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1993/10/22 第128回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第128回国会 環境委員会 第2号
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1993/10/22 第128回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第128回国会 環境委員会 第2号

#1
第128回国会 環境委員会 第2号
平成五年十月二十二日(金曜日)
    午前十時開議
出席委員
  委員長 奥田 幹生君
   理事 福永 信彦君 理事 谷津 義男君
   理事 岡崎トミ子君 理事 笹山 登生君
   理事 大野由利子君 理事 小泉 晨一君
      野田 聖子君    橋本龍太郎君
      林  幹雄君    細田 博之君
      持永 和見君    与謝野 馨君
      金田 誠一君    田中 昭一君
      前田 武志君    松沢 成文君
      田端 正広君    竹内  譲君
      宇佐美 登君    樽床 伸二君
      北橋 健治君    岩佐 恵美君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣
        (環境庁長官) 広中和歌子君
 出席政府委員
        環境庁長官官房 大西 孝夫君
        長
        環境庁企画調整 森  仁美君
        局長
        環境庁自然保護 奥村 明雄君
        局長
 委員外の出席者
        議     員 園田 博之君
        議     員 渡瀬 憲明君
        衆議院法制局第 福田 孝雄君
        五部長
        環境委員会調査 西川 義昌君
        室長
    ―――――――――――――
委員の異動
十月二十二日
 辞任         補欠選任
  高見 裕一君     樽床 伸二君
同日
 辞任         補欠選任
  樽床 伸二君     高見 裕一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法の
 一部を改正する法律案(園田博之君外七名提出
 、衆法第二号)
 環境基本法案(内閣提出第五号)
 環境基本法の施行に伴う関係法律の整備等に関
 する法律案(内閣提出第六号)
     ――――◇―――――
#2
○奥田委員長 これより会議を開きます。
 園田博之君外七名提出、水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。岩佐恵美君。
#3
○岩佐委員 まず提案者にお伺いをさせていただきます。
 この法律が本当に被害者の救済、業務認定の促進になっているのかどうかということです。
 例えば、臨時措置法施行後から平成四年末までの認定申請者件数は三百十三件、処分件数が百四十件、そのうち認定はたったの三十三件、棄却が百七件、未処分百七十三件というありさまになっています。また、最近の平成二年十月の改正後、去年の末までの状況はどうかといいますと、申請で百三十五件、処分数で十四件、うち認定はゼロとなっています。これでは全く被害者の救済になっていないという現状だと思います。その点、いかがでしょうか。
#4
○園田議員 この臨時措置法は、先日提案の趣旨説明を申し上げたときに御説明申し上げておりますが、もともと認定業務、関係県でやっておりましたが、申請者の便宜を図るためにも、あるいは認定を全体的に促進するためにも、臨時措置法をつくって国においても認定業務をやっていただきたい。むしろ、私どもが選出されております熊本県からの強い要望で昭和五十三年につくっていただいた法律であります。
 もちろん、この数字を見て満足と言えるほどのものかどうかはわかりませんが、正直に申し上げまして、一定期間この臨時措置法によって申請することを拒否するといいますか、そういう運動があった時期もありました。今はそうではないんですが、一つは、やはり時間が相当たっているということもありましょうし、一つの年度に相当膨大な人たちが申請するということはありませんが、数字を見ておりますと、今まで何回かごの法律を延ばしてきた経過の中で、私は、むしろ最近の三カ年はかなり多くの人たちが申請していただくようになっているんじゃなかろうか。むしろ、今この法律をやめてしまうことは、せっかくそれなりに順調に進んできた認定業務が私は阻害されることになるんじゃなかろうか。それなりに、数の上で不満足はございますが、依然として、しかも今回は枠を拡大しておりますし、またこの法律を延長、拡大することによって申請者がふえるんではなかろうかというふうに考えております。
#5
○岩佐委員 申請者数が少ないという問題については、今数字を申し上げましたように、臨時措置法施行後から平成四年まで三百十三件あって、問題は、処分件数が少ない上に認定が非常に少ないということが問題なんですね。処分件数百四十件、そのうち認定はたったの三十三件だ。またこの改正後も、申請で百三十五件あるわけです。そして処分数が十四件、認定はゼロ、そこが一番の大きな問題ではないですかということで伺っているわけです。
 裁判の方ですけれども、裁判の結果は、新潟水俣第一次訴訟、昭和四十六年九月、五十六名中容認したのは五十五名で、一名棄却でした。それから熊本水俣病一次訴訟、昭和四十八年三月、四十五名中四十五名が容認されています。それから、その他の裁判がずっとこういう形で続いて、合計延べ四百六十三名中四百十六名が容認されている。棄却されているのはたったの四十七名です。
 ですから、被害者から見れば、この法律は救済には役に立たないのじゃないか。だから裁判によって救済してもらいたい、こういう結果になっているんだというふうに思います。この点について環境庁にお伺いしたいと思います。
#6
○森政府委員 ただいまお話がございました、裁判の上での認められた数とそれから行政的な判定との比較でございますが、これは必ずしも正確ではないのではないか。
 といいますのは、裁判も原告全員についてそれが判断をされているわけではなくて、その結審をした部分、それについての判決ではなかろうかと思います。そうなりますと、その段階ではいろいろ判断のしやすさ、しにくさ、それらがしんしゃくをされて出ておりますので、その容認率と申しましょうか、裁判上認められたものの傘と、それから臨時措置法によって認定をしております。その率、これを直接に比較することは大変難しいなと思っております。
 ただ、臨時措置法自身の持つ役割といいますのは、現在持っております公害健康被害補償法、これによる認定を進めていくというのがまず大事なことでございます。そのために、国、県一体となってその仕事を進めようということでありまして、県の仕事だけでも大変でございますが、それ
を国と一緒になって、国の方でも分担していこうという仕組みでやっておりますので、私どもは、ただいまお話しのような認定率の問題は、それなりにいろいろ評価があろうかと思いますけれども、この臨時措置法が持つ役割、これは大変大事な役割であろうと考えているところでございます。
#7
○岩佐委員 臨時措置法が持つ役割が大事である、これはだれの立場に立って大事かということが一番大きな問題だと思うのです。被害者の皆さんは、本当にその被害を救済してもらえる、そういう立場に立ってこの法律が動いているかどうか、そのことが一番大きな問題なのではないでしょうか。裁判で大多数の被害者を容認している、臨時措置法では認定の率が低い、これは環境庁の被害者に対する判断基準に問題がある、だからこうなるのではないかというふうに考えます。
 例えば、八七年三月の熊本地裁水俣病第三次訴訟第一陣判決で「水俣病か否かの判断には、被告らが主張する昭和五十二年七月一日付環境庁企画調整局環境保健部長通知のような各種症候の組合せを必要とする見解は狭さに失するもの」という判断をしています。いわば環境庁の水俣病判断条件は狭さに失するという指摘をしているわけです。
 司法の一定の判断が既にこういうふうに出ているわけですから、七八年の事務次官通知は見直して、思い切って苦しんでいる患者さんを救済する、そういう立場に立つべきなのではありませんか。
#8
○森政府委員 ただいまお話しの熊本地裁の判示された内容は、私どもも承知をいたしております。その後昭和六十年に、今お話しのようなことも背景にいたしまして、水俣病の判断条件に関します専門家会議を開催いたしまして、医学界の方々に再度いろいろ検討をいただきました。その結果も、これまでやっております判断基準、判断条件、これは妥当であるという御判断を賜ったわけでございます。
 さらに、和解という論議が出ました後に、中央公害対策審議会に健康被害を訴えられる方が多いという特性からかんがみて、何らかの対策をとれないかということを諮問した際の答申でも、この六十年に開催されました条件に関する見直しの専門家会議、この結果も踏まえて、昭和五十二年からやっております判断条件に変更が必要なような新たな医学的知見は示されないという結論でございましたものですから、私どもは、そういう専門家のお話を総合いたしまして、現在やっておる水俣病の判断基準、判断条件は適切なものであろうと考えて運用をしているところでございます。
#9
○岩佐委員 中公審の判断についてはちょっと後でまた議論をさせていただきたいと思いますけれども、私たちは今までの判断がよかったということで中公審が考えているというふうには理解をしておりませんので、その点後で議論をしたいと思います。
 長官にお伺いしたいのですけれども、これは平成二年六月、九〇年六月の参議院環境特別委員会で死後認定の問題を取り上げておられます。そのまま読ませていただきますけれども、この中で、「認定そのものがいわゆる診断そのものが疑問があると考えてよろしいんじゃないか、」「さらに大きく幅を持って認定していかなければならないんではないか、そんなふうに考えるわけでございます」と率直に指摘をしておられました。
 私は、この長官の議事録を改めて読ませていただいて、こういうふうにお考えいただいていたんだなと思ったのですが、この点について長官の御見解は今も変わらないのではないかというふうに思いますけれども、いかがでございましょうか。
#10
○広中国務大臣 そのとき私は質問者の立場でございまして、死後、つまり患者さんというのでしょうか、が亡くなった後、いわゆる水俣病患者として認定されるという事実は承知してきたわけでございます。それに対する答弁というのは環境庁の担当の者がたしか加えてくだすったと思いますけれども、私はそうした疑問を呈したことは事実でございます。
#11
○岩佐委員 長官に急に伺ったものですから、なかなか御理解をいただけなかったのかなというふうに思いますが、次に進ませていただきます。
 臨時措置法が施行されてから一体どれだけの方が亡くなっているのかということですが、平成四年度末の未処分者の二千百九十一人中三百三十九人が亡くなっています。一割以上の方が亡くなっているわけです。裁判の方も、原告は二千三百人いらっしゃいますが、既に二百二十人余りが亡くなられています。第三次訴訟の原告団千五百七十三人、うち患者さん千三百七十八人ですが、その中で亡くなられた方は百六十五人に達しています。八七年三月三十日の判決後、六十人近くも死亡しているわけです。
 広中長官は、この水俣病の早期和解による解決、そういう問題につきまして、もうしばらく慎重に考えさせていただきたい、こういう御回答が何回か寄せられているわけですけれども、今までも待ちに待って、そして判決をもう待てないで亡くなった方も本当にこれだけの数いるわけです。ですから、次の高裁の判決あるいは最高裁の判決ということになりますとこれから何年かかるか、それこそ三年も四年もかかるということになってしまうと思います。本当にこれ以上待てない、そういうのが患者さんの率直な希望なんですね。その点について長官の御意見をお伺いしたいと思います。
#12
○広中国務大臣 申し上げるまでもなく、水俣病問題は環境行政の重要な課題でございまして、早期解決に向けて最大限の努力をしてきたところでございます。歴代の長官も所要の対策を進めてきたものであり、私としても、水俣病問題の早期解決を図るために、今後とも認定業務の促進、水俣病総合対策事業の実施など、行政施策の推進は一生懸命やってまいりたいと思っております。
 和解についてでございますけれども、私自身も、以前は確かにそのような方法で解決できればいい、あるいは死後認定の問題なども問題提起したことがございます。そうしたことは事実でございますが、しかしこの問題は、水俣病訴訟の争点が国の行政のあり方の根幹にかかわる問題である、そういうことから、行政をあずかる立場からは和解勧告にはすぐに応じることは困難である、そういう状況なのでございます。御理解をいただきたいと思います。
#13
○岩佐委員 私は一人の患者さんの悲痛な訴えを改めて長官に聞いていただきたいと思います。
 この方は二人の息子さんを水俣病で亡くして、一人娘は水俣病京都訴訟の原告で、みずからも原告として訴訟に参加をしておられる柳迫ハツエさんです。恐らく長官はこの御本人から手紙を受け取られて、そして長官御自身がこの柳迫さんに御返事を書かれたというふうに伺っています。
 私がきょうこの柳迫さんの訴えをここで申し上げる気になったのは、実は柳迫さんの次男の方がことしの二月に亡くなられました。私はこの次男の方と環境庁の長官交渉、そのときは政務次官でございましたけれども、非常に広い会場で彼が直接訴えていたのです。ちょうどこういうコップを一人で持ちまして、それを持っている姿が本当に目に焼きついているのですけれども、手が震えて、水がどんどんこぼれていく、そしてなかなか口に持っていって飲むことができない。でも、そういう症状だけれども、彼はとてもちゃめっ気のある元気な若者でした。そういう若者の姿が脳裏に焼きついているものですから、そのお母さんの訴えをちょっと聞いていただきたいと思います。
 私は、原告の柳迫ハツエと申します。今年七十歳になります。私は大牟田市に生まれ、父親の実家にあった津奈木町に移り住みました。そして、縁があって、昭和二十三年に結婚しました。私には三人の子供がありました。結婚、子育てと充実しているはずの二十代は、障害のある子を抱え、その子を亡くし、夫を亡くし大変なことになりました。子供は近所の叔母に預け、なりふり構わず働きました。次男は、昭和六十二年の熊本地裁判決で胎児性水俣病と認定
されました。判決で水俣病と認められたことで、この子が生きて行く上での不安が少しでもなくなるという思いと、自分が産んだということの間で私の心は大きく揺れました。この子が「なんで俺は産んだつや、生まれてこんだったらこぎゃんキツカ思いはせんでよかったとに」と言ったことがあったからです。この子も今年二月に亡くなりました。私が、夫や子供たちに魚を食べさせたのがいけなかったのではないかと、どうしても心に引っ掛かります。母親として何ともつらい気持ちです。私自身の具合もよくありません。しかし、だからこそ精一杯がんばっていかなければと思います。こういう思いを語っておられます。今、こうした苦しんでいる患者さんが十日に一人亡くなっている、そういう実態でございます。
 先ほど長官の言われた御意見というのは、まさに環境庁としてはずっとその見地を繰り返してきたんですけれども、やはりそうではなくて、今政治家として政治的な決着が迫られている、そういう時期ではないかというふうに思います。その点、広中長官の御意見を伺いたいと思います。
 そして、あわせまして、北川長官のときには水俣に調査に行っておられます。広中長官も機会があればぜひ現地に行っていただければというふうに思いますけれども、その点もあわせてお伺いしたいと思います。
#14
○広中国務大臣 私といたしましては、心情的には、和解というものが可能であるのならそのようなことが望ましいというふうに思っているところでございますけれども、原告の方々が、裁判による争点でございますけれども、その点に関しましては行政の立場からは、そのあり方の根幹にかかわるものであるということで、大変に、今すぐに和解に応じるというような立場でないことは御案内のとおりでございます。
 総理の方はこのように答弁なされております。「水俣病訴訟の争点が法に基づく行政のあり方の根幹にかかわる問題であることから、いましばらく慎重に考えたい。」そういう御発言でございましたので、私としては国の対応をも見守ってまいりたいと思っております。
#15
○岩佐委員 最高裁まで持ち込まれたら何年かかるかわかりません。これでは多くの原告が被害救済されることなく亡くなることになります。これほど残酷なことはないと思います。「生きているうちに救済を」の患者さんの必死な声を今受けとめるべきだと思います。
 環境庁に伺いますが、全国の地方自治体で水俣病問題の早期解決を求める要請決議や、あるいは和解のテーブルに着くように、そういう賛同署名が広がっていると思いますけれども、その状況を把握をしておられましたら、教えていただきたいと思います。
#16
○森政府委員 地方自治体から、近時いろいろな形で、水俣病の早期解決に関します要望書あるいは地方議会の意見書あるいは陳情書というような形で出ておりますのが、昨年、平成四年の九月からふえております。今私ども、平成四年の九月からこれまでの一年余り、直近は去る十月十九日新潟県知事によるものまで、合わせますと三十一件ございます。これらは総じて申し上げますと、水俣病の早期解決に政府は努力をしてほしい、こういう御要請であり、その手法として和解を早期にやれということをうたい込んでおられるもの、これが七件であろうかと思います。
#17
○岩佐委員 原告の救済なしにこの水俣病問題の解決はないということは、これはもう当然のことです。これだけの患者救済を求める世論があります。とにかく早く解決してほしい。しかも、歴代の環境庁長官、例えば昭和四十七年の大石武一長官、それから昭和四十八年の三木武夫長官、昭和五十二年の石原慎太郎長官、そして平成二年の北川石松長官、こうした皆さん、行政の責任を率直に認められ、早期解決のために努力をする、こういうふうに公式に発言をされています。
 平成三年九月の福岡高裁の和解所見では、これらを指摘して、国も和解協議に参加して各当事者と話し合い、知恵を出し合って、水俣病問題についての解決責任を果たすべく努力する必要がある、こう述べているわけです。
 長官、今こういう環境庁の決断のときだと思うのですね。いろいろ今までのことがあるかもしれないけれども、もう今やらなければならない、そういうせっぱ詰まった段階にあるのではないでしょうか。その点についてもう一度長官のお考えを伺いたいと思います。
#18
○広中国務大臣 繰り返しになりますからあえて行政の立場については申し上げませんけれども、いましばらくお時間をちょうだいしたいと思います。
#19
○岩佐委員 先ほど長官からお話がありました細川総理ですけれども、総選挙前に行われました被害者・弁護団へのアンケートに、和解による早期解決が望ましいと述べておられるのですね。そして、九〇年九月の県知事として和解勧告を受け入れた記者会見では、たとえ総理大臣から罷免されても、水俣病問題の解決をこれ以上おくらせるわけにはいかない、こう決意を表明されています。自民党離党の理由にこのことを挙げていました。また長官も、昨年二月、女性議員有志のお一人として政府に和解に応じるよう訴えておられました。そして連立与党の各党の皆さんも、早期解決を総選挙の公約として掲げておられました。
 私は、選挙民に対して、あるいは公に、こういう御決意を表明されておられるわけですから、やはり政治家として本当にこれまでの被害者や弁護団の運動に賛同してきたそういう態度、一緒に頑張りましょう、そういう態度を貫いてほしい、これが私の率直な意見ですけれども、その点政治家としていかがかということですが、どうでしょうか。どうしても国の行政の根幹ということで、これは環境庁の従来の立場なんですけれども、それを乗り越えて何とか政治家としてやってみよう、そういうお気持ちがあるかどうかということでございます。
#20
○広中国務大臣 先ほどお答えしたとおりでございます。
#21
○岩佐委員 提案者の園田提案者にお伺いをさせていただきたいと思います。
 園田提案者も、被害者・弁護団へのアンケートに、党派を超えて早急な解決に全力を注ぐことは全く変わりありませんというふうに答えておられます。その態度は今変わらないのかどうか。そして、今その問題について本当に御尽力なされる、そういうお気持ちがあるかどうかを伺いたいと思います。
#22
○園田議員 結論から言うと、気持ちは変わりありません。
 これは、チッソの有機水銀が原因であるということが発見されてからもう既に三十数年、公害病に認定されてからも二十数年、しかも補償法ができて、こうやって水俣病の患者を認定して補償し続けておるわけですが、今大臣が繰り返し言っておられます公害行政の根幹にかかわるといいますか、これはやはり原則、いわゆる不幸にして公害を出した場合にその責任は発生企業が負うべきだ、この基本は今後とも守らなければ、公害行政も、あるいは日本の経済の仕組みも大きく考え方を変えなければならぬという大問題でありまして、それだけはいかなることがあろうとも守るべきだというふうに私は思っております。
 したがって、当時の行政責任を追及されても事は始まらないと私は思っておるわけでありますが、ただ、私がそれでもなお和解を勧めたいのは、それほど長い年月を経てきて、そういう方々がもう高齢になっておられる。しかも、日本はこれから国際貢献ということが非常に大きな課題になっておりますが、環境の分野で日本が国際的に貢献をしていかなければならぬ、リーダーになっていかなければならぬ。そういうときに、三十数年間も国内の社会的な問題のまま引きずっているということは、私は耐えられないことだ、お互いに不幸なことだ。したがって、でき得れば和解で早く解決をすべきだと今も思っております。
 ただ、これは私どもや国が決断すればすぐでき
ることとは思えないのですね。基本的にはやはり私が申し上げましたように、発生企業は責任を持つべきでありますから、そういう原告の方々と発生企業の間で和解が調えばそれで済むことなんですが、残念ながらこの発生企業には補償するという能力がございません。したがいまして、行政責任はないにもかかわらず、国としてやはり解決には責任を持たないとこれは解決できないのじゃなかろうかというのが、ずっと私が考えていることであります。
 それから一方、それだけではなしに、原告の方々あるいは裁判所に来ておられない方々、いろいろな要求をしておられますが、その環境をお互いに、もう三十数年たっておりますから、本当に詳しいところまで調べ上げて、この方が水俣病だ、この方は違いますということはもう判定不可能なんですね。したがいまして、和解するには和解するだけの環境を、国だけではなしにそういう方々の間でも環境をつくっていただくということが大変大事なことじゃなかろうかなというふうに思っております。
#23
○岩佐委員 行政の根幹ということが先ほどからたびたび出てきていましたけれども、国の見解では、国は国民の活動にどこまで介入すべきか、国が責任を持つべき分野を過大に広く認めるならば過剰な規制を行わざるを得なくなるおそれすらある、こう言っているわけですけれども、水俣病で問われている問題の根本というのは、公害発生源である窒素の垂れ流しをいかに規制するかということでした。それを、国は窒素の垂れ流しを規制してこなかった、そういうところに大きな問題があるというふうに考えます。当時、汚染源を規制する法律がありながら窒素の垂れ流しを規制してこなかった、そういうところに大きな問題があるのではないでしょうか。
 ことし三月の熊本地裁の判決では、「被告国には、食品衛生法、水質保全法、工場排水規制法上の規制権限を違法に行使しなかったことによって、水俣病被害を拡大させた責任がある。」と明確に国の責任を述べています。国は何ら規制の策を打たず、原因を隠し、加害を擁護する行為を繰り返してきたからこういう被害を拡大をさせてきた、こういうふうに言えると思います。水俣病で問われている国の責任というのはまさにここにあると言えるし、国の行政の根幹云々には全く道理がない、私はそういうふうに思いますけれども、環境庁のお考えを改めて伺います。
#24
○森政府委員 若干お答えが長うなることをお許し賜りたいと思うのでありますが、この水俣病訴訟というものはどういう訴訟であるかということを訴訟という観点からちょっと見てまいりますと、訴えに及ばれた方、すなわち原告でありますが、原告の方が、自分は水俣病にかかっているということが一つ。そして、そのかかっている原因というのは、企業に加えて国、県が権限を行使しなかったから水俣病が発生し拡大をしたのだ、法律的には、責任論としては不作為の違法、不作為が違法になるケースの場合を損害賠償請求という形で訴えておられるわけでございます。それは、ただいま先生お話しのとおり訴訟構造になっていると私は思います。これにつきましては大変難しい判断を要するわけでございまして、現に地方裁判所レベルでは、熊本地裁では、こういう場合でも国には違法責任を問うべきであるという御判断をされておられます。一方、東京地方裁判所、新潟地方裁判所では、国、県にはそういう責任はなかった、こういう判断をしておられるわけでございまして、裁判の下級審ではございますが、その判断に大変な難しさがあるということをうかがわせるケースでございます。
 それで、国としましては関係省庁とも随分相談をいたしました。それで、一言で行政のあり方の根幹にかかわる、こういう表現をとっておりますが、今の不作為が違法である、こういうケースの場合に国が賠償責任をすべきだ、これを認めるかどうかということになりますと、国は何もしなかったことが後から違法に問われるケースになるわけでございますから、国はあらかじめそういうことがないように余計な規制までせざるを得なくなるのではないかという危惧もございまして、それを国が国民の活動にどの段階でどこまで介入すべきかという大変難しい問題があるというのが一点でございます。
 それからもう一つは、究極的に国民に何らかの負担が生じたというときに、原因者がはっきりしないけれども、そういうときに国民全体の負担によってそれを救う、あるいは補てんをする、こういうケースに当たるわけでございますが、これもまた行政としては大変難しい問題であり、ゆるがせにできない、こういうことになりますと、これはやはり司法の明確な判決という形での御判断を得べきではないかというのが国の立場でございます。
#25
○岩佐委員 私は別に、国民一般に対する過剰な規制をしなければいけないということを言っているわけではありません。判決の国の責任の中身も、そういう意味では国の責任をきちんと明示をしている中身は常識的なものであるというふうに思います。国に責任があるからこそ、国は現段階として国の責任の一端として、チッソに対する金融支援措置を行ったり、不十分であるけれども医療費や療養手当を負担した総合対策事業を実施しているというふうに思います。先ほどお話がありました平成三年十一月の中央公害対策審議会の答申でも「結果として当時の環境保健行政等が国民の期待に十分にこたえられず、そのことが今日の水俣病問題が残されている一要因となっている」、こういうふうに指摘をしています。「従来の対策に加えて、地域における健康管理事業及び四肢末端の感覚障害を有する者への医療事業を行うべき」だということでこの答申が出されているわけです。
 先ほど園田提案者の言われたことですけれども、国は企業活動による公害発生に対して厳しく規制する義務を負っていると思います。企業が公害を引き起こし、国がこれを防止する必要な規制を怠り、そして多くの被害を出した場合には、加害企業が賠償するのは当然です。しかし企業が能力がなかった場合には、国が被害者救済をするのは当然です。だからこそチッソへのさまざまな金融支援だとか総合対策事業が行われているんだというふうに思います。
 私たちはこういう経緯だというふうに思っていますけれども、先ほどから議論の中で申し上げましたように、今本当にこれを放置をすることは、みんな見解一致しているのですね。これ以上放置はできないということですので、連立政権にかわった、そういう皆さんの現地での期待もあるわけですね。細川総理が、環境庁長官がどういう和解による決断をされるのか、これを注視されておりますので、ぜひこの点について全力で頑張っていただきたい、そのことを最後に長官に申し上げまして、もし御答弁がなければそれで、私の意見を申し上げまして終わりたいと思います。――終わります。
#26
○奥田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#27
○奥田委員長 この際、本案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。広中環境庁長官。
#28
○広中国務大臣 水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案に対する内閣の意見を申し上げます。
 水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案については、政府といたしましては異存はございません。
    ―――――――――――――
#29
○奥田委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。岩佐恵美君。
#30
○岩佐委員 水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案に対する反対討論。
 私は、日本共産党を代表して、水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法
律案に対し、反対の討論を行います。
 反対理由の第一は、本法が患者救済に役立っていないことです。本法施行後、現在までの約十四年の実績は、認定申請三百十三件、処分件数は百四十件、うち認定はたったの三十三件、棄却百七件、未処分百七十三件というありさまです。三年前の前回改正後の伸びは、申請で百三十五件、処分数で十四件、うち認定ゼロ、棄却十四件、その反面、未処分件数は三年前は五十九件であったにもかかわらず、現在は百十八件とこの三年間に五十九件も放置されたままになっています。
 一方で、現在一高裁、六地裁に二千三百名を超える患者が訴訟を提起し、救済を求めて争っており、本法は水俣病の認定業務を促進するための法律でありながら、何ら認定業務の促進になってはいないし、患者救済は依然進んでいません。
 第二は、これは、本法が水俣病認定申請者の長期大量滞留及びチッソの経営危機という事態を患者切り捨ての方向で打開するために、一九七八年、それまでの認定基準を大幅に改悪した事務次官通知とセットで出されてきたものと言えるからにほかなりません。
 現行の判断条件を改めることなく本法を改正延長しても、患者救済に役立たないばかりでなく、むしろ患者切り捨て促進につながるものとなることは当然の帰結と言わなければなりません。
 第三は、認定業務は自治体の事務という公害健康被害補償制度の大原則を崩したものであるということです。公害病の認定は、最も住民に近い立場にある自治体が行うべきであり、国での認定審査は、患者と審査業務を切り離し、その意味においても患者切り捨てにつながるものと言わざるを得ません。
 第四は、今回で六度目の延長措置は、国や県の怠慢による認定業務のおくれを不作為の違法とした判決など一連の裁判対策、県や患者に対して、国も努力しているという体裁を繕うためのものでしかないということです。
 水俣病は公式発見されてから既に三十七年が経過し、被害者も高齢化しており、提訴以来既に二百二十人余りの原告患者が死亡しています。「生きているうちに救済を」というのが被害者の切実な願いです。細川総理や広中環境庁長官も就任前は和解による早期解決に賛意を表し、熊本県が和解による解決の決断を下した当時の県知事は細川総理でした。
 したがって、今この時期に、このような真の患者救済には実効性が乏しい臨時措置法を延長するよりも、細川連立内閣が今臨時国会中にも、国が和解に踏み切る政治的な決断と被害者の早期全面救済を図るための行動をとることを強く要請して、本法案に対する反対討論とします。
#31
○奥田委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#32
○奥田委員長 これより採決に入ります。
 園田博之君外七名提出、水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#33
○奥田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#34
○奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
#35
○奥田委員長 次に、内閣提出、環境基本法案及び環境基本法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 順次趣旨の説明を聴取いたします。広中環境庁長官。
    ―――――――――――――
 環境基本法案
 環境基本法の施行に伴う関係法律の整備等に関
  する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#36
○広中国務大臣 ただいま議題となりました環境基本法案及び環境基本法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして、提案の理由及びその内容の概要を御説明申し上げます。
 今日の環境問題は、地球環境という空間的広がりと、将来の世代にわたる影響という時間的な広がりとを持つ問題となっております。環境問題は、質の高い実のある国づくりを目指す我が国にとって重要な政策課題であるばかりでなく、人類の生存基盤としての有限な環境を守り、次の世代へと引き継いでいくという、人類共通の課題でもあります。
 我が国では、かつて経済の高度成長期において、環境汚染や自然破壊が大きな社会問題となり、これに対処するため、昭和四十二年の公害対策基本法の制定どこれに引き続く昭和四十五年の公害関係十四法の制定または改正、昭和四十七年の自然環境保全法の制定等により、鋭意対策の推進を図ってまいりましたが、これらに基づく対策の推進及び国民や企業の努力によって、激甚な公害の克服やすぐれた自然環境の保全については、相当な成果を上げてまいりました。
 しかし、その後の経済的発展の中で、物質的にはより豊かになったものの、大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会経済活動が定着するとともに、人口や社会経済活動の都市への集中が一層進んでおり、そのような中で、大都市における大気汚染や生活排水による水質汚濁等の都市・生活型公害等の改善は依然として進まず、また、廃棄物の量の増大等による環境への負荷は高まっており、さらに、身近な自然が減少を続けている一方、人と環境とのきずなを強める自然との触れ合いを大切にする国民の欲求が高まりを見せております。
 また、地球温暖化やオゾン層の破壊、海洋汚染、野生生物の種の減少など、地球的規模で対応すべき地球環境問題が生じ、人類の生存の基盤であるかけがえのない地球環境が損なわれるおそれが生じてきております。我が国は本年五月、気候変動枠組み条約及び生物多様性条約を締結したところでありますが、今後とも地球サミットの成果も踏まえ、地球環境保全に積極的に取り組んでいく必要があります。
 環境は生態系の微妙な均衡によって成り立っている有限なものであり、人類は、このような環境をその生存の基盤として将来の世代をも含めて共有しており、また、環境から多くの恩恵を受けるとともに、環境にさまざまな影響を及ぼしながら活動しています。このため、広く国民、ひいては人類が、環境の恵沢を享受するとともに、将来の世代に健全で恵み豊かな環境を継承することができるよう、適切にその保全を図らなければなりません。
 今やこの環境を保全していくためには、環境の保全上の支障が生じないように科学的知見を充実して未然防止を図るとともに、国民一人一人が環境への負荷が人のさまざまな活動から生じていることを認識し、すべての者の公平な役割分担のもとに、自主的かつ積極的に経済社会システムのあり方や生活様式の見直しを行い、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会を構築することが求められています。
 また、地球環境保全が人類共通の課題であるとともに国民の健康で文化的な生活を将来にわたって確保する上での課題であること及び我が国の経済社会が国際社会と密接な相互依存関係にあることにかんがみれば、我が国は、その経験、能力等を踏まえ、世界の国々と手を携えて、地球環境保全に積極的に取り組んでいかなければなりません。
 環境基本法案は、こうした要請にこたえ、環境
の保全の基本的理念とこれに基づく基本的施策の総合的な枠組みを国民的合意として新たに定立しようとするものであります。
 環境基本法案はさきの第百二十六回国会に提案され、衆参両院における十分な審議を経てさまざまな御意見を調整の上、修正されて全会一致で可決されてきたものの、衆議院の解散により廃案となったものでありますが、同法案の重要性にかんがみ、さきの第百二十六回国会における御審議を尊重し、その過程で追加されました二条項を取り込み、本国会に再び提案することといたした次第であります。
 次に、環境基本法案の内容の概要を御説明申し上げます。
 第一に、環境の保全についての基本的理念として、環境の恵沢の享受と継承等、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等及び国際的協調による地球環境保全の積極的推進という三つの理念を定め、国、地方公共団体、事業者及び国民の環境の保全に係る責務を明らかにし、また環境の日を設けることとしております。
 第二に、環境の保全に関する施策に関し、まず施策の策定及び実施に係る指針を明示し、また、環境基本計画を定めて施策の大綱を国民の前に示すこととするとともに、環境基準、公害防止計画、国等の施策における環境配慮、環境影響評価の推進、環境の保全上の支障を防止するための規制の措置、環境の保全上の支障を防止するための経済的な助成または負担の措置、環境の保全に関する施設の整備その他の事業の推進、環境への負荷の低減に資する製品等の利用の促進、環境教育、民間の自発的な活動の促進、科学技術の振興、地球環境保全等に関する国際協力、費用負担及び財政措置、国及び地方公共団体の協力など、基本的な施策について規定しております。
 第三に、国及び地方公共団体に環境審議会を設置すること等について規定しております。
 次に、環境基本法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の内容の概要を御説明申し上げます。
 この法律案は、ただいま御説明申し上げました環境基本法の施行に伴い、公害対策基本法を廃止するほか、自然環境保全法等の十八法律について規定の整備を行うとともに、所要の経過措置を定めるものであります。
 以上が、これら二法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いいたします。
#37
○奥田委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。
 次回は、来る二十六日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十時五十二分散会
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ソース: 国立国会図書館
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