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1993/05/11 第126回国会 参議院 参議院会議録情報 第126回国会 農林水産委員会 第10号
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1993/05/11 第126回国会 参議院

参議院会議録情報 第126回国会 農林水産委員会 第10号

#1
第126回国会 農林水産委員会 第10号
平成五年五月十一日(火曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月二十六日
    辞任         補欠選任
     谷本  巍君     山田 健一君
 四月二十七日
    辞任         補欠選任
     山田 健一君      谷本 巍君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         吉川 芳男君
    理 事
                浦田  勝君
                永田 良雄君
                菅野 久光君
                三上 隆雄君
                林  紀子君
    委 員
                青木 幹雄君
                大塚清次郎君
                鎌田 要人君
                佐藤 静雄君
                野間  赳君
                一井 淳治君
                稲村 稔夫君
                谷本  巍君
                村沢  牧君
                風間  昶君
                矢原 秀男君
                星川 保松君
                喜屋武眞榮君
                新間 正次君
   国務大臣
       農林水産大臣   田名部匡省君
   政府委員
       農林水産政務次
       官        須藤良太郎君
       農林水産大臣官
       房長       上野 博史君
       農林水産大臣官
       房審議官     今藤 洋海君
       農林水産省経済
       局長       眞鍋 武紀君
       農林水産省経済
       改善局長     入澤  肇君
       農林水産省農蚕
       園芸局長     高橋 政行君
       農林水産省畜産
       局長       東  久雄君
       農林水産省食品
       流通局長     須田  洵君
       食糧庁長官    鶴岡 俊彦君
       水産庁長官    川合 淳二君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        片岡  光君
   説明員
       環境庁水質保全
       局土壌農薬課長  猪股 敏郎君
       外務省経済局国
       際機関第一課長  別所 浩郎君
       厚生省健康政策
       局指導課長    今田 寛睦君
       厚生省生活衛生
       局食品科学課長  牧野 利孝君
       厚生省生活衛生
       局水道環境部水
       道整備課長    浜田 康敬君
       通商産業省貿易
       局農水産課長   山野 昭二君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○農林水産政策に関する調査
 (当面の農林水産行政に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(吉川芳男君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
 農林水産政策に関する調査を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#3
○稲村稔夫君 きょうは、一般審査ということでありますけれども、特に新農政についてかかわりがあるということを中心にしていろいろと質問をというつもりで準備をさせていただいているわけであります。
 また、新農政も今国会でも幾つか関連をする法律なども準備されているようであります。私は、そういう法案審査の中でまた掘り下げた議論をいろいろとさせていただく、こういうことにさせていただきながら、新農政の持っている一つの側面からきょうはそこへ絞って質問をしてまいりたい、このように思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 そこで、まずお聞きをしたいのは、新農政の展開によりまして農業には合理化、規模拡大ということが大きな命題ということになってくるわけであります。しかし、合理化をし規模拡大をしていくということは、当然のことでありますけれども、大型機械を使い、あるいはヘリコプターなどを動員し、あるいは施設の整備をかなり大がかりにやらなければならない、こういうことになってくると思うんです。
 そういたしますと、今世界的な一つの人類の課題としてCO2の排出を減らしていくという問題であるとか、あるいはNOxを規制していくというような問題だとか、化石燃料に伴ういろいろな課題が出てきているわけであります。これは国の行政としても大事な課題になってきている。これと全然離れて、農業は農業だけで勝手に好きな方向へ行けばいいやというふうには、これは社会的にそういう方向は許されないというふうに思うわけであります。
 そこで、合理化、規模拡大というものが目指されているとするならば、それに伴っての化石燃料の消費との因果関係についてどのように考えておられるか、どのようにしておられるかということを、実はもう農林水産省は試算をしておられるだろうと私は思って資料を要求したんですが、きのう要求したら一日かかってもまだできないということでありますから、今まで手をつけておられなかったんだというふうに思うので、そういう点では私はかなり残念だというふうに思います。
 そこで、具体的な数字はないといたしましても、そうすると、まず規模拡大していくということは、化学肥料であるとか農薬であるとかあるいは石油であるとかいうようなものの消費を拡大していくということになるのではないかと思うわけであります。
 そこで、まずお聞きをしたいと思いますのは、その中で、燃料のことはちょっと別にいたしまして、化学肥料とか農薬とかというのは人間の健康にも重大な影響を及ぼすということになるわけでありますので、その人間の健康に及ぼす影響についてどのように政府として現状認識をしておられるか、対策を立てておられるか。このことを農林水産省、それから厚生省、環境庁、それぞれ関係する立場からお答えをいただきたいと思います。
#4
○政府委員(高橋政行君) 今、先生お尋ねの農薬というようなものが人間の健康にどんな影響を及ぼすかというようなことについて、一体どういうような認識をしておるかということでございます。
 御存じのように農薬についてはいろいろな使用の仕方というようなことを定めておりますが、不適正な使用というようなことによりまして散布者の皆さん方が中毒などの事故を起こすというような事例が見られたり、あるいはまた……
#5
○稲村稔夫君 いや、局長、そういうことを聞いているんじゃないんです。ちょっと済みません。僕の聞き方が悪いのかもしれません。
 新農政絡みで規模拡大をしていく、そうすれば当然農薬とか化学肥料を多く使うようになっていくでしょう。そうすると、その観点からいったらどういう対策を立てていますかということを含めてのことになる。現状ということをとらえて、今後それをどう展開していこうとしているかということを聞きたいんですよ。
#6
○政府委員(上野博史君) 農薬、肥料、あるいは燃料についても共通する問題と理解をするわけでございますけれども、規模が大きくなれば大きな経営体としてのこういう肥料なり農薬なり燃料なりの消費は絶対値としてふえるということはそのとおりだというふうに思うわけでございますが、じゃ、その個々の規模の小さい平均的な現在程度の農家の使っているそういう資材の単位当たりの消費量と比べてどうかということになれば、それはそれでかなり大きなものがあるというふうに考えられるわけでございまして、経営規模の大小で、例えば単位面積当たりのそういう資材の消費量というようなものを考えた場合にはさほど大きな差はないんじゃないかというふうに考えるわけでございます。
 したがいまして、これらの資材の投入をできるだけ控えて、環境や人体に影響の少ない農薬生産を今後営まなければならないという、この命題は命題として非常に大事なものだということを考えているわけでございまして、規模の大小を問わず、いろいろな営農のやり方を工夫、検討、改善することによりまして、資材のできるだけ少ない投入、持続性のある農薬、人体へ悪影響のない農薬を確立するという努力を現在しておるところでございますし、今後も続けていかなければならないというふうに考えているわけでございます。
#7
○稲村稔夫君 後でまた農林水産省に伺いたいというふうに思います。
 厚生省の場合は、現在の農薬についての人間の健康に及ぼす影響、これに対して現状をどのようにとらえておられて、どんな対策をしておられるか、厚生省の立場をお聞かせいただきたいと思います。
#8
○説明員(牧野利孝君) 食品中に残留する農薬につきましてお答えいたします。
 食品残留農薬の安全性確保は大変重要でございまして、厚生省では、農産物の安全性を確保するために、農産物中農薬の許容基準、いわゆる残留農薬基準でございますけれども、この基準を設定してきてございます。
 具体的には、平成三年九月から本年三月まで六回にわたりまして、合計九十三農薬の残留基準の設定につきまして食品衛生調査会に諮問したところであり、これまで七十九農薬につきまして残留基準が答申されております。今後とも、資料の整備されます農薬から順次食品衛生調査会へ諮問いたしまして、残留基準の整備に努めることとしております。
#9
○説明員(浜田康敬君) 引き続きまして、厚生省が担当しております水道水の安全性の観点から今の先生の御質問にお答えをしたいと思います。
 水道水の水質基準につきましては水道法に基づきまして定められているところでございますけれども、昨今各種の化学物質の使用の拡大に伴いまして、水道水源中からさまざまこれらの物質が検出されるという事例が見られるようになっているという状況でありますとか、あるいはWHO等におきます飲料水水質基準の見直しの動向といったようなものを踏まえまして、昨年十二月に水道水質基準を大幅に見直したところでございます。
 今回の見直しに当たりましては、現行の基準項目に加えまして、今申し上げましたように、水源中あるいは水道水中から検出される可能性のある物質につきまして幅広く、健康影響の知見、各国の基準の設定の状況あるいは検出状況などを総合的に勘案いたしまして、現行の二十六項目から四十六項目というふうに項目を大幅にふやしたところでございますし、またあわせまして、この水質基準を補完する項目といたしまして将来的な汚染動向を把握するための監視項目というものを別途に定めておりますし、さらにはより質の高い水道水の供給目標たる快適水質項目というふうなものも通知レベルでございますが定めたところでございます。
 こうした中で、農薬等につきましては新たに四種類の農薬、具体的には1・3ジクロロプロペン、シマジン、チウラム及びチオペンガルブにつきまして新たに水道水質基準に定めたところでございますが、これ以外の農薬十一種類につきましても監視項目として水道水の将来動向を把握するために定めたところでございます。
 厚生省といたしましては、今後とも水道水質基準あるいはこうした監視項目につきましても監視が十分に行えるような体制の整備に努めまして、汚染動向の把握あるいは新たな知見の収集に努めまして、安全な飲料水の確保に万全を期していく所存でございます。
#10
○稲村稔夫君 環境庁はどのようにとらえておられますか。これは、環境庁の場合は硝酸根だとかあるいは硫酸根の問題などもありますから、肥料も含めてどういうふうに考えておられますか。
#11
○説明員(猪股敏郎君) 近年、多種多様な有害化学物質の使用拡大などに伴いまして、これらによります環境汚染を防止して、人の健康の保護を図ることが重要な課題となってきているというふうに考えているわけでございます。
 環境庁におきましては、こうした観点から、公共用水域の水質環境基準の設定とか、そういった水質の監視を行うというふうなこととともに、農薬の散布による水や農作物を通じました人への健康影響の未然防止を図る観点から、農薬を登録するかどうかの基準、登録保留基準と言っていますが、そういったものの設定などを行っているところでございます。
 水質環境基準につきましては、本年三月に見直しを行いまして、基準項目として農薬を含む十五項目を追加いたしますとともに、新たに要監視項目として先ほど先生から御指摘ございました硝酸性窒素、亜硝酸性窒素とか、そのほか農薬を含め二十五項目について設定したところでございます。また、農薬の登録保留基準につきましては、本年三月に水質環境基準の設定されている水田農薬と連動いたしまして基準の見直しを行いますとともに、四月には水質環境基準が設定されていない水田農薬についても登録保留基準を設定したところでございますが、今後とも順次個別農薬ごとにこうした登録保留基準を設定していきたいというふうに考えております。
#12
○稲村稔夫君 農林水産省も厚生省も環境庁もそれぞれ人間の健康ということを考えて、こうした化学肥料あるいは農薬等についていろいろ監視をしたり規制をしたりということをしていると思うんです。
 そこで、農林水産省に伺いますけれども、農薬取締法がありますが、この農薬取締法というのは当然人の健康に影響を及ぼすことがないようにということを第一義として置いたものでなければこの法律は余り意味がないと思うんですけれども、その辺はどのようにとらえておられますか。
#13
○政府委員(高橋政行君) 当然農薬につきましては、今先生からお話がございましたような安全性ということのほかに、農薬の持ちます薬効といいますか、そういうようなものにつきましても十分審査をして登録を行っている、検査をしているということでございます。
#14
○稲村稔夫君 当然そうだと思うんですね。
 それで、私は本院の予算委員会を傍聴しておりまして、実は田名部大臣の御答弁、私はそこは意図的だったというふうには思いませんけれども、御答弁の中で極めて気になることがございました。それは、ニュージーランドからのリンゴの輸入に伴っての質疑の中で、害虫と病気の侵入を防ぐというためには万全を期しておるというお立場の答えがありました。万全かどうかはこれまた議論が今後もあるわけでありますけれども、しかしそのときにたしか衛生上の問題というか、そういう人間の健康とのかかわりというのとはまた別の問題ですというふうに言われたので、私はちょっとひっかかっているんですよ。
 外国から入るものであっても、農薬というものについて我が国の農薬取締法の精神にのっとっていけば、まず人間の健康ということを大事にしなきゃならないんです。そこがまず第一の重要な出発点の一つであれば、そうすればリンゴの病気、リンゴの害虫を防ぐということだけが第一義ではないでしょう。別問題というふうにはいかない、これは必ず組み合わさった問題というふうに理解しなきゃならないんだけれども、その辺は誤解を与える御答弁だったんではないかと思うんだけれども、誤解なのか本心なのかというところはやっぱりはっきりさせていただかなきゃいかぬ。
#15
○国務大臣(田名部匡省君) リンゴの問題のときはコドリンガと火傷病のことが、我が省としてどういうふうにこれを検査するかということでありました。ただ、日本で使われていない農薬を使っているのではないかというお話がありましたので、それは厚生省の食品安全の方で、そこでひっかかるものは入れるわけにいかないんだろうと私は思いますが、いずれにしても安全でないという確認があれば、人体に大きな影響を与えるというものについては輸入できないわけでありますから、そういうことで私は厚生省側のことと農水省側のことと分けて発言いたしたものですから、あるいは誤解を受けたかもしれません。
 しかし、いずれにしても人間に安全でないものは受け入れるということは考えておりません。
#16
○稲村稔夫君 人間に安全でないものは受け入れない、そのことだけは明確に御答弁いただきましたので、ぜひ守っていただきたいというふうに思います。
 そこで、時間の関係もありますので少し私は農薬行政についての具体的なことについて入らせていただきたいと思います。
 特に、農薬といっても非常に幅広くいっぱいありますから、いろんなことを取り上げていたらとてもやっていられませんから、きょうはCNPを中心にいたしまして伺うということにさせていただきたいと思います。
 まず、農薬として登録する際の試験、実験データの公開について伺いたいのであります。
 私が要求をいたしましたところが、農薬登録の際の毒性試験と残留性試験データは公表できない、こういうお話でありますが、なぜ公表できないのですか。今、公表したからといってメーカーに特段の差別的な不都合を与えるというふうには思いませんけれども、その辺はなぜか、明らかにしていただきたい。
#17
○政府委員(高橋政行君) 農薬登録の際には、今、先生がおっしゃいましたように、毒性とかあるいは残留性試験であるとかそういったようなデータを添付いたしまして登録の申請を行うわけでございます。それで、このときに出されましたいわゆる試験成績のデータを公表してもいいのかどうかということにつきましては従来いろいろな御議論がございました。
 確かに、今先生がおっしゃいますように、そういうものを別に公表してもいいじゃないかというような議論もあったわけでございます。現在我々の方といたしましては、従来からこういったデータにつきましては基本的に登録申請者に属するものであるのではないか、したがって国が従来から公開をしないということにしておるわけでございまして、しかし、それだけではどうも十分ではないんじゃないかということで、農薬の毒性試験等の主要な知見につきましては登録取得後速やかに公表をしていただくように、我々といたしましては登録申請者を指導して公表をさせるようにしておるということでございます。
#18
○稲村稔夫君 まあ、そうお答えになるだろうと思ったんですが、問題点が幾つかあります。
 最後の方から言いましょう。登録後速やかにということでありましたが、登録後速やかにと言うけれども、昭和四十五年に現在の農薬取締法が改正になっていますね。そして現在のような仕組みになった。そのとき既にもうMOは登録されていたわけでしょう、CNPは登録されていたわけですね。昭和三十九年か四十年か、そのころに登録をされているはずでありますから、そこで再登録になっているんだろうと思います。ところが、概要がこの「農薬時報」に発表されたのは平成三年七月ですよ。四十五年に法律が改正をされて、あなた方の方はそれから指導したとして、平成三年、これが速やかですか。
#19
○政府委員(高橋政行君) ただいま先生がおっしゃるように、確かに事実関係としては今のようなことでございます。
 それで、我々いわゆる試験データの公表につきましてどうするかということでいろいろ議論をいたしまして、実は先ほど申し上げましたように、その主要な知見について登録後公表するようにというようなことでの指導を始めましたのが昭和六十年の一月からでございまして、その指導に基づいて、その後、今申し上げましたような公表に及んだということでございまして、確かに以前につきましてはそういうような指導も十分でなかったということでございました。
#20
○稲村稔夫君 指導が十分でなかった。それじゃ、今後速やかにということは、常識的に考えて速やかにと思われるような時期に明確にするということにならなければ、今の局長の答弁はうそをついたことになりますからね。
 そこで、今度は厚生省にちょっと伺いたいんですが、厚生省は、例えば水道水のための基準であるとか監視項目とかというのを決められますと、そうすると、これについて例えばADIを知りたい、それでADIの根拠となったデータを知りたい、こういうときに見せてくれと言ったら見せますか公表しておられますか。
#21
○説明員(浜田康敬君) 先生御指摘のとおり、私ども、先ほど申し上げましたような水道水に関する水質基準を設定いたします際に、今回につきましては、生活環境審議会の水道部会に水質専門委員会というところがございますが、そこの先生方にさまざまな観点からのデータを提供いたしまして、御検討いただいた上で基準を設定していただいているわけでございます。その際、農薬につきましては、農薬取締法に基づきます評価の際のデータというものを農水省からできるだけいただき、それを提供しておりますけれども、それにつきましては、具体的なデータにつきましては農水省から提供いただいたということもありまして……
#22
○稲村稔夫君 いや、一般的なもの、農水省のことだけじゃないんですよ。農薬だけじゃない。
#23
○説明員(浜田康敬君) 一般的には、そういうデータにつきましては、検討の概要という形で公表はしておりますけれども、個々の具体のデータにつきましては、そうした事情もございまして、必ずしも明らかにしておりませんけれども、検討に使いました材料あるいは研究論文といったものは公表をしております。
#24
○稲村稔夫君 環境庁は、登録保留基準などを決められたときは、そういう資料というのは公開をしておりますか。
#25
○説明員(猪股敏郎君) 環境庁の方では、農薬の登録保留基準を設定いたしておるわけでございますが、その際に、そういった毒性データとかいろいろな関連データを農水省の方からいただいて、それをもとにいろいろ中央公害対策審議会の方で審議しております。
 審議が終わったものについて、いろいろ検討に際して用いたデータについては、先ほど言った毒性データなんかについては、先ほど農水省の方からお答えいただいたように、できるだけ雑誌等に公表していただく、そういうふうな指導をされておりますし、そういったことで関係データというものはいろいろ周知されてきているんではないかと思っております。
#26
○稲村稔夫君 農水省、私が事前にいろいろと聞いていた範囲の中でも、厚生省にしても環境庁にしても、農水省関係の農薬関係以外のものについては、大体審査が終わっていればその背景となったデータ等についてはだれでも知ることができる、公表されている、こういうふうに理解できるんですよ。
 それで、農薬関係についてだけは農林水産省に聞いてくれということになるんですよ、みんな。同じ政府の中で、農薬だけ別でやって、ほかの問題と取り扱いが別になるというのはおかしいんじゃありませんか。国民の知る権利という観点からいったって、メーカーに重大な影響を与えるということでもあれば別ですけれども、そうでない限りは原則公表にすべき問題だと思うんですけれども、どうですか。
#27
○政府委員(高橋政行君) この公表の点につきましては、今確かに先生からお話がございましたような観点からの御意見も当然あるわけでございますし、また、この試験データそのものが登録申請者がみずからいろいろお願いしてつくったという種類のものであるということで、その登録申請者に属するということとの、どういうふうにそこの兼ね合いを持たせるかということで、我々としてはいろいろ検討した結果、主要な知見について、登録後、学会であるとかあるいは学術雑誌であるとか、そういうものを通じて公表していただくということで、そこのところを両方の調和を図ったということでひとつ御理解をお願いしたいと思います。
#28
○稲村稔夫君 概要という話がありましたが、そうしたら概要ということですべてがわかりますか。わからないことも結構あるんですよ。ですから、当然その背景となるデータというものは私は公表されるべきである、こう思っておりますので、この主張はもう変えることはできませんね、私の方も。
 国民が知る権利を持っているんですから、その知る権利を拒否をする正当な理由は政府の方に今ないですよ。そのことを一つ明確に申し上げておきたいと思います。
 そこで、次に厚生省に伺いたいんですけれども、水道水のための監視項目が設定をされました。十二月から実施ということになりますね。この監視項目の中にCNPがあります。それぞれの化学薬品についても伺いたいところがありますけれども、もう時間がありませんからCNPだけ聞きます。
 CNPがこの監視項目に入れられたというのはなぜかという点。そしてその監視項目に指針値というのがありますね。この指針値というのは〇・〇〇五ミリグラム、リッター当たりですね、というのがありますけれども、この数値はどのようにして算出をされたのかということについてお伺いしたいんです。
#29
○説明員(浜田康敬君) 先生今お話しのCNPにつきまして、先ほど申し上げましたように水道水質基準の検討の際に、生活環境審議会の専門委員会におきましてるる検討いただきまして、我が国の生産・使用量、それから河川等での検出実態から総合的に勘案いたしまして、指針値に比べて現在の検出状況が低いレベルではございますので、水質基準とする必要はないという判断ではございましたけれども、将来的に検出レベルが変動する懸念もあるということから、安全性を期する見地から今後全国的にモニタリングを行う必要がある項目として監視項目に定められたものでございます。
 その指針値が〇・〇〇五ミリグラム・パーリッターということに定められた根拠でございますけれども、同じく水質専門委員会におきまして農薬取締法に基づきます評価をもとに御検討いただき、水道水として生涯連続的な摂取をいたしましても人の健康に影響が生じない水準ということで、安全性を十分考慮して設定された値でございます。
#30
○稲村稔夫君 そういたしますと、これはADI、つまり人間の一日摂取量が背景になって決められていると思うんですけれども、そうするとCNPのADIは幾らと計算をしておられたわけですか。
#31
○説明員(浜田康敬君) 御指摘のとおり、ADIをもとに水道水としての指針値を定めたものでございますが、その際のADIといたしましては〇・〇〇二ミリグラム・パー体重キログラム・パーデー、一日当たり体重キログラム当たり〇・〇〇二ミリグラムという数字を用いて検討されております。
#32
○稲村稔夫君 そこであと厚生省は突っかえちゃうんですよ、事前に私がいろいろと伺った範囲でも。というのは、じゃ、ADIという〇・〇〇二ミリグラムというやつを算出した根拠はどうなるんだというと、それは農薬取締法に基づいて農林水産省からもらったデータで、それをもとにしてやるんですということになるから、結局ADIの根拠になるものは全部農林水産省にある、こういうことになるんですね。
 そうすると、ADIというのは、要するに人間の健康に本当に直接影響を持つからこそ設定をされているものなんですけれども、その算出根拠も明らかにされないというんじゃ、これもまた一つ問題だと思うんですよ。その観点からも、登録の際の毒性とか残留試験データというのは公開されるのが当然だというふうに思うんですけれども、この辺はどうですか。
#33
○政府委員(高橋政行君) 今おっしゃった農薬というのは、当然国民の安全性に関係するという立場で公表というものをしていくべきではないかという主張があることは私も当然なことだというふうに思っております。
 それで、先ほど申しましたように、それをつくったといいますか、作成したといいますか、登録申請者の立場というのがございまして、我々はこの辺を本当にどういうふうに考えていくかということを今後考えていかなきゃいけないと思っております。
 現在、国でも情報公開をいかにしていくか、情報公開法といいますか、そういうようなものをどんなふうにしていくかというようなことも検討されておるわけでございまして、我々としては、そういう中でこの問題も今後検討していきたいというふうに思っております。
#34
○稲村稔夫君 今のADIが幾らになっているかということ、これをもとにして、例えば水道水の安全基準あるいは指針というようなものが決まってくる。そのADIの根拠になるのは、それは毒性試験であるとか残留試験である。そうすると今度は、私は厚生省にもう一度念押しで恐縮なんですけれども、この「農薬時報」に発表されているこの程度のことでADIの算出というのは自信を持って算出できるんでしょうかその辺はどうですか。
#35
○説明員(牧野利孝君) ADI、一日摂取許容量でございますけれども、その算定に当たりましては、通常は長期の動物実験を用いまして、何ら作用を及ぼさない量が動物実験でございます。その求められました量に安全係数を乗じまして求めるものでございまして、今先生がお示しのその文献に、長期動物実験の動物への投与量が記載してあって、例えば低容量、中容量、高容量のどのレベルにどのような症状が出たかという記載があれば、そのレポートからはADIの算出は可能でございます。
 ただ、そのほかの特殊毒性等につきましては、ちょっと背景を承知していませんのでわかりかねますけれども、少なくとも長期毒性に関して言えば、通常は長期の動物実験を行いまして、何ら作用を及ぼさないレベルを求めまして、そのレベルに安全係数を乗じて求めるのがADIでございます。
#36
○稲村稔夫君 そういたしますと、長期というのは大体期間をどのくらい見るんですか。例えば、ラット、マウス、犬、ウサギ、いろいろあります
ね。その動物によって違いがあると思うんですが、例えばマウス、ラット、犬くらいのところではどのくらいずつ見るんですか。
#37
○説明員(牧野利孝君) 通常の動物実験はネズミあるいは犬で行うわけでございますけれども、ネズミの場合には生涯にわたります実験をされますので二年程度、犬はデータによってばらばらでございますけれども、一年のものもございますけれども二年以上のものが多いかと思っております。犬はもう少し寿命が長いものでございますので、ネズミと違いまして生涯というわけではございません。
#38
○稲村稔夫君 そこで、私が申し上げたいのは、ちょっとしつこいようで恐縮ですが、概要は発表になるけれども、その概要でもって本当に正確にいろいろな情報を知って計算ができるものとは限らぬということが一つは大きな問題であろうと思うんですよ。そういう観点からいってもきちんと公表すべきであるというふうに思います。幾ら僕がこう言ったって、また概要でもってなんて言って、またいろいろと工夫をして考えてみますという答弁しか返ってこないんだろうと思うから、これ以上はもう聞きませんけれどもね。
 次へ進みますが、我が国で設定をしておりますADI、それと発がん姓ともかかわった残留基準について少し伺っておきたいと思います。
 例えば、アメリカにデラニー条項というのがありますね。このデラニー条項というのはどういう条項でしょうか。まず、農林水産省はこれはどういうふうに理解していますか。
#39
○政府委員(高橋政行君) デラニー条項というのは、アメリカの連邦食品・医療品・化粧品法、我々はFFDCAと言っておりますが、それの四百九条におきまして、どのような動物試験においても発がん性が認められる物質は、食品中に残留してはならないというふうに規定されているものでございます。したがいまして、実験動物にのみ発がん性が認められる物質でございましても、同条項によれば使用は不可能であるというものというふうに思っております。
 たまたま我が国の法律ではこういったデラニー条項に相当するような条項がございませんので、各種の毒性試験データに対する総合的な判断に基づきまして、人間への発がんの危険性がないものにつきましては、先ほど来いろいろお話がございます厚生省で定めるADIに照らしまして、農薬の登録をしていいのかどうかということを検査し、登録をしているということでございます。
#40
○稲村稔夫君 農林水産省の理解はそういうことである。そうなんですね。要するに、発がん性のあるものというのは動物実験でそれがわかったらもう使ってはいけない、一口に言ってしまえばそういうことになるんだと思うんですよ。
 それで、我が国の残留基準というのは、これはどうやって算出されているんですか。
#41
○説明員(牧野利孝君) 食品中に残留する農薬の許容基準、いわゆる残留農薬基準の設定に際しましての発がん性の問題の取り扱いでございます。残留農薬基準を設定する際の食品衛生調査会におきます農薬の安全性評価に際しましては、当然ながら発がん性などに関する資料も含めて検討されております。仮に、食品衛生調査会におきます評価の結果、その農薬の人における発がん性が問題になれば、残留農薬基準もそれに対応した厳しい基準値が設定されることになります。
 例示させていただければ、平成四年十月に告示いたしました農薬ダミノジッドにつきましては、その基準値はNDのディレクトでございまして、検出してはならないとされてございまして、また今月食品衛生調査会より御答申いただきました農薬アミトロールも同様にND、検出してはならないとされております。
#42
○稲村稔夫君 そうすると、例えばペルメドリンだとかBHCとかDDTというようなものについては、ADIの残留値、これはあるんですかないんですか。そのすべてを答えてくれなくたっていいんですよ。
#43
○説明員(牧野利孝君) ペルメドリンにつきましては平成四年十月に告示をしてございますので、残留基準値はございます。
#44
○稲村稔夫君 そうすると、どうして発がん性が同じ相手であっても、片方では検出してはならないし、片方では基準値というのがあって一定程度まではいいということになるんですか。発がん性物質というのにはそういう閾値というのがどこかにあるんですか。
#45
○説明員(牧野利孝君) ただいま申し上げましたペルメドリンにつきましても、先ほど御紹介いたしましたダミノジッド、アミトロール同様、食品衛生調査会におきまして御審議を願っております。
 その結果、ペルメドリンにつきましては、発がん性については人に対する問題はないということで残留基準値が設定されたわけでございまして、逆にダミノジッド、アミトロールにつきましては、食品衛生調査会の審議の結果、問題ありということで基準値はNDというふうになったわけでございます。したがいまして、食品衛生調査会での審議の結果、基準値を置くものは置く、NDにするものはするという、そういう状況になってございます。
#46
○稲村稔夫君 そうすると、発がん性物質というものの場合は閾値というのはあるんですかないんですか。
#47
○説明員(牧野利孝君) 現在、先ほど御紹介いたしました残留農薬基準を食品衛生調査会で順次策定をしているわけでございますけれども、そこでの審議におきましては、人における発がん性が問題になればその基準値は厳しい基準ということでND、検出してはならないという基準になろうかと思います。
#48
○稲村稔夫君 そうですね。発がん性物質については僕はわかればNDとなるのが当然だというふうに思うのであります。
 そこで、CNPの発がん性について伺いたいと思います。
 先ほど登録時のデータは全部だめだけれども、概要は発表になっていると。ちょっと確認ですけれども、これは、平成三年七月十五日発行の「農薬時報」の別冊、三井東圧化学が発表したその論文のことですね。
#49
○政府委員(高橋政行君) そのとおりでございます。
#50
○稲村稔夫君 毒性試験と残留性試験については、これ以外に登録時に出されたものはあるんですかないんですか、これがそのとおりですか。
#51
○政府委員(高橋政行君) CNPに関しましては、今先生がおっしゃいました「農薬時報」の別冊に掲載されているものでございます。
#52
○稲村稔夫君 そういたしますと、ちょっとあなたの部下のことについて伺って恐縮なんですけれども、先日行われた本院の地行委員会で大渕議員からいろいろとCNPについて質問がされております。その質問にお答えをいただいている中でちょっと幾つか私が不審な点がありますので、その点をお聞きしたいと思います。
 まず第一は、CNPのアミノ体について、「CNPアミノ体はマウスを用いた慢性毒性試験におきましても発がん性は認められておりません。」と、こう答弁になっているんですが、私は今まで学会誌などでもいろいろと調べてみてもらいましたけれども、CNPアミノ体での発がん性・毒性試験というのは見当たらないんですけれども、あるんだったら私はいただきたいと思うんですが、いかがですか。
#53
○政府委員(高橋政行君) ただいまの本年四月八日の参議院の地行委におきまして、農水省側からCNPアミノ体のマウスを用いた慢性毒性試験で発がん性がないという答弁をしたわけでございますが、このCNPアミノ体の発がん性につきましては、登録申請時に参考として提出されておりますCNPアミノ体のマウスの慢性毒性と発がん性試験に基づきまして、発がん性がないというふうに答弁をしたものでございます。
#54
○稲村稔夫君 そうすると、そのアミノ体、大事なところですよ、CNPそのものについての試験は、これはこれで発表になっていますね。だけれども、概要報告を出すと言って、そしてその概要の中ではCNPのアミノ体についてはないわけですよ、試験結果は。発がん性試験についてないわけです。
 そうすると、それは登録時の参考として出されているというんであれば、これは非常に大事なことですよね。当然概要でも参考か何かでそういうものを載せられなかったらおかしいんじゃないですか。その辺はどう考えますか。
#55
○政府委員(高橋政行君) 確かに、CNPアミノ体につきましては、土壌中あるいは動物の生体内におきましてCNPが化学的変化あるいは代謝によって生ずるというふうに言われておるわけでございます。
 それで、このCNPアミノ体につきましては、それが生体内で生成されていくわけですから、そのもとになるCNPをマウスとかあるいはラットに投与いたしました試験において発がん性が認められていない。これは先生が先ほどからお話しになりました雑誌に掲載されているところでございます。
 したがって、我々は、CNPアミノ体が動物に与える毒性的な影響については、CNPを使用した毒性試験において既に評価されているんじゃないかというふうにまず一つ考えだということが一つございます。
 それからもう一つは、さはさりながら、CNPアミノ体そのものですね、それの発がん性ということにつきましても参考までに発がん性試験が行われておるということでございまして、確かにその点についての試験データについての公表といいますか概要は今先生お話しの雑誌には掲載されておらないということは事実でございます。
#56
○稲村稔夫君 CNPそのものでやっている試験というのとアミノ体というのを分けて私が伺っているのは、一つはアミノ体という形での及ぼす影響というのは別にあり得るということも考えられるからそういうことで聞いているわけでありまして、そうすると非常に大事な問題だから当然出さなければならないというふうに思うわけです。
 そこで、要求をするわけでありますが、そうすると参考で出された資料というのを私にいただけますか。
#57
○政府委員(高橋政行君) その資料につきましては、非常に膨大なものでございますが、申請者の承諾も得まして、その概要についてお示しすることはできると思います。
#58
○稲村稔夫君 膨大だ膨大だと言うけれども、膨大なものであっても見せてもらわなきゃ困りますよ、これは。概要といっても、概要がいかに信用できないかとこれから聞きますから。
 ここで、犬について動物実験をアメリカでしてもらったということを答弁していますね、この地行委員会で。この犬についてというのは今の発表された論文の中にありますよ。この犬の試験というのは、さっき厚生省に私は伺いましたが、普通の試験でいつでも長期の試験というのは、発がん性試験ですよ、それはマウスだとか何かでも二年ぐらい、犬でもまあ一年とか二年とかと、二年ぐらいかなというような感じのちょっと御答弁だったですね。これ二十六週間しかやっていないんですよ。マウスとラットは二十四カ月やっているんですよ。二十六週間で、何でこれが発がん性試験なんですか。まず第一、これに答えてください。
#59
○政府委員(高橋政行君) 実は、犬を用いた慢性毒性試験でございますが、これにつきましては、恐らく先生がおっしゃいましたのは米国のインダストリアルバイオテスト研究所というのが行った試験データだというふうに思います。これにつきましては、確かに先生がおっしゃったような期間で行われております。
 それで、この点につきましては、我々といたしましては、別途ラットとマウスを用いた慢性毒性と発がん性試験が行われておりますので、その結果を踏まえて評価もなされておるというふうに理解しております。
#60
○稲村稔夫君 ラットとマウスを使ってということもあれですけれども、それじゃ何であわせて犬のことまで答弁するんですか。
 そして、もう時間がないから私の方で一方的に言いますけれども、このインダストリアルバイオテストという研究所はどんな研究所ですか。私が子供のころ、映画でもって切られた配役がよそへ行って、また別の場所だとか別の人に同じ映画の中でまた切られるというシーンをよく見ましたよ。ここで実験に使っているビーグル犬が死んだはずなのにまた実験に使われている、こういうことが発覚をして大問題になって、摘発されて、そしてここは今倒産でしょう。こんなところのテストを信用するんですか。
 そして、こういうものが出されてきたのに対して、調査をきちんとしたんですか。あなた方の方がきちんと調査をしていれば今のような答弁は返ってこないはずですよ。こんなインチキなデータ、捏造で有名になっちゃったんですから。二万何千件のうち一万五千件もデータを捏造していたということがわかったんでしょう。アメリカでそう発表されているんですよ。こんなところに委託した論文が出ているのに、あなた方の方は調査をしていないんですか、これ。調査をしていたら私は今のような答弁は起こってこない、こう思うんです。
 そこで、私は新農政に絡んでいろいろと伺う中で、これから農薬だとか化学肥料がさらにたくさん利用されるようになるであろう、新農政の方向性からいけば。そのことについて僕らは問題があると思いますけれども、これはまた議論しましょう。だが、そういう体制の中にありながら、今のようなていたらくのまま農薬の使用がふえていったといったときに、一体健康のことはどれだけ保障できるんですか。
 私は、新農政を展開していくという大きな希望を持つのだったらば、大臣、今私は一つの側面から光を当てて質疑をいたしましたが、こうした観点、命という問題は非常に大きな問題で、大事な問題ですよ。このことをきちんと踏まえて、農薬行政もしっかりとやっていただけるようなこれから構えをしていただかなければ、安心して国内の農畜産物を我々は買うことはできないじゃないですか。
 私の出身地の新潟県は今、CNPの汚染で胆道がんと胆のうがんの因果関係があるという疫学的な権威ある学者の検査結果が発表されて、「アエラ」などの雑誌に出て、大変ショックを受けているんです。だから、僕はきょうはCNPを中心にしていろいろと伺いました。たった一つの農薬についてだけ伺っても今のこのていたらくなんですよ。しっかりしてもらわなきゃならないと思うんです。この辺大臣のお考えを伺って、私は終わりたいと思います。時間がなくなりました。
#61
○国務大臣(田名部匡省君) かねてから私がこの席でもお答えしておるとおり、目に見えないというものは本当に何を信頼するか、国民はわかりません。空気でも水でも食料でも安全なのかどうかという信頼をどこに置くか、やっぱり科学的に専門家の方々がしっかり対応してもらわぬと、素人が幾ら不安を感じてもその解決にはならないということを考えて、おっしゃるとおり私どもも国民の健康上の安全の観点ということは十分過ぎるほどやっていいんだと思うんです。
 ただ、残念ながら、今申し上げたとおり、信頼されるに足る人たちが間違いを起こしてもらっては、我々では解明できないわけでありますから、その体制というものはしっかりしていただくということが大事なことであります。新農政においても、最近、消費者の適切な選択ができるように、特に表示の問題でJAS法、こうしたものを大いに活用して、農家の皆さんも農薬をできるだけ使わない、あるいは全然使わないでやるというものが消費者に認められるということによって何とかいい方向に誘導していきたいというふうに考えて、改正等についても御提案申し上げているとおりでありまして、何とか私どもも今お話しのような方向に進めていきたいという考え方がありまし
て、これからも最大の努力をしてまいりたいというふうに考えております。
#62
○菅野久光君 私は、まず最初にニュージーランド産リンゴの輸入解禁問題について申し上げたいというふうに思います。
 我が党の三上委員が本委員会において数度にわたってこの問題について質問をいたしました。我が党は、火傷病、コドリンガについて完全撲滅していない現状のもとでの輸入解禁は大きな問題があるということで、それぞれの議員に反対署名を求めたところ、五月十日現在で、参議院においては百三十六名の方の賛成署名を得ました。したがって、この百三十六名の方々の意思をあらわすべく、ニュージーランド産リンゴ輸入解禁反対に関する決議を本委員会で採択すべく各会派に同調を求めてまいりました。野党各派の皆さん方はこれに賛成をしていただいたわけでありますが、自由民主党はこれに同調できないとのことであります。
 本委員会においては、野党の皆さん全員が賛成であるということで、委員会自体では野党が多数を占めております。署名も現在の段階で参議院議員総数の五四%を占めております。まだ出されていない、ぼつぼつという方もございますから、さらにこれがふえるのではないかというふうに思います。しかし、決議等の取り扱いについては、従来から全会一致を原則とするという議院運営の立場から、採決までには残念ながら至らなかったわけでありますが、委員会においても、また参議院の構成議員総数の状況からいっても議員の多数が反対だということは明らかであります。
 お聞きいたしますと、ニュージーランドの首相があす、あさってあたりですか、何か日本に来られるというお話も聞いておりますが、政府は、決議はできなかったけれども、議員多数の意思がそこにあるという状況をしっかり踏まえて今後対応するようにまず強く求めておきます。これについては答弁は要りません。
 それから、新政策に入る前に、当面の問題として漁業の問題でございますが、私も本委員会でも漁業の問題で一番先に取り上げたのは韓国漁船の問題でございます。早くに二百海里をやれということを私もこの委員会で主張してまいりましたが、韓国との間には竹島の領有権問題などがあってなかなか適用しがたいということで、今日まで残念ながら韓国については二百海里の規制を適用しておりません。
 そのためにさまざまな問題が起こっております。漁具被害の問題だとか、それから資源管理の問題で、我が国で資源を守るために休漁期間を設定してやっている。しかし、我が国の漁民は休漁期間を守っているんだけれども、そこに韓国漁船が入ってきて、目の前でとられてしまう。もう本当にどんなに悔しい思いをしているかわからないわけでありますが、なかなか二百海里規制ということがいかない。日韓漁業協定の中でいろんなことを取り決めても、なかなかその取り決めが守られないということでありますので、北海道の漁民の人たちとしては、二百海里の水域をなかなかやれないということであれば、暫定措置として資源管理水域を設けてもらえないか、ぜひ設けてほしい、それが切実な願いでございます。
 そのことがなければ、資源の保護だとか管理、これができなくなってしまうということでございまして、北海道の漁民団体の人たちとしては沿岸五十海里程度を想定しておりまして、この五十海里以内の漁業については国内規制の遵守だとか、あるいは自然保護を前提に操業条件を日韓両国で協議をする、取り締まり権は日本側が持つ、規制を徹底させる。竹島問題の竹島周辺は、資源管理水域の設定を見送るなどとして領土問題への波及を避けて、我が国の資源管理をしっかりできるような、そういうことのために何とか資源管理水域の設定を求めたいという希望が非常に強いわけでございますが、この点についてぜひ我が国政府としても韓国との間でこの問題を取り上げて、早期設定をするようにここではっきりしたひとつ答弁をいただきたい、このように思います。
#63
○政府委員(川合淳二君) 韓国との間の漁業問題につきましては、先生からお話がございましたような経過があるわけでございまして、私どもも今両国間で結ばれております自主規制は昨年三月に結ばれたものでございますが、その間に至りますまでの経過の中で、今おっしゃられましたような共通の管理水域と申しますか、そういうものについての話し合いの歴史もあるわけでございます。今、先生いろいろお触れになりましたので、その辺は省略させていただきますけれども、次回のこの自主規制についての改定問題につきましては、年が明けて実際的に協議が始まるというようなスケジュールになっているところでございます。
 私どもは、民間団体が命お触れになりました共通の管理水域、あるいは資源管理水域と言ったらよろしゅうございましょうか、それについてのある種の提案を持ちまして既に話し合いに入っていることも承知しております。この考え方は、先生まさにおっしゃられたとおりでございますが、ただ、その前提となります日韓漁業協定につきまして、これの改定を必要とするものでございます。
 それは、今、旗国主義という形で取り締まり権をそれぞれの国が持っておりますけれども、この共通水域については、今の民間での案によりますと、それぞれの沿岸国が持つということでございますので、そこには今の漁業協定を改定しなければいけない点があろうかと思います。そんなこともございまして、私どもはまず両国間で、日韓の間の海というのは共通の資源水域であるという、そういう認識を持つということが非常に大事だと思っております。
 既に御承知のように、ことしに入りましても何度か実務者あるいは担当者の協議をやっておりますが、その中でまず私どもは、共通の水域で資源は共通に守らなければいけないという、そういう共通の考え方を醸成すべく努力しております。民間で先生がおっしゃいましたような考え方がかなり積極的に出されてきておりますので、そうした状況を私どもも踏まえまして次回の見直しに対応してまいりたいと思っております。
 その前段階として、これからも私と向こうの庁長との会議なども今後持たれることとなると思いますので、そうした地ならしと申しますか、そういう環境づくりに努めてまいりたいと思っております。
#64
○菅野久光君 議題として取り上げるということを確約していただけませんか。
#65
○政府委員(川合淳二君) 両国の間の次回についてのスケジュールがございますので、今のところそういう形を持っていくのはちょっと時期尚早かと思います。
 そのためには、両国の間の共通の考え方というのをまずつくっていくということが非常に大事ではないかという、そういう段階だと思っておりますので、先生のような御指摘は十分私どもも踏まえておりますけれども、今の段階ではそういうことで対応させていただきたいと思っております。
#66
○菅野久光君 今の段階ではこれを直ちに議題にするということは困難だということは、従来からの協議の経過があるから、それはそれでいいんですが、近い将来にこのことを議題とする。要は、我が国に取り締まり権がない、いわゆる旗国主義ですね、ここにやっぱり大きな問題があるわけなんですよ。ですから、二百海里をせめてささやかに五十海里ぐらいの資源管理水域、これをやらなければ、一体日本の漁業外交、とにかく遠洋は全然もうだめになってしまうわけでありますから、やっぱり前浜の資源をしっかりやるということがこれからの日本の水産行政にとっては本当に大変な大事なことだというふうに思うんですよ。
 そういう意味では、そういう環境をつくりながら、近い将来に資源管理水域の問題について日韓間の議題にのせてやりたいとか、そういう意思というか意欲というか、そういうものをはっきりしてもらわなければ、漁民の人たちは何だ一体と、こういうことになるんじゃないでしょうか。その辺はどうですか。
#67
○政府委員(川合淳二君) この問題は今の日韓の漁業協定の改定を含む問題でございます。したがいまして、これに対する取り組みにつきましては、従来の経緯から申しまして、今民間で考えられているような問題を持ち出すことが果たして今後の進め方として、戦略的に言ってよろしいかどうかというところから考えなければいけない問題ではないかと思います。従来の経緯から申しまして、現在の協定を見直していくということにはなかなか困難を伴うと思いますので、今後の外交上の進め方、これは作戦を含めまして十分考えていかなければいけない難しい問題も含んでおります。
 私は、今の考え方は決して否定しているわけではございませんし、一つの考え方として非常に重視すべきだと思っておりますけれども、もう少し戦略的に考えていく必要があると思いますので、そうしたことを十分検討の上、どういう手順でやっていくかということについて私どもも考えて対応していきたいということを申し上げているところでございます。
#68
○菅野久光君 この問題ばかりやっているわけにいきませんが、長官の口からは将来的に議題として云々ということは言えないけれども、戦略的に考えてということは、そういうことを実現させるために周辺の環境をつくっていくということが今の政府の置かれている立場だということで私は理解をしておきます。長官の口からはなかなか言えないことだろうと思いますが、少なくとも漁民の人たちはやっぱり二百海里の問題を含めて日本の外交の問題について非常に不信感を持っているわけですよね。その不信感を払拭するためにもぜひここのところは頑張ってもらいたいということを強く要請しておきます。
 じゃ、本論の方に入らせていただきます。
 農林水産省は、昨年の六月に「新しい食料・農業・農村政策の方向」、いわゆる新政策を公表いたしました。さらに、本年の一月にはそれを一歩具体化する形で農政審が中間報告を取りまとめて公表いたしました。それによりますと、我が国の今後の農業の基本理念として市場原理、効率主義を強調しております。こうしたことからマスコミの論調は、今後の農政は米市場の開放も視野に入れた方策がとられるのではないかというふうに論じておりますが、この点について、まさかそんなことはないと思いますが、大臣のお考えを承りたいと思います。
#69
○国務大臣(田名部匡省君) 結論から申し上げると、全くそんな考え方はございません。
 そのことの前に、日本の農業・農村をめぐる状況の変化というものをどうとらえるか。このままで推移しますと大変な状況になっていくと思うんですね。そういうことで、特に農村をずっと私も今も回りますけれども、新規就農者が減少しておる、あるいは高齢化がどんどん進んでおる。きのう、おとといも滋賀県、京都をずっと回ってきましたが、放棄地があちらこちら大分多いんですね。そういうことを考えたときに、一体どうやって農業構造の実現でありますとか農村の活性化、そういうものを進めていかなきゃならぬかということが先に立ちまして、米が入ってくる入ってこないという議論の前に、日本の農業もしっかりしようということでやっておるわけであります。
 まあ、マスコミの皆さん方はそのためにとかなんとか言う人もおりますけれども、決してそんな考え方でやっているわけではなくて、二十一世紀の次の世代の若い人たちが本当に農業というものをやっていけるんだろうかという心配の余り一生懸命取り組んでいきたいということでやっておるわけであります。
 ウルグアイ・ラウンドの方は、もう再三申し上げておりますように、国会決議を体して国内産で自給するという従来の基本方針にのっとって今後とも対処してまいりたいというふうに考えております。
#70
○菅野久光君 従来の考え方が変わっているものではないということで、そのことは大変大事なことだと思いますが、実は経団連で「二十一世紀に向けての農業政策のあり方」を昨年三月二十四日に出しましたね。その中で非常に気になる言葉があるんですよ。それは「その後の農業・農政は、概ねわれわれの主張する改革方向に歩みつつあるとはいえ、その進捗のスピードは十分なものとはいえない。」と書いてあるんですね。
 我々は、米などの自由化の問題を含めて農業に対する経団連の考え方というものは反農業というふうに、極端に言えばそういうふうに思わざるを得ないような面が多々ありました。この経団連が非常に評価をしているんですね、「概ねわれわれの主張する改革方向に歩みつつある」と。人間、褒められて嫌な気持ちになる人はいないと思うんですが、経団連からこのような評価を受けていることについて、農林水産省当局としてはどのようにお考えでしょうか。
#71
○政府委員(上野博史君) なかなかお答えが難しい感じがするわけでございますけれども、確かに農産物の国境措置についての物の考え方、こういうものについてはかなり経団連との考え方に差があるということは委員の皆様方にもおわかりのことだというふうに思うわけでございまして、私どもの考え方というのは今大臣がはっきり申し上げたものであるということでございます。
 ただ、国内的な政策体系ということになりますと、与えられている問題、これは認識はそう違わないところがあるんじゃないかというふうに思うわけでございまして、そういう国内的な農業をめぐる非常に厳しい環境に対する対応の問題として経団連においても似たような考え方をとっているということはあり得るんではないかというふうに思うわけでございます。
 先ほど大臣が申し上げましたように、我々がそういう政策をとるから、それが即対外的なことを頭に入れたものであるというような話は決してないということを改めて申し上げたいと思います。
#72
○菅野久光君 貿易立国とかなんとかということで、経団連はそちらの方にウエートを大きく持っているわけですね。
 そういう意味で、私どももこの委員会でも何回か論議をいたしましたけれども、そういう工業製品の輸出の見返りのような形で農産物の輸入ということが外圧として来ている。「農業を工業の犠牲にするな」という言葉が農民の間で非常に強いわけですし、私どももそういう側面を大きく持っているということを考えざるを得ないので、そんなときに経団連がそういう「概ねわれわれの主張する改革方向」などということで評価をされるような農政は、一体農政全体の三〇%が評価されているのか、五〇%なのか八〇%なのか、その辺はちょっとわかりませんけれども、何かこれだけ聞くと、今の農林水産省が進めている農業政策というものはどうも経団連の考え方に即した方向でいっているのではないかという危惧を持たざるを得ない。これは農民の方たちの率直な気持ちでありますので、決してそうじゃないというんであれば、そういうことで今後ぜひ進めてもらいたいというふうに思います。
 今度の「新しい食料・農業・農村政策の方向」の冊子を見ていて、私どもが常に主張していることをきっちり把握している、大変いい部分があるんですね。そこのところは私ども高く評価をしたいと思います。特に、「我が国の食料自給率と世界の食料需給」の中で言われていることの中で評価できることがあるんですが、評価できることの反面、なぜここまで言っているのにこういうことが言えないのかという問題があるわけです。
 それは、世界全体の食料需給を考えると今後不安定にならざるを得ない。そういうことを前提にしたとき、「経済力にまかせて食料輸入を拡大し、国内生産を縮小させていくことについては、「食料輸入発展途上国の食料調達を困難にするもの」、「農産物の輸出は『土壌』と『水』の輸出であり、輸出国自身の環境破壊を助長するもの」などの国際的批判を惹起するおそれがある。」、ここのところは非常にそのとおりだというふうに思うんです。だから、こういう前提があるわけですから、したがって食料の供給力を高めていく、自給率を高める、これが政策の結論でなければならないと思うんです。
 ところが、政策の提案になると非常にトーンダウンして、これからの食料政策の基本としては、「国内農業の生産性の一層の向上」、「国土資源の制約などのもとで多彩な自然条件を生かしながら可能な限り国内農業生産を維持・拡大し、」、ここまではどうやらいいんですが、この後、「食料自給率の低下傾向に歯止めをかけていくことが基本である。」、こういうふうに書いてあるんですよ。なぜ自給率を上げるというふうに言わないのか、前段と後段では全く整合性がないのではないかというふうに思わざるを得ないんですが、どうしてこのような書き方になったのか、本音をひとつここで言ってもらいたいというふうに思います。
#73
○政府委員(上野博史君) できるだけ国内の農業生産によって供給をしていきたいという、そういう気持ちにおいて、これは委員と私、考え方は変わらないだろうというふうに思うわけでございます。
 ただ、具体的に農業の将来のあり方というようなことを考えてまいります場合に、農業を取り巻きます先ほど来議論になっております担い手の老齢化の問題であるとか、あるいは新規の就業者が非常に少ないというような生産力面での隘路。それから、一方で消費者の消費選択というのはまだまだ高度化をしてたんぱく質を多量にとるというような方向に向かって動いてまいっておる。
 したがいまして、そういうえさや何かの海外への依存というものは、国内の農地資源の限界というようなこともございまして、やはりふえていかざるを得ないんではないかというような、こういう物の考え方をいたしますときに、現状を上回ってさらに営々と自給率を高めていくという、そういう考え方というのは非常に実際問題として難しいという実情があるということから、今おっしゃられたような書き方になっているということでございます。
 これはなかなかそういう委員の目から見れば弱々しいというトーンであっても、それを実現するためには私どもとすれば、今言いましたように、非常に難しい条件を克服していかなければならないという感じを持っているわけでございまして、できるだけいろいろな各般にわたります施策を講じて達成に努めてまいる、そのために今回いろいろ制度的な面での御検討もお願いを申し上げているということでございます。
#74
○菅野久光君 いろいろ困難なことがあることはわかるんですよ、私どもも。だから、「食料自給率の低下傾向に歯止めをかけていくことが基本」だということではなくて、困難な問題はあるけれども、自給率の向上のために全力を傾けて努力していかなきゃならぬとか、そういう目標になるんじゃないかなというふうに思うんですよ。そのためにいろんな困難な問題をどのように処理していくのか、どういうふうに対応していくのかということが必要だと思うんです。
 困難な問題があるから、低下傾向に歯どめをかけるということじゃ何だか初めから元気がなくなっちゃうんじゃないかなというふうに私は思うんですけれども、その辺、余りにも現実を見ていて、まあ大きいことを書いてもどうせできないんだから、この程度のところでというような気持ちが強かったのかなというふうに思うんですけれどもね。
 前段であれだけのことをきちっと書いているんですから、先進国としての責任というものは、やっぱり食料の自給率を上げる、発展途上国に迷惑をかけないということが前段のあれからいくと、私は結論になっていかなくちゃいけないんじゃないかなと思うんですよ。その辺ちょっと元気のない形じゃ、初めから新しいんじゃなくて古い食料・農業・農村政策になっちゃうんじゃないかなと思うんですけれども、その辺どうでしょうか。
#75
○政府委員(上野博史君) 繰り返しになる面がございますが、先ほど言いましたように消費の動向というようなことを考えますと、自給率を下げとまらせる、歯どめをかけるということもいわば今の水準との関係で言えばかなりな努力を要するものだというふうに考えている面がございまして、そこでこういうような書き方になっているわけでございます。
 確かにおっしゃられますとおり、私ども政府関係者というのはできるだけ冷静に対応していかなければならないという面もあるわけでございまして、そう将来の見通しみたいなものを離れてなかなか意欲的になり得ないという、そういう性癖を持っているということはこれはあろうかと思いますけれども、実態的に見るとかなりな努力を要する話だというふうに考えているということでございます。
#76
○菅野久光君 とにかく認識は非常にいいんですけれども、具体的な政策の展開ということになると初めからちょっと余りにも現実が厳し過ぎるという意識が強過ぎた書き方になっているんじゃないかなというふうに指摘せざるを得ません。
 今回の問題でこの方向というのは大体十年ぐらいを目安にした考え方ということで理解しておいていいですか。
#77
○政府委員(上野博史君) 大体そういう期間を頭に置いて物を考えているわけでございます。
#78
○菅野久光君 それで十年後におよそ食料の自給率をどの程度まで、まあ「歯止め」というんだから、これも今のあれよりも少し下がっても「歯止め」ということになるのかもしれませんが、やっぱり自給率を幾らかでも上げなくちゃいけないんじゃないかと思うんですが、およそのめどとしてどの程度の自給率まで頑張らにゃいかぬというふうに思っておるのでしょうか。
#79
○政府委員(上野博史君) 私どもの長期見通しで持っております見込んだ数字でございますけれども、我が国の持っておりますいろいろな能力、要素をフルに活用することによりまして供給熱量ベースで五〇%を達成するということはできるのではなかろうかというふうに見込んでいるところでございます。
#80
○菅野久光君 現状の厳しさということから考えてということにならざるを得ない答弁ではないかというふうに思いますが。
 今回の新政策の中で特に環境問題が非常にうたわれておりますね。環境保全型農業の確立ということが随分強調されています。環境保全型農業に対して今までの農業は何というふうに言ったらいいのかですね、その辺をちょっと教えていただきたいと思います。
#81
○政府委員(高橋政行君) 今までの農業を何と言うかというお話でございますが、我々は特別な名前をつけておったわけではございませんで、いずれにせよ化学肥料あるいは農薬、そういったものと環境との関係といいますかそういったことを十分に念頭に置いて行うということが少なかったのではないかというふうに思っております。
#82
○菅野久光君 環境保全型農業ということを強調していく。そうすると、従来の農業を私は効率追求型農業と言ってもいいのではないかなというふうに思うんですけれども、対置して。
 従来のそういう農業とどういう点で違っていくのか、その辺についてはいかがでしょうか。
#83
○政府委員(高橋政行君) 農業そのものがそもそも自然の生態系をいかにうまく利用してやっていくかということが重大な産業であるわけでございますので、環境保全型農業といった場合も将来にわたって持続性のある農業生産を確立するということが必要なわけでございまして、そのために、生産性とか品質の維持向上ということは当然なことでございますけれども、化学肥料あるいは農薬に過度に依存することなく、またさらに、地域のいろいろな有機物資源を有効に利用するそういう農業というようなふうに考えております。
#84
○菅野久光君 私は、環境保全型農業ということは非常にいい提起だというふうに評価をしたいというふうに思っているんです。
 ただ、中身でいくと「効率的」ということが非常に出てくるんですね。それで先ほど私は効率追求型農業ということを言ったんですが、環境保全型農業と効率追求型農業というのはどうも相入れないものがある、矛盾するものがあるのではないかというふうに思うんです。
 そこで、これからの農林水産省としての最大の任務であります安全な食物を安定的にいかに供給するかと、そういう任務があるわけですね。そういう農産物の供給という点ではまず安全ということを念頭に置いて、そして生産政策を進めなければならないというふうに思うんです。だから、安全な食料を安定的に、しかもできたら効率的にやっていくということが農政の基本に私は据えられなければならないと思うんですが、いろんなところに全部「効率的」「効率的」ということが出てくるわけですね。
 だから、やっぱり以前の農業生産に対する考え方から環境保全型農業と言いながら変わっていないのではないかというふうに思わざるを得ないんですが、しかし、これから具体的な政策の中で、先ほど言いましたように減農薬だとか無農薬だとか、そういったようなものを含めた政策を展開していくという中で、ここに書かれているような本当の真の意味の環境保全型農業、そういうことが展開されるように期待をしたいというふうに思います。
 そこで、政策の面で非常に気になるのは、「以上のことから、我が国の食料政策は、可能な限り効率的な生産を行い、内外価格差の縮小にも努めつつ、国際的な食料需給の観点も踏まえて、まず、自らの国土資源を有効に利用することによって食料を安定供給するとともに、消費者の視点に立って安全な食料を供給することを基本としなければならない。」と、こういうふうに書いてあるんですよ。非常に気になるのは「内外価格差の縮小」ということなんです。
 これは生涯所得均衡との問題にもかかわってくるんですが、生涯所得二億円だとか二億五千万円だとかというようなことが出されてきておりまして、他産業並みの収入を得るようなそういう政策をやっていこうということが提起をされております。稲作では十から二十ヘクタール、これは現在の技術体系を前提にしてそのぐらいの規模であれば目標とする所得を実現する経営になり得るというようなことを考えておられるようですが、専ら稲作のことを中心にして書かれているものですから、稲作のことだけで考えていきますと、この場合価格をどのように考えて試算されたのか、その点はいかがでしょうか。
#85
○政府委員(上野博史君) 価格は現状の価格関係というものを前提として考えております。
#86
○菅野久光君 そこと「内外価格差の縮小にも努めつつ、」ということで、現状の価格でいけば他産業並みの収入を得ることができるということだから、そういうことからいけば、もう価格はこれ以上下げませんということでなければ他産業並みの収入を得ることはできませんね。そこのところはいかがでしょうか。
#87
○政府委員(上野博史君) 価格政策につきましては、需給の動向とか生産費の水準というようなことを勘案して価格を決めていくという、そういう基本的考え方自身は変わらないわけでございますけれども、長期的に言えば消費者の観点もございますし、できるだけそのコストを下げることによりまして消費者の観点にも沿うような価格関係も実現をしていくというのは、やはり今後の農政の考え方の一つの要素として頭に置かなきゃならないと思うわけでございます。
 私が申し上げましたのは、先ほどおっしゃられましたような現状の稲作の経営規模というようなものをもって他産業と均衡できるような所得が上がるということを一応の参考的な数字として従来からも申し上げておりますので、その計算をするときに現在の価格関係を用いて計算したということを申し上げたわけでございます。
#88
○菅野久光君 いや、ですから、何かあれだけを見れば他産業並みの所得が得られるような今度の新しい政策だから、さあそれじゃ安心して農業にひとつ打ち込んでいこうというような希望がわくようなことに、あれだけ読めばなるのかもしれませんけれども、今のようにもう毎年毎年とにかく価格の問題については内外価格差を考慮すると引き下げていこうと、内外価格差といったらもう引き下げざるを得ないわけですから。そうすると、生涯所得の問題についてはあそこに描いたような絵にならない。少なくとも前提は現状の価格をもってすればこうなりますと、こう書かなくちゃいけないわけだけれども、そのことは一つも書いてないわけですよ。
 だから、やっぱり農業に対する不安、不安が結局担い手になり手がないということでますます農業の状況を困難なものにしていく、だから自給率を上げるとはなかなか言えない。低下の傾向に歯どめをかけることしか言えないということにつながっていくのではないかなというふうに思うんですね。
 それで、現状の価格を基礎にして計算したら生涯所得は平均して二億五千万程度になるということになるんでしょうが、所得の関係なんですが、これは粗収入で計算をされたのか、可処分所得一で計算をされたのか、その辺はいかがでしょうか。
#89
○政府委員(上野博史君) 所得ベースの計算でございます。
#90
○菅野久光君 じゃ、これは可処分所得ということですね、所得ベースですからね。
#91
○政府委員(上野博史君) そうです。
#92
○菅野久光君 それはそういうことで受けとめて、また今後の論議の中でやっていきたいと思います。
 それから、条件不利地域対策の問題なんですが、これが私は大変大事な問題になっていくのではないかなというふうに思うんですが、これは今回の場合に直接補助というものができない。だから、特別の低利資金を融資するということで条件不利地域については対応していこうということなんですね。「中山間地域などにおいては、以上のような政策の展開を基本とし、所得の維持・確保を図る観点から地域産業を振興することなどを通じて、地域社会を維持するため、以下の政策を行う。」ということで、「畜産、野菜、果樹、養蚕など立地条件を生かした労働集約型、高付加価値型、複合型の農業や有機農業、林業、農林産物を素材とした加工業、観光などを振興する。また、関係各省庁との連携・協力の下で、」云々ということが書かれております。
 しかし、どうなんでしょうか。実際、畜産とか野菜とか果樹だとか養蚕だとかという、そういったようなことが書かれておりますが、それぞれの市町村で中山間地を抱えているところでは、それぞれ工夫をしながら何とか定住条件をつくろうということで努力をしてきていると思うんですよ。ここに書かれているようなことがうまくいくんであれば、もうとうにそのことはうまくいっているんじゃないかなというふうに思うんです。
 ここに書かれているようなことで本当に中山間地の農業を守っていく、あるいはそこに定住させていくということが可能なのかどうなのか。私はこれだけでは非常に不安なんですね。率直に言って、これではできないというふうに申し上げざるを得ないんですが、その点についてはどうでしょうか。
#93
○政府委員(入澤肇君) ただいま御指摘のとおり、中山間地域農業は、全国各地、おる意味では千差万別でございます。私どももかなりいろんな実態を調査していまして、先生がおっしゃったとおりいろんな工夫をしてうまくやっているところもありますれば、しかし必ずしも土地が粗放利用で合理的に利用されていない。今回の中山間地域対策で一番大事なことは、粗放的な土地利用を可能な限り改めて、中山間地域の立地条件、これは地勢条件からしまして、かなり傾斜がきついとかあるいは耕地が非常に小さい、そういうふうな条件下で最適の農業的な土地利用計画を普及させて
いく、その上で最適農業経営計画というのを運動論として展開していくということが必要じゃないかというふうに考えたわけであります。
 まず、そうやって農業経営として所得を上げるということを基軸に据えて、それだけではなかなか定住条件は整備されないだろうということで、他産業の就業機会を設けるとか、あるいは観光資源、地域資源等を活用してあわせて所得を得るとか、いろんなことを考えたわけであります。そういうことを新政策の文章を踏まえてやろうとしているわけでございます。
#94
○菅野久光君 大臣、時間ですから結構です。
 中山間地域の農林業の経営の問題については、単なる経済的な所得を上げるための一つの生活手段と考えるよりは、むしろそれが持っている環境保全的な役割をどのように強化して、それに対して政策的にどれだけの裏づけをするのかという発想がなければならないのではないかというふうに私は思うんですけれども、どうでしょうか。
#95
○政府委員(入澤肇君) 中山間地域の農業の実態を見ますと、確かに環境保全に着目した農業の経営というのは今まで以上に必要になってくると思います。そういう点を決して忘れているわけじゃございませんでして、ことしも予算要求におきまして中山間地域の土と水を守るための基金というのを改めて全国ベースで二百億円を目指して造成しようじゃないかということで予算をとったわけでございますが、環境保全について我々として一般会計から予算を導入すると同時に、自治省にもお願いしまして地方交付税でもそのような予算措置を講じてもらうということにしております。
 そういうふうに環境保全のための立地条件といいますか、整備についてはいろんな努力をいたしますけれども、それとあわせまして農業所得を可能な限り上げていくような農業経営を実現していくんだということがやはり持続的な農業をやるためには必要じゃないかということがこの考え方の根底にあるわけでございます。
#96
○菅野久光君 何か個人に補助をするということはなかなか国民的に理解が得られないとかなじまないとか、資料の中にそういったようなことが書いてありますけれども、得られないからだからやらないというのか、将来的には国民にそういう理解を得させるような努力をして、そして日本型デカップリングということになるのかどうかわかりませんが、そういうふうにしなければならないと考えているのか、もうこれからもそれはやるべきでないというふうに考えているのか、その辺はいかがでしょうか。
#97
○政府委員(入澤肇君) 日本型のデカップリングという言葉がありましたけれども、私どももECでやっているような直接所得補償的な政策ができるかどうか、いろんな角度から検討してみました。これをやるためには、まず標準的な農業経営というのが確立していないと、一体どういう農業経営をやっている人にどのくらい補てんをしていいのかという計算ができないわけですね。そこで、むしろ最適の農業的土地利用計画をつくって、その上で最適農業経営改善計画もつくって農業をやってもらう。そういうことが定着しできますと、この地域ではこういう農業をやると大体このくらいの所得が得られるだろうと。そうしますと、それが平場と比べて所得が低いから、じゃ、その差額を面倒見るにはどうしたらいいかというふうな次のステップを踏めると思うんですね。
 今は実際問題、行政官として実施要領を書けないと私はいろんなところで言っているんですけれども、どういうところでどういう農業経営をやったらどのくらい所得補てんをするかという実施要領がなかなか書きにくい。そのための前提条件をこの中山間地域の法案で整備していこうじゃないかということで御提案申し上げておるわけでございます。ですから、融資制度はそういうふうなことの一つの手段として機能していくことをねらっているものでございまして、そういうことで条件が整備されてきますと、それからあわせて基盤整備も進みますれば、いずれはEC型のデカップリングみたいなことも視野に入ってくるかもしれません。しかし、まだ私は現時点でそこまで明確にいついつそういうふうなことができるのかというふうなことを問われますと、自信がないというふうに申し上げざるを得ないわけでございます。
#98
○菅野久光君 中山間地域、いわゆる条件不利地域の農林業を経営するということについては、そんな条件不利地域なんだからやらなくてもいいということにはならないんですね。どうしてもここのところを何とかやらなきゃいけない。それは、いわば国土保全だとか環境保全だとか、そういう公益的なものを持っているわけですね。だから私は、先ほど言いましたように、環境保全型の農林業経営、特に中山間地、条件不利地域というのは、農業だけじゃなくて、農業、林業というものを一体で考えていかなきゃならない。そういうものに対しては一定の所得の補償をさせるということなしにそこに定住させるということはできない。お金を借りても、借りたものは返さなきゃならない、幾ら低利であっても。低利であっても、元利を払っていくだけの収入があるんだったら、それは何ぼでもお金借りてやれますよ。だけれども、それができないから今日の問題になっているわけですよね。そこのところを一体どういうふうに考えるのか。−先ほど局長が言いましたけれども、ことしの自治省の予算の中で、交付税で森林の問題についてありましたよね。私は本当にすばらしいことだと思うんですよ。それぞれの条件不利地域、いわゆる中山間地域を抱えている市町村は、いかにそこに人を定住させるかということで頭を悩ましているわけですね、過疎化をいかに食いとめるかということを含めて。そうすると、国民の意識がそこまでいっていないというのであれば、国民の意識をそこに持っていかせるための方策というものを考えなくちゃいけないんじゃないかと思うんですよ。
 農業・農村の持つ環境保全上の役割で、ヘドニック法だとか代替法ということで、試算では、ヘドニック法では農業・農村の持つ環境保全上の役割で約十二兆円、代替法では約五兆円だというんですね。これの何分の一か何十分の一かとにかく国民が負担をしていく。
 何もしない−何もしないと言ったら悪いんですが、病気だとか何かで生活保護を受けている方々が、いわゆる農村地域で平均的な夫婦と子供二人、大体四十歳ぐらいで、北海道の農村地域で調べましたら、いろいろ地域だとか年齢で条件は違いますけれども、月当たり十四万七千六百六十円、年にすると百七十七万一千九百二十円生活扶助ということでもらえるわけですね。
 中山間地あるいは条件不利地域とかそういうところでやっている方たちは、そこで収入が上がらない。恐らくいろんなことを含めても二百万、二千何百時間も働いても二百万も年収ない農家というのはあるんですよ。そういうところを一体どうするのか、じゃ、そこをなくしちゃっていいのかと。
 例えば水田なんかは平地だけじゃ大変なんですよ。あの保水能力というのは自然のダムで、減反をやって、一たん大雨が降って洪水になったということで、このごろは大分堤防なども築いてやっていますけれども、大変ですし、東京あたりも干ばつが過ぎるとこれは水の問題が一番大変な問題になってくる。そういう意味では上流と下流だとか、条件のいい地域と悪い地域だとか、そういう環境の問題、国土保全の問題などを含めた公益的な機能に対して国民全体がどういうふうに一体負担をするのか。
 私は、ある意味で言えば国土防衛の意味合いを持っているのが中山間地で頑張っている農林業の人たちではないかというふうに思うんですよ。今平和の配当ということが言われている中だから、だから臆病にならないで、もっと積極的にここで頑張っている人たちに対する直接補償ということについてやっていかないと、今の中山間地の農業の現状というものを変えていくことができない。こういうところは臆病にならないでひとつ大胆にやって、我々もそういうことで積極的に努力をしていくということが大事ではないかというふうに思っております。
 そのことを申し上げて、時間ですので終わらせていただきます。
#99
○委員長(吉川芳男君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。
   午前十一時五十九分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三十一分開会
#100
○委員長(吉川芳男君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、農林水産政策に関する調査を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#101
○谷本巍君 初めに新ラウンド問題、それから構造政策、そして中山間地域対策、三つの問題について伺ってまいりたいと存じます。
 初めに、新ラウンド問題について、外務省の当面の判断といいましょうかそれを伺いたいのであります。
 御存じのように、アメリカの政権の交代で中断状態にあった新ラウンドをめぐる動きが、クリントン政権のファストトラックの延長問題を契機にしまして幾つか新たな動きが生まれてきたようであります。これまでの観測からしますというと、ファストトラックの延長が夏休み前に議会で承認されるか、夏休み後、つまり九月過ぎということになっていくのかということで、新ラウンドの協議のあり方というのが大きく変わるだろうというふうに言われてまいりました。
 最近の新聞報道からしますというと、例えば五月七日にアメリカとECの首脳会談が行われて、七月の東京サミットまでに関税引き下げなど市場参入の拡大など目に見える前進を実現しようじゃないかということで一致したということが報道されております。この報道を前提としますと、アメリカの側からしますというと、一定の実績を早目に上げておいて議会承認を早くとるというような判断で行っておるのではないかと思われます。
 そうした点も含めて外務省が、ファストトラックの延長についてのアメリカ議会承認ですね、いつごろになっていくと見ておるのか、その点について伺いたいと存じます。
#102
○説明員(別所浩郎君) ただいまの件でございますけれども、先生御指摘のとおりアメリカのファストトラックの延長法案というものが議会に提出されるに至っておりまして、その審議の動向というものを私どもは非常に注目しているわけでございます。私ども、あくまでもウルグアイ・ラウンドをできるだけ早く推進していくということは政府として考えているわけでございますが、それにつきましても、アメリカ政府が早くファストトラック法案を無条件で通してくれるということは重要だと思っております。
 先ほど御指摘のとおり、ファストトラック法案、既に議会には提出されておりまして、四月二十九日には、米議会の下院の歳入委員会、その中の貿易小委員会、これでは審議され可決されております。この後歳入委員会本委員会の審議が、もう一応その審議日程にはのっておりますけれども、具体的な審議は間もなく始まる予定でございまして、ここにおきます採決を経まして下院本会議ということになるわけでございます。また、上院の方におきましても、既に公聴会などはアレンジされておりますけれども、引き続き財政委員会の貿易小委員会、それから財政委員会、この審議を経まして本会議に付されることになっております。
 したがいまして、いろいろ米議会におきますファストトラック法案の審議の予定につきましては、もちろんアメリカの国内のいろんな政治的な状況もございます。そういったことにも関連しておりますので、私どもとして明確にいつごろになるだろうということをはっきりもちろんお答えする立場にはないわけでございますけれども、いずれにせよ、我が国といたしましては、ウルグアイ・ラウンド交渉の早期の成功のために米議会が早急にかつ無条件でこれを審議、可決してほしいということを期待しているわけでございますし、そのように申し入れている次第でございます。
#103
○谷本巍君 そうしますと、以前の一般的な観測よりも最近はサミット前には議会承認になるという可能性が濃くなったと、こんなふうに見ておりますか。
#104
○説明員(別所浩郎君) アメリカの行政府といたしましては、とにかくできるだけ早くやりたいということは言っております。現にサミットの前にできるかどうかという点につきまして私どももちろん関心は持っているわけでございます。率直なところ、米行政府としても必ずできるとは言い切れない状況のようでございますが、できるだけ早く審議、可決してもらうように努力するということは繰り返し私どもにも言ってきております。
#105
○谷本巍君 それで、東京サミット前の市場アクセスを中心とする交渉の中身のことですけれども、繊維を含む工業品の関税引き下げ、それからサービスの市場開放、どうやらこの辺のところが中心になっていくだろうというふうに一部マスコミは書いておるところでありますけれども、農業の方の扱いがどういうぐあいになってくるのか、そこを外務省はどう見ていますか。
#106
○説明員(別所浩郎君) 先生御指摘のとおり、東京サミットまでに特に市場アクセスの分野で進展を図っていきたいということが主要貿易国、これは日本も含むわけでございますが、の考え方でございます。こういった場合、市場アクセスと申します場合は、もちろん工業製品、それからサービスと並んで農業も入ってまいるわけでございます。
 ただ、それぞれの分野におきまして各国ともいろいろ難しい問題を抱えているわけでございますから、サミット前までに何ができるかというのはそれぞれの国の事情を踏まえながら話し合いの中で固まっていく問題だというふうに考えております。
#107
○谷本巍君 そうしますと、繊維とか工業品の関税の引き下げではかなりやりやすいものはある、こういうぐあいに言われておるわけです。そこへいきますと、農業分野の問題について言えば、アメリカとECとの合意問題にしても最後に残ったのは一体何なのかというと関税問題でしょう。それからまた、日本とアメリカの関係にしましても米などの問題があるわけです。しかも、農業分野の関税化ということで言えば、その前提となる内外価格差の計算の方法さえアメリカとECの間では合意されていないわけですよ。
 ですから私は、サミット前に農業分野の方の市場アクセスも決着という方向に進むのかということについてはかなり難しい問題があるのではないのかというぐあいに判断しておるのですが、外務省はどう見ていますか。
#108
○説明員(別所浩郎君) 先生御指摘のとおり、米・EC間の話し合いにおきましても、一部農業問題で去年十一月二十日にいわゆるブレアハウス合意と呼ばれておりますものができておりますけれども、その中で完全に詰め切れていない問題があるようでございます。そのように日本のみならず米国、ECともにいろいろ難しい問題を抱えているわけでございますから、その中で先ほど申しましたように各国それぞれの難しい問題をお互いに尊重しつつ何がまとめられるかということで鋭意交渉していくということになるんではないかと思っております。
#109
○谷本巍君 どうも中身はさっぱりはっきりしないんでいらいらするんでありますけれども、もうちょっと伺っておきたいことがあります。
 それは、これからのガット交渉の場合の農業分野の協議事項の一つとしてアメリカとECとの合意というものがありますね。ガットというのはアメリカとECの専有物ではないはずです。ところが、どういうわけかアメリカとECとの合意ということを大前提に据えて、それでもってやっていくというやり方に実はなっているわけです。そのあり方の事のよしあしの問題が一つありますけれども、もう一つの問題としては、フランスなどEC加盟の数カ国がこれに反対をしておるというふうに話を伺っております。
 昨年十二月に私はフランスに参りまして、政府首脳とも直接その辺の事情については随分突っ込んだ話し合いをしてまいりました。それからしますと、アメリカとECとの合意ということを前提にしながら農業問題の今度は全体の協議を進めていこうというのにはかなり無理があるのではないのかというふうに思っておるのですが、外務省はどんなふうに判断しておりますか。
#110
○説明員(別所浩郎君) 御指摘のとおりでございますが、米、ECがもちろんガットのすべてではないというのは当然でございまして、日本もウルグアイ・ラウンドに積極的に関与していくということは私どもの政府の方針でございます。
 米・ECの合意がすべての局面で一致したのを受けて、それをベースにやっていくというよりは、やはり各国、特に日本は重要な貿易国でございますから、できるだけ早い段階で日本の立場というものを主張して交渉の中に入っていくということは当然でございまして、これは従来より私ども参加してきているわけでございます。
 それで、御指摘の米・EC合意がどうなっているかということでございますけれども、おっしゃいましたとおりにフランスなどで一部いろいろと発言が報じられておりますけれども、先ごろ行われました米・EC間の農業大臣会合と申しますか、片やアメリカのエスピー農務長官、片やシュタイヒュンEC農業委員というメンバーで五月四日にブラッセルにおいて会談が行われたわけでございます。
 その後のそれぞれの言いぶりということを見てみますと、双方ともにブレアハウス合意というものを尊重して、これをまた蒸し返さない、リオープンしないということを確認したということを言っております。シュタイヒュンEC農業委員が記者会見で明確にそういうことを述べておりますし、またエスピー農務長官も会談後のインタビューでそういうことを言っております。
 また、EC内におきましてはフランスが農業問題につきこれまで強硬な立場をとってきたことは事実でございますけれども、フランスとしては農業以外の分野も含めたウルグアイ・ラウンド合意全体のパッケージで最終的に判断するという態度をとっているというふうに私ども承知しております。
#111
○谷本巍君 それからもう一つ、北米自由貿易協定との関係です。
 北米自由貿易協定については、環境条項ですね、これを補完作業として入れていこうということで話が進んでいるという情報があります。環境条項といった場合に、どういうふうな中身のものになってくるのか、その辺のところ、いろんな話が出ておるのでありますが、皆さん情報を持っていたらひとつお聞かせいただきたい、これが一つ。
 それから、もう一つの問題は、北米自由貿易協定とガットというのは別物だということにはされてはおりますが、やっぱり関連が出てくるのじゃないのかというふうに私は思うのです。といいますのは、農業問題で言いますというと、北米自由貿易協定ではカナダの酪農品あるいはまた競争力のないメキシコの農産品については一定の特例扱いをするような中身になっていますね。これを前提としてきますと、ガットの場の中における協議問題についても、アメリカの出方について言えば、従来のようなしゃくし定規なやり方と違ったものに変える可能性というのは私はあるんじゃないのかというふうな気がするんだが、その点については皆さんどうお考えになっていますか。
#112
○説明員(別所浩郎君) 御指摘の北米自由貿易協定の環境条項でございますけれども、昨年末に署名されました北米自由貿易協定自身にも環境に関します条項というのは一応含んでおります。それの内容につきましては、環境の基準であるとかあるいは紛争処理、それからそれぞれの国の主権の尊重といったことに関します一般的な規定であるというふうに私ども承知しております。
 それで、昨年八月にこの交渉が妥結したわけでございまして、九月に合意文書が公表されたわけでございますが、それを受けまして、この中の規定ぶりに関しましてアメリカの議会であるとかあるいは環境民間団体から環境保護のために不十分であるという懸念が表明されたわけでございまして、これを受けましてクリントン大統領は、選挙戦中から昨年十月におきまして環境に関する補完協定を締結するということを言ったわけでございます。
 ただ、どういったものをつくるかということは公表されておりません。現在、クリントン政権のもとで補完協定につきましてカナダ、メキシコと話し合っているわけでございまして、アメリカの方がいろいろ提案しているのではないかというふうに聞いているわけでございますけれども、残念ながらその具体的内容につきましては一切公表されておらないようでございまして、そういうふうに承知しております。
 それから、もう一つのNAFTA、北米自由貿易協定とガットとの関係でございますけれども、アメリカ及びカナダと、メキシコもそうでございますが、ウルグアイ・ラウンドとNAFTAとの関係につきましては、北米自由貿易協定というのは、どちらが立てはどちらが立たないという、そういう関係じゃなくて、ガットと補完的なものであるということを言っております。また、NAFTAは、北米自由貿易協定でございますが、これはウルグアイ・ラウンドを推進する一つの段階である、それに向けての一つの通り抜けるべき道筋であるというようなことも言っております。
 したがいまして、とにかく北米自由貿易協定をまとめるということで各国妥協を図ってきたわけでございますけれども、その妥協を図ってきたのはあくまでも北米自由貿易協定をまとめるという関係でやったのであって、ウルグアイ・ラウンドの立場は損なわないということは各国それぞれ言っているようでございますので、ウルグアイ・ラウンドにおきます交渉におきましては、従来ウルグアイ・ラウンドでそれぞれ述べていた立場をもちろん再度主張しながら、今後どういう解決が図られるかということを探っていくのではないかと思っております。
#113
○谷本巍君 そこで、最後に大臣に伺いたいんです。
 お聞きのとおりでありますが、ウルグアイ・ラウンドをめぐる状況というのは、音といいましょうか以前と比べれば複雑な形態をとりながらも、かなり変わった様相を見せるような状況になってまいりました。この後私は構造政策問題について大臣に伺いたいことが幾つかあるんですけれども、午前中の論議を見てみましても、新農政なるものというのはやっぱりガット体制ということを前提にして描いているというふうに私には思えてしょうがないんです。だから、答弁にしたって極めて歯切れの悪い答弁にならざるを得ない。どうも基本的問題は私はそこにあるのじゃないかというふうな気がしてならぬのであります。
 さてそこで、午前中も問題になったのは、環境問題とそれから農業問題、この絡み問題がかなり議論になったわけですね。そこで、貿易問題を見てみますというと、例えば農産物の輸出国で言うならば、有名な言葉というのはアメリ側の学者が言った言葉ですよね。穀物一トンの輸出というのが二トンの肥沃な土を輸出するに匹敵をするというような状況があり、輸入国で言うならば農業の基盤が破壊されるだけじゃなくて、国土そのものが汚染されていくと。畜産公害なんか典型ですよ。そういう状況等々が出ているわけですね。
 他方、二十一世紀に向けて地球上の大きな問題になってくるのは食料問題だと、こうされているわけです。例えば、大臣も御存じでしょうけれども、二〇二〇年になりますというと米の生産は現在の二倍にしなきゃならぬという試算だって今出されてきているわけですね。こういう状況を控えてみれば日本国のガットに対する外交というのは大胆に切りかえた展開が私は必要だろうと思うんです。
 例えて言うならば、食料安保の問題にしましても、これまで日本政府が示していたような食料安保論、つまり日本一国の食料安保論ではなくて、世界全体の食料安保をどうしていくかというような問題ですね。大臣がお示しになっておる国際食料援助基金構想というのは、私、大変残念だが詳しい中身は存じないんですが、大臣がそういう構想をお持ちだという話を人づてに聞いております。
 そういうふうなものが、中身を実は知りませんけれども、例えば世界の食料安保をどうしていくかという問題や、それから経済優先じゃなくて環境優先でいく。去年の十一月に開かれた列国議会同盟の会合でも最終文書にはそれが載っていますよ、全体の合意事項で。私は質疑しておるんです。もう世の中変わっちゃっているんです。でありますから、地球全体をどうするかということについての哲学を持った外交を展開すべきときに来たと思うんです。
 そして、さらにもう一つ申し上げておきたいのは、米の市場開放などをやることによって自由貿易体制を守ろうというのは、これは幻想だということが極めてはっきりしてきているんじゃないでしょうか。そういうもとで、ECについて言うならばさらに市場統合を進めていくという方向であり、そしてアメリカで言うならば今話を出しておきました北米自由貿易協定、これをもっと拡大していこうという動きがあり、そしてアメリカはさらに三〇一条をもって管理貿易体制を一層強めるというような方向を出してきているわけであります。
 そういう中で、日本の経済界が言う米の市場開放をやって、不採算部門の思い切った切り捨て、合理化でさらなる国際競争力をつけていこうというのは時代錯誤ですよ、これは。そうでなくたって日本の貿易黒字が一千億ドルから一千三百億ドルを超えるような状況になって、これは孤立無援になっていきますよ。日本が憲法を改正して軍事大国にでもなれば、あなたの党の小沢さんが言うようなことにでもしなきゃ今の体制は維持できませんよ。これは、私は去年ヨーロッパなどを回り、それからまたブラジルの列国議会同盟、各国の皆さんと話し合ってしみじみとそれを感じました。貿易市場における日本の富の独占というのは、やっぱり話し合うとその問題が出てきますよ、恨まれています。
 そして、日本の貿易のあり方、これはお互いに世界各国の持っている特技を生かし合って有無相通ずるということじゃなくて、一貫した製品をつくって、それでもってやっていくというわけですから、これは失業の輸出ですよ。こういうやり方をしていきますと、経済侵略的な性格を多分に備えてくるということになってくる。でありますから、そういう問題などを踏まえてみますと、この辺でそろそろ私どもは転換をしなきゃならぬと思うんです。
 転換をしていく節目になってくるのは何なのかというと、重要な節目になってくるのはこれはウルグアイ・ラウンドですよ。そこで日本が外交的に思い切ったイニシアチブをとる力を発揮することができるかどうか、そこのところが私は重要な節目になってきたと思うんです。
 私の意見はそういうことでありますけれども、大臣の所見を承りたいんです。
#114
○国務大臣(田名部匡省君) 全く私も同感に思いまして、昨年からずっと数回となくヒルズ通商代表、マディガン農務長官、マクシャリーあるいはFAOのサウマ事務局長、いろんな方々に今委員お話のことを申し上げてきました。
 一体全体、世界の食料というものをどうとらえていくか。人口はどんどんふえる。しかし、不足しているところはもう極端に食料が不足している状態。一方では食料が余って、輸出補助金までつけて売るという行為というものは、一体これから先をどういうふうに見通すかということは大事なことじゃないですかと。余り日本の食料安保ということではなくて、国際的な、その中で、従来からいろんなところで水害でありますとか地震でありますとか、私が閣議で決めただけでももう大変な数に上っているわけですね。その都度医療、食料の援助。残念ながら食料は日本は援助するものがないものですから、どっちかというとお金を出す。そういうお金を出すのであれば、あらかじめ各国が基金を積んで、食料の過剰な国がそこにその資金で手当てをすればいいのであって、それを一国同士で売るとか買うとかというけんかではなくて、常日ごろからそういう体制をとるというのがFAOの仕事じゃないですかと。
 ウルグアイ・ラウンドで我々が農業の自由化を言う前に、FAOとして一体どうあるべきかということを提案すべきだということも実は申し上げてまいりましたし、貿易のあり方についても、まあ今こう言うのはちょっとどうかなと思うのでありますが、やっぱり貿易というのは節度ある貿易ということが私は必要だと思うんです。相手がもう足腰の立たないと言えば語弊がありますが、完膚なきまで輸出をして相手がダメージを受け過ぎるというところまでやる必要があるのかどうかという、そういうものもやっぱり考えていかなきゃならぬ。
 それから、農産物でかねがね申し上げてきましたのは、競争というのは、競争できる条件があって初めて競争になるのであって、今の日本の農業はアメリカやカナダと対等に競争する力というものは、土地の条件、いろんなことから見てないんです。ないものを競争だ競争だと言われても、それは工業製品のようにはいきませんよということも申し上げてまいりました。
 そのとき、日本に自動車でおれたちはやられたということをよく言われましたが、いいものをつくれば日本だってヨーロッパ車は入ってアメリカ車は入ってこないというのは、アメリカももっともっといいものをつくっていただければ日本だってそれを輸入するのであって、そこのところはちょっと違うんじゃないでしょうかということを申し上げてきました。
 余り日本のこまい立場ばかりやっていますと何か変にとられるものですから、むしろこういうことを前面に立てながら、そして日本の置かれている実情というものも十分訴えてきましたし、これからも私はそういう委員と同じような考え方で交渉を進めるべきであろうというふうに実は考えます。
 ただ、他の農業以外の分野になりますと私の所管でありませんので、ここへいきますとまたそれぞれの考えがあって日本として一致した考え方でいけるかどうか、これは私もわかりませんけれども、いずれにしてもこういう立場になってみると、世界全体のバランスというものを見ながら、節度ある貿易というものは必要だというふうに考えております。
#115
○谷本巍君 今の大臣から伺いましたお話、もうちょっと突っ込んで聞きたいことがあるんですけれども、まだ予定の質問がほかにたくさんありますから先に進ませてもらいます。
 構造政策の問題について初めに大臣に若干伺いたいことがございます。
 新農政では、水田農業については十から二十ヘクタール、これを十五万戸程度ですか、つくっていきたい、そして組織経営体については二万集団をつくっていきたいというようなことで、新たに法案の準備もされたやに伺っております。
 どうもこれから出てくるであろう法案のことを頭に描いていきますと、新農政の目指す方向というのはどうやら効率化一辺倒という印象を私は強く持ちます。私どもが新農政に期待をしましたのは環境保全というところですね。つまり安全食料ということですね。そこのところで勝負をしていくということが日本農業が生き延びる道なのではないのかというふうに私どもは考えてきたのでありますが、どうも出されてきている話というのは大分違う。
 それで、きょうの午前中にしても、稲村委員からの質問について大臣がお答えになっているのは、化学肥料、農薬の使用を抑制する方向をお出しになり、そして、消費者に認められるような農業生産の展開が必要だということを強調されておりました。おりましたが、例えば十ないし二十ヘクタールの水田農家の実態で見てみますと、農薬などの投下量というのはとても多いですよ。実態を知っている人たちは残念ながらこう言いますよ、「おれはあの米は食わない」と。これは全部が全部とは申し上げません。実態はそういう例が非常に多いということであって、言うなれば消費者に認められるような農業とはどうも違うというふうに実態的には私どもはとらえております。
 してみると、新農政の言う環境問題というのは看板に偽りありと、果たして規模拡大というのとうまく両立できるのかどうなのか、その辺の問題などを中心にしての大臣の御意見を伺いたいんです。
#116
○国務大臣(田名部匡省君) どれかをやるといいという問題ではなくて、非常に最近の農業というのは難しくなってきているんだろうと思うんですね。例えば、所得もそれ相応にないと農業をやらないという、これはやっぱり何とかしなきゃいかぬ。
 それから、いま一つは環境のことでありますけれども、もともと水田農業というのは環境保全なんですね。ですから、これを維持していかないと環境そのものがおかしくなってくるということになりますと、今の担い手がいない現状、将来、これを考えますと、何とか環境を保全するために継続して農業生産活動というのをやっていただかなきゃいかぬということになると、勢い規模を何とか広げていかないと、少ない人で現状を維持しようとするとどうしてもそこへ行かざるを得ないということでございます。
 あとは農薬を使うか使わないのかというのは、これはまた環境の中の一つの安全という問題で私どもとらえておるわけでありまして、それにはなるたけ消費者に、最近消費者重視と、かつて不足したころは農家に合わせて消費者が買わざるを得なかった時代から、これだけ多様に農家の方々も創意と工夫で目に見える農業をしようということになってきますと、今度は消費者重視にどんどん移行してきた。これはいいことだと思うんです。そのためには農家の方も大変です。大変ですけれども、農薬を使わないものは安定的に生産性はうんと上がるということになって、これに努力していただきたいということでJAS法についても明確にしようと、こういうことでお願いしたわけであります。
 ただ、規模拡大すると、手抜き管理や肥料を多投じて環境問題につながる、こういう御意見もあります。ありますが、効率的で安定的な意欲的な経営体というものが担うことによって、私は意欲さえあれば今みたいなことを、土づくりにしても何でも一生懸命になっていってくれるであろうということを考えるわけでありまして、決して大きいから別な農業だということではない。ただ、残念ながら現場で伺いますと、農薬だとか肥料というものを極力減らす努力はしているようですが、特に肥料等は全く使わずにやるというのは、日本全部の農業にはまだどうも収量の問題とか手間がかかるということで問題点もあるようでございます。
 いずれにしても、私どもはそうしたことも改善しながら、残留性の少ない農薬の開発をするとか、生産性の向上と両立する環境保全型農業技術というものを確立していかなきゃならぬ。課題は多いです。もうどれかをやっているとどれかがだめになる。全部がうまくいって初めて農業後継者というものが生まれてくるという考え方ですから、大変つらいことではありますが、今産みの苦しみだと私は言っているんです。しかし、将来には本当に若い人たちが明るい展望のもとにやっていける、それを目指して頑張るのだと、こう言って、きのうも近畿農政局へ行って全職員にお願いしてまいりました。
 いずれにしても、そういうことで頑張りたいと思います。
#117
○谷本巍君 そうしますと、今大臣が言われたことを私なりに詰めてみますと、政府が言われる効率化、規模拡大というのは、環境保全の枠組みの中でのことだと、こういうぐあいに理解しておいてよろしいですか。
#118
○政府委員(入澤肇君) そのとおりでございます。
#119
○谷本巍君 そうしますと、政府が目指す構造政策というのは、家族農業を基本とした規模拡大であって、資本参入による企業農業への規模拡大ではないというふうに理解していいですね。
#120
○政府委員(入澤肇君) 経営体という言葉を使いましたので、若干誤解があるかもしれませんけれども、私どもは家族農業こそまさに農業の担い手としての中軸に据わるものだというふうに理解しております。
 その一つとして、今までは兼業農家とか専業農家とか分かれておりましたけれども、今度は経営意欲を持って一生懸命やるんだということを表現するために、中立的な言葉として経営体という言葉を使ったわけでございます。そして、家族農業経営で個々の農家がやり切れない部分は、生産組織という組織体を今まで以上に助長していって担い手になってもらおうということで、新政策をまとめ、またこの法律を提案した次第でございます。
#121
○谷本巍君 きょうはそこだけ確認をさせておいていただいて、あとは農業への資本参入といいましょうか、それらの問題点については後ほど法案が出たときに詳しくお伺いをさせてもらいたいと思います。
 さてそこで、もう一つ伺っておきたいことがあります。それは土の問題であります。
 田んぼを見回しましても、これは畑もそうですけれども、ミミズがいない、アリがいない、モグラもいない、そういう状況になってからもう久しくなってきました。つまり、土壌動物がいなくなってきているということですね。ですから、専門家の皆さんなどの話を伺ってみますというと、バクテリアですか、水田によっては、大体バクテリアの多い肥沃なやつを十としますというと、やらせているやつは最近ありませんけれども、最近はもう十対二ぐらいに減ってきていますよという話を聞くこともしばしばであります。
 それでも米で言うならば単収は結構高いじゃないかというようなことを言われる指摘もあります。これは確かにそうですよ。今の米の単収を支えているのは何かといえば、これは技術水準の高さですよ。土の力が一番試されるのは冷害など自然災害の場合によくためされます。これは昔と違って、私どもがよく見ますのは、同一地域で隣同士の田んぼで、片方は七俵とった、片方は二俵しかとれないという例だって結構最近はふえてきております。それだけに土の問題というのは危機的様相を帯びるような状況に入り始めてきているというふうに言うことができると思うんです。
 私が伺いたいのは、まあ局長はこれから先さらに規模拡大は目指していかなきゃならぬということを言われるんでしょうけれども、それも環境保全の枠組みのもとだということになってきますと、規模拡大、そして土の関係、地域の関係、ここのところはよく調査などしていく必要があると思うんです、これは継続的に。その辺のところはこれからどうなさいますか、きちんとやっていかれますか。
#122
○政府委員(入澤肇君) 全く御指摘のとおりでございまして、私は土壌こそ我が国農業の発展のための一番基礎的な前提条件じゃないかというふうに考えております。それで、就任以来、土壌問題については職員全員に注意を喚起いたしまして、まずこの間計画部に「地域農業資源センター」という看板を掲げたんですけれども、全国の土壌条件をまずコンピューターに入れてデータベースをつくりまして、地方農政局、都道府県等々、それから農業関係者が使用できるようにしようじゃないかということで、今枠組みをつくっております。
 それから、財団法人全国土壌協会というのがございますけれども、ここはかなり土壌条件の研究開発について、あるいは啓蒙普及につきまして活動しておりますけれども、この協会の方々とも話し合いまして、もっと土壌の問題を全国民に知らせて理解を得られるようにしようじゃないかというふうなこともやっておりまして、これから土壌につきましては、計画部の担当官、地質官がかなりおりますから、全国の土壌条件を十分に調べて、そしてそれが営農にどのように利用できるかということについて留意しながら行政をやっていきたいと思っております。
#123
○谷本巍君 局長、その辺のところはしかとお願いしながら、続いて、規模拡大の可能性の問題について若干伺ってまいりたいと思います。
 新政策が示された規模拡大をやっていくのには百七十五万ヘクタール程度の農地の流動化が必要だというふうに言われておるわけです。過去十年の流動化の実績を見ますというと、七十一万ヘクタールしかないんですね。つまり二倍以上の流動化が必要だというふうに見られておるわけでありますが、その可能性について数字的に根拠をお示しいただけますか。
#124
○政府委員(入澤肇君) ただいま御指摘のとおり、流動化は近年着実に進んでおります。過去十年間で、今お話しございましたように七十一万ヘクタールが移動しております。利用権の再設定だとか自作地の有償所有権移転のうちの交換を含めますと九十万ヘクタールの流動化でございます。
 今後十年間の状況がどのくらいかということで一つの試算として百七十五万ヘクタールというのをお示ししたわけでございますが、その根拠は、一つは六十歳以上で農業の跡継ぎのいない高齢農家、この農家の保有農地が四十二万ヘクタールございます。それから第二種兼業農家のうち世帯主が恒常的勤務をやっているとかあるいは自営兼業の安定兼業農家の保有農地が百三万ヘクタールあります。このように、出し手となり得る者の保有する農地が増加している。
 また一方で、必要なときに返還されないとか、あるいは返すときに離作料が必要だといった農地の貸し付けに対するアレルギー、これも解消しつつある。要するに、出し手の条件とそれから受け手の条件が整いつつあるということから、恐らく今後現在の農家戸数の減少傾向だとか、あるいは規模拡大の状況から見ますと、過去十年間の実績の二、三倍ぐらいは流動化するんではないかというふうに推計しているわけでございます。
#125
○谷本巍君 局長、出し手の条件は昔とは変わってくる、これは確かにそのとおりだ、今のお話しのとおりですよ。問題は受け手の方なんですね。
 そこで、きょうは時間もありませんから二つだけ問題点を挙げておきたいと思うんですが、まず第一番目に挙げておきたいのは価格政策の問題ですよ。
 新農政は価格政策については需給価格でいくという方向ですね。需給価格ということになってきますと、価格の安定性がどうなるのかということに問題が一つ出てきますし、それからもう一つは、これまでも内外価格差の是正ということを明文にもしながら米価など下げてきておりますね。下げ方向ですね。そういう中で果たして規模拡大が可能なのかどうかということについて私は疑問を持つということであります。
 例えば、五ヘクタールの水田農家が、六ヘクタールなら話は別ですよ、七ヘクタール、八ヘクタールと規模拡大していくときには資本装備を変えていかなきゃなりません。つまり追加投資が必要だということであります。追加投資が必要だということは、その追加投資を回収できるような計算ができるかどうかということ、これが大事なんですよ。ところが、価格政策なるものはまさしくそれに逆行するような方向になってしまっているんじゃないのかという疑問が一つある。これが第一点です。
 二つ目の問題は土地改良の問題ですよ。
 圃場整備をやらなきゃ土地の流動化というのはなかなか難しいですよ。ところが、もう一つの問題は、土地改良の負担金の問題がある。このごろは貸している方は小作料については土地改良をやったところは大抵五万円要求しできますよ。恐らく負担金の年次払いが三万五千円ぐらい。それに今度は水利費がありますでしょう。固定資産税がありますでしょう。そうすると、貸し手は五万円もらわないと合わないと言うんですね。借り手の方は五万円じゃ引き合わないというような状況があるんですね。
 そうしてみると、そうした問題をどう解決していくのかというような展望を抜きにしては、借り手の方は、貸し手はふえても借り手がないという状況、現在そういう状況が随所に広がっていますね。これが一層深刻な格好になっていくはずですよ。
 この二つの問題をどう解決していきますか。
#126
○政府委員(上野博史君) 追加投資と価格政策との関係の御質問でございますけれども、この価格というのは一本で決まるわけでございまして、農業をやっておられるそれぞれの方の経営の内容によりまして今の値段で追加投資ができるかできないかという判断が変わってくるところがあるだろうと思うわけでございます。かなり余裕のある経営をやっておられるところであれば、平均的な値段であっても追加投資ができるということになろうと思いますし、かなり規模が小さいというようなことがあって、コストの高い農業を営むということでございますと追加的な投資が非常に難しい、こういう関係になってまいるだろうというふうに一般的に言えば考えられるわけでございます。
 価格を算定いたします際には、生産費といたしまして規模拡大に伴って必要となりました経費も含めて諸経費が積み上げられておりまして、その限りでは再生産ないし規模拡大の要素も組み込まれて計算をされているというふうに考えております。
#127
○政府委員(入澤肇君) 分担があるものですから、私からは土地改良負担金と小作料の問題について御説明申し上げます。
 御指摘のような問題があることは私も承知しております。実態は一体どうなっているかということでお答えしたいと思うんですが、実勢小作料は、平成三年で十アール当たり府県で二万七千三百九十二円、北海道で二万三千六百四十円と、これが年々下がってきているわけですね。実勢小作料は下がっております。
 それから、実勢小作料の設定において指標となる標準小作料、これも耕作者の経営の安定を図るということを旨として定めることとされておりまして、これも三年ごとに改定しておりまして、平成元年度の改定では十アール当たり都府県で二万五千六百八十一円、北海道では二万二千九百五十四円と、前回改定時に比べまして都府県で六%、北海道で六・八%低下しておりまして、この低下傾向は平成四年度の改定においても引き続いております。平成五年一月末現在でも、ちょっと遅い集計なんですけれども、この改定を終了した二千六百六十一の農業委員会では、都府県では五四%、北海道では五〇%の農業委員会が引き下げをやっております。
 この標準小作料と土地改良負担金の問題を制度論としてどうとらえているかということを申し上げますと、土地改良工事費につきましては、生産力の向上を目的として土地そのものに加えられた投資であるということで、生産費用を構成するものではないという判断から、標準小作料の算定に当たりましては土地改良工事費の負担金を算定の基礎となる生産費用に含めないように通達で行政指導しているわけでございます。したがいまして、標準小作料と土地改良工事費の負担金とは制度的に切り離されているというところでございます。
 そこで、問題になるのは土地改良負担金の今度は軽減の問題でございます。
 この土地改良事業の負担金につきましては、御指摘のとおり、非常に問題があるということで、逐年財政当局といろんな話し合いをしまして軽減努力をしているわけでございます。現在までのところ、事業費単価の抑制の問題、あるいは国営事業におきまして工種別の完了制度を創設する、あるいは計画償還の制度を創設する、あるいはさらに一千億円の資金を五年間で造成いたしまして、そしてこの資金の活用によって負担金の償還が困難な地区に対しまして利子補給等の事業を行う土地改良負担金総合償還対策事業と言っておりますが、こういうものを創設する、いろんなことをやっております。
 これに加えましてさらに、市町村負担を明確化するとともに、事業費補正等の地方財政措置を充実することによりまして地方公共団体の事業費負担を支援する措置を講じております。要するに、標準小作料の制度をきちんと運用していく、それから土地改良の負担金につきましても実態をよく見きわめながら可能な限り軽減のための努力を重ねるということで今の困難な状態に対応していきたいというふうに考えているわけでございます。
#128
○谷本巍君 今いただきましたお答えのうち、官房長のお答えがちょっとやっぱり気になるんですがね。これは官房長、生産費所得補償方式が採用されましてから三十年たちましたよ。あなたのお話は、生産費所得補償方式が採用された前半の時期の話ならわかる。算定方式は一定しているんだよ。もう最近はしょっちゅう、算定要素の入れかえどころか方式自身もころりころりと変えてきているんでしょう。要するに、決めたい水準に合わせて算式なり算定要素を決めるという、そういうやり方になってきているからですよ。
 そのことが一つと、それからもう一つここで確かめておきたいのは、今の官房長の答弁からしますというと、需給価格とはいえこれからも生産費主義によって、例えば米価ですね、今やっているのは水田の話ですから米価ですね、これは決めていくということで確認しておいていいですね。
#129
○政府委員(上野博史君) 今、委員のお尋ねは、先行きどうするんだと、こういうことでお聞きになっておられるんだろうと思うわけでございますが、私どもも現在のところ価格政策について特段新しい考え方というものをまだまとめ切っておりません。現在のところの状況でいく限り、現在の価格制度というものを引き続き実施していくということを申し上げる以上に今のところ申し上げようがないというふうに考えております。
#130
○谷本巍君 中山間地域の方は全然伺うことできなくて、構造政策でどうも時間がおしまいになってしまう。
 大臣、最後にちょっと伺いたいのです。
 構造政策の手法の問題ということですね。といいますのは、農業基本法制定期にあった議論、つまり選別政策の問題ですね、今なお決着はついていないなというのが私の強い印象であります。今度、間もなく参議院にもやってくるであろう構造経営法案で見てみますというと、認定農業者を決めて、そこへ経営者的な助成を行っていくというような方向をお出しになっておるようであります。私どもから見ますと相も変わらぬ選別政策だということであります。
 農業基本法の制定の時期に私どもが議論したことをもう一度ここで思い出してみますと、農業基本法というのは、日本の農民の中から生まれてきた話じゃなくて、西欧の規模拡大、合理化農政に学んだものだった。そこのところで私どもは制定期にこの議論をやってまいりました。それはどういうことかといいますというと、西欧の農村社会の成り立ちと日本の農村社会の成り立ちというのは、成り立ちそれ自体もう性格がまるで違うということです。
 日本の水田農業で言うならば、水の共同管理等々を通してそこにつくり上がった社会というのは共同社会ですわ。共同社会というのは、競争と切り捨てが働くような社会じゃなくて、相互扶助の精神でもって、それでもって落ちこぼれを出さぬ社会なんですね。裏返しに言うならば、突出を許さぬ社会でもあるんですよ。そして、農地のことについて言えば、農地は先祖からの預かりものであって、その利用については村社会に迷惑をかけるような利用の仕方はしないという慣習が伝統的にあるんですね。
 ところが、競争と切り捨てに通ずるかのような選別政策、農林水産省は今もってそれにしがみついておる。これじゃ私はうまくいかないと思うんですよ。規模拡大をやってきた皆さんに聞いてごらんなさい。もうどれだけ隣近所から集落の皆さんに気遣いをしながら規模拡大をやってきたことか。
 それからまた、認定農家の問題にしても、当初私どもが地域へ行くというと、農林省はこれを考えているよという話をして、皆さん手を挙げますかというと何とみんなが答えたか。俺はそれほどばかじゃねえよという答えが多かったですよ。中には、てめえが手を挙げりゃ袋たたきに遭いますという話だってあったですよ。村社会というのはそういうものですよ。
 であってみるならば、こうした選別政策のあり方というものの継承というのは、構造政策を私はうまくいくような状況にしないのではないのかというふうに思います。その点大臣どうお考えになっておりますか。
#131
○国務大臣(田名部匡省君) この認定制度は、従来の農業経営規模拡大計画認定制度を拡充した制度だと。おっしゃるとおりいろんな変化の中で確かに、私どもの小さいころは、今委員お話しのように、農村社会というのは本当に、共同、相互扶助、そういうことで和気あいあいと楽しそうに田植えでも何でもしておった。私もしょっちゅう行っていましたからよくその姿を見ておったわけですが、だんだん経済が発展してきて、後継者がどんどん不足して、農村に人がなくなった。それと一方では機械化によって田植えをするようになった。このことがもう農業の私は一大改革になったという気がするわけですね。
 ですから、いろいろといいときもあったが、今日的に考えると、確かに西欧型かどうかわかりませんが、やっぱり経営管理というものをしっかりしなきゃいかぬ時代になったし、企業的な多少感覚で経営というものを、機械を利用すればそういうことになっていくということの必要性というものが生まれてきたと思うのであります。私は、規模拡大による経営改善に限らず、地域の実態に応じて、経営の複合化などの生産方式の合理化でありますとか今申し上げたような経営管理の合理化、そういう経営改善も認定の対象としなければならぬ時代になってきたということであります。
 この制度は、農業生産の担い手の減少でありますとか高齢化によって農業生産の維持が困難になりつつある状況のもとで、計画的に経営改善を図ろうという農業者に対して、これから重点的に支援を行うということによって意欲を引き出す。今の若い人たちは、本当にそういう面では経営感覚に物すごくすぐれておりますから、そういう担い手を将来にわたって確保していこうということでございまして、まあまあとにかく何とか前進させてやりたいという考え方であります。
#132
○谷本巍君 大臣のお気持ちも私はよくわかるんです。わかるんですが、構造政策の手法というのは、日本型農村社会のよさを生かした構造政策をどう展開するかという意味では、私自身ももっといろいろ皆さんとは違った具体論を持っておりますから、それはまた、時間が来てしまいましたから、法案が出てからひとつ申し上げたいと思います。きょうはこれでやめておきます。
 ありがとうございました。
#133
○矢原秀男君 まず、お伺いいたしますけれども、雲仙・普賢岳の土石流等による農林水産関係についていろいろと被害が出ているようでございます。このことにつきましては、四月二十八日と二十九日と五月二日に発生した雲仙・普賢岳の大規模土石流の被害対策、こういうことを検討する第十回災害対策本部会議が七日に国土庁で開かれております。
 私も心配をしているわけでございますが、農林漁業の再建問題というのは大きな現地ではテーマになっておるわけでございます。そういう意味におきまして、被害状況の実態の分析、そしてそれに対してどういうふうな対策をして、現地の被害者の皆さんの長年の御苦労に対し、またこういうふうな非常に厳しい状況に対して希望のある対策をやっていくか、こういうことは一番大事なことだと思うわけでございますが、これについてまずお答えをお願いしたいと思います。
#134
○政府委員(今藤洋海君) 去る四月二十八日から二十九日にかけましてと、五月二日に発生いたしました雲仙岳の土石流によりまして農林水産業に関係する被害が出ておりますが、現在までのところ県からの報告では、農地農業用施設、林地荒廃、こういったことを中心に約四十一億円の被害ということで、これまで二年間の被害合計では六百七億円という大きな被害になっているわけでございます。
 農水省といたしましては、これまでも自作農維持資金といった資金対応でございますとか、防災営農施設整備事業、こういった荒廃対策の実施、さらには災害関連の緊急治山事業、こういった種々の対策を打ってきているわけでございます。今回の土石流につきましても、早速に被害状況の把握と対策の指導ということで、九州農政局及び本省から農地農業用施設なり林野関係の担当官を現地に派遣しておるところでございますが、特に今回橋が流失をいたしました広域農道は地域の営農なり生活に大きな役割を果たしているということで、この早急な通行が可能となるような対策を現在県の方に指導しておるところでございます。
 また、雲仙岳北東部の中尾川流域につきましても土石流対策のために治山ダムを設置しておったわけでございますが、今回の土石流によりまして効果を発揮したところではありますけれども、これが埋まってしまったというようなことで、今後の土石流に備えるためにもこの堆積した土砂を緊急に除去するということと、さらには再度災害を防止するため上流部に新たな治山ダム等を設置するということにしておるところでございます。
 なお、ビニールハウス等一部営農施設の被害が出ておりますので、共済金の支払いを行うということにいたしております。
 今後とも、本格的な農地の復旧等につきまして、地元の農家の御要望、さらには県とも十分協議をいたしまして早急に進めてまいりたい、このように考えるところでございます。
#135
○矢原秀男君 被害の実態と対策も講じる、こういうお話でございますが、農水省専門の立場としてさらにもう少し具体的にお答えをしていただきたいと思います。
#136
○政府委員(今藤洋海君) 今回の四月から五月にかけましての土石流によりましては、先ほどちょっと申し上げましたように、農地農業用施設、それから山の関係の被害が中心でございます。特に、農地農業用施設につきましては、広域農道の水無川にかかっております茶屋の松橋という橋が流失いたしたわけでございます。それから、新たに農地のつぶれといいますか、農地の被害ということで約八十二ヘクタールが今回被害を受けておりますが、これは既に過去にも被害を受けたところと重複もしてございまして、純粋に新しく被害が広がったのは五十三ヘクタールと、こういったことに相なっております。
 これらにつきましては、九州農政局及び構造改善局の方から現地に担当官が参っておりまして、特に交通の基幹となっております広域農道の茶屋の松橋の復旧につきましては、早急にこれを復旧しなきゃいかぬということで県といろいろ打ち合わせ等をしておるところでございまして、なるべく早急にこの復旧にかかりたいということを考えております。
 また、農地の被害につきましては、これまで過去にございましたのも合わせまして、地域全体を災害関連事業と申しますか、全体として農業経営に支障がないような形で復旧するよう、現在、計画を進めているところでございます。
 また、山の方の関係につきましては、今回、新たに中尾川流域という方に土石流が発生したということでございますが、これにつきましてあらかじめ治山ダム等を施工しておったことによりましてある程度災害が減少といいますか防げたということでございますけれども、そのダムも全部土石流で埋まったということであります。また、それにさらに上流部にも必要な治山ダムを設置いたしまして、今後の土石流対策ということに対応してまいりたいということで、今回の特に農地農業用施設なり山の方の災害に対しましては、私ども現地の方にも参りまして、全力を挙げて取り組んでおるところであります。
#137
○矢原秀男君 この問題については、国土庁長官を本部長として、農水省や建設省、二十四省庁に広がっているわけですから、非常に大規模な大変な対応というものを一生懸命政府がしていらっしゃるなということを実感として感じるわけでございます。
 この件で農水大臣にお伺いをしたいんですが、私も個人としては、大きな災害等では大概この十数年間全国を走り回って、現地を見ながら対策のいろいろな面でも動いておりますけれども、ここだけは私も行っておりませんので、自分自身も非常に悔いが残っているわけでございます。国土庁長官が本部長になっているけれども、農水としては非常に大きな被害がある。農水大臣としてそういうあれで現地に行って、被害者の皆さんを激励し、農水としてはこうなんだと、こういうふうに希望的な、本当に安心させてあげるような、多忙だと思いますけれども、農水大臣として解決の方途の対策を持って現地に乗り込んでいって被害者の方とお会いになる、こういうふうな日程というのは組んでいらっしゃるのかどうか、伺いたいと思います。
#138
○国務大臣(田名部匡省君) 特別に日程を組んでおりませんが、先般も何とか日程を調整して行くことができないかという相談はいたしました。何分にも毎週のように公式日程が土日入ってまいりますものですから、なかなかその日程の調整に困難をきわめておりますけれども、何とか時間がとれれば現地に行って激励をしてきたい、こう考えております。
#139
○矢原秀男君 どうかよろしくお願いをいたします。
 そして、きょうの朝日新聞の一面のトップで「旧ソ連、日本海に毒ガス投棄 ロシア政府委員長が明かす 第二次大戦の直後 三万トン容器の腐食進む」と、これは既に皆さん目を通していらっしゃると思います。私も、先般も日本海に旧ソ連の核廃棄物の問題で、日本海の水産物といえば本当にきれいだという我々の感覚が、あっこれは大変なことだな、それと人体被害はどうだと、そういう心配をしているきょう、またこういうふうなことが、今回は毒ガス投棄。水産物と人体被害というのが、日本海に面する各国の人たちに対して、特に日本もそうでございますが、もし影響があれば大変なことになるなと。
 それで、内容をちょっと見ておりますと、「日本海に計三万トンを超す毒ガスの「イペリット」が入った兵器やコンテナを大量投棄した」し、この三万トンを超すイペリットというのは、「強い毒性をもち、」「化学兵器の中でも、ひどいやけどのような症状を起こす「びらん剤」に分類される。」、こういうふうなことで「吸い込むと肺や気管が侵され死亡する。」と、こういうふうなことが書かれております。そして、このことについては「第二次世界大戦直後、旧ドイツ軍から押収した同種の毒ガスを、旧ソ連軍がバルト海に大量投棄していたことも、最近明らかにされている。」そして、「バルト海周辺の漁民が海底から引き揚げた漁網などによって、皮膚のかいよう、肺のむくみによる呼吸障害などの被害が出ている」、こういうふうにも言われております。
 この報道の中で朝日新聞も防衛庁に尋ねておりますけれども、防衛庁としても、引き揚げは危険を伴う、どこに捨てているのかどうか、そういうこともわからない。また、化学兵器を研究している神奈川大学の教授は、「被害を防ぐには最低限、どこに、どれだけ、どういう状態で捨てられたかをつかむ必要がある。処理のために引き揚げることは、むしろ危険を伴う可能性もある。今後、どうするかの判断は難しい」、こういうあれで出ているわけでございます。
 専門の水産庁としては、科学技術的にどういうふうに対応すれば水産物と人体被害というものが未然に防げるものなのか。それとも、かつてこういうふうな事態が出てきたけれども、水産庁としても報告は受けたけれども、まさかこういう明確なものとははっきりわからなかったから、過去にはあったけれどもそのままになっているとか、いろいろの情報というものが今までにも入っておったと思いますけれども、まずきょうの朝日新聞のこの毒ガス投棄に対しての分析、それから対応、お答えをお願いします。
#140
○政府委員(川合淳二君) この記事は私どもも初めてけさ読みましたので、驚いているところでございますけれども、いずれにいたしましても、この記事だけではわからないところが多いわけでございます。先生も御指摘ございましたように、投棄場所あるいは投棄の量、それから内容などについて詳細な資料が必要だと思っております。
 実は、核廃棄物の投棄問題につきまして本日からモスクワで両政府間の合同作業部会が開かれております。私どもの方からもそこへ担当課長を派遣しておりますので、この点について、この記事にもございますが、向こうから「日本側の協力を求める。」というような書き方をしておりますけれども、その辺について私どもの方からもただしたいと思っております。そこでどの程度わかるかということもございます。その上でさらに詳細な資料などを求めていきたいということを現在考えているところでございます。
#141
○矢原秀男君 御答弁わかりましたけれども、もしこれが今私が申し上げたように日本海の水産物と人体被害等に対して、核のその問題もありますけれども、含めて、こういう想定の場合には大変なことになりますと、そのことについて答えていただきたいことが一点。
 しかし、まあ大体の推定では大丈夫だと思いますとか、いろんな角度からの分析があろうかと思いますが、そういう点についての御答弁を伺います。
#142
○政府委員(川合淳二君) その内容自体につきまして十分な知識を持っておりませんので、今のお尋ねについては差し控えさせていただきたいと思いますが、実は旧日本軍が投棄したものがありまして、それについての処理についてはある程度の知見を持っております。
 これは、ここの新聞にも書いてございますが、陸上に引き揚げることの方がむしろ危険だというような判断もございまして、そういう処理が望ましいのではないかというような知見を持っておりますが、いずれにいたしましても詳細な点についてまだわかっておりませんので、それを確かめた上で対応を考えていかなければいけないと思っております。
#143
○矢原秀男君 私もこれは大変なことだなと思っているんですが、最後に農水大臣、この朝日新聞の報道に対して、当然読まれたと思いますけれども、一番所轄の中心、責任大臣として、今後どう対処すべきであるのか、これを伺っておきたいと思います。
#144
○国務大臣(田名部匡省君) 再三にわたってこういう問題が起きるという、この考え方といいますか、どういう考え方でこういうことをするのか、私も全く理解できません、これ。まあ、ああいう国柄でありますからこういうことを平気でやれるんだろうと思いますけれども、いずれにしても起きたことについては、これは責任を持って私どもも安全対策というものをとっていかなきゃならぬ。
 自分で処理ができないということも、何かやっては日本に何とかしてくれという、もうまさに無責任だとしか言いようがないんです。しかし、我が日本の漁民に影響のないようにどうするか、これはこうとしかもう考えようがありませんので、今長官が申し上げたように、実態がわからぬとこれまたどうするといっても、早急に資料を入手して、政府挙げて対応する問題ですから万全を期すための努力をしていきたい、こう考えております。
#145
○矢原秀男君 どうか万全の対策をよろしくお願いしたいと思います。
 次に、同僚議員の御質問と重複するかと思いますけれども、東京サミットにおいて米を初めとする農産物の市場開放問題が議論されるんではないかと思います。日本も議長国でございますのでこの対処方針というものが必要になろうかと思うわけでございます。
 私はこの問題を重複避けながらずっと申し上げたいと思っておりますけれども、ウルグアイ・ラウンド農業交渉の主な経緯を私も改めて認識しているわけでございますが、一九八六年の九月、ウルグアイでこの宣言というものが発表、交渉されたわけでございます。そのとき交渉対象の十五分野で、関税、非関税措置、天然資源、繊維及び衣服、農業、熱帯産品、ガット条文、MTN合意、セーフガード、補助金及び相殺措置、知的所有権、貿易関連投資、紛争処理、ガット機能、サービス、これが一九九〇年末までの四年間というふうなことで交渉開始がなされたわけでございます。
 このときは、農業交渉の部分の背景というものの一つは、世界的な農産物の構造的過剰を背景にして補助金つき輸出の増大等輸出競争が激化し、農産物価格が大幅に低下するなど世界の農産物市場が悪化をして混乱をした、こういうふうな背景の中でこういうものが進められて今日に至ったわけでございます。
 私も、結論としては、本当に農産物というのは国際分業もよいけれども、みずからの国が責任を負って国民のために食料だけはきちっとやらなければいけない、こういう立場から見ておりますと、経済の分野とかいろんなものとは違う一面というものがあるというのが皆様と一緒の考えでございます。
 そういうふうなことでございますけれども、相手のあることでございますから非常に腹を締めていかなければいけない。日本や米国、ECの立場の対比、こういうふうなものを見ておりましても、日本の国内支持の問題。穀物、砂糖、牛乳・乳製品について、AMSの基本削減目標を三〇%とする。一つは、AMSの要素は、市場価格支持及び不足払い。また、三〇%の基本削減目標から削減実績を控除。輸入及び生産調整の割合を考慮。この国内支持。また、一面では国境措置。基礎的食料については、所要の国境措置をとり得るよう、ガットに新たな規定を設ける。十一条二項(c)品目の維持・明確化を図り、生産制限を実施している品目について引き続き国境措置をとり得ることとする。また、AMSの約束をしない品目で輸入制限を行っていないものについては、関税引き下げを検討。また輸出競争については、段階的削減を通じ、最終的に撤廃。
 こういうふうな日本、米国、ECの立場の対比というものがあるわけでございますが、こういう中で議長国の日本としては、私は農水省の立場としては、この七月のサミットについては農業分野のところまでは来ないのではないかと、こういうお考えも一面では持っていらっしゃるのではないかなと思うんですね。しかし油断をしてはならない。日本が拒否している農業分野においてもサミットの中でどういう形でそこまで波及した議論というものがなされてくるかもわからない。だから、政治日程的に米問題での政治決断は秋以降であると、こういうふうな読み方をしておりますと、国内の方で準備ができていない、大変なことになろうかと思うのでございますが、これに対する大臣としての決意を伺っておきたいと思います。
#146
○国務大臣(田名部匡省君) 私は常に最悪の状態というものを念頭に置きながらこれには対応していくべきものといつも考えております。ですから、今回もないということは毛頭考えておりません。
 ただ、まだ東京サミットにおける議題については現在サミット参加国で調整中だということで、農産物のことが議題になるかどうかというのはまだ情報として入っておりません。ただ、四極通商会議がありまして、通産大臣が今度行くわけでありますが、いずれにしても農業のほか、市場アクセス、サービス、知的所有権、貿易ルール、いろんなことを抱えておりまして、サミットでこれだけを議題にしても大変な私は論争になるであろうと。サミットは別な議題もたくさんありますので、どうなるかということは今から予測することはできませんけれども、いずれにしても話し合われた場合には、従来から私が主張しております我が国の困難な問題についてこれはもうぜひ理解を得る努力をしなきゃいかぬというふうに考えております。
#147
○矢原秀男君 よろしくお願いをしたいと思います。
 次に、新政策及び実現に向けての具体策の一面を伺いたいと思います。
 「新しい食料・農業・農村政策の方向」、この新農政プランというものは、一面では非常に明るい、すばらしい計画課題である、こういう評価もございます。しかし、その方向における一つ一つの解決というものはもし実現するとすれば大変な御労苦もあろうかと思うわけでございます。
 私も農家の生まれでございますけれども、個人が百姓しているのと、日本の国の国際的なそういう観点の中から国の指針というものを皆様方がつくっていらっしゃるわけですから、一面では非常に大変だと思うわけでございますが、先般、私も愛媛大学の農学部教授の麻野教授の論文を見ながら、非常に私たちにもわかりやすい提言をしてくれているなと、そういうことを感じましたので、含めながら当局の御答弁をいただきたいと思います。
 まず、「考え方の第一は、自給率の低下傾向に歯止めをかける食料政策である。世界の中長期的な食料需給は逼迫基調であり、これを踏まえて、単純な国際分業論でなく、自らの国土資源の有効利用が必要である。」と、こういうふうにも明確に訴えておられます。この点については、世界の中長期的な食料需給というものが、ちょっと開発途上国と先進諸国との間の数量が少しずつ崩れているなとは私は思うわけでございますけれども、今申し上げた「自給率の低下傾向」云々、この第一の質問に御答弁をお願いしたいと思います。
#148
○政府委員(上野博史君) まず、国際的な長期的な食料需給の見通しの問題でございますけれども、開発途上国を中心にいたしまして人口が相当急速に増加をいたしているわけでございます。
 一方で、生産力の方はといいますと、耕地の新規の開発というものが大体限界に達しておりますし、それから、従来単収の伸びというのがかなり大きくあったわけでございますけれども、今後、今までと同じようなペースでそういう人口の増加をカバーできる程度に単収がふえていくということもなかなか望みにくい段階に来ているんではないかというような、そういう幾つかの要因を考え合わせまして、これは人によっていろいろ予測の仕方の違うところはあるわけでございますが、なかなか楽観はできないなと。どちらかというと、需給が逼迫する方向に行くのではないかと、こういうふうに考えたわけでございます。
 そういう環境のもとにおきまして、私どもが持っております農業生産関係の資源をフルに有効活用するということによりまして、できるだけ所要の食料を自国内で供給するという考え方を立てるのがいいんじゃないかというふうにまず考えたわけでございます。
 ただ、そうは言いながら、生産面で言いますと、農地面積にも限りがあるわけでございますし、農業就業者の老齢化、就業人口の減少というような現象も一方でございます。それから他面、消費者の食生活の高度化ということは依然として続いておりまして、えさの輸入というようなことがどうしても避けられない、たんぱく質資源の輸入というようなこともますますふえていくんじゃないかというふうに見通されている現状におきまして、食料の自給率を向上させていくということについてもなかなか問題がある。
 しかしながら、現状程度よりもさらに下がっていくということは、現在の水準が非常に低いところに来ているということから考えて、これは何としても避けなければならないことだろうということで、現状程度の水準を維持するということにストレスを置いたということでございます。
#149
○矢原秀男君 官房長、「農業政策の目標を、農業を職業として選択し得る魅力あるものとする」、これは後継者とかそういう数字を見ると必要だなと思いますけれども、この問題。
 それから、「規制と保護の在り方を見直し、市場原理、競争条件を一層導入する。」、こういう問題に対して具体的にはどういうことを考えていらっしゃるのか、伺います。
#150
○政府委員(上野博史君) 特に、若い人々がこれから農業を担っていっていただかなきゃならぬわけでございますけれども、そういう方々の立場に立って物を考えてみます場合に、長い自分の一生を農業に従事するという決断を下すためには、他産業並みの所得なり他産業並みの労働条件というようなものを獲得できる、そういうもとで、自然条件に恵まれた農村地帯で生活をしていくということにつながっていくんじゃないかというふうに考えるわけでございまして、今後の農業の経営主体というものについては、そういう条件を満たすことが非常に大事なのではないかというふうに考えているわけでございます。
 それから、競争条件の問題について言いますと、これは日本の経済全体がそういうシステムの上にあるということが一つ大きな前提でございますけれども、農業生産ということを考えます場合には、消費者サイドの利益というものも当然考えていかなきゃならないわけでございまして、価格だけではなくて、品質面でよりよいものを供給するというのも、これはやはり競争があってこそ実現がされるんではないかというふうに考えるわけでございます。いいものをつくれば、それだけ高く売れるというような形で生産者へのはね返りも考えられるわけでございまして、十分な競争条件がそこに存在をするということが農業の発展、あるいは消費者への寄与ということも含めて必要な条件ではないか、かように考えている次第でございます。
#151
○矢原秀男君 農村地域政策というのは非常に難しい問題がありますけれども、「農村と都市の相互補完・共生により、居住空間や余暇空間として、国民共有の財産であると評価する。そこで生産基盤と生活基盤を一体として、農村整備を推進する。」、こういうふうにあるんです。生産基盤と生活基盤の一体化、農村と都市の相互補完・共生、非常に難しい問題等々もあるわけでございますけれども、こういう点についても細かく伺いたいと思います。
#152
○政府委員(上野博史君) これは、農業に従事する方々あるいは農家の方々が生活をする場が農村社会、農村でございまして、都市の生活から得られる便益と近いものが日常の生活において得られるということが、その地域に住んでいくという、人を引きとめていくという最低の条件になる。緑がいっぱいある、自然環境が整っているというだけではなかなか都会への魅力は断ちがたいということにもなるわけでございまして、そういう意味で、生活道路の整備であるとか、あるいは集落排水の整備というようなことによりまして、より快適な生活が楽しめるような条件を整えてまいらなければならない。
 こういうような整備をいたします場合には、当然それぞれの集落といいますか地域の土地利用の条件等を総合的に勘案いたしまして、住宅地としての土地利用、あるいは農用地としての土地利用、こういうものを総合的にうまく配置をしていく、そして一体的に整備をしていくということがどうしても必要な方法になるだろうというふうに考えているところでございます。
#153
○矢原秀男君 それから、「新鮮・良質・安全な食料を、適正価格で供給し、消費者視点に立った流通面での改革を行う。」、この一つ一つは本当に大切なことでございますけれども、特に流通面で旧ソ連や中国でも、この問題で非常にでっかい国は大変な状況になっております。
 そういう中で、これは的を射た、流通面は日本の国は非常にセクションが多過ぎますけれども、そういう合理化、適正化も必要でしょう。
 それからまた、地域資源と国土というものを良好な状態で後世代へ継承する、これは国民的な視点の政策展開だと思うわけでございます。これらについても具体的に伺いたいと思います。
#154
○政府委員(上野博史君) 良質で、より安いといいますか、消費者に好まれるような農産物を供給するということが農業の果たすべき最大の役割でございますので、それは先ほど来申し上げておりますようを新しい農政の対応によりまして極力確保してまいりたいというふうに考えております。
 それから、流通の関係の問題は、これは原料段階から最終の消費者に製品を届ける、生産物を届ける大事なプロセスでございまして、これこそより効率的にできるだけ新鮮なものが届けられるように努力をしてまいらなければならない別途の施策だというふうに考えております。
 それから、農業というのは、必ずしも食料を供給するというだけではなくて、自然環境を保全し国土を保全するという極めて大事な役割があるわけでございます。これは、農業が農業生産として非常に正常にうまく円滑にいってこそ初めて果たされる役割でございまして、農業が健全に営まれていくという上でぜひとも確保できるようにし、後世へ国土資源あるいは地域資源というものを十分な形で残してまいりたいというふうに考えております。
#155
○矢原秀男君 大臣に伺いたいんでございますが、これらの問題についても、かつて農業基本法三十年の軌跡を見ておりましても、牛乳、ミカンとか、拡大品目のそういう枠の拡大、自由化という中で生産調整を余儀なくされました農業従事者の方々の非常な御苦労というものも今日まで続いているわけでございます。
 そういうふうな中で、この新農政のプランというものが農業基本法の目標と現実異なっている問題、差、その分析を行って、まず原因究明をすることも必要でありますし、これが机上のプランに終わっていくというふうなことになればまたまたいろんな問題が起きるかと思うわけでございます。そういう意味で、大臣に決意としてこの新農政プランの具体化ということについての御見解を伺っておきたいと思います。
#156
○国務大臣(田名部匡省君) 私も所管大臣として日本の農村社会というのを本当に守らぬと大変なことになるという認識を持っております。
 ただ、東京に住んで、どうしてこの大都市に若い人たちが魅力を感ずるのかなといつも考えるんですけれども、決して通勤の条件がいいわけでも、住居の環境がいいわけでも何でもないんですが、これが魅力があるというのは、やっぱりそこに情報というものは集まるし、若い人たちに満足させるいろんなものがあるんだろうと思うんですね。
 ただ、最近こうして見ておりますと、農山村に余暇を過ごすために行く人が非常に多くなってきたということは、反面ではそういうものを求めているんだろうと思うんですね。その求めるところで生活ができないというところに問題があるわけでして、本当にそういうところに生活が十分できる環境というものをつくる。あるいは多少とも、大都市と同じものをつくる必要はないので、環境というのを本当に整備して、若い人たちにもっと別な意味でのコミュニケーションができる、そんなものを提供するということと、もうこれだけ交通網が発達してまいりますと、何も毎日ここに住まなくても、時々出てきてもそういう魅力というものを感じてやれるということさえ条件が整っていくならば、狭い国土ですから十分やっていけるだろう、私はこう思います。
 そこで、肝心の農村というものをどう維持していくかということを考えると、どうも先々の出生率だとかいろんなことを考えていきますと、何としてもやっぱり少ない人数で農業というものを魅力あるものにしていかなきゃならぬということから、この新農政というものに本当にまじめに取り組んでいきたい。
 私は全部ができると思いません。大体十から二十ヘクタールというのも、この程度やればこうなりますということを示しているわけで、それはやれるところもあるしやれないところもある。しかし、やれないところについても、地域の創意と工夫によって所得面ではこういうふうにいけるというものを地域ごとに、上から押しつけることなくつくっていただいて、私は支援していきたいというふうに考えております。
 多様に考えてもらって結構でして、決してこれをやらなきゃいかぬとか、この方法がいいとかというのを私ども申し上げるつもりはありません。農家の皆さん方が団体の皆さんや市町村とよく相談して、本当に一番効率のいい農業というものは何なのかということをよく考えていただきたい。そうすることで、次の若い人たちが今度はおれたちの出番だという魅力のある農業にしていきたい。
 そのためには、去年の米価のときにもう既にパソコン、ファクシミリ、それから企業的な感覚の勉強をしてもらう、そういうものを米価の中に織り込んでありますので、逐次新聞を見て、私の地元のことを新聞でよく見ておりますが、農協でファクシミリを使って農家と直接いろんなことができるようにしようということでもうスタートするとか、いろんなことをやっていただいて、全国的に非常に前向きで取り組んでいただいておることを見まして、私は本当にうれしく思っております。
 しかし、どうしてもできないところはあると思うんです、この広い日本の中には。じゃ、そういうことは一体今後どうしていくかということで、もうできるだけ自力でやっていける、業として農業をやっていける人たちをまず育てる。それから、どうしても面倒を見ていかなければならないところはまたそれなりの手だてをしていくというふうにしませんと、全部を面倒見ておりますと、みんなが不満が残ってなかなかうまく進まないということを考えておりまして、一生懸命やります。大変つらい苦しい道でありますけれども、これを乗り越えて、本当によかったなと言われるようにしたい、こう考えております。
#157
○矢原秀男君 時間の都合がございますので、最後の質問にいたします。
 質問で来ていただいている方、申しわけないんですが次回に回しますので、よろしくお願いいたします。
 大臣に最後の質問をしたいと思うんですが、先般、ワシントンで四月末に閉幕した先進七カ国蔵相・中央銀行総裁会議が行われました。その声明の中で、日本の総合経済対策、一つは内需拡大のインフレなき持続的成長、こういうことが評価をされておるわけでございますが、この総合経済対策には農水省関連の施策も示されております。
 四月十三日発表の政府の総合経済対策はトータルで十三兆二千億円で、史上最大規模と言われております。そういう中で農水の予算関連も出ているわけでございますが、こういう諸問題について、まず当局で具体的な説明をしていただきまして、大臣として最後の、農水のこれらに関する施策、まとめの決意を伺いたいと思います。
#158
○政府委員(上野博史君) 今回の景気低迷に対応いたしますために、四月十三日に総合的な経済対策が決定されたわけでございます。この中身は、一つは当初予算の公共事業の施行促進、契約の早期締結というようなことが内容になるわけでございますけれども、これはほぼ前年と同じぐらいのペースで早期に契約を締結する。ちょっと数字はうろ覚えでございますけれども、七七%ぐらいでしたかの前倒し締結を進めるということで努力をいたすことにいたしております。
 それから、さらに追加的な投資をするということで、委員お話しございました約十三兆円の社会資本整備等を中心といたします投資をするということになるわけでございまして、私どもといたしましても、この新しい総合経済対策の趣旨でございます新社会資本の整備あるいは生活関連の公共投資の充実というような点に即応いたしまして対策を組むということで現在検討をいたしております。
 公共事業の関係で言いますと、集落排水を重点にいたしまして、立ちおくれた農山漁村の生活環境の整備であるとか、あるいは情報化への対応、地域の活性化のための基盤整備であるとか、あるいは我が省関係の研究施設の整備あるいはレベルアップを図るというような内容の研究開発基盤の整備であるとか、あるいは災害復旧の早急な実施というようなことを内容とする具体的な計画を現在検討中でございます。
#159
○国務大臣(田名部匡省君) まだまだ農山漁村対策としては相当時間もかかる、費用もかかると思います。しかし、何とか取っかかりをつけて新しい総合経済対策、この中身についてはまだまだ詰めなきゃならぬ部分というのはあるわけですが、「新」とついていまして、どういうものをこれに入れるかという議論はこれからしていかなきゃならぬ問題はあります。
 ただ、バブル経済の影響、農村や漁村というものはもう何にも、株にかかわったわけでも土地を買ったわけでもない。しかし、その影響というものは受けているわけですから、本当に気の毒なことをしておる。都市に確かに人口は多いものですから、その対策に追われることは私はわかるんですけれども、農山漁村というのは別途に置かれて余り議題にならぬという、これがどうも気になりまして、閣議でも何回も、我が省だけではとても手に負えませんから総合的にやってくださいということで、自治省も国土庁も通産省もようやく理解を示してくれて、一体となって取り組んでいくと。本当に山村というものはなくなりますよということで、ようやく閣内でも大変だという気持ちを持っていただいておるわけであります。
 そういうことで、今官房長がお答えになりました集落排水でありますとか、情報化の対応ということ、これがなければもう絶対だめだということを私は従来から申し上げてまいりましたが、ようやくそういうもので何とか芽を出してもらえるということです。離れていればいるほど情報化の時代におくれるようなことがあってはならぬし、それがまた農業振興にうんと役に立つわけです。
 そういうことでありますとか、特に研究開発ということについて随分議論が閣議でもございまして、これはもうやらなきゃいかぬということになりまして随分力を入れておることでありますから、それは私どもも研究機関を持っておりますので、そこでしっかりとした対応をしていただかないと、それも将来的な研究も大事でありますが、農家にとって今やっていることの研究ということもしてあげないとということで、こういう面についても努力をしていかなきゃいかぬ、こう考えております。
 いずれにしても、この先も委員の皆さん方のお力添えをいただきながら、農山漁村というものを本当にもう少し何とかしてやらなきゃいかぬというふうに考えております。
#160
○林紀子君 私は、まず大臣にお伺いしたいと思います。
 JA全中の石倉常務は、昨年四月二十八日の農業新聞、「新政策への注文」というシリーズの中で、「前川リポート・臨調答申に基づく昭和六十一年の農政審答申「二十一世紀へ向けての農政の基本方向」は、まさしく臨調答申の農業版そのものであり、価格引き下げなどに象徴される合理化路線が、今日のわが国農業・農村の危機的状況を加速させてきた。 その路線を「反省」することが先決で、「新政策」の枠組みの大前提としなければならない。」、こう述べております。
 大臣、新政策はこうした反省の上に立って行われたものなのか。石倉常務が指摘したこのことに対してどのようにこたえているのかということをまずお聞きしたいと思います。
#161
○国務大臣(田名部匡省君) 石倉常務の真意というものは、どういうことを言ったかというのは私はお会いして聞いておりませんのでよくわかりませんが、農業・農村は、今までも申し上げておりますように食料の安定供給でありますとか国土や自然環境の保全、いろんなことを有しておるわけでありまして、農政はこうした農業の役割が十分発揮されるようにすべきものであるという点については石倉常務も我々と考えが同じであろう、こう私は思うんです。
 ただ、高齢化の進展、新規就農者の減少、農業を取り巻く現状のもとで、このような目的を達成するためにどういう施策をとるかということでありますが、基本的には適切な国境措置を講じながら、土地利用の集積による経営規模の拡大を通じて農業就業者が他産業並みの所得と労働条件あるいは労働時間、そうした他産業並み、こう申し上げておりますが、そういうことができるような経営を育成するものであるべきだと実は考えておるわけであります。
 特に、価格政策については私もいろんなところで要望を受けます。価格政策というのはなかなか難しくて、どこでとらえて価格を打ち出すかというのが非常に難しいんです。ですから、どうもどこで線を引いてもその線の下の人は不満が残るし、なかなかこれは本当に難しい、私も何回かやってみましたが。しかし、農業構造の変革によるコスト削減に努めるということは、この間も生産者の御婦人の皆さん、消費者団体の女性の皆さんに役所へ来てもらいまして懇談会をいたしました。もう大体網羅する団体の皆さんに全部来ていただいて、みんな意見言ってくれということで聞きますと、やっぱり消費者の側の人は、安全で安くて新鮮でと、こう言うんです。それで、国内で自給ということは賛成だ。ただ、条件としては安くなければいかぬと、こう言うんですね。しかし、安くといってもこれは限度がありますので、しかしその努力はしていかなきゃならぬということになります。ですから、コストの削減に努めるということは、今の規模程度では削減になりませんので、規模を拡大しながらどの程度下げられるかは別でありますけれども、その努力はしていく。
 それから、需給事情を反映させた価格水準としていくことが必要であるが、その際、価格低下と育成すべき経営体の規模拡大などによるコスト削減に私がいつも言っているタイムラグを生じないようにしなきゃいかぬ。規模拡大してさっとあれしたからもうすぐ削減なんだということではなくて、そのタイムラグをどうやっていくかということは、農家の人たちにとっても私は大事なことだと思うんですね。ですから、その場合でも規模拡大の人とそうでない人との価格政策というものをどうするかということになると、これまた大変難しい問題ですが、一方では消費者という方々がおるんですから、その辺を十分にらみながら適正な価格ということにしていかなければならないというふうに考えております。
#162
○林紀子君 今の大臣のお話の中で一番よくわかりましたのは、価格はさらに下げられるであろうということなわけですけれども、農産物の輸入自由化拡大政策の中で我が国の農業は今大変な事態に至っている。食料自給率は四六%に落ち込んで、農産物価格の引き下げや、そして減反の押しつけなどで営農意欲が著しく低下し、その結果として後継者は不足し、耕作放棄地も急増している、そして農村の高齢化と過疎化、こういう事態になっているわけですね。
 この現状の認識につきましては「新しい食料・農業・農村政策の方向」、これも「はじめに」というところで書いてあります、確かに。しかし、ここに書かれているのは、まさに自然現象でこんなふうになったというような形でしかとらえられていないわけですね。しかし、どうして農村が今こんな状況になっているのか、農業がこういう事態に立ち至ったのかそういうことをはっきり責任を明らかにする、そしてその責任を明らかにした上でどういう方向で解決するかという方向を見出さない限り的確な政策というのは打ち立てられないのではないかと思うわけですね。そういう意味では今回の新政策というのはその責任を明らかにするという一番大切なところが抜けている、土台が狂っている、こういうことではないか。ですから、その後に出てくるものも机上の空論というような形になっていくのではないかということをまず私は指摘しておきたいと思います。
 そして、具体的なことについてお聞きをしたいと思いますけれども、新政策では「農業生産法人の一形態としての株式会社については、農業・農村に及ぼす影響を見極めつつ更に検討を行う必要がある。」、こういうふうになっているわけですね。農水省は、農業生産法人の一形態として株式会社を導入するということについて現時点では不適当だと考えていらっしゃるのか、そしてその先さらに検討するというのはどういうことを意味しているのかということをお聞きしたいと思います。
#163
○政府委員(入澤肇君) ただいまの御指摘のとおり、新政策におきましては、株式会社一般に農地取得を認めることは適当でない、それから農業生産法人の一形態としての株式会社についてはさらに検討しろということでございます。この報告を受けまして、昨年の秋以降農政審議会におきましていろんな議論をやってきたわけでございます。そして今回の農地法改正案では、農業生産法人の要件の一つである組織形態につきましては、現行の農事組合法人、合名会社、合資会社及び有限会社の四形態を維持するということにいたしまして、株式会社は含めないことにしたわけでございます。
 じゃ、今後株式会社をどうするのかということにつきましては、株式会社はメリットがございます。資本の充実とか人材の確保とか経営の効率化とかあるいはリスクの分散、そういった面でのメリットはありますけれども、現在の土地利用規制のもとでは投機とかあるいは資産保有目的での農地取得を前もって排除することは困難であるというふうなことから、現時点で導入することは適当でないと考えておりまして、今回の四形態の法人の維持ということを続けていくことが適当ではないかというふうに考えております。
#164
○林紀子君 経団連は、昨年三月二十四日に「二十一世紀に向けての農業政策のあり方」というのをまとめました。この提言を取りまとめた農政問題委員会の河毛二郎委員長は、経団連としては農水省の新政策づくりの取り組みを支援する、このためにこの意見書を取りまとめたというふうに述べているわけですけれども、入澤局長は経団連の農政問題委員会と昨年六月二十三日に新政策について意見交換をする、またことしの三月十日には農政審の中間とりまとめに関して懇談していらっしゃいますね。
 経団連側からどのような意見が出されたのか、お話をなさいました当事者ですので、ぜひお聞きしたいと思います。
#165
○政府委員(入澤肇君) 経団連が意見を出したのは私が話をする前でございまして、私は今御指摘のとおり総務審議官当時、去年の六月十三日に経団連へ行って新政策の説明をいたしました。それからことしの三月十日に現在御審議願おうとしておる法案につきまして説明をしたわけでございます。
 この中で、特に株式会社につきましては、現在の農地法制度上難しいんだ、法制度論、実体論両方から難しいということを丁寧に説明いたしました。当初経団連の方では、新政策というのは株式会社に農地を持たせることが新政策がというふうな印象を持った方がいましたけれども、私が制度上難しいんだということを十分に説明いたしましたので、十分に納得したというふうに理解しております。
#166
○林紀子君 それでは、農業者側、全国農業会議所は農水大臣の諮問を受けまして、昨年三月十二日に農水大臣に対する本答申、「農業の担い手確保のための具体的方策」というのを行いましたね。この中で「株式会社による農地取得については、」「問題が多く、これを認めるべきでない。」とありますけれども、この答申に対してはどういうふうにお考えでしょうか。
#167
○政府委員(入澤肇君) 私どもの考え方は全国農業会議所の答申と全く同じであるというふうに理解しております。
#168
○林紀子君 農業生産法人は、農協法に基づく農事組合法人、それから商法に基づく合名会社と合資会社、そして有限会社法に基づく有限会社の四つの組織に限定されて、株式会社などの法人組織というのは除外されている。その理由については、農地法の解説書であります「最新農地法詳解」、これは和田正明さんという元農地局長が著されたものだそうですけれども、それによりますと、「株式会社を除外したのは、株式譲渡の自由の原則によって株式の譲渡がなされ、株主(構成員)が変動し易い性質があるため、株式の譲受人によっては農業者以外の者の支配力が強まるおそれが予想されることを配慮したからである」というふうに書かれています。
 また、一九六二年七月一日付の事務次官通達によりますと、「株式会社については、それが株式の自由譲渡性を本旨とするため、共同経営的色彩の濃い農業生産法人制度になじまず、かつ、農業生産法人の要件を欠くことになる危険に不断にさらされることにかんがみ、農業生産法人に含めないこととした。」と明記しているわけですね。
 農政審議会は、ことし一月、「中間取りまとめ−農業構造・経営対策の課題と対応の方向」というのを打ち出しましたが、この検討を進めてきた農政審議会の企画部会第一小委員会の専門委員で東京農業大学教授の梶井功氏らが編集しました「農業の基本法制−問題点と改正試論」という著書の中では、今挙げました二つの説明、こういったものは「今は通用しないものではあるまいか」というふうに指摘しているわけですけれども、これについて農水省はどうお考えでしょうか。
#169
○政府委員(入澤肇君) 株式会社が農地を取得する、あるいは農業生産法人の一形態として認められるというためには大きなハードルを越えなくちゃいけない。そのハードルというのは、農地法の基本原則である耕作者主義、これを越えなくちゃいかぬわけであります。
 先生方、この前も質問がありましたけれども、株式会社一般が農地を取得しなくても参入するんじゃないかとかいろんなことを言っておりますが、農地取得を認めていないわけでございます。それから、あくまでも農業生産法人というのは、実体上は農協法の農事組合法人、この性格に制約されるという問題がございまして、耕作者主義、これをどう克服するかという大きな問題があります。
 もう一つは、農業の担い手の問題でございますけれども、日本の農業の担い手というのは、午前中も答弁いたしましたけれども、家族農業というのが基本でございます。家族農業というのを、どこまでその範囲を広げていくかということにつきましては、これは各国それぞれの法制度がございます。
 我が国では、戦後の、要するに農地は耕作者が所有することをもって最も妥当とするという、そういう目的規定を持った農地法に基づいて農業経営がなされておりまして、この問題をどのように理解して改革していくかということが基本的に重要な課題でございまして、一農地法の改正とかあるいは今回出しているような法律の改正で片づくものではありませんでして、大きく言えば、農業
の担い手はいかにあるべきかというような基本問題を十分に議論する内閣直属の機関を設けて、そこでそのコンセンサスが得られないと解決できない問題じゃないかというふうに私は考えているわけでございます。
 要するに、この株式会社問題、それから農業の担い手の問題につきましては、沿革的あるいは歴史的ないろんな経過を踏まえて農地法というのができておりまして、農地法の根本原則と抵触するかしないか、ここら辺を十分に議論しないと解決できない問題であるというふうに理解していただきたいと思います。
#170
○林紀子君 私がかなりしつこく株式会社問題にこだわりますのは、さらに検討するということがここにうたわれているということと、それから先ほど入澤局長は、経団連の方には十分話をしてわかっていただいたと思うというふうにおっしゃっておりますけれども、先ほどの河毛二郎さんという方は、貴重な農地を最も効率的に活用できる地域農業の担い手の幅を広げようということで、それには農協自身や第三セクター、そして大規模経営を行うために株式会社を組織する場合もあろう、というふうに書いていらっしゃるわけなんですね。
 ですから、株式会社、経団連側というのはいつも農地を我が手にしたいという長年の希望というのを願って、ねらっているというふうに思わざるを得ないところがあるわけですので、そういう意味では、先ほど家族農業が中心であるとおっしゃいましたけれども、株式会社と個人が太刀打ちするということはもうとてもできない相談になって、もし株式会社に農地取得を認めることや農業生産法人の一形態としても株式会社を加えるというようなことになりましたら、まさに企業が農業生産を直接支配するおそれがあると、こういうことを思っておりますので、将来にわたって株式会社の参入というのは認めないということを強く要望して、これが農民の声でもあるということも申し上げまして、次の問題に移らせていただきます。
 次に、基盤整備事業についてですけれども、ことしの三月八日、佐賀県の筑後川下流にある佐賀東部土地改良区に東背振村、こういうところがあるそうですけれども、その関係農民の実に九八%、理事など八名を除いた四百二十七名が集団的な脱退署名を提出したという事件があったということです。
 この村では土地改良事業として、国営の筑後川下流一般型事業、二番目に水資源公団の筑後川下流用水事業、三番目に県営のかんがい排水事業、四番目に県営の圃場整備事業、この四つの事業が重なり合って進められて、受益者である農民にとって負担はかなり大きくなり、十アール当たりの年償還額では四万円近くにも上っている。
 このため、脱退届にはこういうふうに書いているわけですね。「今日の農業経営は非常に苦しく、又、これから先、益々厳しくなると懸念しております。圃場整備事業は致しましたが、その借入金は殆どの地権者が営農以外の収入により色々と工面して返済しておりますが、今後もこの苦しい現状が当分続くものと心配覚悟しております。」「私達地権者は、これ以上の事業費借入金返済は死活問題であり、又、到底出来るものではありません。例えば、十年間の内に一回全く雨が降らず、一粒の米も生産出来ない状態の年があっても、これ以上の借入金の返済を子供や孫の代まで残してはならないと、堅く信ずるものであります。」。
 これが東背振村の農民の気持ちですけれども、大臣、この脱退屈の切々たる訴えをお聞きになって、どう思われますか。
#171
○政府委員(入澤肇君) 大臣が感想を述べる前に。
 今、先生御指摘の土地改良事業は四事業をやっておりますけれども、そのうち県営圃場整備事業については償還中でございまして、その四事業合わせたピーク時の年償還額は、現時点で試算しますと平均三万二千円でございます。四万円以上というんじゃございません。
 こういうふうな状況にあります土地改良事業につきまして、農家の負担金を軽減するために、先ほども他の委員の御質問に対しまして答弁をいたしましたように、事業費単価の抑制とか、負担金償還の早期開始、あるいは償還期間の延長による国営・公団営事業の償還方法の改善とか、あるいは負担金の償還が困難な地区に対する利子補給などの制度をやっているわけでございます。
 いろんな制度を活用いたしまして、私どもとしましては、非常に困っているというふうな声を聞きますと、可能な限り負担金の軽減に努めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
#172
○林紀子君 そういう意味では、いろいろ施策もとっていただいて、また新たな施策の展開ということで、担い生育成農地集積事業の創設というのもあるということも伺ったわけですけれども、今までの担い手の経営面積シェアが二割増しにならなければこれも利用できないということで、まさに新政策絡みで大規模な、そして農地を集積していく人は利用できるけれども、今佐賀の農民、東背振村の人たちが訴えているような、こういう人たちには利用できないようなメニューというのがだんだんふえているんじゃないかと思うわけですね。
 その中の一つとして、二十一世紀型水田農業モデルは場整備促進事業、こういうものを進めているということですが、これはまさに新政策の先取りだというふうに思うわけですね。この事業は、農業生産の集積、農地の流動化を進めるために、促進費として一〇%の上乗せをする。そのために、この事業を導入しようとする地域では農家負担が非常に軽減されている、負担はほぼゼロだという宣伝まで行われて進められている。
 しかも、これが達成できなかったら上乗せ一〇%分は利子をつけて返さなければいけないということが、これまた大変重荷になっているわけですね。ですから、何が何でもこれを達成しようということで、関係農民の十分な合意もないままに進められている事例というのが多いんじゃないかと思うんですが、二百九十九地区だということですが、全部農民の合意を得てうまく進んでいるものなんでしょうか。
#173
○政府委員(入澤肇君) この二十一世紀型の圃場整備事業といいますのは、大区画の圃場を形成しようとする事業が中心になっているんでございますが、補助率は、通常の圃場整備が四五%でありますと、これは五〇%にしているわけでございます。その上に、先生がおっしゃったような、一団地の規模が二ヘクタール以上の生産団地に占める面積がおおむね十年後に五割以上になるという場合には、活動費の助成とそれから土地改良区に対する事業費の一〇%の助成というのをやっているわけでございます。
 初めに、圃場整備事業、具体的な土地基盤整備事業をやりまして、それを十年後において今の連担化の条件を満たすように十分に話し合いをするということで進めているわけでございまして、特に農民の意見を無視してやられているということではないと私は理解しております。
#174
○林紀子君 千葉県の神崎西部地区というところがあるわけですけれども、この二十一世紀型事業についてアンケートをとったそうです。それによりますと、今後の農業について拡大を希望する農家というのはわずか一一%、現状維持を希望する農家は六三%、事実上大多数の農家が二十一世紀型のこの事業を望んでいないわけなんですね。
 しかし、ここでは計画がありまして、この地区の計画は九十四ヘクタールの水田を営農組合に集め耕作を任せる。ところが、現在ある百三十戸の農家は作業を請け負う九戸の農家の置きかえられます。ですから、その結果、百二十二戸、九三%の農家は農地から離れる。まさに農民の切り捨てということになるのではありませんか。
#175
○政府委員(入澤肇君) これも具体的にもう少し現地の状況を私は調べてみなくちゃいかぬと思いますけれども、赤旗によりますと九三%の農家が切り捨てられると書いてあるんですが、そうではなくて、九戸の農家に基幹的な作業は委託しますが、そのほかの農家は自分たちでそのほかの作業をやる、あるいは自留地を持って野菜等の栽培をやるというふうに聞いておりまして、農業を捨てるというわけじゃございません。
#176
○林紀子君 そして、まだ問題があるわけですね。作業を請け負うその九戸の農家というのがなり手がいないわけなんですね。
 私は、福岡県の椎田町というところにも行ってお話を聞いてまいりましたけれども、そこも二百六十ヘクタール、七戸のオペレーターで土地利用を行って、経営も一元化して、所得配分方式でやっていくと。話を聞きましたら、今まで小作料というのがせいぜい三万円だけれども、この所得配分方式だったら七万円ぐらい手にすることができると。大変うまい話なんですけれども、ここも七戸のオペレーターというのがいなくて、やってくれる人がいない。定年後農業をやろうとする人、また今やっている我々高齢者が老骨にむちを打ってやるよりしょうがないというふうに言っているわけなんですね。
 このように、じゃ、どうしてバラ色のこういう夢が描けるようなメニューを出してもやる人がいないのかと言いましたら、大型化しても輸入自由化すれば採算が合うわけがない、地区内のだれも乗る者はいないよと、大変冷たい農家の方たちの返事なんだそうですね。
 そして、先ほども上野官房長からお話がありましたし、大臣からもお話がありましたけれども、大型化して生産コストを下げる、しかしその生産コストを下げたものが農家の人たちの実入りとなってちゃんと戻ってくるのかといったら、そういうことじゃないわけですね。生産コストを下げてさらに価格を下げる、価格を下げるために生産コストを下げるということしか言っていないわけでしょう。
 ですから、そうしたらこの方たちも結局先が見えない、今の米価でどうにかやっていけるけれども、これより下がったらもうどうにもならないと言っているわけなんですね。そのことに対してはどういうふうにお答えになりますか。
#177
○政府委員(入澤肇君) 新農政で、経営の合理化、経営マインドを持った企業経営体を広範につくっていくんだということは、その一つとして、生産コストに敏感な農家を育成することもありますけれども、コストを下げて、その結果所得が減るんじゃなくて、地域複合ということを前提にし、個別農家ごとに複合経営等を追求して、全体として所得を上げるということもねらっているんでございまして、単に生産性を上げて、そして全体として所得を下げるというふうな、私はそういうふうな政策でないことを願っているということをよく理解していただきたいと思います。
#178
○林紀子君 願っているだけでは現実のものにならないと思うわけですね。
 最後に、通産省にも来ていただいているので、大変時間がなくなって申しわけないんですが、一言お聞きしたいと思います。
 千葉県の食品輸入商社が中心となって発足した「お米の輸入自由化を考える会」、これで国際郵便によるカリフォルニア米の輸入というのを考えているということなんです。そして、通産省の方は、一人当たりの輸入数量百キロ以内ということで認めたということですけれども、個人の需要に供するという本来の輸入貿易管理令、そして食管法から考えますと、これは認めるべきではなかったと思うんですが、通産省、食糧庁、一言ずつ最後にお答えいただきたいと思います。
#179
○説明員(山野昭二君) 米は、外国為替及び外国貿易管理法、いわゆる外為法上通産大臣の輸入割り当てを受けるべき品目であります。この割り当て品目については、非自由化品目として、輸入禁止または国内需給を十分に勘案した数量のみを割り当てるなど厳格な規制を実施しております。
 一方、このような規制の趣旨に反しない範囲において、少額な貨物など輸入貿易管理令第十四条の別表に定めるものについては、特例として通産大臣の輸入割り当てを要しないということになっております。
 国際郵便については、同別表上国際郵便と明記はされておりませんけれども、別表第一に少額貨物について規定してありまして、輸入割り当て品目については十八万円以下で無償のものとされております。また、同別表の第四号には「個人的使用に供せられ、且つ、売買の対象とならない程度の量の貨物」という規定がございまして、国際郵便により送付されるものは、これらの規定のいずれかまたは双方に該当すると考えられます。
 御質問の百キログラムでございますけれども、これは「個人的使用に供せられ、且つ、売買の対象とならない程度」の米の数量でございまして、この数量については米を所管する食糧庁に相談して百キログラムといたした次第でございます。
#180
○政府委員(鶴岡俊彦君) 国際郵便により送付されるものにつきましては、食糧管理制度上におきましては輸出入規制の例外とされておるところでございまして、農林水産大臣の許可を要しないということになっております。(発言する者あり)
#181
○委員長(吉川芳男君) ちょっと静かにしてください。
#182
○政府委員(鶴岡俊彦君) 今回の措置は、輸入貿易管理令十四条、今通産省から御答弁しましたように、別表の規定によりまして、「個人的使用に供せられ、且つ、売買の対象とならない程度」の米の量の適用につきましての問題でございまして、通産省等とも話し合いまして、私どもとして協議した結果、現在の食糧管理法の施行に関する件の八の目におきまして、輸出入規制の例外となっている携帯品につきまして百キログラムとされているということとのバランスを考慮してそういう判断を下したわけでございます。
 私ども、百キログラムとしましたけれども、現在我々の家庭にある米びつというのはせいぜい二十キログラムぐらいでございまして、米の購入というのは、十キロか、五キロとか三キロとか、場合によっては二キロぐらいしか一回に買わないというようなこともございます。
 アメリカから精米で持ってきまして、夏を越して消費するというような場合にどうなるのか。日本の場合には、玄米で、しかも低温貯蔵して、食べる近くになりましてから精米して販売しているわけでございます。そういう米がこういう米に勝てないというのでは極めて残念でございまして、この新聞記事はセンセーショナルなことで取り上げられていますけれども、私、実際どの程度出てくるのか今後とも注意しまして、この仕組みから逸脱するようなことが見受けられましたら適切な対応をしていきたいというふうに考えております。
#183
○星川保松君 新農政について御質問をいたします。質問したい事項はたくさんありますが、三十分の時間しかございませんので、ひとつ要領よく答弁していただきたいと思います。
 まず、この「新しい食料・農業・農村政策の方向」という新農政の内容に入る前に、これがなぜこういう形で発表されたのか私はどうも腑に落ちないわけでございます。
 この「農業六法」というのをいただきまして見ましたら、それに載っておりまして、これは「平四・六・一〇 農林水産省公表」ということだけ書いてあるんですね。それで、ずっと後ろの方には法律あるいは省令等、法令がずらっと載っているわけですよ。その冒頭の方にどかっとこれが載っているわけですけれども、これは一体何なのかということなんですね。
 法律ということになれば、それは我々が国会の場でその審議をする場があるわけですけれども、政令となればそれは閣議にかけなくちゃならない。それを全部省略してこういう形でぽんとこれが出てきた。それが私は不思議でならないわけなんです。なぜ立派な法律等をしり目にこんな初めの方にこれが載っているんだろうか。これが付録か何かでくっついているんなら、それはわかると思うんですけれども、それが冒頭の方にどかっと
載っているというのはどういうわけだろうと不思議に思っているんですよ。一体なぜこういう形で出してきたのか、そこのところをお伺いしたいと思います。
#184
○政府委員(上野博史君) いわゆる新政策の書き物でございますけれども、これは今後の食料・農業・農村政策についての考え方を網羅的にまとめたというものでございまして、その内容が即法律や政令の内容になるというものでは必ずしもないというふうに私は思います。
 そういう基本的な全体としての考え方の中からそれぞれ必要な政策体系が打ち出されてまいりまして、法律事項を含んでいるものにつきましては、これを法律として構成をいたしますし、政令として規定をすべきものがあれば政令として規定をするという、そういう言うなれば考え方の一番母体になるものをまとめたのがこのいわゆる新政策の文書であると。それを具体的に今度は法令なり何なりの体系化をしなきゃならないものについて、今回幾つかの法案にまとめてお諮りを申し上げている。そういうような位置関係にあるというふうにお考えいただきたいと思います。
#185
○星川保松君 この前と同じようなことをあなたはおっしゃっていますけれども、私が言っているのはそうでないんですよ。今のような農業の現状、これは何とかしなくちゃならぬ。それは、三十六年に出した農業基本法というのがある。その農業基本法ではもうどうにもならなくなった。この事態を何とかしなくちゃならない。したがって、日本の農業をどうすればいいのかということを私は国会の中で大論争を展開しなくちゃいかぬ、こう思っておったんですよ。
 それは農業基本法の改正案を出してきて、そして国会で大論争をして、それで日本の農業のあり方ということについて国民的なコンセンサスを形成しなくちゃならぬ、こういうふうに私は考えておったわけですよ。それが私は本当のやり方だと思うし、いわゆる三権分立の立法府の任務だと思って待っておったわけですよ。
 ところが、何だかわからないこういう文章がこそこそと出てきて、そして基本法を実質的に大改正してやっていくというやり方は、一体農水省というのは日本の三権分立というものをどう考えておるのか。なぜ基本法の改正案として堂々と国会に出してこなかったかということを私は聞きたいんですよ。
#186
○政府委員(上野博史君) いわゆる新政策の全体としての考え方を基本法的なものとしてまとめるかどうかという問題は、確かに一つの問題としてあるということはそのとおりだというふうに思います。
 私どもといたしましては、現在の基本法の考え方、他産業並みの均衡所得を得るような自立農家を育成していく、非常に簡単に申し上げるわけでございますけれども、そういう基本的な方向づけは今回の新政策の考え方と基本的には違うものではない。もちろん基本法農政は三十年たっておりますので、その間いろいろ評価があるというのはそのとおりだろうと思うわけでございますけれども、そういう大本において変える必要はないんじゃないか。言うなれば、そういう大きな基本的な考え方を現在の農業を取り巻く環境条件に対応しまして、軌道を修正して運営をしてまいる、そういう考え方のものだというふうに我々としては考えたと、こういうことでございます。
#187
○星川保松君 それはそれとして、もし基本法に基づいてこの方向というものを打ち出したのだとすれば、私はこの冒頭に農業基本法に基づくということをうたわなくちゃいかぬと思うんですよ。そういう言葉がさっぱり出てこないんですね。いわゆる脈絡が全然なしに、それでぴょこっと出てきているんですね。
 そういうことをやるから場当たり農政とかということを言われるんですよ。ちゃんと脈絡をつけてやらなくちゃいけませんよ、それは。なぜそれを冒頭にうたわないんですか。それをうたっていないとすれば、とにかくこれは農業基本法に基づいてということをはっきりおっしゃってくれませんか。
#188
○政府委員(上野博史君) 先ほども申し上げたわけでございますけれども、要するに、自立経営農家という考え方が基本法農政の一番大事な概念なんだろうと思うわけでございますが、そういう考え方、その概念の持っておる基本的な考え方というのは、これはやはり改める必要はないわけだというふうに考えるわけでございまして、そういう意味では基本法の延長線上にある考え方である、それはそういう意味において基本法農政を踏まえた現在の農業環境に対応する新展開であるというふうに考えているということでございます。
#189
○星川保松君 いわゆる農政というのは、戦後の農政ですね、最初は自作農創設ということでやってきた。それは土地の所有形態を大きく変えたわけです。そして、今度は経営の面で自立経営ということをうたって、他産業並みの所得が入るようにしようということで、自立経営という旗印を掲げて基本法農政をつくったわけですよ。そういう流れの中の一つの政策で、いわゆる基本法農政というものがこういう功罪があったということをはっきり評価して、そして次の政策を打ち出すというふうにしていかなければ、農家の皆さんも何でこんなぴょこんぴょこんと出てくるんだろうということになってしまうということなんですよ。そのことを農水省はきちんとわかるようにして農政というものを続けていってもらいたい、こういうことなんですよ。
 これはあくまでも農業基本法の改正案ということは考えていないんですか。
#190
○政府委員(上野博史君) 農業基本法の改正ということは考えておりません。
#191
○星川保松君 それでは次に、私はこれは農水省の内部でつくった作文としか言いようがないと思うんですけれども、その作文をいろいろ読んでみたんですが、果たしてこの作文を私なりに評価して合格点が上げられるかどうか今迷っているところでありますけれども、それはともかくとして、これはどこで起案して、どことどこで判こをもらってできたんですか。
#192
○政府委員(上野博史君) 経緯的に若干御説明を申し上げますと、各界のごく限られた数の有識者の方々に御説明をしながら、いろいろと御意見をいただきまして、農林水産省として……
#193
○星川保松君 起案者と判こをついたところでいいや。
#194
○政府委員(上野博史君) 最終的には農林水産大臣の決裁をいただいて……
#195
○星川保松君 最終じゃなくて、どこで起案して、どことどことどこで判こをついてできたんですか。
#196
○政府委員(上野博史君) これは決裁のあれで言いますと、私どもの大臣官房企画室が起案をいたしております。それで最終的に大臣の決裁をいただいているということでございます。
#197
○星川保松君 中途はどことどこですか。判こをどことどこがついたんですか。
#198
○政府委員(上野博史君) 全省にまたがりますので、恐らく関係のところというと林野庁も入っております。水産庁は入っていないかもしれませんが、ほかの局長は皆決裁の対象になっているというふうに思います。
#199
○星川保松君 これは私は農水省の中の考えがよくわからないんだけれども、ここで「新しい食料」と、この「食料」というのは、これは食糧庁の食糧とは違うんですね。
 それから、ここに「農業」とありますけれども、私は最初この「農業六法」というのをもらったんです。そうしたら、水産と林業はさっぱり書いてないんですね。これは一体どうしたんだと言ったら、別にあるということで持ってきてくれましたけれどもね。そういう狭い意味の農業じゃないんでしょう、これは。
 この「食料」というのは食糧庁の食糧とどう違うんですか。
#200
○政府委員(上野博史君) 私どもの理解の問題でございますけれども、食糧庁の糧というのは穀物を意味するというふうに理解をいたしておりますし、今おっしゃいました新政策で使っております「食料」という場合の料理の料というのは、もっと広く農産物全体を、穀物だけでございませんで、全体としての農産物を観念しておるということでございます。
#201
○星川保松君 それでは、この「食料」の中に魚介類は入っているんですか入っていないんですか。
#202
○政府委員(上野博史君) 「食料」の字義の問題とすれば私は必ずしも定かでございませんが、今回のこの新政策におきましては魚介類までは考慮に入れておりません。
 ただ、地域問題を考える場合に、いわゆる農山漁村というような意味合いで考えているところはございます。
#203
○星川保松君 それでは、林野庁から判こをもらったけれども、なぜ水産庁から判こをもらわなかったんですか。
#204
○政府委員(上野博史君) 申しわけございませんが、私その決裁文書を手元に持っておりませんので確定的なことは申し上げられません。
 ただ、御質問ございましたように、漁村も場合によってはそういう地域政策的な観点で入っておるということも考えられますので、決裁としてはとっておったかもしれません。その点、訂正をさせていただきたいと思います。
#205
○星川保松君 なぜこういうことを言うかといいますと、この文章を見ますと、農林水産省のすべてにわたってその対象となっております米づくりから林業をやっている人から漁村の人から、みんながこれを見るわけですよ。そうした場合に、おれのところはどういうふうになっていくのかなと思いながら見るわけですね。そのときに、これを見ますと、漁業のことがさっぱり書いてないんですよ。林業のこともさっぱり書いてないんです、これ。
 その人たちを対象にしていないというのが、初めからそこを抜いて、この中を見ますと米づくりのことだけが書いてあるんですね。だから、恐らくこの「食料」というのは食糧庁の食糧じゃないかなと私は思ったんですよ。だから、さっきからどことどこで判こをもらったんだということを私は言っているわけですよ。だから、まずこの作文の採点として、そのバランスを欠いているんじゃないかというところが一つの減点になるんですよ。
 それはそれとして、いわゆる基本法農政というのが自立経営農家というものを目指してつくられたわけでありますけれども、その当時の自立経営農家というのはどのぐらいの経営規模を想定しておったか思い出せませんかな。
#206
○政府委員(上野博史君) ちょっとお時間をいただきたいと思います。もしできましたら後ほどお答えをさせていただきたいと思います。
#207
○星川保松君 恐らく、私もよく思い出せないんですけれども、乳牛なんか十頭ぐらいいれば経営が成り立つみたいな、そんな考え方でなかったかと思うんですよ。米づくりなんかは恐らく二町歩かそこらじゃなかったかと思うんですね。
 そういうところから、先ほど谷本先生もいろいろおっしゃいましたんですが、いわゆる基本法農政は日本の伝統的な農業経営というものをぶち壊してしまって、それで外国の経営、特にアメリカあたりの農業経営を追い求めたのではないか。そのことについては私は大変罪なことをしたんじゃないかと思うんですよ、基本法農政では。例えば、これは専業農家を育成するということで、専業がいいんだということで言ったわけですよ。
 私たちの地元を見ましても、農家の倒産なんていうのはなかったですよ、ずっと。今、ルーツをたどるというのがはやっておりまして、それで仏様の位牌からお寺さんの過去帳から調べて、うちは何年前から始まったのかなということをやっていますよ。そうすると、三百年、四百年、五百年というのはざらなんですね。すごいと思うんです、私は。その経営の安定性たるや、すごい農家の経営だったと思うんですよ。それはまあ悪い面もいろいろあるかもしれませんけれども、安定性においてはその経営というのは世界に類のないぐらい安定したものであったと思うんですね。
 だから、私らが子供のころは、つぶれた農家というのは、病気があるいは道楽者、そういうのがつぶれるんだと言われたものですよ。そういう農家がつぶれていったのを私らは見聞きしてきたんですけれども、最近はそうじゃないんですね。豚を何百頭飼った、牛を何百頭飼ったというのが、借金で倒産して夜逃げしていくんですよ。これはやはり考えなくちゃいけないんじゃないかと思うんですよ。基本法農政で専業農家、規模拡大規模拡大でやってきたんですね。それがそういう結果になってきている。
 この間、NHKのテレビで列島ドキュメント何とかというのをやっておりました。それは、長崎の青年たちが基本法農政のころに北海道の根釧原野に酪農を志して入植したんですね。それが今はもうほとんど離農してしまって、残った方がインタビューに答えておりました。その残った人が何と言ったかというと、現在私は乳牛を百八十頭飼っている、そして借金が一億円あると、こう言うんですよ。そして言うたことは、格子なき牢獄に入ったと、こう言っているわけですね。
 これが農家の倒産やら借金抱えて首が回らないという、そのことをやはり基本法農政がつくり上げた。日本の極めて安定してきておった農業経営というものを全部け飛ばしてしまった。その反省が私はなくちゃいけないんじゃないか、こう思うんですよ。
 そこで出てくるのは、いわゆる専業を追い求めて規模拡大規模拡大でいいのかということです。前から日本の農業が安定性が高かったというのは、私は複合経営だったからだと思うんですよ。今の会社も生き残りのためのリストラ戦いをやっていますけれども、農業の場合はそう簡単にリストラできるわけじゃないんですね。そこのところをカバーして今日まで来たというのが複合経営だと思うんですよ。だから、その複合経営のよさというものを、基本法農政の専業、規模拡大という農政を反省して、それを取り入れるということをやっていかないと本当の新しさはできないんじゃないか、こう思うんですが、その点についてはどう思いますか。
#208
○政府委員(入澤肇君) 全くそのとおりでございまして、午前中の質問にもございましたけれども、認定農家というのは、前の法律だと規模を拡大するだけなんですけれども、今度のは複合経営をして、全体として経営を改善し所得を向上させる、これも認定農家にしていくということでございまして、私どもはできれば地域複合、その地域複合の前提のもとに個別農家が複合経営をやって、そして土地を合理的に利用して全体の農業生産を発展させるということをねらっているわけでございます。
#209
○星川保松君 それから、いわゆる望ましい経営体ということでこれから進めていくわけですけれども、この望ましい経営体を進める中で私は二つの大きな問題があると思うんですね。その一つは、個別経営体の方は十ヘクタールから二十ヘクタールぐらいの経営規模、それから組織経営体の方は一集落もしくは数集落というふうに唱えているわけですよ。
 そこで、日本の場合の経営のあり方というものを考えてみますと、集団的な共同経営というものには私はタイプが二つあると思うんですよ。
 一つは日本の農協のような、農協の場合は生産手段を一緒にするということをしないんですね。流通とか信用とかそういう面で共同するということで、生産手段、土地その他については共同しないわけですよ。ところが、ソ連のコルホーズとか中国の人民公社というのは生産手段を完全に共有するんですね。そこのところが根本的に違うわけですよ。
 それで、日本の場合は生産手段を共有するということを避けるために、農業協同組合が共同の共の字を使わないで協力する脇を使ったわけですよ。それは、生産手段を共有する共同経営というものは日本には適さないんだというところからああいうふうにしたと思うんですよ。それが伝統だと思うんです。
 ですから、今度の一集落もしくは数集落が一緒になって共同経営をやっていくという中に、土地も一緒にする、いわゆる生産手段も一緒にやっていくんだという考えがあるなら、これは日本の伝統的な共同経営のあり方に私は逆行するのではないか、うまくいかないのではないかという心配をしているんですが、その点はどうですか。
#210
○政府委員(入澤肇君) これからやろうとしている望ましい経営体、これは集落を基礎といたしまして、地域の関係者の意向を踏まえて育成すべき経営体と農地の利用集積を図る。それは個別農家である場合もありますし、それから生産組織である場合もある。生産組織の場合には、農地を取得して経営をやるのは農業生産法人、農地を取得しないでやる作業の請負体みたいなものもございます。
 そういう中で、今農協の話もございましたけれども、実は農協が農地を取得して農業経営をやる主体になるかどうかというのも議論いたしました。これは先ほど林委員の御質問にお答えしましたように、日本の農業の担い手の問題については、基本的な問題は農地法の耕作者主義というものに抵触しますので、株式会社と同じように農協にも農地を取得させて農業経営をやるということは認められなかったわけであります。
 したがいまして、今我々がやろうとしているのは、個別経営農家の育成、生産組織体の育成、同時に地域ぐるみで、集落営農という形で、みんなが土地を提供し合って、そして一つの土地利用計画のもとに機械を効率的に利用するというふうなことで、農協とかあるいは生産組織が中心となって集落営農をやるということは考えられますが、第三者が、農業生産法人以外の機関が農地を取得して、生産手段を取得して農業経営をやるということは考えていないわけであります。
#211
○星川保松君 さっきから言ったように、とにかく日本の農業の伝統的なものをしっかり踏まえてやりませんと、これは本当の作文に終わってしまいますよということを私は申し上げておきたいわけですよ。
 それから、もう一つの望ましい経営体での問題点というのは、これは前にも指摘したんでありますが、いわゆる望ましい経営体ということのために、これは大臣はこの前、望ましくない経営体というのはどういうものだと言ったら、そんなのはないと、こうおっしゃったんですけれども、それはないというのはおかしいんで、それは言えないんじゃないかと思うんですよ。
 だけれども、はっきり小規模兼業農家、それから生きがい高齢農家、土地持ち非農家、ここにちゃんと書いてあるんです。これが望ましくない経営体なわけですよ。そしてこの望ましくない経営体が土地を望ましい経営体に提供しなさい、貸すなり売るなりしなさい、労力も提供しなさい、そっちのお手伝いをしなさいというふうに、文章はそんなふうに露骨なことを書いていませんよ、ないけれども、そういうふうに読み取れるように書いてあるわけですね。
 私はそう簡単にいかないと思うんですよ。今、日本の農家で困っている、体質の弱い、これはむしろ専業農家の方なんですよ。兼業農家の方が極めて強いんですよ。特に生きがい高齢農家なんというのは生きがいでやっているんです。それを取り上げられたら老人たちはたまらないと思いますよ。だれが放すものかと。何か生きがいになるものを別のものでも与えなけりゃ必死にしがみついて放しませんよ。
 ですから、兼業農家というのは片手間に農業をやっている、これが日本農業の足を引っ張っているんだからけしからぬというような発想が世にあるわけですけれども、それに私は農水省はだまされちゃいかぬと思うんですよ。日本の農業が、例えば片手間で農業をやっているんだというふうに考えても、片手間で米をつくりながら日本の国民が食べて余るだけの生産ができるというすぐれた民族なんですよ。すぐれた経営なんですよ。片手間にやりながらそれだけの農業の成果を上げているんですよ。そういう農家を農水省がつくったとすれば、それはえらいことですよ。だから、何もこれを悪者扱いしちゃいかぬと思うんですよ。それは立派なものですよ。だから、それはそれなりにやっていけるように農政をしなくちゃいかぬと思うんですよ。
 例えば、今度機械化の問題が出てきますよね。今度の機械化というのは大型機械の物すごく効率のいい機械のことを想定しているんですね、キャベツを収穫するなんてね。何十町歩なけりゃこの機械は合いませんよ。ところが、普通の農家では機械化貧乏ということで、機械にもうみんな持っていかれて、米をとっても何をとっても金が残らないですよ。これは機械化貧乏なんですよ。だから、そういう小さな農家も引き合うような、そういう効率がよくて安い農機具の開発こそ、私は兼業農家がコストダウンするならコストダウンに役立つようなことをやっていかなくちゃいかぬと思うんですよ。
 そういう兼業農家というものを敵視しないで、それでいいんだと。兼業をしながら、農業をいかにコストダウンしながら合理的にやっていけるかというところに農水省は正面向かって、そして農政を打ち出していくべきだと私は思うんですが、どうですか。
#212
○政府委員(入澤肇君) 一概に兼業農家を否定しているわけじゃございません。農業の実態は、もう釈迦に説法でございますけれども、農業従事者の減少とか高齢化が進展している。そういう中で望ましい農業経営者をどうやって育成しているかという一つの事例で申し上げますと、ある県のある村ですが、二千世帯、そのうち農家戸数が五百数十戸、これが全部兼業農家なんです。穀倉地帯でございまして、前は一反当たり八俵とか九俵とれた。ところが、総兼業農家なものですから、日曜百姓になってしまって、一反当たり六俵とか七俵に全体として生産力が落ちてしまった。それから、技術の伝承がうまくいかなくて、そして全体としての生産力も落ちてきた。
 それを集落の長老たちがよく反省いたしまして、何とかしてこの村の生産力をもとに戻したいということで、兼業農家のうち若手の農業後継者のいる農家二戸を選定いたしまして、そこに稲作の主たる基幹的な作業部門を委託したわけでございます。その他の五百数十戸の農家はどうしたかというと、そういう農家は、まず生産組織になってオペレーターとなってやる場合もありますし、自留地を持って野菜の栽培をやったり花の栽培をやったり、都市近郊なものですからそういうものが売れるわけでございます。そうやって専業的にやっていく農家を自分たちで育成する。
 同時に、残った農家が兼業農家として十分に地域コミュニティーの中で野菜の生産とか何かをやって所得を上げる。さらに、高齢農家では、年金生活に入るということで、あと地代収入を当てにするということで、農地を生産組織だとかあるいは専業農家に全部出してコミュニティーの中の一定の役割分担をする、そういうふうな村がございます。こういう村は各地にあります。
 私どもは、そういうふうに生産力が全体として高齢化やあるいは農業従事者の減少の中で落ちていくときに、経営マインドを持った農家層を広範に育成していく、その農家層に農地を集積させて、他の兼業農家の皆さん方と相まって地域コミュニティーを維持していくんだということをねらいとしてこの新政策は組み立てております。そういうことをぜひ御理解願いたいと思います。
#213
○星川保松君 きょうは合格点をつけるかどうか保留して、今後の課題にします。
 以上で終わります。
#214
○政府委員(上野博史君) 先ほどの自立経営農家の規模の御質問にお答えをしておきたいと思います。
 平成二年の数字でございますけれども、おおむね五百万円程度の農業所得を得ている農家というものが自立経営農家ということで把握されておりまして、全農家ですと田んぼの面積が一・七ヘク
タール、単一経営の稲作の場合ですと七・九ヘクタール、複合経営の場合だと二・二ヘクタールの田んぼを持っているという数字が上がっております。
#215
○喜屋武眞榮君 先般、沖縄で行われました植樹祭に大臣にははるばるおいでいただき、しかも植樹もしていただきまして、まことに御苦労さまで、ありがとうございました。
 そこで、植樹祭における率直な御感想をまず承りたいと思います。よろしくお願いします。
#216
○国務大臣(田名部匡省君) 率直な感想でありますが、さきの大戦で非常に森林が破壊されて、大変な状態だったなということを感じました。何としても緑豊かな沖縄県というものをしっかりしたものにしていかなきゃならぬという気持ちを持ってまいりました。
 また、そういうことであっても地域の住民が生き生きとしてそういうことに取り組もうと、この意欲も感じまして、本当に行って植樹祭をしてよかったというふうに感じました。
#217
○喜屋武眞榮君 ありがとうございました。
 植樹はそれぞれやっていただき、またやりましたが、そうすると、今後特に気をつけていかなければいけないことについて、どういう点を気をつけていけばよろしゅうございますでしょうか。
#218
○国務大臣(田名部匡省君) いずれにいたしましても、林野庁にいろいろこれから計画を立ててもらいますが、何といっても予算が伴う話でありまして、積極的に私たちも支援をして、そしてもっともっと植樹をすることによって、沖縄の復興といいますか、そういうことに努力をしていきたい、こう考えております。
#219
○喜屋武眞榮君 琉球松という松を全般的に植えてもらったわけで、私もそうしたわけですが、ところが、松というものは非常に活着しにくい植物であると私は思っておりますが、去年行われました熊本ですが、一カ年たっておるわけですが、向こうの植樹の状況を漏れ承りますというと、非常に活着率が悪いということも耳に入っておりますが、そうなりますと、いよいよ沖縄における琉球松の活着については最大の関心を払わなければいけないなと私も思って、沖縄におるときに時々回っていきたいと思っておりますが、その点本土と比較しまして、特に沖縄の場合こういう点を気をつけなければいかぬという点、御指示を賜ればありがたいと思いますが。
#220
○国務大臣(田名部匡省君) 琉球松の植樹をいたしましたが、私は本土と違いまして、余りそういうことを念頭に置いて後の利用がどうこうという以前に、やっぱり亜熱帯に合うそういうもので、緑というもので覆うということが一番今ふさわしいのでないだろうか。何か植樹をして、将来伐採してということではなくて、むしろ私はそういう感じを受けました。
 それは当然大きくなって伐採してもいいものもあるんでしょうけれども、今のところ沖縄というのは行ったときに本当に緑に覆われている、そういう楽園だという方が何か私はいいような感じを受けました。いずれにしても、水の問題もありますので、そういうことにふさわしい、亜熱帯地方にふさわしいものをこれからやっていったらどうかなという感じを受けております。
#221
○喜屋武眞榮君 私はその主役を演じた知事にも言っておりますが、植えたからもう一〇〇%活着したという安心感はいけない。補植ということをまた考えておかなきゃいかぬですから、その点も絶えず関心を持って、それこそ完全に活着するまで後の世話をしなければいけない、こういうことも絶えず知事や部長連中にも言っておりますが、大臣にもどうかひとつその点今後ともよろしくお願いをいたしたいと思います。
 次に、質問の第一は、従来の旧に対して新政策という、新しい政策と言われるゆえんは一体何であるのか今までとどこがどのように違うのか、旧と新の相違ですね、その点お尋ねいたします。
#222
○国務大臣(田名部匡省君) 新政策と呼んでおるわけですが、古いのに対して新しいと、こういうことで申し上げておるんですが、基本的には農業の生産性の向上及び農業従事者と他産業従事者との所得の均衡を目標として掲げた農業基本法の延長線上にあるわけであります。ただ、そういう限りでは新と言った方がいいのかどうかちょっとこれは別の問題でありますが、農業における高齢化の進展という新しい事態に即した、あるいは新規学卒就農者の減少、今までにない現象が起きていることで、基本法制定以来三十年間の農業をめぐる諸情勢が著しく変化したということですから新というのがふさわしいのかどうか。そういう事態に対応した今日的視点に立って見直すということです。
 しかしながら、この政策においては、基本法が家族を単位として他産業との均衡を掲げたのに対して、主たる従事者の年間労働時間あるいは生涯所得が他産業従事者と遜色のない、経営感覚にすぐれた経営体を育成する。あるいはこのような経営体が生産の大宗を担う効率的・安定的な農業構造を実現するとともに、また、このことを通じて食料自給率の低下傾向に歯どめをかける。全体として新しい政策体系、時代の変化に対応した政策と、こう言えばなお適切かもしれません。
 いずれにしても、このほか環境保全型の農業、ここのところ急速に環境保全というものがブラジルのサミットで打ち出され、それにまた対応していかなきゃならぬということで、農業・農村の有する国土・環境保全の機能に対する幅広い国民の理解の醸成といった新しい理念とか視点、そういうものが含まれておるというふうにお考えいただきたいと思います。
#223
○喜屋武眞榮君 次に、今後十年後を目標に段階的にこの新政策を推し進めていきたいとのことでございますが、この新政策は昨年すなわち平成四年六月に発表されているもので、平成五年度の総事業に当然に具体的な施策の展開がなされていると思われます。どのような事業にどのように反映されているのか、またその予算的裏づけはどのようになっているのか、お伺いいたします。
#224
○政府委員(上野博史君) この新政策というのは、十年程度の期間を念頭に置いて政策の方向づけをいたしておるわけでございまして、必ずしも一挙にすべてのものが出そろっているというふうに申し上げるわけにはいかないわけでございますけれども、極力平成五年度からできるものは取りそろえるということで努力をしてまいったつもりでございます。
 まず、法制的な面で申し上げますと、今度の新政策三法と言われているような法律の改正というのが中心になるわけでございますが、その一番基本になるものは、いわゆる経営・構造政策として労働時間なり生涯所得というものが他産業並みの経営感覚にすぐれた効率的・安定的な経営体の育成を図る、そのために土地の流動化を進めまして、そういう将来の農業を担う経営体に土地利用権を集積をしていく、そういう関係の法律改正を一つは予定しているわけでございまして、農業経営基盤の強化のための関係法律の整備に関する法律案というのがそれに当たるわけでございます。
 それからもう一つは、二十一世紀を見据えました第四次土地改良長期計画というものを昨年の暮れの予算編成の段階で策定をいたしたわけでございます。これによりまして、基盤整備あるいは農村生活環境の整備をあわせ実施していくということにいたしているところでございます。
 それから農村地域政策、地域の活性化ということが非常に大きな問題として挙がっているわけでございますけれども、これを具体的に、必ずしも農林水産省だけでなくて、関係各省庁の協力のもとに進めるという考え方で、いわばその大枠づくりの体系として特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律案、これは今衆議院で御審議をいただいておりますけれども、この法案を用意いたしておるということでございます。
 それからもう一つは、労働力の減少・老齢化に対応いたしましてどうしても機械に依存をする度合いが高まってまいりますので、そういう需要に備えた新しい機械の開発普及というようなことを目指しております農業機械化関係の農業機械化促進法の改正というようなものを御審議願うということで考えておるところでございます。
 それからまた、消費者の関係の対策といたしまして、消費者に対する正確でわかりやすい食品情報の提供ということで、いわゆるJAS法の改正というものも予定をいたしているところでございます。
 それからまた、それぞれのこういう法律的な体系を裏づけするものといたしまして、農地保有合理化促進事業の予算を充実するとか、それから公共投資の関係の充実も考えておりますし、各般の予算を獲得いたしているところでございます。
#225
○喜屋武眞榮君 次に、「望ましい稲作経営の展望」の中で、十年後の経営規模は、個別経営体では十から二十ヘクタール程度、組織経営体では一集落ないし数集落に相当する程度に拡大すると予想しておるが、このように経営規模拡大が当然の前提であるとするならば、現在実施されております減反政策はいつかは見直しあるいは廃止しなければいけないという壁にぶつかると思うんですが、その点どのように考えておられるのか、お聞きしたい。
#226
○政府委員(高橋政行君) 米につきましては、御存じのように依然として潜在的な需給ギャップがあるわけでございますので、その需給ギャップを調整するということはどうしても必要になりまして、現在生産調整が必要な情勢にある、こういうことでございます。
 こうした中で、新政策においては稲作経営の展望を描くに当たりまして、ただいま先生がお話しございましたような規模を想定しておるわけでございますけれども、これは稲作のみの単一経営ということではございませんで、稲とかあるいは裏作には麦をつくるとかあるいは大豆といったような輪作農法によります規模の大きい複合経営というものを想定しているところでございます。
 また一方、これまで生産調整のやり方といいますか方式につきましては、適地適作あるいは意欲のある生産者の規模拡大意欲が阻害されているではないかとかいうような御批判があったことも事実でございまして、新政策におきましては、将来の米の生産調整については、市場で形成される価格指標やコスト条件などを考慮して、経営体の主体的な判断により行い得るような仕組みとする方向に向けましていろいろな条件整備を進めることが必要であるというふうにしているところでございます。
 したがいまして、本年度から水田営農活性化対策を実施したわけでございますが、この対策では、新政策の方向に沿いまして、稲作・転作を組み合わせました生産性の高い水田営農を確立するという観点から、意欲を持って稲作に取り組もうとしている農家や地域が稲作に集中して取り組めるように、まず一つは、転作等目標面積の配分に当たりましては、担い手のウエートが高いところとか、あるいは稲作の生産性の高いところであるとか、あるいは稲作依存度の高い地域、そういったものには転作をできるだけ緩和していこうというような配分の仕方を一つしております。
 それから二つ目には、規模の大きな経営体の育成助長のための効率的な転作営農の推進という観点から、いわゆる助成体系、これは奨励金と今まで言っておりましたが、そういった助成体系も見直すなどの措置も講じたところでございます。
#227
○喜屋武眞榮君 持ち時間が迫りましたので、最後にお聞きします。
 沖縄県の基幹作目でありますサトウキビの生産量が近年だんだん低下する傾向にあるわけですが、これは非常に沖縄にとって憂慮すべきことだと思っております。
 この低下しつつあるサトウキビの生産につきまして、生産振興策については政府としてどのように考えていらっしゃるのか、率直にひとつお聞かせください。
#228
○政府委員(高橋政行君) 確かに、サトウキビの収穫面積は平成元年産以降減少傾向で推移してきておりまして、四年産では二万八千ヘクタール程度というように見込まれております。これに伴って当然生産量も減少しているという状況でございます。
 原因としてはいろいろございましょうが、やはり農業従事者の高齢化の進展によります耕作放棄の割合が非常に高くなっておりますし、また、他作物、野菜とか花卉とか、そういったものに転換するというようなことが主な原因でございます。こういう中で、収穫作業の機械化による労力の省力化、それから品質あるいは生産性の向上による収益性の増大というようなことが重要なことであるというふうに考えております。
 それで、国といたしましての具体的な対策でございますが、まず何と申しましてもサトウキビの収穫の労働時間が全体の労働時間の半分ぐらいかかるということで非常に高い位置を占めておるわけでございまして、ここの省力化を何とかしなければいけないということで、サトウキビの収穫機の早期普及ということで、これもいろいろな助成事業によりまして、近年、特にこの一、二年といいますか、沖縄県におきましてもサトウキビの収穫機が導入されてきておりまして、こういうものを中心にした機械化作業体系の確立普及を図っているところでございます。
 また、高品質の安定生産技術の啓蒙普及ということが大切でございまして、これにつきましては市町村段階で実証展示圃を設置いたしまして、そこでそういった技術を実証していくというようなこともやっております。
 そのほか、特にサトウキビの品種の関係でございますが、これも早熟で多収、高精な優良品種の育成ということで、現在九州農試それから沖縄県の農業試験場におきまして育種事業を推進しております。
 また、こうしたところで開発され育成されました品種につきましては、それぞれ種苗管理センターであるとか、沖縄県、鹿児島の原原種農場とかあるいは原種圃におきまして高精系新品種の普及推進を図っております。
 そのほか、特に最近複合経営というようなことも進展しておりますので、複合経営部門である園芸作物等の案出荷・加工施設、そういったものの整備にも取り組んできておりまして、我々、今後こういう面の施策をそれぞれ地域の実態に即しまして充実することによって、何とかサトウキビの生産性それから品質の向上を図って経営の安定に努めてまいりたい、このように思っております。
#229
○喜屋武眞榮君 もうちょっぴりあります。時間も惜しゅうございますから、最後に大臣に。
 日本にとって唯一の亜熱帯地域の沖縄の農業については大臣とされても非常に大事にしていらっしゃると信じますが、最後に大臣の沖縄農業、すなわち日本の唯一の亜熱帯農業に対する基本的なひとつお考えをお聞かせ願いまして、終わりたいと思います。
#230
○国務大臣(田名部匡省君) 今お話しのように我が国唯一の亜熱帯性気候の地帯でありますので、その特性を生かすということが非常に重要だと思っております。具体的には、基幹作物でありますサトウキビの生産性と品質の向上を図る、あるいは気象条件の有利性を生かした冬あるいは春の野菜、あるいは花卉、熱帯果樹、草地畜産、こういうものの振興を図るということが大事だと思います。
 この前行ったときもいろんな団体の皆さんの話を聞いてまいりまして、畜産等においても三回ぐらい草地がやれるということで、これも有望な産業だなと思いました。
 ただ、残念ながら、沖縄県でやる肉牛は全部本土に送っているんですね。沖縄の人が食べるのはニュージーランドから輸入をしているという話を聞きまして、非常に残念だなと思いました。行ったら、やっぱり沖縄の肉が食べたいという旅行者が多いですから、こういう人たちの満足いくような体制というものをとらなきゃいかぬ。あるいは花卉についてもバブル経済がここまで影響を与えるのかなと。ランが影響を受けているんだというお話を聞きました。
 過程の中ですからいろんなことはあるんだろうと思いますが、基本的には、今申し上げたように特色ある亜熱帯農業として確立していくことが重要だというふうに感じております。
#231
○喜屋武眞榮君 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
#232
○新間正次君 今回の農地法の一部改正において、直接農業に従事している者でなくても農業生産法人の構成員になるという道が開けたということは大変結構なことだと思います。また、当該会社の構成員の有する議決権がその会社の議決権総数の四分の一以下であり、かつ有限会社にあっては、一人当たり議決権が総数の十分の一以下であるものに限ると、かなり厳しい条件がついているわけでございます。
 農業従事者に不利益が起きないように配慮されているとは思いますけれども、一つ気になりますのは、構成員の要件についての規定の「その法人の事業の円滑化に寄与する者」というところがあるんですけれども、前の基準に比べまして何か漠然としているように思いますし、その「円滑化に寄与する者」というのは具体的にはどういうような者を指すのか、またこのような基準を設けた趣旨をお伺いさせていただきたい。
#233
○政府委員(入澤肇君) 今回の法律の中で農地法を改正いたしまして、農業生産法人の要件につきまして事業とそれから構成員の範囲の拡大を行おうとしているのは御指摘のとおりでございます。
 その具体的な考え方は、まず農業生産法人の基本的な性格等を考慮いたしまして、事業につきましては、農業と一次的な関連を持ち、農業生産の安定発展に役立つような事業、例えば具体的には、ほかで生産されたものも含めて農畜産物の加工、貯蔵、運搬、販売を行う、あるいは農業生産に必要な資材の製造、農作業の受託を行う。こういうように、自分のところの原料だけじゃなくて、他で生産されたものも含めて加工、販売を行えるように事業範囲を拡大するということが事業要件の緩和の内容でございます。
 もう一つ、構成員につきましては、農業生産法人の経営の安定発展に積極的に寄与すると考えられる者を加えると。具体的には、農地の現物出資の事業を行う農地保有合理化法人、農協、農協連合会、それから農業生産法人から法人の事業に係る物資の供給または役務の提供を受ける者であって、政令で定めるもの、それから法人の事業の円滑化に寄与する者であって、政令で定めるもの、この三つを考えているわけでございます。
 では、この政令では具体的に何を書くかということでございまして、第一に、法人の事業に係る物資の供給または役務の提供を受ける者につきましては、法人の事業に係る物資の供給または役務の提供を継続的に受ける個人に限定すると。それから法人の事業の円滑化に寄与する者につきましては、法人の事業に係る特許の供与、新商品または新技術の開発及び提供等の契約を締結している者に限定して定める予定でございます。
 このような改正を行いましても、参入する企業は、農業生産法人の事業に係る特許の供与、新商品または新技術の開発及び提供等の契約を締結している者という真にこの法人の事業の円滑化に寄与する者に限定されているということと、それから、先ほど御指摘ありましたように、企業の有する議決権は四分の一以下であり、かつ一企業で有する議決権は十分の一以下に規制されるということでございます。
 これに加えまして、業務執行役員の過半が農作業に主として従事する構成員でなければならないという要件は引き続き改正しないで維持するということ。それからさらに、許可処分時の要件審査とか、その後の実態把握、報告徴収、立ち入り調査等々十分に監督体制についての規定が整備されておりますので、これらを十分に駆使するということ。
 そういうことから今回農業生産法人の要件の緩和を行いまして、具体的にはその活動を助長していくのでございますけれども、企業の法人支配につながるということはないというふうに考えております。
#234
○新間正次君 大体のところはのみ込めたつもりでおりますけれども、とにかく農業をやられる方々が何か逆に隅に追いやられてしまうようなことのないようにひとつ気をつけていただきたいと思います。
 大臣にお尋ねしたいと思いますけれども、新政策のビジョンでは企業者マインドを意識してということで、生産面からのとらえ方に何か偏っているんじゃないかなというような感じがするんです。
 農村というのは、農道や水路の管理あるいは消防団を中心とした公益的な活動を農業従事者の方々が自主的に行っているところがほとんどなんですね。しかし、都会ではそういう地域活動というのは弱体化する傾向にあって、その部分を行政がカバーをしている。農村におけるその公益的な事業を新政策ではどのように加味しているのかということについてお尋ねをしたいと思います。
#235
○国務大臣(田名部匡省君) この政策では農業政策に重点を置いていることは当然でありますが、次のような各般にわたる施策を講じながら農村地域の活性化を図ることにしておるわけであります。
 その第一ですが、農村と都市が相互に補完し合い、共生していくことによって、国土の均衡ある発展を目指すということ。それから、生産基盤と生活基盤の一体的な整備、美しい景観を有し、伝統文化が豊かな農村の形成。それから適正な土地利用の確保と定住条件の整備をしていく。あるいは中山間地域などにおいては、立地条件を生かした農林業を初めとする産業振興や生活環境の整備のほか、農林地などの地域資源の適切な利用・管理に取り組むこと。こういうことがございます。
 なお、平成五年度より土地改良施設の持つ多面的機能を適正に発揮させるために必要な集落共同活動の強化など集落機能の再編強化を図ることにしておるわけでありまして、御趣旨の意に沿うものと私どもは考えております。
 これ以外にもまたいろいろあるかもしれませんが、適時適切に常に対応していきたい、こう考えております。
#236
○新間正次君 ぜひ対応してください。
 それから、今回の法改正で中山間地域におけるデカップリングを導入すべきではないかという考えもあるということになっております。これを見まして私ふと思いましたのは、昭和四十六年から四十八年に稲作転換対策として休耕に対して十アール当たり約三万円を支払っておりました。これはデカップリングというのは休耕を前提にしていることからなじまないものの、農家の所得補償という点ではその手法に同じ過ちを犯すべきではないんじゃないかなという感じがいたします。もちろん、現在の転換奨励金は基本額を廃止して、構造政策を重視したものと理解はしております。ただ、なぜこの四十六年から四十八年という短期間で中止されたのか。
 また、私が思いますのに、これは、農地の荒廃はもとより、お金を出したことで農家の方々の心まで何か荒廃させてしまったんじゃないかなという感じがいたします。このような施策自体がまた国民の農家に対する、農業に対する目を大変厳しいものにしてしまったということは否めないと思います。デカップリング自身、個々人のイメージが異なっておりますけれども、農家への直接所得補償の導入に当たっては十分にひとつ慎重に検討、また研究されるべきではないかなと考えております。
 また、ことしの白書に、耕作放棄地の増加については中山間とともに都市近郊が結構多いんですよね。ゾーニングしたデカップリングについては中山間のみに限定するというのは、これはコンセンサスが得られるかどうかという心配もあります。したがって、私としては農林業の総合的な発展を考え、トータル的にこれをやってみてはどうかなという感じがするんですが、どうでしょうか。
#237
○政府委員(上野博史君) いわゆるデカップリングの問題につきましては、簡単に申し上げますと、なかなかいろいろと問題がございまして、現在の段階で結論的な考え方を取りまとめるには至っていないわけでございます。さらに検討してまいりたいというふうに考えているわけでございますが、その原因として今委員の言われた幾つかの点も入っているというふうに考えております。
 それから、休耕の奨励金でございますけれども、これは当時米が非常に過剰生産をされまして、在庫が六百万トンぐらいだったかと思うのでございますが、一年分ぐらいの政府の在庫を積み上げるというようなことになりまして、緊急にこの過剰の解消を図らなければならないということで例の米の生産調整対策というのが打ち出されたわけでございまして、なかなか転作といっても急にほかの作物に移るということが難しい、しかしながら米の生産を中止する場合には農家に対するダメージが大きいというようなことがございまして、当面の暫定的な緊急避難措置というような考え方で休耕奨励金が交付されたんだというふうに理解をいたしております。
 デカップリングとの関係で言いますと、デカップリングというのは、農業の持っております自然環境の保全機能であるとか、国土の保全機能であるとか、そういうようないわゆる非経済的な機能を維持発揮させるという観点で考えられているというふうに考えるわけでございまして、休耕の場合にそういうようなデカップリングという施策の対象として考えられるかどうかということについては、委員御指摘のとおり、いろいろ議論のあるところだというふうに考えているところでございます。
#238
○新間正次君 ちゃんとした答えになっていたかどうかやや疑問が残るわけでございますけれども、これはぜひもう少し検討を加えていただいて、また定かなお答えをいただきたいなと思っております。
 それから、中山間地域の振興について、今回の改正では対象地域における細部の線引きを各市町村に任せているということが挙げられておるわけでございますけれども、これは当然のことながら、その地域の農業の実情というのはその地域の方々が一番よく把握されておるわけですから、このようなことは必要なことであると考えます。
 ただ、ある市町村では同じ条件なのにその対象地域になって、こちらの市町村ではもっと条件が悪いのに選ばれなかったというようなことがもし出てきたとすれば、これは農業従事者の方から納得が得られないと思われるんですけれども、線引きに当たりまして各市町村間の横の連携が私は大変大切じゃないかなという感じがいたします。そういう点、国としてどのように指導していくおつもりかお聞かせいただきたいと思います。
#239
○政府委員(入澤肇君) 中山間地域の対象市町村の地域でございますが、これは法案の第二条におきまして「地勢等の地理的条件が悪く、農業の生産条件が不利な地域であり、かつ、土地利用の状況、農林業従事者数等からみて農林業が重要な事業である地域として、政令で定める要件に該当するもの」というふうになっておりまして、政令で具体的に要件を定めることにしております。
 現在検討中でありますけれども、例えば、「地勢等の地理的条件が悪く、農業の生産条件が不利な地域」の要件といたしましては、全耕地面積に占める急傾斜地面積の比率が高いことまたは林野率が高いこと、それから「農林業が重要な事業である地域」の要件といたしましては、農林地の割合または農林業従事者の割合が一定以上であるということで、そういうことで検討しております。要するに、要件が客観で決まりますので、同じような要件からある地域は指定されて、ある地域は指定されないということはございません。
#240
○新間正次君 ぜひそのようになるようにひとつ御検討いただきたいと思います。
 続いて、機械化促進のことでございますけれども、他産業並みの労働条件を整えるという意味でこれは必要不可欠な要素であると考えます。しかしながら、今回の法改正では、どちらかというと、何か機械を使用する側よりも機械をつくる側に重点が置かれているように思われます。今でも年にもう何日も使わない、いわゆる大型の耕作機械の借金の返済のために大変苦労なさっていらっしゃる農家が多いということも聞いております。
 機械の導入が使用する側にとって大きな負担となってしまったんでは意味がないわけでございまして、今回の法改正において機械を使用する側への配慮をどのようにしていくおつもりか、お聞かせください。
#241
○政府委員(高橋政行君) 確かに、農業機械が性能に応じて効率的に利用されなければいけないわけでございます。そうしなければ農業経営の改善にも役立たないということでございますので、我々といたしましては、今回お願いすることになると思います農業機械化促進法におきまして、国、都道府県が農業機械の効果的な導入に必要な条件を定める、いわゆる基本方針あるいは導入計画というものを定めて示すことにしております。それで、これに基づきまして農業者がその経営状況あるいは利用規模に応じまして適切に導入するよう、特に末端では普及組織、そういうものを通じて指導していくということにしたいというようなふうに考えております。
#242
○新間正次君 ちょっと視点を変えまして、いわゆる農山漁村において御婦人の労働力という、これは前のときにもお話をしたと思いますけれども、御婦人の労働力というのは、これはもう大変欠くことのできないものを持っているわけですね。水稲に至っては労働力の約六割を御婦人が担っていらっしゃるという現実があるわけでございます。その割には婦人の権利がきちんと保障されていないのではないかなという感じがするわけでございます。
 他産業に比べまして権利確保を難しくしている要因、あるいはまた農協の役員あるいは指導農業士などにおける女性の方々の活躍の現状及び今後の方針についてお聞かせください。
#243
○政府委員(高橋政行君) 女性の皆さんは、農業就業人口の中の六割も占めるということで、まず農業という面から見ても重要な担い手になっております。また、最近、地域によりましては、それぞれの特産農産物を利用いたしました特産物づくりをいたしましたり、あるいは朝市の開催というようなものを通じまして消費者あるいは都市の皆さん方と交流するというようないろいろな役割を果たしておっていただいておるわけでございます。
 我々といたしましても、今後とも女性のこうした農業あるいは農村での役割というものを適正に評価し、その持っていらっしゃる能力を十分に発揮していただくというような施策を講じていくことが重要であるというふうに思っておるわけでございます。
 それで、そういった観点から、平成四年六月に、「新しい農山漁村の女性 二〇〇一年に向けて」ということで、我々は長期ビジョンと言っておりますが、そういうものを策定いたしまして、長期的に今申し上げましたようなことに取り組んでいかなきゃいけないというふうに思っておるわけでございます。
 特にこの中で、平成五年度におきましては、今先生からお話がございましたように、経営内における女性の権利といいますか役割といいますか、そのようなところが明確にされておりませんので、そういうものを明確にしていく。それから、そういう仕事に応じた報酬の支払いもしていくというような一つのルールづくりというものを検討いたしたい。また、農協とか農業委員会とがそれぞれ地域にいろんなそういう話をする場があるわけですが、そういう場におきましても女性の皆さんに積極的に参画していただく、そういう運動に
なりますが、そういう運動もひとつやっていきたい。また、労働負担の軽減とかあるいは快適な作業環境づくりというようなことも推進をしてまいりたいと思っておりますし、さらに、特に女性の皆さんが農業の経営の中で働いて活躍していただいておるわけでございますので、農業技術とかあるいは経営管理能力の向上のための研修というようなものにつきましても今後工夫をしていきたい。
 今申し上げましたようなことに国、都道府県、市町村、農業団体、そういったものが一体となって取り組むというようなことをしていきたい、こんなふうに思っておりまして、今後とも、女性の皆さんの能力が十分に発揮できるような方策について考えてまいりたいと思っております。
#244
○新間正次君 二〇〇一年なんて言わないで、早速きょうからでもやっていただきたいと思っておりますけれども、女性には女性の役割、また女性でなければできないものというのがたくさん僕はあるような気がするんですね。ですから、そういう意味においてぜひ女性を大切にしていただきたい、別にフェミニストではありませんけれども、それを申し添えておきたいと思います。
 ちょっと今度は厚生省さんにお尋ねしたいと思いますけれども、毎度申し上げておりますけれども、農山漁村の高齢化というのは大変深刻でございまして、都市部では民間救急車という名前で業者によって寝たままで移動できる車が登場しておる。まだごく最近のことでございます。こういうサービスというのは、当然のことながら国民のニーズから生まれたものであるわけでございまして、まだまだ発展途上の業種ではないかと思いますが、福祉の観点から今後優良業者を育てていく必要があるんではないか。
 厚生省として現状をどの程度に把握し、またどう指導していかれるのか、今後の方針をお聞かせください。
#245
○説明員(今田寛睦君) 御指摘のように、病院間あるいは医師が同乗して行いますところの患者搬送業務、これは医療機関が従来行う業務とされていたわけですけれども、最近は、経営の効率化などの観点もございまして、患者搬送業務を民間業者に委託するような、そういう医療機関も出てまいりました。
 このような業者の歴史は、御指摘のように比較的新しい業種でございまして、平成三年に行いました医療機関に対するアンケート調査によりますと、調査対象の医療機関の八・三%が患者搬送業務を民間業者に委託していると、このような実情にございます。当然新しい分野として適切な医療が確保されるという観点から、健全な育成を図らなければならないということでございますが、従来厚生省といたしましても、こういった民間業者に委託する場合の適切な衛生管理については、いろんな分野に指導を重ねてまいったわけでございますけれども、ことしの四月一日に施行になりました改正医療法、これによりまして、医療機関の管理者は、業務を委託する場合に一定の衛生水準が確保されるよう、政令で定める業務につきまして、例えば検体検査、御指摘の患者搬送もそれに含まれておりますが、これらにつきまして一定の基準を満たす業者に委託しなければならない、このような規定がなされたところでございます。
 これらの法令の規定を踏まえまして、患者搬送業務の民間業者の委託につきましても適切な衛生管理がなされますよう指導するとともに、受託業者の資質の向上が図られるように今後とも配慮していきたい、このように考えております。
#246
○新間正次君 そのとおりでございまして、業者によっては料金など、片道でしか取らないところと、それから往復で帰りの空になった分まで取るようなところもありますので、そういう点で指導の方を適切に行っていただきたいと思います。
 時間がありません。最後に、JAでは別府とそれから中伊豆にリハビリテーションセンターというのをつくっております。本来現場を見たかったんですけれども、間に合わずにパンフレットだけしか見なかったんですけれども、大変すばらしいものができているわけですね。
 障害者の方を中心としたサービスを行っているわけでございますけれども、また地域の皆さんにもかなり御利用いただいているという話も聞いておりますし、体の不自由な方の自動車学校などといいますか、そういうものも併設されたところもあるみたいでございますけれども、これらについて今後規模拡大の計画などがあるかどうか、それをお尋ねして、終わりたいと思います。
#247
○政府委員(眞鍋武紀君) お尋ねのJAがやっております別府と中伊豆の障害者のリハビリセンターでございますが、大分県別府市及び静岡県の中伊豆町にあるこのセンターは、昭和四十八年に全国共済農業協同組合連合会等が主体になりまして、社会福祉法人としてそれぞれ開設されているわけでございます。
 御指摘にもございましたように、これは主として交通事故によりまして体が不自由になった方々にリハビリテーションを実施して、早期に社会復帰をしてもらうことを目的にしておるものでございます。二十年間にわたりまして、両施設ともこうした方々の社会復帰に大きく貢献しているものと承知しておるわけでございます。
 農協系統では、こうした事業を初めといたしまして、組合員の福祉に関する事業を実施しているところでございますが、農村社会の高齢化が急速に進展をしている中で、健康管理でございますとかあるいは保養検診等の高齢者対策活動も実施しているところでございます。農業者の協同組織でございます農協が組合員の介護等の活動を効果的に支援していくことが求められている状況になっておるわけでございます。
 こういうふうな状況を踏まえまして、農林水産省といたしましては、先般農協法を改正いたしまして、農協が老人福祉事業ができる旨を法律上明記することとしたわけでございます。今後とも、市町村なり社会福祉協議会、医療機関等地域の関係団体との機能分担を明確にし、福祉の問題でございますので、農協だけというわけにいきませんので、こういう関係の団体との機能分担を明確にいたしまして、これらの団体との十分な連携も図りながら、農協系統がこうした事業に適切に取り組むように今後とも指導してまいりたいと思っておるわけでございます。
#248
○新間正次君 終わります。
#249
○委員長(吉川芳男君) 本調査に対する質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。
   午後五時二十八分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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