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1993/04/14 第126回国会 参議院 参議院会議録情報 第126回国会 産業・資源エネルギーに関する調査会 第6号
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1993/04/14 第126回国会 参議院

参議院会議録情報 第126回国会 産業・資源エネルギーに関する調査会 第6号

#1
第126回国会 産業・資源エネルギーに関する調査会 第6号
平成五年四月十四日(水曜日)
   午後一時開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    会長          浜本 万三君
    理 事
                上杉 光弘君
                星野 朋市君
                藁科 滿治君
                横尾 和伸君
                長谷川 清君
                立木  洋君
                萩野 浩基君
    委 員
                合馬  敬君
                岡  利定君
                佐藤 静雄君
                関根 則之君
                楢崎 泰昌君
                南野知惠子君
                矢野 哲朗君
                吉村剛太郎君
                大森  昭君
                庄司  中君
                西野 康雄君
                深田  肇君
                吉田 之久君
                小池百合子君
   事務局側
       第三特別調査室
       長        秋本 達徳君
   参考人
       中央大学総合政
       策学部教授    水野 朝夫君
       上智大学国際関
       係研究所教授   八代 尚宏君
       東京大学法学部
       教授       菅野 和夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○産業・資源エネルギーに関する調査
 (労働力不足・労働時間短縮の産業経済に与え
 る影響と課題に関する件)
 (二十一世紀に向けての労働力不足問題への対
 応策に関する件)
 (日本型雇用システムと労働力不足・労働時間
 短縮問題に関する件)
 (派遣委員の報告)
    ―――――――――――――
#2
○会長(浜本万三君) ただいまから産業・資源エネルギーに関する調査会を開会いたします。
 産業・資源エネルギーに関する調査を議題とし、労働力不足・労働時間短縮の産業経済に与える影響と課題に関する件、二十一世紀に向けての労働力不足問題への対応策に関する件、日本型雇用システムと労働力不足・労働時間短縮問題に関する件について参考人から御意見を聴取いたしたいと思います。
 本日は、お手元に配付しておりますとおり、中央大学総合政策学部教授水野朝夫君、上智大学国際関係研究所教授八代尚宏君、東京大学法学部教授菅野和夫君に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ本調査会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。
 参考人の皆様から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の調査の参考にいたしたいと存じます。
 議事の進め方といたしましては、二十分程度それぞれの御意見をお述べいただきました後に委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 なお、本日は、御意見の陳述がありました後の質疑につきましては着席のまましていただいて結構でございますので、よろしくお願いします。御意見も御着席のままお述べいただいて結構でございます。
 それでは、水野参考人からお願いを申し上げたいと思います。
#3
○参考人(水野朝夫君) 水野でございます。
 私に与えられましたテーマは労働力不足・労働時間短縮の産業経済に与える影響と課題ということでございまして、お手元に、大変手書きで汚い原稿で申しわけないんですけれども、資料が配付してあるかと思います。基本的にはそちらの資料に従いながら説明をさせていただきます。
 まず最初に、経済学の初歩的な説明で大変恐縮でありますけれども、労働投入量と経済成長とがいかに密接な相互依存関係にあるかということから話をさせていただくことにいたします。
 もともと労働需要といいますのは、対あるいはサービスに対する需要から派生するというふうに考えられております。したがいまして、経済の成長率が高ければ高いほど一般的には労働需要が大きくなるということは申し上げるまでもございません。他方、労働力の供給サイドに着目した場合、生産要素として生産の過程に投入されます労働供給が豊富であればあるほど急速な成長が可能だということになります。そういった意味では、既に先生方御承知のように、二〇〇〇年をピークとしてその後労働力人口が減少に向かうということが予測されているわけでありまして、経済成長に対する制約要因となりかねないということは事実だろうと思います。しかしながら、この経済成長と労働需要あるいは労働供給との関係といいますのは、それほど単純なものではないということがございます。
 その点をちょっと数式的な形で表現してあるわけでありますけれども、ある年の実質GNPといいますのはどういった形から成り立っているかということを考えた場合に、マンアワー当たり、時間当たりというふうに解釈していただいても結構ですが、マンアワー当たりの労働生産性、それから就業者数と労働時間、それをすべて掛けたものから成り立っているということであります。他方、今述べました就業者数といいますのは、いわゆる労働力率と言われるものを十五歳以上人口に対する労働力人口の割合、それからいま一つ就業率を労働力人口に対する就業者数の割合というふうに定義したといたしますと、就業者数は十五歳以上人口に労働力率と就業率を掛けたもの、積によって表現できるということになります。
 以上述べました項目をすべて考慮いたしまして経済成長率というような対前年変化率という形に直したといたしますと、労働生産性の変化率、十五歳以上人口の変化率、労働力率の変化率、就業率の変化率、就業時間の変化率、この五つの項目をすべて足したものから成り立つということになります。
 問題は、こういったことを申し上げます一つの理由は、今述べたような事柄が実は今後の経済成長と労働供給制約ということを考えた場合にどういうインプリケーションを持っているかということであります。
 過去の経験などに照らしながら最初に最も注目しておきたいと思いますのは、経済成長率に対する労働生産性変化率の貢献ということであります。この貢献度が非常に大きいということでありまして、今までの経験、言いかえれば高度成長期
における経験あるいは第一次石油ショック以降における長期間の経験を考えますと、経済成長率の八〇%とか九〇%がこの労働生産性の上昇率によって可能とされてきたんだということであります。そういう意味では、考え方によれば、この労働供給が今後制約要因になるという側面はあるわけでありますけれども、国際比較などに照らしてみても労働力人口の成長率の高い国が高い経済成長率を実現してきたということには必ずしもならないだろうということであります。
 それにもかかわらず、第一次石油ショック後の経験に従って言えば、一つの例として申し上げますけれども、経済成長に対する労働生産性の上昇の影響が八〇%ぐらいだということを勘案いたしますと、今後例えば四%の成長を実現していこうということであるとすれば、この労働生産性の上昇が年率で三・二%、それから労働投入、これは就業者と労働時間の両方を意味しているわけですけれども、労働投入が〇・八%で伸びていかなければならないということになろうかと思います。しかしながら、この労働時間を不変、変化がないというふうに考えたといたしますと、九五年から二〇〇〇年にかけて労働力人口の伸びはほぼ〇・四%ぐらいというふうに予測されているわけでありますから、今後の経済の成長といいますのは二%ぐらいがせいぜいではないかということであります。それからさらには、二〇一〇年委員会で既に指摘されておりますように、今後は地球環境を守っていくために投資が増大しなければならないということを考えますと、労働生産性の成長それ自体が制約されてくるという可能性なんかを考慮いたしますと、かなり高い経済の成長は見込めないだろうということは申し上げられるかと思います。
 もちろんこれはいろんな考え方がございますけれども、一つの考え方、すなわち今後大幅な労働生産性の向上が見込めない、そういう状況のもとで、経済成長をある程度確保したいというような場合にどれくらいの労働力が必要になるかというようなことが、例えばリクルートなどによっても推計がなされております。細かいことは省略いたしますけれども、要するに成長率の高さいかんによっては数百万から一千万人近いような労働力の不足が発生するというようなこともあり得るだろうということでありまして、そういう意味では、今後日本経済がどのような成長を望むかによって労働供給が不足する程度も異なってくるということは改めて申し上げるまでもないということであります。
 問題は、今までのいろんな諸機関から推計がなされている将来の労働供給については、例えば二〇一〇年にはほぼ六千六百十万ぐらいというような数字が出てくるわけでありますけれども、この供給上の制約が具体的にどういった問題をはらんでくるかということだろうと思います。
 それで、一つの状況は、私に課せられている一つの問題でもあるわけでありますけれども、物価の問題にどういうふうにはね返っていくというふうに予測するかということであります。
 この点につきましては、既に昨年の労働白書でも分析されているように、生産性が上昇していくという場合に、その成果といいますのはさまざまな要因に当然配分されます。例えば、一つは実質賃金の上昇ということでございますし、それから二つには労働時間の短縮に向けられていくということになろうかと思います。その他の項目としては労働分配率の低下とか、あるいは消費者物価の相対的な上昇ということでありますけれども、過去の経験、長期間の経験に従う限り、生産性の上昇がある規則的なパターンを持って特定の項目に配分されてきたという傾向は必ずしもございません。そういう意味からいたしますと、今後の労働供給の制約ということが物価の上昇にどういうふうに具体的に結びつくかということは予測することが非常に難しいということは事実でありますけれども、一般的な形で申し上げれば労働供給が不足する、あるいは制約が強まるとすれば、賃金と失業との関係から明らかになっておりますように、賃金のかなり大幅な上昇を引き起こしていく可能性があるということはあえて申し上げるまでもないだろうと思います。しかも、他方において労働生産性の伸びがかなり抑えられるというような見込みがあるとすれば、物価の動向にとって好ましくない状況が生まれるということは当然予測しておくべき状況であります。
 それで、一つの問題は、製造業に代表されるような財を生産する部門といいますのは、技術進歩が非常に急速であります。したがって、高い生産性が維持されるのが今までの傾向でありますから、そこでは高い賃金の上昇があっても生産性の上昇によって吸収される可能性がございますけれども、問題はサービス部門の生産性の上昇というのが一般的には低いということであります。それにもかかわらず、製造業で仮に高い賃金が提供されますと、それがサービス部門に波及していくということで、いわば生産性の上昇率の低いサービス部門の物価が上昇する。あるいは別の言い方をすれば、昭和三十年代半ばのころに経験されたような卸売物価は相対的に安定しながら消費者物価が上昇するというような跛行現象が生ずるというような可能性もあり得るんではないかというふうに私自身は考えております。
 次に話を移したいと思うわけでありますけれども、先ほど来表にも関連して申し上げましたけれども、生産活動に利用される労働投入量といいますのは、就業者数と一人当たりの労働時間の掛けたもの、積として定義がなされております。そういった意味からいたしますと、石油ショック以降の経験から言えば、労働時間が減少してきたということがあったという意味で、それが経済成長に対して一・五ないし二%だけ成長率を低めるというような効果を持ってきたわけであります。そういう意味で今後の生産活動を取り巻く諸条件に仮に変化がないといたしますと、労働時間の短縮が、数学的に考えていただいてもおわかりのように、経済成長に不利な影響を及ぼすということは改めて申し上げるまでもございません。しかし、労働時間の短縮というのが我が国の政策として選択されているわけでありますし、それに向けて法的な準備も進められております。
 その場合に一番大事だろうと思いますのは、要するに労働時間の短縮がどの程度進行するのか、あるいはそれが物価にどのようにはね返っていくのかということを考える場合に、ぜひ状況として必要だと思いますのは、労働時間の短縮を人々がどの程度まで実質所得の上昇というふうに理解するのかということであります。そういう意味で、賃金の上昇といいますのは、コストを引き上げるということはあるわけでありますけれども、労働時間の短縮が実質所得の上昇だという認識がどのような時期に強い形で認識され得るのかということが重要だろうと思います。
 もちろん、労働時間の短縮についてはただ単に千八百時間というような平均の時間だけではなくて、企業規模間あるいは産業間、年齢間に存在する非常に大きな格差がございます。単に千八百時間ということもありますけれども、それと同時に労働時間の格差を解消するような形で対応をしていくということが必要だろうというふうに思います。その際、既に「世界とともに生きる日本」という中で指摘されておりますように、日本的な意味でのワークシェアリングをどのように進めていくのかという点に御配慮をいただければありがたいということであります。
 時間の制約がございますのでかなりはしょらせていただくことになるわけでありますけれども、今後の産業構造の展望ということに絡んで一つ申し上げておきたいことがございます。
 労働供給の制約が強まっていく中で、日本の経済が労働消費的な経済から労働節約的な経済へ果たしてスムーズに転換していくことができるかどうかということであろうと思います。労働消費型か、それとも節約型かということをどのように特定するかという問題はいろいろございますけれども、例えば実質GNPあるいは経済成長率に対する就業者の伸びということで労働の利用が効率的
であるかどうかということを仮に測定したといたしますと、第一次石油ショック以降の時期といいますのはいわゆる経済のサービス化ということを反映いたしまして、非常に労働消費的な形での経済運営といいますか、経済活動が行われてきたということであります。数字はそこに三つないし四つの時期について書いてあるわけでありますけれども、そういった意味では、経済学の用語で言えば雇用弾性値と言われるものが非常に大きかったということであります。特に、それはバブルと言われる時期に典型的に見られた現象であります。もしもそうであるとすれば、今後労働節約型の経済を実現していくためには、サービス部門への依存度を低めていくか、それともサービス部門での急速な労働生産性の上昇を促すような条件を整備しておかなければならないということであります。
 ただし、残念ながら今言いました前者の方、言いかえればサービス部門への依存度が低まるというようなことはいろんな機関、労働省も含めていろんな機関で必ずしも推計がなされているわけではございません。言いかえれば、今後もサービス化の傾向をかなり強めていくであろうということが予測されているということを申し上げておきます。
 最後にぜひ指摘しておきたい問題は、今申し上げましたサービス経済化が進行するというようなことも含めて、労働力のいろんな部門間での配分をどういうふうに考えるかということであります。
 一般的には労働力がどういった部門に配分されるかといいますのは、資本主義経済ということからいえば市場メカニズムを通して配分が行われるわけでありますけれども、そうは言ってもいわゆる好況期あるいは労働力が不足している時期と、それから労働力が過剰な時期とでは若干性格が異なっております。好況期の場合は、どちらかといえば賃金であるとかあるいは労働条件を中心として労働者の配分が行われるということであります。そういうふうに考えますと、さらに我が国の労働市場の特性を考えますと、今後の問題としてぜひ御配慮をいただいておいた方がよろしいだろうと思いますのは、企業規模の間で労働力の配分がどういうふうになるかということであります。
 いわゆる大企業といいますのは相対的に良好な労働条件を一つの武器として、好況期には大量の労働力を吸収するという性格を今まで不断に持ってきたわけであります。そういたしますと、今後労働供給の制約が全体として強まっていくというような状況のもとでは、大企業に労働力が集中し、小規模企業に労働力が不足する、あるいは市場全体として需給バランスが強まる中で、小規模企業では特に労働力の不足が強まっていくということが考えられますし、最近の雇用調整ということに照らして言えば、好況期に大企業は人を集めるわけでありますけれども、不況期にはそれを逆に輩出するという傾向が非常に強いということから考えますと、大企業の雇用に対する役割あるいは労働市場に対する役割といいますのが今以上に慎重さを求められるんではないかというふうに考えております。
 そういった脈絡の中で申し上げるとすれば、いま一つ私に与えられている課題といいますのは、医療あるいは福祉に関係する部分をどう考えるかということであります。
 基本的には既に厚生白書でも述べられておりますように、今後六十五歳以上の老年人口が伸びていく、その伸びに比例して医療あるいは福祉マンパワーを確保していくということになりますと、ほぼ二〇〇〇年の段階で労働力人口の四・七とか五・一%のマンパワーが必要だというふうに予測されております。この比重といいますのは、現在の産業分類で申し上げれば、金融、保険、不動産、ここの雇用者の比率が四・九%でございますので、それにほぼ匹敵するということになります。
 そういたしますと、これだけのウエートを持つ医療マンパワーのいわば職業別の労働市場といいますか、それをどのように整備していくかということになるわけでありますけれども、やや抽象的な言い方をすれば、医療あるいは福祉という労働の質に見合った職業別の労働市場をいかに魅力あるものにしていくのかということに尽きるだろうというふうに思います。もちろん、それに向けていろんな政策的な努力がなされているということは、私自身も若干承知しているわけでありますけれども、特にこういった福祉あるいは医療関係の職業といいますのは、労働の供給が例えば看護学校の卒業生であるとか、あるいは看護婦の資格を有しながら何らかの理由で労働市場あるいは仕事から一たん離れた人々の再参入あるいは再就職に依存しなければならないという非常に厳しい制約を持っておりますので、医療あるいは福祉従事者の職場が魅力あるものにならなければ、言いかえれば賃金その他の労働条件とのかかわり合いで他の職業に対抗し得るものにならなければ、こういった領域で適切なマンパワーを保持していく、あるいは確保していくということもなかなか難しいのではないかということだけ申し上げまして、とりあえず私の意見は終わらせていただきたいと思います。
 若干時間が超過しまして御迷惑をかけましたけれども、足らない部分につきましては御質問のときにお答えさせていただくということにいたします。どうもありがとうございました。
#4
○会長(浜本万三君) どうもありがとうございました。
 次に、八代参考人にお願いいたします。
#5
○参考人(八代尚宏君) 上智大学の八代でございます。
 私に与えられましたテーマは、二十一世紀に向けての労働力不足問題への対応策ということでございますので、これに沿って御説明させていただきます。
 まず最初に、お手元にお配りいたしました若干の図表をごらんいただければありがたいと思います。
 最初に、二十一世紀に向けての労働力問題を考えますときに、極めて大きな影響をもたらしますのが人口高齢化の進展でございます。
 高齢化問題というのはよく議論されておりますが、その中で二つの大きなポイントがございます。第一は、言うまでもなく人口に占めるあるいは労働力に占める高齢者比率の高まりでございますが、もう一点は、出生率が落ちることに伴いまして若年労働力が減少する、それに伴う労働力全体の減少ということが非常に大きなポイントでございます。
 最初のページの上の図表は、経済審議会が一昨年出しました二〇一〇年への展望の資料からとりましたものでありまして、この中で生産年齢人口、つまり十五歳から六十四歳までの人口はほとんど九五年からマイナスに転じるということで、高齢化社会の問題というのは実はもうすぐ足元まで迫っているという現状でございます。ただ、女性等の労働力率が上がりますので労働力人口自体は九〇年代はまだ増加いたしますが、先ほど水野先生から御指摘がありましたように、その増加率自体は急速に減ってまいりまして、九〇年代平均では年率で〇・六%、これは八〇年代平均の約半分でございます。それが二〇〇〇年以降になりますとマイナスに転ずるという、これまで日本経済がかつて経験したことのないような労働力の需給の恐るべき逼迫ということが生じるわけでございます。
 単に労働力全体が減るだけではなくてその中身も変わるわけでありまして、労働力が九〇年代まだふえると申しましても、それはかなりの部分まで五十五歳から六十四歳層のような高齢層でふえるということ、それから労働力の増加の中で男性よりは女性の方が伸び率が高いという形で、急速に労働力の高齢化ということと女性化ということが進むわけでございます。さらにこれに加えまして、先ほども御指摘がありましたが、労働時間の短縮ということが一層進むであろうと予測されております。
 次のページでございますが、そうした形で経済
成長率がどうなるかということは、やはり水野先生から御指摘がありましたように、労働力供給の減少に伴いまして、労働生産性の伸びがたとえそれほど低下しないにしても労働供給が減った部分だけ経済成長率はそれに伴って低下するということが見込まれております。
 ただ、一点御指摘させていただきたいことは、そういう形での経済成長率の低下というのは必ずしも恐れることではない。何が問題かといいますと、それによって失業がふえるというような雇用問題が深刻化するということが経済成長率が低下することの最も大きな意味でありますが、このように労働供給面からの制約によって経済成長率が低下するという場合には、当然ながら失業問題というのはそれほど大きくならないわけでありますから、その点が同じ経済成長率が低下するといっても、需要面の不足から生じる成長率の低下と、供給面の制約による成長率の低下とではかなり意味が違うということでございます。それから、産業構造のサービス化というのは今後ともさらに進展すると見込まれております。
 第二番目に、それでは労働生産性の上昇というのを図るためにはどうすればいいかということでございますが、最後のページの図表を見ていただきたいと思います。
 これはOECD、つまり先進諸国の中で労働供給の増加率と労働生産性の上昇率とを比較したものでございますが、大きく分けまして、例えばアメリカとかカナダのように労働力人口の増加率が非常に高い国、二%強の国では相対的に労働生産性の上昇率は低くなっております。これに対して、ヨーロッパのように労働供給の伸びが〇・五%程度、非常に低い国は相対的に労働生産性の上昇率が高いという関係がございます。日本はこの関係からやや飛び抜けておりまして、労働力人口の増加率は過去二十年、三十年平均で一%強でございますが、それにもかかわらず労働生産性上昇率は五%、これはかなり古い時点からとっておりますのでかなり高くなっておりますが、そういう高い伸びを示しております。
 ですから、今後日本が高齢化社会を迎えまして労働力人口が減少するというときには、これまでの先進国の経験を振り返りますと、それに伴って労働生産性上昇にとっては好都合な条件が整う可能性は十分あるわけです。これは当然ながら労働力供給が非常に豊富な時期にはそれをむだ遣いするというようなことが行われるわけでありまして、日本でもかつて百貨店に行きますと、エスカレーターの横におじぎをするだけの女性が立っていたわけで、最近はさすがにそういう姿は見えませんが、まだエレベーターの前ではおじぎをする女性がいる。これがさらに労働力人口が逼迫しますともうそういうことも見られなくなるというような形で、労働力供給の抑制自体が労働生産性上昇を強いるというような関係が日本でも起こる可能性がございます。
 そういう労働生産性上昇率の余地が日本ではどれくらいあるかというのを見たものがその下の図でございまして、これは日本生産性本部の資料からとってございます。日本の労働生産性上昇率はこれまで非常に高かったわけでありますが、その水準はというと決して高くなかったわけであります。当然ながら製造業等につきましては生産性上昇率及び水準も高いわけでありますが、それを相殺するようなサービス産業の低い生産性がございますので、日本経済全体としての労働生産性、これを為替レートではなくて購買力平価という別の指標ではかったものがこれでございます。これで見ますと、まだ八八年時点におきましても米国に比べて三割ぐらい低いし、ヨーロッパ主要国に比べても二割から三割ぐらい低いというような状況にございます。そういう意味ではまだまだ生産性を上げる余地は十分あるわけでございます。問題はどうやってそれを上げられるかということでございます。
 レジュメの第二点に戻りますが、その対策といたしましては、まず労働の質を上げるためには単純労働を機械で置きかえる省力化投資というのを今後とも進める必要があるのは当然でございます。それだけではなくて、今後ますますふえます高齢者とか女性に合ったような生産技術を開発する。これまでの壮年期の男子に合った技術ではなくて女性にも合った技術を開発するというのは具体的にどういうことかと申しますと、例えばブルーカラーの面におきましてまだまだ日本では自動車とか重厚長大の産業におきまして女性の登用が少ないわけであります。これはなぜかというと力仕事がまだまだ残っている。これは、女性でも使えるように余り力を要らないような形で生産工程を変えることによって幾らでも可能であるわけであります。具体例を挙げれば、例えばバスとかトラックの運転手にまだまだ女性は少ないわけでありますが、これはなぜかというとハンドルが非常に重いとかクラッチを変えるのに力が要る。こういうものは全部パワーステアリングとかノークラッチを導入すれば女性でも軽々と運転できるわけでありますから、そういう面の工夫というのがまだまだ日本はおくれているわけであります。そういう形での生産性技術の向上というのは当然あります。
 それから、教育とか訓練投資を高齢者及び女性の面に集中することによってそういう労働者の能力を上げることは当然必要でございます。
 それから、企業内労働力の効率的な活用ということでございますが、これまで日本ではブルーカラーにつきましてはこういう面の効率化というのは非常に進んできたわけでありますが、ホワイトカラーにつきましては必ずしも進んでいない面があったのではなかろうかと思います。
 先ほど労働時間短縮の話が出ましたが、労働時間短縮の経済効果というのは、私はブルーカラーとホワイトカラーではかなり意味が違うのではないかと思っております。つまり、ブルーカラーの場合では、生産内容を考えますと一時間労働時間を短縮するということは一時間分の生産量が減ることになるわけでありますので、それだけ何らかの省力化投資をしない限りは生産は当然落ちてしまい、労働生産性も頭数の値では減るわけでございます。ところが、ホワイトカラーの場合で言いますと、必ずしもそういう時間当たりで働いているわけではありませんで、一日当たり、場合によっては過当なりという形でホワイトカラーは働いているわけでありますから、その面で労働時間が短縮すれば、それだけ限られた時間内に与えられた仕事を片づけるためには時間当たりの労働生産性を上げるというインセンティブが働くわけでありまして、そうすればむだな会議がなくなるというような形で、生産性を上げる余地はまだ十分残っているのではないかと思われます。
 それから次に、そういうミクロのレベルでの労働生産性の上昇だけではなくて、既存の貴重な労働力というものを産業内で再配分する、あるいは産業間で再配分するというような形での労働移動の活発化を進めるということがマクロで見た労働生産性を高めるために非常に大きな役割を果たすと思われます。
 それから、例えば流通部門あるいは商業部門におきます労働投入というものがよく言われておりますけれども、非常にまだむだが多い。多頻度の配送の問題もございますが、日本のサービス業に最も典型なのは欧米に比べまして過剰サービスでありまして、これは過去の、労働力が過剰であった時代の習慣を引きずっている面があると思います。
 その反映でありますがお客と商店側が平等ではない。例えばお客が店に入ってくると、売り子の方は一方的に頭を下げるというのが常識であると。しかし、これは例えば高齢化が進んでいるヨーロッパの間では必ずしもそうではない。お客と売り手とは対等の関係にあるということでありまして、そういう形で過剰サービスを、高齢化が進んだヨーロッパでは既になくなっているわけでありますが、日本も今後そういう形に向ける必要がある。
 一つの例はガソリンスタンドでありまして、これはヨーロッパであろうがアメリカであろうが日
本であろうが全く同じサービスをしているわけでありますが、ヨーロッパとかアメリカであれば店員が一人ぐらいしかいない。あるいはお客がセルフサービスでガソリンを給油するところが、日本では若い男女が三人も四人もいて、車が入ってくると窓をふいたり車道に戻るときに誘導したりするという過剰サービスをやっていると。それで非常に人件費がかさむから、例えば値上げをする必要があるというような声が出てきているわけであります。これは全く逆であって、むしろ価格はある意味で動かさないと。その中で人件費が上がってくれば、自然とガソリンスタンドの方で省力化をせざるを得ないわけでありまして、そういう省力化を促進するためにも安易な形での、人件費がかさむから値上げというような形の要求というのは慎重に対応する必要があるのではなかろうかと思っております。これは一つの例でございます。
 最後に高齢者、女性の雇用問題ということでございますが、労働需給の逼迫というのは、基本的にこれまでどっちかといえば、縁辺労働力というのが労働経済学の言葉でございますが、という扱いになっておりました高齢者とか女性にとっては有利な社会になるわけであります。高齢者への雇用需要というのは、若年者に比べればはるかに少ないのは常識でございますが、経済成長が続く中で若年労働者の数が減ってくれば当然ながら高齢者への需要もふえざるを得ないわけでありますから、そういう形での企業の需要のシフトというものをスムーズにするような政策が必要であろうかと思います。
 そのときの避けて通れない問題というのは、固定的な日本的雇用慣行をどう評価するかという点でございます。これまで固定的な日本的雇用慣行というのは高く評価されておりまして、現に昨年からことしにかけての景気後退期におきまして、雇用安定に日本の雇用慣行が貢献した面は非常に多大であったわけであります。しかし、問題は中長期的に見て労働力が逼迫するという中で、そのコストもまた非常に大きいことは事実でございます。
 それはいろいろな面にあらわれておりますが、例えば固定的な労働慣行と言いますがそれは退職年齢まででありまして、一定の定年になりますと強制的な退職が行われるわけであります。なぜ企業はそういう若年労働者ではなくて熟練労働者である高齢者を強制的に退職させるかというと、それはやはり年功的な昇進、賃金体系というのが個人の生産性と見合っていないという形でその清算としての強制的な退職が行われるわけであります。ですから、こういう形での強制的な退職の必要性を少しでもなくすためには、やはり企業内における賃金体系の見直しというのはよく言われることでありますが、必要となる。それと同時に個人の職務権というものでございますが、これは外国の企業の中でありますと雇用安定は確かに日本よりは劣っているかもしれませんが、個人の職務権というのは確立しているわけであります。例えばホワイトカラーで雇われた人が販売に回されるとか、あるいは場合によってはブルーカラーに回されるというのは極端な例でございますが、日本では雇用安定を確保するために会社に命じられるまま労働者というのは何でもしなきゃいけないと。その意味で、非常に自分たちになれていないような仕事を強制される面もあるわけであります。それに対して、欧米の場合は職務権が非常に確立している。そういう形で、逆に言いますと自分が自信を持っている仕事というのを、企業は変わることがあっても続けることができるわけです。それに対して日本の場合は、頻繁な転勤で見られますように、これは最近の中高年層で特に見られる単身赴任の増加というような形で家庭生活を犠牲にするというような大きな問題がありますが、これも企業に命じられるままにどこでも行かなければいけないということの一つのあらわれであるわけであります。
 こういう固定的な日本的雇用慣行というのは、高齢者だけでなく女性にとって最も厳しいものでありまして、現在の昇進制というのは内部昇進制でありますので、継続的な就業のできる男性にとっては有利でありますが、出産とか育児とか、あるいは夫の転勤等に伴いまして企業をやめる可能性の強い女性にとっては非常に不利になっております。これがこうした継続的な就業のできにくい女性にとって日本的雇用慣行というものの意味する一つの結果というのが、先進国の中では最も大きな男女間の賃金格差であるわけでありまして、日本の場合は女性の平均賃金は男性賃金の六五%程度でありますが、欧米ではこれが七〇から八〇%の国が多いというわけであります。
 したがって、そういう問題を解決するためには二つのやり方がありまして、一つは女性の育児と就業との両立を通じた継続雇用の促進ということ、つまり女性労働をできる限り男性のような労働に近づけるというやり方でございます。もう一つは逆でありまして、労働力一般を流動化させることによって、ちょうど米国あるいは欧州の一部の国のように男性労働自体も頻繁と職を変わっていく、そういう形で女性労働と余り差がなくなってくるというようなことであります。頻繁と職を変わることの大きな問題は失業であるわけでありますが、冒頭に申し上げましたように、今後の日本社会というのは労働需給が逼迫する、いわば売り手市場でありますので、そうした企業を変わるということが雇用者にとっては必ずしも不利にならないような状況がある。むしろ自分自身の固有の職務権というものを、例えば会計士でありますとか税理士でありますとか、あるいはエコノミストでありますとかそれから営業マンであるとか、そういう面のスペシャリティーを生かすというような形で自分に合った職場を探していくというような流動化対策というのが必要であろうかと思います。
 そのときに政府は何ができるかということでありますが、今一番大きな問題は、退職金とか企業年金というのが企業固有の存在になっておりますので、労働者が企業を変わると非常な不利になるというシステムであるわけです。これがアメリカの一部の企業で行われておりますように、ポータブル化つまり企業年金あるいは退職金の原資を今のように個々の企業の中で蓄えるのではなくて外部に蓄える、それによって労働者が企業を変わっても決して不利にならないというようなシステムというのが一つ必要であろうかと思われます。
 それから、やはりどこの企業でも通用するような専門職とか資格というものをもっと公的に普及することによって、そういう資格を持つことによってよその企業で働いた経験というのが新しい企業でもその内部で働いた経験と同じように評価されるようなシステムというのが必要になろうかと思われます。
 最後に、高齢化に伴う労働需給の逼迫というのは、特にサービス部門におきまして労働生産性上昇率を高める絶好の好機であるわけでありまして、そういう労働者の価値が高くなってこそ有効な活用というものに企業が努力するわけであります。したがって、そういう労働力の流動化を促進するために経済的な規制緩和等、それから先ほど申し上げましたような年金制度等の改革というようなことが必要であろうかと思われます。
 以上でございます。
#6
○会長(浜本万三君) どうもありがとうございました。
 次に、菅野参考人にお願いします。
#7
○参考人(菅野和夫君) 菅野でございます。
 私に与えられたテーマは、日本型雇用システムと労働力不足・労働時間短縮問題でありまして、これを私の専門の労働法の視角から若干考察させていただきたいと思います。
 御承知のように、我が国の官庁や民間大中企業において典型的に成立している人事雇用管理の制度と慣行が終身雇用制と呼ばれていまして、より正確には日本的長期雇用制度とでも呼ぶべきものかと思います。この制度においては、企業による労働力補充の基本的方法は新規学卒者の採用であり、この新規学卒者に対して定年に至るまで雇用を保障した上、系統的な教育訓練と人事異動に
よって企業内の職業能力の発展を図る。この発展の度合いとしての年功に応じて経済的あるいは組織的な処遇を行う。また、この過程で、人事考課や昇進制度等の仕組みで同一年次者間の競争と従業員の献身を確保する。このような定年までの安定的雇用と年功システムは、生産現場労働者をも含めた正規従業員の全体に及ぼされる。大体こういうことが日本的雇用システムと言われるもののエッセンスだというふうに理解しております。
 私のような法律屋から見ますと、この日本的な雇用システムには幾つかの特徴がありまして、第一は何といっても慣行としての手厚い雇用保障であります。特に、一九七三年の第一次石油危機以降に確立された日本的な雇用調整の手法、つまり不況に際しての雇用の調整をレイオフや経済的解雇によっては行わないで、時間外の削減、新規採用の停止、配転、出向、非正規従業員の削減等によって行うという手法等があります。政府の雇用政策及び例えば裁判所の裁判例、労働裁判、労働判例は、この雇用保障の慣行を是認、強化しかつ労働関係の法規制や政策の中心に据えてきたと言えようかと思います。
 第二は、このような手厚い雇用保障の反面として、雇用関係において経営側が大幅な権限あるいはフレキシビリティーを認められているということかと思います。すなわち経営側は、配置替え、転勤、出向を辞令一本で命じる包括的な人事権を有し、また就業規則の制定、変更の権限を労働基準法の八十九条とか最高裁の一連の判例で認められております。これによって経営側は、人事権、業務命令権、残業命令権、労働条件の合理的な変更の権限などの広範な権限を取得しているわけです。さらに、期間雇用の社員、パートタイム社員等の非正規従業員の雇用を比較的自由に認められておりまして、この点での法規制も西欧諸国に比べると少ないと言えようかと思います。
 第三の特徴としては、憲法、労組法による労働三権の保障を基礎とした集団的な労使関係が、これらの憲法、労組法のモデルとはやや異なった形で企業別労使間の労使協議制を中心とした緊密な協力関係として確立しているということであります。
 以上のような日本型の雇用システムも、もちろん近年において中高年齢者の増加、雇用機会均等法の制定、企業活動の国際化、人手不足等を背景にさまざまな変化を遂げているのは御承知のとおりでありまして、現象としては、定年延長、コース別雇用、企業グループによる人事、転職、中途採用の増加、時間短縮、年俸制あるいは最近マスコミをにぎわしている管理職減らしの動き等、広範多様にあらわれているわけであります。
 しかし、これらの変化の現象によって日本型の雇用システムが根本的な変化を見せているかというと、私はまだ疑問だろうと思います。つまり、労働者の企業間の移動が多くかつ雇用調整をレイオフによって行うアメリカ型の雇用システムに移行しつつあるかというと到底そうは見られませんし、また期間労働者について、長期雇用による内部労働市場と外部労働市場が有機的に結合している西欧型の雇用システムとでも言うべきものに移行しつつあるかというとそうも思えないわけであります。むしろ、日本的な長期雇用制度のエッセンスとしての勤続の奨励とか長期勤続を前提としての人材育成、処遇のシステム、考え方はなお基本的に維持されていると見られるわけです。例えば転職指向が増加したといっても、転職がキャリア形成の戦略的手段として一般化しつつあるとは見られないのであります。
 そもそも日本的な雇用システムないし長期雇用制度は、従来も環境の変化に応じて常に自己修正を遂げてきたかなりダイナミックなモデルであると思われます。第一次オイルショック以降、何回か行われてきたかなり大規模な雇用調整、構造調整、それから定年延長とそれに伴う人事諸制度の大幅な修正等々を経てきているわけであります。今回の年俸制導入企業の増加とか管理職の雇用調整なども、日本的な長期雇用制度が環境変化に対応して中核的な部分を維持するための自己修正作用と見た方がよいのではないかというふうに私には思われます。
 次に、最近の日本型雇用システムの変化の重要な現象の一つとして時間短縮問題を若干考察いたします。
 まず、年間実労働時間の統計において、労基法改正の年の一九八七年が暦年で二千百十一時間、これが平成四年、一九九二年で千九百七十二時間となった。大体この五年間に毎年三十時間弱の短縮をしてきたということに示されるように、時間短縮傾向は社会の流れとして定着したというふうに見られます。時間短縮は、昭和六十一年の第一次前川レポートによって日本経済の構造調整の手段として国策化され、次いで大都市勤労者の労働生活の質の向上への願望というものによって社会的な主潮となり、さらにいわゆる平成景気の際の人手不足と今後の中長期的な労働力不足の見通しによって、経営者をも巻き込んだ潮流となったというふうに見られます。そして、時間短縮は日本社会の高齢化への対処の点からも、また女性の働く環境の整備の点からも支持される日本社会の課題となっていると思われます。
 このような時間短縮の動きは、御承知のとおり、産業別の団体交渉を主要な推進力とした西ヨーロッパ諸国の時間短縮に比して特徴的であります。
 第一に、時間短縮が昭和六十二年の労基法改正によって本格化し、その後も国家公務員の完全週休二日制とか時短促進法とか今回の労基法改正法案などで進められているとおり、法主導あるいは政府主導と言えようかと思います。もちろん、労使による団体交渉での取り組みはあるわけでありますが、基本的には法主導であると言えようかと思います。
 第二に、昭和六十二年労基法改正の際に、三十二条の法定労働時間について、目標として週四十時間制が書き込まれまして、次いで年間総実労働時間について千八百時間モデルというものが経済運営計画等にうたわれるなどしまして、政策目標を掲げ企業労使をその目標へ誘導する手法がとられているという点が挙げられます。
 第三に、誘導の具体的方法においては週法定労働時間をまず四十六時間、次に四十四時間、そして近い将来四十時間と段階的に短縮し、それぞれの段階についてさらに中小企業等に猶予措置を認め、また時短が困難な事業主のために環境づくりの施策を実施するなど段階的、漸進的な施策がとられているということであります。このような手法の中で時間短縮は労使共通の課題となり、例えば政府の関係審議会とか団体交渉の場で経営側が総論賛成という立場をとっているという点も大きな特色かと思われます。
 以上のような時間短縮は、今後日本型雇用システムへ相当のインパクトを与えていくように思われます。
 まず、時間短縮の内容として、週休二日制、それから時間外労働の削減、年休消化という体制となりますが、この体制は企業内での働き方の大幅な変更を要請すると思います。会議の多さ等に象徴される集団主義的な業務遂行システムを見直すこと、それから労働時間の量から労働の質ないし成果に中心を置く評価システムを樹立することなどがその課題となってきていると思われます。また、その有限な資源となる労働時間とか労働日を効率的に配分する工夫が必要になり、変形労働時間制とかフレックスタイム制などの活用が検討されていくと思います。さらに、仕事の内容と遂行の仕方、時間配分などについて自立性、裁量性の高い業務に従事する人々、典型的には管理的なあるいは専門的なホワイトカラーという人々の時間管理制度のあり方が報酬制度との関連で見直されていくものと考えられるわけです。
 次に、以上の時間短縮と、それからもっと根本的には労働力人口の減少等によって予測される中長期的な労働力不足と雇用・労働法システムの関係に触れておきたいと思います。
 ただし、今後予測されている労働力不足社会といいますか、あるいは労働力希少会社における労
働法政策あるいは労働法体制の総合的検討というのは、実は学会でも政府の研究会等でもまだほとんどなされていないのではないかという気がいたします。きょうは非常に不十分なお話ししかできないということになるわけですが、まずいわゆる平成バブル景気というときの人手不足に際しては、その余波が法律の世界にも及びまして、転職をめぐる法律問題というのが、主としては判例ですが司法の世界でも登場しました。転職社員が転職前の企業の営業秘密を利用することの限界、企業が転職者に対して行う競業、競争的な営業活動の制限の限度とか、他企業等による従業員引き抜きの限界とか、いわゆるヘッドハンティング業の法的地位といったものが問題になりました。こういったことは、将来の労働力希少時代においてより広範になってきて登場するであろうさまざまな法的諸問題、新たな問題の一端を予測させるものとして注目されたわけであります。
 また、企業では新卒者獲得のため初任給を引き上げた結果、中高年齢者の給与の中だるみが問題となって、これが中高年齢者の処遇、報酬制度の見直し、いわゆる能力主義とか年俸制の動きを加速していると見られるわけです。法律的には、これは年俸制の法的地位いかんあるいは基準法で規定されている裁量労働制の見直しの問題に連なる問題と思います。
 より根本的に、労働力不足下で雇用システムがどうなっていくかについては、日本的な長期雇用制度は緊密な企業別労使関係の基盤でもありますので、大企業では私はもろもろの修正を施されながらも労使双方によってその維持が図られていくのではないかという気がいたします。ただし、労働力の売り手市場とか労働者の価値観の変化の中で、若年者とか即戦力的な技術を有する人々を中心として転職とか中途採用は増加していくでありましょうし、またキャリアとか雇用形態の双方にわたって働き方の多様化が進むと思われます。
 また、中小企業では既にもう始まっていることですが、高齢者や女性の活用を図るという動きは大企業にも及んでいくだろうと思われます。企業の労使としては、女性それから若年者、高齢者を中心として労働者の価値観とか能力が多様化していくという状況の中で、多様な雇用機会やキャリア制度を設定する必要が生じていくのだろうと思います。
 このような労働市場における労働法制の課題というのは、基本的には労働者個人の選択幅を拡大すること、それから労働力の有効活用を図ることだろうと思います。
 幾つかのものを若干分節いたしますと、先ほども八代先生が指摘されたとおり、まず女性の就業機会の拡大と就業環境の整備でありまして、近く始まると言われていますが、雇用機会均等法とか労基法の関連規定の見直し、育児休業法ができましたが、なお残っている所得保障制度の検討、介護休業制度の法制化の検討等が課題となると思います。
 第二は、高齢者の就業機会の拡大でありまして、既に労働省が平成二年に長寿社会雇用ビジョン研究会で提唱している六十五歳雇用システムというのは妥当な考え方であろうと私は思いまして、この推進が課題だと思います。
 第三は、働き方の多様化とか女性、高齢者の問題と関連して、パートタイム労働の問題がさらに重要になってくるであろうと思われます。このパートタイム労働の労働条件の改善、健全な労働市場の育成というものが課題になろうと思います。
 第四は、労働力のミスマッチを防ぐための労働力需給システムの整備でありまして、現在例えば労働者派遣法というものがありますが、これも対象業務を見直す、あるいはこれからふえていくであろう人材スカウトとかコンサルタント業の位置づけ等が課題になると思います。
 より基本的な課題として、今後の人事制度の方向としての、個人の選択を尊重する柔軟な人事制度というものに沿った労働法システムの開発というようなことがあろうかと思われます。例えば就業規則とか人事権などにかかわる権利義務関係を、いわゆる包括的同意説と言われているものから個別的同意説へ組みかえていくような課題、それから個人の申し出で労基法の規制を緩和するという制度が実は現在わずかながらあるわけですが、そういったことを一定の場合には拡大していくというようなことが課題になろうかと思います。
 いわゆる労働三法を骨格とする戦後の労働法制も、大体昭和六十一年の雇用均等法の制定と、翌年の基準法の大幅改正を契機として、日本社会のさまざまな構造的変化に即応するための大きな修正期に入ってきているように思われまして、新しい立法や改正立法が次々になされていく時代となっております。しかし、これらの修正は今のところ個別政策の対応として行われておりまして、将来の労働力希少時代を見越しての総合的な検討には至ってないわけであります。ただ、これは非常に未開拓な大きな課題であるというふうに思われるわけです。
 以上であります。
#8
○会長(浜本万三君) どうもありがとうございました。
 以上で参考人からの意見聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#9
○庄司中君 まず、水野先生にお伺いいたしたいと思います。
 時間短縮の問題で、労働生産性を高めないと成長率に非常に大きな影響を及ぼしますし、特に物価にマイナスの影響を及ぼすという指摘は全くそのとおりだというふうに思います。
 時間短縮と労働生産性の関係を国際的な視野でちょっととらえてみますと、例えば私たちの時短のモデルとしてドイツの金属産業の問題がございますけれども、金属産業の労働生産性と時間短縮の関係を時系列でとってみますと、例えば一九八四年それから八五年、このときには週四十時間から三十八・五時間に変わったわけですね。それからさらに、八八年から八九年には週三十七・五時間から三十七時間に変わったわけです。この二つのケースをとってみますと、八四年と八五年を生産性で比較しますとがくんと上がっているわけですね。数字をとってみますと五・六%という数字が出てまいります。それから、二番目のケースですと四・九%という数字が実は出てまいります。もちろん投資がその間には行われていたというのはもう非常に明らかですね。このケースをとってみますと、例えば時間短縮を計画的、段階的にやっていく、これはドイツの場合には長期の労働協約で決めていきますからそういうふうになるわけでありますけれども。それからもう一つは、そういう計画的、段階的に進める場合に、時間短縮になるから業務の体制を変えなきゃいけない、だから投資を行わなきゃいけない、企業の構造改善をやらなきゃいけない、こういう刺激が出てくるんじゃないだろうか時系列で見ていますとどうもそういう関係がありそうだという感じが実はいたします。
 それで、当然そういう経営革新とか構造改善の場合には投資が必要ですし、それから、その場合には金融を含めた政策的な対応がどうしても必要、先生さっき政策的対応ということをおっしゃいましたけれども、必要だろうというふうに思います。いわば、市場メカニズムじゃなくて政策誘導を、何といいますか、かましていくやり方、特に時間短縮と労働生産性の関係にはそういうことがあるんじゃないだろうかというふうに私感じますけれども、先生どういうふうにお考えでしょうか。
#10
○参考人(水野朝夫君) 私の考え方を御説明いたします。
 ただいまの先生がおっしゃった考え方については、基本的には私もほぼ同じだということを前もって申し上げておきたいと思います。
 もちろん私は、時間短縮が自動的に、労働投入の面からいえば確かに産出の成長に影響を及ぼすだろうということは一般論として申し上げられるわけですけれども、個々の企業あるいは経済全体
を考えていった場合に、時間短縮が生産性の上昇に自動的にマイナスになるというふうに考えるべきではないだろうと思います。
 それは当然のことでしょうけれども、時間短縮といいますのは、先生が今御指摘のように、かなり計画的あるいは段階的に行われるということがございますし、それから、労働者の側から考えたといたしましても、この時間短縮ということを一つのてこにして個々の労働者の側で生産意欲が上昇するという側面もございます。あるいは企業の側としていえば、時間短縮を行うという場合に当然のこととして労働組織といいますかあるいは作業組織といいますか、そういったことのシステムの変更ということは考えて行っていくわけですし、その労働システムあるいは作業システムの変更に伴って機械化あるいは設備投資ということは当然考慮されると思います。
 そういう意味では、今先生がおっしゃられましたように、生産性の上昇を実現し得るような形で労働時間の短縮が伴っていかなければならないだろうということは、私としても全く異存がないということをまず申し上げておきたいと思います。
#11
○庄司中君 次は八代先生にお伺いいたします。
 先生は、ほかの論文で読ませていただきましたけれども、例えば日本型雇用システムのある意味じゃ効率性ですね、それと欧米の雇用システムの平等性とか公平性、これをミックスしたら今よりはもっといいものになっていくだろうというふうにおっしゃっていますし、大体その基調の中でお話がなされたというふうに思いますけれども、例えばずっと日本の戦後の、特に八〇年代の日本の成長みたいなものを考えてみますと、ある意味じゃ日本の雇用システムというのはかなり有効に働いたというふうに考えられますね。
 例えば熟練形成の面でも、職場を異動しまして多能工化していくとか、それから、技能というよりも技能の技術化といいますかね、そういう傾向もありましたし、それから、現場で例えば小さなトラブルが起こりますとそこで直しちゃうわけですね、実際には。そうしますと、その場で直しちゃうノウハウというものが今度は生産システムの中に転移されて、より一層効率的な生産システムをつくっていくというふうな状態があったんだろうというふうに思います。そういう意味では生産システムが非常に安定的に行われてきましたし、それからシステム自身の改善が非常にうまく回っていったというふうなことがあるだろうというふうに思います。
 そういう条件の中で、先生が先ほどおっしゃられましたように、例えば日本の雇用システムの中では職務の内容が明らかじゃないとかそういうふうに指摘をされましたけれども、国際化の中ではそういう問題が当然出てくるわけであります。国際化の中で日本のシステムはやっぱりひとつ問題になってくる、国際的な関係との調整を図っていかなきゃいけないということはもう明らかだろうというふうに思います。日本のシステムと、いわば欧米型の職務内容を明らかにしていくとか、そういう点のベストミックスといいますか、そういう点でどんなふうなイメージを先生はお持ちになっていらっしゃるかということでございます。
#12
○参考人(八代尚宏君) 御指摘どうもありがとうございました。
 まず、日本的雇用慣行のコスト・ベネフィットという問題だと思われますが、非常に大ざっぱに言わせていただきますと、固定的で、かつ今先生のおっしゃいましたような企業内で熟練を形成していくシステムというのは、私は相対的にブルーカラーに非常に合ったシステムだと思われます。これは、日本の製造業の非常な国際競争力の強さということにまさにこれが反映しているわけでありまして、欧米の職種型労働組合が非常に技術革新の導入に抵抗する、これは当たり前のことでございますけれども、そういうものに対して日本の労働組合というのは非常に受容的であった、これは結局雇用が保障されているからどんな新しい技術が入ってきてもちっとも怖くないということだと思われます。ただ、私はホワイトカラーについてはもう少し流動的な欧米型の方が相対的にメリットは大きい面があるのではないかと思っております。そういう意味で、ブルーカラーについてはこれまでの日本的雇用慣行というのは今後とも相対的に残ると思いますが、ホワイトカラーについてはもう少し見直しの必要があるというのが第一点でございます。
 それから第二点は、やはりコスト・ベネフィットというときに、これまで日本的な雇用慣行というのが労働者の生産性を高める面では非常に大きな貢献をしたわけでありますが、その犠牲も非常に大きかったわけでありまして、それが先ほど申しましたような、もう辞令一本で日本の端々まで飛ばされるような配置転換、それから最近は海外まで行くわけでありますが、そういう意味での家族生活の犠牲というようなもの、これは欧米であればどんないい職があっても労働者というのは自分の住みなれた地域から動くということを非常に拒否するわけで、それがある意味で高い失業率にも結びついているわけであります。そういう意味で、これまでどちらかといえば軽視されていた日本的雇用慣行のコストという面にこれからはもう少し配慮されていくのではなかろうかと思っております。
#13
○庄司中君 それでは、菅野先生にお伺いいたします。
 先生の報告の中に、例えば時間短縮をとってみますと、政府主導型といいますか法主導型といいますか、先生詳しく説明をされましたけれども、我が国の時間短縮の取り組み、進め方の上でそれが非常に大きな特徴であるというお話があったわけであります。普通、労使交渉が先にありまして、そこに労働協約ができまして、その労働協約を追認する形で法制度がついていくというのが一番望ましいということは考えられます。
 労働時間の短縮を考える場合にはどうしてもドイツがモデルになるものですから、ドイツを探ってみますと、ドイツの場合には典型的な協約先行型でございますよね。例えば法制度の面では週四十八時間ですね、まだ。ところが、金属産業の労働組合の労働協約をとってみますと、もう三十五時間というところに来ていますね。四十八時間と三十五時間というのは物すごい乖離があるわけですね。そして、その結果日本との間に年間をとりますと五百時間ぐらいの差が出てきてしまって、五百時間の差というのは非常に大きい。余りにも大き過ぎて単にこれは労働時間だけの問題ではなくなってきている、こんなふうな感じを持っております。
 もう一つ中へ入って考えてみますと、例えばドイツの場合には、さっき先生がおっしゃられました産業別の交渉で労働協約がつくられていきますね。労働組合の組織率も日本よりはかなり高いわけです。特に高いのは経営者団体でして、ドイツの金属産業の場合にはたしか企業の八〇%ぐらいは網羅しているというふうになりますね。そして、トップで決まりますと両方の組合と企業が全部同じことをやるわけですから、先生がさっきおっしゃられたような猶予措置というのはそこでは成立をしないわけですね。
 ところが日本の場合は、御存じのとおり、さっき説明がありましたように企業別の組合なものですから、外からの規制力が非常に弱いといいますかトップのところで決まったものが無条件に一番下まで届くというふうな条件を持っていないわけですね。そうしますと、確かにドイツと日本ではいろんな文化的背景があるだろうと思います。それから、時間短縮の取り上げ方が失業者対策ということでドイツの場合は一生懸命やられてましたから、取り上げ方自身に違いがあるとは思いますけれども、さっきも申し上げましたように、これだけ労働時間の年間の差が開きますと、これは労働時間の域を超えてしまうと。
 例えばドイツの労働組合の方が言いますのは、日本の競争力が長時間労働に支えられている、一種のダンピングじゃないかという言い方を向こうの労働組合の方はされますね。そうしますと、国全体の問題になってこざるを得ない。そうします
と、経済計画で労働時間の目標を設定したり、それからある意味では国とか法主導で労働時間の短縮を進めるというのは、オーソドックスな形では法主導というのはちょっと異例であるけれども、国全体を抱え込むような問題になってきた場合にはやむを得ないんじゃないだろうか、ある場合にはこれはどうしても必要なことなんじゃないだろうか。ですから、オーソドックスな労使関係から法制度へという形だけじゃなくて、時と場合によっては国といいますか、法が主導的な役割を果たすということはあり得るし、ある場合には必要なんじゃないだろうかというふうに感じますけれども、どんなふうにお考えでしょうか。
#14
○参考人(菅野和夫君) 私もおっしゃられるとおりだと思います。時間短縮、我が国での特色はまさしく国策といいますか、国の課題として樹立されたということでありまして、そのきっかけはまさしく私も申しました前川レポート以来の経済構造の調整というか、あるいは改革。ドイツなどと比べた場合の労働時間の差は、これは単なる時間短縮ではないと。おっしゃるとおり、いわば社会改革といいますか社会のシステム、もろもろの社会のシステム、構造の改革という課題になっているのだと思います。
 それで、その後にさらに非常に高まったのがゆとりという流行語を呼んだように、勤労者のもっと質の高い労働生活をという非常に強い機運だと思いますし、それでちょうど高齢化とか女性の活用という課題が重要になってきた。それにとっても必要だということでございますので、まさしく国にとっての、社会全体にとっての課題というところから政策によってこれを推し進めていくということは私は必要なことかと思います。
 しかし、労使の交渉が全然なされていないとか意味がないということは全くないわけで、例えば私の中央労働基準審議会というところにおりますが、ここはまさしく労使の代表の方々がいろいろと意見を出されて、その意見を尊重する形で、言うなれば一種の国レベルでの労使の話し合いを尊重しながらやっていく仕組みだと思いますし、そういうのを受けて春季交渉などで労使が各企業で話し合っていく。それを産業別組織あるいは連合等の組織が支援していくということでありますので、ちょうど我が国は政府が主導しながら労使がこれに一体として協力しながらやっていくという、私はそういう意味では望ましい形ではなかろうかと思っております。
#15
○庄司中君 ありがとうございました。
#16
○吉村剛太郎君 三人の先生方、いろいろと大変参考になるお話をいただきまして、ありがとうございます。
 三人の先生方にそれぞれ少しずつ関連がある質問になるんじゃないかと思いますので、まず先生方、答弁といいますか御教示を特定することなくちょっと質問だけを先にさせていただきたいと思っております。
 週四十時間いそして年間千八百時間の時間短縮に絡みまして、日本としては将来とも三%以上の経済成長率を目指しておるところでございますが、そういう中で、このままの時短、労働力不足の中ではとても三%以上の経済成長率というのは望めないのではないかと。逆に、三%以上の経済成長率を目指すならば相当の合理化、生産性向上を図っていかなければならないと、先生方それぞれおっしゃったわけでございます。
 その中で生産部門の合理化といいますのは、これはある意味では目に見えるウエートが非常に高こうございまして、やりやすいといったら語弊があるかもわかりませんが、非常に可能だと思いますが、一方のサービス部門ですか、ここの生産性の向上というのがある意味では大変問題になってくるのではないかと思っております。それに関連して、今日までの日本の企業の企業内訓練といいますものは大変質が高い、またそれなりに効果も上げたんではないかなと思っております。
 先ほど八代先生、日本型雇用システムの中で生産部門での生産性の向上は非常にマッチしている、こういうお話でございました。一方菅野先生は、ちょっと説明を十分聞いておりませんでしたけれども、日本的雇用システムの中核として維持存続、これは生産部門もサービス部門も含めてというふうに私は解釈をしておるんです。
 私もサラリーマンの経験があるんですけれども、教育訓練は非常に綿密にまたグレードも高いものを行ってきておりまして、ある意味ではいよいよこれから日本型雇用システムといいますものの持ち味が出てくるのではないかな、このようにも感じておるところでございます。一方では、労働力不足の中で少数精鋭的な企業体質というものにも当然なっていこうと思いますし、それだけに、逆に言えば企業間の引き抜き合戦、そういうものも多々出てくるんではないか、このように思っております。日本型の雇用システム、それは根底には終身雇用も含めましてそういうものが確立していく一方で、逆に相反して引き抜き合戦というような両またに分かれるんではないかなという気が私はちょっとするんですが、その辺、八代先生と菅野先生、若干見方が違ったのか、私の解釈の違いかどうかわかりませんが、両先生に教えていただきたい、このように思っております。
#17
○参考人(八代尚宏君) 最後の方から逆にお答えさせていただきますと、決して私と菅野先生の言っていることは違ってはいなくて、どっちから見るかだけでありまして、私も日本的雇用慣行が一気に崩れるというのではなくて、徐々に崩れてくる。その崩れ方というのは今までのような固定的な雇用慣行及び年功型の昇進パターンが変化するというよりは、そういう慣行に乗るような労働者の比率が急激に減ってくるというような形で日本的雇用慣行が崩れるのではないか。したがって、外から見ると、年功賃金カーブなんというのはそれほど変化しないと思いますが、あくまでそれが適用される人の数が減ってくるというような意味でございます。
 それから、おっしゃいましたサービス業の部分は、吉村先生おっしゃいましたように、質の高い専門的なサービスと、それから伝統的な対個人サービスとでは全然状況が違うと思われます。後者の対個人サービスの方はもっと稼働率が上がる、すなわち小さな自営業的な性格のところが徐々に数が減っていって、残った部分の稼働率が上がるという形で生産性が上がってくるというようなことが今後見込まれると思います。
 それから最後に、経済成長との関係で申しますと、例えば一九七〇年代のドイツを見ますと、労働力が実にゼロ成長の中で三%成長を達成したわけでございますから、九〇年代はまだまだ日本の労働力供給は〇・六%ほどふえるわけでございますから、そういう意味で三%以上の成長率というのは決して不可能ではないと思います。問題は、貴重な労働力をできる限り効率的に生かすようなシステムづくりであるわけで、そのときはかなり労働力の流動化というものが前提になるだろうと思われます。
 以上でございます。
#18
○参考人(菅野和夫君) サービス産業も構成する対象に含めていたかという御質問は、含めていたつもりでございます。サービス産業でも大企業では日本型の雇用システムが成立してきたというふうに思っておりますが、御存じのように製造業とは違った業態でございますので、女性の活用とか、パートその他の雇用形態の多様化を推し進めているとか、そういう面はますます製造業よりも早く変化が進んでいくのではなかろうかというふうに思います。
 それから、今後の日本的雇用システムの中で人材育成のシステムはますます重要になっていくのではないかという御指摘はそのとおりだと思います。企業はその点で考え方を改めていくというようなことはなかろうかと思いますが、やはり中途採用や転職は確実に増加していくであろう。それがある限度に来たときに、例えば多額のお金をかけてアメリカのビジネススクールにやるとかロースクールにやるといった、そういうぜいたくな人材育成というのはどうなるのかというのが実は私興味があるところであります。
 それから、そういう流動化の中で企業に人材育成をすべてゆだねてしまうというのではなくて、自分自身も自分自身で人材開発を図るというか、そういうシステムも必要だろうし、そういう動きも進んでいくのではなかろうかというふうに思っております。
#19
○吉村剛太郎君 水野先生にお伺いしたいと思います。
 長期的な労働力不足という中で、将来的に失業者といいますものはどのような形で存在するのだろうか。考えられますのは、業種による失業というような形になるのか。これは先ほど三%以上の経済成長をもし果たすとすれば相当労働力不足ということで、絶対数からいくと失業は数字的には発生しないということになるんではないかなと思っておりますが、そういうものがどのような形で将来存在してくるのか私さっぱりわかりませんので、ちょっと先生に御意見をと思います。
#20
○参考人(水野朝夫君) 私自身将来の失業者の規模がどれぐらいになるかということについて推計したことはないんですけれども、御承知のように、労働省の雇用政策研究会の数字に基づいて言えば、いろいろな仮定がございますけれども、そこで予測されておりますのは、数字として例えば二〇〇〇年で二・四%あるいは二〇一〇年で二・三%ぐらいという数字がたしか需給のギャップとして計測されていたかと思います。
 その数字をどういうふうに考えるかということで、先ほど八代先生からも御指摘があったように、ある水準の経済成長が持続して他方で労働供給が非常に厳しくなるということからいえば、このときに推計されてきた数字といいますのは経済成長がダウンするとか、あるいは需要が不足して発生する失業だというふうには恐らくとらえられてはいないと思います。そういう言い方をするとすると、いろいろ関係官庁の報告書で使われている用語を使えば、需要と供給のミスマッチの結果として残ってくる失業というふうに解釈しておいた方がよろしいだろうと思います。
 ただ問題は、仮にそういったミスマッチという形で二・数%の失業をとらえたとしても、じゃこのミスマッチがどういった年齢層に発生するというふうに予測するかということであるわけです。一つの問題は、今後定年制がどういった形で延長されていくかという問題もございますけれども、少なくとも今までの日本の経験で申し上げれば、例えば男子の場合には失業率が若年層で非常に高くて、中年あるいは壮年層で低くなって、その後高齢者のところでまた再び高くなる、あるいは異常に高くなるというパターンを持っていたわけですね。そういうことからいたしますと、今後人口あるいは労働力は高齢化していく、そういった人たちに適切な職業訓練が施されていないということになりますと、場合によれば高齢者が企業を出た後再就職したいというような場合に、希望する職種とそれから自分の持っている技能あるいは能力とがかみ合わないというような形、高齢者を中心としたミスマッチ的な失業が発生する可能性はあるだろうということを考えておいてもよろしいんじゃないかというのが現時点の私の考え方であります。
#21
○吉村剛太郎君 三先生とも直接は触れられなかったんですが、今日大変な円高でドル換算しますとまさに今日の日本人の労働者の賃金というのは世界一だろう、このように思っております。よく今話題になっております労働分配率が日本の労働者は高いのか低いのかという議論が出ておりますが、その辺についての三先生の御意見を、簡単で結構でございますが、お聞かせいただきたいと思います。
#22
○参考人(水野朝夫君) このあたりは非常に難しい問題で、私は数字だけで高い低いという議論というのは余り説得力がないんじゃないかというふうに思っております。確かに、国民所得ベースで考えますと低いというような見方もできるんですけれども、例えば分配率を考える場合に、これは本来は雇用者といいますか企業に雇用されている人たちのウエートの問題が絡まっておりますので、そういったところを考えなければ、この数字だけで一概に分配率が高いあるいは低いという議論はどうも適切じゃないんじゃないかということです。
 もちろん、一つの問題として、経済の成長の一つの目的といいますのは労働者の福祉といいますか、あるいは国民の福祉の向上ということが一つの目標になっているわけでありますから、それに沿った形で先ほど来の生産性の上昇の成果が適切な割合で労働者に配分されていくということであればそれでよろしいんじゃないかというふうに思っております。
#23
○参考人(八代尚宏君) ただいま水野先生がおっしゃいましたように、統計上の問題が非常に大きくございます。労働分配率という概念と統計に出ております雇用分配率という概念は実際は違うわけなんですが、それが一緒になって使われているという問題点がございます。
 したがって、欧米の労働市場に比べて日本の場合は自営業とか家族従業者の比率が非常に高いわけですから、その部分分母の国民所得には入ってきていながら、分子の雇用者所得には入らない、生産物が抜けている、それが日本の労働分配率を見かけ上低くしている一つの要因になっております。ただ、その問題を抜かしまして、例えば法人企業の中だけの分配率を考えても依然として日本の場合は低いという問題点がございます。
 ただ、この解釈でございますが、それでは法人企業の中での雇用者所得、労働者に分配される以外のものは何になっているかといいますと、営業余剰という専門用語がございますが、企業の利益でございますが、この利益部分から例えば法人税が払われるわけであります。日本の法人税というのはかなり高い面がありまして、税引き後で考えた場合は、私が以前試算しましたら米国とそれほど変わっておりません。ですから、米国の場合は法人税収支比率が低いという税金の取り方の問題、企業の方で取るか、あるいは企業から個人に分配された面で取るかというような違いも非常に大きいわけでございます。
 ただ、その背景にある問題といたしまして、米国の企業であれば賃金所得とか配当所得という形で企業が得た利益というのは個人に一たん分配するということに対して、日本の企業というのは法人企業の中に内部留保という形でかなり、それだけ高い直接税を取られながらなおかつ抱え込んでいる。こういう行動自体が日本の労働分配率を低くしている面は確かにございます。これがよく言われています法人資本主義という考え方でありまして、これがいいか悪いかということについてはまたかなり慎重な評価が必要であろうと思います。
#24
○参考人(菅野和夫君) 私、特に専門家ではございませんが、簡単に申し上げれば、賃金とか福利厚生とか時間休暇、それから雇用の安定とかキャリアとしての充実とか、そういった労働生活の質全体として、今までの企業中心といいますかあるいは法人資本主義と言われるような状況を変えて、労働生活を高めていくというような方向がよいのではないかというように思っております。
#25
○吉村剛太郎君 最後に、八代先生、簡単で結構でございます。
 専門の分野じゃないかと思いますが、当然高齢者と女性の就業機会がふえてくるということで、ただこれは女性がいないときに質問した方がよかったんじゃないかと思いますが、女性の就業率が高くなると出生率が低下する、このように俗に言われております。これは先生の分野じゃなくて社会学の分野かどうかわかりませんが、その辺、将来的に、長期的に見た場合、いいとか悪いとかという問題ではないと思いますが、先生のその辺について御所見があればお聞かせいただきたいと思います。
#26
○参考人(八代尚宏君) おっしゃる点は非常に重要な点でございまして、高齢化が進みますと当然労働需給が逼迫して女性に対する需要がふえる、しかしそうなると、働く女性がふえますと出生率が低下することによってますます高齢化が進むと
いう悪循環というのが一つ指摘されております。
 ただ、私はこれに対しては反対でありまして、現在年齢別の女性の労働力率を見ますとM字型というパターンをとっておりまして、まさに子育ての期間、就業率が低いわけでございます。ただ、別途、現に働いていない、非労働力人口と申しますが、その中に占める就業希望率を見ますと、逆にこのM字型のへこんでいる部分で最も高いわけであります。ですから、逆に言いますと日本の女性は決して働きたくないから労働市場から退出しているんではなくて、働きたいんだけれども育児負担のために就業を継続できないという問題がございますので、育児と就業との両立を図るような政策がなされれば、こういう面から、たとえ女性の就業率が高まっても出生率の低下を防ぐことができると思われます。
 具体的な方法として例えば保育所の問題がございまして、これはちょっとこの委員会からは外れると思いますけれども、現在の保育所の考え方というのは働かなければいけないような貧しい母親のための保育所という考え方が基本にございます。社会福祉という考え方です。私は、これはもう根本から変えなきゃいけない。今後の保育所というのは、まさに共稼ぎの世帯のための保育所でありますから、料金を上げてコストをペイするような料金を設定した上でもっと保育所サービスを充実する。払えないような貧しい方には直接政府が補助をするというような形で、いわば高齢化社会の中で女性の労働力を維持するためにも保育所をもっと幼稚園のような市場サービスに近いものに変えていくということが重要であろうかと思います。
#27
○横尾和伸君 三人の参考人の先生方には大変貴重なお話をいただきましてありがとうございました。私からは、御説明をいただいたペーパーに沿って何点かお伺いしたいと思います。
 まず、水野先生にお伺いしたいんです。
 ペーパーで言いますと四ページに労働生産性の伸びを前提としていろいろ予測をされていることが載っているわけです。この労働生産性の伸びというのは、例えば二ページの真ん中にあります経済成長率の式あるいはその下にある表の一などを見てみますと、労働生産性がほとんどひとりで経済成長率を支える、数字的に言いますと支える、また逆に就業時間が経済成長率から見ると足を引っ張る、主にこういう構造になっているわけです。そういう中で、労働生産性の伸び率を四ページの試算では一・六六というふうに想定されているわけです。数字の上で一・六六というのはちょっとわかりづらいものですから、この一・六六というのはどのくらい大変なものなのか、またいつまで持続可能なのか、こういった観点からもう少し御説明をいただけたらと思うんです。
#28
○参考人(水野朝夫君) 今後の生産性の上昇をどういうふうに考えるか、あるいは一・六六というのをどういうふうに考えるかということの御質問だと思うんですけれども、今までの経験からいえば、あるいは外国の経験から申し上げても、恐らくこの生産性の伸び率といいますのは経済の成長率の大きさにかなり依存してきたということは言えるだろうと思います。
 それは改めて申し上げるまでもないかと思いますけれども、経済の成長が活発であれば、そういったときには企業としては設備投資を行う、その結果として生産性も伸びると、時間的なラグの問題は別として。そういう関係をどこの国でも示してきたわけでありまして、そういう意味では、経済の成長に対して生産性が規制要因になるということと同時に、経済の成長率が生産性の動きを規制するという両方の面を持っているわけです。
 そういうことからいたしますと、少なくとも今までの経験からいえば、例えば、日本の場合には経済成長が一%の場合には、労働生産性の上昇率が〇・八とか〇・九%という因果関係を、因果関係といいますか、経験を持ってきたわけでありますので、そのことからいえば、例えば今後の経済の成長率を仮に三%あるいは二・五%というような形で想定した場合に、その成長率の八〇%前後で生産性が伸びていくであろうということは申し上げてもいいかと思います。ただし、それは今までの日本経済の経験に則していえばという限定つきであります。
 そういうことからいたしますと、この四ページに書いてあります一・六六%といいますのは、厳密な仮定から必ずしも出てきているものではございませんけれども、例えば二%というような成長率が仮に維持されれば、今までの経験からいってその八掛けということであるといたしますと、労働供給の方はひとまず別として、二%の成長のもとでも大体一・六%ぐらいの生産性の上昇は期待してもいいんではないかというふうに考えます。
 もちろん、今後どういう社会経済的な制約要因が出てくるかということは必ずしも申し上げられない面はありますけれども、今までの経験からいえば、この数字ぐらいのところはそれほど難しい状況じゃないだろうということを私としては考えております。
#29
○横尾和伸君 ありがとうございました。労働生産性がかなり直に効いてきているということでお伺いしたわけです。
 それから、同じくペーパーの十ページから十一ページにかけまして、労働力の部門間配分について政策的誘導の必要性のある部門が存在するかどうかということをおっしゃられていて、その例示だと思うんですけれども、医療・福祉マンパワーの確保ということを挙げられております。これは私も当然だと思うんですけれども、これはひとりこの医療・福祉マンパワーのほかに、ほかの部門で同じように考えられるものがあるかどうか、そういう観点からお教えいただきたいと思います。
#30
○参考人(水野朝夫君) 御指摘のように、福祉マンパワー関係の領域について私が多少言及しましたのは、これは一つの例示でございます。
 先ほどもちょっと触れましたように、福祉の領域については政策的な誘導というのは、確かに言葉としては多少強い言い方をしているということは事実でありますけれども、経済のシステムのもとで、どうしても労働力が必要だという領域があるということは事実であります。
 問題は、福祉あるいは医療に代表されるように、マンパワーが必要でありながらなかなかそこへ人が行かないと、あるいは集められないという領域が当然出てくるだろうということでありまして、先ほどの一つの例として申し上げれば、私は今後労働力の不足あるいは伸び率が小さくなっていくという状況のもとではやはり中小企業、その規模の厳密な定義は別として、大企業に比較して中あるいは小という日本経済を支えているかなり大きなウエートの領域で、人が深刻な不足なり制約に直面する可能性があるんではないかというふうに思います。
 そういう意味からすれば、一般的な言い方をしますと、市場メカニズムに任じておけば労働力の配分といいますのは効率的に行われる可能性もあるわけでありますけれども、必ずしもそうも言い切れないという側面がございますので、日本経済の中での非常に大きなウエートを占めております中小企業での労働力の不足ということが深刻になった場合に、それにどういった形で政策的な対応を準備しておくかということは今後の課題として残るだろうというふうに考えております。
#31
○横尾和伸君 次に、八代先生にお伺いしたいんです。
 ペーパーの一番最後に図三というのがございます。労働生産性上昇率と労働力人口増加率を縦横軸にとったものですけれども、日本だけがヨーロッパのグループとアメリカ、カナダのグループと外れてぽつんとある。今後、労働力人口増加率が減った場合にこれがどう動くかということで、限られた時間でしたので、私も聞き逃したかもしれませんけれども、御説明の中ではこれが左に人口増加率が減っていくに従って、左上がりに労働生産性上昇率が上昇するというニュアンスだったと思うんです。このところは考えようによってはもう一つのグループであるイタリア、フランス、旧西ドイツ、こういった方向に、もしかしたら左
下がりに行くんではないかという、図だけを見ているとちょっと心配もあったんですが、その中の説明としては下の図四の中で、生産性の水準はまだまだ低いから今後上がっていく余地はあるんだという一面での御説明は大変理解できたんです。時間があれば恐らくもっと違った面からの御説明があったんじゃないかと期待したんですけれども、そういった面から、日本のこの位置がなぜなのかということを少し御説明いただけたらと思うんですが。
#32
○参考人(八代尚宏君) 説明が少し不十分だった点、おわびいたします。
 まず、御質問の点からいたしますと、御注意いただきたいのは、これはあくまで一九六〇年から八八年の、いわば高度成長期を含んだ長期間にわたる平均労働生産性でございますので、実は現時点は日本の位置というのはこれよりもずっと垂直に下に下がっておりまして、労働力人口増加率が一・一%ぐらいで労働生産性の上昇率は三%というところまで既に落ちております。ですから、そこからむしろ私は左に平行に行くような形、つまり労働力人口増加率が減っていく中で、ほぼ三%程度の労働生産性上昇率が維持される、そういうようなイメージでございます。
 具体的に言いますと、これはサービス産業が一番典型的な例でございますが、サービス産業というのは、結局人が余っている限り過剰労働力を使った過剰サービスというのが行われるわけでありますけれども、ヨーロッパのように労働力が非常に少なくなりますと、もうちょっと合理的なサービスが行われるというような形でサービス業の生産性が上昇するわけでございます。
 先ほどのガソリンスタンドの例でいきますと、日本では四人でサービスしているところをヨーロッパでは一人でやっている。そうすると、逆に言いますとヨーロッパのサービス業の生産性というのは日本の四倍であるわけですね。もちろん、これはお客にとってみれば若干のサービスの質が落ちるわけでございますけれども、それでも基本的なサービスからすれば、労働力人口が減るという形で自然と労働生産性が上昇するというふうなことが実現するわけでございます。
#33
○横尾和伸君 次に、菅野参考人にお伺いしたいんです。
 二ページ目に転職をめぐる法律問題が登場した、こういうお話ですけれども、要するにそういう事件が多くなったということだと思うんです。この転職については、労働力不足対応の問題としてはかなり中心的な問題だと思いますので伺うんですけれども、転職をめぐる法律問題が出てきたということですが、この対策についてはもう解決をしたのかどうかという観点から、その対策の進度といいますか、今後の見通しについて法律的な面からどういう対応がなされているのか、教えていただきたいと思うんです。
#34
○参考人(菅野和夫君) ここに幾つか転職をめぐる法律問題として掲げておいてありますが、営業秘密の保護は、御存じのとおり、平成二年に不正競争防止法が改正されて営業秘密の不正な利用についての差しとめ命令を得るとか、損害賠償を得るとかといった法的救済手段が一応規定されたことは御承知のとおりかと存じます。
   〔会長退席、理事藁科滿治君着席〕
しかし、そこにおける営業秘密の不正使用なるものの基準が大変にまだあいまいでありまして、それは事件もまだ少ない、基準も具体的には検討されていない状況かと思います。
 この営業秘密の問題とか、それからその次の競業、労働者が転職する場合はどうしても同じような仕事あるいは営業活動に従事していくということになるわけですが、これがどの程度まで許され、規制さるべきか。職業選択との関係等々は一応幾つかの判例で、例えば退職金の没収条項あるいは減額条項との関連で、あるいは若干の損害賠償訴訟の中で幾つかの基準が提示されているというにとどまっているわけであります。
 引き抜き行為の限界というのも、幾つかの判例で一般的な基準のようなものが裁判所によって提示されていますが、こういった一連の問題はいづれも大変具体的な問題でありますので、実は立法で対処するとかということは難しい問題だと思います。立法で何か書くとしたら大変に常識的な一般的なことしか書けないんで、やはり同じように判例に基準の提示を入れざるを得ないというような問題かと思いますが、今のところは事件数も少ないのでこれで済んでいる。しかし、恐らくいわゆる労働力希少時代とでも言うべき転職がもっともっと一般化したような時期になったら、これについては随分立法的な基準の明確化というようなことも問題になるのではなかろうかと思います。
   〔理事藁科滿治君退席、会長着席〕
 それと、今まで例えば雇用保障を判例は非常に重視して、企業の解雇について厳しい態度をとってきたわけですが、これなども、この時期には緩和の兆しが見られるわけで、それがそこに書いてある中途採用マネージャーの解雇、つまり即戦力として雇い入れたマネージャー、技術者が期待どおりの能力を全然持っていなかったという場合に企業としてはどうするかという問題について、意外と幾つかの裁判例は、従来の厳しい態度とは全く違ってこれを簡単に認めているというようなことから、こういった点も随分変わっていくんだなというふうな気がしております。
 ヘッドハンティングの問題などは、戦後の職業安定法のもとでの職業紹介事業等の非常に厳しい規制が、労働者派遣法などによってひとつ新しいシステムをつくるということで対処されてきているわけですが、そういったことの課題として今後検討されなければならない点だと思います。
#35
○横尾和伸君 ありがとうございました。
#36
○長谷川清君 きょうはありがとうございました。時間の関係もございますし、テーマが非常に相互に入り組んで関連しておりますから、同じ質問をそれぞれさせていただきたいと思うんです。お許しいただきたいと思います。
 おかげさまをもちまして、お話を聞いておりまして、日本の国内における労働情勢がどのような方向でこれから進むのか、そのためにはいろんな対策とか変化が起こってまいります、そういう部分について多様に私はお伺いをしております。
 そういう中でひとつ質問は、外国人労働の問題についてはきょうお触れになっておりませんけれども、そういう国外労働情勢が少しずつドライになっていく。今までの日本的な雇用関係は多様に雇用システムが変わっていく。そういう状況と相まって、外国人労働はこれから拡大をする傾向にあると私は思うんですけれども、その場合、そういう認識でいいのか。それが国内労働力に与える影響がもしあるとすれば、その辺はどういうお考えか。この点をひとつお聞きしたい。
 それから、国内で進めていく場合、今現在もそうでありますが、IBMという会社で今労使で争っていることがあるんですね。これは雇用調整という名において、四つの選択肢をアンケート方式でプログラムとして社員に与えて、このうちどれを選択するか。例えば途中退職についても退職金の歩合を少し割り増しを上げるからという選択肢もありますし、四つともいずれも厳しい、どちらかといえば従業員にとってみれば選択したくないものがある。それを選択しなかった者は、どちらかというと強制配置転換といったような、これは一つの例でしょうけれども、現実にはいろいろ転換していくまでに相当時間がかかるし、犠牲が伴うと思うんです。
 こういう点について、アメリカやヨーロッパのような契約社会では非常に多種多様な人種が集まってのあれですから、会社と個人は契約をして割り切ってやりますけれども、先ほどのお話を聞いておりましても、完全なそういう職務給的、完全な契約社会的労働でもなければ、日本的土俵と日本的雇用関係を軸足にしながら改善、改革をと、こういうふうに私はお話を受けとめましたけれども、そういう場合の経過的なところにいろんな問題がここに含まれておりますので、そういうリスクに対してどのくらいの時間と、それからどのぐらいの範囲のところでこれが転換ができていくの
か、そういった問題意識。
 それといま一つ、三点目は、労働の価値観というものに変化が起こらないかどうか。今までの日本的雇用関係の中にあっては終身雇用制でございますし、技術の継承というものもこの中で果たしていけた縦型社会というものの中においてのよさもあったんですけれども、労働がスムーズに移動していきますと、どちらかというとこれまたドライな感覚にだんだん労働の価値というものは変化をしていくのではないか、またそのことが技術の継承であるとか働くということの労働の価値観、今までのよさが継承されづらくなっていくのではないかという懸念もあるやに思うんですが、その点はいかがでしょうか。お答えの時間もありますから、おれはこれは専門じゃないよという部分がございましたらお答えをカットしていただいても結構でございます。
#37
○参考人(菅野和夫君) まず外国人労働者の問題については、私は企業の国際化というのはますます進むだろうし、また日本社会の国際化というのも進むだろう、そして進めた方がよいというふうに思っております。そういう意味では、専門的な職種についての外国人労働者の受入枠というのはどんどん広げていっていいのではないかと思っております。
 問題は単純労働者でありまして、これは国際的な、政治的な課題というかプレッシャーとしても、あるいは国内の労働力不足との関係でも、例えば枠を決めるとかして受け入れるべきではないかといった問題があろうかと思います。これは、私一個人としてはできるだけ慎重にどのようなコストと準備を払って受け入れるべきかということをいろいろ検討した上でしていただきたいというふうに思っております。
 それから、IBMのセカンド・キャリア・プランでしょうか、それに言及されて、そういうふうな選択制とかあるいは契約社会へ移行していく上での困難さとか時間がかかるといった点の御指摘は私もそのとおりだと思っております。現在の中高年のホワイトカラーの方々は、これはもうまさしく終身雇用という観念で就職されてずっと働いてきた方々ですから、心の準備もそれから技能上の準備もできていないゼネラリストの方々であります。ですから、こういうのはできるだけ時間をかけてキャリアプランとしてやっていく、転換していくのが適当だろうと思います。
 それから、第三点の価値観の変化という点は、私は社会学者とか調査をしている人間ではないので感じじか申し上げられないんですが、変化は進んでいくことは避けられないだろうと。そして、日本の雇用システムを中核としては維持しながらもいろんな修正を施していく過程での大きな課題は、組織としての求心力といいますか、これを今までは全生活を面倒見るということで確保してきたのをいかに確保するということかなと思っております。
#38
○参考人(八代尚宏君) 外人労働の問題につきましては今の菅野先生と全く同じ意見でございます。私は単純労働者の受け入れというのはむしろできる限り抑制すべきであると思っております。
 これは社会的な面を全く除きまして経済的な面だけで考えましても、現在のような日本の過剰サービスを前提としたような特にサービス産業の分野で今後安易に単純労働者を入れますと、せっかく労働力不足のもとで生産性上昇への動きが見られているときに、それを妨げる大きな要因になると思っております。特にその被害は高齢者とか女性に対して集中的に及ぶわけでありまして、単純外人労働者というのはそういう縁辺労働力の方に最も大きな影響を与えるということでございます。
 それで、労働力不足に対しては、少なくとも製造業というのは海外投資をすることによって現地で雇用をふやす、それでできたものを輸入するという方法があるわけでございますから、特に製造業の分野で安易に単純の外人労働者を雇用するということはできる限り抑制する必要があると思います。
 二番目の雇用調整につきましては、これはちょっと考え方の大幅な転換が必要ではないかと思います。つまり、だれの雇用を守るかということでありまして、今管理職の雇用調整が非常に問題になっておりますが、本来管理職というのは非常に高級なポストで、そのかわりに雇用のリスクがあるというのが欧米の常識であるわけです。それに対して下のポストというのは、賃金は低くて労働条件は悪いけれども雇用の安定が守られると。
 これまでの日本の高度成長の過程というのは非常に恵まれた状況でありまして、一たん大企業に入れば定年まで雇用が確保されるというようなことで、だからこそこれだけ受験戦争の被害、大企業に入ったら絶対得だから、もうそれに入るためにあらゆるコストを払っていい大学に行こうということが教育の面では非常な競争加熱を生んでいるわけであります。そういう意味から考えますと、このように諸外国と比べますと恵まれ過ぎた日本のホワイトカラー、管理職というのは何らかの形で調整されざるを得ないと私は思いますし、それを防ごうとするとそれは別の面の被害が及ぶのではないかと思っております。
 三番目の労働の価値観については、私はむしろドライな関係というのはもう少し日本の雇用システムでは進むべきではないか。今までは余りにも会社に対する忠誠ということがあって、企業のために働くと企業がそれなりに報いてくれるという関係を期待していたわけであります。したがって、企業が幾ら労働者が一生懸命働いても雇用を保障できないという状況になれば、もう少し今後の労働者というのは企業のためよりも自分や家族のための時間の使い方とか、そういう形で日本の社会とアメリカ、欧米の社会とのギャップというのがもう少し縮まるような形になっていくのではないかと思っております。
#39
○参考人(水野朝夫君) できるだけ簡単に結論だけ申し上げます。
 まず第一番目の外国人労働力の問題でありますけれども、今までの経過から考えて言えば、労働力の不足を外国人労働者で何とか埋め合わそうというのが日本の今までの状態だったろうと思います。そういったことで考える限り、今後労働力の不足が強まってくるということがありますと、場合によればあるいはほぼ予測されることでもありますけれども、外国人労働力に依存したいという傾向は強まるということは十分に予測されるわけです。
 しかしながら、私自身は結論的には両先生と同じでありまして、現在考えられております単純労働者の場合にも技能養成制度を導入しようというような考えがあるわけでありますけれども、一つには、日本で養成した技能が母国に帰った場合に生かされる条件が担保されているかどうか、その辺についての詰めはほとんどなされていないんじゃないかということが一つ。それから同じく、技能養成が終わった労働者が例えば他の企業に転職しちゃった場合にそれをどういうふうにコントロールするかというところについても、私多少不案内なところがありますけれども、そういった懸念があるということであります。それといま一つは、外国人労働者を入れた場合に、世界の経験から言いましても労働市場の分断化という問題が出てまいりまして、特に単純労働者の場合には、ドイツなんかでもそうですけれども、労働市場の下層部分へ集中するという問題がございます。
 私はそういう意味で積極的には賛成はしませんけれども、我々が議論する場合に労働者の視点からいろいろ議論はいたします。しかしながら、日本へ来た場合に、単純であれ専門職であれ労働力であると同時に日本で生活する、いわば生活者の側面がございます。そういう意味で、ただ単に労働力が不足したから外国人に依存するんだと、それはそれで一つの論理かもわかりませんけれども、日本に生活する人として日本人と対等な形で我々が対応していくんだという意識が育っていない段階では、私は外国人労働者に依存するということについては賛成できないということを明確に
申し上げておきたいということです。
 それから第二点は、IBMの問題が出てまいりましたけれども、今回の選択肢がかなり唐突な形で出てきたというところに一つの問題があるのだろうということであります。これが例えば入社した段階から、将来あなたは四十五歳になったらこういうケースがありますよということがわかっていればそれほど問題はなかったわけでありますので、そういう意味では、リスクをできるだけ労働者に負担させないというためには、ある制度を導入する場合にかなりの猶予期間が設けられなければ摩擦は大きくなるという感じがいたします。
 ただ、それに関連して一言だけ申し上げておきたいのは、今回の雇用調整の状況を見ておりますと、国があるいは労働省がというふうに言ってもよろしいかと思いますが、高齢者が増大していくという状況を踏まえて六十五歳までの継続雇用ということが方針として出されているわけでありますけれども、今回の雇用調整を見ますと、どうも高齢者を日本の企業の中で活力として維持していこう、あるいはそれを活用していこうという気持ちがちょっと弱過ぎるんではないかというのが私の率直な感じであります。
 それから最後に、先ほど価値観の問題が出てまいりましたけれども、このあたりは非常に難しい問題であります。私自身は、企業のあるいは産業の中核になる部分としてはかなり根強い形で長期勤続型というタイプは残っていくわけで、その周辺に恐らくかなりドライな形で転職を繰り返すという部分が多くなっていくんだろうと思います。これは考え方にもよるんでしょうけれども、そういったタイプといいますのは供給側の条件にあわせて行動するということでありますので、今後の社会のもとでは多様な就業形態を認めていくということであるとすれば、ドライな風潮が仮に出るといたしましてもそれは言葉の問題で、それがすべて望ましくないというふうに考える必要はないのではないかというふうに思います。
 以上です。
#40
○長谷川清君 どうもありがとうございました。
#41
○立木洋君 最初に、菅野参考人にお尋ねしたいと思うんです。
 時間短縮と法的なかかわりという問題で若干お尋ねしたいんですが、労働時間の短縮の問題など労働条件の問題に関して、これはすべて労使の自主性に任せるべきだ、とりわけ強制力を持つ法の介入については好まないというのが一部の議論としてあると思うんです。もちろん、私も労使間における話し合い、交渉というものを決して無視したり軽視したりするものではありません。御承知の憲法二十七条でもはっきり就業時間等については法律によってこれを定めるというふうな規定がありますし、また外国とのかかわりを見ても、日本の労働組合の組織率の状態や企業形態として組織されているというふうな特徴から見て、法的なかかわりということがどうしても私は必要じゃないかというふうに思うんです。
 それで、今問題になっています労働時間短縮の問題ですね。これは来年の九月から四十時間、しかし現実にはその週四十時間の適用を受けるのは三割そこそこだ、あと六割の人々が延長されていくということになると、法治国家として法のもとに平等という点から見ていかがなものだろうか。これが三年後必ず改正される、完全に実行されるかというとなかなか問題があるんじゃないかというふうなことを一つ感じるんです。
 それで、私もいろいろな方にお話をお伺いしたんですけれども、特に中小零細企業でこの時間短縮というのはなかなか困難なんだ、だからどうしても一定の猶予期間が必要だというふうな口実にされている可能性もあるんです。中小零細企業の方々の実態を見てみますと、どうして時短がうまくいかないのかというと、親企業のかんばん方式なんかに基づく多頻度の納入だとか、あるいは休日前に仕事が発注されて休日後にはそれを納品しなければならないだとか、それからひどいところによりますと、納品の時期がおくれると罰金を課せられるだとか、さまざまなことがあって、中小企業の方々のお話を聞くと、親会社との関係についてどうしても改めてもらわないと時間短縮というのはなかなか困難だというのが非常に大きなウエートを占めているんじゃないかというふうな気がするんです。
 そういう意味で、これらの問題に関して一定の中小企業の保護政策というのはあるわけですが、とりわけ強制力を持つ法の介入についてはなかなか抵抗があるという状況もあるんですけれども、こういう問題についてもやはり規制するような状況を目指して時間短縮が実現できる方向へ努力するということが必要じゃないかと思うんです。時短の問題での法とのかかわりについて御意見をお伺いできればと思います。
#42
○参考人(菅野和夫君) 申し上げましたとおり、現在の時短は法主導で段階的、漸進的に行われているわけでございます。そこで、四十八時間を四十時間に変えていく過程も段階的にやるばかりじゃなくて猶予措置というものを行っているわけですね。この段階的に移行するということ自体は先進国の立法にも見られないことはない。例えばアメリカの公正労働基準法なんかは段階的な移行をしましたが、確かに猶予措置の方は見られない。恐らく我が国独特のものではないか。これは法のもとの平等に反するのじゃないかとか、あるいは中小企業はむしろ一律にやってくれた方がいいという議論ももっともな面があろうかとは思います。
 私は、一つは、憲法二十七条に基づく労働基準法という労働条件の最低基準としては、四十八と四十というものの意味は非常に違う。四十八時間というのは人間的な生活の基準ではないか。四十時間の方はもっと政策的に豊かな成熟社会に労働生活の質を高めるというような基準ではなかろうか。これを政策的に遂行していく。実態としてはそれにはなっていなくて、かなりおくれているという状況がありますので、そこで猶予措置というのが出てきたのだろうと思います。
 しかし、それは妥当かということは確かに問題なんですが、ただ中小企業も一律にやってほしいという面ばかりじゃないわけで、コストの面、それからおっしゃるとおりの親会社との関係など、経済システムとしての困難さというのがありますので、やはり無理はできないのではないか。したがって、法のかかわりというのは強行的に一律にというよりはソフトにそのシステムを整え環境づくりをしていくという方向にいかざるを得ないところがあるのではないかなというふうに思っております。
#43
○立木洋君 八代参考人にお願いしたいのですが、雇用の形態といいますか労働の形態といいますか、変形労働時間、これは一年間に延長するというようなことが問題になっているんですが、これはいろいろ問題点があるんです。例えば先ほど来参考人もおっしゃいました女子の労働参加の問題、これから見ても非常に大きな障害をもたらすのではないか。それから、勉学を志している若年労働者といいますか青年労働者なんかにもこういう変形労働時間が一年間に延長されるということになりますと、そういう青年・若年労働者にもさまざまな影響をもたらすんじゃないかというふうなことも非常に憂慮されるんじゃないかと思うんです。
 それからもう一つ、裁量労働の問題がありますが、この問題でも先ほどちょっと参考人もお触れになったけれども、今度の場合には、これがこれまでのあれとは変わってきて、現行法における研究開発その他という例示が削除されるわけです。そうすると、ホワイトカラーにもこういう問題が影響するということになると、裁量労働というみなし労働が八時間とノルマが決められたら、それ以上の時間をやっても実際にはただ働きみたいな格好になるというようなことになると、労働生産性という面から見るとこれはまた別な見方があるかもしれませんが、実際に労働者の豊かな労働条件という見地から見るとどうしても問題じゃないかと思うんですが、若干外国との関係なんかもお考えになって、どういうふうに見たらいいのか、
御指摘をいただければと思います。
#44
○参考人(八代尚宏君) 私必ずしも労基法のことは強くありませんので、わかる範囲でお答えをしたいと思います。
 ただ、先ほどから私が申し上げておりますのは、職務権というものをどう考えるかということであります。雇用の形態というときに、例えばホワイトカラーとブルーカラーであるとか、あるいは管理職と平の人であるとかというのはかなり違うわけでありまして、それを全部ひっくるめて労働者と考えて全体に当てはめるようなシステムをつくろうとするとかなり無理ができるのではないかと思われます。ブルーカラーの場合は、本当に労働者の保護ということがやはり重点になるわけでありますけれども、ホワイトカラーにつきまして、特に管理職あたりになりますともう少し選択の自由ということが重要であるかと思います。例えばプロフェッショナルな人たちというのは、本来時間に縛られて働くのではなくて成果で勝負するわけであります。それに対してブルーカラーの方は、まさに時間に雇われる、時間で働くという違いがあるわけでありますので、そういう面からしましても、例えば賃金の払い方も当然違うと思いますし、雇用の保障の度合いも当然違うと思われます。
 したがって、その間の労働者の選択というのを自由にすることが大事だと思われます。例えば今のシステムのように、年をとるとだれでも彼でも無理やりに管理職にしてしまう。管理職にしてしまうから組合の保護から外れて、ある意味でかなり裁量的に退職を迫ることができるというシステムはぜひ変える必要があると思います。ただ、労働者の自由選択が許された暁には、雇用の安定と相対的に低い賃金の仕事、それから賃金は非常に高くてそれなりに管理的な仕事で、しかしリスクは大きいという仕事を労働者が自由に選べるようになろう。そうなると、リスクの多い仕事の労働者の雇用保障というのはかなり相対的には割り引いて考える必要があるんじゃないかと思っております。
#45
○立木洋君 最後になりましたが、水野参考人にお伺いいたしたいと思います。
 これからの労働力の問題については、労働人口の減少傾向だとかあるいは人口構造の高齢化なんかの問題で、高齢者の雇用という問題が一つの大きな問題になってきておると思うのであります。それで、今までの高齢者の置かれている実態を見てみますと、高齢者の雇用安定法なんかが改正されまして、最近数年間を見てみますと、実質的には六十歳から六十四歳の高齢者の方々の雇用実数というのは確かにこの数年間ふえてきているという状況が出ております。ただ、問題は早期の退職優遇制度というようなことを自主的にとっている企業、五千人以上の企業で見てみますと、四七%が早期の退職優遇制度というのをとって、それの適用開始年齢が五十歳から開始されるというのが六割以上なんです。そうすると、高齢者の雇用安定で今の労働人口、将来的なことを考えるならば、高齢者の雇用ということが重視されなければならないんだけれども、一方では、そういう企業の中ではもう五十歳からどうぞできるだけ早くおやめいただきたいということが実際に進行していくということになると、これはどういうふうに考えたらいいんだろうかという問題なんです。
 それから、水野参考人も六十歳から六十四歳の所定内の労働時間が月百八十時間、非常に長いという労働省のあれを引用されておられましたけれども、二十歳代の後半の人よりも所定内の労働時間というのは十時間も多いというふうな状況もあるんです。これは、高齢者の方々が仕事をしたい理由というのが、経済的な理由を挙げているのが男子で八四・五%だというふうな数値を見てみますと、結局、仕事をかわってやめて新しく働くとなると、賃金も大幅に減少し、そして生活を維持していくためには労働条件が多少好ましくなくても働かざるを得ないというふうな実態はやはり所定内労働時間が多いということに示されているのではないかというふうな感じがするんです。
 ですから、こういうような今後の高齢者の労働のあり方という問題も考えて、今のこのような状況、高齢者の雇用問題で何か特別なお考えがあればお示しいただきたいと思います。
#46
○参考人(水野朝夫君) まず、今御指摘のありました数字の件ですけれども、私自身必ずしも細かくチェックはしておりませんが、この数字を見る限り最高年齢の二つの階層のところでかなりギャップを持った形で時間が長くなっております。そういう意味では、これは製造業全体しかも男子全体、学歴全体で考えておりますので、恐らく高齢者が、ある企業を退職された人たちが中小企業に集中されていて労働時間が長くなっているということを反映しているんだろうというふうに読むことは十分可能だと思います。現実に一方では定年制の延長あるいは六十五歳前半までの継続雇用の推進ということが言われていながら、年金の問題なんかは別にして言えば、私自身は必ずしも高齢者の雇用の条件が十分に備わってきていないんじゃないかという感じがしているわけであります。その一つは、確かに六十歳定年制ということが一つの政策目標とし掲げられたわけでありますけれども、結局六十歳定年制ということは、とにかく六十歳まで面倒を見ればあとはよろしいということにもなりかねないわけですし、企業別に見ますと、六十歳定年制をしいたことによって、それを境に労働市場から退出せざるを得ないという状況に追い込まれるケースが非常に大きいということであります。
 ただ、今まで勤めていた企業を定年を境に退職するということは仮にやむを得ないとしても、じゃその後適切な職場に移ることができるのかどうかということになりますと、一つは、例えば相対的に労働条件の悪い中小企業へ就職しなければならないというような問題が発生いたします。それから、高齢者実態調査なんかから明らかになっておりますのは、定年を境に適切な仕事が見つからないということで失業する人たちの割合が非常に高いということであります。恐らくこれは雇用保険制度のあり方にもよるんでしょうけれども、定年退職した人たちの半分近くが一回は失業するというような問題がございます。しかも、失業なり中小企業へ行くということだけじゃなくて、再就職した場合に今までの職業能力が必ずしも活用されていないような職業につかなければならないという問題がございます。
 そういった意味からいたしますと、高齢者の雇用の問題といいますのは、まだまだ日本の政策として本格的に対応しなければならないところがあるわけでありまして、先ほどはしょりましたけれども、中曽根内閣のときの経済計画の中で、若年者の長い労働時間を削って高齢者の雇用機会の創出に向けるんだということが指摘されたわけでありますけれども、どうもそういったところにまで実態が及んでいるというふうにはなかなか見られないというのが私のこの問題についての印象であります。
#47
○萩野浩基君 萩野です。よろしくお願いいたします。お三人の先生方、長時間にわたって大変お疲れと思いますが、ひとつよろしくお願いします。
 今水野先生がお答えになりましたから、逆に菅野先生に御質問いたしたいと思います。立木委員の方からも、またほかの委員の方からも質問が出ておりましたけれども、やはり今時短の問題が大変みんなの関心事になっております。それで、私は労働時間の算定基準というものが一番大事ではないか、そう思っております。
 御案内のとおりに労働時間にかかわる法に関しましては刑罰法規で定められておる、だからこれは大変強い法律だろうと思います。だけど、よく見てみると、この算定の基準というものは日本の場合全然はっきりしていないんですね。この点がいろんな問題を起こしてくるもとではないか。だから、こういうところをはっきりしないでおいて時短時短と言ったところで、結局きちっとしたものは出ない、非常に不明確である。菅野先生もいろんなところでこの算定基準の重要性ということをおっしゃっておられるのを私何度か見たことがあるんです。一言この重要性と、そして算定基準を
何としても定めなければ事は始まらないと私は思っているんですけれども、先生からひとつ御意見を伺いたいと思います。
#48
○参考人(菅野和夫君) おっしゃるような基本的な問題があろうかと思います。労働基準法の特徴として適用範囲が大変に広い、包括的にいろんな産業を網羅し、かつホワイトカラー、ブルーカラー、工場労働、交通運転、サービス産業、もろもろのものを含んでおりまして、いろんな産業、業態における労働時間を規制する、しかし余りにも特殊性のある産業については若干の特別規制をするというふうな仕組みになっておるわけです。
 そういう中で根本の労働時間とは何かというふうな規定、定めがないということはおっしゃるとおりでありますが、逆にこれが例えば工場法とかホワイトカラー労働基準法とかというふうな限定的なものであれば定めやすいのかもしれませんが、その包括性、広範性のゆえに難しいところがあろうかと思います。いろんなサービス産業での営業労働、お客さんとのいろんなつき合いとかも含めた労働時間というのは一体どこまでかという問題もあろうかと思います。
 一番大きなのはホワイトカラーにおける労働時間をどう考えるかということで、これは週休二日制が確立して、それから恒常的な時間外労働などが最小限にというか削減されていって、しかも年休もみんなとれるというふうになった段階でその規制のあり方というのを、ホワイトカラーにとって労働時間とは何かという視点から考えていく必要があるのではないか。今の時点では根本的に考えていくのはやや時期が早いのかなという感じもするわけです。
 お答えになったかどうかはわかりませんが、定義規定というのはかなり一般的なもので余り役に立たないものになるのではないか、根本はホワイトカラーの労働時間をどう考えるかということではないかというふうに思っております。
#49
○萩野浩基君 ここは立法府なんで、やはりこの辺の基準というのはある程度持たないとどうしようもないんじゃないかといつもこういう問題にぶつかると考えておるんです。ありがとうございました。
 水野先生にちょっとお聞きしたいと思いますが、やはりこれも今日のアップ・ツー・デートな問題になっております。新聞紙上におきましても雇用調整というのがいろいろ出てくると大変皆関心があるんですけれども、一般には不況期の特徴的な現象としてこれがよく取り上げられる、また言われておるんですが、私は必ずしもそうとは言えないのではないかと思われる面が多々あるんではないかと。
 今どうしても必要なのは、今は確かに不景気の底にありますけれども、平素からこの管理に対してちゃんと秩序立った管理というものが大切じゃないかと。急に雇用調整、こう言っても、平素の秩序ある雇用管理というものが大事と思っているんです。大変抽象的な質問で申しわけないですが、先生の思われるところを御教示いただければと思います。
#50
○参考人(水野朝夫君) 確かに、御指摘のように雇用調整というと不況期と結びついていろいろ議論されている、それが最近の状況だと思います。実は資料をお配りしなかったんですけれども、この前ある雑誌に書かされたことがございまして、そのときに書いた一つの問題は今先生が御指摘の、言葉の問題は別ですけれども、雇用調整といいますのは必ずしも不況期の特徴だけではないんではないかということであります。
 その一つの具体的な事例といいますのは、企業の場合にはバブル経済という非常に好況の時期においても定年制を通して常に労働者を企業の外へ輩出していった。その輩出といいますのは要するに新しい若い労働者と結局取りかえるという形での調整は常に行ってきたということで、そういうことからいたしますと、不況期だけの特徴というふうに考えるのは、輩出された人の後の問題を考えますとやはり問題のある整理の仕方だろうということは同感であります。
 ただ、好況あるいは不況ということにかかわらず、雇用調整ということを考えた場合に、今先生の御意見として秩序ある雇用管理という御指摘がございました。私自身も全く同感でありますけれども、じゃ具体的に日本の雇用問題を全体として考えた場合にこの秩序ある雇用管理をどの部門が行うかということがあろうかと思います。先ほどもちょっと触れましたけれども、大企業の場合には好況期にはたくさんの労働力を雇い、不況期になると大量の労働者を解雇するというようなことがあるとすれば、日本全体の中で秩序ある雇用管理の責任を担っているのは大企業であるというふうに私は考えております。その受け皿が逆に中小企業になっているわけで、大企業がそれに向かってどういうふうに努力していくかということがこの秩序ある雇用管理の最終の目標になろうというふうに思います。
#51
○萩野浩基君 どうもありがとうございました。
 もう時間も迫ってきましたので、最後に八代先生に。
 先ほどのお答えの中にもありましたが、例えば保育所なんか全く先生のお説のとおりで、これは共稼ぎのための保育所というような考え方をはっきりとしていかなければいけないんじゃないか。そしてまた、措置なんかを見てみましても共稼ぎをしていれば幼稚園にもうじゃんじゃん持っていかれる、十分な措置がないわけですから。だから、この辺が発想自体を変えていかなきゃいけないんじゃないかと思っております。それで、労働資源としての、この調査会はそうした中からいろいろ展望していくんですが、労働資源の立場から考えてみますときに、基本的問題は申すまでもなく出生率がどんどん下がっておるということで、以前私も女子大でも教鞭をちょっととったことがありますので、そのときいろんなデータをとった中の一つに、何人一体子供が欲しいかというデータをとりましたら、名前を挙げるのはちょっとよくないかもしれませんが、共立女子大では一・四人というのが出まして、私の現在の東北福祉大学では約二名、四捨五入で二名になります。それから、早稲田大学では〇・六名でございました。先生も賃金格差に関して「経済評論」の中でもちょっと触れておられましたけれども、子供の出生率の低下ですね。その原因を幾つか挙げておられまして、私も私が調査したデータからいろんなことを考えているんですが、先生あの中で幾つか挙げていらっしゃいますけれども、もうちょっとここで詳しく、もうほとんど時間はありませんけれども、子供の出生率が下がっている主なる原因として幾つかお挙げいただけたらありがたいと思います。
#52
○参考人(八代尚宏君) 子供の出生率が低下している一番大きな原因というのは、よく子供にかかる費用、教育費などが非常に高くなっていることだと言われておりますが、実はそれだけではなくて、経済学では機会費用という概念がございます。これは子供を産むことによって例えばそれまで働いていた女性が賃金所得を失う、この方が実は物すごく大きなコスト効果を与えるわけでございます。ですから、出生率を上げるためには、先ほども若干触れましたけれども、子供を産んで育児をする場合でも仕事をやめなくても済むような措置をすることによってこの機会費用を減らす、それによって出生率の回復を促進する、そういう考え方の政策が必要であろうかと思われております。
#53
○萩野浩基君 終わります。ありがとうございました。
#54
○小池百合子君 三人の皆様、最後の質問者でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 先生方それぞれに伺いたいんですが、きょうは特にホワイトカラーの労働問題などを中心にお話しいただいたと思います。その中で、近未来の日本の労働形態のイメージを描く上でのアドバイスをいただければと思うんですが、もう十年ぐらい前になると思うんですが、アルビン・トフラーが「第三の波」を書いて情報化であるとかコンピューターであるとか、そういったことが労働形態や階層その他に、または教育システムであるとかそういったもの全体にいろんな影響を及ぼすというこ
とを書き、その労働の中で例えば在宅での勤務であるという意味でエレクトロニックコテージというような言葉を使っていたと思うんですが、アメリカの場合ですと、国土が広いとか一極集中がないとか個人主義であるとか、日本とはかなりそういった面で違いがあるということを踏まえてもこれからこういった情報化、コンピューター化が日本の社会においてさらに進むであろうというふうに思っております。ただ、日本の場合テレビ会議のハードが進んでも、テレビ会議をやった後、いやああいう意味で言ったんじゃないんだよということでまた東京から大阪まで出向いていって、飲ミュニケーションで何とかやってしまうとか、そういった日本の国民性であるとか、また別の社会学的な考慮も必要かなというふうにはぼんやりと思うんですが、その辺でコンピューター化、情報化が今後の労働形態に及ぼす影響などについて伺いたいと思います。
#55
○参考人(水野朝夫君) どういうふうにお答えしたらいいか非常に難しい問題でありまして、確かに御指摘のように情報化が進展していくということで新しい労働形態が生み出されてくるということは既に今までもありますし、また今後もそれが深まっていくだろうということはあえて申し上げるまでもないかと思います。
 問題は、今一つの例として御指摘がありました、例えば在宅勤務というようなことが果たして日本の今までのタイプの人々にどこまで通用するかということだろうと思います。情報化が進展することによって部分的に確かに在宅勤務ということが、特に例えば女性の一部で行われていくということがあるんだろうと思いますけれども、現在のシステムのもとでこれが中心になるということは恐らくまだ十年とかあるいは十五年という期間で考えればそれはほとんど例外的な部分というふうに考えておいた方がいいだろうと思います。特に男子の場合には、いい意味でも悪い意味でも会社人間主義というようなことが言われているわけですから、在宅で会社の人とコンタクトなしで給料だけもらえばそれで私は満足だというような状況にはならないだろうと、素朴な意見で申しわけないんですけれども、そんなことは感じております。
#56
○参考人(八代尚宏君) おっしゃいました情報化と労働形態というときに、私は技術の面だけではなくて働き方ということが物すごく重要だと思います。
 欧米の場合でありますと、これは私自身がOECDで働いた経験から申しますと、それぞれの専門職の人であれば個室に入っておりまして、そこで与えられた明確な範囲の仕事をやることが通常であるわけです。ですから、例えばエレクトリックメッセージのシステムを通じてある意味では会議に変わってコミュニケーションを図るということが許されるわけなんです。
 ところが日本の場合は、先ほど菅野先生がおっしゃったように集団主義ということであって、やはりフェース・ツー・フェースでいろいろやらなければいけない。なぜそうかと言いますと、その背景には個人の職務というのが非常に不明確であるという形で、どこまでが自分の仕事かわからない。だから、ある意味で常に情報をとってなければいけないし、またある意味で仕事のとり合いをする、それが長時間労働にも結びついている面があるのではなかろうかと思います。したがって、そういうシステムというのは女性にとって非常に不利であって、要するに八時間労働した後で一緒に夜のつき合いもすることができるような男性にとって有利なシステムになっているわけであります。
 ですから、そういう意味で個人の職務を明確化するということが、何といってもそういう情報化ということを活用する上にも重要でありますし、今後労働力需給が逼迫してきますと、そういう方向に自然と向かうのではないかと思います。政策としては、繰り返しになりますけれども、従来の固定的な雇用慣行を守るということを必ずしもアプリオリに決めるのではなくて、そういう柔軟な職務形態というものもちゃんと包括するような形で考えていくことが必要だと思うんです。
#57
○参考人(菅野和夫君) 情報化とかコンピューター化が進んでいって、それがいろいろなインパクトを与えていくだろうということは御指摘のとおりだと思います。情報化が進んでいろんな情報が次々に変わっていく、変化が激しい中でいろんな情報を得てやっていかなくちゃいけない。知的、専門的な労働が中心になって、そういう社会では、月並みな言葉ですが常に勉強するということですね。ホワイトカラーが常に勉強していくというようなことが重要になって、そのためのシステムというかそれが重要な課題になるんだろうと思います。
 それから、コンピューター化によって労働態様がどのくらい変わるのか。確かに、家でコンピューターを打ってというような労働の仕方もできるようになるわけですが、直接の情報の価値というのも、あるいは直接の接触によるコンセンサス等の形成というのも重要なわけでありますので、両者がミックスした、従来の集団的な業務運営と、それから新しいそういう個人的な働き方というのがミックスしたような形になるのかなという気がいたします。例えばフレキシブルな働き方で週に二日くらいは在宅勤務できるとか、そういうような形なのかなというふうな気がいたします。
#58
○小池百合子君 ありがとうございました。
 八代先生に伺いたいんですが、先ほどからガソリンスタンドのサービスの点を何度が御指摘なさったと思うんでございますけれども、往々にしてそれはすぐ隣のガソリンスタンドが同じようにやっているからうちもサービス合戦でやめられないという企業が抱く不安感であったり、また一方でさまざまな面でセルフサービスが日本では許されていないという規制の問題もあろうかと思うんですね。特に企業の抱く不安、これは非常に企業ごとの、といっても横並びだとは思いますけれども、これは彼らの不安が取り除かれない限りはなかなかやまないだろうということが一つ。
 それから、規制については、労働力の問題から考えても規制が逆に労働力不足を招いてしまっているような例も幾つかあろうかと思います。そういった点で、労働供給の面でこういったさまざまな規制が与えている影響であるとか、さらに規制緩和の必要性についての御認識を伺いたいと思います。
#59
○参考人(八代尚宏君) 先ほどガソリンスタンドの例を挙げましたのは、これが一番わかりやすい例だから言っているわけでございまして、確かにおっしゃるようにサービス合戦の結果そういうことが起こるんだからという御指摘はもっともだと思います。ただ、なぜそのようなサービス合戦が行われるかというと、これは価格競争がないから行われるわけでありまして、もちろん統制価格ではないんですけれども、例えばあるスタンドがかなり安い値段で売りますと不当廉売ということで現にこの前摘発された例があるわけなんです。そういう形で暗黙のプレッシャーがあってガソリン価格というのが必ずしも自由競争になっていない、したがってサービス競争をするんだということだと思います。
 これはちょっと例が違いますが、かつて預金金利というものが固定されたときにはそれぞれ銀行は大卒の行員を預金集めということにも使ったわけでありますね。こういう資源のむだが預金金利が固定されたときは起こったわけですが、最近のように預金金利が自由化されますとそういうことが少なくなって、むしろ場合によっては預金者の方が列をつくって、高い金利を払ってくれる銀行の方に行くということすら起こるわけであります。ですから、価格競争をもっと柔軟に働かせるということがこういうサービス合戦を防いだり労働集約的な慣行をできるだけやめさせるということに重要だろうと思います。まさに規制というのは規制を徹底する方にとっても労働集約的でありますし、規制を受ける方にとっても労働集約的でありますから、今後労働力が非常に貴重になる社会ではますます規制緩和というものが重要になってくると思われます。
#60
○小池百合子君 ありがとうございました。
 それでは、あと女子の雇用の点について伺いたいんですが、菅野先生に、伺わせていただきます。
 女性の雇用についてなんですが、景気のいいときと不況のときと、いずれにいたしましても、先ほどから縁辺労働力というふうな言葉がございましたように、まさに女性の場合は景気の調節弁役を担わされることをしばしばこれまで経験してきたわけでございます。八六年に雇均法を、そして八八年ごろから大企業の場合総合職、一般職といったような分け方が始まっておりますが、この総合職の制度というのはここへきまして非常に難しい局面に面してきているのではないかと思います。それは企業側も、それから女性の側も総合職というものについてのまだ固まったコンセプトを持っていないといったことがあるのではないかと思います。
 そこで、女性がマンパワーとして、ウーマンパワーと呼ばなくちゃいけないんでしょうか、この彼女らの持っている力を発揮させ、さらには彼女らが働きがいがあると本当に感じるような、そのためには企業側としての対応というのにはどういう面が必要だとお感じになりますでしょうか。もしくは法制面でも結構です。
#61
○参考人(菅野和夫君) 私のゼミにいた女子学生も均等法の翌年、施行の年に張り切ってある大企業の総合職に採用されて、三、四年働いて、どうも企業の方が自分の処遇について扱いかねているというので転身します、実は留学を考えているというようなことで相談しに来たことがありますが、確かに均等法への対応として総合職、一般職というのを設けて企業が優秀な女性を採り始めたと。しかし、企業の人事制度の中でまだまだ対応を確立していないという面があろうかと思います。これは女性の方でもやめてしまったりというようなこともなきにしもあらずだということもあろうかと思いますが、しかし私の見るところ、非常に優秀な女性の方というのは多いわけでありまして、企業がこれを活用されない手はない。誇張して言えば、いわば労働力の半分を利用してないというようなことにもなりかねないわけであります。しかし、これは今後の長い目で見れば労働力希少時代とかサービス化とかという中で進んでいくんだろうなというふうには思うわけです。今のところ、例えば準総合職のような中間的な構想を設けた方が今の段階ではぴったりしているというか、定着してよくやっているというような企業もございますので、過渡的、段階的な措置も考えっつやっていくのがいいのかなという気がいたします。
#62
○小池百合子君 時間ですね。ありがとうございました。
#63
○会長(浜本万三君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の皆様に一言御礼を申し上げたいと存じます。
 参考人の皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見につきましては、今後の調査の参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)
 なお、本日、参考人から御提出いただきました参考資料のうち、発言内容把握のため必要と思われるものにつきましては、本日の会議録の末尾に掲載させていただきたいと存じますので、御了承いただきたいと存じます。
 それでは、参考人の方々にはまことにありがとうございました。御退席いただいて結構でございます。
    ―――――――――――――
#64
○会長(浜本万三君) 次に、派遣委員の報告を聴取いたします。
 ちょっと速記をとめてください。
   〔速記中止〕
#65
○会長(浜本万三君) 速記を起こしてください。
 それでは、派遣報告を星野議員からしていただきます。星野朋市君。
#66
○星野朋市君 御報告申し上げます。
 去る二月十七日から十九日までの三日間、香川、愛媛両県において産業・資源エネルギー問題に関する実情調査を行いました。また、その一環として、十七日の午後、高松市において地方公聴会を開催いたしました。
 派遣委員は、浜本会長、藁科理事、横尾理事、長谷川理事、立木理事、萩野理事、小池委員と私、星野の八名であります。
 第一日目は、まず高松市において、四国通産局長から管内の経済、エネルギー事情等について概況説明を聴取いたしました。
 四国は、石油ショック後産業経済の高度化におくれをとり、その経済的地位は相対的に低くなっております。それにもかかわらず、有効求人倍率は一を超えている県が多く、中小企業における人手不足が深刻であります。課題は、地域経済に大きな地位を占めている中小企業の振興、労働力の確保、産業経済基盤である高速道路などのインフラの整備等であるとのことでした。
 次に、株式会社四国総合研究所において研究開発の現状を視察いたしました。
 昭和六十二年に四国電力から分離独立した同社では、高温超電導体を利用した電力貯蔵システム、将来の都市型電源や火力代替用電源として期待されている高効率の燐酸型燃料電池システム、太陽電池と割安な深夜電力との効果的な組み合わせでエネルギー消費量を大幅に低減させる全電化住宅システム、公害物質を排出せず前後左右に自在に動く電気自動車、地下水の涵養に役立つ歩道用透水平板等興味深い研究が行われておりました。
 午後は、高松市内の公立学校共済組合高松宿泊所ラポールイン・タカマツにおきまして、「四国地方における最近の労働力事情と地域経済への影響、労働時間の短縮への取組状況、二十一世紀に向けての労働力不足への対応」というテーマで地方公聴会を開会いたしました。公述人は、平井城一香川県知事、多田野弘四国経営者協会会長、都村忠弘香川県商工会連合会会長、高橋哲雄連合四国ブロック連絡会代表幹事及び井原現代香川大学経済学部教授の五名で、一人十五分程度それぞれの立場から率直な意見が述べられました。
 まず、平井公述人の意見の概要は次のとおりであります。
 香川県では、高齢化が全国平均に比べ十年程度先行する形で進行していることから、中小企業を中心に労働力の高齢化と若年労働力の不足が顕在化しつつある。最近の雇用失業情勢を見ると、景気低迷の影響を受けて、有効求人倍率は昨年十二月、全国平均で一倍を下回っているが、香川県ではなお一・七八倍と全国第三位の高い水準にある。その理由としては、パートタイムの雇用需要が高いことなどが挙げられる。しかし、職業別では専門技術、サービス、運輸通信等が二倍以上であるのに対し、事務的職業は〇・四倍と低水準にとどまり、また年齢別では高年齢者に厳しい状況にあるなど、職種間、年齢間で求人、求職のミスマッチが見られる。また、中小企業においては労働力の確保はなお厳しい状況にあり、一部において外国人労働者の雇用も見られる。労働力確保対策としては、県単独の助成制度による中小企業に対する魅力ある職場づくりへの支援、パートバンクの設置など職業紹介機能の強化、女性が働きやすい職場環境の整備、高齢者の雇用の場の確保、技術の高度化に対応した技術者の育成などを推進している。労働時間の短縮については、平成二年、県議会で「ゆとり宣言に関する決議」を行うなど、積極的に取り組んできており、特に平成四年度からは、商工会議所・商工会が実施する週休二日制普及促進事業への県単独の補助制度、また労働時間短縮のための自動化、省力化設備導入資金への県単独の融資制度を創設している。なお、国に対し効果的な景気対策の強化をお願いしたいとのことでありました。
 次に、多田野公述人の意見の概要は次のとおりであります。
 香川県は全国有数の長寿県で、高齢化が進んで
いることに加え若年者の県外流出が多く、特に昨今の出生率の低下とも重なり、不況下にもかかわらず甚だしい人手不足状態にある。このため、中小零細企業労働者や女子のパートタイム労働者の賃金は全国的に見て高い水準にある。このような人手不足と高い賃金水準が県下の中小零細企業の経営を苦しくしている。労働時間の短縮については最重要課題として取り組み、平成三年で年間二千五十四時間となっているが、政府目標の生活大国五カ年計画期間中の千八百時間達成は過去の実績から見て事実上不可能であり、当面、英米水準の年間千九百時間台半ばを目標に進めるべきである。労働時間等の労働条件については、各産業、各企業の実態を軽視した法改正や行政指導による時短には反対であり、中長期的視点から労使の合意のもとに企業の経営計画の中で地道に努力し実現すべきである。また、世界一高い我が国の賃金水準を今後さらに引き上げるのではなく、日米格差が約三〇%あると言われる消費者物価水準の引き下げにより、実質の賃上げ効果をもたらすべきである。この格差は第一次産業及び第三次産業の生産性の低さにあり、その改善には農産物、流通・サービス分野などにおける政府規制を見直す必要がある。両産業の生産性向上による余剰労働力が第二次産業への移動をスムーズにし、労働力不足をカバーして余りあると考えるとのことでありました。
 次に、都村公述人の意見の概要は次のとおりであります。
 香川県下の中小企業の事業所約六万のうち五十人以下の事業所数が九九%と、そのほとんどは中小零細企業となっている。景気の後退にもかかわらず若年労働者の不足は深刻なものがあり、平成三年度の県内の高校新卒就労者四千人のうち約三割が百人未満の事業所に就職しているにすぎない。今後の見通しはなお一層暗く、百人未満の事業所は平成十二年には全く採用できない状況も予測される。このため、高年齢者の雇用促進、パートバンクの設置等による女子労働者の活用、日系労働者相談所の開設や外国人研修生への補助などの外国人労働者の活用等を進めてきている。また、小規模事業主の高齢化と後継者不足が大きな問題となっている。中小企業分野の労働時間短縮については、ようやく月二回の週休二日制が定着しかかった段階であることから、政府目標の千八百時間は時期尚早である。現在、政府で検討されている法改正による時短と割り増し賃金率の引き上げについては、不況時であり経営的に苦しいこと、労働時間に関する労働省の統計と商工会連合会の統計に大きな差異があること、労基法は労働条件の最低限を定め保護するためのものであり、その趣旨を逸脱する嫌いがあることから、現時点では慎重な対処を望む。時短の環境づくりとしては、大企業による休日前発注、休日後納入の廃止など下請制度の改革、休日が多くなることに伴い収入減となる小規模事業所労働者の日給制の改善、有給休暇の完全消化等が必要である。また、安易な単純外国人労働者の導入によるこれらの問題の解決には、ドイツ等の外国の例を見ても景気によっては大きな社会問題となるので反対である。なお、外国人研修生の受け入れについては、現在地域単位の商工会に限られているが、連合会もその対象にしてほしいとのことでありました。
 次に、高橋公述人の意見の概要は次のとおりであります。
 四国四県の有効求人倍率は低下傾向にあるが、特に高知県の低さが目立つ。最近の雇用調整は、残業時間の規制を中心にパート・臨時工の解雇、中途採用の削減・停止、また一部では希望退職者の募集の動きもあり、今後の景気動向によっては一層厳しくなる可能性がある。労働時間の短縮については、四国四県とも全国平均に達しておらず、愛媛県では、完全週休二日制を実施している企業割合は七・八%、所定内労働時間週四十時間を達成している企業割合は一六・三%にすぎない。また、企業規模による格差が非常に大きく、中小零細企業での時間短縮が重要課題である。時短の具体策としては、年休の増加、多目的休暇の増加、所定内労働時間の短縮を中心に取り組む必要がある。また、政府が検討している時短のための法改正については、労働時間短縮は国際的公約であり、時短が労使の話し合いだけでは遅々として進まない現状から、社会的規範として法律が先導する観点もぜひ必要である。二十一世紀に向けての労働力事情の変化については、今後、出生率の低下に伴い、生産年齢人口の減少と高齢者人口の増加により、労働力不足が基調になることから、若年者の価値観の変化を常に把握するとともに、女性労働力と高年齢労働力の活用、そのための育児休業制度、介護休業制度の普及充実にとどまらず、総合的で多面的な環境整備が急務である。さらに、愛媛県では、新規高卒者の約三〇%が県外流出している現状にかんがみ、Uターン施策として、魅力ある地域づくりが必要であるとのことでありました。
 次に、井原公述人の意見の概要は次のとおりであります。
 香川県の女子労働力人口は約二十二万人、女子雇用者は約十五万人で、産業別ではサービス業、金融・保険・不動産業等で高く、職業別ではサービス業従事者、事務従事者が高い一方、管理的職業従事者は少ない状況になっている。また、女子の雇用形態は四人に一人がパートタイム労働者であり、パートタイム労働者総数の約八五%を女性が占め、有配偶者は約八〇%を占めている。しかし、女性の労働意欲は極めて高いにもかかわらず、女子労働力率は、M字型カーブを描いていること、女子雇用者の産業別・職業別構成比に大きな偏りがあること、雇用形態としてパートタイム労働の占める割合が仕事と家庭の両立を図るとはいえ高いこと、賃金における男女格差が大きく管理的職業従事者が極めて少ない例からも昇進・昇格に格差があること等の問題がある。これらの問題を解決するためには、家庭における夫の役割の見直しを前提に、母性保護に関する規定を除き、男女同一の視野に立った労働基準法の整備を行うこと、男女雇用機会均等法における努力規定を義務規定にすること、育児休業制度と介護休業制度の普及促進を図るとともに、労働時間の短縮や弾力的な勤務制度の導入、保育所や老人ホームの充実を図り育児や介護のために多様な選択ができるようにすること、労働時間の短縮については、週や年間の短縮にとどまらず、一日当たりの短縮も進めること等が必要である。さらに、香川県では、農林・漁業雇用者総数に占める女子の割合が高いことから女性を生かす農林・漁業のあり方の検討、地元女子大学生の要望が強い地元企業への就業機会の拡大等が望まれるとのことでありました。
 以上の公述人の意見陳述に対して派遣委員からは、香川県の有効求人倍率が高い理由と地方公共団体による労働力確保対策の現状、労働時間短縮に関する法的規制の必要性、中小企業における労働時間短縮上の隘路、労働時間短縮が労働生産性に及ぼす影響、複雑な政府の中小企業関係助成措置の体系化、大企業から下請中小企業への発注形態の見直しと発注価格の引き上げ、小売店舗の協業化等流通機構の改善、ボランティア活動歴を企業の採用基準に導入することの是非、雇用を含めた高齢化に伴う多様な福祉施策、香川県におけるシルバー人材センターの設置の現況とその活動状況、男女賃金差別の格差是正と経営者の意識改革、女性進出に見合った大学教育の見直し等について、それぞれ質疑が行われました。
 二日目は、まず建設中の香川インテリジェントパークを視察いたしました。
 ここは、旧高松空港の跡地を、技術、情報、文化の複合拠点として生まれ変わらせようとするもので、海洋資源開発、バイオ、新素材等を研究する通産省四国工業技術試験所、中・四国ではトップレベルの大規模展示場であるサンメッセ香川等が建設中であり、他にも、多くの公的施設や民間系業務施設が建設される予定になっております。
 次に、株式会社タダノ志度工場で、労働事情の聴取と工場の視察を行いました。
 同社は、戦後町工場から出発して現在では建設用クレーンの最大手にまで成長した香川県を代表
する大企業であります。昭和四十二年に、県内の民間企業では初めて完全週休二日制を導入しました。育児休業制度も昨年導入し、介護休業制度は来年から始める予定であります。現在の年間所定労働時間は千九百四十三時間ですが、計画的に時短を推進しており、この過程で従業員の士気が高まって、生産性も向上しております。一方、同社では、国際貢献の一環として、イースター島のモアイ像の修復を支援しております。視察した清潔な感じの工場では、主力製品の一つであるラフテレーンクレーンを生産中でありました。
 次に、多度津町の財団法人原子力発電技術機構多度津工学試験所を訪ねました。
 同試験所では、最大積載重量子トンという世界最大の大型高性能振動台設備を持ち、原子力発電所の安全上重要な大型設備についての耐震信頼性実証試験等を行っております。こうした試験、安全解析、情報の収集・提供等の結果、原発施設の耐震安全性についてのPA効果と有用な技術的成果が得られているとのことでありました。同試験所では、今後も、国の施策に立脚して活動の一層の充実を図ること、原発の耐震安全性向上に役立つこと、そして、機構の耐震技術を広く世界に役立てることを目指していくと話しておりました。
 次に、愛媛県西条市で、四国総合研究所の西条太陽光試験発電所を視察いたしました。
 平成二年にNEDOから引き継がれたこの発電所の規模は、出力千キロワットで、国内最大、世界でも三番目であります。太陽電池は、入手可能な内外のすべての製造会社から集められており、単結晶、多結晶及びアモルファスの三種類があります。発電のコントロールは、制御室で集中的に行い、二分置きにデータをとってコンピューターで解析しております。ここでの試験は、この三月で終了し施設は撤去される予定ですが、関係者によれば、太陽光発電の実用化には、太陽電池と周辺機器を量産によって大幅にコストダウンする必要があり、そのため国による強力な需要創出対策の推進が望まれるとのことでありました。
 三日目は、まず、全国有数のインテリジェントビルであるテクノプラザ愛媛を見ました。
 ここは、県の全面的な協力を得て運営されており、ソフトウェア開発用EWS等を備えたオーブンラボ、研究開発に取り組む企業が廉価で入居できるインキュベートルーム、講演会、産業展示等多目的な使用が可能な近代的テクノポール、見事な似顔絵をかくロボットなどのあるテクノ科学館などが完備しております。関係者は、この施設が、企業間の共同研究や産学の交流を促進し、県経済の活性化に寄与することを期待していると話しておりました。
 次に、砥部町立の砥部焼伝統産業会館を視察いたしました。
 砥部焼は、地元で産出する良質の陶石を原料としてつくられる白磁器で、力強さを感じさせる厚手のつくりと堅牢さ、洗練されたシンプルな絵つけを特徴としております。二百十余年の伝統を持ち、昭和五十一年に通産大臣から伝統的工芸品の指定を受けました。会館には江戸時代から現在までのそれぞれの時代の特色をあらわす名品が陳列され、新人窯元の展示即売会も行われておりました。窯元は八十二軒、年産額は二十億円でありますが、窯元の数は年々増加を続けており、しかもその半数以上が県外出身者であるとのことでございました。
 次に、帝人株式会社松山事業所で工場の視察と労働事情の説明聴取を行いました。
 松山事業所は、同社の主力工場で、テトロンの単一工場としては世界有数の規模と近代性を誇っております。視察した工場では原料から糸までの一貫生産が行われておりました。同社は、時代を先取りした労働時間の短縮に努めており、昭和五十年から完全週休二日制を導入しております。現在年間総実労働時間は職場により千九百四ないし二千二十六時間ですが、これを一九九五年までに一律に千八百五十時間とすることで労使が合意しており、その推進のために一八〇〇委員会という組織がつくられているとのことでありました。
 以上でありますが、最後に、今回の調査に当たり御協力をいただいた関係各位に厚く御礼申し上げ、報告を終わります。
#67
○会長(浜本万三君) 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時三十一分散会
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ソース: 国立国会図書館
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