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1994/06/03 第129回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第129回国会 商工委員会 第5号
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1994/06/03 第129回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第129回国会 商工委員会 第5号

#1
第129回国会 商工委員会 第5号
平成六年六月三日(金曜日)
    午前十時四分開議
出席委員
  委員長 白川 勝彦君
   理事 逢沢 一郎君 理事 甘利  明君
   理事 尾身 幸次君 理事 額賀福志郎君
   理事 伊藤 達也君 理事 古賀 正浩君
   理事 大畠 章宏君 理事 河合 正智君
      浦野 烋興君    小川  元君
      小此木八郎君    金田 英行君
      熊代 昭彦君    田原  隆君
      谷川 和穗君    中島洋次郎君
      丹羽 雄哉君    野田 聖子君
      浜田 靖一君    林  義郎君
      武山百合子君    土田 龍司君
      豊田潤多郎君    西川太一郎君
      西村 眞悟君    山田 正彦君
      吉田  治君    坂上 富男君
      沢藤礼次郎君    関山 信之君
      早川  勝君    松本  龍君
      和田 貞夫君    赤羽 一嘉君
      赤松 正雄君    佐藤 茂樹君
      井出 正一君    枝野 幸男君
      吉井 英勝君
 出席国務大臣
        通商産業大臣  畑 英次郎君
        国 務 大 臣
        (経済企画庁長
        官)      寺澤 芳男君
 出席政府委員
        公正取引委員会
        事務局取引部長 植松  勲君
        経済企画庁長官
        官房長     涌井 洋治君
        経済企画庁国民
        生活局長    坂本 導聰君
        経済企画庁国民
        生活局審議官  塩谷 隆英君
        厚生省薬務局長 田中 健次君
        通商産業大臣官
        房長      牧野  力君
        通商産業大臣官
        房総務審議官  江崎  格君
        通商産業大臣官
        房商務流通審議
        官       清川 佑二君
        資源エネルギー
        庁長官     川田 洋輝君
        資源エネルギー
        庁石油部長   鈴木 孝男君
        資源エネルギー
        庁公益事業部長 白川  進君
        中小企業庁長官 長田 英機君
        中小企業庁計画
        部長      村田 成二君
 委員外の出席者
        法務大臣官房司
        法法制調査部参
        事官      戸田 信久君
        法務省民事局参
        事官      升田  純君
        厚生省薬務局企
        画課長     矢野 朝水君
        農林水産省食品
        流通局消費経済
        課長      大隈  満君
        商工委員会調査
        室長      山下 弘文君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月三日
 辞任         補欠選任
  中尾 栄一君     林  義郎君
  野田 聖子君     浜田 靖一君
  関山 信之君     坂上 富男君
  野坂 浩賢君     沢藤礼次郎君
同日
 辞任         補欠選任
  浜田 靖一君     野田 聖子君
  林  義郎君     中尾 栄一君
  坂上 富男君     関山 信之君
  沢藤礼次郎君     野坂 浩賢君
    ―――――――――――――
六月二日
 製造物責任法案(内閣提出第五三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 連合審査会開会に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 石油公団法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第一八号)
 ガス事業法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第四〇号)
 製造物責任法案(内閣提出第五三号)
     ――――◇―――――
#2
○白川委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、石油公団法の一部を改正する法律案及びガス事業法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 両案につきましては、去る一日質疑を終局いたしております。
 これより両案に対する討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。吉井英勝君。
#3
○吉井委員 私は、日本共産党を代表して、石油公団法の一部を改正する法律案及びガス事業法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。
 まず、石油公団法改正案であります。
 反対理由の第一は、本法案が大企業優遇の現行制度をさらに拡充するものだからであります。石油・ガス油田の探査に対し、成功払い融資制度となっている現行制度に上乗せして、リスクが高いとは認めがたい天然ガスの採取、液化の事業段階に対してまで出資等の優遇制度を拡充するものであり、大企業優遇と言わざるを得ないものであります。
 第二に、法案は、石油審議会部会の民間主導の三原則と称する原則のもとで、制度の利用に当たって、国は口を出すな、金は出せ、開発成果は民間で自由に処分するという、大企業にまことに好都合な運用方針を容認したものとなっているからであります。
 第三に、こうした優遇制度の新設は、利益優先の現在の石油大資本や大手電力・ガス会社本位のエネルギー開発体制のもとでは、国費の乱用になりかねないものであるからであります。
 次に、ガス事業法改正案に対する反対理由を述べます。
 第一に、本法案は、鉄鋼、紙・パルプ、石油化学など製造業大企業の要求である自由契約・自由料金化の要求を最優先させて実現した、大企業のための規制緩和の法案であるとともに、大手ガス会社によるLNG転換の一方的な強行とあわせて、独占的な市場支配に奉仕するものだからであります。
 第二に、都市ガス事業という公共サービス分野に、規制緩和を口実に、競争原理を導入することは、公益事業の性格を根本的にゆがめるものだからであります。すなわち、改正案の最大の目玉である認可料金及び供給区域の部分的な規制緩和は、ガス事業法の根幹とも言うべき総括原価主義、料金明確化及び公平の原則という料金決定の三原則を著しく侵食するばかりか、情報の公開を要求する国民の願いに逆行するものとなっており、極めて重大であります。
 最後に、本法案は、結局は一般家庭、中小業者などに負担と犠牲を転嫁するものとならざるを得ないものであるからであります。その理由で反対であります。
 以上、申し述べまして、討論を終わります。
#4
○白川委員長 これにて討論は終局いたしました。
#5
○白川委員長 これより採決に入ります。
 まず、石油公団法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#6
○白川委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決まりました。
 次に、ガス事業法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#7
○白川委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決まりました。
#8
○白川委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、尾身幸次君外四名より、自由民主党、改新、日本社会党・護憲民主連合、公明党及びさきがけ・青雲・民主の風五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 まず、提出者より趣旨の説明を求めます。尾身幸次君。
#9
○尾身委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    ガス事業法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
 一 規制緩和によりガスエネルギーの効率的利用がより増進するよう、液化石油ガスに関する法規制を含め、さらに規制緩和を推進すること。
 二 規制緩和の対象となる大口供給の範囲の決定に当たっては、ガスエネルギー供給事業者に与える影響等も考慮して、総合エネルギー調査会都市熱エネルギー部会報告を踏まえ、当面、年間契約数量二〇〇万u以上とするとともに、みだりに変更しないこと。
 三 一般ガス事業者の大口供給の実施が、その他の小口一般需要家への供給条件の悪化をもたらすこととならないよう、適正なコスト配分を確立するとともに、計画の審査等において慎重に配慮すること。
   また、今般の制度改正により期待される一般ガス事業者の経営の合理化等の成果が、小口一般需要家を含め、ガス料金等に適切に反映されるよう措置すること。
   なお、負荷調整契約制度については、本年一月の総合エネルギー調査会都市勢エネルギー部会報告に基づき、供給規程化を積極的に推進すること。
 四 一般ガス事業者の自己の供給区域外への大口供給の実施に当たっては、その一般ガス事業者が不当に有利な立場を占めることとならないよう十分な審査を行うとともに、供給区域外における大口需要家への供給導管は、みだりに小口需要家に対するガス供給には使用せず、また、供給区域外に大口需要家への供給導管が敷設されているという理由をもって供給区域の拡張を行うことのないよう指導すること。
 五 需要家のエネルギー選択の多様化を促進する見地から、一般ガス事業及び簡易ガス事業への新規参入の許可に際しては、供給先需要家の意向を最優先とし、その供給開始を速やかに実現するため、許認可事務の簡素化、迅速化を図ること。
   また、大口供給について、一般ガス事業者以外の事業者によるガス事業への公平な参入を確保するため、託送制度の整備等を積極的に推進すること。
 六 中小都市ガス事業者及び液化石油ガス販売事業者に対して、公平な競争条件の整備を図るとともに、その競争基盤を強化するため、政府として、税制、金融面での措置を含め、適切な合理化支援措置を検討すること。
   また、液化石油ガス販売事業者が供給先六九戸以下の小規模導管供給を実施する場合についても、道路占有の特例措置等の支援措置を検討すること。
 七 ガス事業における保安規制については、技術革新の動向等を踏まえ、適時適切に見直すとともに、ガス消費段階の事故をより低減するための安全確保策を徹底すること。
以上であります。
 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#10
○白川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#11
○白川委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決まりました。
 この際、畑通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。畑通商産業大臣。
#12
○畑国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重して、本法案の適切な実施に努めてまいる所存でございます。
    ―――――――――――――
#13
○白川委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○白川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
#15
○白川委員長 次に、内閣提出、製造物責任法案を議題といたします。
 これより趣旨の説明を聴取いたします。寺澤経済企画庁長官。
    ―――――――――――――
 製造物責任法案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#16
○寺澤国務大臣 製造物責任法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 製品に起因する事故から消費者を保護するためには、事業者、消費者双方の自己責任をも踏まえつつ、事故の防止及び被害の救済から成る総合的な施策を講じる必要があります。
 製品の欠陥に起因する事故が発生した際の被害救済については、民法第七百九条に基づいて紛争解決が図られることとなっておりますが、同条は過失責任の原則に立っており、被害者は製造業者の過失の存在を立証しなければなりません。
 しかしながら、大量生産・大量消費の現代社会においては、製品の安全性確保は製造業者に依存する度合いが高まってきており、被害者の円滑かつ適切な保護という観点から、製品関連事故の分野において過失責任の原則を修正し、欠陥責任の考え方による製造物責任制度を導入すべきであるとの指摘がなされるようになってまいりました。
 製造物責任制度の導入については、社会経済への影響など幅広い観点からの検討が必要であることから、政府といたしましては、関係審議会等において鋭意検討を重ねてまいりましたが、同制度の法制化を進めるべきであるとの結論が得られましたので、本法案を提出することといたした次第であります。
 次に、この法案の要旨を御説明申し上げます。
 第一は、製造物責任の導入であります。具体的には、製造業者、輸入業者等が、みずから製造、加工、輸入または一定の表示をし、引き渡した製造物の欠陥により他人の生命、身体または財産を侵害したときは、過失の有無にかかわらず、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずるものとすることであります。ただし、いわゆる拡大損害が生じていない場合における欠陥のある製造物自体の損害については、除外することとしております。
 第二は、免責される場合を定めたことであります。具体的には、研究・開発及び技術革新の阻害の可能性に留意し、製造物を引き渡したときにおける科学または技術に関する知見によっては欠陥の存在を認識することができなかった場合に製造業者等を免責する開発危険の抗弁を認めるほか、一定の場合に部品・原材料製造業者の免責を認めることであります。
 第三は、責任期間を定めたことであります。具体的には、製造業者等の責任を早期に安定させることや欧米諸国の動向等を考慮して、製造業者等が製造物を引き渡したときから十年間とし、蓄積損害等については、損害の性質に応じた被害者の救済を図る観点から期間の起算点を損害発生時とすることであります。
 加えて、法の目的、欠陥の定義等を明らかにし、国民にとってよりわかりやすい法律となるよう所要の規定を置いております。
 以上がこの法案の提案理由及びその要旨であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
#17
○白川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
#18
○白川委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
#19
○林(義)委員 本論に入ります前に、端的に一つ問題を取り上げて、お尋ねをいたしておきたい問題があります。
 それは血液の問題でありますが、エイズの問題であるとか、いろいろ問題がやかましくなっているときであります。生血の輸血、保存された血液の輸血、血液製剤といろいろございますが、加工物になるかいろいろと議論があったところでありますけれども、本法案におきまして、これらの扱いについてはどういうふうにやっておられるのか。
 また、血液事業というのは日本赤十字社がやっておられますけれども、この辺との調整の問題は一体どうか。この問題について、端的にまずお尋ねをいたしたいと思います。
#20
○田中(健)政府委員 お尋ねの血液製剤についてでございますが、これは血液に加工を加えました製品でありまして、そういうことから製造物に含まれまして、この製造物責任法の対象になるわけでございます。
 ただし、輸血用の血液製剤、これは全血製剤とそれから血液の成分製剤をいうわけでございますが、この輸血用の血液製剤の欠陥につきましては、次に申し述べますような製品の特性等の事情を総合的に考慮をして判断する必要があるわけでございます。
 その一つは、生命の危険に際して使用されるものでございまして、ほかに代替をする治療法がなくて、極めて有用性が高いというのが第一点。それから第二点は、輸血によりますウイルス等の感染や免疫反応等によります副作用が生ずるおそれがある旨の警告表示がなされております。それから三番目に、この輸血用の血液製剤は、世界最高水準の安全対策を講じた上で供給をされておりますが、技術的にウイルス感染や免疫反応等によります副作用の危険性を完全には排除できない、こういうような実情にあるわけでございます。
 したがいまして、現在の科学技術の水準のもとで技術的に排除できないウイルス等の混入や免疫反応等による副作用は欠陥に該当しないものと考えております。
 それから、現在、輸血用の血液製剤は日本赤十字社が公的な立場で一手に製造しておる、こんな状況でございます。
#21
○林(義)委員 この質問をやりたいのですが、同僚議員がやるという話でもありますし、私はこの問題はおいておきまして、一般論を少しやらせていただきたい、こう思います。
 製造物責任は、欠陥を要件とする無過失責任とされているが、無過失責任の問題というのは民法学におきまして古くから議論されておったところであります。長い歴史を持った議論でありまして、民法の制定のときの梅謙次郎先生の中にもちょっと話が出ておる。また、大正五年に、岡松参太郎さんという先生がおられまして、大変難しい御勉強をしておられる。こんな厚い本がありまして、「無過失損害賠償責任論」というのがあります。その後、民法学者の中でもこの問題は非常にいろいろな角度から取り上げてきておられるところでありますし、先ほど提案理由の説明がありましたように、いろいろな問題があるということは事実であります。
 そもそも、不法行為制度は、他人の行為や設備で損害を受けた場合に、その他人に帰責根拠があるときにその損害を償わせるものである。しかしながら、基本的にいいますと、近代法においては、これはローマ法以来の大原則であるところの「過失なければ責任なし」という言葉に示されておりますように、過失責任を原則としておるのが今までの体系であります。行為者は十分な注意を払う限り不法行為責任を負わされることなく、個人の自由な活動が保障される、これは近代社会の大原則だろうと私は思うのです。
 しかし、同時に、一方で企業社会が進展し、また、科学技術が進歩するのに伴いまして、法律の指導原理も個人の自由な保障から社会共回生活全体の発展にシフトし、過失責任の原則も修正されるようになってきたというところでございます。企業の社会的責任ということもありまして、いろいろな問題がある。企業の社会的責任の中で、大企業の中におきますところの企業内部の問題、従業員の問題であるとかいろいろな社内におけるところの問題、それと同時に企業の対外的責任の問題、消費者等一般社会との関係というものが見直されるようになってきたというふうに私は思っておるところであります。前者の問題は、社会保障制度であるとか健康保険制度であるとかあるいは労働災害の問題であるとか、いろいろな問題があると私は思いますが、やはり対外的な問題というのはこの無過失賠償責任の問題が上がってくるのではないか、こう思っております。
 そこで、それでは過失責任というものを全部やめてしまう、すべての分野で無過失責任としたり、結果が発生すればすべて加害者の責任というわけにはなかなかいかないと思います。個人の意思や活動の自由、それによって我々の生活の利便性は一方では増しておるが、この個人の意思や活動の自由と、社会に起こってくるところの損失をだれがどういうふうに負担するのが社会としていかなる形をとれば公平であるか、妥当であるかという二つの要請の兼ね合いについてどう考えるかという政策的な、むしろ政治家が判断しなければならないような問題であるというふうに私は考えておりますし、製造物責任につきましても、このような流れの中でとらえるべき問題であるというふうに思います。
 昭和五十年の九月には、民法学の泰斗でありました我妻先生を中心にして、いわゆる要綱試案が発表されました。また、国民生活審議会におきましても、昭和五十年、五十一年、五十六年と三度にわたりまして報告を取りまとめ、平成三年の第十三次国民生活審議会、さらには通産省の産業構造審議会と、関係各省で本格的な検討が始まったものだというふうに承知しております。
 こうして、言うところの製造物責任制度問題の本質についての認識、この問題につきましてまずどういうふうに考えているのか、若干法律論でありますから、法務省の方から御見解を賜りたい、こう思います。
#22
○升田説明員 製造物責任制度の問題につきましては、委員御指摘のとおり、非常に重要な政策問題であると考えております。
 まず、先ほど御紹介のありました民法が採用しております過失責任主義と申しますのは、明治三十一年施行の民法により採用されまして、ほぼ百年を経過しております。その大原則をこの製造物責任制度が変更するという内容になっておりまして、そういう意味で非常に重要な問題であろうと考えられるわけでございます。
 そもそも製造物責任制度が、製品関連事故につきまして、製造業者等の過失を要件としないで、当該製造物の欠陥を責任原因としまして製造業者等に損害賠償義務を負わせるということにいたしましたのは、大量生産・大量消費という現代社会におきまして、製品の安全性の確保は、製品につきましての知識あるいはその技術を製造業者が独占し、それに依存しているという度合いが非常に高いということ、製品の利用者は製造業者等が製品の安全性を確保しているということを信頼してその製造物を利用しているということ、あるいは製造業者等がその製造物の製造等によりまして利益を得ているものであるという実情を踏まえまして、製造物の欠陥によりまして損害が発生しました場合にはその損害を製造業者等に負担させ、被害者の円滑かつ適正な救済を図ることが適切であるというぐあいに考えられてきたからでございます。
 しかし、他方、先ほど申し上げましたように、過失責任制度におきます個人の意思あるいは活動の自由の保障、重要な問題の調整が必要であるというぐあいに考えられるわけでございます。
#23
○林(義)委員 今基本的なお話が法務省の方からありましたが、先ほど申しましたように長い歴史のある問題でございます。そういった経緯につきまして企画庁長官にお伺いしたいのですが、まず、我妻先生の要綱試案の特色と評価につきましてどういうふうに考えておられるのか。あの発表時の状況と、その後やはり二十年間の判例というものがあるわけでありますから、その辺の判例の進展について触れていただければありがたいなと思います。
#24
○寺澤国務大臣 製品関連事故の損害賠償につきましては、やはり現代社会にふさわしい責任原理が必要であり、その際、個人の意思や活動の自由の保障と損害の公平な分担という二つの要請の兼ね合いをどう考えるかが基本的な視点であるという点において、先生の御意見と同じような認識を私も持っております。こうした視点のもとで、平成三年以来長きにわたって幅広い観点から本問題の検討に携わってこられた先生の御高見に感服をいたしております。
 今の後段の先生の御質問につきましては、事務当局からお答えさせていただきます。
#25
○坂本(導)政府委員 ただいま委員の御指摘のありました我妻先生が中心におまとめになりました要綱試案でございますが、これは昭和五十年という早い時期に、大量生産あるいは大量消費の現代社会における消費者の円滑かつ適切な救済という観点から、製品関連事故の分野における損害賠償責任について過失責任の原則を修正し、欠陥責任を導入するという考え方を取りまとめ、我が国で初めて具体的な条文の形で発表されたものであると理解しております。
#26
○林(義)委員 あの我妻さんの要綱試案は、拝見しますと、いわゆる開発危険の抗弁の問題であるとかいうものは入れない。それからまた、法律上の推定の問題なんかも相当踏み込んだお話がその中にはしてあると思うのです。そういったような違いはいろいろあると思いますが、こうしたことが二十年前にされた。私は、その後の状況を見ますと、やはりいろいろなことを考えていかなければならないと思うのです。
 まず第一に考えていかなければならないのは、言われていますのは、アメリカにおけるところの製造物責任が非常に巨大なものであった、大変なものであったということでございまして、日本でもその辺を懸念しているところがあると思います。アメリカでは、一九六三年、カリフォルニア州の最高裁で厳格責任が採用されて以来、六〇年代後半から七〇年代半ばにかけて各州の裁判所で採用されるようになってきましたが、一方で、七〇年代と八〇年代の半ばに二度にわたっていわゆる製造物責任危機というものがあったわけであります。訴訟件数が、連邦地裁ベースでいいますと、七四年の千五百七十九件が八五年には一万三千五百五十四件と、七倍も八倍もふえてきた。賠償額も増加し、また、そういった損害賠償制度がありますから、保険でもってこれを引き受ける、こういうことである。ところが、とてもじゃない、保険会社も引き受けができないので、引き受け停止をするというような形になりましたり、一部製品の生産停止等が起こってきたところであります。
 寺澤さんはアメリカに長くおられましたから、アメリカでの御経験も豊富でありますし、そういったことを踏まえましてどういうふうに受けとめておられるのか、端的にお尋ねをいたしたい、こう思います。
#27
○寺澤国務大臣 先生御指摘のとおりでありまして、アメリカにおいては製造物責任訴訟が非常に多いわけであります。七〇年代半ば及び八〇年代半ばの二度にわたって保険料が急に上がりまして、一部では保険会社が引き受けない、引き受け拒否も発生しております。いわゆる製造物責任危機ないしは保険危機として深刻な問題が生じたと言われております。これは懲罰的賠償制度であるとか陪審制度あるいは弁護士成功報酬制度など、アメリカ独特の民事司法上の制度によるところが非常に大きいのではないかと私は認識しております。
#28
○林(義)委員 今お話がありましたように、アメリカで大変な大きな問題になってきている。今アメリカの議会でも、これだけのことをやっているのは少し行き過ぎではないか、少し修正をしていかなければならないのではないかという形で議員の中から提案をしていますが、アメリカの訴訟社会ではなかなかうまくいかないということも聞いておるところであります。
 それで、今お話がありましたが、民事におけるところの陪審制度、これはアメリカの憲法がありますから、アメリカで陪審制度をやめろというわけにはなかなかいかないのだろう、私はこう思いますが、我々から見ると、陪審という形でやるのはやはり問題がある。裁判というものはやはり公正な形での判断を下すということですから、それにふさわしいような形にやってもらうということが必要ではないか。陪審で、順番で、くじでもってこうやって判断をする。それは確かにアトランダムでやればそういった方は出るかもしれませんが、やはりおのずから知識のある方に判断をしてもらう、常識のある方に判断をしてもらうというのが裁判の本質だろう、こう思います。また、そういったような点から問題がありますが、日本ではこういったことを一体どういうふうに考えるのか。
 それから、お話がありましたように、懲罰的損害賠償制度というのがアメリカにありまして、日本では出たところの損害を賠償する、こういうことがありますが、それを懲罰的にやる。例えば、独禁法なんかも被害額のあったところのものの三倍をやれとかなんとかというような話がありましたり、また、弁護士の成功報酬制度などという形で大変巨額の弁護士報酬が出てくる。これは、一つにはやはりアメリカに弁護士が非常に多いということにもなるのかもしれません。訴訟社会でありますから、お互い弁護士が競争してやっていく、こういうふうなことでありますけれども、こうしたようなこともいろいろとあると私は思いますが、これにつきまして我が国では一体どういうふうに考えてやるのか。
 そういったような問題について、アメリカとの対比を中心にしながら、法務省の方から御説明いただければありがたいと思います。
#29
○升田説明員 製造物責任制度の抱えております大きな問題の一つといたしまして、米国におきまして製造物責任危機と言われる問題が生じていると指摘されております。そして、その原因といたしましては、御指摘のような米国特有の陪審裁判制度、懲罰賠償制度あるいは弁護士の成功報酬制度というのが大きな原因だと指摘されているわけでございます。
 これに対しまして、我が国においてはどうかと申しますと、陪審裁判というのは行われておりませんし、また、損害賠償におきましても懲罰的賠償制度というのも採用されておりませんし、弁護士報酬制度というものも米国におけるような形では存在してないということになっております。したがいまして、製造物責任制度を導入いたしましても、我が国において米国におけるような問題が生ずるおそれはないと考えております。
#30
○林(義)委員 次に、アメリカの問題を挙げましたけれども、ヨーロッパの方の事情はどういうふうになっているのか、御説明をいただきたいと思います。
 アメリカがそういうふうになりましたし、ヨーロッパ各国、それぞれあります。アメリカと同じような英米法の国、イギリスはそうでありますが、判例法の国でのイギリスの扱い方。それから、大陸法でも独法と仏法と違いますし、先ほど申しました岡松先生の話なんかも、フランス法の中での考え方を少し取り入れてやるというふうな話がありますが、やはり各国の法制にはそれぞれ違いがあるわけであります。違いがありますが、その中でやはりヨーロッパ共通の事項としてのECというようなものがありますから、EC指令も出ている。こういったような制度はヨーロッパではどういうふうになっているのか、状況につきまして御説明ください。
#31
○清川政府委員 欧州における製造物責任制度の状況でございますが、実は製造物責任につきまして、通商産業大臣の諮問機関である産業構造審議会が、平成三年、九一年の十二月以来二年間にわたりまして総合製品安全対策の審議をしておられたわけですが、その審議のプロセスにおきまして、昨年の春調査団を派遣されたわけでございまして、部会長である塩野宏成慶大学法学部教授みずからが団長となりまして、欧州の実態調査を行ったところでございます。
 これによりますと、欧州におきましては、一九八五年の七月に、欠陥製品の責任に関する加盟国の法律、規則及び行政規程接近のための閣僚理事会指令、いわゆるEC指令が出されたわけでございます。これに沿いまして立法が行われておりまして、EC十二カ国のうち、フランス、スペインを除く十カ国におきまして既に立法が完了し、また、EFTA諸国におきましてもEC指令と同様の内容の立法が行われているわけでございます。
 これらの諸国におきましては、委員御指摘のとおりでございますが、我が国と民事司法制度において類似性を持っております。そして、本法案と同様の特徴を持つ製造物責任制度を導入しているわけでございまして、イギリスを初め施行後五年を超える国も幾つかございまして、これまでのところ訴訟の件数あるいは製造コスト、保険料あるいはまた物価上昇率などの面におきまして目立った影響はあらわれておりません。製造物責任立法によって大きな社会的、経済的問題が生じている状況にはないというふうに、この実態調査の結果として報告をされております。
#32
○林(義)委員 今お話がありましたが、ヨーロッパの中でも、EC指令が出ましたけれども、EC指令を全部そのままやっておるわけではありません。フランスであるとか、イギリスとか、それぞれその国の実情に合ったようなことでやっているところは多々あると思うのです。
 例えば、ルクセンブルクなんかは小さな国でありますけれども、その国では新しい技術についての抗弁、新しい技術について、それがもしも製造物として被害を及ぼすような場合につきましては、やはりそれは製造物責任の範囲内である、こういうふうな形の法制になっている。こういうこともありますし、各国それぞれ違ったところがありますが、やはりヨーロッパにおけるところの法律の運用の問題と、アメリカにおけるところの法律の運用の問題というのは、おのずから私は違ったようなことがあると思うのです。
 日本は、どちらかというと、法律体系としてはヨーロッパ的なことになっているのだろう、私はこう思いますので、そういったところではそう大きな問題がアメリカみたいに出てくるというふうには考えられないであろう。ヨーロッパ的なものになっていくのじゃないかなとは思いますが、私は、それはそれとして、やはりいろいろな点を考えておかなければならない。最初に話がありましたように、百年にわたる民法体系の大原則を変えるわけでありますから、いろいろな点で慎重な検討をしていくことが必要だろうと私は思うのです。
 それで私は、一つの問題として、情報開示の問題というか証拠の問題があると思うのです。法律上の推定であるとか事実上の推定であるとかというようなことを申しましたけれども、裁判所でこの問題は取り上げられるわけでありまして、裁判所でどれだけの情報の開示をしていくのかというのが大きな問題になっていくのじゃないかなと思うのです。言うまでもありませんが、製造物責任をとるというようなときの問題は、概して言うならば、大きな企業が一方の加害者という形になる。力のないところの、また情報をたくさん持ってないところの消費者というのが被害者になる。被害者の方が原告になりまして訴える、こういうふうな図式だろうと私は思います。
 そうしたことでありますから、巨大な生産をしているところの方は加害者である。その方に情報はまさに独占をされているというのが一般的なことでありますし、消費者の方はなかなかそれを知り得る立場にない。また、情報として一般に知っておっても、それをデータとして出す、あるいは資料として出すというのはなかなか私は難しい問題だろうと思うわけであります。
 そうした意味で、これは証拠法の問題である。日本では自由心証主義という形でありますし、当事者主義というものがとられておりますから、私は、当事者主義というものとの関係におきまして、どうしてやっていくのか。今までと同じような格好でもってやっていくというのでは、なかなかこれはできない問題もあるのじゃないかと正直言って私は思います。そこはやはり民事訴訟一般にかかわる問題でありますから、これをどうするかということはないのですが、裁判官がやはり自由心証として自分がとっていかなければならないデータというものは、今の許されている範囲内においてとっていくということが必要だろうと思います。
 それでは、この製造物責任について、特別の証拠法をつくるかどうか、こういうふうな話でありますけれども、そうすると製造物責任の問題とそのほかの問題とどう違ってくるのか。製造物責任というのは、加害をしたところの製造物の責任である。そうすると、直接にサービスをする人であるとか、その製造物を売った人の責任、あるいは医者のような場合に、今度はその薬を使って医者が患者に対してサービスをする、医者の責任をどうするかというような問題、そのときの証拠の問題をどうするかというような問題も私はあるだろうと思うのです。
 こうしたことでありますから、関連いたしまして、こういったものは経験則に基づいて、やはり裏打ちされた事実上の推定というものが私は必要である、相当因果関係的な議論というものは民事裁判の中においては既に確立されたことだろう、私はこう思いますので、そうしたような形でやっていかなければならないものだろうと思います。
 ただ、こういった証拠の開示の問題につきましては、今民事訴訟法の見直しの作業が進められている、こういうふうに聞いておりますが、この辺につきまして、どういうふうに今作業をやっているのか、また、法務省当局としてこの辺の問題についてどういうふうに考えているのか、お尋ねをいたしたい。
#33
○升田説明員 適切な裁判を行うという観点からは、事案を究明するというのが何よりも重要なわけでございますが、そのための手段といたしましては、できるだけ充実した証拠調べを行うことが必要になってまいるわけでございます。ただし、そういう要請が必要でありますのは、製造物責任関係訴訟だけではありませんで、ほかの訴訟でも同じでございます。そういう観点から、今回この法案におきまして、特に製造物責任関係につきまして、特に特別の証拠開示制度を設けるということは考えておりません。
 他方、法務大臣の諮問機関であります法制審議会の民事訴訟法部会におきましては、平成二年の七月から民事訴訟手続の全面的な見直しの作業を続けておるところでございます。その検討の中で、証拠収集手続の見直しも検討の対象とされております。
 具体的に申しますと、我が国の証拠収集手続につきましては、証拠が一方の当事者に偏在する事件における証拠の収集の手段としては十分ではないのではないかという指摘がなされている一方、他方、米国のディスカバリー制度のように、広範かつ極めて強力な証拠収集手続を設けるとこの手続の利用に膨大な費用と時間を要するなどの大きな弊害があるということも指摘されております。
 そこで、法制審議会の民事訴訟法部会におきましては、アメリカのディスカバリー制度に見られますような弊害が生ずることがないように配慮しながら、我が国の証拠収集手続をできるだけ充実したものに改めるという方向で議論が進められているところでございます。
    〔委員長退席、額賀委員長代理着席〕
#34
○林(義)委員 大きな費用がかかります、だからなかなかできないのです。また、裁判所がそれまでやるのは一体どうかなということでありますが、私はそもそも製造物責任なりこの民法の過失原則の修正というものは、やはり公平の原則、バランスの原則というものをたっとんでやるわけでありますから、相当の費用というものは、私はある程度までかけてもしょうがないものではないかなと思うのです。
 消費者救済というような観点というのは、やはり一つの大きな柱として考えていかなければならない。単に過失原則だけでこうやって、大きな企業が物をつくる云々、こういうことだけでなくて、そのときにやはり消費者が被害を受けない、こういうふうな観点でやっていかなければならない。そこはおのずからやはり考えていかなければならない問題があるように私は思っておるところでありまして、むしろそういったような問題がなかなか解決できないので、法律上の推定をいだそうとか、開発危険の抗弁は認めないことにしようとかというようなことが私は出てきたのだろうと思っておるところでございます。
 実は、そうした意味におきまして、この前の国会ですか、社会党なり公明党から提出されておりました案がありました。当時は社会党も公明党も野党でございまして、議員提案という形で昨年提案された内容でございます。私はこの内容も拝見しておりますが、特にこの法律上の推定の問題、それから開発危険の抗弁の問題、この二点についてどうなっているのか、政府の方から簡単に御説明ください。
#35
○坂本(導)政府委員 御指摘のように、公明党は、平成四年五月、製造物の欠陥による損害の賠償に関する法律案を衆議院に提出いたしました。また、日本社会党は、平成四年六月に、製造物の欠陥による損害の賠償責任に関する法律案を参議院に提出したものと承知しております。
 両法案は、大量生産・大量消費の現代社会における被害者の円滑、かつ適切な救済という観点から、製品関連事故の分野における損害賠償責任について、御指摘のように、過失責任の原則を、欠陥責任の考え方を導入して切りかえております。ただ、これも委員御指摘の具体的な条文の形で提案されたものにつきましては、開発危険の抗弁を認めていないこと、推定規定を置いていることの違いはありますが、そのほかに責任期間を二十年間としている点が今回の政府提案とは相違しております。
 そして、今回政府が、政府案を取りまとめるに当たりまして、まず、製造物責任制度の導入につきましては、社会経済の影響など幅広い観点から検討が必要であるというもとに、政府として、国民生活審議会や関係審議会等において鋭意検討を重ねてまいりまして、そして、同制度の法制化を進めるべきであるという結論をいただきまして、本法案を提出したわけでございます。
 さらに、連立与党におきましては、昨年十二月にPL法プロジェクトチームが設立されまして、製造物責任制度のあり方について、関係省庁や産業界あるいは消費者団体、労働界、法曹界等から幅広く意見を聴取しながら精力的な議論を積み重ねて、早急な法制化の必要性と、法制化に当たっての論点について基本的な考え方を取りまとめておられます。
 そのプロジェクトでは、推定規定を採用すべきではないという意見が大勢を占め、また、開発危険の抗弁については、これを採用するのが適当であるとの結論を得ておられるところでありまして、政府としては、こういった同プロジェクトのまとめられた法制化に当たっての各論点についての検討結果を踏まえて、本法案の立法作業に当たったところでございます。
#36
○林(義)委員 私は、今政府の説明は、プロジェクトチームで、やめて、法律上の推定を移した云々から、期間の制限も変えた、こういうふうな話がありましたが、それはどういうふうな理屈で変えたのかということをむしろお尋ねをしたい、どういうふうな物の考え方でやめたのかというのをお尋ねしたい。ちょっとそこには、そういった関係の当事者はおられませんから、政府の諸君に聞いてみたところてしょうがないのかもしれませんが、そういったことはやはり議論を精密にやっておいた方が私はいいと思うのです。
 本当に、公明党の質問のときにでも皆さん方の方から説明してもらうと私はありがたい。国会ですから、別にその考え方が、全然むだだ、考え方として一〇〇%間違っているとは私は思わないのですよ。だけれども、実態の問題としてどうするか、裁判規範としての問題をどうするかという話でありますから、その辺の議論を私は詰めてやってもらった方がいいのじゃないかと思っています。この辺については答弁要りませんから、私は、今のような話で先に進めさせていただきたいと思います。
 我が党におきましても、実は初めにそういった法律上の推定を入れたらどうだとか、開発危険の抗弁はどうだというふうな議論はいたしました。それは、我妻さんの試案の中にもそういうふうに入っているのですから、当然に議論しなければならない問題だったと私は思うのです。単に、政権になったからどうだとか、そんな話じゃない。これは百年の大計を立てる話ですから、お互いにフランクな議論をしてもらった方がよかったのじゃないかな、私はこう思っておるところであります。
 それで、自民党では、平成三年五月に製造物責任制度に関する小委員会を設置いたしまして、これまで二十二回にわたりまして、関係省庁、日本弁護士連合会、消費者団体、学界、関係産業界、経済団体、中小企業関係団体、海外の専門家など各関係者から、製造物の安全確保、事故に係る被害の救済、いわゆる製造物責任制度について現状と考え方を幅広く聴取しつつ、審議を重ねてまいりました。
 実は、こんなに厚い大部の議事録を私の方はつくっておりまして、こうした問題につきましてはいろいろな御意見を聞いてやることが必要であろうと私は思います。国会でいろいろまた参考人等の招致もあると思いますが、その前に私たちの方はいろいろな角度からの検討をここでしてきたところでございます。
 事柄の重要性にかんがみまして、中間的な取りまとめを行いまして、私たちの考え方を三点、すなわち、製造物の欠陥から消費者を保護するためには、事故の未然防止、再発防止、被害救済の観点から行政上の措置、裁判規範を含む総合的な製品安全対策がなければなりません。製造物責任制度という裁判規範だけですべての問題が解決するわけではないことに留意すべきである。要は、真に消費者の保護に資するものは何かを基本的視点として総合的な方策が検討されなければならない。
 したがって、関係省庁及び関係業界は、それぞれの立場で、事故と被害救済の実態を十分に把握し、製品特性に応じて、まず、事故発生及び救済措置に係る情報収集制度、原因究明、紛争解決及び補償等のための制度、企業の被害者救済における透明性確保のための措置等について充実強化を図ることによって、消費者保護の実効を上げるための最大限の努力をすべきである。
 第三に、これらを踏まえ、諸外国の動向を見た上で、最終的な紛争解決の手段として製造物責任制度について十分な検討を行い、国民的合意の形成に努めるべきであるという三点を示すとともに、製造物責任制度について、二十二項目にわたる検討課題を提起したところでございます。
 委員長にお願いをしたいのですが、実はこのペーパーがありまして、ここに今ありますからお配りすることをお許しいただきたい、こう思います。
 それにつきまして二十二項目ありますが、それにさらにぺーパーについてのコメントをつけておりますから、皆さん方の御審議のぜひ参考にしていただきたい。こういった形で配付していただくことをお許しいただきたいと思いますし、それから、でき得ればこの資料二つを議事録の中に載せていただくことをお願いいたしたいと思います。
#37
○額賀委員長代理 ただいまの林委員からの申し出につきましては、委員会の議論を活発にし、なおかつ充実するために、委員長としてはこれを許したいと思います。
    ―――――――――――――
    〔資料は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#38
○林(義)委員 ありがとうございます。
 実は、我々もその後検討を続け、政府の方も関係省庁が精力的に検討をされてきたところでございます。正直申しまして当初は、産業界におきましては、製造物責任は、先ほど申しましたように、アメリカのような事例がある、何億ドルも取られてしまう、そんなものをやられたのではこれは大変だ、保険の危機もあってどうにもならぬぞ、こういうふうな慎重論があったのです。しかしながら、やはりいろいろな検討の結果、一般企業の方々ももちろん、中小企業の方々の御理解も私は大分進んできたと思っておるところでございます。
 産業界を所管しておられますところの通産大臣に、率直に本案についての中小企業の業界、また、関係業界の受けとめ方をお尋ねをいたしておきたいと思います。特に、推定規定とか開発危険の抗弁の問題が相当に大きな問題になってきたところでありますから、その辺につきまして御見解をいただきたい、お願いいたします。
#39
○畑国務大臣 ただいま林先生御指摘のとおり、私自身におきましても、本問題、当初は産業界あるいはまた中小企業のお立場等々はとりわけ懸念が多かった。逆に申し上げれば、車ほどさように難しい中にございまして、それぞれの、各政党のお立場におきまして真剣な論議がなされた。
 なおまた、御案内のとおり、産業構造審議会初め関係審議会、これは長いところは二年以上論議を重ねた。その構成メンバーの中にも、中小企業の方々を初め、産業界の方は当然のことながら御参加を賜りまして、さような意味合いでは、この問題を今日まで実現せしめるべく、慎重な取り組みが法案提出の一つの大きな推進力にも相なったということでございまして、ただいま御指摘がございましたような、本法案では免責額や責任限度額を設けず、また、拡大損害が生じた場合の物自体の損害を除外しないこととする一方で、推定規定を置かず、開発危険の抗弁を導入するなど、我が国の経済社会の実態を踏まえ、かつ国際的にも調和が図られたものとなっておる、いわばバランスがとられた内容になっておるというような意味合いで、私は、関係者の皆様方がいろいろ問題点を御指摘を賜った、そしてまた、とりわけ林先生等々、もう数年前から私もいろいろ御指導賜った一員でもあるわけでございますが、さような意味合いのものが中小企業を初め産業界の方々の御理解が得られる内容に相なっておる、私はかような考え方に立っておるわけでございます。
#40
○林(義)委員 あるいは事務当局の方でも結構ですが、産業界の方でありましたのは、いわゆる推定規定のところの問題だろうと思うのです。それから、開発危険の抗弁の話であります。
 推定規定というのは、この欠陥責任、六項目かにわたって書いてありますけれども、それ以上に、もう欠陥があった場合には既にこれは加害者である、こういうふうな話等々のことをいうというような話でありますから、その辺をだんだん具体的に書くとどうするかということが私は問題になると思いますし、こうした今の法案のような格好で出てきたならば、バランスのとれたところの欠陥の事実上の推定がそれでできるのだろう、私はこう思っておるところであります。
 そうしたようなことについての大方のコンセンサスというものはだんだん中小企業の中でも出てきたのではないかな、こう私は思っておるところでありますし、実は、最初に私が委員会に取り上げたときには、中小企業団体からは、とてもじゃない、こんなことをしたら中小企業つぶしだぞと言わんばかりの話まであったわけでありますが、その辺につきましてはどういうふうに受けとめられているのかという話を聞かせていただきたい。
 それから、開発危険の抗弁でございますけれども、これは最初に話がありました血液製剤なんかの問題もある。血液というのは、技術的にどうしてもできないというような話がある。しかしながら、それはさっき話がありましたように、ある程度までやむを得ない、日常の知見によってはできないものだということであるならば、開発危険の抗弁を認めていくというような話の問題もあるのでしょう。
 新しく開発をするときは非常にリスクがある、そのリスクをどこまでやるか、その当時の知見によってはこれ以上の問題はないというところまでやればいいのではないか、それ以上のものは、わからないものまで欠陥責任だというわけにはいかないというのがこの法律の趣旨だろう、私はこう思いますので、そうしたような点について、これから開発をやっていこう、新しいものをつくっていこうというところの方について問題があるのかないのか、この辺についての、企画庁ですか通産省ですか、どちらかからでも御答弁をいただければありがたいと思います。
#41
○坂本(導)政府委員 まず、推定規定でございますが、これは民事法、民法全体の、あるいは不法行為の中での立証責任の問題という中で判断すべきであるということから、法律上の推定規定を置かなかった。しかし、実際の個々の判例においては、裁判官がそのケースごとに事実上の推定を働かせていただいているのが実情であり、この法律ができたとしても、その実情は変わらないというふうに考えているわけでございます。
 それから、開発危険の抗弁の方でございますが、やはりこの開発危険の抗弁を認めないとすると、我が国の産業あるいは技術開発の進行等の面で問題が生じ、その結果、ひいては消費者の利益にも問題を生ずる可能性があるということから、やはり開発危険の抗弁を認めるべきであるという考え方でございます。
 ただ、この開発危険の抗弁は、特定の人がそのときの知識を持っていなかったということではなくて、社会全体として、総体としての知識の水準ということでございますから、極めて高い水準でございます。したがって、そのことによって消費者の救済が図られなくなるというふうには考えておりませんし、また一方で、我が国の技術開発の促進をも損なわないという面で、バランスのとれた内容だというふうに考えております。したがって、消費者あるいは御指摘の中小企業の方々全体を含めた観点で、均衡のとれた案ではないかというふうに考えております。
#42
○林(義)委員 私は、案の内容をどうだというのではなくて、むしろ産業界、これは裁判で争って、けんかしてやるわけではない。裁判で争うというのは、お互いに第三者に判断を求めて、公正な形でやりますと。産業界の方でも、やはりおかしなものはおかしい、こう言わざるを得ない。消費者の方でも、何でもかんでもとればいいという話ではないと私は思う。やはり公正、妥当な判断をしなければならないということでありますから、むしろそういったような観点についての大体の業界の雰囲気が出てきておるのかどうか、いや、もうとにかくというような話なのかどうなのか。
 また、私も弁護士さんのいろいろな話を聞いたり消費者団体にもいろいろな話を聞いておりますが、消費者団体の方も、最初はそう言っていたけれども、いろいろと議論をしてみると、やはりこの際は早くなにをした方がいいよというようなお話を私も聞いています。いずれ参考人ということで、当委員会でもいろいろな方々からお話を聞かれるのだろうと思いますが、通産省はどういうふうに受けとめているのか。
#43
○清川政府委員 産業界における受けとめでございますけれども、先ほど大臣が申し上げましたことでございますが、二年余りにわたる検討のプロセスにおきまして、当初の多くの懸念などにつきまして、それぞれ判断をすべき材料をもとにいたしまして、慎重な検討が行われたわけでございます。そして、全体としてこの製造物責任というものを導入することは諸外国の立法例などから見て既に当然であるということ、そしてまた、この立法の内容、現在提案させていただいておりますが、この内容がほぼバランスのとれたものであるということ、このようなことを踏まえまして、産業界、特にまた中小企業団体は、この今の法律であるならば、若干苦しい点はあるけれども、満足すべきものであると考えるべきであるというようなコンセンサスになっていると理解いたしております。
 なお、先ほど委員御指摘の欠陥の概念の問題、これが推定規定あるいは裁判と非常に大きな関係を持つわけでございまして、法の運用の問題と同時に関連するわけでございます。通産省といたしましては、この法律は公布後一年間の経過期間がございますので、その間にあとう限りの精力を注入いたしまして、いわゆる啓蒙普及活動というようなことを行いまして、中小企業の皆様方に十分理解していただき、さらにこの法律が裁判規範としてであると同時にそのような事業者の行為規範としても働き、実際上よく理解されて、製品安全対策が順調に進行するということになることを確保したいと考えております。
#44
○林(義)委員 一つの裁判規範であると同時に行為規範である、一般社会の中で守るべきルールでありますから、そういったものをつくっていくということにおいては多くの方々のコンセンサスというものはどうしても必要だ、私はこう思うのです。そのコンセンサスがなかったならば、いかな制度をやってもやはりいけないのだろうと思います。
 そこで、コンセンサスの問題になりますけれども、やはり対外的にあるのだろう。最初に申しましたように、アメリカでもいろいろな問題があって、製造物責任の話がある。ヨーロッパでも製造物責任の話がある。民法の原則、持っておりましたところの過失原則の例外をお互いにつくっていく、こういうことでありますから、やはりこれはインターナショナルなルールであってしかるべきであろう、こう思うのです。
 むしろ私は、各国が貿易の問題を通じまして、この製造物責任制度がいたずらに貿易阻害的なことにはならないような格好をやって考えていかなければならない。こんな制度をつくって、損害賠償訴えます、だから物が入らないなどというような話になってきたのではいかぬことだと私は思いますし、こうした基本的なルールづくりにつきましては、やはり国際的なルールということを考えていく、国際的に共通のルールをつくっていくということを長い目で目標にしていかなければならないのではないかな、こう思っています。
 これはアメリカもちょっと違いますよね。寺澤さん御承知のように、違います。しかし、やはりアメリカとも一緒になって、ヨーロッパとも一緒になって、物をつくっていくということが世界的な貿易の拡大のためにも必要なことではないかな、私はこう思っています。
 どういうふうな形でやれとか、今すぐにどういう案を出せということではありませんが、物の考え方として、私はそういったことを考えていくべきではないかと思いますが、通産大臣、いかがでしょう。
#45
○畑国務大臣 私は、今、林先生のお話を伺いながら、こういったものがいわゆる貿易を阻害するというようなものに相なってはならぬ、当然のことであるわけでございますし、なおまた極めて大切な要素、こういうようにも受けとめをさせていただいておるわけでございます。
 そしてまた、方向としましては、今先生おっしゃったように、国際的な共通のルール、こういうものがきちんと確立ができれば一番望ましい姿であるわけでございますが、御案内のような、それぞれの国々の社会、経済、文化、これに深くかかわり合いを持つ立場でもあるわけでございますので、流れ、方向としましては、そういうことを絶えず念頭に置きながら努力を続けていく。そういうような意味合いの中で、それぞれが理解を深めて、共通ルールの方向に向けての努力を引き続きやってまいりたいがと、こういうようにも考えておるわけでございます。
#46
○林(義)委員 不正競争防止法というのがあります。この法律はたしか昭和九年か何かにできた法律でありますけれども、やはり不正競争を防止するというのは国際的なルールとして考えていかなければならない、こう思っておるところでありますし、ガットの規定等もあります。いろいろな貿易の自由化とか、やはり世界的な自由化というものもやっていく。こういうことの中で、やはりやっていきますのは企業の責任である。企業の責任の問題について、各国と同じような物の考え方を日本が積極的に打ち出していくということは大切なことではないかな、私はこう思っておるところであります。
 どういうふうな打ち出し方をしてやったらいいのかというようなことについてはもう少し検討するところはあるだろうと思いますが、物の考え方として、やはり世界的な問題としてとらえていかなければならないのではないかな、私はこう思っています。単に日本での裁判規範だけではない、日本での社会的な規範ではない、そういったことで考えていかなければならないと思っています。
 そういった意味で、私は、よい制度として定着していくためには、国内においていろいろな形で節度のある制度であることが必要であろう、こう思っています。長時間かけていろいろな形で関係者の間で形成された合意というものをベースにして本法案を進めていくということが基本的に大切なことだろうな、私はこう思っていることを改めて申し上げまして、本法案についてはこれを評価いたしたい、こう思っておるところでございます。
 法案の問題に関連いたしまして、実は裁判所へ持っていけば、きょうの新聞でしたかきのうの新聞でしたか、三十万円ぐらいのものを裁判所へ持っていってどうするんだ、こういうような話がある。
 例えば、テレビがいろいろ故障したから、それによって被害を受けた云々、こういうふうな形で、テレビが焼けだというような形。テレビが焼けただけなら、裁判所へ持っていくこともない。私は、それはテレビでいろいろな故障があったからといって、テレビの販売店や何かにいろいろ話をしてやっていくというようなことも考えられるのだろうと思うのですね。
 そういった意味で、私は、こうしたような場合、その物自体の被害もありますが、それに関連するところの被害をこの製造物責任で取り上げておるわけでありますが、そういった少額被害の場合、被害でありますが、裁判所へはやはり何百万円というような被害でないと私は持っていかないと思うのですね。それは弁護士さんも使わなくてはいけませんし、訴訟手続の費用も要りますし、いろいろな資料も要ります。こういうことでありますから、やはりお互い同士が話し合いをしてやっていくというのが一つの問題であろう。
 それから、地方公共団体なりあるいは国民生活センターか何かの消費者サービスセンターみたいなところがありますから、そんなところでいろいろな問題を解決をしていく。これは裁判制度ではなくて、行政的なサービスとしてやっていくようなことだろう、私はこう思いますけれども、そういったようなことを解決をして、要は消費者の保護をどうしていくか、被害者をどうして保護するかというのが一つの大きな眼目になっておるわけでありますから、そういったことについてどういうふうに考えていくのか。いや、それは政府はこの法律をつくっておけば、裁判でやればよろしい、こういうことでいいのか。その辺につきまして、企画庁ですか通産省ですか、お答えください。
#47
○坂本(導)政府委員 委員御指摘のように、恐らく少額の紛争あるいは被害は裁判にかかるということは実際問題として少ないのだろうと思います。したがいまして、そういった裁判外の紛争処理の体制という問題は極めて重要でございまして、関係審議会の中でもそういった面で充実を図る必要があるという指摘を受けでございます。
 したがいまして、私どもといたしましては、ただいま申し上げましたような少額被害等につきましては、広く、委員御指摘の相対交渉、あるいは地方消費生活センター、あるいは苦情処理委員会等、消費者が身近に利用できるような案件は既存の体制の中で整備していく必要がある、さらに充実させていく必要があるというふうに考えております。
 またさらに、そういった場面で解決できないようなもっと大きな問題につきましては、あるいはそのニーズに応じまして、個別製品分野ごとに専門的な知識を活用した体制を、中立性あるいは公平性を確保しながら、相互に連携をとりながら充実させていくという必要があるというふうに考えておりまして、そのために努力をしてまいりたいと考えております。
#48
○林(義)委員 ありがとうございました。
 終わります。
#49
○額賀委員長代理 小此木八郎君。
#50
○小此木委員 小此木でございます。よろしくお願いをいたします。
 先ほどは林先生の御質問で、林先生、大変長い間先輩方どこの議論をされてきたと思います。私は、昨年の七月に当選をさせていただきまして、この問題も、ある程度国民に近い立場からと言えるかもしれませんけれども、非常に広範な範囲で、内容も複雑であるというふうに感じておりますが、この法律案の理念そして概要、各方面への影響、そして製造物の定義などについてお伺いをしたいと思います。
 御答弁いただく方は、なるたけ本当に国民にわかりやすく、具体的に、私にもわかりやすくお話しいただきたいと思います。
 まず、経企庁長官にお尋ねをいたします。
 なぜ今この製造物責任制度の導入が必要なのか、提出の取りまとめをされた経企庁長官の御見解を伺いたいと思います。
#51
○寺澤国務大臣 大量生産・大量消費という今の社会では、結局製品の安全性というのが、特に製品が安全でなかったことによる被害者の立場から、安全性の確保はどうしても製造業者に依存するという度合いが強まってきております。そういう観点から、被害者を救済する、守るという観点から、製造物責任制度を導入した方がいいんじゃないかという指摘が、委員も御存じのようにずっとなされてまいりました。
 この製造物責任制度の導入については、いろいろな社会救済への影響など幅広い観点からの検討が必要であって、政府としては、国民生活審議会とかその他いろいろな審議会においてずっと検討を重ねてまいりました。そして法制化を急いできたわけであります。ついにその法制化を進めるべきであるという合意に達しました。それで、今回、この法案を当委員会に提出させていただいたわけであります。
#52
○小此木委員 本法案で言えば、製造業者に対し指導的立場にある通産省でありますけれども、各業界からの要望、率直に言って法制定に対して反対が寄せられていたのではないかと思うわけでありますが、この製造物責任制度の導入の必要性について、通産省の立場からはどのようなお考えか、大臣にお伺いをしたいと思います。
#53
○畑国務大臣 ただいま経企庁長官の方から基本的な必要性等々御説明があったわけでございますが、ただいま先生御指摘のとおり、とりわけ産業界、中小企業のお立場、こういった分野からは当初大変な懸念材料として、あるいはまた、御指摘がありましたように、反対をしなければならぬといったようなお立場をおとりになったことも私どもも承知をいたしておりますし、それぞれのお立場での御懸念があったことは十分御理解をいただけるのではないかなというふうに考えます。
 そういう実態のスタート時点の姿でありましただけに、御承知のとおり、産業構造審議会を初め各関係の審議会等々に産業界の方々、中小企業の方々にもお入りを願って、御理解を得ながらバランスのとれた法案をということで今日まで作業を進めさせていただいたということであるわけでございます。
 これを逆に言いますと、産業界ではさらに製品の安全性を確保する、そういう安全性の向上ということがこれを機会に求められるし、なおまた、当然のことながら、産業界の方でもそういった御努力を賜らなくてはならない。
 なおまた、いわゆる諸外国におきましても同様な制度が従来から持たれておるわけでございまして、さような意味合いでは、御案内のような今日の国際社会の中にございましては、調和のとれた、諸外国と同様な仕組み、制度、こういったものを導入することもこれまた我が国の産業界の一つの大きな責任、こういうような意味合いでの受けとめ方をさせていただいておるわけでございます。
 行政サイドにおきましては、この法案に御賛同賜り、成立を図っていただきました後におきましても、産業界に対する指導あるいはまた相談業務、こういうことにも万遺憾なきを期していかなければならない、そしてまた消費者と製造業者との問のいわゆる相互信頼、こういうものをつくり上げていかなければならない、かように考えておるところでございます。
#54
○小此木委員 次に、製造業者等が責任を負う損害の範囲についてお伺いをいたします。
 国民生活審議会及び産業構造審議会の答申では、事業者に生じた損害については、これを含まないとされています。
 そこで、経企庁にお伺いいたしますが、本法では、事業用、非事業用の区別は行わないとされているようですが、その理由は何か、そして、事業用、非事業用ということを具体的に説明をしていただければ大変ありがたいのですが、よろしくお願いいたします。
#55
○坂本(導)政府委員 委員御指摘のように、国民生活審議会あるいは産業構造審議会におきましては、事業用、つまり商売でやっている事業に使われている製品の事故は対象外にする、その考え方は、製造物責任法は消費者の被害を救済するということであるから、事業者の被害まで救済する必要はないのではないかという考え方から出た答申であろうというふうに考えております。
 しかし、その後政府部内でいろいろ議論をいたしましたが、現在の民法の不法行為でございますと、それは事業用、つまり商売用があるいは消費者個人用がという区別がなされていないということでございまして、あえてその区別をする必要がないであろうという考え方から対象に入れたものでございます。
#56
○升田説明員 ただいまの点につきまして若干補足させていただきますと、現在の民法のもとにおきます不法行為に基づきまして損害賠償請求をする場合におきましては、ただいま御指摘の事業用あるいは事業者に生じた損害を損害賠償として請求するというときには、事業の内容あるいは得べかりし利益の内容、性質、事故の態様あるいは被害者と加害者との関係など諸般の事情を考慮いたしまして、法律では民法の四百十六条というところに規定があるわけでございますが、この規定を類推適用いたしまして、通常生じる損害であるのかあるいは特別に生じる損害であるのかという区別をまずいたします。そして、特別の損害の場合には、その損害の発生が予見可能であったかどうかという二段階の判断の枠組みを経て判断をされております。これを通常、通説的な考え方によりますと、相当因果関係の理論、こういうぐあいに呼ばれておるわけでございます。一般的にこの理論で解決されているということでございます。
 それで、今御指摘の製品事故につきまして、過失責任にかえて欠陥責任を導入した場合におきまして、そういう実務、考え方というものを変更すべき合理的な理由が見当たらないということでございます。
 それからさらに申し上げますと、今までの相当因果関係の理論によります実務の運用におきまして、損害の範囲が不当に広がるというおそれはないというぐあいに考えておりますし、また、これによりまして社会常識に沿った適切な損害賠償が恐らく認められるであろうというぐあいに考えられるわけでございます。
 それから、先ほど御指摘の事業用、非事業用の場合の具体的な例を指摘してみてほしいということでございますけれども、例えば、テレビが燃えた、テレビが燃えてさらに家が燃えたというときに、そのテレビのありました部屋が自宅であった、居住する建物であった場合には、これは非事業用になるわけでございます。ところが、その場合に、その建物が例えば事務所であったという場合には、これは事業用になるわけでございます。ところが、その建物を内職に使っておった、あるいはその家で若干事業をやっておった、大半はそこで寝泊まりしておるというような場合には一体どちらになるのか、そういった難しい問題も出てくるということから、そういう区別は行わないでも、現在の法理論で不当な結果にはならない、むしろ適切な損害賠償が認められていくだろうということを考えて、こういう提案をしておるわけでございます。
#57
○小此木委員 私もいろいろ考えますと、いろいろ店例が頭の中に浮かんできまして、それはまたの機会にいたします。
 続いてまた法務省でありますけれども、製造者などの責任期間について、今度は製品を流通に置いたときから十年とされていますけれども、これは民法の不法行為にかかわる責任期間である二十年の半分になっていますが、このように短縮された理由というのは何であるのか、この十年という期間についてどのようにお考えなのかをお聞きしたいと思います。
#58
○升田説明員 ただいま御指摘の損害賠償の長期の責任制限という問題でございますけれども、これは御指摘のように民法の七百二十四条という条文がございまして、ここでは不法行為のときから二十年間ということになっております。しかし、製造物責任といいますと、これは現在の過失責任よりも責任を厳格にするものである、製造業者にとって厳格な責任を認めるものであるということ。
 それから、製造物の通常の使用期間あるいは耐用期間というものが、比較的長期に使用される製造物でありましても、平均的に見ますと十年、あるいは使用期間で見ますと七年程度であるのが通常であるという事情がございます。
 それから、いろいろ製品を製造あるいは出荷いたしますときの検査記録の保存期間、あるいは製造物責任立法を採用しております国々では十年を採用している国が多いということから、原則は原則ではございますけれども、そういう不法行為責任の特則といたしまして、今申し上げましたような事情を考慮いたしまして、十年とするのが適当であるというぐあいに考えておるわけでございます。
#59
○小此木委員 通産省にお伺いします。
 先ほどの推定規定という話もありましたけれども、国民生活審議会及び産業構造審議会の答申によりますと、事実上の推定を働かせることを期待しているということです。
 先日、大阪地裁で出されました松下電器の賠償命令ということが新聞記事に載っておりました。これは、大阪の
 建設会社の応接室からパチパチという音がするので、従業員がドアを開けると、テレビから黒煙が出ていた。故障だと思い電器店に連絡しようとしたが、黒煙の勢いが激しくなってきたので一一九番通報。そのうちに、テレビ本体の後部から炎が出て燃え上がり、事務室など三十八平方メートルが焼けた。
ということでありまして、この建設会社がテレビ会社を訴えて、結局裁判になったわけでありますけれども、裁判長は、
 「特別の知識も技術もない利用者が、具体的な立証をしなければならないとすれば、製造者は常に免責されることになる」と判断。「被害者はテレビを通常の方法で使っていたのに出火したのだから、テレビの設計、製造の過程で何らかの注意義務違反があったとみられる」
ということは、これが推定ということですね。
#60
○清川政府委員 先ほど先生が御紹介になりました判例につきましてまだ十分詳しく読んでおりませんので、今のお話、そのままそのとおりかどうかという話は別といたしまして、いわゆる事実上の推定、これは法律で推定規定が置いてある推定と違いまして、裁判の実務におきまして、通常、裁判官が損害賠償請求に対する立証責任は原告にあるという形でやっているわけでございますけれども、原告側に一方的に証明を求めているというわけではなくて、立証責任を負っていない被告においても裁判官の訴訟指揮によって必要な証拠を提出しているというのが通例でありまして、このような訴訟の整理、裁判官の争点整理の手続を通じた立証の負担の軽減などが行われているということが、いわゆる事実上の推定というふうに理解をいたしております。
#61
○小此木委員 それで、これまでの個別単一製品の事故で事実上の推定が活用された例はないと言われておるように聞いておりますけれども、答申が言うように、事実上の推定が活用されることにより、製造業者等に過大な損害賠償が強いられることになり、技術開発や新製品開発の意欲を阻害する懸念はないのかどうかもお伺いしたいと思います。
#62
○清川政府委員 事実上の推定の問題でございますが、先ほどちょっと御紹介いたしましたけれども、いわゆる裁判官の争点整理の手続の問題でもございまして、日本の裁判実務で確立している手法であるというふうに伺っております。
 例えば、古い判例かもしれませんが、中古自動車の引き渡しを受けた後で、二日後に走行中に後輪が外れた、それで事故が起きた際の判決として、そのホイールナットのねじ山が事故の直後の時点ではいずれも摩耗しておったというようなことから、被告はホイールナットを十分締めつけなかったかあるいは摩耗していたホイールナットを使用していたかいずれかであったので、やはりこのようなことが事故発生の原因であると推認すべきであるというような判例もございまして、実際上多く使われている、いわゆる立証の困難性や経験則を踏まえた柔軟な立証手続を通じた仕組みであると考えておりまして、従来からも使われていると考えているわけでございます。
 なお、損害賠償の問題でございますけれども、損害賠償の範囲につきましては、先ほど法務省から御説明がございましたけれども、相当因果関係の理論で解決されている実務につきましては、この欠陥責任の導入でも変わらないということになっておるわけでございます。したがいまして、賠償の範囲は不当に広がっていないし、また社会的常識として認められるという説明もございましたが、そのような意味では妥当な法案の内容になっていると考えるわけでございます。
#63
○小此木委員 本法案においていわゆる開発危険の抗弁が認められたわけでありますけれども、免責要件の製造物引き渡し時における「科学又は技術に関する知見」とは、これは具体的にはどのレベルを想定しているのか、経企庁にお願いします。
#64
○坂本(導)政府委員 ただいま御指摘の開発危険の抗弁における「科学又は技術に関する知見」というお尋ねでございますが、これは個々の製造業者等の水準というものではなくて、あるいはさらに特定の者の有する知識ということではなくて、客観的に社会に存在する知識の総体、具体的にもっとわかりやすい言葉で言えば、入手可能な最高の科学または技術の水準というものを基準として考える。ただ、それは一方で、特定の一学者だけがその危険性を叫んだから直ちにそういうことになるというものでは必ずしもございませんが、今申しましたように、入手可能な最高の科学または技術の水準というふうに考えております。
#65
○小此木委員 その入手可能な最高の科学・技術水準ということでありますけれども、その要件を満たすには、企業が常に最先端の科学・技術の知識に精通している必要があると思います。大企業においてはともかくとして、中小企業はこれに対応できるのかどうなのか、どうお考えでいらっしゃいますか。
#66
○清川政府委員 開発危険の抗弁でございますが、これは裁判のときにおける科学または技術に関する知見によれば、これは事後的な関係になりますが、引き渡し時の欠陥の存在を認識できる場合であって、被告は立証により製造物の引き渡し時における科学または技術の知見によってはこれを認識することができなかった、こういうことが客観的に認められたときに被告を免責するということでございまして、この知見そのものは客観的な状況にあるわけでございます。
 今先生のお話しの、しからば中小企業は人的にもいろいろ限られる面が多いので十分対応できるかという点でございます。このような問題はやはり大きな問題でございます。中小企業に関しまして通産省におきましては技術についての担当課を設けるなどして、技術水準の向上、普及などにつきまして鋭意努力を払っているところでございます。
#67
○小此木委員 それでは、本法施行により製造物責任制度が導入されると、製造業者等は製品の安全対策に従来以上に力を入れるようになるとともに、このマネジメントリスクに備え、今度はPL保険等に加入することが予想されると思います。製造業者からすれば、その保険料負担のため製品価格に転嫁することになるものと考えられ、危険負担の公平な配分という考え方をすればそれはやむを得ないということかもしれませんが、結果的に消費者物価が今度は上昇するという懸念も考えられます。
 それで、経企庁ではこの物価への影響をどのように試算をされていますか、具体的にお願いいたします。
#68
○坂本(導)政府委員 御指摘のように、この製造物責任法は裁判規範であると同時に行為規範としての期待を持っているわけでございますから、企業がより安全性の高い製品を供給することを期待しているわけでございます。それが一つのこの法律の目的でもあるわけでございますが、と同時に、委員御指摘のように、それが保険に付してあるいはその製品価格が上がるのではないかという御指摘であろうと思いますが、私どもとほぼ同程度の内容を持っておりますところのEC諸国におきましては、製造コストあるいは保険料負担というものが大きく変わっているということはないというふうに承知しております。
 さらに、じゃ具体的にどの程度消費者物価に影響を与えるのかということは、これはなかなか難しいのでございますが、私どもはかなり大胆に、今製造物責任保険制度に入っていない企業の方々がすべて同時にこの一年間で全部入って、それが結果として物価にどの程度影響を与えるかということを試算してみますと、消費者物価で〇・〇〇五%程度ではないかなというふうに考えているところでございます。
#69
○小此木委員 続きまして、中小企業庁。五月十日の月例経済報告によりますと、「我が国経済は調整過程にあり、一部に明るい動きがみられるものの、総じて低迷が続いている。」となっていますが、このような状況下で中小企業を取り巻く環境は依然として厳しく、なおかつPL保険料の負担を考えれば、死活問題どころか、それ以上の事態に直面せざるを得ないでしょう。そのため何かしらの方策が必要と思いますが、中小企業庁はどのようにお考えか。
#70
○長田政府委員 この製造物責任制度というのを中小企業の立場から見てみますと、この責任制度は基本的に民事上の責任の問題でありますので、企業の規模によってここで切るとか、そういうような一定のところで責任を免れるというような差をつけるということはなかなか難しいのではないかと思います。それからまた、そのような例も諸外国にはないようでございます。
 さらに、もし仮にそういうような適用除外的なことをやったといたしますと、そういう責任を負わない商品は取引をしないとかいうような、取引面でまたいろいろ中小企業に問題が生じてくる、こういう問題もあると思います。そういうようなことを考えてみますと、やはり中小企業を対象にいたしまして、この制度の確立を図っていくということになるのだろうと思います。
 それから、先ほど大臣からもお話がございましたが、最初こういう話が出ましたときに中小企業の人たちは、これは一体どういう制度なんだろうか、非常に法律的な関係もございますし、いろいろな紛争の問題もあります。そういうようなことで、非常な不安感を持ったことは確かでございます。私ども中小企業庁としても、そういうことに対応をしまして、世の中に起こっている状況、審議会でいろいろ議論がされておる状況、諸外国の状況、そういうようなことにつきまして中小企業の方々によく誤解のないように、不安を持たないようにいろいろな勉強会も進めてまいりました。
 そのような状況でございますが、私ども中小企業庁といたしましては、こういう制度が導入されますと、それは中小企業に対する負担もございます。そういう点にかんがみまして、いろいろな対応を講じていく必要は、先生も御指摘のとおり、あると思います。この制度自体に、既に部品や原材料の製造業者について一定の要件のもとに抗弁を認めるというようなことも設けられておりますし、さらに施行期日も一年間の猶予期間が設けられている、こういうようなこともございます。
 私どもとしては、行政上この制度の内容をさらによく普及、徹底して、その中小企業の方々の不安感の解消に当たりますとともに、いろいろな制度、これは例えば中小企業の製品の安全性の向上のためにPR、普及をやるのは当然のことといたしまして、関係の団体に補助金を交付し、そういう点を徹底しますとともに、また、設備投資に対する低利の融資あるいは税制上の措置、こういうようなことを平成六年度におきまして用意して対応をして、万全を期してまいりたい、こういうふうに考えております。
#71
○小此木委員 時間がなくなってまいりましたが、いろいろお聞きしたいこともあるのですけれども、この条文の中で「製造又は加工された動産」、こういったことの具体的な答弁をお願いしたいと思うことや、あるいはその範囲について、例えば第一次農水畜産物とソフトウエア等の無体物及び不動産については該当しないとされているようですけれども、その根拠は何か、これをお聞きしたいと思います。
#72
○坂本(導)政府委員 動産とは、民法上、不動産以外のすべての有体物というふうに定義されておりまして、不動産以外のすべての有体物は動産になるということでございまして、この法律案でもそれをそのまま採用されているところでございます。
 具体的には、今御指摘の電気などの無形エネルギーあるいはソフトウェアなどは、無体物であるので、動産には当たりません。また、建物等土地の定着物は、不動産であるので、動産には当たらないものと考えております。そしてまた、御指摘の未加工の農林畜産水産物は、基本的には自然の力を利用して生産されるものであり、高度に加工された工業製品とは生産形態に著しい差異があることから、本法案の対象から除外しております。
 それから、不動産につきましては、製造物責任が妥当する製品分野として考えておりますのは、大量生産あるいは大量消費という形態が当てはまる最終製品たる動産が一般的に考えられてきておりまして、不動産は、本来、契約責任による救済になじむこと、あるいは第三者に対する被害については土地工作物責任による救済手段が用意されている、あるいは耐用年数も長い、その間の劣化や維持補修をどうしていくかというようなことを考え、あるいは国際的調和でECも採用していないというようなことをすべて総合的に勘案してこういう形にしたものでございます。
#73
○小此木委員 最後に、農水省の皆さん、ごめんなさい、経企庁長官からちょっとお伺いをしたいのですけれども、提案理由の説明の中に、「法の目的、欠陥の定義等を明らかにし、国民にとってよりわかりやすい法律となるよう所要の規定を置いております。」とありましたけれども、私もまだまだ勉強したいところもあります。その中で国民から見た場合になかなか読み取りにくい部分も出てくると感じられます。そうであるならば、ある程度の定義づけをするか、ガイドラインといったものをつくって国民に対して早急に明示をすべきだと思うのですけれども、そういったことに関する大臣の所見をお伺いして、この質問を終わりたいと思います。
#74
○寺澤国務大臣 委員御指摘のように、国民がすぐ素直に読み取れて理解できるような表現にすべきであるということは確かに、本当にそのとおりでありまして、一生懸命に努力いたしまして、私どもも、例えばこの法案の対象となっている製造物についてはその範囲について定義を設け、できるだけ明確化するような努力をしてまいりました。
 製造物責任が主として工業的に生産された動産に適用されてきたということもあり、民事責任としての製造物責任の対象を確定するにふさわしい表現として使ってきたわけであります。
#75
○小此木委員 どうもありがとうございました。
#76
○額賀委員長代理 野田聖子君。
#77
○野田(聖)委員 野田聖子でございます。
 本日は製造物責任法案について御質問させていただきます。今質問のあった小此木議員、そして大先輩の林議員がかなり御質問されたので、私は一点について取り上げて質問させていただきたいと思います。
 実は、私たち商工委員会委員には、この「製造物責任法案の要点及び問題点」という本をいただいております。そこをあけましてすぐに疑問に思った点を質問したいと思うのですが、一ページ目に「法律案の内容」とございまして、二番目、「定義(第二条)(1)「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう。」今まで再々政府からの御答弁があったのですけれども、その中の(注)に、「血液製剤、生ワクチン等は含まれることになる。」こうあえて記載があるわけなんです。なぜこれがあえて出ているのかというと、これは実は事前に随分議論があったものである。それがこの法律案が提出される直前といいますか、突如として製造物に含まれることになったということを承りましたので、非常に疑問を感じておるところでございます。
 そこで、まず最初の質問は、この血液製剤は製造物の定義に該当するのか、なじむのかという質問、あわせて、この血液製剤が製造物であるとするならば、その製造業者はだれなのか、お答えいただきたいと思います。
#78
○矢野説明員 お答えいたします。
 この法律におきまして「製造物」とは、「製造又は加工された動産」、こう定義されております。
 そこで、血液製剤でございますけれども、これはいろいろ種類がございまして、大きく分けますと三つあるわけでございます。全血製剤、血液成分製剤、血漿分画製剤、この三つございまして、結論から申し上げますと、このすべてが製造物に該当する、こういうことにされたわけでございます。
 その理由といたしまして、輸血用血液製剤、これは全血製剤と血液成分製剤のことと承知しておるわけですけれども、血液に保存液とか抗凝固剤、固まりを防ぐ薬剤などを加えまして処理されておりますので、これは加工された動産と言えるのじゃないかということで、製造物の定義に該当するということでございます。
 それから、もう一つの血漿分画製剤につきましても、これは血液を原料といたしまして非常に高度に加工されたものでございますので、製造物に該当するということでございます。
 それから、この製造者でございますけれども、特に輸血用の血液製剤につきましては、日本赤十字社が一元的に製造しております。
#79
○野田(聖)委員 今御説明の中に、血液製剤というのはおおむね三種類に分かれる。
 実は中央薬事審議会PL制度等特別部会報告書が既に平成五年十月に発表されておりまして、そこでは、「全血製剤及び血液成分製剤は、人体から採取した血液を基本的に加工処理しないで、輸血するために用いるものであり、生体機能の一部を補充・移殖するという性格を有するため、製造物の概念には含まれない。」「全血製剤及び血液成分製剤は、生体の一部であるため、例えば、他の医薬品では可能な程度の殺菌処理を施すこともできない。」そういうふうに言っております。
 ただし、先ほどおっしゃった血漿分画製剤というのは、「高度な加工処理が加えられていることから、製造物の概念に含まれる。」つまり、三種類血液はあるんだけれども、最後の血漿分画製剤は加工物、製造物でいい、ただ、最初の二つに関しては今の事情で違うんだということを中央薬事審議会は言っているのですね。
 同じく、これは平成五年十二月に国民生活審議会、これの理解というのも、その血液に関しては、「加工処理しないで輸血するために用いられる全血製剤及び血液成分製剤は、血液そのものの製造と考えることはできずこというふうに言っており、これを製造物責任法の製造物の対象とすることは適当でないということを言っているわけなんです。
 それに対してどうお考えでしょうか。
#80
○矢野説明員 今先生のお読みになったようなことで、中央薬事審議会でこの問題について御議論いただいたときには、製造物になじみにくい、それからまた殺菌処理もできない、殺菌処理をいたしますと薬として有用性が失われるとか安全性に問題が出てくる、こういうことで、そういう殺菌処理もできない、それで危険を承知で使わざるを得ない、こういう面がある。したがいまして、こういった血液製剤につきまして無過失責任を課すということになりますと、血液事業に支障が生じるのではないか、血液の安定供給に問題が出てくるのじゃないか、こういう指摘があったわけでございます。しかし、その後政府部内あるいは連立与党のプロジェクトチームの中でこの問題が議論されまして、最終的には先ほど申し上げたような理由で製造物に該当する、こういうことになったわけでございます。
 そこで、私どもが一番懸念しましたといいますか心配しましたのは、これによりまして日本赤十字社の血液事業に支障を生じるのじゃないか、血液の安定供給に問題が出てくるのじゃないかということを非常に心配したわけでございますけれども、この点につきましては、この法律の「定義」というところで、「欠陥」とは、製造物の特性などを考慮して、「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」、こういう定義が欠陥の定義として行われたわけでございます。
 これを輸血用血液製剤に当てはめてみますと幾つかの点が言えるわけでございまして、一つは、生命の危機に際して使用されるものでございまして、他に代替する治療方法がなく、極めて有用性が高い、二つ目に、輸血によるウイルス等の感染や免疫反応等による副作用を生ずるおそれがある旨の警告表示がなされておる、三つ目に、輸血用血液製剤は、世界最高水準の安全対策を講じた上で供給されているが、技術的にウイルス感染や免疫反応等による副作用の危険性を完全に排除できない、こういった特性等を備えているわけでございます。
 したがいまして、現在の科学技術の水準のもとで技術的に排除できないウイルス等の混入や免疫反応等による副作用は欠陥に該当しないものと考えられるので、血液製剤の安定供給に支障を生ずることはない、こういう判断をした次第でございます。
 したがいまして、この欠陥の定義、製造物のところでは確かに該当するわけでございますけれども、欠陥の定義のところも総合的に考えますと、現在の日赤の血液事業に支障が生じることはない、こういう判断をいたしまして、私どもとしましてもこういう法律案に賛成をしたということでございます。
    〔額賀委員長代理退席、委員長着席〕
#81
○野田(聖)委員 今御説明の中に、連立与党PL法プロジェクトチームの中で議論があったとございます。これは平成六年四月四日の「製造物責任法に関する連立与党プロジェクトの検討結果について」という資料ですが、ここの前文で、このプロジェクトというのは、「昨年十二月十六日から十二回にわたり会合を開き、検討を行った。」とあります。そこで、「この間、関係省庁より関係審議会における本問題についての検討結果をヒアリングするとともに、産業界、消費者団体、労働界、法曹界等より広く本問題についての意見を聴取した。」
 そこで、先ほど製造業者と認定されました日本赤十字社並びに血液に関する日本輸血学会というのがあるわけですけれども、そういう方たちはどうなったのでしょうか。そこに出席されて、そのプロジェクトチームからのヒアリングを受けたかどうか。受けたかどうかだけお答えください。
#82
○矢野説明員 ヒアリングは受けておりません。私どもが代表してヒアリングを受けたということでございます。
#83
○野田(聖)委員 厚生省は厚生省であって、日本赤十字社ではありません。この法案が通ったときに、そういう責めを背負うのは、厚生省ではなくて、日本赤十字社だということは、それはやはりきちんとけじめをつけておくべきではなかったのでしょうか。
 つまり、私が申し上げたいのは、薬事審においても国生審においても反対であった血液製剤、製造物にするのは反対であった。
 なお、この読売新聞の四月五日によりますと、連立与党の骨格で、血液製剤に関してはこういう記載があります。「生活審報告で製造物の対象外とされた血液製剤を、厚生省などの反対を押し切りPL法の対象物とすることにした。」これは読売新聞の一面の記事なのです。だから、厚生省も反対していたのですね。
 それで、さっき一、二、三と、そのまま血液製剤を普通の製造物と一緒にするのは若干無理があるから、血液製剤に関してはこの三つの要項をうまく適用して、それで欠陥じゃないということを立証すればいいとおっしゃったけれども、それじゃ今おっしゃった一、二、三がすべて含まれて、欠陥に該当する血液製剤とは一体どういうものを予想されているのですか。そういうものがあるのですか。これ以外に、そういう血液製剤というのが出てくるのでしょうか。
#84
○矢野説明員 これは、被害の発生原因というのはいろいろ考えられるわけでございまして、例えば保存液とか抗凝固剤を注入すると申し上げましたけれども、こうした薬剤に不良品があった、あるいは血液バッグ自体に欠陥があった、こういったいろいろほかの原因も考えられます。したがいまして、こういったものについては、この法律によりまして無過失責任が適用される、無過失責任の対象になるということでございます。
#85
○野田(聖)委員 もう一度はっきりおっしゃっていただきたいのですが、結局、欠陥じゃなくて無過失だという。要するに、血液製剤というのは、この三つの特別な配慮があるとすべての血液製剤というのは無過失、要するに欠陥に値する血液というのは存在しないということになるわけですか。
#86
○矢野説明員 先ほど申し上げたもの以外にも、被害の発生原因というのはいろいろ考えられるわけでございまして、例えば血液バッグ自体に欠陥があった、あるいは薬剤に欠陥があった、こういった場合には、当然、欠陥責任の対象になるということでございます。
#87
○野田(聖)委員 わかったようなわからないような答弁なのですけれども、実は、先ほど連立与党PL法プロジェクトチームにお招きいただけなかった日本赤十字社と、そして日本輸血学会という血液に関する日本のプロフェッショナルといいますか、私たちは平生、血液を毎日考えて生きているわけじゃなくて、私たちの体には流れているのだけれども、実際にそれを専門的に研究しているのが日本輸血学会であり、かつそれを運用しているのが、私たちの福祉のために、医療のために運用しているのが日本赤十字社であります。
 実は赤十字社が四月十一日、ですからこの新聞発表を受けてですけれども、厚生省に質問書を送っているのですよ。例えば、「「通常有すべき安全性」を備える輸血用血液製剤を明確に示してほしい。」とか、この一つのペーパーなのですけれども、現行の検査では、検査方法によって防止できないウイルスもあるのだ、つまり今供給されている血液というのは完璧なものというのは全くないのだ、完全な血液というのは存在しない、そういうことについてどうするのだという質問書を出したのだけれども、一向に返事がないということなのですよ。
 ですから、私が非常に心配しているのは、日々血液に関して仕事をされている人たちの声も聞いていなければ、その人たちの疑問にもきちんと答えていない。政府のつくった法案の中の血液製剤というのは非常にまずいのじゃないか、公平性を欠いているのじゃないかという心配があります。
 そこで、実はきのうなのです。これは、質問を受けたのが急だったので、日本輸血学会の方からきのうでき上がったばかりの、血液製剤をPL法の対象とすることについての考えというぺーパーをいただきましたので、抜粋して読みます。
 輸血は救命の為に緊急避難的に行われるものであり、現代医療にとって欠くべからざる重要な補充的療法である。輸血用血液は代替品のない(従って、供給を中止することができない)「なまもの」である。そして異なった献血者から得られる血液は均一たり得ないものであり、現代医学で規定される以上に画一的に安全な血液を供給することは不可能である。さらに、輸血用血液の供給は、献血者の善意に支えられ、またその貴い志を活かすべく国と日本赤十字社が共同して行っている公的非営利事業である。PL法にいう無過失責任と損害賠償が、患者の真の意味の救済とは別個の概念で扱われるべきことを指摘しておきたい。というコメントを出されておりますが、これについて御感想は。
#88
○矢野説明員 先ほど来、日赤の反対などを押し切って進めた、こういう趣旨の、そういう受けとめ方をしたわけでございますけれども、私どもは日赤の関係者あるいは学者の方々などとも相談しながらこの問題を進めてきたということでございます。
 ただ、これはたくさんの方がいらっしゃるわけですので、日赤の血液センターの第一線の方々の間まで私どもの考え方が浸透していなかった、御理解を得るに至っていなかった、こういう点はあろうかと思いますけれども、日赤の話もよく聞き、お互いにこの問題について相談をしながら進めてきたということでございます。
 ただいま、輸血学会の意見の取りまとめがあったということは私どもも伺っておりますけれども、先ほど来申し上げているように、欠陥には該当しないということでございまして、技術的に排除できないウイルス等の混入とか、免疫反応等による副作用は欠陥には該当しない、こういう政府の統一見解が出されているわけでございますので、さらに理解と協力が得られるようにこれからも話し合い等を進めてまいりたいと思います。
 具体的に欠陥に該当する場合、該当しない場合、さらに先ほど申し上げたような基本的な考え方のもとに進めていきたいと思っております。
#89
○野田(聖)委員 結局、いろいろまだ不十分であると言いつつ、なおかつ欠陥に該当しない部分が多いわけですから、今まで別に血液製剤に関してそういうのが野放しになっていたわけではなくて、やはりそういう訴訟が実際に起こっております。ですから、あえてPLの新しい法案の製造物に無理やり尾ひれをつけて押し込むのではなくて、従来どおりの過失責任の範囲内で行うことは不可能かどうか。
 実は、「PL法の対象について」ということで、「基本的には現代の大量生産・大量消費という形態が当てはまる製品であり、一般に最終製品たる動産が対象とされてきた。」これは何かというと、「自民党 経済・物価問題調査会PL制度に関する小委員会の中間とりまとめにおける指摘への考え方について」、これは経済企画庁が出しているのですけれども、そついう質問に対して、経済企画庁から平成五年十二月にお答えをいただいている。そういうことを言っている中で、「基本的に」云々という言葉が血液製剤に妥当するのか。
 そして、もう一つの問いとして、「「欠陥」の定義について」、「欠陥概念を可能な限り明確化することが望ましい。」と当時経済企画庁はお答えになっているのですが、じゃ先ほどのような一、二、三の特別な考慮があるとするならば、血液製剤についてはその欠陥概念がかえってあいまいになってしまうのではないかと思うわけなのですが、いかがでしょうか。
#90
○坂本(導)政府委員 委員御指摘のように、国民生活審議会の意見の時点では、製造物の対象とすることは適当ではないという御意見でございました。その後、政府部内において検討し、特に厚生省を通じて日赤等との調整を図っていただきました。と同時に、法律的な詰めも行いました。その法律的な詰めの中で、やはり加工する以上は製造物である。ただ、血液の特性をどう見るかということはその次の問題でありまして、製造物から外すということにはならない。つまり、仮に排除できる欠陥であれば排除する必要はあるわけでございますから、それはやはり欠陥になるわけです。
 しかし、ここで先ほど厚生省がお答えしましたように、そのときの科学技術の水準で技術的に排除できないウイルス等の混入や免疫反応等による副作用は欠陥に該当しない。ただ、これもそのときどきの科学技術の変化がございますから、例えば現在と十年前とは違いましょうし、また十年後も違うと思います。したがって、そのときどきの状況を踏まえて考えると、現在の科学技術の水準では排除できないものは欠陥に当たらない、こういう考え方でございます。
#91
○野田(聖)委員 御答弁を聞いていますと、どう考えても血液製剤というものが掛け値なしに製造物であるという立証ができないのじゃないか。そういうあいまいな中に、あえて製造物に入れなければいけない理由は一体何なのか、非常に悩むところでございます。
 実は、先ほど経済企画庁の方の御説明によると、要は、これは包括的なものであるからあまり例外をつくりたくないのだという御説明があって、だから血液製剤を例外にしてしまうとほかのものも出てくる、そうするとやはり煩雑になるし、よくないのじゃないかということの御指摘もあったのですけれども、現実にもう既に例外はあるわけですね、先ほどおっしゃった電気であり、サービスであり、未加工の農林畜水産物ですか。
 余り時間もなくなりましたので、ありがたいことに、今度通産大臣になられた畑大臣は、ついこの間まで農林水産大臣をやっておられました。実は、私の同僚の農林委員会の委員に聞きますと、この未加工の農林畜水産物というのはわからないというのです、はっきりした定義が。例えば、輸入の果物なんかですと、レモンなんか取り上げると、運搬するのにやはり防腐剤というのがガスによってかけられているし、それは物によっては肥料にもその防腐の製剤が混入されていて、本来十日で腐るものが二週間延びるというような、そういう加工が実際に行われるわけですね。
 それを加工と呼ばずに未加工と呼び、かつ血液製剤というのはなぜクエン酸とかを入れるかというと、血が固まっちゃ困るからなのですね。今ここで献血してもらって、この場で使えることというのはめったになくて、一週間ぐらいストックしなければいけない。そのために、ほっておくと血が固まってしまうから、その血液の成分を変えるためにそういう抗凝固剤を入れるのじゃなくて、運搬の一つ、だから防腐剤とそんなに変わらないのじゃないか、気持ちとしては。そういうところの感覚なのです。
 私、ここで大切だと思うのは、確かに法律にのっとってやれば、その加工という定義とかそういうのはよくわかります。ただ、この加工という定義にしたって、私たち人間がつくったものですから一〇〇%完璧なものではないと思うのです。私たち政治に携わる者にとって大切なことは、そういう四角四面に物事を進めていくのではなくて、やはり自然の生活の中で、ちょっと無理があるなというものに対しては押し込まない、一つのものに押し込まないということが、そういう姿勢が大切だと思うのです。
 ECとかアメリカなんかで製造物の規定をする際には、かなり政治的な力が動いたと聞いております。この委員会で正式にPL法がこうやって審議されるのは私は当選して初めてですから、この場でしか私は自己主張することができませんし、最後の手段だと思っているわけです。
 今までの政府の答弁を聞いていますと、どうもこれが絶対製造物に値するという一〇〇%の確約がないまま現在に至ったような気がするのですが、一度これを考え直していただく、その場が今この委員会ではないかと思っているのですが、私の質問に答えていただけますでしょうか。
#92
○畑国務大臣 御指名を賜って大変光栄に思っておりますけれども、実は私はかって厚生政務次官もやっておりまして、さような意味合いでは今のお話を興味深く拝聴させていただいておったのでございますが、逆に申し上げますと、加工というものと添加、その辺の違いなのかな、いわゆる果物に一つの物を添える、片一方は加工、その違いかなと思うのでございますが、いずれにしましても、物事をすっきり解決することが必要だという意味合いでの御指摘というような意味合いではそれ以上の、私どもは、正直申し上げまして、政治的に判断する方はやや得意とするところでございますが、実務的な面はさらに関係者の間で先生に対する的確な答弁をさせていただきたい、こう思うわけでございます。
#93
○坂本(導)政府委員 すべての製品につきまして、加工か未加工かの判断は、具体的には個々の事案において当該製造物に加えられた行為等のもろもろの事情を考慮しまして、しかも社会通念に照らして判断されることとなりますけれども、一般的には加熱、これは煮るとか焼くとかということでございますが、あるいは味付け、これは調味、塩漬け、燻製等でございますが、それに粉挽き等は加工に当たると考えられるのに対しまして、単なる切断あるいは冷凍、乾燥などは基本的には加工に当たらないと考えられる。あとは、個々の事案を社会通念に照らして判断するということになろうかと思います。
#94
○野田(聖)委員 ありがとうございました。
 経済企画庁長官、御就任おめでとうございます。大変大きな法案なので、いろいろとお考えだと思います。これは大分いにしえから話し合われてきた重大な、重要な法案だと私は理解しておりますし、ついこの間までは自由民主党が主体になってほとんど手がけてきた。最終的に連立与党、それまでいろいろと御異論のあった方たちが政権をとられて、すり合わせがあって、今回の法律案ができたと思います。
 そこで私は、これが最初に言われているのは、今まである民法の一般則の特例措置を定めようとすること、つまり民法なわけですけれども、文字どおり民の法、それを手がけるに当たって、私たちは光栄にもこういう委員会の場で議論することができます。できることならば、言葉にこだわるのではなくて、その時代のニーズに合って、そして心の通っている法律をつくっていくことが、私たち民から選ばれた国会議員の務めだと思います。
 そういった意味で、今製造物と言われている血液製剤というのは、あくまでも最初は献血者の善意から始まります。そして、献血者というのは、それをお金もうけに使っているわけではなくて、やはり自分の真心を、困っている病気の人とか、けがの人を救おう、そういう気持ちから生まれてきたものだと私は理解しています。それが、このような法律下に置かれてしまうと、かえって献血者に対して規制がしかれるのではないか。そういう善意の心をゆがめてしまうような、例えば赤十字社が責任を背負いたくなければ、献血者に対してかなり厳しいチェックが入るだろう、かなり厳しい検査を強いるだろう、そうするとせっかく生まれ育っている献血ボランティア、奉仕の気持ちというのをなえさせてしまうのじゃないか、そういう規制になってしまうのじゃないかということを非常に懸念しているところですが、もう時間がございませんので、そのことについて御意見をいただきたいと思います。
#95
○寺澤国務大臣 野田委員のおっしゃることは、私もよく理解できます。特に、献血者、ボランティアの意気込みを阻害するようなものであってはならない。と同時に、もそういうところから何か病気の原因が生ずるようなことがあってもならないし、その辺のバランスといいましょうか、そういう問題がやはり今後の、特に現代社会において考えられなければならないことだろうと思いますが、野田委員のお考えになっていること、あるいは表現されたことについては、私もよく理解できます。
#96
○白川委員長 ちょっと待ってください。政府側、どうも答弁があいまいなんですよ。大事なことですから、どなたか、大臣でもいいし、どなたでもいいですから、政府委員、きちんと答弁してください。どうもちょっとあいまいです。大事なことですからきちんと。
#97
○矢野説明員 私どもは、日赤等とよく御相談をしながら……
#98
○白川委員長 いや、そういう問題じゃなくて、見解をきちんと、今の、加工に当たるか当たらないか、どういうふうに解釈するかというところをきちんと、有権的な答弁をしてください。
#99
○矢野説明員 血液製剤はすべて製造物に含まれる、こう解釈しております。しかし、先ほど申し上げたような……
#100
○白川委員長 そういう言い方をしないで、今だけで完結させてください。この答弁だけで完結させてください。
#101
○矢野説明員 血液製剤は、いずれも製造物に含まれ、製造物責任の対象になります。
 輸血用血液製剤、これは全血製剤及び血液成分製剤でございますけれども、
 輸血用血液製剤の欠陥については、次のような製品の特性等の事情を総合的に考慮し、判断する必要がある。
 @ 生命の危機に際して使用されるものであり、他に代替する治療法がなく、極めて有用性が高い。
 A 輸血によるウイルス等の感染や免疫反応等による副作用が生ずるおそれがある旨の警告表示がなされている。
 B 輸血用血液製剤は、世界最高水準の安全対策を講じたうえで供給されているが、技術的にウイルス感染や免疫反応等による副作用の危険性を完全には排除できない。
 従って、現在の科学技術の水準の下で技術的に排除できないウイルス等の混入や免疫反応等による副作用は欠陥に該当しないものと考えている。以上でございます。
#102
○白川委員長 申し上げますが、矢野企画課長は説明員ですね。どなたか、しかるべき政府委員。
#103
○坂本(導)政府委員 ただいま厚生省から答弁申し上げました内容につきましては、政府部内で一致した見解でございますので、政府委員の答弁とおとりいただきたいと存じます。
#104
○白川委員長 野田委員。
#105
○野田(聖)委員 ありがとうございます。
 経済企画庁長官の御答弁には非常に感銘を受けましたけれども、そう思ってくださるのであれば、まだ時間があるわけですから、もう一度、新しい連立与党政権になっておられるので、これはとてもすごく、今野党の私ではなすすべがないわけですけれども、少なくともその血液製剤を一くくりにするのではなくて、先ほど厚生省の方からも御説明あったとおり、血液製剤には三つあるんだ。三つあって、全血か、血液成分か、血漿分画製剤。最初の二つと血漿分画製剤というのは全く違うわけですね。全く違うという言い方は語弊がありますけれども、これはもう中央薬事審も、輸血学会も、赤十字も認めている。こっちは製造物だ、高度な加工をしています、だけれども最初の二つは加工じゃないんだ、そういうところはやはりきちんと詰めていただいて、血液を一くくりにするのでは非常にいいかげんな、本当に法律をつくるのであれば、やはりそういうところにもう少し血の通った政策を見出していきたいと思います。
 時間になりましたので、私の方からの質問は終わらせていただきます。どうぞくれぐれもよろしくお願いいたします。
    ―――――――――――――
#106
○白川委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 ただいま審査中の本案について、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選、日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#107
○白川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。
 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時二十五分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時四十四分開議
#108
○白川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。甘利明君。
#109
○甘利委員 午前中に同僚議員が質問をいたしました。私は委員会にかかわる仕事で飛び回っておりまして、委員の質問を全部聞くことができませんでしたので、一部重複することがあると思いますけれども、確認の意味で御答弁をいただきたいと思います。
 このPL法というのは、ある面では、言ってみれば革命的な法律でありまして、今までの民法の過失責任原則に新しい考え方、つまり無過失責任という考え方を持ち込む法律でありますし、製造物の欠陥によって起こされた被害に対して、過失の有無にかかわらず損害賠償の責任を求める、民法に新しい考え方を持ち込むわけであります。ですから、それだけに慎重の上にも慎重に審議をして、各方面の意見を聞いて、つくるのであるならばしっかりとしたものにしなければならないと思うわけであります。
 私ども自民党では、トップバッターとしてきょう質問をされました林先生を中心に、製造物責任制度に関する小委員会をつくりまして、都合二十数回の会合を重ねました。いろいろな方からの御意見も伺ったし、議員同士でいろいろ議論も重ねてまいりました。
 我が国は、よその国よりもかなりきめ細かく個別的な対応策がつくられているわけであります。国が定める安全基準が各範囲ごとにありますし、個別の救済制度というのも相当充実をしてきている。その上に、それぞれのメーカーが苦情処理の相談にもかなり綿密に当たってきているわけですね。そういう個別の対応策があるところに全く新しい概念の法律を網羅的に入れていく。
 その小委員会での最初のころ、私どもは、こういう対応策がかなりきめ細かくやられている、その上に網羅的に網をかける新しい概念を導入するということは、その必要性がどこにあるかをまず明確にした方がいいよと。
 現実問題として、苦情処理にかかわる機関に持ち込まれる苦情処理件数がそんなに伸びているのですか。例えば、国民生活センターに持ち込まれる苦情件数、相談件数が飛躍的に伸びて、現状の法体系ではとても対応できない、現状のメーカーの対応でもとても対応ができませんということであるならば、当然この必要性は認める。そして、国民生活センターの苦情件数を伺いましたら、ほとんど変わらず推移をしていったわけですね。特に、このPL法を提出するその時期に、組み上げていく時期に、件数が急激に伸びたという事実はなかった。その上で全く新しい考え方を導入するには、それなりの理念なり哲学というものはちゃんと確認をされていないと、法律というのはでき上がったらひとり歩きをしますよという議論も随分重ねました。
 ここで改めて、この新しい考え方を導入するに当たっての背景と申しますか、哲学、理念というものをまず伺っておきたいと思います。
#110
○寺澤国務大臣 委員御指摘のように、このPL法の必要性とか理念、これについて私どもは次のように考えております。
 大量生産・大量消費の現代社会においては、製品の安全性確保というのは、製造業者に依存する度合いが非常に高まってきておりまして、その被害者の救済という観点から、製品関連事故の分野における損害賠償に関する責任要件を過失から欠陥に転換することによって、被害者の立証負担を軽減することがこの製造物責任制度導入の目的であります。製品に起因する事故から消費者を実質的に保護するためには、事業者、消費者双方の自己責任原則も踏まえつつ、事故の防止及び被害の救済のための総合的な施策を講じる必要があります。
 この法案は、この消費者被害防止・救済策の一環として、民事責任ルールを変更することを目的としたものであります。
#111
○甘利委員 よく聞く話に注射針事件というのがありまして、PLにまつわる話というのは、本当のようなうその話とか、うそのような本当の話と、そういう象徴的な話がいっぱいあるのでありまして、この注射針事件はそのどっちに当たるのかよくわかりませんけれども、注射針を医者が使用して、それが患者の腕で折れてしまった。もちろん患者はパニック状態になりますから、どうしてくれるということで、結局その折れた針が悪いんじゃないか。注射針のメーカーを製造物責任で訴えて、法外な賠償金を取った。その注射針メーカーというのはもともとそんなに大きいところじゃないから、とてもじゃないがそんなところには、そんな国には注射針を出荷することはできないから、やめた方がいい。そうやって次には、注射針の需要というのは当然あるわけですから、よその国、それよりも粗悪品の国の注射針が入ってくる。そうすると、一人の人の利便のためにその他の人が不便をこうむる、そういうような面を、この事件が本当にあったかどうかは確認はできておりませんけれども、そういう一面をこのPLというのは持っているわけでありまして、いってみれば、PL法というのは消費者が製品事故に対して立ち向かっための非常に便利なツール、道具を与えてくれる、用意してくれたということでありますけれども、それだけに一つ間違うといわゆる濫訴社会というのを招くことになる。
 PL先進国とよく言われるのはアメリカでありますけれども、アメリカは同時にPLが出てから訴訟件数が飛躍的に伸びました。まさに濫訴社会というふうに言われております。アメリカ合理主義といいますか、これは長官が一番お詳しいんだと思いますけれども、かなりドライな国柄で、そのアメリカ合理主義のように、トラブル処理に気軽に裁判を利用する、そういう国民性。裁判をすることに陰湿な部分というのは余りなくて、トラブル処理の機関として気軽に利用する、そういう国民性と、日本の風土といいますか国情、国民感情というのは異なっているんじゃないだろうか。
 隣の人に対して、おたくのワンちゃんがうちの猫にかみつきましてけがをしました、あなたのところの管理責任だからあなたを訴えることにしましたので、だから今週一緒にやることにしていたゴルフはぜひ来週にしましょうよ、そういうような話が気軽にできる国民性と日本人は相当異なるのでありまして、惻隠の情というようなことに代表されるような大げさに言いますと精神文化、それが一つ間違うと崩壊をするというような憂き目に遭うんじゃないだろうか。
 アメリカの車にはバックミラー、サイドミラーでしたか、たしか注意書きがついていますね。このミラーに映る像というのは実像と違っていますよ、それに注意してくださいということがたしか小さい字で書いてあるはずですね。これはもとをただせば、車を運転をしていて、サイドミラーかバッククミラーに映った自動車との距離が相当あると思って、曲がろうとしたらぶつかっちゃった、それで事故が起きた。
 それで、事故を起こしてしまった方は、いや、私が悪いんじゃないのです。このミラーを見ていたら、本当はもっとちゃんと距離があるはずなのに、すぐそこまで来ていた、このミラーはちゃんと実像を映してないじゃないか、だからこれに欠陥があるのですよといって訴える。訴えられた方は、裁判でべらぼうな賠償金を取られてしまったらたまらないので、次からは注意してくださいとただし書きを書くわけですね。実像が映るようなバックミラーなんかつけた分には車が大きくなって走らないわけですね。そんなのが邪魔してまた事故になったらどうしてくれるという話になるから、恐らくそういっただし書きをつけたんでしょう。
 これは要するに、私のせいじゃないですよと。本来、運転免許というのは、そういうことも勘案をして運転ができる人に対して与えられる免許であるはずなのに、自分の責任は放棄してしまって、あいつが悪いからいけないんだ、こいつが悪いからいけないんだ。つまり、見方によっては、PL法の導入によって、みんなで人のせいにしようという大合唱が始まっちゃった。そうすると、ずっとこう歴史に培われてきたモラルとか秩序とか責任感、大げさに言うとそういう精神文化体系が崩壊をしてしまうんじゃないか、そんな心配もしているわけであります。
 今国会に、外弁法と略すのですか、私も詳しくないのですが、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の改正というのがかかっているはずですね。この外弁法というのがかかっている。これは、御案内のとおり、規制緩和の一環として、外国人弁護士の業務の範囲を若干規制緩和をして、参入の幅を広げたんだと思います。しかし、外国人弁護士、恐らくアメリカの弁護士が多く要望していると思います、日本での活動をもう少し制約を解いてくれと。この外弁法の改正がPL法と一緒に今国会に出てきた、このことに私は少し警戒感を覚えるのですよ。
 外弁法では、基本的には相互主義というのですか、ですから、アメリカ人の弁護士は、国際法とアメリカ法しか取り扱うことができなくて、日本の法律はできないから、そんな心配はない。ただし、規制緩和の改正で、日本人の弁護士との共同事業は行えるようになる。直接にこのPLを初めとする国内法にさわることはできなくても、一緒に何らかの事業をするということは、PL法に対してアドバイスをすることができる、そういうふうにこれは理解してよろしいですか。
#112
○戸田説明員 昭和六十二年四月から施行されておりますいわゆる外弁法によりまして、外国弁護士受け入れ制度が導入されまして、外国法事務弁護士の資格を得ました外国弁護士が、我が国において一定の法律事務を取り扱うことができるようになりました。しかし、その取り扱うことのできる法律事務は、今御指摘ございましたように、この資格を得た国の法律に関するものに限られております。それ以外の国の法律、例えば製造物責任法のような我が国の法律に関する法律事務を取り扱うことはできないこととなっております。
 そして、今国会に提出されておりますこの法律の改正法律案におきましても、外国法事務弁護士が日本法に関する法律事務を取り扱うことが禁止されている点については変わりはございません。そして、今回の改正の主要な点が、いわゆる共同事業に関する規制緩和の問題でございます。
 現行法は、第四十九条第二項におきまして、外国法事務弁護士が、組合契約その他の契約により、特定の弁護士と法律事務を行うことを目的とする共同事業を営むことを禁止しておりますが、改正法は、我が国において弁護士として五年以上の職務経験を有する弁護士とする場合に限り、組合契約その他の契約により、一定の法律事務を除く法律事務を行うことを目的とする共同事業を営むことができるとされておりますが、裁判事務はその共同事業の対象とされておりません。
 今申しましたようなことで、外国法事務弁護士が日本法に関する法律事務は行うことができませんし、裁判業務を行うことも共同事業の対象とされておりません。
 さらに、改正法におきましては、裁判業務等弁護士のみが行うことができる法律事務その他の業務に外国法事務弁護士が不当に関与してはならない旨の規定も設けられております。
#113
○甘利委員 その共同事業の範囲内のことしかできない。それから、日本法の裁判にかかわることについてはそれ以外の問題だ。しかし、共同事業の範囲内で取り組んでいる弁護士がPL法に関してアドバイスを求められたときにアドバイスをするということは、その範疇を超えていないということですか、超えているということですか。
#114
○戸田説明員 アドバイスの範囲でございますが、あくまで日本法に関するものは対象とされておりません。それですので、日本法の製造物責任法に関するものはできないわけでございます。ただ、アメリカ法に関するPL法については、弁護士にアドバイスするということは対外的にはできるようになっております。
#115
○甘利委員 御案内のとおり、アメリカでは弁護士さんというのはアシビュランスチェーサーと言われていますね。救急車を追っかけていく人とでもいうのでしょうか、事故のあるところに飯の種があるということでしょう。アメリカでは弁護士さんは請負訴訟というか出来高払い。とりあえずあなた訴えておきなさい、費用は全部自分が持つから、賠償金がたんと取れたら山分けしましょう、そうやって事故の被害者に対して働きかける。そうしないと弁護士の数が多くて食べていけない。だけれども、そういう危険は今回の外弁法の一部改正ではありませんよというお話です。
 しかし、これはもうずっと日米協議のテーマの中に、その底流には流れているのです。どうしてアメリカ人の弁護士が日本の法律事務を担当できないんだ、こういう声が必ず底流に流れているのですね。こういう声は規制緩和をするに従ってだんだん大きくなってきますよ。やがては、おれたちにもちゃんとやらせろという声になりますから、今回がその糸口になってしまわないかということをかなり心配をしております。日本の裁判制度と向こうとは違いますから、私の心配が大したことではなければいいのですけれども、そういうことを今から念頭に置いておく必要があるかと思います。
 日本のPL法というのは、アメリカのそれのように、懲罰賠償のようなべらぼうな、会社がつぶれてしまったって構わないというような賠償金は取れませんから、そんなに心配はないんだという説明も受けております。
 損害を受けた場合は、これはその実費額を査定をして、算定をして払われるということになりますか。
#116
○升田説明員 不法行為に基づく損害賠償を請求できる範囲につきましては、民法の四百十六条の規定というのを類推適用して算定しておりまして、今御指摘のように、実費、実損といいますか、実際に損害があったものの賠償を認めるということになっております。ただし、その中には、精神的な苦痛、通常これを慰謝料と呼んでおりますけれども、精神的な苦痛に対する損害賠償というのも認められております。
#117
○甘利委員 けがをしたとかいう場合はどうですか。身体の問題、体の問題は。
#118
○升田説明員 けがをした場合、その治療費というのはもちろん認められますし、また後遺症がありましたときにはそういった関係で損害賠償を認められることもありますし、また、損害の程度によりましては、精神的な苦痛があるということで、慰謝料が認められる場合がございます。
#119
○甘利委員 物損とか、今のお話の体のけが、これは具体的に算定ができますよね。しかし、慰謝料に象徴されるような精神的な苦痛というのははかることができませんよね、周りから見てわからないのですから。本人が精神的な苦痛、損害を受けた、あなたにはわからないだろうけれども、私にとってはこれは命にかかわるぐらいのダメージなんだという主張があった。これはどうやってはかるのですか。
#120
○升田説明員 一般的に、慰謝料の損害額の算定でございますけれども、理念的に申しますと、まず無形の精神的、肉体的苦痛というものに対する損害を賠償するものであるというぐあいに考えられておりまして、実際には、個々の事案に応じまして、公平の観念に従って、諸般の事情を考慮して算定されるということになっております。
 その場合の諸般の事情というのは、まさに事件それぞれの内容によって異なるわけでございまして、例えば被害の内容あるいは程度、それから被害者の年齢あるいは被害者の生活水準、社会的地位、そういった事情のほかに、加害者側の社会的地位あるいは職業、年齢、さらにはそういった不法行為が行われましたときの動機とか、加害の状況、加害者の故意あるいは過失の程度といった事情が、通常、考慮されております。
 ただし、それはそういったいろいろな事情が考慮されておりますけれども、実際には、交通事故訴訟で損害賠償請求が相当多くございまして、そういった多数定型的に発生する事件におきましては、慰謝料の請求額あるいは忍容額というのは相当類型化されておりまして、そういった意味で客観性というものは担保されているということでございます。
 今委員御指摘のように、本人が訴えたからといって直ちにそのことが損害賠償額あるいは慰謝料に反映するという仕組みにはなっておらないわけでございます。
#121
○甘利委員 私はPLに対して後ろ向きな考えを示しているというわけじゃないんです。PLは救済措置として非常にすぐれた面があるけれども、一方、歩み出し方を誤ると社会の害にもなるという面を備えているということを、立法するに当たってきちんとしておきたいと思うんですね。
 受けた損害について直ちに賠償できる仕組みを導入する、これは確かに立派なことだと思います。ただ、そこがよくなるか悪くなるかということは、いわゆるごね得がどんどん通っていってしまうということであってはならない。適正にちゃんと対応ができる、しかし、こねた人ほど得ということにならないようにする。それが社会のモラルの低下を招かないそのきちっとした境目といいますか、それになると思うのです。ですから、その辺の考え方をきちっとしていただきたいと思います。
 私は、質問の冒頭に、日本には、諸外国に比べて、個別の救済をするシステムとか、あるいはその裏づけとなるといいますか、国が決めている安全基準、各種の安全基準が、個別分野的にですけれども、制度的に割としっかりでき上がっているということを申し上げました。その上に網羅的に、もう一網かぶせるのはどうしてですかということから質問をスタートさせていただきました。
 国が決めている安全基準というのですか、JISマークとかいろいろありますね。これについてちょっと伺いたいと思います。
 国が決めている安全基準が分野別にいろいろありますけれども、製造者というものは言ってみればそれを一つの目安として物をつくるわけですね。安全基準に合格をしている、つまり国のお墨つきをもらった、そのお墨つきをもらっている製造物がPL法によって賠償責任を問われた、賠償すべきである、この場合はどこが賠償責任を負いますか。国ですか、製造物をつくった当事者ですか。
#122
○清川政府委員 国の安全基準、そしてまたPL法の問題と二つ関係してくるわけでございますけれども、委員御指摘の国の安全基準、この安全規制そのものにつきましては、これは製品の製造あるいは販売に際しまして、事故を未然に防止する、そのために充足すべき最低の基準を定める取り締まり規定ということでございます。不適合の場合、事故が発生しなくとも、製造・販売の禁止、罰則等の対象となるというような、こういう取り締まり規定であります。
 しかしながら、これは企業の製品安全対策や消費者の購入、使用にかかわる評価のガイドラインとしての意味を持っているということになります。また、この安全規制は、最低の基準を定めたという意味で、基準のレベルといいますか、これは一般に受け入れられる基準をつくっているわけでございます。
 他方、製造物責任法、この法案につきましては、製品事故が発生した場合の被害の救済の責任原則を定めるというものでございます。したがいまして、この製品安全規制と代替する関係ではなくて、相互に補完するものでございます。
 このようなものでございますので、直接的に国の安全規制と国の賠償責任、国家賠償というものはリンクをしないで考えるべきものと考えます。
#123
○甘利委員 国の安全基準とPLというのは相互に補完するものである。そうすると、国の安全基準を守っていて、なおかつPL訴訟が起きた、事故が起きた、そして損害賠償を企業が請求をされた、一千万請求されたとします。相互に補完する、つまりある部分は国が補完をし、安全基準としてそれを守って、なおかつ事故が起きた。そうすると、一千万のうちの相互に補完した部分については、企業が国家に負担を求めることができますね。
#124
○清川政府委員 国の安全基準は、先ほど申し上げましたように、最小限の基準を定めた取り締まり規定でございます。それと製品事故にかかわる事故の発生、これとまた別の問題であろうと考えます。
 なお、安全規制の不備あるいは事故の原因である欠陥の発生の間に因果関係があるとか、あるいはそのことにつきまして、国家賠償法第一条にあります、公権力の行使に当たる公務員の故意あるいは過失が認められるというような場合に国が賠償責任を負うことになると考えます。
#125
○甘利委員 実は、この議論は、党のPL小委員会でもやりまして、なかなかすぱんと割り切れるような回答が出なかった件でありますけれども、確かにあれなんですね。
 企業、つくる側にしてみれば、国が安全であるという基準を定めてくれて、それをちゃんと守った、しかしPL事故は起きた。起きた時点で、国はおれは知らない、関係ないということであるとすると、じゃ一体安全基準というのは何なんでしょうね。つくる側がそれを目安としていろいろ配慮をして、注意を配るということも余り意味がなくなるんじゃないか。安全基準とは何ぞやということをこれからまた考えていかなければならない。言ってみれば、これは新しい問題提起になるかと思います。
 このPL法は、全く新しい考え方を民法の中に導入をする、言ってみれば革命的な法律と言えると思いますけれども、そうであればあるほど不確定部分というのは排除していかなくちゃならないわけです。何だかよくわからないけれども、これは全く違う考え方を導入してくるんですよと言われたって困るわけです。非常に不確定部分が多いということは同僚の議員からの指摘もあったと思います。
 その一つに欠陥の概念があるわけです。この欠陥の概念というのは、そもそも欠陥を認定するもとになる基本的な考え方でありますから、これがよくわからないとすると、この法律自体がよくわからなくなってしまうわけでありまして、十分に客観性を有して、そして明確性を有していなければいけないはずですよ。
 この法律の中に欠陥の項目は、「「欠陥」とはこいろいろ云々、こう書いてあって、「係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。」この項目は何ページでしたかな、この項目を読んでいると、一体欠陥というのは何だろうか、客観性も明確性も欠いていて、非常に漠としたものだなという感が否めない。
 つくる方にしてみると、どういう点に留意して細心の注意を払ってつくっていくか、その目安にしなきゃいけないのですけれども、目安が漠然としてしまっているものですから、常におびえていなくちゃならないというところがあるのじゃないですか。どうもこの漢という表現から、もう少しブレークダウンして、こういう具体的な要件とこういう要件でありますよと。もちろん、製造物というのはもう物すごく広範囲ですから、なかなか一くくりにできないことはわかっていますけれども、これをもうちょっとブレークダウンする必要はないのでしょうかね。
#126
○清川政府委員 先生御指摘のこの法律におきまして、欠陥の定義の条文第二条におきまして、「「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期」、この三つを例示するとともに、「その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いている」という定義を置いているわけでございます。
 この三つの項目の考慮事項が例示されているわけでございますけれども、この三つの項目のほかに、その他の係る事情ということもございますから、非常に多くの項目が入り得るわけでございますが、国の審議会、つまり産業構造審議会あるいは国民生活審議会の報告において慎重な討議が行われたわけでございますが、この三つの項目の中には、次に申し上げるような九つの考慮事情も含めた概念であるというふうに報告をいただいております。
 このような概念は、またくどくなるわけでございますが、「製造物の特性」という言葉の中には、製造物自体が有する固有の事情ということがありまして、一つには製造物の表示、製造物の効用・有用性、価格対効果、被害発生の蓋然性とその程度、製造物の通常使用期間・耐用期間、この項目が含まれるわけでございます。
 また、「通常予見される使用形態」という概念が例示されているわけでございますが、これは製造物の使用に際しての事情でございまして、製造物の合理的に予期される使用、そして製造物の使用者による損害発生防止の可能性などが挙げられるわけでございます。
 また、「製造業者等が当該製造物を引き渡した時期」という例示に関しましては、これは引き渡した時期にかかわる事情でございまして、製造物が引き渡された時期、あるいは技術的実現可能性などが挙げられるわけでございます。
 このような九項目が、実際の判例においてはそれぞれの事案に応じましてウエートを異にしながら、これらの要素が総合的に勘案されて欠陥の判断がなされることになると考えます。
#127
○甘利委員 明確性ということで言えば、もう一つ明確になっていないものが責任主体ですね。「製造物を業として製造、加工又は輸入した者」、みずから製造業者として氏名を表示した者、こういうことになっておりますけれども、製造業者の中にはもちろん中小企業、日本の企業の九九%は中小企業ですから、何らかの形で中小企業も製造物をつくる作業に加わっているわけであります。
 中小企業というのは、御案内のとおり、財務とか法務、あるいは技術、人的組織において、大企業に比べればはるかに脆弱な体質を持っております。それだけに、このPL法ができるということに対して非常に深刻にとらえているわけです。製品事故が起きた場合、下請メーカーたるこの中小企業にどこまで責任が及びますか。
#128
○清川政府委員 製造物責任の中の「製造業者等」という中に、中小企業問題が含まれるという御指摘でございます。そしてまた、中小企業についてどのような考え方をされているかという点でございますが、特に中小企業について重要な意義を持っている条文が二つございます。一つは、いわゆる部品・原材料等の製造業者の抗弁でございまして、もう一つは、この法律の施行を、公布の日から起算して一年を経過した日から施行するという二つの規定でございます。
 特に、先ほどの御指摘の点にポイントを絞って申し上げますと、部品・原材料等の製造業者の抗弁でございますけれども、多くの中小企業におきましては、いわゆる下請あるいは部品・原材料の納入業者となることが多いわけでございます。このような場合に、納入先から設計に関する指示を受けることが往々にしてあるわけでございます。このような設計に関する指示のみに従って、これによって欠陥責任が生じる、このような場合には、この法案の第四条によりまして、賠償の責めに任じないという規定をいただいております。
 なお、その欠陥が生じたことにつきまして、過失がなかったということが前提になっているわけであります。
#129
○甘利委員 つまり、ここでは製造業者、つまり下請でなくて、自分がブランドとしてっくっているという中小企業は外しての話にしておりますけれども、それはもちろん製造業者になるわけですから、部品として納入をしている、その部品に欠陥があったために製品事故が起きた、その場合、中小企業者はどこまで責任を問われるか。
 その部品の設計が、親会社からこういうふうに設計をしてくれということで依頼があった、指示があった、その設計どおりにつくって、なおかつそれが設計上の問題等々で欠陥があった、それは責任は問われない。それは設計を指示した親会社の方の責任であるということですね。
 親会社と下請会社の関係というのは、設計の指示がちゃんと厳密に設計図で、書面でぴしっと毎日行っていればトラブルはないかもしれません。しかし、口頭で指示をして、あそこをこうやっといてよとか、あるいは中小企業者の方が、ああいう指示を受けましたけれどもこうやった方がいいんじゃないですか、じゃあそうやってよと言って事故が起きた、その場合にはどうなりますか。
#130
○清川政府委員 設計についての指示の形態につきまして、設計図そのものをもらう場合、あるいは指定を受けている場合、あるいはまた口頭によるものの場合、こういった多様なケースが考えられるわけでございますが、この条文におきましては、設計に関する指示を得たことによって生じたものに関して免責されるということになっております。
#131
○甘利委員 その指示がきちっとしていればトラブルはないと思いますけれども、往々にして小さな業者との取引は、そんな綿密な指示書とか設計図面が毎日、一部が変わっても出るということがないことが往々にしてある。その場合に、中小零細企業はトラブルに巻き込まれる。そうすると、もうたちまちのうちに、元請にしてみれば下請をかえればいいだけでありますから、しかし、下請にとっては社業がまさにその時点で終わってしまう、倒産をしてしまうというくらい重大なことでありますね。
 元請は下請から製品を納入させる場合に、普通は製品検査というものをやるのじゃないですか。元請が製品検査をしたということは、その時点で責任は下請から元請に移っているという考えはとれませんか。
#132
○清川政府委員 設計に関する指示について、この検収をするという時点で、これは指示が確定したか否かという点でございますが、この法文におきましては、設計に関する指示に従ったという内容でありますし、また先ほど先生の御指摘の、口頭による指示が行われた後、これを受け取ることによって指示をしたことが明確になったと考えるべきではないかという御指摘でございました。これにつきましては、そのことごとの事例ごとの態様によっていろいろ判断されるケースが多いものと考えられるわけでございます。
 他方、いま一つ、この設計に関する指示、これを明確にしておくべきであるという点を非常に重要な御指摘として伺ったわけでございます。現在、通産省におきましては、この下請についての指示を明確にする、特に下請の企業が弱い立場にあるということを認識いたしておりまして、一つには、下請事業者への設計に関する指示を明確化するということを内容とする親事業者への通達の発出、あるいは下請代金支払遅延等防止法に基づくPLに関する重点的調査、検査の実施、あるいはまた下請企業に対する啓蒙普及活動というようなことを、この法律が成立した段階におきまして、鋭憲政府の施策として講ずることと考えております。
#133
○甘利委員 PLの事故で、下請納入業者に責任がありと判断をされる場合でも、被害者が、元請部品メーカーではなくて、機器の製造メーカーの方にあえて損害賠償請求をするということはできますか。
#134
○清川政府委員 この法律におきましては、製造業者として製品を出荷した、正当に出荷した人に対しての責任が定められているわけでございますが、この製造物が、ある段階では部品である、さらに先の製品に組み込まれるということを想定した条文が先ほどの部品・原材料の抗弁でございます。したがいまして、この法律そのものとしては、想定しておりますのは、完成品として市場に出荷された、完成品のメーカーについての責任を製造物責任として追求されることが第一義的にあるものと考えるわけでございます。
 他方、部品として納めた人も免責されてしまうわけではないということが法律の原則になっておりますから、ここで部品下請業者の抗弁というものを考えているわけでございます。仮にこのような抗弁が認められたとしても、その内容につきましては、求償関係につきましては、また、完成品の製造業者との関係は、民法の本則に従って処理されるわけでございます。
#135
○甘利委員 中小企業者は、PL法の見えない影にかなりおびえているのですね。それは、資金的にも法務的にも対応能力がはるかに劣るわけでありますから、それが新製品開発意欲をそいでしまわないようにぜひしてもらいたい。というのは、日本の活力というのは、新技術開発というものが経済活力を支えているわけでして、その新技術開発に中小企業というのは相当部分深くかんでいる。そのエネルギーをそいでしまったら、角を矯めて牛を殺すようなことになりますから、その辺は十分注意していただきたい。
 今まででも中小企業の対応への施策のお話がありましたけれども、それ以外に、この中小企業のPL法とかPL事故への対応の円滑化、その施策で何かおっしゃることはありますか。
#136
○清川政府委員 中小企業の施策に関して特に申し上げたいのは第二点でございます。それは、この法律が公布の日から起算して一年を経過した日から施行されるわけでございますが、この一年の間に中小企業に対しまして積極的な広報活動を行うという前提で通産省としては施策を組んでいるわけでございます。
 また、その場合に、表示あるいは取扱説明書等の内容が極めて重要でございますが、中小企業者におきましては、人的な余裕、資金的な余裕、あるいは技術的な余裕という点が限られる点が多いわけでございます。今、私ども通産省におきまして、関係業界、消費者の方々も入っていただきまして表示・取扱説明書適正化委員会をつくっておりまして、どのような形で表示あるいは説明書をつくったらよろしいかというようなことも一般的なガイドラインとなるように検討しているわけでございます。
 このような形で、中小企業者が実際上多くの困難に直面しないように、政府として啓発活動、PR活動、普及活動を行っていくということといたしております。
#137
○甘利委員 PL法というと、必ず出てくるのがレンジ猫事件というものですね。これはさっきの注射針事件よりさらに真偽のほどはわかりませんけれども、大変な愛猫家、まさに猫かわいがりをしている女性が猫のシャンプーをして、タオルでふいたけれどもよく乾かない。ちょうど台所に電子レンジがあったから、これで乾かそうといって、レンジの中に猫を入れちゃってチンをした。そうしたら、乾いた猫じゃなく、猫のムニエルができちゃったわけでありますね。そうすると、いかに猫に愛情を注いでいたか、我が子以上に思っていた、それをレンジによって殺されちゃった、そういう訴えを起こしてべらぼうな賠償金を取ったとか取らないとか、そういう話が必ず出てくるわけですね。
 メーカー側にしてみると、レンジで猫を乾かしたことなんか聞いたこともないし、被害者というか訴えた方は、そんなレンジで猫を乾かしちゃいけないなんということはどこにも書いてないじゃないか。しょうがないから、次からはこの分厚い説明書に、猫を乾かしてはいけません、犬を乾かしてはいけません、象を入れてはいけませんとずっと書いて、べらぼうな厚さになっちゃった。一人の人がそうやって訴えたことによって、ほかのほとんど常識を持っている人が不便を受けるようなことになった。
 この事件の真偽のほどはわかりませんけれども、よく象徴的に言われる、引用される事件でありまして、この法律の中に、「通常予見される使用形態」で「通常有すべき安全性を欠いていること」、これはPL法による欠陥の規定ですね。この通常予見される使用形態と予見されない使用形態というのはどこで見分けるのですか。
#138
○清川政府委員 通常予見される使用形態あるいは取り扱い、これは最終的にはそれぞれの事案に応じて社会通念に照らして判断されるということになるわけでございますけれども、この製品の本来の使用形態、特性、またはその製品が想定している使用者、例えば資格がある人が使う、あるいは特定の試験を受けた技術者が使うというようなこともありますので、個別の事案に応じて社会通念に照らして判断されるということになるわけでございます。
 なお、実際上の製品関連事故に関する損害賠償の裁判の例を見てみますと、例えば少し古い裁判例でございますけれども、自動車の助手席の背もたれの支えが十分でなかったというようなことで、助手席に乗車した人が後方へ寄りかかった、しかし、後部座席に乗車した人が、急停車の際に体が前倒しになることを防止するために前部座席の背もたれに手をついて体を支えるという、そういうことは当然経験則上あるわけだというような判例もございまして、一つ一つ判例の積み重ねが必要かというふうに考えるわけでございます。
 今後とも、一つずつの事案に応じて、それぞれの個別の品物につき、それぞれどのような人が使うかというものを考えながら判例が積み重ねられていく、そのような形で社会的通念としてさらにわかっていくもの、確立されていくものと考えます。
#139
○甘利委員 まあレンジで猫を乾かす人はほとんどいないと思いますけれども、しかし、通常予見されない使用形態というのは結構あるのですよね。
 私なんか、学生のころに、ふろに入って頭を洗って頭を乾かすのに、ドライヤーがもう古くて故障していたりしますと、ガスレンジの火をつけて、その上で頭を振りながら乾かすのですね。それで、失敗すると頭に火がついちゃってぼうぼうになっちゃうのですけれども、ガスレンジにはドライヤーがわりに使用しないでくださいという注意書きはついてないんですよね。この辺、つくる側が予見している使用形態と使う側が考えている使用形態というのはかなり乖離がありますよね。
 そこで、これからは取扱説明書というのがかなり大事になってくると思います。その取説に、これ以外には使わないこと、あるいはこういうことに使わないことと書いた場合には、責任を逃れるということはできますか。
#140
○清川政府委員 取扱説明書にどのような中身が書かれるべきかというお話でございますし、また、これ以外に使わないことということを書いた場合はいかがかというお話でもございますけれども、取扱説明書の合理的な書き方、先ほどお話がありましたように、その品物によって相当違ってくることと思います。製造物が合理的に使用される、例えば今お話しのあったようなレンジの話、あるいは乳幼児のおもちゃの場合には、聞き分けのない話でございますから、何と書いてみてもやはり乳幼児が口に入れてしまうということはあり得るというようなこともございますので、物ごとに変わってくると考えられるわけでございます。一概にこのように書けば免責されるはずということは確立しにくいことかとは思います。
 しかしながら、一般的にどのようなことについて取扱説明書を考えるべきか、どのような構成で取扱説明書をつくるべきか、どのような表現方法、例えば、わかりやすい、誤りのない表現方法、あるいは警告を発するのであれば、どのような場合には警告を発すべきであるか、このようなことにつきまして、今研究会で、適正化委員会で研究している最中でございますが、今先生がお話がありましたような事例も含めて、さらに検討してまいりたいと考えます。
#141
○甘利委員 つまり、取扱説明には、書かないよりは書いた方がいいということですか。
#142
○清川政府委員 取扱説明書にどのように記載するか、特にこれ以外には使わないでくださいというものを書けば免責されるのかという点につきまして、これは個別の事案でいろいろ変わり得ると考えます。
 また、その事案が、その取扱説明書の書き方が適切であるか否かという点につきましては、最終的には裁判の場で確定されるわけでございますので、私どもが今こうであるということを申し上げることは難しいわけでございます。
 しかしながら、それぞれの使用目的に応じ、それをだれが使用するかという前提を考えた上で、例えばこういったものに使わないでくださいとか、適切な、明快な書き方をするということが一般的に求められている点におきまして、今先生がおっしゃった点は十分あり得るかと思います。ただ、これはあくまでも一般論でございまして、個別に判断されるべき事柄であろうと考えます。
#143
○甘利委員 PL法には、本当にいっぱいいろいろな変な話がありますよね。
 アメリカでは、野球のヘルメットですか、あれで事故が起きて、ヘルメット会社が訴えられちゃって、随分と賠償金取られちゃった。しょうがないから、ヘルメット会社は注意書きをヘルメットにつける、危険なところでは使わないでください。危険じゃないところではヘルメットなんか邪魔なだけですから、使う人はいないのですよね。こういう変なことばかり起きてくる一面がある。だからやめちまえというんじゃないですよ。こういう面を我々後発部隊はしっかりととらえて、法の本来目指すところを実現していかなくてはいけないというふうに私は思うのですよ。
 それで、ずっと冒頭から申し上げているように、この法律というのは、消費者に対して、製造物事故による損害賠償請求に対して闘う強力なツールを与えてくれるわけですね。同時に、欠陥の存在とか事故との因果関係なんかも立証義務を当事者が負わなくてはいけない。そこで、それを助けるのに公正な第三者機関が必要じゃないかという意見が、実は私どもいろいろな方からお話を伺ったときに、一部ありました。これについてどうお考えになりますか。
#144
○清川政府委員 公正な第三者機関という点につきまして、裁判外の紛争解決の問題及び原因究明体制の問題、大きく分けて二つ考えられることかと思うわけでございます。
 裁判外の紛争解決体制につきましては、これは地方の消費生活センターですとか苦情処理委員会など既存の体制がございます。ここで解決できない案件につきまして、ニーズに応じまして、個別の製品ごとに専門的知見を活用した体制を整備することが必要であると考えております。この場合に、あくまでも現実のニーズ、社会的な費用を踏まえまして、民間活力を活用した体制となることがよろしいと考えております。
 他方、原因究明体制についてでございますけれども、これはまたいずれの製品分野におきましても、事故原因の究明を行うために機械、器具を整備する、体制を整備する、あるいは運営を順調に行うということのためには多額の費用を要するわけでございます。
 このための具体的な考え方といたしまして、通産省といたしましては、例えば通産検査所など経験とノウハウがある公的機関、この公的機関を活用する。あるいはまた、これまで既に事業活動の蓄積がある、高度な専門知識がある民間検査機関、このような民間検査機関の知識、最新の設備、すぐれたテスト能力など、このようなものが既存のものとしてある場合にはこれを積極的に活用していくというような形で、既存の体制を極力活用することが適切であると考えております。
#145
○甘利委員 既存の機関は、公共団体に関するものでは、国民生活センターとか消費生活センターとか通産検査所、農水消費技術センターですか。民間の関係のものでは財団法人の日本電気用品試験所、こういうものがある。
 それぞれ専門分野別に機関があって、そしてもちろん裁判所でも事件の内容の判断を技術的にもする。それ以外にさらに第三者機関で、これが公正だというと、公正というのは中立性と専門性ということの二つが要件ですから、この二つを兼ね備えるということになるとまた相当なスタッフ。既存の機関、それ以外にまた裁判所、それ以外にまた機関ということになると、これはかなり社会的なロスになる。かといって、既存の機関でいえば、消費者側から言わせると、財団法人とはいえ、日本電気云々、何とか試験所なんというのはどちらかというとメーカー寄りじゃないのか。企業の方からいうと、消費生活センターというのは消費者運動になりがちじゃないのかなとかいういろいろな思いがあるのですね。
 それぞれ専門性はきちっと持っているわけでありますから、それぞれをネットワークをしてお互いに補完をし合う、それがまさに中立性を確保する、そして本来持っている専門性とあわせてまさに公正な機関となるというふうに考えておりますけれども、このネットワーク化についてはどうお考えになりますか。
#146
○坂本(導)政府委員 委員御指摘のように、現在の既存の機関はおのおの特色を持っております。したがって、委員御指摘のように、すべての機能を持った機関というのをつくるとすれば、これは膨大なものになって、費用との関係で問題がございます。したがいまして、御指摘のようにさらに、例えば大学も含めて既存の機関の相互連携というものをきちっとやっていく必要があると思っております。したがいまして、この法律を仮に成立させていただければ、その後、この法律とともにそうした体制整備を関係各省と相談しながら進めてまいりたいと考えております。
#147
○甘利委員 血液製剤の話は、先ほど同僚議員からも出ましたし、また後日のこの委員会にも専門的な立場から質問が出ると思いますので、きょうは質問通告をしてありますけれども、割愛をさせていただきます。
 先般、中華航空事件、大変に悲惨な事件が起きました。あれは機械のミスなのか、操縦ミスなのか、いろいろ議論が出ましたし、いまだに出ております。
 非常に微妙な時期でありますから、具体的個別案件について言及はしませんけれども、ああいう設計として、自動操縦にしたときには手動操縦は受け付けない、それを無理やりに手動でやろうとするとコンピューターとの戦争になってしまうということ、それから、いや、そういう場合にもさらに人間の力を及ぼそうとするときには、ある一定の条件でコンピューターが判断をしてオートを解くのだ、いろいろな議論がありますね。これは設計思想の問題になるわけですね。
 それで、設計思想と欠陥との関係というのはどう整理をされますか。
#148
○升田説明員 機械が高度化してくる、あるいは複雑化してくるということになりますと、その中でどう人間が操作するかということはなかなか複雑な問題になってくるわけでございます。
 その場合、そういった人間の対応能力あるいは動作等も含めて、どういうぐあいに設計するのかということは、一般論として申し上げますと、やはり今回提案させていただいております法律の「通常有すべき安全性を欠いている」かどうかということの中で、当然設計思想という点も含まれて欠陥の有無が判断されてくるということになりますけれども、事が非常に複雑な問題でございますので、やはりなかなか難しい問題であるということは御指摘のとおりだと思います。
#149
○甘利委員 アメリカからの発注は、コンピューターと人為操作との闘いになってしまった場合には、ある一定の力が加わったときにはコンピューターが引いて人間の操縦を優先させるという、最後は人間だというのがアメリカ思想のようですね。ヨーロッパというのは、機械に、コンピューターに任せておこう。アメリカは、そうだけれども、最後は、土壇場は人間の力だという、その設計思想の差があるんだという話を実は聞きました。
 では、アメリカの思想でいうと全部安全かというと、ある人は、あの事件は、結局全部手を放しちゃってやめちゃえば、あとは機械がうまくやってくれたのにと言う人がいるんですね。それはわかりませんよ、専門家じゃないからわかりませんよ。アメリカ思想は、ある一定の力を加えると、やはり手動が優先する。手動が優先する飛行機に乗っていて、ではアメリカ思想が完璧かというと、オートにして着陸態勢に入る、あとはパイロットは、全部手を組んでいるだけ、二人で雑談していた、雑談しているうちに大笑いになって、思わず足で操縦桿をけっ飛ばしちゃった、十五キロか何キロか力が加わるとそれが優先しちゃって、今度は手動操縦に切りかわっちゃった、それを知らないで、ちゃんと機械がやってくれると思って黙っていたら墜落しちゃった、そういう事件もあったそうですね。
 ですから、これはどちらの思想が優先するというのはなかなか難しいと思います。要はどれだけ的確に、この設計思想で、こういう場合にはこういうトラブルがありますということを的確に伝えるかということが大事だと思っております。
 今回のPL法の中でいろいろ争点になったことに、開発危険の抗弁をどう取り扱うかということがありました。私は、これは技術立国日本にとっては、日本の将来がかかるぐらい重大なことだと思う。開発危険の抗弁を認めなかったら、とてもじゃないけれども、危なくて、新製品開発なんというのは全部とまる。その時点で日本の科学技術政策は崩壊をする。技術立国日本としては、福祉も大事、教育も大事、道路をつくるのも下水も大事だけれども、その原資を稼ぎ出す源が断ち切れてしまったら全部が崩壊をする、そういう心配をしていただけに、まあ良識的、当たり前といったら当たり前ですけれども、開発危険の抗弁が認められたわけですね。
 ただ、この中で、製造した時点での最高水準の科学的な知見をもっても予想できなかった欠陥ということになるのですね。大体そういうことかな。そうすると、科学的な最高水準の知見というのはだれが判断するのですか。
#150
○坂本(導)政府委員 個々のケースごとに、具体的な訴訟において裁判官が判断されることになると思います、その態様によって。
 しかし、委員も御指摘のように、法文上のその「引き渡した時における科学又は技術に関する知見」と申しますのは、特定の人がそういう知見を持っていなかったということではなくて、客観的に社会に存在する知識の総体、つまり入手し得る最高の科学・技術の水準、こういうことでございます。しかし、一方、特定の学者だけが知っていたということで科学・技術の知見というわけではございません。
#151
○甘利委員 最終的には裁判所が判断をする。このPLは、最終的に裁判所が判断する部分が非常に多いです。法律的な分野で法律の専門家が判断をするというのは当たり前ですけれども、技術的な部分の見きわめを法律家がするという部分が非常に多い法律なのですね。それだけに裁判所に、本来からいえば自分のテリトリーの外にある科学的、技術的部分についての判断を非常に多く任せている。本当に公正な判断ができるかという心配がありますけれども、そういう環境整備は整っているのですか。
#152
○升田説明員 製造物責任訴訟に限りませず、そういう技術的、科学的な問題につきまして裁判になりました場合、実際にどういうぐあいになっているかと申しますと、まず、証拠を提出するのは原告あるいは被告、それぞれ当事者の責任ということになっております。したがいまして、双方で証拠申請をされるわけですけれども、こういう科学的、技術的な問題につきましては、今御指摘のように、裁判官も素人でございますので、当然そういう科学的な知見を持っておられる専門家が証人として出られる、あるいは鑑定という形でそういう知見を裁判所に提供するということで裁判官が判断するということになっておりまして、裁判官が一方的に自己の知識で判断するということにはなっておりません。
 また、同じように製造物責任制度を採用しておりますヨーロッパ各国あるいはアメリカにおきましても、アメリカにおきましては陪審制度というのがございますけれども、特にヨーロッパ諸国におきましては、そういった形で専門家の知識の提供を受けながら、やはり同様に裁判官が判断するという建前をとっております。
 したがいまして、この問題、つまり、我が国に製造物責任制度を導入いたします場合におきましても、そういう点ではそういう制度の手当てというのは特に必要ではないのではないかというぐあいに考えられるわけでございます。
#153
○甘利委員 製造物の製造者、製造業を所管をされている通産大臣、今までのこのやりとりを踏まえて、本法案に対する所見を最後に伺って、私の質問を終わります。
#154
○畑国務大臣 ただいま先生から、長い間の論議を踏まえた、そしてこれからも引き続き懸念される分野、そしてまた取り組みに対しての督励といいますか、そういうものの御指示を賜ったわけでございまして、いわば大きな新しい、そしてまた難しい要素が入ってくる対応という意味合いにおきましては、引き続き我が方におきましてもただいま御指摘を賜りました点を踏まえて努力を積み重ねてまいりたい、かように考えております。
#155
○甘利委員 終わります。
#156
○白川委員長 次に、松本龍君。
#157
○松本(龍)委員 先ほど来、林義郎大先輩に始まって、うんちくを傾けられた議論がなされてまいりました。やっと製造物責任法の審議にかかったわけでありますけれども、まさに大変なこの間のいろいろな方々の努力があって今日があるというふうに考えています。PL訴訟に関しましては、さまざまなとうといお命が失われ、また苦難な道のりを乗り越えて今日があるわけであります。さらに、PL法に関しましても、昭和五十年、我妻栄先生が製造物責任の要綱試案を出されて以来、いろいろな論議が重ねられてまいりました。
 ですから、私は、きょうのこの委員会審議は、いろいろな方々の思いが、熱い思いが耳を傾けておられるなという思いで、本日質問に臨んでおります。そういう意味では身の引き締まる思いがしているわけですけれども、まさに社会党にありましても、数年前から製造物責任法の実現に向けて消費者団体あるいは産業界あるいは学者等々から広範に意見を聞きながら、一昨年には独自の法案を参議院に提出するなどの取り組みを行ってまいりました。
 また、さきの細川政権下では、社会党は、生活者また消費者重視の政策の重要課題としてこの制定を提唱し、連立与党PL法プロジェクトチームを通じてこの法案の作成と国会提出を積極的に推進してきたところであります。以前私どもが主張しておりました考え方とは若干異なる部分もありますけれども、まさに連立与党内で各会派の専門委員が何回も何回もいろいろな見地からの議論を重ねてまとめたものであり、現時点で私は消費者の保護にとって大きな一歩を踏み出すものと考えております。
 したがって、我が党としては、プロジェクトの合意内容にみずから立脚をしながら、なおかつ法案の各条文中で、国会審議を通じて、立法に携わった者として、立法の趣旨や解釈を明確化しておく必要があると考えております。そういう意味におきまして、それらを中心に質問を行ってまいりたいというふうに思います。
 基本的な認識からまずお尋ねをしたいわけですけれども、本法案の核心は、まさに製品の欠陥に起因する被害の救済について、従来の民法の不法行為制度における過失責任原則を、欠陥という客観的な性状を要件とする責任、すなわち無過失責任に転換するという点にあると理解しておりますけれども、被害者救済にとってこのことはどういう意義を有しているのかということを、まず第一点にお聞きをしたいと思います。
#158
○坂本(導)政府委員 御指摘のように、大量生産あるいは大量消費の現代社会におきましては、製品の安全性確保は製造業者に依存するという度合いが高まってきております。したがって、被害者の円滑かつ迅速な、適切な救済という観点から、製品関連事故の分野における損害賠償に関する責任要件を御指摘のように過失から欠陥に転換することで、訴訟における争点を明確化するとともに、予見可能性の証明を要しないものとすること等により、被害者の立証負担を軽減することがこの製造物責任制度導入の目的でございます。
 また、製造物関連の公表裁判例で見る限り、裁判実務においては、過失の高度化あるいは抽象化、客観化が図られておりまして、製造菜者等に高度の注意義務を課すことによって、結果として製品の欠陥を要件とする場合とほとんど差のない責任判断が行われているのが現状ではございますが、製造物責任法の導入は、責任要件を過失から欠陥に転換することによって、これまで進められてまいりましたこういった裁判実務の工夫を実体法に取り入れまして、その法的安定性を高めるという点で大きな意義を有しております。
 一方、この法律案は、裁判規範であると同時に行為規範でもございますので、裁判以外の場でも本法が紛争解決の規範として機能することで解決水準が安定化し、紛争が迅速に解決されるものと期待されておりますほか、製造業者もより一層消費者の安全性に対するニーズを踏まえた商品を提供する、供給することが期待されるところでございます。
    〔委員長退席、額賀委員長代理着席〕
#159
○松本(龍)委員 今お話を伺ったわけですけれども、まさに第一条、目的規定があるわけですけれども、「この法律は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めることによりこということだろうと思います。「被害者の保護を図りこということはわかるのですけれども、「もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」とあります。この文言が、いわゆる消費者団体の皆さん等々、私にもお話がありましたが、この文言は、被害者保護と企業活動のバランスを図る趣旨ではないかという懸念を示されていることもあるわけですけれども、この「もって」以下の部分はどのような趣旨か、御説明を願いたいと思います。
#160
○坂本(導)政府委員 この第一条は、本法の直接の目的として、製造物の欠陥により被害が生じた場合における被害者の保護を挙げております。さらに、これによって達成されることが期待される目的として、「国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与すること」が挙げられております。
 繰り返しになりますが、大量生産・大量消費の現代社会におきましては、製品事故の防止は製品を設計、製造する製造業者に依存する度合いが高まっております。したがって、製造業者、消費者の双方の自己責任原則を踏まえつつ、製品の欠陥を責任要件とする製造物責任法が導入されることに伴いまして、被害者の円滑かつ適切な救済が図られるということとともに、事業者においてもより一層製品の安全性の向上を図ることになると考えられます。それが国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展につながっていくものと期待されるわけであります。
 また、製造物責任法の導入は、経済社会の国際的調和にも寄与することも期待されます。本条はこうした趣旨で設けられたものでございまして、ただいま一部の向きにそういう御懸念がある、産業界のためではないか、あるいは消費者保護にもとるのではないかという御懸念があるとすれば、それは本条で意図しているものではございません。
#161
○松本(龍)委員 今お話を伺って少し安心をしたわけですけれども、まさに消費者重視の姿勢、また私どもがかねてから主張しておりました生活者重視の視点であることを再確認をさせていただきたいと思います。
 基本的な認識はここで終わらせていただきますけれども、次に、先般、三月の二十九日にいわゆる大阪地裁判決が出ました。中身については詳しく申し上げませんけれども、昭和六十三年の三月に大阪府の矢尾市で、ある会社のテレビから出火して事務所が全焼したという事件について、ことしの三月二十九日に判決があったわけですけれども、その中で、「火災原因はテレビ本体からの発火で、テレビには欠陥があったと認められる。製造者が欠陥について、過失がないと証明しない限り、過失があったと推認され、賠償責任を免れない」として支払いを命じたわけです。詳しいことは私はここで触れるつもりはございません。
 しかし、私たちはこの大阪地裁の判決からいろいろなことを学び取らなければならない教訓があるというふうに認識をしています。
 その一つは、この事件は、言ってみれば原告が、訴えた方が勝訴したわけですけれども、中身を見ますと、従業員がテレビが燃えているのを目撃をしたであるとか、また、消防署の報告であるとか、あるいはここの弁護団は大阪、京都の優秀な弁護団が二十人ついた大弁護団を組織したわけですね。そういったことがもしなければ、これは一人の消費者がやるにはかなりきつい裁判になっただろう、レアケースではないかというふうに思っております。
 また、さかのぼってスモン訴訟とかありました。大変大きな社会問題となって、集団訴訟という形をとって、大変な努力がなされてきて、これも勝訴したわけですけれども、これも実は厚生省の調査班が乗り出して、スモンの原因がキノホルムにあるということが究明をされたのが大きな要素となって勝訴に至ったわけであります。
 したがって、私は、いわゆる薬事訴訟、食品公害訴訟が集団訴訟になって大きな社会問題化した事件は、こういう状況で勝訴になるけれども、それもレアケースではなかったかというふうに思います。これらの場合でも多くの費用と労力と関係者の人々の努力があったればこそというふうに思っています。
 したがって、ここで両大臣にお聞きしたいのですけれども、ここで考えなければならないことは、一人の生活者・消費者が、弁護士に相談をし、裁判に持ち込むという道のりはまだまだ遠いものであるなというふうに考えています。
 象徴的な話になりますけれども、四月の七日でしたか八日でしたか、いわゆる大阪地裁判決で、松下側は控訴を断念をされました。諸般の事情を考えられての控訴断念だと思いますけれども、その断念の理由の一つに、「社会的、総合的観点とともに、事故にあったとされる肝心のテレビがすでになくなっていて、原因究明をこれ以上続けることが極めて困難であると判断した」と書いてありました。まさにあの優秀な松下という企業が、すばらしい知恵と頭脳を持ち、情報も持ち、研究開発の能力も持っているところが、肝心のテレビがないから欠陥がなかったということを証明できないということを言われているわけです。つまり、企業みずからが原因の立証がいかに困難であるかを認めているというふうにも考えられます。翻って考えますと、これが逆に、一消費者が欠陥がこれにあったということを証明するということが、これまたそれに比べてどんなに、針の穴に象を通す話ではないですけれども、困難であるかということを言っていることだというふうに思います。したがって、大臣、長官に御質問したいのですけれども、長官も一人の消費者として、例えば事故に遭われた、そして大臣の方も、日田のふるさとでつつましい生活者として生活をされているときにこういう問題が起こったとします。弁護士にも知り合いがいない。そういったことを考えると、この立証負担、立証をするための負担というのは、一人の個人にとっては非常に大きな重荷になるだろうというふうに考えています。
 そこで、その立証の負担をどう軽減される措置をとられるのか、両大臣にお尋ねを申し上げます。
#162
○畑国務大臣 今松本先生のお話を伺いながら、そしてまた非常に卑近な例としてのテレビの焼失といった問題について御指摘があったわけでございます。
 今度のこの法の流れといいますか、この中にございましても、立証責任、これはいわば原告側がその責めを負うというような立場にあるわけでございますが、ただいま先生から御指摘ございましたように、とりわけ一般国民大衆、庶民という立場にございましては、なかなか実際問題、立証することは大方不可能と申し上げた方がいいんではないかなというように私は考えるわけでございます。
 しかし、さはさりながら、今御指摘がございましたテレビ、製品が焼けてなくなってしまっている、こういったケースで、直接の立証は不可能ということであるわけでございますが、今日のいろいろな対応のありようといいますものは、これは私も、法律の専門家じゃございませんので、なかなかうまく説明ができませんけれども、経験則によって欠陥の存在を認定するという事実上の推定が手法として大方確立をしておるというような意味合いで、本法に関しましても、事実上の推定を活用するということによって被害者の立証負担の軽減が図られるというように一面考えるわけでございます。
 そういうこととあわせまして、こういった際に、国が原因究明の体制の拡充をいたしておきまして、これが大きく効果を発揮するということが私は大切ではないかというふうに考えます。
 しからばその具体的な内容は何かというようなお話も当然出るわけでございますが、国の検査機関の体制の拡充強化、そしてまた、すぐれたテスト実施能力を持つ民間機関のノウハウを活用していくための新たな検査手法等に関する委託研究の実施、これらが国に寄せられる一つの期待である。こういうような意味合いで、実は平成六年度予算案の中にも、いささかさような考え方に基づいての予算計上をお願いを申し上げておるということでございます。
 いずれにいたしましても、新しい、そしてまたある意味では非常に画期的な法でございますけれども、いわゆる立証責任が果たしやすいような条件整備を我が方は引き続き努力をしていかなくてはならぬ、そういうことを感ずる次第でございます。
#163
○寺澤国務大臣 通産大臣の答弁と重複するところがあるかと思いますが、製造物責任の場合には、現行の不法行為制度のもとにおける責任原因のうち、過失が欠陥に変更される点を除いては、立証責任の原則そのものは変更されておりません。
 この問題については、被害者が責任原因について立証するこれまでの原則を維持しつつ、裁判において、事案に応じて事実上の推定を活用することによって被害者の立証負担の軽減が図られるほか、国、都道府県の事故原因究明機関の整備や民間の各種機関、試験研究機関等の協力体制を充実させることが必要であるというふうに認識しております。
#164
○松本(龍)委員 ありがとうございました。原因究明機関等々はまた後ほど触れさせていただきます。
 また、本法が通りましても、このことは裁判の長期化であるとか費用の問題、労力の問題等々、アメリカと逆の、裏返しで、日本は弁護士に知り合いがいないであるとか、費用がどうなるかわからないとかいう不安があって、そういう意味では大変距離が遠いということもありますので、この立証負担の軽減に関しては鋭意御努力をお願いしたいと思います。
 これに関して、先ほどの大阪地裁の事例を読み上げさせていただきます。
 利用者が欠陥原因および注意義務違反の内容を具体的に立証しなければならないとすれば、特別な知識も技術もない利用者が、主として製造者の支配領域に属する事由を解明しなければならないことになり、製品が完全に損壊し欠陥原因が特定できなくなった場合には、製造者は常に免責されることになることなどを考慮すると、右のように解することが損害の公平な分担という不法行為法の本旨に沿う。
とあります。この言葉を私自身重くとりたいというふうに思います。
 次に、移らせていただきます。欠陥概念についてでございます。
 第二条第二項の「欠陥」の定義では、判断要素として、一つに製造物の特性、また次に通常予見される使用、三番目に流通に置かれた時期の三点を挙げております。このそれぞれの要素は、欠陥の判断においてどのような意味を持っているのか。また、EC指令にある「製造物の表示」にかえて「製造物の特性」を挙げておられますけれども、この「製造物の表示」を挙げなかったのはなぜか。警告・指示の瑕疵などいわゆる表示上の欠陥については、本法案ではどのように位置づけられるのか。設計上の欠陥、表示上の欠陥と並べて議論されるいわゆる製造上の欠陥についてはどういうふうにとらえたらいいのか。お答え願いたいと思います。
    〔額賀委員長代理退席、伊藤(達)委員長代理着席〕
#165
○清川政府委員 御指摘の、第二条におきます「「欠陥」とはこという定義におきまして、三つの例示があるわけでございます。「当該製造物の特性」「その通常予見される使用形態」「その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期」というふうに三点があるわけでございます。「通常有すべき安全性」、第二条にあります「通常有すべき安全性」の内容、これは個々の製品、事案によりまして異なってくるということから、最終的にはすべての事柄を総合的に考慮して判断されるということになるわけでございます。
 この法案におきましては、このような考慮の事情につきまして、欠陥の概念の明確化を図らなければならないという要請、他方では争点が拡大あるいは拡散しないようにという両方の要請があるわけでございます。このようなこともありまして、両当事者にとって、中立的な表現でありながら、多くの概念を含み得るような表現になっているわけでございます。
 具体的には、このような概念の中に、産業構造審議会あるいは国民生活審議会の報告における九つの考慮事項も含まれているわけでございまして、「製造物の特性」という概念の中には、製造物の表示、これは今先生が御指摘になった点でございますが、製造物の表示、製造物の効用・有用性、価格対効果、被害発生の蓋然性とその程度、製造物の通常使用期間・耐用期間などが挙げられるわけでございます。
 また、「通常予見される使用形態」という概念の中には、製造物の合理的に予期される使用、製造物の使用者による損害発生防止の可能性が挙げられるわけでございます。
 また、「引き渡した時期」という概念の中には、製造物が引き渡された時期のほかにも、技術的実現可能性などが挙げられるわけでございます。
 このような概念がこの中に含まれているわけでございますけれども、実際の訴訟におきましては、これらの考慮事項を含めたあらゆる事情が、それぞれの事案に応じまして、ウエートを異にしながら総合的に勘案され、そして最終的に裁判官の判断により欠陥についての判断がなされるものと考えるわけでございます。
 この「製造物の表示」というECの指令にある事柄がなぜ出ていないのかという御指摘がございました。ECの指令に、いわゆるプレゼンテーションという言葉を使っておりますが、製造物の表示あるいは概観と言うべきかもしれませんが、これにかえまして「製造物の特性」という言葉が出ているわけでございます。「製造物の特性」という言葉を使っておりますのは、先ほども申し上げましたが、「製造物の特性」という言葉の中に表示という概念を含んでいるわけでございます。そのようなわけで、このECの指令にあるような「製造物の表示」という概念が見えないというお話でございましたけれども、この考え方の中に含まれているわけでございます。
 それから、設計の欠陥あるいは表示の欠陥、製造上の欠陥という問題がございました。欠陥という概念の中に、先生御指摘のように、このように設計、表示、製造という三つの分け方が十分あるわけでございまして、このような形で多く説明をされている点も承知いたしているわけでございます。
 この概念は、もちろんそのようなことでございますけれども、通常有すべき安全性を欠くという判断の際には、それぞれのどの概念に当たるかという点はあろうかと思いますけれども、先ほどお話し申し上げましたような九項目あったわけでございますが、考慮事項の中に含まれている概念がある。それぞれの形で整理され、欠陥の判断、通常有すべき安全性を欠くか否かという裁判官の判断の中に含まれていくものと考えます。
#166
○松本(龍)委員 長くお話をいただいてありがたいわけですけれども、「製造物の特性」という表現には当然「製造物の表示」も含まれていると理解してよろしいわけですね。
#167
○清川政府委員 「製造物の特性」ということの中に「製造物の表示」という概念を包含しております。
#168
○松本(龍)委員 それでは、先ほども触れられました開発危険の抗弁についてお尋ねをしたいと思います。
 開発危険の抗弁の判断基準は、私は極めて厳格なものでなければならないと考えております。本法案では、流通開始時の「科学又は技術に関する知見」によっては欠陥の存在を認識し得なかったこととされていますが、ここに言う「知見」とは何か。それは、当該製造業者、一国一業界のいわゆる平均的水準の製造業者等にとって主観的に入手可能なものを言うのかということをまずお尋ねをしたいと思います。
#169
○坂本(導)政府委員 御指摘の本法律案における「知見」とは、欠陥の有無を判断するに当たって影響を受け得る程度に確立された知識のすべてでございます。また、特定の者の有するものではなく、客観的に社会に存在する知識の総体ということでございます。
 したがって、他に影響を及ぼし得る程度に確立された知識であれば、初歩的な知識から最高水準までの知識のすべてが含まれることになりまして、おのずから、免責されるためには、当該欠陥の有無の判断に必要となる入手可能な最高水準の知識に照らしても欠陥であることを認識することができなかったことを証明することが必要だ、そういう水準でございます。
#170
○松本(龍)委員 EC指令の立案に当たったハンス・C・タシュナー氏によりますと、開発危険の抗弁とはこういうふうに書いてあります。「当該産業界の水準によるものではなく、全世界で何人も客観的に当該欠陥に気づき得なかった場合をいうのであって、同抗弁が現在問題となるのは、血液製剤によるエイズ感染ぐらいだ」として、開発危険の抗弁は、ヨーロッパにおいては、タシュナー氏の言うように、大変厳しい内容のものとされていることを申し添えておきたいというふうに思います。
 また、開発危険の抗弁につきましては、抗弁によって製造実者が免責をされる場合があるわけですけれども、その場合、損害はだれの負担によって救済をされるのかということも非常に大きなことだろうというふうに思います。
 国民生活審議会でも、このような問題については、「特定の製品の製造・販売者だけに賠償責任を課すことで解決するよりは、社会保障制度等の活用も含めて社会全体が技術開発に伴う損失を負担して被害者の救済を行う方が望ましいと考えられるが、いずれにせよ、今後の検討が期待される。」とされています。いわゆる社会保障制度等の活用も含めて社会全体が負担して被害者の救済を行う方が望ましいという考えを示しているわけですけれども、このための具体的な方策はどのように検討されているか、お尋ねをいたします。
#171
○坂本(導)政府委員 お尋ねの前に、まず開発危険の抗弁が認められましても、その製品を流通に置いた後に製品の欠陥が明らかになった場合には、その時点から、製造業者等は、当該製品の危険性の公表あるいは指示・警告、場合によっては一部販売停止、あるいは回収ということが求められまして、そういうことを行わなかったということになれば、過失による責任があるということに戻ってこようかと思います。
 そして、御指摘の点でございますが、これは開発危険の抗弁が認められるか否かにかかわりませず、特定分野の被害者救済を確実かつ迅速に行うという行政上の救済制度として、医薬品副作用被害救済基金による被害者救済制度があります。同制度は、製造物責任制度が導入されても、民事責任の対象となり得ない健康被害について救済の道を開いている。
 それからさらに、例えば、アメリカには一般的にはございませんが、我が国では負傷、疾病の療養や障害、死亡に対する補償制度として、ほとんどすべての国民を対象とした健康保険制度、年金制度、あるいはこれに類する労働者災害補償保険制度があり、こういった制度の活用によって救済を図っていく必要があると考えております。
#172
○松本(龍)委員 ありがとうございます。
 続きまして、原因究明機関の強化充実という点でお尋ねをしたいわけですけれども、このPL法の制定に伴い、やはり原因究明機関の充実が一層図られなければならないというふうに考えているわけですけれども、まさに国生審でも、「現状」というところを見ますと、テスト機器が老朽化をしている、対応できる分野が限られている、あるいは技術者が人材不足である、テスト設備の不足である、テスト費用の高額化等々の問題が指摘されているわけです。
 また一方で、二十六年前、昭和四十三年に消費者保護基本法というのができまして、この法律によってさまざまなことが行われてきたわけですけれども、ここでも「試験、検査等の施設の整備等」あるいは「苦情処理体制の整備等」「行政組織の整備及び行政運営の改善」等々という項目の中でこれらのことをうたっているわけですけれども、これはまさに都道府県の消費生活センターのような身近な機関が、原因究明機関等のネットワークの中での消費者窓口としての役割を十分に発揮するとともに、また、個々の事案での事故原因究明に要する費用負担の軽減についても十分考慮する必要があると考えておりますけれども、これらについては何らかの検討がなされているのか、お尋ねをいたします。
#173
○坂本(導)政府委員 原因究明機関の整備につきましては、関係審議会における検討においても、製品事故に係る紛争の円滑かつ適切な解決、その際の被害者の証明負担の軽減、さらには同種の事故の発生、再発防止等の観点からその必要性が指摘されておりまして、政府部内としてもその重要性を認識しております。
 したがいまして、政府としては、本法案の提出とあわせてその整備を積極的に推進していきたいと考えております。
 具体的なあり方といたしましては、国の機関等における原因究明、検査分析能力の拡充強化、民間検査機関等の原因究明に係る受け入れ体制の整備、消費生活センター等からの問い合わせに対する国の機関等の紹介、あっせん体制の整備等を積極的に推進することにしておりまして、本年度の予算案においても、関係各省の予算においてそういうお願いをしているところでございます。
#174
○松本(龍)委員 原因究明機関についてはもっとしゃべりたいんですけれども、時間がなくなりまして、また、情報公開、アメリカのディスカバリー制度等々にも触れながらやりたかったわけですけれども、時間の関係で先を急がせていただきたいと思います。
 周知の方法でありますけれども、私は、この製造物責任法ができましたら、まさにこれをどう国民の皆さんに周知をするかということが非常に大きな問題だと考えています。それも、いわゆるPL法そのものの周知はもとよりですけれども、その前に、やはり消費者側も学習しなければならないでしょうし、また、企業の側でも、製品の安全性を高める努力等々、いろいろな方策が考えられなければならないと考えております。
 ちょうど文言がありましたけれども、製造者等と消費者双方が自己責任原則に基づき、一定の役割を果たしていく必要がある。製造者等においては、製品の安全性確保に一層の努力が期待されるが、消費者においても、欠陥責任の下でも合理的に予見し得ないような誤使用に基づく被害については製造者等に責任を問えないのは当然であり、製品の適切な使用に努めなければならない。
まさに、国生審の結びの手前で書いてありますけれども、こういったことが必要であろうというふうに思います。
 私は、中村雅人さんという弁護士の方が書かれた著書の中で、「欠陥商品一一〇番」というのが九〇年、九一年、九二年に行われた中でどういうことがあったかという体験を通じて述べられていることがあるのですけれども、企業側が、これはこんなことは一回もありません、ほかに一件もありません、そして起こるはずがありませんというかたくなな姿勢は、やはりこれからは改めなければならないだろう。やはりちゃんと声を聞きながら、どこにどういう欠陥があったのか、そしてどうしてそのようなことが起こったのかをやはり親身になって究明をしていくような状況が要るだろうし、また、消費者にとっても、これは自分だけの問題ではない。仮に、本当に欠陥によって損害に遭えば、それがまた次の人になるかもわからない。そういったこともやはり考えていきながら、これらのPL法に臨んでいかなければならないと考えております。
 体験を通じて言えることは、「メーカーはその申し出を真剣に聞き誠実に原因究明をすることこまた「原因究明の結果判明したことは、正直に消費者に説明することこ次に「このようにしていくことが、世の中の製品の安全性や質の向上につながる」というふうに書いてあって、「消費者もメーカーもこのような姿勢になるためには、製造物責任の考え方が社会の基本原則として根づ」かなければならないとあります。
 こういう点につきまして、最後に大臣と長官の御所見をお伺いして、私の質問を終わります。
#175
○寺澤国務大臣 委員御指摘のように、この製造物責任制度の導入が円滑に行われて、制度本来の趣旨が実現され定着していくためには、製造者、消費者を初め関係者によって正しく理解されることが不可欠であります。そのため、この内容を周知徹底し、関係者が対応、準備を行うために十分な期間を設けることも必要であります。
 本法律案におきましては、公布後一年間の周知徹底、準備期間を設けることとしております。この間に、全国各地で積極的に説明会等を開催するとともに、法案の内容をわかりやすく説明した解説書の発行を行うことにしており、法律の内容の周知徹底に努めてまいりたいと思います。
 なお、やはり委員御指摘のように、製品関連事故による消費者の被害を未然に防止するためには、製品の安全性が確保されるとともに、製品が消費者によって適切に使用されることも必要であります。
 また、事故が発生した場合においても、円滑な救済が確保されるよう、消費者が被害救済を受けるための手段や紛争解決のルールについての基本的な知識を持つことも必要でありましょう。このため、消費者への情報提供の一層の推進を図るとともに、消費者教育を積極的に推進してまいりたいと思います。
 具体的には、消費者教育の総合的な体系の確立あるいは教材あるいは指導者マニュアル等の作成、配付、消費者教育に関する図書、教材等に関するデータベースの整備などを推進することによって、消費者教育の定着、充実を図ってまいりたいと思っております。
#176
○畑国務大臣 ただいま松本先生お話しのとおり、私は、この法案といいますものは、その前提に消費者サイドも製造者側も求められるのは意識改革というように思うわけでありまして、私どもの今までの一般的な生活様式としましては、例えば自分が被害者であった、トラブルが起きた、しかし、自分が辛抱すれば何とかまあよかろう、世間が丸くおさまるだろうというような考え方が強かった。これをこの辺で、やはりきちっと物事の責任の所在というものを明確にすることによって、言葉がいいかどうか知りませんけれども、事故から得られる経験は公共の財産というような意味合いで、これを大きく生かすということがこれから求められておる姿ではないかなということも考えるわけでございまして、さような意味合いで、ただいま長官からもお話がございましたが、徹底した一つの周知、啓蒙等々、これは双方が意識改革をやることによってこの法の本当の目的とするものが生かされる、こういう視点に立ってこれからの行政対応も進めてまいりたい、かように考えております。
#177
○松本(龍)委員 終わります。ありがとうございました。
#178
○伊藤(達)委員長代理 坂上富男君。
#179
○坂上委員 委員長、御苦労さんでございます。また、畑大臣、寺澤長官、大変御苦労さんでございます。また、政府各位におかれては、大変熱心な審議をいただいておりまして、感謝申し上げたいと思います。
 私に与えられた時間は三十分なのでございますが、もう二十五分くらいになってしまったのでございますが、十問質問をいたしますと、三分かかりますと、これで終わりです。でありますから、私の質問に対しては、イエスかノーかで答えてください。いいかね。さっき聞いていて、もう十分頭に入りましたから、あとはもう違うことだけ聞きますから、私が前の質問者とダブっておりましたら、もう前に答えましたよと一言でいいですから、そのかわりきちっと答えてくださいよ。いいですか。
 まず、法務省、いますか。この法律というのは、不法行為の特別法に当たりますか。
#180
○升田説明員 特則に当たると考えております。
#181
○坂上委員 そうだといたしますと、これは今度は経企庁ですか、「国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」これはこの条文の中のどこに該当しますか。関係条文、当たるか当たらぬかだけでいいから。
#182
○坂本(導)政府委員 この法律ができることによって、全体としてより……(坂上委員「条文の中に当たっているかどうかと聞いているんだから、それだけ答えなさい」と呼ぶ)法の趣旨でありますが、過失から欠陥に変えることによってより安全な商品が供給されるということから、こういう規定になっております。
#183
○坂上委員 よく聞いて答えてください。この文言はどこの条文に係りますかと、それだけ。係りませんと言えば、係りませんと答えなさい。よく聞いて答えなさい、時間がないんだから。
#184
○坂本(導)政府委員 二条以下との関係では、被害者の保護を図ることまでが係ります。
#185
○坂上委員 「国民経済の健全な発展」というものがどこに係りますかと、こう聞いているだけですから、ここですと言うだけでいいです。そんなことで時間とりたくないんだ。
#186
○坂本(導)政府委員 二条以下の個別の条文と、直接ではなく全体としての関係でございまして、これは先ほど御答弁申し上げた点でございます。
#187
○坂上委員 直接はないのですね。
 それでは、今度はこう聞きましょうか。この対象物について、いろいろとこれは当たる、これは当たらないというガイドラインをお聞きをいたしました。これだけはひとつきちっと答えていただきましょうか。私にお知らせをいただいた対象になる物件、対象とならない物件、これをお答えください。
#188
○坂本(導)政府委員 第二条の一項によりまして、「製造又は加工された動産」でございますから、未加工農産物、不動産あるいは無体の電気は対象になりません。
#189
○坂上委員 私の意味をよく聞いているの。対象となるもので、境界線すれすれの物件はどれですかと、それからこれの対象にならないものはどれですかと、こう聞いているんです。おたくさんの方から報告書をいただいているから、聞いているんです。
#190
○坂本(導)政府委員 製造物、製造または加工された動産が対象となります。したがって、対象となるもの、例えば具体的に挙げますと、家電、自動車、薬品、血液製剤、生ワクチン、加工食品、ガス、住宅部品等でございます。対象とならないもの、無体物、電気、ソフトウエア、不動産、未加工品等でございます。
#191
○坂上委員 それで、これを見ますと、いわゆる無体物は入らない。無体物は何を指すかというと、電気、ソフトウエア、これを指しておられるようでございます。これはなぜ入らないのでしょう、一言でいいですから。
#192
○坂本(導)政府委員 本法で動産を対象としている結果入りませんが、その考え方は、電気等は契約によって確保できると考えているからでございます。
#193
○坂上委員 法務省、こういう答弁でいいかな。
#194
○升田説明員 私どもも同じ見解でございます。
#195
○坂上委員 同じ見解というのはどういう意味。あなた、もう少し法務省らしい答弁で。
#196
○升田説明員 本法で申します製造物は、対象といたしますのは動産に限定しております。
 今御指摘の電気につきましては、刑法上は、そういう特別の必要から、電気窃盗等を取り締まるために動産とみなされておりますけれども、民法上はやはり電気は動産に含まれておらない、こう考えております。
#197
○坂上委員 ちょっといいですか。民法八十五条は「本法ニ於テ物トハ有体物ヲ謂フ」、それで八十六条で「土地及ヒ其定著物ハ之ヲ不動産トス」「此他ノ物ハ総テ之ヲ動産トス」「無記名債権八之ヲ動産ト看做ス」、こう書いてある。
 そこでお聞きをしたいことは、ここに言うところの動産というのは民法に言うところの有体物だと。したがって、電気というのは有体物でないからこの対象にならないというのが私のところへ来た皆さん方の説明なんです。それはそれで答えはいいんですよ。そのことを求めたかったんです。それ以上、もう少し発展した議論をあなたとしたいから私は聞いたんですよ。あなたの答弁はちょっと違うんじゃないの。
#198
○升田説明員 私どもの見解も、先ほど経済企画庁の方からお答えになりましたし、また、今委員御指摘の内容のとおりである、こう考えております。
#199
○坂上委員 そうすると、電気は入らないというのですが、いいですか、ここにこう書いてある。これは有名な本です。民法八五条にいう「有体物」とは、空間の一部を占めて五感により覚知せられうる物質、すなわち固体・液体・気体をいい、電気・熱・光・香気のごときものは右の意味での「有体物」つまり「物」ではない、というのが伝統的な解釈であった。しかし、近時においては、「物」というのは法律上の概念であって、管理技術の進歩や取引社会の進展に伴って変化しうるものであり、かならずしも物理学上の概念に拘束されねばならないというものではない、として、「有体物」の概念を「法律上の排他的支配の可能性あるもの」と拡張解釈すべし
そういうふうな説が有力であると言われている。いいですか、この説をしているのはだれだかわかりますか。我妻栄先生です。
 電気は有体物でないという判例はありますか。
#200
○升田説明員 判例は承知しておりませんが、今御指摘のように、電気が動産に含まれるという考え方があるということは承知しておりますが、ただ、多くの考え方は、電気は動産に当たらないという考え方が我が国の学会では多い、こういう理解をしております。
#201
○坂上委員 学会論争をするわけではないのですが、有力な説でこういうのがあると。だから、そうした場合、電気を一体こちらに入れるのか、こちらに入れるのかということは重大な問題です。それは最終的には裁判所が判断するのでしょうが、私たちは裁判所に行かないでこの問題を生活の中で処理しようというのですよ。
 そうだとしますと、一体どちらに判断したらいいかということを皆さん方から聞いているわけです。だから私は、やはり電気の場合、皆さん方だけの議論では、これはどうも物に当たるんじゃないか、対象物になるんじゃなかろうか。これを見たって本当にそう思いますよ。
 そこで、もっと続けますよ、いいですか。
 民法の立法者が「物」を「有体物」に限定したのは、前述のように、人間の観念の所産たる権利のごときものを除外する趣旨であるから、八五条の法文そのものから、電気などを「有体物」でないとする解釈が必然的に導出されるものではなく、「有体物」の定義は、さらに第二の(八五条以後の)問題だといわなければならない。
こう言っているわけです。だから、ここの八十五条が制定された以降においてもこの問題というのは新しい問題だとこう言っているのですが、新しい問題であるから、やはり電気というのは有体物と言う方がいいんじゃなかろうかと書かれている。これは幾代先生の本の中、でいろいろと学説を紹介している。
 あなたは多数決と言うけれども、本当に多数決という証明があるなら示しなさい。
#202
○升田説明員 文献の数をもちろん調べたわけではございませんけれども、私どもの方で理解しております範囲では、電気につきましては有体物には含まれないというぐあいに理解しております。それは、先ほど来説明させていただいておりますけれども、例えば刑法で電気窃盗が問題になりました折にもやはり同様な議論があったと聞いておりますし、また、今回の本法の検討の過程でもやはり同様な議論を行いまして、少なくとも私どもの方では、電気につきましては有体物ではないという理解に立っております。
#203
○坂上委員 有体物であるかどうかという議論をしていたらきりがないから、もうちょっと、ひとつきちっと私が納得できるように書面でもいただきたいと思います。
 その次に、水道水。これはもちろん対象物になるのだろうと思いますが、これもお答えいただきます。
 それから、薬物、薬品は全部入るようなお話でございますが、漢方のもの、漢方薬品は一体どうですか。例えば、これを干しただけのものが結構あるんだ。これも結構漢方の薬なんだ。これはどうなの。加工なんか何もしてないんだ。
#204
○矢野説明員 漢方は原料がいろいろございますけれども、これは単品で用いるということはないわけでございまして、組み合わせて処方として用いているわけです。それを粉にして散剤として用いる、あるいはお湯に煮出しして利用する、こういう形でやっております。
 私どもは、二百十処方というのを漢方については決めておりまして、これが流通しておるということでございますので、漢方薬は対象になる、製造物に該当する、こういう理解をしております。
#205
○坂上委員 干したばっかりの漢方薬を売っていますよ。どうです。干しただけ。
#206
○矢野説明員 これは、通常、原料として用いるわけです。原料だけを見ますと、確かに乾燥しただけのものとか、シカの角みたいなものもあるわけでございまして、もちろんこういったものは製造物には該当しないと思っております。
#207
○坂上委員 そうしますと、その薬品の中で漢方についてはいろいろその物体によって区分がある、こういうわけですね。
#208
○矢野説明員 原料について見ますと、これは個々の物体ごとに社会通念に照らして判断するしかないと思っております。
#209
○坂上委員 それから、今度、これもやはり法務省がな。とにかく、欠陥によって被害が起きた、裁判を起こした。それで、加害者会社の持っておるところの設計図、仕様書、関係する書類、これをひとつ法廷に出してくれといったら、今の裁判制度の中で直ちに出せますか。文書提出命令のことを聞いているのです。
#210
○升田説明員 文書提出命令につきましては、条文をちょっと失念いたしましたけれども、法文上要件がございまして、それに当たれば出せるということになりますけれども、欠陥によりましてそういう製品事故が起きました場合に、なかなかそういう文書提出命令の要件に当たるという場合は多くないのではないかということは予測されます。
#211
○坂上委員 だから具体例を挙げているんだ。これは僕らはしょっちゅう裁判をやっているんだ。提出命令がからぬの、これは。これは法務省知っているでしょうが。それをごちゃごちゃ言わないで、出ませんとはっきり言ってくれれば対策があるんだよ。だから聞いているんだ。文書提出命令の対象にならぬでしょう、仕分け善とか設計書とかあれを出せと言ったって。どうです。
#212
○升田説明員 先ほど説明させていただきましたように、不法行為の事故というのは偶発的なことになりますので、提出命令の対象にならない場合が多いということは予測されます。
#213
○坂上委員 それで、いわゆるアメリカの証拠開示制度、これはとらないというのですよ。それから、民事訴訟法の改正、これを待っているというのでしょう。経企庁の文章を見ますと、民事訴訟法の改正を見守っているという。話を聞くと、民事訴訟法が法律改正して提出されてくるのは大体平成八年でしょう。しかもこの内容は、文書提出命令の条件をちょっと変える程度だというのです。それで国会の審議になる。一体いつこの程度のことが改正になりますか。そうだといたしますと、これは今言っているのは間違いないでしょう、私の言っていること。今言っているようなことだとすれば、本当にこのPL法を実施をし、私たちの、国民のものにするためには、いわゆる証拠開示をするか、あるいは文書提出命令をもっとやわらかくするか、そういうようなことを必要とするわけです。
 それから、前の質問の中で推定規定を設けなかったということをくどくどいろいろ言われました。だけれども、このPL法案は、推定規定と証拠開示、この二つの問題がこの法律を生かすか殺すかということにかかわっていると私は思っているのです。また、実務をしている弁護士さんや法曹の中では、この二つがこの法律を生かすか殺すかの運命になる、こう言っておるわけです。
 また、ヨーロッパの裁判官はどう言っているかおわかりですか。こういう証拠開示制度のないところで本当に日本の裁判官がPL法の裁判なんかできるんだろうかということを、とにかく会う裁判官、会う裁判官は言っていますよ。そうだといたしますと、本当にこれは、今お話を聞いていますと、裁判所のいわゆる事実上の推定によってやってもらわなければならない、こういう話。裁判官は、そんなに事実上の推定なんかなかなかしてくれません。企業者側に有利な事実上の推定もあるだろう。被害者側に有利な事実上の推定もしてくれると思う。これはもう裁判所は、法律でもってきちっと詰めておきませんと、事実上の推定を期待をしても、何も被害者保護にならぬと私は思っておるわけです。一言でいいですよ、法務省、どうです。
#214
○升田説明員 まず最初に、現在の民事訴訟部会におきます検討状況でございますけれども、民事訴訟手続の全面的な見直しのための審議を進めておりまして、その一環としまして、証拠収集制度についての見直しも検討の対象になっております。平成五年の十二月には、それまでの審議の結果を取りまとめました「民事訴訟手続に関する改正要綱試案」というものを公表しておりますが、その中で、ディスカバリー制度につきましては、アメリカにおきましてもその利用に膨大な費用と時間を要し、乱用をされやすいというような指摘がありまして、この制度をそのまま我が国の訴訟手続に導入するのではなくて、弊害が生じないように配慮しながら、しかし、証拠収集手続を充実強化するという方向で提言がなされております。
#215
○坂上委員 時間がない。畑大臣、これをちょっと見て。これは私がずっと集めてきた品物。食品衛生法に書いてある。この中に、製造年月日が書いてあって、それから品質保持期間というのができた。畑大臣はかえって農林大臣の方が大変格好がいいような感じがするのですが、これは本当なら農水省の管轄でしょう。これはどうですか。品質保持期間というもの。この品質保持期間を過ぎてこれを買って食べて事故が起きた場合、これはどういう対象になりますか。
 それから、今度これによりますと、賞味期間というのがある。これはさらさらふりかけというものだ。こういうものは、この期間内で事故が起きると責任があって、この期間外に事故が起きてしまいますと、これは責任がないという抗弁ができるのですかね。これはどうですか。簡単でいいです。できるかできないかだけでいいですよ。
#216
○大隈説明員 御質問の賞味期限とPLの欠陥責任とは、直接には関係がございません。
#217
○坂上委員 だからどうだっていうのです。だからどうだって聞いているのです。
#218
○大隈説明員 したがいまして、一日過ぎた場合でも、別途その責任を判断した上で、責任があるかどうか判定しないと、過ぎているということだけでは責任があるというふうには断定ができないと思うのです。
#219
○坂上委員 なるほど。それはそういうふうに聞いておきましょう。
 今度は、製造年月日の印刷の意味というのは、大体これは腐ったものを出せないという意味なのでしょう。今度はこの法律ができると趣旨が変わってくるのですね。どういうことかといいますと、時効の関係が出てくるわけです。これを見ると、ゴム印で押されているような製造月日があります。これは消えますね。それで、十年ぐらいたって請求したら、もうあなた、時効でだめですよ、こう言われるわけです。これが薄くてわからぬような場合があるわけです。これはやはり相当な指導をしないといかないと思いますが、業者にとってはこれはなかなか容易な話じゃありません。だから、この辺の調和をどうしていただくかということは、この法律ができてから重要な問題だろうと私は思っているのです。これはまた後で、所感だけでいいですから。何といったって時間がないのです。
 その次、少額被害者の救済問題、皆さんの方からいただきましたこの本を読んでみまするといろいろ書いてあります。
 一つだけ聞きます。消費生活センター。消費生活センターは、一県当たり大体どれくらいの予算でやっているかわかりますか、各県単位。人件費だけなのです。こういう皆様方がほとんどボランティアでやっているのです。これを今度はみんな、これを見てみますと、こういう人たちに期待して皆さん方がこれを運用するというのですが、この皆様方に今のような予算の千倍ぐらい出さぬとだめですよ。私は、本当は大蔵省から来て聞いてもらいたかったのでございますが、これを本当に仏つくって魂入れるということからいいますと、県によっては二千万程度、もう人件費に足らないのです。東京都に至ってはその十倍ぐらいになっていましょうか、これは全部調べてもらいました。
 でありますから、やはりこういうようなことをきちっとするには、予算を獲得しないとこれの実施なんか私はできないと思うのです。これは大臣の仕事なので、まあ欠陥はあなた方に聞いたってそれは答えられるはずはないから、無理して答えることはないのだから、予算をいっぱいとってもらって、そして、これを見ると、本当に被害者救済のためにやっていただくということが私は一番大事だろうと思うのです。
 この中を見ますといろいろありますよ、苦情処理機関が、調停するとかあっせんするとか仲裁するとか。これはまかり間違えますと非非行為です。これを国は嫌々ながらつくったのか、あるいは何としても被害者を救済するために早急に実のある法律をつくらねばならぬと思ってつくられたのか。私は後段です。私たちも一生懸命この法律をつくるために努力したのでございます。
 そこで、お願いでございますが、開発危険の抗弁というのをわざわざ入れなくても、今の裁判の中であるでしょう、医療事故の場合は。当時の医療水準から見て、これ以上のことはできなかったということになれば、お医者さん側は勝ちます、患者側は負けます。同じことがこういう開発危険の抗弁だろうと私は思っているのです。形は違うけれども、そういうことなのです。でありますから、もう時間がないから私は余り聞きませんけれども、大臣にお願いしたいことは、本当にこういうものをするためには、今おっしゃっておりますところの予算が千倍ぐらいなければなりませんと私は思っているのです。
 今度は、被害者の救済ということになると大変なのです。例えばこれなんか、あなた、どうですか。こんなことでできますか。通商産業検査所、ここを充実してやるというのだね。それから農林水産消費技術センター。お聞きをしたら、大臣、これは全国に十しかないそうですようちの新潟県にこれをつくってくれるかね。つくってくださいよ。そういうふうに、書いてあるけれども内容がないのだ、これはみんな。これでは私はいかぬと思いますよ。
 でありますから、これはもう力むだけになりますけれども、これを生かすには、技術論を答弁していただくよりも、本当に大蔵省に談判して、何よりも優先して予算をいっぱいとりますよということさえ確約をしてもらって、これをすれば私は一番いいことなのじゃなかろうか、こう思っています。両大臣、お答えください。
#220
○畑国務大臣 坂上先生の迫力あるお話をいつも伺いながら、現実が残念ながらそれに伴っていないことは御指摘のとおりでございますが、幸いにただいま御審議を願っております平成六年度中にはいささか今の方向に沿った、数億円という金額ではございますけれども、計上がされておる。でございますから、今先生のお気持ちを体して、問題はこれからが本番だ、いささか猶予期間等々あるわけでございますが、とりわけ来年度予算に向けましての取り組みが肝要、かように心得させていただきます。
#221
○寺澤国務大臣 坂上委員の言うとおりだと思います。千倍になるかどうかわかりませんけれども、努力します。
#222
○坂上委員 どうもありがとうございました。
#223
○伊藤(達)委員長代理 西川太一郎君。
#224
○西川委員 私は、連立与党のPLプロジェクトチームの一員として、今日まで、微力でございますけれども、先輩の驥尾に付して準備をしてまいりました者として、きょうここで連立与党を代表してお尋ねを申し上げる機会をいただきまして、まことに光栄に存じております。
 しかしながら、先ほど来四時間二十二分にわたって野党の皆様が熱心な、広範な角度からの議論をなされた後でございますから、まことに限られた時間の中でお尋ねをすることも、これまた限定をされておりますので、大急ぎでぶっきらぼうにお尋ねをいたしますが、ひとつお許しをいただきたいと思います。
 まず初めに、我が国は世界経済の大きな担い手として寄与をしているわけでございまして、石灰石と米と野菜以外は全部外国に頼る、最近では米まで頼るようになっておりますけれども、こういう貿易立国を旨として、世界との経済的なおつき合いというものを上手にしなければ、一億二千四百万の国民が生きていけない。こういう国の法体系というのは、国際社会におけるバランスというものを意識して立法せざるを得ないというふうに思うわけでございます。
 そこで、かつて一九六〇年代に、アメリカのケネディ大統領はその教書の中で、消費者保護というものについてその理想を掲げられたわけでございます。我が国は、その面においては後進国であるという指摘も内外からいただきながら、今日まで来ました。明治二十九年に制定をされた民法が、先ほど来の議論の中でもございますとおり、ここで画期的な新しい第一歩を踏み出す。いろいろ御不満の点もおありになるでしょう。特に、消費者団体の方や、今日までこの法の立法、制定を望んでおられた方々には、もっともっとこうしてほしいという御意見もあるだろうというふうに思います。冒頭から消極的に物を言うわけでは決してございませんけれども、小さく産んで大きく育てるという言葉がかつてはやったことがありますが、この法律については、私は、まず立法、制定をすることが、我が国にとって国際社会の中においてもバランスのある行動ではないか、こう考えているわけでございます。
 そこで、このPL法に関する国際的な立法状況について、特に我が国の位置づけにつきまして関連してお尋ねをしたいと思います。
#225
○坂本(導)政府委員 アメリカでは、一九六〇年代から、欠陥を要件とする製造物責任が早くから判例の展開により一般化しております。しかし、一方で、懲罰的賠償制度、陪審制度、弁護士成功報酬制度など、特異な民事司法上の制度のもとで、訴訟件数の増加、評決額の高騰、訴訟結果の不確実性が問題になったこともあり、一九八〇年代以後、懲罰的損害賠償等についての連邦における基準の統一と訴訟コストの抑制を図ることを主眼とした連邦統一法の制定を目指した動きが続けられております。
 他方、EU諸国では、一九八五年七月に製造物責任に関するEC指令がEC閣僚理事会において採択されたことを受け、EC指令に基づく各加盟国での立法化が進展しており、フランス、スペインを除く十カ国において立法化が完了しております。
 また、EFTA諸国でも、EC指令とほぼ同一の内容で立法化が行われております。
 さらに、フィリピン、オーストラリア、中国、台湾など、アジア・太平洋諸国でも、欠陥を要件とする製造物責任立法がなされております。
 我が国の今回御提案申し上げている製造物責任法案は、おおむねEC並みのものと考えております。
#226
○西川委員 そこで、私、先ほど小さく産んで大きく育てる、こう言った。それは、自由民主党の甘利先生からのお尋ねの中でも、アンビュランスチェーサーという言葉がございましたね。不必要な社会的なコストというものを生む必要はない。過剰になってそれを修正するというようなことも余り望ましいことじゃない。先ほど来お話がありました推定規定についても、欧米では、これをEC指令においても具体的な法文、条文にしているわけじゃない。アメリカでは立法規定もない、立法事実もない。
 こういうことを考えますと、近年におけるこうした世界の動きの中で、先ほどのアメリカのいろいろな動きというものがちょっと行き過ぎだ、こういうことも言われているようでございますが、最近見直しを行われているというような情報にも接するわけでございます。これについて、いかがな内容でございましょうか。
#227
○坂本(導)政府委員 御指摘のように、アメリカでは製造物責任訴訟が極めて多く、七〇年代と八〇年代の二度にわたりまして、製造物責任危機ないし保険危機とも言われるように、保険料の急騰や、一部では保険の引き受け拒否も発生したことから、製造物責任制度の行き過ぎに対する見直しの動きが見られております。
 具体的には、まず、一九七九年十月、統一製造物責任モデル法が商務省から公表され、また、八〇年代初めから、連邦議会において、連邦統一法の制定を目指した動きが続けられておりますが、実現には至っておりません。最も最近議会に提出された法案では、製造業者の責任原理を変更する内容は盛り込まれておりませんが、販売業者の責任の過失責任への統一、代替的紛争解決手段等の促進、懲罰的賠償の制限等を内容としております。
 また、判決レベルでも、八〇年代以降、判決の行き過ぎに歯どめをかける動きが広がっており、こうした動きを背景に、判例を整理し、条文化した製造物責任に関するリステイトメントの改定作業が行われているところと承知しております。
#228
○西川委員 そこで、今度は欠陥概念についてお尋ねをいたすわけであります。
 我が国も、先ほど申しましたとおり、やっと世界での先進国の仲間入りを果たせるというところまで来たわけでありますが、法案の内容が大事でございまして、特に欠陥概念については、その定義、内容を明確化する必要がございます。しかし、反面、先ほど来これも御議論がございましたとおり、不幸にして被害者になられた方々の立証負担、これを過大なものにしてはならない。これとのバランスという問題がございます。これにつきましては、経企庁はいかがお考えでございましょうか。
#229
○坂本(導)政府委員 委員御指摘のように、欠陥概念につきましては、欠陥責任の趣旨を損なわない、被害者の立証負担を過大にしないということが重要でありまして、まずそういった点に配慮しつつ、一方で、極力その明確化が図られることが望ましいという面にも配慮する必要がある。
 こうした考え方に基づきまして、法文案では「通常有すべき安全性を欠いていること」と定義することで、欠陥が安全性に係る概念であること、絶対的な安全性が要求されているわけではないこと等、基本的な内容を明確にするとともに、あわせて、欠陥の有無の判断に当たって総合的に考慮されるべき事情を三つ示しているところでございます。さらに、「その他の当該製造物に係る事情」を含めることで、例示された三つの事情以外にもあらゆる事情が考慮されることを確認的に明らかにしているというものでございます。
#230
○西川委員 これも先ほど来から議論になっておりますが、欠陥があるとかないとかという判断を、一体いつの時点でこれを基準にして判断をするか、これをもう一度ひとつ明確にしていただきたいと思います。
#231
○坂本(導)政府委員 製造物の欠陥に係る製造業者等の帰責の根拠は、欠陥のある製造物を製造し他人に引き渡したことにあるため、欠陥の判断の基準となる時点は、製造業者等が当該製造物を引き渡した時点でございます。すなわち、この時点で欠陥に当たる事実が存在したか否かが判断されるとともに、この時点に存在した社会通念に照らして通常有すべき安全性を欠いているか否かが判断されることになります。
#232
○西川委員 次は、通産省にお伺いをしたいと思うのであります。
 欠陥というのは、明治二十九年の民法の概念が改められて、新たに今度は製造物責任法において導入をされる概念で、主として裁判規範として機能するけれども、しかし、事故の防止や裁判外の紛争処理に当たっての行為規範としても機能する、こういうことでございますが、当該製造物が「通常有すべき安全性を欠いている」というだけで定義するというのではちょっと不十分じゃないか、もっと考慮事情というものがあってしかるべきではないのか、そういうふうに私どものこのプロジェクトチームの中でも議論があったわけでございます。
 この点について、今度の立法に当たられてはどういうふうに御判断をされたのか、ちょっと伺いたいと思います。
    〔伊藤(達)委員長代理退席、委員長着席〕
#233
○清川政府委員 先生御指摘の考慮事情の必要性とその内容でございますけれども、御指摘のとおり、この考慮事情は、裁判の規範であると同時に行為規範となりますから、極力明確化を図るということ、これによりまして、消費者にとっても、企業にとっても、予測可能性、透明性を高める、こういう考え方でございます。
 他方では、余りにも多くの要素を書き込むことには問題が生じるという点がございます。このようなこともございまして、法第二条におきましては、「「欠陥」とはこということで、三つ例示しております。「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期」という三つの例示をいたしているわけでございます。しかしながら、この三つの概念そのものは、依然としてまだ広い概念でございます。
 このような概念でございますが、産業構造審議会あるいは国民生活審議会の報告におきましては、九つの考慮事項ということを考えて答申をいただいております。
 この九つの概念は、「製造物の特性」という条文の概念の中に、製造物の表示、製造物の効用・有用性、価格対効果、被害発生の蓋然性とその程度、製造物の通常使用期間・耐用期間などが挙げられます。
 また、条文にあります「通常予見される使用形態」という言葉の中には、製造物の合理的に予期される使用、製造物の使用者による損害発生防止の可能性などが挙げられるわけでございます。
 また、第三の「引き渡した時期」に関する概念といたしましては、製造物が引き渡された時期、技術的実現可能性などが挙げられるわけでございます。
 このような概念を含んでいるわけでございますが、これを含めまして、さらにすべての概念を含めて、実際の裁判におきましては、それぞれの事案に応じて、ウエートを異にしつつ、それらの要素が総合的に勘案をされて欠陥の判断がなされるものと考えるわけでございます。
#234
○西川委員 ただいま御答弁をいただいて、そうしますと、ちょっと整理をする形でもう一回、くどくて恐縮ですが、お尋ねします。
 産構審だとか国生審で、ただいま御答弁にありましたとおり、考慮事情というのがたしか九つに分類をされていた。それがここでは三つになりました、こういう御説明でございますね。そうなりますと、この製造物の特性と呼ばれる新しい概念の中にもつのうちのかなり多くが包含される、こういうふうに解してよろしいのか。
 つまり、どうしてこういうことをお尋ねするのかというと、実際の裁判においては、個々の事案に応じてウエートをいろいろなところに移しながら審理が進められる、こういう中で総合的に欠陥の判断というものが下されるんだろう、こう思うわけでございます。
 したがいまして、ただいま御説明ございました、当初、通産省におかれても、また経企庁におかれても、それぞれの審議会で商品の欠陥の定義をする場合の判断基準として、またはそれを防ぐ場合の一つの要素として九つ挙げられていたものが、なぜ九つそのまま素直に出てこないで、この三つに整理をされたのか、この辺の事情をちょっと御答弁願えますか。
#235
○清川政府委員 お答え申し上げます。
 三つの大きな要素を例示いたしまして法文に書いてあるわけでございますけれども、これは、欠陥概念の明確化という要請と、さらに他方では争点の拡散を防止する、つまり立証負担の増加につながるようなことを防止することによりまして被害者の救済を図る、この二つの要請を図るということを考えますと、共通性、重要性、そしてまた両当事者に中立的な表現となるということを念頭に工夫をいたしたわけでございます。この工夫のもとに、九つの要素が包含し得るような、され得るような表現といたしまして、製造物の特性、通常予見される使用形態、そしてまた引き渡された時期という三要素を例示して法文化した次第でございます。
 したがいまして、先ほど先生御指摘の、例えば製造物の特性という概念の中には、九つの概念のうちの幾つかが含まれる。繰り返しになって恐縮でございますが、製造物の表示あるいは製造物の効用・有用性、価格対効果、被害発生の蓋然性とその程度、製造物の通常使用期間・耐用期間などが包含されるというふうに考えております。
#236
○西川委員 そこで、この問題についていろいろ議論がなされてきた中で、余りたくさん明示をされるとかえって立証負担が重くなるんじゃないか、こういう議論がたしかございました。その辺も考慮して九つを三つにされたのか。
 こういう懸念はないのか。つまりこれは二つに分かれますが、明示することによって立証負担を重くするということにはならないのか、そういう心配や懸念はないのか、これが一つ。
 それから、くどいようですが、九つのものを素直に出さずに三つに整理をしたということはその辺の配慮もあってのことなのか。こういうことを、二点お尋ねしたいと思います。
#237
○清川政府委員 本法案におきまして、欠陥を認定するに当たっての考慮事項といたしまして三つの要素を例示しておりますが、これらは、欠陥という概念が裁判規範であると同時に行為規範として機能するというものでございますから、そしてまた責任原因として新たに導入されるものでございますから、概念をわかりやすくするという趣旨で法文に考えているものでございます。
 しかしながら、これらの事情は、あくまでも欠陥という製造物責任の要件となる事実の存否を判断する際の代表的な考慮事情につきまして、共通性、重要性、両当事者にとって中立的な表現ということを念頭に置いて例示を示したものでございます。したがいまして、これらの考慮事情の中にもつの概念も包含されるわけでございますが、ほとんどの事案において考慮の対象とされる性質のものでございまして、不必要に争点をふやすことにつながるものではございません。
 また、考慮事情の例示は被害者に立証責任を負わせるものではないということから、ここに欠陥の考慮事情を例示することによりまして立証負担が加重されるようなことはないと考えております。
#238
○西川委員 この製造物責任法が国会で制定される動きがマスコミで報じられました前後、ちょうど暮れのうちから新年にかけての時期でございましたが、中小企業関係団体の新年会、忘年会に私ども何カ所かお呼ばれをしました。そういう席で、その主催者の方や御来賓の方々が時々PL法に触れられて、とんでもない法律ができるのですよ、これができたら我々中小企業は大変なんですと。コストもふえるし、新製品の開発も非常に危険が伴うのです、こういうことは産業、経済、健全な国民経済の発展を阻害するものであるというような大演説をあっちこっちで聞かされたのであります。
 その中で具体的に、製造メーカーが、まあ親会社がと言ってもいいですね、下請さんや部品メーカーに御自分のところで設計をされて指示をして、そしてそれを納めて、設計や指示に従ったのにその部品を組み込んだ完成品が欠陥を起こした、そのときにはおまえたちもやられるんだぞ、君らも責任を逃れられないんだよというようなことが盛んに当時風説として流布しまして、そんな酷な法律あるのか、中小企業というか小規模企業、あえて言うなら零細企業いじめじゃないかというような議論があったのですね。
 これについてはどういう救済措置というか整理がついたでしょうか。ここは大事なところでございます。
#239
○清川政府委員 先生御指摘の中小企業、特に部品・原材料をつくって納入をしているという企業が非常に多いわけでございますけれども、このような問題につきましては、この法案の第四条第二号に、部品・原材料等の製造業者の抗弁の条文を用意いたしております。これによりまして、「当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がない」場合には、これら製造業者につきましては賠償の責めに任じないという、いわゆる部品・原材料等の製造業者の抗弁という条文を用意いたしているわけでございます。
#240
○西川委員 そこで、中小企業を初めとする産業界、こういう方々に、この製造物責任法というものを積極的につくりたい、つくってほしいという消費者団体の皆さんや法曹界の方々は、御自分たちがこれをつくりたい、促進したいというお立場ですから、逆にもっと充実してほしいという御要望があるでしょう。しかし反面、そういうものは要らないんじゃないか、つくる必要はない、こういうふうに思っておられるような業界とかそういう方々に対しては、これを誤解のないようによく理解をしていただいて、この立法の趣旨や精神を体していただいて、そしてこのことは、いたずらに社会的な費用をふやすのではない、好んで混乱を巻と起こすために立法するのではないということの周知徹底を図っていく必要があるんじゃないか。このことが国民経済の健全な発展という大きな目的に沿っていくのではないか。
 「国民経済」という言葉を入れることが、あたかも何か消費者軽視であって産業界寄りであるというような誤解も一部にお持ちの方々はおいででございますけれども、そうではなくて、経済の活動というのは、アダム・スミスの言葉をかりるまでもなく、最終の目的は消費なんですね。やはり私たちは、一回しか生まれてこないこの世で極めてカンファタブルに過ごしたい、こういうことで、効用を追求して経済活動をすることはもう申すまでもないわけでありまして、それが保障されない立法というのはどんな趣旨のものであっても悪法である、私はこう考えるわけであります。
 そこで、つくる側もよい製品をつくりたい。意図して人に害を与えるようなものをつくる者は犯罪者でありますから、そんなものは社会的に存在を許されるわけがない。やはりきちっとしたよいものをつくって、それが国民経済に効用という面で資するものであるべきだ。そして、そのことが消費者のニーズにも合っていくわけでございます。
 そういうことで、そういう法律なんだということを周知徹底させる必要があるんじゃないかと思いますが、これについてはどんな対策をお立てになるか、お聞かせいただきたいと思います。
#241
○清川政府委員 製造物責任制度は、製品事故の当事者間の利害調整にかかわる基本的な規範の変更でございます。また、企業活動や関係者の意識に大きな変化をもたらすものでございます。したがいまして、導入された制度がよりよい制度として我が国社会に定着していくためには、関係者における制度内容の正確な理解と、制度に関する十分な準備、対応が重要でございます。
 したがいまして、例えば先ほどの部品・原材料者の抗弁の問題につきましても、これが親事業者の理解を十分得られるように、通産省といたしましては、親事業者への通達の発出等の措置をとることによってきちんと認識されるようにいたしたいと考えております。
 なお、一言追加させていただきますと、この部品・原材料者の抗弁につきまして、抗弁は認められますが、消費者にとっては、完成品の製造業者に対しましては損害賠償責任をこのPL法に従って求めることができるわけでございまして、消費者の保護に何ら変化があるものでもございませんということを一言申し上げたいと思います。
 そして、この法案につきまして、一般的に、この附則第一項においては、公布後一年間の周知徹底、対応準備期間を設けております。この間に、政府としては、中小企業を初めとして産業界に対しまして法案の内容を十分周知徹底をし、対応の準備をお願いするということを予定しております。
 具体的に申し上げますと、現在、業界団体に対して行っております説明会を充実する、あるいは制度内容の理解を深めるための解説書、リーフレットを作成、頒布するなどによりまして、企業が製品の安全性向上を図るための普及啓蒙、PR等を行うことを予定しております。
 特に中小企業に対しましては、制度内容に対する十分な理解を得るよう、平成六年度予算案におきまして必要な予算措置を盛り込んでいるところでございます。
#242
○西川委員 最後の質問に入りたいと思います。
 畑通商産業大臣と寺澤経済企画庁長官にお尋ねをいたしたいと思います。
 先ほど来いろいろなことを申し上げてまいりましたが、とはいえ、今回の立法を踏まえて、製品に起因する事故から消費者の皆さんを保護するための施策がこの法律にとっては極めて大切でございます。裁判の判例を重ねながら、いろいろとこの法律の成熟、完成を図っていくということも大事でありますけれども、でき得べくんばこれに関して裁判が起こらないようにしていくことがこれまた大事でございまして、そういう意味で、消費者保護を実施するための施策の基本的なお考えについてひとつ両大臣の御見解を承り、質問を終わらせていただきたいというふうに思います。
#243
○畑国務大臣 先ほど来、西川先生が特にこの法案の推進のための御努力を踏まえた、貴重な御意見の中での御指摘を賜りまして、私どもも、いろいろさらに力を入れていこうというような意味合いで、感銘を受けさせていただいているわけでございます。
 ただいま御指摘がございましたように、問題は、いずれにしましてもこういった法そのものを発動しなくて済むようなというような意味合いで、お互いが、みんなが意識を持っていただこうというようなことを前提にしながらも、いわゆる事故の未然の防止あるいはまた再発防止、そういうことに十分に力を入れていかなければならない。あるいはまた、残念ながら万が一にも事故が起きました場合には、その被害救済が確実にやられる、そういうような体制づくりがこれからの大きな課題であろうかというように考えるわけでございます。
 ただいま通産省といたしましては、かかる観点から、具体的なことを申し上げますと、めり張りのきいた安全規制の実施等、あるいはまた表示・取扱説明書の適正化、アフターケアの充実、裁判外紛争処理、事故原因究明体制の整備、製品安全にかかわる情報の提供等々、これを早急に具体化をしまして実施していくというようなことをただいま念頭に置かさせていただいておるわけでございます。
 なおまた、既に申し上げましたとおり、国そのものにおきましても、いわゆる消費者のお立場等々を踏まえながら、原因究明体制の拡充強化の具体的な措置を急ぐということに、先ほど来申し上げますように、取り組まさせていただいているわけでございます。国の検査機関あるいは民間のノウハウ、そしてまた私どもは、その間の、これからの情報ネットワーク等々も踏まえた中で消費生活センター等々との連携も深める、こういうことが大切ではないかなというように考えるわけでございまして、私は消費者も、そしてまたとりわけ中小企業の立場にも十分配慮しながら物事の展開を図っていく。さような意味合いでは、これからの行政展開とあわせまして、その中には当然、税制のこういった問題を踏まえた中小企業に対する配慮、これが消費者にもそのままプラスの要因として還元される、そういう姿かたちをつくり出していかなければならない、かように考えている次第でございまして、せっかくお寄せ願いました皆様方の御熱意を生かすように一層努力を尽くしてまいりたい、かように私は考えております。
#244
○寺澤国務大臣 委員御指摘のように、製品に起因する事故を未然に防ぐということが非常に大切であろうかと思います。事業者それから消費者、双方ともにこの自己責任の原則を踏まえながら、事故の防止及び被害の救済から成る総合的な施策を講じる必要があります。
 経済企画庁といたしましては、都道府県における製品関連被害についての原因究明機能の充実強化、あるいは国民生活センターの機能の充実強化、あるいは制度導入に当たり、関係者の十分な理解を得るための啓発活動及び製品安全についての消費者教育の推進を含む情報提供の実施などに重点的に取り組もうと思っております。
#245
○西川委員 どうもありがとうございました。
#246
○白川委員長 次に、吉井英勝君。
#247
○吉井委員 まず、この法律が出されてきた経過の中で、一九五〇年代からの経過等は午前中林委員の方からもお話がありましたし、私はその重複を避けますが、最近の例で見ても、日本弁護士連合会の調査によれば、これまで約五百五十人の弁護士の方が約一千四百件の欠陥商品事故の相談を受けてきて、その三二%が製造者の過失や被害との因果関係の立証が困難なことなどを主な理由として損害賠償の請求提訴を断念する、こういう事態が非常に多かったわけです。このような消費者が泣き寝入りさせられてきたという状態をなくすために、どうしてもPL法の制定が必要だ。これは、私は今日こういうところへ来た経過の非常に大事な点だと思うのです。
 私、先ほど政府答弁を聞いておりまして、随分元気な声でおっしゃったのだけれども、非常に気になることがありました。このPL法の制定が大事なときに、アメリカでのPL法に行き過ぎがあるとか、行き過ぎの方が問題であるかのようなお話ですね。それぞれの国によっていろいろな問題もあるでしょう。しかし、今日本でどうかというのは、この今のPL法をどれだけいいものにしていくか、どうしてこの消費者保護を図るかということが一番大事なときに、政府答弁が元気な声で、何かそれを議論するのがどこか行き過ぎがあるかのような議論というのは私は非常に残念なことだと思うのですよ。
 また、消費者と製造者との間の利害調整の法律ということじゃないでしょう。何といってもこれは、今弁護士の皆さんが取り組んでこられたような、こういう事案の中でどうして消費者保護を図るか、これがそもそもの出発点だと私は思うのです。
 そこで最初に、まず寺澤長官の方に、もともとこの法案を提案をされていらっしゃるそもそもの出発点がこれは消費者保護なんだ、こういう立場に立ってきちっとお考えだと思うのですが、この機会に改めて冒頭にこれを伺っておきたいと思うのです。
#248
○坂本(導)政府委員 御指摘のように、提案申し上げているこの法律案の第一の目的でございますが、「製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」とございますように、御指摘のような目的がねらいでございます。
#249
○吉井委員 寺澤長官のさきの所信表明でも、政策の重点を生活者・消費者重視の視点へ移し、国民一人一人の生活を豊かにしていくためにこの法案を提出したと述べておるわけですね。
 これは、法律のそもそもの目的というのは、消費者被害の救済、消費者保護、これが出発点なのだということは、私は一番の根本問題のところだと思うのですよ。あとの議論はまた後からやりますけれども、ここのところについて長官と私と認識のずれがあってはこれから先の議論がやりにくいですから、一言これは長官の方から伺っておきたいのです。
#250
○寺澤国務大臣 本法案の直接の目的は、製造物の欠陥により被害が生じた場合における被害者の保護を図ることであって、国民経済の健全な発展あるいは被害者の保護、こういうことを図ることによって達成するということでありまして、基本的には消費者保護というふうに私は理解しております。
#251
○吉井委員 具体的に入ると、消費者被害の救済だ、保護だと言っているのですが、ところが、今も読み上げられた法律の一条で、「もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的」、こう定めているわけですね。消費者被害が十分に救済されてこなかった事態を踏まえて、この法律では幾らかでも改善しよう、こういうところを踏まえて国民生活の向上ということをうたっているのは、これはまあそのことはおいておくにしても、そこへ続けて「国民経済の健全な発展」ということを言っているわけですね。これは一体何を意味しているのか、ここをはっきり聞かせていただきたいと思うのです。
#252
○坂本(導)政府委員 第一条の目的規定でございますが、この法律ができることによって、より安全性の高い商品が供給されること、あるいは国際的な経済の調和にも役立つということから、こういう目的規定になっております。
#253
○吉井委員 消費者被害の救済のための法律の目的に、なぜ「国民経済の健全な発展」という規定が入ってくるのか。
 実はこれは公害基本法の審議の際にも問題になったことですね。経済との調和条項の議論と同じように、消費者被害の救済も、結局大企業の利益を圧迫することのない、その範囲で考える、こういうことになってしまったら、力のある方と弱い方との関係で消費者保護ということを今考えているときに、それを入れてしまったら、きょうは公害基本法の議論はやりませんからおいておきますが、少なくとも今度の、この消費者被害救済のための法律の目的としてはなじまないと私は思うのですが、長官はどういうふうにお考えなのですか。
#254
○坂本(導)政府委員 先ほど別の委員の御質問にもお答えしましたが、一部の向きには、「国民生活の安定向上」及び「国民経済の健全な発展」という規定を入れることによって、産業界寄りになるのではないか、消費者保護にもとるのではないか、こういう御不安があるようでございますが、私どもの立法意図は、全くそういう意図を持っておりません。
#255
○吉井委員 製造物責任法という法律は、これは民法の不法行為法の特則として定められているものであって、いわば権利や義務について定められているものなのですよ。それなのに、いわゆる一般の経済法のような規定を持ち込んでくる、それを置くというのは、形式的にいってもおかしいということになるのじゃありませんか。
#256
○坂本(導)政府委員 民法の特例法であることは御指摘のとおりでありますが、この法律ができることによって、先ほども申し上げましたように、メーカーはより安全性の高い商品を供給してくれることが期待されるし、また、EC並みの水準の法案となっておりますので、国際的な経済の調和にも役立つということから、こういう目的規定を置いているところでございます。
#257
○吉井委員 これは、法律の目的、そして今言われた民法の不法行為法の特則として定めだということを認めながら、全く異質なものを持ち込むということ、それを目的に持ち込むということ自体が非常に形式的にいっても私はおかしいと思うのです。この法律がどのような限界を持っているかということは、実は財界人の発言などを見ても明らかです。
 例えば、参考人として意見陳述が予定されております経団連副会長で経済法規委員長でもある歌田勝弘氏は、欠陥概念の明確化、推定規定の排除、開発危険の抗弁、責任期間十年、この四点がある程度取り入れられた、まずまずの評価だ、いわばしてやったりと言わんばかりの財界の方の本音を四月十八日付の日刊工業新聞のインタビューで吐露しております。これでも、長官が所信で言われたように、政策の重点を生活者・消費者重視の視点へ移したと言えるのかどうか。
 私は、これはやはり長官しか答える権限を持った人はいないと思うのですが、「国民経済の健全な発展」という部分はやはりこの際削除される、それが妥当だと思うのですが、この点はどうですか。
#258
○寺澤国務大臣 「国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」ということは、産業界に配慮をしたものでもなく、被害者の保護と対立、矛盾するものでもなく、これによってこの法案の解釈及び運用が被害者に不利な形でなされるということになるものではない、こういうふうに理解しております。
#259
○吉井委員 一般の経済法の議論だったら、あなたのおっしゃる規定を盛り込んで、その議論は議論としてまたそういうときにやるわけですよ。この法律というのは民法の不法行為法の特則として定められるものであって、全く異質なものを、しかもあなた自身もおっしゃったように、消費者の被害救済のための法律ということで考えるわけですから、もともとなじまないものを入れることはないわけですから、これを削除したからといって何か支障があるかといったら、入れる側にはいろいろ問題はあっても、削除する方には支障はないと私は思うのですよ。何かこれを削除したら被害者救済の上でマイナスが出るのですか。ないでしょう。だから、この際、これを削除するということを、やはり長官として、そのことを決断し、示されることが今は大事だと思うのですが、どうですか。
#260
○坂本(導)政府委員 製造物の欠陥によって生命、身体または財産に損害をこうむり得る主体は、消費者に限定されません。例えば、欠陥車の事故に巻き込まれた乗客や歩行者などのように、製造物を直接使用、消費していない第三者でも、当該製造物の欠陥により損害をこうむることも考えられます。こうした場合のことも、当然、この法律は考えているところでございます。
#261
○吉井委員 今のお話というのは、「国民経済の健全な発展」という言葉を入れることとは全く関係のないことだと思います。
 それで、さらに私は中身に立ち入って聞いていきたいと思うのですが、いわゆる開発危険の抗弁について聞いておきたいのですが、この法律では、第四条に定める免責事由として、第一号で開発危険を規定しておりますが、ここで言う「知見」の水準ですね、どの程度の知見の水準を要求するということにしているのか、これをまず伺いたいと思うのです。
#262
○坂本(導)政府委員 ここにおける「科学又は技術に関する知見」という意味は、特定の者が有する知識水準ということではなくて、社会全体にある知識水準の総体を意味するということでございます。したがって、端的に言えば、入手し得る最高の科学または技術の水準というふうに考えております。
#263
○吉井委員 その水準という表現、今世界最高の水準というふうにたしかおっしゃったように思うのですが、世界最高の水準から、地球上のだれか一人でも危険性を指摘していたというぐらいの水準から、また極端な言い方をすれば、その製造業者だけが認識していた水準まで、これはいろいろなことを含み得る規定なのですね。これは非常に抽象的な規定になっているわけです。
 今御答弁にあったように、世界最高の科学・技術の水準を意味する、こういうことであれば、条文もそのように規定をしておかないと、これは意味がはっきりしてこないと思うのですよ。この点はどうですか。
#264
○坂本(導)政府委員 私がお答えいたしましたのは、入手し得る最高の科学または技術の水準でございます。
#265
○吉井委員 入手し得るといっても、それはあなた、努力すれば入手し得るわけでしょう、その商品が流通過程に出た時点で。第一、出すからにはそれだけの努力が求められるわけで、研究開発途上で、完全にその時点で世界最高の水準になっているかどうかとかということでなくても、商品として流通した時点で世界最高の水準、それを得ることはできるわけですから、それもあなたのお話を聞いていると後退してしまって、何かだんだん抽象的になってしまうのだけれども、私はきょう調査室の方から資料をいただきましたが、調査室の方では、「いわゆる「開発危険の抗弁」を規定したものである。なお、科学又は技術に関する知見の水準は、当該製造物を引き渡した時点で入手可能な最高水準」、確かに「入手可能」としておりますよ。しかし、入手可能というのは、これは日本の国内の水準じゃなくて、その時点における世界最高の科学・技術の水準を入手し得るわけだし、その点についてもう少し、あなたのお話というのはきちっと言い切っておく必要があると私は思うのですが、これはどうなのですか。
#266
○坂本(導)政府委員 具体的に申し上げれば、例えば当該製品を供給した製造業者がそういう知識を持っていなかった、あるいはその業界が持っていなかったということではなくて、入手し得る最高の科学または技術の水準。一方、例えば、特定の学者がそういう認識を持っていたということをもって、入手し得る最高の科学または技術の水準には当たらないと考えております。
#267
○吉井委員 この点は、要するに特定の学説ということではないにしても、しかし、少なくともその時点における最高の知識、最高の水準をもって、その水準に照らしてそれで規定をするという、そこのところを、知識の水準ということがあいまいな規定のままでは、これまたせっかくつくりながら、これは消費者保護という点から見たときに、この法律の段階であいまいさを残してはいかぬと私は思うのですよ。ですから、これはやはり世界最高の科学・技術の水準を意味する、その水準をこの条文の方においても規定するということにやはりきちっと答弁の中でもしておいていただいたた方が私はいいと思うのです。この点、長官、そういう点はあいまいさを残さないようにきちっと答えておいていただきたいと思うのです。
#268
○坂本(導)政府委員 法文上は、「当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によってはこと規定してございます。この「知見」というのは、特定の者の有するものではなく、客観的に社会に存在する知識の総体という考え方でございまして、これを一般的な表現で言えば、先ほど申し上げましたように、入手し得る最高の科学または技術の水準ということでございます。
#269
○吉井委員 入手し得るという、いささかひっかかる部分がないでもありませんが、その時点における世界最高の科学・技術の水準、それによって私は考えるべきものと思います。
 この開発危険の抗弁を認めるかどうかということは、審議会の検討でも議論になった大きなポイントでありますが、やはりこの点が産業界の要求を受け入れて規定されたものとなっているところでこの抗弁を認めるということは、被害者である消費者が、訴訟の中で製造業者からこの抗弁を主張されると、これに反論するためにはプロである製造業者を超えるような調査が必要になってくるし、膨大な費用と時間がかかる。裁判の長期化も予想されますし、断念することになるかもしれないほどの問題になるわけであります。
 提案理由で「被害者の円滑かつ適切な保護」と言うのであれば、私は、本来、抗弁というのは認めるべきではないと思うのですが、この点はどうですか。
#270
○坂本(導)政府委員 開発危険についてまで責任を負わせるということなりますと、研究開発あるいは技術開発が阻害されまして、ひいては、その結果、消費者の実質的な利益を損なうということになりかねないことから、開発危険の抗弁は必要であるというふうに考えております。
 ただ、その場合でも、その抗弁の立証責任は製造業者にあるわけでございますから、そういった面で消費者の救済が図られなくなるという不安は少ないと思います。
#271
○吉井委員 この抗弁を認めないと、何か技術革新が阻害されるとか産業の活性化にマイナスになる、そういう御趣旨のお話ですが、私はそれはこじつけと言わざるを得ぬと思うのですね。
 そこで聞きたいのですが、我が国の産業というのは、これまで安全性を犠牲にした製品開発を常としてきたと私は思わないというか、そういう立場で製品開発をやってきたというふうにはどの開発業者も言っていないと思うのですね。それどころか、産業界の方は、常々我が国の製品は万全の品質管理を行い、安全性が確保されているので、製造物責任法は要らないと主張してきた経過を見ても、実はこの点は矛盾があるわけです。
 新製品の開発というのは、安全性を重視した技術的なアセスメントを十分行えば防ぎ得るものでありますし、万一それでも欠陥が発見され、被害が発生すれば、製造業者はそのことで利益を既に上げてきているわけでありますから、適切な損害賠償をすることは企業としての社会的責任の問題になってくると思うのです。
 ですから、この点は、やはり開発危険の抗弁を認めたこの規定は削除するということが私は今は必要だと思うのです。長官、どうですか。
#272
○坂本(導)政府委員 先ほどもお答えいたしましたが、やはり開発危険の抗弁がないと、それは厳格な開発危険でございますが、研究開発及び技術開発を阻害するということになって、かえって消費者にマイナスをもたらす結果になる。そういうことから、EC諸国でもこの開発危険の抗弁を認めているところでございます。
#273
○寺澤国務大臣 現在のこの法案の文言で、私どもといたしましては、十分に消費者の利益を守る、そして法律の趣旨を通るものだと思います。
#274
○吉井委員 何か抗弁を認めなかったらかえって消費者にマイナスをもたらすかのようなお話ですが、私はそれはとんでもない話だと思うのですよ。私は、せっかく、最初に長官も言われたように、消費者被害の救済、消費者保護という立場から出発しながら、しかし、現実にはそこからかなり離れたものを持ち出してきている。私は、それではこの法の精神に合わないじゃないか。ここはやはりこの開発危険の抗弁を認めた規定は削除する、このことを考えるべきであるというふうに思います。
 時間がだんだん迫ってまいりましたので、これは次回にまた突っ込んで議論をしたいと思いますが、いわゆる推定規定を置かなかった問題です。
 推定規定には三つのポイントがありますが、それは欠陥の推定、それから欠陥と損害の因果関係の推定、損害発生時の欠陥は流通に置いた時点で存在したとする推定の三つであります。
 政府案の方は、EC指令で定めてある損害発生時の欠陥は流通に置いた時点で既に存在していたと推定する、今指摘した三番目の推定すら規定しておりません。提案理由でも、「大量生産・大量消費の現代社会においては、製品の安全性確保は製造業者に依存する度合いが高まってきておりこれは長官みずから述べられたことでありますが、製造物の欠陥に関する情報というのは製造業者の方に偏在しており、被害者である消費者が欠陥を立証するということは極めて困難な話です。これまでの多数の被害救済の事例で明らかです。本当にこれは困難です。
 そこで、長官が消費者重視の視点と言うのであれば、なぜ推定規定を設けなかったのか、ここのところもひとつ明らかにしてもらいたいと思うのです。
#275
○升田説明員 ただいま御指摘の欠陥、因果関係あるいは欠陥の存在時期に関する推定規定というのが我が国でいろいろ議論になったことは承知しております。
 ただし、今回提案されております製造物責任の問題につきましては、従来の過失責任の過失の部分を製造物の欠陥に置きかえるということで被害者の保護を図るということでございまして、立証責任の問題につきましては、従来の過失責任のもとにおきます損害賠償の例によるということが相当であると考えております。
 具体的な問題点につきましては、欠陥、因果関係、欠陥の存在時期、各事実の立証につきましては、本来、個々の製品の特性、事故の態様など多くの事情が関係してくることでございまして、個々の事案の相違という点を捨象しまして、法律上一律に、一定の事実からこれらの事実を推定するということは、被害者の立証負担の軽減という目的を超えてしまうおそれがあるということ。それから、個々の事案ごとの事情を問わず、一般的にそれらの事実の存在を推定するということを根拠づけるだけの経験則が存在しないということ。このような推定規定を設けることは、不法行為一般における損害賠償の体系を崩すおそれがある、混乱させかねないということ。
 それから、被害者側の立証負担につきましては、個々の事案の内容に即しまして、適切な事実認定、事実上の推定を活用することによりまして、適正かつ公平な立証負担の軽減が実務上実際はなされておりますし、また、今後もなされることが期待されるということ。
 さらに、EC理事会指令におきましてもそういう規定を設けていないといった事情から、御指摘のような推定規定を採用することは相当ではないということで考えております。
#276
○吉井委員 一方ではそうおっしゃいながら、先ほど来のきょうの議論を聞いておりまして、事実上の推定が判例等で近ごろ出ているということも含めて、運用上やっていけるというふうな、そういう精神を踏まえてといいますか、何かそれでこれを盛り込んでいない、設けていないようにお聞きしておりますとうかがえるのですが、そういうこともあるのですか、規定を盛り込んでいないのは。
#277
○升田説明員 推定、それぞれの事実、いろいろな事件で問題になるわけでございますけれども、現在、御指摘のような欠陥あるいはその因果関係というのは、訴訟におきましては非常に大きな争点になるわけでございます。
 しかしながら、実際の実務におきましては、製品ごとあるいは事故の態様ごとにやはりいろいろな事情が関係してくるという実情にございまして、やはりそれらの個々の事案ごとに解決するのが最も適切な事案の解決を図ることができる。そういった状況のもとで一律に推定規定を設けるということは、逆の効果を生じさせ、いささか立証負担の軽減という目的を超えてしまうことが懸念されるという状況が一番大きな考慮点ではないかということを考えております。
 それからさらに、今御指摘のように、この法律が仮に成立いたしますと、従来、問題にありました立証はなかなか難しいという過失から、客観的な性状であります製造物の欠陥という、より立証の容易な事実という要件に変更になるわけでございますので、その点でもやはり大きく立証負担の軽減を図ることができるというぐあいに考えられるというのを、また理由としてつけ加えていいのではなかろうかと思います。
 また、そのほかにも理由はいろいろあるというぐあいに考えております。
#278
○吉井委員 きょうも、大阪地裁の判決の例も挙げて、事実上の推定の問題について議論もありましたけれども、あの場合には出火時の目撃者がいたという特殊な事例であったように、事実上の推定があるかどうかというのは、まさに先ほど来の御答弁にもあったように、個々の事案、個々の事件によってこれは随分異なるわけですね。
 ですから、すべての裁判官が、大阪地裁の判例のように、必ず推定するというものでももちろんないわけですし、我が国の裁判所の求める立証責任というのは、高度の蓋然性が求められ、裁判官が確信するほどの立証が求められている現状を考えるならば、事実上の推定が働くということでは非常に困難と見るべきでありますし、やはりこの推定規定の導入というのは、これがあって初めて被害者の側と、つまり立証能力その他のいろいろな面で弱い立場にある被害者の側と、それから大企業製品などが問題になってくるわけですが、力のある側、情報もたくさん持っている側、その間での立証負担の公平ということが確保されるということになるかどうかということがこの点での一つのポイントだと私は思うのです。
 この点で、私は次の機会にまたさらに議論を深めたいと思うのですが、少なくともこの推定規定の導入、これがあって初めて今言いました被害者と製造業者との間の立証負担の公平が確保されることになるというふうに見るべきではないかと思うのですが、時間が参りましたので、この点だけきょうは答弁をお聞きしておいて、次回に続けさせていただきたいと思います。
#279
○坂本(導)政府委員 EC諸国においても我が国と同様の事情にあると思いますが、そういった中でもやはり推定規定を置いていないということでございまして、そのことによってECにおいて被害者が保護されないということにはなっていない。我が国も全く同じ考え方でございます。
#280
○吉井委員 終わります。
#281
○白川委員長 暫時休憩いたします。
    午後六時十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後六時十四分開議
#282
○白川委員長 再開いたします。
 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。
 ただいま審査中の本案に対し、消費者問題等に関する特別委員会から連合審査会開会の申し入れがありましたので、これを受諾するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#283
○白川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。
 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、両委員長協議の上、公報をもってお知らせいたしますので、御了承願います。
 次回は、来る六日月曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時十五分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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