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1993/01/26 第128回国会 参議院 参議院会議録情報 第128回国会 本会議 第12号
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1993/01/26 第128回国会 参議院

参議院会議録情報 第128回国会 本会議 第12号

#1
第128回国会 本会議 第12号
平成六年一月二十六日(水曜日)
   午後一時四十一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第十二号
    ―――――――――――――
  平成六年一月二十六日
   午後一時四十分 本会議
    ―――――――――――――
 第一 公職選挙法の一部を改正する法律案外三
  件両院協議会の協議委員の選挙
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一
 一、農林水産大臣畑英次郎君問責決議案(山本
  富雄君外二名発議)(委員会審査省略要求事

  ─────・─────
#3
○議長(原文兵衛君) これより会議を開きます。
 日程第一 公職選挙法の一部を改正する法律案外三件両院協議会の協議委員の選挙
 本日、衆議院から、公職選挙法の一部を改正する法律案、衆議院議員選挙区画定審議会設置法案、政治資金規正法の一部を改正する法律案及び政党助成法案について、国会法第八十四条第一項の規定により、両院協議会を求められました。
 これより、公職選挙法の一部を改正する法律案外三案に関する両院協議会の協議委員十名の選挙を行います。
 つきましては、両院協議会協議委員の選挙は、その手続を省略し、議長において指名することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(原文兵衛君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、公職選挙法の一部を改正する法律案外三案に関する両院協議会の協議委員に坂野重信君、下稲葉耕吉君、下条進一郎君、関根則之君、平井卓志君、松浦功君、村上正邦君、山本富雄君、橋本敦君、青島幸男君を指名いたします。(拍手)
     ─────・─────

#5
○議長(原文兵衛君) この際、お諮りいたします。
 山本富雄君外二名発議に係る農林水産大臣畑英次郎君問責決議案は、発議者要求のとおり委員会審査を省略し、日程に追加してこれを議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(原文兵衛君) 御異議ないと認めます。
 よって、本案を議題といたします。
 まず、発議者の趣旨説明を求めます。山本富雄君。
    ―――――――――――――
   〔議案は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
   〔山本富雄君登壇、拍手〕
#7
○山本富雄君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました農林水産大臣畑英次郎君問責決議案の提案理由を説明いたします。
 まず、本問責決議案を本日提案するに至った経緯につきまして簡単に説明いたしたいと存じます。
 御案内のとおり、政府はガット・ドゥニ議長調整案の受け入れを十二月十四日に閣議了承し、我が党は国益に重大な損失を招いた関係閣僚の問責を行うべく直ちにその準備に取りかかりましたが、国会会期末の直前のことで、不況対策として緊要な第二次補正予算の参議院採決を優先いたしました。その補正予算審議のさなかに、衆議院は本会議を開会し、参議院を無視して、会期の越年大幅延長を強行する事態が生じました。
 この国会史上例を見ない暴挙により国会が不正常な状況に陥り、一月六日に至りようやく正常化されました。その後なぜか議運で大変手間取りましたが、本日、ガット・ウルグアイ・ラウンドに関し、農政の最高責任者たる農林水産大臣畑英次郎君の問責決議案を提案した次第であります。
 最初に、問責決議案の主文を読み上げます。
    農林水産大臣畑英次郎君問責決議案
  本院は、農林水産大臣畑英次郎君を問責する。
   右決議する。
 理由
 一、農林水産大臣は、農政の最高責任者であるにもかかわらず、三たびにわたる本院の決議、「米の完全自給」、「安全保障体制としての食糧自給力の強化」等に反し、日米間において合意が成立していたにもかかわらず、細川総理を初め、特に農林水産大臣及び外務大臣は、「国会決議に基づき既定方針どおりの交渉を粘り強く続け、これを貫く」等の国会答弁に終始し、結果として国会を著しく軽視し、農民を初め国民全体を欺いた責任は極めて重大であります。
 二、農林水産大臣は、交渉を最終局面に至るまで実務者に任せ、みずから現地で真剣な交渉を行わず、輸入国にとって極めて不公平な結果をもたらし、米の実質関税化を初め重要基幹農産物の総自由化を招いた。これにより食糧の安全保障を放棄し、我が国国民の生命を他国に牛耳られることとなり、農業のみならず農村、国土の荒廃をもたらすおそれを生ぜしめ、国益を大きく損なったことは我が国農政史上かつて例を見ない大失態であります。
 三、農林水産大臣は、ガット・ドゥニ調整案骨子なるものを示し、米の関税猶予期間経過後の七年目以降については白紙で協議する等の誤った印象を国会、国民に与え、追加譲歩義務等の調整案の重大な内容を隠していたことは、国会答弁の二枚舌とあわせ二重にうそをついたことになり、農政の最高責任者として著しく信頼を失墜するものであります。
 特に、米の関税化猶予後の七年目以降について、白紙協議どころか不確実そのものであり、我が国の稲作農業に致命的な打撃を与え、大天災に打ちひしがれている農民に追い打ちをかけ、農業を初め国全体を極めて深刻な不安に陥れた。
 以上が本決議案を提出する理由である。
 次に、趣旨について説明をいたします。
 一、畑農林水産大臣は、つい先日までの国会のたび重なる質問に対して、「国会決議を尊重し、従来の基本方針どおりの交渉を粘り強く続け、これを貫く」旨の答弁を終始してまいりましたが、米を初め重要農産物の総関税化を迫る調整案を受け入れたことは、本院における三たびにわたる国会決議、すなわち「米の完全自給」、「安全保障体制としての食糧自給力の強化」等を踏みにじり、結果として国民に大うそをついたと断ぜざるを得ません。
 凶作による米の緊急輸入を逆手にとり、ミニマムアクセスの拡大の下地をつくって米国と合意をし、これを最後まで隠し通してガットの調整の名のもとに米の隠れ関税化を押しつけられた事実は歴然であります。
 ミニマムアクセスはもともと関税化の一部であり、ミニマムアクセスの量的側面だけから見ても八十万トンという輸入量は日本有数の生産県新潟県の生産量に匹敵するものであり、これは明らかに国会決議違反であります。
 我々は、今まで米についてさまざまな角度から幾たびとなくただしてまいりましたが、外交交渉の隠れみののもとで最後まで二枚舌でしらを切り通したことは重大な国会軽視、いや国会無視であると断定をいたします。
 二、その上、最終局面における最も重要な詰めの交渉においても官僚にすべての交渉を任せっ放し、農林水産大臣が現地訪問をしたのはドゥニ調整案提示時点の四十日も前のことでありまして、それも表敬訪問の域を出ていないではありませんか。
 米国とECの主要官僚が現地で、そして各地で長時間真剣な交渉を何度も何度も繰り返していたこととは正反対であり、また、米問題で日本と同じ立場にあった隣国韓国農相が現地に乗り込んで死に物狂いの交渉を展開していたことから見ても、農林水産大臣の行動は単に職責上の怠慢云々では済まされず、大天災にあえぐ農家を初めとする日本農業に、重要基幹農産物の総自由化という大人災で追い打ちをかけたことにほかなりません。
 さらに、米は言うに及ばず、乳製品を初めとする二十品目に及ぶ我が国重要基幹農産物の関税化は、国内各地の畜産、畑作経営等に今後永久にはかり知れないダメージを与えることになったのであります。
 この結果、一億二千万人の国民の食糧の安定供給が困難となり、農家、農村を切り捨て、国土の崩壊をもたらすおそれが生じたこととなり、長い我が国の農政史上、取り返しのつかない大失策、大失態を犯したのであります。
 三、ドゥニ調整案なる内容について、調整案骨子なるものを示して、十二月九日までの段階で、米の関税化猶予期間経過後の七年目以降は白紙で協議などと、追加譲歩等の重大な中身を隠していたことも農政の最高責任者として全国民の信頼を著しく失墜するものでありました。
 特に、調整案の追加譲歩において、七年目以降猶予を継続する場合も関税化する場合も、そのいずれにおいても大きな代償を支払わなければならないのであります。すなわち、最初の第一年目から削減率が陰において適用され、七年目には八五%の低関税からのスタートとなり、加えてミニマムアクセスの八%維持義務が課せられることになるのであります。これは非常に重大なんです。また、猶予を継続する場合も、追加譲歩として八%を大幅に拡大し、他の農産物の関税引き下げも要求されるおそれが大であります。これはまさに実質的な米関税化そのもので、かかる重大な調整案を知らなかったなどということは到底信じがたいことであります。
 このことは、国会答弁の二枚舌とあわせ二重三重のうそをついたことになり、今後、全国の農家がこのようなリーダーについていくことは到底あり得ないと思うのであります。
 畑大臣、あなたは、天災についての国会答弁で「災いを転じて福となす」と繰り返し述べられました。しかし、あなたのウルグアイ・ラウンド農業交渉についての立ち居振る舞いは、言ったこととやったことが全く逆でありまして、日本の農産物の総自由化という最悪の結果を見れば、国家国民を裏切り、とりわけあなたにすべてを託してきた農民を奈落の底に突き落としたことになるのであります。
 一方、我が国と同様の立場にあった韓国は、関係閣僚の血のにじむような交渉により日本よりも有利な交渉結果を十二分に確保したにもかかわらず、金大統領は国民に陳謝をし、黄首相、許農相を初め閣僚二十六名中十五名を更迭して、韓国国民に公約違反の責任をとったのであります。何という違いでありましょうか。
 今、我が国農業最大の危機を迎え、国を挙げて日本農業の再建に取り組んでいくためにも、まず、国会決議に反し、国民を欺いた為政者の政治責任を明確にし、文字どおり本年を日本農業再建元年とするため、農林水産大臣の一日も速やかな退陣を要求するものであります。
 日本の農政にイデオロギーはありません。党派を超えて満堂の皆さんの御賛成を強く期待いたしまして、私の趣旨説明を終わりたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
#8
○議長(原文兵衛君) 本案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。山田勇君。
   〔山田勇君登壇、拍手〕
#9
○山田勇君 私は、日本社会党・護憲民主連合、公明党・国民会議、日本・新生・改革連合及び民社党・スポーツ・国民連合を代表して、ただいま上程されました農林水産大臣畑英次郎君問責決議案に対し、反対の討論を行うものであります。
 反対の第一の理由は、政府は、完全とは言わないまでもウルグアイ・ラウンド交渉において最大限の外交努力を行い、自由貿易体制を堅持しつつも米の例外なき関税化の圧力に対して諸外国の譲歩をから取った点であります。資源が乏しく貿易立国である我が国にとって、自由貿易体制の存続は国家存立の死活要件であり、交渉をまとめガット体制を守ることは最大の国益でありました。
 我々は、これまで米及び稲作は我が国にとって食生活のみならず国土保全等と不可分なる関係にあり、健全な我が国社会を維持する上で格別に重要な地位を占めているとの認識から、関税化の例外にするよう強く主張し、政府に対して国会決議の趣旨を体して交渉するよう督励してまいりました。
 しかしながら、最終的に我が国に残された道は、調整案を受け入れるか、あるいはこれを拒否するかの選択以外にない状況下に置かれたのであります。我が国がこの調整案を否認した場合、ウルグアイ・ラウンド不成立の非難を一身に受けることになるなど、さまざまな影響も考慮に入れた上で、いずれを選ぶか苦渋の選択を迫られることになったのは衆目の一致するところであります。
 ガット加盟百十五カ国が承認し、しかも我が国と類似した立場にあった韓国やカナダなどの国々が調整案を認めている中で、我が国のみが異論を唱え、世界の孤児となる道を選ぶことは絶対に避けなければなりません。ここに我々の呻吟や苦悩があったことは言うまでもありません。
 反対の第二の理由は、交渉過程において国会軽視とか国民を欺いた等の行為は断じてなかったという点であります。
 多国間交渉という性格上、秘密保持を要することは極めて重要なことであり、やむを得ない行為であります。また、その行為も国会決議をよりどころとしつつ、何とかして最大限の譲歩を引き出そうという信念によるものであります。国会軽視とか国民を欺いた等の非難は牽強付会と言うべきであります。
 翻って考えると、ガット・ウルグアイ・ラウンドは七年もの長きにわたって交渉が行われましたが、その長い間、自民党政権が国民や我々に実質的な相談をしたことがただの一度でもありましたか。ウルグアイ・ラウンド交渉を秘密裏かつ独善的に進めたのはまさに自民党政権ではありませんか。問責すべき資格があるというのでしょうか。到底、夜郎自大のそしりを免れません。
 反対の第三の理由は、ウルグアイ・ラウンド交渉の結果が食糧の安全保障を放棄し、農村、国土の荒廃をもたらすことにはつながらないという点であります。
 ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉で、米については六年間関税化を猶予するかわりに四%から八%の最低輸入量を受け入れますが、七年目以降については六年目に入った段階で再交渉することになりました。これは、当面例外なき関税化を回避できたということであり、我々は再交渉の機会と貴重な時間を得たわけであります。
 また我々は、我が国の農業の安定と発展を図るため、市場開放による利益の還元、農業基盤整備の集中的投資や品種の開発、改良など研究投資の思い切った拡充、農業技術の改善などによる国際競争力のある農家の育成、中山間地農家対策の充実など、連立与党として総合農業政策を確立し、諸対策を講じてまいります。これにより農業の維持、国土保全は確立されると確信をいたします。
 確かに、これまで米の自由化反対を主張し続けてきた我々にとって、今回のウルグアイ・ラウンドにおける農産物交渉の結果は国会決議を一〇〇%実現したとは言えず、痛恨のきわみであります。しかし、日本の国益を総合的に考え、ウルグアイ・ラウンドを成功させる立場からその受け入れを決断したことは、日本の国際的孤立化を回避するためにやむを得ない事態であったと考えております。
 自己の長期政権時代の農政と外交のツケを細川内閣に回しておきながら、厚顔にもこのような本問責決議案を提出する暴挙に出た自民党はみずから恥じるべきであり、反省すべきであります。
 以上申し上げた点にかんがみてみれば、提案者の述べられる畑英次郎農林水産大臣に対する批判は全く的外れであり、暴論のきわみであり、私は、ここに畑英次郎農林水産大臣を強く信任すると同時に、この理不尽きわまる本問責決議案に断固反対して討論を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(原文兵衛君) 大塚清次郎君。
   〔大塚清次郎君登壇、拍手〕
#11
○大塚清次郎君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました農林水産大臣畑英次郎君問責決議案について、賛成の討論を行います。
 畑農水大臣、よくよく聞いてください。あなたは精魂傾けたと言われるが、ガット農業交渉の結果について、全国の生産現場では今何とも言い知れない挫折感に覆われております。もう農業の先は見えた、そういう虚脱の状態が続いております。
 我が国農政の画期的な転換への道しるべとなっておりますいわゆる新政策、この展開に懸命に取り組もうとしているやさき、折しも天明以来の大災害に見舞われ、米の大量緊急輸入の事態と重なった今度の実質包括関税化の受け入れは、まさに我が国農業の存立にとって致命的な打撃でございます。
 特に、新農政が着目しております担い手後継者に与えるダメージははかり知れません。新政策のうたい文句は、我が国のこれ以上の自給率の低下に歯どめをかけ、農業者に他産業並みの生涯所得を保障できる経営体像を提示しております。
 だが、それはあくまでも現行の国境措置の維持を前提に政策が仕組まれているのは論をまちません。このよりどころが衆参両議院での三たびに及ぶ国会決議なのであります。
 畑農水大臣は、事あるごとに内外に向けて、国会決議の尊重、国内食糧自給方針の貫徹を繰り返してこられました。それがドゥニ議長案の受け入れ時点では、国会決議の精神には沿った、国内自給方針の原則はおおむね守れたと、まことに苦し紛れな言いわけに変わってしまいました。これこそ明らかな二枚舌ではありませんか。特に、参議院の国会決議は米の完全自給を求めております。したがって、紛れもない国会決議違反であることは明々白々でございます。
 畑農水大臣には、何よりもまずこの責任を負ってもらわなければなりません。
 それから、畑農水大臣は終始秘密交渉を押し通し、殊にそのハイライト、米の部分開放の日米の内密の合意を経過段階から最後まで隠し通してこられました。細川内閣は、挙げて内外のすべての報道を否定し続け、完璧なまでに外交秘密の保持に狂奔されました。議院内閣制の我が国では、国会に対し外交秘密を盾にとることにはおのずから限界があります。ましてや、結果、成果が国益をそぐ事態においてをやであります。
 しかも、たび重なる国会決議で縛りをかけた国会に向けて、外交機密を口実にして、知らしむべからず寄らしむべしの態度は専制そのものではありませんか。連立与党がお唱えになっております開かれた国会論議という国会改革のフレーズは一体どこへ行ったんでしょう。
 このように国会決議に反する米を初めとする農産物の総自由化の受け入れは明らかに国益に反し、国民と国会にうそをつき通して国家の大計を誤った畑農水大臣の責任を厳しく問うものであります。
 政治改革にかまけて役人任せに等しい交渉のあげくのドゥニ議長調整案の丸のみは、米国とEC、この巨大二大輸出国の世界市場制覇の戦略、エゴに振り回されまして、実質総関税化を押しつけられ、ラウンドの主眼であった貿易の公平公正扱いの原則さえさらに歪曲されてしまっているではありませんか。何のためのラウンド交渉だったのか、まことにざんきにたえません。
 事、米について大臣は例外をから取ったと胸を張っておられますが、これは調整案とダンケル合意案を重ねてみますと、明らかにダンケル合意案の完璧な変形にしかすぎません。加えて、それにミニマムアクセスの大きな数量ペナルティー、これが重くかけられております。五年目の白紙協議なんてとんでもない。そのときの選択によってはさらに大きなペナルティーを義務として背負わせられることになりかねません。
 米減反政策の固定化や、あるいは輸出国の供給保障についての訓示規定、これらのことについても抜け道だらけではありませんか。ともすると自給はおろか、我が国から稲作とこれにはぐくまれた文化が消えていくことになる。この政治責任を大臣は後世に免れることはできません。
 途上国扱いのハンディキャップはあるにせよ、韓国に対する米の扱いとの大きな隔たりに彼我の外交交渉の巧拙と、それから交渉努力の濃淡をまざまざと見せつけられました。韓国の農相が現地に乗り込んであの粘りの交渉で米の猶予期間十年間、ミニマムアクセス一−四%と、我が国よりはるかに有利な条件を引き出したこの事実、それをしましても韓国の農相は潔く引責辞職しておるではありませんか。
 もう一つ見逃せないことがあります。
 東京ラウンドに続く今次交渉のねらい目は、特に農業について輸出国と輸入国の公平公正取り扱いのルールづくり、そのバランスをとるのが基本であったはずであります。そして、その公平公正貿易歪曲の元凶であります輸出補助金の廃止が目標であったと思います。それが交渉の成果に見えていないばかりか、かえってダンケル合意案の枠組みを大きく壊しております。
 この一つの例が、米国とECの密室協議で補助金つきの量的削減は二四%から二一%に下げられ、しかも基準年を動かし、ずらしておる、これが問題なんです。また、米国の通商法三〇一条の温存を初め幾多のグレーゾーンを積み残し転がら我が国だけが実質関税化を丸のみさせられる、その不公平の拡散は私はもってのほかだと思うんです。ここにも大臣が最大限の努力を払った、最大限の努力をしているということ、そのあかしは見えてこない、全く見えません。この責任はまことに重いと思います。
 このような交渉失敗の責任をどうおとりになりますか。これでは政治行政への不信は募るばかりです。武村官房長官に至っては問責に値しないと言っております。閣僚のだれ一人として責任をとろうとはしない、世にも摩訶不思議なことだと思うが、どうですか。
 政治の要請は、政治責任にけじめをつけることが何よりも大切だと思います。
 今、我が国農業存立の最大の危機を迎え、将来にわたるイバラの道に何とか活路を見出していくために農水省が今やろうともくろんでおりますもろもろの国内対策あるいは農業再生ビジョンとかいうようなこと、それらのものをつくって外圧をはね返す実効のある国内対策にとりかかるためにも、為政者はまずけじめをつける、政治責任をとることから始めなければならないと思います。日本農業の生き残りのため、畑農水大臣の潔い退陣を求めまして、私の賛成討論といたします。
 たび重なる国会決議で米の完全自給を政府に求めていただきましたここ議場の全党、全会派、全議員のこぞっての御賛同を切にお願いいたしまして、降壇いたします。(拍手)
#12
○議長(原文兵衛君) 西山登紀子君。
   〔西山登紀子君登壇、拍手〕
#13
○西山登紀子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま提案されました畑英次郎農林水産大臣を問責する決議案に賛成の討論を行います。
 細川内閣と畑農林水産大臣は、例外なき関税化を受け入れない、米は国内で完全に自給するとの三度にわたる国会決議を踏みにじり、ウルグアイ・ラウンド交渉でドゥニ議長の調整案を受け入れました。これは米の全面的な自由化に道を開き、乳製品やでん粉など二十品目もの農産物を一挙に関税化してすべての農産物を自由化し、我が国の農業と農民の生活に壊滅的な打撃を与えるものです。日本の農業を守り、安全な食糧を確保するという国民にとって死活的な利益を投げ捨てた細川内閣の政治責任は極めて重大です。
 言うまでもなく、その最大の責任は細川総理自身が負うべきものです。また、羽田外相も七年半前から受け入れを決めていたと発言しており、その責任は免れません。米の全面自由化は、国民に耐えがたい痛みを強いる細川内閣の際立った悪政と言わなければなりません。
 畑農水大臣、あなたは大臣就任以来、表向きには例外なき関税化には反対、秘密交渉はしていないとの態度を表明してきました。しかし、アメリカの農業分野の交渉責任者であるオメーラ特別交渉官がことしに入って通信社のインタビューに答えたところでは、関税化を六年間猶予しミニマムアクセスだけ受け入れるという構想はアメリカの発案であったということです。しかも、この案を昨年の秋の早い段階に日本に伝えたと語っています。
 このようにドゥニ議長から出された調整案なるものは、実際には日米秘密合意に基づき提出されたものであり、アメリカに全面的に屈服して米の関税化受け入れを準備するものでした。にもかかわらず、当時、細川内閣及び畑農水大臣は、そのような交渉は一切していないと繰り返し否定し続けました。この二枚舌とも言うべき言動は国民と国会に対する重大な背信行為でなくて何でしょうか。
 しかも大臣、あなたは、政府が示したドゥニ議長の調整案骨子は、七年目以降については白紙の状態で再交渉できるものと説明しました。しかし実際は、追加譲歩や高関税部分の一年目からのみなし削減をひた隠しにしてきたのです。これは国民を二重にも三重にも欺き、日本農業を守る努力を放棄したものであり、到底許されるものではありません。
 大臣、米は我が国の主食であり、日本農業の根幹です。それだけに米自由化が我が国の農業と農民に与える深刻な影響ははかり知れません。農業が滅んで国の繁栄があり得ないことは歴史の教えるところです。二千年来、日本の文化をはぐくみ、国民の精神的基盤となってきた稲作と米を失うことは民族の歴史と伝統の否定につながり、まさに亡国の道です。
 さらに大臣、乳製品に至っては九五年一月から完全自由化にさらされるのです。今、酪農経営がどれほど厳しい現状が、あなたが知らないはずはありません。相次ぐ乳価の引き下げと牛肉自由化で個体価格が暴落する中、生産者はみずからだぶつく生乳の生産調整を強いられ、十分搾乳できる若い経産牛を泣く泣く淘汰しているのです。我が子を間引くような、まさに塗炭の苦しみにあえぐ酪農家に対して、この乳製品の完全自由化は死ねというのに等しいものではありませんか。農民や酪農家の生産意欲を奪い、日本農業を滅ぼす道を選んだあなたに日本の農水大臣の資格はありません。
 私は、農家の皆さん、酪農家の皆さんの怒りの声を代表して、あなたの責任を厳しく糾弾いたします。
 今回のガット調整案はだれが担当者であっても拒否することは不可能だったのでしょうか。決してそうではありません。
 もともとガットとは、参加各国の主権の尊重が大前提で、交渉に当たっては各国の経済主権は尊重されています。一九五五年、我が国がガットに加入したときの条件は議定書に定められています。そこでは日本のその時点での有効な法令に反しない限度で輸入制限をなくすという、いわゆる祖父条項が合意されていました。農水大臣はこの祖父条項の存在を知らないはずはありません。
 交渉は当然主権国家のお互いの協議で決めるのが基本原則でした。さらにガットでは、ウルグアイ・ラウンドのような多角的貿易交渉においてはそれぞれの締約国の異なる事情、異なる必要性を尊重し、各国の産業の置かれている状況にも十分考慮されねばならないと明記されています。
 この点からも、今回の調整案の受け入れが決して避けられないものでなかったことは明白です。にもかかわらず、この調整案を受け入れたことは我が国の主権を売り渡したも同然なのです。
 しかも、今回の調整案は、我が国には全面自由化を強制しながら、輸出大国のアメリカには輸出補助金の温存を認めるなど、アメリカ言いなりです。ウルグアイ・ラウンドの成功のためだとか世界に貢献する日本だとか言いながら、実際はクリントン政権の言うままになり、我が国の主権を侵害し、国民の利益を甚だしく損なった大臣の責任は将来にわたってぬぐい切れない重大なものです。
 ウルグアイ・ラウンドの正式調印はことしの四月、条約として効力を持つための国会承認はことしの秋以降になります。今回の調整案のように減反を義務づけされた上、ミニマムアクセスの受け入れで四十万トンから八十万トンも輸入せざるを得ない、こんな矛盾した理不尽なことは世界のどの国でも行われておりません。だからこそ、現在、千を超える地方議会が政府の決定に抗議する決議や意見書を上げ、消費者、国民の中にも大きな不安が広がり、農業団体も細川内閣に厳しい批判の声を上げているのです。今ほど自由化を拒否し、減反をやめ、食糧自給率を引き上げるために万全の対策を講ずるよう政策的な転換が強く求められているときはありません。
 安全な食糧は日本の大地から、こうした国民の当たり前の願いにこたえることこそ、日本政府、わけても農政の最高責任者である農水大臣の責務です。この責務を放棄して、米市場開放を受け入れ、米輸入自由化を前提に九割もの農家を切り捨てる日本農業破壊への道、新農業政策を進める畑農水大臣に引き続き日本の農政を任せることはできません。
 国民の願いに背き、議会の民主的運営を踏みにじって強力な政治を目指す細川政権の企てが挫折することは、過日の本院本会議でも明白に示されました。
 議員の皆さん、私は、畑農水大臣の重大な責任を明らかにし、今後とも米の自由化を許さず、我が国の農業と国民の食糧を守るために一層奮闘する決意を込め、御賛同を心からお願いいたしまして、問責決議案に対する賛成の討論を終わります。(拍手)
#14
○議長(原文兵衛君) これにて討論は終局いたしました。
#15
○議長(原文兵衛君) これより採決をいたします。
 表決は記名投票をもって行います。本案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。
 議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行います。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#16
○議長(原文兵衛君) 投票漏れはございませんか。――投票漏れはないと認めます。投票箱閉鎖。
   〔投票箱閉鎖〕
#17
○議長(原文兵衛君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#18
○議長(原文兵衛君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十六票
  白色票             百六票
  青色票            百三十票
 よって、本案は否決されました。(拍手)
     ―――――・―――――
  〔参照〕
 賛成者(白色票)氏名      百六名
      青木 幹雄君    井上 吉夫君
      井上 章平君    井上  孝君
      井上  裕君    伊江 朝雄君
      石井 道子君    石川  弘君
      石渡 清元君    板垣  正君
      岩崎 純三君    上杉 光弘君
      上野 公成君    浦田  勝君
      遠藤  要君    小野 清子君
      尾辻 秀久君    大河原太一郎君
      大木  浩君    大島 慶久君
      大塚清次郎君    大浜 方栄君
      太田 豊秋君    合馬  敬君
      岡  利定君    岡野  裕君
      岡部 三郎君    加藤 紀文君
      狩野  安君    鹿熊 安正君
      笠原 潤一君    片山虎之助君
      鎌田 要人君    木宮 和彦君
      北  修二君    久世 公堯君
      沓掛 哲男君    倉田 寛之君
      河本 三郎君    佐々木 満君
      佐藤 静雄君    佐藤 泰三君
      斎藤 十朗君    斎藤 文夫君
      坂野 重信君    沢田 一精君
      志村 哲良君    清水嘉与子君
      清水 達雄君    下稲葉耕吉君
      下条進一郎君    陣内 孝雄君
      鈴木 省吾君    鈴木 貞敏君
      世耕 政隆君    関根 則之君
      田沢 智治君    田辺 哲夫君
      高木 正明君    竹山  裕君
      坪井 一宇君    中曽根弘文君
      永田 良雄君    楢崎 泰昌君
      成瀬 守重君    西田 吉宏君
      野沢 太三君    野間  赳君
      野村 五男君    南野知惠子君
      服部三男雄君    林  寛子君
      林田悠紀夫君    平井 卓志君
      二木 秀夫君    真島 一男君
      前島英三郎君    前田 勲男君
      松浦  功君    松浦 孝治君
      松谷蒼一郎君    溝手 顕正君
      宮崎 秀樹君    宮澤  弘君
      村上 正邦君    守住 有信君
      森山 眞弓君    矢野 哲朗君
      柳川 覺治君    山崎 正昭君
      山本 富雄君    吉川  博君
      吉川 芳男君    吉村剛太郎君
      鈴木 栄治君    市川 正一君
      有働 正治君    上田耕一郎君
      聴濤  弘君    高崎 裕子君
      立木  洋君    西山登紀子君
      橋本  敦君    林  紀子君
      吉岡 吉典君    吉川 春子君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名      百三十名
      会田 長栄君    青木 薪次君
      穐山  篤君    一井 淳治君
      糸久八重子君    今井  澄君
      岩崎 昭弥君    岩本 久人君
      上野 雄文君    小川 仁一君
      及川 一夫君    大森  昭君
      大脇 雅子君    梶原 敬義君
      上山 和人君    川橋 幸子君
      菅野  壽君    喜岡  淳君
      北村 哲男君    久保  亘君
      久保田真苗君    日下部禧代子君
      栗原 君子君    佐藤 三吾君
      櫻井 規順君    志苫  裕君
      清水 澄子君    篠崎 年子君
      庄司  中君    菅野 久光君
      鈴木 和美君    瀬谷 英行君
      竹村 泰子君    谷畑  孝君
      谷本  巍君    種田  誠君
      千葉 景子君    角田 義一君
      堂本 暁子君    中尾 則幸君
      野別 隆俊君    浜本 万三君
      肥田美代子君    深田  肇君
      渕上 貞雄君    細谷 昭雄君
      堀  利和君    前畑 幸子君
      松前 達郎君    三重野栄子君
      三上 隆雄君    三石 久江君
      峰崎 直樹君    村田 誠醇君
      本岡 昭次君    森  暢子君
      安永 英雄君    山口 哲夫君
      山田 健一君    山本 正和君
      吉田 達男君    渡辺 四郎君
      藁科 滿治君    荒木 清寛君
      猪熊 重二君    牛嶋  正君
      及川 順郎君    大久保直彦君
      風間  昶君    片上 公人君
      刈田 貞子君    黒柳  明君
      木庭健太郎君    白浜 一良君
      高桑 栄松君    武田 節子君
      続  訓弘君    常松 克安君
      鶴岡  洋君    中川 嘉美君
      中西 珠子君    浜四津敏子君
      広中和歌子君    矢原 秀男君
      山下 栄一君    横尾 和伸君
      和田 教美君    粟森  喬君
      井上 哲夫君    池田  治君
      泉  信也君    磯村  修君
      乾  晴美君    河本 英典君
      北澤 俊美君    釘宮  磐君
      小島 慶三君    小林  正君
      笹野 貞子君    田村 秀昭君
      武田邦太郎君    寺澤 芳男君
      中村 鋭一君    永野 茂門君
      萩野 浩基君    平野 貞夫君
      古川太三郎君    星川 保松君
      松尾 官平君    山崎 順子君
      足立 良平君    井上  計君
      猪木 寛至君    江本 孟紀君
      勝木 健司君    寺崎 昭久君
      直嶋 正行君    長谷 川清君
      山田  勇君    吉田 之久君
      青島 幸男君    喜屋武眞榮君
      島袋 宗康君    下村  泰君
      西川  潔君    赤桐  操君
      紀平 悌子君    椎名 素夫君
      新間 正次君    安恒 良一君
     ―――――・―――――
#19
○議長(原文兵衛君) これにて休憩いたします。
   午後二時四十分休憩
   〔休憩後開議に至らなかった〕  

ソース: 国立国会図書館
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