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1994/06/07 第129回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第129回国会 法務委員会 第3号
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1994/06/07 第129回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第129回国会 法務委員会 第3号

#1
第129回国会 法務委員会 第3号
平成六年六月七日(火曜日)
    午前十時一分開議
出席委員
  委員長 高橋 辰夫君
   理事 小澤  潔君 理事 斉藤斗志二君
   理事 島村 宜伸君 理事 山本 有二君
   理事 中村 時広君 理事 山田 正彦君
   理事 小森 龍邦君 理事 冬柴 鐵三君
      奥野 誠亮君    梶山 静六君
      亀井 静香君    塩川正十郎君
      谷垣 禎一君    津島 雄二君
      浜野  剛君    大石 正光君
     柴野たいぞう君    土田 龍司君
      西村 眞悟君    山岡 賢次君
      佐々木秀典君    坂上 富男君
      山花 貞夫君    大口 善徳君
      富田 茂之君    枝野 幸男君
      簗瀬  進君    正森 成二君
      徳田 虎雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 中井  洽君
 出席政府委員
        法務政務次官  牧野 聖修君
        法務大臣官房長 原田 明夫君
        法務大臣官房審
        議官      森脇  勝君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 永井 紀昭君
        法務省民事局長 濱崎 恭生君
        法務省刑事局長 則定  衛君
        法務省訟務局長 増井 和男君
        法務省人権擁護
        局長      筧  康生君
 委員外の出席者
        警察庁刑事局保
        安部生活保安課
        長       瀬川 勝久君
        警察庁警備局公
        安第三課長   谷口  宏君
        国土庁土地局土
        地利用調整課長 二木 三郎君
        大蔵大臣官房審
        議官      西方 俊平君
        文部省初等中等
        教育局中学校課
        長       河上 恭雄君
        文部省高等教育
        局大学課長   工藤 智規君
        厚生省健康政策
        局看護課長   久常 節子君
        最高裁判所事務
        総局人事局長  堀籠 幸男君
        最高裁判所事務
        総局刑事局長  高橋 省吾君
        法務委員会調査
        室長      平本 喜祿君
    ─────────────
委員の異動
六月六日
 辞任         補欠選任
  枝野 幸男君     玄葉光一郎君
同日
 辞任         補欠選任
  玄葉光一郎君     枝野 幸男君
同月七日
 辞任         補欠選任
  浜野  剛君     谷垣 禎一君
  笹川  堯君     大石 正光君
同日
 辞任         補欠選任
  谷垣 禎一君     浜野  剛君
  大石 正光君     笹川  堯君
    ─────────────
六月七日
 夫婦同氏別氏の選択制の導入と続柄欄の廃止に
 関する請願(岡崎トミ子君紹介)(第二二六二
 号)
 同(五島正規君紹介)(第二二六三号)
 同(辻一彦君紹介)(第二二六四号)
 同(中西績介君紹介)(第二二六五号)
 同(五島正規君紹介)(第二三二〇号)
 同(辻一彦君紹介)(第二三二一号)
 同(岩田順介君紹介)(第二三五八号)
 同(関山信之君紹介)(第二三五九号)
 同(岩田順介君紹介)(第二三八七号)
 同(鉢呂吉雄君紹介)(第二三八八号)
 アジアの女性の人権を守るための施策に関する
 請願(岡崎トミ子君紹介)(第二三五七号)
は本委員会に付託された。
    ─────────────
本日の会議に付した案件
 裁判官の介護休暇に関する法律案(内閣提出第
 六五号)
 商法及び有限会社法の一部を改正する法律案
 (内閣提出第四六号)
 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特
 別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 六四号)
     ────◇─────
#2
○高橋委員長 これより会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 本日、最高裁判所堀籠人事局長、高橋刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
     ────◇─────
#4
○高橋委員長 内閣提出、裁判官の介護休暇に関する法律案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。斉藤斗志二君。
#5
○斉藤(斗)委員 ただいま委員長よりもお話ございましたように、裁判官の介護休暇に関する法律案について質問をさせていただきます自由民主党の斉藤斗志二でございます。この法律案の提案理由について、まずもってお聞きいたしたいと思います。
 一般職の国家公務員に関する介護休暇の新設を含む、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律案が今国会に提出されることになったわけでございまして、その関連でこの法律案が提出されました。そういう趣旨でございますが、その経緯について、まず簡単に説明を求めたいと思います。
#6
○永井(紀)政府委員 最近の社会状況といたしまして、高齢化あるいは核家族化の進展などが指摘されておりますが、このような状況のもとで個人生活と職業生活の調和を図る仕組みを整備することが必要となってきておりまして、これに対応する施策といたしまして、民間においては既にここ数年介護休暇制度が普及してきていると聞いております。ちなみに、この点に関する人事院の調査によりますと、調査対象となりました民間事業所の従業員の約四四・三%がこの制度を利用できるようになっているということでございます。
 このような状況を踏まえまして、人事院は昨年、一般職の国家公務員につきまして民間と同様の趣旨で介護休暇制度を新設する必要があるとの勧告及び意見の申し出を行いまして、これを受けて、ただいま委員御指摘のとおり、今国会で総務庁所管の法案でございます一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法案が提出されております。これによりまして、一般職の国家公務員を対象とする介護休暇制度の法制化が図られる見込みとなっております。
 ところで、このような介護休暇制度を整備すべき必要性は裁判官についても同様でありますので、一般職の国家公務員の例に準じまして裁判官の介護休暇制度に関する法整備を行う必要があるとされまして、本法案を提出するに至った次第でございます。
#7
○斉藤(斗)委員 一般職の国家公務員の介護休暇について、細かい点は人事院規則に委任されているということではありますが、基本的な要件は法律の中に規定されているわけでございます。ところが、この法律案を見ますと、第二条に裁判官は介護休暇中は報酬を受けないものとするといった規定があるわけでございまして、特に介護休暇要件等につきましては最高裁判所規則で定める、そういう説明の仕方になっているわけでございまして、そのほか何も規定されていないという解釈ができるわけでございます。
 法案に詳細がないというのは、いささか腑に落ちないわけでございまして、法律案に具体的な要件を書かなかったというのはどういう理由であるか、御説明いただきたいと思います。
#8
○永井(紀)政府委員 御指摘のとおり、総務庁所管の一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律案では、介護休暇の取得要件や取得期間の範囲などにつきまして具体的に定められております。しかしながら、裁判官の休暇制度そのものは裁判官の服務に関する事項でありますところ、憲法第七十七条第一項によりますと、裁判所の内部規律に関する事項については、最高裁判所が規則で定める権限を有するものとされております。このような事項は裁判所の自律権にかかわるものでございまして、裁判所や裁判官の職務の特殊性に精通している最高裁判所において定めるのが適当であろうという考え方に基づくものと解されております。そうしますと、裁判所の内部規律の一つであります裁判官の休暇についても、基本的には、裁判官の職務の特殊性というものを十分考慮した上で最高裁判所において規則によりこれを定めるというのが、最高裁判所に規則制定権を認めた憲法第七十七条第一項の趣旨に沿うのではないかと考えられるわけでございます。
 そこで、この裁判官の介護休暇制度につきましては、確かに本法案の第一条によりますと、制度の基本的な枠組みを一般職の国家公務員に同時に予定されております介護休暇制度の例に準じるということになっておりまして、介護休暇制度のいわば定義づけをしたというものが第一条にあります。
 それから第二条におきまして、裁判官の介護休暇が一般職と同様、報酬を受けない、無報酬の休暇であるということから、憲法上の問題がございますので、その例外として許容されるものであるということを国会の御審議を経て明らかにしておくという趣旨で、二条で裁判官が介護休暇中報酬を受けないということを法文に明記するということにこの法案の趣旨がございます。
 そのような介護休暇の具体的な要件とか手続等につきましては、ただいま述べました理由によりまして、最高裁判所規則で定めるのが適当であろうということでこういう規定ぶりになっているということでございます。
#9
○斉藤(斗)委員 その二条の報酬を受けないという項目と、もう一つ実は憲法には裁判官の報酬を減額することを禁止した規定がある、こういうことの中での御判断かなと思うわけでございますけれども、この介護休暇中は報酬を受けないことと憲法上の条文ということの中で、これは憲法違反になるのではないかという懸念が生ずるわけでございますが、この介護休暇制度が憲法上問題がないとする理由は具体的にどんなことに依拠するのか、御説明いただきたいと思います。
#10
○永井(紀)政府委員 ただいま委員御指摘のとおり、憲法第七十九条第六項と憲法第八十条第二項によりますと、裁判官は定期に相当額の報酬を受けるものとされておりまして、「この報酬は、在任中、これを減額することができない。」こういう規定になっております。また、裁判所法第四十八条におきましても、裁判官はその意思に反して報酬の減額をされることはないというふうにされているわけでございます。
 これらの規定の趣旨と申しますのは、個々の裁判官に安定した一定額の報酬を保障することによりまして、裁判官が経済的事情に左右されることなくその職務に専念できるようにしようとするものでございまして、裁判官の身分保障を具体化し、ひいては司法の独立を保障しようとするものである、こういうふうに解されているわけでございます。
 このような憲法の趣旨から今回の裁判官の介護休暇制度について見ますと、この介護休暇制度は、裁判官がその家族を介護するために職務に従事しないことを認める休暇制度でありますが、介護休暇制度そのものは、民間労働者に普及しているのみならず、今回一般職の国家公務員にも同様の法整備が予定されているなど、勤労者に退職せずに相当期間にわたって家族の介護に専念できるという、いわば恩恵的な地位を与える無給の休暇制度として社会的にも確立されたものと考えられます。このような制度を利用する裁判官がいわばその自由意思に基づきまして職務から離脱して無報酬の状態になるものでございまして、これが例えば外部の判断で、あるいは圧力によって左右されるというものではございません。したがいまして、このような介護休暇制度を裁判官に導入いたしましても、裁判官が職務に専念することを脅かすおそれはございませんし、その独立性を侵害するおそれもないということが言えようかと思います。
 こういうことで憲法に違反するものではないと考えられるわけでございますが、ちなみに、実はこの点は、平成三年の裁判官の育児休業に関する法律の制定の際も議論がございまして、育児休業の期間中裁判官は報酬等を受けないとするということになっておりまして、この点は国会等でも御論議をいただいたところでございまして、この点につきましても、国会の方では憲法に違反するものではないと解されているところでございます。
#11
○斉藤(斗)委員 裁判官の場合は自律性とか特殊性とかそのような特別な配慮をしなきゃならないという背景はわかるわけでありますけれども、一般職の国家公務員との比較におきまして、一般職の国家公務員はこれまで年次休暇、病気休暇及び特別休暇の種類があるわけでございますが、裁判官の場合、この介護休暇以外の休暇につきまして、最高裁判所規則で定められているという御説明になるわけですが、今回の法律案提出を機会に裁判官の休暇全体を法律で定めるということも考えられたのではないかというふうに思うわけでございます。
 そこで、今回介護休暇だけを特別に取り出して法律案とした理由というのをお聞かせいただきたいと思います。
#12
○永井(紀)政府委員 先ほども申し上げましたとおり、もともと裁判官の休暇制度そのものは裁判官の服務に関する事項でございますので、憲法第七十七条第一項に言う裁判所の内部規律に関する事項といたしまして、最高裁判所において裁判官の職務の特殊性等を十分考慮した上、裁判所規則により定めるのが相当であると考えられますし、また、それが最高裁判所に規則制定権を認めた憲法の趣旨にもかなうものであると考えております。
 裁判官の介護休暇制度につきましては、介護休暇中報酬を受けないということとするものである関係上、裁判官の在任中の報酬減額禁止という先ほど申し上げました憲法上の原則との関係で、このような制度が憲法上疑義はないということを国会の御審議を経まして法律に明らかにしておくのが相当である、こういった理由によりまして、この本法案といいますか、法律において定めるとしたことでございますが、それ以外の年次休暇等の休暇につきましては、こういった特別な事情はございません。特に無給という憲法上の問題はございません。特に法律により定める理由もございませんので、これは従来どおりこれを最高裁判所規則の定めにゆだねるのが相当であり、育児休業とあわせまして裁判官の介護休暇についても無給という点で特に国会の御審議を経ておきたい、こういう趣旨でございます。
#13
○斉藤(斗)委員 そこで次に、一般公務員との勤務時間の比較でございますが、週四十時間ということが原則になって明記されているわけでございます。しかしながら、裁判官の勤務時間というのは、お聞きするところによるとかなりフレキシブルで、勤務時間についてはそういう定めはないにしても、対応が随分違うんだということのようでありますが、裁判官の勤務時間というものは一般公務員とどのように差異が生じているのか、この点についてお伺いしたいと思います。
#14
○堀籠最高裁判所長官代理者 裁判官の勤務時間につきましては、委員御指摘のとおり定めはないわけでございます。裁判官は原則的には裁判所の一般職員の勤務時間とされている時間帯におきましては勤務する必要があることは言うまでもないところでございますが、裁判官は夜間等一般職員の勤務時間外においても職務上必要な限度では勤務する必要があるわけでございます。もちろん、裁判官もその職務の誠実な遂行に支障のない限度において合理的な範囲内で休養をとることが認められていることは言うまでもないところでございます。
 このように裁判官の勤務時間について定めがございませんのは、裁判事務等の運営のあり方やそれに関する権限の行使につきましては、基本的には裁判官個々人の判断にゆだねられていること、それから裁判事務の中には、令状事務でありますとかあるいは保全処分等につきまして一般の職員の勤務時間外でありましても速やかに対応しなければならない職務があるという、こういう裁判官の勤務の特殊性に起因するものでございます。
#15
○斉藤(斗)委員 その特殊性ということの中で、勤務時間もフレキシブルだ。私、フレックスという言葉を使うのですが、かなり自由に使われるということでありますが、これは一般社会と多少違ったところがあるのかなという感がいたします。
 そこで、時間はわかりましたけれども、場所につきまして、その勤務をする場所、これは単に裁判所または事務所等々に限られるのか、それとも在宅でもいいし、まあ夜中もお仕事をされることもあるでしょうから、例えばホテルもあるだろうし、公園ということはあるのかな、その辺は考えながらということだとそういうこともあるのかなとも思いますが、その場所について、勤務の体制を説明いただきたいと思います。
#16
○堀籠最高裁判所長官代理者 裁判官の勤務場所につきましても、原則として一般の職員が勤務しております裁判所で行うのが原則でございます。ただ、裁判官の職務は法廷での審理でありますとかいうことに限られませんで、記録を精査、検討し判決の起案をするというような職務もございまして、このような職務の遂行につきましては必ずしも裁判所に行ってやらなければならないというようなわけではありません。人によっては複雑困難な事件を集中的かつ能率的に処理するためには自宅で執務をする方がよいという方もおりまして、こういう方につきましては自宅で職務を行うというようなこともございますし、また、夜間の令状につきましては、裁判官の自宅に持ってきていただいて、そこで記録を検討し判断するというようなものもございまして、裁判官の勤務する場所というのは必ずしも裁判所の庁舎内に限られたものではないということでございます。
#17
○斉藤(斗)委員 今説明ありましたように、裁判官のお仕事というのは、ある意味では在宅勤務が非常にしやすい、そのような環境にもあるんだというふうに思うのです。私は、これから高齢化社会を迎えるにつきまして、情報化社会での社会資本がより充実していく中で、在宅勤務とか在宅福祉とか在宅介護とか、そのような分野が勤務と相まって発展していかなきゃならないというふうに思っているわけであります。この点についてはまた後ほど触れます。
 そこで、在宅勤務をされながらこの介護休暇をとられてやられるということは可能でございますね。
#18
○堀籠最高裁判所長官代理者 裁判官につきましても、介護休暇をとりまして在宅で勤務するというようなことは、委員御指摘のように可能であると私どもは考えております。
#19
○斉藤(斗)委員 裁判官というのは大変なお仕事をされておられるし、社会的地位も高い。裁判を公平にまた厳正に行っていただく意味でも、より質の高い仕事をしていただかなければならないんだというふうに私は思っております。
 そこで、介護休暇はとりました、無給ですと。二条でそういうふうに書いてありますよね、無給ですと。しかしながら、実質御自宅で介護をされる場合、御自宅で仕事も兼ねてできるのではないかということを思うときに、この二条はなじまないのではないか。介護休暇をおとりになったって、報酬取ったっていいではないかということも当然考えられなければならないというふうに思うわけでありますが、いかがですか。
#20
○永井(紀)政府委員 確かに委員がおっしゃったような形も可能かと思います。ただ、裁判官におきましても職務専念義務がございまして、実は在宅勤務と介護とが、言い方は悪いのですが、何となくごまかしながらやっているというのは、やはりこれは問題があろうかと思います。
 ある面では、在宅勤務することによってちょっとした介護は可能かもしれませんが、介護に専念するということが多くなってきますと、そのときはやはりそういう介護休暇制度のもとにおける休暇をきちっととっていただいてやるというのが、これが裁判官としても、その職務専念義務との関係でけじめをつけるということは必要かと思っております。ただ、確かにある面ではやりやすい部分があろうかと思っております。
#21
○斉藤(斗)委員 職務への専念、また介護への専念だから、きちっとそこは一線を画した方がいいだろう、こういう御答弁をいただいたわけでありますが、実は私は、もっと積極的にこれからの社会を考えた方がいいと思います。
 そういう立場で御質問をさせていただいているわけでありますが、裁判官の特殊性の中に、勤務状態の中でこういうこともあるわけですね。一般職員の場合は、一日または一時間単位で休暇が取得できるというふうに聞いておりますが、裁判官もこの一時間単位とか時間単位でもそのような措置がとられるのかどうか、お伺いしたいと思います。
#22
○堀籠最高裁判所長官代理者 裁判官は、御承知のとおり、配てんを受けました事件につきまして、終始その責任において、良心に従い独立してその事件の処理に当たるものでございます。そのため、裁判官は、裁判所の一般職員の勤務時間の内外を問わず、事件に関する調査でありますとか検討を行うこともありますし、また、先ほども申し上げましたように、裁判事務の中には、令状事務でありますとか保全処分事務などのように、緊急に処理する必要があるものも含まれておりまして、裁判官の場合、事件の適正、迅速な処理のためには、夜間等の一般職員の勤務時間外におきましても、これに速やかに対応することが要求されている場合が少なくないわけでございます。
 このような裁判官の職務及び裁判事務の特殊性からいたしますと、裁判官の職務を時間という単位で管理することはなじまないというふうに考えられるわけでございまして、裁判官の休暇につきましては、介護休暇を含めまして、時間単位での取得ということではなく日単位で取得するということになっておるところでございます。
#23
○斉藤(斗)委員 たびたび裁判官の特殊性といいますか、自律性、独自性ということの御説明が背景にあるわけでございますが、時間の関係もございますので、次に進みたいと思います。
 今回の介護休暇と同じように無給の休暇、休業として、平成四年度から裁判官にも育児休業制度というのが導入されているわけでありますが、これに基づきまして、これまでに育児休業を取得した裁判官というのは一体どのくらいおられるのかというのがまず一点。
 関連して、育児休業につきまして、性別を問わず取得が可能というふうに理解をいたしております。男女一緒だということでございますが、この取得者の中に男性の裁判官もおられるのかどうか、この二点をお伺いしたいと思います。
#24
○堀籠最高裁判所長官代理者 裁判官の育児休業に関する法律に基づきまして、これまで育児休業を取得した裁判官は十四名ございます。
 それで、このうち男性裁判官からの申請はあるかというお尋ねでございますが、現在のところすべて女性裁判官からの申請でございまして、男性裁判官からの申請はこれまでのところは一件もございません。
#25
○斉藤(斗)委員 そこで、育児休業の場合と介護休暇の場合とは多少意味合いが変わってくるのではないかということだと思います。過去の女性裁判官の出産者数からこれは当然予測できるわけですから、育児休業を取得する裁判官の数はある程度予測することが可能だったかと思いますが、今回裁判官に介護休暇制度が導入された場合、どの程度の裁判官が介護休暇を利用するものと、そういった予測を立てておられるのか。
 同時に、これは交代要員の配置、配備をしなければならないということでございますので、その交代要員の体制をどのように考えているか、お伺いしたいと思います。
#26
○堀籠最高裁判所長官代理者 具体的に裁判官の意向調査を現段階ではいたしておりませんので、現在のところ介護休暇を利用する裁判官の数を予測することは非常に難しいというのが実情でございます。従来裁判官は、家族の介護の必要性が生じた場合にも、その職務の重要性にかんがみまして、年次休暇もそれほど取得せずに職務を遂行していたと考えられるところでございます。そういたしますと、介護休暇の導入がされたということになったといたしましても、直ちに数多くの裁判官が介護休暇を取得するというようなことにはならないのではないかというふうに考えられるわけであります。
 しかし、この法案が施行されることになりますと、介護休暇を権利として取得することが認められることになりますれば、将来的にも取得者もだんだん増加することが見込まれるのではないかというふうに考えられるわけでありまして、裁判事務に支障を来すことのないように対処をしていかなければならないというふうに私どもは考えております。
 そこで、裁判所といたしましては、裁判官が介護休暇をとりましたような場合にはどうするかということでございますが、同一庁内の裁判官の応援体制を組むということは当然でございますが、それ以外にも、他庁からの応援、私どもはてん補というふうに言っているところでございますが、場合によってはその庁へ新たな裁判官の配置等を行い、裁判官が介護休暇をとったために裁判が停滞するというようなことがないよう種々対応していきたいと考えているところでございます。
#27
○斉藤(斗)委員 裁判の停滞ということはどうしても避けていただかなければならないかと思いますが、先般も裁判所職員定員法の改正をいたして増員を図ったわけでありますが、その交代要員の配置の関係でこの定員法に影響が出るというようなことはあるのですか、ないのですか。
#28
○堀籠最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、現在のところ、この介護休暇制度が導入されますと、どの程度の裁判官がとるかということが全く予測いたしかねる実情でございますので、それとの関連で裁判官の増員が必要かどうかということを考えなければならないわけでございまして、現実にどの程度の数の裁判官が介護休暇をとるというような具体的な事態が生じました場合には、それとの対応で私どもは裁判官の増員をお願いするかどうかということを、事件の増加等を勘案いたしまして検討していく必要がある、かように考えているところでございます。
#29
○斉藤(斗)委員 それでは次に、具体的な内容についてお伺いいたしたいというふうに思います。
 私、手元の一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律というので御質問をさせていただきたいというふうに思います。
 介護休暇は、「連続する三月の期間内」というのが一つございます。この期間内において必要と認められたものとするというのが一点。もう一点は、継続する一の状態というのが条件として出てきているわけでございます。この期間と、ここに記されました継続する一の状態ということについてお尋ねしたい。どのような解釈をもってこれを運用していくのか、御質問をいたしたいと思います。
#30
○堀籠最高裁判所長官代理者 これは一般職の勤務時間法案の内容でございますが、この「一の継続する状態」の意義につきましては、一定の事由に基づき介護を必要とする状態が認められた後、その事由に基づく介護を必要とする状態が終了し、その後に社会通念上これとは別個の新たな事由が生じ、これに基づく介護が必要であると認める場合には、これは改めて介護休暇を必要とすることができるという意味であると理解しておりまして、一つの事由が継続する限りは、職員は三カ月の範囲内で断続的あるいは継続的に介護休暇をとることができるというふうに私どもは承知しているところでございます。
#31
○斉藤(斗)委員 今の御質問はどっちかというと人事院の方だったかなというふうな感がいたしますが、人事院規則で定めて、そしてそこに準じていくという背景があるというので御質問をさせていただいたわけでございます。
 そこで、一つの状態という解釈があるわけでありますが、例えば介護を必要とする方がおられて、その方が痴呆にかかって介護が必要なんだということですね。次に、この方が外で歩行中に転んでけがをした、結果、骨折をして今度は寝たきりの状況になった。寝たきりでも介護が必要になる。そうしますと、これは当然三カ月以上超えていくわけですね。このときの一の状態というのは、最初は痴呆で解釈し、そして次は寝たきりで解釈する、こういうような解釈というのはできるのかできないのか、それと、三カ月という期間との問題についていかがお考えか、お伺いしたいと思います。
#32
○堀籠最高裁判所長官代理者 この「一の継続する状態」の解釈につきましては、基本的には人事院がどう解釈するかということになるわけでありますが、私どもが理解しているところを申し上げますと、介護を要する者が、ただいまAという病気にかかりまして介護休暇を認められました後に、Aという病気あるいは事情が消えまして、その後に新たにBというような病気にかかったようなことを想定いたしますと、あるいはAという病気と同時に、さらにAという病気が再発したというような場合には、前の一の継続する状態は終了し、新たな別個の一の継続する状態が生じたと考えることになるのではないかというふうに理解しております。すなわち、Aという病気にかかっていて介護中、あるいは介護が終わった後に、委員御指摘のように、別の事故でまた介護を要するというような場合には、事故が起こったときからまた三カ月というふうな計算になるのではないかというふうに私どもは理解しているところでございます。
#33
○斉藤(斗)委員 そうしますと、Aという介護を必要とする状況、次にBという介護を必要とする状況が出た、さらにC、Dといった場合、その都度この介護休暇に対しては適用の対象になるんだ、こういうことでよろしゅうございますね。
#34
○堀籠最高裁判所長官代理者 私どもの理解するところでは、Aという病気、Bという病気、Cという病気、これが社会通念上別個の病気であると観念されるような場合につきましては、別個の一の継続する状態ということになりますので、委員御指摘のように、別々に介護休暇をとることは可能ではないかというふうに理解しておりますが、やはりその分かれ目は、社会通念上同一の理由であるかどうかということになるのではないかというふうに思います。
#35
○斉藤(斗)委員 これからの高齢化社会に向けて、特に介護を要する方々というのは、それまでに大変社会のために頑張ってこられた方々でございまして、また、その必要とする介護が、お年寄りになればなるほど長くなるという、そういう背景もございます。どうぞこのような新しくて、そして改善された制度の導入を図ることによりまして、お年寄りにも優しい社会づくり、それを裁判官でも率先してやっていただきたいということをお願いを申し上げたいと思います。
 高齢化社会を迎えるという時代の趨勢の中で、その必要性につきましては、ただいまお話を伺いましたように、よく理解をできるわけでありますが、四月二十二日付の産経新聞によりますと、民間企業全体では介護休暇制度を導入しているのが六社に一社という割合、従業員五百人以上の大規模な事業所では五割を超している、こういった指摘があるわけでございます。私といたしましても、社会の流れとして、このような制度が導入されることにつきまして賛成でございますし、また、社会全体として大きな流れをつくるという意味で、これからも関係各位には一層の努力をお願いを申し上げたいというふうに思います。
 しかし、裁判所には、適正迅速な裁判を行うべき司法としての責務もあるわけでございまして、特に、往時に比べますと最近は裁判にかかる時間は総体として短くなったとも聞いてはおりますが、民事訴訟事件や、近年急増いたしております執行事件は依然として裁判終結までになお相当の時間がかかっているというふうに聞いております。それは、あらゆるところからの情報、陳情等々でも聞くわけでございます。そのような中で、介護休暇制度を導入して、結果、裁判がおくれるなどというような事態が生ずるんではないかという心配をする声もあるわけでありますが、介護休暇を導入したことによってそのような事態が生ずれば、これは本末転倒ということにならざるを得ない。最高裁としては、その点どのように考えて、国民へのサービスに相努めてくださるのか、その基本的な考えを最後にこの件についてはお伺いいたしたいというふうに思います。
#36
○堀籠最高裁判所長官代理者 介護休暇を導入することによって審理がおくれるというようなことがありますと、これは憲法三十二条に言う迅速な裁判を受ける権利が侵害されるという事態が発生することでありまして、これは委員御指摘のとおり、本末転倒であることは言うまでもないところでございます。
 最高裁判所といたしましては、介護休暇制度が導入、施行されました場合には機動的に対処し、裁判官の協力を得て、介護休暇の取得についての情報を早期に的確に把握いたすとともに、介護休暇がとられた場合には、同一庁内での裁判官の応援体制を早急に立てるばかりでなく、他庁からの応援、てん補、場合によっては当該庁への新たな裁判官の配置等の工夫をいたしまして、裁判官が介護休暇をとったために事件が停滞するというようなことが決してないように、私どもは適切に対処していきたいというふうに考えておるところでございます。
#37
○斉藤(斗)委員 最後に、もう一つだけつけ加えさせてください。
 それは、このような制度を導入し、そしてさらにそれを促進させるということに間違いないわけでございますけれども、民間との格差の問題で、民間との間で違和感が出るような、そのようなことはやはり避けられた方がいいのではないかなというふうに思っております。
 これは労働省からの資料でございますけれども、介護休暇を取得できる労働者と要介護者との関係、これは条件の中に入ってくるわけでありますが、このような指摘があるということで聞いておいていただきたいと思います。
 それは、介護休暇を取得できる労働者と要介護者との間に条件ありとする事業所は七五・二%ある。その条件、これは複数回答でございますけれども、他に介護者がいないことを条件としている事業所が五三・五%、そして同居や扶養を条件としている事業所が四八・二%、本人の介護が必要または適当であることを条件としている事業所が三二・〇%、このような民間は民間なりの対応の仕方をされておるということでございまして、余り違和感のないやり方でこれを進めていただきたいことをお願い申し上げておきます。
 以上でこの介護の関係については終えさせていただきます。ありがとうございます。
 今、大臣大変お忙しい中委員会へ駆けつけてくださったわけでございますが、残された時間、わずかでありますけれども、ゼネコン捜査の関係について少し関連してお伺いしたいというふうに思います。
 まずもって、昨日法務省が出されました「東京地検によるゼネコン汚職事件の捜査処理に関する報告」というのが先ほどの理事会に出されまして、この委員会に報告をされたということで、この報告書が提出をされたということで理解をさせていただきます。
 そこで、ゼネコン汚職事件の捜査処理に関するこの報告に対する法務大臣の所見をまずお伺いしたいと思います。
#38
○中井国務大臣 お答えをする前に、当法務委員会が、大変厳しい日程の中、しかも法案審査に関しまして、私が予算委員会等御無礼をさせていただいておるにもかかわりませず、鋭意御質疑を進めていただいておりますことに対しまして、委員長あるいは理事の皆さん、委員の皆さん方に心からお礼を申し上げる次第でございます。
 今斉藤議員御指摘の報告に関しましては、昨日予算委員会の求めに応じて予算委員会に提出をさせていただきました。国会の国政調査権の行使に対して最大限の御協力をするという観点から、法令の許す範囲において可能な限りの報告をしたと考えております。昨日の予算委員会の委員会質疑におきましても、よくここまで書いたというお褒めの言葉も一、二の議員から賜ったところであります。
 ゼネコン汚職事件は、関係者が極めて多数の複雑な事案でありましたが、そのため捜査は約三百日間の長期にわたりまして、この間検察当局は、厳正公平、不偏不党の立場を堅持して、さまざまな困難を克服し、事案の真相を解明し、適正な事件処理を行ったもの、このように考えているところでございます。
#39
○斉藤(斗)委員 この報告書をもってゼネコン捜査が終わったと見ていいのか、それとも東京地検以外で捜査をしているということがあるのかないのか、これについて御質問をさせていただきたいと思います。
#40
○中井国務大臣 捜査は終了した、このように報告を受けているところでございます。
#41
○斉藤(斗)委員 これは報道によりますけれども、昨日の予算委員会で、小沢議員に対する告訴がなされておるという件について、報道を見て知っているわけでありますが、これはこのゼネコンとは違うという解釈でございますか。
#42
○中井国務大臣 お尋ねの小沢議員に対する二件の告発に関しては、現在それぞれの地検におきまして捜査中であります。いわゆるゼネコン疑惑とは別件であります。
#43
○斉藤(斗)委員 時間もないので次へ進ませていただきますが、ゼネコン疑惑に関してマスコミの報道ということがかなり過熱したのではないか、オーバーヒートしたのではないかというふうに感じているわけであります。供述内容等検察当局の情報が遺漏報道されているのではないか、法務、検察がリークしているのではないかというような話も巷間伝えられるわけでありますが、その点について御所見をお伺いしたいと思います。
#44
○中井国務大臣 過日も法務委員会におきまして、また昨日も予算委員会におきまして同趣旨の厳しい御指摘、御批判があったところでございます。
 しかし、検察当局におきまして、あるいはまた調べに当たりました検察官それぞれにおきまして、いやしくもリークをする、そしてそのことによって情報操作をする、こんなことはあってはならないことでありますし、またやっていない、このように確信をいたしております。日本の報道機関は世界の中でも最大限のものがございます。多くの独自の調査をなさりながら各種報道をなさっていると考えておりまして、これが、報道の自由あるいは表現の自由、こういった立場から報道機関の責任においてなされている、このように考えております。
#45
○斉藤(斗)委員 これは昨日の予算委員会での質問が記事になっているわけでありますが、私が入手した読売新聞のきのうの夕刊との関連でさらに御質問申し上げたいと思います。
 ちょうだいいたしましたこの報告書の最後の方に、三井建設の元役員の項がございます。「同社から国会議員への献金のために現金を預かり保管中、」このようなくだりの中でありますけれども、この新聞報道によりますと「改新の山田正彦氏は、三井建設の元役員の横領に関連して、」このような中で、自民党の元幹事長ということを特定して言っておるわけであります。こういうような報道があるわけでありますが、これの法務省が出した報告書とこの質問に関しては、かなり乖離があるのではないかというような感がいたすわけでありますが、お考えをお伺いしたいというふうに思います。
#46
○則定政府委員 お尋ねの点につきまして、私どもは予算委員会でその具体的な氏名を一切申し上げずに御報告させていただいたわけでございます。しかしながら、今委員御指摘のように、一部の新聞では、あたかもその特定の国会議員にかかわる事件について捜査したということを法務当局が確認したのだというふうな報道ぶりがあるわけでございまして、私どもといたしまして、大変遺憾な報道ぶりだろうと思っております。
 また一方、こういうふうな報道もございまして、つまり今御指摘の部分でございますけれども、詳しい説明を求められたが、法務当局は、関係者の氏名は答えられない、捜査の過程に踏み込むことについては答弁を容赦願いたいということ、また中井法務大臣は、報道に対する意見や感想は控えたい、被疑者や容疑者とされた人の人権問題にも十分配慮してほしい、要望したというふうに報道もなされているわけでございまして、一つの発言につきましていろいろな受けとめ方があるんだなという気はいたしますけれども、やはり私どもといたしましては、最大限関係者の人権について配慮した対応をさせていただいたと考えておりますので、御理解賜れればと思っております。
#47
○斉藤(斗)委員 ただいまの則定刑事局長の御答弁を私はそのとおりだというふうに思いますので、特に人権問題については御配慮いただきたい。
 最後にそれをお願い申し上げまして、質問を終わります。
#48
○高橋委員長 佐々木秀典君。
#49
○佐々木(秀)委員 裁判官の介護休暇に関する法律案について質問をさせていただきます。
 社会党・護憲民主連合の佐々木でございます。
 もう随分古くなってしまいましたが、私が司法修習生として実務の修習をしたのはもう今から三十年も前になります。東京地方裁判所で民事四カ月、刑事四カ月、八カ月間お世話になりましたけれども、その間に第一線の裁判官の皆さんの仕事ぶりを直接に見聞し勉強させていただいたことを今感慨深く思い出しております。恐らく当時も今も変わらないのだろうと思いますけれども、聞いておりましたよりも、実際に日常をともにいたしまして、裁判官の職務がいかに厳しいものであるか、そしてその中での心身の疲労度というものも外部からは推しはかれないような非常に大きなものがあることを私どもはっぷさに見聞きをいたしました。当時もそうでしたけれども、その仕事の忙しさ、さっき御説明がありましたように、裁判官の職務というのは定型的な仕事だけではない。時間的にもそれから場所的にも常にその仕事から切り離されないという状況にあるようなことなども見知ったわけでございますけれども、これはなかなか一般の人にはわかりがたいところではないかと思っております。
 ただ、同時によく言われますことは、裁判官も人間であることには変わりがありません。人が人を裁くことの難しさ、これはよく言われますけれども、同時に、やはり裁判官の人間性というものもその人権とあわせて大事にされなければならないものだろうと私は思っております。幾ら法律知識に精通をしていても、やはり人間としての豊かな人間性というものを持っていなければいい裁判官とは言えないし、いい裁判実務というものも期待しがたいのではなかろうか。そういう意味ではやはり人間としての余裕あるいは豊かさというものも必要なのではなかろうかと私は思うわけですね。そういう意味では、裁判官にも有給休暇の制度というのはあるわけですし、それからまた、さきに育児休業法案が通って裁判官にも育児休暇が権利として認められるようになった。それから、今度の介護休暇に関する法律案で介護を要する家族などのために休暇をとれるようになるということは、いろいろな意味で精神的にも裁判官に与える好ましい影響というものは私は大きなものがあるのではなかろうかと思うわけであります。そういう点から今度の法律案にはもちろん賛成の立場でございますけれども、法律の制度の実を上げますために幾つかの御質問をさせていただきたいと思います。
 そこで、ことしの新任判事補 新しく裁判官になられた方々の数、それからその中での女性の数、これをまずお示しをいただきたいと思います。
#50
○堀籠最高裁判所長官代理者 委員から私ども裁判官の職務の重要性について温かい御理解の発言をいただいて、私どもも感謝しているところでございます。
 今年度の新任判事補採用数でございますが、百四名でございまして、うち女性の判事補は十八名でございます。
#51
○佐々木(秀)委員 これまでの新任判事補の人数に比べますと、ことし百人を超えたというのは、私は比較的多い人数だと思うのです。非常に好ましいことだと思います。それから、そのうち女性が十八人というと、これは全体の一割を超えているわけでありまして、お聞きするところによると、年々司法試験の合格者の数も女性はふえておりますし、それからまた、新任の裁判官、新任の検事ですね、検察官の数も非常にふえている。これもまた、女性の社会的な進出ということを考えますと私は好ましいことだろうと思っておりますけれども、やはりそれに伴ってさまざま、勤務体制の問題ですとか、仕事と家庭の問題ですとか、殊に女性の場合には育児の問題ですとか、それに伴って女性だけではなしにその配偶者にもいろいろな影響が出てくるのだろうと思うのです。
 また、中には裁判官同士の結婚あるいは検察官同士の結婚ということもあるでしょうから、これもまた勤務地の問題などを考えると難しいこともたくさんあるのだろうと思います。そういう中で、できるだけ裁判所においても検察庁においても、そういう夫婦で任官された方々については職務にも支障がないようにというようないろいろな御配慮もあるのだろうと思うのです。
 その中での、介護休暇に関する法律案ができているわけでございますけれども、その前提として、今は新任者の数を聞きましたけれども、逆に今度は退官者の数、この三年間ぐらいの間に裁判官をおやめになった方、これは定年でおやめになった方と中途退官の場合、中途といっても、裁判官の場合には任期が十年で、再任、再任ということになるのだろうと思います。仮に定年までという通念を考えて、その以前にということを中途退官と呼ばせていただくとすると、その定年に至らないでやめた方の数、それからできましたらその事情、特にこの法案で問題になっておりますような家族の介護を必要とするために裁判官の職務を続けられない、もう少し自由な立場にならなければならないというようなことでおやめになったような方があるのかどうか、その辺含めてお示しをいただければと思います。
#52
○堀籠最高裁判所長官代理者 裁判官の退官者の数でございますが、これは会計年度で申し上げます。平成三年度は、定年で退官された方が二十三名、それから依願退官、任期終了等で中途退官された方が七十九名、合計で百二名でございます。平成四年度は、定年退官された方が二十六名、依願退官、任期終了等で中途退官された方が五十八名、合計八十四名でございます。平成五年度は、定年退官された方が四十五名、中途で依願退官等された方が六十一名、合計百六名になっております。この合計の数は判事、判事補及び簡易裁判所判事を含めた数字でございます。
 なお、家族の介護等でやめた方がどのくらいあるかというお尋ねでございますが、私どもは具体的にやめる理由について一々把握しておりませんので、その点現在数字がないわけで、答弁できないことは恐縮でございますが、私どもが考えるところでは、それほど多くの数ではないのではないか、むしろ極めて少ない数になるのではないかというふうに考えておるところでございます。
#53
○佐々木(秀)委員 定年退官に比べますと、私の言った途中退官というか、これは依願退官になるわけでしょうけれども、かなりの数に上っているわけですね。双方合わせますと、平成四年度は八十四名ですけれども、平成三年度で百工、平成五年度で百六。一方、ことしの新任判事補が百四ということになりますと、やはり退官される方の数とそれから新任の数、ことしは多かったということが言えるけれども、恐らく昨年それから平成四年の場合にはむしろ新任判事補の数よりも退官者の方が上回るのではないだろうか。定員法の関係もありますけれども、果たしてこの充足率は大丈夫なのかということがいささか心配になったりすることがあります。
 加えて、ここでまた裁判官がさきの育児休暇ですとかあるいは今度の介護休暇によって長期の休暇をとるなんということになった場合に、裁判の執務体制に支障がないのだろうか。先ほど斉藤委員からのお話もあって、てん補あるいは代替措置などによって遺漏がないようにしておられるということですけれども、若干の懸念なしとしないわけですね。この辺の配慮をぜひお願いしたいと同時に、あわせてやはり裁判官全体の数がこれでいいのかということも、きょうだけではなしに次の機会もあると思いますけれども、少しくここの委員会でも議論する必要があるのではなかろうかというように思ったりしております。
 そこで、裁判官の育児休業請求権、これについては先ほど斉藤委員からも御質問がありましたので、割愛したいと思います。
 一方、裁判官の年次休暇、これはどんな形で取得をされているのか。取得の状況、形態とあわせて、もしも掌握されておられればその範囲で結構ですけれども、これもお示しをいただければと思います。特に、先ほど私が冒頭申し上げましたように、裁判官はとにかく忙しい。人数的にも必ずしも足りていると思われないようなところから、非常に仕事がきついということもあって、裁判官同士年次休暇をとることについても自粛をされているのではないかと思ったりするのですね。
 私の昔の短い実務修習の期間でしたけれども、裁判官のお話や様子なども見たり聞いたりしておりまして、何となく年休というのも遠慮されているのではないかというように思われるのです。しかしやはり心身のリフレッシュその他を考えると、裁判官としても年次有給休暇などは権利としてあるわけですから、これをひとつとって、そして心身のリフレッシュに充てていただくということが効果的であろうし、望ましいことであろうと思われるのですが、この辺の実情はどうなっているのでしょうか。おわかりの範囲で結構ですけれども、お話しいただければありがたいと思います。
#54
○堀籠最高裁判所長官代理者 裁判官の年次休暇を取得するための手続につきましては、必要事項を記載いたしました休暇申請書を所属の長に提出してその承認を受けるということになっております。このように、年次休暇につきましては一般の裁判所の職員と同様な手続でございます。ただ、裁判官の場合には、休みますと法廷がとまってしまうというような問題がありますので、実情を申し上げますと、夏の間あるいはゴールデンウイークの前後、それから年末年始などに集中的にとるというような裁判官が多いというのが実情でございます。
 それから、裁判官の休暇取得状況につきましては、はっきりしたデータを持っているわけではございませんが、やはり一般的に申し上げますと職務熱心な方が多いようでございまして、一般の裁判所の職員と比べますと、どうも年次休暇をとる割合というのは多くはない、むしろ少ないというような実情にあるように思います。
#55
○佐々木(秀)委員 この休暇請求をなし得る環境の整備という質問を十番目に予定しておりますので、今の年次休暇の問題もこれとあわせて最後にまたお尋ねをしたいと思います。
 現在現職の裁判官の中で、御本人の病気なども含めて三カ月を超える長期休暇中である裁判官の数というのは把握されておりましょうか。もしもわかっておられましたら、これもお示しいただきたいと思います。
#56
○堀籠最高裁判所長官代理者 現在三カ月を超える長期病休中の裁判官は一名でございまして、その理由は肝硬変症であるということでございます。
#57
○佐々木(秀)委員 今のところは大変少ないですけれども、実は裁判官それぞれに心身ともに相当苦労されている方もあると思いますので、健康管理などについては十分にひとつ最高裁の方でも配慮していただくように、それからまた過労にならないようにしていただかないと、特にかつてはそういう事件もなかったわけではないのですね。やはり心身の疲労のために、それが裁判官の職務に影響して問題になったというようなケースもないわけではなかったように私ども思っておりますので、一つは、最後の御質問と絡みますけれども、やはりぐあいの悪いときにはぐあいが悪いとはっきり言って、そして早く心身の治癒に専念するということがむしろ望ましいことであるわけですから、そういうことにためらうというようなことがあってはならないと思いますし、仮にそういうような長期休暇だとかあるいは休暇を再々とるということが勤務の評定といいますか、昇進だとかその他の関係で影響があると思わせるようなことがあってはならないと思うのですね。それが環境の整備の問題にもつながるわけですけれども、そういう点はぜひ御配慮をいただきたいと思うわけであります。
 そこで、具体的にこの法案の中身についてお尋ねをいたしますけれども、実は一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律案が去る六月三日衆議院の本会議で満場一致で通過をいたしました。ほどなく成立の運びになる。本法は、それに伴う法律の制定、こういうことになるわけでございまして、法案によりましても、「裁判官の介護休暇については、」本法に定めのないものについては「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律の適用を受ける職員の例に準じ、最高裁判所規則で定める。」こうなっておりますね。最高裁判所の規則に具体的な部分がゆだねられていることになるわけですけれども、そういたしますと、最高裁判所の規則で定められる介護休暇についての具体的な内容ですね、特にこれは一般職の場合との相違点は具体的にどういう点が違うのか。これを御指摘いただきたいと思います。
#58
○堀籠最高裁判所長官代理者 現段階では、人事院規則が必ずしも固まっていないようでございますので、確定的なことを申し上げることは困難でございますが、最高裁判所の規則で定める事項については、私ども次のように考えております。
 まず、裁判官及び裁判官の秘書官以外の裁判所職員、いわゆる裁判所職員の例によるという一般的な規定を置きますほか、一般の職員と違うこととして定めることとして現在考えておりますのは、次のようなことでございます。
 まず第一は、裁判官の介護休暇の単位は一日とすること、二番目といたしましては、裁判官の介護休暇については、所属の各裁判所またはその委任を受けた者の承認を受けなければならないとすること、三番目は、各裁判所は、もちろんその委任を受けた者を含むわけでございますが、介護休暇の承認を受けた裁判官から介護休暇の承認の取り消しの申し出があった場合には、介護休暇の承認を取り消すものとすること、四番目といたしましては、裁判官が介護休暇により職務に従事しない日があります場合には、その月の報酬の額は、裁判官報酬法第七条の規定によりまして日割り計算をする、こういうようなことを現在考えているところでございます。
#59
○佐々木(秀)委員 一般職の場合には、給与の関係については、休暇についてもそうですけれども、時間単位で考えられる。裁判官の場合には、裁判官の職務の特殊性からいって、休暇の時間と申しますか、これはやはり日割り単位になって時間ということにはならない。それから報酬についてもそうだということをさっき御説明がありました。そういうことでございますね。それと介護の対象ですけれども、これは一般職の方では配偶者、父母等となっておるようですが、昨年十二月十七日の人事院の意見によりますと、介護休暇は、職員が負傷、疾病または老齢により「常態として日常生活を営むのに支障がある配偶者、父母、子、配偶者の父母等を介護する必要」がありということで、要保護者の範囲ですね、今申し上げたように記載をしておる。この要介護者の範囲についても、最高裁の規則の中ではこれは明記されるのか。明記される場合には、今私が読み上げたのと同じような記載になるのかどうか。この辺はいかがでしょうか。
#60
○堀籠最高裁判所長官代理者 一般職の国家公務員の介護休暇につきましては、ただいま委員御指摘のように、配偶者、父母、子、配偶者の父母、その他人事院規則で定める者というふうになるものと承知しておりまして、裁判官の介護休暇の場合にも、介護を要する親族の範囲については、一般職の公務員の場合と同内容になる規定を設ける予定でございます。
#61
○佐々木(秀)委員 そういたしますと、さっきの読み上げの中で一番最後に出てくるのは「配偶者の父母」ですけれども、その後に「等」という文字があるのですね。この辺で少し柔軟に考える余地があるのかどうか。
 具体的に例としてお考えいただきたいのは、例えば、本人ないしは配偶者のおじさんだとかおばさんだとかそういうような人々で、直接の親族、このおじさん、おばさんに介護してくれるような子供がいないというような場合に、おじ、おばなども、場合によっては要介護者として、この介護休暇請求のときにその人を介護するために必要だということになるのかどうか。
 実は私なども、私の父の姉、これは私どものおばになるわけですけれども、このおばが早くに配偶者を亡くして、子供がいなかったものだから、独身だったのですが、これを私のところで引き取って女房が面倒を見たのですけれども、亡くなるまで五年ばかり面倒を見たということがあるのですが、仮にこれが裁判官に置きかえられた場合に、こういうような事例で介護休暇の請求をした場合に認められるのかどうか。この辺どうでしょうかね。
#62
○堀籠最高裁判所長官代理者 介護を要する親族の範囲につきましては、委員が御指摘されましたようなほかに、「等」ということになっておりますが、一般職の場合には、具体的には人事院規則でその範囲を決めるという建前になっていると私どもは承知しておりまして、その人事院規則におきましては、同居の祖父母であるとか兄弟姉妹も含まれる予定になっていると聞いております。
 私どもは、裁判官の介護休暇につきましては、やはり一般の国家公務員の場合と同様に扱うのが相当であると考えておりますので、人事院の規定の内容を把握しまして、それと同じような規定を置こうというふうに考えているところでございます。
#63
○佐々木(秀)委員 わかりました。
 時間が迫ってまいりましたので、あと二つ伺いたいと思います。
 この介護休暇をとった場合に、これは報酬は受けないということとも関連するわけですけれども、裁判官の在職期間との関係はどうなるのかということ。例えばその任期ですね。再任との関係で、その休暇をとったら再任期間というのがどういうことになるのか。延びるのか。それからまた、定年との絡みなども、これは一体どういうことになるのか。それとの関係で退職金なんかがどうなるのかとか、こういう在職期間との関係はどういうことになるのでしょうか。
#64
○堀籠最高裁判所長官代理者 介護休暇につきましては、休暇という性質上、他の休暇の場合と同様に扱われることになるわけでありますので、裁判官の在職期間の計算におきましても、介護休暇を取得した期間のすべてが算入されることになるわけでございます。
#65
○佐々木(秀)委員 わかりました。
 それでは最後ですけれども、先ほどもちょっと触れましたように、こういういろいろな休暇の請求が権利として裁判官にも認められる。しかし実際には、裁判の仕事が重要である、忙しい、それからまた、裁判官の独立性ということを考えると、自分が受け持っている事件について、他の裁判官に必ずしも直ちにやってもらうということになじむのかどうかというような問題もあるわけですね。そんなことから、せっかく権利としてこういう制度が認められても、裁判官はお互いに顔を見合いながら請求しにくいというようなことがあるのではないかと懸念されるわけですね。
 例えば、さっきの育児休暇制度にしても、請求者は十四名だけれども男性からの申請はない。つまり配偶者からの申請はないということにもなるわけですけれども、こういうことから見ても、そういうことを権利としてお互いに認め合うのだ、それでお互いにカバーし合うというのは、やはり環境ができないとなかなかやりにくいのではないかと思うのですね。
 地方裁判所などでも、本庁の場合には代替制が割合きくと思いますけれども、特に支部ですね、私も北海道の北の方にいるわけですが、地方裁判所の支部なんかは裁判官も少ないわけですし、場合によっては裁判官がいない庁もあるわけですね。そういうところで補てんをするというのはなかなか大変なことだろうと思うので、そういうことと絡み合わせて、こういう制度の充実を期すための環境づくりについて裁判所がどう考えておられるか、最後にお聞かせいただきたいと思います。
#66
○堀籠最高裁判所長官代理者 私どもとしては、介護休暇制度ができますと、これは権利として認められるものでありますから、それによって裁判官の身分とか報酬の関係で不利益な取り扱いになるようなことはないというふうにに考えております。
 なお、国民の皆様との関係では、事件の配てんがえであるとか、同じ庁内からの応援てん補であるとか、場合によっては他の庁からのてん補というようなことを考えまして、事件がそれによって遅くなることがないように適切な措置をとってまいりたいというふうに考えているところでございます。
#67
○佐々木(秀)委員 ありがとうございました。
 何といっても、裁判所は国民の人権とそれから正義を守ることを職務とするお役所でございますから、そこで働く裁判官あるいは職員の人権にも十分配慮していただいて、制度の充実を期していただきたいと存じます。
 これは、法務省の方では、検察官その他、恐らく今度の一般職の公務員の法律が適用になるのですね。しかし、検察官についてもやはり一般の公務員とは違った職務でございますし、そういう意味では正義、人権という点では裁判所と同じような任務を持っているわけですから、こうした点については法務省もやはり御配慮をいただきたいということを申し上げて質問を終わります。ありがとうございました。
#68
○高橋委員長 正森成二君。
#69
○正森委員 同僚委員がもうほとんどお聞きになりましたので、私はごく簡単に聞かせていただきます。
 今佐々木委員もお聞きになりましたが、我々はこの法案にはもちろん賛成ですが、最後に、裁判官が取得できないのではないかという質問がありまして、当然の権利であるから取得することによって不利益な扱いを受けることはない、これは当たり前の話であります。
 それから、庁内においていろいろ配置がえをするとか、やりくりをして国民に迷惑がかからないようにするということを言われました。それは、そういうようにやりくりをするから遠慮なく介護休暇をとっていいのだということを言外に含めてのことだと思います。しかし、実際上、裁判官の人員が不足している中で、希望する裁判官が気兼ねなく取得申請できるかどうか、環境づくりというのが非常に大切だと思います。
 それで、この制度ができてから直ちにはどれくらい介護休暇をとるかというようなことを予測できない面があるかもわかりませんが、一定の期間が過ぎた場合には、大体毎年毎年どれくらい介護休暇の申請が出て、延べ何カ月くらい休むことになるかということは予測可能でありますから、その分は考慮して裁判官の人員を決める、あるいは新しい採用を行うというような配慮をすべきで、それをやらないで、出たとこ勝負で、休暇が出ればそれぞれの庁内や、あるいは一つの庁でやりくりできないときは高裁管内でやりくりするというだけでは、これは、その裁判官も介護休暇をとりにくいし、他の裁判官にとっては過重な負担になるということになると私は思いますが、その点についての御意見を承りたいと思います。
#70
○堀籠最高裁判所長官代理者 裁判官がどの程度介護休暇をとるということは、現段階では、私ども意向調査をやっておりませんので、予測を申し上げることは極めて困難でありますが、ある程度の運用がまいりますとどの程度介護休暇をとるというようなことがわかりますので、委員御指摘のように、私どもといたしましては、介護休暇の制度及び趣旨を裁判官に周知徹底することによって制度の定着を図るとともに、裁判官が安んじて介護休暇を取得できるような執務体制、環境づくりを進めてまいりたいと考えております。
 現に行われております育児休業につきましても、その育児休業をとっている間はほかの裁判官をよその管内からてん補させてというような運用もやっているところでございまして、これからもそのような点については適切な措置をとってまいりたいというふうに考えているところでございます。
#71
○正森委員 できるだけ適切な措置をとっていだだきたいと思います。
 その次に、本法案の適用される裁判官以外の裁判所職員、これは他の一般国家公務員に準じて介護休暇を申請できることになっております。裁判所の一般職員の中で女性の占める地位が非常に高くなって、介護休暇の要望が非常に強うございますので、今回の措置は歓迎されているようでありますが、休暇の取得が連続三カ月に限られているところに、もう少し改善できないかという不満があります。
 これは、もちろん三カ月でなしに六カ月とか一年だったらいいのは決まっているのですが、公平の原則というか、他との兼ね合いもいろいろありますから、今出ております要望は、連続三カ月じゃなしに、延べ三カ月にできないか。つまり、延べ三カ月ということになれば、夫婦が共稼ぎの場合あるいは兄弟が二人三人おる場合には、介護のローテーションを組んで、プロ野球の投手ではありませんが、それで一年なら一年持ちこたえることができる。だから連続三カ月じゃなしに、一カ月あるいは一週間ずつくるくる回すとかで、結局延べで同一人の同一疾病について三カ月にできないかという要望が裁判所職員なんかには非常に強いのですね。そういう点についてはどうお考えになるか、あるいは、それをもしやるについて他との関係上こういう困難があるということであれば、我々立法府でも考えたいと思いますので、遠慮なく御意見をお述べください。
#72
○堀籠最高裁判所長官代理者 裁判所の一般の職員の中に委員御指摘のような意見があることは私どもも承知しているところでございますが、まず、裁判所の一般の職員につきましては、委員御承知のように、裁判所職員臨時措置法という法律によりまして一般職の国家公務員の規定がそのまま準用されることになっているわけでございます。したがいまして、一般職の職員についての介護休暇の規定を改正しない限り裁判所の一般の職員についてはどうすることもできないというのが現在の法体制であるわけでございます。
 それから、裁判官につきましても一般の職員の例に準じてということになっておりまして、裁判官だけほかの国家公務員と違って長い介護休暇をとるというのは、やはり現在の国民感情からいっていかがなものかというふうに考えておるところでございます。
#73
○正森委員 当然の答弁だと思いますが、そういう点を配慮して一般職そのものについていろいろ考えるように、私どもの党はもちろん立法府も、私がこんなことを言うと委員長に申しわけありませんが、やはり考えてみる必要のある問題である。公務員の要望はもっともな点があると思います。
 それでは残された時間、少し他の問題について質問通告しておりますので、伺いたいと思います。
 三月四日の未明ですね、午前一時ごろだそうですが、浦和市にお住まいの東京高裁の部総括判事の近藤さんのところでどかんという大きな音がして金属弾と思われるものが打ち込まれたという事件があったようであります。警察庁においで願えないかと言っておりますので、この事件の概要や捜査の状況がどうなっているか伺いたいと思います。
#74
○谷口説明員 御指摘の事件は、平成六年三月四日金曜日でございますが、午前一時ごろ、埼玉県浦和市元町所在の、当時東京高等裁判所判事の近藤和義氏、六十一歳宅に対しまして金属弾が発射されました。同判事宅の外壁に着弾しまして、さらに発射弾の胴体部分が隣家の物置に落下いたしまして破損しましたという事件でございます。人的被害はございません。
 捜査状況でございますが、埼玉県では本件に関しまして捜査本部を設置して捜査しているところでございますが、革労協の狭間派が三月六日の日曜日に都内の報道機関に対しまして犯行声明を郵送したことから、革労協狭間派の犯行と見まして現在鋭意捜査中でございます。
#75
○正森委員 三月六日に犯行声明を出したのは、私どもの承知しているところでは革労協と名のるグループであったというように承知しておりますが、この事件は狭山事件と関係があるのではないか、こういうように言われております。といいますのは、七六年の九月に、二審判決で無期懲役を言い渡した東京高裁の寺尾判事が車で出勤途中に過激派と見られる五人組にバットで襲われて負傷するという事件が起こっております。さらに九〇年十月には、判事として一審を担当したことのある弁護士の自宅が放火されて雨戸などが焼かれたということが報道されております。
 近藤さんは東京高裁の第四刑事部の裁判官となって狭山裁判の第二次再審請求の審理を裁判長として引き継いでおられたそうですが、再審請求をめぐって最近、請求の棄却が迫っているなどとしていた過激派がいるということも言われております。そして、近藤さんは年齢が六十歳くらいだそうですが、この犯行のあったその日あるいは翌日ですか、退官をせられているのですね。まだ定年までは間があったと思うのですが、これについて東京高裁の事務局長は、「事実関係は調査中だが、近藤判事の担当していた何らかの事件の処理に関係するものだとすれば、大変遺憾だ」というように言っておりますし、当時の日本弁護士連合会の阿部会長は、「裁判を妨害し、何らかの影響を及ぼす意図があったとすれば、司法に対する悪質な挑戦で、憤りを禁じえない」という趣旨の談話を発表しております。ですから、単純な犯行ではないのではないか。特に、裁判官が退官するというようなことと何らかの因果関係があれば、これは非常に問題であるというように思いますが、重ねて警察庁もしくは裁判所の御見解を承りたいと思います。
#76
○谷口説明員 事件後の三月六日に都内の報道機関に対しまして革労協の革命軍軍報が郵送されました。また、革労協狭間派の機関紙「解放」、平成六年の三月十五日付でございますけれども、この犯行を自認する内容の記事が掲載されました。その中を見ますと、第二次再審棄却を策謀せんとすることに対しての革命的鉄槌である云々というふうな内容が書かれておりまして、狭山闘争に関連しましたゲリラ事件と見て鋭意捜査中でございます。
#77
○堀籠最高裁判所長官代理者 近藤判事は東京高裁の長官代行を約二年近くにわたってやっておられた方でございまして、かねてから勇退したいという意向を示しておられたわけでございまして、その発令が本年の三月四日になったという関係でございます。
 私どもといたしましては、狭山事件を担当していたとか金属弾が自宅に撃ち込まれたということを契機として退官したものではないのではないかというふうに考えているところでございます。
#78
○正森委員 事前にもうおやめになるということであれば、この事件があったからおやめになったということは、おっしゃるとおりないかもしれませんが、逆に言えば、犯行を行った者が、三月四日にやめるということを知っておって、それで犯行を行ったという可能性がますます強くなると思うのですね。そういう意味では、警察庁になるのか検察庁になるのかわかりませんが、やはりしかるべき捜査をしていただく必要があるというように思います。
 法務大臣がおられますので、警察の捜査がある程度熟せば検察庁にも上がってくるわけですが、政治家としてでも結構ですから、御感想がございましたら一言承って、時間が大体なくなりましたので、終わらせていただきたいと思います。
#79
○中井国務大臣 御質問は承っております。
 先生のお話の御趣旨と違うかもしれませんが、いやしくも裁判官あるいは検察官が暴力等によっておどかされる、このようなことがあっては断じてならないと考えております。
#80
○正森委員 終わります。
#81
○高橋委員長 これにて質疑は終局いたしました。
    ─────────────
#82
○高橋委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 裁判官の介護休暇に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#83
○高橋委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#84
○高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ─────────────
    〔報告書は附録に掲載〕
    ─────────────
#85
○高橋委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午前十一時三十九分休憩
     ────◇─────
    午後三時三分開議
#86
○高橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 内閣提出、商法及び有限会社法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本有二君。
#87
○山本(有)委員 商法、有限会社法の改正の最初の質問でございますので、教科書でいえば総則どういうことで、ちょっと一般的な、大まかな話をお伺いさせていただきたいと思います。
 いわばそのテーマは企業の社会的責任と商法改正、そう銘打ってもいいような話だろうと思いますが、まず、商法改正というのは昭和五十六年から平成二年あるいは平成五年、たびたび行われておりまして、このように改正が頻繁に行われる、しかも平成二年、平成五年というように間の年数が少ない。ならば一括して改正すればいいものをどうしてこのようにたびたび行わなければならないのか、そのあたりの御事情をお聞かせいただきたいと思います。
#88
○濱崎政府委員 御指摘のとおり、商法のうちの会社法に関する部分につきましては、他の民事基本法に比べまして相当頻繁に改正が行われているわけでございますが、その理由を御説明するに当たりまして、前からの経過についてちょっと申し上げさせていただきたいと思います。
 商法の会社法の規定につきましては、御案内のとおり、戦後の昭和二十五年に、アメリカの制度を導入するということを主体とする大変大きな改正がされまして、その後大きな改正といたしまして昭和四十九年の改正がございました。これは、昭和四十年代初めごろの粉飾決算等による大型倒産等によっていろいろな社会的な問題を引き起こしたということを契機といたしまして、会社の監査制度、それから会計制度の抜本改正のほか、大規模会社については会計監査人監査の制度を導入するいわゆる商法特例法の創設を含む大規模な改正でございましたけれども、この法案の審議の中で、衆議院、参議院各法務委員会における附帯決議におきまして、会社法についてはもっと抜本的に全面的な改正作業を行うべきである、こういう御指摘をいただきました。それを踏まえて、昭和五十年から法制審議会の商法部会の場で、会社法のいろいろな分野にわたる全面的な見直しの作業に着手したわけでございます。当初は、それを一度に実現するということを目途として改正作業を進めてまいったわけでございますが、その後御指摘のように、少しずつといいますか改正を繰り返してきた。現在もなお、その昭和五十年に始めました全面改正作業の途中にある、まだ残された問題もあるという状況にあるわけでございます。
 なぜ一括してという御質問でございますけれども、これは最初の改正、昭和五十六年改正におきましては、御案内のとおり、昭和五十四年にいわゆる航空機疑惑問題を契機にして企業の不正行為防止の観点から商法においてもその手当てをすべきだという大変強い御指摘があり、そういう観点から、それまでの五十年以来数年間の検討の結果に基づいて、今申し上げましたような観点をも含む改正をその際実現するということになったわけでございます。
 その後、平成二年には最低資本金制度の導入でございますとか、大小会社の区分の問題でございますとか、そういった中小規模の会社に関する規定の整備をし、平成五年には御案内のとおり監査役制度、代表訴訟制度の改善、それから社債法制のかなり大幅な改正ということを実現させていただいたわけでございます。
 これは、全面改正ということで大変長い期間をかけてそれを一挙に実現するという方法も一つの方法でございますけれども、そういうことになりますと大変長期間を要する、その間に会社をめぐる社会情勢がいろいろ変化をしていく、変化をしていく中でやはりその都度その都度対応しなければならないという問題もまた同時にあるというようなことから、これはやはり現実的に必要な改正を実現し、しかもそのときどきの社会経済情勢に応じた改正もそれにつけ加えていくという形で実現する方が、現実問題としてはより現実的と申しますか、適切であるというような考え方に基づいて、そういうふうに対応してきているわけでございます。
 今後も残された問題について検討を続けていって、今後の取り扱いがどうなるかはまたこれから検討するわけでございますが、そういうことで少しずつ着実にという方法も一つの適切な対応の仕方ではないかというふうに考えているところでございます。
#89
○山本(有)委員 商法の改正はたびたび行うそういう社会事情があるというようにお伺いをしたところでありますが、社会事情が変化する、それは、人間の創作活動や人間の自由な活動に基づくものだろうと私は思います。まずやはり現代国家、近代国家の一番大事なのは自由であって、それから肉体的、精神的自由があって、そして経済的自由があって、その経済的自由の中に企業活動の自由がある。ところが、その企業活動を自由にやっていくと、もう個人が自由に働いていくというよりも、巨大な組織が働くことによって、いわばそこに人間が予想できなかった、本来自由を確保したときには予想できなかったいろいろな弊害が起こってきておるというように思います。
 例えば公害問題なんというのは、企業活動の自由の中から出てきたいわばお荷物であり、ちりあくたのようなものであろうと思いますが、そのことによって逆に、自由であるはずの個人がその自由を奪われるというようなことにもつながってきておるわけです。そうすると、企業の社会的責任ということが叫ばれてしかるべきでありますし、そのことが、高度経済成長、例えばアメリカの一株株主運動だとかラルフ・ネーダー弁護士だとかいうような華々しい活動となって今日来ておるわけでありますが、最近の日本におきましても、例えばバブル崩壊のときのあの土地の高騰、さらに株の乱高下、さらにはゼネコンの最近の不詳事件というのも、ひいては企業の社会的責任を全うしなかったがゆえにここに至ったと言うこともできようかと思うのであります。
 この企業の社会的責任を果たすために、現行の商法上この規制が十分に働いているのかどうか。商法はまさに改正をどんどんしていっている。それは、社会的責任を全うしてくれよという枠組みづくりだろうというようにお伺いしておりますけれども、しかし今日それが十分なのか。そのことについて御意見を承りたい。
#90
○濱崎政府委員 会社は御案内のとおり営利を目的とする法人でございますので、出資者である株主のために、さらには、会社を支える従業員の生活確保という観点からも利益を上げなければならない。そういった組織を使っての活発な企業活動というものが、また我が国経済を支え、発展を支えてきているという関係にもあるわけでございますが、そういうことで、御指摘のとおり、企業というものが巨大化する、それも、株式会社という制度を利用して初めて可能になるという面があるわけでございます。そのように会社が営業活動をする中で、会社が商法を初めとして各種の法令を遵守して、いやしくも社会的非難を受けることのないよう行動することが、まずその社会的責任を果たす上において、ひいてはそういった企業活動の将来の経済の発展の観点からも極めて重要な問題であると考えているわけでございます。
 この企業の社会的責任ということは、先ほど申しました昭和四十九年の法改正の際の衆参の法務委員会の附帯決議の中でも、そういう観点からの改正ということも御指摘いただいているところでございます。これまでにおきましても、監査制度の充実強化などの会社のいわゆる自主的監視機能の強化のための諸制度の改善を図るなど、会社の違法、不当な行為の防止という観点からの改正にも努めてまいったつもりでございます。これまでの、先ほど申しました改正の中でも、こういった観点からの改正というものがかなり大きな部分を占めておるというふうに考えているところでございます。
 現在の規制で十分かどうかということにつきましてはいろいろ御議論があるところであろうと思いますが、会社法というのは、これは会社の組織法でございまして、そういう観点から会社の運営が適切に行われるようにという組織法上の規制をするということでございまして、会社の行動を一々監視するという立場での法律ではないという面もございますけれども、そういった組織法を所管する立場といたしましては、これまで可能な限りの努力を傾けてきているというふうに考えておりまして、さらに今後ともそういう立場で考えてまいりたいと思っております。
#91
○山本(有)委員 この企業の社会的責任をどう考えるかが、商法改正の重点をどこに置き、どのように改正の方向を持っていくか、いわばこれにつながろうと思うのです。
 そこで、大臣にお伺いします。
 大臣は、企業の社会的責任、それを十分に今までも考られてきただろうと思います。特に、民社党という一つの、結党以来それを主張してきた、極めて労働者の立場に立ちながら、使用者に対して対決でなくて協調というような趣旨でやってこられた政党だろうと私は思っておりますが、その中での御活躍の中から大臣になられたわけでありまして、この意味は深いと思っております。そんな意味から、大臣に、企業の社会的責任ということに対してどうお考えか、お伺いいたします。
#92
○中井国務大臣 言うまでもなく、会社は日本の経済発展の上において必要不可欠の存在であり、その活発な企業活動が確保される必要があると考えています。その反面、その社会的責任はおっしゃられるように非常に大きいものがある。商法を初め各種の法令を遵守して、株主や従業員の利益を守るとともに、社会的非難を受けないよう行動することがその社会的責任を全うすることにつながる、このように考えております。
 一方、民社党の議員として活動してきた中からどう考えているか、こういうお尋ねでございましたが、私個人は、過去、選挙区においても国会においてもこういう言い方をいたしてまいりました。
 日本の会社は、社会的にアメリカや他の国々と少し違うのではないか。なぜかというと、スポーツの面でもあるいは文化の面でも、まああるいは政治献金という意味でも、個人がなかなかお金を出すという風習にない、なじまない、また税制もそれに対応していない国にあって、企業が、環境面、文化面、スポーツ面、ありとあらゆる面で企業活動と直接は関係ない、社会の一員としてという意味で寄附を求められ、また、直接営利に関係ないけれども、企業はこれにこたえてかなり広範な範囲で活動し、社会をある意味で支えてこられておる、このように言ってまいりました。そういった観点からも、逆に社会的な責任、この重さをお感じいただくべきであろう。そういう中から商法の諸制度の改善を図り、会社の違法、不当な行為の防止に、今事務局が申しましたように努めてまいりました。
 また、昨年の商法改正でもこの観点から改正が行われたところであり、この改正あるいはこれらの法律運用が十分機能することを私どもは期待していきたい、こんな思いでございます。
#93
○山本(有)委員 大臣の御所見を承りまして私も思いますのは、企業というのは決して悪ではない、むしろ積極的な社会的責任を全うしている。特に、雇用を確保する、そして国民の賃金を確保する、さらには利便を提供し、科学技術に基づきながら家庭電化製品なんというのは大変な主婦の皆さんへの利便を提供しましたし、さらには、文化という意味でもスポーツという意味でも大きな貢献をしていますし、全体として日本の繁栄とか景気維持とか国際的な信用とかいうのは、やはり企業が全うする積極的責任があったからこそ、こういうように日本が繁栄した、そう結語することができるだろうと思います。
 そんなことを考えていきますと、積極的責任、まさしくここに企業は存分の活躍をいただいている、こう思われるわけであります。
 ところが、私のもう一方の考え方で、消極的責任もあるのではないか、やってはいけないことをやっているのではないか。例えば、公害であるとか、先ほどの、バブルをもたらしたことも企業の責任でございますし、さらにはゼネコン汚職、つまり営利を目的とするがゆえに安易ないわば利益獲得、これに走ることによって不祥事件が起こりました。またさらには、私は、メディアの問題、多くの企業が、プライバシーをあるときは侵害し、その危険を生じさせているということもあり得るのではないかというように思います。
 したがいまして、消極的責任については、企業は十分に考慮をいただいて、絶対二度と起こさないようにしなければなりませんが、企業が営利で自由であるということを考えますときに、我々の政治体制、経済の枠組みから考えますと、法務大臣が、あるいは所管の皆さんが、法務当局の皆さんがしつかり目を凝らしながら商法改正に臨まなければならぬ、私はそう思います。
 そこで、今回の、現行の商法が規定している自己株式取得規制、これは世界でも一番自己株式取得規制は厳格だと言われております。厳格だと言われておるにもかかわりませず、これを改正して、規制緩和して、これを緩やかな方向に持っていこうというわけでありますが、冒頭、規制の概要及び規制を改正するという理由等々お聞かせいただきたいと思います。
#94
○中井国務大臣 委員御承知だと思いますが、かねてから、国会の大蔵委員会等におきまして、あるいはまた当委員会においてもと思いますが、自己株式取得についてはいろいろと論議のあったところでございます。
 一昨年、金融・証券等の不祥事に関しての特別委員会ができまして、私もそのメンバーの一人でございました。賛成、反対含めましてかなりの論議があったところであり、同時に、そのことによってかなり認識も深まった、このように感じているところでございます。そういう認識の中、また同時に、証券取引監視委員会というものがこの議論をもとにつくられた。同時にまた、東証を含めて、証券協会を含め、かなり自主的な体制をおつくりになった。
 そして同時に、企業がボーダーレスで広く世界の中で行動する。また、世界の中で大変大きな地位を占める証券市場、これの開放ということも常に頭に入れていかなければならない。これらすべてが時を得まして今回の改正につながった。私自身はこのように判断をいたしているところでございます。
 中身につきましては事務当局から答えさせます。
#95
○濱崎政府委員 大筋はただいま大臣から御答弁申し上げたとおりでございますが、現在、どういう規制がされているかということでございますけれども、基本的に申し上げまして、現在の商法の規定は、自己株式の取得というものを原則として禁止しておりまして、例外として一部これを許容しております。それは、いわば会社の合併の場合でございますとか、営業の全部の譲り受けの場合でございますとか、会社が権利を行使するに当たってどうしてもその自己株式を取得する必要がある場合でございますとか、そういった、いわば会社の行動の中で不可避的に取得するという場合に限られている。会社が、一定の目的のために会社の判断によって自己株式を取得するということは基本的に認めないという制度になっておると言えようかと思います。
 その理由といたしましては、会社法の立場といたしましては、会社財産の充実を害し、会社債権者及び会社の利益を害するということ。それからその自己株式の取得の方法いかんによっては、特定の株主を優遇して、いわゆる株主平等の原則に反するというような問題。それから、証券取引市場の問題といたしましては、余り自由に自己株の取得とか放出を認めますと、いわゆるインサイダー取引とか株価操縦というようなことが行われる温床になる。そういった観点からそういう規制がされているわけでございます。
 これに対しまして、ただいま大臣から申し上げましたように、世界各国の法制は概して我が国よりも緩やかでございますし、それから、かねてから非常に強い要望があったということで、今回は、今申しましたような弊害を除去し得る範囲内で、一定の目的のための自己株の取得を認めようということで今回の改正法案を策定させていただいた次第であります。
 主要点ということでございますが、これは、今回の改正の概要を改めて申し上げるという趣旨で、少しく時間をいただいて御説明申し上げさせていただきますと、大きく分けて三つの場合について自己株の取得を認めております。
 一つは、会社が取得して使用人に譲渡するための自己株式の取得でございまして、会社は、従業員持ち株会に株式を譲渡する必要がある場合など正当な理由があるときには、定時総会の決議に基づいて、配当可能利益の範囲内で、発行済み株式総数の百分の三を限度といたしまして、使用人に譲渡するための自己株式を取得することができるということでございます。
 二つ目は、利益消却のための取得でございまして、会社は、定時総会の決議に基づいて、配当可能利益の範囲内において、株式を消却するという目的で自己株式を取得することができるということでございます。
 三つ目は、株式の譲渡制限がある会社、いわゆる閉鎖会社についての取得の特例でございまして、そういう閉鎖会社におきまして、株主から株式を他に譲渡することについての承認、もし承認しない場合には買い受け人を指定してもらいたいという請求があった場合において、会社は、自分を買い受け人に指定して、株主総会の決議に基づいて、これも配当可能利益の範囲内で自己株式を取得することができるということ、及び、株主の相続があった場合におきまして、会社は、これも株主総会の決議に基づいて、相続の開始後一年以内に限って、配当可能利益の範囲内で、その相続人から自己株式を取得することができる、こういう道を設けたわけでございます。
 なお、有限会社につきましても、使用人に譲渡するための取得については有限会社法上手当てをしておりませんが、そのほかについては同様の自己持ち分の取得を可能にするという改正をすることを内容としているわけでございます。
#96
○山本(有)委員 この自己株式取得の厳しい規制を外すということは大事な意味が幾つもあります。しかし、これは非常に専門的、技術的になりますので、私は、明日時間をいただいておりまして、本日は総則的な観点から、先ほど来の話の企業の社会的責任、それについてもうしばらく質問をさせていただきたいと思います。
 前回、先週質問をいたしました企業の社会的責任の中で、特にメディアの責任、いわば犯罪報道における犯罪と言っても過言ではないような、メディアに対する企業は責任があるように私は思います。
 特に犯罪報道というのは、報道される人は単なる個人でありまして、その侵害された法益はプライバシーという法益であります。被害者はたった一人。しかし、加害者は企業であり、しかも、企業の報道を見た人たちが怒りを持って、いわば社会も巻き込んだ、一人対大変大勢の人という力関係になってくる、そんなふうな背景のある大変ゆゆしき社会的責任であろうと私は思います。
 自由な人間が自由な活動をすることによって企業が生まれたわけでありますが、巨大なメディアを使ってのこの企業活動におきましては、まさしく最初の出発点であった人の自由を奪う、そんなふうな矛盾を内包した問題であって、これはゆるがせにできないはずでございます。
 そこで、先週に引き続いてもう一回お尋ねするわけでありますが、先週、ちょうど判決言い渡しの量刑のところで、既に十分な社会的制裁を受けているのでというような情状酌量の部分の、そういう判決言い渡しがあるということを申し上げました。恐らく求刑をするときにおきましても、いわばそういうことを考慮された文言が出されてくるだろうということをお伺いさせていただきましたが、もう一度この社会的制裁を受けているという中身についてお伺いをさせていただき、そしてその中に、さらにいわばマスコミ報道によってプライバシーを侵害されたり、あるいは社会的制裁がマスコミによって行われることもあり得るのか、そのことを意味しているのか、内包しているのかということをお尋ねさせていただきたいと思います。
#97
○則定政府委員 大変重大かつ難しい御質問でございます。社会的制裁を受けている、したがって判決あるいは論告等でそれを加味して量刑を考える、もちろんそういうことはあるわけでございますけれども、その場合に社会的制裁の中身いかんということでございます。
 前回も御質問がございまして、これは法律的な概念がございませんので、いろいろなことがあるかと思います。その中に、御指摘のように、社会に当該被告人等糾弾されている者の行為が流布されて、それによって当該審判の対象になっている者あるいは犯罪捜査の対象になっている者等につきまして消極的評価がなされたということ、あるいはそれに伴ういわゆる世間の非難の声というものももちろんあろうかと思います。そのほかに、犯罪によって検挙されあるいは起訴されたといったことで本来それまで勤めておりました職場を失うとか、そういったことも含まれるだろうと思います。
 したがいまして、報道のあり方という点で今御質問があるわけでございますけれども、もちろんそれぞれのメディアが、いろいろと事件へのアプローチと報道ぶりというもの、これは責任でやっておられることでございまして、私どもからとやかく言うのはもちろん差し控えるわけでございますけれども、当然のことながらいたずらにその取り扱われる人の人権を損なうことのないように配慮されてしかるべきものであろう、こういう気はいたしております。
#98
○山本(有)委員 先週お聞きしましたが、ペーパートライアル、いわば不当な社会的制裁を、公訴権を持つ検察当局が、あえてマスコミを活用しつつ、有罪の心証を得ながら、いわばそれを社会的に公表していく。すなわち、まだ公訴も提起されていない、刑罰も確定していない、そんな段階で社会が犯罪者と認定していく、それを率先することがあり得るかどうか。これは逆に検察の名誉のために、刑事局長の名誉のために、このペーパートライアルが日本で行われているかどうかについて、行われていないとしっかりと答えていただくために、もう一回お聞きいたします。
 ペーパートライアルが今日日本で行われているかどうか。大臣から手が挙がりましたので、大臣まず答えてください。
    〔委員長退席、島村委員長代理着席〕
#99
○中井国務大臣 先生の過日の委員会での質問、またきょう引き続いてのお尋ね、昨日は予算委員会でゼネコン等の集中審議においても同じような意味での御叱正やら御質疑があったところでございます。
 予算委員会でも私からお答えをいたしましたので、先生にも今私からお答えを申し上げるわけでありますが、検察当局、法務省を含めてそういったリークして情報操作する、あるいはペーパートライアルを考えてあえてリークする、こういったことはやっておりませんし、やってはならないこと、このように考えております。
#100
○則定政府委員 まさに大臣から答弁申し上げましたことに尽きるわけでございまして、あってはならないことでありますし、現にやっていないと考えておるわけでございます。
#101
○山本(有)委員 明快にお答えいただきました。
 あえてもう一つ、基本的な、言わずもがなのことを失礼ながらお聞きするわけでございますが、国家刑罰権はだれが行使するのか、これについてお伺いさせていただきます。
#102
○則定政府委員 具体的に国家の刑罰権を行使する機関は何か、こういうことでございましょう。
 これは確かに難しいことだと思いますけれども、法概念的には国家刑罰権というのは、抽象的
 に国家の統治作用として持っている。その上で個々の具体的な刑罰権というのは裁判作用が確定して初めて確定する、個別に生じる、こういうことだろうと理解します。本来統治作用の一環として国家刑罰権があるわけでございますから、当然のことながらそれを行使する機関は行政作用を担う者、こういうふうに理解いたします。
 そういたしますと、現実に我が国の場合には、検察官が具体的に判決で確定された個別の刑罰権を判決に基づいて執行の指揮をすることにより行刑当局が行使している、こういう構図になろうかと理解いたします。
#103
○山本(有)委員 それでは、ほかに刑罰権を持つ
 ている人はないのですね。
#104
○則定政府委員 刑罰権を持っているものということになりますと、一般的にはあくまでも国家そのものであろうと思います。
 その中で、今御指摘の問題がいわゆる地方自治体の条例による処罰という問題等でございますれば、それを重層的に分有しておる場合があり得る、こう思います。
#105
○山本(有)委員 そうすると、刑罰権は国家に帰属するわけで、他にないというようにお伺いしたわけでありますが、社会的制裁というのは刑罰権ではない。確かにそうなんです。しかし、制裁ということはあくまで刑罰権に似て非なるものというように解釈できますけれども、この存在は認めますか、認めませんか。刑事局長。
#106
○則定政府委員 せっかくの御質問でございますけれども、私の立場から公的にお答えすべき事柄ではなさそうに思いますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
#107
○山本(有)委員 それでは質問の言い方をかえまして、社会的制裁という言葉が求刑の中にも出てくるということはお認めでございます。社会的制裁ということが実存することを肯定された、こう私は思います。
 そうすると、国家刑罰権というのは、刑罰というのは国家に帰属しておるわけですから、ほかにない。そうすると、社会的制裁というのはあくまで私の刑、私刑、リンチになるわけですよね。国家の刑罰権じゃないところで社会的制裁という似て非なるものがあるわけです。制裁であることは間違いないわけであります。
 そうすると、この観点が好ましいものであるかどうか、社会的制裁ということが好ましいものであるかどうか、それについてお伺いさせていただきます。
#108
○中井国務大臣 的確なお答えになるかどうかわかりません。また、専門的なことは担当局長からお答えをさせていただけると思いますが、昨日予算委員会に報告いたしました私どもの報告書、当委員会にも午前中配らせていただいたわけでありますが、その最後のページの後ろから四行目のところに、「このほか、東京地検では、本件に関してなされた種々の報道等をも視野に入れつつ、」こういう言葉を書いてございます。私は、ここはいいのではないか、こういうことを実は申したわけでございます。しかし、日本のマスコミは御承知のように大変な数、またそれぞれの調査能力もお持ちでありまして、あるいは東京地検が見逃しておるような証拠等もあるのではないか、こういう意味であえてこのマスコミの報道等も視野に入れということを書いておる、こういうことを聞かせていただきまして、私どもは、東京地検あるいは取り調べがリークをしていると言われる御非難を多々もらうわけでございますが、逆に、私ども関係の検察庁は、謙虚にそういうことも見させていただいて、証拠として本当にあるのかないのか、こういったことも調べておる、このことも御理解を賜りたい、このように思います。
 同時に、今お話がありました社会的制裁という問題につきましては、毎回毎回使われる、報道に載った人すべてに社会的制裁というものが使われるわけではなかろうか、このようにも思います。御当人が謙虚に反省もされておるという検事の判断ということもあろうか、同時に、いろいろな犠牲を起訴される前からお受けになる、これも考えていかなければならないことでありますが、日本においては、広くそういう形で身を処される方が多いわけでございます。これらのやり方もやはり私どもとしては頭に入れて、そういう社会的制裁云々ということが場合によっては求刑の中に使われるのではないか、このように考えております。
#109
○山本(有)委員 大臣からせっかく御答弁いただきましたので、もう一回それでは大臣にお伺いさせていただくわけですが、昨今予算委員会で問題になっているその話も、当然犯罪報道の話として受けとめられるわけでありますが、ただ、国家機関、特に政治家とか官僚だとか、そういう権限を持つ者の犯罪行為に対する報道と一般市民に対する報道、おのずから性質が異なってくるだろうと思います。それは、例えば大臣が何らか職務上不正を犯したというのは、もし大きな組織の中で包み隠されてだれも何にも言ってくれなければ、大臣のそういう行為というものは表に出てきません。それがいわば今まで共産主義だとか権力の集中した国家だとかというところで間々人権侵害があったことにつながるわけですから、それはどんどん非難され、あるいはマスコミで追及されても私はある程度やむを得ないだろうと思います。ところが、全くの一市民がもし社会的にあなたは犯罪者だといって報道されてしまったならば、これはどうしようもないところに陥ってしまうのではないかということを想像するのです。
 特に、私が思っておりますのは、免田栄さん、免田事件という再審無罪の判決がありましたが、その当時、もう十年前くらいですが、一九八三年くらいに、法務大臣が、これはゆゆしき問題ということで反省しましょうということを司法当局に、関係者に言っておりますし、その返す刀で、マスコミの犯罪報道等人権擁護についてということを検討してくれと、当時は秦野法務大臣だったそうでございますが、人権擁護の観点から検討を省内に促しております。一市民が無罪になるこの長い長い経過の中で、それこそ無罪として再審を行っているという報道はまだいいのです。ところが、有罪だ、逮捕された、人を殺したという報道が過去にあることによって、我々は予断を抱き、偏見を持ち、その人をそう見て、その家族をそう見て、その地域をそう見てというような、我々自身にまた責任を感じてしまうのです。報道を見て活字を信じることに我々自身が責任を感じるのです。
 そう考えていきますと、どうも私はこの社会的制裁ということが、はっきり言って、なべてマスコミに許されていいのかどうか、犯罪報道というものが野放していいのかどうか。我々が規制しようというものではありませんけれども、そのことによって被害をこうむっている人たちが少なからずいるということにも、我々自身が着目しなければいかぬのではないかというようなことを申し上げたいと思っておるのであります。
 その観点から、マスコミの犯罪報道と現状というものに対して、大臣がどうお考えであるか、お聞かせいただきたいと思います。
#110
○中井国務大臣 裁判で刑が確定するまでは、いかなる被疑者であれ、あるいはいかなる人であれ有罪ではないわけであります。このことはマスコミ報道も十分御認識の上で報道をなさっていることと私どもは考えております。
 なお、私自身は国会で長らく逓信委員会におりまして、たびたびマスコミのあり方あるいは報道の中身等について議論をいたしたところでございますけれども、やはり報道の自由、表現の自由、国民の知る権利、これらが厳然として守るべきものとしてある以上、マスコミの自覚というもの、あるいはマスコミにお勤めの方々の倫理、こういったものの向上を待たざるを得ない、このことを痛切に感じているところでございます。
 したがいまして、先ほどから委員が熱情を持たれ、また具体的例を挙げられてお話しをいただきまして、あるいはそういう意味でマスコミの報道によって本当にゆえなく傷つく、取り返しのつかない烙印を押された、こういうこともあるのではないかと思いますけれども、法務大臣としては、先ほど申し上げたような立場上、コメントを差し控えさせていただけたらありがたい、このように感じております。
#111
○山本(有)委員 いや、そこをぜひ法務大臣として差し控えずに、遺憾な面もあるというくらいに思い切って踏み込んでいただくと、私も本当に大臣をさらに一層尊敬することができるわけでありますが、そうもいかないようであります。
 しかし、法務当局がもう十年くらい以前からこのことについて関心を持っておられて、秦野法務大臣が検討を命じられて、それで鋭意努力されておるだろうと私は思います。そこで、秦野大臣がこうして検討しろと言ったことに対して、どんなことをして、そしてどういうような成果を上げられてきたのか、このことについて法務当局にお伺いさせていただきます。
#112
○筧政府委員 委員御指摘の昭和五十八年ごろでございますけれども、当時の秦野法務大臣の方から、人権擁護機関として、容疑者や被告人を呼び捨てにする問題など、マスコミによる人権侵害の問題について議論をし、その点についての世論を喚起してはどうかというような御示唆を受けたことがございます。
 この御示唆を受けまして、人権擁護委員の組織体であります全国人権擁護委員連合会におきましても、この問題について精力的に取り組んだわけでございまして、例えば、東京都の人権擁護委員連合会においてアンケート調査をする。あるいは、これは昭和五十九年のことでございますが、学者やマスコミなどの関係者を集めて公開によるシンポジウムを実施したというようなことがございます。あるいはまた、昭和五十九年十月四日の全国人権擁護委員連合会の総会における研究集会を開きまして、この問題について協議をしたというような経過がございます。そうした経過を踏まえまして、その総会の宣言といたしまして、マスコミの関係者などが取材あるいは報道に当たって個人のプライバシーについて十分な配慮を行うことを要望するという旨の宣言を発したというように承知しているわけでございます。
 このような宣言を発した理由といたしましては、先ほど大臣の方から申し上げましたように、この問題は報道の自由、それと表裏になります国民の知る権利と個人の名誉、プライバシーというものの密接に関連し合う問題でございまして、公的な機関、これは法務省の人権擁護機関も含めてのことでございますが、この問題について直接的に関与するということはできる限り避けるべきであって、まず第一次的にはその報道の主体であるところのマスコミが自主的にこの問題に取り組み、規制をするということが望ましいのではないかというような観点から、ただいま申し上げたような措置をとったというような経過を承知しております。
#113
○山本(有)委員 最後の結論におきましては私も同感です。自主的に、なるだけ政府等の関与なしにマスコミのルールができればと思います。
 ただ、私が申し上げたいのは、一市民が、一般市民が、いわば知る権利の対象になるのかどうか。知る権利というと、それはよほどのことがなければ、普通に生活している、国家機関と何の関係もない人を、その人の生活をかいまのぞくような、そんな報道のあり方というのはあり得ないんじゃないかなというように私は思っております。
 そういう意味から、質問をさらに続けさせていただきますが、人権擁護局長の答弁をいただきましたので、人権擁護局長にあえてもう一回、観点を変えてお聞きいたします。
 犯罪報道というものは、例えば被疑者に行われた、被告人に行われた、既に受刑中の者に、囚人に行われたというときに、実名で、例えば山本被疑者はと、逮捕された山本有二はと、こういうように言われたときに、一体その人に与える影響はいかに。二番目には、今度はその報道によって、奥さん、子供、お父さん、おじいさん、その親族が受ける影響というものはどうか。三番目に、今度は私が例えば人を殺した、じゃ、死んだ家族はどう思うのか。まだそのとき私が被疑者のままであって、まだ公訴も提起されていない、しかも刑も言い渡しされていない段階で、被害者の御両親やらそういう人たちが何をどう思うか。さらに、被害者あるいは被疑者の近隣、地域の人たち、同級生や会社の同僚の皆さんはどう思うのか。さらに、最後に、社会の人たちが一体どういう影響を与えられるのか。一に被疑者、二に家族、三に被害者、そして四に近隣、五に社会というように分けた場合に、それぞれの影響についてどうお考えかをお聞かせいただきたいと思います。
#114
○筧政府委員 これは犯罪にかかわることでございまして、それが被疑者段階であろうが、あるいは被告人の段階であろうが、あるいは受刑者の段階であろうが、いずれにしてもその対象となる者あるいは家族、あるいは被疑者、被告人、受刑者として名指された人の近隣等にとって、いわば不名誉なことであるということには間違いないわけでございまして、そういう関係者の利益という面ではマイナスに働くということは間違いのないことであろうというように考えております。
 また、被害者の点においても、いまだその刑が公権的に確定しておらないという段階において、あるいはそのことが間違っておるということになったような場合を考えますと、被害者も誤った人を対象にして被害感情を抱くというようなこともあり得るというように考えているわけでございます。
 ただしかしながら、他方において、実名報道については、その報道の真実性の担保というような一つのメリットという面もあるわけでございまして、先ほど委員が御指摘になりました被疑者、被告人等が一私人であるというような場合におきましても、その犯罪の重要性等におきまして、一般国民としてはこれを知りたいと欲するというような利益も、これまた一つ保護されなければならない利益ではないかと思うわけでございます。
 そうした意味におきまして、ぎりぎりこれを許されるかどうかという点から考えますと、報道をなしたところの根拠というものを報道機関がどの程度確保しておったかということが最も重要な要素でございまして、それと犯罪の重要性あるいはその犯罪の捜査がどういう段階にあるかというような種々の事情を考えて、一つ一つの事件ごとにそれが許されるかどうかということを判断されることになるのではないかというように考えておるわけでございます。
#115
○山本(有)委員 それはまさしくそのとおりでございますが、受けた報道の影響はなお甚大だろうと私は思います。その理由としましては、受けた人たちが救済手段を持たないということが一番我が国の社会問題なのです。救済手段、例えば家族だった、あの人の友達であった、犯罪者の友達というレッテルだけでも大変なことなのです。そういうことを私は申し上げたいわけでございます。
 例えばこんな例もございます。有名な事件で、連合赤軍事件、これの坂東国男さんという実際に浅間山荘事件を起こした、有罪判決の、本当に凶悪犯でありますけれども、そのお父さんは一九七二年四月二十九日に世間を騒がせたことを死んでおわびするという遺書を残して首つり自殺をしておるのですね。やはりそんなことを考えたときに、お父さんには責任はないわけでありますから、いわば報道のあり方、凶悪犯人である、父であるということは真実なんです。しかし、真実だけれども、こういうことが陸続と発生しないようなことがあり得るとするならば、それを模索していくのが我々の役目じゃないのかというように思うのであります。
 ここで一つの例を申し上げますと、一九七九年に市原市少女殺人事件という千葉県市原市で起きた事件がございます。
 それは、まず同年の二月十二日に明美ちゃんという十二歳の少女が行方不明になりました。二カ月後の四月十日の朝、自宅から二十五キロ離れた木更津市で死体発見されて、四月十日の夕刻にAという会社員が逮捕されてしまった。これは警察署長の発表で翌朝の朝刊に優良な社員が仮面をかぶった人格で人殺しをしてしまったという報道がされている。そして七九年五月二日、勾留されておりましたけれども、勾留満期で、処分保留のまま釈放されて、そして八二年、それから三年後の十一月三十日に不起訴処分が決定されて、そして一週間たった十二月六日に不起訴が決定したと公に発表した。
 そうすると、最初、逮捕の段階で「少女殺しを逮捕 母親の知人、冷たくされ?」というのが朝日新聞。「母親の知人逮捕 結婚拒絶された腹いせ」というのが読売新聞。「顔見知りの工員逮捕
 車のドロが一致」、毎日新聞。
 それが不起訴になりますと、「少女殺し甘い捜査 否認のAさん釈放、拘束二三日、物的証拠なし」「見込みの捜査の結果」「捜査陣手痛い黒星」「『不当逮捕は明白』弁護団 苦悩隠せない警察、地検」なんということに変わるわけでありますね。
 それは、この人が悪い、Aさんが悪いという判断は、報道は、我々社会にも犯罪を憎むという意識がどんどん高まってきます。しかし、後でこんなことになりますと、法務、検察当局としては大変な不名誉ですよ。こんなことは本当に、「『不当逮捕は明白』」なんて、検察が不当逮捕を毎日やっているように書かれるわけですから。だから私は、このことにおいても、国家機関の大事な信用を失墜してしまうという観点からも、大事にこの犯罪報道というのを考えていきましょうよと言いたいわけでございます。
 そこで、例えば各国の例を引きますと、アメリカではこういうようになっているかというと、なってないんですよ。全然なってない。なぜなってないかというと、アメリカでは訴訟の国です、頻繁に訴訟が行われます。訴訟すると、名誉毀損でも賠償責任が出版社、マスコミ等々に発生します。その発生金額が尋常じゃありません。何億ドルというようにもなるわけでありまして、不名誉なこと、いわばプライバシーを侵害するようなことを一回書きますとその会社がつぶれてしまう、こういうことになるわけでありまして、そうすると、自動的に訴訟でチェックが働いているということであります。
 特に、ナイトローヤーといって、出版の前にその記事を名誉毀損かどうかチェックする弁護士が専門にずっといる。それは一般にナイトローヤーというふうに言われておりますし、そういうことを考えてみますと、どうしても我が国は、いわば犯罪報道された一般市民側に武器がなさ過ぎるんじゃないかなということを思わざるを得ません。
 スウェーデンとかあるいは北欧諸国なんというところに行きますと、オンブズマン制度、これは行政オンブズマンもありますけれども、プレスオンブズマンというのが徹底しているようでありまして、不名誉なことを書かれた場合に、このプレスオンブズマンに申し立てをすることによって自主規制の道を正しく選ぶことができる。例えばプレスオンブズマンが、あなたの言うこと正しいよ、こんな記事は事実無根だ、こういうことになりますと謝罪広告を載せていただけますし、また、相当の損害の費用も出すことを要求してくれます。さらに報道評議会という、政府も多少関与したような評議会も自主規制の中であるわけでございまして、そんなふうにアメリカでもヨーロッパでも工夫をしながら、一般市民を守ろう、そして国民を守っていこう、そういう工夫があるわけでございます。その工夫が我が国にないのが残念だというのが、私が先週からずっと申し上げている観点でございます。
 そう考えていきましたときに、例えば先ほどの市原市の少女殺人事件で容疑をかけられてやがて不起訴になった方、そういった人たちに対して、救済措置がむしろ法務省の側から、国の側から一あって当然ではなかろうか。例えば、まだまだ社会がそう熟していない、表現の自由の方が大事だということはわかります。しかし、例えば週休二日制を実現しようとするときには官庁から率先して実現していきましたでしょう。というように、やはり率先して、いいことは先に官庁からやってもいいのです。
 例えば不起訴になった、その人が既に犯罪報道があったというときには、不起訴を、どうぞ新聞の皆さん、これを載せてあげてくださいということぐらいはやっていいことじゃないかなというように私は思いますが、例えばこの市原市のAさんのような人に救済の道はないのか、その点について法務、検察当局にお伺いさせていただきます。
    〔島村委員長代理退席、委員長着席〕
#116
○則定政府委員 まず私の方から、被疑者として身柄を拘束され、それがまた相当の凶悪事犯であるということでそういう報道がなされたという事案につきまして、いわば司法手続の枠内でどういうことが考えられるだろうかということをまず御説明したいと思うわけでございますけれども、その前に、誤解のないように申し上げたいと思いますが、これらの強力犯につきまして、検察庁がみずから逮捕するというわけではございませんので、むしろ検察としては、そのような事犯について、検察としての独自の捜査を加えた上で、真に起訴するに足りるような嫌疑を持っているのかどうか、この辺を十分に捜査を尽くした上で、その後の裁判手続に乗せないという意味でのチェック機能を働かせておるということがあるわけでございまして、その点はひとつ御理解いただきたいと思います。つまり、検事として、検察としてふるいにかけているということでございます。その後の手続に乗せないという意味で、その後におけるいろいろの負担から事前にいわば解放するという点の役割も果たしているということを付言させていただきたいと思います。
 ところで、この司法の枠内で今のようなケースがございました場合には、いわゆる社会的制裁というところとは直接ございませんけれども、現在の法制度といたしましては、いわゆる被疑者補償規程ということにのっとりまして、拘束日数に応じて償いを金銭的に国から行うということは一つございます。これは指摘される場面とは違いますけれども、いわゆる救済という意味で申し上げれば、そういう点はございます。
 それからさらに、犯罪の端緒あるいは逮捕に至る経緯等につきまして、本件について具体的にいかなるものがあったかはわかりませんが、一般的に申しますならば、国家賠償なりあるいは当該被疑者から国あるいは報道機関に対する損害賠償等々の、あるいは名誉毀損による民刑両面にわたる訴訟による救済の手続というものがあることを付言させていただきたいと思います。
#117
○山本(有)委員 答えにくいことかもしれませんが、それによって十分に人権が回復され、それで最初の犯罪報道、特に実名報道による侵害を賄い切れるというようにお考えでしょうか。刑事局長、お答えしにくいかもしれませんが、あえてお聞きします。
#118
○則定政府委員 確かに答えにくい問題でございますが、あえてお答えしますと、一たん傷ついたそういう名誉というものの回復は確かに一般的に非常に難しいものであるということは私自身もよく理解できます。
#119
○山本(有)委員 そういうように答えていただきますと本当にありがたいと思いますし、その難しいということをこれからお互いに解消していきましょうよ。ぜひそういうことをお願いさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
#120
○高橋委員長 谷垣禎一君。
#121
○谷垣委員 このたび中井先生が法務大臣になられまして、私大変喜んでおります。大臣とは委員会も随分御一緒させていただきましたし、海外にも一緒に旅行させていただいたことなんかがあるのですが、こういうふうに質問させていただいて、また答弁していただく、これは初めてでございます。私、本来法務委員ではないのですが、きょうは差しかえで参りまして、これから大臣に質問させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 そこで、きょうの商法及び有限会社法でございますが、私が申し上げるまでもなく、明治の三十年代にできた法律だったんでしょうか。もう百年近くたっている。最初に描いた会社の姿も相当変わってきて、いろいろな大改正が行われてまいりました。
 最近でもこの二十年ぐらいとってみますと、昭和四十九年に監査制度の改正、それから五十六年には株式、機関それから計算、公開の大改正、それから平成二年、大小会社区分立法の一環としての改正、それから平成五年には社債、監査役制度、代表訴訟あるいは帳簿閲覧権、こういうふうに改正を行ってきたわけです。
 これだけ大きな企業をめぐるいろいろな環境の変化があると、これからも適時適切な改正というものが行われなければならないのだと思うのですが、このあたり一つの大きな流れの中でこれからやっていかなければならない。
 そのあたりの流れ、それからこれからの商法改正の方向、この辺大臣どうお考えか、まずそれを伺いたいと思います。
#122
○中井国務大臣 谷垣先生の御激励感謝を申し上げ、また一層の御指導をお願い申し上げます。谷垣先生、答弁資料がかなり長いものですから、その中をとって申し上げていきたい、このように思います。
 経済環境、また会社を中心とした経済活動、それに対する国民の目、それぞれ時代時代に応じて大きく変化をいたし、これからも変化をしていくであろうと考えています。また、ボーダーレスで、日本の大企業は言うに及ばず中小企業も含めて海外進出あるいは海外からの日本への進出、海外との取引の増加、こういったことが見られる中で、国際的な平準化あるいは国際的な均衡を常に考えていかなければならない、このことがまずあろうか、このように思います。そして、規制緩和の時代でありますから、企業ができる限り自由な形で活動できる、こういうところでの改正も考えていかなければなりません。同時に、その活動は常にお金というものがまつわるわけでありますから、ほうっておけば社会に対する大変な悪影響を与える、このことも事実でございます。
 これら三つを常に見据えて、国会での御議論あるいは学者の間での御議論といったことも常に注目しながら、これからも適宜ふさわしい改正を心がけていくべきだ、このように考えております。
#123
○谷垣委員 時代の進歩に合わせて適時適切な改正に努める、それは結構だと思うのです。
 それで、先ほど申しましたように頻繁に改正を行ってきたわけですが、こういう大きな時代の流れの中、会社法の変化の流れの中で、今までの評価といいますか、いろいろやり残したもの、積み残したものもあると思いますし、今までやってきたものの中でまだここが不十分だ、こういうようなものもあると思います。現在の段階での会社法制度の進展と申しますか、その中で商法制度がどこまでのことをやっているのか、極めて大きな質問でございますけれども、法務省の認識をまず伺いたいと思います。
#124
○中井国務大臣 私の認識の足りない技術的な、あるいは積み残し等については当局からお答えをさせていただける、このように考えております。
 企業に対する厳しい国民の指弾、これらに押されて、私どもは監査役の権限の強化、監査制度を立て続けに変更、改革を加えてきたところでございます。これらが十分に機能していくのかどうか、こういったことを十分見ていかなければならないと考えております。
 検察庁をおやめになった方がその後監査役という形で職が得られる、これは私どもは思いもかけぬ結果であろうか、こんなふうにも考えております。
 また、昨今企業関係の方にお会いいたしますと、この間改正を賜りました代表訴訟の改善については、企業の経営者、役員クラスにはかなり厳しい、こういう声もあるようでございますけれども、現実に厳しい中で身を律しておやりいただき、株主の利益というものを従来以上に守っていく、こういう方向が出てきているのではないか、このようにも考えております。
 また、最低資本金制度の導入、これにつきましては順調に推移はいたしておりますけれども、この場の論議という意味では少しふさわしくないかもしれませんが、私ども議員活動の中では、有限会社等は資本金を再来年までに上げるというのは大変苦しいのだ、何とかならぬのかという切実な陳情も手元にございます。しかし、社会の全体の中における会社あるいは経済活動の大きさといったものを考えれば、これは何とか乗り切って、今の時代にふさわしい会社経営がなされるように臨んでいきたい、私はこのように考えております。
#125
○濱崎政府委員 今後の改正作業への取り組みという点について、補充して御答弁申し上げます。
 先ほど山本委員の御質問に対してもお答え申し上げましたけれども、現在継続的にやっております会社法の改正の審議、これは昭和四十九年に監査制度を中心とする改正を実現させていただいた際に、衆参の法務委員会の附帯決議の中で、会社法についてはいろいろな観点から全面的な見直しをすべきだ、新しい時代に即したあるいは企業の社会的責任という観点にも立った全面的な見直しをすべきだという御指摘をいただいたことを踏まえまして、昭和五十年から全体的な改正項目を拾い出しまして作業に取り組んだわけでございます。
 当初は一挙に全面改正ということで取り組みましたけれども、何しろ幅が広い、会社経営に与える影響も非常に大きいということで、これを一挙に実現するということはなかなか難しい。それからまた、そのときどきの社会経済情勢に対応しなければならないという問題もあるということで、いわば細切れと言うと言い方が悪うございますけれども、部分、部分に応じて着実に改正を実現していくという方法をとっているわけでございます。御指摘をいただいた昭和五十六年改正、平成二年改正、平成五年改正、いずれもその全面改正の一環として実現をしてきているものでございます。
 しかしながら、なお残された問題はかなり広範囲にわたってございます。従来議論されてまいりました会社の計算書類の公開の問題でございますとか、それに関連する中小会社の計算の適正の担保のための監査にかわる制度の創設でございますとか、そういった問題もございます。さらには、会社の計算規定の全般にわたる見直しの問題、会社の合併法制の改正、あるいは新たな会社の分割法制の創設、それからさらには有限会社法も含めました中小会社区分のもっと抜本的な法制度の整備、こういったいろいろな問題がまだ積み残しということで残っているわけでございまして、これを実現するためにはさらに相当の期間をいただかなければならないと思っております。
 当面、今後の予定といたしましては、現在の法制審議会の議論におきましては、会社の合併・分割法制の整備ということから着手していきたいというふうに考えているところでございます。
#126
○谷垣委員 平成五年改正の中で、さっき大臣も触れられましたけれども、代表者訴訟が八千二百円でしたか、あれでできるようになった。大臣の御答弁の中では、企業関係者から大変厳しいという声も聞かれるというお話でしたが、あれができてから、この代表者訴訟の運用実態というようなものにどういう影響なり変化というものが見られるのか見られないのか、そのあたりちょっと伺いたいと思います。
#127
○濱崎政府委員 裁判所から聞いております事件数をまず御紹介したいと思いますが、昨年末、平成五年十二月三十一日現在で、地方裁判所及び高等裁判所に係属している株主代表訴訟の件数が八十四件ほどということでございます。それから、それに対しまして、一年前の平成四年末に係属しておりました代表訴訟の件数が三十一件であったということでございます。それから、現在係属しております八十四件のうち、平成五年改正の施行日である昨年の十月一日以降に提起された件数が二十八件あるということのようでございます。そういうことで、客観的に見まして、代表訴訟の利用が相当多くなってきているという現状にあるということが言えようかと思います。
 ただ、これは改正による影響ということはもちろんあろうと思いますが、それだけなのかどうか。やはりそういったことに対する国民あるいは株主の関心が高まった、昨今のいろいろな社会経済情勢の中で、そういう関心がこの法改正とは別個に高まってきているという観点もあるいはあるのかもしれません。いずれにしても、そういうことで、訴訟事件の件数はこの限りで見れば増加しているということが言えようと思います。
#128
○谷垣委員 それから、先ほど民事局長がお触れになった中で、計算書類の登記所における公開制度という問題がございますが、これはペンディングになっているわけですが、いろいろな不祥事を見ますと、経営の透明性を高めるための方策というものが検討されなければならぬ。五十六年に改正する前の条文では、すべての会社で貸借対照表を公告しなければならぬと決められていたわけですが、最も守られていない規定だというふうに言われていた。五十六年改正で、対照表の概要というか要旨で足りる、大会社では貸借対照表、それから損益計算書の要旨をやればよい、こういうことになったわけですが、平成二年のときの法制審議会の決定ではこれを、商業登記所で計算書類を公開するよう検討項目に加える、こういうことでしたが、あのときの法改正には入らなかった。たしかあの附帯決議の中でも、これはさらに検討を進めよ、こういうことであったと思いますが、この点の検討状況についてどうなっておりますでしょうか。
#129
○濱崎政府委員 御指摘のとおり、現在、商法上計算の公開の制度として決算公告の制度がありますけれども、一部の大会社を除いて、ほとんどの会社において守られていない。そこで、そういう官報または日刊新聞紙における公告といったようなものではなくて、もっと簡便で経済的で負担も軽い、そして利用者からも利用しやすい計算の公開の方法として、商業登記所において計算書類を公開するという制度が提案されたわけでございます。
 御指摘のとおり、平成二年の改正の際の法制審議会の答申では、その事項が盛り込まれておったわけでございますが、その後いろいろ関係方面と意見調整をします中で、この問題についてはもっと関係方面の理解をさらに得るべく努めるべきであるということになりまして、その際の改正では見送りとなったということでございます。
 私どもといたしましては、引き続きこの問題は大変重要な課題であるというふうに考えておりますし、今御指摘いただきましたように、その後の国会の附帯決議にもあることでございますので、次の商法改正の際には何とか実現をいたしたいというふうに考えておりますが、この問題をめぐりましては、既に御案内かと思いますけれども、まずもって中小会社サイドの理解を得なければならないということ、それから公開する計算書類がでたらめなものであっては困るので、その適正を担保するための方策があわせて考えられなければならないという意見もございます。そういったことを踏まえて、なかなか調整は容易ではないという問題でございますけれども、そういった諸状況も踏まえまして、できるだけ成案を得るべく努力してまいりたいと考えております。
    〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
#130
○谷垣委員 今民事局長おっしゃったように、これはなかなか調整が難しい問題だと思いますが、ぜひ前へ進めていただきたいと思います。
 それから、さっきまたお触れになった中にちょっとあるわけですが、監査にかわる調査といいますか、会計調査人、これもなかなか調整が難しくて、積み残しになっている課題だと思います。これは、だれがやるかということで、業際利益というのが非常に難しい課題になっていると思いますが、このあたりはどの辺まで今検討が進んでいるのでしょうか。
#131
○濱崎政府委員 今委員もこの問題の難しさというのは概要御案内かと思いますけれども、この問題については、直接の利害関係人である公認会計士会それから税理士会、そういった方々との間で継続的に勉強会、検討会というものを継続しておるところでございまして、その中で何らかの調整可能な案が得られるべく努力を続けているという状況でございます。
#132
○谷垣委員 いろいろな商法改正の検討状況をちょっと離れまして、今度の改正そのものの問題に入っていきたいと思うのです。
 現行商法二百十条によって、自己株式の取得を原則的に禁止しているということだと思いますが、このたびその取得規制を緩和することにしたわけですね。今までこの自己株式取得規制の緩和論というのは、そのときどきの経済情勢、企業環境の変化によってずっと昔からあった議論だろうと思います。それで、重点も時代時代によって随分変わってきたのだと思うのですが、経済界と、あるいはその法律家と申しますか商法学者と申しますか、若干ニュアンスの違いなどというのも議論にずっとあったように思います。私自身は、この二百十条の原則的禁止というのは十分理由があることかなと今まで考えてきたわけでございます。
 よく言われるように、昔は社団が自己株式を取得すること自体背理だというような概念法学的な理論もあったように聞いておりますが、よく言われますように、資本維持だとか株主平等だとか支配の公正さだとかあるいは株式取引の公正というような政策的目的を達成するためには、原則として禁止するという態度は、それなりに理由のあるものだと思ってきたわけですね。
 しかし、今回その取得規制を緩和することにしたその考え方といいますか、経緯といいますか、背景といいますか、ちょっとそこらあたりを御答弁いただきたい。特に、今までとってきた原則的な態度というものが、緩和したのだからそれは変化したのでしょうけれども、本質的な政策転換というようなものが何かこの背後にあるのかどうか、ひとつ。
     〔山本(有)委員長代理退席、小澤(潔)
    委員長代理着席〕
#133
○濱崎政府委員 現行法で厳しく規制しておる制度、これは委員御指摘のような会社法上あるいは証券取引法上の公正の確保という観点から、原則禁止という制度ができているわけでございます。しかし、これは主要諸外国の立法例とも比較いたしましても、我が国の規制というのは最も厳しいものでございます。
 それから、委員御指摘のとおり、これはもう随分前から、経済界からはさまざまな理由でその緩和が求められてきたわけでございます。従前は、実務界の方が求める緩和というのは、いろいろな目的のためにも使える、しかも、会社が取得して、これを保有して、それを処分するということもかなり自由に認めるというような視点からの要請であり、他方、商法の立場からいえば、そういうものは基本的なこれまでの考え方に適合しないということで、いわば両にらみの状況にあって推移してきたということが言えようと思います。近年になりまして、経済界の要請を受けて、それは、経済界の要請を全部入れるということはできないけれども、しかし、これまで指摘されている弊害を防止し得る措置を講じた上で、その弊害を防止する範囲内でのいわば規制の緩和という方法は、もう少し詰めて考えればあるのではないかというよケな考え方も次第に有力になってまいりました。
 さらに、政府の考え方といたしましても、今回の改正については、直接は本年二月の経済対策閣僚会議の決定である総合経済対策の中で、規制緩和の一環としてこの趣旨の改正を実現すべきだということが打ち出されているわけですが、その前から、昨年の四月には経済対策閣僚会議の「総合的な経済対策の推進について」という決定がございましたし、さらにさかのぼりますと、平成四年の経済対策閣僚会議の緊急経済対策の時点から、規制のあり方について検討すべきだ、こういう指摘があるというような状況が出てきたわけでございます。
 今回の改正は、そういった諸情勢、それから先ほど申しました、商法の学者の中の考え方も時代の変化に伴ってそういった考え方も出てきた。それから、経済界の意見が大変強いものがあるということを踏まえまして、また、諸外国の立法例との調和を図るという観点を踏まえまして、平成四年四月から、どういう方法でやればそういう弊害を除去しつつ一定の限度で経済界の要請に対応することができるかという観点で審議を重ねてまいりまして、その結果今回の法制審議会の答申をいただき、そしてそれを法案として立案させていただくということになったわけでございます。
 したがいまして、自己株式の取得を一定限度以上認めれば、そういった商法上の弊害それから証券取引上の弊害、そういうものがあるという基本的な考え方は変わっておらない、ただ、そういう弊害を除去し得る範囲内で一定の限度で緩和する道があるのではないかということで、今回の改正案を提案させていただいているわけでございます。
 結論的に言えば、基本的な考え方が変わったわけではないというふうに理解しております。
#134
○谷垣委員 そこで、この自己株式の取得規制の緩和は、今までも経済界からもいろいろな要望が出ていたということを申し上げたわけですが、いろいろな形があって、特に今回は、平成三年の暮れか四年の初めごろから自己株式取得緩和という議論が大きく出てきたように記憶をしているのですが、経済界からもそういう議論があったと思いますし、あるいは政府の経済対策の中にも議論があったと思いますが、その当時の議論というものと現在に至る段階の自己株式取得緩和の議論というものに何らか変化があるのかどうか。つまり、若干経済情勢も変化をしてきていると思いますが、依然として経済界等の考え方といいますか、主張というものは、同一の主張を維持しているのかどうか、このあたりはいかがでしょうか。
#135
○濱崎政府委員 結論的に申し上げますと、経済界の基本的な要望のスタンスというのは変わっておらないというふうに認識しております。現時点におきましても、経済界におきましては、従業員持ち株制度の充実あるいは利益による株式の消却ということによって相当の企業活動の円滑化を図ることができるということで、今回の改正の早期の実現を希望しておりますし、さらには今回の改正は、要請という観点からいえば、一定の部分について対応するという内容でございまして、そのすべてを実現するものではないわけでございますけれども、やはり経済界の本音といたしましては、もっと大幅な緩和をという声があるということも、当時と現在とで基本的に変わっておらないというふうに認識しております。
#136
○谷垣委員 先ほど、海外と比べると日本の自己株式取得はかなりタイトであるというお話がございましたが、海外の法制はこういう理解でよろしいでしょうか。アメリカあたりは原則自由である。EC諸国というのは、基本的な考え方は日本と同じように原則はだめだが例外を認めている。ただ、その例外は日本よりも緩やかである。つまり、日本とアメリカの中間ぐらいがヨーロッパである。大体こんな認識でいいのでしょうか。
#137
○濱崎政府委員 御指摘のとおりであるというふうに思っております。
 なお、ECと我が国の現行制度を比較いたしますと、今御指摘のとおりなのでございますけれども、もっと平たく言いますと、我が国の現行制度は、いわば会社の活動上不可避的に自己株式を取得せざるを得ないという場合に例外的に認めておる。それに対してECの場合は、国によっていろいろ要件、取得の事由というものに違いがございますけれども、一定の限度で会社が一定の目的を達成するために、会社の判断によって自己株式を取得する道を認める。そこのところが違うところでございまして、今回の改正は、大ざっぱに申し上げればEC諸国並みの水準に改正するというふうに申し上げてよろしかろうかと思っております。
#138
○谷垣委員 そこで、改正された二百十条ノ二でありますが、今度のこの立法で、使用人に譲渡するための自己株式の取得を認める、こういうことになったわけですね。ここで言う「使用人」とはどういう方を意味するのか、従業員持ち株会に加入している人に限られるのかどうかということ、ちょっと細かなことですが。
 それとあわせて、「使用人」という場合には普適役員等は入れない概念だろうと思うのですが、ちょっと質問が広がりますけれども、経済界の要請の中には、例えばストックオプション制度なんかを取り入れていくことが国際競争力を高め、企業の魅力を高めるためにも必要ではないか、そういうような議論もあったと思うのですね。今回の商法改正ではストックオプション制度みたいなのは取り入れないということになっているんだと思うのですが、ちょっとその「使用人」の概念と関連して、役員等はどう考えているのか。まあストックオプションは役員だけには限られないのかもしれませんが、そのストックオプション等に対する今回の法制審議会なり法務省の判断ですか、そのあたりをちょっと伺いたいと思います。
#139
○濱崎政府委員 まず「使用人」の概念でございますが、これは日常用語としては従業員と言った方がおわかりいただきやすいわけでございますけれども、いわゆる従業員すべてを含む概念でございます。これは、商法の現行の規定の中では、すべて従業員という言葉を使わないで「使用人」という言葉を使っております。例えば商法の二百七十六条では、監査役と使用人を兼ねてはならぬという規定がございますが、そこで「使用人」という言葉を使っているというようなことから「使用人」という言葉を使ってあるわけですが、結論的に申し上げますと、先ほど申しましたように、従業員すべてを含むということでございます。
 今回の改正の主たる目的は、御指摘の従業員持ち株会の運用上の隘路を解消して、その制度の円滑な運用に資するということを目的とするものでございますが、しかしながら、法文の規定上、「使用人」はもちろん従業員持ち株会に加入している使用人に限られるわけではございませんし、「正当ノ理由アルトキハ」使用人に譲渡するために自己株式を取得することができるというふうに規定しているわけでございます。この「正当ノ理由アルトキ」というのは、会社が自社の株式を使用人に譲渡するということについて、そのことが会社の業務の運営あるいは従業員の福利厚生などに資するという場合を意味するわけでございまして、従業員持ち株会に譲渡する場合のほか、例えば永年勤続あるいは特別の功労ある使用人に譲渡するための取得というようなこともこの規定によって認められるということでございます。
 次に、役員の問題でございますが、まず我が国の運用といたしまして、役員の持ち株会というのもあるというふうに聞いておりますが、これは人数が少なくて規模が小さいということから、従業員持ち株会のような運用上の隘路は必ずしもない、現行、規定がなくてもそれなりに運用できるということで、従業員の場合と異なってその必要性は少ないということと、それから取締役に自己株式を譲渡するということになりますと、いわゆる会社と取締役との間の利益相反行為、自己取引の場面に該当するということで、御案内のとおり、その自己取引については大変厳しい規制をしておりますので、その関係で非常に複雑な手当てを要するということが考えられる、そういうことから、これは使用人に限っているわけでございます。
 なお、アメリカで認められているストックオプション制度の我が国への導入という要請もかねてからあるわけでございます。しかしながら、いろいろ実情を聞いてみますと、いわゆるアメリカのストックオプション、これは役員に新株の取得権を認めるということで、株式そのものを与えるということではないようでございますが、そういう制度というのは必ずしも我が国の会社の役員の考え方の中で、そういうものがぜひ欲しい、大いに利用できるというような意識が必ずしも一般的ではないように聞いております。
 そういったことと、やはり役員との間の問題になりますと、今申しましたような利益相反の問題が生ずるというような観点から、今回の改正では、アメリカの制度に倣ったストックオプションという制度の導入は見送るということになったわけでございます。
#140
○谷垣委員 この規定は、先ほどの局長のお話の中にもありますように、従業員持ち株会等を円滑に機能させるためのものだと言われている。そこで、その円滑に運用するために自己株式取得の規制の緩和を認めることが必要だというのは前から言われていたことでありますが、緩和するためと言われているのは、持ち株会の運営者といいますか、そういう人が余りいろいろな裁量をして株価の操作とかいろいろな不公正な運用をしてはいかぬ、そういうことから特定の日に買い付けるというような形になっているんだろうと思いますが、そうすると、その日に大量の買い付けが入るということがわかって株価が上がるとか、あるいはその日に買えないとか、そういうことを緩和するために自己株式取得というものを緩和する必要がある、これがこの条文の背景にある理由だと思うのです。
 私は、従業員持ち株制度をもっと進展させるためにこういう緩和をしていくのは必要だと思うのですけれども、一方、そういう今までの運用状態を改善するというようなことによってはこの従業員持ち株制度を伸ばしていくことはできなかったのかという、やはりこれはどうしても自己株式取得緩和というものに頼った方がよいという、そのあたりもうちょっと詳しくおっしゃっていただきたいと思います。
#141
○濱崎政府委員 御指摘のとおり、従業員持ち株会の株式の取得の仕方は、代表者である理事長が毎月一定の日、給料日だとか給料日の翌日とか日を定めて機械的に買い付けをしている、それで今御指摘のような隘路があるということでございますが、それを少し工夫してもう少しうまいやり方をする道があるのではないかという御質問と伺いましたけれども、どうしてそういう買い付けの方法をしているかと申しますと、これは一つは証券取引法上のインサイダー取引規制の関係がございます。これは、従業員というのはインサイダー取引規制上の会社関係者とされておりますので、その規制を受けないようにするためには、あらかじめ買い付けの計画を決定しておいて、その決定に従って買い付けを行う必要がある。そうでなくていつでも随時買い付けをすることができるという運用をいたしますと、そのインサイダー取引の規制に反するという指摘を受けるおそれがある、そういうことになっては大変だということで今のような運用をしているということが一つ。
 それから、理事長が任意に買い付けをしますと、高値で買ったというような批判を後から会員から受けるおそれがある、どうしてもそういう懸念を払拭することができないというようなことでございまして、これは実務界の方々に聞きましたところ、これは現行制度のもとではどうしてもこういう運用をせざるを得ないということのようでございます。
 この従業員持ち株会制度というのは我が国に定着してある程度年月がたっわけでございますが、その間の経験にもかかわらずそういう取り扱いをせざるを得ないということは、やはり実務的にそうせざるを得ないということのようでございます。
#142
○谷垣委員 従業員持ち株会は、会社の業績が悪化したときは加入している社員、従業員が二重の損失をこうむるというような批判もあるわけですけれども、しかし、社員の方から見てみて、企業の奨励金等が入ったりして、従業員の複利厚生という意味からいいましても、あるいは企業の方から見ても、その企業で働く魅力を高めるという意味合いからいっても、私はもっと伸ばしていかなきゃならぬ制度だ、こういうふうに思っているのです。
 諸外国の立法例、私もよくわからないのですが、アメリカあたりではこの従業員持ち株制度に相当する制度が日本よりもはるかに普及し、使われている、こういうことを聞くのですが、そのあたりの諸外国の、アメリカあたりの実情と日本とどのような違いがあるのか、お伺いします。
#143
○濱崎政府委員 今回の改正案と同じような趣旨で従業員持ち株会の運用に資するために会社が自己株式を取得することができるという法制をとつている立法例としては、ドイツ、フランスの例がございます。そのほかアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ等におきましては、これは商法上の観点からというよりも、むしろ経済活性化の手段あるいは社会保障制度の補完という観点からの従業員持ち株会制度というのが別個に法制化されて
 いる。その従業員持ち株会制度の運用に際して、会社あるいは従業員の双方にいろいろな面でそれを促進するための措置が講じられているというふうに承知しております。
#144
○谷垣委員 それでは、従業員持ち株会のところから株式の消却のところに移ります。
 今回の改正によりまして、従来の二百十条それから二百十二条で認められていた株式の消却に加えて、株主総会の決議によって、配当利益によって行う株式の消却の制度が認められたわけですね。従来、商法二百十二条によって認められていた株式の消却、これは資本減少の場合と利益をもってする消却の場合と両方があったわけでありますが、利益をもってする消却というのはほとんど使われていない制度であったというふうに聞いているわけです。
 その使われていなかった理由は、一つはみなし配当課税の問題があるわけですが、これについてはあす我が党の津島委員がこのあたりを質問されるというふうに聞きましたので、ちょっときょうは法務省だけお呼びしておりまして、法務省に伺うのはなんですが、これはこの間の租税特別措置法で一応の解決を見たということでよろしいんですね。
#145
○森脇政府委員 みなし配当課税の問題につきましては、二つの面でこの課税がなされるという形になっております。
 一つは、消却のために会社に売り渡した株主に対するみなし配当課税の問題。もう一つは、会社に譲渡せずにずっと保持していた株主に対するみなし配当課税の問題、この二つがあるわけでございます。
 この利益消却の一番ネックになっておりましたのは、株式をずっと所持し続けている者に対するみなし配当課税。何ら行為をしないにもかかわらず課税をされてくる、こういう関係でございます。しかも、この点につきましては、会社においてそのみなし配当課税分を源泉徴収しなければならない、こういう形になっておりました。今度の租税特別措置法によりまして、その会社の源泉徴収義務がなくなったということでございまして、みなし配当課税の問題すべてが今回の租税特別措置法で解決されたということではございません。
#146
○谷垣委員 みなし配当課税の問題もまだ残る問題がある、こういうことですが、もう一つ、この利益消却を扱われなかった理由は、利益消却を実施するためには原始定款または改正した定款において消却の基本条件を定めることが前提とされていたわけですが、原始定款に消却の規定などを置く例は余りないでしょうし、さりとて、この場合の定款改正がどうだというと、株主全員の一致だというような意見もあり、そうでない意見でも株主総会の特別決議だというに至っては、従来の株式消却制度はなかなか使えなかったということなのだろうと思うのですね。
 それで、今度の新しい消却制度は、その点、今までのよりも大分自由に使えるようになって、従来、自己株式の取得緩和を認めろと言われていた問題が、この規定の新設によってかなり解決をするのではないか、こんなふうに思っているわけですが、その場合、株式の消却をした場合に、一体資本はどうなるのか、授権株式数についてはどうなるのかという議論があるだろうと思います。
 教科書を見ますとさらっと書いてありますが、従来、ほとんど例がないというと余り詰めた議論なのかどうかという気もするわけですが、今回のこの改正ではこのあたりの議論というのはどのよ
 うに整理されているのか、お伺いいたします。
#147
○濱崎政府委員 まず、株式の消却と資本の関係でございますが、株式の消却をいたしますとその分だけ発行済み株式の総数が減るわけでございますけれども、御案内のとおり、現行商法の規定は、株式会社の資本といわゆる株金総額、一株の額面金額等に発行済み株式の総数を掛けたものとの関係を切断しております。したがいまして、株式を消却したからといって、資本がその分直ちに減少するということには、そういう関係にはなっておらないわけでございます。
 現行の二百十二条一項の本文の資本の減少の場合の株式の消却、これは当然、資本の減少を伴うわけでございますけれども、現行の二百十二条一項ただし書き、今御指摘の定款の定めに基づいて配当すべき利益をもってする消却、これは配当すべき利益をもってするわけでございますので資本の減少を伴わないということでございますし、今回改正案で提出しております新しく設けました株式の消却については、これは取得の原資を厳格に配当可能利益の範囲に限るということにしておりますので、当然に資本の減少を伴わない。資本の減少を伴うようなものであってはこれはまさに問題でございますので、そういうことがない範囲内で取得を認めることにしているわけでございます。
 それから株式の消却と授権株式数との関係でございますけれども、これは結論的に申しますと、株式を消却して発行済み株式総数が減少いたしましても、既に授権の範囲内で使った授権枠というものはこれによって復活するものではないという考え方、これは一致した見解でございます。
 その際に理論上の問題といたしましては、授権株式数自体が減少するということになるのか、あるいは定款の変更をしない限り授権株式数はそのままである、授権株式数はそのままであるけれども、一たん授権に基づいて発行した株式数は消却によって発行済み株式総数が減少しても復活することはない、こういうふうに考えるのか、その二つの考え方がございますけれども、いずれにいたしましても復活することはないという点においては学説の考え方は一致しておるということでございまして、法制審議会の審議でもそういう考え方を前提にして議論がされております。
    〔小澤(潔)委員長代理退席、委員長着席〕
#148
○谷垣委員 そこで、今回の新しく設けられた株式の消却規定には、先ほどの使用人に譲渡するための自己株式のように正当の理由というようなことが条文上書いてないわけですね。恐らく別に特定の理由がなくても配当可能の利益の中ならできるという規定になっているわけですね。そうしますと、これもちょっと理屈のような話かもしれませんが、自己株式を取得して株式の消却をする、その後また短期間のうちに新株を発行するというようなことは理論上可能だということになると思うのですが、商法上可能なのかもしれないけれども、いささか問題のような気もするわけですね。自分の持っている株式が自分のところの実力以上に市場に出回り過ぎて少しでもそれを減らしたいというようなことで減らして、その後すぐ新株を発行するなんというのでは、価格操作やなんかに使われるおそれはないのかというようなことを感ずるわけですけれども、これは商法の問題なのか証取法の問題なのか、ちょっとそこらはわかりませんが、商法自体を見る限りは、今回そのあたりに対する別段の配慮と申しますか規定はないように思いますが、この辺はいかがでしょうか。
#149
○濱崎政府委員 新株の発行は一般的には取締役会の決議によってするということでございますし、今回の株式の消却のための自己株式の取得は定時総会の決議に基づいて行うわけでございますが、御指摘のとおり、それぞれの行為について、どういう時期にやらなければならないかという関係の規定はないわけでございまして、その相互の関係についても特に規定はないわけでございます。
 要するに、いつどういう状況のもとで新株を発行しあるいは株式の消却をするかということは、取締役会あるいは株主総会の御判断、広い意味で経営判断にゆだねられるということでございまして、商法の立場から申しますと、これはその決定をする取締役会あるいは定時総会の議案を提出する取締役会、そういった取締役の経営上の判断の問題であり、それを誤った場合には取締役の責任等の問題で対応するということになるわけでございます。
 ただ、今ちょっと御指摘がございましたように、例えば株式を公開している会社が次に予定している新株発行等の条件を有利にするために自己株式の取得によって株価を上昇させようというようなことをいたしますと、これは証取法で禁止されている相場操縦行為に該当する場合もあり得るわけでございまして、そういう場合には同法違反に問われるということになる場合もあると存じます。
#150
○谷垣委員 それから今度の自己株式取得緩和の議論の中で、株式の持ち合い等の関係の議論もございます。系列等は日米構造協議でも大変議論になり、これからも議論のあるところだと思いますが、そういう日米構造協議をまつまでもなく、我が国の会社の、法人の持ち合いといいますか、それが我が国の企業の重要な特徴の一つである。それをどう評価するかというのもいろいろでしょうが、少なくとも日米構造協議等では系列の解消というようなことが大きな議論になっている。しかし、こういう自己株式の取得の緩和を認めたからといって、持ち合いの解消ということにはすぐつながらぬと思うのですが、このあたりの議論、法制審議会あるいはこの法案にまとめられるに当たってどのような整理がなされているのか、伺いたいと思います。
#151
○濱崎政府委員 今回の改正は、自己株式の取得に関する制度を、会社法上の制度をより合理的なものにするということを目的とするものでございまして、御指摘の株式の相互持ち合いを解消するということを直接の目的にしているものではございません。ただ、経済界から、株式の相互持ち合いを解消したいと考えるときに、その受け皿として自己株式の取得あるいはそれによる株式の消却という方法を利用する道が一つできるということで歓迎する向きがあり、そしてそういうことであれば、今回の株式の消却という方法によってそういうことに対応するということも可能でございますので、今回の改正によって、上場会社等の公開会社におきまして定時総会の決議によって自己株式を消却することができるようになる、そしてその取得方法としていわゆる公開買い付けによる方法も認められることになるということから、解消したいという場合の一つの手段ができるという意味で、そういう観点からの相応の意義を有しているというふうに考えておりまして、法制審議会の議論もそういう整理でなされております。
#152
○谷垣委員 今回の改正では、使用人に譲渡するためのものとか、あるいは閉鎖会社、譲渡制限がある株式についての場合は、ある意味では特殊な場合、特殊というのは言葉がいいかどうかわかりませんが、比較的限定されたものだと思うのですが、利益による消却というものは、かなり一般的といいますか、幅広い使用が可能だという制度、今までに比べるとここのところは相当緩和が進んだ領域ではないかと思うのです。
 そうすると、もとの問題に戻りまして、こういう制度によって、従来自己株式取得を認めた場合の弊害と言われていた株価操縦の問題であるとか、あるいはインサイダー取引の危険というものがどうなってくるのか、今回どのようなそういう危険を回避するための措置が考えられているのか、そこを伺いたいと思います。
#153
○濱崎政府委員 御指摘のインサイダー取引のおそれあるいは株価操縦のおそれ、その懸念というのは、従来から経済界が要望しておりますように、会社が自社株を自由に取得することができるのみならず、それを保有して、そして随時、任意に売却することができる、こういうことになりますと大変その懸念が大きくなってくるわけでございます。
 今回の改正におきましては、会社の取得は一定の範囲で認めるということでございますが、消却の場合につきましては、直ちにそれを株式として失効させるということでございまして、保有、それから保有後の処分は認めない。それから、そのほかの場面におきましても、できるだけ早く一定の目的のために処分しなければならないということで自由な保有、処分を認めておらない。そういうことでございますので、総体的にインサイダー取引あるいは株価操作の懸念も比較的少ない範囲で今回の改正を実現することができると考えているところでございます。
 ただ、それにいたしましても、会社が株式を取得することによってそういうおそれがあるわけでございまして、その問題につきましては、法制審議会の審議と並行して、証券取引審議会の方で商法改正の動きをにらみながらそのための対応を慎重に御検討いただきました。
 その結果、インサイダー取引の関係では、自己株式の取得を行うという会社の決定、これを内部者取引規制上のいわゆる重要事実として追加する、これによって、自己株式の取得についての会社の意思決定を公表した後でなければ、会社あるいは会社関係者はその株式の取引をすることはできない、こういう規制を証券取引法の改正において実現するということで、現在法律案を提出していただいているところであります。
 一方、株価操縦についても証取審の方で御検討いただきましたが、これにつきましては、今回新たに自己株式の取得を認めましても法改正をするまでの必要はない、現在の規定の運用上、この問題についても一定の留意すべきことについて十分な配慮をすれば、それで対応することができるという答申内容であったと承知しておりまして、そういうことで運用上の適正な対応をしていただけるというふうに考えております。
#154
○谷垣委員 それでは今度、譲渡制限がある株式についての特例について伺います。
 譲渡制限がある場合に自己株式取得ができるようにした、これはなかなかメリットのある制度ではないかと思うのですね。譲渡の相手方がなかなか見つからない場合は、会社に好ましくない人物への譲渡を認めざるを得ないような場合が出てくる。あるいは閉鎖会社の株を相続したような場合に、なかなか相続税を払うのに困難を感じておられる例、これは現実に私も見聞きしておりますけれども、そういう場合に、適当な譲り渡し人がなかなか見つからない場合には会社がその自己株式を取得してくれるというのは、相続人にとってもメリットがあるということで、閉鎖会社の場合、投下資本の回収というものがなかなかスムーズにいかないわけですけれども、そういう意味合いにおいてもこの新しい制度は意義があるのではないか、こう思っているわけです。
 そこで、その場合、取得した自己株式について相当の時期に処分することを要するもの、こういう規定になっているわけですが、この場合の「相当ノ時期」というのはどういうことを意味しているのか、伺いたいと思います。
#155
○濱崎政府委員 この「相当ノ時期」という表現は、自己株式を取得した場合の処分すべき時期として現行の二百十一条に定めている文言そのままでございまして、考え方は現行法の解釈と同様でございます。
 これに対する概念として、遅滞なくという概念がございますが、遅滞なくという程度には迅速さを要請されない、言ってみれば、できるだけ早い時期に、かつ会社にとって不利でない時期にということでございます。
 これは、ともかくすぐ処分しなければならないということになりますと、会社に経済的な損失を与えることになりますので、そういう損失を生ずることがないように、かつできるだけ早くということでございまして、具体的な判断は、個々のケースに応じて取締役が善管義務に従って合理的な経営判断のもとに処理すれば足りるということでございます。
#156
○谷垣委員 相当な時期に処分せよということですが、この条文を読みますと、適当な買い取り先を見つけることができない場合には、いつまでも持っている、自己株式を保有し続けることになるのじゃないかと思うのですが、それは会社財産の健全性の見地から問題はないかということですね。その辺のことをちょっと伺いたいと思います。
#157
○濱崎政府委員 今申しましたように、商法の立場としては、できるだけ早く適当な買い受け人を見つけて処分するということが好ましいわけでございますけれども、そういう場合に、方法としては株式を消却させるという方法も考えられるわけでございますけれども、株式を消却させたのでは、もともと中小規模の会社の要請に応じてこういう手続を設けた意味が極めて少なくなるということで、その要請に応ずるためには、やはりできるだけ早く処分することができるまで保有を認めるという法制をとらざるを得ないというふうに考えた次第でございます。
 会社財産の健全性からの問題というのは、確かにどうしても買い受け人が見つからないという場合にはあるわけでございますけれども、それは発行済み株式総数の、相続の場合の取得と合わせて五分の一という範囲内ということにしておりますし、もともと取得について配当可能利益の枠内でということにしておるということで、全く問題がゼロであるというふうには申し上げませんけれども、制度を認めることによって会社の健全性が基本的に害されるという事態は懸念する必要はないというふうに考えておる次第でございます。
#158
○谷垣委員 私の持ち時間ももう少なくなりましたので、最後に一つだけ伺いたいのですが、今度の自己株式取得の緩和が株式会社の企業金融と申しますか、そういうもの全体に与える影響というのはどういうふうに見ていったらいいのか。実は、これはこういう御質問を通告してなくて、最後に急につけ加えて申しわけないのですが、どんなふうに見たらいいのか、今お感じになっているところをお聞かせいただきたいと思います。
#159
○濱崎政府委員 今回の改正は、会社、経済界のいろいろな要請のもとに、先ほど来申し上げたような観点で、商法上の資金運用の合理化という観点で改正したものでございまして、それが今御指摘の資金調達のあり方とかあるいは会社金融のあり方とか、そういうものにどういう影響を与えるかということは、これは私ども直接それを目的とするということではないものでございますから、正しくつまびらかに認識しているわけではございません。
 例えば、今回の消却のための自社株の取得ということによって、発行済み株式総数が減少することに伴って将来の配当コストが少なく抑えられるというような効果、そういったことが具体的な企業サイドの目指すところというものの例として聞いておるところでございます。
#160
○谷垣委員 それでは、これで質問を終わります。どうもありがとうございました。
#161
○高橋委員長 坂上富男君。
#162
○坂上委員 坂上富男でございます。委員長御苦労さんでございます。また大臣以下皆さん御苦労さんでございます。
 本日は、商法改正について私に九十分の時間を与えていただいたわけでございますが、ちょっと緊急な事態が起きてまいっておりますので、しばらくそちらの方に時間をとらさせていただきたいと思っておるわけでございます。
 御存じのとおり、きょう新聞の報道でも私たちはわかったわけでございますが、京都府警におきまして、朝鮮学園の捜査において大変な不法捜査が行われたという事態が判明をいたしたわけでございます。そこで、法務委員会の任務、法務の任務といたしましては、いわゆる人権擁護の観点から見てもこの問題は大変重大な問題ではなかろうか、こんなふうに思っておるものでございまするから、人権擁護の角度からこの問題を少し皆様方からお聞きをさせていただきまして、意見を述べさせていただきたいというふうに思っておるわけでございます。
 まず一つは登記の関係でございますが、国土計画法に基づきまして届け出を必要とする土地については登記の関係はどうなるのでございましょうか。何か届け出たという証明を必要とするのでしょうか。所有権移転の場合、これはどうなりますか。登記の方はおりませんか。
#163
○濱崎政府委員 登記の方は民事局の所管でございますが、突然の御質問でございまして、私十分に調査してまいっておりません。お許しいただきます。
#164
○坂上委員 民事局長、登記のことについても調べてこいよというふうに要請をしておいたわけでございます。だれがやるのだろうと言ったら民事局長だ、こういう話でございますから待っておったわけでございますが、これは後でいいです。(中井国務大臣「調べさせます」と呼ぶ)はい。
 さてそこで、今回の捜査の対象になった土地でございますが、これは登記はどうなっていたのでございますか。何か新聞によると、仮登記だけできていたのでしょうか。どういうふうになっていますか。
#165
○瀬川説明員 登記はされていたものと承知をしております。
#166
○坂上委員 所有権移転登記ですよ。
#167
○瀬川説明員 はい。
#168
○坂上委員 今お答えは警察の方でございましたか。──所有権移転登記ができたということになりますと、これは国土計画法に基づく届けがなくともこういう土地については所有権移転登記というのはできるのですか。これはどうなんです。
#169
○濱崎政府委員 御質問の通告をいただいているというふうに今お聞きしましたが、私この事案の関係についても今初めて承知したような次第でございまして、的確な答弁をいたしかねることをお許しいただきたいと存じます。
#170
○坂上委員 民事局長さん、大変恐縮でございました。急な話をずっと、しかし連絡だけは確実にしてあること、突然の質問というのは私はしないことにしていますから、どうぞ御理解ください。
 なぜこういう質問をするかといいますと、登記簿謄本はとったのだろうと思うのです、この土地二筆について。所有権移転登記がなされておれば、国土計画法による届け出は、何かやはり届け出があって初めて所有権移転登記ができるのじゃなかろうかと私は素人なりに思っているから聞くわけであります。だから、もしこれが届け出が必要である、しかも届け出ていないのになぜ登記ができるのだろうか。やはり登記できないのだろうと思うのです。届け出があったればこそ登記ができたのじゃなかろうか、こう思っての質問なのでありますが、そうだとすると、この今回の捜査というのは本当に幼稚な、致命的な違法の捜査がここの中から始まったと私は見ているのですが、これはどうですか。
#171
○瀬川説明員 お答えします。
 私ども、国土利用計画法違反事件等を年間数十件検挙をしているわけでございますが、そのような捜査実務等を通じましても、所有権移転登記がなされているにもかかわらず、国土利用計画法に基づく届け出がなされていないという例が多数あるものと承知をしているところでございます。
#172
○坂上委員 国土庁、おられますか。これはどうですか。もう所有権移転が届け出しなくてもできるんだということなら、これは余り意味がないじゃないの。どうですか。
#173
○二木説明員 国土法の世界では届け出と登記とは直接は関係ございません。
#174
○坂上委員 そうしますと、届け出してあろうがなかろうが、国土計画法に基づくところの土地である場合は、それとは全く無関係に売買契約、そして登記申請、関係書類があれば登記はできるのですね。
#175
○二木説明員 国土計画法では、売買の前に届け出をしてくださいという仕組みになっておりますが、そこで売買の証明書等がございますれば、登記所におきまして特段の調査ということなく受け付けてもらえるというふうに聞いております。
#176
○坂上委員 それはひとつまた、法務省の方からきちっと御答弁いただきましょう。
 問題は、今言ったようにやはりここに一つあるのですね。もし、国土庁がおっしゃるように、届け出は届け出なんだけれども移転登記とは全く無関係なんだ、こういうことになりますと、これではいろいろこういう間違いが起きる可能性もやはりあるんだなということを私は痛感するわけでございます。
 それでは、警察庁の方から聞きますが、ひとつこの事件の概要というのをまずお話しください。
#177
○瀬川説明員 お答えいたします。
 これは、捜査を行いましたのは、京都府警察本部生活経済課及び山科警察署でございますが、平成六年三月ごろでございますけれども、山科区の住民から端緒を得まして、内偵捜査を行いました。その結果、問題の学校法人京都朝鮮学園でございますが、これが、京都市内の市街化調整区域の土地につきまして、四万三千六百平方メートル余りでございますが、これを買収をしていた。しかし、国土利用計画法上の届け出状況がどうかということにつきまして、京都市の理財局、こちらがそれを担当しているわけでございますが、ここに届け出の有無を照会したわけでございます。そうしたところ、本年の四月一日付でその土地の一部について届け出がない旨の公式文書による回答を得たところでございます。
 それに基づきまして、六月四日でございますが、京都地方裁判所に国土利用計画法違反容疑事件ということで捜索・差し押さえ許可状の発付を請求いたしました。同日これを得まして、六月六日、京都市右京区の京都朝鮮会館内に所在するこの当該学校法人の事務局及び在日本朝鮮人総聯合会京都府本部など二十六カ所につきまして捜索・差し押さえを実施したわけでございます。
 捜索後、関係者の出頭を求めまして、事情聴取を行いました。そうしたところ、関係者の中から、この土地については国土利用計画法上の届け出をしているという旨の供述がございました。したがいまして、京都府警察本部といたしましては、再度京都市役所に照会をいたしました。その結果、京都市役所の方から、同市役所の係員の書類の検索ミスにより、京都府警察本部の照会に対して誤った回答がなされていたということが判明したわけでございます。
 したがいまして、同日、昨日の午後十一時過ぎでございますが、関係者に対しまして、容疑が解消したということで捜査を打ち切って、押収品につきましてもこれを至急還付したいということで連絡をとったというのが、今回の事案の概要でございます。
#178
○坂上委員 大変怖くて、普通の善良な者は生活できないんじゃないの。
 市役所が、結果的にはでたらめの報告をした。そのでたらめを受けて、警察は、念のために調べるということなく家宅捜索、しかもわずかこれだけのことの、国土法違反について二十六カ所やった。新聞では二十七と書いてあるけれども、二十六カ所も家宅捜索をする、大がかりな捜査というわけだ、これは。あげくの果ては、照会してみたところが、関係者は届け出たというものだから、もう一遍聞いてみたらそうだった、やめました。これじゃ国民に申しわけないんじゃないの。
 警察庁、どう思っていますか、これは。一番の責任者である国家公安委員長はまずどう思っているのですか、これは。あなた自身は  公安委員長は何か十二時ごろに声明を出したそうですね。何かテレビでやったそうです。大体、警察庁、こんなばかなことが今の法治国家の中にあっていいかと思うのです。だから、緊急に私に質問せいという要請がありまして、質問をするわけでございますが、こんなばかなことがあっていいのですか。どうですか、あなたも。もうちょっときちっと御答弁いただきましょうか。
#179
○瀬川説明員 お答えをいたします。
 本件につきましては、この学校法人が用地取得に際しまして国土利用計画法に基づく届け出をしなかったという容疑で関係箇所の捜索等を行ったものでございますが、本件の容疑につきましては、京都市に対しまして捜査関係事項照会書により照会をし、公文書によってこれは届け出がないという回答を得ていたものでございます。
 先ほど申し上げましたとおり、関係者の事情聴取を行ったところ届け出をしている旨の供述があったということで、早速至急に再照会等をいたしまして、市役所係員の書類の検索ミスでそのようなことが起きたということがわかったわけでございますけれども、私どもといたしましては、京都市理財局長名で回答をされたその公文書というものは、捜査上の資料としましても、いわば最も信頼すべきものだったというふうに考えているところでございます。
 本件捜査そのものにつきましては、適法に行われたもの、違法性はなかったものとは思いますけれども、ただ、先生御指摘のとおり、捜査の判断の根拠となった公文書、これは京都府警で最も信頼すべきものと考えておったわけでございますが、結果としてその回答に誤りがあったということでございます。結果として、これは関係する方々に大変御迷惑をかけたことだというふうに考えておるところでございます。
#180
○坂上委員 これは、迷惑をかけたで済む話じゃないでしょう。しかも、京都の市役所の公文書だった。公文書と我々国民とどっちを信頼するの。お答えなさい。
#181
○瀬川説明員 お答えいたします。
 捜査の過程におきましていろいろな事実照会等をしなければいけない場合があるわけでございますが、その場合に、捜査関係事項照会書による照会ということはよく行われているわけでございます。そしてまた、その照会先がいわば公務所であり、そこから、何と申しますか、責任ある方の名前で正式の文書回答をいただいたということにつきましては、一応それを前提として捜査を進めていくということになろうかと思います。
 ただ、るる申し上げるようでございますが、結果として、市の方の検索ミス、事務的なミスにより誤った回答がなされた、それに基づいて捜査を進めた結果、大変関係者の方には御迷惑をおかけしたというふうに考えているところでございます。
 私どもといたしましても、早急に、関係者の方に昨晩じゆうに事情も御説明をし、また押収したものにつきましては至急還付したいということで御連絡をさせていただきました。本日、還付手続を大至急進めているところでございます。
#182
○坂上委員 警察庁、これは本当に済まないと言うだけでは済まないのです。国家公安委員長の責任問題です。私は、これは責任をとってもらわなければいかぬと思います。なぜかというと、これに対する捜査の違法性が極めて強いからです。私は、最高の責任者である国家公安委員長、自治大臣が責任をとることを要求したいと思います。
 あなたは今検索ミスだとおっしゃっているわけですが、これは検索ミスじゃないですよ。わかっていますか。まず、コンピューターに届け出が入力してありますか、入力してあるけれども検索ミスだったのですか、どっちですか。
#183
○瀬川説明員 本件の捜査につきましては、繰り返すようになって恐縮でございますけれども、捜査関係事項照会書に対する公文書の回答をもとに捜査を進め、裁判官の発する令状により捜査をしたものでございますので、警察の捜査に違法な点はなかったと考えているところでございますが、関係者の方に大変御迷惑をおかけしたと考えております。
 お尋ねの検索ミスという関係でございますけれども、私どもが承知している限りでは、実際には係員の方はコンピューター操作ではなくて、簿冊を指で繰るような形で、当該土地が国土利用計画法に基づく届け出がなされているかどうかについて調べたものであると聞いております。
#184
○坂上委員 警察庁、これをよく調べなさいよ、この図面をあなたに見せますから。私は、質問する以上はきちっと調査の上で質問しているのです。検索ミスじゃないのです。入力をしておって、検索の仕方が間違っていたためにそれが出てこなかったのじゃないのです。この届け出があったのが平成二年六月でしょう。入力すべきことを入力してなかったというのですよ。入力してなかったのだから、幾ら検索したって出てくるはずがないのです。したがいまして、あなたは検索ミスだと言うけれども、検索ミスというのは、どういうことをしたのか私はわかりません。コンピューターで検索するのにミスなんて起きないだろうと私は思います。わかって御答弁なさっているのかな。文章をただ読んでいるだけなのかな。私にはいいかげんな答弁はできないのですよ。
 そこで、学校法人京都朝鮮学園から出た土地売買届け出書は入力していなかったというのです。なぜ入力していないのか。平成二年ですよ。今もって入力してないのかどうかということは私はわかりませんが、少なくとも入力していないから検索しても出てこないというのです。これがまず第一点です。
 自治省、これは調査して聞かせてくださいと言ってあったのですが、調べたらどうでしたか。──来ていませんか。それじゃいいです。
 次に、警察庁、土地売買の予約契約をしたという情報を得たと言っているのですが、どういう情報を得たのですか。これは違法行為だから何ら捜査の秘密はないのですよ。捜査の秘密ですから答えられませんと言ってはいけませんよ。だれからどういう情報を得たのですか。
#185
○瀬川説明員 お答えいたします。
 情報と申し上げますよりも、当該土地周辺において当該学校法人が大変広大な土地を購入されてそのままになっているという風評を耳にしたといいますか、そういうものが端緒であるというふうに報告を受けております。
#186
○坂上委員 今の答弁もなってないのじゃないですか。土地を買ったという風評だ、手に入れたという風評だと言うが、あれは届けていないよという風評ならまだわかりますよ。風評と言っているが、新聞では情報を得たと言っている。これもいいかげんじゃないですか。もっと近所の風評を調べてみたらどうですか。あれは間違いなく売買したのだ、調べたら届け出をしていない、これはやはり違反だ、こういってやったわけですが、この情報の調査の仕方も全くずさんじゃないですか。
 その次に、ことしの三月二十八日に理財局に照会をしたのだそうですね。そこで、四月一日に届け出はないとの理財局長名の回答があったということが言われているのです。しかし、この事件があってからこういう話が出ているのです。これもきちっと答えてもらいたい。六月三日に警察の方から市に照会があったというのですね。そうしたら、市は調べてから回答したいと返答をしたという報告を理財局長が受けたというのです。これはどっちが本当なんですか。ここに来ると責任のなすり合いなんです。私たちは調べてから回答したいと言っているにもかかわらず、警察はどうもやってしまったのじゃなかろうか。警察の方に言わせれば、三月二十八日付で照会をして四月一日に届け出がないという回答をいただいたと言っておるわけでございます。これは一体どっちが本当なんだろう、どうですか。
#187
○瀬川説明員 お答えいたします。
 六月三日のことにつきましてはつまびらかじゃございませんけれども、とにかく京都府警察本部といたしましては、四月一日付の公文書による京都市役所からの回答に基づいて捜査を進めていったものというふうに報告を受けております。
#188
○坂上委員 これ以上やっても水かけ論ですから……。
 きょうの六月七日付の朝日新聞に「朝鮮総連捜索はミス」、これは間違いないのですが、そのことがちょっと書いてありますから、どうぞこれは調べて、警察庁の方の言い分が正しいのか、京都市の方が正しいのか、これはきちっと答えていただきたい。これによって責任の軽重が変わってくると私は思っているから言っておるわけでございます。
 その次に、捜索令状をいつもらったのですか。
#189
○瀬川説明員 六月四日でございます。
#190
○坂上委員 最高裁、京都地裁から捜索令状が出ているそうでございます。許可状が出ているそうですが、北朝鮮関係の捜査については大阪で必要以上な過酷な捜索でないか、こういうようなことが新聞で騒がれまして、我が党の調査団も調査に行ったわけでございます。
 そういう状況の中で、一千名とかというような人たちが家宅捜索に出られて、それで何カ所だか知らぬけれども大変な捜索をなさったんだそうですね。一千名を超える、機動隊を出してやったそうでございますが、これは本当に大変なことじゃないか。家宅捜索も八カ所、これはその割合に少ないですが、八カ所もやられたそうでございます。これについても大変批判の声が上がっておったやさきに、今度は、二十七カ所か二十六カ所かわかりませんが、家宅捜索の許可が出たわけでございますが、一体、この国土計画法の届け出というのは、もう登記がしてあるのですから、全くその必要性がないのですね。確かに、届け出をしてあるかどうかということは、売買契約してありません、こう言い逃れるために家宅捜索するということは、僕はあってもいいと思うのですよ。だけれども、こうやってきちっと登記をしてあるんだから、もう言い逃れできないんじゃないんでしょうかね、売買の届けもしてあるわけでございますからね。そうだといたしますと、一体、これは何のためにこんながつたな捜査が行われたのだろうかと実は私は思っているわけです。
 その前提となっております、裁判所が二十六カ所を許可するような家宅捜索令状を出されることについても、私は、裁判所批判で大変恐縮でございますが、どんな考えでなさったのだろうか。しかも、どういう証拠に基づいてなさったのだろうか。
 今、聞きますと、市の公文書による回答書をもとにして出したと言うんでございますが、これについて二十何カ所も調査するわけでございますから、もう少しそれを裏づける関係者の調査でもあってしかるべきなんでございますが、これも出てないわけでございますし、この売買は、中へ入った人と売った人二人とかいるんだそうですね。この人についての家宅捜索は全くないんですね。ないでしょう。しなかったでしょう。令状ももらわぬでしょう。だから、この売り主の方についての家宅捜索はなくて買い主だけ二十七カ所もやる、こういうことなんですね。だから、私はこれも、売った人も家宅捜索したならまだいいですよ、令状をとったならいいのですがね。
 これもちょっとおかしな話なんでございますが、裁判所はきっと裁判官独立の原則で答えられないとおっしゃることは承知の上なんでございますが、あえて来てもらいました。いかに司法権の独立、裁判官そのものがその権限においてなさるとおっしゃっても、こういう令状を出すことはひど過ぎると私は思いますよ。一体、本当にこの令状の発付というのは適切であったのか、やはりちょっと問題なんじゃなかろうかと実は思っておるわけでございますが、最高裁、これはどうですか、この質問。答えられませんかな。
#191
○高橋最高裁判所長官代理者 具体的な事件の処理ということにつきましては、私どもの立場として何ともお答えしかねるところでございますけれども、委員御指摘のように、令状の発付、こういうことは裁判官にとって非常に重要な職務の一つでありまして、令状の請求を受けた裁判官としましては、憲法の要請する令状主義の精神にのっとり司法的なチェック機能を十分に果たす、そういうような観点から、捜査機関から出された資料を厳密に検討して、令状発付の要件があるかどうかを一件一件慎重に判断していく、そういうふうに確信しております。
    〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
#192
○坂上委員 最高裁がおっしゃるとおりでございまして、これが第一線でどうも実行されていないのじゃなかろうか。これじゃいかぬと思いますし、私は、司法の独立あるいは裁判官の独立の意味においても、やはりこれはちょっと問題だぞ、こう思っているのです。
 いま一つの問題点を指摘しますと、朝鮮総連の委員長以下四人の個人宅を家宅捜索しているのですね。売買をしたと言われるのは学校法人の朝鮮学園なんですね。法律上は全く別個の権利主体なんですね。委員長ら四人の個人の自宅まで家宅捜索しなければならぬというこの理由もちょっとわからないのですね。この辺はどうだったのですか、警察庁。
#193
○瀬川説明員 お答えいたします。
 捜索につきましては、先ほど委員御指摘ございましたけれども、その朝鮮総連の関係の方々あるいはそういった場所だけではなくて、本件土地売買に関与した方のところについても実施をしたところでございます。また、その関係箇所が非常に多数に及ぶではないかという御指摘でございますけれども、本件の国土利用計画法違反という捜査の趣旨からしまして、その土地の購入の状況なりあるいは利用の目的なり、るる捜査上解明しなければいけない点も多々あるということで、このような箇所数になったものでございますが、いずれも当時の捜査上の判断においては必要な捜査箇所である、このように判断をしていたものと承知をしております。
#194
○坂上委員 これ以上言ってもおたくさんの立場からしようがないのでございますが、今申しましたとおりこれだけ膨大な、二十七カ所、二十六カ所も捜索する必要性、それから個人のところを何でやらなければならぬのか、それから別法人に関係のあるところをなぜやらなければならぬのか、売った人の方の家宅捜索をなぜしなかったのか。そして、あなた、登記によってきちっと売買の証明ができているわけでございますから、逃げも隠れもできないわけでございます。そんなような点から一つ一つ積み重ねていっても、全く何のためにやったんだろうかと疑問を呈するわけであります。
 しかも、六月三日に警察の方が市にもう一遍照会をした。そして、調べて回答したいという返事をしたという報告を理財局長が受けているというんだが、もしそうだとするならば、これはなおのこともう少し待ったっていいんじゃなかったか、こう思われる節があるわけでございます。
 いずれも詳細な調査をしていただかなければいかぬものでございますから、私は、法務委員会でこういう発言があったということをひとつ受けとめていただきまして、どうぞ上の方と相談をしていただきまして、これは国家公安委員長、いずれの場所においても、責任の有無については私はもう一遍議論したい。今この場所で、いないところで大変恐縮でございますが、これだけのことをした責任をとっていただきたい。本当にまじめにしている人たち、事実無根にもかかわらずこういう家宅捜索を受けて、このやり方が全くなってないというわけであります。
 私は多分、推測しますと、今北朝鮮の核疑惑問題が出ております。口々には、いわゆる北朝鮮の核査察をしてもらって、きちっと平和を取り戻したいんだというのが国会の答弁なんです。しかし、実際見てみますと、もし話し合いがつかぬ場合については、後で撤回されたんですが、集団自衛権を行使するとか有事立法を行使するとか、いろいろのことを言っているわけでございます。万々一をおもんぱかりまして、片っ端から情報収集のためにこういうことをあえてやっているんじゃなかろうかと、私はその心配を実はしているのです。
 きのうも総理大臣に聞きました。あなたは、いわゆる外務大臣当時であるが、間もなく総理大臣になられようとするその瞬間においてインタビューに答えていられる、集団自衛権容認の方向で憲法を議論してくれということを国民に提案しているわけでございます、これを取り消すのとお聞きをいたしました。まあ取り消すがごとく取り消さないがごとく答弁でございましたが、そんなような事態でありますから、どうもやはり警察は、万一をおもんぱかりまして情報収集しているのじゃないの。そうでなければ、この家宅捜索、令状捜索は私は納得できない。それで、大変なポカをやってしまったわけだ。こんなの本当は、今言ったように、証拠隠滅も何もないのでございますから、何でこんなことをしなければならぬかわからぬ。
 課長さんに幾らどなったってどうしようもありませんけれども、このことをよくひとつ首脳の方にお伝えください。公安委員長に伝えてください。きちっと責任をとっていただきたい。とれないというならば、どこかの場所でひとつ、我が党の同じ委員も、それはやはり責任をとってもらおうじゃないかというのが、お話の上で私は今言っているわけなんです。私個人のあれではありません。党の、法務委員会としての要請でございますること、きちっと対応して返事を持ってきてくださいよ。
 さて、その次。文部省お見えてすか。──お見えてすね。文部省、いろいろ新聞で出ていますな。例えば、朝鮮学校生徒、人権侵害が頻発しております。四月十四日午前七時十五分ごろ、東京朝鮮中高級学校の女生徒が、京王線明大前付近で、暴漢にはさみでチマ、スカートを切り取られ暴行を受けた上、電車が駅に到達するや車内からホームに突き出された、これも新聞に出ていました。また、四月二十七日午前七時ごろ、JR千葉駅付近の車内で同校女子生徒が、正体不明の男性にチマを、スカートですが、切り裂かれた。四月二十六日夕方、東大阪朝鮮中級学校の男子生徒が、自転車で下校中、日本の男子生徒数人から、朝鮮人殺すぞなどと暴言を受けながら、直系三、四センチの石を投げつけられて目を負傷する。いっぱいここに書いてありますが、これに似たようなことがいっぱい出ております。こういうようなことはやはり文部省の方もある程度情報として入ってきていますか、どうですか。入ってきておりませんか。
#195
○河上説明員 お答えいたします。
 最近、一部の報道機関におきまして御指摘のような事件について報道されていることは承知しております。このうち、千葉県の松戸市におきまして、先月中旬、日本人の中学生が朝鮮人の生徒に対しまして暴行等に及んだ件につきましては、千葉県教育委員会を通じ報告を受けております。
 その他の件については、報告をいただいておりません。
#196
○坂上委員 今度、厚生省の方。これも新聞に出たことでございますが、愛知県では、朝鮮の学校を出た少女が准看護婦の資格を得た。それから今度正看護婦になろうとする。正看護婦になるには何か厚生省が管轄なんだそうであります。これはだめになったということでございます。朝鮮学校を出たからというのがどうも理由のようでございます。愛知県は、準用して准看護婦の資格を与えたのですね。正看護婦になるには何か厚生省らしいのですが、厚生省、これは今何かだめになったというような話です。いろいろ理屈はあるのでしょうが、これは事実でしょう。
 それからもう一つ、文部省。大要大学、これも何かこの間問題を起こしていましたね。これも認識されておりますか。いい、悪いは別なんです。どうですか。
#197
○久常説明員 事実でございます。
#198
○工藤説明員 大妻女子短大に入学志願した朝鮮高級学校出の子供の件についてでございますが、本件につきましては、その是非は別としまして、日本の高校に編入学いたしましてそこを卒業しておりますので、大学入学資格はあるわけでございますが、大学入学資格がある者についての合否の判定は、それぞれの大学で決められるわけでございます。ただ、志願されました大妻女子短大の夜間部なのでございますが、そちらの方の合否判定に当たりましては、私ども大学側からお聞きしましたところ、主として高校での調査書に基づいて判定をするのが通例なのだそうでございますが、この御本人の場合は、その調査書が不備で判定できなかったということで、残念ながら合格に至らなかったと承知いたしております。
#199
○坂上委員 人権擁護局長おられますか。局長、どうですか、今言ったような問題は、これは人権問題でありませんか、どうです。
#200
○筧政府委員 委員の方から御指摘を受けましたもろもろの事案のうちで、准看護婦に関する件はちょっと私ども承知しておりませんが、ほかの御指摘を受けました件については新聞報道等で承知しているところでございまして、特に学校の生徒に関する暴行、脅迫等の事件、これが人権侵犯事件に当たるのではないかという観点から情報の収集に努めているところでございます。
 しかしながら、現在のところ、いわば被害者側から、これらの事件について人権侵犯事件としての申告というのはまだされておらないという状況でございます。
#201
○坂上委員 被害者側からの上申もないので、届けもないのでということでございますが、しかし、情報収集はしていただいているということでございます。本来法務省は人権を擁護するというところに大きな任務を持っておられるわけでございます。申しますとおり、もうこういう警察の不祥事、まさに不祥事でございますが、あってはならないことでございます。
 これに関連をいたしまして、本当にうっかりミスというには余りにも軽率過ぎる、やはり何か意図があったのではなかろうか、私はこう思っているわけでございます。しかも私たちは予算委員会で、特に北朝鮮問題について今回の予算委員会は熱心な議論を実は尽くしてきておるわけでございます。でありますから、この問題が、ちょうどきのうまでわかっておれば予算委員会で総理大臣以下に御見解を求められたのでございますが、きょうは分科会でございまするから、この時間を利用させてもらって問題点を指摘をいたしておるわけでございます。
 さて、法務大臣、こういうような事態一つ一つとらえてみれば、あるいはこういうことでこっちは正当なんですといういろいろのあれがあるかもしれません。しかし、今こういう空気なんですね。こういう情勢が日本の中にあるということなんですね。特に私は、京都のものは、これはそれ
 でも届けがなくてやったということになりますと、警察はもう悪いことをしたのを捜査するのに、たとえ二十七カ所であっても当然でございます、四百人警察が出動したそうでございますが、当たり前でございますと多分開き直るでしょう。しかし、これがたまたまこうやって違法性を持ったものでございまするから黙っておられますが、私はやはりこういうような問題は、本当に外国人の皆様方の人権、特にこういう状況になっておりましたら、あるいは肩身の狭い思いをされているかもしれません。ましてや子供たちでございます。いろいろなことから考えてみますと、ここにおられる北朝鮮の皆様方にとっては今大変な事態になっておるわけでございますから、本当に日本人が、お互いに生活をともにするこういう人たちとともにきちっと人権を守るということが必要なんだろう、こう私は思っておるわけでございます。でありますから、こういうことが今後ともだんだんエスカレートしてこなければいいがと私は思っているわけでございます。
 法務大臣、人権擁護の上から私はこの際法務省から御検討をいただきたいのは、こういう累次の人権侵害問題が起きている事実から考えて、各地方自治体あるいは法務局になるんでございましょうか、きちっと通達を出していただきまして、こういう人権が侵害されることのないような対応をしていただきたい、こう思って各省から実は来ていただいたわけでございまして、法務大臣、この事実を十分御認識をいただきまして対応していただきたい、こう思っておるわけでございますが、いかがです。
#202
○中井国務大臣 過日、予算委員会でも、坂上先生から具体的な事例を挙げてお話がございました。私ども、ただいま局長が答弁をいたしましたように、関心を持って調査をしているところもございます。
 ただ、今回の京都の問題につきましては、私も、まだ昨日夜テレビで報じられましたのを見ただけでございまして、本日朝から、閣議等あるいは衆参の委員会、本会議、また、私自身が民社党の党大会という中で忙殺をされておりまして、新聞の切り抜きを見ながら、先ほどから先生の御質疑を聞かせていただいたところでございます。
 ただ、新聞等で報じられるところによりますと、内閣もあるいは自治省も、単純なミスである、このように言われておりますし、また、自治大臣も記者会見等では非常に遺憾の意を表された、このように出ておりますので、私どもは、そういう単純ミス、しかし大きなミス、こういったことで認識をさせていただかなければならないと考えているところでございます。
 いずれにいたしましても、永住、永久居住者の方々の基本的人権ということにつきましては、これは日本人と同等の基本的人権という中で私どもも対応するつもりでございます。人権擁護局あるいは関連の機関に届け出があって普通は調べるということでございますが、先生御指摘のように、人権擁護局みずから調査をするということも実は仕事の一つである。このことをわきまえながら、十分これらの問題に関心を持ち、対応も考えていきたい、このように考えております。
 なお同時に、私は、ここまで申し上げてどうかとは思いますけれども、北朝鮮の核疑惑、これで大変緊迫した情勢にあるのは先生御指摘のとおりであります。予算委員会でも、本当に国家、国益を考えて、それぞれで御議論を賜っております。そういうときだけに、逆に、ナーバスな対応にお互いがなるということは厳に慎んでいかなきゃならない。そういう中で、人権侵害という問題が続発をするということがあれば、私どももこれに厳重に対応していかなければならない、こんな心構えでおるところでございます。
#203
○坂上委員 大変ありがとうございました。警察庁の方を特に中心といたしまして、どうぞひとつ詳しい報告もいただきたいと思っております。今言ったような問題が出ているはずでございますから。
 このことは、実は、自治省の方から京都市役所についても調査をしてきょう答弁していただきたいと言っておいたんでございますが、何か手違いがあってお見えにならぬようでございますから、後からで結構でございますから、なぜ、こういう間違いが起きたんだろうということも警察の立場できちっとやはりお調べをいただきたい、こう一思っております。また、自治省の方にも私からも強く要求をいたしておりますが、お互いに今度はちょっと責任のなすり合いみたいなことになりますけれども、そういうことにならぬように、今後二度とこういうようなことが起きないようにひとつ御尽力のほどもお願いをしたいな、こう思っております。これに関連をいたしまして出席された皆さん、ありがとうございました。どうぞお帰りになって結構でございます。
 もう二点ばかり、ちょっと商法以外のことで聞きたいんでございますが、法務省、尊属殺の加重の廃止の問題でございますが、この間、私たちが三ケ月法務大臣時代にお伺いをいたしましたら、法務省側の対応といたしまして、尊属殺加重の規定については法制審議会にかけまして、来年の通常国会に提出できるようにしたい、こういうようなお話を承ったんでございますが、ひとつ法務省の最高責任者である大臣の方からこの問題について御答弁いただきたい、こう思っていますが。
#204
○中井国務大臣 この問題につきましては、もう委員既に中身等は詳しく御存じのこと、また、たびたび委員からも御熱心な御議論を賜ったところでございます。
 法務省といたしましては、近く法制審議会に諮問する予定の平易化のための刑法改正作業の機会に合わせまして、法制審議会答申に沿って、尊属加重規定を全廃する方向で検討してまいる所存でございます。
#205
○坂上委員 どうも大変失礼しました。中井法務大臣にお話しに行ったときのお話でございました。大変失礼を申し上げました。
 いま一点、最高裁にちょっとお聞きをしたいんでございますが、司法修習生が裁判官希望をいたしましたが、任官拒否になった、こういうことでございます。それで、この人は異議申し立てをなさったそうでございます。一応日弁連といたしましては、これを採用しなかったことの理由については明白にすべきだという会長談話等が出ておるわけでございますが、異議申し立てが出た以上は、最高裁判所は、採用しなかったことに対する理由というものは異議申し立ての中できちっと明示いただけるものでございますか。
#206
○堀籠最高裁判所長官代理者 ことし判事補に採用されなかった方から先日異議の申し立て書が提出されましたことは、委員御指摘のとおりでございます。
 この件につきましては、最高裁判所の裁判官会議におきまして行政不服審査法の規定にのっとって審議されることになるものと考えておるところでございます。
#207
○坂上委員 行政不服申し立て書による異議申し立てというのは、やはり相当事実を摘示をいたしまして、それに対する判断というのをなさるんでしょう。どうですか。
#208
○堀籠最高裁判所長官代理者 判事補に採用されなかった方から異議申し立て書が出ましたので、その異議申し立て書の内容につきましては、最高裁判所の裁判官会議において判断されるわけでございまして、その判断の結果が決定という形で出るものと承知しております。
#209
○坂上委員 私の聞きたいことをきちっと御答弁になったとは思えないんでございますが、また余り言ってもいかがかと思いますから、ぜひできるだけ何とかこの問題については解決を図っていただきたいというのが私たちの希望でございます。できるだけお伝えくださいまして、また理由についても適切な御判断を納得のいくようにしていただくことも必要なんじゃなかろうか、こう思っておるわけでございます。最高裁判所が養成をいたしました司法修習生諸君でございますので、いずれにいたしましても、裁判官に不適格だなんということは決して考えられないのじゃなかろうかと思いますが、これ以上のことはわかりませんから申し上げませんが、ぜひひとつ円満な御解決をしていただくようお願いをいたしたいと思います。
 以上でございまして、私はあとは今度は商法問題をさせていただきます。それでは、次の点についてお答えをいただきたいのでございます。
 今回の自己株式の取得については、資本維持の原則から見ていかがなものなんだろうかということが一点でございます。
#210
○濱崎政府委員 委員に御説明申し上げるまでもございませんが、資本というのは会社財産の確保のための基準となるものでございますので、その額がただ名目的に定まっていればよいということではございません。資本額に相当する財産が現実に会社に拠出され、かつそれが保有されておらなければならないわけでございます。これを資本充実維持の原則と言っておるわけでございますが、そのために、まず会社設立の際においては、その出資が確実に行われるようにということが要請されますとともに、資本を裏づける財産がその後も現実に維持されることが要請されるわけでございます。
 今回の、自社株の取得を是認することに関しましては、従前から現行制度が自社株の取得を厳しく規制しております理由といたしまして、会社財産の充実を害する、ひいては会社債権者及び会社の利益を害するということが挙げられていたわけでございますが、今回の改正案におきましては、自己株式の取得によって資本充実の原則に反することがないよう、新たに今回の改正によって許容されることとなる取得事由については十分な配慮をしておるところでございます。
 具体的には、今回の改正案におきまして認めようとしております使用人に譲渡するための取得、それから利益消却のための取得につきましては、株主総会におきまして取締役に授権する自己株式の取得枠についての取得の財源を配当可能利益内に限定するとともに、さらに具体的に個々の買い取り行為を取締役が実行する場合におきましても、その結果、その営業年度の終わりにおいて配当可能利益がマイナスになる、いわば資本に欠損が生ずるということがないように、個々の買い受けの場合においても配慮しなければならないという注意義務を課するという形で、資本充実を害することがないように万全の配慮をしているわけでございます。
 また、閉鎖会社における自己株式の取得の特例につきましても、それぞれの取得ごとに取得する自己株式の財源を配当可能利益に限定する、しかも同じように、その結果、その営業年度の終わりにおいて配当可能利益がマイナスになるというような事態が生ずるような場合には取得をしてはならない、それに違反した場合には、特別の重い責任、損害賠償責任を取締役に負わせるという形で、御指摘の点は万全を期しているつもりでございます。
#211
○坂上委員 その次は、自己株式取得は、相場の操縦やいわゆる内部者取引に利用されやすいことが言われております。この点はいかがですか。
#212
○濱崎政府委員 現行制度において自己株式の取得を厳しく規制しておるもう一つの理由といたしましては、御指摘の内部者取引あるいは株価操縦のおそれがあるということが従来から指摘されておったわけでございます。
 今回の改正で認めようとしております案は、一定の事由のもとに及び一定の手続のもとに自己株式の取得を認めるわけでございますが、その自由な保有を認め、さらには自由な譲渡を認めるということにはなっておりません。従業員に譲渡するための場合には、その目的どおり六カ月以内に従業員に譲渡しなければならない。それから、利益消却のために取得した場合には、遅滞なく株式の失効の手続をとらなければならないということでございます。また、閉鎖会社の場合におきましても、相当の時期にその所期の目的に従って株式を処分しなければならないという枠をはめているわけでございます。
 したがいまして、内部者取引の危険あるいは株価操縦の危険というのも、会社に自由な保有、自由な処分、再処分というものを認めておらない関係で、総体的にはその懸念はそれほど大きくないという制度になっているというふうに考えております。
 ただ、それにしましても、会社が自己株式の取得をすることができることによりましてある程度そういう懸念もあるということから、その観点につきましては、この改正のための法制審議会における審議と並行いたしまして、証券取引審議会の方で商法の改正の到着点をにらみながら、それに対応する証券取引法制上の措置について慎重に検討していただきまして、その結果、株価操縦という点については、今回の改正の範囲内の規制緩和ということであれば証券取引法自体を改正する必要はない、現在の規制のもとで、その運用の中で自己株式の取得という場面について十分な配慮をするということをもって十分に対応できるという御答申であったというふうに承知しておりまして、それを踏まえて適切な運用をしていただけるものというふうに考えております。
 一方、内部者取引の関係につきましては、これは、会社が従業員に譲渡するため、あるいは株式消却のために一定の限度で自社株を取得するという意思決定をすることが株式の価額に影響を与えるということがございますので、そういう会社の意思決定を内部者取引規制上のいわゆる重要事実に加えるという改正をするということで、そのための証券取引法の改正法律案を現在国会に提出され、審議をいただいているというふうに承知しております。
 したがいまして、そういう意思決定を公表した後でなければ、会社あるいは会社関係者は当該自社株の取引をすることができないという規制が加わるわけでございまして、これによってそういう懸念については十分に対応できるというふうに考えているところでございまして、法制審議会の商法部会におきましても、そういう証券取引審議会の審議をにらみながら今回の改正のための要綱案を定めていただいたということでございます。
#213
○坂上委員 その次は、株主平等の原則から問題は起きませんでしょうか。
#214
○濱崎政府委員 株主平等の原則という問題も、自社株の取得規制を自由にいたしますと、その取得の方法によってはそういう懸念があるということは指摘されているところでございます。今回の改正におきましては、その点については、これもまた制度的に十分な対応をさせていただいているというふうに考えております。
 具体的に申し上げますと、従業員に譲渡するための取得及び株式消却のためにする取得、これらを、株式を上場している会社あるいは店頭登録をしている会社、いわゆる公開会社につきましては、その取得は必ず公開の市場、あるいは株式の消却のためにするときには加えて証券取引法制上の公開買い付けの方法によって取得しなければならない、個別の株主から相対で取引するという取得方法は認めないということにして、要するに公開の市場で買い取るということで、すべての株主に平等に売り主として参加する機会を確保するということにしております。
 また、株式を公開していない会社、上場会社、店頭登録会社以外の会社がそういう取得をするとき、あるいは閉鎖会社の特例によって取得するとき、その場合には、これは市場というものがございませんので、個別の株主から相対で買い取るということをせざるを得ないわけでございますが、そういう場合に株主の平等を害することがないようにという観点から、これは必ず総会の決議は特別多数決議で行わなければならないということにするとともに、その当該議決については、買い取りの相手方である株主は議決権を行使することができないということにして、それ以外の株主の特別多数決議によって判断するという措置を講じておる次第でございます。
#215
○坂上委員 もう一点でございますが、大体今の答弁を聞いていますとこれも理解できるようでございますが、一応法務省の見解を聞いておきたいと思います。
 経営陣が会社の資金で、自分たちの地位を不当に守るために自己株式取得がなされることを防止するために自己株式の取得が禁止されておる、こう言われておるわけでございます。この点はいかがですか。
    〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
#216
○濱崎政府委員 自己株式の取得あるいは処分を自由に認めるということになりますと、従来から、会社経営者が不当な会社支配にこれを用いることになる危険性があるという観点から指摘されておりますのは、会社経営者が自己株式を取得した上で、これを現経営者に友好的な第三者にさらに転売する、要するに友好的な、会社経営者の意のままになる株主をそういうことによって生じせしめて、そして会社支配をするという危険があるという観点からの指摘があるわけでございます。
 委員の御指摘もこういう観点を踏まえてのことかと思うわけでございますが、先ほど来御説明しておりますように、今回の取得は取得後の自由な保有、自由な再譲渡ということを認めないということになっておりますので、今申しましたような危険は生ずるおそれがないということでございます。
#217
○坂上委員 今度は法制審議会の商法部会の会社法小委員会で議論されたものを事務局の方で、自己株式の取得及び保有規制に関する問題点八項目、これを挙げられているわけでございますが、これについて日本弁護士連合会は反対意見を表明をしておるわけでございます。いわゆるその必要性は少ないのじゃないか、かえって弊害があるのじゃなかろうか、こういう二点から言っておるわけでございます。さっき申しましたこととダブるような部分もないわけではございませんが、一応項目別にひとつ法務省から御回答をいただきたいと思っておるわけでございます。
 まず必要性についてでございますが、一番は株主への利益還元の充実という点からいかがかという問題でございます。これはさっきちょっと御答弁あった中とダブるようでございますが、一応またこの命題について御答弁いただきたい、こう思います。
#218
○濱崎政府委員 御指摘の点に関する日弁連の御意見は、株主への利益還元の充実ということは、これは配当の充実によってすべきことであって、自己株式取得規制緩和というようなことでやることについては理論的に疑問であるというものでございました。
 しかし、この点につきましては、会社を取り巻く経済環境等を勘案して、配当可能利益を自己株式の取得という形で売却に応じた株主に還元するということは、その株主に対する利益還元になる、また取得した自己株式を消却するということを認めることによって、一株当たりの持ち分割合を高めるということによって株価の底支えという意味もある、そういう可能性は否定できないということで、日弁連が当初御主張された、配当として還元する以外にこういう選択の道を増加させることは、弊害が生じないという限度内において意味があることではないかという法制審議会の結論になったということであります。
#219
○坂上委員 それから今度は、従業員持ち株制度の運営の円滑化という問題でございますが、これは日弁連から言わせますと、商法改正してまで推進すべき問題であるかどうかは疑問である、こういうことを言って、結果的に必要性は乏しいのじゃなかろうか、しかもまかり間違えますと、現経営陣の会社支配の手段となる可能性もあるということを心配をしていますが、いかがですか。
#220
○濱崎政府委員 従業員持ち株制度の運営の円滑化のために自己株式の取得を認める必要性があるかどうかという点については、これは当初の議論では、日弁連の御指摘のように、今の従業員持ち株会制度の運用のもとで十分にやれるのではないかというような御意見があったわけでございますが、その後法制審議会の審議の中で、会社関係者等から持ち株会の運用の実情を聞いたところ、やはりこれについて、自社株の取得ということでそれを支援するという制度がなければ、その運営の円滑化を図ることができない、そういう実態が現実に従業員持ち株会の運用の中で存在するということが確認されたということがございます。
 この点につきましても、最終的には日弁連から出ていただいておる審議会の委員の方、その方は日弁連と連絡をとりながら御出席いただいておるわけでございますけれども、御理解をいただいたということでございます。
#221
○坂上委員 三番目は、いわゆるストックオプション制度の利用ということでございますが、こういうのは新株発行によって可能なのじゃなかろうかというような趣旨があるわけでございます。これはひとつ御見解はいかがですか。
#222
○濱崎政府委員 ストックオプション制度につきましては、御指摘のような問題点も踏まえて、今回の改正ではこれは取り上げないということになっております。
#223
○坂上委員 四番目は、余剰資金のより適切な運用上必要ないんじゃなかろうか、こういう点でございますが。
#224
○濱崎政府委員 日弁連の御主張は、我が国においては、少なくとも現時点では、自己株式の取得が他の運用手段よりも企業金融上有利だということは少ないんじゃないかという御指摘がございました。
 今回の商法改正は、もちろん、特にこの問題に対応するということを直接の目的とするものではないわけでございますけれども、この点につきましても、株式を取得して消却するということによって後年度の配当コストを減少させるといったようなメリットは考えられる、したがって必要性がないということではないというふうに考えられるわけでございます。
#225
○坂上委員 次は、企業買収への対抗手段ということでございますが、この点についてはどのようなお考えでございますか。
#226
○濱崎政府委員 この点につきましても、日弁連の当初の御主張は、そういった理由で自己株式の取得を認めると不当な買い占めによって高値での売り抜けを助長する、こういった弊害があるのではないかという指摘でございました。
 今回の改正は、企業買収への対抗策ということで、それを改正理由とするものではないわけでございまして、浮動株式を取得して消却することによって買収側の株式取得に間接的に対抗することができるという余地はございますけれども、日弁連の御主張のような懸念につきまして、そういう懸念が排除できないという制度ではないというふうに考えられているところでございます。
#227
○坂上委員 次は、株価の不当な低落への対応策についてでございますが、これはいかがですか。
#228
○濱崎政府委員 この点につきまして、日弁連の当初の御主張は、株価がいかほどであるかということは市場で判断すべきことであって、経営者がそれを左右するということを是認すべきものではないという御指摘でございましたが、この点につきましても、今回の改正は、そういうことの必要性を認めて、それを目的として改正するものではないということでございます。
 ただ、市場から株式を取得して消却するということが、投資家、一般株主等の投資情報として積極的に評価されて、その結果株価が変動することはあり得る。それはアメリカの例などでもそういう効果が生じているという報告もあるところでございますが、これはあくまでも結果としてそういうことになるということでございまして、今回の改正は、経営者が株価を操作するという目的のために自社株の取得を認めるという趣旨ではないわけでございます。
#229
○坂上委員 もう一つ、必要性の最後でございますが、株式相互持ち合いの解消の受け皿についてということでございますが、この点はいかがですか。
#230
○濱崎政府委員 この点についての御指摘は、この問題は、我が国の古くから存する慣習に由来するものであって、自己株式の取得の規制緩和をしても株式相互持ち合いの解消という観点からは役に立たないのではないかという御指摘がありました。
 これも、今回の改正がこのことを直接の目的とするものではないわけでございますが、株式の相互持ち合いを解消したいということで、会社の方でそういう意思を互いに持っておられて、それでそういう目的のために相手会社が株式を放出したいという場合に、自社株を取得して消却するということによってその持ち合いを解消する、持ち合いを解消する方法としての一つの手段として利用することができるという意味があるというふうに考えられております。
 この点も、今回の改正は、このこと自体によって相互持ち合いが解消される、そういうことを目的とするものではないわけですが、解消しようという会社側の意思がある場合に、その受け皿が一つ用意される、これはそれで一つの意味があるのではないかというふうに考えているところでございます。
 なお、全般的なことで申し上げますと、この審議につきましては、従来からありました経済界からの要請を踏まえて、その要請について商法としてどういう限度で対応できるかということから審議をスタートした、その時点で今御指摘の問題点というものを公表して、それについて日弁連も意見を述べられたわけでございます。
 そういうことでございますので、この時点の日弁連の御意見としては、経済界が要求しているとおりに大幅に規制を緩和するとこういう弊害が生ずるのではないかという視点がつたかと思うわけでございますが、その後、審議を詰めてまいりまして、そういう指摘されているようないろいろな弊害といったものを除去し得る方法というものをいろいろ検討しながら、かつ会社側の必要性というものについてもさらに議論を詰めてまいりまして、その結果、今回の改正のもとになります要綱、改正要綱が法制審議会で作成されたわけでございます。
 その過程におきましては、先ほど申しましたように、日弁連から出ていただいている委員ももちろん参加していただいておりますし、その委員を通じて日弁連の考え方も十分に議論に反映されているわけでございまして、結果的に、最終的には今回の改正要綱については御異論がないという状態で改正を実現させていただいたということを、御質問以外でございますが、付言させていただきたいと存じます。
#231
○坂上委員 時間もありませんが、今度は弊害についてでございますが、こういう指摘をしておるわけであります。
 自己株式の取得、保有の規制緩和を行うと、我が国の証券取引の現状では、株価操作、インサイダー取引など、種々の弊害の発生が予想されることは以下の理由による、しかも、我が国には、このような不正行為を監視し、規制するための実効的な制度がいまだ十分に整備されておらない、そこで、現時点では今のような規制緩和には合理性がないという指摘をされているわけでございます。
 しかし、今の御答弁の中で、七点あるのでございますが、相当ダブっておりますので、時間の都合上二、三にとどめて御回答いただきたいと思います。
 一つは、不当な株価操作の危険性がある、そう言われていますが、これはさっき御答弁があったようでございます。
 それから二番目の、インサイダー取引の危険性について、これもあったようでございます。
 それから四番目なんでございますが、現経営者の不当な会社支配を許す危険性があるんじゃなかろうか、こういうようなことの指摘がありました。
 それから、ほかの先生から、閉鎖会社での濫用の危険性についても指摘があったようでございますから、これは時間の都合上答弁は要りません。
 そこで、二点ばかり御質問をいたしますが、一つは、会社資産の垂れ流し、空洞化の危険はないか、こういう点でございます。
#232
○濱崎政府委員 この点につきましても先ほど申し上げたかと思いますが、これは要するに、資本充実維持の原則に反するのではないかということがございまして、その点については、先ほど申しましたように、これは厳しく配当可能利益の範囲内でそれを財源としてのみ取得することができる、したがって資本あるいは法定準備金に食い込むということがないように、厳に手当てをしているということでございます。
#233
○坂上委員 いま一つは、一部株主による不当な取得要求の可能性はないか、こういうことでございます。
#234
○濱崎政府委員 これは要するに、会社が買い取る場合の株主の平等が確保されるかどうかという問題でございまして、日弁連の当初の指摘は、一部株主に対する利益供与の手段として高値で買い取るというような懸念を御指摘になっていたわけでございます。
 この点につきましても先ほど御答弁を申し上げましたように、そういう買い取りに当たって株主の平等が害されることのないように、公開会社では公開の市場で、非公開会社においては相対の取引になりますけれども、決議要件を厳重にし、当該相手方は議決権を持たないというような手当てをすることによって、そういう弊害を生じないようにという手当てをしているところでございます。
#235
○坂上委員 項目的な質問は以上で終わりますが、本商法改正問題は、いわば新しい試みでもあるわけでございます。願わくばこれが効果を発揮するように期待をいたすわけでございます。
 我が党は、一応これについては賛成する立場で御質問を申し上げたわけでございます。どうぞひとつ、今言った問題点についてさらに御検討の上、またいろいろと対応をしていただきますことを期待いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
#236
○高橋委員長 正森成二君。
#237
○正森委員 私は、日本共産党を代表して、商法改正について質問させていただきたいと思います。
 非常に不十分なものですが、質問の論旨展開の御参考にということで、参考資料を配らせていただきましたので、必要なときにごらんいただきたいと思います。
 まず第一に、大蔵省、来ていますか。
#238
○高橋委員長 大蔵省は来ています。
#239
○正森委員 この自社株取得について、もちろん法務省は商法改正の当事者ですが、大蔵省も非常に関係深い官庁であります。平成六年の二月八日に総合経済対策というのを政府が出しましたが、それを見ますと、「景気浮揚のための内需拡大」とか、「課題を抱える分野における重点的施策の展開」とか、「経済活力の喚起のための発展環境整備」とか、大きな三項目を掲げておりまして、その第二番目の部分では、「バブル経済の崩壊、国際情勢の変化等を背景に事業環境等への影響が大きい分野への適切な対応を行うことが必要である。このため、」云々と書いてありまして、「金融・証券市場の活性化等に関する施策を講ずる。」こういうようになっております。「政府としては、」こういう「諸施策を一体として推進しつつ、」「可能な限り景気に配慮するよう努めることにより、」云々ということで、「本格的な景気回復と、安定した持続的成長経路への移行が確保されることを期するものである。」こう言っているのですね。そして、問題のところを見ますと、「証券市場の活性化」、こう書いてありまして、「自己株式の取得に関する規制の緩和について、今国会に関連法案を提出すべく引き続き検討を進める。」こうなっております。
 つまり、これを見ますと、自己株式の取得というのは、明らかに総合経済対策の一環として出され、しかも、それは景気の活性化あるいは株式市場の活性化に役立つものというように位置づけられております。大蔵省は、いかなる根拠に基づいて自己株式の取得が証券市場の活性化に役立つと考えておるのか、そのメカニズムについて説明し
 てください。
#240
○西方説明員 ただいまお話のございました自己株式の取得規制の緩和を図ることによりまして、今まで、通常企業ですと、配当可能利益がございますと、それを再投資して将来の企業価値をさらに高めるとか、それからさらに配当として株主に還元するといったような選択肢があるわけでございますけれども、そういったことに加えまして、企業を取り巻く経済環境等を見ながら、有効な再投資先が仮にないような場合、こういった場合には、配当可能利益を自己株式の取得という形で株主に還元を図る、それが消却後の自己資本利益率の向上に資する、こういった選択も可能になるわけでございます。
 こうしたふうに、株主へ利益を還元する際の選択肢をふやすということによりまして、結果的には、株式投資魅力を高めまして、それが安定的で活力のある証券市場の確立に資するものと考えるというふうに考えた次第でございます。
#241
○正森委員 聞いていると、風が吹けばおけ屋がもうかるというようなそういう観点で、あなたの言うようにいかない場合もあるよ。
 だって、配当利益の範囲内で株を買えば、それだけ内部留保がなくなるわけだから。だから、株式は減るかもしらぬけれども、その株式の対象である会社に保有されている財産はなくなってしまうわけです。だから、利益還元といったって、わざわざ商法で資本維持の原則のために原則禁止されている例外を設けるということの必要性があるのかというのは、法制審議会が、各大学あるいはその他のいろいろな機関に諮問したときにも、そういう意見がいっぱいあるのですね。実際の目的は、それはそういう点にあるかもしれないけれども、もっといろいろあなた方として考えている点があるのじゃないか。
 つまり、資料を見てください。
 資料一を見ていただきますと、「国民総資産残高の推移」が書いてあります。一九八七年では、一番下の株式は四百七十三兆円でした。これは経済企画庁の資料であります。一九八八年には、バブルが進行しまして、六百六十九兆円になりました。四一%余りの値上がりであります。一九八九年には、ぐっと上がりまして八百九十兆円、三三%上がりました。ところが、一九九〇年に、バブルが崩壊し始めまして五百九十四兆円へ一挙に下がりまして、八百九十兆から比べれば実に三百兆円の資産の減少であります。一九九〇年というのはまだ下落のピークではないので、このころは株価が日経平均で二万円ぐらいありましたが、その後一万七千円というようになりましたから、そのときにはもっと株式についての資産価格は減少しているわけです。
 そこで、資料二を見ていただきますと、この株の暴落でだれが一番損害を受けたかという点を見ますと、金融機関が実に四三%も持っております。そして、ピーク時の三万八千九百十五円日経平均から最低の一万七千円ぐらいまで下がったときを見ますと、五六%資産価値が減少して、合計で四百九十八兆円で、金融機関だけで二百十四兆円であります。莫大な損害であります。下の方に行きまして、事業法人はどうかといえば、株式分布では三〇%を持っておりまして、百四十九兆九千億円の損失であります。両者を合わせて、実に法人が七〇%をはるかに超える株式を持っております。個人は、見ていただいたらわかりますように、我が国ではわずか二〇%そこそこであります。それでも百一兆円の損害があります。つまり、株はばあっと上がりまして、一挙にどんと下がった、こういう状況になっておるのですね。
 そこで、このバブルの崩壊に対してどう対処するかということで、政府が、公共投資はふやすわ、さまざまな対策を立てておる。その一環に自社株取得という、商法を変えてまでちょっとでもてこ入れしようという発想が出てきたのですね。
 だけれども、一体バブルをつくったのはだれであり、それによって大もうけをしたのはだれであるかということが問題であります。一体バブルはなぜ起こったのですか。あなた方が答えて長くかかってもいかぬから、一口で私の見解を言えば、プラザ合意後、一九八七年から八九年にかけて二年数カ月にわたって、我が国の公定歩合が二・五%、史上最低という状況を続けました。そのために、円に対する日銀の介入で、非常にたくさんの円をばらまきましたが、その結果、私の調べでは、マネーサプライが毎月毎月対前年比一〇%以上、二けた以上の伸びを見せているのです。それなのに、政府と日銀は何ら対策をとらなかった。だから、日銀総裁が、あの過ちを繰り返してはいかぬという意味の自己批判をしているくらいなのです。
 それだけ金はあるけれども、投資対象はある程度限られているから、その金が土地に向かい、そして一方は株に向かって、株と土地のインフレが起こって、それでバブルが猛烈に起こったわけであります。それがつぶれたわけでしょう。そのときに、このバブルを利用して、今まさに株の活性化だなんとかいって、商法の改正までして助けてもらおうと思っている企業は一体何をやっておったか。それはあなた方が知っているエクイティーファイナンスをやって、株の値段はどんどん上がる、その株の値段でCBは発行する、ワラント債は発行する、時価発行だということで、金利換算すれば安い金利の金をかき集めて、それで設備投資をやる。設備投資ならまだいいが、土地やら株に対して投機行為を行うということをやったのじゃありませんか。
 私、ここに論文を持ってまいりましたが、これは京都大学の名誉教授の宮崎義一さんという人の書かれた論文ですけれども、非常におもしろい論文で、単行本も出ております。そのうちの一部、この人は複合不況という立場をとっているのですね。こう言っているのです。「その実態は、ワラント債、転換社債など、異常な低コストによる資金調達によって過剰≠ネ資金調達を行ない(それは八六〜八九年の四年間に九十四・四兆円にも達する。そのうち約三分の一の三十一兆円は設備投資に充当された)、その低コスト資金を前提にして引き起こされた設備投資がかなりあったことを見落としてはならない。事実、エクイティファイナンスの調達コストは、二%以下であったし、先物為替をヘッジすると、」危険を避けるためのリスクヘッジですね、「金利コストが時折マイナスまで低下するケースも見られた。また、これらの社債が順調に株式に転換することに成功すれば、企業にとっての資金調達コストは、株式利回りに等しい一%程度にとどまったことであろう。」これは「東証要覧」から引用しているのです。
 いいですか、だから企業は物すごく株を上げて、エクイティーファイナンスをやって、それで金利一%ぐらいの資金をじゃぶじゃぶ手に入れたのですよ。あなた、エクイティーファイナンスはどういう本質を持っているか、知っていますか。
    〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
#242
○西方説明員 今お話がございましたように、バブルのときに企業がエクイティーファイナンスをたくさん行ったということは事実でございます。なお、そういったものがその後の株式市場における供給過剰感になっているということもあろうかと思います。
 先ほど来お話がございます自己株式の取得につきましては、私どもは、先ほども御説明申し上げましたように、企業が消却を機動的に行うことによりまして株主への利益還元策の選択肢をふやすということでございまして、いつもいつも自己株式を取得できるような環境にあるというわけでも必ずしもないと思います。経済環境とか企業の財務の現況、そういったものを見て企業が行うということだと思います。
 したがいまして、この施策というのは、先生も御案内のことと思いますけれども、今に始まった要望ではございませんで、産業界からは随分前から自己株式についてはお話があったわけでございます。この政策は決して短期的な当面の株価対策ということではないことも御理解いただきたいと思います。
#243
○正森委員 審議官、一生懸命答えているのは顔を見ていたらわかるのですけれども、私の聞いた一番肝心なことには答えていないですね。だから、学校の成績でいえば、学校の先生としてはいい点をつけられないですね。厳しい先生だったら零点ということになるのですよ。
 私が聞いたのは、エクイティーファイナンスの経済的な本質は何かということを聞いたのです。それは何かといえば、株を発行する会社によるキャピタルゲインの取得なんです。いいですか、五十円の株が何で千円、二千円に上がるのかといえば、これは後で申します法人資本主義の需給関係がタイトであるという結果にもよりますけれども、土地を持っておったら土地には含み益がある、あるいはさまざまな内部留保がある、それが反映されて、株の額面は五十円だけれども、あるいは五百円だけれども、これは千円で買っても値打ちがあるということで買うのですよ。これを一般の株主がやれば、まさにこれはキャピタルゲインになるのです。そのキャピタルゲインを逆に株を発行している会社が獲得する、これがエクイティーファイナンスによる資本金を超える額なんです。これは経済学者なんかがちゃんと言っていることなんですよ。
 だから、そういうことをやって非常に安い資金を獲得して、それで一生懸命設備投資をしてもうけようとしたけれども、バブルが破裂して、そしてCBにしろあるいはワラント債にしろ、自分が設定した価格よりはるかに株価が下がった。だから、そんなものはだれだって転換はしないし、新株を引き受けようとしない。だから今、劣後債などを発行して、普通の社債へどんどんかえようというので、資金コストが一%、二%から六%に上がって、それが企業の採算分岐点を上げているんでしょう。それが今の不況の複合不況たるゆえんなんです。だから、そういうことをやっておいて、それで困ったら今度はエクイティーファイナンスはやらないで、逆に株を自分がもうけさせたお金で回収する。何から何まで企業主権の考え方でこれをやっておるのです。
 聞きますが、あなた方は何か、後で聞きますけれども、取引所を通じて企業は買い戻すのだというでしょう。企業は一体、エクイティーファイナンスをやって大もうけしたときの額で買い戻すのですか。それとも、今の下がった値段で買い戻すのですか。それは言わなくてもわかっている。今の価格で買うのでしょうが。そうしたら、一株八千円ぐらいでエクイティーファイナンスやっておいて、四千円で買い戻したらどうなるんですか。物すごく会社がもうかっていることになるじゃないですか。そういうことを公然と可能にするような制度が、この自社株取得なんです。
 まだ言いましょうか。資料の四を見てください。資料の四は、これも宮崎さんの本から引いたんだけれども、九二年の三月ぐらいのケースかな、日経平均がちょうど一万九千三百四十五円。九二年三月末でしたが、そのときに、日本経済研究センター、これは住友系ですかな、住友系ではなかったかもしらぬな、自己資本比率の推計値を出しました。そうしますと、上から見ていただいたらわかりますように、自己資本比率というのは、国際決済銀行、BISで八%なければいかぬということになっているのでしょう。それが九二年三月には、ずっと見ていただきますと、ぎりぎり八%になっていますが、その一つ右の一万七千円割れのケースということになれば、八%のBIS規制をクリアしているのは住友以外にないのです。ほかは全部八%を割っているのです。このときに経団連を初め財界が一番慌てて、公的資金を投入せよ、自社株買いを認めろ、こういう大合唱をやったのです。
 今ここに、経団連の自社株取得についての要望書を出した資料を持ってまいりました。これを見ますと、なるほどあなたが言っているように、一番最初は昭和四十三年から平成四年三月十日まで、九回にわたって自社株についての要望を出しております。しかし、そのたびにその事由が違うのですよ。そして、まさに平成四年三月十日というのは、このBIS規制をクリアすることもできない、そういうときに財界の利益から、公的資金を導入せよということで福祉事業団などに株を買わせる、その資金をもっと出せという一方で、自社株買いをやってくれ、こう言ってきた。そのときの要望書の中にはこう書いてあります。
 自己株取得規制の緩和は、株主への利益還元の充実、従業員持株制度の運営の円滑化、ストック・オプション制度の利用、余資のより適切な運用等のため、喫緊の課題となっている。とりわけ、我が国資本市場の活性化が緊急を要する重要課題となっている折、自己株の取得は、流通株式の減少に伴う一株当たり利益の向上により、結果的に株主への利益還元となることを認識すべきである。
こう言っているのです。今あなたが言うたことはこの財界の見解ですよね。
 そして、財界がなぜ平成四年三月十日にこういうことを言うたかといえば、ここの資料に書いてあるように、株が大暴落をして我が国の主要な世界に冠たる企業がBIS規制をクリアすることができないというような状況のときに、自社株を取得して、余っている余資をそういう方へ突っ込めば、株数が減って、そして株の値段が上がってくるだろう、こういう要望から出ているのです。いいですか。だから、商法の自社株取得の制限の撤廃というのは、単なる法律問題じゃないのです。すぐれて財界の要望である景気対策であり、経済対策の一環であるということを指摘しておかなければならないというように思うのですね。あなたはまだそこまで、見解の相違で思っておられないかもしれませんが、そういうように思うのです。
    〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
 そこで、私は、あす参考人が来られるからそこでも伺おうと思いますが、なぜ日本の株が三万八千円も九千円も、はね上がったかといえば、それは奥村宏教授なんかがよく言われておりますように、法人資本主義の結果ですね。
 私の差し上げました資料でもわかりますように、個人株主はわずか二〇%にしか過ぎません。そして金融機関が四三%で、事業法人が三〇%を超えております。証券も入れればほとんど八割近い、そういう数字であります。そうなれば、株の需給関係がタイトになるのは当たり前であります。そして、事業法人と金融機関は、今まで問題が出たように、相互の株の持ち合いによって、これは利益配当を受けることが目的じゃなしに支配証券であります。だから売らないんですよ。東証に聞いてもらってもわかりますけれども、最近は少し崩れて売られるようになったけれども、二、三年前までは総売買数のうち、法人はこれだけ持っているのに、売買回数では一割にいくかいかないかぐらいであります。そして、二〇%ぐらいの個人が売買をする。そうしますと、全体の株数は極めて少ないから、法人が買いに入って、そしてある程度売買が上がれば、それは物すごく需給関係に影響するんですよ。これが日本の高株価の大きな原因だということは、学者に繰り返し指摘されているところであります。
 今度は、株式会社がおのれの利益でそれをやろうとしているのが、この自社株取得の解禁じゃないですか。株の値が高いときはエクイティーファイナンスで大もうけをして、そしてバブルで崩れたら、今度は内部の金で株を支えるために買う、そんな勝手なことがありますか。そういうことでは、個人株主は株式市場から逃げ出す以外にはないというように言わなければならないと思います。
 そこで、あなたのお顔を見ていると、大分それは立場が違うからな、まさか仰せのとおりですとも言われへんし、反対すればまたかみつかれるし、?りいところだと思うので、具体的な問題に移りますが、今同僚委員も聞きましたが、利益消却の場合は配当可能利益の範囲内でと、こう書いてありますね。そこでちょっと具体的に聞きますが、この配当可能利益というのはどういうことですか。それは一般的には、これは法務省の答弁守備範囲かもしらんが、普通は商法二百九十条の「利益の配当」のところに、「利益ノ配当ハ貸借対照表上ノ純資産額ヨリ左ノ金額ヲ控除シタル額ヲ限度トシテ之ヲ為スコトヲ得」というように書いてありますが、このことを指しているんだと言われていますが、そういうことですか。
#244
○濱崎政府委員 御指摘のとおりでございます。
 なお、今回の改正によって、控除項目に、今回認める種々の理由によって決算期において保有している自己株式の保有残、今回の改正によって認める取得の取得残、その評価額も控除するという改正を加えることにしております。
#245
○正森委員 ちょっと聞こえない部分もあったのですが、いいです。
 これを見ますと、「左ノ金額ヲ控除シタル額ヲ限度トシテ之ヲ為スコトヲ得」となっていますが、「資本ノ額」、これは当たり前ですね。「資本準備金及利益準備金ノ合計額」「其ノ決算期ニ積立ツルコトヲ要スル利益準備金ノ額」、これは十分の一ですね。それから、二百八十六条の二及び二百八十六条の三、これは開発費とか、そういうものですね。「貸借対照表ノ資産ノ部二計上シタル金額ノ合計額が前二号ノ準備金ノ合計額ヲ超ユルトキハ其ノ超過額」というようになっていますね。しかし、これを見ますと、資本準備金や利益準備金に入らない資本剰余金といいますか、任意積立金があるんじゃないですか。それは、私はここに商法の注解を持ってまいりましたが、それを見ますと、これらについては財務諸表規則があったり、あるいは定款によって、定款の規定がある場合には定款を変えれば取り崩せる、あるいは過去の株主総会における計算書類承認決議によって積み立てられた任意準備金は、利益金処分案に取り崩し分を計上し、総会の承認決議を得ることにより利益配当に充てることができるとかいうのが通説だというように書いてあります。そうすると、この商法二百九十条よりも配当可能利益というのは広いのじゃないですか。あるいは、商法二百九十条はそう解釈していいのじゃないですか。
#246
○濱崎政府委員 御質問の趣旨を必ずしも正確に把握しているかどうか、後でよく御指摘いただければと思いますが、商法上の配当可能利益は、今委員御指摘のような費目を純資産額から控除するということでございますが、その配当可能利益の中には、会社が定款あるいは株主総会の決議によって一定の目的のために積み立てる金額としての任意積立金というものもその中に入っているわけでございます。その任意積立金の取り崩しということについては、定款で定めておるものについては定款の変更、それから総会の決議で定めているものについては総会の決議によって取り崩すということができるわけでございますので、そういう行為をしなければ、商法上は配当可能利益であってもそれをそのまま配当するというわけにはまいらない、こういう関係にあるわけでございます。
#247
○正森委員 結局、私の言うたことを承認したわけでしょう。私も、無条件に配当可能利益になるというのじゃなしに、定款で決まっておるものは定款で決めれば、あるいは株主総会で任意積立金になっているものは株主総会で承認すれば配当可能利益になるんだ、通説はそうなっているけれども、そうでしょう、こう言うたのだから、あなたの答弁は私の言うたことをそのとおりですと言って答えたのと同じことじゃないですか。うなずいているわな。何もそんな威張って言わなくても、先生御指摘のとおりです、こう言えば十秒か二十秒で済むものを、あたかも学ありげにこんなことを言わなくたって、私がちゃんとそのとおり言うたのだから。何も私、無条件に配当可能利益になるなんて言っていないのだから。まあいいですわ、民事局長には民事局長のプライドがあったのでしょうからね。
 だから、結局配当可能利益というのは伸縮性があるのですよ。だから、相当買えるのです。そこで、配当可能利益で買う。これは数量の制限がないのですからね。配当可能利益であればよろしい。それで、またしばらくしたらもうけて金がたまってくる、それでまた買うということになれば、会社は非常に大きな株の買い入れの能力、逆に言葉を言えば、株価操縦能力を持つのでじゃないのですか。
#248
○濱崎政府委員 御指摘のとおり、会社の実態はさまざまでございますけれども、いわゆる配当可能利益の範囲、まさに任意積立金というものも含めて考えますと、相当の財源ということになると考えております。ただ、株価操縦という観点につきましては、これは私ども、それがそのまま株価操縦につながるというものではないというふうに考えております。前段は御指摘のとおりと思います。
#249
○正森委員 株価操縦といって、上げてやろうと思って行動するのじゃなしに、経団連などは、そういうように自社株取得で買える、そして流通株を少なくするということがその株価に影響があるんだ、こう言っているのですからね。だから、そういう効果はあるというように思うのです。
 それで私は、その場合に、利益消却で株を買った場合に税金関係がどうなるかというのを、主税局来ていますか、主税局にみなし配当課税の問題について、租税特別措置法などを今度改正されましたから聞きたいと思ったのですが、今委員部から紙が回ってまいりまして、ちょうど時間になりました、こう言っておられますので、七時も大方半になっておりますし、またあすの審議がありますから、本当はきょう質問したいと思うことがまだ二間も三問も残っているのですが、あす聞かせていただくということにして、きょうはこれで終わらせていただきます。大臣、どうも。大臣に聞こうと思ったところまで行かなかった。
     ────◇─────
#250
○高橋委員長 内閣提出、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、趣旨の説明を聴取いたします。中井法務大臣。
    ─────────────
 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ─────────────
#251
○中井国務大臣 外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、最近における弁護士業務を取り巻く国際的環境の変化及び国際的法律事件の増大にかんがみ、渉外的法律関係の一層の安定を図る等のため、外国法事務弁護士に係る承認の基準についての相互主義を緩和するとともに、外国法事務弁護士が弁護士と共同の事業を営むことができることとする等外国法事務弁護士の活動に関する規制を合理化する等のため、外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正しようとするものでありまして、その改正の要点は、次のとおりであります。
 まず、第一は、現行法の裁量の余地のない相互主義を緩和するものとしていることであります。すなわち、我が国が外国と外国弁護士受け入れ制度に係る条約その他の国際約束を締結したときは、その誠実な履行を妨げることとならないよう、その相手国において我が国の弁護士となる資格を有する者に対し我が国の外国弁護士受け入れ制度による取り扱いと実質的に同等な取り扱いが行われていないときであっても、その外国の外国弁護士となる資格を有する者に対し外国法事務弁護士となる資格の承認をすることができることといたしております。
 第二は、外国法事務弁護士となる資格の承認の基準の一つである外国弁護士としての職務経験年数の要件を緩和するものとしていることであります。すなわち、五年以上の外国弁護士としての職務経験を有することを承認の基準とするとの現行法の原則は維持しつつ、国内において弁護士または外国法事務弁護士に雇用されていた期間については、一定の要件のもとに、通算して二年を限度として外国弁護士としての職務経験年数に算入することといたしております。
 第三は、外国法事務弁護士の請求により登録が取り消された後の手続を合理化するものとしていることであります。すなわち、外国法事務弁護士がみずからの請求により登録の取り消しを受けた場合について、現行法の法務大臣による裁量的な承認の取り消しの制度を廃止し、その者が登録の取り消しを受けた後六カ月以内に再度登録の請求をしないときには外国法事務弁護士となる資格の承認が失効することといたしております。
 第四は、外国法事務弁護士の事務所の名称に係る規制を緩和するものとしていることであります。すなわち、外国法事務弁護士の事務所の名称中には外国法事務弁護士の氏名を用いなければならないとする現行法の規制を撤廃するとともに、一定の要件のもとに、外国法事務弁護士の事務所の名称中に外国法事務弁護士が所属する事業体の名称を使用することができることといたしております。
 第五は、外国法事務弁護士が我が国の弁護士と共同の事業を営むことに係る現行法の規制を緩和するものとしていることであります。すなわち、外国法事務弁護士は、五年以上の弁護士としての職務経験を有する弁護士とする場合に限り、訴訟代理等一定の法律事務以外の法律事務を行うことを目的とする共同の事業については、これを営むことができることとし、外国法事務弁護士が弁護士と共同の事業を営むときには、一定の事項を日本弁護士連合会に届け出なければならないことといたしております。
 以上が、この法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
#252
○高橋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
  次回は、明八日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後七時三十分散会
     ────◇─────
ソース: 国立国会図書館
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