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1993/06/10 第126回国会 参議院 参議院会議録情報 第126回国会 外務委員会 第7号
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1993/06/10 第126回国会 参議院

参議院会議録情報 第126回国会 外務委員会 第7号

#1
第126回国会 外務委員会 第7号
平成五年六月十日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月十三日
    辞任         補欠選任
     矢野 哲朗君     鈴木 貞敏君
 五月十四日
    辞任         補欠選任
     鈴木 貞敏君     矢野 哲朗君
     松谷蒼一郎君     北  修二君
 六月三日
    辞任         補欠選任
     矢野 哲朗君     坂野 重信君
 六月四日
    辞任         補欠選任
     坂野 重信君     矢野 哲朗君
 六月八日
    辞任         補欠選任
     田  英夫君     竹村 泰子君
     松前 達郎君     森  暢子君
     猪木 寛至君     井上  計君
 六月十日
    辞任         補欠選任
     久保田真苗君     肥田美代子君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         野沢 太三君
    理 事
                椎名 素夫君
                山岡 賢次君
                北村 哲男君
                磯村  修君
    委 員
                成瀬 守重君
                野村 五男君
                宮澤  弘君
                矢野 哲朗君
                竹村 泰子君
                堂本 暁子君
                肥田美代子君
                森  暢子君
                荒木 清寛君
                黒柳  明君
                井上  計君
                立木  洋君
                武田邦太郎君
   国務大臣
       外 務 大 臣  武藤 嘉文君
   政府委員
       警察庁刑事局保  中田 恒夫君
       安部長
       法務大臣官房審  森脇  勝君
       議官
       外務大臣官房外  小池 寛治君
       務参事官
       外務省アジア局  池田  維君
       長
       外務省欧亜局長  野村 一成君
       財務省経済局次  林   暘君
       長
       外務省条約局長  丹波  實君
       外務省国際連合  澁谷 治彦君
       局長
       文部省初等中等  野崎  弘君
       教育局長
       文部省学術国際  長谷川善一君
       局長
   事務局側
       常任委員会専門  辻  啓明君
       員
   説明員
       法務大臣官房審  古田 佑紀君
       議官
       法務省民事局参  岡光 民雄君
       事官
       法務省刑事局刑  倉田 靖司君
       事法制課長
       法務大臣官房審  小西 正樹君
       議官
       外務大臣官房審  野上 義二君
       議官
       外務大臣官房外  服部 則夫君
       務参事官
       文部省初等中等
       教育局高等学校  富岡 賢治君
       課長
       厚生省児童家庭  宮島  彰君
       局企画課長
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○児童の権利に関する条約の締結について承認を
 求めるの件(第百二十三回国会内閣提出、第百
 二十六回国会衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(野沢太三君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 去る五月十四日、松谷蒼一郎君が、また去る六月八日、松前達郎君、田英夫君、猪木寛至君が、また本日、久保田真苗君が委員を辞任され、その補欠として北修二君、森暢子君、竹村泰子君、井上計君、肥田美代子君がそれぞれ選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(野沢太三君) 児童の権利に関する条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。武藤外務大臣。
#4
○国務大臣(武藤嘉文君) ただいま議題となりました児童の権利に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 この条約は、平成元年十一月二十日に第四十四回国際連合総会において採択されたものであります。
 この条約は、生命に対する固有の権利、思想の自由、社会保障についての権利、教育についての権利等の児童の権利を定め、これらの権利がいかなる差別もなしに尊重され及び確保されるように、締約国がすべての適当な立法措置、行政措置その他の措置を講ずることを定めております。
 我が国がこの条約を締結することは、児童に対する人権の保障に関する我が国の姿勢を内外に示すものとして望ましいと考えられます。さらに、この条約の締結は国際社会における児童の人権の尊重の一層の普遍化に貢献するという意味からも極めて有意義なものと考えます。
 なお、我が国としては、この条約中の自由を奪われた児童の成人からの分離についての規定に関しては、その内容にかんがみ、留保を付することが適当であると認められます。
 よって、ここにこの条約の締結について御承認を求める次第であります。何とぞ、御審議の上、速やかに御承認あらんことをお願いいたします。
#5
○委員長(野沢太三君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○矢野哲朗君 自由民主党の矢野哲朗でございます。
 きょうから衆議院から場所を移して参議院で児童の権利条約締結に関しての質疑がスタートするわけでありますけれども、この件に関しては今日に至るまで相当十分な論議が尽くされたかな、こう思うところでありますけれども、反面、条約の趣旨とは違った形で解釈されるやら誤った運用がなされるおそれもある、そんなことが散見されますのでありますから、より一層明確にしておきたいこと、改めて確認しておきたいこと諸点につき質問をいたしますので明快な答弁をお願い申し上げます。
 まず児童の権利条約締結の意義についてお尋ねをいたします。
 この条約が平成元年第四十四回国連総会で採択されて以来、条約の批准に向けてさまざまな論議が重ねられてきました。その中で、従来、児童は保護、管理の対象でありましたが、この条約により児童は権利の享有行使の主体と認められたとして、条約を締結すれば学校教育の場はもとより児童福祉、少年司法等々、我が国でもいろいろな分野で改革が必要であるというような意見が大手を振ってまかり通っているようにも見受けられます。
 確かにこの条約は、児童の権利の尊重、保護を目指した広範な内容の条約であり現代的な視点も加味されております。しかし、その内容をよく検討すれば基本的人権の尊重の理念に基づく我が国憲法の目指すところと同じでありまして、我が国が既に締結している国際人権規約の権利保障と軌を一にするものであると考えます。
 私は、この条約の締結によりまして我が国社会の大変革が迫られているという一方的な論議に目を奪われることなく、国際的な人権保障の前進という観点から冷静に条約の締結が進むことを願います。政府はこの条約を締結する意義をどのように位置づけられているのか、お伺いをいたします。
#7
○国務大臣(武藤嘉文君) 先ほどの提案理由の中でもいろいろと申し上げましたし、今、御指摘のとおりでございまして、やはり国際的に国際社会において児童の人権の尊重の一層の普遍化に貢献するという意味が大変有意義なものであると存じております。
 もちろんこの権利条約は児童の人権の尊重を訴えておるわけでございますけれども、今、御指摘のありましたように、当然憲法における基本的人権と軌を一にしているものでございまして、憲法における基本的人権というものもやはり権利があればそれに対する責任は当然伴っているということでございまして、その辺の運用というものはきちんとしていかなきゃならないものと思っております。
#8
○矢野哲朗君 条約における児童観、条約の国際的な意義についてお伺いをいたします。
 この条約は、児童を大人と同じ権利を有し権利行使の主体として見直したところに画期的な意義があるとして、児童を保護の対象としてとらえていた児童観は払拭され、児童を権利行使の主体としてとらえる児童観に基づき条約が運用されなければならないという意見が一部に散見されます。
 しかし、従来から児童は権利享有の主体であったのであり、児童の権利の尊重に向け世界各国はそれぞれの社会の伝統にふさわしい形で努力をしてきました。我が国でも児童の権利は十分に保護、尊重されていると考えますし、むしろ今日の状況は権利主張に走り過ぎる弊害も見受けられると思います。この条約による権利の保障は自然体で考えればよいのであり、この条約は児童を権利行使の主体ととらえる児童観に立脚しているなどという考え方は曲解も甚だしいと思うのであります。
 むしろこの条約で注目しなければならないのは、発展途上国などにおけるいわゆるストリートチルドレンに代表される極めて困難な状況に置かれている児童の存在であり、幼い児童が大人の兵士の身がわりとなって、動く地雷探知機とされたような少年兵士の存在など、児童の人権はもとよりその固有の生命まで脅かされてきたような現実を世界の各国が相互に協力して根絶していこうという決意をしたところにあると思います。
 そこで、この条約の締結によって児童観がコペルニクス的な転回を遂げるものではないことと、条約の国際的な意義について改めて政府に確認させていただきます。
 加えて条約第四条などで触れられている条約の履行にかかわる国際協力について今後どのような展開を考えておられるのか、あわせてお伺いをいたします。
#9
○説明員(小西正樹君) お答え申し上げます。
 まず第一に、この条約の締結により児童観がコペルニクス的な転回を遂げているのではないかという趣旨の御質問でございますけれども、この条約は、我が国が既に締約国になっております経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、市民的及び政治的権利に関する国際規約において定められております権利を児童につきまして広範に規定するとともに、さらに児童の人権の尊重及び確保の観点から必要となる具体的な事項を詳細に規定したものでございますけれども、目的といたしますところは、先ほど大臣から御答弁がありましたとおり、基本的人権の尊重の理念に基づいている我が国の憲法と軌を一にしているところでございます。
 児童は、その人格の完全なかつ調和のとれた発達が確保され、社会の中で個人として生活をするために十分な準備が整えられることが必要であるというのがこの条約の基本的な考え方でございます。したがってそのため、この条約に規定されているように、児童の教育、発達につきましての第一義的な責任を有しております父母等が児童の能力に応じて適当な指示を与える責任等を尊重しながら、この条約において認められている児童の権利の尊重、保護を引き続き図っていくということが重要であるというふうに認識しております。
 先生、この条約の国際的な面、特に発展途上国の児童の状況についてお触れになりましたが、その点はもちろんこの条約においても勘案されておりますが、この条約は広く、先進国、開発途上国の区別なく一般的に困難な状況に置かれました児童の人権の尊重、保護の促進を目指して作成されておりまして、特定の国の文化や法制度に偏っているということではございませんで、すべての国が受け入れ可能な普遍性を有しているという点がございます。このことは、多くの国がこの条約作成作業に参加してコンセンサスで採択され、これまでに既に百三十を超える国が締結をしていることにもよくあらわれているというふうに考えております。
 また、先生、国際協力の面にお触れになりましたが、この条約においては国際協力の面においても具体的かつ広範な規定が設けられております。例えば一般的な形では第四条で既に国際協力の重要性が指摘されておりますけれども、そのほかに個別具体的な点といたしまして、保健の分野における国際協力の重要性、教育の分野における国際協力の重要性、こういった面がうたわれておりますし、それぞれ児童の地位を任務といたしております関係の国際機関、ユニセフ、WHO、こういった機関を通じる資金協力等を実施していくことの重要性、こういう面での国際協力の重要性というものが指摘されているところでございます。
#10
○矢野哲朗君 何回も論じられてきたことでありますけれども、条約の名称、チャイルドの訳語についてお伺いをいたします。
 私のところにもいろいろな団体やら個人から条約の名称は「子どもの権利条約」としてほしい旨の要望が届いております。その趣旨は、条約のチャイルドを子どもと訳すことが児童を権利の行使主体ととらえるためのキーポイントである、そのことからだと思います。しかしながら、条約の正文をどのように訳すかにより我が国における条約の履行にそこを来しかねないとの主張は一方的過ぎ、論理の飛躍があると言っても過言ではないと思うのであります。条約の訳語が国民すべてにわかりやすいものであるべきことはそのとおりでありますが、法令用語としての整合性を保ちながら条約が訳されることも大事なことであります。このような観点から見ると、児童という用語は憲法二十七条三項や人権規約二十四条でも用いられておりまして一貫性のある言葉であることが理解できます。
 そこで政府から、チャイルドを児童と訳した経緯について改めて説明をいただきたいと思いますし、他方、この条約は国民すべてに広く知ってもらう必要があることから、児童に対して易しい言葉でわかりやすく条約の内客の紹介に努めてもらいたいとも考えます。
 政府は、わかりやすい広報についてどのように今後努めていくのか、考えをお伺いいたします。
#11
○説明員(小西正樹君) まず第一に、チャイルドとございます条約の正文をなぜ児童と訳したかという経緯についての御質問でございますけれども、一般的に条約や法律におきましては、ある言葉を用いた場合に同一の内容であればその言葉を続けて使っていくというのが原則であるという意味で、法令用語の整合性あるいは一貫性ということが重要でございます。我が国が締結済みの条約におきましては、チャイルドという英語の言葉が親子関係における子という意味に限定される場合には子という訳が用いられておるわけでございます。そして、必ずしもかかる観点に着目せず低年齢の者を一般に指す場合には児童という訳語が用いられるのが通例となっております。子どもと訳した例は見当たらないわけでございます。
 国内法令におきましては、先生お触れになりました憲法を初めといたしまして児童福祉法、児童手当法いずれも児童を十八歳に満たない者と定義一して使用しているわけでございます。先生の指摘されました人権規約においても私どもは児童というふうに訳しているわけでございます。
 そういったことで、我が国が締結済みの条約や憲法を初めといたします国内法令では低年齢の者を一般に指す場合には広く児童が使われているという法令用語の整合性ということにかんがみまして、チャイルドという英語の言葉を児童というふうに訳したものでございます。
 第二の御質問で、易しい言葉で国民にわかりやすく広報に努めるべきではないかという御指摘でございますが、この条約の四十二条におきましてもまさに先生の御指摘のとおりの趣旨が規定されておりまして、この条約について広く国民一般に対して適切な広報を積極的に行うという義務が課されておるわけでございます。そういう面で、特に易しい言葉を使ってわかりやすくということにつきましては児童に対する広報の面で重要であるわけでございますけれども、その点につきましては私どもは小冊子等各種の媒体を用いることを含めまして具体的な方策につきまして現在関係省庁と検討しているところでございますけれども、ぜひとも児童にもわかりやすい広報上の工夫をしていきたいというふうに考えております。
#12
○矢野哲朗君 政府がこの条約を締結するに当たりまして行おうとしている一つの留保と二つの解釈宣言、このことを行わないようにしてほしいというやはり要望が私のところにも届いております。
 確かに国際条約は、留保を伴わないで締結できればその方が望ましいのは当たり前であります。しかしながら、世界各国がそれぞれの伝統や現状を踏まえて理想的な姿を描いた国際条約のネットワークを形成しようとするのであるから、それぞれの国内事情も考慮されなければならないことは当然であります。ですから少年司法に関係する留保については、我が国の場合二十歳未満の者まで対象としている少年法の運用について誤解のないように念のための質問でありますし、また出入国管理と関係する二つの解釈宣言についても、出入国管理法制は国家の主権作用にかかわるものであることは国際社会め共通の理解でありますから、我が国と同趣旨の解釈宣言を行っている国も少なくないと聞いております。
 政府が留保と解釈宣言を行おうとするに至った理由、そしてこれらの措置をとってもこの条約の本旨を損なわないものであることを明確にしていただきたい。お伺いいたします。
#13
○説明員(小西正樹君) この条約の第三十七条の(c)は、自由を奪われたすべての児童は成人とは分離されるということを規定いたしております。これは十八歳未満の者は十八歳以上の者から分離されなければならないということを定めていると解されるわけでございます。他方、我が国の少年法等の法制度によれば、十八歳未満の者は二十歳以上の者からは分離されるが、十八歳及び十九歳の者からは分離されなくてもよい取り扱いとなっております。これはこの条約が十八歳未満の者を児童としてそれに保護を加えることとしているのを少年法等ではさらに一歩を進めまして二十歳未満の者を広く保護の対象としていることによるものでございます。
 したがいまして、我が国の少年法等の法制度とこの条約の第三十七条(c)は分離の基準の年齢におきまして明らかに差異が存在するわけでございますので留保する必要があるわけでございます。しかし、条約及び国内法はその趣旨において相反するものではなく、ともに年少者をそれ以外の者から分離するという点で軌を一にするものでございます。
 次に、解釈についてお触れでございますけれども、この条約第九条一は、締約国に対して、父母による児童の虐待または父母の別居等の特定の場合を除きまして児童がその父母の意思に反して父母から分離されないことを確保するよう義務づけるものでございます。児童または父母の退去強制、抑留、拘禁等この条約の第九条四において国がとり得る措置として認められている措置により結果的に親子の分離が生ずることをこのことは妨げるものではないということでございます。
 また、この条約の第十条の一は、締約国が出入国の申請を積極的、人道的かつ迅速な方法で取り扱うということを規定しております。これは出入国の申請の審査の結果を予断し拘束するものではないというふうに解されるわけでございます。ただ、このような解釈が文言上必ずしも一義的に明らかでないため、将来、解釈をめぐって問題が生ずることのないようこのような解釈を明らかにしておくということにしたものでございます。
 このように、我が国の行おうとしている留保、解釈宣言いずれも私どもといたしまして必要と判断したものであり、かつこの条約の趣旨を損なうものではないというふうに考えております。
#14
○矢野哲朗君 条約実施のための立法措置、予算措置についてお伺いをいたします。
 私のところに届いています要望の中には、この条約を締結するために関係国内法を整備せよとの意見、条約の広報義務を果たすために予算措置を講ずべきであるという主張があります。しかしながら、この条約は基本的人権の尊重の理念に基づく我が国の憲法が目指すところと合致しているわけでありますし、憲法を頂点とするいろいろな法令の体系、行政措置に沿って児童の人権は保障もされております。そして、その水準は世界的にもずば抜けたものと言っても誤りではない、こう考えております。この条約を実施するために新たな立法措置を求める意見は、将来このような立法が必要ではないかという立法政策の議論と一緒にしているのではないかと思います。
 政府は、条約実施のための立法措置についてどのように見解を整理しているのか、お伺いをいたします。
 そして同様に、この条約第四十二条の広報義務を履行するためには政府広報の中でしかるべき対応に努めればよいものと理解しますが、政府の考え方を明確にしていただきたい。お伺いをいたします。
#15
○説明員(小西正樹君) 政府は、一般に条約を締結するに当たりましては、誠実にこれを履行するという立場から国内法制との整合性を確保することといたしております。この条約の締結につきましてもこのような方針のもとに鋭意検討を行った結果として、その内容の多くは、先生もお触れになりましたとおり、人権規約、憲法を初めとする現行の国内法制等で既に保障されておることから、条約を締結するために新たな立法措置は必要としないと考えております。
 他方、今申し上げましたことは立法政策上の観点から将来、児童の法的保護、福祉の向上等をさらに一層図る一環といたしまして新たな国内立法措置が行われることを排除する趣旨ではないことは申すまでもございません。
 広報についてお触れでございますけれども、この広報につきましても従来より関係の諸機関による予算のもとで実施されてきておるわけでございまして、この条約の締結後もこのような体制に基本的に変更はないわけでございます。私どもといたしましては、関係機関の広報予算を活用いたしましてこの点についても積極的に対応していくという考え方でございます。
#16
○矢野哲朗君 条約と国内法との関係で二点ばかり、少し細かな質問になりますけれども、ひとつ明確にしていただきたいということで質問させていただきます。
 一つは、条約の第二十一条(a)項では「養子縁組が権限のある当局によってのみ認められる」と規定されております。一方、我が国の民法では家庭裁判所の許可を必要としないいわゆる直系卑属養子が定められています。この両者の関係について政府はどのように整理をされているのか、明確にしていただきます。
 いま一つは、条約第四十条の二項で、外国人の児童が刑事裁判を受ける場合、その児童が日本語がわからないときには無料で通訳の援助を受けるものとされています。我が国少年法では逆に、通訳人の費用は徴収することができる旨定められていることとの関係であります。これについては政府はどのように関係を整理しているのか、お伺いをいたします。
#17
○説明員(岡光民雄君) 私の方の養子の問題を先に御説明させていただきたいと思います。
 我が国の民法におきましては未成年者の養子縁組につきまして、まず当該養子縁組が子どもの福祉に反しないかどうかということを家庭裁判所が審理しましてその後、縁組の許可をし、かつ今度は戸籍事務管掌者というものが法令に違反しないということを認めまして縁組の届け出を受理する、そして初めて養子縁組が成立するというふうにされておるわけでございます。
 繰り返して言えば、権限ある当局としての家庭裁判所と、同じく権限ある当局としての戸籍事務管掌者の二重の審査を経て未成年の養子縁組が認められるというふうにされておるわけでございます。
 御指摘の自己または配偶者の未成年の直系卑属を養子とする場合には、家庭裁判所の許可を要しないとされているのはそのとおりでございます。それはこのような身分関係の場合には養子の福祉を害しないことが定型的に明らかで、むしろ簡易迅速に養子としての地位を与えることの方が子の福祉に資すると考えられているからでございます。
 その一つの例として挙げられますのは、配偶者のいわゆる連れ子さんを養子とする場合も、配偶者、つまり養子の方から見れば実親に当たるわけですが、その実の親の同意が必要というふうに別な規定でされておりますから、この場合も子どもの福祉を害しないことは明らかであると考えられるのでございます。
 したがいまして、自己または配偶者の未成年の直系卑属を養子とする場合には、一方の権限ある当局である家庭裁判所の許可にかえまして、もう一方の権限ある当局である戸籍事務管掌者が他の法令に違反しないこととあわせまして当該縁組が自己または配偶者の未成年の直系卑属の養子縁組に当たるかどうかという事実を認定して、それに当たるとすれば縁組を認めるというふうになっておるわけでございます。
 したがいまして、いずれの場合も子どもの福祉に反しないかどうかということの権限ある当局の判断を経まして養子縁組が成立するというふうになっておるわけでございまして、我が国の未成年養子に関する民法の規定は条約二十一条の(a)項に適合しているものというふうに考えておるところでございます。
#18
○説明員(倉田靖司君) 刑事の面につきましてお答え申し上げます。
 本条約の四十条二項(b)の(E)というのが、刑事裁判及び少年審判におきまして国語を理解しない児童のためには通訳を付すこととするとともに、訴訟または審判遂行の過程におきましては通訳人の費用を児童に負担させないということを規定しているものと理解しておりますが、これは国語を理解しない児童にも法廷等におきまして十分な陳述ができることを保障しようというものであると解されるところでございます。したがいまして、その裁判が確定した段階におきまして、あるいは少年審判が終わりました段階で、その手続上通訳に要した費用を何びとに負担させるかというところまでは本条約は規定しているものではないと考えております。
 ところで、少年法の三十一条というのは審判を受けた少年またはその保護者から通訳の費用も含む費用の徴収ができるというふうに規定しておりますが、これは費用の徴収を義務づけているものではございません。家庭裁判所が手続の全体を総合的に判断いたしまして適切と認めるときには費用の徴収をすることを可能としているというものでございます。
 なお、ちょっと実際の運用につきまして一言付言させていただきますと、実際の運用におきましては通訳費用につきまして少年法による費用の徴収がなされた事例はないと承知しておりまして、実務上は事後的にも通訳費用は無料となっているというのが現状でございます。
 それはさておきまして法律の方に戻りますと、ただいま申し上げましたような解釈から、本条約四十条の二の(b)の(E)の規定と現在の実務というものは矛盾するものではなく、現行少年法制下におきまして本条約の規定するところは十分保障されているというふうに考えるものでございます。
#19
○矢野哲朗君 条約第十二条に規定をされていますいわゆる意見表明権についてお尋ねをいたします。
 自分の意見を形成することのできる児童が自分に影響を及ぼすすべての事柄について自由に自分の意見を表明することができるとのこの意見表明権、この条約の特色の一つだと思いますし、加えて十分尊重しなければならない事柄だと思うのであります。しかしながら、意見表明権の存在がひとり歩きをして、学校教育の現場で校則やカリキュラムまでも児童の意見を聞かなければ決定できないという主張がなされていることは意見表明権の本来の趣旨を履き違えたものと言わざるを得ない、こう思うのであります。
 条約でも児童の意見はその年齢、成熟度に従って相応に考慮されるものと規定されています。また、児童に退学処分など不利益な処分を行う場合についても児童の意見を十分聴取することの必要性はこの条約の規定にまつことなく認められていることでありまして、政府は既に意見表明権の趣旨を踏まえて、学校教育の現場で校則やカリキュラムの決定に当たり生徒会などの活動を通じて児童の意見を参考としていくとの考えを示しています。
 学校運営の原則、根幹が揺らぐことのないように、教育現場が無用の混乱に陥ることのないように明確な対処方針を示すべきと考えるのでありますけれども、所見をお伺いいたします。
#20
○説明員(富岡賢治君) 先生御指摘のとおり、条約の十二条一項につきましては自己意見表明権が規定されておりますけれども、同条は児童の意見を年齢等に応じ相応に考慮することを求めるものでございまして、児童の意見を無制限に認めるものではないわけでございます。したがいまして、もとより例えば校則やカリキュラムにつきまして児童の意向を優先するということを求めているものではないわけでございまして、当然のことでございますが、校則やカリキュラムにつきましては学校の判断と責任において決定されるものというふうに考えておるところでございます。
 また同条の二項では、一定の行政上の手続につきましての児童の聴取される機会につきまして規定されているわけでございますが、これは個々の児童に直接影響を及ぼすような行政上の手続につきましての規定でございまして、したがいまして個々の児童を直接対象とした行政上の手続ではないカリキュラムの編成とか校則の決定というようなことにつきましては、条約上の義務として児童の意見を聞く機会を設けなければならないわけではないわけでございます。
 今、先生御指摘のように、そういう機会を設けなければならないわけではないわけでございますけれども、例えば校則などの指導に当たりまして、生徒が自主的に行動して積極的に自己を生かしていくというようなことが大事でございますので、そういう校則の制定、見直しに当たりまして生徒会とか学級会の活動などでいろいろな課題、みずからの課題ということで討議する場を設けるなどの指導上の工夫は一つの方法であるというふうに答えてきているところでございます。
 いずれにいたしましても、先生御指摘のとおり、校則の制定とかカリキュラムの編成につきまして児童生徒の意向を優先するなどというような誤った解釈あるいは混乱が生じないよう、趣旨の徹底につきましてはいろいろな機会がございますので努力してまいりたいというふうに考えております。
#21
○矢野哲朗君 今の考え方に関連することでありますけれども、文部省は既に御承知だと思うのですが、日教組またはその他の団体がこの条約批准に大変熱心である、そしてこの条約の解釈について独自の見解を持って広報宣伝に努めていると聞いております。
 また今回、私は、質問をさせていただくということで調査をさせていただきましたその中で、生徒人権手帳という書物を読むことができました。内容は、我が国の学校における生徒手帳は生徒の義務や禁止事項ばかり書いてあるとの立場である団体により出版されたものですけれども、飲酒喫煙を自由にし処分を受けない権利、集会、サークルや政治活動の権利、つまらない授業を拒否する権利など権利の主張が列挙されていまして、本当に私も驚いてしまったのが現状であります。
 このような主張はこの条約とは無縁のものだと私は考えたいのでありますけれども、条約の締結に当たりまして、誤った考え方によって教育現場での無用の混乱が引き起こされることのないよう政府、特に文部省は現場の状況を十分認識してしかるべき対応に努めるべきだと思うのでありますけれども、所信をお伺いいたします。
#22
○説明員(富岡賢治君) 今、御指摘の生徒手帳というのは、先生御案内かと思いますけれども、国で生徒手帳に何を書くかというようなことについては特に定めを持っているわけではございません。一般的に各学校の教育目標とか校則とかあるいは配慮事項などが書き込んであるわけでございまして、その学校の教育目的の達成のために必要な配慮点というようなことをまとめたものでございまして、したがってその内容につきましては、当然のことでございますけれども、学校の判断と責任において確定するものでございます。
 今、お聞きしたような内容につきまして仮にそのようなことがあるとすれば、それは本条約の趣旨と全く関係ないことでございまして、やはり学校教育の目的の達成のために必要な内容でなければいけないというふうに考えるわけでございます。
 いずれにいたしましても、先ほど御答弁申し上げましたように、無用な誤解とか混乱というようなことが生じないようにということは大事なことでございますので、いろいろな機会を通じまして文部省としても考えていきたいというふうに思っておるわけでございます。
#23
○矢野哲朗君 無縁のものと考えたいというふうなことを私はあえて申し上げたのでありますけれども、国連子どもの権利条約を学校の中にというようなことで帯封がついているのですね。ですからそのこともあえて申し添えて、全く関係ないのだというふうなことで、混乱がないようにひとつ趣旨の徹底をされたいと願います。
 条約第二十九条では、児童の教育が目指すべき事柄について定めています。その中で、児童の教育は児童の出身国や居住している国の国民的価値観や自分と異なる文明に対する尊重を育成することと掲げられています。
 条約をめぐる今までの論議を聞くと、学校教育の場で国旗・国歌についての指導を行うことが条約第十四条の規定する思想及び良心の自由に反するとの主張が繰り返されていることも事実であります。しかしながら、国旗・国歌を尊重し、敬愛することは国際社会の基本的なルールの第一歩である。このことは今さら言うまでもないと思うのであります。我が国を代表するボランティアである青年海外協力隊の皆さんに対する訓練でも派遣先の国旗・国歌の尊重が重要とされております。
 学校教育の場で児童が我が国の国旗・国歌の意味をよく理解し国旗・国歌を尊重する態度と心情を養うことは、すべての国の国旗・国歌に対してひとしく敬意と尊重の態度を養うに通ずるものであると思いますし、条約二十九条の趣旨に沿うものと考えております。政府の見解を改めてお聞きしたいと思います。
#24
○説明員(富岡賢治君) 条約の十四条の思想、良心の自由につきましては既に憲法や国際人権規約に規定されているわけでございまして、これは一般に内心につきまして国家がそれを制限したり禁止したりすることが許されないという意味と解しているわけでございます。
 我が国におきましては、先生御案内のように、長年の慣行によりまして日の丸が国旗、君が代が国歌であるという認識が広く国民の間に定着しているものでございまして、学校教育におきましては学習指導要領に基づきまして、児童生徒が国旗・国歌の意義を理解しそれを尊重する心情と態度をしっかり育てるために、入学式や卒業式などにおきまして国旗掲揚、国歌斉唱の指導を行うこととしているわけでございます。
 この指導につきましては、児童生徒が将来広い視野に立って物事を考えられるようにという観点から、まだこれからの国際社会に生きる国民として必要な基礎的、基本的な内容を身につけるために行われるものでございまして、児童生徒の思想、信条を制約しようというものではなくしたがって本条約の十四条に反するものではないということでございます。むしろ、御指摘のとおり、児童の人格、能力等の最大限の発達、児童の文化的同一性等の尊重の育成、諸国民との相互理解の促進等の教育が指向すべき事項を定めております第二十九条の趣旨に合致するものであるというふうに考えております。
 文部省といたしましては、学習指導要領に基づきまして今後とも国旗掲揚、国歌斉唱が適切に行われるよう指導の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。
#25
○矢野哲朗君 ぜひよろしくお願いします。私どもの栃木県ではごく自然にそのことが励行されているということで、私もそのことがごく当然だというふうに解釈をしていたのでありますけれども、国内ではかなり地域的な格差があるというような状況もありますから、その点ひとつ精いっぱいの御努力を期待したいと思います。
 父母などの指示の尊重についてお伺いをいたします。
 この条約は、児童の権利に関する条約というタイトルから個人としての児童に注目をされる傾向があります。しかしながらよく読んでみますと、第五条では、締約国は父母などの保護者が児童の能力に適合する方法で適当な指示と指導を与える責任、権利、義務を尊重すると定めています。また十八条では、締約国は児童の養育と発達について父母が共同の責任を有するとの原則についての認識が確保されるよう最善の努力を払うこととされています。児童は国家社会の一員であるとともに、まず何よりも家族、家庭の一員であることは事実でありますからこれらの規定は当然のことを定めたと言えますが、現代社会の複雑化に伴って家族、家庭のあり方も大変変化してきていることは事実であります。
 政府は、条約の実施に当たりましてこれらの規定の趣旨をどのように実現していく考えなのか、お伺いをいたします。
#26
○説明員(小西正樹君) ただいま先生がお触れになりました五条、十八条の趣旨でございますが、我が国におきましては「成年に達しない子は、父母の親権に服する」ということが民法の第八百十八条第一項に規定されておりますし、また「親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」ということが同じく第八百二十条に定められております。また、憲法二十四条におきまして家族に関する事項に関して両性の本質的平等を規定しているほか、民法におきまして親権は「父母が共同してこれを行う」というふうな規定があるわけでございます。したがいまして、御指摘のこの児童の権利に関する条約の五条及び十八条の規定に定められました父母等の権利、義務及び責任につきましては、我が国の現行法制度のもとで適切に確保されているというふうに考えております。
 政府といたしましては、この条約の趣旨を踏まえまして引き続き現行法制の適切な運用を図っていきたいというふうに考えております。
#27
○矢野哲朗君 最後になりますけれども、条約の実施体制と広報についてお伺いをいたします。
 国際条約は締結すれば足れりというものではないということは当然事実でございますし、条約を誠実に遵守し履行することが国際社会に対するまさに信義であります。我が国における児童の権利保障の前進に資するものであるとも考えます。
 そこで、私のところに届く要望の中には、条約を実施するために新たな国内体制の整備を求める見解もありますけれども、現在でも教育、福祉、少年司法を初め我が国の児童に対する行政施策は世界的にぬきんでた水準にあるものでありますから、屋上屋を架することなく現行の体制を基盤に条約の趣旨を踏まえて前進させる方向が望ましいと考えます。このことについて政府はどのように対応するか、お伺いをいたします。
 あわせて、この条約を我が国の伝統そして風土を踏まえて実りあるものとしていくために、児童はもとより児童を持つ父母や地域社会、さらに教育、福祉の一線にある地方自治体を初めとして広く国民の皆さんにこの条約の趣旨、内容を正しく理解してもらうことが肝要だと思います。この条約の積極的な広報が必要と考えますけれども、政府はどう対応していくか、お伺いをいたします。
#28
○説明員(小西正樹君) 御指摘のとおり、現在の我が国の児童福祉のレベル等は国際的に見ましても高い水準にあるというふうに考えております。ただ、人権保護のレベルにつきましては、先進国であれ途上国であれ、法制度の面、意識の面、実態の面、こういった面において不断の努力によってさらに向上させることが必要であり、また重要であるというふうに考えております。
 政府といたしましては、現行の法制度を基盤とした上で、この条約を締結することにより児童の基本的人権の尊重に対する広く国全体の意識を高め、児童の法的保護及び福祉の向上等を一層図っていくきっかけにしたいというふうに考えております。そのためにこの条約の効果的な実施を図っていくという上からも積極的な広報が重要であるという御指摘はまさしくそのとおりでございまして、私ども広く国民にこの条約についての正しい理解が得られるように積極的に広報をやっていきたいというふうに考えております。
#29
○矢野哲朗君 ぜひお願いをいたします。一応、条約の関連の質問は終わりにさせていただきますけれども、実行されると信じて期待をさせていただきますので、ひとつよろしくお願いをしたいと思います。
 それでは一般国際情勢についてお尋ねをさせていただきます。
 順序が多少前後しますけれども、北朝鮮の核拡散防止条約脱退問題についてお伺いをいたします。
 北朝鮮の核不拡散条約の脱退発効期限であります六月十二日をまさに二日後に控えまして米朝交渉が続けられているわけでありますけれども、日本の今夕、第三回目の会談がニューヨークで持たれる、この成り行きを日本国民として大変心配している一人であります。北朝鮮が核開発の道に本格的に歩み出すことは、まさに東北アジアはもとより世界の平和と安定に重大な脅威を及ぼすことになると思うのであります。冷戦終了後、国際安全保障上最大の支障になるとも懸念をいたしております。
 その状況をひとつ御説明願いたいと思いますし、なおかつ政府の働きかけとしましても、米国や中国、韓国と連携して北朝鮮に翻意を促す努力を図るべきと思いますけれども、その点についての説明を伺います。
#30
○政府委員(池田維君) ただいま先生御指摘の北朝鮮のNPT脱退問題でございますが、御指摘のとおり、これは核不拡散体制に対する大きな挑戦でありますし、東アジアのみならず世界の平和と安定に大変大きな影響を及ぼし得るものだというように我々も認識しているわけでございます。
 これまでは北朝鮮側に対して特に二つのことを要請してまいりました。これはNPT脱退の決定を撤回させるということが一つでございます。それからもう一つは、ヨンピョンの地域にあります二つのいわゆる核疑惑の残っております地域へのIAEAの査察を認めさせるということでございまして、この二つを中心にしてこれまで我が国のみならず関係諸国はあらゆる手段を用いて働きかけてきたわけでございまして、それの一つの重要な働きかけが現在第三回目を迎えております米朝の会談でございます。
 米朝間につきましては、今月二日それから四日に既に二回にわたりましてニューヨークでハイレベルの会談が行われておりますけれども、これまでのところ見るべき成果はございませんでした。三回目が日本時間で申しますと明朝になると思います。ニューヨークで行われることになっております。私どもとしましては、この会談で北朝鮮側が前向きな柔軟な姿勢を示すということを強く期待しているわけでございます。
 それからこれまで朝鮮民主主義人民共和国に対して関係国がどういう働きかけをしてきたかということでございますけれども、日本といたしましては、特にアメリカ、韓国との三者の間で密接に協議、連絡をしてまいりまして、その協議を踏まえて個々に北朝鮮側に働きかけをしてきたということがございます。
 それから北朝鮮側に対して相対的に見まして大きな影響を持っております中国に対しましても私どもは個々に働きかけをしてまいりまして、中国側の北朝鮮への影響力行使ということを期待してきたわけでございまして、そういった意味ではできる限りの外交努力を続けてきたということでございます。
#31
○矢野哲朗君 六月の二日、三日に行われましたOECD閣僚理事会に我が国からも武藤外務大臣、森通産大臣、船田経企庁長官それぞれが出席されたわけであります。東京サミットにおける議題を方向づける重要な会議であったと承知するのでありますけれども、一部報道によりますと、各国の利害が表面化をし激しいやりとりがあったとも聞いております。
 サミットに向けて有効な政策協調が打ち出せたのかどうか、質疑の内容及びどのような合意形成が図られたのか、お伺いをいたします。
#32
○政府委員(林暘君) 六月の初めに行われましたOECDの閣僚理事会ではいろいろな議論が行われましたけれども、お尋ねの東京サミットとの関連におきましては、マクロの経済政策の問題、貿易政策の問題及び途上国問題という三つの議題が関連することであったかと思います。これらにつきまして会議ではいろいろ率直な意見交換が行われまして、御案内のとおり、いろいろな意見の表明がございました。最終的にはコミュニケという形で政策協調の基本的方向性についての合意が得られたというふうに思っております。
 それぞれについてごく簡単に御説明申し上げますと、マクロ経済政策につきましては、一部の国から我が国に対して引き続き内需主導型経済運営をしっかりやってほしいという希望の表明がございました。また、我が国からは、貿易不均衡の削減のためには赤字国において財政赤字削減努力が必要であるというようなことを指摘したわけでございます。こういう議論を踏まえまして最終的にコミュニケにおきましては、各国がそれぞれの状況に応じて財政赤字の削減、内需の拡大、金利の低下等の政策課題に取り組むべきであるということが確認された次第でございます。
 貿易政策につきましては、この閣僚理事会の機会に四極の貿易ウルグアイ・ラウンド担当の大臣が集まりました会合もございましたが、閣僚理事会そのものにおきましては我が国から、一方的な措置、管理貿易というようないわゆる多角的な貿易体制に反するような行動を各国が控えるべきであるということを強く主張したわけでございます。この主張に対しては、ヨーロッパの国々等を含めまして賛同する意見が示されました。最終的には、貿易政策につきましては多角的自由貿易制度の維持強化に各国が今後とも努めるべきであるというふうな意見の一致を見たわけでございます。
 他方、東京サミットの関係におきましては、今申し上げました四極の閣僚会議が今月の末、二十三、二十四でございますが、東京でもう一度開くことになっておりまして、ウルグアイ・ラウンド、特に物、サービスにおきますアクセスの増加という関係からの交渉をさらに続行して東京サミットにつなげていきたいというふうに思っているわけでございます。
 三番目の途上国問題への取り組みにつきましては我が国から、ロシア問題も重要でございますけれども、現在途上国が直面している困難も忘れてはならないということを指摘いたしまして、援助の量的質的拡充の重要性、それから途上国の多様性に応じたきめの細かい支援の必要性というものを強調いたしました。途上国の援助に関しましては、財政的な制約から一部の国の間に消極的な意見があるわけでございますけれども、基本的には我が国の主張について各国の賛同を得られたというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、我が国といたしましては、このたびの閣僚理事会での議論を踏まえまして来月の初めに東京で行われますサミットへの準備を今後とも進めていこうというふうに思っております。
#33
○矢野哲朗君 それでは最後になりますけれども、カンボジアの状況についてお伺いをいたします。
 総選挙が無事に終了したということで、大変乱もよかったなというふうな気持ちでいっぱいであります。その後のカンボジア情勢はシアヌーク殿下の国民政府構想を軸に動いていると思うのでありますけれども、殿下の言動も大変揺れが多いなと、こう考えます。まだまだ情勢は予断を許さない現状だと思っています。
 カンボジア国民自身が国家再建に立ち上がる柱としてシアヌーク殿下が一番の力量をしかしながら持っていると思うのでありまして、政府はシアヌーク殿下の構想が今後どのように展開すると見ていらっしゃるのか見解をお伺いをしたいし、他方、新憲法の制定、新政権の樹立とシアヌーク殿下の構想はどのような関係に今後立つものか、その辺の見解をお伺いします。
#34
○政府委員(池田維君) シアヌーク殿下のいわゆる構想でございますが、これは暫定期におきますカンボジア国民政府樹立という構想でございます。これにつきましてはただいま先生御指摘のとおりでございまして、三日に一度打ち出された後、次の日に撤回されたということになっておりますが、現実には現在カンボジア当事者間では、引き続いてこの構想に示されております考え方というものを軸にしまして調整の努力が各派間で行われているというように理解しております。
 特に今回の選挙で圧倒的に有利な立場を占めました人民党とフンシンペック党というこの二大政党の間の協力関係を中心に今後の政局の安定を図っていくというシアヌーク殿下の構想というのは、やはりカンボジアの安定という面から見ますと望ましい構想であるというように私ども考えておりまして、そういった意味でこの構想を中心にして各派間の建設的な妥協が図られるということを期待しているわけでございます。
 そして、昨日はラナリット殿下がプノンペンに帰りましてシアヌーク殿下と会談を行ったようでございますが、きょうプノンペンでSNC会合が持たれる予定になっておりまして、このSNC会合というのは恐らく非常に重要な会合になるのではないかというように考えております。我が国としても引き続きこの事態を注視してまいりたいと考えております。
 それからシアヌーク殿下の打ち出しました構想と、あとパリ和平協定が考えております今後のスケジュールとの関係でございますけれども、私どもは基本的にこの構想というのは暫定期間中の構想であって矛盾するものではないというように理解しているわけでございます。すなわち、選挙の結果やがて制憲議会が開かれましてこの制憲議会で新しい憲法が制定される、そして新しい憲法が制定されてから新しい政府ができるわけでございますが、この政府ができますまではSNCが依然としてカンボジアの主権を代表するという形をとっていくものだというように考えております。
 それからUNTACの明石代表自身、このシアヌーク殿下の打ち出しました構想についてはそのイニシアチブを高く評価しているというように述べておりますし、私どもあるいは関係主要国もシアヌーク殿下の求心的な役割というものに期待しているというのが現状でございます。
#35
○矢野哲朗君 そういった状況を前提としながら、国連安保理の非常任理事国並びにパリ和平協定署各国の我が国の立場として、シアヌーク殿下を柱とする国民和解の連立政権構想が実を結ぶよう、国連安保理事国等と連携して新生カンボジアが国際社会から祝福されて発足できる環境づくりのために我が国独自の外交努力を展開すべきだと当然思うわけであります。
 当面、新しい国家建設支援のための国際会議が予定されているようですけれども、関係国間の対応を含め、カンボジア復興国際委員会の議長国である我が国としてどのような支援策を今後講じていくのか、お伺いをいたします。
#36
○政府委員(池田維君) 選挙が終わりました後、カンボジアの国づくりは基本的にはカンボジア人自身の手によって行われるべきものだと考えておりますが、他方、カンボジア人のこの自助努力を国際社会としても引き続きできるだけ支援していくのが適当であるというように私ども考えているわけでございまして、そういった意味からカンボジアの再建あおいは復旧ということについて国際社会が果たせる役割というのは相当あるのではないかというように考えております。
 それで、ただいま御指摘のございましたような、まず関係主要国がカンボジア人の当事者と会談をする、そしてその中で関係国として今後特に暫定期間の間に何を行うべきか、それから暫定期間が終わった後、将来の新しいカンボジア再生の過程でどういった協力があり得るのかということを広範に議論しようという機運が出てきておりまして、これはまだ最終的に具体的な日程は固まっておりませんが、恐らくきょうのSNCの会合等を踏まえましてその後で具体的にこの日程等も固まってくると思います。そういう関係主要国の会合というものの中で、恐らくただいま御指摘になりましたような特にこの復旧あるいは復興の問題について早急に手を打つべき問題というものが議論されるようになると思います。
 そして、特に経済建設の面では、日本がカンボジアの復興委員会の議長国ということで去年、ちょうど一年前に東京で開かれました閣僚会議で決められております。したがいまして、この面で日本が果たすべき役割というのは今後特に大きいわけでございますが、ただいま申しましたような主要関係国の会議の中で将来この復興委員会をどういうように動かしていくのかということも議論されることになってくるというように考えております。
 もちろん日本としましては、単に経済復興の面だけではなくて、これまでもカンボジアの和平の過程でカンボジア人あるいは主要関係国とも話し合いながらできるだけの和平促進のための協力はしてまいりましたが、今後ともその面におきましてもできるだけの支援はしてまいりたいというように考えております。
#37
○矢野哲朗君 最後になりますけれども、最近のPKOの動きと我が国の対応についてお尋ねをします。
 ガリ国連事務総長が昨年の六月、安保理への報告書「平和への課題」でいわゆる平和執行部隊を提唱するなど、最近のPKOはスタート当初からは急激な展開を示していると思うのであります。人によっては、最近のPKOの動きと我が国の国際平和協力法に基づくPKO協力体制との関係について、我が国の体制は世界から二周も三周もおくれているというふうな評価もあります。
 このような指摘を率直に受けとめて、例えばUNTACへ派遣された施設部隊、停戦監視員の責任者の意見を徴するなど、国際平和協力法に明記された三年後の見直しを念頭に置いて我が国のPKOの協力体制をいかに改善していくか検討する必要があるのではないかと思うのですけれども、その点でのお考えをお伺いしたいと思います。
#38
○政府委員(澁谷治彦君) 基本的には今、先生が御発言されましたとおりの考えを私どもも持っております。
 まず、「平和への課題」で提起されております諸問題、例えば平和執行部隊の問題につきましては、現在の国際平和協力法の建前からいたしまして我が国自身がこれに参加するということは難しいと考えます。ただ、この問題についてはまだ不明確な点が多々ございますので今後検討していく必要があるかと思っております。
 しかし現実には、例えばソマリアあるいはマケドニア、これは予防展開でございますけれども、部分的には実現されつつあります。この二つの場合の安保理での決議案には私どもは賛成いたしました。これは特殊例外的な場合であるという認識のもとに、これ以上の悲惨な状況を救うには当面そういった措置しかあり得ないということで賛成した次第でございます。
 それから確かに国連におきましてはPKOについての新たな展開が見られておりますけれども、こういった平和執行部隊とか予防展開といった考え方は必ずしも一般化しているということは言えないと思います。例えばPKO特別委員会が出しました報告書には確かにこれに賛成する意見も書かれておりますけれども、同時に伝統的なPKOの原則を尊重すべしという意見も併記されております。したがって、日本としてPKOの新たな展開の先頭に立っているということは言えませんけれども、必ずしもおくれをとっているということではないと思います。
 最後に、もちろん三年後の法律の見直しの際には、アンゴラ及びカンボジアで私どもが得ました貴重な経験及び実績を踏まえて見直しについての議論をすみことが重要だと考えております。
#39
○矢野哲朗君 これで質問を終わります。
#40
○森暢子君 森でございます。
 子どもの権利条約について質問をいたしたいと思いますが、私も文教委員会の方で何回か質問させていただきました。多分この会が最後になるのではないかと思いまして、いろいろな討論の中でいろいろ感じることもございましたけれども、きょう同じことが出てくるかもわかりませんが、再度御質問をしたいと思います。
 この条約は、皆さん御存じのように、一九八九年の十一月二十日に国連総会で採択された後、日本政府もその条約に署名して、そして外務省がそのことについて日本語訳を出されたというのですが、条約を採択後二年四カ月たちまして外務省がようやくその訳を出された。その中で、訳語に関してまた内容に関していろいろと問題がありまして、国内法の改正が必要であるとかいろいろな問題で今まで何回か討論してまいりました。その経緯はよく御存じだと思うのです。
 それで、これも一九九〇年の九月に国連で子どものための世界サミットというのがございまして、海部前総理がそれに出席なされ、そこで演説もなさっている。そういう中で、国連子どもの権利委員会の第二会期というのがその後ジュネーブで開かれまして、この権利委員会では子どもの権利条約に盛られた子ども最優先の原則に立った各国の実施措置についての検討が開始されている、このように聞いております。既に批准した国からはその実施状況を国連人権委員会に報告する、そういう国まで出ている、このように聞いております。
 そういう中で、先進国と称しております日本にとりましてはこの批准というのは本当に遅かったのではないかと思いますけれども、今回批准されようとしていることについては、私どもにとりまして、本当に子どもにとって最優先の子どもの権利を保障していくという面では大変うれしいことだと、このように思っているわけであります。しかしその中で、国内法の改正は要らない、予算措置もなし、こういうことで進まれているわけでありますけれども、本当はいろいろの問題があります。
 と申しますのは、私も学校現場で三十数年間働いておりましてもう肌身に感じてきたものがたくさんあるわけです。その中で教師としても反省しなきゃいけないことがたくさんあります。そして、子どもにもいろいろとこういう権利というものについて考えてもらわなきゃいけないこともたくさんある。そういう中で、もまれてまいりました。そういうことの反省も含めて私はこの権利条約についてはずっと見てまいったようなことでございます。
 その中で、もう何回もお話が出まして、今も矢野委員の方からお話がございましたが、名称が子どもか児童かということについて大変たくさんの方からお話がございました。私ももうこれは触れないでおこうかと思ったのですけれども、御存じのように、各種の法令による子ども、この呼び方にはたくさんの差があるわけです。
 これはもう政府の方はよく御存じだと思うのですが、少年法では二十歳未満だし、刑法では十四歳未満だし、児童福祉法では児童というのは十八歳未満だけれども乳児は一歳とか幼児は小学校までとかいうのがありますし、学校教育法では児童というのは小学生です。それから生徒というのは中学生、高校生。または労働基準法では年少者という呼び方で十八歳未満、児童というのは十五歳未満とか、道路交通法では児童というのは六歳以上十三歳未満とか、こういうふうに大変なばらつきがあるわけです。それは御存じの上で児童とつけられたのだと思うのですけれども、ひとつそこで文部省にお聞きいたします。
 文部省が一番関係が深いと思うのですが、その中で児童というのは普通、小学生をいうと。じゃ生徒と呼ばれている中学生、高校生にこの権利条約のことを説明する場合、これは児童の権利条約ということになっているが皆さん方に対してはこうこうだということをどのように説明なさるかということですね。それを説明していただきたいと思います。ここにいる人が高校生だと見て説明してください。
#41
○政府委員(野崎弘君) 今、先生御指摘ございましたように、法令によって児童の範囲とかいろいろなことが違っているわけでございますけれども、現実に今そういうことで学校教育の中で混乱が起きているとか、そういう実態がないわけでございます。
 今回の条約について全体的にどういう広報をとるかということは、政府全体で外務省ともよく連携をとりながら考えていかなければいかぬと思っておりますけれども、いずれにしても、この条約が十八歳未満の者に適用があるということははっきり定義で書かれておるわけでございますので、そういう趣旨を十分小中高校生にも指導していく、こういうことになろうと思っております。
#42
○森暢子君 現在、混乱はない、このようにおっしゃいました。しかし、これが批准されて、そして皆さん方のお力で広報活動されてずっと浸透していくと、おかしいなと思う人も出てくると思うのです、高校生の中に。おかしいのじゃないか、僕らを児童というのかということも出てくるかもわからないということですね。
 しかし、確認しておきますが、教育関係の学校教育法では児童は小学生、生徒は中高校生、こうなりますと権利条約の児童とはその認識が違うということをお認めになりますか、文部省。
#43
○政府委員(野崎弘君) ちょっと今、御質問の趣旨が必ずしも私は十分に理解できなかったのでございますけれども、これはいろいろの言葉の使い方があるわけでございますから、やはりそういうものに即して私どもは指導していかなければいかぬと思っておるわけでございます。先生の御趣旨がちょっと私、十分受け取れませんでしたが。
#44
○森暢子君 つまり小学生を児童と呼ぶということですね。それを確認したいのです。
#45
○政府委員(野崎弘君) これは学校教育法で決まっておりますから、小学生は児童である、それから中高校生は生徒であるということは、これはもう学校教育法上の規定ではっきりしております。
#46
○森暢子君 それで結構です。
 それでは次に移りますが、この条約を批准したら従来の日本の国内法とどうかかわるかということにつきましては、国内法では改正や施策を変更する必要はない、これは森山文部大臣が前回の文教委員会の中でおっしゃったのですが、今すぐ直接的には変更する必要はない、こういうふうにおっしゃったわけです。そして文部省のお答えをおかりいたしますれば、本条約の精神は我が国では憲法あるいは国際人権規約の規定によりまして既に保障されている、こういう基本的考え方に立っておるわけでございましてというふうにずっといつも答えられていたわけですね。
 しかし、憲法でも権利条約でも何ででもですけれども、保障されているではだめなのですね。紙の上でこれは書かれています、保障されています、あります、これではだめですね。それをどのようにしていくかという行動が伴わないと。ただ憲法がありますから守られていますと。じゃ実際に守られていますか。守られていないことがたくさんあるのです。ですからそういう答え方はなさらないで、今後こうしていくというふうな積極的なお考えがいただきたい、このように思うわけです。
 つまりすべての子供たちの状況をよくしていくためにこの条約をどのように活用していくか、どう現実的なものにしていくかというのがこれからの我々日本に課せられた大きな課題ではないか。ただ批准しました、それで済みましたということにはならないと思いますが、文部省、いかがですか。
#47
○政府委員(野崎弘君) 今、先生お話しございましたように、この児童の権利に関する条約で保障されています権利につきましては、憲法、国際人権規約の規定によって既に児童生徒に保障されているというふうに思っておりまして、そういう意味で条約の批准によって現在の学校教育の制度あるいは仕組みに基本的な変更を求められているものではない、このように考えているわけでございます。
 しかし、学校教育におきましては、児童生徒の人権に十分配慮して一人一人の個性を大切にした教育指導あるいは学校運営が行われることは大変大切なことであるわけでございまして、そのために児童生徒の意見や考え方を十分把握しまして日々の教育指導に生かしていくことが大切だと、このように考えているわけでございます。
 こういうことにつきましてはかねてから文部省としても指導しているわけでございますけれども、この条約の締結を契機といたしまして、児童も人格を持った一個の人間として尊重していこうという条約全体の趣旨というものを踏まえましてさらに適切な教育指導が行われるように指導を徹底していきたい、このように考えております。
#48
○森暢子君 それは何回かお聞きしたお言葉なのですが、私が申し上げたいのは、やはりそれをどう具体化していくかという具体的な施策が欲しいわけですね。
 ちょっと各論に入りますが、二十八条でございます。子どもの教育への権利というところなのですが、もう御存じのように、ここの教育への権利の中では、初等教育の義務性、無償性、それから無償性導入による中等教育の発展、それから中途退学率減少のための措置、こういうようなことが盛られております。その中で前回の、前回といいますか、国際人権規約の中では高等教育への無償性についてはできないということで留保なさっていた。しかし今回は留保しない。留保もなしでそのまま高校の授業料の徴収が継続できるという判断をなさったのかどうか、そのことについてお聞きいたします。文部省。
#49
○政府委員(野崎弘君) 条約の二十八条第一項(b)の規定かと思うわけでございますが、これは原文ではサッチ・アズという言葉を使っておりまして、締約国のとることが義務づけられている適当な措置として考えられる措置の例示として、無償教育の導入そして必要な場合における財政的援助の提供ということが掲げられている、このように考えているわけでございまして、そういう意味で私どもは現在の制度というものをこれによって変更する必要がない、このように考えているわけでございます。
#50
○森暢子君 例示として「例えば」ということなのだから必ずしもしなくてもいいというふうなお考えかもわかりませんが、「例えば」としても例として示されたのですから、そしてこれを批准するのですから、例として示されたらその方向に向かって努力していく、これが国の姿勢ではないか、このように思うのですね。
 それで、御存じのように今、初等教育が無償だと言いますけれども、無償というのは教科書が無償と授業料が無償、この二つだけなのですね。御存じだと思います。皆さん方もお子さんを持っている方はたくさんいらっしゃると思うのです。その他にどれだけお金がかかっているかというのは御存じだと思うのですね。給食費もそうだし、そして部活動費それから教材費、たくさんのお金がかかる。これは高校へ行くともっとなのですね。ですから小学校もこれを契機に教科書と授業料だけではなくもう少し何かの方法で教育への財政援助をする、そういう方向でお考えになりませんか、文部省。
#51
○政府委員(野崎弘君) 憲法でいう無償ということにつきましては、私どもは教育を受ける代価いわゆる授業料の免除、授業料を取らないということがやっぱり憲法でいう無償の意味ということでとらえているわけでございます。教科書の無償措置というのはそういう憲法の趣旨をさらに趣旨として実現をするというぐあいに考えているわけでございまして、私どもとしては義務教育につきましては、小学校教育、中学校教育につきましてはそういう意味で憲法の規定というものを既に達成している、こういう考え方でございます。
#52
○森暢子君 憲法の趣旨を生かすためにそういう無償の措置をとられるのだったら、それをもっと拡大していくという姿勢が必要ではないかと思いますね。
 それで一つお願いしたいのは、高校の就学率が今、九五・六%ぐらいですね、高校に行っている生徒が。ほとんど義務制と言っていいぐらいたくさんの子どもたちが高等教育を受けている。その高等教育を支えているのはだれか。これは保護者ですね。保護者が全部お金を出してそして日本の高等教育を支えているわけで、文部省が余り大きい顔はできないと思うのですよ。ですからそれに対して国として、教科書の一冊でも授業料の一部でも無償としてひとつ頑張っていこうとかいうふうな姿勢、これはこの条約を批准するに当たり、「例えば」の例示にあってもそれを拡大していく姿勢、これが必要だと思いますが、文部省、いかがですか。
#53
○政府委員(野崎弘君) 高等学校段階におきます教育につきまして現在、育英奨学あるいは就学援助等、就学が経済的に困難な者に対します経済的な援助、そして私立高等学校の就学上の経済負担の軽減のための私学助成、こういうものを行っておるわけでございまして、これらの措置によりまして本規定の趣旨といたします中等教育の機会の確保のための適切な措置をとっているところでございまして、今後ともその充実に努力をしてまいる、こういう考え方でございます。
#54
○森暢子君 今後ともその充実に努めていくという中に一つ考えていただきたいものがあります。というのは養護施設に入っている子どもの話なのですが、御存じのように、養護施設入所の子どもは十五歳で切られます。そうですね。十五歳、中学卒業で措置解除、自立という名目で就職とか施設退所にされるということになっているのです。しかし、その子どもたちは本当にお金もなかったり行く場所がなかったりして、十五歳でそこを出されてしまうということについて大変な悩みを持ち家族ともども悩んでいる。また、その子どもたちも引き続き勉強もしたい、高校へも行きたい、こういう思いを持っているわけですね。
 それで、例示にすぎないのですけれども、今やっていらっしゃる奨学資金制度とか私学の助成とか就学援助とか、そういうことをやっているのだからということをおっしゃいましたけれども、その中に今の養護施設の子どもたちが本当に高校まで学べるように、十八歳までその措置を継続できるような変更というのはできませんか、文部省。
#55
○政府委員(野崎弘君) 私どもは、今お話ししましたように、一般的に経済的に困難な者に対する援助という考え方でいろいろな予算措置をしているわけでございますが、今の先生の御指摘の点はあるいは厚生省の課題かと思うわけでございまして、ちょっと私どもの方からは答弁がいたしかねる、こういうことでございます。
#56
○森暢子君 これが子どもの問題をやるときに一。本化していないものですから大変不便なのですね。これは文部省です、これは厚生省ですといって、子どもが権利を侵害されて言っていった場合にたらい回しにされるわけです。
 これは前の文教委員会のときにも私は申し上げたのですが、学校給食のことでぜひ話を聞いてもらいたいということで文部省へ行きました。安全なお米を食べさせてやってほしい、子どもたちの給食、健康と命にかかわることだからと、こう言いましたら、それは私どもの管轄ではございません、これは農水省です。じゃ食器が有害なものでないように本当に子どもたちにいい食器を与えてほしい。これは厚生省です。それから働いている調理員さんの健康のためにいろいろと留意してほしいと言いましたら、これはうちの管轄ではありません、労働省ですと、こうおっしゃるわけです。
 じゃ文部省は何をしているのか。実際に学校で給食を食べているのは子どもたちです。そして学校給食は教育の一環としてちゃんと位置づけられている。その給食のことについて子どもの意見を聞きながらいろいろ子どものためにやりたいと思っても、いやこれは文部省ではない、厚生省です、農水省です、いえ労働省ですと、こういうことになると、子どもの権利条約、これを批准した後、権利を侵害されて言っていく場合に一本化されていないということが今後の大きな問題であるわけです。
 今の養護施設の問題でも、大変澄まして私どものところでは何も申せませんとおっしゃいました。厚生省であるということなのですけれども、やはり教育に関連している文部省としても考えていかなければならない問題ではないか。これは今後に残る大きな課題として一つ申し上げておきます。
 私どもは、超党派の国会議員が有志ですけれども集まりまして、子どもの声を聞く会というのをいたしました。これは二回やったのですが、東京都内でやりましたので本当に一部の子どもで、全国の子どもの代表の声とは言えないかもわかりませんけれども、一応この権利条約を批准するに当たって子どもの声を全然聞かないのはおかしいのではないかということで聞く会を持ちました。
 その子どもの声をちょっと紹介させていただきますと、ほとんどの子どもが知らないと言うのです。この権利条約のことについては知らない。自分はこの会に来るに際して一週間ほど前にちょっと勉強した。そうすると条約は大変立派なものだ。これを現実のものにするにはどうしたらいいかわからない。それを大人に教えてほしい。つまり行動計画を立ててほしいということなのです。それで、子どもの意見も聞いてほしい、一緒にできることがあるのではないか。それから子どもでもできることもあるしできないこともあるから聞いてほしい、こういうことです。それから自分たちの生活にどう反映されるのか、子供向けの簡単なものが欲しい、こういうことです。
 それからこれはちょっと聞いたのですが、家庭科の保育の時間にこの権利条約のことが出てきて知ったというふうなのもありました。これは私ちょっと調べてないのですけれども、学校の教科の中に出てくると大変すばらしいなと思います。家庭科の保育の時間に聞いた、こういうことです。
 それでもう一つ言ったことは、条約を親にも知ってほしい、こういうのがありました。というのはプライバシーの問題で、子どもに電話がかかってくると、ボーイフレンドではないか、ガールフレンドからかかってきたのではないか、だれからか、だれなのかと言ったり、親が電話を聞きましてそれを勝手に切ったりすることがあるわけです。または子どもに来た手紙をそっとあけてまたすっと封をしておくとかというふうなことについて、または自分の部屋に勝手に親に入られるなどというのは大変子どもにとってはいろいろと言い分があるわけです。それがプライバシーの保護ということで条約に書いてあった、これはすばらしい、ぜひ親にも知ってほしい、こういう意見がありました。
 もう一つだけ私が聞きましたのは、目の不自由な子どもがそのときに来ておりまして、自分はテレビのニュースで知った。盲学校の高校二年生ですが、学校からは残念ながら聞いていない、しかしこういうものができたということはよかった、大変感動しているということなのです。それで盲学校、聾学校など障害を持った人たちにも知らせてほしいという要求がありまして、後でぜひお願いしたいのですが、点字でのパンフレットをお願いしたい、こういうことがございました。こういう子どもの声がありましたということを皆さん方に国会にお伝えしておきたい、このように思います。
 ですから知った子どもは大変感動しているわけです、いい条約ができたと。しかし、ほとんどの子どもが知らない。もっと子どもたちにもわかるように、障害を持った人たちにもわかるように知らせてほしい、こういうことなのです。
 こういう子どもの声について文部省はどのように、御感想で結構でございますから。
#57
○政府委員(野崎弘君) 私どもは、やはりこの条約の広報ということは大変大事なことだと思っておるわけでございまして、外務省を中心にしまして政府全体として取り組まなければならぬと思っていますけれども、学校教育の場にも大いに関係することでございますので、文部省といたしましてもいろいろな面で必要な協力をしていかなきゃいかぬ、このように思っております。
#58
○森暢子君 四十二条に広報の義務というところがございます。やはり広報活動というのは大変大事だと思います。つまり子どもたちは自分たちにどんな権利があるのかなんというのは知らされないとわからないのですから、勉強しないとわからないのですから、それを知らすということはこの条約を批准する上の大きな責任問題であるというふうに思います。
 特に私が思いますのは、学校現場、これが今後大変だと思うのです。そのためにはまず先生に知っていただくということが必要だと思いますので、教職員への条約の趣旨、内容の徹底、そういうために文部省は研修の実施をやっていただきたいと思いますが、いかがですか。御計画ございますか。
#59
○政府委員(野崎弘君) そういう特別の研修というものをつくるのがいいかどうかということはあろうかと思いますが、現在既に各種の研修会あるいはいろいろな会議、そういうものが設けられているわけでございますから、そういう場を利用いたしましてこの条約の趣旨あるいは内容について、十分趣旨の徹底を図るあるいは周知を図るということを考えていきたい、このように思っております。
#60
○森暢子君 では、いろいろな会を利用してその周知徹底を図るということでございますね。
 それから子どもに今度は条約を知らせなきゃいけないのですが、それについても前向きに取り組みますというふうなお答えだと思うのですけれども、各学校で今、生徒が持っております生徒手帳というものがある。いつもいろいろと校則の問題で問題になっておりますが、そういう中に条約の簡単な中身だけでも、こういういい条約ができたということでも載せるというふうなことを、例えば各教育委員会を通じてそういう指導をなされたらいかがかと思いますが、どうでしょうか、文部省。
#61
○政府委員(野崎弘君) 生徒手帳、これは文部省がどういうものだという様式を示しているわけではございませんで、それぞれ生徒の実態とか地域の実情に応じまして各学校の判断で作成配付されているわけでございまして、そういう判断の中で各学校がどのような取り扱いをしていくか、こういうことになろうかと思っております。
#62
○森暢子君 それで、前にも申しました障害者への広報なのです。ここでぜひ点字のパンフレット、これを出していただきたいと思いますが、文部省、いかがでしょうか。
#63
○政府委員(野崎弘君) これは先ほどもお答えしましたが、どういう形で全体的な広報をするかというのは政府全体として取り組まなきゃいかぬ課題だと思っておりますので、よく外務省とも連携をとりながら検討していく必要がある、このように思っております。
#64
○森暢子君 では外務省にお願いしますが、外務省も、広報の義務はあるけれども、これについて予算は要らないというふうなお答えでございましたね。いろいろな外務省の予算の範囲内でなさると思うのですが、やはり点字とか、それから耳の聞こえない方にはビデオがいいと思うのです。テレビで見たという人もいらっしゃるようですからビデオをつくるとか、また日本の中にはまだまだ非識字の人もたくさんいらっしゃるのですね。
 外務省と連携をとりながらという文部省のお答えでございますので、外務省はそういっただ目が見えて読める人だけの対象の広報活動ではなくて今言った障害者の方たちへの広報活動についてどのようにお考えでしょうか。
#65
○説明員(小西正樹君) 先生御指摘のとおり、この条約の四十二条は「締約国は、適当かつ積極的な方法でこの条約の原則及び規定を成人及び児童のいずれにも広く知らせることを約束する」という規定になっております。したがいまして、この条約の内容について国民の皆様方が正確な理解を得るということは政府として当然やるべき責任でございます。
 また、この児童の権利に関する条約の第二条に。おきましては、その児童の権利におきまして特に「心身障害」という言葉を使いまして、「この条約に定める権利を尊重し、及び確保する」という規定もございます。したがいまして、先生御指摘のそういった体の不自由な方々、特に児童ももちろん含めましてそういう方々に対するこの条約の広報文というのは当然私どもとしてどういうふうに対応すべきかということにつきまして真剣に検討すべき事柄ではないかと思います。
 そうした体に不自由のある方々に対する広報も含めましていかに効果的な広報をやっていけるかということにつきましては、関係各省庁とも十分御相談いたしまして私どもとして積極的に広報をやっていきたいというふうに考えております。
#66
○森暢子君 それでは、検討に値するだけではなくて必ず検討して実施すると、そのように確認しておきます。やるということでございますね。
 引き続き外務省にお尋ねしたいのですが、予算措置は要らないということでちゃんと書いてあります。このことにつきましてもいろいろと今まで討論なさったと思うのですが、予算措置は要らないということについての意味合いをもう一度ここでおっしゃっていただきたいと思います。
#67
○説明員(小西正樹君) 外務省が作成いたしましたこの条約の解説のための資料には、先生今おっしゃいましたとおり、予算措置は不要であるという趣旨の記述がございます。これは簡単に申しますと、いろいろな国際条約におきましてはその条約を実施していくための基金あるいは条約で想定されております特別な機関のための分担金、こういった予算措置の義務を課しているものがあるわけでございます。したがいまして、そういう意味での予算措置、新たに追加的な予算措置がこの児童の権利の条約を批准することに伴い必要になるかというと、そういう意味では必要ではないという趣旨で予算措置は不要であるという説明を行っておるわけでございます。
 したがいまして、この条約を実施していくに当たりましては、私どもは現在ございます広報予算を活用いたしまして積極的に広報していくという考え方でございます。
#68
○森暢子君 そういうことでございますが、今まで人権に関する条約の批准、これは日本は数が少ないのですね。そして遅いということで有名なのですけれども、国際人権規約A、B、それから女子差別撤廃条約とか難民に関する条約とか選択議定書の条約とかいうのがあるのですが、この中で予算措置ゼロだったものはどういうものか、または予算をつけたものはどういうものか、ちょっと説明してください。
#69
○説明員(小西正樹君) これまで我が国が締結いたしました人権関係の規約の中で、締結に際して外務省として新たな予算措置をとったものは特にございません。
#70
○森暢子君 特にないと言うけれども、その後、具体的にいろいろとその条約を広めたりまたはいろいろな取り組みをなさったと思うのですが、具体的にどういうことをしたかということがありましたら一つでもいいですから聞かせてください。
#71
○説明員(小西正樹君) 当然のことながら私どもは、このような国際条約の遵守ということは憲法にも規定されておる非常に大切なことでございますので、広報予算を活用いたしまして既に国際人権規約、難民の地位に関する条約について冊子、パンフレットを作成し配布しております。世界人権規約については、たまたまここにございますが、こういう形でパンフレットとして国民の皆さんに利用できる形にしております。(資料を示す)
#72
○森暢子君 それでは次に移りますが、条約が批准された後が大事だと思います。条約は批准しました、国内法は何もいじらなくてよろしい、予算措置も一応要りませんというふうなことで通りましたと、こういうことでは何にもならないのでありまして、その後どうしていくかというのが本当に大変な課題であると思うわけです。
 そこで、この条約というのは日本だけのものではなくて、世界じゅうの子どもたちのためにどのように日本がしていくかということが大事であります。例えば二十八条の三のところですか、「教育に関する事項についての国際協力を促進し、及び奨励する。これに関しては、特に、開発途上国の必要を考慮する」という一項も条約の中にあるわけですね。
 それで、一九九〇年にニューヨークでありました子どものための世界サミットの中で海部前首相が識字信託基金の創設ということを提案されたわけてありますが、その後の情勢、もうどのくらい資金が集まってどのように使われているかということを御報告いただけたらと思います。
#73
○政府委員(長谷川善一君) 御存じのとおり、平成二年が国際識字年ということで国連総会において宣言されたわけでございまして、平成二年度に始まったわけでございますが、文部省の経費から毎年七十万米ドルで日本識字信託基金ということで設置いたしまして、ユネスコの中にその信託基金の運営をお願いするシステムをつくったわけでございます。毎年七十万米ドルの支出がなされておりまして、私ども毎年ユネスコの方から、特にアジア・太平洋地域を中心とする開発途上国に対しまして識字の事業についてどういうことをやっておるか、またどういう問題があるかというような報告も受けておるわけでございます。
 主にやられております事業というのは、まず要員の指導者の研修事業でございます。具体的には、パキスタン、中国、ラオス、モルディブ、ベトナムそれぞれが助成を受けてやっておりますし、その要員研修には日本からも人を出して指導をいたしております。
 それから識字パイロット事業、これはコミュニティーを動員いたしまして実践的な研究をやっておるわけでございます。これにはブータン、ネパール、バングラ等々八カ国が参加いたしております。
 それから識字教材の開発事業、かなり大きい事業でございまして、これは日本でも特に大学では広島大学、あるいは文部省の関係団体でございますユネスコ・アジア文化センターというのがございますが、そういうところが中心になりまして十七カ国の参加を得まして教材開発事業に非常に真剣に取り組んでおるところでございます。
 そういった事業につきましてこの識字信託基金は非常に有効に使われておると我々認識いたしております。
 今後、事業の発展につきましてこの経費の中あるいはその経費以外でも私どもできますこと、いろいろなセミナーを主催するあるいは指導者を派遣する等々につきまして積極的にやってまいりたいと考えておりまして、この条約の批准を契機にいたしましてさらに努力したいと考えております。
#74
○森暢子君 もう一つだけ。
 これを批准をした後いろいろと問題がありますけれども、日本政府の開発援助の中に子どもを最優先していただけたらと、いただけたらというよりもすべきではないかと思うのですね。日本はこれから先十年ぐらいは世界で最大の開発援助提供国になると思うのです、今もたくさんの援助をしていますけれども。その際に子どもの課題をやはり最優先事項にしていただきたい。ダムをつくったり日本企業の投資先を考えたりとか道路をつくるとか建物をつくるとかも結構でございますけれども、やはり発展途上国の子どもたちの手助けをするということを開発援助の最優先の事項にしていただけたら、このように思います。
 先日、私はネパールへ行ってまいりましたが、もうこれはアジアの最貧国、一番貧乏で識字率も最低。日本政府もいろいろと援助をしているのですけれども、もっともっといろいろな人の手が必要であります。その中で日本大使館の方や日本のJICAの人たちが一生懸命頑張っているのですね。頑張っているのですけれども、これからもっともっと日本がネパールとかその他のアジアのそういう国のためにこの批准をしたのを機に子どもたちのことを最優先に開発援助の中で考えていただけたらと、こういうことを思いますが、最後に外務大臣にお聞きいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
#75
○国務大臣(武藤嘉文君) ネパールへも行っていただきまして、日本が援助をやらせていただいていることも御理解いただいたと思うのでございますが、昨年私どもODAのこれからの新しい方向というので開発要綱を決めさせていただきましたけれども、その中にも特に子どもに対する配慮という条項も入っておるわけでございます。
 今日までも二国間援助で、例えば学校の教育施設をつくらせていただいたりあるいは教材を提供させていただいたりいろいろやってまいりました。あるいはユネスコ、ユニセフといったような国際機関を通じて資金協力もやってまいりましたが、これからもっともっと、日本の子どももこれは大切でございますけれども世界の子どもも大切でございますので、せっかく開発要綱にもそのような項目も入れさせていただきましたので、従来以上にそのような子どものためのいろいろの援助につきましては一層私ども努力をしてやってまいりたい、こう思っております。
#76
○森暢子君 終わります。
#77
○委員長(野沢太三君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十三分休憩
     ――――◇―――――
   午後一時開会
#78
○委員長(野沢太三君) ただいまから外務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#79
○肥田美代子君 外務大臣にまずお尋ねします。
 子どもの権利条約が批准されますと、子どもの世界、子どもの生活がいろいろ変わると思うのですけれども、私はそう思うのですけれども、大臣は変わらないと思われますか、それともより幸せになると思われますか。
#80
○国務大臣(武藤嘉文君) この条約はいわゆる児童の権利を保障するわけでございますし、そういうことでは変わるのじゃないかという御指摘かと思うのですけれども、大体今、憲法でも基本的人権の尊重ということがよく言われているわけでございますし、それに伴っていろいろの国内の法律も整備されておりますので、法制面で変わっていくというようなことはなかなかないのじゃなかろうか。
 しかし、こういうものができることによって世間にどんどんもっと児童の権利をこうやって守っていこうという雰囲気ができ上がっていくことは、実態面といいますかあるいは国民の意識といいますか、そういう面では私はやはり子どもたちは非常に理解される、そんな社会ができ上がっていくのじゃないかというふうに思っております。
#81
○肥田美代子君 そうしますと、子どもたちの本当に幸せな社会になるためには私たち大人はどういう心構えてこの条約の内容を実施していけばいいと思われますか。
#82
○国務大臣(武藤嘉文君) 私は、従来どちらかというと、法律もそうだと思うのですけれども、社会においても大人の立場から子どもを見ているという社会が日本の社会だったと思うのでございますが、せっかくこういう条約を批准された暁には子どもの立場から見るということを大人がもっと実態面でしていく必要があるのじゃないか、私はそういう方向に我々のPR活動をさせていただいたらどうかというふうに思っております。
#83
○肥田美代子君 今、大臣から私はとてもうれしい御答弁いただいたのですが、例えば来年度の高校生の教科書で社会科と家庭科なのですが、そこの中では記述が子どもの権利条約となっているのですね。私はまさにこの教科書の記述というのは、大臣が今おっしゃった大人の側から見た立場ではなくて子どもの立場からどうなのかということを真剣に考えてこういう記述になったと思うのですけれども、大臣はどう考えられますか。外務大臣にお尋ねします。
#84
○国務大臣(武藤嘉文君) 後ほど文部省から、教科書の検定は私の方の所管じゃありませんので、私の方はそんなようなことを、私も実は新しく今度公表される教科書の検定というものをまだ存じ上げておりませんが、ただそんなようなことがあるというようなことをそれとなく聞いておりますけれども、これは文部省の方でおやりになることなので、ただ私が申し上げているのは、これはもう私どもは児童に関する権利条約と、こうお願いしているわけでございますから、どうも私どもからはなかなか申し上げられないので、文部省の方から御答弁をしていただきたいと思います。
#85
○政府委員(野崎弘君) 来年度の教科書の話が出ましたが、これは新しく使う教科書でございまして、従来から毎年七月に新教科書の内容あるいは前年度の検定の結果等について統一的に公表していますのでそれについてのコメントは差し控えさせていただきますが、ただ現在使われております中学校社会科の教科書の中で既に本条約のことが取り上げられておりまして、この名称はいろいろさまざまでございます。
 例えば児童権利条約という言葉を使っているのもございますし、子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)という形で書いているものもございますし、子供の権利条約と、「子ども」もありますし「子供」もある。これはいろいろ教科書によってございまして、執筆者がそういう形で書いてきたものについて私どもが検定意見を付さなかった、こういうことでそのようなさまざまな名称と記述になっているわけでございます。
#86
○肥田美代子君 今、来年度の高校の教科書についてお話し申し上げているわけですけれども、私は執筆者の気持ちになってみますと、高校生の教科書に児童の権利条約と書いたら恐らく高校生は、何だ、小学生の権利を僕たちに教えるのかと、私はそういうふうにとると思うのです。それで恐らくその執筆者は大変心を砕かれて子どもの権利条約とされたと思うのですけれども、文部省、いかがですか。
#87
○政府委員(野崎弘君) 執筆者がどういうお考えでお書きになったかということは私どももなかなかそんたくできないわけでございますけれども、私どもとしましては、本条約がまだ批准されていない段階でもあるというようなことから執筆者の書いてきたものにつきまして検定意見を付さなかった、こういうことでございます。
#88
○肥田美代子君 私は、今、野崎局長は七月一日のオープン前ですからかなりかたい御答弁をしていただいていると思うのですけれども、やっぱり私、文部省がまず一歩出たと思うのです。子どもの立場に一歩出たと思うのです。私はそのことを大変認めたいし、よくやってくださったと言いたいのです。
 本当に高校生の立場になって考えますと、小学生の権利を僕たちに教えるのかというそういう気持ち、わかっていただきたいと思うのです。ですから批准前とおっしゃいますけれども、来年には、高校生たちが使うころにはもう批准されているわけですから、その辺のことも考えまして私は文部省ありがとうと言いたいのですけれども、この問題がだんだん大きくなってほかの省からいじめられて、文部省がいつの間にかこそっと正誤表なんかを出して児童の権利条約に直すということを私はとても心配するのです。そういうことは絶対ないと約束していただけますか。
#89
○政府委員(野崎弘君) 今後の話でございますけれども、本件条約が批准された段階におきまして教科書の記述をどう扱うかということにつきましては、教科用図書検定調査審議会というところもございますので、そういうようなところの意見も聞きながら慎重かつ適切に対処してまいりたい、このように思っております。
#90
○肥田美代子君 子どもの手に教科書が渡るころになって全部「児童」になっていたら私は承知しませんので、よろしくお願いします。
 それで、外務省にお尋ねしますけれども、チャイルドを子どもと訳せないその理由に二つ挙げていらっしゃいますね。その主な二つをおっしゃってみてくださいませんか。
#91
○説明員(小西正樹君) お答えいたします。
 我が国が今までに締結いたしました条約においては、チャイルドという英語の言葉は通例、児童または子という訳語が当てられているわけでございます。このチャイルドという言葉が一般に低年齢層の人間を表現する場合には、これは児童という言葉を当てるのを通例としておるわけでございます。
#92
○肥田美代子君 では、親子関係においては子を使う、それから低年齢層を指すときには児童と訳し分ける必要があり、そのどちらの意味も持つ子どもと訳すことはできないというのがそちらの趣旨でございますか。
#93
○説明員(小西正樹君) チャイルドという言葉が親子関係における子という意味に限定される場合には子という訳を通常用いておるわけでございます。
#94
○肥田美代子君 確かに女子差別撤廃条約では子という言葉と児童という言葉が訳し分けられておりますけれども、では国際人権B規約ではどうなっていますか。
#95
○説明員(小西正樹君) 国際人権規約においては、A規約とB規約と両方ございますが、一般的に児童という言葉を通例訳語として当てているというふうに承知しております。
#96
○肥田美代子君 そうしたら、そのB規約では親子関係のときも児童と書いていらっしゃるわけですね。そうですか。
#97
○説明員(小西正樹君) 今申し上げましたように、一般的に人権規約の言葉におきましては児童という用語をもってチャイルドに当てております。
#98
○肥田美代子君 そうしますと、さっきおっしゃった親子関係においては子であって低年齢を指すときには児童というその意味づけがなくなるのじゃないですか。あるのは女子差別撤廃条約の場合だけで、国際人権B規約についてはそういうことは言えませんね。
#99
○説明員(小西正樹君) 繰り返しになって恐縮でございますけれども、親子関係における子という意味に限定される場合には通例、子という訳語を使用しているわけでございます。国際人権規約におきましては一般的にチャイルドという言葉が出てまいりますけれども、それについては人権規約全体の統一性という観点から児童という言葉を用いて表現しているわけでございます。
#100
○肥田美代子君 B規約の十八条の四項で、親に対応する概念で用いられているチルドレンを児童と訳しているのですけれども、これはどう説明されますか。
#101
○説明員(小西正樹君) 十八条の四項は、「この規約の締約国は、父母及び場合により法定保護者が、自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由を有することを尊重することを約束する」という規定が先生御指摘のとおりございますけれども、ここでその児童という言葉を英語のチャイルドという言葉に当てでございます。これは先ほど来申し上げておりますとおり、人権規約においてチャイルドという英語の正文を一般的に児童ということで訳文として当てているということでございます。
#102
○肥田美代子君 私の方も繰り返しになりますけれども、それでは最初おっしゃった子と児童の使い分けは整合性がないのじゃないですか。
#103
○説明員(小西正樹君) これは私ども条約のチャイルドという訳語について親子関係における子という意味において限定されている場合については子という訳を優先的に用いているわけでございますけれども、一つの条約においてチャイルドという言葉が出てくる場合には、その条約の統一性ということから、その条約における用語、訳語の統一性ということにも十分留意いたしましてどちらの訳語を使うかということを判断するわけでございます。
 国際人権規約における該当の先生のおっしゃっておられる規定につきましても、人権規約全体としてチャイルドという言葉をどう訳すかということでいろいろ考えまして児童という統一性を持った言葉で当てたわけでございます。
#104
○肥田美代子君 論理がすれ違っているように思うのです。お互い行き違いということで今、児童と子どもでもめているわけですから、そういうふうにおっしゃってもしょうがないと思うのですけれども、外務省がおっしゃる法律の整合性ということにつきましても、国内法ではそれぞれの法律の中の児童の年齢くくりが全部違う。それは私は法律の整合性がもう既に崩れていることだと思いますし、今申し上げた子と児童との使い分けにいたしましても外務省がおっしゃる論拠はもう崩れているのじゃないかと思うのですけれども、いかがですか。
#105
○説明員(小西正樹君) 繰り返しになって恐縮でございますけれども、私どもはチャイルドの訳語の用語といたしまして児童または子という両方の可能性を持ってやっておりまして、児童というのは一般的に低年齢層の人間を指すものということで用いておりますし、それが親子関係に限定されるという趣旨に理解できる場合は子という言葉をもって訳に当てておるわけでございます。
#106
○肥田美代子君 どうも私の言っていることがお聞こえにならないのじゃないかというぐらいに私は思うのですけれども、お互い立場が違ってそちらのおっしゃることはそちらのおっしゃることだし、私はそれが崩れておりますよと申し上げましても、今ここで一騎打ちをするわけにもいきませんので、私はちょっと提案させていただきたいのですけれども、よろしいですか。
#107
○委員長(野沢太三君) どうぞ。
#108
○肥田美代子君 現在、当委員会で審査中の児童の権利に関する条約について、チャイルドは「児童」ではなく「子ども」と訳し、条約の日本語名称を「子どもの権利条約」とするべきと考えます。政府においてその旨訂正されることを委員会の決議により求めることが必要と考えます。
 その理由といたしましては、まず本条約の当事者である子どもたちの現状とその意見に真摯に目を開き耳を傾けるならば、右要求はけだし当然のことであり、このことを今もって決断し得ない政府に怒りを越えて悲しみを感ずるからであります。
 二十世紀を生きてきた者として、次の世代への最大のメッセージとなる本条約を契機として、今後、法令用語としては古いイメージを持つ「児童」は「子ども」に変えていくべく前向きの努力をすることは当然の責務だと考えるからであります。
 委員長、いかがお考えでしょうか。このような決議を求める条件は整っていると思います。委員長の御見解を伺いたいと思います。
#109
○委員長(野沢太三君) ただいま肥田君から御提案のありました条約の名称について児童か子どもかという問題につきましては、これまでるる議論を重ねてきたところでございます。各党それぞれ御意見がまだございますようですから、とりあえず各党理事間においてさらに討議を続けられるようお願いをいたします。
#110
○肥田美代子君 ありがとうございました。
#111
○竹村泰子君 子どもの権利条約が一九八九年に採択されて以来、私を含め本当に多くの人たちは我が国が批准するのを今か今かと待っておりました。国内法を整備してこの条約を批准すれば、子どもが社会の中で個人として認められ、その人格の調和のとれた発展を実現することになると胸を躍らせて心待ちにしていたと言っても過言ではありません。
 ところが政府の方針は、批准のために国内法を整備する必要はない、こういうふうにおっしゃいました。これが明らかになったときは正直申しましてびっくりし失望をいたしました。もちろん批准は喜ばしいことなのですけれども、私には、この点はどうなのだ、あの点はどうなのだ、この問題は国内法を変えないと条約批准ができないのではないか、明らかに条約に違反するのではないかということがたくさんございますのでお尋ねしたいと思います。時間の許す限り、私の疑問に思っていることを幾つかお聞きしてみたいと思います。
 まず非嫡出子あるいは婚外子の問題でございますけれども、本条約の二条は子どもに対する出生によるいかなる差別も禁止しているわけです。我が国の民法等が子どもの両親が婚姻関係にあるか否かで相続や戸籍上の差別を設けているのはこれは明らかに二条に抵触すると私は思います。
 そこで、子どもの権利条約第二条で出生による差別を禁じている、この出生とは一体何を意味するのでしょうか。婚外子あるいは非嫡出子とも言われておりますけれども、この婚外子差別はその中に含まれるのでしょうか。民法九百条四号ただし書き、非嫡出子の相続分は嫡出子の二分の一とする規定はこれに抵触しないのでしょうか、お答え願いたいと思います。
#112
○説明員(小西正樹君) この条約の第二条一の出生、これは英語の正文ではバースとなっているものを訳したものでございます。この条項の審議におきましてはその意味について特段の議論は行われておらなかったわけでございますけれども、この言葉、英語のバースという言葉は通常、生まれ出るということを意味しているものというふうに考えております。
 御指摘の嫡出子、非嫡出子の問題につきましては、第二条一に列挙された事項のうちでは「他の地位」とございますが、他の地位にかかわるものとの理解のもとでこの規定が起草されました経緯があって、出生、バースという言葉にかかわるという理解はなかったわけでございます。
#113
○竹村泰子君 今、二条について出生とはどういう意味なのか、婚外子差別はこの二条に違反しないのかという質問をしたのですけれども、法務省はいかがですか。
#114
○政府委員(森脇勝君) お答えさせていただきます。嫡出でない子の法定相続分を嫡出子の二分の一としております現在の民法九百条四号ただし書き、これについてお尋ねであろうと思われますのでお答えいたします。
 まず、この民法の規定が児童に対する不合理な差別を禁止する規定であります本条約二条に抵触するかどうかという点でございます。
 この二条の一は、締約国は児童に対し「いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する」、こういうことになっておりまして、ここで「この条約に定める権利」が何かということが問題になるわけでございます。
 「この条約に定める権利」の中に相続分の保護が含まれるかどうかということでございますが、これは含まれないのではないかというふうに考えられるところでございます。それは本条約の中に相続に関し何らの直接的な規定を設けてございませんし、相続について何らかのものを示唆する規定というものも存在しないわけでございます。また、相続の問題は親子関係等の身分関係に基づいて生ずるもので、子が児童か否かといったことによって左右されるものではないわけでございます。特に平均寿命が長くなっている現在においては、相続が問題となる時点では相続人たる子も既に成人に達しているという場合がほとんどと考えられるところでございまして、その意味でも相続の問題はその児童の権利保護を目的とする本条約の対象外であるというふうに考えられるわけであります。したがいまして、この二条の一による保護の対象にはならない、このように考えられるわけでございます。
 次に、二条の二でございますが、二条の二は児童がその父母その他家族の構成員の地位に基づいて差別または処罰を受けないようにするための適当な措置をとることを締約国に課しているわけでございます。
 ここで問題になりますのは、この父母の地位ということでございますが、この「地位」というのは本条の制定経過に照らしても次に出てまいります「活動、表明した意見又は信念」、これと並ぶ社会的または政治的地位を指していると解されるところでございまして、したがって父母が婚姻関係にあるかどうかといったような身分上の違いに基づいて相続分に差異が出てくるということはこの二条の関知しないところではないかというふうに解されます。
#115
○竹村泰子君 要するに二条には抵触しないとおっしゃるわけですね。高齢化社会で子どもはもう成人している場合が多いのじゃないかと。若い人は死なないのですかね、子どもを残して。そんなおかしな答弁をしてもらっては困ります。
 何としても抵触をしないとおっしゃりたいらしいですが、一九八九年四月に規約人権委員会はこの条約の二十四条に関してジェネラルコメント、一般的意見を採択しておりますけれども、その中で相続の場合を含めてと断った上で、特に国籍による差別とともに婚外子差別について、これをなくすために各国政府が子どもへの保護処置をいかに法律上及び実務上保障しているかということを政府報告書に記すべきであるとしております。
 ジェネラルコメントについては日本語訳がないのですけれども、外務省にお聞きしますが、これは知らせる必要もなければジェネラルコメントに対して報告書を出す必要もないという意味なのでしょうか。なぜ日本語訳がないのか、それではこれをどういうふうに報告をなさるおつもりなのか、聞かせていただきたいと思います。
#116
○説明員(小西正樹君) 先生御指摘の今のジェネラルコメントは、市民的及び政治的権利に関する国際規約第二十四条に関するジェネラルコメントだというふうに承知いたしますけれども、これにつきましては、私どもも当然のことながらこの内容について承知いたしておりますし、またこの内容についてこういった意見があるということについては必要に応じましていろいろな場で御説明なりお知らせするということをしておるわけでございます。訳につきましても、私ども必要に応じその訳は部内でつくっておるわけでございます。
#117
○竹村泰子君 部内でごらんになっていても、こういう大事なことがジェネラルコメントとしてつけられているのだということは国民にはわからせなくてもいいのですか。
 それで私、ちょっとおわびします。ごめんなさい。規約人権委員会と申しましたのは、今おっしゃったように、市民的及び政治的権利に関する国際規約の規約委員会でございます。
 その報告書を政府がB規約に関して最後にお出しになったのはいつですか。
#118
○説明員(小西正樹君) 一昨年の十二月でございます。
#119
○竹村泰子君 そうですね。この政府報告書では婚外子差別に関してどのような報告がされていますか。
#120
○説明員(小西正樹君) その報告においては、特に嫡出子、非嫡出子の問題については言及しておりません。
#121
○竹村泰子君 特に書いてないですね。この規約人権委員会が特にとしてわざわざ指定している事項についてなぜ日本政府は報告書を書かないのですか。
#122
○説明員(小西正樹君) この国際規約四十条一に基づく報告におきましては、特に前回の報告書の人権委員会における検討の際に各委員より質問のあった点を中心に、なるべく問題点、実態及び改善すべき点等の措置がとられた事項について報告するように努めているわけでございます。
 前回、一九八七年に提出した報告書の人権委員会における検討の際には、嫡出子、非嫡出子の問題について質問等がございませんでした。それで御指摘の報告書においてはこの問題について特に言及しなかったものでございます。
#123
○竹村泰子君 この規約の四十条二によりますと、「報告には、この規約の実施に影響を及ぼす要因及び障害が存在する場合には、これらの要因及び障害を記載する」となっていますね。条約実現のために積極的にとった措置だけではなくて、実現に向けた措置がとられていない場合にもなぜかということを報告しなければいけないのではないでしょうか。いいことだけ書いておけばいいということではないのじゃないかと思います。
 規約人権委員会がB規約二十四条に基づきこのようなジェネラルコメントを採択したのは、ジェネラルコメントそれ自体が規約の解釈を示すものでなくとも、規約人権委員会にはこの条項が婚外子に対する差別を禁じているという解釈があるからではないのでしょうか。そこをわざと読み取らずにそのことにわざと触れなかったと私は思えてならない。いかがですか。
#124
○説明員(小西正樹君) 先生御指摘のとおりに、「報告には、この規約の実施に影響を及ぼす要因及び障害が存在する場合には、これらの要因及び障害を記載する」という規定があることは事実でございます。
 ただ、先ほど御説明申し上げましたとおり、前回の報告書において言及しなかった理由は、この報告書に記載すべき点として前回の検討の際に各委員から質問のあった点を中心になるべく問題点、実態及び改善等の措置がとられた事項について報告するように努めておるわけでございまして、そういう問題について質問等がなかったということで特に言及しなかったわけでございます。
#125
○竹村泰子君 私はここに報告書の訳を持っているのですけれども、実に巧みなのですね。委員長、これはやっぱり外務委員会できちんといつかは議論を重ねていただかなければいけないと私は思うのですけれども、実を言うと私、外務委員会におりましたときにこの報告書を出す前に私たちに見せてほしいと再三、特にこれは人権の問題ですので再三要求いたしました。けれども、大臣、一切見せてくださらないのです。国会議員にも見せないでお出しになるのです、これは。そして事後、こういう報告書をお出ししましたと言って見せてくださるのです。それがこれなのですけれども、実にうまいこと書いてあるのですよ。
 例えばその問題、今のところはもう全然記載されていないのですけれども、問題になりそうなところは、刑事訴訟法などで例えば強制、拷問、脅迫など長く抑留拘禁された後の自白はこれを証拠とすることができないとしてあるとか、憲法ではこういうふうに保障されているとか、拷問の禁止については警察官等捜査にかかわる公務員は研修中に憲法に関する講義などを受講することとされているとか教育が行われているとか、うまいのですね、この書き方が。現実をちっとも書いていない。現実ではもう代用監獄なんていう言葉が世界的な共通語になっているような状況をまるで書いていない。みんなそれは憲法で保障されております、差別は禁じられております、何はどうされております、そういうことの書き方。
 この報告書は市民的及び政治的権利に関する国際規約で義務として出さなければいけない報告書ですよね、五年ごとに。これをこんな形でお出しになる。そして現実に苦しんでいる人たちの声なんて全然わかっていらっしゃらない。
 後で私はアイヌの人たちの問題も少し質問する予定でおりますけれども、アイヌの民族のことに関しては私は数えました。ようやく二十二行入りました。八九年まではこれは、なしだったのですね。アイヌ民族は日本の国に存在していなかったのです、国連への報告書の中では。
 大臣、これはやっぱり私はちょっと問題だと思います。どういう報告をされるのか。今の婚外子の問題だってそれは何も触れないで出しますよと言ったらわあっと騒ぎが起きるとお思いかもしれないけれども、これからもまだ質問を続けますが、いろいろな意味で婚外子の問題は非常に大きな問題となっている。それに全く触れない報告書を涼しい顔をして出している外務省。これは私はちょっとどうかと思います。大臣、どうお思いになりますか。
#126
○国務大臣(武藤嘉文君) 今、いろいろお聞きしておりますと多少もう少し親切に説明すべきところは説明すべきかという感じはいたしますが、今おっしゃっているような殊さらそこだけを隠そうというような悪意があったのではないのじゃないかと私は思いますけれども、いずれにしても、これからはこういうものはできるだけ国民にわかりやすく理解しやすくしていくというのは当然のことだと思っておりますので、そのように指導してまいりたいと思います。
#127
○竹村泰子君 先ほど委員長にと申しましたが、これはやはり大事な外務マターの一つであると思いますので、ぜひ理事会でもお取り上げいただきまして、外務委員会の中できちんと今後の報告に関してこのような方向でいくということを姿勢として出していただきたいと、私からのお願いでございます。
#128
○委員長(野沢太三君) その件につきましては、後刻理事会において相談をいたします。
#129
○竹村泰子君 この子どもの権利条約で出生による差別が禁止されるに至りましたのは、いきなり出てきたわけではないのですね。国連憲章、世界人権宣言、子どもの権利宣言、国際人権規約の二つの条約、子どもの権利条約というこの一連の流れの中に位置づけられ、女子差別撤廃条約もこの流れの中にあると思います。
 世界人権宣言二十五条二項では、母と子は特別の保護を受ける権利を有する、すべての児童は嫡出であると否とを問わず同じ社会的保護を受けるとあります。それ以後の児童の権利宣言や国際人権規約B規約ではこうした表現はされておりませんけれども、婚外子差別を容認したからというわけではないと思います。むしろ、嫡出、非嫡出という言葉自体が嫡出概念に基づく差別を含むと解されているからではないでしょうか。
 この出生という、主に婚姻内の出生であるか婚姻外の出生であるかという意味によって解されていると思いますが、出生による差別が非嫡出子差別のことであるというのは国際的に確立した解釈であると私は思いますが、いかがでしょうか、外務省。
#130
○説明員(小西正樹君) この条約二条一におきましては、先ほど来お話しになっております出生あるいはその他の地位ということで御指摘の嫡出子、非嫡出子の問題が取り上げられておりますけれども、ここの条約で定めておる趣旨は、この条約に定める権利の享有において不合理な差異を設けることは禁じておるわけでございますけれども、合理性のある差異に基づく権利の享有ということについては認めるというふうに解されるわけでございます。
#131
○竹村泰子君 国際連合は、経済社会理事会や総会の勧告などで婚外子差別の撤廃を訴えております。さっきも私が申しましたように、ずっと一連の国際的な流れの中でこれらと条約とは無関係ではないはずだと思いますが、その点、日本はどういうふうに考えられるのでしょうか。大臣、いかがですか。
#132
○説明員(小西正樹君) 先生、今、国際的な動きということにお触れになられましたので、この条約を締結している国において嫡出子、非嫡出子についての各国の制度を念のために私ども紹介した例をここで御披露申し上げますと、この相続制度を初め、嫡出子、非嫡出子の別による差が設けられている国といたしまして、ドイツ、フランス、ベルギー、オランダ等の国がございました。そのほかの国、豪州、カナダ、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、メキシコ等につきましては、相続分に関して申し上げる限り特に嫡出子、非嫡出子についての差は設けられていないということでございました。
 この例からもおわかりいただけますように、この条約自身の解釈におきまして各国がこの点についてどういう解釈をとっているかということについては、この規定を前提としたままドイツ、フランス等の国々が締結していることにもあらわれておりますように、私どもはその制度について合理的な理由があるということに基づく取り扱いの違いについてはこの条約が許容しているところであるというふうに理解しております。
#133
○竹村泰子君 今、いろいろな国の名前をお挙げになりましたが、私、要求しておきませんでしたのでこちらで調べたところを申し上げます。
 例えばアメリカ、アラバマ州など十七州、七三年、婚外子、婚生子の区別を廃止した。オーストラリア、婚外子差別を撤廃する立法がなされた。オランダ、嫡出子のそれと一致させた。韓国、父に認知された婚外子は扶養や財産相続の面で婚生子と同じ地位を有する。スイス、もちろんです、認知された婚外子は嫡出子と同様に扱われる。スウェーデン、すべての子に与えられる権利を平等に持つ。スコットランド、すべての親族の記載には婚外子も含まれる。ロシア、旧ソビエト、婚生子と婚外子との差別を撤廃した。中国、婚外子は婚生子と同等の権利を有する。ドイツ、婚生子と同じ相続権を有する、ただし婚生子や配偶者と競合する場合はといっただし書きがついています。ノルウェー、婚生子と同等の法的地位を有する。こういうふうになっているのですね。日本は何とおくれていることよと私は思います。
 フランスは、これも私の調べたところによりますと、九一年十二月に相続人の権利に関する改正草案、これが国民議会に提出されて、少しひどい言葉なのですが姦生子という、犯された子どもという意味ですね、その姦生子の差別があったわけで、これをもうなくそう、全部なくしちゃおうと。出生を理由にいかなる差別扱いもしてはならないという原則が国際法において再確認されている今日においては、子に親の過誤の結果の報いを受けさせることに対してかつてないほど厳しい条件がつけられている。あくまでも相続について嫡出子と同等の権利をとるべきだとアンケート調査でも大半の人々が考えている。
 今、ドイツとかフランスとかおっしゃいましたが、細かく言うとそういうことなのですね。廃止する方向で改正作業をしている。非常に私は国際的にも不名誉なことだというふうに思いますし、新聞などもそう報道しております。
 出生による差別を残すのはとても恥ずかしいことだと私は思いますが、大臣、どうお思いになられますか。
#134
○説明員(小西正樹君) その前にちょっと事実関係で御説明させていただきたいと思います。
 先生、今、フランスの例にお触れになりましたけれども、そういった嫡出子といわゆる姦生子の相続権に差を設けている現行法があることは事実でございまして、それについての法案が提出されたことも事実でございますが、私どもはその法案が現在審議が行われないまま廃案になっているというふうに承知しております。また、フランスの政府自身は、現在ございますフランスのこの規定が条約に反しているというそういう条約の解釈を行っているわけではないというふうに述べていると承知いたしております。
 私が先ほど御説明として申し上げたのは、この条約上の義務としてそういうことが求められているかどうかということについて申し上げたわけでございまして、この問題についていろいろな考え方があるということは私どももとより承知いたしております。
#135
○国務大臣(武藤嘉文君) 今、私もずっと各国の資料を見せていただいておりますけれども、確かにヨーロッパの先進国は相当御指摘のようなことになっておりますし、逆にアジアの各国はまた日本よりももっとおくれているような感じに私は見ているわけでございます。
 日本としては、私の記憶では昔よりは大分よくなってきているのではないかという感じがしているのでございますが、現時点では法律上の婚姻に基づくいわゆる婚姻関係というものを社会的な中で位置づけていくという一つの考え方に基づいて、こういうことが今、社会的にそういう雰囲気だということで私はこのようなことが残っていると思うのでございますが、せっかくの御指摘でございますので私もひとつ勉強はさせていただきたいと思います。
 ただ、これは民法の問題でございますから私が外務大臣としてとやかく言うべきことではございませんけれども、せっかく条約の中にこのような条文もあるわけでございますからそういう立場で検討はさせていただきたいと思います。
#136
○竹村泰子君 ぜひ前向きに検討をお願いしたいと思います。
 同じく婚外子の続き柄のことなのですが、これは民法に関することですから法務省にもおいでいただいていますけれども、婚外子は戸籍の続き柄欄、住民票の続き柄欄で一目でわかる差別的な記載をされております。この際、こうした記載を改めるつもりはないのでしょうか。
#137
○政府委員(森脇勝君) 先ほど来、私の方で申し上げました相続分の差異についてでございますが、それは外務省でもお話しされていますように、条約との関係で条約に抵触するかどうかという観点から申し上げたものでございます。その問題と、それからこの九百条につきまして立法政策の観点からこうした規定を置いておくのが妥当かどうかという判断の問題は別個の問題であろう、私どももそういうふうに考えておるところでございます。
 この九百条四号ただし書きにつきましては、以前からこの規定の当否について種々の議論があるところでございます。すなわち、両親が婚姻関係にあるか否かということは子どもにとっては責任のないことでございますから、これによって相続分に差異を設けるという規定を置くことは妥当ではないのではないかという議論が一方にございます。それから他方には、このような取り扱いの差を設けたのは法律による婚姻制度というものを維持しようとするものでやむを得ない差異なのだ、合理的な理由に基づく差異なのだという議論がございます。
 この議論は、嫡出子とそうでない子の相続分がここで問題になりますのは、一人の被相続人について複数の子どもがいる、そのうちのある者は婚姻関係にある配偶者との間の子どもであり、ある者はその被相続人と配偶者以外の異性との間に生まれた子どもである、この相続分に差異を設けて婚姻関係にある配偶者との間で生まれた子の相続分を多くしようということは、結局その法律による婚姻あるいはその婚姻によって生ずる家庭、これを保護しようという趣旨に出たものであって合理的であるというのが一方の意見なわけです。
 この点につきましてどちらを優先すべきかということにつきましては、いわば二律背反の問題でございまして非常に難しい問題であるとされておりまして、諸外国の立法を見ても、相続分を同等に扱うという先生御指摘の多くの国があります反面、何らかの形で相続に差異を設けようとするフランスであるとかドイツであるとかそういった国も多数存在するわけでございます。
 私ども法務省としましても、いずれをとるのが妥当であるかという点については重大な関心を持っておるところでございまして、昭和五十四年七月に相続法の改正を考えまして、その民法改正要綱試案の中に嫡出子と非嫡出子の相続分を同等とするように改正すべきであるという案を設けまして関係各界の意見を聞いたことがございます。
 また、これと前後いたしましてこの点についての世論調査を実施したことがございますが、この時点での世論調査の結果では、国民の意見はこの改正をすべきであるという案に対しては反対意見が多くておおむね半分近い四八%の人が反対であった、それに対してそのような改正をすべきであるという賛成者は一六%であった、こういう実情がございました。また、先ほど申し上げました関係各界に意見を求めたという結果でございますが、その結果においても国民感情に反するあるいは時期尚早であるといった反対の意見が少なくなかったことから、五十四年の民法改正においてはこの点の改正が見送られたといった経緯がございます。
 それ以降十四年が経過しておりますので、国民世論の動向に変動があったのかどうかあるいはその変動がどの程度のものなのかといった点についてつまびらかではございませんけれども、いずれにしても、この問題は国民の法律意識、国民感情に深くかかわる問題でございますので今後とも民法の改正という観点から慎重に対応すべき問題であるというように考えておるところでございます。
 このように、民法の規定を残しておきますとこれに伴いまして子の関係を戸籍の上で公示するということがどうしても必要になってまいります。その意味から嫡出子につきましては長男、次男といったような記載をいたしますし、そのような差異を設けて記載しているところでございます。
#138
○竹村泰子君 長々と御答弁なさいましたけれども、何を中心にこれを考えているのですか。子どもの権利条約を審議している私たちは子どもを中心に考えるのじゃないのですか。法律婚を保護するためじゃないでしょう。戸籍法を保護するためじゃないでしょう。子どもを中心に考えるべきなのでしょう。子どもには関係ないでしょう、どういう親から生まれようと。そしてその親が籍を入れていようといまいと、どういう選び方、どういう生き方をしていようと関係ないでしょう、そんなこと。その怒りを国民は持っているわけですよ、特にこの子どもの権利条約に関して。きょうたくさんの傍聴の方がいらっしゃいますけれども、多くはそういう問題意識を持った方たちです。
 今、お答えがありましたように、法制審議会が民法部会身分法小委員会で一九七九年の七月十七日に、非嫡出子の相続分、嫡出でない子の相続分は嫡出である子の相続分と同等とするものとするというのを出しましたね。それから十四年たっていると今おっしゃいました。十四年もたっているのですよ。それなのにこのときの世論の反響が四八%反対だったから、これは今もそうだと思っていらっしゃるのかどうかわからないけれども、これを頼りに民法の改正はしないと。民法の改正をしないで何でこの子どもの権利条約が批准できるのですかと私は言いたい。そういうことを全く無視して、子どもに対する差別はそのまま温存して、それもあるでしょうあれもあるでしょうと。
 外務省の偉い方が私の部屋においでくださいました。こんなことで条約が批准できるのですかと私が素朴な疑問を投げましたら、とにかく第一歩でございます、その後のことは後で追いかけてまいりますと。発想がおかしいのじゃないかと私は思います。こんなに差別的なことがいっぱいいっぱい温存されていて、子どもの幸せを願って世界じゅうの国が子どもの権利条約を批准しよう、してほしいと言っているのに差別はそのまま置いておいて、とにかく条約は国内法をさわらないでいたします、事実は後で追っかけます。大臣、これでいいのですか。いかがですか。
#139
○国務大臣(武藤嘉文君) 先ほどから申し上げておりますように、民法の問題は私の所管でございませんのであれでございますが、とにかくこの条約は、先ほども申し上げましたが、子どもの立場から物事を見ていこう、こういうことを私どもは社会の中でこれからよく御理解をいただけるようにPR活動を続けていかなきゃならないと思っております。
 そういう点から申し上げますと、今、御指摘の点はもっと早く国内法の整備があってしかるべきではないかという御意見でございますけれども、それぞれの役所が今の法律の体系は憲法の基本的人権を尊重するという立場からそれぞれでき上がっておってそれはそれなりに正当性がある、こういうお立場でございますから、私どもは今は特にこの条約の義務を果たしていく上において直ちに法律改正をしなきゃならないというものはないのではないかという立場をとっておるわけであります。
#140
○竹村泰子君 非常に安易でおかしい不合理な考え方をしていらっしゃると私は思います。
 親の婚姻関係の有無によって生まれた子どもを差別する、これは政府答弁、大臣答弁のように、必然的に合理的だと私には到底考えられません。非嫡出差別を廃止することは以前から請願がたくさん出されております。私、請願の数も調べましたが、本当に多くの請願が国会に寄せられている。国民から強く求められていると思います。本条約二条の「いかなる差別もなしに」と書いてあるこの言葉、子どもの権利を尊重するように条約批准を機会に民法等の改正をぜひ考えていただきたい。
 これは法務委員会でもやらなければいけないと思っておりますけれども、もう一言、大臣、いかがですか。ちょっとお役目が違うから難しいですか。でも内閣の一員として、条約批准に対してこういうことがあったという閣議などでの御報告はお願いできると思いますが。
#141
○国務大臣(武藤嘉文君) これは法務省からお答えいただくのがいいかと思うのでございますが、民法の改正となりますと、御承知のとおり、手続的に審議会をやりいろいろ手続をしていかなきゃならないわけでございましてなかなか問題かと思うのでございます。
 先ほどからどうも私と意見がちょっと違うようでございますが、私は憲法第十四条のいわゆる法のもとの平等という点と今の民法というものは整合性が保たれているというのが今の政府の解釈だと思うのでございます。政府の一員として今、現時点でどうだとおっしゃれば、やはりその辺の整合性は保たれておると、こう言わざるを得ないわけでございまして、その辺は多少意見が違うかと思いますけれども、御理解をいただきたいと思います。
#142
○竹村泰子君 それでは少年司法の問題に移らせていただきます。
 本条約の規定には少年法とかかわりを持つ部分が非常に多く含まれています。中でも三十七条と四十条、これは少年司法の運営そのものに関する規定となっています。ここには子どもであっても適正手続の保障が完全に確立されるべきこと、すべての面において人道主義に立脚した処遇が実施されるべきことがうたってあります。これを実現するためには少年法の抜本的な見直しが必要であろうと私は考えていたのですが、予想に反して政府は三十七条(c)については留保を付する以外は現行法で十分だと判断されたわけです。これには国民からも疑問の声が出ているようですし、私自身納得できない部分があります。現行法上問題と思われる点を指摘したいと思いますので明快な答弁をお願いいたします。
 まず通訳の無料化、四十条二項(b)には無料で通訳の援助を受ける権利が定められております。これに対して少年法三十一条一項は、通訳人などに要した費用の全部または一部を少年または扶養義務者から徴収できるとの規定になっております。
 今、日本語を解さない子どもがどんどんふえている。外国人登録数が法務省の統計によりますと初めて百万人の大台に達した。そして特にアジアからの人々が非常に多くなっている。その中には家族として子どもが存在し、そして日本で生まれて育った者以外はほとんど日本語を解さない子どもたちがいる。それからまた忘れてならないのは、日本の国策によって棄民化されて戦後多くの年月を経てようやく帰国できた引揚者とその家族、日本語教育、居住、就労、教育などの受け入れの体制の不備と偏見と差別の中で極めて厳しい状況にあるのは御存じのとおりであります。
 そこで、それは日本の国民、もともと日本に住んでいた国民と同じだと思うのですけれども、その中で非行に走る子もいる。そういう中でやはり言語の問題は非常に大きいと思います。そして、ある程度言葉を覚えても日本社会固有の価値観をあらわす言葉は容易に理解できない。事件を起こして警察の御厄介になってもなかなかその思いが表現できない。母言語を解さない限り正確にはあらわれないことはもう明らかでございます。
 裁判所法七十四条では、「裁判所では、日本語を用いる」と。しかし刑法百七十五条、これを準用する少年法十四条ですけれども、「国語に通じない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせなければならない」というふうに規定しております。この権利条約四十条では無償で通訳の援助が受けられるということを明記してあるのですけれども、私どもはこの条約に明らかに現行の少年法は抵触をするのではないかと思います。改正の必要があるのではないかという解説書もたくさんございますけれども、法務省の見解をお伺いしたいと思います。
#143
○説明員(古田佑紀君) ただいま委員御指摘のとおり、この条約の四十条二項(b)の規定は無料で通訳の援助を受けることができることを定めておりますが、まずこの条約の趣旨でございますけれども、これは刑事裁判及び少年審判におきまして日本語がわからない児童のために通訳をするということ、そして訴訟または審判の遂行の過程におきまして通訳人の費用を児童に負担させない。そういう際に負担させるとしますとこれはやはり防御に差し支えがあるわけでございますので、そういうふうなプロセスでは費用を負担させてはいけない、こういうふうな趣旨に理解しているわけでございます。
 そこで、では審判が終わりました段階でその費用をどうするのか、こういうふうな事後的な問題になりました場合に、この条約はそこまで規定しているものではないというふうに私どもとしては考えているわけでございます。
 ところで、御指摘のありました少年法三十一条でございますが、これは費用の徴収を義務づけているものではございませんで、家庭裁判所が事後的にその審判の手続の状況あるいは少年や保護者の資力、そういうふうな諸般の事情を考慮いたしましてやはり費用を徴収した方が適当だというふうに認められるときに、裁判所のいわば健全な裁量で費用の徴収が可能だというふうにしている規定でございまして事後的なものでございます。そういうことからこの規定は本条約の御指摘の条項に抵触するものではないというふうに私どもとしては考えているわけでございます。
 以上のような理由で改正の必要はないというふうに考えている次第でございます。
#144
○竹村泰子君 条約にはっきりと無料で通訳をつけなきゃいけないと書いてある。しかし日本の国では、それは必ずしもそういう条件を言っているものではない、無料で通訳をつける必要はないというふうに解釈なさるわけですね。これはどうもよく私は理解できませんし、どうしてこれが抵触しないのか、条約違反ではないのか、それはみんなわからないと思いますね。法務省の御答弁は何回聞いても同じですからいいですけれども。
 次に、同じような問題ですが、付添人。三十七条、四十条には弁護人その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利、審判手続において立ち会いを受ける権利などが保障されています。政府は、少年法によって付添人を選任することが認められているので保障は十分だとこれまでにも後藤田法務大臣も答えておられます。議事録を拝見いたしました。
 果たしてそうでしょうか。一般保護事件において現実を御存じないのじゃないかと私は思うのですけれども、付添人が選任される率は一%にも満たないのですね。平成三年度で言いますと〇・八%。我が国の家庭裁判所が取り扱う少年の九九%は付添人の援助なしに審判手続に臨んでいる。いわば無権利状態に置かれていると言えるのではないかと思います。これでは到底条約のいう権利を保障しているとは言えないのではないでしょうか。どのように考えていらっしゃいますか。警察にもお聞きしたいと思います。
#145
○説明員(古田佑紀君) ただいま委員御指摘の付添人が選任されている率でございますが、確かにトータルといたしましては今、御指摘のような数字でございます。
 ただし、少年事件と申しますのは全体で平成三年度で約二十五万件に上るわけでございまして、非常に多数の部分が審判不開始あるいは不処分といいまして何もしないで結局少年にとっては積極的な保護処分というものを受けないで済む非常に軽い犯罪が多いわけでございます。そういう点から全体として見ますと付添人のついている率が低いのではないかというふうに推察するわけでございますが、付添人の選任権というのは今、委員御指摘のとおり、常に担保されているわけでございますし、また家庭裁判所の審判の前の捜査段階では当然ながら弁護人の選任権も確保されているわけでございます。
 そういう点から申しましてこの条約の規定につきましては私ども、日本の国内法は十分その要請にこたえているというふうに考えている次第です。
#146
○竹村泰子君 警察にお答えいただく前にちょっと実態を申し上げて、それからお答えをいただこうと思います。
 例えばこんなことがあるのです。群馬県富岡署の事件なのですけれども、十七歳の少年がバイク窃盗容疑で任意同行された。署員は巡査部長三名を含む六名の警察官であった。少年は取り調べ開始直後、一人の警察官から「てめえはドテチンと言うんだべ」とばかにされたりしたのだけれども、窃盗容疑を否認したところ少年の右側にいた警察官は「このやろう、やっていいですか」と正面にいた警察官に聞き「いいよ、責任とるから」と上官からの了解を得て、取り調べ室内でいすに座っていた少年の髪をつかみ後頭部を壁に数回打ちつけ、いすから落ちてしりもちをついた状態となっていた少年に対して「このやろう、まだ言わないか」などとどなりつけて暴行を働いた。そして次々と警察官が交代する中で、少年の髪をつかみ床に引き倒し引きずり回し、左足、肩、胸、わき腹をけったり、いろいろな恐喝があってパイプいすでまで二度殴りつけられています。そして余罪の自白を迫ったわけです。群馬弁護士会が群馬県警本部と富岡署に対して警告書を提出した。一九八八年十一月の事件です。
 その後の調査によりますと、これは決して特殊なものではない。こういう事件はそれはもう非常に特別な例ですというわけではない。家庭裁判所に送致された交通事犯以外の事件で、こういうときにちゃんと弁護士がその前後であろうともいられる例は二百件に一件の割合でしかない。このときはちゃんとこの人には弁護士がついていたわけですから、それでもこれだけの事例が挙がってきている。取り調べ室の中での子どもの人権は極めて深刻であると言わなければならない。
 こういうふうな事例がたくさんあります。きっと警察もお手元に事例があると思いますけれども、どうお考えになりますか。
#147
○政府委員(中田恒夫君) ただいま委員御指摘の例でございますけれども、詳細については必ずしもつぶさに承知しておりませんけれども、確かに弁護士会の方からそのようなお申し出があり、検察庁を通じてその所轄の警察署で医師に診察をさせたと聞いております。そのときに、体に外傷はなくて腹部の痛みは慢性胃炎によるのだろうという診断書をいただいて、そのようなことでこの件はたしか終わっておるかと思います。
 いずれにいたしましても、少年の取り調べに当たりまして私ども警察としては、刑事訴訟法あるいは少年法等の関係法令に定められた事項を遵守することはもとよりでありますけれども、特に少年の心情を理解して、年齢や性格を初め少年の心理、生理その他の特性に十分配意して適正に行われるよう指導をしてきたところでありますし、また現実にもそのように行われているものと承知をしております。
 ただ、このような少年事件捜査の基本を十分に尽くしていなかったというようなケースでありますとか、あるいは警察の捜査結果を的確に少年審判に反映させることができなかったようなケースで残念ながら御発言のような御指摘を審判の決定の中で受けた事例もないわけではございませんので、もとよりそのようなことがあってはいけないことでございますので、今後ともそのような御批判を招くあるいは疑念を抱かれるということのないように適正な処理に十分心がけてまいりたいというふうに思っております。
#148
○竹村泰子君 指導をしたいということでしょうけれども、私はやっぱり国選付添人制度の確立や付添人選任権の告知を義務づける立法が必要なのではないかと思うのです。子どもは大人より権利行使の能力が劣っておりますし、大人以上に弁護人の援助を必要としていると思うのです。実質的に権利を保障するシステムをつくらないと条約が実効性のあるものにならないと私は思うのです。すべては後回しでとにかく条約批准、国内法は置いておいてとにかく条約批准ということにはならないと私は思うんです。
 子どもはまさに半人間、一人の人間としての人格として扱われていない。法的援助者を求めるなど子どものくせに生意気だと、大人には保障されていることが子どもには保障されないのです。このことはどう思われますか、法務省。
#149
○説明員(古田佑紀君) まず実情を若干申し上げますと、家庭裁判所の審判の段階で付添人の選任権は、これは実際の家庭裁判所の手続上すべて書面で告知するという取り扱いになっております。
 また、ただいま委員が御指摘になった大人との差があるのではないかとおっしゃる点につきましては、もし刑事訴訟になりますれば国選弁護人という制度があるのに対して少年審判の手続では国選付添人という制度がない、恐らくこの辺のことを御指摘なのではなかろうかというふうに考えるわけです。その点につきましては委員御指摘の点も問題だというふうに私どもも考えておりまして、以前、少年法の改正で法制審議会から答申をちょうだいした中にそういう問題も含めたいろいろな審判手続の整備改善というふうなことが盛り込まれているわけでございますが、残念ながらこの改正につきましてはいろいろなところでなかなか意見の一致が見られずそのままになっているという状況でございます。
 ただ、現行の少年法ということを前提に考えてまいりますと、現行の少年法というのは端的に申しますと家庭裁判所が親がわりになって少年のことを考えるというシステムになっておりまして、現行少年法のほかの手続等の整備を図らないままで国選付添人制度を導入するというふうなこともいろいろ難しい問題があるように思われますわけで、今後ともそういう点を含めましていろいろな角度から検討していきたいと思っております。
#150
○竹村泰子君 問題であるというふうに考えておられるということはわかりました。
 それでは、今ちょっとお触れになりましたが、問責を告知される権利。四十条二項では、刑法を犯したと申し立てられ訴追されたすべての児童は速やかにかつ直接に、さらに適当な場合には父母または法定保護者を通じてその罪を告げられる権利を有すると規定しています。これは捜査手続であれ審判手続であれ、犯罪少年または触法少年として手続の対象者になった場合、少年自身とその親や保護者に対して速やかに被疑事実の告知がされるべきと定めたものだと思います。この権利についても問題が多い。
 現行法上は、逮捕、勾留の際に少年本人に対して被疑事実の要旨の告知を定めた刑事訴訟法の規定が適用されるのでしょうけれども、親や保護者に対する告知を定めた規定はありません。家庭裁判所送致後に関しては告知を要求した法律は全く存在しませんね。審判廷では審理の冒頭、非行事実の告知がなされていますが、この段階では「速やかに」の要件を満たしているとは到底言えないでしょう。逮捕、勾留段階で親や保護者に被疑事実を告知すべきこと及び家裁に送致後、審判期日の相当期間前に少年と親や保護者に非行事実を告知すべきことを定めた立法措置がぜひ必要であると思います。
 少年法の改正については、今おっしゃいましたが、一九七七年、法制審議会少年法改正に関する答申、その第一番目の項の二に「弁護士である国選付添人の制度を設ける」と。告知については触れていないかもしれないけれども、付添人についてはそういうふうに書かれています。この点について、今の告知の点も含めてどうお思いになりますか。
#151
○説明員(古田佑紀君) ただいま委員御指摘の告知の問題につきましては、条約上の問題といたしましては、そういう保護者等に告知するということを義務づけているわけではなくて、本人に対する告知、それからそれが適当な場合には保護者等を通じてするようにということが義務づけられているものというふうに理解しているわけです。
 そこで、この手続が一体どういう場面がと申しますと、やはり家庭裁判所における審判手続、それから当然のことではありますが、刑事訴訟になった場合の訴訟手続ということになろうかと考えるわけです。
 捜査段階の告知というふうな問題になってまいりますと、これは逮捕した場合にはもちろん必ず刑事訴訟法上告知をしなければなりませんし、あるいは逮捕していない場合でありましても実際に取り調べ等を開始する場合には必ず告知をしてやらなければできないわけでございまして、少年に対してはそういう形で必ず告知される状況でございます。また、保護者あるいは親などに対しましても、取り調べ等を行うときは原則として親等を通じて呼び出すというふうな手続をとるようにしておりまして、そういう段階でどういう疑いがあるのかというふうなことについては親にも知らせているというのが普通でございます。
 家庭裁判所の審判手続につきましては、これは保護処分がとられるような可能性のある事件につきましては、御存じのとおり、家庭裁判所に調査官という制度がございまして、この調査官が前もって保護者等を呼び出していろいろ環境調査等もいたすわけでございまして、その時点でやはり親の協力を得ますためにはどういうような問題について審判に付されようとしているのかというふうな点を十分説明した上でなければできないわけでございます。そういうようなことから、審判手続の場合、かなり前から両親あるいは保護者につきましてはどういう疑いがかけられているのかということは十分告知されているというふうに考えております。
#152
○竹村泰子君 これまでの審議で総理と法務大臣は、少年司法のあり方を抜本的に見直して少年の権利保障を強化することは条約四十条の要請を大幅に超えると、そういう考えを示されました。そして、この問題についてはほかの密接に関連する問題とあわせて将来少年法改正の条件が整ったときに検討すべきだと。つまり四十条の要請よりも我が国の少年司法の保障を強化していくことの方が超えてしまうのだ、条件がもっといいのだ、しかしその他の関連する問題とあわせて将来検討するべきだと言っていらっしゃる。
 それでは将来というのは一体いつのことなのでしょうか。少年法改正については、さっき申しましたように、七七年に審議会の答申が出ておりますし、昭和で言えば四十年ぐらいからずっと議論され続けている。いまだに改正が実現しないのにさらに将来とおっしゃるのは一体いつのことなのだろうかと思います。
 私は、少年の権利保障の規定を整えることが条約四十条の要請を大幅に超えるとはどうしても考えられない。そんなに日本の少年たちはよく処遇されているとは思えない。そして、この条約を批准するこの機会に条約の趣旨に沿って少年法を改正すべきだと思っていますのできるところから少年法改正していくべきではないでしょうか。
 冒頭にも言いましたけれども、子どもは取り調べの段階などでやはり精神的に非常に大きなショックを受けております。わかりやすく、特に少年少女たちの特性に対する十分な配慮の上に、そしてきちんと弁護人選任権もあり告知の義務の履行もしていただく。先ほどの事例のような暴行を働くなどというのはもってのほか、とんでもないことです。自白偏重捜査を抜本的に警察は見直していただいて、やはりこれは近い将来、ぼんやりとした将来ではなくて近い将来、できれば今やっていただきたいのですけれども、そうはいかなければ必ず近い将来この少年司法に関する改正を考えていただきたい。
 きょうは法務大臣いらっしゃいませんから、そういたしますというお答えはできないと思いますけれども、いかがですか。前向きの答弁をしていただけませんか。
#153
○説明員(古田佑紀君) 私が大臣のお答えについてコメントするのも大変申しわけないことではございますけれども、法務大臣が申し上げた趣旨は、現行の少年法は少なくとも児童の権利条約の四十条の保障というのは十分に満たしている。今、御指摘のありましたような諸点については、さらにそれを踏まえていわば国内の立法政策として考えることがどうかという事項だろうと思うという、こういう御趣旨ではないかというふうに私としては考えるわけでございます。
 先ほど申し上げましたような国選付添人の制度等も、条約上は必ずしも国選を義務づけているわけではございません。ただ、先ほど申し上げましたように、国内的にはその方が妥当ではないかという意見ももちろんあるわけで、そういうことを踏まえて検討をしてきたわけでございます。
 問題は、かつて少年法についての答申をちょうだいしたころと比べまして、また少年事件というものもいろいろさま変わりしており、あるいは少年審判手続で事実認定というのはどの程度精密にやるべきなのだろうか、それとの関係もあって少年の権利保障というのはどういうふうにすべきだろうかというふうな点につきましていろいろな御見解があるのも事実でございまして、率直に申し上げましてこの辺のコンセンサスがなかなか得られないという状態でございます。
 私どもといたしましても、そういうふうな少年非行の動向ないし家庭裁判所での審判手続のあり方、その中での権利保障等についていろいろな御議論がどうなるかというふうなことも踏まえながら引き続き検討を続けていくつもりではございますが、今すぐいつごろというようなことをちょっと申し上げることは困難であることを御理解いただければ幸いでございます。
#154
○竹村泰子君 遠くのいつかわからない将来じゃなくて、ぜひきちんとした目に見える将来にそれは考えていただきたいというふうに重ねて強く要望しておきます。この少年司法に関することは、いずれ改めて法務委員会で取り上げたいと思います。
 それでは、時間もなくなってきましたので、先住民の問題について、私は北海道選出の議員でありますのでお聞きしたいと思います。
 これまでの権利条約の衆参外務委員会の議事録、特に衆議院でこの先住民のことを原住民と訳されていることを何回か取り上げておられます。かなり議論が重ねられておりますので改めて私がここでああでもないこうでもないと言うのはやめますけれども、これはちょっとお伺いいたしますが、衆議院の外務委員会で委員長預かりで理事会にかけられておりますね。その結果はどういうふうになったのでしょうか、お教えいただきたいと思います。
#155
○政府委員(小池寛治君) 衆議院の方で、この問題を契機といたしまして訳語についてどう扱うかという問題の質問がありました。それで、一部の先生方から理事会で検討すべきではないかという意見があったのも事実でございます。しかし衆議院の方で、私が承知している限りにおきましては理事会の方で特に結論が出たということではないというふうに承知しております。
 さらにその際、私の方から御説明したことが一つございますが、それをつけ加えますと、条約の訳語の件についてでございますけれども、内閣は憲法七十三条に基づきまして条約の締結の承認の是非について国会にお諮りしているわけでございます。もちろんその条約を締結するに当たりましては条約の内容というものをよく審議する必要がございます。訳文が正文を正確に反映しているのかどうかということをも含めて審議するわけですけれども、それを審議して最終的に国会としてそういう条約を締結することがいいのかどうかという承認の是非について判断していただくということになっております。したがいまして、条約の訳語というのは国会の審議の対象、すなわち議案そのものではないということを追加的に御説明した経緯がございます。
#156
○竹村泰子君 そういうふうにお答えになっていることは私、議事録が出ている分は読みましたのでわかっておりますけれども、じゃなぜ国際先住民年とおっしゃっているのですか。国際原住民年とおっしゃればよろしいでしょう。それに北海道にはまだ旧土人保護法というのが存在することは言うまでもありません。
 原住民という言葉の遣い方が、訳し方が、今、訳の問題ではない、条約を批准していただくためのものだというふうにおっしゃいましたが、こういう子どもの権利条約のようなものを批准に向けて審議している中で明らかに差別的な言葉遣いをされている。この問題を私は言っているわけで、ほかでは先住民というふうに訳していらっしゃるのになぜここでは原住民とお訳しになったのですかと聞いているのですが、この条約の趣旨を生かすためには我が国における少数民族や先住民の子どもたちの権利を認識して保障していくことが非常に大切になってくると思います。
 具体的には、まずアイヌ民族の人たちについて基本的な権利を定めた法律、これはアイヌ民族の人たちがアイヌ新法を提案しておりますけれども、これも検討委員会でもう何年も何年もかかってまだそのままになっています。差別的名称の北海道旧土人保護法は正式に廃止して早急に新法をつくっていかなければならないと思います。
 また、我が国には多くの韓国・朝鮮人、中国・台湾人の人々が暮らしています。アジアの人々もたくさん暮らしています。子どもたちが各民族の文化を継承していけるような政策を進めていくことが必要になってくると思いますが、大臣、先住民、少数民族の文化を享有していく権利の実現についてアイデンティティーをどういうふうに保障していくかということも含めてぜひお答えをいただきたいと思います。
#157
○国務大臣(武藤嘉文君) 日本の社会の中で、今のアイヌ民族の問題はもう古い問題でございますし、それから今、御指摘のようにいろいろの民族が、戦前から韓国あるいは中国関係の方々も多い、そこへ最近はまたより多くの民族がふえてきていることは事実でございまして、こういう方々の人権を尊重するというのはこれは当然のことでございまして、そういう面における法整備が必要なことは私もよく理解をいたしております。
 ただ、具体的にアイヌ民族の皆さんのことを、新法についても何か十省庁で今日までやっておられるようでございまして、なかなかそこで結論が出ないというようなことになっているのが今の現実のようでございますけれども、これはできるだけ早いうちに結論を出して新法をつくっていくというのが私はやはり望ましい姿ではないかと思っており、外務省もその十省庁の一つでございますからそういう面では努力をしてまいりたいと思います。
#158
○竹村泰子君 御努力をいただきたいのですが、もう何年も何年も関係省庁が集まってそして月に一回のペースで検討委員会をしていらっしゃるのですけれども、なかなか結論が出ないということです。そしてアイヌの人たちの聞き取りもやっていらっしゃらないのですね、その検討委員会の中では。そういうことで私はアイヌの人たちのことがわかるのだろうかと言いたいわけです。だからこういう原住民というふうな言葉が平気で訳語として使われる、こういうことを思うわけですが、もう時間が来てしまいました。
 文部省にも少数民族の言語、文化、歴史など学習指導要領を改訂してぜひやっていただきたいとお聞きしようと思ったのですが、ごめんなさい、また次の機会に譲りたいと思います。
 最後に外務省にお伺いしたいのですが、国際先住民基金というのがありますね。通告しておりませんのですけれども、これはちゃんと先住民基金と使っていらっしゃるのです。原住民基金じゃないのですよ。それで、ここへオーストラリア、カナダ、フィンランド、オランダ、ノルウェー、スウェーデンなどがもう既に基金を出して、日本も一九九一年七月に二万米ドル、二百六十万円ですか、この金額も、経済大国日本として二百六十万円です、を同基金に振り込まれました。これは九一年ですから、その後九二年、九三年と振り込まれたのでしょうか、それともまだなのでしょうか。今後も二百六十万円なのでしょうか。その辺のことをお聞きしたいと思います。
#159
○説明員(小西正樹君) 今、先生がお触れになりました国際年に関する国連基金のためには五万ドルの拠出を近く実施する予定でございます。
#160
○竹村泰子君 それは何年度分ですか。
#161
○説明員(小西正樹君) 平成五年度の予算に計上しておるものでございます。今度の国際年に関する国連基金のための拠出でございます。
#162
○竹村泰子君 九三年度ですね。
#163
○説明員(小西正樹君) はい。
#164
○竹村泰子君 ありがとうございました。
 こういうことで私は、この原住民という言葉にお訳しになったことに、日本の国際感覚というか先住民差別、そういったものがここにやっぱり顕著にあらわれていると思うのですね。
 ですから衆議院でもかなり審議が重ねられてきたと思いますけれども、そういうことでぜひ外務大臣にも御努力をいただきたいし、それから原住民、先住民の訳についてはぜひこの委員会でももう一度、衆議院でそのまま宿題になっておりますので、ぜひお預かりをいただきたいと思いますが、最後にそれをお願いして終わりたいと思います。
#165
○委員長(野沢太三君) 承っておきます。
#166
○荒木清寛君 まず条約についての質疑の前に一般外交問題を二点お聞きしたいと思います。
 一つは日米関係ですけれども、今後始まってまいります日米包括協議でアメリカが日本に対して出してくる要求が明確になってきたわけです。大統領あるいはカンター通商代表の発言を総合しますと、まず日本の経常収支の黒字については今のGDP比率三%を三年後には一、二%にまでいわゆる半減させる。また、工業製品輸入のGDPに占める比率についても、現行は三%でありますけれども、これを相当引き上げる、三〇%程度引き上げるというふうに数量目標を定めて要求をしてくるということが明らかになってきたわけでありますけれども、これに対して政府としてはどう対応されますか。
#167
○国務大臣(武藤嘉文君) 私どもといたしましては、前々から言っておるとおりでございまして、例えばGDPの何%にいついつまでにしろとかあるいは輸入を幾ら幾らまでにいつまでにしろとか、これはもう今のこういう自由貿易体制の中でそういうことをやろうとすれば当然管理貿易をせざるを得ないわけでございまして、私どもとしてはとてもそのようなことはできないという姿勢で今後これからの交渉に臨んでいきたいと思っております。
#168
○荒木清寛君 おっしゃることは私も賛成でございます。ただ今回、モンデール氏という大変大物の方が次期の駐日大使に内定をした、あるいは常々クリントン大統領は最も大事な二国間関係が日米関係であるというふうにおっしゃっていまして、我が国の立場としても単に拒否をするというだけで日米関係をやっていけるかというとそういう問題ではないような気がするのですね。
 ですからもちろんその管理貿易については反対をしていくということは前提としながら日本としてどのようにして黒字を半減していくのか、そういうプログラムといいますか道筋はきちんと示していく必要があるというふうに考えますが、その点はいかがでしょうか。
#169
○国務大臣(武藤嘉文君) これはまずアメリカ側が、私はよく先方の今までお目にかかったブラウン長官、ベンツェンさんその他にも皆さんに申し上げているのですけれども、クリントンさんが大統領に御就任になって、一つは財政赤字の縮減、いま一つは国際競争力の強化、こういう二つの大きなタイトルを掲げられたわけでありまして、私は、国際競争力の強化をしていくためということならばそのような管理貿易的なことは国際競争力を強化することとは矛盾することだ、本当にあなたのところが国際競争力を強化するのならばこういうことは言うべきではないということを指摘したわけでございます。やはり向こうとしてはできるだけ国際競争力を強めていく方向をいろいろとやっていただかなきゃならないのじゃないか。
 それから日本側としてしかし何かをやるべきではないか。これだけ日本は貿易収支の黒字が突出しているわけでございますから、これは直していかなきゃならないのは私は当然だと思っております。
 いろいろ分析をしてみますと日本でやれることとしては、やはり国内の景気を一日も早く回復をさせて輸入をもっと増加していくということが必要だろうと思いますし、またできる限り製品輸入の比率を、相当高まってはまいりましたけれども、もっと高めていくというようなことも努力をしていかなきゃならないのではないかと思っております。
#170
○荒木清寛君 もう一点、日ロ関係についてお尋ねしますけれども、読売新聞の世論調査によりますと、日ロ関係については、悪い、非常に悪いと思っている人が五七・八%、むしろソ連崩壊前よりもその数字が高くなっている。その大きな理由としては、エリツィン大統領が二回にわたって訪日の約束といいますか予定を一方的にキャンセルしたということに対する反感ではないかという気がしますし、そういう意味で早期に訪日が実現するように政府としても努力されたいと思うわけでありますけれども、このサミット後のエリツィン大統領の訪日の予定について何か今、打ち合わせはしていらっしゃいますでしょうか。
#171
○国務大臣(武藤嘉文君) 御承知のとおり、ロシアの国内の政治情勢は大変複雑なものがあるようでございまして、なかなかその辺を踏まえると、いつ日本へ、向こうは九月、十月に来たいという意思表示をされたことは事実でございますけれども、私どもとしては、過去の今の話の例がございますので余りそれにまた期待をかけていくというのもいかがなものかと、こちらは今、受け身の態勢でこの問題については正直いるわけでございます。
 向こうがおっしゃるとおり、お越しいただければ大変結構でございますが、しかしお越しいただくとなればこちらは領土問題というものがあり、こちらとしては領土問題を一日も早く解決して平和条約を締結し国交を完全な正常な状態にしていただきたいということは、これは今、当然言っているわけでございまして、その辺の問題も含めて国内の政治情勢との絡みで向こうがそういう点について果たしてどういう態度で来られるのか、私はいろいろ思っていくとなかなか難しいこともあるのじゃないかというような感じもいたしておりまして、今のところは受け身といいますか、そんな態勢でいるというのが現状でございます。
#172
○荒木清寛君 それに関しまして、北方領土返還の方針につきましてもう少し長いスパンで考えていくというふうに政府として方針を変更したというような報道が一部にありますけれども、それはそういうことでよろしいのですか。
#173
○国務大臣(武藤嘉文君) 私どもは、エリツィン大統領になられてから法と正義に基づく外交を展開するのだと、こうおっしゃっておられるわけでございますから、少なくとも五六年の日ソ共同宣言というものは当然その法の中には含まれるものと解釈をいたしておりまして、その法と正義に基づく外交方針でおやりいただくのならば少なくとも日ソ共同宣言は認めてもらわなければ困るというのがこちらの姿勢でございまして、その辺は決して私は変わっておるとは思っておりません。
#174
○荒木清寛君 次に、本題であります児童の権利条約。私は、子どもの権利条約というふうに訳すのが日本語として正確であるというふうに考えていることをまず表明して、質問をしたいと思います。
 大臣にお聞きしたいと思いますけれども、日本の子どもが置かれている状況をどう認識されているかということについてお尋ねをしたいと思います。
 確かに乳幼児の死亡率等は世界でも最低といいますか一番いいレベルでありますけれども、逆に学歴社会の中で受験競争に勝利をするために栄養ドリンクさえ飲んで塾に通っている、そういう実態があるわけでございまして、こういう実態については総理も三月の参議院の予算委員会におきまして大変憂慮しているというような発言があったわけでございますが、大臣はそういう意味で日本の子どもというのは幸せな状況に置かれているというふうにお考えかどうか、率直な感想をお聞きしたいと思います。
#175
○国務大臣(武藤嘉文君) どうもこれは私の所管ではなくて文部省の所管で、教育の指導方針の問題だろうと思うものでございますから余り私がコメントするのはいかがかと思うのでございますけれども、少なくとも生活水準は上がってきたわけでございますから、そういう点では世界の子どもたちと日本の子どもたちと比較した場合に少なくとも恵まれた生活を送れるようになってきた、この点は評価すべきだと思いますが、今、御指摘のような塾へ通わなきゃいけないとか家庭教師を雇わなきゃいけないとか、実際学校の正常な教育以外にそのようなことをせざるを得ないというようなことは本当に子どもたちにとっては気の毒な状況ではないかと私は思います。
#176
○荒木清寛君 そういう意味で、大人の責任でもう少し人間的に成長できる、そういう環境をつくってあげる責任があると思うのです。
 ただ、今回の条約の説明書によりますと、先ほども質問がありましたけれども、この条約の締結については新たな国内の立法措置は不要であるあるいは予算措置は不要であると。ということは、条約を締結したとしても国として子どもに対する施策については従前どおりでいいのだということになるわけでありまして、これでは何のために締結したのかという話にならないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
   〔委員長退席、理事椎名素夫君着席〕
#177
○国務大臣(武藤嘉文君) 私ども申し上げておりますのは、この条約をこれから批准していただいて実施していく上において、その義務を果たしていく上においては現在の法体系でどうしても今すぐやらなきゃならないというものではなかろうと私は思っておりますけれども、これは先回衆議院でも私は御答弁申し上げたのでございますが、しかし実際やっていく上において、いろいろ御指摘いただいていることも衆議院の論議またきょうの論議を承っておりまして、各省関係の中で果たしてそれで十分なのかどうだろうかと。ただ、最低果たしていればいいというだけではないわけでありますから、より充実をしていかなきゃいけないということが子どもの立場から考えれば必要なことだと思います。
 そういう面では今、現時点でただ義務を果たしていくには十分でありますと。しかし、これをより子どもの立場に立ってもっと充実をしていこうと思えば直していかなきゃならない点があるのじゃないだろうかということは、これからそれぞれ関係各省庁でぜひ御議論いただきまして必要のあるところは直していただくというのが望ましい姿ではないかと私は思っております。
#178
○荒木清寛君 また、条約上の義務の履行ということにつきましても、例えば二十九条一項の(a)に「児童の人格、才能並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること」というような義務もあるわけでして、そういう意味からすると日本の教育環境が決してこの条約の趣旨に合致しているというふうには私は考えないわけでありますけれども、それはそれとしまして、次に条約の十九条の関係でいわゆる児童の虐待という問題につきまして、厚生省さんも見えておりますのでお尋ねをしていきたいと思います。
 第十九条は、児童が保護者から虐待を受けることがないように適当な立法上、行政上、社会上、教育上の措置をとっていくということが書いてあるわけであります。昭和五十八年の厚生省の調査における定義におきまして児童の虐待というのは、身体的な暴行、あるいは保護の怠慢、拒否、あるいは性的な暴行、あるいは心理的虐待というような定義をされております。
 昭和六十三年の四月から半年間の間に全国百六十その児童相談所でどのくらいこういった児童の虐待問題について相談を受けているかというと千三十九件である。ということは年間にすると二千件程度の相談が昭和六十三年のレベルでも寄せられているということになるわけでありますし、また東京には民間の子どもの虐待防止センターというところもあるわけですけれども、ここに行って聞いてきますと年間で千五百から千六百件の電話の相談がある。その六割がいわゆる児童の虐待に関するものである。そのようにもおっしゃっておりました。また新聞記事を見ましても、せっかんによって子どもが死ぬというような記事もあるわけであります。
 政府としまして、日本における児童の虐待の現況をどのように認識しているのか。ふえているのか減っているのかという点をまずお聞きしたいと思います。
#179
○説明員(宮島彰君) 今、先生御指摘のように、我が国の児童の虐待問題がやや社会問題化してきているという背景にはいろいろな要因が絡み合っているかというふうに思いますが、一つには、子育ての基盤であります家庭を見ますと、いわゆる核家族化という形で家庭の中でお母さんと子どもがやや孤立化しているという状況が一つあろうかと思います。
 かつての三世代家族のようにおばあさん等のたくさんの家族と一緒に住んでいるという状況であれば、育児についての知識なり技術というものもいろいろ教えてあげたりあるいは手助けしてあげるということが家庭の中で可能であった状況があったわけでありますけれども、今それが非常に核家族化ということでできないような状況になっております。それから家庭を取り巻く地域社会を見ましても非常に隣近所のそういった関係もだんだん希薄化しておりますので、地域社会で昔のようにお互いに助け合うというような状況も特に都市部においては難しい状況ができております。
 そういう意味では、現在の育児というものが家庭の中でお母さんと子どもが一対一で孤立化して非常にある意味で育児不安といいますか、あるいはそれに伴うストレスをかなり増加させてきているという点が問題の大きな背景としては一つあるのではないかというふうに思っております。
 児童虐待の件数につきましては、児童相談所で扱った件数について見ますと平成三年度千百七十一件という数字がございます。前年度の平成二年度が千百一件でございますので七十件ほどふえておりますが、やや微増傾向にあるというふうには言えるかと思います。
 ただ、欧米等と比べますと、アメリカにおいては約二百五十万件、あるいはイギリスでは約三万件という数字もあります。ただし、統計のデータベースが違いますので一概に比較はできませんけれども、欧米諸国に比べればまだ極めて深刻な状況までには至っていないのではないかというふうに考えております。
#180
○荒木清寛君 この児童の虐待問題の対応につきましては、民間団体のお話はまた後で質問させていただきますけれども、公的機関の中では児童相談所が中心的にこの問題に対処をしなければいけないと思いますけれども、そういう相談窓口が児童相談所にありますか。全国に何カ所ぐらいありますか。
#181
○説明員(宮島彰君) こういう虐待問題を中心とする児童に対する問題の中心的機関は児童相談所というものがあるわけでございますけれども、現在、全国に百七十四カ所ございます。
#182
○荒木清寛君 相談窓口も百七十四カ所に開設をしているという趣旨ですね。
#183
○説明員(宮島彰君) はい。
#184
○荒木清寛君 この児童、子どもの虐待については民間レベルで一生懸命やっている方がたくさんいらっしゃいまして、さっき言いました虐待防止センターもそうですけれども、弁護士も一生懸命やっているわけであります。
 そういう人に話を聞いてみますとおっしゃることは、自分が相談を受けて児童相談所に相談をつなぐといいますか、そういうケースもかなりある。しかし、児童相談所の対応が余りなれていないというケースも間々ある。また、横の連携も余りよくないというケースがあるので、逆にこっちの方であらかじめ十分な根回しをしてから相談所につなげなきゃいけないということもおっしゃっていましたし、またこういった相談所につなぎますとすぐに虐待をしている親御さんをしかってしまう。だからしかられて二度と相談に行かなくなってしまう。そしてまたこちらの方に戻ってくる。
 そういうことも言っていらっしゃったのですけれども、児童相談所でのこの問題についての対応はだれがしているのですか。
#185
○説明員(宮島彰君) 児童相談所におきましては、御承知のように、児童に関する全般的ないろいろな問題の相談に応ずるとともに、児童についての医学的あるいは心理学的な判定を行って必要な指導を行うという一応専門的な相談機関の位置づけになっております。
 児童相談所におきます人員につきましては、児童福祉司という専門の職員と、それから精神科医、お医者さんがいらっしゃいます。そのほか心理判定員等の専門職種もありまして、こういう職員がチームを組みまして児童虐待問題についての対応を行うという体制になっているところでございます。
 その対応の方法等につきましては、それぞれの職員につきまして児童相談所職員研修会という形で幾つかの研修を行いまして、こういった児童虐待問題の専門知識の向上を図って適切な対応を図るような体制を一応組んでいるところでございます。
#186
○荒木清寛君 今おっしゃったスタッフの中では、児童福祉司、これが一番主力なメンバーですか。
#187
○説明員(宮島彰君) 一番中心的になるのが児童福祉司でございます。
#188
○荒木清寛君 そうなりますと、この児童福祉司が果たして専門家としてこういった虐待問題に対応できる能力があるかどうかということが一つ大事なポイントじゃないかと思うのですね。
 児童福祉法の第十一条の二に児童福祉司の任用資格ですか、資格要件が一号から五号まで列記されておりますけれども、この二号にいいます学校教育法に基づく大学において心理学、教育学もしくは社会学を専修する学科またはこれらに相当する課程を修めて卒業した者ということは、結局、大学の文学部とか教育学部、そういうところを出ておれば児童福祉司としての資格はあるということになりますか。
#189
○説明員(宮島彰君) 児童福祉司の資格要件につきましては今、先生御指摘のように、大きくは三つのルートがございます。一つは、今お話がありましたように、大学で心理学、教育学または社会学の必要な課程を修めて卒業した方、それから二番目には社会福祉主事として二年以上児童福祉事業に従事した方、三番目には厚生大臣の指定する児童福祉司の養成施設を出た方ということになっております。
 今お話しの大学で心理学、教育学もしくは社会学を修めた方は現在、児童福祉司として採用している全体の中では五五%ほどを占めておりますので、過半数を心理学等の課程を修めて大学を卒業した方が占めているということでございます。この資格はいわゆる任用資格でございまして、都道府県なり指定都市において任用されて初めて児童福祉司という資格が付与されるという仕組みになっておるところでございます。
#190
○荒木清寛君 私が調べた限りでは、おっしゃった一番目の資格を持った方が五五%。実際、採用の段階で、大学を卒業して児童福祉司という形で採用になったという方もいらっしゃいます。しかし、そうではなくて一般の県なら県の職員として採用されて事務の仕事をしていてその後に転勤といいますか配置がえで児童福祉司になったという方もたくさんいらっしゃるというふうに認識しておりますけれども、そういう方ははっきり言いますとこの児童問題といいますか虐待問題のプロとは決して言えないというふうに思うわけです。そういう方に対する教育といいますか研修といいますか、それはどのようにやっていらっしゃいますか。
#191
○説明員(宮島彰君) 児童相談所の職員につきましてはいろいろなレベルでの研修を行っておるところでございまして、職種別にいろいろなコースを設けております。
 心理判定員、一時保護所員につきましてはそれぞれ毎年一回やっておりますし、児童福祉司、相談員、これにつきましても年一回四日間の研修をやっております。それから心理判定員セミナーというものを五日間のコースで年一回やっております。それから児童福祉司の大体五人単位に一人スーパーバイザーを置いておりますが、スーパーバイザーの研修も四日間コースで年一回行っておる。そのほか児童相談所の長であります所長の会議を年一回行うという形で、各レベルでの研修を実施しているというところでございます。
#192
○荒木清寛君 私が実際聞いた範囲でも、水道局で事務の仕事をしておってその後に児童福祉司になったという方もいらっしゃるわけでありまして、そういう方に対する研修としてはなおかつそれでも不十分ではないかという感じを持つわけです。
 児童福祉司には大きく分けて三つのルートがあると先ほどおっしゃいました。最後に言われましたのは養成施設を出てこういう資格を取得するというコースがあるとおっしゃいましたけれども、そういう方こそまさにそういう意味では本当のプロ中のプロではないかというふうに思うのです。ですからむしろ三番目の資格を持った方を中心に児童福祉司の任命をするというような運用といいますか、場合によっては児童福祉法の十一条の二をそのように変えた方がいいのではないかというふうに考えますが、この点はいかがですか。
#193
○説明員(宮島彰君) 児童福祉司につきましては、今申し上げましたように大きく三つのルートでなっていただいておるところでありまして、養成施設につきましては当然その専門教育を経た上でなってくるわけでありますけれども、児童問題というのは幅広い要素を含んでおりましてかなり専門的な心理系統の問題あるいは教育系統の問題等も含んでおりますので、やはり大学でそういった心理学なり教育学あるいは社会学という専門分野を修めた方にも児童福祉司になっていただいて、幅広い立場での児童福祉司としての業務を遂行していただくということも必要ではないかと思います。
 そういう意味で幾つかのルートで児童福祉司になっていただいておるわけでございますが、当然なったからすぐ適切な対応がすべてパーフェクトに可能というわけにはなかなかまいらないかと思いますので、先ほど言ったように、研修等を積みましてそういったノウハウを研さんしていただくという体制をとっているというのが現在の状況でございます。
#194
○荒木清寛君 そうしますと、この養成施設というのはいわゆる高校を卒業して入る専門機関ということになるわけですか。この養成施設は全国に幾つあるわけですか。
#195
○説明員(宮島彰君) 養成施設は現在、国立秩父学園と国立武蔵野学院の附属の養成施設と上智社会福祉専門学校の養成施設の三カ所ございます。基本的には大学を卒業して入ってこられる方がこの養成施設の対象になっております。
#196
○荒木清寛君 そうしますと先ほどの説明はちょっとおかしいわけでして、この養成施設というのは大学を卒業してさらに高度な訓練を受けるということになるわけですから、まさにそういう方こそプロとしてこの児童相談所に配置をして虐待問題についての対応もしてもらうということがあるべき姿じゃないかというふうに私は考えます。
 次の質問に移りたいと思います。
 衆議院の外務委員会の御答弁によりますと、児童相談所にいわゆる児童虐待についての一一〇番といったようなシステムを設けているということですけれども、それは間違いないですか。
#197
○説明員(宮島彰君) はい、設けております。
#198
○荒木清寛君 民間の方もそういうことは非常に評価はしているのですけれども、しかし残念ながら待ちの姿勢が多いということを異口同音におっしゃるわけですね。要するに例えば第三者から通報があって、通報といいますか連絡がありまして、あそこの家で何か親が子どもを虐待しているというような連絡があっても、まず児童相談所の方では家庭訪問なんかはしてくれないということもおっしゃっているわけなのです。
 現行の児童相談所のスタッフで例えば問題のある家庭を訪問して調査をして指導していく、そういった対応まで可能ですか。
#199
○説明員(宮島彰君) 児童相談所におきましては、その機能につきましては先ほど申し上げたとおりでございまして、御指摘のようなケースが発生してやはり何らかの措置を必要とするあるいは何らかの指導を必要とするケースということであれば、当然児童相談所の指導職員がそのケースについての必要な面接なりあるいは訪問なりの措置をとって対応していくというのは児童相談所の通常業務としてやっておるというふうに私は思います。
#200
○荒木清寛君 思いますと言われますけれども、現場を取材しますと必ずしもそこまでやっていないような気がするのですね。
 先ほどおっしゃったスタッフというのは全国の児童相談所に何人ぐらいいらっしゃるのですか。人口当たりにしますと何人に一人という配置になっておりますか。
#201
○説明員(宮島彰君) 先ほど言いましたように、児童相談所の数は百七十四カ所ですので、一県当たり平均しますと大体三カ所程度になろうかと思います。
 それから職員の数でございますが、全部で五千百八十六名でございます。いろいろな職種があるわけでありますけれども、そのうち児童福祉司と言われる方が千百十五名でございまして、あと心理判定員が七百八十七名あるいは相談員が三百八十八名、その他お医者さんが四百九十六名といったような陣容で構成しておるところでございます。
#202
○荒木清寛君 ざっと五千百八十六名ということですと二十万人に一人という計算になりますかね。ですからとても児童相談所だけで対応するということは不可能じゃないかという感じがするのです。そういう意味で、多くのいわゆる人的な資源を活用しながらネットワークをつくってこういう問題を解決していくということをきょうは厚生省、政府に要望したいと思うのです。
 いろいろな児童虐待のケースがありますけれども、例えばサラ金地獄に陥って家庭が崩壊をして親が子どもに暴力を振るうといったようなケースですと弁護士も含めて対応しなきゃいけないわけですし、あるいは親に精神的な障害があるという場合ですと精神科医も登場しなければいけない。あるいは両親の仕事の世話というようなことでは職安にもかんでもらわなきゃいけないということになるわけでして、そういった多方面の人材あるいは機関とネットワークをつくって児童相談所が
 一つの核となって対応していく、そういうことが私は必要ではないかというふうに考えるのですけれども、その趣旨に立って若干質問をしたいと思います。
 衆議院でおっしゃっていますけれども、いわゆる児童委員のほかに主任児童委員という制度をつくったというお話ですけれども、あえてこういう主任児童委員という資格、資格といいますかそういう制度を設けたのはどういう目的からですか。
#203
○説明員(宮島彰君) 御案内のように、現在、児童委員という方がおられて地域の第一線で活動されておりますが、児童委員はもう一方で民生委員というのと同一の方が兼務するという形で活動されておるところであります。
 この民生委員、児童委員は全国で現在約十九万人ほどおりますが、そもそも出発の経緯等もありましてその活動が、生活保護なりあるいは最近ですと老人福祉といいますかそういう関係のウエートがやや重点になりがちで、もう一枚の看板であります児童委員としての活動がなかなか難しいといいますか活性化しにくいという点が前々から指摘されておったわけでございます。そこで今回、主任児童委員という形で専ら児童問題を中心に担当していただく方ということで新しい制度として主任児童委員制度を設けたわけであります。平成六年の一月一日からスタートする予定になっておりまして、全国で約一万四千名ほど新たに委嘱するという予定になっております。
 現在の民生委員、児童委員は地区担当ということで各地区をそれぞれ区分して担当しておるわけでありますけれども、今回考えています主任児童委員はそういう地区担当を持たないでいわゆる児童問題の一種の専門的なアドバイザーとして、スタッフとしてこういった地区を担当している民生委員、児童委員を支援していく、あるいは児童問題についての児童相談所を初めいろいろな関係機関との連携を図っていくという趣旨で新たに設けたものでございます。
#204
○荒木清寛君 どういう選任の基準で選んでいるのですか。
#205
○説明員(宮島彰君) 主任児童委員も基本的には現在の民生委員、児童委員と同じ身分、資格でございますが、それに加えまして今申しましたように、主任児童委員としての特性を発揮していただくということで別に特別の選任基準を設定することにしております。
 一つは、保母、教員等の勤務経験や地域の子ども会活動あるいは年少スポーツ活動等の活動実績を有するなど、いわゆる地域における児童健全育成の中心になっていろいろな活動をしている知識経験が豊富な方を選任していただくというのが第一番目であります。
 それから第二番目は、やはり児童問題中心になりますので積極的な女性の登用をお願いするということで、少なくとも複数配置になるところにつきましては半数は女性の方から登用していただくということが二番目でございます。
 それから三番目は、やはり児童問題ということとそれから地域でできるだけ活動していただくという趣旨から、現在の民生委員、児童委員よりも若干年齢を若返らせまして、原則として五十五歳未満の方を選任していただくというような規定を新たに設けております。
#206
○荒木清寛君 来年の一月から発足ということですけれども、これがうまく機能すれば児童の虐待問題についても相当よい効果を発揮できるのではないかというふうに思いまして私も期待をしておりますけれども、ただ現場で聞きますと、主任児童委員ですから名前だけ聞きますと児童委員の上に立つというようなニュアンスがありますので、若干従来の民生委員さんというか児童委員さんがへそを曲げているといいますか、そんな話も入ってきていますので、その辺よく調整をしてすぐれた人材を選んでいただきたいというふうに要望しておきたいと思います。
 ちょっと観点を変えますけれども、児童福祉法の三十三条に一時保護という制度がございますね。児童虐待のケースでいわゆる被虐待児をこの一時保護によって保護しているということはあるのですか。そういう活用をしていますか。
#207
○説明員(宮島彰君) 各児童相談所は一時保護という機能を持っておるわけでありまして、その問題ケースにつきましてやはり親の手元から少し隔離して一時保護という形でその状況を観察したり、いろいろな調査を行って最も適切な措置なり処遇を判定していくという過程の一環として一時保護という形も現在行っているところでございます。
#208
○荒木清寛君 一時保護は、児童相談所で一時預かりといいますか保護をするのですか。
#209
○説明員(宮島彰君) 児童相談所で行っております。
#210
○荒木清寛君 同じく二十七条の一項の三号によりますと、親権者の意思に反しない限りで、いわゆる保護者の同意をとって施設所に入所措置をさせるという規定がございますね。これも児童虐待のケースでこの制度は十分に活用しているのですか。
#211
○説明員(宮島彰君) 児童虐待のケースですとやはり親の意思と反するような対応をしなければいけないケースも当然出てくるわけでございまして、基本的にはできるだけ親に対して必要な説明なり説得あるいは必要な指導を講じてその子どもにとって最善の対応を行うという形をとっておりますけれども、どうしてもそういった子どもにとっては最善の措置をとることについて親の同意が得られないということにつきましては、今の御指摘の条項を活用して家庭裁判所の承認を得てやるというケースもございます。
#212
○荒木清寛君 二十七条の一項の三号というのは親の同意を得て措置をするケースではないですか。違いますか。それを今お聞きしたのです。
#213
○説明員(宮島彰君) 失礼しました。
 第一段階は同意を得て措置するということであります。
#214
○荒木清寛君 ですからその児童虐待のケースで、こういった形で施設に預けるということは積極的にやっているのですか。
#215
○説明員(宮島彰君) いろいろなやり方で対応するわけでありまして、先ほど言いましたように、施設にすぐ入れるということではなくて、親と一緒に必要な指導なりカウンセリングをやってそれで問題が解決すれば家庭に戻していくという形もありますし、どうしてもそういう形では問題が本質的に解決できないということであれば施設へ入所という形で措置をしていくということもございます。
 ただ、順番からいいますと、できるだけやはり児童を生活している家庭から引き離さないで問題が解決すれば一番ベストでありますので、そういう形をまず第一段階としてはとる対応をとってきておるというところでございます。
#216
○荒木清寛君 その第一段階がうまくいかないで施設に子どもを入れて親子を離すという場合になりますと、具体的にはどこにその子どもさんは入所するのですか。
#217
○説明員(宮島彰君) 虐待の事例ですと、一般的には養護施設に入所という形になると思います。
#218
○荒木清寛君 私の偏見かもしれませんけれども、養護施設といいますとどちらかというと両親がいない子どもさんですとかそういう方が多いのじゃないかという気がするのですね。そうじゃなくて虐待された児童のようにいわゆる心に傷を負って入ってくる子どもさん、こういう方をきちんと治療していくシステムというのはこの養護施設では整っているのですか。
#219
○説明員(宮島彰君) 養護施設の機能として、やはりそういった虐待ケースで入ってくるお子さんもかなりおりますので、その施設の指導員にはいろいろな研修等を通じてそういう対応の知識なり技術をつけさせているというところでございます。
#220
○荒木清寛君 専門的な知識を持ったそういう治療をする資格を持った方というのは養護施設にはいないのですか。
#221
○説明員(宮島彰君) 指導員という形で養護施設に配置されている方々がそういった専門知識を持つ職員という形で配置されているということでございます。
#222
○荒木清寛君 私の調査した範囲ではそういう意味で心理的な治療への対応という点ではまだ不十分ではないかという感じがしますので、この充実をぜひお願いしたいと思います。
 時間もありませんけれども、児童福祉法の二十八条一項の一号によりますと、これはかなり最終的な段階になると思いますけれども、保護者の意思に反して児童相談所が虐待された子どもを施設に預ける、入所させるということもできるようです。実際この規定を利用して子どもさんを強制的に親子分離させた事例はかなりあるのですか。
#223
○説明員(宮島彰君) 平成三年度で見てみますと、承認件数は一応九件という形になっております。
#224
○荒木清寛君 先ほどのお話ですと、平成四年度でも一千件以上の相談ケースがある。この中にはかなり緊迫したケースも多いのじゃないかと思いますけれども、そういう全体の数からするとこの九件というのはいかにも少ないという感じがするのですね。これは何か障害といいますか、この規定を十分に活用できない理由があるのですか。
#225
○説明員(宮島彰君) 児童相談所におきますケースワークの手順といいますか、そういう基本的なスタンスにかかわるものだと思いますが、先ほど申し上げましたように、やはりそういったケースが起こった場合にはその親も含めましてそのケースについてのケースワークを行って、いろいろな説明、指導、説得を行って問題を解決してできるだけその子どもの生活している家庭へ返していくということを第一義的に考えておりますし、それからどうしても解決ができない場合は、先ほど言いましたように、親の同意を得て施設入所をやるという形をできるだけ優先してとるという形をとっておるわけであります。
 そういう意味では、親の意思に反して家庭裁判所の承認をとって措置を行うというのは最後の手段でありますので、前の段階での指導なりあるいはケースワークというものによる解決をまず第一義的に考えるというスタンスからくる形で、結果的に少なくなっているということではないかと思います。
#226
○荒木清寛君 そのようにおっしゃいますけれども、千件あって九件以外全部説得で解決できたということはちょっと信じがたいわけです。
 ですから強制的に入所させるといった規定が十分活用できないのは、実は一つ一つ手順を踏んで最終段階に至るマニュアルといいますかフローチャートといいますか、そういう手法が確立していないので、この伝家の宝刀といいますか最後の強制手段も十分に利用できていない、それが実態ではないかと思いますけれども、認識が間違っていますでしょうか。
#227
○説明員(宮島彰君) 児童相談所のこういった業務の運用につきましては、児童相談所の運営指針というところでその具体的な業務のマニュアルを示しておるところでありまして、そういった中で今申しましたような手順がきちんと各児童相談所の運営上生かされておるというふうに思っておりますが、なおそういった児童相談所の業務の適正な実施については、先ほど言った研修なりいろいろな場を通じて徹底を図っていく努力をしていきたいとは思っております。
#228
○荒木清寛君 権利条約の十九条の二項によりますと、虐待からの保護措置としまして、防止のための効果的な手続また児童虐待の発見、報告、付託、調査、処置及び事後措置、司法の関与という
 一連の規定があるわけですね。この規定の趣旨というのは、児童の虐待に対して場当たり的な対応をするのじゃなくて総合的、系統的に配慮をしていく、いろいろな人材が関与したネットワークの中で総合的、系統的に対応していきなさいということを言っているのじゃないかというふうに思うわけです。
 そうなりますと、先ほど聞きましたけれども、主任児童委員、婦人科医あるいは精神科医、または警察、特に婦人警察官あるいは弁護士、または民間のいろいろなネットワークといいますか、そういう方々がどのように具体的に連携をして、そしてそのネットワークの中でどういう人がどういう手順で順々にサービスをしていくのか、そういうことをきちんと決めておくということがこの条約の趣旨ではないかと思いますけれども、厚生省の方でそういう総合的、系統的なシステムというのはきちんと確立をしておるのですか。
#229
○説明員(宮島彰君) 先生御指摘のように、この問題につきましては児童相談所だけですべて解決がつくというものではございませんで、おっしゃいますように、教育なりあるいは司法なりあるいはいわゆる保健所といいますか保健系統の機関なりいろいろなところと連携をとりながら当然やっていかなければいけないわけでございます。
 そういうネットワークといいますか連携をとって進めるということにつきましては、先ほど申しました児童相談所の運営指針でも一つの章を設けて非常に大きな重要な事項として、地域にある各種相談機関、施設等の実情を十分把握して常に円滑な連携をとるようという指導を行って、各県でその方針に基づきましてそういうネットワークづくりをやって対応を行っているというふうに考えております。
#230
○荒木清寛君 その児童相談所の運営指針ですか、その中に、今おっしゃったような抽象的なことじゃなくて具体的にこの虐待問題に対してはだれがどう対応するのか、それがだめだった場合に次はどうするのかということまできちんと決めてあるのですか。
#231
○説明員(宮島彰君) 先ほど言いましたように、児童相談所が受けたケースについての処理のマニュアルはそこで定めております。
 それから各相談所との連携につきましては、いわゆる保健所なりあるいは教育委員会なり学校なりそういったところの連携についてもその連携の主な事項について具体的に列挙して、その連携の仕方等も指示しておるというものでございます。
#232
○荒木清寛君 そういう連携というかネットワークの中で、東京にも子どもの虐待防止センターという民間の団体がありますし、大阪にも同趣旨の団体があるわけです。そういう民間団体の活力の利用についてはどのように考えていますか。
#233
○説明員(宮島彰君) 御承知のように、日本のこういった児童問題につきましては、問題ケースを発見した場合これは国民すべてにそういった問題を通告する義務があります。
 そういう意味では、団体あるいは個人を問わずそういうケースを発見した場合には児童相談所なりしかるべき機関へ通告するという形になっておりまして、児童相談所におきましても民間団体なりあるいは個人からの通告という形でそういうケースが入ってくる例もあるわけでございまして、先ほど言いましたように、そういうネットワークづくりも公的な保健所なり教育委員会なり学校以外にいろいろな民間団体との連携を当然児童相談所においては現在図ってそういう方向を進めているというところでございます。
#234
○荒木清寛君 最後にお聞きしますけれども、私はこのネットワークの中でもっともっと民間団体が主要な役割を果たすべきじゃないかというふうに考えているのです。
 それはいろいろな機関がこの児童の虐待防止については関与するわけでありますけれども、その取りまとめ役としてだれが一番適切かといいますと、厚生省の中でも医療の分野と保健の分野は違うわけですし労働省も関与するということになりますと、どこかの官庁がその中で中心となってやっていくということは非常に難しいのではないかと思うわけです。責任の所在が不明になるということもありますし、また悪い言葉で言いますと縄張り争いということもあると思いますし、そういう中で民間のネットワークといいますか団体がその取りまとめ役として十分に活動するということが一つ大事なポイントではないかと思います。
 もう一点は、この虐待問題につきましては上から下に指導するというのではなくて、そういった悩みを持っている保護者の方と同じレベルで話をして悩みを解決していくということが非常に大事じゃないかというふうに思うわけです。まさにそれができるのが民間の団体でありまして、そういう意味では民間の団体に対して積極的な資金の援助とかそういった形で今後育成していくというお考えはありますか。最後にそれを聞いて、終わります。
#235
○説明員(宮島彰君) 先生御指摘のように、こういった問題はいわゆる行政サイドといいますか公的機関だけではなくて、おっしゃいますような民間サイドにおきますいろいろな活動も極めて重要な役割を果たすというふうに認識しております。
 現にイギリス等ではむしろ民間サイドのいろいろな活動がこういった問題に対する非常に有効な効果を上げておるという実績もございますので、日本の場合はどちらかといいますとそういう民間サイドの活動がごく最近始まったような歴史的な違いもあるわけでありますけれども、やはりそういった民間サイドにおきます活動を含めましてお互いの役割を生かしつつ総合的に対応していくという形は重要でありますし、我々もそういう対応を今後も強化していく必要があるのではないかというふうに考えております。
#236
○立木洋君 私は、最初にこの条約に関する政府の基本姿勢についてお聞きしたいと思います。
 どうしてかといいますと、大臣、私はこの人権に関する問題をこの外務委員会で相当やってきましたよ、国際人権規約のA規約、B規約と。だけれども、政府のとっている姿勢というのは人権問題に対しては非常に後進的なのです。経済的には発展したと先ほど大臣は言われたけれども、しかしこの人権問題に対しては積極的な姿勢が示されない、政府の姿勢というのは。これはやっぱりどうしても問題だと。この子どもの権利に関する条約の問題でも衆議院での議論の内容も聞きました。それからきょうの議論の内容も聞いてきましたけれども、政府の姿勢というのは、それもこれには含まれていません、これはもう条約にかなっていますと。より前向きに子どもの権利をどう保障していくか、そういう観点で政府が取り組むという姿勢を本当に感じないのですよ。僕は大問題だと思うのですね。
 ここに私は持ってきているのだけれども、国連人権センターで今、国際的に問題になっている重要な人権問題の条約というのは二十五本を問題に挙げてありますけれども、その中で日本が批准しているのは子どもの権利条約を含めても二十五本の重要な人権に関する条約の中のたった七本なのです。これを見て驚いたのだけれども、例えば経済的におくれた国でも日本の人権規約の批准の倍も批准しているところがたくさんあるのですよ。
 これは名前を挙げて驚かれるかどうかしりませんけれども、アフガニスタンだとかキプロスだとかインドだとかイラク。イラクだって日本の倍近く人権規約に関する批准をしているのです。それからモンゴルだとかネパール、フィリピン、スリランカ、シリア。これはアジア・太平洋の若干の国を挙げただけです。人権問題に対して何で政府がそんなに積極的な姿勢を示されないのだろうかということが私の非常に大きな疑義なのです。
 まず大臣にお聞きしたいのだけれども、この子どもの権利あるいは人権の問題というのは社会の発展とともにだんだん考え方も変わってきますよね。やり方自体についても進歩してきているわけです。だから昔の考え方が必ずしもすべて悪いという意味ではないにしても、それがより前進させられ発展させられ新しい考え方が取り入れられて、そして人類の進歩というのは形成されてきているわけですね。人権問題でもそうなのです。子どもの権利の問題でも当然そうだと思うのですね。
 それで最初にお聞きしたいのは、一九五九年、今からざっと三十年余り前に出された子どもの権利宣言と今回の子どもの権利条約、基本的に変化、発展させられている内容は一体何なのでしょうか。これはもちろん宣言ですから原理的な指示であって、こちらは条約になったのだから法的な拘束力を持っているわけですね。しかし、そういう意味ではなくて、子どもの権利という問題に関して基本的に新しい内容が取り入れられた点ほどういう点なのか。まず大臣はどういう御認識をお持ちなのか。
#237
○説明員(小西正樹君) お答えいたします。
 ただいま先生御指摘の一九五九年の児童の権利に関する宣言でございますけれども、これは人権を児童に対して特別に保護する必要性に基づき、世界人権宣言、一九四八年の世界人権宣言でございますが、これを踏まえまして第十四回の国連総会において採択されたものでございまして、児童の権利享有における差別の禁止、氏名・国籍を持つ権利、社会保障・教育を受ける権利、あらゆる形態の搾取からの保護等を定めております。
 これに対しまして児童の権利条約は、家族関係、養子縁組及び刑事手続等に関連して児童の権利を保護するための規定のほか、思想、表現及び集会、結社の自由等の権利にかかわる規定を設けるなど、児童の権利と保護について児童の権利宣言に比しより広範かつ詳細な規定となっておるわけでございます。
#238
○立木洋君 間違いではないけれども、表現が余り適切じゃないね。
 大臣、最も重要なことは、かつて子どもの権利宣言のときには子どもを保護する対象とみなしておったのです。これが最も重要な内容だった。子どもは大人から保護される対象だった。だからその保護受ける権利があるというふうに見なきゃいかぬと。しかし、今度のこの子どもの権利条約の問題についていえば、その保護の面での権利もより発展させられているけれども、それだけにはとどまらないでいわゆる権利を行使する主体としての子どもの権利が取り上げられている。
 だから今言われたように、意見表明権だとかあるいは表現の自由だとか、思想、良心、宗教の自由だとか、結社、集会の自由だとかあるいは私生活では通信プライバシーの権利、こういうものは一九五九年の子どもの権利宣言のときになかったのですよ。これが入れられた。つまりそういう意味ではただ単に保護を受けるという権利だけではなくていわゆる主体的に自分が権利を行使する、そういう子どもの権利が認められた。もちろん何も勝手なことをやってもいいという意味じゃないですよね。私はそういう意味で言っているわけではもちろんない。正確に内容としてつかんだ上で言っているわけですけれども。
 そうした場合に、権利を行使する子どものそういう権利の問題についていわゆる国としてどういう新しい義務が生じるのでしょうか。ただ単に保護するという権利の問題だけでなくて権利を行使する主体としての子どもということを考えた場合に、子どもの権利を保障する上で国の義務というのはどういう新しい義務が生じるのでしょうか。
#239
○国務大臣(武藤嘉文君) 私は、今ちょうど五十九年のをちょっと読ませていただいているのですが、やはり今おっしゃったように、保護から一歩進んで子どもというのを一人の人間としてその基本的人権を尊重していこうという姿が今度の違ってきている点じゃないかと思うのです。
 それで、それに対して国は一体どう受けとめるべきかということだと思うのでございますが、これは政府としては答弁しておるとおりでございまして、それに対してその義務を果たしていく上においては現在の法体系で十分でございますと、こういう答弁をしてきているわけでございます。
 私は、先ほどちょっと申し上げましたように、少なくとも今の義務を果たしていくに最低の法体系はできているとは思うのでございますけれども、やはり片方の憲法のいわゆる基本的人権の尊重との整合性がありますから、そういう点で日本の法律体系は一応整っていると思うのでございますが、どちらかというと従来は、今のこの人権もそうですが、大人から子どもを見るという一つの考え方で来たのじゃないだろうか。これは国際的にも日本も来たのじゃないだろうか。しかし、今度はそうじゃなくて大人が子どもの側から見ていく、こういう逆の立場になって見なきゃいけないというのが今度の精神じゃないかと思うのです。
 ただ、そういう精神をこれから実際に、せっかくこれを承認していただいたら批准してそして執行していくということになりますと、やはり国全体がそういう姿勢になっていかなきゃいけない。となるとそれぞれのお役所、外務省はその法律を持っているわけではございませんけれども、法律を持っている各役所はそういうお気持ちでひとつ今の法体系を見ていただきたい、そして必要なところがあればこれは直していただかなきゃいけないのじゃないだろうかというふうに私は思っております。
#240
○立木洋君 その今述べられた範囲で言えばそれはそのとおりかもしれませんけれども、しかし大臣、子どもの立場に立って物事は考えなきゃいけない、大人から子どもを見るということではなくて。
 ところが、あなたがきょう外務委員会で述べられたこの子どもの権利条約の批准に関する提案理由には、子どもの権利条約を批准したら日本の子どもにとってどういう意義があるのか、ただの一言も述べられていないですね。内外に日本の政府の姿勢を示すことだとか、国際的に普遍的な権利を及ぼすようにするためだと。日本の子どもにとってこの子どもの権利条約を批准することがどんな意味があるのか、どういう意義を持っているのか、それに対して国としてはどういう責務が生じるのか、子どもの立場に立って最も聞きたいことを提案理由の中に一言も述べていないのです。だから大臣言われたようにそれをかしこまって言われると、子どもの立場に立って述べますとかなんとかということになるけれども、しかし常時自分の政治姿勢としてそういうことが貫かれていないとこれはだめなのですよ。
 これはどうせ官僚の方がつくられた作文でしょうから、大臣が御自身でつくった文章じゃないかもしれない、提案理由は。だけれども、子どもにとってこの権利条約を批准することはどんな意味を持っているのかというのがただの一言もこの批准を要求するあなたの提案理由の中に入っていない。ということになれば一体どういう責任ある立場で子どもの権利条約に今後対処していくのか、そういうことさえこれで述べられていないということを言わざるを得ないわけですね。
 だから問題は、今、子どもの権利条約の問題に関して子どもの権利に関する委員会というのが国連につくられていますね。これは必ず報告して、そしてその審査を受けなければならないということになっているのです。ところが、法律上このことはもう既に保障されていますから問題ございませんというふうなことでは子どもの権利委員会では受けつけないのですよ。権利が実際にどのように保障されているのかという実態に基づいてチェックをするというのが子どもの権利委員会の任務なのです。そうすると、日本で法文上子どもの権利はこのように保障されています、あのように保障されていますと言って二年たって政府が報告したって、国連の子どもの権利委員会ではただの一つも認められない。実態はどうなっていますかという問題が問題になるのですよ。
 そういう点で言うならば、新しく子どもの権利条約の中で出されているこの問題、つまり権利の行使という問題、これは一般的な言葉で言えば、子どもが自分に最も関係のある問題について子ども自身が参加をして決めてもらう、そういう権利なのですね。子どもの参加する権利なのです。そうした場合に、参加して自分の意見を述べたからといって子どもの意見のとおり全部やらぬといかぬなどというようなことではもちろんありません。しかし、少なくとも子どもは、自分たちが参加をする、自分たちに関係のある問題についてはすべて参加をする、そういう権利が保障されなければならないということだと思うのです。
 今言ったような子どもの参加する権利について国としては今後どういう姿勢をとっていくおつもりなのか、その基本的な点についてお答えいただきたいと思います。
#241
○国務大臣(武藤嘉文君) これは第五条に「父母若しくは場合により地方の慣習により定められている大家族若しくは共同体の構成員、法定保護者又は児童について法的に責任を有する他の者が」と、そして「その児童の発達しつつある能力に適合する方法で適当な指示及び指導を与える責任」があるということを加えてあるわけでありますし、今、御指摘のとおり、十八条は第一義的な責任を持っているということでございまして、やはり子どもが参加をするということはそのとおりだと思うのでございますが、これを見ていて父母の責任というものも、まだ大人になるまでの間においては人間としてのそのようなことをやっていかなきゃならないというのは、私はこれはこれで当然の姿だと思うのでございますし、条約でもそう書いてあると思うのです。
#242
○立木洋君 だから子どもの発達の程度、その能力の伸展の程度に応じてやるということは私も反対じゃないのです。条文で書いてあるからそのとおりなのです。
 だけれども、そういう状況を見ながらも、しかし子どもが参加する権利を完全に保障していくということを国の立場としては確立しなければならない。子どもの問題に関することに子どもが参加しようとすることを一方的に排除するというふうなあり方はとってはいけないということを基本的には確認したいのですが、結構ですね、それは。発達の程度に応じてという問題は私は前提として認めつつも、子どもが参加をする権利というのは国としてやっぱり保障しなければならない。
#243
○説明員(小西正樹君) 条約の解釈に係る部分でございますので私の方から御説明させていただきたいと思います。
 先生よく御承知のとおり、また今、御発言のとおり、この条約については各種の児童に着目した権利について述べられておるわけでございますが、ただいま先生がおっしゃった参加という意味が正確にどのような事態を指しているのかということについて私は必ずしもつまびらかにいたしませんけれども、この条約に即して申し上げれば、児童の意見の表明権あるいは児童の表現の自由、こういった点、あるいは思想、良心の自由というふうに具体的に規定しておることは先生御承知のとおりでございます。
#244
○立木洋君 今の説明にもありましたように、だから国としては、児童が権利を行使する場合、その能力の度合いだとか発達の度合いだとかということはもちろん考慮に入れなければならない、またすべてを子どもの言うとおり言うことを聞きなさいという意味ではもちろんないけれども、しかし少なくとも子どものそういう権利を行使すること、つまり子どもの問題に関することについては子ども自身が参加するという権利、これを国が十分に保障するということがなければやっぱり基本的な条約の精神にもとることになるわけですから、このことだけは改めて指摘をしておきたいと思います。
 それで大臣、例えばこの子どもの権利条約の問題についても国際的な議論の中でいろいろあったのですよ。これはもう宣言でいいと、法的な拘束力を持つ子どもの権利条約なんかつくらぬでいいしゃないかというふうな主張も国際的にあったのですよ、そういう意見も。また、ある意味で言えば、世界人権宣言があるのだから何も子どもというのを特定に選んで別に区別して子どもの権利ということを条約として出さぬでもいいじゃないかという意見もあったのです。
 しかし、そういうようなおくれた考え方でなくて、やっぱり子どもは子どもとしての権利が十分により広く保障されなければならないという、一九七九年のヨーロッパ会議なんかの声明でも出されていますけれども、子どもが成長に達して十分な法的能力を行使する段階的な準備として、未成熟であってもそういうことを保障していく、そういうことが重要なのだということが議論されていわゆる宣言の問題から条約になり、そしてこういう子どもの権利条約というものがつくられるようになったのですね。
 そこで私は、政府の基本的な考え方を聞く意味でお尋ねしたいのは、一九七九年からこの権利条約の問題が国際的に審議されてきていますけれども、一九八二年から国連の人権委員会に日本政府も正式に代表を出して、そして討論に参加して意見を述べてきているわけですね。ところで、八二年に日本政府がこの人権委員会に参加してから果たされた役割は一体どういう役割だったと政府は評価しているのでしょうか。簡単で結構ですから。
#245
○説明員(小西正樹君) もとより日本政府の代表団は、この条約の重要な意義を認めまして、この条約がコンセンサスで参加国の満足のいくような形でまとまるように日本政府としての努力を積極的に行ったわけでございます。いろいろ個々の条項について日本の政府としても提案いたしましたし、またそのコンセンサスがまとまる上においていろいろな面で日本として貢献したということでございます。
#246
○立木洋君 小西さん、必ずしもそうじゃないのですよ。
 この問題については、例えばそれならばこの十年間審議された内容、政府はどういう意見を述べて、それがどんなふうに審議されてどういうふうになったのか。そういう審議された内容を政府の責任で出版した文献がただの一つもありますか。私は残念ながら見たことがない。小西さんもあると言えないはずですよ。民間では出していますよ、いろいろ。政府が責任を持って出した文献がありますか、審議の内容を詳細に。
#247
○説明員(小西正樹君) この児童の権利の条約……
#248
○立木洋君 あるかないか、簡単で結構ですよ。
#249
○説明員(小西正樹君) ございます。ただ、これは政府の意見ということではございませんで、担当している課長が個人の見解といっただし書きをつけまして条約の交渉の過程についても説明を十分に詳細に加えたという資料はございます。
#250
○立木洋君 それは個人の意見として述べられた文献はありますよ。だけど、政府が責任を持って、審議された内容はこうでした、日本の政府はこういう見解を発表しました、これはどんなふうに討論されてどうなりましたというようなのを政府の責任で出した文献は一つもないでしょう、外務省は。だからそういう個人の文書というのにすりかえてはいけない。
 ・それからもう一つは、それなら独立した原案を日本政府が子どもの権利条約の問題の審議の過程で出したことがありますか。
#251
○説明員(小西正樹君) まず条約一般の交渉につきましては、条約の審議の過程においていろいろな立場がございますので、私ども政府の公式の立場としてはその一々についてそれを広報するという立場にないことは先生御理解いただけると思います。
 また、具体的な提案があったかということでございますが、それについて日本の立場、日本の見解に沿った提案というものはもちろんこの条約の交渉の過程で行ったことはございます。
#252
○立木洋君 いろいろ提案をしたとか、相手が述べた意見に対していろいろな意見を開陳したとか、そういうことはありますよ、たくさん。だけど、独立した原案として日本政府はただの一本も出したことはないはずです、私の知っている範囲では。
 ですからこの問題については、例えば幾つかの問題で政府がとった姿勢について私は述べたいので、ちょっと大臣お聞きいただきたいのです。
 この十二条の意見表明権で、子どもに「影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利」というのがここに書かれてありますね。ところが、これに対して日本の政府がどういう意見を討論の過程で述べたのかといいますと、子どもに「影響を及ぼすすべての事項について」というのを日本の代表は子どもの権利に影響を与えると理解すると言って子どもの権利という問題だけに限定して、子どもに「影響を及ぼすすべての事項に」ということについては一いわゆるチェックしたのです。子どもが意見を表明する問題に関してより狭めた見解を出したのです。これが一つ。この問題は、子どもの権利としてカバーされない子どもにかかわる問題があったらそれはその意見表明権には入らないということを政府の代表が述べたということになるわけですね。
 もう一つは、二十八条の中等教育に関する無償教育の導入について、これは討論の過程で日本代表が何と言ったか。「無償教育の導入」という文言を奨学金を供与するような適切な措置に置きかえるようにという意見を出しているのですよ。これも後退させている。そして結局末尾に、二十八条の後ろの二つに書かれてある「無償教育の導入」と「必要な場合における財政的援助の提供のような適当な措置」、この末尾の二つの措置は任意のものであって拘束されないと解釈するということを討論の過程で政府は述べた。これも後退した姿勢なのです。
 それから嫡出子や非嫡出子の問題についても、この権利に関して先ほど来議論になっているように、第二条一項では子どもの出生の問題を含め、二項では家族の地位の問題を含め、差別をとってはならないということが問題になっているのです。ところが、嫡出子、非嫡出子の問題については差別はしてはならないという文章の中で、最初は国内法を通じてこれが保障されるべきだという文章だったのを、日本の政府代表は「国内法を通じて」という文章を削除するように要求する発言をしているのです。
 私は幾つかの例を挙げた。ある人の意見によると、日本の政府代表の立場というのは、子どもの権利を広く認めるより積極的に進歩的な態度をとるという姿勢ではなくていわゆるブレーキをかける、そういう姿勢に終始したのではないかというような批判さえ出される状態が日本政府のこの審議に参加した姿勢だったということさえ言われているのです。
 私は、極めてそういう日本政府の姿勢というのは残念だし遺憾なのですよ。今すぐできないということが仮にあったとしても、先ほど来同僚議員が述べられたように、より子どもの権利を保障する前向きの姿勢でやっていくという立場がなぜとれないのか。こんないわゆる子どもの権利の問題を真剣に検討しようという国際的な舞台でブレーキをかけるような、ある意味で、ちょっとえげつない言い方をすれば、国際的に議論する条項にけちをつけるような意見しか日本政府の代表は出さなかったとするならば、まさに人権問題に関する後進的な立場を日本政府はとっている生言わざるを得なくなるのです。
 こういうような問題について、大臣、どのようにお考えですか。
#253
○説明員(小西正樹君) 条約交渉の過程におきましては、先ほども申し上げましたように、この条約はいろいろな具体的な条項に触れた詳細かつ広範な規定を含んでおります。したがいまして、各国はそれぞれの立場からいろいろな見解を表明しているわけでございます。委員御指摘のこの十二条についてもいろいろな意見があったことは事実でございます。
 その中にありまして特に言及されました権利ということに関しての日本の提案は、ここの表現におきます児童個人に関するすべての事項という趣旨がこの文面上はっきりする、文言の意味を明確化させるという観点から日本側が提案したものでございます。
 また、二十八条の…
#254
○立木洋君 小西さん、わかりました。
 国際的においては議論の過程でいろいろな国のいろいろな意見があったということは、私の知り得た材料の範囲内で私は知っているだけで全部の過程をフォローできているわけではもちろんありませんよ。だけれども、少なくともいろいろな国のいろいろな意見があったということはそれは結構なのです。それがけしからぬと言っているのじゃないのです。日本の政府が少なくとも人権問題にとる立場というのは、より積極的に社会の進歩に貢献する立場で人権問題を議論する姿勢であってほしいというのが私の強い要求なのです。
 だから問題は、国内法に抵触するなら国内法を変えるという方向で進歩の道を求めたらいいじゃないですか。国内法にかかわるからといって、国内法が重要だといって後ろ向きの姿勢で、社会の進歩という方向に前進するような意見を日本の政府は出さないならば、その姿勢こそ私は改めてほしい。国内法を変えたらいいじゃないですか、妨げになるならば。そして本当の子どもの権利が保障できるように前向きの姿勢を私はとっていただきたい。そういうことを私は特に求めたいのです。
 ですから私は、もう時間がなくなりましたからこれ以上申しませんけれども、私の述べたいところをぜひ大臣、理解してほしいのですよ。私は、政府のとってきた姿勢、これについて本当にもっと前向きな、子どもの権利を本当に保障できるようなそういう条約の実現に向けて努力してほしい。
 それで、例えば子どもの権利条約、児童にするかどうかという問題がありますね。五十四条では、日本語というのは正文ではないのですよ、訳文なのですよ。アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語が正文なのです。だからこのチャイルドを子どもというふうに訳すかあるいは児童というふうに訳すのか。児童というふうに政府が訳すから全部それへ右へ倣えして児童という言葉を使わぬといかぬというふうなことをやるならば、子どもの権利を広く認めなければならないという条約でなおかつ権力で児童という言葉を押しつけようとすることになりはしないか。そういうふうになってはやっぱりならない。権利、人権の問題を問題にする条約であるならば少なくとも人権を尊重する方向で問題の解決を図るべきではないか、私はそういうふうに考えます。
 そういう基本的な姿勢について、私はもう時間が極めて短いので私の方で一方的に大分述べた点はありますけれども、武藤さん、ぜひ前向きに受けとめていただきたいと思うのですが、大臣の御所見を最後に聞いて、私の質問を終わります。
#255
○国務大臣(武藤嘉文君) 確かに日本の過去の歴史あるいは風土、いろいろあったと思うのですね。しかし、最近は日本も非常に人権を尊重しようという姿勢になってきていると私は受けとめているわけでございまして、今後とも人権尊重という点については国際舞台においてもできるだけそういう方向に日本は発言をしていくように努力をしていきたいと思っております。
#256
○磯村修君 条約についての質問に入る前に、当面している問題でちょっと二、三お伺いしておきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
 さきにモザンビークに輸送調整の要員を派遣いたしまして、その後、国連から派遣要請が何か具体的にありましたでしょうか。
#257
○説明員(小西正樹君) モザンビークにつきましては先月、国連より新たにONUMOZ、モザンビークにおける国連の平和維持活動でございますけれども、このONUMOZへの停戦監視要員の派遣について非公式の打診があったところでございますけれども、我が国のONUMOZへの参加に際して行った過去の検討結果をも踏まえまして政府部内で慎重に検討いたしました結果、この要員の派遣は困難であるというふうに回答した経緯がございます。
#258
○磯村修君 これからの国連からの派遣要請につきましてもやはりいろいろな事情の中で派遣していくと思うのですけれども、これからの派遣要請に対してどういうふうな対応をお考えですか。
#259
○説明員(小西正樹君) 今後の国連の平和維持活動についてどういうふうに対処するかということでございますが、先生御承知のとおり、私ども国連の平和維持活動に参加するに当たりましては、平和協力法というものに定められました条件に果たして合致しているのかどうか、その問題の平和維持活動に参加することが我が国の外交にとってどういう意味を持つのか、その平和維持活動に対する国民の理解と支持についてはどういう状況になっているのか、こういったもろもろの状況を判断いたしまして、なおかつ我が国としてそういうことについて貢献する能力、状況、こういったものも加えて総合的に慎重に検討することとなるというふうに考えております。
#260
○磯村修君 先ほどの停戦監視員の派遣要請は、いつごろ、何人ぐらいの要請があったのでしょうか。
#261
○説明員(小西正樹君) 五月下旬に非公式の打診がございまして、先週これに回答したというふうに承知しております。
 国連からは日本に対して二十人以内の要員の派遣について打診があったわけでございます。
#262
○磯村修君 カンボジアのPKOでいろいろなことを経験したわけでありますけれども、大変当初の分析、情勢の見方の甘さと申しましょうか、想定外のことが相次いで生じたということもあるのでひとつお伺いしておきたいのですが、今のモザンビークの状況をどの程度把握しているのか、お伺いしておきます。
#263
○説明員(野上義二君) モザンビークにつきましては、御承知のように、昨年の十二月に安保理決議七百九十七で七千五百名程度のPKO要員を擁するONUMOZが展開されているわけですが、この決議を受けまして現在までに約六千名程度の各国からのPKO要員が派遣されております。五月末の時点で約二十カ国からの派遣だと理解しております。
 御承知のように、RENAMO、反政府側は、国連のPKOが展開されるまで武装解除の話し合い等を進めることについて消極的な態度をとっておりましたけれども、今申し上げましたように、こういった六千名程度、これは全体の七千五百名のPKO、その中でも約千二百名程度が選挙監視要員でございますから実際にはほぼ九〇%のPKOが展開できているわけですが、そういった状況を踏まえて北部の方にこもっていたRENAMOの人たちがようやくマプトに戻ってきております。マプトで国連のもとで停戦監視委員会とか監督監視委員会等の話し合いが進んでおりまして、その結果新たな和平のプログラムを今、協議中、六月初めから協議を始めているというふうに理解しております。
#264
○磯村修君 一応、現状は平静を保っているということに理解してよろしいのでしょうか。
#265
○説明員(野上義二君) モザンビークにおきましては、昨年十月十五日の停戦協定成立以降、一回か二回ぐらいちょっとバラック、宿舎を占拠するとかそういった小競り合いはございましたけれども、それ以来、武力衝突等は一切起こっておりません。
#266
○磯村修君 それから先日、本会議に提案されました自衛隊法の一部改正について一つ確かめておきたいのですが、これはいわば我が国の国民が海外で災害とかあるいは騒乱とか、いろいろな出来事に巻き込まれて救出が必要であるということを目的として政府専用機等を飛ばすという内容のようでございますけれども、これはそれだけに限定されているというふうに理解してよろしいですね。
#267
○国務大臣(武藤嘉文君) 今の自衛隊法の改正は、政府専用機だけではなくて場合によれば、外務大臣が要請をいたした場合には自衛隊機も使用できるというのが今お願いをしている改正点でございます。
#268
○磯村修君 外国人の救出輸送ということも含まれるわけですか。
#269
○説明員(服部則夫君) お答え申し上げます。
 もちろん政府救援機を飛ばす場合の主たる対象は邦人でございますけれども、飛行機に座席の余裕がある場合とかあるいは関係国の政府から要請があるような場合には外国人もその対象といたしております。
#270
○磯村修君 先日、当委員会で審議されました国際移住憲章の中に難民の問題もありましたけれども、こうした難民の方々の救助ということもこの場合は対象になるのでしょうか。
#271
○説明員(服部則夫君) 先生が難民とおっしゃるのは飛行機を派遣する国の当該国の難民というふうに理解してお答え申し上げますと、原則として、先ほど御答弁申し上げましたように、私どもが救援をする対象は邦人でございまして、そのほかに第三国の外国人がおるような場合には、我々が課しております条件に合う場合にはそれも救援の対象にいたしますけれども、原則として当該国の難民という方々を我々の救援の対象とするということは考えておりません。
#272
○磯村修君 わかりました。
 それでは条約の方に移らせていただきます。
 先ほど来、政府の提案している名称から申し上げますと児童の権利に関する条約ということになるのですけれども、何か行政というのは一たん決めたことはなかなか覆さないというどうも立場であるようですね。私は、行政ということを考えた場合に果たしてそういう姿勢でいいのかというふうな疑問を同僚議員のお話を聞きながら感じたのです。行政というのはいろいろな人たちの意見を吸収してそしてそれを実行していく、これが私は本当の意味の温かい気持ちの行政だと思うのです。
 しかし、私どもの立場からこの名称を子どもの権利条約生言わせていただきますけれども、この条約の審議の過程の中でいろいろな議論でお答えになっている中身というものには大変私は冷たさを感じているのです。非常に冷酷な答弁の内容だ、こういうふうに私は思っております。例えば私どもが当委員会でいろいろなことを議論しているだけではなくて、外にいる人たちもこの条約の中身については大変な高い関心を持っていていろいろな意見を持っているわけなのです。そして、その中身を子どもの権利というものにふさわしいものにして、それを子どもの権利条約としてほしいという主張が非常に強いわけです。そういう声を我々も背に負ってこういうところで意見を述べ合っているわけでありますけれども、そういう意見というものを率直に行政は聞き入れられるところは聞いて、それをとにかく行政に反映していくというのが本来の意味の開かれた行政ではなかろうか、こういうように思うのです。
 大臣、今までの議論を聞いて私はそう感じたのですが、大臣の感想はいかがですか。
#273
○国務大臣(武藤嘉文君) どうも冷たいと言われるのに、また冷たいと言われるのも大変恐縮なのでございますけれども、私どもとしては、国連人権規約も児童となっておりますし、たまたまこの条約の年齢が十八歳未満となっていて、日本の国内法で、憲法はもちろん児童となっておりますが、国内法でも児童福祉法とか児童手当法とかいろいろあるものがたまたま十八歳未満にもなっておりますので、そういう点では、もちろん御指摘のように、児童と言いながらあるいは少年法と言ったりいろいろ年齢が違うというのはそのとおりもうばらばらでありますけれども、少なくとも十八歳未満という点ではたまたまそういう国内法もあるわけでございまして、その辺の整合性からいって児童という表現がよかろうということでそういう訳をしたわけでございます。
 これは本当に冷たいと言われれば、冷たいと私ども思っていないのですけれども、どうもそう受けとめられればそうかもしれませんが、私どもとしては児童に関する権利条約ということでお願いをしたいと思っているわけであります。
#274
○磯村修君 例えば外務省がまとめました「西暦二〇〇〇年に向けての国内行動計画」という文書がございますけれども、ここで率直にサミットで使われた言葉どおりに「「子供のための世界サミット」のフォローアップ」というふうに使われているのですね。やはり率直に書いているのですから、どうしてそのままそれを受け入れて法の整備なりあるいは名称の呼び方なりを考えないのかというふうな、私はそういう感じがするのです。
 例えばこの文章を読んでいっても初めのページの方は児童、児童、児童と、何か非常に気を配りながらの書き方をしているのですけれども、後ろの方に行きますと子どもとか児童とかという言葉が現実に使われているのですね。ですから子どもという言葉を率直に自然の形の中でもって書いている人は書いているわけなのです。そういう気持ちをあらわしているのですよ。初めの方は非常に何か気を配りながら言葉を選びながらやっていた感じがするのですけれども、後ろの方にくるに従って何カ所かにそういう自然の形での表現がなされているのですね。そういう気持ちをみずからなぜ大切にできないかというふうに私は思うのです。やはりそういうものがこういう条約等に反映されていって初めて子どもの本当の意味の権利というものについての内容が整ってくるのじゃなかろうか、こういうふうに思うのです。
 条約の第十二条に意見表明権というのが書かれてありますけれども、この意見表明権についてはどういうふうに受けとめておられますか、理解しておりますか。
   〔理事椎名素夫君退席、委員長着席〕
#275
○説明員(小西正樹君) 十二条には、「締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする」ということが第一項に定められておるわけでございます。
 この条項の趣旨は、児童といっても分別のつく年齢に達すれば、そういう児童がその児童についての事項についていろいろ意見を持つようになる、そういう意見を言いたいというときに親なりその周囲の人がそういった意見に耳を傾けるべきである、こういう趣旨から規定された条項でございます。
#276
○磯村修君 例えば子どもの意見表明権という立場から踏まえて考えていきますと、子どもたちが自分たちの事柄に関することについてはいろいろな考えを発表できる、やわらかく言えばそういうものが保障されているのだというようなことですね。
 そういう意味からいっても、やはり意見表明権というものがきちっとあるわけですから、子どもの権利条約にしてほしいというふうな多くの子どもたちから強いそういう要望、希望、意見というものがあるわけですから、子どもたちに保障されている意見表明権として彼ら彼女らは言っているわけですから、率直にそういう子どもたちの世論というものを受け入れていかなければ本当に子どもたちのことを考えた条約なのかどうか、考えた法整備なのかどうかというふうな疑問を子どもたちに与えてしまうことになりはしないかというふうな心配を私は持っているわけなのです。
 やはり一方的に政府側、行政側が、こういう理由なのだからそう簡単には変えられないよというふうなことを釈明しても子どもたちの心の中には行政の気持ちというものは通わないのですね、そういうことでは。意見表明権に基づいて物を言っている子どもたちの世論というものをやはり率直に受け入れて行政を進めてほしいというのが率直な子どもたちの意見ではなかろうかと思うのです。その辺いかがですか。
#277
○説明員(小西正樹君) 繰り返しになって恐縮でございますけれども、先ほども大臣から御答弁いたしましたとおり、私どもこの条約の名称につきましては、ほかの条約でこういった原語のチャイルドという言葉をどういうふうに訳しているかあるいは国内法との整合性はどうであるか、こういった点につきまして慎重に検討いたしましてその結果この名称を選んでいるわけでございます。
 確かに委員御指摘のとおり、冷たいという御意見もあることは私どもも承知しておりますが、法令用語の性格といたしましてある程度そういう面が否めないということはあるとしても、私どもの立場からいたしますと、やはり法令用語としての一貫性、整合性という立場から一番適切な用語は何かということを考えましてそういう用語を使っているわけでございまして、その点についてぜひとも御理解を賜りたいと存じます。
#278
○磯村修君 行政庁というのは決めたことは何が何でも押し通すと、こういうふうに聞こえてくるのですよ。昔流の言葉で言えば、お上のことを聞きなさいと、こういうふうにどうも私の耳には伝わってくるのですが、大臣、どうでしょう、私の受けとめ方が間違っていましょうか。
#279
○国務大臣(武藤嘉文君) いろいろと事務当局から御答弁をいたしておりますように、これもまた冷たいという言い方かもしれませんけれども、条約全般の承認をお願いをしておるわけでございまして、その一つ一つの訳語についていろいろ御意見があって、ここを直せここを直せと言われると、やっぱり条約の締結権は政府の方に持っておりましてとにかくワンパッケージでこれを御承認願いたいと、こういうことになっている、従来の条約はそういうことになっているものでございますから、どうもその辺は冷たいといえば冷たいのでございますけれども、ぜひこれはもうすべてワンパッケージで御承認をいただくということでお願いを申し上げたいわけでございます。
#280
○磯村修君 今の大臣の御答弁は押しつけなのですよ。子どもたちに押しつけているのです。もう少し、民主社会ですから余り、日本の行政庁というのは一〇〇%きちっきちっとやらなければ気が済まないという、どうもそういうところがあるようですが、やはりちょっと肩をほぐして一歩でも半歩でも踏み外してごらんなさい。踏み外して物を考えるともっとよい発想が出てくると思うのですよ。
 もう少しこれからの行政官庁というものはそういう発想の仕方が必要じゃないかと思うのですが、私はどうもその辺のことが解せない。一たん決めたことは絶対にもう譲らないという、それが今までの行政だったですね。ですから国民の側、子どもの側に立ってみれば、大臣は先ほど、今までは大人の立場から見た子どもたち生言いましたね、いやそれを子どもたちの立場から見るのだと、こういうことをおっしゃっておりますが、そのとおりなのです。そうであるならば子どもの立場をもう少し一歩外して考えてほしい、こういうふうに私は思うのです。
 例えば、法体系があるからと言いますね。法体系があるからできないのだと言うけれども、昔つくられた法体系をいつまでもカビが生えるまで持っておってもしょうがないのじゃないですか。法律というものはやはり変えるとき変えた方がいい、変えるべきなのですよ。また、変えてほしいというときにはそれは慎重に検討して変えるべきものは変える、それが行政の姿だと思うのです。
 一つ聞きたいのですが、どうして子どもと児童という言葉をかえると大きな変動が起こるのですか。どういう変動が起こるのですか。
#281
○説明員(小西正樹君) これも繰り返しになってまことに恐縮でございますけれども、法令用語というものは一定性というか一貫性、整合性、すなわち同一の事態であれば同一の用語をもって表現するということが法的な一貫性、安定性に資するわけでございます。同じ用語を用いれば同じ事態を指すということが読者によってすぐにわかるという意味におきまして、法的安定性が必要とされます法律もしくは条約におきましてはそういうことが極めて重要な要請であるわけでございます。
 したがいまして、感情的な面、ニュアンス、味わいといったような観点からはいろいろな御意見があるということは私どもも十分承知いたしておりますけれども、まさにそういった法令用語におきます整合性、一貫性という立場からこの用語を使用しておる次第でございます。
#282
○磯村修君 ずっと朝からいろいろな問題につきまして問題が提起されまして、こういうところはこうやるべきじゃないかという御意見も出ておりました。そういう細かいことを私きょうは聞きませんけれども、ともかく法令に出ている言葉が一〇〇%の国語であるとは思ってもらいたくないのです。
 今、一億何千万人の国民が本当にすらすらと六法全書を読むかといえば読まないのです。読めないのですね。国語じゃないですよ。やはりわかりやすい、子どもたちに受け入れられやすいように頭脳を働かして国内法というものを見直してほしいということなのです。そうすることによって血の通った行政というものが運用できるのじゃないだろうか、法律の運用というものができるのじゃなかろうかと、私はそう思うのです。いつまでも伝統的なそういうものに張りついていれば全く同じことを繰り返しているだけであって進歩はない、こういうふうに私は考えております。
 大臣のコメントを求めて、私の質問を終わります。
#283
○国務大臣(武藤嘉文君) これは先ほども申し上げましたように、いずれにいたしましても、この条約を御承認いただければ私どもは批准手続をとり締結をさせていただくわけでございますが、その後、私ども各省庁ともよく連絡をとりまして、また法制局ともよく相談をいたしまして、現時点ではこの条約の義務を果たしていく上においては特に法律の改正は必要がないということで今、対処いたしておるわけでございます。
 私といたしましては、しかしこれから条約に基づいていろいろの施策を進めていく上においては、先ほども申し上げましたように、従来よりはどちらかというと子どもの立場に立って物を考えていく、こういうことで施策を施行していく場合にちょっとこの法律は少し直した方がいいのじゃないかというようなときは、ぜひそれぞれの関係省庁が法律の見直しということを私はしていただけるとありがたい、またそのようにお願いできればお願いをしていきたいと思っております。
#284
○磯村修君 今の大臣のお言葉を本当に前向きに具体的に実行してくださることをお願いします。
 以上です。
#285
○武田邦太郎君 もう問題はほとんど出尽くしまして、ほかに言うべきことに気がつきませんが、この画期的な条約に双手を挙げて賛成したい、こう思います。
 まず、それにつきましても、これは午前中の森委員の質疑に共通することでありますけれども、署名から三年近い月日がたっているわけでありますので、その間、世論に十分訴えてこの条約の意義、内容の理解を徹底させまして、国民各層から盛り上がる意見を踏まえてこの国会で討議するということができておれば最も幸福だったわけでありますけれども、どうもそうは実感されないのが非常に残念だと思います。
 それで、これからの問題でありますけれども、外務省の御努力で国民各層にこの意味をさらに正しく理解を求めていく、あるいは文部省関係では学校関係あるいは子ども自身に十分自覚を求めるように条約の意味をわかりやすく理解をさせていくとか、あるいは厚生省で言えば児童相談所関係、あるいは警察関係もございましょうが、そういうあらゆる機関を通じあるいはこのことに十分の関心を持つ民間機関にも協力を求めて、この条約の意義を十分に国民全体が理解をして、法文は多少かたくて冷たいかもしれませんけれども、その運用は温かく、温かいお湯がしみ通るような温かさで運用されますようにお願いしたい、こういうふうに思います。
 それからこれは竹村委員の質疑に共通なものでありますけれども、立木委員もおっしゃいましたが、嫡出子、非嫡出子という問題が繰り返して出ました。これは相続関係は民法と抵触しないというようなお話がありましたけれども、こういう問題は抵触するしないというよりもむしろさかのぼればその非嫡出子の母の運命にも深くかかわる問題でありまして、相続が半分しがなければ母親の運命は非常な、完全にもらうよりも悲惨の状況になることは間違いがない。そういう考え方からいきますと、この問題はただ子どもの問題だけにとどまらず、男性と比べて女性の社会的地位が極めて依然として低いということにもつながるわけで、こういうことを放置することは到底できないわけです。
 大きく考えまして、この条約はすべての国に普遍妥当する前向きの歴史的な取り組みでございますので、この条約を締結するのを機会に国内法の立ちおくれた部分をこの線に則して新しく改正しようという意欲が盛り上がるということはこれまた当然の成り行きでありまして、これに対して政府は拒否的な姿勢を、まあ拒否的でもないでしょうけれども、どぎつく言えばそういう姿勢をどうかおとりにならないで、こういう機会をとらえて国内法の不備と申しますか、なおおくれているといいますか、そういう問題をも改正して法体系全体の整合性を図っていく、こういうことが最も望ましいと思います。
 これは外務省だけではどうにもならぬ問題でございましょうけれども、こういう問題を外務大臣の政治力で全政府の問題意識として提起していただきまして、この条約が契機となって国内法全体の体系を前向きに大整備ができますようにお願いできれば大変ありがたい、こういうふうに思います。
 今申しましたようなこの条約の精神なり内容なりを特に国民の各階層あるいは学校関係その他、子どもの理解力に訴えて特に浸透させるというような考え方あるいはその方策が具体的にありましたらお聞かせ願いたい、こう思います。
#286
○説明員(小西正樹君) ただいま先生御指摘のように、この条約をこの国会で御承認をいただきましたら、条約の第四十二条で定めておりますとおり、「締約国は、適当かつ積極的な方法でこの条約の原則及び規定を成人及び児童のいずれにも広く知らせることを約束する」という規定を実施するということから、私どもといたしましても積極的に広報に取り組んでいきたいというふうに考えております。
 その取り組んでいくに当たりまして、特に今、先生がお触れになりましたように、国民各階層、児童、子どもの理解力に訴えてこの条約がどういう内容であるかといった点について十分な広報に心がけていきたいというふうに考えております。特に児童に対する広報につきましては、小冊子等の各種媒体を用いることを含め、わかりやすい広報の具体的な方法について関係省庁とも相談いたしまして積極的に取り組んでいきたいというふうに考えております。
#287
○武田邦太郎君 くれぐれもよろしくお願いします。
 それで、最後に外務大臣にお願いした問題でありますが、十分に政治力を発揮して、法体系の進歩的な整備に整合性ができますように、お力を存分に発揮していただきたいと特にお願いを申し上げます。
#288
○国務大臣(武藤嘉文君) 先ほど来申し上げておるとおりでございまして、この条約の案につきましては、内閣法制局また各省庁とも協議の上、現時点においてこの条約の義務を果たしていく上においては特に現在の法律改正を必要としないということになったようでございますが、先ほど申し上げますように、立場が変わって考えますと場合によれば、これからこの条約を批准した後いろいろの施策を我々実行していくわけでございまして、その実行するに当たってそういう温かい、子どもからの立場で物を見た場合にどうしてもここが必要だというような法体系の整備の見直しが必要だというようなときには、私はやっぱり見直しをしていただくように各役所に働きかけてまいりたいと思っております。
#289
○武田邦太郎君 よろしくお願いします。
 終わります。
#290
○委員長(野沢太三君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。
 次回は来る十七日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後四時三十九分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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