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1994/06/22 第129回国会 参議院 参議院会議録情報 第129回国会 法務委員会 第5号
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1994/06/22 第129回国会 参議院

参議院会議録情報 第129回国会 法務委員会 第5号

#1
第129回国会 法務委員会 第5号
平成六年六月二十二日(水曜日)
   午前十時二分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 六月二十二日
    辞任         補欠選任
     深田  肇君     千葉 景子君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         猪熊 重二君
    理 事
                下稲葉耕吉君
                糸久八重子君
                平野 貞夫君
                荒木 清寛君
    委 員
                斎藤 十朗君
                志村 哲良君
                鈴木 省吾君
                服部三男雄君
                山本 富雄君
                栗原 君子君
                竹村 泰子君
                千葉 景子君
                深田  肇君
                木暮 山人君
                翫  正敏君
                國弘 正雄君
                紀平 悌子君
                安恒 良一君
   国務大臣
       法 務 大 臣  中井  洽君
   政府委員
       法務大臣官房長  原田 明夫君
       法務大臣官房審
       議官       森脇  勝君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  永井 紀昭君
       法務省民事局長  濱崎 恭生君
       法務省刑事局長  則定  衛君
       法務省人権擁護
       局長       筧  康生君
       法務省入国管理
       局長       塚田 千裕君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局総務局長   涌井 紀夫君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   堀籠 幸男君
       最高裁判所事務
       総局経理局長   仁田 陸郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        播磨 益夫君
   説明員
       警察庁刑事局暴
       力団対策部暴力
       団対策第二課長  村田 保史君
       防衛庁防衛局運
       用課長      野津 研二君
       外務省北米局日
       米安全保障条約
       課長       鹿取 克章君
       大蔵大臣官房審
       議官       西方 俊平君
       大蔵省証券取引
       等監視委員会事
       務局総務検査課
       長        中井  省君
       運輸省鉄道局次
       長        戸矢 博道君
       自治省行政局選
       挙部選挙課長   大竹 邦実君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○平成六年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送
 付)、平成六年度特別会計予算(内閣提出、衆議
 院送付)、平成六年度政府関係機関予算(内閣提
 出、衆議院送付)について
 (裁判所所管及び法務省所管)
○商法及び有限会社法の一部を改正する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
○裁判官の介護休暇に関する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
○外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特
 別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(猪熊重二君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 去る六月十七日、予算委員会から、本日六月二十二日の一日間、平成六年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、裁判所所管及び法務省所管について審査の委嘱がありました。
 この際、本件を議題といたします。
 裁判所及び法務省関係予算につきましては、去る六月七日に説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#3
○下稲葉耕吉君 私は、大臣が所信表明の冒頭で法秩序の維持と国民の権利の保全ということをおっしゃいました。あの席上でも申し上げましたように、法秩序の維持という問題につきましては、これはもう大臣がおかわりになろうがなるまいが基本的な問題であろうというふうに理解いたしております。
 そこで、具体的に法秩序の維持というのはなかなか難しいことがあると思うんですが、一般論として大臣はどういうふうな御認識でいらっしゃいますでしょうか。
#4
○国務大臣(中井洽君) 大変難しい問題で、答え方に私自身も迷うわけでございますが、やはり日常は朝から晩まで法の中で国民は暮らしていらっしゃるわけですが、法秩序とか法秩序の維持というのをお互いが意識しなくてもその中で十分平和にお過ごしをいただける。しかし、緊急の場合あるいはいろいろな問題が起こったときには法の持っておる意義、これを私ども当局が断固守っていく、そして法によって判断をする、そのことによって法秩序が維持される、このように考えているところでございます。
#5
○下稲葉耕吉君 それでは、具体的な問題についてお伺いいたしたいと思います。
 大臣に御就任になりますといつも死刑の問題についてマスコミの皆さんから御質問をされるわけでございますが、その問題につきましては先般来ここでいろいろ御議論をいただいております。
 大臣は、ちょっと古い話で恐縮でございますが、昭和五十二年の九月二十八日に日本赤軍による日本航空、パリから東京行きの飛行機がハイジャックされました。いわゆるダッカ事件、こういうふうに言われておる事件があるわけでございますが、それは御存じでございましょうか。
#6
○国務大臣(中井洽君) 当時国会の一年生議員でございまして、この事件が起きました後、衆議院で委員会が開かれて、私は初めて衆議院の第一委員会室でこの問題について質問をいたしたことを先生の御質問を聞いて思い出しました。十分承知をいたしております。
#7
○下稲葉耕吉君 できれば、刑事局長でも結構でございますが、何か概要でも御報告いだだけますか。
#8
○政府委員(則定衛君) いわゆるダッカ・ハイジャック事件と称されておりますのは、御指摘のとおり、昭和五十二年九月二十八日に日航南回り四七二便がボンベイを離陸後、けん銃、手りゅう弾等で武装したいわゆる日本赤軍の五名に奪取されまして、バングラデシュ人民共和国ダッカ空港に着陸いたしました。犯人は、日本に拘禁中の奥平純三ら九名の釈放と現金五百万ドルを要求したわけでございます。
 政府は、当時の石井運輸政務次官らを急派いたしますとともに、奥平ら六名と五百万ドルをダッカに移送し、人質の乗客大半と交換いたしたわけでございます。
 犯人は、ダッカ離陸後クウェート、シリアを経てアルジェリア民主人民共和国に逃走いたしまして、アルジェリア政府に投降した、こういう案件だと承知しております。
#9
○下稲葉耕吉君 おっしゃるような事件でございます。
 当時、私もまだ役人でございまして、実はこの事件に携わった者の一人でございますが、要するに法務省は、拘置中の言うなれば凶悪な犯罪を犯した人、あるいは裁判中の方もいたわけでございますが、それの釈放につきまして大変反対された。しかし政府は、政府というのか外務省が中心になって動いていたように私自身は考えているんですが、人命の尊重というふうな角度からこういうふうな要求に応じまして、応じたというのか屈したというのか、どっちの方が正解かわかりませんが、応じまして、そして身柄の引き渡しを超法規的な措置だというふうなことでしたわけです。
 当時の法務大臣は福田一先生で、後に衆議院議長なんかをなさいましたが、当時の刑事局長はもう亡くなられた伊藤榮樹さんでございましたが、いろいろ抵抗されました。警察も反対でありました。そういうふうな中で政府は釈放を決めたわけでございます。
 やはり、法務大臣としては大きな政府の方針の中で決断をせざるを得なくなった。そして、政府の方針が決まりまして、法務大臣は担当の局長に指示をなさった。首相官邸でその会議が行われたんですけれども、それが終わってその足で法務大臣は総理の後を追っていかれて総理室に入られて辞意を表明されたんですね。その問題につきまして、当時自民党としても大変議論をいたしました。人命というのは地球よりも重いとかなんとかというような言葉が確かそのころ出たわけでございます。
 羽田まで引き渡し人を警護してくれぬかということで、当時警視庁に話があったんですけれども、警視庁の警察官とかが死傷されたり、何だかんだと、撃った犯人を送るわけにいかぬということで、警視庁が怒ったりしたようなことまで私は記憶にあるわけでございます。そういうふうな事態が発生しないとも限らない。これは法務大臣としての大変な一つの見識を問われる事態だろうと思うのでございます。
 自民党といたしましては、ああいった措置についてはやはり現在でもよかったということを最後まで言い切れていないような状態だろうと思うんですが、そのような事態に対処しましての大臣の御決意といいますか、難しい問題が出てくると思うんですが、超法規的なことをおやりになったわけですから、それについての大臣の御見解というのを承りたい。
#10
○国務大臣(中井洽君) 当時、私どもが知り得なかったようなことも含めて先生から御質疑を賜りました。私ども当時まだ三十四歳か五歳でございまして、委員会で質問いたしましたのは、超法規的措置は断固とるべきじゃなかった。また同時に、こういう事件が起きたときに対策をとるような特殊な部隊、そういったものが警察にも何もないというのはおかしいじゃないか。あるいはまた、たとえこういう中で犯人側の要求を飲まされて五百万ドル持たされ、当時たしか薬からパンツまで渡したような記憶がありますが、例えば五百万ドルにせ札で渡すなんというような対策もとれなかったのかとか、そんなことまで実は申し上げたことを記憶をいたしているわけでございます。
 ああいう事件を契機に、議員も既に御承知だと思いますが、ハイジャック等非人道的暴力防止対策本部で定められた国際協力の推進、ハイジャック等防止対策に基づき法制度の整備を鋭意進めてまいったところでありますし、また外務省、警察庁等関係機関との協力のもとに、こういう事件が二度と起こらないように努力をしてまいりたいと考えております。
 万一、不幸にしてこの種の事犯の発生を見ました場合には、人質の安全救出のため最大限の努力を払うことはもとよりでありますけれども、テロリストの不法な要求には決して屈しないということが私の思いでもありますし、また累次のサミットにおいて確認された国際的原則である、このように認識をいたしております。法秩序の維持のため、犯人の不法な要求には断固たる態度をもって臨んでいきたい、このように考えております。
#11
○下稲葉耕吉君 大臣の御決意を伺いまして私も安心いたしました。やはり、いろいろな議論もあろうと思うんですけれども、こういうようなことがあっては私はよくないと思うんです。
 以上でこの問題については終わります。
 もう一つほど時間も若干ございますのでお伺いいたしますが、本年度の予算でも法務省の職員の増員というふうなものが多数認められております。すばらしい地位にいると言うと語弊がございますけれども、着実に伸びているんじゃないかと私は思うんです。それの重点はあくまでもやはり入国管理行政というものが重点であって、入国管理行政に増員というものがずっと傾斜しているような感じを受けるわけでございます。私は、それは時代の要請に応じて、それはもうそうだろう、こういうふうに思うわけでございます。しかしながら、法務行政全体を見ますと、やはりそれは時期の時代的な要請に応ずることのためにはやむを得なかったとしても、果たしてこういうふうな形が今後もずっと続いていいのかなとうかなというふうなことでいささか懸念するわけです。
 昨日も問題になりましたような更生緊急保護事業等の問題につきましても、点検してみますと実は余り日の当たらない部署であり、それだけになかなか御苦労も多いし、しかも国民的関心も非常に強いんじゃないかというふうな感じもいたします。
 あるいは、今北朝鮮の核疑惑の問題でいろいろ議論されておりますけれども、日本は専守防衛でございますから、やはり耳を長くしなくちゃならない。そういうような面からいいますと、公安調査庁の問題につきましても、昔は一時増員したことがあるんです、私もバッジをつけましたから。あるんですが、後はずっと減員されている。減員されているのみならず法務省全体の中の調整で削られているというふうなこともないわけじゃないんです。
 ですから、私は大臣の高い見識で法務行政全体を展望していただいて、そういうような中であるべき法務行政としてどこに重点を置いていけばいいか。予算なり人なり、そういうような面もあるだろうと思うんです。もちろん施設の面にしてもそうでございます。施設の問題も、先般来何回も補正が組まれまして、実質一年分ぐらいの施設費の増強というのが図られている現実もあるわけでございます。
 きょうは、人の問題について大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。
#12
○国務大臣(中井洽君) 下稲葉先生初め、法務行政に大変御支援を賜っております各党各議員の皆さん方の御支援のもとに、今予算で百六十八名という定員の増を入国管理局は見させていただきまして、現行のふえ続ける出入国管理事務等に、また大阪新国際空港の開港に伴う事務増大に対応できることを大変感謝申し上げているところであります。
 しかし、御指摘のように、この陰には、法務省全体での定数削減をめぐって、それぞれ重要な部局でありますけれども、人員増の要求の抑え、あるいは場合によっては削減と大変難しい調整があったと聞かせていただいておるわけでございます。これから来年度に向けて、またこれからの法務行政全般の中で、どこに予算をどこに人員をという大事な方向づけをしていかなければならない。どれ一つをとっても大事な問題ではありますけれども、現行の日本の置かれた情勢、また法務省の置かれた立場、これらを十分議論しながら、将来に対応でき、また同時にバランスのとれた人員増加あるいは予算要求、こういったものを考えていきたい、このように考えております。
 この予算が御通過をいただけるということで、過日大臣官房に総務審議官を置くということで仮決定させていただきました。新聞等で人事、名前等が出ているようでございますが、この裏には、先生御指摘の公安も参事官を一人削るというようなこともあったわけでございます。これらの御苦労を踏まえて、十分な対応ができるよう私も鋭意努力をさせていただく、こんな思いでございます。
#13
○下稲葉耕吉君 ありがとうございました。終わります。
#14
○栗原君子君 栗原でございますが、幾つか質問させていただきたいと思います。
 とりわけ、関西国際空港の開港も間近になるなど、我が国の出入国の管理業務は大変また重要になってきているわけでございます。そこで、今また大きな社会問題の一つになろうとしていることがございますのでお尋ねをしたいと思います。
 国際化に伴いまして、日本人の男性とフィリピン人の女性の接触の機会が大変ふえているわけでございます。婚姻とか同棲とかそれから婚外子をめぐるそういった法律に関する紛争が大量に発生しているわけでございます。現地のマニラの大使館によりますと、この十年間に二万五千件の婚姻届があったということでございます。これは表に出た数字でございますけれども、むしろ地下に潜った数字は三万件とも十万件とも言われているような状況でございます。フィリピン方式の結婚と申しますのは、日本領事館で婚姻要件具備証明書を請求いたします。これは、独身であるということの証明でございまして、この証明書を発給してもらってフィリピン人の女性の居住地であるところの役所に婚姻の申込書を提出するわけでございます。そして、十日後に結婚許可証がおりて二人で結婚の契約書にサインをしてこれで終わるというのでございます。
 そういうことになりますと、フィリピンの領事館でこういうことがなされたのであるならば、当然今度は日本の各市町村の窓口にこの人は結婚しましたというものが返ってこなければなりませんけれども、これが返ってきておりませんものですから、重婚になっている場合が大変多うございます。このことに関してお尋ねをいたします。
 そこで、問題点は、日本人の男性による婚姻関係とか、それから内縁関係における家族の遺棄とかあるいはまた養育費の不払いとか婚約の不履行とか子供の認知がなされないなど、そういうことが大変数多くあるわけでございます。日本政府、とりわけ私は法務省としてどういうお考えを持っていらっしゃるのか、お尋ねをしたいと思います。
 ぜひ私は調査をしてほしいと思うんですが、調査が難しいことであるならば、こういう問題が各地で多発をしておりますので、何とか日本にも相談の窓口をつくっていただくことはできないものかどうか、これが一点でございます。
 そして二点目には、フィリピンでの結婚は、日本へ届けなければ、先ほど申しましたように戸籍に記載されないわけでございますから、日本で再び結婚をするということになって重婚になるわけでございますが、自動的に日本でも婚姻届が受理されるような制度をつくることはできないものかどうか、お尋ねをさせていただきます。
 例えば、いろんな市民団体とかそれから弁護士さんたちのグループで国際戸籍共助制度、これは仮称でございますけれども、こんなことを考えてもらうことはできないものであろうか、こういうお尋ねでございましたので、この件に対してまず二つの点を御答弁いただければと思います。
#15
○政府委員(濱崎恭生君) 国際化ということに伴いまして、特にフィリピンとの関係において御指摘のような問題が生じているということは私どもも聞き及んでいるところでございます。
 ただこの問題は、私ども所管しております民事法の観点から申し上げますれば、いずれも夫婦関係、親子関係あるいはそれに準ずる関係にある者の間の身分法上の法律関係、権利義務の関係の問題であり、またその関係に基づく権利を実現するための権利実現の手続の問題であるということでございまして、それぞれ当該の不利益を受けておられる方々が、我が国のあるいはその本国の所定の法律の規定に従って個々の事案ごとに解決していくという性質の問題であるというふうに思っているところでございます。
 そういった問題についての相談窓口という御指摘でございますけれども、我が国の国内におきましては、戸籍の問題でございますれば法務局の戸籍の担当あるいは市区町村の戸籍窓口、そういったところで個別に相談に応ずるという体制はあるわけでございますし、そのほか人権の角度からあるいは法律相談の角度からということでそれぞれの相談窓口がある。あるいは弁護士会、日弁連あるいは各単位弁護士会等における法律相談という場所も使っていただければということではないだろうか。そういうことで、現在でも国内の相談窓口としてはそれなりの体制があるのではないかというふうに思っております。
 御指摘が国内の窓口ということであったか国外の窓口であったかということはちょっと聞き漏らしたかもしれませんが、外国におられる方に対する窓口ということになりますと、これは外国における外国人に対する相談ということでございますので、私どもだけでどうこう言うことのできない大変難しい問題であろうというふうに思っております。
 それから、もう一点御指摘がございました日本人が外国においてその現地の方式で婚姻をした場合、その婚姻関係を日本の日本人については我が国の戸籍に記載するという問題でございますが、現行の制度におきましては、日本人が外国でその外国の方式によって婚姻をした場合には、三カ月以内にその国に駐在する日本の大使館あるいはあと日本の市区町村長に対して婚姻証書の謄本を提出しなければならないということに戸籍法上定められております。
 それは、日本の日本人の方がそういう義務を負っているということでございますが、日本人であるその一方配偶者が婚姻証書の謄本の提出をしない場合には、相手方である外国人である配偶者からもその提出をすることができるという取り扱いになっております。したがいまして、いずれの当事者からも駐在大使館等あるいは日本の本籍の市区町村長に対してそういう書類を提出されれば、それによってその日本人の戸籍にその婚姻事項を記載することができるということになっているわけでございます。
 三カ月以内にと申しましたけれども、それは三カ月以内にすべきこととされているわけでありまして、三カ月を超えたからその提出を受理しないということではないわけでございますから……
#16
○栗原君子君 まだ聞きもせぬところを答弁してくださったのですけれどもね、それでは次の質問になりませんので。
#17
○政府委員(濱崎恭生君) 今の御質問はございませんでしたか。失礼いたしました。
#18
○栗原君子君 私は、親切な答弁を要求しようと思って詳しいメモを先に渡しているんですよね。そうしたら、何か変なんですよ。
 嫡出子で国外で生まれた子供というのは、さっきもう答弁しておられましたけれども、三カ月以内に国籍留保の届け出を行わないと日本国籍は喪失するわけでございます。日本人の血を受けた子供であるから、当然日本の国籍を私は取得する資格もあるのであろうと思うんです。だから、ここで三カ月間の国籍の留保ということがありますけれども、これを超える場合がもう圧倒的に多うございますし、それで国籍に載る方法がなくなってしまうわけですから、この救済制度については考えられないかということをお尋ねしておるんです。考えられるか考えられないかを言ってくださったらよろしいんです。そして、何とか前向きに検討してもらえるかどうか、こういうことを私はお尋ねしたいのであります。
 それから四つ目には、日本人を父に持つフィリピン在住の子供に対して、父親に会えるようビザの発給に対して人道上の立場で特別な対応はなされるものがなされないものかお尋ねをします。答弁を伺って再質問いたします。
#19
○政府委員(濱崎恭生君) まず、国籍留保の問題についてお答え申し上げます。
 御案内のとおりと思いますが、現在の国籍法におきましては、国籍制度の理想として重国籍を可及的に防止するという観点に立っておりまして、そういうことから外国で生まれてその外国の国籍を取得する子供については、ほうっておきますと重国籍になるということで、三カ月以内に日本国籍の留保の届け出を行わないと日本国籍を喪失するということになるわけでございます。
 ただ、後の措置といたしましては、日本国籍の留保の届け出をしなかったために日本国籍を失ったという人については、二十歳未満の者でありまして日本に住所を有しているという場合には法務大臣に対する届け出という簡易な方法によって日本国籍を再取得することができる、そういう救済措置を講じているということでございます。
 なお、三カ月以内に届けができなかった特別やむを得ない事情がある場合には、その期間が延長されるといり措置も定められておるところでございます。
 あとの問題は所管の入管局長の方から御答弁申し上げます。
#20
○政府委員(塚田千裕君) 日本人を父に持つフィリピン在住の子供に対して、父親に会えるようビザの発給を人道上の立場で特別に対応すべきではないかというお尋ねでございますが、幾つかのケースが考えられるのでございますけれども、一番多いケースは、父子関係が明らかになっていない場合であろうかと思います。しかし、そのような場合でございましても、父親を捜すというような目的で入国申請をすれば父子関係の蓋然性といいますか、その可能性が非常に高いという状況であれば、これは短期滞在というような在留資格で入国を認めるというようなことはこれまでも柔軟に対処していますし、今後ともそのようにやっていきたいと思っております。
 なお、念のためつけ加えますれば、子の出生の時点において日本人と法律上の父子関係があればその子は出生により日本の国籍を取得することになりますので、これは日本国旅券の発給を受けることができていますので、入国は全く問題はございません。また、出生の時点では法律上の父子関係がなかったといたしましても、入国申請の時点で父子関係が明らかになっていれば、これはまた日本人の配偶者等、これは配偶者だとか特別養子だとか実子だとか認知をした非嫡出子というようなものが入ってくるわけでございますけれども、その在留資格で入国を認めることとしております。
 いずれにしても、全体として人道的に入国を認めているということでございまして、今後ともその姿勢といいますか、そのやり方でやっていきたいと思っております。
#21
○栗原君子君 市民団体のところへ寄せられた手記も読んでおりまして、本当に私は涙が出てきたんです。こういう状況がたくさんあるんです。「日本のようなカネ持ちの国は貧しい国の天然資源だけでなく、その国の若く美しい女性を手に入れ楽しんでいる。女性をまるでモノのように扱う状況は人権侵害であり恥ずべき」行動であろう、こう言っております。
 それで、日本人がフィリピンに行ってそういうことが起こって、だから父親がわからないわけないんです。何カ月間は同棲をするなり結婚生活をしているわけでございますから、当然その人が父親であるというのはわかっているわけでございます。それが日本に帰りましたら全く連絡も途絶えてしまう。そして、弁護士さんたちが捜しても、養育費を払ってくれないとか逃げ回るとか、そういう男性が圧倒的に多うございます。中にはまじめな男性もいるわけで、幸せな結婚生活をしている人もあるわけでございますけれども、圧倒的にそういう人たちが多いという状況、これは見過ごせないことであると私は思うわけでございます。
 そして、特に日本から出向いていっている企業の派遣員でございます。建設労働者とか水商売の人とか、あるいはまた暴力団の関係者とか、それから自営業の人とかブルーワーカーとか、そういった人たちがそういうことをやりまして、中小企業の人たちもたくさんおられるようでございます。何とか捜し当てて表に出たのは氷山の一角のような状況なんです。
 私は、日本人としてほうっておくわけにはいかない、それで質問をさせていただいておりますが、先ほどから申し上げておりますような状況とか、あるいはまた日本に出稼ぎに来たフィリピンの女性、これが日本人の男性との間に子供ができたが認知をされない状況でありますし、そのまままた帰国をいたします。そして母と子供の生活をしているわけでございますが、現地では学校で売春婦の子供だと言って差別をされるとか、そういう子供たちの人権にかかわる問題もあるわけでございます。日本人の血を受けた子供のことでありますから、何とかできないものか、こういうことを私は考えるわけでございます。
 もう一度そこら辺お願いをいたします。私もいろいろな市民団体の人たちのところにも調査に出かけたりいたしまして、きょうは本当にわずかな時間ですけれども質問に立たせていただいているわけでございますから、いいかげんな答弁にならないように、何とか引き出せるものはないものかと思うんですけれども、先ほどお二人が答弁くださいましたが、もう一度答弁をお願いいたします。
#22
○政府委員(濱崎恭生君) 御指摘のお気持ちは私どももよくわかるわけでございます。
 ただ結局、今御指摘によれば、被害を受けておられる方は外国に住んでおられる外国人ということでございます。あるいはその子供も先はどのようなことで留保をしなければ外国人ということでございますので、そういう方々に対して日本の国としてどういうことができるのかということは、なかなか私ども法務省当局だけではお答えすることのできない大変難しい問題であるというふうに考えているところでございます。
 私どもとしてはそのように考えております。
#23
○政府委員(塚田千裕君) 私もフィリピンに在勤したことがございますので、この問題の側面というものは少しは承知をしているものでございます。
 ただ、この問題は、日本が基本的に自由な出入国を行って、人の往来が盛んであるということの一面で生まれている問題で、確かにそれ自体はまた別の角度から対処しなければいけない問題であるということはよくわかります。
 ただ、出入国の観点から申し上げれば、我々はできるだけスムーズな往来ができるように、まして先ほど御質問のございましたような日本人の父を持つフィリピンの子供が父親に会いたいということで入国申請をしたときは、これはもう最大限実現するようにやっておりますので御理解をいただきたいと存じます。
#24
○栗原君子君 フィリピンからたくさん女性たちが働きに来ているんですけれども、その実態を御存じなのかどうか私は不思議でならないんです。
 私がお会いしたフィリピンの女性というのは給料が八万円から九万円だというんです。その中から幾らかのお金を本国の両親のもとへ仕送りしている。本国ではそのお金でテレビを買ったとか、あるいはまた洗濯機とかラジオカセットを買ったとかいう状況だと。そして、日本でお客さんをとらなければ、さらに一万円か二万円借金がかさんでくるんだと。そして、コーラとかウーロン茶とか、そういうものを頼めば、それが百円ずつプラスされていくんだと。だから、本当にそこで日本人の男性から優しい言葉をかけられたら、わずかばかりのチップでももらったらすぐそちらの方になびいてしまうという、そういう女性の弱さもあるわけでございます。そういう日本の中で、外国の女性をそういった大変低位な条件で働かせている事業者に対しても、私は責任があると思うんですね。
 そしてまた、先ほど申しましたように、国外に出て、日本人が大変破廉恥な行動をしている状況もあるわけでございますが、何とか出入国管理のところで、国外に出ていく日本人に対して買春をしないように呼びかけるとか、そういったパンフレットの一枚でもつくるとか、そういった前向きなことは考えられないものかどうか、ちょっと最後にお尋ねをしておきたいと思います。
#25
○政府委員(塚田千裕君) 国内で就労している外国人としては、フィリピンの方は非常に多いわけでございます。例えば、興行というような在留資格で滞留している人、これの半分ぐらいはフィリピン、半分以上でございますかね。しかし、大部分の方はきちんとやっておられるといいましょうか、今、先生御指摘のあったような社会問題、悲しい側面というのが相対的に、それでも小さな数でございます。それは、好ましいことでないことはよくわかっておるのでございますが、片一方で円滑な出入国という立場からは、私どもも精一杯のチェック、精一杯の努力をしているわけでございます。
 日本人が外国に行くことにつきましては、これは私どもももちろん関係いたしますが、片一方で移住の自由といいますか、外へ行く自由というものは、これはもう憲法で絶対的に認められていることでございまして、やはり基本は一人一人の自覚といいますか、モラルといいますか、そういうことであろうかと思いますので、役所としてできることには限界がございまして、もろもろのそういう社会的な力で日本人のモラルが向上する、自覚が向上するというようなことを待つより仕方ないのではないかと私は思っております。
#26
○栗原君子君 今のやりとりはまだ十分じゃないんですけれども、大臣はどうお考えになられますか。最後にお聞かせいただきたいと思います。
#27
○国務大臣(中井洽君) 今から何年か前でしたが、十年以上前かもしれません、フィリピンの買春ツアーというのが大問題になりまして、土井衆議院議長が大変な御質問をなさったりいたしまして、火の消えたような形になり、また国内でも局長が今答弁しましたように、男性はけしからぬという口論が沸き上がったのを思い出しております。
 しかし、今お話を聞いておりますと、日本の男は相変わらず破廉恥だなという思いでございます。しかし、同時に日本の男性にとりましては、昨今結婚相手がなかなか見つからないというのも事実でございます。これを受けて、本当にまじめな外国人との結婚をなさって幸せな御家庭をおつくりのところもたくさんいらっしゃる、一概に言えるわけではない、このように考えております。
 国際化の時代、日本の戸籍といえども海外のいろんなものとどういう整合性を持つのか、それらを含めて、このフィリピン問題だけではなしに、一度勉強と検討をさせてみたい、先生のお話を聞いて感じているところでございます。
#28
○翫正敏君 翫正敏です。
 最高裁判所に対して質問をしますが、ことしの四月六日に裁判官への任官を希望した司法修習生のうちの一人が、PKO法案反対のアピールを修習期間中に出したとかという、そういうことなどが関係があるかないかがはっきりしないわけですけれども、そういうことでとにかく裁判官になれなかったという事案がございました。
 最高裁の方では、本人に対して理由がはっきりとした形では示されていないわけでありますが、この任官が拒否された、名前は神坂直樹という人なんですが、この人の任官拒否の事案について、どういう状況なのか説明してください。
#29
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) ことしの春の新任判事補の採用につきまして、不採用者一名が出ましたことは委員御指摘のとおりでございますが、不採用の理由につきましては、大事に関することでございますので、具体的に明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。
#30
○翫正敏君 神坂直樹さん本人に対して説明した理由がありますね。それを示してください。
#31
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 不採用になった人に対しましても、不採用になったということだけしか通知しておりません。大事に関することでございますので、具体的な理由というものは本人に対しても通知していないということでございます。
#32
○翫正敏君 私は過日、本人からいろいろ陳述書といいますか、書面をもらって、そして事情を聞いたわけでありますけれども、その事情を聞くと、どうもこれは本人が成績が悪かったなどということは全然なくて、大変司法修習期間の成績はよかったんだけれども、その期間において、例えばさっき言いましたようにPKO協力法に反対する署名活動をしたであるとか、また司法修習生になる以前から忠魂碑訴訟という裁判の原告の一人に加わっていたことであるとか、そういうようなことが理由で、思想信条を理由にして任官が拒否されたのだということを本人は訴えているわけであります。
 本人の訴えのとおりだといたしますと、やはり憲法の第七十六条にあります、裁判官というものは、その良心に従って独立してその職務を行い、この憲法及び法律にのみ拘束されるというふうに規定されておりますところの司法、裁判所の独立、こういう観点から見ましても問題があると思います。
 また、裁判所法によりますれば、第四十六条で任命の欠格事由とされておりますのは、「禁錮以上の刑に処せられた者」とか、「弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者」とかということでありまして、本人が成績もよく、また裁判官になりたいという希望を持っている、希望をはっきり表明していたという人に対して任命しなかったということは大きな問題だと思うんです第四十三条にも、「判事補は、司法修習生の修習を終えた者の中からこれを任命する。」というぐあいになっておりますから、この裁判所法の規定からいいましても、司法修習をちゃんと二年間受けてしかるべく成績をおさめた者が理由も明らかにされずに一方的に任官を拒否されるということはあってはならないことだと思いますが、理由を公表はできないんですか。
#33
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 判事補の採用につきましては、司法修習中の成績でありますとか二回試験の結果等をもとにいたしまして、本人の能力、識見その他一切のファクターを考慮しまして、総合的に見て裁判官にふさわしいか否かということで決めているところでございまして、思想であるとか信条というようなものは裁判官を採否する際の基準としては全く関係がないということでございます。
#34
○翫正敏君 総合的に判断するとおっしゃるその総合的な内容を示してください。
#35
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 裁判官は、いろいろな人の訴えに予断を抱くことなく謙虚に耳を傾けまして、これを的確に理解し、国家意思としての公正妥当な判断を行うことが要求されているところでございます。
 そして、対立する当事者から信頼され、同僚、書記官等と共同し、迅速に職務を遂行する能力が必要でありまして、そういう裁判官にふさわしいかどうかということを総合的に判断いたしまして判事補の採否を決めているところでございます。
#36
○翫正敏君 成績に問題はなかったというふうに理解をしてよろしいですか。いわゆる学業成績ですね、そういうことは問題はなかったと。点数が足らなかったというふうなことはないと。それはよろしいですか。
#37
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 私どもは、判事補の採用につきましては、先ほども申し上げましたように、司法修習中の成績、それから二回試験の結果等をもとにしまして、能力、識見その他一切のファクターを総合的に見て判断しているところでございまして、その一部一部につきましてどうであるかということはここで申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
#38
○翫正敏君 何でも差し控えておればいいというものじゃなくて、明らかにするということが大事なことなんです。
 国会の場でちゃんと説明をして、拒否された人も、またそのことはおかしいというふうに、一緒に司法修習を受けた仲間の、勉強を一緒にした人の中からも何人もの人が、あの人だけが任命を受けないのはおかしいというそういう書類を出しています。
 裁判所の方へたくさんの声明書とか要望書であるとか、抗議というようなきついのはあるかどうかわかりませんが、いろんなそういう書面ですね、本人はもちろんのこと、本人以外からもたくさん寄せられておりますね、おかしいんじゃないかと。やっぱり神坂氏も任命すべきだという要望はたくさん来ていますが、どういうのが主に来ているか、ちょっと紹介してください。
#39
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 委員御指摘のように、ことしの春に不採用になった人に対しましては、採用してほしいという要望書が同期の人とかあるいは弁護士会等から出ておりますことは委員御指摘のとおりでございます。
#40
○翫正敏君 委員御指摘のとおりでございますじゃなくて、どれくらい出ていますかと質問しているんですから、どういうふうな人たちがどれくらいの量、量的なものを聞いているんですから、ちゃんと答えてください。
#41
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) ただいまのところ、正確な数字は持ち合わせておりませんが、かなり多くの、弁護士会からそういう趣旨の要望書が出ていることは間違いないところでございます。
#42
○翫正敏君 非常に納得がいかないので、またさらに後で時間がありますときに質問したいと思いますので、用意しておいてほしいんです。
 一応、五月二日付で日本弁護士連合会会長土屋公献さんの名前で弁護士連合会が声明を発表しておりますものの重要と思われる部分を読み上げてみたいと思います。
 最高裁判所が今回の不採用の理由について本人の求めがあればこれを具体的に明らかにすることを要望し、本人もまた不採用の理由の開示を求めてきた。しかし今日に至るも最高裁判所はこれに応えようとはしていない。という事実を踏まえて、
 指導担当の裁判教官の発言等に照らし、同人がこのような自主的活動に積極的に参加してきたことや、修習前期においては西暦使用による判決起案をして元号使用についての疑問を提示し、検察実務修習においては検察取調修習の適法性に疑問を提起してこれを辞退したこと、さらには、同人が従前からいわゆる箕面忠魂碑違憲訴訟の原告補助参加人の立場にあることなどをとらえて、その拒否の理由としたことが強く疑われるところである。こういうふうに指摘をして、そして「思想・信条による差別的な新任拒否であることは明らかである。」、こういう指摘をしています。したがって、最高裁判所が人柄、能力、識見を総合的に判断した結果であるというふうな説明だけでは納得できないということを言い、最後に、
 当連合会は最高裁判所に対し、司法がこの国民の期待に応えるために、あらためてこの裁判官志望者を裁判官として採用されるよう強く求めるものである。というふうに声明を出していることを紹介しておきます。
 後でまた午後の時間にお答えをいただきたいと思いますので、これはちょっと中断をしまして、せっかく外務省や防衛庁の人に来ていただきましたので、別のことをお聞きします。
 六月十七日付の一部新聞の報道、それからやはり大体相前後した時期でありますけれども、一部新聞の報道によりますと、米軍が自衛隊の基地の調査をしていると、そしてそれが朝鮮半島の有事を想定しての調査なのではないかというふうに報道されております。
 具体的に自衛隊基地として調査をしたところが千歳基地、三沢基地、三沢基地は米軍基地が主体なんですけれども、それから松島基地、小松基地ということで、新聞では私の家のほんの二キロぐらい離れているところにあります小松基地が一番大きい記事になって、「小松など四カ所選定」というふうに書かれて、私の周りの人たちはかなりびっくりしたようなことだったんですが、こういう報道がされております。
 それからまた、米軍は異例と思われる形だと報道されておりますが、九州の博多港でやはり同じような目的なのではないかということでいろんな調査をした、こんな報道があるんですけれども、このような調査が行われたということを外務省や防衛庁は把握しておられますか。そしてさらに、把握しておられたとしたら、その調査の目的は何だというふうに認識をしておられますか。お答えをいただきたいと思います。
#43
○説明員(野津研二君) 航空自衛隊の基地に関係するところにつきまして、私の方から御説明させていただきます。
 米軍は、日米安全保障条約の信頼性の維持向上という観点から、日ごろから効率的な運用を確保するということで、各種の研究調査を行っているところでございますが、そういった調査にはこれまでも自衛隊として必要な協力を行っているところでございます。
 航空自衛隊の飛行場につきましても、従来から年に一、二回の割合でいろいろ研究調査しているということでございまして、御指摘の今回の調査につきましても、在日米軍からの依頼がございましたので、従来と同様の観点からこれに協力しているところでございます。
 ただ、今御指摘の報道で、航空自衛隊関係四カ所をお挙げになりましたが、今回の調査で自衛隊の飛行場を対象といたしましたのは千歳、松島でございまして、三沢につきましては確かに参っておりますが、これは米軍管理の飛行場でございます。それから小松でございますが、これは一部報道で小松という名前が出ておりますが、今回小松には行っておりません。
 以上でございます。
#44
○翫正敏君 湾の方は。
#45
○説明員(鹿取克章君) 港湾の方についてお答えいたします。
 先生御指摘のとおり、六月九日付朝日新聞が、米海軍関係者が博多港を訪問したということを報じております。私どもも四月十日から二十三日まで福岡に滞在した米海軍関係者が博多港を訪問したことは承知しております。
 アメリカ海軍は随時世界の各地の主要港湾の情報収集を行っておりまして、今回の博多の訪問もかかる情報収集の一環として行われたものと了承しております。また、本件訪問の目的は博多港の港湾施設にかかわる情報一般を関連当局の自発的な協力を得て収集することであったと承知しております。
#46
○翫正敏君 いずれの四カ所の場合も朝鮮半島有事を想定しての米軍の調査であるという新聞報道は不正確であるということで、一般的な調査である、そういうふうに認識していると、こう理解してよろしいんですか。
#47
○説明員(鹿取克章君) 我々が承知しております米軍のかかる調査は、従来からも行われております一般的な調査というふうに理解しております。
#48
○翫正敏君 日米安保条約の第六条では、極東の平和のために米軍が日本の施設を使うことができるというふうになっておりまして、それを受けて日米の地位協定があって、第二条の四項の(a)と(b)がありますが、(b)においては日本の自衛隊の飛行場を米軍が一時的に一定期間共同使用することができる、このように規定されておるところあります。
 この地位協定の趣旨からいえば、米軍がこの地位協定第二条四項の(b)に指定されました飛行場からの有事ないしそれに近いような状況での出撃というようなことになります場合には、これは日米合同委員会において事前にこの飛行場をどの期間使うかということについての取り決めが行われた後使うことが許されるものである、このように理解してよろしいですか。
#49
○説明員(鹿取克章君) 先生御承知のとおり、安保条約につきましては、第六条の実施に関する交換公文というものがございまして、そこには次のとおりに書いてあります。
 すなわち、「日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする。」、こういうことを書いておりまして、アメリカが我が国の施設、区域を戦闘作戦行動のために使う場合は、それは施設、区域から行われるということが前提となっております。
 また、ここで言う施設、区域とは、先生も今御指摘になりましたとおり、地位協定第二条に基づきまして我が国が米国に提供した施設、区域を意味しております。
#50
○翫正敏君 特に、小松の飛行場につきましては、これが日米共同使用されるようになりました昭和五十七年の時点で小松市長と防衛施設庁との間で協定書が交わされておりまして、訓練にのみ使うのだ、それも年に四回、四週間というのを限度として訓練にのみ使うものである、さらには騒音などを出して住民こ被害を与えるよりなこともしない、こういうようなことが協定されております。
 この協定の趣旨からいいましても、当然に戦闘作戦行動に米軍が小松基地を使うというような場合には、それは日米の合同委員会によって期間が定められる、日本政府がそれを認める、そういう決定が行われた後でなければできないことである。そのときには小松市とのこの協定についても小松市との間でさらに協議も行われるというのは当然のことだ、このように理解してよろしいですか。
#51
○説明員(鹿取克章君) 今、先生、朝鮮半島の情勢を念頭に置きつつ小松基地の御質問をされました。我々としては、今まさに朝鮮半島の情勢につきましてはいろいろ外交努力が継続されているところでございますので、北朝鮮の情勢を念頭に置いた仮定の質問というものについては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
 いずれにしましても、ある事態においてどのような共同使用が必要となるかというのはあらかじめ予断することはできないと思いますので、その時々の具体的な状況に応じて判断する、こういうことになると思います。
#52
○翫正敏君 終わります。
#53
○紀平悌子君 法務大臣に専らお伺いしたいと思いますので、少しまた時間の関係で早口で申し上げさせていただきます。
 政治改革ということで四法が、まだ実際には施行はされておりませんけれども、成立をしております。その中で、腐敗防止に関する施策については極めて不十分であったという意見を持っております。そういったところへ、三月十九日付の朝日の朝刊だったと思いますけれども、「当選無効にかかわる公選法違反 百日裁判実現へ協力」、「法曹三者が合意」というふうな大きな見出しで新聞に出たわけでございます。
 買収とか戸別訪問とかいった公選法違反の罪に問われた公職の候補者や出納責任者らに対して速やかに判決が言い渡されるようにという協力ということであると思いますが、いわゆる金権選挙、なぜ金権選挙なのかということの説がいろいろとございまして、鶏と卵説と、国民が最後には悪いというふうなことまで言われているわけなんですけれども、やはり金権選挙の具体的な中心というものがいわゆる買収、供応といった悪質犯というものに具体的には支えられているというか、そういうことを考えますと、この百日裁判実現への協力というのは政治改革そのものへの取り組みというふうに私は受け取りました。
 海部内閣以来、緊急的な課題とされた政治改革について今国会の改正を含め、小選挙区比例代表並立制導入、これを柱とする関連四法が成立して、これによってさまざまな政界再編成というふうな動きも活発で、総選挙という声も聞こえてきております。ここで国民有権者が非常に心配をしている、今度の選挙が金のかからない選挙にするということが一つの柱でございましたけれども、空前の金権選挙になるのではないかという心配もしております。一名しか一つの区から当選しないわけですから、やはり選挙戦が過熱になります。各地で自治省の区割り原案によって有権者の後援会への取り込みというんですか、そういうのが既に始まっているという風聞も絶えておりません。
 国民有権者の願いというものは、やはりこの金権選挙、それから金権体質の政治の払拭にあるということは政治改革の根本にあった問題だというふうに思いますので、何点かお伺いをいたします。
 その第一でございますが、いわゆる百日裁判の実現につきまして法曹三者の話し合いはどこまで進んでいるのでしょうか。第二問。政治家の政治犯罪につき二審制で審理を進めようという識者の考え方もありますが、大臣はどうお考えになりますか。
 第三問。連座制を充実させるために、関係者もしくは本人の有罪確定と同時に政治家がその資格を失う当選資格失効制度を設けるべきと私は考えてきましたけれども、大臣としてはいかがお考えでございましょうか。
 最後に、金で票を買う非常識を絶つために企業、少なくとも大手ゼネコンなど、国、地方自治体の公共事業と一定額以上の取引実績のある会社等による献金を即時禁止の方向をとるべきだというふうに思いますが、大臣はどうお考えになりますか。
 そして、時間があれば自治省からもいわゆる当選無効の問題、連座制の問題、これについて一言自治省から最後に締めていただきたいというふうに思います 大臣からよろしくお願いいたします。
#54
○国務大臣(中井洽君) 参議院の全国区の制度が比例になりますときに、私は衆議院の選挙制度改革特別委員会の理事をいたしておりまして、当時紀平先生が婦人有権者同盟の先頭にお立ちになられて、私どものところへ政治改革、選挙制度改革、お金のかからない選挙について御熱心に御忠告を賜りましたことを今思い出しました。以来、絶えず金のかからない選挙を目指して御議論を賜っていることを心から敬意を表します。
 同時に、私自身も選挙のときにはお金もありませんから、やっておりまして昨今の地方選挙を含めて物量が幅をきかすような選挙のあり方を大変残念に思っております。今回の政治改革の諸法案、そして小選挙区比例代表並立制の制度導入、これらによりまして選挙に立つ方、また選ぶ国民双方が十分な理解のもとに、また民主主義を発展させるために金権選挙、こういったものが少しでもなくなるよう法が守られ、またお互いが自戒、努力をしてほしい、こんな思いでございます。
 先生から四つの点で御指摘を賜りました。百日裁判につきましては、御指摘のように三月十八日に法曹三者が平成四年の法改正の趣旨を尊重し、相互に協力して被告人と弁護士の防御権、弁護権の保障に配慮しつつ、検察官及び弁護人において実行可能な事前準備の励行や審理計画の早期確定に努め、弁護人所属の弁護士会もこれに協力する必要があることが相互に確認をされております。今日行われております裁判におきましても、この百日裁判を実現するということでそれぞれが御努力をいただいておる、このように聞かせていただいておるところでございます。
 二審制度、連座制あるいはまた企業、大手ゼネコンなど国、地方自治体の公共事業と契約をしているところの献金即時廃止、こういったことについてお尋ねでございましたが、これらにつきましては国会の各党間の政治改革の論議を私どもは見守らせていただきたい。法務大臣としてコメントを申し上げることは差し控えたい。時間もないのでこのように簡単にお答えをさせていただきます。
#55
○説明員(大竹邦実君) 第三点目の連座制の関係について御答弁申し上げます。
 委員御指摘ございましたように、さきに成立いたしました公選法の改正におきましては、今回は秘書を対象に加えますほか、連座要件の強化でございますとかあるいは現在の当選無効に加えまして立候補制限の導入など、連座制の強化を図っているところでございます。
 委員御指摘ございました当選資格失効制度でございますけれども、現行法上におきましては、当選人本人の公選法違反の場合につきましては、これは刑事裁判確定のときに当選が無効となるわけでございますが、連座制の場合につきましては二つございます。一つは、連座の対象者がいわゆる総括主宰者、地域主宰者、出納責任者、こういった場合につきましては原則といたしまして、当選人からそれらの者がこれらの地位にないことを理由として出訴しない場合につきましては出訴期間徒過により当選が無効になっているわけでございます。さらに、連座の対象者が親族のときにつきましては、検察官から提起されました連座訴訟の確定のときに当選資格が奪われてくるというようになっているわけでございます。
 今御指摘ございました当選資格失効制度につきましては、過去の連座制の強化の中でいろいろと検討されたことがあるわけでございますけれども、連座という事柄の性格上、あるいは裁判を受ける権利の保障という観点などから難しいのではないかとされた経緯が実はあるところでございます。
#56
○紀平悌子君 終わります。
#57
○安恒良一君 大臣は所信表明で、法務行政に課せられた使命は、法秩序の維持と国民の権利の保全と、こう言われているんです。ところが、きのう私は竹村委員との日本商事問題についてのやりとりを聞いておりまして、大臣じゃありませんが、関係各省庁の態度に激しく憤りを実は感ずるわけであります。
 それはどういうことかというと、法の秩序を守るということは、例えば殺人、強盗などの凶悪事件はもちろんのことでありますが、いわゆる経済犯というのはとかく軽視されがちだということがよく言われます。そうあってはいけないわけです。なぜかというと、インサイダー取引というのは結果的にいうと株価の公平な構成とかそれから市場の確保、そういうことを大きく乱す場合に厳重にやらなきゃならぬ、経済犯の事犯は。
 ところが、今回の日本商事の事件は私は極めて異常だ。会社ぐるみとは思いたくありませんけれども、そんな感じすらするんです。ところが、それを受け取っている厚生省、大蔵省、それから証券取引委員会等の考え方は非常に安易じゃないか。それはなぜ異常かというと、きのうも竹村さんからありましたように、九月二十日、この事件発生から厚生省が発表する十月十二日までの間に実に関係者が百七十五人も株を売り抜けている。しかも、その中には元副社長の相談役とか元常務の顧問が入っておって、幹部が入っておった。この人たちは本当に人命に重大にかかわる製薬会社の社会的使命とか責任をどう考えているかということです。しかも、またこれにはプラスがつきまして、これを扱うエーザイの社員も十名前後が副作用公表の前にやっぱり売り抜けている。これは事実なんです。
 ところが、きのうの質問に対して、一般論としてはこうでありますが個々の問題は調査いたしておりますから答弁しかねますと、ここへ来て平気で大蔵省もそれから証券取引委員会も言っているわけです。これに対する認識が全く甘い。十五人も死者を出しているのに甘い。
 そこで、大臣にお聞きしたい第一点は、経済犯罪というようなものについてどういう認識をお持ちでどう処理をされようとするのか。それから三番目には、きのうのやりとりを聞いておって、これは役人を相手にしてもだめだと思いました。そこで、大臣は法務行政の最高責任者ですから、なるほど薬事行政は厚生大臣、それからいわゆる証券行政は大蔵大臣でありますから、やはりこの三大臣で十分に御協議くださって、今回のこの異常と言われている事件については速やかに真相を解明して、処断すべきものは処断する。二度とこんなことが起こらないように私はやらなきゃいかぬと思うんです。
 きのうは、これは法務委員会ですから、あんな答弁を予算委員会でしょったらそこで予算ストップです、そしてはっきりしてくれと、こうなるんです。もう少しああいうものについて親切に、例えばこういうことについて今調査していますとか、こういうところが進行していますとか、そういうのがあるべきなのに、一切答えられませんとここで大きな顔をして突っぱねている。同僚議員の質問であっても、私は心から実は義憤を感じて聞いておりました。
 その点について、私は二十四分までということですから、あとは大臣のお考え、それから今後の処し方、こういうことについてお聞かせください。
#58
○国務大臣(中井洽君) 安恒先生御指摘の経済あるいは財政犯、これについて十分法務大臣として対応せいというのは、そのとおりであろうかと考えております。
 特に、日本の経済が大変大きくなり世界じゅうに影響を与えているわけでありますから、それなりのルール、また厳しい監視、こういったものが必要であろうかと考えております。時代時代に即応した法改正を含めまして十分対応を続けていく決意でございます。
 あと、御指摘を賜りました点につきましては、他の役所をかばうわけではございませんが、昨日予算委員会では、先生お話ございましたように証券監視委員会が答弁をいたしましたところ、そんな答弁はだめだという強い委員会の御指摘があり、厚生大臣、また大蔵大臣もこういう事犯の国会における答弁にしては私は怒りを込めて踏み込んだ答弁をなすった このように考えており、この両大臣の答弁のとおり、法と証拠に基づいて関係省庁で十分お調べをいただけるものと、このように考えておりますけれども、先生の御指摘でございますので、それぞれの機会に厚生大臣、また大蔵大臣に御指摘のあった点を申し伝えさせていただきます。
#59
○安恒良一君 予算委員会であったこと知っていますが、大臣も、あなたもおられますけれども、ここでの答弁が私はふざけていると言うんだ、ふざけていると。ですから、やはりこの法務行政をつかさどるあなたが中心となって、どんな委員会であろうと解明を求められたらきちっと答弁するし、それからそれと同時に関係大臣と相談して、これは特殊な異様な事件ですからやっぱりきちっと解明する、こういうことですので、大蔵省と証券、来ていると思いますから、今言ったことについての考え方を聞かせてください。
#60
○説明員(中井省君) ただいま先生御指摘の件につきましては、新聞等において種々の報道がなされておりますことを我々も承知しております。また、おしかりを受けるかもしれませんけれども、一般論として申し上げれば、このように新聞等で報道され、社会的な関心も深い問題、さらには昨日の予算委員会、それから当委員会での御質疑等ございますような問題につきましては、監視委員会としても関心を持って情報収集等に努めてまいる考えでございます。
 しかしながら、我々が持っております権限というのは刑事手続に関する権限でございます。甚だ申しわけないことでございますけれども、個別の調査に関することについては答弁を差し控えさせていただきたいと思っております。
#61
○安恒良一君 終わります。
#62
○委員長(猪熊重二君) 以上をもちまして、平成六年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、裁判所所管及び法務省所管についての委嘱審査は終了いたしました。
 なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#63
○委員長(猪熊重二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 午後二時三十分まで休憩いたします。
   午前十一時二十四分休憩
     ―――――・―――――
   午後二時三十分開会
#64
○委員長(猪熊重二君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 商法及び有限会社法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#65
○翫正敏君 翫正敏です。質問いたします。
 商法につきましては、今回の改正案の審議に先立ちまして、昭和五十六年の商法改正、つまり商法の第二百九十四条ノ二において、株主の権利行使に関する利益の供与をしてはならないということ。さらに、それを受けて商法の第四百九十七条では、株主の権利行使に関し財産上の利益を供与するの罪ということで懲役刑を含む罰則が設けられたわけであります。
 このときの提案理由を見ますと、主な改正の趣旨が「いわゆる総会屋の排除を図るため、株主権の行使に関して会社がする利益の供与を禁止し、その利益の供与を受けた者はこれを会社に返還しなければならないものとするとともに、これに違反して会社の計算でそのような利益の供与をした取締役等は刑罰に処する」と、こういう内容になっておるわけであります。
 この商法四百九十七条違反の事案として、昭和五十六年の商法改正以後、この法律が有効に働いていわゆる総会屋対策に力を発揮しているものと思いますが、その辺の実情はどうなっているのか、まず大臣の方から総括的にお答えいただきたいと思います。
#66
○国務大臣(中井洽君) お尋ねの昭和五十六年商法改正によるいわゆる総会屋を排除して会社経営の健全性を確保するための法改正につきまして、私も今手元をちょっと見ているのでありますが、全部ではありませんが、平成四年十一月から平成五年十月までの間の利益供与事件の一覧というのがございます。
 一九九二年の十月にいわゆるイトーヨーカ堂事件というのがございまして、現在公判中でございますが、この事件を契機に社長が引責辞任をいたしております。なお、総会屋に渡したという利益供与は二千七百四十万円であります。また九三年の八月にはキリンビールがこれで起訴がなされておりまして、会長が引責辞任、副社長二名が引責辞任をいたし、金額的には四千六百六十万円。それから一九九三年十一月にはNTN、これは現在送検中でございますが、金額は百五十万円。
 金額の大小はありますけれども、一部上場の目立つ事件というのはこのようなものかと私どもは掌握をいたしており、これらに見られますように、この昭和五十六年の法改正はかなり効果を上げておると考えておりまして、関係者の間で株主の権利の行使に対して金銭等を交付することが違法である、この認識が広まっていると私どもは考えております。
#67
○翫正敏君 いわゆる総会屋対策の実がかなり上がっておるという大臣の御答弁でありました。そのように受けとめていきたいと思います。
 ただ、今日の株主総会の実情を見てみますと、例えば決算期から三カ月以内での株主総会というようなことが決められているとはいいましても、それが六月二十九日という日に集中をしているというような実情があります。別に三カ月未満ならば二十七日でも八日でも九日でも三十日でもいいわけでその辺は別に構わないはずでありますが、実際には六月二十九日に集中的に株主総会が開かれているような実情を見ますと、やはり株主総会の形骸化ということも考えられますし、総会屋対策がこの商法の改正というものによっても、下に潜っているといいますか、こういう形で摘発されているものもありますが、潜っている形のものもふえてきているのではないか。
 そのようなことがこういう株主総会の同じ日への集中、それからシャンシャン大会で二、三十分で終わるというふうな、我々国会審議でありますと夜の遅くまでやらされることもあったりしますが、そういうものから見ますと随分早く、大勢の人が集まって簡単に終わる場合も多いというような、実情はそういうことになっていると思います。実情を事務方の方で答弁していただいて結構なんですが、例えば我々ですと一日六時間コースで審議をしましょうなどといって十時から五時まででよく行われるわけであります。たとえ一日集中的に行われたにしても、一日六時間ぐらいかけて審議をしているというような、そういう株主総会は多いでしょうか。それとも二、三十分、一時間以内で異議なし異議なしとかいうような声とともにシャンシャンと終わるのが多いというふうに考えられますか、いかがでしょうか。
#68
○政府委員(森脇勝君) 先生、今御指摘いただきましたとおり、法規の関係それから決算期の関係という点から申しますと、株主総会がある程度の期間内に集中してくるはずだということが一方で言えるわけでございます。すなわち、商法では毎年一回一定の時期に定時総会を招集しなければならないという規定になっておりまして、また先生御指摘いただきましたように、決算期から三カ月以内に開催するということにいたしております。そして、御案内のとおり、多くの会社は三月末を決算期にしているということになりまして、その総会のための準備期間等を考えますと、どうしても六月の下旬あたりに集中してくる要因はこのあたりにあるのかなというふうに思われるわけでございます。
 一定の幅があるのに特定の日になぜ集中してくるのかということでございますが、これは必ずしも商法の場面からは説明できないわけでございますが、こうした一定の日に集中してくる理由といたしまして一般に言われておりますところは、他の会社の株主総会の日と同一の日に株主総会を開催することによりまして、いわゆる総会屋と呼ばれる特殊株主の出席を妨げることができるというメリットがあるというふうに言われているわけでございます。
 次に、総会がどのぐらいの時間開かれているかということの実情でございますが、これについては私ども必ずしも把握しておらないわけでございますが、一般に新聞等で報ぜられているところによりますと、二十分とか三十分とかいうような比較的短時間のものが多いというようには聞いておるところでございます。
#69
○翫正敏君 今度の法改正によって、自社の従業員に株主になってもらうということが推奨されるといいますか、そういうふうになるわけでありますが、この総会対策というようなことに関連して考えてみますと、いわゆる総会屋と言われているようなその道のプロの人にお金を渡して総会を取り仕切ってもらうというようなことをすると商法の四百九十七条の罰則にかかりますね。
 従業員の場合ですと、従業員に持ち株会なんかをつくって株主になってもらうということでやっていきますと、例えばその会社に労働組合があるといたしますと、その労働組合の要求どおり受け入れるというような形ですね、こういう形で直接に利益を供与することになれば商法にかかると思いますが、その労働組合の要求なんかを丸ごと受け入れるというようなことを、そういう方法を活用して総会屋もどきのことを自社の従業員にさせていよいよ株主総会を形骸化させる、そういうおそれはあるのではないか、そのように私は心配するわけですけれども、その点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
#70
○政府委員(森脇勝君) 従業員持ち株会につきましては、一定数の株式を長期にわたって保有してくれるという、その会社にとってもメリットの面があるというように言われているわけでございます。しかし、従業員持ち株会は従業員の方にも大変なメリットがあるわけでございまして、毎月の給料から少額を天引きすることによって株式投資が可能になるとかその他のメリットがあるというところから、昭和四十年以来急速に普及してきたというふうに言われておるわけでございます。
 これと総会との関係でございますが、商法上は株主総会における議決権の行使に当たっては、従業員持ち株会の買い付けた株式というのはこれは名義上は持ち株会の代表者、一般には理事長と言われておりますが、この者の名義になりますので、議決権は理事長名義によって行使されるということになるわけでございます。
 ただ、従業員持ち株会の実際の運用におきましては、持ち株会の規約によって株主総会における議決権の行使について、持ち株会の各会員は総会ごとに理事長に特別の議決権の行使、いわば理事長にとってみれば議決権の不統一行使ですが、この権利を行使する旨の指示ができることとされていますので、従業員もみずからの意思に従った議決権を行使することができるという体制になっております。また、会員の持ち株が単位株相当に達した場合には、多くの持ち株会では当該会員の申し出によってその単位株について当該会員の個人の名義に名義がえをすることができるということになっております。
 したがいまして、商法上は持ち株会の運用と相まちまして任意に基づく議決権の行使が可能になっておりまして、経営側にくみするということには必ずしも結びつかないのではないかというふうに考えております。実情は、新聞等を見てみますと、持ち株会の会員が総会の際に第一列を占めるといったようなものも報道されておりましたので、実際の運用と商法が期待しているところにはそごがある面があるのではないかという点を危惧しておるところでございます。
#71
○翫正敏君 ちょっと警察の方にも、警察庁の方から来ていただいているので。
 最近、この二十一日の新聞に載っていることなんですが、いわゆるプロの総会屋なんでしょうね、小川企業という総会屋の社長の小川薫容疑者が警察に逮捕されたということが報道されております。これはどういう容疑で逮捕されたんでしょうか。
#72
○説明員(村田保史君) 御指摘の事案ですけれども、総会屋グループの小川薫なる者が自分が使用する車について虚偽の名義で登録をしたというものでございます。
#73
○翫正敏君 この小川企業、または社長の小川薫容疑者個人かははっきりしませんけれども、JR東日本という旧国鉄から民営化された会社、この会社に対して質問状を送りつけていたという、そういうことを私は情報として聞いたんですけれども、それは警察の方で把握していますか。
#74
○説明員(村田保史君) 我々警察といたしましては、いろいろと犯罪を犯す可能性のある総会屋グループなどに対して、その動向に重大な関心を払っております。いろいろな総会屋グループが企業に対して揺さぶりをねらっていろいろな文書の送りつけなりしておるということも承知しておりますが、個々具体的にどういったグループがどういった企業に対してそういった文書を送りつけているかといった具体的な内容につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
#75
○翫正敏君 この間、質問の機会がありましたときに、東京スポーツ新聞、この新聞の菊池久氏の政治評論「永田町の熱闘」というのが三回にわたって、取り消し謝罪というような形になったことと、それから週刊文春がJR東日本の駅舎の販売店から拒否されるという事案について取り上げました。
 「JR東日本に巣くう妖怪」ということで報道されたんですけれども、この内容について取り上げましたときにもそうでありましたが、要するにこういうものは言論の自由ということでは言えないんだと。これは会社に対する、そしてその会社の個人、この場合は労働組合の委員長なんですけれども、その人に対する非常に重大な人権侵害であるからこれは差しとめるのは当然なんだということで、現在もこの週刊文春については駅舎での販売がとめられているという状況になっているわけです。
 その問題点というのが、いろいろ聞いてみますと、一つは総会屋対策として会社が費用を出したというような報道がなされていること、もう一つはJR東日本の松田社長と松崎委員長という人が労使協調などというそういう程度ではない、もう癒着、一体関係にあるというようなことが報じられている、このことが原因となっているわけです。それは菊池久氏の論文の場合でもほとんど同じことでありまして、その内容が問題になって、憲法違反である、いや人権侵害であるということで対立が起きているわけです。
 その後私の方からいろいろ関係者とかさまざまな人に事情を聞いたりしてまいりましたけれども、その中のお一人に鈴木毅という人物がおりまして、この鈴木毅氏に会っていろいろ知っていることの話を聞きました。聞いて次回の質問に活用しようというふうに思っていましたところ、本日発売になりました週刊文春にも第二弾ということで、「JR東日本に巣くう妖怪」というので今度はもっと直接的に名前が出されておりまして、松崎労働組合委員長個人の重大な疑惑があるという、こういう報道がなされているわけであります。
 そういうことにかんがみまして少し問題を指摘してみたいんですけれども、ここに書いてありますことが事実といたしますと、つまり別の言い方をすれば私が会って話を聞いた鈴木毅氏の証言が事実としますとというふうに言いかえてもいいんですけれども、やはり一つには株主総会といいますか、民間会社になりまして株を上場するようになった、そういう状況のこのJR東日本の会社、そこがいわゆる総会屋と言われるような人にお金を渡したのではないかというようなことがきょう号の文春には書かれております。そして、そのお金は現取締役総務部長の花崎淑夫氏が渡したんだけれども、この人はお金がなくて、そういうお金を出せなくてということなんでしょうか、それで労働組合の委員長の松崎氏がそれを立てかえたというふうに書いてあります。かなりの高額のものが渡されたように書かれておりますけれども、現取締役総務部長というような会社の役職をしている人がみずから出せないような大きな金額だったのだろうと思います。
 そういうことから言いますと、この資金源が例えばもし組合の資金を流用したというような場合になりますと刑法二百四十七条の背任というようなものにもかかるおそれがありますし、先ほど言いましたような総会屋対策でお金が渡ったという面からいいますと会社の方が商法の利益供与罪の違反に当たるというようなことが考えられるのですけれども。
 まず、法務省の刑事局の方に来ていただいておりますので、きょう発売のこのコピーを事前にお渡ししてありますので読んでいただいたと思います。私が簡単に内容の大事だと思う部分も紹介しましたが、そういうのを踏まえて、刑事事件の可能性もあるのではないかということについて申しましたが、御見解をお示しください。
#76
○政府委員(則定衛君) 今、具体的な事例を紹介されながら犯罪の成否についてお尋ねでございますけれども、ある特定の行為が犯罪に該当するのかどうかということは、御案内のとおり、法令に定める一定の構成要件に該当し、かつまたそれが種々の状況の中でやはり違法性を帯びると、その上でかつその行為者について責任をとれる状況にあるかどうか、これらの問題につきまして適法な手続で得た証拠によって判断する、こういうことになるわけでございます。これは我が国におきましては捜査機関にゆだねられておる権限でございまして、私ども法務当局から今申しましたような事実関係を責任を持って究明する立場におらないところで申し上げるというのはいたしかねますので、御了解いただきたいと思います。
#77
○翫正敏君 じゃ、警察庁の方にお聞きしますが、この鈴木毅氏に事情を聴取したことがあるかどうか、これが一点ですね。それを踏まえて、先ほど言いましたような罪に当たる可能性、そういうことを踏まえた捜査、こんなことが行われているかどうか、これを示してください。
#78
○説明員(村田保史君) 我々警察といたしましては、個別具体的なケースについての対応の内容について申し上げるということについてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
 また、二番目の犯罪が成立するかどうかの問題につきましても、先ほど法務省刑事局長の答弁もございましたけれども、私たちの立場からしましても、具体的な事実と証拠に即して判断される事柄でありますので、この場で該当するかどうかについてのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
 いずれにしましても、私ども警察としましては、刑罰に触れる行為があるならばそれに対しては厳正に対処していくということでございます。
#79
○翫正敏君 鈴木氏の事情聴取は、それも言えないわけね。
#80
○説明員(村田保史君) そのとおりでございます。
#81
○翫正敏君 私は、これだけはっきり名前を出して関係を証言している、また私にも、私が呼び出したところ私の事務所へ来て事情をお話しした鈴木毅氏を警察はぜひ呼んで調べるべきだということを提案したいと思うんです。
 なぜかといいますと、この週刊誌の中にも書かれておりますし、同じことを私に対しても証言したわけでありますが、この大事なところだけちょっと読み上げてみますと、読んでおられない方もおいでると思いますので読んでみますと、
 一一九〇年夏、ある右翼団体がJR東日本をめぐるスキャンダルをネタに、JR東日本に公開質問状を叩きつけた。
 初めのうちは文書による攻撃だけだったが、やがて街頭宣伝車による攻撃にエスカレートする気配も出てくる。というようなことが書いてあって、それを受けて、
 この攻撃に手を焼いていたのが、そのころ総務部長になって間もない花崎淑夫氏(現取締役総務部長)だった。困った花崎氏が目をつけたのが、当時N代議士の秘書をしていたある人物である。
 かねてから知り合いだった花崎総務部長の相談に、N代議士秘書は九〇年九月初め頃、ある警察OBを紹介した。そして三人は善後策を協議。警察OBの紹介による仲介者の調整も功を奏し、右翼団体の執拗な攻撃を中止させるためにはある〈工作〉が必要との結論に至った。
 二、三日後、その準備はなされた。しかしその現金を捻出したのは、花崎総務部長ではなく、なぜか組合委員長の松崎明氏であった。仲介者による調整がまとまりそうになったものの、その話が余りにも急だったため、花崎総務部長には〈工作〉の用意ができない。そこで松崎委員長が、それを肩代わりしたという図式である。
 ところが、間もなくこの一件は警視庁捜査四課の知るところとなり、関係者の事情聴取が行われた。しかし花崎総務部長もN代議士秘書もかたくなに口を閉ざしたため、立件されることなく、事件は闇から闇へ葬り去られたのである。
 N代議士秘書こと鈴木毅氏は、この事件のあとN代議士のもとを去り、JR総連の政治顧問を経て、現在はある衆議院議員の手伝いをしながら、国労で講演活動も行っている。
 鈴木氏は当初、取材班との接触をかたくなに拒絶していたが、たび重なる説得にようやく重い口を開いた。飛ばしますが、
 ぼくは、松崎委員長の仕事を手助けするようになり、たとえば松崎さんの処女出版『鬼の挑んだ賭け』というタイトルは、ぼくがつけるといったような関係にまでなりました。
 当時の松崎委員長は、折に触れ、いろいろなことを教えてくれたというような話が書いてありまして、今ほど申しましたようなことなどが本人の口から語られているわけであります。
 こういうことになりますと、やはり本人に事情を聞いて、商法の先ほどから申しております総会屋対策の罪にかかるのかどうか、それから刑法でいいますと背任罪にかからないのかどうかというようなことを調べないと、この週刊誌対JRの会社という関係で今やり合っているのは、こっちは言論の自由が弾圧された、憲法違反だと、こう言う、こっちはいや名誉棄損になったということで裁判で争わにゃいかぬということで法廷闘争と、こうなる。法廷で争っている以上はこれは答えがなかなか国会で質問してもできないというようなことで、この間のときには、とにかく運輸省の方はかたくなに指導するというようなことはなされないという言い方だったわけですね。やっぱり警察の方も仕事が仕事なんですからちゃんと乗り出して調べるべきものは調べるということをなさらないと、今度は運輸省の方の指導もできないんじゃないかというふうに思うんですが、いかがなものでしょうか。
#82
○説明員(村田保史君) 御指摘のこの週刊文春の報道について私どもも承知しております。いろいろな報道がなされ、それが我々捜査側にとって一つの端緒になり得るものであります。いろんな事案についてそうであります。それについて調査なり捜査なりを進めていく場合もケースによってありますし、それに基づいて捜査が進んでいくということもあり得るわけです。
 ただ、具体的なケースについて、だれについてどのような形で捜査を行ったのかというその具体的な内容については答弁を差し控えさせていただきたいということでございますので、御理解願いたいと思います。
#83
○翫正敏君 運輸省、来ていただいていると思います。
 前回質問しましたときには、名誉棄損か憲法違反か何とかというようなことで裁判になりそうなことなんだから見守っていきたい こんなことだったんですけれども、やはり商法や刑法に違反して刑罰の可能性もある、そういう事案になってきていると思うんですね。名誉棄損かどうかということは法廷でそういうものが争われる、これはこれで別口でやっていただくということはいいとして、こういう事案なんですからやっぱり監督官庁の運輸省がしかるべく乗り出して指導して実情調査をしたりする、こういうことがないとこれはおさまらないんではないかと思うんですけれども、いかがですかね。
#84
○説明員(戸矢博道君) お答え申し上げます。
 前回にお答えしたことの繰り返しになるようで恐縮でございますけれども、基本的にはこの販売中止の問題自体は、弘済会と文芸春秋の間に結ばれております販売契約に基づいて行われたものでございまして、私的な商取引契約に基づく当事者間の問題であるということで、先生も今御指摘のように、実は両当事者で東京地方裁判所に仮処分を申請しているというふうに聞いております。
 したがいまして、行政機関たる運輸省としては、本件については司法の場等での判断を待つべきものではないかというふうに考えているところでございます。
 それから、御指摘ございました商法あるいは刑法違反といったような問題につきましては、先ほどから法務省、警察庁の方からも御答弁ございましたけれども、捜査機関が法律の定めるところに従いまして個別的に判断すべき事柄だというふうに考えておりまして、私ども運輸省として調査を行う立場にはないのではないかというふうに考えております。
#85
○翫正敏君 運輸省が監督しているJRというのは、もともと国鉄というところが分割・民営化されて株式会社になったわけですけれども、普通の株式会社とは全然違う特別な法律に基づいた会社であって、極めて高い公益性を持っているわけですね。こういう会社が行っている行為、行為という意味は販売を拒否したという行為もありますが、今回の号に載っているような行為、こういうことになってきますと、いや、こちらでは警察が調べておられるから見ておればいいし、それは検察庁がまた調べられるから見ておればいいということで、とにかく洞が峠を決め込んで見ておるというようなことでは運輸省の監督指導というようなものは要らない、必要のない役所であるというようなことに極言すればなるんではないですか。やっぱりちゃんと事情を調べてみる、そういうことぐらいはしないといけないんじゃありませんか。
#86
○説明員(戸矢博道君) 駅構内の売店におきます取り扱いについては、鉄道事業者あるいは販売取り扱い事業者、売店事業者等が営業的な見地から独自に判断しているものでございまして、私ども運輸省として規制とか指導を行っているものではないということを御理解いただきたいと思います。
 それから、おっしゃいました法律違反の問題につきましては、先ほど申し上げたことの繰り返しで恐縮でございますけれども、やはり捜査機関が法律の定めるところに従って個別的に御判断いただく事項であろうというふうに考えております。
#87
○翫正敏君 大臣には直接関係ないとおっしゃるかもしれませんが、やっぱり事は商法にも関係することでありますし、刑法にも関係することでありますからね。憲法を遵守する義務のある閣僚の一人であるというようなこともございますし、やはり事柄は各テレビ、新聞などこも取り上げられているわけでありまして、社会的にも大変大きな関心が持たれている事案であると。私はこれは極めて重大な言論弾圧事件である、こういうふうに見ているわけですね。これは私の見方ですから、それが正しいかどうかは別ですね。やっぱり言論弾圧事件であるというふうに見ていると。これは重大な関心を持って法務省、大臣もそういう観点に立って調査をいろんなところに指導、指示するべきであるというふうに思うんです。
 この間も質問をいたしましたけれども、今回もまた同じようなことなんで恐縮ですが、どんなふうに今思っておられるか、所見をお述べいただきたいと思います。
#88
○国務大臣(中井洽君) この間、先週の週刊文春を見たかということでお尋ねを賜りまして、見させていただきましたとお答えを申し上げたところでございます。東スポについては、時々見出しを楽しませてもろうておりますが、余り見ておりません。
 それからまた、今週号の週刊文春でいろいろと御質疑を賜りましたが、僕は今、今週の週刊文春は出ているのかと言ったら、あしたじゃないかと言われたから、先生は一日早くお手入れなさったのかなと思いながら拝察をいたしております。
 いずれにいたしましても、けさほどあるいは昨日から、この問題だけじゃありませんが、証券監視委員会を含めて、警察を含めて、私どもも含めてこういうお答えしかできていないことを残念だなと思いますけれども、これはこれの立場が法律的にもあるわけでございます。ただその中で、時々マスコミに報じられた事件については十分注視している、一般論だけれどもと、こういうことを聞かせていただいております。
 過般、衆議院の予算委員会の要求に従いましていわゆるゼネコン疑惑の報告書を提出いたしました。参議院ではお出しをしてございませんけれども、その中の一項にマスコミ報道をも視野に入れ、こういう報告を実は出したわけでございます。
 私は、事務当局に対しまして、ここまで書くのかと、これはどういうことだと説明を実は求めたことがあったわけでございまして、一般論で言えば御担当の方がマスコミの報道等のなされたことを十分注視しているということはそういうところから御判断を賜るのがいいのではないかと。きのうと違う答弁であったかもしれませんが、先生、御熱心に御質疑をいただきますので、あえてこういう形でお答えをさせていただいた次第でございます。
#89
○翫正敏君 ですから、商法の関係でいいますと、従業員に持ち株会をつくって株を持ってもらって総会にも出てもらえるようになるわけですね。そうすると、具体的に前の一列なり二列なりを占拠してそうだそうだというようなことでやるかどうかということはわかりませんよ。それはまた逆に、国会のやじが出るようなもので、前の方から逆にやじるというようなこともあるかもしれません。
 わかりませんが、いずれにしても、従業員に対する利益供与というのは非常に会社の立場からいうとやりやすいですね。直接お金を渡せば商法の利益供与罪になりますが、さっき言いましたように、要求をのむとか、さまざまなそういう方法によって従業員ですからできますがね。直接にたくさんの人に少しずつ分けるとかという方法をとればできるわけですから、そういうことから考えてみると、やっぱりこういう面は法の運用上、非常に気をつけるべき面だと。会社の幹部と労働組合の幹部が癒着関係になってくるようなことにもしなりますと、その株を持って株主総会をシャンシャンに持っていくとか、逆に総会屋並みにおどかして金を、要求をとって、そして丸くおさめるとか、こんなようなことになっても罪に問えないということになりますでしょう。
 だから、そういうことで気をつけて運用しなきゃならない点があるのではないかというふうな観点にも立って質問しているわけですから、私が今申し上げましたようなことに対してはどんなふうにお考えか、それをお答えいただいて質問を終わりたいと、そういうふうに思います。
#90
○国務大臣(中井洽君) 先ほどから事務方から御答弁をさせていただきましたが、たっての御質疑でございますので。
 全体を聞かせていただきまして、今回の法改正を含めて、日本の経済というものが大きくなるにつれて会社の関係あるいは法律関係、すべて国際化を迎えて世界の法律の中にハーモニゼーションを考えていかなきゃならない時代を迎えております。これらにおいおいと対応をしていく、これが私どもの仕事の一つであろうかと思います。
 一方、法律だけはそういう形でどんどん進んでいくけれども、株式会社やあるいはお話がありました株主総会のあり方等が相変わらず日本独特の、日本だけでしか通用しないやり方でやっておるところに先生御指摘のような点があろうか、こういったところは一刻も早く淘汰されて本当に胸を張れるような会社運営であってほしい、このことを強く念願いたすものでございます。
#91
○翫正敏君 終わります。
#92
○紀平悌子君 商法及び有限会社法の一部を改正する法律案につきまして、法務省及び法務大臣に御質問を申し上げさせていただきます。
 ちょうど今、世界に開かれたというか、世界に通用する制度ということで、大臣がお答えくださいましたものとマッチする新聞記事が、これは朝日の六月二十一日付でございますが、「重み増す機関投資家 企業の安定収益求め、米の株主像に変化」という記事がございます。お読みになったことと思います。資本主義の本場のアメリカでございますのでこれは日本より一歩先を行っているなと思いましたけれども、「「目先の配当や株価ばかりを追い求める」といわれてきた株主像が変わりだしている。年金基金などの「機関投資家」が力を付け、幅広く集めた資金を長期運用するため、投資先の企業に安定した収益を上げることを求めるようになってきたからだ。」と、「企業の側でも、経営陣と社外取締役や株主の間に、適度な緊張関係を保つことが競争力の回復につながるとの自覚が広がっている。」と、こういうふうな記事がございまして、長いのでここら辺にしておきます。
 株主総会の活性化というものは、これはいわゆる総会屋の問題ばかりが取り上げられますけれども、実はアメリカや日本など株式会社の力の強い先進主義国家においては活性化というのは、正しい活性化というか、それは株主総会で総会屋が騒いだというような活性化ではなくて、大事なことだと思うんです。やはり経営陣と株主との関係が希薄じゃないかというふうに思います。私も株を少々持っておりますのですが、案内が参りますけれどもすぐごみ箱に捨ててしまうというか、そんなことで非常に自分自身を含めて反省をいたしますが、会社の経営者と株主との間では本当に緊張関係が必要であろうというふうに思います。それは、企業の体質を強化したり不透明な部分がなくなって、会社の社会的な責任を果たしていく原動力になるように思われます。
 現在は、広く海外の投資家が日本においでになっておりますので、株主総会がより開かれたものになる方向で進むと思いますので、商法上もそれに対応して、日本の投資家をも含めて総会の活性化のための方策を今こそ考えなければならないということだと思います。これは政治と同じで、政治に対する国民の関心というものが薄れましたときには信頼が落ちているときでもあります。ですから、経済界と政治は同じでございまして、並行的にこのことを考えていく必要があるというふうに思っております。いわば、利害関係者の参加ということが非常に大事だということです。
 ちょっと前置きが長くなりまして、あとの質問が詰まったというふうに思っております。
 最初に、六月二十九日の会社の株主総会のシーズンを迎えて、富士写真フイルムの専務が自宅で殺害をされたという、総会屋のテロリズムとも言うような目に余る状態が起きました。
 ここで、法務省としても、これまで言われている株主総会の活性化という形での商法上の対策と今後の総会屋対策を含めた総会の活性化策というものがあれば、妙案があればおっしゃっていただきたいと思います。法務省からお願いします。
#93
○政府委員(森脇勝君) 先生御指摘のとおり、非常に資本の方も流動化しまして国際化という問題が出てまいりまして、今までの会社のやり方をいろいろ変えていかなきゃならない。例えば、配当の仕方にしてもどちらかというと日本は安定した配当というのを目指してまいったわけですけれども、それが外国資本、外国機関投資家の資本が入ってくるということによってそれらが徐々に変わってきつつあるというように認識いたしております。
 それから、その会社の株主と経営者の関係なんですけれども、この面についてもちょっと日本に特有な部分というのがなおいまだに強く残っている面があるだろうと思います。それは株主の関心がどちらかというと株価の変動の方に集中いたしまして、会社の経営方針とか業務の執行とかということには関心が薄い、どちらかというと会社の所有者であるという意識に乏しいといった面がございます。それで、会社の方にとりましても、株主の関心が薄いことをよいことにといいますか、薄いのと呼応いたしまして、会社の最高意思決定機関である株主総会を重視しない傾向というようなものもあるのではないかということでございます。
 これに対しまして、株主総会が会社の最高意思決定機関でございますので、これが適正な意味で活性化される、先生がおっしゃるように、騒いで活性化するのではなくて真の意味で株主が建設的な意見を述べ合うといったような形での運営が望まれることは申すまでもないところでございます。
 これらにつきましては、法務省として株主総会の活性化のための商法上の諸制度の整備ということに努めてきたところでございまして、昭和五十六年の商法改正におきましては、株主の提案権の新設であるとか、先ほど来話題になりました株主権の行使に関して利益を供与することを禁止し、これを処罰する規定を設けるといったような手だてをなしてきたところでございまして、なおこれらの商法の規定を周知徹底する必要があるだろうというふうに考えておりますし、実際この法の適用につきまして警察関係等もこれを機会に総会屋を絶つというような形での企業に対する働きかけをしていただいているというように伺っておりますので、これら法律の周知徹底とともに運用がうまく図られることが重要であろう、こういうふうに認識いたしているところでございます。
#94
○紀平悌子君 ぜひ効き目のある方策を今のお話に加えて考えて、そして実行していただきたいというふうにお願いをしておきます。
 さて、質問なんですけれども、自己株式取得の弊害というものがあれば教えていただきたいんです。それから、株主譲渡の相手方がいわゆる使用人である場合、改正法案では一番目には正当な理由、二番目は定時総会の決議に基づくこと、三番目は配当可能利益の範囲内であること、この三つの条件を課しておりますけれども、それぞれの意味を簡単に御説明ください。簡単にお願いいたします。
#95
○政府委員(森脇勝君) 自己株式を自由に取得することを認めた場合の弊害ということが従来から言われておるわけでございますが、そこで言われております理由の第一は、会社財産の充実を害して会社債権者及び株主の利益を害するおそれがあるという点、第二には、会社の内情に通じた取締役がインサイダー取引等を行って一般投資家を害するおそれがあるということ、第三として、自己株式の取得の方法、対価いかんによっては特定の株主を優遇することになって株主平等の原則に反すること、第四に、会社支配権を維持する目的にこれが利用されて株主あるいは会社債権者の利益が害されるおそれがあること、第五に、株式の買い占めを行った者から高い価格で買い取るといったようなことが行われますと、会社に対して財産的な損害を与えるとともに、会社荒らしを助長する結果になるといったような弊害が指摘されているところでございます。
 今、先生御指摘になりました従業員持ち株会の規制との関係でございますが、正当な理由が要求されていること、それから定時総会の決議が要件とされていること、この点につきましてはただいま申し上げました第三、第四、第五に係る弊害に対応するものであるというふうに認識いたしております。
 それから 配当可能利益の範囲内に財源規制を絞っておるという点につきましては、これは第一の会社財産の充実を害するおそれを未然に防止しようということでございます。
 さらに、この場合には発行済み株式総数の三%という数量規制もかけておりますが、これは第四の会社の支配権に係る弊害を防止するためのものでございます。
#96
○紀平悌子君 会社が違法に自己株式を取得した場合、今まで現行法上どんなペナルティーがあったわけですか。
#97
○政府委員(森脇勝君) 自己株式を違法に取得した場合の刑事制裁としましては商法の四百八十九条二号に、会社の計算において不正に自己株式を取得したとき、これに当たると思われます。この場合には五年以下の懲役または二百万円以下の罰金、情状によってこれらを併科するということになっておりまして、この法定刑は商法の中ではかなり重い刑に当たるわけでございます。
 また、現行の商法の規定に違反して自己株式を取得して会社に損害を与えたという場合には、商法二百六十六条一項五号の規定によりまして、会社に対して損害賠償の責任を負うということになっております。
#98
○紀平悌子君 会社制度をめぐる最近の社会経済の変化という言葉をお使いになっていらっしゃいますが、これは私の解釈でありますけれども、簡単にお願いします。
#99
○政府委員(森脇勝君) 御指摘の会社制度をめぐる最近の社会経済情勢というのは、まず、バブルの経済時においてエクイティーファイナンスが活発に行われた結果といたしまして、株式の発行数が増加いたしまして、これが過剰になり、株式数の需給のバランスを欠いているという点が挙げられると思います。また、我が国の企業の海外との商取引が増大していくという中で、一層の国際化に対応いたしまして諸外国の法制との調和を図る必要性が従前にも増して高まってきたといったような状況が考えられるわけでございます。
#100
○紀平悌子君 最後の質問になりますけれども、法務大臣にお聞きしたいと思います。
 商法上の権利主体の中心である会社というものについて、これは法人として政治献金を行うということは、多額な場合であればあるほど、ゼネコン等がいわゆる許認可権をコントロールしてしまうというふうな政治腐敗の温床となりがちであるということは周知のことだというふうに思うんですね。このことは国民の参政権を間接的に侵害するというふうに事実上なってしまうんじゃないかと思います。例えば、法律をつくるとき、それからいわゆる物価が高いというか、安くできるのになかなか下げられないとか、いろんな問題と関係してくると思います。
 かつて八幡製鉄献金事件というか、判例がございますけれども、企業の政治献金は法人としての権利の範囲内であるという最終判断が出ております。それが今のいろいろ政治資金規正問題の常識のようなことで言われておりますのですが、企業献金を通じての政治腐敗というものは後を絶たないという、これは現実ですね。現実に後を絶たないということを考えますと、大臣は商法上企業、つまり法人として会社が献金をすることというものをどういうふうに思っていらっしゃいますか。その弊害を考えて適切なことであるかどうか、これも一つの有益な行為であるというふうにはっきりと言い切れるのかどうか、ぜひ伺っておきたいと思います。
#101
○国務大臣(中井洽君) 会社のいわゆる企業献金につきましては最高裁が昭和四十五年六月二十四日の判決で、今先生お話にございましたように、範囲等がいろいろありますが、合法である、こういう判断を示されております。したがいまして、法務大臣といたしましては当然この判決の趣旨でお答えをしなければならない、このように考えております。
 商法上ということでございますけれども、やはり会社の規模、経営実績、その他社会的、経済的地位及び寄附の相手方など諸般の事情を考慮して、合理的な範囲内においてその金額が決せられるべきであろうか、このように考えております。
 なお、今国会あるいは数年間にわたる各党間の御熱心な御議論の中で、今回政治資金規正法の改正が行われ、その中でも制限つきの中で企業献金が認められておる、このように考えております。
 なお、私個人としては企業献金についていろんなところで申してまいりました。本来的にはやがて先生のおっしゃるようなことも含めてこういうものが規制されればいいんだろうと考えておりますけれども、現在日本の社会において企業というのは他の国の存在と随分違っておるなという感じを持っております。それは、日本の税制の違い、他国との税制の違いもありますし、国民の社会に対する貢献、こういう発想の違いもありますが、文化面であるとか、あるいはスポーツの面であるとか、あるいは環境の面であるとか、こういう面において企業が大半寄附で支えていらっしゃる。ここらのことを考えますと、企業の日本における存在あるいは日本の社会における存在というのは他の国々とまだまだ違っておるなと。この間個人がもっともっと税制面で優遇をされて、そして文化、スポーツ、あるいは環境、いろんな面で社会活動を支えるような献金あるいは寄附、こういったものができるような風習になってくればおのずから企業の政治献金というものも個人に移りかわっていくのではないか、こんな認識を持っているところでございます。
#102
○紀平悌子君 ありがとうございました。終わります。
#103
○安恒良一君 私は、商法及び有限会社法の一部改正について、法務省と大蔵省に質問をしたいと思います。
 まず第一に、御承知のように、独禁法の九条というのは、平和憲法の九条にもじられて経済基本法の基本だと言われておりますが、それをあえて今回持ち株会社を認めるということになりますと、その根本的なねらいと当面のねらいについて、大臣に聞いておきたい。
 私が推察をするのに、根本的なねらいというのは、日本の資本主義会社というのは量的拡大の思考で、しかも横並びでどんどん成長してきた。ところが、この行動が内外から大きく批判をされて行き詰まっておる。そこで、これはもう今までの日本型資本主義を根本的に変えなきゃならない、こういう改造のシナリオをまず関係省庁が描いて、その第一歩としてこれをやり出したのではないかと思いますが、今回の改正の根本的なねらいについてごく簡単にお答えください。
#104
○国務大臣(中井洽君) 先生から独禁法に関連してのねらいがあるんじゃないかという御質問でございましたけれども、独禁法のことにつきまして、あるいは独禁法との関連につきましては、場合によっては公取にお尋ねを賜ればありがたいかと考えますが、私どもは今回の商法改正でそのようなことを考えたことも、また思いついたこともないわけでございます。
 今回の改正におきましては、バブル経済時においてエクイティーファイナンスが活発に行われた結果、株式の発行数が過剰に増加し、株式数の需給のバランスを欠く会社が増加するとともに、我が国の企業と海外との商取引が増大していく中で、一層の国際化に対応して諸外国の法制との調和を図る必要性が今までよりも非常に高まってきたという会社制度をめぐる社会経済情勢及び会社の業務の運営の実態にかんがみて、株式制度等の運営の一層の適正化、円滑化を図るため今回のような改正を行おうとしたものでございます。
#105
○安恒良一君 独禁法のことを言っているのに、私の質問に少し不勉強だと思います。私は、各省庁、例えば通産省その他いろんなところが今回の改正についてあれしているのを見ると、やっぱり今までのような日本型資本主義では行き詰まっていると。
 じゃ、第二問に入っていこうと思いますが、米国では会社は株主のものだと、日本では会社は必ずしも株主のものではないんです。ですから、こういうやり方はやっぱりいけないからということじゃないでしょうかと。例えば 日本の場合には個人株主の比率は、ここに資料をいただいていますが、二十数%しかない。あとは機関投資家と言われる金融機関を初め関連企業で株を全部持っているんです。七十数%持っているんですから。その結果、株主の監視の目から逃れる、そしてこのもたれ合い構造が株主に気兼ねをしないで会社の経営ができるわけですね。しかし、これはまた非常にデメリットがある。それは、時には会社の経営が放漫になる、もしくは不祥事が起こる、こんなことがあるからこういう会社の株主構造、いわゆる会社の経営方針を根本的にやっぱり変えなきゃいかぬ、その中の一環ではないかと思ったから私は聞いたんですが、いやそんな大それた考えは持ちませんと、こういうことでした。
 そこで、具体的に今大臣が挙げられました、例えば今回のメリットとしては、会社側はこれをやることによってMアンドA対策ができる。第二番目は、いわゆるエクイティーファイナンスによってふえ過ぎました株主を圧縮できる。その結果何が起こるかというと、株数を減らして株主一人当たりの資産額を上げて、これは株主優遇策であると。それから今一番日本型資本主義の中で外国から批判をされているところの企業間株式持ち合いの解消の受け皿になる、こんなことを大臣が言われたいんじゃないかと思いますが、これにもメリットとデメリットがあると私は思うんです。
 そこで具体的にお聞きをしたいんですが、そういうねらいを持ちながら果たして今回の皆さんがねらっておられることがうまくいくのかどうかというのは、実は経済専門家が三つの方向に行くだろうと、シナリオがあるというふうに言っておる。
 一つは、これをやっても期待するほど大した効果がない。それはなぜかというと、これは御承知のように持ち合い構造がありますから、持ち合い構造の上にさらに持ち株をすると屋上屋を積むことになるし、まだそういう株主構造になっているところがあえて株を一部に売って、そんなことをする必要はない、日本の大企業はみんな当面この持ち株制度というものを活用しないだろうと、こういう意見が一つある。
 それから二つ目には、いや金融機関や中小企業はこれを十分活用して、今行き詰まっている日本企業の再生力の有力な武器になるだろう、こういう見方が二つ目にある。
 三つ目には、いやそうは言っても税制上の問題もあるし、さらに独禁法との関係もまだ整理されないから、そんなことをやられたんじゃかなわないということで、今世紀中にはこれは活用されないだろう、いろいろこういうことを専門に研究している経済家は見ているんですが、そこのところは大臣、どういうふうにお考えでしょうか。また、どんな見通しをお持ちでしょうか。
#106
○政府委員(森脇勝君) まず、今回の改正の主眼といいますと、先ほど大臣から答弁ございましたように、エクイティーファイナンスとの関係あるいは諸外国の法制との調和という点にかんがみまして、自己株式の取得規制を緩和することによって企業の活動の自由の部分を拡大しよう、これが根本的な思想であろうというふうに考えております。
 したがいまして、先生御指摘のMアンドA対策であるとか、私どもも申してまいりました株主への利益の還元であるとか、それから持ち合いが解消された場合の受け皿であるとかというのは、そこから出てくるメリット面と申しますか、こういう位置づけになるのではないかといりふうに考えておるところでございます。
 それから、今回の改正についての評価でございますが、確かに余り効果がないのではないかといったような批判、それから当面は活用されないのではないかといったような批判もございますが、今回の自己株式取得規制の緩和という点は、経済界それから中小企業、こういったところからの長い間の要望に基づくものでございまして、今回の法律案についてもこれを肯定的に評価するといったような声も聞いておりますので、必ずしも一部の識者が述べておるような結果になるというものではないと私どもは期待しておるところでございます。
#107
○安恒良一君 いや、一部の経済評論家が言っているんじゃなくて、具体的にもう大企業では今の持ち合い制度があるからこれを使う必要がないと考える。もしこの持ち株制度をやろうとすると、その経営にライン、組織、人員、マーケティングなどのオールラウンドの専門的知識や能力を求められる人材を持たないとなかなかうまくやれない。だから、今の企業にそういうオールラウンドの能力を持った人がいないから、大きい会社は当面これを活用する必要はない、メリットはない。ただ、財界として要望してきていますから正面切ってこんなものは要らぬとは言わぬけれども、具体的に使われるかどうかということになるとなかなか期待する効果が非常に少ないと、こう言われている。そのことはお互いに時間がありませんから見解の相違ということにしておきます。
 そこで、株主優遇策だと、こう言われておりますが、日本のような株式構成の中でいわゆるROEですね、株式資本利益率、それからEPS、一株当たりの利益の向上にどれだけ今回の改正が当たるんだろうか、これもなかなかいろんな意見があるところなんです。それは今申し上げたROEやEPSの大きな向上になるかならぬかということです。簡単に答えてください。
#108
○国務大臣(中井洽君) 株式の利益消却をした場合に、先生御指摘のEPSやROEの数値の変化についてはそれぞれの会社の財務会計上の問題でもあるので私が答弁する立場にはなかろうかと思いますが、EPSについては変化しないというのが一般的見解であり、またROEについては上昇するという見解もあるとは思いますが、確立した見解はないものと私どもは考えているところでございます。
 なお、先生、先ほど冒頭お尋ねを賜りました問題に十分お答えをしなかったのか、このようにも思いますが、今回の改正は先生のおっしゃったような方向であることは間違いない。それに伴って株式市場の近代化、あるいは証券界の自己規制の改善、あるいは証券監視委員会の充実、あるいは公取等の充実強化、こういったことがトータル的に行われて、そういう世界的な中に日本の会社制度というものが発展をしていくと考えておりますが、今回の法改正が御指摘のありました九条、あるいはこの九条をなしましにしていくんじゃないか、こういう御疑問については全く関係がないとお答えを申し上げます。
#109
○安恒良一君 いや、誤解があるといけませんから、私は九条をなしましにしていくなんて質問をしていません。人の質問をよく聞いてください。私は日本の会社の経営戦略をある程度変えていくのかということを中心に聞いたんです。それは結構です。
 そこで、大蔵省にも聞きたいんですが、自社株を持ってそれを売買したときに利益が出る、いわゆるみなし配当課税の問題について、根本的に外してくれ、でないとこれが活用できないよという意見が多くあったんですね。今度商法の改正をして証券取引法の改正を一部されたんですね。しかし、根本的にみなし配当課税の適用除外が今回できなかったわけですね。じゃ、いつごろどういう方向でさらにこの中身を詰めていくのか。とにかく今回の説明は結構です、今回の証券取引法の改正は私存じておりますので。これが一つです。
 それから、法務省に一言だけ聞いておきたいんですが、この前聞いたとき一番気になったのは、この持ち株を従業員に認めるというのは、これはよくわかるんですね。その一つの理由に永年勤続、これも客観的にわかるわけですね。ところが、功労があった者にもできるというんです。僕は功労があった者というのは客観的な基準があるかどうかと、会社に功労があった者にもこれを認めるという答弁があったものですから。でないとこれはいろいろ非常に取引を僕はゆがめることになると思います。
 以上、二つのことについてお答えいただきたい。まず 大蔵省から
#110
○説明員(西方俊平君) このたびの商法改正に伴いまして、私ども証券当局が税務当局に対して税制上の改善措置をお願いしたわけでございますが、税務当局の方からは、やはり配当に対する課税というものの基本的な問題があって、これを抜本的に改正することは大変難しいというような指摘を受けているわけでございます。
 今後につきまして、どういうふうに私どもが考えていくかということは、今の時点では特に方針を持っておらないわけでございますが、いずれにいたしましても、今度改正された税制上の措置というものをよくフォローしてまいりたいというふうに思っております。
#111
○国務大臣(中井洽君) 先生御指摘の功労者が同じく使用人の永年勤続者に比べたら基準の客観性の点で劣るのではないか、あいまいではないか、この点はそのとおりであろうかと危惧もいささか持たないわけではありません。
 しかし、いずれにいたしましても、株主総会で説明をした上で株主総会の決議をもって承認をされるということが必要でありますから、御心配のような会社の恣意によって乱用するおそれはない、このように考えております。
#112
○安恒良一君 いや、今回の歯どめにあちこちに株主総会というのがかかっているんですね。この株主総会自体がアメリカあたりと違って日本の場合は、今申し上げたように、株の持ち合いの機関投資家中心で、それがもう株全体の六、七〇%ありますからそれでチェックするから安心だということだけでは、特に客観的基準がない功労者という表現は、まあ功労者ですが、どこまで見るかということは非常に難しいと思いますね。
 それからいま一つ、これもう最後に聞きますが、いわゆる従業員持ち株は、これも一回の取得は歯どめがかかっていますね。ところが、どんどん積み上げていって相当数を持てるわけで、一回はこれだけやっていい、総体の株数で従業員持ち株会に歯どめがかかっていませんが、そこのところのおそれがありませんか、だんだん膨れ上がっていくと。従業員持ち株というのはデメリットとメリットがありますから。今言ったように、メリットもあります。しかし、さっきの質問のように、御用組合や御用的になるとこれはデメリットが出てきます。そうすると、どこかに歯どめがないと、この法律の歯どめはここでわかりますが、さらにだんだん毎年、毎回積み上がっていく、相当数の株を取得するということになる。そこはどうお考えですか。
#113
○政府委員(森脇勝君) 今回の改正では従業員に譲渡するための自己株式の取得については数量規制をかけておりまして、一年間で会社が取得できる数量が一〇〇分の三、それからさらに、会社が従業員に譲渡するために保有している株式数も発行済み株式総数の三%、こういうかけ方をしているわけでございます。
 したがいまして、これだけの規制ですと、先生御指摘になりましたように、何年も積み重ねていけば、それはかなりの部分を従業員持ち株会が保有するという事態は確かに出てまいります。現在、我が国の上場会社が従業員持ち株会をやっているところで従業員持ち株会が保有している株式は約一%というふうに言われております。それからさらに、以前から従業員持ち株会の制度を、制度といいますか、従業員に譲渡するための自己株式の取得を許容しているドイツ等においては、ある会社では二%に達してきているというような状況にございます。ただこれも、従業員といえども通常の株主でございまして、先ほど来御説明いたしましたように、株主としての個人の意思の表明もできるという形も商法に用意してございますので、これについての特別の規制を設ける必要はないのではないかというのが今回の改正の考え方でございます。
#114
○安恒良一君 終わります。
#115
○委員長(猪熊重二君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 商法及び有限会社法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#116
○委員長(猪熊重二君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#117
○委員長(猪熊重二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
#118
○委員長(猪熊重二君) 次に、裁判官の介護休暇に関する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#119
○志村哲良君 この法案は、最高裁と法務大臣によりまして、法務省が提出なさっておられると伺っておりますが、どちらにお伺いしたらいいんでしょうかね。法務省ですか。最高裁の方ですか。じゃ、御両者に関係あることですから、御答弁は適当にひとつあんばいをしていただきたいと思います。
 まず冒頭に申し上げますが、私はこの法案には全面的に賛成でございます。とりわけ、私は介護ということに関しまして最近ごく身近に、何といいますか、本当にしみじみとそのことの必要性を味わわされております。
 実は、八月になりますと九十一歳になる母親が一カ月ほど前に発熱をいたしまして、医師は簡単な風邪だとおっしゃいましたけれども、それ以来急速に体力が衰えまして、意識も薄らいでまいりました。私の妻ですとか近所に嫁いでおります私の姉とか妹は絶えずスケジュールを組んで泊まり込みをいたしまして、私のところでは妻は一緒に住んでおりますから介護に当たっております。そんな中で、私ごとですからつぶさに申し上げますことは失礼いたしますが、そのさまを目の当たりにいたしまして、ああ介護というのは必要だなと本当に心の底から味わっておる次第であります。そんなこともありまして、冒頭に申し上げました。
 この法案には全く賛意を表しているものでありますが、ただ法案としては私などにはちょっと理解できない点もありますので、四点ほどこの問題に関してお伺いをいたします。
 一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律を見ますと、職員の勤務時間、休日、休暇等についての規定がされており、その中で休暇等の一つとして介護休暇について定められております。これに対して、本法案は介護休暇についてのみ規定した理由は那辺にあるのでしょうか。その辺に関してお伺いをいたしたいと思います。
#120
○政府委員(永井紀昭君) 御指摘のとおり、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律では、介護休暇のほか、職員の勤務時間あるいは休日、一般の休暇等についても具体的な規定を置いてございます。
 裁判官の勤務時間は、いわゆる勤務時間という観念がございません。それから、一般的な休暇につきましては、最高裁判所の規則で一般職の例に準じて行うという規定が既にございます。
 このたび、六月十五日に一般職のこの法案が成立いたしまして、二十条では介護休暇制度についての定めも置いているわけでございますが、一般職の国家公務員につきましてこうした介護休暇制度が導入されることになった背景には、御承知のとおり、一般的な社会の高齢化あるいは女性の社会進出が多い、あるいは核家族化の進展といった最近の社会状況の中で個人生活と職業生活との調和を図る、こういう仕組みを整備することが必要になってきたという事情があると理解しております。
 それで このような介護休暇制度を整備すべき必要というのは、やはり裁判官についても同様なことがあるであろうということで、一般職の国家公務員の例に準じまして裁判官の介護休暇制度に関する法整備を行うことが必要であるということでこのような法案になったわけでございます。
 ただ、これをなぜ法律にしたかという問題は、実は裁判官につきましては、憲法上、在任中は報酬を減額することができないという規定がございまして、これにつきましては、やはり今回の休暇制度におきましては、介護休暇をとる場合にはノーワーク・ノーペイの原則で報酬を支払わないという、そういうことになっておりますので、憲法との関係でやはり国会の御審議を経ておくべき必要があるというふうに解されますので、したがいまして特に介護休暇中についての報酬を支払わないという部分は憲法上との疑義があるという問題がありましたので法律の形で国会の御審議をいただくという、こういう形になったわけでございます。
#121
○志村哲良君 ただいまの介護期間中は報酬を受けないということでございますが、これは、今の御説明がありました憲法上の裁判官の報酬減額禁止との関係が具体的にどのようになるのかという点で疑念がありましたので、もう少しその点について御説明を願いたいと思います。
#122
○政府委員(永井紀昭君) 憲法七十九条第六項と、それから八十条第二項に規定がございまして、「裁判官は、定期に相当額の報酬を受ける。」ものとして、「この報酬は、在任中、これを減額することができない。」という、こういう憲法上の規定があるわけでございます。
 この規定を置いた趣旨は一体那辺にありやということでございますが、これは個々の裁判官に安定した一定額の報酬を保障することによりまして、裁判官が経済的事情に左右されることなくその職務に専念できるようにしようとするものでございまして、裁判官の身分保障というものを具体化し、ひいては司法の独立を保障しようとするという、こういう考え方で制定されていると解されているわけでございます。主として外部からの圧力、いろんな形での圧力を受けないという、ざっくばらんに言えばそういう規定でございます。
 ところで、裁判官の介護休暇制度につきましては、裁判官が自由意思に基づいて介護休暇をとって職務から離脱するということも自由でございます。また、一たん介護休暇をとりましても、すぐそれを取り消してまた職務に復帰するということも自由でございまして、この介護休暇そのものをとるかやめるかという問題につきましては自由な選択でできる、外部の圧力等によって左右されることはないという、こういうふうに解されております。
 そういたしますと、無給の休暇制度を導入いたしましても、裁判官が職務に専念することを脅かすおそれはない、その独立を侵害するおそれもないということから、この制度において裁判官が介護休暇中報酬を受けないものとするとしても、憲法の各規定に違反するものではない、こういう解釈になっているわけでございます。これは裁判官だけが無給になるのではなくて一般職もやはり無給になるということがございますので、やはり裁判官だけ報酬を確保しろというのもややこれは行き過ぎであろうということになっております。
 ちなみに、この問題につきましては、平成三年に裁判官の育児休業に関する法律が制定されまして、その際におきましても、育児休業の期間中、裁判官は報酬等を受けないものとすることになっておりまして、この点に関しましては国会でも十分御議論いただきまして、やはり憲法違反ではないということでいいだろうということの結論を得られているところでございます。
#123
○志村哲良君 次に、裁判官の介護休暇の内容についてでございますが、本法案には、一般職の職員の例に準じ、最高裁判所規則で定めるとありますが、どうも私どもには全くわからない世界のことのようです。
 具体的にはどのような内容になっているのか、御説明を願いたいと思います。
#124
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 現段階では人事院規則が固まっておりませんので確定的なことを申し上げられないことをお許し願いたいと思いますが、まず最高裁判所の規則におきましては、裁判所の一般の職員の例によるという一般的な規定を置きますほか、次のような事項について規定する予定でございます。
 まず第一に、裁判官の介護休暇の単位は一日とするということ。
 第二に、裁判官の介護休暇につきましては、所属の裁判所またはその委任を受けた者の承認を受けなければならないとすること。
 それから三番目には、各裁判所及びその委任を受けた者を含むわけでございますが、その介護休暇の承認を受けた裁判官から介護休暇の承認の取り消しの申し出があった場合には、介護休暇の承認を取り消すものとするということ。
 それから四番目には、裁判官が介護休暇により職務をしない日があります場合には、これは先ほど法務省の政府委員から申し上げましたように、その間無給となるわけでございますので、その月の報酬額の算定につきましては日割り計算、裁判官報酬法第七条にこういう規定があるわけですが、その規定により計算するというような規定を置くこと。
 この四つぐらいを現在のところ考えているところでございます。
#125
○志村哲良君 裁判官は処理しなくてはならない事件が多く相当多忙であると伺っておりますが、介護休暇をとる必要のある裁判官が本当に介護休暇をとることができるのかどうかということが心配になります。
 また、介護休暇制度を設けることによって事件の処理に支障が生ずるようなおそれはないのかということもあわせてお伺いしたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君)どの程度の人数の裁判官が介護休暇を取得するかにつきましては、現在のところ予備的な調査をしておりませんので予測することは困難でありますけれども、従来は裁判官は家族の介護の必要が生じました場合にも、その職務の重要性にかんがみまして、年次休暇を取得するという方も少なくて、裁判の職務の遂行をしていた方が多いわけでございます。したがいまして、介護休暇の制度が導入されたといたしましても、これは現時点での推測では、直ちに数多くの裁判官が介護休暇を取得するようにはならないのではないかという感じがするわけでございます。
 しかし、この法案が施行されますと、介護休暇というものを権利として取得することが認められることになるわけでございますので、将来的には介護休暇取得者もだんだんふえることが見込まれるわけでございまして、そうなりますと、裁判事務等に支障を来すことがないように今後十分に検討していかなければならないと考えております。介護休暇を導入することによりまして審理がおくれ、憲法第三十二条で保障されております迅速な裁判を受ける権利が侵害されるというような事態があっては、これはもとより本末転倒なことでございます。
 介護休暇をとる裁判官がどの程度かということは、現段階では必ずしも予測は難しいわけでございますが、裁判官が介護休暇を取得したことによって審理の進展が滞るということがあってはならないということで、私どもも万全の措置をしていきたいと考えております。
 最高裁判所といたしましては、このような場合には、機動的に対処するため、あらかじめ裁判官の協力を得て介護休暇取得の蓋然性について早く情報を入れていただくということの協力を求めますとともに、介護休暇がとられた場合には、同じ庁内での裁判官の応援だけではなく、他の所、庁からの応援、私どもはてん補と申しておりますが、こういうことも考えますし、場合によりましてはその庁へ新たな裁判官を配置するとかいうようなことを考えまして、裁判が介護休暇のため停滞しないよう種々対応していきたい、かように考えている次第でございます
#126
○志村哲良君 実はもう少し余計質問を考えたんですが、筆頭から少し短くという要請があったものですから十分ほど余らせて、これで私の質問は終わらせていただきます。
 最後に、先ほど来お伺いを申し上げましたり、また御答弁をいただいても、一般職の介護休暇と違いまして、裁判官の皆様の場合にはいろいろな条件がつきまとってくるような、そんな思いもいたしますが、これも冒頭に申し上げました私のごくささやかな経験でございますが、今実感をしております。
 やはり裁判官とて人でございますので、どうぞひとついろいろな条件を克服して、もしこの法案が成立しましたら、必要に応じて介護休暇をおとりになることがよろしいのではないかなと、まことに差し出がましいことですが、思いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
#127
○国務大臣(中井洽君) 御教示を含めて御質疑を賜りまして、ありがとうございました。
 ただいま先生から御母堂様が御病気だと聞かせていただきまして、御心痛の思いであろうかとお察しを申し上げます。奥様を初め、御家族の御看護のもとに一日も早く御本復をなさって、御長寿をいただきますよう、こんな機会でありますがお祈りを申し上げます。
#128
○志村哲良君 どうもありがとうございます。
#129
○竹村泰子君 けさほど栗原委員の方から、アジアから働きに来ている女性の問題が出ておりましたので、それを受けまして、ちょっぴりだけ特別にお許しをいただきまして質問させていただきたいと思います。
 委員長、ありがとうございます。
 昨年の二月に東京地裁で判決が出ました。それは、父母ともに不明の子供、つまり、多分フィリピンの女性だろうと思われる女性が日本に働きに来ていて日本人と知り合い、そして子供を産んだと。しかし、名前も行き先も何も告げずに病院から消えてしまったということです。国籍法の第二条にあります「日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。」には国籍を取得できるという項があって、これは無国籍の子供たちをできるだけ出さないようにという配慮からつくられている法律だと思うんですが、東京地裁はこの子供を養育している牧師夫妻側勝訴、そして「「無国籍児」将来に光」というふうな報道がされておりまして、原告側は「当然だが画期的」だというふうなことだったんですけれども、残念ながらその後これが覆されまして、全く反対の高裁の判決が出ているわけです。
 今、日本で生まれて日本人の父親の四歳以下の無国籍児、入管で調べましたらそれが百三十八人いる、そういう報道が出ておりました。これは九〇年末、つまり四年前の七十四人に比べて倍増でございます。日本に働きに来る女性たちが非常に多くなっていることからいいますと、この子供さんはアンデレちゃんというんですけれども、このアンデレちゃんのようなケースはどんどんふえていくだろうと思われます。母親の行方はいまだにわかりません。
 それから、もう一つの例を申しますと、長野県内で九二年タイ人と自称する女性が男児を出産した後に行方がわからなくなった。後に日本人の父親が認知している。だから父親の戸籍に記載されたんですけれども、しかし出生後の認知は国籍決定に反映されないために、外国人登録で無国籍のままとなっているというケースも一つございます。
 この外国人登録上の無国籍児は、国籍がないということ、あるいは混血であるということで大変な差別をこれからもずっと受けていくわけですし、例えば乳児院なんかに預けられている場合の予防注射も受けられない。それから就学の通知ももちろん来ないでしょうしできないということで、そして非常に残念なことに、国はことしの二月三日に最高裁に上告をしていらっしゃいます。確かにそれはこういう日本人の男性も無責任だし、それから行方知れずになっちゃった母親も無責任かもしれないけれども、私ですと言って出れば不法滞在がわかってしまうというような事情もあって名乗りたくても名乗れないというケースも随分出ている。無国籍児の人権が宙に浮いたまま百三十八人。これは倍々でどんどん私はふえていくんじゃないかと思います。
 私は、この問題をかなり前からお願いをしておりまして、田原法務大臣、後藤田法務大臣、そして三ケ月法務大臣、それぞれに法務省に直接参りまして、子供たちに罪はありませんと、何とか救う手だてを考えてくださいとお願いしておりますけれども、残念ながら上告までしていらっしゃる。とても残念に思います。日本で生まれた日本人の男性の子供です。なぜ国籍が与えられないんでしょうか。法務大臣の御所見と、それから民事局の御答弁もあわせて、今後打開策があるかどうか、全く絶望なのか、ちょっと伺いたいと思います。
#130
○国務大臣(中井洽君) 一つだけ。大変御無礼でありますが、最高裁へ上告しましたのは国側ではございませんで、原告側であろうかと承知をいたしております。
 昼休みに先生の質問通告を賜りまして、短時間でありますが説明を聞かせていただきました。答弁を持っておりますが、今の御質問のままでしたら過去三人の大臣と同じ答弁をせざるを得ない、このように考えております。
 しかし問題は、おっしゃるように現実に赤ちゃんが、子供さんがいるわけでございます。日本人の子供であろうか。どうすればできるか。どう考えても、やはりこの第二条の形でお訴えになられるとどうしようもないんじゃないかと、最高裁の判例を待たなければなりませんけれども、私どもは考えております。
 したがいまして、第八条の「引き続き三年以上日本に住所を有するもの」という規定にのっとって帰化申請をしていただく、これしか手はない。しかし、帰化申請を嫌だと、こう言われた場合には現行法上はなかなか私どもは、先生のせっかくの御熱意、御尽力でありますが、おこたえがしにくいと考えております。
 それなら三年間どうするんだと、その三年間日本のどこかで預かってくれるところがあるのかと。実は私自身は養護施設の理事もいたしておりますが、全国養護施設は随分定数割れをいたしております。閉じられるというようなところもあるわけでございます。先生の御質問にこういうお答えの仕方は悪いのでありますが、一緒になって御努力いただいて、厚生省とも話をして、そういうお子さんを何かこういう養護施設みたいなところで日本人と同じような形でお預かりをいただいて、三年目に帰化を申請していただいて日本人という形でそのまま養護施設なり養い親なりのところで育っていただくという方策はないのかなというのが、私、型破りの答弁で恐縮でありますが、率直な思いでございます。
#131
○政府委員(森脇勝君) ただいま大臣から御答弁申し上げたとおりでございまして、現行法のままではこれに対応する手だてというものはないわけでございます。
 ただ、法改正のあり方としては、一応現在の血統主義を中心としているものを出生地主義に改めるとか、そういう手だては法律改正によって不可能ではないと思われるのですが、これにつきましてはそれぞれの国の長い伝統に基づいて国籍法が定められておりますので、それも大変難しいことになるのかなというように考えておるところでございます。
#132
○竹村泰子君 ぜひ一考願いたいと重ねてお願いを申し上げて、終わります。
#133
○栗原君子君 私は、もう時間が余りなくなりましたけれども、幾つかちょっとお伺いをしたいと思います。
 今回の法律に関しまして、詳しいことは規則で定めるということになっておりますけれども、私は一般職と裁判官と同じような勤務体制であるならば大体わかるわけでございますけれども、勤務体制は大きく違うわけでございます そういう中で規則で定められるわけですけれども、今回出されておりますこれは二条しかないわけでございます。それで、規則として大体こういうことは考えているということをお示しいただかなければ審議の対象にならないということを思うわけでございます。だから、審議の対象にならないような中で審議をしろというのは国会軽視につながるということはお考えになっておられるかおられないか、お伺いをいたします。
 そして次に、報酬がないということ、これは法律の第二条に「裁判官は、介護休暇中は報酬を受けない。」との規定があるわけでございます。裁判官の報酬については憲法七十九条の六項と第八十条の二項に、「在任中、これを減額されない。」と規定しているわけでございますが、このことについてどのように考えていらっしゃるのか。他の事務官とか書記官の場合は二時間の介護休暇を申請すれば二時間減給をされるということなんです。裁判官の場合はこれはどのようになるのかお示しをいただきたいと思います。
 それから、一般職の介護休暇は一日単位の取得と時間単位の取得がございます。これに対して裁判官の介護休暇は時間単位の取得は認められないと聞いておりますけれども、そうすれば一般職と裁判官との間に不公正が生じるのではなかろうか、こんな疑問があるわけでございますが、今申しましたことについてお答えいただければと思います。
#134
○政府委員(永井紀昭君) まず法務省の方から、本条文が二カ条しかないということでの御質問がございましたので、この点につきまして御答弁申し上げます。
 先ほど志村委員からの御質問にもお答えいたしましたが、もともと憲法七十七条一項におきまして裁判所の内部規律に関する事項は最高裁判所規則で定めるということが規定してございます。最高裁判所規則というのは、訴訟手続に関します例えば民事訴訟手続規則、そういうものにつきましても実は最高裁判所規則で定めております。この最高裁判所規則は、いわば相当法律に準じたものとして、我々法務省ですけれども、例えば法務省で規則で決めるとかそういうものとちょっと性質が違っておりまして、独特の地位を持っているわけでございます。それで、裁判所の内部規律に関する事項といたしまして、裁判官の服務に関することでございますとか休暇に関することは既に規則で定められております。
 たった二カ条しかないというのも、先ほどお答え申し上げましたとおり、特に給与をその間支払わないということは憲法上の問題があるので、やはりその点は国会において法律の形で御審議をいただいておくのが適当であろうということで、特にこの第二条の介護休暇中の報酬についてのところが重点でまず法律にするべきだということにしたわけでございます。
 ところが、その中身につきましては、第一条では一般職の例に準じて最高裁判所規則で定めるものとすると、こういう形になっているわけでございます。この例に準じてというときには、これはその例による、あるいは準用するという、そういう趣旨でございまして、全く勝手に決めることはできないという縛りがかかっているということでございます。一般職の法律につきましては、二十条で介護休暇についての要件でございますとか、どういう被介護者が必要かということも規定してありますが、これに縛られますよということをここで規定しているわけでございまして、そういう趣旨で一応の縛りをかけて最高裁判所規則で定めるということにして憲法上の疑義がある報酬のことも明記する、そういう精神でつくられたものでございます。
 それで、もう一点だけ、例の減額することができないという憲法上の規定との関係でございますが、これは先ほどもお答えいたしましたが、介護休暇というのは無給の休暇といたしまして一般職の職員に導入されることになった制度でございまして、裁判官の休暇についてもやはり同様にこれは無給としたわけでございます。裁判官は自由意思に基づきまして介護休暇を取得し、無報酬の状態になるものでございますが、これを選ぶか選ばないかは自由な選択によるものでありまして、外部の圧力等により左右されるものではないという、そういう観点から憲法違反ではないという考え方をとっているわけでございます。先ほども申し上げましたとおり、育児休業につきましても同様の解釈で報酬を支払わない、こういう規定になっているわけでございます。
#135
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 介護休暇の取得単位の点について答弁いたします。
 裁判官は、配点を受けました事件につきましては終始その責任におきまして良心に従い、独立してその事件の処理に当たるわけでございます。そのため、裁判官は、裁判所の一般の職員の方が勤務すべきとされている時間内に法廷を開き、審理をすることは当然でございますが、それ以外にもその事件に関する調査であるとか判決の起案というようなことを家に帰ってからもやっているということは通常あることでもございますし、また裁判の事務の中には、逮捕状の請求とか捜索令状の請求のような緊急を要するもの、あるいは保全処分事務などのように緊急に処理する必要があるものも含まれておりますので、裁判官の場合は、事件の迅速な処理のためには夜間等においても、一般の職員が勤務しない時間外でありましてもこれに速やかに対応することが要求されているところでございます。
 このように、裁判官の職務及び裁判事務の特殊性からいたしますと、裁判官の職務を時間で管理するということは非常に難しいのではないかというふうに考えられているところでございまして、裁判官の休暇につきましては、介護休暇を含めまして、時間単位の取得ではなく日単位で認めていこうというふうになっているところでございます。
#136
○栗原君子君 だから、一般職は時間単位で取れるんですが、裁判官の場合は時間単位では取れないという、やっぱりここに不公平が生じると私は思うんです。そして、この勤務体系が、別に出勤簿があるわけじゃありませんから、例えば朝十時半に出てきますと、今度は書記官などは早くから、九時にはもう出ているわけでございますから、それに合わせてやっていると書記官の場合も裁判官に合わせて結局はこれは超過勤務になってくるんじゃないかというような気持ちもするわけでございます。だから、一般職と同じような勤務体制であればわかるんですが、勤務体制が違うものの中で、どこからが休暇であるのか私はちょっとよくわからないんです。
 それから、報酬を払わないということになりますと、一日分カットするということになるのでございますね。そういうことでございますね。それらを定めた規則というのはいつ出るのか、ちょっとお伺いいたします。
#137
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) まず、裁判所の一般職員の場合には何時から何時までというふうに職務内容、勤務というものが把握できるわけでございますが、裁判官の職務は法廷で審理をするということだけではなくて、判決を書いたりいろいろやる、これも職務の内容になっておりまして、どこまでを裁判官の職務ということで時間単位で管理するのがなかなか難しいということを御承知いただきたいと思います。
 それから、裁判所の規則につきましては、一般職の人事院規則が定められ、これが施行されるときには間に合いますようにいたしたいというふうに考えているところでございます。
#138
○栗原君子君 私は、規則はいつ出るのかを教えてくれというのは、大体何月に出ると言ってもらえると思ったんですが、そうじゃないんですか。
 それと、大体三カ月までという一つの区切りになっておりますけれども、ゆうべ私はNHKのテレビを見ておりましたら、「クローズアップ現代」という番組で、自分の妻とお母さんが痴呆にかかって、そして結局その男性はお母さんを殺したんです、もう介護に疲れて。こういう状況なんです。そういたしますと 一つの病種に対しては三カ月しかとれない、こうなっておるようでございますが、この三カ月という期間が妥当かどうかというのが大変私はわからないわけでございます。そういった高齢者を抱えていたり、アルツハイマー型の痴呆の人たちがいらっしゃると、とてもやっぱり三カ月どころじゃなくて、いつまで続くかわからないような状況の中で三カ月という線が妥当と考えておられるのかどうか、こういうことをお尋ねいたします。
 それから、司法修習生の場合はどのようにお考えでいらっしゃるのでございましょうか。
#139
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) まず、最高裁判所の規則の制定時期でございますが、これは現段階で人事院規則の内容が固まっておりませんので具体的な見通しを立てづらい状況にあるわけでございますが、本法案が成立いたしました後、人事院規則の内容が固まり次第速やかに最高裁規則の制定作業を始める予定でございまして、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律及び人事院規則の施行時期に合わせるようにいたしたいというふうに考えているところでございます。
 それから、介護期間の点でございますが、これは一般職の公務員の場合については連続した三カ月以内ということになっておりまして、裁判官につきましても一般職の例に準じてということになっておりますので、一般職の国家公務員、それから裁判所の一般の職員の方についても三カ月以内ということになっております関係上、裁判官についてだけ三カ月を超えてというようなことは困難ではないだろうかというふうに考えているところでございます。
 次に、司法修習生につきましては、法曹にふさわしい品位と能力を備えることを目的といたしまして、法律で二年間の修習を受けるということになっておりますので、その修習期間中、長期間修習しないということはおよそ司法修習制度というものの性質から考えていかがなものかというふうに考えられるわけでございまして、司法修習生につきましては介護休暇制度を導入しないということにいたした次第でございます。
#140
○栗原君子君 最後になりますが、民間の場合はまだまだ大変遅うございまして、従業員が三千人以上のところでしたらかなり進んでおりますけれども、中小零細企業になりますと本当に全く進んでいないという状況があります。そんな中で、私は公務員を中心に先にこういったものを導入することができるということは大変喜ばしいことであると思っております。もう既に自治体の中では条例化が進んでいるところもありまして、期間が六カ月というところもあるようでございます。
 私は、とりやすい状況といいますか、環境づくりをぜひお願いしたいと思います。以前、育休がありましたけれども、結局一年が待てなくて、それは給料が入らないわけでございまして、待てないものですから六カ月か七カ月すると出ていくというような状況がありました。そういったことも考慮していただきまして、とりやすい環境づくりをぜひお願いいたします。
 最後に、ちょっとそこらあたりの決意のほどをお伺いできればと思います。
#141
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) ただいま御審議いただいております法案が成立いたしまして、裁判官につきましても介護休暇という制度ができました場合には、裁判官につきましても介護休暇というものが権利として認められるわけでございますので、私どもとしてま裁判官がとりやすいような環境をつくるように努力いたしますとともに、また一方では裁判を受ける国民の皆様に迅速な裁判の実現という点で御迷惑をかけないようにも措置したいと、両方をにらみつつ適切に対処していきたいというふうに考えておるところでございます。
#142
○委員長(猪熊重二君) 質疑の途中でございますが、午後六時三十五分まで休憩いたします。
   午後四時三十四分休憩
     ―――――・―――――
   午後六時三十三分開会
#143
○委員長(猪熊重二君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、裁判官の介護休暇に関する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#144
○翫正敏君 翫正敏です。
 最高裁にお聞きします。
 ことし裁判官の任官を拒否された神坂直樹氏のことについて理由をお聞きしましたが、答えてもらえませんので非常に遺憾であります。
 それで、ちなみに戦後、裁判官になろうとして、いわゆる修習もちゃんと受けて、法律上の欠格事由もなく、裁判官になりたいと希望したにもかかわらず任官を最高裁によって拒否された例というのを全部挙げて、それからその拒否の理由を本人に具体的に示した場合がないのかどうか。三番目は、国会で任官拒否の理由を質問されてもお答えになりませんけれども、お答えにならない法的根拠を、それぞれ示してください。
#145
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 戦後、司法研修所を卒業された方で、裁判官の採用願を出して採用にならなかった方の数の点でございますが、これは昭和四十四年以降ははっきりとした統計がありますので、その方は五十二名でございます。
 それから、それ以前の方につきましては、採用願を出してその後で願書の撤回をされた方もおりまして、私ども正確な統計は持ち合わせておりませんが、昭和四十四年よりも前でとにかく願書を出された方というのは百四十九名おります。そのうち、私どもではっきり不採用ということで押さえておる方は五十二名でございまして、あとの方につきましては願書を撤回されたのか不採用なのか、何分にも古いことで数字をはっきりと統計を持っていないことをお許し願いたいと思います。
 それから、最高裁判所といたしましては、不採用になった人につきましては、具体的にどういう理由で不採用になったということを過去に本人に話した例はないものと承知しております。
 それから次の、本件のようになぜそれでは不採用の理由を言わないかという点でございますが、任官希望者の不採用は、要するにその方について総合的な評価の結果といたしまして裁判官として採用するには至らなかったということでございまして、その場合、具体的にどのような理由からその者が不採用になったかを明らかにするということは、総合的な評価という問題から考えまして、無用な誤解や紛争を呼び起こすことになり、適当ではないというふうに私どもは考えているところでございます。例えば、各官庁であるとか企業でも人を採用しなかったときにその具体的な理由を明らかにする例がないというのも同様な配慮によるものではないかと思われます。
 それでは、本人になぜその理由を告知しないかという問題が次にあるわけでございますが、本人にだけでも理由を告知すべきではないかという御意見があることは私どもも承知しているところでございますが、ただいま申し上げましたと同様の理由から本人だけに対する理由の告知も適当ではないと考えております。また、本人にだけ理由を告知いたしましても、それが直ちに公になる可能性が強いわけでございまして、このようなことを考えますと、理由の公開も本人だけに対してすべきではないかという点につきましても一般に公開しない場合と同様に私どもは考えざるを得ないということで、過去におきましてもそういう答弁をしているところでございます。
#146
○翫正敏君 法的根拠は何ですか。国会で質問されても答えなくてもよいという法的根拠は何ですか。
#147
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 私どもとしては、採用するかどうかという点は総合的な評価の結果裁判官としてふさわしいかどうかというこでございまして、個々の理由というものを挙げることによってかえって無用な誤解や紛議を呼び起こすというようなことから、大事に関することにつきましては よその省庁でも同じかと思いますけれども、説明は差し控えさせてもらっているところでございます。
#148
○翫正敏君 じゃ、いわゆる成績ではなくて本人の思想信条に基づいて不採用にするということはあり得るわけですね。
#149
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 私ども裁判所といたしましては、憲法を擁護する義務を負っているわけでございますので思想信条による差別ということはいたしてはならないということでございまして、裁判官の採用につきましても思想信条による差別ということはいたしておらないわけでございます。裁判官としてふさわしいかどうかという観点から総合的に判断いたしまして、ことしの場合には裁判官として採用するに至らなかった、こういうことでございます。
#150
○翫正敏君 じゃ、念を押しますが、要するに思想信条とは関係ないという、こういうことなんですね。その理由だけははっきりしているわけですね。
#151
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 裁判官の採用につきましては従来からも思想信条による差別はしておらないわけでございまして、ことしの採用についてもそういうことによったものではない、こういうことでございます。
#152
○翫正敏君 本人の陳述によりますと、九三年三月、司法修習生をしておりましたときに教官、我々普通で言えばクラスの先生というのに当たる方ですが、この人がクラス会というものを開いてクラスの同級生の人たちと一緒にいた席でこういうふうに言っているということが本人の陳述で記録にまとめたのを私持っているんです。
 神坂君が裁判官になったら危ない。というのは、僕は、神坂君のことをカミソリ神坂だって思ってたんだよ。とにかく要件事実がすごく得意だっただろ。クラスで一番できてたよ。でも、実務っていうのは違うんだよ。要件事実みたいなカミソリで、ずったばった切ってしまったんでは、根本的に解決しない。まあ、あれだな、少しなまってるナタぐらいなもので、当事者双方から色々な事情を聞いて集めて、これぐらいが落ちつきどころかなって見極めるのが、結局、一番大事なんだよ。
 裁判官になったら、洋暦でやるんだろ。当事者が不可解に思わないかなあ。というようなことを言ったと言っているんです。
 それから同年の七月にまた別の合宿研修会というんですか夏期研修会、こういうものがあったときの懇親会の席において、別の先生なのかもしれませんが、とにかくクラスの先生が本人に対して、前に裁判官を希望しているということを聞いているが、そうじゃなくて弁護士の事務所の方がいいんじゃないか、それはもう決まったか、やっぱり裁判官を希望しているのかと。「もう遅いよ。早く言ってくれないと。とにかく今からじゃあ、難しいなあ。」、そういうふうに言ったというふうに言っています。
 それから、九三年の九月には電話が自宅へその先生からかかってきまして、そして、
 神坂君は裁判官より弁護士に向いてる。
 神坂君が裁判官になったら、苦労するんじゃないか。物足りないんじゃないか、同僚とうまくいかなくなるんじゃないか、と思ってね。なかなか続かないと思うよ。基本的に合議でやっていく仕事だからね。
 はっきりいって、裁判官は十中八九駄目だろう。私が決めるんだから、なんともいえないけど、成績は問題ないよ。民裁では、おそらくトップクラスだよ。難しい理由は、ひとつは、時世だな。おそらく弁護士事務所が決まらない人もいたりして、任官希望者が一〇〇を優に超えるだろう。だから成績が悪い人や、人柄に問題のあるんじゃないかという人には難しいって言ってるんだよ。
 西暦起案は、当事者が怪訝に思うはず。ちょっと教室で議論したよね。確か、法的には根拠はないかも知れないが、元号法もあるし、慣行もあるしね。でも考え直さなかったじゃない。普通なら、教官に言われたら、あ、そうかと直すはずなんだけどな。成績は優秀でも、人柄については、教官が前期みたところで客観的に言うしかないから。
 神坂君は論理的思考は好きだから問題ないけど、また論理的思考だけでもいけないんだな。切れすぎるのも困るんだよ。成績が良すぎるっていうのも考えもんなんだ。ほどほどがいいんだ、ほどほどが。平凡が一番なんだよ、平凡が。
 こんなことを言っているんです。
 それから九三年十月には、やっぱりこの先生が「神坂君はやっぱり弁護士に向いてるよ。」云々というふうに、とにかくこんなような調子で肩たたきがあって、そして弁護士に向いている、向いていると言われたその理由がこんな理由だということを言われているんです。
 さらに別の機会には、九三年十二月の時点ですけれども、これは願書受け付けの前日というふうになっていますが、やはり教官が神坂君は裁判官には向いていないと思うというふうに言って、そして「箕面忠魂碑訴訟の当事者をやっていたことが問題なのか」と本人が質問をしたところ、「そうだ。君は、確信をもってやっている。このような人は裁判官には向かない。弁護士になって活躍した方が君のためだ。」、こういうふうに言ったというふうに本人は陳述しているんです。
 成績は全然問題なくて、やはりその本人の思想信条というものをもとにして任官が拒否されたというふうに考えざるを得ないんですけれども、いかがですか。
#153
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 司法研修所の教官は、裁判官教官であれ、あるいは検察官からなった教官であれ、あるいは弁護士からなった教官であれ、教官とそれから司法修習生という関係で進路指導なんかについて話が出た場合にはアドバイスするということはあるわけでございます。
 それから、ただいま委員が御指摘のようなことの内容の一部は先日最高裁判所に対する異議申し立て書の中にも書いてあったわけでございますが、それによりますと、どうも教官とその採用されなかった人との話というのは宴会の席の話とかいうようなことがあるようでございまして、私どもといたしましては、教官と修習生との信頼関係に基づく進路指導の一環であるということで、委員御指摘のような事実があったかどうかというような点については確認はしておりません。
 しかし、私どもといたしましては、午前中にも申し上げましたように、いろいろな要素を総合判断いたしまして裁判官として採用するにはふさわしくないということで不採用としたものでございまして、思想信条を理由として採用をしなかったということではないということは御理解いただきたいと思います。
#154
○翫正敏君 本人の陳述、最後のところではこんなふうに言っています。
 最高裁は、その期待を裏切り、私の不採用を決定したのであり、その怒りと悲しみは言葉には尽くせないものがある。裁判官希望者のこれまでの経歴や修習中の活動を理由として、任官拒否処分を行うことは、「国民に開かれた裁判所」の実現の流れに逆行するものであり、司法反動の再来というほかなく、最高裁の本日の政治的・差別的決定は、司法の独立、裁判官の独立・市民的自由、司法修習生の自由な活動の保障を脅かし侵害するものとして、厳しく断罪されねばならない。
 というふうに言っています。
 同僚の、同じ期で勉強しておられた方が「最高裁判所人事局 御中」ということで抗議文を出しておられるものの一部をちょっと読み上げてみますと、神坂氏が成績面で不採用とされることは全くもって考えられないことだと。彼と一緒にずっと勉強していて、成績についてはもう全く問題がない、一番、二番と言っていいくらいの成績であったということはもう間違いないということを言った上で、そういう人が裁判官になれないということは 「人権保障の最後の砦である裁判官に市民的自由が保障されなければ、裁判官が自己の主催する裁判手続において、民主主義原理のなかで保護されない少数者の人権を実現することは、極めて困難になることと思います。それは司法の自殺行為ではないでしょうか。」というように書いておられる同級生の司法修習生の人もおられるわけで、午前中質問したときにも、その他何人もの人たちや弁護士会やさまざまなところから採用すべきだ、本人は成績がいいんだから、よかったんだからこれは間違いないことだと、みんなクラスの仲間がそれを証明しているというふうな文書が来ているということはお認めになりましたので、これはやっぱりもう一度、成績面からの問題が全くないということは明らかなわけですから裁判官として採用すべきだというふうに思うのですが、再考しようというような意思はございませんか。
#155
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 判事補の採用につきましては、午前中にも申し上げましたように、司法修習中の成績、二回試験の結果等をもとにいたしまして、本人の能力、識見その他一切のファクターを考慮して、総合的に見て裁判官にふさわしいか否かということで採否を決めているところでございまして、全く思想とか信条によって採否を決するということはないわけでございます。
 それから、今回不採用になった方につきましては、ただいま委員御指摘のような趣旨のことも載りました異議申し立て書が最高裁判所に提出されまして、その異議申し立て書につきましては裁判官会議で御審議いただきまして、その結果異議申し立てば却下ということになったわけでございます。この点は御理解いただきたいと思います。
#156
○翫正敏君 時間ですから終わります。
#157
○紀平悌子君 最高裁にお伺いをしたいと思います。
 現在、いわゆる高齢者世帯、男性六十五歳以上、女性六十歳以上だけか十八歳未満の子供が加わった世帯、これが初めて二百万を超えて一年で六%増、八世帯に一軒が高齢者世帯となっております。この驚異的な速さで進む高齢化社会に際して、老いた場合は子供に自分の世話をしてほしいという者が六割を超えているという調査がございます。裁判官においてもその事情には変わりないと思います。
 ここで裁判官についても介護休暇制度を導入するということはまことに時宜を心得たものと思っておりますが、介護の中心となるのは現実には女性でございます。現在、女性の裁判官の正確な数と、その年齢別構成についてまずお伺いをしたいと思います。
#158
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 現在、下級裁判所の女性裁判官は全部で二百三人でございます。そのほかに最高裁判所判事が一名ございます。
 その下級裁判所の女性裁判官二百三名の年齢分布でございますが、二十代が三十四人、三十代が九十七人、四十代が三十二人、五十代が二十八人、六十代が十二人というぐあいになっているわけでございます。
#159
○紀平悌子君 ありがとうございます。
 裁判官の待遇改善の一環として百二十二国会で育児休業法の導入がございました。この制度につきまして、その対象に当たる方々の申請状況を教えてください。
 また、裁判官の職責が裁判の結審ということを一区切りとすることを考えますと裁判官はまとまった休暇がなかなかとりにくいと思われますが、最高裁規則では今後どんな基準で介護休暇を認めていかれるのかお聞かせください。一定期間というのは最長でどのくらいか、また裁判の合間合間に一日あるいは数日単位で休暇がとれるのか、また男性の場合と女性の場合では違いがあるのかお聞かせください。
#160
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) まず、育児休暇の問題でございますが、この制度が発足いたしましたのが平成四年四月一日でございまして、これまでの間に育児休業の申請をした裁判官は十四名ございまして、その十四名いずれの方についても育児休業が認められております。この十四名の方はいずれも女性の裁判官でございます。
 次に、裁判官の介護休暇の取得の単位でございますが、裁判官につきましてはその職務の特殊性から日単位による取得ということを考えておるわけでございます。具体的には連続する三カ月の範囲内で継続的にとることも可能ですし、断続的にとられることも可能と考えております。取得形態はケース・バイ・ケースであろうかと思います。委員御指摘のように、裁判の合間を縫っての一日単位の取得ということもあり得るものと考えておるところでございます。
#161
○紀平悌子君 ちょっと戻りますけれども、育休の方でございますけれども、男性は一人もいらっしゃらなかったわけですか。
#162
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 育児休暇につきましては、ただいま申請し認められた者は十四名で全部女性の裁判官でございます。どうも現状では女性の方が生まれたばかりの子供の世話をした方がいいというようなことで、申請は女性の裁判官になっているようでございます。
#163
○紀平悌子君 女性だけが育児に携わっていいか否かはきょうは問題といたしませんけれども、それはまた後ほどお時間をとらせていただきたいと思います。
 男性の裁判官が一人ぐらいはとっていらっしゃるかなというふうに思って実はちょっと質問を反らせておいたんですけれども、一人もいらっしゃらないということでございます。
 それでは、裁判官が介護休暇中は報酬を受けないということで、これは先ほど私がちょっと座を外しましたときに御質問は同僚議員から多分あったと思うんですけれども、憲法八十条二項、裁判官の報酬は在任中減額されないという規定があることと抵触をしないかということを再度お伺いしたいと思います。
#164
○政府委員(永井紀昭君) ただいま御指摘の憲法の規定の趣旨は、裁判官が経済的な事情に左右されることなく職務に専念できるようにして、その身分を保障いたしまして司法の独立を保障しようとする、こういう考え方のもとに憲法が定められている、こういうふうに理解しております。
 したがいまして、これを害するおそれが全くない場合の報酬の減額は憲法の規定に抵触しないということで、この介護休暇制度は裁判官が期間中無給であることを知った上でその完全な自由意思により介護休暇をとるかどうかを選択するものでございますので、裁判官の身分保障、司法の独立を何ら害するおそれはない、また憲法の規定に違反するものではないと、かような考え方をとっているわけでございます。
 ちなみに、育児休業につきましてもやはり現在のところ無給でございまして、さきの国会ではその御議論をいただいたところでございます。
#165
○紀平悌子君 時間がございませんので簡単にお答えいただきたいと思いますけれども、介護休暇の場合、一律無給ではなくて、休暇の長さに応じて段階的に対応ができないものか。これはできないならできないと、一言で結構です。
#166
○政府委員(永井紀昭君) 現在のところはそれはできないという結論と考えております。
#167
○紀平悌子君 法務大臣にお伺いいたします。
 裁判官を初め、介護休暇制度の整備及び充実につき大臣の御意見をお聞かせいただきたいわけです。育休も介護休暇も同じでございますが、特に女性で社会参加あるいはさまざまな責任のある立場に参加をする人たちの問題ということが現状では重いわけでございます。そのことをどんなふうにおつむにお置きになっていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。
#168
○国務大臣(中井洽君) ちなみに、法務省におきましては育児休業を男の方がとったのも何人かございます。国会の御議論、御努力の中でおいおいと育児休業あるいは介護休暇制度ができつつあることを大変うれしく思います。
 特に、私自身は、父親を十数年植物人間のまま母と女房がこれを見ておりましたので、私の家の場合にはまあ何とかやりくりしながらこれができたわけでありますが、お話しのような共稼ぎの方は大変であろうか、このように考えております。
 制度はできてまいりましたが、これから財政的、あるいは世の中の認識が進むに従って給料等も休暇中どうあるべきかとか、おいおいと論議が進んでいくことを期待いたしております。
#169
○紀平悌子君 ありがとうございました。終わります。
#170
○安恒良一君 この法律は、一般職公務員に準じて裁判官にも介護休暇制度を導入するというものですから、私は内容的には非常に結構だと思っております。全会一致で可決されてしかるべき法案だと思っております。
 ただ、立法の形式上、若干この際ただしておかなきゃならぬ点がある。それは、一般職公務員の場合は勤務時間、休暇に関する法律で介護者の範囲もそれから介護期間も全部法律に規定してあります。ところが、この法律は「最高裁判所規則で定める。」ということになっておりまして、その中身は、同僚先生からいろいろ聞かれて、最高裁側もいわゆる一般公務員と同じだと、こういう答え方をしているわけですね。これは人事院規則ができたらうちもつくりますと。
 例えば、総定員法に基づいて裁判所の職員定員法というのはやはり毎年毎年国会の審議で定めておりますし、また裁判官の報酬に関する法律も人事院の勧告がありますとこれは毎年毎年国会で十分議論をして決めています。ところが、この法律をつくった当時は、最高裁によって決められる、最高裁の規定で決められるという原案だったんです。ところが、参議院の法務委員会でそれはいかぬということで満場一致、いわゆる「別に法律の定めるところにより」ということで毎年国会で議論して決まっているわけですね。
 ところが、またぞろ今度こういうものを出してきて、なぜかといったら、育児休業法もこういうことでしたと、こういう言い方をしますけれども、私はこれから先この中身が、国家公務員が非常にまた、改悪されることないと思いますが、改正でさらに長くなる場合もあると思うんです。既に地方自治体では同僚議員の質問でも六カ月と、こういうこともあったわけですから、その意味からいうと、国会で十分に議論をすることを嫌がってなぜこんなことにしたのかなと、立法上。ほかのやつは全部国会でちゃんとチェックするものはチェックする、バランスがあるかどうかということを。この法律だけまたぞろしてきている。
 そこで、「職員の例に準じ」と書いてあるわけですね、この法律は。ですから私は、「職員の例に準じ」ということについて裁判所を呼んで聞いたら、いや国家公務員と横並びに準じますと。ここまではまだいいんですよ。ところが、「準じ」というのを最高裁規則で決める場合は、その合理性があれば、その合理性というのは世間的一般的合理性があれば最高裁としては独自に決められる、こう言うわけです。そういう解釈をここでするわけです。そうなりますと、これはやっぱり法律の縛りをきちっとかけておかないと、世間的合理性があれば最高裁の中で決められると言われてもそんなものは手前みそであって、自分たちで合理性があると言われても、合理性があるかどうかというのは国会でちゃんとチェックするのが国会の我々の権限でありまして、また任務であるわけです。
 ここで「適用を受ける職員の例に準じ、」というこの表現について、この法案を提出された法務省としてどういうふうに考えられるか、また私が言ったことについてどういう縛りをお持ちなのか。また、最高裁側も世間的合理性があれば最高裁で決められるなどという、そういうものについての物の考え方についてはっきりしてもらいたい。
 以上です。
#171
○政府委員(永井紀昭君) この法案をつくりましたといいますか、立場で一種の立法趣旨的なことをお話し申し上げます。
 私ども、内閣の法制局ともよく相談いたしまして、どういう形の条文にするかということをいろいろ検討してまいったんですが、結局は国家公務員が一般的にこういう介護休暇制度を入れるということになりました以上、裁判官にもこれは入れなきゃいけない。裁判官につきましてどのような形の条文をつくるかということで、やはり先般来御説明いたしておりますように、報酬を受けないというところが一番やっぱり法律をつくるべき意味がある。それからもう一つは、やはり一般職の例に準じというのは一般職の例によるという考え方でつくったつもりでございます。
 したがいまして、どういう趣旨かといいますと、この一般職の法律第二十条にございます介護の対象者あるいは介護要件あるいは介護休暇の期間というものにつきましてはこの一般職の条文にあるとおりにしていただくという、そういう基本的な骨格はすべて一般職の法令に従うという原則でつくったつもりでございます。したがって、例えば裁判所におきまして最高裁規則で介護休暇期間につきまして三カ月を四カ月にするとか五カ月にするという、そういうことまではおよそ想定していないというふうに考えておるところでございます。
#172
○最高裁判所長官代理者(堀籠幸男君) 最高裁判所といたしましても、この法律が規則にゆだねるといいましても、規則を制定する際には、さらにはまた運用の面におきましても一般職の法律の枠を超えて行うことはないということをこの席で明らかにしておきたいと思います。
#173
○安恒良一君 そこはよくわかりました。
 それでは、「例に準じ」ということと例によるというのは、これは日本語として厳格に解釈するとやっぱり後で問題が起こります。だから、今回の場合、今さらこの法律のここだけ直すとまた法制局の手を煩わしてとてもきょうあすじゆうに間に合いませんから、大臣、やはりこういうところは解釈にいろんな問題が起こらないように、またいろいろ改正がじきあると思いますからそのときには御努力願いたい。
 なぜかというと、裁判官であっても一般公務員の上でも下でもない、やはり同じ例だということにしないと、同じ裁判所でも書記官や事務官が働いているわけですから、身分によって上があったり下があったりしても困りますから、その意味からいうと、今言われたように、ここの「例に準じ」ということは職員の例によるというふうに私はここで明確に読んでいいということを大臣からお約束いただきたい。
#174
○国務大臣(中井洽君) 先生のおっしゃるとおりでございます。また、今後の点につきましては十分留意をさせていただきます。
#175
○安恒良一君 終わります。
#176
○委員長(猪熊重二君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 裁判官の介護休暇に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#177
○委員長(猪熊重二君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#178
○委員長(猪熊重二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#179
○委員長(猪熊重二君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、深田肇君が委員を辞任され、その補欠として千葉景子君が選任されました。
    ―――――――――――――
#180
○委員長(猪熊重二君) 次に、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#181
○服部三男雄君 外国人弁護士法の改正案に関することでお尋ねしたいと思います。
 現行の外弁法、つづめて外弁法と申しますけれども、アメリカ及びEC、現在のEUですけれども、が我が国に対して、外国弁護士の受け入れ制度がないのはサービス産業の自由化等の観点から問題であるとして、一種の貿易摩擦問題の一環として政府間協議の対象とした、こういう経緯があるわけでございますが、我が国政府としましても、この米国及びEC、以前のECと大変厳しい政府間折衝を行いました。結局、六十一年五月に日弁連からの要請もありまして妥結したわけであります。そして、六十二年四月の現在行われております外弁法の施行後も米国、ヨーロッパから外国法事務弁護士と弁護士との共同経営の禁止の解除、いろいろ現行法の規制に対する緩和というんでしょうか、こういう要求が重ねて強く出されて現在の問題に発展していると承知しております。
 まず、法務当局としてこの外弁法施行後のこれまでの問題に対してどのように取り組んでこられたのか、アウトラインを簡潔に、専門的なことであれば当局で結構でございますのでお答えをお願いします。
#182
○政府委員(永井紀昭君) 委員、お話がありましたとおり、現行外弁法は昭和六十二年四月に施行されました。その後、平成元年以降、アメリカ及びECから外国弁護士受け入れ制度に関する規制緩和要求が随分とされました。法務省におきましても日弁連と意思疎通を図りながらアメリカ及びECと協議を重ねてまいったわけでございますが、なかなか容易に結論を得ることができませんでした。
 そこで、平成四年になりまして実は臨時行政改革推進審議会、いわゆる行革審の第三次答申というのがございまして、ここにおきまして、政府は、日弁連の自主性を尊重する一方、主体性を持って本問題の解決に向けて努力する、そのため広く国民各層関係各界の意見を反映し得る開かれた公式の場を早急に設け結論を得るよう努める、こういう提言を受けたわけでございます。
 そこで、法務省といたしましても、この答申を踏まえまして、日弁連と共催で有識者を中心といたします外国弁護士問題研究会というのを発足させました。それが平成四年九月のことでございました。この外国弁護士問題研究会では非常に御熱心な御審議をいただきまして、平成五年九月、昨年の九月にこの研究成果を取りまとめられまして、法務大臣及び日弁連会長あてにその報告書の提出を受けたところでございます。
 法務省は、この報告書の内容を踏まえまして、日弁連の自主性を尊重して、日弁連と外国弁護士受け入れ制度の改善に向けて協議を行ってきたわけでございますが、その結果、日弁連におきましては、ことしの二月に外国弁護士受け入れ制度における規制緩和を目的とした外弁法改正に関する制度要綱というものを策定されまして、日弁連会長から法務大臣あてにこの制度要綱に基づいて外弁法の改正をしてほしいという、そういう要望がされたわけでございます。そこで、法務省では、この制度要綱の内容を尊重して立案作業を行いまして、四月十九日の閣議決定を経ましてこの改正法案が国会に提出された、こういう経緯になっているわけでございます。
#183
○服部三男雄君 今回のこの外弁法の改正の問題というのは、昨年のガット・ウルグアイ・ラウンド交渉の中に、先ほど申しましたサービス貿易交渉の一つである、このように取り上げられたと聞いております。
 日弁連も、どうも実態は外弁法をシステム化しても大してアメリカからも入ってきていないからという観点もあったのではないかと推測するんですが、ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉の進展に必要という判断も加わって、特に相互主義に関する改正というようなことがテーマになったようであります。
 私自身は、こういう司法にかかわる問題というのは、ガット・ウルグアイ・ラウンドのサービス貿易の自由化という一種の貿易摩擦の解消問題とやや趣を異にする観点から考えねばならぬのではないかな、このように考える一人でございまして、事実六十二年までは日弁連も法務当局もそういうお考えであったように聞いておりまして、再度その点について、この外国人弁護士問題というのは日本の司法制度の根幹にかかわる問題ではないかと。というのは、アメリカなんかは特に訴訟社会の弊害というのが今強く言われておるわけですが、こういう観点からも法務当局がどういうお考えで、これは日弁連が主体には違いないんですけれども、司法制度の根幹にかかわることは法務当局でございますので、どういうお考えでこれに対処されたのか、お伺いしたいと思います。
#184
○国務大臣(中井洽君) 先ほど政府委員からお答え申し上げましたように、六十二年の改正当時、先生のお話のあったような形で随分議論があったことを私も承知をいたしております。それから今日までかなりいろんな形で御議論いただき、また日弁連の皆さん方におかれましても、日本における国際的な法律事務の増大にどういうふうに対応するか、こういった観点からも御理解が進んだ、このように考えております。
 もちろん、我が国の司法制度を変更する、こういうことでありますから司法制度の根幹にかかわるものではありますけれども、ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉におきましては、御指摘のように弁護士業務の問題がサービス貿易に関する自由化の問題として取り上げられてまいりました。外国法事務弁護士が行う業務が依頼者に法律サービスを提供する業務であるという側面があることも私どもは否定しがたい面がある、このように考え、サービス貿易に関する自由化の問題として今回いろんな形でお取り上げをいただき、今日法案提出に至ったと考えておるところでございます。
#185
○服部三男雄君 日本の比較的保守的な考え方の多くの人は、明治もそうですし、第二次世界大戦後もそうですし、それから今回の貿易摩擦の問題、非常に日本というのは外圧に弱いんではないか。中には、日本の現在の制度を変えるのに日本の国内で声を上げただけではだめなんで、アメリカに頼んでわざわざ手を回してまでやりかねない人もいると聞いておりまして、そういう外圧という問題、それは日本の制度も社会の進展とともに変わる必要は確かにあるんですけれども、どうもこの外弁問題はその典型のような気がいたします。
 まず最初の突破口の六十一年がそうでありますし、今回も特にアメリカから規制緩和の一環としてやってもらいたいという要望が非常にあったように聞いておりまして、外圧に負けたという表現が適切かどうか知りませんけれども、この法改正が成りますと、どうなんでしょうか、アメリカやEUは満足するんでしょうか。それとも、さらに今後もっと要求を強めてくるんでしょうか。その点について法務当局はどのように考えておられますか。
#186
○政府委員(永井紀昭君) まず、この法案を改正するまでの間に、実は外国法事務弁護士として現に日本で活動されている方々の意見も日弁連は何回かにわたって聴取されました。また、私どもも意見を聞く機会を得ました。この立案作業中にいろいろ意見を聞いたんですが、私どもはやはり外国弁護士問題研究会の報告書にのっとりまして、筋を通してこの改正法案を出したわけでございます。
 現実にアメリカあるいはEC、現在はEUと言っておりますが、からの反応は必ずしもこれで満足という回答は返ってきておりません。やはりまだ不十分じゃないかと。ところが、これに対して実はアメリカやヨーロッパだって我が国よりももっとおくれた外弁制度があるじゃないか、こう言いますとまた口を閉ざすということがありまして、完全に満足はしておりませんがそれなりに理解しておりまして、こういう改正ができて実際の運用がどうなるかを見守っていきたいというのがまず第一段階でございます。
 ただ、いずれいろんな形でまた言ってくるであろうと。私どもといたしましては、単にその外圧に負けてどうこうするのではなくて、外国弁護士問題研究会における報告書をよりどころにいたしまして、筋を通すべきところは筋を通してはねる、あるいははっきり言いますと、おまえの国だってこんないいかげんじゃないかと言うべきことはやっぱり言うということで対応をしていくべきものだと考えております。
#187
○服部三男雄君 先ほどもちょっと触れましたが、今回の改正は主にアメリカ側の要求が強かったと思うんです。日本の社会の流れというのは、特に日本は豊かになってからは大体アメリカを十年か二十年おくれて追っかけている、社会現象としてですよ、そういうことを指摘される方も多いんです。
 今、アメリカで一番問題になっているのは、司法制度の中でも司法現象として問題になっているのは、何でも訴えるんだと。これは司法の伝統が違いますから一概に日本がそうなるとは思いませんけれども、アメリカでよく言うのは、タクシーの運転手が実は弁護士だったと、それが緊急事故が起こると、エマージェンシー・カー・チェイサーと言うのだそうですけれども、仕事欲しさに追っかける、あるいは逆に事件にしろと進めにいくと。最初は着手金は要らない、成功報酬はこれだけくれればいいとかき立てにいく。どうも日本の弁護士さんとはちょっとその点感覚が違う人が多い。今この改正によって日本に入ってくるアメリカ及びEUの弁護士さんがそうだと言うわけじゃありませんけれども、そういう訴訟社会の弊害というものをアメリカ自身でも既に反省されていろいろ規制しようという動きがある中で、このような改正によって一挙に訴訟社会に進むとは思いませんけれども、やっぱりそういう弊害も考えなきゃならぬじゃないか、こういうことについて法務当局はどのようにお考えですか。
#188
○政府委員(永井紀昭君) 今回の法改正をいたしましても、実は外弁法の基本は、骨格は変えてないわけでございます。それはなぜかといいますと、この外弁の受け入れ制度といいますのは、基本的には例えばアメリカならアメリカの弁護士の資格を持っている方が日本で試験を受けなくてもアメリカ法について日本で仕事をやってよろしい、日本法はやっちゃいけません、こういう骨格は変えていないわけでございます。したがいまして、アメリカの弁護士あるいはイギリスの弁護士が来て、いわば自分の母国法を中心にしかできない、日本法をやるわけにいきませんので。そういう観点で考えますと、果たしてそんなにたくさんふえるだろうか、それだけまたペイするだろうかということがあるわけでございまして、そんなにたくさんどっと押し寄せるわけではないと思います。
 それからまた、仮にこういう弊害が起きるんじゃないかというおそれもそれは全くないとここで断言するわけにはいかないんですが、基本的にただいま委員がお話しされましたとおり法曹人口が圧倒的に違うわけでございます。アメリカは弁護士の資格を持っている人間が現在約八十万人、日本は弁護士資格を持っている方が一万五千人でございまして、この圧倒的な数量の違いという問題が逆に日本弁護士ももう少し人数ふやした方がいいという議論を今呼んでいるわけでございますが、そういう法曹人口の違いがある。あるいはアメリカ特有の極端な成功報酬制度でございますとか、あるいは民事陪審制度でありますとか、懲罰的な損害賠償制度といった制度といいますか仕組みがいろいろあるものでございますから、それは日本ではやっているわけじゃございませんのでアメリカのような形にすぐになるということにはならない、かように思っておるところでございます。
#189
○服部三男雄君 司法法制部長、今、相互主義の問題をちょっと触れられましたのでその関係でお尋ねしたいわけです。
 現行の外弁法はかなり厳格な相互主義をとっておられたのではないかと思うわけでありますが、今回それがやや緩和されているんではないかと思うわけでありまして、まず当初現行法が厳格な相互主義をなぜとったのか、そしてそれがどういういきさつで今回緩和するようになったのかということをお尋ねしたいわけです。
 特に、今回の改正後は現行の第十条三項第二号の条約その他の国際約束が存在する場合には相互主義を適用しないということになっておりますが、そのような条約その他の国際約束というのは今あるのかどうか、あるいはこういうことが近い将来に出てくるのかどうかということで、制度が少し変わってきている点についての説明をお願いしたいと思います。
#190
○政府委員(永井紀昭君) 現行の外弁制度といいますのは、先ほども言いましたとおり、アメリカならアメリカの弁護士が試験を受けないで日本で母国法について仕事ができるという、そういう制度でございます。ここで現行法が厳格な相互主義を採用した理由といいますのは、日本の弁護士がある外国へ行ってその外国で日本の法について仕事ができる、こういう受け入れ制度がない以上はあなたの国の弁護士さんも入れませんよという、いわば相互の見合いということで決めたわけです。
 これはどういう趣旨かといいますと、やはり諸外国に対しまして我が国の弁護士に対する門戸を開くように働きかけるという点、あるいはそれによって在外邦人や在外日本企業の利益の擁護拡大ということ、ただいまも言いましたとおり、我が国の弁護士の職務活動の領域、機会の拡大、こういったことから相手国に圧力をかけるにはやはり相互主義をとっていた方がいいという、そういう考え方に立っていたわけでございます。
 この原則は今でもそれなりの理由があると思いますし、それはそれでいいんですが、ただ最近の世界的な流れというのは、こういう厳格な相互主義を余りにとり過ぎているのでは国際化した社会においては非常に問題があるのではないかという、こういう考え方が広く世界的に出てきたわけでございます。我が国の国際的な社会における地位にかんがみましても、やはり日本が余りかたくなに相互主義で、あなたの国があけてくれなきやうちは絶対入れてあげない、こういうようなことを言い過ぎているのほかえって問題ではないかと。
 例えば、実は韓国は外国弁護士の受け入れ制度を持っておりません。したがいまして、韓国の弁護士さんが日本に来て韓国法をやりたいといってもこれはだめですよというような、こういうことになっているわけです。
 やはり、余りに厳しい相互主義というのは問題があるのではないか、お互いにこれから国際的な約束をして最恵国待遇の原則を国際的に広げていこうという、そういう考え方と矛盾してくるということになるわけでございます。
 したがいまして、我が国においても、世界的な趨勢等にかんがみまして、相互主義をそれほどかたくなに頑張るべきではないのではないかということで、実は弁護士会におかれましてもこれはやっぱりもう少し相互主義を緩和すべきだと。この相互主義の緩和につきましては実は外国弁護士問題研究会の報告書には入っていないんです。むしろ弁護士会が積極的にこれはやはり相互主義をもう少し緩めるべきだということで日弁連の決議をされたわけでございます。
 それからもう一点だけ、実はガット・ウルグアイ・ラウンド交渉との関係も横にらみをしているわけでございます。
 これは御承知のとおり、昨年の十二月十五日に実質的な妥結に至りましたガット・ウルグアイ・ラウンド交渉では、世界貿易機関を設立する協定、いわゆるWTO協定ということが今問題にされておりまして、このWTO協定のもとにありますサービス貿易に関する一般協定というものがこの弁護士業務とのかかわりを持っているわけでございます。このサービス貿易に関する一般協定では最恵国待遇の原則を定めておりまして、我が国も約束表においてはこの原則を遵守するというふうに書いているわけでございます。
 したがいまして、我が国におきまして、国会の御承認を得ましてWTO協定を締結してその協定が発効したという場合には、現行法の相互主義はその原則と矛盾してまいりますので法改正をしなきゃならないということがございます。したがいまして、この法案で改正をしていただきますと、将来WTO協定の効力が発効した場合にも改めて法改正をしなくても済む、いわば先取りをしているという、そういう点があるわけでございます。
#191
○服部三男雄君 今のは相互主義の緩和でございますが、今度は職務経験に関する緩和の問題が今回の法改正で問題になっていると思います。
 もともとはアメリカならアメリカ、アメリカの法を扱う弁護士さんがアメリカにおける弁護士として五年以上の職務経験というような形容詞になっておったわけですが、今回それが改正されまして、我が国における弁護士または外国法事務弁護士事務所に雇用されていた期間を通算して二年を限度として職務経験年数に算入するというふうに一部やや緩和されているわけですが、これはどういう理由でなさったのかということが一点です。
 それから、一方、そういうふうに相互主義とか職務経験の年数の緩和ということをなさっているんですが、外国法の弁護士さんが普通の日本の弁護士さんを雇用することの禁止は相変わらず維持されておりますね。こういうところの違いはどうしてなのか。私なんかに言わせれば、日本にも外国人の弁護士はたくさんおられるんですけれども、アメリカのローファームで勉強して向こうのそればかりやっているところで徹底的に鍛えてきた人がわざわざ日本に来るんだから、日本の弁護士さんは留学費用を払わなくてもいいんだからそこへやって勉強させてやった方がかえっていいんじゃないか、司法の構成要素である弁護士さんの知識の向上にもなるんじゃないかな、こういうふうに素人意識には思うんです。
 要件の緩和が二つ、相互主義と職務経験年数の緩和がありながら、この雇用の問題だけはどうして禁止されたのか、この二点についてお伺いします。
 これでもって終わります。
#192
○政府委員(永井紀昭君) 現行法が承認の要件として五年以上の職務経験を要求しております。この原則は今回の改正でも原則的には維持されているわけであります。
 これは先ほども言いましたとおり、我が国では、例えばアメリカならアメリカの弁護士に対して、実は試験を課していないんですね。司法試験なりあるいは簡単な試験も何もやっていないものですからその人間がどういう人間かというのはわからない。例えば、アメリカのカリフォルニア州でロースクールを出てすぐ弁護士になりました、登録しました、その人がぽんと来て日本でカリフォルニア法をやる。その人は本当にどういう人柄なのかというのが必ずしもわからない面があるわけです。したがいまして、原資格国法といいますか、母国において法律事務をきちんとやってきた、そういう能力と資質がある。また、倫理的にも例えば五年間なら五年間、非違行為がなくて懲罰を受けるということもなくやってきたということがわかれば、それはそれなりに信用いたしましょうという、こういう仕組みで五年以上の職務経験を要求しているわけでございます。
 実は、これはアメリカのまとんどの州も、外国弁護士の受け入れ制度を持っておりますアメリカの十六州ぐらいあります。そのうちの十二州はやっぱり五年以上の職務経験を要求しているわけでございます。ほかにも四年のところとか三年のところがございます。
 ただ、今回の改正で若干緩和いたしましたのは、五年の間に日本の弁護士さんに雇われていわば日本で研修といいますか、そういうことをやっている外国の弁護士さんも実はいるわけです。これは、例えばニューヨーク州の弁護士さんがニューヨークで三年本国でローファームにいました。三年後、ニューヨーク州のローファームから日本へ行って勉強してこいと言われて日本に来て日本の弁護士さんのもとで働いている、こういう方がいるわけです。
 こういう方については、少なくとも日本の弁護士が監督して使っているんだからせめて二年ぐらいの期間については通算してあげようじゃないか。したがいまして、ニューヨーク州で三年やって日本で二年そういうふうに働いてきた人は五年の経験をしたんだというふうに認めてあげてもいいんじゃないかということで、実はこれは現行法でも附則にそういう精神が出ております。附則の第二項というところに出ているものですから、似たような制度としてこれを二年に限って職務経験年数に算入いたしましょうということにしたわけでございます。
 それからもう一点、なぜ外国法事務弁護士が日本の弁護士を雇用することを禁止しているかということでございますが、これはもともと外国法事務弁護士というのは日本法を取り扱ってはいけないということになっております。外国法事務弁護士が日本の弁護士を雇いますと、どうしても手足として日本法を間接的に扱うという結果になってくる可能性がある。要するに、雇用主としての指揮監督権というものがあるものですから、外国法事務弁護士が実質的に日本法の処理に介入してくる、こういうことが予想されるので雇用の禁止を維持することが相当であるんだということで、これは何も法務省が考えたり弁護士会が考えているだけではなくて、外国弁護士問題研究会でも一致して一般の有識者の方もこれはまだ禁止すべきだ、こういうことになっているわけでございます。
#193
○服部三男雄君 終わります。
#194
○千葉景子君 時間もこういう時間になりまして、御苦労さまでございます。なるべく今の服部委員と重なる部分は省略をさせていただきまして、できるだけ簡潔に質問をさせていただきたいというふうに思います。
 まず最初に、基本的な問題点でございますが、この外国弁護士問題というのは、先ほどの御答弁でもありましたように、法改正についてはアメリカあるいはECなどからの規制緩和の要望、こういうものがこの改正の一つの契機になったのは確かなんだろうというふうに思うんです。ただ、そうはいいましても、これは本当に規制緩和の一環なのか、通商問題かというと、そうでない問題ではないかというふうに私も思います。
 そういう意味で、一番基本のところになると思いますけれども、この改正の基本的な視点というのでしょうか、国際化が進んでおりますし、日本の中においても諸外国との法律問題、こういうものも多分ふえていると思います。そういう意味では、この問題は決して規制緩和というだけではなくて、そういうニーズにも対応していくというような側面もあるのではないかと思いますが、今回の改正の一番の基本的な視点はどういうところに置いてなさったのか、そこをまず確認させていただきたいと思います。
#195
○国務大臣(中井洽君) 先生御指摘ございましたように、今回の改正につきましては、契機としてはやはりアメリカやECからの強い要求があったと考えております。しかし、これは契機でありまして、先ほど服部議員にお答えを申し上げましたように、国際事犯の数がふえるに従って、やはりこれに対応する体制もつくっていかなければならない、このことが根幹にあったところでございます。
 しかし、外国からの交渉云々という形でこれはスタートいたしましたけれども、その経過におきましては、先生既に十分御承知のように、日弁連と十分な意思疎通を図り、また日弁連の独自の御議論を経た中で私どもは今回の法改正をその御意思を尊重してやってまいった、このように考えております。
 これからもこういう弁護士業務に関する法改正につきましては引き続き日弁連の御意思、こういったものを十分尊重する、このことを基本姿勢に置きながら取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
#196
○千葉景子君 こういう問題については今後もいろいろなそれこそ外圧もあろうかと思うんですけれども、それで何かずずっと後ずさりするというようなことでは解決できないと思いますので、その点については今後の取り組みの中でもぜひ慎重に取り扱っていただきたいというふうに思います。
 ただ、今回の問題については、日弁連との間で共同作業といいましょうか、大変尊重なさって、日弁連の側からむしろ問題提起があったというような形になっています。普通の法案ですと、日弁連の意見を聞くとかそういうこともしばしばございますが、これは異例というとあれですけれども、特殊といいますか、むしろ日弁連が要綱をつくり、それを法務省が受けて法律を作成するというような、いわばちょっと特殊な形になっていると思いますけれども、その辺の意味合い、それからその共同作業をする中で先ほどの通商問題なのか、あるいは基本的な根幹にかかわる問題なのかというあたりで意見の不一致とか、そういう点はなかったのかどうか、その点についてお答えいただきたいと思います。
#197
○政府委員(永井紀昭君) 私どもは、先ほど大臣から御答弁いたしましたとおり、日弁連の意思を十分尊重して動いてきたつもりでございます。と申しますのは、外弁法自体が制定過程では、制度要綱をつくってこういう形で外弁法をつくってくれと法務省に持ち込んでこられたのは実は日弁連でございまして、そうはいいましても実質共同作業をやってきたという、そういう外弁法制定からの経緯もございます。さらに、外国弁護士問題研究会というのも日弁連と共催をしてやってきたという経緯がございまして、いわば意見を調整しつつ共同歩調をとるという、こういうことでやってまいりました。
 それから、今回の改正案では、結論的には一致したんですが、その研究会の過程とかあるいは法律案を具体的につくるときには幾つかのちょっとした視点の違いというのがございました。
 それはどういう点かといいますと、実はその痕跡がこの外国弁護士問題研究会の報告書にも出ているんですが、弁護士さんは司法制度の存立及び維持に不可欠な重要な担い手として、憲法並びに弁護士法に基づき基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする公共的な役割なんだと、これを非常に強く言われたんです。
 これをだれも我々は否定することもなげれば何もないんですが、実はもう一つ、外国の言い方がそれに似ているんですが、こういう弁護士制度というものは、弁護士制度の利用者である国民の側、依頼者、そういう観点があるのではないかと。専門的な法律サービスを提供してほしいという依頼者あるいは国民の側の目というものは一体どうなんだろうかという、そういう観点からの議論が若干ずれるといいますか、力点の置き方の違いなんですが、そういうところが意見のそごといいますか、どうも議論がしっくりいかないなというところが時々ございました。この外国弁護士問題研究会の報告書においても、実は弁護士さんはその両側面を持っているんだということで意見を一致させて動いてきたという、抽象的ではございますが、そういうところが意見がちょっと、力点の置き方が違うというところがございました。
#198
○千葉景子君 今のは大変重要なポイントだと思うんです。社会正義、憲法を尊重し基本的人権を守るといいましても、やまり利用する側の利便といいますか、そういう問題も当然考えなければいけないだろうというふうに思うんです。
 現行法の中で、時代の変化とか利用者の側のニーズとか、こういうことを考えたときにやっぱりここは改正せにゃならぬとか、現行法ではもう対応し切れないんだというような面などはございましたか。その点についてどんな問題があったのでしょうか。
#199
○政府委員(永井紀昭君) 改正しなきゃならぬという論点は今回の改正法案のとおりでございますが、一番大きな点はやはり何といっても外国法事務弁護士と日本の弁護士とが共同した事業が行えないという、原則的に継続的に一緒に仕事をやってはいけないというこの観点が一番のキーポイントだったと思います。外国弁護士問題研究会等でも各企業あるいは弁護士さん、外国法事務弁護士、商社の方、いろんな方の意見をヒアリングといいますか、要望を聞きますと、現行法は日本の弁護士事務所と外国弁護士事務所と一緒にいてはいけないわけでございまして、日本の弁護士のところに行き、次に今度外国弁護士のところへ行くという、物理的にも精神的にも遠回りしなきゃいかぬ、これを何とか一カ所に行けばできるという形はないのかということが大きな議論でございました。
 ただ、そうは言っても、外国法事務弁護士と日本の弁護士とむやみやたらと一緒にやってよろしいと言ったのではこれは非常に問題が起きることがありますので、一定の制限を加えながら、特定共同事業という形で一定の制約のもとに共同事業を認めましようという、そういう結論になっているわけでございます。
#200
○千葉景子君 そこで、その共同事業なんですけれども、今お話をお聞きしましたように、やはり一緒にはできないということになりますと、利用する側は確かに不便を感ずることがございますよね。あるいは日本の法律と外国の法律とまたがるようないろいろな事件処理もしなければいけない。そうなりますと、単純に考えますと、それじゃむしろ共同経営はどうしてだめなんだという感じもするわけですね。
 そうすると、これまでは別々でなきゃいけない。一番わかりやすいものとすればむしろ一緒に共同経営をして利用者の便宜も図るという道もあるだろう。今回はちょうど何かその合間といいましょうか、何となくわかりにくい共同事業という形なんですけれども、これは結局どうなんでしょう、共同事業と共同経営とではどう違い、それでこう制約しなければいけなかった一番のポイントというのはどこにあるのか、ちょっとその辺の違いなども含めて説明をいただきたいと思います。
#201
○政府委員(永井紀昭君) 現行法におきましては、外弁法の第四十九条というのがございます。この現在の六十二年四月に発効いたしました外弁法は非常に慎重な態度で法律をつくっておりまして、まず外国法事務弁護士は日本の弁護士を雇ってはいけないという禁止規定を置いています。
 これは現在でも維持されているわけですが、これはなぜかといいますと、外国法事務弁護士というのは日本法を扱ってはいけないんですね。また、日本法を扱う資格と能力がない、あると認める以上は日本で試験しなければいけないということでございますので。それが前提でございまして、そういう外国法事務弁護士は自分の母国法あるいはその周辺の法律しかできない。いわゆる指定法と言っていますが、そういう特別に認められた法律しかやってはいけないと言っていながら日本の弁護士を雇いますと、間接的に日本の弁護士を使って日本法を扱ってしまう。そして、その収益を収奪するという、そういう結果になってくる可能性もあるわけですね。
 雇用というのはまさに指揮監督で給料を渡すわけですから取り分、収入より少ない給料でいいじゃないかという、こういう問題が起きるわけでございますからあえて収奪という表現を使ったんですが、こういう実質的に日本法の処理に介入してはいけないということから雇用の禁止という規定が維持されておるわけであります。
 四十九条の第二項には、実は共同して事業をしてはいけない、法律用語としては共同経営という言葉は使っていないんです、共同して事業を行ってはいけない、実質は共同経営ということなんでございますが、共同経営をしてはいけないということなんです。
 これも実は一定の要件を決めてきちっとしないで法にいたしますと、これは雇用の禁止の脱法手段として、一緒にやるんだということで外国法事務弁護士が日本法についてもあれこれ指示したり、それが結局は収益を分配できるわけですから、そういう形で非常に危険性があるのではないかということからやはり共同経営というものは原則いけないということを現行法は非常に厳しく制約しているわけです。
 ただ、いわゆる渉外事件というものについてなぜ一緒にできないのか、それはおかしいではないかというのは、これは利用者の利便を含めて、その声が強うございます。現に外国弁護士問題研究会でも、やはり日本法に介入するという危険性を回避しながら一定の範囲で共同事業を認めたらどうかという提言があったわけでございまして、これにつきまして私どもはいろんな要件を決めて、要件を非常に制約しながら、外国法事務弁護士が日本法に不当に介入できないようにしながら共同事業ができるような仕組みというものをつくったのが今回の法改正だというふうに御理解願いたいと思っております。
#202
○千葉景子君 実際には、今回の形態というのは、何か例え話みたいにしていただけるとわかりやすいと思うんですけれども、どんな共同形態と考えたらよろしいでしょうか。
#203
○政府委員(永井紀昭君) 日本の弁護士は、これ図に書くとわかりいいかもしれませんが、日本の弁護士は外国法を含めて、日本法だけでなくて外国法についても実は法律業務を完全に独占しているんですね。したがいまして、日本の弁護士さんは、本当に外国法について堪能であるかどうかにかかわりなく、日本においては外国法も扱えるという前提になっているわけです。一方、外国法事務弁護士は、自分の母国法と指定法以外は扱ってはいけないという制約がもともとあるわけでございまして、この基本骨格は外していないわけです。
 そうしますと、一緒にできるのは一体何かといいますと、いわゆる渉外事件といって、外国法に関する事件は一緒にやっていいじゃないかということで、今回の法案にも四十九条で、いわゆる純粋日本法は扱ってはいけない、そのほかの渉外事件については一緒に共同事業ができますよと、こういうふうな形でやったわけです。
 それで、しかも、それはいろいろ気をつけなきゃいけませんのは、日本の弁護士も司法研修所を出たての弁護士さんがベテランの外国法事務弁護士と一緒にくっつきますと、今度は逆に外国法事務弁護士さんが若い司法研修所出たての日本の弁護士さんをこき使う、こういうのを避けようということでございます。いや、そのこき使うという表現は実は日弁連でもそう言っておられますのであえて使っておるわけでございます。そういうことは避けるべきであろう。したがって、五年以上の弁護士としての経験者が対等に外国法事務弁護士とやれるようにすると。
 それから、場所は同じ場所でやってください、ただし看板は別々の看板をかけてくださいと。一枚の看板にかけてもよろしいが、例えば日本の霞が関法律事務所、こちらはピーター・ブラウン外国法事務弁護士事務所、こういうふうに書いて、そしてそれぞれにお互いに共同事業をやっていますという表示をしてくださいということになっています。
 したがいまして、イメージとしては同じフロアにいる。そして、看板はどういうかけ方をしてもよろしいが、それぞれの事務所の名称は、日本の弁護士は日本の霞が関法律事務所、それから外国法事務弁護士は、一緒に共同事業をやっていても、例えばピーター・ブラウン外国法事務弁護士事務所、それぞれこちゃんと共同して事業をやっていますという表札は掲げてくださいと。
 したがいまして、看板を入り口の両ドアに分かれてかけてもよろしいですし、一枚の看板の中にそれを書いておいても結構ですというような、余りに具体的な話を申し上げたかもしれませんが、イメージとしてはそういう感じでございます。
 ただ、もう一つはお金の面では経理区分はしていただかないと、これは必然的にそうなるんです。日本の弁護士しかできない日本法を扱ったものについては収益を分配してはいけませんから、日本法だけを扱った日本の弁護士が上げた収益については、これは経理区分をしてやってくださいと。ただし、渉外事件で一緒にやった収入は分配して結構でございます、こういうことになるかと思います。
#204
○千葉景子君 何か大体わかってきたような感じがいたします。渉外事件などに業務の提携みたいなものですね、上下関係ということではなくて。大枠そういう感じになるのかなという感じがいたします。
 さて、今回のこの外国弁護士問題というのは、必ずしもその外国弁護士が日本で業務ができるという問題にとどまらず、やはりこれだけの国際社会といいましょうか、そういう時代の変化の中で、ある意味では日本の弁護士制度とか、あるいはその基盤の整備とか拡大とか業務の充実とか、そういう問題にもむしろつながってくることではないんだろうかというふうに思うんですね。
 そういう意味では、最近法曹人口を増加させるということで司法試験の合格者の増員とか、そういうものにも取り組んでいただいているところでございますけれども、そういう問題とか、あるいは法曹養成に当たって国際関係というようなものも十分に法曹として身につけていくということも当然必要になってくるだろうというふうに思います。あるいは国際的な事件に対しての諸制度、そういうものの整備ということも一つは問題になってくるだろうと。
 それから、先ほど今回の改正の一つの視点でもある市民の側からの法律への、あるいは法曹へのアクセスをもっとやりやすくするというような問題、こういうことなどが今度は国内というか私たちに任せられた逆な意味では課題でもあろうかというふうに思うんです。
 そのあたりの問題について、法務省としては今後こんな問題点については取り組んでいきたいとか、こういう方向で頑張っていきたいというようなことがございましたら御意見を聞かせていただきたいと思います。
#205
○国務大臣(中井洽君) 先生御指摘の諸点は、先ほどの外弁研究会の報告書においても提言のあった弁護士制度にかかわる基盤整備というところでも種々述べられているところだと承知をいたしております。
 お話ありました弁護士人口の増加、法曹養成制度の改革については、法曹三者が有識者とともに構成している法曹養成制度等改革協議会において現在鋭意調査研究を行っていただいているところであります。
 その他におきましては、本委員会においてもたびたび御質疑を賜っております法律扶助制度があろうか、このように思います。本年度御審議をいただいております予算案におきましては、法律扶助に関する研究会の経費というものが盛り込まれております。予算通過後早急に研究会を発足させていただきまして、民事事件における法律扶助制度のあり方等について研究を開始をさせていただき、実りある成果を上げていきたい、このように考えております。
 また、弁護士会におかれましては、弁護士事務所の法人化問題等大変大きな問題について御研究を賜っておると聞かせていただいておりまして、法務省といたしましてはこれらの問題に十分な関心を持っていきたい、現在このようなことを考えているところでございます。
#206
○千葉景子君 ぜひ、今御答弁がございました問題を含めて積極的な取り組みをお願いしたいというふうに思います。
 それでは、最後の質問にさせていただきたいと思います。
 今回、この外国弁護士問題、一定のところまで法整備がされてきたわけですけれども、まだ積み残された課題があろうかというふうに思います。また、これにとどまらず、外圧でまた何か言われるというのは問題ですけれども、やはり今後また問題になってくるような課題もあろうかというふうに思いますが、その点についてどのようにお考えか、そしてそれについての今後の検討の方向性、そういうものについてお答えをいただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。
#207
○政府委員(永井紀昭君) 実は、委員も御承知のことと思いますが、外国弁護士問題研究会の報告書で積み残しされているものがございまして、それは国際仲裁代理の問題が解決に至っておりません。これはあくまで報告書においては今後自由化の方向へ向けて制度を改正するよう検討しなさいという、こういう提言がされております。
 私ども、日弁連と早速協議をいたしまして、この六月一日に国際仲裁代理研究会なるものを発足させました。第一回目会合がありまして、第二回目は七月に行うということになっております。これは国際仲裁代理という非常に技術的な問題点ではございますがこれも日本において、渉外的な仲裁を活発化するにはやはり外国弁護士なんかももう少し参加できるようにした方がいいのではないかという、そういう観点からの検討でございます。こういう研究会も日弁連と共催でやっているところでございます。
 さらに、一般的な問題といたしまして、今後もアメリカ、EU等からやはりいろんな形での、規制緩和というような言い方での要求というものが幾つか出てこようと思います。ただこれは、相当今回の改正で解決されたところと、それからもう一つ、日本にだけ要求するのではなくてアメリカに対しても要求すべきものがある。要するに、ヨーロッパはアメリカに対しても要求し、日本にも要求する、アメリカは日本にも要求するしヨーロッパにも要求する。要するに三すくみで、実務家同士がもう少し現実を見据えて話し合いをしなきゃならないという点が随分あるかと思います。お互いに制度的な誤解をしている部分がある。今回の法改正につきましても、中身を一生懸命説明するんですが、自分の側の枠組みでみんな考えるものですからなかなかお互いに理解が進まない。
 そういう意味では、私ども今後日弁連に期待申し上げていますのは、今回の法改正に基づきましていろんな形で共同事業ができる、その共同事業が実際に機能するものとして動けるように日弁連としてもいろいろ図っていただきたいということをお願いしておりますし、先ほどもお答えいたしましたが、これから外国からのいわゆる外圧と言われるものが来ましても、これは毅然たる筋を通して言うべきことは言い、お互いにもっと理解し合った方向で解決を図っていかなきゃいかぬ、こういうふうに思っているところでございます。
#208
○千葉景子君 ありがとうございました。
#209
○翫正敏君 翫正敏です。
 米国やECからの規制緩和の要求がなされてこの法改正がなされたということでありますけれども、欧米と日本とでは弁護士の数が随分違うわけでありまして、それは結局訴訟というもの、裁判というものに対する考え方が国民性として随分違うということだと思うんです。
 アメリカでは八十万人、日本では一・五万人という御紹介があったんですけれども、ECも含めて人口というもので見ますと、それぞれ人口何人に一人の弁護士がいるというようなことになるんですか。
#210
○政府委員(永井紀昭君) たまたま今手元にちょっと統計があったものですから御報告いたしますと、各国の法曹人口、重立ったところを見ますと、法曹人口ということで弁護士、裁判官も含めてお話をいたしますと、日本は約一万八千人ぐらいでございます。アメリカは約八十万人でございます。イギリスが七万五千人ぐらいでございます。ドイツが九万人でございます。それからフランスが約三万五千人ぐらい、こういう数字でございます。
 それで、各国法曹一人当たりの国民数はどうかというのを概算ですが見てみますと、日本は法曹一人当たり、法律家一人当たりの人口が、これは昨年度の数字でございますが六千八百五十二人、アメリカは法曹一人当たり三百二十人、イギリスは六百九十三人、ドイツは九百八十一人、フランスは千七百八十四人でございます。したがいまして、アメリカと比較しますと二十倍ぐらい違いがあるんですね。一番日本に近いフランスでも約四倍近く法律家がいる、こういうことでございます。
#211
○翫正敏君 アメリカが三百二十人ぐらいに一人で、ECがざっと千人ぐらいに一人で、日本が六千人か七千人ぐらいに一人と随分違うわけですけれども、こういうアメリカなどの弁護士が日本へ出稼ぎに来るというようなことは多分ないとは思いますが、現状は外国の弁護士が日本へ来て仕事ができるわけですよね。
 そういうふうになっていて今度は合同事務所ができるようになったということが法改正なんですけれども、今までの法律によって依頼者が不便を受けていたという面は、さっきの説明では、こっちの事務所へ行って、今度は外国法の事務所へ行って、日本の事務所へとこう行ったり来たりをしなきゃいけないという、そういうふうな説明だったですけれども、もしそういうことだけならば、部屋を仕切って隣と隣とにこうやって、扱う法律が違うわけですから、こっちは日本の弁護士、こっちは外国弁護士、こういうふうにすれば十分でないかというふうに思うんですが、そこをさらに踏み込んで合同ということは、そういう仕切りはないわけでしょう。こういう同じフロアの中に弁護士がそういうふうに三人並んだりして座っているわけでしょう。そういうふうになるんでしょう。
 仕切りをつくって別にして不便がないと思うんですが、あえてそうしなかった理由は何ですか。
#212
○政府委員(永井紀昭君) この法律では書いてはありませんが、できるだけ同一の場所でなければいかぬという問題が実はあるんです。それはなぜかというと、弁護士法二十条あるいは外弁法の現在の四十五条に、収益を分配する人たちが事務所を二つ持ってはいけない、こういうのがありまして、収益を分配する以上は同じ場所でやりなさい、こういうことになっております。
 もっとわかりやすく言いますと、委員ちょっと誤解がありますのは、部屋は仕切られても結構なんです、部屋は仕切られてもいいんですが、とにかくすぐ行けるところにいてほしい、そういうことでございます。仕切ってもいいし、こういうふうに同じところに三人並んでいたってこれは差し支えないわけです。ただ、日本の弁護士は日本の法律もできます、外国法事務弁護士は日本法はやっちゃいけません、そういう仕事の区別がありますから、仕切る仕切らないにかかわらず、観念的な事務所としては違うということ、だから場所は同じところにいてほしいと。仕切っても仕切りがなくてもそれは自由でございます。
#213
○翫正敏君 私、測量士なんですけれども、測量士と別の士とが同じ事務所をやることはできるんですよね。
 そういう場合、結局実際仕事をしてますと、仕事の依頼がありますとその話を聞いてどんな話であったかとメモをつくって、いわゆる依頼者の話を聞いて何か書類を一応つくってというような、そういうものは同じものをつくるんですね。どちらでもつくれるわけです。依頼者のものをつくると、そういうふうになって、それから仕事にかかって、最終的には書類を役所へ提出する場合に、これは測量士の資格で出すか、そうでない別の資格で出すかということによって変わってくるんです。この外国人の弁護士と日本人の弁護士が合同で事務所をすることになると、結局はフロアは一つにして仕切ってもいいし、一つでもいいということなんですが、そういう場合には結局扱えない法律、日本の法律は外国の弁護士さんは扱えないわけですが、しかし実際には依頼者が来ると話を聞いていろいろつくって、何といいますか、下仕事みたいな実務的なことはやって最終的なことは日本の弁護士がする、こういう形になるんではないかと思いますが、そういうことは違法ということになるんですか。それは実質的に防げますか。
#214
○政府委員(永井紀昭君) いわゆる渉外事件で外国の弁護士さんも扱える事件ですと一緒に仕事がやれるわけですね。これは問題ないわけです。
 ところが 実は日本法に関することでも、例えば外国人の証人だとかなんかが必要になってくる場合があるかもしれませんですね。そういうときには日本の弁護士さんが外国法事務弁護士に特別に手伝ってくれということで、例えば通訳、実は弁護士としての仕事というより通訳的にいろいろやってくれとか、それからもし必要があれば外国の文献をちょっと探してみてくれとか、そういうことは日本の弁護士さんなら日本法を解決するときでもそういうことが必要な場合が出てくる。それはお互いに共同して、いわば通訳料的なものは渡すのはいいとか、いろんなやり方は考えられると思います。渉外事件でなくても、そういういわば通訳的な仕事をやるとか、それからネーティブでない人たちのドラフトは、やっぱり外国の弁護士さんが見た方がいいという、そういうときもございます。どういう事案かによっていろいろケースが違います。
#215
○翫正敏君 わかりました。
 要するに、扱う法律は基本的に違うということでありますが、共同ないし合同のそういう事務所をつくることによって実務上は実際仕事を始めれば相互乗り入れのような形に仕事がなっていくと、そのことがいわゆる外圧に対して、アメリカならアメリカの方からの規制緩和の要求にこたえる方向になる、現状よりは進むと、こういうふうに考えてこの法律がつくられていると、こう考えればよろしいんですね。
#216
○政府委員(永井紀昭君) 細かい点はいろいろ言い出すと切りがつきませんが、大体そういったことで御理解いただければ結構だと思います。
#217
○翫正敏君 わかりました。
 終わります。
#218
○委員長(猪熊重二君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後八時十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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