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1993/05/28 第126回国会 参議院 参議院会議録情報 第126回国会 本会議 第20号
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1993/05/28 第126回国会 参議院

参議院会議録情報 第126回国会 本会議 第20号

#1
第126回国会 本会議 第20号
平成五年五月二十八日(金曜日)
   午後零時三十一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第二十号
    ―――――――――――――
  平成五年五月二十八日
   午前十一時四十分 本会議
    ―――――――――――――
 第一 児童の権利に関する条約の締結について
  承認を求めるの件(趣旨説明)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(原文兵衛君) これより会議を開きます。
 日程第一 児童の権利に関する条約の締結につ
 いて承認を求めるの件(趣旨説明)
 本件について提出者の趣旨説明を求めます。武藤外務大臣。
   〔国務大臣武藤嘉文君登壇、拍手〕
#4
○国務大臣(武藤嘉文君) 児童の権利に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、趣旨の御説明を申し上げます。
 この条約は平成元年の国連総会において採択されたものであり、児童の権利の尊重及び保護の促進を目的とするものであります。
 この条約は、我が国が締約国となっている経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約及び市民的及び政治的権利に関する国際規約において定められている権利を児童について広範に規定するとともに、さらに、児童の人権の尊重及び保護の観点から必要となる詳細かつ具体的な事項をも規定したものであります。この条約の目的は基本的人権の尊重の理念に基づいている我が国の憲法とも軌を一にするものであり、我が国がこの条約を締結することは、我が国の人権尊重への取り組みの一層の強化及び人権尊重についての国際協力の一層の推進の見地から有意義であると考えております。
 我が国は平成二年九月にこの条約に署名しており、またこの条約は、平成五年五月現在、既に、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダを含む百三十以上の国により締結されております。さらに、近年、児童の権利の重要性に対する認識が世界的に高まり、この条約につきましては、子供のための世界サミット、国連総会等において世界各国に対してこの条約の早期締結が勧奨されるに至っており、このような点を勘案いたしましても早期にこの条約を締結することが重要であると考えられます。
 なお、我が国としては、この条約中の自由を奪われた児童の成人からの分離についての規定に関しては、その内容にかんがみましても留保を付することが適当であると認められます。
 右を御勘案の上、この条約の締結について御承認を得られますよう格別の御配慮を得たい次第でございます。
 以上が児童の権利に関する条約の締結について承認を求めるの件の趣旨でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#5
○議長(原文兵衛君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。堀利和君。
   〔堀利和君登壇、拍手〕
#6
○堀利和君 私は、日本社会党・護憲民主連合を代表しまして、子どもの権利に関する条約、残念ながら政府は児童の権利に関する条約と訳しておりますけれども、本条約について、特に障害者の立場から政府のお考えをただしたいと思います。
 まず、私は、本条約を一読し、第二条にある障害ゆえの差別の禁止条項に深く心を打たれました。といいますのも、世界人権宣言や日本国憲法にも障害による差別の禁止規定は明記されていないからです。つまり、当時、障害者の側からの視点が社会的に全く人々の意識に上っていなかったということです。ちなみに、カナダの憲法では、精神的もしくは肉体的障害により差別されることなく法による同様の保護及び利益を受ける権利を有するとあり、近年の障害者をその構成員とした社会のあり方を指し示しているものであります。
 さて、このような歴史的にも大きな意味を持つ本条約第二条について、宮澤総理及び外務大臣に対しまして御見解をお伺いしたいと思います。
 一方、このような立派な条約を締結しようとしている我が国において、障害を持つ子供たちはいまだに障害ゆえの差別を受け続けていると言わざるを得ません。障害児の就学に当たって、行政側は常に、あなたの子供は盲学校に合っているとか、養護学校がいいとか、親や子供の希望に反して振り分けてきました。
 その具体的な事例を挙げてみたいと思います。例えば、全盲で重度の知恵おくれの子供が盲学校の小学部を勧められ、やむなく入学いたしました。ところが、御両親は間もなく地元の小学校への転校を強く望んだわけでございます。それは、総理、なぜだとお思いになりますでしょうか。親の見えてはないかとか、我が子を障害児と認めたくないからではないかと思われるかもしれません。決してそうではないのでございます。障害を持つこの子にお父さんは生きる力を身につけさせたかったからでございます。盲学校では確かに専門家の手で衣服の着脱や白いつえをついての歩行訓練などを行います。しかし、お父さんは次のように語っています。
 うちの息子は幾ら訓練をしても一人歩きはできません。それは地域の学校に入学しても同じことです。ただ、近所の学校に通うことで、うちの子供がここにいるんだということを知ってもらうことの方が大事だと思ったのです。そうすれば、たとえ一人で歩くことができなくても、迷ったときに息子を知っている人がうちに連れてきてくれることもあるからです。それがこの子が生きる力を身につけることになるのです。この子は学校を出たらここで生きていくのですから、と語ったわけでございます。
 また、ある知恵おくれの子は、何年も何年も養護学校で算数を教えられて、それでもちっとも身にっかなかったといいます。でも、卒業後、買い物に出るようになり、初めはけげんそうな顔をしていた八百屋や肉屋の人々もその子の顔を覚えてくれ、おつりを渡してくれたり、町を歩いていると声をかけてくれるようになったのです。おつりの計算はいまだにできません。でも、この子は確かに地域社会で生きる力を身につけたわけです。この子にとって、九年間、地域の子供たちから切り離された場での時間とは一体何だったでしょうか。
 このように、障害を持つ子供たちにとって生きる力とは社会のいろいろな人々との交わりの中でこそ得られるものであると思いますし、私自身の経験からも胸を張ってそう言えるのでございます。総理、この点につきましてどのようにお考えかをお聞かせ願いたいと思います。
 さて、障害ゆえの差別の禁止という点からいえば、養護学校が遠いため、年端もいかぬ六、七歳のころからずっと親元を離れて寄宿舎暮らしを余儀なくされるわけです。毎日毎日、同じ敷地の中にある学校と寄宿舎を往復するだけの生活を送っている子供たちがおります。先生の方は家に帰ります。たまに家に戻っても、その子が地域にいることをはかの子供たちは知りませんのでだれも遊びに来ません。楽しいはずの夏休みも、だれも遊びに来ない家での四十日間は子供にとってまさしく耐えがたいものであります。家族や親兄弟もふだん別々に暮らしているためよそよそしくなり、親戚の子を扱うようになってしまうのです。これは親からの分離禁止を定めた本条約第九条に明白に反しております。しかも、九条に反するだけではなく、基本的人権にかかわる重大な問題です。総理、あなたも子を持つ親としてこのようなことをどのようにお考えか、御感想をお伺いしたいと思います。
 養護学校に通うということは、例えば歩いてたった五分のところにある学校に通うことが許されないということでございます。通学も、シートベルトに縛りつけられて、長いときには二時間以上かけてスクールバスに揺られわざわざ遠くの養護学校に通っている。こういう子供たちがいます。このバスの中の子供たちの姿は、地域の子供たちには全く見えないのです。
 次に、私は、本条約十二条の子供の意見表明権について、事例を述べお伺いしたいと思います。
 ある車いすの少女が教育委員会から、あなたにとって一番の学校は養護学校中等部ですと執拗に説得されました。これに対しこの少女は、私にとって車いすでの生活が普通の生活です、少し手をかしてもらえればいいのです、どのように手をかしてくれたら私の障害がなくなるのかをわかってもらいたいためにみんなと一緒の普通学級へ行きたいと思います、と強い希望を表明しました。しかし、彼女がいざ地域の中学校に入るや、そこにはほかの友達から切り離された彼女一人だけの教室が用意されていたわけです。足かけ三年、クラスの友達と机を並べたいと主張してきたにもかかわらず学校や教育委員会は全く耳をかさないまま、彼女はひとりぼっちの教室から卒業を余儀なくされようとしております。
 私は、この少女の年齢と意思表明の内容から見て、第十二条に言う「その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮される」意見表明権を保障されるべきだと考えます。自分の就学にかかわる重要な問題への意見表明権が、障害児であるがゆえに事実上否定されたと言わざるを得ません。文部大臣、このことをどのようにお考えなのか、お聞かせ願いたいと思います。
 さて、条約二十三条の障害児の権利は次のように述べております。障害児が可能な限り社会への統合及び文化的、精神的発達を達成することに資する方法、言いかえればいろんな人が当たり前に生きることを保障するノーマライゼーションの理念を基本に、その実現の手段をるる述べております。加えて、条約第五条には親の指導の尊重をうたっております。つまり、地域の学校へも、あるいは養護学校へ行くのも親の意向が尊重されるはずでございます。しかし、日本の公教育は、親や本人の意思に反して一たん養護学校などに行ってしまえば、子供が幾ら地域の学校に戻りたくても針の穴を通るほどの難しさがあるわけでございます。
 第五条には子供の能力の発達と適合する方法でとありますので、たとえ親の希望と異なっても、養護学校への指導、それは正当性があるという考え方が一方にございます。しかし、障害児の親には文部省の硬直した法的解釈では学校選択の自由はなく、唯一指導された養護学校へ行くしかないのでございます。もちろん、地域によっては普通学校への入学を許されているところもあります。しかし、入学した後も、障害児に対する周囲のいじめや無理解、無視されるということで親や本人がノイローゼに陥り、登校を拒否する子供も出てくるということが現実でございます。その結果、養護学校などへの転校を執拗に学校側から勧められるということも多く起こってきております。
 これは明らかに、国際障害者年や本条約の理念でもあるみんなが当たり前に生きるというノーマライゼーション優先の原則に反していると思います。私は、この理念優先原則こそ本条約の障害児の権利の根幹であると考えております。この点について文部大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
#7
○議長(原文兵衛君) 堀君、時間です。
#8
○堀利和君(統) 最後に、これから二十一世紀の高齢社会を担う今の子供たちが、社会的なハンディキャップを負わされた障害児や障害者、また高齢者とともに生きる社会人に育っていくためには、障害があろうとなかろうと、どんな子も地域社会でともに生き合う子供社会の実現こそがぜひ求められるものと思いますけれども、総理、これをどのようにお考えかお聞かせ願いたいと思います。
 終わりに当たりまして、一言申し添えたいと思います。私がるる障害児の権利の問題について述べてきましたのも、それが本条約の核心に迫るものであると信じたからにはかなりません。障害を持つ子も持たない子も一緒に育ち合う可能性と優しさ、その豊かな感性を持っているのがすべての子供たちではないでしょうか。だから、私はすべての子供たちのことについて述べたつもりでございます。このような観点から、我が党は本条約の本質を子供として認識し表現したのでございます。まさに子どもの権利条約であるにもかかわらず、政府は児童としました。政府の再考を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(宮澤喜一君) 最初に、条約第二条について御指摘がございましたが、第二条は「締約国は、その管轄の下にある児童に対し、児童又はその父母若しくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する。」と述べております。
 御指摘がありましたように、この条約第二条第一項は、この条約に定める権利をいかなる差別もなしに尊重し及び確保することを規定しております。そして、このような差別禁止事由の例示の一つとして心身障害が明示的にここに掲げられましたことは、障害による差別を禁止することについての国際社会の関心を反映したものと申すことができます。御指摘のようにこれは歴史的に大きな意味を持っており、この精神を我が国におきましても行政にも最大限に生かしてまいらなければならないと考えます。
 次に、障害を持つ子供たちのあり方、生き方について御意見を承りました。障害児の育成につきましては、可能な限り地元の地域で生活しながら行われることが望ましいと思います。一方で、専門的な指導、訓練の必要性から施設等に入所させることがより望ましい、また必要だという場合もあると考えます。今後とも、在宅サービスの場合と入所サービスの場合の適切な組み合わせによりまして、障害児の育成に最もよい方法を発見することに努めてまいりたいと思います。
 次に、障害の重い児童生徒が特殊教育諸学校の寄宿舎に入舎することにつきまして、特別の配慮のもとに適切かつきめ細かな教育を行うために必要なものでありまして、この点は本条約第九条に反するものではないと考えております。
 それから、二十一世紀の高齢社会を担う子供たちが、どんな子も地域社会でともに生き合う、そのような社会を実現すべきということについて、御指摘のとおり、障害を持つ児童もまた持たない児童もともに地域の中で暮らしていける社会、ノーマライゼーションの社会を実現することは重
要な課題であると考えます。このため政府としては、本年三月に作成した障害者対策に関する新長期計画に基づき、関係省庁が一体となって、この精神を実現いたしますための関連施策を推進してまいりたいと存じます。
 お尋ねの残りにつきましては関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣武藤嘉文君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(武藤嘉文君) お答えをいたします。
 今総理からも御答弁がございましたけれども、この第二条の差別禁止規定の中に心身障害というのが明示されましたことはまことに歴史的にも大きな意義のあるものであり、私は高く評価したいと思っております。このようなことになりました背景には、やはり国際社会においても障害者問題に対するお互いの関心というのが大変高まってきた証拠ではないかと思っております。(拍手)
   〔国務大臣森山眞弓君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(森山眞弓君) まず、障害を持つ子供たちの教育についての御質問がございました。
 御質問の具体的なケースにつきましては、その事情や経緯をよく承知しておりませんので具体的なお答えはしにくい面もございますが、一般的に申せば、心身障害児の教育につきましては、障害の程度の重い子供たちについては盲、聾、養護学校で教育を行い、障害の程度の軽い子供たちについては小中学校の特殊学級などで適切な教育を行うということになっております。また、具体的な子供の就学すべき学校などの決定につきましては、保護者から話を聞くとともに、医師、教育職員など各方面の専門家でもって構成されます就学指導委員会の検討の結果を受けまして、教育委員会の責任において行っているわけでございます。
 このような現行制度の運用に当たりましては、各教育委員会が子供の状態を把握いたしますとともに、保護者の気持ちなどをしんしゃくいたしつつその子供のために最も適切な判断を行うよう指導しているところでございまして、本件のような平成五年五月二十八日 参議院会議録第二十号ケースにつきましては、保護者等と話し合いを進めまして適切な対応がなされることを期待したいと考えております。
 次に、ノーマライゼーションの理念の優先原則に関する御質問がございました。
 心身障害児の教育につきましては、その障害の種類と程度に応じましてその能力を最大限に伸ばし、可能な限り社会に積極的に参加できるよう適切な教育を行うということが肝要でございまして、障害の程度が重い子供たちにつきましては、少人数の学級編制、特殊教育についての知識・経験を持った教職員の配置、障害の状況等に対応した教育内容・方法、障害に配慮した特別の施設・設備や教材などの特別の配慮のもとにきめ細かい教育を行うことが必要だと考えます。
 このため、我が国では、障害の程度が重い場合は盲学校、聾学校及び養護学校におきまして、また障害の程度が軽い場合は小学校、中学校の特殊学級等において教育するということにしているところでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(原文兵衛君) 浜四津敏子君。
   〔浜四津敏子君登壇、拍手〕
#13
○浜四津敏子君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました児童の権利に関する条約について総理並びに関係大臣にお尋ねいたします。
 本条約の名称については衆議院で論議されてまいりましたが、私は子どもの権利に関する条約とするのがより実態に即し妥当と考えます。以下、子どもの権利条約と称します。
 子どもの権利条約は、人権史上に新たな一ページを記す画期的な条約と高く評価されております。その意味で、本条約の批准がここまでおくれたことについては、政府は本気で取り組む姿勢があるのかと疑わざるを得ませんが、ともかくも批准のための国会審議が行われたことを率直に喜ぶものであります。
 私は国会議員になる前に弁護士として、また子を持つ身として、子供の人権に私なりに取り組んでまいりました。そうした中で本条約を見たとき、単に子供の人権にとどまらず、すべての人々の人権、そして人類全体の生存と生き方という極めて根本的な課題を私たちに問いかけているのではないかと考えております。その意味で、子供の人権を考えるとき、それは力関係に左右される政治的視点ではなく、損得や利害に左右される経済的視点でもない、生命の視座に立った人類としての視点で取り組むことが不可欠と考えます。
 そして、人権思想の結晶としての本条約が私たちに要請しているものは、一つには、国家主役ではなく人類主役への転換であります。二つには、国益追求でなく人類益追求、そして経済大国から人権大国、平和大国への転換であると考えます。
 本条約が全会一致で採択されたことからもわかるように、今、地球社会が認める共通の価値の一つが人権であります。宮澤総理は人権をどのようにとらえ、そしてこの条約の基本理念と精神をどのように理解しておられるかをまず最初にお尋ねいたします。
 民族が違い、国も違い、体制が違ったとしても、人は皆同じ人間としてだれもが幸せに生きる権利があるとの世界的な人権意識の高まりの中、本年六月にはウィーンで世界人権会議の開催が予定されております。そして、本年は国際先住民年であります。人権大国を目指す日本として、世界人権会議及び国際先住民年にどう取り組まれるのか、外務大臣にお伺いいたします。
 次に、日本の子供たちが置かれている現状とその解決への取り組みについて伺います。
 第一は、条約第二条の差別禁止についてであります。親が法律上の夫婦か否かという子にとってはどうしようもない理由により戸籍や住民票の差別記載、相続の差別がなされることは、到底合理性があるとは言えないと思います。国際的に見てもこうした差別をなくす方向にあり、日本社会の動きから見ても廃止すべきではないでしょうか。本条約の批准に当たり、かたくなな答弁だけでなく、法務省の法制審議会でも、条約の基本精神に立ち、非嫡出子差別廃止の方向で柔軟な議論をすべきではないでしょうか。法務大臣の御見解をお伺いいたします。
 第二に、条約二十八条などの関係で問題とされるいじめ、体罰、登校拒否、校則、内申書、退学処分など教育現場における諸問題の原因及び解決方法、並びに条約精神に沿う教育の基本方針についてお伺いいたします。
 一国の興亡盛衰は次代を担う子供たちによって決定づけられると言われます。人権大国を目指す日本のこれからのリーダーに求められるものは、狭い利益ではなく、広く人類益のために貢献する崇高な人格であります。果たして今の日本の教育は次代の平和のリーダーを育てているでしょうか。残念ながら疑問とせざるを得ません。
 かつて弁護士会の「子どもの人権一一〇番」を担当していたとき、たくさんの子供たちから泣きながらの電話を受けました。学校の中で、友達にトイレに顔をつけられ、足げにされ、上履きを隠され、体育館の隅に連れ込まれて衣服まではぎ取られる。毎日こんないじめに遭う学校、そしてまた、黒と決められたリボンがなくて紺のリボンをしただけで鼓膜が破れるほどの体罰を受ける、こんな学校が子供たちにとってどれほどの地獄だったでしょうか。教育現場におけるこれらの諸問題の根本的原因は教育の基本方針の誤りにあるのではないでしょうか。
 現在の教育は、経済大国に必要な知識しか教えず自分だけがよければというエゴを引き出す教育であり、社会のため、多くの人々のため、平和のために力を尽くすことこそがとうといという崇高な人間性を育てる教育になっていないところに問題があると考えます。今こそ条約二十九条の教育の目的に沿う真の人間教育が要請されるものと考えますが、いかがでしょうか。
 文部大臣に、これら諸問題の生じた原因をどう認識しておられるか、そしてそれらの解決にどのように取り組まれるのか、あるべき教育の基本方針について御見解を伺います。
 次に、近年とみに増加している子供の虐待についてであります。
 条約十九条は、すべての虐待から子供を保護するために、あらゆる分野からの総合的、系統的配慮を義務づけております。日本においては、子供を保護し援助するための系統的制度も統一的な法も存在しておりません。早急に制度と法の整備が必要と考えますが、法務大臣及び厚生大臣の御所見をお伺いいたします。
 今指摘しただけでも、国内法の整備が必要なことは論をまちません。総理、今後子供の人権全般にわたっての法整備を早急に行うべきであると考えますが、総理の御見解と決意をお伺いいたします。
 次に、世界の子供たちの置かれた状況と我が国のNGO支援のあり方について伺います。
 ユニセフによれば、発展途上国では毎週二十五万人もの子供が栄養不良や病気で死に、過去十年間だけでも戦争で百五十万人以上の子供が殺されたと報告されています。こうした国々において日本のNGOのメンバーも、殊に子供たち救済のために活躍しております。政府としてもっと有効にNGOを育てるような助成策を、そして、ODAに占めるNGO補助金の割合を少なくとも諸外国並みに上げる努力をすることがぜひとも必要と考えますが、外務大臣のお考えを伺いたいと思います。
 最後に、子どもの権利条約の広報、実施体制、運用方針について伺います。
 条約の内容及び精神を広く一般国民や子供た七に知らせるのみならず、殊に子供たちに直接かかわる教育、出入国管理、福祉関係等の教職員の方々などに対して周知徹底することが必要と考えます。具体的にどのような方法で知らしめていかれるのかを総理にお伺いいたします。
 フランスでは条約実施に当たり、子供たちの代表を国会に集めて「子供からの発言」と題する討論会を開いたとのことです。また、近年、人道庁を設置いたしました。ブラジルでは子供庁を設置しスウェーデンはオンブズマンを置くなど、諸外国では前向き、積極的に取り組んでおります。我が国はどのように実施し運用していかれるのか、オンブズマン制度を設ける意思はあるのかをお伺いいたします。総理、条約批准を契機に日本においてもぜひ子供庁を設置してはいかがでしょうか、お伺いいたします。
 約二十年間弁護士として子供たちの事件と苦悩を見てきた立場として、子供の人権の十分な保障が私の宿願であります。単に形式上批准して事足れりとするのではなく、積極的に実施体制を整え、運用においても精神を十分に推進し、人権先進国として誇れる施策の積極的な実施及び運用を切に希望して、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
  〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(宮澤喜一君) 最初に、人権というものをどのように考えるかというお尋ねでございました。
 人権とは、世界人権宣言の前文で述べられておりますように、「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利」であると考えます。人権の尊重は「世界における自由、正義及び平和の基礎である」と思います。この御審議をいただいております条約は、児童の人格の完全な、かつ調和のとれた発達のため、児童の人権が保障されるとともに、児童が特別な保護及び援助を受けるべきであるという基本的な考え方に立脚しておるものと認識をいたしております。
 条約との関連も含めまして、子供の人権全般に「わたっての法整備を早急に行うべきではないかというお尋ねでございました。
 この条約に定められておりますもろもろの権利につきまして、その内容の多くは我が国憲法を初めとする現行の国内法制で既に保障されているものと思いますが、しかし、この条約を締結することによりまして、法制度の面ばかりでなく、意識の面、行政の実態の面で一層努力をしていくべき契機にいたすべきものというふうに考えております。
 それから、政府としてはこの条約を十分に周知徹底する、広報することの重要性を認識いたしまして広報誌等においてもこの条約について紹介、普及を行っておりますが、今後とも児童を含む国民全般に対しまして適切な広報を行ってまいりたいと思います。また、児童にかかわる関係機関の職員に対して、関係省庁において講習の実施、通知を出しますなど適切な方法によってこの条約の趣旨、内容を周知徹底してまいることといたしたいと思います。
 それから、オンブズマンの制度についてでございましたが、児童に関する各般の問題につきましては、既に児童相談所、児童委員、人権擁護機関などが家族や児童本人からの相談に応じ各種の援助を行う体制を整備しております。したがいまして、子供の権利侵害の問題について、オンブズマンという新しい制度を新たに設けるということでなく、児童相談所、人権擁護機関等の相談活動の強化を図ることによって対応してまいりたいと思います。
 それから、児童の権利の保障につきましては、これまでも児童の健全な育成を目的とした各種施策の展開を通じて確保してまいりましたが、政府としては引き続き、関係行政機関の緊密な連絡を保ちつつ、この条約の趣旨を踏まえた施策を総合的に推進してまいりたいと考えております。
 残余のお尋ねにつきましては関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
  〔国務大臣武藤嘉文君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(武藤嘉文君) お答えいたします。
 一つは、ことしの六月にウィーンで開かれます世界人権会議の問題でございますが、世界における人権の尊重及び促進のための重要な機会ととらえておりまして、我が国といたしましてもこの会議が成功するように積極的な貢献を行ってまいります。
 また、ことしは御指摘のとおり世界の先住民のための国際年でございます。世界の先住民の人々が直面している人権、環境、開発、教育、保健等の分野におけるいろいろな問題の解決のための国際協力を推進する上で大変これは必要なことでございまして、政府としても、特にことしはそういう年でもございますので、前向きに取り組んでまいりたいと思っております。
 その次は、NGOに対する援助というか協力の問題でございますが、政府としてはNGOの活動を高く評価いたしております。政府の開発援助とこのようなNGOの活動を有機的に結びつけまして官民を挙げた総合的な経済協力を推進するということが、開発協力への国民参加という観点からも重要なことであると認識をいたしております。
 政府のNGO支援、助成策につきましては、平成元年度に御承知のとおりNGO事業補助金制度及び小規模無償資金協力の制度を導入いたしました。その後年々NGOに対する支援を強化拡充してきているところでございます。NGOの自主性を今後とも十分尊重しながら、NGOとの協力関係は一層深めてまいりたいと思っております。(拍手)
   〔国務大臣後藤田正晴君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(後藤田正晴君) 浜四津議員にお答えを申し上げます。
 嫡出でない子の差別を撤廃すべきである、こういう御質問でございます。この条約の第二条は児童に対する不合理な差別を禁止する趣旨の規定でございますが、嫡出子とそうでない子との取り扱いの差異を定める民法の規定は、婚姻関係にある両親から出生した子であるか否かに伴って必然的に生ずる差異や法律婚の尊重という見地からの合理的な差異を定めたものでございまして、この条
約に反するものではない、かように考えております。
 なお、御指摘の問題については、条約の問題とは別に、国民世論の動向等を踏まえて今後とも慎重に対応する必要がある、かように考えております。
 次に、子供の虐待防止の観点から親権のあり方について検討すべきである、こういう御質問でございました。民法の親権に関する規定はこの条約に反するものではございませんが、御指摘の親権喪失制度等は親子関係に関する基本的かつ重要な問題でございます。今後とも慎重に対応すべきものである、かように考えているわけでございます。(拍手)
   〔国務大臣森山眞弓君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(森山眞弓君) 教育上の諸問題への対応及び教育の基本方針についてお尋ねがございました。
 学校教育は、人間としての調和のとれた発達を目指し心身ともに健全な人格形成を期して行われるべきものと考えます。この条約二十九条におきましては締約国の教育が指向すべき事項につきまして、児童の人格、能力等の最大限の発達、人権及び基本的自由等の尊重の育成などの観点を挙げておりますが、これらの事項は、教育基本法、学校教育法に規定されている我が国の教育目的の趣旨と基本的に合致するものでございます。したがいまして、これらの教育の目的に従って教育の一層の推進を図っていくことが大切であると考えます。
 また、教育を進めるに当たり、登校拒否、中退、体罰などの諸問題が生じていることは十分認識しております。これらの原因には、社会、家庭、学校それぞれの要因が複雑に絡み合っているものと考えられます。これらの問題に対しましては、学校、家庭、地域社会それぞれが教育の一層の充実に努めることが肝要でございますが、学校関係者が児童の人権を尊重した人間味のある温かい指導に努めるよう、今後ともその改善充実を図ってまいる考えでございます。(拍手)
   〔国務大臣丹羽雄哉君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(丹羽雄哉君) 障害児の福祉に関するお尋ねでございますが、障害を持つ子供も持たない子供と同様に生活し活動する社会を目指すノーマライゼーションの理念の実現に向けて総合的な対策を推進していくことが必要と考えております。このため、児童福祉施設の整備やホームヘルプ事業等の在宅福祉サービスの推進を図っているところであり、今後ともこれらの関連施策の一層の充実に努めていく考えであります。
 次に、児童の虐待についてのお尋ねでございますが、虐待のケースについては児童相談所において調査、指導を行い、必要に応じて養護施設などで受け入れることになっております。今後とも、それぞれのケースの実態に応じた迅速かつ適正な対応に努めるなど、この条約批准を契機として子供の人権に一層配慮し適切な対策を図っていく決意でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#19
○議長(原文兵衛君) 鈴木栄治君。
   〔鈴木栄治君登壇、拍手〕
#20
○鈴木栄治君 私は、民社党・スポーツ・国民連合を代表して、ただいま提案のありました児童の権利に関する条約について総理並びに文部大臣に質問させていただきます。
 現在、子供たちの人権の実態は大人の人権に埋没しがちであります。国際的には、世界人権宣言や国際人権規約等の人権規範でも子供たちの人権は規定されております。特にソマリアやボスニアの子供たちの悲惨な状況を目にしますと、これら子供たちへの人道に基づく援助が緊急に必要なことはもちろんのことであります。また、世界の子供たちを取り巻く状況は、発展途上国において恒常化している飢餓、内戦による難民化、少年兵の問題、親による暴力や性的虐待、読み書きができない子供たちやストリートチルドレンの急増、人身売買、麻薬の常習など極めて深刻であります。
 さて、我が国の子供たちの現状はといいますと、途上国の子供たちが置かれているようなその生存を脅かすほどの極限状況ではありませんが、陰湿ないじめ、体罰、登校拒否や少年非行などの教育問題に対し早急な解決が望まれております。
 以上のような観点から、私は、国際的な協力によって困難な状況にある子供たちの生存権、人格権を尊重しようとするこの条約の趣旨を評価し、早期に批准する必要があるものと考えます。
 まず、この条約で最も画期的と称される、十二条に言う児童の意見表明権の趣旨についてお尋ねいたします。
 この条項を、現在の行き過ぎた管理教育やそこから派生すると言われる不合理な校則、学校運営上の諸問題を是正するための手段として、児童生徒に権利として発言の場を与えるものと解釈する向きがあります。私は、原則として、この条文が規定するように自己の意見はその年齢や成熟度に応じて配慮されれば、殊さら権利性を前面に出さずとも十分確保、尊重できると思います。
 確かに、今の校則のあり方や学校運営には大いに改善の余地があることは事実です。しかしながら、これらの課題に対してどの程度児童生徒の関与を認めるのかという問題に対して、即、児童生徒に対し厳格な意味での権利を与えることによって図るというのでは余りにも短絡的であり、非常に疑問が残ります。なぜならば、学校は本来的に、場合によっては懲戒権を行使する教育の場であるということです。したがって、児童生徒と学校の関係は、教育に対しては一般社会における契約関係に見られるような対等の当事者である以上に教育を受ける対象でもあることを十分に念頭に置くことが必要だと思います。
 私は、児童生徒の一人一人がその人格を尊重されるのは当然のことだと思っています。しかし、他方では教育を受ける対象でもあり発育途上にあることを考慮すれぼ、いたずらに権利性だけを強調しても誤解を生じやすいと思います。私は学校教育を一般社会と同じように考えることには疑問を感じます。
 教育の上で最も大事なことは、日々の教育の中で権利についての理解を深めるとともに、その行使には常に一定のルールのもとで、しかも同時に責任と義務を負うということをしっかり教えることが大切です。これまでの議論を聞きますと、権利という言葉が先行して、その権利行使の前提となるはずの人格形成の重要性が欠落しているような気がしてなりません。
 これからの日本の教育のあり方を考えますと、権利意識の高揚はもちろん大切ですが、その基礎にあるのは他人の権利を尊重すること、すなわち他人に対する思いやりの心をはぐくむことだと私は思います。さらには、日本人として誇りを持ち、国を愛する気持ちを育てていかなければなりません。ところが、残念なことに現在の日本の教育を考えますとどうもそういう点がなおざりにされ、それが今、我が日本国において最も必要な国際貢献にさえも積極的に参加できない姿勢にもあらわれているのではないでしょうか。
 私は、我が国の子供たちの現状を見るとき、今こそ確固とした教育理念を確立すべきときであり、この条約の批准もよいきっかけになるものと確信しますが、この教育理念の確立についてどのような見解をお持ちでしょうか。総理並びに文部大臣の答弁を求め、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(宮澤喜一君) 教育は人格の完成を目指すものであり、これからの学校教育におきまして、二十一世紀を担う児童生徒一人一人が豊かな人間性を持ち、個性を発揮しながら創造的に生きていくことができる力をはぐくむことが重要であると存じます。
 その他、子供の教育に関しまして鈴木議員からるる御所見を承ることができました。今後とも学校教育を考える上で十分参考にさせていただきたいと存じます。
 なお、残る問題につきましては文部大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣森山眞弓君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(森山眞弓君) まず、校則や学校運営と児童生徒の関与についてでございます。
 この条約は、児童の心身ともに健全な発達のために教育を含む各種の特別な保護と援助とを確保しようとするものであり、児童についてさまざまな権利を規定しているところでございます。これらの権利につきましては、我が国では憲法や国際人権規約の規定により既に児童生徒に保障されているものでございまして、その意味では、条約の批准によって現在の学校教育の制度や仕組みに変更が求められるものではないと考えます。
 例えば、この条約の第十二条一項の「自己の意見を表明する権利」につきましても、自己の意見を年齢等に応じ相応に考慮することを求めるものでございまして、児童の意見を無制限に認めるものではございません。したがって、例えば校則やカリキュラムについては学校の判断と責任において決定されるものであると考えております。学校教育において、この条約の批准を契機としてより一層児童生徒の人権に十分配慮し、一人一人の個性を大切にした教育指導や学校運営が行われるようにしていくことが大切であると考えます。
 なお、御指摘の校則の改善につきましては、時代の進展や児童生徒の実態を踏まえた校則の見直し、その運用の改善につきまして一層の指導の充実に努めてまいりたいと考えております。
 次にお尋ねのあった学校と児童生徒の関係につきましては、各学校は学校の教育目的達成のために必要な合理的範囲内におきまして児童生徒に対し指導や指示をしたり、必要な場合には懲戒等の処分を行うものでございます。この点については本条約の批准によって何ら変更されるものではないと考えます。最後に、権利には責任と義務を伴うという点につきましては、児童生徒に権利及び義務をともに正しく理解させることが極めて大事であると考えております。また、他人に対する思いやり、日本人としての誇り、国を愛する気持ちを育てることや、国際社会において信頼され、その発展に貢献できる主体性のある日本人の育成を図ることが重要な課題であると認識しております。このため学校教育においては、日本国憲法及び教育基本法の精神にのっとりまして、学校の全教育活動を通じてこれらの点について指導しているところでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#23
○議長(原文兵衛君) 吉川春子君。
   〔吉川春子君登壇、拍手〕
#24
○吉川春子君 私は、日本共産党を代表して、子どもの権利に関する条約について質問をいたします。
 子どもの権利条約は、世界じゅうのすべての子供に共通するニーズにこたえるため、子供の権利の全分野にわたって、権利行使の主体として具体的な保障を確立しようとしております。これは、民主主義と民族自決権の確立と擁護を歴史の確固たる流れとした今世紀における人権条約の締めくくりとして最もふさわしい条約です。
 そこで、まずこの条約に対する政府の基本姿勢についてお尋ねいたします。
 条約の前文は、「極めて困難な条件の下で生活している児童が世界のすべての国に存在」し、「このような児童が特別の配慮を必要としている」と述べています。これは重要な指摘です。具体的な困難の中身は違うけれども、それがすべての国にあること、したがって日本も決して例外ではないことの認識から出発しなくてはならないのです。ところが政府は、この条約が、あらゆる国、特に発展途上国における子供の生活条件を改善するため国際協力が重要であると述べていることをとらえて、本条約の意義を発展途上国の子供にとってのものにとどめようとしているのです。
   〔議長退席、副議長着席〕
これでは日本の子供たちの権利を正しく守ることはできないのではありませんか。
 総理、我が国の子供たちはどういう困難な条件のもとにあるのでしょうか。日本の低賃金、長時間・過密労働は子供の成長にとって最も大切な家族の団らんを奪っており、子供の成長に大きな影響を与えています。学校では管理主義が横行し、学校嫌いの子供がふえ、自民党の文書でも、受験競争の過熱による過度の学習塾通いが子供たちの心身に種々の悪影響を及ぼしていると述べているように、深刻な事態です。地域では子供の集団が崩壊し、テレビゲームの前で何時間も孤独な時間を過ごすことがどれほど子供の心身をむしばんでいることでしょう。子供の周りからは豊かな自然は失われていく一方です。
 子どもの権利条約を形だけのものにしないためにも、こうした権利侵害の実態を把握し、その原因にメスを入れ、具体的な改善と前進のために行政を根本的に是正する機会にすることが政府に求められていると思いますが、総理の基本認識を伺います。
 さて、この条約は、子供を保護の対象にするだけでなく権利行使の主体として認めるという画期的な内容を持っています。意見表明権に見られるような子供の権利行使に対し政府は積極的に対応すべきだと思いますが、明確な答弁を求めます。
 私たちは先日、子供の意見表明権の行使の場として、子供たちにさまざまな学校生活上の意見を聞く機会を持ちました。埼玉県の高校生は、子どもの権利条約三周年を記念して三つの高校の図書委員の生徒が交流集会を計画したところ、学校側に会場の使用を拒否されました。別の高校生は、平和に関するアンケートを他の高校にとりに行ったら、教師が出てきて生徒には会わせてもらえなかったといいます。子どもの権利条約について学ぶこと、自分たちの未来に直接かかわる平和の問題で交流すること、こういう自主的な子供たちの活動こそまさに本条約の十二条で保障されていることではありませんか。これを妨げることは条約に照らして好ましくないと思いますが、いかがですか。
 こうしたことの口実として利用されている、複数の学校の生徒会のメンバーが集まること及び高校の生徒会の連合組織の結成を禁止する一九六〇年の文部次官通達と校内の生徒会活動を制限する六九年の初中局長通知は、教育基本法に反するのみでなく子どもの権利条約にも真っ向から対立するものであり、この際、撤回を強く要求いたします。文部大臣の明確な答弁を求めます。
 また、条約では教育に関する情報の公開を定めており、内申書及び指導要録は子供と親から請求があれば開示することが原則ではありませんか。答弁を求めます。
 少年司法についても子供の権利の尊重を貫いたものにしなければならないのは当然のことです。
 一九八五年、埼玉県草加市で女子中学生が殺害され少年五人が保護処分を受けた事件に関する損害賠償訴訟で、ことし三月、浦和地裁が少年らの自白の信用性を否定して請求を棄却し、刑事事件について事実上の無罪判断を行いました。現行の少年法ではこの事例のように保護処分終了後無実を示す証拠が見つかっても保護処分は取り消されないが、民事裁判では冤罪が認められるという不合理が起こり得るのです。
 条約三十七条では、自由を奪われたすべての子供は「弁護人その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利を有し、」と述べています。少年法についても再審の道を設けること、また一般刑事裁判の弁護人に当たる付添人の国選制度を設けるなど、この際、子供の司法救済の規定を充実させるべきではありませんか。法務大臣の答弁を求めます。
 次に、本条約の実施体制についてお尋ねします。
 女子差別撤廃条約批准に際しては総理大臣を本部長とする婦人問題企画推進本部が設置されました。国際障害者年に当たっても同様に、障害者対策推進本部がやはり総理を本部長に設置されました。子どもの権利条約の批准についても当然、子どもの権利条約実施本部を設置すべきではありませんか。
 また、条約を誠実に実施していくための体制として、第一に、子供の権利に関する立法と政策を提言し、同時に調査・勧告を行う権限を有する独立した行政機関をつくること、第二に、子供の意見を聞き行政に反映する子供の権利委員会を国と地方自治体に設置すること、第三に、各地方自治体に子供課を設置することを提案しますが、実行する意思はおありですか。この条約を国会へ提出して一年以上たつのにいまだに権利条約実施本部すら設けていないのはなぜですか。どうしてほかの問題と比較して子供の権利問題を差別するのですか。明確に答えていただきたいと思います。
 また、短期的、長期的に子供の権利保障を実施するための具体的な国内行動計画をつくるべきだと思いますが、あわせて総理のお考えを伺います。
 総理、一九九〇年七月、子供のための世界サミットにおいて採択された世界宣言で、各国は、子供の権利保障の重要さに目覚めその実現を最高の政治課題とし、十項目のプログラムの実行を約束いたしました。まさしく私たちはこれまでの子供の権利についての意識を根本的に改めることを求められているのです。したがって、本条約を形だけの批准に終わらせることは世界に対する違背行為と言わなくてはなりません。
 我が党は子どもの権利条約を全面的に実施させるため全力を尽くすことを表明し、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(宮澤喜一君) この条約の目的についてでございますが、この条約は、先進国、開発途上国の別を問わず、世界的な視野から児童の人権の尊重、保護の促進を目指すものと認識をいたしております。
 次に、子供の権利侵害、権利行使、意見表明権等についてのことでございますが、児童の権利侵害等の問題につきましては、既にこの条約の要請を満たす形で、児童相談所、人権擁護機関等により各種の援助を行う体制が整備されております。
 本条約が規定する児童の権利につきましては、我が国では憲法や国際人権規約の規定により既に保障されているものと考えます。したがって、条約の批准によって現在の学校教育の制度や仕組みに変更が求められているものではないと考えますが、もとより、今後とも一人一人を大切にした教育指導が行われることが肝要と思います。
 それから、この条約の実施に従いまして独立した行政機関あるいは子供の権利委員会などを設置することについてでありますが、政府としては関係行政機関の緊密な連携を保ちつつこの条約の趣旨をも踏まえた施策を総合的に推進してまいることとしておりまして、特にそのために新たな行政機関を設置することは必要がないと思います。また、各種施策の実施に当たってもこれまで必要なものについては児童の意見を反映させてきたところであり、子供の権利委員会とでもいうような新たな機関を設置する考えはございません。
 地方公共団体においては、児童の育成に関する事務等を処理するため、いろいろ名前の違いはございますけれども、各都道府県、各政令指定都市等において既に何らかの組織が設けられておりまして、積極的に問題に取り組んでおります。各地方公共団体においては、児童の権利に関する条約の趣旨を踏まえ今後とも積極的に取り組んでいくものと考えます。
 それから、児童の権利の保障につきましてはこれまでも関係行政機関の緊密な連携のもとに各種施策の展開を通じて実施してきたところであり、新たな対策本部を設置する必要はないものと考えております。
 また、この条約実施のため国内行動計画といったものを策定すべきではないかということでございますけれども、これは従来関係行政機関が緊密な連絡を行って行政をやっておりまして、それによりまして今後とも児童の権利を保障していくことが十分にできるという考えでございます。
 残りの問題につきましては関係大臣からお答えを申します。(拍手)
   〔国務大臣森山眞弓君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(森山眞弓君) まず、児童生徒の活動と本条約との関係についてのお尋ねがございました。
 現憲法下におきましても、各学校におきましては学校の教育目的達成のために必要な合理的範囲内におきまして児童生徒の行動等に一定の制約を加えて指導を行うことができるものでありまして、この点についてはこの条約の批准によって何ら変更されるものではないと考えます。
 また、高校の生徒会活動に関するお尋ねがございました。
 児童生徒の表現の自由、集会・結社の自由につきましては既に日本国憲法等の規定により児童生徒に保障されているものでございますが、この条約もこれらと同趣旨の規定であると考えます。日本国憲法等のもとにおきましても、学校は教育目的達成のために必要な合理的範囲内であればこれらの権利に制約を加えて指導を行い得るものとされているところでございまして、学校が心身ともに発達の過程にある児童生徒の政治的活動等について一定の制約を加えることはこの条約に反するものではないと考えます。
 昭和三十五年の「高等学校生徒に対する指導体制の確立について」という事務次官通達や昭和四十四年の「高等学校における政治的教養と政治的活動について」の初等中等教育局長通知においては、教育基本法を踏まえ、高等学校における政治的教養を豊かにする教育の一層の改善充実を図るとともに高校生の政治的活動についての適切な指導を行うための見解などを示したものでございます。これらの通達等の内容は教育基本法やこの条約に反するものではなく、撤回する考えはございません。
 さらに、内申書及び指導要録の開示につきましては、条約第二十八条第一項は、児童の教育を受ける権利を保障するため児童が進学や就職に必要な案内やガイダンスを得る機会を保障する規定でありまして、内申書や指導要録の本人への開示を義務づけるものではないと解されます。内申書や指導要録は児童生徒の成績評価に関する資料であり、その作成に当たっては、教師の評価が公正かつ客観的に行われるよう、通常、本人への開示を前提としない取り扱いとされております。したがって、これを開示することについては慎重に対応すべき問題であると考えます。(拍手)
   〔国務大臣後藤田正晴君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(後藤田正晴君) 吉川議員にお答えを申し上げます。
 この条約の第三十七条で、自由を奪われたすべての子供は弁護人その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利を有すると、こうされておるわけですが、我が国においては、少年は被疑者として取り調べを受ける段階においては刑事訴訟法によって成人と同様に弁護人選任権が認められております。また、事件が家庭裁判所に係属した後は少年法によって付添人を選任することが認められておりまするので、少年の権利は現行法においても十分に保障されており、この条約の要請は十分に満たされておる、かように考えます。
 少年の保護事件におけるいわゆる再審につきましては、現行少年法においても、保護処分の継続中非行事実が存在しないことを認め得る明らかな証拠を新たに発見したというときには家庭裁判所でその保護処分を取り消すこととされておって、その限度で刑事訴訟法における再審と類似した制度が認められております。
 ところで、少年の保護事件における刑事訴訟法の再審に相当する非常救済手続の新設につきましては、昭和五十二年六月に法制審議会から答申のあった少年審判手続全体の整備改善に関するいわゆる中間答申の中に盛り込まれておるのでございますが、ただこれについては反対の意見も相当ございます。関係機関との調整に努めてきておるわけでございますが、その間に少年非行の情勢にも実は相当な変化が見られるといったような事情もございまして、まだその実現を見ていないのでございます。このような刑事訴訟法の再審に相当する非常救済手続を設けることは、保護処分や事実認定のあり方など少年法の全体構造にかかわる問題でございますので、少年法全体の改正の中で慎重に検討すべき課題である、かように考えております。
 次に、弁護士である国選付添人の制度を設けたらどうだ、こういったような御質問でございますが、少年審判手続の改善につきましても先ほど申しました中間答申の中で盛り込まれておるわけでございまして、再審の問題と同様に、他の密接に関連する問題とあわせまして少年法全体の改正の中で慎重に検討をいたしたい、かように考えているわけでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#28
○副議長(赤桐操君) 乾晴美君。
   〔乾晴美君登壇、拍手〕
#29
○乾晴美君 私は、民主改革連合を代表し、ただいま議題となりました児童の権利条約について総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 この条約ま世界の子供たちのマグナカルタと位置づけられるものであり、一九八九年に国連で採択される以前から内外で高い関心を呼んできました。国際的には、二度の世界大戦を初めとする幾多のとうとい犠牲を礎として人権を尊重することが世界の平和と発展の基礎であるとの世界人権宣言、国際人権規約の系譜を引き継いでいます。さらに、女性と子供たちの人権の確立なくして真の意味での社会的な進歩は遂げられないという考え方に立脚した国連を中心とする努力が実を結んだものであり、女性差別撤廃条約に続く歴史的な条約と申せます。私は、世界人権宣言採択四十五周年に当たることとし、我が国がこの条約を締結する運びに至ったことを心からうれしく思います。
 宮澤総理は今国会の冒頭、「外にあっては世界平和秩序構築のための積極的な国際貢献、内にあっては政府を初め個人や企業の意識や行動の転換を伴う生活大国づくり」を施政方針として表明しておられます。この条約は、熟通いに追われる子供たちや、企業戦士、過労死に象徴される働き過ぎの大人たちなど我が国の社会のあり方に対し、人が皆だれでも通過する子供の時代をより豊かなものにしていくことを契機として我が国の社会に大きな改革を迫る内容を持っています。同時に、ストリートチルドレンに代表される困難な状況にある世界の子供たちの現況の改善に向けて国際社会が一致協力することを求めています。まさにこの条約は総理の施政方針と同じ方向で、その内容を豊かにしようとするものと総理はお思いになりませんか。総理に、この条約の意義をどのように考えておられるか、国連が作成した人権関係条約の批准促進とあわせて所信をお伺いいたします。
 次に、条約の名称についてお尋ねいたします。
 私たちが条約の名称を子どもの権利条約としてほしいと願う理由は、この条約が、子供を保護の対象とする伝統的な子供観から脱却し、子供を権利の享有と行使の主体ととらえる現代的な子供観に立脚しているからであります。総理、衆議院本会議でも、本院でも、多くの党が子どもの権利条約の名称がふさわしいと言っているのに、それでもなお「児童」に固執されるおつもりですか、御答弁を願います。
 また、政府は過去の例や他の法令との整合性を理由に訳語の修正を拒んでいますが、この条約には明確な定義規定があり、混乱が生じる余地はありません。「子ども」を使用した場合にどのような支障が生じるのか、総理並びに外務大臣、具体的にお示しください。
 続いて、条約の実効性ある実施体制の確立について伺います。
 人権条約は、締結した後これを誠実に遵守することが肝要です。子供の権利を保障し増進する観点から、教育、福祉、少年司法、家族法制など広範な分野でこの条約の理想を実現する計画を子供たちの声も取り入れて策定し具体化するとともに、そのために例えば子供オンブズマンを創設するなど、この条約の趣旨を実現するために政府部内に何らかの組織を設定する必要があると考えます。あわせて、この条約の批准を契機に発展途上国を中心とする困難な子供たちの状況を改善するための施策を強力にするとともに、そのための組織をつくる必要があると思いますが、総理並びに外務大臣の御見解をお示しください。
 次に、学校教育の問題であります。
 学校嫌いを理由に年間五十日以上欠席した子供の数は、平成三年度には小学生で一万人弱、中学生で約四万四千人に達しており、この数は年々増加の一途をたどっております。また、高等学校を中退した子供の数は約十一万三千人であります。その原因として、画一的で知識偏重、また過度に管理された学校のあり方などが指摘されております。このような学校教育の現状は実質的にこの条約の趣旨に反する事態を招いていると考えますが、この現状について総理の御認識をまずお伺いしたいと思います。
 条約第二十九条一項(a)は、子供の可能性を最大限に発達させることが教育の目的であるとしています。子供は自由な雰囲気の中で伸び伸びとその個性を伸長すべきであると考えます。そこで、教育基本法の「教育の目的」の中に一項を加え、教育が個々の子供の能力を最大限引き出すためになされるべきものであり、画一的な学校教育を行ってはならないことを明確にすべきであると思いますが、政府の御所見をお伺いいたします。
 また、この条約の批准に伴い学校において子供の意見表明権をどのように保障していくおつもりなのか、御見解をお伺いいたします。
 次に、第三十一条に関連してお伺いいたします。
 余暇、遊び、レクリエーションは、子供の発達または心身の健康のために不可欠のものであります。子供たちはその中で創造性を発揮し、個性を伸ばし、連帯感をはぐくみ、社会性を身につけていきます。しかしながら、現実は、御存じのようにますます低年齢化する受験戦争の中で、小学生まで余暇、遊びの時間を削り、過労児という造語も生まれてまいりました。受験戦争の緩和、低年齢化の歯どめは喫緊の課題と考えますが、政府の御見解及び対応策についてお伺いいたします。
 文部省の調査によりますと、子供たちの体力、運動能力は、十年前に比較しすべての年齢段階で劣っているとのことであります。受験戦争が大きな影響を及ぼしていると考えられますが、スポーツ施設、指導者の不足も原因の一つであろうと思います。加えて、公園やレクリエーション施設など子供同士あるいは家族そろって余暇が過ごせる施設も、欧米に比べまだまだ不十分であります。政府は、これらの施設の整備拡充、指導員・専門職員の養成について、年次計画の策定など積極的な施策を行うべきと考えますが、文部大臣並びに建設大臣の御意見をお伺いいたします。
 また、子供たちが芸術文化に容易にアクセスできるよう、国立の博物館、美術館などを無料化してはどうかと思いますが、いかがでしょうか。
 最後に、広報活動についてお伺いいたします。
 第四十二条において条約の広報義務がうたわれております。この条約が広く深く社会に浸透し得るかどうかは、政府がどこまで適切かっ積極的な手段でこの広報義務を尽くし、この条約の原則及び規定を成人のみならず子供に対しても広く知らせるかどうかにかかっていると言っても過言ではないと思います。この点につき政府はどのような
広報のあり方を検討しているのか、特に条約が強調している子供たちに対する広報についてどのように工夫されるおつもりなのでしようか、外務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
 また、今年度予算では全く予算措置がとられておりませんが、今後どの程度の広報予算をお考えなのか、具体的な答弁を総理に求めます。
 また、政府は、この条約を遵守すべき公務員、とりわけ、子供の人権にかかわる学校、教育委員会、児童相談所、保護観察所、擁護施設、教護院、少年院、その他関係機関の職員一人一人に対する指導をどのように実施するのか、総理に明確な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
  〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(宮澤喜一君) この条約の意義でございますが、この条約は、世界的な視野から、児童の人権の尊重、保護の促進を目指すものと認識をいたしております。
 未締結の人権関係諸条約についてでございますが、条約の目的、意義、内容、国内法体制との整合性などを十分勘案の上、その取り扱いにつきまして引き続き検討を続けてまいりたいと思います。
 それから、この条約の名称につきましては、いろいろ御議論のあることをよく承知いたしておりますが、我が国では一般に低年齢層の者を指す場合の法令用語として従来広く「児童」が使われていることなどにかんがみ、この条約の「チャイルド」の訳としては「児童」が最も適切であると政府は判断をしたものでございます。
 それから、児童の権利の保障につきましては、これまでも児童の健全な育成を目的とした各種施策の展開を通じて確保してまいりました。政府としては引き続き、関係行政機関の緊密な連携を保ちつつ、この条約の趣旨をも踏まえた施策を総合的に推進してまいりたいと思います。
 それから、オンブズマンのことでございますが、児童に関する各般の問題については、既に、児童相談所、児童委員、人権擁護機関などがございまして、家族や児童本人からの相談に応じ各種の援助を行う体制を整備いたしております。したがいまして、子供の権利侵害の問題につきましては、オンブズマンという新しい制度を創設するよりは、今までのこのような機関の相談活動の強化を図ることの方が有効であろうと考えております。
 それから、開発途上国などの子供たちの救済ですが、昨年六月に閣議決定いたしました政府開発援助大綱において、政府開発援助の効果的実施のための方策の一つとして、子供などいわゆる社会的弱者にも十分配慮する旨を掲げました。このような考えのもとで、これまでも子供の教育、医療等の分野でも協力を行ってきております。また、国連児童基金、ユニセフでありますが、等の国際機関を通じた資金協力なども行っております。今後とも、ODAの大綱を踏まえまして、御指摘の点は協力の充実に努めてまいりたいと思います。
 それから、学校教育の現状についての認識でございますが、今日では我が国の学校教育は、普及の程度と質の高さにおいて国際的にも高く評価されております。これまでの国民生活・文化の向上、経済発展の基盤ともなっておるものと考えておりますが、他方で今日の教育の現状を見ますと、画一性、知識偏重の指摘があり、また登校拒否、高校中退の問題など心を痛める現状もあるということをよく存じております。このような状況をも踏まえ、これからの学校教育においては、子供たち一人一人が豊かな人間性を持ち個性を発揮しながら創造的に生きていくことができる力をはぐくむような、そういう教育が重要であると考えております。
 それから、この条約の広報につきましては、御指摘のようにその重要性にかんがみまして、政府としても適切な措置をこれからも講じてまいりたい所存であります。
 それから、児童にかかわる関係機関の職員に対してこの条約を周知徹底することはもとより重要でございますから、関係省庁におきまして講習の実施、通知の発出など適切な方法によりまして、関係機関の職員によく広報を徹底させてまいりたいと考えております。
 残りのお尋ねにつきましては関係大臣からお答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣武藤嘉文君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(武藤嘉文君) お答えをいたします。
 総理から大体御答弁がございましたネーミングの問題でございますけれども、これは総理の御答弁のとおりで、私どもはこの条約の「チャイルド」の訳としては「児童」が最も適切であると考えておりまして、「子ども」に改める考え方はございません。
 それから、オンブズマンその他の問題は既に総理から御答弁がございました。この条約上の権利は憲法を初めとする現行国内法制で既に保障されておりまして、新たな法体制が必要ではないかという点は、現時点では特に私は必要ではないと思っております。
 開発途上国の子供たちの救済のための施策あるいは組織をつくったらどうかというのは、もう総理から詳しく御答弁がございまして、そのとおりでございます。
 それから、広報のあり方につきましては、一般の広報は総理から御答弁がございました。児童に対しましてこれからどういう形で広報をしていくかにつきましては、児童にわかりやすい小冊子をつくってそれを配布するべきであろうと思っておりまして、具体的な方策については今関係各省庁と検討をいたしております。(拍手)
   〔国務大臣森山眞弓君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(森山眞弓君) まず、条約二十九条に関しまして、教育の目的について御質問がございました。
 教育基本法第一条は、教育の目的として、人格の完成を究極の目標としながら、平和的な国家及び社会の形成者として心身ともに健康な国民の育成を期して行われるべきことを示すとともに、その具体的な資質として個人の価値などを挙げているところでございます。このことは本条約の趣旨に合致するものでありまして、教育基本法の改正の必要はないと考えます。
 次に、第十二条第一項の児童の意見を表明する権利につきましては、児童に影響を及ぼすすべての事項について自己の意見を表明する権利を規定するものでありますが、同条は児童の意見を年齢等に応じ相応に考慮することを求めるものでございまして、児童の意見を無制限に認めるものではないと考えます。
 次に、受験競争の緩和についてでございます。
 近年、過度の受験競争の問題が指摘されているところでございますが、学校教育においては、人間としての調和のとれた発達を目指し、心身ともに健全な人格形成を期して、児童生徒の個性を生かす教育を行うことが肝要でございます。このため、文部省では、学校教育の個性化・多様化、入学者選抜の改善、進路指導の改善充実、生涯学習体制の整備などの教育改革に係る各般の施策の具体化に努めてきているところでございまして、今後ともこれらの施策の充実に努めてまいる考えでございます。
 また、スポーツの振興について、スポーツ施設や指導者は必要不可欠な極めて重要なものであると考えております。平成元年の保健体育審議会答申におきましても、地方公共団体におけるスポーツ施設の整備の指針を示しますとともに指導者の養成のための認定制度の活用について指摘するなど、スポーツ施設の整備、指導者の養成・確保等の総合的なスポーツ振興方策を提言しております。文部省といたしましては従来からこの答申の趣旨を踏まえましてスポーツ施設の整備や指導者の養成・確保などの施策の推進に努めているところでございまして、今後とも一層努力してまいりたいと考えております。
 最後に、芸術文化へのアクセスについてお尋ねがございました。
 おっしゃるとおり、児童生徒がすぐれた芸術に触れ、芸術文化活動への興味、関心を養い豊かな情操をはぐくむことは大変重要でございます。このため、国立博物館、美術館におきましては、児童生徒の鑑賞料金を一般に比べて大幅に安くしておりますほか、昨年から学校週五日制の実施に伴いまして毎月第二土曜日に児童生徒を対象とした普及事業を新たに実施するなど、配慮を行っております。今後ともこれらの施策を通じまして児童生徒が芸術文化に親しみ、博物館、美術館などの積極的な利用が一層図られますよう努めてまいりたいと考えます。(拍手)
   〔国務大臣中村喜四郎君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(中村喜四郎君) 私に対する質問は、レクリエーション施設、都市公園等が欧米の国々と比べて非常に不足しているではないか、もっと整備を急げという御質問でございました。先生御指摘をいただきましたように、都市公園は子供たちにも、また生活大国としても非常に大きな役割を果たしております。我が国は欧米の国々と比べ、特にドイツのボンあたりは五十九年の段階で一人三十七・四平米、イギリスのロンドンが三十・四平米、それに比べて我が国は平成二年の段階で五・八平米でございますので、第四次にわたる五カ年計画を策定いたしまして、今やっております第五次五カ年計画におきまして七年度には平均七平米になる予定でございます。そして二〇〇〇年にはおおむね十平米を目指して整備をしていきたいと思っておりますので、御指摘をいただきました都市公園の整備につきましてはさらに力を入れてやっていきたい、このように考えております。(拍手)
#34
○副議長(赤桐操君) これにて質疑は終了いたしました。本日はこれにて散会いたします。
  午後二時十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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