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1993/06/01 第126回国会 参議院 参議院会議録情報 第126回国会 法務委員会 第8号
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1993/06/01 第126回国会 参議院

参議院会議録情報 第126回国会 法務委員会 第8号

#1
第126回国会 法務委員会 第8号
平成五年六月一日(火曜日)
   午前十時三分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月二十五日
    辞任         補欠選任
     峰崎 直樹君     角田 義一君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         片上 公人君
    理 事
                下稲葉耕吉君
                真島 一男君
                竹村 泰子君
                猪熊 重二君
    委 員
                斎藤 十朗君
                鈴木 省吾君
                服部三男雄君
                平野 貞夫君
                大脇 雅子君
                角田 義一君
                深田  肇君
                矢田部 理君
                石原健太郎君
                紀平 悌子君
   国務大臣
       法 務 大 臣  後藤田正晴君
   政府委員
       法務大臣官房審  森脇  勝君
       議官
       法務省民事局長  清水  湛君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局民事局長   今井  功君
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長
   事務局側
       常任委員会専門  播磨 益夫君
       員
   説明員
       大蔵大臣官房審  西方 俊平君
       議官
       国税庁調査査察  藤井 保憲君
       部調査課長
   参考人
       学習院大学法学  前田  庸君
       部教授
       経済評論家    佐高  信君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○商法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
 議院送付)
○商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係
 法律の整備等に関する法律案(内閣提出、衆議
 院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(片上公人君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案を一括して議題といたします。
 本日は、両案につきまして御意見を伺うため、学習院大学法学部教授前田庸君及び経済評論家佐高信君に参考人として御出席をいただいております。
 この際、参考人に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席をいただきまして、心から御礼を申し上げます。
 両案につきまして忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、前田参考人、佐高参考人の順にお一人二十分程度御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質問にお答えいただきたいと存じます。
 それでは、まず前田参考人からお願いいたします。前田参考人。
#3
○参考人(前田庸君) この席で意見を述べる機会を与えられましたことを大変光栄に存じております。
 今回の改正法案は、会社法関係のものと社債法関係のものとに分けられます。会社法関係のものは、さらに監査役、株主の代表訴訟及び株主の会計帳簿・書類の閲覧請求、この三つの制度にわたりますが、それらはいずれも会社経営に対するチェック機能を充実させ、それによって株主の権利の充実を図るという点で共通していると言うことができます。
 まず、監査役制度の改正についてでありますが、初めに社外監査役制度の導入について取り上げさせていただきます。
 社外監査役制度導入の直接の契機となったのが、日米構造問題協議におけるアメリカ側の社外重役制度導入の要求及び平成三年六月以降に発覚しました証券・金融不祥事の発生による企業の内外からの監査機能の充実の要請にあるということは否定しがたいと考えます。しかし、この制度はこのような事情が生ずる以前からその導入の必要性が叫ばれていたものであります。具体的には、昭和五十六年商法改正の審議の過程における改正試案の中でこの提案がなされておりました。ところが、それは主として経済界からの反対により実現しなかったという経緯がございます。
 このように、社外監査役制度は、従来懸案とされていたものが、先ほど申し上げましたような事情が直接の契機となって提案される運びとなったというのが正確な理解であると私は考えております。
 社外監査役制度導入の必要性について述べさせていただきます。
 現在、我が国の監査役は大部分がそれまでその会社の取締役または使用人として業務執行の体制に組み込まれていた者がそのまま横滑りしたという者によって占められております。したがいまして、監査役としましては、自分がその中に組み込まれていた業務執行の体制についてみずから監査するという結果になっている場合が大部分であります。
 このたびの改正法案は、このような現状を抜本的に改めようとしているわけではございません。会社の事情に通暁した者、殊に社長、副社長等の大物が監査役に就任するということはそれなりに長所があると考えられるからであります。社外監査役制度導入の必要があるのは、業務執行の監査が右のような社内者だけで占められるということは適当でないと考えられるからであります。みずからが組み込まれていた業務執行の体制が違法であった、または著しく不当であったという場合には、監査役になったからといって業務執行体制の違法性等を指摘するということはできないと考えられます。
 そこで改正法案は、商法特例法上の大会社についてでありますが、監査役のうち少なくとも一人はそのような業務執行体制に組み込まれていなかった者、すなわち社外者であるということを要求しまして、客観的、第三者的な立場で業務執行の是非について意見を述べることができるようにしようというものでありまして、ぜひ実現していただきたいと考えております。ここで社外監査役としましては、少なくとも第三者的な立場から業務執行をチェックできる、そういう者であるということが必要であるというふうに考えております。
 なお、改正法案は、社外監査役の資格としまして、完全な社外者であるということは要求しておりません。社外監査役制度導入の先ほど申し上げましたような趣旨からいいますと、完全な社外者であることを要求するのが望ましいことは否定できません。また、親会社の取締役または使用人等も除外するということが望ましいというふうに考えます。
 しかし、かつて経済界から、社外監査役制度導入に対する反対理由として、適任者が得られないということが挙げられております。あるいは適用会社も商法特例法上の大会社八千社前後に及ぶということにかんがみますと、この程度に実務に対して配慮をするということはやむを得ないのではないかと私は考えております。五年前に会社、子会社の取締役または使用人たる地位を引いた者が監査役に就任する場合には、その者はその就任の時点では、その時点における業務執行の体制に組み込まれているとは言わなくてもよいという説明も可能であるというふうに考えられます。
 次に、監査役の員数の増加について述べさせていただきます。
 改正法案は、監査役の員数を商法特例法上の大会社につきまして二名から三名に増員することを要求しておりますが、これもぜひ必要な改正であると考えます。企業の内容が複雑になってきたという一般的な理由からだけではなく、社外監査役制度の導入との関連でもそれが必要だと考えます。かつての経済界からの社外監査役制度導入に対する反対理由としまして、限られた員数の枠内で社外監査役を強制すれば、常勤の監査役の員数が減って情報収集能力を低下させるということが挙げられておりました。確かにそういう面もあると考えられますので、この際、監査役の員数を三名以上とする必要があると考えております。
 次に、監査役会について述べさせていただきます。
 商法特例法上の会社につきまして社外監査役制度を導入し、かつ監査役を三人以上とするという以上は、あわせて監査役会を決定するということがぜひ必要であると考えます。監査役が三人以上とされる場合には、各人が企業の全体についてばらばらに調査するよりは監査役会において適切な職務分担の定めをし、それぞれがその分担した調査の結果を監査役会の場で報告をし、調査の結果を全員の共通の情報とするということによって組織的、効率的な監査が可能になると考えます。殊に社外者が監査役になった場合には、みずからが企業の全体について調査をするということは不可能でありますので、ぜひ右のような監査役会の法定が必要と考えております。
 また、監査役会として意見を述べることによって、個々的に意見を述べるよりは経営陣に対する影響力も大きくなるということが期待されます。もっとも、このように監査役会が法定されることによって個々の監査役の権限が制約されること、例えばみずからが調査したいという監査役がいる場合にも、それを監査役会における多数決で制約するということになっては、これは適当ではないと考えます。改正法案は、監査役のいわゆる独任制の長所を損なわないようにするために監査役会と監査役との間の権限の分配について十分な配慮をしていると言うことができまして、妥当なものというふうに考えるわけでございます。
 さらに改正法案は、任期について述べさせていただきますが、すべての株式会社について監査役の任期を二年から三年に伸長しております。より安定した立場でより充実した監査をすることができるようにするためのものであり、また社外監査役にとりましては、三年間その地位が保障されることによって会社の実情についても通暁するに至る、そういうメリットもあるというふうに考えておりまして、適切な改正案であるというふうに考えます。
 監査役制度につきましては以上で終わらせていただきまして、次に代表訴訟について述べさせていただきます。
 この改正点は二つございます。
 その一つは、この訴訟を提起する際の申し立て手数料の算定に関するものであります。現在、右の申し立て手数料の算定につきましては、請求金額によって算定するという考え方と、一律に八千二百円でよいという見解とに分かれております。
 請求金額によって算定するという考え方によった場合には、あらかじめ負担する申し立て手数料の額が大きなものになり、この制度が利用されにくいものになるという可能性があります。また、理論的にいいましても、株主が代表訴訟に勝訴をし、請求が認容されたとしましても、認容された金額に相当する利益がその株主に帰属するというわけではございません。したがって、少なくとも立法論としましては手数料を請求金額に応じて算定するという考え方をとる必然性というのはないというふうに考えられます。そして、株主の代表訴訟が取締役の不祥事を防止するための有効な手段である以上、立法論としてはこれを利用しやすくするということが必要であります。改正法案は、申し立て手数料につきまして八千二百円でよいということを明確にしており、妥当なものというふうに考えております。
 次に、代表訴訟に関する改正案のもう一つの点は、株主が勝訴をした場合に、そのために支出した費用で訴訟費用でないもの、例えば調査費用等が含まれると思いますが、そういったものの相当額についても株主から会社に請求できるということにしようとするものでありまして、これも当然の改正案であるというふうに考えております。
 次に、会社法関係の改正法案の最後としまして、株主の会計帳簿・書類の閲覧謄写請求権の行使の持ち株要件について述べさせていただきます。
 取締役が不祥事を起こしたかどうかということは、会計帳簿あるいは書類を調査しなければわからないことが多いわけでございます。そこで、大株主による帳簿・書類閲覧権の行使によって経営に対するチェック機能を果たさせるということが期待されるわけでございますが、現行法はこの権利を行使するためには発行済み株式総数の十分の一以上という持ち株要件を定めておりますが、改正法案はこれを百分の三に引き下げて、大株主による右の権利行使をしやすくするというものであり、これもぜひ実現させるべきであるというふうに考えます。
 以上で会社法関係について終わらせていただきまして、次に社債法関係の改正について述べさせていただきます。
 社債法関係の改正の柱としましては、次の三つを挙げることができます。第一は社債発行限度の撤廃、第二は社債管理会社を原則として設置強制とする等の改正、第三に商法の社債に関する規定と担保附社債信託法の規定との調整ということであります。この最後の点は主として技術的なものでありますので、ここでは第一の点と第二の点を取り上げさせていただきたいと存じます。
 まず、社債の発行限度の撤廃についてでございますが、実務界からは現行法のような発行限度の規制、会社に現存する純資産額を超えて募集してはならないという規制の仕方につきましては、比較法的にも例が少ないこと及びそのような規制のために現実に社債発行の需要を貯えない会社が生じているということ等の理由から、限度規制の撤廃を求める主張が長年にわたってなされてきました。
 確かに、どんなに財務状態がよく、社債の発行を認めても社債権者保護のために全く問題がないというような優良企業の場合にも、この規制があるために社債発行による資金調達の道が閉ざされてしまうということは、これは問題であるというふうに考えます。そしてまた、社債発行限度規制によっても社債発行会社が倒産をするということを防止するという機能は全く有しないということが言えるわけでございます。
 私としましては、証券取引法上のディスクロージャー制度の充実及び社債格付制度の定着等の四囲の状況が整備された現在、これから取り上げます社債管理会社の設置強制を前提として限度規制は撤廃しでもよろしい、また資金調達の選択の可能性を大きくするという立場から撤廃すべきであるというふうに考えております。
 次に、社債管理会社の設置強制、その他の社債管理会社に関する改正について取り上げさせていただきます。
 現行法のもとでは、担保付社債については担保の受託会社の存在が当然の前提となっております。しかし、無担保社債については少なくとも法律的には社債募集の受託会社の設置は任意とされております。しかし、少なくとも一般公衆に発行する社債につきましては、社債発行会社が例えば社債元利金の支払いを怠ったという場合に、個々の社債権者が社債元利金の支払い手続をとるとか、あるいは期限の利益喪失約款に基づく権利あるいは会社の財務状態の調査等の権限を個々の社債権者が行うということは、これは事実上極めて困難であります。このような関係から、また先ほど申し上げました社債発行限度の撤廃とも関連しまして社債管理会社の設置強制が必要条件というふうに考えられます。
 改正法案は、このように社債管理会社の設置を原則として強制するとともに、その権限の範囲を合理化した、またその義務及び責任を強化するための規定を設けたものでありまして、この改正もぜひ実現していただきたいというふうに考えております。
 以上でとりあえず私の意見陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
#4
○委員長(片上公人君) どうもありがとうございました。
 次に、佐高参考人にお願いいたします。佐高参考人。
#5
○参考人(佐高信君) 企業というものは大変に非合理なものでありまして、とりわけ日本の企業というのはまさに封建時代の藩と同じく非合理の塊みたいなものでありますけれども、それにどう合理的ないわば網をかけていくか。日々何かジャーナリスティックにそれをやろうとしている者にとっては、今度の改正案を拝見しまして、マイナス八からマイナス六というのを進歩と言うかどうかというふうな、私はまだマイナスであるという立場ですのでそのマイナス八からマイナス六も進歩と言うのかどうかというかなりの疑念がありますけれども、まあやらないよりはましだろうという、正直言ってそういう感想です。
 昨年の夏に、私は長崎大学というところで一週間集中講義をしたわけですけれども、そのときに、日本の企業というふうなものに、いわゆるいい会社、一流企業と言われるところにサービス残業や過労死というふうなものがあると学生に話をしましたら、学生は信じないわけですね、いわゆるいい会社というのはそんなものはないところだというふうに思っているわけですから。いい学校からいい会社へという神話の中で、全然そういうことのない、一流銀行に月一人大体百時間ものサービス残業があるというふうなことを言っても信じない。いろいろ実態をお話ししますと、次に彼らが言うのは、労働組合はないんですかというふうに聞くわけです。私はそれに対して、組合はあるけどないんだというふうに答えたんです。
 それと同じように、日本の企業に対するチェック機能、監査役なんかを含めまして、そういうのはすべてほとんどあるけどないの状態なわけです。それをどうあるけどあるというふうなものに近づけていくかというためには、日本の企業の現実というふうなものがどういうものであるかというものを私の立場から見るともう少し深刻に知る必要があるんじゃないかという感じがするわけです。
 今から十二年前ですか、一九八一年の商法改正がありまして、総会屋の追放を主眼としたものだったように言われているわけですけれども、そのときに私は、その商法改正というのはハエの発生源をきれいにしないでハエを追うようなものであるというふうに批判した覚えがあります。
 どういうことかというと、総会屋というのは悪いやつだということでそれを取り締まろうとするわけですけれども、総会屋というふうなものは企業の暗部ですね、内紛とか汚職とか粉飾決算とか、そういうところをつっついて出てくるものであって、決して逆ではないわけですね。もちろん、総会屋という存在は非難さるべき、あるいは排除さるべき存在ですけれども、その企業の暗部の方が前提としてあって、それをどうなくするかということが先決、そうしないで総会屋を退治しようとしても私は無効であるというふうに言ったわけです。
 総会屋というものの存在の数は少なくなっていますけれども暗部はなくなっていませんから、あの八一年の改正の結果、いわゆる総会屋に金を渡したとかして企業の総務部長が逮捕されるというふうな結果は出てきましたけれども、そんなにその効果というのは上がっていないんじゃないか。要するに、企業の暗部をなくするという意味では効果は余りなかったのではないかという感じがするわけです。
 それで、総会屋というふうなものが怖いものだと、かなり数としてはなくなっていますからその怖さというのは少なくなっていると思うんですけれども、企業というのは非常に変なことを今現在やっている。いわゆる一部株式上場企業の、ちょっと数はあれですけれども、三月期決算の九割近い企業が六月末の同じ日の同じ時刻に一斉に株主総会をする、こういう本当に異常な事態ですね。それは全く株主総会を開いていないのと同じことであるわけですけれども、総会屋のはしごを恐れるというふうな形のことで同じ日の同じ時刻に一斉に株主総会をする。あれをやめない限り、私はチェックというふうなものはほとんど何にもならないのではないかと。
 あの異常事態を企業というふうなものがどう考えているのか。経団連の行動基準の中に、例えばそういうものを盛り込んで、経団連の会長、副会長会社だけでもせめてほかの日にするとかいうふうなことでなければ、企業の社会性とかいうふうなものは全然ないわけですね。株主総会というふうなものを公開しないという企業もたくさんあるわけで、一昨年公開したけれども去年はそれを公開しないようにしたとか、むしろ全体の流れとして進歩しているようには見えませんし、そういう企業の封建性とか非社会性あるいは反社会性というものをどう虫干しするかということですね。それが、一年一回の虫干しがいわば株主総会であるわけですけれども、そういうものがほとんど機能していない。
 そういう状況の中で、監査役というふうなものを強化してもどのくらい効力があるのかなという、マイナス八からマイナス六、あるいはマイナス八からマイナス九かもしれないという、その辺の疑いみたいなものがあるわけです。監査役というふうなものの存在、前田先生がアカデミックにお話しくださったので、私はジャーナリスティックというか、いわば扇情的にお話ししますけれども、監査役というふうなものの実態ですね。
 私は、昨年、日本監査役協会の総会で講演せいということで、五、六百人集まるその総会で講演したわけですけれども、四、五年前も同じようにその総会で講演したんです。その四、五年前に講演したときに私は、日本の企業の実態を固有名詞を挙げて具体的に話して、例えば世襲とか、社長が兄から弟へとか、あるいは親から子へというふうなことが何の疑いもなく行われていると。そして、そういうふうにして就任した社長が、同族企業と言われるのは心外だと、それこそ心外なことをしゃべっているというふうな状況の中で、その企業の監査役というのはどういうことをやっているのかと、監査役だけがある種救いのことをやってくれなくては困るみたいなことを具体的に企業名を挙げて話したわけですけれども、そこに企業名を挙げられた会社がたくさんいたわけですね。
 その監査役協会の総会での講演というのは「月刊 監査役」という雑誌に載せるというふうなことがありまして、事前に私は了解を求められて、ああいいですよというふうにしていたわけですけれども、講演が終わった後に係の人がかなり青い顔をして来まして、申しわけないけれども掲載を遠慮させてほしいということだったわけですね。私は、別にいいですよというふうなことで済んだ。それが四、五年前の話で、昨年また何を間違ったか呼ばれましたので、最初にその話をして、きょうはどうなりますか注目しておりますと言ったけれども、やっぱり載らなかったんです。そのぐらいやっぱり企業監査役というふうなものが全く社内監査役となっているということですね。
 それを社外監査役にするということはまさに必要なことでありますけれども、私なんかから言わせれば何で一人だけ、三人全部が社外監査役でいいんじゃないか、何で一人だけが社外監査役なのかと。ほかの二人というのはいわば社内監査役で、ほとんど役に立たないという言い方はあれですけれども、ほとんど社長とかに厳しいことを言えるはずがない、今の状況の中で。そうすると、三人の中でたとえ一人を社外というふうなことにしたとしても、すぐにそれは社外は社内に変わっていくんですね。社長なんかに物を言えない。株主総会というふうなものが全く機能していない状況では、外の世界の後押しもないわけですからすぐに社内監査役になってしまって、いろんな使途不明金の問題を含めて、粉飾決算というふうなものをどこまでチェックできるか非常に疑問である。
 経済界の方では人材がいないとかいうふうなことを言いますけれども、私なんかから言わせますと、人材がいないというのは、自分たちにとって非常に安心のできる人材がいないというだけの話だろうと。人材というのは育つものであって、育てるものでもあるわけで、私は、一人だけ社外というふうなことをやるよりも、この際三人全部社外というふうなことでいいんじゃないかという感じがします。株主総会、労働組合、監査役あるいは消費者運動とか、そういうふうなものがほとんど機能していない日本の企業、社会の実態では、経営者は完全なる裸の王様であって、もうやりたいほうだいということなんですね。
 そういう中で、代表訴訟とかそういうことはある程度の進歩だというふうに思いますけれども、今の日本の企業の実態というのはかなりひどいものであるということをもう少し、例えば株主総会の実態とかいうふうなものを調べて、それを全部法律で取り締まるというのも自由経済とかなんとかということで非常にまずい話だと思いますけれども、私はそういうことについてだけは行政指導というものを認めてもいいのかなと、皮肉な意味でそんな感じもします。
 社債の発行限度額の問題につきましては、限度を設けるのは合理的でないというふうなことで、合理的でない企業について彼らが合理的でないということを認めていいかどうかという問題もあると思いますけれども、投資家保護というふうなことをきちんとやればしょうがないかなという感じです。
 全体として、株主総会のあの実態、同じ日の同じ時刻に一斉に株主総会を開くという異常な状態を一方に置いておいてディスクロージャーというふうなことを言うのは全く説得力を持たないということだと思うんですね。だから、株主総会の実態とか、ああいうものを何とかする方向を示しながらディスクロージャーというふうなものをやらないと、株主保護とか投資家保護というふうなものも絵にかいたもちというふうなことになるんじゃないか。銀行が不良債権の額を公表しないとか、いろんな実態があるわけですけれども、そういうふうなこと。日本の企業の非常に非合理な、あるいは理不尽な実態にどのくらいこの法律が有効なのかということについては、かなりの疑問というか、がありますけれども、先ほど申し上げましたように、やらないよりはましということかなと。
 ある経営者が、労働組合というのは企業の病気を知らせる神経だということを言ったんですけれども、日本の場合、株主総会もそうですけれども、労働組合もさまざまなチェック機能を果たすべき神経が全く麻痺しているということですね。その神経というふうなものの機能をどう回復させるかというのは、まず日本の企業の大変にひどい実態というものを知って、その上で有効なメスを入れていくということが必要なんじゃないか。この法案というのはまだ、長崎大学の学生程度とは言いませんけれども、企業の実態というのはそうひどいものとは思っていない形で出されているんじゃないかというふうな感じがいたします。
 何か余りに言葉がストレートというか、汚い感じのあれで、これが記録されると問題になるかもしれませんけれども、そういうことで一応私の感想めいたものを申し述べさせてもらいました。
#6
○委員長(片上公人君) どうもありがとうございました。
 以上で両参考人の御意見の陳述は終わりました。
 それでは、これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#7
○真島一男君 前田参考人、佐高参考人、大変御多忙な中をきょうは当法務委員会に御出席を賜り、大変有意義な御意見をちょうだいし、ありがとうございました。
 最初に前田参考人にお伺いをさせていただきます。
 監査役制度ということについてでございますが、監査役の業務内容は、今回の商法改正では特に触れられておらないということですから、これまでどおりということでございましょう。そしてまた、業務監査というものが先般の改正で取り入れられ、そしてそれが法令、定款というものに違反するというだけでなくて、甚だしく不当なものも入るのではないかというのが通説だと承知をいたしておりますけれども、しかし妥当性という問題までは監査役は入れないのではないかというようなことが一般的な解釈であろうかと思っております。
 それで、そういうことを頭に置いた上で、前回の証券、土地とかそういうバブルの中での監査役というものはどういう役割を果たしてきたのか。答えからいえば、なぜ果たせなかったのかということがやはり非常に頭に残るのでございますが、例えば私自身の体験でこういうことがございました。前回のバブルの中で土地というものが異常に高くなった。そしてその土地対策として、ひとつこれまでにない土地の保有に対する課税の強化をすべきであるということで、私も当時土地税制の担当者をしておりましたので、地価税と今言われているもの、これをつくることによって土地の投機的な取引を抑制したいということで提案をいたしましたが、当然のことでございますけれども日本の産業界、不動産業界は反対でございました。
 しかし、私は、そのときに会社の経営者の方々に対して、今の地価の状態、例えば社長さんが退職されても、あなたの退職金でマンション一つ買えるか買えないかじゃないですかと。だから、エンドユーザーでもう一番上にいる人が買えないような商品がいつまでも売れるわけがない。それはたまたま買いかえの特例の適用でもって買える人がいるだけのことであって、一時的な現象であると。そのことが地価全体を動かしているというのは健全ではない。それは伝統ある大会社、何千人の従業員を持って今日まできている会社が、これから十年先の不動産業の経営を考えたときに、とても今の状態では会社としても存続が危うくなるのではないかというようなことをるる申し上げて、最終的には地価税は理解をしていただいたということがございました。
 こういうときに、会社の中でこんなことをいつまでも続けていては不動産業というものは果たしてこれからずっと成り立つのだろうか。これだけの企業の社会的な存在価値というものはどうなっていくのだろうかというようなことについて議論がされたということは、残念ながら耳に入ったことはございません。こういうときに監査役というものの業務監査というものが働くべきであろうと私は思わないでもなかったんですけれども、そういう例もなかった。
 それで、法律的に見ますと、これは議論がもちろん分かれるところでございますけれども、実は私が担当しておりました地価税の問題をやりましたのは平成二年の夏から秋にかけてでございました。その前の平成元年に大変な地価の上昇がございまして、そして平成元年十二月二十二日に土地基本法ができて、土地基本法の第四条に「土地は、投機的取引の対象とされてはならない。」ということが明文で規定された。そうすると、先ほどの監査役の業務監査の法令違反等にそこで理屈の上では係る可能性もあるのかなという気は抽象的には私は思っておりましたけれども、それは実効上はそういう話はついになかったわけでございます。
 さてそこで、このたび社外の監査役という我が国にとって画期的な制度が導入されたということで考えた場合に、これの形はそういうことで入りましたけれども、実は業務監査の内容自体が社外監査役に、これは、社外監査役を今度入れるからこういうことも監査対象にしましょうよというような法律改正があってもよかったかなという気はしているんです。しかし、そこがなくても、やはり監査役制度というものは法律が定めるということだけでなくて、運用上の効用というものが随分と出てくるのだろうという期待もしているところでございます。今までの監査役に社外監査役が新たに加わったことで何かこれから先の運用上こんなふうな違いが出てくるかな、あるいは監査役協会でマニュアルみたいなものがつくられていくのかもしれませんけれども、その辺について何か御示唆をいただければと思いますので、ちょっといろいろ御教示をいただきたいと思います。
#8
○参考人(前田庸君) 御趣旨は十分に理解できます。今おっしゃったような問題は、恐らくそのような業務執行が著しく不当である、土地転がしとかあるいは土地に対する異常な融資というのが著しく不当であるというふうに判断されれば、これは監査役の監査権限の範囲内に入るということでございます。
 今回の証券・金融不祥事に関連して、社外監査役制度との関係で特に私が考えましたのは、具体的な例としては、例えばあの証券会社の損失補てんという問題もございます。あの問題は、平成三年に証取法が改正されて明文で禁止されましたけれども、それまでは損失保証は禁止されておりましたけれども損失補てんは禁止されていなかったという状態でございまして、そういうことから損失補てんという形で大口投資家に対する取引が行われていた。しかし、一般的にはああいう取引は、損失補てんということは証券取引の基本的なルールに反するのではあるまいか、あるいは特に大口投資家に対する損失補てんというようなことになりますと極めて不公平であるということで、第三者的な立場で判断するとああいうやり方は著しく不当だと。特に明文で規定されていなくても著しく不当だということは考えられるのではないか。
 ところが、その証券取引の業務執行の体制に完全に組み込まれていた人は、長年そういうやり方で証券業務をしているわけでございますから、そういうものについて著しく不当だという意識もなくなってしまうのではあるまいかという感じがしたわけでございます。ですから、そういう業務執行の体制に組み込まれていた人が仮に監査役になったとしても、それに対して違法である、あるいは著しく不当である、そういった意見は言えないのではあるまいか。それは第三者的な立場で見ると、これはあれだけ社会的批判があったわけですから、普通の人だったらこれはおかしい、著しく不当だということを意識するのではあるまいか。
 ですから、そういう人がこのたびの改正で一人は監査役に入るということによってああいう問題をチェックするということが可能になるのではあるまいか。社外監査役制度というのはそういうものとして法案化されたというふうに私としては理解いたしております。
 お答えになりましたでしょうか。
#9
○真島一男君 ありがとうございました。
 せっかくの機会でございますので、今回の改正は改正として、前田先生がこれから先の商法の改正すべき点としてはこういうものが大きなテーマであろうというものの中に、従業員の持ち株制度に対する評価というようなものが私はあるのではないか、あるいは株式の持ち合い制度という慣行などに対するもの、そこは当然自社株の保有というような問題にも関連してくるのだと思いますけれども、そういうことについてのお考えを承れればありがたいと思っております。
#10
○参考人(前田庸君) 今御指摘の点は、自社株取得に直接関係する問題だと思いまして、これは私も属しています法制審議会商法部会で今までも取り上げてまいりましたし、これからも取り上げることになるわけでございますが、確かに我が国における現行の自社株取得規制というのは、比較法的に見て非常に厳しいものであるということは十分に理解しておりますので、私としてはこれについては当然検討する必要があるというふうに考えております。ただ、外国のような立法をそのまま日本に持ってきていいのかどうかという点は、例えば外国では発行済み株式総数の一〇%は自社株取得を認めるということなんですが、日本で現在の株式の時価で発行済み株式総数の一〇%を認めるということになりますと、これは大変な金額になりまして、とても会社の財務内容からいってそこまで法律で認めるということ、その限界を考えますととてもそれは恐ろしい問題になってくるというようなこともございます。
 それから、自社株取得ということは、配当可能利益を減少させるという効果が伴いまして、株主にとって大きな問題になってくるわけでございます。例えば配当に関する権限は、例えばアメリカの場合ですと取締役会で決定する、株主総会ではなくて取締役会で決められるということになるわけでございますが、我が国では利益処分は株主総会の権限だということになるわけでございます。このような利益処分を伴うような自社株取得というものを株主総会と離れて取締役会だけで認めていいものなのかどうか、こういう配当処分に関する比較法的な違いから見ますと、そのままでいいのかどうかという問題もございます。
 さらに自社株を放出するという場合には、結果的には新株発行と同じような効果を伴いますので、新株発行と同じような規制をかけないでその放出を自由にするというようなことでいいのかどうか。
 そのようないろんな問題がありますので、今後そういった問題について慎重に検討して結論を出すべきではなかろうか。ただ、日本の規制が比較法的に見て厳しいということだけは十分に意識しているということでございます。
#11
○真島一男君 ありがとうございました。
 佐高参考人にお伺いをさせていただきます。
 先生は「会社は誰のものか」という御著書がおありで、私も大変興味深く読ませていただいたのでございますが、あそこに出てくる例は相当極端な例で、その方が説得力があるし、私ども読んで教わるところも多かったわけでございます。
 なかなか今の株式会社、いろいろな大小、形もございますけれども、一般論として、大会社について見た場合に、会社はだれのものかというときに、佐高先生は、今自分の中ではどういう整理をされているかということをちょっと教えていただければありがたいと思います。
#12
○参考人(佐高信君) これは、ある種永遠の問いでありまして、すぐに答えが出る話でもないんですけれども、一般的に株主のものとかあるいは社員のものとかさまざまた言い方があると思います。今、日本の企業、とりわけ大企業と言われるところにおいては社長のものみたいな感じで思われているのが強い。だから、それは違うんじゃないかということでいろいろ書いているわけですけれども、みんなのものと言うとだれのものでもないということにもまたなってしまうわけですね。だから、今は社長、トップの私物化の意識が非常に強いから、それをアンチテーゼとしてだれのものか、あなた方のものではないという言い方をしているわけです。
 先ほどそれに関連して、ちょっと社員持ち株制の問題、もちろん御承知だと思いますけれども、株主総会において管理職、部長とか課長が社員株主という形で株主総会にずらりと並んで、総会屋を排除するという目的で、与党というか経営陣を守るという形にさせられていくというか、しているというか、そういう例も非常に多いわけですね。だから、私はその社員持ち株制というふうなもの、あるいは自社株制限解除というものには非常に懐疑的でありまして、日本の企業というふうなものはそうでなくても非合理なものですからかなり厳しくやってもやり過ぎることはないのであって、今の状況の中でそういうみんなのもの、やはり社長のものだけではない、社長あるいは創業者の一族のものではないんだという言い方を強めるならば、社員持ち株制とかいう形は、自社株の制限解除みたいなものは私はやるべきではないというふうに考えます。
#13
○真島一男君 時間が参りました。ありがとうございました。
#14
○竹村泰子君 きょうはお二人の先生方、大変御多忙の中を私どもの希望をお入れくださいましておいでいただきまして、本当にありがとうございます。
 初めに前田先生にお伺いをしたいと思います。主に代表訴訟制度のことでお伺いをしたいと思います。
 これは一九五〇年に導入された株主による取締役の責任を追及する制度ということでございますけれども、ほとんど利用されていない実情にあるのではないかと。期待されたほどの役割は果たしていないと思われるんですけれども、昨年十二月三十一日現在でちょっと調べましたところ、係属している株主代表訴訟は全国で三十一件だというふうに聞いております。
 株主の代表訴訟は、一株しか持たない株主であっても、私どものような例えばいわゆる庶民のそういう人たちや、六カ月間保有すれば訴えを提起できるという極めて強力な株主が監督をできる制度というふうなものだと思いますけれども、ほとんど利用されていない。その理由は何だというふうにお考えになりますでしょうか。
#15
○参考人(前田庸君) この問題は、アメリカでは盛んに利用されているにもかかわらず日本では利用されていないということは御指摘のとおりでございまして、この点は国民性の違いとかなんとかということで説明するほかないのかなという感じもいたしておりますけれども、やはり申し立て手数料等もその一つではなかろうかということで、このたびの改正法案はその点についてせめて修正をしようと。
 それから、結局この訴訟で勝訴をしましても株主はその者自身としてはほとんどメリットがない。会社にメリットがあってその間接的な効果として当人にもメリットが生ずるという程度のメリットしかないという点がございますので、どうしてもわざわざ訴訟してまでも取締役の責任を追及するということについてちゅうちょするということもあるかと思います。
 そういうことからいいますと、考えられる立法論としましては、そういうことで訴訟で勝訴した場合には、何といいますか、褒美みたいなものを何らかの形で株主に与えるというような立法論も、そのような代表訴訟を起こしやすくするためにはあるいはそういう立法論も全く考えられないというわけではありませんけれども、またそうなりますと額の問題も起こってくるというようなことで、このたびの改正法案では訴訟費用以外の費用、調査費用等はせめててん補しよう、そういうことで今までよりはこの訴訟を提起するインセンティブを与えようということにしているわけでございますが、果たしてどの程度効果があるかという点につきましては私としては何とも申し上げる自信がございません。ただ、せめてこの程度の改正は必要ではなかろうかというふうに考えております。
 お答えになりましたかどうか、申しわけありません。
#16
○竹村泰子君 余りメリットがないということが、株主にとって余りメリットがない。日本では、私どもの周辺でもそうですけれども、株は持っているけれども株主総会になんか一度も行ったことがない、そういう株主が会社のために何か訴えを起こすというふうな気持ちにはなかなかならない。これは期待する方が無理なのかもしれないという気もするんですね。それから、やはり経営の内部の情報にもっと通じませんと訴訟を起こすということにはなかなかならない。
 それで、今、先生がおっしゃいました何の得にもならないということとか手数料が高過ぎるとかいうことがあるんですが、もしよろしければ、アメリカはそれではどこが違うんだろうかということをお尋ねしてよろしゅうございますでしょうか。
#17
○参考人(前田庸君) アメリカの具体的な事情についてはよく存じませんけれども、やはりアメリカは訴訟社会と言われまして、積極的に訴訟するという国民性がある。また弁護士もそういったことを利用して自分の業務のプラスにする。そういった社会の違いというようなことがあるのではなかろうかというふうに考えております。
#18
○竹村泰子君 それではもう一つお伺いいたしますが、今回の改正で、代表訴訟の訴訟の目的の価額を九十五万円とみなして手数料を一律に八千二百円とした。勝訴した株主は弁護士費用以外に勝訴のために支出した費用で訴訟費用とならないものを会社に請求できるということですが、このような費用面だけの改正で代表訴訟の活性化は少しは期待できるんでしょうか。
#19
○参考人(前田庸君) 実は、この点につきましては経済界、特に経営者の側が非常にこの改正案については強い関心を持っておりまして、あるいは一種の危惧の念も持っているということを、私としては改正要綱が発表されて以来いろんな機会に経験しております。そういうことで少なくとも財界に対しては大きな影響力を持つということは事実でありますので、現実に訴訟が今後ますますどんどん起こるようになるかどうか、そういう期待があるかどうかは別として、不祥事を起こさないようにしなくてはならない、不祥事を起こせば代表訴訟でやられるかもしれない、そういった意味での抑止的効果は私としては相当あるのではないかというふうに期待いたしております。
#20
○竹村泰子君 それでは佐高先生の方にお伺いしたいと思います。
 先生は多くの御本を出版しておられまして、私も二、三読ませていただきましたのですけれども、企業の体質をペンをもってずっと追及し続けていてくださるその姿勢に本当に打たれるんですが、しかし内容的にはもう目を覆うばかりと言いたいような、どうやったら一体企業の体質改善ができるんだろうかともう暗たんたる気持ちになるんです。先生も先ほど、ハエの発生源をそのままにしてハエを追っ払うようなもの、この程度の改正ではどうしようもないんじゃないかというふうな御参考意見を伺ったんですけれども、やはり国民からのチェックのない政治が腐敗する、今政治の腐敗が叫ばれておりますけれども、それと同じように株主からのチェックのない企業は腐敗していくのかなとこう思いますが、私どもが例えば株主だといたしまして、それではどんなふうにチェックをすればいいのだろうかということが問われると思います。
 今回の改正では株主の監督機能と監査役の地位の強化が図られているわけですけれども、これによって企業経営に対するチェック機能は少しは働くようになるとお考えでございましょうか。
#21
○参考人(佐高信君) 先ほども申し上げましたように、マイナス八からマイナス六を進歩と見るというふうにするならば、一応代表訴訟の問題なんかを含めて進歩であるというふうに思います。
 どういうチェック機能の働かせ方があるかということですけれども、私は株主ということになったならば一応株主総会への出席通知というのを出してみたらいいと思うんです。そうしますと企業の方は大変に慌てまして、どういうことをお聞きになるんですかと総務部長とか総務の人間が飛んでくるはずなんですね。そういうことで何で企業というのはこんなに恐れているのかということを一般の人たちが肌で感ずる。これだけ恐れているからにはやっぱり日々変なことをやっているに違いないという現実認識が広まっていくしかないんだろうと思うんですね。
 先ほど政界の腐敗というふうなことを言われましたけれども、私は、腐敗があるにせよ一応選挙で議員というのは選ばれているわけですけれども、社長というのはこれは全然選挙じゃないわけですね。括弧つきにせよ、今、日本というのは民主社会だと言われているけれども、なぜ企業のトップは選挙では選ばれないのか。そういうことを言いますとおまえは企業の現実を知らないとか何かいろんなことを言うんですけれども、私は選挙制でやったとしても今より企業がおかしくなることはないと思うんですね、今がもう底みたいなものですから底が上がるだけであって。
 あるいは、選挙制と、いうふうなものがどうしても難しいんだというふうにいろいろ言うならば、せめて社長リコール制というのを導入できないものか。変な社長はやめさせるというリコール制みたいなもの、そういうふうなことをやらないと私は社内監査役とか、社外監査役ならぬ社内監査役ですね、というふうなものではチェックは難しいんじゃないかというふうな感じを抱いておりまして、ただ、大変申しわけないんですけれども、ちょっと気取って言えばもうほとんど絶望的な闘いでありますので余り希望は抱けないという感じです。
#22
○竹村泰子君 余り希望は持てないということで、私どももちょっと暗たんたる気持ちになるんですけれども。
 今回の改正案では株主の権利の拡充が目的の一つとされているんですけれども、本来株式会社の所有者は株主であり、先生は「会社は誰のものか」という問いかけをしておられますけれども、企業経営では株主の利益が第一にされなきゃならないはずであると思うんです。ところが、日経新聞が一九九一年五月にまとめました「株主に対する社長の意識」アンケート調査の結果によれば、日本企業のトップで収益を優先的に株主に分配すべきであると考えている人は二割にも満たないという非常に衝撃的な数字が出ております。
 また、株主に対する配当は極めて低く、株主総会は短時間のシャンシャン大会、しかも先ほど先生もお触れになりましたように五月、六月など一斉に開かれるというこういう体質で、株主は全く無視されていると言ってもいいのかもしれないと思います。大きな、大変たくさんの株を持っている人はまた別といたしまして、ちょっぴり少しばかりの株を持っているような株主は本当に無視されていると言っても過言ではないのではないか。日本の場合、株主でない会社の経営執行部が形成されていて、会社は社長以下従業員のものというような、あるいは会社は社長のものと先ほどもお話がありましたけれども、そういうふうに個人のものであるとかあるいは従業員のもの、社員のものというふうな様相を呈しているかと思います。
 こういった先生の御本にも出てまいりますような絶えることのない企業の不祥事、それがまた政界の汚濁にも結びついていっている。多額の使途不明金や企業の政治献金を生み出している会社本位主義といいますか、法人資本主義と申しますか、そういうものが日本のビジネス社会にはびこっているこの原因といいますか、改めてまたとりたててお伺いするのもちょっと複雑で大きな、大幅な質問であると思いますけれども、その辺をどうお考えになりますか。
 それと同時に、絶望的だというお言葉が先に出てしまったんですけれども、克服をする道はございますでしょうか、お聞かせ願いたいと思います。
#23
○参考人(佐高信君) そもそも日本の会社というのは株式会社なのかという、そういう疑問さえ出てくる。例えば銀行とか証券というのは、ここに大蔵省の方がおられますけれども大蔵省管轄下の、私はあれは資本主義じゃないと思っているわけですね。出店から何から全部がんじがらめで何の自由もない、しかしそのかわり責任もとらなくてもいいということになっているわけですけれども、そういう意味では本当の意味の資本主義というのは日本にあるのか。
 それを奥村宏さんは法人資本主義という形で、会社は相互にもたれ合う、株式の相互持ち合いに基づく法人資本主義というふうに表現したわけですけれども、その中で決定的に落ちていくのが責任という感覚です。経営者はどんなことをやってもほとんど責任をとらなくていい。あれだけ銀行がでたらめなことをやって、責任をとった人というのは数少ないわけですね、経営者で。そういう意味では法人資本主義が日本の無責任経営のある種の温床となっているということなんですけれども、しかし一方、株式を買った人の方も株主という感覚はほとんどないわけですね、上がればすぐ売るということで。配当が低いから配当目当てにその株を持っていられないということもありますけれども。
 そういう中で、日本というのは本当に資本主義なのかなということを考えてしまうことが多いんですけれども、やっぱり封建的資本主義というか、資本主義なら資本主義という形をとった、しかし根っこは封建社会の封建的資本主義というふうなことなんじゃないか。会社というのは経営者にとっても社員にとっても城という意識が非常に強いですね。前にある経営者が自分の城は自分で守れというふうなことを言ったわけですし、あるいは今経営雑誌なんというものは上杉鷹山を初め、もうほとんど封建社会の武将の話なんですね。社員の方も侍ということですし。
 だから、活路はどう見出せるかというのは非常に難しい話でありまして、やっぱりその大前提として、現在日本は近代資本主義でないという前提を立てるしか、そこから考えるしか道はないんじゃないかというふうな、私は暗いけれども何か歩いていくしかないと思ってやっているわけでして、少なくとも私の生きている間は近代資本主義にはならないだろうというふうな感じを持っております。
 余りお答えになりませんけれども。
#24
○竹村泰子君 日本に資本主義があるのかということで歴史的に、会社は城であり社員は侍であるというふうな意識と今おっしゃいましたけれども、そういった歴史的な影響がいろいろ今に尾を引いているということは確かにあると思います。そういったことを克服して、今度の商法改正も本当に微々たる前進だと思いますけれども、私どもも実を言いますとこの午後も審議をいたしまして、そしてまた引き続き三日にも審議をいたしますけれども、こういった改正がずっと繰り返し十八回、改正に改正を積み立ててきたわけですけれどもちっともよくなっていかないというもどかしさを感じているわけでございます。
 その辺のことにつきまして、商法改正がもっと抜本的なもっと根本的な改正でなければならないのではないかと私ももどかしさを感じつつ審議に当たっているわけですけれども、その辺の商法に関しまして具体的なことで御感想を、もう時間が余りございませんのでお二方から一言すつ聞かせていただいて終わりにさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
#25
○参考人(前田庸君) 商法改正、数次にわたって行われておりますが、それについてその実効性が上がっていないという御趣旨かと思いますけれども、私としましては、例えば総会屋の規制につきまして昭和五十六年改正がなされたわけでございますが、確かに根絶しているとは言えませんけれども、改正前に比べますとこれはもうさま変わりの様子を呈しているという意味で私としては相当の効果があったのではあるまいか。今までは公然と利益供与をしていたのに対して、少なくとも今は仮にしているとしてもこっそり、これもよくないんですけれども、しかもその金額においてももう完全に少なくなってきている。また総会屋の人数ももう激減しているということで、完全ではありませんけれども相当程度の効果は上げているというふうに考えております。
 それから、監査役の件につきましても昭和四十九年、五十六年、このたびまた改正しようとしているわけですけれども、それによる監査役の意識というのは相当違ってきておりまして、少なくともいろんな点について責任を感じながら、どうやったら責任を負わされるのか、どういうふうにやったら責任を負わないでいいのかというようなことについては、例えば日本監査役協会等の団体等で集まりながらいろんな検討を続けている。これも商法改正がもたらしたものではなかろうか。私、商法改正に関与しておりますのでちょっと我田引水的な発言になるかもしれませんが、そういう意味で若干楽観主義的なことを申し上げますけれども。
 ただ、今後ともやはり、余り抜本的な改正をして実務界に大きな混乱をもたらすということも適当ではありませんので、その点では、例えば任期三年ということでもかつてはとても通らなかった改正が今回は通った、それから社外監査役制度でも先ほど実務界の反対で通らなかったものが今回は通ったということで、今度はもしこれで不十分ならまたさらに次の手を打つということで、少しずっといいますか漸進的に改革をしていく。余り大きな改革をするということは実務界に余りにも大きな混乱をもたらすという意味で適当でないのではないか、そういう意味で私としては楽観的な気持ちを持っているということを申し上げさせていただきます。
#26
○参考人(佐高信君) 私、先ほど総会屋の話をしましたけれども、私は一九八一年の商法改正で総会屋の数は確かにいなくなったと、今、前田先生言われたとおりだと思います。
 ただ、企業の暗部というのはなくなっていないわけで、共和事件なんかを見ますとその穴を政治家が埋めているという、政治家の総会屋化という現象が新たに発生しているんだろうというふうに私は思います。
 ただ、先ほどもさまざま今の日本の企業の状態を申し上げましたけれども、日本の経営者というのは大変自信のない動物と言うとあれですけれども人たちでありまして、例えば財テクが流行すればすぐみんな財テクになるわけですね。スズメダイという動物は、一斉にみんなこっちを向いていると、急に何か変わるとばっと逆の方向に動くそうですけれども、それと同じように、何かほかの社がどうなるかというのを非常に見ているんですね。よそを見ているわけです。だから、先ほども前田先生言われましたように経済界の嫌がる部分をこの改正案は含んでいるわけですから、そうするとちょっと変わっただけで大騒ぎしてみんな動くという傾向もまたあるわけですね。
 だから、そこにはかない望みをかけるということしかないだろう。大いなる悲観とともに大いなる楽観を一方で持たないと生きていけない社会みたいでございますので、そんなところを考えております。
#27
○竹村泰子君 どうもありがとうございました。
#28
○猪熊重二君 公明党の猪熊と申します。
 本日は、お二人の先生方には大変いろいろ貴重な御意見ありがとうございました。
 最初に前田先生の方にお伺いしたいと思います。
 今回の監査役制度の改正で、社外監査役という者一名を導入するということになったわけですが、この社外監査役に関連して、今回の改正法とは直接関係ないんですけれども、会計監査人というのを外部から導入したわけですね。外部から導入した公認会計士ないし監査法人による会計監査人制度というものが、果たして導入した後どれだけ機能したんだろうか。結局、社外から導入したこの会計監査人がほとんど機能していないんじゃないか。そうすると、社外監査役もまた外から持ってきたと言ってみたところで同じような結果になるんじゃなかろうかと私は思うんですが、まず、会計監査人制度を導入したことによって少しは変わったかどうか。それでまた、これはやっぱり意味がないとすれば今回の社外監査役はどうなんだろうというような点について御意見を伺いたいと思います。
#29
○参考人(前田庸君) どうもいつも楽観的なことばかり申し上げて恐縮でございますが、会計監査人の監査によって、これは会計監査に限られているわけでございますけれども、やはり監査のやり方というのも基本的に変わったというふうに考えてもいいのではなかろうか。会計監査についての専門家が監査するわけでございますから、単なる監査役が、会計について必ずしも専門家でない監査役が監査をするのに比べると格段にレベルが上がったということが言えると考えております。
 そのことを前提としまして、昭和五十六年の改正におきましては、会計監査人が導入されている会社におきましては計算書類の確定は株主総会にかけないでよろしい、そういうことについてコンセンサスが得られたということになるわけでございまして、そういう社外からの会計監査人の監査というのは実効を上げているというふうに私は考えております。
 それで、ですから一方で、社外から会計監査人が導入されているから社外監査役というのはダブるのではないか、必要性がないのではないかという財界からの反対論もあるわけでございますが、会計監査人の監査は先ほども申し上げましたように会計監査に限られておりますので、それ以外の業務について違法性がある、あるいは著しく不当性があるというような場合には、会計監査人としては監査の対象にならない。そういった点について社外監査役の役割に期待したいというのがこのたびの改正案であるというふうに理解しております。
#30
○猪熊重二君 次に、株主の帳簿閲覧請求権に関して、十分の一の要件を百分の三にしたことによって株主の地位が大分強化されたというふうな趣旨のお話ですが、十分の一の場合であれ百分の三の場合であれ、一人の株主がそれだけの株数を持つ必要がなく、何人かを合わせて改正法によれば百分の三を持てばいい、こういうことになると、帳簿閲覧請求権というのは一株の株主も有している固有の株主権の内容というふうに考えないと、足し算して請求権が発生するということになると一つ一つが一つの株についてその権利があるからそれを集合した比率と、こういうふうに考えざるを得ないと思うんですが、その点についてのお考えを一つと、それから百分の三ということの妥当性についてどうお考えなんでしょうか。
#31
○参考人(前田庸君) 初めの御質問の趣旨を私が理解しておるかどうかでございますが、御趣旨は複数の株主でも百分の三になればよろしいということであれば、個々の一株の株主でも全部集まって百分の三になればその権利を行使できるのであるから個々の株主の権利と考えるべきではないか、そういう御趣旨と理解しましたけれども、そういう御趣旨であれば、そのような理解をするということも可能だというふうに考えております。
 ただ、講学的には株主の権利というのを単独株主権、一人でも行使できる株主権と、少数株主権、一定の要件を満たさなければ行使できない株主権というふうに分けられておりまして、その分け方からいいますと帳簿閲覧権は少数株主権に属するということになるわけでございます。
 それから、百分の三ということが適当かということでございます。果たして十分の一から百分の三に引き下げたことによってどの程度その権利を行使し得る株主がふえたかということになりますと、確かに、それでも恐らく今まで例えば上場会社について数人であったのが万単位ぐらいにふえたということは言えるのではないかと思いますが、しかしそれで改正の意味があるかと言われると確かに問題の点がないわけではありませんけれども、しかし実務界としては百分の三に下げたということについては非常に大きな関心を示しておりまして、保有期間についての要件を追加すべきではないかというような御意見もありましたし、そういう意味では実務界に対しては大きな影響を与えるものである。
 それから、先ほど申し上げましたように、複数で行使できるという場合には、十分の一から百分の三に下げることによって行使しやすくなるということも言えるかと思います。
 それから、一部で言われたことでございますが、独禁法上、金融機関につきましては他の会社の発行済み株式総数の五%を超えて持てないということになっている独禁法上の制限がありますので、現在の十分の一の規制ですと金融機関が一社ではこの権利は行使することができない。独禁法上そういう制約があるわけでございますが、百分の三になりますと独禁法上の制約のもとでもこういう権利が行使できるようになる、そういったメリットもあるかと。
 それから、中小企業にとりましては、この点は相当大きな影響を受けるという意味で、効果はあるというふうに私としては期待いたしております。
#32
○猪熊重二君 もう一点、簡単にお伺いしたいんですが、社債の限度枠を撤廃したという点ですね。確かに、限度枠を設定しであったとしても社債が実際に償還されるまでの担保的な価値はないということはわかるんですが、しかし発行の時点においてはいずれにせよ純資産額を超えて発行できないという意味での担保はあったわけです。
 それに対して今度の社債管理会社の場合には、弁済を受領するとか、弁済受領というのは向こうが持ってくるのを受け取るだけですから、それから債権の保全、これもあれば保全できる。あとは社債の管理をやるということだけで、ほとんど社債権者の債権の実質的な担保という観点から見れば何もないのと同じだと思うんです。まあ、そうかといって先ほど申し上げたように現在の限度枠が償還のときまで担保しているわけじゃないけれども、しかしせめて発行のときは担保していたじゃないか、今度の社債管理会社ということになると最初から最後まで全然担保的な問題がないじゃないかと思うんですが、その点を簡単にお答えいただけたらと思います。
#33
○参考人(前田庸君) おっしゃる趣旨は十分理解できますけれども、しかし現在のような規制の仕方ですと、どんなに優良な企業で社債発行を認めても全く問題がないというような企業におきましても発行限度を超えているというだけで発行が認められない、そういう問題点があるわけでございまして、現状を見ますと、ディスクロージャー制度によって社債を発行するときには証取法上有価証券届出書によって企業の内容が開示される。それから格付制度というのが定着しまして、社債発行の際にそれがどの程度の償還可能性のあるものか、社債ごとにAAから細かなレーティングをつけましてその償還可能性について公示されるということがありますので、社債を購入する者としてはその社債がどの程度安全なものかということにつきまして判断することができるという体制が整っているというふうに考えられます。
 それから、社債管理会社を置いても意味がないではないかという御指摘でございますが、社債発行の時点で甚だ社債償還の可能性の悪い、財務内容の悪い企業の発行する社債につきましては、恐らく社債管理会社を引き受けるということは危険ですのでその可能性は小さいというふうに考えられます。今までのように任意ですとその場合でも発行できますけれども、設置強制をしますとそういった観点からも財務内容の悪い会社の社債発行は防止できるのではないか、そういうふうに考えております。
#34
○猪熊重二君 佐高参考人に、時間が余りなくて申しわけないんですが。
 監査役制度、それから先ほど申し上げた会計監査人制度、こんなものをつくってはあるんですが、これ午後にも聞こうと思うんですけれども、いわゆる証券不祥事という、損失補てんの問題にしても四大証券を中心にして二十一社、総額七百億の損失補てんをしている。やっちゃいけないという証券局の通達があるにもかかわらず、それを無視してやっている。あるいは使途不明金も、これもまた午後聞こうとは思っているのですが、調査している範囲としての昭和六十年以降も調査法人の一〇%前後の法人において毎年五百億前後が使途不明金だ。そうすると、監査役だとか会計監査人というのを中から持ってきたんじゃどうにもしょうがない。どうしてもやる必要があるんだったら全く外部的な監査というふうなことを考えるべきじゃないかと思うんですが、その点についての御意見いかがでしょうか。
#35
○参考人(佐高信君) おっしゃるとおりだと私は思います。監査人と会計士ですかの問題と監査役のダブりの問題なんかでも、ただ私はさまざまな網をかけないと企業というのは暴れ回るものだと思いますから、ダブりを承知でさまざまな網をかけることは必要なんだろうというふうに思います。
 使途不明金なんかの問題にしても、私はディスクロージャーというふうなことが本当の意味で行われていないことが一番大きな問題であって、株主総会さえもさまざまな理由をつけて非公開。ある大手証券会社なんかは、一度はテレビかなんかで外に流していたのを去年やめたとかというふうなことがあるわけですね。だから、そういう面の公開性というものを非常に強めていって、監査役とかなんとかそういう人たちだけでなく、社会全体の企業についてのチェックというか監査というか、そういうものを強めていかないと監査役というのも浮かび上がれないだろうという感じがするわけです。
 私は、先ほども申し上げましたように、一人だけ外からというふうなことは言わずに三人全部外からというふうに言ったんですけれども、そのくらいのことをやらなければ企業というふうなものをコントロールするというか統御することはできないだろうというふうに思います。
#36
○猪熊重二君 ありがとうございました。終わります。
#37
○紀平悌子君 私は、時間が大変短うございますので途中で時間が切れてしまうのではないかと恐れておりますけれども、前田先生に最初お伺いいたします。
 今回の改正での社債発行限度規制廃止は、バブル崩壊直後で、エクイティーファイナンスの弁済のため企業が再度借りかえの形で資金調達をしなければならないことと関連があるというふうに思うんですけれども、投資家保護の視点から見て、ワラント債のときと同様、市場に混乱をもたらすという可能性はございませんか。
#38
○参考人(前田庸君) 経緯から申し上げますと、このたびの社債法の改正は今回のバブル崩壊ということとは全く関係ありません。八年ぐらい前からこの審議はしておりまして、このたび金融制度改革とも関連してぜひ実現しなくてはならないということから、たまたまこの時期に改正法案が提出されたということでございます。私もずっとその審議に参加しておりましたけれども、バブル崩壊の問題とたまたま一致しただけで、それとの関連は全くないということを申し上げたいと思います。
#39
○紀平悌子君 時間がございませんので、佐高先生にお伺いしたいと思います。
 今回の商法等の一部を改正する法律案の「立法の目的」というところが法務省から示されております。「最近の社会経済情勢、会社をめぐる不祥事の発生等にかんがみ、株主による会社の業務執行に対する監督是正機能を強固にしこというのがまず頭に出ておりまして、そして私もいわば今の政治の国民の不信回復の一つのこれは商法の面からの是正かと思いまして、関心を非常に持っておるわけでございます。
 先ほど、大分御専門家でありますし現状を御存じであるだけに非常に暗い見通しを現在の会社に持っていらっしゃるということなんですけれども、過去の改正で総会屋は消えたかもしれないけれども企業の暗部はなくなっていないという点なんですが、それに政治家が取ってかわったような観があるというようなお話だったと思います。先ほどの御質問にありましたけれども、例えば今国民が政治資金規正法というものをようやく意識をして、そして一番問題にしておりますのが表金、裏金の問題ですね。表金は政規法に、いわゆる報告をされたのが表金としますと、そうすると裏金は恐らく使途不明金なるようなものから大部分出ているんじゃないかと類推をしているわけです。
 今回の改正が、この使途不明金というものに対して何か非常に効果的なチェックができるというようなことにつながれば非常にいいというふうに思っているんですけれども、御感想でも結構でございますので、お願いいたします。
#40
○参考人(佐高信君) 例えば総会屋というふうな種族に渡るお金というのは完全に使途不明金の一つだと思いますけれども、そのお金を渡したことがわかった時点で企業の渡した側も捕まるんだというのがさきの改正だったんですね。総務部長なりなんなりが捕まっている例はあるわけですけれども、私はそれを社長も一緒に捕まる、社長連座制みたいにしたら大分変わるんじゃないかと思うんです。総務部長だけが捕まって社長はそのままという例も多いわけですけれども、そうじゃなくて、そういう場合にはトップ、代表取締役も何らかの罪に問われるんだというふうなことになりますと、少なくとも総会屋とかに対する裏金の捻出というのは非常に厳しくなるわけですね。
 そういうところから、また経営者に一つの口実を与えてやらないとだめなんですね。法律がこれだけ厳しいから出せないんですよというふうにしないと、彼らはむしるというか、たかるというか、そっちの方はさまざまに理屈をつけて持ってくるわけですから、いや、これはこういう形でできないんですというふうな口実のための法律みたいなことをやれば、ある程度は、ある程度は少なくできるかもしれないというふうに思います。
#41
○紀平悌子君 四十五分までですのであと一分ぐらいなんですけれども、今のことへの御感想で結構でございますので前田先生からもお願いいたします。
#42
○参考人(前田庸君) 商法上はもちろん使途不明金というのはございませんけれども、恐らく使途不明金に当たるのは、商法では無償の財産上の利益の供与という言葉がございますが、大部分がそれに該当するというふうに思われます。
 この点につきましては、法務省令にあります大会社の監査報告書に関する規則という規定によりまして、無償の財産上の利益の供与については監査役が取締役の違法行為がないかどうかということをチェックして、違法行為があったらそれをそれとして監査報告書に記載しなければならないという規定の仕方がなされております。
 それから、同じく法務省令の計算書類規則におきまして、附属明細書に、無償の財産上の利益の供与というのは営業費用中の販売費ないし一般管理費の中に含まれるであろうということから、それの明細を記載させまして、その記載の仕方については監査役が監査をするのにしやすいように記載しなければならない、そういう規定の仕方をしておりまして、使途不明金というのは会社の内部の監査役にとっては決して使途不明ではなくて、それについてチェックするという商法上の仕組みになっているわけでございます。
 それをどんな細かなところまでチェックするかどうかということはともかくとして、商法の規定を、今のような規定の仕方を遵守するとすれば、監査役がチェックしなくてはならない。私の聞いたところでも、そういう意味で無償の財産上の供与については一定の金額を超えるものは監査役に一々報告をして了承を求める、そういう仕組みにしているということも聞いております。
#43
○紀平悌子君 ありがとうございました。終わります。
#44
○委員長(片上公人君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人に一言御礼を申し上げます。
 本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。
 午前の審議はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時四十五分休憩
     ――――◇―――――
   午後一時開会
#45
○委員長(片上公人君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#46
○竹村泰子君 今回、商法の改正が出ているわけですけれども、戦後この商法の改正は十八回を数えているんですね。前回の改正から二年余り、今回の改正案提出に係る経緯の概要について説明をいただきたいと思います。
#47
○政府委員(清水湛君) お答えいたします。
 商法につきましては、仰せのとおり、戦後非常に頻繁に大改正がされているわけでございますが、特に昭和四十九年に監査制度に関する大改正が行われたわけでございます。その際に、国会等の御質疑あるいは附帯決議におきまして、会社法というものを根本的に見直すべきであるということが指摘されたわけでございます。そういう点を踏まえまして、法務省では昭和四十九年以降、会社法改正に関する根本的な問題点といたしまして、株主総会制度の改善策とか、あるいは取締役及び取締役会制度の改善策、株式制度の改善策あるいは株式会社の計算公開、企業結合、合併・分割、最低資本金制度、大小会社の区分というような根本的な問題について検討を開始いたしたわけでございます。
 そういう検討の過程の中で、昭和五十六年に、主としてその時点において大体見解がまとまりました株式制度、あるいは株主総会制度の改善策、あるいは取締役会の権限強化等に関する改正をいたしたところでございます。もちろん、この機会に四十九年改正ではやや不十分とされた監査役制度についての改正もいたしております。そういう改正を受けましてさらに検討を進めてまいったわけでございますが、平成二年改正におきましては最低資本金制度の導入を中心とする改正を行った、こういうことになるわけでございます。
 今回の改正は、そういうような昭和四十九年以降の商法改正作業の継続の中で、現時点においてまとまった問題点につきましての改正をお願いするというのが基本的な関係でございます。商法につきましてはまだ、先ほど申しましたように、大小会社の区分の問題、あるいは中小会社、有限会社法制の問題、あるいは企業結合、合併・分割、合併については現在会社法の小委員会でもうかなり審議が進んである程度の結論が取りまとめられつつある状況でございますが、そういった各種の問題がまだ積み残されておる状況にございます。
 しかしながら、今回の改正案におきましては、一つには従来から検討を続けてまいった社債についての改善策がまとまったということ、それから四十九年改正以来問題があると指摘されておりました監査制度あるいは株主の権利の拡充というような点について緊急に改正を要する事項を取り上げて改正案の中身といたした、こういうのが今回の改正の経緯あるいは概要でございます。
#48
○竹村泰子君 私などは素人でございますけれども、今、日本的なコーポレートカバテンスというのはきしみ始めている、揺らぎ始めているというふうに思うんです。つまり、それは八〇年代の日本経済の構造が銀行を中心とした金融資本の時代から株式・証券市場を中心とした株主資本の時代へと急速にシフトしてきたからではないかと思います。それにもかかわらず、先進諸国による指摘に見られますように、日本型株式会社の基本的な枠組み、これは旧態依然のままだったのではないか。そのために企業経営におけるチェック機能が失われ、不祥事が多発してくるという困ったことが起きております。すなわち、それはこれまで数度の理念なき商法改正に見られ、そのたびに両院の法務委員会で各種の附帯決議がつけられて今日に至っているわけです。
 そこで、これまでの改正がどのような効果をもたらしてきたのか、どのような点がよくなかったのか、明確な答弁を求めたいと思います。
#49
○政府委員(清水湛君) 企業と申しますと典型的には株式会社ということになろうかと思いますけれども、株式会社というのは、株主から出資をしていただいて、それを会社が資本として活用して利益を上げ、これを株主に還元する、こういうシステムであるというように簡単に申し上げれば言うことができようかと思います。
 そういう出資あるいは資本、企業活動という過程の中で、会社が各種の法令に従って適正な企業活動をするということが求められるわけでございますけれども、そういうような適正な企業活動をする、そしてしかも株主に適正な利潤を配当する、また従業員の生活も守るというようなことのために株式会社の法制がいかにあったらよろしいかという観点から、従来も各般にわたって会社制度のあり方が検討されてきたというふうに私どもは思うわけでございます。
 特に、会社の中で非常に重要な点は、私ども一口に計算と申しますけれども、企業が粉飾経理等をしないで適切な開示をするということが非常に重要な問題であると。不正な行為をしない、不正な経理をしない、そういうような観点から従来より監査制度の強化ということに取り組んでまいったわけでございます。
 先ほど申しましたように、昭和四十九年改正というのは、戦後昭和二十五年改正で入ったアメリカ型の会社法制を抜本的に変える大転換の改正であったわけでございますけれども、多くの大企業における粉飾決算等が問題になったということがその契機となっておるということは御承知のとおりでございます。そういう意味で監査制度の強化ということに努めてまいったわけでございますが、私どもといたしましては、監査役の権限を強化する、あるいは制度についていろんな改善を加えるということによりまして、日本の企業経営というのほかなりの部分にわたって法的にも改善をされてきておるというふうに実は考えているわけでございます。
 ただ、しかしながら時によりいろんな会社をめぐる不祥事が発生する。例えば、昭和五十六年改正の一つの背景となりましたロッキード、グラマン事件というような問題、あるいは今回の改正の一つの背景となっております証券・金融等における不祥事等の問題が起こっているわけでございますけれども、そういう事態が起こっているということは非常に残念なことではある。何とかそういうものを食いとめるための商法の面からのアプローチとしてどんなことが考えられるかということを実は考えて今回の改正案を提案させていただいている次第でございますけれども、基本的にはやはり法的な各種の整備によってそれ相当の成果は一般論として申しますと上げてきておるのではないかというふうに実は考えているわけでございます。
#50
○竹村泰子君 徐々に聞いてまいりますが、成果が本当に上がっているんでしょうかね。
 一九九一年五月二十二日に、東京霞が関の外務省で三日間にわたった日米構造協議、この事後点検協議、フォローアップ会合を終えて、両国の代表団は第一回年次報告を発表いたしました。また、米国側が外国人株主など少数株主権の強化を強く迫った結果、日本は商法改正を公約したというふうに報道されております。
 そこで、米国側が問題視している市場閉鎖性の象徴とも言われる系列問題等の具体的要求について、本改正案検討段階の法制審においてはどんな審議がされたのでしょうか、御説明願いたいと思います。
#51
○政府委員(清水湛君) 日米構造協議におきまして、アメリカ側から日本の会社法にあると思われるいろんな問題点の指摘がされたわけでございます。そういうような指摘の背景といたしましては、御指摘のように、日本の市場が閉鎖的であって、アメリカの方から見るとよくわからないというような問題意識があったのではないかというふうに私どもも思うわけでございます。
 そういう議論の過程の中で、例えば今回の改正案でお願いしております株主の会計帳簿閲覧権についての持ち株要件の問題だとか、あるいは代表訴訟制度の活性化の問題等々について、幾つかの問題点の指摘があったわけでございます。
 実は、そういうような問題につきましては私どもの方でも法制審議会の中で議論をしていたところでございますので、この日米構造協議における年次報告におきましては、私どもは当時法制審議会でしていることを日本側として述べるということでこの決着をつけたわけでございます。アメリカ側の要求によって法制審議会が審議を始めたとか、あるいはアメリカ側に公約をして、公約の履行として今回のような改正案というものがつくられた、こういうふうには私どもは考えていないわけでございます。
 中にはアメリカ側から幾つかの問題が出されましたけれども、そういうものについてはアメリカ側の誤解と思われるようなものも多々ございましたために全く取り上げる余地もないというものもたくさんございました。今回の改正法につきましては、そういう問題の指摘はございましたけれども、公約の履行としてこういう改正案をお願いをするということではないということだけは御理解いただきたいと思います。
#52
○竹村泰子君 今回の商法改正案は、アメリカはともかく、国内でも余り評判がよくない。先ほどの参考人の方々からの御意見にもございましたけれども、ハエの発生源をそのままにしてハエを追っ払っているようなものだと、追っても追ってもまた次から次からとハエはやってくるというふうな感じで内容が骨抜きになっているんじゃないかという有識者の御批判もあります。やらないよりはやった方がましかなというくらいの御批判も午前中ございました。
 この点、それから改正案の国会提出を取り急いだ理由について、具体的かつ責任ある答弁を求めたいと思います。
#53
○政府委員(清水湛君) 今回の商法の改正は、先ほど申しましたように、昭和四十九年の大改正を契機といたしまして始められました会社法の根本的な見直し作業の一つの成果として提案をしたものでございます。もちろん、会社法全部について見直しをして、一括して会社法の全面改正という形で法案の御審議をお願いするということも一つの方法かと思いますけれども、何分にも会社法につきましては問題が多岐にわたっており、それぞれ問題についてのアプローチの仕方というものはいろいろございますので、問題ごとに結論に到達したものについて提案をするということにいたしているわけでございます。
 そういう意味で、先ほど申しましたような社債法についての改善策について意見がまとまったということから今回の改正案をお願いし、また昭和四十九年の監査制度の大改正のいわば補充といたしまして、最近の社会経済情勢というものを踏まえまして今回の株主の権利あるいは監査制度についての改正案をお願いしておるということでございます。そういうわけでございまして、特に国会提出を急いだとかそういうようなことではないというふうに私どもは考えております。
 もとより商法というのは、特に会社法は会社の組織を定める法律でございまして、そういう組織にのっとって企業が日々どういう行動をするかという企業行動を直接規制する法律ではございません。そういうものにつきましては、独占禁止法だとか、あるいは政治資金の面でございますと政治資金規正法というような別途の法律があるわけでございまして、すべて会社法を改正すれば企業行動まで適正化されるということにはなりがたいということは、これは商法の持っている役割のいわば限界として私どもも認めざるを得ないというふうに考えているわけでございます。
#54
○竹村泰子君 商法は実務的な法律ですから、改正案については実務家の理解と支援の得られる内容にすることが要請されると思います。一方、商法は民法の特別法、基本的な法律としての規範性も要請されているというふうに思います。
 そこで、本案提案までの過程において、いわゆる関係各界との意見の調整はどのように行われたのか。特に、監査役制度の改正については日本監査役協会からの要望書、平成四年十一月ですか、が出されるなどの経過がありましたし、また日米構造問題協議の最終報告書で会社法の見直しなどが取り上げられておりまして、それらの経緯もあったので、これらに対する関係者の動き、それから評価、経緯なども含めて御報告願いたいと思います。
#55
○政府委員(清水湛君) 今回の改正のうち、株主の権利の拡充に関する問題、それから監査役制度の改善に関する問題、それから社債制度に関する問題、大きく柱を分けますと三つあるわけでございます。
 社債制度につきましては、もう古く昭和三十年代から各方面の意見というものがあるわけでございまして、経済界その他関係省庁等の意見が積み重ねられましてこの改正案の中身になっているわけでございます。
 また、株主の権利の拡充あるいは監査役制度の問題につきましては、御指摘のような昭和四十九年改正を契機としてつくられました日本監査役協会、これは大手の企業の監査役さんほとんどすべてを網羅して組織されている会だというように承知いたしておりますけれども、そういうようなところで現実に監査役として監査役の業務を日常行っている方々の意見というようなもの、さらには経済関係の諸団体等の意見というものも踏まえ、さらにそういうものを前提とした学会、弁護士会等の意見も聴取しながら法制審議会において議論を重ねていただきまして、最終的に今回のような改正案の中身に皆さんの意見が一致した、こういうことになるわけでございます。
 もちろん、そういう審議の過程におきましては、日米構造協議でもこういったたぐいのことが問題になったということは私ども法制審議会に報告しているわけでございまして、そういうことも参考にされたというふうに理解しているわけでございます。
#56
○竹村泰子君 いろいろお話がございましたとおり、一九七四年、監査制度を中心とする改正が行われ、衆参両院の法務委員会の附帯決議を受けて法制審議会等において会社法の全面改正、八一年には株式制度と会社の機関あるいは会社の計算公開に関する改正、また九〇年には小規模かつ閉鎖的な会社にも適合する法制度の整備、債権者保護などなど、会社の資金調達方法を合理化するための改正が行われてきました。
 九〇年の改正において、取り上げないこととされた計算書類の登記所における公開制度、あるいは中規模会社の計算書類の適正担保の制度、それはその後どのように検討されたんでしょうか。
 また、今回の改正案の柱の一つは株主による会社の業務執行に対する監督是正機能の強化というか、株主のしっかりした権利というか、そうであるにもかかわらず、なぜ今回の改正案には含めなかったのか、今後どのようにするおつもりなのか、お伺いしたいと思います。
#57
○政府委員(清水湛君) 会社の計算の公開というのは、非常にこれは重要な問題だというふうに指摘されているわけでございまして、従来からこれをどういうふうな形で実行させるかということが大変な問題になっていたわけでございます。
 現在の商法によりますと、会社は特に貸借対照表、損益計算書等を官報とか新聞に公告をしなければならないということになっているわけでございますが、それがほとんど守られていないという実情にあるわけでございます。株式会社が現在百三十万社あるというような状況のもとで、そのすべてにこのような義務の履行を求めるということは大変難しい問題だというようなこともあるわけでございます。
 そういうようなことから、この平成二年改正に際しましては、法制審議会におきまして、少なくとも資本金三千万以上の会社につきましては、貸借対照表、損益計算書というような計算書類を登記がされておる登記所に提出して、それを一般に公開するというようにしたらどうかというような答申をいただいたわけでございますけれども、現実にはその適用の対象となる会社、これは中小会社が中心ということになるわけでございますが、これが二十万社近いというような状況になるわけでございまして、そういった中小企業の団体の方から、現段階においてそういった会社の計算書類を登記所で公示するということについてはまだいろいろ解決されなければならない問題があるというような指摘がございまして、最終的には平成二年改正の中身に盛ることができなかったというような状況があるわけでございます。
 そういった中小企業の実情というようなことに加えまして、一つには登記所で公開する以上そういう計算書類が正確なものでなければならない、その正確性を担保するためにはやはり専門家がそういうものをチェックするというシステムがなければいけないというような議論があるわけでございます。現在、商法特例法上の大会社については公認会計士あるいは監査法人による監査というものがあるわけでございますが、それについては問題はないわけでございますけれども、二十万社に及ぶ中小会社については現在そのような制度がない。
 そこで、じゃそういう会社の計算書類を公的にチェックするようないわば会計調査人というべき制度をつくったらどうかというようなことが議論になったわけでございますけれども、問題はその会計調査人に一体だれがなるのかというようなことにつきまして、監査を専門の業務といたします公認会計士の方々、あるいは税務申告の代理を業とします税理士の方々等の意見というものがいろいろと違う面が出てまいりまして、なかなか意見がまとまらないというような状況に現在のところあるわけでございます。
 私どもといたしましては、そういう意見の対立はあるといたしましても、中小会社における計算の公開というのは、やはり株式会社制度というものを存続する上で大変重要な基本的な制度であるというふうに考えておるわけでございまして、引き続きこの問題については関係方面と折衝を重ねておる状況でございます。
 まだ今回の改正案でもこれを盛り込むことができなかったというのは非常に残念でございますけれども、先ほど申しましたように、会社法制について、大会社、中会社、小会社というような区分法制を考える、あるいは有限会社法制というものを全面的に見直す、そういう過程の中で会社の計算の公開という問題は、これはもう避けて通ることができない重要な問題でございますので、引き続き検討を続けていきたい、何とか早い時期に結論を得るように努力をいたしたいというふうに考えているところでございます。
#58
○竹村泰子君 先日の峰崎委員への答弁では、今おっしゃったように、関係各界の意見調整がつかないからというふうにお答えになっておりますが、今、民事局長もおっしゃいましたとおり、債権者保護の直接具体的な手段は外部監督などその適正を担保する制度と内容の公開ということ、これによって会社の経理内容とか資産状況とかを債権者が正確につかむことができるという意味で非常に重要な部分だというふうに思いますので、今前向きな御答弁がありましたけれども、次の改正時にはぜひ盛り込んでいただきたいと強く要望をしておきます。
 次の質問に移りますが、一九九〇年の改正案議決の際の当委員会の附帯決議におきまして、「今後の法改正に当たっては、より一国会社全般の実情に配慮しつつ、実効性ある立法措置を講ずること。」というふうに求めております。
 大臣にお伺いしたいと思いますが、今や会社の社会性に着目した機能的、効果的な制度改正の必要性、あるいは経済の国際化等、企業経営環境の激変と申しますか、そういうことに配慮し、二十一世紀を展望した新たな視点からの企業法制を構築していくための会社法の抜本的な見直し、もうさっきからいろいろ申し上げておりますとおり、二年ごとの改正というふうなことではなくて抜本的な見直しを図るべき時期が来ているんじゃないかと思うんですけれども、大臣の御所感と今後の対応をお伺いしたいと思います。
#59
○国務大臣(後藤田正晴君) 御質問のとおり、平成二年の商法改正の際の附帯決議、おっしゃるように実効性のある制度の確立と国際的にも調和のとれた制度とするために、六項目ばかりの附帯決議があることは承知をいたしております。
 私は先ほど来の質疑応答をお伺いしながら、会社法といいますか商法、こういうものは企業そのものの基本的な重要な骨組みを規定をするものであるだけに、私はやはり安定性というものが一つ必要なんじゃないかと、こう思いますね。しかし同時に、終戦後の経済の大変な変化、殊にまた国際社会の中における日本の会社のあり方に関連しての外国からのいろんな要請、こういったものがあるわけでございますから、そのときどきの大きな環境の変化にやはり対応していかなきゃならぬなと。そういう面から、一方で安定性を必要としながら、同時にまた変革に対しては機敏に適応するということが何よりも大事だなと、こう思うわけでございます。従来の経緯を見てみますと、戦後ずっと大変な商法改正が何回も行われているというのは、やはりそういうことを考えての改革ではなかったのかなと、かように考えるわけでございます。
 そこで、今回のこの改正もそういった中で、ともかく基本法でございますだけに各方面の意見が必ずしも一致しません。基本的なところで非常に対立する意見が出る。例えば会社の自己株式の取得ですか、こういう問題も二万では大変強い要請があるんだけれども、一方ではとてもじゃないがそんなの今困る、こういったような意見があるわけですね。それは一例ですけれども、そういうような全く相反する意見の対立がある。あるいはまた、アメリカ側から構造改革等でいろんな要請があり、私自身前川レポートをつくったときに参画したわけですけれども、その後も依然として日本の経済社会の閉鎖性というものに対するいろんな面からの要求がある。ところが、これを一挙にやろうとするとこれまた国内では大変な反対意見もあるといったようなことで、基本法であるだけにいろんな厄介な面がございます。
 しかし、私どもとしては、実態をよく見ながら、ともかくおおよそのこの作業に対する御理解が得られた段階で逐次改正をしていくという道を探らざるを得ないのではないかなと。こういうことで今回もまた、これ二年前ですかね、改正しておって、さらに今度は債券の発行限度の問題であるとか、監査制度の充実であるとか、あるいは株主の代表訴訟の問題であるとかといったようなことで、ともかくまず意見の一致を見て、なるほどここらは心配ないな、やるべきだなということをお願いしておるということでございますので、今後も、今、竹村さんおっしゃったように残っておる課題がたくさんあるわけですから、それらについては政府として皆様方の御意見等も十分踏まえながら対応をしていきたい、これが基本的な考え方でございまするので御理解を賜りたい、かように思うわけでございます。
#60
○竹村泰子君 けさほど参考人の御意見をお聞きいたしました。前田庸さんと佐高信さんをお呼びしたわけですけれども、企業の社会性、公共性ということについてお伺いをしたいと思うんです。
 漠然としたお尋ねで恐縮ですけれども、参考人の佐高さんは「会社は誰のものか」という御本をお出しになって問いかけをしておられるんですが、企業の社会的責任、企業倫理といったようなことで大臣の御所見を伺いたいと思います。
#61
○国務大臣(後藤田正晴君) 企業というのは、前回でございましたかね、御質問がたしかあったと思いましたけれども、やはり一つは株主に対して企業経営というものはきちんと責任を持たなきゃならないだろうと。もう一つは、やっぱり社員を抱えておりますから、社員の生活というものについては企業経営者はしっかりひとつ責任を持ってもらわなきゃ困るし、同時にまた、取引をやるわけでございますからお互いの取引相手に対する信用といったような面もきちんとしてもらわなきゃならないと。いろんな会社の私は社会的責任があると思うわけでございますが、こういったような観点も取り入れながら、やはり何といいますか、一番私は率直に日本の会社で足りないのは、少し株主を軽んじておるんではないかなという気がするんですね。
 そういうような意味合いから、今回の改正の中の例の代表訴訟ですかね、重役に対しておかしいではないかという訴訟を会社にかわってやれるといったようなものを株主に認めるとか、あるいは監査制度等、こういったような企業の最近のあり方に対する一つの社会的責任という観点から今回のような改正案も法務省としては提案をした、かように考えるわけでございます。
 当然のことながら違法な行為なんというものは、これはもう初めから問題にならぬ話でございまして、それらの点については既に現在までの会社法の中にきちんとしておりますから、それはそれなりにきちんと守ってもらうし、また当局としてもそれなりの対応をしていかなきゃならぬ、かように考えておるわけでございます。
#62
○竹村泰子君 大臣は企業の政治活動のあり方、特に企業献金の是非だとか、いわゆる使途不明金の最近の動向、そういうことについてどんなふうにお考えになっておられますか。
#63
○国務大臣(後藤田正晴君) 私は、長い間実は選挙制度の問題とか、あるいは政治活動の問題に党の中でも従事をしておったんですが、竹村さんと少し違うところは、ともかく最近企業のいろんな不法行為がありますから御意見はよく理解はできるんですけれども、やはり企業というものも法人格を持って、そして同時に個人と二つが並んで今の日本の社会というものはでき上がっておるのではないのかと。
 だとするならば、企業そのものも、なるほど投票権はありませんよ、投票権はないが、政治参加の一つとして企業献金というものをあながち否定をする私は立場には立っておりません。しかし、もちろん節度を守ってくれなきゃ困るんですよ。最近のような度外れなことは認めるわけではありませんけれどもね。だから、やはり企業献金というものはあってしかるべきだと。
 しかし、私は率直に言ってこれは政党にだんだん集中していくのがいいのではないかなと。個人に対する献金というものはこれは漸次改革をしていく、減少していくとでもいいますかね、そして企業に集中していくと。むしろ個人の献金が非常にいいんだ、こういう御主張があるんですが、私はこれは余り信用しないんです。個人の方の会計は非常にこれはルーズなんですよ。会社の方はこれは企業会計できちんとしなきゃならない面があるんですから、やはり企業それ自身は先ほどおっしゃったようにあらゆる面でできる限りのディスクロージャーはしなきゃいけませんよ。そういう観点で個人献金と企業献金についての物の考え方は私は野党の皆さん方とは考え方が多少食い違っておるところがあると。そして同時に、このことは今さら持ち出すまでもありませんが、八幡製鉄事件での判決があるんだといったようなことも私の頭の中にはあるわけでございます。
 もちろん、そうは言っても、使途不明金なんというものは、これはもう税の執行上の取り扱いの問題であって、会社法にそんなものがあるわけのものではありません。したがって、これら使途不明金の扱いを税の執行上ある程度認めざるを得ないという場合にも、これが会社の違法な支出であった、違法であったということになると、これは既に今日の会社法の中に私はきちんとした罰則規定があるんではないかなと、こう思います。
 したがって、使途不明金問題の観点から、これについて会社法の上で何かきちんとしたものをやったらどうだという御意見があるのも承知しておりますが、これは私は、会社法の問題でなくて、むしろこれは政治資金の世界の中で、あるいは選挙法なりそういったものの世界の中で政治資金に関する問題としてきちんと整理をしたらどうであろうかと。ちょっと会社法の場合には世界が違いはしないのかな、かように考えているわけでございます。
#64
○竹村泰子君 四月二十二日の私の質疑に対する国税庁の答弁で、また衆議院法務委員会の会議録を見ますと、年平均五百億円を超える使途不明金の存在が明らかになりました。
 しかし、法務委員会の議事録を見ますと、これは所管する法人三万三千七百二十八社のうち調査したのは一四%の四千七百二十二社にすぎない。使途が政治資金と見られるものが年平均十七億円程度とのことですけれども、資本金一億円以上の法人の実地調査の割合は、今申し上げましたように一五%程度と言われております。年平均五百億円を超える使途不明金の金額は実際には氷山の一角にすぎないと、こういうふうに思うんですね。今、大臣大分お答えくださいましたけれども、このような実態からいえば、罰則の強化が即現状の改善にパラレルには結びつかないとは思いますけれども、しかし何らかの処置もとらず手をこまねいていることは許されないという思いがいたします。
 そこで、税法上の問題とは別に、商法の取締役の忠実義務でありますとか、あるいは監査役によるチェック体制の確立、この監査役制度の問題については後でゆっくり質問をいたしますけれども、そういった観点から、商法における規制のあり方、これを根本的に検討するべきであるというふうに思いますが、大臣及び関係当局の御所見を求めたいと思います。
#65
○政府委員(清水湛君) 先ほど大臣の方からもお答え申し上げましたとおり、使途不明金という概念は商法には実はないわけでございます。商法におきましては、そういう計算関係の帳簿・書類には事実を正確に記載をせよということになっているわけでございます。したがって、例えばいわゆる使途不明金と税法上されるものにつきましても、販売促進経費だとか、あるいは交際費だとか、あるいは諸会費だとか、いろんな対策経費というような形でそれぞれの費目の性質上許容される限度において適正に帳簿に記載されておるということになるわけでございまして、監査役としてはそういう帳簿を帳簿として検討し、その経費の支出を確認するということになるわけでございます。
 ただ、しかしながらこれは税法上の問題で、私どもは正確に知り得ないところではございますけれども、会社の営業行為としてそういう費用が支出はされたけれども、税法に対する関係におきましては支出先を明らかにするとそちらの方に税金がかかっていくというようなこともありまして、あるいはその使途を税務当局には明らかにしないというようなこともあり得るのかなと、そういうものが俗にいわゆる使途不明金と称されるものではないかというふうに私どもは思っているわけでございます。
 したがいまして、商法の立場から申しますと、使途不明金について商法の規制をするということではなくて、株式会社の計算のまさに根本原則である経費の支出が正確に事実に即して帳簿に反映されているかどうかということをチェックする、もしもそれが不正な事実である、不正経理がされているということでございますと、それは商法上既に罰則の制裁があるわけでございます。また、そういうことによりましてこの会社に損害を与えるというようなことになりますと取締役の責任も生じますし、あるいはそういう不正経理を監査役が見逃した、故意、過失に基づいて見逃したということになりますと監査役についても既に商法上の責任が生ずるということになるわけでございます。
 そういう意味におきまして、不正経理というものが許されない、そういうものに対するいろんな責任とかチェックシステムというものは商法上は既に整備されておるというふうに実は考えているわけでございます。
 問題は、使途不明金ということではなくて、不正経理をチェックするという意味で監査役制度の充実強化を図るとか、あるいは今回お願いしておりますような監査役会制度とか、あるいは社外監査役を導入するとか、あるいは監査役の任期を伸長して監査役の地位、身分の安定を図ってより実効性のある監査ができるようにする、こういうようなことが非常に重要なことになるのではないかというふうに実は考えているわけでございます。
#66
○竹村泰子君 今の局長のお答えばもう全然いただけませんね。だって会計監査も含めて監査役制度がきちんと機能してチェックしておれば、今回のようなもう目を覆うばかりの使途不明金、やみ献金と言われる、政治献金主言われるそういった多くのものは出てこなかったわけでしょう。だから、それはおかしいと思うんですね。
 八一年の商法改正の際にも、我が党の委員が使途不明金の商法による法規制の必要性を指摘しております。そのときに、これに対して当時の中島民事局長、「御指摘のような問題も将来の検討課題としていきたい」、また奥野法務大臣、「引き続いて検討していきたい」と答弁しておられます。それから十年以上、現在も当時と全く同一の問題を提起しなければならない。この現状からいえば、使途不明金はもう税法の問題であると繰り返し衆議院の法務委員会でもお答えになっておりますけれども、もはやそういう逃げはできないんじゃないですか。
 再度、商法による規制の必要性、今、局長は商法上は整備されておりと涼しい顔しておっしゃっていますけれども、そんなこと国民の前に言えるんですかね、これ。ぜひその必要性についての対応の方法について、大臣の御決意も伺いたいと思います。
#67
○国務大臣(後藤田正晴君) 私はおっしゃるような不明朗な金が会社から出ているということを容認しているわけじゃありません。ただ問題は、それをきちんとさせる世界が違うのではありませんかと、別の世界できちんとやるべきではないのかということを申し上げておるわけでございます。この点は御理解をしておいていただきたい、こう思います。
#68
○竹村泰子君 よくわからないんですが、世界が違う、確かに商法じゃなくて税法上の問題であるというふうな、そういう世界が違うという言い方をされておられるんでしょうか。だとすると、十二年前の中島民事局長、奥野法務大臣、引き続き検討していきたいと、これは言い逃れの詭弁でしかなかったわけですか。
#69
○政府委員(清水湛君) 先ほどから申し上げておりますように、商法の規定の中に使途不明金という言葉を持ち込むことは私はできないのではないかというふうに考えるわけでございます。
 ただ問題は、不正経理は絶対許されないわけでございます。例えば政治献金の財源をひねり出すために事実に反する会計処理をする、これは政治献金でなくても、あるいは別途いろんな資金に充てるために裏金として不正な経理をする、こういうことはもう絶対商法の立場からも許されないわけでございます。そういう不正経理をどうやってチェックするか。不正経理ということがわかればそれに相応する罰則なりあるいは責任というものは明確でございますけれども、委員御指摘のように、まさにそういう不正な経理を事前にチェックするシステムというものを考えるということが会社法というものに課せられた重要な責務だというふうに私は思っているわけでございます。
 そういうような観点から、昭和四十九年、これは実は山陽特殊鋼等の大企業の粉飾決算、不正経理による会社の倒産でございますけれども、そういうものを契機といたしまして、監査制度の強化だとか、あるいは大会社については公認会計士というような外部監査の制度を強制するというような形、さらには昭和五十六年の改正によりまして、監査役がいろいろみずから取締役会を招集していろんな調査をするとか、あるいは会社の従業員を直接呼んでいろんな事情を聴取するというような権限を昭和五十六年改正で認め、さらに今回の改正では、身分の安定を図って遠慮なく会社の執行部に物が言えるような状況をつくるとか、あるいは監査役会というような制度をつくりまして、一人一人の力はなかなか行使しがたいけれども、監査役会というような組織で行動をするというような形で会社のいわば不正経理をできるだけチェックできるようなシステムをつくり上げようということで今回の改正のこの案もでき上がっているわけでございます。
 おっしゃるように、そうであるにもかかわらず会社をめぐる不祥事件と申しますか、恐らく不正経理が行われていることもあるのかもしれませんけれども、とにかくそういった形での不祥事件が起きておるということは本当に残念なことだというふうに私ども事務当局としても思うわけでございます。しかし、商法でできる範囲の措置を講ずる、商法の生命である不正経理をなくす、会社の計算の適正を期するということが商法の一つの大原則でございますから、そういう観点からやはり一歩でも二歩でも制度の充実強化を図っていかなければならない、こういうふうに思っているわけでございます。
 今回の改正案もそういう意味で、効果がどこまであるのかと言われると、私どももここまでありますというふうにはなかなか申し上げにくい点があるわけでございますけれども、一つの改善方策であるというふうに考えている次第でございます。
#70
○竹村泰子君 全然納得のできるお答えではないけれども、ちょっと切り口を変えてお尋ねをしてみたいと思います。
 例えば、改正案は株主による会社の業務執行に対する監督是正機能をより強固にするために所要の改正を行うと。その前提となる株主総会の活性化についてお伺いしたいと思います。
 一九八一年の改正で、株主による議題の提案の制度の新設及び株主権の行使に関する利益の供与の禁止等により、株主総会の運営を適正化するための措置がとられました。これは、株主総会が文字どおり株主の総会として活性化が図られることを期待されての改正であるというふうに理解いたしますけれども、法の期待した活性化の状況は果たしてどうなんでしょうか。
 九三年二月期決算の株主総会は去る五月二十七日に集中して行われたと聞いております。三月期決算の株主総会は六月末に集中的に行われるというふうに聞いております。先ほどの、午前中の参考人の方も、総会屋一掃をねらって一斉に株主総会を開いていると。しかし、こういう形で総会屋対策をしたかのように見える株主総会を一斉に集中的に開いているということは、もう株主のはしごというか、そういうこともできないようになっているわけでして、多くの会社の株主である方というのは大変困られますし、先ほどの参考人の御意見にも、こういう理不尽な企業のあり方をほっておいて商法の改正なんてということを言っていただいてもというふうな厳しい御意見があったんですけれども、株主総会の最近の状況について御説明願えますでしょうか。
#71
○政府委員(清水湛君) 昭和五十六年改正で御指摘のように株主総会制度の改善というのをいたしたわけでございます。五十六年改正の非常に大きな重要な柱の一つでございました。
 株主総会の活性化ということをねらいといたしまして、株主の質問権と申しますか、要するに説明請求権だとか、あるいは株主の提案権、一定の持ち株要件は必要といたしますけれども提案権を認めるというような形、さらにそれまでの株主総会というのがいわゆる総会屋に占領されておりまして、善良な株主は発言をすることができないというような指摘もございましたので、この総会の議決権の行使に関して金品の授受をいたしますとこれが犯罪となるというような非常に重要な改正をいたしたわけでございます。そういうようなことによりまして株主総会というものほかなり正常化されてきつつあるというふうに私どもは認識いたしております。
 ただしかし、御指摘のように、これは最近の新聞等でも問題とされているところでございますけれども、実際問題としては株主総会が集中してしまう。恐らくことしの三月期決算の株主総会というのは六月末に集中すると思います。昨年の例で申しますと、六月二十六日に三月期決算の九二・六%の会社が株主総会を開いておるというような状況になっております。
 この六月末に集中するというのは、これは商法の面から申しますと、議決権を行使し、あるいは利益の配当を受け得る株主を特定するために株主名簿の閉鎖ということができるということになっているわけでございますが、三月三十一日決算の会社でございますと四月一日から六月末まで株主名簿、名義の書きかえを提出するというような措置を講ずることが認められているわけでございまして、そういう意味で名義の書きかえ停止可能期間中に総会を開かなきゃならないという一つの制約があるわけでございます。
 他面において、四十九年改正におきまして、監査の手続が非常に厳格になりまして、監査役における計算書類の監査、あるいは大会社の場合ですと会計監査人による監査というようなものが四週間あるいは八週間というようないろんな期間の制約のもとに要求されておるということで、商法のいろんな監査に要する諸期間というものを計算し、かつ株主総会の二週間前までに株主に招集通知あるいは参考書類を送付しなければならないというような期間計算をいたしますと六月末にある程度集中せざるを得ないというようなことが言えるわけでございます。それがことしの場合ですと六月二十九日とか、そういうような日が集中される日だというようなことが言われております。
 おっしゃるように、確かに一定の日に集中しますと、いわば総会屋ではない普通の善良の株主が株主総会に直接出席して取締役の方からいろんな説明を求めたいというような機会が奪われるのではないかというような指摘もあるわけでございます。
 商法の面から申しますと、現実の株主総会というのはほとんどが委任状によって出席をする人たちでございまして、現実に出席するという株主は全体の株主の中でごくわずか、半分以下というのが実情のようでございますけれども、それでも現実に出席をしたいという株主にとりましてはこの機会が奪われるということにもなるわけでございます。代理人による議決権行使というようなものも認められておりますので、株主としての権利を通常の場合行使するということについては支障はないと思いますけれども、直接説明を受ける機会が奪われるという意味においては問題であるというふうに私どもは考えているわけでございます。
 ただしかし、これをどういうふうに改正すればよろしいかと。例えば株主名簿の閉鎖期間を三カ月というふうにしないでもっと長くするということも考えられますけれども、そうしますと今度は新しい株主がこの名義を書きかえて会社に対して株主権を主張することができないというような、逆に今度は株主の権利が阻害されるというような問題があるわけでございまして、この辺の調整が非常に難しい問題ではないかというふうに実は考えているわけでございます。
#72
○竹村泰子君 確かに難しいことも多くあると思います。しかし、株主総会が活性化されていれば代表訴訟というようなことは起きにくいわけですし、乱訴の懸念も少ないと考えられますけれども、今回の改正理由を含めて、それらとの関連を御説明願いたいと思います。
#73
○政府委員(清水湛君) 株主総会を活性化させて、そこで十分な議論がされればいろんな誤解とかあるいは疑問も解消して、無用な争いとか訴訟の提起ということもなくなるということは確かに御指摘のような面があると思います。
 私ども実際問題として株主総会の担当実務者に時折実情等を聞くわけでございますが、最近は書面による事前質問、つまり説明要求というのもかなりされているようでございまして、そういう意味での株主総会における質疑応答というものは従前に比べますと相当活発にされておるというふうに思うわけでございます。
 ただしかし、そういうその事前説明要求をする人たちがある特定の、例えばいわゆる総会屋と言われるような人たちに実際問題としては偏っているのではないかというような指摘もあるわけでございまして、その辺の実情は必ずしもつまびらかにはしませんけれども、いずれにいたしましても、株主総会というのは会社の最高の意思決定機関でございますから、そこで会社の実情等について株主に十分な説明がされる、そういう説明を求めたいと思っている株主に対しましては十分な説明がされるということがやはり大事なことではないか、そういうことによって無用な争いというものも解消される面があるということは、これは否定することができないというふうに考えているわけでございます。
#74
○竹村泰子君 商法はシステムづくりでありまして、運用は企業の責任であるというふうなことが監査役制度の改正に関して峰崎委員への民事局長の御答弁でした。
 理論的には株主総会の活性化についても同様なのかもしれませんけれども、法律論を離れて、大臣、株主総会の活性化の一番大切なところは何だとお思いになりますでしょうか。法務大臣の御所見を伺いたいんですが、株主総会を活性化させるための一番大切なところは何だと思われますでしょうか。
#75
○国務大臣(後藤田正晴君) 難しい御質問ですけれども、やはり私は日本の株式会社、これは本当は大変、どこの国でもそうかもしれませんが、民主的なんですね。しかしながら、実際の株式会社の運営というのはこれくらい過当支配の制度はない。そして、同時にまた日本の場合には株主権というもの、株主というものが大切にせられていない。しかもそれが当たり前であるという株主の意識なんですね。だから一番大事なことは何かと、こういう御質問であれば、投機の対象としての株主でなくて、これはあくまでも自分たちが金を出し合って会社の経営を一定の専門家に任してあるんだ、あくまでも我々の会社なんだといったような意識の問題が私は日本の場合は一番大事なのではないかなと、かように考えます。
#76
○竹村泰子君 大臣がおっしゃったとおりだと思うんですけれども、それがなかなか実現していかないというところなんですよね。
 代表訴訟という問題が出てまいりましたけれども、今回代表訴訟の改正をやっておられます。株主の代表訴訟の目的の価額を九十五万円にみなす改正が行われることとなっております。これに関してお伺いをしたいと思いますが、改正の目的は何なんでしょうか。本会議における法務大臣の御答弁では、「今回の改正はその訴訟の訴額に関する疑義を解消するためのもの」というふうに言っておられます。そうしますと、提案理由で言っている株主の「代表訴訟の遂行に伴う株主の負担を軽減するため」としている理由はむしろ反射的な効果であって、主たる理由ではないということなのでしょうか。どうでしょうか。
#77
○政府委員(清水湛君) お答えいたします。
 主たる理由がどうかと言われるとちょっと私もあれなんでございますけれども、要するに九十五万円とする考え方と請求金額によるという考え方がございまして、現に裁判所の取り扱いが分かれておる、これはどっちかに決めなければならない、そうしないと窓口でトラブルが起こるのではないかということでございます。
 そういうようなことから、こういう重要な問題についてはどちらかに決める必要がある。その場合にどちらをとるか、どちらの方の解釈にくみするかということでございますけれども、九十五万円説も従来あったわけで、かなり有力だったわけでございますから、特に裁判所の書記官のグループが書いた書物ではもう九十五万円説だというふうになっているわけでございますので、そういうことから九十五万円説に立った法改正をしたわけでございます。
 ですから、従来から九十五万円だというふうに考えている人たちから見ますと、これは当たり前のことを法律に書いたという理解でございましようし、そうじゃなくて請求金額によって訴額を算定すべきであるという方から見ますと、これは大変な株主にとっては負担軽減措置である、こういうような評価になるというふうなことになろうかと思うわけでございます。
 そういう性格を持つものでございますが、私どもといたしましては、九十五万円説をとることによって疑義を解消するということが第一であり、同時にそういった意味では株主の負担軽減にも通じていく、こういうふうにとらえましてそのような御説明を申し上げているわけでございます。
#78
○竹村泰子君 どちらが大事だとかどちらが大事じゃないとかいうことではなくて、両方とも大切なことだから両方述べてきた、こういうことですか。
 それでは、住民訴訟についてお伺いいたしますが、地方公共団体の長などの違法、不当な公費支出、これに対して地方公共団体にかわって損害賠償、不当利得の返還等を求めた最近の裁判事例、この件数をお尋ねしたかったのですけれども、ちょっと調査のところでは件数は出せないというふうな、出せないというよりか出てこないというふうなお話だったんですが、最近の裁判事例などから少しお話をお願いできますでしょうか。
#79
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 今、お話しのございました住民訴訟でございますが、これにつきましては、特に今回の株主代表訴訟との関係では訴額というのが問題になろうかと思います。
 これにつきまして、実は最高裁判所でリーディングケースとでも申すべきような判決がございます。これは昭和五十二年の三月三十日、最高裁判所の第一小法廷の判決でございます。
 この住民訴訟につきましても、今お話しのございましたように、地方公共団体が例えば地方公共団体の長等に対しまして損害賠償を求める、こういう訴えでございます。その訴額につきまして従来はやはり二つの説がございまして、一つは例えば百万円の損害賠償請求の場合ですと百万円を訴額として印紙額を計算する、こういう説もございました。それから逆に、いやそういうことではなくて、この訴額の算定は非常に難しいんだ、だから算定不能あるいは算定が著しく困難であるというようなことで訴額を決めるべきだ、こういう説があったわけでございますが、この五十二年の三月三十日の判決はこのように言ったわけであります。
 この住民訴訟における「訳を以て主張する利益」、これは地方公共団体の損害が回復されることによってその訴えの原告を含む住民全体の受けるべき利益がこれに当たると見るべきである。このような住民全体の受けるべき利益、これはその性質上、勝訴判決によって地方公共団体が直接受ける利益、すなわち請求に係る賠償額と同一ではあり得ず、他にその価額を算定する客観的、合理的基準を見出すことも困難である。したがって、結局、これは非財産権上の請求の訴えの訴額に関する民事訴訟費用等に関する法律四条二項に準じて、その価額は三十五万円とすることが相当であるというふうに言ったわけであります。
 この三十五万円と申しますのは、昭和五十三年当時は算定不能の事件は三十五万円ということになっておりましたが、その後昭和五十七年に法律が改正されまして、現在ではそれは九十五万円ということになっておるわけであります。
 したがいまして、この昭和五十三年の最高裁判所の判決、これを契機といたしまして、その後実務上は現在では九十五万円、要するに非財産権上の訴えと同じような訴額でもって計算するんだと、こういう取り扱いが裁判所の実務におきましては定着しているということでございます。
#80
○竹村泰子君 件数は出せないということでしたけれども、なぜ出せないんでしょうか。理由を教えてください。
#81
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 出せないと申しますか、実は私どもはいろいろ訴訟については統計をとっておるのでございます。
 ただ、行政訴訟についても統計をとっておるわけでございますが、特にこの住民訴訟に限ってという統計は実はとっておらないわけでありまして、住民訴訟の中には損害賠償の請求訴訟というのもございますし、それからほかの住民訴訟としまして、いわゆる差しとめ訴訟というんでしょうか、地方公共団体の長が違法な行為をしようとした場合にそれをストップしなさいというような差しとめ訴訟もございます。いろんな形態があるものですから、それについて一々とっておらないと。要するに損害賠償ならほかの損害賠償、差しどめならほかの差しどめというような形で一体となって統計をとっておるものですから、住民訴訟だけで幾らというのは出てこないんだということを申し上げたわけでございます。
#82
○竹村泰子君 分類が難しいということなんですね。こう全部一緒になっているからどれを住民訴訟というふうに分類するかということが非常に難しいということなんですね。
 訴訟手数料はどのようになっておりますでしょうか。
#83
○最高裁判所長官代理者(今井功君) 今申し上げましたように、この住民訴訟につきましては先ほど申し上げた最高裁判所の判決以降は非財産権上の訴えと同視するということでございまして、現在では九十五万円が訴額である。ですから、それについての印紙はたしか一審ですと八千二百円ということになると思いますが、そういうことで実務の運用は定着をしております。
#84
○竹村泰子君 最高裁判決も出ているようですけれども、住民訴訟に限らず、集団訴訟と申しますか、先般の湾岸戦争の九十億ドル訴訟の場合の原告員数の多寡による訴訟額の変動など、訴訟手数料のあり方には明文の規定がない。国民の裁判を受ける権利との関係からもこれは問題が多いんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
 現在行われている法制審議会の民事訴訟法部会における民事訴訟手続に関する検討では、申し立ての手数料等についても審議されているというふうにお聞きしておりますけれども、その動向も含めて、国民の間で公平性が保たれるような方策を慎重に検討するべきであると思いますが、いかがでしょうか。
#85
○政府委員(清水湛君) 訴え提起の手数料というのは訴訟の目的の価額に基づいて算出されるということになっているわけでございます。訴訟の目的の価額というのは訴えをもって主張する利益ということになるわけでございまして、これは民事訴訟費用法等に規定があるわけでございます。
 したがいまして、例えば多数の原告が共同して一つの訴えを提起する、こういういわゆる集団訴訟のような場合におきましても、それぞれの原告がそれぞれ請求権を持っている、たまたま同じような内容の請求であるからこれをまとめて集団的に起こしておるというような場合、こういうような場合はやはりそれぞれの請求について合算をするということにならざるを得ないというふうに思うわけでございます。
 これに対しまして各原告、つまり集団訴訟の原告の訴えをもって主張する利益というのが同一であるというようなとき、例えば今回の代表訴訟でございますと数人の株主が集団で代表訴訟を起こすというようなことが考えられるわけでございます。こういう場合には訴えの利益としては一つであるということでございますので、何人で訴訟を起こしましても九十五万円とみなすということで八千二百円ということになるのではないかというふうに思っておりますけれども、例えば欠陥車なら欠陥車で被害を受けたという方々がそれぞれの損害賠償を請求するというものを集団で起こすという場合には、これは合算をしていただく以外に方法はないというふうに思うわけでございます。
 ただしかし、この集団訴訟と言われるものの訴訟の類型の中にはいろんなケースがあり得るわけでございまして、そういったような場合の手数料、あるいはそもそも現在の民事訴訟費用法におけるような手数料構造について、これが適切であるかどうかというような意見、諸外国の法制との比較論というものも当然あるわけでございますけれども、そういうような観点からいろんな問題が提起されております。
 御指摘のように、現在法制審議会民事訴訟法部会におきましては民事訴訟法のまさに全面的な見直し作業を進めているわけでございますが、その中の一つの問題としてこういうような問題についての議論もされている状況でございます。この民事訴訟手続の全面改正作業は、私どもは平成七年あるいは八年には結論を出したいということで今作業を進めているところでございます。
#86
○竹村泰子君 では、作業の成り行きを見守るということですが、できるだけ国民の間の公平性が保たれるようにぜひお力を出していただきたいというふうに要望をしておきます。
 今回の改正の中で特に問題が多々あり、また現実に会社の中での監査機能の強化ということが非常に重要と考えますので、監査制度につきまして時間の許す限り質問をさせていただきたいというふうに思います。
 監査制度の改正につきましては、一九七四年及び八一年にも行われております。しかしながら、依然会社の不祥事は、先ほどから私も申し上げておりますとおり、後を絶ちません。今回三度目の改正になるわけですけれども、従前の改正が所期の目的を達し得なかったその理由についてはどのように分析していらっしゃいますか。
#87
○政府委員(清水湛君) 御指摘のように、これまで数次にわたる商法の改正によりまして監査制度の改正、つまり監査役の権限を強化する、これはもちろん責任も重くするということで、四十九年大改正を初めとして五十六年改正あるいは今回の改正というふうに、いろんな会社の不祥事をめぐりましてこの問題が指摘されまして、そのたびごとにこれに対応するような改正が行われてきたわけでございます。私ども、非常に強力な監査役の存在というものが現実の企業の中で相当の機能を果たしておる、強力な権限を持った監査役が存在する、さらにまた必要に応じて権限を行使してくるというようなことが会社、企業の運営の適正化という面において相当の効果を上げておるというふうに考えているわけでございます。先ほど申し上げたとおりでございます。
 しかし、まさに御指摘のように、もう少し監査役がきちっとした目配りをしておればこのような不祥事は防げたのではないか、あるいは監査役みずからが不正行為の先頭に立っていろんな違法行為をするというようなケースも現実にあるわけでございまして、そういうようなことから考えますと、監査役が与えられた権限を適切に行使していない、そのためにこのようなことになったということにつきましては非常に残念に思うわけでございます。制度が整備されましても、その任に当たる人によって十分に活用されていないということかとも思うわけでございますけれども、私どもといたしましては、何とか権限は与えられたと。権限は与えられたけれども、その権限をもっと行使しやすくするような方法をやっぱりこの際考えるべきではないかと。
 そういうような観点から、実は監査役会制度というようなものも監査役の独任制との関係においていろいろ議論はあり得るわけでありますけれども、そういうような形で会社の執行部に対応するというようなことが与えられた権限を行使しやすくするという意味において意味あることであるというふうに例えば思うわけでございまして、そういう意味でこの監査制度の充実強化ということにつきましては、これまでも十分力を尽くしてきたつもりでございますけれども、今後ともやはり関心を持ってその運用の実情等については眺めていく必要があるというふうに考えているわけでございます。
#88
○竹村泰子君 今回の改正が前車の轍を踏まないと言えるんでしょうか。いかがですか。
#89
○政府委員(清水湛君) 前車の轍ということでございますけれども、例えば四十九年改正で監査役の権限が飛躍的に強化されて、あるいは外部監査という公認会計士監査が入ったということによりまして、企業の計算と申しますか、企業会計というものは私はもう相当改善されたというふうに実は考えている者の一人でございます。
 したがいまして、制度改正の効果はあったと、しかしながらまだ不十分である、それを何とかもっと十分たらしめたいということについて私どもは謙虚に考えているわけでございますが、そういう意味で今回の改正がさらに私どもは大きな前進になっていただきたいと思いますけれども、少なくとも一歩ないし二歩の前進にはなっていただきたい、運用の面においてもそういう効果は上げていただきたいというふうに実は念願しているわけでございます。
#90
○竹村泰子君 いただきたいと、それはだれもそう思いますけれども。
 現行法では権限を与えても適切な行使がなされなかったという御説明がこれまでにもあったと思うんですけれども、権限行使の担保にはやっぱり監査役の人事権が独立しなきゃだめなんじゃないかと思うんです。選任手続に改正を加えないで権限行使が容易になるとお思いになる根拠は何ですか。
#91
○政府委員(清水湛君) 監査役について申しますと、監査役というのもこれは会社の実は内部の機関でございまして、会社全体の人事構成の中でその監査役の役割というものも考えられる。取締役しかり、監査役しかり、あるいは監査役につくスタッフしかりということでございまして、会社全体の人事構成という枠組みの中の一つでございます。そういう面から見ますと、いわば会社の人事をどうするかということはやはり会社の執行部がまず第一次的には責任を持って考えるべき問題であろうというふうに思うわけでございます。
 そういうようなことから、現行法では監査役は株主総会で選任されるわけでございますけれども、株主総会で選任されるためには原則的には取締役会で監査役候補者という者を決めまして、この監査役についていろんな情報、資料を株主に知らしめて、株主総会での議決を仰ぐという形になっているわけでございます。そういう過程の中で、既に御承知のように、そういうような候補者を決定する、つまり選任議案を決定する取締役会には当然監査役も現在出席することができるわけでございまして、出席して意見を述べる。特に監査役の選任に関しては、自分をも含め、他のあるいは監査役の選任候補者をも含め、それについて意見を言う。あるいはそのことについて取締役会で意見が入れられなかった場合には、株主総会で監査役がいろんな意見を述べるというような権限も保障されているわけでございます。そういうような仕組みの中で考えますと、やはり監査役も会社の内部の人間でございますから、取締役会の中で取締役、監査役ともどもこのような議案について協議をするという現在のシステムが私どもは適当ではないかというふうに思うわけでございます。監査役に監査役の選任議案提出権というものを認めまして、いわば取締役会とは独立した立場で、あるいはこれに対立するような形で人事案件を監査役会が独自に株主総会に提案するということについては、やはりこれは問題があるのではないかと。相当慎重な検討を要する、会社という一つのまとまった組織体のあり方として相当慎重な検討を要するのではないかというふうに思うわけでございます。現在のような監査役、取締役、いわば共同の決議のもとにこの選任議案をつくるというようなシステムでも監査役の独立性というものが害されるということにはならないというふうに考えているわけでございます。
#92
○竹村泰子君 いろいろ不思議なことがあってお尋ねしたいんですが、任期を一年延ばす、この根拠は何なんでしょうか。あるいは員数を三人以上とする理由は何なんでしょうか。社外監査役選任の要件については、狭義の第三者的監査役を導入しなかった理由は何なんでしょうか。五年の根拠も教えてください。
#93
○政府委員(清水湛君) 任期を二年から三年に伸長するというのは、要するに監査役の身分的な安定を図る、身分保障を図る、二年ごとに改選されるということであればどうしてもある程度取締役会に遠慮をしなければならないというような面もあるだろう、こういうことから三年にするということにいたしたわけでございます。
 そういう点から、例えば立案の過程では四年にしたらどうかとか、あるいは三年にして再選を保障して最低六年は監査役でいられるようにせよというような意見もあったわけでございますけれども、しかし我が国は多数の会社があるわけでございまして、すべての会社についてそういうようなことを当てはめるというのは非常に無理があるということで、最大公約数二年から三年に延長するということで今回は落ちついたわけでございます。
 それから、三人以上にするということでございますけれども、これは大会社についてのみの規定でございます。
 一つには、監査機能の充実強化を図る、大会社については監査すべき分野が非常に多いというような実情がございますので、これに対応するということが一つ。
 それからもう一つは、今回監査役会制度というものを大会社につくったわけでございますけれども、二人では会というのは成り立たないのではないか、つまり合議体が最低限成り立つ人数としては三人である、こういうことも考慮の一つになっているわけでございます。
 さらにもう一つは、最近の大会社におきましては、監査の重要性というものを考えられまして監査役の人数を法律の規定以上にふやす傾向がございます。現にもう七割近い会社は監査役を三人以上置いておるというような実情にもなっているというようなことを踏まえまして、いわば最大公約数的な数字として三という数字を出したということになるわけでございます。
 それから社外監査役につきまして、五年間の要件にとどめたというのはなぜかという御質問でございます。
 純粋な社外の人を監査役にするという方法をとるべきだという意見はもちろんございました。これに対しまして、いや五年という要件も厳し過ぎる、三年間程度でいいのではないかという意見も実はかなり強くあったわけでございます。この社外監査役の強制導入が適用される会社は約八千社から九千社あるわけでございますけれども、それぞれの会社の実情というようなものを考えますと、大方の意見として、今回の改正案では五年ということでとにかく社外監査役制度を導入するということに最終的な法制審議会における合意の成立を見たというのが事実でございます。
 以上でございます。
#94
○竹村泰子君 今回の監査役制度改正に関する衆議院の附帯決議をどのように受けとめておられるでしょうか。法務省には商法の施行についてのいわゆる行政指導はないと思いますけれども、「第三者的・中立的な人物を社外監査役に選任するような運用がされるよう努めことあるのは、これは具体的にはどのようなものと理解しておられるんでしょうか。
 また、「第三者的・中立的な人物」に限定するとした場合、資本金額五億円以上のいわゆる大会社は八千社程度と言われておりますけれども、それならそれほど酷な要件とも言えないと思いますけれども、いかがでしょうか。
#95
○政府委員(清水湛君) 法務省は、直接に会社を監督したりあるいは行政指導をしたりするという立場にはございません。しかし、会社法を所管する官庁でございますので、今回の会社法の改正の趣旨というようなものを十分に関係方面に周知徹底して、この改正の趣旨に従った制度運用がされるということを期待しているわけでございます。そのための努力は十分にいたしてまいりたいというふうに思っております。
 具体的にどういう方が社外監査役として適当であるかということにつきましては、これはそれぞれの企業におきましてそれぞれの企業の業務の中身というようなものに照らしてやはり考えることであろうかと思います。すべての企業にとりまして、例えば弁護士の資格がある人が適当であるとか、あるいは公認会計士の資格のある人が適当であるということには必ずしもならないと思います。それぞれの企業が株主総会でそれぞれ適切な判断をして選んでいただくということが必要かと思います。
 ただ、私どもといたしましては、こういう制度をつくりまして、これが法律として施行された暁には、実際どういうような方が社外監査役として選任されたかというような追跡調査はして、その分析はしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
#96
○竹村泰子君 今のお答えは、先日の峰崎委員に対する答弁でも、社外監査役の運用に関して民事局長は、「適当な時期に実態調査もしてみたい」というふうにお答えになっておりますけれども、これは運用実績がもし改正法の趣旨に合わないような場合には再検討するという意味も含めたものと理解してよろしいでしょうか。実施方法の具体案を含めてお答えいただきたいと思います。
#97
○政府委員(清水湛君) 社外監査役につきましては、実はアメリカでは社外取締役という制度があるわけでございますけれども、アメリカの方が歴史は古いんですが、非常にこれを支持する説と、何もわからない人が入ってきて結局棚に飾られているだけじゃないかというような非常に冷たい意見も現実にはアメリカでは出てきておるというふうに聞いております。日本で一体この社外監査役という制度がどういうふうに定着していくかこれは実は私ども大変関心を持っているわけでございまして、しかるべき時期にこの実情、実態調査等はいたしたいと思っております。
 具体的にどういう方法でやるかというお尋ねでございますけれども、先ほどちょっとお話にも出ておりました法務大臣の許可に係る社団法人日本監査役協会というようなものがございますので、そういうような機関にもお願いをしてこの実情を調査するということにいたしたいと思っております。
 その結果どういうことになるのかということについては現状では全く申し上げることはできませんけれども、衆議院の論議の過程におきましても、全く会社と関係のなかった人を監査役に選ぶというようなことを思い切ってやったらどうかというような意見も各政党の委員、皆様方から強く出されたところでございますので、そういうようなことも意識しながらやはり実態を調べてみる必要があるのではないかというふうに実は考えているわけでございます。
#98
○竹村泰子君 本案が成立した場合、施行は十月を予定していると衆議院ではお答えになっておられますけれども、そうしますと社外監査役及び監査役会の設置は一九九四年の株主総会以降ということになりますか。それでよろしいですか。
#99
○政府委員(清水湛君) 仮に十月一日にこの法律が施行されるということになりますと、社外監査役あるいは監査役会制度の設置というのは、十月一日以降最初に到来する決算期に係る定時総会の終了まで現在の制度が続きまして、そこから新しい社外監査役あるいは監査役会制度というものがスタートする、こういうことになると思います。
 我が国の多くの会社は九月期決算と三月期決算に分かれますので、三月期決算の会社につきましては、先ほどもちょっと議論に出ましたけれども、六月末の定時総会で社外監査役が選任される、こういうことになろうかと思います。
#100
○竹村泰子君 監査役の権限なんですけれども、現行の商法は、そのチェック役として取締役会、会計監査人、それから監査役の三者を挙げております。ところが、日本の取締役会は、業務執行の意志決定機関であるとともに、それをみずから監督するという大変おかしな二重大格的な矛盾を抱えているわけですよね。また、会計監査人は、会計のプロではあるけれども外部の人であり、社内で何か不祥事が起きるのを事前に防止することには、これはちょっと無理があるんじゃないか、限界があるんじゃないか。その意味からも、商法二百七十四条は、監査役は取締役の業務執行を監査すると規定して、その責任にこたえられるように監査役に取締役による違法行為の差しとめ請求権、業務及び財産の調査権など、こういう強力な権限を与えております。
 大臣にお伺いしたいんですけれども、それにしても一九八〇年代後半から九〇年代に入ってさまざまな企業の不祥事や上場企業の倒産が多発いたしました。監査役が十分にその機能、役割を果たしたケースはほとんど耳にしませんという事実関係。今回の改正案で企業のいわゆるお目付役である監査役制度を具体的にどう再生、活性化させていけばいいのか、大臣の御所見を求めたいと思います。
#101
○政府委員(清水湛君) 大臣がお答えになる前に私の方で総括的なお答えをさせていただきたいと思います。
 監査役にはもう既に現行法により大変強力な権限が与えられているわけでございます。いろんな各種の請求権、差しとめ請求権とか、あるいは取締役会に出席する権利、あるいは取締役会を招集する権利までも認められておるというようなことになっております。多くの会社においてはこのような強大な機能を持っている監査役というものの存在によって企業行動がおのずから規制されておるというふうに思うわけでございます。
 現実に企業の実務担当者に聞きますと、いろんな会社は行為をする際に監査室、監査役のもとにある監査室等といろいろ協議をしながら現実には違法な行為をしないように注意して日常の業務活動をしているというようなことが言われているわけでございまして、そういう意味で監査役制度というものがそれなりの機能を果たしているということは私ども間違いないところだと思うわけでございます。それにもかかわらず、先ほどから申し上げましたように、いろいろな不祥事が生じている、監査役の目の届きにくいところであるいは不正経理が行われておるというようなこともあるわけでございます。
 そういうことを踏まえながら、今回の改正法案におきましては、既に強化されている監査役の権限をより行使しやすくするというような観点からの改正、員数をふやすとか、あるいはその身分的な保障の安定強化を図るとか、あるいは監査役会制度というような組織的な監査を可能にするというようなものを導入するとかいうふうな制度の改善に努めているわけでございますが、これからは監査制度を実効あらしめるために各会社において監査役としてふさわしい人をとにかく選んでいただく、こういうことについても各企業それぞれ心していただきたいというふうに立案当局としては考えている次第でございます。
#102
○国務大臣(後藤田正晴君) 今、局長からお答えをいたしましたように、今回のこの改正についても、監査役の人数の問題とか、あるいは任期の問題、あるいは社外監査役の五年の問題、こういう点については強弱それぞれの意見がありまして、大体私どもが御提案申し上げておるようなところがまずは多くの方々の一致するところではなかったのかな、こういうことで御提案を申したわけでございます。
 私はこれは結局は活性化とでもいいますか、監査役に十分働いていただくという基本をやっぱり、先ほどちょっと竹村さんおっしゃいましたね、それは監査役の任命の手続、それから人を得るという人事の問題、これに帰するのではないかなというのが私の考え方でございます。それだけに、今、局長が申し上げましたように、それぞれの会社なり、あるいはまたそれぞれ関係筋があるわけでございますから、そういったところで、この法律をお認めくださった暁には、従来のこの監査役のあり方を踏まえながら改革の趣旨を御理解をしていただいて、監査役が十分期待に沿うことができるような環境整備に努めていただきたい、かように考えております。
#103
○竹村泰子君 商法は監査役がタイムリーに企業の意思決定の場面に立ち会って早期に経営情報を入手できるように取締役会への出席権を保障しています。
 しかし、どうでしょう。企業の取締役会というのはもう完全に形骸化しちゃっているんじゃないか、それが現状ではないでしょうか。つまり、組織の肥大化に伴い取締役の人数はどんどんどんどんふえていって、実質的な討議は人数を絞った専務会とか経営会議とか、そういうところでのみ行われ、取締役会はただトップからの報告を受けて、それを追認するだけの場と化してしまっているんじゃないでしょうか。ましてやスキャンダルに関するような場合、トップの数人だけの間でひそかに、余り外部にばらさないようにひそかに処理をされて、取締役会にはおりてさえこないという、そういうケースも多いというふうにお聞きしております。
 このように、法律が定めた監査役の権限と企業の現実との間には大きなギャップが生じているということに、大臣、そして局長はどういうふうに認識しておられますでしょうか。御所見を伺いたいと思います。
#104
○政府委員(清水湛君) 昭和四十九年の改正の際のいろんな議論を踏まえまして私どもが取り上げた一つの問題が、まさに先生御指摘のような取締役及び取締役会制度というものについてどのような改善を加えたらよろしいか、これを活性化してまさにこの名実ともに執行機関としてのふさわしい機関にするにはどうしたらよいかという問題提起をいたしまして各種の議論をしていただいたわけでございます。
 その一つの成果といたしまして、昭和五十六年改正におきまして、取締役会の権限というものを強化する、それから特に重要なる財産の処分とか譲り受けとか多額の借財、こういった会社経営上重要な要素の部分になるものにつきましては取締役会で決議をしなきゃいかぬというようなこと、それから取締役会というのはもちろん監査役も出席するわけでございますけれども、出席して意見を述べるというような形にするというようなこと、その他もろもろの措置を講じまして、取締役会の権限の強化、その実質形骸化の防止という点でいろんな仕組みをつくってまいりました。
 ただしかし、この日本のような非常に巨大な企業におきましては取締役の人数も数十人に及ぶ、五十六年改正の過程の中では例えば取締役の人数を二十人以下にしたらどうかというような実は議論もあったくらいでございまして、二十人以下であれば実質的な討議ができる、お互いに責任を分担することができるというような議論もございましたけれども、現在では取締役が数十人というようなビッグビジネスも少なくないというような状況にございます。
 そういう状況の中で、会社のそういう実質的な経営管理機構というものをどういうふうにしたらよろしいか。御指摘の例えは常務会というようなものが実質的には取締役会と同じような仕事をしているんじゃないか、さらにはその上の専務会というようなものが実質的な権限を持っているんじゃないか、さらには代表取締役が独断専行しておるのではないかというようないろんな指摘がございます。
 それぞれの会社の規模とか営業の形態とか会社の歴史とか、そういうものによって非常に違いがあると思うわけでございまして、一律にはなかなか議論できないと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、取締役会というものの権限の強化とその適正な行使ということについてはこれからも相当いろんな配慮をしていく必要があるのではないかというふうに思っているわけでございます。
 特に、会社の業務の適正な執行を図るという意味におきましては、監査役というようないわば横からのチェックをするということも非常に大事でございますけれども、もともとこの取締役会制度というものができた基本的な趣旨は、取締役会によって会社の業務の適正化を図るというところにあったわけでございますから、そういう意味で取締役会というものが昭和二十五年、アメリカ法に倣って導入されたこの制度の趣旨というものが生かされるように考えていかなければならない、こういうふうに私ども考えております。
#105
○竹村泰子君 大臣にもお答えいただきたいんですが、ちょっと時間が追ってまいりましたので、もう一つ、二つまとめて質問をして、それで大臣にお答えをいただきたいと思います。
 監査役の任免権はほかの取締役と同様に株主総会が持っているわけですよね。だから監査役は事実上みずからのトップが推薦した候補がそのまま選ばれる。つまり、みずからの任免権を持つトップを監査しなければならないという、こういう矛盾を背負うことになりますね。単なるサラリーマンとしてみずからの任免権を握るトップに思い切った発言を期待するというのは、これはちょっと無理なんじゃないかなと私どももそう思いますけれども、監査役の人事権と身分保障は、だから本当にきちんとした監査をするためには、これは先ほども申しましたとおり、独立しないといけないというふうに思います。
 先ごろの大手証券会社が株式取引に失敗した一部の企業の損失を穴埋めしていた損失補てん問題、これを発覚前から担当会計士は知っていたはずですよね。九一年に表面化した損失補てんは、世間の厳しい批判を浴びて、証券市場への信頼を崩壊させただけではなく、その後の証券会社の経営基盤を大きく揺るがせる一因にもなりました。
 こうした経営危機をもたらす結果になった不明朗な金銭支出を財務諸表の監査を通じて知り得たはずの公認会計士は、なぜ一切の指摘ができなかたのか。不祥事に何ら対応できない現行の会計監査に対して、関係当局はどう認識をして対処してきたのか。今こそメスを入れるべきだと思いますが、関係当局及び大臣の責任ある答弁を求めたいと思います。
#106
○政府委員(清水湛君) 損失補てんという問題につきまして具体的に監査役あるいは外部監査人である会計監査人あるいは公認会計士が指摘をすることができなかったのはなぜかと、こういうお尋ねでございます。
 当時の状況として、一体損失補てんというものがどういう形で行われたのか、どういう目的あるいはどういう動機で行われたのか、企業の大口の顧客を確保する手段として行われたのか、私どもはそういう点についてつまびらかにはいたしておりません。
 したがいまして、これが違法、不当な行為であるということで当然に監査役あるいは公認会計士が指摘すべきであったかどうかということについてはちょっと私どもの立場からは申し上げかねるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、違法である、あるいは著しく不当な支出であるということになりますと、これは監査役あるいは公認会計士、会計監査人、当然これは指摘をすべきものであるということにおいてはこれは間違いないわけでございます。
 そういう意味で、もしそういうものを見逃したということであれば、やはりそれなりの問題、責任というものは考えられるわけでございますけれども、ただ具体的にここ数年問題になりました損失補てんについていかがかと言われますと、私どもその実情をちょっと詳しく承知しておりませんので、それについて違法であるとか、違法でないとか、責任をしようとか、しないとかというようなことについては、訴訟も起きていることでございますので言及することはちょっと差し控えさせていただきたい、こういうふうに思います。
#107
○国務大臣(後藤田正晴君) 違法支出といったことになりますと、これはまた現行法上でもそれぞれの規定があるわけでございますが、御質問の損失補てん、あの当時は損失補てんの規定はなかったのではないかなと思います。今度の証取法の改正で初めて損失補てんの問題についての規定が問題になったので、その当時はなかったんじゃないかなと、こう考えております。
#108
○竹村泰子君 大蔵の方からお答えありますか。
#109
○説明員(西方俊平君) 損失補てんにつきましては、以前は通達でもってそれを自粛を求めていた、最近法律改正におきましてそれを禁止することになったわけでございますが、会計監査上の問題につきましては、実はこれが非常に技術的には難しい点があったんだと思います。例えば、損失補てんが会計上例えば交際費とか寄附金とか、または実際の売買する場合の差額を通じて行うというようなことがございまして、それが現実に公認会計士等の監査の段階で補てんがあったかどうか、これが不適切な会計支出であったかどうか、これについて必ずしも明らかにできなかったというようなことがあったのではないかというふうに思っております。
#110
○竹村泰子君 時間が参りました。今回の改正案の中で、非常に大きな問題でもあり、監査機能の強化ということで御質問を重ねてまいりましたけれども、最後に申し上げます。
 できるだけ経営者からの独立性を高めるために社外監査役についても法務省がどのような人選を期待しているのか、関係官公庁あるいはメーンバンクからのひもつきや天下り、そういう温床となるおそれはないのか、非常にそういったことが気がかりになるわけですが、時間が参りましたので、また続きは後日させていただきたいと思いますが、最後に一言大臣から、私のこれまでの質問に対しまして、あるいは特にこの最後の部分、御所感と申しますか、非常に大事な部分であると思いますので言いただいて、終わりたいと思います。
#111
○国務大臣(後藤田正晴君) おっしゃるように、せっかくのこういう改正でございますから、これが十分に機能するように、我々は直接やるわけではありませんけれども、関係者の皆さんがきちんとした会社経営が行われるように、それに対して適切な監査役が役割を発揮するように適切な運営を私の方としては期待をいたしたい、かように考えております。
#112
○猪熊重二君 きょうは今般の改正の中で、監査役についていろいろお伺いしようとしたんですが、今、竹村委員の方から大分いろいろ御質問がございましたので、少しはしょらせていただきます。
 監査役制度について、昭和四十九年、五十六年、平成元年、監査役の権限強化というふうな観点からいろいろ改正してこられた。今回もまた同じような路線の上に立ってやっておられるわけです。この各年度ごとの監査役の権限強化によって本当に法の目的としていたことがどれだけ達成されたかということについて、先ほど民事局長はそれなりに達成したというふうな趣旨のことを言っておられました。私は達成されたかどうか、もう少しこの後順番に質問していきますが、ただ昭和四十九年の改正で、大会社の監査制度の一環としていわゆる公認会計士、監査法人による会計監査人制度というのを導入したわけです。これは今までの監査役が取締役、監査役というふうな形でまさに企業の中の全く純粋の一機関というのに対して、ある程度外部的な立場の人間を導入して監査業務の適正化を図ろう、こうされたんだろうと思いますが、この会計監査人制度を導入したことによって従前の監査役の監査以上に何らかの質的な変化でも生じたかどうか、その辺はどうですか。
#113
○政府委員(清水湛君) お答えいたします。
 四十九年改正というのは、もう監査制度についてのいわば歴史的な大転換を遂げた年だというふうに申し上げていいかと思います。昭和二十五年改正によりまして、先ほども御議論が出ましたけれども、会社の業務監査というのは取締役会に期待された。監査役というのはもう会計監査だけというふうに昭和二十五年改正でなったわけでございます。しかしながら、昭和四十年代前後における山陽特殊鋼を初めとする大企業の倒産というようなことが契機になりまして、そういうことではもうこれは現実に対応することができないということで監査制度を抜本的に変える必要があるということになったわけでございます。
 その際に、二十五年改正で一たん奪われた監査役の業務監査権というものを復活したわけでございますが、しかし業務監査ということを復活しただけでは山陽特殊鋼等の実態を見るととても監査役だけでは対応することができないのではないか。会社の規模、経理の膨大性というようなものを考えますと、これはどうしても外部の会計専門家を導入する必要があるということになったわけでございます。
 そこで、監査役に業務監査権を付与するとともに、会計の専門家である公認会計士による監査というものを導入することになったのでございますけれども、同時にそのころ、公認会計士というのも、これは一つの個人職業でございまして大会社の監査をするという場合にはやはり組織的な面で非常に問題があるというような大蔵省の御認識がございまして、公認会計士による監査法人という法人化が図られた。そういう専門家の法人体制が整ったというようなこともございましてこのような会計監査人制度を導入いたしたわけでございます。
 それにもかかわらず、その後いろいろと会社をめぐる不祥事というのは起こっているわけでございますが、私どもいろいろ公認会計士協会の皆様方とか、あるいは企業の方々のお話を伺ってまいりますと、公認会計士事務所あるいは監査法人、日本にも国際的にも有数な監査法人というものが現在生まれてきておりますけれども、そういった組織的な監査法人による企業会計の日常的なチェックというものによりまして、会社の方でもこの関係する監査法人あるいは公認会計士等に日常的にいろんなことを相談するというようなことが行われるようになりまして、企業会計の適正化という面につきましてはこの会計監査人制度はかなりの成果を私どもは上げておるのではないかというふうに思うわけでございます。
 そういうような成果を実は踏まえまして、こういうようなことは大会社だけではなくて、先ほどもちょっと議論出ましたけれども、中小会社、つまり資本金五億円以上の会社というような現在のものではなくて、もっと例えば資本金三千万円程度以上の会社にもこういったたぐいの制度を導入すべきだというところまで議論が発展してまいったわけでございます。そういう意味から、公認会計士の皆さん方を中心とするこの企業会計の適正化のための努力というものはやはり着実に私どもは実を結んでおると。
 具体的な現象として、例えば監査法人なり公認会計士が会社の監査をいたしまして監査が不適正であるというような意見を出すという例は極めてまれでございまして、そういう意見を出す前に、事前にもう十分に調整されて適正な処理に是正されるということが実態であるということでございまして、不適正意見がたくさん出るからその制度が機能しているということには必ずしもならないと思うわけでございます。つい最近、監査法人と会社側の意見が衝突して当該会計監査人が解任されるというような事件が起こったというような新聞報道がございますけれども、これは極めて例外現象だとは思いますけれども、正常な会社におきましては相当程度の成果を上げておるというふうに思っているわけでございます。
#114
○猪熊重二君 局長、もう少し簡単に答弁してください。
 今、局長は、監査役のほかに会計監査人というのを外部から入れてきて相当な成果が上がっている、こうおっしゃる。それで、竹村先生が言われたけれども、私は損失補てん問題とそれから使途不明金問題に関連して、果たして今おっしゃるような会計監査人、外部から入ってきて立派な仕事をしたか、していないかということについてちょっと伺いたいと思うんです。
 まず、証券局に伺います。
 大蔵省証券局は、平成元年十二月二十六日、損失補てん禁止に関する通達を出しました。これは損失補てんだけじゃなくて、ほかの項目もありますけれども、損失補てんしてはならぬぞという通知を出した。これを出すに至ったいきさつ及びこの通達の趣旨を証券会社にどの程度徹底するための措置をとったのか、簡単で結構ですが。
#115
○説明員(西方俊平君) ただいまのお話でございますけれども、平成元年の十二月に一部の大手証券会社に損失補てんが認められたことがございました。損失補てんを禁止するとともに、その温床となりがちな営業特金の適正化を図ることを目的といたしまして証券局長通達を出したものでございます。
 この通達は日本証券業協会長あてに出しまして、協会に対する周知徹底を指示いたしました。また私どもの財務局長に対しましても通達を出しまして、所管の証券会社を指導するように徹底を指示したわけでございます。
#116
○猪熊重二君 この通達を出した後、損失補てんなんかしていないだろうなという意味において、いろいろ通達の遵守状況についても証券局としてはそれなりに調査したんだろうと思うんです。
 お伺いしたいのは、証券局が調査したとすれば、各証券会社の会計に関するどんな書類、どんな帳簿を受け取るなり、あるいは出向いていって調査したのか。特にそれらの書類の中には監査役の監査報告書だとか会計監査人の監査報告書なども含まれていたのかどうか、その辺どうですか。
#117
○説明員(西方俊平君) まず、前段の御質問でございますけれども、通達が出された後、私ども大蔵省におきまして監督しております規模の大きな証券会社に対しまして、損失補てんの有無を平成二年の三月までに自主的に申告するよう求めました。その後も証券会社に対しましては業務の運営とか財産の状況及び諸法令の遵守状況につきましては定期的な検査がございまして、その検査を通じてチェックをしているというようなところでございます。
 個々の証券会社の検査の内容についてはここで詳しいことはお話しできませんけれども、通達を出しました後、三年六月までの間に実施いたしました定期検査におきましては幾つかの会社に対して損失補てんについての指摘をしておりまして、その都度厳正に対処してきたところでございます。
 そこで、証券会社との関係で帳簿はどういうふうになっているんだということでございますけれども、証券会社に対する会計に関する報告書といたしましては、毎営業年度の経過後二カ月以内に営業報告書をとっておりますけれども、これは証券行政上の立場から業務及び財産とか経理の状況を把握するためにとっておるものでございまして、監査役の監査報告書とかそれから会計監査人の監査報告書までは含まれておりません。そういったような状況にございます。
#118
○猪熊重二君 証券局、もう結構です。
 国税庁にお伺いします。
 証券局が平成元年十二月に通達を出してから一年半後の平成三年六月、国税庁の税務調査の結果として、野村、日興、大和、山一の四大証券を含む二十一社に総額七百億円に上る損失補てんの事実が判明した。要するに、証券局は通達を出したけれども一年半、ちょぼちょぼのものをやったことは認めますけれども、ほとんどやっていない。
 私がお伺いしたいのは、国税庁はどのような資料をどのように分析した結果この大手を含むほとんどの証券会社で総額七百億にも上る損失補てんがあるという事実が判明したのか、そのときの調査の資料はどんなものを使ってやったのか、お伺いしたいと思います。
#119
○説明員(藤井保憲君) お答え申し上げます。
 一般に私ども税務調査で検討の対象としておりますのは、税法の規定に基づいて記録保存が行われております帳簿・書類等でございまして、例えば青色申告書を提出している法人の場合には仕訳帳、総勘定元帳あるいは契約書、領収書、そういった書類でございます。
 お尋ねは、どのような資料から損失補てんの事実を認知したのかということでございますが、私ども国税当局といたしましては、損失補てんに当たるかどうか、そういったこととは別に、証券会社等が有価証券取引を通じまして特定の顧客に特別の利益を供与した場合、そういった場合にはその実態に応じて交際費等として課税をいたしておるところでございまして、そうした事実の有無につきましては、先ほど申し上げましたような法人の帳簿・書類、証憑書類、そういったものに基づきましてケース・バイ・ケースで判断をいたしているところでございます。
 調査の内容にわたる事柄でもございますので、どのような資料をどのように分析したかという点につきまして具体的に答弁することは控えさせていただきたいと思います。
#120
○猪熊重二君 それはそうだろうと思う。ここで余り手のうちを明かすわけにはいかぬだろうけれども、しかし私が聞きたいのは国税庁が調査した会計帳簿・書類は、要するに監査役なり会計監査人なりが見ることができないようなえらい難しい書類を持ってきて、それで事実が解明されたのか、それともちょっと会社の状況を調べようということで調べればそこら辺に転がっている書類なのか、その辺ぐらいの区別はどうですか。
#121
○説明員(藤井保憲君) 私どもが税務調査で調査の対象としておりますのは、ただいま申し上げましたように仕訳帳でございますとか総勘定元帳でございますとか契約書、領収書、そういった書類でございます。これらの帳簿・書類等が監査役等の監査におきまして当然に調査の対象となる会計帳簿等に当たるかどうか、そういった点についてのお尋ねでございますが、大変恐縮でございますが私ども国税庁としてお答えする立場にございませんので答弁を控えさせていただきたいと思います。
#122
○猪熊重二君 それでは、使途不明金についてお伺いします。
 国税庁、平成三年度における使途不明金について細かいことをある程度入れて説明してください。
#123
○説明員(藤井保憲君) お答え申し上げます。
 使途不明金につきましては、原則として資本金一億円以上のいわゆる大法人のうち実地調査を行いましたものにつきまして私ども計数を把握しておるところでございます。この計数に基づきまして平成三事務年度の数字を申し上げますと、所管法人が三万三千七百二十八社ございまして、そのうち一四%に当たります四千七百二十二件の調査を行いました。五百五十四件、五百五十八億円の使途不明金を把握しております。五百五十四件というのは調査をいたしました法人の一一・七%に当たるわけでございます。把握しました使途不明金の総額はただいま申し上げましたように五百五十八億円でございます。
 次に、この使途不明金総額五百五十八億円のうち、私ども使途の解明に全力を挙げました結果、二五%につきまして、百三十九億円でございますが、内訳を把握してございます。これによりますと、約三割に当たります四十二億円がリベート、手数料、四三%に当たります六十億円が交際費等、以下その他二七%で三十七億円、このようになってございます。
 さらに、使途不明金総額五百五十八億円について業種別に申し上げますと、六八%に当たります三百八十二億円が建設業、以下製造業、卸売業、小売業、このようになっておるところでございます。
#124
○猪熊重二君 これについても、国税庁が使途不明金、これだけのものを見つけ出してくるのにいろいろ資料とした会計書類等はどんなものなんですか。要するに先ほどの損失補てんの場合と同じように、特別に国税だから倉庫の奥に隠しているのをかぎをぶっ壊して持ってきて見た書類なのか、それともそこら辺に転がっている書類なのか、どっちなんですか。
#125
○説明員(藤井保憲君) 使途不明金の把握につきましても、先ほど申し上げました書類等と全く同じでございます。
 一般論として申し上げますと、税務調査に当たりまして、そういった法人の帳簿、証悪書類等に基づきまして適正な経理処理が行われているかどうか検討しているところでございまして、例えば法人が外注費でありますとか交際費でありますとかそういった費目で支出しているものにつきましても、支出の事実、支出先等につきまして確認をいたしまして、そうした調査の過程で法人がその使途をどうしても明らかにしないといったものが出てまいりました場合にやむを得ず使途不明金として処理をいたしておるところでございます。
#126
○猪熊重二君 使途不明金は、いただいた資料によれば昭和六十年以降毎年毎年、調査法人の約一〇%ぐらい、そしてその金額も大体毎年五百億円前後ということになっている。たまたまある年だけ使途不明金が出てきたわけじゃないんです。六十年より前のは私資料をもらっていないのでわからないけれども、恐らくその前も、十年も二十年も同じことだろうと思うんです。結局、先ほどの損失補てん問題にしろ、あるいは使途不明金問題にしろ、長期にわたっている問題について国税ができるのに、なぜ監査役や会計監査人というのは何もしないんだというところを私は言いたいわけです。
 民事局長、今国税の方ではどの書類との書類とは言わぬかったけれども、具体的には言わなかったけれども、この書類は監査役なりあるいは会計監査人が当然見得るし、職務上見るべき書類だと思うんだけれども、その辺はどうですか。
#127
○政府委員(清水湛君) 商法の立場から申しますと、監査役は貸借対照表、損益計算書、営業報告書という定型的な書類のほか、利益処分あるいは損失の処理に関する議案、そういうものを見るわけでございますけれども、そういうものの基礎となる各種の計算書類、附属書類、諸帳簿を見る、こういうことになっているわけでございます。さらに、そういうことのために必要であればいろんな財産の現実の状況等もこれは調査をするということになるわけでございます。
 そういう状況の中で、例えば、先ほどもお答えしたところでございますけれども、商法の概念では使途不明金という概念はないわけでございまして、営業費用という形で計上されておる、あるいは交際費という形で計上されておるそれぞれが企業の営業活動を行う上において合理的な金額ということであり、その支出が事実上明らかにされておるということであれば、監査役としてはそれは特に問題にすることはない、こういうことになるのであろうと思うのであります。
 損失補てんにつきましても、例えば、リベートという言葉が適当かどうか知りませんけれども、営業上必要なリベートとしてそういうものが支払われたということに、記載されているのかどうか知りませんが、あるいはそういった形で記載されているということであれば、それが適法に支出されているということでございますと、違法ということでなければそれはそれなりに監査としての実を尽くしたということになるのではないかというふうな気がいたします。ただしかし、それぞれにつきまして、違法であるか、あるいは著しく不当であるかというような問題があると思いますが。
 さらに、この使途不明金に関して申しますと、会社としては支出しておるんだけれども、税務当局に対しては支出先を明らかにすると支出先にいろんな迷惑がかかるというようなこともあって明らかにしないというようなこともあるというふうに言われているわけでございます。これが事実であるかどうかは私ども確認する方法がないわけでございますが、そういった会計監査人あるいは監査役の立場から見る見方というものが税務当局なりあるいはその他の機関の立場と若干食い違うということも一つの理由かと思います。
 また、あるいは調査能力という問題も確かにあろうかと思います。国税庁のような非常に強力な調査能力を監査役が持つということは余り期待できませんし、まあ余り期待できないというか、ほとんど期待できないというふうに言った方が正しいのかもしれませんが、そういうような状況がございます。
 ただ、いずれにいたしましても、この損失補てんに関するいろんな資料、あるいは使途不明金に関する資料というような具体的な資料ということになりますと、果たしてこれが監査役なり会計監査人が法律で与えられている権限を行使することによって調査でき得る資料であったかどうかというようなこともまた問題になるわけでございまして、一般的な評価というのは具体的な問題でありますだけに難しいというふうに実は考えているわけでございます。
#128
○猪熊重二君 それは今の局長の話はおかしい。
 まず使途不明金の方から申し上げれば、結局監査役なり会計監査人が監査した貸借対照表が最終的にはずれなきゃならぬわけですよ。損金に上げておくことができない。損金に上げておくことができない、損金の方を減らすということは、結局収入がふえることになるんです。だから、会計監査人なり監査役としてもし、今、局長がおっしゃったような理由でいいんだと言うとすれば、いいんじゃなくて結局は修正せにゃならぬでしょう。修正申告せにゃならぬでしょう。まして使途が、使途不明金といって最終的にまで使途不明ということは、税務当局に対しては使途不明だけど、そうすると局長のお話だとこれは社長の遊興費だよということを監査役に言ったから使途はわかっているんだ、だからそれはそれでいいと。そんな理屈以外にないじゃないですか。
 使途不明金、例えば平成三年のですよ、結局税務当局として調べたけれども四百十九億円はどこへ行ったか全然わからないのか、言わないのか、まあ言わない。だけど、そうすると局長は、四百十九億円は監査役なり会計監査人は知っていて、それでしかもその支出先を正当だということでこの計数に基づく貸借対照表あるいは損益計算書は結構でございます、何ら問題とするところはない、特記事項はないと、こういうことを言ったことになる。
 それから、さらに損失補てんの方にして言えば、損失補てんしちゃならぬよという通達、この通達がどれだけ法的効果を持つかどうか、それは一応議論があるところです、先ほど大臣も言われたけれども。ただ、証券取引法では事前の利益供与を言って証券の売買を勧誘しちゃならぬという規定になっていたんです、その当時。事前に利益供与をすることを条件にして売買、勧誘しちゃならぬということは、事後だって同じことなんです。買う前にあなたには損をかけないでどうしますからと言ったって、後で損が出た、ああ、じゃ、それしましょうということは、要するにその当時の証券取引法の法文の趣旨からいえば、後で損失補てんしますということと前に損させませんということとは同じことじゃないですか。
 まあ、それはどっちにしても、法的効果はどうであるかということは別にしたって、証券局長が損失補てんはしちゃならぬという通達を出したんだから、その通達を監査役なり会計監査人は当然考えて、損失補てんはあるかな、うちの証券会社はないかなと調べるのが当たり前なんです。それを調べないでやっておいたから今みたいなことになっているんです。証券会社をひっくり返すようになっているんです、まともにやっていないから。それを何か、今、局長は会計監査人なり監査役は真っ当にやっていて、税務署は税務署で勝手にやっているようなことを言っているが、それはもう一回きちんと言ってください。
#129
○政府委員(清水湛君) 私も、具体的にどういうふうな形で計算書類なりなんなりがつくられているかということについては承知しておりませんので結局観念論で申し上げるということにならざるを得ないわけでございますけれども、取締役会なり最終的に株主総会で承認された計算書類、例えば営業収益の中で経費という形で損益計算書に計上されておるという形で株主総会では承認されたと。
 ところが、その株主総会で計算書類が承認される、あるいは特例的に取締役会の決議で確定されるということもあるわけでございますが、そういうような確定した計算書類に基づいてそのまま税務申告をすればそれで問題がないわけでございますけれども、税務申告の段階では損益計算書上費用という形で株主総会で確定されたものについて費用性が否認されると。したがって、その部分については会社に利益があるものとして税金を納めなければならないという意味での株主総会で承認された計算書類と税務申告のために提出される計算書類との食い違いが生じてくる、こういうことはあるのだろうと思うのであります。
 それはしかし、税務申告上の使途を明らかにすることができないということから生じる一つの現象だろうというふうに思います。それを商法の上で是正しろと言われても、これは株主総会で承認されている計算書類でございますので、そういうわけにはちょっといかないのではないかというふうに思うわけでございます。
 それから、損失補てんの問題につきましては、具体的には損失補てんに係る支出がどういう形で計算書類の上で表示されるのかという問題ともかかわってくる問題だろうと思います。損失補てんが明確に違法であるというふうに客観的にもう確定された段階でなおかつそれを公認会計士なり監査役が見逃したということであれば、これは違法、不当な支出についての正当な監査をしなかったということに当然なるわけでございます。
 この違法性について疑義があって、まだ社会的には問題であるけれども商法の見地からは違法ではないという、もしそういうふうなことを考える余地がある段階での話ということになりますと、それはまた別な考え方も出てこようかと思いますけれども、損失補てんについての違法あるいは違法でないということが決まっていたかどうかということがやはり一つの決め手になる性格の問題であろうというふうに思います。
#130
○猪熊重二君 何も局長がすべての日本じゅうの会社を監督しているわけじゃないんだから、そんなに夢中になって言わなくてもいいんです。いいんだけれども、要するに使途不明金にすれば、毎年やっていて、特に建設業なんというのは六〇%、七〇%金額的に占めてやっているわけです。それで監査役なり会計監査人が結構ですと言って判こをついて、今おっしゃったように株主総会で結構ですということになって、後で税務署が来てはひっくり返されているんです。これじゃ仕事していることにならないじゃないか。税務署が来てもひっくり返らないようなものをつくったらいいじゃないか。ただ、ことしはたまたま間違ったから来年はと言うんだけれども、来年も同じことをやっているんです。再来年も、毎年同じことをやっているんです。
 特に私が言いたいのは、せっかく外部から委任した会計監査人というのは一体何なんだ、公認会計士あるいは監査法人の仕事を見つけてやっただけじゃないか、ほとんど役に立っていないじゃないかというぐらいに極論すれば言いたいわけで、これは別に局長が責任感ずることじゃないんですよ。ないけれども、せっかく一生懸命やったけれどもほとんど役に立っていない。
 そうすると、大臣ね、こんな監査役だとか会計監査人を、いろいろ一生懸命法務省としてさっきも言ったように四十九年から何回も改正して、権限強化したらどうだ、ああいうふうにしたらどうだ、こういうふうにしたらどうだ、今回もまたいろいろやっているんだけれども、ほとんど役に立っていないと思うんだけれども、これについて大臣、現行の監査役制度とか会計監査人制度というものをもう抜本的に見直すべきだと私は思うんですが、どうお考えになりますか。
#131
○国務大臣(後藤田正晴君) 監査役制度とか会計監査人の制度を抜本的に見直せ、こういうお話ですね。そして、大体使途不明金あるいは本来自己責任でやらなきゃならない株の取引で大口の人にだけは損失補てんをするとか、あるいは飛ばしとか、いろんなことがありましたね。しかし、これらの、私は常識論ですよ、手口というものは私はこれ複雑な手口でやっているんだろうと思いますね。だから本来複雑な手口を取引の中で経理処理上はそれぞれきちんと私は整えてあるんじゃないかな、こう思うんですね。だからなかなか実態はわかりにくいのが本当ではなかろうかなと。
 それなら何のために監査役とか会計監査人を置いてあるんだと、こうおっしゃるのもわかるんですよ。わかるんだけれども、本当に現在の監査役、会社の中の立場、役割、あるいは外部の会計監査人でも結構ですが、実際はなかなか、そうは言っても本来常識的にわかるはずだという疑問はあるんですが、必ずしもそうはいかない面が、私は実際会計の帳簿の処理上はきちんとしておるんではないかなと、こう思うわけですね。
 そうすると、例えば損失補てんの問題なんかも、結局処理は全体として、トータルとして損失補てんというのは行われておったんじゃないか。ところが、これは、交際費として上がっておるんじゃないかといったようなことででもこれ処理したんじゃないのかな。
 だから、あなたの御質問よくわかるけれども、今の制度ではちょっと、だから会計監査の制度とかあるいは外部の監査人の制度がこれは役に立たぬというわけでも、一口には言えないのではないかなと、かように考えるわけでございます。
#132
○猪熊重二君 大臣ね、馬を川まで連れていくことはできるけれども水飲ませることはできないということわざがあります。幾ら一生懸命国でシステムとしてこれだけきちんとやったって、やる気がないやつは何もやりゃせぬ。だから、もう馬は川のほとりどころか水飲むところまでとっくの昔に連れてきているんです。それを飲まないだけなんだと私は思うんです。
 飲まないというのは、結局会社の中の役員の一つである監査役、それから頼まれたけれども委任契約によって報酬をもらってやっている会計監査人、このようなシステムじゃもうだめだということになる。だめだからやめちゃったらどうだろうとも思うんです、私は。もうどうせ役に立たぬのだから、そんなもの強制する必要も何もないです。システムが悪いんじゃなくて、システムを使う意思も能力もないんです。
 だとしたら、こんな内部的な監査なんという制度でなくして、どうしても監査が必要だったら全く外的監査をやったらどうだと。今、会社に対してもいろんな外的な機関がありますよね。商取引に関しての公正取引委員会だとか、あるいは証券取引に関する今度できた証券監視委員会だとか、一番嫌な話だけれども国税庁だとか、いろいろありますよ。そういうふうな意味で、何かもうどうしてもやらにゃならぬというんだったら全く純粋に外的な監査制度というものをつくるのならつくるし、どうせ役に立たぬものだったら法律が一生懸命苦労して制度をそんな整備する必要もないじゃないかと。レッセフェールで自由にやらしておいたらいい。国としては国税の税金と濫費者たる国民のPL法の問題だけやればいいんであって、あとはもうほっておいたらどうだと、こんな極論すら覚えるほど役に立っていない制度だと私は思うんです。
 外的機関による監査ということについて、大臣、どうお考えになりますか。まあ局長でもいい、これはどっちでも。
#133
○政府委員(清水湛君) 外部機関による監査というのが非常に意味があるということで、実は四十九年に公認会計士、監査法人による会計監査人制度というものを導入したわけでございます。これはまあ効果が上がっているか上がってないかということについてはいろいろ見方があるわけで、先生も全くゼロだという趣旨でおっしゃっているのではないと思っておりますけれども、そういう外的、外部監査というものの意味は私どもはまだ否定することはできないと思います。
 ただ、そういう意味で外部監査に頼るということは一つの考え方であるということは私どもは否定はいたしませんけれども、しかし企業というものの存在というものを考えますと、監査役も実は企業内部の人間というふうに構成されているわけでございまして、まずみずからが、企業みずからがきちっとした企業行動をする、計算の適正な保持を図る、違法な支出はしない、違法な行為はしないということで企業みずからがまず身を正すということが会社法の本質的な問題として要請されていると思うのであります。その企業みずから身を正すというのが日本においては監査役制度であります。例えばアメリカではそれが取締役会であり、取締役会の足らざるところを今度は株主が直接会社に対して諸要求をする、つまり株主のコントロールにより企業の行動の適正化等を図る、こういうことになっているんだろうと思います。
 今回の日本の会社法の改正でも、企業内部のいわば浄化作用としての監査役制度を強化するとともに、企業のいわば内部の人間である株主による会社のコントロールというものもやはり強化をする、これが代表訴訟制度等の強化につながっているわけでございます。そういう企業内部における監査機能の強化というものにあわせて、さらに必要なら外部的な組織というものを考える、こういうことになるのではないかと思います。そういう意味で、決して内部の監査制度、監査機能の充実強化ということについて私どもとしてはあきらめてはならないというふうに実は考えているわけでございます。
#134
○猪熊重二君 今回の個別的改正問題について伺おうとしましたが、時間の関係もあるし竹村先生の方からも聞かれましたので、今回の改正とは直接関係ありませんけれども、こんなことはどうなんだろうか。
 すべての株主が監査役及び会計監査人に対して、例えばうちの会社には使途不明金があるかないか調べてくれというふうな監査請求をする。言っていることは、住民の問題と同じなんです、住民が監査請求をしてためたと言われたから住民訴訟を起こす、あれと同じように。個々の株主はわからないんです。ただ新聞を見るとみんなあっちでは使途不明金やっているそうだよ、うちもどうかなと言ったってどこをどう調べていいのだかわからぬ。そういう場合は、うちの会社には使途不明金があるかないかということに関して監査役なり会計監査人に具体的にそのような項目を提示して、うちを調べてくれというふうな制度はどんなものだろうという点が一つ。
 それからもう一つは、すべての株主が会計監査人に対して、会計監査人がまともに仕事をしていない場合、会社と会計監査人の間は委任関係だからなかなかうまくいっているわけだ、うまくいっていて損害賠償請求も何もせぬというふうな状況において、すべての株主が会社に代位して会計監査人に対する損害賠償請求も起こせるというふうなこと、ただこれは代位権の問題がちょっとあもんだけれども、その二点についてお答えいただいて、きょうの質問を終わりたいと思います。
#135
○政府委員(清水湛君) 第一問の方は、地方自治法で認められておりますような住民の監査請求、これはそこではもう認められているわけでございます。そういう意味で株式会社についてもいかがかと、こういう御発想だろうと思います。
 この点につきましては、一つの考え方としてあり得る考え方だというように思いますけれども、株主によるいわば直接会社のコントロールというアメリカ法の思想にやや近いのかなという感じもいたしますけれども、日本では個々の株主がそういう行為をするかわりに監査役というものを制度化いたしまして、監査役に大いに期待をしておると。権限を強化して責任も重くする、こういうことになっているわけでございまして、この辺日本の株式会社の実情というものをあわせて考えますと、株主にそういうような直接の権利を認めることがいいかどうか、かえって会社経営が大変混乱をすることになるのではないかというような問題もあるわけでございまして、一つの問題提起として私どもは伺いますけれども、相当これはやはり研究、検討しなければならない問題だろうと思います。
 それから次は、代表訴訟の対象を取締役、監査役あるいは会社の発起人等に限定することなく、外部の人間である会計監査人に対しても代表訴訟を認めるべきではないかというような御指摘でございます。
 確かに、会社が会計監査人に対して損害賠償請求権を持つということはあるわけでありますが、本来この代表訴訟が認められている趣旨は、会社がいわば会社の内部の人間である取締役、監査役に対してはなかなか権利を行使しないというところに着目した制度でございまして、会計監査人と会社との間は委任契約関係だと申しましても外部の人間でございますので、そこまで代表訴訟という特別の訴訟形態を認めるのが適当かどうかということについては、これも一つの問題提起であるということは私ども十分承知いたしておりますが、相当慎重に研究、検討を要する問題ではないかというふうに思っております。
#136
○猪熊重二君 いろいろ悪口を言いましたけれども、しかし大変に御苦労さんなんです。この前の質問のときにも申し上げたけれども、大体これは大蔵省の仕事を法務省がやらされているようなもので、しかも業界というか、実際の企業のいろんな要望も聞かなきゃならぬ。しかし、企業の要望を聞いていたらやってはいられないはずなんです。しかし、企業の言うことを全然無視して組織法をつくったってまた乗ってこないし、えらい難しいところで御苦労をしていることはわかるんだけれども、まあしっかり監査役に頑張ってもらうことにしたいと思います。
 以上です。
#137
○紀平悌子君 午前中、参考人の御意見を意味深く伺ったわけですけれども、そのお一人の佐高参考人が、会社はもともと、非合理とおっしゃったか不合理とおっしゃったかちょっと記憶がはっきりしませんが、不合理なもので、これに合理的な網をかけていこうというようなことは大変なことなんだ、マイナス八からマイナス六まで進歩するという程度のことでの進歩はあるんじゃないだろうかというような大変手厳しい御発言から始まりましたわけです。
 ちまたで商法の改正というのを今法務委員会というところに属してやっているのだというふうに話をいたしますと、それは一体国民にとってどういうことなんだということを聞かれるわけですね。なかなか一口に説明ができないで困っているというのが現状でございます。
 思いますのに、今回の改正は株主権の強化をねらいにしているということはわかります。本改正中で最も影響力が大きいのは、これまで余り活用されてこなかった株主代表訴訟制度を活性化させるための措置だというふうに思われるんですけれども、これは日米構造協議などでの民事訴訟の手続の簡素化、弁護士資格の相互承認など、米国側の一連の法律上の要求と同じく、貿易摩擦の激しくなる今日では、いずれ遅かれ早かれ多国籍企業を手始めとして株主訴訟も増加していくというふうに考えられます。
 その点について、株主代表訴訟の増加はこの法が動き始めたときにどういうふうになっていくというお見通してございましょうか、法務省にお伺いいたします。
#138
○政府委員(清水湛君) お答えいたします。
 今回の代表訴訟制度についての訴訟の目的の価額を九十五万円とみなすということにいたしましたために、具体的に訴状に張る印紙は八千二百円でよろしいということになったわけでございます。これについてはいろんな考え方があって、考え方によりますといろんな見方ができるわけでございますけれども、従来に比べますと代表訴訟が提起しやすくなったということは間違いなく言えると思います。ただ、これによって訴訟事件が非常に増加するんじゃないかというようなことを新聞などでも書かれていることがございますけれども、これにつきまして私どもは必ずしもそういうふうに実は考えておりません。
 代表訴訟を起こすと申しましても、実はその前提に、会社が取締役なり監査役に対して損害賠償を請求することができる、損害賠償請求権があるということが前提になっているわけでございます。この損害賠償請求権の存否というのは、今回の改正の前後によって変わりがありません。今回の改正によって取締役とか監査役に対する損害賠償請求権がふえたとか金額が上がったということにはならないわけでございます。ただ、従来に比べて訴訟が起こしやすくなったために、今まではその訴訟の提起をためらっていた人たちが起こすということはあるかもしれませんけれども、それとても訴訟に勝つ見込みがないのに起こすということはあり得ないわけでございます。そういう意味では、実質的な増加というのはそれほどないのではないか。
 ただ、一つ考えられますのは、八千二百円払えば訴訟が起こせるんだからということで会社に対して嫌がらせ的な代表訴訟提起をするグループというものがあるいは出てくるかもしれない、こういう心配はございます。これに対しましては、現在ほとんど活用されておりませんけれども、悪意のある訴訟提起をした原告に対しましては、裁判所の方で、被告となった取締役あるいは監査役がこうむることがあるべき損害を担保するための担保の提供を命ずるという制度がございますので、いわゆる乱訴、嫌がらせ的な訴訟提起というのは防止することができるのではないかというふうに考えているわけでございます。
#139
○紀平悌子君 これまでイトマン事件とか東洋信金事件など、刑事事件に発展し、そして経営の根幹が揺るがされるようなケースはバブルの崩壊と同時に多発をしております。そのような放漫経営はこれまでの商法の体系では許されていたという、結果的にはそう言えるわけですけれども、株主代表訴訟が今後、それほど猛烈でなくても盛んになるとすると、過剰な子会社への投資、融資、財テクの失敗などの経営判断ミスに対して経営者個人が巨額な賠償をしなければならぬ場合が出てくるとも思われるんです。
 そこで、今後司法の場で経営責任が問われる可能性が高まった場合、法務当局はそういう可能性についてどう御認識をお持ちでございますか。
#140
○政府委員(清水湛君) イトマン事件とか東洋信金の事件で具体的に取締役の任にあった者に損害賠償責任というものがあるのかないのかということについては私ども何とも申し上げることはできませんが、先ほども申し上げましたとおり、今回の改正によって取締役なり監査役の損害賠償責任が重くなるとか軽くなるということはないわけでございます。その責任の範囲というものについては従来どおりでございます。
 したがいまして、現行法のもとでも、本当にそういう意味で経営者の責任を会社が追及すべきである、あるいはまた会社更生とか破産という段階になりますと、更生管財人なり破産管財人が取締役の損害賠償請求をするということも現に行われているわけでございまして、そういうような場面というものもあるわけでございます。
 ですから今後、代表訴訟制度が利用しやすくなったがために、いわば正当な権利としての代表訴訟が提起されて損害賠償請求というものが行われるというケースはあるいはふえるかもしれませんけれども、それほど数がふえるというふうには考えていないわけでございます。そういうことで、取締役が責任を負うということであれば、これはもう当然この法律の規定に従った責任は負っていただかなければならない、このことは今回の改正によって左右される問題ではないと、こういうように思っております。
#141
○紀平悌子君 続いてですけれども、投資家の立場から見れば、今後企業の健全経営についてより慎重な対応が法的に要求されるということになりますけれども、企業の経営状況などの重要情報を投資家が広く利用できるように開示を十分に行う必要があるというふうに思います。
 そこで、放漫経営を隠ぺいするための誤った企業内容の開示が行われた場合などについて規制強化することが必要じゃないかというふうに思うんですが、その点につき簡単で結構でございますのでお答えをお願いいたします。
#142
○説明員(西方俊平君) 今お話しございましたように、ディスクロージャーの制度というのは資本市場の適正な企業評価が行われるための前提として大変重要なものだというふうに思っております。ディスクロージャーの違反につきましては当然罰則規定が整備されておるというような状況でございまして、むしろ現在、投資家のための信頼を確保して市場の参加を容易にしていくという意味では、ディスクロージャーの充実ということが各方面から言われてきているところでございます。
 私ども、五十年代、六十年代、それからことしもそうでございますし、今回の改正に伴いましても必要なディスクロージャーの充実に努めていこう、こういうふうに考えておるところでございます。
#143
○紀平悌子君 大蔵省にお伺いいたします。
 今回の社債についての法制度改正についてですけれども、社債発行限度を撤廃するということは、社債を引き受ける投資家の自己責任原則を容認する環境が整備されてきたという判断が基本にあるというふうに伺っております。バブル時代の大手企業の資本調達はどのように行われてきたのか、八六年から八九年の間、社債発行による資金調達額及びエクイティー関連社債などどれほどに上り、またこれらの償還のめどは立っているかどうか、伺いたいと思います。
#144
○説明員(西方俊平君) ただいまのバブル時代の社債等の発行の問題でございますけれども、年を追って数字で申し上げたいと思います。
 一九八六年度の社債発行額は約八兆八千億円ございまして、それに占めるエクイティー関連社債の割合は約七割でございました。一九八七年の社債発行額は約十一兆六千億円、それに占めるエクイティー関連社債の割合というのは約八割強というような状況。それから八八年度の社債の発行額は約十五兆円でございましたけれども、これもエクイティー関連社債の割合というのは約九割弱というようなことでございます。それから一九八九年は社債発行額が約二十兆円を超えるというようなことになりまして、そこに占めるエクイティー関連社債の割合というのは約九割というような状況になっているわけです。
 今御指摘がございましたように、こういったものにつきましては償還ということが目の前に来ております。現実にことしの場合は約十一兆円の償還が予定されている。来年の場合は六兆三千億円、再来年の場合は四兆四千億円ということで、当面ごとしが大変なピークになるわけでございます。ことしの上半期の償還額、これは償還額だけでも六兆三千億円に上りまして、九四年以降の年間償還額を上回るような状況でございます。
 こういった状況でございますので、私どもこれまでに転換社債とかワラント債を発行した企業につきまして、本年一月の段階でございますけれども、調査を行いました。償還のめどはどうなんだろうということでございますけれども、その時点では大体償還期というのがはっきり決まっておることもございまして、ほとんどの企業は償還についての手当てを行っているというようなことでございます。その後数カ月を経ているわけでございますけれども、この間償還について特に問題があるという話は聞いておらず、大変多額の償還にもかかわらず順調に償還が行われているというふうに認識しておるところでございます。
#145
○紀平悌子君 今、バブル経済の影響からようやく脱し始めておるというふうに、私にはよく認識できませんが、そういうふうに言われております今の時期なんですけれども、社債など資金調達ということよりも、まず不良債権の整理など地固めの時期に来ているんじゃないかというふうに思います。
 ミニバブルをもたらしかねない社債発行限度額の廃止、撤廃というのはもろ刃の剣ではないかというふうに言われておりますけれども、今回の改正のバブル経済への反省との関係で法務省の御評価はいかがでございましょうか。
#146
○政府委員(清水湛君) バブル経済の影響から脱し始めた現時点というのは不良債権の整理などの地固めの時期であるというような御指摘でございますけれども、この社債制度の改正というのは、たまたま今そういう時期に遭遇をいたしたわけでございますけれども、この前からお答えしておりますとおり、そもそも現行法の制限というのは合理的なものであるかどうか、先進諸国の制度との比較において適当なものであるかどうかというようなことから、古くからこの制度の改善ということについて議論がされてまいったところでございます。
 そういう意味で、今回の改正におきましては、社債の発行限度の規制を撤廃はするけれども、やはりそれにかわる社債権者保護の仕組みというものをしっかりつくり上げるというようなことが前提となっているわけでございます。単純にその発行の段階における限度規制をすれば足りるというようなものではなくて、発行後償還に至るまで社債権者の権利が十分に保護されるような形でのシステムを考えるということによりましてこの限度規制の撤廃をしたわけでございます。
 したがいまして、バブル経済というような問題が今回の改正によって生ずると申しますか、そういうようなものの原因の一つに将来なり得るというようなことにはならないのではないかというふうに考えているわけでございます。
#147
○紀平悌子君 午前中の前田参考人も同じように、ちょうど時期が今の時期になったのだという一言でお話を返されましたので、これはこれ以上申し上げないことにいたしまして、今回、もう同僚委員がどんどんお聞きになったことではございますけれども、株式会社の監査機能が強化されて監査役の任務が重くなるというわけですけれども、監査役が取締役によって実質的に選任されるなど、その経営チェック機能にやはり不安はあるわけです。一たん会社に放漫経費などが生じたとき、監査役がトカゲのしっぽ切りで監査の怠慢の責めを負わされて終わるというようなこともあり得ないことではありません。
 そこで、監査役について要求される注意義務というもの、これは具体的にいかなるものを想定されているか、御説明をいただきたいと思います。
#148
○政府委員(清水湛君) 監査役は、取締役の職務の執行について監査権限を有する、あるいは監査のために取締役に対して営業の報告を求め、あるいは会社の業務及び財産の状況を調査することができるなどなど、いろんな権限が与えられているわけでございます。そういうような義務を、これは取締役と同様に会社に対する善良な管理者としての注意義務をもって行うということに商法上はなっているわけでございます。取締役も同じく会社に対しまして善良な管理者の注意義務をもって行う義務があるということになっております。
 取締役の職務と監査役の職務はそれぞれ違いますので具体的な中身というものは違っているわけでございますけれども、やはり全体的に見まして監査役としての尽くすべき義務を尽くしたかどうかということを諸般の事情から総合的に判断してその責任を決める、こういうふうに申し上げざるを得ないわけでございます。個々具体的な事情に基づいてその責任の有無を判断する、こういうことになろうかと思います。
#149
○紀平悌子君 最後の御質問になるんですけれども、法務大臣にお願いをいたします。
 今日の商法改正案について、内容はだんだんにということでなければなかなか無理だということも理解をしかけてはおりますけれども、実効性がいささかどうなのかなと、法益というものはどの辺にあるのかなというふうに私は感じております。
 また、米国側が日米構造協議で要求してきている市場閉鎖性の改善というような点についてはノータッチということのようでございますので、いささか言葉が適当でありませんけれども、骨抜きの部分もあるのかなという批判もあります。
 法務大臣は、それらの点につき総括してどのような御見解をお持ちでございましょうか。また、今後の改正の場合、何が一番大事だというお見通してございましょうか。
#150
○国務大臣(後藤田正晴君) 確かにこれで果たして十分かなという御疑問は今日までの委員の皆さんの御質疑の中でもしばしばお出しになられた御意見でございますが、私はやはりこういうものは漸進的に逐次効果は上がってきているもの、また上げなきゃならない、かように確信をしております。
 それから日米関係の問題では、実は初めのうちは経済摩擦を日本の市場の閉鎖性といったようなことで取り上げて、いわゆるMOSS協議で一つ一つの品物についていろんな苦情が出てきまして、それで実はこれの対応に、正直言ってもうエンドレスの要求じゃないかといったような我々の側、日本の側においての不満もあったわけですね。そういったようなこともございまして、これはやはり構造そのものの中にお互いに問題があるんじゃないかと。
 それならば、一方でMOSS協議、これは自由経済でありながら実際は管理貿易をやれということなんですから、これはやはりシステムの問題として取り上げようということで、御案内の前川レポートですね、これで日本の経済構造それ自身をそれなりにひとつ改革をしていこうということで取り組んで、私はあの改革はそれなりに双方にとっても有益な改革であったなと、こう思いますが、依然として今日なおかつアメリカ経済の現状と日本との間の貿易のインバランス、こういう問題が改善をしない。アメリカ側にはアメリカ側としてやってもらわなきゃならない放漫財政の問題、赤字問題があるわけですね。しかしまた、同時に日本側はここまでできるだけやって、私はこれ以上言われる筋合いはないじゃないかというぐらいの感じが実はしておるんです。しかしながら、よくよく考えてみますと、なるほど日本の市場は開放成ったけれども、実際は日本特有の企業ごとの大きな仕組みのこの市場の中に入りにくいという外国の批判は私はそれなりに受けとめなければ、ともかく一方的に日本の方はグローバルな立場で見てもほとんど黒字ですから、そういう意味において日本の市場は私はまだまだ開放しなきゃならぬ面があると思います。
 そういったようなことも考えながら、私は今回のこの商法の改正もやはり日本の立場でもちろん判断してやったんですけれども、アメリカ側からは市場の閉鎖性と関連して問題があるといったようなことがあって、一番日本として考えなきゃならぬのは、一つは株主の権利の保護だといったような観点から今回の改正に我々としては踏み切ったわけでございます。それは代表訴訟の問題とか株主の帳簿閲覧権の要件緩和といったようなことで手当てをしたわけでございます。
 そういう改正で、皆様方のこれで一体大丈夫かという御批判はそれなりに私はよくわかります。そこらを頭に置いて、将来これの運営がどうなるかということは十分注意をしてやりたいと、こう思いますが、商法それ自身の改正がこれで終わるわけじゃありません。やはりまだまだたくさんの点が残されておりますから、これらについても引き続いて慎重に、法制審議会その他の御意見等も承りながら改善すべき点については逐次改正をしなきゃならぬなと、かように考えているわけでございます。
#151
○紀平悌子君 ありがとうございました。終わります。
#152
○委員長(片上公人君) 両案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。
   午後四時散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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