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1993/04/08 第126回国会 参議院 参議院会議録情報 第126回国会 商工委員会 第5号
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1993/04/08 第126回国会 参議院

参議院会議録情報 第126回国会 商工委員会 第5号

#1
第126回国会 商工委員会 第5号
平成五年四月八日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月五日
    辞任         補欠選任
     藁科 滿治君     松前 達郎君
 四月六日
    辞任         補欠選任
     松谷蒼一郎君     北  修二君
     松前 達郎君     藁科 滿治君
 四月七日
    辞任         補欠選任
     北  修二君     松谷蒼一郎君
     吉田 達男君     松本 英一君
 四月八日
    辞任         補欠選任
     松本 英一君     吉田 達男君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         斎藤 文夫君
    理 事
                沓掛 哲男君
                松尾 官平君
                吉田 達男君
                井上  計君
    委 員
                倉田 寛之君
                下条進一郎君
                前田 勲男君
                松谷蒼一郎君
                吉村剛太郎君
                谷畑  孝君
                峰崎 直樹君
                村田 誠醇君
                藁科 滿治君
                浜四津敏子君
                和田 教美君
                市川 正一君
                古川太三郎君
                小池百合子君
   国務大臣
       通商産業大臣   森  喜朗君
   政府委員
       公正取引委員会
       委員長      小粥 正巳君
       公正取引委員会
       事務局取引部長  植松  勲君
       通商産業大臣官
       房総務審議官   江崎  格君
       通商産業大臣官
       房商務流通審議
       官        細川  恒君
       通商産業大臣官
       房審議官     白川  進君
       通商産業大臣官
       房審議官     石黒 正大君
       通商産業省通商
       政策局長     岡松壯三郎君
       通商産業省産業
       政策局長     熊野 英昭君
       特許庁長官    麻生  渡君
       特許庁特許技監  辻  信吾君
       特許庁総務部長  姉崎 直己君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        小野 博行君
   説明員
       法務大臣官房参
       事官       柳田 幸三君
       大蔵省関税局業
       務課長      栃本 道夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○不正競争防止法案(内閣提出)
○理事補欠選任の件
○特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(斎藤文夫君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨七日、吉田達男君が委員を辞任され、その補欠として松本英一君が選任されました。
#3
○委員長(斎藤文夫君) 不正競争防止法案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○藁科滿治君 おはようございます。
 最初に、今問題となっております公共事業をめぐる談合問題について、通産大臣に御質問をさせていただきます。
 金丸事件の解明を通じまして、建設業界を初めとする我が国のやみ献金あるいは談合体質、こういった問題が改めて注目をされております。政・財界の癒着構造ということで、国民の厳しい批判の対象になっております。そこで、各産業と広く関係を持つ通産省として、このような事態をどのように認識されておられるか。また、こういった構造やあるいはシステムから脱却するためにはどのような手を打っていったらいいか。こういうことについて、まず最初に森大臣から見解を承りたいと思います。
#5
○国務大臣(森喜朗君) 公共事業におきます指名入札にかかわる問題につきましては、言うまでもなく、適正な手続のもとで自由かつ公正な競争によって行われるということが公共事業に対する国民の信頼を確保する重要なことだというふうに考えております。
 いわゆる今御指摘がございました建設談合問題に対しましては、通産省としては意見を申し述べる立場ではございませんが、独禁法の運用に関する一般論について申し上げるならば、産業の活力ある発展と消費者利益の増進のためには、自由で公正な競争の確保が必要不可欠であると考えております。これは、我が国経済の国際的な調和を一層進める観点からも求められている課題でございます。
 このため、独禁法違反事件に対しましては厳正な対応が求められておりまして、通産省といたしましても、所管業界に対して独禁法の遵守を徹底するように随特注意を喚起してまいりたい、このように考えております。
#6
○藁科滿治君 あわせて、関連づけながら公取委員長にも御質問をしたいと思っておりますが、年初以来、水道あるいはシールの談合事件を通じまして公取委が大変な奮闘をされていることについては、私も評価しながら敬意を表しております。
 しかし、今回の金丸事件の解明を通じまして我が国の産業の構造はまさに危機的な状況に至っている、このように判断しているわけでございます。そういう面では、公正取引委員会の立場からもこういった構造やあるいは入札のシステムなどについて抜本的なメスを入れる時期に来ている、このように私どもは考えておりますが、公取委員長としてどのようなお考えを持っておられるか、御質問をしたいと思います。
#7
○政府委員(小粥正巳君) ただいまの藁科委員のお尋ねでございますけれども、いわゆる談合問題、いろいろなタイプがございましょうけれども競争入札制度一般におきまして、もしあらかじめ受注予定者を決めるあるいは受注価格を取り決めるというような行為がございますと、これは入札制度の根本を侵害する行為でございまして、申すまでもなく独占禁止法に違反する行為でございます。したがいまして、私どもは従来からこのような独占禁止法違反行為につきましては積極的に排除措置、厳しい対応を図っているところでございます。
 ただいまお尋ねの中で、入札制度の点にもお触れになられました。どのような入札制度がよろしいか。この問題は、申すまでもなく第一義的には発注者側の問題でございますから、私どもがそれについて具体的に申し上げる立場ではございません。入札制度は、ただいま通産大臣の御答弁もございましたけれども、自由かつ公正な競争が入札参加者において行われるということが基本でございます。したがいまして、お尋ねのようないわゆる談合行為が行われないような適正な入札制度がいかにあるべきか。現在、たまたま建設省におかれましてもいろいろと入札制度の改善につきましては御検討をいただいているようでございますから、私どもは、入札制度がさらに改善をされて、ただいま申し上げました公正かつ自由な競争が入札参加者の中で適正に行われるように、そしてこれをまた独占禁止法の立場から注意深く見守ってまいりたい、こういうふうに考えております。
 それから、公正取引委員会として、お尋ねにございましたこのように談合行為が行われているのではないか、このような状況において一体どんなスタンスを持っているか、こういうお尋ねでございますけれども、何より大切なことは、冒頭申し上げましたようにこのような独占禁止法違反行為に対してこれに厳正に対処するということ、違反行為が厳しく処分をされるということが今後の違反行為を未然に防止するゆえんでもあろうと思います。
 それから、制度面におきましては、昨年末国会において御審議の末に成立をさせていただきました独占禁止法の改正、具体的には事業者団体及び事業者に対する刑事罰の大幅引き上げ、それからまた一昨年でございますけれども、カルテルに課せられます課徴金の算定率の大幅引き上げ、このような独占禁止法強化の制度改正がいわば違反行為に対する総合的な抑止力を格段に高めたところと考えております。また私ども、平成二年六月には、国民生活に広い範囲で影響を与える悪質かつ重大な独禁法違反行為に対しましては刑事告発を積極的に行っていく、こういう告発方針の公表もしておりまして、ただいま御質問の中にもございました、ことしに入りまして、いわゆるシール入札談合事案につきましては、私どもこの方針に基づいて告発を行ったところでございます。
 ただいま申し上げましたような具体的な違反行為に対する対処あるいは制度面での抑止力の向上、これが何より大事でございますけれども、それ以外にも独占禁止法の運用方針、考え方というものが広く事業者あるいは一般の消費者に十分理解をされ、それをさらに深められるということが不可欠と考えております。その意味では、独占禁止法の適用の考え方につきまして、各種のガイドラインの設置でありますとか広い意味の広報活動によりまして独禁法の周知に私ども努めてきているところでございますけれども、この点ではなお私どもの努力にも十分でないところがあろうかと思います。この点をさらに徹底させるつもりでございます。
 幸い、最近各企業あるいは事業者団体におきまして、独占禁止法遵守マニュアルの作成あるいは法務部門の充実、社員教育の徹底というようないわゆる独占禁止法遵守体制の整備に対する取り組みが大変進んできております。私どもといたしましても、積極的にこのような動きを支援、助力していきたいと考えております。
 今後とも、このような談合等の独禁法違反行為に対して厳正に対処いたしますとともに、違反行為の未然防止にできる限りの努力を払っていく所存でございます。
#8
○藁科滿治君 それぞれ御答弁をいただきましかが、これらの問題は言うまでもなく国内問題にとどまらず、これからの日米の協議でも大変厳しく指摘される事項でもある、このように私は認識をしているわけでございます。今御答弁いただきましたが、今後遺漏のないように前向きな対応をぜひそれぞれの立場でしていただきますよう重ねて要望を申し上げておきます。
 さて、本題に戻りまして、不正競争防止法案について幾つか御質問を申し上げます。
 今や、内外にわたってこの知的財産の保護の問題が非常に重要視されております。我が国もまた世界有数の知的財産国である、こういう観点から今回の法案の提案は各界のみならず国際的にも非常に注目をされているわけでございます。率直に言えば、むしろ遅きに失したという感なきにしもあらずという感想を私どもは持っているところでございます。
 そこで、まず基本的な問題として御質問したいのは、当法案はその国の産業、企業の倫理あるいは道徳、こういったものを象徴するものであるとも言われているわけでありまして、そういう面ではこの法案が国内にどれだけの成果を上げ得るかということも非常に重要であると同時に、国際的な面でのレベルとしても十分対応できるものを持っているかどうか、これについて私どもは重大な関心を持っているわけでございます。特に最近、我が国では不正競争をめぐる関係訴訟がマスコミをにぎわしているわけでございまして、こういう面からも本法案は十分効果を持つのかという観点からひとつ大臣の見解をまず最初に伺っておきたいと思います。
#9
○国務大臣(森喜朗君) 今回お願いを申し上げました改正につきましては、これまでに蓄積されました判例また我が国経済社会の環境変化を反映させますとともに、国際的な協調の観点を踏まえまして現行法を全面的に改正するものでございます。また、従来の片仮名表記を平仮名表記に改める、当然なことでございますが、この機会にこれを改めまして国民にわかりやすい法律にいたしたわけでございます。今回の改正によりまして、本法が不正競争の実態に十分対応できるものとなるとともに、今委員御指摘ございましたようにまさに産業の象徴である、こうおっしゃったわけでありますが、そういう面から見ましても国際的に見て十分遜色のないものになった、このように考えておるところでございます。
 今回の改正に先立ちまして、産構審におきまして各界の代表者に慎重な御論議をいただいたところでもございますし、今後も今御指摘のように遅きに失しないように内外の状況に即応して機動的かつ実効的な見直しを行ってまいりたい、このように考えております。
#10
○政府委員(熊野英昭君) ただいま大臣から御説明申し上げましたように、今回の改正によりまして本法が不正競争の現在の実態に十分対応できるものとなると同時に、国際的にもいろいろな各国の法制等を参考にしまして遜色のないものになったというふうに考えているところでございます。
 昨今、新聞紙上をにぎわしているという御指摘がございました。個々のケースにつきましては、私ども慎重にフォローはしておりますけれども、その個々のケースを直接コメントする立場にはないわけであります。一般的に申し上げまして、今回お願いしております本法の改正案が施行されますことによりまして、従来不正競争行為から保護しておりましたものに加えまして、著名ブランドの保護でありますとか、デッドコピーの規制等でありますとか、不正競争からのさらなる的確な保護が図れるものになることを期待しているところでございます。
#11
○藁科滿治君 それでは次に、国際的な視点に立って幾つか質問をさせていただきます。
 今回の提案をめぐりまして、国際的なハーモナイゼーションということがしきりに強調されておりますけれども、そういう意味でガットのウルグアイ・ラウンドとかあるいは現在までの日米間の構造協議の中でこういった問題がどういう形で論議されているのか、その内容を伺いたいと思います。
#12
○政府委員(熊野英昭君) 不正競争防止法をめぐります国際的枠組みといたしまして基本的にございますのは、工業所有権の保護に関するパリ条約という条約がございます。この条約におきましては不正競争からの有効な保護を付与するべきことが規定されております。
 具体的に申し上げますと、このパリ条約におきまして競争品の産品、活動と混同を生じさせる行為、競争者の信用を棄損する行為及び産品の性質等を誤認させる行為の禁止を最低限の義務としているところでございます。そういう形で、パリ条約によりまして基本的には国際的な調和と申しますかハーモナイゼーションが図られているところでございます。我が国の不正競争防止法はこれらの義務を基本的に満足するものとなっておるところでございます。
 さらに、現在交渉が行われていますところのガット・ウルグアイ・ラウンドにおきましては、いわゆるTRIP協定におきまして営業秘密の保護が義務とされているところでございます。我が国不正競争防止法は、平成二年の改正におきまして既に営業秘密の保護を導入したところでございます。そういう意味では、このTRIP協定の発効に先駆けて既に対応を図っているところと言うことができるわけであります。
 さらに、近年の世界的な不正競争の防止に対する関心の高まりを背景といたしまして、世界知的所有権機関、略称WIPOと申しておりますけれども、ここにおきましても昨年の七月から不正競争防止法のハーモナイゼーションに向けての作業が開始されております。WIPOにおけるハーモナイゼーションの具体的内容につきましては、目下議論中でございますから、現段階で必ずしも明らかにはなっておりません。他方、今回私ども改正をお願いしております不正競争防止法の内容は、諸外国の法制を十分に勉強いたしましてそれらを勘案して改正案を作成しておりますので、改正後の不正競争防止法というのは国際的に見ましても最も整備されたものの一つになるのではないかというふうに考えておるところでございます。
 なお、ただいま不正競争防止法をめぐることを申し上げましたけれども、さらに不正競争防止法より広がって知的財産権一般についてはいろんなところで議論をされております。例えば、日米構造問題協議にどうかという御指摘があったわけでありますけれども、これにつきましては、御案内のとおり例えば特許の審査期間の短縮等が日米構造問題協議における議論を踏まえて特許庁において真剣に取り組まれているところでございます。
#13
○藁科滿治君 次に、技術移転の必要性と知的財産の保護のバランスの問題について質問をいたします。
 知的財産の保護は産業の健全な発展のために極めて重要である、こういう認識を持っておりますが、一方で我が国の場合途上国に対する技術移転の要請が大変強いわけであります。この二つの要件をどのように均衡を保ちながら両立させるか、非常に難しい問題であります。この点についてどういった考え方をお持ちでしょうか。
#14
○政府委員(熊野英昭君) ただいま藁科委員御指摘のように、発展途上国におきます経済社会の開発を進めていくためには技術が大変重要な役割を果たすわけでありますから、我が国といたしましても経済協力の中で技術の面からいろいろな支援をすることが大変重要でございます。そういう意味で、技術協力をかねてから大変重要なものとして進めておりますし、通産省も率先してやっているところでございます。それからまた、いろいろな産業の技術というのは民間企業におきまして、例えば民間企業が相手国の企業に対して技術援助をするとか、あるいはノウハウを提供するとか、あるいは直接投資をもって発展途上国に投資をいたしまして、そこで日本の技術を使って産業活動をするという格好で技術移転を進めているということもたくさんあるわけであります。
 しかしながら、他方におきまして民間企業がそういう自分が持っております、あるいは大変苦労して開発をし保有している技術について、保護が行われないとなかなかその発展途上国へ向けての民間ベースの技術移転ということは進まないおそれがあるわけであります。そういう意味におきまして、発展途上国においても技術の保護をちゃんとしっかりやってもらうということは、技術移転が円滑に進むための大前提になるのではないかと思います。
 そういう意味で、技術協力を進めていくことと保護をやっていくということは、御指摘のように大変バランスをとることが重要なわけであります。技術を出していくと同時に、我が国としましても技術を保護する方につきましても、相手国の社会基盤整備の一つといたしまして知的財産を適切に保護する制度の整備あるいはその整備された制度の適切な運用が行われるように協力を行っていくことが重要であると考えております。
 そういう意味で、これまでもいろいろそのための協力をしてきているところでありますけれども、今後ともそういう協力を進めていくと同時に、先ほど来申し上げておりますように政府ベースあるいは民間ベースで、一方で技術協力を積極的に進めると同時に、知的財産保護の制度の整備あるいはその運用についての協力についても積極的に進めてまいりまして、御指摘のように双方の適切なバランスをとっていくことが重要なことではないかというふうに考えております。
#15
○藁科滿治君 次に、中小企業への影響と対策について御質問をいたします。
 大企業でもそうでありますけれども、中小企業の場合は、特にみずからが開発したノウハウあるいはのれんといったものを守ることはその企業の存亡をかけた極めて重大な課題でございます。しかし、組織的には特許への体制とかそういった問題を守っていくというような体制が極めて不十分であるわけでございまして、さらにまた地方の零細企業の場合等につきましては情報の入手も非常に困難である、こういったさまざまな弊害があるわけでございます。
 そこで、本法案の中小企業への影響、そしてまた対策、指導といった問題についてどのようにお考えになっておられますでしょうか。
#16
○政府委員(熊野英昭君) 権利を付与するためには出願でありますとか審査とか登録といったふうな手続が要るわけでありますけれども、この不正競争防止法は一定の事実状態を保護するというものでありますので、手続に関する専門的な知識等がなくても、あるいはその手続等について御指摘のようにスタッフが薄いとかそういう中小企業におきましても、実は分け隔てなく保護が図られるというような仕組みになっているものと考えております。そういう意味で、場合によってはそういう難しい手続を経ないでも、例えばノウハウでありますとかのれんでありますとか、ただいま御指摘のありましたようなものにつきましても、ちゃんと一定の事実状態を持っていれば保護されているということになるわけであります。
 その普及というか、あるいは情報等につきましては、前回の平成二年の改正の時点におきましても、東京のみならず全国の通商産業局がございます所在地等におきまして幅広く広範な説明会等を催してきております。あわせまして、できるだけわかりやすい解説書を発行いたしますとかガイドラインの発行を行う等も通じまして、中小企業にも十分本法を御理解いただくというための周知徹底を図っているところでございます。幸い、今回この法案を成立させていただきました暁には、引き続き新法の詳細な内容について説明書あるいはマニュアル等をつくりまして、その説明会を地方にも参って開催し、あるいは中小企業団体等へも周知徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。
#17
○藁科滿治君 次に、営業秘密の問題について御質問いたしますが、今中小企業対策について御答弁いただきましたけれども、営業秘密の体験からも中小企業への対応というのは非常に難しいわけでございまして、ぜひ今の御答弁に沿って積極的な御努力を要請したいというふうに考えております。
 そこで、営業秘密の問題ですが、前回の改正によりましてこの営業秘密という問題が新たに保護されることになったわけでございますが、その後の産業、企業の動向というものは一体どういう状態になっているんでしょうか。また、我々が聞いている情報では、中小企業レベルにおける対応が非常に困難であるというような実態も伺っているわけでございまして、そういう点も含めてその後の状況について少し紹介をしていただきたい。
#18
○政府委員(熊野英昭君) ただいま御指摘の営業秘密の保護につきましては、平成二年の改正法で入れていただいたわけでございます。この改正を機に企業、産業界におきましても営業秘密の保護の重要性についての認識が一層高まってまいりまして、社内における管理体制の整備のための組織でありますとか、あるいは社内規定を充実していくとか、あるいは社内におけるマニュアルを作成する等々の対応が行われてきているものと承知をしております。
 また、前回の改正法の施行後、訴訟件数等がどうなっているかということを御紹介申し上げますと、前回の改正法は平成三年の六月十五日に施行されておりまして、平成五年の三月までの実績を見ますと、営業秘密に係る訴訟件数は二十七件でございます。その三月末時点における状況は、二十七件のうち二件が判決が出て、二件が和解になっておりまして、一件が取り下げになって、残り二十二件は係属中というふうに聞いているところでございます。
 なお、訴訟件数はそういうことでございますけれども、こういった知的財産権を専門にしておられる弁護士事務所がございます。そういうところに内々感じを聞いておりますと、訴訟までに至らなくとも新法を前提に、新法と申しますのは平成二年の改正法でございますけれども、改正法を前提に当事者間の話し合いによる解決がふえているということを聞いているところであります。
 先ほども申し上げましたように、前回の改正時におきましても、中小企業に十分本法の趣旨を御理解いただくための努力を我々なりに行っているつもりでありますけれども、本法の全面改正を機にさらに一層周知徹底を図ってまいりたいと思いますし、中小企業の方でいろいろわからないところがありましたら、私どものところなり通産局なり、あるいは知的財産研究所というふうな財団法人もございますので、御遠慮なく御相談を賜ればというふうに思っております。
#19
○藁科滿治君 次に、不正商品の問題について御質問をいたします。
 近年、途上国において我が国の商品の模倣品が出回る、こういった被害が多発していると伺っております。こういった不正商品の根絶のためには、まずもって我が国の法改正、そしてまた我が国みずからがみずからの姿勢を律するということが前提であることは言うまでもありませんが、こういった海外で発生する不良製品に対してこの法案の改正をめぐってどういった点まで波及効果があるのか、あるいはまたそれは別の視点から国際的なレベルとしてどういった形で対応するのか、ここら辺について答弁をしていただきたいと思います。
#20
○政府委員(熊野英昭君) ただいま藁科先生御指摘のように、我が国の商品のデザインの水準でありますとか、技術の水準でありますとか、あるいはブランドそのもののイメージ等々大幅に向上をしてきておりますので、そういうことを背景といたしまして、近年我が国の商品があるいはブランドが海外の企業によって模倣をされたり盗用されるといったふうな事例が出てきていることは事実でございます。
 この法案は日本の国内法でございますから、外国における不正商品を対象とするものではございません。ただ、模倣商品の輸入行為、外国で日本の商品を模倣した商品をつくりまして、それが本邦に対して輸入行為が行われる場合には、これは不正競争行為としてとらえているところでございます。したがいまして、例えばどこかの外国で製造された模倣商品が日本に輸入されるような場合には差しとめを請求することが可能となっているところでございます。
 いずれにいたしましても、御指摘のような不正間品の防止を含めまして、知的財産の侵害に対しましては、やはり第一義的にはその知的財産権を持っている人がみずからの判断によりましていろいろな対処をしていただくことが基本であろうと思います。したがって、海外における不正商品を防止するためには、海外、例えば輸出先の国であるとか、あるいはそういう模倣商品をつくる人がいるような国における商標権などをできるだけ確保していただいて、権利行使を行うことが基本になるのではないかというふうに考えるわけであります。
 しかしながら、御指摘のようにいわゆる発展途上国におきます不正商品の防止につきましては、先ほど申し上げましたけれども、知的財産保護に関する制度をやはりベースとして整備していただく必要があるわけであります。あるいは適正な運用が行われる必要もございます。さらに、その背景として国民意識の向上といったふうなことも必要なわけであります。
 そういう意味では、単に民間の企業一人一人が主体的な努力をするだけでは実際上問題が解決しにくいことも事実でございますから、政府といたしましても、不正商品問題の実態はできるだけ詳細に把握するよう努力するとともに、そういう問題が発生するような国でありますとか、あるいはそういうものが流通しているような国の政府に対しまして、そういう不正商品の取り締まりについて動いてくれるように要請をするとか、先ほど来申しておりますように制度の整備のために日本としても協力を行うというふうな格好で整備を進めていただくといったふうなことにも積極的に取り組んでいく必要があろうと思います。
 そういう観点から、今後とも不正商品の防止に努めてまいりたいと考えておりますので、御理解を賜りたいと思います。
#21
○藁科滿治君 それでは、少し観点を変えまして、消費者の保護の立場から若干質問をしたいと思います。本法案は、事業者に対する自律的公正な競争秩序を確立、維持しよう、こういう趣旨のものでありますから、消費者の保護を直接の目的とはしていない、こういう点は私どもも一定の認識を持っておるわけでございます。しかし、実際問題としまして、不正競争防止法によって規制の対象とされている行為のうち、例えば商品やサービスの質、内容等を誤認させるような行為、こういった問題については最終的に消費者にも損害をもたらす場合が多いわけでございます。
 そこで、消費者保護の観点からその問題についてどのように考えておられるのか、その点をまず第一に伺っておきます。
#22
○政府委員(熊野英昭君) 不正競争防止法は、ただいま委員も御指摘のとおり競争事業者による民事的な措置を通じまして公正な競争秩序を確立しようというのが法のねらいでございます。そういう意味で、消費者の保護を直接の目的とはしておりません。しかしながら、公正な競争秩序が確立されますことによって間接的には公正な競争環境ができるということは消費者にも資するわけでありますから、消費者保護にも間接的に資することになるのは当然であろうと考えております。
 さらに、不正競争行為として第二条においていろいろな類型を挙げているわけでありますけれども、そのうちの特に社会的な悪性の強い一定の類型に対しましては、これは第十三条で規定をしておるところでございますけれども、刑事罰を適用するという形で消費者保護の観点も加味しているところでございます。
 他方、我が国では消費者保護の観点からは実は別途のいろいろな法律もございまして、特に表示を中心といたしました景品表示法があるわけであります。さらに、個別の業法、例えば宅地建物取引業法でありますとか、旅行業法、訪問販売法、薬事法、食品衛生法、家庭用品品質表示法等々いろいろな個別の立法がございまして、消費者保護の観点からも広範な規制が図られておるところでございます。あるいは誤認惹起行為によって取引関係に入った消費者を救済する規定といたしましては、一般的に民法の規定もあるわけでありますし、さらには特別法といたしまして割賦販売法とか訪問販売法におきまして、一定期間内での契約の申し込みの撤回等を可能とするいわゆるクーリングオフの制度が規定されておるところは御案内のとおりだろうと思います。
 こういった消費者保護を目的とする各法律が存在しておりますので、この事業者間の公正な競争を確保するという我が国の不正競争防止法の基本的な目的を変えてまで直接に消費者保護を目的とするような規定を設ける必要は乏しいのではないかということで、実は最初大臣から御答弁申し上げましたように、本法の改正案を作成する過程では大変いろんな熱心な議論を産構審において行っていただきまして、その産業構造審議会の結論を受けて、本法のような改正案の内容を提案させていただいたわけでございます。
#23
○藁科滿治君 あわせて、景品表示法による規制は消費者が直接行使できないわけでありまして、そういう面では必ずしも機動的、即応的な保護が図られない、こういうふうに考えるわけでございますが、不当表示に関する最近の景品表示法の運用実態、こういうことについてわかる範囲で少し紹介をしていただきたいと思います。
#24
○政府委員(植松勲君) 藁科委員の質問に私からお答えさせていただきます。
 事業者が行う広告表示は、一般消費者が商品または役務を選択する際の重要な情報となることから、公正取引委員会としまして従来から不当表示事案については厳正に対処してきておるところでございます。景品表示法に基づきます平成四年度における不当表示事件の処理についてお答え申し上げますと、排除命令が十件出ております。三年度、前年度では四件ございました。それから、警告等によりまして是正を講じたものが五百十二件ございます。前年度、平成三年度は三百九十九件でございました。排除命令、警告等によりまして、合わせて平成四年度におきましては五百二十二件につきまして是正措置を講じておるところでございます。
 また、都道府県におきまして景品表示法の権限の一部が委任されておりまして、平成四年度、これはまだ十二月までの数字しか集計がなされておりませんけれども、平成四年四月から十二月までの九カ月におきまして二千三十件、前年同期千九百二十九件でございますが、二千三十件につきまして都道府県におきまして表示に関して是正措置をとっていただいております。
#25
○藁科滿治君 一般条項との関係について、少し質問をさせていただきます。
 本法案は、不正競争行為を限定的に列挙している、そういう面では社会通念上の不正行為であると目される行為であっても列挙されていなければその行為類型には該当しない、こういうことになるわけでありまして、限定列挙主義のもとで新たな不正競争行為が発生した場合に迅速な対応がとれないおそれがあるのではないかと危惧されるわけでございますが、こういう点について今後の課題という面も含めてでございますが、どのように考えておられるか。
#26
○政府委員(熊野英昭君) 一般条項を導入することにつきましては、産業構造審議会において活発な議論をしたところでございます。積極論、消極論両方ございます。産業構造審議会の委員の中にはたくさんの法律の専門家に入っていただいておりまして、弁護士それから裁判所の代表の方、法務省の代表の方、それから学者、あるいは実務における法律を専門としている方々等で、いろいろな実態を含め、あるいは法律論を含め議論をされたところでございます。
 若干その議論の要旨を御紹介させていただきますと、ただいま委員御指摘の一般条項の導入についての積極論については、要約すると三点あったと思います。
 第一は、経済社会の変化に応じて発生する新しい不正競争の類型に一般条項があった方が迅速に対応できるんではないかというのが第一点の積極論の根拠でございます。それから第二点は、ドイツとかスイスといったところでは実は不正競争防止法に一般条項を有しているじゃないか。そういう意味で比較法的な観点からも一般条項を導入した方がいいんではないか、こういうのが第二点の御議論。それから第三点は、パリ条約においても、若干細かくなりますけれども、第十条の二の(2)におきまして「工業上又は商業上の公正な慣習に反するすべての競争行為は、不正競争行為を構成する。」というふうに書いてありますので、その趣旨を実現するためには一般条項の導入が適当なのではないかというふうな御議論でありました。
 他方、一般条項を導入することについての消極論を申し上げますと、ただいま申し上げましたような積極論に対するそれぞれ反論になるわけでありますけれども、一般条項の要件というのは結局のところ、一般条項でございますから極めて抽象的にならざるを得ないわけであります。そういう意味におきまして、抽象的であるということは、事業活動を行う人から見ますとどういうものが不正競争になるかということについて予測ができない、予測性を著しく害するわけであります。そういう意味で、正当な事業活動をも萎縮させるおそれが大変大きいんではないかというのが第一点でございます。
 それから第二点は、比較法的な観点を申し上げましたけれども、実は一般条項を置いておりますドイツにおきましては不法行為法そのものにおいては実は差しとめ請求が認められているわけであります。他方、我が国の民法七百九条は、原則として差しとめ請求権を認めてないわけであります、そもそも民法七百九条の不法行為。したがいまして、ドイツの法体系と我が国の法体系は実は全く違うわけでありますから、ただいま申し上げましたように不法行為法のもとにおいて差しとめ請求を原則認めないという体系になっている我が国の法制下において、不法行為法の特別法でありますこの不正競争防止法において一般条項を置くことはドイツの事情とは異にするんではないかと、大変有力な議論があったわけであります。
 それから第三点は、これまで不正競争を個別に類型化してそれぞれ要件を明確にして対応を図った後において、不正競争として想定すべきものは何かということになると明確ではなくなるわけでありますから、むしろ社会通念上これはもう不正競争であるということで法律の中に明確に規定して、それを差しとめ請求権でありますとかそういう民事的な請求権を与えた方がいいというコンセンサスが得られれば、その都度法律に取り上げていけばいいではないか、それでまた十分対応できるではないか、迅速にやっていきさえすればいいんだからということであったわけであります。
 以上のような議論の結果といたしまして、産業構造審議会が昨年暮れに出しました中間答申におきましては、当面一般条項を取り入れずに、今後ともそういうことを一生懸命勉強はしていく必要があるだろう。あるいは、先ほど来申し上げておりますように、新たな不正競争行為として類型化することが適当であるという社会的なコンセンサスが得られたらいち早くそれを法改正という形で取り入れていくことの方が適当であるということで、今回のような対応をさせていただいた次第でございます。
#27
○藁科滿治君 最後に。この法案はいずれにしましても画期的な改定というふうに考えておりますので、ぜひ実効を上げるように積極的な運営面の努力をしていただきたいということと、それから一方で国際的な動向に照らした場合にやや後追い的な域を出ていないという面もあるわけでございますから、ぜひ今後内外の情勢、推移に見合って機動的に見直しをしていただきたい、こういうふうに考えているわけでございますが、この点についていかがでしょうか。
#28
○政府委員(熊野英昭君) 本法案をお認めいただきました暁には、先ほど来御答弁でも累次申し上げましたとおりその運用について十分なマニュアルをつくったりあるいは説明会を開催したりしまして、広く中小企業の方々も含めて、この法案の立法の経緯でありますとか趣旨でありますとかあるいは使い方と申しますか、そういった面について易しく理解をしていただくようにできるだけ努力をしてまいりたいと思っております。
 また、世界の流れにおくれないようにという御指摘でございます。その御指摘を外しまして、いろいろ世界の動きにつきましても、できるだけ日本といたしましても機動的に対応すると同時に、国内の、先ほど来申し上げておりますように不正競争の新たな類型ができたようなときには、いち早く改正をお願いしてまた対応を図っていきたいというふうに考えておりますので、御理解をちょうだいしたいと思います。
#29
○藁科滿治君 若干時間を残しておりますが、以上で私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
#30
○村田誠醇君 お尋ねをいたします。
 不正商品問題というのは、我が国が世界経済の中において工場と言われるくらい製品の供給をダントツにしているわけでございますし、最近の貿易の実態を見てみますと、物の取引よりもサービスの分野における取引というのが随分伸びてきておる、そういう意味で知的所有権に絡む問題というのは大変重要性を増してきたわけでございます。
 そして、それを放置しておきますとどういう影響を与えるかといえば、これはもう既に御存じのとおり生産者に対して販売や収入、雇用の減少、あるいはそういう不正行為を取り締まるための時間と費用が片一方ではかかってくる。もう一方においては、消費者に対しても影響が出てくる。つまり、品質や安全性などの不確実な商品が出てくる。それと同時に、欠陥品が出てきた場合に取りかえをお願いしたり修理をお願いしたら、実は自分のところの商品じゃないから嫌だと、こういうことで消費者が迷惑をこうむるということが起こってくるわけでございます。
 それで、どこに聞いてもこういう不正商品の取引について、表現が悪いんですが、アングラ的行為であるのでどのくらいやっているかということについてはだれもわからない。取り締まりの結果出てきたものについてはわかるんですけれども、そういう意味では非常に水面下に隠れていてよくわかりにくい部分が多い、こういうことでございます。それに対して、今回の法律をもって不正競争の防止という観点からこういう問題にメスを入れていこうということでございいす。
 そこで、本法律案の提案理由を読ませていただきますと、産業構造審議会の中間答申の「不正競争防止法の見直しの方向」を踏まえた内容、こういうことになっているんですね。それで、産業構造審議会の「不正競争防止法の見直しの方向」というのをいただいて読ませていただきましたら、こう書いてあるわけでございます。
 「見直しの必要性」、(1)、(2)、(3)、(4)という四つの項目のうち、三番目に「世界知的所有権機関において不正競争防止の国際的なハーモナイゼーションを目指し、」、真ん中を省略しますが、「我が国の不正競争防止に係る制度を国際的に見てもバランスのとれたものにしておく必要がある。」と。それから、続いて書いてございますが、「見直しに当たっての基本的視点」ということで、「知的財産法をはじめとするわが国法体系の中における不正競争防止法の位置付けという観点」と、先ほど言った世界知的所有権機関で「検討が進められつつあるモデル法に盛り込まれるべき内容をも念頭に置き、」改正を行った、ここがポイントだと思うんです。
 そうしますと、先ほど藁科委員が言われたように世界的にガットで交渉している中身と今回の法改正とは絡んでいるんだろうと思うんですが、その関連性についてひとつ御説明をいただきたいと思います。
#31
○政府委員(熊野英昭君) ただいま委員からいろいろな点の御指摘があったのでありますけれども、第一に、まずガットのウルグアイ・ラウンドで現在検討しているものとの関係はどうかということについて申し上げますと、ガットのウルグアイ・ラウンドにおきましては、先ほど藁科委員の御質問にもお答え申し上げましたように、TRIP協定の合意案ができておるところでございます。この合意案については、知的財産権の問題についていろいろなことを言っております。特許等工業所有権の問題でありますとか、著作権の問題でありますとか、半導体チップの問題でありますとかいろいろ言っておりますけれども、本法の不正競争防止法との関係で申し上げますと、いわゆる営業秘密の保護について指摘があるわけであります。そういう意味におきまして、実は営業秘密の保護につきましては前回の改正においてこの保護を図るような改正をお願いいたしましたので、既に対応ができているということでございます。
 詳しく申し上げますと、TRIPの合意案は三十九条でいろいろそういうことを書いております。ちょっと細かくなるんで省略いたしますけれども、その中には、例えば営業秘密の要件が秘密性、有用性、秘密管理性等書かれておりますけれども、これは今回の法律で申し上げますと、「定義」の中に営業秘密の定義として明確に本法に書いているところでございます。
 それから、いわゆるWIPOにおけるハーモナイゼーションということがありました。これは、WIPOにおいていろいろなモデル法に取り込まれるべき内容ということで議論が行われている段階でありまして、先ほど申し上げましたように最終的にどうなるかということは現段階ではまだ必ずしも明らかではございません。既に、アメリカとかヨーロッパ各国、それぞれの国において判例法あるいは成文法によって対応されているような内容を念頭に置きながら、他方そういうものと当然WIPOにおけるモデル法は大変重要な関連があるわけでありますから、これらと十分に見合って国際的な水準において十分対応できるような内容をつくるということで本法案の改正をお願いしたわけであります。
#32
○村田誠醇君 そうすると、さきの改正で営業秘密等の条項が入った。これは、今ガットでやっている交渉、合意というわけじゃないですけれども、ダンケル・ペーパーの中に書かれてはいますけれども、まだ国際的に完全な合意になっていないんですが、通産省としては先般の改正で先取りをした、こういうふうに理解させていただきたいと思うんです。
 そうしますと、このガットでやっている現在の交渉の一部分だけを極めて先駆的に先取りしたような形になっておるんですけれども、ガットのTRIPの中身を、ダンケル・ペーパーの中身をずっと読んでみますと、大変複雑多岐にわたっているわけです。しかも、それに対応する省庁、法律というのも、これもまた主管庁がばらばらになっているわけでございます。一例を挙げれば、著作権が文化庁、商標権は通産省、地理的表示に至っては大蔵省も絡んでくる。あるいは特許権の一部に関しては農水省も絡んでくるし、薬事法に至っては厚生省まで絡んでくる。国際的に今一つの合意をしようかという交渉をしている中身を見てみますと、要するに日本国内に入ってくると省庁ごとの権限に分かれてくるわけでございます。
 そうすると、私どもは今回のこのガットの中の位置づけ、あるいは藁科委員も言われたようにWIPOとの関係での位置づけをして質問しているわけですけれども、そういう前提に立ったときに国内の関係省庁、今言いましたように文化庁、大蔵省、厚生省、農水省、こういうところのそれぞれ持っている法律、あるいは通産省の持っている特許法、商標法、意匠法、こういうものとの関係の中で一体この法律というのはどういう位置づけをされているのか、あるいは今回の改正をするときに他の法律との見比べをしながらどういう整合性をとったのか、ひとつちょっと御説明をいただきたいと思います。
#33
○政府委員(熊野英昭君) まず、一般的に法律の改正案を国会に提案いたします際には内閣として提出するわけでありますから、例えば通産省の中はもちろんでありますけれども、各省にいろんな法体系との関連がございますから十分な協議を行いながら、仮に調整すべきことがあれば調整をするというのは当然の一般的な原則でございます。
 それから、知的財産権の問題というのは、現代においては技術やいろんなものが進んでまいりますから、昔と比べて大変広範な経済活動あるいは経済活動のみならず文化活動等々に広がりを持ってくるわけであります。したがって、そういう意味で御指摘のように例えば著作権法であれば文部省、文化庁が所掌しております。ただ、私どももいろいろその運用については、単に不正競争防止法という観点のみならず、いわゆる工業所有権法等との兼ね合いについても議論を常々しておりますし、御指摘のいろんなところで知的財産権の保護に関する対応はしていくということは当然でございます。
 それから、TRIPとの関連について申し上げますと、TRIPの中には御指摘のようにいろんな項目がありますけれども、本法との関係で言えば営業秘密の保護というところが本法との関連が出てくるわけであります。
 そこで、知的財産を保護するいろいろな法律があるではないかということでございますけれども、御指摘のように不正競争防止法も特許法等の知的財産権法とともに知的財産保護の一翼を担うものであります。何がどういうふうに違うかということを申し上げますと、特許法等の知的財産権法は実は客体に権利を付与するという方法によって知的財産の保護を図っているわけであります。それに対しまして、不正競争防止法というのは保護されるべき一定の状態がある、そういうことを前提に行為に着目して規制を行う。しかも、民事的な請求権をその競争者に与えるという格好で基本的には保護を与えようとしているものでありますから、いわば知的財産の保護を行うという大きな意味においては目標を一にしておりますけれども、互いに相補って別の視点から知的財産の保護を図ろうとするものでございます。
 こういうふうに、それぞれ互いに独立をした視点から保護を与えていくということでございますので、それぞれいろんな法律は十分に整合性を持って成立しているというふうに御理解を賜ればと思います。
#34
○村田誠醇君 かなり技術的なものなので、私の頭の中も多少混乱していますので整理のために教えていただきたいんですが、この法律で言っている不正競争という行為に着目してやる部分と、国際的に論議になっている不正商品を取り締まるというのとでは明らかに違うと思うんです。つまり、ここで言っている不正競争の対象となるものですね。権利が登録されていようがされていまいが、周知のものであればこの法律で不正競争に該当する罰も出てくるんです。
 具体的に聞きますと、それでは特許法に侵害したものを販売して、国内でもちろんそれを没収することもできますし法的な対抗手段をとることもできますが、そういったものもしくは今はやっているICの模倣品を使った商品が出てきた場合に、それは不正競争の概念に該当するんですか。そこのところがちょっとよくわからないんですよ。権利を侵害した商品であることは事実なんだけれども、要するに知的所有権侵害商品であることはわかるんだけれども、その商品そのものが不正競争に該当するのかどうかということなんです。ちょっとここら辺が私の頭の中ではよくわからないんで説明をしていただきたい。
#35
○政府委員(熊野英昭君) 御質問の趣旨は何点があったと思いますけれども、まずいわゆる不正商品の防止につきましては、工業所有権が特に重要な役割を果たすと思います。その場合、工業所有権は各国ごとに独立にあるわけでありますから、それぞれの外国において保護を得ようとすればその国の権利を取得することが当然に原則となるわけであります。したがって、例えば海外において日本の企業が、物まね商品をつくってそこで売られるということを防止しようとすれば、そこで商標権を確保する、そして権利行使を行うということが基本になるわけであります。
 ただ、そう言ってもあれでございますから、実はそういう意味でガットでありますとかWIPOでありますとかというところで国際的にできるだけそういう知的財産の保護を調和させようという努力が先進国、後進国を含めて一方でなされているわけであります。あるいは我が国独自としても、先ほども御説明申し上げましたようにそういう面でもいろいろ技術的な協力とか、あるいはそういう仕組みについてつくることを御協力申し上げたり、運用について例えば審査の方法等について研修を行うために専門家を派遣したり、あるいは研修生の受け入れをするということもやっているわけであります。他方、ちゃんとそういうものを取り締まってくださいよというようなことを二国間の協議等の場で相手国にお願いをすることもやっているわけであります。
 それから、いろんな法律があってどうかということでございますけれども、これはそれぞれの法目的でそれから手段でやっておりますから、その一件一件についてのケースごとの判断ではありますけれども、一般論を申し上げますと重畳的に適用されるということでございます。だから、ある者が商標法とそれから本法の対象として保護を求めることは、例えば商標権を持っているという状態でありましたら商標法の問題として対応もできますし、他方、不正競争防止法の不正競争の行為類型に該当すると考えれば、それは例えば差しとめ請求なり損害賠償という民事的な請求を裁判所に対して行うという格好で保護を求めることもあり得るわけであります。
#36
○村田誠醇君 現行法の第六条で工業所有権の適用除外を書いてあるわけですね。特許権、実用新案権以下商標権に至るまで適用除外だと。現行法の不正競争に該当する部分については特許法や商標法の方が優先するんだ、これはこういうふうに読めるんですが、そうするとガットのTRIPの知的所有権でこうやって見てみると、残っているのは地理的表示、日本語で言えば原産地表示の問題と営業秘密の部分だけが適用されるというふうに読めるんです。
 しかも、もっとわからないのは、改正法では工業所有権のうち商標法のみ引用されているんですね。商標法に基づく違反行為というのが出ているんですけれども、他の工業所有権法というのは私無知でどうもよくわからないもので、一体どういう関係にあるのかこれがよくわからないんです。だから端的に言えば、さっき言ったようにICの半導体の模倣品が出てきたときに、これは確かに権利を侵害した商品であることは間違いないんだけれども、それを売ることがこの法律で言う不正競争の概念に入ってくるんでしょうかということなんです。具体論を答えてもらった方が我々にはわかりやすいので、ちょっとそこら辺を教えていただけませんでしょうか。
#37
○政府委員(熊野英昭君) 裁判規範でございますから、個別の具体的なケースに応じてやはり最終的には判断されるということで、抽象的な具体例を御説明するのがなかなか難しいのでまことに申しわけなく思いますけれども、一例として申し上げます。
 不正競争防止法と意匠法という法律がございます。その意匠法の保護との関係がどういうことになるかといいますと、先ほども申し上げましたように法律の複数の規定の要件を満たす場合には、その適用について調整する規定が別途設けられていない限りは重畳的にそれぞれの規定が適用されるというのがまず一般原則でございます。したがって、不正競争防止法と意匠法とそれぞれにおきましてそれぞれの条項の要件を充足するような事態でありましたら、両者を重畳的に適用し得るわけであります。
 例えば、ある一つの商品の形態につきまして意匠登録を受けていれば、本法による保護と意匠法による保護とをどちらでも受けることが可能になり得ると思います。そういうことで、じゃそれをどういうふうにするかというのはその競争者が意匠法で訴える、不正競争防止法で訴える、あるいは両方使って訴える。それは、権利を侵害されたと考える人がそれぞれの判断によってそういうケースについて申し上げますと行えることになるわけであります。
 それから、もう一点御質問になった点は、現行法の第六条におきまして工業所有権の権利行使は通用除外とする旨を規定していたわけでありますけれども、これを削除したのはどういう趣旨がという御質問があったかと思います。これは、実は正当な権利行使が不正競争に該当しないことは当然のことでございます。しかし逆に、現行第六条の規定がありますことによって一切の権利を持っていることが一切の免罪符になるわけでもない。一見、例えば工業所有権の商標権の行使に該当する行為でありましても、それが権利の乱用にわたるような場合はあり得るわけであります。そういう場合には、不正競争に該当することもあり得るということで、実際の裁判の判例上もそういう運用がなされているところでございます。
 おわかりにくいと思いますけれども、例えば商標権を持っているけれども、権利は持っているけれども全く使っていないというケースがあるわけです。片や、商標権は持ってないけれどもずっと使っている、周知されているというケースがあり得るわけであります。そうした場合に、商標権を持っている人が、私は商標権を持っているからあいつはけしからぬというのが、これが権利の乱用になる可能性があるわけであります。こういう場合には、不正競争防止法でその訴えに対しては、自分はもう何十年としてこれでやって天下に周知をされているとかいろんなことで保護を逆に求めることができる。
 そういう意味におきまして、実は現行法第六条はそういう限りで権利の乱用を認めたことはないのは当然の理でありますけれども、実際の裁判例におきましていろいろ先ほど申し上げました問題も出てきているということで、この規定に基づいて抗弁が認められた事例は極めて少なくて、他方、今のように悪意の抗弁の根拠として用いられているケースも多くなって弊害が多くなっているという、産業構造審議会の関係者のいろいろな議論の中でそういう認識が多数を占めました。今回の改正におきましては、工業所有権法各法と不正競争防止法との調整は、権利の行使は乱用にわならない限りは許されるという一般原則にゆだねることの方が適切であるというふうに判断いたしまして、現行法第六条を削除するという提案を行った次第でございます。
#38
○村田誠醇君 そうすると、全体をまだよく理解できていないからあるいは的外れな質問かもしれないんですが、工業所有権の各法を見てみますと、ただ単に特許なら特許権をどうやって付与するかとか期間がいつかというだけじゃなくして、その権利が侵害された場合の救済の方法あるいは損害賠償の項目もその項目の中にみんな入っているわけですね、各法に。その法律と不正競争防止法で書いてある差しとめ損害賠償の請求とは、そうすると訴える者がどっちを使っても構わない。それは裏返して言いますと、この法律が必要としている他の法律によってカバーできない部分はそれじゃどこかというと、さっき言った原産地の表示と営業秘密、これしか残ってこないということになると思うんですね、ダブらないという意味でいけば。そういうふうな理解でよろしいんでしょうか。
#39
○政府委員(熊野英昭君) 先ほども申し上げたところでございますけれども、広い意味で知的財産権を保護するという大目的においてはそれぞれ共通の目的を持っているわけでありますけれども、手段と申しますか、法律の立て方が違うわけでございます。
 片方は、例えば権利を付与してその権利を前提にして保護を図るというのが工業所有権法の法律のあり方。この不正競争防止法というのは、権利があろうとなかろうとそういうことじゃなくて、何か特許権を持っているとかそういうことじゃなくて、一定の事実状態を前提として不正競争行為というのを類型化して、それでそれに対して自分は迷惑をこうむっている、自分の本来持っているものを不正競争で非常に損害を与えられている、官業の利益を害されていると考える人が、この法律に基づいて民事的な請求をできる。民事的な請求というのは差しとめ請求権、そういうことはやめてくれ、販売することはやめてくれというような民事的な差しとめとか、あるいは損害賠償請求を行うことができるというのがこの法律の立て方なわけであります。
 そういう意味におきまして、それぞれの法律において同じ事態が適用される可能性は、先ほど来るる申し上げているようにあり得るわけであります。重畳的に適用されるわけであります。したがって、その人がこの法律でいってもいいし、あるいは両方でやってもいいし、現にこれまでもそういう重畳的に裁判所に訴えられた例はそれなりに存在をしていると思います。そういう意味で保護のやり方が違うわけでありますから、そういうところを御理解賜ればと思います。
 それで、各国によって必ずしも同一ではございませんけれども、そういう民事的な請求によって不正競争行為を保護するというやり方は多くの、例えばアメリカにおきましてはコモンローといわれる判例法に基づいてそういうことが行われておりますし、ドイツやスイスやヨーロッパの国の多くにおいては成文法に基づいて同じような規制、もちろん程度の差とかいろいろありますけれども、行われているわけであります。
#40
○村田誠醇君 時間があったらもう少し後で聞かせていただきます。
 それで、先ほど藁科委員の方からも少し触れられましたけれども、不正商品というのがこのところ国内にいろいろ、国外にも流通しているわけでございますが、少し実態についてお伺いしたいと思います。
 これは、藁科委員も指摘されたように二つに分かれると思うんですが、どこで流通しているかという流通段階の問題と、製造段階がどこであるかということが区別されると思うんです。つまり、我が国国内で製造し我が国国内で流通している場合と、我が国国内でこういう不正商品が製造されてはいるけれども海外で流通している場合と、あるいはその逆で海外で製造されたものが我が国で流通している場合、あるいは海外で製造されたものが海外でしか流通していない場合と、こういう四つのパターンがあると思うんですが、それぞれどのくらい、これはほかの国はデータをとっていないと思いますから、日本の権利者の権利が侵害されている不正商品の実態について、少しお聞きをしたいと思います。
#41
○政府委員(白川進君) 今お尋ねの、正確に権利侵害を受けているものの実態ということは、実は私どもの調査ではございませんが、その御参考の一助になるかと思われますのは、私どもが毎年実施いたしております「デザイン・商標。技術的創作又は著作物に関する模倣実態調査」というものがございます。これは、我が国国内の企業約九千社に対します一種の意識調査でございまして、みずからの持っておる商標、意匠、技術、著作物等について、外国で模倣されたと感じたことがあるかないかということを聞いておる調査でございます。
 そういう前提のもとで今のお尋ねの点を一部お答えいたしますが、これは我が国のものが海外においてまねをされて、それがどのように流通しているかということの実態を調べたものでございます。これは、回答数が九千社に対して四百社で、うち二百社が模倣されたと答えておりますが、いろいろ答えによりまして重複いたしておりますので、合計が合わない点があることはあらかじめお断り申し上げます。
 まず、模倣されたと言われておる相手国でございますが、延べ数でお答えいたしますと六百四十七件でございます。これは一つの件数が複数の国で模倣されているということは二として数えられておりますので、六百四十七件でございます。それで、その国別内訳を申し上げますと、一番多いのが台湾でございまして二百十七件、それから次が韓国で九十七件、以下中国六十九件、香港四十五件、タイ三十三件、その他百八十六件となっております。これは我が国の商標、その他模倣されたものがつくられた製造国の件数でございます。
 次に、それが流通している国についても調べておりまして、これは流通国がさらに重複いたしますために総合計が千三百九十四件となっておりますけれども、その流通ベースで一番多い国が台湾でございまして百五十八件、次が韓国九十七件、以下中国八十二件、アメリカ七十八件、香港七十五件でございます。これは非常に多くの国にまたがっておりまして、その他が九百四件ということで、非常に少数の件数がいろんな国にまたがっているということでございます。
#42
○村田誠醇君 今外々のデータしかないということでございましたから、それはもうしようがありません。
 それで、外でつくって我が国に持ち込まれてくるというケースも当然あるわけでございます。これは恐らくデータをとっているのは大蔵がデータをとっているんだろうと思うんですが、平成四年の六月八日に出ました産業構造審議会の不公正貿易政策・措置調査小委員会のつくりました「不公正貿易報告書」というのがあるわけです。この中に、実におもしろいことが、おもしろいことと言っては語弊があるんですが、こう書かれております。
 知的財産の保護について、「日本の税関における水際規制措置には、TRIP合意案に照らして問題がある。」、現在の水際の規制措置について云々というのがずっと書いてありまして、輸入者にとっても権利者にとっても「適正手続が確保されていない点において不十分である。」、そして最後の結論として、このような我が国の「水際規制措置の抜本的改革を進めることが必要である。」。
 つまり、不正商品が入ってくるのを水際で我が国がとめるために大蔵省が現在やっている措置については不十分であるという指摘がされているんです。これは、当然大蔵省の立場からすればいろいろ異論があるところ、あるいは意見のあるところだと思うんです。初めて言ったので読んではいないんじゃないかと思いますが、この点についてはどういうようなお考えをお持ちなのか、ちょっとお聞かせを願いたいと思います。
#43
○説明員(栃本道夫君) お答えを申し上げます。
 先生御指摘のとおり、水際の取り締まりというのは非常に重要でございまして、私どもも鋭意いろいろ改善を図ってまいらなければならないというふうに考えているわけでございます。
 まず、取り締まりの現状から説明させていただきたいと存じますが、関税定率法の第二十一条の第一項第四号におきまして、商標権、特許権等の知的財産権を侵害する物品は輸入してはならない旨規定されておりまして、税関ではこの規定に基づきまして水際での取り締まりを行っているところでございます。現在、我が国におきまして存在する知的財産権というのは、登録がなされているものだけでも約二百四十万件という大変膨大な数に上っているわけでございますけれども、水際取り締まりの実効を期するために、知的財産権侵害物品に対する輸入差しとめの申し立てという手続を活用すること、それから全国の主要官署におきまして不正商品取り締まりを専門に担当する担当官を配置して勉強させているというふうなことで、いろいろな措置を講じて輸入貨物の重点的な審査、検査を行っているところでございます。
 それで、先ほど御紹介がありましたようにいろいろ侵害物品の認定の手続等につきまして御議論をいただいておったところでございまして、またこの問題につきまして取り扱いの改善を図る必要があるということで、私ども実は不正商品の取り締まりにつきましての通達を改正したところでございます。昨年九月からこれを実施してございます。
 これは、先ほど先生からお話がありましたように、ウルグアイ・ラウンドのTRIPの方でもいろいろな御議論がございますが、そういうものの趣旨もできるだけ生かしながら、この議論をある程度現行法令の範囲内で先取りできるものは先取りしようという考え方でございまして、取り締まりの重点化を図る。それから、特に先ほど御指摘がありましたような認定の手続につきまして、輸入者、権利者、双方の立場が十分反映されるように透明性のある手続を通達で明らかにするということで改正をいたしました。また、侵害物品の処理につきまして、より一層厳格な処理が望まれているというところでございましたので、この侵害物品の処理を厳格化する、こういうような観点で通達を改正したものでございます。
 より具体的にもう少し説明させていただきますと、まず現在の税関におきます水際の取り締まりというのは、現行法令上は基本的には職権に基づきまして税関の方がそういう意味では能動的に取り締まるわけでございますが、何といっても権利者自身から輸入差しとめをしてほしいという御要請のありますものをやはり重点的に取り締まるべきであろうという考え方に立ちまして、輸入差しとめの申し立てをいただいているものを優先的に取り締まるという方針をまず明確にしたという点がございます。
 それから、この知的財産権の侵害物品につきましては、疑義のある物品を発見いたしましてから、これを権利者、輸入者双方に必要に応じいろいろ問い合わせしたり照会したり関係資料をいただいたりというようないろいろな手続がございますが、そういう手続を明確に定めまして、こういう手続でございますよというのを明らかにしたということ。
 それから三番目としまして、侵害物品として認定されたものにつきまして原則没収するという厳格な取り締まりを行うこととしたところでございます。
 また、輸入差しとめとしてどういうものが申し立てをされているかということを一般の方にやはり前もって知っておいていただいて、そのようなものについて輸入がされないように予防するということも非常に重要でございますので、この輸入差しとめの申し立ての内容を公表するというような措置も導入したというようなことで、私ども税関といたしましては侵害物品の一層効果的な水際取り締まりに努めてまいっているところでございます。
 その結果、著名なブランド品のコピー商品を主体といたしました侵害物品の輸入の差しとめ件数でございますが、昭和六十一年には百件だったわけでございますが、平成元年には一千件、それから平成三年には約一千三百件というふうに輸入差しとめ件数が増加してまいりました。逆に平成四年には、先ほど申し上げました通達改正を通じまして取り締まりを強化し、それを私どもとしては精いっぱいPRもさせていただいたというようなことで、そういったことの抑止効果、特に原則没収という取り扱いを世の中に明らかにさせていただいたというようなことがいろいろ効果があったと思っておるんですが、そういうことで輸入者の侵害物品に対する意識というものも高まってまいったようでございまして、差しとめ件数が七百六十件というようなものにとどまっているところでございます。
 我が国におきます知的財産権の侵害物品の取り締まり実績というのは……
#44
○村田誠醇君 もうわかりましたからいいです。詳しくはまた後で聞きますから、結構でございます。
 それでは、今言ったこの答申を受けた通産省としては、ここに明記された考え方というのはどのように評価なさるのか。
#45
○政府委員(岡松壯三郎君) TRIPで決められております、これはまだ成立していないわけでございますが、紛争処理手続が規定されておりまして、これに基づきまして必要な紛争処理手続を今後定めていくということで対応していくことになるわけでございます。
 具体的には、現行の紛争処理手続を強化することあるいは一方的な措置の禁止あるいは対日紛争処理手続、クロスリクリエーションと申しますのは同一分野以外にも最終的には制裁を科すことができるということでございますが、そういうことも含めまして今後TRIPがまとまりましたところでさらに具体的な法整備が行われていくということになっていくわけでございます。
#46
○村田誠醇君 水際措置に関しては主として大蔵だと思うんですが、一部通産にも法律の規定があるので改めてお尋ねしたいんですが、この不正競争防止法と輸出入取引法との関係でございます。
 具体的には、取引法の第二条二号、これが不正競争防止法の第一条一項三号と同一の規定と思われる、まあ同一というのは一言一句じゃなくて同じような趣旨の規定があるんではないか。あるいは取引法の第二条四号と不正競争防止法の第一条一項五号、これが似ている、似ているといいますか同じような規定が置かれているんではないかと指摘されているわけでございますが、この法律と一体どういう関係になるのか。私も不正競争防止法を読みましてびっくりしたのは、輸出する場合にもこの法律の適用を受けるんですね。だから、輸出入取引法もこれも同じでございまして適用を受ける。そうすると、二重にダブって適用されるのか、あるいは独立してこういう法律をつくった何らかの意味があるのか、ちょっと具体的にお聞きをしたいと思います。
#47
○政府委員(熊野英昭君) 先ほど来申し上げておりますように、法律はいろいろな観点からそれぞれの法律がつくられているわけであります。したがって、工業所有権法のように権利を付与してその権利を保護するという形の法律もございますし、ただいま御指摘のありました輸取法とか外為法とか行政的な観点から規制を行っているものもあります。それから、今回御提案を申し上げております不正競争防止法のように事業者間の公正な競争云々で不正競争の防止及び不正競争にかかわる損害賠償に関する措置等を講ずる、要するに裏業者間で民事的な請求権を付与することによってそういう事態を防止しよう、あるいは営業の利益を侵害されたら損害を回復しよう、こういう体系になっているものもあるわけであります。それぞれがそれぞれの法律において、同じ事態が重畳的。に適用されることは先ほど来申し上げているように実はあり得るわけであります。
 したがって、みずから権利を侵害されたと思う人は、権利を持っている場合には権法に基づいて訴えることもできますし、あるいは権利を持っていても不正競争防止法、あるいは権利を持っていなくても一定の事実状態が自分にあると思えばそれで訴えることもできますし、そういう体系になっているということを御理解賜れればと思います。
 輸取法その他については貿易局の方から御答弁いたします。
#48
○政府委員(白川進君) 今御指摘のございました輸出入取引法でございますが、委員御指摘のとおり第三条に不公正な輸出取引の禁止、第四条にその違反者に対する制裁の規定がございます。
 この不公正な輸出取引と申しますのは、外国の工業所有権等の侵害、それも含まれますけれどもそれのみを想定しているわけではございませんでして、これの過去の適用例の一つは、随分前の話でございますけれども、一定の貨物を船積みするということで顧客に対して実は中身が石であった、石を詰めて相手に届けたということで、これは当時日本の貿易を大いに振興しなければいけない時代に、日本の輸出貿易の信用を著しく失墜するということで戒告をした例もございます。
 したがいまして、この法規制の目的といいますか、これは我が国の輸出についての国際的な信用を失墜せしめない、そういう観点から置かれた規定でございます。
#49
○政府委員(岡松壯三郎君) 申しわけございません。先ほどの水際措置についてちょっと補足説明をさせていただきます。
 TRIP上の義務として新たに設けるものとして三つの点がございまして、申し立て権を付与しなければならないという点が一つ、それから担保制度の導入という問題がございまして担保を提供させて通関させなければならないという点、それから適正な手続ということで、十日間差しとめるけれどもその間に仮処分がない限り通関させる等の適正手続の保証というものもあわせて義務として決められているということを申し添えさせていただきます。ありがとうございました。
#50
○村田誠醇君 ありがとうございました。
 それでは、本題の大蔵省の方にお聞きしたいんですが、関税定率法第二十一条で言う輸入禁制品、これは限定列挙になっているわけですね。「特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権又は著作隣接権を侵害する物品」ということは、これ以外の知的所有権を侵害する物品、日本でいきますと先ほど言っています半導体集積回路配置利用権というんですか、それから不正競争防止法で言っている地理的表示を偽ったもの、これは税関の立場としてはチェックすることができない、こういうふうに理解してよろしいんでしょうか。
#51
○説明員(栃本道夫君) お答え申し上げます。
 私どもの水際取り締まりは、輸入禁制品を最重点として取り締まりをしておりますことは先生御指摘のとおりでございます。このほかに、私どもにおきましては、輸出入をしようとする貨物が関税関係の法令以外の法令によりまして当該貨物の輸出入について許可とか承認などを要するような貨物である場合に、関税法第七十条というのがございまして、この規定に基づきまして当該許可とか承認などを受けていることの確認を行う、また当該確認がなされない貨物については輸出入の許可をしないというような取り扱いになっているところでございます。先ほどの輸出入取引法もそういう法令の一つでございますので、私どもとしては水際におきまして適正に処理をしているところでございます。
#52
○村田誠醇君 先ほどの通産省とやったやつじゃないんですよ。許可とか確認を受けているもので不正な商品なんていうのはないわけですね、これは。明らかに法律に違反することを承知して、表現は悪いんですけれどもつくっている商品ですから、相手方の許可をとっているなんということは通常考えられないわけです。したがって、許可も確認も必要のない不法なもの、海賊版、海賊商品、小正商品が、どういう名目かは別にしまして通関手続を経て通ってしまう、膨大な部分を扱っていますからやむを得ないんですけれども、法律上税関が輸入禁制がとれる品物、要するに法律上知的所有権上制限できる物品というのはこの工業所有権法にわずかに書いてあるこの部分だけという理解でいいんですね。つまり、もっと逆の表現で言えば、不正競争防止法で国内では販売することのできない商品であっても、その一部分であるけれども税関上はチェックできないで入ってくる物品も分類をしていくと出てくる、今の税関の法律の規制その他ではどうしてもその部分が出てくるという理解でよろしいんですか。
#53
○説明員(栃本道夫君) 先ほど御説明が足りなかったかと存じますので、詳しく御説明させていただきたいと思います。
 最も典型的な他法令の関係というのは医薬品あるいは食料品のようなものでございますけれども、一般的に申しまして関税関係法令以外の法令の規定によりまして輸出または輸入に関しまして許可、承認等を受ける必要のあるものにつきまして、税関はこの関税法第七十条の規定に基づき輸出入申告または税関検査の際にその旨を確認するなど輸出入通関業務を適正に処理しているところでございます。この関税法第七十条の規定によりますと、貨物を輸出または輸入しようとする者に、関税関係法令以外の規定によりまして輸出または輸入に関し許可、承認等を要する貨物について、その許可、承認等を受けていることを税関に対して証明するよう義務を課しているところでございます。
 それから、もう一つの類型でございますが、輸出または輸入に関し検査の完了、つまり他の省庁におかれます必要な検査の完了とかそれから一定の条件を具備していなければならないというのがあるわけでございますが、そういう条件の具備を要する貨物につきましては、そういう検査の完了とか条件の具備を税関に対して輸入者の方が証明をし、その確認を受けるという義務を課しているわけでございます。税関は、この証明がなされていないものまたは確認を受けられない貨物に対しましては、関税法第七十条におきまして輸出または輸入の許可をしないという規定になっているところでございます。
 したがいまして、先生が今御指摘になりましたように知的所有権の中で列挙されていないようなものにつきましても、関税関係法令以外の他の法令におきます輸出輸入の規制ということで水際において適正に対処してまいっているところでございます。
#54
○村田誠醇君 それでは、輸入禁制品とは違う扱いになるわけですね。先ほど言われた通達では、そういう商品が見つかったときには、これは没収なんですか輸出国に送り戻しする措置をとるんですか。どっちなんですか。
#55
○説明員(栃本道夫君) 先ほど申し上げましたように、私どもが水際取り締まりの重点としておりますのは何といっても輸入禁制品でございまして、これをまずもって最大限抑止しなければならないということで、極めて限られた職員数で精いっぱいやっているところでございます。そのような中で、侵害物品と認定されたものにつきましては原則没収という取り扱いをしているところでございますが、例外的に自発的に廃棄をするとかいろいろなケースがございますので、そういうものはその対応に応じました処理をしているというところでございます。他法令の関係につきましては、関税定率法の第二十一条にございます規定は直接働きませんので、先ほども申し上げました関税法第七十条の範囲で私どもは輸出輸入を許可しないという扱いをしているというところでございます。
 その後、その物品がどう処理されるかということになりますと、一般論として申し上げれば、例えば輸入ができないものにつきましては再び輸出した先の方へ戻すとか、あるいはもう放棄してしまって処分してくださいというようなことになるとか、そういう例が多いというふうに御理解をいただければと思います。
#56
○村田誠醇君 余りやってもしょうがないですが、従来の行政当局の見解とは少し違うと思うんです。
 関税定率法二十一条で規定してないものについては、そしてあなたが言っているように関税法七十条で許可も確認も要らない商品であれば、これは税関当局としては何もできないということです。不法行為を幇助しているという、そういうことじゃないですよ。あなた方に取り締まる権限がないんだ、だから通過してしまって国内で損害が発生した場合には国内法で対応できるけれども、水際でストップをかけるという点については法律の授権の範囲から外れているはずなんです。だから通っちゃうんです、自動的に。それは、あなた方を責めているんじゃなくて、法律上問題があると言っているんです。だから、通産省の報告書に言っている、日本の水際措置に一部不十分な点があるというのはそのことを含めて言っているんだと思うんです。
 それからもう一つお聞きをしたい。これは、先ほど言っていたように取り締まりをするのは工業所有権の部分でもいいですが、税関長がみずからの判断で行うんだ。真正な権利者がこういう商品が入ってきたので差しとめてくださいというのは情報の一つであって、極端な表現をしますと、取り締まるか否かというのは税関が自主的に決めることなんです。法律に基づいて真正な権利者から請求があったからそれをとめるんじゃなくして、税関長の判断でとめるんだということでございますと、これは真正な権利者の保護という概念はこの関税定率法の中にはまるっきり欠落しているんです。真正な権利者の保護という観点は一切入ってない。あくまでも行政当局の権限でこれをとめるんだということになるわけでございますが、その点についてのいろんな批判が出ていると思うんですけれども、行政当局側の見解はどうでございましょうか。
#57
○説明員(栃本道夫君) 今の点は、実は今回の通達改正の上で非常に大切なポイントとして私ども問題にいたしまして、いろいろ勉強したところでございます。
 先生が御指摘されたとおりでございまして、現在の関税定率法の規定というのは、要するに知的財産権の侵害物品の輸入を許すということは公益を損なうものであるということで、公益を保護するという観点から税関がその職権によって取り締まりをするという法体系になっているということでございます。ただ、もちろんその水際取り締まりの結果としましてそういう不正商品の侵害が食いとめられますので、そういう意味で反射的に権利者の方も保護が受けられる、こういう構造になっている、まさに先生がおっしゃるとおりでございます。
 しかしながら、私どもはこの膨大な、先ほどもおっしゃいましたように二百三十万件を超える知的財産権につきましてどういう取り締まりの仕方が一番いいかというときに、やはり権利者自身が、侵害物品が入ってくるおそれがあるのでそういうものについて輸入差しとめをしてくださいという申し立てをしていただいて、そういうものを重点的に取り締まるということが大切ですし、その前提としましては、輸入差しとめ申し立てをむしろ積極的に出していただくということが重要なことでございます。
 私どもは、今回の通達改正に当たりましてはその点を最も実は重要視いたしまして、輸入差しとめ申し立てというものをどういう手続でやったらいいのか、どういう様式を使ってやったらいいのか、そういうことも詳しく通達でお示しをしておりまして、ぜひとも積極的に輸入差しとめの申し立てをしていただきますようにお願いしております。税関としましては、職権でいろいろなものを取り締まらなければなりませんが、特にこの権利者から輸入差しとめの申し立てをいただいておるものを最重点にして取り締まるという方針を明らかにし、また鋭意そういうふうに努めているところでございます。
#58
○村田誠醇君 最重点に取り締まっていただくのは結構なんですが、国際的には今進めているガットでは、商標権及び著作権の侵害物品の輸入差しとめ申し立て制度の整備は義務づけられる、そして他の知的所有権に関するものについては、これは義務ではないけれどもなるべく制度としてつくりなさい。つまり、税関の権限でとめられるというものと輸入差しとめという形でとめられるという制度と二つあるんですね。国際的に今論議して、これで大体いこうじゃないかと言われているのがこの二つです。
 ところが、日本の場合にはこの輸入差しとめ申し立てというのは、あくまでも税関に自分の権利がこういうふうに侵害されるといけませんからこういう商品だけを重点的に取り締まってくださいというお願いなんです。制度としての権限を認められたシステムになってないわけでございます。
 したがって、どういう問題が起こるかといったときに、これは当局にも寄せられているんだろうと思うんですけれども、知的所有権を侵害する物品が偽って入ってきた、税関の目をごまかして国内に流れ出た。それでは、真の権利者がこの人間を相手取って訴訟を起こす、あるいは損害賠償を起こしたときに、輸入業者の名前を教えてください。つまり、これを輸入したのはだれですか、それからどこから船積みされたんですか、この人たちにも裁判の法的な手続をとりますからといったときに、大蔵当局は、これは守秘義務を盾に教えませんでしょう。あるいはこの業者が過去同じような商品を輸入していたかどうか記録を見せてくれと言っても、守秘義務を盾に教えないんです、現行は。
 そうすると、真の権利者から見てみますと、自分の権利をどうやって守ったらいいのかということに関しては、極めて行政上不公平な扱いを受けているというかなり強い不満が出ているわけです。この点についてはどうなんですか。
#59
○説明員(栃本道夫君) 第一点目のウルグアイ・ラウンドとの関係でございますけれども、ウルグアイ・ラウンドの交渉は現在まだ終わってございませんので、私どもとしましては現在のこの法令のもとで最大限取り締まりの改善を図ったところでございます。いずれ同ウランドが妥結しました暁には、我が国の取り締まり制度につきましてもその協定の内容に合致させたものとすべく国内法令の整備を含む見直しをその際に行うこととしてございます。
 それから、第二点目でございますけれども、ただいま御指摘の点というのも、私どもも大変に難しい問題を含んでいるということで、実はいろいろ検討をさせていただいたところでございますけれども、やはり行政当局としての限界というのがどうしてもございます。
 現在、権利者の方に対しましては、侵害物品の認定手続の中でできるだけ私どもの手続の規定をお示しして、御連絡をいたしまして明らかにするように実はしているところでございます。権利者に対しまして、私ども御連絡というふうに言っておりますが、侵害の疑義物品を見つけましたよ、それからそれにつきましてその認定手続が今こういう段階にありますよと、必要な場合には権利者の方からその物品に関します参考の御意見とか資料の提供をいただくというような形で実質的にこの認定手続に参加をしていただいているというのが実情でございます。また、侵害物品に該当するかどうかということを税関として認定いたしますが、その認定をする場合に権利者の方の御意見もお伺いをするということもしておりますし、またその処理の結果につきましても、これは権利者の方に御連絡する。これは、実はいろいろ御批判をちょうだいしまして不親切だというようなことがあったので、今度、実は昨年の九月一日の改正でそれを取り入れまして、その処理の結果につきましても権利者に御連絡をすることにいたしました。
 ただその場合に、それではすべて何でもかんでも御連絡できるかということになりますと、まことにそこはつらい話でございますけれども、やはり私どもとしましては行政手続の限界というのがございまして、その中で権利者に対して御連絡できるのはこういう品物につきましてこういう処理をいたしましたよということの御連絡でございます。だれがとか輸入者のお名前というふうなもの、あるいは侵害疑義物品がそういう意味で個人の秘密にかかわるようなところに属して特定の個人が支障を来すというふうなことになりますと、やはり行政のあり方として問題を生じてしまうということです。私ども国家公務員に守秘義務が課せられているということは、これはどうしても私どもとしては守らざるを得ないということでございます。
 一定の限界はございますが、先ほど申し上げましたようにできるだけ権利者の方に対してもオープンにすると同時に、手続を透明な形で進めるということで精いっぱい努力をしているという点を御理解ちょうだいしたいと存じます。
#60
○村田誠醇君 それは、行政の方からいろいろな支障があるというのもわかります。しかし、権利者から見ましたら、結局実害が発生して訴える、調べるということよりも、あらかじめこういうものはだめですよということをきちんと申し立てる、あるいはそれに違反して輸入した業者がわかった場合はその名前を公表するとか、あるいは過去どういう業者がどういう商品を輸入していたか等はわかるわけですから、こういう情報というのは公開をしていただかないと完全な意味で防止することができないんだろうと思うんです。ですから、それは当然寄せられていると思いますので、行政の方で検討をお願いしたいと思います。
 それからもう一つ、侵害商品で一番ポピュラーなど言ってはちょっと語弊があるんですが、これからゴールデンウイークを迎えて海外へ行く人が多くなってくる。そうすると、海外に行って知的所有権侵害の物品を買ってくる。一つでもいいです。その場合、お聞きをしたいんですけれども、日本国内に持ってくるときににせものと知りつつ一つだけ自分の見えでちょっと持っていようかなという形で買ってきたものは、これは税関としてどのような対応をするのが適正なんでしょうか。クイズ番組で、一体これはどういうふうに扱うのが正しいのかという質問が出ているんですね。つまり、大量に業務として輸入するのはだめですよというのは、これはもうはっきりわかっている。自分が使うためだけのものを一つだけ持ってくる場合はどうなのか、ちょっと見解をお聞きしたい。
#61
○説明員(栃本道夫君) 今御質問は二つあるかと思うんでございます。一つは、まずにせものであると知っているかどうかということが侵害物品であるかどうかの認定に影響を与えるかどうか、左右されるかという、そういう趣旨の御指摘でございますが、これにつきましては知っているかどうかというのは関係なく、要するに侵害物品であるかどうかが問題でございます。
 それから、第二点目の個人的に使用するものというものはどうなるかということでございますが、これは現在の工業所有権の各法律の定めはいずれも先ほど先生御指摘のとおりでございまして、業としての使用につきましての規定でございますので、法律上個大使用というのは該当しないということでございます。ですから、問題は個々の具体的なケースにつきまして、それが個人的使用であるかどうかという認定の問題でございまして、これは物に応じて取り扱っているところでございます。
 私どもが国民の皆様にお願いしていますのは、やはり持ってき方に応じて税関職員がそれを見る目つきというものが違ってまいりますよと、平たく申し上げれば。やはり、一個持ってきているケースと二個も何個も持ってきているケースでは税関職員の目つきが違ってまいりますよと。したがいまして、お尋ねの仕方とか物の拝見の仕方も違ってまいりますよというところで御理解をちょうだいしたいと思います。
#62
○村田誠醇君 そうすると、最後に確認したいんですけれども、これはいつのかちょっと年代わからないんですけれども、成田税関支署ということで「旅行者の皆様へ」というチラシ、あるいはいろいろなものが置いてありますね。あそこに書いてある文句は、こういう商品というのは輸入が禁止もしくは制限されていますよという中にずっと入っているんですね。
 それから大蔵省が、これはその後の通達を出したのか知りませんけれども、旅行業者に対して通知しているのは、こういった商品を持ち込まさせませんよ、その場で所有権の放棄をさせるか積み戻しをさせますから買わせないようにしてくださいというのを、変な話だけれども指導しているんですね。だから、皆さんの頭の中では絶対に持ち込めないものだという意識なんです。またそういうふうにやっているんですけれども、今のお答えを聞くと、にせものと知りつつ自分で使うんであればいいんですよということだと、クイズ番組の正解が間違えていたということになるんですけれども、その方が正しいんですね、いろんな通達を読んでみましても。
 もう一度お伺いしたいんですけれども、成田の税関あるいは空港に置いてあるチラシに書いてあることは、余りそこのところに一つはいいですよと書くとみんなが持ってくるから原則禁止と書いておいた方がいいだろうということでしょうけれども、法律、行政の対応としては、一つか二つか極めて限定的な部分であれば構わないんです。ただ、毎回毎回行って持ってくるというのはいろいろあるんでしょうけれども、そこら辺は微妙でしょうけれども、原則いいんだと。いいんだと言えるのか、適用の対象にはならないというふうに理解して、最後の答弁をもう一度もらって終わりにいたします。
#63
○説明員(栃本道夫君) 少量のコピー商品を輸入した場合に税関ではどのように取り扱われるのかというお尋ねでございます。やや詳しく申し上げますと、やはり商標法など知的財産権を規定しました法律におきましては権利者以外の者が業として権利を使用するという行為を権利侵害としているわけでございまして、関税定率法ではこの権利侵害の対象物を輸入禁制品としているわけでございます。
 したがいまして、いわゆるコピー商品と申しますものにつきまして、輸入者の個人的な使用に供されるものなど業として輸入されるものでないものと認められれば、それは侵害物品とはならないことになるわけでございます。この場合に、それでは輸入されようとする物品は業として輸入されるものでないものなのか、それとも業として輸入されるものなのかということでございますが、これは基本的にはその輸入申告物ごとに調査の上判断をしなければならない性格のものでございます。
 ただ、例えば今お話がありましたように成田空港のように大変に混雑しているところでたくさんの方がいらっしゃる、お通りになるというようなときに、実務上個々の輸入貨物について限られた通関の処理時間内に輸入目的についてパーフェクトに調査しろということになりますと、これは大変に限界があるということは十分御理解をいただけるところでございます。したがいまして、私どもとしてはその取り扱いの一応の線といたしまして常識的にはどういうものが例えば個大使用というふうに判断できるであろうかというときに、現に使用している、使っているということが拝見して明らかであるというようなものはまさに個大使用されている物品であるということが言えるであろうということなんですが、それ以外のものについてはなかなか難しゅうございます。
 先ほどおっしゃいましたように、頻繁に何回も同じものを持ってくればそれは、一回ごとにはそれは少量でも継続的に輸入するということになりますと、これはまさに反復性が出てまいりますので、そういったものは業としてのやはり輸入がなされていると判断しなければならないものもあるだろうと考えられるわけでございます。
 そこで、私どもとしてはやはり税関が本当に真剣にまじめに一件一件完璧にやろうとします場合に、一通りの判断をさせていただいて、それでその一通りの判断に問題があったらさらに詳しく調べていかなきゃならぬというときに、第一次的なまず取り扱いとしてはどの辺に線を引くかという実務上の現実の問題に直面しているわけでございまして、その点で理論的に言うといろいろ問題はあるかもしれません。
 ですから、その理論的に問題がある部分というのは、さらに調査を進めますということを申し上げるしかないわけでございます。そういう窓口におきます一応の取り扱いといたしまして、私どもは一人の方が一つの品目について二つも三つも持ってきていただくときには、やはり税関の職員の目つきが変わってまいりますよというところで御理解をちょうだいする以外にないということでございます。いろんなパンフレットで持ち込まないようにとのお願いも、やはりそういうことで空港でいろいろお時間をとっていただかないようにするためにはその方がベターでございますよという趣旨で、あくまでもお願いとしているということをぜひ御理解いただきたいと思います。
#64
○村田誠醇君 どうもありがとうございました。
#65
○委員長(斎藤文夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時九分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時四十分開会
#66
○委員長(斎藤文夫君) ただいまから商工委員会を再開いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 本日、松本英一君が委員を辞任され、その補欠として吉田達男君が選任されました。
    ―――――――――――――
#67
○委員長(斎藤文夫君) 次に、理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#68
○委員長(斎藤文夫君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に吉田達男君を指名いたします。
    ―――――――――――――
#69
○委員長(斎藤文夫君) 休憩前に引き続き、不正競争防止法案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#70
○浜四津敏子君 それではお伺いいたします。
 不正競争防止法は、立法が昭和九年、経済法規の中でも最も古い部類に属しますが、立法後、昭和十三年あるいは二十五年、平成二年など数回の改正を経ましたけれども、しかし、急激な経済状況の変化、その実情に法が追いつかないという状況が続きまして、従来判例がかなり無理をして具体的妥当な解決を図ってきたという経緯がございます。また、実際の実務上の解決と法文との乖離、あるいはパリ条約に近づけて国際的な調和を図るという必要もありましての今回の改正、その必要性にこたえる方向での改正だということで、基本的には評価できるというふうに考えております。ただしかし、十二分にとは言えない面もありますし、また正確な定義あるいは解釈、確認が必要かと考えますので、こうした点から何点か質問させていただきます。
 まず第一点ですが、第一条に示されております本法の性格についてお伺いいたします。
 不正競争防止法は、事業者間の競争秩序維持法という性格だけで、消費者保護法の性格が全く付与されておりません。そしてまた、その法的性格からいたしまして、この三条で差しとめ請求訴訟の原告適格も事業者にのみ認められておりまして、事業者団体あるいは消費者団体あるいは消費者には認められておりません。
 もともと出発点においては、こうした事業者間の私的利益保護を通じて公正な競争秩序維持、こういう狭い限定された目的を第一義的にしていたということは疑いありませんけれども、しかし今日では多種多様な不正競争行為が生じておりまして、それによって消費者の利益が直接的に大変大きく侵害されるという事態も数多く頻発するに至っております。こうした消費者にも法的に保護されるべき利益があるのではないか、そしてまた行政的な制裁あるいは救済、あるいは刑事的な制裁だけでは万全ではなくて、こうした利益侵害される者の、特に消費者の自主的な権利主張を保障して初めて完全なものになるのではないかというふうに考えられます。また、諸外国でも消費者保護法制として位置づけているところも数多くあります。
 こうした経済状況の変化を見るときに、日本においても、単に競争事業者の私的利益保護という狭い目的の競争秩序維持法ではなくて、より公益性の高い法、また消費者保護法としての性格をもあわせ持たせるべき段階に来ているのではないかというふうに思われますが、その点についてはいかがでしょうか。将来の方向性、そしてまた見通しについてもお伺いしたいと思います。
#71
○政府委員(熊野英昭君) 不正競争防止法は、ただいま委員御指摘のとおり、競争事業者による民事的な措置を通じまして公正な競争秩序を確立しようとするものでございます。そういう意味で、御指摘のとおり、消費者の保護を直接の目的としたものではございません。しかしながら、公正な競争秩序が確立されることによりまして、消費者保護にも間接的に資することは当然のことではないかと考えておりますし、また社会的な悪性の強い一定の類型に対しましては刑事罰を適用するという形で、消費者保護の観点をも社会的悪性の強いというところで勘案をしているところでございます。
 他方、我が国におきましては、消費者保護という観点から、例えば表示を中心として景品表示法がございますし、そのほかに宅地建物取引業法でありますとか旅行業法、訪問販売法、薬事法、食品衛生法等々、いろいろな法律によって消費者保護の観点から広範な規制が図られているところでございます。また、誤認惹起行為によって取引関係に入った消費者を救済する規定としては、一般的な民法の規定があることは御案内のとおりでございますし、特別法といたしましても割賦販売法、訪問販売法等におきまして、一定期間内での契約の申し込みの撤回ができるといういわゆるクーリングオフの制度が規定をされているわけであります。
 こういった消費者保護を目的とするいろいろな法律が存在する中で、ただいま御指摘のような不正競争の停止、予防請求権の請求権者を例えば消費者に拡大すべきか否かという点について、産業構造審議会においても法律専門家の間で十分御議論をいただいたわけでありますけれども、ただいまこういう日本の法制体系の中にあって、この不正競争防止法の法目的を変えてまでそういう請求権を付与する必要はないであろうというのが答申の結論でございます。ただ、引き続きそういう問題についても勉強をしていく必要がある、あるいはいろいろ実態の推移その他を見て勉強はしていく必要があるということになっているわけであります。そこで私どもといたしましては、この答申を受けまして、本法案のような形で提案をさせていただいたわけであります。
 今後とも、ただいま御指摘のようなことにつきましては産業構造審議会の当該部会において勉強を続けたり、あるいは私ども通産省としてもいろいろな勉強は続けていきたいと思っております。
#72
○浜四津敏子君 法案第一条に、「この法律は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、」と、こうあります。ここで「国際約束」という言葉が出てまいりますが、それについて二点お伺いいたします。
 一体、国際約束というのは何を指すのか。条約あるいは協定あるいは行政約束などのいわゆる国際的な約束のどこの範囲までを含むのか、これが第一点でございます。第二点としまして、将来この国際約束で本法とそごする内容の約束がなされた場合にはどうされるのか、解釈の変更や改正があり得るのかどうか、これが第二点でございます。
#73
○政府委員(熊野英昭君) 国際約束という言葉でございますけれども、これは国際的な取り決めてございます条約でありますとか協定等、等の中には行政協定等も入ると思いますけれども、これらの我が国がその履行を国際的に約束したものを一般的に指しております。不正競争に関する国際約束ということで申し上げますと、工業所有権の保護に関するパリ条約、及び同条約の特別取り決めでありますところの虚偽のまたは誤認を生じさせる原産地表示の防止に関するマドリッド協定がございます。
 いずれにいたしましても、国際的なハーモナイゼーションの観点を踏まえつつ不正競争の防止を図っていく必要にかんがみ、この法案におきましてはこれらの国際約束の的確な実施を確保することを法目的の一つとして掲げたところでございます。
 なお、今後この法律と背馳するような、矛盾するような内容の国際約束が行われたらどうかということでございますけれども、これはその内容に即して対応するということでございます。明らかに例えば矛盾するということになれば、それは改正をしなければならないと思います。あるいは、解釈上で対応できるものであればまた解釈上で対応することになるかもしれませんけれども、それはそのときどきのお約束の内容に従って対応していくことになろうかと思います。
#74
○浜四津敏子君 次に、第二条の第一項一号に「需要者の間に広く認識されているもの」というふうに定めがあります。いわゆる周知性の要件と呼ばれております。その定義について、殊に地域的な範囲をお伺いいたします。
 今回、現行法の「本法施行ノ地域内ニ於テ」という要件が削除されたということは、それによって外国で周知の場合あるいは外国でのみ周知の場合も含まれることになるのかどうか、お教えいただきたいと思います。
#75
○政府委員(熊野英昭君) 周知性要件についてのお尋ねでございますけれども、そもそもこの六号は、登録によって保護が認められておりますところの登録商標とは異なって、その商品等の表示が登録されてない場合であっても差しとめ請求権を与えるものでありますから、対象となる表示が需要者の間に広く認識されていること、いわゆる周知性の要件が必要であるというふうに考えているわけであります。
 そこで、その「広く認識されている」とはどういう範囲かということでございますけれども、全国的に知られている必要はなく、一地方で認識されていれば足りるものと解されているところでございます。
 そこで、少し詳しくなりますけれども、周知性要件についてどういうふうな議論があったかということでありますが、この周知性につきましては、あくまでも法的保護に値する一定の事実状態、すなわち一定の事実状態というのはみんなに知られているという周知性でありますけれども、周知性が形成されたと認められる場合にのみ保護することが適切であるということで、これを要件として掲げているわけであります。
 それから、外国周知の問題でございますけれども、商品等の表示に係る冒用を規制しようとするものでございますので、その商品等の表示が広く知られている範囲で冒用されなければ混同は生じないわけであります。したがいまして、当該表示が日本で広く知られていなければ仮に外国においで有名であっても日本において混同を生じることはないわけでありますから、日本における冒用は規制の対象とはなりません。
 ただし、本法案においては、輸出という行為も本法で行われる限りにおいて規制の対象に含まれるわけでありますから、仕向け国におきまして、周知な表示を付した商品を日本から輸出しまして、その国で混同を生じさせるような場合には六号の規制対象となり得るとは考えております。
 いずれにいたしましても、本法案の適用される地域的範囲は我が国の主権が及ぶ日本国内に限られるわけでありまして、先ほども申し上げましたように、輸出については、輸出行為自体が日本国内で行われるという限りにおいて本法案の適用対象となるというふうに解しております。
#76
○浜四津敏子君 同じく第二条の一項一号から三号までの行為類型として現行法にはない「輸入」が規定されております。輸入行為につきまして二点まとめてお伺いいたします。 この「輸入」は今回新たに新設したものなのか、それとも従来も含まれていたものを表現を変え明確にしたものなのかどうか、それが第一点でございます。
 また第二点目、「輸入」の定義ですけれども、陸揚げされれば輸入と言えるのか、それとも通関した後に初めて輸入と言えるのか。例えば保税倉庫に入って、通関せずに日本領海内を通過するだけの商品というのは本法の対象となるのかどうか、これをお教えいただきたいと思います。例えば、日本の有名ブランドのデッドコピーが陸揚げされただけで、通関しないで目の前を通過していくという場合に、これを取り締まることができるのかどうか、それをお教えください。
#77
○政府委員(熊野英昭君) 御指摘のとおり、不正競争行為の類型の一つといたしまして改正法では「輸入」の話が加えられておるところでございます。これは、現行法の「拡布」という言葉がございますけれども、この言葉に包含されているものと従来判例上も解されていたところでございまして、これを現代の言葉に書き改めたものでございます。そういう意味で、従来なかったものを新たに加えたということではなくて、何ら従来に変更を加えるものではございません。
 それから、第二の御質問でございます輸入をどの時点でとらえるかということでございます。一般的に、輸入の時期につきましては、我が国の領域に入った時点というのが一つの考え方でございます。それから二番目の考え方は、陸揚げの時点というのが二番目の考え方でございます。それから三番目は通関における輸入許可の時点、いわゆる通関時という三つの時点が考えられるわけでありまして、いずれの時点をとるかについてはそれぞれの法律の趣旨あるいは目的に応じて異なっているかと思います。
 例えば外国為替及び外国貿易管理法上の輸入は、輸入貿易管理の観点から行うわけでありますから、船舶等から陸揚げした時点というふうに解されているところでございます。また、関税法上の輸入と申しますのは、関税の確定あるいは徴収等、税関手続の適正処理の観点から、輸入の許可を受けて完全な内国貨物とするとき、すなわち通関時というふうに解されているわけであります。
 これに対しまして、不正競争防止法ではどうかということでございますけれども、不正競争行為が行われる具体的な危険が発生する時点ということで、本邦への陸揚げあるいは荷揚げ時をもって輸入と解されているところでございます。したがいまして、委員御質問にありました保税倉庫に入ってまだ通関してない段階でも本法の適用上は輸入に当たるかどうかということについて申し上げますと、輸入に当たるというふうに考えております。ただ、領海上をただ通過するにすぎないような商品は、本法の適用上は輸入とは解されないと思います。
#78
○浜四津敏子君 同じく第二条で、不正競争行為の類型として、この中には他人の周知表示あるいは著名表示あるいはデッドコピー、こうしたものを譲渡などのために所持することという所持という行為が挙げられておりません。これについて二点お伺いいたします。
 所持については、本法でどのように扱われることになるのか、差しとめの対象となるのかどうか、これが第一点でございます、むしろ商標法三十七条のような、「侵害とみなす行為」として所持を明確に規定すべきではなかったのでしょうか。
 それからまた、昭和六十三年に著作権法が改正になりましたけれども、その改正の際にも、所持について明示されていないということが法の不備である、こういうことで百十三条に「侵害とみなす行為」を規定したわけでございます。そんなところから、せっかく改正するわけですから、所持についてもこの商標法あるいは著作権法と同じように明確に規定すべきではないでしょうか。なぜ本法には明確にその所持が入っていないのか、その点についてお答えいただきたいと思います。
#79
○政府委員(熊野英昭君) ただいま浜四津委員の御質問は二点あったと思います。第一点にお答えすることがすなわち第二点の答えになるのではないかというふうに考えておりますけれども、まず第一点について申し上げます。
 すなわち、所持はどういうふうに考えるかということでございます。周知表示あるいは著名表示につきましては、この法案の第二条第一項第一号及び第二号の規定によりまして、その表示を「使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入する行為」が侵害行為として規制の対象となっているところでございます。他方、この法案の第三条第一項におきまして予防請求権が規定されているところでございます。周知表示あるいは著名表示の付されたものを所持することにつきましては、所持がこの法案で定められておりますところの侵害行為を起こすおそれがあるか否かによってこの法案の対象となるか否かが判断されることだと思います。
 したがいまして、それではどう考えたらいいかということでございますけれども、周知表示あるいは著名表示の付されたものを法案の第二条第一項第一号に規定されています例えば「譲渡」、譲渡といったふうなものを目的として、譲渡するために所持をしているということであれば明らかに本法案の対象になるものと考えているわけであります。
 したがいまして、ただいま第一点について御説明を申し上げたわけでありますけれども、この法案におきましては、侵害行為となるような譲渡等を目的とした所持の場合には規制の対象になることは明らかであるというふうに考えておりますので、従来からの法の沿革をも踏まえまして、御指摘のような商標権の侵害の予備的な行為を侵害そのものとみなして商標権の保護を図るという商標法第三十七条のような規定を特段設ける必要はないというふうに考えた次第でございます。
#80
○浜四津敏子君 同じく第二条の一項三号に移ります。
 ここには「他人の商品(最初に販売された日から起算して三年を経過したものを除く。)」と、こうありますが、この三年というのは請求権の行使期間というふうに考えていいのかどうか。ということは、販売開始後三年以内に模倣したものが差しとめの対象となる、こういうふうに考えていいんでしょうか。そしてまた、仮に訴訟中に三年が経過したときには差しとめはできない、損害賠償だけが可能となる、こういうふうにこの三年というのは考えでいいのかどうか、お教えいただきたいと思います。
#81
○政府委員(熊野英昭君) 第二条第一項第三号におきまして商品の形態の模倣が不正競争というふうに考えられますのは、先行者が資金でありますとか労力を投下いたしまして商品化した成果にフリーライド、いわゆるただ乗りをすることが競争上不公正であるということで不正競争と位置づけているわけであります。こういう趣旨にかんがみれば、模倣を禁止するのは先行者の投資回収の期間に、おおむねでございますけれども限定することが適切ではないかというふうに考えられます。
 そこで、先行者の投資回収期間を一律に、物によって当然違うわけでありますから一律に決することは難しゅうはございますけれども、差しとめという効果が他方事業活動に重大な影響を与えることを考えますと、やはり政策的見地から一定の確定した期間を定める方が適切ではないかということでかようにしたわけであります。なお、特許法等におきましても、発明等の価値は事案によって実はさまざまであるわけでありますけれども、政策的見地から権利の存続期間については一律の期間が定められているということもあるところであります。
 それから、実は国際的な状況を見ましても、現在ECにおきまして、大変短いライフサイクルのデザインの保護を目的といたしまして、登録されていないデザインについても模倣に対し差しとめ請求権を与える制度を検討されているところでございますけれども、この権利期間は実はデザインの公表時から三年間とされているところでございます。これも勘案をしたところでございます。
 そういうわけで、商品の形態の開発のために投下した費用及び労力の回収はその商品の販売を通じて行われるわけでありますから、起算点は最初に販売された日というふうにした次第でございます。
 それから、三年の期間が到来した場合はどうであるかということでございますけれども、当然差しとめ請求については認められないということになりますし、損害賠償については三年前の期間のものについては認められる、こういうことになろうかと思います。御指摘のとおりでございます。
#82
○浜四津敏子君 同じく第三号の、「他人の商品」という場合の「他人」には外国人も入るのかどうか。そしてまた、ここで言う「販売」というのは日本における販売だけなのか、あるいは外国における販売も入るのかどうかについてお答えください。
#83
○政府委員(熊野英昭君) 「他人」には当然外国人も入ります。それから外国における販売も入ります。
#84
○浜四津敏子君 同じく第三号に関連してですが、例えば設計図ができているだけの段階のもの、つまり商品化前のものあるいはカタログだけができている、こういうものをその設計図を見てあるいはカタログを見て模倣した第三者が本人よりも先に販売を開始した、こういう場合にはこの本人と第三者とどちらが優先し、どちらが差しとめ請求ができることになるんでしょうか。
#85
○政府委員(熊野英昭君) ただいま御質問にございましたような商品化をする前の設計図におきましても、その対象となっている商品としての形態がその設計図から明らかに観念できるというような場合には当然、本法の規制の要件を満たす限りではありますけれども、その限りにおきまして本法の規制の対象となると思います。つまり、それはいわゆるおそれに該当するものだろうと考えます。
 他方、商品化前の設計図が模倣された場合におきまして、ただいまの御質問の直接ではございませんけれども、その設計図の保管管理状況あるいは取得方法との関係によりましては、別途営業秘密の侵害が生ずる可能性もあるのではないかというふうに考えられるところであります。
#86
○浜四津敏子君 これは法務省にお伺いいたしますが、営業秘密を取得する行為、不正に取得する行為、この第四号に関連する件ですが、現実に差しとめ請求権を行使する場合に、請求する者はそれが窃取、詐欺あるいは強迫その他の不正な手段によって取得したんだと、この点の立証が非常に難しい状況にあります。日本はアメリカのようにディスカバリーの制度が存在いたしませんから大変立証に苦労しているというのが実情でございますが、この立証の緩和策は何か考えておられるか。
 それからまた、営業秘密が訴訟を通じて、口頭弁論とか訴訟記録を通じて公開されてしまうという不都合にどう対処されるか。営業秘密裁判における非公開制度というのを検討されているのかどうか、お伺いしたいと思います。
#87
○説明員(柳田幸三君) お答え申し上げます。
 ただいま委員御指摘のように、証拠が立証責任を負わない当事者の側に偏在しているというような場合につきましては、現行の民事訴訟法のもとでは、実際上立証責任を負う当事者が立証を尽くすことが困難な場合があるのではないかという指摘はかねてからあるところでございます。法制審議会民事訴訟法部会では、平成二年の七月から民事訴訟手続の見直し作業を続けておりますけれども、ただいま申し上げましたような指摘があることを踏まえまして、証拠収集手続の充実強化の立法的方策につきましても審議を進めているところでございます。
 平成三年の十二月に、それまでの同部会における審議の結果を踏まえて作成されました「民事訴訟手続に関する検討事項」が公表されまして、関係各界に意見照会がされたわけでございますが、その中でも、文書提出義務の拡張、文書所持考が提出命令に従わない場合の制裁の強化等を内容とします証拠収集手続の充実強化に関する考え方が相当数掲げられたところでございます。同部会では、現在、検討事項に対して関係各界から寄せられました意見を踏まえまして改正試案の作成の作業が行われているわけでございますが、証拠収集手続の充実強化につきましても引き続き検討が進められているところでございます。
 それから、二番目の御質問でございますけれども、これも委員御指摘のように、現行法には、不正競争防止法が規定いたします営業秘密等の保護に値する秘密が、訴訟審理あるいは訴訟記録の閲覧といったことを通じまして漏えいすることを防止しながら充実した審理を行うための規定が欠けているという指摘も、これもかねてからあるところでございます。
 そこで、この点につきましても、先ほど来申し上げております民事訴訟法部会の民事訴訟手続の見直しの審議におきまして、こういった指摘を踏まえまして、営業秘密等の秘密の訴訟法上の保護についての審議を進めているところでございます。この点につきましても、平成三年十二月に公表されました「民事訴訟手続に関する検討事項」の中で、秘密が問題となる場合における訴訟審理の非公開の当否、あるいは秘密保護のために訴訟記録の閲覧、謄写を制限するといったことの当否につきましても考え方が掲げられまして、意見照会がされているところでございます。この点につきましても、先ほどの証拠収集手続の充実強化の問題と同様に引き続き検討が行われているというところでございます。
#88
○浜四津敏子君 ありがとうございました。
 法案の第二条で、不正競争として規定されております個別行為類型の中に今回は不当広告とかあるいは不当廉売、あるいは取引妨害、内部干渉など、いわゆる不公正な取引方法等を規制の対象としておりませんが、なぜ入れなかったのか、その理由をお伺いしたいというふうに思っております。
 独禁法と並びまして、フェアな取引、公正な競争秩序維持に不正競争防止法がより一層資するためには、将来的にはこうした独禁法型の行為類型も不正競争防止法の規制の対象として入れるべきではないかというふうに考えますが、将来の方向としてはいかがなんでしょうか。
#89
○政府委員(熊野英昭君) 本法案におきましては、商品または役務の品質でありますとか内容等を誤認させるような行為に関しまして、個々の事業者に民事的請求権を与えることによって公正な競争の確保を図ろうとするものでございます。
 一方、経済が進んでくるに応じまして、市場に悪影響を与えるような行為につきましては公益的な観点からも規制すべきであるという考えから、民事的な措置にのみゆだねるのではなくて、例えば独占禁止法等による行政規制が導入されて市場における自由競争の確保が図られるようになっているところでございます。ただいま委員御指摘のとおりでございます。
 そこで、独占禁止法は、公正かつ自由な競争を促進するため、私的な独占でありますとか不当な取引制限、不公正な取引方法を規制対象としているわけでありますけれども、これらの行為のうち、公正な競争の促進に関する部分について、すなわち三つの中の不公正な取引方法に関する部分でございますけれども、これはこの不正競争防止法と重なる部分があるわけであります。
 他方、その不公正な取引方法の中には、ただいま御指摘にもありましたように、不当廉売でありますとか、内部干渉でありますとか、取引妨害といったふうな広範な行為が実は含まれているわけであります。こういったものの中には適法であるか違法であるか非常に境界が微妙なものも多いわけでありまして、そういう観点から独立行政機関でありますところの公正取引委員会の専門的な判断にゆだねられているところではないかというふうに考えるわけであります。
 そういうわけでございますので、いわゆる不公正な取引方法として指定されている行為のすべてを不正競争防止法の対象として民事的請求の対象とするかどうかについては、既にいろいろ御議論はあったところでありますけれども、今回はそこまでの拡大はしていないわけでありまして、引き続きその必要性等について産業構造審議会などで議論を進めてまいりたいと思っております。
#90
○浜四津敏子君 現行法もまた今回の改正案によっても、不正競争行為の類型というのは限定的に列挙されているだけで、いわゆる一般条項というものが掲げられておりません。不正競争行為というのはこれらの列挙されている行為に限定されるものではありませんで、それ以外にも多数存在するわけでございます。また、どのように拡張解釈をしても救済できない行為類型も、従来もありましたし、また今後も増加することが予測されております。
 そんなことから一般条項を設けた方がいいのではないかという意見があります。一般条項を設ける場合にも、いわゆる幅広い包括的な一般条項を設けるとする立場と、個別に列挙した上で、最後に全各項に準ずる行為というふうに定める、いわゆる小さな一般条項説というのがあります。将来の方向として、現行法またこの改正法がとっている個別類型説から、多少なりとも一般条項を認める方向での予定がおありなのかどうか、お答えいただきたいと思います。
#91
○政府委員(熊野英昭君) 一般条項につきましては、不正競争に当たる行為を列挙しております現行法では、社会通念上不正競争であるというふうに目されている行為であっても、列挙された行為類型に該当しない場合は規制の対象とならないということで、新たな不正競争に対してどういうふうに対応していくか、ただいま委員御指摘のような問題提起が産業構造審議会の中でもございまして、十分議論をされたところでございます。それについては積極論もございますし、消極論も、大変強い消極論もございました。
 結論から申し上げますと、そういう問題について必要性、あるいは導入した場合の問題については今後とも検討を続けていくべき課題ではあるけれど、今般改正では一般条項を設ける必要はないということできたわけであります。
 私どもといたしましては、要は、今第二の御質問があった点もそれに関連するわけでありますけれども、準ずるといっても結局のところ一般条項ではあるわけであります。したがいまして、そういうことをいたしますと、どういう実は競争類型が対象になるかという非常に法律上不安定な状況も生じますから、それよりは、社会的にそういうものがコンセンサスとして成った時点で迅速に法律改正をお願いいたしまして、そういうものを導入していけばいいじゃないかというふうに考えているわけであります。
 したがって、随時そういうことの状況の把握について怠りなく勉強してまいりまして、既にそういうことで不正競争行為類型として追加した方がいいというふうな社会的なコンセンサスができました時点においては、おくれることなく法律改正を行ってそれに対応していきたいというのが目下のところの基本的な考え方でございます。
#92
○浜四津敏子君 それでは、附則についてお伺いさせていただきます。
 附則の第二条、経過措置が定められておりまして、この中に「特別の定めがある場合を除いては、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、改正前の不正競争防止法によって生じた効力を妨げない。」、こういうふうに規定がされております。ここで言う改正前の不正競争防止法によって生じた効力というのは、具体的にどのようなことを意味するのか、お教えいただきたいと思います。
#93
○政府委員(熊野英昭君) ただいま御指摘の附則第二条における改正前の不正競争防止法上生じた効力と申しますのは、改正前の不正競争防止法に基づいて行われましたすべての判決でありますとか契約、債務等の法律上の効力を示しているところでございます。これらの効力は今回の改正によってもその効力が妨げられるものではないことを明示し、また、以下の附則各条によりまして、新法によって旧法下における既得権が損なわれないように経過措置を規定しているところでございます。
 こういった経過措置の考え方というのは、商法などの改正におきましても効果を上げているところでございますので、この不正競争防止法の改正におきましても、こういう附則の規定によりまして円滑な施行がなされることを期待しているところでございます。
#94
○浜四津敏子君 同じく附則の第三条ですが、ここでは民事責任についても原則不遡及ということを定めているんだと思いますが、「この法律の施行前に開始した次に掲げる行為を継続する行為」と、こうありますけれども、それではこの法律の施行前に開始して現在は行為を継続していないというものについてはどのようになるんでしょうか。
#95
○政府委員(熊野英昭君) この法律の施行前に開始したが現在では施行せずに既にやめている行為についてはどういう扱いになるかという御質問の趣旨だと思いますけれども、これにつきましては、新たな不正競争行為が行われているわけではありませんので、新法に基づき違法行為とされることはないということでございます。
#96
○浜四津敏子君 同じく附則の十条とそれから十三条の関係をお伺いいたします。
 大変わかりにくいものですから、基本的なところで申しわけないんですけれども、例えば、かつて模倣行為をしたけれどもいまやめているという者に対しては、例えば損害賠償請求はできるんでしょうか。十条は、反対解釈いたしますと、十三条、十四条の規定というのは、この施行前に開始した附則三条三号の行為で継続している行為以外に適用されるのかどうか、ちょっとそのあたりが混乱してよくわからないものですから、お教えください。
#97
○政府委員(熊野英昭君) 附則の第十条は、民事請求に係る附則第三条に対応しているものでございます。旧法のもとにおいて適法行為でありましたものを改正法の施行によりまして突然罰則の対象とするということになりますと、大変公平を失することになるわけであります。したがいまして、新たに規制対象となりますサービスの不当表示を改正法の施行前から継続して行う行為につきましては、改正法の罰則の適用対象としてない、施行後新たにそういう行為を行う者を規制対象としているという趣旨でございます。
 他方、附則の第十三条におきましては、改正法の施行前に行われました行為に対して、罰金額を変えておりますから、改正法により引き上げられた罰金額を適用いたしますと罪刑法定主義に反することになりますので、これらの行為については刑法の基本原則にのっとりまして従前の罰金額が適用される旨のことを明示的に確認をしている趣旨でございます。
#98
○浜四津敏子君 最後に大臣にお伺いいたします。
 不正競争防止法は、先ほどもちょっと触れさせていただきましたが、昭和九年に制定されて以来何回か改正を繰り返してまいりましたけれども、そのほとんどの改正が外圧によるもの、外からの要因で改正されてまいりました。その時点では日本は、まだ産業の面において発展途上国であったという事情があったかと思います。
 前回の平成二年の改正もそうだと思いますけれども、今回はむしろ国際的な流れを日本が先取りした形での改正というふうに考えられます。日本の産業経済、名実ともに世界のトップクラスを行くということになった、それを示すものかというふうに思います。今後の日本の経済は、この不正競争防止法の理念としているところでありますけれども、ほかがやらない分野、新しい分野をみずからの力で切り開く、そしてまたフェアな姿勢で競争していくということが必要かというふうに思われます。
 また、アメリカのいわゆるヤング・レポートに見られますように、知的所有権の保護強化というのが国の産業の競争力向上のための施策の一つとして位置づけられております。こうした知的所有権の保護が国の重大な経済戦略に組み込まれてきているというような状況にありまして、今後の産業政策の運営に当たって、日本の経済基盤をより強固なものにするために、通産大臣におかれてはこの法律の基本的な理念をどのように生かされていくおつもりなのか、そのあたりをお伺いしたいと思います。
#99
○国務大臣(森喜朗君) 長い世界の歴史を見てまいりましても、大英帝国が世界を支配していた時代もございました。またアメリカが経済的な力を持ち、また軍事的なプレゼンスを持って世界をリードしてきた、そういう歴史的な時代もあったわけであります。まさに、これから我が国は科学技術を中心として、それが一つの牽引車的役割を果たし産業社会を発展させることによって、世界の経済にもまた世界の繁栄にも貢献をしていくというのがこれから日本の国の進むべき方向であろう、こう思います。
 そういう意味で、今浜四津さん御指摘ございましたことなどは、まさに世界に模範となるようなこうした知的所有権、あるいはそれぞれ苦労して中小企業の皆さんなどが考えつかれたことなどを大事にして法的にも守ってさしあげる、また世界的にも評価の高いものにしてあげるということも、我々通商産業省あるいはまた中小企業庁などでそうした環境を整えていくということが極めて私は大事なことだというふうに考えています。
 所信表明でも明らかにいたしましたとおり、今後の我が国産業は、独創的な研究開発を進め、個性を生かした方向に進むべきものであると考えております。みずからの独創性を発揮して、個性をまた尊重しなければならないというのは当然のことでございまして、本日脚熱心に御審議をいただいております不正競争防止法、また後日お願いすることになりますが、特許法等の工業所有権法はこのような方向での産業発展の制度的な基盤をなすものでございまして、今後の産業政策を考える上でも極めて重要なものでございます。
 不正競争防止法は、ある意味では、先ほど委員が御指摘のとおり一国の産業社会の倫理的、道徳的水準を示すものである、このように言えるかと思います。今回の改正によりまして、往々にして誤解されがちな我が国産業のあり方を正しく世界に示すことができるのではないか、このように考えておるところでございます。
 今後ともオリジナリティーを尊重し、フェアな競争を通じまして我が国産業がますます発展していきますように努力してまいりたい、このように考えております。
#100
○浜四津敏子君 ありがとうございました。以上で終わります。
#101
○井上計君 大分質問が出尽くしております。また、同じような質問もありましたけれども、いま一度確認の意味でお伺いいたします。
 この不正競争防止法は、昭和九年といいますから約六十年前、戦前に制定された法律。しかもその後、時代の変遷に伴ってずっと改正が続けられておりますけれども、言えば戦前から生き残っておる法律としては数少ない法律の一つであるわけでありますが、平成二年ですから三年足らず前にかなり改正が行われている。
 そこで、また今回事実上全面改正と言えるような改正をするねらいといいますか、理由は何であるのか、この点をいま一度お伺いをいたしたいというふうに思います。
#102
○国務大臣(森喜朗君) 井上委員から御指摘ございましたように、現行法は昭和九年でございますから、恥ずかしながら私はまだ生まれていないのでございます。
 昭和九年に工業所有権の保護に関するパリ条約ヘーグ改正条約に加盟するために制定をされまして以来その基本的な枠組みを変えていないため、近年特に多様かつ巧妙化しております不正競争の実態に十分対応ができていない状況にある、このように認識をしております。
 具体的には、例えば著名なブランド、マーク等の無断使用によりましてブランドイメージの維持が大きく阻害されていることがございます。また、家電、おもちゃなどの売れ筋商品を中心にして、現行法では対応できない商品形態の模倣行為によりまして、にせもの商品や物まね商品等の被害が広がっていることも御承知だと思います。さらにはまた、サービス経済の進展とともに商品のみならずサービスの内容等を誤認させるような行為が増大をいたしておりまして、サービス産業の健全な発展の阻害要因となっていること等、不正競争をめぐりまして、新たな状況に十分この法律では対応できていないというところも委員も十分お気づきであろうと思います。
 また国際的にも、昨年七月からWIPOにおきまして、不正競争の防止に関して国際的なハーモナイゼーションを図るべく、モデル法の作成に向けてその準備作業が開始されているところでございます。
 このような状況を踏まえてみますと、現行法では対応できない新たな不正競争の防止を図り、あわせて国際的にも遜色のない法制度を確立するために、従来から各方面からいろいろと御要望がございました、平仮名法に改めて国民にわかりやすい法律として現行法の抜本的な改正を図るということが喫緊の課題である、このように承知をいたしておるところでございます。
 なお、平成二年には、今井上委員からも御指摘ございましたように、営業秘密の保護の必要性の高まり及びガットTRIP交渉への対応という緊急の要請にこたえるために、営業秘密にかかわる部分についてのみ改正が図られたわけでございます。本法の全面的な見直しは課題として残されて今日に至ったわけでございますが、このたびこうしてこの国会に提出をさせていただいたわけでございます。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。
#103
○井上計君 世の中ますます複雑になってまいりますし、また、製造分野においてもそれこそもう多種多様な商品をいろんな形で混合してつくるということはますますふえてきているわけですね。
 そこで、こういう事例が今後ますますふえてくると思うんですが、例を申し上げますと、印刷だとか出版という場合には一貫して一つの社が全部つくるということは事実上はあり得ないんですね。企画から、あるいはその前の写真撮影とかいろんなものがありますが、いろいろ総合されて、そして最終的に商品化されるということになるわけです。ところで、みんなこれは受託生産なんですね。その場合、製造する本人はそれがコピーであるかどうか全くわからぬわけですね。善意の第三者がそのようなコピー商品をつくるということが従来でもありますし、今後ますますそのようなものがふえてくるんではなかろうかな、こんなふうに考えられるんです。したがって、委託者の指示どおりにやった場合、本人は悪意も何にもないわけですね。
 そういうふうな商品をつくった場合の罰則といいますか、規制はそこでどんなふうに行っていくのか、それらについてちょっと御見解を伺いたい、こう思います。
#104
○政府委員(熊野英昭君) ただいまの井上先生の御指摘の趣旨は、デッドコピーであることを知らずに発注者の指示に従って受注をした人が商品を製作したような場合に、結果的に他人の商品の形態と同じ形態を持つ商品を製作したことになってしまったという場合、本法の規制上どういうふうになるのだろうか、こういう御趣旨だというふうに理解をしたところでございます。
 そこで、この法案におきまして規制の対象となっております模倣ということでありますけれども、模倣というものには二つの要件を考えております。主観的な要件と客観的な要件が必要だろうと思います。主観的な要件といたしまして、模倣の意図があることが必要である。それからもう一つ、客観的な要件というのは、その結果が同じ、まさにデッドコピー、同一性であるという二点が必要であろうと思います。そういう意味で、模倣行為であるというためには、先行者の商品の形態を参考にしたり、あるいはそれをまねている、準拠しているという主観的な要件が必要となるわけであります。
 したがいまして、先ほど御質問のありましたようなケースについて申し上げますと、商品の形態については発注者の指示に従ったのみであって、そのつくった人に模倣の意図がないということが明らかである場合には本法の規制の対象とはならないというふうに考えているわけであります。
 ただ、その発注した側の人が模倣の意図を持っていて、それから客観的にも明らかにデッドコピーであるような場合には、当然この対象にはなってくると思います。
#105
○井上計君 これは御参考にお聞きいただければ結構でありますが、一つ例を挙げますと、私の関係の業界の例があります。
 皆さんごらんになっている文字ですね、新聞から何からいろんな文字をごらんになっていらっしゃいます。あの文字はもとからあのようないろんな文字があったわけじゃないんですね。文字をつくるメーカー等々がいろんなデザイナーを集めて、それこそいろんな字をつくってみて、これが一番いいというふうな形でつくられた文字が現在いろんなコンピューター等々で皆使われておるんですね。新聞活字もそうなんです。それから新聞活字でも、最近言いませんけれども何とか活字というふうに、昔そういうふうに名称がついていたんです。今は全くないわけです。それが期せずして同じような文字になっておるというのがたくさんあるんですね。だから、時々問題になることがありますけれども、どこからどこまでが模倣であるのかということについて非常にその限界が難しいというものがあるわけですね。
 それらのこともありますので、今後、規制の対象あるいは取り締まりの場合、いろんなクレームがついた場合の処理というのが大変難しい厄介な問題が起きるんじゃなかろうかなという懸念が私一つあります。これはお聞きいただくだけで結構です。
 それからもう一つは、第二条の十ですが原産地ルールというのがあります。
 これは思いつきのようで恐縮でありますが、例えて言うと、肉屋さんにずっと高級肉、和牛が並んでいますね。国産和牛ということでは、一般消費者が高いものについてはちょっと二の足を踏む。ところが松阪牛と書いてあると、高くてもこれはいい肉だと買うというのがあるんですね。でも本当に松阪牛かどうかわからないわけです。松阪牛というのは品質を非常にシビアに検査をしたりいろいろやっておるようですが、極端なことを言うと一週間か十日牛を松阪へ連れて行って、松阪で屠殺すると松阪牛なんですね。
 そういう例が実はウナギでもあるわけですよ。ウナギと言えば浜名湖のウナギ、こうなっていますが、実際に浜名湖で今シラスから育っているウナギというのはごくわずかで、ほとんどは台湾や大陸から生きたのを持ってきて浜名湖の池に十日か半月入れて、それで浜名湖ウナギで出荷していると、こういうのもあるんですね。これも実際に不正競争ということを考えるといかがであろうかな、こう思っている。
 それから、大臣のおひざ元ですが、例の金箔紙、これは日本の生産の九〇%ぐらい金沢ですね。金沢の金箔紙は確かにいいんですよ、いろんな面で技術的にも。その金沢の金箔紙を模倣している産地があるわけです。そこは、どこでつくったか言わないで、やはり黙って出してくると金沢だと思ってるんですね。金沢として売っているんです。そういうのもあるわけですね。
 だからこの辺について、大変難しい厄介な問題が今後随所に起きるんではなかろうかなということを実は感じる。そういう場合の不正ということについては、なかなか容易なことではないなという感じが一つします。十分お考えいただいていると思いますけれども、なかなか法律上明記されない、あるいは予期できないようなことも今後起きてくるんではなかろうかという感じがするんですが、何か局長お考えがありますか。
#106
○政府委員(熊野英昭君) ただいま御指摘のように、個々の具体的なケースというのは大変判断の難しいケースがあるだろうと思いますけれども、いずれにいたしましても裁判規範でございますので、具体的なケースに応じて裁判所が最終的にはそういう問題を判断することになるというのがこの法律の立て方ということになろうかと思います。
 ただ、原産地についてどういうふうに考えたらいいか。これも実はお答えにならないかもしれないんですけれども、それが主として生産されたところで、例えば松阪牛というんだったら、どこで生まれて、どこでどのぐらいの期間が必要であるとか、そういう実質的な判断を裁判所が最終的にはすることになろうと思います。
#107
○井上計君 もう一つ問題は、これもちょっと同僚議員の質問にもありましたけれども、最初に販売された日から起算して三年を経過していないということが指定の要件ですね。そのことは逆に言うと、三年を経過した後にはどんなものを模倣して出してもいいではないかという、実は裏返すとそういうふうなことにもなるわけです。それは商秩序という面から見れば許されることではありませんけれども、やはり規制の対象にならぬということがまた問題が起きてくるんではなかろうかというふうに思うんです。
 どうなんですか、三年経過したものについての模倣ということについては、きちっとした規制ができない、したがってどういうふうな指導をしていくかということ。私ども個人的にもいろんな相談を受けた場合、そういうふうなことについて難しい問題だなという気がするんですが、どうなんでしょうか。
#108
○政府委員(熊野英昭君) その三年という規定は、先ほど申し上げたと思いますけれども、先行者が資金とか労力を投下した商品に対して、いわゆる成果にフリーライドする、ただ乗りをするということが競争上不正競争であるというふうに考えておるわけでありまして、そういう意味でおおむね三年程度ということで、三年という一つの割り切りをしているわけでございます。
 当然のことながら、その期間経過後にデッドコピーを行うことを積極的に認めようという趣旨でないことはもちろんでございます。また、法律上違法とされない場合であっても、そういった模倣が商業道徳上歓迎されるべきものでないのもまた当然だろうと思います。期間を定めますと、どういうものでも期間を過ぎた、権利を付与したものでもある程度期間を経た後はどうなんだという議論があるわけでありますけれども、この法律にのっとって考えますと、例えば商品の形態が三年を経た後に需要者の間に広く認識されるように至った場合には、第二条第一項第一号の混同惹起行為として、逆にそれをまねした人に対しては場合によって一号を使うことがあり得るかというふうに考えます。
#109
○井上計君 新しい法律ではありませんが、事実上このような新しい法律ができますと、法律知識に中小企業というのは大変乏しいわけですね。また、いろんなことを勉強する、調査する余裕も全くないわけであります。だから、全く本人が善意で自分の文字どおり独創的な商品だといってつくったものでも、これは人間のつくるものでありますから、実際には同じものがあったというようなことも今後やっぱり起きると思うんです。
 その辺について、中小企業に対してはこの法律の趣旨、目的、規制等々について十二分に周知徹底するようにぜひ指導をしていただかなくちゃいかぬ、こう考えるんですが、その面についてはどのような周知徹底する方法を具体的にお考えかどうか、このことをお伺いをして、質問を終わります。
#110
○政府委員(熊野英昭君) 前回、平成二年に法律改正を行いました際にも、いろいろな解説書をつくって、その解説書に基づいて説明会を行ったりしたわけでありますけれども、今回全面的に平仮名に書き改めたこともございますので、法律の全部について詳しく、また易しい解説書をつくらしていただきたいと思っております。
 その中には、当然のことながら立法の経緯でありますとか、あるいはいろいろ産構審等で議論されたようなものも例えば参考資料に付するとか、具体的にできるだけ皆さんに改正内容が御理解いただけるような努力をしたいと思います。
 それからまた、単に解説書をつくるだけではなくて、地方通産局のあるところに参りまして、地方の中小企業の皆様にも御理解をいただく、あるいは中小企業団体等たくさんございますので、中小企業庁の関係を通じて、あるいは私どもの関係原局を通じて、関係業界等にも十分そういう資料等が流れるように対応していきたいというふうに考えております。
 また、いろいろ御指摘ございましたら御指示を賜れば、それにのっとって対応させていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
#111
○井上計君 ぜひそういう周知徹底の方法を具体的にお考えいただきたいと思うんです。
 今局長お話しの中で、いろいろな中小企業団体はそれぞれ機関紙をみんな持っているわけですね。したがって、その機関紙をぜひ有効に使うように、機関紙にそういうふうなPRといいますか指導の原稿をどんどん渡して、それぞれの団体が命度機関紙で周知するように、役所からくる文書だとかは中身見ない人がおりますが、機関紙は大体みんな見ていますので、ぜひ機関紙を活用するようにお考えいただきたい、こう思います。
 終わります。
#112
○市川正一君 この法案では、規制の対象になる不正競争行為を第二条第一項で限定的に列挙しています。しかし、経済社会の変化に応じて不正競争行為でも新しい類型が出てくることが十分に予想されます。これに対応するためには、この法律のバックボーンになっているパリ条約第十条の二の(2)、そこに規定しております「工業上又は商業上の公正な慣習に反するすべての競争行為は、不正競争行為を構成する。」といったような一般条項が必要であると思うんですが、この点どうお考えでしょうか。
#113
○政府委員(熊野英昭君) 一般条項を導入することにつきましては、産業構造審議会におきましても大変活発な議論が行われたところでございます。積極論、消極論あったわけでありますけれども、答申におきまして当面見送るのが適当との結論を得ました。ただ、今後さらに勉強は続けていこうということになっているところでございます。これを踏まえまして、今般の改正におきましては一般条項の規定を設けなかったところでありますけれども、経済社会の変化に応じて逐次法改正を行って対応していく必要があろうかと思っております。
#114
○市川正一君 ぜひこの点は研究、勉強をお互いに続けていきたいというふうに私は思いますし、要望いたします。
 一九九二年十二月に産構審の知的財産政策部会が出しました「不正競争防止法の見直しの方向」を見ますと、この一般条項導入問題を初め、独禁法で言う不公正な取引方法もこの法案に取り込むという問題などについて検討を行っていくべき課題と、こう述べております。
 第一問とも関連しますが、いつごろまでにその結論を出そうというめどなのか、もしお考えありましたら伺いたいと思います。
#115
○政府委員(熊野英昭君) 独禁法上いわゆる不公正な取引方法として指摘されております行為の中には、不当廉売とか取引妨害といったふうな行為が含まれているわけでありますけれども、これらを不正競争防止法の対象として民事的請求の対象とするかどうかについては、産構審においても活発な議論を行ったところであります。ただいま委員御指摘のように引き続き検討していくということで、一般条項と同じような不正競争行為の類型をどうするかということでありますから、それを入れるのが適当かどうか、あるいはほかの法律との対比、景表法、独禁法、その他いろいろなことを考えながら勉強を続けていきたいと考えております。
#116
○市川正一君 ずるずると日を延ばすんじゃなしに、一定のめどといいますか区切りをつけた研究を期待しております。
 次に、ぜひ伺いたいのは、不正競争による被害者は競争関係にある事業者だけではないと思うんです。その取引の中で消費者も被害を受けることはしばしばであります。法案の目的に消費者の権利保護を明記し、不正競争行為には消費者ないし消費者団体も差しとめや損害賠償が請求できるようにすべきだという意見もございます。そうした意見は被害防止と不正競争防止に有効である、私もこう思考いたしますが、こうした点で、大臣うなずいていらっしゃいますのでもし何か見解ございましたら承りたい。
#117
○国務大臣(森喜朗君) 現行法は、御承知のように、競争事業者によります民事的な措置を通じまして公正な競争秩序を確立しようというものでございまして、消費者の保護を直接の目的としていないけれども、公正な競争秩序が確立されることによって消費者保護にも間接的に資することは、これは当然なことでございます。さらに、社会的悪性の強い一定の類型に対しましては刑事罰を適用することになりますから、消費者保護の観点をも加味しているというふうに考えられるところでございます。
 産構審におきましても、不正競争防止法の目的に消費者利益の保護を加え、不正競争の停止、予防請求権の請求権者を消費者並びに消費者団体にも拡大すべきか否かという点につきましては、先ほどから局長答えておりますように活発な論議が行われてきたところでございますが、昨年十二月の答申ではなお時期尚早として引き続き検討していくということになったわけでございます。このため、今回の改正法案におきましては目的の拡大を行ってはおりませんが、右答申の趣旨を踏まえて今後必要に応じ検討してまいりたい、このように考えております。
 委員から御指摘のとおり、国民の立場に立って施策を推進すべきことは行政を預かる者といたしまして常に心にとめておくべきことであり、今後とも消費者保護行政には遺漏なきように期してまいりたい、このように考えております。
#118
○市川正一君 もう一点ちょっと具体論でお聞きしておきたいのは、第六条のただし書きで、書類提出が拒否できる「正当な理由」というのがありますが、これは具体的にどういう理由を指すのか。例えば、企業秘密などという一般的な理由がもし認められるようになるとこの条文が事実上骨抜きになるおそれがあるんじゃないか、こう懸念されるんですが、その点はどうなんですか。
#119
○政府委員(熊野英昭君) 本条におきます、ただいま御質問の「正当な理由」というのは、例えば当該書類が存在しないというようなことを想定しておりまして、例えばその書類が使用中であるからちょっとそっちに回せないなどというのは該当しないというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、正当な理由の有無については最終的に裁判所において判断されることとなるわけでありますから、御指摘のようないわゆる脱法的な行為が是認されるということにはならないものと考えております。
#120
○市川正一君 実は、この法改正には我が党は賛成の立場に立っております。石黒審議官などからも直接詳しい説明をいただきました。大臣からも答弁に立っていただきました。
 質問はこの程度にとどめて、あとの時間を九州ニチイが佐賀県三養基郡上峰町に出店するマイカルタウン上峰の問題についてお伺いをいたしたいと思うのであります。
 というのは、ちょうど二年前でありますが、第百二十国会の本委員会において私が取り上げました。ここに会議録も持ってまいりましたんですが、改正大店法の本質を示すまさに典型例である。また、森通産大臣にもかかわる問題なんです。
 そこで、まず大臣にお聞きしたいんですが、去年の十二月十八日、細川審議官、河本商政課長も同席して、佐賀県の三神地区の商工会連絡協議会と大型店対策協議会の両代表とお会いになって大店審の結審に対する再審意見書を受け取られたはずであります。それを受けて森大臣が再審査の手続をなされたのかどうか、去年の暮れのことで記憶は生々しいと思うんですが、思い出してくれませんか。自民党の坂井代議士……。
 手続なさったかどうか、そこからまずお話を承りたい。
#121
○国務大臣(森喜朗君) 大店法のこうした大型店舗の進出は私どもも選挙区でいつも頭を痛めている問題でございまして、特に私は地元が人口わずか十万ちょっとの小松市というところでございますから、本当にこの問題は困るんですね。商店街にとってはいろいろな意見もありますから、どちらかというと商店街のお父さんは困る困ると言っていますが、息子の方がたな子の方に入っちゃいましてそっちを進めておるとかいろんなことがございますし、政治が絡んだり非常に難しい問題で私どもも頭を痛めます。
 しかし、たしか坂井隆憲代議士から依頼を受けて、私も就任間もないころでございましたので、今前段に私は冗談のように申し上げたのは、やっぱり冗談ではなくて本当にきつい問題ですから、政治家にとっては非常に命取りになるところもございますから、私も判断を示すというわけにいきませんので担当の方へおろしまして、たしか細川さんに少しよく地元の意見も聞いてあげなさいというふうに命じたということを今思い出しております。
#122
○市川正一君 そうすると、大臣としてはまだその再審手続の措置は今のところとっていらっしゃらないというふうに確認をした上で、それではあきまへんでという話にこれから入っていきたいんです。
 中身をだんだん思い出していただけると思うんですが、このマイカルタウン上峰に関する事前広域商調協、上峰町の商調協の委員が二万五千平米を主張しました。そして、神崎町その他の周辺四カ町は四千二百平米を主張いたしました。意見が分かれたために両論併記で結審をしておりました。それにもかかわらず、大店番九州審議部会佐賀審査会は、当事者から直接意見を聞くこともなしに書面審査だけで二万一千二百平米の結審を出しました。周辺四町の主張とでは五倍以上の開きが出たんです。
 影響が広域に及ぶことが予想されたからこそ広域商調協を開いたのではないんですか。これで地元の意見を尊重したと言えるのかということをまず第一にお伺いいたしたいと思います。
#123
○政府委員(細川恒君) 今の御質問にお答えいたします前に、先ほどの大臣の受けました昨年末の陳情の模様を簡単に申し上げた上で今の御質問にお答えをいたしたいと思います。
 先ほど委員の方からお話がございましたように地元の関係者から陳情がございまして、そのとき当省からは、本件の出店手続はすべて法的に終了いたしておりまして、調整結果について覆すことはできないこと。第二点は、周辺四町の意向が反映されなかったとの疑念につきましては、担当の九州通産局の方から十分に説明を行うという本省で回答を行いまして、これを受けまして九州通産局におきまして、商調協における議論やその際の周辺四町の意見につきましても十分に大店審に報告をいたしましたこと。
 第二に、そうした意見も踏まえながら大店審において十分な議論がなされ、総合的判断として結論が出されたものであることにつきまして十分に説明を行ったわけでございます。加えまして、長くなりますが、九州通産局より出店者の九州ニチイに対して……
#124
○市川正一君 今私が聞いていることに絞ってください、経過はもう承知しているのだから。
#125
○政府委員(細川恒君) それで、出店者の九州ニチイに対しましては、地元との共存共栄を図るべき観点から配慮をするようにということもあわせ要請を行ったところでございます。
 今のお話でございますが、この件は委員御存じのように大店法改正前の旧法下における案件でございます。したがいまして、現改正法のもとにおきます事前の意見の集約、地元意見聴取とか地元の意見集約というものは、これは省略することになっております。したがいまして、地元の意見を聞かなかったということではございませんで、事前の商調協で二論併記ということが出ておりますから、その経緯等々を先ほどお話しになりました佐賀の審査会に詳しく報告をいたした上で審査をいただいたという経緯がございます。
#126
○市川正一君 これは旧法と新法のちょうど経過時点に起こった問題なんですね。ですから、新法に基づいて最終的には処理が進められているんですよ。
 そこで伺いますが、この経過には数々の疑惑が含まれています。その一つは、佐賀審査会の結論の前提になっている広域商調協の構成にかかわる問題であります。上峰町の商業委員である、あえて名前を出させていただきますが、田中某氏、江口某氏、両氏とも夫人の名義でこのマイカルタウン上峰のテナントとして出店することになっているんです。両氏は本件について利害関係者です。そもそも商調協の委員になり得ない人物です。それが商調協でも問題になったという経緯があります。また、大店法七条に基づいて、去年の十月二十四日に大店審会長あてに坂田春雄氏が意見書を出して解明を求めております。十二月十八日の大臣への再審意見書の中でもそれは指摘されております。この両委員とも広域商調協の中で九州ニチイの主張に沿った結審を求めている発言、態度、これはもう周知のところです。
 こういう商調協の構成の中に中立性、公正性そのものに疑惑が持たれる。そういう商調協での審議というのは適切、公正なものとこう認定されるんですか。
#127
○政府委員(細川恒君) 先ほどお話がございましたように、本件は旧法と新法との経過のところのものでございますので、その点を踏まえて御説明を申し上げたいと思います。
 まず、旧大店法下におきます商調協の委員は、商業関係者、消費者及び学識経験者の中から商工会議所または商工会において選定されたものでございまして、本件につきましては上峰町商工会において商業者委員十名、消費者委員十名、学識経験者十名の合計三十名が選定をされたわけでございます。先ほどお話がございましたように、本件は広域案件でございましたために、委員は上峰町のほか周知の四町からも選定をされたわけでございます。ちなみに、上峰町関係者は、その他関係町村委員すべてを合わせますと五分の一ということになります。
 御指摘のとおり結果といたしまして、旧事前商調協委員であった者のうちの二名、先ほどもお話がございましたが、その者の配偶者が当該商業施設のテナントヘの入居予定者として届け出をしている事実というのは私どもも承知をいたしております。商調協の委員の選定に当たりましては、つまり旧法のもとの選定に当たりましては、九州通産局において出店予定者が含まれていないことにつきまして当時確認をいたしまして、それらの二名が出店予定者であるとの事実は把握をしていないということのもとで商調協の委員の選定が行われたわけでございまして、私どもはこの時点における委員の選定において問題があったとは考えていないわけでございます。
#128
○市川正一君 どうして。あなた、この田中、江口両名の配偶者がテナントとしての出店の当事者であるということを今認めたじゃないですか。それはやっぱり、その当事者が商調協の構成メンバーになっているということは、これは公正さを欠くじゃないですか。
 それだけじゃないんですよ。一つ一つ聞きますから、長々の説明じゃなしにそれを認めるかどうかで答えてほしいんですが、大店審の佐賀審査会の構成についてもやはり重大な問題があります。
 大臣、あなたにかかわってくることなんでよう聞いておいてほしいんですが、佐賀審査会の委員の一員である大石という佐賀大学の経済学部助教授は、九二年の三月から九三年九月、ことしの九月まで一年半アメリカに留学中で、本件の審議には全く参加していないんです。同助教授の海外留学は既に九一年十月時点で決まっておったんです。審査会の委員の職務が果たせないということは事前にもう明々白々だった。それをあえて任命しているんです。
 さらに不可解なのは、同助教授自身が留学に先立って委員の辞任届を提出したが、通産局はそれを握りつぶしたままなんです。これについて同助教授自身も、通産省側に事情があったようだと四月一日付の毎日新聞で彼は語っております。
 しかも、佐賀審査会の七人のメンバーのうち三人は、佐賀大学経済学部の教官であります。通常、同じ大学の同じ学部のそういう教官を同時に複数任命するということはほかに例を見ません。それは、大学内部の人脈や師弟関係などから公正、中立性を保障するためにあえて避けるというのが常識じゃありませんか。
 衆知を集めて審議を尽くすべき審査会の欠員をあえて補充せずに審議を強行した、そういう九州通産局のやり方を本省側は、細川さん、あなたはずっとつき合っているようですけれども、公正、民主的というふうに言えるんですか。今の問題についてはっきり答えてほしい。
#129
○政府委員(細川恒君) 三点ばかり御質問ございましたので、一つずつ申し上げます。
 第一点は、関係者が事前商調協に入っておるじゃないかということでございますが、この点については日時をもって申し上げたいんですが、事前商調協は平成三年の九月七日に二論併記という形で結論を出しております。先ほどお話がございました関係者が入っているかどうかということが判明をいたしましたのは翌年、すなわち平成四年の九月四日になりまして五条届け出がございました。そこで初めてわかったことでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、事前商調協のメンバーの選定の時点ではかかる事実というのはわかっておらなかったということを申し上げたわけでございます。
 続きまして、佐賀審査会の関係者の件でございますが、お話もございましたように大店審の委員は何よりも申立、公正であることが不可欠でございます。こうした観点から、一般的に地元の学識経験者を対象にいたしまして、都道府県、商工会議所、商工会などとも十分に相談をしながら当省として人選を行っておるという事情がございます。
 この佐賀審査会につきましても、人選当時、といいますのは平成三年の十一月及び十二月でございますが、さらに新法の施行時点におきます昨年の一月、その時点におきます佐賀県内での大学学部の設置状況、それにかんがみまして、本審査会として最も適切な委員がどなたであるかということを慎重に考えました結果、佐賀大学から関係者が選ばれたという経緯がございます。今申し上げましたような経緯を経まして、地元の商工会議所、地元自治体とも相談をいたしまして、当該地区の商業事業に明るい委員の発掘に努めました結果として七名の委員を人選した経緯がございます。
 続きまして、関係者の留学の件でございますが、御指摘ございましたように委員のうちの一名が任命後に海外留学をいたしまして、したがって今件の審査に参画をしていないという事実はございます。当人の意思表示がございましたのは平成四年の三月二日でございまして、二日というのはその佐賀審査会が設立をされた最初の委員会でございました。その次の会合におきまして、本人の意思表示につきましてどうするかということでございましたが、それを考えましたけれども、審査会の適切な人選を行うため最大限の努力をして、そしてようやく七名の適格な者を選んだという経緯があること、それから大店番運営規定上、審査会は会長を含めまして五人から九人で構成されるということにされておりまして、一名欠くこととなりましても大店番運営規定上問題を生じないことなどにかんがみまして、審査会として当該委員の留学中は委員六名による審議を行うことについて差し支えない旨の了解が成立をしていたという経緯がございます。
 こうした経緯を踏まえまして、本件につきましては同委員の不在中に佐賀審査会において審議を行うこととなったわけでございますが、委員七名中六名は三回の審査にすべて参加をされておりますし、さまざまな角度から慎重に審査をいただいた上で調整結果が適正なものということになったと考えております。
#130
○市川正一君 そういうつじつま合わせの作文を何ぼ読んでも事実はごまかせないですよ。例えば、二人がテナントの出店者であったということは後でわかったというわけでしょう。後でわかったら、僕はその決定が無効とは言わぬが、少なくともやり直すぐらいの誠意を示すべきです。それから、任命後外国へ行くことになったというけれども、任命する前に留学することははっきりわかっていたじゃないですか。おまけに、彼が辞任届を出しているのにそれを握りつぶしている。何か事情があったらしいと本人が言っているじゃないですか。さらに、地元では、五条申請のテナント名を商調協委員の名前じゃなしに配偶者、夫人の名前にしろと通産省が示唆したということは専らの評判として広がっていますよ。現場へ行ってみなさい。そういうことをあなた承知の上でのうのうとそんな作文を読み上げたものです。
 さらに聞きたい。九州ニチイの上峰店の出店については、大店法第七条に基づく意見書あるいは抗議電報など多くの反対意見が寄せられている。大臣のところにも来ているはず。大臣にかわってあなたよく見ているでしょう。佐賀の県議会でも自民党の県会議員を含めて超党派で反対しているんですよ。井本県知事もそうです。九州ニチイに地元への配慮を要求しております。
 ところが、去年の十二月二十三日付の朝日新聞佐賀県版で九州ニチイの梶栗忠雄開発部長はどない言ってます。大店法が緩和された時点で地元商店街の現状維持の道はなくなった、人は我々が呼んでくる、地元は業種転換、テナント入居、宅地化などいろいろな道を選択をしてほしい、こう語ったと報道されているんですよ。あなた知っているでしょう。読んでなかったら渡しますよ。
 つまり、地元の業者は、小売業はニチイに任せ、転業するか、商売している土地は宅地にして売りなさいと。しかし、テナント入居といってもほとんど入れぬのです。三十九店中七店だけしかまだ上がっておりません。だから、結局この町から出ていけと公然と宣言しているのに等しいじゃないですか。地元との共存共栄、あなたはさっき共存共栄と言われた。そんなこと、はなから考えてますか。こういう横暴な企業行動が許されるのですか。これでも地元の意見が尊重され、十分審議が尽くされていると言うんですか。私はしかとその点について答弁を承りたい。
#131
○政府委員(細川恒君) たくさんの点を御質問いただきましたので、かいつまんで申し上げたいと思います。
 再度お話のございました事前商調協のメンバーの件につきましては、先ほど申し上げましたので繰り返すことを差し控えさせていただきます。加えまして、佐賀審査会の関係者の海外留学の件につきましても、日時をもって申し上げましたので、これも省略をさせていただきます。ただ、先ほどお話のございました配偶者の名前をもって申請をしろ、こういうことについて当省がかかわったような御発言がございましたが、そのような事実はないことを申し上げておきたいと思います。
 その上で、今お話のございましたニチイの新聞で報じられました発言の件でございますが、会社の関係者が地元でどのような発言を具体的に行いましたか、これについては把握をいたしておりませんけれども、地元商店街を無視するような考え方が表明されたというふうには考えておらないところでございます。仮に地元商店街を無視するような発言をしたということが事実であるとすれば、中小店と大型店が共存共栄関係の中で魅力ある商店街あるいは商業集積づくりを進めることを旨とする当省の立場から遺憾なことだと思います。
 私どもこういう立場にございますので、その立場に基づきまして、通産省として事業者に対して、出店に当たっては地域経済社会との調和などの観点にも十分配慮するべき旨の通達を出しておりまして、これは改正大店法施行の二日前、昨年の一片二十九日に出しておるわけでございます。その上で本件、具体的な案件につきましても、昨年の平成四年十二月十六日に九州通産局から出店者であります九州ニチイに対しまして、テナントの入居に当たっては地元を優先するなど地元との共存共栄に努めるべき旨を要請したところでございます。
#132
○市川正一君 時間が迫ってまいりましたので、最後に大臣に伺います。
 以上のような経緯で、去年の暮れに大臣のところにいわば要請に伺ったわけです。九州ニチイの態度は、細川審議官が盛んに弁明されるんだけれども、まさにそこのけそこのけニチイが通るという傍若無人です。先ほど来指摘したように利害関係者を参加させるなど、その構成と運営に重大な問題を持つ広域商調協でさえ両論併記とせざるを得なかった。その両論併記という結論を、同様にその委員の構成と運営に問題を持つ佐賀審査会が十分な審議もせずに九州ニチイの意向に沿った結審を出したんです。しかも、その根拠について佐賀県知事にも、地元の町長にも、議会にも、業者団体にも一切明らかにされておりません。会議録も見せられていないんです。問答無用の結論だけの押しつけです。
 こういう二重三重に不当なやり方が実は改正大店法によってすべて森通産大臣、あなたの名のもとにやられているんです。御承知のように、改正された現行大店法では、通産大臣によってそれぞれ任命される大店審委員、九州審議部会委員、そして佐賀審査会委員によって審議されているわけで、つまり森大臣の意図とは無関係にこういうことがやられているんです。
 私は大臣に要望いたします。本件についてこれまでの経過をよく精査いただき、適法なルールに基づいて審議をし直す、少なくとももう一遍そこは調べ直す、それが筋ではないかと思うのでありますが、誠意のある答弁を求めて、私の質問を終わります。
#133
○国務大臣(森喜朗君) 先ほども冒頭に申し上げましたようにちょうど私が就任した直後のことでございまして、それ以前の経緯については私も詳細を承知いたしておりませんが、先ほど申し上げましたように、地元の坂井代議士がお話だけ聞いてやってほしいということでございました。先生もいろいろおっしゃるように、いろんな意見がやっぱりあるようでございました。しかし、話をよく聞くようにということでございましたから、伺って私がその場で判断を示すというわけにもいきませんので、細川君の方でよく対応するようにと、こう申し上げたわけでございます。
 今いろいろとお話を聞いておりましても、先ほど申し上げたように、私たちのときにもよくこのようなことがございまして、都合が悪くなると、先生のおっしゃったのがそうだという意味じゃありませんよ、私の自分の体験で申し上げると、いやあれは森代議士がいいと言ったからだとか、あれは市長がそうしろと言ったんだとか、じゃ何でそんなことをやったんだと言ったら、いやそれは何か通産局がいいと言ったとか。大概後から話というのはみんなそんなふうにつながっていくものなんですね。
 ですから、少なくとも九州通産局等はきちっとした法律のもとでその対応をしていったと私は信じたい、こう思います。本件につきましては、大店法上の手続に沿って大店審において慎重に審議をして結論を得ておるわけでございますので、いろいろと御意見やいろんなお考えもあるようでございますが、そのプロセスと結論においては、今細川君から御説明申し上げましたように大型店側の意向に沿ってすべて進めていたものではない、このように私は承知をいたしております。
#134
○市川正一君 一遍洗ってくれませんか。
#135
○国務大臣(森喜朗君) いろんな事情もあるようでございますから、お話は聞いてみたい、こう思いますが、審議官から申し上げたとおりである、このように思っております。
#136
○市川正一君 大臣として一遍洗い直してみてください。
#137
○古川太三郎君 朝からの論議で、この不正競争防止法の目的に関しては同僚議員が質問しております。そして、またそれについてのお答えもいただいておりますが、事業者間だけを規定するということについては局長の先ほどからの答弁だけでは非常に不十分だ。もし事業者間だけだというならば被害者の大多数が一般消費者であること、この認識が足らないんではないか、こう思うわけなんです。
 二条の一項一号あるいは二号なんというのは、大体被害者という件数をとれば、百人のうち九十八人ぐらいまでは一般の消費者だと私は見ています。そして、本当に事業者間だけを規定する法律だと言われるのならば、これまたおかしな規定で、二条の一項七号とかあるいは九条の「外国の国旗等の商業上の使用禁止」あるいは十条の「国際機関の標章の商業上の使用禁止」、こういったのは事業者間という概念が入ってこないんです。何でこんなところにこういうものが出てくるんだろうか。これまた不思議に思うわけなんですけれども、そういった矛盾はどうお考えになっているのか、お聞かせください。
#138
○政府委員(熊野英昭君) この法案は、ただいま委員御指摘のように第一条に明記しておりますように「事業者間の公正な競争」、これを確保するために「不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等」、いわゆる民事上の措置、民事上の請求権をもって国民経済の健全な発展に寄与するということを基本的な目的にしているわけであります。ただ、そういうことで公正な競争秩序を確立した結果として消費者へ間接的な利益が及ぶことは当然でありますし、それから社会的悪性の強いものについては刑事罰を適用するということで、消費者保護の観点をも加味しているわけであります。
 他方、それではその目的を拡大して消費者保護に直接ということにつきましては、これも先ほど来御説明しておりますように我が国におきましては、消費者保護の観点から景品表示法もございますし、いろいろな業法、訪問販売法とか家庭用品品質表示法といったふうな消費者保護の法律もあるわけでありまして、そういうものでいろいろな規定があるわけであります。そういう中で消費者利益の観点からあえてこの段階で、例えば消費者に請求権を付与することの適否については各面から議論をした結果、産構審においてもなお勉強は続けていったらいいということにはなっておりますけれども、今回の法改正においてはこういう対応をしたわけであります。
 それから、国際約束との関係についても御指摘があったかと思いますけれども、不正競争におきます国際約束には工業所有権の保護に関するパリ条約、あるいはそのパリ条約の特別取り決めてございますところの虚偽のまたは誤認を生じさせる原産地表示の防止に関するマドリッド協定がございます。
 その中で、パリ条約の第六条の三に国の紋章等の保護という規定がございまして、そのパリ条約を受けまして、この不正競争防止法の目的の一つとして掲げ、そして第九条の「外国の国旗等の商業上の使用禁止」という規定を設けたところでございます。これは、ただいま申しましたように第六条の三の規定を受けまして、外国の国旗等の商業上の使用を禁止する規定でございますけれども、その保護法益というのは、外国の国の威信でありますとか国民の名誉感情ということでございます。
 第一項は外国の国旗、国の紋章その他の外国の記章、記章というのは象徴的な図形を言いますが、そういう意味で旗章あるいは紋章を含む概念でございます。これらの商標としての使用を禁止するものであります。第二項は、そのうち特に国の紋章について商品の原産地を誤認させるような方法での使用を禁止するものであります。
   〔委員長退席、理事松尾官平君着席〕
また、第三項は、外国の政府もしくは地方公共団体の監督用あるいは証明用の印章でありますとか記号でありますとか、例えばバターとかチーズといったふうなものの生産物などについて検査に合格をしたといったようなものを証するためのものの商標としての使用を禁止するものであるというのがその趣旨でございます。
#139
○古川太三郎君 私が聞いているのは、九条とか十条は事業者間という概念がむしろ入ってこない。そういうものをなぜ目的のときに事業者間だけに絞るのか。そこをちょっと今までの議論を聞いていて不思議に思ったからお聞きしたので、そのことを聞いているのです。
#140
○政府委員(熊野英昭君) 第一条の目的には、「事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、」ということで、国際約束の的確な実施が入っておるわけでございます。そういう意味で、先ほどパリ条約の第六条の三を御説明して、それを受けて規定しているところでございます。
#141
○古川太三郎君 それならば、パリ条約の十条の二に規定しているように「国民を不正競争から有効に保護する。」とか、こういった保護規定もこの目的に入れてもいいんじゃないか、こう思うわけなんです。もしそういうように国民の保護規定が入れば、これは被害者である消費者団体も差しとめとかそういったこともいろいろできる。また、こういう消費者団体が入ってこそ、不正競争というような本当にわかりにくい概念、そういったものの理解が国民に伝わっていくんじゃないかというように思うんですけれども、いかがですか。
#142
○政府委員(熊野英昭君) パリ条約の、ただいま御指摘の第十条の二の不正競争行為の禁止に基づいて、この第十条の二におきましては「工業上又は商業上の公正な慣習に反するすべての競争行為は、不正競争行為を構成する。」というふうになっておりまして、その趣旨を実現するためには、一般条項の……
#143
○古川太三郎君 一般条項のことじゃない、保護規定。この規定では、「各同盟国は、同盟国の国民を不正競争から有効に保護する。」というのが(1)にあるわけなんですね。ということは、日本の法律にも不正競争防止法にその目的を、国民を不正競争から有効に保護するという保護規定を入れて何ら悪いことはないじゃないですか、こういう趣旨です。
#144
○政府委員(熊野英昭君) 大変繰り返しになって恐縮でございますけれども、我が国におきましては、消費者保護の観点から景品表示法その他いろいろな法律があるわけであります。そういう形で消費者の保護を片ややっているわけでありまして、そういう消費者保護を目的とするいろんな法律が一方で存在する中で、基本的に事業者間の公正な競争を確保するという不正競争防止法の目的を変えてまで、例えば今おっしゃるような消費者保護の形はいろいろあると思いますけれども、御趣旨が例えば消費者や消費者団体に請求権を付与するというようなことであれば、現段階においてはそこまで必要ではないというのが産業構造審議会でいろいろ法律専門家含めまして議論をした結果の結論でございます。
 ただ、そういうことについて引き続き検討はしていく必要があるだろうということで、産業構造審議会の知的財産部会においても勉強は続けていきたいということでございます。
   〔理事松尾官平君退席、委員長着席〕
#145
○古川太三郎君 今局長がおっしゃっているのは意味もわかるんですけれども、先ほどからこの目的に関して消費者団体の訴訟適格ですか、そういったものがないこと、これは今仕方ないと。それは、またほかに景品表示法とかあるいは個別の宅建取引法あるいは旅行業法、訪問販売法、薬事法、食品衛生法、家庭用品品質表示法、こういったことで救済されているからいいんだというのはもう朝からよく聞きました。
 しかし、そういう個別の法律でそういったものを一つ一つ救済していくよりも、不正競争の本当に被害者、これも先ほども申しましたように不正競争をやられたのじゃたまらないと言われるのが国民一般なんですね。そして、事業者というのは本当に利害関係の出るわずかな人なんです。そういう中で、消費者団体の提訴権まで奪ってしまうというようなことであってはならないと思うんです。せっかくこういう法律ができたんですから、消費者団体の提訴権までつくったらどうか。しかも、パリ条約では国民一般が保護されるんだというような規定まであるわけなんです。それをわざわざ日本の法律で落としてしまうことはないんじゃないかなと思うんですが、いかがですか。
#146
○政府委員(熊野英昭君) パリ条約に規定してありますところの国際約束を不正競争防止法で十分に受けているかどうかにつきましては、いかなる方法で不正競争を防止するかということは各国の法制にゆだねられているところでございます。私どもは、法制局と十分審議をしてそういうふうに理解をしているわけであります。
 それから、消費者でありますとか、あるいは消費者団体の訴権については、先ほど来申し上げておりますように行政庁の責任においていろんな立法において所与の目的を達成することが予定されているわけでありますし、さらには民法の一般的な規定もございます。それから、いわゆるクーリングオフの制度につきましても、割販法でありますとか訪販法において規定をされているということでございますので、現段階でこの法目的を変えてまで消費者団体に訴権を与えるのが適当であるかどうかというふうに判断したわけであります。
 なお、その差しとめ請求権を消費者団体に与えた例といたしまして、ドイツ、スイスの例がございます。ドイツにおきましては、実は事業者、事業者団体、消費者団体等に請求権を認めているわけでありますけれども、実際にどういうことが起きたかと申しますと、消費者団体等の請求権の乱用が見られたために、その後に乱用規制を図っているという状況も片やあるところでございます。他方、スイスにおきましても消費者団体、事業者団体等とあわせまして請求権を認めているところでございますけれども、こちらにおきましては実際に消費者個人による訴訟は起きていない。消費者団体による訴訟が若干数件だけあるというふうに承知をしておるところでございます。
#147
○古川太三郎君 ドイツの例なんか持ち出されましたけれども、ドイツの例で言えば、これは消費者団体が訴訟すれば補助金なんかもらえるとか、いろいろの制度があるからそういう乱用制度が出てくるので、その部分を乱用だということでむしろ修正しているんですよ。そうじゃなくて、日本の消費者が裁判やるのにどこから補助金もらうんですか。そんな制度ないでしょう。そういう制度のないときに今おっしゃるようなことをおっしゃっても、これは全然ピント外れの私は答えだと思うんです。
 それから、いま一つ、先ほどから訪問販売とか薬事法とか、いろいろの法律で行政が主導的な責任を持ってその所与の目的を達成している、こういうこともお話しになりましたけれども、私はそのことが一番今日本で直していかなきゃならぬことだと思うんです。行政措置によって救えば国民一般はそれでいいんだという発想そのものが通産省のやっぱり一番悪いところで、これはもういまだに日本を啓蒙的な時代だというように置いているのと一緒なんです。
 そういったことから、許認可の発想がたくさん出てくるんですよ。許認可をなくしていこうという基本に立ては、こういういろいろのものについては行政が主導的な地位を持つんじゃなくて、むしろ国民一般から、これは私が損害をこうむったんですよというような形で訴訟が起きてくることによって、こういう社会通念でどれが不正だとかいうようなことが教育されていくんです。それを初めから、国民はもう黙っていてもいいんだ、知らなくてもいいんだ、行政がちゃんとやってあげます、こういう発想そのものが私たちは非常に間違った発想ではないか、こう思うんですけれども、どうですか、そこは。
#148
○政府委員(熊野英昭君) 御指摘のような議論がいろんな意味であることは承知をしております。消費者の意識においてどうあったらいいかとか、いろいろな観点からの議論はあろうと思います。
 しかしながら、現状におきましてどういうことかというと、先ほど来申し上げておりますようにいろいろな消費者保護法規もあります。それから一般的に民法の規定もあるわけでありますし、それから特別法としてクーリングオフといった格好で消費者の権利を確保しているようなものもあるわけであります。そういう中で、どういうふうに全体の中で考えるかということでいろいろな専門家に入っていただいて、あるいは実務者等々に入っていただいて御議論いただいた結果として、現状において不正競争防止法の法目的を変えてまで消費者や消費者団体に訴権を付与する必要性はないんではないかというのが一応の結論であったわけであります。
 ただ、このことについては引き続き勉強していくようにということになっておりますので、私どもとしても行政の立場からももちろん勉強を続けてまいりますし、産業構造審議会の知的財産部会におきまして、また必要に応じそういう御議論をいただきたいというふうに考えております。
#149
○古川太三郎君 この法律自体の基本は、工業所有権法なんかで保護されてない、要するに権利としてしっかりとした概念がない不正というような社会通念でこれは悪いんだよというものの列挙でしょう。そういう意味で、これは権利と違うわけなんです。それを侵害したとか侵害しないとかいう場合に、非常にあいまいになってくることも事実なんです。やはり自分がこれは損害をこうむったと言える人、これは何も業者だけじゃなくて一般の人もそれは言うべきことなんで、またそのことを考えることによってこの不正競争防止法というのが本当に実効あるものになるはずなんです。
 それを事業者だけで考えればいいんだ、事業者だけの争いだというような発想では、社会通念として不正というような概念の教育になっていかないんだ。そういったことは全部役所がやりますというようなことではいつまでたっても国民を愚弄していることになるんじゃないか、私はそう思ってもう少し発想を転換していただいて、国民の皆さんが自分の権利が侵害されたのなら自分でやりなさいと。少しずつでもそういう窓口を広げていくような形にしていただきたい。
 そういう意味から、少なくともパリ条約にもあるんですから、国民が全部救われるんだと、そのくらいの一般規定を入れても何ら不思議じゃないと思う。そしてまた、せっかく差しとめ請求までできたのなら、これは消費者団体ぐらいにはその訴訟適格を与える必要があるんではないか。そういうことによって、国民はどれが不正な競争なのかということが徐々にわかっていく。そういう社会通念の高揚がない限りは、不正競争の法律そのものがこれは余り意味がないんですね。意味がないと言っては語弊がありますけれども、本当に業者同士の争いで国民的な法律ではないことだけは事実なんです。そのことを指摘申し上げたいと思います。そしてまた、そういうことの発想が許認可権限というものをだんだん少なくしていける発想にもつながっていく、私はそう思います。
 最期に、大臣に御意見を伺いたいんです。
 今まで申しましたように、この法律自体は非常にこれから重要な法律になっていくだろうと思います。そういう意味で、賛成ではありますけれども、国民の深い理解がない限りこの法律は本当に有効に適用されていかない。一方、これは先ほど申しましたように権利として保護されるべき権利じゃないですから、むしろ不正行為という社会通念、社会概念で行動、判断をしていかなきゃならぬ非常に難しいところにございます。それだけに、一方では安心して行動ができるようなシステムがない限り、これまた非常に問題になってくるだろうと思うんです。そういう意味から、営業の自由だとかあるいは職業選択の自由との整合性が問題になるだろう。
 また、今盛んに言われておりますが、今までは終身雇用だったけれども終身雇用制はこれからは非常に問題になってくるだろう。こう言われる中で、職業転換する場合に、どこどこの研究所に勤めていてその研究をもとにして自分が仕事をしたいとかいうようなときに、日本の社会の常識からいけばなかなか権利意識がといいますか、そういう個人的な考え方ができない社会ですから、今まで勤めていたところからちょっと文句を言われると、もうそれに従うような性質がございます。また、自分自身で自主規制するということに国民はなれ切っておりますので、非常に活動の自由が制限されるんじゃないか。
 また会社でも、下請は親請にちょっと言われると、秘密というような形で非常に窮屈な営業活動しかできなくなる。ほかのところにその商品を卸そうと思ってもなかなかしにくい、親請だけのところにしか商品を持っていけないとかいうような部分もございます。
 そういう意味から、不必要な制限をなるべく排除するような、そういう趣旨で国民に本当に理解されるような方に持っていくのにはどうしたらいいか、大臣の御所見だけお聞きしまして終わりたいと思います。
#150
○国務大臣(森喜朗君) 午前中から各党各委員の皆様のいろんな御提言も含めて、またこの法に対してそれぞれのお立場で未整備なところなどの御指摘もございました。通産省としては、この委員会での皆様の御発言を今後とも十二分に参考にさせていただきたい、こうまず最初に申し上げておきます。
 今委員からもいわゆる消費者保護についての欠落といいますか、足らざるところの御指摘もございましたが、基本的には本来は法律というものは余りない方がいいわけでありまして、規制などは解除しようというようなことがよく出てきます。企業などでも、考えてみますと景気をよくする一番いい方法は何だ、いろいろと各地方の意見を自民党で聞いてきたら、それは規制緩和することが一番いいだろうとよく言われます。しかし、やっぱりそこは競争が正しく行われていくためには、そういう生産面あるいは販売方法、営業上の方法、すべて法と体制の中で秩序正しく行われていくということが自由主義、資本主義の最も大事な要請だ、私どもはそう考えております。
 そういう意味で、委員の皆様からは国際的にかなり今の日本のあるべき立場としてはふさわしいというお褒めもいただいているわけでございますし、角度を変えてみますと、また今古川委員から御指摘のようにいろんな問題があるということもよくわかりました。私も先ほど市川委員にも申し上げましたし、これからまた各界の方々からいろんな御意見をいただいて検討していくということを申し上げておるわけでございますので、どうぞ御理解をいただきたいと思います。
 一般に、法律は広く国民の理解を得るということが一番必要でありまして、特に本法のような民事法は国民の権利義務に関するものでございますために、委員から御指摘のように一層深い国民の理解を得るということが必要であろう、このように認識をいたしております。したがって、前回の改正のときには東京だけではなくて、通産局所在地等の地方におきましても広範な説明会を開催いたしております。また、わかりやすい解説書の発行等も通じて周知徹底を回らせていただいたところでございます。現行法におきます国民の理解が浅いのではないかという御指摘は、率直に受けとめてまいらなければならぬと思っております。本法案の成立後は、さらに詳細なる説明会の開催あるいは解説書の発行など一層積極的に進めてまいりまして周知徹底に努めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
#151
○小池百合子君 それでは伺わせていただきます。
 昭和九年に不正競争防止法が立法されてから今日まで行われてきた改正はすべて外圧ということが言えると思うのでございますが、今回初めて自主的に改正を行うのではないかというふうに考えております。
 そこでお伺いしたいんですが、今回のこの立法の必要性、改正の必要性ということを確認するために一体どのような調査を実際に行ってこられたのか。現行の商標法、意匠法、不正競争防止法などでは不正競争対策に不十分であるという事実をもってそういう結論に達せられたと思うんですが、実際にどのように一種社会学的に確認をなさってこられたのか、まず伺いたいと思います。
#152
○政府委員(熊野英昭君) こういう法律でございますから、先ほど来何度も申し上げておりますように、産業構造審議会に幅広い委員に御参加をいただいて、学界の代表的な方はもちろんでありますし、それからこういう問題を専門にしておられる弁護士の方々、あるいは工業所有権法に関連していろいろお仕事をしておられる例えば弁理士の方でありますとか、あるいはそういう団体に参加しておられる人でありますとか、さらに各企業でそういうことをやっておられる方々、それから言論界の方等に参加をしていただきまして、一つは裁判事例というか、そういうところで判例上いろいろなケースが議論をされてきているわけであります。したがって、その産業構造審議会の議論の過程では、裁判上のいろんな判例等々を御紹介しながら、皆さん御専門家でいらっしゃいますからよく存じていらっしゃいますけれども、そういうものを通じて法律との対応において判例の努力がどういうふうになっておるか、そういうことも含めて勉強してまいりました。
 他方、そこまでいかないでも、いろいろ社会的に、新聞紙上に出てくるようなこういう法律との関連の事例等も十分参考にしてまいったわけであります。
#153
○小池百合子君 続いて法的な位置づけについて伺いたいんですが、不正競争防止法改正の法体系における位置づけということで、経済法そして知的財産権法と言われる法律にこの不正競争防止法というのは属すると思うわけなんですけれども、ほかの経済法、知的財産権法であります特許法それから商標法、実用新案法とかそれから意匠法、著作権法に対して今回の不正競争防止法の改正は一体どのような影響を及ぼすというふうに見ていらっしゃるのか、その考え方と見通しについて伺いたいと思います。
#154
○政府委員(熊野英昭君) ただいま委員御指摘のとおり、不正競争防止法は、いわゆる特許法等のただいまお挙げになりましたような各種の知的財産権法とともに知的財産保護の一翼を担うものというふうに考えておるところでございます。
 そこで、その特許法等のいわゆる知的財産権法というのは客体に権利を付与するという方法によって知的財産の保護を図っているものであります。それに対しまして不正競争防止法は、まさに一定の事実状態を前提にその行為に着目をいたしまして不正競争行為を類型的に挙げましてこれを規制する、そういう観点で知的財産の保護を図るものであります。また、手段といたしましても、先ほど来申し上げておりますように民事的な請求権をもってその実現を図るということで、いわば異なる観点からお互いに相補って知的財産の保護を図ろうとしているものと考えております。そういう意味でそれぞれ、終局的な大きな意味ではねらうところは同じかもしれませんけれども、方法あるいは担当する分野を異にしておりますので、この改正によって他方に当然に影響を与えるようなものではないというふうに考えております。
 なお、今回の改正により拡充をされます類型のうち、著名表示の冒用につきましては現行法の混同惹起行為に対する規制と同様に商標法とともに、また他人の商品の形態を模倣、いわゆるデッドコピーにつきましては意匠法と重なるというか、あわせて知的財産の保護の一層の充実を図ろうとしているものでございます。
#155
○小池百合子君 それでは、各条文の中の質問点が幾つかございますので伺わせていただきたいと思うんです。二条一項十一号に競業者の信用を害する虚偽の事実というところが、「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」ということが今回出ているわけなんですけれども、この条文とそれから最近テレビのコマーシャルでも見られるようになりましたいわゆる比較広告との関係というのを知りたいと思います。
 たしかWIPOの方では比較広告は禁止されていると理解しているんですが、また比較広告というのは日本には、国民性もあるのかまた景表法の関係もあるのか、これまで避けてきたというふうに思っております。それが最近、広告の中でも比較広告という形が結構見られるようにはなっておりますけれども、今回の法案の中に含まれているこの十一号との関連でこの比較広告はかえって規制の方向に働くのかな、その辺のところ、ちょっとわかりにくいので御説明いただきたいと思います。
#156
○政府委員(熊野英昭君) いわゆる比較広告についてのお尋ねだと解します。
 そこで、比較広告と申しますのは、いろいろ事業者が供給する商品でありますとか役務について、自分の商品なりあるいはサービスの内容と競争関係にある特定の商品あるいはサービスといったものを比較対象として示しまして比較する広告のことを言われているわけであります。
 この法案におきましては、商品または役務の内容等について誤認を生じさせるような表示をする行為、これは第二条第一項第十号でございますけれどもこの行為、また「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」、これは同項の第十一号でございますが、これを不正競争として挙げているわけであります。比較広告の中で自分の商品等の内容について誤認を生じさせるようなものでありますとか、あるいは競争関係にある事業者の商品等について虚偽の事実を挙げて例えば誹謗するというようなものは、当然この規定に基づいて規制の対象となるものと考えております。
 ただ、商品の内容等の誤認惹起行為とか信用棄損行為というのは実は現行法においても規制されておりまして、今回商品と並んで役務をつけ加えたという点では拡大しておりますけれども、商品そのものについては誤認惹起行為とか信用棄損行為というのは現行法にもあるところでございます。そもそも正当な比較を行っているというような、要するに不正競争行為に該当しないような比較広告については、従来同様今後においてもやはり不正競争防止法上の不正競争行為にはならないわけであります。
#157
○小池百合子君 それから、同じく二条の一項にたびたび出てくる文言の方なんですけれども、先ほど大臣も一般に法律というのは広く国民の理解を得ることが先決であるというふうにおっしゃいました、その意味でしばしば出てくる言葉として営業秘密という言葉があるんです。これは、たしか九〇年のときの改正時においても、営業秘密という言葉は社会的には企業秘密と言った方がわかるんじゃないかといったような議論も行われたというふうに思います。
 つまり、国民の理解を得るためには、営業秘密というのが法律用語なのかどうかよく私はわかりませんけれども、もっとわかりやすい言葉として企業秘密という方が一般にはわかるのじゃないか。むしろ、営業秘密ということは営業という部分、つまり販売活動とか営業活動に限定されるような営業上の秘密、例えば顧客名簿が外へ出てしまうとか、何かそちらの方のイメージを抱かせてしまうような気がするんですけれども、こういった言葉遣いというのは、前回のときと全く変えていない。この辺についての理由と、それからこの営業秘密なる言葉を企業秘密に変えるという考えはないのかどうか伺いたいと思います。
#158
○政府委員(熊野英昭君) まず、今回片仮名を平仮名に書きかえるということで全部書きかえているわけでございますけれども、基本的に実質的に変えた部分と、それから現行法の用字でありますとか用語をそのまま現代語化したものということで、営業秘密の部分はそういう何ら今回実質的に手を加えている部分ではございません。
 そこで、営業秘密とは何か。法律の用語は、その法律効果を持つものにつきましては、その法律において定義を一般的にしているわけでございます。したがって、その解釈はその定義に基づくということになると思うんですけれども、本法におきます営業秘密は、第二条の第四項におきまして、「この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。」というふうに規定をしているところでございます。
 これは整理をしてもう一度申し上げますと、第一の点は、秘密として管理されている。先ほど営業というか販売方法みたいなものだけじゃないかということでございますが、ここにございますように生産方法、その他事業活動に有用な技術上または営業上の情報ということで技術的なものも当然に入っておりまして、そういう意味では広いものが入っているわけであります。そういう意味で一つは、管理されているということがポイントでございます。それから第二の要件は、今申し上げました有用な技術上または営業上の情報である。それから三番として、公然と知られていないもの、つまり本来秘密であるもの、既にどこかで発表されているようなものじゃだめですよという意味でそういう定義をされておりますので、委員御指摘の点はこの定義において明らかではないかというふうに考えております。
#159
○小池百合子君 どうも定義の部分とそれから社会的に一般的に認識されている点と、若干イメージで誤差がある。
 その意味で、これからこの法律が施行されるに当たりまして、また罰則につきましてもその金額などもアップされるわけでございますから、特に中小の企業等にとりましては、こういったわかりにくい言葉というのをまず理解させるということから始めねばなりませんけれども、それならば一般に通用している言葉の方をあえてこういった時期に変えていくという方向でもよかろうというふうに考えるわけでございます。それについては今私の考えを述べさせていただきました。
 それで、またもう一点、先ほど来委員の方々が御指摘なさっている点でございますので繰り返して質問いたしませんが、要望として、やはり一般消費者という点が今回抜け落ちでいるという点で、一般消費者に対するさまざまな救済制度といった点の充実を望むところでございます。
 それから最後に伺いたいのが、今回の罰則でございます。現行の五十万円から三百万円に罰金の最高限度額を引き上げる、法人に対する罰金の最高限度額については一億円ということでございます。ちなみにこの罰則、罰金の設定に当たりましての経緯をお知らせいただきたいと思います。
#160
○政府委員(熊野英昭君) 罰金なりあるいは罰則というのは、そういう行為を抑止するというために設けられているわけであります。どのくらの例えば罰金をかけ、あるいはどのくらいの罰則をかければどう抑止ができるかという一義的な関係を見つけることは大変難しいわけでありますけれども、いろいろな経済状況でありますとか、他法令の関係でありますとか、そういうことを考えながら、また罰則については特に法務省においてそういう全般的なことを考えておりますので、法制局との審議はもちろんのことでございますけれども、法務省と十分な相談をしながらこういう案をつくったわけであります。
 罰金額について申し上げますと、物価の上昇といったふうな経済社会状況でありますとか、あるいは現在国会において御審議をいただいておりますところの特許法等の罰金額の引き上げを踏まえまして、罰金の金額を三百万円としたところでございます。
 それから、法人重課規定を今回設けたわけでございますけれども、これは平成三年十二月の法制審議会刑事法部会における検討を踏まえまして、自然人への抑止力と同様に法人業務主への抑止力を確保するという観点から、証券取引法でありますとか独占禁止法の最近の例に倣い今回新設したものでございます。いずれにいたしましても、これらの罰金額の引き上げでありますとか、法人重課の新設によってこの法目的が十分に達成されるよう期待をしているところでございます。
#161
○小池百合子君 ちなみにその罰則でございますけれども、不正競争防止法によってこれまで刑事罰を受けた者は過去どのくらいあったのか。そして差しとめ請求等の民事の請求はどのくらいあったのか、数字を伺いたいと思います。
#162
○政府委員(熊野英昭君) 検察統計年報によりますと、不正競争防止法違反の疑いで検察で受理された人数は、この十年くらいを見てみますと、少ないときで四十人ぐらい、多いときで九十人か百人近いところまで、大ざっぱに申し上げまして四十人から百人程度の間で年々推移をしているところであります。
 それから民事事件に関しましては、年によって非常にばらつきがございますけれども、第一審裁判所であります地裁が新たに受理するこの不正競争防止法にかかわりますところの訴訟は、大体年間七十件から百五十件程度でこの数年間推移しているというふうに理解をしております。
#163
○小池百合子君 そうしますと今回の改正といいますか法案によりまして、抑止力の点について今お話もありましたけれども、これはなかなか予測は難しいと思いますが、今回の改正による抑止力の効果のほどはどれぐらい見込んでいらっしやいますでしょうか。
#164
○政府委員(熊野英昭君) 先ほども申し上げましたように、刑罰の罰金の量でありますとか罰則がどういうふうな抑止力になるかということを定量的に決めるあるいは予測するというのはなかなか困難だと思います。しかしながら、いろんな横並びでありますとか、従前の例とかあるいは経済社会状況の変化等を考えながら今回三百万円に引き上げた、あるいは法人重課については一億円というかなり高額のものを最高限度として設けましたから、そういうことにおいては相当の抑止力ができたのではないかというふうに理解をしているところでございます。
#165
○小池百合子君 最後に質問させていただきます。
 今回のこの法案でございますけれども、先ほど初めて外圧でなくできるのではないかということを申し上げたわけでございますが、しかし国際的影響もかなり大きいものがあろうかと思います。それは対先進国だけでなく、いわゆるNIESの国々への影響ということも考えておく必要があるのではないか。ちなみに、いわゆる模倣品の増加実態を調べましたところ、商標とか商品デザインなどの模倣が行われたかどうかという調査では、これは通産省の数字でございますけれども、九三年が九二年に比して企業数で二三%ふえ、商品数で三二%ふえたということが報じられております。そして、模倣したのが台湾とか韓国とか中国といったような国々であるということなんでございます。
 こういったいわゆるNIESの諸国などに法整備を進めようとしているとき、あえて日本がこのモデル法案に先行してこういった立法をするということは、NIESの国々に対しても模範を示すものとして受け取られるのか、反発を招くことにならないのか、こういった点についてはどういう配慮をなさったのか、伺わせていただきます。
#166
○政府委員(熊野英昭君) 知的財産権の保護ということにつきましては、国際的な調和を図っていくということは大変重要なことでございまして、先進国相互はもちろんでありますけれども、発展途上国あるいは中進国のようなところを含めて調和を図っていくことが重要であるということで、WIPOでありますとか、あるいは今回のウルグアイ・ラウンドにおいてTRIPという形で大きく議論をされておるところでございます。
 また、いろいろ我が国が発展途上国等に技術協力をして技術を移転していくためには、やはりそこで技術が保護されるということがまた大前提でございますから、そういう観点からもちゃんとした技術保護の体系ができることが必要であるというふうに考えております。我が国も従来から、そのためのそういう社会基盤をつくる、あるいは法制を整備する、運用をするということについてもいろんな協力等をやってきているわけであります。
 また、この不正競争防止法につきましても、近隣の諸国でほとんど我が国と同じような法制を持っておられる国もございますので、私どもの今回の改正が、またそういうところにおいてもいろいろ前向きの好影響を与えていくことができれば望ましいのではないかというふうに考えているところでありますし、またそういう求めがありましたらいろいろ協力をするのにやぶさかではございません。
#167
○小池百合子君 終わらせていただきます。ありがとうございました。
#168
○委員長(斎藤文夫君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 不正競争防止法案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#169
○委員長(斎藤文夫君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#170
○委員長(斎藤文夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#171
○委員長(斎藤文夫君) 次に、特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。森通商産業大臣。
#172
○国務大臣(森喜朗君) 特許法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 近年、技術革新の進展に伴い技術開発成果の迅速な保護が強く求められ、また、産業経済活動の国際化等に伴い工業所有権制度の国際的調和の必要性が増大するとともに、特許出願の審査等を迅速に行うための諸施策を推進すべく特許特別会計の財政的基盤を強化する必要性が生じております。
 本法律案は、以上のような工業所有権制度をめぐる最近の情勢の変化に対処するため、工業所有権関係四法について所要の改正を行うものであります。
 なお、本法律案は、工業所有権審議会において平成三年五月から慎重な審議が重ねられ、昨年十二月に提出されました「特許法及び実用新案法の改正に関する答申」を踏まえた内容となっております。
 次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。
 第一は、特許出願に係る補正の範囲を適正化するものであります。我が国では、特許出願に係る補正の範囲が主要国に比べて広範となっており、これが迅速な権利付与を妨げる要因となっております。このため、制度の国際的調和を図るとともに、技術開発成果の迅速な保護を図るべく特許出願に係る補正の範囲について所要の改正を行うものであります。
 第二は、迅速な審理を推進するため、特許に係る審判手続の簡素化を行うものであります。具体的には、補正の却下の決定に対する審判を廃止し、補正の可否は拒絶査定に対する審判において争うこととすること等所要の改善を行うものであります。
 第三は、実用新案制度の早期登録制度への改正であります。現在の実用新案出願には、技術開発の加速化を背景として、早期に製品化され、寿命が短い技術が多くなっております。しかし、現行制度は主要国と異なり審査を経て権利を付与する制度であり、出願から権利付与までに長期間を要しております。これを改め、製品寿命の短い技術の迅速な保護を図るため、早期権利付与を可能とする実用新案制度に改正するものであります。
 第四は、手数料等の改定を行うものであります。その背景といたしましては、日米構造協議における審査を迅速に行う旨の目標を達成するためには、ペーパーレス計画の推進、審査官の増員等の諸施策を強力に推進する必要があります。しかし、そのための経費が増加する一方で、保有権利の見直し、出願の厳選といった構造的変化により歳入が伸び悩むため、平成五年度には特許特別会計が赤字となるおそれがあります。このため、歳出削減を推進する一方で、今後も引き続き審査の迅速化のための経費を確保するため、所要の引き上げを行うものであります。
 以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。
 何とぞ慎重御審議の上御賛同くださいますようお願い申し上げます。
#173
○委員長(斎藤文夫君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日行うこととし、本日はこれにて散会いたします。
   午後四時十七分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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