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1993/05/13 第126回国会 参議院 参議院会議録情報 第126回国会 労働委員会 第8号
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1993/05/13 第126回国会 参議院

参議院会議録情報 第126回国会 労働委員会 第8号

#1
第126回国会 労働委員会 第8号
平成五年五月十三日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月十二日
    辞任         補欠選任
     野間  赳君     藤江 弘一君
     山崎 正昭君     岩崎 純三君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         田辺 哲夫君
    理 事
                大木  浩君
                星野 朋市君
                庄司  中君
                笹野 貞子君
    委 員
                岩崎 純三君
                佐々木 満君
                坪井 一字君
                平井 卓志君
                藤江 弘一君
                清水 澄子君
                篠崎 年子君
                浜本 万三君
                三石 久江君
                武田 節子君
                中西 珠子君
                足立 良平君
                吉川 春子君
   国務大臣
       労 働 大 臣  村上 正邦君
   政府委員
       労働大臣官房長  七瀬 時雄君
       労働省労働基準  石岡慎太郎君
       局長
       労働省労働基準  伊藤 庄平君
       局賃金時間部長
       労働省婦人局長  松原 亘子君
       労働省職業安定  岡山  茂君
       局次長
       労働省職業能力  伊藤 欣士君
       開発局長
   事務局側
       常任委員会専門  佐野  厚君
       員
   説明員
       外務大臣官房領
       事移住部領事移  岩田 達明君
       住政策課長
       文部省高等教育  工藤 智規君
       局大学課長
       文部省学術国際
       局国際企画課教  竹本 廣文君
       育文化交流室長
       労働大臣官房政  松原 東樹君
       策調査部長
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する
 臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出
 、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(田辺哲夫君) ただいまから労働委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告申し上げます。
 昨日、野間赳君及び山崎正昭君が委員を辞任され、その補欠として藤江弘君及び岩崎純三君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(田辺哲夫君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案の審査のため、来る五月十八日、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(田辺哲夫君) 御異議ないと認めます。
 なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(田辺哲夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#6
○委員長(田辺哲夫君) 労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#7
○清水澄子君 おはようございます。
 私は、今回のこの労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について質問いたします。
 まず、その提案趣旨に述べられております「労働時間の短縮は、働く人々が時間的余裕を持ち、家族とのコミュニケーションや健康の増進により、心身を健全にし、能率的でよりよい仕事をするための大きな課題であり、「時」のゆとりを実感することのできる生活大国実現のための大きな柱であります。」というその考え方には、私は心から賛成をしているものでございます。しかし、現実には、今回の改正は、この法定労働時間の猶予特例措置や一年の変形労働時間制の導入など、とりわけ働く女性にとっては非常に働きにくいという不安の方が今大きな問題になっております。そういう中で、この政府、労働省の言う労働時間の短縮による生活大国という、そういう実感よりもむしろこの際明らかにしていただきたい問題がたくさんあります。私は、そうした観点から質問させていただきたいと思います。
 まず、私は村上労働大臣にお伺いをしたいわけです。今回の改正案の最大のねらいは、申すまでもなく年間労働時間千八百時間の実現にあるわけですが、そのためには過労働時間を四十時間、完全週休二日制の実施、有給休暇の完全消化が前提になっております。そしてまた、これが完全にされなければ、その目標は達成されないと思うわけです。そしてまた、この国際的な労働時間の基準から見ますと、週四十時間を定めましたのは一九三五年のILO条約であったと思います。しかし、日本では第二次世界大戦後の昭和二十二年、一九四七年の労働基準法によって初めて週四十八時間から出発をしております。これは、戦後の復興上やむを得ないという事情があったと思いますけれども、一九六〇年代の経済の高度成長の時期の労働時間については、法制度においてほとんど顧みられないできております。そして、ようやく一九八七年の改正において、原則週四十時間とし、当面の措置として平成三年、一九九一年よりこの規模別業種別の形をとった週四十時間の法定労働時間の運びとなったわけです。ですから、四十八時間から週四十四時間になるというんですか、目標にするまでには四十四年間の歳月を要しております。
 そこで、お聞きしたいのは、労働時間行政において労働省は四十四年間も労働時間の短縮化に手をつけてこなかった、それをどのように総括をしていらっしゃるか、お尋ねしたいと思います。
#8
○国務大臣(村上正邦君) よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
 早速、この四十四年間の労働省の総括について、どういう総括をしておるのかという御質問でございます。
 資源の乏しい我が国が、今日のような経済的発展を遂げることができましたのは、あの戦後の廃墟の中から、そしてまたもともと資源のない日本の国が今日の復興がありますのは、とにかく国民が一生懸命働いてきたことにまずあるということを申し上げなければならない。先生御指摘の四十四年間は、今日の日本を築き上げたそうした先人たちが大変に御苦労を重ねてこられた年月であり、今日の労働時間短縮の進展もそうした大変な御苦労の上に開花し、果実してきたものだと、こういうふうに受け取っておりまして、先輩、先人の皆さん方に心から、そうした今日の日本を築いてくださったその汗に対して、私たちは感謝をしなければならない。
 そして、その果実は何かといいますと、今御審議を願っておる「時」のゆとりということであろうか。ただ単に、時代の要請ということではなくして、そうした四十四年間の営々として汗を流していただいたその果実に対する、私どもはやっぱり恩恵に対して感謝すると同時に、またそうした段階に来ておるということに対して、今日この労働時間短縮ということのスタンスを私は持っておるものでございます。とにかく、衣食足って礼節を知ると言われますが、我が国の経済力はある程度の水準となりまして、まさに「時」ということ、労働行政の中に課せられた生活大国実現という中の大きな柱であろうかと、このように考えております。
#9
○清水澄子君 もう少し反省の声が聞かれるかと思ったんですが、復興の時代の話ならわかるんですが、この長い四十四年間の経済の成長力から見ますと、その果実の大きさから見て労働時間がそれこそ国際的にも非常におくれているという点で、もっと厳しい反省がないと、この改正案が本当に実行できるのかどうか私はむしろ心配になってまいりました。
 それをお聞きしましたのは、やはり四十四年間もかかっている。そうしますと、今度の改正案が一九九七年、つまり四年後には完全に実施するとなっているんですけれども、本当にそうなんだろうか。四年間の間に本当に四時間というのがなくなってくるのかなという、そういう点が非常に不安であるわけです。
 ですから、ここで再度お尋ねしておきたいわけですけれども、一九九七年のときには一切の猶予措置を設けずに、特例の方は後ほどまた伺いますけれども、必ず年間総労働時間千八百時間、そして過労働時間四十時間、完全週休二日制実施、そして有給休暇の完全消化の実現というのを約束をすることができるでしょうか。大臣お答えください。
#10
○国務大臣(村上正邦君) お答えいたします。
 政府の目標でございます千八百時間の基盤をなす今回の法案は、そうした重要な内容を盛り込んだものでありまして、それをもとに目標の達成に向けて大きく前進を図ることができるものと考えております。
#11
○清水澄子君 そのお言葉を本当に信じますから、女性が信じたときというのは大変ですから、後から変更しないでください。
 そこで、実は今回の法改正の最大の争点というのは、週四十時間の法定労働時間に対して中小企業に四十六時間の猶予措置また四十八時間の特例措置を残しているということが、本当に時短の実効性からどうなのかということが非常に大きな問題になっていると思うわけです。
 そこで、お尋ねしたいのは、その規模別、業種別の猶予措置の考え方なんですが、百人以上というので以上と以下を区分されたわけですけれども、百人以上と以下という区分の根拠というのは一体何なのか、そこをお聞かせいただきたいと思います。
#12
○政府委員(石岡慎太郎君) ことしの四月一日から、例外はございますが、百人以下の企業につきましては法定労働時間を四十六時間ということで一年間猶予するという政令を出させていただいたところでございます。
 この百人以下とした根拠でございますが、一つは昨年末からことしの初めごろにかけまして不況の影響がいろいろございましたので、中小企業の経営状況の調査をいろいろさせていただきました。例えば、中小企業団体中央会の方々の調査もしたわけでございますが、それらによりますと、中小企業におきましては売上高の減少、収益の悪化、取引条件の悪化などの実態が見られたところでございます。したがいまして、中小企業におきまして四十六時間を四十四時間にした場合にいろいろ経営上の悪影響が出るのではないか、そういう懸念を持った次第でございます。
 それからもう一つは、実際に中小企業の所定労働時間がどうなっているかという実態調査をさせていただきました。その結果を見ますと、やはり百人以上と百人以下では所定労働時間につきまして非常に大きな差が見られました。百人以上のところでは四十六時間から四十四時間に移行することが十分可能なそういう実績が出ておりましたけれども、百人以下のところではただいま申し上げましたような不況の影響などもございまして、四十四時間になかなか移行できないという実績が見られたわけでございます。
 以上、二点の調査によりまして労働省といたしましては百人以下の企業に限りまして一年間四十六時間の猶予措置をとらせていただいた次第でございますので、よろしく御理解を賜りたいと思います。
#13
○清水澄子君 今の猶予措置を設けた理由は、中小企業の経営状況を理由にされておるわけですけれども、そもそも労働時間の短縮の基本理念というのは一体何なんだろうかと非常に不思議に思うわけです。
 一九六二年のILO百十六号勧告、労働時間の短縮に関する勧告ですけれども、その勧告には労働時間を漸進的に短縮する政策の実施に当たっての基本認識が規定されています。そこでは、そこに働いている関係労働者に特に重い負担がかかっている、肉体的、精神的または健康上、そして産業及び職業に対してそこに働く労働者、特に女子とか年少者には優先順位を与えた時間短縮というものが規定されているわけですけれども、そういうふうに労働省というのは労働時間を決定するときには経営者の経営を基準にされるのでしょうか。その労働者の、労働側の負担からの解放という意味での時短という考え方をなぜおとりにならなかったのか、その理由を労働大臣、御説明ください。
#14
○政府委員(伊藤庄平君) 私ども、今回御審議願っております労働基準法の改正案、週四十時間労働制、これの実現を最大の課題にいたしておるわけでございますが、それに向かう道筋の中でやはり我が国の産業の実態等を見ますと、かなりの中小企業が存在し、それらに対して時間短縮を進めていくためにはかなりの手当てを講じながら進めていかなければならない、そういった難しい問題をかなり抱えておるわけでございます。そういった中で、私どもやはり大きな流れとしてこの労働時間短縮を進め千八百時間という目標に近づいていくためには、何としてもこの週休二日制に相当します週四十時間制を実現することが基盤になる、そういう立場から改正法案もまとめたわけでございます。
 ただ、そういった我が国の経済社会の実情の中でそれを目指すものでございますから、やはり我が国の中小企業の実態等を考慮しつつ、それに引きずられないようにしながら、一方でそういうところにも各種の支援措置を講じながら一定の時期には週四十時間制がそういった分野でも定着するような仕組みを考えていきたい。そういった配慮のもとでこのような猶予措置ということを講じながら、段階的ではありますが週四十時間労働制を目指す、こういった仕組みをとらさせていただいたものでございます。
#15
○清水澄子君 それは、理論的根拠にはなってませんね。中小企業はつぶれてもいいとは言っておりません。中小企業の景気対策、そういうものについては労働省がやることではないんじゃないんですか。
 労働時間を決定するときというのは、労働からの負担の軽減なんで、時間短縮というのはそれこそ先ほどから申し上げた人間的な労働に値するという、そういうことが労働時間とか労働条件の基本原則だと思うわけです。ですから、それは他の省との関係の中で中小企業に対してはそういう景気対策を十分にてこ入れするということであると思うわけです。ですから、その点においても私はやっぱり納得ができません。労働省では、常に経営サイドの発想でずっと時短全体の問題が考えられているような気がいたします。
 そこで、今度規模別、または業種別に猶予とか特例措置をとられたわけですが、これを労働者の側から見るとどういうことになるか。そうすると、これは労働者はやはり労働賃金の面でも規模別、業種別の格差があるわけですけれども、今度時間の上でもまた規模別、業種別という、そういう二重の差別を受けることになると思うんです。そういう意味で、労働基準法という法のもとでの平等、いわゆる法はすべての人のもとに本来平等でなきゃいけないので、格差をなくしていく方向じゃなくて、格差を当然のこととした法改正になったという点において、労働大臣はどのようにお考えになりますか。
#16
○政府委員(石岡慎太郎君) 先生御指摘のように、法のもとの平等あるいは同一労働同一賃金という原則は好ましいものだと基本的には考えております。しかしながら、経営の状況ばかり考えているのではないかとおしかりを受けますかもしれませんが、我が国の現状を見ますと、多くの中小企業ではなかなか労働時間の短縮が進まない面がございます。それは、経営問題ばかりではなくて取引慣行だとかいろいろな社会経済情勢が原因としてそこにあるわけでございますが、そういう状況の中で時短を進めていく場合には一定の猶予措置を講ずることがどうしてもやはり必要ではないかと思います。
 しかし、その猶予措置も余り長きにわたるものでは先ほど申し上げました法のもとの平等という原則にも反するものですから、できるだけ短い猶予措置を講じまして、そして中小企業の時短をその間指導援助していく、こうすることが結局中小企業が早期に時短ができることにつながることでおります。そうなりますと、中小企業が時短ができることになりますと、中小企業の労働者も週四十時間制などのもとで大企業の労働者と同じように働くことができるわけでございますから、法のもとの平等にも近づくわけでございます。
 そういう考え方に基づきまして猶予措置などを講じさせていただいているところでございまして、先生の御理解のほどをお願い申し上げたいと思います。
#17
○清水澄子君 でも、それはもうみんな裏は知っているんです。また来年まで猶予措置が何で延びたかというのは、それはどこから圧力がかかったか。まず省の中では通産省でしょうし、ここの中におられる、与党の中でもやはり商工のそういう面の人たちからの圧力がかかったというのは、これはもう公のことでございますので、そういうことから見て本当に実現できるのかということが非常に心配なんです。「経営者」ということしの四月の雑誌に日経連の三鬼副会長が述べているんですけれども、「猶予期間が終わったら即座に四十時間に移行することには非常に無理があると思います。」「猶予期間が切れた時に、もう一度十分検討すべきでしょうね。」と、こういうことが公に、これがでも本心だと思いますね。
 ですから、こういうことは絶対にない、ここだけで何かきょうの質問の時間が終わったらおしまいというのでは私たちは一体何のために論議したかわかりませんので、九七年には猶予措置などは一切残さない、絶対に延期しない、そして週四十時間の法定労働時間の完全実施をここで大臣は必ず実施するということを明確にお答えをいただきたいと思います。大臣にお願いします。
#18
○政府委員(石岡慎太郎君) 大臣からお答え申し上げる前に、事務的なことも少々ございますので、私からまず答えさせていただきたいと思います。
 今回の改正案をお読みいただければおわかりいただけると思いますが、猶予措置、これは平成六年四月から平成九年三月までの間設けることにいたしております。この間の法定労働時間は四十四時間以下で定めることにしておりますが、猶予措置は平成九年三月末までとなっておりますので、この期間を過ぎますと、例えば四十四時間などの猶予措置というのは切れまして、法律上は四十時間に移行するということに原則としてなるわけでございます。
 御指摘のように、いろいろこれについて経営側に懸念があることは私どももよく承知しております。したがいまして、平成九年三月末までの猶予期間の間、特に中小企業に対しましては強力な援助指導を行いまして、週四十時間に円滑に移行していただくように、こういう努力もあわせてさせていただくつもりでございます。
#19
○国務大臣(村上正邦君) お言葉でございますが、先ほど圧力がかかってという御発言がございましたけれども、私はそういう認識には立っておりません。私の性格上、圧力などということに対して一番抵抗を感ずるものでございまして、それがたとえだれであろうと、圧力ということになれば私は毅然とした態度で、いいことはいい悪いことは悪いと、このけじめだけはぴちっとつけて今日までも政治信念としてまいってきたと、私はこう思っておりますので、今後この問題について圧力などという御発言についてはどうかお慎みあそばされていただきたい、このように存ずる次第であります。
 それからまた、今申し上げましたように円滑に移行できるように最善の努力を払ってまいりたい、こう思っております。
#20
○清水澄子君 圧力というのがあれなら介入があったと、その辺訂正しても結構です。
 そこで、次に今回の改正案ですけれども、具体的なところが、例えば時間外労働の割り増し賃金率とか、変形労働時間の上限規制とか、政省令に委任する事項が非常に多いわけですけれども、労働基準法というのは非常に強制法規の性格を持った法律だと思います。その法律がほとんど委任立法ということになっているわけですが、この点では一体私たちは国会で具体的に何の中身を審議しているのかというと、お願いばかりになるわけです。ですから、そういう点で労働大臣は、そういう圧力というのもお嫌いでしょうけれども、こういう国会の中では本当に対等の立場で、そして具体的にこれを国会の中で論議、審議ができるという、そういう中で決定されていくというものにするのが本来の国会の権威だと思います。
 そういう意味で、今度非常に政省令への委任事項が多いんですけれども、その点では今回はやむを得ず週四十時間にするためにこういう措置になったのか、これが正当で当たり前のことなんですか。この点について労働大臣、お答えください。
#21
○政府委員(石岡慎太郎君) 先生の御指摘は本当にごもっともであると思っております。憲法第二十七条をひもときますと、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」となっておりますので、こういう趣旨からしましても、できるだけ勤労条件に関する基準は国会で、法律でお決めいただくのが原則であると我々も考えております。
 しかしながら、現実問題、例えば週四十時間制をこれから実現していこうという場合には、先ほどから申しておりますような猶予措置とか、いろいろ弾力的な措置を法制上もとっていく必要がございます。これらにつきましては、一々法律で規定できない側面も持っているものと考えております。
 したがいまして、憲法二十七条のところに戻りますけれども、憲法二十七条は必ずしもそのすべてを法律で決めなければだめであるという趣旨ではないと解されております。一定の条件をつけまして、その中での政省令への委任であればそれも許されるという趣旨でございます。
 したがいまして、例えば割り増し賃金率につきましても政令に委任することにしておりますが、その場合におきましても、これは一例でございますけれども、二五から五〇%の範囲内で決めること、それからそれを決めるに当たっては労働者の福祉とかいろんな条件を考えなければならないこと、そして審議会の意見も聞かなければならないこと、それらの条件が付せられた上で政令に委任される、こういう形をとらせていただいているわけでございます。
 こういう例はほかにもございます。できるだけこういうものはない方が望ましいのでございますが、四十時間制へ移行するために経済社会の実情に合わせて時間法制を弾力的、機動的につくり上げていかなければならないためやむを得ずこういう措置をとらせていただいておりますので、御理解のほどを賜りたいと思います。
#22
○清水澄子君 今後、やはりできるだけそういう部分は少なくしていただきたいと思います。
 次に、猶予措置、特例措置で結局週四十時間から除外されている労働者というのは全労働者の過半数以上ですね、六〇%。そういう中で、これらがほとんど経営規模の小さい中小企業労働となるわけですけれども、実は一九八七年の九月に労働基準法の改正の審議が行われたときに、衆議院参議院両方で附帯決議がなされていると思うんです。
 この附帯決議は、「中小・零細企業における週休二日制等労働時間短縮を促進するため、環境整備を進めるとともに、必要な指導・援助の拡充に努めること。また、下請企業における労働条件の改善・向上の観点からも、取引条件の適正化のためなお一層の指導監督を行うこと。」、このことが実は六年前に附帯決議をされているんです。こういう法定労働時間の二重、三重の格差の構造を改善するために、労働省はこの六年間の間にどのように指導監督それから調査をなさったのか、その結果を経営規模別に見て実労働時間の短縮がどの程度進んだのかということを数字を挙げて説明していただきたいと思います。
#23
○政府委員(伊藤庄平君) ただいま御指摘のございました前回の改正の際の附帯決議でございますが、私ども労働時間短縮を進めるに当たりましては、やはり中小企業、零細企業において労働時間短縮をいかに進めるかということが非常に大きな課題でございますので、常に念頭に置きながら対策を進めてきました。
 具体的には前回の改正以後、私ども中小企業等を対象にいたしまして労働時間短縮のための労務診断あるいは助言指導を通じたノウハウの提供等を行ってまいりました。さらに、そのやり方の一環といたしまして同業種の企業集団あるいは同一地域、系列別といった形で事業主をとらえまして、そういったところに対しまして集まっていただいて、具体的なノウハウの提供、時間短縮の監視をするといったような事業を行ってきております。さらには、昨年労働時間の短縮に関する臨時措置法を成立させていただきまして、これに基づいて事業主が共同で労働時間短縮を進める場合のいろんな支援措置も今軌道に乗りつつあるところでございます。
 さらに、今回の改正法におきましては、その時短促進法あわせて改正をさせていただいて、そういった事業主に対します労働時間短縮のための助成制度も新設するといったような対策を附帯決議の趣旨に即して私ども講じてきているところでございます。
 こういった中で、具体的な数字として中小企業等の労働時間短縮がどのくらい進んでいるかという数字でございますが、例えば規模別に見てまいりますと規模五百人以上の大企業で、前回の改正が施行されました昭和六十三年度二千九十八時間でございましたが、これが平成四年度には千九百五十四時間になっております。一方、規模三十人から九十九人の中小企業で見ますと、同じ昭和六十三年度にその規模での年間総実労働時間二千百五時間という水準でございました。これが平成四年度には千九百五十八時間、この辺経済情勢の影響もあろうかと思いますが、数字で見ます限り大企業と遜色のないスピードで労働時間の短縮が進みつつあるというふうな状況になっております。
#24
○清水澄子君 これは不景気になって下がった部分が多いと思います。そして、大企業との所定内と所定外を比べるとまだ違うと思うんですが、それは前にも質問しましたので次に参ります。
 今回の法改正に当たって、猶予措置の事業所の範囲というものについて、今後新たに実態調査をして決めるとおっしゃっているんですが、私なんかは物事の進め方、手順が逆じゃないかなと思うんです。本来なら、実態調査を踏まえてここは猶予措置が必要ですからという提案がなされるべきだと思うんです。法案が通りましたら今度実態調査をいたしますということなんですが、その労働省のやり方というのはそういうものなんですか、ちょっと教えていただきたい。
#25
○政府委員(伊藤庄平君) 今お話のございました法定労働時間の猶予等を決める範囲につきまして既に実態調査を行い、ある程度の見通しを立てて法案等の作成に当たるべきではないかというお話でございますが、私ども過去、前回の改正以後段階的に労働時間短縮を進めるに当たりましては、常にその直近の時点で最新のデータを調査いたしまして、それに基づいて行ってきたわけでございます。また、今回の改正法案をまとめるに当たりましても、昨年の五月、六月に実態調査を行い、その結果を見てやはり一定の猶予対象事業をつくることがやはり必要だと、こういう認識のもとに法案の作成を行ったところでございます。
 ただ、具体的な猶予対象事業を進めるに当たりましては、こういった労働基準法の改正法案の御審議をいただく、そういう過程でやはり一般の企業に対しても労働時間短縮の流れがインパクトを持って浸透していきますので、私どもできるだけ労働時間の短縮が進んだ時点での状況を把握して、それに基づいて極力限定する形で猶予対象事業の範囲を決めていきたい。こういう考えから、法案を成立させていただきましたならば、その段階で改めて労働時間短縮がより進んだ状況を把握して、それに基づいて猶予対象の事業の範囲を決めていきたい、こういう考えでそういう準備をしているところでございます。
#26
○清水澄子君 それでは、特例措置については余り具体的なスケジュール的なものが見当たらないんですが、これも一緒にやはり具体的な短縮計画が必要だと思いますけれども、その時期とかその水準をどのように引き上げていくのかという年度計画のような予定がありましたら教えてください。
#27
○政府委員(石岡慎太郎君) 十人未満の商業・サービス業などの労働時間につきましては、特例ということで、現在は週四十八時間となっているところでございます。この特例措置の見直しのスケジュールについてただいまお尋ねいただきましたけれども、まずこの御提案申し上げております基準法の改正案をお認めいただきますと、その施行は平成六年の四月一日からと考えております。その改正法の施行時期に合わせまして、この特例措置の水準を短縮する方向で審議会でいろいろ検討したいと思います。
 また、この対象事業の範囲につきましても、審議会でいろいろ問題も指摘されておりますので、最新の実態の調査を踏まえまして、この範囲につきましても検討させていただきまして、平成六年の四月一日からは新しい内容での特例措置を出したいと考えている次第でございます。
 それから、もう一点ございまして、平成九年の四月一日からは、予定でまいりますと先ほども御質問がございましたが、週四十時間制が全面的に実施されることになるわけでございます。この段階におきまして特例措置はどうあるべきかというのは当然問題になるわけでございます。したがいまして、平成九年四月、四十時間制が全面的に実施される以前に中央労働基準審議会に今後の週四十時間制における特例措置のあり方につきまして御検討をお願いいたしまして、審議会の検討結果をまって行政側としましては適切に対処したい、そういうスケジュールを考えております。
#28
○清水澄子君 次に、時間外・休日労働の割り増し賃金率でございますが、これも一九六二年のILO百十六号勧告ですね、労働時間の短縮に関する勧告では、やはり割り増し賃金率というのは一〇〇%から二〇〇%という提起がされているわけです。
 私は、日本は労働時間については非常に後進国ですから、先進国並みにということはここで申し上げません。せめてアジアや発展途上国並みに引き上げられないか、こういうことを申し上げたいんです。
 と申しますのは、インドネシアでも時間外労働の割り増し賃金率五〇%、そしてイラクでも五〇%、モンゴルでも五〇%、ネパールでも五〇%ですね。そして、休日労働に対してはパキスタン一〇〇%、シンガポールも五〇%、タイや韓国は五〇%ですね。ですから、そんな先進国並みなんて大それたことは言いませんから、ぜひ発展途上国並み、アジア諸国のせめて五〇%、だって休日労働の二五%しか出てないわけですから、やはり時間外労働、休日労働をそこまで引き上げていくべきじゃないか。そして、労働基準法の本文にはっきり明記すべきだと思いますが、労働大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
#29
○政府委員(伊藤庄平君) 事務的に御指摘の問題をどのように頭に置きながら法案のまとめを行ったかという点について御説明を申し上げたいと思います。
 御指摘のように、欧米だけではなくてアジア諸国の割り増し率も日本の水準より高いものが設定されておる、例外といえばフィリピンあるいは一般的な規制を持っていない香港である、こういう状況につきましては私ども十分念頭に置きまして法案の作業をいたしたつもりでございます。したがいまして、そういった状況を見ますと、やはりこの割り増し率につきましてその引き上げに向かって踏み出していくべきである、こういう基本的な認識のもとに法案の作成作業をさせていただきました。ただ、我が国の実態を見ますと、最低労働基準を決めるという労働基準法でございますが、実際上九割方この二五%という割り増し率で労働契約等が設定されている状況がある。また、日本の雇用慣行のもとで残業が失業者を出さないための雇用調整的な役割を果たしている。これに対して、急激に一気に引き上げていくということについてかなり難しい問題もある。
 そういったことから、今回の改正法案に示されていますように二五%から五〇%までの範囲内で実態を見きわめながら機動的に対応できるような仕組みとしてこの法案を提案させていただき、今後段階的な引き上げに向かって私ども努力をしていきたいというふうに考えたものでございます。ぜひ御理解をいただきたいと思っております。
#30
○清水澄子君 御理解と言われると困るんです、理解はできないんです。それだから、戦後四十四年間もたってこれをどうしてきたんですかと最初お尋ねしたときにも、反省がないのが心配ですと申し上げたわけですが、こういうふうに発展途上国でも、やっぱりこれは国際的な公正な労働基準だからそうなると思います。
 そういう中で、今度の割り増し賃金率にしても、休日労働のみで二五%から五〇%なんて出しているというのは、それもどの範囲でどうなるかというのもわからないわけですから、本当に本腰を入れているのかというところが疑いたくなるわけですけれども、労働省には時間外の割り増し賃金率を上げることで時間外労働を少なくしていく、そういうペナルティーとして扱っていく、そういう視点というのはお持ちではないんでしょうか。この点についてもいかがですか。
#31
○政府委員(伊藤庄平君) この割り増し賃金率につきましては、私ども基本的にはその引き上げを図っていくべきであるという考えのもとに作業をいたしたわけでございます。その前提となる考え方といたしましては、やはりこの割り増し率の引き上げを通じまして時間外・休日労働を抑制していく、あるいは国際的な公正労働基準を確立していく、こういうことの必要性を頭に置いて作業をいたしたものでございます。
 割り増し賃金率を単にペナルティーと位置づけるわけにはなかなかまいらぬ面もあろうかと思いますが、そういったことを念頭に置きながら、私ども今御審議願っている法律の仕組みを今後活用しながら、その実態を見きわめつつ的確、機動的に対応して段階的な引き上げに努めていきたい、こういうふうに考えているところでございます。
#32
○清水澄子君 だから、だんだんこうしてお聞きすると、さっぱりいつどうなるのかわからなくなってくるわけです。ですから、例えば残業時間の割り増し賃金率も現在が二五%というのであれば、今日本ではボーナスは割り増し賃金率の算定基礎に含まれておらないんですね。そうすると、実質的には現行の二五%の割り増し賃金率は一四%程度にしかならないという算定もあるわけですから、それならまず二五%のところに持っていくという意味でボーナスもそれに含めるということをされてはいかがですか。
#33
○政府委員(伊藤庄平君) ボーナスの問題に入ります前に先ほどの答弁で補足させていただきますが、段階的な引き上げのスケジュールがちょっと明確でないという御指摘もございましたが、私ども段階的な引き上げを図るということにつきまして、具体的にはまず法律の施行に合わせまして法定休日の割り増し賃金率についてはこれを引き上げていきたい。また、時間外労働についての割り増し率につきましても、週四十時間労働制への移行のスケジュール等を見ながら中央労働基準審議会にその審議を、御検討をお願いしていきたい、こういうふうに考えているところでございます。
 ボーナスの問題でございますが、割り増し率につきまして、その算定基礎に入れる賃金は労働基準法によりまして通常の労働時間または労働日の賃金、これを割り増し率の算定基礎に入れると、こういうふうに規定されているところでございます。
 ただ、ボーナスの性格、実態を見ますと各企業によりましてかなり異なっておりまして、企業への功績に対する報奨的な意味合いが非常に強いもの等も含まれております。そういったことからいたしますと、通常の労働時間または労働日に対する賃金として見ていくことについては問題があるというふうに考えているところでございます。
#34
○清水澄子君 では、やはり本来なら割り増し賃金率は時間外労働五〇%、そして休日労働一〇〇%、それを明確にむしろ打ち出すべきですから、その方向で今後それを検討なさっていきますか、実行される予定はありますか。
#35
○政府委員(石岡慎太郎君) 我が国の時間外・休日労働の割り増し賃金率につきましては、時間外・休日労働の抑制、それから国際的な公正労働基準の確立などの観点から基本的には引き上げていくべきだと考えております。それで、我が国の引き上げの目標でございますが、我が国のいろいろな実態、諸外国の状況などから見まして、一応当面、時間外及び休日とも五〇%といたしております。
 具体的には、先ほど部長も申し上げましたように当面まず法定休日労働の割り増し率から引き上げてまいりたいと思います。それから、時間外の割り増し率につきましても、これは週四十時間への移行と関係がございます。週四十時間への移行が行われてきました段階で、この引き上げも検討したいと思っているところでございます。
 なお、先生、休日労働につきましては一〇〇%とすべきではないかという御指摘でございます。確かに、諸外国の実情から見ましてそういう御指摘をされるのは私もよく理解できるところでございます。この一〇〇%の問題につきましては、五〇%に引き上げましてからのさらに中長期的な課題として受けとめさせて、勉強させていただきたいと思っております。
#36
○清水澄子君 それでは、この残業労働時間の上限規制なんですが、日本ではこういう目安労働時間というものが設けられているわけですけれども、もう現在統計で百四十六時間なんて出されているわけですから、この際やはり残業時間に上限設定をすべきだと思いますけれども、それのできない事情というのは一体何でしょうか。
#37
○政府委員(石岡慎太郎君) 中央労働基準審議会におきましても、時間外労働の上限規制をすべきではないかという議論が大いに行われた次第でございます。この点についてはいろんな議論があったところでございますけれども、例えば昨年の九月に出ました労働基準法研究会の報告、これは労働法学者の研究報告でございますが、それを御紹介させていただきますと、週四十時間制の移行に関連しまして、「しばらくの間は、臨時・緊急のときに行う時間外・休日労働の必要性が増すとも考えられ、」というのが一つの理由になっております。それからまた、「我が国の労働慣行の実情にあうような上限設定が可能かどうか定かでない」という理由も挙げまして、法律的に上限を規制することにつきましては慎重な検討が必要であると、学者の方々からこういう御意見もいただいているところでございます。
 先ほど、時間外労働の上限規制がなぜできないのかというお尋ねでございますが、今御紹介しましたような理由などがそれに該当するものと考えているような次第でございます。
#38
○清水澄子君 今回、深夜労働については何らの規制措置も講じられていないわけですけれども、なぜ今回それが外されたわけですか。
#39
○政府委員(伊藤庄平君) 御指摘の問題は、割り増し率の仕組みを変えて、その引き上げに向かっての仕組みを今回法案の中に盛り込んでいく、そういった中に深夜業は対象になっていないという点であろうかと思いますが、私どもこういった割り増し率につきまして一定の改正をお願いしておりますのは、やはり時間外労働の抑制、こういったことを念頭に置いての措置でございます。
 深夜業につきましては、いわゆる交代制等のところで多く見られるわけでございますが、その時間外労働の抑制という観点とは別の、いわば夜働くことが生理的にどうかといったような問題から議論が必要な課題でございますので、この時間外労働の抑制とはまた別に、私ども別途の観点から深夜業の問題については検討をしていきたいというふうに思っているところでございます。
#40
○清水澄子君 それは一体いつなんですか。
#41
○政府委員(伊藤庄平君) この御審議をお願いしております労働基準法の改正案は、中央労働基準審議会で種々御議論を願っている過程におきましても、やはり今回の改正案に盛り込まれなかった事項、また中長期的に検討すべき事項、幾つか審議会の中でも項目が挙げられております。その中にやはり交代制の問題等も議論が出ておりますので、私どもこの法案を成立させていただき、円滑な施行に向けて努力いたしまして、そういったものが落ちついた段階で、この中央労働基準審議会でそういった問題も含めて新たな議論が始まるといいますか、お願いをしていくことになろうというふうに考えております。
#42
○清水澄子君 それは急いでいただきたいし、そしてやはり深夜労働にも割り増し賃金率をこの時間外労働とあわせてそれはぜひ決定していくべきことをお願いしたいと思います。
 特に今度は、年間の残業、時間外労働が、女性労働者の場合には一応百五十時間というのが上限が定められておるわけですけれども、やはりこの時間外労働に対しても上限規制というのが必要だと思うんですね。
 つい二、三日前にNHKの朝のテレビ番組で、ポーラ化粧品の男性の疲労度というのが統計で報告されていたんです。その疲労度の調査結果の中で、最も強いのが三十代の男性でした。それは、週実労働時間五十二時間と言っていましたから変形労働時間だと思います。そして、一日の家庭労働の時間が一時間二十分と非常に褒めるべき、少ないけれどもそれでも一時間二十分というのはまだよくて、三十代だったらそれだけ家庭とか育児に協力するんだろうと思うんですけれども、そういう時間の中で、三十代の男性が一番疲労度が高く出ているということが出ていたわけですね。ですから、やはり今日男性労働者も家庭責任というのは一緒に持っているわけですから、残業とかそれから時間外労働の上限規制をこれははっきりさせて法制化していくべきだと思うんです。ですから、その点でももう少し労働大臣、それはやってみるということをひとつお答えいただけないでしょうか。
#43
○国務大臣(村上正邦君) そうお答えしたいんですけれども、我が国の労働慣行の実情から見て、現時点ではそういうことを申し上げるところまでにはなかなか事情が許さないんではないのかなと、こういうふうに今先生のお話を聞いておりまして感じたところであります。
#44
○清水澄子君 大臣のお答えが何か今後難しいて終わると、私はそのまま続けられないんですが。
#45
○政府委員(石岡慎太郎君) 先生御指摘の三十代の男性のケースを拝聴いたしておりまして、私もやはり問題があるなと思います。
 余りにも長過ぎる労働時間、過重な残業時間、こういうものはやはり男性の労働者の疲労というものを増させている、それは決していい状況ではないと思います。男性も最近若い方々が家庭労働もやられますから、こういう状況では家庭労働もなかなかできないのではないかと思います。ということで、余りにも長い時間外労働というものは、これは抑制していかなければならないと、労働省はそういう決意を持っているところでございます。
 上限規制につきましては、大臣もお答え申し上げましたように我が国のなかなか労働慣行の実態に沿わない面もございまして、今後慎重に検討させていただくべき課題だと思っておりますが、そのかわり御承知のように残業時間につきましては、目安制度を昭和五十七年から導入してきております。これは、法的な規制力がないわけでございますけれども、かなり行政指導を通じまして効果を上げております。この目安につきましてもさらに内容を強化いたしまして、これに基づく行政指導で余りにも長過ぎる残業時間というのは極力抑えてまいりたいと思います。
 それからまた、今回割り増し賃金率の改定もお願いしているところでございます。これにつきましても、基本的には引き上げを図りながら休日労働などの抑制も行ってまいりたいと考えているような次第でございます。
#46
○清水澄子君 目安の時間が、大体三百六十時間というのは大体長過ぎますね。これだって先進国から見たら大変な数字なんです。ですから、やっぱりこれは根本的に改めるべきだと思います。
 そこで、サービス残業についてなんですけれども、労働省は今金融業界などのサービス残業の摘発に乗り出されていると思うんですけれども、それはどのような実態調査をなさったか、そしてどういう指導や摘発をされていらっしゃるのか、サービス残業を生む背景というのはどういう問題があるということを把握していらっしゃるかということをお答えいただきたいと思います。
#47
○政府委員(石岡慎太郎君) サービス残業というものがいろいろ問題になっておりますけれども、労働基準局としましては、サービス残業とは一般的に使用者が明示または黙示の指示によって労働者を時間外に従事させながら、その正確な時間外労働時間を把握しようとせず、また労働者が時間外労働時間に対する賃金の請求を行うことができにくい環境をつくる、そういうことによって時間外労働に対する賃金が支払われない、そういう状況だというふうにとらえております。これは、法規に触れる問題点も含んでおりまして大変問題だと思っているわけですが、その実態となりますと、なかなか正確にわからないところがございます。
 ということで、なかなか監督をするときにも困難が一般的にはありますが、平成三年度におきましては、労働基準監督機関がこの点もサービス残業の問題意識も持ちながら約十三万の事業場を監督いたしまして、そのうち基準法三十七条の規定に違反する、すなわち割り増し賃金を払わなかったという違反事実につきましては約六千五百事業場ございまして、全体の四・七%にこういう違反が認められましたので厳しく是正をしているところでございます。
 また、個別に申し上げますと、特に銀行に問題がございまして、既に新聞発表されておりますので申し上げますけれども、ことしの一月には北陸銀行、さらに大分信用組合などにつきましてもサービス残業といいますか、三十七条違反ということで摘発、送検をしているところでございます。
 今後とも、このサービス残業の実態把握に努め、監督を強化してその是正に努めてまいりたいと考えております。
#48
○清水澄子君 ぜひそれは徹底をしていただきたいと思います。
 次に、年次有給休暇の日数でございますけれども、今回の法改正では、最低付与日数に勤続要件を、一応六カ月に短縮されたのはとても評価できますけれども、その後やはり一年ということになっています。そして、全労働日の八割の出勤率を挙げておられるわけですけれども、年次有給休暇というのは労働者の権利ですから、ILO百三十二号条約の水準、全労働日の八割の出勤率というふうな、そういう問題はなくして、そしてみんなが最低三労働週十五日をまずとれると、そういうためには一年に一日なんといっているのは少な過ぎると思うんですね。十年たたないと二十日にならないというのは非常に遅いと思いますので、むしろ思い切って有給休暇の日数を年間二十五日ぐらいを早くできるような、そういう上限をつくっていくというお考えはありませんか。
#49
○政府委員(伊藤庄平君) 年次有給休暇につきまして、まず最初御指摘のございました八割出勤要件の見直しの御指摘でございますが、年次有給休暇の付与条件として設定されています八割の出勤要件、我が国の年次有給休暇は、勤労者の方々の心身の疲労を回復するという目的とあわせまして、同時に働いていただいていることに対する一定の報酬といいますか、そういった側面がございまして、我が国の終身雇用慣行のもとで現在のような形で年休を付与していくということが定着しているのが実情だろうと思います。
 そういうことを考えますと、この八割という出勤要件の廃止ということは現段階でなかなか難しいのではないかというふうに考えているところでございます。ただ、今回の改正におきまして、業務上の負傷や疾病による休業などに加えまして、育児休業につきましてもこれは出勤したものとみなすという改正を行っているところでございますので、ひとつ御理解をいただきたいというふうに思っております。
 それから、年休の付与日数の水準について御指摘がございました。年次有給休暇の付与日数につきましては、私ども今後の課題といたしまして、来春には中央労働基準審議会にそのあり方について検討をお願いしていきたいというふうに考えているところでございます。今御指摘ございました、例えば一年に一日ではなくて二日ずつふえていく仕組み、あるいは最低付与日数二十五日まで引き上げるような考え方、その点に関しまして御意見もいただきましたので、中央労働基準審議会で御検討を願う際に付与日数のあり方全体の議論の一環として御議論を願うことにしていきたいというふうに思っております。
#50
○清水澄子君 そこで、年休消化率が非常に少ないというのがいつも言われるんですけれども、この消化を高めるために事業主にもっと年休消化の義務を負わせていくようなそういう制度というのはつくられないですか。
#51
○政府委員(伊藤庄平君) 年休につきまして、その消化を事業主に義務づける仕組み、欧米等にはそういった例も見られるところでございますが、そういった仕組みを考える際には、やはり時季の請求といいますか、時季を事業主の方に決めさせるような仕組み、こういうものとセットになっている例が多いようでございます。我が国の年次有給休暇の仕組みは、労働者の方が基本的にはその時季を決めて年休をとる、こういった仕組みを前提にしております。
 したがいまして、その消化を事業主に義務づけるといったような形を議論していく場合には、そういった年次有給休暇制度全体の仕組みについても慎重に検討した上でないと、労働者にとって果たして望ましいものになるかどうかいろいろ懸念も出てくるという面がございますので、慎重に検討していく必要があろうかというふうに考えておるところでございます。
#52
○清水澄子君 その場合、ILO百三十二号条約では、病気とか労働不能のときのそういう休暇というものを年次有給休暇に含めるべきではないということが明確になっているんですから、そういう考えはもう取り入れていいんじゃないですか。そして、病気休暇とか看護休暇という新しい法律というものをぜひ私はつくるべきだし、このことは本当につくるということをぜひ今後検討課題に、これは具体的課題にしていただきたいと思うんです。
 特に、女性の場合、最近連合ユニオンが調査をしています。年休の取得目標というのは、一つは自分の病気なんですけれども、それが半数あるんですが、あとはほとんど子供の教育とか、学校の行事に行くとか、それから家族の介護とか、そういうふうな自分の休養とか疲労回復にはなかなか使えない、そういう実態が出ているわけです。ですから、やはり病気休暇とか看護休暇というような新しい法律というものをつくっていくべきだと思いますが、その点についてお答えください。
#53
○政府委員(石岡慎太郎君) 病気休暇制度や介護休業制度の法制化につきましては、御指摘のとおり確かに労働省が今後検討していくべき課題であると思っております。
 ただ、現状を見ますと、この両制度の普及状況は必ずしも十分ではございません。一割ないし二割程度で実施率がとどまっている状況でございますので、労働省としましては、まずこの両制度の普及促進も政策として大いに進めていかなければならないと考えております。
#54
○清水澄子君 今回、季節出稼ぎ労働者、いわゆる短期雇用労働者の有給休暇の付与の面では改善された点は私は評価いたします。しかし、パートの場合、例えば疑似パートと言われている常用並みに働いている人たちが現実にあるわけですね。しかし、この人たちは一年契約という表向きは一年の間に対象にならないということになりますので、そういう人たちへの付与日数を常用雇用の労働者と同じように扱っていく必要があるんじゃないか。
 もう一つは、パートは今改善なさったんだけれども、週四日間働いている人をパートとして、週四日の場合には十一年目に初めて十二日という基準になっていますね。そうすると、今週休二日制ですから週五日が常用労働者でしょう。そうして、常用労働者は十年後には二十日になるわけですから、一日違っただけで半分になってしまうようなパートの人の有給休暇の付与日数というのはもう一度再検討する必要があると思うんですが、これは非常に不公平だと思いますので、その点はぜひ改善をしていただきたいと思います。
#55
○政府委員(伊藤庄平君) パートの年休についてでございますが、最初にお尋ねのございましたパート労働者のうちいわゆる疑似パートと申しますか、実質的に常用労働者同様継続勤務している者についての扱いでございます。私どもそういった方々につきましては、いわゆるバートと称されている場合であっても、同一事業主のもとで実質的に労働関係が継続している限り通常の常用労働者と同様の扱いをして年次有給休暇が付与されると、こういうことでなくてはいけないという考えをとっておりますし、またもし具体的に問題がある場合には、そういった考えに沿って適切に指導していきたいというふうに思っております。
 それから、もう一点でございますが、いわゆる所定労働日数が四日とか、疑似パートの方と違って短いパートの方の場合、年次有給休暇の増加日数のテンポが非常に遅いという御指摘でございますが、やはり前回の六十二年の改正の際に、常用労働者と所定労働日数による比例配分の形で、新たにパート労働者の方にも年次有給休暇が認められることになったわけでございます。目下私どもそういったあれに則しまして、パート労働者にも適切に年休が確保されるよう努力しているところでございますが、これを常用労働者と同じようなテンポで引き上げていくという問題につきましては、年次有給休暇の、先ほども御指摘ございました勤続年数ごとに増加していく仕組み、これ自体のあり方とも関連する、非常に年次有給休暇のあり方の基本にも絡むかと思いますので、なかなか現段階におきまして御指摘のような改善をとることについては慎重な検討が必要ではないかというふうに思っておるところでございます。
#56
○清水澄子君 でも、四日働いた人と五日働いた人が半分も違うような、そういうものはやはり一度再検討していただきたいと思います。
 次に、これもぜひ労働大臣にひとつお伺いしたいんですが、本来私たち人間は毎日二十四時間の範囲の中で暮らしているわけですから、その中での労働時間というのは、これは長い間二十四時間を三つに区分されてきた原則があります。睡眠八時間、私的な生活八時間、そして労働八時間という、これは長い間これが労働者の労働時間の取り組みの中で確立してきたものなんです。そういう場合に、八時間を超えて毎日勤務があるということになると、それはどこの時間を削っているかというと、当然やはり疲労を回復しなきゃならない私的な休養時間とか教養時間のところを削って暮らしているということになるわけです。
 特に、今首都圏なんかは、通勤時間というのがとても長いわけです。これは労働時間に入りませんけれども、もう片道最低一時間はかかります。往復二時間というのは大体普通ですね。ですから、それらは全部今私的な時間に食い込んでいるわけなんです。ですから、労働時間の短縮を言う場合には一日当たりの労働時間の短縮が原則だと、こういうふうに認識をすべきだと私は思うんですけれども、その点について労働大臣はそういう認識をされておられるかどうかということについてお尋ねいたします。
#57
○政府委員(石岡慎太郎君) 先生の御指摘のとおり、一日八時間という労働は人間の暮らしの原則であるというふうに思っております。したがいまして、変形労働時間制なども制度として持っておりますし、またこれを改善していこうとも考えておりますけれども、やはり一日八時間という原則を念頭に置きながら、これを上回る場合も上限規制を行うなど適切な歯どめ策がそこには必要ではないかと考えておるところでございます。
 また、通勤時間の問題について御指摘がございました。確かに、特に首都圏で働いている方々は、一時間、二時間という通勤時間をかけて出勤されるわけでございます。出勤された途端にもう疲労を感じておられるという、そういう方が非常に多いと思います。この通勤時間をできるだけ短縮するといいますか、あるいはまた過密な状態で電車に乗って通勤するという状態を改善するために、先般労働大臣も時差出勤の提唱などを含む通勤対策をぜひ進めていかなければならないということを表明されまして、いろいろ今検討しているところでございます。
 以上のように、一日八時間という労働が原則であるということを念頭に置いて、通勤時間にも目を配りながら労働時間対策に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
#58
○清水澄子君 今回、一年単位の変形制という労働時間制が取り入れられたわけです。ですから、その場合も今申し上げ御答弁いただきましたけれども、一日単位の八時間というのが人間の暮らしの原則だというお考えのもとでこれを取り入れられたのであれば、変形制というのは本来これは例外的なものではないんでしょうか。むしろ、この通常の一年変形制が原則になるというようなことはないと思うんですが、その点はどのようなお考えですか。
#59
○政府委員(石岡慎太郎君) 一年の変形労働時間制につきましては、年間単位での休日増が図られ、その結果時短につながるといったところが対象になるわけです。もう少し言いかえさせていただきますと、そういうところにおきましてはあらかじめ何月何日には休日にするということが特定できなければならないわけです。そうでないところでは一年の変形労働時間制というのは採用されないということになりますので、あらゆる企業で無原則に一年の変形労働時間制が行われるということはあり得ないと御理解いただいて結構かと思います。
 また、先ほどもお答えいたしましたように一日八時間労働は人間の暮らしの原則であります。したがいまして、現在も三カ月の変形労働時間制につきましては、一日十時間以下という上限規制が定められております。また、現在の三カ月労働につきましては、一週五十二時間という上限規制もあわせて定められているところでございます。
 一年の変形労働時間制を導入するに当たりましては、この三カ月の変形時間制の上限規制をさらに厳しくしようということが審議会で決まっておりまして、具体的には一週間の五十二時間を四十八時間にしたいと考えております。それからまた、一日十時間の制限につきましては、今明言ができませんけれども、これを縮める方向で審議会で検討してもらう、そういう考え方でございます。
#60
○清水澄子君 週四十八時間というのはわかったんですけれども、一日十時間というのはどの程度まで、これは八時間が原則ですから、一日八時間の上限というのをぜひこれは厳しくやっていただきたいと思います。
 そして、週四十八時間というのは、これはもう当然確認されると思うんですけれども、連続労働日数も、きちんと六日のうちに一日必ず休日はあるということの中で、一日という単位をここで明確にしていただきたいと思います。
#61
○政府委員(石岡慎太郎君) 一年の変形制につきましては、一週間に一日休日が与えられなければならないという制約をつけてまいりたいと考えております。
 そこで、お尋ねの一日の十時間の上限規制をどの程度短縮するかでございますが、これは先ほど申し上げましたように審議会で短縮の方向で検討するということが取り決められておりますので、その方向で審議会で法案が成立後検討させていただきたいと考えております。
#62
○清水澄子君 あえて、原則はひとつお守りいただきたいとお願いしておきます。
 この一年単位の変形労働時間制の導入を図ろうとする業界というのは、労働省としてはどういうところからの要求が来ているか、またどういうところの企業、業界が導入を図ろうとしているのか、何かつかんでおられるでしょうか。
 と同時に、一年単位の変形労働時間ですと、途中で入社したりあるいは退社したときは、その労働時間そして賃金計算というのはどういうふうになっていくのか。一日十時間だったのを短くするわけですが、例えば一日八時間になったときに八時間の後残業が加わったとき、それは当然残業の計算というのは一日八時間ならいいんですけれども、それが九時間とか十時間になったとき、その後また残業があるわけですね。そうすると、一日本来八時間のものが変形労働時間で九時間まではいいというと、一時間分は残業手当を払わなくていいわけになると思うんですが、そういう残業手当の計算というのはどういうふうになりますか。
#63
○政府委員(伊藤庄平君) 一年の変形労働時間制につきましてどのような業界から要望があったかという点でございますが、これにつきましてはいろんな業界が関心を持っておりまして、特に特定業界ということはなかったかと思っております。
 現実に、相当のところで年間休日の労使協定を決めたり、あるいは年間の休日カレンダーをつくって年間単位での休日管理をやっているところ等がございまして、そういったシステムの中で週四十時間労働制を実現していきたいという割合実務的な関心は各業界持っておられたようでございますが、特にどの業界ということはございません。
 それから、一年の変形労働時間制を採用した場合に、途中入社あるいは途中退社した場合にどういうふうになるかということでございますが、この変形労働時間制の法律の要件、仕組みといたしまして、その変形期間の最初からいて変形期間よりも雇用期間が短く決められているような者はこの対象にはならない、こいいう仕組みをとっております。したがいまして、まず変形期間の途中から入社した者につきましては、既にもし変形労働時間制が定められていたとしても適用はできない、こういう仕組みになっております。
 それから、変形期間の途中で退社した場合につきましては、その時点でもちろん変形制の適用を受けなくなるわけでございますが、それまでの労働につきまして変形制の適用のなかった場合と比べまして一定の時間外手当等についての精算の問題が出てくる、こういうことになります。
 それから、時間外労働の計算の問題でございますが、これは現行の三カ月の変形労働時間制について行っている時間外労働の計算方法と同様の仕組みを考えております。
 少々技術的なものになるわけでございますが、三段階の計算をすることになりまして、まず一日単位でその変形の対象になっている期間について御指摘のありましたようにある日が九時間ということに決められていたとすれば、九時間を超えて労働した部分がいわば所定外労働時間を超えたものとして時間外手当の計算の基礎になります。それがもし八時間ということであれば、変形されていなかった日であれば八時間を超えたところから残業手当が計算される。日単位で言えばそういう仕組みで計算する。
 それを週単位でもやはり見てまいりまして、週単位でも四十時間、これは要件といたしまして全体で平均四十時間ということになっておるわけでございますが、ある週につきましては変形の対象期間として組み込まれていて、四十時間を例えば四十二時間というようなことで協定されている週であるとすれば、四十二時間を週単位で超えていた部分については時間外手当を払う。それから、四十時間というふうに法定どおりの週であれば、四十時間を超えたところから時間外手当を支払わなければならない。
 さらに、一年の変形労働時間制につきましては、まず年間での休日をあらかじめセットし、それから一定期間ごとに労働時間の総枠も労使協定しなくちゃいかぬ、こういう仕組みを考えております。あらかじめそういうものが予定されているところでしか採用できない仕組みになっておりますが、年間単位でもそういった所定労働時間の総枠を超えたかどうかもチェックする必要が出てまいります。年間単位でも、所定労働時間を超えていればその単位でまた時間外手当を精算しなくちゃいかぬ。こういう三段階の仕組みになっておりまして、これを使うに際しましては、かなりの事務処理能力が要求される面はございます。
#64
○清水澄子君 この変形労働時間制に女性とか、いわゆる労働基準法施行規則の第十二条の六ですね。いわゆる事業主が配慮しなければならない十八歳未満の労働者とか、妊産婦、育児、介護、教育関係者への配慮規定ですね。このところは一年単位の変形労働時間制の場合、そのままこれが導入されるわけですか。
#65
○政府委員(石岡慎太郎君) 先生御指摘のとおり、現在労働基準法施行規則第十二条の六におきましては、使用者は育児などを行う者については、「これらの者が育児等に必要な時間を確保できるような配慮をするように努めなければならない。」という規定が置かれているわけでございます。これは、昭和六十二年のさきの労働基準法の改正の際に、国会の指摘も受けまして設けられた規定でございます。したがいまして、その後に育児休業法ができましたけれども、この育児休業法の趣旨にも合致する、そういう規定であると考えております。
 お尋ねの一年の変形労働時間制がもし認められる場合におきましては、この規定は当然のことでございますが、一年の変形制につきましても適用してまいりたいと考えております。
#66
○清水澄子君 私自身は一年の変形労働時間制というのは賛成をしていないんですけれども、それがどうしても通るときには厳しいやはり上限規制とか、特にハンディキャップを持つ人たち、それからそういう女性とか妊婦とかいろんな人たちの――一年単位の変形労働時間制というのはどちらかといえば働く人のメリットというよりも経営者の側のメリットが強いと思うんですね。ですから、そういうところについては本当に強力な上限規制なり、それからいろんな事業主の配慮規定というものを明確にしておいていただきたいと思います。
 次に、私はこのことをずっとこうして調べていくうちに、今回の労基法改正案というのが、実は昨年の六月にこの労働委員会で通りました時短促進臨時措置法との関係で実にうまくできちゃっているんだなというのが気がついたんです。実にうまくというのは、労基法では本当は一年の変形労働時間制は労基署に届け出の義務があると思うんです。しかし、時短促進の臨時措置法とセットになっているために、今度一年の変形労働時間制になってもこれは労使協定の届け出をしなくてもいいということになってしまうわけです。
 ですから、労基法の届け出規定がしり抜けになってしまうという意味では、労働基準監督行政というのは一体何なんだろうか。また、ここで実にこの法律というのは見えないんです。去年ここで質問したので覚えていたんですが、本当にそこがよくわかりません。ですから、あれはたしか五年間の時限立法だったと思うんですけれども、そうすると今後一年の変形労働時間制ができても五年間は報告しなくていいわけですね。そういう意味で、これは時限立法であって、絶対に延長しないということは約束できますか。
#67
○政府委員(石岡慎太郎君) 時短促進法では、労働時間短縮推進委員会を設ける制度を規定いたしております。この企業内における労働時間短縮推進委員会におきまして、委員全員が合意をした決議につきましては御指摘のとおり届け出の必要性はないわけでございます。
 しかしながら、こういう委員会において、委員全員の合意によりなされた決議につきましては、十分その基本的な問題も議論した上での合意でありましょうから、制度乱用のおそれのあるようなケースはないんではないかと、基本的にはそう考えます。しかしながら、そういう御懸念も表明されているところでございますので、労働者の申告、定期監督、あるいはまた就業規則の届け出などによりまして、例えば一年変形制の導入につきまして不審な点がありましたときには、十分に監督機関がこれについてチェックをさせていただきたいと思っているところでございます。
 それから、もう一つお尋ねでございましたが、労働時間短縮促進法は確かに五年間の時限立法でございます。これを延長するかどうかということでございますが、これも延長するかどうかはまた一年の変形制とは別の観点からいろいろ検討されなければならない問題であろうかと思います。今の時点で延長するとは申し上げられませんけれども、そういう我が国の労働時間の推移を見まして審議会でもよく御議論を賜りまして、その審議会の方向などに沿って延長するかしないかも決めてまいりたいと思っております。
#68
○清水澄子君 でも、それは五年間の時限立法ですと提案してきたんですから、五年間で打ち切る予定ですと、それが本来の答弁じゃないんですか、本当ならば。そして、その五年後のときにどうというのは、これはそのときまた討議しなきゃならないんですが、今から延長するかどうかは今後検討というのは、何か初めからやっぱりそこを延長するつもりでつくっているんじゃないかというのはその後にずっとわかっていくんですけれどもね。
 ですから、この辺が延長されたら一年間という変形労働時間制というのは大変長い、一年間といったらほとんど三カ月とか一カ月というのと違うわけですから、それがもうずっと届けなくていいというのがまた延長されていくというのは大変問題があると思うんです。今回のこの変形労働時間制導入も、だれがこれを一番要求したかというのは、私は働く人からは要求がそんなに出ていない、これは企業の側から要求が出ていたと思います。
 それは、現在いろんな変形制ありますが、三カ月単位は一番使いにくいというのを随分企業側は言っていたわけです。これは規制があると。そして今一番多く使われているのは、一カ月単位の変形労働時間制だと思います。これは千人規模の製造業では三〇%使っています。これは何にも届けなくていい部分だけは使っている。それが今度一年単位でこれが使えるようになるわけですから、非常に企業にとって私はメリットだと思います。ですから、今後これが拡大されるんじゃないかという、そういう意味でこれは私は乱用のおそれが非常にあるということを感じているわけです。
 特に、それが昨年の時短促進の臨時措置法との関係でセットになっているというところが非常に不可解ですし、あいまいだし、問題があると思いますので、その点についてはあくまでもこれは五年間の時限立法という趣旨で提案されてきたわけですから、それが一緒にセットになっていること自体に私は問題があると思うんですけれども、それを延長ということは、今からそういう問題意識ではそれは訂正していただきたいと私は思います。
 そして同時に、届けないでいいという場合に、結局労働時間短縮推進委員会の決議があればいいということになるわけですね。その場合に、私は前のときも質問いたしました。そうすると、労使で決議というんですが、使はもう当然はっきりしていますけれども、労働側の過半数代表者の選任というのが非常にいつも、これが企業の労務管理者がなっているというのが統計上も出ているわけです。ですから、過半数労働代表の選任基準というのをより明確にしていただきたいと思いますが、そのことについてのお考えをお示しいただきたいと思います。
#69
○政府委員(石岡慎太郎君) 先ほど、時短促進法の延長の問題につきましていろいろ付言いたしましたが、改めてこの労働時間短縮促進法は五年間の時限立法であるということを申し上げておきます。
 それから、一年の変形制についての時短推進委員会との関連の問題でございますが、先ほど申し上げましたとおりこの委員会で合意がなされました場合には、やはり労働側もそれでいいということでお認めになったわけでございますし、使用者側もそれでいいということでございますので、労使がお決めになったことですから、基本的にはその決議には問題はないと考えておりますけれども、なお乱用が行われないように制度的な歯どめをかけるとともに、監督機関が絶えず目をこれについては配ってまいりたいと考えております。
 過半数労働代表の問題につきましては、部長からお答えを申し上げます。
#70
○政府委員(伊藤庄平君) 時短促進法に基づきます時短推進委員会の設定に当たりまして、労働者代表の選任等については、適正な民主的な手続が行われるように私ども通達等でも指示をし、その指導に当たっておるわけでございます。
 とりわけ、時短推進委員会は、この一年の変形制の場合もそういった決議ができることはもとよりでございますが、労働時間短縮のための企業内でのいろんな施策全般についていろいろ労使話し合い、例えば年次有給休暇をとりやすくできる仕組み、あるいは計画付与制度をどうやって活用するかとかいろんなことを話し合っていただいて、しかも労使全員一致で決議をしていただく。その場合には、例えば届け出を要する協定等にかわってその決議を用いることができると、こういう仕組みにしているものでございますので、非常に私ども大きな働きを期待している制度でございます。
 そういった趣旨のものであるということをぜひ御理解をいただきたいと思いますが、そういった大切なものであるだけに、そこに選ばれてくる労働者の代表の選任につきましては適切に行われるように指導したいと思いますし、またついこの前労働基準法研究会からそういった労働者代表の選任のあり方について御指摘もございましたので、今後の検討課題として私ども受けとめ、中央労働基準審議会でも御検討を願っていく、こういう考えでいるところでございます。
#71
○清水澄子君 その臨時措置法との関連で、今回は労働時間短縮支援センターというところが非常にボリュームのある、内容は余り大したことはないようなんですが、それが強く出ている法律ですね。それは結局五年間の時限立法ではないんじゃないか。これだけいろんな人をどんどん採用したり事務所をつくっていけば、五年後にはやめられなくなるんじゃないかなと感じられたんです。やはりそれも労災保険でやられるわけですが、その点についても本来こういう労働時間短縮支援センターというのは、労働基準監督行政としてやるべきものを代行しているといいますか、何か労働基準監督行政の民活のような疑いを持ちます。
 そして、そこには当然監督経験のある人という意味では天下り、表現が悪ければ、でもやはり天下りの場所になるわけですけれども、労働時間行政をこういうやり方でやるのは問題だと思うんです。これは、労働基準監督官をもっとふやして、そして本来の労働基準監督行政としてやるべきだと思うんです。それが、さっきの臨時措置法との関連で支援センターが出ているわけですけれども、本来はやはり基準監督官をふやして行政でやるべきものというお考えはございませんか。
#72
○政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のございましたように、労働時間の短縮はいろんな角度から総合的に進めなくてはいけない施策でございます。
 とりわけ、今御審議願っております労働基準法の改正につきましても、成立させていただきましたならばそれの周知徹底、さらにはその遵守等について指導をしていかなくちゃいけません。この辺は、まさに労働基準監督官がその権限等も活用しながら行うべきものだろうというふうに考えております。したがいまして、私ども今後とも労働基準監督官の増員など労働基準行政の体制整備に努めていかなくちゃいかぬというふうに考えております。
 ただ、今回の労働時間短縮臨時措置法の改正の中でお願いしております時短支援センターの指定につきましては、これは労働時間の短縮を進めるに当たりまして、やはりその企業内でどういうふうに省力化あるいは業務の効率化を進めたらいいか、また労務管理あるいは人員配置なんかをどういうふうに直したらいいかという具体的な経営問題と密着したノウハウを提供したり開発したりしながら進める分野もある。そういったことをこの時短支援センターで中心になって行っていただこう、そういったまさに経営問題と密着した具体的な労働時間短縮のためのノウハウの提供と、それを活用して時短に成功した場合に新たに創設いたします助成金をそこを通じて支給する、こういう形で既にそういった方面の専門的知識、ノウハウの蓄えを持った民間団体を活用して行わせることが適当ではないか、こういうふうに考えているもめでございます。
 そこは、決して本来の労働基準行政の職務をそちらへ移すとか、軽減させるためにやるというようなものではなくて、労働時間短縮をまさに全体として推進体制を厚くするために行うものであるというふうにぜひ御理解をいただきたいと思っております。
#73
○清水澄子君 疑問がいっぱいあるんですけれども、次に移ります。
 昨日、労働大臣は本会議での答弁の中で、一年単位の変形労働時間は女性の労働に影響を与えることはないと確信を持って言い切っておられたわけですけれども、それは女性は決してそうだと思わないのです。余りにも実態を御存じないなという実感をきのうは強く受けました。それは、さっきから私が一日単位の労働時間ということを非常にしつこく申し上げているのは、私たちは日々暮らしているんです。一年トータルで暮らそうということはできないんです。日々子育てをして、日々家庭生活をやっているわけです。その上に、最近は介護という問題も加わってきているわけです。その場合、これは全部女性ではないんですが、しかしどちらかといえば男性よりも家庭責任というのはやっぱり女性にまだ負担が多くかかっております。
 そういう中で、今女性たちが一番今度の労基法の改正で心配しているのは、一年単位の変形労働時間制で本当に私たち女性は今後働き続けられるかということにはとっても大きな不安があるわけなんです。そんなことは脅かしだろうと思われるかもしれません。また、同僚の皆さん方がおっしゃると思いますけれども、現にある会社では一日たった三十分の延長になった変形労働時間制の会社で、子育て中の女性はほとんど非常勤にくらがえしてしまったんです。それは、たった三十分というけれども、それが一週間だけというならいいですけれども、ずっと続いていくということになるとそれが連続した日常の就業形態になるわけです。そうすると、保育所の関係もいろいろなかなかうまく合わないわけです。生活のリズムに合わせることができなくなっている。そういうふうな問題があちこちで今起きてきているわけです。
 労働省は、これまで三カ月の変形労働時間というのは一日十時間で、そして週五十二時間だったし、これを今度は縮小するんだから大丈夫だ、こういうふうにおっしゃるんですけれども、さっきも申し上げたように例えば変形労働時間制がずっと一年間の範囲で続くとなれば、女性の場合はそれが三カ月なんて続いたら家庭生活とうまくできない、特に子供を育てる時期というのはもう決まっているわけです。そうすると、一日の拘束時間が例えば九時間であっても、さっき申し上げたように、首都圏だったら通勤時間がそれに対して少なくとも二時間はかかります。そうすると、毎日一時間というもの、それに残業でも二時間入ったら十三時間というものが労働の時間になれば、これは決して家事、育児とか、そういう家庭責任と調和して働くということはとてもこれは困難になるわけです。
 まして、自分の連れ合いの夫も変形労働時間制となると、これは両方がそういう形になってなかなかやり繰りができなくなってくるということの中で、前の八七年の労基法改正のときも女性の時間外労働規制が緩和されたり、深夜業の規制が緩和された。そして、一方では男性並みに働けるエリート女性の拡大という、そういう道が開かれたんですけれども、しかし大多数の女性はそういうことと引きかえに短期的な労働者の方の拡大の方につながっていく。これを私たちは、女性労働が二極分解されていく、そして女性は縁辺労働力にされていくんだという不満と警戒を持っているわけなんです。これは事実なんです。
 労働大臣、連合ユニオンが調査した三十五歳以上の女性たちの最も高い要求というのは、一日当たりの労働時間を短縮してほしいということなんです。また、労働省婦人局が調査された統計でも、妊婦が出産によって退職した数というのは、働いている妊産婦全体の三一・二%もやめているというこの事実というのは、それは子供を産み育てながら働くということがいかに困難かということを証明していると思うわけです。
 ですから、労働大臣が楽観的に何にも影響ありませんよなんということを言われると、私は日本じゅうの女性が怒ると思いますし、これから本当の意味で男女が共に家庭責任を持ちながら人間らしい働き方をしていく、それが可能な時間短縮をみんなが求めているわけですね。ですから、企業の側にメリットのある一年単位の変形労働時間制というものは、人間の生活からはこれは合理性がないわけですから、一年単位というものは例外的なものという位置づけに立って、根本的な是正の方向、または検討を加えていただきたいというふうに私は考えるわけですが、労働大臣いかがですか。
#74
○政府委員(伊藤庄平君) ちょっと事務的な点について御説明申し上げさせていただきたいと思います。
 一日八時間ということを基本にした労働時間のあり方、こういったものが必要ではないか、一年の変形制についてもそういった観点からというお話でございますが、一年の変形制については、再三申し上げておりますように一日及び一週の限度時間を縮小するということで対応していきたいというふうに思っております。
 ただ、女性の方々について、やはり八時間というものが少しでも動いた場合にいろいろ不安がある、こういう問題でございます。その点につきましても、やはりこの三カ月の単位の変形制について設けております育児や介護に当たる女性の方々に対してこの制度を適用する場合の配慮義務、こういったことを一年制の変形制にも適用を広げ、労使でこの制度を協定していただく際にもそういったことについて十分踏まえた対応がなされるように、また私どもそういった労使協定の届け出を受けるに際しましては、そういった点の配慮がどのようになされているかも十分に留意しながら届け出を、協定を受理するとか、そういった配慮をしていきたい、こういうふうに思っております。
 そういったことを通じまして、この一年の変形労働時間制がもともと本来のねらいとしております一年単位で休日をふやし、休日を確保する、そういったことを通じて働くときは働き、あとは思い切って休む、またリフレッシュしていただく、家庭におけるコミュニケーションを深めていただくとか、そういう機会がふえていくような、そういった形としてこの一年変形制が機能していくようにいろんな配慮をしていきたいというふうに思っております。
#75
○清水澄子君 これは申し上げるまでもないんですけれども、ILO百六十五号の勧告とか百五十六号条約とか、これは家族的責任を有する男女労働者の機会均等及び均等待遇に関するという、そういう条約が採択をされているわけです。これらは、いわば戦後四十年間にわたって国連で専門機関が男女平等について真剣に話し合ってきた結果、国際レベルにおいて理念とかどういう方策が必要かということが提起された今日最も包括的な到達点を示す内容だと私は思うわけです。
 ですから、これは当然今後私たちは批准を要求しますし、そして労働省は当然批准のためにそれが満たされる要件を準備すべきだと思います。この条約、特に勧告ですね、百六十五号勧告、そこには家族的責任を持つそういう労働者に対して、これは男女ともにですけれども、特に留意すべき点として、一日当たりの労働時間の漸進的な短縮及び時間外労働の短縮をしなければならない、そして労働の計画、休息期間及び休日に関する一層弾力的な措置をしなきゃいけない。こういう労働条件を決めるときには、やはり家庭生活支援のいろんな他の政策とあわせて、そういう家族的責任を持つ労働者の特別のニーズを考慮すべきだということがここに提起されていて、これが今これこそ世界的に女性たち含めて各国の政策として実行に移されているときなんです。
 ですから、そういうことを考えますと、私はこれからの労働行政というのは、やはりそういう内容が満たされていく、そういう中で初めて労働というのが人間らしい労働になる。そして、それがみんなの働く機会を与えて参画ができるようにして、働くということが人々の基本的人権として確立されていくという、新しいというのか、本来それが本当なんですけれども、今まで日本は非常におくれていたんですが、これを急いで私はそういう方向に持っていくべきだと思うんです。
 そういう意味で、労働大臣は大変意気に燃えていらっしゃるわけですけれども、ぜひこれからの労働行政のあり方、それから労働政策のあり方、それから労働法規のあり方というものについて今後労働大臣は、今現在いろんな働く女性にとっては相矛盾する政策が出ているわけですけれども、そういうものを正していく、そういう御決意というのはおありですか、お伺いしたいと思います。
#76
○国務大臣(村上正邦君) 女性のお立場につきまして静かに拝聴させていただきまして、大いに心を打たれるところがございました。
 そうしたことから、人間らしい暮らしを進める労働行政はどうあるべきかと、こういうお尋ねでございますが、先ほど最初に申し上げましたように今まさに果実の恩恵を、私たち現代生活している者といたしましてその恩恵をいただくわけであります。要するに文化的、知的向上、また家族とのコミュニケーションや働く人自身の健康の維持、特に過労死などということはあってはならないことだと、こう思っております。そしてよりよい仕事を能率的にやっていく、こういう一つの基本政策を持って進めてまいりたい、このように思っておるところであります。
#77
○清水澄子君 時間が少しありますから、もう一つだけ聞かせていただきます。
 実は、これはこの間の三月二十六日のときの質問で、私はここでJR西日本の勤務制度について、待ち時間のことを休憩時間として、表向きの労働時間として、待ち時間というものが結局カットされているということで質問をしたんです。このことはその後、今度はJRの中で九州の方の会社はむしろはっきり待ち合わせ時間というのを労働時間に認めて、拘束時間ということを認めて、そして拘束手当としてその分を払うという、そういうことがあったという報告を聞いているわけです。
 組合同士のいろんな問題はあるのかもしれませんけれども、そういう拘束された長時間の休憩とか、そういうものをどう見るかということで、私はそこで提起したんですが、この問題は何もJRだけに限っておりません。今いろんなところに時間短縮ということの中であらわれてきている例があるわけです。
 例えば、通信業務で働く人の問題です。ことしの三月から週四十時間という変則労働に入ってきているんですが、夕方五時に出勤をして夜中一時半まで働く。そうすると、それは八時間三十分働くことになるんですが、その間に休憩は四十五分あるんです。そして、その後二時間が自由時間になるんです、真夜中の二時間が。そして、朝三時半までの間が二時間自由時間、その間は自由時間になりますから賃金カットされる。そして、午前三時半からその日の朝の九時半まで六時間働く。従来なら、これは仮眠時間として賃金を受けていたんですが、今度はそれは全部自由時間、休憩になるんです。こういう場合、深夜に、そんな時間にどこかへ自由に行きなさいと、真夜中の一時半から三時半までどこにも行けないわけです。だから、非常に変な時間短縮なんです。前日から来ると八時間半になるんですが、朝三時半から九時半までは六時間ですから、二つ足すと七時間十五分の時間短縮になるんですね、両方平均すれば。ですから、こういう本来の時間短縮じゃない方向での事例があちこちに今出てきているわけです。
 ですから、これは労基法研究会報告でも、長時間の休憩時間を設定することによって拘束時間が非常に長くなるというケースとか、深夜に及ぶ業種についていろんな問題が起きていると、それについては適切な指導を行うべきであるという報告もされているわけですから、私はここでこういう変則労働が拡大しないように長時間の休憩や深夜に及ぶ拘束時間については調査をなさって、そしてそういう扱いについてはやはりちゃんと規制する、またはガイドラインを出すと、そういうふうなことをぜひお願いしたいと思いますが、いかがでございますか。
#78
○政府委員(伊藤庄平君) 今御指摘のございました、長時間の休憩時間などを設定することによって結果的に拘束時間が非常に長くなる。非常に産業活動、企業活動が複雑化している中でそういった問題も私ども幾つか聞いておるところでございます。
 御指摘のございましたように、その問題については法案の御議論を願っていた中央労働基準審議会の中でもいろいろ意見がありまして、過度の長時間休憩による長時間拘束については何らかのガイドラインの作成も含めて適切な指導を行うべきであると、こういう御指摘もいただいているところでございます。
 従来は、自動車運転者についてそういった拘束時間の上限を決めたりして現に今指導しておるわけでございますが、今御指摘のあったような分野を含めて、そのほかサービス業等でもそういったお話を聞くことがございますので、私どもそういった分野での情報収集等も含めまして実態に応じた必要な対策についての検討を行いたいというふうに思っております。
#79
○清水澄子君 終わります。
#80
○委員長(田辺哲夫君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時三分休憩
     ――――◇―――――
   午後一時三分開会
#81
○委員長(田辺哲夫君) ただいまから労働委員会を再開いたします。
 午前に引き続き、労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#82
○大木浩君 この委員会で今取り上げております法律案でございますけれども、労働基準法ないしは時短の関連の法律というのは、これは非常に長い歴史がありまして、今回非常に明確な労働時間の短縮という方向へ向けての大きな第一歩、第一歩といいますかいろいろあったわけですけれども、今回改めて大きな一歩を踏み出されたというふうに理解をしておるわけでございます。そして、私どもも政府・与党という立場でいろいろな勉強には携わってきておりますから、基本的にはそういった意味で非常に前向きの法案であるというふうに受けとめて、何とかしてこれを成立させたいと思っておるわけでございます。
 ただ、これは非常に長い長い歴史があるわけですし、それから私は今の労働問題というのを考えてみますと、労働大臣が国としての政治の中で外交、防衛あるいは教育、労働といったようなものが非常に大事だとおっしゃった。それはそのとおりだと思うんです。特に、むしろ労働というふうに狭く考えずに、日本の社会生活というものが大きく変化しているわけですから、それを反映して労働問題というのも変化をしておる、そういうふうに理解しております。だから、教育とか労働とか並立的にみんな重要だというよりも、むしろ相互に関連してこれからどういうふうに日本の発展のために考えていくかということから私どもはこの労働問題も考えなきゃいかぬのじゃないかというふうに理解をするわけでございます。
 先日、渋谷の方へ行きまして、労働省に御案内いただきましてレディス・ハローワークを見せていただきました。大変にレディスを対象としてそういった雰囲気もつくってなかなか繁盛していました。なかなかよかったと思うんですけれども、あそこへ来ておられる方を見ましても、急にぽっと来たというよりは、今まで一応就職していろいろ経験を持ったんだけれども、またいろいろ考えて必ずしも満足でないんでもう一遍新しいことをやりたい、転換したいと、こういう方が私はかなりおられたように思います。これが女性だけのことかどうか知りませんけれども、いろんな年齢層の方が、かなり若い方も含めて、ですからかなり仕事をやり始めてまだ間もない方が二、三年というところで一遍考えてということであります。
 つまり、今の労働市場という言葉がいいのかどうかわかりませんけれども、労働というものが非常に流動性が多いということを感じております。そういった中で、これは日本の労働というのは戦後の四十何年の発展を見ますと、ある意味においては労使関係が非常に上手に運営されてきたというようなこともありますし、またその中で日本型の雇用制度というようなものが発展してきた。だから、全体としては非常にいい、よく育ってきたというふうに私は考えますけれども、同時に今の社会体制が非常に変わってきていますから、労働雇用制度の方も今までのような例えば終身雇用だとか年功序列だとか、そういったものも相当変わってきているんじゃないか、そういうふうに思うわけであります。
 そこで、今回こういう法案を出されましたけれども、現在特に若年層を含めて労働の流動性というものが増しておるという感じを受けますので、そういったものは労働省事務方の方で結構ですけれども、どういうふうに受けとめておられるのか、そういったものを考えながらこれから労働行政を展開していかれるのか、その辺の大まかな話で結構ですから、ひとつ基本的な認識ということをちょっと示していただきたいと思います。
#83
○説明員(松原東樹君) 御案内のように、我が国の雇用慣行は、企業が長期的視点に立ちまして人材を育成、処遇していくといったことを特徴としておるところでございますが、御指摘のように近年若年者を中心といたしまして転職志向の強まりなど、変化の動きが見られるところでございます。
 例えば、新規学卒者の就職後三年間の離職率を見てみますと、高等学校卒業生の場合で約半数近くが三年間で離職しているというような状況になっておりまして、それも近年さらに増加するような傾向にあるところでございます。ただ、できる限り雇用の安定を図るといった考え方は、労使の間で今後とも基本的には維持されていくものというふうに考えられますが、産業構造の変化あるいは高齢化、若年者を中心とした勤労者意識の変化などによりまして、就業形態の多様化あるいは労働移動の増加、さらには人事労務管理におきます能力主義の強まりといったような変化が進んでいくものと見込まれるところでございます。
 労働省といたしましては、こうした動向を今後とも的確に把握しながら、勤労者の専門能力を高めるような職業能力開発あるいは若年者が職業選択を的確に行えるための情報の提供など、経済社会の変化に対応した政策の推進に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
#84
○大木浩君 今基本的な認識としては、なるべく労働条件というものを安定したものにしたいというお話がございました。これから新しい、先ほどから私は労働市場という言葉を使っているんだが、労働市場という言葉がいいのかどうか。何となく人間を市場と言うのもあれですけれども、いずれにいたしましても日本の産業界へ新しい人材を供給するということになりますと、これは当然ながら教育というものが非常に重要な働きをするということになると思うのでございますけれども、今私は日本の教育制度についてもいろいろ個人的にも考えることがあるし、諸外国と比較してももうちょっと改善できないかというふうなところもあるわけでございます。
 一言で言えば、日本は非常に世界有数の高学歴社会になったけれども、しかし現実の例えば高等教育、特に大学教育の現状というようなことを考えますと、これがいろんな意味で本当に望ましい姿なのかどうかということについては相当いろんな御意見があると思うのです。他方、今のこの入試地獄といいますか受験戦争が非常に大きなウエートを占めておる日本の教育ということ。しかし、それは結局いい学校へ入っていい就職をしたいということが、これはいいか悪いかは別としてそういう意識が現実にあるわけです。そういうことのために非常にたくさんの人が努力というか、とにかくエネルギーを費やしておる。
 他方、今度は産業界の方からいいますと、一体日本の今の教育を受けて出てこられた方々が、すぐに産業界で活躍するための十分な訓練、教育を受けておるかということになると、これはまたいろいろ問題があるというようなところがあると思います。最近よく言われておりましたのは、いやいや日本の大学の卒業者というのは、とにかくある程度基本的な勉強だけしてきてくれ、しかしすぐにはとても使いものにならないよということで、企業内教育、一遍まず採用してからもう一遍鍛え直したと、こういうようなことが非常にあったと思います。
 しかし、先ほども申し上げましたように今の終身雇用というようなことも少しずつ変わってきておる状況の中で、一体日本の文部省といいますか、文部当局の方では新しい人材を産業界といいますか、要するに日本の経済そのものへ送り込むという立場から、どういうことを意識しながら今の教育制度をいろいろと検討しておられるのか。多少世の中が変わっていますから、そういうことを考えながら文部省としては、そういった狭い意味での私は職業教育ということでなくて、むしろこれから社会の中心となって働くそういう人材を教育していただくという意味での教育というものについて、どういうことを考えて今いろいろと施策をしておられるか、その辺のところでもしお考えがありましたら聞かせていただきたいと思います。
#85
○説明員(工藤智規君) 大木先生には、文教委員長として随分御指導いただいていたわけでございますし、先生の方がよく御存じでいらっしゃいますので恐縮でございます。
 御承知のように、大学、短大を合わせますと今千百を超える学校がございまして、学生数も二百六十万という、戦前に比べますと進学率が三九%でございますので、学生の気質も随分変わってきているところは事実でございます。それと、お話がありましたように最近変わってきたように思うのでございますが、就職に当たっての学校歴といいましょうか、企業の側も大学でろくな教育をするよりは、ごく常識人を早く卒業させてくれというような声などがありましたり、いろいろな要素がありまして、日本の大学教育の質がそもそもどうなんであろうかということはかねてから問題視されてきたわけでございます。
 ただ、そういう中ではございますけれども、そもそも大学の教育というのが単に知識の修得だけではなくて、問題の発見、解決でございますとか、あるいはディベート能力を含めた表現力でございますとかを含めた総合的な人格形成が必要とされているところでございますし、こういう問題につきまして御議論いただいておりました大学審議会というのがございます。昭和六十二年に発足以来、これまで十一本ぐらいの答申を既にいただいておりまして、それに基づいて私ども制度的な改正をいたしております。
 幾つか貴重な御提言がある中で、特に重要と私どもが考えておりますのは、高等教育の個性化ということでございます。今これだけたくさんの学校がございますけれども、それぞれの大学が特色を生かして個性ある教育を行っていただく、それぞれの学生が胸を張って社会へ出られるような教育を施していただいて、また社会の側からも、あそこの大学の学生はちょっと一味違うと言われるような教育の充実に努めていただきたいというのが大学審議会の答申の基調でございますし、私どももそういうような方向での設置基準の改正等を行ってきているところでございます。
 それに基づきまして、各大学でも今非常にカリキュラム改革を含めて意欲的な取り組みが見られているところでございます。何分にもカリキュラムの改正でございますとか、あるいは教育の効果というのは時間がかかる面もございますけれども、ちょうど平成三年七月の改正以来、各大学が非常に真剣に取り組んでいるところでございます。基本的には、教育内容そのものは各大学が自主的に行っていただくべきものではございますけれども、私どもとしましては、各大学の御努力に応じましてそれを一層助長しさらに支援しながら、社会の負託にこたえる最高学府として育てていきたいと思っている次第でございます。
#86
○大木浩君 私も今御質問としては大学教育のことを申し上げたわけであります。ただ、労働力を供給していただくということになれば、これは大卒もあるし高卒もあるし、いろんなところがあるわけでございまして、全般として考えなきゃならぬ。
 ただ、私も今の日本の教育制度を考えて、一番むだと言っては言葉が悪いかもしれませんけれども、少なくとも目的が達成されていないのは、大学の教育が一番目に見えるところで問題があるような気がいたします。これは、今申し上げましたようなこれから産業界というか、もっと大きくこれからの要するに二十一世紀を担ってもらう若い人をどうやって育てて社会に送り込んでいただくかということでいろいろとまた、これは文部省だけの話じゃなくて、むしろそれこそ村上労働大臣の話じゃないんですが、教育と労働というのがお互いに協力しながらやっていかなきゃいかぬと思いますので、またひとつよろしくお願いをしたいと思います。
 ちょっと一般論を離れまして、法律の方へ戻りたいと思います。今度の法律は、先ほども申し上げましたように基本的には時間短縮ということで前向きのあれだということですから、各野党の先生方も基本的にはこれを大いに評価するんだというお話でございます。むしろ、いろいろと御質問ないしは御批判のあったのは、基本的には例えば四十時間といいながらいろいろと例外措置だとか暫定措置だとか猶予措置だとか、そういうようなことがあって、すぐには一〇〇%実施されないんじゃないのという御不満の声があったと思いますが、一つはせっかく労働省の方で新しいことを言ったんで、前向きだということを言っているにもかかわらず、逆に皆さんの方ではこれはかえって改悪じゃないかというようなところがあるわけです。
 その一つが、例の変形労働時間制の問題でございまして、いろんなところから御心配やら御批判がありました。これは、もう一遍お話がございましたので改めて、私は与党の立場ですけれどもしっかりと我々がわかるように、いやいやこれは決して改悪じゃない改善だというところを、もう一遍くどいようですけれども御説明をいただきたいというふうに思うわけであります。
#87
○政府委員(石岡慎太郎君) 一年単位の変形制は、年単位で休日の増加を図りまして、週四十時間制を導入しようという目的の制度でございます。
 ただ、この制度を導入いたしますと、一日当たりあるいは一週当たりの労働時間が時には長くなって問題ではないかということで、いろいろ御指摘を受けているところでございます。このため、一日あるいは一週の労働時間の上限を設けるなど、この制度の問題点をできるだけ少ない形にしてまいりますので、この制度は時短にとって大きな意味のある制度と考えております。
#88
○大木浩君 今までの三カ月制から一年制へと常識的に読ませていただきます。それで、先ほどもお話がございましたが、かなり具体的に一日十時間だとか週五十二時間から週の方が四十八ですか、それから一日の方も十を少なくとも減らすという方で御検討中だということですから、一応見かけというと悪いんですけれども、形の上での数字はとにかく前より改善だと、後はいろいろと運営の中で労働省がちゃんと指導していく、こういうお話です。
 しかし、その辺の指導をきちっとどこまでやるか。どうもこの労働委員会におきますいろいろな御議論を聞いておりますと、労働省は非常に中立的といいますか、企業家あるいはその労働者の両方の立場をよく聞きながら公正な案を出しておると、こういうお話だけれども、運営のところではどうもそうは言うもののというような話が多い。だから、その多くの部分が労働省の指導に任されておると、こういうことになるわけです。
 ただ、ある意味におきましては、先ほど清水先生のお話でも変形労働時間とそれから時短促進法ですか、これとの関連で組み合わせて眺めてみると何かおかしいぞと、こういうようなお話もございました。ですから、さっと見たら非常に改善のように私どももとるんですけれども、まだなかなか御納得いただいていないというわけです。ただ、逆に言えば、いやいや労働省は一生懸命やりますと、監督を強化しますと、あるいは今後検討いたしますということで、何かそういう話を聞いていますと、労働省はますます仕事がふえるばっかりじゃないか、労働省もっと人をふやさなきゃだめだ、あるいは労働省は時短どころか夜中まで仕事をしなきゃちゃんと任務が果たせないというようなことになるんですか。
 先ほど、時短支援センターの方の話もありまして、これも一体いつまでやるんだというような話があったんですけれども、その辺議論があったようですので、もう一遍取りまとめてちゃんと自信があるならあると御説明をいただきたいと思うんですが、どうですか。
#89
○政府委員(石岡慎太郎君) 時短促進法に基づきまして、企業内には労使の方々によりまして労働時間短縮推進委員会が設けられることになっております。ここで全員一致でお決めになったことは監督署に届けなくてもいいということになっております。
 こういう制度を設けましたのも、労使の方々が全員一致で決められればやはりそこには問題はないんじゃないかという、行政の方から見て労使に対する信頼感を持っているからでございます。したがいまして、この委員会で変形労働時間制の導入をお決めになれば基本的には問題はないと考えております。しかしながら、いろいろ御指摘も受けましたので、当然のことですが労働基準監督機関におきましては、この一年の変形制で労働者の申告あるいは定期監督などの際に問題があればこれを指導して是正するということをやってまいりたいと考えております。
 そういうことでございますが、さらに制度の仕組みにつきましても一日、一週の労働時間の上限を設けるなど整理をしてまいりますので、この制度は我が国に週四十時間労働制を導入していくために大いに意味のある制度になるのではないかと確信をいたしておる次第でございます。
#90
○大木浩君 新しい法案の内容についていろいろと先ほど申し上げましたように、要するにこれは結構だけれどももっと前向きにできないかとか、もっと早く目標を達成できないかというお話がありまして、その一つに年次有給休暇の話も出てまいりました。
 これは、休暇は多ければ多いほどいい、多々ますます弁ずというような、それは抽象的にはそのとおりになるわけです。これもなかなか実際に企業の方からいいますとできないというようなことがあって、それを反映してまあまあいろいろと猶予措置やら例外措置を認めているんだ、こういうお話ですし、私もそれは、仮に私が企業者の立場になればそれはできることはできるけれども、やっぱりあらゆることを法律で縛られても非常にきついな、こういう感じは持つと思うんです。
 先般、ちょうどゴールデンウイークでございましたけれども、皆さんそれぞれの企業が休暇をとっておられます。いわゆる年次有給休暇とはまた別かもしれません。本来の休日も入っているわけですから別ですけれども、いずれにいたしましても日本ではまだ長期的に休暇をとるという慣行が確立してないし、それは単なる労働問題じゃなくて、やっぱり日本の社会がそういうふうになかなかできていない。仮に長い間お休みをもらっても、それじゃどこへ出かけようかというようなことになるわけでありまして、先日もテレビを見ておりますと、今度のゴールデンウイークの休暇の過ごし方は安・近・短ですか、何か安くて近くて短期間というようなことになっておる。だから、これは労働省もこうやって何とかしろといったってなかなか解決のつかない問題です。
 年次有給休暇は、実態を見ながらということで先ほどは御答弁があったようですけれども、世の中がだんだんみんながきちっととるような体制ができるまではまあまあ現実に合わせて休暇の方の制度も整備していこうということなのか。その辺、労働省として今の時点でどういうふうに受けとめておられるか。もっとそれは早くやれというようなお話がありますから、それについての今の段階での御感触を例えればと思います。
#91
○政府委員(伊藤庄平君) 年次有給休暇につきましては、現在最低付与日数十日ということになっておりますが、この十日も中小企業につきましては来年の四月からようやく十日というものが実施される段階でございまして、現段階でこの付与日数について重ねて増加させるということは困難な状況にございます。ただ、この法律の検討に当たりました審議会におきましても、今後の課題としてやはりILOの条約等を参考にしながらその増加を図るべきだという議論がございました。
 今後の検討課題として私ども取り組んでいかなくちゃいかぬとは思っておりますが、あわせましてやはり我が国の場合、御指摘のございましたように年次有給休暇の消化率が低い、こういうところにももう一つ問題があるわけでございます。現在のところ、平成三年で見ますと平均の付与日数が十五・七日でございますが、実際に消化されているのは八・六日、約五〇%を少し上回る程度の消化率でございます。やはり付与日数の増加を今後の課題として検討することとあわせて、実際上の方策としてこの取得率の向上を図っていくためのいろんな施策といいますか、啓発といいますか、そういったものもあわせて進めていかなくちゃいかぬ、そういう状況に今あるのであろうというふうに思っております。
#92
○大木浩君 命令で絶対休めというのも、これも考えてみるとあれなところもあります。しかし、法律で大枠をつくってできるだけそれを実現していただくということでないと、なかなか物が動かないという面があるからこそひとつ法律の整備をしようということも声が出てくるわけですから、今後とも現実に結果が出てまいりますように、ひとつ労働省でいろいろと知恵を出していただきたいと思うわけでございます。
 それから、これもまた同じ話で、一体どこまで法律で厳しく言えば物が動くのかどうかわかりませんけれども、いわゆる特例措置事業の非常に零細な企業についての労働状況というのを、今回の時短法では法律的には特に手を加えない、こういうことですね、基本的には特例措置事業につきましては。だけれども、これもまたやはり日本のこれからの社会全体の中の労働事情ということを考えますと、当然一番難しいところですから、その辺についてこれから考えていかなきゃいかぬということです。
 これは、今回特に法律的にどうのということは見送りにしておられるけれども、またいろいろと考えますというようなお話です。これにつきまして、特例措置事業についての対応、必ずしも法律ばかりでなくても結構ですけれども、今の時点におきますお考え方をちょっとまとめて聞かせていただきたいと思います。
#93
○政府委員(伊藤庄平君) 現在、労働者数が十人未満の零細の商業・サービス業につきましては、労働時間についての特例を設けておりまして、週四十八時間という水準で法定労働時間を定めておるわけでございます。この特例措置につきましては、やはり将来的にはこの労働時間の短縮を進めていくべきではないかということでいろいろ御議論がございましたが、今回の労働基準法の改正に当たりましては、審議会の方でも基本的にはその存続を図る必要がある、こういう指摘をいただいたところでございます。
 ただ、現在四十八時間としております法定労働時間の水準につきましては、週四十時間労働制が平成六年の四月から原則として実施される、それとあわせてやはり縮小の方向で検討していくべきではないかという御指摘をいただいておりまして、私どもそういった方向で考えていきたい。また、業種などの範囲につきましても、改めて調査いたします実態調査を踏まえて、最新の状況に基づき、どうあるべきかということを検討していきたいというふうに考えております。
 また、先の問題といたしまして、週四十時間労働制が全体に実施される平成九年の段階でどうなるのかと、こういう御議論もこの特例措置をめぐってあるわけでございますが、その時点での将来のあり方につきましては、やはり中央労働基準審議会で非常に関心の高い問題でございますので、改めてその後のあるべき姿について検討を願い適切に対応していこう、こういうふうに考えておるとこでございます。
#94
○大木浩君 いろいろとこれからも御努力を願いたいと思うわけでございます。
 先ほど、清水先生のお話にもございましたけれども、立場が違うといろいろと物の見方が違うわけでございまして、労働者の立場からいえばこういうことをできるだけきちっとしろと、こういうお話になると思うけれども、逆に今度は日本国民全体ということになれば、やっぱり日本の国の経済というものが引き続き強固なものになっていく、そしてあえて言えば国際的にも競争力を維持してと、こういうことになると思うんです。大臣お得意の、それこそ外交、防衛を含めて、日本のこれからの経済大国というものをどうやって、経済大国というのはいろいろ中身はあります、だから経済大国だけれども生活大国になっていないとか、いろいろあります。基本的には、例えばGNPだけじゃないけれども、GNPというようなものが大きく下がればそれはあらゆるところに響いてくるわけですから、やはり私は日本の経済大国あるいはいい意味での経済強国にならなきゃいかぬと思うんです。
 そういった中で、そういった大きな目的の中で、大臣はこれから労働行政どういうふうにしていかれるのか。ひとつ大臣のお立場から、どうぞ労働省に局限せずに今の大臣御自身の立場になっていろいろと見ておられると、そういうこともあるかこういうこともあるかということがあると思うんですが、経済大国なり経済強国なりの日本というものを維持しながら、しかしどういうふうに労働行政をさらに進めていくのか、大臣としての御感触がありましたらひとつ伺いたいと思います。
#95
○国務大臣(村上正邦君) 自分の考え方を言ったらどうだと、こういうサジェスチョンではないか。大木先生は役人生活もなさっておられて、また今は政治家として、役人がどう政治家をコントロールしてきたかということもよくおわかりの上での私に対する善意な発言を促されたと、こう解釈いたしております。
 もともと私は、ここにずらっと並んでおりますけれども、この人たちがいろいろああ言っちゃいかぬこう言っちゃいかぬ、こうやれこう言えと作文をしてこられるわけでありますが、大変私も役人さん泣かせじゃないのかなと、こう反省してみたり、自戒してみたりしておりますのできる限りやはり自分の考え方を出していくということが政治家としてまた大臣として大事なことじゃないかと思うものですから、朝早くからきょうもここにいます安定局の次長と外国人労働者の問題について大きな声を出して激論をしたところであります。
 今回のこの労働時間の短縮、これによってどう国際競争の力をつけていくのかというようなことにつきましても、やはり資源の乏しい我が国において、イソップ物語のアリではございませんが、今まではとにかくのべつ動いて動いて、働いて働いてやってきたと、こういう嫌いはあろうかと思うんです。それが、今日の日本の大きなやはり国際競争力をつけた第一番の理由に挙げられると思います。しかし今日、千八百時間ということの中でそれは一体どうなるのかと、こういうことになりますが、それはやっぱり十分企業の省力化ということからいってカバーできるんじゃないだろうか。そのためには、いろいろ政府が手厚い手当てをしていかなきゃならない部分はたくさんあるだろう。しかし、それは大いに私は政府がやったらよろしい、労働省がやったらよろしいと、こう思っております。
 そうした中で、とにかくむだを省く、そして能率を上げていく、働くときは働くというめり張りをつけた生活をやるし、また労働時間の中においてもだらだらした、とにかく時間さえおればいい、夜遅く電気をつけておけば仕事をやっていると、そういう意識改革はやっぱり大いにしていかなきゃならないと、こういうふうに思います。そして、いわゆる日本人の持つ創造性、日本人の持つ創意、そういったことについては即席ではなくして、時間の余裕の中で新しい創意工夫をつくり付加価値をどんどん高めていく、こういうことで私は生産性の向上や国際的に我が国の経済競争力の力がついてくる、このように持っていきたいものだなと。そうした意味において時短のメリットを十分に引き出していく、こういう方向に時短のあるべき姿として経済力ということからいけばそういう方向へ持っていきたいと、このように考えております。
#96
○大木浩君 どうもありがとうございました。
 ちょうど今大臣が在日外国人労働者問題について議論しておったとおっしゃったので、その言葉じりをとらえるわけじゃないんですけれども、この外国人労働者問題というのも、私もたまたま昔外務省におったような立場もありますので、今の外国人労働者問題については非常にある意味では関心と憂慮を抱いておるわけです。
 外国人労働者はかなり数もふえてきたし、いろいろ問題もあるようですが、ごく大ざっぱに、一体どれだけ外国人労働者というのが今日本に入ってきて、合法あるいは不法というのか違法というのか両方あると思いますけれども、数だけでも簡単に、いわゆる就学生とか日系人も含めてどれだけおられるのか、ちょっと教えていただけませんか。
#97
○政府委員(岡山茂君) お答え申し上げます。
 現在我が国に入国いたしまして就労する外国人労働者はいろんな形の方がおられるわけでございますけれども、現在まず合法的に就労しておられる方、いわゆる技術あるいは技能等専門技術的な労働者として約七万人の方がおられます。それから日系人の方が、これは在留上の資格制限がございませんので働くことができます、これらの方が約十五万人おられます。そのほかに、留学生、就学生がおられますが、留学生が約四万九千人、就学生が三万六千人おられます。
 ただ、これらの方がどの程度働いておられるかということにつきましては、調査によりますと、大体六割くらいの方がアルバイトで働いておられるというようなことでございますので、それらを考えますと約五万人くらいの方ではないか。そのほかに、いわゆる在留期間経過後も残留をいたしておりまして、これらの方が恐らく就労しておるものと考えられるわけでございますが、そういう在留期間経過後も残留しておる者が、平成四年の十一月現在で約二十九万人と見られております。したがいまして、合法、不法を含めまして約五十万人以上の人が働いているというように見ております。
#98
○大木浩君 在日外国人労働者というのは最近いろいろと社会問題になりまして、一時は、今もそうかもしれませんけれども、イランあたりから来られた人が上野の山へ集まっちゃって大変な風景を生じておるというような話もありますし、私は選挙区が愛知県ですけれども、名古屋駅のあたりに随分外国人が集まっておられるというようなことで、これはこれからきちっと対処をいたしませんと非常な問題になると思うんです。
 きょうは全部議論する暇もありませんし、きょうは法案の方の議論ですから余り長々とやりたくないんですが、二つちょっとお聞きしたい。
 一つは、今の就学生ですね。就学生は本来は勉強しに来る。勉強といいましても日本語の勉強だということだけれども、現実にはアルバイトをしてお金を稼がないと暮らしていけない。それから、日本語学校がいい加減な学校で、余り日本語もうまくならないで、むしろそれはもうほとんど一日じゅう働いているというようなことで、先ほどの不法残留、不法就業というような格好になっている人が多いと思います。それについて、確か文部省あたりが中心になられて、労働省やら外務省あるいは法務省あたりとも協力して日本語教育振興協会というのをつくって、日本語学校の実態をきちっと監督するということになったというお話を伺っていますけれども、その辺のところをちょっと御説明いただけますか。
#99
○説明員(竹本廣文君) お答えいたします。
 日本語学習を主目的とする就学生を対象といたしました日本語教育施設の中には、先生御指摘のとおり運用面において問題を起こしたり、また一部にはいわゆる不法就労の隠れみのであるというふうなことが指摘されておることも承知いたしております。
 文部省としては、先ほど先生からもお話がございましたように法務省及び外務省等と協力いたしまして、平成元年の五月に日本語教育振興協会を設立いたしました。また、それに先立ちます昭和六十二年に協力者会議をもうけまして、日本語教育施設の運営に関する基準をまとめております。そして、日本語教育振興協会がこの基準にのっとりまして日本語教育施設の審査をいたしておるところでございます。
 また、この協会におきましては日本語教育施設の教員や管理・運営担当者等を対象とした研修会を実施いたしておりまして、これらを通じまして日本語教育施設の教育内容面及び管理・運営面の質的向上や就学生に対する生活指導の実を図るよう啓発指導を行っているところでございます。
#100
○大木浩君 振興協会で頑張っておられるというお話なんですが、私がいろいろとお聞きするところによりますと、振興協会の方もそんなにたくさん人もおるわけじゃないし、学校の方はもう雨後のタケノコのごとくどんどんできてきて、しかもかなり怪しげなのも多い。実際にお金だけ払って、入学金を取られて、来てみたら学校がどこにあるかわからないというようなこともかなりまだあるらしいと思います。
 きょうは、これ以上の御質問はしませんけれども、留学生なり就学生として来たというのは、日本で勉強しよういう気があるから来ているわけでしょうし、そういう人がせっかく日本へ来ながら何か勉強の方もちゃんと目的を達しないし、しかも不法就労というような形になればいろいろと問題が起こる。ということになれば、決して私は日本についてのいい思い出を持って帰るという状態にはないと思うんですね。ですから、これはぜひこれからも文部省ばかりじゃなくて、関係各省ともひとつ御協力いただきまして、事態の改善について努力をお願いしたいと思います。
 それから、先ほど日系人が十五万人と言われました。十五万人というのは相当な数ですね。たしか、日系人だからビザの方も余り難しいこと言わずに、しかも日本語もある程度できるだろうというような期待も持って入ってきておられる。この日系人というのは南米の人が多いですね。しかし、十五万人というのは相当な数でありまして、例えば幾らブラジル日系人がたくさんいるといったってその中の十何万が来ておる。あるいはペルーも最近は大変来ていると思いますけれども、現地の日系人の何十%、五%とか一〇%じゃなくて、二、三〇%ぐらいの人が来ているというような計算になるんじゃないかと思うんです。これはどうなんですか、きょうは外務省は来ていますか。そういった意味で、非常にたくさんの人が日系人として今来ているんですけれども、別に狭い意味での移住外交ということじゃないんですけれども、日系人がそれだけたくさんおられて、しかも日本へもたくさん来ておられるという状況の中で、こういった国々との外交というのは、特にどういうことを配慮しながら外交を展開しておられるのか、ちょっと説明していただきたいと思います。
#101
○説明員(岩田達明君) 日系人は、大部分は移住者の指定でございます。
 移住に関して申し上げますと、まず戦後華やかなりしころの集団農業移住は大体終えんいたしまして、その方々がおおむね安定定着しておられるというふうに私どもは考えております。
 ただ、問題も幾つか残っております。移住者を含む日系人社会の動向と、それがもたらす今の政策課題ということを簡単に申し上げますと、まず第一は、安定定着に至っておられない移住者あるいはその子弟の方々にどういうふうに支援をするか。例えば、移住者で高齢になられた方がおられるんですけれども、身寄りのない高齢の方にどういうふうに支援するかとか、それから移住地の中でなかなかうまくいかなかった。それは、移住者個人の能力とか意思の力ではなくてたまたま経済事情がよくなかったとか、入った土地がよくなかったとか、いろんな事由でうまくいかなかったところがある。そういうところにどういうふうに支援していくかという問題が残っていると思います。
 もう一つの問題は、今御指摘の日系人の出稼ぎの労働者の問題でございます。この方々は皆さんが皆さん現地でうまくいかなかったということではないんです。うまくいかなかった方もおられますけれども、経済的な機会を見てみますと、日本の方がよりいいということで日本に来られた方も相当おられるというふうに私どもは見ております。大体十五万人ぐらいおられるわけですけれども、この方々が日本で働かれることについては、我々としてはもう最大限の援助をしたいと、こう考えております。もちろん私どもの省、外務省だけでできることは限られておりまして、ここにおられる労働省、文部省、その他の省にもたくさん支援を仰いております。
 例えば、私どもの省に関して言いますと、日系人の方が東京に来られて、言葉がわからなくて困っておられるその最初の段階でのお手伝いをする。どこに行けば学校の問題が解決できるとか、住居はどうしたらいいのかとか、そういう初動のお手伝いをすること等々の作業を今年度から予算をつけていただきまして始めました。これが今後やらなきゃいけない日系人の問題なんですけれども、その他大多数の、大体今私どもの計算では一割ぐらいの日系人の方が日本に来ておられると思うんですけれども、それ以外の九割の方はどうかと申し上げますと、これは大体その移住先の国だとか地域社会に非常にうまく溶け込んでおられるケースが多くて、その方との関係をどうするかという問題を今先生は質問されているんだろうと私は理解します。
 これに派生するもろもろの問題があるんですけれども、その中で一つだけ、私どもとして特に現地にうまく溶け込んでおられる方に対する政策の問題を申し上げますと、やはり日系人の方々の方にも日本との関係を何か持ちたい、日本語を勉強したい、日本文化を理解したいという強い希望がございますので、日本との文化的なリンケージを維持するためのいろんな措置、日本語の教育であるとか日本文化の広報であるとかをやっております。また、その他もろもろの施策もとっております。
 私どもといたしまして、これだけの多くの日系人、数の勘定の仕方によるんですけれども、例えばブラジルだと百五十万とも二百万とも言われている日系人の方がおられるんですが、こういう外地における日系人社会をその国と日本との間の関係増進の一つの大きな媒体として役立てたいと考えております。やはり日本を理解していただける方がブラジルならブラジル、その他の国にたくさんおられるということは日本から見ても心強い限りですし、またその国から見ても日本との関係を律していく上で役立つケースが多いというふうに考えております。それが大きな基本的な考え方ですけれども、それ以外に個々のことを申し上げますと、例えば日系社会は成功しているケースが多いんですけれども、成功しているケースを見てみますと、その地域社会で経済発展のコアになっているケースが多い。そういう経済発展のコアになっているケースに関しましては、今後の政策といたしまして、経済協力に当たってそういう日系社会により中心的な役割を果たしていただくとか、あるいは企業が進出していく一つの媒介になるとか、いろんなことが考えられると思います。
 私どもといたしましては、相手国の政策をよく考えながら、その国の日系社会がどういうふうに我が国とその国との間、またその国の経済発展に役立っていただけるかということを考えつつ政策を立案していっているところでございます。
#102
○大木浩君 今日本も国際化国際化と言って一生懸命いろいろと国際社会で日本のイメージづくりに頑張っているところです。だから、せっかくそれだけたくさんの日系人がいるわけですから、こういう人とも上手にできないというんじゃとてもじゃないが始まらない話でありますから、ひとつぜひともいろいろと。
 これは、もちろん外務省ばかりでなくて、今お話しのとおりにブラジルならブラジルにおられる日系人というものに対してどういうことをするかということと、しかしもっとじかに今度は日本人が、我々が、日本に来られた日系人の労働者というのは現実にそこにおるわけで、しかもそれが大変な数いるわけですから、そういう方との関係を上手にこれから発展できないということじゃとても困ると思います。ただ、残念ながら今ちょっとお話があって、日本語をちゃんと教育しなきゃいかぬとかいう話がありますし、だから来られた方は多少日本語がわかっても、またその家族が来て、家族の方になると三世ぐらいからは日本語もよくわからないというようなことで、日系人だからといって安易に考えると、そう簡単に日本の社会に溶け込めないというような面もあるようでございます。それから、就学年齢児が来れば学校の問題もあるし、そういったような点は必ずしも十分に対策を行っているとは思いませんので、これはなかなか難しい話ですけれども、ぜひ御検討をいただきたいと思います。
 外国人労働者の問題というのは、日系人ばかりじゃなくて、普通のほかの日系人以外につきましても、何せこの数年間に急速に物すごい数がふえてしまったということで、どうしたらいいんだろう。片方では、とにかくこれだけ日本が経済水準が高くなって、賃金も高くなったんで、とにかく合法・不法でどんどん入ってくるということで、まず波打ち際の法務省が、これはもうとにかく困るんだ、何とかしてとめたいという気持ちの方が先に立っちゃって十分な対策ができていないようです。ですから、これは単なる労働問題ということじゃなくて、これからの日本の国際社会における立場というようなことからも、ひとつぜひ関係各省協力して御検討願いたいと思います。
 ただ、労働者ということに限って考えると、労働省の方も先般も基本方針としてというか、ずっと従来もそうだと思いますけれども、単純労働者は入れないよと。しかし、ある程度技術を持った者は先ほどの話でも七万人ばかりは合法的に入ってきておる、こういうお話でございますし、これからもそういった制度を整えようということで、たしかつい最近技能実習制度の構想を公表されました。これは、もう現実に動いているわけですか。ひとつその辺のところをちょっと御説明いただきたいと思います。
#103
○政府委員(伊藤欣士君) 御質問の技能実習制度につきましては、いわゆる発展途上国を中心とする外国の方、特に未熟練ないしは技能を持たない方、そういう方々を日本で一定の研修を経た上で研修成果の評価等を行いまして、一定の水準に達した方につきましては、その雇用関係のもとでさらに技術、技能等を習得していただきまして、その熟練度を高めて母国に帰っていただき、自分の国での経済発展に寄与していただく、こういうシステムでございます。この制度そのものは、人づくりを通じました国際協力を推進する観点に立ちまして、外国人に対しましてより実効のある技能移転を行うための新しいシステムとして行革審の方から御提言をいただき、必要な予算措置を講じましてこの四月から実施されたものでございます。
 この基本的な仕組みにつきましては、現在の入管法の仕組みのもとで構成されておりまして、全体を広い意味での研修としてとらえる。その中で、今申し上げましたように前段階は従来型の研修というシステム、入管の資格も研修ということで入ってきていただいて、研修をしていただく。一定期間後それを評価いたしまして、先ほど申し上げましたように一定の水準に達した者については在留資格を法務大臣の特定活動ということで切りかえまして、その後につきましては雇用労働者として正式に働くという形での技能習得を進めていくということになるわけでございます。
 そういう意味で、従来の研修というのはいわゆる報酬を得る活動というのはできない。まさに勉強そのものでございますけれども、この技能実習制度で評価を受けて切りかえた後には、まさに労働者として雇用関係のもとで働きながら勉強していただく。当然雇用関係、労働関係の法令等は全面的に適用される、こういうシステムでございます。
 この制度につきましては、平成五年度において予算案も計上していただきましたし、関係各省とも連絡をとりまして、承認をいただいた上で推進事業の運営方針というものを労働大臣が決めまして、関係団体とも協力をしながらこれを実施していきたい。当然のことながら、事業主の方々あるいは研修生が来られます送り出し国の外国政府の方々にもこの制度を十分に御理解いただきまして、これが活用され、まさに本当の意味での人づくりに寄与したいというふうに考えておるところでございます。
#104
○大木浩君 ありがとうございました。
 外国人に対するいわゆる今までで言うと技術研修というふうな、研修という言葉をよく使っていて、例えば政府ベースのJICAの研修とか、あるいは通産がやっています海外技術者研修制度、これもまた民間の企業にある程度政府が協力してと、いろいろあるわけです。今のお話を伺いますと、今度のはきちっと前半は勉強して後は労働する、こういうことですね。細かい話は、時間がありませんのであえて御質問いたしませんけれども、どうぞひとつせっかくいい制度ができましたので、大いに活用していただきたいと思います。
 最後に、大臣にもう一回まとめてお伺いするわけですけれども、外国人労働者問題というのは今申しましたように日系人は日系人としての問題があるし、それから例えば中国とかあるいはその他のアジア諸国から来ている外国人労働者というのも、彼らが来る目的はいろいろあるわけでありますけれども、とにかく何万人という数の人が来るということは、そこで日本人との接触が始まるわけですから、これは非常に大事だと思います。
 そういうことでひとつ、先ほど何か大臣と事務方といろいろ議論もしておられたようですが、外国人労働者問題については、これはもう大いにひとつ労働省としてはきちっとやっていくんだということについての御所信を述べていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
#105
○国務大臣(村上正邦君) やはり国際国家日本として、今外国人受け入れについての基本的な考え方は事務方でお話がありました。
 しかし、それは基本は基本としても実態は一体どうなのかということで、先般も上野公園や代々木に日曜日に集まるイランの人たち、とにかく一時は上野には本当に何千人と、鈴なりに上野公園に花が咲いているのかイランの人がいるのかというほど集まっておりました。それが、上野でそういう集団で集まることは困るというようなことで、そうすると結局はまたどこかへそういう人たちが行くということで代々木へ集まってきていた。私は、上野にしても代々木にいたしましても、実際ジャンパーを着ましてこの人たちの中に入っていろいろ通訳を通じてでございますけれども話を聞いた。ほとんど大半が不法滞在、それを自覚している、みんなが。もうビザは切れているんだと言うんです。そうしてまた、彼らの目的は仕事をしに来ているんです。日本側はそんなことはないといったって、仕事を見つけに来ているんです、稼ぎに来ているんです、不法就労なんです、それも知っているんです。
 しかしながら、やはり一歩扱いを間違うとこれはイランと日本の国際問題にもなっていく、そしてまた両国間においてせっかく石油等々を日本は買い入れて非常にいい友好関係にあるのが、この扱い方を間違えれば、これがまた反日感情にもつながっていくという、こうした大きな問題を抱ええておることだと思うんです。しかしながら、やはり現状の中では基本的な姿勢は貫いていく。
 しかし、けさ私が次長に言いましたことは、この実態の中でじゃどうしていくのかと。実際、事業主がこの人たちを雇っていかなければ事業が成り立っていかないという、こういう実態ということも労働省としてはしっかり目をあけて見ていかなきゃならぬことだろうし、そこらあたりに今後メスを入れると同時に、そうしたところの問題点を出して、これにやはり対応していかなければいけないのではないかと、こういう話をしたところでございます。新しい外国人の受け入れについて新たな段階に来ていると、私はそういうふうな認識に立っております。
#106
○中西珠子君 約五十年前に、日本は敗戦の荒廃と疲弊から立ち上がって平和憲法を制定し、諸制度を民主化する努力をしてきました。国民の教育水準の高さと勤勉さ、また会社のためには長時間労働もいとわない忠誠心、こういったものが日本株式会社とも言われるほどの優秀で効率的な行政指導と相まって、日本は今や世界に冠たる経済大国になりました。
 生活水準は、戦後に比べると上がりましたけれども、一般国民は依然としてまだまだ生活の豊かさやゆとりを感じられない状態でおります。過労死という言葉がそのまま世界に通用するほど日本の長時間労働は悪名が高く、国際的にも批判され、公正な労働基準が守られなければ公正な国際競争はできない。長時間労働が国際経済摩擦の原因の一つともなったこともあり、国際協調のためにも、また勤労者の生活にゆとりをもたらせるためにも労働時間短縮の必要性が叫ばれてもう久しくなり、一九八七年九月の労働基準法改正では週四十時間労働制がうたわれ、段階的に導入されることになっております。
 一九八八年五月に閣議決定された経済運営五カ年計画、「世界とともに生きる日本」の中でも、年間総実労働時間千八百時間の目標達成を目安として、本年三月末日に達成するということをうたっておりました。しかし、これはまだ実現しておりません。また、昨年六月に閣議決定された生活大国五カ年計画、これでも平成八年までには千八百時間の達成を目標に掲げております。
 今回の労基法の一部改正と時間短縮促進臨時措置法の一部改正によって、年間総実労働時間千八百時間の目標の早期達成が可能となるとお考えになっておりますか。大臣にお伺いいたします。
#107
○国務大臣(村上正邦君) 今回のこの法案は、中央労働基準審議会において十分な御議論を行った上で作成したものでございますが、平成六年四月から原則週四十時間労働制への移行を決めたこと、割り増し賃金率を二割五分以上五割以下の範囲内で命令で定めることとしたことなど、再三午前中からもこのことについては政府委員の皆さんが御答弁をいたしておりますが、政府の目標である千八百時間の基盤をなす重要な内容を盛り込んだものであり、これによって目標の達成に向け大きく前進を図ることができるものであると考えておるところであります。
 さらに、千八百時間という目標達成のため、このような労働時間法制の整備と相まって、時短促進法に基づく支援措置の活用などによる労使の積極的な取り組みを一層促進するなど必要な指導援助に努めていきたい、このように考えておるところであります。
#108
○中西珠子君 この法案によって暫定措置が廃止になりまして、今大臣がおっしゃいましたように平成六年四月から週四十時間労働制が原則適用となるということでございまして、これは大変結構なことではございますけれども、この週四十時間制の実施に当たりまして、現在の制度と同じように政令による猶予措置というものが前提になっておりまして、それが平成九年、一九九七年三月三十一日まで猶予措置を受ける業種があるということだそうでございます。
 これにつきましては、現在は原則四十四時間となっており、一九九三年、ことしの三月三十一日まで週四十六時間制を認める猶予措置がとられていましたのが、一年期間が延長されまして一九九四年三月三十一日まで猶予されることになったわけでございます。現在、猶予措置を受けている労働者の割合は、約五〇%、四九・六%といいますから五〇%ですね。それから、その上十人未満の商業・サービス業などの一週四十八時間の特例措置というものを受けているのが全体の一四・一%。それで、猶予措置と特例措置を合計すると、全体の六三・七%の労働者が現行の週四十四時間制の対象外となっているわけでございます。
 このような猶予措置というものは、一九九七年の三月三十一日までお続けになるわけでございますが、命令で定める一定規模以下、または一定の業種の事業について四十四時間以下四十時間を超えて法定労働時間というものを決めるということになっております。政令によって広範な猶予措置を認めるということは、憲法二十七条二項で、労働条件の最低基準を法律で定めるとしている趣旨に反するものだと思いますけれども、この点についてはどのようにお考えですか。また、どのような規模、どのような業種について命令を定め、週四十時間を超え四十四時間の範囲内で法定の労働時間となさるおつもりですか。あわせてお伺いいたします。
#109
○政府委員(石岡慎太郎君) 今回の基準法の改正法案におきましては、平成六年四月から週四十時間労働制が原則適用となります。ただし、中小企業等につきましては、週四十時間にすぐできない現状もございますので、一定の期間猶予措置をとらせていただきたいと思います。その猶予措置の期間は、平成六年四月から平成九年三月三十一日までの間でございます。また、その猶予措置の水準は、四十時間を超え四十四時間以下で政令で定めることにいたしております。
 そこでお尋ねでございますが、こういうふうに政令で定めることは憲法二十七条の規定に違反するのではないかという点につきましては、確かに憲法二十七条を読みますと勤務条件の基準は法律で定めるとなっておりますので、その趣旨からいきますと法律ですべて明確に定めた方が望ましいことは言うまでもございません。しかし、これはすべて法律で例外なく定めなければならないということではございませんでして、今回のようなケースにつきましては、やはり一定の法律上条件をつけまして、それで政令に落として、政令で定めるということも許されるものと解釈いたしております。前回の昭和六十二年の基準法の改正のときも附則百三十一条で、政令で法定労働時間を定めさせていただいた先例もございます。したがいまして、必ずしも二十七条の規定に違反しているものとは考えておりません。
 それから、どのような規模、業種に四十時間を超え四十四時間以下で政令で定める法定時間、猶予措置を適用するかということでございますが、この点につきましては、法案をお認めいただきますと早速法定労働時間の実態調査を実施いたしたいと思います。その実態調査の結果を踏まえまして、できるだけ猶予対象の企業を限定いたしまして猶予措置の適用を図りたいと考えておりますが、具体的には審議会等で十分御検討いただいて政令で決めてまいりたいと考えている次第でございます。
#110
○中西珠子君 実態調査をなすってからお決めになるということですけれども、現行のような広範囲な特例措置を入れると六三%にも上るようなそういった規模の猶予措置ということは法のもとの平等にも反しますし、どうしても必要やむを得ざるという範囲に限定するべきだと考えるのですが、この実態調査というのはいつごろなさるのですか。
#111
○政府委員(伊藤庄平君) 過去、法定労働時間を段階的に短縮する際も実態調査を行ってきておりますが、その際には、大体五月、六月にかけての実態調査を行いまして、その年末には審議会に図り猶予対象の事業を決めると、こういう形でやってまいりました。今回も、この法案について成立をさせていただければ、速やかにその実態調査に入りたいというふうに考えているところでございます。
#112
○中西珠子君 けさほども同僚委員から御指摘がありましたけれども、法律が通ってから実態調査をするというのは何だかおかしな話で、実態調査をやって、それから法案を出すというのが免じゃないかと思いますが、とにかく猶予措置の対象となる規模、業種はできるだけ限定していただきたいということをお願い申し上げます。
 特例措置はどうなさるおつもりですか。
#113
○政府委員(伊藤庄平君) 労働者十人未満の商業・サービス業などについて行っております労働時間の特例につきましては、そういった業種の事業の性格にかんがみ、基本的にはこれを継続することといたしております。
 ただ、全体の労働時間が四十時間制に移行する中で短縮されてまいりますので、これらの特例対象事業につきましても、改正法の施行にあわせて労働時間の四十八時間という水準を短縮する方向で検討いたしたいというふうに考えております。また、その対象事業の範囲についても最新の実態を踏まえて検討をいたしたいというふうに考えておるところでございます。
#114
○中西珠子君 短縮する方向でぜひお考えいただきたいし、また対象につきましてもできる限り減らしていただきたい。全体の一四・一%が特例措置受けているなんということは、やっぱり長時間労働ということでございますので、ぜひ労働者の福祉のためにもまた保護のためにもなるたけ対象を減らしていただきたい、お願いいたします。
 それから次に、一年単位の変形労働時間制が導入されますが、その導入される理由はどういうところにありますか。
#115
○政府委員(石岡慎太郎君) 一年単位の変形制は、年間単位の休日管理によりまして年間単位で休日の増を図る。その結果、週休二日制に相当する週四十時間制の実現を図るというものでございます。
#116
○中西珠子君 年間単位で休日がふえるという保証がありますか。
#117
○政府委員(石岡慎太郎君) 最近、企業の実情をいろいろ調べさせていただきますと、かなりの企業では年間単位であらかじめいついつ休日にするというカレンダー制度を導入しておられるケースが非常に多うございます。こういうやり方、年間カレンダーなどというやり方で年間単位で休日をふやしておられる実態もございますので、そういう実態を念頭に置きながら、問題点もいろいろ出てくる可能性がございますけれども、そういう問題点もできるだけ制度的になくする形で一年単位の変形制をつくらせていただければ、我が国の労働時間の短縮につながるものになるのではないか、そういう考え方に立っております。
#118
○中西珠子君 一年単位で休日がふえて時間短縮が進めばいいという考え方は、統計上、年間の総労働時間が短縮されればいいという考え方なんですね。
 労働者の生活というのは、一日一日の労働時間が短いということが大変重要であり、健康の上からも、また生活の上からも重要である。殊に、女性にとりましては、一日の労働時間というものが非常に重きをなしているということだと思うんです。殊に、育児とか介護の責任を負っている人たちにとっては、一日の労働時間が変形制のもとに長くなりまた変形制でないときには短くなるということで、もう年間合計で短くなればいいじゃないか、休みも多くなればいいじゃないかということには必ずしもならないと思うんです。
   〔委員長退席、理事大木浩君着席〕
 それで、とにかく使用者側にとっては、今もおっしゃったように変形時間が一年ということになった方がずっと使いやすいし、それから三カ月単位の変形よりもずっと便利だと、こういうことになるんだと思いますけれども、本当に女性にとっては、殊に家庭責任を持っている女性にとっては、この変形労働時間というものは健康も破壊するおそれがあるし、また家庭生活も破壊されるというおそれがあるわけなので、この一年単位の変形労働時間制導入ということは、私は疑問視するし反対でもあるわけです。
 けさほど、一年単位の変形制の場合、割り増し賃金の支払い方式は三段階になるという御説明がありました。そういたしますと、私の印象では、一年間働いてみないと果たして超過勤務手当がもらえるのかどうかよく労働者にとってはわかりにくい、こういうことがあると思うんです。それで、例えば九時間の例をお挙げになったけれども、九時間を超えた分は一日につきもらえる、それから八時間以内である場合にはもらえないということなんです。
 例えば、変形制のもとで所定労働時間が長かった場合ではなく、逆に短くて一日の所定労働時間が四時間。平均で言っていますから、平均の労働時間だから、結局短いときと長いときがあるわけです。それで短い場合、例えばその日は四時間しか働かなくてもいいということであった場合に、急に必要なことができて会社の都合で二時間ぐらい余分に働かなくちゃいけない、合計六時間働かなくちゃいけないということになったといたします。そうすると、法定一日八時間以内だから、時間外労働には該当しないから超勤は出さない、こういうことになりますか。
#119
○政府委員(伊藤庄平君) まず、一年単位の変形制につきまして一日単位の労働時間が問題である、そういった御指摘についてでございます。
 この一年単位の変形制を導入するに当たりましては、私ども基本的な考えといたしまして週四十時間労働制を導入する、これが週休二日制に相当する、こういうものでございます。仮に、工場等の操業度について波動性があって、ある週土曜日に出てこなくちゃいかぬケースがあったとしても、それを例えば夏休みあるいは操業度が落ちる時期に金、土、日と休むとか、そういった連続休暇に使う、あるいはほかの時期で連続休暇をつくるとか、そういった形で年間単位で週休二日制に相当する、あるいはそれ以上の休日を確保していく。こういうことで、我が国にも週休二日制を定着させていくための効果的な方策として考えたわけでございます。
   〔理事大木浩君退席、委員長着席〕
 したがいまして、そういう立場から申し上げれば、午前中も申し上げましたように仮に土曜日を出させる週があっても、八掛ける六の四十八時間、これが一週の限度時間として適切であろうということで、三カ月の変形制の場合五十二時間となっておりますが、私どもこれを一週については四十八時間というふうに短縮することを前提として、一日、一週の限度時間については縮小した形で労働省令を定めたい、そういうことで審議会にも検討をお願いしていく、こういうことでございます。御懸念のような点につきましては、労働時間の変動幅というのは、一日についても一週についても現行の三カ月の変形制を繰り返して用いていくケースよりも非常に小さくなる、安定した労働形態ができる、こういうことでございますので、ぜひ御理解をいただきたいというふうに思っております。
 それから、この一年単位の変形制を導入した場合の残業時間の計算でございますが、そのうちの第一点、一年単位が終わらないと残業代がもらえない可能性があるんではないかということでございますが、これは変形制を導入するに当たりましては、休日はあらかじめ年間を通じて具体的な日にちをもって特定し、また日々の労働時間につきましても三カ月ごとにはあらかじめ全部決めてセットしておかなくちゃいかぬ。したがいまして、それを超えれば即残業ということになるわけでございまして、それはその日々あるいは週、月単位でこの人が幾ら超過勤務をやったかというのはまず出てまいります。そういう意味では、それぞれの月々の給料に残業代が組み込まれていく。
 ただ、年間単位で総労働時間も決まってまいりますので、最終的な調整が年間単位で出てくるケースもある。それが、先ほど申し上げました三段階の最後として事務的に精算的なことが残るケースがあるということでございますので、決して一年たってみないと残業代が手に入らないというようなものではございません。
 それからもう一点ございました……
#120
○中西珠子君 手に入らないと言ったんじゃない、わからないと言ったんです。だから、最終調整は年間でやるわけでしょう、結局のところ。
#121
○政府委員(伊藤庄平君) もう一度御説明申し上げます。
 まず、一日について仮に八時間というふうに法定労働時間どおりになっているケースであれば、八時間を超えればすぐ割り増し賃金を払わなくちゃいかぬ。仮にそのときが変形の対象になっていて、先ほど例として申し上げました九時間、これを超えるようなことがあれば、その日の残業代としてもう月末の給料には組み込まなくちゃいかぬわけですから、それぞれ計算できるわけです。
 ただ、年間単位で労働時間を決めております場合に、やはり年間たってトータルしてみて若干精算的なものが残る余地が技術的にはございますので、それは端数の精算みたいな感じでそういう技術的な問題が残ることがあるというふうに御理解いただければありがたいと思います。
 それから、四時間のケースでございますが、これは変形制の場合に限らず、割り増し賃金を払わなくちゃいかぬのは八時間を超えたところからというのが、これは変形制の場合に限らず全体としての取り扱いでございます。四時間ということは、先ほど申し上げましたように一週の限度時間を四十八時間、これを前提にし、一日についても現在の十時間を縮小する方向で検討するとした場合には、四時間というようなことを続けますと絶対ほかのところで埋め合わせがつかなくなりますので、まずそういったことはないかとは思います。
 仮に、四時間で二時間のオーバーの労働をしたという場合でございますが、これはいわゆる割り増し賃金率の対象には変形制の場合に限らずならないわけでございますが、こういった場合は二時間完全にオーバーしておりますので、年間単位で見ていくと、当初約束していた総労働時間を超えることが出てきます。その場合には、割り増し賃金を払わなくちゃいかぬということにはね返ってまいります。そういう精算が最後には必ず残ると、こういう使い方をすれば。そういう意味でございますので、御理解願いたいと思います。
#122
○中西珠子君 最終調整は一年間たってからということになりますね。
 それから、一週間の上限は四十八時間とおっしゃいました。一日の上限はどのくらいになさるおつもりですか。九時間九時間とおっしゃっていたから九時間ぐらいにするんですか。三カ月の変形労働時間は、もう我々一生懸命になって上限つけてくださいといって十時間になりました。それじゃ長過ぎると思うんですよ。本当は八時間にしていただきたいんです。だけど、さっきから九時間九時間とおっしゃっているから、少し減らして九時間になさるおつもりですか。
#123
○政府委員(伊藤庄平君) 先ほど申し上げましたように、この一年の変形制の趣旨からいって、週休二日制あるいはそれ以上の休日を確保するということで、一週単位で言えば仮に土曜日出させたとしても八掛ける六の四十八、この辺を前提に一週単位を決めていくということでございます。
 一日になりますと、既に三カ月の場合はもう十時間でございますので、これを縮小する方向で検討するとなると、本当に幅が物すごく限られた幅でございまして、この辺まで決めてしまいますと、なかなか審議会の方にいろいろ議論を願うにも、何かもうすべて決めてかかるようなことにもなりますので、今明言はできませんけれども、そういった幅の中で御議論を願って決めていきたいというふうに思っております。
#124
○中西珠子君 一日の上限はなるたけ八時間にしてください。お願いいたします。
 それから、連続労働日、これはやっぱり上限をお決めになりますでしょう、七日に一回ぐらいの休みという。週で言うと、変形で休みのときも働かせるというふうなことになって、後で休みを上げることにもなって、一週間のうちに一つと言うと不都合になるかもしれないけれども、七日に一日は休むというふうなことはお決めくださいますか。
#125
○政府委員(伊藤庄平君) 連続労働日数につきましては、通常の場合四週四回休ませればいいというのが労働基準法の定めてございますが、変形制を採用する場合には一週に一回休ませなければならないと、こういうふうにする予定でございます。これで連続労働日数の上限として機能するように私どもやってまいりたいというふうに思っております。
#126
○中西珠子君 それから、三カ単位の変形労働時間のときには、育児・介護などの家族的責任を有する者、勤労学生等の特別な事情のある者につ
いては十分な配慮をすることを義務づけられているわけですね。この一年間の単位の変形労働時間のときには、やはり同じようにやっていただけますか。
#127
○政府委員(伊藤庄平君) ただいま労働省令で御指摘のような育児あるいは介護に当たる方々への配慮義務をこの変形制を採用する場合に定めておりますが、これは当然一年の変形制を採用する場合にもこの適用を拡大していくといいますか、当てはめて適用していくと、こういう考えております。
#128
○中西珠子君 それから、年少労働です。これは適用除外だったのに、今度は週四十八時間以内ならいい、一日八時間以内ならいいと、こういうことで適用になりますね。これは健康上、また就学の都合からも大変なんじゃないでしょうか。
#129
○政府委員(伊藤庄平君) 年少者につきまして、今まで三カ月の変形制について適用がなかった点を今度適用する点の理由でございますが、先ほど来申し上げていますように一年の変形制は、年間を通じて実質的に完全適休二日制あるいはそれ以上の休日を確保していく、こういうことをねらいといたしておるわけでございます。
 したがいまして、年少者の場合にも、工場全体が休む中で、休日がふやされている中で、やっぱりその恩恵を及ぶように手配していかなければならないと、こういう考えから適用することとしたわけでございます。ただ、条件を厳しくつけておりまして、年少者について一年の変形制を適用する場合には、一週については四十八時間以内、それから一日については八時間以内で労働省令で定めるところを限度にすると、こういうことでございますので、御指摘のような今の場合に比べるとかなり厳しい条件でございますので、年少者がその仕事につかれるといったような事態は出ないよう十分配慮したつもりでございます。
#130
○中西珠子君 その年少労働者の保護の立場から、よく指導をしていただきますようにお願いいたします。
 それから、三カ月単位の変形労働時間のときには、通達で季節などにより業務の繁閑の差が非常にある事業などを対象業務としていますね。今回の一年間の変形労働時間制というものは、全然業種の限定というのはないんですか。どんな業種でも適用できるんですか。
#131
○政府委員(伊藤庄平君) 三カ月の変形制につきましては、例えば私ども通達では観光バス等を例示しておりますけれども、その期間を通じて日々の労働時間や休日を特定できないような業種、あるいはしょっちゅう労働時間の変更を余儀なくされるような性格の事業、これらについては変形制の適用の余地はないというようなことを示しております。
 この点につきましては、一年制の場合もまさにそのとおりでございまして、むしろ一年通して見通して休日の設定があらかじめ可能か、労働時間の特定が可能かということになりますので、三カ月の場合よりもより適用に当たっては厳しい制約を受ける業種が出てくるんではないかというふうに思っております。
 ただ、あらかじめ制度としてこれこれの業種は除外するということは決めておりませんが、これはそういうところからおのずと制約を受けることと、もし年間を通して決め、休日を増加させ、あるいは労働時間を特定できるのであれば、そういったメリットを勤労者の方にも享受してもらうために業種を特に限定する必要はないだろうという考えによるものでございます。
#132
○中西珠子君 労働者の保護の立場から厳しい制約をつけていただくことをお願いいたします。指導をなさる上で、先ほど申し上げた一日の上限八時間、一週上限四十八時間、連続労働日七日に一回の休みということは、連続労働日は六日ということですね。それで、とにかくこれは余り利用されやすいのでどんどん広がってしまうというのも大変困ることなので、厳密な指導をやっていただきたいと思います。
 それで、先ほど来から出ていますけれども、時短促進臨時措置法の時短推進委員会というのを各企業レベルでつくって、そこで満場一致で可決すれば届け出をしないでいいということになりますから、変形労働時間の届け出もしなくていいということになると、その追跡調査も難しいし、なかなか監督がなされにくいんじゃないかと思うんですけれども、その点はいかがですか。
#133
○政府委員(伊藤庄平君) 一年単位の変形労働時間制、これは労使協定を要件にしておりますので、労使で話し合って協定を結び、それを労働基準監督署へ届け出るということが義務づけられておるわけでございます。今お話のございましたように、時短促進法に基づいて事業場内に時短推進委員会を労使で構成している場合、そこで全会一致で決議したものについてはこの協定の届け出は必要はないというのが法律上の定めてございます。
 ただ、時短促進法では、この事業場内に設けます時短推進委員会に対しまして、いろんな労使で時間短縮のための話し合いを広範に行っていくことを期待しておるわけでございますので、その点の労働者の選出につきましてかなり私どもは厳しくまた適正に行われるよう指導する姿勢をとっております。また、全会一致でなければならない、またそこでの議事録といいますか、それについてはちゃんと保存して、三年間だったと思いますが、一定期間保存しなければならないとか、いろんな厳しく定めているところでございます。
 私ども、こういった一年の変形制等のことはもちろんでございますが、まだ現在までのところ、むしろ逆にそういった時短促進法に基づく委員会の設置をもっともっと普及しなくちゃいかぬ。今のところはほんのわずかでございますので、もっともっと普及しなくちゃいかぬと思っている段階でございます。そういったところにつきましては、記録も残っている、またすぐわかると、こういうことでございますので、十分指導監督に当たってチェックが可能だというふうに思ってますので、そういうふうな厳正な形がとられるように指導をしていきたいというふうに思っております。
#134
○中西珠子君 労使協定の場合もそうですけれども、組合の組織率が大変下がっておりますし、組合のないところはやはり労働者の大多数を代表する者が出てきて労使協定を結ぶわけですね。
 それから、この時短促進臨時措置法に基づく時短の委員会というものも労使の代表から構成されるわけですが、労働側の委員をやはり適正に選んでいただくということを指導していただかないと、満場一致というのが使用者側のプレッシャーで満場一致になっちゃったというふうな形になっても困るわけですから、やはり労働者側の労使協定の場合の代表も、また時短促進臨時措置法の時短の委員会の労働者代表の選任方法ということもよく徹底して指導していただきたいと思います。
 だんだん時間がたっていって、通告しただけの質問がこなせなくなってきそうでございますが、時間外労働や休日労働の上限規制というものを法案に入れなかった理由は何ですか。
 これは、同僚議員が本会議でも、またここでもお聞きになりましたので、大臣がこれは日本の労働慣行には即さないというふうにお答えになっておりますけれども、労働時間を短縮していく上で、時間外労働が三六協定さえ結べば男性の場合はほとんど野放しで幾らでもできるという、こういうことによって時間短縮ができないという側面もあります。それから、時間外労働を縮減していくという方向で一生懸命労働省は御努力していらして、目安時間というのをこれまで年間四百五十時間だったのを三百六十時間になすったということも承知しておりますけれども、これはやっぱりある程度の上限というものは、ただの行政指導の目安だけではなくて、法律の中に盛り込むことはできないでしょうか。盛り込んでいる国もたくさんありますね。
#135
○政府委員(伊藤庄平君) 時間外労働の上限の規制を法律等に基づいて行えないかという御指摘でございます。
 時間外労働につきましては、我が国の場合、終身雇用慣行といいますか、そういった雇用慣行のもとで、やはり景気の変動に対応いたしまして時間外労働で雇用調整を図っていく、そういうことを通じて不況のもとでも失業者を出さない体制をつくっている、そういう状況がございます。したがいまして、経済情勢の変化に対応してある程度の弾力性を持っている、こういうことも必要でございまして、そういう意味では労使で十分その辺の時間外労働の程度の問題について話し合う、それで三六協定を締結していく、こういう形が一番望ましいんではないかというふうに思っておるところでございます。
 したがって、私ども時間外労働の労使協定につきましては、その上限についての目安時間を決めて、この一月には従来の年間四百五十時間を三百六十時間に短縮するというような改正もして指導を徹底してきておるわけでございます。かなりその点についての効果も上げてきているという状況でございますので、先ほど申し上げたような問題等考え合わせれば、やはり法律上時間外労働の上限を規定することについてはなかなか難しいというふうに考えているところでございます。
 ただ、もとより時間外労働、これの削減を図っていかなければ千八百時間という目標の達成にも近づいていかないわけでございますので、そういった観点からただいま申し上げました時間外労働協定の適正化指針、これに基づく目安時間につきましては指導を強化するとともに、その指針の内容についても速やかに見直しを行いながら対応していきたいというふうに思っておるところでございます。
#136
○中西珠子君 御承知のように、一九一九年のILOの第一回総会で採択されました第一号条約、これは工業的企業の労働者について時間外労働を一日一時間を限度とすると言っているんですね。一九三〇年のILOの第三十号条約は、商業、事務所の労働者については時間外労働は一日二時間を限度としている。これは最低の国際基準でございまして、これを法律の中にうたい込んでいる国はたくさんあるわけでございます。
 でも、日本は日本的な労働慣行のために時間外労働の規制を法律の中でできないということであれば、割り増し賃金率、これを引き上げたらどうでしょうか。割り増し賃金率というのは、諸外国では御承知のように一種のペナルティーとして、先ほどもお話にありましたけれども、アジア諸国ですらフィリピン以外は五〇%とか一〇〇%と決めているわけです。欧米諸国もそうです。フランスなんかは八時間を超えたときには五〇%にするけれども八時間以内は二割五分だとかいうふうに決めておりますけれども、そういうのは例外的でありまして、ほとんどが五〇%以上というふうに決めております。
 日本の割り増し賃金率は、終戦直後、一九四七年ですか、労働基準法ができましたとき以来全然据え置きのままで一度も上がっていないわけです。ですから、二割五分を適用している企業がほとんど九割だから上げられないというふうなお話もありますけれども、でもこれはやはり時間外労働の規制というものを法律の中に盛り込めないならば割り増し賃金率の引き上げをやっていただきたい。
 それで、何とか割り増し賃金率を少しずつ引き上げるというふうな含みをこの法案に持たせていらっしゃいますけれども、大体どの程度をお考えでいらっしゃいますか。政令でお決めになるということで、法律案には出ていないわけですね。
#137
○政府委員(石岡慎太郎君) 時間外・休日労働の割り増し賃金につきましては、時間外・休日労働の抑制あるいは国際的な公正労働基準の確立等の観点から基本的にその引き上げを図っていくべきではないかと考えております。そういう観点に立ちまして、今回の法改正におきましては、割り増し賃金率につきましては五〇%以下二五%以上という政策目標を掲げまして、その実態等を見ながら段階的に引き上げを行っていくという改正を御提案申し上げているところでございます。
 具体的に申し上げますと、この法案がお認めいただければ、当面まず法定休日労働の割り増し賃金率につきまして平成六年四月一日の改正法の施行に合わせまして引き上げることといたしたいと思っております。それから、時間外労働の割り増し賃金率につきましては、今ちょうど週四十時間制への移行の過程にございますので、週四十時間制への移行の状況を見ながらその引き上げについて中央労働基準審議会で検討をお願いしたい、以上のように考えております。
#138
○中西珠子君 年次有給休暇の継続勤務要件を六カ月に緩和なすった理由はどういうことですか。
#139
○政府委員(石岡慎太郎君) 今回の改正法では、従来一年間継続勤務しなければ年休が付与されなかったのでありますが、御指摘のようにその要件を六カ月に緩和いたしました。その理由をお尋ねでございますが、労働基準法研究会で六カ月に年休の継続勤務要件を緩和することを御提案いただいたわけですが、そのときに研究会では次のような理由を挙げておられます。
 一つは、若年労働者の年次有給休暇に対する希望が非常に強いこと、それから二つは労働力の流動化がいろいろ進展しておりますのでこれに対応した年休制度をつくる必要があること、三番目には入社初年度から有給休暇を付与している企業も相当数我が国では存在してきているということ、それから四番目にはILOの基準では六カ月勤務が継続勤務の要件となっていること、その他いろいろございますが、それらの理由が挙げられております。
 今回、そういう理由に基づきまして六カ月という勤務要件を御提案申し上げている次第でございます。
#140
○中西珠子君 この改正法案の中で六カ月に継続勤務要件を緩和なすった点、それから育児休業期間は出勤したものとみなすと、これは大歓迎いたしまして、大変いいことをしてくだすったと思って賛同いたします。その点は大変望ましい改正であると思います。
 ただ、今おっしゃいましたILOの百三十二号条約、これは最低勤務期間の六カ月ということを有給休暇の取得資格として認めてよいということになっているんですが、六カ月以上にしないようにということになっておりますが、最低の有給休暇の日数というものは一応三労働週、すなわち十五日ということになっているんです。これは、もちろんすぐには付与日数をもっとふやしていただきたいということは申しません。
 というのは、現在年休付与日数の平均も少ないし、また取得率が非常に少ないということを聞いておりますが、今どのような状況になっていますか。また、取得率の低い理由はどのように把握していらっしゃいますか、お伺いします。
#141
○政府委員(伊藤庄平君) まず、年次有給休暇の取得率でございますが、平成三年の数字で申し上げますと、付与日数は平均十五・七日でございます。これに対しまして、取得されている日数の平均が八・六日でございまして、率に換算しますと五四・六%、半分を少し上回る程度、こういう状況でございます。こういうふうに横ばい、やや上昇気味で推移している取得率でございますが、まだまだ不十分であることは御指摘のとおりでございます。
 このように年次有給休暇を取得しにくい理由でございますが、私どもの調査結果によりますと、やはり周囲に迷惑がかかる、こういうふうに理由を答える者が一番多く、次いで病気など有事への備え、あるいは仕事がたまって後でかえって忙しくなってしまうからとか、仕事が多い割に人手不足であるからというようなことが理由として多く挙げられております。
 こういうことから見まして、年次有給休暇の取得率が低い原因は、その事業場内での有給休暇をとるためのとりやすい雰囲気づくりといいますか、あるいは事業場内で調整し合う、そういったシステム・体制づくりがやはり不十分な点にあるのではないかというふうに思っております。
#142
○中西珠子君 一九八七年の労基法改正のときに国会で修正をいたしまして、年次有給休暇をとったために勤続手当がもらえなくなったり、いろいろ不利益な取り扱いをするという事例が多かったので、そういった不利益取り扱いの禁止条項を入れたわけです。ところが、労働者側にとって年次有給休暇というのは、病気のときにとっておこうとか、急に家族が病気になったときに困るからとっておこうとかいう気持ちが大変強い。それからまた、ほかの人が休まないから休めないとか、代替要員もなくて人が足らないから休めないとかいろいろあるわけですけれども、そういった意識改革というものも必要だと思いますし、もう少しとりやすい雰囲気をつくるということも必要だと思います。
 病気休暇というものが日本にないですね。それから介護休暇もありません。クリントン政権の初仕事として、本人の病気、それから家族、それは子供も配偶者も年とった親なども含むわけですけれども、そういう休暇を法制化いたしました。こういったものがやはり日本にも必要なのではないかと考えるわけでございますが、いかがでしょうか。
#143
○政府委員(石岡慎太郎君) 病気休暇及び介護休暇を法制化してはどうかという御指摘だと理解いたしますが、この問題は確かに労働省がこれから大いに検討していかなければならない課題であると思っております。
 ただ、現状を見ますと、病気休暇も介護休暇も企業においてはまだまだ普及率が低い状態でございますので、労働省としましては、まずこの普及を促進する努力をしなければ法制化の問題にもつながっていかない面もございますので、大いにその点につきましてこれから努力しなければいけないと思っております。
#144
○中西珠子君 大いに努力していただきたいと思います。
 それから、時間も迫ってまいりましたので、裁量労働制というものについて、現況はどうなっているか、届け出件数というのはどのくらいあるのか、お聞きしたいと思います。
#145
○政府委員(伊藤庄平君) 労働基準法に基づきます裁量労働制の適用でございますが、労使協定に基づいてこれは実行されるものでございますので、その届け出の件数を見ますと、昭和六十三年は三十四件でございましたが、以後平成二年に百二十三件、平成三年になりますと八百五十件の届け出が出ております。
#146
○中西珠子君 裁量労働制、これの対象となる業務を命令で定めることにこの法案ではなっておりますが、なぜそういうことになさるのか理由をお聞かせ願いたいと思います。
 命令で決めてしまいますと、みなし労働時間制を採用するために労使協定で、命令で決まっているからやろうというふうになって、本当に裁量労働であるというふうに実態は言えないような働き方の労働者でもその業務が命令に定められているから裁量労働ということになるということにならないか。そういう裁量労働、みなし労働制というものを、今までは研究業務とかそういうふうに例示していらしただけなのに今度は特定なさるわけでしょう。そういうときに、一体どの範囲のものを考えていらっしゃるのか。非常に広範囲になってしまうと、実態はそうではないのに裁量労働ということにされてしまうなんという、今申し上げたような危険もあるのではないかと思うわけです。
#147
○政府委員(伊藤庄平君) 裁量労働制の対象業務につきましては、現在法律では「研究開発の業務」が例示になっていますが、「その他」となっておりまして、「その他」につきましては通達で例示をしている。これは限定的な例示でございませんで、記事の取材等に当たる人あるいはシステムエンジニア、ディレクター、そういった方を例示して、そこにもまたその他がつく、こういう形になっておるわけでございます。
 我が国の経済のサービス化、情報化が進む中でそういった裁量的な労働を行う、あるいはそれに近い人たちというのはふえてきているわけでございますが、やはりそういった状況の中でこの裁量労働制というものを安定した的確な制度として運営していくためには、そういう例示ではなくて業務もしっかりと特定して運営していくことがいいのではないか、こういうことから私ども法律で具体的に労働省令でその対象業務は決める、こういうことにいたしたわけでございます。ただ、労働省令で適用対象業務を決めるわけでございますが、そういう業務であっても、その中でさらに仕事の遂行方法、労働時間の配分等について本人の裁量にゆだねられているという要件がかぶることは今と全く同じでございますので、特に今よりも拡大する形になるということではございません。
 具体的に、命令でどういった部門を決めていくかということでございますが、当面私ども、現在五業務が通達で例示されておりますけれども、これを中心に決めていきたいというふうに思っております。
 議論といたしましては、中央労働基準審議会での議論としても、例えばサラリーマンの方のうちで、本社等におきまして非常に高度な経営戦略上の企画とか、そういった部門に携わっている中にはかなり裁量的に働いている人がいるので、その辺の人をこの裁量労働制の対象にできないかという観点の議論はございました。
 これは、確かにそういった方たちの労働時間管理のあり方というものは、制度としても受けとめ検討していかなければならない課題でございますが、実態等を正確に把握し、どのようにそういう人たちを定義づけていくのかということはかなり難しい問題でございますので、私どもそれについては別途研究、検討の場を設けて、その結論、成果が得られた段階で対応を考えていきたいというふうに思っております。したがいまして、繰り返しになりますが、当面現行の五業務を中心に決めていく、こういうことで基本的には考えております。
#148
○中西珠子君 現行の通達では、具体的に「新商品又は新技術の研究開発等の業務」、「情報処理システムの分析又は設計の業務」、「記事の取材又は編集の業務」、「デザイナーの業務」、それから五番目が「プロデューサー又はディレクターの業務」というふうに例示されていますね。このほかに、サラリーマンの中でも企画を担当しているような人、この人たちは非常に裁量的に働いているからこういう人も入れるかもしれないとおっしゃいましたけれども、これから研究してお決めになるわけですか、それとも通達に出ているものはさっと入れるということですか。
#149
○政府委員(伊藤庄平君) 現在、通達で示されている業務につきましては、私どもそれを中心として労働省令で施行に合わせて決めていきたい。ただ、さっき言いましたサラリーマンの中で特にそういった高度な経営戦略等に携わる人たちの扱いについては、これは別途研究、検討の場を設けた上で対応を決めていきたい、こういう考えでございます。
#150
○中西珠子君 裁量労働としてみなし労働時間制にしてしまうと、実態はそうでないのに急に労働時間の規制が適用されなくなるし、かえって長時間労働で疲労をしてしまうというふうなケースも出てきますので、よく指導なすって、実態もお調べになって命令の中に入れてくださるようにお願いいたします。
 時間が来ましたので、終わります。
#151
○吉川春子君 政府は一九八八年、経済運営五カ年計画を策定して、九二年までに年間総労働時間を千八百時間に縮減するとして週四十時間の達成を公約しております。
 一番最初に伺いますが、九一年、九二年の年間の労働者一人当たりの総実労働時間及び所定内実労働時間、この数字だけ端的におっしゃってください。
#152
○政府委員(伊藤庄平君) 総実労働時間についての数字のお尋ねでございますが、平成三年度で申し上げますと……
#153
○吉川春子君 西暦で言ってくれませんか。私、西暦じゃないとわからないので。
#154
○政府委員(伊藤庄平君) 換算してもらわないとちょっと私もあれでございますが、今資料をちょっと元号で書いておりますので。
 平成三年度総実労働時間二千八時間でございます。所定内がそのうち千八百三十八時間、それから所定外が百七十時間でございます。それで、平成四年度でございますが、総実労働時間千九百五十七時間になっております。所定内が千八百十三時間、所定外が百四十四時間、こういう水準でございます。
#155
○吉川春子君 昨日の本会議で総理は、千八百時間を達成する公約は、個々の労働者についてではなく、パート労働者を含めた平均の労働時間のことだと答弁されましたけれども、これは個々の労働者が人たるにふさわしい生活を営む条件としての時短という発想が欠けているんじゃないかと私は思います。短時間労働者、パート労働者との平均じゃなくて、通常労働者について、一般労働者について千八百時間にすることが今切実に求められているんじゃないでしょうか。
 日本生産性本部の一九九三年版労使関係白書によりますと、OECDではパートタイム労働者の比率が我が国よりも高いために平均労働時間が低い、我が国もパートタイム労働者の比率がアメリカ並みに上昇し、かつ労働時間の弾力化が進むことで一般労働者の年間労働時間が千九百五十時間程度に縮減されれば千八百時間が達成されると、こういう試算をしていますね。政府の発想もこれと同じなんですか。
#156
○政府委員(伊藤庄平君) 生活大国五カ年計画、それ以前の計画におきましても目標として示されておりました年間総実労働時間千八百時間、この目標でございますが、従来からこの目標の設定、またその後のこの目標に対するフォローアップにつきましては、毎月勤労統計のパートタイム労働者も含めた全労働者の数値を用いて行ってきているわけでございます。そういう意味ではパートタイム労働者を含む全労働者の数値で比較するということは事実でございます。
 ただ、私ども、この目標達成に当たりまして、そういったパートタイムを含む全労働者の労働時間の数字でフォローアップを行うにせよ、個々の労働者にとりまして完全週休二日制を普及させていく、また勤労者一人一人の方が年次有給休暇の二十日取得といったことに向かっていく、また所定外の労働時間についてもできるだけ削減していただく、そういうことを通じてやはり一人一人の労働者の方ができるだけ千八百時間に近づいていくように私どもも努力し、また労使の方にもその取り組みを積極的に進めていただく、そういうことがこの経済計画の目標からは期待されているんだろうというふうに受けとめておりまして、そういう受けとめ方のもとに最大の努力で進めてきているところでございます。
#157
○吉川春子君 パートタイム労働者、短時間労働者と一般労働者をまぜて、それで時短を進めればいい、こういう発想は生産性本部のと同じですね。
 それで、大臣にお伺いいたしますけれども、短時間労働者との平均においてさえ千八百時間は達成されていないわけですが、前回の八七年の法改正のときに、この法改正によって千八百時間が達成されるんだ、そういう宣伝もなされたわけですが、なぜ公約が実現できなかったんでしょうか。今どういう反省に立っておられるでしょうか。それを大臣から御答弁お願いいたします。
#158
○国務大臣(村上正邦君) お答えいたします。
 その目標の達成に至らなかったことについては遺憾である、まずこう申し上げます。
 そこで、反省が足りないんじゃないかと先ほども言われました。コマーシャルの何かじゃありませんが、反省は猿でもする、こう言いますが、やはり反省も大事なことでありますけれども、前向きに積極的に今後取り組んでいくということが大事だ、私はこう思いますので、そういう方向で達成に向かって新たな決意を持って取り組ませていただく、こういうことでひとつ御理解を賜りたいと思います。
#159
○吉川春子君 重ねて大臣にお伺いいたしますが、達成できなかった原因ですね。なぜ達成できなかったか、その原因を幾つか挙げていただきたいと思います。
#160
○国務大臣(村上正邦君) これは、事務方の方で答弁させます。
#161
○政府委員(石岡慎太郎君) 前回の経済計画の目標が達成できなかった原因でございますが、一つは千八百時間達成のためには完全週休二日制が普及することが前提となっておりました。しかしながら、中小企業を中心としまして我が国の完全週休二日制の普及がおくれたということが挙げられようかと思います。
 それから、年休が二十日取得されるということも千八百時間の前提として考えていたわけですが、年休の取得が五割程度にとどまっているということも原因として挙げられると思います。
 それから、平成四年度におきましては残業は百四十四時間となりましたけれども、前の経済計画の期間中は残業がかなり高水準で推移したという点も原因として挙げてもいいのではないかと考えております。
#162
○吉川春子君 私は、やはりいろいろな理由があるんですけれども、午前中からずっと問題になっております猶予措置、特例措置、こういうことで例外を設けだということも一つ大きな原因になっていると思いますので、政府みずからが設けた例外、特例ですね、これについて数字をお伺いいたします。
 今週四十時間制の適用を受けている労働者、政令による猶予措置の対象になっている労働者、そして特例措置の対象となっている労働者はそれぞれ何%か、政府の口からおっしゃってください。
#163
○政府委員(伊藤庄平君) 現行の法定労働時間の枠組みの中で申し上げたいと思いますが、猶予、特例のそれぞれの扱いの対象になっている労働者数でございますが、割合というふうにおっしゃいましたか。
#164
○吉川春子君 両方言ってください。
#165
○政府委員(伊藤庄平君) 猶予対象事業の事業場数百六十六万三千六百でございます。それから、労働者数にいたしますと子九百七十八万人おります。これは、事業者センサスによる数字でございまして、全体の比率でいきますと、猶予対象の事業場の方が四五%、労働者数で四五・四%になります。これにつきましては、既に実態として所定内の労働時間がどこまで短縮が進んでいるかということを全然考慮せずに事業者センサスで、とにかくその規模に該当する事業場数を拾った数字でございます。
 私ども、昨年の五月、六月に所定内労働時間についてどこまで進展しているかについての実態調査を行いました。その中で週四十時間をクリアしている事業場数も相当ある。また未達成のところもある。その割合を使いまして、この猶予対象事業についてまだ四十四時間という猶予水準をクリアしているかしていないかに分けますと、未達成事業場の方は先ほど百六十六万三千六百と申し上げましたが、そのうち未達成のものが七十三万事業場、率にして一九・九%、労働者数にして四百五十五万人、一〇・四%、こういうところが未達成で残っているというふうに計算をいたしておるところでございます。
#166
○吉川春子君 猶予と特例と分けてそれぞれ何%ですか。
#167
○政府委員(伊藤庄平君) 特例の方もあわせてお答えいたします。
 特例の方は、これは十人未満の商業、サービス業ということでかなり零細なところが入ってまいります。事業場数で特例措置対象が百六十九万七千事業場でございます。率にして四五・九%になります。それから、労働者数でこれは六百十三万三千人、一四・一%という割合になります。
#168
○吉川春子君 それで、今回法改正によってその四十時間制が適用されるとなると、この数字はどういうふうに変化するんですか。要するにその四十時間の恩恵を受けるところはどれぐらいのパーセントになるかわかりますか。
#169
○政府委員(伊藤庄平君) 現在、御審議願っている本法案につきまして成立をさせていただければ、平成六年の四月から原則としての週四十時間制が実施され、その時点で新たに四十四時間という水準からの猶予が別途一部業種規模についてるわけでございますが、これの範囲につきましては再三申し上げてますように、この法律成立後速やかに新たな実態調査を行いまして、最新時点での所定内労働時間の進展状況を規模、業種ごとにとらえ、それに基づいて新たに極力できるだけ限定した形でこの猶予対象事業の範囲をお決め願う、こういうふうに考えております。
 したがいまして、現段階ではこれが具体的にどのくらいが新たな猶予対象として残るかどうかということの推定はできないといいますか、困難な状況でございます。
#170
○吉川春子君 時短を本当に推進して、千八百時間に到達するために計画をもって行うというのであれば、特例措置などもやめるべきだと私は強く指摘しておきたいと思いますし、政府がもっと方針を持って数字の上でも見通しを立てて時短を促進すべきだというふうに思います。
 それで、憲法二十七条の問題についてお伺いいたしますけれども、この憲法二十七条二項は労働条件の最低基準を法律で定めるというふうにしてますね。そして、これは例えば注釈日本国憲法によりますと、「労働条件の決定を労使間の契約の自由ないし私的自治に委ねた場合に、経済的弱者たる労働者に低賃金や過重労働を強いたという歴史的経験をふまえて、国が労働者の保護のために立法によって介入し、労働条件の基準を決めることにより契約自由の原則を修正する」ものだと、こういうふうに書いてあります。そしてまた、労基法のコンメンタール、労働省がおつくりになったものですけれども、ここにも同様の趣旨で、「契約自由の原則を修正していくという、つまり、世界の労働法の流れをしっかりと見極めて日本の法秩序の新しいあり方を宣言していることに他ならない」と、こういうふうに書いてあります。契約自由の原則に対する介入であると。
 そしてもう一つは、それを法律という形式によって、つまり国会で決めようというのが二十七条二項ですね。政令に任せてもいいなんて先ほど来言っていますけれども、憲法は政令に委任する場合は、またその政令に委任するという規定を設けていますでしょう。明確に法律で、つまり国会で定めようとしているのに政令にゆだねられる根拠というのはどこにあるんですか。
#171
○政府委員(石岡慎太郎君) 三点御指摘があったと思いますが、まず第一点は、特例措置はやめてはどうかということでございます。この点につきましては、審議会でいろいろ議論があったんですが、この特例措置は基本的には継続するという結論をいただいておりますので、水準の見直しなどは行いますけれども、存続はしたいと思っております。
 それから二番目に、週四十時間への見通しを持って臨むべきではないかという点でございますが、それは全くごもっともでございます。今の見通しといたしましては、平成九年四月から大半の企業が週四十時間に移行するということになろうと思っております。
 それから、憲法二十七条の勤務要件の基準を法律で定めるという点につきましては、確かに御指摘のとおりその基準はできるだけ法律で、すなわち基準法で定められるべきだと考えております。全く政令にゆだねることを憲法の二十七条はその趣旨として排除しているわけではないと従来から解釈されております。したがいまして、昭和六十二年の基準法の先回の改正の際も、法定労働時間は附則百三十一条で政令で定めることにさせていただいたわけでございます。しかし、その場合には条件がございまして、合理的な範囲で具体的な要件をつけて政令にゆだねるということが必要でございます。したがいまして、今回の場合もそういう原則条件をつけて政令に落とさせていただいていると考えております。
#172
○吉川春子君 政令にゆだねていいということはどこも書いてないし、憲法は形式上の法律という形式で定めるということを書いてあるだけでして、それを勝手に政府が決めてもいいんですよと従来から解釈されている。そのされているということは労働省が解釈しているけれども、それは不当だということを私は申し上げておきます。
 ここにだけとどまれないので、次へ進みますが、大臣に変形労働時間制についてお伺いいたします。
 産業革命以来、今日の歴史の中で八時間労働制の原則というのは確立されてきまして、憲法の二十五条にも「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」というものを定められておりまして、その憲法二十五条なりを受けてこの労働法令が定められているわけですね、社会権として。そして、労働基準法の一条も「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たす」と、そういうふうに書いてある。満たす上で欠くことのできないものとしてあると思うんですね。八時間働き、八時間眠り、八時間は自分のために使う。こういう生活を保障するために労働時間の短縮というのが行われる、それこそが労働時間短縮の目的であると考えるべきだと思いますが、これは大臣の御認識はいかがですか。
#173
○国務大臣(村上正邦君) 委員のおっしゃる趣旨について、全く私も文化的、健康的な生活を営むということについてやぶさかじゃありません。
 そこで、一日八時間という労働パターンの持つそうした意味は私も深く理解をいたしております。同時に、例えば年間単位で計画的に休日をふやし、働くときは働く、そして休むときは思い切って休むと、そうしためり張りのきいた働き方をすることも労働と生活全体の調和のために意味のあることではないかなと、このような認識に立っております。
#174
○吉川春子君 重ねてお伺いいたします。
 三カ月の変形労働時間制を導入する場合、先ほど来お話がありましたように上限は一日十時間とされています。私も大臣と同じ首都圏から通っているんですけれども、一時間半かかります。ですから往復三時間の通勤時間がかかるわけです。そうすると、もうそれだけでお昼の休憩時間を入れれば一日の拘束が十三時間とか十四時間とか残業なしでなるわけです。これは、ゆとりある生活などとは到底言えないんです。
 例えば、お母さんの場合を見てください。九時に出勤して十時間となると、お昼休みに一時間休むとして夜の八時です。それから保育所に赤ちゃんを迎えに行くとして、もうそこまで預かってくれる保育所はありませんからもう一カ所別に預けているわけです。公立の保育所からもう一カ所別の保育所に預けている、二重保育と言っているんですけれども。そこで、幼児をおんぶして九時過ぎごろ帰って、それでお食事の支度をして、小学生の子供がいたらそれにも食べさせて、子供が寝るとなるともう十時では寝られません、十一時とかそういう時間になるんです。
 そういうことを現実に考えたときに、一日十時間まで働かせていいという、別の日に休むからいいという理屈だけではとても解決できない問題が含まれるんですけれども、大臣、この点はいかがお考えですか。
#175
○国務大臣(村上正邦君) 今例を挙げておっしゃられたことについては、私も理解を示します。
#176
○吉川春子君 だから大臣、変形労働時間というふうに何か難しく理屈で言うとわかりにくくなるんだけれども、実際にはそういう効果というか、それを女性の労働者へも男性の労働者へも及ぼしているんだということをぜひ念頭に置いていただきたいと思うんです。
 それで、三カ月と一カ月の変形労働時間制が現在導入されていて、これを一年に延ばすんですけれども、では三カ月や一カ月の変形労働時間がどういう効果を上げて、これは好ましいと思ったから一年に延ばすんでしょうけれども、まずその実態をどうやって調査されたのか、どこが好ましいと思ったのか、その辺について労働省、お考えいかがですか。
#177
○政府委員(伊藤庄平君) この三カ月あるいは一カ月の変形労働時間制につきましては、私ども平成二年に、労働基準法の前回の改正施行後の意識調査等を行い、これがどういうふうに働く方々に受けとめられているかを調べ、またその後実態調査を通じて、変形制を採用しているところで実際の労働時間がどのくらいになっているかというようなことを調べてまいりました。
 その中で、例えば平成二年の時点で変形労働時間制についての意識調査を行っているわけでございますが、この時点で、例えば一日の所定労働時間が八時間を超える日があっても休日がふえるのであればよいと、こういうことを四五・六%の方がそこで答えておるわけです。また一方、一日の所定労働時間が八時間を超える日があっても暇な日の所定労働時間が短いのであればよいというのが二二・三%、それから一日の所定労働時間はどんなことがあっても八時間を超えない方がいいという方も二七・七%おられます。
 ただ、同じ調査で見ますと、変形労働時間制がその生活に及ぼす影響、これについても、それがよい影響を及ぼしたか、悪いと受けとめたか、特に影響がないかということを聞いておりますが、二五・九%の方がよい影響を及ぼす、悪い影響を及ぼすと答えられた方が一三・三%、特に影響がないと答えられた方が五五・七%、こういった状況でございます。
 また私ども、実態調査に基づきまして、変形労働時間制を採用している事業場の実際の労働時間でございますが、それを調べますと、平成四年の実態調査でございますが、現行三カ月単位の変形労働時間制の採用事業場、これは過所定労働時間の平均が四十時間十六分というふうになっております。通常の変形制を採用していない事業場の平均が四十二時間四十分でございますので、この変形制によりまして所定内労働時間の短縮がかなりできている。
 こういったことを踏まえて、私ども今度本格的に週四十時間労働制を導入するに当たりまして、これは週休二日制に相当するものでございますので、やはり休日をふやしていく。こういった導入しやすい形をつくって、週四十時間労働制を実際いろんな技術的な問題がある事業場にも採用していってもらわなくちゃいかぬ、こういう気持ちでさらに一年単位で、現実に年間で休日管理を行っているところがかなりの数に達していること等も踏まえて、この一年単位の最長でございますが変形労働時間制を導入したい、こういう考え方によるものでございます。
#178
○吉川春子君 今言われた時短の効果があった、四十時間十六分になったと、ではその同じ事業所で三カ月の導入前は何時間何分だったんですか。
#179
○政府委員(伊藤庄平君) これらの個々の事業場で変形制を採用する前に何時間であったかということはデータがございません。ただ、今度の一年の場合でも同様でございますが、この変形労働時間制を採用する場合は、原則として週の所定労働時間が平均四十時間以下になっていなくちゃいかぬ、こういうことになっておりますので、そういう点からこういった数字が出てきているんだろうというふうに思っております。
#180
○吉川春子君 前に比較するものがないのに導入した後だけ四十時間十六分になったと。比較もできないのに別のものと比較して時短の効果があったというのはこれはすごいごまかしで、そういうことを理由づけにされるのはちょっとフェアじゃないというふうに思うわけです。
 三カ月単位の変形労働時間の導入実績、届け出事業所数、これの数字だけお願いします。
#181
○政府委員(伊藤庄平君) これは、先ほど申し上げた調査とは別に、私ども労使協定でこれも三カ月の場合は行うことになっておりますので、その届け出件数を集計いたしますと、平成元年が三百六十一件、平成二年で四百十一件、平成三年の時点で八百十五件と、こういう状況でございます。
#182
○吉川春子君 前回の法改正の審議のときの議事録を拝見しますと、変形時間制を導入したときは、突発的なものは別として、時間外労働というものはないということを前提にしていただくべきものだと、それから時間外労働協定には変形労働時間制を採用しているかどうかわかるようになっているので中身を検討して必要な指導をしていきたいと、こういうふうに政府委員の方が答弁しておられますけれども、今おっしゃった届け出のあった事業所について、時間外労働についてはどういう指導をされたんですか。
#183
○政府委員(伊藤庄平君) これらの今申し上げました件数の事業場について、時間外労働が実態としてどうなっているかという状況についてはデータがございません。
 ただ、私どもこの変形労働時間制、三カ月の場合もまだ労働基準法の適用対象事業場の中で非常にわずかな状況にございますけれども、そういった就業規則の届け出を受けた場合に、その労使協定の中身、またそれが当時六十二年国会審議の中でも指摘されましたようないろいろ問題を生むような形態にならないかどうかというようなことを十分チェックさせて受理をさせておるところでございます。
#184
○吉川春子君 国会の委員会で変形労働時間というのは大問題だということで質問されて、だからこういうことでちゃんと指導していきますというふうにおっしゃっているのにどうしてデータもとらないんですか。データをとらなくてどうやって指導できるんですか。それは、国会に対して約束したことを守っていらっしゃらないということですごく不誠実だというふうに思うわけです。
 つまり、さっきも言いましたように十時間も所定労働時間が決められて、さらに時間外なんてなったら本当に大変でしょう。だから、そういうことのないようにということで指導していくというんですね。だから、導入されて三年なら三年たって、では実際に三カ月変形で所定労働時間延ばしたところは時間外がどれだけあったのか、それとも指導どおり時間外が全くないということで経過できたのか、その辺データをとらないとは何事ですか。
#185
○政府委員(伊藤庄平君) 私ども、こういった変形制を使っているところでいろいろ残業あるいはその他の乱用の問題が出てないかどうかについては、これは第一線の労働基準監督署がそういった労使協定の届け出を受け、しかも件数がまだこういったふうに三けたの状況でございますので、そういった事業場を十分把握して適切に指導していくと、こういう状況でございまして、現段階でそういう指導をしていますことと、その状況を統計的に本省が把握するかどうかとは若干別の問題でございまして、そこは御理解願いたいと思います。
#186
○吉川春子君 適正に指導しているかどうか、その指導の効果が上がっているかどうかというのは数字を見ないとわからないんじゃないですか。少なくとも、私たちはその数字を見てああ指導しているなどか指導が足りないなとか、こういうふうに判断するんであって、そういうデータもとらないで適切に指導していますというのは国会の答弁のときだけと、そういうふうにとられてもやむを得ないと思うんです。
 先ほど、三けたのわずかな資料だとかとおっしゃるんだけれども、さっきはもう三カ月単位の変形労働がすごくいいんだと、これだけいいという意見もあったなんておっしゃっているじゃないですか。私は、まだわずかな数の中でそんな結論は出せないんじゃないかと思うんですけれども、あなたは出したんですよ。
 時間の関係でもう一つ聞きますけれども、先ほど来問題になりました労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法が、労使の委員会で構成する労働時間短縮委員会の決議があれば労働協定そのものを不要とすると、あるいは労基署への届け出義務を免除したわけです。変形労働の導入について、では労使協定が不要とされた件数あるいは労基署への届け出義務が免除された件数、これはわかりますか。
#187
○政府委員(伊藤庄平君) 時短促進法に基づきまして事業場内に時短推進委員会を設置して、そこで時短を進めるための労使の話し合いを進めていく、そういう体制を整備したところについて届け出を受けておりますが、その届け出件数は全国で現段階で四十四件という状況でございます。
 これらについては、やはり時短促進法の一つの柱として、労使が相協力して、また話し合いながら労働時間短縮のための話し合いを進めていく体制の一つの柱として位置づけたものでございますので、私どももう少しこの推進体制、委員会の設置等の整備を進めていかなければならないというふうに考えておるところでございます。いずれにしましても、今御指摘の問題は、全国でこの四十四の事業場でどういう状況になっているかということでございます。
 それからなお、就業規則あるいは時間外・休日労働のいわゆる三六協定、これらについてはやはりこういう委員会が設置された場合であっても届け出をしてもらう、こういう仕組みにいたしております。
#188
○吉川春子君 ちょっと今の答弁がわかりにくかったんですけれども、労基署への届け出の義務を免除されたのが四十四件ということですか。
#189
○政府委員(伊藤庄平君) 事業場内に時短促進法に基づく委員会をつくっているところ、これが今のところ全国で四十四件と、こういう数字でございます。
#190
○吉川春子君 その労基署への届け出の義務を免除されたという数字はわかるんですか、わからないんですか。
#191
○政府委員(伊藤庄平君) 時短促進法に基づいてこういう委員会を設置した場合に、委員会での全会一致の決議をもって協定の届け出にかえることができるものというのは、今申し上げた四十四事業場だけに限られるわけでございます。
#192
○吉川春子君 だから、何件だったんですかと聞いています。
#193
○政府委員(伊藤庄平君) 趣旨が違っているかもしれませんが、こういう四十四の委員会の中で実際どんな活動を行い、中には決議等を行ったところがあるかどうか、こういう御質問でございましょうか。
#194
○吉川春子君 そうです。
#195
○政府委員(伊藤庄平君) これについては、私ども時短促進法を昨年施行いたしましてから半月経過しておりまして、今各地方を通じていろんなフォローアップを進めているところでございまして、この変形制の場合だけじゃなくていろんな時間短縮のための話し合いが行われているはずでございますので、そういったもののフォローアップを進めておりますが、まだ集計はいたしておりません。
#196
○吉川春子君 三カ月単位の変形労働時間制を導入して、そしてそこをきちっと指導するというふうにおっしゃっているんだけれども、例えばその中で労使協定が不要になる場合、その委員会の決議をもって労働時間の弾力化、時間外・休日労働等に関する労使協定とみなすと、こういうことが行われたり、具体的にはもう労基署への届け出の義務も免除されるわけだから、その時点で労基署としてはそこをいろいろ行政指導するきっかけというか、資料、そういうものを失うんじゃないですか。あるいは非常に不十分になるんじゃないんですか。こういう特例でもって本当に三カ月単位の変形労働時間制を導入した企業を具体的に指導することができるんですか。
#197
○政府委員(伊藤庄平君) 先ほども申し上げましたように、この時短推進委員会の設置、これは労働時間短縮臨時措置法のいわば一つの柱でございまして、こういう形で事業場内で労使の話し合いのもとに時短が進められる体制をつくっていく非常に大事な制度でございます。
 そういう意味で、こういう委員会が設置された事業場については私ども非常に注目をしておるわけでございますし、先ほど申し上げましたようにその活動状況等もフォローアップしていかなくちゃいかぬ。それで、実際に決議等を行った場合には、その記録、議事録等の保存も義務づけておりますので、まして現段階の四十四と、これは残念な数字ではございますが、そういう状況でございますので、第一線の機関を通じて十分にフォローアップ、チェックが行われていく、こういうふうに考えております。
#198
○吉川春子君 そうしますと、そういう委員会の内容とか、そういうものを全部労基署はつかむ、そうするとその届け出義務を免除したということと矛盾するんじゃないですか。届け出の義務を免除したということは、もうそこでよく話し合ってやれば、労使が合意してるんだから問題なかろうとさっきから繰り返し答弁されてますね、午前中から。
 だから、労基署に届け出をしない。でも労基署に届け出をされないものをどうやってあなた方はそういうものを指導することができるのか。それでもその内容については、届け出義務じゃないけれども任意的にいろいろと報告をさせてそして指導する、こういうことなんですか。
#199
○政府委員(伊藤庄平君) この時短推進委員会は、私ども時短促進法に基づく施策を推進するための一つの柱としておりますので、ここでの活動状況をフォローアップするといいますのは、そこでどんな活動が行われ、例えばどんな決議が行われたかを、いわば先駆的な事例をフォローし、これをほかの事業場等でもいろいろ参考にしていっていただく必要がある、そういう角度からチェックしていくわけでございまして、そういう意味ではその段階で活動状況またはその内容も当然フォローされるわけでございます。
 先生御指摘のように、そういう意味合いの非常に私ども期待している制度でございますので、乱用あるいは法違反の内容を含んでいないかという、そういうチェックの姿勢でフォローしていくという意味合いでないことは御理解いただきたいと思っております。
#200
○吉川春子君 時間がもう来ましたので、また引き続きこの問題はやりたいと思うんです。
 労働大臣に最後にお伺いしますが、三カ月単位の変形労働制の導入自体、まだ事業所数が少ないんでこれがどういう本当に積極的な効果があったかどうかというのは、今お伺いしたところまだ数字が少ないのでつかんでいないというのが実情のようですけれども、私はこれについてどういうことだったのかということを国会に資料を提出してほしいと思うんです。これは、もう法案が提出された直後からお願いしているんですけれども、なかなか実態について労働省は持ってこられないんです。
 衆議院の労働委員長が指示して提出されたという資料を見ましたら、これは全く不十分なもので、本当にその労働制を実施してどうだったのか、もうちょっと生々しい具体的なものも含めてきちっとした資料をこの参議院の委員会に提出していただきたい。それによって私たちはもうちょっと具体的につかんだ審議ができると思いますが、その点も含めて大臣の答弁をお願いします。
#201
○国務大臣(村上正邦君) 十分各委員が審議ができます資料を提供するということは、政府委員とし、また政府当局としての義務だと、私はこう思っておりますので、出せるものは出す、ただし出せないものは出さない、出ないものは出ない、そこらあたりの見きわめはひとつ御理解を賜りたい、こう思います。
#202
○笹野貞子君 昨日、本会議で私は代表質問をさせていただきました。その代表質問で、私が幾つか大きな質問をさせていただいたわけですけれども、その中で首相が経済的な問題に対しては全面的に私の意見に賛成していただきました。
 もう一度繰り返しますと、こういう部分でした。時短が経営上の革新を生み出し、企業の活性化にもつながるんじゃないかという意見があるけれども首相はどう思うかという質問と、労働時間短縮が所定外労働に対する割り増し賃金率の上昇と同時に行えば、消費拡大と省力化の設備投資増加をもたらし内需主導型経済成長につながるんではないかと、こういうふうに質問したことに対して、首相は全面的にそうだとおっしゃいました。
 私は、この時短の労働基準法の改正に対しては、これはもう首相の答弁からしますと労使ともに全く問題ないという回答であったというふうに思いますから、この労働基準法の改正に従って大臣は自信を持ってどんどんやるべきだというふうに思って大臣に最後にお話を聞きましたら、大臣は非常に名演説、大演説、ノー原稿で演説をなされて、手前みそで申しわけありませんけれども、きょうの京都新聞が大臣の記事を大きく取り上げまして、私に朝地元から送ってきたわけですが、この記事を見るとこう書かれています。
 村上大臣は、熱っぽく「貧しさからの解放、病のない、争いのない社会をめざし、労相として頑張りたい」と、力のこもった答弁をした。こういうふうに新聞に載っておりまして、何か私のことを書くのじゃなくて大臣のことを京都新聞は褒めているような感じがいたしますので、私はちょっとどう考えていいのか複雑な心境です。いずれにしましても、きのうの代表質問では、私の大きな問題に対しては大変前向きな御発言が次々とあったというふうに思います。
 そこで私は、憲法と労基法というものの考え方をもう一度、きのうの答弁に立脚しながら、ひとつ御質問させていただきたいというふうに思います。
 労働基準法の第一条を見ますと、これは釈迦に説法ですけれども、労働条件というのは「労働者が人たるに値する生活を営む」という、この「生活」という言葉が出ております。そこで、生活という言葉は、これは憲法の第二十五条に規定をされております。つまり、日本の国民というのは文化的で健康な生活という、今度は生活の規定を憲法は掲げております。そうするならば、労働基準法の労働条件というのは、文化的で健康であるというのが大前提であるということは、これは言うまでもありません。
 私が、もし文化とは何かというふうにもう一つ突っ込んで解釈するとならば、文化とは楽しいことだというふうに思います。人間が愉快になること、心地いいことが文化であるというふうに思いますから、文化的で健康である労働条件というのは、労働が楽しいことであり愉快なことであるということの労働条件を整備するのが、これが私は労働省のやるべき最大の任務であるというふうに認識をしております。
 そこで、大臣に御質問いたしますけれども、今回の労働基準法の改正というのは、前回の労働基準法の改正から、私が今提起しましたように文化的で健康というその側面でどのように変えたというふうな御認識でしょうか。
#203
○国務大臣(村上正邦君) 全く笹野委員のおっしゃるとおりであろうかと思います。
 勤労というもの、労働というものが楽しいものである。健康で、明るくて、愉快で、朝起きて、きょうはこういう仕事が待っているな、さあきょうも明るく頑張ろう。こういう職場づくりというものが私に課せられた課題であろうか。そうした意味において、昨日の本会議における笹野委員に対する答弁も、そうした意味で働く人たちの幸せまた喜びというものを私どもがつくっていくという、そうした課題ということからいけば、国家の最も大きな基本であろうか。防衛、外交、文教そして労働と、この四つの柱が福祉国家の基本の四本柱であろうかと、こうも申し上げたところであります。
 そうした観点からいきまして、今回の時短ということの関連性からいきますと、たびたび申し上げますけれども、私はやっぱり人間が、あのチャップリンの「モダンタイムス」のように時間に拘束されているというような姿ではなくして、人間が時間を自由に支配できたときに初めてそこに本当の人間尊重というのか、人間本来のあるべき姿が出てくるんだと、こうした基本的な理念に立ってこの時短というものを考えていきたい、このように私は考えて、御激励をいただきましたように自信を持ってこの法案については促進をしていきたい。
 よって、どうかひとつ各委員におかれましても、委員長におかれましても、速やかにこの法案が可決成立いたしますことを心から願ってやまない次第であります。
#204
○笹野貞子君 大臣の御発言には私も賛同ですけれども、速やかにというのは、まだ審議をやらないと、余り急いで可決するのもちょっとどうかと思いますので、もうしばらく審議をさせていただきたいですし、大臣の今の御発言を聞きましても、そのすばらしい理念を実現するためには幾多のまだ現実問題が横たわっているということも、これもやっぱり認識をしていただかなければいけない大きな問題だというふうに思います。
 例えば、依然として過労死などという言葉があったり、サービス残業があったり、あるいは大臣も先ほどおっしゃっていましたけれども、通勤時間が長くて、文化という他の人生の楽しさというのがもう苦しさに変わったり、いろんな問題がある。あるいは家庭の中で病人が出ると、介護という問題で女性が職場を去らなければならないというような文化とはほど遠い問題がもう幾つもあるという認識に立つことが、これがまた労働省のやるべき大きな任務ではないかというふうに思います。
 そこで、次の質問に移らさせていただきますけれども、労働基準法という法律は、条文の第一条第二項を見ますと、労働基準法というのは労働条件の最低の基準であって、それに合わせてはいけないんで、常にその基準を上に上げるように努力しなければいけないし、そして最低の基準を下回ってはいけないんだというのが基準法の人定義なわけです。
 そこで、この基準というのが非常に重大になってくるというふうに思うんです。基準を決めるときに、賃金などというのは非常に基準を決めやすい。なぜかというと、生きるためには絶対これだけのお金が必要だ、これだけの物が必要だということで基準は決めやすいのですけれども、時間とか休日とか、そういうものというのは大変基準が決めにくいものです。ともすれば、労働基準法の基準の低下をしてはいけないというこの条文に抵触するような、そういう問題が出てくる可能性があります。
 ですから、そういう点では私は、労働省はつまりこの基準というのをどこに求めながら、大臣の大変先ほどから頑張っていらっしゃる情熱のある正義感が具体的なものとして出るためには、常にどこかに基準を設けてなければいけません。しかし、日本の今までの歴史的な過程を見ますと、そういう目に見えるような基準はまあまあ法定でとにかく決めておりますけれども、休日とかそういうような目に見えないものというのは、ともすると下がりがちだというふうに私は指摘させていただきたい。そこで、この基準を、この労働基準法ができるときには国際水準に合わせたというふうに私は理解しております。
 そこで、大臣にお聞きをいたしますけれども、常に適正な労働条件の基準というものを国際的な基準に合わせていくという、そういう私たちの政治的な義務があるというふうに私は思っているのですけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。
#205
○国務大臣(村上正邦君) 前段にございました過労死だとか、これらについては先ほどもお答えしましたように本当にあってはならないことだ、こういう記事が報道される、新聞に出るということは非常に悲しいことだと、私はこう思っております。
 それから、通勤地獄にいたしましても、できれば私はこの週でも行きたいと、実態を見たいと、こう思っております。この前も何か四チャンネルで出たようでありますが、秋葉原から乗ってどうだこうだといってネクタイ一本やるとかいう、そういうあれもあったようですが、二十四日の週にはぜひ、運輸省とも今詰めておりまして、一番劣悪な、条件の悪い、一番込み合う時間帯に、どこの沿線がいいのか、そこらあたりを出していただいて体験をしていきたい、こう思っております。
 通勤時間のみならず、私もかつては、今吉川先生は席におられませんが、埼玉の東上線から池袋で乗りかえて永田町まで来ておりましたが、とにかく窓もあけられない、身動きもできない、新聞も読めない、そして各ホームに列車がとまるごとに押し屋さんというのがいてどんどん押し込んで入れるという状況の中で、先ほど言ったきょうはこんなすばらしい仕事が待っているんだなんという気持ちは本当にしぼんでしまう。こういうこと
を考えたときに、こういう問題は一日も早く解決していかなければいけないと思っております。
 そこで、基準ということについての御質問でございますが、おっしゃるように国際国家日本と言われる世界の中の日本、先進七カ国と言われる日本の今置かれている立場からいたしまして、当然そうした国際的な基準、特にILO条約等々のこうしたことを勘案しながら国内においてのさまざまなやはり条件というものがあるわけでございまして、そういう国内の事情と、そしてまたおっしゃいますように国際的な基準も考慮に入れて決められていかなければならない、このように思っておる次第でございます。
#206
○笹野貞子君 そうするならば、その国際的な基準というのが非常に一つの大きな労基法の基準になると今おっしゃったわけですが、今度法律の中じゃない省令の中に、最も国際的に基準がおくれている部分を省令に任せてしまうというのは、これは考えたら本末転倒な議論でして、基準が非常にわかりやすいような、そういうところはこれは省令に任せておいてもいいんで、まだ国際的に非常におくれている部分というのは、これは法規範の中で強制力を持って国際基準に合わせていかなければならないというふうに私は思うんですけれども、どうも考え方が道なんですが、それはどうなんでしょうか。
#207
○政府委員(石岡慎太郎君) 今回の改正案におきましては、欧米諸国で一般的になっております四十時間制を我が国にも導入したいということで、これらを中心に所要の改正を行っているところでございます。
 そういう意味では、国際的な基準も考慮に入れながら今回の基準法の改正に取り組んだわけでございますけれども、ただ中小企業を中心にすぐに週四十時間にはならない国内の事情もございます。そういうことでございますので、経過的な措置として中小企業に一定期間猶予を与えていただく。その水準も、実質的に法律で定めたと同様に行政府の恣意が余り挟まれないような条件をつけさせていただきながら政令で定めさせていただく。その期間も平成九年の三月末までという形で猶予措置を設けさせていただいたわけでございまして、決して先生の御指摘のような国際的なものを念頭に置きながら法律でこれを決めていけという御指摘と実質的にはそう変わらない内容で政令で物事を定めさせていただく、こういうふうに考えておりますので、御理解のほどをよろしくお願い申し上げたいと思います。
#208
○笹野貞子君 何か大分言いにくそうな御答弁でしたけれども、もしも実質的に法律と変わらないというのであるならば、労基法と憲法二十七条には法律で定めなさいと書いているわけですから、もしも労働省が国際基準に物すごくおくれている部分で、これは何としてでも国際水準に合わせようという意気込みがあるならば、本来でいくならば強制法規であるところの法律でやるのが私は情熱だというふうに思うんですが、どうもそうじゃないところは、局長が何か言いにくそうに言っているというのは少し情熱がないんじゃないかというふうに受け取ってしまいたくなります。ですから、その点は労働省のこれからあるべき姿勢というんでしょうか、大臣がせっかくこれだけ頑張って情熱と正義を燃やしておるわけですから、それを具体的に進めていくようにしていただきたいというふうに思います。
 さて、そこで先ほどの議論を聞いておりまして、特に労働条件という問題はまさに現代法規範とでも言うんでしょうか。私の言葉で言うならば、これは労使に任せていて、力とかそういう運動でもってから取るという時代はもうとっくに過ぎて、きのう私は代表質問の中で使わせていただきましたけれども、法の支配による原則という、非常に法治国家の中の一つの自然権であるべきものにしなければいけないんだ、これがつまり人間の文化であり生活だということをお話ししたわけです。先ほどの伊藤部長さんのお話の中で、ちょっと私は不審に思ったので質問をさせていただきます。
 伊藤部長には、個人的に何の恨みもありませんけれども、ただ立法府というものがどうこれからあるべきかというのは重大な問題だというふうに思います。
 先ほど、中西委員の説明のときに、そんなことを言うと審議会にしかられると言ったのか通らないと言ったのか、その語尾がちょっと私は聞き取れませんでした。最後の語尾がむじゃむじゃとなっちゃったんですが、憲法四十一条、これは皆さん方御存じのように国会が唯一の立法機関であるというふうになっております。この私たちの委員会はまさに唯一の立法機関なわけですが、この立法というものの考え方には、学説はありますけれども、発案からそのプロセス、制定に至るまでを立法というふうに私たちは解釈しております。この私たちの唯一の立法機関に何か制限を加えるか、あるいは私たちの立法府に対してよりもっと強いものが上にあるかのごとき審議会の存在であるならばこれは問題だというふうにちょっと思いましたけれども、先ほどの御発言はどういう意味で御発言なさったのか、もう一度御発言いただきたいと思います。
#209
○政府委員(伊藤庄平君) 誤解を受けられたかもしれませんが、その点おわび申し上げますけれども、先ほどの変形労働時間制の一日、一週の限度時間につきまして、とりわけ一日の方について八時間ということについてはどうかということについてお答えした点だろうと思いますけれども、こういうつもりで申し上げたわけでございます。
 この点、ずっと労働基準法の改正について論議を進めてまいりました中央労働基準審議会の中で、やはり一日について八時間あるいは一週間について四十八時間という議論が行われました。労使の間でも、かなりそこに隔たりのあった問題でございます。
 ただ、私ども一週の方については、先ほど来答弁申し上げていますように現在三カ月の場合五十二時間、これを幾らにするかというのはかなりの幅があるんで、これは国会で御審議願う中でやはりそういった問題についてある程度の方向というものを、御審議の中で出てくるんであろうということで四十八時間というようなことも前提としていかなくちゃいかぬというふうに申し上げていたわけでございます。一日のものについて十時間を縮小するという場合に、これはどうするかということは私ども本当になかなか決めかねる状況でございまして、特にそこは審議会の中でも見解の対立のあった部分でございまして、私どもとしては慎重に考えさせていただきたい。
 そういう意味合いで、縮小するということは申し上げて、その中でまた審議会等での御議論をぜひさせていただいて、そういう中で労使折り合う水準を模索していきたい、こういう気持ちで申し上げましたので、決して国会でその辺のお決めになること、あるいはそういった立法府として行政府をリードしていくことについて異を唱えたような趣旨ではございませんので、御理解を願いたいと思っております。
#210
○笹野貞子君 そうしますと、私たちこの立法府というのは、八時間にするか九時間にするか七時間にするかという、そういう時間を決めるという、つまり文化というもの、時間というのは私は人生にとってどうあるべきか、労働にとってどうあるべきかという文化の部分だと思いますけれども、立法府というのはそういうことは決められないという意味なんですか。
#211
○政府委員(伊藤庄平君) そういう意味で申し上げているんではなくて、本来国会でお決めになることがこれはもちろん筋である問題であろう。
 ただ、この問題は、先ほど来申し上げていますように中央労働基準審議会で御議論があった、非常に労使の見解の対立があった点でもあり、具体的には労働省令で決める。先ほど来御批判も受けている省令委任の姿にはなっているわけでございますが、そういった状況の中で、一週間についてはいろいろ御議論があった。四十八時間を前提にというようなことも私ども考えていかなくちゃいかぬ。ただ、一日については、そういった今の改正
法案の仕組みの中で今後この国会での審議も参考にしながら、またここで出された御意見等も私ども審議会に十分紹介し、尊重していただく中での御議論をお願いしながら最終的に決めさせていただければ非常にありがたい、こんな意味合いで申し上げたわけでございます。
#212
○笹野貞子君 この問題は、私は非常に大きな問題だと思っております。ですから、私たち憲法四十一条に定められている唯一の立法機関というこの立法権というのはどこからどこまでを言うのか。これは非常に大きな問題で、審議会というものとどうかかわっていくのかという問題は、私は一度ゆっくり議論しなければならない問題だというふうに思っております。
 ともすると、私の考え方では、何か立法府が常に制限されているようで、私たちが何か言いっ放しという感じで、私たちの議論よりも違うところの議論の方が立法に重大な影響を与えているかのような今感じがしております。もし私の感じが間違いならば非常にいいのですけれども、これはきょうは私に与えられている時間は非常に少ないので、この大問題に足を踏み入れると時間がありませんので、後ほど改めてやりたいと思います。労働省としましても、ここの問題はすかっとしておかなければ、独自の哲学を持った労働行政というのはこれからできなくなるというふうに思いますし、憲法に保障されている文化と健康という問題を、労働行政の中でだれの意見を一番重要にしながら推進していくか。いずれこの問題は、お互いに研究してからまた議論をさせていただきたいというふうに思っております。
 では、続いて次の問題に移らせていただきますけれども、千八百時間という時間の出し方についてちょっとお伺いをしたいというふうに思います。
 きのうの議論で、首相は千八百時間はパートタイマーも入れているんだというふうに答弁なさったように記憶しておりますので、この千八百時間という時間の出し方について、もう一度どういうふうに計算するのか、述べていただきたいというふうに思います。
#213
○政府委員(伊藤庄平君) 現在の生活大国五カ年計画で目標として掲げております千八百時間の目標、また以前の計画においても同様でございましたが、これを定めるに当たって我が国の労働時間の現状も対象に置きながらその目標を決めなくちゃいかぬわけですが、その際使いましたものとしては、毎月勤労統計による年間の総実労働時間を使っている、これは経過として事実でございます。またその後、目標に対して労働時間短縮の状況を見ながらフォローアップしていく際にも毎月勤労統計の数字を使ってきた。したがいまして、その中にはパートタイム労働者を含んだ年間総実労働時間としてあらわれていると、これは御指摘のとおり事実でございます。
 もう一つ、これに関連して御理解をいただきたいと思いますのは、私どもそういった数字ではございますけれども、また別の角度から千八百時間というものにアプローチをして、こんな数字を示しながら啓発を進めてきておるわけでございます。この千八百時間を達成するためには一般の勤労者の方のモデルとして、例えば所定内については大体平均である七時間半程度、それで所定外を百五十時間を切る程度、それから年次有給休暇については二十日付与、二十日取得といった水準、こういったものを達成していくことによって、平均的な姿ではなくて、働く人がモデル的にいわば一人一人が千八百時間に近づいていけるんだと、こういう目標も示してこの千八百時間というものを受けとめて啓発も行ってきている。千八百時間についてはそういう受けとめ方も一方でしながらやっているという点もあわせて御理解をいただければありがたいと思っております。
#214
○笹野貞子君 その千八百時間を計算するのはいいんですけれども、計算の仕方を私は聞いております。
 というのは、毎月勤労統計調査というのは、これは調査の仕方が民間と大分遣うんです。民間の個人調査であるところの労働力調査と比較すると、今でも時間が男性の調査が三百時間ぐらい違うんです。ですから、これは片方は労働省がとっている調査、片方は民間がとっている調査でなぜこんなに差が出てくるのか。つまり、残業でもこの毎月勤労調査を見ると、残業の割り増し金を払っているところだけ残業として入れて、払っていないところはサービス残業にしちゃってそれは残業に入らないということが指摘されているんですけれども、この調査の仕方というのをこれからこんなふうにしたら千八百時間というのはちょっと危なくなってしまうんじゃないかなというふうに思うんですが、いかがですか。
#215
○政府委員(伊藤庄平君) 千八百時間との関係で、毎月勤労統計の数字でいろいろフォロー等をしていることを申し上げましたが、先生御指摘のもう一方の労働力調査は、これは総理府が実施している調査でございます。
 これによるものとの違いでございますが、確かに労働力調査におきましては、世帯単位のアンケート調査であるということ、それから月末一週間分の状況を聞いたりする、そういう調査のやり方がかなり違うところが正直ございます。それによって恐らくいろんな形で違った数字が出てくるんだろうと思いますが、その違い等についてはもちろんよく分析して、その違い等をまた御説明申し上げたいとは存じますが、そういった統計上のやり方の違いが確かにあることは御指摘のとおりでございます。
#216
○笹野貞子君 ですから、やり方によって全く違うんだと言われてしまうと、千八百時間といっても信用はできなくなりますね。この両方の調査を見ますと、女性は意外とぴたっと合っているんです。女性の場合には余り残業もしなければそういうことがないので、両方の調査は女性の方の数値を見るとやや一緒なんです。そして、男性の方を見ると非常に違うということが出てきているわけです。
 今でもこれだけ違う調査が二つあるわけですから、どういう調査をしても千八百時間になるようにならなければ、ただするするといっても本当にそうなったのかどうかというのは重大だと思うんですけれども、その毎月勤労調査をこれからどのように改良して、つまりこれなら千八百時間といってもみんなが信用してくれるというふうに変える努力というのは考えていらっしゃるわけですか。
#217
○政府委員(伊藤庄平君) 毎月勤労統計と労働力調査の違い、これは両者の統計の違いについては推測で申し上げてはいけませんので、どうしてこういう形が出てくるかはよく分析の上でまた先生にも御説明させていただきたいと思います。
 これは推測も入りますので、大変恐縮と思いまして先ほど申し上げなかったわけでございますが、労働力調査の方でいきますと月末の一週間のアンケート調査をするわけでございます。したがいまして、家族が記入するという点が世帯単位のアンケートで出てまいります。それから、調査対象が月末だということで、比較的会社、企業によっては繁忙時期が入ってきたりすることもあるのではなかろうかというようなことを私ども念頭に置きながらやっているわけでございます。
 それから、これは統計にあらわれるほどかどうか、そういう世帯単位のアンケート調査でございますので、例えばダブルで働いている場合に、両方出てくるようなこともあり得るかとか、いろんな統計の仕組みの違いによるものでございますので、その辺よく私ども両者を分析してまた御説明をさせていただければありがたいというふうに思っております。
#218
○笹野貞子君 仕組みは違ってもどうでもいいんですけれども、結局、サービス残業を抜かしちゃって残業がないかのような統計が出てきたならばそれは全くごまかしになりますから、その点はやっぱり信憑性のある統計のとり方をとるようにしていただきたいというふうに思います。
 さて、最後になりましたけれども、先ほどから変形労働の話で随分ちょうちょうはっしなされていますので、一つだけ変形労働についてお聞きしたいというふうに思います。
 というのは、この変形労働を入れた目的は何なのかなというふうに私は思っているわけですけれども、何か休日がとりやすいからとかいうことなんですけれども、そういうのはこの目的じゃなくて、いかに時短を促進するかということが目的であって、何か本末転倒の議論をしているのじゃないかというふうに聞いておりました。
 そこで、フランスの例をとりますと、フランスでは変形労働制の弾力化ということの見返りとして、実質的に時短であるということの証明があるいは金銭的補償という代償措置をとって初めて変形労働というのをとってもいいということにしておるのがフランスの変形労働制なんです。
 ということは、かわりに時短が絶対できるというそういう確証があるいは金銭的に補償をきっちりするということは、この変形労働制というのは勤労者にとってはデメリットなんだ、余りよくないんだということを前提にして、そういうつまりお金を支払ったりして、それでとらせているということは、これは勤労者にとっては余り歓迎されないから、言葉をかえて言うならばペナルティーをつけたような感じ、また反対にお駄賃をつけたような感じでこれをとらせているということがあるわけです。つまり、フランスのこういう考え方というのはまさにデメリットだという証明なんですが、この点は労働省の方はどのようにお考えなんですか。
#219
○政府委員(石岡慎太郎君) 今回提案しております一年単位の変形制につきましては、先ほどから申しております労働法学者から成ります労働基準法研究会でまず御検討していただいて御報告いただいたものに基づいているものでございます。
 基準法研究会におきましては、御指摘のフランスの変形労働時間制を十分検討していただきました。フランスの場合は一年を平均して週三十九時間の変形制がとられております。一週の場合は一週間四十四時間が上限となっておりますが、労働協約のときには一週間四十八時間を上限とすると、先生が御指摘になったほかにもこういうような制度もございます。
 こういうことで、基準法研究会ではフランスの例、外国の例などもよく御検討いただきまして、我が国の場合デメリットができるだけない形で、例えば労使協定の締結が前提になるとか、あるいは事前に一年間単位の休日設定を行わなければならないとか、あるいはまた一日及び一週の労働時間の上限が定められているという労働者にとってできるだけデメリットがない諸条件をつけながら、こういう一年単位の変形制を導入してもいいじゃないかという御提言もいただきまして、審議会で検討して、今回法案で提出させていただいている次第でございます。
#220
○笹野貞子君 この問題につきましては、私も後日のこの委員会でまた質問させていただきますので、きょうは時間ですのでこれで終わります。
#221
○足立良平君 労働時間の短縮というものを考えてみますと、これは相当我が国の社会で、政あるいは分あるいは使、そういうふうな中では、総論としては労働時間というものを早急に短縮をしていかなきゃいけないということは全部一致しているわけです。
 ところが、実際の労働時間を短縮していく我が国の足取りというものは、きょう午前中からずっともう相当長い時間議論されておりますけれども、余り遅々として進んでいなかったということが実ははっきりいたしておるわけです。これはその面からいたしますと、今回の週四十時間というこの労働基準法をいつの時点からはっきりやるということを基準法の改正として打ち出していくということは、労働省を含めましてそれなりに大変な努力をされたものだろうというふうに、私はその点においては評価をまず第一点でしておきたいと思うんです。その立場でこの基準法の改正というものを議論していく必要があるのではないか、こういうふうに思っております。
 事実、例えばここ数年来の労使間のいわゆる賃金交渉と、それから労働時間の交渉というものが一体で毎年春に行われているわけですが、実績を見ますと大体二日ないし三日、年間にいたしますと二十時間前後ぐらいしか労働時間の短縮というのは所定労働時間においてすら進んでいないわけです。それが、結果として時間外に置き変わっているのか変わっていないのか別として、それほど我が国の労働時間の短縮というのは進んでいない、労使関係の中においては、というふうにこれは事実として私は見ていかざるを得ないのではないか。
 したがって、そういう面からすると、既にいろんなところで言われておりますように労働時間の短縮をして、そして我が国の社会の中における働いている人たちのゆとりある生活というものを実現させていくという観点からするなら、この基準法の改正といいますか、これは極めて大きな意義というものがあるんだというふうに私は評価を、位置づけをしていきたい。だから、そういう面からすると、そういう極めて大きな意義があるだけに、この基準法の改正について、後から見てあのときに間違ったことをやったのはちょっとまずかったなというふうな問題が生じないようにきちんとつくり上げていくということがこの委員会における最大の任務ではないか、このように実は考えているわけであります。
 それで、私は前段で、労働時間の短縮を進めていくに当たっての基本的な認識をきちんとしておく必要があるだろうというふうに思うんです。これは、私は質問の通告はしていないんですが、ずっときょうの議論を聞いておりまして、この点だけ一つはっきりして、労働省の方の考え方を確認しておきたいなと思いますのは、かつての貧しい時代における、あるいはまた経済の規模が小さい時代における労働時間というものと、経済規模が拡大をし、あるいは企業もそれだけの力を蓄えてきたそういう時代における労働時間というもののとらまえ方はおのずから変わってくる。
 ですから、考え方としては、経済がこれほど大きくなった、あるいは企業がこれほど力をつけてきた、したがって労働時間をこれだけ短縮しましょうという考え方で労働時間を短縮していくのか。今日の日本の人口というのは約一億二千四百万弱くらいだろうと思うんです。そして、その中で働いている雇用労働者というのは約六千四百万弱くらいだろう。一般の第一次産業なりその他のものを入れるともう少しふえるんでありましょうけれども、少なくとも日本で働いている一般の国民の労働時間をどのように設定するかということによって、我が国の経済社会のあり方あるいは我が国の社会のシステムというものが逆に変わってくるものだろう。
 もう一度申しますと、経済が大きくなったから労働時間をこれだけ短縮しようというよりも、むしろ今日の我が国のような経済規模になってまいりましたときには、そこに働いている、あるいはまた国民全体の生活を一体どうしていくのかということから、逆に日本の社会のあり方なり経済のあり方なり、あるいは国民生活のあり方というものが導き出されていく発想をとっていかないといけない時代に私は入ってきているんではなかろうかなと、こんな感じを実はきょう朝からの議論をずっと聞いていて、私は今ここにメモしてみたんです。
 そういう点で、もし労働省の方で何かそういう点でお考えがあるなら前段にお聞かせを願いたい。これは今急に言っていますからあれなんですけれども、もしあればおっしゃっていただきたいと思います。
#222
○政府委員(石岡慎太郎君) 確かに、先生御指摘のように我が国がまだ経済的にも小さくあるいは国民生活も貧しかったときの時間と、現在のように経済が大きくなって国民生活も豊かになった時代の時間というのは、基本的にはやはり違うと思います。
 そういう意味で、現時点に立ちまして、これからどういう国民生活を送っていくべきなのか、あるいはどういう時間を前提に経済や社会の営みが行われていくべきかと、労働時間の法制を今回変えるわけですが、そういう際にも先生御指摘のような視点をやはり持っていかなければならないというふうに感ずる次第でございます。
#223
○足立良平君 私は、この点はきちんとしておきませんと、単に労働時間を短縮すればいいんだというだけの論議ではないのではないかなと。それは、逆に言いますと、労働省そのものがこれからの我が国の、きのうの大臣の答弁ではございませんけれども、四つの柱の労働行政というものを置いていこうとするなら、私は単に労働行政という側面だけでなしに、国のあり方あるいは国家のあり方というもの、その基本にかかわってくる問題ではないかというふうに思っておりますので、これは前々の委員会でもそういう観点で二、三申し上げた経緯がございます。
 それで、これからこの委員会というのはさらに具体的な問題をいろんな点で詰めていくことに相なってきますから、きょうは概略だけで進めてまいりたいと思うんです。労働時間を短縮していくということは、経営者にしてもそこに働いている労働者にしても、それぞれの要求の度合いというのは相当違いがあることは事実であります。ですから、それをどれだけ整合性を持たせていくかということであろうと思うんです。それだけに、逆に私は、本当の意味で日本の経済なり企業活動というものの活性化を維持しながら、そして同時に働いている人たちの生活というものもきちんとゆとりのあるものに仕上げていくということになってまいりますと、長期的に、しかもそれは計画的に物事を進めていかなければいけないというふうに思っているわけです。
 私自身も、かつて労働時間の短縮を企業の中でどのようにやるかということを、実はいろいろなところで話をしてきたその当事者の立場に立ってみますと、労働時間の短縮ということは計画的にやってまいりませんと、ある日突然、それならきょうは二時間なら二時間短縮をしよう、四時間なら四時間短縮しようと言いますと、これはもう大変な混乱をその職場の段階で起こすものでありますから、この法律というのは週四十時間というものを達成していくという法律改正、政府の五カ年計画では千八百時間というものを達成していこうということははっきりしている。だから、問題は千八百時間にこの法律改正だけで今すぐになるわけではないわけです。
 だから、政府の千八百時間を実現していく、達成していくというために、労働省として一体どのような長期的計画というものをお持ちになっているのか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
#224
○政府委員(石岡慎太郎君) 生活大国五カ年計画におきまして、平成八年度末までに千八百時間という労働時間を達成する、このことを目標に掲げまして、ゆとりある国民生活の実現を図ろうとしているところでございます。今回出しましたこの法案も、そういう経済計画の目標達成のためにお出ししたものでございまして、そういう意味では千八百時間達成のためにこの法案をぜひ成立させていただきたいと思っております。
 なぜなら、千八百時間にする場合には、しかも計画年度内にやる場合には、例外は特例措置などでありますものの、多くの企業がやはり週四十時間制を実現していただかなければならないわけでございます。この法案では、もう御承知のとおり平成九年四月から四十時間制が全面的に実施されることを想定している次第でございます。それから、あと実は時間外労働、それから年休、この二つも妥当な水準にならなければ千八百時間は達成されないと思っております。
 年休につきましては、今回この法律によりまして六カ月の勤務をいたした場合に十日の付与という改正を提案しているのみでございますけれども、経済計画の期間中、労働省といたしましては要綱その他に基づきまして二十日の取得の強力な指導をしてまいりたいと考えて計画しておるところでございます。さらには残業時間は、平成四年度の数字を見ますと、百四十四時間ということで、ほぼ想定しております望ましい残業水準になってきております。
 問題は、これがこれから計画年度を維持できるかどうかでございまして、いろいろあると思いますけれども、割り増し賃金率の引き上げなども法案が成立いたしますと今回仕組みとしてとらせていただきますので、その有効な活用あるいは目安時間制度の内容の改善、それからその的確な実施、指導などを通じまして、残業につきましても計画期間中妥当な水準におさまるように努力したいと計画しているところであります。それらによりまして、大変いろいろ難しい状況はもとよりありますけれども、千八百時間の目標達成に全力を挙げて取り組みたいと思っておるところでございます。
#225
○足立良平君 そういう面で全力を挙げて取り組んでいっていただかなきゃいけないだろうと思うんです。
 これは、もう今まで済んだことを責任がどうとかこうとかいうことを私は申し上げるつもりで言うわけではありませんが、例えば同僚議員が今までの議論で、千八百時間が既に前の計画でも目標にして達成できなかった理由として労働省の方が、週休二日制が定着をしなかった、あるいは年休の取得が少なかった、あるいは時間外が多くなったというふうないろんな要因を挙げられているわけです。これは考えてみますと、労働省の強力な指導だけで本当にそのことが減っていく要因なんだろうかと、先ほど来の議論を通じて私はそんな感じを受けているわけです。
 というのは、週休二日制はこの労働基準法の改正によって進んでいくでありましょう。ただ、年休の取得が少ないとかあるいは付与という問題は、次回の委員会でまだいろんな具体的な議論を私はいたしますから、これは横に置いておいたとしても、年休の取得率が低いというのは、これはやっぱり日本の文化にかかわる問題が存在をしている。あるいは基準外の労働、いわゆる時間外労働というものは、そのときの経済の状況によって、例えば雇用調整的なものとして労働省は時間外労働というものを位置づけされているけれども、逆に言うとその位置づけの意味が大きければ大きいほど時間外労働というものは減っていかない、私はこういうふうに思うんです。
 したがって、そういう面からすると、例えば従来の労働慣行があるから時間外の目安時間を強行法規にすることは難しいとか、ずっとこの問題に関して今まで労働省は答弁をされてきているけれども、従来の労働慣行というものを変更していくんだという決意を持ってこの種の問題に取り組んで行政指導をしていかないと達成することが不可能なのではないかと、このように私は思うんですけれども、これは局長、いかがでしょうか。
#226
○政府委員(石岡慎太郎君) 我が国の労働慣行を総じて申し上げますと、やはり残していくべきものもあるのではないかと、率直にそう感じます。例えば、非常に雇用を大事にするというような慣行は残されていくべきだと思います。
 しかしながら、労働時間の短縮も先生御指摘のようにこれからは新しい角度で世の中を変えていくんだ、国民生活をよりよくしていくんだというために労働時間の短縮をやっていかなければいけないと思います。その場合には、従来の労働慣行で変更すべきものがあれば、これは変更していくという決意で取り組まなければならないものと、今のお話を聞いて感じております。
#227
○国務大臣(村上正邦君) これは、事務方が答えることではないだろうと思います。
 まず一点は、おっしゃるようにこれは意識革命、やっぱりそこまでいかなきゃ徹底できない、達成できない。一労働省だけではなかなかできることじゃありません。それを踏まえてこれは政府一体になって取り組む。むしろ、時短促進閣僚会議でもつくって関係各省と取り組んでいかなきゃならぬ。総理大臣が本部長になるぐらいの姿勢が必要だ。そしてまた労使、これもそうした政府に相呼応した一体感の中で取り組んでいく問題だと、こう思っております。
 そうした歴史的な大きな問題に今私どもは取り組んでいるんだと、こうした位置づけをさせていただいていると、こういうことであります。
#228
○足立良平君 今大臣の答弁を聞いていまして、私は本当にそのとおりだろうと思います。
 実は、私もそういう決意で政府としてこれは取り組んでいかないとうまくいかないものではないか。きょうもずっと同僚議員からいろんな指摘がされておりますけれども、例えば今の労働時間の統計一つとりましても、内実を見ると本当にそれが正しいのかどうなのか、それぞれの企業の実態の中で本当の数字を表示しているのかどうなのかというふうな問題から始まって、労働行政の指導といいますか、そういうものについては断片的にこういう場所では議論として出ますけれども、実際的には相当違っている面があるわけであります。
 そのことは、労働省自身もあるいはまた労働大臣自身も十分御承知になっていますから、私はそういう面でこれからの日本の社会あるいはまた日本の国のあり方がいかにあるべきか、こういう観点からこれは取り組んでいくべき課題なのではないか、こんな感じを実はいたしております。それだけに、労働省の置かれているこれからの位置というのは大変重要な省庁になってこなければいけないという感じを実は持っておりまして、今大臣がおっしゃったような意味でさらに検討を深めていただきたいと、このように思います。
 それで、さらにこの労働時間の問題というのは国内だけの問題でとどまらずに、この問題というのは、経済が国際化してきている、あるいはまた人間そのものもある面においては流動化、どんどん動きかけているわけでありますから、そういう面からいたしますと国際的な視点で物を考えていかなきゃならない、こういう面が今日もう出てきていることは申すまでもないわけであります。そういう面を考えてみますと、例えば経済五カ年計画で千八百時間というものを目指していくという政府の計画というものは、国際公約と言ったら言葉は適切かどうかわかりませんが、そういうような意味合いを持ってきているのではないか。
 例えば、日本で海外のある外国企業と合弁事業をやっている。そうすると、向こうの側では例えば労働時間にいたしましても割り増し賃金にいたしましても、あるいはまた労働の態様そのものについても、現地のなにがあるわけですから、そうしますとそういう面では国際的な基準というものがもう極めて大きなウエートを持ってくるわけでありますから、この千八百時間にいたしましても、政府が今出されている方針というのは、そういう面では国際公約として見なければいけないのではないか。逆に言ったら、政府として相当責任を持っておるものだと、国際的に、というふうに思えるんですけれども、この点いかがでしょうか。
#229
○国務大臣(村上正邦君) これは、政府が閣議決定により策定した宮澤内閣の生活大国五カ年計画、この実現に向かってということでございますし、おっしゃるとおりそういう意味合いで私は理解しております。
#230
○足立良平君 さらに、これはそういう面で相当重いものであるわけであります。重いものであるだけに、これはまた次の十八日の労働委員会ではそれぞれの学識経験者の皆さん方に参考人で来ていただいていろんな考え方をお聞きする機会があるわけであります。
 これは考えてみますと、この労働時間の短縮を進めていく、あるいはまた働いている人たちのゆとりというものをきちんとつくり上げていくということは、その面からしますと、単に今どうこうといいますよりも、将来の日本の展望を考えてみますと労働力不足の時代に入っていくことはもうはっきりいたしておるわけです。そうしてまいりますと、これは一方において、そのとき労働力不足でもうにっちもさっちもいかないような状態のときに労働時間を短縮していかなきゃならないということになってまいりますと、これは日本経済の中で大変な影響を与えていくことになる。その面からすると、可及的速やかに労働力不足の時代が到達したときに対応できるような経営のシステム、社会のシステムというものを今つくり上げておかないと、私はその時代には全く我が国の場合どうにもならない状態になっていくと思う。
 ですから、今経済状況が厳しいからもうちょっと猶予措置を延ばすとかいうふうな短期的なものばかりで見るんではなしに、労働省が、各企業、産業に対して、そういう労働力不足の時代に対応できるような経営システムを今からつくるために今こうしなきゃいかぬという強力な指導をまず特別に考えていくことが、労働時間の短縮を進めていくということもさることながら、例えば経営側の立場だけを考えるなら、経営側の立場に立ってもこのことは絶対に必要なんだというものをやっぱり打ち出していっていただくことが労働省のこれからの論点になってくるんではないか、私はこんな感じがするんですが、労働省の方、いかがでしょか。
#231
○政府委員(石岡慎太郎君) 労働時間の短縮は、一人一人の労働者の生産性の向上があって実現できるものでもあると考えております。また、一人一人の生産性が向上することが、来るべく労働力不足に対応することにも通じるというふうに思っております。したがいまして、先生の御指摘は全くそのとおりだと思います。
 したがいまして、時短を今から進めていくことが、将来企業にとっても必要なことでありますし、労働力不足時代へ対応することにもなりますし、ひいてはそれが日本経済全体のためにもいいことになるというような視点を持ちながら、これから企業に対して時短の指導をする際にそういうことを念頭に置きながら臨んでまいりたいと考えております。
#232
○足立良平君 認識としては一緒のようであります。ただ、認識として一緒でありますだけに私はちょっと逆に、時短センターとかなんとかいったのがありましたですね。例えば、今度の法案の中で時短の情報を提供するとか、指導をしていくとか、あるいは時間短縮を進めるようにそういうものを時短センターでやっていきますよということを提起されていますけれども、認識としては、労働省なりあるいは大臣なり私の認識はそう変わっていない。
 だから、その面においては、それを進めていこうとするなら相当の指導力、これは余り指導力というのを求めることはいいか悪いか、行政指導というものの意味合いからしますとこれまたあるんですが、しかし現実的にそれを進めていこうとするなら、本当に時短センターというふうなもので時短を各企業に進めていくようにアプローチしていくことができるか。ある面においては、行政指導というのはそんな甘いものではないだろうと思います。また、企業というのは長期的に見るとそれはそうだと、こう言うんです。これはまさに総論賛成各論ため、こういうことになるその最たるものですからね。
 ですから、そういう面を考えてみると、企業としては時短を進めるということはコストアップにつながるからなるべくそれはやめたいという欲求をもともと持っているものです。だから、それを国レベルの経済なり、国際的なレベルなり、あるいは働いている人たちの豊かな生活を確保するという意味で何としてもやらなきゃならないというある程度強制的なものがありませんと、これは前に進んでいかない。公害対策も一緒なんです。したがって、そういう点からすると、時短センターというふうなもので本当にその意図が達成し得るのかどうかなという感じがするんですが、これはいかがでしょうか。
#233
○政府委員(石岡慎太郎君) 労働省は、千八百時間を目標にいたしまして、これから労働時間短縮の指導を企業に対していろいろやっていかなければならない立場でございますが、その際には、監督署まで含めまして全機関一丸となりまして、企業に対して適切な指導を行ってまいりたいと考えております。
 しかしながら、民間の方におきましても、やはり労働時間の短縮のために努力をしていただかなければなりません。企業も努力をしていただかなければなりませんし、労働組合の方も当然ながら御努力を賜らなければ千八百時間の達成はできないわけでございます。
 その民間の努力の一環としまして、民間の社団法人である時短センターが所要の例えば時短の奨励金を給付するとか、あるいは時短の一般的な啓蒙指導を民間企業にするとか、そういう任務を今回法改正させていただければ担うわけでございまして、これもまた行政とは別の重要な役割を民間のサイドにおいて持っているものではないかと思っております。監督機関と時短センターと車の両輪なような形で時短のために努力をしてまいりたいと思います。
#234
○足立良平君 また、具体的な点は別の機会に十分議論をしてまいりたい、このように思います。
 確かに、企業も労働組合もこれは努力していかなければいかぬし、あるいは労働省も努力をする、これは当然だろうと思います。
 ただ、これは考えてみますと、今日まで日本の労働時間というものが本当に進まなかった理由というのは、先ほど局長が三つの理由を挙げられました。私もそのとおりだと思います。けれども、欧米の労働時間の場合に進んでまいりましたのは、労使交渉が中心になって進んできているわけです。残念ながら、日本の労働組合の組織率というのはどんどん組織率が減ってまいりまして、今日は約二四%強くらいになっている。それで中小企業の組織率というものは、これはもう二、三%くらいの組織率になってきている。その辺を考えてみると、労働時間の短縮というものを進めていくということは、ある面におきましては中小企業の問題をどうするかという問題になってくる。その中小企業の労働組合の組織率というのは、現実的に一けた台、しかも低い一けた台になっているというときに、実質的に労使関係の中で、あるいはまた労働組合がそこに大きな役割を果たして労働時間の短縮というものが進展していくということは残念ながら期待することは不可能というふうに私は思わざるを得ないわけです。
 ですから、単に企業は努力をしなさい。あるいは労働組合は努力をしなさい、あるいは監督署も一緒になって努力しましょうという、これは個々の議論としては成り立つのでしょうけれども、現実の労働時間の短縮を進めていこうとするならそれは成り立たないという現実があるということだろうと思うんです。
 そういう問題を前提にするなら、この猶予措置の問題についてもどうしていくかということは、千八百時間を達成していくという面において、これは今までの労働省の物の考え方というか答弁をもう少し飛躍していただかないと、飛び越えていただかないと、私は経済五カ年計画でうたっているそういう方向にはなり得ないのではないかというふうに思えてなりません。
 これは、既にもう同僚議員が指摘をされておりますが、基準法というものは強行法規でありますから、この強行法規でそれ以上に労働者を働かせるということは、これは完全に罰則を伴う。週四十時間ということを原則として決めていて四十一時間の労働者がおるということは、これは罰則を伴うというのは基準法の一番の原則であります。その原則を特別措置であるとか、猶予措置であるとかということで免罪するわけでありますから、本来罰則を受ける事項について免罪をしようとするのが猶予措置であり特別措置であるとするなら、この措置というものは極めてそれはレアケースであり、そしてその期間においては極めて短くなければならないという私は発想を持たなければいけないと思うんですが、この点の大臣に考え方をお聞きしまして、もう時間も余りありませんから、また次の機会に譲りたいと思います。
#235
○国務大臣(村上正邦君) 私もそうした認識に立っております。
 平成六年四月における猶予措置の対象事業の範囲については新たに実態調査を行い、その結果を踏まえ、今おっしゃいますようにできる限り限定する考えで臨んでいきたい。その後においても適宜実態調査を行い、その結果を踏まえ、猶予措置の水準及び範囲について所要の検討を行うということでまいりたい、このように思っております。
 また、業種の区分や範囲の決定については、より実態に即したきめ細かな業種の区分が可能であろうといった点などを含め、今後――先ほども、大きな一つの論点になっております立法府が審議会にゆだねていくということについて問題がある。私も議会人ですから、当然そのようなことについては一般論として、この問題ということではなくして一般論として審議会のあり方、立法府のあり方については大いに今後大きな問題だと考えて、余り審議会にゆだねるゆだねるということを申し上げることについて、私は好きじゃないんです。局長や部長にも答弁の中において余りにもこれが多いものですから、おれはこの部分は削除すると。削除するとまたおかしな形になるので、今までの長い経緯の中から見てやむを得ない現状でもあろうかな、こう思っております。
#236
○足立良平君 終わります。
#237
○委員長(田辺哲夫君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時一分散会
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ソース: 国立国会図書館
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