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1993/01/22 第126回国会 参議院 参議院会議録情報 第126回国会 本会議 第1号
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1993/01/22 第126回国会 参議院

参議院会議録情報 第126回国会 本会議 第1号

#1
第126回国会 本会議 第1号
平成五年一月二十二日(金曜日)
   午前十時三分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第一号
  平成五年一月二十二日
   午前十時開議
 第一 議席の指定
 第二 常任委員長の選挙
 第三 国務大臣の演説に関する件
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一及び第二
 一、特別委員会設置の件
 一、参議院政治倫理審査会規程第九条による議
  員の選任
 一、北海道開発審議会委員の選挙
 一、日程第三
     ―――――・―――――
#3
○議長(原文兵衛君) これより会議を開きます。
 日程第一 議席の指定議長は、本院規則第十四条の規定により、諸君の議席をただいまの仮議席のとおりに指定いたします。
     ―――――・―――――
#4
○議長(原文兵衛君) 日程第二 常任委員長の選挙
 これより欠員中の議院運営委員長の選挙を行います。
#5
○中曽根弘文君 議院運営委員長の選挙は、その手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
#6
○志苫裕君 私は、ただいまの動議に賛成します。
#7
○議長(原文兵衛君) 中曽根君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(原文兵衛君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、議院運営委員長に高木正明君を指名いたします。
   〔拍手〕
     ―――――・―――――
#9
○議長(原文兵衛君) この際、特別委員会の設置についてお諮りいたします。
 科学技術振興に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名から成る科学技術特別委員会を、
 公害及び環境保全に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名から成る環境特別委員会を、
 災害に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名から成る災害対策特別委員会を、
 選挙制度に関する調査のため、委員二十五名から成る選挙制度に関する特別委員会を、
 沖縄及び北方問題に関する対策樹立に資するため、委員二十名から成る沖縄及び北方問題に関する特別委員会を、
 土地問題及び国土利用に関する対策樹立に資するため、委員三十名から成る土地問題等に関する特別委員会を、
 また、国会等の移転に関する調査を行うため、委員十名から成る国会等の移転に関する特別委員会を、それぞれ設置いたしたいと存じます。
 まず、科学技術特別委員会、環境特別委員会、災害対策特別委員会、選挙制度に関する特別委員会、沖縄及び北方問題に関する特別委員会並びに土地問題等に関する特別委員会を設置することについて採決をいたします。
 以上の六特別委員会を設置することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(原文兵衛君) 御異議ないと認めます。
 よって、科学技術特別委員会外五特別委員会を設置することに決しました。
 次に、国会等の移転に関する特別委員会を設置することについて採決をいたします。
 本特別委員会を設置することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#11
○議長(原文兵衛君) 過半数と認めます。
 よって、本特別委員会を設置することに決しました。
 本院規則第三十条の規定により、議長は、議席に配付いたしました氏名表のとおり特別委員を指名いたします。
    ―――――――――――――
#12
○議長(原文兵衛君) この際、参議院政治倫理審査会規程第九条による議員の選任を行います。
 議長は、参議院政治倫理審査会規程第九条の規定により、政治倫理審査会に出席する議員に井上計君を指名いたします。
     ―――――・―――――
#13
○議長(原文兵衛君) この際、欠員中の北海道開発審議会委員二名の選挙を行います。
#14
○中曽根弘文君 北海道開発審議会委員の選挙は、その手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
#15
○志苫裕君 私は、ただいまの動議に賛成します。
#16
○議長(原文兵衛君) 中曽根君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#17
○議長(原文兵衛君) 御異議ないと認めます。
 よって、議長は、北海道開発審議会委員に伊江朝雄君、楢崎泰昌君を指名いたします。
 これにて午後四時まで休憩いたします。
   午前十時九分休憩
     ―――――・―――――
   午後四時五分開議
#18
○議長(原文兵衛君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 日程第三 国務大臣の演説に関する件内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、船田国務大臣から経済に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。宮澤内閣総理大臣。
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(宮澤喜一君) このたび、国民がひとしく待ち望んでおりました皇太子殿下の御婚約のことがめでたく決定になりました。国民の皆様とともに心からお喜び申し上げます。(拍手)この御慶事は、我が国の明るい将来を象徴するものであり、これを機に皇室と国民とを結ぶ親愛のきずながさらに揺るぎないものとなることを確信いたします。
 今、我々は、久しく経験したことのない歴史的変動の中におります。
 東西間の冷戦の時代が終わり、歴史の流れは大きく平和へと転じました。しかしながら、このことは、国際社会に新たな平和秩序の構築という重い課題を投げかけるとともに、我が国の外交を取り巻く環境にも、また国際社会における立場にも大きな変化をもたらすものとなりました。今や、我が国の行動が国際社会の動きを左右するまでになっており、新たな平和秩序の構築に対し、国力の増大に応じた責任と役割を積極的に果たしていかなければなりません。私は、このたびのASEAN訪問における各国首脳との意見交換を通じて、我が国の国際貢献に寄せられている期待の大きさを改めて痛感いたしました。
 現在、我が国経済は極めて厳しい状況にございます。今、国民は景気の早期回復を心から待ち望んでおり、これは官民が力を合わせて全力で取り
組んでいかなければならない緊急の課題であります。他方、国民の意識は、これまでの成長や効率優先主義から、ゆとりや安心、公平、公正を重んずるものへと変化しつつあることも見逃せません。一日も早く景気の回復を図るとともに、国民一人一人が心からゆとりと豊かさを実感できる経済社会の実現に着実に進んでいくことが必要であります。
 国際環境と国民意識におけるこのような変化は、戦後我々が積み上げてきた経済社会システム全体の変革を迫るものであり、そしてそのための先導役が今政治に求められております。
 こうしたときに東京佐川急便事件を契機として国民の政治に対する不信感が広まっていることは、まことに遺憾なことであります。真相の解明が重要であることはもちろんでありますが、真に国民の信頼を回復するには、民意が的確に反映される政治構造の実現に向けて政治改革を推進し、目に見える具体的な成果を上げていくことが肝要であります。戦後半世紀近くもなれ親しんできた政治や行政のシステムから脱却し変革を遂げていくことは、決して容易なことではありません。勇気と決断と、それを実行する強い意思が不可欠であります。今や政治改革こそがすべての変革の出発点であります。
 我が国はこれまで大きな変動を何度か経験してきましたが、その都度、進んでみずからを変革し、新たな発展の道を切り開いてまいりました。今また、変動の時代を迎えておりますが、必ずやこれに対応した変革をなし遂げ、二十一世紀に向けての新たな発展の礎を築くことができると確信しております。私は,外にあっては世界平和秩序構築のための積極的な国際貢献、内にあっては政府を初め個人や企業の意識や行動の転換を伴う生活大国づくり、そしてこれらの前提となる国民に信頼される政治の確立、この三つを柱に我が国の変革を推進してまいりたいと思います。
 冷戦の終了は、これまで我々民主国家群が追求してきた自由、民主主義、市場経済という基本理念が世界的規模で認知されたという一面を有しております。他方で、冷戦終了の結果、国際社会は、民族や宗教に根差した地域紛争の激化や核兵器を初めとする大量破壊兵器の拡散懸念など新たな課題の発生を見ております。また、開発途上国における貧困問題、地球環境問題など人類共通の課題も深刻化しております。西側社会の基本理念は、むしろ今こそその真価が問われていると申さなければなりません。
 我が国は、戦後一貫して平和主義、国連中心主義を堅持してまいりました。国際政治において軍事力の持つ意味が相対的に低下し、東西対立にかわる新たな世界秩序の構築が模索されている今、この理念の実現が現実的な課題となってまいりました。冷戦終了後、世界の平和を確保するための国連の努力が活発に行われておりますが、我が国も、人的貢献を含めさまざまな形でこれに参画していくことが必要であります。現在、その第一歩として、国際平和協力法に基づいて、既に多数の派遣隊員諸君がカンボジアの復興を目指して汗を流しておりますが、その労苦を多としたいと思います。
 また、ソマリアにおける事態は、人道上の緊急事態として座視し得ないものであります。我が国は、国連のソマリア信託基金への一億ドルの拠出を行いましたが、今後とも、こうした国連を中心とする国際的努力に対してできる限りの貢献を行うことが我が国に課せられた責務であります。
 国際情勢の変化を受け、軍備管理・軍縮の重要性はますます高まっております。このたび、米ロ両国が戦略核兵器の画期的な削減に合意したことは人類の平和にとって大きな前進であります。しかし他方、核兵器などの大量破壊兵器の拡散の動きが見られることは懸念すべき問題であり、また通常兵器の移転が地域の不安定化を招かないよう、十分注意していかなければなりません。我が国としては、大量破壊兵器の不拡散体制強化のための国際的な努力に積極的に参画するとともに、化学兵器禁止条約や通常兵器の国連登録制度への各国の参加を引き続き呼びかけてまいりたいと思います。
 このような緊張緩和の流れなどに対応して、政府は昨年末、我が国の中期防衛力整備計画の修正を一年早めて実施し、計画期間中の防衛関係費を五千八百億円削減することといたしました。もとより、平和憲法のもと、専守防衛に徹し、今後とも必要最小限の基盤的な防衛力の整備に最善を尽くしてまいることは申すまでもありません。
 世界の平和の流れを確実なものとしていく上で、多くの開発途上国において貧困の拡大や経済の低迷などが深刻化する様相を見せていることは見逃せない事実であります。また、旧ソ連などかつての社会主義国における民主主義の導入と市場経済化の努力は幾多の困難に直面しております。東西対立が消滅した今、南北問題の解決や旧社会主義国の改革支援は、我が国として真剣に取り組まなければならない問題であります。この場合、政府開発援助大綱に基づき、経済力に見合った規模の途上国援助を実施するだけではなく、地球環境を初め、難民、人口、エイズ、麻薬など地球的規模の問題や世界の政治情勢を十分に踏まえ、重点的な対応を行っていくことが重要であります。また、我が国の国際貢献の観点から世界経済の活性化に資する開発途上国などへの資金の流れを引き続き確保するとともに、これまで蓄積してきた技術やノウハウの提供など知的支援についても積極的に進めていく必要があります。
 今日の我が国の経済的発展はこれまで国際的に自由貿易体制が維持されてきたことに負うところが多く、また、自由貿易体制の堅持が我が国はもちろん世界経済の発展にとって不可欠の前提であることは異論のないところであります。現在進行中のウルグアイ・ラウンド交渉がもし不調に終わるようなことになれば、保護貿易主義の台頭など世界経済に深刻な影響を与えるおそれがあり、他の主要国とともに、交渉を早期かつ成功裏に終結させるべく努力を続けていく決意であります。なお、農業については、各国ともそれぞれ困難な問題を抱えておりますが、我が国としても、これまでの基本的方針のもと、相互の協力による解決に向けて最大限努力してまいります。
 このたび、私は、インドネシア、マレーシア、タイ、ブルネイのASEAN四カ国を訪問し、今後のASEAN諸国との協力のあり方、さらにはアジア・太平洋地域のあるべき姿と我が国の果たすべき役割について各国首脳と意見交換を行ってまいりました。冷戦構造崩壊後の世界において、アジア・太平洋地域は、政治的にも経済的にもますます重要性を増してきております。この地
域が安定性を維持しつつ、今後ともダイナミックな経済発展を遂げていくことは、世界の平和と繁栄にとっても不可欠であります。さまざまな歴史、文化、社会的特性を持ち、また、異なった発展段階にあるアジア・太平洋地域の国々が経済的発展を遂げることができましたのは、異質なものの存在を許容しながら、開かれた自由貿易体制のもとで、相互に切磋琢磨してきた結果にほかなりません。地域全体の平和と繁栄を確保していくためには、今後とも、こうした多様性の尊重と開放性の確保が不可欠であり、また、こうした流れを世界の流れへと発展させていくことが重要であります。
 このため、域内の政治・安全保障対話を促進するとともに、今後とも環境保全や人材育成の面での支援を含む経済協力の拡充に努め、地域全体の平和と繁栄を我が国自身の問題として取り組んでまいります。その際、過去の歴史に対する反省の上に立って、誠実かつ謙虚な態度でこれら各国に接すべきことは申すまでもありません。
 日中関係は、今、さまざまな分野で着実に進展しております。我が国としては、今後とも政治、経済両面にわたる改革努力への支援を行うことにより、中国と国際社会との一層の協調を促進していく考えであります。
 朝鮮半島政策については、我が国は韓国との友好関係の強化を軸にこれを進めてきております。私は、二月に就任予定の金泳三次期大統領とも緊密な対話を通じて未来志向的関係の構築に努力してまいります。北朝鮮については、依然として核兵器開発の疑惑が解消されていないこともあり、国交正常化の今後の見通しは不透明でありますが、関係諸国とも連絡をとりつつ、原則的な立場を堅持し、粘り強く交渉に臨んでまいります。
 去る二十日、米国ではクリントン氏が大統領に就任されました。新大統領は就任演説において、米国の再生の必要性を強く訴え、引き続き国際的リーダーシップを発揮するとの決意を述べられました。私は、米国が、若く、知性にあふれた、新たな指導者のもとで、経済の再活性化を初めとする国内問題の解決や新たな世界秩序の形成に真摯に取り組もうとしていることを心から歓迎いたします。
 冷戦後の世界が抱える課題の解決のためには、各国が協力して取り組んでいくことが不可欠でありますが、殊に世界のGNPの四割を占める日米両国が、共通のビジョンのもとに、連携してリーダーシップを発揮し得るかどうかが二十一世紀に向けて世界の展望を大きく左右すると言っても過言ではありません。また、アジア・太平洋地域の安定確保にとって、米国の存在、米国の関与が従来にも増して重要となってきており、我が国がこの地域においてさらに大きな役割を果たすに当たっても、米国との緊密な協調関係の維持が不可欠であります。
 日米間には、共通の価値観に加えて、日米安保体制を初め広範な分野で密接な相互依存関係が存在しております。こうした基盤に立って、両国間の経済問題を迅速適切に処理するとともに、新たな平和秩序の構築にともに手を携えて取り組んでまいります。
 ECにおいては、この一月一日に市場統合が実現されました。さらに欧州連合条約の批准を目指して積極的な努力が続けられており、国際社会におけるECの重みはますます増大してきております。ECは我が国と価値観を共有する重要な友人であり、今後とも政治経済両面での対話、政策協調を深めてまいりたいと思います。
 現在、ロシアは、改革に伴う多くの政治的、経済的諸問題に直面しておりますが、同国での改革が進展すること、また、法と正義に基づき北方領土問題が解決され、日ロ関係の完全な正常化が実現することは、我が国にとってのみならず国際社会にとっての利益でもあります。私は、このような考えに基づき、一貫した方針のもと、日ロ関係が均衡のとれた形で発展していくよう、対ロ外交を進めていく考えであります。
 イラクは、国連を中心とする国際社会のたび重なる警告にもかかわらず、安保理決議違反を繰り返してきております。我が国は、一連の安保理決議の履行を確保するために米、英、仏合同軍がイラクに対し限定的に武力を行使したことを理解し、支持するものであります。
 本年七月には東京で主要国首脳会議が開催されます。冷戦終了後アジアで開催される初めてのサミットであり、また、我が国の世界平和秩序構築に向けての姿勢が問われる重要な会議でもあります。私は議長として、世界経済の回復を初めとする諸問題の解決に向けた主要国間の政策協調を一層強化し、世界に明るい展望を開くことができますよう、このサミットの成功に全力を尽くす決意であります。
 我が国経済の現状は、住宅投資や公共投資など一部には明るい兆しが見られるものの、一般家庭の消費は停滞ぎみであり、また、中小企業や自営業の方々を初め企業経営者を取り巻く環境にも厳しいものが見られるなど、依然として景気の低迷が続いております。加えて、バブルの崩壊によって資産価格が大幅に下落し、金融面では金融機関の融資対応能力の低下や金融システムの安定性の問題が懸念される一方、実体経済面にも影響を与えております。
 こうした状況に対して、政府は、昨年三月には公共事業等の前倒し実施などを内容とする緊急経済対策を、また、八月には内需の拡大と金融システムの安定性の確保のための施策を含む過去最大規模の総合経済対策を決定するなど、機動的に可能な限りの努力を行ってまいりました。
 平成五年度予算は、こうした努力につなげる形で、公共投資等について、国の公共事業のほか財政投融資計画や地方単独事業においても近年にない高い伸び率を確保するなど景気に十分配慮したものといたしました。さらに、雇用情勢に細心の注意を払って、失業の予防、就職促進など機動的な雇用対策を講じていくほか、小規模企業対策の強化や中小企業が直面している時短あるいは労働力確保の問題への対応など、きめ細かな中小企業対策を推進してまいります。また、金融.証券業界の徹底した合理化努力を前提として、金融システムの安定性の確保や証券市場活性化に引き続き努力していく考えであります。
 我が国企業の旺盛な活力とその底力は、これまで幾多の困難を乗り越えてきた実績が証明するところであります。我が国経済の潜在力を考えるならば、政府の政策努力によってやがて民間の活力が引き出され、再び内需を中心としたインフレなき成長路線へと移行していくことは疑いありません。対策の効果がだれの目にも見える形であらわ
れるにはある程度時間がかかるため、もどかしさを感じられる向きもあると思いますが、政府は、今後とも、経済情勢の変化に細心の注意を払い、一日も早く景気の回復が実感できるよう機動的な対応を怠らないようにいたします。まずは、景気の足取りを確実なものとするためにも、平成五年度予算の速やかな成立を切望いたします。
 現下の厳しい経済環境の中にあって、企業においては、経営体質の見直しや二十一世紀に向けた企業行動の変革など構造的な課題への積極的な取り組みが行われており、個人においても、環境と調和した簡素なライフスタイルを目指す動きが着実に進展しつつあります。また、景気の低迷もあって、地価の下落や労働時間の短縮が進んでおります。こうした傾向を一時的なものにとどめず、むしろこれを契機として消費者・生活者重視へと政策の重点を移し、個人や企業の意識や行動の転換を促して、生活大国の実現に向けた構造的な変革へとつなげていかなければなりません。
 政府は昨年、生活大国五カ年計画を策定いたしましたが、本年は、生活大国の実現に向けて本格的な第一歩を踏み出す年であります。
 国民一人一人が経済力に見合った生活の豊かさとゆとりを実感できるためには、住宅や社会資本の整備が不可欠であります。二十一世紀までに残された期間は、後世に残すべき良質な社会資本ストックを形成するための貴重な時間であります。
 このため、平成五年度予算においては、住宅や都市公園、下水道、環境衛生施設など生活に関連した分野に思い切って重点的に予算を配分することといたしました。
 特に、住宅については、大都市圏において勤労者年収の五倍程度で良質な住宅取得が可能となるよう、住宅金融公庫融資の拡充や住宅地供給促進のための基盤整備など総合的な対策を講ずることとしています。また、土地神話を打破し、地価の下落・鎮静化傾向の定着を図るため、引き続き国土政策との連携を保ちつつ総合的な土地対策を推進してまいります。
 我が国の繁栄が国民の勤勉に支えられていることは申すまでもありませんが、今後の課題として、個人の生活に潤いをもたらし、また、家族との団らんの機会をふやすためにも、ぜひとも労働時間の短縮を図っていかなければなりません。年間総労働時間千八百時間の達成に向けて、中小企業等による時短のための自主的な取り組みを支援し、完全週休二日制の普及を図るとともに、週四十時間労働制への移行を実現するための労働基準法改正案を今国会に提出することといたしております。
 国民のだれもがみずからの能力に応じて社会参加し、社会に貢献できるようにすることは、生活大国実現のかぎとなる重要な課題であります。特に、女性が十分に社会で活躍できるよう、これまでの男女の固定的な役割分担意識を初め社会の制度、慣行、慣習などを見直すとともに、男女の雇用機会均等の確保を図り、男女共同参画型の社会を実現していく必要があります。
 このため、育児休業制度や介護休業制度の普及促進に努めるほか、パートタイム労働対策の充実のための法的整備を行うなど所要の対策を推進してまいりたいと考えております。
 世界一の長寿国となった我が国は、世界でもいまだ経験したことのない超高齢化社会を迎えようとしております。住みなれた地域社会の一員として高齢者が充実した老後を送ることができるようにすることは、政治の基本であります。その基盤づくりとして、高齢者が活躍できる職場を確保し、公的年金制度の長期的安定を図るとともに、地域における保健、医療、福祉サービスが総合的、計画的に提供される体制づくりを進めてまいります。特に、看護婦、福祉施設職員等の確保は緊急の課題であり、勤務条件の改善等、総合的な対策を講じてまいります。
 さらに、出生率の低下など状況の変化に対応して将来を担う子供たちが健やかに生まれ育つ環境づくりに取り組むとともに、国連障害者の十年終了後も長期的展望に立って、障害を持つ人の社会への完全参加と平等の理念の実現に努めるなど福祉施策全般にわたって充実強化を図ってまいります。
 エイズ患者や感染者が急増しております。何としてもその拡大を食いとめなければなりません。そのため、地方自治体や民間の協力も得ながら地域や職場、学校などあらゆる場で正しい知識の啓発普及を推進するとともに、相談や検査・医療体制の整備、治療法の研究など総合的かつ集中的な対策を展開してまいります。
 次に、社会秩序と安全の問題について申し上げます。最近の治安情勢は、暴力団活動の悪質巧妙化を初め、けん銃を使用した凶悪事件やテロ、ゲリラ事件の多発、薬物事犯の増加など厳しさを増しております。また、交通死亡事故も高水準で推移しています。申すまでもなく、法秩序の維持や安全の確保は、国民生活の基盤をなすものであり、私は、今後ともその対策に万全を期してまいる所存であります。
 国民がひとしくゆとりと豊かさを実感できるようにするためには、多極分散型の国土を形成していくことが重要であります。このため、都市・産業機能の地方分散を一層推進するとともに、成長と定住の核となる地方拠点都市地域の重点的整備や地方の自主的、主体的なふるさとづくりへの支援を積極的に推進してまいります。また、東京一極集中への今後の対応として、過密問題対策とあわせて、国会等の移転の具体化に向けて積極的な検討を進めてまいります。さらに、高規格幹線道路を初めとする道路網や、幹線鉄道、空港など基幹的な高速交通網、生活や地域に密着した高度な情報・通信網の整備などにより、全国土を有機的に結び、国土の一体化を図ってまいります。
 また私は、北海道の総合開発と沖縄の振興開発にも引き続き積極的に取り組んでいくほか、地域の実態に即した国土の保全にも努めてまいります。
 先日の釧路沖地震により被災された方々に心からお見舞い申し上げます。政府としては、被害の復旧に早急に取り組むなど災害対策全般の一層の充実に努力してまいります。
 農林水産業は、国民生活に欠くことのできない食糧の安定供給という大切な使命に加えて、国土や自然環境の保全、伝統と地域文化に裏づけられたゆとりある生活や余暇空間の提供といった多面的な機能も有しております。
 現在、我が国の農業、農山漁村は後継者の減少、高齢化の進行などの事態に直面しております。私は、二十一世紀という新しい時代を視野に置いた長期的展望のもとに、経営感覚にすぐれた
意欲的な農業者が生産の根幹を担う力強い農業構造を実現してまいります。同時に、条件の不利な中山間地域を初め農山漁村が多様で活力のある地域として発展できるよう、基本的な条件の整備を推進してまいります。また、林業、水産業については、国土・環境保全など緑と水の源泉としての森林づくり、豊かな海の恵みを生かした水産業の振興などに努めてまいります。
 人類の生存基盤としての有限な環境を守り、それを次の世代へと引き継いでいくことは、現在に生きる我々に課せられた使命であり、それはまた生活大国実現の礎でもあります。政府は、環境と調和した持続可能な経済社会を構築するためにも、地球環境時代にふさわしい政策を総合的、体系的に進めていくための環境基本法案を策定すべ目下検討を進めております。
 また、地球環境問題に適切に対応していくためには、エネルギーの需給両面からの対策も不可欠であります。需要面では、あらゆる部門における抜本的な省エネルギーを推進するための総合的な対策を講ずることとし、供給面においては、環境負荷の小さい原子力や再生エネルギーなどの開発導入を積極的に推進してまいります。特に、原子力については、安全性の確保に万全を期しながら、原発立地や原子燃料の平和的利用の促進を図るほか、旧ソ連・東欧地域の原発の安全性向上のための協力を進めてまいります。
 教育や芸術文化、科学技術は、我が国が創造的で活力ある文化国家として発展し、世界に貢献していく基礎を築くものであります。
 このような認識に立って、私は、個性や創造力を伸ばすことを学校教育の基本に置き、日本人としての自覚を持って国際社会に貢献できる、心豊かなたくましい国民の育成に努めてまいります。また、生涯にわたって自由に学習の機会が得られる社会の実現を目指すとともに、国際的な文化交流の促進、スポーツや芸術文化の振興を図ってまいります。
 さらに、我が国の将来の発展を確保し、知的な面での国際貢献を行っていくためには、基礎研究の基盤整備を図り、独創的、先端的な学術・科学技術研究を推進しなければなりません。高等教育機関の教育・研究環境の抜本的な改善や研究開発基盤の充実強化、研究交流や国際協力の促進に努めるとともに、地球規模の諸現象の解明、宇宙、海洋などの開発利用を推進してまいります。
 生産者中心の視点から消費者や生活者を重視し、効率優先から公正にも十分配慮した社会への転換を進めることは生活大国づくりの基本理念であります。
 私は、国民の一人一人が真に安全で豊かな消費生活を営むことができるよう、消費者行政を積極的かつ総合的に推進してまいります。現在、政府部内において総合的な消費者被害の防止や救済のあり方についての検討を行っておりますが、年内には結論を得たいと考えております。また、消費者の利益を保護するためには、市場における公正かつ自由な競争を維持し、促進することが重要であり、今後とも、独占禁止法違反行為に対し厳正に対処するとともに、その運用の透明性を高めてまいります。
 二十一世紀をにらんだ社会資本の整備や人口の高齢化などに適切に対応し、生活大国実現に向けて着実に歩みを進めるためにも、また国際社会における我が国の役割の増大に積極的にこたえていくためにも、引き続き健全な財政運営を確保し、公債残高の累増を避けるべく財政改革を進めていかなければなりません。なお、地方財政についても、その円滑な運営を図ってまいります。
 また、時代が大きく流れを変えようとしているときにあって、行政組織やその役割は根本からの見直しや変革を迫られております。私は、簡素で効率的な行政の実現という基本に立って、これまで進めてきた地方への権限委譲、規制緩和の推進に加えて、官民の役割分担そのものの見直し、セクショナリズムの打破による総合的な政策展開能力の強化などを断行する決意であります。
 なお、行政手続法制の整備に取り組むなど、公正、透明で信頼される行政を目指します。
 国民の政治に対する不信感の高まりは、かつてその例を見ない状況に達しており、政治家の一人として、また、国政を担う者として、まことに憂慮にたえません。今こそ政治が我が国の進むべき方向を提示し、その具体化に邁進すべきときであり、一日も早く政治改革を実現し、国民の政治に対する信頼と期待を取り戻さなければなりません。イギリスでは、かつていわゆる腐敗行為防止法の制定を転機に政界の浄化が進んだと言われております。我が国も今、将来にわたって民主政治を発展させていくための抜本的な改革を断行する時期を迎えるに至りました。
 さきの国会で成立した緊急改革は、政治改革に向けての着実な第一歩を記すものでありました。しかしながら、ここで前進の歩みをとどめることなく、引き続き抜本的な改革を推進することこそが国民の期待にこたえるゆえんであります。先般、自由民主党が策定した「政治改革の基本方針」は、政治倫理の確立、政治資金の透明性の確保、政策論議を中心とする政党本位の選挙制度の確立などを目指すものであります。抜本改革のあり方については、さまざまな意見や利害の対立があることは当然でありますが、私といたしましては「今日の後に今日なし」との覚悟で政治改革の実現に取り組んでまいります。
 今国会中に抜本的な政治改革が実現するよう、十分建設的な議論が行われることを念願いたします。
 今、我々は、二十一世紀に向けて明日への展望を開く岐路に立たされております。内外の環境が大きく変化し、国内的にも国際的にも変革が迫られ、また、その機が熟しているのはだれの目にも明らかであります。変革は大きな困難を伴うものでありますが、今ここで、新たな道への一歩をちゅうちょするならば我が国の将来を危うくするおそれがあります。
 私は、改造内閣の発足に当たり、「変革と実行」を掲げました。我が国を、国際社会から尊敬され、国民一人一人が誇りを持ち幸福を実感できる国とするため、政治を初めとする社会制度全体を見直し、新たな時代に対応していくための変革を実行してまいる決意であります。
 議員各位と国民の皆様の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#20
○議長(原文兵衛君) 渡辺外務大臣。
   〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(渡辺美智雄君) 第百二十六回国会が開かれるに当たり、我が国の外交の基本方針につき所信を申し述べます。
  国際情勢認識について。
 国際社会は、古い秩序が急激に瓦解しましたが、これにかわる新たな秩序の構築が間に合わず、なおそのはっきりとした姿が見えない状況にあります。世界は歴史の転換期に特有な不透明で流動的な時代を迎えており、平和を享受するにはまだまだ遠い状態であります。
 さきの湾岸危機や、旧ユーゴスラビア、ソマリアでの今日の悲惨な内戦や飢餓の状態は、このような時代を象徴する出来事であります。これまで抑えられていた宗教、民族、領土問題等の対立や紛争、抗争が今後とも引き続き表面化してくる危険があります。
 ロシア等の旧ソ連諸国においては、民主化と市場経済化への改革はいまだその途上にあり、国民の日常生活を含めた経済面の諸困難は依然として深刻であります。
 世界経済は、アジアの一部の地域が高成長を続けていることを別にすれば、おおむね景気回復の足取りは重く、先進諸国は、深刻化する国内の経済・社会問題に忙殺されて、ともすれば内向きになりかねません。また、多くの開発途上国の貧困、人口増大等の問題はますます深刻となってきており、国際社会は結束して一層真剣に取り組む必要があります。
 国際社会は、歴史の転換期にあって、一方では冷戦の終結により各地で噴き出した民族、宗教紛争等への対応に追われつつ、他方では、新しい平和と繁栄の枠組みを模索しています。しかし、新しい枠組みが構築され、国際社会が安定するためにはなお少なからぬ年月を要するものと思います。
  日本外交の目標について申し上げます。
 国際社会は、このような歴史の転換期の諸問題を着実に克服し、平和と自由と繁栄を世界のより多くの人々が享受できるよう努力しなければならないという歴史的課題に直面しております。我が国は、そのような国際社会の課題にこたえて、明るい未来を開いていくため、その国力にふさわしい指導力を発揮していく必要があります。そのため、経済力、技術力のみならず、人的及び知的な協力を通じ積極的に努力してまいります。
 我が国は、第二次大戦の灰じんの中から立ち上がり、今日の平和と繁栄を享受するに至りました。この平和と繁栄を享受することができるようになったのは、自由主義体制のもとで国民の勤勉と努力に負うところ大でありますが、同時に、日米安保関係を基盤体制や、ガット、IMFを中心とした戦後の開かれた世界経済体制が維持されてきたからであることも忘れてはなりません。
 日本の存在が飛躍的に大きくなった今日、我が国は、国際秩序から単に受益するだけでなく、これに貢献し、これを強化する役割を担わなければなりません。また、そうした役割を果たすことこそが我が国の長期的国益にかなうものであり、我が国外交の目標でなくてはならないのであります。
  国際協調の推進について申し上げます。
 今日の世界が抱える諸問題は、主要国といえども一国のみでは対応することができず、国際社会が協調して解決していくことが必要であります。その意味で、国連の場での、また日米欧間及びアジア・太平洋地域の諸国間での協力が重要であります。
 本年七月には主要国首脳会議が東京で開催されますが、我が国は議長国として、このような認識に立って、その成功のために最大限の努力を行ってまいります。
 米ソの二極構造が消滅した今日、国際秩序を維持していく唯一の現実的な道は各国間の協力を前提とした協調体制を強化していくことであります。そのためには、まず、国連を初めとする国際機関を強化し、各国が協調して共同の責任を果たしていくことが不可欠であります。特に、国連は、東西のイデオロギー対立から解放されて国際の平和と安全の維持という本来の機能を取り戻してきており、今日その役割への期待は飛躍的に増大しています。戦後一貫して国連中心主義を掲げている我が国としては、そのさらなる活性化に向け一層の努力を行っていかなければなりません。
 近年、国連の平和維持活動の件数は著しく増加し、一九四八年以来実施されてきた計二十八件のうち、実に十五件の設立が過去五年間に集中しています。また、活動内容や規模も大型化してきております。このような趨勢にこたえていくため、国連加盟国の一層の協力が必要となっております。我が国といたしましても、国際平和協力法により人的貢献を行うとともに、財政基盤の強化のため平和維持留保基金、いわゆるPKO立ち上がり基金の設立を提唱し、これが実現をいたしました。
 さらに、従来の伝統的な平和維持活動を超える新たな国連の活動が必要となる場合も出てきております。この点で、ソマリアでの人道支援のための安全な環境づくりを目的とした国際的な活動が注目されています。このように国際の平和と安定のための国連の役割と任務はより多様なものとなってきており、加盟国にも一層柔軟な対応が求められております。これは、我が国としても、責任ある国際社会の一員として真剣に受けとめなければならない問題であると思います。
 また、国連が効果的に機能するためには、安全保障理事会の構成を含め国連の機構改革と機能強化に取り組んでいく必要があるとの認識が国際的に広がりつつあります。私は、昨年の国連総会出席の機会にこの点を訴えましたが、このような我が国の主張は、国連総会において安保理改革に関する各国の意見を国連事務総長に提出することを求める決議として満場一致で採択されました。私といたしましては、引き続き国際社会とともにこの問題を真剣に検討していきたいと考えております。
 国際社会が直面する諸問題の解決に当たり、日米欧間の緊密な協力の重要性はますます高まっており、我が国はこうした協力に一層主体的に取り組むことが求められております。
 その中で、国際的な協調を強化するには米国にかわり指導力を発揮し得る国はどこにもありません。この意味で、私は、クリントン新大統領がさきの就任演説において、「米国の再生」という目標のもとに国民の結束を求め、冷戦後の世界において引き続き指導的役割を果たしていく決意を示されたことを心から歓迎いたします。我が国は、クリントン新政権との間で、世界の平和と繁栄の確保を共通の課題として、歴史の転換期にふさわしい新たな協力関係を構築するよう努めてまいります。
 
 日米安保体制に基づく日米関係が我が国の外交の基軸であることは、冷戦後の今日においても変わりありません。むしろ、日米基軸外交が、アジア・太平洋地域の平和と安定を確保し、また、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないという日本の立場の国際的な信頼性を高めるために、今後とも一層重要であると申せましょう。
 それと同時に、日米間の経済関係は今や密接不可分に結びついており、そのために時として摩擦が生じることは避けられない面もありますが、両国がその経済的調和を目指し、協調関係を強化していくことは、日米両国のみならず、世界経済の繁栄のために重要であります。クリントン新政権及び米国議会が、自由貿易体制擁護の立場から国内の保護主義的な動きに対して確固たる態度を示されるとともに、米国経済再建の努力が実を結ぶことを期待し、そのための努力を支持してまいります。
 欧州においては、近年の国際情勢の劇的な変化の中にあって、ECを中心とした歴史的な統合が進められております。欧州の統合はまさに国家間の歴史の変革であり、統合完成の暁には世界の政治と経済に大きな影響を与えることは確実であります。その意味で、今回の私の欧州訪問と各国指導者たちとの政治対話は大変有意義であり、今後とも欧州との関係強化を図ってまいります。
 近年の目覚ましい経済発展を受けて政治的安定を達成しつつあるアジア・太平洋地域の諸国は、地域の平和と繁栄のための協力において重要な役割を担うようになってきております。我が国は、それらの諸国との協力を進め、アジア・太平洋地域での平和と繁栄を確保し、これを世界の平和と繁栄につなげていくよう努力をしてまいります。
 このような考え方を背景にして、今般、宮澤総理はASEAN四カ国を訪問し、日本とASEANの協力関係を一層強化していく決意を表明してきたところであります。
  主要な政策課題について申し上げます。
 国際社会が直面するさまざまな問題に取り組んでいく上で、世界経済の活力を維持強化することが、今やこれまで以上に重要な課題となっております。しかし、世界の自由経済体制のもとでは、各国経済は、相互依存関係が強いだけに、一国のみの繁栄は長続きいたしません。先進各国における景気回復がおくれている中で、各国の政策協調が強く求められているのはそのためであります。我が国としても、内需を中心とするインフレなき持続的成長を確保していくことは、国内的に重要であるのみならず、国際的にも世界経済の健全な発展に向けて大きな貢献となるものであります。
 現在最終段階にあるウルグアイ・ラウンド交渉は、多角的自由貿易体制の維持強化の観点から、世界経済の将来にとり決定的に重要であります。我が国は、この交渉が成功裏に、かつ早期に終結するよう引き続き最大限の努力を行っていく方針であります。
 中東の不安定な状況や、旧ユーゴスラビア、ソマリア、カンボジア等における紛争は、転換期の世界における大きな懸念材料であります。このような認識に立って、我が国は、地域紛争の解決のため、資金的協力にとどまらず、人的貢献や外交努力を積極的に行っていきます。
 まず、資金的協力の面では、カンボジア問題以外にも、旧ユーゴスラビアやソマリアにおける避難民の救済のため、それぞれ二千万ドルを超える人道援助を行っています。特に、ソマリアに関しては、人道援助に加え、国連のソマリア信託基金に対し一億ドルを拠出することを決定しました。次に、人的貢献としては、国際平和協力法のもと、既にアンゴラ、カンボジアに平和協力隊を派遣いたしました。さらに、外交努力としては、カンボジア問題、中東和平問題等の多数国間の協議の場に積極的に参画しております。しかし、ソマリアでの惨状に対して典型的に示されているような国際社会の積極的な対応は、国民の皆様が連日の報道でごらんのとおりであります。地域紛争も国際社会の対応もますます多様化しようとしている中で、我が国の取り組みはどうあるべきかが改めて問われているように思います。
 転換期の世界の平和と安定を確保するためのもう一つの重要な課題は、軍備管理・軍縮への取り組みであります。昨年以降、この分野において幾つかの大きな成果が見られました。
 第一に、米ロ両国間において、昨年六月、二〇〇三年までに戦略核兵器の弾頭数を現保有量の約三分の一まで削減することが合意され、先般、条約への署名が行われました。我が国は、唯一の被爆国として核軍縮を重視しており、これまでの合意の着実な履行とともに、米ロ以外の核兵器国の核軍縮過程への参加を強く期待しております。
 第二に、中国、フランス等が核兵器不拡散条約に加入し、核兵器国がすべて締約国になるとともに、締約国数も百五十カ国を超えるなど同条約の普遍性がますます高まってきていることは歓迎すべきことであります。
 第三に、長きにわたり行われてきた化学兵器禁止条約交渉が九月にまとまり化学兵器の全面的な禁止が実現する運びとなったことは画期的なことであります。先般、パリで行われた署名式には私自身出席してまいりました。
 以上のような好ましい動きが見られる反面、北朝鮮やイラクなどにおける核兵器開発の疑惑、そして旧ソ連からの大量破壊兵器やその製造技術等の流出の危険が国際的な懸念を呼んでいます。
 我が国は、大量破壊兵器やミサイルの不拡散体制の強化のため、他の関係国とともに一層努力していく方針であります。また、旧ソ連での核兵器等の製造技術の流出防止を目的とした国際科学技術センターの設立に当たりましても二千万ドルの資金貢献を表明しており、今後とも同センターの円滑な活動のために積極的に協力してまいります。
 通常兵器については、まず兵器移転の透明性を高め、これにより各国間の相互信頼感を高めることが重要であり、我が国等の提案により発足した国連軍備登録制度の円滑な実施に一層努力いたします。また、冷戦中に膨らんだ各国兵器産業の余剰生産能力が一部地域への兵器の無秩序な移転を生み、地域の不安定化を招く結果とならないよう、関係国による慎重な対応の重要性を国際的に強調してまいります。
 世界平和を真に長続きのするものとしていくためには、自由、人権、民主主義が尊重され、市場経済のもとで繁栄が享受され、人間一人一人の幸福が保障される社会を形成する必要があります。
 旧ソ連諸国や中・東欧諸国においてのみならず、モンゴルや南西アジア諸国、アフリカ、中南米の多くの開発途上国において、民主化や市場経
済の導入に向けての改革を進める機運が高まっております。
 ロシアに対しても、我が国は、技術的支援、人道支援など他の諸国に劣らぬ支援を行ってきており、今後とも国際社会と協調しつつ適切な支援を行っていく方針であります。昨年十月に我が国が旧ソ連支援東京会議を主催したのもこのような努力の一環であります。中央アジア諸国については、我が国の働きかけにより、政府開発援助の対象国となることが先般国際的に決定されたところであります。
 また、我が国の政府開発援助大綱においては、援助の実施に当たり、被援助国の軍事支出の動向などとともに、民主化の促進と市場経済導入の努力に十分注意を払っていくこととしておりますが、これは、こうした民主化と経済改革の動きを援助を通じて積極的に支援し促進していくとの考えに基づくものであります。
 翻って、開発途上国の現状に目を向けると、依然として飢餓や貧困、成長の低迷、累積債務問題などの問題が山積しており、援助の必要性はこれまで以上に高いものとなっております。
 我が国は、今後とも開発途上国援助を外交の重要な一分野としてとらえ、政府開発援助大綱に掲げた理念と原則にのっとり、開発途上国を支援していく考えであります。今国会において審議をお願いする政府開発援助予算は、このような考えに立って、厳しい財政事情のもと、一兆百四十四億円の一般会計予算を計上したものであります。
 国際社会は、地球環境、人口、難民、エイズ、麻薬、テロ等の全人類にとって共通の重要な問題を抱えており、我が国も、地球市民としての自覚のもと、それらの問題の解決のために一層の努力を払っていかなければなりません。
 特に、地球環境問題については、昨年の国連環境開発会議の成果を着実に実施していくことが必要であり、そのため、我が国の行動計画の策定と気候変動枠組み条約等の締結に向け努力してまいります。また、国連環境開発会議で発表したとおり、環境分野における政府開発援助を拡充強化してまいります。
 難民問題については、中米やカンボジアでは難民の本国への帰還が始まり問題が解決に向かっておりますが、旧ユーゴスラビアやソマリア等では新たな難民問題が発生し、関係地域の安定にも大きな影響が及ぶことが懸念されております。我が国は、世界各地の難民問題の解決のため、一層の協力を行い、より積極的な役割を果たしていきたいと考えております。国連難民高等弁務官事務所に対する我が国の拠出金として平成五年度予算に前年度より八百万ドル多い八千三百万ドルを計上したのもそのあらわれであります。
 各国との間で知的及び文化的交流を推進し、国家間の相互理解を深め、信頼関係を築いていくことは、平和で安定した国際関係を構築する上で不可欠であります。また、我が国は、人類共通の財産である文化財の保存や開発途上国の教育、文化の振興等にも積極的な協力を行っていく考えであります。
 科学技術の分野についても、経済とのかかわりのみならず、環境問題の解決のためにも国際的な協力がますます重要となってきており、我が国も外国人研究者の受け入れや国際的な各種研究プロジェクトを着実に進めていくことが重要であります。
 次に、アジア諸国との関係について申し上げます。
 天皇皇后両陛下のさきの中国御訪問は、日中両国民の間の相互理解と友好を促進する上で大きな成果をおさめられ、まことに意義深いものでありました。中国との間で友好関係を維持発展させ、また、国際社会においてともに建設的役割を担っていくことは、アジア・太平洋、ひいては世界の平和と安定にとって重要であります。我が国は、このような認識に立って、中国が政治、経済両面にわたる改革・開放を推進し、国際協調を行っていくよう慫慂してまいります。
 我が国は、香港が一九九七年以降も繁栄を続けていくことを強く希望しており、そのためには、香港が、英中間の合意に基づき、政治的にも経済的にも開かれ、安定した体制を維持していくことが肝要と考えております。
 朝鮮半島については、南北対話の一定の進展は見られたものの、緊張緩和に向けた動きはなお定着したとは言いがたい状況であります。
 このような状況のもと、我が国は、韓国との友好協力関係を基本として、北東アジア地域の平和と繁栄に貢献していく考えであります。二月には韓国で金泳三大統領が就任いたしますが、新政権との間でも引き続き未来志向的な関係の構築に向けて努力していきたいと考えます。
 北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国との国交正常化交渉につきましては、依然として核兵器の開発疑惑が解消されていないこともあって、なお見通しを申し上げることが困難な状況であります。我が国は、引き続き北朝鮮の動向を慎重に見守りつつ、韓国、米国といった関係諸国とも緊密な連絡をとりながら、原則的な立場を堅持し、交渉に臨んでいきたいと考えております。
 インドシナの経済社会の発展は、アジア全体の安定と繁栄にとり重要であり、我が国は、ベトナムを初めとする各国の開放政策を支援してまいります。カンボジアでは、国連カンボジア暫定機構の指導のもとで、多くの困難と闘いつつ、総選挙に向けての準備が進められていることを高く評価しております。我が国は、予定どおり本年五月までに総選挙が実施され、カンボジアの真の永続的和平が実現されるよう、引き続き外交努力を行ってまいります。
 次に、旧ソ連諸国との関係について申し上げます。
 ロシアとの関係については、我が国はその改革努力を支持してきております。ロシアの改革の成否が世界的に極めて重要な意味を有している中で、日ロ関係の完全な正常化はアジア・太平洋地域の将来の発展にとり不可欠であります。そのためにも、両国間の最高首脳を含むハイレベルの対話を継続的に行うことが必要であります。この関連で、エリツィン大統領の訪日が延期されたことは残念でありましたが、訪日延期によってつまずいた日ロ関係の仕切り直しとして、昨年九月下旬には私がコズィレフ外相と会談し、日ロ間の対話を再開しました。さらに今般、パリでの同外相との会談では、エリツィン大統領の訪日の早期実現に向けて真剣な準備を行うことを確認いたしました。我が国は、今後とも拡大均衡の原則にのっとって、領土問題を解決し平和条約を締結して
日ロ関係を新しい次元に引き上げるよう全力で努力を継続していく考えであります。
 また、我が国は、他の旧ソ連諸国との関係強化も進めており、今般、ウズベキスタン、カザフスタン、ウクライナには大使館を、ベラルーシには駐在官事務所を開設しました。
 その他の地域の諸国との関係について申し上げます。
 湾岸地域を含め、中東地域の平和と安定の確保は、世界の最大の関心事の一つであります。今般、米国を初めとする合同軍がイラクに限定的な武力行使を行いましたが、これは国連安保理諸決議の履行を確保するためのものであり、我が国はこれを理解し、支持することを表明しました。我が国としては、安保理の決議に公然と挑戦するような行動は到底容認できません。また、我が国は、この地域の安定にとり不可欠である中東紛争解決のため、多数国間協議において重要な役割を担うなど、問題の早期解決を促す努力に積極的に取り組んでおり、さらに、シリア、イスラエルを初めとする交渉の直接当事者に対し、交渉の早期妥結に向けて柔軟な対応を行うよう引き続き働きかけてまいります。
 アフリカでは、今なお百万人以上が飢餓線上にあると言われているソマリアでの緊急事態に対応するため、人道支援の分野でさらにいかなる協力が可能かについても検討しております。また、我が国は、民主化と経済構造の調整に向けての多くのアフリカ諸国の努力を支援してきており、それらの諸国の努力を一層促す目的で、本年十月にアフリカ開発会議を東京で開催いたします。
 中南米では、先般、ペルーで民主体制復帰の第一歩となる憲法制定議会選挙が平穏裏に実施され、エルサルバドルでは和平合意が着実に実施されております。我が国は、民主化と市場経済の確立に向けての真剣な改革努力を続けているこれらの諸国を今後とも積極的に支援してまいります。
 海外における邦人の安全対策と危機管理について申し上げます。
 世界各地の地域紛争に日本人が巻き込まれる危険性が増大し、日本人を標的とした凶悪犯罪も多発しているため、海外における我が同胞が安心して活動を行えるよう、安全対策の強化が必要であります。また、万一緊急事態が発生した場合にも、安全確保のための政府としての役割に遺漏のないよう、在外公館の危機管理体制を一層整備してまいります。
 最後に、今日、さまざまな側面で外交活動は日常生活に直接影響するようになっています。今や外交と内政はまさに一体でありますので、私は引き続き国民の皆様の一層の御理解と御協力を得るため、「わかりやすい外交」を目指して努力してまいります。また、さまざまな視点から正確に国際情勢を分析し、適切かつ機動的な外交活動を展開していく「頼もしい外務省」とするために、それを支える外交実施体制と諸機能の強化に努めてまいります。
 国際社会がさまざまな課題に取り組んでいく中で、我が国がより大きな役割と責任を担っていくのに伴い、外交の成否が我が国の将来に及ぼす影響は一層重大なものとなります。外交の責任者として、その重大な任務を前に身が引き締まる思いであります。私は、将来にわたり国を誤ることのないよう、使命感を持ち、誠意を持って職務に粉骨砕身してまいる決意であります。何とぞ、国民の皆様の一層の御理解と御協力を切にお願い申し上げる次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#22
○議長(原文兵衛君) 林大蔵大臣。
   〔国務大臣林義郎君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(林義郎君) 平成五年度予算の御審議をお願いするに当たり、今後の財政金融政策の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明いたします。
 戦後の我が国経済は、二次にわたる石油危機など幾度となく困難に直面いたしましたが、そのたびにそれを乗り越え、さらなる飛躍を実現し、その結果、今や我が国経済は世界経済において大きな地位を占めるに至りました。
 しかしながら、現在我が国経済は、いわゆるバブル経済の生成と崩壊の過程で種々のひずみが生ずる等幾多の問題に直面しており、その解決に総力を挙げて取り組んでいるところであります。我が国は、これまでの経験を生かしてこの試練を克服しなければなりません。政策運営を生産者中心から生活者や消費者をより重視する方向へ転換することにより、国民一人一人が豊かさとゆとりを実感できる生活大国を実現していくとともに、世界経済の安定的発展のためにその地位にふさわしい貢献をしていくことが必要であります。
 まず、最近の内外経済情勢について申し上げます。
 我が国経済は、現在調整過程にあります。他方で、住宅投資に回復の動きが見られ、公共投資は拡大しております。政府は昨年夏に過去最大規模の総合経済対策を策定し、その着実な実施に努めておりますが、平成五年度予算についても、近年になぐ厳しい財政事情のもとではありますが、景気には十分配慮いたしました。こうした政策努力が、今後我が国経済の内需中心の持続的な成長に大きく寄与するものと確信をしております。
 国際経済情勢を見ますと、世界経済は総じて緩やかな回復基調にあるものの、回復の足取りは国によりばらつきが見られ、その活性化が大きな課題となっております。また、ECでは統合に向けた動きが進展し、旧ソ連や中・東欧諸国では市場経済への移行の努力が続けられるなど、世界の情勢には大きな変化も見られます。
 私は、今後の財政金融政策の運営に当たり、このような最近の内外経済情勢を踏まえ、二十一世紀に向けて我が国が進むべき道を展望しながら、
以下に申し述べる諸課題に全力を挙げて取り組んでまいる所存であります。
 第一の課題は、内需を中心とした持続可能な成長を実現することであります。このような観点から、景気に十分配慮した施策を実施することとしております。
 平成五年度予算編成に当たりましては、こうした見地から、公共事業関係費について最近では実質上最も大きな伸びを確保するとともに、財政投融資計画や地方財政計画における地方単独事業についても近年最大の伸びを確保するなど、国、地方を通じ全体として十分な額の公共投資を確保することとしております。この結果、今後とも公共投資の切れ目ない執行が可能となり、平成五年度の政府経済見通しにおける政府投資額は九・五%増と高い伸びで増加する見込みであります。
 また、住宅の質の向上により生活大国の実現に資するとともに、経済に対する波及効果の大きい住宅投資を促進する観点から、住宅対策の充実を図ることとしております。
 一方、金融面では、五次にわたる公定歩合の引き下げの効果などにより、市場金利は低下を続け、これを受けて金融機関の貸出金利も低下してきております。政府としては、こうした政策効果がなお一層浸透していくことを期待しております。
 また、今後とも、主要国との政策協調及び為替市場における協力を通じ、為替相場の安定を図ってまいりたいと考えております。
 第二の課題は、財政改革を引き続き強力に推進することであります。
 顧みれば、我が国財政は、昭和五十年度以降、特例公債の発行を余儀なくされ、その結果、巨額の公債残高を抱え、財政構造の硬直化が進行しました。政府としては財政の対応力の回復のために懸命な努力を払い、平成二年度においてようやく、十五年間の長きにわたって続いた特例公債の発行が回避されました。このような経験から見ても、一たび特例公債を発行すれば、財政の赤字体質が慢性化し、特例公債依存から脱却することが極めて困難となることは明らかであります。
 平成五年度予算においては、税収が前年度当初見積もりを下回るという、昭和五十八年度予算以来の厳しい歳入状況に直面しております。このような状況のもとで、制度や歳出の徹底した見直し、合理化に積極的に取り組むことなどにより特例公債の発行を回避いたしましたが、他方、景気の動向等にかんがみ公共事業等を着実に推進していくため、建設公債の発行額は増加させることとしました。その結果、我が国財政は、公債残高が平成五年度末には約百八十二兆円にも達する見込みであり、巨額の国債費が政策的経費を圧迫するなど、依然として構造的な厳しさが続いています。
 財政改革の目的は、本格的な高齢化社会が到来する二十一世紀を間近に控え、一日も早く財政が本来の対応力を回復することにより、今後の財政に対する内外の諸要請に適切に対応し、豊かで活力ある経済社会の建設を進めていくことにあります。
 したがって、今後の財政運営の基本的方向としては、後世代に多大の負担を残さず、再び特例公債を発行しないことを基本とし、公債残高が累増しないような財政体質をつくり上げていくことが重要であります。財政の規律を重んずるという考え方は国際的にも共通の認識となっているところであり、私は今後ともこのような基本的方向に沿って、財政改革を引き続き強力に推進していく覚悟であります。
 第三の課題は、調和ある対外経済関係の形成と世界経済発展への貢献に努めることであります。
 世界経済は、貿易や直接投資の拡大とともに相互依存関係をさらに深めつつありますが、その中にあって我が国は、調和ある対外経済関係の形成に努めるとともに、世界経済の発展のために積極的に貢献していく必要があると考えます。
 保護主義的な動きを回避し、多角的自由貿易体制を維持強化することは、世界各国の経済発展と国民生活向上の基礎であります。このような観点から、ウルグアイ・ラウンドにつきましては、我が国を含め各国が有する困難な問題について適切な解決を図りつつ、成功裏に終結するよう努力することが重要であると考えております。
 関税制度につきましては、市場アクセスの一層の改善を図る等の見地から、重油の関税割り当て制度の廃止等の関税改正を行うこととしております。経済協力につきましては、開発途上国の自助努力を支援するため、昨年六月に策定された政府開発援助大綱のもとで、政府開発援助の充実に努めているところであります。また、累積債務問題につきましても、その解決は世界経済の安定と成長を図る上で重要な課題の一つと位置づけ、引き続きその解決に努力していく考えであります。
 旧ソ連地域に対する支援につきましては、これらの国々が新しい体制のもとで市場経済への移行や種々の改革を円滑に進められるよう、他の主要先進国とも協調しつつ適切に対応してまいりたいと考えております。
 第四の課題は、金融システムの安定性の確保及び証券市場の活性化を図るとともに、金融資本市場の自由化、国際化を着実に進展させることであります。
 金融システムの安定性の確保につきましては、金融機関の自助努力を基本としつつ、政府としても金融システムに対する国民の信頼が損なわれないよう最大限の努力を払っていくことが重要であり、このような考え方に立って各種の措置を講じてまいりました。
 まず、金融機関の不良資産の問題につきましては、その処理方針を早期に確定し、計画的、段階的な処理を図っていくことにより、金融システム
への不安感を払拭することが重要であります。この観点から、個別問題の早期処理が進められている一方、民間金融機関により共国債権買い取り機構が設立されることとなるなど、必要な環境整備に努めております。また、各銀行によるいわゆる不良資産のディスクロージャーが本年三月期より行われる予定であります。さらに、経済活動に必要な資金の円滑な供給が阻害されることのないよう新たな自己資本充実策を着実に実施するなど、金融機関の融資対応力の確保を図っているところであります。
 証券市場の活性化等のための施策につきましては、安定的で活力ある市場の確立に向けて、公的資金の簡易保険福祉事業団等を通じるいわゆる指定単への運用に関し、株式組み入れ比率を制限しない指定単を平成五年度においても設けるほか、株式累積投資制度の創設、従業員持ち株制度の運用の弾力化、先物取引の改善の基本的方向についての取りまとめ等の措置を講じております。
 金融資本市場の自由化、国際化は、国民の幅広いニーズにこたえるとともに、我が国経済の発展にも寄与するものであります。また、近年、市場の一体化が世界的に進展する中で、世界の主要市場の一員としての我が国に対する期待は増大しており、その期待にこたえる上でも大きな意義を有するものと考えます。
 このような観点から、まず預金金利の自由化につきましては、定期預金金利の自由化を本年六月を目途に完了し、また平成六年中には流動性預金金利の完全自由化を図るべく努力してまいる所存であります。
 また、金融制度改革は、有効かつ適正な競争を促進することにより金融制度の効率化及び市場の健全な発展を図るという重要な意義を有しており、政府としても着実かつ円滑に実施していくこととしております。昨年十二月には、金融機関及び証券会社の相互参入の推進、諸規制、諸慣行の見直し等についての制度改革実施のための具体的事項を決定したところであり、今後は、本年四月ごろを目途に金融制度改革法を施行すべく所要の準備を進めてまいりたいと思います。
 次に、平成五年度予算の大要について御説明いたします。
 まず、歳出面につきましては、特例公債の発行を厳に回避するため、制度や歳出の徹底した見直し、合理化に積極的に取り組むとともに、景気や生活大国づくりに十分配慮するなど社会経済情勢の推移に即応した財政需要に対しては、財源の重点的、効率的配分を行うこととして編成いたしました。
 補助金等につきましては、暫定措置が講じられている公共事業等に係る補助率等について、その体系化、簡素化を図り、恒久化するなど、その整理合理化を積極的に推進することといたしております。なお、これらの措置に関連して、別途、国の補助金等の整理及び合理化等に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。
 また、現下の財政事情にかんがみ、特例公債の発行を回避するためのやむを得ざる措置として、平成四年度補正予算に引き続き一般会計において承継した債務等の資金運用部に対する償還を延期することにより、当該債務の償還財源の予算繰り入れ六千九百八十三億円を行わないこと等の措置を講じました。なお、これらの措置につきましては、別途、平成五年度における一般会計承継債務等の償還の特例等に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。
 国家公務員の定員につきましては、第八次定員削減計画を着実に実施するとともに、増員は厳に抑制し、一千二百十五人に上る行政機関職員の定員の縮減を図っております。
 以上の結果、一般歳出の規模は三十九兆九千百六十八億円となっており、これに地方交付税交付金、国債費等を加えた一般会計予算規模は七十二兆三千五百四十八億円となっております。
  次に、歳入面について申し述べます。
 税制面では、現下の厳しい財政状況及び最近の社会経済情勢の変化にかんがみ、課税の適正、公平を確保する観点から租税特別措置の整理合理化を行うほか、農林業対策等のための措置、第十一次道路整備五カ年計画に必要な財源確保等のための措置など、当面早急に実施すべき措置を講ずることといたしております。
 税の執行につきましては、今後とも国民の信頼と協力を得て、一層適正、公平に実施するよう努力してまいる所存であります。
 公債発行予定額は八兆一千三百億円としております。なお、借換債を含めた公債の総発行予定額は二十九兆九千三百二十三億円となっております。
 財政投融資計画につきましては、景気に十分配慮するとともに、生活大国の実現に資するため、財政投融資の積極的な活用を図るとの考え方に立ち、社会資本の整備、住宅対策、環境対策等に対し、資金の重点的、効率的な配分に努めたところであります。
 この結果、財政投融資計画の規模は四十五兆七千七百六億円、前年度当初計画に対し一二・二%の増加となっており、また、資金運用事業を除いた一般財投の規模は三十六兆五千九百五十六億円、一三・四%の増加となっております。
  次に、主要な経費について申し述べます。
 公共事業関係費につきましては、景気への配慮という観点からその拡充を図るとともに、その配分に当たっては、生活関連重点化枠などを通じて、生活に密接に関連した住宅、下水道や環境衛生等の分野に思い切って重点を置き、地域の実情にも十分配慮してまいります。特に住宅対策につきましては、住宅金融公庫における貸付限度額の引き上げ、公共賃貸住宅の供給の促進など施策の拡充を図っております。なお、平成四年度末に期
限の到来する道路整備等の三分野の長期計画につきましては、おのおの新たな計画を適切に策定することとしております。
 社会保障関係費につきましては、活力ある福祉社会の形成を目指し、すべての国民が安心して老後を送ることができるよう高齢者保健福祉推進十カ年戦略を着実に推進するとともに、エイズ対策等の諸施策についてきめ細かく配慮しております。
 文教及び科学振興費につきましては、教育行政に係る国と地方の費用負担のあり方等の見直しを進めつつ、第六次教職員配置改善計画の策定、公立文教施設整備事業費の確保、高等教育.学術研究の改善充実等を図るとともに、科学技術振興のため各般の施策の推進に努めております。
 中小企業対策費につきましては、中小企業を取り巻く厳しい経営環境に配慮するとともに、地域の小規模事業対策の強化など特に緊要な課題に重点を置いて施策の充実を図っております。
 農林水産関係予算につきましては、我が国の農業、農村を取り巻く内外の諸情勢に対処するため、今後、経営感覚にすぐれた効率的、安定的な経営体を育成し、こうした経営体が生産の大半を担う農業構造が実現されるよう各般の施策の推進に努めております。
 経済協力費につきましては、国際社会の平和と発展に寄与するため、無償資金協力や技術協力を重点として特段の配慮を行っております。
 防衛関係費につきましては、先般修正された中期防衛力整備計画のもと、現下の厳しい財政事情等を踏まえ、極力その抑制を図るとともに、防衛力全体として均衡がとれた態勢の維持整備に努めております。
 エネルギー対策費につきましては、我が国の脆弱なエネルギー供給構造に加え、地球環境保全の重要性を踏まえ、総合的なエネルギー対策の推進に努めております。
 地方財政につきましては、景気にも十分配慮して地方単独事業の拡充を図るなど、歳入歳出を的確に見込むとともに、円滑な地方財政運営のため所要の地方交付税総額を確保した上で、地方交付税の年度間調整としての特例措置等を行うこととしております。なお、地方公共団体におかれましても、歳出の節減合理化をさらに推進し、より一層効率的な財源配分を行われるよう要請するものであります。
 以上、平成五年度予算の大要について御説明いたしました。本予算が現下の諸情勢に果たす役割に御理解を賜り、何とぞ、関係の法律案とともに御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。
 来るべき二十一世紀には、我が国は本格的な高齢化社会を迎えます。私たちは、これまで国民の勤勉と創意工夫、真摯な努力などによって幾多の困難に対処してまいりました。このような点も想起しながら、新たな視点に立った改革を実行し、こうした時代を乗り切っていくことが肝要であります。また、そうすることによって、将来の国民の一人一人が真の繁栄と安定を享受できるような、豊かで活力に富み、国際的にもふさわしい役割を果たし得る経済社会を創造していくことが可能になるものと考えます。
 私は、ただいま申し述べました諸課題に正面から取り組み、これを一つずつ着実に解決すべく、今後とも精いっぱいの努力を続けてまいる所存であります。
 国民各位の一層の御理解と御協力を切にお願いする次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#24
○議長(原文兵衛君) 船田国務大臣。
   〔国務大臣船田元君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(船田元君) 我が国経済の当面する課題と経済運営の基本的考え方について所信を申し述べたいと思います。
 我が国経済は、現在厳しい調整を余儀なくされております。今回の景気の低迷は、景気循環という従来型の要因に加え、いわゆるバブルの崩壊による資産価格の大幅な下落が経済のさまざまな分野に影響を及ぼしたという点で、我が国経済が安定成長期以降初めて体験するものであります。
 この景気低迷からの早期回復を図ることが、現在の経済運営における第一の課題であることは申すまでもありません。しかしながら、こうした景気回復に向けての取り組みは、堅実な消費と健全な企業行動に支えられる経済構造への変革に結びつくものでなければなりません。また、それは生活大国の実現に資するものでなくてはなりません。むしろ、厳しい経済状況にある今日のようなときこそ、生活大国の実現に向けた変革と実行の契機ととらえるべきであります。
 一方、国際社会に目を転じますと、東西冷戦時代が幕を閉じた今、旧計画経済諸国の自由主義経済システムヘの融合や、EC、北米などの地域における国境を越えた市場経済の結びつきの強化が進みつつあり、世界経済は、市場原理を軸に、二十一世紀に向かって新たな胎動を始めております。
 このような世界経済秩序の再編の動きには、ともすれば排他的な地域主義につながりかねない危険も潜んでおります。新しい時代の世界経済の枠組みは、これまでの世界経済の発展を支えたグローパリズムに基づく自由貿易体制の理念に反するものとなってはなりません。そのためには、同じ市場原理を重視する経済システムも、その歴史、文化、発展段階によりさまざまであることは尊重しつつも、これらの相違が自由な貿易を阻害することのないよう、我が国を初め多くの国が協調し、新たな世界経済秩序をつくり上げていくことが重要であります。
 私は、今こそ政府の政策努力と国民の英知と汗を結集し、現在の苦境を乗り切るとともに、我が国経済に課せられた内外の課題に対応するため、新しい世紀に向けて大きな一歩を踏み出すべきときであると考えております。
 内外の経済の現状と平成五年度の経済運営の基本方針について申し述べます。
 まず、世界経済の動向を見ますと、アメリカ経済にこのところ明るさが見られ始めており、クリントン新大統領のもと、競争力の強化や財政赤字の削減を目指した経済立て直しへの取り組みが始まろうとしております。EC諸国は、今年の初めに市場統合を実現させましたが、景気は総じて停滞しております。旧ソ連地域、中・東欧諸国では、一部に明るさも見られるものの、総じて困難な状況が続いております。
 一方、アジアについては、堅調な拡大を続けており、世界経済全体の中で目覚ましい発展を見せております。また、債務問題解決のための国際的な協力が進められる中、中南米諸国等で経済状況の好転が見られ始めております。
 次に、我が国経済の動向を見ますと、住宅投資に回復の動きが見られ、公共投資も堅調に推移しておりますが、個人消費、設備投資を中心に低迷しており、生産は停滞傾向で推移しております。加えて、株価と不動産価格の大幅な下落が、金融システムの安定性の問題などへの懸念を生じさせるとともに、実体経済にも影響を及ぼしており、我が国経済は厳しい状況に直面しています。一方、経常収支黒字は引き続き前年水準より大幅に拡大をしております。
 こうした状況に対処するため、政府は、昨年三月の緊急経済対策に引き続き、昨年八月に史上最大規模の内需拡大策と金融面での諸施策を含む総合経済対策を決定し、政府一丸となってその円滑な実施を図っております。
 政府としては、これらの施策の効果が速やかに発揮されるよう全力を尽くしているところでありますが、現下の経済動向を勘案しますと、平成四年度の実質経済成長率は一・六%程度にとどまるものと考えられます。
 以上のような経済状況を踏まえ、私は、平成五年度の経済運営に当たりましては、特に次の諸点を基本としてまいりたいと思います。
 第一は、現在調整過程にある我が国経済を、内需を中心とするインフレなき持続可能な成長経路へできるだけ早く円滑に移行させることであります。
 このため、近年になく厳しい財政事情の中、平成五年度予算において、公共投資の積極的な拡大、住宅投資促進策の拡充など、国、地方を通じて景気に十分な配慮を行うことといたしました。特に、公共投資につきましては、公共事業関係費について四・八%と最近では最も大きな伸びを確保したほか、財政投融資計画においても公共事業実施機関について一二・四%の、また、地方財政計画における地方単独事業については一二%という近年最大の伸び率を確保いたしました。これらと昨年の総合経済対策による公共投資の大幅な追加とが相まって、今後とも高水準の公共投資が確保されるものと考えております。
 次に、金融政策につきましては、内外経済動向及び国際通貨情勢を注視しつつ、今後とも適切かつ機動的な運営を図る必要があると考えております。また、金融・証券業界の徹底した合理化努力を前提として、金融システムの安定性の確保のための措置などを引き続き講じてまいります。
 物価の安定は、国民生活安定の基礎であることはもちろん、消費者の先行きへの信頼感を高めるものでありまして、今後ともその安定の維持に最善の努力を尽くしてまいります。
 さらに、中小企業対策の円滑な実施に努めるとともに、失業の予防のための施策等雇用の安定策を引き続き推進してまいります。
 民間部門の自助努力に加え、以上のような政府の施策を適切に実施することにより、平成五年度の我が国経済は、内需を中心とするインフレなき持続可能な成長経路へと円滑に移行していくものと期待され、実質経済成長率は三・三%程度になるものと見込まれます。
 政府といたしましては、今後とも、景気動向を注視しつつ、主要国との経済政策の協調にも配慮しながら、適切かつ機動的な経済運営に最大限の努力を傾注してまいります。
 第二は、生活大国五カ年計画に沿って生活大国の実現を目指すことであります。
 本年は、生活大国の実現に向け本格的な第一歩を踏み出す年であると考えております。このため、平成五年度の予算において、住宅、下水道や環境衛生等の生活に関連した分野に公共事業関係費の重点配分を行うなど生活大国づくりに十分配慮したところであり、今後とも各般の施策を政府一体となって強力に推進してまいります。
 社会資本については、経済計画に掲げられた利用者の視点に立った整備目標等を踏まえ、公共投資について重点的、効率的な配分を図ることにより、生活に関連した社会資本に重点を置いた整備を進めてまいります。
 また、住生活の充実を図る観点から、良質な住宅の蓄積と居住環境の整備を推進してまいります。特に、勤労者世帯の平均年収の五倍程度を目安に良質な住宅の取得が可能となることを目指して、総合的な土地対策を着実に推進するとともに、住宅対策等の諸施策の充実を図ってまいります。
 労働時間の短縮については、年間総労働時間千八百時間の達成という目標に向け、週四十時間労働制への移行のための取り組みや、労使の自主的な取り組みに対する援助等各般の施策を推進してまいります。
 さらに、自由時間充実のための施策を推進するとともに、女性、高齢者、障害者などだれもが社会参加できる環境の整備や、不安のない老後の生活のための高齢者保健福祉推進十カ年戦略の着実な推進を図ってまいります。
 内外価格差問題につきましては、引き続きその是正、縮小を図ってまいります。
 また、ゆとり、安心、多様性のある国民生活を実現するため、個人生活重視の視点に立って、現在の制度、慣行の見直しを進めてまいります。
 消費者行政につきましては、消費者がより安全かつ豊かな消費生活を営むことができますよう、国民生活センター等を通じた情報提供の充実など、消費者保護会議で決定した施策を積極的、総合的に推進してまいります。
 製造物責任制度を中心とした総合的な消費者被害の防止や救済のあり方につきましては、昨年の国民生活審議会答申の趣旨を踏まえて、政府として、製品特性等も考慮しつつ、精力的に検討を進めてまいります。同審議会においては、さらなる検討結果を本年中には取りまとめていただきたいと考えております。
 さらに、東京一極集中の是正と、魅力と活力ある地域づくりによって国土の特色ある発展を図るとともに、環境と調和した経済社会の構築を目指し、省資源、省エネルギーなどのための取り組みを推進してまいります。
 今後とも、経済計画に掲げられた施策の実施状況を点検し、その実効性ある推進を図ってまいります。
 第三は、国際社会と調和した経済構造への変革を推進し、自由貿易体制の維持強化に向け率先して努力するとともに、調和ある対外経済関係の形と世界経済の活性化への積極的貢献を行っていくことであります。
 このため、現在大幅な経常収支黒字を継続している我が国としては、国際的に調和のとれた対外均衡の達成に向け、内需主導型の経済成長の定着と市場開放等の構造調整努力を一層推進していく必要があります。
 こうした観点から、OTO、すなわち市場開放問題苦情処理推進本部の活動の強化等を通じて市場アクセスの一層の改善を図ってまいります。
 ガット・ウルグアイ・ラウンドは、今後の自由貿易体制の維持強化のかぎを握るものであり、我が国においてもその成功に向けて一層の努力を行ってまいります。
 米国に対しましては、クリントン新政権との間においても、緊密なパートナーとして引き続き良好な日米経済関係の発展に努めるとともに、国際経済分野における政策協調を継続してまいります。
 欧州諸国との間におきましても、先般の日・EC委閣僚会議を初め多くのレベルで対話を進めているところでありますが、日・EC共同宣言等を踏まえ、引き続き協力関係の強化に努めてまいります。
 発展途上国への経済協力については、人口、難民等の地球的規模の課題も念頭に置き、ODA大綱に基づいて、環境と開発の両立、軍事用途への使用回避などに留意しつつ、途上国援助の拡充とより適切な推進を図ってまいります。
 さらに、貿易、投資等を通ずる協力を一層推進するとともに、資金還流の促進を図り、加えて知的な面での支援も進めてまいります。
 アジア・太平洋地域は、今後の世界経済の発展の核となるものであり、経済、貿易、投資、人づくり等さまざまな分野での協力を一層推進するとともに、域内に芽生えつつある地域的な結合強化の動きが域外にも開かれたものとして世界全体の経済発展に結びつくよう、各国との対話を進めてまいります。
 また、旧計画経済諸国については、その経済の安定を図りつつ市場経済への円滑な移行を促進することが大きな課題となっており、適切な知的支援等を進めてまいります。
 地球環境問題は、世界全体が長期的視野から喫緊に取り組むべき重大な課題であり、我が国としても、みずからの経験と能力を生かし、国際協調のもと、問題の解明と解決に努めてまいります。
 以上、我が国が当面する主な課題と経済運営の基本的考え方について所信を申し述べました。
 バブルの発生とその崩壊により、これまで我が国経済が抱えてきた多くの問題が一挙に顕在化いたしました。この苦い経験は、一方で、経済の安定的な成長は地に足のついた経営姿勢と堅実な消費態度に裏打ちされてこそ可能であることを改めて認識する機会となりました。
 現在、企業においては、収益力の改善にとどまらず、堅実な消費行動への回帰やライフスタイルの変化に対応した製品やサービスの供給体制の整備等、企業活動全般にわたるリストラクチャリングに懸命に取り組んでおられます。
 我が国経済は、戦後半世紀にわたる国民のたゆまぬ努力により、幾たびかの深刻な経済的困難を克服しつつ、目覚ましい発展を遂げてまいりました。私は、創造的な企業家精神の発揮と、経済活動の現場の活力を十分に踏まえた政府の適切な経済運営とが相まって、我が国は現下の困難も克服し、長期的な安定的発展とみずからの経済力にふさわしい生活大国を実現することができるものと確信いたしております。
 私は、これまでの先人たちの努力を踏まえ、我が国が将来にわたって持続的な経済成長を実現できるよう全力を尽くしてまいります。
 同時に、私たちは、戦後の我が国経済の発展が自由主義経済体制のもとにもたらされたことに、また、我が国が主としてそのシステムを享受する立場にあったことに改めて思いをいたさなくてはなりません。世界有数の経済規模を有するに至った現在の我が国に求められているのは、より積極的に新たな世界秩序の形成に参画していくことであります。
 来る七月には主要国首脳会議が東京において開催されます。今こそ、新しい時代の世界経済秩序が各国にとって真の利益をもたらすものとなるよ
う、その枠組みやルールづくりに主体的に参加していこうではありませんか。
 国民の皆様の御支援と御協力を切にお願いする次第であります。(拍手)
#26
○議長(原文兵衛君) ただいまの演説に対する質疑は次会に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#27
○議長(原文兵衛君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時五十五分散会
     ─────・─────
平成五年一月二十二日(金曜日)
    開 会 式
 午後零時五十九分 参議院議長、衆議院参議院の副議長、常任委員長、特別委員長、参議院の調査会長、衆議院参議院の議員、内閣総理大臣その他の国務大臣、最高裁判所長官及び会計検査院長は、式場に入り、所定の位置に着いた。
 午後一時 天皇陛下は、衆議院議長の前行で式場に入られ、お席に着かれた。
   〔一同敬礼〕
 午後一時一分 衆議院議長櫻内義雄君は、式場の中央に進み、次の式辞を述べた。
   式 辞
  天皇陛下の御臨席をいただき、第百二十六回国会の開会式を行うにあたり、衆議院及び参議院を代表して、式辞を申し述べます。
 皇太子徳仁親王殿下には、このたびめでたく御婚約の運びとなりましたことは、まことに慶賀にたえないところであります。
 現下、わが国をめぐる内外の諸情勢はきわめて多端であり、解決すべき幾多の問題があります。
 われわれは、この際、わが国の現状と国際社会における立場を深く認識し、外に対しては、諸外国との相互理解と協力を一層深め、世界の平和と繁栄に貢献するとともに、内においては、政治、経済の各般にわたり、適切な施策を強力に推進し、もって国民生活の安定向上と国運の伸長に努めなければなりません。
 ここに、開会式にあたり、われわれに負荷された重大な使命にかんがみ、日本国憲法の精神を体し、おのおの最善をつくしてその任務を遂行し、もって国民の委託にこたえようとするものであります。
 次いで、天皇陛下から次のおことばを賜った。
   おことば
 本日、第百二十六回国会の開会式に臨み、前国民を代表する皆さんと一堂に会することは、私の大きな喜びであります。
 国会が、永年にわたり、世界の平和と我が国の繁栄のため、たゆみない努力を続けていることを、うれしく思います。
 ここに国会が、国権の最高機関として、その使命を十分果たし、国民の信託にこたえることを切に希望します。
   〔一同敬礼〕
 衆議院議長は、おことば書をお受けした。
 午後一時七分 天皇陛下は、参議院議長の前行で式場を出られた。
 次いで、一同は式場を出た。
   午後一時八分式を終わる 
ソース: 国立国会図書館
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