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1993/04/15 第126回国会 参議院 参議院会議録情報 第126回国会 商工委員会 第6号
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1993/04/15 第126回国会 参議院

参議院会議録情報 第126回国会 商工委員会 第6号

#1
第126回国会 商工委員会 第6号
平成五年四月十五日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月八日
    辞任         補欠選任
     吉村剛太郎君     高木 正明君
 四月九日
    辞任         補欠選任
     高木 正明君     吉村剛太郎君
 四月十五日
    辞任         補欠選任
     村田 誠醇君     堀  利和君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         斎藤 文夫君
    理 事
                沓掛 哲男君
                松尾 官平君
                吉田 達男君
                井上  計君
    委 員
                倉田 寛之君
                下条進一郎君
                松谷蒼一郎君
                吉村剛太郎君
                谷畑  孝君
                堀  利和君
                峰崎 直樹君
                村田 誠醇君
                藁科 滿治君
                浜四津敏子君
                和田 教美君
                市川 正一君
                古川太三郎君
                小池百合子君
    国務大臣
        通商産業大臣  森  喜朗君
    政府委員
        通商産業大臣官
        房長      内藤 正久君
        通商産業大臣官
        房総務審議官  江崎  格君
        通商産業大臣官
        房審議官    白川  進君
        通商産業大臣官
        房審議官    石黒 正大君
        通商産業省貿易
        局長      渡辺  修君
        特許庁長官   麻生  渡君
        特許庁特許技監 辻  信吾君
        特許庁総務部長 姉崎 直己君
    事務局側
        常任委員会専門
        員       小野 博行君
    説明員
        法務大臣官房参
        事官      柳田 幸三君
        農林水産省農蚕
        園芸局種苗課長 三野 耕治君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
○貿易保険法の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(斎藤文夫君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
 特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#3
○峰崎直樹君 おはようございます。
 まず最初に、森通産大臣にお尋ねを申し上げたいと思うんです。アメリカにも先日訪問されてまいりましたし、衆議院の段階における論議でも大臣の国際的な対応に対する姿勢についてもお伺いしたわけでございますが、今日の世界の中で日本は、アメリカがどのように出てくるかというそういう姿勢だけではなくて、問題によってはやはり日本が引っ張っていかなきゃいけない、そういう姿勢というものをやはり持つべき課題がたくさん出てきているんじゃないか、こういうふうに私自身感じているわけでございます。
 今回提案されました特許法等の一部改正の法案、内容的な問題は後で議論いたしますけれども、基本的にこの問題について世界的に論議されていることに対しまして大臣はどのような方向へ引っ張っていかれようとされているのかについて、冒頭御意見を伺いたいと思います。
#4
○国務大臣(森喜朗君) 峰崎委員の御指摘のとおり、まさに地球時代といいましょうか、世の中科学技術と国際化、その方向に進んでいるわけでございますから、そういう意味で経済活動そのものもグローバリゼーションあるいは技術革新の進展に対応していかなければならない、これはまさに委員の御指摘のとおりでございます。委員がかつて御関係をされておられました鉄鋼なども、日米の鉄鋼業界がまさに協力し合って、いろんな問題がございますけれどもそうした二国間の鉄鋼、民間の企業が協力し合っていかなければならない、そういう時代に入っておることはもう御承知のとおりでございます。特に、各国の特許制度というのがそれぞれ国によって違うということは、やはりこれは工業化が進めば進むほどさまざまな問題が出てくるわけでございまして、そういう意味で特許制度を調和させていく必要性が極めて高くなってきているというふうに感じております。
 そういう意味で、後ほど御審議の中でお話に入っていただくと思いますけれども、世界知的所有権機関、つまりWIPOにおきましてもいろんなハーモナイゼーションを進めていくということが大事だということになるわけでありまして、特に先願主義への移行あるいは出願公開制度の導入、あるいは特許制度の国際的なルールを目指しながら条約の内容についていろいろな活発な交渉が行われているわけでございます。
 そういう中で、ことし七月に実は予定をされておりました条約採択のための第二回の外交会議につきまして、事情は、アメリカ側に新政権がスタートいたしましたのにかんがみまして特許商標庁の長官の指名がまだ行われていないということもあるようでございますが、準備が間に合わないということで延期したいというそういうお話がございました。本年四月五日のパリの同盟臨時総会におきまして、一応延期やむなしということに至ったわけでありまして、これも御承知のことだろうと思います。
 こんなことで、この条約を成立させるためにはどうしてもアメリカの協力を必要とするということは言うまでもないことでございまして、先般アメリカに参りました際にも、ブラウン新商務長官にも直接私からこの旨のお願いを申し上げたところでございます。委員御指摘のとおり必ずしも対米追随あるいはアメリカに従っていくということではなくて、たびたびこの委員会でもまた予算委員会でも申し上げてまいりましたが、今や世界のGNPの四割を超える日米が、その力を持っておるわけでございまして、そういう意味では産業の発達のためにも世界の経済に貢献をしていくため
にも日米がお互いによりよきパートナーシップを築き上げていくということが基本的に重要であって、当然産業の基盤になるこうした工業所有権の問題につきましても同様に日米間協力を重視をしていくということが基本的に重要、大切ではないか、このように考えておるところでございます。
#5
○峰崎直樹君 アメリカの知的所有権戦略というのは、レーガンの時代にアンチパテントからプロパテントヘと転換をしたというその流れの延長線上で、昨年九月の段階で先発明主義から先願主義への転換なども合意をされかかったやに聞いていたわけでございます。先ほど大臣がおっしゃいましたように、この七月のハーモ条約の締結が延期される、これは純粋に技術的な問題といいますかそういう背景なんだろうか、それともこれまでレーガンの時代から進められてきた特許戦略といいますか、そういうものの転換が考えられているのかどうか、そういった点につきましてもしわかれば教えていただきたいというふうに思います。
#6
○政府委員(麻生渡君) 今回のアメリカからの条約会議の延期要請、これが単純にアメリカの特許庁長官の人選がおくれておるということに由来するものであるか、あるいは前ブッシュ政権時代にアメリカの商務省の方ではパッケージということでありますけれども、ともかく制度を根本的に変えようという方向を出したわけでございますが、それが新政権の中で変わってくるのかどうかということ、さらには広くアメリカの知的所有権戦略そのものが変わりつつあるかどうかということでございますが、端的に申しまして今の段階でこの問題に対する明確な答えを出すだけの新政権の動きはないというのが現状でございます。
 二、三それを予想される動きもあるわけでございますが、現在判断できます材料の一つは、ことしの二月に公表されておりますが、新政権の技術イニシアチブという報告、政策方針の表明がございます。その中では、アメリカの経済成長を促進し、競争力を強化するためにはやはり知的所有権というものを非常に重視していくんだという考え方が明確に述べられております。また、三月末にアメリカのUSTR、通商代表部が各国の障壁レポートというものを発表いたしておりまして、その中でUSTRとしての今後の活動方針を示しておるわけでございますが、その中でも知的所有権の保護の水準を世界的に高めていく必要が非常にあるんだ、そのために強く交渉していこうということがはっきりうかがえるという状況でございます。
 そのような状況でございますものですから、また経済の実体も産業活動がどんどん国際化しておる、アメリカの産業もどんどん国際的に広がっておりますから、そういう経済活動の実態まで考えますとやはり知的所有権戦略という考え方はずっと維持されていくんではないかというふうに私どもは予測を今しておるという状況でございます。
#7
○峰崎直樹君 引き続きアメリカとの関係について、私どもも本当に日米がしっかりと信頼関係を持ちながら、その上で国際的なハーモナイゼーションの確立に向けて努力をするという方向で見詰めていきたいというふうに思うわけでございます。
 さて、WIPOのハーモ条約の中からガットのTRIPの方へ六項目移されたというふうに聞いておるわけでございますが、この六項目を移された理由といいますか、これはガットで論議をした方がよろしいというふうに判断をされている根拠といいますか、それは主として南北の間の対立問題なんだろうかというふうに想像をするんですが、そのあたりはいかがなものでしょうか。
#8
○政府委員(麻生渡君) 昨年のWIPO臨時総会の席上、御指摘のようにそれまでWIPOの用意しました特許のハーモナイゼーションの条約の項目からいわゆるガットTRIP交渉の項目とダブっておる部分につきましては、これはガット・ウルグアイ・ラウンドの交渉の方に任せようということでこの条約案から削除するという決定を行っています。これは、大きく三つほどの背景があるわけでございます。
 第一は、ウルグアイ・ラウンドの知的所有権交渉の中では、もちろんこれは非常に幅広い事項を扱っておりまして、特許のみならず一般的な知的所有権、商標その他著作権その他の知的所有権の最低の保護水準をどう保障するかということでございます。その取り決めを行うわけでございまして、その意味では保護が非常におくれておる途上国、それに一定の水準の保護をすることを迫るといいましょうか保障してもらおうということが主たる内容になるわけでございます。
 その中では、特許につきましては特許の対象をどうするかとか、特許期間をどうするかとかいうような項目が含まれておりますが、これにつきましてはガットのウルグアイ・ラウンド交渉全体は今のような状態でございますけれども、知的所有権の部分につきましてはほとんどもう話がつきつつあるという状況でございまして、むしろ同じ問題をもう一度WIPOで議論するよりも、もうウルグアイ・ラウンド交渉に任せた方がこの点の解決は早くできるんじゃないかということでございます。
 第二番目の点は、この問題がありますとどうしてもWIPOの条約の交渉が、この部分がまだはっきりしないということで進めにくいということがございます。一方、WIPOの特許条約は、先願主義への統一とかあるいは出願公開制度を導入する等々非常に重要な内容を含んでおりますから、これはこれで非常に重要なぞれ自身として意味を持つ条約でございますから、これはそれで進めたいということであります。
 それから第三番目の理由は、紛争処理の問題がございまして、同じ事項がガットの条項とそれからこの特許条約に含まれた場合にその国家間の紛争はどちらの紛争処理手続を使うかというのが将来問題になってくる可能性がございまして、むしろその点からはダブらしておかない方が将来の紛争処理上は有利であるというような配慮も働いたわけでございます。
#9
○峰崎直樹君 それでは、少し具体的な問題に入っていきたいと思うんです。日米構造協議で平成七年までに特許・実用新案の平均処理期間を二十四カ月にする、こういう約束をしてきたわけでございますけれども、定数増の問題やペーパーレスシステムの導入など大変努力はされていると思うんですが、一体これは展望としてはこの平成七年までにという見通しは実現可能なんでございましょうか。そこらあたり少し。
#10
○政府委員(辻信吾君) 日米構造協議に関する審査処理の促進についてでございますが、これまでも審査官の増員あるいは民間能力の活用等の総合施策を講じてきております。その結果、審査処理期間は着実に短縮してきておりまして、今後ともこれらの施策を推進することによりまして平成七年における目標達成に向けて全力を挙げてまいりたい、かように思っております。
#11
○峰崎直樹君 特に、日本の場合は出願件数が極めて多い、全世界の四割近く実は出願をするというような大変高い出願率を持っているんですが非常に公告率が低いということで、出願審査請求構造に非常に問題があるということでかねてから指摘されていました。その場合特に、中小企業は約一割程度であとは大企業が多い、上位百社で五〇%程度を占めるというような数字もいただいているわけでございます。これについて特許庁の方では何とかその公告率を上げていこうということでこれまで努力をされてきたと思うんですが、その努力目標に対してどのようにその公告率の引き上げが実際上できているのか、その状況について少しお聞きしたいと思います。
#12
○政府委員(辻信吾君) 御指摘のとおり、現状は玉石混交と言わざるを得ない出願の構造をとっておりますが、これの質を高めていくことが極めて重要でございます。このような観点から特許庁といたしましては、企業における特許管理を充実しまして量から質への転換を図っていくということで、先ほど大臣からもお話があったと思いますが、出願上位企業百社に対しまして審査請求公告率が六〇%を超えるようにというような指導を、企業
特許管理行動計画、AP六〇と申しておりますが、これを昭和六十年度から行っております。それから昭和六十三年度からは、欧米並みの公告率八〇%を目指すべしということでAP八〇と称しておりますが、このような施策を推進してきております。それから、平成四年度からは対象企業を二十一社ふやしてございます。
 結果でございますが例えば公告率、先ほどの百社を例にとりますと、五十三年の出願につきましては五一%程度であったのが、五十九年の出願につきましては六〇・九%と上がっております。これは若干数字が古いのは現在審査請求期間を七年間とっておりますので、五十九年までのデータが現在ある、このような効果をおさめてきております。
#13
○峰崎直樹君 そうすると、AP八〇というのはまだこれから先でないとわからない、七年間の関係があるからわからないということですか。
#14
○政府委員(辻信吾君) 現在審査を終了しております現状から十年さかのぼりますと一〇%上がってきておるわけでございます。着実にそれは効果は出ております。さらに推進してまいりたい、かように思っております。
#15
○峰崎直樹君 一説には、これはなかなか相矛盾するんだろうと思うんですけれども、後で述べますがいわゆる出願料が非常に安いんではないか。しかし、広く発明を広げていかなきゃいけないという観点からするとそうはいかないということで、ここら辺は後で述べます大企業と中小企業との二段階格差の問題とか価格政策の面でも何らかの考慮が払われていいのかなというような感じがいたしますが、これは後でまた少しお話を申し上げたいと思います。
 さて、日本の処理のおくれの一つの原因としてかねて指摘されていた問題で権利付与の前に異議申し立てを認めているということについて、これは特に世界の各国からこの点廃止をするべきではないかといったような意見が出ているやに聞いているわけです。それは今回の改正案の中には含まれてないんですが、この点についてはどのような見解ですか。
#16
○政府委員(麻生渡君) 異議申し立て制度につきましては今世界には二つあるわけでございまして、一つは日本のように権利を与える前に公告をいたしまして、それにつきまして異議がある人は申し立ててもらうというやり方でございます。もう一つは、アメリカあるいはヨーロッパのように一たん権利を与えまして、異議があればその後受け付けるということでございます。当然、日本の場合には事前に異議を処理いたしますから、最終的に権利を与えるというのが遅くなるということになるわけでございます。この点につきましては、現在交渉いたしておりますWIPO条約、その中でも統一しようということでございまして、この点につきましては今の条約原案では一たん権利を与えた後に異議申し立ての処理をするという制度になっておるわけでございます。
 実は、今回の改正の中にはこの部分は入っておりません。入っていないのは、この点につきましてはまだ法律技術的にも少し難しい点がございまして、詰める要素もございます。それに加えまして、このWIPOの条約交渉の中でもこれはまだ議論が残っておるという要素がございます。
 加えまして、先ほどちょっと触れましたがアメリカのポジションが、アメリカが先願主義その他の大幅な制度改正をして条約に参加するというときの考え方がパッケージディールという考え方でございまして、アメリカだけ変わるんではなくて日本その他も変わってもらいたいと。その変わってもらいたい項目が幾つかあるわけでございますが、その中の非常に重要な項目の一つとして、対日項目は異議申し立て制度の手続の変更でございます。そういうような点を考えまして、もう少しWIPOでの交渉の状況あるいはアメリカの動向ということを見定めた上でこの改正に踏み切りたいということで検討を続けておるという状況でございます。
#17
○峰崎直樹君 そういたしますと、もう既にハーモ条約でいろいろ論議をされていることについての準備はもう着々と進んでおる、これから国際的な協議の中で対応を決めていきたいという理解だと思うんです。
 同じような問題で、実はハーモ条約で出願公開時にサーチレポートを添付しろ、そういうような原案なるものが出されているやに聞いているわけでございます。もしこのことが義務づけられますと、特許庁の現在の体制で出願だけでも相当な比率になっているわけですが、それに対してサーチレポートをつけろということになると果たしてこれは今の体制で対応できるんだろうかという心配をちょっとしているんですが、この点いかがでしょうか。
#18
○政府委員(麻生渡君) 今のハーモ条約の原案の中には、十六条という私ども大変頭の痛い条項があるわけでございます。その条項は、出願時には全件サーチレポートをつけろということを国際約束にしようではないかという案になっております。これは、私どもは受け入れられないということで非常に強く反対をいたしておるというところでございます。
 このような問題が出てきた背景でございますが、これは専ら日本を念頭に置いているわけでございまして、日本の場合には出願が非常にたくさんありましてそれが公開されるわけでありますが、それを当然諸外国のいろんな関係者はそれぞれの出願がどういう状況になっておるかというフォローを監視をしなきゃいかぬというわけであります。その監視をするに当たりまして、日本のように大量にある国の場合にはやはり全件ずっとフォローするのは大変で、そのためにはその出願の内容がどの程度の発明性を持ったものかということを事前に知っておく必要があるので、そのためにはサーチレポートをつけて公開をしてもらいたいというようなことでございます。
 しかし、これは非常に逆の意味で大問題でございまして、特に日本のように大量出願がなされておる国で全件にサーチレポートをつけるということになりますと、それは作成のために大変な費用がかかりますし、また大変な人的な投入をやらなきゃいかぬ。言われましたように、まさにもう一つ特許庁をつくらなきゃいかぬというぐらいの問題になってくるわけであります。加えまして、出願されたものが全部を審査してくれということを言ってくるわけじゃありません、日本の場合五割ぐらいでございます。その意味では、審査請求のないものについては五割がほとんど意味のないサーチレポートになっていくというようなことでございます。
 そういうことでありまして、むしろサーチレポートをつくるということを義務づければその方にお金なりあるいは人材がとられてしまって、肝心かなめの審査の促進にはならぬのではないかということでございます。そのような点、決して合理的ではないということを強く世界各国に訴えて交渉をしている最中でございます。私どもは、この点につきましては強く今後とも交渉をしていきたいと考えておる点でございます。
#19
○峰崎直樹君 そのサーチレポートなんですけれども、ヨーロッパだとかそういったところで進められている仕組みを考えますと、日本の場合には余りにも大量出願をしているがためにこのサーチレポートをつけることを義務づけられるともう大変だと。これは考えてみると、いわゆる技術的なさまざまな先行サーチをつけて技術評価をされ出願をされるという、非常に早く知り得る機会をつくるという点で、これはある意味ではやはりサーチレポートをつけた方が一般論として進んでいるんではないか、また日本もそのように本来は変えるべきではないか。
 日本の特殊事情といいますか、大量出願があってそれに全部つけるとなったらもう大変なんですという事情は私も非常によくわかるんですが、しかし一般的に国際的に考えたときに、サーチレポート付与というのはこれは理論上拒否できるものなんだろかどうなんだろうか、この点はいかがなんでございましょうか。
#20
○政府委員(麻生渡君) 二つの点で私どもは不合理であると思っております。
 一つは、サーチレポートを一たんつけてそれでまた後で審査をする、そのときまた先行技術調査をやるわけでございまして二重投資になるという意味で非常に制度としての合理性を欠くし、むしろ審査促進にならないんじゃないかという点が第一でございます。
 それから第二番目は、そもそもやはり出願をする場合に、自分の出願なりがどの程度のものであるかというのはやはり出願者がしっかり特許戦略を考えまして、先行技術も調べた上で出願をしてくるというのが本来筋であるわけでございまして、そこのところを国にいわばばっと出しまして国に調べてくれというのはいかにも出願態度として非常に問題があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。そういう点からは風の方で出願サーチレポートをわざわざつくっていくという制度はやはり受け入れられないというふうに考え、説明をしておるわけであります。
#21
○峰崎直樹君 実は冒頭の、アメリカが日米構造協議で二十四カ月に要処理期間を短縮してくれというふうに言ってきた意味というのは、恐らく急いでくれということだろうと思うんですよ。それは要処理期間を急ぐということもさることながら、もっとやはり特許権というものを早く付与してもらいたいんだということを考えたときに、その要処理期間、出願をしてそして審査をしてくれという段階から二十四カ月、そういう理解ですよね。そうすると、いわゆる出願をしてそして一年半段階でこういうものが出ましたということで公告します、そこの段階の長さが非常に長いと、実は日本に申請をしてもいわゆる特許権を付与される期間というのは世界から見ると長いということになっちゃうんじゃないかという気がするんですよ。そういう点で出願をする側の企業にも問題がある。私は企業性悪説に立っているつもりは毛頭ないんですけれども、しかし企業側も努力をしなきゃいけない。
 特許権が国際的に同じようなテンポで付与されるように、そういう意味でもハーモナイスされていかなきゃいけないとした場合には、どうもサーチレポートの問題というのはそう簡単にはと今長官おっしゃいましたけれども、二十四カ月を平成七年になって達成しましたというけれども、いやいや実は日本の特許付与のあり方については国際的な圧力でまだ問題があるぞというようなことで、これはハーモ条約にそのまま組み込まれるかどうかは日本が反対すればまたどういう展開になるかわかりませんけれども、その点についてちょっともう一回長官の意見を聞かしていただきたいと思います。
#22
○政府委員(麻生渡君) 今の御指摘になりました問題は、サーチレポートの添付の問題のほかにもう一ついわば対日問題として提起されております審査請求期間の問題があるわけでございます。
 日本は審査請求期間が七年あるわけでございまして、そうしますと出願したものを七年間にわたって実際に審査をしてもらうかどうかという選択権を企業側が持つという、出願者側が持つということになるわけでございますが、これがいかにも長過ぎるんではないか。その間は第三者は七年間にわたってこれが実際に審査請求されるのかどうかというのを見ていかなきゃいかぬということでございまして、これも今回の条約交渉の中ではもっと短くしてもらいたいというようなことでございます。
 したがいまして、今先生がおっしゃいましたように、審査請求した後二年で処理するという、その審査請求までの期間が長いというもう一つ前のところに問題が提起されておるということでございまして、その意味では日本の審査処理期間、体制というものに対する相当大きないろんな形での見直し要求ということでございますものですから、そういうことを全体を含めながらかつ審査体制の整備ということの見合いを考えながらこれは対処していく必要があると思っておる次第でございます。
#23
○峰崎直樹君 このサーチレポートの問題というのは本当に日本にとって大変頭の痛い問題でもあると思いますので、引き続き国際交渉の中でもしっかりと日本の立場も了解を求めながら、国際的なハーモナイゼーションを達成していただきたいなと思います。
 今回の特許法の改正で補正回数が実際上二回までということで、さらに補正可能な条件というものを非常に狭く限定する改正がなされているわけでございます。さて、補正の回数別のいわゆる出願件数、査定件数といいますか、そういうものは一体分類されてどのようになっているのか、ちょっと教えていただければと思います。
#24
○政府委員(辻信吾君) 現行制度下では審査が終了したものが対象でございますが、補正なしてそのまま終わるのは二〇%ございます、補正が全然ない場合。それから、補正が一回あるケースが約六五%、それから二回以上のものが一五%、こういう分布になっております。
#25
○峰崎直樹君 そうしますと、この一五%以上というのが今回一番ひっかかるということですね。そうすると、これはいわゆる審査をする段階において相当時間がかかるものなんでしょうか、この一五%に該当するものは。
#26
○政府委員(辻信吾君) 個別案件でよくおくれているのを私ども経験で見てみますと、やはり補正によって非常に長くかかるということが事実としてあるわけでございます。
#27
○峰崎直樹君 この改正案は大変複雑で、私ども目を通してもなかなか頭が痛くなるような状況なんです。新規事項追加の補正禁止と規定しているんですけれども、過度にわならないといいますか要するに審査時間をおくらせないような補正というものは可能になるというふうに理解してよろしいんでしょうか。あるいは、内容的には自明のこととかいろいろ細かいことが書いてあったんですけれども、その点を具体的にはどのようなことまでならそれは許されるのかということについてちょっと。
#28
○政府委員(辻信吾君) 今回、制度の補正について改正の一つの大きな柱になっております、明細書の中にいわゆる新規事項の追加を認めないということで非常に判断というものが明確にできる、単純にできる、しかも第三者から見てもその運用についての透明性が非常にあるということで、非常にそこは迅速処理に資するというふうに考えております。
#29
○峰崎直樹君 実は審査官からの拒絶理由通知の中にいろんな種類が、私も衆議院の段階のやりとりを聞いていて、最初の拒絶とか最後の拒絶、しかも最後の拒絶というのは物理的な最後ではないとか、非常に禅問答のような事項があります。これは専門家が読めばもう大体おわかりのことなのかもしれませんけれども、しかし非常にいろんな意味で大変複雑だと思うので、この種類あるいはそのときどきに許容される補正の範囲について非常に誤解のないように明確にしておく必要があるというふうに思うんですけれども、この点についてはどのように整理をされて今後周知徹底を図られるのか、その点をお聞きしておきたいと思います。
#30
○政府委員(辻信吾君) 今回の制度改正、補正につきましても、これは従来の実務の変更を伴うものでございますので、早期に運用基準をできるだけ早くつくりまして、十分な周知徹底等を図り、それで制度の円滑な実施を図る方針でございます。
 具体的には、補正について申し上げますと、運用基準あるいはガイドラインを、これは出願人の方々あるいは代理人の方々の意見を踏まえつつ早期に作成いたしまして公表する予定でございます。また、そのでき上がったものにつきまして、全国各地で説明会等開きまして周知徹底を十分図ってまいりたい、かように考えております。
#31
○峰崎直樹君 今度の二回までという、かなり内容的にも厳しくしていると思うんですが、ヨーロッパあるいはアメリカといったようなところの補正はこの改正案のような形で内容的には規制が非常に厳しいものなんだろうか、その点対比をさ
れでどのような日本の場合の特徴になっているのか、その点もしわかればお聞きしたいと思います。
#32
○政府委員(辻信吾君) 明細書または図面の補正についての考え方でございますが、米国、欧州ともに、出願当初の明細書、図面でございますがこれに開示された範囲内ということで今回の改正案と同じでございます。
 それから回数のところでございますが、これも米国、欧州ともに、二回目の拒絶理由を受け取った後は特許請求の範囲に記載された発明の内容を実質的に拡張するとかあるいは変更するというこういう補正ができないという意味において合理的な範囲内だと、こういうふうになっておりまして、この点においても共通でございます
 ということで、今回の改正によりまして改正された後の我が国の制度は、欧米と比べまして補正の範囲に関する考え方が同等でございまして、国際的にこれで均衡がとれる、かように考えております。
#33
○峰崎直樹君 いわゆる基本特許だとかあるいは非常に重要な発明というものの出願というものをする場合は、何度も補正をすることによってそういうものが得られるんじゃないか、こういう御指摘があって、今回の改正によって、補正回数というものを制限することによってそういう重要な発明とかそういうものが実現することを困難ならしめる可能性があるんではないのか、こういう御指摘が寄せられているわけです。この点についてはいかに説明されますか、お聞きしたいと思います。
#34
○政府委員(姉崎直己君) 我が国では、昭和六十三年以前は一つの出願で一つの発明しか特許請求ができおいといういわゆる単項制を採用しておりました。この単項制のもとでは一つの請求項でしか審査を受けられないということで、一たん審査官から拒絶理由を通知されますと、補正によってまた別の一つの請求項を特許請求を行うという手続を繰り返してやっておったわけであります。しかしながら、昭和六十二年以降、我が国も欧米と同じような多項制という制度を導入いたしました。すなわち、特許を受けようとする発明につきまして、出願人の自由な判断によって複数の請求項を持って特許請求を行うことが可能になったというわけでございます。
 この多項制のもとでは、多面的な観点から複数の請求項を記載いたしまして発明の保護を図ることが可能でございまして、その意味で、欧米におきまして行われておりますような基本発明といいますか重要な発明の保護が十分にこれによって図られるということでございます。今回の補正の適正化も、多項制の導入以降、出願人において多項制に習熟してきたということを踏まえてこの適正化を行おうというものでございます。
#35
○峰崎直樹君 くれぐれも補正を制限することによってこういった有用な発明といったものが阻害されるようなことのないようにひとつ図っていただきたいと思いますし、こういうふうに制限することによってよりよい明細書による出願を促す、あるいは公平で好ましいものにすべきだという趣旨を本当に徹底し得るようにぜひとも周知徹底を図り、庁内外の意見を十分に取り入れる必要があるというふうに思いますので、この点については付加をしておきたいというふうに思います。
 さて、実用新案法の改正問題について次に触れてみたいと思うわけですが、実は、実体審査を伴わない考案に排他的独占権の設定登録を行うということになるわけでございます。このことによって権利行使や権利の防御上の弊害などの混乱が懸念をされるわけですが、こういった点について、ちょっと一般的過ぎますが、混乱防止といいますか周知徹底方について対応をどのように考えられているのか、まずお聞きしたいと思います。
#36
○政府委員(姉崎直己君) 今回改正をいたします実用新案制度におきましては、先行技術及びその先行技術から見た権利の有効性について客観的な評価を内容といたします技術評価書という制度を設けております。これはだれでも、またいつでも請求をすることができまして、特許庁では請求がありましたら早期にこの評価書を作成するということにしております。また、この権利者は権利行使に先立って評価書の提示が必要になるということになっておりますので、その意味でも客観的かつ適正な権利行使が行われることになろうと考えております。
 一方また、権利の有効性について当事者間で紛争が生ずるということが考えられるわけでありますが、私どもといたしましては、その際、無効審判の早期処理ということで問題に対する対応を図りたいと考えております。
 先生御指摘のようないろいろな混乱等の生じないように、私どもといたしまして、この改正の制度が円滑に定着するということが非常に重要でございますので、今後、法の施行までの間、十分に全国での説明会等々を開催いたしまして事前に十分な周知徹底に努めたいというふうに考えております。この点私どもとしては、先ほどの補正の適正化の問題とあわせまして、制度改正に当たってのPRあるいはその周知徹底方に遺漏なきを期す所存でございます。
#37
○峰崎直樹君 ぜひとも混乱のないようにしていただきたいと思うんです。
 この新制度が導入されると企業内で非常に温存されていた技術といったようなもの、小発明といったものがかなり出願をどっとされるのではないか。非常に短い期間で質が高く信頼性に富むような技術評価書というものが作成されるような、そういう準備体制というのは十分整えられているんですか。
#38
○政府委員(辻信吾君) この評価書につきましては、ただいま説明がありましたように登録された実用新案権の有効性について客観的判断材料を提示するという極めて重要な性格を持っておりますことから、これは特許庁の審査官自身が関連する先行技術文献及び先行技術文献から見た権利の有効性に関する評価を下す、こういうことでございますが、そのために必要な体制を現在構築中でございます。
#39
○峰崎直樹君 時間の関係でこの実用新案の最後にちょっと質問したいと思うんですが、この新法案の第二十九条の三、先ほど総務部長おっしゃいました無効審判がされた場合、その損害賠償の範囲だとか非常にあいまいもことした規定がちょっとしてあるわけでございます。例えば「相当の注意をもってその権利を行使し、」、この「相当の注意」なんというのは、非常に中身的に見て法律の解釈上ちょっとあいまいではないかなと思われるような部分があるわけでございます。それだけに、これは大変権利の付与の問題、そしてその審判の結果損害賠償といった大変被害も大きいわけでございまして、それらの点についての対応策といいますか、考えておられればお聞かせ願いたいと思います。
#40
○政府委員(姉崎直己君) 先生御指摘の点二つあろうかと思います。
 まず、二十九条の三の点でございますが、御指摘ございましたように評価書の評価に基づいて権利行使をした、その後、評価書の調査の範囲内で新たな証拠が示されまして権利が結果的に無効になった場合でございます。この場合には原則として損害賠償は免責されるものと私どもは考えております。その意味で、過失の推定が破られるということを規定したのが二十九条の三でございます。
 それでは、そこに規定されております、相当の注意を払って権利行使をした場合というのは例えば具体的にはどういうことかということでありますが、例えば評価書は先行技術文献から見た権利の有効性を調査するわけでありますが、それ以外のいわゆる公知公用の技術、当業界では知られている技術、これらについてまで評価書の中で調査しているわけではございません。したがいまして、これらについてはやはり出願権利者が当然に調査をする責任を有しているということでございます。
 具体的には個々の事例ごとに判断されることになろうと思いますが、先生御指摘になりましたような、この法律の趣旨というのはなかなかわかり
にくいのではないかという御指摘もございました。この点につきましては、先ほど来申し上げましたように、制度の円滑な運用を図る上でこの趣旨を明確にし周知徹底するということは極めて重要だと私どもも考えておりまして、今後全国での説明会の開催等十分この点について周知徹底に努めてまいりたいと考えております。
#41
○峰崎直樹君 公知公用の技術というのは当事者の間ではこれは簡単に知り得るものなんですか、それとも相当これはじっくり調査をしなきゃわからないものなんですか。
 といいますのは、その公知公用の技術というものは、当事者が知らないとだめだよ、特許庁の関与するものではないよということになると、そのことに伴う、審判の審決で無効になったときに被害が及ぶわけでございますので、私もその世界の公知公用の技術というのは十分存じていないもので、その点わかれば教えてください。
#42
○政府委員(姉崎直己君) 若干先ほどのお答えに補足いたしますと、公知公用技術と申しますとすなわち当業者であればある意味では業界の常識ということでありまして、容易に知り得る状態にある技術ということでございまして、普通は公知公用の技術の存在を全く調査しないまま権利行使を行って、その後これが無効になってしまうというケースは事実上ないのではないかというふうに考えております。
#43
○峰崎直樹君 実体審査を行わないで変わっていくわけでございますので、ぜひともそういった点も含めて、広く周知徹底を図っていただきたいと思います。
 最後に、料金の引き上げ問題について少しお伺いしたいわけでございますが、大体値上げをするときというのは、何がどのくらい原因でどうなっているかという資料というのは、やはりきちっとつけなきゃいけないと思うんです。費用アップの一番の原因は何かという衆議院段階における説明の中で。値上げの原因はペーパーレスではなくて、審査処理の促進と物価上昇分の二つの要因だと、こういうふうにお答えになっているのを私もちょっと伺ったわけでございます。ペーパーレスじゃなくて審査処理の促進と物価上昇分と、非常にまだ中身がちょっとわかりにくいんで、さらに内容的にわかれば教えていただきたいと思います。
#44
○政府委員(麻生渡君) 今回の値上げをお願いいたしておりますのはペーパーレス計画が予定以上にお金がかかったということによるものではないわけでございまして、ペーパーレス計画は実は五十九年に特別会計ができて十年かけてシステムを開発して導入をしていこうということであったわけでございます。そのときに約千二百五十億ぐらいかかるんじゃないかということであったわけですが、大体予想しましたラインで開発が進んでおるという状況でございます。
 ところが、このときの計画では放置しておきますと審査期間が七年ぐらいになってしまうということでございまして、このペーパーレス計画を導入しながら審査促進をやっていこう、そして三年を目標にしながら、審査期間が延びないようにしていこうということであったわけでございます。それでやってきたわけでございますけれども、先ほどちょっと出ておりましたように三年じゃとてもだめだということでございまして、日米構造協議でいろいろもめまして、結局平成七年には何とか平均期間を二年まで短縮しようということになったわけであります。
 そうしますと、ペーパーレス計画で考えておりましたようなスピードではとても間に合わないということでございまして、このときからさらにペーパーレス計画の処理促進に上乗せいたしまして審査官の増員を急遽図っていこう、それからもう一つは先行技術の調査、これをずっと審査官がやるわけでありますが、少しでも審査を早めるために一部民間に予備的な先行技術調査をやってもらって、それをベースにやっていったら早くなるということで、それをやり始めたというようなことでございます。
 このところの費用の増加要因が相当大きいという点と、それからもう一つ、前回の値上げは六年前であったわけでございますが、その後人件費にしましてもいろんな諸コストも徐々にやはり物価に比例いたしまして上がってきておるわけでございます。その部分をどう吸収するかということであるわけでございますが、やはり物価上昇分というのはどうしても支出がふえていくわけでございましてこの分の吸収ということを考えざるを得ないということでございます。
 その大きな二つの要因が支出サイドの事情でございます。
#45
○峰崎直樹君 内容的に日米構造協議の問題だとか、今から九年前でしょうか、この考え方が出された段階で本当に予想し得なかった新しい事態が登場してきていると思いますので、そういったものも付加していかなきゃいけないということはよくわかるわけでございます。
 ただ、この間ずっと議事録などを読ましていただいたときに、ペーパーレス計画、なかんずくコンピューター関係の支出の問題について触れられたことは、確か若杉特許庁長官のときに一度明らかになっているんですけれども、例えばシステムの維持費、つまりコンピューターというのはハードの物体そのものの値段というのは比較的下がる傾向にあるわけですね、最近ではダウンサイジングだとか小型化しているわけでございます。しかし、一番金がかかってくるのは、これからコンピューターをどのように運営していくか、そのシステムにかかる費用だというふうに思います。そのシステムにかかる費用が予想以上にかかったんではないのか、こういう御指摘を受けることがあるんですが、この点について当初のもくろみとそしてそれがどのように変わってきたのかということがもしわかれば教えていただきたい。
#46
○政府委員(麻生渡君) ペーパーレス計画の中で大きな費用は、いわゆるシステムの開発費用、それからいろいろ解析したデータをデータベースとして蓄積しなければいけませんが、そのデータベースを蓄積するための資料の整理費用、加えまして御指摘がございましたようにコンピューターそのもののレンタル費用ということがございます。
 当時の若杉長官の答弁の中では、特にレンタル費用というのはいろいろ技術が進歩していけば今予想しているよりもっと早く下がるんではないかという期待を表明いたしております。その意味では、確かに当初想定しました額よりも大分現実の支出は下がっております。大体二割ぐらい下がっておるという状況でございますが、そんなにトラスチックに下がっていないという状況でございます。
 これは今非常に問題になっておりますが、私どものコンピューターシステムは、中央演算装置のところに大きなコンピューターを置きましてそこで集中的にシステムとして運営しているという形でございまして、最近のような技術進歩のダウンサイジングをまだ採用していないということが大きいわけでございます。このダウンサイジングを私どもは次にぜひ採用して、もう少し分散型のものにしたい。そうしますと、このレンタルのところは相当下がっていくんじゃないかと思っておりまして、その意味ではペーパーレス計画、この機械のところはダウンサイジングを徹底してやっていかにゃいかぬということで今具体的に研究を進めておるという状況でございます。
#47
○峰崎直樹君 システム開発の方の費用は、どのように推移をしてきたのかというのはわかりますでしょうか。
#48
○政府委員(麻生渡君) システム開発の費用は、実は当初予定しておりましたよりも若干逆にこちらの方は二割ぐらいふえておるということでございまして、これは開発途上で、私どものシステムは当時から見ますと非常に先端的でほかに全く世界的にも国内的にもない大きなシステムでありましたものですから、予想以上に難航したということでございます。
#49
○峰崎直樹君 一昨日、私どもも庁舎を見せてい
ただきまして、本当に世界に誇る知的所有権というか、工業所有権の殿堂だというふうに私も思っておりまして、ぜひともより一層の充実を図っていただきたいなというふうに思うわけでございます。
 この値上げ問題に絡んで、私は先ほどちょっと冒頭申し上げたんでありますが、料金問題というのは、いわゆる料金を払ってそしてその対価を受けるという、そういう意味では一般的には受益者負担という原則が通用する分野だと思っているんです。
 ただ、日本の出願が非常に多過ぎる点、あるいは出願はするけれどもそれがどの程度実際に採択されるかという採択率の低さの問題、あるいは審査をしてくれという審査請求の数の少ない問題、こういう問題についてちょっと世界で日本ぐらい多過ぎるところはないんじゃないのか。だとすれば、そういう構造にメスを入れる方法として、あまり料金体系でそのことを云々することは本当は邪道なのかもしれないけれども、しかしそのことをどうしても変えなきゃいけないとした場合、一つはやはり中小企業家だとかあるいは個人の出願における料金を下げる問題と、それからペナルティーとして、今コンピューターで管理されているわけですからどの企業が非常に改善が進んでいないのかということを含めて料金を比較的下げる分に比例してペナルティーをかける分野をふやすといったような、最近でありますと公害問題でいわゆる環境税の問題なんかでもそういう議論がされています。
 ちょっと邪道なんですけれども、そういうことも考えられてしかるべきじゃないかというふうに思うんですが、その点いかがですか。
#50
○政府委員(麻生渡君) 日本の大量出願、これは私どもの処理という点から見ますと、御指摘のように非常に難しいといいましょうか、大変な課題を背負い込むという事態になっております。これをどう評価するかということなのでございますが、確かに大量出願、そういう問題がありますけれども、一方でともかく出願をしてやろうという、これはやはり産業あるいは企業の活力であるという点があるわけでございましてこともかく何でも押さえ込めばいいということでもないということでございます。その両者のバランスをどういうふうにとっていくかということが非常に大切じゃないか。余り適切じゃないことをやりますと、今度は活力をそいでしまうという点にも配慮する必要があると考えております。
 今の御指摘のように、むしろ料金体系を思い切って変えることによりましてもう少し出願態度を合理的にしたらどうかという考え方、これは実は昨年の審議会でも相当の議論が出ておりまして、もう少し料金体系を根本的に見直すということも考えたらどうかということでございました。その点につきましても今後重要な研究課題であると思っておりまして、今後いろんな角度から各界の意見を伺いながら検討してまいりたいと思っておるわけでございます。
#51
○峰崎直樹君 非常に激動するこれからの時代でございますし、ハーモナイゼーション条約などの採択をされるとそれに伴って大きな変化も予想されてくるわけでございますので、ぜひともこの価格問題といいますか、非常に大きな混乱を与えないようにしっかりとした中期見通しを立ててこれからも進めていただきたいなと思います。
 実は、この機会に過去の政府答弁書の問題点について、きょう時間がございませんので最後に確認を含めてやらせていただきたいと思うんです。
 農水省の方、お見えになっておりますでしょうか。
 私どもの先輩議員の方々が、知的所存権問題に絡めて、いわゆる工業所有権問題とそれから種苗法の関係について過去にいろいろ論議をされてきております。その点を確認だけさせていただいて、論議はこれからということできょうのところは進めさせていただきたいと思うのであります。
 平成三年十月四日に質問第一一号ということで吉田正雄議員が、現在衆議院議員をやっておられますが、植物新品種の保護に関する質問主意書を出されているわけであります。この中身は詳しく説明するというよりも、特許庁の皆さんやあるいは農水省の皆さん方は内容をよく御存じのことだろうと思います。時の総理大臣は海部俊樹さん、そして再質問をされまして時の総理大臣は現在の宮澤総理大臣でございます。二度にわたってその主意書に対する答弁をいただいております。
 内容的には、いわゆる種苗法が改正をされて、そしてそこで与えられる権利とそして特許権、この二つの関連性について実は質問している主意書なのでございます。その主意書の答弁に対して内容的に少し確認をしておきたいと思いますので、その点、若干の時間をおかし願いたいというふうに思います。
 最近、植物関連の問題に関して大変技術的な進歩が著しいわけでございます。バイオテクノロジーの技術という問題が進んできておりますが、その点について最初に特許庁の方に御確認を申し上げたいと思うんです。
 まず最初に、一一号答弁書の中で、「五について」「従来からの交配による育種技術自体には状況の変化はないことから、植物新品種に関する審査基準」、これは恐らく具体的には特許庁の中の審査基準がある、最近ではそれが改正をされるような意見も聞いているわけでございますが、「審査基準において示した交配による育種の領域に関する創作性、明細書の基本的な記載要件及び参考資料としての植物新品種に関する明細書の例示については変更はない。」、こういうことが答弁をされているわけでございます。
 現在、特許庁で改定作業が進行中の生物特許の審査基準にもこの点は変更なく引き継がれることと思っているのですが、その点いかがでございましょうか。
#52
○政府委員(辻信吾君) ただいまの先生の御指摘の、答弁書五における答弁につきましては変更はございません。
#53
○峰崎直樹君 それじゃ、二点目をちょっと進めたいと思うんです。
 これは、第八号答弁書の中に入ってくるわけでございますけれども、実は特許権と種苗法に基づく登録をした人の権利の問題との関連でございます。この種苗法に基づく登録制度、この点についての権利が付与されるのはいわゆる特許権とどういう関連なのかということについての問題でございますけれども、農水省の方にこの点も確認をしておきたいと思うんです。
 昭和五十三年五月三十日、衆議院農林水産委員会における松沢俊昭委員の質問に対して、当時の新井説明員の答えがこういうふうになっているんです。「今回の登録制度、これは品種を育成した者に認めるわけでございまして、これは種苗法という行政取り締まり的な法規によって認められる」、ちょっと間を省略しまして、「新品種の育成をした者に対しまして、登録をする、その登録の反射的な利益といたしまして、一定の特権的な利益を与える」旨の答弁がなされたことがございますが、この点は確認できますか。
#54
○説明員(三野耕治君) 先生、先ほど御指摘の点につきまして、先ほど来お話がありました吉田先生の質問主意書に対する答弁一及び二において申し上げているとおりでありますが、この答弁は現時点においても変更はございません。
#55
○峰崎直樹君 ちょっと時間をとって恐縮でございますが、二点目は、同じ趣旨のことで、六月十三日の参議院農林水産委員会において私どもの先輩議員であります丸谷金保委員の質問に対して、小島説明員がやはり同じように「この登録によって与えられます地位というのは、この法律の中におきまして第三者がその許諾を得なければ勝手に有償譲渡ができないというふうな禁止規定を置いたことのいわば反射的な効果として、ある種の経済的な利益が本人に確保されると、こういう仕組みなわけであります」云々、こういう答弁がなされたことも確認はできますか。
#56
○説明員(三野耕治君) 先ほどの答えと同じでございますが、答弁書の一及び二において答えてい
るとおりでございます。
#57
○峰崎直樹君 実はこの点についてはもう一点あるわけでございます。実は政府答弁書の中にその点の記載が、この衆議院あるいは参議院の各委員会の答弁と違った政府答弁がなされているという点で私どもはこれは引き続き議論せざるを得ないなというふうに思っておりますので、この点について農水省の方にも申し伝えておきたいというふうに思うわけでございます。
 それから、今度は宮澤総理大臣のときの質問主意書に対する答えがあるわけでございますけれども、これは実は、特許法による植物新品種の特許と農水省の種苗法に基づく品種登録の調整に関する参議院の農林水産委員会における先輩の丸谷金保委員の質問に対して、これは別府政府委員といいますから法制局の方だと思いますけれども、種苗法「第十二条の五第二項第五号には、「登録品種の育成をする方法についての特許権を有する者」云々ということで、特許法上の方法特許とこちらの品種登録との調整の規定はございます。」「この法律で方法特許についてさえこのような調整規定を明文では置いているところから言いますと、いわゆる法律解釈上のもちろん解釈と申しますか、より保護をすべきものと申しますか、物の特許が行われた際には、」「十二条の五の二項の五号に準じて外れるという解釈をとることが妥当であろう」という答弁がなされたことについて、実はこれも農水省の方にちょっとお聞きしたいんです。
#58
○説明員(三野耕治君) 先生御指摘の点につきましては、先ほど来先生御引用されている答弁書の三において答弁しているとおりでありますが、この答弁は現在も変更はございません。
#59
○峰崎直樹君 実はもう同僚議員の質問時間に大幅に食い込んでいるので、さらに質問したいところはたくさんあったのでございますが。
 我々社会党の同僚の吉田正雄議員の質問したことに対する政府答弁、いわゆる農林省や特許庁の答弁とそれから政府答弁書の中で出されていることが大幅に食い違っているというそういう問題が、今実は指摘をしたことの中にあるわけでございます。これはこのまま放置をしておくということにはなりませんので、ぜひとも別途この種問題を論議する場で引き続き我々、政府側の意見の問題点についてさらにこれからも議論をしていきたいということを、最後の点ちょっとしり切れトンボになりましたけれども、そういったことを申し上げまして私の質問を終わらせていただきます。
#60
○吉田達男君 森通産大臣にお尋ねいたします。
 知的所有権の価値は今の世界経済の中でますます重要度を加えております日本でありますが、国際的な二つのいわば相対立する部分を含む条約に取り組んでおります。一つはWIPOでありますが、これは後進国を含む百二十カ国、多くの加盟国が合意を求めながらこの知的所有権についてはよりオープンな工業所有権のあり方を求めておりますし、ガットの方はこれはむしろ知的所有権に対する侵害に対していかに制裁をするかという知的所有権を保護する傾向の強い扱いであります。
 今こういう国際化の時代に対応して日本の特許法を改正しようとされる通産大臣は、日本の経済運営の戦略として工業所有権をどのように世界の工業所有権をめぐる制度に対応させようとしておられるのか、その基本的な方針をお伺いいたします。
#61
○国務大臣(森喜朗君) 先ほど冒頭に峰崎委員からも、いろいろとこれからの我が国がこうした工業所有権制度を含めて国際社会に対応していくことというような御質問もございました。少し重複する点もあるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。
 近年、技術革新が大変急激に進展をいたしておりますし、また企業活動の国際化も大変目まぐるしいものがございます。こうした状況を背景といたしまして工業所有権制度の国際調和の必要性が極めて高まっていることは、今も委員の御指摘のとおりでございます。今回の法改正もこのような要請にこたえるための努力の一環でございますが、もとより工業所有権制度の国際調和は一国だけで達成できるものではございません。関係国とのコンセンサスをつくり上げていくことが極めて重要でございまして、そのためへの努力をしていかなければならぬ、こんなことでございます。
 このため、今例示として御指摘ございましたようにウルグアイ・ラウンドの知的所有権交渉、さらにWIPO、世界知的所有権機構の特許制度調和条約等の国際交渉の場で、制度面の国際調和の達成に向けて引き続き積極的に働きかけていくということが我が国としての基本的な考え方でございます。さらに、制度調整に加えまして運用の調整も日米欧三極の特許庁においてやはり積極的に進めていかなければならない、このように考えております。
 国内面では、工業所有権行政の使命でございます迅速、的確な権利の保護のために審査の処理の促進にも全力を傾けてまいりたい、このように考えておるところでございます。
#62
○吉田達男君 今国際的に日本が知的所有権をめぐって対応をしておりますところは、後進国と言えないかもわかりませんが、主に隣接国の日本の工業所有権に対する模倣の問題であります。工業所有権を管理する者が怠れば模倣されてしまう、これをいかに守っていくか、こういう観点についてはどのようにお考えでございますか。
#63
○政府委員(麻生渡君) 工業所有権が途上国においてどのように守られるか、日本のいろんな権利が十分保護されるかどうかということは御指摘のように非常に大きな問題でございます。
 ガットのウルグアイ・ラウンド交渉の中での知的所有権交渉も、御指摘がございましたように、いわば途上国において適正に知的所有権が、特許を含めまして守られることができるように国際合意をつくろうということでございます。これは一見先進国がその利益を一方的に主張するためにその保護水準を確認しようというように見えますけれども、他方ではそのような保護の確立がなければいわゆる技術移転というものが進まないわけでございまして、いい技術はやはり模倣されてしまうので持っていかないということになります。
 その意味でも、広くは今のガットのウルグアイ・ラウンド交渉、知的所有権交渉がうまくいくということが一番焦点になってまいりまして、それに対応した形で各国のいろんな法制度が整備されていく、それを国際的に確認をしていくということが大事であるというふうに考えておるわけであります。
#64
○吉田達男君 ガットの方は、むしろ印象としてはアメリカに対しての対応の方に今当面しておるように思われます。東南アジア等々について、後進国についてはむしろハーモナイゼーションというんですかWIPOの方の条約ということで国際的な標準的なものをルールとして打ち立てるということが前提になろうかと思います。
 しかし、アメリカの場合は、先ほど大臣に質問いたしましたようにやや戦略的な考え方があった。例えば、税関法の三百三十七条は特許侵害の訴えがあれば輸入を差しとめるように改正になったわけでございます。今までは、ちょっと前でありますが、特許侵害と認めても被害証明が出されるまでは輸入をとめるという措置に出られなかったんですが、そこのところがまさに戦略的な展開であろうかと思います。工業所有権の制度というものといわば貿易時における一つの扱い方の問題との競合がそこにあって、そこで国の方針としての大臣の見解を聞いたわけでありました。
 ミノルタのカメラの自動焦点の特許にわたってアメリカとトラブルがありまして、ミノルタは結局百六十六億円賠償金を払い、かつ特許料を払ったのでありますが、この点についての見解をお伺いいたしたい。どう感じておられますか。
#65
○政府委員(麻生渡君) ミノルタとハネウェルの事件、これは個別的な事件でございますものですから、余り詳細に立ち至って私どもが民事事件につきまして云々することは適切ではなかろうと思いますが、これは事件そのものはハネウェルが四つの特許を出願しておる。それにつきまして、日
本、欧州あるいはアメリカでそれぞれ特許が成立した場合もあるし、まだ成立していない場合あるいは却下が行われた場合、いろいろあったわけでございます。これについてアメリカで裁判が行われて、御指摘のように非常に巨額のお金を払うということになったわけでございます。
 個別の訴訟内容はそれといたしまして、やはり世界的に特許をめぐる考え方がアメリカの裁判所を含めて非常に変わってきておるという点であります。
 一つは、これは一九八二年以来、アメリカの場合には特許問題を専門に扱う巡回控訴裁判所ができて、ここがいろんな形でいわゆるプロパテントの判断、判決を出しておるわけでございますけれども、そういう流れを受けましてやはり非常に多額の賠償を認めておるということでございますし、また傾向といたしまして権利者の権利、これを均等論なんかを使いまして広く認めるという傾向になっておる。
 その結果、企業経営におきまして知的所有権、特許というものが非常に大きな財産的価値を持ち、あるいはこれをうまく使えばマーケットの競争におきまして非常に有利な立場になっていくということがはっきりいたしておりまして、その意味で企業経営の中におきます特許の役割といいましょうか位置づけが非常に変わってきておる、そういうことが端的に出ておる事件ではないかというふうに理解をいたしております。
#66
○吉田達男君 日本の特許制度とアメリカの特許制度はもちろん違っておりまして、そこのところのショートが一つあろうかと思いますが、特許の扱い方の姿勢にも問題があり得たと思います。
 ミノルタに限らずでありますが、日本も特許を持っている、アメリカも特許を持っている、お互いに経済活動をしながらその特許を特許料を払って使用させてもらう、あるいは知らないうちにもし侵すことがあってもその分については寛容に願うような契約をしておるところもある。そういうところは特許がいわばクロスして、このクロスした特許についてショートした場合に営業的なセンスで解決をするという方法が日米の中に例があるようでございます。
 取引関係があってライセンスがクロスして合意を得たものはそれで済むかもわかりませんが、同じ特許をほかの者が使っていて、この件について合意が成ったということはその特許を侵していたということを認めたという傍証になって、それでその特許を使っていたほかの企業が次々とダメージを受ける、これはカメラ業界が軒並み横並びやられたケースと同じであります。
 ここにおいて特許権についての基本的な考え方を、知的所有権に対して自信を持つというか、きちんとした考えを近代的に持たなければならぬのではないかと思います。ありようとしては、訴訟を徹底的に追求するとか、あるいはその前後をわきまえた上で和解するなら和解をして長期の有効な特許権の使用をかち取るとか、あるいは逆に日本の方からいえば特許権をむしろより多く使わせ開放して特許料を取る、こういうようないわばわかり切ったことです。
 本質的な特許に対する取り組みというものが、アメリカに対してどこか浮き足立っている印象を受けてならなかった。それは特許制度にもかかわることでありますが日本の経済運営にかかわることでありまして、ちょっとしつこく聞いた次第でございますが、今後に処していただきたいと思います。
 そこで、この特許について、隣接の東南アジアの方でトラブっておりますが、アメリカとトラブっておる方のはまた全然意味が違っております。去年の九月に、アメリカの商務長官に特許制度にかかわって諮問委員会が勧告をしておりまして、その勧告によると、日欧等がアメリカの望む制度改正を実施するならばアメリカも先願主義に変わってもいい、つまり先発明主義で貫いておりましたアメリカが日本の先願主義にその特許制度を変えてもいい、こういうことを前提にしながら六つの項目にわたって提示をしておるわけであります。まあグランドパッケージと言っておるわけであります。
 そのことが今回の特許の改正に織り込まれているのか、視野に入っていないのか。また、アメリカのここの勧告を受けた政府が、クリントン大統領として今後先願主義に転身をされるという兆しにあるのかないのか。対応によって判断が異なってくると思うので、この改正に当たってどういう見解をお持ちか、伺っておきたいと思います。
#67
○政府委員(麻生渡君) 昨年九月に出ました商務長官の諮問委員会の報告、これは御指摘のようにアメリカも先願主義へ移る用意がある、しかしその場合には他の国もアメリカが求めるような制度変更をすること、その意味でパッケージのディールをやりながら変えていくんだという考え方でございます。
 その場合に日本は、アメリカに対しまして大きな三点、先発明から先願主義へ移行する、あるいは公開制度をとれ、あるいは特許の期間、起算点を出願日から考えるんだというようなふうに変えてもらうということが我々の交渉上の基本ポジションでございます。アメリカの場合には、今度は日本に対しまして六項目ほど、先ほどもございましたが、審査期間の問題とかサーチレポートの問題とかあるいは異議申し立て制度の変更というような点でありますが、そういうことを言っておるわけであります。
 これと今回の改正でございますが、いわゆるパッケージ項目と言われています事項につきましては今回の改正の中に入れておりません。これは、今後の条約交渉、それから交渉がうまくまとまりましてもそれをちゃんと立法化されるのかどうかということを見きわめながら、それとの見合いでやはり日本も考えていかなきゃいかぬという要素がございますものですから、交渉上の立場ということも考えておりまして、今回の改正そのものにはいわゆるパッケージ事項は入っていないということであります。
 ただ、では今回の改正は全くこのようなことと無関係がといいますと決してそうではございませんで、補正の適正化、これはもう条約の項目に入る予定でございますけれども、これは各国で全く意見の相違がないという点でございます。また、審査促進という点は、これは条約交渉をやっていきますためにも、どうしても日本はこの問題に大きな課題を抱えておりますから早くこれに対して対応をつくっていく必要がございますから、その意味では今回の改正は非常に大きな前進になっていくということでございます。
 それから二番目の、新政権、クリントン政権の中でアメリカの立場はどうなっていくのかということでございますが、これは端的に申しまして、まだ肝心かなめの向こうの特許庁長官の人事ができていない、どういう人が来るかわからないという状況でございまして、非常に判断の材料に乏しいわけでございます。
 ただ、アメリカが今まで新政権のもとで発表いたしております経済政策、特に技術政策あるいは産業競争力政策、あるいは対外交渉のためのUSTR、通商代表部の交渉ポジションペーパー等を見ますと、ここにはやはり知的所有権をうまく使ってアメリカの産業を強化していこうという思想が非常に色濃く流れておるわけでございます。その意味では、従来と同じようにいわゆる知的所有権をてこにという知的所有権戦略の考え方は恐らく維持されるんではないかというふうに予測をしております状態でございます。
#68
○吉田達男君 制度の大きな違いを世界の調和を求める中でお互いに包む、まあ言葉をきれいに言えばそういうことでありますのでそれを期待するものであります。今回の改正の中にも、それをあえて意識したようにはおっしゃいませんでしたけれども、促進等々についてはこたえておると。アメリカの先願主義というものについてはなおそれの実現方を迫りながら、制度による違いというものが近代的な経済世界の中で矛盾をはらんではなりませんので、アメリカと日本が経済大国とお互い協力し合いながら、それができないようではい
けないので、努めてアメリカに求めてもらいたいと思います。
 そこで、このたびの促進の一番大きい目玉は補正を制限したことでございます。この補正を制限するというのは方法として当然あり得たことだと思いますけれども、問題は、特許権の範囲にわたって前提となる見解というか概念がちょっと違うのではないかという気がしまして、それによってまた大変な運営上の問題が起こってくると思います。願書に最初に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内において補正は許されるわけでありますが、この事項の範囲ということであります。
 ここに万年筆がありまして、ちょっとスペアをこう入れていくわけです。このスペアの玉が丸いのもあります。円筒形になったのもあります。弁になったのもあります。これでパテントをどうとっているかわかりませんが比喩で聞いていただきますと、アメリカの特許のクレームの範囲ということで言うと、こういう方式であれば、文章表現でありますからこれは一つの特許で済んでいると思うのに、日本の場合は、これはベアリングのような玉できちっとやったのと弁になったのとそれによって受けの方の刺す角度が斜めに削ってあったりしましてそれぞれ違っていますが、それは別々の特許のように見受けられる。
 そして、その文章解釈に当たって特許庁では、そういう特許を出願するときにデータを示せとか、あるいは実際にはどういうことだということで実試レベルほどの詰めをなさる。したがってこの特許事項というものが限定されてくる、狭い範囲になってくる。アメリカの場合はかなり広い範囲でこれが扱われているように伺う。
 そこで、どういうことが起こっているかというと、日本の特許では、このタイプを一つ発明したけれども侵されてはならないから防衛出願をしようということで、一つの特許にわたって似たような類似の周囲の特許をたくさんとってやってきた、こういう慣例が日本の中に起こっているわけです。したがって、そこのクレームの範囲というものがはっきりしないと、補正をするのが妥当かどうかという判断についても扱い方が変わってくると思うのでございます。
 そこで、今補正の問題でお伺いいたしますが、この文言どおりに解釈いたしますと十七条の二項は極めて限定的なものであります。そうすると、補正をさせないということが今までの日本の慣例で言うと大変厳しいことになりはしないかと思うのでありますが、それについてはどういう解釈をしておられますか。
#69
○政府委員(辻信吾君) 今回の法改正のうちの新規事項の追加についての具体的考え方はどういうことかという御趣旨だと思います。
 これにつきましては、明細書または図面の補正につきましては、従来は要旨の変更にならない限りつまり当初の要旨を変更しないと認められた場合に限り、出願当初に記載されていない事項を追加する補正が可能であったわけであります。これは従来も、追加の補正というのはそう大幅に認められていたわけではございません。極めて要旨を変更しない範囲ということであります。
 しかしながら、要旨を変更するか否かということにつきましては、対象は記載されている内容が発明でございますから、要旨を変更しているのかしていないのか、どうしてもこういう解釈の幅があることは否定できないわけでございます。審査官自身がつまり実体判断を要する、そこについて十分な吟味が必要だということでございます。
 それで、これを認めるか認めないかについて非常に多くの時間がかかっていたということでございまして、今回の補正はこれをつまり明細書または図面に明らかに記載されている事項ということに限って認めるという趣旨でございまして、このように一見制限的なようでありますが、非常に判断が画一的になりましてまた容易になるということが趣旨でございます。
#70
○吉田達男君 今までも勝手たるべしという補正をやっていたわけじゃないけれども、ニューマターを出してもよかったので補正が続いたわけですね。今回もう出されないということになったわけですから、そこで解釈の問題が厳格になってくると思う、法施行で。
 そうすると審査をされるのは個人です、個人の差があるかもしれない、制度が変わりますからね。そしてまた、初めに言いましたような若干ともアメリカの影響を受けというか、お互い譲り合いながらということになってくると、適用、認容もそういう傾向を持って広いクレームを文章表現でやるということになってくると、もとは文章表現ですから、その解釈をどうすべきかというガイドラインのようなものを担当の者も知っておかなければならないし、またこの制度をもってこれから出願をするという者にも周知させなければならぬ。
 その周知についてガイドライン等が必要なのじゃないかと思うけれども、それなんかはどういうふうに考えているのか。
#71
○政府委員(辻信吾君) 御指摘のとおり、これは出願人の方にとりましては非常に重大なことでございますので、こういう場合は認めてこういう場合は認めないというような具体的な事例もつけまして早急にこのガイドラインをまとめまして、もちろんその過程におきましては出願人または代理人の方、弁理士先生等の御意見も取り入れまして早急にこういうものをつくりまして、また具体的には全国で説明会を開くといったようなそういうことを通じまして周知徹底を図ってまいりたい、かように思っております。
#72
○吉田達男君 最近の特許は、先般特許庁に視察に参りましたときに、コンピューターその他大変高度専門的なものが多くなっておりますが、依然として中小企業あるいは町の発明家等々も出願をしております。そういう人たちも、このたびの制度の改正によって大きい影響を受けるのであります。何でも中小企業というつもりではありませんが、そういう専門の職員を一つの組織として会社の中に持ってやっておるところと、一匹オオカミみたいな中小企業、町の発明家がこれに対応しようということになればどういうようないわば支援措置があり得るのか。
 また、私は地方の鳥取におりますが、ペーパーレスが施行になって、平成五年の一月にオンラインが通じて大変便利になったけれども金がかかると言っています。しかし、地方になればそういう特許情報も日本国内均一とまではいきません。こういう不利な条件にある者に対しての周知方について、あるいはこれに対応する支援措置についてどのように考えておられるか、お伺いいたします。
#73
○政府委員(麻生渡君) 今回の補正の適正化、それの関連ももちろんあるわけでございますが、現在のように特許が経営上、技術上非常に重要になってまいりますと、特許戦略ということが大切になってきております。
 したがいまして、この特許戦略をいろいろ考えながら、研究開発段階あるいは製品を送り出す段階から出願を戦略的に選択的に行っていくということをやっていきます非常に重要な要素の一つは、やはりそれぞれの技術の分野あるいは出願しようとしておる分野あるいは研究開発を新たにゃろうとしておる分野で先行技術がどうなっておるかということを十分知るということが大切になってくると考えられます。
 特に、御指摘のように中小企業の場合あるいは個人発明家の場合には、そのような能力をそれぞれ持つということは大変でございます。その意味で先行技術の調査能力を補完するという対策をとりたいと考えているわけでございます。
 具体的には、全国にございます発明協会の支部、これは都道府県にみんなあるわけでございます。それからもちろん私ども通産局は入るわけでございますが、そのほかに商工会、商工会議所、そういうところを窓口にいたしまして、個人あるいは中小企業の皆さんが自分の出願との絡みで先行技術がどうなっておるかということを調べたいという場合には、こちらの方に持ってきていただければこちらを窓口にいたしまして調べてさしあげるという制度をつくっていきたいと思うわけであり
ます。
 幸いぺーパーレス計画がずっと進んでまいりましたものですから、先行技術の調査のためのデータベース、これはこの前見ていただきましたようにずっと蓄積をされてまいりましたものですから、あれをずっと開放していく、あれを使いながら解析をしていくということでございます。必要な端末は各地に置いておりますけれども、直接その端末のない場合には発明協会の支部を通じますとそれが東京の方とつながるということでございますから、それを使いながらその補完をやっていこうということであります。
 また、そういたしますとむだな出願もなくなっていくという意味で、中小企業の皆さん方の費用負担の軽減にも十分なるというふうに考えておるわけでございます。
#74
○吉田達男君 それでは実用新案についてお尋ねいたしますが、先日視察に参りましたときに表をもらいましたら実用新案の件数は近年非常に右下がりになっておるわけでございます。これはどういうわけだろう、そこの分析をひとつ聞かせてもらいたい。
 いま一つは、実用新案制度をとっておるのは世界の中でも日本、ドイツ、そのほかはちょっとでもうほとんど特許オンリーでやっておるわけであります。こういうことでいくと、実用新案は今の扱いにしてもやめてしまおうというような腹でもあるんじゃないかという疑いも持たざるを得ないんですが、ちょっとその辺の見解を聞かせていただきたいと思います。
#75
○政府委員(麻生渡君) 実用新案の出願件数が減ってきておりますが、これはいろんな事情が考えられます。
 一つは、やはり日本の技術水準がずっと上がっておりまして、技術の内容から見ましてやはり特許の方にいくということの方が適しておると出願者の方が判断される、その意味では技術水準が向上しておるということが一つの要因であろうかと思います。
 もう一つは、特許と実用新案を比べました場合に、やはり世界的にいろいろやっていきます場合に実用新案といいますのは今御指摘がございましたように全世界的な制度ではない、特許は全世界的な制度である、そういう意味ではやはり特許をとった方がずっと世界で活動していく場合に技術的な基礎として使いやすい、力が強いという要素が働いておるというふうに考えられるわけであります。
 今回の実用新案制度の改革でございますが、確かにこのように実用新案の利用件数が減ってきたということがございますが、もう一つ、実用新案と特許を比べました場合に現在の運用というのは非常に類似をいたしておりまして、制度の特色がないと言ってもいいような状態になっておるわけであります。
 一方で特に、例えば典型的にはおもちゃとか繊維とかあるいは家庭電気用品等々の分野では、現在の実用新案はやはりどうしても審査をやっておりましてこれで時間がかかるものですから、審査を終わって権利をもらったときには実際にはもうマーケットでその製品寿命が終わってしまっておる、技術の寿命も終わってしまっておってそれをもらったときには本当の有効な権利として使えないということになってしまうので、ともかく早く権利をもらわなければ短ライフの技術には対応できないというようなことがございます。
 そういうことで、今回は新実用は主として短ライフの技術を早急に保護していくという制度にし、それから権利期間を長くとってやっていこうというものにつきましては特許が利用できるというような制度の差を設けるということによりまして、実用新案制度ももっと有用に使えるという方向を探っていきたいということでこのような制度改正を試みておるわけでございます。
#76
○吉田達男君 それで、実用新案制度は存続をする、廃止をするという考え方ではないということのように、はっきりおっしゃいませんでしたが受け取ってよろしゅうございますか。
#77
○政府委員(麻生渡君) 今回の改正は、現在の技術の変化あるいはマーケットが急速な変化をしていくという実態に合わせましてもう少し有効に使えるという制度に変えたいということでございまして、実用新案制度をやめたいとかそういうことでは決してございません。
#78
○吉田達男君 わかりました。比較的小発明でありまして、それだけに経済の動きの中で陳腐化も速いのに出願手続の方に時間がかかって日の目を見ないうちにあきらめてしまう、こういうようなことがあってもならぬので、今度の無審査で実用新案権を与える、こういうことでありますが、それによってよみがえれば幸いだと思ってちょっと激励かたがたお尋ねいたします。
 この方式審査だけで権利をとるわけであります、実体審査がなくて取る。その裏づけになっているのが、結局は技術評価書があってその信用になっておるわけですね。だから、その技術評価書の根拠が説得力のあるものでなかったらこれも死んでしまうのであります。評価をする基準といいますか、さっき言ったガイドラインといいますか技術評価でこれは確かなものだという横に並べて見るものは何かという物差してございます。
 手っ取り早く言えば、公報があったりしましてそれを見ればおおむねわかる。ところが、今の技術業界は専門家がたくさんいて専門書を見なければわからぬことがたくさんあるというようなことを見ると、どの辺に技術評価の根拠を置くのか、その基準はどういう形で示されるのか。新しい制度に当たってお示しをいただきたいと思います。
#79
○政府委員(辻信吾君) 技術評価書でございますが、これは登録された実用新案権の有効性について客観的な判断材料を提示するものでございまして、これは特許庁の審査官がこれに関連する先行技術文献を調査するわけでございますが、その文献から見た権利の有効性について評価を示すわけでございます。
 その対象となる文献でございますが、審査官が現在の実際の審査で現在の制度で用いております同じ文献について同じデータベースを使いまして作成することになっております。したがいまして、審査と同様の質が担保されるというふうに考えております。
#80
○吉田達男君 方式審査は、手続的な形式が整ったらクリアするわけですね。実体審査になると今中身にわたってやる。ここの技術評価を方式審査の裏づけとしてやる場合に、時間がかかるとまた同じことになるんじゃないかという心配がある。それは今までと同じレベルのものを物差しにする、こうおっしゃったから、そこのタイムラグができてしまったらもとのもくあみになるのじゃないかという心配をちょっとしますし、そこのところを御説明いただきたいと思います。
#81
○政府委員(辻信吾君) これは迅速に作成しませんといけませんもので、例えば出願と同時に評価書を請求されます場合は約半年ぐらい、出願が登録されると同じくらいに評価書も出したい。それから登録後に評価書を請求される場合でありますが、これも三カ月ぐらいでできないものだろうか、こういうふうに考えております。
#82
○吉田達男君 それにしても、十年という権利を六年にするわけでございますね。出願手続が短縮されるから有効に使える期間は確保される、こういうことかもわかりませんが、料金からすると五割高くなっておる。十年のものが六年になるのに料金の方は五割高くなる。これは余りじゃないかと思うのであります。
 先ほど算出の根拠についてやや触れられましたけれども、結構出願の費用もかかりますしまた弁理士にも世話になりますし、維持をするためにまた年度を追って登録料を納めていかなければなりません。これはなかなかの負担でありますからできれば低いにこしたことはないと思うのであります。
 時間がないので、そこのところをもう一度お答えいただきたいのとあわせて、アメリカなんかの例を見ると、料金がA系列とB系列とあってA系列は大企業、B系列は中小、個人で二分の一になっ
ていますね。そういうような扱いをして、やはり日本の国民が大企業でなくても町の発明家として夢を持って世に貢献をする技術、わざを主張できる、こういうことを育てるような気持ちにもなってもらいたいと思うのであります。
 今言った料金の半額とかいうような点についての考え方はいかがでありますか、お答えをいただきたいと思います。
#83
○政府委員(麻生渡君) 今回の料金の改定によりまして、確かに中小企業あるいは個人の方々の負担は増加するわけでございます。ただ、値上げ率そのものは、特許、実用新案あるいは新実用新案制度それぞれ違った要素がございまして、一番高いところで五〇%という形になっております。いずれにしましても、そういうことで料金の改定をさせていただきたいと考えてお願いを申し上げておるわけでございます。
 権利期間が短くなる、一方で値上げするというのはどうかという第一の点でございます。権利期間の問題は大変難しい問題でございます。先ほど申しましたように、今回の新実用新案制度、これはとにかく早く権利がほしい、そして必要な場合に早く行使をしたい、そうでないと技術の寿命が尽きてしまうというものを迅速に保護しようということでございます。それで、いろんな形で実態を調査いたしました。けれども、六年あれば今問題になっておるような技術は十分保護できるのじゃないかということが一方にあります。
 一方で、権利者の側から見ますと、権利は常にできるだけ長い方がいいということになるわけでございますが、やはり実用新案、特許もそうでございますけれども、これは一種の非常に力の強い独占権でございますものですから、その権利を長く認めてほかの人が自由に使えないという状態、これは社会全体から見ると制限されることの利益のバランスをどう見るかというところがあるわけでございます。相当ライフサイクルが短い技術をいつまでも独占権を与えて普通の人が自由に使えなくなっていくという状態をつくるのは、これはまた別の観点から非常に問題があるということで、その両者のバランスを勘案して六年間にいたしたということでございます。
 それから二番目の、確かにアメリカは中小企業の料金と大企業の料金が違っておりまして二重料金制になっております。アメリカの場合には、八〇年代の初めに一挙に料金、出願料を四倍にいたしまして、いわゆる日本で言う登録料を導入したため二十倍近くになったということがございまして、余りにも急激な値上げであるということで激変緩和措置ということでこれが導入されたという経緯がございます。
 これについてはまだアメリカの中でもいろんな議論があるわけでございますが、私どもは中小企業と大企業の二重料金制をとっておりません。これは、やはり特別会計の考え方、料金の考え方というのが受益者負担ということでございまして、出願をし権利をもらいますとその権利自体は財産的にもあるいは経営戦略的にも非常に大きな価値を持つものでございまして、その価値を生むという点ではもう大企業、中小企業同じことでございますし、審査のコストという点でも同じであるということでございます。また、ほかのいろんな料金制度を見ましても、日本の場合は、中小企業あるいは大企業ということで変わった二重料全体制はとっておりません。
 しかし、言われますように、中小企業なり個人発明家の皆さんに対する配慮はやはりする必要があるということでございまして、その場合には、一般的には料金体系を別にするんじゃなくて別途の中小企業対策ということでやるわけでございます。
 今回も私どもは料金は同じように上げさせていただきたいと思っておりますけれども、中小企業の皆さんに対する配慮、対策といたしまして一番効果的なのは先行技術の調査を補完するということではないかと思いまして、全国的に補完するためのシステムをつくっていく。それによりまして二重、むだな出願を回避する、あるいは研究開発活動もしっかりやれるという基盤をつくっていくという形で対応したいと考えておるわけでございます。
#84
○委員長(斎藤文夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   正午休憩
     ―――――・―――――
   午後一時二分開会
#85
○委員長(斎藤文夫君) ただいまから商工委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、特許法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#86
○松谷蒼一郎君 特許法の改正につきましての質問に入ります前に、現在景気の動向が微妙に変化をしているというように伺っております。例えば四月七日の日銀総裁の記者会見の中でも、株価が上昇してきている、それからまたマネーサプライにつきましても増加が見られる、それによって企業マインドに微妙な変化が見られるというような会見の趣旨がございました。それからまた、経済企画庁の月例経済報告につきましても同様なことでございますし、また自動車の生産がふえてきている、それから住宅建設につきましても、今までのいわゆる建てかえ等を中心にした住宅建設の増加だけでなくて、分譲マンションにつきまして前年同期比では落ちてはおりますが、しかしやはりその減少の幅が次第に小さくなってきておる、こういうような状況でございます。
 こういうような景気の動向の微妙な変化につきまして、通産大臣としてどういうような御見解であるか、その点についてお伺いいたしたいと思います。
 特に、四月十三日に新総合経済対策が決定になりました。十三兆二千億という大変膨大な補正予算が計上されるということが決定されたわけでございますが、これにつきましては一部の報道機関では、矢継ぎ早の景気復興対策はいいんだが、景気が過熱はしないだろうか、またバブル経済がまた再びやってくるようなことはないだろうかというような懸念をしている向きもございます。
 そういうような点につきまして、通産大臣の御所見並びに今後の対策等につきましてお伺いさせていただければ幸いでございます。
#87
○国務大臣(森喜朗君) お答えを申し上げます。
 このところ鉱工業の出荷あるいは乗用車販売、マネーサプライなどに、今委員から御指摘ございましたように、一部には回復の兆しを示す動きが徐々にあらわれてきておりますことは御承知のとおりでございます。しかし、私は常々この商工委員会でもあるいは予算委員会でも申し上げてまいりましたけれども、通産省といたしましては産業界全体の動向をやはり注視をしておかなきゃならない、特に産業界全体から見てまだその業況感は必ずしも皆さんのそういう晴れやかな状況であるということにはかなりほど遠いという、そういう感じを私は持っております。
 したがって、工業生産指数も確かに二月一・九とプラスに転じておりますし、三月の予測も二・三というふうに我々見ておりますけれども、これはやはり年度末の決算対策ということもございましょうし、そういう意味での押し込み的なものもあるでしょうし、自動車の場合はちょうどヨーロッパヘの輸出が一応解禁をされたといいますか、そういうこともございますでしょうし、いろんな要素がありまして、逆にそういうことの反動で四月にはマイナス三・一になるのではないかというふうに我々は見ておるわけでございます。
 そのほか、業界の動向を見るには在庫調整を見るのが一番いいわけでありまして、そういう点では生産財も消費財も耐久消費財もまだまだいまいちということで、かなり私どもとしては先行きまだ不透明だ、こういうふうな見方をいたしておるわけです。
 今マネーサプライの御指摘もございましたけれども、確かに六カ月ぶりには増加に転じておりますが、対前年比でいきますと〇・二%増でござい
まして依然として低い伸びである、こういうふうに見なければならぬと思っております。特に、GNPの四分の三を占めております個人消費の低迷、設備投資の減少が依然として続いておりまして、そういったいろんな角度から見て私どもは依然厳しい状況に推移している、このように見ておるわけでございます。
 そこにさらに最近の急速な円高が景気に与える影響は、これはまた懸念せざるを得ない状況でございまして、我が国経済はまだまだ予断を許さない状況にある、このように私は認識をいたしておるところでございます。
 このため、今松谷さんから御指摘ございましたように、政府として四月十三日に総合的な経済対策を決定いたしました。今回の経済対策は総規模で十三兆円を上回るものでございまして、前回の十兆七千億を超える史上最大のものであるとともに、これは内容的にも、この委員会でも与野党の皆様からいろんな御意見をいただきながら私も申し上げてまいりましたが、従来の公共事業に加えて、さらに波及的効果が広がるようにということで新社会資本の整備も盛り込ませていただいたという、そういう特色を持っております。
 このような社会資本整備の新たな展開によって、その需要拡大効果が各方面に広範かつ速やかに浸透することが期待をされるわけでございます。もちろんいずれ補正予算というのはお願いを申し上げるということになるかと思いますが、昨年のいわゆる総合経済対策、それを裏打ちいたしました補正予算、さらに皆様のおかげで二十二年ぶりに年度内に成立をいたしました平成五年度の予算、こうしたものと連続いたしまして、さらに今回のこの対策が産業界全体、あるいはまた消費者全体のマインドにいい効果をあらわしていくというふうに私どもは見ておるわけでございます。
 そういう措置と公共投資の拡大、さらに減税、政府系金融機関の活用による設備投資の促進、さらにはきめ細かい中小企業対策等の措置が相まって景気の早期回復に寄与するものであろう、このように考えております。
 何といいましても自由主義経済でございますから、こうした措置を政府等が一体になってやったわけでございますが、同時に民間企業に対しても、経営基盤の強化、そして新しい需要に即応した戦略を立てるということも極めて重要なことでございまして、そうしたことを民間企業においても積極的な経営努力を行っていただきたい、このように期待をいたしておるところでございます。
#88
○松谷蒼一郎君 ただいま通産大臣から御所見を伺いました。景気の回復につきましてのかじ取りの大変難しい時期であろうかと思います。そういう点で、経済官庁の中で最も実力者であられます森通産大臣、何とか景気が回復に転じていくようかじ取りの方をよろしくお願いを申し上げます。
 それでは次に、特許法の改正に関連しての質問に移ります。
 先日特許庁を視察させていただきました。大変立派な建物の中にすばらしい施設がありまして、制度もそれから運営もそしてまたペーパーレスのシステムも、非常に世界的な形で運用されているんではないかと大変に感心をしたわけでございます。
 しかし、今回の法改正に見られますように、我が国では特許の出願件数が世界各国に比べて非常に多いということはございますが、それにしても出願から権利付与に至ります期間が相当に長いというように伺っております。そのこれまでの状況と、それからまたペーパーレスシステムその他を導入したことによる現状と今後の見通し、出願から権利付与までの期間の問題でございますが、それらについてお示しいただきたいと思います。
#89
○政府委員(麻生渡君) 私どもの審査期間、御指摘のように世界の中では長いということでございます。最近では昭和六十三年のときが一番平均処理期間は長かったわけでございまして、このころが三十七カ月でございました。
 その後、日米の構造協議なども行われまして、これではどうにもならないということで、平成七年に二年、二十四カ月にしようという目標で今対策を講じておるという状況でございます。今のところいろんな対策を講じておりますが、平成七年に二年、二十四カ月まで持っていくということは何とか達成できるんじゃないかあるいは何とか達成しなければいけないというふうに考えているところでございます。
 さらに、もう少し先を見ました場合に、国際的に見てまだ日本の国内の状況から見まして平成七年の二年でいいのかとなりますと、これはまだ不十分になる可能性が非常に大きいわけでございまして、現在の特許調和条約の中での審査短縮の問題、これはさらにもっと徹底した短縮を迫られておるというような状況でございます。その意味では、この短縮問題、一層の努力が引き続き必要であるという状況であるわけでございます。
#90
○松谷蒼一郎君 日米構造協議でアメリカ側から平成七年までに二十四カ月の審査期間でやってもらいたいという要請があったわけであります。また、WIPOのハーモナイゼーション条約案に盛り込まれております迅速処理の要請もございますが、そういったものが今回の法改正あるいはその他措置によりまして満たされるようになるのかどうか、その点についてお伺いいたします。
#91
○政府委員(麻生渡君) 今回の改正の中で審査処理促進に直接役立ちますのは、これは補正の適正化でございます。これをやりますと、補正のときに何回も先行技術の調査をしながら審査をしなければいけないというところが、ずっと回数が制限されてくるという意味で役立つというふうに考えておりまして、大きな期待を寄せておるところであります。
 また、今回の料金改正でございますけれども、その大きな目的は、処理期間の短縮のために従来やってまいりましたような増員、あるいはサーチレポートの外注というようなことを続けて強化をしていこうということで役立つわけでございます。
 WIPO条約の今の案に盛られていますこの審査期間の問題、この考え方は、今の私どもの審査請求の時期から計算をいたしまして平均何年で処理するかという考え方を超えまして、出願時から換算しようということでございますものですから、これは相当の審査請求期間なんかの短縮も含まれております。その意味ではもっと違った考え方も含まれておるということでございますから、今後このような対応だけではなくて、さらにいろんな多面的な対応策を考えていく必要があると思いますし、またこの点は条約交渉の途中で日本の実態に合った形で交渉を強くするということも必要であると考えております。
#92
○松谷蒼一郎君 今回の法改正によりまして審査期間を短縮していこうという、その法改正の目的に最も合った改正点というのが補正の問題じゃないかと思うんですが、この問題は確かに、いろいろお伺いしますと、補正によって審査が大変に複雑になる、あるいはまた不公平の問題が出てくるというような問題がございます。しかしまた、出願者から見れば、この補正の問題はある意味では助けになるようなところもあるわけです。そういう意味で補正の適正化が出願人にとって不利益となったり、あるいは実用新案制度の改正に伴って混乱が生じる、そういうようなことはないのかどうか、この点についてちょっとお願いします。
#93
○政府委員(麻生渡君) 第一点目の出願人にとって不利益にならないかどうかということでございます。
 これは若干歴史的な問題でございますけれども、日本はずっと長い間特許出願は単項制をとっておりまして、一つの出願には一つの特許の権利としての請求項しか認めないというやり方でございました。しかし、これでは権利をいろんな形で強くする、広くするということが難しいということでございまして、六十二年より多項制ということで、一つの出願でいろんな特許権の関連するものを一括して請求できるという形に変えております。これは欧米もそのような制度をとっており、そのもとで欧米の方では基本特許なんかも数多く
つくられておるという状況でございました。
 この多項制はずっと日本で定着をしてまいっております。随分習熟をしてまいったということでございまして、これが定着をいたしますと、今度は、単項制を前提にしておりました現在のような補正のやり方、これはもう少し適正化をするということが可能でありますし、むしろそうしなければこの制度が有効に生きてこないということでございます。
 そういうことでございまして、この補正の適正化をやりましても、多項制の定着したものをうまく使っていただければ、これは出願人にとりまして必要な権利は十分とれる仕組みでございますし、またこのような制度を使って欧米では立派な基本特許、強い権利が構成されておるという状況でございます。
 さらに、実用新案制度の改正に伴って混乱が生じないか、あるいは適正化の問題で混乱が生じないかという点でございますけれども、これは当然私ども新制度に移行するに当たりまして必要な制度運用のガイドラインは公表してまいりますし、またそれにつきましては事前に全国にわたりまして十分周知のための講演会、説明会を開くということでございますものですから、このことがないように最大の努力をいたします。また、ないものと確信をいたします。
#94
○松谷蒼一郎君 たくさん質問したかったんですが、もうあと十分ぐらいしかありませんのでちょっと省略をいたします。
 先日特許庁を拝見いたしましたときに、実にすばらしいコンピューターの使用でありますとか制度の運用に感銘を受けたわけでございます。ただ、結局審査をするのは審査官なんです。そうなってまいりますと、現在の先端技術、例えば電子技術やバイオテクノロジー、そういった非常に先端的な技術を審査する場合に、実体審査の場合、こう言うことは失礼ですけれども、審査官のそれを審査する能力が果たして十分に特許庁の中で備えられていくものかどうかということに若干の疑問を感じたのでございます。
 この点は、それでいくといえばそれで結構でございますが、例えば民間のいろいろな研究機関と協力をしながら審査をしていくとか、そのようなことが考えられるのかどうかそれらについてお伺いいたしたいと思います。
#95
○政府委員(辻信吾君) 先生の御指摘のとおりでございまして、非常に重要な問題と認識しております。それで特に、半導体とかコンピューターあるいはバイオテクノロジーといったような先端技術分野におきまして迅速、的確な審査体制を構築することは、技術開発の成果、適切な保護が要請されているという観点から極めて重要だと考えております。
 具体的にどのようなことをやっているかと申しますと、審査官を大学などの教育機関に派遣しまして特にこういう先端技術については再教育いたしております。それから、こういうことと同時に、コンピューターのソフトウエアでありますとかバイオテクノロジーといったような先端技術につきましては審査基準といったものが非常に重要な意味を持っておりますので、これらについては現在改定の作業を行ってきております。近々公表にこぎつけたい、かように考えております。このようなことを通じまして審査基準を統一する、能力を上げると同時にそのスタンダードの整備をしていく、こういったことをやっているわけであります。
 また、人員的に見ますと、コンピューターソフトウエアのような分野は非常に出願が急増しておりまして、このような分野におきましては審査官の増員を重点的に配備いたしまして、先端技術について十分な審査体制を構築しているところでございます。
#96
○松谷蒼一郎君 ただいま特許庁では、たびたび申し上げますようにペーパーレスの計画推進、それから審査官の増員等の総合的な施策によりまして、出願から権利付与までの期間を何とか短縮しようということで頑張っていらっしゃるわけでございます。今回の法改正あるいは審査官の増員、これらによって所期の目的どおり審査期間の短縮ができるのかどうか。もう少し遠慮せずに、どうせ特別会計でございますから、審査官をもっと多量に増員するとかそういうことで期間の短縮を図るというような考えはございませんか。
#97
○政府委員(麻生渡君) この前御視察いただきましたようにいろいろ機械化はやっておりますけれども、最終的に判断をいたしますのはどこまでも人間であります、審査官であります。したがいまして、審査官各人の能力が非常に高いことはもちろんそうでございますが、審査官の人員数ということも非常に重要な要素であります。
 そういうことでございますものですから、特許庁の方では審査官の増員、これに鋭意努力を重ねております。過去五年間、平成五年までの増員数は百七十七人であるわけであります。御承知のとおり、今国家公務員、これは総定員が縛られておりますものですから総定員はふえない。一方がふえた場合には必ずどこか減っていくというような関係になっておりますものですから、増員を認めてもらうというのは大変に難しい状況でございますけれども、関係各方面のいろんな御理解を得ながらこのような増員をやっているということでございます。
 今後につきましても、やはり中心は何といいましても人間でございます。その意味で一層増員の確保に努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
#98
○松谷蒼一郎君 審査官の増員を含めましてやはり審査体制を充実するためには、特別会計自体が健全な会計でないとぐあいが悪いわけですけれども、そのために今回の法改正によって料金の改定が行われるわけであります。しかしその中身は、午前中に社会党の先生方の御質問がございましたが、料金そのものは今の価格の体系の中で言えば大した価格ではないわけです。それよりは、出願する方々の御意見を伺いますと、少々料金が高くなっても審査期間をできるだけ短縮してもらいたい、自分たちの職業のためにも、仕事のためにもその方がよほど効率的だなというようなことを伺っているわけですけれども、今回の料金の改定で十分なのか、あるいはさらに今後料金改定を行う意図があるかどうか、これについてお伺いします。
#99
○政府委員(麻生渡君) 今回の料金改正をさせていただきました後、特別会計の見通しがどうなるかということでございますが、この点につきましてはいろんな条件を想定しながら検討を詰めてまいりました。長期にわたりまして予測をするということは、不確定な要素が多々あるものですからなかなか難しいわけでございます。
 いろいろ試算をしておりますが、今から五年間、平成九年度までを見通した場合には、今回の値上げを認めていただき、また別途私ども歳入対策、これはいろんな形で審査促進をするということが歳入対策になるわけでございますが、そういう対策も行っていく、あるいは歳出面につきましていろんな形での合理化努力、特にコンピューターのダウンサイジングというものをやっていこうというような削減努力を重ねますと、五年間はやっていけるということの見通しを持っております。
 ただ、ちょっと不確定な要因と申しますと先ほどのWIPOの条約問題でございまして、あの帰趨いかんでは今予想しでないような要素が加わることも考えられます。これにつきましては、サーチレポートの問題を初め、何とか大きな歳出増にならないようなことで済むように鋭意交渉してまいりたいと考えておる次第でございます。
#100
○松谷蒼一郎君 迅速な権利付与ということは世界経済の発展のためにも、そしてまた我が国産業の発展のためにも極めて重要なことであると考えます。そういう意味で今回の法改正は前進であるというように私は考えております。しかし、これで果たして十分であるのかどうか。そういう点につきまして、あるいは今後さらに特許行政をいかに発展をさせていくかということにつきまして、最後に通産大臣の御決意を伺いまして、終わります。
#101
○国務大臣(森喜朗君) 特許行政を初めといたし
まして工業所有権行政は、知的生産活動の成果の迅速かつ的確な保護を行っていく、さらにまたそれの利用を図ることを通じまして産業の発達に寄与することをその使命といたしております。近年の技術革新の進展や企業活動の国際化等を背景といたしまして、工業所有権はその経済的価値及び国際性を高めておりまして、その意味で工業所有権行政、とりわけ制度の国際的調和の重要性が一層増してきているものだと認識をいたしております。
 このため、ウルグアイ・ラウンドの知的所有権交渉、あるいはWIPOを初めとした国際交渉の場で国際調和の達成に向けて引き続き積極的に働きかけてまいりますとともに、日米欧三極特許庁間で運用面での調整にも着手してまいりたいと考えております。さらに、ASEAN諸国等に対する特許制度整備のための支援も重要であると考えております。
 国内面では、今委員からも御指摘ございましたように、審査の促進、権利の早期付与が現在のような変化の早い時代に特に重要であるというふうに認識をいたしておりまして、このための努力を強化をしてまいりたいと存じておりますので、今後とも御理解をいただきますようにお願いを申し上げる次第でございます。
#102
○浜四津敏子君 それでは伺います。
 WIPOの特許ハーモナイゼーション条約というのは、本来は本年七月に成立の予定だったはずでありますけれども、七月の成立が困難というふうに伝えられております。その理由と、またいつごろ成立の見通しなのかを簡単に一言で結構ですのでお答えください。
#103
○政府委員(麻生渡君) 七月に予定されておりました、WIPOの特許条約の最終採択をやろうということで予定されておりました外交会議、これが延期されたわけでございます。理由は、アメリカの新政権下で体制ができておらず、七月では準備態勢ができないということであるわけであります。
 この会議がいつ開かれるか、これは今未定でございまして、九月にこのWIPOの定時総会が開かれることになっておりますが、このときに日程を再調整しようということになっておるわけでございます。
 再調整した結果いつこの条約ができ上がるのかということでございますが、これは新政権が前政権と同じように、ブッシュ政権と同じように大きなアメリカの制度の転換をやっていこうというポジションをとり続けるのか、あるいは別のポジションになるのかということが現在のところはっきりいたしておりません。したがいまして、何といいましてもこのアメリカがどうなるかというのは非常に大きな影響を持つわけでございまして、アメリカがそういう状況でございますものですから、いつできそうであるかというのはちょっと今のところ申しにくいということでございます。
#104
○浜四津敏子君 いずれ日本がこのWIPOの条約を批准する場合には、それと抵触する国内法の整備、また運用解釈を合わせる必要が出てまいりますが、また具体的にアメリカから六項目要求されております。この六項目の中で日本が受け入れ困難だというような項目がありますでしょうか。
#105
○政府委員(麻生渡君) これはいろいろ交渉上の若干の問題がございますものですからどれが易しいと言いづらいところがあるわけでございますけれども、やはり一番すぐ困難なのはサーチレポートをつけろということでございまして、これは午前中もいろいろ御議論がございましたように、実質的に日本の今の出願状況あるいは滞貨の状況ということではどうにも受け入れられようがないという状況でございます。
 そのほか、審査期間の短縮の問題あるいは原語出願の問題等々は、これも実態から見ますといろいろ難しい問題を含んでおるということであります。そのほかの項目につきましても決して易しい問題ではありませんけれども、しかしアメリカが本格的に変わるというのでありますと、私どももそれに対応した形でやはり私どもの制度も変えるということを考えなければいけないと思っておる次第でございます。
#106
○浜四津敏子君 この六項目につきまして具体的に伺いたいと思います。
 まず原語出願の許容の問題ですが、外国語での出願を認める、こういう内容になりますが、外国語、それから訳文が出た場合にどちらを正文とするのか。例えば、原語を正しく訳したとしますと新規性があるものが、訳文が間違ったために新規性が認められない、こういう場合にどうされるのか。それから二点目は、原文と訳文に不一致があった場合に、それによって受ける不利益というのはどこが責任を負うのか。三番目に、できる限り不一致がないようにするための対応策を何か考えておられるのか、この三点伺いたいと思います。
#107
○政府委員(姉崎直己君) お答えいたします。
 WIPOのハーモ条約案の中に、御指摘のように原語出願に関しまして提案がなされております。内容的には次のような二点が含まれております。一つは、後日翻訳文が提出されることを条件に、日本であれば、日本語以外の出願人の母国語による出願の提出日をもって出願日として認めること、つまり出願日の認定に関する部分であります。第二点は、特許の付与前は原文に一致させるためにいつでも翻訳文の訂正ができる、先生先ほど御指摘になった原文と翻訳文の不一致の訂正の問題であります。
 このハーモ条約の中で、第一点、先生御指摘ありました正文をどちらと認めるか。条約上は、これは原語出願を許容するということで、これは出願日のある意味では認定に係る問題でございます。したがいまして、これは私どもとしてまだ条約上最終的にこうだという公定解釈を出せるところまで至っているわけではございませんが、先ほどのようなケースであれば、私どもとしてはいずれにしても出願された日本語で審査をするということでございますので、日本語とそれから原文の不一致があった場合のリスクも含めまして、そこは出願人がそのリスクを負うということになろうかと思います。また、不一致がありながら権利として登録されたということになりますと、無効原因を内包した権利ということになるわけであります。
 私どもとしまして、この原語出願を許容することになりますと、先ほど御紹介した条約の中の第二点としまして原文と翻訳文が不一致の場合に特許の付与の前はいつでも訂正ができるということになりますと、訂正のたびに一たん審査した内容をもう一度やり直しをさせられる、先ほど来御提案申し上げております補正の適正化でまさに是正しようとしていたような問題がこれによって惹起される可能性が出てくるのではないかということがございます。
 それからまた、出願公開をいたした後にその翻訳文を訂正するということになりますと、例えば第三者に不測の影響を与えるといったような問題が発生することも予想されるということで、この原語の出願をどのような形で許容するか、その訂正をどのような形で認めるかというのはこの条約の受け入れに当たって大変大きな問題であり、私どもとしては慎重に検討する必要があるというふうに考えております。
#108
○浜四津敏子君 それでは次に、付与前異議の禁止について伺います。
 日本がいずれ付与後の異議申し立て制度へ移行する場合には、無効審判制度との関係を明確にすることがどうしても必要かというふうに考えられます。異議に対して出される結論と無効の審決で出される結論とが矛盾した結論にならないように条文化する必要があると考えておりますが、これについてはどうされる御予定なのか。また、既判力についても明確化する必要があるんではないかと考えますが、これについてお答えいただきたいと思います。
#109
○政府委員(姉崎直己君) 異議申し立て制度、特許付与後にするという制度を採用するかどうか、先ほど来長官からもお答え申し上げましたところですが、これはまさにハーモ条約の交渉の帰趨を
見きわめる必要がある。ハーモ条約が一体どのような形で仕上がるか、内容的には相当日本の現行制度に大きな影響を与えることになり、かなり大がかりな国内法の改正が行われることになろうと思います。したがいましてその段階で、今御指摘のような問題について、立法論としてどのようにすべきかということを検討する必要があるわけでございます。
 したがいまして、御指摘の点、とりあえずの考え方ということでお聞きおきいただきたいわけでありますが、異議申し立て制度と無効審判制度、もとよりこの両者の法的な性格は異なるものでございます。仮に成立した特許権の中に瑕疵があった場合、付与後の異議申し立て制度と無効審判制度のどっちの制度で瑕疵ある特許権の取り消しを図るかということは、請求人がこの両制度の相違を比較し、その上で自己に有利な制度の採択ができるという、言うならば選択が可能な形にするというのが望ましいのではないかというふうに考えられるわけであります。
 今回の制度改正に先立ちまして、工業所有権審議会でもいろいろとこの付与後異議の問題について御審議いただいてまいったわけでありますが、その中に確かに、異議申し立ての決定と無効審判の審決、その間で判断の矛盾が生じないようにすることが必要だということで、仮に異議申し立てと無効審判が同時に係属するようなときには、審判の審理を裁量的に中止するということが必要ではないかといった指摘も答申の中では出されております。私ども、いずれ近い将来行われるであろう国内法の抜本的な見直しの際に、どのようにして異議申し立ての決定と無効審判の審決の判断の抵触を回避するか、いろいろと工夫をし勉強してまいりたいと考えております。
 最後に、先生御指摘ありました判決の既判力の問題であります。
 異議申し立ての制度というのは第三者による申し立てで開始されるものでありますが、当事者、特許庁と権利者の間で行われるというものでございます。したがいまして、異議申し立ての決定、特に権利の取り消しの決定に対して権利者が特許庁を被告として行政訴訟を申し立てる、その結果権利者の主張が認められる場合に、当事者以外の第三者の審判請求をその判決によって封ずるというところまでその拘束力を及ぼすことは難しいのではないかというふうにとりあえず考えておりますが、これも先ほど申し上げましたように今後の立法論の検討の過程で十分勉強させていただきまして、適切な制度に仕立てていきたいというふうに考えております。
#110
○浜四津敏子君 それでは次に、先ほども出ましたが、クレーム解釈の弾力化について伺います。
 WIPOの条約二十一条二項に均等についての規定がございますが、従来クレーム解釈につきましては、アメリカは広過ぎる、日本は狭過ぎる、こういうふうに言われておりまして、日本が狭過ぎるからもう少し広くせよと、こういう要求になっております。確かに余り狭く解釈いたしますと、特許発明の保護を請求範囲の文言どおりに限定するということになりますと、その特許発明の構成要件を他のものに少し置きかえたり、あるいは欠落させたりすることによりまして同じ効果を持つ技術思想を実施することが可能になる。それがまた権利侵害にもならないということであれば、発明の保護の原則と相反する結果となるのではないかというふうに思います。
 また、逆にアメリカのように大変広く解釈することになりますと、特許請求の範囲に書かれていない、明示されていないものまでに拡張して権利に含まれる。こういうことになりますと、第三者から見ますとどこまで実施していいのかわからない、法的な安定性を欠く結果になるかと思います。
 この特許請求の範囲と文言が厳密に一致しない対象に対しては、従来日本の裁判所は、いわゆる均等論とかあるいは改悪実施形態とかいう考えにつきまして大変根強い反対論、消極的な立場が続いてまいったかと思います。また、特許専門部の裁判官の多くの方々は、恐らく現行法の七十条のもとでは従来どおり文言どおり限定して解釈せざるを得ないんだ、したがってWIPOの条約を批准することになれば、立法的にこれを改正することによって解決を図らなければいけないのではないかというふうにお考えの方が多いかと思うんです。
 またこれも今後の検討課題ということになるのかもしれませんが、WIPOの条約がいつ成立するのか、早いのか遅いのかちょっとわかりませんけれども、それに備えて一体これにどういうふうに対応されることになるのか、つまり均等の及ぶ範囲をどの程度まで日本としては広げるのか、また均等成立の基準時をいつとするのか、その辺のことについてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
#111
○政府委員(辻信吾君) 権利を行使する段階の均等論につきましては、これは裁判所で判断することでございますが、ここでは現在WIPOの特許調和条約の中で進められている議論と日本の現在の七十条の関係についてちょっと御説明していきますと、WIPO特許調和条約については現在も国際的に検討が続けられておりますが、この二十一条における論点は大きく分けて二つございます。
 第一は、特許請求の範囲に記載された文言から見て均等の範囲はどこまでか。すなわち、その文言が特許権としてどの技術までカバーするかという観点です。第二は、均等であるか否かの判断の時点をどの時点に置くか。具体的にいいますと、出願の時点なのか、侵害時の時点なのか。この二つの点について論点があるわけでございます。
 それで前者、すなわち文言上から見た均等の範囲に関しましては、まだ条約案でございますが、その二十一条では、クレーム解釈に当たりまして均等か否かを考慮すべきことを規定しております。それだけではなくて、その判断手法といたしましては、やや議論が細かくなりますが、いわゆる欧州型と米国型のいずれを採用してもいい、こういうふうになっております。
 それで、欧州型の手法と申しますのは、特許請求の範囲に記載されました要素、その一部の要素を他の要素に置きかえることにつきまして、それが業としてそれを実施している当業者にとりまして自明であるということを要件としております。これに対して米国の手法と申しますのは、当業者にとって自明であるかどうかということを要件としておりませんで、どの技術までカバーするか必ずしも明確ではない、こういう指摘もございます。
 そこで、我が国の現行法の七十条について申しますと、あくまでこれまでの判例を見る限りでございますが、特許請求範囲に記載された要素を置きかえることが当業者にとって自明であることを要件としていると解釈されるわけでございまして、そういった意味から申しますと、現在の条約案、これはすなわちヨーロッパ型に近いということが言えると思いますので、現在の条約案であっても特段現行のままでいいんではないか、問題はないということが言えると思います。
 これに対してもう一方の問題、判断時点の問題について申しますと、一例を申しますと、ちょっと技術的な話で恐縮でございますが、例えば真空管を用いた計算機という特許がとれたとします。ところがこれは、出願時においては真空管しかありませんでしたが、そのうちに半導体でございますとかトランジスタとか、そういう新しい手段が出てきた。こういうことは技術の進歩に伴って多々あるわけでございます。それで、この権利が成立しましてそれを実際に実施する場合におきましては、もうほとんど半導体が使われているわけでありますね。でありますから、そういう場合は出願時で見れば真空管、ところが侵害時で見ますと半導体は非常によく知られている。こういった点で、そのどちらに判断時点を置くかというのは非常に大きな問題がありまして、これは大きな論点となるわけでございます。
 均等か否かを出願時点の技術レベルで判断するのと実施レベルではこのように差があるものでございますから、このWIPOでは、この判断時点
について議論いたしますときは、現行特許法七十条のもとでの先ほど申しました判例で見る限りにおきましては、我が国ではどうも出願時点で判断するとされているということでございますから、現行の条約案を批准する際には判断時点を侵害時とするかどうかについて所要の整備が必要ではないか、かように考えられるわけでございます。
 ただし、そのWIPO条約案におきましては、クレーム解釈条項につきまして弾力性が必要であるという主張もあるわけでございます。その個々の国の裁判所の問題でございます。そういう議論もあるわけでございまして、どの程度拘束力を有する規定にするかについては今後もさらに議論が続けられるのではないかと考えられます。
 このようなことを念頭に置きまして、関係者とも協議しつつ、国内法制の整備について今後検討していく必要がある、かように考えます。
#112
○浜四津敏子君 それでは次に、特許侵害訴訟について何点がお教えいただきたいと思います。
 現在の特許侵害訴訟は大変時間がかかると言われております。これも外国からかなり批判が出ているところでございますけれども、その原因の一つとして、訴訟対象物件、また訴訟対象方法の特定が大変困難であるということが原因として挙げられます。
 例えば、他人の特許方法を市中に出回わらない形で自分の工場の中だけで業として使う、あるいは特定のお得意さんだけに特別注文して売る、こんな場合には外からその対象物件を特定する、対象方法を特定するというのは大変困難な状況にありまして、こうしたいわゆるイ号物件とかイ号方法、この特定が余りに大変である、これが時間がかかる大きな原因であると言われております。
 そんなことで、これも将来的な立法論になるかと思いますけれども、この特定をスピーディーに、また原告にやりやすくするような方法として何か特許法の中で、例えば立証責任の緩和とか、あるいは転換を図るというような方向での検討はされる御予定はないでしょうか。
#113
○政府委員(姉崎直己君) 先生の御指摘は、多分、この侵害訴訟の被告の方にも何らかの立証責任を分担させるというようなことによって訴訟の促進を図れないか、こういう御指摘かと理解いたしました。
 これにつきまして、現行特許法におきましては百四条というのがございますが、これは製法特許について規定している条文でございます。これによりますと、生産されたものが出願前に国内で公然知られたものでない場合は、そのものと同一のものはその製法で生産したものと推定する、こういう旨の規定がなされているわけであります。すなわち、対象物の特定に関して、その立証責任の転換をこの規定は行っているというものであります。このような趣旨の規定と同じ規定が、実は先ほど来御議論いただいておりますWIPOのハーモ条約の二十四条にも規定されておりますところであります。
 侵害訴訟の遅延、時間が非常にかかるという点については、司法行政上さまざまな理由があるのではないかというふうに推察されますが、私ども特許行政の観点から見ますと、立証責任の緩和をさらに図っていくという立法論につきましては、さまざまな司法制度上の枠組みとのかかわり、これも十分踏まえながら慎重に検討させていただきたいというふうにお答えを申し上げたいと思うわけであります。
    ―――――――――――――
#114
○委員長(斎藤文夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、村田誠醇君が委員を辞任され、その補欠として堀利和君が選任されました。
    ―――――――――――――
#115
○浜四津敏子君 それでは、この特許訴訟あるいは無効審判についてまだ何点かお伺いしたいんですが、後で時間がありましたら伺うことにいたしまして、実用新案について伺います。
 二十九条の二で、権利行使の際には実用新案の技術評価書の提示が必要と、こういうことにされておりますが、この技術評価書、権利の有効性についての評価書であるというふうに先ほどお答えをいただきましたが、具体的にどういうことを書くのか。登録性があるかないかという結論をはっきり書かれるのかどうか、それが一点でございます。
 そしてまた、一度評価書が出た場合に訂正できるのかどうか、それも伺いたいと思います。そしてまた、評価書をもらってから考案権利の放棄ができるのかどうか。つまり訂正もできる、また考案権利の放棄もできるのか、そういうことで瑕疵を直すことができるのかどうか。
 それからもう一点、評価書の法的性質、それから法的拘束力についてお答えいただきたいと思います。これは単なるオピニオンということなのかそのあたりのことをお教えください。
#116
○政府委員(辻信吾君) 評価書を具体的にどのように作成するかということでございますが、登録性のみにつきまして請求項ごとに判断をいたします。それで、どれが登録性がないと認められるときは、関連する先行技術文献と、その文献に基づいてなぜその項目がいわゆる新規性が欠けているのかと、こういう根拠まで指摘するということを考えておりまして、その結果登録性が否定できない場合はその旨も記載したい、かように考えております。
#117
○政府委員(姉崎直己君) 先ほど御指摘の第二点、第三点の御質問にお答えいたします。
 評価書を見た上で明細書の訂正が可能か、あるいはさらに請求項を放棄することができるかといった御質問でございました。評価書には、先ほど技監から申し上げましたように、複数の請求項が書かれている場合には、請求項ごとに関連する先行技術文献及びその先行技術文献から見た権利の有効性に関する評価が示されるわけであります。このため、評価書によってその新規性または進歩性が否定された請求項については、出願人の自由意思で、遡及効を有する訂正によりましてその請求項を削除することができますし、またその請求項を将来的に将来効として放棄をすることも可能だというふうに考えております。
 それから三点目の評価書の法的な性格でございますが、この技術評価書は登録された実用新案権の有効性についてその客観的な判断材料を提示するというものでございまして、この評価結果によって直ちに権利が左右される、権利義務関係に変動をもたらすという行政処分性を有するものではございませんで、その意味で法的な性格としては査定という行政処分を伴う審査とは異なりまして、言うならば鑑定に近い法的な性格のものではないかというふうに考えております。
#118
○浜四津敏子君 現在存在いたしますいわゆる判定の制度でございますけれども、これも単なる鑑定あるいは意見、こういうことでなかなか信頼性がそれほど高くないといいますか、また利用価値も余りないということで実務上取り扱われているんじゃないかというふうに思っております。そんな意味で、ほぼ同じ法的性質を持つこの技術評価書もそういった面から運用の面で何とか信頼性が高まるように、そしてまた本当に当事者が安心して利用できるようにしていただきたいというふうに思います。
 次に、二十九条の三の第一項ですけれども、権利者が評価書に基づいて権利行使した場合に仮に後で無効審判でこれが無効とされた場合に、この権利者は損害賠償責任が免責されるのかどうかをお答えください。
#119
○政府委員(姉崎直己君) この改正後の実用新案制度におきましては、評価書を提示して権利行使をすることが必要だということになっております。この評価書は客観的な権利の有効性に関する判断材料ということでございますので、この評価書の有効性ありという記載を信じて権利行使をした後で、評価書の調査範囲内での文献で新たな証拠が見つかって権利が無効とされたといった場合には、原則として免責されるというふうに考えております。
 ただし、この評価書は先行技術文献から見た評
価でございますので、公知公用技術等については判断を行っておりません。したがいまして、当業者であれば容易に知り得るような公知公用技術についての調査をするという注意義務、これについてはやはり権利者の責任として必要ではないかということを定めたものでございます。
#120
○浜四津敏子君 ただいまの御説明と関連するかと思いますが、二十九条の三第一項で、相当の注意を持ってその権利を行使したときはこの限りでない、こういう条文が出てまいりますが、この相当の注意というのは具体的にどういうことを意味するのか、お答えいただきたいと思います。
#121
○政府委員(姉崎直己君) 御説明いたします。
 公知公用技術ということを今申し上げましたが、当業者であれば容易に知り得る状態にある技術でございます。したがいまして、この公知公用技術の存在、全く認識しないまま権利が無効とされるというようなケースは事実上ないのではないかというふうに考えております。また、その評価書を作成するに当たりまして調査をいたします先行文献の範囲外の文献についても、当業者の中では知られている文献の範囲であるということであればそこまでの注意をしていただくということが適当ではないかという意味で、その他必要な注意を果たすことが求められているということでございます。
#122
○浜四津敏子君 それからもう一点、大変細かい点で申しわけないんですが、十二条の第一項で何人も評価書は請求できる、こういうことになっております。また第三項では、実用新案権の消滅後でも請求できるというふうになっております。
 そうしますと、さまざまな時期にあるいはさまざまな人に対して評価書が複数出されることが考えられますが、その複数出される評価書の内容がそごする場合があり得るのか、仮にそごした場合にはどれが優先されるのか、お教えください。
#123
○政府委員(辻信吾君) 評価書が請求されました場合はその旨公報に掲載、公示されることになります。それで、こういったようなことから評価書が複数請求されるといった事態はそれほど生ずるとはちょっと考えられないわけでありますが、万が一仮に複数の評価書の請求がなされた場合についてですが、その場合も審査官がやりますので、その審査官は担当を持っております。そういったようなことから判断の抵触や矛盾が生ずることはないと考えられますが、そのようなことがないように評価書作成の際のガイドライン、それから運用上十分配慮して運用してまいりたい、かように考えております。
#124
○浜四津敏子君 順不同になって申しわけございませんが、少し時間がありますので、また特許のことをちょっと伺わせていただきます。特許庁の無効審判と裁判所における特許侵害訴訟との関係について、また前に戻って伺わせていただきます。
 権利の有効無効の判断につきましては特許庁が判断する、そしてまた一たん成立した権利の侵害の有無の判断は裁判所がする、こういう制度になっております。百六十八条によりますと、審判と訴訟が併存した場合にはいずれの手続も任意的に中止することができるというふうになっておりますが、これは任意的な中止ですから、裁判所では中止をせずに手続を進めることもできることになっております。
 また、裁判所では現在いわゆる無効の抗弁を認めておりませんで、当然権利が有効であるということを前提として侵害の有無を判断しております。侵害があるとして損害賠償の判決が出た場合、そして被告がそれを払ったその後で特許庁の方から無効の審決が出た、そういうことになりますと判決そのものが根底から覆される、ひっくり返ることになるわけで、払った損害賠償金もまた戻す、こういうことになります。現実にはそれほど多くはないかとは思いますけれども、しかし、一体制度としてこういう矛盾した制度があってもいいものだろうかという、素朴な疑問なんです。
 むしろ、これも立法論になるかと思いますけれども、特許法の中で、侵害訴訟が起きたときには裁判所にアメリカで認められているような無効宣告を認める制度を導入するとか、あるいは少なくとも無効の抗弁を許す、こういうような方向での改正は検討できないものでしょうか。
#125
○政府委員(姉崎直己君) 我が国の現行制度上、特許を無効とする処分というのは特許庁の無効審判における審決によってのみ行われるべきものだということになっております。一方、侵害訴訟の裁判では特許が有効であるということを前提として権利範囲を解釈するものだというふうにされております。
 このように権利の有効性の判断については特許庁のみが行うということになっておりますのは、やはり特許の特殊性といいますか、非常に専門技術的であるということ、かつ判断がそれぞれのケースごとに振れるということになりますと非常に問題の波及するところが大きくなるわけでございますので、統一的な判断がやはり必要だろうということに基づいてこのような仕分けがなされているというふうに考えられます。
 では、先生御指摘のように、それぞれの判断の抵触といったようなことが発生する危険があるのではないか、混乱が生ずるのではないかという御指摘でございますが、無効理由を有します特許に基づいて侵害訴訟が提起された場合、同時に特許庁に無効審判が請求されているといったようなケースにおきましては、裁判所の側で特許が無効になる蓋然性が高いというふうに判断すれば、裁判所の判断で特許庁側の審決が確定するまでは訴訟の手続を中止するということができるわけでございます。この中止規定の活用によりまして、特許庁における判断と裁判所の判断の抵触を避けることが可能だという建前になっているわけであります。
 さらに加えまして、裁判所におきましては権利範囲の解釈をするに当たって、特許の無効理由として有力と思われるような公知の事実、これにつきましても十分参酌して権利範囲を定めるといったようなことも行われていると承知いたしております。したがいまして、このように現行制度のもとでは、手続の中止規定あるいは権利の解釈に当たっての公知事実の参酌といったようなことによって、具体的なケースごとに見てみますと結果的には適切な解決が図られ、先生御心配のような、判断が食い違って混乱するといったような問題は避けられているというふうに私ども理解いたしております。
 ただ、御指摘のような立法論として、それでは裁判の中で権利の有効性についても審理するという考え方ももちろんあり得るわけでありますが、これは私どもの問題といいますよりもむしろ司法行政上の問題として、裁判所の管轄権の集中といったような司法制度とも密接に関連いたしておりますので、特許行政の観点のみならず、幅広い観点からの検討が必要な問題ではないかというふうに考えられます。
#126
○浜四津敏子君 それでは、法務省の方にお伺いいたします。
 これも先ほどの問題に戻って恐縮ですけれども、特許侵害訴訟においてイ号物件、イ号方法の特定に時間がかかる、こういう問題を先ほどちょっと触れさせていただきました。それとともに、なかなか対象物件を開示したがらない原因の一つとして、企業秘密を守る、企業秘密が外に出てしまうのが困るのだ、こういうケースも多々あります。そんなところから、企業秘密を守る関係からこうした対象物件あるいは対象方法を裁判所にのみ開示させる、こういう方法が制度としてほかの国にも存在いたしますけれども、そういう制度をお考えいただけないかと思いますが、いかがでしょうか。
#127
○説明員(柳田幸三君) お答え申し上げます。
 ただいま委員が御指摘になりましたように、現行の民事訴訟法には、保護に値する秘密が訴訟審理を通じて漏えいするといったことを防止しながら審理を行うといった規定が欠けているのではないかという指摘があるところでございます。
 現在、法制審議会民事訴訟法部会では民事訴訟手続の全面見直しの作業を行っているわけでござ
いますが、この作業におきまして、保護に値する秘密の訴訟手続上の保護についても審議を進めております。平成三年の十二月に、これまでの審議の成果を踏まえて作成されました「民事訴訟手続に関する検討事項」が公表されまして関係各界に意見照会がされたわけでございますが、その中で、秘密保護が問題になる場合に訴訟の審理を非公開にするといったことの当否などにつきましても意見照会がされたところでございます。
 御質問にございますように、裁判所のみが証拠といったものに接するといった制度を設けることにつきましては、相手方当事者の適正な裁判を受ける権利の保障という面でなかなか難しい問題があるのではないかと思われるわけでございますけれども、関係各界から寄せられました意見の中には、こういった制度をも設けるべきであるというものもあったわけでございます。
 この民事訴訟法部会では、現在、検討事項に対して関係各界から寄せられました意見も参考にしながら検討の作業を進めているところでございます。
#128
○浜四津敏子君 それともう一つは、特許訴訟の管轄でございます。
 東京地裁、大阪地裁、また名古屋地裁には専門部がございますが、むしろ大変特殊な訴訟でございますので、こうした東京、大阪あるいは名古屋地裁ぐらいまでに限定して、特許訴訟に関しましては事物管轄を定めてそうした裁判所に集中させる。そして、特許専門の裁判官の方に当たっていただく。そしてまた、裁判所と特許庁と協力体制をつくっていただきまして、先ほども有効無効の判断は大変専門的な判断であるというお話がございましたけれども、審判官の方が何らかの形で、今は調査官として関与されておられますけれどもその判断に当たれるような、そういう制度については御検討いただけないでしょうか。
#129
○説明員(柳田幸三君) 御案内のように、特許権侵害による損害賠償請求訴訟などの工業所有権関係訴訟は、専門技術的な要素が非常に強い訴訟でございまして、この種の事件が中小規模の裁判所に係属いたしますと円滑に審理を進めることが困難な場合があるという指摘がかねてからあるところでございます。
 そこで、先ほど申しました民事訴訟手続の見直しの作業におきましても、こういった指摘があることを踏まえまして、工業所有権関係事件の土地管轄につきまして特別の定めを置くこととするかどうかといった問題についても検討を進めているところでございます。先ほど申しました「民事訴訟手続に関する検討事項」におきましても、この問題について二つの考え方が掲げられておるわけでございます。
 一つは、高等裁判所の本庁所在地の地方裁判所の本庁だけが高等裁判所の管轄区域を管轄する、こういった考え方でございまして、もう一つは、現行の土地管轄は基本的に維持した上で、現行の管轄裁判所のほかに東京地方裁判所と大阪地方裁判所の各本庁にも競合的な土地管轄を認めるといった考え方でございます。
 この二つの考え方を例示いたしまして関係学会に意見照会、公募したわけでございます。これにつきましては、いずれにつきましても賛否両論が寄せられたところでございまして、法制審議会民事訴訟法部会では現在この問題につきましても引き続き慎重に審議を行っているところでございます。
#130
○井上計君 同僚議員からいろいろと質問が出ておりますから若干重複することがあるかもわかりませんが、お許しをいただきたいと思います。
 特許制度が今後、従来もそうでありますが、これからのことを考えると、国際的な調和というのがますます必要になってくるというふうに考えます。しかし、現実には特許をめぐりましての国際紛争が依然として頻発をしておる。さらに、これから頻発の度合いが多くなってくるんではなかろうか、こう考えられます。とりわけ特許制度のみでなくて、先ほどもちょっと御質問ありましたけれども、裁判制度を含めて各国の間でかなり違いが現在あるんではなかろうか、これが紛争の原因になっているのではないかというふうに考えられるんです。
 したがって、国際的な特許紛争を迅速に処理するためには国際的な枠組みのようなものと別に制度の調和を必要とするんではないかな、こんなふうに感じるんですが、いかがでございましょうか。
#131
○国務大臣(森喜朗君) 先ほどの御議論の中にもございましたように、近年、日米企業間の紛争を中心に我が国の企業が多額の損害賠償請求を命じられましたり、多額の和解金を支払うといったようなさまざまな形で特許紛争が多発していることは委員御指摘のとおりでございます。
 この背景といたしまして、主として各国の特許制度運用の相違によるものが大きいと考えられるために、WIPO特許ハーモナイゼーション条約等やあるいは日米欧三極特許庁の協力を通じまして特許制度運用の調和を図るべく積極的に努力しているところでございます。これ、まさに今井上先生御指摘のとおりでございます。紛争処理制度の相違によるものも、国際的特許紛争の背景にあるものと理解をいたしております。
 このため我が国といたしましては、国際的な紛争処理制度を一層整備することがまず肝要であろう、このように考えた次第でございまして、現在WIPOにおいて検討を重ねているわけでございます。私人間の知的所有権紛争の国際仲裁制度の創設につきましては、積極的に論議に参加し、これからも貢献してまいりたい、このように考えておるところでございます。
#132
○井上計君 次に、近年、実用新案の出願件数が減少しておる、このように伺っており、企業にもそういうものがあるようでありますが、なぜ出願件数が減少しておるのか、何かその理由等についてお感じがあればお示しをいただきたい、こう思います。
#133
○政府委員(麻生渡君) 御指摘のように実用新案の出願件数でございますが、六十二年のころは二十万件を超えるというものでございましたが、平成三年には十一万件というようなことでございまして、相当速い勢いで減少してきておるというのが実情でございます。
 なぜ減少してきたかということでございますが、一つは、やはり日本の技術水準がずっと向上してまいりまして、その技術の中身の高度化に対応して、どうしても権利をとる場合には特許の方が実用新案よりも技術水準との関係でいいということが一般的になってきておるという点が第一でございます。
 第二の点は、これは企業活動がだんだん世界的になっておるということと非常に絡んでくるわけでございますけれども、実用新案制度を持っております国は日本、ドイツ、フランスが主要国ということでございます。そのほかに北欧の国なんかございますけれども、アメリカなんかにはないわけでございます。そうしますと、世界性という点から見ますと、やはりどうしても特許でなきゃうまく使えないということでございますものですから、事業が世界的になっていけばいくほどやはり世界的に一般化しております特許制度を使おうということになってくると考えられるわけであります。
#134
○井上計君 今伺いましてなるほどなという感じがいたしますけれども、しかしこの実用新案制度は中小企業にとってはやはり重要な制度なんですね。小さな発明というとおかしいですが、要するに小規模な発明の保護という面では大変重要な制度である、このように考えるわけです。今回の実用新案制度の改正はそのような中小企業にとってメリットといいますか、中小企業向けに何を考えておられるのかという点についてお伺いしたいと思います。
#135
○政府委員(麻生渡君) 特許と実用新案を比べました場合に、中小企業の皆さんの利用率は実用新案の方がずっと高いというのが実態でございます。その意味で、中小企業の皆さんにとりまして実用新案制度はより重要であるということでございます。
 そういうことなんでございますけれども、ただ一方で、現在の実用新案制度は審査制度をとっております。今実用新案制度で審査制度をとっておりますのは、主要国では日本ということでございます。ドイツやフランスはいわゆる無審査制度をとっておる状態です。そういうこともございまして、どうしても審査に時間がかかりまして、せっかく実用新案を出願いたしましても実際に権利が付与されるというまでには、これは技術分野、物によるんですけれども、三年とか長い場合には六年かかるというようなこともあるわけでございます。
 一方で実用新案は小発明ということで、例えば玩具とか生活用品とかスポーツ用品あるいは家庭電気用品、建築材料というような分野の技術がたくさん含まれておるわけでございますけれども、こういうところはマーケットの変化が非常に激しゅうございまして、またこういうところの技術というのは非常にライフサイクルが短いということであります。
 そうしますと、せっかく権利をもらいましても、もらったときにはもうその製品は市場に存在しない、あるいは技術としてもう有用性がなくなってしまっておるという状態になっておりまして、せっかくもらった権利についてそれを的確に実行しようといたしましても時期がおくれてしまうというようなことでございます。そのために、かねてからともかく早く権利をもらいたいということでございまして、それをもらわなければこのような短ライフサイクルの分野では効果的な制度になっていないということでございます。
 このような実態にどう対応するかということでいろいろ研究したわけでございますが、今回のようにともかく早期に登録をする、権利を認める、しっかりした権利の内容の方はそれをもとに、今回のような評価書が出ればそれを一つの材料として非常に速やかに権利行使もできるようになるということでございます。その意味では中小企業の皆さんに何がメリットがあるかといいますと、このような短ライフサイクルの技術につきまして非常に的確に権利行使ができるという制度に変わっていくということでございます。
#136
○井上計君 よくわかりました。
 そこで具体的に、それは若干差異があるでしょうが、今度は実体審査がなくても登録される、こういうことなんですね。とすると、従来は今長官言われるように三年とか五年とか、実際には登録されたときにはもう陳腐化して全く意味がなくなるというのが多かったわけですが、これからこの法改正によって、出願してから大体標準的にはどれぐらいの期間で権利登録されるということになるんでしょうか。
#137
○政府委員(姉崎直己君) ただいま長官から申し上げましたように、今回の実用新案制度の改正の目的はライフサイクルの短い技術の早期保護ということでございますので、可能な限り早期に登録を図ることがぜひとも必要であるというふうに認識しております。このため、方式審査等所要の手続を出願後直ちに行いまして、出願から原則半年程度で登録を行うように体制の整備と運用方針の確立に努めてまいりたい、かように考えております。
#138
○井上計君 半年程度で登録されればこれはもう大変なメリットがある、このように思います。大いに期待をしております。
 次に、改正後は、権利者が権利を行使する場合に実用新案の場合には実用新案技術評価書の提示が必要だということでありますが、この請求があった場合には特許庁が評価書を作成されるわけですが、これについてどの程度の期間でこの評価書を交付されることになるんですか。
#139
○政府委員(姉崎直己君) 技術評価書はこの権利の有効性の客観的な評価を示す資料ということでございまして、権利の適正な行使を図るための重要な材料であるわけでございます。したがいまして、できるだけ早期に入手可能となることが必要でございます。
 このため評価書が請求された場合には極力早期に評価書を作成するということで考えておりまして、具体的には、出願と同時に請求がなされた場合には登録とほぼ同じ時期に評価書を作成しお渡しすることができるようにしたい、また登録後に請求された場合にはおおむね二、三カ月後を目途に作成をいたしたい、かように考えております。
#140
○井上計君 出願してから登録までの期間が非常に短縮されるわけであります。同時にまた、登録後、評価書の請求等について今二、三カ月というお話がありましたが、事務的にいろいろと大変手数がかかると思いますけれども、これもできるだけ早く交付されるようにまた御配慮をいただきたい、こう思います。
 そこで、これに関連してでありますが、この場合の評価書の請求料は、今度の新料金では四万二千円ですね。今度の法律改正とは関係なく技術評価書の料金は決まるんですか、どうなんですか。
#141
○政府委員(姉崎直己君) 今回の法律改正によりまして法律で上限を定めることになっておりまして、政令で具体的にこの額をさらに決めていくという形になっております。
#142
○井上計君 法律で上限は今度は幾らに定めるんですか。
#143
○政府委員(姉崎直己君) 今申し上げました、先生御指摘の四万二千円というのが法律の上限であり、かつ実際に適用される料金ということで考えております。
#144
○井上計君 わかりました。
 時間がまだありますけれども、次の共産党の同僚委員が早くやめろ早くやめろと言われますので、あと一問、最後にちょっとお伺いします。
 これは若干意見を交えてでありますけれども、料金改定について、今法律で上限を決めて上限以内であれば政令ということですが、実際には今度の料金改定は全部上限なんですね。だから、これから改定をしていこうとすればその都度法律改正を必要とするということになるんだ、こう思うんです。
 そこで、私はもちろん今回の料金改定は妥当だ、こういう認識に立っていますからこれは賛成であります。しかし、これから特許庁としては新しい技術の開発あるいはまた機器の導入、さらにはまたペーパーレスをさらに進めていくという面でますますコストが増大することはもう間違いないと思うんですね。また、出願件数も当然ふえるでありましょう。そうなった場合に、独立採算でありますから赤字が出ないようにということでその都度法律改正ということで、極端なことを言えば、あるいは新しい技術を導入するとか新しい機器を導入するということになると毎年変えなくちゃいかぬということもあり得るわけですね。
 そこで、私は、もっと弾力性を持たして、料金改定については法律改正で上限をもっと上げておいて、その範囲内で政令でやれるようなことを考えるべきではないかなというふうに思うんです。あくまでもこういうふうな料金というのは受益者負担でありますから、だから出願をする人は物によっては何百万、何千万あるいは何億円という価値のあるものを登録するための出願料ですし、またそのために要する費用ですし、企業はそれはいわば全部経費、損金で落ちるわけですね。だから、実際には私はもっと高くてもいいんではないかなと。
 そこで、いただいた資料をずっと見てみますと、欧米各国に比べると日本の場合随分安いんですね。私はこんなに差があるとは思わなかったんですが、日本の場合出願料については改定後でも二万一千円、アメリカは八万七千円、ヨーロッパ先進国七万五千円、審査請求料は日本が改定後九万二千円で、ヨーロッパ三十七万一千円、このように書かれている。十年間の権利保護に要する全料金は改定後日本が五十一万一千円、ヨーロッパが百十八万円、アメリカは五十七万、これらを見ると日本は非常に安いなあという思いもまたするわけです。
 料金等についてもう少し弾力性を持たして、やはり必要なものは受益者負担でいただく、そのかわりに出願者に対してできるだけ迅速に的確に
サービスに努める、こういう考え方が必要ではなかろうかな、こう考えるんですけれども、意見を交えてお尋ねをしたいと思います。
#145
○政府委員(麻生渡君) 私どもの特会の収入になっています出願料、登録料、その他の諸費でございますけれども、これは実は決め方が三種類あるわけでございまして、法律上額をきちっと決めてあるもの。それから、今お話がございましたように法律で上限を決めましてそれであと政令委任されているもの。実際には政令は限度きりぎりまで決められると。それから、そもそも政令に委任されているものと、三種類あるということでございます。
 それで、法定あるいは法定上限で政令委任した場合には、結局、料金改定は一応みんな国会の審議をいただくということでございまして、ぎりぎりいっぱい頑張るわけでございますが、そうしますと、どうしても頑張って頑張って最後には率がちょっと大きくなっていくというような問題もあるわけであります。したがいまして、実態に合わせてもう少し枠を広げておいて、いきなり大きな奉じゃない形で上げていった方がいいのじゃないかという議論もずっとかねてあるところでございますが、これはやはり法定の問題との絡み、そもそも特会のあり方というような深い問題とも絡んでおりますものですから、いろんな角度から検討させていただきたいと思います。
#146
○市川正一君 井上理事のおっしゃるようなことじゃなしに、ゆっくりやりなさいということを申し上げていたんでありますが。
 きょうは私は法案に即して十数問お伺いしたいと思うんで、二十五分の枠内なので御答弁も簡潔に賜ることを強く要請いたしておきます。
 さて、森通産大臣は法案の提案趣旨の説明の中で技術開発成果の迅速な保護について述べておられますが、私は、具体的には日米構造協議でアメリカに公約した二十四カ月以内に審査するための改正、こう理解しているところであります。
 さて、審査期間を短縮するためには、一つには出願を適正化し、出願それ自体を減らすことも考える必要があると思うんです。出願上位百社の出願状況を見ますと、特集合わせて全出願の五一%を占めております。特許の公告率は六〇%、外国の公告率は八〇%前後でありますが、これと比べると著しい乖離があります。つまり、我が国の出願は、数は多いが中身がないということに相なります。特許に結びつかない出願は、できるだけ抑制していく必要があるように思うんです。
 そこで提案でありますが、出願数が一定規模以上の出願者には、先行技術の調査を法律で義務づけることによって、出願の際その適否について事前に判断させ、みずから出願をいわば調整していくということも考えられますし、また出願されても審査官のサーチ実務を軽減することによって審査期間の短縮にもつながると思うんですが、こういう提案はいかがでしょうか。
#147
○政府委員(麻生渡君) 現在の審査のおくれの一つの要因は、御指摘のように出願が大量でございまして、かつそれがやはり実態といたしまして玉石混交になっておるということであります。
 これに対処いたします場合に、一つは、今御指摘がございましたように先行技術調査を自分でやって添付してこいというやり方があろうと思うんです。
 もう一つは、これもいろいろ議論が行われるわけでありますけれども、むしろやはり料金をもう少し高くするという形にしておいた方がいいんではないか、もう少し料金体系を特許料と出願料あるいは審査料との関係で審査料のところを高くするというふうな形に変えた方がいいんではないかという議論がございます。
 もう一つ、第三番目は、これは現在私どもがとっておる方法でございますが、上位の出願企業に対しましてもう少し特許管理をしっかりやる、審査請求公告率がもっと上がるように厳選をしてもらいたいという、これは一種の行政指導でございますがやっておるということでございます。この行政指導は、相当効果を徐々に上げてきておるということでございます。
 一方で先行技術調査を義務づけるという点は一つの考え方であろうかと思いますが、技術的な問題、データベースの問題、費用の問題あるいは特許庁と企業との役割の問題等、相当深い問題を含んでおりますものですから、当面、私どもは今やっております行政指導ベースでの審査請求厳選ということをずっと強めてきておりますけれども、この方向を維持していきたい、この効果を見きわめたいというふうに考えておる次第でございます。
#148
○市川正一君 私の提案については、今願書は特許法第三十六条第二項、特許法施行規則第二十四条、これに基づく様式二十九によって出すことになっておるわけですね。この備考の十四のイでは、「従来の技術に関する文献が存在するときは、その文献名もなるべく記載する。」、こうなっております。現行では確かに義務づけられてはおりませんが、その必要性は認識されていることは明白です。ですから、研究するとおっしゃったので私これ以上追及いたしませんが、ぜひ検討していただきたい。
 今、長官はいみじくも料金体系のことに触れられました。そして玉石混交という言葉も使われました。そのとおりなんです。そういう玉石混交の大量出願で特許行政に大きな負担をかけている企業にそれにふさわしい負担を求めることは決して理不尽でないと思うんですが、この点はどうでしょうか。
#149
○政府委員(麻生渡君) 特許特別会計の考え方が、今おっしゃられましたように特許庁で行っております業務、これに必要な経費は受益者に負担していただこうということでございます。私どもの仕事というのは、結局は願書を受け付けまして、そしていろんな作業をした上で権利を付与するということでございまして、その最終的な直接の受益者はその出願人であり権利を得た方々でございますから、その費用はこういう方々に負担をしていただこうということで料金を設定しておるということでございます。
#150
○市川正一君 そうすると、具体的に踏み込んでお聞きしますが、出願上位の大企業はそういう先行技術を調査する力量は十分に持っておるんです。また、特許庁をサーチ機関のようなつもりでどんどん出願する、そういう実態も実際にあるわけです。さらに、出願の適正化問題を料金制度の側面からも検討する必要がある、というのがこの提案の根拠なんです。
 例えば、前年度の出願実績が一定規模以上であるものについては、公告率の実績に応じて料金にランクをつける。例えば、公告率九〇%を標準にして五%悪くなることに料金が五%ずつ高くなる。これは一例ですけれども、そういう逓増料金制度を導入して公告率を引き上げるように誘導していくということも一つの方法だと思うんですが、私は積極的提言をしているんですが、どうですか。背景説明はよろしいですから、それは名案やとか何か、そう言いなさいよ。
#151
○政府委員(麻生渡君) 確かに公告率が低い、玉石混交であるというふうに申し上げましたが、これはそういう側面はありますけれども、同時に、出願が非常に多いというのは日本の産業の活力のあらわれであるという側面も持っておることは否めないわけであります。
 そういう状況のもとでいろいろ工夫をし出願をした、審査請求をした、その結果悪かった場合に罰則的に料金を上げていくというやり方がいいのか、もう少しソフトな誘導がいいのかということであろうかと思います。やはり悪かったら悪いということでどんどんいわば料金を上げていくという考え方は、全体の活力の考え方あるいはそもそもの特許制度、発明奨励という考え方との関係でよほど慎重に検討をする必要があるアイデアであると思っております。
#152
○市川正一君 私は、ペナルティーとして提起しているんじゃないんですよ。実際の実態に即した応能主義を提起しているんです。
 さらに伺いますが、なぜ補正は無料なのかという問題なんです。
 補正は、場合によっては新しい出願と同様の実務を伴うとも聞いております。とすれば、補正の適正化とともに料金収入の確保という面からもこれを有料にしてはどうかという点が小委員会の段階では検討されたと聞いておりますが、この点はいかがでしょうか。
#153
○政府委員(麻生渡君) 委員会の段階ではいろんな各方面から非常に多様な意見が出てまいります。料金制度の問題につきましてもいろんな観点からいろんな議論が出ておりまして、補正料金というような考え方もあり得るのかもわかりません。
 しかし、補正を何回もしたら確かに私ども手数はかかるわけでありますが、それを一回一回また料金を取るというような考え方よりも、今回申し上げましたように補正の適正化を国際的なやり方に合わせてやっていくということの方が出願の質の向上あるいはその事務効率という点からはるかに効果的であるというふうに考えまして、今回の補正の適正化ということをお願いいたしておる次第でございます。
#154
○市川正一君 私は、長官自身が玉石混交とおっしゃっている、そういう状況を適正化するということをめぐって若干の具体的な積極的な提案を行ったのでありますが、森通産大臣、お聞きになっていかがでしょうか。
#155
○国務大臣(森喜朗君) 長官が申し上げましたように、やはり発明を奨励するということ、それから行政サービスの一環でありますからできるだけハードルを低くしてだれもがそうしたことの申請ができるようにしてあげるということは本来の行政のあり方であろうと思いますし、もう一つは、玉石混交という言葉がいいか悪いかは別としまして、いろんな方が申請されることになりますから確かにいろんな意味での審査の障害になっていることは事実だと思います。
 委員がいろいろ具体的なお考えをお示しになりまして、長官としてはなかなかそれはいい考えやなとは言えぬようでありますから、私はまあ政治家でありますから、なるほどなと、そういうふうに思いました。
#156
○市川正一君 私もなるほどなと、こう伺ったわけです。
 私は、国民の出願の権利を抑制せいとかあるいはペナルティーをかけろとかというのじゃなしに、上位百社の企業が圧倒的な部分を占めているんです。そして彼らは十分調査能力もあるんですよ。それをサーチ機関のようにやっているという状況をやっぱり改善する必要があるということを言っているわけです。
 そこで、補正の適正化について具体的に伺いたいんですけれども、従来認められていた実施例の追加、自明な事項の追加、これは今後は認められないと理解してよろしゅうございますか。
#157
○政府委員(辻信吾君) 御指摘の点の実施例の追加といったようなことが認められるかということでございますが、従来からも実施例で認められたというのは極めて限定的であったと思います。
 今回は、例えて申しますと、弾力性手段と書いてありまして、実際ばねが図面に書いてあります。ですから、これは直接的、一義的に関係があるということで記載をばねとする、このようなことは新規事項の追加に当たらないということで、だれから見ても判断基準が非常に明確だ、こういうふうな考えてあります。
#158
○市川正一君 深くこの問題で議論をする余裕がないんですが、私は、願書に最初に添付された発明の詳細な説明は誤字脱字の類の訂正を除けば一切補正を認めないということにすべきだ、こう考えます。そう理解してよろしゅうございますか。
#159
○政府委員(辻信吾君) 必ずしも誤字脱字よりももうちょっと、一義的、直接的ということでございます。
#160
○市川正一君 もうちょっとがどのちょっとか、これぐらいか、もう時間がないのでこの点は後でまた詰めていきたいと思うんです。
 実葉について伺いたいんです。短サイクル技術の保護には賛成なんでありますが、従来の実案の中で保護されなくなってくるおそれがあると思うんです。
 去年の九月に改訂された特許庁編集の「工業所有権法逐条解説」を見ますと、「発明の水準をある程度高く維持しながら同時に創作意欲の減退を防ぐため」、「実用新案制度をなお存置することが社会の実情に適合するものと考えられた」と、こう述べている。つい半年前のこういう考え方を特許庁が転換なすったのかどうか、工業所有権をめぐる情勢はこの半年でそんなに激変したのかどうか、そこらをちょっと伺います。
#161
○政府委員(麻生渡君) 今回の制度改正でございますけれども、これは一昨年から工業所有権審議会で審議を開始し、また特許庁を挙げてこの検討に取り組んできた点でございます。したがいまして、昨年の九月段階の考え方と今回御提案申し上げておる制度改正、この間に思想の転換があったということではございませんで、当時の思想をずっと検討しながら今回の御提案に至っておるということでございます。
#162
○市川正一君 私は、権利行使の際に評価書を示しかつ相当な注意を払う義務が課せられてくることになりますと、権利行使のためかなりの努力を払わなければならぬ、中小企業の場合にはそれが相当過酷な負担になるという懸念を持つのでありますが、権利行使に支障が出るおそれはないかどうか、この点を新たにお聞きいたします。
#163
○政府委員(姉崎直己君) 評価書の有効性があるという記載を信じて権利行使をした後に評価書の調査の範囲内で新しい証拠が見つかりまして、権利が無効となったといった場合にどうするかという問題でありますが、原則として免責はされるというふうに考えております。
 ただ、評価書といいますのは、先行技術文献から見た権利の有効性に関する評価でございまして、調査の対象となる先行技術文献以外のいろんな情報というのが対象の外にあり得るわけでございます。したがいまして、非文献の公知公用の技術などについては判断を行っておりません。したがいまして、単に評価書を提示して権利行使をしたということだけで免責されるということではなくて、当業者であれば容易に知り得るような公知公用の技術については調査が必要だということが適当と考えた次第でございます。
 先生から中小企業個人ではこの調査が過大な負担ではないかという御指摘がございましたが、当業者であれば通常常識として知っているような技術の存在について注意をしていただくということについて、それが過大な調査負担だというところまでは考えられないのではないかというふうに私ども思っている次第でございます。
#164
○市川正一君 中小企業の過大な負担にならぬような配慮と指導を強く求めておきます。
 次に伺いたいのは、MDA四条協定に基づく協定出願、いわゆる秘密特許についてであります。一九八八年四月二十一日の本委員会で私この問題を質問いたしましたが、その後の状況についてただしたいと思います。
 まず、秘密特許制度ができてからちょうど五年になります。出願件数はどれぐらいになるのか年度別にお示しいただきたい。
#165
○政府委員(麻生渡君) 御指摘の協定出願でございますけれども、これは今お話がございましたようにいわゆる五六年協定、防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日米協定の三条に基づくものでございます。
 この三条では、一方の政府が防衛目的のために他方の政府に提供した技術上の知識に係る特許出願が、提供国、この場合にはアメリカでございますけれども、秘密にされている場合には提供を受けた側、日本の方では当該技術上の知識に係る特許出願については提供国におけるのと類似の取り扱いをするということが想定されておるわけでございます。
 この取り扱いでございますけれども、米国におきましては、我が国を含みます関係国との間で秘密に保持されております特許出願の件数については公表していないという運用になっております。
したがいまして、今申し上げました五六年協定の第三条の趣旨にかんがみまして、我が国におきましても協定出願の件数につきましてはこの公表は差し控えさせていただきたいと考える次第でございます。
#166
○市川正一君 それはもう重大ですよ。
 それじゃ聞きますけれども、準協定出願は何件ですか。
#167
○政府委員(麻生渡君) 準協定出願でございますけれども、これも同じく五六年協定の三条に基づくものでございまして、性格といたしましては同じような性格でございまして、この件数につきましても同様に差し控えさせていただきたいと思います。
#168
○市川正一君 何にも言えぬというのですか。中身を聞いているわけじゃないんですよ、件数はどれぐらいやと聞いているんです。件数ぐらい言いなさい。
#169
○政府委員(麻生渡君) 結局、この協定の趣旨は米国における扱いと同じような扱いをしていこうということでございまして、その意味で今申し上げましたように件数の公表は差し控えさせていただきたいと思います。
#170
○市川正一君 それでは、これまでに秘密指定が解除されて出願公開されたのは何件ですか。
#171
○政府委員(麻生渡君) 昭和六十三年にこの協定出願あるいは準協定出願が受け付けを開始されたわけでございますが、その後その一部につきましてはアメリカの方から秘密の解除の通告がございまして、これに伴いまして我が国におきましては既に出願公開がされたものはございます。
 ただ、それが具体的に何件かという点でございますけれども、これは協定出願あるいは準協定出願の件数を公表していないということとの関係上、差し控えさせていただきたいと思います。
#172
○市川正一君 公開しておいて、その件数も差し控えさせてもらいたい、一体どこにあなた方は責任を持っているんですか。
 先日、私は公開公報を調べ、公開された協定出願と思われるものの一部を見ました。その中には、液体発射薬包とかその弾丸あるいはガトリング型の銃の内蔵駆動装置、確かにこれはなるほど軍用技術かもしれません。しかし、大部分は高分子材料とかセラミック材料とかあるいは合金、集積回路、言うならばデュアルユースの技術じゃないですか。
 こういう技術まで秘匿されたことについて、また現に秘匿されている技術もあるわけですが、産業技術の発展にとりわけ重要な役割を果たす特許庁における長官としてどうお考えになるんですか、責任ある態度を示していただきたい。
#173
○政府委員(麻生渡君) この協定出願でございますけれども、これは五六年協定に基づきまして防衛目的のためにアメリカの方から日本に技術が提供されるということでございます。つまり、日本政府の方でも防衛目的という観点から必要な技術ということで提供を受けるものでありまして、そのスタートになる技術の性格がそのようなものであるということでございますものですから、今先生が言われましたようにどんどん広がっていくというような性格ではないというふうに理解をいたしております。
#174
○委員長(斎藤文夫君) 時間を超えています。
#175
○市川正一君 時間が参りましたので、最後に一言、締めくくりにただしたいのでありますが、今私が具体的に指摘したようにいわゆる汎用技術じゃないですか。デュアルユースなものなんです。今のアメリカの技術開発が軍事中心にずっと進められてきました。結局、そのためにアメリカ経済をゆがめただけでなしに民間企業の技術力や生産力を停滞させ、国際的な競争力を失ってきたことは今ではアメリカで常識になっています。協定出願とか準協定出願が横行すれば日本の経済や技術の発展をゆがめることもまた必定です。
 こういう協定は廃棄すべきであるということを私は強く要求して、そして日本の特許庁の長官ですから日本国民の立場に立って毅然として臨まれることを重ねて要望して終わりたいと思います。
#176
○古川太三郎君 大体もう質問の部分は終わったんじゃないかなと思うんですけれども、ただ私自身ちょっと聞き違えたのかなと思ったりするところで二、三お話を聞かせていただきたいと思います。
 一つは、先ほどからよく言われているんですが、出願と審査請求の比率なんです。これは日本では出願が大変多い、そして審査請求までにほとんどと言ってはあれですが、四割ぐらいは脱落してしまう。審査請求しない。しかし、出願すればそのときから権利の形成ができていくものですから、法律関係は非常にふくそうしてくることは事実なんですね。
 それだけの権利保護のためにこの出願料というのは非常に安いんではないか。これは一つの物権的な効果を持っておりますからこれは絶対的なんで、だれにも侵害されない排他的な権利ですから、これほど大きな権利を安い登録料でやってしまうということは先ほどから議論がありましたようにむしろ権利の乱用の部分もあるんではないかそのように思うわけなんです。
 また、発明したりなんかしても、特許を申請するよりも雑誌に書いたりあるいは発明協会で公開技報というんですか、そういったものに掲載するとかいうような場合でも特許の出願料以上にお金がかかるというようなことで、むしろ先ほどサーチのために特許庁が利用されているんじゃないかというような議論もありましたけれども、この出願料そのものはもっと値上げしていっていいんじゃないか。アメリカとかあるいはECに比べても四分の一か三分の一ぐらいの安さなんですね。こういったところにその原因があるんではないか。
 そうなればなかなか出願がしにくくなって活性化ができない、こう言われるのならば、まじめに出願する人に対する猶予というような形で、訴訟でも訴訟救助みたいな形がありますから、個人とかあるいは中小企業でこれは大変だというような場合にはその猶予を置いてそして審査請求までおやりになって、公告ができたらこれはお金をもらうというような形の制度になさってはいかがかと思うんですけれども、その点はいかがですか。
#177
○政府委員(麻生渡君) 私どもの工業所有権制度を運用していきます基本的な考え方は、これは明治以来そうでございますけれども発明奨励でございます。研究開発活動を活発にし、発明をしてもらい、日本の技術水準を高める、これが日本の発展の一番基礎になるということを確信しやってきたわけでございます。その発明奨励の一つの重要な要素は、やはりいろんな特許なりいろんな権利をとってもらうにつきまして、できるだけ特許庁として安くサービスを提供するのがこのような発明奨励、開発に役立つということでございます。
 今、先生が御指摘になりましたように、出願の中の選択ということを価格をもう少しうまく使ってやる方法はないか、あるいは非常にまじめといいましょうか質の高い出願を行うに当たって経済的に難しい方には特別な支援をする方法はないかというような点の御指摘がございました。確かに、今後の私どもの行政を考えます場合に、特に一番目の出願料の考え方というものは非常に重要な点であろうと思います。第二番目の困窮者なり非常に資力がない方の発明、これは現在でも生活困窮者であるということの場合にはその審査請求料を免除するという制度がございます。
 そういうことでございまして、今までの考え方をどの程度変えるのが技術奨励、発明奨励との関係でバランスがとれるのか。やはり活力をそいではこれは何もなりませんものですから、そういうバランスを見ながら研究をしてまいりたいと思うわけでございます。
#178
○古川太三郎君 一昨日はペーパーレス計画を十分に見せていただきましたけれども、そういうことで確かにこれからデータが非常に蓄積されてくる。そしてその編集も特許庁でおやりになるということですから、私は一つの国有財産だ、こう思うんですね。
 その管理をしていくためにも、またこれを公開
していくためにも適正な価格というのがあっていいんじゃないか。そうでなければ受益者負担といいながらこういったものがだれでも使えるということには私はなっていかないだろうと思うので、ある意味で適正な価格を設定しなければならない時期に来ているんじゃないかなと思うんですけれども、その点はいかがですか。
#179
○政府委員(姉崎直己君) 先生御指摘のように、CD-ROM公報を初めといたしまして、特許出願の書誌的事項を含むデータベースでありますとか総合資料ファイルデータベースといった特許庁保有のデータベースは、特許庁が著作権を有する著作物でございます。したがいまして、これは財政法九条には適正な対価なくしてこれを譲渡あるいは貸し付けをしてはならないという規定がございますもので、この規定を踏まえましてその使用あるいは収益の許可に当たっては適正な対価をいただくということになっているわけであります。
 この対価の具体的な決定に当たりましては、受益者負担の原則ということを考慮しつつ、また国の持っております特許権の実施料の料率なども参考にしながら決定いたしておるわけであります。
 ちなみに、この一月から公開公報のCD-ROMを発行いたしたわけでありますが、この公開公報のCD-ROMを第三者に業として提供する場合にはCD-ROMの通常の公報価格の三枚分をこのデータ使用料としていただく、また社内のオンラインで自社内で複製して使うという場合には通常のCD-ROM価格の上に一枚分のデータ使用料をいただくというような形でデータ使用料をいただいているということになっています。
#180
○古川太三郎君 それは、特許庁の中で使う場合には無料になっているんですか。
#181
○政府委員(姉崎直己君) 特許庁の中で、もちろん業務用で使う場合は別といたしまして、現在資料館というところで、この間先生方にもごらんいただきましたが、端末を利用いたしまして総合データベースを皆様に公開利用していただいているわけでございます。実は、またこれはテスト中という形でございまして現在無料で公開をいたしておりますが、いずれ正式な本格的な利用という体制が整い次第有料化を検討いたしたいというふうに考えておるところでございます。
#182
○古川太三郎君 話を変えまして、今度の法改正では、権利の成立を早期に実現するとかあるいは国際調和といった目的で出願の内容を、出願人にそういう義務を負わせているような部分がございます。しかし、その反対に行政サイドにおいてもすごく努力が必要なところがあるのではないか。
 今まで出願人から見れば、審査官からの非常に簡単な拒絶理由書で却下されておるとかというようなことが多くあったのではないかと私らの経験で思うんです。これからは拒絶理由書そのものによって審判を申し立てたりいろいろと権利関係が出てくると思うんですが、その拒絶理由がやはりしっかりと書かれていることが私は非常に大切になってくるだろう、こう思うんです。
 権利というのは、明確でなければ争いが非常に多くなるものです。しかも、今までの行政のところを見ていますと、日本では行政手続法というのがないからうやむやに権利を拒絶されてもなかなかはっきりと異議を申し立てる人は少ない部分もあった。あるいは、何だかんだ丸め込められてそれで終わってしまうとかいうようなこともあるわけなので、やはり拒絶する場合にはしっかりとした理由が必要だと思うんです。特に、こういう工業所有権等においてはこれは大切にしていきたい、こう思っているものです。
 その拒絶理由は審査官がそれを書くことになるだろうと思うんですが、そういったところの統一性というのか、あるいはどこに注意されているのか、そういったことをちょっとお伺いしたいと思うんです。
#183
○政府委員(辻信吾君) 先生御指摘の拒絶理由通知の充実ということでございますが、従来からも、この拒絶理由通知を極力懇切丁寧に通知する必要がございまして努めてまいったわけでございます。具体的には、先ほどから話が出ております昭和六十二年に導入されました多項制に合わせまして、各請求項ごとに拒絶理由を通知することの運用基準を作成いたしまして具体的にこれを公表いたしまして、同時に審査官の運用の基準としてまいっております。
 これに加えまして、今回は補正について改正されるわけでございますから、今回の補正が欧米並みに適正化されるに伴いまして、この拒絶理由通知のあり方も欧米並みにぜひあるべしという観点から、具体的には、その拒絶理由通知に対しまして項目ごとにその時点で調査いたしました公知技術を項ごとに示すといったこと、さらには審査官と出願人の方々との面接をさらに充実していきたい。加えまして、拒絶理由通知を出す場合に、場合によっては出願人の方々からの補正、どのように補正したらいいのか、こういった補正案を示唆する、こういったようなことを盛り込んだ運用基準を作成していきたいという考えております。
 こういうことによりまして出願人の方々が少ない回数の補正で十分容易に権利が取得できる、こういうふうにやっていきたいと考えております。
#184
○古川太三郎君 いずれにしても、補正が制限されるようになりましたし、早期に権利を実現しなければならぬという要請もありますから、またそれが拒絶された場合には異議の申し立てがきっちりできるようにその理由書はしっかりと書いていただきたい、こう思っております。
 また、余り書いていない人と書いてあったりする人と、審査官によっていろいろな人が出てきたりなんかするとこれはまた不公平になりますから、そのあたりはひとつマニュアルでもつくってしっかりとしていただきたい、こう思うんです。
 審査官の場合には特に中立性だとかあるいは高度の専門性が要求されるだろうと思うので、今度はそのための人数の増員だろうと思うんですけれども、こういった方々が本当に業務に専念できるようなシステムになっているのかどうか。私から見ればあれは大変な仕事だろうと思いますし、またある意味ではこれは悪く考えれば誘惑も多いだろうと思うんですね。そういう意味から、中立性を守るためには審査官あるいは審判官のどのような身分保障になっているのか、あるいは専門的な技術の向上をどのような方法でおやりになっているのか、その点をお聞きしたいと思うんです。
#185
○政府委員(辻信吾君) 審査、審判官の職務につきましては、法律上これが定められておりまして、審査官の場合独立して査定ができる、こういうシステムになっております。先日脚視察いただきました審査官は四年で一人前になるわけで、一人前になった審査官は独立して判断できる、審査官の名前で査定ができる、こういうふうな仕組みになっております。
 また、その審査官の審査結果につきましては、不満があれば上級審の審判事件でも裁かれますし、あるいは現行制度では出願公告されますと異議申し立てという制度もございます。あるいはまた、審査基準室という組織でもちましてその審査基準の統一ということにも努めております。
#186
○古川太三郎君 もう聞くことはございませんので、最後に大臣に強く御要望を申し上げたいと思うんです。
 アメリカが日本に要求していることは、大体これからの特許制度については必要な方向だろうと、私はそう思っているんです。日本がアメリカに要求する項目、これも大変大切なことで、今後特許制度を充実していくためには、私はアメリカの言っていることはむしろ今の特許の方向とは逆だろうと思っていますからしっかりとアメリカに要求していただいて、ヨーロッパなんかとも統一できるような方向に早く持っていってほしい、こう願っているものです。大臣の御所見を聞きまして終わりたいと思います。
#187
○国務大臣(森喜朗君) たびたびお答えを申し上げておりますので、古川先生に余り時間をかけてお答えするのほかえって失礼だと思います。
 現在のWIPOで特許制度調和条約の交渉が行われておりますが、重要なポイントは、今古川さん御指摘のとおり、アメリカとの関係をまず調和
させるということであろうと思っております。その重要なポイントは、先発明主義から先願主義へと移行させるなど米国の他国と大きく異なった制度の是正を求めること、このように認識をしております。このような観点から、我が国としては条約交渉が成功するよう積極的に努力をしてまいりたいと考えております。ただ、アメリカの中には根強い先発明主義維持論もあると聞いておりますし、経済産業活動のグローバル化の目覚ましい進展を見ればアメリカも制度を変える必要があるわけでございますし、アメリカの積極的な姿勢は不可欠なところでございます。
 先般、アメリカに渡りましたときにも、私から直接ブラウン新商務長官に対しまして、条約成立に向けましてぜひアメリカのイニシアチブを発揮してもらいたい、このように申し上げたところでございます。また、予定がそのとおりであれば、今月末にもブラウン長官にお目にかかる機会があるようでございますので、その前もまた直接お話を申し上げておきたい、このように思っております。
#188
○小池百合子君 お尋ねさせていただきます。
 今回の法改正の質問に入らせていただく前に、日米首脳会談直前ということもございますので、大きな意味での経済の状況について大臣の方からお答えをいただければと思っております。
 まず、株価の上昇と相まってこのところ急激な円高ドル安が続いて、きのうあたりから一服ということもございますが、円の対ドル相場は二月初めからおよそ一〇%近く上昇という傾向が続いているわけでございます。ということで、このところの円高水準についての見方、それからどこまで容認ができるのか、さらには円高差益についての問題が余り触れられていないようでございますので、これについてのお考えなどを伺いたいと思います。
#189
○国務大臣(森喜朗君) 円相場といいますのは、これはもう小池さんも国際的に活動しておられたのでよく御存じのとおりでございまして、これは市場原理が反映するものでございますから、今まずどの程度容認するんですかとかどの程度になると思われますかというようなことは、これは私から申し上げる立場ではないわけでございます。我が国のやはり基礎的な経済条件といいますかファンダメンタルズ、こう言っておりますが、それが適切に反映をするということであろうと思います。
 ただ、今お話しのとおり、昨年の十一月以降百二十三円から百二十五円台で安定して推移しておりましたのが、二月の初旬から我が国の大幅な貿易黒字を背景に政治的な円高方向への為替調整圧力が生じるのではないかという思惑が強まったと。当時G7が予想されておりましたり、あるいはアメリカの学者でクリントンの側近でありましたバーグステンがちょうど来ておりまして、当時アメリカの下院の副議長もお見えになって、何となくそういう政治的な思惑が走った、その思惑買いが当時円の急進になった、このようにも言われておるわけでございます。
 しかし、四月に入りましても連日のように最高値を更新しておりまして、十三日には瞬間ベースで百十二円六十銭ということでございまして、その後わずかにドルが戻しておりますが、現在も百十三円台の半ばから後半で推移をいたしております。今回の円高も、近く行われるG7でありますとかきょう出発されました宮澤総理の日米首脳会談などもまた政治的ないろんな背景があるというようなことで、思惑買いが進んでおるのではないかというふうに考えられております。
 ただ、私といたしましては、余りにも急激過ぎてこうした変動は好ましくない、このように考えておりまして、今後とも為替レートの動向は注視をしていかなければならぬ、こう考えております。
 見通しはいかがかということでございますが、先ほど申し上げましたように、市場心理、金融情勢、貿易収支、その他内外の諸要因によって左右されるということでございますので、見通しを立てるということは困難なことでございます。現に、市場関係者の間には大幅な貿易黒字を背景にさらに円高が進展するとの見方もありますし、一方では日米の景気回復の差といいますか、そうしたものを背景としてまたドルが値を戻すのではないかという見方もございます。こういう中で、先ほど冒頭に申し上げましたように、政府としての予断を申し上げるということは市場にまた予断を与えるということになりますので適当ではない、こう思っておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、せっかく景気が回復基調へ向かいつつある、こういうときでございまして、やはりこのことは企業に対して大きな影響を与える懸念がありまして、そういう意味で景気回復の足を引っ張るという面でも私としましては大変懸念をいたしておる、そういう状況でございます。
#190
○小池百合子君 それでは、今回の特許法について、先ほどの日米関係からも生じている、または国際ルールのハーモナイゼーションといった面からも今回の特許法の一部改正ということが出てきておりますので、そういった観点からも伺いたいと思います。
 とにかく午前中から特許の、そして実用新案の出願件数が年間で四十八万件、そしてアメリカのおよそ三倍にも上る。その割には公告率が三一%と、プロ野球の選手であったらだれに当たるのか、打率が低いというようなところでございますけれども、件数が多ければ技術超大国がなといったらそうでもないし、またある部分は当たっているかもしれない。今後日本が生きていくためには、やはり何といっても物まねではなくて、オリジナリティーであるとかそういったアイデアというのがどんどんとわき出ていくということが何よりも必要になってくると思います。
 この改正案の補正の部分でございますけれども、この補正を限定したときに特許出願への意欲をそぐようなことというのはないのかどうかかえって事務処理が迅速化されることによって活力が増すというふうに考えた方がいいのか、この辺のスタンスについて再確認させていただければと思いますので、特許庁の長官からお願いいたします。
#191
○政府委員(麻生渡君) 今回の補正の適正化を出願の皆さん方にお願いするわけでありますが、それによって出願サイドが意欲をそぐということはないと思います。この適正化をやる前提といたしまして、多項制ということがだんだん定着をいたしております。これを使えば十分に強い権利、幅広い権利がとれるということでございます。
 ただ、補正の適正化ということが行われますと、これは途中で何回も補正ができるということではございませんものですから、出願をする際にどういう権利を自分はとっていくのか、それが自分の研究開発あるいは将来の商品開発との関係でどういう意味を持つのかということをしっかり考えてやらなければいかぬということでございます。その意味では、しっかりしたやはり特許戦略というものを要求される傾向を持つということであると思います。
#192
○小池百合子君 その特許法の補正の部分でさらに伺いたいと思うのでございます。
 世界的なハーモナイゼーションは当然必要だとは思いますが、例えば現場レベルで考えてみまして、弁理士さんなど実務担当者の感覚とすれば、これまで何度か担当の方とやり合う、話し合う中でその補正を行ってきた、これに時間がかかったりしてきたということもあるんですが、一回でだめということになりますと、その辺の対話の中から生まれてきた調整といいますか、その機会がかなりそがれるということにどうしてもなってしまうわけなんです。その辺のカバーはどういうふうにすればよろしいのか、お考えを伺いたいと思います。
#193
○政府委員(辻信吾君) 御指摘の点でございますが、先ほども申し上げましたように、まず最初の、こちらから差し上げる拒絶理由通知につきまして丁寧に書いてございます。それから、なおかつ出願人の方々との意思の疎通を図る上で審査官と出
願人の代理人の方々との面接をする機会を現状でも設けておりますが、これをより積極的に進めてまいりたい。さらには、こういうふうに補正をすればこの出願は特許になり得る、そういう場合にはできるだけ補正案をお示しする、こういったようなことで出願の方々との意思の疎通を図っていきたい、かように考えております。
#194
○小池百合子君 できるだけその意思の疎通の一回しかないチャンスをフルにお互いがよく調整できるような、そういう機会にしていただきたいというふうに思います。
 続きまして、実用新案についての条項に移らせていただきたいと思います。実用新案の評価書について第十二条に記されておりますけれども、改正案によりますと、実質的な審査を行わずに権利行使の場合には実用新案評価書によるというふうに出ております。実際にその作成に当たるのが審査官ということで十二条二項に記されているわけなのでございますけれども、実際にそうであるならば、実質の審査を行っている現状と一体どういうふうに違うのか、その辺を御説明いただきたいと思います。
#195
○政府委員(辻信吾君) 先ほど申しましたように、これは審査官が従来の技術水準について調べます。引用文献について調べますし、それからそういう従来技術に対してその考案が登録の有効性があるかないかについての記述もするわけでございますが、審査と一つ違う点は、審査の場合は、先ほど申しましたように一件の審査にやりとりがございます。これは非常に時間がかかるわけでございます。評価書の場合は、その内容を見ましてそれについての評価をする、こういった点で審査と違う点がある、この点が違う点の一つでございます。
#196
○小池百合子君 実際には、その実用新案技術評価書の作成というのは、どれくらいの期間がかかるものなんでしょうか。
#197
○政府委員(姉崎直己君) 評価書の作成期間の見通してございますが、私どもとしてはできるだけ早期に作成をいたしたいと考えておりまして、具体的には出願と同時に請求がなされた場合には登録とほぼ同時期すなわち半年程度で作成いたしたい、また登録後に請求された場合には請求俊二、三カ月を目途に作成するように努めたいというふうに考えております。
#198
○小池百合子君 できるだけ早い作成をお願いしたいところでございます。
 そういった実用新案評価書の作成を行うということならば、事務負担の軽減というのはその辺のところで実際に行われるのかどうか。そしてまた、負担が多いときには第三者に託すということのようなんですけれども、それはどういう条件でもって行われるのか、その辺いかがでしょうか。
#199
○政府委員(辻信吾君) 評価書作成は、これは実用新案法でも定められておりますように審査官が作成するわけでございますから、その性格上これは審査官が作成することが適切であり、外部に委託することは考えておりません。
#200
○小池百合子君 先ほどもちょっと出ておりましたけれども、同じく実用新案の方でございまして、権利の保護期間が出願の日から六年とされているということでございます。この期間につきまして、資料ではドイツで八六年の改正で八年、さらに九〇年の改正によって十年とされているわけで、この六年というのは余りにも短いそういう現場の声もかなりあるのでございます。
 それで、商品のライフサイクルが短いという先ほど来の御説明でございますけれども、一律に製品のライフサイクルの短縮化として決めつけてしまうのはちょっと不合理な点も感ずるのでございますが、その辺の見解を伺いたいと思います。
#201
○政府委員(姉崎直己君) 今回の実用新案制度の改正の趣旨は、先ほど来申し上げましたような昨今の大変速い技術革新のテンポの結果、ライフサイクルの短い技術が多くなっているという実態に現在の制度が追いつかなくなっている、その結果、権利の保護が十分に行き届かなくなってしまっているということを踏まえまして早期登録をし、かつこのライフサイクルの短い実態に合わせて権利期間も六年とすることにいたしたわけであります。
 この御提案をする前に、私どもいろいろと実態調査をいたしました。実用新案を用います日用品等の技術のほとんどが非常に短期間でサイクルが変わっていく、三分の二の技術が五年以内というような期間でサイクルが回っておりますし、また通産省の調べました家電製品の調査でございますと、大体一年ないし一年半ぐらいがモデルチェンジの期間ということであります。また、中小企業が多く参入しております玩具の業界なんかにつきましては、大体二年ないし二年半がサイクルというような状態になっております。こういった実態を私どもも十分調査をいたした上で六年というのがおおむね適当ではないか、余りに不必要に長い期間というのはかえって独占の弊害をもたらすことになるのではないかと考えたわけであります。
 ドイツの例を先ほど御指摘になりましたが、ドイツにおきましては実用新案制度がおおむね百年近く続いてまいりましたが、保護期間はずっとこの百年間六年という期間で続いてまいったわけであります。これが近年十年となっておりますのは、ヨーロッパ特許条約にドイツが加入する際に、特許期間の権利期間を条約に合わせて二十年というふうに延長いたした際に算術的に合わせだといった事情が特殊にあったというふうに理解いたしております。
 実用新案制度を持っております主要国といたしましてドイツのほかにフランスというのがあるのでありますが、フランスは権利期間が出願から六年ということでございまして、日本の六年という制度が決して特異な短過ぎる制度ということではないというふうに考えております。
 なお、もっとサイクルの長い技術についてはどうするのかという御指摘もありましたが、ライフサイクルの短いものについては実用新案制度、長いものについては特許制度、すみ分けをしていただくということで多種類の技術の保護に従来以上に万全を期することができるのではないかというふうに考えている次第でございます。
#202
○小池百合子君 いろいろ質問した後にこういう素朴な質問をするのは非常に恐縮なんですけれども、例えば同じ内容の発明が特許とそれから実用新案の両方に出願された場合というのは一体どうなるんでしょうか。
#203
○政府委員(姉崎直己君) 日本では、同じ技術について同日に特許と実用新案がそれぞれ出願されるということについてはいわゆるダブルパテントの排除という原則を持っておりまして、したがいまして御指摘のような同日に実用と特許の新案が出されるということは認めておりません。
 ちなみに、ドイツでは同日出願の特許と実用新案の保護をするという制度があるわけでございますが、私どものダブルパテントの排除の原則というのは、一つの技術思想に対して複数の権利を与えることによって重複して権利行使を受ける危険がある、第三者に不当な不利益が生ずる可能性があるということからダブルパテント排除の原則が確立いたしておるわけでございます。その意味で、改正実用新案制度におきましてもこの考え方は踏襲してまいりたいというふうに考えております。
#204
○小池百合子君 たしか午前中も出ておりました。そうすると特許と実用と両方には出せないということでございますけれども、例えばアメリカの場合ですと実用新案制度が存在しないとかそういった面で、なかなかこの差の部分というのが、今後技術のさらなる発展に伴って特許と実用新案のボーダーというのがどういうふうに変化していくのか、もしくはそういう違いというのをそのまま置いておく必要があるのかどうかこの辺いかがでしょうか。
#205
○政府委員(麻生渡君) 現在の実用新案制度と特許制度の関係で言いますと、一般的な言い方をしますと大発明と小発明ということでありますが、実際の審査に当たりましては、その進歩性につい
ではそれほど違った判断をしていないということでございます。料金が安いとか権利期間が短いというようなことはございまして利用の差というのは出ておりますけれども、技術思想の見方というのはそんなに差がないということでございます。
 今回の改正をいたしますと、技術の判断基準そのものにはそんなに変化はないと考えますけれども、むしろ実際の使われ方につきましては、こちらの方は非常に早く権利が与えられる。一方で権利期間が短いということでございまして、こちらの方はいわゆる短ライフサイクルの技術の保護に非常に適した制度であるということでございまして、その意味では両者の制度の性格の差、使われ方の差が非常にはっきりしてくるというふうに考えております。
#206
○小池百合子君 では、このまましばらくは二つは存続していくということでございますね。
#207
○政府委員(麻生渡君) このように違った性格、使われ方の制度ができていくというふうに想定をいたしておりまして、この制度を両方、それぞれ特色を生かして活用していただくということでやってまいりたいと思います。
#208
○小池百合子君 これで終わります。ありがとうございました。
#209
○委員長(斎藤文夫君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 特許法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#210
○委員長(斎藤文夫君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 吉田達男君から発言を求められておりますので、これを許します。吉田君。
#211
○吉田達男君 私は、ただいま可決されました特許法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲民主連合、公明党・国民会議、民社党・スポーツ・国民連合、日本共産党、民主改革連合、日本新党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    特許法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
 政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
 一 補正の適正化に当たっては、制度改正により無用な混乱を生ずることのないよう周知徹底を図るとともに、拒絶理由通知に当たっては、補正の適正化に資するよう拒絶理由の明確化等に努めること。
 二 実用新案登録出願について、実体審査を要しない早期登録制度の導入により無用な混乱を生ずることのないよう新制度の周知徹底を図ること。
 また、実用新案技術評価書については、権利の信頼性が確保されるよう十分な技術評価の提供に努めるとともに、その発行が迅速かつ的確に行われるよう事務処理体制の整備等に努めること。
 三 中小企業者等が制度改正等に円滑に対応し得るよう、指導・相談業務の一層の充実を図るとともに、先行技術調査に係る支援、情報提供体制の強化等を図ること。
 四 改定後の工業所有権関係料金の水準が可能な限り長期的に維持されるよう、特許特別会計における事業経費の一層の合理化に努めること。
 五 審査要処理期間の一層の短縮を図るため、ペーパーレス計画の推進、審査官等必要な人員の確保等による事務処理体制の整備等の審査処理促進策を引き続き強力に推進するとともに、出願適正化施策の強化を図ること。
 六 工業所有権制度の国際調和の重要性にかんがみ、我が国の主張が生かされるよう最大限の努力を払いつつ、国際的な制度調和の実現に積極的に取り組むこと。
 また、工業所有権制度の整備についての国際協力に積極的に努めること。
 右決議する。
 以上であります。
 何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
#212
○委員長(斎藤文夫君) ただいま吉田達男君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#213
○委員長(斎藤文夫君) 全会一致と認めます。よって、吉田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、森通商産業大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。森通商産業大臣。
#214
○国務大臣(森喜朗君) ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重して、本法案の適切な実施に努めてまいる所存であります。
#215
○委員長(斎藤文夫君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#216
○委員長(斎藤文夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#217
○委員長(斎藤文夫君) 次に、貿易保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。森通商産業大臣。
#218
○国務大臣(森喜朗君) 貿易保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 我が国企業等が行う発展途上国等に対する事業資金の貸し付け及び出資等は、発展途上国の累積債務の増大等に伴うカントリーリスクの高まり等を背景として近年減少しております。
 他方、一千億ドルを大きく超える貿易黒字を計上するに至っている我が国は、膨大な資金需要を抱える発展途上国等に対してその必要な資金を還流することを強く要請されております。
 かかる状況のもと、我が国としては、政府開発援助等の公的資金の拡大と並んで、海外において行われる事業に対する我が国民間企業による資金の貸し付け及び出資等いわゆる民間資金の還流の拡大を図る必要があると考えられます。
 このため、貿易保険制度を改正し、我が国民間企業による海外向け事業資金の貸し付けに伴うリスク及び海外直接投資に伴うリスクの貿易保険によるてん補を拡充することが必要であり、ここに本法律案を提案した次第であります。
 次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。
 第一は、海外事業資金貸付保険の新設であります。
 本邦外において行われる事業に必要な長期資金の本邦法人または本邦人による貸し付けにつきましては、現行海外投資保険の対象としておりますが、現行の法定てん補率上限、保険金算定方式では事業資金の貸し付けを促進するのに不十分なものとなっております。このため、事業資金の貸し付けを対象とする海外事業資金貸付保険を新設し、これらの点を改正することによってリスクのてん補を拡充することとしております。
 第二は、海外投資保険のてん補率の上限の引き上げであります。
 現行海外投資保険では、戦争、収用、外貨送金制限といった非常危険に係る法定てん補率の上限は百分の九十となっておりますが、今回の改正におきましては、これを百分の九十五まで引き上げることとしております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。
 何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
#219
○委員長(斎藤文夫君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日行うこととし、本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十八分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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