自己株式取得を取締役会、株主総会などで不正行為の温床にさせないための仕組みがぜひ必要なのではないかというふうに思います。
 最後に、今回のこの改正が従業員の持ち株会、安定した株主の確保や従業員の財産形成あるいは福利厚生を目的とするとさっきおっしゃいましたけれども、終身雇用と年功序列制の賃金体系、まだまだそういう中にあって日本的な雇用形態の産物ではないのかと、また厳しいことを申しますが。
 昨年の商法改正も私はかかわっておりまして、株主の権利の拡充だとか、それから株主による監視機能の強化を目指すものであって、日本的な経営形態、会社本位主義とか法人資本主義とかにくさびを打つものであった、そういうふうに審議をしながら、これが全部きちんとできれば本当によくなるんじゃないかと思っておりましたが、今回の改正は非常に日本的な経営形態、とりわけ経営者による会社支配を強化することになるのではないかという危惧を抱いております。
 もちろん賛成するわけですけれども、しかしこういった数々の危惧を抱きながらの審議でございますので、ぜひ大臣に最後にきちんとしたこれからの施策、そして具体的な実効性のある方法をとっていただきたいと強く要望して、大臣の御決意を聞いて終わりたいと思います。
#160
○国務大臣(中井洽君) 先生の御指摘ありました日本の現在の株主総会等のあり方を含めて日本の株式会社がアメリカやヨーロッパのあり方と随分違う、ここにいろいろと今海外との摩擦が出ている原因も一つあろうか、こんなふうにも常日ごろ考えております。おいおいと国内での論議を高めていただいて、株式会社が本来持ちます機能あるいはまた有利な点、これらが生かされる体制にしていくべきだと、このように考えております。
 私自身は、実は大蔵委員会での何回かの論議のときに、従業員持ち株会に自社株を売り渡すということじゃなしに労働組合がこれを買えるという形にしたらどうだと、そして五%なら五%を持ったら労働組合から監査役が出る、こういう形も一遍考えたらどうだといってかなり大蔵省と議論もいたしましたし、勉強したこともございます。
 そういう中で、今回法務大臣としてこの法案審議をお願いする立場になりまして、日本もここまで踏み込めるようになったかとプラスの面を大いに自分ながら評価をいたしているところでございます。
 インサイダー取引の問題を含めていろいろと御心配を賜りました。私ども関係各省庁と十分連絡をとり合いながら、御心配のないような法運用ができるよう努力を続けていきたい、こんな思いでございます。
#161
○木暮山人君 今回の取得規制の見直しの背景と最大のねらいは何であるかというような観点から今回の商法改正は自己株式の取得制限を緩和しようとするものですが、商法は昭和十三年以来、自己株式の取得を原則として禁止し、例外的に容認するという立場に立っております。自己株式の取得を認めると、会社の財産が減少するおそれがあるというのがこの最大の理由だと言われています。これに対して、経団連は昭和四十年代に、資本の自由化で日本企業が外国資本の買収や合併にさらされるとの懸念から自社株取得規制の緩和を要望したのを手始めに、最近では自社株取得による株式持ち合いの解消の際の受け皿、従業員持ち株制度の充実などを理由にして緩和を要望しております。
 そんな観点から、法務大臣にひとつお伺いしたいと思っております。
#162
○国務大臣(中井洽君) お答えを申し上げます。
 今回の商法の改正により自己株式の取得規制を一定の範囲で緩和いたしますのは、一つには我が国の自己株式の取得規制が欧米諸国の規制に比して厳格に過ぎて、経済界を中心としてその緩和を求める声が最近非常に高まってきたこと、二つ目には商法及び証券取引法において自己株式の取得及び保有に伴う弊害を防止するための十分な措置をとることが可能であると考えられること、三つ目は自己株式の取得規制を緩和することが証券市場の活性化につながるものとして平成四年三月以降の政府の経済対策等に取り上げられたことなどによるものであります。
 今回の自己株式の取得規制の緩和は、株式制度等の運営の適正化、円滑化を図ることを目的とするものでありますが、この改正により自己株式を取得することができる場合が拡大されるため、今後の会社の経営の安定化や証券市場の活性化に大いにつながることが期待されるものと考えております。
#163
○木暮山人君 そこで、今お話にもありましたけれども、欧米諸国の制度について御説明をどなたかにひとつお願いしたいと思います。
#164
○政府委員(濱崎恭生君) まず、アメリカの制度でございますが、アメリカは相対的に最も取得規制が緩やかであると言われております。アメリカにおきましては、どういう事由で自己株式を取得するかというその取得事由の制限がないということでございますが、ただその取得財源については余剰金の範囲内で取得するという制限はかかっております。
 それから、取得した自己株式をそのまま保有することができるか、さらには任意にまた市場で売却することができるかという点につきましては州によって法制が異なっておりまして、当然に消却される、取得したらすぐ株式を失効させるという制度をとっているカリフォルニアなどの州と、それから取得して保有して取締役会で任意に処分することができるとするデラウェアなどの州がございます。
 なお、アメリカのいわゆるモデル法、模範事業会社法におきましては株式の保有を認めないという考え方をとっております。
 次に、EC諸国でございますが、例えばイギリス、ドイツ、フランス等におきます制度、これはそれぞれ中身は国によって違うわけでございますが、これは自己株式の取得は原則的に禁止し、例外的に許容する、この考え方は日本の制度と同様でございますけれども、しかし日本の現在の制度に比べれば取得できる場合がかなり緩やかに認められております。それぞれの国において一定の手続を経た場合、あるいは一定の事由がある場合に会社の意思によって自己株式を取得するということを認めておりまして、また必要に応じて財源を配当可能利益の範囲内にする、取得した株式は一定の期間内に処分をする、あるいは消却をすべきものというふうにしております。
 それに比べまして我が国の現行の制度は、自己株式の取得を例外的に認めておりますけれども、言ってみればそれはやむなく取得するという場合に限られておるということで、我が国はそういう諸国に比べて最も規制が厳しいということでございますが、中身は違いますけれども今回の改正によってレベルとしては大体EC並みというふうに考えております。
#165
○木暮山人君 どうもありがとうございました。
 次に、自己株式の取得制限の緩和に当たっては、弊害の防止のための措置を講じた上でと大臣は趣旨説明で述べられておりますが、一つは会社の財産の減少につながる、また株価操縦やインサイダー取引のおそれがある、また経営権の防衛の乱用につながるというような弊害に対してどのような防止のための措置が講じられておりますか、そこの説明をひとつお願いいたします。
#166
○政府委員(濱崎恭生君) 大筋につきましては先ほど来大臣の方で御答弁申し上げているところでございますが、私の方からやや詳細に申し上げますと、ます一番目に指摘がありました会社財産の減少あるいは会社の財産基盤を危うくする、こういう弊害につきましては、今回新たに許されることになる取得事由のいずれの場合につきましてもその取得財源を直前の決算期における配当可能利益の範囲内に限定する。しかも、個々の株式取得の場合におきましても、次期の決算期において欠損が生ずるおそれがあるような場合には株主総会の授権の範囲内であってもその取得をしてはいけないというような規制をかけて、言ってみれば総会の決議の場面とそれから個々の取得の場面でそれぞれ配当可能利益の範囲内に限定するという措置をとっているわけでございます。
 次に、二番目の株価操縦やインサイダー取引のおそれという弊害につきましては、これは法制審議会の審議と並行いたしまして証券取引審議会で慎重な審議をいただいた上で、証券取引法の改正という形で今回の取得規制の緩和に伴うそういった弊害を除去するための措置を講じていただくということになっております。
 具体的には、インサイダー取引の関係におきまして、自己株式の取得を会社が決定する、その会社の決定を先ほど来いろいろ出ておりますインサイダー取引規制上の重要事実として規定する、したがってその決定を公表した後でなければ会社関係者はその株式の売買をすることができないという改正をするとともに、自己株式取得に関する開示制度の整備を行うという内容の改正案が提出されているところであります
 次に、三つ目の経営権防衛の乱用あるいは会社経営者による会社支配につながるという弊害も指摘されているところでございますが、今回許容するいずれの取得の場合につきましても株主総会の決議を要することにしておりますし、また取得した自己株式を長期間にわたって保有する、さらにはこれを譲渡するというようなことは認めておらない。それから、自己株式を保有する場合に、その数量についても消却のためにする場合を除いて数量規制を設ける。消却の場合は当然のことながら株式を消却してしまう、失効させてしまうわけでございますので、そういうことで新しい制度によって会社経営者による会社支配が不当に強化されるということがないようにという対応をしているところでございます。
#167
○木暮山人君 質問終了いたします。どうもありがとうございました。
#168
○荒木清寛君 まず、大臣にお伺いをいたします。
 昨日は法制審議会に刑法の現代用語化につきまして諮問をされました。今回改正になります商法につきましても、明治三十二年の制定でございまして、文語体、大変にわかりにくい、そういう表現になっているわけでありまして、現代用語化に取り組む必要性というのは刑法と変わりがないと思います。
 この点、大臣におきましては今後どう取り組んでいかれるのか、まずお伺いしたいと思います。
#169
○国務大臣(中井洽君) 先生御指摘のように、昨日、刑法の平仮名化につきまして法制審議会に諮問をいたしたところでございます。
 振り返りますと、平成三年に国会で附帯決議をいただきまして以来、鋭意勉強し、研究し、そして合意を得て昨日諮問ができた、そういう年数がかかっているわけでございます。もちろん、御指摘の商法におきましても、明治以来の片仮名書きで大変わかりにくくなっており、これをわかりやすい平仮名書き、現代語表記に改めていくことは当然のことだ、このように考えておるところでございます。
 現在、商法全体を口語化する場合に備えて、昨年から商法学者の参画を得て研究会を発足させ、商法典を平仮名口語体表記に改めるという観点からの研究に着手いたしたところでございます。
 しかし、刑法の場合には御承知のように二百八十条ぐらいというところでございますが、商法の場合には五百条を超える条文がございますし、また時代の推移に伴って用いられている用語が時代に合わなくなっているものも数多くある、また検討すべき問題も少なからずございます。かなり日数的にかかるのではないかと考えておりますが、御指摘をいただきましたことを踏まえ、また当法務委員会での先ほどからの御議論にもございました点を十分留意いたしまして、できる限り早い機会にそういう方向が打ち出せるよう督促をしてまいりたいと考えております。
#170
○荒木清寛君 先ほど来自己株式取得のいわゆる規制緩和に伴ういろんな弊害につきましてお話がございましたので私からも、法律に違反をして自己株式を取得し、会社の財産を危うくした場合の取締役の責任、その一点に限って御質問をさせていただきます。
 今回の法改正によりますと、自己株式の取得には、第一に配当可能利益を超えることができない、第二には営業年度の終わりにおいて資本の欠損が生ずるおそれがあるときには取得することができない、そういう二つの財政的な規制があるわけであります。
 このうち後者、資本の欠損のおそれがある、そういう場合に自己株式を取得した場合の取締役の責任につきましては改正法におきまして規定があるわけでございますが、もう一点の配当可能利益を超えて自己株式を取得した場合の取締役の責任につきましては何ら規定がないわけでございまして、私はこれは法の不備があるのではないか、そういう観点から御質問をさせていただきたいと思います。
 簡単な例を考えてまいったのでありますけれども、例えば配当可能利益が五億円だったと、ところが取締役が株主総会の決議に反して十億円分の自己株式を取得してしまったという場合を考えていただきたいんですが、こういう場合の取締役の責任というのは今度の法改正によりましてどうなっていくのでしょうか。
#171
○国務大臣(中井洽君) 事務当局からお答えする前に、先ほどの訂正をさせていただければありがたいと考えております。
 先ほど刑法については二百八十ぐらいの条項がある、商法については五百ぐらいのということで数が多いということを申し上げたのでありますが、不勉強でありまして、商法は八百五十一条、刑法は二百六十四条でございます。もっと数が多うございます。訂正をさせていただきます。
#172
○政府委員(濱崎恭生君) ただいまの配当可能利益を超える株主総会の議案を提出してその決議がされたという場合の取締役の責任の問題でございますが、委員御案内のとおり、そういった場合の類似の制度といたしまして、二百六十六条一項一号におきまして、配当可能利益を超えて利益配当をした、あるいは法定の財源規制を超えて違法な中間配当をしたという場合には、その違法配当額あるいは違法分配額についてその取締役が当然責任を負うという規定があるわけでございますが、それとの対比で申し上げますと、株式配当あるいは中間配当の場合にはいずれもそういう配当あるいは分配をすることによって会社から金銭が一方的に出ていくということでございまして、その出ていった金銭に見合うものが会社に入ってくるということはないわけでございます。
 ところが、今回の自己株式の取得の場合につきましては、今回三つの場合について認めるわけですが、そのうち使用人に譲渡するための取得、それから閉鎖会社の特例による取得、この場合には買い入れた自己株式が会社の所有になるということで、言ってみれば流出した金銭に見合う利益が会社に入るということになりまして、流出した金銭が当然に会社の損失になるわけではない。また、利益消却のためにする場合におきましても、売却に応じた株主が退社して、株主がそれだけ減少するという効果が生ずるわけでございます。
 そういうことで、その二つの場合、先ほど申しました配当等の場合と今回の自己株式の取得の場合を比べますと、それぞれ財源規制に違反したという点は共通でございますが、それによって会社が受ける損失状況には根本的な違いがある、そういうことで今回の改正においては利益配当等の場合と同様の規定を設けることはしなかったわけでございます。
 ただ、今回の制度のもとにおきましても、所定の財源規制の範囲を超えて自己株式を取得するという議案を定時総会に提出した、あるいはそういった株式を取得するということはそれぞれ法令に違反する業務執行ということでございますので、二百六十六条一項五号にあります一般規定である「法令又ハ定款ニ違反スル行為ヲ為シタルトキ」というものに該当するわけでございますから、そのことによって会社が被った損害については二百六十六条の規定に従って損害賠償責任を負うことになるということでございます。
#173
○荒木清寛君 そうしますと、確認をいたしますと、仮に先ほどの例で五億円しか配当可能利益がないのに十億円分の自己株式を買ってしまった、そうしましたところ株価が暴落をいたしましてこの十億円の時価が三億円になってしまった、結局従業員にもそれだけの値段でしか売ることができなかったという場合には厳然と会社に損害が生じるわけでありますが、その場合には先ほどおっしゃった二百六十六条一項五号の規定により損害賠償の責任が生じてくる、そういう理解でよろしいんでしょうか。
#174
○政府委員(濱崎恭生君) 財源規制を超える部分についてはそういうことになると思います。
#175
○荒木清寛君 以上です。
#176
○委員長(猪熊重二君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします
   午後七時四十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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