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1993/05/12 第126回国会 参議院 参議院会議録情報 第126回国会 本会議 第15号
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1993/05/12 第126回国会 参議院

参議院会議録情報 第126回国会 本会議 第15号

#1
第126回国会 本会議 第15号
平成五年五月十二日(水曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第十五号
  平成五年五月十二日
   午前十時開議
 第一 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を
  改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、国務大臣の報告に関する件(平成五年度地
  方財政計画について)及び地方交付税法等の
  一部を改正する法律案(趣旨説明)
 一、商法等の一部を改正する法律案及び商法等
  の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律
  の整備等に関する法律案(趣旨説明)
 一、労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関
  する臨時措置法の一部を改正する法律案(趣
  旨説明)
 以下 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(原文兵衛君) これより会議を開きます。
 この際、日程に追加して、
 平成五年度地方財政計画についての国務大臣の報告及び地方交付税法等の一部を改正する法律案についての提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(原文兵衛君) 御異議ないと認めます。村田自治大臣。
   〔国務大臣村田敬次郎君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(村田敬次郎君) 平成五年度の地方財政計画の概要及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨について御説明を申し上げます。
 平成五年度の地方財政につきましては、最近における経済情勢の推移と地方財政の現状にかんがみ、おおむね国と同一の基調により、歳入面においては、地方税負担の公平適正化を推進するとともに、地方一般財源の所要額の確保を図ることを基本としております。
 また、歳出面におきましては、経費全般について徹底した節減合理化を図るとともに、景気に十分配慮しつつ、自主的.主体的な活力ある地域づくり、住民生活の質の向上のための社会資本の整備、地域住民の福祉の充実、快適な環境づくりなどを積極的に推進するため必要な事業費の確保に配意する等、限られた財源の重点的配分と経費支出の効率化に徹し、地方財政の健全性の確保にも留意し、節度ある行財政運営を行うことを基本としております。
 以下、平成五年度の地方財政計画の策定方針について御説明申し上げます。
 第一に、地方税については、最近における社会経済情勢の変化に対応して早急に実施すべき措置を講じることとしております。
 第二に、地方交付税については、将来にわたる交付税総額の安定的な確保に配意しつつ、平成五年度の地方財政の円滑な運営に支障が生じないよう、その総額を確保するとともに、四千億円を減額する特例措置等を講じることとしております。
 第三に、公共事業等に係る国庫補助負担率の恒久化に伴う地方財政への影響額等については、地方団体の財政運営に支障が生じることのないよう適切な財政措置を講じることとしております。
 また、義務教育費国庫負担金等のうち共済費追加費用、保健所運営費交付金等の国庫補助金等の一般財源化及び国民健康保険制度に係る保険基盤安定制度の暫定措置に伴う影響額については、所要の財源措置を講じることとしております。
 第四に、地域経済の振興や雇用の安定を図りつつ、景気にも十分配慮して、自主的・主体的な活力ある地域づくり、住民生活に直結した社会資本の整備、地域住民の福祉の充実、快適な環境づくり、住民生活の安全の確保等を図るため、地方単独事業費の確保等所要の措置を講じることとしております。
 第五に、地方行財政運営の合理化と財政秩序の確立を図るため、定員管理の合理化及び一般行政経費等の抑制を行うとともに、国庫補助負担金について補助負担基準の改善を進めることとしております。
 以上の方針のもとに、平成五年度の地方財政計画を策定いたしました結果、歳入歳出の規模は七十六兆四千百五十二億円となり、前年度に比し二兆五百一億円、二・八%の増加となっております。
 次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 平成五年度分の地方交付税の総額につきましては、地方交付税法第六条第二項の額に三百七十億円を加算した額から、特例措置額四千億円及び交付税特別会計借入金元利償還額千八百二十四億円を控除した額とすることとした結果、十五兆四千三百五十一億円となっております。
 また、特例措置額四千億円に相当する額等につきましては、後年度の地方交付税の総額に加算することとしております。
 さらに、平成五年度分の普通交付税の算定につきましては、自主的な地域づくりの推進、高齢者の保健福祉の増進、森林・山村対策等のため地方団体が必要とする経費の財源を措置するため、単位費用を改定すること等としております。
 以上が、平成五年度の地方財政計画の概要及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#6
○議長(原文兵衛君) ただいまの報告及び趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。山口哲夫君。
   〔山口哲夫君登壇、拍手〕
#7
○山口哲夫君 私は、日本社会党・護憲民主連合を代表して質問をいたします。
 地方交付税並びに地方財政計画の質問に入る前に、今日非常に重大な情勢を迎えておりますカンボジア問題について質問をいたしたいと思います。詳しくは改めて政府から報告があると思いますので、本日はとりあえず以下の問題について質問をいたします。
 既にカンボジアにおいては二名の日本人死者を含む五十二名の国連要員の死者が出ており、この数はさらにふえるおそれが強いのであります。
 私は、これらの犠牲者に心から哀悼の意を表明いたします。
 さて、村田国家公安委員長には、けさカンボジアから帰国されたばかりですが、早速お聞きをいたしたいと思います。
 まず、見舞われた入院中の警察官及びプノンペンで会見された警察官からどのような報告と要請を受けられたのか、具体的に報告をいただきたいと思います。また、明石代表に対して何を要請され、どのような回答を得たのか、さらにカンボジア情勢とUNTAC要員の安全確保についてどのような見通し、認識を得られたのかを御報告いだだきたいと思います。
 我が党ま、自衛隊を除く文民のPKO要員の派遣を主張してまいりました。しかし、これはあくまで平和維持活動の原則が守られていることが前提であります。
 しかし、今日のカンボジア情勢は、国連PKOの前提となる三原則がほぼ崩壊状態にあるというのが衆目の一致するところであります。武力襲撃、そして武力衝突は多発し、大規模化の様相も呈しております。軍隊の宿営地への集結や武装解除も実施されておりません。パリ協定に言う停戦の実質は存在していないのであります。また、UNTAC自体が紛争当事者の一方から公然と敵視されております。UNTACがポル・ポト派を除く各派の軍隊で投票所を守らせるとするならば、国連の中立性さえ問われることになるのではないでしょうか。これでは自由かつ公正な選挙は全く不可能と言わなければなりません。カンボジア情勢及び紛争当事者とUNTACの関係について、総理の認識をお伺いしたいのであります。
 UNTACの使命はカンボジア国民の和解と復興にあり、選挙はそのための手段であります。この際、国連は紛争当事者の合意と協力が得られるよう説得と調整に全力を尽くすべきであります。その結果、選挙が多少延期されることがあるでしょうけれども、選挙さえ実施すれば事足れりという態度では、紛争はさらに拡大し、本来の和解と復興もできず、いたずらに犠牲者をふやすことになりかねないのであります。
 政府は、この際、停戦や選挙の実施に関する紛争当事者の実質的な合意が存在していないという現実に立脚して、PKOのあり方を根本的に問い直すとともに、これ以上の犠牲者が出ないよう自衛隊を含むすべてのPKO要員を撤収すべきであり、この方向で国連に働きかけるべきであると思いますけれども、総理の答弁を求めるものであります。
 さて、地方財政計画と地方交付税に関して質問をいたします。
 交付税の質問に入るその前提として、国と自治体との関係について確認をしておかなければなりません。
 七年前、私は予算委員会で当時の中曽根総理にこの質問をいたしたことがあります。そのとき中曽根総理の答弁は、自治省が本来持っている監督権に基づいて自治体を指導助言するというのが国と自治体との関係であると答弁をいたしました。唖然としたのであります。まさに戦前の内務官僚の考え方をそのまま持っているのであります。国と自治体との関係というものは、国が上にあって自治体が下にあるなんというものではありません。これはあくまでも対等、平等が原則であります。そういう考え方に立つならば、まず地方自治体が持っている権利というものをきちんと認めるということが、国と自治体との関係で最も重要な問題であると言わなければなりません。ところが、その権利を財政的な面で四千億も特例減額をやるということで踏みにじったのが今日の実態であります。
 地方交付税というものは、五つの国税に対する一定率を掛けたその金額が地方交付税の総額であり、これが自治体の財政的な権利でもなければなりません。それを交付税総額から四千億円、昨年は八千五百億円、その前の年は四千五百二億円、三年間で何と一兆七千二億円と、う莫大な金額を国に吸い上げたのであります。当然私どもは許すことはできないのであります。このことについて、自治体の財政的な権限を一方的に国が踏みにじったと考えるけれども、総理のお考えを聞きたいのであります。
 このような考え方があるからこそ、私どもは地方行政委員会でも国会決議をいたしました。すなわち、「地方交付税を国の一般会計を通すことなく、国税収納金整理資金から直接交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れる制度を積極的に検討すること。」毎回のように国会決議をしているのであります。すなわち、交付税というものは国の一般会計を通すのではなくして、直接地方交付税の特別会計に直入をせいというのが私どもの考え方なのでございます。これに対する大蔵大臣とそれから自治大臣の見解を承りたいのであります。
 さらに問題は、法律とそれから大蔵大臣と自治大臣の間で決められた覚書まで踏みにじって、七千二百三十一億円という莫大な金額をこれまた一方的に四年間延期して九七年度から交付税に加算をするということをやってまいりました。これも私どもとしては到底納得できることではありません。国の権力によってこれは地方財政を支配したということになるのではないだろうか。この点に対する総理の見解を承りたいのであります。
 さて、地方自治体にはやらねばならない問題が山積をいたしております。例えば道路の舗装率一つとってみても、国道は八七・七%、これに比べて都道府県道は四八・三%、市町村道に至っては一五・一%という、まことに少ない舗装率であります。本来、国民の多くが通勤、通学あるいはお買い物に毎日使うこの市町村道が最も舗装率がおくれているという実態なのであります。
 さらに、今、政府は、西暦二〇〇〇年を目指して寝たきり老人ゼロを実現しようということで、ゴールドプラン、すなわち老人保健福祉計画を実行いたしております。その重要な事業の一つにホームヘルパーの増員問題があります。ところが、このホームヘルパーを二〇〇〇年には十万人にするという計画でありますけれども、そのことが実現されたといたしましても、西暦二〇OO年で人口十万人に対するホームヘルパーの数は何とわずかに九十人であります。福祉国家と言われるスウェーデンは現在既に十倍以上の九百二十人であります。したがって、地方自治体はもっと積極的にこの事業を実施していかなければなりません。
 また、生活関連社会資本整備の国際比較を見てみますと、道路の舗装率は、イギリスが一〇〇%、ドイツが九九%、アメリカ九〇%、フランス九二%、日本はわずかに七〇%であります。下水道の普及率は、イギリス九五%、ドイツ九一%、アメリカ七三%、フランス六四%に対して、これまた日本はわずかに四五%であります。都市公園一人当たりの面積に至っては、ドイツが三十七・四平米、イギリス三十・四平米、アメリカ十九・二平米、フランス十二・二平米に対し、我が国は何と一けたの二・六平米であります。
 このように社会資本整備は、総理は生活大国を目指そうとしているけれども、極めてお粗末なのが実態なのであります。このようなことは文化面においてもあるいは環境面においても同じことが言えるのでありまして、我が国はこういった公共事業を急がなければならないのであります。したがって、生活大国を目指そうとするならば、その実現のために最も財政負担を強いられている地方自治体に対し、まず財政計画を大幅にふやし、その中で地方交付税の増額を行うべきであると考えるけれども、総理の見解を承りたいのであります。
 さてもう一つ、国庫補助負担金の一般財源化の問題があります。これについては我が党も基本的に賛成であります。しかし、権限の移譲がセットでなければならないという条件づきであります。ところが、本年はこの一千八十四億円という莫大な金額を、本来ならば地方交付税とは別枠で補助負担金を支出していたのでありますから、当然交付税に別枠として積むのが常識ではないでしょうか。それを一般の地方交付税の中で一千八十四億円を見るということは、その分だけ自治体の地方交付税を期待していたものが減らされたということになりはしないでしょうか。これに対する総理の見解を承りたいのであります。
 政府はどうも野党を甘く見ているようであります。どうせ野党は交付税には反対しないであろう、そういうふうにたかをくくって、したがってこの三年間連続して特例減額をやってきたのではないでしょうか。
 さて、四月十三日に発表された新総合経済対策十三兆二千億円、この中には地方単独事業が三兆五千億円も含まれております。公共事業四兆一千七百億円、この大部分は地方自治体が負担をして実行しなければならないのであります。地方自治体は、総理の言う新総合経済対策を進めるためにも大変な財政負担を強いられるのであります。私どもはこういう実態を考えるときに、これからますます地方自治体の財政が苦しくなろうとしているときに、我々の今日までの忠告に一切耳をかさないというのであるならば、我々も今後この地方交付税に反対する決意を固めなければならないときが来るのではないかと考えるのであります。
 最後に、来年度以降、総理は特例減額あるいは補助負担金の交付税枠内での一般財源化は絶対にやらないということをここで言明していただきたいと思いますし、またこれから行われようとする新総合経済対策の地方財政に対しましては、この地方財政に十分な措置をとる、自治体に負担をかけないということをここでお約束いただき、答弁のいかんによっては再質問することを議長にお願いして、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(宮澤喜一君) 去る五月四日、カンボジアにおいて国際平和協力業務に従事しておりました我が国文民警察要員五名が、他のUNTAC要員とともに武装グループに襲撃されました。うち、高田晴行さんが殉職され、残り四名の方々も負傷されるという痛ましい事件がありました。
 かかる事件の発生に対し、深い悲しみと強い憤りにたえず、高田さんの御冥福をお祈りし、御遺族に衷心よりお悔やみを申し上げるとともに、負傷された方々の一日も早い御回復を祈念しております。世界平和のため努力してこられた前途有為な人材を失ったことは、まことに断腸の思いであります。
 カンボジアにおきましては、このほかにも種々の暴力行為、テロ事件が発生をしております。また、ポル・ポト派が選挙への不参加を表明いたしましてプノンペンの事務所を閉鎖するなど、不安定な要因が存在をしております。カンボジア四派のうちポル・ポト派を除く三派は武装解除に応じるなどおおむねUNTACに協力してまいりましたが、ポル・ポト派が武装解除に応じず、これが今日の事態の一つの原因になったわけでございますが、ポル・ポト派のUNTACへの非協力的態度はいろいろな意味で国際的に非難をされているところであります。
 しかし、現在カンボジアの情勢を見ますと、どのような局地的な停戦違反事件はございますが、もとより全面的に戦闘が再開されているわけではありません。また、カンボジアにおける紛争当事者各派はパリ和平協定におのおの署名をいたしており、UNTACの設立についてもSNCを通じてこれを受け入れ、またUNTACの活動を受け入れているわけであります。ポル・ポト派自身も、パリ和平協定につきましては、最近の声明においても和平協定そのものは自分たちは認めるのである、むしろ和平協定が十分に忠実に実施をされていないところに問題があるというのが主張であります。
 すなわち、ポル・ポト派の主張によれば、ベトナムの人たちがまだ多数残留をしておるというようなこと、あるいはSNCが期待されたような独立の権限を十分に行使していないといったようなそういう主張でございますので、ポル・ポト派自身がパリ協定という和平の枠組みあるいはUNTACの活動を否定するというような立場には立っていないというふうに思われます。事態は複雑でございますが、基本的にはそういう構図であるというふうに思われます。
 したがりて、パリ和平協定に基づく和平プロセスの基本的枠組みは依然として維持されている、いわゆる法に言う五原則は満たされているというふうに考えておりますので、ただいまの時点で中断、撤収等を検討すべき状況ではないというふうに私は判断をいたしております。
 また、このようなポル・ポト派の選挙不参加にもかかわらず、既にカンボジアにおきましては住民の九〇%と推定される四百七十万に上る選挙登録が行われております。このことはカンボジアの国民の多くが選挙を望んでいるということの証左であると思われますし、また制憲議会選挙を予定どおり実施することにつきましては、シアヌーク殿下自身もこれについて、つい二、三日前にも国民に呼びかけられ、また国際社会も累次これを確認しているところでございますから、我が国としても選挙が予定どおりかつ安全裏に実施されるようUNTAC関係諸国とともに努力をすることがこの際緊急な要務であろうと思います。いずれにいたしましても、派遣要員の安全対策につきましては、政府として万全を期してまいりたいと考えております。
 次に、法案につきましての御質問でございましたが、国と地方公共団体とは、国民がゆとりと豊かさを実感できる生活大国の実現という共通の目標に向かって、御指摘のようにそれぞれおのおの機能と責任を分担し協力する関係にあると承知をいたしております。その際、住民に身近な行政はなるべく住民に身近なところで地方公共団体が処理されることがこれが考え方の基本であると考えております。そのためには、国から地方への事務・権限の委譲等地方分権を推進し、地方公共団体の自主性、自律性の強化を図ることが必要であるというのが私の基本認識であります。
 地方交付税の性格についてもお尋ねがございましたが、地方交付税は地方団体に法律上当然に帰属するという意味において地方の固有財源であると考えて差し支えないと思います。平成五年度の地方財政につきましては、住民福祉の向上、景気に配慮した地方単独事業の大幅な増額など財政需要を的確に見込み、所要の地方交付税総額を確保した上で、現下の厳しい国の財政事情のもとで国と地方の公経済のバランスをも勘案し、地方交付税総額の特例措置を行うこととしたものでありまして、この間の事情につきましては何とぞ御理解を得たいと存じます。
 その際、今後の地方交付税の安定的な確保と地方財政の健全性の維持が不可欠であるという観点から、法律や覚書によって五年度の地方交付税に加算することとされている額について、その一部を後年度に繰り延べることといたしたものであります。今後とも地方財政の円滑な運営には十分配慮をしてまいらなければならないと思います。
 生活大国を実現いたしますために、住民に身近な行政を行っている地方団体の役割はもとより極めて重要でありまして、自主財源である地方税とあわせ地方交付税等の一般財源の充実強化が必要と思います。今後ともこうした観点から、地方交付税所要額の確保等地方一般財源の充実強化を図っていくことといたしたいと思います。
 国庫補助金等の一般財源化に見合う所要額につきましては、毎年度地方財政計画に適切に計上をすることによりまして地方財政全体として必要な財源を確保し、地方財政の運営に支障が生じることのないよう措置することと、たしているところであります。地方財政そのものは、多額の借入金残高を抱えております上、現下の経済状況のもとで税収の伸び悩みなど厳しい環境に置かれているものと認識をいたしております。決して余裕がある状況であるとは考えておりません。また、今後社会資本整備の充実、高齢化社会の進展への対応など多額の財政需要が将来にわたって見込まれているところであります。このため、今後とも地方財政の円滑な運営に支障が生じませんよう、地方財政計画の適切な策定を通じ地方財政の充実を図っていく必要があると考えております。
 残りのお尋ねにつきましては関係大臣からお答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣村田敬次郎君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(村田敬次郎君) 私は、宮澤総理からの御指示によりまして、五月八日から十二日までカンボジアを訪問いたしました。その際、今回のカンボジア訪問におきまして、バンコク市内の病院に入院中の文民警察官四名を見舞ったほか、プノンペン市内において文民警察官十三名と会見いたしましたが、彼らからは治安状況や生活環境についての報告を受けました。非常に彼ら文民警察官の諸君は、責任感圧盛にして誠心誠意しっかり勤務に精励をしておられるという頼もしい印象を受けて帰ってまいった次第でございます。
 また、明石代表との会見につきまして御報告を申し上げます。私は明石UNTAC代表に対して、文民警察隊員に対する警護の強化、配置先の再検討、プノンペンにおける安全対策会議の開催などを強く要望いたしました。それに対して明石特別代表からは、UNTACとしても隊員の安全対策に万全を期したい、UNTAC要員の配置については再度緊急に検討したい、安全対策のための会議を巡回によって行うといった対応が示されました。
 カンボジア情勢につきましては、我が国文民警察隊員の高田さんが痛ましい死を遂げられる等、総理から御報告のありましたようにいろんな不安定な要因が存在するのは事実でございます。しかしながら、現在カンボジアにおいて全面的な戦闘が行われているわけではなく、パリ和平協定の枠組みは依然維持されておると総理から御答弁のあったとおりでございます。そうした情勢のもとで、世界でも最大の二万六千人のUNTAC要員が選挙実施に向けて現在懸命の努力をしているところでございます。したがって、我が国から派遣されている要員につきましても、各国と同様その安全対策に万全を期することま言うまでもありませんが、引き続き担当業務を進めることが非常に重要であると考えております。
 地方交付税を一般会計を通すことなく交付税特別会計へ直接繰り入れる措置につきましては、かねてから地方制度調査会等からも御指摘をいただいているように、地方交付税の性格、すなわち地方公共団体の固有財源であることをより明らかにする措置であると考えており、自治省としてはその実現を図ることが望ましいものと考えております。
 以上、お答え申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣林義郎君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(林義郎君) 山口議員の御質問にお答え申し上げます。
 私に対する御質問は、地方交付税を国の一般会計を通すことなく、国税収納金整理資金から直接交付税及び譲与税配付金特別会計へ繰り入れる制度を検討すべきではないか、こういった御質問でありまして、私の見解はどうかという御質問だと思います。
 かねてから国会でいろいろ御議論のありたところでございますが、地方交付税を一般会計から交付税特別会計に繰り入れるという現行制度は、昭和二十九年の地方交付税制度創設以来とられているところの制度でございます。これを変更することは国の予算制度または会計制度にも大きな影響を及ぼすものでありますし、極めて問題が多いところではないか、こういうふうに考えているところでございます。(拍手)
#11
○議長(原文兵衛君) 山口哲夫君。
    〔山口哲夫君登壇、拍手〕
#12
○山口哲夫君 村田国家公安委員長は極めて重要な任務を持ってカンボジアに行ったはずであります。一体文民警察官と会ってどんな報告を受けたのか、その概要についてもう少し具体的に説明をしていただかなければ、今のような説明では一体何のために行ったのかさっぱりわからないではないでしょうか。もう少し誠意を持った説明をしていただきたい。
 それからもう一つ、総理にお聞きしたいのは、パリ協定はポル・ポト派が認めていると盛んに言うけれども、問題は、国連のPKO三原則の一番大事なところの紛争当事者の停戦合意の成立が崩れているではないか、この一番大事なことが崩れているのになぜ今日までPKO活動を続けなければならないのか、そういうことについて具体的に説明を求めているのであります。
 特に、このPKO三原則の第一というものは、実施段階で四つの原則が守られていなければならないと言っているのであります。それは、停戦合意をした四派が絶対に発砲し合ってはならないという大原則があるはずであります。それなのに四十数件も既に発砲事件が発生しているではないか。そしてプノンペン政府がポル・ポト派を攻撃しているというのは、これは一体この原則に違反していないのかどうなのか。
 こういう具体的な事例に立ったならば、当然この三原則は守られていない、崩壊していると見なければならない。そうするならば、当然我が国の要員も撤収しなければならないのではないですか。そのことはこの法案提出のときに盛んに政府みずからが言っていたことではないか。それと全く食い違っていることに対して、今単にパリ協定が認められているということだけでもって撤退させないということにはつながらない、このことを強調したいのであります。
 さて、交付税の問題であります。
 まず、この交付税の問題については、総理はこれは自治体固有の財源であることを認めておきながら、それではなぜ四千億を吸い上げるのかということに対して理由は何も言わないでただ認めてほしいと言ったって、地方自治体はこれは納得できる問題ではないのであります。この理由を明らかにしていただきたい。
 そしてもう一つは、この交付税を一般会計から特別会計に入れるのではなくして、直接特別会計に交付税総額を入れなさい、こういう決議に対してどう考えているのかという質問に対して、予算委員会では自治大臣は決議を守りますという決意表明をしているのであります。それを今あいまいな態度でもって答弁するというのは一体どういうことなんですか。この自治大臣の答弁と、大蔵大臣は決議には反対であるということを言っているのであります。この問題は、総理の諮問機関である地方制度調査会が何回もこのことを総理に対して答申して、直入をしなさいということを再三言っているのであります。それを一向に守らないというのは一体どういうわけなんですか。総理の見解をもう少しはっきりとお聞きしたいのでございます。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(宮澤喜一君) 第一の問題は、先ほどお答えをいたしたつもりでございましたが、十三年に及ぶ戦闘が行われて関係者がすべて戦い疲れて、結局いろいろ経緯はございましたけれども、各国も仲介をいたしてパリの和平協定というものができた。これには全部の各派が署名をいたしたわけでございますから、それが基本の枠組みでございます。
 そこで、ただそういう状況でございましたから、平和を確保するために国連の平和維持活動が始まったわけでございますけれども、過去にそういういきさつがございましたから、すぐにすべてが静かになるというわけにはいかない、平和を確保するという努力が今選挙に向かって行われているというのが現実であると思います。
 そこで、確かにクメール・ルージュは御承知のように一種の攻撃的な行為がところどころでございますけれども、先ほども申しましたパリ和平協定というものはむしろ積極的に評価をしている立場であります。それが、ベトナム人がなお排除されていないという主張であったり、SNCが十分に独立の機能をしていないという主張であって、パリ和平協定そのものを否定しているという立場ではない。これはごくごく最近の声明もそう言っておるわけでございますから、そういう意味で停戦合意というものが破れていないというふうに考えるわけであります。
 次に、地方税のことについてお話がありまして、確かに地方財政も決して楽ではございませんけれども、国の財政もさらにそれを上回るような状況の中で、予算編成に際しまして、結局地方の財政国の財政といっても、いずれにしてもそれは国民の財政であるというような大乗的な見地から地方に対して了解を得てああいう措置をいたした。これは決して本来好ましいことではございませんけれども、総合的に考えました措置としていたしましたもので御理解を得たい、こう考えておるわけでございます。
 最後に、直入の問題は、これは長い間の御指摘のような議論のある問題でございますけれども、いずれにしても予算制度、会計制度等々に非常に大きな影響のある問題でございますので、両省間でなお協議を続けてもらいたいというふうに考えております。(拍手)
   〔国務大臣村田敬次郎君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(村田敬次郎君) 実際にカンボジアに参りまして、そして私が見た生な感想を述べさせていただきたいと思います。
 カンボジアには二万六千名のUNTAC要員、地球上最大の要員が行っておられるわけでございまして、まさにカンボジアは国の夜明けを迎えようとしておる、そしてカンボジア国民にUNTAC要員、国連、日本も全面的な協力をするという建前でございまして、このことは明石代表とも一時間半にわたって会見をし、そして強く日本の文民警察等の安全を心から要請を申し上げたわけでございます。
 そして、プノンペン市内で行われました文民警察官との会見、あるいは現地を視察して各地の方々、そしてまた日本の文民警察官との会見におきましていろいろ生な感想を聞かせていただきました。そして、私は先ほど申し上げたように、これらの文民警察官は責任感旺盛で、一生懸命職務に従事しておるという、私は国家公安委員長あるいは自治大臣としての所感を得て帰ってきたところでございます。率直にここで御報告を申し上げます。
 また、交付税の直入問題につきましては、総理からも御答弁がございました。これは先ほど申し上げましたように、地方固有の財源であるということで自治大臣としては直入制度を心から望んでおるわけでございまして、公経済を担う大蔵、自治両省がその両翼として貸し借りという問題が出ておるわけでございますが、これは必ず全額国家財政から返していただくという建前であり、その方向に向かって協議を続けておるところでございます。この点は絶対に御心配がないように努力をいたします。(拍手)
#15
○議長(原文兵衛君) 自治大臣の答弁については、後刻協議することとし、次に進みます。
     ─────・─────
#16
○議長(原文兵衛君) この際、日程に追加して、
 商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#17
○議長(原文兵衛君) 御異議ないと認めます。後藤田法務大臣。
    〔国務大臣後藤田正晴君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(後藤田正晴君) 商法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、会社をめぐる最近の社会経済情勢等にかんがみ、株主による会社の業務執行に対する監督是正機能をより強固にするとともに、株式会社の監査役制度の実効性を高めるために必要な措置を講ずるほか、株式会社の社債による資金調達の需要の増大の状況にかんがみ、企業の資金調達の方法の合理化を図るとともに、それに伴い、社債権者の保護を強化するため、商法、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律及び担保附社債信託法の一部を改正しようとするものでありまして、その改正の要点は、次のとおりであります。
 まず、商法につきましては、第一に、株主の代表訴訟の遂行に伴う株主の負担を軽減するため、この訴訟の目的の価額を九十五万円とみなすこととするとともに、代表訴訟に勝訴した株主はとの訴訟に要した費用で訴訟費用でないものの相当額の支払いを会社に対して請求することができる改正をすることとしております。
 第二に、株主が会社の会計帳簿等を閲覧謄写することができることを容易にするため、閲覧謄写することができる株主の持ち株要件を発行済み株式の総数の十分の一から百分の三に緩和する改正をすることとしております。第三に、株式会社の監査役の地位の強化を図るため、監査役の任期を二年から三年に伸長する改正をすることとしております。
 第四に、企業の資金調達の方法の合理化を図るとともに、それに伴い、社債権者の保護を強化するため、社債発行限度に関する規制を廃止し、これにかえて、社債を募集するには、会社は、社債管理会社を定め、社債権者のために社債の管理を行うことを委託することを原則的に義務づけるとともに、社債管理会社の社債権者に対する義務及びその権限を明確にし、また、社債権者集会における社債権者の議決権の行使を容易にする改正をすることとしております。
 次に、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律につきましては、大会社における監査役制度を充実強化するため、第一に、監査役の員数を二人以上から三人以上に増員する改正をすることとしております。
 第二に、監査役のうち一人以上は、その就任前五年間、会社またはその子会社の取締役または使用人でなかった者でなければならないとする改正をすることとしております。
 第三に、監査役の全員で監査役会を組織し、監査役会において監査役の協議により監査の方針等を定めるとともに、監査役の報告に基づいて監査報告書を作成しなければならないとする等の改正をすることとしております。
 最後に、担保附社債信託法につきましては、担保付社債の募集の公告の制度を廃止して、社債申込証により募集及び申し込みをさせる等の改正をするほか、商法の社債に関する制度の改正に伴い、所要の改正をすることとしております。
 次に、商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、商法等の一部を改正する法律の施行に伴い、社債発行限度暫定措置法等を廃止するとともに、非訟事件手続法外六十八の関係法律について規定を整備し、所要の経過措置を定めようとするものであります。
 以上が商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の趣旨であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#19
○議長(原文兵衛君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。峰崎直樹君。
    〔峰崎直樹君登壇、拍手〕
#20
○峰崎直樹君 私は、日本社会党・護憲民主連合を代表して、ただいま議題となりました二法律案に対し、総理並びに関係大臣に質疑を行います。
 去る四日、国連カンボジア暫定統治機構UNTACに派遣された文民警察官五人の死傷事件が発生しました。
 質疑に先立ち、私は死亡した高田晴行警視の御冥福をお祈りするとともに、御遺族に衷心よりお悔やみを申し上げます。また、負傷された要員各位に心からお見舞い申し上げます。
 このような事態に対し、総理は仕方ないなと発言されたとも報じられておりますが、その真意を明らかにしていただきたいと存じます。
 さて、商法に改正を加える必要があるとすれば、その要綱を示されたいと法務大臣が法制審議会に諮問したのは今から四十年近くも前の一九五四年、昭和二十九年のことです。その答申を受けてこれまでに累次にわたる法改正が行われてまいりました。
 特に、一九六五年、昭和四十年代からの数年置きの商法改正は、いずれも資本の自由化と株式会社の不祥事対策を背景にしたびほう策的改正にとどまるものとは言えないでしょうか。確かに、会社は利潤を追求する営利法人であって慈善事業団体ではありません。しかしながら、現代の国民生活や海外取引は企業の存在抜きには語れないものとなっており、今や会社の社会性、公共性は国際的にも無視することはできない時代になっております。
 一九七四年、昭和四十九年の商法改正案の議決に際し、本院法務委員会は、「大規模の株式会社については、その業務運営を厳正公正ならしめ、株主、従業員及び債権者の一層の保護を図り、併せて企業の社会的責任を全うすることができるよう、株主総会及び取締役会制度等の改革」を行うよう政府に求めました。
 ところが、国民の怒りと政治不信を増幅させた東京佐川急便に見られる取締役の特別背任事件、イトーヨーカ堂や金権腐敗政治とも密接に関連した平和相互銀行事件に見られる監査役の不祥事等々、累次の商法改正にもかかわらず、企業犯罪は依然として後を絶ちません。また、ロッキード事件以来、政治腐敗はとどまるところを知らず、総理御自身も関与を指摘されたリクルート事件に見られる企業の反社会性も記憶に新しいところです。さらには、やみ献金の原資とも見られる今般のゼネコンなどの異常なまでの使途不明金の存在、これらはいずれも長期自民党政治支配のもとにおける汚職と利権政治を再生産する構造的な政治機構が一向に改善されてはおらず、またこれまでの商法改正が何ら本院の附帯決議にこたえるものとはなっていないことの証左ではないでしょうか。
 その意味において、商法改正は決して政治改革と無縁の存在ではないし、また取締役や監査役の犯罪を阻止できず、とどまるところを知らない多額の使途不明金をチェックできない監査制度等は、株主や債権者などの権利を完全にじゅうりんするものであり、この際、商法サイドからの徹底的な改革も必要になっているのではないでしょうか。
 さらに、会社法については、ここ十数年来顕著となっている経済の国際化等の進展に伴う企業経営環境の激変に配慮し、国際会計基準の導入等をも念頭に置き、また二十一世紀を展望した新たな視点から、我が国のあるべき企業法制を構築するための抜本的見直しを図る時期が到来していると言えるのではないでしょうか。
 私は、このような認識のもとに、今回の改正法案の疑問点などについて順次お伺いしていきたいと思います。
 まず、私の認識に対する総理の御所見を伺いたいと存じます。
 次に、総理の政治姿勢を伺いたいと存じます。
 今や政治改革の最大の課題は、金権腐敗政治を一掃し政治倫理を確立することにあると思います。そのためには、総理の強力なリーダーシップのもとに所要の新法制定を検討するほか、現行の法律や制度の運用を一部改正の必要性を含めていかに一体的、有機的に活用してその実効性を図っていくかが求められているのです。
 それには、第一に、企業・団体献金を即座に廃止することが必要です。幾ら政治家個人間の寄附を禁止してみても抜本的な改革にならないと思いますが、いかがですか。
 第二には、代表質問で我が党の矢田部議員が質問したように、英国並みの政治腐敗防止法の速やかなる制定が必要です。今衆議院政治改革調査特別委員会で審議中の自民党提出の関連議案では真の政治浄化への基本法と言うには甚だ不十分だと思います。総理・総裁として、矢田部議員に対する答弁の責任を問いたいと思います。
 ところで、今回の商法改正も理念的な改正にとどまり、真に機能的、効果的な法改正になっていないというのが学者、有識者の多数意見です。基本法たる商法の改正には十分なる検討と精緻な理論的整合性が要請されるにもかかわらず、七月の東京サミットを念頭に、日米構造問題協議での指摘事項を早期に解決しようとする余り、総理お得意の外圧をてこにして新総合経済対策にまで盛り込んで本案の早期成立を期し、その速やかなる施行を図る旨決定したのではないでしょうか。仮に今国会で成立したとしても、施行期日が数カ月先と予想される本案に景気対策の効果を期待することはそもそも困難であるし、宮澤内閣の経済運営の失敗を棚上げにしたまま、安易に基本法たる商法をなりふり構わず経済対策に結びつけようとする発想は筋違いと思いますが、いかがですか。
 バブル当時に発行されたワラント債の償還が本年度約十一兆円に上ると言われております。今回の社債制度の改正はそれをも念頭に置いたものであり、企業の資金調達の関係上どうしても改正案の年内施行に持っていきたいというのが政府・自民党の本音なのではないでしょうか。そうだとすると、このような社債発行を許容していた現行の制限規制そのものが不備であったと言うべきであるし、何よりもバブル経済の運営に加担した政府・自民党の責任が問われるべきなのではないでしょうか。資金調達の容易化は、会社にメリットはあっても、本当に社債権者の保護の強化につながる改正と言えるのでしょうか。発行限度枠の撤廃を焦る余り、将来の不良債権の発生防止に手抜かりはないと言えるのでしょうか。社債管理会社の設置だけで本当に社債権者は十分保護されると言えるのでしょうか。
 また、さまざまな意見のある自己株式の取得及び保有に関する規制の見直しについても、新総合経済対策において次期常会までにと期限をつけてまで結論を急ぐ理由についても明らかにしていただきたいと思います。
 次に関係大臣にお伺いいたします。
 一九七四年、昭和四十九年、監査制度を中心とする改正が行われましたが、その後、衆参両院の法務委員会の附帯決議を受け、法制審議会などにおいて会社法の全面改正作業が本格的に始動するところとなりました。一九八一年、昭和五十六年には株式制度と会社の機関、株式会社の計算、公開に関する改正が、また一九九〇年、平成二年には小規模かつ閉鎖的な会社にも適合する法制度の整備、債権者保護を図るとともに、会社の資金調達方法を合理化するための改正が行われたわけですが、今回の改正はこのような一連の商法改正作業の一環としてはどのように意義づけられるのでしょうか。商法の抜本的改正終結への展望を含めて今後の方針を明らかにしていただきたいと存じます。
 次に、改正案は株主による会社の業務執行に対する監督是正機能の強化のために所要の改正を行うこととしているのですから、一九九〇年、平成二年の改正では取り上げないこととされた計算書類の登記所における公開制度や中規模会社の計算書類の適正担保の制度こそ今回の改正案に含める努力をするべきであったと思います。なぜ今回の改正案に含めなかったのかを明らかにしていただきたいと思います。
 監査機能の強化について伺います。
 監査役の任期の伸長や員数の増員、監査役会の法定化はおおむね大会社の現状を追認化するだけの改正ではないでしょうか。実務的には既に行われていることを法定化することにどのような意義があるのでしょうか。これで監査機能の強化が図られるとする根拠についても明らかにしていただきたいと思います。
 私は、監査役機能の実効性担保のためには、監査役の選任、人事権の独立性を確保する改正の方がよほど実務的ではないかと考えています。監査役制度の改正は、社外に人材を求めたり監査役会を法定化することに意義があるのではなく、経営者の影響力の及ばないところで選任されるようにすることこそ重要であると思いますが、いかがでしょうか。
 また、今回の改正案の社外監査役についての選任要件は極めてあいまいで、運用上の抜け道もあり、ほとんど効果が期待できないように思えます。要件について見直す考えはありませんか。監査役会の法定化は監査役個々人の意見反映の機会を現在よりも減殺させることにはなりませんか。従来の答弁との整合性についても明確な説明を求めます。
 政治改革との関連において、今やみ献金の原資ともなっている使途不明金の是正が大きな社会問題になっております。取締役が経理操作を行ったとしても、貸借対照表や損益計算書等の会社の会計帳簿からのチェックは必ずしも容易ではないと想像されますし、現実的に会社の計算書類等からは形式的には把握しがたいと思われます。しかも、現行商法上の仕組みは、不実記載や粉飾決算等の場合などに所定の罰則が適用されるケースが考えられるだけで、使途不明金そのものの発生を防止するような手だては何ら講ぜられておりません。現在は専ら税法上の問題として処理されておりますが、これでは監査機能の強化と言ってみても、株主の権利擁護のためには何の改善にもなりません。
 そこで、取締役の忠実義務違反の観点等から、商法においてもその規制のあり方を真剣に検討すべきではないかと思いますし、法人税法第百五十九条の積極的な運用も検討する必要があると思います。関連法規の一体的、有機的対処の必要性を含めて、法務大臣、大蔵大臣の所見を伺いたいと思います。
 また、使途不明金の多いゼネコン各社に対し、指名競争入札制度や談合等、やみ献金等の誘因になっていると思われる事項や企業倫理確立のための指導について、建設大臣から是正の概要と決意のほどを伺っておきたいと思います。
 次に、株主の代表訴訟の目的の価額を九十五万円とみなすこととする改正は、裁判所によって取り扱いがまちまちとなっている訴訟費用の算定に公平性を確保するものであり、改善と理解します。ただ、この法理は株主訴訟にとどまらず広くクラスアクション全般に及ぼすように関係法の改正を検討するべきであると思いますが、いかがですか。
 また、いわゆる国民の裁判を受ける権利と乱訴の防止、あるいは総会屋等による悪用の危険性の阻止についての所見と対応はどのようになっているのかも明らかにしていただきたいと思います。
 なお、株主の会計帳簿等の謄写閲覧権の緩和は理念的改善にとどまるのではないでしょうか。法律内部の整合性としての持ち株三%の要件にこだわる余り、せいぜい千株単位で所有している一般株主には全く無縁の改正とは言えないでしょうか。法務大臣は本当に実効性のある改正と思われているのでしょうか。
 一九九〇年、平成二年の改正案議決の際の当委員会の附帯決議において、「今後の法改正に当たっては、より一国会社全般の実情に配慮しつつ、実効性ある立法措置を講ずること。」を求めました。EC統合や日米構造問題協議での問題点の指摘等を念頭に置けば、国際化の進展に伴って経済活動に関する制度やルールの統一化は国際的にも不可欠のものとなっております。国際会計基準の導入、金融システムの安定性の確保を初め、企業のディスクロージャーの実施はますます重要になってきております。
 最後に、このような観点に立って、今後の商法の改正のあり方、抜本的な検討の必要性についての総理の所見を伺って、私の質疑を終わります。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(宮澤喜一君) カンボジアで起こっておりますことは重大な事態でございますので、その対応について仕方がないなどということを発言したことはもとよりございません。
 それから、企業の不祥事件について御言及がありまして、商法におきまして会社の業務執行が適正、円滑に行われ、株主、会社債権者及び従業員の利益が十分保護されるように制度上の改善が図られてきているものと思いますけれども、一部企業をめぐる不祥事件の発生について、商法その他の法令に従った会社運営が行われていなかった結果ではないかと考えられ、これはまことに残念なことと考えております。
 会社が商法を初め各種の法令を遵守して行動するよう、これまで監査制度の充実強化など商法中り諸制度の改善を図り、会社の違法、不当な行為り防止に努めてまいりました。今回の改正における株主の権利の強化及び監査制度の改善もこれに寄与するところが大きいものと期待をいたしております。経済の国際化等に対応いたしまして、これまでも昭和四十年代以降、会社法全体の見直し作業を続け、数次にわたる商法改正を経てきておりますか、今後とも社会経済情勢等の変化に適切に対応いたしまして、我が国のあるべき会社法制の整備に努めていかなければならないと存じます。団体献金のことにつきまして、これは以前にも申し上げましたが、企業も一つの社会的な存在でありますので、政治活動の自由を有するものと思います。したがって、企業等の団体献金は一概に否定すべきものとは思いません。しかし、それにはおのずから節度があるべきであろうと思います。政治改革に関連いたしまして、自由民主党ではこの点につきまして、政治資金の調達を政党中心とする目的を持ちまして、企業等の団体献金は少額のものを除き政党に限ることということを提案しておると承知をいたしております。確かに、我が国の現在の国民の政治不信は非常に深刻なものでございますので、かつて十九世紀の終わりにイギリスでいたしましたような、あのような政治腐敗防止の努力は目下極めて最も大切なことであるというふうに存じておりまして、各党とも政治改革について真剣な御論議をいただいておるところと承知をいたしております。
 次に、今回の改正事項中の社債制度に関するものでございますが、この点にりきまして先般の新総合経済対策において言及をいたしておりますけれども、しかし社債制度に関する問題は長期間にわたって商法改正の重要課題として検討されてきたものでございまして、当面の経済対策のためにこれが行われたということでは事実でございません。
 また、自己株式の取得につきましても、経済対策で言及いたしておりますけれども、これにつきましてもかねてから商法改正の検討課題として取り上げられてきているものでございまして、総じてこの商法改正というのは非常に長い時間をかけて将来に向かっての大きな作業でござい.ますので、そのときどきの経済対策からそれをどうこうするという性質の問題ではないというふうに考えております。
 今後の問題でございますが、社会情勢の変化、企業活動の国際化等を通じまして適時適切にその改正を考えていくことが肝要と存じます。
 残りの問題につきましては関係大臣からお答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣後藤田正晴君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(後藤田正晴君) 峰崎議員にお答えを申し上げます。
 社債管理会社の設置だけでは社債権者の保護は十分ではないのではないか、こういう御指摘でございますが、改正法におきましては社債管理会社に対して社債償還請求の権限のほか、発行会社の業務及び財産状況の調査権を付与するなど、社債権者の権利を保護するために十分な権限を付与するとともに、善管注意義務及び公平誠実義務などその義務を明確にし、義務違反の場合の損害賠償責任を課するなど十分な手当てをいたしております。これと、証券取引法上の各種の規制及び社債の信用性についての格付制度、こういったものの充実強化とあわせて社債権者の利益は十分に保護されているのではないか、かように考えております。
 今回の商法改正は、従前の改正との関連でどのように一体意義づけておるのか、こういう御質問でございますが、法務省といたしましては昭和四十年代以降、会社法の全面的見直し作業を行って、昭和四十九年、昭和五十六年、平成二年と逐次検討の終了したものから改正を行ってきておるものでございますが、今回の改正はこのような会社法の全面的な見直し作業の成果の一つでございます。
 特に、監査役制度の改正は、従前の改正において強化された監査役の権限の行使をより容易にするためのものでございます。
 また、社債制度の改正は、企業の資金調達の合理化、円滑化及び社債権者の保護という観点から、昭和五十年代から検討を重ねてきたものでございまして、最近における社会経済情勢の変化に適切に対応するものであると考えております。
 計算書類の登記所における公開制度及び会計調査人制度を改正案に盛り込まなかったのは一体どういうわけだ、こういう御質問でございますが、株式会社においてはその有限責任の前提として会社の計算の適正を確保し、またその計算書類を公開することが重要であり、そのような観点から法務省では計算書類の登記所における公開制度や中小会社の計算書類の適正担保の制度につき検討を続けてきておるところでございますが、現在までまだ関係各界の意見の一致を見るに至っておりません。今回の改正案に盛り込むことができなかったわけでございます。法務省としては、今後とも関係各界の意見を十分にお聞きして、適切な結論が得られるよう努力をしていく考えでございます。
 今回の監査役制度の改正によって監査機能の強化が一体図られておるのかどうか、こういう御質問でございますが、監査役は株式会社の最高機関である株主総会で選任される会社の機関であって、既に強力な監査権限を法律により与えられているものでございますが、今回の改正は監査役の任期を延長してその地位の安定化を図るということ、また大会社については、監査役の員数を増加して社外監査役及び監査役会の制度を導入しようとするものでござ、まして、これにより、従来に比べてより組織的かつ効率的な監査が行われることが期待されると考えております。
 社外監査役の要件を見直すべきではないか、こういう御指摘でございますが、会社の業務執行等に一定期間関与しなかった者に監査させるということによって業務執行に対する監査機能を高めるという社外監査役制度の趣旨に基づきまして、社外監査役の要件を、「その就任の前五年間会社又はその子会社の取締役又は支配人その他の使用人でなかった者」と定めておるものでございまして、現状においてはこれで適切な改革ではなかろうか、かように考えております。
 次に、監査役会が監査役個々人の意見反映の機会をかえって減殺するのではないか、こういう御指摘でございますが、各監査役は監査役会の決議に基づいてその事務を分担して行うこととなるわけですが、監査役会は監査役の権限の行使を妨げることはできません。また、監査報告書には各監査役の個人の意見を付記することができると、かようにされておるわけでございまして、監査役の意見反映の機会が減殺されることはないものと、かように考えております。
 次に、商法においていわゆる使途不明金の規制を検討すべきではないか、こういう御指摘でございますが、商法上はいわゆる使途不明金という概念は認められていないものでございます。いわゆる使途不明金に関して不正経理を行うということは商法の既に禁止するところであって、不正経理に関与した取締役等は罰則の制裁を受け、また会社等に対して損害賠償の責めを負うこととされておるなど、商法上、既に必要な規制は行われておるのではないか、かように考えております。
 次に、株主の代表訴訟の目的の価額についての改正をクラスアクション全体に及ぼすべきではないか、こういう御指摘でございますが、株主の代表訴訟は全株主の利益のためにその代表者として取締役の責任を追及するというものであって、今回の改正はその訴訟の訴額に関する疑義を解消するためのものでございます。
 なお、その他一般の民事訴訟等の申し立てに要する手数料のあり方については、御指摘の点も含め、さまざまな意見のあることは私は承知をいたしておりますが、そのような意見も踏まえて慎重に検討すべき課題である、かように考えております。
 次に、株主の代表訴訟における乱訴の防止のための対応いかん、こういう御質問でございますが、商法上、当該訴訟を提起するための手続が規定されているほか、被告取締役ま悪意のある原告株主に対して相当の担保を提供させることを裁判所に申し立てることができることになっておるところでございまして、この制度の適切な運用等によって乱訴の弊は防止される、かように考えております。
 次に、会計帳簿等の閲覧謄写権の持ち株要件を百分の三に緩和してもそれでは実効性がないのではないか、こういう御質問でございましたが、会計帳簿の閲覧謄写権を有する株主の持ち株要件は、御承知のとおり現行法では発行済み株式総数の十分の一以上とされておりますが、この要件は余りにも厳し過ぎるということを考えまして、改正案は株主による会社の業務執行に対する監督是正機能を強化するために百分の三に緩和するものでございまして、株主の権利の強化という点において私は重要な意義を持っておる、かように考えておるわけでございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣林義郎君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(林義郎君) 峰崎議員の私に対する御質問は、使途不明金の是正のために法人税法百五十九条の積極的な運用を検討したらどうかと、こういう御質問だったと思います。
 使途不明金が書いてございますのは、脱税犯という項目で百五十九条にございますが、これに基づきまして調査査察を厳正に行っていくべきではないかと、こういう御趣旨と理解いたしまして申し上げますが、一般論として調査査察を行うためには同条での構成要件がございます。偽りその他の不正の行為があること、第二に法人税を免れたという逋脱の結果が発生をしておること、第三に一般の刑法犯と同様に故意があること、これが必要でございまして、これらについて立証し得る見通しがあるかどうかを検討した上で調査査察の要否を判断するという建前になっております。
 使途不明金がある場合には、まず使途不明金が実際には当該法人に留保され、その法人の所得を構成しているのか、または実際に支出され、支出先の相手方の所得を構成しているのか、使途を解明する必要があると思います。その結果、使途不明金がいずれかの側の所得を構成することが明らかになった場合におきまして、それが偽りその他不正の行為によって通脱された所得であり、かつ脱税についての故意が認められれぽ調査査察を行うという建前になっております。
 こうした考え方に基づきまして、これまでも調査査察を行ってきているところであり、今後とも厳正に対処してまいりたい、こういうふうに考えております。(拍手)
   〔国務大臣中村喜四郎君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(中村喜四郎君) 峰崎議員にお答えをいたします。
 私に対しましての御質問は、使途不明金の多いゼネコン各社に対する指名競争入札制度や談合等、やみ献金等の誘因になっておると思われる事項や企業倫理の確立のための指導についての是正の概要と決意いかにという御質問でございました。
 建設省と、たしましては、今回の件に伴って建設業界が国民の厳しい批判を受けることとなり、あわせて公共工事の入札・契約制度の運用について不透明な点があったのではないかという指摘が行われていることを重く受けとめ、建設業界の倫理の確立を図り、入札・契約制度について透明性、競争性を一層高めていくために省を挙げて現在取り組んでいるところでございます。
 具体的には、平成五年度より新たな入札方式の導入を行うこととするとともに、入札手続改善検討委員会において現行の指名競争入札手続について一層の透明性、競争性を確保するための指名基準の具体的かつ明確な運用基準の策定等の具体策を取りまとめてまいりました。また、日本建設業団体連合会、全国建設業協会等においては、企業倫理の確立のために決議等を行っており、その内容の遵守、徹底に努めているところであります。
 今後、建設省としては、入札手続の改善の的確な実施を図るとともに、建設業界に対し適宜適切な指導を図り、国民の信頼の回復に全力を挙げて取り組んでいく決意であります。(拍手)
#25
○議長(原文兵衛君) これにて質疑は終了いたしました。
     ―――――・―――――
#26
○議長(原文兵衛君) 先ほどの国務大臣の報告及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨説明に対する山口君の質疑に対し、答弁の補足があります。村田自治大臣。
   〔国務大臣村田敬次郎君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(村田敬次郎君) 山口議員の御質問にお答え申し上げます。
 カンボジアに我が国から派遣されておる文民警察官の厳しい生活環境や治安状況、日本とは違った現地での生活の苦労ぶりなどについて報告を受けた次第でございます。
 以上、御答弁申し上げます。(拍手)
#28
○議長(原文兵衛君) これにて平成五年度地方財政計画についての国務大臣の報告及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨説明に対する質疑は終了いたしました。
     ─────・───── 
#29
○議長(原文兵衛君) この際、日程に追加して、
 労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#30
○議長(原文兵衛君) 御異議ないと認めます。村上労働大臣。
   〔国務大臣村上正邦君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(村上正邦君) 労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 今日の我が国の経済的発展は、長い間に培われてきた国民の勤勉、実直、すぐれた創意工夫、そして働くことをとうとぶ精神に支えられており、こうした日本人の持つ伝統的な価値観を大切にしつつ、労働時間の短縮を推進していきたいと考えております。
 衣食足りて礼節を知ると言われてきましたが、我が国の経済力が相当の水準となり、衣食がある程度満足できるところまできている今日では、生活の豊かさやゆとりを実感するためには、「住」と「時」のゆとりが求められているところであります。
 労働時間の短縮は、働く人々が時間的余裕を持ち、家族とのコミュニケーションや健康の増進により、心身を健全にし、能率的でよりよい仕事をするための大きな課題であり、「時」のゆとりを実感することのできる生活大国実現のための大きな柱であります。
 このため、政府といたしましては、労働時間の短縮、中でも完全週休二日制の定着に向け取り組んできたところであります。特に、昭和六十二年の労働基準法の改正により、完全週休二日制に相当する週四十時間労働制を法定労働時間の目標とし、段階的にその短縮を進めてまいりましたが、既に十分な年月を経ており、週四十時間労働制の実施を図ることが求められているところであります。
 また、労働時間の短縮が難しい中小企業に対する支援措置の充実が必要となっております。
 政府といたしましては、このような課題に適切に対処するため、中央労働基準審議会の建議を踏まえ、法律案を作成し、同審議会にお諮りをした上、ここに提出した次第であります。
 次に、この法律案の内容の概要を御説明申し上げます。
 第一に、労働基準法第三十二条第一項に明記されている週四十時間労働制を平成六年四月より実施することにするとともに、中小企業等の実情に配慮して、平成九年三月三十一日までの間、必要な猶予措置を講ずることとしております。
 第二に、年間単位での休日増を図るために、現行の三カ月単位の変形制を最長一年単位の変形制に改正することとしております。
 第三に、時間外及び休日労働に係る法定割り増し賃金率について、二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ命令で定めることとしております。
 第四に、年次有給休暇につきまして、継続勤務要件を六カ月に短縮し、出勤率の算定に当たって育児休業について出勤したものとみなすこととしております。
 第五に、労働時間短縮を進めにくい中小企業等に対する支援を行うため、労働時間短縮支援センターを指定し、労働省令で定める助成金の支給等を行わせることとしております。
 その他、裁量労働制の対象業務の範囲を具体的に命令で定めることとし、また、林業について労働時間法制の適用対象事業に加えることとしております。
 なお、この法律の施行期日は、労働基準法の改正部分については平成六年四月一日、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の改正部分については公布の日としております。
 以上が労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#32
○議長(原文兵衛君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。庄司中君。
   〔庄司中君登壇、拍手〕
#33
○庄司中君  私は、日本社会党・護憲民主連合を代表し、ただいま議題となりました労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 昨年六月閣議決定された生活大国五カ年計画では、その政策の目標を、「国民一人一人が豊かさを日々の生活の中で実感でき、多様な価値観を実現するための機会が等しく与えられ、美しい生活環境の下で簡素なライフスタイルが確立された社会」としております。そして、それを実現する第一の具体的な課題として、年間千八百労働時間への短縮を挙げています。
 また、政府の労働時間短縮への取り組みは、一九七九年の新経済社会七カ年計画に始まり、その後の二つの経済計画を挟んで、今回の生活大国五カ年計画と、実に四つの経済計画と十四年の期間を経ております。しかも現状は、経済大国の名に全くふさわしくない長時間労働の国であります。
 総理、まずお聞きしたいのは、この長い間の宿題を今なお果たし得ないでいる現状についてどう受けとめ、どう改革しようとしているのかであります。
 我が国の進むべき道は、生活大国五カ年計画のサブタイトルにありますように、まさに「地球社会との共存をめざして」であります。それは対外関係をそうするだけでなく、我が国経済社会自体を共存型に組みかえていくことであります。我が国は先進工業国であり貿易依存の高い国であります。各国間の商品や人の交流などが頻繁になり、生活パターンが似できますと、一国のみ労働時間について並み外れた基準でいるわけにはいかないのであります。
 その点で、一つの例を申し上げたいと思います。ドイツの有力誌「シュピーゲル」三月二十九日号は、我が国とドイツの労働時間問題を取り上げ、「コール首相とネッカー・ドイツ産業連盟会長は「日本に負けない輸出競争力を維持するためには、これ以上の時間短縮は避けるべきだ」という見解で一致しており、各企業に対し、むしろ労働時間を延長するように要請した」と指摘しております。
 この指摘は、第一に、我が国の並み外れた長時間労働が国際的な時間短縮の趨勢を押しとどめる役割あるいは逆転させる役割すら持ちつつあるということであります。さらに第二には、こうした我が国の労働のあり方が公正な競争条件にもとるという理由で国際的な経済摩擦の要因になり得る、あるいは現になっているということであります。この点についてどう考えておられるかということであります。
 我が国の年間総実労働時間は、一九九〇年時点の製造業生産労働者で二千百二十四時間、これをドイツ、フランスと比較しますと、実に四百時間から五百時間長いのであります。この原因の一つに、年次有給休暇の付与日数が少なく、付与条件が厳しく、働労者が休暇を取得しやすい法整備が行われていないということがあります。
  我が国は、年次有給休暇制度が貧弱であるため、まだILO百三十二号条約を批准できないでいますが、今回の法改正に当たっては思い切って国際基準に近づける努力を行うべきであるというふうに思います。
 第一に、休暇の付与日数は依然として最低十日で、国際基準三労働週をかなり下回っていますが、なぜ今回これをふやす方向で改正しなかったのか。
 第二に、付与条件については、勤続一年を国際基準である六カ月に今回改めますが、もう一つの八〇%出勤要件、これは国際基準にはない制限的要件と言えますが、なぜこれを残したのか。
 そして第三には、休暇を取得しやすくするためには、私傷病、家族責任に伴う休業など、国際基準にある労働者本人の統御できない休業、この休業の制度化が不可欠ですが、これを全く無視しているのはなぜか。
 これらの問題については、労働大臣に答弁を求めたいと思います。
 長時間労働のもう一つの原因は、所定外労働時間、つまり残業や休日出勤が余りにも多いということであります。問題は法制度にあります。現行法によりますと、労使協定さえ結べば何時間でも所定外労働がやれる仕組みになっております。別に労働省は、本年一月改正施行の時間外労働協定の適正化指針で年間三百六十時間目安を提示していますが、これは実質的にはほとんど規制力を持っていないのであります。
 国際基準であるILOの労働時間に関する条約は、ILO設立の年である一九一九年につくられました第一号条約でありますが、何と我が国はこの七十年以上前の条約をいまだに批准できないでいるのであります。それは、同条約の所定外労働時間の最高限度を定めるという要件を現行法制が満たしていないからであります。所定外労働時間上限の法的規制は時間短縮を進める上で緊急の課題であると考えます。なぜ今回の改正でその課題を見送ったのかという問題であります。
 今回の労働基準法改正で最大の論点は、時間外・休日の割り増し賃金率の問題でした。そして、この法律案では二五%から五〇%の範囲でそれぞれ命令で定めるということになって、法律から外されております。割り増し率の国際相場は残業五〇%、休日一〇O%。そしてこの水準は先進工業国だけでなく発展途上国のうちのかなりの国が既に実施しているものであります。さらに問題なのは、割り増し率二五%から五〇%の範囲の水準は、所定外労働を抑制する効果ではなく反対に促進効果を持っているということであります。
 労働白書平成四年版は、この問題を割り増し賃金を払って所定外労働を行う場合と新たに雇用した場合との労働コストの均衡点、つまり両者のコストが等しくなる中立の水準、これを分析いたしまして、それは割り増し率六九・三%、ほぼ七〇%の水準という結論を出しております。すなわち割り増し率七〇%以下では、所定外労働を行えば行うほど新たに人を雇う場合に比べて単位当たりの労働コストは低下するということであります。このことは今後、改正を予定している割り増し率の水準では依然として所定外労働の抑制効果ではなく促進効果を持ち続けるということにほかなりません。一体この問題をどう考えているのかということであります。
 労働時間短縮を阻害している条件に企業間取引の問題があります。それは主として親企業から下請中小企業への発注、納入に関する問題で、具体的には下請中小企業振興法の振興基準にかかわるものであります。昨年十二月に中小企業庁が発表した実態調査結果を見てみますと、終業後に発注、翌朝納入の下請企業数の割合が一五%、休日
前に発注、休日直後納入が四五%、発注内容の変更が四〇%もあるということであります。これへの企業の対応は、別の労働組合の調査によれば、実に九〇%から七五%が所定外労働で行っているということであります。これでは、下請中小企業は時間短縮を進めようにも進められない。したがって人材確保も難しくなる。つまり、こうした状態をつくり出しているのは発注主体である親企業であるということであります。
 そこで通産大臣にお尋ねします。こうした状態を抜本的に改善するには、もはやガイドラインに基づく行政指導では不十分で、より強力な法的介入が必要ではないかということであります。
 また、この問題は企業間取引の問題ですので、独禁政策の立場からの見解も求めたいと思います。この問題は、国民生活の豊かさに関係するものであり、優越的地位にある親企業が一方的な都合で半ば強制的に下請企業に仕事をさせるということであります。下請企業はこうした親企業の要求を拒否すれば取引先を失うおそれがあります。これは不公正な取引方法、つまり優越的地位の乱用に相当するものではないかということであります。
 我が国の独禁政策、市場政策の不十分性が諸外国から指摘されて久しいのであります。こうした国民生活の向上を阻害する取引方法、実質的に自由かつ自主的な取引を制限している分野に、今後より積極的に踏み込んでいく考えを持っているのかどうか、このこともあわせてお尋ねいたします。
 以上、労働時間短縮の問題は、労使の問題だけでなく、国民生活、さらには国際協調にまで直結する問題であり、より根本的な改善を必要としているということを重ねて要望しまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(宮澤喜一君) 我が国の長時間労働の現状について、政府はどう認識するかという最初のお尋ねでございました。
 労働時間は近年減少しつつございます。平成四年度の年間総労働時間は千九百五十七時間となりましたが、しかし経済計画で考えております目標の達成にはなお一層の努力が必要である、そういう現状と認識しております。
 このため、この労働基準法の改正案により週四十時間労働制への移行を実現するとともに、労働時間短縮に取り組みます中小企業に対する助成制度を創設し、目標達成に向けた労使の取り組みを促進してまいりたいと考えております。
 我が国の経済的地位にふさわしい労働条件を実現するとともに、国際的に調和のとれた競争条件を形成いたしますためにも、労働時間の短縮はそういう観点からも重要な課題と考えます。本当にゆとりのある国民生活を実現するという観点はもとよりでありますが、国際的な公正労働基準にも合う、そういう観念も念頭に置きまして労働時間の短縮を推進してまいりたいと考えます。
 なお、親企業が一方的な立場から優越的地位を乱用するということについてお尋ねがございました。
 親企業による下請企業に対する優越的地位の乱用行為につきましては、独占禁止法にも規定がございますし、またいわゆる下請法に基づきます公正取引委員会においての処理もございます。厳正に対処をいたしつつあると考えますけれども、なお十分に注意をいたします。今後とも独占禁止法及び下請法の厳正な運用によりまして、公正かつ自由な競争が確保されていくために努力を続けたいと存じております。
 残りのお尋ねにつきましては関係大臣からお答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣村上正邦君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(村上正邦君) 本日は、各党御質疑を賜るわけでありますが、担当大臣といたしまして誠実にお答えをさせていただきます。
 年次有給休暇の最低付与日数については、中小企業について段階的に引き上げが行われている過程であり、平成六年三月末までは八日、その後に十日に引き上げられることとなっており、現時点で重ねて引き上げを行うことは困難であり、今後の検討課題としたものであります。
 年次有給休暇の付与条件につきましては、年次有給休暇の制度は、働く方々の心身の疲労を回復するという趣旨とともに、その勤労に報い、さらにそれを奨励するという性格もあわせ持っているため、八割という出勤要件が設けられているものであります。この要件を一律に廃止することは適切でないと考えますが、業務上の負傷や疾病による休業等に加え、今回の改正案では育児休業についても出勤とみなすこととし、一定の改善を図ったところであります。
 病気休暇制度や介護休業制度の法制化につきましては、制度の普及状況が必ずしも十分でなく、今後の普及状況等を見つつ検討していくべき課題と認識いたしております。
 所定外労働時間の法的規制の問題にお答えいたしますが、ILO第一号条約については、我が国の労働時間法制はおおむねその水準を満たしていますが、時間外労働の法的規制を設ける問題については我が国の労働慣行等に沿わない面もあり、批准をいたしておりません。しかしながら、時間外労働を抑制すべきことはもちろんであり、時間外労働協定の適正化指針に基づく目安時間の遵守の徹底に努め、その削減を図ってまいります。
 割り増し賃金率については、恒常的な時間外労働、休日労働を削減するため、基本的にはその引き上げを図っていくべきものであると考えております。しかしながら、大部分の企業における割り増し賃金率が二五%にとどまっている現状から見て、大幅な引き上げは妥当でなく、実態などを見きわめつつ対処していくことができるよう割り増し賃金率については政令で定めることとしたものであります。このような今回の改正は、時間外労働の抑制、国際的な公正労働基準の確立などの観点から政策目標を掲げたものであり、このような認識のもとに段階的に引き上げに努めていきたいと考えております。
 以上、お答え申し上げました。(拍手)
   〔国務大臣森喜朗君登壇、拍手〕
#36
○国務大臣(森喜朗君) 庄司議員から御指摘のございました振興基準の法的規制の点につきましては、下請中小企業振興法の振興基準は「下請中小企業の振興を図るため下請事業者及び親事業者のよるべき一般的な基準」でございまして、その内容は下請事業者及び親事業者双方の努力目標を定めたものでございます。このため、こうした努力目標に法的な規制を付するということは振興基準の性質から見ましてなじまないものと考えております。
 しかしながら、振興基準に盛り込まれております事項、例えば時短の推進を妨げる発注の抑制について申し上げれば、親事業者が費用増を考慮しない単価で短納期発注を押しつけるなど、下請中小企業に過度な負担を強いるような悪質なケースにつきましてま、下請代金支払遅延等防止法によります規制の対象となるような制度となっているところでございます。
 今後とも、通商産業省としましては下請中小企業振興法の振興基準の普及、啓発に努めますとともに、下請代金支払遅延等防止法に基づく検査を強化し、下請取引の適正化に全力を尽くす考えでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#37
○議長(原文兵衛君) 武田節子君。
   〔武田節子君登壇、拍手〕
#38
○武田節子君 私は、公明党・国民会議を代表し、ただいま議題となりました労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 まず、本題の質問に入ります前に、緊急課題となっておりますカンボジアPKO問題について言質問させていただきます。
 去る五月四日、カンボジアで国際平和協力業務に従事しておりました文民警察官の高田晴行警視が殉職されました。
 ここに謹んで心より哀悼を申し上げます。あわせて御遺族の皆様に衷心よりお悔やみを申し上げます。
 さて、村田自治大臣は本日早朝帰国されました。現地情勢の掌握をされてお帰りになったと思いますが、日本の今後の対応についてどのような認識を持って帰国されましたか、お伺いいたします。
 自治大臣と文民警察官との会見で警察官の方々から、何人死ねば帰されるのですかとか、現地の実情が理解されていない等々の発言があったと伝えられておりますが、この点、正確な御報告を求めたいと思います。
 私は、現在のカンボジア情勢について既に停戦の合意が一部崩れているのではないかと危惧を抱くとともに、要員の安全確保という観点から、地域によっては文民の任務の中断を日本政府として検討すべきときに至っていると考えますが、この点について宮澤総理並びに村田自治大臣の見解をお尋ねいたします。
   〔議長退席、副議長着席〕
 本題の質問に入ります。
 我が国の経済は、戦後の復興から今日まで多くの試練を乗り越え目覚ましい発展を遂げ、今日では世界第二位の経済大国と言われるまでに成長いたしました。しかし、労働者は一貫して長時間労働から解放されることがなく、気がついたときには経済は一流、労働条件は三流というバランスの欠落したゆがんだ社会構造がつくり上げられてしまいました。
 このような経過を考えますと、今回の労働基準法改正は戦後労働時間法制の総決算でなければなりません。しかし、法案の内容を拝見いたしましても、その気概が全くうかがえないのはまことに残念でなりません。生活大国五カ年計画というような仰々しい計画を打ち上げるのも結構ではございますが、世界的に見て人並みの労働条件を実現してほしいと、うささやかな労働者の願いに、なぜ政府はこたえられないのでしょうか。総理の所信を伺いたいと思います。
 また、総理は、生活大国五カ年計画において、計画期間中における年間総労働時間を一千八百時間にするという目標を掲げ、その実現のために労働時間法制の見直しを行うとしています。政府は、今や国民的課題となっている一千八百時間の時短目標の達成のため強力なリーダーシップを発揮すべき責務があると考えますが、総理の見解をお伺いしたいと思います。
 次に、本改正案の問題についてでありますけれども、まず毎勤統計によりますと、昭和三十五年に二千四百三十二時間であった総実労働時間は平成四年には千九百七十二時間までに短縮されましたが、今後我が国の長時間の労働を是正していくためには、過労死が国際語になっているという不名誉な事実を提起するまでもなく、時間外労働の削減対策が極めて重要であります。
 本来の趣旨に反して恒常化している時間外労働を削減するには、現在のような目安告示や所定外労働時間削減要綱による行政指導には限界があり、基準法によって時間外労働の上限を規制すべきであります。我が党は、衆議院本会議においても申し上げましたが、直ちに上限規制を設けることが困難であるならば、目安時間を年間百五十時間ないし二百時間程度に改めるとともに、拘束力を持った制度として整備し直すべきであると考えております。この点に対する労働大臣の見解をお願いいたします。
 次は猶予措置についてでありますが、そもそも労働時間法制は法のもとの平等をうたった憲法の理念に反するものであってはなりません。このような観点からすると、大企業労働者と中小零細企業に働く労働者の労働時間が違ってよいはずはありません。したがって、猶予措置の適用事業所の規模や業種の範囲は極力縮小するとともに、平成九年四月以降に緊急措置と称して猶予措置を持ち越すことのないよう厳正に運用していただきたいと思いますが、労働大臣の見解をお伺いいたします。
 一方、時短を推進する上で、中小企業における時短をどう進めるかが最大の課題になると思います。その時短対策を推進していく上で、一体何が時短の阻害要因となっているのか、どうしたら時短を全産業に徹底できるとお考えなのか、政府の見解をお尋ねいたします。
 次は、割り増し賃金率について伺います。
 本改正案は、割り増し賃金率について二割五分から五割の範囲内で命令で定めることとしています。しかし、罪刑法定主義の原則に基づき本則で規定されてきた経過を無視し、一定の幅を設けたとはいうものの命令に委任するということは、違法とは申しませんが好ましいことではなく、労働時間法制の弱体化をもたらすと同時に、行政裁量の余地を拡大しようとする改悪と言わざるを得ません。
 また、時間外・休日労働に対する割り増し賃金は、経済的負担を使用者に課することによってこれらの労働を抑制することを目的としたものであることは、多くの判例が認めています。しかしながら、現在の二割五分という割り増し賃金率は、使用者にとって新規雇用を行うよりはるか安上がりなレベルであり、ボーナスを含めて考えると、実質一割五分程度にすぎなくなっているのが実情であります。このような不合理な割り増し賃金率を改められないのはなぜでありましょうか。今こそ諸外国の一般的な水準に倣い、時間外五割、休日十割とし、本則に明記するよう強く要求したいと思います。労働大臣の見解をお伺いいたします。
 次は、一年単位の変形労働時間制についてでありますが、政府は、年間休日の増加を図るため一年単位の変形労働時間制を導入すると説明していますが、そもそも無定量の時間外労働が恒常的に行われている状況のもとで採用されるべき制度ではなく、特定の期間の長時間労働をもたらすとともに、特に女性労働者の雇用継続に影響を及ぼし、本来時間外労働となるべき時間が所定内労働時間に組み込まれることによって所得の減少をもたらすなど、多くの弊害をも予想されるところであります。大臣、私はここで事例を挙げて御所見を伺いたいと思います。
 所沢市に住むAさん、四十歳、中学三年の子供と二人暮らしの母子家庭、新宿の大手デパート勤務、勤続二十三年のマネジャーで、今月一日より新しい勤務表が渡されました。早出の日は朝八時三十分出社、夕方六時五分退社、正味九時間三十五分勤務。遅出の日は午前十時二十五分出社、午後八時退社、正味九時間三十五分勤務。いずれも残業手当なし。しかも、定休日が祭日になるとそのまま連続勤務となり、休日は仕事のないときに休ませてもらうという状態で、年休権の自由利用の原則が崩されております。その上、通勤時間に片道一時間半もかかり、遅出のときの帰宅は夜十時、それから食事です。
 要するに、女性労働者がいかに厳しい状況に置かれているか、またこのような実態が今の労働行政の視野に入っていないところにその悲惨さが浮き彫りにされております。
 こうした実情から考えて、一年単位の変形制の導入に当たっては、季節により業務に繁閑を生ずる事業等に限定し、さらにこの種の業種並びに危険有害業務に関しては、一週、一日の上限時間を少なくとも現行三カ月単位の変形労働時間制で用いられている条件以下の厳しい条件で運用するなど、乱用を防止するための厳しい規制措置を講ずることが必要であると思いますが、いかがでありましょうか。
 次に、時短促進法の改正では、労働時間短縮支援センターを設置し、労働時間の短縮のための援助を行う事業主団体や時短を行う事業主に対する給付金の支給等の業務を行わせることとしているのでありますが、最近の労働省の立法例を見ると、援助事業などを行う場合に、既存の団体を支援センターとしてオーソライズし、当該団体の事業の拡大と財政基盤の強化を図っているケースが大変多いように思います。これは 労働省OB支援センターになる可能性が極めて強く、むしろ労働基準局の機能と人員を強化することで対応するのが本来あるべき姿ではないかと思いますが、労働大臣の見解をお伺いします。
 最後に、宮澤内閣の公約である生活大国五カ年計画では、国民一人一人が豊かさとゆとりを日々の生活の中で実感できる社会を実現すると述べていますが、今回の労基法等改正案については、最も配慮されているのは企業経営に対する影響であり、その許容限度の中で労働条件の改善を図ろうとしているにすぎません。このようなスタンスからは豊かさもゆとりも生まれないことをあえて申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#39
○国務大臣(宮澤喜一君) カンボジアの問題につきましては、先ほどもお答えを申し上げましたが、局地的な停戦違反事件は確かに幾つかございますが、全面的に戦闘が再開されている状況ではございません。本来、パリ協定についてはカンボジアにおける紛争当事者各派すべての派が署名をいたしておるところでありますし、またUNTACの設立を認めております。さらに、SNCを通じてUNTACの活動を受け入れているというのは基本的な枠組みでございます。
 ポル・ポト派も、パリ和平協定につきましては重ねてこれを尊重すると最近も言っておりますが、ただ、その履行が十分でない、その履行が忠実でないという批判をしておる立場でございますので、基本的に和平の枠組みは崩れていないという判断をいたしております。そういう意味では、法に定めます五原則は満たされていると考えておるわけで、現時点で中断、撤収を検討すべき状況であるとは思っておりません。
 なお、選挙につきましては、住民の九〇%、推定九〇%が登録をいたしております。四百七十万でございます。このことは、カンボジアの国民の大多数は選挙による制憲議会、そうして憲法制定ということを望んでおる証左と考えます。政府といたしましては、UNTAC関係諸国とともにそのために努力をいたしてまいりたいと考えておるところでございます。
 それから、労働時間の短縮でございますが、御指摘のように、豊かでゆとりのある国民生活を実現する生活大国へ向けまして前進を図るために最も大切な課題の一つであるというふうに思います。十分な自分の時間を持って生活設計をするというためにも労働時間の短縮は極めて大事なことと思います。
 この法案でま、欧米諸国でま既に週四十時間制というものが定着いたしておりますので、それへの移行という大きな課題の実現を図ろうとしております。そのために、労使の取り組みの一層の促進を図るなど、政府といたしましても労働時間の短縮の実現に全力で取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。
 もとより、労働時間の短縮は労使の取り組みを基本といたしますが、政府としても、経済計画におきまして千八百時間の目標を掲げておりますので、労使の取り組みを促進いたしますためにも、積極的なそのための御援助をいたしたい、不可欠と考えます。
 労働基準法の改正によりまして、週四十時間労働制への移行を実現するとともに、労働時間短縮に取り組んでおられる中小企業に対しましては助成制度を創設し、目標達成に向けた労使の取り組みを政府といたしましても促進してまいりたいと考えているところでございます。
 残りのお尋ねにつきましては関係大臣からお答えをいたします。(拍手)
    〔国務大臣村上正邦君登壇、拍手〕
#40
○国務大臣(村上正邦君) お答えいたします。私への質問を整理しますと六問かと思います。
 第一問でございますが、時間外労働の適正化指針による目安時間については、本年一月から年間四百五十時間を三百六十時間とするなどの改正を行ったところであり、これを百五十時間ないし二百時間とすることは我が国の時間外労働の現状から見ても困難であります。また、この指針は昭和五十七年の制定以来相当の効果を上げてきておりますが、この指針に拘束力を持たせることについては我が国の労働慣行になじまない面があり、困難であろうかと考えます。
 次に、改正法が施行される平成六年四月における猶予措置の対象事業の範囲については、新たに実態調査を行い、その結果を踏まえ、できる限り限定する考えであります。なお、この後においても適宜実態調査を行い、その結果を踏まえ、猶予措置の水準及び範囲について所要の検討を行うこととしたいと考えております。
 また、猶予措置の対象事業については、猶予期間中であってもできるだけ早期に週四十時間制が実施されるよう、関係省庁とも連携を図りながら、事業主に対する啓発、指導など必要な指導援助を行い、平成九年度からの週四十時間制への移行が円滑に行われるよう努める考えでおります。
 次に、中小企業の問題についてお答えいたします。
 中小企業については、同業他社との横並び意識が強いこと、経営基盤が弱いこと、短い納期の発注など取引慣行上の問題があることなどから、労働時間の短縮が進めにくい状況が見られます。このため、中小企業に対しては、従来から時短促進法に基づいて事業主が共同で労働時間の短縮に取り組むことを促進するなど、同業種の企業集団に対する指導援助などに努めてまいりました。
 また、今後、週四十時間労働制の実施に向け、中小企業における一層の労働時間短縮を進めていくためには、省力化投資などへの援助がぜひとも必要と考え、今回新たに助成金制度を設けることといたしております。さらに、中小企業をめぐる取引慣行の是正に努めることにより、ずれの業種の中小企業においても労働時間の短縮が円滑に進むよう努力してまいります。
 次に、時間外・休日労働の割り増し賃金率についての今回の改正は、時間外・休日労働の抑制、国際的な公正労働基準の確立等の観点から政策目標を掲げたものであり、そのような認識に立ちまして段階的な引き上げを図ろうとするものであります。具体的には、当面まず法定休日労働の割り増し賃金率について改正法の施行にあわせて引き上げることとし、時間外労働の割り増し賃金率の引き上げについても週四十時間制への移行スケジュール等を踏まえつつ、引き続き中央労働基準審議会に検討をお願いすることとしております。
 一年単位の変形制は、業務の繁閑などを利用して休日の増加を図り、週休二日制に相当する週四十時間制を導入しやすくしようとするものであり、対象業務を限定することは適当でないと考えます。また、一日及び一週の上限時間についても一週の上限は四十八時間とすることを前提に、現行三カ月単位の変形労働時間制より縮小する方向で検討するとともに、乱用されることのないよう十分指導してまいる考えでおります。
 最後に、労働時間短縮支援センターについては、労働時間の短縮を進めるためには事業主に対するきめ細かな相談、援助を行う必要がありますが、こうした相談、援助は労働時間の短縮についての事業場の実態を熟知し専門的知識を持った民間団体によりきめ細かく対応していくことが適切であろうと考えます。このような観点から、既存の民間団体を活用することとし、労働時間短縮支援センターを指定して労働時間の短縮に関する業務を行わせるものとしたものであります。
 以上であります。(拍手)
   〔国務大臣村田敬次郎君登壇、拍手〕
#41
○国務大臣(村田敬次郎君) 武田議員よりの御質問にお答えをいたします。
 カンボジアの問題につきましては、先ほど総理から御答弁がありましたように、パリ和平協定の枠組みは依然維持をされていると考えておるわけでございます。したがって、明石代表との会談におきましては、この総理の御意図を伝え、そしてカンボジアの今回の選挙の実施について全面的に御協力を申し上げるということで、文民警察官等の安全について十分話し合ったところでございます。
 先ほども申し上げましたように、UNTACの二万六千人の要員が今選挙実施に向けて懸命の努力をしておるところでございまして、これは軍事部門、民生部門、警察部門、難民帰還部門、復旧部門等々各方面にわたり、そして関係各国も文字どおり国連UNTAC加盟の諸国から、例えば文民警察部門は三十二カ国三千五百七十八人に及ぶ方が派遣をされております。そして、私は日本の山崎隊長外十三名との会談におきましては、よく状況をお伺い申し上げ、そして我が国から派遣されている文民警察官の厳しい生活環境や治安状況、日本とは違った現地での生活の苦労ぶりなどについて報告を受けたわけでございます。
 この十三名との会談のほかに、私どもは現地の視察を行いました。これはカンボジアのプノンぺンからトンレサップ川を渡河いたしまして、距離にしては二十キロぐらいのところでございますが、非常な悪路で、約一時間はどかかるところでございます。そこでインド人の隊長や、ジョルダン、モロッコ、フィリピン、各方面からの方々と、日本の文民警察官とも対話を続けてまいったところでございますが、これからもうあと十日余りで選挙が実施をされるわけでございます。そして、今地球上最大の二万六千人というUNTACの組織ができ上がっており、このカンボジアの夜明けのために全面的な協力をしなければならないと存じております。
 こういった意味で、武田議員の御質問にお答えしますが、私は現地の情勢を身近に感じ、そしてこれからいかに新しい国づくりとしてあの一角に民主国家が誕生することが大切であるかということを痛感し、現地における記者会見におきましても誠心誠意日本人記者団あるいは外国人記者団七十名と一時間半にわたって、時間を区切ることなく全面的に話し合いを続けてまいりました。その基調は、カンボジアに民主国家をつくるためにuNTACと共同して、UNTACの要員として日本も全力を尽くすという意味でございます。
 以上、お答え申し上げます。(拍手)
#42
○副議長(赤桐操君) 答弁の補足があります。村田自治大臣。
   〔国務大臣村田敬次郎君登壇、拍手〕
#43
○国務大臣(村田敬次郎君) 先ほど来の質問は、文民警察官の十三人の方から、何人死ねたら帰るのかという質問があったというお尋ねであろうかと思います。私は、その質問はなかったと申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#44
○副議長(赤桐操君) 直嶋正行君。
   〔直嶋正行君登壇、拍手〕
#45
○直嶋正行君 私は、民社党・スポーツ・国民連合を代表して、ただいま提案されました労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について質問を行うものであります。
 労働時間の短縮は、労働者個人にゆとりを保障するだけにとどまらず、家庭生活の充実、ボランティア活動など社会活動への参加促進、さらには国際的に公正な労働条件の確立という観点からも現在の我が国に課せられた重要な課題となっているのであります。その意味から、生活大国五カ年計画に労働時間の短縮が最重要な柱の一つとして盛り込まれていることを評価するものであります。
 しかしながら、この計画を前回計画がそうであったように、計画倒れに終わらせず、計画期間内に確実に実施をすることこそ最も重要であります。生活大国五カ年計画では、労働時間短縮に関して、「計画期間中に年間総労働時間千八百時間を達成することを目標とする。」と、前回計画に比べてより明確な表現で目標を掲げています。既に計画年度は二年目に入っており、この労働基準法等改正案の施行期日は計画の中間年度である平成六年度となるのであります。
 総理は、今回の改正案の内容で計画期間内の目標達成は可能であると考えておられるのかどうか、まずお伺いをいたします。
 以下、本改正案に関して具体的な質問を行います。
 第一に、法定労働時間についてであります。
 昭和六十二年の前回改正で本則に週四十時間制の原則は盛り込まれましたが、実際の法定労働時間は段階的に短縮されてきたものの、週四十四時間どまりでありました。本改正案に、来年四月から週四十時間制へ移行することが明記されたことは、若干おくれたものの評価するものであります。しかし、問題は約二千万人の労働者が猶予措置対象事業場で働き、約六百万人の労働者が特例措置対象事業場で働いていることであります。このように全体の過半数にも上る労働者を猶予・特例措置の対象とすることは、労働条件の最低基準を定める労働基準法の基本理念に反するとともに、憲法で保障する法のもとの平等にも反するものと言わなければなりません。
 原則的には、これらの猶予・特例措置は廃止することが望ましく、本改正案でも猶予措置については平成八年度末までと期限が付されたことは一応の評価はできます。しかしながら、今回突然猶予措置が一年間延長されたように、この期限が厳守されるかどうかの保証がありません。猶予対象事業場にあってまじめに時短に取り組んだ者とそうでない者との間に不公平があってはならず、時短を進める観点からも、法のもとの平等を達成する観点からも、猶予措置の期限は守られるべきであり、またその対象となる事業場もできる限り限定すべきであります。同様に、特例措置についてもその範囲を狭めていくなど段階的に時短を進めていくべきと考えますが、これらについての労働大臣の見解をお伺いいたします。
 第二に、割り増し賃金率の問題について伺います。
 現在の時間外二五%の割り増し率は、七十四年前の一九一九年のILO一号条約の定めた基準であります。また、昭和二十一年の労働基準法策定当時の原案では時間外五〇%とされていたのが、敗戦で壊滅的打撃を受けた我が国の産業復興のために二五%に修正されたと聞いております。我が国が世界有数の経済大国となった今、時間外の割り増し率がいつまでたっても二五%という世界最低の基準でいいのでありましょうか。このことは、我が国産業が世界的規模での展開を図っている現在では、国際的に公正な労働基準の確立という観点からも厳しく問われています。生活大国五カ年計画でも、「割増賃金率の引上げについて具体的に検討する。」とされていますが、今回の改正案では「二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ命令で定める率」とするのみで、その内容は命令にゆだねています。
 私は、日本が依然として世界最低基準のまま放置することは許されないと思います。当面少なくとも時間外三五%、休日五〇%に引き上げ、これを法律に明記すべきと考えますが、具体的内容をどのようにされるおつもりなのか、労働大臣の明確な答弁を求めるものであります。
 第三に、年次有給休暇の問題について伺います。
 労働時間の短縮のためには有給休暇の取得促進が不可欠であり、そのためには最低付与日数の引き上げと取得率の向上が必要であります。前回法改正時の附帯決議には、「今後適当な時期に、ILO条約の水準を参考に、さらに付与日数の増加を図ることを検討する」とされています。現行の最低付与日数十日は極めて不十分で、早期にILOの三労働週の水準をクリアすることが必要と考えます。
 そこで、まずこの附帯決議にある付与日数の増加について、今日まで労働省としてどのような検討を行ってこられたのか、また、今後どのようにされるおつもりか、お伺いをいたします。
 次に、一定規模以下の事業場についての有給休暇の付与日数についてであります。これらは今日まで段階的に引き上げられてきましたが、今後も五カ年計画期間内に段階的に引き上げる方法を検討すべきと考えますが、そのお考えはあるのか、お聞きいたしたいと思います。
 さらに、現行の勤続一年につき付与日数を一日ずつ増加させる悠長な方法を、勤続一年につき二日ずつ増加させることを検討すべきであると考えますが、これら諸点に関する労働大臣の御見解をお伺いいたします。
 戦後の我が国の経済社会を振り返ると、生活大国五カ年計画にもあるように、敗戦の焦土からの復興を図るため、経済成長、産業発展を重視し、さまざまな努力を積み重ねてきました。その結果として、我が国は経済規模において世界有数の国となり、国民生活においても物質的な面では確かに豊かになりました。しかし、経済全体の豊かさと個人の豊かさの実感との間には大きな乖離が見られ、今後、真の豊かさの追求のため自己実現の機会を十分に与えられる社会を構築していかなければならないわけであります。
 その意味で、労働時間の短縮は社会構造の変革や人々の意識革命にもつながる大変重要な課題であります。そして、政治が国民生活を真に豊かにさせていくためのものである以上、この時短の問題はぜひ実現させねばならない課題なのであります。これはまた、同時に国際社会が我が国に期待していることとも一致するものであります。
 このような認識から、国を挙げて労働時間短縮に取り組んで、ただくことを強く要望するとともに、最後に、総理の労働時間短縮に向けた決意をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#46
○国務大臣(宮澤喜一君) 今回の法案は、平成六年の四月から原則週四十時間労働制に移行すること等を内容といたしておるものでありますが、これは生活大国五カ年計画に規定されました政府目標であります千八百時間の基盤をなす重要な内容を盛り込んだものであります。
 千八百時間というこの目標達成のためには、法制の整備とともに労使の積極的な取り組みが必要であります。また、政府としてもそのための指導援助、それにつきましては全力を挙げてこれをお助けしたい、達成を期したいと考えておるところでございます。
 労働時間の短縮は、もとより豊かでゆとりのある国民生活を実現し、生活大国を実現する上での最も重要な課題と認識をいたしております。このため、このたびの基準法の改正をお認めいただきまして週四十時間労働制への移行を実現するとともに、労働時間短縮に取り組む中小企業に対する助成制度をも創設いたしまして、労使の取り組みをぜひ促進してまいりたいと存じております。
 残りの問題につきましては労働大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣村上正邦君登壇、拍手〕
#47
○国務大臣(村上正邦君) 御質問の第一点、猶予措置についてお答えをいたします。
 平成六年四月における猶予措置の対象事業の範囲については、新たに実態調査を行い、その結果を踏まえ、できる限り限定する考えであります。なお、その後においても適宜実態調査を行い、その結果を踏まえ、猶予措置の水準及び範囲について所要の検討を行う考えでございます。
 また、猶予措置の対象事業については、猶予期間中であってもできるだけ早期に週四十時間制が実施されるよう、関係省庁とも連携を図りながら、事業主に対する啓発、指導等必要な指導援助を行い、平成九年度からの週四十時間制への移行が円滑に行われるよう努めてまいります。
 次の、労働者十人未満の商業、サービス業等に係る労働時間の特例措置については、改正法の施行に合わせてその水準を短縮する方向で検討をするとともに、その対象事業の範囲についても最新の実態を踏まえ検討することとしております。
 それから、時間外・休日労働の割り増し賃金率についての今回の改正は、時間外・休日労働の抑制、国際的な公正労働基準の確立等の観点から政策目標を掲げたものであり、そのような認識に立って段階的な引き上げを図るよう努めてまいりたいと考えております。
 具体的には、当面、まず法定休日労働の割り増し賃金率については、改正法の施行に合わせ引き上げることとし、時間外労働の割り増し賃金率の引き上げについても、週四十時間制への移行スケジュール等を踏まえつつ、引き続き中央労働基準審議会に検討をお願いする考えであります。
 最後でございますが、年次有給休暇の最低付与日数の問題については、平成三年四月より中央労働基準審議会において改正労働基準法全般の見直しを行う過程で年休の付与日数の増加についても検討を行ってきました。そして、昨年十二月に出された同審議会における建議において、引き続き検討するとされているところであります。
 年次有給休暇の最低付与日数については、来年四月から中小企業についても十日に引き上げられることとなっており、重ねて引き上げることは困難でありますが、ILO条約の水準を参考に、今後その増加を図ることについて来春を目途に中央労働基準審議会に検討をお願いし、速やかにその結論が得られますよう努力してまいりたい考えでおります。
 以上であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#48
○副議長(赤桐操君) 高崎裕子君。
   〔高崎裕子君登壇、拍手〕
#49
○高崎裕子君 私は、日本共産党を代表して、労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 総理、日本の労働者の実態は深刻です。フランスや旧西ドイツより年間五百時間も多い長時間労働と超過密労働は世界に例のない過労死を生み出し、働き盛りの労働者の二人に一人が過労死の不安におびえています。非人間的な徹夜、深夜の不規則勤務、サービス残業、ふろしき残業といっただ働き、一日二時間半しかない自由時間、家族そろっての夕食は週二ないし三回、ヨーロッパには存在しないと言われる単身赴任により家庭生活の根底が揺るがされています。豊かな日本、なぜこんなに貧しいのかと世界の人々が一様に驚きの声を上げるほど世界から大きく立ちおくれ、およそ世界第二位の経済力にふさわしくない、人間らしい生活にはほど遠い実態があります。
 労働基準法の改正というのなら、今こそ憲法二十五条、二十七条の保障する人間らしく生き、働く権利を確立し、これらの問題を解決し、労働者の健康と命を守るための抜本的改正こそ必要です。
 以下、この立場から具体的に質問いたします。
 政府は、この間たびたび労働時間短縮計画を策定してまいりました。しかし、そのいずれも一度も達成されることなく今日に至りております。総労働時間が二千時間を割ったといいますが、それはパート労働者を含めた平均であって、一般労働者の年間総労働時間は平成三年で二千七十六時間にもなっているではありませんか。
 昨年、総理は生活大国五カ年計画で、九六年までに千八百時間を達成すると公約されたのであります。そして、この公約は勤労者とその家庭にゆとりをもたらし、職業生活と家庭生活、地域生活との調和を図るためのものとされています。そうであれば、当然一人一人の労働者に実現すべき目標でなければなりませんが、そのとおりですね。それともパート労働者を含めた平均の労働時間ということですか。明確に答えてください。
 さて、政府案は法定労働時間について来年度から本則週四十時間を実施するとしています。労働省の調査でも全労働者の四〇%が既に週の所定労働時間四十時間が実施されているのです。にもかかわらず、今回この適用対象となるのは全体の三六%にすぎません。つまり、これでは現状を追認するだけであり、時間短縮の効果はほとんどないのではありませんか。真に時短を進めようというのなら、いまだ四十時間に達していない労働者にこそ適用すべきではありませんか。それを猶予と称して四十四時間制を温存し、法律が一番手を差し伸べなければならない最も劣悪な労働条件のもとで苦労している零細企業の労働者には、依然四十八時間制の特例を残すというのであります。
 労働大臣にお尋ねいたします。いつまでこの特例措置を残すつもりですか、こうした猶予・特例措置を残したままで本当に時短が進むと考えておられるのですか。
 今必要なことは、特例や猶予措置を引き延ばすことではなん、下請中小企業の労働者の時短を進めるために、大企業の下請単価を引き上げさせ、一方的な納期の押しつけをやめさせるなど、時短を阻害する大企業の横暴を抑えることと時短のための設備資金など国の十分な援助措置をとることではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。
 労働時間の短縮のためには、法定労働時間の短縮とともに時間外労働の削減が極めて重要であります。総理が本気で千八百時間を目指すというのであれば、どうして残業時間の上限規制を行わなかったのですか。また、時間外手当の割り増し率を国際的にも常識になっている時間外五〇%、深夜・休日一〇〇%にどうして引き上げようとしないのですか。さらに、欧米では見られないサービス残業が長時間労働を一層深刻にしており、時短を実現するには、この違法、脱法行為を根絶させることが緊急に求められていますが、いかがですか。総理の見解を求めます。
 次に、政府案で新たに導入されることになっている一年単位の変形労働時間制についてお尋ねいたします。
 変形労働時間制は、企業が忙しいときには長時間労働者を働かせ、暇なときには休暇をとらせるなど、企業の都合に合わせて労働時間を強制し、同時に企業が残業代を節約することができるというもので、到底認めることはできません。企業にとってはのどから手が出るほどの制度だと言われるように、変形労働時間制が一年延長になれば、建設、自動車、電機、金融など、全産業に拡大することは必至です。この制度は、専ら使用者側の利益と要求に沿うもので、労働基準法の本来の趣旨を踏みにじるものではありませんか。労働大臣の明確な答弁を求めます。
 政府は、これについて休日をふやして時短を進めるためだと説明していますが、これは全くの脆弁だと言わなければなりません。労働者は、長期に及ぶ長時間労働の連続と時間外手当の大幅減収を余儀なくされ、家族との団らんや社会活動への参加が奪われます。とりわけ女性労働者にとっては一層深刻であります。前回改正以降、一カ月の変形労働時間制を導入された銀行において、女性労働者が子供の保育園の時間に間に合わないためやむなくパートにかわったなどの事例に見られるように、子育てや介護など家庭責任を担わざるを得ない女性にとって働き続けることができるかどうかの大問題で、女性の社会進出を阻むものとなっており、この事実を労働大臣は一体どう考えるのか、明確に答えてください。
 また、休日をふやすというのであれば、年次有給休暇を国際水準の年二十日にふやすこと、現在わずか五割しか使われていない年次有給休暇の完全消化を促すことこそ急務ではありませんか。労働大臣の答弁を求めます。
 総理、人は一日のサイクルで生きているのであります。一日二十四時間の中で八時間は労働に、八時間は睡眠に、そして残りの八時間は自分と家族のために、これが長い間に打ち立てられてきた原則です。これをどうお考えでしょうか。私は、提案されている一年変形労働制について削除を求めるものでありますが、あわせて総理の答弁を求めます。
 最後に、政府案は、裁量みなし労働制について研究開発その他という例示を削除しています。これでは裁量みなし労働制が一挙に三千万ホワイトカラー労働者全体に広がる可能性すらあります。
 裁量みなし労働とは、ある一定の業務量を八時間当たりの業務量と労使で協定を結びさえずれば、それが実際に何時間かかろうと八時間とみなすという制度であります。この制度は労働者に請負、ノルマ制を課し、法定労働時間制を根底から崩すもので、ホワイトカラー労働者に長時間過密労働による過労死の危険性を一層増大させるものとなります。最低労働条件を定めた労働基準法にこうした制度を無制限に持ち込むことは、労働基準法の自殺行為とも言うべきものではありませんか。
 裁量みなし労働制については、条件を緩和するのではなくて労働者の要求に基づくものに限定するなど、現状より厳しい制限をつけるべきだと考えますが、総理の答弁を求めます。
 以上について、総理並びに関係大臣の誠意ある答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#50
○国務大臣(宮澤喜一君) 年間総労働時間一千八百時間の目標は、我が国の労働者全体の平均的な労働時間の目標として設定されたものであります。従来より、パートタイム労働者を含む全労働者の数値でとらえてきております。
 下請取引の適正化は、下請中小企業の時短の促進に極めて重要と認識しております。このため、時短促進を阻害するような単価の設定が行われないよう、平成三年に下請中小企業振興法に基づく振興基準、また下請代金支払遅延等防止法の運用基準をそれぞれ改正いたしました。今後ともこの方向で努力を続けてまいります。
 時間外労働について、その時間の上限を法律上設定することにつきましては我が国の労働慣行の実情に沿わないと考えられます。現状では困難と思います。その規制については、時間外労働協定の適正化指針の遵守の徹底に努める所存でございます。
 長時間労働を促進しておりますサービス残業でございますが、いわゆるサービス残業については、適正な労働時間管理を徹底し、そうした事態を生むような土壌をなくしていくことが重要と思います。今後とも、そのための啓発、指導に努める必要がございます。
 一年変形制の問題ですが、一年単位の変形労働時間制については、年間単位の休日管理を可能にすることにより、年単位の休日増を図っていく趣旨であります。労使の取り組みによって効率的な労働時間短縮が可能になるものと思います。
 なお、労働者の福祉が損なわれることがないよう、一日及び一週の労働時間の上限を設けるなど適切な措置を講じることといたしております。
 裁量労働制ですが、今回の改正は裁量労働制の適用対象業務を命令で明確に定める趣旨であります。その具体的決定に際しましては、労働者保護の観点から十分慎重に検討をいたします。
 残りの問題は労働大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣村上正邦君登壇、拍手〕
#51
○国務大臣(村上正邦君) お答えいたします。
 まず、総論から御質問に入られたわけでございますが、その総論と申しますのは、今回の法案では時短効果はほとんどないのではないかという非常に悲観的な質問から入られたわけでありますが、今回のこの法案の時短効果につきましては、労働基準法改正案では週四十時間労働制に円滑に移行するための措置として、一定の規模以下または一定の業種の事業について猶予措置を講ずることとしていますが、平成九年四月以降は特例事業を除き週四十時間制に移行することとなることから、本法案は労働時間短縮に大きく寄与するものと確信をいたしております。
 それから、いまだ四十時間に達していない労働者に対する週四十時間労働制の適用につきましては、すべての労働者に直ちに週四十時間制を適用することは困難であることから、円滑に週四十時間制に移行するためには猶予措置が必要であります。しかしながら、できるだけ早期に週四十時間制が実現されるよう、関係省庁とも連携を図りながら、事業主に対する啓発、指導等必要な指導援助を行い、平成九年度からの週四十時間制への移行が円滑に行われるよう努めてまいる考えでございます。
 特例措置はいつまで残すのかということでございますが、労働者十人未満の商業、サービス業等に係る労働時間の特例については、改正法の施行に合わせてその水準を短縮する方向で検討するとともに、その対象事業の範囲についても最新の実態を踏まえ、検討することにしております。また、週四十時間制が全面的に実施された段階における特例措置のあり方については、改めて中央労働基準審議会に検討をお願いし、その結果を踏まえ、適切に対処したいと考えております。
 猶予、特例を残したままで時短は進むのかということでございますが、今回の法改正では、原則として週四十時間労働制に移行し、それに伴い設けられた猶予措置は平成八年度末までとしており、また特例措置の労働時間の水準も短縮の方向で今後検討するものであるので、全体として労働時間の短縮が図られるものと考えております。
 一年単位の変形制は、年単位で休日増を図り、週休二日制に相当する週四十時間労働制を導入しやすくしようとするものであり、労使の取り組みにより、業務の繁閑に応じた効果的な労働時間短縮を可能にする制度と考えております。
 一年単位の変形制は女性の社会進出を阻むものではないかとの御指摘については、一年単位の変形制については、現行の三カ月単位の変形労働時間制の限度時間を縮小の方向で見直すこととしていますので、女性の社会進出を阻むような懸念はないものと考えております。
 さらに、育児やお年寄りの介護をしながら働く方々については、一年単位の変形制の適用に際して必要な配慮がされるよう措置する考えであります。
 最後のお答えでございますが、年次有給休暇の付与日数については、ILO条約の水準を参考に、今後その増加を図ることについて来春を目途に中央労働基準審議会に検討をお願いし、速やかに結論が得られるよう努力する考えであります。
 また、連続休暇取得促進要綱に示した年次有給休暇の平均二十日付与、二十日取得の達成に向けた労使の自主的な取り組みの一層の促進を図ることとし、そのための実効ある方策について引き続き検討してまいります。(拍手)
    ―――――――――――――
#52
○副議長(赤桐操君) 笹野貞子君。
   〔笹野貞子君登壇、拍手〕
#53
○笹野貞子君 私は、民主改革連合を代表し、議題となりました労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に対し質問をいたします。
 私たち民主改革連合は、国民生活のゆとり、豊かさの追求を最大の公約として掲げ、議席をお預かりしました。労働時間短縮は、私たちの目標の人間らしい生活社会を築く上で最も有力な政策の一つであります。一方、政府も生活大国五カ年計画で、平成八年度までに年間総実労働時間を千八百時間とすることを明示されておりますが、政府が明確な理念に基づいて労働時間短縮に取り組んでおられるのか疑問の点も多々ありますので、以下質問をいたします。
 まず、二十一世紀の労働はどのようにあるべきなのか、労働時間に関する政府の基本的なお考えを伺います。
 言うまでもなく、労働時間短縮はゆとりある生活を実現するための基本的課題であります。しかし、政府の労働政策は世界の潮流に大きくおくれ、長時間労働、過労死、サービス残業などを現実に生み出し、誇張された日本異質論に根拠の一つを与えております。来世紀初頭に人間中心の社会を構築するために、国民一人一人の豊かさを基本にした労働のあり方の理念を政府も考えるべきなのであります。
 労働時間短縮への取り組みは、一つの労働政策のさじかげんの問題ではなく、労働とは何か、市民生活とは何か、人間とは何かという根本的な意義を含んでおります。労働こそ生活の中心をなすものです。生活大国を目指すという政府にとっても労働時間短縮への責任は一層重いものとなっております。二十一世紀の労働像を描くことなしに時短の推進をすることはできません。
 そこで、政府は来世紀初頭の労働全般、そして女性、高齢者、障害者などの労働のあり方についてどのようなお考えを持っているのでしょうか。また、政府は生活大国五カ年計画での年間労働時間千八百時間の目標の達成についてどのように見込んでいるのか、具体的な日程をお示しいただきたい。
 さて、次に今回の労働基準法等改正案に沿って具体的な点を伺います。
 週四十時間労働につきましては、すべての労働者について労働基準法に定められるべきでありますが、やむを得ざる経過措置として週四十時間労働の適用を猶予する場合についても、対象となる事業場の規模、業種を極力限定すべきであります。時間外労働につきましては、事実上野放しになっているのが現状です。法律によって女子のみについて時間外労働の上限が規定されているわけですが、労働時間短縮の観点からすれぼ、全労働者に時間外・休日労働の上限を設けるべきではないでしょうか。
 また、今回の改正案で時間外・休日労働の割り増し賃金率は二五%以上五〇%以下の範囲内でそれぞれ命令で定めると引き続き低水準に抑えられております。私たちは時間外・休日労働の賃金については時間外五〇%、休日一〇〇%の割り増しとし、法律に明記すべきであると考えます。また、労働時間短縮を所定外労働に対する割り増し賃金率の上昇と同時に行えば、消費拡大と省力化の設備投資増加をもたらし、内需主導型経済成長につながるという見方もあります。政府のお考えを伺います。
 変形労働時間制導入に際しては歯どめが必要だと思います。一日八時間、一週四十八時間を上限とし、連続労働日数の上限も定めるべきであると考えますが、政府の対応を伺います。また、変形労働時間制導入に当たっては、勤労者の育児、介護等の事情に十分配慮される必要があることは言うまでもありません。
 年次有給休暇につきましては、最低付与日数及び総日数の上限を引き上げ、また若年労働者の年次有給休暇に対する希望が強いことからも、継続勤務要件は今後六カ月以下に短縮すべきでしょう。加えて、私たちが提案しているパート労働法の制定、介護休業制度の法制化、メーデー祝日化など連休拡大の措置等が緊急に必要と考えますが、政府はどのように対処されますか。
 また、これまでの日本経済を力強く支えてきた中小零細企業における労働時間短縮が極めて重要であります。下請振興策について法的措置を含む実効ある措置を検討すべきであり、その他中小零細企業に対する労働時間短縮支援策を充実すべきであります。
 労働時間短縮は、国民が連帯してこそ実現できる課題であります。多くの企業でも私たちの考えを受け入れ、四十時間労働に向けて計画を立て、怠りなく準備を行っているわけであります。時短が経営上の革新を生み出し、企業の活性化にもつながるという声も聞かれます。しかし、政府が国民のまじめな努力を無視して特定事業に係る猶予を延長したことは、政府の労働時間短縮に対する考え方の底の浅さを感じさせます。労働時間短縮を粛々と実行していく決意が政府にあるのかどうか、お聞かせください。
 労働時間短縮の実現は、歴史の段階を一つ上る仕事でもあります。労働を苦役から生活の一部に変え、休暇をかち取った権利から法の支配による原則に育てる歴史的な課題が労働時間短縮であり、労働基準法改正だと考えますが、いかがでしょうか。
 そしてまた、女性、高齢者、障害者等の労働をどう位置づけていくかが生活社会実現への。パイロット的役割を果たすのではないでしょうか。女性、高齢者、障害者等が労働の現場に大きく参入することによって労働者全体の労働時間短縮もできると考えますが、政府のお考えを伺います。
 私たちの創造する二十一世紀初頭の生活社会は、多様な生活者に多様な労働機会が準備されていることで成り立ちます。私たちはそのために、今、労働条件の不公平、不公正の撤廃を行い、労働に対する基本的権利の充実を図る覚悟であります。
 最後に、労働大臣に伺いますが、労働省は働く生活者の立場を代弁する機関として先見的な政策を今後取り入れていただきたいわけであります。既に大学進学率は女性が男性を上回っていますが、今後の女性の職場進出に伴う社会の変化は想像以上に進むでしょう。女性に対する保護や規制の措置が混在している現在の法律や制度は、大幅な整理と見直しを迫られるでしょう。高齢者についても福祉の対象として考える以上に、潜在する経験豊富な勤労者の大集団ととらえる時代が来ております。障害者についても、米国の障害者法に匹敵するようなノーマライゼーションの措置を行い、健常者と変わりなく就業できるようにすべきでしょう。労働大臣の御決意を伺いたいと思います。
 労働時間短縮は、まず労使の自主的な努力によって達成されるものですが、今後広く国民生活全般にかかわっていく問題であります。総理並びに関係大臣の真剣な御答弁を要望し、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#54
○国務大臣(宮澤喜一君) 生活大国の実現は国政の最重要課題であると考えておりますが、すべての人がみずからの能力に応じて社会に参加、貢献をし、かつ生活の中に潤いとゆとりを実感できるような働き方を追求していくことが重要と考えます。
 労働時間の短縮は、職業生活と家庭生活、地域生活との調和を図り、国民一人一人が豊かさとゆとりを日々の生活の中で実感できるような社会を実現し、生活大国への前進を図る上での最重要な課題の一つと認識をいたしておりますので、全力を挙げて推進いたしたいと思います。
 本法案によりまして、週四十時間労働制への移行を実現するとともに、労働時間短縮に取り組む中小企業に対する助成制度をも創設いたしまして、この目標の達成に政府としても全力を尽くしてまいりたいと思っています。
 労働時間を短縮した結果、自由時間が増大する、それによってまた消費というものが喚起される。他方で省力化が必要でありますから、そのための設備投資をも誘発するであろう、したがってこれらは内需拡大に資する面があるという御指摘は、私も賛成であります。そのように考えております。
 それから、メーデー、五月一日を祝日にすることにつきましてお触れになられましたが、この点は時間短縮という観点だけでなく、「国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日」という祝日法の趣旨もございますので、また現在、祝日の中に勤労感謝の日が定められておるという等々もございますので、それらのことを考えながら慎重に検討する必要がある問題と心得ます。
 それから、法定労働時間を四十六時間とする猶予措置の延長は、厳しい経済情勢のもとで経営環境の悪化に苦しむ中小企業が少なくないということに配慮をいたしました、いわばやむを得ない緊急避難的措置でございます。
 もとより、こういう措置によりまして労働時間短縮という大きな流れが停滞することがあってはならないと思っておりますので、政府としても積極的に中小企業の労働時間短縮対策を講じていく考えであります。
 特に、猶予期間を延長された企業におかれても、一日も早く週四十四時間制に移行できるような計画的、集中的な、政府としてもそのような指導、援助に努めていきたいと思っております。
 女性、高齢者等の社会参加についてでございますが、生活大国の実現のためには、国民のだれもがみずからの能力に応じて社会参加をし、社会に貢献することが、そのような環境整備が大事でございます。特に、女性が十分に社会で活躍できるようこれまでの男女の固定的な役割分担意識を見直すとともに、高齢者や障害者についても就業機会の整備などを通じ社会参加をして生きがいのある生活をしていただく、そういうことが大事であると思います。
 こうした社会参加の促進は、今後の中長期的な労働力不足をも緩和することになると思います。また、労働時間の短縮を円滑に進めるためにも寄与するものと考えております。
 残りの問題につきましては労働大臣からお答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣村上正邦君登壇、拍手〕
#55
○国務大臣(村上正邦君) 第一の質問でございます猶予対象となる事業場の規模、業種を極力限定すべきではないか。改正法が施行せられます平成六年四月における猶予措置の対象事業の範囲については、新たに実態調査を行い、その結果を踏まえ、できる限り限定する考えでありますことは、繰り返しお答えを申し上げておるところであります。なお、その後においても適宜実態調査を行い、その結果を踏まえ、猶予措置の水準及び範囲について所要の検討を行うことといたしております。
 時間外・休日労働の上限について、法律によって一律の規制を行うことま我が国の労働慣行の実情から見て困難であると考えます。しかしながら、恒常的な時間外労働は好ましくなく、そのため時間外労働協定の適正化指針に基づく目安時間の遵守の徹底に努めるとともに、同指針の内容についても速やかに必要な見直しを行いたいと考えております。また、法定休日労働についても、指針の内容の見直しに合わせて、その規制のあり方について検討してまいりたいと考えております。
 それから、時間外・休日労働の割り増し賃金率についての今回の改正は、時間外・休日労働の抑制、国際的な公正労働基準の確立等の観点から、もう同じことを何回も繰り返し申し上げておりますが、その政策目標を掲げたものであり、そのような認識に立ちまして段階的な引き上げを図よるう努めてまいりたい。具体的には、当面まず法定休日労働の割り増し賃金率について改正法の施行に合わせて引き上げることとし、時間外労働の割り増し賃金率の引き上げについても週四十時間制への移行スケジュール等を踏まえつつ、引き続き中央労働基準審議会に検討をお願いしたいと考えております。
 それから、一年単位の変形労働時間制は、休日の増加に資するという制度の趣旨に沿って適切に運用することとしております。具体的には、一日及び一週の上限時間について、一週の上限は四十八時間とすることを前提に、現行三カ月単位の変形労働時間制より縮小する方向で検討することとしております。また、連続労働日数の上限についても、一週間に一日の休日が保障される日数とし、それが連続労働日数の上限として適切に機能するよう配慮することといたしております。
 年次有給休暇の最低付与日数については、来年四月から中小企業についても十日に引き上げられることとなっており、重ねての引き上げは困難でありますが、ILO条約の水準を参考に今後その増加を図ることについて、来春を目途に中央労働基準審議会に検討をお願いし、速やかに結論が得られるよう努力してまいる考えでおります。また、今回の改正案では、継続勤務要件を一年から六カ月に短縮するという思い切った改善を行っており、若年労働者の希望にも沿うものと考えております。
 最後に、労働省は働く生活者の立場を代弁する機関として、その大臣として決意いかん、こういうことでございますが、この本会議においての締めくくりの私の決意にもなろうかと思いますので言申し添えておきます。
 私は、国の基本というものは外交、防衛、教育、これが三つの柱だと思っておりましたが、労働大臣になってみまして、労働行政というものはこの三つの基本の柱の中にもう一本入るんだ、国政の中でも重要な柱である、こういう認識に立っております。
 そして、私といたしまして、その労働行政を預かる立場といたしましては、(発言する者あり)ちょっと聞いてください。ここは。いろいろ女性問題とか身障者の問題とか出稼ぎの問題とか、いろいろな弱者のお立場に、労働省、また大臣といたしまして心がけていかなきゃならぬ。孫がうたた寝しているときに、自分の羽織をそっと脱いでその孫にかけてやる老婆心が大事なことだ。そうした思いやり、そうしたぬくもりのある労働政策の推進に取り組んでいるところであります。
 勤労者一人一人が幸せになることが政治の基本であり、今後とも、働く人々の声、経済社会の実情や今後の変化の方向を的確にとらえ、先手先手、積極的に労働政策を推進していきたい、そして貧しさからの解放、病のない、争いのない社会を目指して頑張っていきたい、この決意を申し述べさせていただきまして、結論とかえさせていただきます。(拍手)
#56
○副議長(赤桐操君) これにて質疑は終了いたしました。
     ―――――・―――――
#57
○副議長(赤桐操君) 日程第一 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。厚生委員長細谷昭雄君。
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   〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
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    〔細谷昭雄君登壇、拍手〕
#58
○細谷昭雄君 ただいま議題となりました法律案につきまして、厚生委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、戦傷病者、戦没者遺族等の処遇の改善を図るため、障害年金、遺族年金等の額を引き上げるとともに、戦没者の妻及び父母等に改めて特別給付金を支給する等の措置を講じるごととするものであります。
 なお、衆議院において、施行期日について所要の修正が行われております。
 委員会におきましては、中国人被爆者への対応及び中国残留婦人の帰国の促進、年金等の支給に係る国籍要件、旧ソ連抑留中死亡者等の遺骨収集の推進等の諸問題について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
 質疑を終わり、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
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#59
○副議長(赤桐操君) これより採決をいたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#60
○副議長(赤桐操君) 総員起立と認めます。
 よって、本案は全会一致をもって可決されました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時三十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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