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1993/06/03 第126回国会 参議院 参議院会議録情報 第126回国会 法務委員会 第9号
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1993/06/03 第126回国会 参議院

参議院会議録情報 第126回国会 法務委員会 第9号

#1
第126回国会 法務委員会 第9号
平成五年六月三日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 六月二日
    辞任         補欠選任
     大脇 雅子君     千葉 景子君
 六月三日
    辞任         補欠選任
     井上  孝君     河本 三郎君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         片上 公人君
    理 事
                下稲葉耕吉君
                真島 一男君
                竹村 泰子君
                猪熊 重二君
    委 員
                河本 三郎君
                斎藤 十朗君
                鈴木 省吾君
                服部三男雄君
                平野 貞夫君
                山本 富雄君
                千葉 景子君
                角田 義一君
                深田  肇君
                矢田部 理君
                石原健太郎君
                紀平 悌子君
   国務大臣
       法 務 大 臣  後藤田正晴君
   政府委員
       法務大臣官房長  則定  衛君
       法務大臣官房審  森脇  勝君
       議官
       法務大臣官房司  濱崎 恭生君
       法法制調査部長
       法務省民事局長  清水  湛君
       法務省保護局長  杉原 弘泰君
       大蔵省銀行局保  鏡味 徳房君
       険部長
   事務局側
       常任委員会専門  播磨 益夫君
       員
   説明員
       大蔵大臣官房審  西方 俊平君
       議官
       国税庁調査査察  藤井 保憲君
       部調査課長
       自治省行政局振  松浦 正敬君
       興課長
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○商法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
 議院送付)
○商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係
 法律の整備等に関する法律案(内閣提出、衆議
 院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(片上公人君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨日、大脇雅子君が委員を辞任され、その補欠として千葉景子君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(片上公人君) 次に、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案を一括して議題とし、前回に引き続き、質疑を行います。質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○角田義一君 私からまず大臣に御質問申し上げたいと思いますが、今回の商法の改正で私は改めて株式会社、特に巨大企業、巨大株式会社のあり方というようなものを真剣に考えなくちゃいけないんじゃないかなという気がいたします。
 ややグローバルに申し上げますならば、東欧諸国というものが崩壊をしてソ連も崩壊をする、中国等の一部を除きまして世界がほとんど市場経済あるいは競争原理という社会的な経済的な構造になっていくということになりますると、それだけ一層私は巨大企業のありようというものがますます問われてくるということになるだろうと思います。
 日本の場合を限って見ましても、巨大企業は大変な従業員も抱えております。それから、もちろん株主も多いです。そして、取引先も多い。さらには、この前の日産のように工場を閉鎖するというようなことになれば地域社会に対する影響も大きい。そして、新規採用を取り消すというようなことになればこれまたいろいろ深刻な問題もあるわけですから、そういうさまざまな問題を考えますと巨大企業のあり方、一体巨大企業はだれのものかとか、だれのためにあるのかというような議論が最近巻き起こっておるというのも当然だというふうに思うわけでありますが、いよいよ巨大企業の、言葉は適切かどうかわかりませんけれども、一口で言えば社会化あるいは民主化、そういうものが問われてきているんじゃないかと思います。
 そういう中で、余り私は英語を使いたくありませんけれども、例えばコーポレートカバテンス、企業統治というような概念なり論争が起きているわけでありますから、そういうものの流れ、大きな流れというものを踏まえた上で商法の改正なり商法のあり方というものが論じられなければならないんじゃないか。特に、アメリカとの日米構造協議の中で、アメリカの株式会社制度と日本の株式会社制度とは運用の面においても大分違うというようなことを考えますと、今後の日米関係の中でもいろいろ大きな問題が出てくるんじゃないか。
 そういう観点からやはり商法のありようというようなものは考えていかなくちゃいけないんじゃないかというふうに私は思っているのでございますけれども、大きな流れの中で、ひとつ大臣、どういうふうに考えておられますか、まず御所信を承りたいと思います。
#5
○国務大臣(後藤田正晴君) 仰せのとおり、現在の世の中、言うまでもありませんが、自然人と並んで企業法人、これが大きな構成要素になっておるわけですね。しかも、御意見の中にある巨大企業といいますか、これの経済力はもちろんのこと、社会に与える影響力、これも極めて大きくなってきておる。さらにまた、国際的に見ましても、今までのような考え方では、何といいますか、ともかく大量生産なり大量販売、そしてシェア中心といったようなことで、国際的にもこれまた大きな問題を投げかけておる。
 しかも、同時にまた日本の場合には、それらの同業の業種ごとに実際は大変なかたい、何といいますか、日本特有の企業のあり方があるものだから、外国から見るとすっかり閉鎖社会で、幾ら国境措置をやかましく言っていても実態は入れないじゃないか、アンフェアであるといったような非難もありますし、国内的に見ましても、今仰せのように、地域社会に与える影響、これ大きいですね。
 例えば、日産自動車の座間ですか、あれはあの地域には容易ならざる大きな影響を与える。あるいはまた、年によって新規の学卒者の採用を決めておったのを取り消すとか、いろんな面で企業の社会的責任というものは私は重要になってきておるなと、こう思いますから、やはりその会社の組織といいますか、それを決めておる商法の規定なり、あるいは会社それ自身の活動をコントロールするもろもろの法律もありますね、こういうようなものについても、全部やはりそういう社会的な責任というものはよほど以前とは変わってきておるという前提に立って、そのときどきにそれに対応する措置をしなきゃならぬと、こう思います。
 しかし、同時に言えることは、やはり安定性ということですね。これもまた一方で考えませんと、非常に浮かれておったんじゃ活動ができないといったような面もありますから、そこらの兼ね合いをどう考えたらいいんだろうかと思います。
 私どもの方は法律制度の面ですから、これは商法について言えば商法改正の審議会等もありますからそこらで検討して、そして各界の御意見も聞きながら、今この程度がどうだといったような結論の得られた点について皆さん方に改正をお願いしていく、こういう今までのやり方ですね。私は、やはり現時点では、角田さんのおっしゃるのはよくわかりますけれども、やっぱり改正のあり方としては今までのような法務省のやり方で、これが適当なのではないかなと。思い切ってやるというのも一つのあれですけれども、片方、安定性から見てリアクションが出てくるということもありましょうから、今までのとおりのやり方でやらせていただくのがいいんではないかなと、こう考えております。
 ただ私は、ここに局長さん方いらっしゃるんだけれども、初めて法務省に行きまして、確かに法務省というのは歴史の積み重ねのあるさすがに古い伝統を持ったいい組織だと、戦後といえども崩れてないなという感じは持ちました。これは褒め言葉の方です。ところが、安定性の方が余りにもきついものですから、制度の面とか、殊に予算の面あるいは人員ですね、こういうことになってくるというともうちょっと積極的に取り組んで、こっちに大蔵省いらっしゃるが、少々大蔵省が嫌がってもいただくものはいただくといったようなことでいかぬといかぬのではないかなというのが私の率直な感じでございます。
 わき道にそれまして、恐縮でございます。
#6
○角田義一君 今、大臣からいろいろ御発言がありましたけれども、法務省の今までのやり方、今回の商法の改正で私はちょっと後でまた問題を提起しますけれども、必ずしも世の中の実態に合っていないじゃないかということを後でまた聞いていきたいと思います。
 それはそれといたしまして、企業のあり方、巨大株式会社のあり方でやっぱり一番問題なのは、株主と経営者との関係が一つ大きな軸になると思います。
 これは同僚議員からお尋ねもございましたが、上場企業の九割に当たります千八百二十四社が昨年の六月の二十六日に一斉に総会を開いた。しかも、一九八五年では総会に要した時間が一時間を超える会社というのはそれでも全体の五・五%ありまして、百社ぐらいはあったんですよ。ところが九一年では所要時間が一時間を超えた総会、これは○・九%、十九社ですね。大体三、四十分でシャンシャンやっちゃう。イトーヨーカ堂さんの監査役の問題が出ましたけれども、あれは業界筋に言わせると氷山の一角ではないかと。
 やはり総会は、取り締まっておるけれども、実態的にいろいろ根回しをやってシャンシャンと三十分か四十分でやっちまう、こういう株主総会のありよう。これは本来ならば株主が経営陣に対して物を言う場であるはずなのに、現実は三十分か四十分でシャンシャン。しゃべろうものなら、やじ、怒号でつぶされる、こういう雰囲気です。
 これは理由はいろいろあると言われています。いい悪いはいろいろ議論があるところですけれども、一つにはいわば巨大企業の安定株主もこれは大企業だ。大企業がお互いに株を持って、株式発行数の七割ぐらいは大企業が持っている。その大企業は他人様の会社のことには口を出さない、お互い出さない、こういう一つの大きな流れがあるといってその株主総会というのはますます形骸化していく。
 したがって、株主総会を活性化し、企業をもっとオープンにするためには、株式の持ち合い、相互保有という問題についてメスを入れなきゃいけないんじゃないか、手をつけなきゃいけないんじゃないか、こういう議論がされておるわけでありますが、その点について民事局長、どういうふうに考えておられますか。
#7
○政府委員(清水湛君) 株式の持ち合い、いわゆる相互保有につきましては、これは日米構造協議でもいわゆる系列問題の一つとしてアメリカ側が日本企業の一つの特有の現象ではないかということで非常に大きな関心を示している問題であるということは私ども承知いたしておるわけでございます。また、商法の面から申しましても、御承知のように商法は自己株取得の原則禁止をいたしております。これのいわば一種の脱法行為的な形態として相互保有というものがある、こういうような従来からの認識でございます。従来から商法の学者は、自社株取得の禁止というものの趣旨を徹底するために相互保有も規制すべきであるというような議論を強く展開しているわけでございまして、法制審議会の商法部会等におきましてもしばしばこの問題は議論されております。
 しかしながら、現実の問題として我が国の企業の実態の相互保有というものを私どもすべてにわたって精査したわけでございませんけれども、例えばA社とB社がお互いに相互保有をし合っているというような単純な相互保有というのは、もちろんそういうのもあるわけでございますけれども、これは量的にはむしろ少ない。AがBの株を持ち、BがCの株を持ち、CがDの株を持ち、DがEの株を持ち、さらにEが最終的にはまたAの株を持つという連鎖的な、それがまた非常に複雑に入り組んだ形での相互保有、それが全体的に例えば何々グループというような企業体を形成する。逆にそれがアメリカ側から見ると非常に大きな系列として映るということにもなるんだろうと思いますけれども、そういうような複雑な保有形態というものを法律で規制するということは大変難しい、技術的に非常に難しいというような問題が実はあるわけでございます。
 そういうような観点から、商法の面ではいわゆるそういった意味での相互保有は規制していないわけでございますけれども、しかし少なくとも相互保有をすることによって議決権の行使が歪曲化されるということになってはいけないというようなことから、御承知のように昭和五十六年改正によりまして子会社による親会社の株式の取得が制限される、子会社というのはその親会社によって五〇%を超える株式を保有されている会社を子会社というふうに商法では定義しているわけでございますけれども、そういう子会社による親会社の株式の取得制限を商法二百十一条ノ二でするとともに、また会社が他の会社の発行済み株式の総数の四分の一を超える、つまり二五%以上の株式を保有しているという場合にはその保有されている会社の方では親会社についても株主権の行使をすることができないというような規制をしているわけでございます。これはしかし現実のいわゆる連鎖的な相互保有というものとはかなり実態のかけ離れたものでございます。
 確かに今の株式会社の実態というものを見ますと、先生まさに御指摘のように、株主の大多数はいわゆる機関株主であり、あるいは関連会社が株主であり、そういった会社と利害関係の深いものが有する株式が総数の数十%を占めておるというような実態がございますので、そういうことも株主総会が余り活発に運営されないということの一つの原因ではないかというふうにも考えられるわけでございます。
#8
○角田義一君 時間の関係もありますから、それは一つの大きな今後の検討課題としてあるという認識は持っておるというふうに承っておきたいと思います。
 巨大企業のあり方、特に経営陣の責任のとり方といいましょうか、責任の所在、責任のとり方、これが今日大きな私は社会的な問題になっておると思います。
 そこで、大蔵省が見えておりますので使途不明金について若干お尋ねいたしますが、私は先ほど補正予算の予算委員会で御質問申し上げました東京地検特捜部から捜索を受けた十七社、全部名前を挙げて申し上げたんですけれども、この使途不明金、これは口が裂けても言えないですか。
#9
○説明員(藤井保憲君) お答え申し上げます。
 使途不明金につきまして私どもが把握しております一定の計数につきましては御説明させていただいておるところでございますが、先生御指摘の個別納税者に係る事柄につきましては、税務行政の性格上、答弁を控えさせていただきたいと思います。
#10
○角田義一君 私は本来であれば超法規的に、これだけでかい問題になっちゃったやつは例えば国会の決議でもあればしゃべってもらわなくちゃならないようなぐらい大きな問題だと思っておりますけれども、あなたは口が裂けても言えぬと言うから、裂くわけにいかないからそれ以上言わないけれどもね。
 じゃ一つ聞きますけれども、過去三年間ぐらいで特に建設業の使途不明金の実態というのだけちょっと説明してください。それは言えるでしょう。
#11
○説明員(藤井保憲君) 国税当局といたしまして原則として資本金一億円以上の、いわゆる私どもの方で大法人と申しておりますが、そのうち実地調査を行いました法人について使途不明金の計数を把握しておるところでございます。
 これに基づきまして過去三年間を申し上げますと、平成元事務年度におきましては、使途不明金を把握しました法人数が五百九十八社でございます。把握しました使途不明金の総額が五百六十三億円、一件当たりで約九千万円、こういうことになります。建設業で申しますと、法人数が約二百件、総額が四百八億円、これは金額で申し上げますと建設業全体の七三%になります。一社当たりで見ますと約二億円、このようになっております。
 以下、平成二事務年度におきましては、全体が五百八十五社で四百七十六億円の使途不明金が把握されまして、一件当たりで八千万円、建設業は約二百件で三百五億円の使途不明金でございまして、平均しますと一億五千万円。
 平成三事務年度におきましては、五百五十四社から使途不明金が五百五十八億円把握されまして、平均しますと一社当たり約一億円でございます。建設業につきましては約百八十件、把握されました使途不明金の額が三百八十二億円でございまして、平均しますと約二億円、このようになってございます。
#12
○角田義一君 いかにゼネコンというのが、使途不明金もけしからぬけれども、普通の平均的な倍とか三倍とかという使途不明金を使っているわけですよ。
 その使途不明金で税金を取られるわけだけれども、そのことを例えば当該ゼネコンなりあるいはその会社なりにどういう通知をして、どういうさたをして、そしてこういうことをやっちゃいけないよというようなことを、具体的にどういう指導を大蔵省はしているんでしょうか。それは監査役までどういうふうに通ずるシステムになっているのか。それはもう会社の内部事情でそこまでは大蔵省は関知しない、代表取締役にこういうことはおまえのところはだめだよと言う程度だけなのか、その辺ちょっと聞いておきたいんです。
#13
○説明員(藤井保憲君) お答え申し上げます。
 私どもは、使途不明金につきましてはやはり真実の所得者に課税するという趣旨から考えましても大変問題がある、このように考えておりまして、日ごろから企業に対して安易に使途不明金処理をしないよう指導いたしております。また、調査に当たりましても、全力を挙げて使途の解明に取り組んでおるところでございます。ただ、実際の調査におきましてそういう使途不明金を把握する、こういうことになった場合におきましては、原則といたしまして納税申告の責任者でございます代表取締役あるいは経理担当役員等に対しまして適正な会計処理を行うよう指導を行っておるところでございます。
 監査役に対して指導をしたことがあるかどうかにつきましては私ども特に把握をいたしておらないところでございますが、余り例はないのではないか、このように考えております。
#14
○角田義一君 要するに、何回も何回も同じことを毎年平然とやっているわけですよ。
 名前は言わなくてもいいけれども、同じ社が何回も何回も毎年同じことをやっていますか。一社はもう一年でやめちゃって、もうそれ以来ゼロ、全くない、きれいになっているというんじゃないんでしょう。やっぱり同じことを何回も何回もやっておるんじゃないですか。その辺だけちょっと話してください。
#15
○説明員(藤井保憲君) お答え申し上げます。
 特にどこの社という、そういうお答えは差し控えさせていただきます。
 ただ、私ども調査いたしますときに、大きな法人に対しましてより傾斜をつけた調査を行うということをやっております。したがいまして、その調査の頻度ということになりますと大法人が自然に多くなる、このようになっておるところでございまして、こういう答弁でお許しいただきたいと思います。
#16
○角田義一君 法務大臣、要するに企業家といいましょうか経営者の倫理のあり方が問題になるわけです。
 たまたま私の手元の資料に、「九二年版の株主総会白書によると、上場企業のおよそ七割が「チェック機能強化に有効な方策」として「役員・社員の倫理観の向上」を挙げている。」と。七割の会社が「役員・社員の倫理観の向上」が大事だと。ところが、ゼネコンのやみ献金をやった十七社の社長、だれもやめていないですね。四社なんてひどいもので、逃げ回っていて記者会見にも応じないということです。名前を挙げちゃ申しわけないけれども新聞でも書かれておりますから言いますけれども、例えば鹿島の石川会長、日本商工会議所の会頭さん、おやめにならないということで新聞に名指しでいろいろ議論されているわけです。社説で議論されております。
 こういう経営のトップまでが倫理観が大事だといいながらよう責任持たないという社会状況、風習、これは根源的には政治家がしっかりした責任をとらない、こういう風潮が一つある。うんとはきりずばり言いますと、例えば竹下さん、やっぱり責任をとられておやめになるべきだという世論があるにもかかわらずおやめにならない。元の総理大臣がこういうことであるから企業の親分の方も、政治家もそういうことをやっているなら我々もやめることはないや、こういう風潮が出てきておる。こういうことが蔓延をすると非常に社会的に私はゆゆしい問題であるというふうに思うんですが、これは副総理としてこの辺の問題をどう考えておられますか。
#17
○国務大臣(後藤田正晴君) 角田さんの最近の風潮に対する御意見、これは私はそれなりに尊重しなければならぬ御意見だと心得ます。ただ、個々具体的な責任のとり方についての個別の問題については答弁をひとつ控えさせていただきたい。
 一般的には、ノーブレスオブリージュという言葉があるとおり、それはやはり高い地位の人間にはそれなりの重い責任があるということは、これはもう当然のことでございますが、それらをお考えになってそれぞれ対応すべき事柄であろう、私が言うことではないなと、こう思います。
#18
○角田義一君 それ以上のお答えは出ないと思いますけれども、企業の経営者というのは盛んに倫理観の向上をみずから言っておきながら、いざ自分のときになったら全然やらない、こういう風潮というのはやっぱりこれは社会的にただされるべきものだというふうに私は思っております。こういうことではやっぱりいかぬじゃないかという気持ちが大変強いものですから、一言どうしてもこれは申し上げておかなきゃいかぬ、こう思っておるんです。
 そこで、時間の関係ありますから若干具体的な問題に入ります。
 少数株主の帳簿閲覧権についてお尋ねをしたいわけですが、今回十分の一から百分の三に大幅に帳簿の閲覧謄写権が軽減された、そういう法律になっておるんです。しかし、私はこの改正というのは本当にこれでいいのかなという大変な疑問を持っておるんです。
 例えば、例を挙げますと、新日本製鉄という大きな企業がありますが、これは発行済み株式は六十八億八千九百九十万三千株ですよ。それから、今ちょっと問題になっておりますゼネコンの、名前を挙げちゃ悪いけれどもこれははっきり統計出ておりますから言いますけれども、例えば鹿島建設さんは約九億六千万株ですね。清水建設さんは七億八千万株。それから、あの不祥事を起こした野村証券さんは十九億六千百五十五万株です。そして、日興証券さんは十四億六千六百八十五万株。これが発行済みの株数です。
 そうしますと、帳簿閲覧をする権限というのは、その三%は幾らかというと、新日鉄さんは二億六百六十九万株です。鹿島建設さんは二千八百八十三万株ですよ。そして清水建設さんは二千三百六十五万株、野村証券さんは五千八百八十四万株、日興証券さんは四千四百万株。これだけの株を集めなければ、あるいはこれだけの株を持たなければ帳簿の閲覧謄写権はないんですよ。これでは百分の三にしたところで、具体的に私は数字を挙げましたけれども、これだけの株を集められる人はまずいません。個人ではまずゼロです。法人は持っている法人もいますけれども、法人ですら最高の法人の株主でも大きいのが三・五%も持っておればいいところです。そうしますと、これだけ、百分の三にしたところで、実際問題として帳簿閲覧権、これはもうないに等しい。
 私のささやかな弁護士の経験で言いますと、十分の一のときにも、要するに中小企業の同族会社で内輪もめが起きる、社長の弟と社長がけんかして内輪もめが起きる。そのときには、同族ですから二割とか三割の株を皆お互い持っているから、それを使って帳簿閲覧権とかいって、裁判所側からそれをとるとか見るとかというのは中小企業なり同族会社ではあるんですよ。あり得たんです。だけれども、大企業で百分の三にしたってこれを使える人はだれもいないんです。これで要するに少数株主権を保護したとか、権利を守ったと言えるんですか。現実から猛烈に遊離した机上の空論が法案に出てきた。
 私に言わせれば、私は社会党だけれども、本来は反対したいような気持ちもあるんですよ、これ見ると。十分の一から百分の三になったからちょっとはいいというけれども、実際はこうですよ。これで本当に少数株主権の帳簿閲覧権、謄写権、保障されているというふうに突っ張れますか。民事局長、どうなんですか。
#19
○政府委員(清水湛君) いろいろと問題があるということは私どもは十分承知いたしているわけでございます。
 ただ、現在は十分の一ということでございまして、例えば新日鉄六十八億株の株式が発行されておるということになりますと、現在だと六億八千万株の株を集めなければならない、これがその三分の一にまで下がる、こういうことになるわけでございます。
 そもそも我が国の株主の会計帳簿閲覧権、会計帳簿というのは会社の根幹をなす帳簿でございます。会社はすべて会計帳簿を基準として会社の経営の実績というものがそこに集約されておる、こういう大事な帳簿でございますので、これを閲覧し、かつ謄写をするということは実は大変なことでございます。そういうようなことから、我が国におきましては従来十分の一以上の株式の保有要件というものを課しておりました。
 そういうような保有要件を課す背景には、一つには日本の株式会社におけるそういった面での会計の適正保持というのは監査役制度というものによって果たさせようと。アメリカのように監査役という制度がございませんのである程度持ち株要件等についても緩やかな要件になっているわけでございますけれども、そういう監査役という制度に期待するということが一つの要件として、考え方としてあったというふうに考えられるわけでございます。
 今回これを百分の三というふうにいたしましたのは、商法のいろんな諸制度の中で百分の三というのは、少数株主のいわば権利行使の要件として一般的な数字としてこれが使われておるというようなことも一つの重要な背景にございます。
 それからもう一つ、百分の三というのは個人で百分の三の株式を持つということではございませんで、株主が何人かあるいは何十人か集まって百分の三という要件を満たすということもこれは可能でございます。そういう意味から考えますと、従来のこの十分の一から考えますと相当大幅な緩和であるというふうに実は思っておるわけでございます。
 あるいは角田先生御指摘のように、大企業と中小企業というものを使い分けてこの要件の緩和というものを考えよという御指摘かもしれませんけれども、実はこの持ち株要件の緩和ということにつきましては、中小というか中規模、巨大企業ではございませんけれども普通規模の会社の団体からはかなり強い抵抗があるわけでございまして、そういうような条件、他方、日米構造協議におきましてはこの持ち株要件が現在日本では厳し過ぎるというような問題の指摘もあったというようないろんな事情も考慮いたしまして、今回百分の三ということで最終的な結論に到達したわけでございます。実質的には、これによってかなりのいわば少数株主権の擁護が図られる、前進であるというふうに私どもは考えております。
 さらに要件を緩和するかどうかということにつきましては、これはやはり今までの議論の経過を踏まえますと、相当難しい問題をはらんでいるというふうに私どもは認識いたしております。
#20
○角田義一君 先ほど大臣は今の法務省のあり方でいいというようなことをおっしゃったけれども、私はこの問題について言うと、とてもじゃないが納得できないんですわ。
 今、局長は、みんなで寄り集まって百分の三になればいいと、こういうふうにおっしゃるけれども、現実に日本の株式の保有の形態というのを見ると、千株から四千株ぐらいしか持っていない人が八二・三%なんですよ。例えばこの鹿島さんの二千八百八十三万株を集めようとしたら、一万株持っている人を一体何人集めなきゃいかぬか、すぐ計算で出るでしょう。そんな何千人の人が集まって、そしてその百分の三になって会社の帳簿を閲覧しようかなんという、これは一つの社会運動でもない限りできないですよ。
 あなたは衆議院の答弁で、アメリカの法制では一株の株主だって会社の帳簿閲覧権があると、こうある。日本とアメリカでは法制が違うから、私はアメリカの法制がいいとは言いませんよ。言いませんけれども、いかにもこれは現実離れした雲の上の議論になっているんです。百分の三になったって大企業は全然痛痒を感じませんよ。それじゃせっかくこれ商法でやったって、中小企業では何とかこれ今言ったような同族会社がすったもんだするときには有効かもしれぬけれども、最初私が言ったいわば巨大企業の社会化とか民主化という観点からいったら、これはもう百分の三なんというのは全然問題にならない。
 だから、いっそのこと例えば株式数に応じてこれを逓減するとかというふうにしなければこれは生きないんですよ。そういうことは考えたことあるんですか。これは附帯決議でもしなきゃだめですよ。
#21
○政府委員(清水湛君) 先ほど申しましたように、監査役制度とか、あるいは大会社については外部監査機関である会計監査人制度というものの監査が強制されておるというような事情を踏まえて、なおかつそういうものにプラスアルファとしての株主による直接コントロールということでございます。
 したがいまして、必然的に株主の帳簿閲覧についての株式要件というのはアメリカ等に比べて厳しくせざるを得ないということになるわけでございますけれども、現実の問題といたしまして大企業におきましても、大企業を完全に支配をするということになりますと五〇%以上の株式を保有するということが会社を支配する前提要件になるわけでございますが、百分の三という形で株主が帳簿閲覧を請求することができるということにつきましては相当大きな緊張感を与えておるというふうに私どもは実は感じているわけでございます。
 そういう意味で、大企業サイドからも百分の三というのは少し緩やか過ぎるのではないか、百分の五とかもっとそういう形で考えるべきではないかという意見も実はあったわけでございます。特に、日本では五十円株式、額面が五十円株式を前提として何十万、六十八万株とかなんとかということを考えているわけでございますが、これからの会社は一株の額面が五万円ということになりますので、それで計算いたしますと、発行済み株式総数の数から申しますとかなりの減少ということになるわけでございますが、いずれにいたしましても十分の一から百分の三までの一気の要件の緩和というのは、私どもといたしましては大会社にとりましてもかなりの緊張感をもたらす数字であるというふうに思っているわけでございます。
#22
○角田義一君 これは局長と私の認識の違いなんだけれども、私は百分の三になっても大企業は痛くもかゆくもないと思っていますな。現実に百分の三の株を集められませんよ。できないです。
 そこで、私がちょっと問題を提起した逓減性、例えば巨大会社については発行済みの株式の一%にするとか〇・五%にするとかということは考えたことがあるのか。それからまた、そんな角田さん、そんなことを言ったってだめだ、そんな空想みたいなことを言うなというふうに一蹴するのか。それとも、アメリカでは一株だって帳簿閲覧権があるというような法制を見れば、私の言っていることもまんざらじゃないなというふうに思うのか。そこをちょっと聞きたいんですよ。答弁してください。
#23
○政府委員(清水湛君) 実は議論の過程では先生御指摘のようなそういう御意見ございました。そういう意味で、例えばある程度の逓減性を設けるというような議論も途中ではあったわけでございますけれども、一方では、そういうことになると結局これを利用するのはいわゆる総会屋というような人たちがこれを有力な武器にすることになるのではないかというような議論もございまして、それだけが理由ではございませんけれども、当面はやはり商法でいろいろ規定している少数株主権の要件である百分の三というところに落ちつけるのが相当である、こういうことになったわけでございます。
 アメリカの法制では、この株式の単位というものの考え方が若干違うことになっておりますので一律に論ずることはできませんけれども、一株の株式でも持っていれば株主はこの帳簿閲覧請求権がある。しかし、これに対するいわば制限と申しますか、会社側の拒絶の理由というのもかなり広範でございまして、運用の実際というのは必ずしも一株だからだれでも見られるということにはなっていないわけでございますが、そういうようないろんな情勢、先ほども先生最初に御指摘になりましたように国際化というような問題もあるわけでございますから、今後のこの株主の帳簿閲覧の実情あるいは問題点というのを踏まえますと、いずれまたやはり実情に即した意見なり問題の提起というものも、これは予想されるというふうには考えているわけでございます。
 しかし、今回の改正案につきましては、そういった規模別による逓減とか、そういうようなことについては最終的な議論の過程では時期尚早、こういうことになったということは、これは事実としてございますので申し上げておく次第でございます。
#24
○角田義一君 理事さんのお許しをいただきまして、あと一分だけやらせていただきます。
 監査役の人事権の問題についてどうしても一つ聞いておきたいんです。
 今度の改正でもやっぱり取締役会というものが総会に監査役任命の議案の提案権を持っているということでございますので、あくまでも監査役の首根っこは取締役会に押さえられているということでございまして、この制度はこのままで果たしていいのかなと私は思うんだけれども、今の少数株主権との関係でいって、少数株主らの率は一株だとかそんなものではなくてかなり高いものであったとしても、例えば少数株主がある程度集まって監査役を総会に提案する、そういう権限を与えるという思い切った発想にしないとこの人事権の独立ということが私は非常に危ういんではないかというふうに思うわけでございます。
 この辺の監査役の人事権の独立といいましょうか、保障といいましょうか、これについてどういうふうに考えておるか、それから今のままで果たしていいのか、もうちょっと大胆な改革ということがやられていいんじゃないかと私は思うんですが、その点について所信を承っておきたいと思います。
#25
○政府委員(清水湛君) 監査役は最終的には会社の最高意思決定機関であります株主総会で選任される、こういうことになっております。会社側のいわば監査役候補者というものを決めまして、議案として株主総会に提出するという場合には取締役会で議案を決定する。この議案の決定の際における取締役会に限らず、取締役会には監査役が常時出席する権利があるわけでございまして、当然その議案についていろんな意見を述べることができますし、あるいは株主総会において監査役の選任議案について意見を述べる、こういう形になるわけでございます。
 監査役もいわば広い意味における会社という一つの企業体における人事政策の問題でございますので、そういった意味での業務執行決定の一態様として取締役会の決定というものは要件になっているというふうに思うわけでございます。つまり、株主総会で選任されるんですけれども、代表取締役と取締役の恣意的な選任にならないようにという意味での配慮は現行法上既にされておるということになるわけでございます。
 それからもう一つ、お尋ねの少数株主の方から監査役の候補者という者を決めて株主総会の議案として提案をするということができるかということでございますけれども、これは実は現行法上既にできるわけでございます。昭和五十六年の改正におきまして、その改正案の一つの目玉が株主総会の活性化ということでございまして、その際に株主側の質問権、これは事前に質問請求書を会社に提出しておくということが必要でございますけれども、俗に質問権と言われる説明要求権と同時に株主提案権というものが認められました。
 提案権の要件といたしましては、六カ月前より引き続き発行済み株式の総数の百分の一以上に当たる株式または三百株以上の株式を有する株主は、取締役に対し、株主総会の日より六週間前に書面をもって一定の事項を総会の会議の目的となすべきことを請求することができる、こういうことになっているわけでございまして、少数株主側として監査役は何某を、取締役は何某をという形での議案を提出する権限が認められております。現に、これはここ数年前の事件でございますけれども、株主側で取締役候補者を定めた議案を提案したという事例がございます。これは株主総会で否決されたというふうに聞いておりますけれども、そのような権限は現在もあるわけでございます。
#26
○竹村泰子君 商法の質問に入ります前に、戦前の寄留法によります寄留名簿の件につきまして、ちょっと確認をしておきたいことがございますので質問させていただきます。
   〔委員長退席、理事猪熊重二君着席〕
 松本市で実は戦前、戦中のいわゆる寄留名簿が発見されました。言うまでもなく、松本市というところ、長野県というところは松代元大本営跡という大きなものがございまして、ここにたくさんの強制連行者が連行されてきていた。当然、朝鮮・韓国籍の方、中国籍の方々がおられたわけで、非常に貴重な名簿が発見されたという知らせが届きました。
 これにつきまして、実を申しますとこれは法務省が、地方法務局長あて民事局長の通達が昭和二十七年六月七日に出ておりまして、この「問」、「答」という中で、一応保存期間を過ぎているので保存を要しない、廃棄処分は市町村が行っていいというふうな通知が出ているのであります。これは御存じのとおり、非常に世論的にも強制連行者あるいは従軍慰安婦の問題等、また厚生省その他の省庁からも多くの貴重な資料が発見されて、私どももずっと調査を続けてまいりました。
 それで、この閲覧をぜひしたいと思いますが、閲覧はともかくとして、この貴重な資料をぜひ保存していただきたい、焼却処分にしないでいただきたいという、こういうお願いを私どもいたしましたので、それにつきましての確認の御答弁をちょうだいしたいと思います。きょうは自治省もおいでいただいておりますので、両省からお願い申し上げたいと思います。
#27
○政府委員(清水湛君) まず、寄留制度というのは、これは大正三年に制定されました寄留法に基づくものでございまして、この制度の骨子は、人の居住関係を寄留簿に記載してこれを一般に公開する、こういうことにあったわけでございます。この寄留制度は、住民登録法が昭和二十七年の七月一日に施行されることにより廃止されたわけでございます。この住民登録法というのは、これはいわば法務省の所管と申しますか、法務大臣が市町村に対してその事務の取り扱いに関して必要な勧告をし助言をすることができるということになっていたわけでございます。この住民登録法施行の際に、かつての寄留法に基づく関係書類というのは一年間保存する必要があるけれどもその後は自由に廃棄処分してよろしい、こういうことにいたしておったところでございます。その後、さらに昭和四十二年になりましてこの住民登録法は住民基本台帳法というものに改められまして、これは現在自治省の所管となっております。
 そういう状況でございますので、私どもといたしましては、この御質問の書類の保存または廃棄に関しては、これはもう松本市が自主的に判断すべきことであって、これに対して法務省として具体的に何らかの指導とか助言をする立場にはない、法律的にはどうせよこうせよと言うことはできない、こういう状況になっておるということは御理解をいただきたいと思うわけでございます。
#28
○説明員(松浦正敬君) 寄留簿の制度につきましては、先ほど先生の方から御案内ございましたけれども、その制度を定めておりました寄留法が昭和二十七年に廃止をされたわけでございますが、その際にその所管をいたしておりました法務省の方からその取り扱い等につきまして指導がなされたというふうに聞いているところでございます。
#29
○竹村泰子君 松本市役所にある名簿ですから私も自治省の管轄かと思ったんですけれども、これはどうもお聞きしてみますと法務省の通達であり、そして法務省が出した法令であると。
 それで何としてもこれは貴重な資料でございますので、今までこの長い年月眠っていたものを今さら焼却処分に何とかしないでいただきたい、こういうお願いでございますが、大臣、一言お願いいたします。
#30
○国務大臣(後藤田正晴君) もうこれは二十七年に今お答えがあったように新しい登録法を施行したときに従来の寄留法に基づく寄留簿、これも廃棄処分にしてよろしい、こう言って市町村に処置を任せてあるんですね。だから、今、竹村先生おっしゃるように今さらということになると、今さら私の方からどうこうしろということは逆に言えない立場にあるんです、これは。そこのところはひとつぜひ理解をしておいてほしいなと、こう思います。
#31
○竹村泰子君 そうすると、何とか私どもはその貴重な資料を、歴史的な資料を保存したい、こう思っておりますが、それはいかんともしがたいということですか。
#32
○国務大臣(後藤田正晴君) そんなことを言っているわけじゃありません、私は。要するに、法務大臣として既に昭和二十七年に市町村にすべて過去のそういう寄留簿の処分はやってよろしいと、こういうことを言ってあるのを、今日にあるから、今日はしかもこれは住民基本台帳にまたかわっているわけですね。そういうようなことを考えまして、あなたが市役所と談判なさってどうこうするというのは、これはもう当然我々が何も申し上げることはないんですけれども、私の方から市役所に対してこれを置いておけよと言うわけにはいかぬ、こうお答えしておるわけでございます。
#33
○竹村泰子君 大臣のお立場、そして法律的な問題はよくわかります。しかし、私どももずっと戦後の問題、そして日本の戦争責任、戦後処理の問題、こういうことにずっと取り組んでまいりまして、やはり国際的にも注目をされているし、アジアの一員としてもやはり何らかの大きな一つの壁を越えなければならない時期が来ているのじゃないか、そう思うわけです。
 そういう中で、やはりこれはもう焼却処分にしようと何にしようとそれは知らぬよと、それはもう済んだことだということで処分されてやみに葬られてしまうのかなという思いがいたします。もちろん、私どもも八方手を尽くしますが、何らかの御意思がお伝えいただければ大変幸いだと思うわけですが。
#34
○国務大臣(後藤田正晴君) ともかく昭和二十七年からですから今日までの長い間の時間の経過を考えますと、今さらここで私の方から指導、助言をするという立場には法務省としては立ち得ない、こういうことをお答え申し上げているわけでございますから、その点は理解をしてほしいと、こう思います。事柄の重要性はよくわかっておるわけでございます。
#35
○竹村泰子君 このことに余り時間をとるわけにはいかないのですけれども、大臣は副総理でいらっしゃいますから、今、内閣が名簿の収集その他調査を進めているところでございますので、ぜひその御配慮を私から強く要望したいところでございます。よろしくお願いいたします。
 きょうは私にとっては本案の最後の質疑になると思います。これまで衆議院から数えますと四十時間近い審議を重ねてまいりました。賛成の法案でありますけれども、しかし審議を進めるにつれまして、こんなことでいいのかなと。今、角田議員も申しましたとおり、総会屋の問題、そして株主の問題、監査役制度の強化、その他、使途不明金が政治献金に流れていって、それも一四%しか解明されていない、そういうふうなことをずっと考え続けてまいりますと、そう簡単に通してしまっていい法案なのかなという気がいたしますけれども、しかし確認の意味を込めて質問をさせていただきたいと思います。そして必要な事項を附帯決議としてお出ししたいと考えておりますので、よろしくお願いをいたします。
 本会議における総理の答弁にありますように、企業が商法を初め税法、政治資金規正法、公職選挙法等の各種の法令を遵守して行動し、社会的責任を全うするよう、商法中の諸制度の改善を図り、会社の違法、不当な行為の事前防止のための対策が講じられてまいりましたが、今後とも効果的な法制面からの整備並びに適切な運用がされるための施策を要請しておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#36
○政府委員(清水湛君) 委員御指摘のように、これまでも会社情報の開示制度や監査制度の充実強化など、累次にわたって商法中の諸制度の改善というようなものを図ってまいったわけでございます。
 これらの改正の目的は、会社が法令違反の行為をするとか、あるいは著しく不当な行為をするということを何とか防止しようというようなことと同時に、最近の企業活動の国際化というようなことも考慮して、各国会社法制との調和とか、そういうような観点からいろんな改善が試みられてきたわけでございます。私どもといたしましては、まだ積み残されている問題が、具体的な問題といたしましては企業の合併法制の問題、分割の問題、あるいは大小会社区分及び有限会社法のあり方の問題等々、まだ多くの問題がございますので今後とも引き続き我が国経済の実態に即応するようにこの法律の改正作業は続けてまいりたい、こういうふうに考えておりますし、現に作業を継続中でございます。
#37
○竹村泰子君 商法はこれまでに数次にわたる改正が行われてまいりましたが、社会経済情勢の変化、特に経済の国際化等に対応した適時適切な改正に今後とも努めるべきであると思いますが、今大分お答えをいただきましたけれども、改めてもう一度確認をしたいと思います。
#38
○政府委員(清水湛君) 会社法というのは、これは会社の企業活動というのは国内だけで行われるわけではございませんで国際的な関係での企業活動というのがもう大変な量を占めておるということはもう申すまでもないわけでございます。
 そういう意味におきまして、各国の会社法というのは、大体諸外国の会社法を参酌しながら同じような方向に改正の動きがされておるというふうに私どもは認識いたしております。例えばEC統一に伴いましてEC域内における会社法の統一ということが現に重要な問題になっておるというようなこともございます。また、平成二年の会社法の改正におきまして最低資本金制度の導入等を実現させていただきましたけれども、実はこの最低資本金制度というものも一つの国際的な流れの中で重要な問題として指摘されてきた問題でございまして、平成二年の改正でやっと日本もそういう意味では諸外国の会社法の水準に追いついたということが言えようかと思います。
 そういうような状況を踏まえてまいりますと、日米構造協議で例えば株主の権利の拡充の問題、さらには会社のディスクロージャー、つまり会社の計算等についてのディスクロージャーの一層の強化の問題、あるいは今回の改正法でお願いをいたしております代表訴訟制度の改善の問題だとか、あるいは日米構造協議の報告書には盛り込まれませんでしたけれども株主総会のあり方等の問題につきまして外国からも日本にいろんな関心が寄せられておるというような実情がございます。
 私どもといたしましては、そういった諸外国の会社法の動きというものを常に注視しながら、それとの調和というような観点も十分に考慮してこれからの改正作業に臨んでいく必要があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
#39
○竹村泰子君 前回の改正で見送りになった計算書類の登記所における公開制度、それから中小会社の計算書類の適正担保の制度、これらについては今回も見送られております。
 前回改正の最低資本金制度の導入には債権者保護の機能は見られず、会社債権者を真に保護しようとするならば、その際計算書類の登記所における公開制度や会計調査人制度をセットで導入するのが道理であったと言えると思いますので、今後関係者の意見の調整等を行う場合には、会社債権者の保護と中小会社の利益の調和を求める方策、これを考慮すべきであると思いますが、いかがでしょうか。
#40
○政府委員(清水湛君) 御指摘の問題については、私ども既に何回かは他の先生方の御質問でお答えを申し上げているところでございます。
 中小会社が中心になるわけでございますけれども、会社の計算を登記所において公開するというのは、実はもうこれはヨーロッパ諸国ではすべてやっていることでございまして、日本ではまだこれが実現していないという点で国際的にもこの点はおくれているという問題が一つあるわけでございます。
 しかし、今までやっていなかったことを改めてやるということになりますと、一昨日もお答え申し上げましたが、例えば資本金三千万以上という会社で限定して考えますと、資本金の額だけでも十六万社、さらに一定の負債総額等の要件を加味して考えますと二十万社近い会社が新たに計算書類を登記所に提出してこれを一般大衆に公開をするということになってくるわけでございます。そういう意味では、企業内容がディスクローズされるという意味におきまして非常に重要な意味を持ってまいるわけでございます。また、この点につきましては中小企業の方からいろんな考え方があるわけでございまして、その辺がまだまだ熟していないという点が一つございます。
 それからもう一つ、御指摘のように会計調査人という制度、これは大会社に現在強制されております会計監査人とは違う形での会計調査人制度の導入ということが言われているわけでございますが、二十万社の会社についてそういう外部からの会計専門家による調査ということが果たして今の日本の実情のもとで可能であるかどうか。それをするということになりますと公認会計士が主体になるという考え方があるわけでございますが、公認会計士の数が一万人程度という、私は実は一昨日の答弁で二万人、一万数千人という答えをいたしたかもしれませんけれども、公認会計士の数は現在は一万人弱でございますのでちょっとその点もしそういうことであれば訂正させていただきたいと思いますが、そういうような数、あるいは税理士の数が六万人に満たないというような実態の中で二十万社を対象とする会計調査人というものをうまく確保することが一体できるのかどうかというような問題もございまして、多方面にわたる問題を抱えておるという実情がございます。
 しかし、これは平成二年の商法改正の際における附帯決議でも指摘されていることでございますし、法制審議会の内部でもその早期実現についてかなり強い意見がある問題でもございます。私どもといたしましては、今回の改正に盛り込むことはできませんでしたけれども、引き続きこの点については努力をしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
#41
○竹村泰子君 これは衆議院の附帯決議にもついているんですが、企業活動の基本法である商法及び関連法については、民法、刑法等とともに口語化作業との進捗状況を考慮しながら適切な措置をとるべきであると思いますが、いかがでしょうか。
#42
○政府委員(清水湛君) 商法は要するに漢字片仮名まじりの文語体で現在書かれております。実は法務省所管の法律というのは明治の初期につくられた法律が多うございまして、そういう意味では漢字片仮名まじりの文語体の法律が非常に多いというような実情がございます。民法もしかりでございますし、刑法もしかりでございますし、商法も民事訴訟法もそうでございます。
 そこで、そういうものを口語化してわかりやすいものに改める必要があるということから、刑法については刑事局で、また民法については私どもの局、民事訴訟法、会社法についてもしかりでございますけれども、それぞれ専門の学者と民事局のスタッフが相協力して商法典現代語化研究会というものを発足させまして、現にかなりの作業が進んでいる状況にございます。
 ただ、商法につきましては、株式会社法というのは戦後何回も改正されておりまして、表現はややかた苦しいんですけれども、言葉自体はかなり一般国民にわかりやすいものになっております。
 しかしながら、商法中、商行為法とか保険法とか海商法とか、こういうような問題になりますとほとんど戦前につくられたままになっておる、明治の初期につくられたままの表現になっておるというような問題がございまして、これを現代語に改めるということにつきましては、改めることによって意味が変わるというような可能性もありまして相当難しい問題をはらんでおるというようなことだというふうに私ども実は思っているわけでございまして、しかしながらいつまでもそういう難しい法律をそのままにしておくことはできませんので、これも時間は若干要するかと思いますけれども、私ども現に鋭意作業を進めておるということでございます。
#43
○竹村泰子君 刑罰の強化については慎重に検討すべきであると思いますけれども、使途不明金の多くは実際には政治献金の原資となる等、使途の明確なものが少なくありません。経理操作で使途不明金扱いとされる事態の未然防止策と、そのために事実上行われている虚偽記載、不実記載に対しては厳格な措置が要請されます。
 このような不明朗な経理は商法上からも根絶させる必要があり、そのためには会計帳簿に不実の記載をする等、商法第四百九十八条第一項第十九号に該当する行為をした者に対する制裁のあり方については現行の過料制度の見直しも必要であるかと思いますので、この際所要の検討をお願いしておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#44
○政府委員(清水湛君) 税法上使途不明金とされたものに係る金銭の支出が当然に会計諸帳簿における不実記載ということになるわけではございませんから、使途不明金だから不実記載というわけにはまいらないわけでございますけれども、いずれにいたしましても会社の基本である会計帳簿、まさにこれは営業成績を把握するための最も基本的な会社の制度の中の重要なものでございますので、これの不実記載ということはこれは何としても防止をしなければならないわけでございます。
 そういう意味におきまして、監査制度の充実強化というようなことで事前チェック体制の強化を図ってきたわけでございます。しかし、それにもかかわらず不実記載がされたという場合にはこれはもう罰則で対応するしかない、あるいは損害賠償責任の追及という形で対応するしかない、こういうことになるわけでございます。
 そこで、現在、御指摘のように例えば百万円以下というような過料に商法の規定がなっているわけでございます。この百万円というのは、昭和二十五年以来据え置かれていたものを昭和五十六年改正によって百万円という金額に改めたものでございます。この百万円とするにつきましては、単に商法の規定だけではなく、それぞれ銀行法とか保険業法といった同じような性格を持つもろもろの法律とのバランスを考慮いたしまして百万円という金額が設定されたというふうに私ども承知いたしておりますので、これを商法だけ突出して引き上げるかということになりますとやや問題があろうかと思います。
 いずれにいたしましても、この過料の問題あるいは刑事罰の問題、その額が幾らであるのが妥当であるかというような問題は、やはり物価の上昇の問題だとか社会経済情勢等に照らして適切な額を定めるという必要があることは私どもそのとおりだと思いますので、この金額を今直ちに引き上げることがいいかどうかという問題はこれはもう少し検討させてもらう必要があると思いますけれども、不実記載を防ぐための効果的な金額であるかどうかということについては今後とも十分に関心を持って検討をする必要があるというふうに考えている次第でございます。
   〔理事猪熊重二君退席、委員長着席〕
#45
○竹村泰子君 よろしくお願いします。
 時期尚早ですから自社株取得規制緩和の是非については触れませんが、仮に緩和の方向へ向かう場合でも、インサイダー取引、株価操縦など不公正取引の防止措置、情報開示制度の整備、みなし配当課税問題の見直しなど多面にわたる措置が要請されます。したがって、総合的な対策が不十分なまま商法上の自社株取得規制緩和問題だけがひとり歩きしてしまうことのないよう、どうか十分な検討と対策を要望しておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#46
○政府委員(清水湛君) 自社株取得につきましては、現在の商法におきまして厳しい規制がある、例外的に取得が認められている場合は非常に限定的になっておるということは御承知のとおりでございます。
 この点につきまして、法務省では昨年来法制審議会におきましてこの問題を取り上げまして議論を重ねております。そして、ことしの二月でしたか諸外国の法制等も参照しながら問題点を列記いたしまして、今関係方面に意見の照会中でございます。徐々に意見が現在集まりつつあります。
 問題は、規制を緩和する、諸外国の法制と比べてやや日本が厳し過ぎるのではないかという指摘、これが非常に強いわけでございますけれども、じゃどこまで一体緩和したらよろしいのかというような問題。それから、緩和をするにいたしましても、まさに御指摘のようにインサイダートレーディング、内部者取引の温床になるのではないかとか、さらにもっと危険なのが株価操作につながる、こういうような問題。
 もちろん、基本的には出資した資本の払い戻しになって会社の資本が空洞化するというような問題もあるわけでございますけれども、これは配当可能利益の限度内で取得を認めればいいんじゃないかというような議論によってある程度救済することはできると思いますけれども、少なくともこれが株式取引に対する一般国民間の不信感とか、あるいはそれを利用していろんなまた資金操作をする、不正な取得をするというようなことが絶対あってはならないというふうに私どもは考えているわけでございます。
 そういうことがないようにするためにはどういう条件を課するべきであるか、証券取引法なりその他関係法令にどういう規制をすべきであるのか、あるいはどういう厳しい罰則というようなものを設けるべきであるのかというような問題、これは相当慎重に検討を要するものと私どもは考えております。
 いずれにいたしましても、関係方面の意見が五月末ということになっておりますけれどもまだまだ若干集まりが悪いようでございますが、そういうものを踏まえまして慎重に検討してまいりたいというふうに思っている次第でございます。
#47
○竹村泰子君 五月末ということは、もうそろそろ集まるということですね。
 それでは、株主による会社の業務執行に対する監督是正機能の強化について申し上げます。
 株主の代表訴訟の目的の価額を九十五万円とみなす改正が行われることの均衡等を考慮し、一般の民事訴訟等の申し立てに要する手数料のあり方についても民事訴訟法の抜本的改正過程の検討の中において検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#48
○政府委員(濱崎恭生君) 今回の株主の代表訴訟の訴額に関する特則を定めるという改正、これは、株主の代表訴訟が全株主の利益のためにその代表者として取締役の責任を追及する性質のものであるということにかんがみまして、いわば会社法上の特別の要請に基づいて立案されたものというふうに承知しております。
 その他民事訴訟等の申し立ての手数料一般の問題につきましては、委員御案内のとおり、昨年の通常国会におきまして、民事裁判を国民にとってより利用しやすいものにするという観点から、その手数料額を引き下げる内容の改正を実現させていただいたところでございます。その改正法は昨年十月一日から施行されておりますので、現段階ではその改正が民事裁判の事件数等に与える影響を私どもとしては見守っていきたいと考えているところでございます。
 なお、昨年の法案の審議の際にも、民事訴訟等の手数料のあり方についてより抜本的な改正を考えるべきだという御指摘をいただいたわけでございます。しかしながら、手数料の額が国民の訴訟提起をそれがために阻害するようなものであってはならないということは当然でございますが、一方ではただ安ければいいというだけでもない、国民一般の負担と具体的に裁判制度を利用する者との負担の公平、あるいは利用する者の間の負担の公平ということを考えなければならない、副次的には乱訴の防止といったことも考えなければならないということで、当面の改正としてはその時点での改正法の法案の限度での改正を適当と考えるということを申し上げたところでございます。
 今申しましたように、改正法の影響等を見守りつつ、またいただいておりますいろんな御意見を踏まえつつ、私ども手数料制度を所掌する立場として常に関心を怠らないように、また今御指摘の民事訴訟法の改正作業の進行を見守りながら関心を怠らずに検討してまいりたいというふうに考えております。
#49
○竹村泰子君 また、少数株主権の擁護という観点も含めて、いわゆる大企業に対する株主の会計帳簿等の閲覧謄写権の持ち株要件については、その緩和に向けて見直すことも検討すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
#50
○政府委員(清水湛君) 先ほども角田議員からの御指摘がございました。いろいろと議論を重ねまして、十分の一から百分の三というような結論に現段階においては落ちついたわけでございます。
 しかしながら、そういった少数株主権の尊重というか拡充というような面から、会社の会計帳簿閲覧権についての実情がどうなっていくかというようなことにつきましては私どもいろんな観点からの関心を持っているわけでございまして、今直ちに将来どういたしますということは申し上げることはできませんが、改正法の施行状況等については強い関心を持って見守ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
#51
○竹村泰子君 それでは、監査機能の強化について伺います。
 社外監査役等の新設については改正の趣旨を周知徹底させることが必要であると思いますが、具体的にはどのように行っていくかについては、過日の私に対する答弁では監査役協会等を通じて行う意向が示されました。これは衆議院の附帯決議でもついております。
 また、社外監査役の運用実績についても追跡調査をしてみたいというふうに民事局長はお答えになっておられますが、その具体的な時期や、それから調査結果によっては選任要件の見直しの必要性ということについては必ずしも明確ではなかったように私は記憶しております。仮定的な面があることはわかりますけれども、いま一歩前向きな答弁をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
#52
○政府委員(清水湛君) 法務省といたしましては、各種の企業に対して直接にいろんな指揮はもちろんできませんし、監督するということもございませんし、また行政指導をするというような立場でもございません。
 ただしかし、商法を所管する立場といたしまして、いろんな現在の社会経済情勢というものを踏まえて、こういった目的を持ってこういう改正をしたんだということは、これはいろんな機会を通じて関係企業に十分に理解していただきたいと、こういうふうに思っているわけでございます。
 そういう方法といたしましては、もちろんこれは担当者のいろんな解説、論文等もございましょうし、あるいは企業団体、経団連を初めとする各種の企業団体が改正法の趣旨についていろんな説明を求める、積極的に説明をしていただきたいというような要請が法務省にも数多くあるわけでございまして、そういった形でのできるだけ時間を割いて説明に応ずるというようなこと、さらには政府広報、政府におけるいろんな広報雑誌、広報番組等もございますけれども、これも利用して積極的な周知の徹底を図りたいというふうに思っております。
 また、商法の改正というのは法制審議会の場でまず議論をすることになるわけでございますが、ここには経済団体の代表者も来ておりますので、そういった商法改正の意義というようなものを関係団体に十分に伝えるように私どもとしてはお願いをいたしたいと思っています。
 それから、フォローアップの問題でございますが、このいわゆる社外監査役制度が現実の企業の中で今後どのように運用されていくかということにつきましては、これはさしあたっては日本監査役協会、これは法務大臣の許可に係る社団法人、公益法人でございますけれども、そういったような機関を通じまして実態調査をしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
 本法施行後最初に到来する決算期に係る定時総会において社外監査役が生まれることになっておりますので、その隣どういう方々が選ばれたかということについてまず第一に関心があります。そういうような運用の実情等に重大な関心を持って私ども実は臨んでまいりたい。そして、その後どうするかということは、これは今の段階で申し上げるわけにはまいりません。この改正案が現段階においてはいろんな諸要素を考慮してベストである、こういうふうに考えているわけでございますから、その趣旨が生かされるように運用の状況について注視してまいる、こういうことが私どもの現在の考え方でございます。
#53
○竹村泰子君 社外監査役の新設について衆議院の附帯決議では、「第三者的・中立的な人物を社外監査役に選任するような運用がされるよう努めこということが述べられ、当委員会の佐高参考人は、極論すればすべて部外者から監査役を選任するべきであると、そういうふうに発言をなさっておられました。私どもも質問の中ではそのようにお尋ねをしてまいりましたけれども、いずれも監査役の独立性を側面から担保する必要性を述べたものと理解します。
 今後とも監査役会、社外監査役の新設については運用状況を踏まえて適時適切な改善に努めていただきたい、こう思いますが、いかがでしょうか。
#54
○政府委員(清水湛君) 社会経済情勢の変化とか、あるいはそういう実態に照らしまして、その事態にふさわしい商法改正をするということは当然必要なことでございまして、監査制度につきましてもまたいろいろ立法の趣旨とは違った形での運用がされてきており、それが問題であるということでございますとまたそれに応じた改正をしなければならないということは、これは当然のことであるというふうに考えております。
#55
○竹村泰子君 これまで、イトマン事件、東洋信用金庫事件を初め、刑事事件にまで発展をして経営の根幹が大きく揺らぐようになりましたケースが多かったんですけれども、そういったものがかのバブル崩壊と同時に多発しております。今後は、刑事事件にまで発展しなくても、過剰な子会社救済、財テク失敗、さらには誤ったディスクロージャーといった何でもない経営判断ミスにも経営者個人が巨額の賠償責任を負わされることになる場合が出てくるかもしれないと思います。実際問題として、これまで司法の場で責任が追及されなかったために担当役員の退任や減俸といった日本的な風土、いわゆるみそぎで問題が決着してきたにすぎないという嫌いがあったと思います。
 このような事情経過を関係当局はどのように認識し、これからの対応をしていかれるおつもりか、御答弁を求めたいと思います。
#56
○政府委員(清水湛君) 個々の会社で、先生は例えばイトマン事件だとか東洋信金事件等の具体的な事件を御指摘になりましたけれども、それぞれの会社におきまして当該具体的な取締役が職務執行につき懈怠があったとして、つまり重要な過失あるいはそういった会社に責任を負うような行為があって損害賠償を会社に対してしなければならないというような事案が具体的にあったのかどうか、あるいはあったとして具体的にその金額はどの程度のものであるかということにつきまして一は、私どもとしては承知していないわけでございます。具体的な事件の実情を知り得る立場にはございませんのでそうならざるを得ないわけでございます。
 また、これまでもいわゆる倒産と言われる、具体的には会社更生の事件の中で、管財人の方から取締役の責任を追及して損害賠償の請求をする、それについて裁判所が査定をするというような例もわずかながらあるわけでございますが、具体的にどのような事情、どのような状況のもとにそのような査定がされたかということについては私どもはつまびらかには承知いたしていないわけでございます。
 ただしかし、商法のあり方として、もしそういう取締役が具体的に会社に対して損害賠償責任を負うというのであるならば、その責任を的確に履行する、あるいは履行を求めるための手段を考えるというのは、これは商法の立場として当然考えなければならないわけでございまして、そのために会社が取締役に対してそういう損害賠償責任を追及しないというのであるならば、株主が代表して会社にかわってそういう責任を追及するということができるようにすると。
 つまり、実態上そういう損害を賠償すべき義務があるならば、その義務は確実に履行してもらう、こういうための制度をつくる、こういうことは私ども商法を所管しておる法務省としては当然考えなければならない問題だというふうに思っているわけでございまして、今回の代表訴訟制度につきましても、具体的な事件についてどうこうというのではなくて、あるべき制度としてこのような代表訴訟制度の改善というものを考えた、こういうふうになるわけでございます。
#57
○竹村泰子君 大蔵に対して一問質問させていただきたいと思います。
 役員保険の仲なんですが、アメリカで役員保険が登場したのはニューヨーク株式相場の大暴落直後の一九三〇年代で、一九七〇年代に入って急速に普及し始めた。日本では、近時PL訴訟が強調されがちでありますけれども、米国では早くからPL訴訟と並びDアンドO、ディレクターズ・アンド・オフィサーズ訴訟というんでしょうかが大きな問題として取り上げられてきております。
 我が国でも九〇年に役員保険が発売されたということでありますけれども、今回の株主代表訴訟制度の改正を機にその導入を図る企業がふえるものと思われますが、大蔵省の見通しはどうなのでしょうか。保険料の決定はどのようにされ、保険料はどの程度になると思われますでしょうか。
#58
○政府委員(鏡味徳房君) 今御指摘がございました保険の問題でございますけれども、会社の役員賠償責任保険は、会社役員がその業務遂行に伴う行為に起因しまして損害賠償請求を受けた場合に、会社役員がこれにより生じた法律上の損害賠償金、争訟費用を保険金として支払うものでございまして、御指摘のように平成二年から販売が行われているわけでございます。
 今般の商法改正が行われる結果、具体的にこのような問題に関する訴訟がどの程度増加するかという問題につきましては、私どもとしてなかなか見通すわけにはまいらないというような立場でございますものですから、したがいましてそれに伴いまして保険がどの程度加入がふえていくか、こういったことについても一概には申し上げられないのではないかなと考えております。
 また、この役員賠償責任保険の保険料でございますけれども、これは具体的には保険契約者ごとに事業の種類とか経験、規模、財務内容あるいは信用度等を勘案しながら決められているわけでございまして、そういった個々のケースに応じながら保険料が決定されていく、こういうことになっておりますものですから、個々具体的なケースに応じながら保険契約がなされ、保険料が決められる、このように考えております。
#59
○竹村泰子君 それでは、社債に関する質問を少しさせていただきます。
 バブル経済崩壊後二年余り、日本企業の国際的な経営が問われる中で、企業の資金調達の合理化を図るということで今回社債発行制度に関する規制の廃止を提案している一方、この商法改正に係る議論のさなかにも商法違反や独占禁止法違反が日常化するという経営の問題点もあぶり出されてきております。
 また、松下電器産業は一般事業会社として最大限の国内普通社債二千億円の発行に踏み切る、松下の大型起債はこれまでおくれていた一般事業会社の普通社債市場の整備につながる可能性もあるというふうに、これは報道なのですけれども、私ども読みました。
 そこで関係当局に伺いたいんですが、現在我が国の社債市場でどの程度の社債引き受け能力があると思われますか。
#60
○説明員(西方俊平君) 社債の引き受けにつきまして、一つは量的な問題でどうかという御趣旨と、それからもう一つは大型起債があった場合に市場の能力を超えて社債が発行されるおそれはないかそうしたものを十分チェックする自動調節作用みたいなものが市場に備わっているのか、そういった意味の御質問が込められているんじゃないかというふうに伺っております。
 まず自動調節的なものについてはどう考えたらいいかということでございますけれども、今回の商法の改正によりまして社債発行限度規制が撤廃されるわけでございますが、これにあわせてより合理的、実効的な社債権者保護の仕組みといたしまして、社債管理会社の原則的な設置の強制とか、それから社債権者集会制度の改善が行われることになりまして、制度的にはそういったものについては大変一層強固な社債権者の保護が図られるというふうに考えております。
 それから、市場実態面について考えてみますと、そもそも社債の発行と申しますのは発行者が投資家が投資をしてくれるかどうかということについて十分念頭に置きながら発行すべきものでございます。そのためにはちゃんとしたディスクロージャーとか格付の充実というようなことで投資家の判断のための材料を提供する必要があるわけでございます。このため、近年、私どもの方でディスクロージャー制度の充実とか、それから関係者の方々の御努力で格付の定着というものを進めてまいっているわけでございます。
 それからまた、仲介を行う引き受けの証券会社でございますけれども、例えば大変規模が大きい社債が発行されるというようなことになりますとシンジケート団を証券会社の間でつくるということが一般的でございます。そして、投資家の方々に発行条件等を提示しながら、どのくらいの発行が実際可能かどうかということをサウンドする、いわゆるマーケットリサーチ的なことを行いまして、これによって発行の規模というものを大体固めていくという機能がございます。
 仮に証券会社が引き受けを行った場合に、市場でもって十分売れないということになりますと、逆に売れ残った分というのは引き受けの証券会社が背負い込まなければいけないというリスクがあるわけでございます。引き受けの証券会社は、当然のことながら、そうしたリスクを負いたくない、回避しなきゃいかぬということでございますので、こうした引き受け会社の責任の機能ということでもって一つは大きなチェック機能があるんだろうと。
 それからもう一つは、投資家のサイドでございます。これは当然のことでございますが、先ほど申しましたディスクロージャーとか格付といった判断材料をもとに、その発行会社がどういう業績を上げているか、財務内容がどうだろうか、それから社債はどういうふうに流通性を持っているんだろうとか、それから金利等の条件、こういったことでもって対応するわけです。そこでは元利の償還が確実だということは当然審査の基準になるわけでございますが、そのほかにも他の金融商品への投資を行った場合との比較というようなことを勘案して当然合理的な判断を行うということでございます。私どもはこうした市場関係者の機能をマーケットメカニズムというふうに呼んでおるわけでございますけれども、こうした市場のマーケットメカニズムが十分機能している、そういうような状況にあるというふうに私ども思っております。
 それから、第二点の量的な問題でございます。これは金融的な面でキャパシティーがあり得るのかどうかということでございますけれども、最近の国内の社債市場というのは非常に大きくなっておりまして、平成二年度の場合ですと四兆円を超える、三年度の場合は六兆円を超える、四年度でも五兆円を超えるということで、大変大きなものになっております。もちろん、発行する時点の金融情勢という大きな条件はございます。それからまた、最終的にはただいま申しましたようなマーケットメカニズムにゆだねられるという面もあるわけでございますけれども、現在の金融情勢のもとであればある程度大型起債ということも可能なのではないか、こういうふうに考えております。
#61
○竹村泰子君 さっきちょっとお触れになりましたが、一般投資家保護のためにもディスクロージャー制度の積極的検討をどうしていかれるのか、展開していかれるのかもう少し詳しく教えていただきたいと思います。
#62
○説明員(西方俊平君) 資本市場におきましては、基本的には私どものいろんな意味での規制というのは必要最小限のものが望ましい。そのためには、やっぱりディスクロージャーというものと格付が柱になって、発行体と引き受けの証券会社、それから投資家の間でもって自由な判断が行われる、そういう判断にゆだねるということが基本だというふうに思っております。そういった意味で、今お話がございましたように、ディスクロージャー制度の充実というのは大変重要だと思っております。
 これまで、五十年代にも随分私どもいろいろ努力させていただいたと思っておりますが、例えば連結財務諸表の作成とか、それから中間財務諸表の作成とかそれからリスク情報の開示、こういったことが五十年代でございます。それから、六十年代以降に入りましても、企業集団の状況の開示とかそれの資金収支表とか研究開発活動の開示、それからセグメント情報の問題、それから訴訟の提起とかまたは解決があったような場合には臨時報告書の提出をしてもらうとかそれから市場性のある有価証券につきましては時価情報を開示していただくというようなことを行ってまいりました。それから、ことしの三月にもいろんな改正を行ったわけでございますけれども、例えば投資家に理解しやすいように主要な経営指標を、数年間の推移を示すというようなことでディスクロージャー制度の充実に努めてきているわけでございます。
 今回社債法の改正がこういうふうに行われているわけでございます。投資家の保護のために有価証券届け出書などにつきまして当然適切に開示すべき事項が含まれているのではないかというふうに考えております。具体的にはどういう項目を開示にするかというようなことにつきましては今関係のところで検討をしているところでございますけれども、いずれにいたしましてもこの改正社債法の施行期日に合わせまして関係省令が出るように作業を進めてまいりたい、こういうふうに思っております。
#63
○竹村泰子君 素人考えかもしれないんですけれども、大規模な社債発行が前に発行した社債償還との関係でいわゆる自転車操業、そういう発行に陥るおそれはないんでしょうか。
#64
○説明員(西方俊平君) 一般論でございますけれども、例えば日本で社債でもって大規模にかつ継続的に出している企業といたしましては電力会社がございます。電力会社は、資金調達は当然銀行の借り入れとか社債によっているわけでございますけれども、その時々の金融情勢によりまして、長い期間の社債を出した方がいいのか、短い期間の社債を出した方がいいのか、そういうような決定をするわけです。電力会社の場合はむしろその償還期限が来ますとまた借りかえのための社債を出すというようなことがしばしば行われているわけでございます。
 先ほど申しましたように、経営状況が悪くて自転車操業的に社債を発行するというようなことは当然、先ほど申しましたディスクロージャーの点とか、それから投資家側の判断とか証券会社の引き受けの判断というようなことでそれなりのチェックが行われるというふうに考えられると思います。
#65
○竹村泰子君 改正案は、社債管理会社に対して、社債償還請求権のほか、発行会社の業務及び財産状況の調査権を付与しております。抽象的な善管注意義務、公平誠実義務の規定では、発行会社と取引関係を有する社債管理会社が社債権者と利益相反状況等の場合の対応についてこれは懸念される点が多々あることは両院の質疑で明らかになっております。
 法的には特別代理人制度というのが設けられていて、でもこれは最後の手段であって実際の社債権者の保護には機能しないのではないかと私思うんです。したがいまして、社債権者の保護のために必要な諸方策を講ずるとともに、情報開示制度等の改善充実に努め、一層の企業の透明性の向上を指導するべきであると思いますが、これは最後の質問でございますので、局長、そして大臣にも一言お答えをちょうだいしたいと思います。
#66
○政府委員(清水湛君) 今回の社債法の改正におきましては、その発行限度規制を撤廃すると同時に、社債権者保護ということを最大の眼目にいたしまして、専ら社債権者のためにこの社債の管理をすると。そのために一定の条件のもとに発行会社の財産状況を調べたり、その他いろんなことをするというようなことを認め、一方におきまして社債権者と管理会社の利害が衝突する場合には特別代理人の制度を設けるとか、あるいは最終的には公平誠実義務、つまり自分の債権の、管理会社である銀行の債権だけ回収して社債権者の債権は後回しにするというようなことができないように公平誠実義務を課するとか、あるいはより基本的に善良な管理者の注意義務をもって社債権者の権利の管理に当たらなければならないというようなもろもろの規制をいたしているわけでございます。
 そういうような法的規制のほかに、さらにこういった社債管理会社というものが銀行とかあるいは非常に厳しい条件のもとに認可される信託会社、こういうようないわば資本力も豊かな、あるいは財産管理についても経験豊かなものに社債管理会社というものを限定しているということになっているわけでございますが、そういうような銀行等にその社債権者のいわば法定代理人としての地位を与えることによりまして私どもといたしましては社債権者の保護は法律的にもまた現実的にも十分に保護されるのではないかというふうに実は考えているわけでございます。
 これまでの例えは現行法でも、これは任意ではございますけれども、社債募集についての受託会社として機能するのは銀行と信託会社というふうに商法上これもうなっているわけでございますが、現実の問題といたしますと、銀行としては社債募集の受託会社になった以上は、これはもう銀行の信用にかけても社債償還が不能になるというようなことは絶対避けなければならないということから、例えば俗に言われておる財務制限条項というような条項があるわけでございます。
 例えば、社債が償還されなくなるなんということになると困るものですから、余り株主に配当をたくさん出すなとか、あるいはほかの銀行から大きな借金をするなとか、あるいは一定の自己資本というのは常に維持せよとか、いわばそういう注文を受託会社である銀行が発行会社につける。これが少し過剰介入ではないかということで大蔵省の方ではそんなに厳しい条件をつけるなというような御指導をなさっているようでありますけれども、そういうような現実の銀行の信用というものをベースにした行動というようなものがあり得るわけでありまして、今後ともそういう意味では社債管理会社が社債権者のために適時適切にその権利保護のための行動をしていただけるというふうに私どもは考えているわけでございます。
 さらにそれに加えまして、先ほど大蔵省の方からもお答えをいただきましたけれども、ディスクロージャーの強化の問題だとか、あるいは社債についての格付制度が非常に日本でも精巧なものになってきておる、精緻なものになってきておるというようなことからいたしましても、社債権者の保護ということについては十分その保護が図られるというふうに考えているわけでございます。
#67
○竹村泰子君 大臣、全般にわたってで結構でございますから、御決意のほどをお伺いして終わりたいと思います。
#68
○国務大臣(後藤田正晴君) 社債の問題につきましては、やはり一番大事なことは社債市場の健全なる育成、発展、それについての関係者の指導、そして何よりも社債権者が不測の被害を受けるといったようなことのないような運営にしなければならないと、かように考えておるわけでございます。
#69
○委員長(片上公人君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時四十七分休憩
     ――――◇―――――
   午後一時一分開会
#70
○委員長(片上公人君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#71
○猪熊重二君 きょうは、改正法の中で社債に関して少々お伺いしたいと思います。
 先ほどの角田委員やあるいは竹村委員のような高尚な論議じゃなくて、逐条解釈的なことをお伺いしたいと思います。
 まず、現行法の二百九十七条の社債発行の制限である純資産額を超えて募集してはならないという規定を削除したわけです。この規定は、私は発行時においては少なくとも社債の担保があると。純資産額があるだけしか社債を出さないということになるわけですから、少なくとも発行の時点においては担保的価値があった、この規定は。
 今度これをなくしちゃうということになって社債管理会社をつくるということになるんですが、この社債管理会社をつくるということが社債権者に対する社債の担保的な意味での作用というか価値というか、こういうものはあるんでしょうか。
#72
○政府委員(清水湛君) お答えいたします。
 御指摘のように、現行の二百九十七条の純資産額を超えてこれを募集することはできないという規定は、まさにそういう資産内容の不良な会社が社債を発行することを禁ずるという意味においてそれなりの役割を果たしてきたわけでございます。
 例えば、昭和五十二年に暫定的にこの商法の規定の二倍までは社債の発行をすることができるという暫定措置法をつくったわけでございますが、その際におきましても、この商法における発行限度規制というもの、これは十分のものではありませんけれども、少なくともある程度の機能は果たしているわけだからそれにかわるような機能、あるいはそれ以上の機能というものをやはり根本的に考え直す必要がある、あるいはそういうことが有効に機能するような商法以外の諸条件の整備というものを考える必要があるということでこの二百九十七条の発行限度規制というものをすぐやめるということはいたさなかったわけでございます。
 じゃ、どういう状況を満たせば社債権者保護ということが図られるかということがその後の研究、検討の中心課題になりまして、その一つが今回商法の面からは社債管理会社の設置を強制する、こういうことにいたしたわけでございます。
 もちろん、この社債管理会社の設置の強制だけではございませんで、これまでも議論が出ておりますように、証取法上のディスクロージャー制度が拡充強化されたというようなこと、それから企業内容を精査して企業の信用力というものをチェックして、そういった企業が発行する社債の信用度というようなものについての格付制度、こういうようなものが昭和六十年以降、これは外国資本の我が国への進出等の影響も非常に強かったわけでございますけれども、急速に整備されてきた、こういうような諸条件が整ってきたということによりまして今回このような改正案になったわけでございます。
 これまでのこの社債募集についての受託会社、これはもう現在あるわけでございますけれども、任意的ではあるわけでございますけれども、これが同時に発行会社の代理人でもあり社債権者の代理人でもあるというような中間的な機能を持っておるというようなことから、今回の改正法におきましては専ら社債権者のために法定代理人的な立場で行動すべきであるということを明確にし、かつ社債権者に対する責任、公平誠実義務、あるいは善良な管理者の注意義務等、あるいは発行会社に対する一定の条件のもとにおける財産状況の調査権、あるいは銀行、信託会社というような一定の厳しい条件のもとにおける免許に基づいて業務を行い、大蔵省等の所管庁における厳しい監督を受けているというような企業が社債管理会社になるというようないろんな法的な整備というものを図ることによりまして社債権者の保護というものは十分に全うされるのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。
#73
○猪熊重二君 もう少し簡潔な御答弁で結構なんですが、今度二百九十七条を改正して社債管理会社というものをつくる、あるいは社債の発行会社は社債管理会社を定めなければならない、こういう規定になっているわけですが、このただし書きがどうもよく読んでも意味もわからないし、趣旨もわからないんです。
 社債を募集するには社債管理会社を定めると。しかし、「但シ各社債ノ金額ガ一億円ヲ下ラザル場合又ハ社債ノ総額ヲ社債ノ最低額ヲ以テ除シタル数ガ五十ヲ下ル場合」はそういう社債管理会社を定めてそれに委託するというふうなことをしなくてもよろしいと書いてある。このただし書きの意味と趣旨を御説明ください。
#74
○政府委員(清水湛君) この「各社債ノ金額ガ一億円ヲ下ラザル場合」というのは、要するに最低単位としての社債が一億円であるという意味でございます。
 普通は最低単位の社債額は百万円とか、あるいは場合によっては十万円というような小さな金額になっているわけでございますけれども、場合によっては一億円というような最低の単位が定められておるというような場合がございます。こういうような一億円というような社債、一口一億円でございます、そういうようなものを引き受ける能力があるのは、これはもう金融機関とか生保、損保というようないわゆる機関投資家に限られるわけでございまして、そういうようなところは社債管理会社というようなものを通さなくてもみずからの力によって社債権者としての立場を発行会社に対して強力に主張することができる、こういうふうに考えられるわけでございます。したがいましてこの場合には社債管理会社というものの設置は義務づけない。
 それからもう一つの、「社債ノ総額ヲ社債ノ最低額ヲ以テ際シタル数ガ五十ヲ下ル場合」というのは、要するに五十口未満の社債しかないと、こういうことでございます。
 これは典型的には私募債、本当に会社と特定の関係のあるような方々だけに社債の引き受けをしていただくというようなものでございまして、こういう場合にはもう発行会社と引受人の個々的な契約でこの社債の募集が行われる。これは普通の金銭の貸し借り契約とほとんどもう実質的には違わないというような実態がございますので、社債権者の数が非常に少数でございますのでそういった社債権者集会とか、そういうようなものを前提とする社債管理会社というものの設置は必要がない、こういうことでございます。
#75
○猪熊重二君 だからさっきも商法を含めて片仮名の法文を直そうと、こういうふうなことを言っておられるんです。
 ところが、この持って回ったただし書きをなぜつくるかということなんです。「社債ノ金額ガ一億円ヲ下ラザル場合」なんでわざわざ何で書くかと言うんです。それで局長が説明するのは、一億円以上のことなんですと言う。説明するときに一億円以上と言うんだったら、各社債の金額が一億円以上の場合と書いたらいいのに、何でその「一億円ヲ下ラザル場合」なんて書くのか。
 それからもう一つの、「社債ノ総額ヲ社債ノ最低額ヲ以テ除シタル数ガ五十ヲ下ル場合」なんてこと書いてあるけれども、今、局長が説明したのは、要するに五十口以下の場合、こう言っているんだから、だったら何でまたは社債の総数が五十口以下の場合と書かないでこんなわからぬようなことを書くんですか。どうなんですか。
#76
○政府委員(清水湛君) 同じようなものについて同じような表現が他にされておるというようなことも参考にされておるわけでございますが、ちょっとそのほかの例というものを今記憶はいたしておりませんけれども、こういったたぐいの法文作成の場合の一つの技術、正確に書こうと思えばやっぱりこういうことになるのかなということでございまして、私自身も口頭で説明する場合にはもっとわかりやすい説明の仕方というものでいいのではないかと。例えば今現在の商法の二百九十九条、「下ルコトヲ得ズ」というような表現で従来から商法はほかのところでもされておる、そういうことでございますので、よろしく御理解いただきたいと思います。
#77
○猪熊重二君 いや、私が理解するんじゃなくて、国民にこんなわからぬようなものをわざわざ何で書くかと。もっとわかりやすく、すっと読んだらすっとわかるように書いたらいいと思う。
 社債管理会社というものの委託契約、これの法律的な性質をちょっと伺っておきたいんです。
 社債管理会社に委託するというけれども、委託者は発行会社ですね。受託者は管理会社です。そこのところへ社債権者というものが横っちょにいるわけですね。この委託契約の法律的性質、その委託契約と個々の社債権者とがこの契約とどういう関係にあるのか御説明ください。
#78
○政府委員(清水湛君) 社債管理会社と発行会社の間で社債管理の委託契約をするわけでございまして、社債権者というのは契約の当事者ではございません。民法的に申しますと、これは第三者のためにする契約である、社債権者のためにする契約である、こういうものに法律的な性格はなるのではないか、こういうふうに思うわけでございます。したがいまして、社債権者が契約上の当事者になっておりませんので法律に善良な管理者の注意義務とか公平誠実義務というものをわざわざ書き込む必要があるということにもなるわけでございます。
#79
○猪熊重二君 そうすると、社債権者は社債管理会社ができて自分のことをいろいろやってくれるそうだと、債権保全やってくれたり取り立てしておれのところへまた金を持ってきてくれるそうだとか、こういう利益を受ける立場だけで、それ以外に何らかの関係が法的に出てくるんですか。もっと極論すれば、個々の社債権者は、管理会社があるという場合であったとしても、自分の社債権者としての格別の権利行使は自由にできるんですか、それとも自分じゃできないんですか。
#80
○政府委員(清水湛君) 社債権者が社債権者になるためには、社債申込証に基づいて社債の申し込みをするわけでございます。その社債申込証の中に社債管理会社というのはこういう会社でこういうことをするということが書かれているわけでございます。ですから、第三者たる社債権者のいわゆる受益の意思表示、第三者のための契約における受益の意思表示というのは、いわば社債申込証による申し込みによってなされる、こういうことになるわけでございます。
 そういうことになるわけでございまして、社債管理会社としては社債権者集会の決議等によりある一定の行為をしなければならないというようなことが義務づけられる場合もございますけれども、社債権者は会社に対して社債権者としての法律上の地位を持っているわけでございます。この社債権者の地位を消費貸借契約上の社債契約権利者と見るのか、あるいはそれに類する一種の無名契約上の会社に対する権利者と見るのか、あるいは会社が発行した債券の売買の所持人と見るのか、いろんな考え方があるかと思いますけれども、要するに社債権者というのは会社に対して直接請求権を持っておりますので、個々的にそういう権利を行使しようと思えばこれはできるわけでございます。
#81
○猪熊重二君 そうすると、もう一度確認しておくと、個々の社債権者の社債権者としての権利については何ら変更はないと、うまく回収でもしてもらって、もらうときだけの問題だと、一口に言えば。そういうことにお伺いしてよろしいんでしょうか。
 それから、この委託契約の委託手数料みたいなものについてはどんなことを考えているのか。委託手数料はだれが払ってどの程度の額だとか、その辺についてはどんなことを考えておられるのか。社債権者のところへ結局しりが来ることになるのかならぬのか、その辺どうなんですか。
#82
○政府委員(清水湛君) 社債権者というのは大変多くの公衆というか大衆を前提としているわけでございますから、社債権者集会というものが想定され、それをベースにした社債管理会社というものがあるわけでございますから、社債権者は普通は社債管理会社を通じて権利を行使するということになるわけでございます。しかし、理論的には単独で権利を行使することも可能でありますが、抜け駆けで他の社債権者より有利な扱いを受けるということになりますと、それはそれでまた別途の問題を生ずるということは当然のことでございます。
 それから、社債管理会社というのは社債権者のために法律の規定に基づいて社債の管理をする義務、社債権者ために社債の償還を受け、あるいはそのために必要な裁判上、裁判外の一切の権限を行使する義務を負うているわけでございますけれども、それについてのいろんな費用というのは発行会社と社債管理会社との間の契約に基づいて発行会社が負担をする、こういうことになるわけでございます。
 社債権者のために社債管理会社が行為をしながら手数料は発行会社からもらうのはどういうわけなのかと、こういうことも問題になるわけでございますけれども、恐らく発行会社としては社債発行の経費の一部として委託手数料というものを当然勘案をしているというふうになるわけでございます。一方、社債権者の方から見ますと、社債申込証に示された社債の償還条件、あるいは利息というもの、そういうものをもとにして社債の申し込みをするということになるわけでございまして、その委託手数料の負担が社債権者に帰せられるということには当然にはならないということになるわけでございます。
 そこで、問題はその委託手数料を発行会社と銀行あるいは信託会社との間においてどういう基準で決めるのかということになるわけでございますが、これはやはり契約によって決めるということにならざるを得ないわけでございます。これについてもおのずから一定の基準というようなものがあるようでございます。これを実質的に監督しておりますのは大蔵省ということになるわけでございまして、これは現行法のもとでございますけれども、従来、社債の受託会社の手数料が欧米に比べて高いというような指摘がされておるというようなことは私ども新聞等の報道で承知しているわけでございますけれども、これにつきましても新しいこの法律が施行された段階においてそれぞれで適正な額が設定され得るものというふうに私どもは考えているわけでございます。
#83
○猪熊重二君 細かい点で非常に恐縮なんだけれども、二百九十七条ノ三というのが今度新設規定としてあるわけです。それで、二項、社債管理会社は社債権者に対し善管注意義務を負うという規定、これが社債管理契約の当事者が発行会社と受託会社であって、社債権者は第三者だから法律が特別にこの善管注意義務を規定したんだと、法律の規定による社債管理会社の義務なんだということはわかるんですが、一項はどういう趣旨なんですか。
#84
○政府委員(清水湛君) この二百九十七条ノ三の第一項の公平誠実義務というのは、これは「社債権者ノ為二」と書いてありますけれども、要するに社債権者に対して公平に事務の取り扱いをする必要があると。社債権者は多数でございまして、その一部の社債権者のために有利な扱いをし、他の一部の社債権者のために不利な扱いをするというようなことがあってはならない、社債権者全体に対して公平にその職務を行わなければならない、こういう意味でございます。
 それから第二項の方は、これは一般に委任契約というものでございますと、これは社債管理会社と社債権者との間に契約がございますと一種の委任契約でございますので当然民法上出てくるわけでございますが、この契約がございませんので一般の委任契約上の受任者の義務として善良なる管理者の注意をもって社債の管理をなす義務を負うという規定を置いたわけでございます。
 いずれにいたしましても、社債管理会社が社債権者のためにきちんとした事務処理をしなければならないという趣旨のものでございまして、実質的には同じものでございますけれどもちょっとニュアンスが違っている、こういう意味で両者を書き分けているわけでございます。
#85
○猪熊重二君 要するに私が質問したのは、一項もやっぱり法律の規定によって発生する義務なのかということを聞いているんです。
#86
○政府委員(清水湛君) 仰せのとおりでございます。
#87
○猪熊重二君 だとしたら、これもさっきと同じで、何で一項と二項と書き方がこう違うんだと言うんですよ。一項も二項も、両方ともこの法律の規定によって管理会社に義務を発生させ、社債権者に反面としての権利を生じさせる。両方とも同じだというんだったら、何で一項と二項の書き方が違うんだと。一項の方は社債権者のために公平誠実に管理をなすことを要すと書いてあるんです。二項の方は社債権者に対し善管注意義務を負うと書いてあるんです。両方とも同じだったら二項の方も社債権者に対し公平かつ誠実に社債の管理をなす義務を負うと書けば同じじゃないですか。何でこんなに書き分けるんですか、同じことを言っているのに。
#88
○政府委員(清水湛君) これも実は商法の書きぶりという一つの歴史的な背景があるわけでございます。
 先生よく御存じのように、取締役の会社に対する責任に関する規定がございまして、会社と取締役の関係には委任に関する規定が準用されるということになりまして、そこから当然に今回の法律で申しますと二項のいわゆる善管注意義務というものが出てまいるということになっております。ところが他方、商法は二百五十四条ノ三で「取締役ハ法令及定款ノ足並ニ総会ノ決議ヲ遵守シ会社ノ為忠実ニ其ノ職務ヲ遂行スル義務ヲ負フ」という、いわゆる忠実義務というものを課しております。
 私どもの言葉で言う善管義務と忠実義務というのは一体同じものであるのか同じものではないのか。同じであるという説と、いやちょっと平面が違うんだという議論が学者の論文の中でも大いに議論されているというような問題がございます。そういうような背景もあるわけでございますが、公平誠実義務というものを善良な管理者としての注意義務の中から特に抜き出して重要な要素として書き分けたというふうに見るということになるのではないかというふうに思うわけでございます。
 それからもう一つは沿革の問題でございますけれども、実は担保附社債信託法という法律、これは一般の普通社債とは違いまして、受託会社が社債権者のために社債の管理をすると同時にその社債に付せられた担保についての管理義務を負っているという趣旨で一般の商法の社債の場合とは若干性格を異にするわけでございますが、その担保附社債信託法の六十八条と六十九条にその公平誠実義務と善良な管理者の注意義務というものが使い分けられておるというような問題もございまして、やはり今回この社債管理会社の義務を明確にするということのためには公平誠実義務、善管注意義務というものをきちんと並べて書いた方がよりそれだけ管理会社の責任というものが明確になるだろう、こういう意味で書いたわけでございます。
 確かに取締役の忠実義務、善管義務で大変な論文が出ているような問題でございますので、御指摘のようにこの辺は将来は少しすっきりしなきゃならないのかなというふうに私自身も考えているところでございます。
#89
○猪熊重二君 いろいろお答えになるけれども、私にはちっともわからない。要するに何で同じものがこんな違う文字になるんだということを聞いているだけなんです。ほかの法律がどうだとかこうだとか、ほかの法律のことはほかの法律に任せて、せっかく直すんだったらちゃんとわかりやすいように書いたらどうだと。
 なぜこんなことを言うかというと、私自身が、一項と二項の書き方が違うから、二項は法定責任だけど一項は契約責任なのかなと。一項は契約責任だから違う文言で書いてあるのかなと思って聞いてみたら、一項も二項もこの法律によって発生する義務、あるいは社債権者の立場からいえば権利だとこう言うんだから、同じことだったら同じように書いておけば読む人が非常に楽だということを申し上げているだけなんです。
 次に、三百四条に社債の合同発行という規定があります。社債を合同発行する場合には社債申込証に各会社の負担部分等を記載しろと、こういうふうな規定になっています。この合同発行した場合の社債権者の権利、それから負担部分を記載させることの必要性、これについて簡単に説明してください。
#90
○政府委員(清水湛君) 合同発行ということができるわけでございますけれども、合同発行による複数の発行会社の債務というのは商行為による債務でございますので連帯債務ということになります。したがって、社債権者の方から見ますと、例えば百万円の社債をA、B両社が合同発行した場合には、A社に対しても百万円請求できるしB社に対しても百万円請求ができる、どちらにも百万円請求をすることができるというのが連帯債務の特質でございます。しかしその場合に、A、B間に負担部分の定めというものがございますれば後でまた償還関係が起きるということが一つございますとともに、債務の免除をした場合に一体それはどういう効力を生ずるかというようなこともございますので、この負担部分を明らかにするという必要が生じてくるということでございます。特に免除の絶対効の範囲を示すということに意味があると。
 例えば先ほどの例でございますと、A、B社が百万円の社債を合同発行して、A社が五十万円、B社が五十万円という負担部分であるという場合に、社債権者はどちらに対しても百万円の請求をすることができるわけでございますが、A社に対して百万円の社債の免除をするということになりますと、その免除の効力はA社の負担部分五十万円についてのみ生ずる、B社の負担部分五十万円については生じない、こういうことが法律的な効果として出てまいりますので、そのことをあらかじめ明らかにするという意味におきまして負担部分を明示させる、こういうことにいたしたものでございます。
#91
○猪熊重二君 この辺は非常によくわかる説明なんです、さっきと違って。
 三百九条ノ四、利益相反の問題について伺いますが、ほかの委員からもいろいろこの点について質問が出ています。要するに、社債管理会社は社債管理会社として社債権者のために一生懸命やらなきゃならないということと、社債管理会社といったって結局は銀行だから自分の貸付金の方の回収も一生懸命自分のためにやらにゃならぬということになってくる。この場合どうなんだということになるわけですが、この利益相反行為ということに関連して、具体的にこういう場合は利益相反行為になるのかならないのかということについて伺いたいんです。
 まず一点目は、発行会社がただ金を持ってきたときに、銀行の立場で自分のところの貸付金の方へまず取っちゃうのか、あるいは社債権者に対する償還として受け取るのか。一つの持ってきたお金をどっちに割り振るかというふうなことは利益相反行為の問題になるんだろうか。
 それから二番目の問題は、例えば社債発行会社が何か新しい不動産を取得したと。銀行という立場に立ては、どうも危なっかしいからこれを急いで仮差し押さえしようといって自分の債権保全のために仮差し押さえするのか、社債権者のために仮差し押さえするか。これ、どっちゃってもいいのか。あるいは同じように発行会社が新しい資産でも取得した場合に、ともかくそれを担保に出せと銀行の立場で自分のところへまずとってくるか、社債権者のために担保にとるかというふうな、このような場合にどっちゃっても構わぬのか。これは利益相反の問題なのかそうじゃないのか。利益相反というのは非常に難しい概念だからね。どうなんでしょうか。
#92
○政府委員(清水湛君) 銀行が社債管理会社になっていて同時に貸付金も持っている、同時に社債権者のためにもいろんな権限を行使しなければならない、そういう状態で発行会社が銀行に弁済として金を提供してきた。時あたかも社債の償還期でもある。社債の償還期でないとそういうことは問題にならないと思いますけれども、償還金として持ってきたのかあるいは銀行の貸付金の弁済として持ってきたのかということでございますけれども、これは銀行としても貸付金を受領するいわば権利と申しますか、そういうものは当然ございますし、また社債権者のために社債金の償還金としてこれを受け取るというような権利と申しますか、義務も当然あるわけでございます。
 したがいまして、銀行としてはそれはどういう趣旨の弁済なのかということをまず明確にしなければなりませんし、その結果銀行が例えば自分の貸し金の方に充当した結果社債の償還が非常に難しくなってしまった、こういうことになりますとこれは別途銀行の損害賠償責任という問題が生ずるということになるわけでございます。
 ですから、一般論として申しますと、そういうような弁済の充当については、やはり先ほど申しました公平誠実義務あるいは善良な管理者の注意義務という概念に照らして、銀行の行為として適当であったかどうかということが判断される対象になろうかと思います。これは利益相反の問題ではないというふうに思います。
 それから、もしも先ほど申しましたような銀行の貸付先が非常に危険な状況になってきたというような状況のもとで自分の債権の先取りに走ったというようなことで勝手にその弁済の充当に充ててしまうとかあるいはどうも危ないから自分の貸付金の債権の方の担保を無理やり提供させた、その結果として社債権者が弁済を受けることができないような状況になってしまった、しかもそのような行為が、これは三百十一条ノ二の二項の問題に今度は移るわけでございますけれども、そういう社債についての償還不能というような事実が生ずる三カ月前の期間内に行われたということになりますと、まず原則として銀行の方で十分に注意を尽くしたということを証明しない限り社債権者に対して償還不能額についての損害の賠償をしなければならない、こういうようなことになるわけでございます。
 そういう意味で、善良な管理者の注意義務あるいは公平誠実義務というものを前提とし、かつ三百十一条ノ二の一項ないし二項の規定の適用という場面が生じてくる、こういう意味でございます。
#93
○猪熊重二君 要するに、結論的に言うとそれは利益相反行為の問題じゃないということなんだろうと思うんです。
 じゃ、利益相反行為というのは具体的にどうかというのを聞きたいけれども時間も余りありませんので……。
 三百九条ノ五の社債管理会社は裁判上の行為をなす場合において「各別二社債権者ヲ表示スルコトヲ要セズ」、こういう規定があります。要するに、社債権者はそれは百人も五百人もいるかもしれぬけれども、社債管理会社は「各別二社債権者ヲ表示スルコトヲ要セズ」ということになると、例えば裁判上の行為をする、訴訟を提起する場合に一人一人の名前を書かなくてもいい、こういうことですね。
 まず、その判決はだれに対して生ずるんですか。当事者はだれなんですか、その裁判の。
#94
○政府委員(清水湛君) 社債管理会社というのは社債権者の法定代理人として行動するということになりますので、判決の効力は社債権者に対して当然生ずるということになります。
 そこで、結局じゃどういうふうに当事者を表示するかということになるわけでございますけれども、個人個人の社債権者、これはもう何万人にも及ぶということが普通考えられますので書くことはできませんが、結局当該社債を特定する、つまり具体的には企業の社債の場合には第何回ア号とかイ号とか、そういうふうな符号を付して社債権者グループを特定するというようなことをやっておりますので、何々株式会社第何回、それでアとイとつけるかどうか知りませんが、第何回の社債権者というふうにだけ書いて社債管理会社何々銀行、こういうようなことで社債権者グループというのは特定できる、こういうことになろうかと思います。
#95
○猪熊重二君 当事者は社債権者だとおっしゃるわけでしょう。そうすると、名前もないし、どこの太郎さんだか次郎さんだかわからぬ人が当事者になって、それで勝訴判決もらって執行するというときはだれが執行するんですか。名前も何も出ていない。そうすると、最終の執行手続までを社債管理会社だけが実際上はやることになって、個々の社債権者は当事者であり、原告だとかあるいは勝訴した原告だとか、そういうことにはなっているけれども全然動きがとれない、こういうことですか。
#96
○政府委員(清水湛君) 社債権者の法定代理人として、先ほど申しましたような公平誠実な義務あるいは善良な管理者の義務という義務は当然の前提になるわけでございますが、社債権者のために裁判上、裁判外の一切の行為をするということになるわけでございまして、裁判を起こし、勝訴の判決を得て、会社の財産に強制執行する、あるいは各種の清算手続に参加をするということになります。そして、その結果、社債管理会社が回収をした場合には、これは三百九条の二項でございますけれども、社債管理会社が弁済を受けたるときは「遅滞ナク其ノ旨ヲ公告シ且知レタル社債権者ニハ各別ニ之ヲ通知スルコトヲ要ス」ということとされております。そして、その上で社債権者は債券と引きかえに償還額あるいは利札と引き換えに利息の支払いを請求するということになるわけでございます。
 恐らく社債管理会社としては社債権者の氏名、住所等は掌握しているはずでございますけれども、一方、社債は自由に売買ができるということになっておりますので必ずしもそれが正確に常に掌握されているということにはならないわけでございます。そういうことから、知れたる社債権者には個々的に通知をいたしますけれども、そうでない者については公告をする、こういうことになります。
 いずれにいたしましても、社債権についてはそれぞれ償還期というものが決まっているわけでございまして、償還期に償還されない場合にはなぜ償還されないかということが社債権者の方から見ますと当然に問題になり、管理会社において現在訴訟中であるとか、あるいは強制執行中であるとか、いずれ公告がされて分配手続が始まる、こういうようなことはしかるべき方法によって社債権者は知り得る、こういうことになろうかと思うわけでございます。
#97
○猪熊重二君 細かい問題いろいろあるんですけれども、最後の質問で、三百十四条二項に社債管理会社が社債権者集会を法律に従って招集するべきにもかかわらず招集しないようなときには「社債ノ総額ニ付期限ノ利益ヲ失フ」、こういう規定があります。それは社債発行会社に対するペナルティーとしてはわかるんですが、社債権者の立場にすると、単に期限の利益を失って元金が償還される、それはいいことかもしれぬけれども、五年間利息稼ごうと思ったのに一年で償還償還ということになると損じちゃったなということになるのか、その辺はどういうふうにお考えなのか。要するに、社債発行会社としては償還期日が来たという意味でのペナルティーを課せられる、それはいいんだけれども、個々の社債権者の利息に対する利益の期待権というものはどうなりますか。
#98
○政府委員(清水湛君) この三百十四条の規定と申しますのは、法律で設置を義務づけられております社債管理会社というものがいろんな事情によって存在しなくなってしまった、そういう場合にはこれにかわる社債管理会社というものを早急に定めなければならない、そういうようなことを社債発行会社としてはすべきである、こういう前提のもとにつくられている規定でございます。
 であるにもかかわらず、社債発行会社がそういった社債権者のための社債管理会社の設置の手続を怠っておるということは、多くの場合は社債の償還についても大変な疑念を生じさせるということにもつながってくるわけであります。果たしてこの発行会社がまじめに社債権者の利益というものを考えて管理会社というものを設置をしようとしているのか、あるいはこれをぐずぐず延ばして社債の償還を免れようとしているのかというようなことも十分その事情としては考えられるわけでございます。
 そういうような不誠実な発行会社につきましては、これはおっしゃるように、一定の期間この社債の利息というものを得ようということを考えていた期待権というものがあるということはまことにお説のとおりでございますけれども、むしろそういう場合には社債の償還がされないという危険性をできるだけ避けるためにこの期限の利益を失わせて直ちに償還をすべきものとすると、こういうふうにすることが社債権者にとっては必要であろう、こういうふうに考えられるわけでございます。
#99
○猪熊重二君 今回の商法改正、いろんな点があるわけですけれども、社債管理会社というのは新しい制度ですから法務省としてもいろいろ御苦労してつくられたわけですが、これがうまく機能して社債権者の利益にもなり、また発行会社の方の資金調達にもうまくいくようになればいいと思うけれども、まあこれはやってみなきゃわからぬということで、いずれにせよ新しい制度をつくるのにいろいろ御苦労されたことについては敬意を表しておきたいと思います。
 以上で終わります。
#100
○紀平悌子君 商法の問題に入ります前に一つだけ、もうこれ以後は多分お聞きしないと思いますけれども、恩赦につきましてもう一回お尋ねをしたいと思います。
 いよいよ六月九日の皇太子御成婚の日も近づいてまいりましたので法務省の御姿勢、御方針もだんだんにはっきりなさってきたことと思います。新聞等で仄聞するところによりますと、これまで戦後十回にわたって政令恩赦という形で、それに含まれる大部分のものというか、それが選挙違反者だというふうなことは、選挙は正しくあるべきだと、法を守るべきだと思って一生懸命やってまいりました有権者のそしりを受けていたということは事実でございます。その政令恩赦から今回は特別基準恩赦というふうなことでなされるやに伺っております。
 政令恩赦、今までの形が変わっただけでも大変進歩だというふうに、あるいは画期的なことだというふうに私は思ってはおりますが、この特別基準恩赦というものは、社会のために貢献するところがあり、かつその刑に処せられたことが現に公共的社会生活上の障害となっている者というものが基準になっているというふうに伺っておりますが、そうでございましょうか。そして、もしそれがそうであるならば、それは公職選挙法違反の種類によることもありましょうけれども、違反者について特別基準恩赦を行うべきではないというふうに私は考えますけれども、それについて法務大臣及び御当局の御見解を承りたいというふうに思っております。
#101
○政府委員(杉原弘泰君) お答えいたします。
 今回の皇太子の御成婚に際しましては、この委員会でも大臣からお答えになっておりますように、いろいろ慎重に検討いたしました結果、謙抑的に行うということで政令恩赦を行わず、個別恩赦であります特別基準恩赦のみを実施するということで事務手続を進めております。
 ただいま委員からお尋ねのありました公選法違反対象者についての問題につきましては、まだ詳細にこの特別基準恩赦の内容につきましてはこの席で申し上げるわけにはまいりませんけれども、一般的に特別基準恩赦として今度考えております恩赦の内容は、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権、この四つの種類の恩赦を実施する予定にしております。
 そして、この特別基準恩赦と申しますものは、原則的に申し上げるならば、犯罪の種類を問わずに、それぞれ個々の事案ごとに個別に本人の犯情、性格、行状、改善更生の程度、それから社会の感情等を総合的に勘案いたしましてその者の恩赦の当否を決定するものでございますので、当初から特定の罪名を対象から除外するということにつきましては必ずしも合理的な理由があるというふうには考えておりません。
 したがいまして、公選法も含めましてすべての罪名について個々の犯罪者の事情を個々に検討いたしまして、そして恩赦の当否を決定していくと。この個別恩赦の趣旨に従いまして今回の恩赦は行われるであろうというふうに私は予想いたしております。
#102
○国務大臣(後藤田正晴君) 今、局長からお答えしましたとおりでございますが、特別基準恩赦というのは個別恩赦でございますから、したがって個々の事案ごとに個別的に本人の性格とか行状とか改善更生といったような総合的な面から判断をしまして、しかもそれは申し出によるわけですけれども、その内容は中央更生保護審査会、ここで審査をしまして、そしてそれが法務大臣に上がってくる、それが内閣の方にいく、こういう段取りでございます。
 個々的に審査をするということになっておりまするので、今おっしゃるような選挙違反、これは決していいことじゃありませんけれども、だからといってそれだけは除くというのは一般論としまして必ずしも適切ではないのではないか個々の審査の問題ではないのか、こういうふうなことで、おっしゃるように選挙違反だけは除くというわけにはいかぬのではないかなと、かように考えておるわけでございます。
#103
○紀平悌子君 いずれにいたしましても、公正、公平な恩赦をということをお願いいたしまして商法の問題に入らせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 お話をずっと聞いておりますと、ゼネコンの監査役などは一体何をしていたのかという怒りが再び込み上げてくるわけなんです。
 前回、六月一日の質疑でお聞きしましたけれども、監査役の注意義務についてその内容をお答えをいただきました。時間が若干足りませんでしたので補足してその点を質問させていただきたいと思います。そのときのお答えでは、監査役が善良な管理者の注意義務を果たしたかどうかは諸般の事情から判断するのだという抽象的なお答えでございました。もう少し具体的にお伺いしていきたいと思います。法務省にお願いいたします。
 まず、今回大会社について社外監査役、監査役会の制度を導入された場合、個々の監査役の注意義務に変化はあるのでしょうか。つまり、監査役会を法定する意義として、監査役の中で職務分担を決めて適当な方法で調査をする、そしてその結果を監査役会に持ち寄って監査役全員の共通の情報にするということが挙げられていますので、従来の独任制の監査役と比較して今回はいわばその監査という職務上の守備範囲が定められてくる点で責任の範囲にも変更があるのでしょうか。具体的にお答えを願います。
#104
○政府委員(清水湛君) お答えいたします。
 今回の監査役制度の改正によりまして監査役の個々の責任とか権限というものには基本的な違いはないわけでございますけれども、先生御指摘のように、監査役会というものが今度つくられます。そこで、監査役会がいわば一つの調整機関として各監査役の責任分担を決める、あなたは何々工場、あなたは何々工場というふうに決めるということが考えられます。それは監査役会の定めとして監査役が構想されますので、その定めに従って監査事務を行うということでございますと、その決議に従った範囲内においてその善良な管理者の注意義務というものが問題にされる、こういうことになるわけでございます。そういう意味においては、監査役会制度ができたということによる若干の変容があるということになるわけでございます。
 ただしかし、最終的にその監査役会におけるいろんな監査意見を決めるという場合に、お互いにそれぞれの監査役が自分のした監査について報告をするということがあるわけでございますが、その際に他の監査役が決められた分野についてした監査がどうも少しおかしいんじゃないか、もう一回きちっと調べてみる必要があるんじゃないかというふうに他の監査役が考えたと。そういう場合に、やはりもう一度やるべきであるというのにもかかわらずやらなかった、そこを漫然と目をつぶって見逃したというようなことになりますと、これはまたそれなりの責任というものも、つまり善良な管理者としての注意義務を尽くしたことにはならないんじゃないかというような問題が生ずるということは、これはあり得ることだというふうに考えております。
#105
○紀平悌子君 局長はとても何でも知っていらっしゃいますので次の質問の中身までお答えいただいちゃったみたいなんですけれども、監査役の決裁は多数決でございますね。その多数決なんですけれども、反対をなさった監査役もその中におありになるとします。そうすると、その監査役としてはともに共同責任を問われるということになる、こういうことの解釈ですか。どの程度その注意義務について尽くせば免責される場合もあるんでしょうか。
#106
○政府委員(清水湛君) 今回の改正で監査役制度を導入したことに伴いまして、ある監査役のした行為について責任が生ずるという場合に、その行為が監査役会の決議に基づいてされたというときにはその決議に賛成した監査役もその行為をしたものとみなされます、具体的に行為をしなくてもその行為をすることについて賛成をした監査役。しかし、それには反対であるということで異議をとどめた監査役、これは責任を問われないということになるわけでございまして、もしその異議をとどめないでおくと賛成したものと推定されるという別の規定はございますけれども、いずれにいたしましても反対し、異議をとどめておくということによって監査役としての責任は免れる、こういうことになるわけでございまして、これは取締役についても同じような仕組みになっておるということでございます。
#107
○紀平悌子君 こんなふうにお伺いいたしましたのは、今回の改正で代表訴訟が提起しやすくなる、これはみなしてございますが、提起しやすくなるとすると取締役という経営陣だけではなくて監査役に対しても責任追及の動きが出てくると思われるからです。
 事実問題として、損失補てんや使途不明金などなぜ監査役が不当、違法な支出をチェックができなかったのか、あるいはしなかったのかという声は今でも大きい声となっております。商法において監査役の機能を増大させて、会社の経理、不法行為などをチェックさせようというならば責任も重くなって当然ですし、またその地位向上のためにはその責任もやはり重く追及されることも必要であろうかと思います、逆に言えばですね。
 今後の監査役に対する代表訴訟の見通しなど、以上のことを踏まえてどんなふうにお考えになるかお聞かせをいただきたいと思います。
#108
○政府委員(清水湛君) いわゆる使途不明金なるものに関しまして不正経理が行われる、監査役が善良な管理者の注意義務を尽くしてもそれを見破ることができなかったということであればまた話は別でございますけれども、怠慢で見逃したということになりますと責任を負わなければならないという場合が当然考えられます。
 こういう場合、この現行法では取締役についての代表訴訟制度に関する規定を監査役についても準用いたしておりますので、現在もしそういうことであれば監査役についても代表訴訟を起こすことができるということになっております。
 これまで監査役を相手とした代表訴訟制度が現実にあったかどうかということはちょっと私記憶に定かではございませんけれども、制度としては当然そういうことは考えられますし、もし監査役の損害賠償義務というのが明白であるにもかかわらず会社は監査役をかばってそういう訴訟を起こさないということであれば、これはもう代表訴訟というのは起こせるということになってこようかと思います。
#109
○紀平悌子君 会社役員に対する役員保険というものについてお伺いをしたいと思います。
 先ほど竹村委員の御質問にも触れられたことでもございますけれども、一九九〇年にこの保険が発売されたものの、当初は余り活用がなかったというか関心が濃くはなかったというものが、今回の代表訴訟制度を見込んでかどうかわかりませんけれども、非常に企業、とりわけ代表取締役からの引き合いが多くなったというふうに聞いております。
 しかし考えてみますと、この保険は将来取締役が会社に損害を賠償すべき場合に備えて会社が保険をかけて、その保険料を会社が支払うということになるわけですね。つまり、株主が取締役のため保険料を払うわけで、取締役が賠償責任を果たせないときの役員保険というものもどうも釈然としない感じがするんです。これは株主がどうお考えになるかということでもございますけれども、私は理論的にはそう思います。
 一昨日、参考人としてお教えいただきました前田先生がそのような御意見をお持ちのようでございます。私も前田先生の御意見を盾にするわけではございませんけれども、「商事法務」という雑誌をちらっと拝見いたしましたところ、会社がその保険料を支払うこと自体が会社に損害を与えることではないかということで、その保険料の額は当然代表訴訟の対象になる感じがする、つまり代表訴訟の中でそういうことが問われることになるというふうな御発言がございました。私の読み違えでなければそういうふうな専門家の御意見もありますので、その点は法務省としてはどういうふうにお考えでございましょうか。
#110
○政府委員(清水湛君) アメリカあたりで取締役が損害賠償責任を追及された場合に備えまして、いわゆる取締役の責任保険というものが非常に発達をしているということを聞いております。
 その場合の取締役の責任保険というのは、会社に対する損害賠償責任を保険するというものと、あるいは取締役が株主あるいは第三者に対していろんな会社の職務執行上損害を与えて損害賠償責任を負うという場合の保険といろいろあるようでございます。
 問題は、取締役が会社に対して損害賠償義務を負った場合の保険、こういうものに限定して考えますといろんな考え方ができると思うのであります。会社としては取締役に損害賠償請求をする、しかし取締役は個人であって財産を持っていない、だから幾ら訴訟に勝っても取締役は損害を賠償してくれない。その結果どういうことになるかというと、会社のいわば会計に穴があいてしまう、会社が現実の損害を受ける、こういうことがあり得るわけであります。こういうことを想定して、その損害をてん補するために保険会社と提携をする、こういうことが一つの目的として考えられます。
 その場合のテクニックとして、会社が直接保険会社と契約して、取締役が損害賠償してくれなかった場合の損害についての保険金を会社が保険会社に支払ってもらうということも一つのやり方だと思います。
 それからもう一つは、一たんとにかく取締役が自分の資産がない場合には保険会社から保険金を払ってもらって、それを会社に支払うという、一つの経路を通じるという、こういうやり方もあると思います。そういう場合に、取締役としては自分では保険料を払えない、会社がそれを払ってあげる。しかし、会社が払ってあげるのは結局保険会社が払った保険金が将来会社に入るということが前提になっているからだ、こういう理屈がそこに出てまいると思うのであります。その場合の会社の保険料負担というのは、結局それは会社のためではないのか、こういうような議論も実はあるわけでございます。
 御指摘の前田教授、私も親しくさせていただいている教授でございますけれども、彼はややそういう点について疑問を持っておられるということも私承知いたしております。
 しかし、広い目で見ると、会社の損害を穴埋めするための一つのテクニックであるというような見方をされる方もあるわけでございまして、あながちそれが株主にとって損失である、会社にとって損失であるということにはならないんじゃないかというような意見も実はあるわけでございまして、その辺は日本における新しい問題として、私どももこれはもう少し研究をしてみる必要があるんじゃないかと。
 今、法務省で直ちに商法上違法であるとか違法でないとかというのは、ちょっとまだ結論を出しにくいような状況でございます。保険契約の実態とか、そういうようなものをもう少し詳細に分析した上で結論を出す必要があるのではないか、こういうふうに思っている次第でございます。
#111
○紀平悌子君 ありがとうございました。
 もうちょっと時間が残っておりますけれども、皆様もお疲れのようですし、またこれは私も賛成の法律でございますので、この辺で引かせていただきます。ありがとうございました。
#112
○委員長(片上公人君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、井上孝君が委員を辞任され、その補欠として河本三郎君が選任されました。
#113
○委員長(片上公人君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。
 これより両案について討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。別に御発言もないようですから、これより直ちに両案の採決に入ります。
 まず、商法等の一部を改正する法律案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#114
○委員長(片上公人君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 竹村泰子君から発言を求められておりますので、これを許します。竹村泰子君。
#115
○竹村泰子君 私は、ただいま可決されました商法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲民主連合、公明党・国民会議の各派並びに各派に属しない議員石原健太郎君及び紀平悌子君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    商法等の一部を改正する法律案に対する
    附帯決議(案)
 政府は、次の事項について格段の努力をすべきである。
 一 企業が商法を初め各種法令を遵守して社会的責任を全うできるよう、商法等の諸制度の改善を図り、併せて社会経済情勢の変化及び経済の国際化等に対応した会社法制の一層の整備等に努めること。
 二 監査役の独立性を確保し、その機能が十分発揮されるよう、監査役会及び社外監査役制度を導入する改正の趣旨を周知徹底するとともに、その運用状況を踏まえて一層の改善を図ること。
 三 一般株主及び社債権者等を保護するため、会社の業務及び会計に関する情報の開示制度等の充実・改善に努めること。
 四 企業の社会的責任の重要性にかんがみ、会計帳簿の不実記載等を防止するための所要の措置について検討すること。右決議する。
 以上でございます。何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#116
○委員長(片上公人君) ただいま竹村泰子君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#117
○委員長(片上公人君) 全会一致と認めます。よって、竹村泰子君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、後藤田法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。後藤田法務大臣。
#118
○国務大臣(後藤田正晴君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえて適切に対処してまいりたいと存じます。
#119
○委員長(片上公人君) 次に、商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#120
○委員長(片上公人君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#121
○委員長(片上公人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時七分散会
ソース: 国立国会図書館
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