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1993/05/25 第126回国会 参議院 参議院会議録情報 第126回国会 労働委員会 第10号
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1993/05/25 第126回国会 参議院

参議院会議録情報 第126回国会 労働委員会 第10号

#1
第126回国会 労働委員会 第10号
平成五年五月二十五日(火曜日)
   午前十時四分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月十八日
    辞任         補欠選任
     南野知惠子君     森山 眞弓君
 五月二十四日
    辞任         補欠選任
     岩崎 純三君     泉  信也君
     森山 眞弓君     南野知惠子君
     三石 久江君     三上 隆雄君
 五月二十五日
    辞任         補欠選任
     泉  信也君     清水 達雄君
     坪井 一宇君     野間  赳君
     三上 隆雄君     三石 久江君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         田辺 哲夫君
    理 事
                大木  浩君
                星野 朋市君
                庄司  中君
                笹野 貞子君
    委 員
                泉  信也君
                佐々木 満君
                清水 達雄君
                坪井 一宇君
                野間  赳君
                南野知惠子君
                平井 卓志君
                清水 澄子君
                篠崎 年子君
                千葉 景子君
                浜本 万三君
                三上 隆雄君
                武田 節子君
                中西 珠子君
                足立 良平君
                吉川 春子君
       発 議 者    中西 珠子君
   国務大臣
       労 働 大 臣  村上 正邦君
   政府委員
       労働大臣官房長  七瀬 時雄君
       労働大臣官房会  山中 秀樹君
       計課長
       労働省労政局長  若林 之矩君
       労働省労働基準  石岡慎太郎君
       局長
       労働省労働基準  伊藤 庄平君
       局賃金時間部長
       労働省婦人局長  松原 亘子君
       労働省職業安定  齋藤 邦彦君
       局長
   事務局側
       常任委員会専門  佐野  厚君
       員
   説明員
       林野庁林政部森  関川 和孝君
       林組合課長
       建設省建設経済
       局建設振興課労  矢野 進一君
       働資材対策室長
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する
 臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
○介護休業等に関する法律案(中西珠子君外二名
 発議)
#2
○委員長(田辺哲夫君) ただいまから労働委員
 会を開会いたします。
    ―――――――――――――
 委員の異動について御報告申し上げます。
 昨日、岩崎純三石及び三石久江君が委員を辞任され、その補欠として泉信也君及び三上隆雄君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(田辺哲夫君) 労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○三上隆雄君 私は、このたび先ほど承認いただいた三石議員に差しかえをいただきまして、今回の労働基準法の一部を改正する法律案について、いわば恵まれない労働者の立場で質問を展開してまいりたい、こう思っております。
 我が国は、戦後約半世紀にしてあの敗戦の廃墟から驚異的な発展をなすことができました。これは、教育制度や平和憲法などすぐれた諸制度と国民のたゆまぬ努力と勤勉性によって発展されたものと信じております。しかし、ここに至って本当のゆとりと豊かさとは何なのか、真の人間中心の社会をつくりたい、その改善が求められているのであります。その意味において、今回の労働基準法の改正も一歩前進であると評価と期待をするものであります。
 そこで、村上労働大臣には、日ごろから現場を重視するということで、私もお会いした江東区の水道工事の事故現場や山谷など直接現場に出向かれて労働者の実態を自分の目で確かめ、熱意を持って労働行政に当たっておられることは大変貴重なことであるし、心から敬意を表する次第であります。
 さて、大臣にお伺いいたしますけれども、私は今回の労働基準法の一部改正に際しまして、出稼ぎ労働者の労働条件を改善するという立場で質問したいのであります。
 まず、出稼ぎ労働者は労働省の推計でも二十万人弱いることになっております。そのうちの半分が東北人であります。その半分は、私の出身県でありますが、青森県で占めているという状況になっております。この出稼ぎ労働者による年間所得は、雇用保険給付金額を含めると青森県で約一千億円と目されております。青森県の農業生産額がおおよそ三千三百億円で、それを分類いたしますと、リンゴや米、そして畜産、野菜等々それぞれ約一千億でありますから、その主要品目に匹敵する出稼ぎ産業であります。また、出稼ぎ労働者は首都圏や中京・阪神地区などの都市建設などに従事して、日本の経済発展にも大きく貢献をしてきました。今日の日本の経済発展の陰に下積みで働く出稼ぎ労働者の貴重な労働があったればこそだと私は思うのであります。今後も、出稼ぎ労働者がそうした役割を果たすことによって日本の発展に大きく貢献するものだ、こう思っております。
 しかし、そうした出稼ぎ労働者の労働条件は、一般の常用労働者に比べてまことに劣悪であります。先ほど、出稼ぎ労働者が全国で二十万人弱と推計されていると言いましたが、出稼ぎ労働者の就労経路が多様なこと、就労期間が一定していないことなどなどさまざまな条件で出稼ぎ労働者の正確な人員が把握されていないというのが現状であります。その実態についての正確な統計もございません。出稼ぎ労働者は一年未満の就労を繰り返しているということで、既存の労働諸法の適用から除外されているのが現状であると思います。同じ日本人の労働者でありながら、出稼ぎ労働者の果たしてきた役割、その実態について労働省はどのようにお考えですか、まず村上大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。
#5
○国務大臣(村上正邦君) おはようございます。
 きょうは、また広く深く御熱心に御審議賜りますことを冒頭に感謝させていただく次第であります。
 そこで、ただいまお話がございました出稼ぎ労働者は我が国経済に重要な役割を果たしてきた、これに対する認識いかん、まずそういうことでございますが、今委員のおっしゃいましたことと同じ考えでございまして、その果たしてこられました役割についで心から敬意を表してまいりたい、こう思っております。
 そこで、出稼ぎで働く人たちは健康面や留守家族を初めとするいろいろな問題を抱えております。出稼ぎが減り地元就労がふえることは喜ばしいことと考えておりますが、今なお山村など雇用機会に恵まれない地域があり、また都市との賃金格差など今後も出稼ぎを生む要素も残っており、今後とも雇用労働条件に関する対策を進めていくことが必要である、こう考えております。
 出稼ぎ労働者の方々の働く環境は近年改善されてきてはおりますが、依然として雇用関係が不明確なこと、労働条件に関するトラブルや労働災害の発生などの問題が特に建設業に多く見られます。非常に残念なことであります。建設業の事故といえば、出稼ぎの方々の犠牲ということがすぐ反射的に返ってくるという昨今の建設業のこうした痛ましい事故の続発、こういうことは非常に遺憾なことでございまして、きょうも建設省から来ておられるようでありますが、冒頭に私は申し上げたいのであります。
 問題は提起されておりませんが、今建設省では入札制度の新しいいろいろな方策が打ち出されておりますが、この中にそうした観点からの入札というものについて労働省といたしましても大いに口を挟んでまいりたい、こう思っておるところであります。
 出稼ぎをされる方々の高年齢化に伴い、健康の確保や労働時間の短縮、住環境の整備といった労働福祉面の向上を図る必要も高まっております。このようなことから、労働省といたしましては出稼ぎ労働者の方々が安心して働けるよう、これは出稼ぎの方々も注意をしてもらわなきゃならぬことでございますが、縁故あるいは企業、また地元の顔役、こうした方々の募集、直接企業とのそうした就労経路をたどるんではなくして、公共職業安定所を通じての適正な就労経路の確保、安全衛生と労働条件の確保、福祉の向上などを定めた「出稼ぎ労働者対策要綱」に基づき、事業主に対し指導を行うなどきめ細かい施策を強力に推進してまいりたい。こういう方策が出稼ぎの皆さん方に対する今日までの労苦に対しておこたえする我々の姿勢だと、こう思っております。
#6
○三上隆雄君 ただいま村上大臣からそれぞれ誠意のある御回答をいただきましたので、これから質問を続ける中でまた適切なお答えをいただきたいと思います。
 それでは、今回の労働基準法の一部改正で、有給休暇の部分が雇い入れの日から起算して六カ月間継続勤務、そして全労働日の八割以上勤務した労働者に対して十日労働日の有給休暇を与えなければならないというのが改正の要点であります。
 御存じのように、出稼ぎ労働者は一年未満の就労を繰り返しており、これまでの労働基準法の中では出稼ぎ労働者に対して有給休暇を与えなくてもよいということになっていたわけであります。しかし、出稼ぎ労働者は六カ月間という短期ではありますが毎年同じ会社に就労するということの繰り返しをしておるわけでありまして、長い人では二十年も三十年も同じ会社に就労しているという実態が多くあるわけであります。通算して言うならば、こういう人たちは十年なり十五年間という長い期間同じ会社に就労、貢献しているということになります。労働基準法では一年間継続してということですが、出稼ぎ労働者はこの権利を受けることができません。この部分は、若干今までの経過を踏まえて御報告申し上げながらの質問になります。
 そこで、全国出稼組合連合会は細谷会長を中心として長年労働省に要求して、昭和六十三年に、三カ月以上六カ月未満就労する出稼ぎ労働者には三日程度、六カ月以上一年未満就労する出稼ぎ労働者には六日程度の有給休暇を付与することという行政指導をしていただくことになったわけであります。しかし、その実施の状況を見ますと、行政指導が行われるようになってから五年が経過しておりますけれども、私たちが職場や宿舎を歩いていてほとんど見当たりません。一割にも満たないのではないかと思われます。やはり行政指導という枠を超えて労働基準法で保障していただかないと普及しないのではないかと思うのであります。
 その意味で、今回の改正案でも六カ月間継続勤務するということが条件になります。出稼ぎ労働者の多くはほぼ六カ月間という就労期間が一般的であります。したがって、有給休暇を取得する権利は確保できたが、そのときは雇用期間が切れているという実態が出てくるわけであります。こうした出稼ぎ労働者に有給休暇を保障するには、同じ会社に就労することがもちろん条件にもなりますけれども、ことし有給休暇を受ける条件を満たしておればその行使は来年就労したときにも受けることができることを御検討いただきたいと思いますが、労働省の御理解あるお答えを御期待申し上げて質問したいと思います。よろしくお願い申し上げます。
#7
○政府委員(石岡慎太郎君) 今回の労働基準法改正案におきましては、継続勤務要件を一年から六カ月に短縮しているところでございます。こういうことを御提案申し上げましたのも、ILOの条約などを考慮したほか、やはり出稼ぎ労働者の方々に年次有給休暇をとってもらいたいということからでございます。したがいまして、この法案が認められますと、六カ月以上の出稼ぎ労働者の方々には法律上の権利として有給休暇を取得する者が生ずると考えております。しかしながら、継続勤務が六カ月未満の出稼ぎ労働者につきましては適用がないわけでございます。この点につきましては、出稼ぎ要綱の見直しを早急に行わせていただきまして、しかるべく六カ月未満の方々の有給休暇の日数を定めまして、行政指導によりまして強力に有給休暇の付与の普及に努めてまいりたいと考えております。
 また、御指摘いただきましたように出稼ぎ労働者の方々が六カ月以上勤務いたしまして年休の権利を取得しましても、ほどなくやめられて年休を行使できないという問題は確かにあるわけでございます。したがいまして、この問題につきましても、我々も確かにこれは問題だと考えておりますが、ただこの問題は、雇用契約が断続した場合と年休の取得権の関係という年休制度の基本にかかわる問題でございます。したがいまして、先生御指摘の趣旨も十分念頭に置かせていただきまして、学識経験者の意見を聞き、今後十分にこの問題については検討させていただきたいと考えております。
#8
○三上隆雄君 せっかく前向きなお答えをいただきましたけれども、先ほども質問申し上げましたが、行政指導では五年間経過してもなかなかその実施に踏み至らないという現実がございますから、どうぞひとつ早い機会にこれも特例という、どんな形でも結構でございますから、単なる行政指導でなく法制化の実現をお願いしたい、こう思いますのできればそのめどをひとつ局長からお聞かせをいただきたいと思います。
#9
○政府委員(石岡慎太郎君) 改正基準法の施行は平成六年の四月一日からと予定いたしておりますので、それまでの間にただいま申し上げましたような検討を急ぎたいと思っております。
#10
○三上隆雄君 今ちょっと聞き漏らしたけれども、もう一度、いつまでですか。
#11
○政府委員(石岡慎太郎君) 改正基準法の施行日が平成六年の四月一日と予定いたしておりますので、それまでの間に出稼ぎ労働者の要綱を見直しまして年休制度を改善したい、こう考えておりま
す。
 また、出稼ぎ労働者の方々が再就職された場合の年休の権利につきましても、それまでの間にいろいろ検討をしてまいりたいと思っております。
#12
○三上隆雄君 よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 それから三点目には、出稼ぎ労働者はほとんどのところが日給月給制であります。日給月給制のところでは、休日が多くなるとその分収入が少なくなるという問題がございます。出稼ぎ労働者は、限られた期間内にできるだけ多くの収入を得たいということですから、残業の割り増し賃金を含め、できる限り長時間就労しようとするのが心理であります。
 したがって、出稼ぎ労働者の考えは、今日の時間短縮や週休二日制と逆行しているわけでありますけれども、出稼ぎ労働者にも時間短縮や週休二日制を適用していくには、今の日給月給制を改めて月給制にしていかないと、出稼ぎ労働者の時間短縮や週休二日制は実現し得ないような現状にあります。この点について労働省はどう考え、どう対処されますか、改めてお尋ねをしたいと思います。
#13
○政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のように、出稼ぎ労働者の方々は日給月給制の方が多いわけでございまして、そういった方々につきまして、賃金の水準などを維持しながら休日の増加等を図っていかなければならない。そういうことを考えますと、私どもこういった労働時間の短縮を進めるに当たりましては、日給制から月給制への改善、これを同時に相まって進めていくことが非常に重要ではないかというふうに考えております。
 このため、出稼ぎ労働者の方々が多く就労します建設業を中心に、労働時間の短縮とあわせまして日給制から月給制への改善、こういった施策を建設労働者の雇用改善対策の一環としてもかねてより呼びかけを行ってきているところでございます。今後、御審議を願っていますこの法案が成立いたしますと、出稼ぎ労働者の方々についても週休二日制の普及、休日の確保ということが非常に具体的な課題となってまいりますので、私どももさらに建設省や元請企業の協力も得まして、こういった日給制から月給制への改善といったことの指導を行いまして、週休二日制の普及、休日の確保が労働条件を維持しながら円滑に行われるように努力していきたいというふうに考えております。
#14
○三上隆雄君 どうぞひとつ適切な措置を講じていただきたい、こう思います。
 なお、申し上げますけれども、仮に六カ月勤務できなくとも、夫婦で来る場合があります。それから親子で来る場合があります。この間の江東区の事故現場も、親子で来られてああいう悲惨な事態になった。やっぱり夫婦というのは一心同体であります。親子もそれに近い関係にあるわけでありますから、その点のことも十分御配慮されて、先ほど御要望申し上げました点について、早期に改善されますことをお願いを申し上げたいと思います。
 それでは、次に建設省に対して質問をしたいと思います。
 今までの流れで、労働省から誠意ある前向きな御回答をいただいたわけでありますけれども、先ほど申し上げたように六カ月以上の労働者以外は該当しないというわけでありますけれども、それに対して帰省手当というものを支給できないか。
 実は、先般の二月二十三日の建設委員会で、私がこういう形で聞いて、中村建設大臣からこのような前向きな答弁をいただきました。その内容は、工賃に適正な積算を確保できるよう今後徹底した見直しを行って、各企業にきめ細かな対応ができるよう強い認識で業界を指導していきますという言明をいただきました。
 どうぞひとつ、この六カ月に満たない労働者が家庭を離れて夫婦で親子でそうして来る現状を見たときに、何らかの形で有給休暇に相当するようなそういう手当をいただきたい。その意味で、月に一回の帰省手当、その内容についてはいろいろ政府の御検討にゆだねるわけでありますけれども、私が先般の建設委員会で主張したのは、公費で半額、企業が半額という形でも結構ですから、そういう手当を出せないものか。その点、建設省からの御見解をいただきたいと思います。その後検討されているのかも含めてお答えをいただきたいと思います。
#15
○説明員(矢野進一君) お答え申し上げます。
 先生御指摘のように、出稼ぎ労働者の方々を初めといたしまして、期間雇用の方々が建設業におきましては非常に重要な地位を占めておられます。これらの方々なくしては、私どもの建設業はなかなか成り立っていかない、そういう状況にあることは事実でございます。そういう方々につきまして、なるべく建設業に定着していただく、そういうことが重要であろうということで、去る三月に中央建設業審議会で人材の確保、育成、定着といったようなことにつきましての答申をいただいておるわけでございます。
 その中で、特に重要な論点となっておりますのが、期間雇用の方々も視野に入れましての月給制の推進、月給制にもいろいろなパターンがあるわけでございますが、いろいろな観点からの検討をしていきたい。それから、御指摘のような週休二日を初めといたします休日をなるべく多く確保していくというような観点で、このためには給与条件の問題とかいろんな問題が絡んでまいります。こういった点を中心にいたしまして、今後深く検討を総合的にしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
 現在、この答申を受けたばかりでございますが、この中身を踏まえまして、より具体的な検討を進めるように準備中のところでございます。
 以上でございます。
#16
○三上隆雄君 前委員会で中村大臣から言明をいただきましたように、ひとつ前向きに検討されて、よりよい措置を講じていただきたいと思います。
 なお、私どもがなぜあえてこの出稼ぎ労働者の雇用条件の改善を願うかというと、先生方あるいはこの会場においでいただいている皆さんそれぞれの考え方はあると思いますけれども、今農水省では、新農政という形で日本の食料、農業、農村という新政策を提示してございます。これによって規模拡大がなされなければ日本の農業が諸外国と国際的競争ができないということから、これからもどんどん離農が進み、あるいは小農に切り詰めていかなきゃならない現実があるわけであります。しかしながら、地方に参入してくるという状況には必ずしも並行していかないという現実がございますから、今これから新しくまた出稼ぎに来るようなそういう労働力は、今までの労働力も確かに立派な労働力ですけれども、実際営農に携わって夫婦、家族が一生懸命働いているその労働力は私は日本産業の発展に極めて良質な労働力だ、こう思うわけでありますから、どうぞひとつ出稼ぎ、臨時労働者にも人並みの労働条件を与えていただきますように、この場において心からお願いを申し上げて善処方をお願いしたい、こう思っております。
 それでは、次の問題に入らせていただきます。
 二月一日に発生した江東区の水道工事のガス爆発の事故でありますけれども、先ほど来言っていますけれども、原田兄儀親子と合わせて四人の方が死亡されました。これもまた全員が青森県の出身であります。なおまた一人が重傷を負っているという状態であります。あれからもはや五カ月にならんとしておりますけれども、私はそれぞれ関係省庁から、その事故の結果が出れば速やかに情報を提供するという約束がございますけれども、まだ遺憾としてございません。ですから、もちろんこれは刑事事件、捜査の段階でしょうから、今回調査という形でその結果をつまびらかに御報告を願いたい、こう思っております。よろしくお願い申し上げます。
#17
○政府委員(石岡慎太郎君) 江東区の水道工事のガス爆発事故につきましては、二月一日の事故発生以来、東京労働基準局に対策本部を設置いたしまして、亀戸労働基準監督署を中心に十回の坑内立入調査、延べ八十二人にわたる現場関係者からの事情聴取などを実施してきております。
 これまでの調査によりまして、避難訓練は実施されていたこと、避難用器具は坑内に設置されていたことなどが明らかになっております。また、労働省の附属機関に産業安全研究所がございますけれども、ここがこれまで事故原因の調査をやってまいりました。
 その結果を簡単に申し上げますと、爆発した可燃性ガスについては、事故発生後トンネル内の切り羽近くで採取した空気から高濃度のメタンが検出されておりまして、これが爆発したものと思われること。それから第二点でございますが、このメタンはトンネル内にわき出ておりました地下水から出たものだと思われるということと同時に、切り羽の土の部分からもこのメタンガスが出ていたものと思われます。それから三番目でございますが、被災者の状況、坑内の設備の熱による変形などの状況から推測いたしまして、爆発の位置は切り羽に近い位置と推定されること。それから四番目でございますが、問題の着火源でございますけれども、着火源につきましては現時点では電気設備による電気スパークであった可能性が高いと思われることなどの報告を受けているところでございます。
 今後、警察も別途この事故原因について調査を進めておりますので、労働省と警察で事故原因につきましていろいろ打ち合わせをしてまいりたい。それからまた、今までも延べ八十二人にわたる現場関係者から事故原因に関係するいろんな事情聴取を行っておりますが、さらに現場関係者からの事情聴取を継続いたしまして事実関係の解明に努め、関係法規の違反があれば送検いたしたいと考えております。
#18
○三上隆雄君 それにしても、この種の調査が約五カ月になってもそういう状態だということは、私は積極性に欠ける、こう思うわけであります。
 その結果、いわば労災法上のそれぞれ被災者に対するある意味での補償はできたとしても、民事的な補償はこの結果が出ないとできないわけでしょう。これが通常の事故現場の調査なんですか。これがほとんどの事故現場でこのぐらい期間がかかるという実態なんですか。その点についてお聞かせをいただきたいと思います。
#19
○政府委員(石岡慎太郎君) ただいま事故爆発後五カ月にわたってこの程度か、捜査に積極性がないのではないかという御指摘をいただきましたけれども、決してそういうことはございません。
 この事故につきましては、先ほど申しましたように東京労働基準局に対策本部をつくりまして、もう全員一丸となって事故の解明その他に当たっております。また、労働大臣がたびたび現場に行きまして指示をされるなど、本省も一生懸命この事故に取り組んでいるところでございます。ただ、かように時間がかかりましたのは、やはり地下十四メートルのトンネル工事内で起こった爆発事故でございます。それから関係者が四名死亡、それから一名が重傷ということでなかなか原因の究明が難しい、そういうケースに当たると思います。
 したがいまして、時間がかかっておりますけれども、先ほど申しましたような事実も判明してきているわけでございます。さらに、積極的に捜査を続けまして事故原因を解明し、その段階で法違反があれば司法送検もいたしたいと考えているわけでございます。
 それから、民事的なものはこれが判明しないと出ないのではないかという御指摘がございましたけれども、会社の方からの報告によりますと、三月の中下旬にかけまして四名の死亡者の遺族の方々とそれから一名の重傷者の方との間で示談書の調印がなされておりまして、その示談に基づきましてJVから死亡者の遺族につきましては弔慰金が支払われております。また、重傷者につきましては、見舞い金を治癒後算定して支払うという内容になっております。
#20
○三上隆雄君 できたら、その結果を私に書面でお示しをいただきたいと思います。
 それでは、大臣に最後にお伺いしたいと思います。
 このような一連の建設業における労働災害防止対策を労働省は今後どう進めていくのか。佐川急便に見られるように、ゼネコン、業界、官僚、政治家の姿勢が問われる問題であると思います。下請業者と事故が無関係とは言えないんではないか、こう思います。冒頭、大臣から若干のこれに対する姿勢を示していただきましたけれども、最後に大臣の誠意ある御回答をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
#21
○国務大臣(村上正邦君) 今の御質問にお答えいたします前に、二月の江東区のトンネル事故、この解明に時間がかかるんじゃないかという御指摘で、私も実はそう思っております。今局長はああいう答弁をいたしておりますけれども、ちょっとかかり過ぎる。
 そこで、三月の末でしたか四月初めでしたか、どうなっているんだ、中間報告でも持ってこいということでも、いやまだ継続してやっておりますと、こういう答えだったものですから、私は今あの事故の現場はどうなっておるのかこの目で確かめたい、こういうことで現場に出向いて、そしてまた請け負っております企業の最高責任者ともお目にかかり、警察当局に対しても解明の促進を促したところであります。二月のあの事故がいまだに結論が出ないということは、大体にして遅過ぎる、私はこう思っております。だから、今後こういう類の事故の起きた場合にはせいぜい三カ月、ここらあたりで結論が出るようなそうした方法を考えていかなきゃいかぬ、こう思っておりますことを申し上げます。
 そこで、とにかく最初にも申しましたように建設業において労働災害が非常に多い。死亡災害でも、全体の事故の四割以上を占めております。このような状況から、きょう来ている建設省の対策室長はよく聞いておいてもらいたい。労働省としては、建設業を労働災害防止対策の最重点業種として関係法令の整備充実に努めるとともに、的確な監督指導の実施に精力的に取り組んでいきたい、こう思っております。
 事故防止のために、現在労働省の中に労働災害防止のためのプロジェクトチームを設置いたしました。現在、このチームにおいていろいろな問題提起をいたしております。その一つは、ジョイントベンチャーの場合の統一的な安全管理の徹底。あのトンネル事故におきましても、大体大手と言われる企業が四社のジョイントベンチャー、三十四億近くの請負金額に対して何で四社も大手が横並びのジョイントを組まなきゃならぬのか、こうしたこと。それから、重層下請構造の改善指導。ある文京区の建設現場にこの前私行きましたが、下請を入れると合わせて八十四社の企業体、ジョイントですよ。こんなことで安全管理ができるのかという疑問を私は持っております。こうしたことにも十分今後メスを入れていかなきゃならない。それから、請負契約時における安全対策等の明確化、それから出稼ぎ労働者、現場の作業員、技術者に対する安全衛生教育の徹底、こうしたことについて現在検討していただいております。そして、これも今月中にその結論を出していただいて、報告を求めているところであります。
 そしてまた、最初に申し上げましたようにやはりこうした事故を起こした、災害を出した企業、ゼネコンに対しては、指名入札制度の中においても、今の規定はございますけれども、この見直しも含めて指名停止ぐらいの大きな処置を考えていかなければ、私は基本的に建設安全対策というものは成り立たない、こう思っております。
 そしてまた、労働省といたしましても建設安全対策を非常に重く受けとめまして、組織体制の強化を考えているところであります。
 以上、お答えを申し上げました。
#22
○三上隆雄君 若干予定の時間を経過しましたけれども、お許しをいただいて森林労働者の問題について一点だけお答えをいただきたいと思います。
 森林は、我々人間が生きていくために極めて重要な機能を持っております。その山を守るための森林労働者は重要なまた役割を果たしているわけであります。しかし、今山村には若者がほとんどいないのが実情であります。その中心労働者は五十歳から六十歳代が大部分のような状況にあります。そこで、今回の労基法改正で林業労働者にも労基法が全面適用になることは評価をいたしたいと思います。問題は、それを受けるための条件の整備が重要であります。林業労働者の実態は、臨時的、短期的、そしてまた専業的、いろいろさまざまな様態がございますけれども、厳しい割に賃金が低く、社会保険の適用条件整備も進んでおりません。他産業並みの労働条件、すなわち雇用の通年化、賃金支払い形態、雇用契約のあり方等々事業主の指導をどのように行っていくのか、労働省、そしてあわせて林野庁にお尋ねをしたいと思います。
 なお、林野庁については、この大切な日本の森林を守り育てるために林業労働者を安定的に確保することは、林政上はもちろん国全体の重要課題となっております。このため、国、地方自治体、事業主が一体となって労働者確保のための制度を確立すべきだと思います。日本社会党は、このための林業労働法案を提出して政府にこの関係の促進を願っておるわけであります。政府としても真剣に受けとめていただきたいと思います。
 林野庁、労働省、特に労働大臣からもあわせて積極的な対応を期待申し上げて、最後の質問になるわけでありますけれども、どうぞ林野庁、労働省からそれぞれ御見解をいただきたいと思います。
#23
○政府委員(齋藤邦彦君) 林業労働につきましては、先生御指摘のように多々問題点がございます。雇用関係が不明確、雇用が不安定、それに伴いまして労働者が減少し、あわせて高齢化が進んでいる、このような状況でございます。
 私ども、林業労働者の雇用の安定を図ることが急務というふうに考えまして、今年度から従来の対策に加えまして新たに雇用関係の明確化、雇用の安定ということを中心にしました林業事業体の雇用の改善を促進するために総合的な事業を推進することにいたしました。関係各省、林野庁とも十分御相談いたしましたし、今後林野庁等とも十分に連携をしながら相談・指導、調査研究、研修というようなものを一体的に実施いたします林業雇用改善促進事業を推進することにいたしております。
 また、今年度からは関係各省もそれぞれのお立場で積極的に林業労働者の確保のために種々の対応策をとるというように承知しておる次第でございます。
 また、法律のお話がございましたけれども、私ども政府の問題として考えますと、やはり私ども今年度から新しい施策を積極的に推進することにいたしております。やはりこういうような施策の行方、効果を見きわめた上で必要に応じて検討していく課題ではないかというふうに私どもは思っております。
 なお、今国会に社会党から法案を提出されたということは十分承知しておりますが、国会の問題でございますので、私どもとかくのコメントは差し控えさせていただきたい、このように思います。
#24
○説明員(関川和孝君) 林業労働者の高齢化、減少が続く中で、林業従事者の就労条件を改善し、担い手の育成確保を図ることは林政の重要な課題であると考えております。このため、合併共同化による事業体の規模の拡大あるいは高性能林業機械の導入、広域就労、雨降り時の就労施設の整備、林道等生産基盤の整備等の施策の推進に努めているところでございます。
 さらに、平成五年度におきましては、流域を単位に事業体の体質強化、機械化の促進、林業労働力の確保を図るための流域林業サービスセンターの設置、造林・間伐事業等の補助単価の引き上げ、林業改善資金助成法の改正による林業労働福祉施設資金の創設等各般の施策を実施するとともに、地方交付税措置に基づきます担い手対策基金の創設、あるいは労働省さんからただいまお話がございました施策等関係省庁との連携により対策の充実を図っているところでございます。
 今後ともこのような各般の施策を総合的に推進していくことにより、担い手の育成、確保に努めてまいりたいと考えております。
#25
○三上隆雄君 終わります。ありがとうございました。
#26
○篠崎年子君 初めに、大臣にお尋ねをいたします。
 大臣は労働大臣に就任以来、働く者の立場に立って、今もお話にありましたように災害があれば災害現場に入り、あるいは外国人労働者の問題があれば上野にいらっしゃるということで、大変働いていただいております。それから、婦人局を女性局に改めたらどうかということで、今労働大臣が八面六臂の働きをしていらっしゃるということで、私たちとしては称賛を申し上げたいと思うわけでございます。
 昨日は、何かちょっと聞き及びますと、一番込んでいる電車に込んでいる時間に通勤を本当に味わいたいということでお乗りになったということを承っておりますけれども、その御感想をお聞かせいただきたいと思います。
#27
○国務大臣(村上正邦君) 労働大臣に就任いたしまして、幸いに参議院からは労働大臣経験者の先輩がいらっしゃいまして、この委員会でも平井先生が労働大臣の経験者でいらっしゃいました。いろいろとアドバイスをいただいております。また、浜本万三先生におかれましては、裏の労働大臣ということで、何かと厳しい注文をいただきながら職責を合うさせていただいているわけであります。
 今御質問のございました昨日の通勤電車の乗車でございますが、最も混雑する時間帯の通勤電車の体験乗車をしてまいりました。乗車区間は、地下鉄日比谷線北千住から上野まで、JR京浜東北線上野から東京までの二区間で、途中秋葉原で一たんおりまして、結局ここは一番込むので、乗りおりを一遍体験しろという四チャンネルの朝のキャスターの御注文もございまして、秋葉原で一たんおりまして、再び乗り込みました。
 こうした中で、北千住駅は、ちょうど七時半ちょっと前に参りましたが、七時半から八時半の一時間の間に、あの小さな駅ですが、八万五千人の乗りかえのサラリーマンが津波のように引いてはまた押し寄せて、常時立錐の余地がない状態でありました。京浜東北線に乗り込みますと、定員の二五〇%という混雑を経験いたしました。各駅では駅員やアルバイトの係員に押し込まれ、車内では身動きすらできない蒸しぶろのような状態でございます。このような状態で一日の朝のスタートを切るようでは、到底発想の豊かなよい仕事などはできないと感じた次第でございます。
 経済大国と言われる今日、我が国経済を支えるサラリーマンのこのような通勤状態が解消されないのは大きな問題であり、ぜひとも通勤混雑の緩和を実現するための対策を講じていかなければならないと痛感いたした次第であります。
#28
○篠崎年子君 今お話がありましたように、本当に通勤の解消ということに取り組んでいかなければならないと思いますが、どう取り組んでいったらいいかということがこれから先の問題になろうかと思っております。
 労働時間の短縮のことについて、まずお尋ねをいたしたいと思いますけれども、今もお話にありましたように政府は生活大国五カ年計画をスタートさせました。その中で、一九九六年度末までに年間総労働時間千八百時間の達成ということを掲げておりまして、その経過措置としては、週四十六時間の猶予措置というのを途中経過として設けているわけですけれども、これも一九九〇年末の中央労働基準審議会で一九九三年三月末を期限切れとして四月から週四十四時間に移行するということが決められておりました。
 にもかかわらず、労働省は、今回週四十六時間の一年延長ということを約束されたわけです。このことにつきましては、中央労働基準審議会の労働側の委員は途中で退席をするといったような非常手段に出たわけですけれども、私はこの問題については、政治的に産業界から、企業の団体からといろいろな圧力があったり、あるいは申し入れがあったりと、いろんな問題があったとはしましても、労働省というのは労働する者にとりましては最後の頼りの場所だと思うんです。ですから、労働省が私たち労働者を守ってくれなかったということで、労働省に対する勤労者の、労働者の不満あるいは不信感が募ったのではないだろうかというふうに思います。
 特に、民主主義の世の中にありましては、まず法律というものが決められておりまして、その法律によっていろいろな物事が進められていかなければならないわけです。その法律が、政令という国会の意思が反映できない形で今回の一年延長の措置がとられたということにつきましては、私は強い憤りを感じるわけです。
 この時短の問題について一つ確認をしておきたいことがあるわけですけれども、ことしの場合は、景気が悪いとかあるいはいろんな理由があったとかということでこういうことになったんだろうと思いますけれども、今景気が底をついたとは言われておりますが、先行きまだ不透明だという説もございます。しかし、こういう中にありましても、来年の四月からは確実に四十四時間に移行するということを労働省としてはしっかりと腰を据えてお取り組みになるかどうか、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
#29
○国務大臣(村上正邦君) 猶予措置の延長は、たびたび繰り返してまいりましたが、中小企業が厳しい経営環境に直面していることから、緊急避難的なやむを得ない措置として行ったものであるということの理解をしていただきますように繰り返し繰り返し申し上げできたところであります。
 おっしゃいますように、労働省といたしましては、一日でも早く週四十四時間制が実現できるよう全力を尽くして今後取り組んでいかなければならない、こうした気持ちでおります。
#30
○篠崎年子君 少し数字的なものになりますけれども、現在の法律のもとで週四十四時間制が法定労働時間となり、また猶予措置として四十六時間があり、そしてもう一年残る、あるいは特例措置があるということで非常に時間帯が複雑になっているわけですけれども、それぞれのその対象事業所、それから対象事業者数、どのくらいになっているのかということをお答えいただきたいと思います。
#31
○政府委員(伊藤庄平君) お話にございましたように、平成五年度につきましては週四十四時間を原則としつつ、百人未満の事業場を中心に四十六時間で猶予措置があるわけでございます。
 まず、原則四十四時間の適用になる事業場、それから百人未満の中でも既に四十四時間というものを達成している事業場、その両方を足し合わせまして私ども計算いたしますと、事業場数で百二十七万事業場、それから労働者数にいたしまして二千二百九十六万人の労働者数になります。それから、四十六時間で現に猶予されている事業場の数でございますが、これは七十三万事業場でございます。それから労働者数で見ますと、四百五十一万人の労働者数がなお四十六時間の猶予の方の対象になっている、こういう数字になります。
 なお、十人未満の商業・サービス業について設けられております特例措置の対象となります事業場数は約百七十万事業場ございます。そこに働いておられる労働者の方の数が約六百十三万人、こういう数字になります。
#32
○篠崎年子君 その中で、特に先ほども要請がありました中小企業の問題ですけれども、中小企業のところで労働時間の短縮ということがなかなかとれないわけですね。中小企業のところが労働時間の短縮に踏み切れないというのはいろいろな理由があるかと思いますけれども、どういうことが阻害要因になっているのでしょうか。
#33
○政府委員(石岡慎太郎君) 労働省が企業に対して先般行ったアンケート調査の結果によりますと、企業が週休二日制を実施しない理由としては、次のようなものが挙げられております。
 一つは、同業他社が余り実施しないということでございます。それから二番目は、交代要員がなかなか確保できないので週休二日制が実施できないということでございます。それから、顧客へのサービスが低下するおそれがあるということも週休二日制を実施しない理由としてかなりの率になっております。それから、関連企業、取引先との関係がありましてなかなか週休二日制が実施できない。さらにもう一つ挙げますと、週休二日制をしますと人件費コストが上がるといった理由も出ていた次第でございます。
 以上のようなアンケート調査などから、中小企業における時短を阻む原因を分析してみますと、いろいろありますが、三つ挙げられるんじゃないかと思います。
 一つは、厳しい企業間競争が中小企業の場合行われておりまして、一社だけが時短をできないといいますか、そういう横並びの問題が一つあるということでございます。それから二番目は、中小企業の場合、経営基盤が弱くて生産性の向上がなかなかできない、生産性の向上がなかなかできないと時短もできないという、こういう問題が挙げられると思います。それから、三番目には取引慣行の問題でございまして、親企業などからあるいは取引先から急な注文が来て、その結果長時間労働などを余儀なくされる、こういった取引慣行の問題が三番目に挙げられております。
 以上三点が主要な中小企業の時短を阻む原因ではないかと思っております。
#34
○篠崎年子君 今お話がありましたようなことは、組合の方の連合が調査をした中にもやはり出てきているようです。
 その中で特に問題となりますのは、同業他社との競争関係、これはもう避けて通れないことですからなかなか難しいことかと思いますけれども、みんなで渡れば怖くないで、足並みをそろえていくということがまず第一だろう。そのためにはどうすればいいかというと、今お話がありました三番目のところの取引関係の問題ですね、これが非常に大きなウエートを占めるんじゃないかと思うわけです。と申しますのは、やはり中小企業の場合にはどこかとつながっていて、そこの下請をするとか、あるいは注文を受けて仕事をするとかいうことがあります。特に、製造関係の問題になってまいりますと、このことが非常に週休二日制あるいは時短の問題とも絡んでくるかと思いますが、連合が九二年の十月に調査いたしました中で、製造業の方の取引関係でいいますと、休日前発注、それから休日直後納入、こういうことがそれを阻害しているというのが四九%あります。それから、終業後発注、翌朝納入というのが一八%、それから発注内容の変更というのが六八・五%、これは少しダブっていっているわけですけれども、こういうことが出てきているわけです。
 ところが、このことにつきましては、九一年の二月に改正下請振興基準というのが出ておりまして、下請基準につきましては、単価の決定とか無理な発注を抑制するようにということが指導されていると思うんです。こういったようなことが指導されていながら、なおなかなかこれがよくならないということについては、今後労働省としても十分心を配っていただきたいと思うんですけれども、この点についてはいかがでございましょうか。
#35
○政府委員(石岡慎太郎君) 先生御指摘のとおり、中小企業の場合は同業他社との競争が非常に激しいことが時短の阻害要因になっております。この問題につきましては時短促進法という法律がございますが、その時短促進法という法律によりまして同業者が一団となって時短をする。みんなで渡れば怖くないと御指摘いただきましたが、同業者がみんな集まりまして時短をするという制度がございますので、こういう制度を通じて同業他社との競合関係が時短を阻む、こういう問題点をできるだけ解決していきたいと思っている次第でございます。
 それからまた、取引関係の問題につきまして、これが時短の障害となっているということで、連合の調査を挙げておっしゃいましたけれども、全く実態はそのとおりではないかと思います。どちらかといえば、この取引関係の問題が非常に難しい問題であるというふうに我々も考えているような次第でございます。このためには、先ほど触れましたように同業者が一丸となりまして時短促進法に基づく計画をつくる。そして、取引先に対しまして一丸となって、こういう取引条件はやめていただきたいという申し入れをすることができることになっております。そして、それを労働基準局とか業種を所管する地方の出先官庁が支援することにもなっております。こういう一つは時短促進法によって同業者が一体となって時短促進計画をつくっていただきまして、それで取引条件を発注先に改善させていくというやり方を通じてこの問題にひとつ対処してみたいと思います。
 それから、労働省でもう一つできますのは、親企業が、やはり先ほどおっしゃいましたように休日前発注だとか、あるいは終業後の発注だとか、発注内容の変更などいろいろやるわけでございます。したがいまして、都道府県の基準局が中に入りまして、親企業と下請中小企業の集団を一つずつ毎年指定しております。そこで、基準局も入って十分話し合っていただきまして、両者間で申し合わせを行っていただいております。そういう中小企業の時短を妨げるような発注はしない、そういう約束を申し合わせていただくなどいたしておりますが、こういう企業系列別の週休二日制の特別指導も今後大いにやってまいりたいと思います。
 それから三点目になりますが、それはやはり関係省庁とこの取引条件の問題につきましては緊密な連携をとって対処してまいりたいということでございます。中小企業庁では、御指摘のように平成四年の十二月から改正振興基準の遵守の通達を出してくれております。先生御指摘の下請振興基準の問題でございますが、このように中小企業庁がやはり発注条件の改善といいますか、取引条件の改善をいろいろ指導していただくことも有効なわけでございますので、こういう中小企業庁とか、建設省とか、あるいはまた運輸省とか、関係省庁といろいろ労働省は積極的に今後協議いたしまして、関係業界の取引条件の改善を促し、時短ができるだけ進むようにしてまいりたいと考えております。
#36
○篠崎年子君 今お話がありましたように、当事者を指導する、あるいは当事者が意識改革をするということも大事ですけれども、元請と申しますか、親企業と申しますか、そういうところが理解を示さないといけないと思いますので、そちらの方への指導も十分にしていただきたいと思うわけです。
 それともう一つは、これは後からも申したいと思いますけれども、せっかく下請振興基準というようなものができておりますね。ところが、実際に調べてみると、これを知っているのはわずか一四%ぐらいの企業しかなかったというのが連合の調査でわかっておりますので、この点も十分御指導いただきたいと思うわけです。
 次に、労働時間短縮支援センターについてお尋ねをいたしたいと思います。
 これは法案の第五章に出ているわけですけれども、新しくできると思いますが、労働時間短縮支援センターの構成、職員の身分、それから仕事の内容のあらまし、こういうことについて御説明いただきたいと思います。
#37
○政府委員(伊藤庄平君) ただいま御審議願っておりますこの法案の中では、時短促進法、これを改正いたしまして、新たに既存の民間法人を活用いたしましての時短支援センター、これを指定いたしまして、そこを通じまして新たに中小企業事業主に対します労働時間短縮のための支援措置を進める、具体的にはそこを通じて支援のための助成金等の支給を行う、こういうことにいたしておるわけでございます。具体的には、この時短支援センターにつきましては、既存の民法上の公益法人を活用するということで、社団法人であります全国労働基準関係団体連合会を指定したいというふうに考えております。
 この連合会は、東京に本部がございますが、各都道府県に支部組織を有しております。そういった構成でございまして、そういった本部、支部を通じましてこれまでも労働時間短縮のための中小企業事業主等を中心に相談・援助、情報提供、あるいは研修事業等を行ってきた団体でございます。
 そういった団体でございますので、そこを構成しています職員につきましても、そういった業務に精通している者で構成しているわけでございまして、例えば民間企業におきまして労務、人事等を担当していた方で定年等でおやめになった方のノウハウをこの法人に入っていただいて活用している、あるいは私ども労働基準行政の経験者のやはりノウハウをそこに入っていただいて活用している、こういった方々が職員の構成の大多数を占めております。
 職員の方の身分でございますが、もちろん民間の公益法人の職員ということで、全く民間の方になるわけでございますが、常勤、非常勤の方がございます。常勤の方を軸といたしまして、業務の性質に応じまして非常勤の方も入っていただいて、そのあれを活用しながら業務を進めていく、こういう形で業務を進めておるところでございます。
#38
○篠崎年子君 そうしますと、そこの財政はどういうふうになっているんですか。
#39
○政府委員(伊藤庄平君) この法律案を成立させていただきますと、新たに助成金等の支給業務を行うわけでございますが、そういった業務につきまして国の方からの交付金として必要な予算をこちらへ交付する、こういった仕組みをいたしております。
 今までの事業につきましては、私どもの方から委託している事業がございます。中小企業事業主を対象に相談・援助の業務を行ったり、情報提供の業務、あるいは研修事業等を行っておりますので、それについては国から委託費として今まで渡してきておりましたが、これらにつきましても法律成立後につきましては、所要の交付金としてそういった業務を続けて行っていただくための財政的な資金をこちらへ渡す、こんな仕組みになるわけでございます。
#40
○篠崎年子君 今御説明いただきましたし、またこの法案を読みましても、内容的に考えまして、今までの外郭団体が横滑りをするという形なんですけれども、労働省自身あるいは労働基準監督署自身、安定所、そういったところはどうして直接指導ができないのかということについて私は疑問を持つわけですけれども、いかがでございますか。
#41
○政府委員(伊藤庄平君) 労働時間の短縮を進めるに当たりまして、私ども労働基準関係の行政機関はもとより、労働基準法の最低労働条件の遵守、また今後の時間短縮に向けての指導啓発等を積極的に行っておるわけでございます。ただ、具体的な個々の事業主の方に労働時間短縮を進めていただく段階、特に中小企業の方々に労働時間短縮を進めていただく段階になりますと、実際は勤務体制の改善、人事労務管理の改善あるいは省力化、業務の効率化等を具体的にどう進めたらいいか、そういった経営問題と裏腹の関係で事業主を指導していく必要が出てまいるわけでございます。
 したがいまして、そういった経営問題と裏腹の関係の中できめ細かな労働時間短縮のためのノウハウの提供をしていくということになりますと、それは労働基準監督機関よりも、そういった点のノウハウに精通した民間の法人等の能力を活用して必要な相談・援助、ノウハウの提供等を行っていった方がいいんではないか、こういう判断から新たに時短支援センターというものを指定してきめ細かい対応を行っていく、こういう形をとったわけでございます。
 したがいまして、私ども労働基準監督機関はもとより、この労働基準法の円滑な施行を中心に労働時間短縮に向けての指導啓発、場合によっては監督指導、こういったものは今まであるいはそれ以上に今後とも精力的に進めていく考えには変わりございません。
#42
○篠崎年子君 それでは、次に特例措置についてお尋ねいたしたいと思います。
 この特例措置につきましては、先ほども御説明ありましたようにずっと猶予あるいは特例措置というのが設けられているわけですけれども、四業種が特例措置になっておりますね。この四業種が特例措置として残されている理由というのはどういうことなのか。それから、今までの経過、どうしてこうなったのかということについて御説明いただきたいと思います。
#43
○政府委員(伊藤庄平君) 現在は、商業・サービス業等の十人未満の事業所について講じられております特例措置でございますが、以前は商業、映画・演劇業、それから保健衛生業、接客・娯楽業、これらの業種につきまして一日九時間、それから一週五十四時間といったような特例が労働基準法の施行規則によって定められていたわけでございます。その後、昭和五十六年以降順次この対象範囲が縮小されてまいりました。それから、最後には残りました一人から四大規模につきましても、こういった水準での特例措置は平成三年の三月三十一日をもって廃止されました。昭和六十二年からは労働基準法の施行規則を改正いたしまして、一人から九大規模の同じ業種につきまして一週四十八時間という特例措置が設けられて現在に至っておるわけでございます。
 このような特例措置が設けられております理由でございますが、労働基準法上、条文上示されておりますのは、公衆の不便を避けるためということが法律上の理由として書かれておりますが、こういった理由のほかにお客の方が来店、来社する、それに応対する、あるいはそれを待っている時間、こういった手持ち時間が非常に長いという業務の実態、また商業・サービス業等が中心でございますので、そういう省力化等を通じましての生産性の向上といいますか、労働時間を短縮するための生産性向上がなかなか図りにくい分野である、そういった実情、こういったものも特例措置が現在設けられている理由になっているというふうに考えております。
#44
○篠崎年子君 その点について、今業種が一号から十七号まで指定されておりますね。これは、いつこの十七種に指定されているんでしょうか。
#45
○政府委員(石岡慎太郎君) 労働基準法第八条におきまして適用事業の範囲を定めております。一号から御指摘のように十七号まであるわけですが、こういう適用事業の範囲は、昭和二十二年に基準法が制定されたとき以来基本的には変わっておりません。したがいまして、十七号というのは基準法制定の二十二年に設けられたものでございます。
#46
○篠崎年子君 労働基準法ができた二十二年からということですから、もう四十五年ぐらいたっているわけですね。その間にいろいろ産業形態も変わってまいりましたし、経済の事情も変わってまいりましたので、その中でそぐわないところが出てきているんじゃないだろうかと思うのですけれども、特に今度のように時間短縮の問題とかあるいは休日休業の問題とか出てまいりますと、このくくりだけでいいでしょうか。もっと変えていかなければならないところがあるんじゃないかと思いますが、いかがでございますか。
#47
○政府委員(石岡慎太郎君) 御指摘のように、産業構造などが変化いたしまして、基準法第八条の第十七号のその他の事業、これが増加する傾向があるということは事実でございます。労働基準法研究会というものが設けられておりますけれども、これは労働法学者から成る研究会でございます。その研究会が五月の十一日、労働大臣に対しまして労働契約などの見直しの報告を出されました。その中でも、この基準法第八条の事業分類を見直すべきではないかという報告をいただいたところでございます。
 この労働基準法研究会報告、これは何も労基法八条の事業分類ばかりではなく、労働契約とかいろんな見直し、基準法制定以来四十数年たっていますから今日に合わせて労働契約などを見直せという内容も含んでおります。労働省といたしましては、この研究会報告を受けまして、どうすべきか今審議会で検討を開始していただいたところでございますので、この審議会の検討結果を踏まえまして適切な対応をしてまいりたいと考えております。
#48
○篠崎年子君 それでは、今後の御検討を待っております。
 次に、この問題の最後ですけれども、四十八時間制から四十四時間に移行するまでに約六年かかっております。今度、四十四時間から四十時間制への移行で、九六年度末までには全部四十時間に入るということになるわけですけれども、こういうようなことを考えますと、ぜひこれはやり遂げていただかなければならないわけです。本当にやれるかどうかということの御決意と、それからそのときになお猶予措置とかあるいは特例措置を残すのか残さないのか、そのときにはもうきれいに一つの線にそろえられるかどうかということについてお尋ねいたしたいと思います。
#49
○政府委員(石岡慎太郎君) 今回御提案申し上げております改正労働基準法案によりますと、週四十時間制につきましては平成六年四月から原則適用、それから平成九年の四月からは全面的に適用、こういう内容になっております。こういう形で、円滑に週四十時間制に移行ができるように労働省は全力を挙げたいと思っております。
 それから二番目に、平成六年四月から平成九年三月末までの間、さはさりながら週四十時間になかなかできないところもございますので、実態調査などをし、審議会に諮りまして、週四十四時間になると思いますが、猶予措置を設けたいと思います。この猶予措置企業につきましても平成九年四月から週四十時間に移行できるように、猶予期間中あらゆる支援措置を講じましてそのようにしてまいりたいと決意をしている次第でございます。
 それから、最後に特例の措置でお尋ねがございましたが、特例措置につきましては審議会でもいろいろ検討していただきました結果、十人未満の商業・サービス業に係る特例措置につきましては基本的には残すという方向が出ております。しかしながら、あわせて改善をしなければならない点が二点ございます。
 一つは、平成六年四月一日から改正労働基準法の施行が予定されているわけでございますが、その四月一日までの間に現在の特例措置の過労働時間が四十八時間になっております。この水準で果たしていいのかどうか見直すことになっておりますとともに、対象事業の範囲につきましても最新の実態を踏まえまして見直しをするということになっております。
 それから、もう一つございます。これは大分先の話でございますが、平成九年四月一日から週四十時間制が全面的に実施されることになろうかと思いますが、その段階における特例措置は果たしてどうあるべきかと、こういう問題があるわけでございます。この点につきましては、中央労働基準審議会でもう既に結論が出ているところでございますが、中央労働基準審議会でその時点でいろいろ調査その他をして、改めてどうすればいいのか検討していくということになっておりますので、労働省としては審議会の検討結果を踏まえまして適切にこの問題については対処したいと考えている次第でございます。
#50
○篠崎年子君 次に、年次有給休暇についてお尋ねしたいと思います。
 この年次有給休暇の問題ですけれども、先ほどもちょっと同僚議員から質問がありましたが、この年次有給休暇というのは労働者の権利としてとれるものなのか、それとも与えられるものなのかということについていかがお考えでしょうか。
#51
○政府委員(石岡慎太郎君) 年次有給休暇の取得は一定の要件のもとに法律上当然に労働者に生ずる権利であると考えております。したがいまして、その完全取得に向けまして労働者は権利を行使することが望まれます。
 ただ、こういう御質問が出るように現実を見ますと、職場の雰囲気や体制が年休をとることに不十分でありまして、なかなか年休の取得が進まない状況が見られます。また、労働者の方にも、権利ではなくて与えられるものだという意識もあるようにも思います。したがいまして、労使ともやはり基準法のもう一度趣旨に立ち返りまして、年休については意識を切りかえる必要が基本的にあるのではないかというふうに思っております。
#52
○篠崎年子君 わかりました。私もぜひそうあっていかなければならないと思うわけです。
 今までの様子を見てみますと、取得率が六〇%ぐらいですね。国家公務員の場合はどのくらいになっていますか。
#53
○政府委員(伊藤庄平君) 国家公務員につきまして見てまいりますと、平成四年の七月から九月までの夏季における年次有給休暇等の使用状況を見ますと、全省庁における一人当たりの使用状況は、年次有給休暇が三・四日、それから夏季休暇が二・九日、合計六・三日、こういう状況でございます。
#54
○篠崎年子君 年間を通してはどうですか。
#55
○政府委員(伊藤庄平君) 年間を通して全公務員の平均を見ますと、十二・九日、こういう数字が出ております。
#56
○篠崎年子君 今の御答弁でもわかりますように、国家公務員でさえと言ったらいいのかどうか、とりやすいところだと思うんですけれども、そこでもやっぱり十二・幾らという数字です。そうしますと、これは一般企業とか商業で働いている人とか、そういうところになりますとなおさらとりにくいんじゃないかというふうに思うわけです。
 ところが、先ほどもお話がありましたように年休というものは、憲法第二十七条の中に定められております「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」と、こういうふうになっておりまして、やはり働く者にとってはもう当然の権利だということを皆さんにわかっていただかなければならないし、また使用者の側にもそのことを徹底してもらわなければいけないと思うんです。
 この点は、十分今後の御指導を待ちたいと思いますけれども、なぜ年休取得率が低いのかということについではどのように把握をしていらっしゃいますか。
#57
○政府委員(伊藤庄平君) 年次有給休暇を取得できない理由につきまして、意識調査を行いまして見てまいりますと、周囲に迷惑がかかるとする者、あるいは病気など有事への備えのためにとっておくと、こういうことを挙げる者、それから仕事がたまり後で忙しくなる、こういうことを理由に挙げる者、それから仕事が多くて人手不足のためにとれないと、こういうことを挙げる方が多いようでございます。
 このことからいたしますと、年次有給休暇の取得率が低い原因でございますが、やはり企業内でのそういった年次有給休暇を取得しやすい雰囲気づくり、あるいはいろんなそういう計画表の作成その他含めまして年次有給休暇を計画的にこなしてとっていくための体制づくりといいますか、その辺が不十分である、こういうことに原因があるのではないかというふうに推測いたしております。
#58
○篠崎年子君 そういう体制づくりということについては、今後どのような方策をとられますか。
#59
○政府委員(石岡慎太郎君) 年次有給休暇の取得促進は、先生御指摘のように非常に大切なことであると考えております。
 そのため、昭和六十二年の基準法の改正の際に年次有給休暇の計画的付与制度が設けられたところでございます。これは、先ほど部長から説明しましたように年休はなかなか周囲に迷惑がかかるとか仕事が結局たまってしまうとか、そういう会社内での位置づけに問題がございますので、あらかじめ労使が年の初めにこことここは年次有給休暇で休むという計画をつくっていただく。そうすれば、労働者が気兼ねなくちょうど国民の祝日のように休めるということになるのではないかということでこの制度が設けられたものと理解しておりますが、この制度の普及がまだまだ不十分でございます。この制度は非常にいい制度でございますので、今後これを大いに普及させてまいりたいというふうに考えております。
 それから、平成二年の七月に連続休暇取得促進要綱というものを、これは通達ベースでございますが、労働省が設けまして、年休の二十日付与、二十日取得に向けましていろいろの施策を講じていくことにしておりますが、この連続休暇取得促進要綱に基づきましていろいろ職場における体制づくりを勧奨してまいりたいと思っております。
 なお、もう一つ今後の問題といたしまして、やはり年休の取得が進まないために取得促進のための有効な方策を検討すべきじゃないかという建議が中央労働基準審議会で行われましたので、中央労働基準審議会で今後年休の取得促進策について鋭意検討していただきまして、それを受けて新しいものがあれば実施をしてまいりたいと考えております。
#60
○篠崎年子君 今おっしゃいました連続休暇取得促進要綱、これは平成二年の七月五日に中央労働基準審議会が了承して出されているわけですけれども、第三の二のところにこんなふうに書いてあるわけです。「一方、勤労者が気がねなく年次有給休暇を取得できるようにするためには、例えば誕生日等あらかじめ決まっていて、職場の理解が得やすく、本人も休みやすい機会をできるだけとらえて年次有給休暇を取得させるようにすること」も重要な一つの要件だというふうに出ております。
 今の年次有給休暇のとり方というものは、暦年でするところと年度でするところとあるかと思うのですけれども、そうするとみんな一斉に始めて、そして一斉に終わるわけです。ですから、とりたいと思うときというのは大体同じところに集中してきて、やっぱり悪いかなというようなことでとれないということも出てくるかと思いますので、このとり方を考えるということは今後検討されないだろうかということが一つです。
 それから、年次有給休暇を残すということの一つに、病気をした場合に備えてとか、あるいは家族が、例えば年老いた親を抱えているようなところは、ひょっとして親が病気になったときに少し長期に休まなくちゃいけないのじゃないだろうか。そうなったときに、有給休暇を持っているといいからというようなことでこれを残していくとか、そういったようなことがあるんじゃないかと思いますと、やはり病気休暇の制度とかあるいは介護休暇の制度、こういうものを整備していかなければ年次有給休暇の完全消化ということはできないんじゃないだろうかと思うのですけれども、いかがでございますか。
#61
○政府委員(伊藤庄平君) まず一点、最初にお尋ねのございました年次有給休暇の取得のための基準日の設定、これを種々工夫することによって各自重なり合わないで年次有給休暇を取得しやすい状況が生まれるんじゃないかという点でございますが、まさに御指摘のとおりというふうに思っております。
 非常に貴重な御意見だというふう受けとめておりまして、私ども先ほども申し上げました連続休暇の取得促進要綱の中では、そういった工夫も一つの貴重な創意工夫として進めておるわけでございます。そういった種々の工夫を凝らして各職場で年次有給休暇の取得促進が進むことを私ども期待しておりますので、そういったことをいろいろ呼びかけながら、それを受けとめていただいて、労使の間で十分に話し合っていただいて実態に即した年次有給休暇の取得促進が進むように努力していきたいというふうに思っております。
 それからもう一点、お尋ねのございました病気休暇それから介護休暇の整備の問題でございます。
 年次有給休暇の取得促進という観点からやはり見逃せない問題であろうかというふうに思っておりますが、現時点で見ますと、これらの休暇制度は非常に低い普及状況にございます。各企業でいろいろ自主的に整備していただく点につきましては、私どもその普及のための方策についてさらに実効ある方法をいろいろ考えながらやっていきたいと思いますが、具体的な制度としての整備につきましては、まずそういった普及のための実効ある方策について検討し、それを実行しながら普及状況を見つつ検討してまいりたいというふうに思っております。
#62
○篠崎年子君 そのことについて、私は考えていることがあるんです。
 例えば、開始日というか計算の基準日ですね、これを今は一月一日からとか四月一日からとかというふうになっておりますけれども、これを九月ぐらいにしたらその前の夏休みということが入ってまいりますので、そこのところに何とかとれる方法があるんじゃないかと思います。それから、運転免許証の切りかえが誕生日です。同じ企業にずっと働き続けるということから考えると、ある人は誕生日から誕生日までということになってくるとまた違った意味でとりやすいところが出てくるんじゃないかと思いますので、これは検討されるときに頭の隅の方に入れておいていただければと思うわけです。
 それから、付与日数の件ですけれども、この点につきましては今のままではいけないということは皆さんもお感じになっていらっしゃると思いますので、ぜひともILOの基準まで達成できるように今後御努力いただきたいと思っております。
 年休の問題につきましても、それから先ほど来からの時短の問題についてもそうですけれども、せっかくいい提案や、それからいい計画等が出されているわけです。私も今度この質問するに当たりましてずっとあっちこっちのものを読んでおりましたら、ちゃんとそこに書いてあるわけですね、こういうことができるとか、あるいはこういうことをしなさいとか、こういう方法があるとか。ところが、実際にそれが多くの人々に伝わっていないということから考えると、やはり政府としてPRの仕方が足りないんじゃないか、あるいはその指導が徹底していないんじゃないかと思いますので、これは今後の検討をお願い申し上げたいと思います。
 次に、本法案と直接関係がありませんけれども、生活にゆとりを持たせるという意味から、フレックスタイムのことについてちょっとお尋ねをいたしたいと思います。
 このフレックスタイム制度は前回の改正のときに設けられた制度ですけれども、現在の実施の状況はどのようになっておりますでしょうか。
#63
○政府委員(伊藤庄平君) 平成三年の賃金労働時間制度等総合調査で見てまいりますと、フレックスタイム制を採用している企業は、産業規模全体で見ますと二・七%という状況でございます。
 これを企業規模別に見ますと、常用労働者三十人から九十九人の企業では一・二%、それから百人から九百九十九人の規模の企業では四・三%でございます。千人以上の企業になりますと割合がぐっと高くなりまして三〇・八%と、大企業における採用率が高くなっております。
 また、業種別には、電気・ガス・熱供給、水道業、この辺が九・四%、サービス業で六・二%と、他に比べて若干採用率が高くなっておりますけれども、おおむね業種では余り偏りがないといいますか、特徴的な傾向はございません。
#64
○篠崎年子君 今数字をお答えいただきましたけれども、大企業の三〇・八%というのは特別高いようですけれども、あとのところが四・三%とか、あるいは小さいところは一・二%とかというふうにあります。業種にもよると思いますけれども、これもまた非常に低いわけです。
 この制度につきましては、大臣がきのう電車に乗られまして、非常に込み合った通勤電車ということを痛感されたわけですけれども、フレックスタイム制を採用することによってそういうことが幾らか緩和できるのではないだろうか。それと、ゆとりを持って仕事ができるということでは、これは女性にとりましては大変大切な制度ではないだろうかと思うんですけれども、このこともやはりできるところとできないところとあるかとは思いますが、フレックスタイム制につきましては、企業とか労働者とかそういうところに周知徹底方、先ほど来から周知徹底ばかり申しておりますけれども、この周知徹底についてはどのような方法をとって指導され、あるいは周知徹底されていらっしゃるんでしょうか。
#65
○政府委員(石岡慎太郎君) 先生のフレックスタイムについての御指摘は本当にごもっともであると思います。この制度は、大臣がきのう満員電車に乗られましたけれども、通勤緩和のためにも非常に有効な制度であると思います。それから、御指摘いただきましたように女性の方々もこれを利用されると家事とのバランスなどいろんな意味で非常にゆとりのあるいい制度になろうかと思います。
 しかしながら、中小企業を中心にいたしまして、この制度の普及が進んでいない残念な事実がございます。これには、制度を採用するときに労使協定を結ばなければいけないという手続がございまして、中小企業の場合は特にこういう手続を煩瑣に感じておられる向きもあるのではないかと思っております。また、中小企業の場合は労働者が非常に少ないので、その面からフレックスをとりますと人数がなかなかそろわない時間帯もできるわけですから、そういう面での限界もあろうかと思っております。何といいましても反省すべきは、この制度のPRがどうも十分行き届いていないんじゃないか、その結果余り普及していないんじゃないかと思っている次第でございます。
 今までも、労使双方に対しまして基準局や監督署がパンフレットなどをつくってPRはしてきたわけでございますが、御指摘も受けましたので、また通勤対策も非常に重要になってきておりますので、このフレックスタイムの普及につきましてひとつ抜本的な対策は何かということで、PRも含めましてこの際十分検討させていただきたいと思っております。
#66
○篠崎年子君 大変前向きな御答弁をいただきまして、私もぜひともそれを実行していただきたいと思うわけです。
 このことにつきまして、私が先日ある会合で、女性ばかり五十人ほど集まっているところで、フレックスタイム制というのを知っていますかと聞いたんです。そうしましたら、その五十人の中で三人だけ手が挙がった、知っているというので。その三人の方の職業は、一人は郵便局にお勤めの方、一人は大企業にお勤めの方、一人は大企業とまではいかないけれども中ぐらいのところに勤めている方で、あとやはり大企業に勤めている人がそこに何人かいたんですけれども知らないんです。そんなのがあるんですか、それはどういう制度ですかと言われましたので、私が喜んで説明を申し上げましたら、そんなのがあるんだったら私はとるのにというふうなお答えが返ってきているわけです。これは働いている方の側なんです。
 今度は、事業主の方の側はちょっと私は聞く機会がありませんでしたのでお尋ねしませんで、監督署の人たちに、どんなふうなことでこれをPRしているのかとお尋ねしましたら、年度の初めのときに報告がありますね、そのときに封筒の中に入れてお配りをしているというわけなんです。そうすると、そういうことに関心を持っている人は見て、ああなるほど、こういう方法だったらうちの会社でもとれるんだな、そして職員にもこれは徹底させようかなというふうに思ってそこの会社の中に広めていく、できるところはやっていこうじゃないかと、こういうふうにすると思うんです。ところが、そういうことに余り関心がないような人は、ふうんと言ってほっぽり出してしまっているというようなことがあるんじゃないだろうか、そのためにこれが徹底していないということもあると思うんです。
 そこで、提案ですけれども、例えばPKOのときとかあるいは消費税のときとか、国は一億か三億か知りませんけれども、たくさんのお金を出して一面の広告を出されました。それから、テレビにもいろんなことで出されますね、公共広告などもありますけれども。そういうふうなメディアを使ってこういうことを徹底させるべきではないだろうか。今度の労働時間の問題についても、また年次有給休暇の問題についてもそうですけれども、この点については、今後の問題もございますので、大臣の方から御答弁いただけますでしょうか。
#67
○国務大臣(村上正邦君) もう全く同感であります。
 例えば、雇用調整助成金にいたしましてもよく徹底されていない。そこで、一面新聞広告を急遽出させるとか、こういう方策をやっておりますが、おっしゃるように電波を使って、やはり今は視覚に訴えるということが一番入りやすい時代でございます。けさも、大幅に予算を獲得してこれは大胆にひとつ広報宣伝、テレビを使って――今までどういうことをやっているかというと、もう微々たることなんですね、八千万ぐらいの予算を持ってうろちょろやっている。何もこれはできやしません。それで、今度は補正で大体二億ぐらいあれしていますが、二億の金なんてだめです。ですから、やっぱり何十億という予算をこの際私は出して、大いに努めたい。特に、この前も本会議で連合の笹野先生から質問がありましたが、国家としての四本柱の中の一本の役所であるならば、そのくらいのことはやらなきゃいけないと思っています。
 特に、これからは雇用失業問題、外国人労働者の問題、それから卓越した技能者やその作品の紹介、そしてまた今も話題になっております快適通勤のための時差通勤、フレックスタイムの重要性の呼びかけ、それから働く女性の問題、なぜ婦人から女性へと名称を変えなきゃならぬのか、こういうこと等々も大いに啓蒙していかなきゃいかぬ、こう思っておりますので、今後そうしたことに力を入れていきたい、こう思っております。
 全く先生のおっしゃるとおりでありまして、きょうのこの御質問を受けてさらに大蔵省とも折衝してまいりたい、こう思っております。
#68
○篠崎年子君 大変力強い御決意をいただきまして、微力ではございますが、私も応援をいたしたいと思っております。
 ところで、今までは全体的な問題でして、今度はちょっと個々の問題にわたってお尋ねをしたいと思うんです。今のフレックスタイム制というのは、先ほど来お話がありましたようにコアタイムがあって、その前後にフレキシブルタイムというのが出てくるわけです。そうすると、このフレキシブルタイムというのは個人が自由に使える時間だ、自由に決めていい時間だというふうに解釈をしておりますけれども、それでよろしいでしょうか。
#69
○政府委員(伊藤庄平君) お話のございましたように、フレックスタイム制は、これは始業、終業の時刻を労働者が自主的に決定するというのがこの労働基準法の趣旨でございます。
 したがいまして、コアタイムの前後にございますフレキシブルタイムにおきまして始業、終業の時刻をあらかじめ定めるんではなくて、選択させたりするんではなくて、基本的には自主的な労働者の方の決定にゆだねる、こういうことがフレックスタイムの一つの要件になろうかと思っております。
#70
○篠崎年子君 これを決めますときには、先ほどもお話がありましたようにそこの会社の中の労働組合があれば労働組合、ない場合には働いている者の大半を代表する人、そういったようなことで契約を交わすということでございます。
 あるところですけれども、これを三十分単位で切ってしまって、その三十分は個々で例えば八時から八時半まで、八時半から九時まで、九時から九時半までというふうに切るというようなことの契約をした、決めたとします。そうしたら、その場合に本当ならば自分でその時間を決めていいはずなのに、例えば八時十分に出勤をしたら、その人は八時半からの出勤しかカードに入らないということになりますと、本来なら八時十分からですから五時十分までというふうに仕事をすれば八時間ということになるわけですけれども、そこで三十分と決められておりますと二十分というものはただ働きということになってしまいます。そうしますと、そのときはわずかに二十分ですから、二十分ぐらい目くじらを立てなくてもということになるかもしれませんが、それがずっと重なっていくと、その二十分というのは何時間にもなってきて給与の関係等も出てくるんじゃないかと思います。
 この点について、長崎で、ある会社に対しまして三十分ごとに始終業時間を決めたフレックスタイム制は労働基準法違反であるとして長崎労働基準監督署が是正指導を行ったんです。そうしましたら、その是正指導をされた会社が、これは労基法の趣旨には反しないということで改めなかった。そこで、さらに労基署はそれから二、三カ月後にもう一度是正をするように同社に指導したということが報道をされておりましたけれども、こういったように三十分ごとに切っていくということはフレックスタイム制の精神に反するのではないかと思いますが、いかがでございますか。
#71
○政府委員(伊藤庄平君) 先ほども御説明申し上げましたように、フレックスタイム制は、労働基準法上は始業、終業の時刻を労働者の自主的な決定にゆだねると、これが法の趣旨でございます。したがいまして、労働者の自主的な決定ではなくて三十分刻みで選択させるという方法は、基本的には労働基準法上のフレックスタイムには当たらない、こういうことになります。
 ただ、賃金計算とは別に、労使協定におきまして労働時間管理の都合上、例えばこのグループの方々については八時半までなら八時半に出勤するというような一応の目安として示しておく、こういうことを労使協定で定めることについてはこれは許される、こういうふうに解釈されております。もし業務開始が八時十分であれば、もちろんそこから賃金計算が始まるわけでございますが、そういうものとは別に目安時間を決めて労働時間管理をやりやすくするということについてはこれは許されるわけでございますが、その両者を混同しないように、誤解されることのないように十分指導はしていきたいというふうに思っております。
#72
○篠崎年子君 それはあくまでも目安であって、それできちっと決めるということではないということですね。わかりました。
 最後に、何遍も先ほどから大臣に御答弁いただいておりますけれども、御決意のほどがよくわかりました。一番初めに申しましたように、労働省というのは労働者の味方であるということを私が申すまでもなく大臣は十分おわかりになっていらっしゃいますので、今後の労働行政の中にそのことを反映させていただきたいと思うわけでございます。
 特に、労働時間の短縮につきましては、これから先日本の国がほかの国々と一緒になって仕事をしていく上において、日本人はエコノミックアニマルだとか働きバチだとかと言われるような世の中にならないようにするためにも、やはり千八百時間の総労働時間の厳守といいますか、それを守るということを今後ぜひともやり遂げていただきたいと思いまして、最後に大臣の御決意をお伺いして質問を終わらせていただきます。
#73
○国務大臣(村上正邦君) 実は、きのうもつくづく思いました。今衆議院の予算委員会が開かれておりますが、朝九時から夜の九時まできのうは座っておりました。やはり千八百時間の実現ということからいけば、我々はこれはいいとしても、結局私どもが委員会をやるときにはこうして事務局が、議員が審議しておる間はがっちりガードしておるわけですね。ガードという言葉がいいかどうかわかりませんけれども、参加しているわけです。だから、やっぱりここらあたりから考えていかなきゃならないんじゃないかなということを所管大臣としてきのうは考えたわけであります。
 いずれにいたしましても、そういう方向を目指してやってまいりたいと、こう思っております。ですから、労働大臣を三期ほど続けてやらせていただければ徹底できるのかなと、こう思っておりますがそれもかなわぬことで、私の決意は決意としてそういう決意を持っておりますことをひとつ御理解を賜りたい。
#74
○篠崎年子君 終わります。
#75
○委員長(田辺哲夫君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時四分休憩
     ――――◇―――――
   午後一時一分開会
#76
○委員長(田辺哲夫君) ただいまから労働委員会を再開いたします。
 この際、委員の異動について御報告いたします。
 三上隆雄君及び坪井一宇君が委員を辞任され、その補欠として三石久江君及び野間赳君が選任されました。
    ―――――――――――――
#77
○委員長(田辺哲夫君) 午前に引き続き、労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#78
○星野朋市君 私は、労基法の法案審議に先立ちまして、実は雇用調整助成金のことについてお伺いしたいと思います。
 先ほど大臣も言われましたけれども、雇用調整助成金はなかなか大変な制度でありながら、一般に知られていないという面もございます。
 私は、三月の予算委員会で労働省に、その時点での雇用調整助成金の対象業種、たしか百四業種、それでカバー人員が恐らく二百四十万程度であったと思うんですが、三月末で、その後四月、五月ぐらいの見通しをお聞きいたしました。新聞報道でも見られるように、自動車業種という大きな業種が指定されましたので、かなり人数がふえていると思うんですけれども、雇用調整助成金の対象となっている現状ですね、これを改めて御説明いただきたいと思います。
#79
○政府委員(齋藤邦彦君) 雇用調整助成金でございますが、十月に指定基準を緩和して以来、毎月指定をしてまいりました。
 現在までに指定をいたしました業種は百二十八業種でございます。対象労働者にいたしますと約三百六十八万人、こういうことになっております。また、六月一日現在で指定すべく十幾つかの業種について、現在事務的な処理をいたしておる最中でございます。
#80
○星野朋市君 この二月の間にかなり大幅にふえたわけでございます。
 それで、この前の予算委員会のときに、たしか雇用調整助成金の予算額が五百九億円だと記憶しておるんですが、衆議院でも補正予算の審議が始まりまして、当然労働省の補正予算の中に雇用調整助成金の予算もかなり含まれていると思いますけれども、労働省の補正予算関係についての主な項目、金額、おわかりでしたら御説明いただきたいと思います。
#81
○政府委員(山中秀樹君) 今回の補正予算で主に計上しておる項目について申し上げますと、ただいまお話がございましたように雇用対策の充実ということで二百七十七億円を計上いたしております。特にその中で、雇用調整助成金の充実ということで二百四十四億円計上させていただいております。
 また、中高年のホワイトカラーの雇用就業機会の確保とか能力開発の推進あるいは労働時間短縮の促進ということで、ただいま申し上げましたように二百七十七億円を計上いたしておりますし、そのほかに労働省関係施設等の整備ということで千四十四億円を計上させていただいております。合計千三百二十二億円を今回の補正予算案に計上させていただいております。
 以上でございます。
#82
○星野朋市君 雇用調整助成金については、齋藤局長からお話があったとおりほぼ大きな山は越えたと思うんでございますが、この補正予算の額を加えて、雇用調整助成金に関する予算は十分であるとお答えいただけますか。
#83
○政府委員(齋藤邦彦君) 最近の雇用失業情勢は、景気の低迷を反映をいたしまして余りはかばかしくございません。三月の求人倍率が〇・八台になりまして、四月の求人倍率は現在集計中で今月末公表予定でございますが、三月より恐らく下がるだろうというふうに思っております。
 そういうような事情を勘案いたしまして、今度の補正予算では雇用調整助成金の支給額の増額あるいは第二次下請等に対します支給対象の拡大というのをお願いいたしまして、そのための経費として、先ほど会計課長が申し上げましたように二百四十億ばかりお願いをしておるわけでございます。当初予算と合計をいたしますと、大体七百四、五十億になりますので、この額であれば大丈夫ではないかと、このように思っておる次第でございます。
#84
○星野朋市君 それでは、私の時間は余りございませんので、千八百時間の問題についてのみお尋ねをいたしたいと思います。
 今までのこの委員会の論議を通じまして、実は週四十時間、年間千八百時間という論議はなされておったわけでございますけれども、その千八百時間(週四十時間というのを年間にしますとどういうモデルになるんだろうか。この間、参考人のときに北海道大学の保原教授が、週休二日、年間百四日、それから有給休暇二十日、その他の休日十五日。これは生活大国五カ年計画の中にある恐らく百二十九日というのに合わせていると思うんですけれども、それが出ただけなんです。
 そうすると、モデルとするとどういうことになるんだろうか。一日八時間で千八百時間というと二百二十五日になるわけです。そうすると、休日は百四十日ないと八時間労働で千八百時間にならないわけです。現在の日本の祭日その他の実情をあわせてみますと、週休二日で百四日、それから祭日が十三日あります。それから、日本特有のお盆の休みと年末年始、お盆の休みは労働省のとらえ方だと多分有給の休日というふうになっていると思うんです、役所が多分お盆は一斉に休みませんから。
 ところが民間は、日本特有のお盆には大体五日ないし六日の休みを土日にくっつけてやりますから、習慣的に三日ぐらいは完全休日になる。それから、年末年始は土日を含めて、一日の休日を含めて六日ないし一週間だと、ここでも習慣的な休日というのは三、四日できるわけです。実は、その他の休日というのは日本特有で、計算しますと十三日プラス七日間でこちらが二十日になって、有給休暇というのは平均十五日ぐらいあって、その取得率が大体半分ぐらいで八・何日という計算が出ているわけですけれども、そういう形になるのかなと一つ考えているわけです。
 それからもう一つ、日本で比較的休日が多くとられている外資系企業の平均休日というのは、年間百二十四日もしくは百二十五日ぐらいです。これでいくと、完全週休二日制百四日プラス日本の祭日十三日。年末年始の扱いは外資系企業がどういう扱いをしているか。そのほかに有給休暇十日前後。それで大体百二十四、五日になるわけです。そうすると、この場合は一日当たり七時間半という労働時間でないと千八百時間にならないわけです。
 こういうことで、労働省が描いているモデルはどういう形なのか、それをお示しいただきたいと思います。
#85
○政府委員(伊藤庄平君) 私どもが目標として取り組んでおります千八百時間は、いろいろなアプローチの仕方があるのではないかと思っておりますが、事業主の方々にこういうケースなら達成ができるという形でいろいろなモデルを示しております。
 一つのよく使いますモデルといたしましては、まず週休二日制が完全に定着している姿を想定いたしまして、また一日の労働時間につきまして労使の努力等もあって、また現在の平均的な姿を見まして、大体七時間半ぐらいまでもし進んでいけばというようなことを想定に一つ入れております。それから、休日の関係で見ますと、まず年次有給休暇につきまして二十日取得していただくという姿をその次に想定しております。それから、有給休暇以外また週休以外の休日につきまして約十五日、これを想定いたしております。そうすると、あと残業がもう一つの要素になるわけでございますが、時間外につきましては、百五十を少し切る程度、百四十七くらいの時間で年間の時間外を見ますと大体千八百時間というものが達成できる。これを一つのモデルとして私どもはいろいろ使っておるわけでございます。
 もちろん、一つのモデルといいますか目安でございますので、その中でいろいろな企業の事情また休日の設定状況によりましては、そこが先生御指摘になりましたようにむしろ週休以外の有給休暇以外の休日の方で例えば二十日取得した場合、そういうケースになりますと、ほかの要素で年次有給休暇が二十日取得でないケースでも千八百時間というものに到達が可能になってくるといろいろな状況が生まれてくるのではないかというふうに思っておるわけでございます。
#86
○星野朋市君 私が最初に申したケースと同じなんですが、そこがちょっと違うんです。要するに、その他の休日の方が二十日間あって、有給休暇は平均的には二十日間ないんです。だから、それを二十日と設定して二十とれと言っても無理なんです。このレベルをもう少し下げて、その他の休日というのをもう少し確定すれば、むしろそっちの方が現実的じゃないかと思っておるわけです。
 それで、例えば昨日の本会議で、環境基本法の問題について、六月に環境の日を設けるという意見が出まして、政府の答えは、既に日本は十三日という世界で例を見ないような多くの休日を持っているからというような答えがあったわけですけれども、一般的に言うと、六月、七月というのは祭日がおいので、そこら辺を一日ずつ設けて十五日つくったって別におかしくはないんじゃないか。結果的に時間短縮というのは、一日当たりの労働時間は余り短くはなかなかできないんです。
 私のおった会社は、労働時間の問題についてはかなり先駆的でありまして、早くから所定内労働時間七時間半というのをやったわけです。それで、それはどういうふうにやったかというと、朝の始業タイムを九時じゃなくて八時四十五分、それで終わりを五時十五分、こういうふうにして七時間半という所定内労働時間を設けたわけなんです。それにしても、それよりもっと所定内労働時間を短くするというのはなかなか難しいんです。そうすると、実は休日をふやすという形でないと時間短縮というのはできない、こういうふうに思っているわけでございます。
 それで、この点でよく例に出されるドイツでありますけれども、ドイツはどうして時間短縮が進んだかというと、実は労働組合が経営参加しているから、これが大きな原因の一つであろうと思うんです。経営協議会に労働組合が必ず入っていますから、そこで時短がかなり進んだ。結局日本でも、これは石岡局長が前に申されたように労使協議会というものを定期的に開いて、ここで労使の意見というものを交わしていくと私はうまくいくんじゃないか。要するに、今まで労使協議会というのが定期的に開かれる会社というのはなかなかありませんで、賃上げのときに、急遽賃上げと絡んでいろんな条件を出してやり合うんですけれども、これを月に二遍なりなんなり、会社の経営状況、設備状況、そういう諸般について労使の話し合いというものを進めていくと必然的に時短というのはかなり進むと思うんですが、局長の御見解はいかがですか。
#87
○政府委員(石岡慎太郎君) 各企業、各事業場を見てみますと、さまざまな労働時間短縮を阻む要因があろうかと思います。時短を進める上では各企業、各事業場でそれぞれの実情に応じたさまざまな工夫を行う必要がありまして、そのためには使用者側のみならず労働者側の意見も御指摘のように大いに反映されることが必要ではないかと思っている次第でございます。
 こういう観点も実は時短を進める際に労働省にございまして、昨年お認めいただきました時短促進法におきましてはそういう思想が入っております。すなわち、企業に労働時間短縮を協議していただく労働時間短縮推進委員会を設置する、このことを事業主の努力義務にさせていただいたような次第でございます。
 先生御指摘のとおりでございまして、やはりこういう労使協議会などが定期的に開かれまして、労働者がいろいろ時短を経営者と協議していく、こういうところでは時短が大いに進んでいくのではないかと思っておりまして、時短促進法の労使協議会制度の普及促進を大いにやってまいりたいと考えております。
#88
○星野朋市君 そういうふうに組合があって労使の間がうまくいくところはいいんですけれども、そうじゃなくて、じゃ中小企業はどうするんだ、個人経営のところはどうするんだと、必ずそういう議論が起こると思うんです。だけれども、これはやむを得ないことでありまして、まず大企業、それから中小企業の中でも非常にユニークな企業、こういうところの経営者が率先してやっていくという実例、これが次第に他に及ぼすということですから、組合があって大企業だけがそういう形になるのはおかしいじゃないかという議論も途中で出るわけですけれども、ここら辺は私はやむを得ないというふうに思っておるわけであります。
 それで、さらにこの千八百時間の社会に向けて、これは前にも足立先生からこういう御指摘がありました。これは、社会構造、社会通念それから経済原則その他もかなり大きく変わらざるを得ない状態になっているんじゃないか。私も全く同感でありまして、今までのような形でただ時間短縮という形をとってもなかなかうまくいかない。
 これは、ちょっと外れるかもしれませんけれども、卑近な例で一つ申し上げますと、私は釣りが好きで時々房総へ行くんですけれども、そこの釣り宿が土曜日休みなんです。それで、何だおまえ、お客が休みのときにそっちが休んでいたら何にもならないじゃないかと言いますと、そこのおかみさんが言うんです。お客さん、そう言ったってうちの若い者が土曜日じゃないとデートができないと、お客さんよりも跡継ぎの方が大事だと言うんです。言われてみればもうしょうがないです。だから、要するに我々の勝手で、我々は土日は休みだと思って行くと、相手はそれに従ってやってくれる、こういう観念を変えなくちゃいけない。そういう予兆があるように思うんです。
 ですから、この前も労働委員会である地方県を視察したそのときの報告の中に、一年間六十四日以下の休日しかない企業がその県の中の一三・二%を占めている。それは週一日の休日プラス決められた祭日よりも短いというか少ない休日しかとれない企業が一三%ぐらいあるんです。それで、そういうのはどういう業種だと聞いたら、零細企業ですと答えたから、零細だけじゃなくて業種的にどうなんだと。大体これはわかるわけです、サービス産業なんですけれども。そういうところでも、では通年やっていなくちゃならないのか。そうしたら、結局労働不足でもって人が来ないんだよ、そういうこともあると思うんです。これは、労働大臣がまさしく申されているように労働省を核としていろいろな各省にまたがるこういう形の要するに社会通念、そこら辺を少し変えていかないと時間短縮というのはなかなかできないんじゃないかと私は思うんですが、労働省はどういうふうにお考えでございますか。
#89
○政府委員(石岡慎太郎君) 今先生の方から、具体的な例を二つお挙げになりながら社会通念を変えなければ労働時間の短縮にならないのではないかという御指摘がございました。全く同感でございます。
 今までの労働力過剰経済になれた、そういう労使慣行はまだいろいろ残っておりますけれども、社会通念を変える一環としてそういうものも変えながら時短を進める、それが人手不足、労働力の確保対策にもなる。確かに、御指摘のとおりそういうことだと思っておりますので、今後時短を進
めるに当たりましても社会通念を変えていかなければ時短ができないという御指摘を念頭に置きながら、いろいろ施策を工夫してこれに対処してまいりたいと考えております。
#90
○星野朋市君 先ほど社会党の篠崎委員から、昨日の労働大臣の通勤体験、これへの御質問がありました。大臣は非常に行動的で、今まで通勤体験というのは普通は運輸大臣がなさるんです。運輸大臣がなさって、運輸行政の立場から何とかしなくちゃならないというわけですけれども、労働大臣は一番混雑する中で御体験なさって、御所見も私は聞いたわけですけれども、実は実際にもう少し違った時間帯をもう一回経験されるともっとよくわかったと思うんです。
 日比谷線の北千住の混雑というのはすさまじいものがある。JRは、実は日暮里と秋葉原闇というのがこれが一番込むんです。ところが、実際七時四十分までに日暮里を乗りますと、そうすると電車の中でまだ新聞が読めるんです。それからもう十分違って七時五十分になったら大変です。それから八時五十分過ぎてこの日暮里―秋葉原間を乗ると、これも折り畳んだ新聞が読める。この結果は何だというと、結局大多数の会社が、特に中央に集中している会社がほとんど九時の始業なんです。
 私の会社の経験から言いますと、本当に全部九時にいなくちゃならないのか。大体総務とか人事課だったら三分の一はまず本当に仕事をしていない。営業も四分の一は仕事をしていない。企画とかそれからデザインとか管理課、そういうところはやっぱり始業してすぐ仕事があるというのは三分の二ぐらいです。現状の一極集中で、それで鉄道のあれは大臣もおっしゃっているように二分間隔で今電車は動いているわけですから、これ以上集中できないわけです。そうすると、この中でどうするかというのは実際はフレックスタイムをとるしかない。
 このフレックスタイムは、私のかねてからの持論なんですが、そのいい例が、これはNTTで調べればわかるんですが、電話が東京都内で一番かかる時間というのは実は十時から十一時半までの間なんです。ここが頻繁に動くんです。そういうことを考えると、これから高齢者の問題などを含めてフレックスタイムというのは大企業からスタートしなくちゃいけないんですけれども、やはりもう定着させないといけない。残念ながら、今までまだ三〇%台で終わっているということは、実は製造業なんかの場合、製造現場まで含めてフレックスタイムを提案すると組合が反対する場合が多いんです。会社はどういうことをするかというと、企画であるとか研究所であるとか、こういうところだけフレックスタイムを入れちゃうわけです。製造現場というのはなかなかフレックスタイムをとりにくいんですけれども、東京の中央に属しているオフィスビル、これのフレックスタイムというのがかなり取り入れられたら、その結果通勤地獄というのは私は解消すると思う。
 通勤地獄を解消するために時差出勤であるとかフレックスタイムというんじゃなくて、フレックスタイムを導入することによってそっちが自然に変わる、こういうふうに私は認識しておるんですが、フレックスタイムの問題を含めて労働大臣、広く全般にわたっていろいろなことをお考えのようでございますから、御意見をお聞きしまして私の質問を終わります。
#91
○国務大臣(村上正邦君) 運輸大臣の領域を侵しちゃいけないと思ってはおりましたが、私がなぜ通勤地獄の解消と申し上げるかというと、やっぱりこれも快適な職場の環境をつくるということからいって、一日のスタートからとにかく不愉快な顔をして出勤されたんじゃ、これはいい仕事はできないと思ったからです。
 私は、今までそんなに感じなかったんですけれども、大臣になって霞が関の役所へ朝行きますと、ちょうど出勤時間でごった返してエレベーターを待っているわけでありますが、同じ労働省の職員でも私の顔を見ても、私がおはようと言ったっておはようございますとも言わない、頭も下げない。とにかくぶすっとして立って、エレベーターが来ればそれに押し込まれて各階におりていくという、こういうことじゃいかぬなと、こう思いました。
 外人の東京観光バスに乗るとガイドさんが、日本の朝の通勤時にはそれぞれ駅には押し屋さんというのがいて、とにかく車内に行けば他人同士が体をくっつけ合いながらとにかく黙々と通勤している、それが日本の文化なのか、日本人というのは我慢強いというのを見たというようなことをガイドさんがおもしろおかしく説明すると、外人さんがそういうことを言っているということもある雑誌で読みました。ではひとつということで、この横におります労政局長の立案に従って、一番込むところはどこだと言ったら北千住だと、この線が一番込むと、こういうことでございましたので乗ってみたわけであります。
 そこで、けさも閣議で通勤混雑緩和対策について、私のこの体験乗車から一つの提案、発言をしてまいったわけでありますが、中長期的には輸送力の増強ということが言えるでしょうが、今おっしゃられたように二分間隔で走っているわけですから、これ以上どうしようもないということなのかなと。しかし、それはそれなりにいろいろ今おっしゃられたように根本的には一極集中ということに問題があるんだろう、こう思うのでございます。しかし、それはそれといたしまして、輸送力の増強ということを中長期的には考えなければならない。
 しかし、当面この混雑緩和のためには、今星野委員もおっしゃられたようなフレックスタイムの導入ということは、現在の、いろいろ労働時間短縮、労働時間改善、意識の改革、いみじくも先日の足立先生の御発言もございましたが、そういう意識の改革ということも多少出始めてきている。そうした中では、こうしたことの導入というのは労使間、政府がやろうとすれば徹底してやれることだ。ならば、通勤地獄の解消には役立てられるのかな、こういうふうに思っているところであります。
 そこで、この通勤問題について、来月の七日に産労懇というのがございまして、これは労働組合の幹部、それから使用者側の幹部、もちろん政府からも入りますが、運輸大臣にお出ましをいただいて、この解消問題についていろいろ英知を出し合っていきたいな、こう思っておるわけでございます。
 そこで、一つの提案は、あのすし詰め状態の中でも涼しい顔して座っている人たちもいるわけですね。だから、通勤ラッシュの時間だけはあれが折り畳み式になれば大分またこれは緩和できるのじゃないのかなと。傍聴席で笑っているけれども、こそくといえばこそくだけれども、しかしそれなりに知恵を出せばできることなのかな、こう思っております。そういう知恵を出し合って、いずれにしてもこんな通勤状態では生活大国だとか経済大国だとかにほど遠いことであるし、これまたストレスのたまった状態で出勤して、朝早く出勤するときから我勝ちに生存競争さながら、とにかく予定の時間に乗らなきゃ会社におくれるということで、闘争心むき出し、敢闘心むき出しの通勤というのは決して好ましい仕事はできない、こう思っております。
 それからまた、私もかつて通勤したことがあるんですが、とにかく依然として変わらないのは、乗りますと車内一面広告だらけですね。つるしも週刊誌の広告ばかり。あれで多少でも金を取っているんでしょうがね。だから、余りそんな営利だけじゃなくして、電車に乗っていてそういう新聞も読めないんですから、二〇〇%だとか二五〇%なんという状態では新聞も読めない。新聞でも読んでいる厚かましい人はいますよ。しかし、そうすると、ひじが当たったとか新聞をガサガサやっているとうるさいとか口論を電車の中でやっているわけです。
 だから、そういう状態でも目を楽しませるような、例えばミレーだとかセザンヌだとか東山魁夷画伯だとか平山画伯の、あれは複写でいいんですから、そういうものをつるとか、それから電光板のニュースをこしらえてその日のニュースを流すとか、いろいろそこらぐらいの工夫は、ここにJR出身、私鉄やなんかの出身者があれば  いないですね。そこらあたりの研究もしていけば多少違ってくるのじゃないかなと、ストレス解消ということからいけば。
 それから、私も汗をびっしょりかいたんです。ですから、会社へ行って、さっとシャワーでもというような形でいけばすかっとした気持ちでいすに座れる。そして、おはようと言って一日の仕事が始められればいいなと、そういう方向が打ち出せればなと、こう実は考えているところであります。
#92
○武田節子君 私は、きょうの委員会の中で裁量労働制についてお尋ねしたいと思いますが、その前に、今たまたま労働大臣がラッシュの電車の中で経験されたことを伺って、私も下北沢で小田急と千代田線に乗るんですけれども、それはそれはもう大変でございます。
 前向きに乗れないですから、後ろから駅員にけ飛ばされて押されて、そのままドアが閉まりますから鼻がドアに挟まったまま、手はこうなったままで、ちょうどヒキガエルのような形でずっと現場まで行くわけです。私は、ブローチはしてこないことにしております。なぜかというと、押されたらそのまま骨折しそうなのでこれは大変だなと思うんですけれども、あの込みようはちょうど六畳一間に八十三人を詰めたと同じ混雑だそうでございまして、そこで費やすカロリーは一日の半分の四百九カロリーを費やしてしまうということで、今労働大臣がシャワー浴びてにこりにこりと言いますけれども、こういう状況では共働きの家庭は、おまえがにこり私もにこりで合わせてしこりしか残らないような、そういう状況であると思っております。
 さて、本論に入りますけれども、ILOは去る三月二十三日に世界労働報告を発表して、その中で、ある調査によれば四〇%の日本人が過労で死亡するおそれがあるという極めてショッキングな指摘を行っているようですけれども、この事実関係について伺いたいのと、この報告の背景となっている調査とはどのようなものを指しているのか、もしおわかりであれば御紹介願いたいと思います。
#93
○政府委員(石岡慎太郎君) 三月二十三日に発表されましたILOの世界労働報告の第五章におきましては、仕事でのストレスに関連して我が国の労働時間、労災補償などに言及した部分がございます。御指摘のように、その内容はある調査によれば四〇%以上の日本人が過労で死亡するおそれがあると言っている、こう書かれているわけでございます。
 労働省としては、この世界労働報告を拝見いたしまして、早速厳重にILO当局に抗議をいたしたところでございます。と申しますのは、この記述の基礎となっているデータの出所が不明でございます。それからまた、そういう出所不明のデータを掲げながら、あたかも日本人の半分に相当する者が過労死のおそれがあるという記述は、いささか慎重さに欠けるんではないかということで抗議もいたしました。
 また、この記述につきましては、事前に全く日本政府に相談がございませんでしたので、今後こういう記述をするときには日本政府にも相談をしていただきたいという抗議も行ったところでございます。
 なお、この調査がいかなる調査なのか、我々もいろいろ調べておりますがよくわからない、そういう状態でございます。
#94
○武田節子君 ILOの報告の記述は、事実をゆがめた極めてオーバーな表現と言わざるを得ませんけれども、弁護士会が開設した過労死一一〇番へ寄せられた声や、日常的に新聞や雑誌に報道されているような過労死、労災認定にかかわる記事を見るにつけても、過労死をもたらすような労働条件の解消が今日の我が国の労働政策の重要な課題だと思います。
 その意味で、諸悪の根源となっている長時間労働、過密労働を解消するために、労働基準法の改正に対する期待は極めて大きいと思いますけれども、今回の改正内容を見たときに、一年変形労働時間制の導入や裁量労働制の拡大に道を開いたことなどを見ますと、現在よりも厳しい労働条件を生む改正を含んでいることは本来の時短、労働条件の改善に逆行すると言わざるを得ません。
 そこで、まず裁量労働制に関する第三十八条の二の改正の意図についてお伺いしたいと存じます。
#95
○政府委員(石岡慎太郎君) 今回、裁量労働制の改正を御提案申し上げておりますが、これにつきまして御説明申し上げますと、御承知のように裁量労働制は昭和六十二年の基準法改正によって設けられたものでございます。労働者の裁量にゆだねる、そういう業務が存在するので、こういう規定が設けられたわけでございます。
 法律では、その業務といたしまして「研究開発の業務その他の業務」とされております。この業務に相当するものとしまして、五つの業務が実は労働省の通達で定められているわけでございます。これは、法律解釈ということで、通達でこの五業種を定めたわけでございますが、行政が法律解釈として業務を定めるという形は、それはそれなりに意味がないことはありませんけれども、やはり少し問題ではないかというふうに考えた次第でございます。むしろ、通達でそういう裁量労働制の対象業務を例示するのではなくて、はっきりとした命令で対象業務を定める、こうする方が裁量労働制の対象業務を明確に限定する意味でより効果的である。
 いろいろ御指摘をいただきましたけれども、時短に逆行するような改正の意図を持って今回裁量労働制の改正をお願いしたんではなくて、むしろ法律解釈いかんによっては、安逸に拡大いたします裁量労働制の対象業務を審議会の意見も聞きながら命令できちっと定める、その方が歯どめがかかっていいのではないか。そういう観点から御提案申し上げているものでございますので、先生の御理解をぜひ賜りたいと考えております。
#96
○武田節子君 それでは、昭和六十三年の通達で五つの業務が規定されておりますけれども、この業務を命令に格上げして規定するだけで、業務の範囲を拡大することは考えられていないと理解しておりますけれども、それでよろしいのでしょうか。
#97
○政府委員(伊藤庄平君) ただいま局長が申し上げましたように、現在通達で例示されている五業務、これは通達で例示列挙でございますので、労使協定によってそういう裁量的な業務を拡大することも可能なような形になるわけでございますが、今回はそれを審議会の意見も聞いた上で命令で特定するということでございますので、五業務を中心として労働省令で具体的に決めたいというふうに考えております。
 先生御懸念の点は、この国会に本法案を提出するまでの間、審議会におきまして、いわゆる本社等で経営の企画、戦略部門に携わる人たちについて、中に裁量的に働いている人がいるので、その人たちの扱いをこの裁量労働との関係でどうするかという議論が、労働基準法研究会、その後の審議会の議論の過程であったことから御懸念の点が出てくるのかと思います。
 この点は、この五業務を労働省令で決めるというのがまずございまして、そういった方々、今申し上げましたような方について裁量労働制をどう適用するかについては、今後の検討課題として、別途人事・労務管理の実務家等も含めた研究の場を設けて、そういう人たちの労働時間の管理のあり方がどうあるべきかというようなことを十分御議論願った上で、何か一定の成果が出ればその段階でまた検討をしていきたい、こういう考えでございますので、その点の御懸念はないかというふうに考えております。
#98
○武田節子君 それでは、その懸念が持てないようにしっかりやっていただきたいと思います。
 裁量労働制の対象業務については、今後も当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定などに関し、具体的な指示をしないこととなる業務でなければならないとされていますが、問題なのは業務の総量、ノルマやそれを達成するための期限については特に触れていないことであります。したがって、過大なノルマと厳しい期限が示されれば、労働者は長時間・過密労働によって対応せざるを得なくなるという問題が発生しますので、裁量労働制の採用については厳格な運用が必要であると思いますが、いかがでございましょうか。
#99
○政府委員(伊藤庄平君) この裁量労働制の実際の運用に当たりましては、今御指摘のような点を十分念頭に置いて運用に目を光らせてまいりたいと思います。例えば、具体的に申し上げまして、今御指摘にございましたように一定のノルマを労働者にかけるというような形で、その仕事を一定の期間内に仕上げることを雇用主が要請、指示する、こういう形のものは本来裁量労働制になじまないわけでございます。
 裁量労働は、法律でも明記されておりますようにその仕事の遂行方法、また労働時間の配分、こういったことを含めまして一切労働者本人の裁量にゆだねられている。その人たちの判断で仕事を進める場合がいわゆる裁量労働制の対象になる業務でございます。その点は、厳格に要件として明示していきたいと思いますし、具体的にその要件を受けて労使協定で最終的には特定していただきますので、またそれについても届け出を受けることになっておりますので、十分その点はチェックしながら、この制度が今御指摘になったような形にならないように十分目を光らせていく考えでございます。
#100
○武田節子君 その点、しっかりお願いしたいと思いますけれども、制度はそれを使う人によってよくもなり悪くもなるという両刃を持っておるわけでございますから、裁量労働制や一年変形労働時間制については、特に本来の趣旨に反し悪用される危険性が極めて私は強いと思うんです。
 週刊読売は五月三十日号で「残酷 サービス残業」という特集を組んでいますけれども、その中でサービス残業一一〇番を担当した日本労働弁護団の弁護士の一人の方が所見を紹介されておりますけれども、それによりますと、フレックスワークの弱点は賃金の目減りだけではないとして、
  能力のある層でますます競争が激化するでしょう。よりよい仕事の成果を求めるため、これまで以上に時間をかけることになる。ところが、時間の枠が取り外されているので手当もつかない。裁量労働は、むしろサービス残業を増加させてしまう危険性があります。不況だから仕方ないというが、一社でも潰れた大企業がありますか。いたずらに不況不安をあおり、今のうちに、より収益性のある体質をつくろうとするのが狙いなのです。リストラの目的だ。と言われています。
 労働省は、裁量労働制が悪用されないよう労使協定の運用等について十分な監視と指導を行っていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
#101
○政府委員(伊藤庄平君) この裁量労働制でございますが、私ども十分労使間で話し合っていただいて、法律上あるいは命令上具体的に出します要件、それはそういった一定のノルマがかかって、それを仕上げるために相当な残業を強いられるような人たちではなくて、むしろ裁量労働制によって労働時間がみなされていく、そういう中でかなり本人自身の自主的な判断によっていわばフレキシブルな勤務体系ができ上がる、そういう人たちを念頭に置いた制度でございますので、そういった形で運用されますように十分指導していく。また、労使協定の届け出を受ける際に当たっても、そういう観点から十分内容をチェックした上で受理していく、こういうことを徹底していく考えでございますので、御理解願いたいと思います。
#102
○武田節子君 同じく、裁量労働制とあわせて一年変形労働時間制の危険性ということでちょっとお尋ねしたいと思うんですけれども、労働省の調査によりますと、平成四年における三十人以上の事業所の一年間の総労働時間は二千八時間でありまして、その中の残業時間は百七十時間となっております。この場合、もし一年の変形制を導入しますと、一年三百六十五日とした場合に、変形できる所定時間の合計は二千八十五・七時間ですから、今まで残業として扱われてきた百七十時間は残業として扱わなくてもよくなるわけです。したがって、残業手当の支払いも割り増し賃金も必要がなくなる。これは労働者にとって一方的に不利になり、使用者だけが有利な変形制の導入は避けるべきだと思いますけれども、大臣のお考えはいかがでございますか、お伺いいたします。
#103
○政府委員(伊藤庄平君) 大臣のお答えの前に、ちょっと事務的に制度関連で御説明申し上げたいと思います。
 変形労働時間制は、確かに今度の最長一年の変形労働時間制を想定して考えますと、各週を平均したならば四十時間の形ができあがっていなければならないというのが第一の要件でございます。したがいまして、年間五十二週で見ますと二千八十時間というのが最長出てくる可能性はあるわけでございますが、もちろんこれからは、一般の場合でもそうでありますように年次有給休暇あるいは国民の祝日、その他のいろんな特定の休日等が引かれてまいりますので、実際の年間総実労働時間は週平均四十時間をこなすためには相当短くなくてはならない。変形労働時間制は、そういったことによりまして年間総実労働時間の減少を非常に期待したといいますか、そういったことを引き出していくための制度として考えておるわけでございます。
 そのことに加えまして、一年の変形労働時間制を採用する場合、現在三カ月の変形労働時間制について設けております一週五十二時間、それから一日については十時間という上限の限度時間を一週については四十八時間に縮小する、一日についてもこれを縮小していこう、こういう考えで、そこは具体的に労働省令で定めてまいります。
 現在、三カ月の変形制について見ましても、三カ月ごとに変形制を繰り返して通年的に使われているのが非常に多いわけでございますが、そういった場合に比べましても、今度の最長一年の変形制をそういう厳しい要件をかけることによりまして、一日なり一週の労働時間を動かせる幅といいますか、これは基本のパターンよりも小さくしか変動できない、こういう仕組みになってまいります。
 今御指摘のございました残業時間がこれによって消されていくんではないかという心配につきましては、現行の三カ月の変形労働時間制を通年的に使う場合等に比べてぐっと圧縮される。むしろ、そこは今回の変形労働時間制が年間休日をふやしていく。そういうことによって、総実労働時間を減らし週平均四十時間というものを導入しやすくする。こういうねらいを持っておりますので、私ども労使協定の場においてもそういった休日増ということを十分話し合った上でこれの利用の具体的な姿を話し合って実施していただくということを期待しておりますし、実際そういった指導、また労使協定の届け出に当たりましてもそういった面からのチェックと指導を行っていく考えでございますので、そういった残業減らしというような形には至らない、そういう制度として機能していくというふうに思っております。
#104
○武田節子君 私たち女性の立場から考えますと、休日がふえるのも大変結構なんですけれども、やはり一日の労働時間が長くなるということは大変困ることでございまして、変形労働制と三六協定を組み合わせると一日の労働時間の限度がなくなってしまうとか、そういった心配はないんでございましょうか。
 ここに、たくさん子育ての人たちなどから投書がありまして、残業と言われても、今までだったら子供を迎えにいくと言って断れたんだけれども、法改正になったら所定内の労働ということになって断れなくなってしまうんじゃなかろうかといったような心配、親を抱えて働き続けている女性とか、子育てしながら働いている女性たちから
たくさん来ておりますので、その辺のところをちょっと伺いたいと思います。
#105
○政府委員(伊藤庄平君) 一日の労働時間が長くなることはないかという御指摘でございますが、まず残業等が入ってこない姿を想定いたしますと、現在三カ月の変形労働時間制で繰り返して使っていく場合に比べて、現在は一日十時間という限度でございますが、これは縮小するということを前提にいたしておりますので、これはむしろ短縮されるというふうに考えていただきたいというふうに思っております。
 しかも、一週については四十八時間ということに、今の五十二時間を四時間短縮いたしますので、これをどう決めるかというのはこれからの問題でありますけれども、仮に八時間を若干超える限度時間が決められたといたしましても、それを長く続けることは三カ月の場合に比べても不可能になってくる。そんなに連続しては使えない。しかも、どこかできちっと休みをとるなりなんかして年間で見れば週平均が四十時間になっていなければならない。こういう制度になりますので、まずそういった一日の労働時間が長い姿で、今よりも悪い形で利用されるということはないというふうにぜひ御理解いただきたいと思っています。
 それから、そこに残業がつけばどうなるか。これは、もちろん通常変形制を使わない場合、それから変形制を使った場合でも残業というものが出てくる可能性は確かにあるわけでございますが、三六協定なり三六協定の上限時間の目安等を私ども使って適正な残業時間といいますか、残業時間の削減についていろいろ指導をいたしておるわけでございます。
 ただ、この変形制について申し上げれば、休日は年間を通してあらかじめこの変形制を動かす前に労使で決めていただく、具体的に何月何日という設定をしていただく、それから毎日毎日の労働時間についても特定をしていただく。これは、もし時間を切るんだったら、少なくとも三カ月より短い期間ではなくて三カ月より長い期間であらかじめ毎日毎日の労働時間を決めておいていただかなくちゃいかぬ、こういうことをこの要件として法定いたしております。したがいまして、業務の効率的なあり方といいますか、労働時間管理の適正な姿というものを労使で十分見通しを立てて話し合っていただかないとこの変形制を使えない、そういう仕組みになってございます。
 したがいまして、労使の間で労働時間管理の厳格な姿はどうあるべきかということを話し合っていただいた上で変形労働時間制が動き出しますので、今までに比べてむだや無理が排除される、残業というものがむしろ少なくなるんではないかということを私どもはこの変形制を使うところに対して期待しておるわけでございます。
#106
○武田節子君 期待して、しかと見届けたいと思います。
 私は本会議でも、季節により業務に繁閑を生ずる業務に限定するとか、あるいは危険有害業務に対しては厳しい規制をというようなお願いをしたわけでございますけれども、ここに二つの事例を労働大臣に聞いていただいて、大臣の御所見を伺いたいと思います。
 一人は、世田谷区に住んでいるNさんで、六十四歳のひとり暮らし、サラダ製造会社に勤務しています。先月四月十一日に体を悪くして退社しました。女性正社員は三人で、あとは女子パート三十人、あとは男性社員。勤務時間は、正社員は午前三時半から午後四時から五時ぐらいまで、パートは午前五時から午後の三時まで。休憩は、始まった五時から九時までの四時間はぶっ続けで働いで、あと九時から十時の一時間休憩、十二時から一時間休憩。あとは労働時間です。
 五時から九時までの四時間というのは、ジャガイモを蒸気で蒸したりあるいはマカロニをゆでたり、大きな部屋にあるガス台に一斉に火がつきますから、この四時間は常に四十度を超す熱気と湿気の中で仕事をするわけです。ここには冷房も何も効きませんので、扇風機と換気扇で対応しております。全然効き目なしです。また冬は、サラダづくりですから生野菜を洗うのに暖房は使えませんので、コンクリートの洗い場で生野菜を洗っている。そして、常に三十キロぐらいのものを持ち運ぶというそういう状況です。
 この人たちは、会社をやめるとほとんどの人が重い病気にかかっているわけで、彼女も四月十一日にやめてから近くのカイロプラクティックに通って肩と腰の治療を今しております。これは、行楽シーズンとか正月には変形制が導入されて大変な長時間労働、それでなくとも正社員ですからパートの人が来るまでの間に準備をするので朝の三時半から四時ごろに来ていて、そしてパートの人が来ると一斉に五時から九時の間はジャガイモを蒸したりマカロニをゆでたりという、四十度を超すところで仕事をするわけです。彼女も顔は青くむくんでおりまして、今治療に通っているという状況でございます。
 もう一人の人は、葛飾区に住んでいるFさんですけれども、この方五十九歳でひとり暮らしで正社員は一人。ゴムの加工会社に勤務して工場で働いておりますけれども、勤務時間は八時から五時、現在は不況ですから残業はありませんけれども、サービス残業は結構しております。これが、景気が回復したらまたすぐさま変形制が導入されることは目に見えているわけです。
 仕事の内容といえば、ゴムを練ったり、固めたり、カットしたり、研磨したりということです。その研磨のときは猛烈な粉じんの中で作業をするわけで、吸じん機はあるけれども用をなさなくて、みんな作業員は二重のマスクをしていますけれども、作業を終わってマスクをとると口の周りがみんな真っ黒で、吸じん機よりも人が吸っているというような感じの状況のようでございます。作業場は、そういうゴムを溶かしたり研磨とかそういうことで、やはり常に熱を使って四十度を超す猛烈に暑いところで仕事をしているわけです。ここも換気扇と扇風機でもってやっていますけれども、用はなさない。Fさんは余りに体がきついのでやめたいと思うけれども、あしたからの生活が困るので働き続けているということです。彼女の足は、象の足のようにむくんでおります。
 こういった状況の中で、監督署は一度も検査に入ったことがないというような状況でございます。こういう作業をしているところに今度一年変形労働時間制が導入されると、乱用されてしまっては大変だという思いがございますので、そういう業務に対する厳しいチェックあるいは三カ月変形制の規制よりももっと厳しい規制措置をすることが大事ではないかと、こんなふうに思っております。まだまだたくさんございますけれども、そういう人間の尊厳を無視した状況で働いているこういう状況に対して労働大臣の御所見、御感想を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
#107
○国務大臣(村上正邦君) この一年単位の変形労働時間制というそもそもの目的は、先ほどからも政府委員が御答弁申し上げておりますような趣旨でございまして、時短の目的を達成すると、こういう意図でございます。
 しかし、今一つの例を挙げられました。そういう過酷な条件で女性の方が労働を強いられているということを聞いた以上は、ただここで聞きっ放しということは私としてはできない性分でございますので、その辺は調査をさせていただきたい、こう思います。
#108
○武田節子君 次に、千八百時間達成についてお尋ねいたします。
 本委員会においても、宮澤内閣が掲げた年間総実労働時間千八百時間を達成する問題については多くの委員から指摘のあったところでございますけれども、その内容についてはいまだ理解できないところがございます。
 再確認する意味で伺っておきたいと思いますけれども、まず「計画期間中に年間総労働時間千八百時間を達成することを目標とする。」という表現についてであります。これは、これまでの論議で、個々の労働者の労働時間を千八百時間以内に
するという目標ではなく、毎月勤労統計調査上の目標値であり、二千時間を上回るような労働者がいたとしても、パートを含めて平均値が千八百時間になればよいという意味であると理解していますけれども、間違いはございませんでしょうか。
#109
○政府委員(伊藤庄平君) 生活大国五カ年計画で掲げております千八百時間という目標でございますが、私どもこれに対して現状を常に比較しながらどこまで進んだかというフォローをしておるわけでございます。そのフォローをする際に用いています資料といたしましては、今御指摘のございました毎月勤労統計調査の三十人以上の規模の事業所についての調査の数値を用いて行っておるわけでございます。それが、いわば平成四年度で千九百五十八時間まで減少してきたという状況になっておるわけでございます。
 この数字につきましては、御指摘がございましたようにパートタイマーの方も入った数字であることは事実でございます。ただ、私どもパートタイムを含めた数字が減っていけばそれで事足れりということではなくで、この千八百時間という目標については、やはり個々の方々がそういった統計の数字とはまた別にできるだけ千八百時間に近づいていくような形で労働時間の短縮がなされていく、こういうことの目標でもあるだろうというふうに理解しております。
 そういった意味で、この千八百時間の達成の一つのモデルといたしまして、週四十時間労働制というものが実現して週休二日制が完全に定着する、また年次有給休暇については二十日付与、二十日取得といったものが達成される、それ以外の休日についても必要な日数が確保される、と同時に所定外労働についても百五十時間を下回るような水準まで削減される、こういったパートタイマーの方ではなくて、個々の一般の労働者の方も含めて、そういうところへ近づいていけるためのモデルケースも示しながら努力を私どももし、また企業の労使の方にもお願いしている、そういう考えでやってきております。
#110
○武田節子君 平成四年の数値によりますと、事業所規模三十人以上の年間総実労働時間が千九百七十二時間でありまして、五人以上になりますと千九百八十二時間となっております。この間に十時間の開きがございます。
 生活大国五カ年計画は、勤労者とその家庭にゆとり、豊かさをもたらそうという理念に基づいているわけですから、小規模零細の事業所で働いている労働者を計画のらち外に置くことはないはずではないでしょうか。ですから、当然五人以上規模で考えられると思いますけれども、いかがでございましょうか。
#111
○政府委員(伊藤庄平君) 先ほども申し上げましたが、今御指摘の点でございますが、千八百時間というものに対して現状どこまで進んでいるかというフォローアップを私ども行っている際には、毎月勤労統計の三十人以上の規模の事業所の数値を用いてきております。これは確かに、五人以上の規模の事業所の調査と比較いたしますと、約十時間の差があるということも御指摘のとおりでございます。
 ただ、これは私ども千八百時間という目標に対して、現状どこまで労働時間の短縮が進んでいるかということを常にフォローし、我々の努力がまだ足りないとか大分成果が出たとかいうことを判断していくためのフォローアップでございまして、やはり先ほど申し上げましたように千八百時間というものの目標は、そういった統計数字で把握、フォローしていくのとまた別に、個々の勤労者の方々が千八百時間というものにできるだけ近づいてくる、こういう意味合いも込められた目標でございます。それは、事業所規模等のいかんにかかわらず、先ほど言いましたようなモデルケースも一つの参考にしていただいて、そういった勤労者の方々が、労使、私どもの努力も相まってできるだけ千八百時間に近づいていくように努力をしていきたい、そういう数字として御理解をいただきたいと思います。
#112
○武田節子君 労働省は、年次有給休暇や割り増し賃金率の問題については、我が国に固有の事情があるから諸外国並みにすることは困難性があると言ってILO水準並みの三労働週へ引き上げを行わず、時間外五〇%、休日一〇〇%という割り増し率についても、四十時間制移行の途上にあり経営にとっては二重のコストアップになるから休日割り増し率のみの微調整にとどめるというように、時と場合によっては都合のよいように諸外国との均衡を使い分けていますけれども、時短によって勤労者とその家庭にゆとりをもたらすための目標なのですから、恒常的労働者の年間総実労働時間を千八百時間にするという考え方によるべきだと思います。
 ここで、千八百時間を克服するための三つのテーマとしてちょっと伺いたいのですけれども、週休二日制の定着の進展状況、年度ごとの改善状況、業種別、規模別の内容、これは週休二日制について。二番目は、残業を減らすことについて、景気動向と進展のぐあい、これも業種別の内容と会社規模別の進展。三番目は、年次有給休暇について、取得の進まない原因と対策、完全取得実現への手順等についてお答えいただきたいと思います。年次有給休暇のことはまたこの後でも少し具体的にやりとりをしたいと思いますから、簡単に。
#113
○政府委員(伊藤庄平君) 千八百時間という目標達成におきまして、まず一つの重要な柱が完全週休二日制の定着でございます。
 週休二日制の普及状況を見てまいりますと、平成三年では何らかの週休二日制の適用を受けている事業所が九一・六%でございますが、そのうち完全週休二日制になりますと、半分をやや欠ける四五・九%の労働者が完全週休二日制の適用受ける、こういう状況になっております。ただこれは、御指摘のありました規模別に見ますと、やはり中小企業におきましてはこの完全週休二日制の普及状況はかなり低くなることは事実でございます。
 それから、所定外労働時間でございますが、平成二年度まではほぼ百八十時間台で横ばいで推移しておりました。平成三年度以降、経済の影響もございまして大幅な減少が出てまいりまして、平成四年度では現在百四十四時間という水準になっております。これを規模別に見ますと、所定外労働時間については、大企業で多く中小企業でむしろ少ない。所定労働時間とはちょうど逆の関係が所定外労働については出てまいります。
#114
○武田節子君 週四十時間労働制の実現のところで、生活大国五カ年計画では、「実態として、計画期間中に大部分の業種において週四十時間労働制を実現する。」としております。この公約についても具体的に詰めて考えてみたいのですけれども、この「実態としてこという表現はどのように理解したらよろしいでしょうか。
#115
○政府委員(伊藤庄平君) 経済計画で示されていますとおり、その計画期間中に週四十時間労働制を大部分の業種において実態として実現するというふうに書かれております。私どもこの法案作成に当たりましても、そこは基本的には現在特例措置が小規模の十人未満の商業・サービス業について設けられておりますが、それを除きましては大部分の業種がまず四十時間というものの制度の適用を受ける態勢に持っていく、これが経済計画の趣旨であろうというふうに考え、そういったつもりで法案作成に当たったわけでございます。
#116
○武田節子君 では、「大部分の業種において」という表現についてでありますけれども、これは特例対象業種を除いた他の業種すべてを四十時間制とするという趣旨であると理解してよろしいわけですか。
#117
○政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のとおり、今回の法案では、四十時間制を平成六年四月から実施し、一部業種、規模について猶予がとられますけれども、その期限は平成九年三月三十一日までと明記されているとおりでございまして、残るものは十人未満の商業・サービス業についての特例措置と、こういうことになります。
#118
○武田節子君 私は本会議において質問いたしましたけれども、平成九年四月以降、緊急措置と称して猶予措置の延長を行うことのないよう強く主張いたしました。
 これは、大臣にお聞き願いたいのですけれども、韓国労働研究院長のソン・チャン・ヒ氏が、日本労働研究雑誌九三年三月号の提言で、「来年から四十時間へ移行する際、従来のような中小企業に対する猶予措置を設けることで四十時間制を奇形化する小手先技法は用いないほうがいい」と。韓国が一九八九年に週四十八時間制から四十四時間制に短縮した際、大企業一年、中小企業二年の猶予措置を一回限り認めただけで時短の足並みをそろえた例を紹介しておられますけれども、ソン氏の言われるようにしり抜け時短にならないよう、経済大国にふさわしい対応を行ってほしいと思いますけれども、労働大臣、いかがでございましょうか。
#119
○政府委員(石岡慎太郎君) 私もソン・チャン・ヒ韓国労働研究院長の論文を拝見いたしました。御指摘のとおり、「韓国は、一九八九年改正法で週四八時間を四四時間に縮めた際、大企業は九〇年、中小企業は九一年まで一回限りの猶予を認めただけで時短の足並みをそろえた。」、そう言っておられます。
 今回、平成六年から平成九年の三月までにかけまして猶予措置は確かに設けたいと思います。というのは、やはりいきなり四十時間にできない中小企業などが存在するからであります。しかしながら、法律上はそういうことではっきり時期を区切って明示しておりますし、やっぱり猶予措置というのは何回も繰り返すものでもないというふうに考えておりまして、週四十時間制への移行に平成九年四月からなりますように全力を挙げたいと思っております。
#120
○武田節子君 期待しております。
 次は、年次有給休暇の付与日数についてお尋ねしますけれども、今回の改正に当たって、年次有給休暇の最低付与日数の国際水準への引き上げが行われなかったのは極めで残念でございます。ILO百三十二号条約並みの三労働週、完全週休二日制で十五日は世界の常識だと思いますけれども、年間総実労働時間千八百時間達成のためには年休の二十日付与、二十日間の完全取得が欠かせない条件となっているにもかかわらず、付与日数の引き上げが見送られたのはなぜでございますか、伺いたいと思います。
#121
○政府委員(石岡慎太郎君) 今回、年休の最低付与日数の引き上げを行わなかった理由は、やはり中小企業にございます。中小企業の場合は、段階的に年休六日を十日に向けて引き上げてきております。平成六年の四月から中小企業ではようやく年休十日最低付与しなければならない、そういう状態になるわけでございます。その時点でさらに重ねて中小企業も含めまして最低付与日数の引き上げを行うことは、中小企業の立場を考えますといろいろ問題があるということで、審議会でもいろいろ議論がありましたけれども、今回最低付与日数を引き上げなかったわけで、この点はよく御理解を賜りたいと思います。
 しかしながら、御指摘はごもっともでございまして、ILOの条約が存在するわけですから、我が国もできるだけそれに近づいていかなければならない、そういうふうに思っております。したがいまして、中小企業が十日になります来春を目途にいたしまして、中央労働基準審議会で最低付与日数の御検討をお願いし、速やかに結論が得られるように努力してまいりたいと考えております。
 また、行政指導ベースの話ではありますけれども、連続休暇取得促進要綱で二十日付与、二十日取得という目標を掲げてかねてからやってまいりましたので、この要綱に基づきますさらに実効ある方策、年休が二十日付与され、二十日取得されるためにどういう有効な方策があるか、これにつきましても審議会その他で御検討いただきまして、結論が得られれば実施をしてまいりたいと思っております。
#122
○武田節子君 年休付与日数が二十日に達するためには十年六カ月を要しますから、労働者一人当たりの平均付与日数が統計上二十日になることはまずあり得ない状況だと思います。今来春をめどに早急に結論を得られるように改善の措置というお話がございましたけれども、よろしく頑張っていただきたいと思います。
 改正案の施行後は、継続勤務六カ月経過後に十日の年休が付与され、その後は従来どおり一年に一日ですから、勤続年数が十年六カ月で法定日数の上限である二十日になる計算でありまして、これでは余りにもスローペース過ぎると思いますし、一年に二日付与するような制度に改めるべきではないかと、こんなふうに思っておりますので、中基審での検討に当たっては、この点についても御検討願いたいと思います。
 また、世界的に例を見ましても、八割出勤要件については、この要件が戦後における著しい勤労意欲の後退局面で導入された経過があり、今日においては全く意味のない要件になっていると思いますので、これを廃止する点についても検討すべきだと思いますけれども、いかがでございましょうか。
#123
○政府委員(伊藤庄平君) 最初にお尋ねの年休の付与日数につきまして、勤務期間に応じて上がっていく日数につきまして、これを一年一日ではなくて改善する考えはないかということでございます。
 先ほど局長から申し上げましたように、来春を目途に今後の年次有給休暇の付与日数のあり方について審議会に検討をお願いしていこうという考えでございます。その中では、この付与日数のあり方の議論が行われるわけでございますが、その際には検討事項の一つとして御指摘のような御意見も念頭に置いて議論が行われるようにしていきたいというふうには考えております。
 また、もう一つ御指摘ございました年次有給休暇の出勤要件の関係でございますが、八割という出勤要件につきまして、我が国の年次有給休暇の体系、付与日数のあり方等を含めまして、我が国の雇用慣行にいろいろ配慮した形がつくられております。また、こうした仕組みが現在我が国の雇用慣行のもとで定着していることも事実でございます。したがいまして、この八割出勤要件というものを直ちに廃止することについては、困難な面が多いというふうに考えております。
 ただ、今回の改正におきましては、従来から業務上の負傷や疾病による休業など幾つかの事項につきましてはこの八割出勤要件を外しておりますが、今回新たに育児休業についても出勤要件から外して出勤したものとみなすというような改正も行っているところでございますので、そういう点、御理解をいただければと思っております。
#124
○武田節子君 それから、年休取得について先ほどもお答えがありましたけれども、労働省は年休の取得促進を図ることがまず重要で、取得率が五〇%台で低迷しているもとでは付与日数を引き上げても余り意味がないと考えていられるようであります。平成元年以降、多少上昇ぎみではありますけれども、依然として五十八年の五九・五%という低水準であります。
 これは、私が昨年まで働く婦人の会で仕事しておりましたときに、いろいろ調査しますと、百人未満の企業では事業主も働く人も年休のことがよくわからないというのが大変多うございまして、それから休暇をとらない理由の一番目は他人に迷惑をかけたくない、これがございました。それから病気のためにとっておくもありますけれども、それよりも上回っているのが勤務評定が下がるというのが大変高い率を占めておりました。
 こういう状況を見ますと、やはり私は年休の周知徹底というものを条文の中にしっかり入れることが大事ではないか。それから、他人に迷惑をかけるというので、交代の要員を確保するということの行政指導といいますか、それから勤務評定が非常に悪くなるという点では私はむしろ逆に年休を完全取得した人が高く評価されるような義務づけをされてはいかがか。そのとることの理由は、例えばボランティア活動に参加したとか、地域の活動に参加したとかいうふうに有給休暇を有効に使っている、また体を休めることに使っても結構ですけれども、有給休暇の取得者は高く評価するというような義務づけがあってもいいのではないか、これは逆発想していったらいかがかと思うわけです。
 さらに、病気の休暇の法制化や、介護のための休暇を法制化するのは当然のこととして、これからしっかり法制化にも取り組んでいただきたいと思いますけれども、年休の取得率の悪さというのはそういう状況に出ておりますので、この点はいかがお考えでしょうか。
#125
○政府委員(伊藤庄平君) まず、年休の取得率向上を図っていくために、現状の取得率が低い原因についていろいろ御指摘がございました。確かに、取得をしていく上でほかに迷惑がかかるとか職場の雰囲気等が取得率の向上を阻害している面もあるようでございます。その点、御指摘のとおりでございます。
 現在、労働基準法には年次有給休暇の取得を理由として「不利益な取扱いをしないように」という定めもございまして、私ども労働時間の実態等を調査する際にはそういった点がないかどうかも含めていろいろ調べるわけでございますが、今後ともそういった目を光らせながら、年次有給休暇の取得に当たって少なくとも不利益な取り扱いを受けるようなことがないように十分配慮していきたい。
 また、先生からは、年次有給休暇を建設的な形でとった場合にむしろそれを評価していく、こういう形の御提案もございました。そういったことも労使の間でいろいろ話し合っていただきながら、年次有給休暇の取得に対する労使の意識といいますか、そういうものの改革につながっていく踏み出しになっていけばいい結果につながるのではないかと思います。
 制度的にどうというわけにはなかなかいかない、労使で話し合っていただくべき問題かもしれませんが、そういったことも含めて私ども年次有給休暇の取得率向上のためのいろいろ実効ある方策を検討することにいたしておりますので、そういった中で好事例的なものの収集も含めてひとつ対応していきたいというふうに考えております。
#126
○武田節子君 出稼ぎ労働者に対する比例付与についてお尋ねします。
 今回の継続勤務要件の改正によりまして、出稼ぎ労働者やパート労働者に対する比例付与のあり方も見直して行われることだろうと思いますけれども、この場合六カ月を超える長期の出稼ぎ労働者は直接的に改正の効果を享受できるわけですけれども、それに満たない期間で働いている出稼ぎ労働者については、一番最初の方の御質問にもありましたけれども、出稼労働者対策要綱に基づく行政指導によって実効を確保することになると思います。そこで、この出稼労働者対策要綱についではどのような内容の見直しを行う予定なのか、この際明らかにしていただきたいと思います。
 また、出稼ぎ労働者に対する比例付与については、労働省が出稼労働者対策要網に基づいて積極的な啓発指導行政を展開しておられることは承知しておりますけれども、その効果について必ずしも十分な結果が得られていないと思われます。この原因は、あくまでも経営者の理解と協力を前提にした指導行政にとどまっているからであって、雇用期間が六カ月に満たなくともその期間に応じて比例付与することを制度にして義務づけることを検討される、そういう時期に来ているのではないかというふうに思うのですけれども、この点いかがでしょうか。
#127
○政府委員(伊藤庄平君) 出稼ぎ労働者の方については、出稼労働者対策要綱に基づきまして、現在は継続勤務の要件が一年でございますので、出稼ぎ労働者の方に法律上の年次有給休暇の取得権がないということでございますので、その要綱で特別の指導をする根拠をつくっております。具体的には、六カ月未満の方については三日の有給休暇、六カ月を超える方についてはたしか五日だったと思いますが、年次有給休暇を出稼ぎの方にも与えるようにということで、その要綱に基づいて建設業等を中心に私ども行政指導を行っております。
 今回、六カ月に短縮いたしましたので、当然六カ月を超える方については法律上の取得権が出る。それから、六カ月未満の方についても、今度六カ月になった方は十日でございますので、今までと違ってその均衡を与えれば六カ月未満の方についても指導ベースでの日数の見直しはしなくちゃいかぬだろうというふうに思っております。したがいまして、この法律の施行にあわせまして出稼労働者対策要綱のその部分を私ども見直しまして、見直しを契機といたしまして建設業を中心とした関係業界に対してもその指導を徹底する、そういう対応を改めてとっていきたいというふうに考えているところでございます。
#128
○武田節子君 次に、パート労働者に対する年次有給休暇の比例付与に当たりましては、過所定労働日数が四日の者については初年度は六日とされております。この点につきましては、今回の基準法改正によって週四十時間制が実現するわけでありますから、現在の計算方式、すなわち十日掛ける六分の四イコール六日という方式を、十日掛ける五分の四、八日に改める必要があると思いますけれども、いかがでございましょうか。
#129
○政府委員(伊藤庄平君) パート労働者の方の比例付与の日数の問題でございますが、先ほども申し上げているとおり、この年次有給休暇の付与日数のあり方については来春検討をしていくということでございますので、そういった中でこの付与日数、比例付与で与えられるパート労働者の日数についても考えていきたい。とりわけ、今後完全週休二日制の普及が一般的になった時点においては、その辺は現実の課題として私ども検討をしていきたいというふうに思っているところでございます。
#130
○武田節子君 いろいろお答えをいただきましてありがとうございました。
 最後に、時短促進法の改正では、労働時間短縮支援センターを設置して労働時間短縮のための援助を行う事業主団体や時短を行う事業主に対する給付金の支給等の業務を行わせることとしております。このことは大変に結構なことではございますけれども、これは本会議でも申し上げて大変しつこいようですが、私はこれらの業務は本来行政機関が直接行うべきものと考えております。
 最近の労働省の立法例を見ますと、援助事業などを行う場合に、既存の団体を支援センターとしてオーソライズし、当該団体の事業の拡大と財政基盤の強化を図っているケースが大変多く見受けられますけれども、なぜそのような手法を用いなければならないのでしょうか。これを一つお尋ねしたいと思います。
 もう一点は、この支援センターは労働省のOB支援センターになるのではないかといった声が聞こえできますので、まかり間違ってもこの支援センターが労働省のOB支援センターにならないように、念のため労働大臣に確認をいたし、御答弁いただいて、私の質問を終わります。
#131
○政府委員(伊藤庄平君) 労働大臣にということでございますが、この支援センターの業務の具体的な内容と関連しますので、まず私の方からお答えをさせていただきたいと思います。
 この労働時間短縮支援センターは、法案を成立させていただけば、具体的には公益法人であります全国労働基準関係団体連合会を指定する予定をいたしております。ここは、かねてより労働時間の短縮を進めるために、特に中小企業においてはどういうふうにすれば労働時間短縮が進められるか、その具体的なノウハウにつきまして経営問題等ともいろいろ密接な関連のもとに相談・援助、ノウハウの提供等を行ってきているところでございます。今後、この労働時間短縮支援センターを時短促進法によって指定法人として指定し、具体的な業務を一層推進させる。それとあわせて、新たにその省力化等を進めて時間短縮を行う場合の助成金制度もここを通じて支給するという形になるわけでございます。
 したがいまして、こういった労働時間を短縮するに当たりまして、指導啓発あるいは労働基準法の円滑な施行ということでの監督的な指導とか、そういったものは行政が精力的に進める。ただ、そういう経営問題、労務管理問題、その辺と密接な関連を持って進めなければならない具体的なノウハウの提供等に関しましては、民間のそういったノウハウを蓄積しているところがやっていただくのがいいだろうということで、そういう考えのもとに全国労働基準関係団体連合会を時短支援センターとして指定して進めるわけでございます。
 そういうことでございますので、もう一点御指摘のございました労働省のOBの行き先になってしまうのではないかという御指摘でございますが、今申し上げましたようにこの時短支援センターは、とりわけ中小企業の経営問題、労務管理問題、その辺と裏腹な関係で時間短縮を進めるためのノウハウを提供していかなくちゃいかぬ、そういう役割を担うわけでございますので、なかなかこれは役人だけが集まった団体ではその辺具体的なことは正直わからないというのが実情なんだろうと思います。やはり民間の企業におきまして、そういう人事・労務管理問題を経験を積んだ方なんかにも本団体に入っていただいて、適切なノウハウの提供というものをやっていかなくちゃいかぬだろうというふうに考えております。
#132
○国務大臣(村上正邦君) OBが天下りしてやれるセンターであれば、何もセンターでやることはない、おっしゃるように労働省でやればいいことであります。これは、原則として天下りというのはよろしくないというのが私の基本的な考えです。私が国対委員長をやっておりましたときにも国会承認案件の人事が回ってくるんですが、随分と私はサインするのには渋ってまいりました。ですから、余りよろしくないと思っております、ここにも役人のOBの方おられますが。
 そこで、それならそれなりに役所の定年を少し延ばせばいいと、私はこう考えております。だから、そこらあたりまで考えて、天下りはよろしくないと、こう言わなきゃならぬと思います。しかし、場合によってはどうしてもその豊富な知識、経験が必要なポジションもございます。ですから、そこらあたりをぴちっとけじめをつけた今後の天下りについては考えていきたいと、こう思っております。
#133
○足立良平君 この労働基準法の改正問題も相当議論をいたしておりますので、問題の焦点がある程度絞られてきている感じもしないわけではないわけであります。
 問題は生活大国、民社党は六年前から生活先進国ということで、労働時間の短縮問題、豊かな国民生活を実現していくと、そういう観点で提起をしてきているわけでありますが、要はこの千八百時間を達成をしていくその一つの手段として週四十時間というものを実現していく、当然それは週休二日制も実現をしていく、あるいはまた労働時間のいわゆる基準外労働というものもこれは抑制をしていく、あるいは休暇の取得ということもこれは完全に取得をするようにしていくというふうに、問題は千八百時間を達成をしていくために、一つの手段として今回の労働基準法の改正と、こういうふうに私は理解をいたしているわけでございます。
 千八百時間の内容がどうとかこうとか、いろんな議論はありますけれども、まず原則的に今私が申し上げたような理解でよろしいかどうか、一言お聞かせを願いたいと思います。
#134
○政府委員(石岡慎太郎君) 今回基準法の改正法案を提出させていただいておりますが、これは御指摘いただきましたように千八百時間という生活大国五カ年計画目標達成のために必要な措置であると、そういうふうにお考えをいただきたいと思います。
#135
○足立良平君 私は、この前の委員会でもちょっと申し上げたかと思うんですが、来年の四月から、これはちょっと遅きに失した感もありますけれども、我が国の経済の二重構造、いろんな今の我が国の経済状況というものを考えてみましたときに、そういう中で来年の四月から、猶予措置は後で触れるとして、四十時間というものを実施していくということで踏み切って労働省が法案化をされたということは、私はそれなりに評価をいたしたいというふうに思うんです。
 ただ、労働省としてもこれからさらにこの千八百時間を確実なものにしていくという観点で、先ほども星野委員からも提起されておりましたけれども、労働省の試算のモデルというのがあるんですね。これはモデルですから、余り厳密にどうこうということを私はここで申し上げようとは思いませんが、モデルをつくるに当たって、先ほど星野委員も提起されておりますように年休を、これを二十日を前提にしてモデルを組んでいくとかですね。現実的に考えると、日本の平均の有給休暇の付与日数が十五日強でしかない、平均して。そういうものであるにもかかわらず、一応モデルとして二十日を前提にして組むということは、これは労働省の千八百時間を達成する意欲がないのではないか。計算は何とでもできるんですよ、こんなものは。
 ですから、例えばこれは十五日なら十五日、あるいは十五・七日なら十五・七日、今付与日数の平均が十五・七日です。これを前提にしてこれから千八百時間を一体どうつくるかということをきちんとつくり上げていくということが、私はそこにモデルのモデルたるゆえんが出てくるのではないかと思うんですが、この点いかがでしょうか。
#136
○政府委員(伊藤庄平君) 御指摘のとおり、千八百時間の目標達成に当たって私どもモデルとしていろいろ関係方面へも周知等に使っております内容、例えばその中では完全週休二日制のほかに、年次有給休暇につきましては二十日付与、二十日取得、こういうことを前提といたしております。
 実際、付与されている平均の付与日数が十五・六日ということでございますので、相当程度の努力目標を見込んだ水準として年次有給休暇については考えておるわけでございますが、私ども平成二年に連続休暇取得促進要綱、これを作成いたしまして、パンフレット等にいたしましてかなり広く配付し呼びかけておるわけでございます。その要綱の第一のスローガンといいますか目標が、年次有給休暇二十日付与、二十日取得ということをいたしておりまして、法定の付与日数のほかにいろいろ労使の話し合いで何か有給休暇について二十日付与、二十日取得に近づくことはできないかというのが私どもの気持ちでございます。
 さらに、そのための実効ある方策についてはもっと検討すべきじゃないかという御指摘もございますので、そういう検討もこれから進めていきたいというふうに思っております。
#137
○足立良平君 私が申し上げているのは、今部長の言葉じりをつかまえてこれは詰めようと思いません、私が詰めていきたいのはもっとほかの項目がありますから。
 相当の努力目標として二十日取得するようにやっていきたい、こうおっしゃるんですが、現実的に一つのモデルとして考えたときに、十五・七日しか平均の付与日数がないんです。二十日間付与しているんではないんです。そして、この労働基準法の改正案の中に、平成八年度の末までに休暇の付与日数を全労働者に対して二十日間付与するようにしようという改正案も含まれてないんです。休暇が十五・七日しかないこの現実。そして、改正案の中にも二十日まで付与日数をふやそうという案もない。にもかかわらず、そこで二十日とることを前提にして千八百時間のモデルとして出すということは、労働省がこれは計算だけしているんであって、休日のこと一つとってもこの程度なんだから、ほかのことも大したことないやという、権威の疑われるようなモデルを出すということは私はかえってマイナスではないか。これだったら、むしろこんなものは出さぬ方がいいという感じもするんですね。
 ですから、これ以上何かさらに答弁を求めても多分出てこないでしょう。だから求めません。求めませんけれども、私はそういうものだろうと思う。――ありますか。それならどうぞ。
#138
○政府委員(石岡慎太郎君) 千八百時間のモデルケースで、先ほど星野先生からも御指摘がありましたように年休は二十日、それから週休以外の休日は十五日と合計三十五日休日をふやそうというのが政府が考えているモデルの内容になっております。
 こういうふうに考えましたのも、実は昭和六十二年にこういうモデルをつくったときに、週休以外の休日が十五日だったわけです。そのときは、まだ年休が八日だったわけですから、こういうモデルができたんだと思います。しかし、平成三年度で見ますと、週休以外の休日は御指摘のように二十日になっております。したがいまして、年休は十五日取得すれば、実績として先生御指摘のように三十五日の休日がとれまして、千八百時間の一つの水準がそこで実現するわけでございます。
 このモデルは、先ほどから部長が言っておりますようにこれはあくまでも一つのモデルでありまして、このほかにもいろいろ形はあるわけでございますので、我々といたしましては今御指摘のような問題点も踏まえながら、とにかく千八百時間を実現するように努力したいと考えております。決して先生のお考え方を否定するわけではございません。そういう考え方もあるということを念頭に置いて休日以外の休日をふやしたり、あるいは年休をさらにふやすという努力をしたいと思います。
#139
○足立良平君 年休以外の休日も、これはもう余り細かく詰めませんけれども、星野委員から指摘されていましたように例えば夏季休暇というものも、これはほとんど実際的には有給休暇を流用しているわけでして、それから中小企業の場合の年末年始の休みにいたしましても、現実的には三十日ないし三十一日まで一応労働しているわけです。一日が国民の祝日とすると、二、三日がこれは今局長が言われた休日の中あるいは祝日等の中に加え得るものだろう。
 ですから、モデルですから詰めませんけれども、これは問題は、後ほど少し触れてみたいと思いますけれども、有給休暇の付与日数というものに対する考え方を労働省も切りかえていかなきゃいかぬだろうというふうに私は思います。そうしませんと、いわゆる終身雇用、年功序列という日本の企業経営を前提に置いた有給休暇の付与というものの考え方は私は今日の実態からするなら現実的でないだろう、あるいは将来においてそれはたえ得る考え方ではないだろう、このように思っておりますから、これは後ほど少し触れてみたいと思います。
 それで、千八百時間を確実なものにしていくに当たって、まず猶予措置の問題、これはもう既に議論がされているわけでございます。この猶予措置というものを、この前私は参考人の意見の聴取をいたしておりまして、大臣以下おいでになりませんでしたが、お聞きをいたしております。これは日経連の成瀬参考人であったと思いますが、猶予期間が終了しても平成九年度以降においては実態に応じて再検討をお願いしたいというのが経営者の考え方だというふうに私はお聞きをいたしました。それ以上は余り私は詰めなかったわけでありますが、これは労働省として一体どういうお考え方をされているのかということをお聞きしたいわけです。
 これは、ことしの三月前後に例の猶予措置の延長問題がありました。それは、緊急措置として延長云々がありました。そして、経営者団体というものは平成九年度以降も猶予措置というものを希望するということが今の段階ではっきりしている。そうなってまいりますと、ことしの例があるから次にまたやってもいいと私は言いません。また、やってもらったら困るわけです。そういうことを考えてみると、まず労働省として、私どもが猶予措置はやむを得ないなというふうに考えるか考えないかのキーポイントは、今からの労働省の答弁によって私は態度を決めざるを得ないというふうに思います。その点いかがですか。
#140
○政府委員(石岡慎太郎君) 今回、御提案申しております法案では、猶予措置は平成九年三月末までと明確に法律上規定いたしております。
 猶予措置につきましては、確かに経営側からいろいろ要望のあるところでございますが、こういう猶予措置につきましては、先ほどもお答えしましたようにそう何回もあってもいいものではないのではないかとも考えておりますので、平成九年三月末から週四十時間が実現されますように労働省は最大限の努力をしてまいります。
#141
○国務大臣(村上正邦君) 今足立委員の経営者側にさらに猶予措置についての考え方があるのではないかということにつきましては、この前の参考人の御答弁の中にあると聞いておりますが、私自身には直接そうした声は参っておりません。一切今日の段階において経営者側の方から猶予の猶ということもございません。
 今もお答えいたしましたように、これはちゃんともう平成九年三月と、こう明記をいたしておりますので、それに向かってただいまの私のこの任期を果たしていくに当たりましては、最善の努力をしてまいりたい、こう思っております。
#142
○足立良平君 労働時間の短縮を進めていくとか、それからゆとりのある生活を国民に保障していくということはそれなりに企業活動というものも一方においては健全といいますか、順調に行われていかなければいけない。私は、時間短縮だけやってしまって、そして企業がもうぶっつぶれてしまっていいんだという考え方はとるわけにいかない。
 したがって、そういう面からすると、猶予措置というものが延長してもらわなくでももらいたいというふうな声が出ないように、これからこの三年間にどのようにしていくのかということが一番の課題になってくると思うのです。ですから、そういう点からいたしますと、先ほど大臣も決意を表明していただきましたし、それから局長もこれから精いっぱいやりますというふうにおっしゃっている。問題は、この三年間に猶予措置あるいはまた特別措置をいわゆる事業所も含めましてどれだけ確実にきちんとやっていくようにしていくのかという、これがやっぱり一つの産業政策の問題になってくる。
 ですから、その産業政策の問題について法律がたくさんあったり、あるいはまたことしの本予算の中でも議論をいたしましたけれども、五十万から三百万の助成金を支給するとか、こういうふうなことだけでは実際的には対応することは不可能、これまたはっきりしていると思うんです。だから、猶予措置をきちんとやり抜いていくという、三年間の中で今申しましたようないろんな通産省側における法案も総動員するとしましても、労働省として一体これをどのようにさらに担保していく考えになっているのか。その点を再度お聞かせ願っておきたいと思います。
#143
○政府委員(石岡慎太郎君) たびたびお答えしておりますように、平成六年の四月一日から平成九年の三月三十一までの三年間、どうしても四十時間にならない企業、業種につきましては猶予措置を設けることにしております。多分、この時間は四十四時間になろうかと思います。
 そこで、労働省といたしましては、この三年間に週四十四時間で猶予されました企業に対しまして平成九年四月から週四十時間制に移行できるように、さらにはその前から実際上、労働基準法の四十四時間というのはあくまでも最低基準でございますから、これを上回る労働条件を当然ながら望ましいものと考えている法制でございますから、関係省庁とも連携を図りながら事業主に対する啓発指導など必要な指導援助を行いまして、早ければ平成八年度までに、遅くとも平成九年度から週四十時間制が全面的に施行されるように最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
#144
○足立良平君 週休二日制の問題も含めまして、これは石岡局長も答弁の中でおっしゃっておりましたけれども、一番中小企業の側を含めて週休二日制の実施に踏み切らない理由は、周囲がやっていないんだと、いわゆる横並び意識というふうに先ほど表現をされておりましたが、私は日本の企業の場合のそういう横並び意識、ある意味においては過当競争にあると思うんです。ですから、そういう面からすると、今答弁の中にありましたけれども、経営者に対しましてもどれだけ週休二日制なり千八百時間に向かって周知徹底をしていくのかという、これは実は大変大きな私はファクターになっていくのではないか。
 私もこの前ずっと走っておりまして、週休二日制のやれない理由は何ですかということで詰めていくと、周囲がやってないんだからおれのところはやれないんだよと言う。ですから、これは例えばもう協定を結んでしまうとか、土日は休んでしまうとか、そういうふうな地域ぐるみあるいはまた業種ぐるみでそういうものをきちんとやっていくという競争条件を一緒にしないと、日本の企業というものは前へ進んでいかない。
 ですから、労働省とほかの省庁との連携プレーの中で、日経連あるいはまたそれぞれの経済団体を含めて、私はそういう面に対するもっと強いアプローチをやっていただかないといけないのではないか。それぞれ都道府県レベルでは単発的にやっていることを私は承知しておりますけれども、労働省が中心になって経済団体に対してもっとそういう面を私はこれからやっていただきたいということを申し上げておきたい、こういうふうに思うわけであります。
 それで、次の点で考え方をお聞きいたしたいと思いますのは、残業に対する考え方なんです。
 これは、私は労働省の考え方について、今までの答弁をずっと闘いでおりまして少し考え方を変えてもらわなければいけないのではないかということがあります。それは、残業に対する考え方で、景気変動に即応した雇用維持機能を果たしているということを経営者団体も言っておりますし、労働省自身も答弁の中でそういう考え方を提起されてきております。私は、こういう考え方を前提にすべて仕組んでまいりますと、この残業時間、いわゆる所定外勤務時間というものを減らしていくということが本来的に難しくなってくるのではないか、このように思えて実はならないわけです。
 というのは、労働省自身の統計資料を見ておりますと、これは毎月勤労統計調査を見ておりますと、概略昭和五十年までは若干景気のでこぼこによりましてありますけれども、押しなべてずっと所定外勤務時間は減少してきているわけです。そして、昭和五十年くらいを境にまた若干でこぼこしながらふえた。
 これは、労働省自身はどういうような判断をされているかは別としまして、昭和四十八年の第一次石油ショックあるいはまた昭和五十三年から四年にかけての第二次石油ショックあるいはまた円高不況とか、日本の経済の大きな変革期の中で企業は物の見事にそういう大きな世界的なショックを耐え扱いできたわけです。企業も体質強化をしてきた。けれどもそれは逆に言うと、昭和五十年までの状態と全然違ったパターンを描いてきているということは、企業が経済不況の中で体質を強化する一方で時間外労働というものでそれをしのいできたということが労働省自身のこの調査の中にはっきりと出てきているんではないかというふうに私は思えてならないわけです。
 それは、一方におきまして、これも労働省の調査にはっきり出ているわけでありまして、労働省の毎月勤労統計調査、それから通産省の鉱工業の生産指数より換算をいたした、これもまた御承知のとおりだと思いますが、この資料を見ましても、残業時間というものは好不況によって上下いたしますけれども、固定的な残業時間というものは好不況に関係なしにずっと続いている。そうすると、労働省が今まで答弁をずっとされてきたように現実問題として雇用を調整していくという安全弁としての残業時間というものはわずかな部分しかないわけです。
 だから、そういう面からすると、私はまず従来の労働省の残業時間というものに対する認識というものをここで一回修正をしておいていただかないと、千八百時間というものを達成していくために残業時間を減らしていきましょうという一つの柱が根底から崩れてしまっている、モデルではないですけれども。その点について、労働省の考え方をまずお聞かせを願いたいと思います。
#145
○政府委員(石岡慎太郎君) 御指摘にもありましたけれども、労働省で残業時間の分析をかねてからやっております。
 残業時間は二つの部分から成るのではないか。一つは景気変動部分である。もう一つは恒常的な部分ではなかろうかということで、計量的にこれを測定もいたしております。その結果を見ますと、例えば平成三年の場合ですと百六十二時間ぐらいが恒常的な残業の部分である。それから、景気変動部分は四十八時間ぐらいであるということでございます。したがいまして、景気変動部分は先生御指摘のとおりわずかであるというのは事実であると思います。圧倒的に恒常的な残業部分が多いわけでございます。
   〔委員長退席、理事大木浩君着席〕
 これは、確かに問題でございまして、残業というのはそもそも考えてみますと臨時緊急の場合に行われるものであるということでありますので、こういう恒常的な残業が非常に多いという状態は決して望ましい状態ではないと考えます。したがいまして、労働省といたしましてもこういう事実認識に立ちまして、恒常的な残業はできるだけ減らしていこうと、そのためにも今回割り増し賃金率の改正を提案して御審議をお願いしているような次第でございます。
 また、残業時間の目安労働時間につきましても、その水準の見直しなどを図りながら、今後これをさらに有効な形で企業に対しまして指導していくものにしたいと考えているような次第でございますので、御理解のほどを賜りたいと思います。
#146
○足立良平君 わかりました。今局長の答弁で私の申し上げた点を理解していただいたと思います。
 残業時間というものは、今局長から答弁がありましたように固定部分が百六十時間強、そして変動部分、景気の変動によって動いていくと想定されるものが約四十七、八時間くらい、三分の一なんです。だから、変動部分の三倍強が固定となりますと、雇用の調整弁的な、そういうものとしてこの残業というものをとらまえていくということは本質的に間違っておる。ですから、残業時間というものを根底から否定しようとは私は思っておりません。思っておりませんけれども、あるいはまた労働慣行として現実的には働いている人たちも残念ながら残業時間というものを個人的に求めているという、そういうものもありますから、そういう実態ということも全く無視できない面もあります。
 ですから、無視できないものはあるけれども、物の考え方として、これから千八百時間というものを実現していこうとするときの基本的な物の考え方をぴしっと置いて、その上で対応というものを、あるいはまた行政指導というものをしていくということでないと、私は本来的にこの問題は前へ進んでいかないのではないか。
 それは、当然労働大臣も就任のときから、働く場所をきちんと確保していく、雇用を維持していくということは一番大切なことだというふうにずっとおっしゃっておりますけれども、私は今までの石油ショックなり、円高不況なり、あるいはまた今回のバブルのはじけた後の経済状況等を見ますと、現実的には相当人員整理というのは行われているわけです。確かに、それはいろんな手当てでありますけれども、例えば会社をつくってそこへ出向するとか、そして出向した後でもつぶれちゃうとか、日本のいろんな産業構造というものは変わって、現実的に雇用調整というものは進んできている面もあるわけでありますから、それを踏まえた労働行政というものは、まずこの千八百時間を進めて行くに当たってしておいていただかなければいけない、このように私は思っているところであります。
 したがって、そういう面でもう一度考え方をお聞きしておきたいと思いますのは、この時間外・休日労働というものが、今申しましたような点で、あくまでも臨時、緊急の場合に行うべき性格のものだ。現実は、一遍にそこまでいかないと思いますが、まず原則的にはそういうものだと、こういうふうに考えてこの所定外勤務時間というものを考えていいかどうか、もう一度確認をしておきたいと思います。
#147
○政府委員(石岡慎太郎君) 御指摘のとおり、時間外・休日労働は臨時、緊急の場合に行われるものである、これがもう基本でございます。こういう基本に立って、残業対策、休日労働対策をやるべきだと考えております。
#148
○足立良平君 それでは、その上で所定外労働時間の上限の規制の問題についてさらにお聞きをしたいわけです。
 そういう面で、千八百時間に到達するために所定外労働というものを抑えていかなければいけないというのが労働省の基本的な考え方。それで、これは目安時間ということで、平成五年には従来の四百五十時間を三百六十時間ということで、労働省としてもそれなりに努力をされているということを、私はこれもそのまま評価をしたいと思うんです。ただ、丸々評価するにしてはまだ三百六十時間というのは、これはいささか大き過ぎますね。
 問題は、平成四年度の実態調査を見ますと、目安時間以下で労使協定というのは現実的に行われている。これは九四%くらい、九四%といいますともうほとんどだというふうに考えていいと思います。そうしますと、まずこの上限という問題をさらに抑えていくという面においては、私はこれを何でもって抑えていくのかということがこれからの課題になってくると思う。ですから、将来的に千八百時間を達成していくために法的な面でこれを抑えていくということが一つある。
 それから二つ目には、先ほど局長が答弁されておりましたように割り増し賃率を引き上げることによって、そしてコスト的に企業としてはそれをやる方がかえってマイナスだという状態をつくり上げていくか、この二つしか私は現実的にはないのではないかというふうに思うんですが、この点いかがでしょう。
#149
○政府委員(石岡慎太郎君) 時間外労働の上限の規制のあり方の問題でございますが、これにつきましては昭和二十二年に基準法ができまして以来、我が国では二つの措置を講じているわけでございます。
 一つは三六協定、労使協定によりまして上限を決めていただくということでございます。これは諸外国で余り例がございません。そういう一つの歯どめ策が講じられているわけでございます。それからもう一つは、現行では二五%ですが、割り増し賃金率が時間外労働あるいは休日労働をした場合に課せられるということでございます。
 この二つの措置によりまして、我が国では残業時間などの上限規制が行われてきたと考えております。こういうふうに二つの措置がとられましたのも、いろいろ言われているような日本のいろんな事情がございましてこうなってきたものであろうかと思っております。
 そこで、法的に例えば女子の場合年間百五十時間となっておりますが、そういう措置をとるべきではないかという御指摘でございますが、確かにそれは一つの方法であろうかと思います。基準法を昭和二十二年に制定されたときもそういう検討がなされた経緯もございます。確かに、一つの方法だと思いますが、総じて申し上げるならば、この措置はなかなか日本の雇用慣行あるいは日本の現状、その他に合わない面が率直に言ってあると思います。
 したがいまして、基準法制定以来の三六協定と割り増し賃金率という二つの方法で今後も行かざるを得ないのではないかと思います。しかしながら、三六協定はうまくいっている場合もありますが、なかなかうまくいっていない場合もございますので、目安時間というものを設けさせてこの協定という担保措置を補強させていただいております。今後もしかるべく妥当な水準で補強を続けるべきではないかと思います。
 それから、割り増し賃金率につきましては、二五%というのは現行では余りにも低過ぎると思います、国際水準その他に照らしまして。これにつきましては段階的に引き上げを図っていくという、この二つの方法で上限規制には対応すべきではないかと率直に考えております。御理解を賜りたいと思います。
   〔理事大木浩君退席、委員長着席〕
#150
○足立良平君 局長の方も資料としてはお持ちだと思うんですが、固定の残業時間、これが平成三年度の場合は百六十二時間強、そして景気変動部分が約四十八時間ぐらい。合計すると約二百時間ぐらいですね。そうしますと、今目安時間とされておるのは三百六十時間。だから、その面からすると賃率も一遍には難しいよと、こうおっしゃる。漸次上げなきゃいかぬと、これははっきりおっしゃった。それから、三六協定でやっていたんだからそれでいかざるを得ないと言って、実際のところ残業時間のモデルは約百五十時間弱ですね、千八百時間に到達するモデルは。
 そうしますと、一方で百五十時間弱くらいのモデルを組んでおいて、そして目安時間は三百六十時間でそのまま置いておいて、そして強制的な法的ななには全然裏打ちなしで三六協定も余りうまくいかないんですよとこうおっしゃると、これは千八百時間に到達することを労働省は本当に考えているんですかというふうになっちゃうんですよ。この点、もう一度考え方をはっきりしていただきたいと思います。
#151
○政府委員(石岡慎太郎君) 平成四年度の残業時間を申し上げますと、百四十四時間という水準でございます。モデルでは百四十七時間を想定しておりますので、既にそれに相当する残業時間が我が国で平成四年度に実現しているわけでございます。
 こうなりましたのにはいろいろな原因があると思います。一つは、不景気によりまして残業時間が減ったということでもありますが、もう一つはやはり労使が三六協定でいろいろ努力をされて、こういう結果にもつながったのではないかと了解をしているような次第でございます。
 そこで、今後の問題でございますが、この百四十四時間といいますか、こういう妥当な水準がさらに今後実績として計画年度続きますように図っていかなければならないわけでございます。そのためには、割り増し賃金率、これは休日労働から始めたいと思いますけれども、この引き上げを法改正ができました場合には実行いたしたいと思いますし、それから週四十時間制などにだんだん移行していくわけですから、状況が変わってまいりましたので、目安労働時間も御指摘のような三百六十で果たしていいのかどうかも検討して妥当なものに直す努力をしてまいりたい。それらによりまして、現行既に百四十四時間になっているようなこういう実勢を継続させたいものだと考えておる次第でございます。
#152
○足立良平君 また、別の機会にもう少しこの辺のところは具体的に議論というか、詰めてまいりたいと思うんです。
 私は、労働時間の関係で労働省の考え方、見方といいますか分析の仕方をお聞かせ願っておきたいと思いますのは、平成四年度の年間の労働時間というものが企業規模別に統計が出ております。これは、平均で千九百七十二時間、所定内が千八百二十三時間で所定外が百四十九時間くらいですから、一応そういう数字が出てきている。これは、五百人以上の規模でありますと、所定内が子七百八十七時間で、三十人から九十九人の規模は千八百四十六時間ということで、小さな企業、零細企業の方が所定内の労働時間が長い、これは一般的に考えられるとおりです。
 それで、いわゆる残業という所定外の労働時間は、大企業の五百人以上が百八十三時間で、三十人から九十九人のところは百二十七時間ということで実に五十数時間中小零細企業の方が低い。これは、労働時間の短縮を進めていくに当たって、残業時間というものだってなかなか難しいという中で、例えばジャスト・イン・タイムでいわゆる契約の問題、あるいはまた親企業から関係企業に対して、休日の前に発注があるとかどうとか、そういう経営システムの問題にも相当中小企業の側では労働時間の短縮は難しいという統計資料が出てくるわけです。
 そうしますと、一般的に考えられている統計資料というものと、それから労働省が一応作成をされている平成四年度の大企業と中小企業の所定内と所定外の労働時間の傾向というのは、我々が別のところで統計を持っているのと全然違った、相反するような資料が見られるわけなんですが、この点について労働省の見解をお聞かせ願いたいと思います。
#153
○政府委員(石岡慎太郎君) 平成四年の所定労働時間、所定外労働時間について、規模別にお述べになりましたけれども、数字はまさに御指摘のとおり正しいものでございます。
 したがいまして、中小企業の所定外労働時間は大企業に比べまして明らかに低いわけです。こういう低い理由の一つとしましては、やはり所定外労働時間が中小企業の場合は大企業より長いわけでございますから、あるいはまた言いかえれば、総実労働時間というのが残業時間と所定外合わせたものでございますが、これがやはり中小企業の場合長いわけでございますので、休日前発注だとかいろいろございますけれども、その結果労働時間が長くなっている。ただし、週休二日制など余りやっておりませんので、所定労働時間が長いために残業時間が相対的に低く出てくる、こんな原因が一つあるのではないかなと思っております。
 それから、あえて申し上げれば、数字的に詰めたわけではございませんが、中小企業の場合女子労働者が案外多いのではないかと思います。女子労働者の場合は余り残業をしておりませんので、そういうものも中小企業の残業に反映されているのではないかなと思っております。
#154
○足立良平君 私は、余りあと残り時間がございませんけれども、労働時間の短縮というものを進めていこうとしますと、私も実はこの統計を見まして、正直言って理解に苦しんでいるんです。労働時間の短縮を進めていくというのは、まさにこれは中小企業問題に帰結するというふうに私は考えておりました。そしてまた、事実本当にやっぱりそうだろうなというふうに思っております。
 ところが、この統計を見ますと、今局長がおっしゃっいましたけれども、つるべの関係にある。大企業は、所定内労働時間が短くて所定外労働時間が多くて約千九百七十時間くらいです。そして、三十人から九十九人の中小あるいは零細と言った方がいいかもしれませんが、これも所定内が多くて所定外が少なくて、そして大企業と比較いたしますと千九百七十三時間ですから、ものの三時間しか違わない、一年間にですよ。ということを考えてみると、この統計からだけしますと、中小企業の労働時間の短縮ということは、我々が考えている以上にひょっとしたら簡単になるかもしれないということも逆説的に私は出てくるのではないかというふうに思ったりいたしております。
 したがって、そういう面ではこれから本当の意味で、これは最後の詰めの段階になりますと冒頭申しましたように中小企業が、ある面においては私は中小企業自身ももっと企業努力というものをしていただかなければいけない部分が相当あるのではないかと思います。しかし、猶予措置を設定しながら、その間にいわゆる千八百時間に到達できるように国としてもやっていくに当たって、具体的な助成措置というものを考えていく場合の大変重要な指標なのではないかというふうに私は思っておりますので、詰めの段階でこの辺のところについてもし労働省としての分析があればまたお聞かせを願いたい、このように思います。
 ただ、何といいましても、所定外勤務時間、残業の問題を考えようといたしますと、環境整備をやっていくに当たっては取引条件の見直しということが、これは労働省だけでは難しい感じが私はするわけでありますけれども、この点はかの省庁との連係プレーといいますか、これを一体どのように労働省として今後お考えになっているのか。これだけお聞きをいたしまして、とりあえずきょうは終わらせていただきたいと思います。
#155
○政府委員(石岡慎太郎君) 御指摘のとおり、中小企業の時短を進めます場合には、取引条件の改善が何といいましても一番重要な問題となろうかと私もそう考えております。これはしかし、一言でそう言いましてもなかなか難しい問題でございまして、それこそ先生がいつも言われるように社会的な通念、今までの通念をもう変えなければならないような大きな問題だと思います。
 労働大臣は、閣僚会議を開くべきだともおっしゃっておりますけれども、そういう意気込みで労働省、関係省庁と今までにない連携体制をとりまして取引条件の改善の問題に取り組みたいと思っております。
#156
○国務大臣(村上正邦君) 閣議でも私たびたび発言をいたしておりますが、やはり大事な問題ですから、それと同時に各省庁の御協力をいただかなければなりません。閣僚レベルのそうした懇談会等をつくってやらなきゃならないことだ、こう意気込んでおります。
#157
○足立良平君 終わります。
#158
○吉川春子君 前回に引き続きまして、変形労働時間制についてお伺いいたします。
 労働省は、一年変形労働時間制の導入について年間当たりの休日増を図ると繰り返し答弁されていますけれども、週休二日制導入を前提として一年変形を認める、こういう意味ですか。
#159
○政府委員(伊藤庄平君) 一年単位の変形労働時間制につきましては、週休二日制に相当する週四十時間労働制を年間平均として実現しなくちゃいかぬ、こういうのがまず第一の要件でございます。
 これを、三カ月の場合に比べてそれぞれ一日、一週が縮小された限度時間の中でこの週四十時間制を平均として実現するわけでございますし、またその制度を導入するねらいとしても、週休二日制、そういったことを前提として休日を確保してもらう、そういう使い方をしていただきたい、こういう考え方で制度を設定しております。
#160
○吉川春子君 そうすると、週休二日制導入が前提である、一年変形の労働時間を認めるのは、そういう意味ですか。
#161
○政府委員(伊藤庄平君) 完全週休二日制、いろんな形の週休二日制があろうかと思いますが、例えば典型的な形として毎週土日をきちっと休むスタイルの週休二日制、これが仮に年間通した工場その他の業務の波動性を見た場合になかなかすぐには難しいというような場合であっても、年間を通した休日管理を行い、そういう中でこれに実質相当するような休日確保に向けて努力していただく、そういう中で各週ごとに平均してみれば週四十時間制というものが実現すれば、こういうのが最長一年単位の変形労働時間制の趣旨でございます。
#162
○吉川春子君 もうちょっとわかりやすく答えていただけませんか。
 趣旨を聞いているんじゃなくて、要するに週休二日制の導入をしないと一年変形を認めない、こういうことなのかどうかということです。
#163
○政府委員(伊藤庄平君) これは、先ほど来申し上げていますように週四十時間制、これを平均として実現していただく。これは週休二日制に相当するわけでございますし、それからこの制度の立て方として、休日というものを年間単位で管理し、一年変形制を動かす際にはその一番最初に年間を通して具体的な休日を決める、こういう仕組みでございますので、週休二日制に相当する休日確保につながっていく制度として設定をいたしておるわけでございます。
#164
○吉川春子君 私、もうこれで四回目ですよ、聞くのは。
 もう一度聞きますけれども、一年変形の労働時間を導入する場合には週休二日制を一緒に導入しないと認めない、それが条件になっている、こういうことですか、そうじゃないんですか。もうイエスかノーでいいんですよ。
#165
○政府委員(伊藤庄平君) 週休二日制に相当する週四十時間制を年間単位の休日管理の中で実現する、こういうのが制度の仕組みでございます。
#166
○吉川春子君 制度の仕組みを聞いているんじゃなくて、ともかく週休二日制を導入するということを条件として一年制の変形を認める、つまり週休二日制になっていないところは一年変形の労働時間を認めないということなんですか、どうですか。
#167
○政府委員(伊藤庄平君) 再三同じ答えになって大変恐縮なんでございますが、先生のおっしゃる週休二日制というのはどういう形態の週休二日制を想定しておられるか、私よく定かにはわかりませんけれども、この週四十時間労働制そのものが週休二日制に相当する、こういう前提でこの制度を考えておるわけでございます。
#168
○吉川春子君 週休二日制は法定されていますか。
#169
○政府委員(伊藤庄平君) 恐らく先生のおっしゃる意味、毎週二日を法定休日として義務づける意味合いが先生の念頭に置かれている週休二日制であるとすれば、これは労働基準法上はそういう仕組みにはなっておりません。
#170
○吉川春子君 法定制の問題はともかくとして、週休二日制と言うと、じゃあなたの念頭にはどういう形があるんですか。週二日休むというのが週休二日制じゃないんですか。
#171
○政府委員(伊藤庄平君) 週休二日制はいろんなとらえ方があると思います。現在でも完全な週休二日制から隔週、いろんな形があろうかと思いますが、私どもは最長一年の変形労働時間制を考えるに当たりまして、週休二日制というもので実現されるような日数の休日を年間単位の休日管理の中で確保してもらいたいというのがこの考え方でございます。
#172
○吉川春子君 変形労働時間はちょっとさておきましょう。
 あなたが考えている週休二日制というのはどういうことですか。私が考えている週休二日制というのは一週間で二日間休みがある、こういうことなんですけれども、あなたの週休二日制というのはどういうのですか。
#173
○政府委員(伊藤庄平君) 先生の御質問の趣旨があれなんですが、恐らく先生と私どもの……
#174
○吉川春子君 いや、恐らくじゃないですよ。どういうのを言うんですか。
#175
○政府委員(伊藤庄平君) 私どもは、あるタームで週休二日制に相当する休日というものが確保されていく、そういう形が幅広い意味で週休二日制に該当するであろう、こういう考えでございます。
#176
○吉川春子君 そうすると、ある週は一遍しか休まないというのも週休二日制の概念の中にあなたは入れているんですね。
#177
○政府委員(伊藤庄平君) この一年変形労働時間制では…………
#178
○吉川春子君 いやいや、変形労働時間はいいんですよ。週休二日制の定義を言ってください。
#179
○政府委員(伊藤庄平君) 最長、あるタームの中で、もし週休二日制に相当する日数がある程度定期的な形で確保されるんであれば、これは幅広い意味で週休二日制が実質的に実現していると見てよろしいんではないかというふうに考えております。
#180
○吉川春子君 時間もないんで余りまどろこしいことを言わせないでください。
 要するに、一週間のうちに二日休むというのが私の週休二日制の定義なんですよ。世間も常識もそうなんです。一週間で二日休むというのが週休二日制なんですけれども、一週間で二日休むということでないと変形時間一年制の導入は認めないのか、それともそうじゃなくても一年制の変形労働時間は導入を認めるのか、その点はどうですか。
#181
○政府委員(伊藤庄平君) 毎週必ず二日ずつ休むという形であることは要しないという仕組みでございます。
#182
○吉川春子君 それを最初に答えてほしかったんですよ。
 そうすると、既に週休二日制をとっている企業で一年制を導入しても休日は特別にふえないというふうになりますね。
#183
○政府委員(伊藤庄平君) これは通常の場合でも、変形制を離れてお答え申し上げれば、週四十時間制というものを完全にこれから実施していきたいというのがこの労働基準法のねらいでございます。週四十時間労働制を実現すれば週休二日制というものの普及が非常に定着していくだろう、こういう考えで週四十時間労働制を導入したい、こう思っておるわけでございます。
 最長一年の変形労働時間制も平均すれば週四十時間というものが実現するということでございますから、週休二日制に相当する日数の休日確保につながっていくもの、こういうねらいを込めた制度になっておるわけでございます。
#184
○吉川春子君 週休二日制につながるということは、要するに今もう既に週休二日制を導入している事業所、企業では特別に一年制を導入しても、もう既に週休二日制が導入されているわけだから、休日がふえるということにはならないんですね。
#185
○政府委員(伊藤庄平君) 先生の御指摘の趣旨、よくあれですが、もし現在既に毎週二日きちっと休みにしている事業場があるとすれば、これは既に週四十時間労働制を実現しているのではないかと思います。
 したがいまして、そういったところでは、もしさらにもっと所定労働時間を縮めるためにあるいは休日をもう少しふやしていくために変形制を改めて導入するという場合でなければ、とりわけ今回四十時間制の導入を手助けしていこう、実質的に年間休日管理の中で週四十時間制を導入しやすくしようというこの制度とは直接かかわってこないかもしれません。
#186
○吉川春子君 直接かかわってこないかもしれないんじゃなくて、かかわってこないんでしょう。
 要するに、今もう週休二日制をとっている企業で一年制の変形時間を導入してもこれは特別休日はふえないわけですから、これを導入するメリットというのはそういう点ではないわけで、変形制を導入すれば休日がふえるということは、だからこの点では否定されますね。確認だけでいいです。
#187
○政府委員(伊藤庄平君) もう土日完全に休みになっている事業場において、一年の変形制を使うスタイルということは私ども念頭には置いておりません。
#188
○吉川春子君 もう週休二日制、完全週休二日制が導入されているところで一年制の変形時間制を導入するということを念頭に置いてない、こうおっしゃったんですか、確認しますけれども。
#189
○政府委員(伊藤庄平君) 年間単位で休日管理をする中で週四十時間制を実現しやすい状況をつくっていこう、こういうのが最長一年の変形労働時間制の趣旨でございますので、既に各週きちっと休み二日という状態を実現しているとすれば、既に週四十時間制が実現されている、こういう状況でございますので、もしそういうところがこの一年変形制を使うとすれば、さらに三十八時間とか三十九時間というものを目指す場合にそういう利用形態が出てくるのかなという気はいたしますが、もしそのままであれば変形制ということの使う意味合いというのはないのかなというふうに思っております。
#190
○吉川春子君 変形労働制を使う意味合いはないのかなと労働省はお考えなんですけれども、それはしかし使えないということじゃなくて、そういうところも変形労働時間制は使えるわけですね。
#191
○政府委員(伊藤庄平君) 完全週休二日制というと、国民の祝日等を除きまして休みが百四日でございます。
 もし既に完全週休二日制になっている事業場が百四日ではなくてもっと休日をふやしたい、そのためにどこかで三連休をつくったり、四連休にする、そのかわりどこかで一日例えば休みに出てきてもらうか、八時間をちょっと超えて働いてもらうというようなケースというのは想定されますが、そういうふうに休日をふやすその分がどこかでちょっと飛び出す、平均してもう少し四十時間を割るような利用の仕方、こういう利用の仕方は想定されますが、そういうケースを想定されているんでしょうか。
#192
○吉川春子君 要するに、前回の法改正のときだと、例えば週三十六時間にするとか、変形労働時間制を入れるときは時短のメリットというのはあったわけです、働く側にとって。しかし、今度は今ちょっと繰り返しやりとりがありましたけれども、もう四十時間になっているところでは特別休日がふえるということではないし、そしてまた四十時間を三十六にしないと一年制の変形を導入できないということでもないので、そういう点では導入をするから休日がふえる、こういう因果関係は今度の法改正ではないですね。
#193
○政府委員(伊藤庄平君) 先ほど来申し上げていますように、もし完全に週四十時間制、そして各週、毎週の二日の休日を確保しているところがその状況を、四十時間、各週、毎週二日ずつの休みというものを前進させない限りにおいては、この一年変形制を使うことの意味というのはまずないのかなというふうに受けとめます。
#194
○吉川春子君 だから、労働者の方にとっては、もう四十時間になっているところでは一年制の変形労働時間を導入されても別に休日がふえるわけではないということですから、一年制の変形労働時間制を導入すれば休日がふえるというような説明はなさるべきではない、そのことをはっきりと申し上げておきたいと思います。
 それで、残業代の支払いの問題を続いて伺いますけれども、たびたびこの問題も答弁されましたが、例えばこういう事例でお答えいただきたいと思うんです。来年から法定過労働時間を四十時間にするという事業所で、最高四十八時間まで働かせる場合、そしてその上限がこの間来のお話だと四十八時間ぐらいにしたいということでしたから、四十八時間まで働かせる場合に、例えば四十時間を超えた部分について時間外手当の支払い義務が企業の側は生じますか。
#195
○政府委員(伊藤庄平君) 今の場合でございますが、どういう形でその週四十八時間というものにするか、日々と週単位の組み合わせにまず出てまいります。
 まず、仮にいろんな姿で想定いたしますと、ある特定の週だけ取り出してみますと、毎日八時間ずつ働いて、土曜日まで八時間で働いたとするとちょうど四十八時間になります。この場合で申し上げれば、それは要するに時間外労働というものがない状態でございます。しかし、その組み合わせが一日が九時間とか八時間とか、まあ議論になっていたところでございますが、仮に現行の十時間よりも縮小した値で一日の限度時間を決める、それを超える日があったりして、結果的に週でトータルで見ると四十八時間になっているとすると、一日の限度時間を超えた分については、あるいは八時間というふうにしていた日でももし八時間を超えて労働させていたケースについては、日々ごとの時間外労働の割り増し賃金というものは支払い義務が出てくる、そういうふうに見ていかなくちゃいかぬと思います。
#196
○吉川春子君 それで、逆に一年制の変形を導入してある週を四十八時間とすれば、別の週は今度それを調整するために三十二時間という週も出てくるわけです。そうした場合、その三十二時間を超えて働いた場合、四十時間未満という場合には、これもやっぱり残業代の支払いは行われなくてもいいんじゃないんですか。
#197
○政府委員(伊藤庄平君) あらかじめ特定して、週単位でもし四十八時間に対応する週として三十二というのがございますね、これもやはり同じように見ていかなくちゃいかぬ。
 今の割り増し賃金率というのは、法定労働時間を超えたところから出る仕組みになっておりますので、日々ごと、また週ごとで見てもし毎日八時間ずつで三十二時間でおさまっていれば、あるいは四十時間以内におさまっていれば、残業手当の問題は出ない状況になるかと思います。
#198
○吉川春子君 要するに、今までだと例えば一日八時間を超えて働いた分は残業代が払われるとなっていたのが、一年制を導入すれば四十八時間までの週、これは四十時間を超えても八時間は残業料は払わなくていいし、また三十二時間という週でも、それを超えて四十時間まで働いたとしてもその八時間は残業料を支払わなくてもいいと、こういうことになって、企業にとっては本当に願ったりかなったりという制度だと思うんです。企業にとっては残業料の節約をもたらすというメリットがあるけれども、労働者にとっては今度は残業代を払ってもらえないと、そういうことで大いなる残業料の損失が生じるというふうに思うわけです。先ほど来の休日の問題とあわせますと、働く側にとっては、この変形労働時間制というのは何のメリットもないわけなんです。
 そこで、伺いますけれども、この制度の導入を要求している労働組合があるんですか。一年制の変形労働時間をぜひ導入してほしいと、こういう要求を出している労働組合があったら、その名前を教えていただきたいと思います。
#199
○政府委員(伊藤庄平君) ちょっと前の御質問に戻ってお答えしなくちゃいかぬと思いますが、先ほど週単位で、例えば三十二時間……
#200
○吉川春子君 それは、もうわかりますからいいですよ。
#201
○政府委員(伊藤庄平君) いや先生、ちょっと補足しないと不正確になるかと思います。
#202
○吉川春子君 あなた、答えているからいいですよ、もうそれわかりました。
#203
○政府委員(伊藤庄平君) 先ほど、仮に三十二時間と決めた週で四十時間働いたらどうなるか。その週の分については、週ごとで見た限りでは時間外労働は出てまいりません。しかし、それはあらかじめ決めた労働時間の総枠、これはあらかじめ決めるのが法律上の要件でございますが、八時間を超えていますので、最後にはその八時間を飛び出した形が残りますので、これは、例えば最長一年であれば一番最後にはこの八時間を飛び出した分は割り増し賃金として残業代にはね返ってまいります。
 そういう日々、週、それから年間なり総労働時間の枠を決めた単位ごとの、タームごとに残業代の精算というのがあります。その仕組みで、週ごとだけ取り出すのじゃなくて、日々、週、それからもし一年であれば一年というものの期間で全部残業代を精算することになりますので、その点だけはちょっと補足させておいていただきたいと思います。
 それから、御指摘の一年単位の変形労働時間制について、具体的に組合の名前を言えということでございますが、私どもいろんな業界、それから関係の労働側の受けとめ方、いろんなものを議論の中で見てまいりました。特定の組合を申し上げていいかどうかわかりませんが、休日確保ということで、現に年間の休日カレンダーを設定して、かなりの企業でこれに近いパターンを実質上取り入れて年間総労働時間の短縮なり休日増というものをやっておるところもある。それは、既に労使協定で行われておりまして、そういったものが引き続きこの基準法改正後も行われるような形を望んでいるところというのは相当数あるという認識のもとに法案の作成に当たってまいりました。
#204
○吉川春子君 端的に答えてください。
 労働省がつかんでいる、この制度の導入を要求している労働組合の名前がありますか、ないんですか。
#205
○政府委員(伊藤庄平君) 先生の御指摘、例えば具体的に要望、要請という形で文書の形等になっているものはないかと思います。
 ただ、私ども中央労働基準審議会でこういった一年変形制の問題もテーブルにのっけて議論してまいりました。公労使三者構成の場でやってまいりました。それで、最終的に限度時間のあり方、その他についていろんな議論は、労使の一致していない部分は残しておりますけれども、その審議会の中で、こういった四十時間制を導入するためのこういう休日増をねらった制度については全会一致で建議をいただき、また答申も了解していただいたということでございます。
#206
○吉川春子君 ないわけですね。労働組合からの導入の要請というのはないわけだし、労使協定で現にやっているということと、労働組合が要求しているということとはまた別問題なんで、ないと思うんです。
 さきの参考人質疑でも、連合もこの制度には反対だと言われましたし、全労連はもちろん反対しています。全労協も反対しています。あらゆる潮流に属する労働組合が反対している。当然のことですね。今までのちょっとしたやりとりの中でも、別に働く側にとってはほとんどメリットがないわけですから。これは、労働組合が賛成できないのは当然で、労働組合が反対しているのにこれを強行するというのはいかがなものかというふうに思います。
 労働基準法というのは、言うまでもありませんけれども労働者の保護法であるわけです。だから、保護されるべき労働者が労働基準法の中でこういう制度を導入してほしいと言っていないばかりか、強く反対を表明している。この間、連合の女性の参考人の方もそういう立場を強く表明しましたけれども、そういうことで導入するというのは、これは非常にまずいというふうに思うわけです。
 労働基準法研究会の保原教授は、この間も参考人でおいでいただきましたけれども、「労働時間法は、労働保護法としての本来の性格を保ちながら、労働時間の弾力的運用のための法としての意味をもち始めている」、こういうふうに論文で言っておられるわけなんです。労働省はこの考えをどう思いますか。これは一教授の立場ではあるんですけれども、要するに労基法というものが労働時間の弾力的運用のための法としてそういう違った意味合いを持ち始めているというんですけれども、労働省もそういう考え方に立ちつつあるのでしょうか、伺います。
#207
○政府委員(伊藤庄平君) 最長一年単位の変形労働時間については、再三繰り返しになりますけれども、今回の基準法の改正の最大の柱であります週四十時間労働制、これを平成九年の四月から全面的に実施する。そして、これがいろんな業務の繁閑、波動性を抱えている中で、そういったところについてもこの週四十時間労働制というものを実現していくためには、年間単位での休日管理ということが必要だという意味合いでございまして、それが弾力的な労働時間管理ということになるのかどうか、これは保原先生の論文とよく突き合わしてみないとわかりませんけれども、そういう意味合いなのかどうか、深く私定かに承知していませんが、そういう意味で年間単位の休日管理をねらっている制度であるということは言えるかと思っております。
#208
○吉川春子君 賃金部長以外の方に伺います。
 労基法というのは労働者保護のための法律だ。だから、労働時間なんかもきちっと法定されていて、それに違反すると刑罰もあるわけですけれども、そういう性格から少しずつ労働時間の弾力的運用のための法律というふうに性格を変えつつあるんだと。こういう見方について基準局長、どうですか。労基法というものはそういうものですか。
#209
○政府委員(石岡慎太郎君) 私は、保原先生の論文を拝見しておりませんが、基準法は労働者保護の法律であると考えております。
#210
○吉川春子君 質問を変えたいと思います。
 年俸制の問題についてお伺いしたいと思うんですけれども、年俸制というのは一体どういうものなんでしょうか。
#211
○政府委員(伊藤庄平君) 年俸制につきましては、いろんな採用の形がございますけれども、給与の体系をまず年単位で一定の額をセットするというようなこと、それからそれに伴います評価制度等もかなり成績評価を行いながら年単位で設定して毎年一定の賃金についての額の更改等についで決めていく、そういう仕組みを骨組みとした、あとはいろんなバリエーションがございましてあれでございますが、そんな単位で進めていく形がとられていくかと思います。
#212
○吉川春子君 先日の参考人質問で保原教授は、一年単位の変形労働時間制は年俸制とリンクしてというような考え方を述べられたわけなんです。そうした見解というのは、先生の「労働基準法改正の動向と論点」という論文の中でも述べられています。つまり、
  ホワイトカラーの時間管理を外し、仕事の成果をたとえば年単位でみることにすれば、最も楽観的にみれば、乗った日には多少遅くまで残業をしても、翌日は午後から出勤する等、効率よく仕事ができると同時に、時短にも繋がる、ということになる。もっとも、悪い予測としては、とめどない残業、休日労働ともなりうる。要は、彼らの賃金を年俸制にし、一切時間外手当を払わないことにすれば、時間外手当に対するインセンティブが消えて、総労働時間を短縮することになるからである。こういうふうに述べているわけなんです。
 もちろん、これは一人の先生の意見ですが、賃金の支払い期間と労働時間を合わせるというのですから、年俸制になれば何時間働いたかが問題になるのではなくで、どういう成果がもたらされたかが重要になってくると思うんです。これと変形労働時間制と組み合わせるということは、一年のうちに休日だけを特定しておいてあとは残業などで関係なく幾らでも働けと、こういうふうになるんじゃありませんか。局長、どうですか。
#213
○政府委員(石岡慎太郎君) 五月十八日に開催されました当委員会の参考人の質疑を私も傍聴させていただいておりましたが、そのとき保原参考人は確か先生の御指摘のような御答弁をなさったと私もそう思います。
 保原先生の真意のほどはよくわかりませんが、それはあくまでも保原先生個人の考え方でありまして、労働省といたしましては今回一年の変形制の提案をさせていただいておりますけれども、この一年の変形制と年俸制の間には関係がないと考えております。
#214
○吉川春子君 大臣にお伺いしたいと思います。
 休日をふやすということを盛んに言われるわけですけれども、大臣のお考えとしてはどういう休日の過ごし方が理想的だというふうにお考えでしょうか。
#215
○国務大臣(村上正邦君) 賃金部長と吉川委員との波長が合わないようで局長に今答弁をさせましたが、それぞれ波長がありますので御勘弁を。
 私には、どういう休日の過ごし方が理想と思うかと、こういうことですが、やはり家族や友人とのコミュニケーション、これは旅行やレジャー活動もあるでしょう、スポーツや読書を通じた心身のリフレッシュや自己啓発による知的向上、創造性の増進と、いろいろあるかと思います。それからまた、ボランティア活動を通じた地域活動への貢献、それぞれ有意義な過ごし方があると思います。あわせて、やはり労働で疲れた体を十分いたわってあげるというふうな、それはそれぞれによっていたわり方があろうかと思いますが、そしてよりよい仕事ができる健全な心身を備えていく、こういうことであろうかと思います。
 そこで、レジャーにいたしましてもスポーツにいたしましても、例えばディズニーランドに家族と一緒に子供を連れていけば相当高いということを聞いております。ですから、そういう身近なところで手軽に余り経済負担をかけないようなそうした環境も大事だ。それは、ただ政府政府ということじゃなくして、やはり働く人たち、それから経営者、そして政府、三位一体になってそういう環境づくりをしていくことが大事なことなのかな、こう思っております。
#216
○吉川春子君 重ねて大臣に伺いますけれども、仕事のために休日があるんですか。それとも、もっと別の大きな人生のエンジョイという目的のために休日はあるんですか。
#217
○国務大臣(村上正邦君) 何か、四角四面にお尋ねしますがと、こう言われると私も構えなきゃなりませんが、やはり両方に引っかかってくるんじゃないでしょうか。
#218
○吉川春子君 そこで、以下ホワイトカラーと呼ばれる労働者の実態について伺っていきたいと思います。
 労働省が、労働者の中でどのような仕事、職業上の強い不安、悩み、ストレスがあったかを調べた一労働者の健康状況調査結果」によりますと、これは一九八二年と八七年の二回行われているわけですけれども、「強い不安、悩み、ストレスの有無及び内容別労働者の割合」というふうになっているんですけれども、その中身で一番多かったのは何でしょうか。それから、この二回の調査で一番ふえた項目はどういうことでしたか。
#219
○政府委員(石岡慎太郎君) 昭和六十二年の調査で一番強い不安、悩み、ストレスを感じた問題は、「仕事の質・量の問題一であります。それから、昭和五十七年と昭和六十二年の同様の調査で比較いたしますと、項目でふえておりますのは、「仕事の質・量の問題」が一つあります。これは四八・八%から五五・四%にふえております。それから「仕事への適性の問題」がやはりふえております。それから「職場の人間関係の問題」、これもふえております。それから、以下「配置転換の問題」も微増となっております。
#220
○吉川春子君 今局長が指摘されましたように、いろいろふえている項目はあるんですけれども、圧倒的にというか一番多いのが「仕事の質・量の問題」ということで、特に男子労働者にこの傾向が強いわけで、職場の人間関係とか環境とかそういうことよりは、仕事の質と量がふえているということが物すごくストレスの原因になっている、これが労働省の調査結果に数字としてあらわれています。
 それで、中央労働災害防止協会が一九八六年に行いました「企業におけるストレス対応 指針と解説」という調査があります。これは、傷病によって一週間以上の休業を余儀なくされた人千数百人を対象として行った調査で、発症前一カ月間のストレスの有無を尋ねたものですけれども、この中の数字を伺いたいと思うんですが、最も多かったストレスの内容は何だったでしょうか。そして、その数字も示していただきたいと思います。
#221
○政府委員(石岡慎太郎君) 最も多かったストレスの内容は、多忙による心身の過労でございまして、三百三人がそう訴えております。
#222
○吉川春子君 一番多かったのが多忙による心身の過労ということなわけです。そしてこういうことを見ると、仕事が多いということによってどんなに働く人々が疲れ果てているかということが明瞭なんです。
 もう一つお伺いしたいんですけれども、都立の労働研究所が八七年に行った「技術革新下における労働者の生活と健康 ソフトウエア技術者を中心に」という調査があるんです。これは、残業時間が一体どれくらいになれば労働者の疲労が耐えがたいものになるのか、こういうことを調べているんですけれども、仕事で疲れて退社後は何をやる気も考える気にもなれないという日が急激にふえる、それは残業時間が大体何時間を超えたころというふうに指摘されているんでしょうか。
#223
○政府委員(石岡慎太郎君) 御指摘の東京都立労働研究所の調査結果を手元に取り寄せたんですが、残業時間がどれくらいかという数字がちょっと見当たりませんでして、通常の帰宅時間が十時台という人のぐったりとしたという疲労が三八・六%でございまして、十一時台という人ではこれが最も高く四四・八%になっております。
#224
○吉川春子君 それもそうです。月の残業時間が四十時間を超えると、もう何をやる気も起こらなくなる。今局長が言われたのは、帰宅時刻別に見た仕事によるぐったり疲労度の頻度、こういう調査結果なんですけれども、そういう形になっているわけなんです。
 「ホワイトカラーに見る疲労・ストレスの増大とライフスタイル」、これは山崎さんという東大助手の方が「日本労働研究雑誌」に書かれているものなんですけれども、社会保険学者が田園都市線沿線に住む百四十四人のホワイトカラーに聞き取りした調査結果があるんです。それによりますと、中堅サラリーマンの勤務日の平均タイムスケジュールは、起床が七時二分、出宅が七時五十四分、通勤時間が五十分、出社が八時四十四分、勤務時間が十二時間七分、退社が八時五十一分、帰宅が十時二十六分、それから就床、床につく時間が零時一分、睡眠時間が七時間一分、こういうことが書かれております。平均的タイムスケジュールです。それで、百四十四人の九割が中企業、大企業の民間企業で働き、七割が部課長クラスです。いわゆる時間管理を受けない人たちです。この人たちに休日の過ごし方を聞くと、圧倒的に多いのが家で寝ているというものであり、次がテレビを見ているとなっています。
 大臣、これが日本のホワイトカラーの一つの姿なんです。働くときはしっかり働いて休日はしっかり休む、こういうめり張りのある働き方と休み方というのは、実態はそうでないわけです。だから、仕事の量を減らす、少なくとも働く時間の総量を規制するということが、こういう幾つかの実態調査を挙げましたけれども、非常に緊急な課題になっていると思うんです。総量を減らすというと、さっきも部長はすぐ一年単位と、こう言うんですけれども、そうじゃないんです。一年単位ではこれは人間の生理に合わないわけなんです。一日当たりの労働時間の総量を規制する、これがどうしても必要だと思うんですけれども、大臣いかがですか。
#225
○国務大臣(村上正邦君) 私ども労働省といたしまして、働く方々の健康、心の健康はもとよりでございますが、これを守っていくということが大事な仕事だと思っております。
 そうしたことからいって、ストレスのたまる原因が働く量にある、こういうお答えが今一番多いということでございますが、それは是正をしていかなきゃならぬことだし、またいつか申し上げましたように結局過労死にもつながっていく、こういう。ことはやっぱりなくしていかなきゃならない。そのために休息があるということじゃございませんが、それは休息は休息、さっき言ったように働くときは働く休むときは休むというこのめり張り、それとやはり適材適所ということも考えていかなきゃならない。その人に適合した職場というもの、その人に合った仕事の量というものも考えていかなきゃならない。それだけ目配りというのでしょうか、そういう細かいところまで目を当てていかなきゃならぬ、こう思います。
#226
○吉川春子君 大臣に重ねて伺いますが、要するに働く時間の総量を規制する、こういうことをしないと過労死も防げないんです。働き過ぎなんです。だから、一日当たりの労働時間の総量を規制する、こういうことが必要だと思うんですけれども、その点についてはいかがお考えですか。
#227
○国務大臣(村上正邦君) 今おっしゃっておられることは、特殊なケースのお話かと思いますが……
#228
○吉川春子君 いや、一般的にそうですよ。
#229
○国務大臣(村上正邦君) それが一般とは私は理解しかねますが、十分おっしゃることはわかります。理解をしているということにとどめておきたい、こう思います。
#230
○吉川春子君 これは、特殊な例というふうにならないために今いろいろな数字を駆使して申し上げたわけで、ホワイトカラーと言われる人たちがどういう勤務実態がという、その一端をわかっていただけたと思うんです。
 それで、月間の残業時間が五十時間を超えて、そしてそのための通常の帰宅時刻が夜九時を過ぎてしまう、こういうような生活が続いたらどんな屈強な男性の労働者でも疲労やストレスの蓄積を招くということを示しているんです。これは、労働者本人の健康と同時に家族の団らんとかこういうものが奪われて、ゆとり感は低下して、そして飲酒、喫煙、運動、食生活等の生活習慣の悪化ないし確立困難が強まるということも明らかになっているというふうに専門家から指摘されているわけです。だから、月間残業時間が四十から六十時間を超えると過労死や健康破壊のリスクファクターが急激に悪化を見せる、過労死事例の多くが月間残業時間五十時間以上であった結果とも符合するというふうに結論づけているわけです。
 それで、前回ホワイトカラーの生産性が低いとかなんかという論議がありましたけれども、ホワイトカラーの労働者は息詰まるような密度と量の仕事をこなしている、そういう実態なんです。ホワイトカラーに一番過労死も多いわけです。世界に例のないこういう過労死ということをも生んでいるわけです。そういうことをさておいて、欧米と比べて生産性が低いとか、こういうことは全く何事かと私は思うわけなんです。
 日経連の成瀬氏は論文で、ホワイトカラーの生産性の向上とはホワイトカラーの数を減らすこと、こんなことを言っているわけなんです。不況の中でのリストラとかなんとかというときもホワイトカラーが百万人余っているとかなんとかかんとか、こういうことを盛んに言われましたけれども、これはとんでもないことで、むしろ減らさなきゃならないのは仕事の量、そして労働時間なんです。そういうことを私はきちっと認識して、そういう手だてを労働省としてとっていかなきゃならないと思うんです。この点について、大臣もう一度御決意のほどを伺います。
#231
○国務大臣(村上正邦君) 御決意ということよりも、そういうことがあってはならない、そういうことのないように指導をしていかなきゃならぬことだ。今吉川委員がおっしゃるような私どもの想像を絶したそうした偏った労働時間、労働者が酷使されているというこういうことに対しては指導していかなきゃならぬ、こう思います。
#232
○吉川春子君 終わります。
    ―――――――――――――
#233
○委員長(田辺哲夫君) この際、委員の異動について御報告申し上げます。
 泉信也君が委員を辞任され、その補欠として清水達雄君が選任されました。
    ―――――――――――――
#234
○笹野貞子君 大変お疲れのところですけれども、最後の質問をさせていただきたいというふうに思います。
 一般的に社会権と呼ばれる労働法というのは、まさに日本の新しい民主主義に生まれてきたそういう法律であるし、その法律を具体的に実現する労働省というのはまさに若い省であって、大臣が非常にやる気満々であるというのは、いかに権利という抽象的な問題を行政の面で具体的に直すかというのは、これは大変に楽しい仕事でもあるというふうに私は理解しております。
 先ほど吉川議員が、労働基準法というのは労働者を保護する法律だろうという御質問があった中で、石岡局長はその迫力に負けたんでしょうか、労働者を保護する法律だというふうにお答えになりました。私は、別に字句にこだわろうとは思っておりませんけれども、正確に言いますと、労働基準法というのは勤労者の権利を規定しているものだというふうに私は理解をいたします。権利は常に公平でなければなりませんから、その結果として保護するという現象があるかもしれませんが、一部の者をえこひいきしたり、そういうものが権利であってはいけないわけです。
 労働基準法という法律は、勤労者の権利が公平に行われているようなそういう社会を常に見据えていかなければ、その公平さがある一定の時期に偏ったりおくれたりするということがあってはならないということの方が非常に私は重大だというふうに思っております。ただ、親が子供を保護するようにこうしなさいああしなさいというものではないというふうに思います。そういう意味では、民主主義というのは権利を持っている主権者の方もみずから自分たちの立場を理解し、そして自分たちのあるべき公平さをしっかりと言い続けていくということになるだろうというふうに思いますので、私はそういう観点からいろいろな御質問をさせていただきたいというふうに思います。
 労働基準法という法律は、そもそも生活者というものが勤労者と一緒になるために、労働条件というのが生活をどう豊かにしていくかというのがまさにその目的だというふうに思っております。そういう意味から、労働条件あるいはもろもろの労働の形態というのを常に労働省は先取りしながら、生活の面でこういう生活があるならばそれは余り豊かじゃない、あるいはこれは生活にとってゆとりではないということを先取りしなければいけないという使命があるんじゃないかというふうに思います。
 そういう点で、きょうは私は労働基準法の改正の変形労働制を取り上げたいというふうに思ったんですけれども、変形労働制と聞いただけできっといましばらく嫌な思いをされるというふうに思いますので、ちょっと観点を変えまして、読売新聞の九三年五月十五日にこういう記事がありました。「ハイテク機器で内職を」ということで、通産省が新投資減税制度をPRしている。これはどういうことかというと、ハイテクでもって内職をしませんか、夫の働きをカバーしませんかと家庭の主婦に呼びかけて、企業がいろいろな機器を購入するときにその税金を免除してあげる、減税してあげるという制度をつくりまして、今盛んに新総合経済対策ということに銘打っていろんな機器を企業が買うことを支持している。その機器は百二十五品目にもわたっていて、この機器によって家庭の中で主婦が勤務できるように今勧めているという記事を見ました。
 私は、こういう勤務の仕方というのはいいか悪いか、これからの大いに研究するところだというふうに思いますが、労働省が出しております第七次雇用対策基本計画を見ますと、多様な労働、多様な勤務状態があってもいいんだ、これからはそういう勤務状態を大いに取り入れていかなければいけないし、労働省としてもそういう勤務状態に対応するような施策を講じなければならない、こういうふうに書いております。
 そこで、お尋ねいたしますけれども、通産省が今盛んに家庭の中で女性が勤務するということの方がいいんだというこの政策、昔流で言うと家内労働というんでしょうか、女性もかつてはこの家内労働で随分苦しめられたときがありました。そういうことを思いますと、この新しい女性の働く形態というものに対して労働省としてはどのような、つまり法律によってこういう勤労権という権利を損なわないような対策があるかどうか、あるいはこうすることによってかつての家庭の中の女性が厳しい労働条件に、長時間労働に苦しんだということを防げるかどうかというそういう何か妙案をお持ちかどうか、最初にお聞きします。
#235
○政府委員(松原亘子君) 先生が最初に御指摘なさいました読売新聞の記事でございますけれども、確かに新総合経済対策の中には中小企業機械投資促進税制ですとか高度省力化投資等促進税制といったものが創設されるということが書いてございます。
 通産省に聞くところによりますと、具体的にどの範囲を含めるかといったようなことについてはまだ検討が済んでいないということのようでございますので、必ずしも実態は新聞に報道されたようなことではないというふうに私は承知しております。つまり、そういったものを具体的に企業が購入して、いわば家内労働を推奨するといいますか、そういったことを決めているといったようなことはないというふうに聞いております。
 それは別といたしましても、確かに御指摘のように情報機器が非常に発達してまいりまして、労働の形態というものも非常に変わってきておるのは事実でございます。この家内労働との関係で申し上げれば、家内労働者の労働条件の向上という観点からは先生も既に御承知のとおりと思いますけれども、家内労働法に基づきまして、家内労働手帳の交付ですとか工賃の支払いが確実に行われるようにということで私ども対策を推進しているところでございますが、情報機器の発達その他によりましてその範囲というのも随分かつてから変化してきているのが実態でございます。
 特に、印刷業界を中心といたしましてワープロ作業というのがかなり大幅に家内労働分野の中に広まってまいりました。そういうことから、私どもワープロ作業について実態がどうなっているのか、問題点がどういったところにあるのかといったようなことを検討いたしまして、ワープロ作業というのは家内労働なのかどうかといったようなことも議論が実はあったわけでございますけれども、平成二年からワープロの操作を行ってフロッピーディスクに入力するいわゆるワープロ作業については、これは家内労働法の対象にするということにいたしまして、その点地方にも明確に通達をいたしたわけでございます。
 特に、私ども力を入れておりますのは、そのとき調査いたしました実態では、どうも委託契約の内容が必ずしも文書で行われていないといいますか、明らかにされていない。口頭の約束でやられているようなケースが多いといったような実態もあったものですから、特に家内労働手帳の交付に重点を置き、加えましてワープロ作業の特質から特に作業環境につきましての留意事項といったものを、こういったチラシにいたしまして、労働基準局、労働基準監督署を通じまして委託業者に配付し、委託業者からワープロ作業に従事しておられる方々にこの趣旨が徹底されるようにということで指導を行っているところでございます。
 また、今後この作業以外にいろんな分野に広がってくるということがございますれば、そういった推移を見ながら対応してまいりたいというふうに思っているところでございます。
#236
○笹野貞子君 これからの日本というのは、まさに女性と高齢者の労働というのをいかに有為に生かせるかということにかかっているというふうに思います。そういう意味では、女性の勤務形態も非常に多様化してまいりますので、やはりすべてが後手後手に回らぬように、こういうことも起こり得るだろうというすべての可能性を今からピックアップしておきまして、また女工哀史のような時代に戻らないようなそういう考え方で労働省は機敏に対応していただきたいというふうに思っております。
 さて、それでは変形労働制にちょっと移らせていただきたいというふうに思います。私は、伊藤賃金部長とは決して波長が合わなくはありませんので、どうぞ御遠慮なく御発言いただければ大変うれしいというふうに思っております。
 どうも、変形労働制の問題を審議している過程の中で、先ほどから言いますように労働基準法というのはやっぱり働く人に権利を与えているわけですから、権利というのは前進こそあれ後退するような権利であってはいけないわけです。そういう点では、労働基準法というのは常に新しい権利のためにそのすべての条件を前進させるというそういう気構えでなければいけないんで、それがちょっとでも後退するような危倶がある場合には、これは徹底して研究しなければならないというふうに思っております。そういう意味で、私はどうも変形労働制というのはその運用を間違うならば大変危険があるかのように、まだそういうふうに思っております。これが錯覚ならばいいんですけれども、どうも違うように思っておりますので、きょうは私の疑問を二、三御質問にぶつけてみたいというふうに思います。
 まず一番先に、端的になぜ一カ月、三カ月という変形労働制があったにもかかわらず、急に一年という変形労働制を入れた、その一番大きな目的は何か。何度聞いても時短を進めるためだと言うのですけれども、もう一度お伺いいたします。その目的は何だったのでしょうか。
#237
○政府委員(伊藤庄平君) 今回の労働基準法の改正におきまして、やはり最大のねらいは週四十時間労働制を実施したい、ここにあったわけでございます。これを具体的に特例事業場を除きまして全面的に実施していく、そのためにどんな事業場でも週休二日制に相当する四十時間をこなすために毎週二日ずつ休日をとっていくという形でいこうとした場合には、なかなかすべての事業に導入していくことが難しいという事情が一つございました。
 それから一方、多くの三カ月の変形制等を採用している事業場、その他の事業場を見た場合に年間で休日管理をやっている、あるいは年間で労使の間で休日協定をしている事業場がかなりございます。三カ月変形制の場合にも実際上三カ月を四半期ごとにつなぐことによって年間の休日のカレンダー等を労使で決める形がとられておる場合が多いわけでございます。
 したがいまして、私どもこの週休二日制に相当する四十時間制を導入する際には、年間単位で休日管理を行っていただく、そして年間単位で週休二日制に相当するような休日を確保してもらって、平均の中で週四十時間制というものを実現できるような仕組みをつくることによってすべての産業、事業に週四十時間制というものを導入できる形もつくっていこう、こういう考えで最長一年の変形労働時間制というものをセットさせていただいたわけでございます。
#238
○笹野貞子君 部長、お願いですけれども、どうも語尾がちょっと聞き取れないんです。私の年のせいでしょうか。それで、最後の語尾のところをしっかりと言っていただければ大変ありがたいというふうに思います。
 それでは、週四十時間にする、そして時短を促進するためだ、それが大きな目的だと言うんでしたら、労働省としてはこの一年変形制を入れたらどのくらいまで時短ができるというふうにシミュレーションを出しているんでしょうか。
#239
○政府委員(伊藤庄平君) 一年単位の変形制でございますが、これは先ほど申し上げましたように年間単位で休日管理をしながら週四十時間制を同時に導入しなければならない、こういう制度でございますので、その分それによって効率的な労働時間短縮ができていくんではないか、四十時間制に導入する過程で、そういうふうに考えております。
 ただ、もう一方実態を見てみますと、三カ月変形制を採用しているところの時短効果を調べてみますと、全事業場平均の過所定労働時間が四十二時間四十分というのがこれは全体の事業場の平均でございます。そういう中で、三カ月変形制を採用している事業場の所定労働時間が四十時間十分になっている。主な事業場でも部門によっては変形制を採用しないところもございますので、そういうところと比較しますと、同じ事業場でも変形制を採用していない事業場は四十時間四十一分ということで三十分ほどの開きがある。やっぱり計画的な休日管理等を行うことによって効率的な時間短縮につながっているのではないか、こういうふうに考えております。
#240
○笹野貞子君 数字というのは非常におもしろくて、本当に一つの手品みたいなときもあるんです。ですから、数字で言われるとそうかなと、こういうふうに思うんですが、これがなかなか惑わされることがありまして、今の部長のお話では週時間ばかり言っているんです。年間総労働時間の短縮というのがどこまで進むかという計算は余りされてないんで、私がちょっとやってみました。
 これはどうでしょうか。つまり、平均過労働時間を四十時間にする、こういうわけです。そうすると、一年間ですから五十二週とすると年間所定内労働時間は二千八十時間となります。二千八十時間は所定内労働ですが、有給休暇を二十日間とったとすると千九百二十時間になります。残業が多分あるだろうということで、残業の分を百時間ぐらいにしても年平均労働時間、所定内労働時間は簡単に二千時間になってしまうんです。これは何にも法律には触れませんし、労働基準法どおりの計算でも二千時間を優に目いっぱい使ってしまう。そうしたら、これはちゃんと週四十時間になっています。こういうシミュレーションはどうでしょうか。間違っているんでしょうか。
#241
○政府委員(伊藤庄平君) 今先生おっしゃられた数字を前提にいたしまして二千八十時間から計算してまいりますと、先生がおっしゃられたような数字になるかと思います。
 ただ、五十二週を四十時間でやりますので、二千八十時間から出発しなくちゃいかぬわけでございますが、そこから年次有給休暇、それから国民の祝日とか、それから夏あるいは正月等の休みを引いた場合にどういう数字になってくるかというシミュレーションをしなくちゃいかぬわけでございます。先ほどもございましたが、千八百時間のモデル等で簡単にやっていくと仮定の数字は出るわけでございますが、仮定の数字でございますので差し控えさせていただきます。先生がさっきおっしゃった中から、できれば国民の祝日とかのも引いた数字でやらせていただければもう少し少ない数字でシミュレーションができるんではないかというふうに思っているんですが。
#242
○笹野貞子君 しかし、私のシミュレーションはちゃんと祝日を休日に入れているわけですから、決して法には触れないわけです。ですから、目いっぱい所定内労働時間を使おうと思えばこの計算は決して間違いじゃないんですね。ですから、今週労働時間四十時間にしていない企業、そして週休二日にしていない企業は、今私のやった数字のトリックでちゃんと変形労働時間制をとっても法に触れないようにやりましたということができるわけですから、これはちょっと数字のマジックで、これは決して勤労者の方にはメリットがあるとは言い切れない制度なんですけれども、どうでしょう。
#243
○政府委員(伊藤庄平君) 今猶予と原則の労働時間でそれぞれ四十四、四十六時間ということでやっておるわけでございますが、例えば一週四十四時間を前提にしますと、これは四週六休制の形になるわけでございます。これですと、年間の休日が大体七十八日で実現できてしまう仕組みになるわけでございます。したがいまして、この四十時間という形を平均であるにせよ年間単位で実現していく場合には、一週及び一日の労働時間の限度時間とかかわってまいりますけれども、週平均の四十時間を実現するためにはやはりかなり休日をふやしていかなければならない、そういう必要性が出てまいるのかと思っています。
 したがいまして、週四十時間制を導入すること、一日の限度時間を減らすことと相まって週四十時間制を前提とすれば、かなり年間単位では週休二日制なりそれに近い休日確保の努力が採用しようとする事業場では行われていくということを念頭に置いた制度として考えております。
#244
○笹野貞子君 部長は念頭に置いたと言いますけれども、それは部長は念頭に置いていただくのは一向に構わないんですけれども、しかし法に触れないように、労基法に触れないように計算をすると簡単に休日、時短にはならないという結果が出ますね。
 例えば、こういうのはどうでしょうか。もう一度やってみました。
 つまり、現在適所定労働時間が四十四時間という企業があったとします。この四十四時間という企業が四十時間にしなさいということで変形労働制を導入したとします。週四十四時間というのは、これは日曜日はお休みでそして土曜日は半ドンかあるいは隔週ごとに休んでいるというような企業だというふうに思います。こういう企業が四十時間にするためには一週間に四時間を減らさなければいけません。そのために、四時間を減らすために、五十二週分を掛けると二百八時間になります。つまり、今年間二百八時間を減らすと週休四十時間になります。ですから、この企業は休日を日数に直して二十六日ふやせばいいことになります。二十六日を休みにするといいんです。
 もともと、この企業は祭日とかそれから盆とか正月とか年末年始というのを休ませていました。しかし、週休四十時間にするために変形労働制を入れると、今日本の基準法では年末年始、盆とかそういうのは法定休日になっておりませんから、総なめになめて、それでこの日数で割っていきますときれいに週四十時間労働になるわけです。そうすると、何にも休日をふやさないで、もともと休日だったものを計算に入れて変形労働制をするとちゃんとつじつまとして四十時間になりますし、そして変形労働制を使うことによって何の休日も増やさないという結果が出るんですけれども、これはどうしたものでしょう。
#245
○政府委員(伊藤庄平君) 確かに、先生おっしゃるとおりもしそういう形で国民の祝日等を週休日に組み込んでいくようなことをしながら、それを週休日として使って平均を出していくという計算ですと、ただいま先生からお聞きしたような計算が出てくるわけでございます。
 当然、その過程では就業規則上、国民の祝日を休みにしていたとか労使の話し合いでそういう仕組みがとられていたと思います。これを週休日に組み込んでいくということは、そういったものは場合によっては不利益変更というケースも出てまいるかと思いますし、しかも一年変形制の導入をかりてそういった形が行われていくということはこれはよくないんだろうというふうに思います。もしも、そういう形でのものが出てまいりましたら、やはり労使協定の届け出等に当たってはチェックしていかなくちゃいかぬというふうに思います。
#246
○笹野貞子君 部長は、今よくないとおっしゃったんですね。その言葉は重みがあると思うんですよ。労働基準法というのは、勤労者にとって明らかによくないという結果が出たときには、これは法制度によってその公正を保っていかなきゃいけないんで、それが明らかによくない、この運用の仕方が明らかに時短にならないというのは、今私がシミュレーションで出しました。ですから、こんな変形労働制というのは明らかに勤労者にとっては前進させる権利ではなくて、かえって後進させる権利であるかのような危倶をここで持ちました。だって、部長はよくない、それは指導しなきゃいけないと言ったんです。
 ですから、労働基準法というのはよくないという部分があった場合、これはその権利をきちっと構成するためには何らかの措置をとっていかなきゃいけませんから、私たちは上限を決めなさいとか祝祭日をちゃんと決めなさいとか、そういうふうなことを言い続けているのがそこなわけですから、その点はもう重大な問題としてやっぱり再考慮しなければいけない点だというふうに思います。
 そこで、聞くところによりますと、部長はフランスの変形労働制の権威だそうで、大変御造詣が深いということを聞きましたので、フランスの変形労働制の問題をちょっとやってみたいというふうに思います。この間、私が石岡局長にフランスの変形労働制について質問をいたしましたら、それも考慮に入れてこれから大いに検討したいとごまかされてしまいましたので、もう一度あえて質問をさせていただきたいというふうに思います。
 フランスが変形労働制をとるときには、私も読ませていただいたのは日本労働協会が出しております「変容する労働時間制度 主要五カ国の比較研究」の中のフランス版ですけれども、これを拝見しますと、フランスは三回にわたってこの変形労働制というものの改正をして現在に至っているということがわかりました。このときにフランスでは、変形労働制というのはどういうことなのかというその本質論の激論があったということがわかりました。一つは今労働省が盛んに何度も言っている時短だという説と、いやこれは企業の方の時間調整という、要するに時間の弾力性のためだという大議論があったと聞きます。そして、どちらの方が有利かというと、企業の時間の調節の方にこの変形労働制は軍配が上がったということが書かれていますが、それはそのとおりでしょうか。
#247
○政府委員(伊藤庄平君) 私も先生が今御指摘になった本の知識それだけでございますが、その中でフランスの変形労働時間制につきましてそういった記述があることは承知しております。
 とりわけ、私どもから見ますと、私ども諸外国の労働時間の比較をする場合に製造業の生産労働者で見るわけでございますが、フランスの場合既に千六百時間台を達成してきている。日本の場合、同じ方式で計算しました平均の実労働時間が二千二十時間という労働時間である。フランスの場合は各週平均三十九時間ということで、単純に変形制を認めていきますと、むしろ弾力性だけが残って、平均の実労働時間よりも随分上に出る形のものが出てくる。当然、フランスの場合も一定の歯どめをしているようでございますが、やはり先生御指摘のような労働時間の調整という色彩が強くなるような指摘がなされていたのはそういう側面があるのかなというふうに受けとめました。
#248
○笹野貞子君 多分、部長はフランスのことを読まれたのが頭にあったのか、あるいはそういう変形労働制が部長の認識の中にあったのでしょうか。先ほど、武田委員との質問のやりとりの中で、労使協定でもってしなきゃいけないというようなときに、それでもってむだな時間が省けるんだと、こういうふうにおっしゃいました。ですから、まさに変形労働制を使うということはむだな時間が省けるのだと。
 私は、大変申しわけなく思ったんですけれども、部長の語尾が余りはっきり聞こえなかったものですから、またこれも議事録を読んでからもう一度再度部長にお聞きしますけれども、結局部長もそういう時間の弾力性、時間の調整というのを頭の中で認めているのだということになるわけです。ですから、そういう点では別に今御回答は要いません、これは私の聞き間違いかもしれませんので、議事録をもう一度拝見させていただきます。
 結局、フランスの場合には、完全にこれは労働者の方にメリットがないという認識のもとで三回改正が行われているわけです。その都度その都度、これはつまり運用を下手にすると勤労者の方にメリットどころか、かえって長時間労働に逆行するということで、大変な歯どめをつけているわけです。
 どういう歯どめをつけているかというと、労使の協約・協定によってこの制度を採用しても、八日以内に当該企業、事業場の従業員代表組織の選挙人の過半数が異議を主張したときには、同協約・協定は効力を生じないでもとへ戻せるんだ。私は、フランスの組合のあれを今余り熟知してませんけれども、とにかく組合の方は企業とこういう変形労働制を結んでも八日間、もう一度考え直してやっぱりこれはおかしかったとなるとやめることができるという歯どめがあったり、あるいはある特定の週に三十九時間を超えて労働させられるときには、その三十九時間を超えた部分にはもちろん割り増し金はつくし、また休みを減らされたときには代償休日の権利が与えられているということで、幾重にも制限が課せられているわけですけれども、こういうフランスの制度に対してはどのようにお考えですか。
#249
○政府委員(伊藤庄平君) フランスにつきましては、今先生御指摘のようにかなり変形労働時間制につきましていろんな規則が同時についてきているということは承知いたしております。
 これは、先ほども申し上げましたが、フランスの変形労働時間制の場合には、既に全体の平均の総労働時間が大体千六百時間台、千六百八十時間ちょっとぐらいだったと思いますが、そこまで来ている。そういう中で変形制を導入いたしますと、逆に相当労働時間がもとに戻ってしまうといいますかふえてしまう。そういうことを許容する前提になる仕組みが出てまいりまして、かなりそういうことのために制約を厳しくしているというふうに承知いたしております。
 我が国の場合、それに比較いたしますと、先ほども申し上げましたように、フランスの千六百八十時間ちょっとに相当するものが二千二十時間でございまして、私ども週四十時間労働制を実現して、それで年次有給休暇その他の休日なりをとっていってもらえば、かなりそれを下回る年間の総実労働時間の短縮につながっていくだろう。いわば、現状を前に持っていくために週四十時間労働制というものを導入する。この一年の変形制も最終的には平均して週四十時間労働制を実現しなくちゃいかぬわけでございますので、総労働時間の短縮という結果が必ず出てくるものというふうに思っておるわけでございます。
 そういうことを想定して導入する背景と、フランスで導入された際の背景とではかなり違う状況がございまして、そのためにフランスではかなりそういった制約等もかぶせながら導入してきているのではないかというふうに受けとめております。
#250
○笹野貞子君 フランスの変形制に造詣の深い部長としては、ちょっと説得力がなくて、私は余りよくわかりませんでした。この変形労働制というのは、勤労者にとっては非常にデメリットになる危険なものであるから、これを採用するときには幾重にもチェックをしているというのがフランスの制度です。それは先ほど部長もそうだとおっしゃいました。
 それで、フランスは変形労働制を使うときには、ちゃんと祝日もそして有給休暇もすべてを入れた一つのシミュレーションを出して、そしてこれが一つのモデルなんだ、これを上回らないようにというふうにモデルを出しているのは御存じですね。
 そのモデルを言うと、こういうふうになっています。一年間は三百六十五日。そこから五十二週の休日を引きます。そして、三十日の年休日を引いて、十一日の祝日を引くと全部で二百七十二労働日になる。この二百七十二という労働日を、週六日ありますから六で割りますと、全体で週四十五週と三分の一になる。一週の平均時間は三十九時間だから、三十九時間に四十五週と三分の一というのは三三にしまして、それを掛けると千七百六十七・八七時間。これがつまり上限の労働時間です。この上限の総労働時間以内であるならば変形労働時間を使いなさい、こう言っているわけです。一番最高でも千七百六十七時間ということで、これから少なくなるわけですから、千六百時間になるということなんです。
 私は、政府委員室の方に、フランスはこういうふうにモデルケースを出して、だから変形労働制を使うと時短が促進するし、また変形労働制を使うときにはこういうチェックの中で使いなさいとちゃんとモデルケースを出しているんですから、日本が千八百時間になる、千八百時間以内になるというそういうモデルケースを数式で出してください。ただ、一週四十時間というところは一つの数字のマジックで、週四十時間というと二千八十時間働いてもいいということになるわけですから、千八百時間にするためにはつまりどういう数式を使ったのかそれをお示しください、こう言ったんですけれども、きょうはそれをお示しいただけますか。
#251
○政府委員(伊藤庄平君) 先生が御指摘になりましたフランスの場合、日曜日に相当する週休日、それから三十日の年次の有給休暇等を差し引いて限度最高の時間として約千七百六十八時間、これを示しているということは承知いたしております。
 先ほど申し上げましたのは、こういう意味でございまして、その千七百六十八時間がフランスの平均的な総労働時間に比べますとかなり高い水準であろうと思っています。そういうことからかなりフランスの場合については千七百六十八時間も高い、それを採用するに当たって使用者に対していろんな規則をかけている点はあると、こういうことを申し上げたわけでございます。
 日本の場合は、これと比較いたしますと、これは変形制を採用するしないにかかわらず、年間百四日休んでいるといたしますと単純には二千八十時間という数字が出てまいるわけでございますが、フランスの場合は前もって週休日や年次有給休暇三十日を引いていますが、日本の場合は二千八十時間から引かれてくるわけでございます。したがいまして、年次有給休暇とか国民の祝日等が二千八十時間から引かれてくるわけでございますので、そこは今の我が国の平均的な総労働時間の
水準よりもずっと総労働時間としては少ない水準に出てくる。そこをもし千八百時間のモデルで使っているような数字をもとに計算してまいりますと一定の数字が出るかと思いますが、それはまた計算してお示しすることはやってみたいというふうに思います。
#252
○笹野貞子君 本当は、きょう私もフランスの数式をちゃんと持っていますので、労働省が描いているこの変形労働制を使うと、これだけの時間を休んでこれだけの年休をとると千八百時間以下におさまって週休二日になるんだという、それはやっぱりモデルケースを出さないと、ただそういうふうになるものと思いますというふうに部長がここで力説をいたしましても、現実問題としては二千八十時間という時間はこれは何の法規にも触れないで働ける時間になるわけですから、その点はこれはもう一度部長はお考え直しにならなければ大変危険だというふうに思います。
 フランスの場合には、今こういうふうにきちっと数式を出して、これ以内でという規制をして、しかも企業の方に割り増し賃金、そして代償休日等すべてのチェックをかけていますから企業にしてはコストが高くなってしまって、かえって変形労働制を使ってもメリットは何もないということで余り使われてないという実績が出ているのもこれも御存じですね。この本の中に書いております。
 ですから、そういう点ではフランスのように勤労権というのが進んだ民主主義の国民性、そして働く権利というものを非常にきちっと理解しているそういう状況にあるならば、変形労働制というのはこれは協約とか協定とかあるいは組合の話し合いで歯どめはききますけれども、まだ有給休暇もとることもできないような日本の現状、そして残業によって生活を支えているようなそういう日本の状況では、今この一年変形労働制を何の制限もなしに採用させるということは私はそこに危険を十分はらんでいるというふうに思うんです。
 そして、先ほどから何度も言うように労働省の見解としては、週四十時間週四十時間ばっかり言っていますから、千八百時間に対してはどういう数式で、どれだけ祭日を休ませてどれだけ休日があってどれだけ有給休暇があるかという具体的なものは何も示してないわけですから、そういう点では私は危険がいっぱいだというふうに思います。そういう点では、先ほど労働基準法というのはつまり公平な権利でなければならないということを力説している私の自説に対して、この点はもう一度再考慮していただきたいというふうに思います。
 最後に、労働大臣に女性についてのお話を聞きたいというふうに思います。
 この変形労働制という労働形態は、よく使われると私も先ほどから言っていますように非常に時短を促進するかもしれません。しかし、それが間違った運用をするならば一番弱いところにやっぱり出てくるだろうというふうに思います。これから女性の労働、そして育児休業、介護休業というような問題を含んで、この変形労働制というのが、女性とかあるいは年少者とかあるいは勤労学生に不利に働かないようにするためのひとつ大臣としての方策をお聞かせいただきたいと思います。
#253
○国務大臣(村上正邦君) 育児やお年寄りの介護をしながらお働きになります女性の方々、また勤労青少年については、一年単位の変形制の適用に際して必要な配慮がなされるよう措置する考えであります。
 なお、先ほどから、非常に御熱心な御議論を拝聴させていただきました。吉川議員から引き続いての笹野先生の変形制、こうした御議論も踏まえまして、一年変形制の創設の趣旨に従い、週四十時間制の実現、休日の増加が確実に図られる制度として、特に力を入れて申しますが、運用されるよう十分指導してまいりたい、このように思います。
#254
○笹野貞子君 ありがとうございました。
#255
○委員長(田辺哲夫君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#256
○委員長(田辺哲夫君) 次に、介護休業等に関する法律案を議題といたします。
 発議者中西珠子君から趣旨説明を聴取いたします。中西君。
#257
○中西珠子君 ただいま議題となりました介護休業等に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 我が国は、二十一世紀に向けて世界に例を見ない急速なスピードで人口の高齢化が進行しており、それは先進諸外国が四十五年から百年以上を要したものを二十四年で経験するという極めて急激なものであります。これに伴い、介護を必要とする老人が急増する一方、核家族化の進展と女性の就業の増加等の社会的、経済的変化を背景として年とった親などの介護の精神的、身体的、経済的負担は労働者にとって極めて大きなものとなりつつあります。
 こうした状況の中で、政府は、平成元年に高齢者保健福祉推進十カ年戦略、いわゆるゴールドプランを発表し、この実現に資するため諸制度の整備を行ってきました。
 しかし、厚生省等の調査によりましても介護を要する寝たきり老人の数は西暦二〇〇〇年には百万人に達すると見込まれており、介護施設の整備等が促進されるという前提のもとでも家庭における要介護者はますます増大すると考えられております。
 このような状況に対処するため、公明党・国民会議は、介護施設や介護サービスの充実等と相まって、介護すべき家族を持つ労働者が雇用を継続しつつ介護を行うことを可能とする介護休業制度の法制化を強く求めてまいりました。
 政府は、昨年の七月に「介護休業制度等に関するガイドライン」を作成するなど、この制度の普及に努めていますが、平成三年二月現在の従業員三十人以上の事業所における介護休業制度の普及率は一三・七%にとどまっております。
 公明党・国民会議は、介護のニーズが急速に高まると予想される状況のもとで、行政指導による制度の普及には限界があり、労働者の福祉と経済社会の安定を図るためには介護休業制度を法制化することが急務であるという認識のもとに、ここに本法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の内容につきまして概要を御説明いたします。
 第一に、この法律案は、介護休業制度を設けるとともに、勤務時間等に関し事業主が講ずべき措置を定めることにより、障害により日常生活を営むのに支障がある家族を介護する労働者の雇用の継続を促進し、もって労働者の福祉の増進を図り、あわせて経済社会の発展を図ることを目的としております。
 第二に、この法律案では、「家族」とは配偶者、子、父母もしくは配偶者の父母またはその他の同居の親族をいい、配偶者には婚姻の届け出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含み、子及び父母には縁組の届け出をしていないが事実上養子縁組関係と同様の事情にあるものを含むものとしております。また、「障害」とは負傷、疾病または精神もしくは身体の障害をいうことにしております。
 第三に、雇用される労働者は、日々雇用される者等特定の雇用関係にある労働者を除き、その事業主に申し出ることにより介護休業をすることができることとしております。この場合、介護休業をしたことがある労働者で、引き続き同様の障害の状態にある家族につきましては、労働省令で定める特別の事情がある場合を除き、再度の申し出ができないこととしております。
 また、介護休業の申し出は、その開始予定日と終了予定日を明らかにして、休業開始予定日の一週間前までにしなければならないこととしております。
 介護休業の申し出があった場合、事業主はその労働者に対し、介護を要する家族が相当の期間介護を必要とする状態が継続すると見込まれること等を証明する書類の提出を求めることができることにしております。
 第四に、休業の申し出があった場合に、事業主は、労働者の過半数で組織する労働組合等との書面による協定に基づき、介護休業をすることができないものとして定められた場合を除き、介護休業の申し出を拒むことができないものとしております。
 休業申し出をした労働者は、休業開始予定日の前日までは、休業申し出を撤回することができます。休業開始予定日の前日までに、家族の死亡、その他労働者が申し出にかかわる家族を介護しなくなった事由などが生じたときには、労働者は事業主に対して遅滞なく通知すべきものとし、休業申し出はなされなかったものとみなします。
 申し出を撤回した労働者は、申し出にかかわる家族の障害の状態が引き続き同じであるものについては、特別の事情がある場合を除き、再度の休業申し出をすることができないこととしています。
 休業開始予定日の繰り上げ変更と終了予定日の繰り下げ変更は、それぞれ一回限り認めることとしています。
 第五に、介護休業期間につきましては、原則として一年を限度としておりますが、この間に家族の死亡等により介護をしないこととなった場合などには、介護休業期間はその事情が生じた日に終了するものとしております。
 第六に、労働者が安心して介護休業等を取得することができるようにするため、事業主は、労働者が休業の申し出をし、または介護休業をしたことを理由として、当該労働者に対し解雇その他の不利益な取り扱いをしてはならない旨を規定しております。
 第七に、事業主は介護休業に関して、労働者の介護休業中における待遇に関する事項等を定め、労働者にあらかじめ周知させるための措置等を講じなければならないこととしております。また、事業主は、介護休業の申し出及び介護休業後における就業が円滑に行えるようにするため、配置その他の雇用管理等に関する措置を講ずるよう努めるとともに、介護休業をした労働者が業務に復帰した場合、賃金等の処遇について同種の労働者との均衡を失することのないよう適切な配慮をするよう努めなければならないこととしております。
 第八に、勤務時間の短縮によって家族の介護を行うことを希望する労働者に対しては、事業主は、労働者が就労しつつその家族を介護することを容易にするための措置を講じなければならないこととしております。勤務時間短縮の措置は、一年の範囲内であれば介護休業と組み合わせてとることができます。例えば、半年間介護休業を取得した後、次の半年間勤務時間の短縮等の措置を受けることができます。なお、この運用基準につきましては家族を介護する労働者の負担の軽減を図るとともに事業主の事業活動の遂行に著しい支障を生じることのないように配慮して労働省令で定めることにしております。
 第九は、事業主が介護休業に関する定めの周知等の措置を講ずるに当たって、その指針となるべき事項を労働大臣が定めるとともに、これを公表することとしております。また、労働大臣は、この指針に従って事業主に対し、必要な助言、指導、勧告を行うことができることとしております。
 第十は、国による援助等の措置についてであります。国は、家族を介護する労働者の福祉の増進を図るため、介護休業をする労働者が雇用される事業所における労働者の配置その他の雇用管理、介護休業をしている労働者の職業能力の開発及び向上等の措置を講ずる事業主等に対して必要な援助を行うよう努めることとするとともに、中小企業者に対して必要な助成を行うことができることとしております。
 第十一は、介護休業手当に関する措置についてであります。国は、介護休業や短縮勤務をする労働者に対して、その生活の安定に資するため、別に定める法律により必要な手当を支給するものとしております。この休業及び短縮勤務中の所得保障の水準につきましては、雇用保険制度等の枠組みの中で、通常賃金の六割給付が行われるべきだと考えております。この考えに基づき本法律案の附則第二条で、「政府は、この法律の施行状況及び介護休業に関する制度と育児休業その他の労働者の休業に関する諸制度との均衡を勘案し、これらの制度を利用する労働者に必要な手当を支給するための制度について、雇用保険制度等の全般に関する見直しを含めた総合的な検討を行い、その結果に基づいて、速やかに、法制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。」と規定しております。
 なお、この法律案では、事業主が講ずべき措置に関し労働大臣が指針を定めるに当たって、中央職業安定審議会への諮問を義務づけるほか、手続規定等の労働省令への委任、船員に関する特例措置、国家公務員及び地方公務員の適用除外等について規定するとともに、関係法律の整備を行うこととしております。
 この法律案の施行日は、平成六年四月一日からとしております。
 以上、この法律案の提案理由及び内容の概要につきまして御説明申し上げました。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
#258
○委員長(田辺哲夫君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時二十三分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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