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1993/04/21 第126回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第126回国会 労働委員会 第8号
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1993/04/21 第126回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第126回国会 労働委員会 第8号

#1
第126回国会 労働委員会 第8号
平成五年四月二十一日(水曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 岡田 利春君
   理事 愛野興一郎君 理事 大野 功統君
   理事 古賀 正浩君 理事 住  博司君
   理事 長勢 甚遠君 理事 岩田 順介君
   理事 永井 孝信君 理事 河上 覃雄君
      赤城 徳彦君    東家 嘉幸君
      羽田  孜君    平田辰一郎君
      石橋 大吉君    岡崎 宏美君
      沖田 正人君    五島 正規君
      外口 玉子君    山下八洲夫君
      石田 祝稔君    伏屋 修治君
      金子 満広君    伊藤 英成君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 村上 正邦君
 出席政府委員
        労働省労働基準
        局長      石岡慎太郎君
        労働省労働基準
        局賃金時間部長 伊藤 庄平君
        労働省職業安定
        局次長     岡山  茂君
 委員外の出席者
        厚生省健康政策
        局総務課長   伊原 正躬君
        厚生省健康政策
        局看護課長   矢野 正子君
        中小企業庁計画
        部下請企業課長 柚木 俊二君
        労働委員会調査
        室長      下野 一則君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二十日
 辞任         補欠選任
  柳田  稔君     伊藤 英成君
同月二十一日
 辞任         補欠選任
  田邊  誠君     五島 正規君
同日
 辞任         補欠選任
  五島 正規君     沖田 正人君
同日
 辞任         補欠選任
  沖田 正人君     田邊  誠君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三三号)
 派遣委員からの報告聴取
     ――――◇―――――
#2
○岡田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、去る十九日、本案審査のため大阪府に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からの報告を求めます。永井孝信君。
#3
○永井委員 私どもは、労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案の審査に資するため、大阪府に赴き、現地において各界の代表から意見を聴取いたしてまいりましたので、この際、私から御報告申し上げます。
 派遣委員は、岡田利春君を団長として、住博司君、長勢甚遠君、岩田順介君、石田祝稔君、金子満広君、柳田稔君、それに私を加えた八名であります。
 なお、現地において、中馬弘毅議員、和田貞夫議員が参加されました。
 現地における会議は、四月十九日午後一時より午後四時十九分まで、ロイヤルホテル会議室において開催され、まず岡田団長が、派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営の順序などを含めてあいさつを行った後、関西経営者協会専務理事豊田伸治君、弁護士門間進君、連合大阪事務局長柴田範幸君、自治体労働安全衛生研究会副会長井上浩君の四名の方々から、参考意見を聴取いたしました。
 陳述者の四君からは、いずれも本法案について大筋で賛成である旨の意見が述べられました。
 その意見の内容につきまして、ごく簡単に申し上げます。
 豊田君からは、法定労働時間については、一定の規模、業種に対する猶予措置は不可欠であり、一年以内の変形労働時間制は、極めて重要で、必要である。また、時間外・休日労働の割り増し賃金率の諸外国との比較においては、我が国の時間外労働の持つ雇用調整機能に留意する必要があり、中長期的には見直す必要があろうが、週四十時間制の実施と合わせて引き上げを行うことには反対であるが、大筋で賛成である。このほか、労働時間短縮については、中長期的な重要課題と認識し、中小企業ほど時短に係るコスト負担が大きいため、下請企業に対する親企業、元方企業の理解と協力を必要とし、トータルな政策が求められる等の意見が述べられました。
 門間君からは、裁量労働については、対象業務を「命令で定める業務」としたことには疑問を持つものの労使の判断にゆだねる性格のものであり、労働者個人の自律性を広く認めて時間管理から解放し、裁量労働の普及に努めるべきである。また、年次有給休暇付与の継続勤務要件の六カ月短縮は適当であり、最低付与日数の引き上げは、労使の協議に任せるべきである。労働時間短縮支援センターについては、労働時間短縮に関して調査研究し、その情報や資料を提供して、中小企業等を支援することは望ましいとの意見が述べられました。
 柴田君からは、週四十時間制実施の時期が明確化されること、猶予措置の廃止期限が設定されることは評価するが、年間総実労働時間千八百時間の目標達成には疑問を残す。猶予措置の延長については、特例措置の範囲も含め対象業務を厳密に検討し、早期にその限度を四十四時間とすべきである。また、変形労働時間制には、目的に沿った適切な規制を設け趣旨を明確にすること。労働時間短縮支援センターを初め労働時間短縮推進策については、地方分権的な発想が大切で、各府県で関連する機関団体が各種の時短促進施策を総合的に推進できるようにすべきである等の意見が述べられました。
 井上君からは、週四十時間制の原則を平成六年四月一日より全事業場に適用すること。一年単位の変形労働時間制については、一般的に労働者側に不利益を及ぼすおそれがあるので、採用しないこと。時間外・休日労働の割り増し賃金率については、現行の二割五分を五割にすること。公務員等への三六協定の適用。ILO条約第九十四号の批准についての要望がありました。また、労働時間短縮支援センターについては、労働時間短縮業務は行政機関で行うべきである。労働時間短縮施策としては、労働基準法第三十六条に上限規定を設け、同法第四十一条第二号を改正し管理職者等に割り増し賃金の支払いを可能とすること等の意見が述べられました。
 意見の陳述が行われた後、各委員から、年間総実労働時間千八百時間への施策、欧米諸国と比較して我が国の労働時間が長い原因、過労死の労災認定基準、下請振興基準の周知徹底の必要性、時間外・休日労働の割り増し賃金率の妥当な水準、猶予措置の対象事業場の見直し、ドイツと我が国の労働時間についての考え方、憲法第二十七条第二項と割り増し賃金率を政令で定めることの是非等について熱心に質疑が行われました。
 以上でありますが、会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細は会議録によって御承知願いたいと存じますので、速記録ができましたならば、本委員会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。
 なお、現地における会議の開催につきましては、関係者多数の御協力をいただきました。ここに深く感謝の意を表し、報告を終わります。
 以上でございます。
#4
○岡田委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。
 お諮りいたします。
 ただいま報告のありました現地における会議の記録が後ほどでき次第、本日の会議録に参考掲載することに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○岡田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕
    ―――――――――――――
#6
○岡田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古賀正浩君。
#7
○古賀(正)委員 労働時間短縮の問題につきましては、私は、去る二月二十三日の労働大臣の所信表明に対する質疑の中でも総論的にお尋ねをいたしたところでございます。
 その際、大臣からは、日本人の伝統的な労働を美徳とする価値観、そういうものを評価しながら、日本人の実直さ、勤勉さなどを大切にしながら、労働時間短縮を推進していきたいというような御意向をお示しいただきましたし、ただ単に時間を短くするだけではなくて、その時間的余裕をいかにうまく使うかということが非常に大事だというような基本的なお考え方をお示しいただきました。また、四月十六日の労働基準法質疑におきましては、人間が時間に追われる生活から解放されて、逆に人間が時間を自由に使うことができるようにすることが人間尊重の社会の基本であるというお考えを披露されたところであります。
 私も大変同感するところでありますけれども、本日は、労働時間短縮問題につきまして、さらに少し議論を進めさせていただきたいと思う次第であります。大臣は、今参議院本会議ということだそうでございますから、事務当局へのお尋ねを先にいたしたいと思います。
 我が国において労働時間短縮の問題が活発に論議をされるようになりましたのは、昭和六十一年に総理に提出された「国際協調のための経済構造調整研究会報告」、いわゆる前川レポートあたりが契機であったというふうに承知をいたしております。
 ちょっと脱線でございますけれども、私は三十数年前に大学の経済学で貿易論というのをたまたまとったことがありました。その試験でいきなり労働力という問題が出まして、はて貿易と労働力というその心は何だろうみたいな、瞬間戸惑った記憶があるわけでありますが、まさに貿易に関してこの労働力、労働問題というのは非常に大事だということがその後年を追うごとに明らかになってきた、中心的な課題になってきたということも言えるわけであります。
 この前川レポートの当時、我が国は欧米諸国に対しまして大幅な貿易黒字を生み出し、深刻な経済摩擦を生じさせていくという中で、欧米並みに労働時間を短縮しなければ、日本は長時間労働によりより強い国際競争力を維持しているアンフェアな国だというような国際的な批判、いわゆる日本たたきを招きかねない、そういう危機感が発端であったというふうに思います。
 近年、労使あるいは行政その他の大変な御努力の中で労働時間も大分短縮されてきておるというふうに思うわけでありますけれども、欧米先進国と比較すると現在の日本の労働時間というのはどういうことになっておるのか、この点についてまずお伺いしたいと思います。
#8
○石岡政府委員 近年、我が国の労働時間は着実に減少しておりまして、平成四年の一人当たりの年間の総実労働時間を調べてみますと、千九百七十二時間と初めて二千時間を割っております。
 そこで、この日本の労働時間と外国との労働時間の比較でございますが、各国によりまして統計調査の方法あるいは定義等々が違いますので比較する場合にはかなり困難な点がございますが、できるだけデータの基準をそろえまして、製造業の生産労働者について推計試算をしております。それによりますと、一九九一年の年間総実労働時間は、アメリカ、イギリスが千九百時間台、フランスが千六百時間台、ドイツが千六百時間程度となっておりまして、我が国の労働時間は欧米主要国に比べてまだかなり長い状態でございます。
#9
○古賀(正)委員 日本は欧米諸国に比べますとまだ大分労働時間が長い、そういうことで、今後この労働時間短縮問題は大きな課題であるということであります。
 ただ、私は、この際別に労働時間が大体どのくらいであるべきかというようなこと、例えば我が国としては当面は千八百時間ということが目標になっておるわけでありますが、フランス、ドイツみたいに千六百時間みたいなところまでいくのか、あるいはもっともっといった方がいいのかみたいなことになりますと、私はいろいろな見方、考え方があるような気がするわけであります。本日はこの際議論をいたしませんが、そのようなことがあることだけをまず御披露申し上げさせていただきたいと思います。
 そして、今のような差があるというのは、理由は何なのか、ひとつそのあたりを御説明いただきたいと思います。
#10
○石岡政府委員 日本の労働時間と欧米主要国の労働時間に今申しましたように差があるわけでございますが、こういう差が生じる原因といたしましては、次のようなものがあると考えております。
 一つは、欧米先進諸国では完全週休二日制が普及しておりますけれども、我が国における完全週休二日制の普及率は、適用労働者ベースで見ますと平成三年には約四六%程度ということで、我が国では完全週休二日制の普及が進んでないという面がございます。
 それから二番目には、我が国では欧米諸国のようにバカンスということで夏季に長期の年次有給休暇をとる習慣がございませんなど、いろいろな原因から我が国では年休が平成三年でたしか八日ないし九日しかとってないという違いがございます。
 それから第三番目には、諸外国は所定外労働時間が案外短いのでございますけれども、我が国では所定外労働時間が長いといったことが挙げられるかと思います。
#11
○古賀(正)委員 お話を聞くほどに、大臣もおっしゃっておられます人間尊重の社会の基本であります自由時間をうまく使うということが非常に大事だなということを改めて感ずる次第であります。
 ただ、従来常識的に、日本は非常に労働過重である、非常に働き過ぎだ、ワーカーホリックであるみたいなことが神話のごとくなっておったわけでありまして、近年はそれぞれの改善の努力の中でこの実績を上げてきておると思うわけであります。
 そういう中で、たまたま四月十九日の日経でございましたかにILO報告なるものが紹介されておりまして、そのILO報告によりますと、日本人の四割は過労死のおそれがあるというような大変刺激的な表現の報告になっておるというように聞いております。
 この点労働省は御存じでしょうが、どのような内容であったのか、御存じでしたらお話をいただきたいと思います。
#12
○石岡政府委員 三月二十三日にILOは世界労働報告を発表いたしました。その内容を拝見いたしますと、先生御指摘の箇所がございます。手元に英文も持ってまいってきておりますが、率直に紹介申し上げますと、「ある調査によれば、四〇%の日本人が過労で死亡するおそれがあるといった」こういう記述がございます。
#13
○古賀(正)委員 これはもう論ずるまでもなく、大変過大な、不穏当な報告になっておると私は思う次第であります。この時間短縮問題というのは国際的に非常に関心を持たれる中で日本も進めているわけでありますから、そういった意味では、こういうことは本当に困ったことだという気がいたします。
 こういう問題については、例えばILOの事務局あたりが本当によく日本を理解しているのかということを考えますと、日本からもかなりのスタッフがILOに入っているのかみたいな問題もございますし、こういう報告があったら直ちにILOに抗議をすべきであるというふうに私は思いますが、労働省のお考えをお伺いしたいと思います。
#14
○石岡政府委員 ただいま御報告申し上げました記述につきましては、私どもも非常に不穏当な表現であるというふうに考えております。これについての資料の出処が不明確でございますし、それにもかかわらず、あたかも国民一般がそういう認識をしているように紹介しているからでございます。
 ILOの世界労働報告を見ますと、そのほかにも、例えば八八%の企業はサービス残業に依存しているとか、いろいろ事実と違う、あるいは出処の不明確なそういう記述が出ておりますので、労働省といたしましては、ILOに対しまして、出処が不明確なデータについてはこれを明示するように求め、それから間違っているものは修正を求め、さらには、今後このような報告を提出するに当たっては事前に十分日本政府とも協議を行っていただきたい、そういう内容の抗議文書を既に外務省に提出しているところでございます。外務省から近々ジュネーブ日本政府代表部を経由いたしましてILOに抗議されるものと承知いたしております。
#15
○古賀(正)委員 労働省で的確な対応をぜひしていただきたい。また、先々この問題についてどのようなことになっていったのかは御報告いただきたいと思います。
 さて、次の問題に移りますけれども、労働時間の短縮の推進に当たりましてはいろいろな課題があるわけでありますが、特に中小企業への配慮というのは非常に大事だというふうに私ども考えております。
 そのために、中小企業につきましては、法定労働時間の原則を直ちに適用しないで一定の猶予期間を与えるというのが従来からのやり方になっておるわけであります。週四十六時間労働制への原則に対しまして中小企業は週四十八時間の猶予措置が三年間認められましたし、週四十四時間労働制の原則に対しましては週四十六時間の猶予措置が二年間認められ、さらに、つい最近その猶予措置が百人未満の事業場に限って一年間延長されるということになりました。
 今回の法案においても、当然こうした中小企業に対する猶予措置が用意され、中小企業にいきなり週四十時間労働を適用するということはないと聞いておりますけれども、この点どのようになっておるのかをお伺いしたいと思います。
#16
○伊藤(庄)政府委員 先生御指摘のように、中小企業におきましては、経営基盤の問題あるいは親企業、発注者との取引慣行等の問題もございまして、労働時間の実態に立ちおくれが見られるところでございます。そういった事情に十分配慮しながら労働時間短縮を進めていかなければいけないわけでございますが、一方、そういった中小企業の実態に全体を合わせてまいりますと、週四十時間労働制への移行等も大変おそくなってしまうという問題もございます。
 したがいまして、今回の法案におきましては、まず、原則としての週四十時間労働制への移行を平成六年の四月から実施することとした上で、中小企業等につきましては平成九年の三月三十一日まで週四十四時間労働制から始まる猶予措置を講ずることにいたしております。
 この猶予対象企業の範囲でございますが、これにつきましては、本法案を成立させていただいた段階で改めて中小企業等の労働時間の実態も調査いたしまして、その調査結果をもとに私ども慎重に検討をして、また審議会にもお諮りして決定していきたいと考えております。
#17
○古賀(正)委員 私は、二月二十三日の本委員会での質疑でも申し上げましたけれども、労働時間の短縮というのは本来罰則をもって強制するものであろうかという思いをぬぐい切れません。労働基準法制定当時のような窮迫の時代と申しますか、あるいは非人道的な奴隷労働といいますかそういうものがいろいろあったような時代ならともかくといたしまして、雇用条件も改善し、時間的余裕を論ずるような段階になってきた今日に、このように罰則で強制するのはどうかなという気がいたしておるわけであります。
 この時短というのは、本来労使の理解と努力にまつというのが筋であると思う次第でありますし、いわばむちではなく、いろいろな助長策であるとか名誉で与えるとか、そういうやり方でやるべきではないか。
 私は、中小企業の社長さん方と話す機会もよくありますけれども、やはり自分たちの雇っている人たちのことについては、自分の家族同様にみんな考えていると思うのですね。大体百人未満ぐらいになりますと、一人一人顔から名前からあるいは家族の状況からみんなおやじさんは知っていて、いろいろ心配してやっておるということでありまして、それを何か罰則で追い立てるような形というのは、そういう社長さん方の思いとか人格にも余りいい対応ぶりにならないのじゃないか、こんな思いがしてならないわけであります。
 そういった意味では、こう言ってはなんですが、労働省はかなり強権的な体質みたいなのがやはりまだいろいろあるような気がしてならないわけでありまして、このあたりは指導とか助長とかこういったものを大いにまた試みていただきたいと思う次第であります。
 先日、これは本委員会でもあるいは本会議でも議論があっておりましたけれども、中小企業の猶予措置の延長ということに関連しまして、何かまじめな者、つまり、まじめな労使が損をするというような御議論もございました。私は、ちょっとこれはうまく解せないわけでありまして、条件ができればそういう罰則がなくても実行できるのじゃないか。やはりそういった意味では、そういう罰則と関係なく労使の努力が進むようなことをまず行政の第一義にしていただきたいと思う次第であります。
 ただ、この間の議論を聞きながら私も同感いたしましたのは、現場の第一線の労働基準監督官が、来年からはこうなるんだよ、しっかり労使も頑張ってやってよと言っていろいろな現場の事業所を回り、会社を回って指導してきた。ところが、何かそういう人たちの思いからしますと、それがぐっと延びたということは、俗な言葉で言いますと監督官のメンツもつぶれるみたいなこともあって、これは現場で話していると、確かに本当に気の毒だなという思いがいたしますし、そういう人の士気に影響するようなことがあってはいかぬなという思いも片やいたしておるところであります。しかし、基本はあくまでも労使の努力、これは強制と関係ないところで基本的な努力が行われるべきだというふうな気がするわけであります。
 そういうことに関連いたしまして、中小企業の労働時間短縮が円滑にいくように、労働省もいろいろ支援策も講じておられるというふうに思います。いろいろな生産性向上等になりますと通産省の担当分野かもしれませんけれども、労働省所管の関係でどのような努力をされておるのかを簡単に御説明いただきたいと思います。
#18
○石岡政府委員 先生の方から、労働省は強権的な体質を持っているのではないかという御発言もございましたので、その点について少し触れてお答えさせていただきます。
 改めて申し上げるまでもないことでございますが、基準法で定めるものは、これは基準法第一条第二項に書いてございますように、あくまでも労働条件の最低の基準でございます。したがいまして、労使が対等の立場に立ってそれ以上の労働条件を決定していく、これは基準法第二条に書いてあることでございますが、これが原則であると思っております。
 そういう労使が対等の立場で最低基準を上回る労働条件の向上を図っていくためには、さはさりながら、中小企業は経営基盤が非常に脆弱でございますので、政府の時短のための援助措置が大変必要ではないかというふうに考えておる次第でございます。
 そういう観点から申し上げますと、中小企業の時短のためにいろいろな助成策を講じてきております。一つは、昨年九月から、時短促進法に基づきまして、同業種集団が一体となって労働時間短縮計画を立てて時短をやっていくという制度を設けております。平成四年度ではこの集団が四十八できまして、各県でそれぞれ時短を進めてくれておりますが、平成五年度におきましてもこのような団体の数をふやしてまいりたいと考えておる次第でございます。
 それから、その他幾つも助成策はあるのですが、もう一つ申し上げさせていただきますと、今度の改正法案において強力な助成策を実は時短のために中小企業に講ずることにしております。それは、中小企業が省力化投資を行いまして労働時間の短縮を行う場合、これは今までなかったのですが、個別の中小企業に対しまして、五十万、百五十万、三百万という、規模によって違いはございますが助成金を創設するという内容が盛り込まれております。
 それからまた、本改正法案につきましてはもう一つ、先ほど申しました時短促進法に基づいて中小企業の団体が集団となって時短をやっていく場合に、今まで何の助成策も実はなかったのでございますが、中小企業の団体がそういう計画を立てて時短をやっていく場合には、その団体に対しまして事務費の三分の二、一千万円までの助成金を創設することにしている次第でございます。
 今後とも、これらの施策を中心にいたしまして、特に中小企業における労使が対等の立場で労働条件の向上といいますか労働時間の短縮を図っていくための支援をしてまいりたいと考えております。
#19
○古賀(正)委員 中小企業のそのような助長策みたいなことについては、今後も大いに意を用いていっていただきたいとお願いを申し上げます。
 それで、時短の推進に当たりましては、やはり中小企業、なかんずく取引の立場の弱い下請中小企業への対策ということが非常に大事だと思います。
 通産省では、下請中小企業の体質改善あるいは経営基盤の強化を図るための下請中小企業振興法に基づいて振興基準を定めていると承知しておるところでありますが、その基準の中では、下請中小企業の労働時間短縮の妨げとなる発注の抑制、下請中小企業の計画的生産・発注平準化への協力などを親企業として協力すべき事項として定めまして、下請中小企業の労働時間短縮を図っているというふうに聞いております。
 通産省は、この問題についてどのような指導を実施してきたのか、あるいは今後親企業に対して徹底した指導をさらに行うべきだと考えますが、お答えをいただきたいと思います。
#20
○柚木説明員 お答え申し上げます。
 下請中小企業の時短促進のためには、親企業の発注方式の改善が重要でありますことから、中小企業庁といたしましては、平成三年の二月、下請中小企業振興法の振興基準を改正いたしまして、ただいま御指摘のとおり時短の妨げとなります発注の抑制等につきまして、発注面での親企業の協力事項を追加したところでございます。
 これまで同基準の普及啓発のため、全国各地で約五千人ほどの親企業の発注担当者を対象としました講習会の開催あるいは各種広報等を実施いたしまして、親事業者に対する指導を行ってきたところでございます。
 また、親事業者の発注方式の実態を把握するため、毎年約四万の下請事業者を対象に実態調査を行っておりまして、その結果を踏まえまして、昨年二月それから十二月と二回にわたりまして、約三百六十の親企業団体に対しまして中小企業庁長官及び関係局長連名で通達を発出いたしまして、振興基準の遵守徹底について強く協力要請を行ったところでございます。
 それから、平成五年度におきましては、ただいま申し上げました従来の施策に加えまして、まず、下請事業者からの苦情相談等を、全国で約六百人ほどを配置いたします下請取引相談員を通じて行い、情報を収集する。こういったことによりまして、当局の下請取引に関する情報収集能力を抜本的に強化するという目的を持ちました下請取引相談事業を創設するということ、それから下請取引適正化推進のために社内教育用ビデオを作成しまして、これを各親企業の社内教育に大いに活用していただくということ、それから三点目には、従来対象としておりませんでした資本金一億円未満の親企業に対しましてもこの振興基準あるいは下請代金支払遅延等防止法等の関係の講習会をつくる、こういったような新たな施策を展開することとしております。
 今後とも、下請代金支払遅延等防止法等に基づく検査の強化はもちろんでございますが、振興基準の一層の普及徹底等下請中小企業対策に全力を尽くしてまいりたい、こう考えております。
#21
○古賀(正)委員 実は小規模商業やサービス業等についての話を進めたいと思っておったのですが、時間の関係もあるようでございますので、これはまたの機会に譲るといたしまして、最後に、大臣にお伺いさせていただきたいと思います。
 政府は、昨年六月三十日に新しい経済計画としまして「生活大国五か年計画」を閣議決定をいたしたわけであります。この計画の中では、「労働時間の短縮は、勤労者とその家庭にゆとりをもたらし、職業生活と家庭生活、地域生活との調和を図り、「生活大国」の実現を目指す上での最重要課題の一つである。」というふうに大変重い位置づけがなされております。その上で、平成八年度までに年間総労働時間千八百時間を達成するという具体的な目標を決定しておるということであります。
 我が国の労働時間は、先ほど石岡局長からお答えいただきましたように、昨年で千九百七十二時間、これを千八百時間の目標と比較いたしますと、まだ二百時間近い差があるということであります。大変困難な中にも、ともかく力を傾注していかなければならぬ課題であるということでございますけれども、政府目標の達成について労働大臣の決意のほどをお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
#22
○村上国務大臣 おはようございます。
 けさは十分ほどおくれてまいりましたが、過ぐる日、衆議院におきまして駐留軍関係離職者等臨時措置法を参議院に送付していただきまして、本日十時からの参議院の本会議でこの成立を見たわけであります。この本会議に出ておりまして、おくれてまいりましたことをまずおわびを申し上げます。
 そこで、今の御質問でございますが、その前に、古賀先生のお言葉の中に、労働省は強権的な面があるのじゃないか、これにつきましての基本的な私の考え方は、労働省ほどそういう色彩があってはならない役所はないと私は思っております。やはり働く人たちの立場を吸い上げた行政、そして最も弱い弱者の利益を守っていく、そして、労使の善意というものを信じて行政を進めていかなければならない。たくさん役所はございますけれども、そうしたことに最も留意していかなければならない役所だ、こう思っております。そういう姿勢のもとに労働行政を進めてまいりたい、このように思っておりますことをまずお答えをさせていただきたい。
 それから、御質問でございますが、労働時間の短縮は、働く人々がゆとりと豊かさを実感できる生活大国実現のための大きな柱であると認識いたしております。人間が時間に追われる生活から解放され、逆に人間が時間を自由に使うことができる社会こそが人間尊重の社会の基本であり、そうした社会の実現を目指し労働時間の短縮の推進を図っていきたい、このような考え方でおりますし、そういう決意でおります。
 そこで、まだまだ二百時間ほど差があるじゃないか、これについて千八百時間という政府の目標達成に向けてその決意いかん、こういうことでございますが、この千八百時間ということの目標にいくためには、三条件ございます。それは週四十時間の実現であります。それから年休二十日、そして残業を百四十七時間に抑えていく、こうした三条件があろうかと思います。
 こういうことの克服に向かって、ただいま御審議をいただいております本法案の速やかな成立、そしてその円滑な実施を図るということが大事なことだと思って、そういう方向に向かって一生懸命汗を流してまいりたい、このような決意でおりますことを申し上げて、お答えにかえさせていただきます。
#23
○古賀(正)委員 大臣の御活躍をお祈りして、質問を終わります。
#24
○岡田委員長 五島正規君。
#25
○五島委員 まず、大臣にお伺いいたします。
 高齢社会を迎えまして、今、日本は高齢前期の労働力の活用というものが今後の労働行政の中でも重要な課題になっているというふうに考えるわけでございます。また、就業者の平均年齢の上昇に伴いまして、いわゆる成人病を持ちながら、その疾患のコントロールを行いつつ労働生活を正常に継続している人々も大変ふえてきておられます。今後、医療は、ますますこうした疾病治療あるいは疾病コントロールを行いながら、労働生活の継続を可能とする方向に進んでいくことが期待されるわけでございます。また、こうした高齢者の就労継続や障害者雇用の推進あるいは成人病罹患者の労働生活の継続という問題が、労働者サイドの一方的な要求ではなくて、企業も含めた社会全体がこうした方向を望んでいる、そういう時代にもう既に到達しているというふうに考えるわけでございます。
 しかし、一方で過労死であるとかあるいはその主たる原因である脳血管障害や心筋梗塞などの障害、あるいはノイローゼなどの障害というものを来す労働者がふえていることも事実でございます。これらの障害や事故に対する労災保険の適用につきましても大変争いがふえているという、そうした時代の要請と逆行した状況も見られるわけでございます。
 高齢者が就労を継続できるためには、やはり若年時代からのゆとりのある労働というものが必要でございます。あるいは障害者雇用の推進や成人病罹患者が労働生活の継続を可能としていくことのためにも、当然これらに該当する労働者が安全に就労できる労働条件の改善はもちろんのこと、今国際的にも批判されております日本の長時間労働の改善ということが大変必要になってきているというふうに考えるわけでございまして、こうした高齢社会というものを展望しての大臣の労働時間の問題についてのお考えをお伺いしたいと存じます。
#26
○村上国務大臣 労働時間の短縮は、働く人々がゆとりと豊かさを実感できる、先ほど申しましたように、生活大国実現のための本当に大きな柱である、こういう認識に立っておりますことは繰り返し申し上げているところでございます。
 そうした中で、今いろいろ御指摘をいただいたわけでありますが、やはりいろいろな疾病だとかストレスだとか過労死だとか、こういうこと等々は、時間のゆとりというものを十分に使い得ることのできないそうした状況、環境の中で、やはり遠因はそういうところにも大きく起因すると考えております。
 ですから、私は、人間尊重の労働行政というものはこの時間というものからの解放である、こう申し上げているところでありますが、そういうことについて今回この時短行政というものを強力に推し進めていきたい、このような考え方を基本にいたしまして、高齢者の方々が持つところの豊かな経験、知識を生かすことができるような、また、障害者の方々が天分またその能力を十分発揮できるような職場環境をつくっていくためにも欠かせない時短政策であるのかな、こういう考え方に立っておりますことを申し上げさせていただきます。
#27
○五島委員 大臣のそのお気持ちというのは私どもと全く一緒でございまして、そういう意味では大変共感できる御回答をいただいたわけでございます。
 そこで、お伺いするわけでございますが、過労死の労災認定につきましては、ほとんどの場合、いわゆる別表第一の二の一号、九号に該当せずということで却下されている。言いかえれば、現在申請されているそういう過労死の労災認定申請に対して五%弱の認定でございます。
 その理由として、今申しましたように、時間的、場所的に明確にし得る業務に関連した異常な出来事に遭遇して発症した場合と、日常業務に比較して特に過重な業務に就労した場合のみを業務上としているわけでございます。この日常業務に比較して特に過重な業務に就労という場合、やはり労働時間を基準として判断される場合がほとんどでございます。
 ところで、お伺いするわけでございますが、三六協定に基づく適正化指針、すなわち「一定期間についての延長することができる時間に関する指針」というものが、昨年八月十二日の告示の改正によりまして本年一月一日より変えられました。すなわち、一週間で十五時間、これは従来と変わっておりませんが、一カ月に四十五時間、これは従来より五時間の短縮、一年間に直しますと四百五十時間が三百六十時間というふうに、指針では三六協定に基づく時間延長が短縮されているというふうになっているわけですが、この指針に書かれております、一カ月以内であれば就労規則だけということになるわけでしょうが、そうした時間外の数値というのは、これは残業時間の最高値ということに理解していいわけでございますか。目安という言葉をお使いになっておられますね。この目安というのは何に対する目安なのか。当然ここで出されているのは残業時間の最高値の目安というふうに理解するわけでございますが、それでようございますか。
#28
○伊藤(庄)政府委員 ただいまお話しのありました時間外労働協定の適正化指針、これは労働大臣の告示で定めておりまして、正確には指針という言葉で示しておるわけでございますが、労使協定で残業時間を定めるに当たって、それ以上の時間は定めないでくださいという意味の上限として私ども指導の基準として用いております。
 そういった意味で、その指導の基準、あるいは労使協定で定める場合にそれを超えないように定めてほしい、こういう意味では最高値という表現にもつながるかと思います。
#29
○五島委員 そういたしますと、例えば過労死の労災申請に対しまして、過労死及び過労に原因する脳血管疾患や心疾患の労災認定に際して、日常業務に比較して特に過重な業務に就労という場合の労働時間の基準値としては、三六協定の上限値の目安として示されているこの数値が使われるべきであるというふうに考えますが、そのようにはお考えになりますか。
#30
○石岡政府委員 いわゆる過労死という非常に痛ましい労災事故がいろいろあることに対しましては、我々は甚だ遺憾に思っておりまして、こういういわゆる過労死という事態がないためにも労働時間の短縮などを進めなければならない、まずそういうふうに思っていることを申し上げたいと思います。
 そこで、今のお尋ねの件でございますけれども、適正化指針で定めております労働時間の目安につきましては、これは、第一義的には、あくまでも時間外労働削減のための目安として設けられたものでございます。したがいまして、例えば年間三百六十時間以内の残業となっておりますけれども、年間三百六十時間以内の残業時間でありましてもいわゆる過労死として業務上の災害というものを認めるケースもございますので、御指摘の点につきましては、脳・心疾患の方々の労災認定におきまして、業務の過重性を評価するに当たりましては、労働時間に限らず、労働の密度、業務の内容あるいは作業環境などを総合的にいろいろな材料で、そのいわゆる過労死と業務上の仕事とのつながり、因果関係がどうだったかという判断を今までもしてきているわけでございまして、言いかえれば、労働時間が単に目安時間を超えているからどうのこうのという問題ではないというふうに理解している次第でございます。
#31
○五島委員 いや、それはわかり切っていることで、その問題につきましては、前々国会でしたか私が指摘したところでもございます。したがいまして、過労死の問題が労働時間だけで処理されるべきでないということはわかり切った話です。
 その上で、労働時間の問題、これはやはり認定する上で一つの大きなファクターになってくるわけで、そのファクターとして三六協定の上限値というものをもって、それは労働時間が過重であるというその部分に限っては評価するというふうな基準値にするかどうかということをお伺いしているわけです。どうですか。
#32
○石岡政府委員 脳・心疾患の方々の労災認定の業務の過重性を判断するに当たりましては、私は決して労働時間の長さが問題ではないと言っているわけでございませんで、目安時間を超えるような長い労働時間がある場合には、それがいわゆる過労死の原因の一つとなるというケースも大いにあるという立場に立って認定を行っていると思っております。
#33
○五島委員 この三六協定の上限時間が過労死の場合にも一つの目安になるというお話でございます。
 そこで、もう一つお伺いするわけですが、加えまして変形労働時間を採用された場合、一カ月以内の変形労働時間を採用する場合は、所定労働時間の延長というものについて上限がございません。結果的に十六時間労働の隔日勤務といったようなことも可能なわけでございます。そうした場合に、労働省自身も、所定労働時間を非常に延長している場合、それが所定労働時間内であるから過労死の問題とは関係ないとは言わないとこれまでもおっしゃってきているわけですが、所定労働時間が変形労働時間によって大幅に延長された場合に、さらに加えてこうした時間外労働が加わりますと、三六協定の枠の中であったとしても非常に長時間労働というものが予想されるわけでございまして、そういう意味では、所定労働時間を含む一日の実労働時間の上限というものが決められるべきではないかと考えるわけですが、その辺についてはどのようにお考えでしょうか。
#34
○伊藤(庄)政府委員 まず、一カ月の変形労働時間制についてお話がございました。
 この変形時間制、特に一カ月の場合は、六十二年の法改正前は四週の変形労働時間制として実施してきておりまして、いろいろな運輸交通業等で利用されていたわけでございますが、一カ月の変形制に改正しまして以来、主としてこれの利用が四週六休制あるいは四週の中で週休日をふやしていくための方策としてこの一カ月の変形制が用いられてきておるわけでございます。
 したがいまして、私ども昨年の五月、六月に実態を調べましたところによりますと、事業場平均でも一日の最長の労働時間が平均で八時間十九分という水準でございまして、特に変形制を使って所定労働時間を極端に延ばしておるという実態にはございません。
 もう一つ、かといってそこに残業時間がついた場合はという御指摘でございます。
 私どもは、変形制の場合にも、先ほどお話がございました労使協定による残業時間についての上限の指針、これは適用しております。そういったものを積極的に活用しながら、長時間労働に及ぶことのないよう、また、恒常的な残業時間が削減されるよう努力をしていきたいと思っております。
 我が国の残業時間につきましては、景気の変動等に対応して労使で話し合いながら雇用を維持するために弾力的な対応をするという雇用調整の面もございまして、これを一律に上限規制を行うということは極めて難しい実情にあるかと思いますので、私どもは、そういった指針を活用して時間外労働等の削減に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
#35
○五島委員 変形労働時間を採用しているからといって、平均値が大幅に一時間も二時間も延びているということになれば大変な問題で、平均値の話をしているわけではございません。問題は、過労死の問題との関連で質問させていただいておりますので、そういう可能性あるいはそうした平均値の中からは論じられないケースの問題を話しているつもりでございます。
 変形労働時間によって、一月以内の変形労働時間の中において極めて特異に長い労働時間が所定労働時間として設定された場合でも、三六協定における残業時間の規制というものがそのまま上乗せされていくということになってくると、非常な長時間労働というものが実際起こっている、これが過労死の問題とも関連するではないか。だから、三六協定という問題もあくまで全般、一般的な平均値で話をしているわけでございますし、そういう意味において、過労死という極めて特異なエマージェンシーを防ごうということを考えるならば、そうした一日の総労働時間の規制が必要ではないかと質問したつもりでございますが、ちょっと御理解いただけなかったようでございます。その辺はどうですか。
#36
○伊藤(庄)政府委員 先生のお話は、一カ月の変形労働時間制の場合についての一日の上限時間の設定についてかと思います。
 その点につきましては、先ほども申し上げましたように、最近における一カ月の変形制の利用状況、四週六休制の採用等を中小企業で行う場合に主として用いられておりまして、こういった業務の繁閑を利用した効率的な時間配分によりまして、むしろ全体としての労働時間の短縮につながっている状況でございます。したがいまして、特に一日の労働時間の長時間化を招く原因になっている状況ではございませんで、むしろそこに非常に長い残業時間が加わった場合にそういった先生御指摘の問題が出てくるのではないかと思います。
 したがいまして、その点につきましては、先ほど申し上げました時間外労働の労働時間の上限に関する指針の遵守を徹底するよう指導いたしまして、そういった長時間の残業時間の減少に私ども努めていきたいと考えておるところでございます。
#37
○五島委員 この問題は後に譲りまして、次に、第四十一条の第二号に定める「監督若しくは管理の地位にある者」の時間管理という問題がございます。
 近年見てまいりますと、例えば私どものところへよく出入りされるセールスマンあるいは銀行員、銀行員なんか特にそうですが、非常に若くてもほとんどが支店長代理とか支店長代理席という形で、いわゆる管理職の地位という形で処遇されておられる方が非常にふえているように感じられるわけでございますが、そういう方々は、非常な長時間労働が時間外という概念でなくて実施されているという問題がございます。
 この「監督若しくは管理の地位にある者」の時間管理はどのようにお考えなのか、その点についてお伺いしたいと思います。
#38
○伊藤(庄)政府委員 労働基準法上の取り扱いにつきましてまず御説明申し上げたいと思います。
 労働基準法の四十一条におきまして、監督または管理の地位にある者につきましては、労働時間あるいは休憩、休日といった労働時間法制の適用を除外いたしておるところでございます。したがいまして、一般的には、工場長とか部長とか、労働条件の決定その他労務管理につきまして経営者と一体的な立場で、時によっては重要な職務のためにそういった労働基準法の枠を超えて働かなくてはいかぬケースが出てくるような人たちを対象として、この適用除外を行っているところでございます。
 もちろん、先生お話しのように、こういった方々がそういったことから長時間労働につながらないように企業内での自主的な労働時間管理を行っていただくことまでこの労働基準法から外しているわけではございませんので、そういった事態にならないような指導につきましては、私ども十分に目を配ってまいりたいとは思っております。
#39
○五島委員 現実問題として、ノイローゼの問題とか過労死の問題を考えますと、中間管理職の方々、中堅幹部の方々のそういう障害が多うございます。そういう方々を見てみますと、その多くが管理職ということでもって時間管理がされていない。企業の側にもされていない。したがって、被害者あるいは被害者の遺族と企業側の申し立てとの間に大きな差があるということが非常に多うございます。
 そういう意味において、管理職であれば、現実的に管理職手当が幾らか出ておれば時間管理しなくてもいいという考え方はやはり考え直して、きちっとした時間管理を企業がしていくことが必要ではないかというふうに考えているわけなのですが、その辺どうなのでしょうか。
#40
○伊藤(庄)政府委員 労働基準法で、管理監督の立場にある人たちに労働時間関係の規定につきまして適用除外をいたしておるわけでございますが、これはあくまで労務管理をみずから行う立場、経営と一体的な立場にある人たちということでその辺の規定の適用を除外しているわけでございまして、そういった方々が健康管理あるいは余り仕事にのめり込み過ぎないようないろいろな配慮、メンタル面でも健康を維持していくといった配慮をしていかなければいかぬことは事実でございまして、そういう労働時間法制の別として、企業内においてこういった方々の健康その他につきまして適切な管理が行われることは、私どもとしても期待をしているところでございますし、そういう目配りは十分していきたいというふうに思っております。
#41
○五島委員 経営者と一体的な立場にある者という評価そのものが、実態的に、例えば銀行の支店長代理はどうなのだ、代理席と言われる人はどうなのか、具体的になってくると非常に難しい問題があるわけでして、こういうふうに書いてあるからという説明があっても、それが実態を反映していない、あるいは実態的にそれが特定できないからいろいろな争いが起こるのではないか。そういう意味では、この点について研究を続けていただきたいというふうに考えるわけです。
 あわせて、こうした問題との関連の中で、今日盛んにサービス残業ということが言われております。
 一九九二年十一月二十一日に大阪で弁護士さんたちが中心になりましてサービス残業一一〇番というのを実施されました。その資料をいただいて見せられたわけでございますが、相談件数が全部で九十件ございました。その内容を見てみると、先ほどの質問者の方のお話とは全く違った大変な内容が次々と出ております。例えば、不況を口実として残業費の不支払い、あるいは不況を理由として残業の上限を規制して、実際の残業がそれよりはるかに超えても支払われないというふうなこと、あるいは今申しました地位や身分、担当職務といったようなもの、例えばセールスなんかの場合は、物を売るということによって、職務との関係においてこれは払わない、完全な不払いだ。あるいは私が申しましたように、コンピューターのプログラマーの主任という名目によってそれが払われない、あるいは支店長の代理席という名目でもって支払われないといったような完全不支払いの例、あるいは中小零細企業において、前近代的な労使関係の中で完全に払わない、残業手当を請求したらいじめを中心にして退職を強制するといったようなこと、あるいは女性に対する百五十時間規制というものを理由として、はるかにそれを超える残業があったとしてもそれは払われないといったような事例が具体的に事細かく出てまいっております。
 こうしたサービス残業の実態というのは、証券業界なり銀行業界において非常に目立ち、労働省もたしかプロジェクトチームをつくって摘発に取り組まれたというふうに存じているわけでございますが、現在このサービス残業というのは減っているのかどうか、またこれについて、どのようになくするように努力しておられるのか、お伺いしたいと思います。
#42
○伊藤(庄)政府委員 先生お話しございました大阪でのサービス残業一一〇番、私ども報道によってその一端等を読ませていただいております。
 私どもは、一般的に言えば、使用者が明示なりあるいは黙示の指示によって時間外労働に従事させながら、その正確な残業時間を把握しなかったり、またいろいろな方法で時間外の割り増し賃金を請求できにくい環境をつくること等によって出てくる問題、これをいわばサービス残業と呼びまして、そういったものの解消に向けていろいろ努力をしているところでございます。
 先ほどのサービス残業一一〇番にございましたように、個々のケースが出てまいりますと、私どももそういったものに応じまして適切に対処してまいるわけでございますが、正直、全体的な統計的な把握になかなかなじみにくい点もございます。したがいまして、私どもいろいろな努力をして、報道されているような取り扱いもいたしましてこのサービス残業の解消に努めてきておりますので、実態として減少の方向に向かっているというふうに期待はいたしておるところでございますが、減っているかどうかにつきまして正確なデータは、正直、把握はいたしておりません。そういった状況でございます。
 いずれにしましても、このサービス残業といったようなものがあってはならないわけでございまして、先生御指摘のありましたようなそういったものが生まれてくるいろいろな土壌、そういうことの解消に向けまして私ども啓発指導に努める、また、労働基準監督署の窓口等におきましても、そういった問題についての申告なりそういうことがあれば適切に対応して、そういったサービス残業等の解消に向けて努力をしていく、そういうふうに努めてまいりたいというふうに考えております。
#43
○五島委員 一人一人の御本人の申し立ての内容を見てみると、なぜこのような大企業においてこういうひどいことがあるのか、また、中小零細企業において、今の時代にこういう前近代的な雇用関係があるのかというふうな事例がずっと報告書として出されているわけでございます。
 そういう意味では、この問題についてまだ実態を把握していないということでございますが、こうした状況を放置しておいて時短を推進すると言っても、時短推進という形でもって結果的にサービス残業がふえていくということになれば、労働者にとっても社会にとってもより不幸であると思うわけでございまして、その点についてより具体的な措置をお願いするわけでございます。
 あわせて、例えば、都立労研が「営業職の労働時間管理」というのをお出しになりまして、立派な冊子を発行しておられます。この都立労研の調査によりますと、先ほど申しました管理職に残業手当を払っている企業というのはわずかに八・五%にすぎない。そして、管理職でございません一般の労働者に対して支払い残業時間の上限を決めているところが二六・九%ある。したがって、それらのところにおける労働者の残業手当の支給というのは、実労働時間に対しては五三・三%、すなわち、実際の残業時間の半分しか払われていないということが出されているわけでございます。しかも、営業手当という形で手当が出ているからということでございますが、営業手当としては時間給五百五十五円が平均ということで、到底残業手当に見合うものではございません。こうした数値というものが都立労研の調査にも出ているわけでございます。
 企業の方の残業時間の報告は平均して十四・三時間。ところが、労働者の方がそれに対してどう言っているかというと、三十七・七時間の残業時間がある。二十時間以上も、企業の出されている、すなわち残業費用が払われている時間と労働者が労働していると言っている時間との間に一月当たりに格差が出てくる。こういうふうなとんでもない実体労働における大きな差があるわけでございます。
 この問題なんかについて、労働省は本当に本腰を入れて整理していく気があるのかどうか。こういうサービス残業と言われる部分が月に二十時間もあるというふうな状況であれば、三六協定がどうであろうと、それから一週の労働時間の上限をどう決めようと、これは実際上は絵にかいたもちということになりかねない。その辺についてどのようにお考えかお伺いしたいと思います。
#44
○伊藤(庄)政府委員 サービス残業につきましては、先ほど申し上げましたように、使用者が明示なり黙示で労働者に時間外労働をさせながら、また、その労働者が割り増し賃金を支払われるべき対象の労働者でありながら正確な労働時間を把握しなかったり、あるいはいろいろな方法で支払いから逃れるケースをそう呼んでおるわけでございますが、御指摘のございました都立労研の「営業職の労働時間管理」の調査結果を見てまいりますと、その中には管理監督者の方が含まれていたり、あるいはみなし労働時間制の適用を受けている方も含まれているようでございます。また、賃金体系が必ずしも残業手当というような形態でないものも含まれておりまして、この結果だけでいわゆる実際の残業時間と手当との問題でサービス残業がどの程度含まれているかということを把握することは、正直、ちょっと困難ではございます。
 しかしながら、もしそういった中に幾らかでもサービス残業といった問題、あるいはそれにつながる土壌がそこに隠されているとすれば、やはり私どもこういったサービス残業の解消に向けて努力していかなければいかぬことは事実でございますので、私どもの第一線の窓口等におきましても、そういった労働者からの申告等の事案につきましては、十分配慮しながらその処理に意を尽くして適切に対処し、サービス残業等の解消に向けて努力を積み重ねていくようにしていきたいというふうに思っております。
#45
○五島委員 この点は、実は労働省の方が行っております定期監督の実施状況、それによる違反状況というものを見てみますと数字的に類推できるわけでございます。
 三六協定がないということで、労働時間違反を起こしているケースというのは、男女挙げておりますが、両方で約二万五千件くらいございます。一方、三六協定があるために三十二条違反にはならないけれども、いわゆる三十七条違反、割り増し賃金のところにおいて問題を起こしているというのが約七千件くらいございます。これは監督署の定期監督の実施調査でございますが、そういうふうな実数が出ている。一方、そういうふうなものを受けまして、今のは平成元年の数値でございます、平成二年に出された数値でございますが、その結果をどういうふうに処理されたかということ、もちろん指導はそれぞれされていると思います。
 ところが、送検されたケースというものを見てみますと、三十二条違反で送検されたケースというのは二十五件。これは昔に比べると約倍くらいにふえているわけですが、二十五件でございます。一方、割り増し賃金について送検されたケースが八件、実際に違反の確認状態と送検数との間は比率にもならないほどごく微々たるものでございますが、いずれにしても、この三十二条違反の場合は、三六協定の締結を指導することによって解決するということになっているのだと思います。
 三十七条違反の場合はどのようにしておられるのか。きのう質問をとりにおいでになられた方にお伺いしたのですが、どうも話の要領が得られない。指導しておりますと言うわけですが、この三十七条違反というのはいわば賃金の未払いでございます。これについては、違反状態がはっきりするとするならば、労働者が働いた賃金が払われていない、これは労働債権である、それについてきちっと払わす、これは当たり前のことだと思うのですが、単なる指導ということではおかしいのじゃないか、どのようにしておられるのかちょっとお伺いしたいと思います。
#46
○石岡政府委員 労働基準監督機関におきましては、三十七条違反の事例がありました場合、通常でございますが是正勧告書を交付いたしまして未払いの割り増し賃金を払わせております。
 ただ、是正勧告書を出しましても払わないとか、あるいはまた非常に悪質な、例えば賃金台帳をごまかしたり時間外の記録をごまかしたり、そういうことで割り増し賃金を払わないというような非常に悪質な場合は、いずれの場合におきましても送検いたしております。
 三十七条違反に限りませんけれども、今後とも基準法違反につきましては厳正に対処してまいるつもりでございます。
#47
○五島委員 三十七条違反の場合は、そういう形で厳正に対処して支払わせているということであるならば、先ほど申しましたサービス残業ということが明らかになった場合は、これもやはり三十七条違反としてそういうふうに措置されているわけですか。
#48
○石岡政府委員 いわゆるサービス残業の場合で割り増し賃金が支払われなかったことが明らかな場合は、是正勧告を出しまして、割り増し賃金がきちっと払われるように是正をさせております。と同時に、最近のある銀行のケースで申しますと、その実態が非常に悪質であったということで送検もいたしております。
#49
○五島委員 与えられております時間がもう余りございませんので、この問題はもうこれ以上やる時間がないわけでありますが、いま一つ、この時短の関係におきまして厚生省においでいただいていると思いますので、厚生省にお伺いしたいと思います。医療、福祉現場における時短の問題でございます。
 御案内のように、医療を例にとりますと、医療におけるマンパワーの配置というのは、これは医療法等々によって定められているわけでございますね。したがいまして、その範囲の中においての業務ということになってまいります。これは施設においても同じということになるかと思います。
 そういうふうな中において、現在四十四時間労働を四十時間労働に労働時間を短縮するということになってきますと、約一割の労働力が結果的には患者さんの前から減るという問題になってまいるわけでございまして、これは一企業の努力においてどうこうできるという問題ではございません。すなわち、人をそれだけ増員するか、あるいは患者さんに対する看護なり介護の手を一割薄めるか、二つに一つしかないわけでございます。
 そのように考えますと、当然、四十時間労働になりますと、現在の看護基準、看護の配置基準、これを見直さない限りは、現在でも看護、介護の人手不足あるいはそれが十分でないという指摘がある中において現場はやっていけないという問題になると考えるわけでございますが、その点について、この法律との関係で、厚生省はそうした看護基準やあるいは福祉施設における介護者の基準について見直しをされる計画をお持ちであるのかどうかお伺いします。
#50
○伊原説明員 お答え申し上げます。
 五島先生には医療におきます人員の問題につきましては格別の御理解をちょうだいしておりまして、実はこの問題につきましても、昨年、厚生委員会における医療法改正の際にいち早く御指摘いただいたところでございますが、医療法上、病院におきます看護婦さん等を含む人員配置の基準につきましては、患者がいずれの病院におきましても均質な医療を受けられますよう配置基準を一律に決めさせていただいておるところでございます。この基準と申しますか、これは医療法では標準というふうに、先生も非常にお詳しいところでございますが、標準に基づきまして各病院にその遵守というものを指導しておりますけれども、必ずしもこれは十分にそれを満たしていない現状にございます。
 ただいまのような四十時間の問題、こういった問題が加わりますと非常に厳しい状況になってくるわけでございまして、これまた先生の方に御理解いただいておるところですが、昨年、看護人材確保法というものを設けまして、またその看護婦の養成等に所要の予算措置等を講じまして、そのマンパワーの確保に私ども努力をしておるところでございます。いずれにしましても、現在の水準を、まずこの標準をすべての病院に満たしていただきますようこの指導なり助成に努めておるところでございます。
 さらに、基準につきましては、これまた昨年の医療法の改正のときに附則に検討規定というのが設けられまして、それぞれの医療施設がその機能に応じた配置基準を持つようそのあり方について検討を進めるということになっておりますので、その中で鋭意検討させていただきたい、かように思っております。
#51
○五島委員 ということは、確かに看護婦さんは足りない、だから、結論的に言えば、今現在も足りないのであるから、患者さんに対する看護の手を水増しせよ、薄めてしまえということとして受け取らざるを得ない御返事なのですね。
 そういう状況の中で、これからの看護あるいは医療というのはやっていけるのか、これは厚生の問題ですからまた厚生委員会でやらせていただきますが、いずれにしても、そういうふうな状況の中において看護の職場というのが三K労働とかなんとかいった形で嫌われていく、極めて重要な職場から人が去っていくという逆の状況が起こっていくのではないか。
 この点につきましては、例えばこれまでにも労働省の方のお出しになっております「解釈例規」の中にも、寮母や看護婦の場合の断続勤務ということについて、断続勤務を寮母や看護婦に認めるか、あるいはそういう問題については一日平均三時間程度までは拘束時間が長いとはいえないとか、十五、六時間まで手待ち時間を含めてやったらどうかという問題についても全く明確に答えずに「実態に即して判断されたい」という形で、労働省はこれらの問題、看護、介護現場については一切触れてないわけですね。言いかえれば、これは厚生省サイドに任されている。
 そうだとすると、やはり厚生省はこの週四十時間労働という問題が平成九年に来るということになれば、その時点において看護なり介護の基準をどういうふうに整備していくのか、これはきちっと対応していくように準備すべきじゃないですか。また、それを前提として、今医療というのは、技術や材料や人件費というのはすべて診療報酬によって管理されるという社会化され切った社会ですね。そうなれば、当然それらの問題に見合った形での診療報酬の処置というものもされない限り、この週四十時間労働というのは達成できないという問題になってまいります。その辺についての問題が、現状看護婦が足りないから看護婦確保法ができたので、これから看護婦がふえてくれば、それからおいおいにという話であれば、その看護婦確保法によって確保できる、その見通し。それから、平成九年の四十時間完全実施との間においてきちっと整合性を持てるというふうな計画になっていますか、その点お伺いいたします。
#52
○伊原説明員 ただいま先生からの御指摘でございますが、その四十時間の話との整合性ということでございますけれども、申し上げましたとおり、看護人材確保法に基づきまして私ども基本指針というのを定めまして、当面、週四十時間労働制を目指して、完全週休二日制の普及等労働時間の短縮を進めていくなどの看護職員の処遇の改善に関する事項をこの基本指針に盛り込みましてやっていこうということになっております。
 また、絶対的な人員不足ということの中で、看護職員の確保のために養成所に対する国庫補助等の充実を通じまして、まずもって私どもは看護婦職員の各病院における充足率を高めていく、これに向かって努力しておるところでございます。
#53
○五島委員 伊原さん、週四十時間労働を達成しなければいけないというのはそのとおりなのですが、それが完全週休二日制というふうなこととあわせてそう勝手に言われたら困るわけです。では、患者さんに対して、国民に対して週二日間病気になるなというのかという問題で、医療というのは二十四時間、三百六十五日存在しないといけないわけです。そういう意味において、国立病院がさっさと週休二日を採用された結果、地域医療の中においてどれだけ迷惑しているかという問題も考えてほしいのであって、この辺を、週休二日をきちっとするというなら、それに見合った形での医療従事者の配置というのを考えた中において言っていただかないと、厚生省が週四十時間労働制に対応するマンパワーの確保をどうするかという見通しについても、これから看護婦を養成してという話をしながら、週休二日なんというふうなことを根拠なしに言われる。これでは本当に現場は混乱するだけだろうと思うのです。
 その混乱の結果、今何が起こっているか、これは労働省も関係があると思うのですが、今盛んに夜勤専門パート看護婦というのがふえているわけですね。御承知のとおりです。これはどういう看護婦か。正看の数がいない、だから厚生省はパートの看護婦を時間単位で医療法に言うところの看護婦の数としてカウントします、こうなっている。その結果、夜勤のない診療所等に勤務しておられる看護婦さんが、昼間の勤務が終わって夜勤専門の労働としてパートで入っている。週に二日ぐらい、十六時間勤務ですね。通常は、早出・遅出をうまく組み合わせて十五時間ぐらい夜勤労働をやる。その労働はパートですから労働省サイドでもそれを把握し切れない。だけれども、その看護婦さん自身からしてみると、昼間日勤で他の医療機関で勤務し、そして、夜勤専門看護婦として夜十五時間の夜勤勤務をする、そういうふうな数が公的病院も含めて今ふえているわけです。これは看護婦が足りないという問題に一つ大きな要因があります。
 しかし、その一方において、そうした問題をどういうふうに処置していくかということを抜きにして、労働行政と厚生行政との間において一日も早く四十時間を達成してほしい。そうでない限り、医療におけるそういう看護婦さんや介護される方々が、三K労働等々ということで極めて重要な職種になかなか入っていただけない。だから確保していただきたい。
 だけれども、そうであればあるほど、例えば平成九年の週四十時間完全実施のときに対応できるようなシステムを考えていただかないと、これはますます今言ったような、資格を持っている人であればそういうパートという形でもって長時間労働、それで厚生省はそれを実労働時間でカウントして、だから一人の看護婦さんが長時間労働することによって、実質上二カ所で働いているような形での査定をすることによって、現在の看護婦不足の問題を数字の上では糊塗しようとしている。これはやはり大変な問題だろうと思う。
 そういう意味では、こうした二つの事業所にまたがる長時間労働を行う、一方はパート、一方は正社員という形でのそういう長時間労働の問題、これは一体どういうふうに厚生省がそれを――私は、この問題についていえば厚生省だと思うのですが、厚生省の問題でもあり、また労働行政でもそういうような形の労働というのは今後医療以外にも起こってくるだろうと思うわけですが、それについてどうお考えか。まず厚生省、そして最後に労働省、お話をお伺いしたいと思います。
#54
○矢野説明員 今のお話によりますと、二つの職場を行ったり来たりしているという実態があるということでございますが、先生の調査によりますとそのようなことがあるというお話でございますが、これにつきましては、ちょっとうちの方ではきちんとしたデータは持っておりません。ただ、そういうことがこれからあり得るだろうというような予測はできるわけでございます。夜勤専従という問題につきましては、今までいろいろなところで言われてきておりますが、どういう形であれ少しずつ入ってきているという実態はございます。
 そういうこともありまして、この問題をどういうふうに検討したらいいかというのは一つの課題にはなっております。特に、深夜とか準夜とかそういう勤務におきましてこういう夜勤専従を導入している医療機関というものは、勤務時間帯でありますとか一カ月の勤務日数等看護婦本人の希望を配慮した上で導入しているのが実態ではなかろうかと思いますが、その方々の人事とか労務管理とかいろいろな観点から今御指摘がありますようないろいろな問題がありますので、そういった面につきましても今検討中といいますか業務検討ということでやっている経過もございますので、今後勤務条件、職場環境の整備等を勘案いたしまして検討していきたいというふうに考えております。
#55
○石岡政府委員 医療機関におきますところの労働時間は、現在、三十人以上が四十四時間、十人から三十人が四十六時間、九人以下が四十八時間ということでございますが、今後基準法の改正が成立いたしますと、これらの多くのところは平成九年から週四十時間に移行していただくことになります。
 週四十時間にこれら医療機関が移行する場合には、先生御指摘のようなさまざまな問題があるということは我々もそう感じておるところでございます。したがいまして、これらの問題を解決し、週四十時間へ医療機関の労働時間が円滑に移行するために、労働省は厚生省とも十分協議をしてまいりたいと考えております。
 それからもう一つのお尋ねでございますが、確かに、労働時間の短縮が進んでまいりますと、ダブルジョブホルダーといいまして二つの仕事をされる方がふえてまいっております。こういう事態に対しまして労働基準法の規定は、三十八条だったと思いますが、労働時間の通算制度があるだけで、必ずしも体系的な規定が整備されているとは言えない状況であると思います。
 この問題につきまして、現在、労働大臣の諮問機関であります労働基準法研究会で検討していただいておりますので、その検討結果が出ましたら基準審議会でもよく検討していただき、結論が出ましたら対処をしてまいりたいと思っております。
#56
○五島委員 労働省の方はダブルジョブホルダーと言われている労働者の実態について、またそれに対する検討を進めていかれるということでございますから結構だと思うわけですが、厚生省の方で夜勤専門パート看護婦といったような実態は把握していないとおっしゃるわけですが、これは随分と多くのところで指摘されているわけですよね。労働組合からも指摘されておりますし、あるいはさまざまな医療関係者のところからもこの問題の指摘が出てきております。この実態を把握していないということがもう既に遅きに失するわけですが、これについてやはり早急にそうした実態を把握していただきたい。
 私としては、このパート看護婦の数、労働時間によるカウント制というものの中で非常にふえてきたような感じを持っております。まさに今労働省がおっしゃったダブルジョブホルダー、これがいいか悪いかというのはこれはまた別の概念でございまして、そういう時代になるのかもわかりません。しかし、そういう時代になるとしても、そこで何らかの形でのそれに対する労働衛生上の処置というのは必要だというふうに考えますので、その実態は一日も早く把握していただきたいというふうに思います。
 あわせまして、これは福祉職場の問題においては、例えば寮母さんに対しては人員が措置という形でもって費用が公的に定められていますね。看護婦さんの問題についても、診療報酬ということで厚生省は定めているわけです。そういうふうなものをきちっと連動させない限り、週四十時間労働に移行しようとしても経営努力によって移行できないというシステム、そこまで社会化されているシステムだということをやはり厚生省はきちっと考えて、平成九年というのはもう動かないと大臣もおっしゃったわけですから、だから、平成九年に向けて、それが動かないという前提のもとでの看護や介護あるいはそういう施設の職員の人員の見直しを大至急やっていただきたいと思うのですが、やっていただけますね。
#57
○伊原説明員 お答え申し上げます。
 先ほどちょっと触れさせていただいたのですが、医療施設に関する人員の問題につきましては、昨年医療法を改正する際に、その施設の機能に応じた配置をするということを検討せよ、こういう修正条項が医療法の附則に入りました。それを踏まえまして、これは法改正にも絡む問題でございますので、私ども今後その附則検討規定に基づいた検討をさせていただく、こういう趣旨でございます。
#58
○五島委員 残余の質問について沖田議員とかわります。
#59
○岡田委員長 伊藤英成君。
#60
○伊藤(英)委員 本日は、先回の労働委員会でお話を申し上げたとおりに、時間外労働並びに休日出勤の割り増し率の問題を中心にして質問をいたします。
 まず最初に、時間外労働の割り増し賃金率についての問題であります。
 時間外割り増し率二五%というのが一九一九年のILO第一号条約の定めた基準でありまして、昭和二十一年当時の労働法策定の原案では時間外五〇%とされていたようでありますけれども、敗戦直後の産業復興を理由にして二五%に修正をされたというふうに聞いております。
 そこで、今日日本がまさに世界の最高水準を達成しているのに、時間外の割り増し賃金率が二五%のままでいいはずはないと私は思うのです。労働省の基本的な考え方をまず伺います。
#61
○村上国務大臣 基本的な考えということでございますので、私がお答えさせていただきます。
 割り増し賃金率については、基本的にはその引き上げを図っていく必要がある、こういう考え方でおります。
 しかしながら、大部分の企業における割り増し賃金率が二五%にとどまっているという現状にかんがみますと、これを直ちに引き上げることはなかなか難しい。
 そこで、休日労働にかかわる割り増し賃金率について一定の引き上げをまず行い、その後、さらに労使の取り組み等を総合的に勘案しながら段階的に対処していくため、本法案では二五%から五〇%の間で政令で定めることとしたものであります。
#62
○伊藤(英)委員 今の話は、基本的には上げていきたいのだけれども、当面は時間外割り増し率について二五%と考えたいという大臣のお言葉ですね。
 そういたしますと、「生活大国五か年計画」で「所定外労働の削減を図るため、時間外・休日労働の法定割増賃金率の引上げについて具体的に検討する。」こういうふうになっていますね。これとの関連で、今の時間外労働の割り増し率についてはどういうふうに考えますか。
#63
○伊藤(庄)政府委員 先生御指摘のように、「生活大国五か年計画」では、割り増し賃金率につきまして、その引き上げについて具体的に検討するということにされております。もちろん、この経済計画の引き上げについて具体的に検討するという点は、その引き上げの時期あるいはその具体的な幅、いろいろなものを検討することを含んでいる趣旨だろうとは思いますが、私ども、こういった経済計画を受けまして、今回御審議をお願いしております労働基準法の改正に当たりまして、週四十時間労働制への移行のスケジュール等とあわせまして、重点の課題として中央労働基準審議会にも検討をお願いし、労使双方から非常に活発な御議論をいただいた次第でございます。
 そういった検討を重ねました結果として、私ども今回の改正案を取りまとめるに当たりまして、割り増し賃金率につきましては、現在二五%というふうになっているものを二五%以上五〇%以下の範囲で政令で定める、それで、今後労使の取り組みその他の実態等を見ながら段階的にその対応ができていく仕組みを法制上つくって御審議をお願いしたわけでございます。
 また、現にまず第一段階として、休日労働に係る割り増し賃金率についても、法律の施行日であります平成六年四月からこれを引き上げるという考えで対処していこうというふうに考えておるわけでございます。
#64
○伊藤(英)委員 問題は、どれだけ早く日本の水準を是正していくかということだと思うのです。
 私は、例えば今のような話を聞いていてもそうですが、本当に現在の日本の世界における状況なりを正しく認識して、具体的な施策として展開をしようとしているかということがまだよくわからぬな、こういうふうに思うのです。
 以前もこの労働委員会でいろいろと議論もしてまいりましたけれども、今ますます国際化というのが進んでいく、そして世界的な規模で日本がいろいろな事業も展開をされている、そういう企業がたくさんある、そういう中で、外国での時間外労働が五〇%、そして日本が二五%というような状況ですと、これは明らかに国際公正労働基準と言われる観点から見ても極めて問題だと私は思います。こういうような状況は外から見れば、いわゆるソーシャルダンピングと言われても仕方がない状況だと思うのです。どうですか。
#65
○石岡政府委員 御指摘のとおり、諸外国の時間外労働の割り増し賃金率を見ますと五〇%の国が多い現状がございます。
 その中で我が国の割り増し率は現状二五%にとどまっておるわけでございますが、やはりこれではいけない、国際的な公正労働基準の確立、先生がおっしゃいましたそういう面からも、基本的にはこの割り増し賃金率を引き上げていく必要がある、かように考えている次第でございます。
#66
○伊藤(英)委員 引き上げていくと言うのですが、今回ですと、二五%から五〇%という大きな幅で法律は策定をして、後の政令でどうしようというわけですが、本当にちゃんと動いていくかしらという話になっていくわけですよね。
 今の点は局長も十分に御認識だと思いますが、私は本当にこれは大変な問題だと思っておりますのは、日本の会社がほかの国に出ていって、自分のところの子会社をつくったり工場をつくったりしますよね。そのときに片っ方の日本は二五%で、片っ方のその出ていった外国でもしも五〇%とか一〇〇%でやっていたら、その面について言えば、ひょっとしたらダンピングじゃないかということさえ――さっき私がいわゆるソーシャルダンピングと言われたりしても仕方がないのじゃないかという話をいたしましたよね。このことの重要さというのは、いわゆる日本に住んでいる、そこで働いている人たちだけの問題ではなくて、その人はもちろんでありますが、国と国という関係をとっても重大な問題だと思わなければならぬということですね。
#67
○石岡政府委員 割り増し賃金率につきましては、先ほど申し上げましたように、国際的な公正労働基準確立などの観点からもこれを引き上げていく必要があると考えております。そういう点では、先生のお考え方と私たちの考え方は基本的には同じではないかと思っている次第でございます。
 ただ、違いがございますのは、我が国の現状は、いろいろな要因がございまして割り増し賃金率につきましては二五%にとどまっております。こういう現状から、一挙に例えば五〇%に引き上げますといろいろな面で経済社会面に混乱が出るというふうに考えている次第でございます。
 したがいまして、労働省の考え方は、割り増し賃金率につきましては、諸外国の水準も十分踏まえまして二五%から五〇%という範囲で命令でこれを定めていこう、具体的には、今後の経済動向とか週四十時間制への移行のスケジュールとか企業における実態などを総合的に勘案しながら、段階的に国際的な一応の目安であります五〇%に向けて割り増し賃金率を引き上げていこう、この方がやはり現実的にこの問題を処理することになるのではないか、そういうふうに考えている次第でございます。
#68
○伊藤(英)委員 先ほど大臣が中小企業等のこともあるからという意味で言われたと思うのですね。
 今段階的にいろいろやっていこうという話の中で、労働省の労働基準法研究会の報告の中で、時間外労働の時間数にかかわらず一律に割り増し率を上げるという賃金率の引き上げについて、そういうやり方ではなくて、賃金率を段階的に設定するというやり方も考えられるのではないかというやり方の問題について意見が言われておりますね。要するに、時間の問題、時間というのはタイムスケジュールの話じゃなくて、時間外労働の時間がどれだけ大きいかということを段階的に分けたその割り増し率を設定していくというやり方ですね。
 こういう制度の導入については私は検討する余地もあるのではないか、こう思うのですが、こういうのはどういうふうに考えますか。
#69
○伊藤(庄)政府委員 先生からお話しございましたある一定の残業の時間数のところから割り増し率について段差をつけて高いものにしていく方式、フランス等に見られるものでございますが、この制度につきましては、労働基準法の改正案の取りまとめに当たりまして、その前段階として御検討願いました労働基準法研究会においても、この制度は恒常的な残業時間の抑制に非常に効果があるのじゃないかという観点から非常に関心を持たれまして、そういった方法についてもこの研究会報告で言及がされたところでございます。私ども、そういった研究会の報告も頭に入れて、この改正法案の取りまとめに当たりまして審議会等でも御議論を願ったわけでございます。
 ただ、我が国の実態を見ますと、大半が時間外労働についての割り増し率が二五%にあること、また、今御指摘ございました段階的な割り増し賃金率を採用している企業等の事情を調べましたが、なかなかそういったものが我が国において現実にまだ出てきていない、そういった状況がございました。
 この時間外労働の割り増し率につきましては、審議会の方からも指摘されておりますように、基本的にはその引き上げの必要性を認め、今後四十時間制への移行のスケジュールあるいは労使の取り組みの進展、そういうものを見ながら検討していこう、こういうことにされておるわけでございますが、そういった検討の中では、先生お話しのあった段階的な割り増し率の引き上げの仕組み、これも重要な検討項目の一つになっていくであろうというふうに受けとめております。
#70
○伊藤(英)委員 それから、今度時間外労働の上限規定が労基法になくて、指針で、例えば平成五年一月一日より三百六十時間の目安時間というのを設けたりしておりますね。こういうのが本当に現在どのくらいの実効性があるのか疑問視する声もありますね。
 政府として本当に千八百時間というものをやろうと思うなら、これはやはりはっきりと法律で規定しなければならぬ、私はこう思いますがいかがですか。
#71
○伊藤(庄)政府委員 この時間外労働につきましては、我が国の場合、景気の変動があった場合にこの時間外労働を通じて雇用調整をすることによって雇用を維持していく、こういった面が非常に特徴的なわけでございますが、そういったことからも労使協定に基づいてこの時間外労働について弾力的な対応が図られてきている、また、その時間外労働のあり方も業種ごとに非常にさまざまな実態があるというような状況を考え合わせますと、現段階で一律に時間外労働の上限を法律によって規制するというようなことは、非常に慎重な検討を経なくてはいけないのではないかというふうに考えておるところでございます。
 私どもは、そういった状況の中で時間外労働の上限の指針につきまして労働大臣の告示を出しまして、これに基づいて指導を行ってきております。昨年の五月、六月に実態調査をいたしました状況を見ますと、その当時は、例えば一年についての上限時間の目安が四百五十時間でございましたが、その実態調査によりますと、四百四十時間以下で労使協定を結んでいる企業が約九四%ほどございまして、多くの企業がこの時間外労働の指針を遵守しているというような状況が出てきております。
 今後、なおそういったものが引き続き多くの企業で守られるように努力することによって、時間外労働の削減に努めていきたいというふうに思っておるところでございます。
#72
○伊藤(英)委員 私は、この問題は非常に重要な問題だと思っておりますので、また後刻議論することになると思いますが、これはぜひ真剣に検討しておいていただきたいと思います。
 それから、休日労働の割り増し率についてであります。
 先ほども若干考え方が述べられたりはいたしましたけれども、やはり今の日本の休日労働の割り増し賃金率二五%というのは、本当に世界の最低水準でありますし、これは問題だというふうに思います。だからこそ、今まで経済審議会でも第七次雇用対策基本計画でもあるいは国民生活審議会でも、そしてまた労働基準法研究会とか中基審の建議でもこの問題については述べられて、休日労働の削減、そしてまたそのためにも割り増し賃金率の引き上げの必要性が言われてきているわけです。
 今回この労基法の改正において、なぜ明確な形で、休日労働の制限並びに割り増し賃金率引き上げ後の率、何%以上にするのだとはっきりとできなかったのか、伺います。
#73
○石岡政府委員 今回基準法改正法案の御審議をお願いしておりますが、その中の重要な項目の一つは、週四十時間労働制の実現でございます。週四十時間制が実現いたしますと、例えば完全週休二日制という週に二日休む形が社会に定着していくことになろうかと思います。こういう休日をふやす時短をこれから進めていかなければならないとしているところに休日で働くことが多いということになりますと、これは非常に矛盾していると思いますので、休日労働というのはできるだけなくしていくべきだ、そういうふうに基本的に考えているところでございます。
 そこで、いろいろ検討したのでございますが、例えば休日労働の日数の上限を基準法で決めよということでございますが、臨時・緊急やむを得ない休日労働も実態としては一部あるわけでございまして、そういうことを考えますと、こういう日数の上限を定めることについては、我が国の労働慣行や実態等から見て慎重に検討する必要があるというふうに考えている次第でございます。
 しかしながら、割り増し賃金率につきましては、やはり国際的な公正労働条件の確立などの観点からいいましても、休日についても引き上げる必要があると考えておりまして、そこで、二五%以上五〇%以内で政令の範囲で段階的にその引き上げを図っていこうとしているところでございます。
 休日労働につきましては、具体的に何%と書けなかったのは、たびたび先ほどから時間外の割り増しについても申し上げている同じ事情がこれについてもあるからでございます。休日労働の場合の割り増し賃金率は、大部分の事業場で二五%となっております。これを一挙に引き上げるのはやはりいろいろ困難がございますので、段階的に引き上げを図ってまいりたい、そう考えているからでございまして、法案が成立いたしますと、この休日労働の引き上げを実態調査もしながら実現してまいりたいと考えております。
#74
○伊藤(英)委員 これから実態調査もして段階的に進めていきたいということなのですけれども、いわば似たような御説明は今までも結構あったりしていますよね。しかし、本当になかなか進まないということなのですね。
 何のために週四十時間にするのだろう、何のために千八百時間なら千八百時間にするのだろうかということについて、やはりみんなもっと考えないといけないのではないかと私は思うのです。
 例えば、時間外と休日の問題にしても、先ほどもいろいろ言われたりしておりますが、時間外と休日労働では、本当は若干また意味も違うのですね。休日の意味というものは何だろうかと考えて、かつて私はこの労働委員会で議論をしたことがあります。何のために時間外割り増し率を引き上げようとかあるいは休日労働の割り増し率を上げるべきかということを議論するときに、私は、これは時間に対する価値の問題だと思っております。人間の生活に対しての時間の価値を、かつてと比べれば本当に高く評価をしよう、時間を大事にしようと考えるからこそ、週四十時間にしようよ、あるいは千八百時間にしようということを考えるわけです。時間に対する価値を本当にどういうふうに考えるのだろうか、それを本当に私たちの生活の中にちゃんと組み込むようにするために法的な措置をどのように展開をしていくのかと考えなければいかぬ問題です。
 そういうふうに考えれば、現在の状況ですと、それは私は休日労働の割り増し率でも一気に一〇〇%まで持っていくべきだ、これは先ほどの国際労働基準というような観点からしてもそう思うのですよね。どう思いますか、先ほど来申し上げておりますが、時間外労働の価値と、休日労働をするときのその休日の時間の価値をどういうふうに考えるかということも含めて……。
#75
○石岡政府委員 休日労働につきましては、やはりこれは本来労働者が家庭で休むべき日であるその日に働くという問題でございますので、労働者にとりましては、時間外労働よりも相対的に負担が重い問題であると考えております。
 また、先ほど言いましたように、あるいは先生もおっしゃっておりますように、週四十時間とか千八百時間ということで労働時間を短縮しながら、反面、休日労働がふえるというようなことはあってはならない、矛盾したことではないかと思っておる次第です。
 そういう面からも、休日労働の問題につきましては、時間外労働も大事な問題ではございますけれども、労働者にとって重々しい問題であると考えております。したがいまして、基準法の改正をお認めいただきました暁におきましては、休日労働の割り増し賃金率につきましては、審議会でも十分検討させていただきまして、その引き上げを図ってまいりたいと決意をしている次第でございます。
 ただ、先生御指摘のように、一番いい形は何%と法律に書き込むことであろうかと思いますが、日本の休日の割り増し賃金率がもう大半の企業で二五%になっておる現状、恐縮ですがたびたび繰り返して申し上げているそういう実情がございますので、引き上げるにしましても、いろいろな諸条件を考慮しながら段階的にやっていくということが、最善ではないにしろ次善の策としていいのではないかと考えております。
#76
○伊藤(英)委員 いわば国民の生活の仕方あるいは生活を守っていくためにも、労働行政として本当に実効あることをやっていかなければならぬ。例えば現状がこうだからというふうにやっていたらよくなっていきませんよね。よくなっていかない。特に日本の場合には、例えば組合の組織率も低い、どういうふうにしていったら本当に上がっていくだろうかと考えれば、これは法律で最低基準をこういうふうにセットしますよ、だからこれ以上はちゃんと実行してくださいというふうにやっていくことだと思うのですね。
 そういうふうに考えれば、まずは休日労働の割り増し賃金率については最低限五〇%にしますということを明記する。それ以上の部分についていえば、いろいろとまた段階的にどうするかという話はあるとしても、最低限五〇%はまず法律に明記することだ。どうですか。
#77
○石岡政府委員 休日の割り増し賃金率の水準につきましては、諸外国の実情あるいは我が国の実態などをいろいろ考慮いたしまして、五〇%という水準を設定いたしまして、それを政策目標として段階的に引き上げていこう、そういう考え方で今回法案を出させていただいた次第でございます。
 先生の今の御指摘のような考え方も、私よくわかります。よくわかりますが、やはり日本のこの問題の現実を考えました場合には、五〇%を明記いたしまして、その後さらに一〇〇%でしょうか、それに向かって段階的に引き上げていくような方式につきましては、残念ながらなかなか難しい面があるのではないか。考え方としては私どもと先生とは基本的には違わないと思いますけれども、割り増し賃金率を引き上げていく方法につきまして若干の差があるだけだ、そういうふうに考えております。
#78
○伊藤(英)委員 きょうは私の時間がもうほとんどないのだそうでありますが、私は、これは非常に重要な問題で、今回の労基法の改正の問題で考えれば、特に時間外の問題あるいは休日労働の割り増し率の問題というのは極めて重大な問題だと思うのですね。
 そういう意味で、大臣から先ほど時間外・休日労働の問題ともに若干お話がありましたけれども、今私は当面の措置として、休日労働の上限を定めること、そしてまた、この休日労働の割り増し率を五〇%に法律上明記をする、そういうふうにすべきだ、こういうことを要求したいと思いますが、大臣にお言葉をいただいて、本日は終わります。
#79
○村上国務大臣 今政府委員とのやりとりを聞いておりまして、要するに、この時短というのは休日をふやす、休日労働をふやすということではなくして、時間外労働をふやすということではなくして、これはできるだけ抑えていこう、そうしなければ千八百時間に持っていけないわけでありまして、問題はこの千八百時間に持っていく、これが趣旨でございます。
 しかし、そうした中でも、休日振りかえ等々やむを得ない場合これに対してどうするか。時間外というものも、これも実態に即して百四十五時間以内に抑え込んでいくと先ほど私は申し上げたわけでありますが、こういう実態に対して、では国際水準からいって今のままでいいのか、こういう御議論でございますので、まあ物事というのはやはり段階的にやっていかなければならない。もう急速に、ラジカルに、一気にということになりますといろいろ問題が出てくるであろう。そこらあたりを考えながら、しかし今の二五%というこれではいかがか、そういう考え方の基本に立っていることは間違いないわけでありますので、そういう考え方で検討をしてまいります、こういうことでございます。
 それから、まあとにかく時短を進める中で余った時間、本来休まなければならない時間をアルバイト、パートという議論も実態としてあるんだ、先ほどこういうお話でございましたが、決してそれは私たちが時短を進める上において理想的な姿ではない、こう申し上げておきたい、こう思うのであります。
#80
○伊藤(英)委員 終わります。
#81
○岡田委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四分開議
#82
○岡田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。沖田正人君。
#83
○沖田委員 労働基準法の改正案についてでございますが、週法定労働時間に関する猶予措置等の問題もあるわけでありますけれども、時間の関係で、改正点の一年の変形労働時間制についてのみお伺いをいたしたいと私は思うわけであります。
 一年の変形労働時間制については、現行三カ月の変形労働時間制を一年の期間に延長して変形労働を認めるということにされるようでありますが、これによって幾つかの問題が発生すると思われますので、この際、お尋ねをしておきたいと思うのでございます。
 まず、一年の変形労働時間制度は、日給月給制の労働者にも適用されるのかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
#84
○石岡政府委員 一年の変形労働時間制は、年間を通しての休日の設定を行うことによりまして休日増を図り、労働時間の短縮を促進しようとするものでございます。
 この適用労働者でございますが、賃金の支払い形態いかんにかかわらず、雇用期間が変形期間、すなわち一年を超える者には適用するということでございます。
#85
○沖田委員 建設業や林業等で日給月給制が用いられていると思いますが、その実態をどのように把握をされているか、お示しをいただきたいと思います。
#86
○伊藤(庄)政府委員 建設業におきます日給月給制の実態でございますが、雇用促進事業団が平成四年一月に行いました「建設専門工事業における建設労働者の雇用・賃金形態等の実態に関する調査」、これによりますと、建設労働者のうち常用一般労働者につきましては、日給月給制が五〇・一%採用されているという状況になっております。
#87
○沖田委員 林業については調査がありませんか。
#88
○伊藤(庄)政府委員 林業についても、調査を当たればその辺の実態が出てくるかと思いますが、申しわけございませんが、今手元にございませんので、後ほど調べてみたいと思います。
#89
○沖田委員 後ほど林業についても数字がわかれば、お知らせをいただきたいと思います。
 そこで、建設業全体、林業全体と言ってもいいでしょう、それぞれすべての現場で週休二日制が実施されているのかどうか、この点についてお答えいただきたいと思います。
#90
○伊藤(庄)政府委員 これは賃金労働時間制度の総合調査によりましてその状況を見てまいりますと、建設業におきまして何らかの週休二日制の適用を受ける労働者の割合は七八・七%でございます。そのうち、完全週休二日制の適用を受ける労働者の割合は三〇・四%でございます。全産業平均では、何らかの週休二日制の適用を受ける労働者の割合が九一・六%、また完全週休二日制の適用を受ける労働者の割合が四五・九%でございますから、それに比べますと、その普及にはおくれが見られるところでございます。
#91
○沖田委員 建設業における月給制の採用実態は非常に比率が低いですね。こういう状況の中で、完全週休二日制については、大手では採用されつつあるわけでありますけれども、すべての現場でなかなか定着しておらない、こういう実態があることは御案内のとおりだろうと思います。
 こういう建設業や林業等の現場におきまして一年の変形労働時間制が適用されたならば、週休二日制による賃金の引き上げがあればいいのですけれども、具体的には、賃金の引き上げもなくて、日給月給制であるという立場からノーワーク・ノーペイ、働かなければ、労務につかない日は賃金が支払われない、こういう実態であることも御案内のとおりだろうと思うのでございます。所定労働時間の延長を認めて時間外の割り増し賃金をもらうということにもなかなかなりにくい。年間での労働時間数の帳じりが合えばいいのだ、そういうことになってしまうと思うのです。
 でございますから、季節的に労働ができない時期などで賃金の保障のない休日の増加、それ以外の時期では割り増し賃金が支払われないで労働強化が行われる、年間を通じての収入減、季節的な極端な収入の減少が生じると危惧するものでございます。
 建設業や林業など屋外労働者の労働実態からこうした危惧が生じることについてどのようにお考えか、お伺いをいたしたいと思うのでございます。
#92
○石岡政府委員 一年の変形労働時間制は、先ほど言いましたように、業務の繁閑を利用しながら休日を増加させまして、週休二日制に相当する週四十時間労働制を導入するための方策でございます。
 このように休日が増加いたしますと、先生御指摘のように、日給月給制の場合はその分減収になる、あるいはまた、御指摘のように時間外の手当が減るケースも考えられると思います。これらは、一年の変形労働時間制にかかわらず、時短を進めていく場合に出てくる基本的な問題であろうかと思っているところでございます。
 労働省といたしましては、建設業における時短を進めるに当たりまして、日給制から月給制への改善の呼びかけなどを行ってきたところでございますが、変形労働時間制の導入を機会に、さらに建設省や関係業界団体の協力も得まして積極的な指導を行いまして、建設業の週休二日制の普及等労働条件の維持向上が同時に行われるように努力をしてまいりたい、かように考えております。
#93
○沖田委員 林業等では、休日を業務の繁閑に応じて振りかえるというのではなくて、雨天等天候上の理由で振りかえる、こういう実態が七四%に及ぶ、こういうふうに一つのデータを私は持っているわけでありますが、建設業においてはそれでは一体どうだろうか、その点について把握しておられればお答えをいただきたい、こう思います。
#94
○伊藤(庄)政府委員 休日の振りかえにつきまして、その件数その他につきましての統計的な資料はございません。
 ただ、建設業につきましては、その産業の性格上天候に左右されやすい、また、受注産業であることからそういった面が多いということは事実として私ども承知しているところでございます。
#95
○沖田委員 悪天候手当というような制度も現在ございませんし、建設業などでは雨が降れば仕事を休まなければいかぬというようなことからして、今後の変形労働時間制そのものがどういうふうに影響が出てくるか。先ほどお答えいただいたように、働かなければ賃金をもらえない、こういう日給月給制の実態からして、収入が減少することもあるかもしれないということはお認めいただいたようでありますから、こういう点についてはっきりしておきたいのは、業務の繁閑によって休日が振りかえられるのじゃなくて、天候によって振りかえ休日等が行われるという実態が存在をする。
 したがって、そういう実態上からして考えられることは、変形労働時間制そのものについての疑問というものがわいてくる。このことについて御理解いただけるかどうか、お伺いしておきたいと思うのです。
#96
○伊藤(庄)政府委員 変形労働時間制を特に最長一年の期間に延長するに際しましては、私どもは、まず休日につきまして年単位で管理する、したがいまして、当初に労使協定に基づきまして年間の休日を特定してもらう、これを一つの条件としております。したがいまして、年間の休日の特定等が非常に困難、またはそれが後になって非常に振りかえやすいというような場合については、この変形労働時間制の採用に当たりまして、そういった業界に対しましてそれが適切なものになるように指導していく必要があるというふうに考えているところでございます。
#97
○沖田委員 先ほど建設専門工事業における建設労働者の賃金形態、つまり日給月給制については五〇・一%とお答えいただいたようでありますけれども、これは三十人以上の企業だろうと思いますが、これに間違いありませんか。
#98
○伊藤(庄)政府委員 これは全国で一万事業所、建設事業主団体の会員事業所から無作為抽出しておりまして、特に三十人以上というふうに限った調査ではございません。
#99
○沖田委員 そうすると、五〇・一%という数字が必ずしも妥当なものではなくて、実態としては相当多い建設労働者などが日給月給制で働いている、こういうことを認識されますか。
#100
○伊藤(庄)政府委員 建設業につきましては、私ども建設労働者の人材の確保その他から建設業を魅力ある職場にしていくということで、建設労働者の雇用の改善にいろいろ取り組んでいるわけでございますが、賃金形態の改善、特に日給制から月給制への改善ということがそういった中での一つの課題でございまして、その背景には、先生御指摘のように、建設業におきましては日給制あるいは日給月給制、こういう賃金形態が多いということは承知しております。
#101
○沖田委員 建設業等での不安定雇用の実態からいたしまして、直接雇用、月給制の採用、完全週休二日制の促進が各方面から提唱され、努力をされているわけでありますけれども、一年の変形労働時間制の導入が、本来の時間短縮、休日増を図るとする改正法の趣旨に反して、賃金保障の伴わない形式的な通年雇用、週休二日制として悪用されることになりはしないかという大変な心配をいたしているわけであります。
 したがって、建設業等における週休二日制、月給制等が普及するまでの当分の間は、建設業等における日給月給制労働者を変形労働時間制の適用から外すなど、いろいろ考えていかなければならぬと思いますが、この建設業や林業等の労働者に対して法律や制度を悪用、逆用するような事例が具体的に出てきたときにはどうなさるおつもりか、このことをお伺いしておきたいと思います。
#102
○伊藤(庄)政府委員 まず、一年変形制の趣旨でございますが、三カ月単位の変形労働時間制について設けられている一日、一週の限度時間、これを縮小するということで、法律の施行段階におきまして具体的に労働省令でその縮小された限度時間を決めるという考えでございます。
 したがいまして、年間通しまして休日を設定しながら、業務の繁閑を利用していくわけでございますが、そんなに極端な変動幅を生じさせるような利用形態というのは非常にやりにくいということがこの変形制の仕組みから一つ言えるかと思います。
 それから、この一年の変形制におきましては、年間を通して採用されている、いわゆる変形期間よりも、一年よりも短い雇用期間の者は適用除外をする、こういう仕組みもとっております。
 そういったことで、この一年変形制に伴う御懸念の乱用防止というようなことに当たってまいりたいと思います。
 さらに、御指摘の建設業におきまして日給制あるいは日給月給制が多いということの問題がございますので、この辺につきましても、かねてから日給制から月給制への改善等を呼びかけてきておりますので、また、こういう変形制の導入を機会に、それがそういった方々にとって非常に弊害を生むことのないように、建設省や元請企業の方の協力も得ながら、ひとつ建設業においてこういった休日の確保あるいは週休二日制の導入、そういったものが労働条件の維持と両立し得るように、今後とも引き続き努力をしていきたいというふうに思っておるところでございます。
#103
○沖田委員 建設業等にあっては積雪寒冷地に特に季節的影響を受けやすいわけであります。計画的に年間労働時間を配分するのであれば、積雪寒冷地等で変形労働時間制が利用されると思われますが、積雪寒冷地での特例措置、通年雇用奨励金、冬期雇用安定奨励金、冬期技能講習助成給付金、また短期の雇用特例給付の制度に変形労働時間制がどのように影響してくるのか、お答えいただきたい、このように思います。
#104
○伊藤(庄)政府委員 先ほどもお答え申し上げましたとおり、一年の変形制を採用するに当たりましては、一年を通じて雇用が継続しているということが要件になるわけでございます。したがいまして、この一年の変形制を積雪寒冷地で採用しようとする場合には、その事業主は該当労働者を通年雇用しなければならないということになるわけでございまして、もしそういったことを通じて通年雇用が促進されるのであれば、先ほどから問題の賃金形態の改善その他雇用関係の改善を進める基盤が整備されていくことにつながるのではないかというふうにも考えておるところでございます。
 具体的に、まず通年雇用奨励金との関係でございますが、通年雇用奨励金は、季節労働者を通年雇用した場合に支給される奨励金制度でございますので、まさに一年の変形制とこの通年雇用奨励金というのは政策目的に合致するというふうに考えております。
 それから、もう一つ御指摘ございました冬期雇用安定奨励金あるいは冬期技能講習助成給付金でございますが、これらは通年雇用に至らないで冬期に離職する、こういった季節労働者の方々に、冬期の就労なり通年雇用に備えての技能を身につける、そういったことを助成していくための給付金でございますので、これは離職が前提になってしまうという制度でございます。したがいまして、この冬期間離職するような場合、恐らく年間を通して継続雇用されるという一年の変形労働時間制を当てはめる労働者の要件を欠くことになるかというふうに思っております。
 それからもう一つ、雇用保険の特例一時金の制度もお話がございましたが、この特例一時金制度は、毎年循環的に冬期間離職する方々に五十日分の一時金を特例一時金として支給する制度でございますので、これもやはり冬期間離職してしまうことが前提になる制度でございます。したがいまして、これも一年間を通じて雇用されるということを要件にしております一年の変形労働時間制の対象労働者からは外れることになるかというふうに思っております。
#105
○沖田委員 大変失礼ではありますけれども、この変形労働時間制をお考えになった時点では、日給月給制の労働者の存在というものが十分に理解されていなかったのではなかろうか、こういうふうに思われますが、率直にお考えをお伺いいたしたい。
#106
○伊藤(庄)政府委員 この一年の変形労働時間制をいろいろ検討するに当たりまして、前の労働基準法の研究会、あるいはそれに基づいて建議を出すために検討を願った中央労働基準審議会におきましても、一年の変形労働時間制のこういった乱用防止が議題となりました。そういう際に、季節労働者など一年を通して雇用されない人についてはこれを除外するなど、そういった乱用防止策を講じなければならないということが議論の一つの論点でございました。
 そういった時点から、こういった建設業における労働者の問題等の一年の変形労働時間制のことは念頭に置きながら、その乱用防止策も含めて、制度検討に当たってまいりました。
 それで、そういう際に、日給月給制の方等につきまして、やはりこの一年の変形制との関係で、建設労働者の雇用の改善といいますか、そういう方たちの例えば日給制から月給制へといった賃金形態の改善その他の雇用面の改善があわせて一緒に進めていかないといけないであろうというようなことを念頭に置きつつ、制度検討に当たった次第でございます。
#107
○沖田委員 いずれにいたしましても、建設業における重層下請の実態、そしてまた、先ほどもちょっと林業に絡んで申し上げましたけれども、悪天候に理由を求めて振りかえ休日を行う、そういう実態が非常に多いわけであります。悪天候手当もない。そしてまた、公共現場等でも賃金の公表が、掲示が行われなくて、つまり公契約法、公の契約法がまだ日本には存在をしていない、こういう状況からいたしましても、建設労働者や山林、林業の労働者の労働実態というものは非常に厳しいものがあるだろう。そして、日給月給制ということについても、今度のこの時間短縮の恩典というものが前向きにとらえられないで悪用、逆用されることのないように、やはりきちんとしていかなければならぬ、そういう点では御理解をいただけたと思いますが、もう一度その点について確認をしておきたいと思います。
#108
○伊藤(庄)政府委員 建設業また林業の面におきまして、その後継者の確保あるいは優秀な若い人材の確保といった観点からも、その雇用の改善を進めていかなくてはいかぬということは、これは業界にとって大きな課題でございますし、労働省におきましても、そういった事業主の取り組みに対していろいろな援助、助成を行ってきております。そういう中で、日給制等の改善も大きな課題でございます。
 この今回新たに導入されます一年の変形制、これも一方ではやはりそういった雇用の改善と関連いたしまして、建設業における週休二日制の導入あるいは休日の増加といった魅力ある職場にしていくための雇用改善の一環にもつながるわけでございます。
 そういった性格の制度でございますので、この際やはりそういう賃金形態の改善といったような雇用の改善と、一方で労働時間の短縮、そういったものとが両方相まって、並行的に両立しながら進むように、建設省あるいは関係団体とも十分連絡をとりながら努力をしていきたいと思っております。
#109
○沖田委員 ハイヤー、タクシーの労働者の中でも日給月給制の存在があるだろうと思います。このたびの時間短縮の変形労働時間制の問題等含めて、悪い影響が出ないようにしてもらいたいと思いますが、所見を伺いたいと思います。
#110
○伊藤(庄)政府委員 ハイヤー、タクシー関係につきましても、御指摘のように日給制等の問題がある場合、私どもは、この一年の変形労働時間制において設けておりますいろいろな乱用防止の策につきまして、もしそういった業界が利用しようとする場合に十分徹底されるように配慮した上でその利用を図ってまいるつもりでございますが、とりわけハイタク業界につきましては、私ども別途自動車運転者の労働条件の改善基準というものを作成しておりまして、運転時間あるいは拘束時間または運転から運転までの休息時間等について一定の基準を示して、その遵守を呼びかけております。
 したがって、一年の変形制を利用するといえども、その前提としてこういった自動車運転者の労働条件の改善基準が遵守されていることが先決問題となりますので、そういう観点からもその改善基準の遵守を促しまして、そういった御懸念の問題が出ないように留意してまいるつもりでございます。
#111
○沖田委員 いずれにいたしましても、建設業や林業等の労働者に対して変形労働時間制についての悪い影響というものがどうしても心配でならぬわけです。したがって、どう対処するかということについては、ひとつ十分歯どめの措置をお考えいただきたい。
 ともあれ、単なる指導とか単なる一片の通達とかいうことでは不十分だろうと思いますから、法律上、明らかに悪影響が出ないような歯どめ策というものを考えていただきたい。せっかく時間短縮という労働者にとって喜ばしい法改正が、変形労働時間制ということを加えたために、逆の方向で建設業や林業等の労働者が一層の苦労をしょわされることにならないように努力をしていただきますようにお願いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
#112
○岡田委員長 岡崎宏美君。
#113
○岡崎(宏)委員 前回の委員会から、たくさんの方がいろいろな問題点を指摘されておりますけれども、きょうは、少し重なる部分があるかもわかりませんが、確認をさせていただきながら質問したいと思っています。
 最初に、千八百時間というのは時間短縮の一つの通過点だ、それが最終目標でないというのはこの間随分論議をされているところです。しかし、とりあえず千八百時間は何とか達成をしたい、そのために、こういう形になれば千八百時間が達成できるというモデル案のようなものも出されているわけでして、これを例えば所定内はこれぐらい、所定外はこれぐらい、休日はこれぐらい、これがとりあえず千八百時間という私たちの目標だというものを、変わっていないと思いますが、一度確認をさせていただきたいと思います。
#114
○石岡政府委員 政府といたしましては、千八百時間の目標達成のために御指摘のようなモデルをつくりまして、いろいろ啓蒙宣伝に使っているところでございます。
 具体的には三つございまして、一つは、完全週休二日制が普及することでございます。年間でいえば週休日が百四日、週休日以外の休日が十五日程度を想定しております。それから二番目には、年次有給休暇が二十日取得されるということでございます。そして三番目には、所定外労働時間が百四十七時間。
 以上のような千八百時間のモデル、従来も使ってまいりましたが、これからも一つの目安として使ってまいる考えでございます。
#115
○岡崎(宏)委員 今の千八百時間のモデルの中身についてあれこれは言いたくないのですが、モデルの中にも言われているのは、所定内も短くしていくことだし、所定外ももちろんそうだし、休日が百四日というのは完全週休二日制ということが大前提だし、それを実際今回の労基法の改正案の中で達成できるかどうかが一つの私たちの、これでいいかどうかというのを判断していく材料にもなると思うのです。そのために一つはお聞きをいたしました。
 それで、今回たくさんの人から、心配だという声も含めていろいろな意見を私たちもいただいております。その意見が集中しているものの一つが変形労働時間制だと私たちは受けとめております。
 今この委員会の部屋の中で「変形労働時間制について」という紙が配られておりますけれども、前回の労基法の改正の時点で三カ月単位の変形労働時間制が取り入れられた、このときも随分いろいろな論議はあったわけですけれども、この変形労働時間制、三カ月を取り入れた趣旨についてもう一度確認をしたいと思いますが、教えてください。
#116
○石岡政府委員 最近企業の実態を調べてみますと、年間の休日カレンダーをつくられるなど年単位の休日管理を行うケースが非常にふえてきております。
 最長一年の変形労働時間制は、このような動きに立ちまして、年間単位の休日の増加を図り、そして週休二日制に相当する週四十時間労働制を導入しやすくしよう、そういう趣旨、目的を持って、検討の上創設せんとしておるものでございます。
#117
○岡崎(宏)委員 この表を見ましても、現行の三カ月変形制「季節的な業務の繁閑に対応した労働時間の効率的配分」、改正案の方が「業務の繁閑に応じての年単位の休日増」とあります。
 ただ、三カ月単位を入れますときも、お互いに休日を何とかしてふやす、労働時間の効率的な配分というのもあるけれども、休日を何とかしてふやすことをやりやすくするために、そしてそれは結果として労働時間の短縮につながることのためにというのが趣旨だったと思うのですね。これに間違いはないですね。
 そして同時に、そういう形で取り入れるものだから、突発的なものはさておいたとしても、恒常的には時間外労働というものはないということが前提だ、こういうことが趣旨としてお互いに確認されたと思うわけですが、それに間違いはありませんね。今回も変更はありませんね。
#118
○伊藤(庄)政府委員 三カ月の変形労働時間制を設けました際におきましても、また現時点でもそうでございますが、通常、業務の繁閑を利用しながら労働時間の効率的配分により短縮するという場合、労働時間の短縮が、特に最近におきまして休日をふやす、こういう形で週の所定労働時間なりを縮めていくというケースが非常に多くなってございます。
 そういう意味では、三カ月の変形制を設けた際の業務の繁閑に対応した労働時間の効率的な配分ということも休日増につながっていると思いますし、そういった趣旨については変わりないというふうに思っております。
#119
○岡崎(宏)委員 それでは、とりあえず現行の三カ月単位の変形労働時間制ですか、実際のところそういう趣旨に沿いながらどれくらいの利用状況になっているんでしょうか。
#120
○伊藤(庄)政府委員 三カ月の変形労働時間制を採用している事業所の状況でございますが、件数で申し上げますと、これはいわゆる労使協定の届け出件数で集計しておりますが、六十三年が三百一件でございます。その後次第に増加してまいりまして、平成元年が三百六十一件、平成二年が四百十一件、平成三年になりまして増加幅が大きくなりまして、平成三年で八百十五件というふうになっております。
#121
○岡崎(宏)委員 利用の状況の件数はそういうことだそうですが、そもそもの趣旨に沿って時間短縮、それから休日の大幅増ということでいけば、この三カ月の変形というのは大いに役立ったんでしょうか。そのように労働省としては総括をされていらっしゃいますか。
#122
○伊藤(庄)政府委員 現行の三カ月変形制につきまして、平成四年に労働時間の総合実態調査を行った際、週の所定労働時間について調査しております。変形制を採用している事業所での週の所定労働時間の平均が四十時間十六分という状況になっております。通常の事業所の週所定労働時間が平均四十二時間四十分であるということと比較いたしまして、こういった採用した事業所では、時短が進んでいるといいますか、効果を上げているのではないかというふうに考えておるところでございます。
#123
○岡崎(宏)委員 その数字の出し方というのもいろいろ聞いてみたいとは思うのです。
 例えば、私は前に委員会で一度お尋ねしたことがありますが、毎勤をずっととっていらっしゃるけれども、その対象の事業が小さな規模は全然対象になっていないとか、あるいは短時間パートで働いている人たちがひょっとしたらこの数字の中に入っているんじゃないかとか、いろいろ我々としては統計としてはこういうものが出てきたと言われても、首をかしげることというのはよくあります。
 今も教えていただいた、例えばこの変形制を取り入れているところで週の所定が四十時間ちょっと、そうでないところが四十二時間ということですけれども、でもこれは大体物すごい時間短縮になっているとは言えない数字じゃないでしょうかね。四十時間というのは、これからもそうですが法定時間ですし、適用猶予ということになるとその範囲の中ですし、変形制によって大いに時間短縮が進むというふうにはなかなか言い切れるものではないような気が実はいたします、また後でお尋ねもしたいと思いますが……。
 けれども、その一方で、私たちもこんな意見があるというふうに聞いているのです。三カ月の単位というのは随分使いにくい、こういうふうに特に使用者側の皆さんが言っておられる、こんなふうに聞くのですが、これは本当でしょうか。
#124
○伊藤(庄)政府委員 この変形制に関しまして私どもいろいろ関係方面から御意見を承っておりますが、そういった中で、相当数の企業が休日につきまして年単位で設定するというような労働協約を結んでいた、あるいは、年間の休日カレンダーをあらかじめセットして、業務の繁閑の中で年間の休日を設定するというようなことを行っておる状況がございます。
 そういった中で、現在の変形労働時間制が三カ月に限定されているために、通常、工場その他におきましても、工場の操業等についてやはり年間単位で波動性がある、そういうものを利用して休日をふやしていくためには三カ月というサイクルの中ではなかなか難しいんだ、こういうお話を伺います。
 そういったことで、今回、最長一年の変形時間制について、所要の規制を行いながらそういった変形期間の延長がなされれば、年間を通しての休日管理をやることによって休日数の増加ができるんだ、こういう話を伺ったことがございまして、その辺が現在の三カ月制についていろいろ問題にしている向きの使用者サイドからお聞きする意見の大半ではないかというふうに思っております。
#125
○岡崎(宏)委員 使用者サイドからはそういう意見がある。しかし、実際に利用状況そのものはまだ多くなくて、私たちも具体的なその事例というのを余りつかみ切れていませんけれども、労働者サイドからはやはりこの変形制というのは問題がある、一方からはこういう意見も聞いています。変形制を取り入れても実は思ったより休日がふえない。ふえるはずの鳴り物入りの三カ月でやってみたけれども、休日はふえない。むしろ一日の時間が随分長い日が出てくる。
 この例も以前委員会で一度お尋ねしたことがありますが、これはたまたま一カ月の変形制を採用しているところですけれども、労基署も悪用だとしか言いようがない、だけれども違法ではない、そういうすれすれのところを使用者側が使うと、労働時間が実は以前よりも長くなっていくというふうなこともあり得る。例えば一日の時間が十時間というふうになってくると、これはもう保育所に子供を預けているような女の人だとか、あるいは家で親が帰ってきて御飯をつくってくれるのを待っているような子供のいる人にとっては、とてもじゃないけれどもだめだ、正規で働くことも難しいというふうなことも出てくるのですが、使用者側からの意見は先ほどお聞きしたとおりです。
 労働者サイドからそういった意見が出ているということは、労働省としては御存じですね。
#126
○伊藤(庄)政府委員 現行三カ月の変形制あるいは今度の一年の変形制もそうでございますが、一カ月の場合と異なりまして、平均した週の労働時間が原則として四十時間以下でなければならない。一カ月の場合は、猶予されているところにつきましては、そのまま四十四時間とか四十六時間ということでよろしいわけですが、三カ月なりました今度の一年の変形制におきましては、原則として四十時間以下というようなことがございます。そういったことから、一カ月の場合とは事業所の規模なんかでも利用例が違ってきている面はあるのかというふうに思っております。
 それからもう一つ、労働者の方からいろいろこの変形制に関連して出ている話といたしましては、もともと三カ月制が設けられた際にも御議論のございましたように、育児、介護等あるいは勤労学生等の方々に対して必要な配慮がなされて、そういった方たちが育児あるいは介護等の時間が奪われないような、計画的にそういった方もできるような仕組みでなくてはいかぬということで、そういったことについて配慮する必要性が指摘されまして、私ども労働省令においてもそういった配慮義務を定めて指導いたしておるわけでございますが、そういったことについての御意見は伺うことがございます。
 この一年の変形制を導入するに当たりましても、そういった点に十分配慮をいたしまして、三カ月制の場合よりも、現在一日十時間、一週五十二時間という変形の場合の上限の限度時間について、これは縮小する方向で施行の段階で具体的に労働省令で決めていこう、こういうことにしておりまして、そういった意味では、一日あるいは一週の所定労働時間の変動する幅といいますか、そういったものは現行の三カ月よりも小さくなる。そういう意味では、育児、介護等に当たられる方にとっても、その変動幅が小さい分、計画的な行動がしやすくなることにつながっていくのではないかというふうに考えております。
#127
○岡崎(宏)委員 できるかできないかお互いに言い合っていてもきりがないのですが、前回の委員会で公明党の石田委員の方からだったと思いますが、この三カ月を採用した際に、一日十時間を例えば十日間連続でやったとしても、あるいは休日なしで連続十二日間働くというふうなことも理屈の上では可能じゃないかという質問があって、それは理屈の上では成り立つというふうな答弁がたしかされていたと思います。これはついこの間の委員会でそういう答弁がされていたと思います。
 それで、私たちにとって非常に気にかかるのは、特に労働者サイドの方からいけば、押しなべたときに幾ら週四十時間以内であったとしても、その現実の姿では五十二時間という今の一つの一週間の数字があって、この五十二時間というのは、実は育児や介護に携わっている人たちへの配慮というものを義務とされても、具体的な担保がなければ働く側にとっては本当に厳しいものを含んでいる。しかも、理屈上では成り立つというのは、特に小さい企業で組合も余りないというふうなところになってくると企業が悪用するおそれも十分あって、幾ら悪用しても実は違反ではないというところであれば、さらにそれが大きくなるということがあるわけですから、これはあえて申し上げているわけです。
 それで、できるだけ具体的にそうした配慮というものがみんなに担保できるような形でこれから示していっていただきたいと思うわけですけれども、一週当たりの労働時間、これが四十時間以内ということですね。そして、しかしそうであっても、労働時間の限度などについて、今一日十時間、一週間五十二時間というのは、この部分については命令で定めるということに改正案の中ではなっています。また、連続して労働させる日数の限度というものも、これもまた命令で定めることになっています。
 具体的にどういうふうなことが内容として考えられているのか、教えてください。
#128
○伊藤(庄)政府委員 最長一年の変形労働時間制をとる場合に、一日及び一週間について所定労働時間として働いていただく時間の限度時間を労働省令で決める、こういうふうに法律の仕組みをとっております。
 これは三カ月制の場合と同様でございますが、違いますのは、そこで定める限度時間について、現行は一日十時間、それから一週については五十二時間でございますが、これは全体として休日増の確保をねらうのだ、こういう趣旨に則してその縮小を図っていこうというのが、法案をまとめるに際しまして審議会等におきましても一つの合意された方向でございます。具体的には、法律を成立させていただいたならば、その段階でそういう方向で具体的な詰めを行った上で労働省令を決めていきたいというふうに思っております。
 それからもう一点、連続して働いていただく日数でございますが、これにつきましては、現行の三カ月と同様、通常四週四回という休みをある程度まとめてもいいような現在の労働基準法の規定の原則を、この変形制を採用する場合に限りましては、一週間に一回ずつ休ませなくてはいけない、こういう形にして歯どめをかけていこう、こういう考えでおります。
#129
○岡崎(宏)委員 できるだけ乱用されることがないような具体的な事例というものも出していただいて、歯どめをかけていく。それはだれもがわかるような形でかけていっていただきたいと思うのです。これは今の時点では、私たち要望する以外にないわけですけれども、今ある例えば一日十時間、一週間五十二時間をできるだけ縮小させていくという方向で命令を考えていただけるのであろうと思うのです。だけれども、その上になおかつ実労働時間の上限というものを本来は必要とするのではないか。
 これは本来変形制そのものが、私が最初に趣旨をお尋ねしましたけれども休日をふやす、そうしたことを含めて時間短縮という形で、何とか時間短縮を進めるための一方法として採用されたのだと思いますけれども、本来の人間の生活スタイルからいけば、変形労働制というのは時短のための例外的な措置ということだと思うのです。
 それからいくと、やはり一週当たりの特に実労働の上限はこれから決めていく、そういうことを検討していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
#130
○伊藤(庄)政府委員 ただいま、所定労働時間としての一週なり一日の限度時間ということだけではなくて、所定外の残業時間も含めた全体としての上限を法律上定めていったらどうかという御指摘であろうと思います。
 この点につきましては、全体的に申し上げれば、やはり我が国の労働慣行といたしまして、時間外労働というものが景気の変動に対応して雇用調整を図る、雇用の維持も図っていくというような機能を果たしている側面がございまして、また、業種ごとにその時間外労働の動向というのもかなりさまざまな動きをする、こういうところから法律で一律の規制をしていくということについてはなかなか難しい面があろうかと思います。
 ただ、この変形制の際に、六十二年の改正の際にも御議論があった育児あるいは介護等の方々に対して配慮した取り扱いというものにつきましては、やはりこれからの女性の方の職場進出や高齢者の方々の知識や経験を生かして職場で働いていける、そういう職場環境をつくっていくためにも、やはり事業所の方々が配慮しつつ職場環境の整備を行っていく、そういう必要性は実際問題としてあろうかと思います。
#131
○岡崎(宏)委員 繰り返しで申しわけないけれども、実際一週間四十時間以内というふうに決めたとしても、そしてそれだけでいったとしても、年間でそれを数えてみれば、労働時間としてはそんなに短くはないわけですね、四十掛ける五十二週間、やってもらえば二千時間を超えるわけですから。その上に、本当は所定外は余りないはずだ、こういう前提だけれども実際はやはりある。そういうものを足していけば、そして週休二日制も実はなかなか進んでいないというふうなことを考えれば、これは働く方の側にとってみれば、自分勝手にやめた、こう言えないわけですから、そこに一番きちんとした歯どめをかけることができるのは、やはり実労働時間の上限だろうと思うのです。これが今すぐなるかならないかというのは、説明があるわけですから、今すぐ返事をしろ、こういうふうに言いませんけれども、使用者の人たちからの意見はそうかもしれないけれども、一方で労働者側からの声もきちんと受けとめていただいて、ぜひ考えていただきたい。これは要望しておきたいと思います。
 それで、対象になる人また対象になる業務に関連をして確認をしたいのですが、ここにあるように「業務の性質上あらかじめ特定することが困難な業務については適用の余地はない」という従来の通達ですね、ここで言うと。例えば観光バスのようなというのがこの前にあったと思うのですけれども、これは今回変わるものではありませんね、確認をさせてください。
#132
○伊藤(庄)政府委員 御指摘のように、現在の三カ月の変形労働時間制の場合、これはこの三カ月制の変形労働時間制を導入する最初に、その三カ月間の労働時間を特定する必要がございます。そういうことで、業務の性格上あらかじめそういった特定ができないもの、できない業種につきましては、これはそういった三カ月の変形労働時間制の適用ができない、貸し切り観光バスを例示してそういった通達を出していることは御指摘のとおりでございます。
 そういった取り扱いにつきましては、今度の一年の変形労働時間制、これは三カ月の場合よりもなお一層そういった必要性が高くなるのではないかというふうに思っております。と申しますのは、やはり年間での休日を図っていくというような趣旨がございますので、これは実際上も年間単位での休日をあらかじめ特定するというようなこと、また、三カ月ごとにそれぞれの期間の労働時間を特定する、こういった要件もかぶせております。
 したがいまして、三カ月よりも一年を通してそういった業務の都合を見通せるようなところにおのずと限定されてくると思いますし、そういったことは引き続き通達で明らかにしていくつもりでございます。
#133
○岡崎(宏)委員 次に、きょうのこの表の中には入っていないのですけれども、年少労働者の人たち、これが今度三カ月、一年単位の変形が適用されることになった。たしか、前回の改正のときに、三カ月単位の変形制はこの年少労働者には適用されない。それで、成立後に出ている基発一号の中で、一カ月は条件つきで一応適用になっていますが、三カ月の方は年少者保護の見地から適用除外とする、こういうふうになっていると思うのですが、今回どうして三カ月、一年単位、これが適用になることになったのでしょうか、この合理的な理由というのは一体何でしょうか。
#134
○石岡政府委員 御指摘のように、年少者につきましては、年少者保護の見地から、現行の一カ月単位の変形労働時間制、フレックスタイム制、三カ月単位の変形労働時間制、一週間単位の非定型的変形労働時間制に関する規定は適用しないということでございます。ただし、一カ月単位の変形労働時間制につきましては、条件つきでこれを認める場合がございます。
 これに対しまして、最長一年単位の変形労働時間制の場合、なぜ年少労働者にもこの適用をするのかというのがお尋ねだと思いますけれども、この最長一年単位の変形制は、年単位で休日増を図るものでございます。したがいまして、例えば具体的には、年少者の場合、お盆とお正月に故郷に帰る、そういう休日設定が行われた場合に、当然ながらそれを利用した方がいいと考えられます。これは単に一例でございますけれども、そういうことを考えますと、年間単位で休日増が図られそれが年少者に適用されるということは、年少者についてもいいことではないかというふうに考えまして、本制度ではそういう見地から年少者に適用を図ろうとしているわけでございます。
#135
○岡崎(宏)委員 三カ月のときに外した理由は、年少者保護の見地なんですね、理由として挙げられているのは。年少者保護の見地というのは一体どこにいってしまったのだろうか。
 私、知る限りでは、働いている人たちの中から、非常に積極的に年少者にも変形労働時間制を採用してほしい、こういう声は聞いた覚えがない。今回中基審なんかの審議の場でも、これは余り議論になったというふうに聞いた記憶がない。なぜ今突然に出てきたのか。どうもその合理的な理由というのはわからないのです。今の説明を聞く限りでもよくわからない。一体どこからこれが出てきたのだろうかというのは非常に素直な私の疑問なんですが……。
#136
○石岡政府委員 今回の最長一年単位の変形制につきましても、年少者につきましては、一日八時間、一週四十八時間以下という厳しい上限時間を付した上で適用を図ろうと考えております。したがいまして、年少者保護の観点を今回一切捨て去ってしまったという印象を私の説明で与えたとすれば、それは誤りでございまして、年少者保護の観点は、最長一年制についても残しているということでございます。残しながら、年間単位の休日増が図られ、それを利用することが年少者にとってもいいという側面がございますので適用していく、こういうことでございます。
 それから、審議会でいろいろこの最長一年単位の変形時間制を御審議いただきました。その過程では、いろいろなところから、一年のこの変形労働時間制について年少者にも適用していただきたいという要望もございました。例えば、率直に申し上げますが、紡績業界がそうでございまして、紡績業界の場合は遠隔地からたくさん働きに来ておられます。これらの方々がお盆とかお正月に十分休日をとりまして帰省できる、そういう面からも年少者に適用していただきたい、そういう要望を受けております。
#137
○岡崎(宏)委員 年少者の人というのは、私たち人間の一生の中でも、自己形成にすべてを集中している時期だと思うのですね。それは、働きながらも学ぶことであったり、あるいは遊ぶことも必要だし、そういう意味で、やはりこういう年齢の人たちほど人間本来の生活スタイルというものをできるだけ崩さないように、たくさん休みたいという希望があれば、それこそ若い人たちにも年次有給休暇がきちんととれるような職場の環境を整えることがまず必要なのであって、変形の中に組み込んでいくことによって若い人たちの休めるところをふやすというのは、私は、本末転倒ではないかと思うのです。
 正直申し上げて、私がこの年少労働者というのを改正案の中で見たときに、最初に頭の中に思い浮べた年少者の働いている場所というのは、紡績ではなくて、町の中にたくさんあるファストフード店、スーパー、コンビニ、こういうところで働いている高校生くらいの人たちですね、実はそれを思い浮かべたわけです。ほとんどはアルバイトという形で働いているのでしょうけれども、中には、アルバイトではあっても一軒の店をほぼ任されるような働き方をしている高校生も実はいるような時代で、こういう随分広い範囲に、十五歳から十八歳くらいの年齢の人たちが働いているんだということを労働省は知っていてこれを入れたのか、こういう人たちのところに広がっていかない、そういう担保というのはこの中でできるのか、これをちょっとお尋ねしたいと思います。
#138
○伊藤(庄)政府委員 今お話しございました高校生のアルバイトの人たちがコンビニエンスストアやそういったところで働いているケースにつきまして、この変形制との関係でどうなるかということでございますが、二つの面からいろいろ制約を受けるのだろうと思います。
 一つは、一年の変形制を採用するに当たりましては、一年間を超えて雇用をされる。雇用期間があらかじめ一年よりも短い雇用期間で定められている人たちについては、これは適用できないという形になります。こういった側面が一つでございます。
 それからもう一つは、今お話しございました年少者につきまして、一日八時間、それから一週四十八時間以下の労働省令で定める時間を上限にしてしまうということでございますので、結局一日八時間というものが決まりますから、あとこの変形制によってそういう人たちに働いてもらうメリットというのは、休みをどこかで埋め合わせにとっていくしか方法はない、また、年少者については三十六条の適用ができないこととされておりますので、時間外労働も許されないこととなっております。
 こういう仕組みになっておりますので、そういった今回の一年の変形制を採用したことで、こういったところで働く高校生等のアルバイトの人たちに悪い影響が出てくるということはないのではないかというふうに思っております。
#139
○岡崎(宏)委員 私、いろいろ言いたいことはあるのだけれども、文句は後でまとめて言わせていただくことにしまして、高校生だから本当に短期のアルバイトだという感覚は今の時代を知らない、こういうふうに言わないとしようがありません。卒業するまで三年間しっかりアルバイトをしている人がいるんだ、アルバイトだからあるいは年少者だからこれ以上は働けないはずなんだということは言われていても、それは現実の世界ではそうなっていないことはいっぱいありますから、しまったということがないようにだけは、これは労働省にぜひ私はお願いしておきたいと思いますし、本来、今回適用させたということはやはり本末転倒、間違いじゃないかと私は思いますから、外せるものなら外してほしい、これははっきり申し上げておきます。
 次に、裁量労働の関係で少しお尋ねをしたいと思います。
 よくわからないのです、法案を読む限り、改正文を読む限り。三十八条の二の改正は一体何をポイントにしているのか、教えてください。
#140
○石岡政府委員 三十八条の二の改正の趣旨でございますが、これは裁量労働制の対象業務を従来よりさらに明確にするため、命令でこれを限定的に定めることとしたいということでございます。
 この趣旨に伴いまして、三十八条の二につきましては若干の文言の整理を行っておりますが、立法技術上の問題でございまして、命令で定めることにした以外、特に条文上、意味において変化はございません。
    〔委員長退席、永井委員長代理着席〕
#141
○岡崎(宏)委員 裁量労働の範囲の決め方が今回の改正によって変わるのではないか、こんなふうに私は受けとめたわけですが、こういうふうに受けとめて間違いないのでしょうか。
#142
○石岡政府委員 従来、この三十八条の二では、御承知のとおり、例示を掲げまして、あとは労使が決めるという仕組みでございました。しかしながら、実際、労使が協定で裁量労働を決めようといたしましても、実態としてなかなか決まらない、そういう問題もあったところでございます。それらを踏まえまして審議会で御検討いただいた結果、裁量労働の業務の範囲につきましては、これから法案が通りますといろいろ命令で定めていくことになりますが、審議会の意見も聞きながら命令でその範囲を定めるということにしたい、こういうことでございます。
 したがいまして、基本的に物の考え方において変化はないわけでございますけれども、業務の範囲がより客観的に、明確にされるという点は出てこようかと思っております。
#143
○岡崎(宏)委員 でも、結局、それではどんなものが裁量労働の範囲になるのかというのは、これは命令で定めるとなるわけですね。
 私たち普通考えて、今あるものよりもよりはっきりするというのは、やはり法律の本則で定められて初めてこれはよりはっきりするわけです。研究開発その他の業務、ある意味では例示で示されていたものが今回そこが外れて一般的にこうされていくのは、はっきりするより、むしろ後退しはしないか、しかも、実はこの法律が決まったときには、命令でこれこれというふうに考えていますというものが出されるのならまだ議論の余地はあると思うのですけれども、命令で定めますから、それは審議会で相談しますからということだけでは、どうも裁量労働に関してもよくわからないだけに不安が大きい。審議会で相談をしてからということしか労働省からは普通なかなか答えが出ないのですけれども、例えば現行の通達で示されている1から5の範囲、これを変えるものではない、これを踏み外すようなものではないというふうに考えておいていいのでしょうか。
#144
○石岡政府委員 先生の御指摘は、今回の法改正によりまして裁量労働制の範囲などが行政府の方において恣意的に拡大される、そういうことはあってはならないというような御趣旨かと思いますけれども、今回の法改正をお認めいただけますと、そういう恣意に流れることのないよう審議会の意見もよく聞きながら決定してまいりたいと思いますし、また、この制度自体は労使協定が前提となっておりますので、仮に業務の範囲が決まりましても、それを採用するかどうかは労使でお決めいただく、こういう歯どめもございますので、御心配の点は基本的にはないのではないかと思います。
 それから次に、問題の研究開発その他の業務の範囲でございますが、現在、御指摘のように通達で五つこの範囲を定めております。基本的にはその範囲、五つは今後も命令で定める場合は残るというふうにお考えいただきたいのですが、最近の労働の実態を見ますと、労働者が裁量で労働していく分野というのはそのほかにもあるわけでございます。そのほかにある分野につきましては、審議会でもよく御検討いただいた上で、命令でその範囲を決めたいと考えておるわけでございます。
#145
○岡崎(宏)委員 どうも最初におっしゃったことと違うような気がするのですよ。裁量労働、なかなか労使の間で煮詰まらないから今回のように改正案を出したとおっしゃりながら、具体的には労使協定で労使で決めてもらうことだから、こんなふうに答えられるのはなかなか納得がいきませんし、実際働いている人の職場で、どこもかもにきちんとした労働組合があるわけではありません。そういう人たちにとっては、やはり法律で、しかもだれが見てもわかりやすい中身が一番支えになるわけですから、これは1から5はそのまま残るとしても、ふえるものがあるというのは、そのふえるものについてもっとしっかりしたものを示していただかないとなかなか納得のしようがありません。
 しかも、今回の労基研あるいは中基審の審議の様子を私たちその報告を受けながら聞いていて思うのは、どうも労働者が裁量でやれるものがあるじゃないかと言われるその対象の中に、俗に言うところのホワイトカラーというものがしばしば出てくる。しかし、ホワイトカラーというのは一体何かというのは全然わからないわけでして、このわからないものを対象に置いて法律が決められ、しかも具体的には命令だというのはちょっと私としては納得ができないのです。
 そのホワイトカラーの概念については一度お尋ねしておかなければいけませんので聞きたいと思うのですが、労基研では、このホワイトカラーへの適用ということでホワイトカラーという言葉をちゃんと使われていますね。これはどういうものを指して言っているのか。労働省としてはどういうものだと思って受けとめてこの間それを聞いてきたのか、ぜひ教えてください。
#146
○伊藤(庄)政府委員 今の裁量労働の対象として、現行の五つの業務のほかに、法案作成の段階で議論がございましたのは、いわゆるホワイトカラーの中で裁量的に働いている人たちをどうするかということでございました。その始まりは、御指摘のございました労働基準法研究会の報告でございます。
 その中で、ホワイトカラーの中で、「例えば、管理・監督者に準ずる者、専門的な業務を行う者のうち、本社において高度な経営戦略上の問題の企画に携わる者のように労働時間の配分など労働の態様について自律的に決定している者」、こういうことで、そういう人たちについて裁量労働制への適用を検討する必要があるのではないかというのが労働基準法研究会の報告でございました。これを受けまして、法案の作成の過程で中央労働基準審議会でもこの問題について議論がございました。
 ただ、私ども、このホワイトカラーのうち労働基準法研究会の方で指摘するようなグループにつきまして裁量労働制を適用するにしましても、そこが法律的にまた運用にたえる一定の線引きをしなくちゃいかぬ、その線引きが果たして現段階で可能かどうかということが議論の中心でございまして、この点については、各企業本社部門等でも、さまざまな組織またさまざまな人事労務管理が行われている中で、それらに共通した一定の線引きをすることが現段階でなかなか難しい。したがいまして、この点につきましては、私ども別途こういったホワイトカラーの労働時間管理につきまして実務家、専門家等を含めた研究の場を設けて、そういった人たちの労働時間のあり方なり内容につきまして研究を願う、そういったものの中から一定の成果が出てくれば、その段階で裁量労働制との関係でどうするかを改めて審議会の方で御議論を願う、こういうことで審議会の議論の中でも最終的に関係労使とも合意をいただいているところでございます。したがいまして、そういった研究等の場をまたない限り、このホワイトカラーの場合改めて命令ですぐに審議会にお諮りして決めるというわけにはいかないという経緯がございます。
#147
○岡崎(宏)委員 いや、その経過なり中基審のところでの話はわかるのですが、ホワイトカラーって何ですか、それを教えてください。大臣、教えてください。
#148
○伊藤(庄)政府委員 ホワイトカラーというのは俗に言っている言葉でございまして、とりわけ日本のような人事労務管理が行われているところでは、向こうのように職員と工員の食堂が別とかいろいろなことがなしに、いわばホワイトカラーとブルーカラーの境界線が一番あいまいな国でもございますので、そこを明確に定義づけろと言われると、ちょっと今すぐには頭に浮かんでこない状況でございます。
#149
○岡崎(宏)委員 労働省ですら明確に浮かんでこないものを、いわゆるホワイトカラーを今回範囲に入れ、今すぐではなくても審議をしようというのは、余りにもむちゃくちゃじゃないですか。
 ホワイトカラーというのは本当に一体何かというのは随分大きな問題ですよね。はっきり言えることは、ベルトコンベヤーの前で仕事をしてない人だとぐらいしか言えないのじゃないですか。どうですか。
#150
○伊藤(庄)政府委員 御指摘のように、いわゆるホワイトカラーというふうに使っていますように、このホワイトカラーをどういうふうに定義づけるかというのがまず非常に難しい。したがって、そのうち裁量労働制になじむホワイトカラーというのはどういうグループなんだ、その線引きができるのかというところが、先ほど御説明申し上げましたように審議会でも大いに議論のあったところでございまして、先生まさに御心配になっているとおりの問題がこの法案作成段階でも議論されたわけでございます。
 したがって、その点についてはそういった方面、人事労務管理についての実務家、専門家等を含めた場でよく研究をして、そういったものの中から一定の成果が出てきた段階で改めて検討をしていこう、こういうことになったわけでございまして、そのホワイトカラー、特に裁量労働制になじむような人たちをどうグルーピングして定義づけるかというのは非常に難しいというふうに私ども思っておるところでございます。
#151
○岡崎(宏)委員 これはきちんと時間をかけていろいろなところからの意見を聞いてください、早々と決めてしまうことがないように、これはぜひお願いしておきたいと思います。
 そうしないと、一方で、使用者側の人たちから、この裁量労働の範囲をとにかく広げたいという声は間違いなくあるわけです。使用者側の人たちがつくっているいろいろな集まりといいましょうか、特にその理論形成しているような例えば弁護士さんたちの意見の中でも、ここを変えていくことがこれからの労働の中身を考える際に一番焦点になるところだ、これを変えろというふうなことを指摘するような意見もあるわけでして、それは逆に言うと、よくわからない中で労働者サイドの意見がきちんと反映をされないところでこういうものが広がっていくと、本当に正直言って、今の日本の社会は労使ともに時間に対するきちんとした意識が希薄ですから、問題が広がっていくのじゃないか。裁量労働そのものが時間に対する観念というものをなくしがちなものですから、これはぜひ本当に慎重に慎重にやっていただきたいと思っております。
 特に審議会でやる際には、国会の中でその経過がなかなかわかりませんけれども、やはり労働省としては、これはたくさんの人が関心を持っていることですから、ないしょにしないでその経過については報告をするくらいのことはぜひお願いをしたいと思います。よろしいですか。
#152
○村上国務大臣 裁量労働制によるみなし時間は、みずからの裁量と創意工夫で仕事をする人々を対象とするものであり、実態に即したものでなければならないと考えております。
 したがって、対象の業務も実態に即して、委員のおっしゃるように慎重に定めていかなければならないし、その対象業務が広がることのないように考慮しなければならない。
 また、審議会の審議の経過等については、密室ではなくして当然いろいろな場においてつまびらかにして御報告をしたいと思っております。
#153
○岡崎(宏)委員 ぜひお願いします。
 それでは、次に、年休のことについてちょっとお尋ねをしたいと思います。
 今回の改正案で、取得条件が雇い入れの日から起算して六カ月の継続勤務になったということについては、それから育児休業した期間を出勤したものとみなすということについては、これは従来私たちもいろいろな要求をしてきましたし、一歩前進した、そういうふうに評価したいと思います。
 ところで、年休なんですけれども、どうもなかなか取得は進んでいないのではないかと思うのですが、そのあたりの現状、付与日数あるいは取得状況などを報告していただきたいと思います。
#154
○伊藤(庄)政府委員 現在のいわゆる年次有給休暇の取得状況等でございますが、平成三年での年次有給休暇の付与日数は平均いたしますと十五七日でございまして、取得日数につきましては八・六日と、取得率がまだ五〇%を少し上回る程度にとどまっておるというのが実情でございます。
 こうした年次有給休暇を取得できない理由につきましては、いろいろ意識調査等を見ましても、周囲に迷惑がかかる、病気等有事への備え、あるいは仕事がたまり後で忙しくなる、いろいろなことを挙げている方が多いわけでございますが、私どもそういったお話をお伺いしながら見てまいりますと、年次有給休暇の取得率が低い原因は、その多くが企業内で年次有給休暇を取得するための体制なりあるいは雰囲気といいますか、そういうもののつくり方が十分でないというところに起因しているのではないかというふうに考えております。
#155
○岡崎(宏)委員 さっきの年少の人たちの問題ではありませんけれども、とりにくいと言わせているその原因を何とか取り除いていく、そういう労働省としての指導というものもされているのでしょうけれども、これはもっともっと力を入れてやっていただかなくちゃならない。
 それで、そのときに、とる側からすれば、とりたいと思うけれども今これをとってしまうと後が困る、そういうふうに思わせている原因はいろいろあると思います。休むとどうも仕事をしていないかのように評価されてみたり、そういう面の条件もあると同時に、病気休暇というふうな制度がまだなかなかきちんと確立されていないので、これは悲しいというかせつないですけれども、自分が病気になったときのために年休は使わないで置いておこうとしている人もたくさんいるわけですね。
 そこで、一つの条件整備の中にぜひ病気休暇の確立というふうなものはこの際やってもらえないかと思うのですが、これはどうでしょうか。
#156
○石岡政府委員 確かに御指摘のように、労働者が年次有給休暇をとりにくい理由を調べてみますと、病気休暇がない、そのために年休を残しておく、こういう理由がかなり見られます。そこで、病気休暇の普及状況も調べているところでございますが、現状では、病気休暇がある企業は約二五%程度となっております。こういう制度が普及するのは、その限りにおいてはいいと思いますので、いろいろな機会を通じましてこの病気休暇制度の普及促進にさらに努力したいと思います。
 一方、この病気休暇制度を法制化してはどうかという議論も審議会の一部でございます。ただ、この点につきましてもいろいろ実態を調べてみますと、なかなか複雑なものがありまして、それでは病気休暇制度のある企業で、ほかの企業、ないところと比べまして年休がかなりとられているかといいますと、そうでもないという点がございます。ということで、病気休暇制度の導入につきましては、審議会の方で引き続き勉強させていただきたいと考えております。
#157
○岡崎(宏)委員 ぜひ前向きに検討してほしいと思います。
 ところで、私も実際に働いていて、年次休暇が残り少なくなるというのは何となく不安でした。特に最初のうちは日数も少ない。今回、付与日数については増加をされなかった。平均の付与日数は十五・七というふうにおっしゃっているけれども、最初に伺った千八百時間のモデル、これは年休は二十日で計算されている。これは小さなことかもしれないけれども、少しずつでも条件を整えていって千八百時間を達成しようとしたら、年休の付与日数は今回の改正案で思い切って引き上げておくべきではないのか、私はそう思いますし、これはたくさんの働いている人たちから求められていることだと思うのです。しかも、国連に協力しようかという意見がいろいろある日本で、この年休に関してはILOの百三十二号条約は批准されておりません。これを批准するためにもその見通しもお聞きしたいのですけれども、年休を充実させていく必要がある。
 そういうもろもろのことから考えて、付与日数をふやす、あるいは労基法で、今回いろいろな改正をされているけれども、休日をふやすということについては触れられていない、一週間に二日休むということをぜひ改正していってほしいと思うのですが、考えを聞かせてください。
#158
○石岡政府委員 今回の改正法案におきましては、年休の付与日数につきましては特に引き上げを図っていないわけでございます。これは御承知のことでございますけれども、前回の基準法改正によりまして、年休の付与日数が六日から十日に引き上げられたところでございます。ただし、中小企業では六日から十日に一挙に引き上げることができませんでしたので、段階的にその引き上げを図ってきております。平成六年の四月から中小企業もようやく年休を十日付与しなければならないという水準に到達するわけでございます。この改正法案は平成六年四月から原則的に施行と考えておりますけれども、中小企業がようやく十日になった途端にさらにその引き上げを図るというのは、審議会でもいろいろ議論があったところでございまして、今回は盛り込んでおりません。
 しかし、最低付与日数の引き上げをさらに図るべきだという意見は審議会で非常に強くございまして、それが審議会の建議になっております。中小企業の最低付与日数が十日に引き上げられた後には、この最低付与日数のさらなる引き上げについて引き続き検討するというのが審議会の建議でございますので、この建議に沿って、今後それについていろいろ検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
 それから年休につきましては、やはりいろいろとりにくい状況がございます。そのために、前の法律改正では年休の計画的付与制度というのもつくらせていただいたわけでございます。これは、あらかじめ年休を取得する時季を労使で協定する、年休を休日化するといってもいい仕組みがもう既にできているわけでございます。この年休の計画的付与制度の活用などをさせていただきながら、我が国における年休の取得が、八日や九日ということではなくて、千八百時間のモデルに挙げましたように二十日に近づけていきたいというふうに考えております。
#159
○岡崎(宏)委員 みんなにとっていいことはできるだけ積極的に取り入れてほしいと思うのです。
 もう一つお尋ねしておきたいと思うのですが、育児休業は、今回「出勤したものとみなす。」というふうになりましたね。労基研の話のときには、介護や病気を理由とする休みの場合も育児休業も横並びで出勤したものとみなしてはどうかというふうな提言がたしかあったと思うのですが、これは改正案の中では触れられていないのですけれども、どうなっていますか。
 ついでに聞いてしまえば、今すぐ仮に無理だということであったとしても、特に介護休業というのは労働省自体がかなり今力を入れて普及を促している、その普及状況によっては介護休業制度というものをつくりたいというふうな動きまであるわけでして、それと並べたときにどうなのかということをお尋ねしたいと思います。
#160
○伊藤(庄)政府委員 年次有給休暇の八割の出勤要件の関係でございますが、確かに、御指摘のとおり、労働基準法研究会の報告では、この八割出勤要件の算定の際に、育児休業、それから介護休業、病気休業、これらについては出勤したものとみなすことを検討すべきという報告でございました。審議会にもその旨報告し議論を願ったわけでございますが、最終的に、まず法律的にその請求の制度が整備されている育児休業について出勤したものとみなしていく、こういう取り扱いをしようということになりまして、法案の方もそういった方向で取りまとめを行った次第でございます。
 したがいまして、特にということで御指摘のございました介護休業、これも現在そのガイドライン等をつくりその普及に努めておるところでございますが、今後その制度化や法制化の論議もあるのかと思います。そういった論議の状況を見ながら、そういった状況によっては扱いについて検討をしていきたいというふうに思っております。
#161
○岡崎(宏)委員 それでは、制度化された時点で介護休業も育児休業と同じようになるのだろう、こういうふうに受けとめたいと思います。
 それで、もう一点なのですが、前回の改正のときに参議院の方で附帯決議として取り上げられた出稼ぎ労働者の人たちにとっての年休をどう保障していくかということがあります。これは、今回年休の取得要件は六カ月ということになって、そこらあたりまでは見通しがついてくるのかなとも思うのですが、この出稼ぎ労働者の人たちにとっての年休の保障をどういうふうにできるのか、教えてほしいと思います。
#162
○石岡政府委員 今回の基準法の改正案におきましては、会社に入りまして六カ月たったときから一年間に年休を十日付与しなければならないという内容を盛り込んでおります。もしこの制度ができますと、六カ月以上働きます出稼ぎ労働者もこの権利を享受することができるのではないか、その限りにおきましては、出稼ぎ労働者の有給休暇の取得にこの規定が役立つのではないかと思っておるところでございます。
 しかしながら、一般的に、出稼ぎ労働者は六カ月働かなくてそれ未満の方も非常に多いわけでございます。そういう方々につきましては、現在、出稼ぎ要綱というものをつくりまして、六カ月未満の場合は三日程度の年休を与えなさい、六カ月以上の場合は六日程度与えなさいとやってきました。この六日程度の方は今度十日になるわけでいいと思いますけれども、三日程度の方は法案が成立いたしますと改めなければならないと思っております。具体的に何日にするかは今後検討させていただきますけれども、新しい内容で、出稼ぎ労働者六カ月未満の者につきましては、行政指導でしかるべき内容の年休を与えるように指導するということをやってまいりたいと思います。
#163
○岡崎(宏)委員 指導の範囲を後で少し時間があればお話ししたいと思いますけれども、指導というのはあくまで指導だ、こういうふうに開き直る使用者がいるということを私たち聞きます。そういうものを結局放置をしておいて、指導できるように、何日間かはこれでいけるようになったというのは極めて弱いものがあります。特に出稼ぎの人たちというのは、そういう意味ではきちんとした組合があるわけでもなく、非常に不安定なところに置かれているわけですから、さらにこれが本当にきちんととれるという法的な根拠というものを持たせるようにぜひ検討いただきたいと思います。
#164
○石岡政府委員 従来も出稼ぎ要綱で、出稼ぎ労働者に年休を与えるように行政指導をやってまいったところでございます。実績を調べますと、私の記憶が正しければ、約二四、五%の企業が年休を与えてくれているということで、それなりの効果は今までもあったと思います。今回、六カ月以上の人たちに十日の年休を与えることが法律的に担保されますので、それとの並びで六カ月未満の者に年休を与えようということで行政指導を強力にやればかなり実効が上がるのじゃないかとも思っております。
 そういうことで、新しい出稼ぎ要綱をつくりまして、それに基づいて強力な指導を加えてまいりたいと思います。
 それから、この出稼ぎ労働者の年休をさらに法律的にもう少し拡大して与えていくという問題につきましては、今後の勉強の対象にさせていただきたいと思います。
#165
○岡崎(宏)委員 ぜひお願いをいたします。
 次に、割り増し賃金の問題で、ちょっとこれは確認も含めたいのですが、午前中からも割り増し賃金の引き上げについては、私たち強い要求をしております。ただ、具体的なものがなかなか明らかにならないもどかしさがあるわけです。ふやそうとする分にはなかなかもどかしいものがある一方で、これは今回、そういう意味では、改正案の中に取り上げられているわけではありませんから大丈夫だというふうに思うのですが、どうも下げようということでは積極的な発言をした人が労基研あたりではあったようだ。
 それは、その割り増し賃金の算定に当たって幾らかの手当あるいは賃金をその計算から外すということが今もございますよ。四つほどありますね。その中に住宅手当を入れてはどうか。だから、住宅手当を割り増し賃金の算入の中から外そうというふうなことが言われたらしいということがありました。心配をいたしますのは、こうしたものがまた国会の審議とは関係なく命令の中で定められていくということになれば、ぽっとみんながわからない間に住宅手当が入れられていたとしたら、私ちょっと計算をしてみたのですが、割り増し賃金率が仮に引き上がったとしても、算定の基準に住宅手当を入れないということにすると実質の割り増し賃金は下がるのじゃないか、そんな思いもいたしましたので、これは入れない、入れないというか従来どおりだというふうに考えていいかどうかをちょっと確認をさせてほしいのです。
#166
○伊藤(庄)政府委員 この割り増し賃金の算定基礎に入れるかどうか、労働省令で除外する場合決めるわけでございますが、この住宅手当につきましては、労働基準法研究会の報告では、実費補償的な性格が強いということの理由で、ほかの除外されているものとの並び等も考えまして除外してはどうか、こういう指摘でございました。
 その後、この住宅手当につきましては、そういう実費弁償的なものを超えてかなり報償的な色彩で払っている企業もあるとかいろいろな御意見も出ております。私どもとして、今回基準法改正の法案取りまとめに当たりましては、そこを突き詰めた議論は正直しておりません。したがいまして、もし今後住宅手当の問題について論議する場合には、さらにもう少し住宅手当の実態についてよく把握した上で御議論を願うことになるのではないかというふうに思っております。
#167
○岡崎(宏)委員 重ねて聞きますが、今回いろいろな審議をする際に当たっては、従来どおりでこの枠を踏み越えないというふうに考えていっていいということですね。
#168
○伊藤(庄)政府委員 住宅手当の実態について、先ほど申し上げたように、いろいろな形態があるということでございますので、その辺について十分な把握をした上でないと、早急な議論はできないであろうというふうに思っております。
#169
○岡崎(宏)委員 わかりました。
 それでもう一つは、これは今直接、率を私あれこれ言いませんけれども、深夜の問題ですね。
 深夜の割り増し率というのは、所定外と同じくくりになっているわけですけれども、私は、本来深夜というのは人間が働いている時間ではない、こういうふうに思っております。
 それは、よく労働力というものはと、この中でも言葉として出てきますけれども、労働力、あなたの労働力はと言われても、私、ポケットから出してこれだと言うわけにいかない。ハンドバッグから出すわけにもいかない。それは、やはりとにかく生きて生活している私自身の体の中にあるというか、この体の一体なもので、そういうものをいかに効率よく使うかということがこの間議論されているにしても、やはり深夜は本来人間は働くべきではない。そうはいっても二十四時間、例えば医療の現場は空にするわけにはいかないからというふうなことで働いている人がいる。それは、その分その人たちにとって非常に手厚いものを保障しなければいけない、そうしないと、人間は次々元気に働いていけないわけですから。それがためにあるわけで、この深夜の割り増しが一般の所定外と同じように位置づけられていくことは問題があるのではないか、私はそう思いますので、これはきょうは指摘にさせていただきたいと思います。ぜひこれはしっかり考えていただきたいと思うのです。
 それで、時間が少なくなったのですが、ちょっと文句を固めて言わせてくださいと申し上げていたわけですが、私は、今回の労基法の改正に当たって一体どんなことが起きているんだろうと随分気になりまして、いろいろな人に尋ねてみました。
 そうすると、まず、例えば法定労働時間にしても、自分がどの枠に入っているかというのもわからない人もたくさんいる。それで、適用猶予あるいは特例、いろいろな形があって、そのどれかがわからない。本人もわからないだけではなくて、現場に行きましたら、組合がきっちりあるところはそれでもまだわかるけれども、労働組合がないようなところに行くとわからない。相談に駆け込んだ労働基準監督署で、私がわからないんだから、相手の労働基準監督署もよくわからないということも出てきている。これはなかなか大変だなというのがまず正直な思いです。
 それで、組合があるところでも、途中でも何度か申し上げましたけれども、確かに違反ではないかもしれない、違反ではないけれども、どうも悪用としか言いようがないような例まで出てくる。あるいは、これも前回ほかの委員の方からの指摘にもありましたけれども、休憩時間が随分長い。拘束時間が例えば二十三時間とか二十四時間とか、JRの職場なんか今そうです。その拘束二十三、二十四時間という中で、休憩時間というのは七時間というふうにある。その間何ら仕事を、例えばお茶をくんでほしいとかあれこれ拘束されることがなければこれは労働時間ではない、しかしそういうことがあれば労働時間だ、こんなふうな答弁もあったけれども、例えば運転手の人が休憩六時間とか七時間とかいうのをはめられて、しかしその間に次の乗務に向けてだれからも文句を言われないで、だれからも何も言われないで、例えば眠らないと体がもたないからといってアルコールを入れて寝るとしたら、これはやはり社会的におかしいということになりますね。お酒を飲むことはできない。あるいは、勝手に遠くに行ってしまうこともできない。そうすると、これはやはりこの長時間の休憩時間というものが置かれて時間が組まれていくということはおかしいのではないか。こうしたことが各地の労働基準監督署に組合によって申し立てられているようなんですけれども、労基署の対応というのも随分差があるように思います。
 聞いてみると、今一々どこがどう言ったというのは申し上げませんけれども、例えば即座に指導という形をなし得る労基署もあれば、いや、では就業規則を何とか変えてもらうように話してみましょう、書きかえをしてもらいましょうというふうなところもあるし、もう一度よく話し合ってみてくださいと言うようなところもあるし、労使交渉の場で当局側が、いや、基準監督署の指導なんてあれはあくまで参考だ、こういうふうに言い切っていて、しかし労基署はそれになかなか手出しもできないというふうなこともあるというふうに聞いています。
 例えば、違う職場で所定外の労働時間について、労働省は目安というふうなものも出されて、所定外をできるだけ少なくしようという指導をされていますね。だけれども、三六協定が結ばれて、出てきた中身を見ると、一年間何と千百時間というふうな協定が結ばれている。これはちゃんと労働基準監督署に届け出られているものですから、私もえっと思いますけれども、目安時間は今一年で三百六十時間でしょう。だけれども、この目安三百六十時間に対しては、法的規制は、そういう意味では罰則になるものではない、あくまで指導だ。一週間が十五、これは掛け算していくと間違いなく三百六十よりは多くなりますよ。一週間という単位だけで見て掛け算していくと、三百六十をはるかに超える。どういう仕組みでお互い結んだかわかりませんけれども、そんなものまで出てきている。罰則がないがために、あくまで目安であり指導であるがために、こういう事例がたくさん出てくるというのは、やはり労働省としては本当に何とかしてもらいたいと私これは切実に思います。
 労使協定にゆだねるとか、それから命令で定めるとかいう部分が今、一つの法律をめぐって随分項目があります。一回数えてみたらよかったなと思うのですけれども、基準法の中で、命令で定めるというふうになっているのは幾つあるのだろうか。それで、だれでもがわかるようにぜひしてもらいたい。命令で定めるあるいは指導するというものは極力減らして、本則の中できっちりわかるようにしてもらいたいということは、これは第一に申し上げておきたいと思います。
 それと、私も何度も何度も申し上げていますけれども、これは大臣にもぜひ考えていただきたいと思うのですけれども、生活大国ということ、これは今だれしも言います。家庭生活との調和だとか社会生活との調和だとかということも言います。言いますけれども、本当に調和させようとしたら、夜中に働くことが当たり前で本当に家庭生活や社会生活が成り立つかどうか。できないです。これは私自身も働いてきて、子供を育ててみて、幾ら一日十時間の枠内だからといったって、小学生の子供が、親が八時、八時半、九時ぐらいにならないと帰ってこないのに何が家庭生活か、何が家庭の団らんかということですから、時間短縮と一言で片づけないで、本来の時間短縮は人間の一日八時間、八時間、八時間のリズムを崩さない、そういう短縮だということを改めて確認をいただきたいと思っております。
 そのことだけを申し上げて、労働大臣の今後への考え方あるいは決意を伺って終わりたいと思います。
#170
○村上国務大臣 私は、常々申しておりますように、時短というのは、今岡崎議員のおっしゃったように、やはり家庭とのコミュニケーションのためにより時間をつくっていく、知的な教養というものもまたつくっていく、そうしたことが大事なことだと思います。そこから、午前中のお話にもありました、五島委員の話にもありました、結局、意識改革というのか意識革命が必要なんですね。せっかく時間ができても、特に生命を守らなければならぬ看護婦さんあたりが、昼のぴちっとした職業を持ちながら、時間があるからといって夜勤専門のパートへまた行く、こういう時間の過ごし方ということのために時短というものはあるんじゃないんだということ。それと、どちらかというと私なんかもそうなんですが、今まで貧乏症でとにかく早く、日の明るいうちに家に帰ると何か損したような、そうした意識がやはりあるんですね。また、有給休暇がとりにくいとか、これは労使ともにそうなんでございますけれども、そういうことの意識改革というものが大切だと思いますので、この法案を通じてそういうことに対する考え方を変えていくということにも役立てていけばいいな、このように思っております。
 いずれにしても、やはり豊かさの実感できる、時間を十分に人間が使い得るような、そうした労働に対する、時間に対する考え方を持つことができれば幸いだ、こう思って、この法案の速やかな成立を願ってそういう世づくりをしていくことができれば、こう思っております。
#171
○岡崎(宏)委員 労働省の皆さんに、特に基準監督署の持つ役割というのは大きいと思いますから、先ほど申し上げたようなことをぜひ頭に入れていただいて頑張っていただきたいと思うのです。
 大臣にせっかくおっしゃっていただいたから……。私、大臣のこの委員会で最初の一般質問でお答えになったこと、しっかり覚えておりますよ、二宮尊徳さん。いろいろ言われたけれども、二宮尊徳という人は、日が暮れて仕事をしなくてもいいように、そういう合理性を持った人だ、まことに時宜にかなった人を私は尊敬していると言って挙げたと思う、こうおっしゃった。私よく覚えております。今大臣もおっしゃったけれども、やはり人間にもう一度合わす。二十四時間、夜中にあいているところもあるけれども、本当にそれでいいかということも含めて見直そうとしている時期だから、そういう意味ではひょっとしたら二宮尊徳さんも喜んだかもしれないのですが、これは労働時間を本当にきちんと一日を単位に短くしていくということをみんなが努力してかなうことだと思いますから、今の大臣の発言をぜひ生かせるようにお願いしたいと思います。
 質問を終わります。
#172
○永井委員長代理 河上覃雄君。
#173
○河上委員 労基法の質問に入ります前に、一点御報告を求めたいと思っております。
 それは、昨日午前中に大臣が佐川急便の社長をお呼びになったという報道が夕刊で出ておりました。内容は新聞報道に若干載っておりますけれども、労基法違反あるいは安衛法違反ということでございまして、改善計画を来月末までに提出せよ、このように大臣の方から異例とも言えるような対応をなさったと報道されておりました。
 そこで、この問題につきまして、調査結果の報告と、あわせまして、労基法、安衛法違反を含めまして今後の労働省としての対応方、この点についてお伺いしておきたいと思います。
#174
○石岡政府委員 平成四年の十一月に佐川急便グループ所属の九十七事業場に対しまして監督指導を実施いたしました。と申しますのも、この佐川急便グループ所属の事業場は労基法三十二条違反などが繰り返し行われているという実態があったからでございます。その監督指導の結果が昨日まとまりました。
 その結果の概要を申し上げますと、監督指導いたしました九十七事業場のうち七十四事業場、これはパーセンテージにいたしますと七六・三%になりますが、七十四事業場におきまして労働基準法、安全衛生法の何らかの法違反が認められたところでございます。それから、この委員会でもたびたび御議論の対象になっておりますけれども、自動車運転者の改善基準、これは労働大臣告示でございますが、これに違反している比率が六四・九%、六十三事業場でございました。
 さらに、条項別に法違反の状況を申しますと、やはり三六協定の範囲を超えて時間外労働をさせたという違反が最も多いわけでございまして、九十七のうち三十五事業場で認められました。次いで、賃金台帳に係る違反が二十八、就業規則を改正したにもかかわらず届け出なかった違反が二十五、健康診断、半年に一回しなければならないのですが、これをやらなかった事業場が十八ということでございます。この違反率七六・三%は、平成三年の場合が九〇・二%の違反率でございましたので一定の改善は行われたと考えておりますものの、五回も監督指導を実施しながらこの七六・三%の違反率は相当に高い違反率だと言わざるを得ないわけでございます。(発言する者あり)
 そこで、極めて異例のことでございますけれども、労働大臣が、昨日佐川急便グループの代表ということで佐川急便の栗和田社長を呼びまして、これは大臣が私の後に御報告されると思いますけれども、徹底的に改善をするよう口頭指示をされたところでございます。私は、その後、基準局長室に栗和田社長を呼びまして、今回の違反は繰り返し行われたものであるから、大臣が注意されたにもかかわらずこういうことがまたあれば非常に問題だということで、法違反の原因を徹底的に分析して、二度とこういうことを繰り返さないような改善計画を五月いっぱいに作成して提出するように指導したところでございます。なまじの内容では受理しないと言いました。今後、実効性のある改善計画を作成させまして、法違反のないように強力な指導を行ってまいりたいと思います。
 大臣がお答えになる前に、事務的な報告をさせていただきました。
#175
○河上委員 今の実態でございますが、私は、これは驚くべき実態だ、こう思うのです。大臣は就任以来積極的に御答弁なされているし、あるいは積極的な行動に私は心から敬意を表しております。こうした事実が再び起きないようにこれは対応していかなくてはならないものだと思います。
 五回も立ち入りをいたして、九〇・二%から七六・三%と、一三・九%しか落ちていないわけですから、ある意味ではなめ切っているのではないか、こんな感じがいたします。これじゃまるで無法じゃありませんか。やはりこんなあり方自体をきちっと戒めるようにしなくてはならないと思っておりますが、これらを含めまして、大臣の御感想、御決意を伺わしていただけますか。
    〔永井委員長代理退席、委員長着席〕
#176
○村上国務大臣 佐川急便グループのこうしたたびたびの監督指導にもかかわりませず、同じ事柄において改善されない、仏の顔も三度ということわざがございますが、その憤りについては、いみじくも河上委員が今御指摘なさったような、また今も反省が足りないと不規則発言がございましたが、全くそういう気持ちで、昨年十一月に実施いたしましたこの監督指導の結果を見まして一度お目にかかりたいな、こう思っておりまして、また、上がってきました結果というものが、今御報告いたしましたように、想像以上の実態ということでございまして、国会の議論も踏まえて昨日社長に大臣室へ来ていただいた。
 新しい経営陣でございまして、そしてまた、社長も非常に若い社長で、一緒についてきた補佐的な実務担当の方々も、実際自分が佐川急便の何輪車ですかね、何トン車か運転して、実務に携わった方々だそうでありまして、最前線で働いている佐川グループの人たちの気持ちは十分わかっている人だと私も思いましたので、とにかく法律を遵守してやっていただきますように強く申し上げたところでございます。そしてまた、細部にわたっては、今基準局長が申しましたように、時間をかけて一つ一つ事細かくいろいろと指導を申し上げ、的確な今後の対応について指摘をした、こういう経過でございます。
#177
○河上委員 この点につきましては、ひとつしっかり取り組んでいただきたいことを重ねて強く要請をしておきたいと思います。
 さて、労基法の関係に移りたいと思いますが、労基法改正は「生活大国五か年計画」に示されました、期間中に一千八百時間を達成、この上から極めて重要な問題である。大枠の議論につきましては、私も本会議で行わせていただきましたので、若干細かくなりますが、幾つかの項目に基づきまして御質問さしていただきたいと思っております。
 まず、猶予措置についてであります。
 週四十時間制への移行は猶予措置と一体不可分の関係にある、こう思っております。改正案は、一定の規模、一定の業種につきまして平成九年の三月三十一日まで週四十時間から四十四時間の範囲で命令で定める時間としといたしまして、猶予措置というものを残された内容になっているわけでございます。
 そこで、猶予措置は本来撤廃すべきであろうと私は思います。一つは、労基法は労働の最低基準を定めた法律である、先ほど基準局長もこうおっしゃっておりました。最低基準を定めているもとにさらに猶予あるいは特例、こうした措置を設けることが果たしていいのか悪いのか、これも問題の一つであります。また、猶予措置というものは、実態的に申し上げると、どうしても使用者側の要請に配慮するようなことが強い。そして労働者側からすれば、規模、業種等によりまして労働条件に格差があること自体、法のもとの平等性にもとる、私はこういう見解を持つわけでございますが、なぜ今回猶予措置を設けられたのか、まずこの点からお伺いしておきたいと思います。
#178
○石岡政府委員 御指摘のように、基準法改正案におきましては週四十時間制への移行に伴う猶予措置を設けることといたしております。確かに、こういう猶予措置につきましては必要最小限のものにとどめるというのが望ましいことである、基本的にはそう思っておりますが、我が国の法定労働時間の実態を見ますと、一挙に週四十時間に最低基準を引き上げた場合、これを果たして履行してくれるかというと、中小企業などを中心としましていろいろなところに問題があるということでございます。したがいまして、今回一定の規模、業種の事業については猶予期間を設けることとしたわけでございます。ただし、この措置は平成九年三月三十一日までということで、平成六年四月から計算いたしますと三年間という短期間の準備的、経過的な措置でございまして、先ほど言いましたように、猶予措置はもう必要最小限にとどめるという点も考慮してこうしたわけでございます。
 それからもう一つ、こうした措置を講じなければ週四十時間労働制を早期に実現することが、先ほど申しましたような我が国の現状からしまして極めて困難ではないか、そういう意味では、こういう措置を設けることが逆に週四十時間制へ早期に移行する一助にもなるのではないかというふうに考えまして猶予措置を設けたわけでございます。
 この猶予措置につきましては、週四十時間という大目標を達成するためのある意味ではやむを得ない措置でございまして、そういう点を先生にぜひ御理解いただきたいと思います。そうすれば、こういう措置は、短期的にはともかく中期的には週四十時間の労働制実現につながるわけでございますから、決して平等原則に反するものではない、そういうふうに考えております。
#179
○河上委員 実態の面からやむを得ない、こういうお話もありました。そして、短い期間の三年間である……。よく考えてみますと、猶予措置というものが設定されましたのは五年前でありますから、五年間はもう既に担保されているわけでございまして、今度三年間、合わせまして八年間。これが短いのか長いのかという議論もおありでしょうけれども、決して短くはないわけでありまして、その間一体どのような努力とどのようなあり方を示したのか、これもやはり重要な問題点の一つであろう、そうおっしゃるのなら私はそう思うわけであります。
 それとは別にいたしまして、年間総実労働時間一千八百時間の達成は、申し上げておりますように中小企業の時短をどう進めるかにあるわけでありまして、その視点から考えますと、中小企業の多くがその対象となる猶予措置というものを九年まで残すということは、新経済五カ年計画の中にあります一千八百時間達成の方針と整合性がないように私は思えるわけですね。九年、そして「生活大国五か年計画」が求められております日時も平成九年度末と同じであるわけでありますから、中小企業の時短をどのように進めるかという視点の中で、双方とも九年度末まで、片や達成する、片や猶予措置を置く、これでは整合性がないように思うわけでございまして、その意味からいたしましても、少なくとも一千八百時間を達成するためには平成九年度以前に猶予措置は撤廃されるべきではないか、このように私は思うのですが、どうでしょうか。
#180
○伊藤(庄)政府委員 今度の御審議をお願いしております改正法案で設けることにしております猶予措置は、経済計画でその計画期間中に大部分の業種において週四十時間労働制を実現する、こういったことを受けまして、中小企業の実情に配慮しながらソフトランディングということで平成九年三月三十一日までという猶予期間を設けることにしているわけでございます。
 もとより、中小企業等を含めましてそういったところが一日でも早く四十時間制へ到達してくれる、これがやはり平成九年段階で非常に円滑な四十時間体制への移行にもつながるわけでございますので、猶予措置の撤廃ということは中小企業のいろいろな実情がある中で大変難しいわけでございますが、一日でも早くできるだけ多くの中小企業などが四十時間体制に努力し、持っていけるように私どもとしても支援体制を活用していく、また、中小企業をめぐる労働時間短縮のための環境整備につきまして関係省庁とも十分協力、連携をとってまいりたいと考えております。
#181
○河上委員 おやりになられるわけでございますが、この猶予事業の範囲を決定する基準、決定の考え方ですね、どのような基準、どのような考え方に基づいて猶予事業という範囲を設定なされるのか、その辺についてお答え願います。
#182
○伊藤(庄)政府委員 この新改正法に基づきます一定の規模、業種につきましての猶予の範囲をどのように決めていくかということでございますが、まず、手順といたしましては、この法案を成立させていただいた段階で、中小企業等を含めて広く法定労働時間、所定労働時間の実態その他につきまして調査を行いたいと思っております。その調査結果に基づきまして、各規模あるいは業種ごとに精査いたしまして、労働時間が実態としてどの辺まで進んでいるか、その辺を十分見きわめながら中央労働基準審議会にもその報告をし、御議論を願った上で猶予を決めていくという手順をとりたいと思っております。
 今まで既に、四十八時間から現段階に来るまでの間、猶予につきましてそれぞれ業種の範囲等を決定して現在に至っているという経過がございます。そういう際には、ある規模、業種でくくりました分野の事業場のうち、これから目指そうとする法定労働時間をどの程度クリアしているかという実態を見て進めてまいっております。その際、過去に四分の三クリアしているかどうかというようなことが議論された経緯もございますので、そういった経緯も今後踏まえることが必要でございましょうが、また実態調査の結果を十分見て、どのような考え方で猶予を決めることになるか、審議会で十分御議論を尽くしていただくつもりでおります。
#183
○河上委員 猶予対象事業におきます一定の規模、一定の業種の具体的な範囲は、今御説明ありましたように、今後実態調査を踏まえまして審議会の答申を得て決定することとする、こうなっております。
 ところで、「生活大国五か年計画」の中には、「計画期間中に大部分の業種において週四十時間労働制を実現する。」このように書いてあるわけでございますが、大部分の業種において実現するということでございますので、かなり狭い範囲に限定されると考えます。時短促進の立場からすればおのずとそうなるのではないかと思いますが、労働省の基本的な考え方をもう一遍お尋ねをしておきたいと思います。
#184
○石岡政府委員 御指摘のように、「生活大国五か年計画」におきましては「計画期間中に大部分の業種において週四十時間労働制を実現する。」と書いてございます。こういう計画のいわば目標も十分念頭に置きまして、また、猶予措置の範囲は、先ほど言いましたように原則的には少ない方が公平なわけですから、そういう観点も念頭に置きながら、今後、審議会の意見も十分聞いて範囲を決めてまいりたいと考えております。
#185
○河上委員 これまでの過去の経緯でございますが、法定労働時間を週四十六時間から四十四時間にするときの猶予事業の範囲は、週四十八時間から四十六時間に移行したときの猶予事業の範囲をそのまま踏襲していますね。しかし、今回は四十四時間から四十時間になるわけでございますので、私は基本的には相当の見直しが必要と考えております。
 そこで、この猶予事業の範囲を限定するためには、果たしてこれまでの業種の区分方式が実態を正しく反映したものであろうかな、こんな疑問が起こってまいります。より実態に即したきめ細かな分類というのが改めて今日的に要請されるのではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
#186
○伊藤(庄)政府委員 これからの新改正法に基づいて猶予の範囲を決めることとなる段階で、やはり業種の実情に即した決め方をしなければいけないという点は御指摘のとおりでございまして、労働基準法八条の業種区分だけで決めていく場合にやはり実情に沿わない面が出てくるのではないか。労働基準法の八条の分類が大くくりであること等から、そういった御意見を関係方面からもお聞きしているところでございます。そういった猶予措置の範囲を決定していただくための、いろいろ参考にする事前の実態調査に当たりましては、その辺を念頭に置いて業種区分等について、労働基準法八条の区分よりもより緻密な形で調査を行うように、関係労使の意向も聞いて今調査の設計を行っているところでございます。
#187
○河上委員 実態調査ですが、いつ実施なさいますか。そして、いつごろまでにまとまりますか。これだけちょっと……。
#188
○伊藤(庄)政府委員 これは昨年の例で申し上げさせていただきたいと思いますが、昨年の実態調査につきましては、昨年の五月と六月で実態調査を行いまして、秋十月に入りましてから集計結果がまとまり、審議会に資料として御報告をした、こういうことになっております。
 今回の場合、この御審議をお願いしております改正法案について成立をお願いし、その後速やかに調査に入りたいというふうに思っておるところでございます。
#189
○河上委員 猶予措置については、猶予期間を短縮して命令で定める労働時間を例えば四十二時間以下とする、こういう考え方はおありでしょうか、おありになりませんか。
#190
○伊藤(庄)政府委員 猶予の水準といたしまして四十四時間よりも短い水準を設定する考えはあるかということかと思いますが、私ども平成六年の四月から一定の業種、規模について始まります猶予につきましては、まず四十四時間という水準からスタートをしていきたい、こういうふうに考えております。その後、猶予期間が三年あるわけでございますが、適宜実態調査を行いつつ、その実態によって労働時間の実情が進んだところ、また、私どもそういった支援措置の活用を通じて進む方向に努力をしてまいるわけでございますが、その成果等も見ながら次のステップを検討していきたいというふうに思っております。
#191
○河上委員 これはちょっと確認いたしますと、年度ごとに段階的な短縮の考え方はなくはない、こう理解してよろしいと思いますが……。
 次に、使用者の皆さんの考えの中で、猶予措置は経過的措置であり、やがてこれは消滅するんだ、特例措置は労働の質の問題でありまして合理的理由がある、こういう御意見があるように伺っております。労働省としては、この特例措置の扱いについてどうお考えになりますか。
#192
○石岡政府委員 労働基準法第四十条の特例措置につきましては、労働時間の実情や業務の実態などから見まして、中央労働基準審議会の建議におきましては、これを今後も基本的に継続してはどうかということとされたところでございます。
 しかし、こればかりではございませんでして、建議の中におきましてはさらにこういうことも述べられております。この特例措置の労働時間の水準については、「週四十時間労働制への移行スケジュールを踏まえ、短縮する方向で引き続き検討することとし、業種の範囲についても最新の実態を踏まえ、検討すること」ということでございます。
 特例措置につきましては、いろいろ議論はございますが、今申しました二つの中央労働基準審議会の建議の方向を踏まえながら今後検討してまいりたいと思います。
#193
○河上委員 時間の関係もございますので次に移りたいと思いますが、割り増し賃金率についてお伺いいたします。
 二五%、これは戦後の経済混乱期に日本経済が軌道に乗るまでの暫定措置であったはずでございまして、しかも、労基法制定時の議論の中には五〇%という意見もありました。国際的に見ても、欧米諸国の多くは五〇%以上でありまして、アジアでさえと申しますと怒られるかもしれませんが、アジアでさえ二五%はフィリピンだけだ。しかし、そのフィリピンも休日労働については三〇%と二五%を超えている、祝日労働は一〇〇%となっている、このような実態の関係にございます。
 ところで、日本では二五%の事業所が八二・一%、そして二五%未満、割り増し賃金の定めがない事業所等々含めますと九二・四%が二五%以下の割り増し率となっているわけでございまして、さらに休日、深夜についても二五%が定着をいたしております。
 そこで、これまで私どもも、時間外については五〇%、そして休日は一〇〇%、欧米並みのレベルに引き上げることを主張してまいりました。日本の割り増し率は極めて低いわけでございますが、割り増し賃金の持つ補償機能あるいは抑制機能にかんがみれば、私は引き上げるのが当然ではないかと考えます。加えて、抑制機能からすれば、命令する使用者が負担と感ずる割り増し率でなければ抑制効果というのは期待できないのではないのか、その意味から少なくとも時間外五〇、休日一〇〇、私はこう考えますがどうか。そして、諮問機関であります労働研究会の報告からも、今回の割り増し率については後退しているように思えるわけでございますが、この点いかがでしょうか。
#194
○石岡政府委員 労働省も諸外国の労働時間法制、なかんずく割り増し賃金率も調査はいたしまして参考にさせていただいているところでございますが、労働省は、基本的には、やはり国際的な労働基準の確立の点からいいましても、割り増し賃金率の引き上げを今後図っていくべきである、そういうふうに考えているところでございます。
 ただ、先生も御指摘をされましたけれども、日本の割り増し賃金率の実態を見ますと、時間外それから休日の割り増し率とも二五%が圧倒的に多いという現状がございます。そういう現状を見ますと、やはり一挙に引き上げるのではなくて、五〇%という一定の政策目標を掲げながら段階的に引き上げていくということが一番いいのではないかというふうに考えまして、今回そういうような内容で法律案を出させていただいたところでございます。
#195
○河上委員 改正案は、二五%から五〇%以下の範囲で命令で定める率以上の率で計算する、このようになっております。本会議の大臣の御答弁でも、基本的見直しは図るべきである、こうおっしゃいました。今後の経済動向あるいは週四十時間制移行スケジュール、さらに労使の取り組み、企業の実態を勘案して段階的に対処をしたい、このような御答弁をいただいたわけでございます。
 割り増し率については、例えば五〇%を上限といたしまして段階的に引き上げる、このことをぜひとも検討していただきたいわけでございますが、ここに一定の期間というものをぴしっと明示し、さらにゴールの地点も明示する、このようなお考えはありますか、ありませんか。
#196
○石岡政府委員 休日労働の割り増し率につきましては、週休二日制、週四十時間制への移行で休日をふやしながら、その休日に労働されるということはおかしなことでございますから、基準法が成立いたしますと、審議会に諮りまして、休日労働の割り増し率の引き上げをぜひ実施してまいりたいというふうに考えています。
 それから、時間外労働につきましては、やはり問題があるところではございますが、我が国の時間法制が週四十時間制へ移行している過程でもございますので、物の考え方といたしましては、週四十時間制が一般的になりました後で引き上げを図っていくべきではないかと考えております。
 具体的にこれら二つの割り増し率をいつまでに五〇%にするかお尋ねでございますけれども、その辺は、今申し上げたようなこと、さらには今後の経済実態、労使の取り組み方あるいは国際的な問題その他いろいろ勘案して引き上げを行ってまいりたいということを現時点で申し上げるほかはございません。
#197
○河上委員 一部に割り増し率を上げると時間外労働がふえて総実労働時間が長くなる、こんな見解があるのでありますが、この見解について労働省はどうお考えになりますか。
#198
○石岡政府委員 確かに、割り増し率の引き上げについては先生御指摘のような議論もたびたび聞くところでございます。したがって、確かにそういう側面はあろうかと思いますが、近年、いろいろ調査をしてみますと、労働者の自由時間の選好は所得の選好を上回っている、そういう結果を見ることが多うございます。やはり日本も経済的にここまで発展してまいりますと、労働者も一応の所得を得ておりますので、長時間労働に拘束されている、そういう実態を直したいという希望の方が強くなってきているのではないかというふうに考えております。
 また、割り増し率を引き上げますと、これは使用者側に全く問題がないわけではございません。時間外労働のコストがアップするわけでございます。したがいまして、使用者側からこの時間外労働の割り増し率の引き上げについては物すごい反対も今まで行われてきたところでございますし、今後もそういう反対の動きが大いにあろうかと思っております。
 したがいまして、割り増し賃金率が引き上げられますと、それが直ちに逆に時間外労働の増加につながるということではないのではないか、そういうふうに考えております。
#199
○河上委員 時間外労働並びに休日労働制、これは法定労働時間制と車の両輪の関係にあると思います。しかし、どちらかといいますと、日本の法制度では、法定労働時間制でぎゅっと締めながら時間外や休日労働は緩めているのではないのか、アンバランスであるという指摘もあるわけでございます。その視点からすれば、時間外労働と休日労働の上限規制を何らかの形でするべきではないか、もちろん法的根拠を与えるということも含めながら。私はそう考えるわけですが、この点はいかがでしょうか。
#200
○石岡政府委員 我が国の時間外労働、休日労働の実態を見ますと、景気の変動などにかかわりなく、恒常的にこれらが行われているという側面がございます。これらはゆとり創造のためにも決して望ましいものではなくて、やはりこういう恒常的な時間外・休日労働は削減していく必要があるというふうに思っているところでございます。
 その削減の方法なんでございますが、確かに上限規制がとられれば有効な面もあろうかと思います。したがいまして、時間外労働につきましては、目安時間制度をつくりまして、例えば年間の時間外労働の水準を三百六十時間以下に協定で抑えるようにするという制度も設けているわけでございます。
 しかし、こういう時間外・休日労働の日数の上限規制を法律で決める、あるいは現在の目安指針に法的な根拠を持たせるということにつきましては、我が国の労働慣行、特に例えば時間外労働についていいますと、時間外労働は雇用を維持するための機能も持っておるわけでございますから、それを法律で規制した場合にはその機能が失われるおそれもございますので、これらの時間の法的な上限規制につきましては、確かに先生御指摘の趣旨はよくわかりますけれども、慎重に検討しなければならない事項ではないかと考えております。
#201
○河上委員 本年一月一日から、残業の目安時間が四百五十時間から三百六十時間となりました。適正化指針の見直しによるわけでございますが、その際あわせて、施行後二年を経過した段階で必要な検討を行う、こうされております。そうしますと、平成七年の末に再び見直しを行うこととなるわけでございますが、今回の労基法改正に基づいて週四十時間制を前提とした場合、時間外労働の上限は労働省としてはどの程度が適切とお考えなのか、この点お答えできればお答えしてください。
#202
○伊藤(庄)政府委員 今お話がございました時間外労働の上限の指針につきましては、二年後見直しを行うということにしておるわけでございますが、その段階の経済情勢、これが一つ、この影響をどう見るかというようなことがございます。
 また、お話がございました週四十時間制、現在御審議をお願いしておりますこの法案を成立させていただきましたならば、その段階では週四十時間制へ向かってのレールがしかれておるわけでございまして、中小企業等を含めましてこの週四十時間制をこなすために、それに向かって努力が行われておる段階になるかと思います。そういうことに向けて生産性の向上等を図りながら時間短縮が進んでいきますならば、この時間外労働の動向等も現在とはまた違ったいい影響が出てくる可能性もございます。
 こういう週四十時間制のレールがしかれることがそういった時間外労働等にどう影響を与えていくか、その点について十分見きわめて新しい上限の指針を設定していきたいというふうに思っております。
#203
○河上委員 続いて、変形労働制について何点か質問いたします。
 現行の三カ月変形労働制が導入されて五年間たちます。しかし、普及率は依然として低いわけでございますが、低い理由は何とお考えですか。
#204
○伊藤(庄)政府委員 現行の三カ月の変形制は、このところ採用する事業所が伸びているとはいえまだ八百件ちょっとでございまして、普及率は確かに低い状況でございます。さまざまな業界から、業務の繁閑に応じてある程度弾力的な対応が可能であれば労働時間短縮は進められる、こういう声がございます。その際、三カ月という期間内で平均をする場合に、やはり業務量の繁閑の波動の波に三カ月という期間が合致せず、したがって、この変形制を使いながら時短を進めるということがなかなか難しい、そういう要望が出てきております。
 一方、また労働基準法研究会の報告にございますように、年単位で休日に関する労働協約を結び、あるいは年単位の休日管理を行って休日カレンダー等を年間で設定しているところが多いことから、三カ月よりも最長一年の幅で変形労働時間制を認めることが休日確保あるいはそれを通じての時間短縮につながっていくのではないか、こういう指摘もございます。
 その辺が三カ月変形制について普及率がまだもう少し伸びない理由にもなっているのかなというふうに受けとめております。
#205
○河上委員 この変形制は年間休日の増加を図ることを目的にして一年間に拡大する、こういうことでございました。しかし、よく考えてみますと、これを通常の勤務体制と組み合わせることによりまして、私はかなり使用者側にさまざまな利点が生まれるのではないか、ある意味ではなかなかいい知恵だな、こう思うのですが、反対に、その乱用を防ぐためにはどうしても厳格な歯どめが必要であろう。
 そこで、先ほど議論も出ておりましたが、私は、一日、一週、月、年と労働時間をいろいろな仕切り方をしておりますが、最も大切なのは一日だと思うのですね。これがまさに人間の生活のリズムでありますので、そこに力点を置きながら考えますと、この上限は変形制を採用した場合一体どの程度が一番いいのか。これはやはり真剣に考えなくてはならないと思うのです。
 一日、そして一週、この上限時間並びに連続労働日数の上限、これはどの程度がよい、また、どの程度に考えているのか、その基本的な見解を求めておきたいと思います。
#206
○石岡政府委員 一年単位の変形制は時短にとって効果のある制度と考えておりますけれども、御指摘のように、この制度が悪用されるようではいけないと思っております。悪用されないために幾つかの歯どめが制度化される必要があると考えております。
 一つは、これを導入する場合には労使が協定する、そしてそれを監督署に届け出るということにしております。それから、労使協定においてあらかじめ年間のいつといつが休日なのか、これをはっきり事前に設定するということも必要といたしているところでございます。さらには、一日あるいは一週の労働時間の上限を設けるということもしているところでございます。これらによりまして、これらの厳格な要件を付しておりますので、悪用の問題というのは生じるおそれはないのじゃないかと考えております。
 ところで、この一日などの労働時間の上限の設定につきましては、中央労働基準審議会で建議が出ております。現行の三カ月単位の変形制のものよりも縮小の方向で見直すということになっております。したがいまして、今ここで、審議会にも諮っておりませんので、例えば一日十時間を何時間にするというふうには申し上げられませんが、一日十時間、一週五十二時間を縮小する方向でございますということは申し上げられると思います。また、一週に一日の休日をとるということもその条件にしてまいりたいと考えております。
#207
○河上委員 時間があと七分程度になってしまいまして、年休や中小企業の時短について等々、御質問をたくさん用意したのですが、余り時間がございません。
 そこで、まず年次有給休暇一点だけお伺いしておきたいと思いますが、これは労働省としての理解ということでお示しいただきたい。
 年休の取得率は十数年間五〇%台で推移しております。そして先ほど議論もちょっとありました低いというお話でございましたが、年休の繰越分を加算いたしますと実態はさらに低くなるのじゃないのか、私はこう思っております。
 この取得率が低いという理由をどう分析なさっているのか、もう一遍お尋ねしておきたいと思います。
#208
○伊藤(庄)政府委員 私ども労働時間短縮に関する意識調査を実施しておりまして、それによりますと、やはり年次有給休暇を取得できない理由として挙げておられますのが、周囲に迷惑がかかる、あるいは病気等有事への備えがある、あるいは仕事がたまり、後でかえって忙しくなってしまうので休むのは嫌だ、仕事が多い、人手不足で仕事が多いのだ、こういうことを挙げる勤労者が多くいます。
 私どもこういった意識調査を見ましてその分析をいたしますと、やはり年次有給休暇の取得率が低い原因の多くが、企業内で年次有給休暇をとりやすくしていくための体制とか仕組みとかそういった雰囲気づくりが十分行われてない、こういったところに起因するのではないかというふうに考えております。
#209
○河上委員 今迷惑がかかる、病気、有事のためとおっしゃいました。とりやすい環境が徹底できてない。迷惑がかかるということは、これは労働者間の意識の問題でございますので、時短等の推進に当たりましてさらに啓発していかなくてはならない国民全体の課題だとも思います。病気、有事、これらについては病気休暇等の新しい考え方も導入しなければこれは解決しないと思いますし、とりやすい環境、これも一生懸命図らなければできないものでありまして、問題点はわかっていながら、これを具体的にどうやって措置していくか。この具体性にいつも欠けてしまうわけでございまして、これはひとつしっかりと、そうした明快な分析が出ておるわけでありますので、一つ一つ対応方をきちっといたしていただきたい、これを強く要請をしておきたいと思います。
 それからもう一点、中小企業の問題でございますが、今回の支援策の中に支給要件の項目がございます。支給要件は、「中小企業事業主であること。」さらに「猶予期間の満了を待たずに週所定労働時間を四十四時間から四十時間以下に短縮する計画を有する事業主であって、現に就業規則等を変更して週所定労働時間を二時間以上短縮した事業主であること。」これが二番目の要件。三つ目が「その他」、こうなっております。
 この三つが支給要件になっているわけですが、まとめて伺います。「四十四時間から四十時間以下に短縮する計画を有する事業主」とありますけれども、これはどこで認定するのでしょうか。
 次に、「週所定労働時間を二時間以上短縮した事業主」こうありますが、二時間の根拠は何でしょうか。一時間ではいけないんでしょうか。これが二点目。
 三点目、この支給要件を全体的に見た感想でありますが、時短に努力をする中小企業が対象と思われます。意欲のない企業には与えないのではないのかというニュアンスもうかがえなくはないわけでございますが、御案内のように、中小企業は、規模別に見た場合極めて厳しい要因も多々ございます。意欲は十分あり、しかし、親企業との受発注システムの問題等でなかなか進まない要因等も現実に存在しているわけでございまして、これはみずからの企業努力では解決でき得ない問題になっているわけでありまして、下請振興基準等徹底して今努力をしている、こう通産省はおっしゃっておりますが、その実はなかなか上がっておりません。したがって、小規模における中小企業においては、ある意味ではみずからの意思と全くかかわりなく、外的要因によって阻害される場合が多い、こういう実態にあるわけでございまして、こうした側面を考え合わせれば、支給要件をさらに緩和、拡大して、万般にわたるようなあり方、これを示すことが必要ではないのか、こう思います。
 さらに、「その他」とありますが、「その他」とは何でしょうか。この点だけまとめてお伺いします。
#210
○伊藤(庄)政府委員 まず、今回新たに実施することとしております労働時間の短縮を進めた事業主、中小事業主に対します特別奨励金でございます。
 それで、それについての最初のお尋ねが、四十四時間から四十時間に短縮する目標があること、それで現実に四十四時間から二時間短縮したこと、この二点で、最初の目標をどこが認定するのか、こういうことでございますが、これは現在御審議をお願いしている法案の中で、時短支援センター、これを新たに設置することにいたしております。これは、全国労働基準協会連合会を指定して時短支援センターとして業務を行わせる予定にしておりますが、ここが既に労働時間短縮のためのノウハウ等を蓄え、いろいろな時短アドバイザーその他集団指導等のための業務に取り組んできている経緯がございます。そういった団体に、個々の助成金の支給に当たっての四十四時間から四十時間への短縮目標を有すること、また、現実に二時間短縮して就業規則を改正した事実等の認定を行わせまして、この時短支援センターを通じて助成金を支給していく仕組みにしていきたい、こういうふうに考えているところでございます。
 それから、やはりこの特別奨励金に関連いたしまして、要件が現実に週所定労働時間を二時間以上短縮した者というふうにしているけれども、一時間ではだめなのかという御指摘でございますが、現在、所定労働時間の短縮、最近の動向を見てまいりますと、休日増という形で時間短縮を進めるケースが非常に多くなっております。したがいまして、月一日の休日増を図りますと、今まで何らかの週休二日制を導入したりする場合こういう形が出てまいるわけでございますが、一週当たりにすれば大体二時間に相当するということで、その辺が支給要件としてぜひクリアしていただきたい要件というふうに考えて設定したものでございます。
 それから、そういった要件のほかに、「その他」という要件は何かということでございますが、今度の特別奨励金につきましては、中小事業主が生産性を上げながら労働時間短縮を進めていっていただく、これを後押ししたいというものでございまして、省力化に向けての投資を、設備投資等を行っていただく、それを要件にしておるところでございます。
 それから、もう一点お尋ねのございました、中小企業の場合こういった助成金があっても、また意欲があっても、なかなか進められないところがあるのではないかという御指摘でございます。
 確かに中小企業につきましては、その事業主の意欲のほかに、親企業あるいは発注者との関係等におきます取引慣行等の改善が進んでいかないと労働時間短縮を進めるための環境が整わないといったような問題を抱えている中小事業主が多いことも事実でございます。この点につきましては、私ども、そういった取引慣行の改善に向けまして、通産省を初め関係省庁とも十分連携をとりながら、政府全体としての取り組みの中で少しでも事態の改善が進むように努力してまいりたいというふうに思っております。
 それとの関係で、この特別奨励金の支給要件をさらに拡大してはどうかというお尋ねがございました。
 この新しく設けられました特別奨励金は、時短に関連しての助成金としてはまさに初めてのものでございまして、そういう意味では画期的な制度ではないかというふうに考えておるわけでございますが、当面この法案を成立させていただいた段階では、それの周知と活用促進を進めて、それをさらに実効あるものにしていくために、いろいろなどんな要望が出てくるかについては常に留意しながら、その辺の把握に努めて、今後の課題として検討はしていきたいというふうに思っております。
#211
○河上委員 大分残りましたのは、別の機会でまた質問をさせていただきたいと思います。
 いずれにしても、大臣、人間愛あふれる労働行政、人間愛あふれる労働基準法の形を目指して頑張られることを心から期待を申し上げます。
 終わります。ありがとうございました。
#212
○岡田委員長 金子満広君。
#213
○金子(満)委員 前回に引き続いて、労基法問題で最大の問題である変形労働の問題についてただしていきたいと思います。
 ここへ来て「変形労働時間制について」という三カ月と一年の比較がありますこれを見ました。ひょっと見ると、まあ大したことないじゃないか、三カ月についての労働時間の限度、今の一日十時間、一週五十二時間を、今度は一年になると縮小すると書いてあるからいいんじゃないかみたいに思う方もあるかもしれませんけれども、いろいろのところを通じて法律改正になるわけですが、この一年の変形労働制というのは、労働者側の委員は要求しましたかどうですか、つくる過程で。
#214
○伊藤(庄)政府委員 この一年の変形制につきましては、この考え方が最初盛られましたそういう報告等の場合は、まず最初、労働基準法研究会がこの基準法……(金子(満)委員「時間が私は短いから簡単に答えてください」と呼ぶ)労働基準法研究会の報告の中で、実情に合わせていくためには、年間単位での休日管理、そして年間単位の変形制がいいという御指摘がございました。それを受けて、中央労働基準審議会でいろいろ御議論をお願いしました。
 それで、最終的に建議をいただいてこの法案をまとめたわけでございますが、その段階では、この年間単位での休日管理を行うことにより休日の増加につながっていくのであれば、この制度の採用については全会一致で建議をいただいたところでございます。
#215
○金子(満)委員 私は、こういう問題は最大の問題ですから、審議の経過とか、使用者側があるいは労働者側がまた公益側の委員がどういうことを言ったかというのは別に秘密でもないと思うので、明らかにしておくことは非常に大事だと思うのですね。ですから、中基審でこうなったといえば、ああそうですかと、今引き下がるような状態じゃないと思うのですよ。
 この十九日に大阪で地方公聴会があって、私は行きました。使用者側の方は非常に率直で明快ですよ。ごちゃごちゃ遠回しのようなことを言わないで、何と言ったかというと、関西経営者協会の豊田専務理事は、一年間は非常にいいことだと言うわけです。いろいろの規制、枠をつくらないでくれ、メリットが少なくなる、堂々たるものですよ。非常に正直で、こういうのは確かに企業の論理なんです。社会的存在であっても、社会的に責任がどうかというそこが問われるのだけれども、企業の論理むき出しで、枠までつくるなと言うわけだ。メリットがということになると、前回も私は聞いたわけだけれども、年間労働者が受け取っている残業代の総額は約十兆だ。これは関西でも私聞きました。その中の八割が大体恒常的な残業で周期があるわけです。これは三カ月では波にならないのです。一年だから波になるのです。そこのところに変形労働を適用するんだから、企業の側は残業代の節約になることははっきりしているのです。労働者の側になったら手取りの激減になることもはっきりしているのです。だから私は企業の論理だと言うのだけれども。
 そこで、労働省の担当の方に伺いたいわけですけれども、変形労働が一年の期間で導入されると労働者の年収がここで激減するだろう、私はそういう推測をするのですが、その点については何か考えていることがありますか。
#216
○伊藤(庄)政府委員 一年の変形労働時間制を採用するに当たりまして、三カ月で設けられている一日十時間あるいは五十二時間というのを短縮いたします。そういうことになりますと、先生御指摘のように、一日について例えば時間外労働がこれによってそんなにふやせたり消せるほど長時間にわたって幅がある、こういう形の制度にはまずなりにくいのではなかろうか。また、この制度を導入する前提として、週休二日制に相当する週四十時間制というものを年間単位では実現していかなくちゃいかぬ、そういったことから見ますと、今四十四時間なりあるいは四十六時間でやっているところが四十時間制に行って、そのためにこの一年の変形労働時間制を使うわけでございますから、むしろ先生御指摘のような形で残業時間を消すために使うというよりは、新たに年間単位で見れば完全週休二日制に等しいような週休日が設定されることを期待しておるわけでございまして、御指摘のような所得の激減につながるような形というのは私ども想定はいたしておりません。
#217
○金子(満)委員 そこが最大の問題だと思うのですね。労働省も研究してほしいと思いますけれども、外国の変形労働時間をもうちょっと深く見ていただきたいと思うんです。変形労働を三カ月がだめで一年を導入するということは、それなりに企業の側、使用者の側ではメリットがあるんですよ。どこにメリットがあるか。だれが考えても残業代が減るのです。だから、それを、今言われるように年間収入が減ると思わないと言うのは、これはちょっと見当違いだ。これは厳しく指摘をしておきます。やがて答えは全部わかるわけですからね。
 そこで、さらにもう一歩突っ込んで、具体的に女性の場合、女子労働者の場合ですけれども、既に今変形一カ月を採用しているのがもうかなりあるわけです。金融機関、特に銀行の場合にあるわけですけれども、週休二日制を実施すると同時に一カ月変形を取り入れて、平日の所定時間を変えたんですね。二日休むために、それまでは例えば一日七時間二十分であったのを二十分プラスして平日をふやす、そして週休二日をやっていくということがあるわけです。二十分ふやすことによってどういうことが起こるかというと、育児や家事に大きな影響が出てくる。保育所の問題がすぐ出るわけです。
 いろいろあるのですけれども、そういう点で、基準法施行規則の十二条の六で育児とか老人の介護という問題については特別配慮するということが八七年の法改正で入ったわけですね。だけれども、これがなかなか実行されないのですよ。変形をとっちゃったら実行されないというものがあるので、これを徹底するという点で何か特別の指導とか考えていますか。これは一年になったらもっとひどくなるのですよ。
#218
○伊藤(庄)政府委員 六十三年度から三カ月の変形制が始まりました際に、育児あるいは介護、その他事情を抱えている方々に対して、この変形制の適用に当たっては所要の配慮をしなくちゃいかぬという規定を労働省令上も設けて制度が始まったわけでございますが、今回一年の変形労働時間制を導入するに当たりましてもこれを実施していく、この配慮義務については当てはめていきたいというふうに考えております。
 この一年の変形制は、とりわけ家庭責任を果たすこととの関係で問題になります各日の労働時間の設定あるいは年間単位での休日の設定、特に休日につきましては年の初めにやっていただく。それから、各労働日の労働時間につきましても、三カ月ごとに従業員の代表とのそういう同意も得て決めていっていただく、そういう仕組みをとっておりますので、一年変形制の導入に当たりましては、それにも適用するために、この労働省令について適用の枠を広げ、そういった新しい制度の導入に際して周知徹底を進める際にはこの配慮義務についても十分PRを行い、事業主の理解を深めた上でこの制度の導入をしていく、こういうことにしていきたいと思っております。
#219
○金子(満)委員 変形一カ月の適用で、週休二日ですから確かに一日休みはふえたわけです。ふえたことによって生活のリズムが狂っちゃうのです。これは使用者側の便宜にはなるのです。休日の方だけ言うと、ふえたじゃないかというのは確かにそうですよ。リズムの方は狂いました。こういう関係です。一カ月でこれですから一年になったら相当出ると思うのです。これは今言われるとおりに配慮しなきゃならぬというのは法律にあるわけですから、今度は配慮の内容というのは相当徹底させなかったら、一年になったら女子労働者はパートにかわってくるのがかなり出るだろうと私は思うのです。ここのところもぜひ今後の問題として指摘をしておきたいと思うのです。
 それからもう一つは、今、女性の場合でもそうですし、若い労働者、男女含めて例えば夜の英会話に通うとかパソコンをやるとか、そういうのを一生懸命身につけようとして努力しているわけです。それからお茶、生け花だってやりますよ。これも変形のところに当てはまっちゃうとなかなかできなくなるのです。そういうような点でも特別の配慮をしないと、せっかくの希望や青春時代に何やろうなんて思ったってぐずぐずと崩れちゃうのですから、こういう点も変形一年になったら大変なことになるということも指摘しておきたいと私は思いますが、そういう英会話、パソコンなんかを習得する労働者に対してこれはどんな配慮ができるのですかね。労使間でやれということで終わりですか。
#220
○伊藤(庄)政府委員 現在の三カ月の変形制、まだ八百件ほどの利用状況でございます。三カ月の変形制の場合と比べましても、一年間の業務の繁閑を利用してこの変形労働時間制を採用していくわけでございますが、何といいますか、ならし方が非常に幅の広い形でならしていける、そう急激なまた一時期に集中するというよりは、長い単位で休日等をふやしながら労働時間の調整をしていく、こういうことになるのが一つございます。
 それから、再三繰り返していますように、一日、一週についての労働時間は三カ月の場合よりも縮小する、こういうことにいたしております。したがいまして、一日の変動幅あるいは一週間の変動幅というのは、現行の三カ月制を採用された場合に比べても小さいものになるわけでございまして、むしろ先生御指摘の夜どこかへ勉強に行くあるいはいろいろな授業へ出かけるという方にとっては、一日や一週の限度時間が短縮されることがプラスにつながってくるのではなかろうかというふうに思っています。
#221
○金子(満)委員 それは一つの解釈ですけれども、三カ月の変形を実際に導入している企業は少ないわけでしょう。使いようがないのですよ、三カ月では。確かに、英会話、パソコンに行きますよ。今度一年になったら適用されちゃうのだから、確かに上限は決めても大きな問題が起こる、このことももうすぐ起こることですから指摘しておきたいと思います。
 それから、次は、時間外労働の問題です。上限を設けるという問題ですね。
 これはもう他の委員からも随分指摘をされているところですが、結局残業の上限を設けないこと、それがどこへつながっていくかというと、私は過労死だと思うのですよ。これはもう諸外国からも指摘をされているとおりなのですね。
 そこで、ひとつ見解を伺っておきたいのですが、四月六日の衆議院の本会議で、うちの小沢議員の質問に対して宮澤総理が、「時間外労働について、その時間の上限を法律上設定するということは、我が国の労働慣行の実情に沿わないと思います。」これは、思うんだから、感じで幾らでも弾力的ということはあると思うので、違った思いをしても構わないと思いますけれども、やはり我が国の労働慣行に合わないというのは一体どうだろう、この問題ですね。私は、労働慣行に合わないのではなくて、企業の考え方に合わないというのが正確だと思うのですよ。だって、上限を決めようというのは、ほとんどの労働者そして国民の多数が望んでいるのですから。
 そこで、国際的にも上限を決める、そして決めているということは常識なのですね。よく引き合いに出されるのですけれども、ドイツは一日二時間、年三十日間、合計六十時間となっているわけですね。確かにドイツでは上限を相当厳しく決めているんだが、日本では労働慣行に合わないという理由で今まで決めておらなかったのかどうなのか。ドイツとどこが違うのだと思いますか。
#222
○伊藤(庄)政府委員 ドイツとの違いでございますが、残業をめぐる統計等の違いは、確かにその水準について歴然としたものがあるわけでございますが、一つは、日本の場合、時間外労働が終身雇用慣行のもとで景気の変動等に当たっても雇用を維持していくための雇用調整の機能を果たしている。そういうことから、やはりある程度時間外労働というものがかなり労使の間で弾力的な対応が図られてきた経緯があるということが、その水準の違いの一つであろうというふうに思っております。
 それから、ドイツと日本のそういう産業活動の体質の違いもあろうかと思います。ドイツの自動車の生産等を見ましても、ドイツの場合には、注文者が工場までとりに来る、また二、三カ月待つ、需要に応じてそう簡単に生産をふやしたりなんかしていかない、そういう体質の中でやっていく、そういうことがいろいろな労働協約の締結を可能にしていることにつながっていると思います。
 そういう企業行動のいろいろな考え方の違いというようなものがこういった残業時間についての水準の違いにもあらわれてきているのではないかというように思っております。
#223
○金子(満)委員 そういう産業構造の違いということを今一つ言われましたが、これはドイツの場合ですけれども、今度はフランスとかスウェーデンとかトルコなどを見ても、みんな上限が決まっているのですね。フランスは、一番長くても一日十時間を超えてはならぬ、週四十八時間を超えてはならない、年間百三十時間。スウェーデンは、月五十時間を超えてはならない、年間二百時間を超えてはなりません。トルコは、一日三時間、年間九十時間を超えてはならない。みんなあるわけです。ヨーロッパの方はみんな産業構造とか仕掛けが違って日本と合わないんだ、そうじゃなくて、合わないのは、日本の経営者の考え方が合わないのですよ。
 残業の割り増し率も同じだと私は思うのです。さっきから他の委員も言いますけれども、割り増しが世界で一番低いのは日本です。経済大国で割り増しが一番低いなどというのはとんでもない話だと思うのですね。
 こういう点で、これはILO条約のいろいろなことにも関係しますけれども、ここは大臣、国際的な貢献を言うんだったら、日本も労働条件でこのように国際貢献しますというのを念頭に置いて、本当に思い切って大きく改善をしていくべきだと思うのですが、その心構え、どうですか。
#224
○村上国務大臣 眠気が一遍で覚めるような質問をいただいたわけでありますが、先ほど政府委員がお答えいたしましたように、また総理が本会議場でお答えいたしましたように、日本的雇用慣行のもとで景気変動に対する雇用調整機能を有している面もあり、法律に基づき一律に上限を規制することは困難な面が多いのではないのかなとしか、やはり私としてもお答えできないんじゃないだろうか、こう思っております。
#225
○金子(満)委員 思うんだから、もっと元気に、やりたいというぐらいのことを言わなかったら、外国へ行って、ああ、労働大臣にしては全くみみっちいことやっているなと、国際的に、僕らも行くけれども、笑われちゃうのですよ。えっとびっくりするのですよ。だから、こういう点は大胆に変えていくという姿勢を出していかなきゃならぬと私は思うのですね。
 そのことは割り増し率についてもやはりそうなのですね。これは五〇までの間で命令でやります、ああそうですか、では四九になるのですか五〇になりますかと言ったって、大体なりっこないのですよ、今の姿勢で、空気で。こういういい改正ですと気分を持たせておいて、看板をちょっと塗りかえたような格好がありますよ。それはだれが見たってそう思う。経営者だってそう思っているんだから。
 そういう点で、例えば休日の問題は確かに上がると思うのです、幾らか。では、平日の二五%といったら、中基審は当面上げないのでしょう。当面といったら幾年たったって――法律によっては当面が三年も五年も続いている当面もあるのですから。
 こういう点なんかも考えて、これはもう他の委員も言っていますから、とにかく五〇%を一〇〇%にしろというのが労働者の要求なんだが、やはりここで最大の問題は、時間外の上限の問題と割り増し率の問題は日本の問題だけではないということなんです。
 それで、日本の労働慣行というのは、総理の言葉もありますけれども、あの輸出で輸出で、貿易摩擦でというのはどこから来るのですか。自動車、電機を見ればすぐわかりますよ。コストを下げているのでしょう。どこで下がっているのですか。残業代で下げているんじゃないですか。そして、残業時間を多くしてやっているんじゃないですか。これは別な言葉で言いますと、長時間過密労働、その上、低賃金ということになると思うのです。これで過当競争をやっていくのですね。ですから、さっき自動車の話が出ましたけれども、例えばフランス、イギリスの自動車産業は、労働組合だけではなくて使用者側からも、日本の労使関係を持ち込まないでくれ、そういうひどい指摘があるのですね。時間短縮してくれという要求が向こう側から来るのは当たり前だと思うのですよ。
 ですから、こういうように残業上限も決めない、そうして割り増し率はなるべく低いところで我慢せい……、ありがとうございますと言うのは、これは使用者側ですね、労働者は結構ですなんて言えないですから。こういう点も今この機会に改善しないとならないと私は思うのですね。そういう点をここのところでもう一度考え直してもらいたいと思うのです。
 貿易摩擦、そして輸出輸出であおり立てた結果の矛盾がこういうところにもあるのだ。ですから、そういう点で上限は決めないということを労働大臣は言えますか。世界に向かって、日本では労使関係からいって、慣行からいって上限は決めません、これは労働大臣の確たる方針ですということを。これは外国の人もみんな聞きますからね。大変なことだ。
 私は、労働基準法の改正は、この前も意見を出しましたけれども、日本の労使関係だけでなくて、日本の国民全体に関係するし、国際的にも注目をされているものなのですよ。その意識が政府当局で非常に弱いと私は思うのです。総理大臣があんなことを演説したら大変なことですよ。思うと言うんだから、思っただけです、そう断定はしてませんと言っても、これでは通らないので、これは労働省の担当官でなくて、大臣、国際的にも注目をされている問題ですから、ひとつ腹の底を割って話を聞きたいと私は思うのです。
#226
○村上国務大臣 腹を割ってと、こういうことですが、時間外労働についての労使協定について、その上限を年間三百六十時間以下とすることなどを内容とする目安時間の指針を告示し、これに基づき指導を行っており、相当な効果を上げている、このように考えております。
#227
○金子(満)委員 なかなかいい答えが出ないのだが、それをやっても千八百時間にはならないですよ。それをうたうだけなんだな。
 そういう点で、千八百時間にするためにはパートの労働者をうんとつくっておいて平均すればそれはなりますよ。だけれども、千八百時間というのは個々の労働者にとって千八百時間であって、何かうんと短時間の労働者があるから全部計算して数で割ったら低くなりました、不況で残業が少なくなりましたから労働時間は短縮されました、こういう何か変な流れに任せるのではなくて、こういうふうにすればなると、計算は出ているのですから……。
 ただ、私、大阪の公聴会でも言ったのですけれども、できないのは、一番悪い癖は、中小企業に責任をなすりつけるのですよ。まるで中小企業があるから時短ができないような、休日がふえないような言い方、そういうのは本末転倒で、だから中小企業に対するいろいろな援助をしなければならぬ。これは大臣もよく言われることですから、こういうのを踏み込まないと、言葉があって内容がないのですね。よく昔、八紘一宇という言葉があった。内容はと言ったら何だかだれもわからないのです。ですから、言葉と内容が一致しなければならぬわけです。
 そこで、さらにもう一つ長時間労働の問題です。
 八〇年のときに初めて政府が二千時間と数字を挙げた。これはこの前も申し上げました。これは八五年目標でできなかったわけです。だから、八五年でまた二千時間を出したわけですね。それで途中で、八八年で千八百時間を出してしまったわけです。ところが、過労死が一番多いのはその時期なんです。
 これは「過労死・残された50人の妻たちの手記」というので、「日本は幸福(しあわせ)か」という単行本があるのです。これは五十人の奥さんなんかが書いた自分の子供や自分の夫がこういう長時間の過密労働で死んでいったのですという、そういうのを見ますと、二千時間二千時間というので一生懸命やっていた時期、例えば一九八七年といえば二回目の二千時間目標ですよ。そして千八百時間を持ち出す前年なんですよね。十一月に亡くなった人ですが、これは製本会社の断裁工ですけれども、五十四歳。その月からさかのぼって一年間の年間労働時間が何と二千八百五十八時間です。これでは死ぬですよ。これはひどい。とにかく一日十四時間連続勤務というのですね。こういう中でだんだんだんだんおかしくなるのですけれども、亡くなっている。あるいはまた、これは茨城の新聞社勤務の夫です。この人も、とにかく残業の時間が月に百七十時間から百九十時間。これは所定労働時間のあれにしたらどのくらいになるか、えらい数字になると思うのですね。こういうようなのがいっぱいあるわけですね。
 上限の問題はさっき大臣が言われましたけれども、話を聞くと情けなくなるね。これで経済大国ですか、これで日本の日産、トヨタですか、この実態が出たらひどいことだと思いますよ。
 だから、こういうのを考えるとやはり何らかの規制をしないと、亡くなった人ももちろんだし、残された妻や子供たちはもっとつらいと思うのですよ。これはどこが踏み切るかといったら、経営者は絶対踏み切らないですよ。だから私は、政府が行政として指導力を発揮すべきだと思うんだな。
 確かにドイツなんかは千八百時間でなくて、今労使関係で千六百時間、そして週三十五時間というところまで持っていこうというのでやっているわけですよ。私はそういう点でいえば、ドイツの労働者の考え方も大事であると同時に、ドイツの経営者の考え方というのは非常に弾力的だし、社会的だと思うのですね。そこのところが日本ではどうも違う。
 だから、政府といえば企業と同じじゃないかみたいなことにならないように、企業に厳しくやるようなことを、村上労働大臣は相当企業に対しても、新卒者の採用の途中取り消し問題なんかでは企業の側から文句を言われるぐらいやったことがあるわけですから、どうせそこまで来たんだから、一発、もう一つ押し込んで、なるほどこうかというのが出ないとならぬと思うのですね。こんなことを言うと失礼ですけれども、永久に大臣をやっているわけじゃないと思うのですが、ところが労働者は死ぬまで労働者をやっておるわけですから、やはり村上労働大臣のときに、どうか、ああこういう変化があったかということができるように、大過なく過ぎましたというのじゃなくて、せっかく労働基準法の改正が出たときに、変形は一年です、残業は上限を決めません、割り増し率もぼちぼちですというようなのでは、これはだれも我慢できないだけじゃなくて、日本の政治に対する不信というのがここから出ると思うのですよ。
 そういう意味で、最後にその点をお聞きして、質問は終わりたいと思います。
#228
○村上国務大臣 大変な激励だ、こう受け取らせていただきます。
 速やかにこの法案をひとつ通していただくことをお願い申し上げておきます。
#229
○岡田委員長 次回は、来る二十三日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時三十九分散会
     ――――◇―――――
  〔本号(その一)参照〕
    ―――――――――――――
   派遣委員の大阪府における意見聴取に関す
   る記録
一、期日
   平成五年四月十九日(月)
二、場所
   ロイヤルホテル
三、意見を聴取した問題
   労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関
   する臨時措置法の一部を改正する法律案(
   内閣提出第三三号)について
四、出席者
 (1) 派遣委員
   座長 岡田 利春君
      住  博司君    長勢 甚遠君
      岩田 順介君    永井 孝信君
      石田 祝稔君    金子 満広君
      柳田  稔君
 (2) 現地参加議員
      中馬 弘毅君    和田 貞夫君
 (3) 政府側出席者
        労働省労働基準
        局賃金時間部長 伊藤 庄平君
        労働省労働基準
        局賃金時間部労
        働時間課長   上村 隆史君
 (4) 意見陳述者
        関西経営者協会
        専務理事    豊田 伸治君
        弁  護  士 門間  進君
        連合大阪事務局
        長       柴田 範幸君
        自治体労働安全
        衛生研究会副会
        長       井上  浩君
 (5) その他の出席者
        労働委員会調査
        室長      下野 一則君
     ――――◇―――――
    午後一時開議
#230
○岡田座長 これより会議を開きます。
 私は、衆議院労働委員会派遣委員団長の岡田利春でございます。
 私がこの会議の座長を務めますので、よろしくお願いを申し上げます。
 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。
 皆様御承知のとおり、当委員会におきましては、労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案の審査を行っているところでございます。
 当委員会といたしましては、本案の審査に当たり、国民各界各層の皆様から御意見を聴取するため、御当地におきましてこのような会議を開催いたしておるところでございます。
 御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いを申し上げます。
 まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。
 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、座長の許可を得て発言していただきたいと存じます。
 なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく方々は、委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。
 次に、議事の順序につきまして申し上げます。
 最初に、意見陳述者の皆さんから御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただきました後、委員より質疑を行うことになっておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。
 出席委員は、自由民主党の住博司君、長勢甚遠君、日本社会党・護憲民主連合の永井孝信君、岩田順介君、公明党・国民会議の石田祝稔君、日本共産党の金子満広君、民社党の柳田稔君、以上でございます。
 なお、現地参加議員として、中馬弘毅君、和田貞夫君の両議員が出席されております。
 次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。
 関西経営者協会専務理事豊田伸治君、弁護士門間進君、連合大阪事務局長柴田範幸君、自治体労働安全衛生研究会副会長井上浩君、以上の方々でございます。
 それでは、豊田伸治君から御意見をお願いいたします。
#231
○豊田伸治君 豊田でございます。
 初めに、本日、意見を述べる機会をちょうだいいたしましたことに対しまして、御礼を申し上げます。
 時間が限られておりますので、私は、大きく二つの問題について意見を申し述べたいと存じます。まず第一点は、労働時間短縮に関します概括的な意見でございます。二つ目に、改正法案についての意見を申し述べたいと存じます。
 初めの概括的意見につきましては、細かくは四点に整理をいたしたいと存じます。
 第一点は、御承知のとおり、労働時間短縮の問題につきましては経営側も中長期的な重要課題であるということは十分認識をいたしておりますし、したがいまして、今日までも前向きに取り組んできたところでございますが、この厳しい経済情勢の中で時間短縮が一層難しくなっているという実態につきまして、まず御理解をいただきたいというふうに思います。したがいまして、時間短縮の今後の方向というのは、我が国の経済あるいは経営の実態と乖離しないように配慮していただくことが必要であろうと考えております。その意味で、週四十六時間制が一年延長になったわけでありますけれども、私は、これはやむを得ない措置であるというふうに理解をいたしております。
 第二点目は、御承知のとおり、労働時間は経営にとりましては当然にコストでございます。なかんずく、中小企業ほど経営にかかる負担が大きいということは御承知のとおりでございます。さらに、下請企業に対しましては、いわゆる親企業でございますとか発注元企業の理解と協力が欠かせないわけであります。これがございませんと、下請中小企業の時間短縮は極めて困難である、この点も御承知のとおりでございます。
 三点目は、労働時間の短縮の問題というのは、単に勤労者が働く労働時間をどうするかという問題だけではないというふうに理解をしております。
 一つは、社会のあり方が問われることになるだろうと考えております。つまり、サービスを求める社会生活のあり方というのは果たして妥当なんだろうか。例えば、日曜日だからといって、祭日だからといって、交通機関をとめるわけにはいきませんし、航空会社に働いている人たちは、他の労働日に休むということはあり得るといたしましても、日曜、祭日でも電車は動き、飛行機は飛ぶわけであります。つまり、サービスを供給する側とサービスの提供を受ける側とで労働時間というものに対する認識は変わるのでありましょうか、あるいは、二十四時間のコンビニエンスストアといったものは、これからの社会に果たしてどういう位置づけを持つのでありましょうか。その意味で、労働時間短縮問題というのは社会とのかかわりというものを外しては考えられないと思うのであります。
 個人の意識の問題もございます。
 さらには、この点は比較的議論されることが少ないのでありますが、私は、インフラの整備という問題と時間短縮というのは切っても切り離せないというふうに考えております。学校の週休二日制という問題があるわけでございますが、寒冷地等を除きましても、全国の学校の休みがある一定の時期に偏るというのはいかがでありましょうか。少なくとも地域によって学校の休みの時期が異なるという考え方に立ってもおかしくはないのではないか。あるいは、休日を利用して国民がレクリエーションを楽しむということになりましても、そのための社会資本の整備というのは果たしてございますでしょうか。つまり、インフラの整備というものを抜きにしては、私は労働時間短縮というのは語れないというふうに思っているわけであります。
 言いかえれば、社会のあり方から始まりまして、個人の意識の問題でありますとか、あるいはインフラの整備といったような問題がこの時間短縮の問題にはかかわっているわけでありますから、その意味でトータルな政策が求められていると申し上げても過言ではないというふうに理解いたしております。
 概括的意見の四番目でございますが、計画期間内に千八百時間を政策目標として掲げておられることは私どもも理解をいたします。しかしながら、この計画期間内に年間総労働時間を千八百時間にするということは事実上困難ではないかと考えます。千八百時間は、言うまでもなく結果としての時間でございます。足し算と引き算が行われての結果としての時間でございます。現実かつ具体的な政策は、週四十時間制の実現の問題、週休二日制の実現の問題であろうと思います。そのための確実なステップづくりをどうするのかということが、私は現実かつ具体的な政策課題であるというふうに理解しております。今日まで労働省初め各労働基準局の積極的な取り組みというものを評価いたしますが、今後ますますきめの細かな施策が求められることになると考えております。
 以上が概括的な意見でございます
 二つ目は、改正法案についてでございます。
 まず、結論から申し上げます。今回の改正法案につきましては、私は大筋で賛成でございます。
 労働時間は、言うまでもなく基本的な労働条件の一つでございますから、その意味で、法律制度と労働時間とのかかわりというのは、少なくとも労使の自主的な努力をサポートする形で進められるのが本来の筋道であろうと考えております。
 さらに、この機会に敷衍することをお許しいただきますならば、現在の労働基準法の考え方がとっております罰則つき強行法規のあり方というものは、再検討する時期に来ているのではないかというのが私の考え方でございます。
 そこで、各論でございますが、まず第一に、法定労働時間についてでございます。
 結論といたしまして、改正法案が掲げております法定労働時間につきましては、やむを得ないと考えております。
 なぜやむを得ないのかと申しますと、私ども、昨年の七月に福井県を含みます近畿二府五県の経営者の労働時間短縮に関する意識調査を実施いたしました。その結果、四十時間制への移行は平成八年とすべきであるという意見が最も多かったわけでございます。その点で改正法案では、原則四十時間とするのは平成六年四月一日であると掲げられております。私がやむを得ないと申し上げましたのは、近畿二府五県の経営者の意識調査の結果を踏まえますならばやむを得ないのではないかというふうに申し上げたわけであります。つまり、経営者の感覚からすれば、法案は四十時間制の原則実現を少なくとも二年間前倒ししているわけでございますから、そうではありましてもやむを得ないというのが率直な意見でございます。ただし、一定の規模あるいは業種に対します猶予措置は不可欠であると考えております。この猶予措置を前提としなければ、平成六年四月一日の四十時間制は無理であると申し上げざるを得ません。
 なお、この猶予措置の問題につきましては、その内容につきましては実態を十分に踏まえていただく必要があるということは申し上げるまでもございません。現在一部に認められております四十八時間の特例措置の見直しが起きてまいりますときも、同様であると考えております。
 各論の二つ目は、変形労働時間制でございます。
 これにつきましては、私は積極的に賛成いたします。
 何よりも年間総労働時間の短縮、週四十時間労働制への対応、計画的な休日設定と年次有給休暇の計画行使、連続休暇の活用、さらには、現在の三カ月型の変形労働時間制が持っております問題点を克服する、こういった課題から考えてみますと、一年以内の変形労働時間制というのは極めて重要であり、かつ必要であると考えております。ただし、この変形労働時間制に厳格な枠組みが設定されるといたしますと、それはかえって制度のメリットを否定するにとどまらず、年間総労働時間の短縮にブレーキをかける結果になることを憂慮いたしております。
 各論の三つ目は、時間外・休日労働の法定割り増し賃金率についてでございます。
 中長期的に見まして、法定割り増し賃金率の見直しは必要になってまいりましょう。しかしながら、現在の労働省の各種のデータから読み取れますように、割り増し賃金率の現状からまいりますと、この現状を無視したまた現状と著しく乖離するような改正は妥当ではないと考えております。なかんずく経営実態からいたしますと、かなり厳しい週四十時間労働制の実施に割り増し賃金率の改定を合わせるということは反対であります。
 なお、諸外国の割り増し率と比較されることが多いわけでありますが、その際にぜひ御留意いただきたいことは、我が国の時間外労働というものが雇用調整機能の役割を果たしているということでございます。ぜひともこの点についての御認識をちょうだいしたいわけであります。
 なお、裁量労働制、年次有給休暇等の問題が残っておりますけれども、後ほど弁護士の門間先生から意見の陳述があろうかと思いますので、私の方は省略をさせていただきます。
 以上でございます。
#232
○岡田座長 ありがとうございました。
 次に、門間進君にお願いいたします。
#233
○門間進君 門間でございます。
 結論として最初に申し上げますと、私も本改正案全体に対しまして、大筋において賛成ということが申し上げられるのじゃなかろうかと思います。
 法定労働時間の問題とか変形労働時間の問題あるいは時間外割り増し賃金の問題は、今豊田さんが詳細に述べられましたので、重複を避けますためにその問題はひとまずおきまして、そのほかの点に関する問題点について私なりの意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず第一が、裁量労働制の改正の問題でございます。
 御承知のように、この裁量労働制というのは、昭和六十二年の法改正によって新しく設けられたものでございますけれども、それから五年余り経過しましたが、労働省の実態調査を拝見いたしておりますと、余り普及していないのじゃなかろうか。徐々にではございますが、平成三年の実態調査では八百五十件ほどの協定の届け出があったということは承知しておりますけれども、まだまだ非常に少ないのじゃなかろうかというふうに思っております。
 これはなぜかということでございますが、現行法の規定に「研究開発の業務その他の業務」ということが明記されておりまして、これを受けまして、労働省通達が六十三年の一月一日でございますか出されております。労働省通達、これは例示的ということでございますが、そこに五種の対象業務というものが書かれておるわけでございます。通達でございますから、必ずしもそれに束縛される必要は本来はないわけでございますが、実際上はほぼそれに沿った形でなされておって、非常に厳格な運用がなされているという状況ではなかろうかと思っております。単なる研究開発業務だけではなく、例えばデザイナーとかプロデューサーとかディレクター、あるいは新聞、雑誌の記事の取材、編集といったことも加えられてはおりますけれども、一般的な形からすれば、まだまだ非常に限定された職種といいますか業務内容だけがその対象とされておる。これは先ほど申しましたけれども、例示なんですが、それに非常に束縛されているということでございます。したがって、これは法文の「研究開発の業務その他の業務」ということに引きずられているということが申し上げられるのじゃなかろうかと思います。したがって、今度の改正案でその字句が削除されたということは、非常に評価すべきことではなかろうかと思っております。
 ただ、ではその対象業務をどうするかということに対しまして、改正案では「命令で定める」というふうに書かれております。果たしてそれが妥当であるかどうか、過渡的措置としてやむを得ないこととは存じますが、多少問題があるのじゃなかろうかというふうに思っております。
 それは、一つには、やはり労働基準法というのが罰則を伴う行政警察法規であるという点からして、その対象業務を法律という形ではなく、命令という形で定めることが果たして妥当なのかどうかということがまず第一点でございます。
 ただ、仮に法律上に記しますと、その改正その他が非常に困難でございますので、命令等の方が弾力的な運用をしやすいという点を考慮いたしまして命令で定めることが妥当だといたしましても、どうしてもその業務対象内容というものが例示的あるいは限定的にならざるを得ないんじゃなかろうかというふうに思っております。いわゆる職務の内容が労働者の裁量にゆだねる必要があるものであるかどうかということでございます。いわゆる業務の仕方、方法あるいは労働時間の配分というものをどうするかといったことは、これは考えてみれば非常に千差万別でございます。あるいは事業場ごとによって非常に異なるんじゃなかろうかと思うわけでございます。
 現在の通達で、例えばディレクターの業務だとか、プロデューサーの業務だとか、デザイナーの業務というものが裁量労働の中で認められているわけでございますが、それに類したものは一般の商社あるいはその他の営業関係でも十分考えられる内容のものではなかろうか。ただ、その限界というようなことにつきましては、非常に微妙な点、難しい点があるわけでございますけれども、必ずしも機械的、定型的労働ばかりではなくて、そういう労働者の裁量に任せてしかるべきものがまだまだたくさんあるんじゃなかろうかと思うわけでございます。
 そこで、その労働者の裁量に任せる業務であるかどうかということは本来だれが一番よく知っているかといえば、そうした業務内容を熟知しているのはその関係当事者である労使そのものであろうと思うわけでございます。したがって、労使がお互いに合意して、これは裁量労働として認めようというものであれば、私は、それはそれで結構なことではなかろうかと思うわけでございます。
 そのほかに、とりわけ労働時間の管理というのは、これは多少語弊があるかもしれませんけれども、諸外国でも行われておると思うのですが、いわゆるブルーカラーに関する時間管理というものではなかろうか、いわゆるホワイトカラーの人々の業務というものは、ほとんど個人の裁量性が高いということが申し上げられるんじゃなかろうかと思います。ホワイトカラーにもいろいろな種類がございますし、ホワイトカラーとブルーカラーをどう分けるかということもこれは非常に難しいわけでございますが、一つの概念として申し上げますと、ホワイトカラーの多くの人は、そう一々指示、命令に従って仕事をしているわけではない、ある概括的な指示に従って多くの方は仕事をしているんじゃなかろうかと思います。
 その仕事の評価の仕方というものでございますが、これは単にその量の問題、量の問題と申しますのは、例えば何時間働いたからいいというものではなく、本来、質で評価されるべきものではなかろうか。特に単なる生産労働者、肉体労働者ではなくて、いわゆる頭脳労働者と申しますかホワイトカラーの多くの人々にとっては、その質が評価されるべきであって、単に机の前に何時間座っておったからいいというものではないんじゃなかろうかと思います。いわゆる労働者個人の自律性ということを広く認められまして、時間管理から解放されて、その裁量にゆだねるということが必要なんじゃなかろうかと思います。
 ですから、本改正案で「命令で定める」ということになっておりまして、その命令内容は今後どういうふうにお決めになるのかは今後の問題でございますが、裁量労働の実を上げるために、あるいは裁量労働が広く普及されるために、その点を御配慮いただければ非常に幸いだと思うわけでございます。
 それから、第二番目の年次有給休暇の問題でございます。
 これは、これまで現行法の継続勤務要件の一カ年が六カ月に短縮されるということでございます。
 これも労働省の実態調査によりますと、新しく入った新入社員の方々がその年に有給休暇が付与される、いわゆる初年度付与というのが過半数に達しているという実情、現状でございます。それから、三百人以上の規模ではほとんど九割がもう初年度に与えている。中企業と申しますか、百人以上三百人未満の企業でも七割以上がそういう休暇を与えているということであります。
 それから、六十二年の改正で計画休暇というものが導入されておりますけれども、それとの関連もございますが、企業では、例えばゴールデンウイークを中心にして、あるいは夏のお盆を中心とした夏休みとかそういうものを中心にして、一斉休暇というものを現実に行っておりますので、そうした場合に初年度の人だけ、新入社員だけ何らの休暇を与えないというわけにはまいりませんので、何らかそこで措置をされているという現状からいたしまして、六カ月に短縮するということは適当な措置ではなかろうかと思うわけでございます。
 なお、この年次有給休暇に関しまして、付与日数の件で十日から十五日に引き上げるべきだという御意見があるように承っております。ただ、この点に関しましては、現在の有給休暇の消化率というものが非常に悪いと申しますか五割程度の状態であるということが言われておりますので、まず、その現在与えられております十日、それに一日ずつ足した総計二十日の現在の有給休暇日数の消化促進を図るべきである。今直ちにその最低付与日数を増加する必要はないのではなかろうかと思っております。
 それから、その点に関してでございますが、三百人以下の規模の中小企業に対しましては、御承知のように、現行法で来年の四月一日から十日に初めて引き上げられます。したがって、まだ中小企業ではこれから十日ということになるわけでございますので、今それを一挙に十五日にというのは時期尚早ではなかろうかというふうに思っております。
 それから、この労働基準法は、御承知のように最低基準というものでございますから、仮に各事業体あるいは企業体においての実情から、それ以上の日数をお与えになることは何ら差し支えないわけでございますから、それ以上の日数ということはそれぞれの労使の協議に本来任せることが適当な措置ではなかろうかと思います。したがって、最低付与日数を十日から十五日に上げるということに関しましては、不適当ではなかろうかと考えております。
 それから、本改正案あるいはそれの附属法律でございますが、労働時間短縮支援センターというものを設置されるということになっております。
 この御趣旨は評価すべきことではなかろうかと思います。
 労働時間短縮に関しましていろいろ調査していただき研究していただく、そして、その情報や資料を一般に提供なさる、あるいは企業を支援するということは非常に望ましいことではございますが、ただ、これが実質的に労使の自主的努力を阻害するというような運営がなされないことを望むわけでございます。ですから、その運営に十分配慮していただきたいということを申し上げたいと思うわけでございます。
 本来、これは労働時間だけではございませんけれども、賃金を含むあらゆる労働条件の決定というものは、労使が自主的に決定すべき事柄でございましょう。いわゆる労使以外のところで、例えば法的強制によって決められて、やむなくそれに労使が従うということは本来望ましいことではない、労使の自主的決定を最優先すべきだというのが私の考え方でございます。しかし、そうは申しましても、何らかの規制というものはやはり必要なことは認めるにやぶさかではございませんが、そういう法的規制は最小限にとどめるべき性格のものではなかろうかと思います。
 したがって、やむを得ずいろいろな法的規制をなすに当たりましては、先ほど豊田さんも若干述べられておりましたけれども、現実的土壌といいますか、そのよって立つ基盤を十分お考えいただくとともに、いたずらに観念的所産と申しますか、こうあるべきだ、こうなければいけないというようなことが優先されては問題ではなかろうか。企業の実情、特に中小企業の置かれているいろいろな問題、中小企業の経営の基盤が脆弱であるとか、あるいは中小企業は、今ではこのバブル崩壊になって若干違ってまいりましたけれども、かつては非常に要員確保が難しかったという問題、あるいは親企業、取引先との構造的ないろいろな問題、そういった実情あるいは働く人々、労働者側の個人の意識といった問題、残業代が欲しい、それが大きな収入のウエートを占めているというようなところから残業を好んでやるという意識もなきにしもあらずと聞いておりますが、それがいい悪いの価値判断の問題は別といたしまして、現実にそういうところにあるということの中から、どうしていくかということを十分配慮すべき問題ではなかろうかと思います。
 こうした観点から、労働時間短縮に関する環境とか条件の整備に向かって十分な政策的配慮を希望するわけでございます。
 以上でございます。
#234
○岡田座長 ありがとうございました。
 次に、柴田範幸君にお願いいたします。
#235
○柴田範幸君 柴田でございます。
 わざわざ大阪へお出ましいただきまして、私どもの意見を聴取いただくことに心からお礼申し上げます。
 私は、四つの論点について申し上げたいと思うのであります。
 第一は、千八百時間のいわゆる目標と年次有給休暇、時間外労働に関してであります。第二は、時短推進に関する国の基本的姿勢、これと猶予措置に関する問題であります。第三は、変形労働時間制の目的とあり方、第四に、時短推進施策の地方分権的手法に関してでございます。
 まず、論点の第一でございますが、年間労働千八百時間達成が今回のこの改正で十分なのかという点に関しまして、先生方の十分な御検討を煩わしたい、その必要があるんじゃないか、こう思っております。
 このたびの改正によりまして、週四十時間制実施の時期が明確化されたこと、並びに猶予措置の廃止期限が設定をされたことに関しましては、評価をしております。しかし、これでいわゆる九七年三月末までに年間千八百時間労働、こういう目標が達成できるかについては疑問を残さざるを得ない、こう思っております。
 目標達成のためのキーポイントとしまして、国際的な水準をやはり確保する、こういうことで二点を指摘しておきたいと思います。
 その第一は、年次有給休暇に関しましてでございますが、一九七〇年に採択されましたILO条約第百三十二号が批准できるように改正されるべきであると思います。特に、最低の目標を、先ほども御意見がございましたけれども、三労働週、つまり十五日とすることは欠かせない前提でなければならないと思うのであります。また、中小企業におきましては、従来から長期勤続者が比較的少ない実情にございました。これを考慮して勤続一年につき一日を加算する、こういう形になっております点は、二日を加算するという形に改めていただきまして、総日数を二十五日とするべきであろうと思います。
 二つ目には、時間外労働、休日労働に関してでございまして、我が国のように労使協定によりまして労働時間の延長措置をいわば無制限に認めておるというのは、国際的に見て労働時間制上異端ではないか、こう前から思っておるわけでございまして、ぜひその上限を法律で規制すべきではなかろうか。同時に、アジア諸国に比べても恥ずかしい割り増し賃金率、これにつきましては、最低、時間外に関して三五%、休日に関して五〇%という形で法律で定めていただきたい、こう考える次第でございます。
 論点の第二に関してでございますが、国の労働基準行政、特に労働時間短縮推進の基本的姿勢を私はこの機会に問題にしたいと思うのであります。
 四十六時間から四十四時間、つまり隔週二日制へというぎりぎりの時期に来てしまってから、急遽強引にいわゆる猶予措置を延長するなどということは、まことに朝令暮改のきわみであろうと思うのであります。言語道断の悪政じゃないかと思うわけでございまして、これがもたらした混乱、それから基準行政に対する相当の不信、こういうものにははかり知れないものがあるのでございます。
 ほんの一例でございますけれども、大阪の南部織物協同組合のケースについてこの際触れておきたいと思うのであります。
 大阪では、昨年の十二月に、全国に先駆けまして事業主が共同で労働時間短縮実施計画を策定をして、いわゆる時短促進法によって承認をいただく、こういうケースでございました。泉南地域、つまり岸和田から泉佐野にかけましての綿スフ織物製造業二十社で成り、常用労働者は、多いところで二百七十名の一社がございますが、そのほかは十二名から百名未満の企業、これがつくる協同組合でございますが、昨年の春ごろから大阪労働基準局や所轄監督署の、ことしの四月には四十四時間になる、こういう前提での熱心な呼びかけがもとになりまして、この協同組合の役員の皆さんが音頭をとりまして、相当の反対が渦巻く中でたびたびの会合を重ねられたわけであります。そして、ようやく九月に入りまして、それまでの週四十六時間から、つまり四週五日休日制でございますが、それから土曜休日の増加を通じまして九四年末までに週四十二時間を達成しよう、こういうことで合意に達しました。関係の連合傘下のゼンセン同盟と協議も進めまして、十二月一日に大阪労働基準局に申請をし、同月十七日に承認を得た、こういう流れになってまいっておるわけであります。
 この承認を受けまして、非常に厳しい経済環境下でございますけれども、四月からまず四十四時間にしなければならぬということで調査検討を急速に行いまして、そして、資金もつぎ込んで苦労も重ねて実施にこぎつけたやさきに新聞報道に接した、こういう次第なんでございます。
 各社の経営者からは一斉に、協同組合は何やってんだ、こういう非難が集中をいたしまして、基準局の方からも相当の釈明が必死に行われておるわけでございますけれども、今やこの協同組合の組織問題に発展をしてきてしまっておるのであります。もう集まってくれまへんわ、こういう責任者の述懐が出ておるわけでございまして、これは何を意味しておるのか篤とお考えをいただきたいと思うのであります。正直者がばかを見るというのは御免だと、私どもが言っているのじゃございませんで、その当事者の方々が怒り心頭なんでございます。不況であるからこそできるのだとこの方々は言ってこられました。彼らと苦労をともにしてきました基準局の人たちの立場も、本当に想像を絶するものでございます。それまでの信頼をすっかり今や失ってしまって、どうして再び彼らに時短促進の呼びかけを続けられることができましょうか、こういう状況でございます。
 決して四十四時間に相当する隔週週休二日制が進んでいないのではございません。例えば、大阪労働基準局の主催で去る三月二日に大阪労働時間短縮推進会議というのが開かれました。その席上、大阪商工会議所から書面によって報告されているわけでございますが、それによりましても、昨年九月現在で、大阪の百人未満のところの月二日以上を含む月二回の週休二日ですね、これを含めて隔週週休二日制を実施しているところが既に八五・五%に達しているわけであります、百人未満でですよ。今後週休二日制を拡充すると答えているところが大部分でございます。つまり四十六時間、四週に五日休みから、この四週に一日休日をふやすという努力を一年間やってきたわけであります。この努力を一年も繰り延べる、この程度のことを一年も繰り延べるということでは、今後の困難が克服できるのかと私は大変心配しております。
 こうしたことが府下の随所に生じているわけであります。困難な条件、つまり時短のコスト、先ほどもお話に出ましたが、これを吸収できる方法がなかなか見つからない、それでも世の中の進歩なんだから必死になって努力しよう、こういうふうに事業主の方々を初めみんなが苦労をされておるわけでありまして、それを省みることなく頭からサボってきた向きの意見を重視する、こういうふうな基本的姿勢は断じて改めてもらいたいのであります。中小企業主の多くから私は聞いておりますが、法律ですっきりさせてもらった方が、労働力確保であるとか下請振興基準の改正であるとか、そういうふうな措置よりも進めやすいのだ、こういうふうに聞いておるのであります。
 これらとの関連で、私は法案に関して三点を述べておきたいと思います。
 一つは、この点を前提にして、猶予措置というものは今回延長されましたけれども、ぜひ本年度早期に隔週週休二日制、つまり四十四時間、この達成を図るために国の責任を明確にしてもらいたい、これが一点であります。二つ目は、このような経験にかんがみましても、法のもとの平等に反するような猶予措置の範囲というものは、来年度以降の分も極力限定すべきであると思います。もともと一括して適用猶予事業を指定するということはどうも基本的に見て誤りではないか、むしろ私は猶予を必要とする立証責任は事業主の側が負担するべきだ、こう思っておるわけでございます。三つ目に、特例措置につきましても同様でございまして、この点を重視して対象事業を厳密に検討していただきたい。そしてその限度は週四十四時間、こういう段階に進めていただきたい、こう考える次第でございます。
 論点の第三に移ります。一年単位の変形労働時間制、これはぜひ目的に沿った適切な規制、これが欠かせないと主張しておきたいのでございます。
 平均週四十時間を前提としておる現行の三カ月単位の変形制の場合でも、先生方もよく御存じだと思いますが、実は恒常的な時間外労働、これが当然であるかの運用が行われているのであります。時間短縮をやりやすくしようというこの制度の趣旨が必ずしも十分生かされていないと思います。
 ましてこれが一カ年単位ということになりますと、労働者生活の安定上かなりのデメリットも出てまいります。時間外労働賃金の精算でも、労働基準法は賃金の毎月支払いの原則を決めておるわけでありまして、それとの矛盾が拡大することになります。また、ぜひ御留意いただきたいのは、年間を通じたカレンダー方式による休日増、これを大いにやっておるわけでございますが、これは必ずしも一年でなくとも三カ月単位でも実施設定可能でございます。そういうふうに思います。
 したがって、完全週休二日制への過渡的措置という認識に立ちまして、最低でも、法律によりまして次の五つの要件を明確にされるべきだと思います。
 一つは、法律の提案趣旨説明において年間における休日増を図るためと、このように述べられておりますから、そういう点を明確にしていただきたい。繁閑を前面に出すということであってはならぬ、こう思います。第二に、一日の労働時間の上限を八時間、一週の労働時間の上限を四十八時間ということにしていただきたい。三つ目に、連続した労働日の日数の上限を六日としてほしいということであります。四つ目に、あらかじめ労働日、労働時間を個々の労働者にもわかる形にしてもらいたい。これは必ずしも明確になっておりません。五つ目に、労使協定は当然でございますが、しかし、一月単位の変形制と同様に、この際、就業規則もしくはそれに準ずるものに規定をすることもつけ加えていただいてはいかがかと思います。
 なお、この点に関連しまして、現状、就業規則は届け出を含めて十人以上のところに義務づけられておる、これをもっと近代化すべきだと思います。なぜなら、労使の協定で各種の運用を認めるのは結構でございますが、労働組合との協約でないケースが大部分でございますし、協定と届け出だけでは必ずしも労働者個々に強制的な命令をするわけにはいかないという解釈が多いかと思うのであります。この際、労働保険はすべての事業所に適用されておりますし、健康保険につきましても、強制被保険者が法人事業所のすべて、法人ではないところでも常時五名以上の事業所とされている現状でございますから、これを常時五人以上のところには就業規則の作成、届け出を行うべきであるということを補足しておきたいと思うのであります。
 最後の四つ目の論点に移らせてもらいます。労働時間短縮支援センターを初め、時短推進施策には地方分権的総合化が必要であろうと思っております。
 本年度からの新規事業として、中小企業におきまする時間短縮に対する助成金の支給などの趣旨には大いに賛成でございます。特に猶予期間満了を待たずに時短を実施した事業主に格別の奨励措置がとられるべきである、また、先ほど申し上げたような時短促進法に基づく時短実施計画を推進する事業主団体、これの活動に対しましても十分な支援措置が配慮されるべきである、こういうふうに思います。
 しかし、申し上げておきたいのは、これまでの時間短縮の啓発なり支援施策、いろいろ努力をいただいておるのはわかっておるのですけれども、これを見てまいりますと、労働省本省が中央で労働基準連合会等に委託をされまして、お金がそこに行く、そしてそれが下におりてくる、こういう形になっておるわけでございますが、これにはかなり問題を実は感じておるわけであります。地方分権的な発想が大事でございまして、地方基準局にむしろ予算をおろしていただく、そして地方基準局が責任を持って、各府県の関連する自治体あるいは行政組織あるいは諸団体などが推進機構なども持っておりますから、そういう機構の協議を通じまして各種の時短推進施策を総合的に推進する、こういう形にしていただくことが実効を上げるゆえんではないか、こう思っております。今回の労働時間短縮支援センターに関しても同様でございます。
 以上、意見にかえたいと思います。
 ありがとうございました。
#236
○岡田座長 ありがとうございました。
 次に、井上浩君にお願いいたします。
#237
○井上浩君 それでは、まず、週四十時間労働制のことから申し上げたいと思います。
 私は、健康で文化的な生活を送るために、基本的には労働時間というのは短いほどよろしいと考えております。ただ、労働時間というのは結局は一国の生産力によって決まるべきものだろう。例えば、四十六時間労働して初めて国民の衣食住を提供できるのであればそれでいいでしょうけれども、もし四十時間ではとても国民の衣食住を提供できないということであれば、四十時間労働制を幾ら基準法で強制しても、これは実行不可能だろうと思うわけなんです。
 では、現状はどうかといいますと、私は、当然四十時間の労働で日本の一億二千万からの人口が十分文化的な生活を送っていけると思うわけです。そういう点で、この週四十時間労働制を直ちに今全産業に実行させるということが必要ではなかろうかと感じます。
 そうなりますと問題点は、結局、では中小企業をどうするかという先ほどの御意見にもなるわけなんです。中小企業は四十時間労働の負担にたえるかどうかということだろうと思うのです。これで少々計算をしてみました。ただ観念的にだめだ、だめだと言うのでは話にならぬのですね。九二年の毎月勤労統計、労働省のあの統計でございます、これでいきますと、九二年の三十名以上の事業所の労働者一人当たりの賃金というのは、三十九万二千七百八十円です。これはちょっと本当は高いのですね。きょう来るときのタクシー運転手に聞きましたら、手取り二十一万円でした。しかし、まあいいでしょう。だから、ほぼ四十万ぐらいということで計算していきますと、時給が大体二千三百円ぐらいになるわけなんですね。この場合に、それではこの三十九万円の労働者を十名使っている中小企業の負担はどんなにふえるかということなんですね。
 これをずっと毎勤統計で計算していきますと、所定外の労働時間というのは十二・四時間ですが、これを加えまして十名の労働者を使っている中小企業は、四十六時間から一挙に四十時間制度に変わった場合幾ら負担がふえるかといいますと、大体、割り増し賃金なんかで月に一万七千円ふえる、年間一人大体二十万ふえますね。これは一カ年間では二百万円の増になるわけなんです。大体十人くらいの規模でありますと、年間の人件費は、現在のところは六千八百万円ですね。だから、二百万円ふえて七千万円ですよ。その二百万円の出費の増をどこかで吸収すればいいわけなんですね。
 例えば、販売の値段を上げるとか、逆に今度は材料を買う値段を安く買い入れるとか、それから、工場内のむだを省くとか、場合によっては利益を少し我慢して少なくするということで二百万円を吸収すれば、私は当然これはできると思います。わずか二・九%ですから、そのぐらいのことは、これは中小企業でもできるだろう。全く抵抗がないような法の改正はあり得ないですよ。抵抗ないような法律は、これはない方がいいわけですから。空気みたいな法律は意味がないわけですよ。やはり中小企業の経営者も努力をしなければいけないですよ、歴史の歯車は間違いなく時間短縮の方に回っているわけなんですから。
 マクロの経済で見ましても、大体一カ年間の国民所得が三百五十兆ですよ。この中で雇用者の所得が二百五十兆。大体四十六時間制を四十時間制にした場合どのくらい所得の配分に影響が出るかといいますと、これは割り増し賃金に影響がない人もあるわけですね。例えば課長とか部長の管理監督者、それからパートタイマーみたいに全く残業のない人、それから、労働省の調査によりますと、既に三六%の労働者は週所定労働時間が四十時間以下になっているといいますから、そういう点から引いていきますと、恐らく四兆円ぐらいの所得の移転が起きるだろう。だから、雇用労働者の二百五十兆円に四兆円がプラスになる、それ以外の百兆円から四兆円がそこに移っていくだろうということなんです。恐らくは、実質は国民所得の一%の移転にすぎないということだと私は大まかな計算でそう思うわけです。だから、四十六時間制を一遍に四十時間に変えても決して大きな負担はないと私は思います。ただ、感情的に大変だ大変だと言うのは、それは全然話にならぬですね、もっとやはり定性的でなくて定量的に考えていかなければいけないと私は思うわけなんです。
 それから、変形制の労働時間のことについて申し上げます。
 労働省の三十名以上の事業所の労働時間調査を見ますと、平成四年度の総労働時間が二千八時間です。これはその中の所定時間が千八百三十八時間、残業時間が百七十時間ですね。平成三年は二千四時間というようなことになるわけです。そして、もし一年間の変形労働時間制を導入しますと、労働省の計算でいきますと、一カ年間三百六十五日にした場合、合計二千八十五時間を一カ年間に配分できるわけなんですよ。いいですか。
 そうしますと、この労働省の実態調査からいきますと、これはすべての事業場が一カ年間の変形労働時間制を採用したら全く残業はなくなるわけなんですよ。なくなります。例えば平成四年は総労働時間二千八時間、この中で千八百三十八時間が所定労働時間で、残業が百七十時間なんですよ。もし一カ年間の変形労働時間制を導入しますと、この百七十時間は残業でなくなるわけですよ。したがって、三十六条協定も必要がないし、割り増し賃金の支払いも必要なくなるわけなんですよ。そういう労働者側に一方的な不利益を押しつけるような一カ年間の変形労働時間制は、私はおかしいという気がいたします、いろいろ例外もありますけれども。
 続いて、今度は割り増し賃金の関係のことについて申し上げます。
 これは先ほどいろいろ言いましたが、もし現在の二五%を五〇%にした場合には、四兆円が八兆円の変動になってくるわけですね。したがって、八兆円、約二%の所得が移動するということだけなんですね。仮に五〇%にしても、そんなに大きな影響はない。だから、私は、時間外も休日労働も割り増し賃金は少なくとも五〇%増しにすべきだと思います。
 次に、今度は労働時間の時短促進法ということです。
 今度は、労働時間短縮支援センターというのができるそうですが、これは何か労働大臣が一つの団体を指定するとあります。これは全国労働基準関係団体連合会が指定される予定だそうでございますけれども、支援センターの仕事の内容を見ますと非常に結構なことなんです。そのような結構なことは、やはり私は役所が自分でやるべきだろうという気がいたします。だから、今の機械的な行政整理がどだいおかしいわけで、行政需要がふえておれば当然公務員の数もふえていいわけなんですね。こういう結構な仕事はやはり役所がやるべきだろう。本当に労働時間短縮支援センターであればいいのだけれども、労働省OB支援センターになってはしようがないというのが私の偽らざる考え方なんです。
 それで、そういうことがありますが、ではどんなふうにしたら労働時間短縮ができるのかということについて私の考えを申し上げます。
 まず一番最初は、先ほどほかの方もおっしゃいましたけれども、現在の三十六条協定の時間外労働に上限規定を設けることです。
 それから、二番目は管理監督者、部長、課長には現在は割り増し賃金は払わなくてもよくなっているわけですね。私は、そういう管理監督者にも、三十六条協定の必要はないけれども、割り増し賃金は払うべきだと思う。そうすれば管理監督者の過労死は恐らくなくなるでしょう。今みたいに割り増し賃金を払わなくてよかったら、企業の方では大変助かるわけなんですね。もしも今度は基本給の高い管理監督者に割り増し賃金を払うようにしたら、それこそ今度はとても大変な負担になりますから、恐らく企業の方でも長時間労働は管理監督者にさせないようにする。管理監督者が長時間労働をしなくなれば、その部下である一般の事務員さんもしなくなる。これはやはり日本の過労死発生に大きな影響があるはずです。
 三番目、現在の労働時間短縮促進法には、事業者が労働時間の短縮を共同で決めるということがあります。しかし、共同で決めても強制力がないわけですね。もしも業者が団体で労働時間の短縮を決めてそれを強制した場合には、独占禁止法に違反するのだというのが今の考え方ですね。これは明らかにおかしいですよ。罰則のある基準法だって守らない人があるわけですから、まして過怠金も取らなかったら守るはずがないわけですよ。だから、やはり時短促進法には独占禁止法の除外規定を設けるべきだ。現在、中小企業団体法だとか環境衛生同業組合の適正化に関する法律、そういうものを含めて独占禁止法の適用除外を決めた法律は、独占禁止法を含めて四十二あります。四十二も独占禁止法を除外している法律があるわけですよ。ただ、労働省関係だけは残念ながらありません。あとは農林省とか通産省関係ですが、やはりこの労働時間短縮促進法には独占禁止法の除外規定を設ける必要がある、そして、共同行為を強制できるようにしなければいけないと思います。
 四番目は、自動車運転者の労働時間の改善基準、これは告示からきちんと法律に変えなければいけないということです。
 それから五番目は、公契約における労働条項というILOの九十四号条約があります。これを批准すべきだと考えます。
 私は昔、ある長時間労働の印刷工場に行きました。何でこんな長時間労働をやっているんだと言ったら、基準局の仕事をやるために徹夜をやっておりました。それから、ある工場に行きました。そこでは沖縄から来た年少労働者を午後八時ごろに使っている現場に入ってきました。そうしたら、そこは人事院のロッカーをつくっておりました。そういうところに国から仕事を発注することがおかしいわけですよ。だから、労働時間の関係の違反があったり、休日労働の違反があるところには、少なくとも国だとか地方公共団体からは仕事を出さないという体制をつくらぬといけないですね。それには、やはりアメリカみたいな公契約法をつくって、そして一九四九年のILOの公契約における労働条項を批准する。現在批准している国は世界じゅうで五十六あるわけですが、日本はまだ批准しておりません。
 それから、国家公務員法の附則の十六条を改正して、四現業以外の一般職の国家公務員にも三十六条協定を適用すべきである。
 それから、今度は、労働基準法の三十三条の第三項を廃止をする、そのことによって、非現業の地方公務員と国公立の学校の教育職員が三十六条協定を締結するようになります。そういう点で、公務員にもやはり労働時間短縮の法規を適用すべきだと思います。
 それから八番目は、行政体制というものをもう少し強化しなければいけない、相互の協力もやらぬといかぬということです。
 例えば、長時間労働の事業場から求人の申し込みがあった場合にはその求人は受理しないというようなことも、職業安定行政ではやらなければいけないでしょう。今、派遣労働者なんかの問題もありますけれども、聞くところによりますと、基準局の方で職安に連絡してもなかなかうまく事が運ばないということだそうです。こう聞きます。これは昔、繊維産業でもありました。この地元では泉州基準法なんという大変問題があった一時期がありましたが、その時分もいろいろ問題がありましたけれども、もっと行政全体、政府全体が労働時間短縮に取り組む必要があるだろう。それには、やはり労働時間短縮の長期の計画を労働省ではつくって、それを情熱を持って進めるべきだろう。
 昔、日本の労働基準法は敗戦によって強制されたものであって、日本の経済力からいったら守っていけない、特に中小企業は守っていけないということで、その改正が議論されたことがありました。その場合に、労働省は最後まで頑張って改正をとめて、そして是正基準というものをつくったわけなんですね。例えば、今言いました泉州の場合には、労働基準法でいけば本来は女子の深夜業というのは午後の十時以降はやってはいけないのだけれども、それを午前零時まで認める、それから、午前五時前はいけないのだけれども、午前四時以降は認めるということを大阪労働基準局の管内ではやっておりました。それについては、学者とか労働組合は大変反対したわけですよ。しかし、私は賛成しておりました。全労働という組合でいろいろ討論会なんかやりましたけれども、その是正基準をきちんとつくってきちんと進めたところは実際に労働時間が短くなっておりました。
 だから、やはり理想は高く掲げて、法律は少々厳しくても厳しいものをつくって、それに計画的に近づけるように情熱を持ってやっていくということで改善されていくのではなかろうかと思います。
 それから最後に、労働委員会の守備範囲ではないのですけれども、下請代金支払遅延防止法という通産省関係の法律があります。そこにいろいろ書いてありますけれども、日本の中小企業が労働時間を短縮しようとした場合には、どうしても親会社の影響というのを考えざるを得ないですね。だから、この場合に、できれば中小企業の下請代金支払遅延防止法をもっと改正強化して、下請中小企業に対して長時間労働だとか深夜業などを押しつけるような親企業の不公正な行為を禁止するような規定をつくるということもまた必要ではなかろうかと思います。
 以上であります。
#238
○岡田座長 ありがとうございました。
 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
#239
○岡田座長 これより委員からの質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。住博司君。
#240
○住委員 四人の意見陳述者の方にそれぞれのお立場で意見を述べていただきまして、労働時間を短縮するという方向については皆さんが一致しておられるのだろうと思うのですが、理念を先にするのか、あるいは実体経済に即してできることからやっていこうではないかという考え方に立つのか、それは大きな違いがあると私は思っているのです。
 まず最初に、例えば時間短縮を推進していきますと、どうしても売り上げの低下であるとか利益の減少だとか、消費者や取引先に対するサービスの低下ないしは経費の上昇という経営の根幹にかかわるような問題が起きてくる可能性があるというふうに指摘する声があるわけです。これに対して何らかの改善策というものをきちんとやっていきませんと、時短というものが全体として進んでいかないというふうに思いますけれども、豊田さん、そのことについて御意見があればちょっとお聞かせいただきたいと思います。
#241
○豊田伸治君 今の住先生の御質問でございますが、先ほど私、少し申し上げましたように、トータルな政策が必要ではないのでしょうかと申し上げたのはそういうことでございます。
 つまり、企業経営に対する直接の圧迫要因というのは申し上げるまでもなくあるわけでございまして、例えば最も簡単な計算をいたしますとこういう計算ができるわけであります。仮に四十六時間制を四十四時間制にするという場合に、これは週当たりの労働時間でとらえてございますから、週当たり賃金が四十六時間制の場合と四十四時間制の場合で変わらないと仮定をいたしますと、四十四分の四十六という計算式が成り立つわけでありますが、これは四・五%という数字が出てまいります。つまり、黙って四十六時間を四十四時間制にするだけで、週当たり、時間当たりで考えてみますと四・五%の賃上げをしたのと同じ経済効果があるということでございます。
 問題は、先ほどのお話もありましたけれども、当然に固定費がふえてまいりますから、それが価格に転嫁できるのであれば救われるわけでございますが、この価格転嫁はそう簡単にはできません。もし簡単にこれをやるとすればインフレを招く危険性が多分にあるわけでありますから、したがって、私どもの実態調査の結果を見ましても、経営者の皆さん方の意見というのは、労働時間短縮に決して否定的なわけではないけれども、価格転嫁もできなければあるいは製品の価格に振りかえることもできないということであるとするならば、これは経営をストレートに圧迫する要因になる、こういういわばうめき声が出てくるわけでございます。
 しかし、長い目で見ますと、時間短縮の流れが現実のものでございますから、今後の経営努力でどこまでそれがカバーできるか。さらに言えば、今国会に出されておると伺っておりますけれども、時短の助成金でございますね、こういった制度も今後どのようにこれを活用していくことになるのか。言ってみれば経営努力は不断に重ねられるわけでございますが、それとのバランスがどうとれていくかということではないでしょうか。
#242
○住委員 トータルな政策というのは、今おっしゃられた例えば助成金の部分でトータルな政策の一つと考えているというお考えだと思うのですけれども、もう一方で、私たちの国は中小企業が国の経済を支えていることは事実だと思うのです。しかし、親会社と下請との関係からすれば、言ってみれば取引慣行というのがあったりして、あるいは余りいいことではないという指摘はされるのですけれども、終業時刻に納入の要求をしてきたり、休日を前にして発注があったり、こういうことがあるわけですね。
 これに対して、経営全体としてこの問題を一体どう処理していこうとお考えになっているのか、その点をお聞かせいただければありがたいと思います。
#243
○豊田伸治君 ただいまのお尋ねは、例えばその一つのモデルは、茨城県の市でございましたか、日立製作所と日立製作所の関連の事業協同組合との間で時間短縮協定が結ばれておりますが、この協定の中で発注の仕方等について工夫がなされております。私はそういう形が一つのモデルだろうと思いますし、恐らく全国では十以上のモデルがあるのではないかと思います。一つのやり方は、そういった元方企業と申しますか、いわゆる親企業を中心として関連する中小企業との間に協定ができ上がるかどうかということが一つの具体的な方法だろうというふうに思っております。
#244
○住委員 もう一度豊田さんにお聞きしますけれども、しかし、ある程度それが常態的に行われるようになっていきませんと、競争している以上、一つの企業が我々はそれは抜かしてもいいのだということをやられますと、結局まともに取り組んでいるところが、時短をやるがゆえに利益率が下がり、企業全体の経営が成り立たなくなるという可能性も含んでいるわけですから、そこについては国もいろいろな意味での支援策というものを考える必要があると思うのですけれども、それについてはどうお考えでしょうか。
#245
○豊田伸治君 それはおっしゃるとおりです。
 ただ、問題は、実は今回の時短の助成金に関係いたしましても、一部の中小企業にある声は、もう既に五年も十年も前に四十時間制を実施し週休二日制をしてきたいわば先駆的な努力をしてきた企業に対しては、法制は何ら手当てをしてくれない、今からやろうとするところに対してのみ手当てがあるというのはおかしいではないかという議論もございます。
 御指摘の点につきましては、少なくとも今後あるべき労働時間の姿に対して、個別具体的な経営努力をどう展開するかということでしかないのではないでしょうか。これは何としてもやっていかなければならない。ただ、そのことが、例えば国民生活全体の中にサービス提供のあり方そのものを見直すきっかけになれば、私は一番効果があるのではないかというふうに思います。
#246
○住委員 私は、本来は、時間短縮というのは労使の自主的な取り決めによってやるべきものだと考えているわけです。だけれども、それがなかなか進まないということなものですから、言ってみれば労使合意のみに依存していたら進みませんよ、だから、その目的を達成するために法律によってやるんだ、こういうことになっているわけですね。
 しかし、罰則規定も入っているこの法律によって時短をこれから進めていこうという考え方そのものについては、門間先生、どうお考えになっておられるのでしょうか。
#247
○門間進君 おっしゃいますように、私も先ほどちょっと申し述べましたけれども、労働時間というような労働条件というものは本来労使の話し合いで決められるべき問題で、そこで労働条件の一般的な相場ができ上がって、それに基づいて現実に実施するというのが一番無理のないやり方ではなかろうかと思います。
 労働時間短縮問題については、我が国は千八百時間と言われておりますけれども、私、二、三年前ドイツに行ってちょっとその関係で調べたのですけれども、ドイツでは千六百時間と一般に言われております。しかし、あれは本来労使協定によっておるわけでございまして、ドイツの法制ではまだ週四十八時間になっているはずでございます。
 いわゆる法律というのは、あくまでもおくれて後から追認していくという形でいいので、法律が引っ張っていくという形はやはり本来的なあり方ではないのじゃなかろうか。特に、これが最低基準でございまして罰則規定の適用があるという形から考えますと、あくまでも一番最低水準のものであっていいので、先ほど来いろいろな御意見の中で理想を高く掲げるというのですけれども、これは立法という問題としては問題がある。政策という問題あるいは旗振りの問題としては別でございますけれども、法律問題として特にそれが罰則で規制される、実際問題では余り罰則適用はないのじゃないかということではございましょうけれども、しかし、やはり法律体系の問題としては一番最低水準のところで法律は規制すべきだ。
 それ以上のことをなさることはもちろんいいことなんで、先ほど四十六時間の問題に関しまして朝令暮改というような御意見もあったようでございますけれども、そういう努力をなさること自体は決して悪いことではございませんし、あるいはけしからぬという御批判は私はどうかな、一生懸命努力なさって、それをおやりになれるところはそれでいいわけです。しかし、法律として最低水準を設けるという場合は相当考えなければいけない問題じゃなかろうかと思っております。
#248
○住委員 それから、千八百時間という目標に向かって進んでいくときに、どれをやるかということは完全にわかっていると思っているのですね。それは完全週休二日制の実施をすることですよとか、年次有給休暇の完全取得ですよ、ないしは連続休暇の定着だ、所定外労働時間の削減をするんだ、こういうことは言われているわけです。
 実を言うと、私も以前組合活動をしているときに、年次有給休暇をたくさんとってくださいというお願いを組合員にしていたことがありました。ところが、取得率が大変低いわけですね。そして、その理由を聞きますと、いろいろとあるのですけれども、要するに、後で忙しくなってしまうから、あるいは同僚に迷惑をかけるからというような話があったり、ないしは病気や急な用事のために残しておきたいとか、何となくとりにくいとか、そういったことで取得率が大変低い。数字的にも五割程度ということになっています。
 柴田さん、その問題について組合として一体どうやって取り組んでいこうとされているのか。組合員一人一人の勤労意欲の問題もかかわってくると思いますけれども、その点についてどうお考えでしょうか。
#249
○柴田範幸君 御指摘のとおり、かなり問題点であると理解しております。
 しかし、これも長い間の運動と昨今のキャンペーンによりまして、少なくとも労働組合が存在するところでは相当改善してきておると私は思っております。特に先生方の御努力もありまして、社会的環境づくりがかなり進んでまいっております。特に期待したいのは、学校五日制等もございますが、そういう状況をおつくりいただいている中で、かなりバカンス的に連続休暇型で休まなければならぬ、そういうふうになってまいっておりまして、同時に、三カ月の変形制などの問題も出ているのも、そういういろいろな休日増との絡みがあろうかと理解しておったわけでございまして、かなりこれは前進してきておる。むしろ、百三十二号条約にありますように、先生も御承知のとおり、あれの中には年休の取得前にボーナス型あるいは前払い賃金型のものを渡して、どうぞ二週間お休みください、こういうやり方をEC諸国はやっておりますね。ある程度そういうようなかなり踏み込んだ啓発等を大いにやりながらシステムも改善していくことによって、これは遠からず解決できる。
 問題は、労働組合が存在しないところが圧倒的にございまして、私ども残念ですが、なかなかおっしゃるようなわけにいかないものですから、そこで、法律自身をかなり国際水準のところまで引き上げていくことを一つのきっかけに社会的なコンセンサスづくりを広げたい、こういうふうに念願しておる次第でございます。
#250
○住委員 そこのところでやはりいろいろなそごが出てくるのではないかと思うのですね。つまり、先ほども言ったように、トータルとしていろいろな産業が組み合わさってできている国でございますから、一つのところでは大変労使の関係がきちんとできていて、組合もしっかりできていて、それでできましょう。しかし、一方でそうではないというところもあるわけですね。だから、これは法律でやれという御意見、法律で厳しくやってしまえという御意見がありますが、しかし、そうだからといってできない状況が続いている。現実に労使協定をちゃんと結んでいてもなかなか取得率が低いという現実もあるわけですから、その点をよく考えたときに、法律というのは一体どこの水準に置いておくのかということをやはり考えていくべきだと思いますけれども、そこをあくまでも高く基準を設定するという理由をもう一度お伺いをしたいと思います。
#251
○柴田範幸君 私は、私が申し上げたことを含めまして、今回目指しておるような改正の水準が御指摘のように非常に理想論過ぎるじゃないかというふうには決して思っていないわけであります。むしろ国際的な水準、つまり、こういう議論を、豊田さんもいろいろお話に出ておりますが、一体本当にEC諸国なんかの会議で我々お話ができるんだろうかと思うぐらいでございまして、年次休暇の三労働週の問題なんかを例にとれば、あるいは四十時間制にしてもしかりでございますが、むしろ、理想論ではなしに、今や国際的に絶対的に求められておる水準じゃないかというふうに思っております。
 労働組合の存在しない中小に関しましては、先生よく御存じのように、これは大変な苦労を伴う、痛みがある、これはごもっともでございます。けれども、その痛みを克服する機運が生まれてきておることに、あるいはその機運をつくることに、いろいろな助成策等を含めましていろいろな御苦労を先生方にもいただいているところでございますから、これをさらに一層進めていただければいいんじゃないか。
 先ほど来議論が出ておりますが、公正競争上、必ずしも今長時間労働をやっておるところが公正競争条件を満たしておるとは思わないのですね。大企業と中小企業が同じ製品をつくっているところだってあるわけです。この公正競争条件をむしろ崩しておる現状がはびこっておるということなんでございまして、公正競争のためにも、やはり労働時間というのは法のもとに平等という立場に立って原則は考えないといかぬのじゃないか。
 先ほど来御意見が出ておりますように、我々も猶予措置が全く必要はないとかそういうことは言いませんし、穏歩前進も必要なときがございます。ございますが、これだけ六年間やってきたわけでございますから、やはり前向きの姿勢を、水をかけるというのじゃなしに、より一層アクセルを踏んでいただく、こういうことを期待しておるわけです。
#252
○住委員 今ほどのお話でもそうなんですけれども、私どもの国が欧米の諸国に比べて労働時間が非常に長いという指摘を受ける理由の一つには、やはり年次有給休暇の取得率が非常に低いということがある。
 それから、私たちの国は、雇用形態が随分変わってはまいりましたけれども、やはり終身雇用というのが原則にあって、先ほど豊田さんのお話にもありましたけれども、終身雇用ということは、それによって言ってみれば時間調整をするわけですね。景気のいいとき悪いときというのがありまして、景気のいいときに合わせて人員を雇っておくわけにはいかないよ、そうすると、時間外労働で対応しますわという話になっていることはまた事実だと思うのですね。そういう日本の雇用形態を考えたときに、実を言うと、それだけで時間を比べていくということが果たして妥当かどうかという議論はやはりきちんとしておかなければならない、私はそんなふうに思うのです。
 そして、もう一つ最後に触れておきますけれども、裁量労働の問題なんです。
 門間先生にお聞かせいただきたいのですが、私も裁量労働というのは自己管理性とか個々人の判断、裁量の余地が非常に大きい、こう思っているのです、そうしないとだめなんですけれども。ただホワイトカラー、こう言われましても、一体どこの業務までというのをやはり限定して、どれくらいなんでしょうかということをお聞きしておかないと、一体どこまでなんでしょうかというのがよくわからないものですから、先生がお考えになっている職種というんでしょうか対象というのは、どんなところだとお考えになっているのでしょうか。
#253
○門間進君 その線を引くことは非常に難しい問題でございますけれども、普通の大学卒の人々が入りまして、何年かはこれは無理でございましょうけれども、ある程度の仕事を任される、これが必ずしも合っておりますかどうか問題でございますが、例えば職階制で言いますと主任とか係長とか、少なくともそういった仕事の人々、これも仕事の内容によりますし、それから、名目的だけの係長とかいう職制ではちょっと困るわけでございますが、しかし、そういう実質的な、ある程度任されて仕事をしているという人々はホワイトカラーの中の裁量労働の範囲に入ってよろしいんじゃなかろうか。
 私、余り実情を知らないで申し上げたら怒られるかもしれませんけれども、例えば新聞とか雑誌のいわゆる記事取材、編集というのが裁量労働として認められているというなら、同じような仕事をしている商社の営業マンとかいうのも非常にいらっしゃるんじゃなかろうか。それは対象は違いますし取り扱う内容も違いますけれども、その裁量範囲、取引先とどの程度の取引をしてどうするかというような事柄のことをある程度任されているという人は、ある程度の職制以上かもしれませんし、また、そういう職につかなくても任されている人がいるんじゃなかろうか、それは各事業体によってそれぞれ違う。それを、現実にそのところでこの人たちはこういうことをやっているんだというのを知っているのは、その現場の人が一番だろうと思うのです。ですから、本来はそういう労使の交渉に任せるべきだというのが私の考えです。
 ですから、明確な線をどこに引けとおっしゃっても、ちょっと困るわけでございます。
#254
○住委員 要するに、幅広く、そして労使でお考えをいただくのが基本ですよということでございますね。
 長時間質問させていただきまして、ぶしつけなことも言いましたけれども、大変失礼いたしました。ありがとうございました。
#255
○岡田座長 以上で住博司君の質疑は終了いたしました。
 次に、岩田順介君。
#256
○岩田委員 岩田でございます。
 まず、井上副会長にお尋ねをしたいと思います。
 先ほど御丁寧な御説明をいただきましたが、いわゆる過労死の問題にちょっとお触れになりましたけれども、今日日本人の一年間の死亡者数というのが大体七十五、六万人というふうにも統計が出ております。過労死というのは一体どの範囲でいうのか。急性死というのは一体どの範囲で急性死というふうに決定づけるのかという議論はいろいろあるみたいでありますが、つまり、発病して二十四時間以内に死亡に至るという場合を範囲に加えるのか、一時間以内というふうに加えるのか、これによって数は当然違ってまいりますけれども、発病して倒れられて二十四時間以内に亡くなる、こういった場合でも全体の死亡者数の一割を優に超えるというような数字が出ております。過労死として例えば労災の認定を受けるというケース、また受けられなくて裁判というケースも最近随分ふえてまいりました。つまり、二十四時間というふうに規定いたしましても、急性死の急増というのは近年社会問題になっているわけですね。
 過労死認定の場合は、いずれにしても慢性的な長時間労働が原因だということはだれの目からもはっきりしているわけでありますけれども、先ほど副会長もおっしゃいましたように、今、野放しといえば野放しですね。労働省の指針も三百六十時間ということになっております。これは極力そのために努力はされておりますけれども、しかし指針は法的な根拠がないものですから、業務の繁閑によれば長時間労働が慢性化するということはこれは常識なんですね。
 過労死、急性死とこの長時間労働、残業時間の規制、この問題について御意見があればお伺いしたいと思います。
#257
○井上浩君 ただいまの先生の過労死というのは非常に難しい問題でありまして、まず過労死が労災かどうか、業務上かどうかということからしても大変難しい問題がありまして、まずそれが決まらないとという、長時間労働と因果関係があるかどうかというそのスタートの問題があるわけなんですね。だから、どういう死に方が労災に該当する過労死なのか、ではその過労死は長時間労働とどんなふうに因果関係があるのかというふうになってくるわけだろうと思うのです。
 過労死はどんなのが労災かというのは、非常に難しいわけなんですね。けがの場合と違いまして、過労死だとか、頚腕、腰痛の場合もそうですけれども、いろいろな原因が競合して発病に至る場合が多いということなんですね。
 その場合に、そういういろいろな原因をどう評価するかということが問題になると思うのです。だから、少しでも仕事が原因の一つになっておれば、すべてそれは労災の過労死として見るのか、そうではなくて、逆に今度は、極端に言ったら、全部仕事だけが原因で死んだ場合だけが労災に該当する過労死かという両極端の考え方があるわけなんですね。労働者は、どちらかといいますと、結局いろいろな原因が競合している場合には相対的に仕事の影響が有力だ、相対的に有力な場合にはそれは労災に該当する過労死なんだという言い方をしているわけですね。
 そういうものを前提にして考えた場合には、労働時間の長さだけではなくて、長さと内容、量と質が影響して確かに過労死は起きているだろう、ただ、それが何件かということはよくわかりませんけれども、確かに起きていると思います。
 そういう点で、そういう労働時間の長さを規制することと、また同時に、労働時間の内容についてもいろいろな基準を設ける必要があるかもわからないと考えるわけなんです。けれども、それはどんなふうにやるかというのはいろいろな方法があるでしょうが、先ほど申し上げましたように、一般的には三十六条協定に時間外労働の上限を設ける、先ほどの指針では強制力がありませんから。三十六条協定の中には、現在は、有害業務だけ一日二時間という上限がありますけれども、それをほかの場合にも、一般的な業務にも上限規定を設ける。それから、今度は、そういう労働時間の適用のない部長、課長、そういう方に対しては割り増し賃金を払うことによって間接的に労働時間を短縮の方向に持っていくというようなことを考えてやれば、過労死の関係についてもいい影響が出るんじゃなかろうかという、その程度のことしかお答えはできませんけれども……。
#258
○岩田委員 柴田事務局長にお伺いをしたいと思うのです。
 先ほどお話を聞いておりまして、南部織物のお話がございました。時間短縮の取り組みというのがこういう地域的、業種的に行われるというのは、労働運動の場合比較的珍しいというか少ないですね、ゼンセンの取り組みだということだったと思いますけれども。つまり、日本の場合は、労働組合の組織率は御承知のように二四・四%という非常に低いものですね。百人以下になりますと二%を切っているというのが現状です。
 そこで、時間もございませんから、短絡的なことになりますが、お伺いをしたいと思います。
 先ほどのお話ですと、労働基準監督署も本当によく一生懸命やられた。恐らく連合との関係でも連絡を密にして、ある意味では共同して御努力なさったのではないか。いざ協定をしようという段階になって、猶予措置の問題が出てがっかりした……。ぜひこれは力を落とされずに頑張っていただきたいというふうに要請する以外にないのであります。つまり、そういった運動や取り組みの成果、この問題に限らないのですけれども、将来の問題なんですが、そういう成果を本当に果実としてつくり上げていくということの一つの方法として、例えば織物なら織物の場合、他の小売なら小売でもそうなんですけれども、その地域の、大阪府でも大阪市でもいいのですけれども、商工会議所と労働協約を締結をするというようなことが一体考えられないのかどうなのか。労組法十七条、十八条では一般的な拘束力と地域的の拘束力ということがありますけれども、日本の場合、こういったいい法律があるにもかかわらずこれが活用されてない。されない原因もあるのですけれども、労働組合の組織率の問題ともかかわってくる問題ですが、現実はこの二つのことが活用されてないというのが現状ではないかと思いますね。したがって、今申し上げますような一歩進んだ取り組みの姿としてそういうことが考えられるのか考えられないのか、どうお思いなのか。
 それからもう一つ、支援センター等の問題について、これは井上副会長の方からも出ておりましたが、これは労働省の出先機関にきちんと対応してセンターが置かれているわけですね。柴田事務局長の、私も初めてお聞きするのですが、労働行政における地方分権という問題は極めて適切であるし、一歩進んだお取り組みではないか、考えではないかというふうに思います、非常に難しい問題がありましょうけれども。労働省の機関の周囲には随分これらの公益法人がふえましたね。井上副会長もおっしゃるように、これは本来はやはり労働省が、国が直接やるべきではないか。一定の水準までいけばこれは公益法人やその他の機関にゆだねるとしても、この種の問題でもう少し労働省が本気でやるならば、人も金もかけてきちっと仕上げていく、その権限というか判断は労働基準監督署にゆだねる、これが私は地域の実情を本当にきめ細かく把握した上での心の通った行政ではないかというふうに思いますね。
 したがって、そういうふうに考えて私はお伺いをしたのですが、そういうことなのかどうなのか、お伺いをしたいと思います。
#259
○柴田範幸君 まず一つは、南部織物のケースなんでございますけれども、これは私のお話の仕方で誤解を受けるといけませんが、確かに私どものゼンセン同盟がかなり力を入れたわけでございますけれども、同時に、この指導的な御熱心な旗をお振りになったのは大阪労働基準局なんですね。私どももあらゆる領域におきまして相当――確かに先生御指摘のとおり、もう中小は大変ですが、そういう中で、かつ四十四時間制が来よるということで、昨年一年度の間は大変な御苦労をされておるのをしみじみ痛感しております。
 そういうところから、実は業界の方々も、ただ労働組合、ゼンセンサイドからのお話というよりも、そういう基準行政としての真剣な、先ほど井上先生のおっしゃった情熱、そういうものによってこの事態が前へ行くということになってきたんだということを再度申し上げておきたい、これが一つでございます。
 それで、お話しのとおり、力を落とさずに頑張ってまいりますが、御指摘の労働協約の拡張適用制度は、私どもも昔から非常に重要な労働運動の上での着眼点であるということは認識しているつもりなんでございます。しかしながら、組織率が低いということもございまして、必ずしも労働時間の面では十分進んでおりません。
 ただし、賃金制度は御存じのように小ぐくり最低賃金制、これをつくっていただいた関係もございまして、拡張適用型の道筋を展望しながら業種別最賃、産業別最賃の設定に向けてかなり着々と多くの単産が、産業別組織が取り組みつつございますので、それは遠からず、今日でももうこれまでの歴史で幾つかの、八つぐらい大阪でございますけれども、今後拡張適用を基盤にした産業別最賃というようなものが広がっていくことは可能だと思います。
 労働時間短縮に関して言いますと、私も不勉強なんですが、ゼンセン同盟は前から業種別の労働協約をきちんとつくり上げて、これを拡張適用化しようという道筋をかなり検討されておりまして、一時は、場合によっては地労委に一括持ち込んで、ひとつ地労委を煩わしてでも――第一、団体交渉をなかなかしてくれないというようなこともございますので、企業別にするけれども産業別組織とはやらないとか、いろいろなことが出てまいりますので、そういう労働委員会機能などもひとつ発揮していくというような感じで取り組もうというふうな努力もされておるわけでございまして、御指摘のとおり商工会議所までいくかどうか、豊田さんのところとはしょっちゅう話をしておるのでございますけれども、なかなかスウェーデン型にはいかぬかと思いますが、いずれそういう日をつくるように努力していきたいと思っております。
 それから、三つ目に支援センターの件でございますが、御指摘のとおり、そういう趣旨で申し上げたつもりでございます。
 御承知のとおり、地方の労働基準局では、連合ももちろん加えさせていただいておりますけれども、例えば大阪ですと、大阪府あるいは大阪市、さらにいわゆる通商産業局の近畿通産局ですね、それから建設局あるいは運輸、こういうところの行政のそれぞれ近畿の機関、こういったところなども加わり、かつその関係協だとかそういったところも加わりまして、労働時間短縮の推進機構を設けておるわけですが、それを通じまして努力をされておる。我々は我々なりに努力もし、それぞれの団体が努力を続けてまいっておるわけですね。
 問題は、これが総合化されないところに私ども若干の問題意識を持っておるということを申し上げたかったわけでございまして、例えば南部織物のケースでも、労働サイドの話はそれで努力の結果が実ったりするのですが、実際は、南部織物だとは言いませんけれども、これまでもそういう同種の努力は、業界ごとの努力はいろいろ労使ともにやってきておるわけです。例えば運輸だとか、特に陸運関係だとかやってまいっておるのですけれども、そういう際に、通産サイドといいますか公取サイドは相当厳しく、先ほど井上先生もおっしゃいましたけれども、結構厳しく、カルテルではないかということがある。例えば営業日を統一して少なくするとか、つまり統一した休日をつくってやると、この休日をつくるということ自体は労働問題なんですが、営業日をそろえるということまで踏み込みますから、勢い若干ちょっとどうかなというような議論が出たりするわけなんですね、一例を挙げますと。
 ですから、基準局が中心になってちゃんとその総合化の推進をしていただくとすれば、やはり予算をお持ちになってそれなりの体制を、大阪は労働時間課長が置かれておるのですけれども、それなりのものが全国に置かれているところはごく少ないのですよ。ですから、そういう体制も整備していただき、同時に予算もきちんとつけていただいて、できれば井上先生おっしゃるように、やはり公務員の方がこれは実際監督権を持っているわけですから、例えば基準連合会なり今度の支援センターの支部なりに大阪で委託なら委託をしていただく、そして総合的に推進していただいた方が、府だとか大阪市も金を持っていないとは言えない立場ですから、それなりにいろいろな施策が回転するのじゃないか。一々縦でおりてくるということでは、やはり私どもから見ておりますと、どうしても問題が残っておるような感じでおります。
 以上でございます。
#260
○岩田委員 もう一つお伺いします。
 先ほどのお話を聞いておりますと、関係者の努力で中小企業の事業主、組合、従業員もやはり時短については一生懸命やられてきただろうという背景がうかがわれますね。豊田専務の方のお話と、その辺はまず目的が違いますよね。最近の景気動向もありますけれども、中長期的には千八百なんというのはちょっと無理ではないか、日経連の方向でまいりますと、千九百時間台の半ばというふうになっていますから、随分乖離がありますね。しかし、中小の企業主、事業主というのは一生懸命やってこられたと思いますね。
 そこで、もう一つの問題は、中小の皆さん方のいわゆるコンセンサスがどういう程度進んでいるのか。例えば東京商工リサーチの調べによりましても、最近倒産がかなりふえていますけれども、倒産の原因に、時短を進めなければ困るということでそれを進めたので倒産なんというのは、もちろんございませんね。それから、中小企業の意識調査を各種見ましても、最近一番心配なのは人材不足である。これは中小の皆さんの方が危機感が強いですね。ですから、もっと支援措置を、いわゆる政府の支援を幅広くやってくれ、しかも簡略にやってくれ、我々は一生懸命、人材カバーのためにも将来のためにも時短を何が何でもやるんだということの方が見えてくると思うのですが、実態はいかがでしょう。
#261
○柴田範幸君 私が存じ上げる範囲で申し上げますと、中小企業の皆さん方の大部分の方は、生活大国、特に宮澤内閣になりましてからの経済計画などを機会にいたしまして、やはり世の中の流れなんだ、こういうことを御認識いただいておると同時に、ぜひ積極的にそういう対応をしないと、御指摘のように人手不足でかえって問題を残すという立場からお考えになっておるように確信しております。一々どなたがどうという例を申し上げませんけれども、結局これは大きなコンセンサスになっておるのじゃなかろうかと考えております。
 しかし、せっかくの機会ですから申し上げますと、案外議論されてないのですが私なりに言いますと、中小では大企業との、つまり親企業とのいろいろな関係、商慣行、この問題が御指摘のとおりございまして、我々は運動的には、いわゆる発注企業の方の労働組合を通じまして、そういうシステムを、先ほどの集団的なやり方等の開拓を盛んに松下等でも努力しているわけですね。それは労働組合も力を入れているわけです。しかし同時に、中小零細のところで私なりのネックは、実践的に言いますと、日給制と出来高払い賃金のような感じが今してきているのですね。経営問題とかなんかいうのは確かにございます。ございますが、むしろ日給制なものですから、週休をふやそうとすると月収が減る、これに労働者の方もかなわんなと……。出来高払いもそうなんですね。タクシーとか陸運業なんかかなり出来高払い賃金ですから、休みにしてしまうと出来高が減りますので、出来高払い賃金の基準を上げなければいけないという、つまり、より非常に具体的なネックのところへ差しかかっているわけであって、経営とかそういうところは確かに住先生も御指摘のようにございます。ございますけれども、その辺はもう割り切っていこうというところになってきて、その次の問題として例の商慣行の問題、これもかなりいろいろな手当てをしていただきましたから、かなり前向きに改善されますし、基準局その他総合機関のいろいろな努力があって、これはかなり前向きにいっておるわけですね。
 ところが、労働者の先ほどの年休の話ではございませんけれども、一番どろどろした本当のところが私ちょっと申し上げたいようなところも残っております。ですから、それだけに、これは社会的なゆとり創造事業、これは労働省もおやりになっていますし、先生方も御配慮いただいておるのですけれども、このゆとりを創造する社会的なキャンペーン、こういうものをやって、例えば土曜日は社会的な休日だというようなそういうものをつくり上げていくことが、やはり今ネックになりかかっているところを突破する道ではないか、ちょっと余談になりましたが申し上げたかったわけでございます。
#262
○岩田委員 門間先生にお伺いをしたいと思います。
 確かに、労働条件問題というのは一にかかって労使の自主決定というのが一番望ましいということは、私ども全くそのとおりだというふうに思っております。先生、冒頭に大筋において労働基準法改正は賛成であるとおっしゃいましたが、一定を超えて罰則を規定するということはどうかなというふうに思っております。しかし、労働基準法が施行されて四十五年、その間に社会も変化しましたし産業構造も変化しました。ここに来て、労働のあり方も各種変化をせざるを得ないということが言われておるところです。ホワイトカラーとブルーカラーの問題もきょう提起がございました。やはり今回の労働基準法改正というのは、一にかかって中小企業の問題ではないかというふうに思います。一方では、既に四十時間を達成して、四十時間を切っているという労働者もいるわけですね。一方では、四十八時間という実態が厳然としてあるわけです。したがって、非常に難しい問題だろうというふうに思います。これだけいわゆる格差がありますから、縮めること自体は論理的には簡単でしょうけれども、実態が存在をしておりますから非常に難しいのではないか。
 先般、日本商工会議所の代表からも、政府は介入すべきでない、法律の強制はこれ以上強化させてはならない……、全くそれはそういうふうに思います。先ほどドイツのお話が出ましたが、ドイツも労働協約法と労働条件決定法といいますか、この二つがありまして、いずれも余り発動はされていないというふうに聞きますが、それは日本の場合とちょっと現実も違いますけれども、労使が法律で決められた労働時間を上回って自主的に決定しているということ、日本はそれ以下が随分存在をしている、この差ではないかというふうに思っているわけですね。
 そういった意味からも、今回の法改正というのはまあまあ仕方がないじゃないかというようにも聞き取れるのでありますが、四十八時間と四十時間というこの差について労働基準法の果たすべき当面の役割について、お伺いしたいと思うのです。
#263
○門間進君 労働時間を総体的に短縮するということ自体は賛成でございまして、なるべく労働から解放されるということは、やはり人間にとって必要なことだろうと思いますし、短縮することそのものについて別に反対するわけではないのです。
 ドイツのお話も出ましたけれども、結局ドイツと日本とでは、土壌といいますか、よって立つ基盤が非常に違うわけでございます。ですから、単に国際的な比較だけから、ドイツばかりではございませんで、各国いろいろございますでしょうけれども、単に国際的比較で何時間、何時間ということはいかがなものだろうかというふうに若干私は思っておるわけでございます。
 本改正案の問題につきましても、今御指摘のように、大企業ではほとんどこれは問題のない改正ではなかろうか、何とか運用してやっていけるということだろうと思います。おっしゃいますように、やはりどこら辺からが問題かと申しますと、これまた問題がございますけれども、やはり俗に申しまして中小企業が非常に問題にするところではなかろうか、特に猶予措置の範囲の問題というような点では、中小企業が非常に問題だろうと思います。中小企業も決して労働時間短縮そのものに反対するということではなくて、できるものなら短縮するということが望ましいとは、皆さん考えていらっしゃると思うのです。ただ、いわゆる生産性といいますか広い意味の生産性を落とさずに、現状あるいは現状以上の生産性を維持しながら労働時間を短縮するということが、現在の土壌の中においていかに困難であるか。
 先ほど、東京リサーチでおっしゃいましたけれども、いわゆる労働時間短縮で倒産した企業はない、確かにそれはそうでございましょう。ただ、労働時間を短縮するということは、企業によって通常の業務の中で吸収できる企業もあるとは思いますけれども、やはり人数をふやさなければどうしても労働時間短縮が達成できないところもあるのではないか。極端に申しますと、先ほど有給休暇の取得率の問題も出ましたけれども、有給休暇を完全に一〇〇%取得しようとすれば、現在の要員体制を、これは大企業も含めてでしょうけれども、ある程度見直して増員していかなければ、有給休暇の完全達成というのは、仕事の面を考慮しますならばやはり相当難しい問題があるのじゃないか。したがって、労働時間短縮だけで倒産という問題はございませんけれども、いわゆる人手不足とかその他もろもろの問題、親企業あるいは取引先との構造的ないろいろな問題が非常にございますから、そういう現実的な問題の上に立ってさてどうするのかというところが、私は問題だろうと思います。
 したがって、私なりに申し上げるようでございますけれども、法律というのはあくまでも最低基準でいいのだ、それ以上のものはいわゆる政策あるいはいろいろな御指導、御支援によって高めていくということなんで、法律というのは罰則つきのものだ、これ以下のものは違法なんだ、いわゆる刑罰を科するのだという法律の枠というものはやはり最小限の問題として考えるべきだ、その上に立っていろいろな御指導をされるということが必要ではなかろうかと思うのです。
 労働基準局あるいは基準監督署からいろいろ御指導を賜っているわけなんですが、ただ、私、この際にちょっと申し上げておきますが、基準局あるいは監督署の御指導ということになると、これは実際問題として企業者としてはやはり相当の圧力をこうむっている。そういうことを申せばなんでございますが、特に中小企業等におきましては、たたけばほこりが出るというようなことで、どこかをすれば何らかの問題が出てくるのは、私は多くのところの実情だろうと思うのです。そうしますと、労働時間で強力な御指導というものが、単なる御指導という段階だけでとどまっておればこれはいいのですけれども、それに変に逆らうと、いろいろな基準法違反というものが摘発されるおそれがないかということで、権力と申しますとなんですけれども、やはり一抹の問題を中小企業者の方では考えるということが事の実態ではないか。ですから、法律違反という面においては私としてはできるだけ避ける、しかし、実態はそれを上回ったものにしていくというのは、政策的あるいはその他の配慮によってなさっていただくことには非常に賛成なわけでございます。
#264
○岩田委員 ありがとうございました。
#265
○岡田座長 次に、永井孝信君。
#266
○永井委員 永井でございます。本日は御苦労さまでございます。
 もう既にお二人から個々の具体的なケースについてはかなり突っ込んだ御質問がございましたので、重なることは避けていきたいと思います。
 今も少しやりとりを聞いておって、日本と日本が労働時間の短縮問題では達成目標の対象にしているいわゆる西欧型と比べると、決定的な違いは、今岩田君からドイツの例が出されましたけれども、いわゆる労働基準法にかかわるそういう問題が、ヨーロッパでは最低条件を上回っているという現実がございますが、日本の場合は押しなべて労働基準法の最低条件として決めたものが現実は最高基準になってしまっている、実はここの違いではないかと思うのです。
 非常に短い時間ですから細かく何回もやりとりすることができませんので、まず豊田さんにお伺いするのですが、千八百時間の計画を定められた期間に達成を求めることは、現実的に言って適切でないという趣旨の御発言がございました。結果として達成されるものだという御発言がございました。確かにそのことは私は否定をいたしません。
 しかし、振り返ってみますと、日本が経済復興を果たして労働時間の短縮問題が政治課題になってきたのはかなり古い時代でございまして、田中内閣の時代からこの問題が提起をされてきたのですね。そして、大平内閣のときに新経済七カ年計画というのがつくられたのですが、そのときに大平内閣が目標に挙げましたのは、一九八五年までにヨーロッパ並みに追いつくんだということがその新経済七カ年計画の柱だったわけです。ところが、これが達成できなかった。そして中曽根内閣になって前川レポートが出てきたりして、何としてもこの千八百時間の達成は必要なんだ、国際的に見ても日本と海外との経済摩擦を考えた場合でも、千八百時間の達成は不可欠なんだ、そういう観点から前川レポートが出されて、中曽根内閣が一九九三年までに千八百時間を達成したいということで国会に提案をして、前の基準法の改正がされたのですね。ところが、ことしもう一九九三年なんです。今度の改正案では来年の四月から四十時間ということにするのですが、これも一年おくれ、しかも、かなりの企業が猶予対象になっておりますから、現実は一九九七年でないと四十時間は達成できない、こういうことになっているのです。
 しかも、このことについてあえて一言申し上げますと、日にちは忘れませんけれども、去年の九月十二日にEC議会、ヨーロッパの欧州議会ですね、EC議会の代表団が日本に来られました。そのときに日経連の永野会長と会談をされておるのですが、今もちょっと岩田君から話が出ておりましたけれども、日経連の会長は、労働時間の短縮問題なんというものを法律で定めるのはまことにけしからぬ話だ、労使間で決めることなんだ、こういうことで、いわばEC議員団のそういう時間短縮に対する要請は内政干渉ではないかということまで発言されまして、そのことを受けて私ども労働委員会のメンバーと会談をしたのですが、私どもはかなり厳しくやられたのですよ。
 経済摩擦というのは単にウルグアイ・ラウンドで市場開放だけの問題ではないんだ。簡単に言いますと、長時間労働で賃金が安くて福祉がおくれていて生活環境が悪い、そういう日本でつくられた製品と、それと反対に、時間が短くて賃金が高くて福祉も進んでいるというヨーロッパの製品とが、同じ自由経済だということで同じテーブルの上に並べて競争することほど不公正なことはない、一体、日経連の会長のそういう発言をあなた方は認めるんですか、国会は何のためにあるんですかと、ここまでやられたのですよ。
 こういうことについて、まず一言御感想をお聞きしたいと思うのです。
#267
○豊田伸治君 私がお答えすべき筋合いかどうかちょっと迷いますが、せっかくの御質問でございますから、一、二関連して考えておりますことを申し上げておきたいと思います。
 私は、最初に千八百時間というのは政策目標として理解するということを申し上げたわけでありますが、御指摘のように、私の記憶に間違いなければ昭和六十一年の新前川レポートで千八百時間という時間が出てまいりました。ただし、このときは西暦二〇〇〇年を目指してできるだけ早い時期にアメリカ、イギリスの水準を上回る千八百時間、こういう指摘ではなかったかと覚えております。
 問題は、では千八百という根拠がどこにあるのかということが実は具体的には示されないままに今日まで来たということにあります。したがって、企業経営者が理解しがたいのは、なぜ千八百でないといけないのかということについてのいわばコンセンサスがないままに今日まで来たというのが現実ではないでしょうか。ですから、千八百というのはこういう考え方で千八百なんだという説明が今までなかったと私は考えます。したがって、これが企業経営者にとって非常に理解が得にくかったことであります。
 ただ、問題は、日本の労働時間制度をどうするのかというのは、大げさな言い方が許されるならば、私は、日本の将来像をどう思い描くのか、日本の社会のあり方をどう描くのかということと実は密接不可分だろうというふうに考えております。その際に、ヨーロッパ、アメリカの労働時間と我が国の労働時間を比べてみますと、御承知のとおり、アメリカ、ヨーロッパの時間短縮というのはワークシェアリングであります。ワークシェアリングということはウエッジのシェアリングを伴うわけであります。ところが、日本の場合の時間短縮というのは、実はワークシェアリングになっていないわけです。それは賃金の支払い形態と密接につながっているわけであります。したがって、雇用というものを確保しながら、雇用というものを維持しながらどうしたら時間短縮ができるのかということは、極論しますと、欧米が経験していない経験を今日本が経験している、こういうことではないかというふうに私は考えております。
 そこで、週休二日制というものを考えてみますと、これはごく単純な計算をしますと、二日働いて一日休むという社会なんですね。年間三百六十五日でございますから、仮に週休二日制ができ上がれば、年間五十二週でございますから休日が百四日ですね。それに国民の祝日等が加わってまいりますから、そうすると、大ざっぱに言えば百二十日の休日がある。三百六十五日は変わらないといたしますと、年間の労働日数は二百四十五日であります。ということは、二日働いて一日休むという社会であるということが言えるかもしれない。この中には年次有給休暇は入っておりませんから、もし年次有給休暇を一〇〇%近い形で消化していくという前提に立って考えると、一体、日本の将来の経済というのはどんな姿になるのだろうか、企業経営というのはどういう姿になるのだろうかというのが、今私が考えている直面している課題であるというふうに考えております。
 お答えになるようなならないようなことでございますけれども、これでお許しをいただきたいと思います。
#268
○永井委員 考え方の違いがありますから、ここで細かくすり合わせをすることはできませんけれども、しかし、少なくとも国際社会の中の日本が孤立しないようにということを考えるならば、労働条件にかかわる問題も国際的な水準に到達させるというのは政策的には当然なことなんですね。そのための努力というものは経営側の場合も積極的に考えて対応してもらわなければいかぬと思うのです。
 とりわけ、今話が出ておりました中に、年休の消化率が悪い、これは何回も言われてきたことですが、年休の消化率が悪いということは、例えば家族が病気になっても十分に介護休暇がとれない、そういう法律的な制度がない、あるいは自分が病気になったときに病欠で休めば成績に影響するとか、いろいろなことがあって、ヨーロッパのように十分に年次有給休暇を消化することができない条件に今置かれているのです。とりわけ職場の雰囲気で休暇がとりにくいとか、同僚に迷惑をかけるとかいう問題がかなり高い数値で出ております。これは労働組合もそうですが、経営者側の方も積極的に年休がとりやすいような条件を整備することが私は時間短縮にとって欠かせない条件だと思いますので、これは時間がありませんから御答弁は要りませんけれども、ひとつ積極的に努力をしてもらいたいと思うのです。
 次に、柴田さんにお聞きをするのですが、今も話が出ておりましたけれども、例えば法律をつくって、あるいはそれに基づく政令がつくられて、その目標に向かって一生懸命努力してきた、しかし、土壇場になったら、数の論理で国会で決められることもありますけれども、政府が政令の勝手な変更をしてしまった、これに対して非常に不満もあるだろうし不信感もあると思うのですね。
 一言で結構ですから、こういう状態が続くと、今度の改正法で一九九七年に間違いなくその法律が実行されるというふうに信頼を持っていらっしゃいますか、どうですか。
#269
○柴田範幸君 これは相当の方が不信感を抱いてしまって、また緩めていただけるのじゃないか、こういう印象を持っている向きが出てきていると思います。だから、国の方も相当責任を感じていただいて、二度とかかることが生じないように、そのためにも四十四時間制というものを本年度早期に実現するんだというところを何らかの形でアピールしていただきたい、こう思います。
#270
○永井委員 柴田さん、今岩田君からも聞いておりましたけれども、労働組合法の関係ですけれども、拡張発動基準ですね。これは今、日本は四分の三になっているのです。これは私個人の見解ですけれども、ヨーロッパ並みに五〇%以上ということにするのが妥当だと思いますけれども、労働組合ではそのことについてどういうふうな見解をお持ちですか。
#271
○柴田範幸君 これは全く御指摘のとおり、二分の一にしていただきたいと思っております。
#272
○永井委員 その次に移って恐縮ですが、井上副会長にお伺いいたしますけれども、下請企業の下請振興基準の問題についてたしか御提起がございましたね。このことがなかなか実効を上げていないということで御提起がございました。
 ちょっとここに資料がございますが、この下請振興基準というものがあることを知らなかった、あるいは、知っていたけれども内容を全く知っていない、そういうものがあるけれども中身はわからない、こういうふうに答えた中小企業の皆さんの統計をとりますと、飲食品では、一番高いのですが、八一・四%の企業の皆さんが知らないのですね。あるいは金属製品で見ますと、七九・二%の皆さんが知っておられないのですよ。あるいは一番よく典型的な例として言われる自動車でいいますと、トヨタとか日産とか大きな企業がありますが、これとの関係で系列の下請がありますね、そういう関係の企業で六七%の企業がこういう下請振興基準のあることを知らないのです。だから、これは活用されていないという最大の原因だと私は思うのです。
 これは、経営団体も労働組合も、あるいは井上副会長のようにそういう研究に携わっていらっしゃる組織も含めて、もちろん行政が第一でありますけれども、もっと具体的にPRをして活用できるようにしていただきませんと、幾ら法律をつくっても実効が上がっていかないと思うのです。
 これについて井上さん、どうでございましょう。
#273
○井上浩君 下請関係は非常に難しい問題でございまして、先生おっしゃったように、振興基準だとか、それから下請代金支払遅延防止法なんというものがありますけれども、罰則がないのですね。問題があった場合にはその企業名を公表するというぐらいのことで、しり抜けになっている。だから、そういう点では実効が余り伴わない。実効が伴わないから、皆さんも余り関心を持たないということになるのだろうと思うのです。だから、できれば結局そういうものにも罰則をつけ、もう一つは、先ほど言いましたように、いろいろな共同行為を認めるのが大変いいのではないかと思うわけなんです。
 一般に、下請企業だけに限りませんけれども、中小企業が当面しているいろいろな問題というのは、その根っこには過当競争があるのではなかろうか。過当競争がある限りは、税金をまけてやっても金利を安くしてやっても補助金をやっても、その競争の過程で全部どこかに吸い取られてしまうということがあるわけです。だから、そういう点では、過当競争をとめるために、一つは共同行為を認める、独禁法の除外規定をつくるということが非常に必要だろう。他面では、そういう罰則もつける。
 そして、もっとそういう関係の行政、これは通産省と都道府県庁で結局やっておりますが、そういうところももっと人員とか予算とかそういうものを強化してやらぬといかぬのではないか。私の知っている企業にも通知が来ているのです。何かおりてくるのだけれども、みんな読まないのです。だから、もっと積極的にいろいろPRするというような行政もこれから強化していく必要があるのではなかろうかという気がいたします。
#274
○永井委員 細かいやりとりができなくて申しわけないのですけれども、割り増し賃金の関係です。
 豊田さんは、現実と乖離するような改正は問題がある、こういうふうに発言をされましたね。これは昭和二十二年に労働基準法がつくられたときにいろいろな記録を調べてみました。当時から五〇%にすべきだという意見がかなりあったのですね。ところが、戦後の混乱期だということで、とりあえず二五%にしておこうじゃないか、順次改善すればいいということで二五%に決まったまま現在に来ているのです。
 ところが、日本はアジアの盟主なんだけれども、アジアで見ましても、インドで一〇〇%でしょう、インドネシアが五〇%か二〇〇%、あるいはイラクでも五〇%か一〇〇%、近くではネパールが五〇%、パキスタンが一〇〇%、シンガポールが五〇%、トルコが五〇%、タイが二〇〇%、韓国は五〇%、日本ほど低い割り増し賃金のところはないのですよ。
 だから、コストの関係とかいろいろな経営にはね返ってくる問題はありますけれども、宮澤内閣が唱えている生活大国論からいくと、時間外に働く者についてはそれだけの保障も要るし、そういうことを通してできるだけ時間短縮を進めていくようにしていきたいというのが私どもの願いでありますけれども、経営者の立場から、どうしてもこれはだめですか。
#275
○豊田伸治君 私が先ほど申し上げたのは、御承知の労働省労働基準局がまとめておられます昨年の総合実態調査、ことしの三月に発表されたものでありますが、それに基づきますと、二五%である事業場というのは八九・四%に及んでいるわけです。これは約一万四千事業場が調査対象事業場でございますから、この八九・四%、ざっといえば九〇%近い事業場が法定割り増し率で運用しておられるという実態がある。この実態に御配慮をいただきたいということを申し上げたのです。
 もう一つは、先ほど申し上げたことですが、雇用調整機能というものを全く無視できないと私は考えております。仕事が忙しくなって人を雇い、暇になって人を解雇できるのならば、ある意味でいえばこれは簡単なことなのであります。そうではなくて、仕事が暇になってきましても雇用は何とか最後まで手をつけないで頑張ろう、そのためには残業時間で調整をする、こういう機能を持っているということもあわせて御考慮いただきたい、こういう趣旨でございます。
#276
○永井委員 終わります。
#277
○岡田座長 以上で岩田順介君及び永井孝信君の質疑は終了いたしました。
 次に、石田祝稔君。
#278
○石田(祝)委員 公明党・国民会議の石田祝稔です。四人の陳述者の皆さん、大変に御苦労さまでございます。ダブらないように気をつけていろいろとお聞かせいただきたいのですが、ダブりましたらまたよろしくお願いをしたいと思います。
 まず最初に、私は全員の方にお伺いをしたいのですが、労働時間を短縮するということについていろいろな委員の方からもお話がございました。国内の生活大国の問題とか、国外に対しては日本の労働条件の問題、こういうこともございましたが、これから労働時間短縮をどういうふうに位置づけて考えておられるのか、順次、豊田陳述者から簡単にお願いをしたいと思います。
#279
○豊田伸治君 時間短縮は、先ほど来申し上げていることですが、私は避けて通れないことだと思っております。
 ただ、例えば週四十時間制というところに一挙にいけるかいけないのかという問題だけでありまして、その意味では、どう考えてみましても、ここ数年のうちに四十時間制は実現する現実的な課題でありますから、それは十分理解しているつもりでございます。
#280
○門間進君 時間短縮そのものについて反対ということではございません。週四十時間労働というのは非常に結構でございますけれども、そこに持っていくには、先ほど来いろいろ出ておりますようにいろいろな問題もある。結局、いかにソフトランディングせしめるかということが当面の課題ではないか、特に中小企業における課題ではないかというふうに思っております。
#281
○柴田範幸君 例えば財界人セミナーなどが開かれたりして私どもも御一緒する機会も多いのですが、ゆとりと豊かさの実感できる日本をつくろうということは、まさにコンセンサスになっていると思うのですね。今や国策であるということですから、多くの問題点は残しておりますけれども、先生方の御努力はもとよりでございますが、私ども気合いをそろえまして頑張ればそれほど難しいことではない。要するに週休二日ですから、週休二日を達成するということで努力できるのではないか、こう思っております。
#282
○井上浩君 先ほど申し上げましたけれども、労働時間短縮は大変いいことだ。いろいろな理屈を言いますけれども、基本的に何かというと、結局人生というのは有限なんだ、人間の生命は有限なんだということに基本があると思うのです。だから、そういう面では労働時間の問題は非常に重要であって、短いほどいいんじゃなかろうか、しかも、それを短くすることは可能である、現在の人知をもってすれば可能であると思っております。
#283
○石田(祝)委員 井上陳述者にお伺いをしたいのです。
 生産性をこれから頑張って上げていって、日本が国内的に労働時間を短くしようと頑張っていく、そういう中で日本も発展をさせていく、また、日本の置かれている国際的な立場も十二分に考慮しながらやっていくと、この週の労働時間というのは大体どこのあたりまで短くできるというふうにお考えですか。
#284
○井上浩君 どれくらいまで短くできるかというのは、なかなか具体的には申し上げにくいと思うのですが、それはヨーロッパの例もありますから、やがて三十五時間とか三十時間とか、だんだん短くなっていこうと思うのです。
 ただ、働くということは、単に今苦痛に考えていますけれども、楽しい人もいるわけなんですね。だから、ゼロには多分ならないだろう、やはり三十五時間とか三十時間とか、いわゆる本当に人間が楽しい生活を確保できるようなところまではどんどん短くなっていくのではなかろうか。職場は苦しいという何か前提がありますけれども、将来は、職場も家庭と同じように楽しい職場になっていくんじゃないか。そうなれば、余り労働時間の問題も出てこなくなるかもしれないというようなことも感じないでもございません。
#285
○石田(祝)委員 これは端的に全員の方にお伺いをしたいのですが、今回のこの法案、改正案に大筋賛成というふうにはっきり言われた方もいらっしゃいますけれども、この賛否を端的にお伺いをしたいのです。
 その中で、例えば賛成だという中でも、不十分だが賛成だという立場と、ちょっと厳し過ぎるけれどもやむを得ないという賛成、賛成でも若干こういう濃淡があると思うのですが、豊田陳述者から順次その賛否の態度と、ちょっと簡単に理由をお願いしたいと思います。
#286
○豊田伸治君 私は、先ほど改正案について、特に法定労働時間から時間外・休日労働の法定割り増し率の問題まで含めまして、大筋で賛成であるというふうに申し上げました。
 法定労働時間の問題につきましては、これは実態からいけば問題は残りますでしょうが、来年四月一日、四十時間原則というのはやむを得ない、ただし、猶予措置がとられることが前提条件であるということでございます。
 特に、この前提条件につきましては、実はこの機会にお願いしておきたいと思います一つの問題点は、労働基準法第八条の見直しの問題であります。あの八条は基準法制定以来変わっていないわけであります。ところが、企業の実態、経営の中身というものはどんどん時代とともに変化をいたします。例えば一・五次産業とか二・五次産業という産業があると言われてきておりますのもそういうあらわれであろうと思います。少なくとも八条を時期に応じて見直していく、その上に立った猶予措置がどのように組まれるかということだと思います。
 それから、変形労働時間制でございますが、これは積極的に賛成だということを申し上げました。私どもの実態調査でも、一年間を平均して週四十時間制ができるならばかなり弾力的な時間運営が可能になるわけでありますし、先ほど申し上げましたように、年間総労働時間の短縮のためには欠かせないという答えが出てまいります。そういう実態を踏まえて、この年間の変形労働時間制については積極的に賛成であるというふうに申し上げたわけであります。
 それから、時間外・休日労働の法定割り増し率の問題につきましては、先ほど永井先生の御質問にお答えしたとおりでございます。現状では、特に四十時間制実施の問題と、実施の時期と割り増し率の引き上げをセットにするということは余りにも負担が大き過ぎる。先ほど申し上げたような現実がございますから、この現実を踏まえていただき、なおかつ四十時間制実施の時期というものとのバランスを考慮していただく必要がある、つまり、現状では変えるべきではないというのが結論でございます。
#287
○門間進君 私も先ほど大筋において賛成ということを申し上げたわけでございますが、これは本法案、改正案を拝見した上において大体おおむね賛成ということでございます。と申しますのは、政令とかその他命令の方にゆだねられている事柄がたくさんあるんじゃないかと思っております。
 例えば、法定労働時間の四十時間制の猶予措置の対象企業というようなものが政令で定められることになっておりまして、その内容が現在の政令と同じなのか、あるいはまた、そこでいろいろの考慮が払われるのかということもいろいろあろうかと思います。その他、割り増し賃金の場合も、二割五分以上五割までというようなことで、その内容も政令その他にゆだねられておるということでございますので、法案そのものについては、まあこういうものかなということで、特別に反対という問題ではないわけでございます。ただ、希望といたしまして、その政令の中にどのように今後配慮していただくかという希望を申し述べたというわけでございます。
#288
○柴田範幸君 先週野党四党の共同要求というものをおまとめいただいたやに伺っております。この要求に賛成でございまして、自民党の住先生お越しでございますが、ぜひこれを含めて、今通常国会中に長年の懸案でありますこの四十時間制へ向けて大きく結論を出していただきたい、こう期待しておる次第でございます。
 ちょっと恐縮ですが、一言補足いたしますけれども、先ほど来労使自治と法律の関係がいろいろ議論されておるのでございますが、私ども、労使自治を否定しておるわけじゃございませんで、そこでまず大いに議論をして、きちんとしていかなければいかぬという立場に立っておることは事実でございますが、組織率の現状等もございますし、公正な社会ということを考えてまいりますと、日本国憲法にもあるように、なぜ制定されておるか、つまり、労働条件の最低を法律で決めろということをなぜ決めてきたかという人類の歴史に沿って判断をしていただければ、これは当然法制化すべきものはきちっとしていく。そういうことが、特に言われておる日本のこの過当競争体質、これでみんなお互いに泣いておるわけですから、経営者も泣いていますが我々も泣いている、こういう状態を克服する道であろうと思っておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思っております。
#289
○井上浩君 一番初めに週四十時間制の関係のこと、これは賛成ですけれども、ただし、例外規定を置かなくて、全面的に全産業に実施するという条件で賛成です。
 それから、三月の変形の関係、これは一年間ではやはり長過ぎる。ただし、一日の上限の時間を短くするというような厳しい条件がつけばこれでもいいんじゃないかという気がいたします。
 それから、割り増し賃金の関係、これは五〇%でも私は可能であると思うわけですが、ただ、これを命令に委任するということについては問題がないこともないんじゃないか。これは、事業主の方から見ますと、大げさに言えば財産権の侵害といいますか、大変経済的に影響が大きいわけですから、やはりこれは法律で決めるべきではないか。議会に対する立法権の侵害というとちょっと大げさですが、そんな感じがしないでもございません。
 裁量労働について、これも対象業務を命令で規定するということになったわけですが、これも同じような問題があると思うのですが、適正に命令が決められればよかろうと思います。
 それから、年次有給休暇の関係のこと、これは従来一年で資格が生じたのが六カ月に短くなりましたから、そういう面では賛成、ただ、日数が全体としては少ないという考えです。
 それから、時短促進法の関係、支援センターの指定、そして支援センターですか、これについてはやはり公務員がやるべきではないかという考え方です。
 それから、今回の改正の全般について、先ほどからいろいろありましたけれども、私は、法律をつくった場合、十人の人が十人全部が違反する法律は悪法だと思います。もちろん戦争中の経済統制法規だとか現在の交通法規とか所得税法なんかは、あるいはそうかわかりませんが、一般的には、十人の人が十人とも全部違反するのは悪法だ。逆にまた、十名の人が一人も違反する人がないというような法はこれは要らないと思いますね。要らない。だから、十人のうちで二人か三人がひっかかるというくらいの法律はいいだろう。私は、そういう点で、今度の改正法の条文はいろいろなひっかかりがあるかわからないけれども、この程度のことはしようがないと思います。そういうことです。
#290
○石田(祝)委員 一年間猶予の措置の延長の問題でお伺いをしたいのです。これは豊田陳述者にお伺いをしたいのです。
 これはしようがないというふうな御意見だったと思うのですが、これは今景気が悪いから延ばしてもらった方がいい、助かった、そういういわゆる景気に左右されるような話なんでしょうか。
 また、そうすると、今回一年限りということになっておりますけれども、もうちょっと景気が悪いのが続けばさらに一年延ばしてもらわなくちゃならない、こういうふうにいわゆる時短というものが景気で左右されるような考え方、これはどうなんでしょうか。これからも景気というのは波があるわけですし、そういうふうなお考えなのかどうか、簡単にお伺いをしたいと思います。
#291
○豊田伸治君 私はこれは一年間の時限立法的色彩のものであると理解をいたしております。したがいまして、今回の長期にわたる景気低迷が、特に昨年の後半以降大変厳しくなってきたことは御承知のとおりでありますから、言ってみれば緊急避難的な措置だというふうに理解をいたしております。
 したがって、そういうエクスキューズが来年以降も通るかということになってきますと、これはそのときどきの経済情勢を踏まえなければいけないのではないかというふうに考えております。
#292
○石田(祝)委員 これは法的な問題でちょっと門間陳述者にお伺いをしたいのです。
 平成五年の四月一日から四十四時間、ことし四月一日から、そういうふうにいろいろな事業所で準備をしておった、労働基準局もそういう対応でやっておった、それが急遽一年先に延ばされたということで、現場の混乱、また労基行政に対する信頼感が失われたとか、いろいろな問題がありますが、門間陳述者は弁護士ということで法律の御専門家でもありますから、法への信頼感ということ、また行政への信頼感、こういういわゆる法体系というものに対する信頼感の観点から、景気が悪くなったから延ばす、エクスキューズがあったから一年間、こういうことはどうなんでしょうか、法体系としていいことなんでしょうか。
#293
○門間進君 確かに三月の政令改正で一年間猶予ということでございまして、先ほど来出ましたように、不信感を抱かれたというところもあろうかとは思います。ただ、私は、不信感ということ自体がおかしいんじゃないか。というのは、法律はいわゆる最低限度でございますから、そこで一生懸命努力なさってできるならば、それは仮に猶予期間があったとしても四十四時間体制になさるとか、あるいはもう少し少ない時間体制になされば結構なんで、別に損をしたとかだまされたという意識がそもそも問題じゃないか。それよりも上回ったことをされるなら非常に結構なことなんで、法への不信というのはどういうものかなというふうに私は思っております。
 法というのは、私ちょっと大げさに申しますけれども、特に罰則を伴った法というのはあくまでも現実を無視したものであってはならない、かくあるべきだからこうすべきだ、こうなったからこうだということはやはり問題じゃなかろうか。さっき経済情勢の変化によってどうだということを御質問もあったようでございますけれども、何年か先の日本の情勢、特に政治情勢、経済情勢はどう変わるかわからないわけでございます。何年か前にこう決めたからしゃにむにそれを押し通す、しかも、それを刑罰を持った法規で押し通すというのはいかがなものでございましょう。やはり柔軟な対応ということが求められてしかるべきじゃないかと思っております。
#294
○石田(祝)委員 続いて、変形労働時間制の問題でお伺いをしたいのです。
 現在、上限ということで一日十時間、一週五十二時間ということで行われておりますけれども、豊田陳述者と井上陳述者にお伺いをしたいのですが、これは労働省への建議の中でも、現在の三カ月の変形制よりもこの一日十時間、一週五十二時間というものは縮小の方向で検討すべきだ、こういう建議が出ておりますが、お二人にお伺いをしたいのですが、具体的にどのくらいが適当だというふうにお考えになっていらっしゃいますか。
#295
○豊田伸治君 今の御質問の趣旨は上限にかかわる御質問だと理解してお答えをさせていただきたいと思いますが、現在の三カ月型の上限規制は、御指摘のとおり、一日十時間、一週五十二時間、それから、一週に一日の休日の確保ということがあることは御承知のとおりですが、現在ほとんど機能していない。これは労働省の調査を見ましてもそうでありますけれども、わずか五%に満たないわけでありまして、そうなってきました原因の大きな一つは、季節によって業務に繁閑の差が著しいものでなければとれないということが一つございました。もう一つは、一日、一週の上限規制に絡んで、労働組合の要求との間に接点を見つけることが非常に難しかったということがございました。そのために、現実に三カ月型の変形労働時間制が機能しないままに今日に至ったというふうに私は理解しております。
 したがいまして、一年以内の変形期間を切るという場合でありましても、ただいまのところ、私が承っております解釈は、三カ月型をとる場合には現在の三カ月型の制限はそのまま生きると伺っているのですが、これを半年とか九カ月とか一年という期間で変形制を組むときには、上限規制をかなり弾力的に設定いたしませんと、現在の三カ月型が機能しないのと同じ結果になるのではないか、そのことを憂慮しております。
#296
○井上浩君 上限の問題ですけれども、これはやはり一般の業務と有害業務と分けて考えた方がいいだろうと私思うわけなんです。三十六条で労使協定しますと、現在は時間外労働は上限がないわけですけれども、有害業務だけは一日二時間という限定があるわけですね。だから、この変形制の労働時間の場合でも、有害業務の場合には余り長時間暴露しますとやはり中毒なんかしますから、それは有害業務の場合には一日八時間以内、それで、それ以外の場合には最大限でも九時間、九時間の場合、一時間休憩がありますと十時間拘束になりますから、そのくらいが精いっぱいではなかろうかという感じがいたします。
#297
○石田(祝)委員 では、最後の質問ということでお願いしたいのですが、割り増し賃金の問題が何人かの方からも質問が出ましたけれども、現在、この割り増し賃金基準にはボーナスが入ってないということはもちろん皆さん御存じだろうと思うのです。だから、実際、例えば二五%の場合、ボーナスを年間三カ月もらっている人であれば、ボーナスを含めた賃金を考えた場合に、二五%割り増しをもらってもこれは一円も基本的にはふえていない、こういう計算にもなるわけですが、この時間外の割り増しのパーセントと休日の割り増しのパーセント、それぞれ皆さんどのくらいが適当だとお考えなのか。
 それとあわせて、現在ボーナスが入っておりません。これについてどのようにお考えなのか、時間の関係もございますので、端的に豊田陳述者から順次お答えをお願いしたいと思います。
#298
○豊田伸治君 先ほど申しましたように、私は、時間外、休日は現在の二五%でいくべきである、ただし、中長期的には見直しが必要になるだろうというふうに考えております。
 計算基礎賃金の見直しの問題につきましては、これは単に賞与の問題のみならず、住宅手当等の問題も見直す必要があると考えておりますが、御承知のとおり、先般の労働基準法研究会の報告では指摘がありましたけれども、これは中基審の論議の結果、今回の問題の中には入っていない、こういうことでありますけれども、継続して我々としては検討すべき課題であるというふうに考えております。
#299
○門間進君 割り増し賃金率を幾らにするかということは非常に難しい問題でございますが、私、ついせんだってもある会社からお話を承っていますと、その会社はもう三割五分払われています。そして、ことしの春の闘争では四割というところまでいっていらっしゃいます。ですから、それは名前は申しませんけれどもある大企業でございますので、そういうできるところはおやりになるということは、私はそれで結構だろうと思います。特に労使合意の上でおやりになるのですから、それはそれで結構だ。ただ、労働基準法で幾らと決めることは、これは何遍も申すようですけれども、罰則を伴った法規でございますから、やはり先ほどもありましたように、約九〇%近くがまだ二五%というときにいきなり罰則を伴った割り増し率を上げるというのはいかがなものだろうかというふうに考えております。
 それから、最低賃金の基礎に賞与を入れるかどうかというような御質問でございますけれども、ボーナスの性格というもの、これは単なる賃金の途中の後払い的なものなのかどうかということにもかかわってまいります。いわゆる利益分配というような問題もあろうかと思います。そして、それこそ景気の動向に左右されるというような問題もございますので、一つの検討課題ではあろうかと思っております。
#300
○柴田範幸君 まず、割り増し賃金率につきましては、冒頭申し上げましたとおり、時間外三五、休日五〇ということでお願いをしたいと思っております。
 一時金の問題につきましては、特に今回一年間の変形労働時間制が出てまいっておりますので、一年間で物を考えようということになるのであれば、これは当然一時金を算出根拠に入れてもらうのが筋ではないか、こういうふうに考えております。
 なお、法律で賃金率を定めることの是非が論じられておるのですけれども、私どもは、国際的に見ましてもこれはむしろ法律で決められておる、上げるか上げないかというところは別でございますが、それは議論が残りましょうけれども、少なくともこれはやはり法律できちんと決めるということが当然ではないかと考えております。
#301
○井上浩君 最初に、時間外労働の割り増し賃金は五〇%でもいい、私は可能であると思います。それから休日労働、これはキリスト教の聖書を見ても、一週間に一回休まないのは犯罪だとかなんとか書いてありますが、これは一〇〇%でもよかろうと考えます。それから、深夜業も一〇〇%でもいいかという感じがいたします。
 それから、割り増し賃金にボーナスを入れるかどうか、これは、実は労災保険でも同じような問題が起きたわけなんですね。最初は、保険料を取る場合これは入っていましたが、今度は払う場合、これは労災保険では現在では年金については解決をしているわけなんですね。だから、普通の賃金の分の保険給付と、ボーナス分の労働福祉事業からの支給金という形で両方とも入っております。だから、割り増し賃金にももちろん算入してもいいのでしょうけれども、規則をつくる場合に非常に技術的に難しいのではないかという感じがいたします。入れることは入れても、私、賛成ですけれども、ただ非常に難しいということが私の感じです。
#302
○石田(祝)委員 どうもありがとうございました。
#303
○岡田座長 以上で石田祝稔君の質疑は終了いたしました。
 次に、金子満広君。
#304
○金子(満)委員 私は、日本共産党ですが、限定された時間ですから端的に伺いたいと思います。特に時間短縮の問題と変形労働制の問題について伺います。
 豊田さんに最初に伺いたいのです。
 日本の長時間労働、そして過密労働、しかも、そういう中で発生している過労死というのは、国際的にも非常に厳しい指摘をされている。特に、過労死というのは日本語が国際語になって、私ども外国に行ってもカローシと言えばすぐわかるのですね。それほど有名になっている。
 そこで、千八百時間の問題ですが、豊田さんは、計画はよいとしても期限内に達成することは困難ではないかという意味のことを言われたと思うのですね。そういう中で、例えば祝日とか休日というのは、それがあっても列車も動くし飛行機も飛んでいるという意味のことも言われました。確かに、なるほどと瞬間は感ずるのですけれども、考えてみると、ヨーロッパでも休日があり、そして祝日もあるわけですね。そういう中で、同じように列車も飛行機も走っているわけですけれども、日本と違ってヨーロッパでは、既にフランスでは週三十九時間労働になっているわけですね。それから、ドイツでは年千八百時間どころか、先ほどもお話がありましたが、労使協定という中で千六百時間という方向で進んでいるわけなんですね。だから、こういうことを考えたときに、だれが見てもドイツと日本は違うことは事実で、なぜ違うか、ここの点を端的に豊田さんから伺いたいと思うのです。
    〔座長退席、永井座長代理着席〕
#305
○豊田伸治君 私は、基本的にはこれは民族の物の考え方の問題ではないかというふうに考えております。
 御承知のとおり、労働時間の国際比較というのは大変難しい問題である、これは賃金の国際比較と遜色がないぐらいに実は労働時間の国際比較というのは難しいと考えております。
 今日、我が国で紹介されておりますドイツの時間制度につきましても、これは金子先生御存じのとおり、製造業の生産労働者の労働時間でございますね。言いかえれば、勤労者が働いて賃金をもらい税金を払った時間、いわゆるタックス・ペイ・アワー、ただ年次有給休暇で休んだ時間はカウントするようでございますけれども、タックス・ペイ・アワーで計算されております。
 我が国の場合、各種の統計はかなり精度が高いわけでありますけれども、果たしてそういうタックス・ペイ・アワーで本当にとれるのかどうかということになってまいりますと、統計のあり方というのはそう簡単には比較ができない問題であろうというふうに考えております。特にホワイトカラーも入れたマクロの比較をいたしますと、これは全く違った数字になってしまうということがございますから、したがって、ストレートにドイツの時間と我が国の時間とを比べることは、私は問題があるというふうに考えております。
#306
○金子(満)委員 単純な比較は確かに問題があろうと思いますけれども、既に国際的にそういう大きな格差があることは公にされているわけだし、今豊田さんの言われる中で民族の考えの違い、確かにそれはあると思うのですよ。ただ、民族の考えの違いの中にドイツと日本の使用者側、企業責任者の考え方に相当の違いがあるということもいろいろな書かれたものやお話しされた内容を比較してみると、私はその点はよくわかるわけですね。
 そういう中で、先ほどお話がありましたが、なぜ時短ができなかったのかという問題について、使用者側も、それから往々にして政府の側も中小企業の責任に転嫁するのがかなりあるのです。おれは悪くない、おれはそういう目標も立てる、私のところも努力をした、しかしうまくいかないのは中小企業だと、責任はそこにあるとは言わぬけれども、そこのところに流れをつくり出していくのだと思うのですね。
 しかし、中小企業に対する適切な助成、それから大企業と下請企業との関係、これは外国のそれに比較して日本はもっともっと改善しなければならない。例えば、中小企業の助成が必要だというときに、どんな助成をしますかと言ったら、余りよくわからぬけれども、これはぼちぼち考えよう……、これでは時短は進まないのですね。
 私は、端的に、時短を現在やったっていいと思うのです。時間短縮をするなら、中小企業には一定の減税もしてやるぐらいのことを考えるとか、それから下請企業に対してはいろいろの法律上、それからまた規則の上でも今までにないところをやはり開拓していかなければならぬ。そうしないと、日本の全産業の中で中小企業の占める割合は非常に高いのですね、そういうことを考えたときに、今中小企業はきつい、汚い、危険、三Kだ、その三Kプラス長時間労働だ、そうしたら労働力が不足するのは当たり前なんですね。
 私はよく言うのですけれども、なに外国人労働者に来てもらえばいいよというのを単純に考えたら、これは重大な問題だと思うのですね。だからそういう点で、私は、千八百時間をやるためには、先ほどからも言われていますから細かい点は申し上げませんけれども、週は四十時間です、週休は二日です、ここだけはみんな言うわけです。しかし、今すぐではなくて、努力しながら中期、長期でいきますということなんですが、それだけではまだ千八百にならないのですよ。ですから、ヨーロッパ並みにと言えば、有給休暇は二十日以上ということです。既にECでは四労働週二十八日を目指してやっているわけですよ。だから、ECでそれをやろうというのですから、こういう点で、日本とヨーロッパの違いは歴然としているし、それを民族の物の考え方とかあるいは土壌の違いということにすりかえないで、日本の経営者の考え方も国際的に通用することをひとつやってほしい。日本はまだ世界がやっていないことをやっているのだというお話がありましたが、世界がやっていないきついことをやっているのですよ。ここのところは大いに改善をしていかなければならないのではないかと思います。
 そこで伺いたいのですが、これは具体的な問題ですけれども、一日八時間というのはもはや国際的な常識で、これを疑う人はないわけですね。だから、八時間というのは、仕事を八時間します、寝るのが八時間です、自由な時間が八時間です。これは一九一九年のILO条約の第一号条約で決まっているのですけれども、あの条約はまだ日本では批准されていない。この条約の審議のときに日本の経営者は反対したわけですよね。
 だから、そういう点を考えたときに、私たちは八時間労働制というのは生活のリズムなんですから、この点は使用者の側も、つまり、企業の側も労働者の側も、一般国民の世論からも私は一致していることだ、そういうように思うのですが、門間さん、どうですか、法律家として。
#307
○門間進君 一日八時間労働制そのものはもうずっと昔から定着しているわけでございまして、結局、週何時間にするかというところが問題だろうと思うわけでございます。八時間ということに法制上はなっておりますけれども、中小企業等は別といたしましても、丸々休憩時間を除いて実働八時間というところはだんだんやはり少なくなってきているのじゃなかろうか。七時間四十五分とか七時間半とかいうところが一般的になってきている。ただ、それに残業を加えるということになると、多少問題が出てくるわけでございますけれども、いわゆる所定内の法定労働時間というのは八時間はずっと前からやられておりまして、ほとんどの使用者は八時間ということについては十分な意識を持っていらっしゃる。問題は、そこにあと何時間加えるかということだろうと思います。
#308
○金子(満)委員 時間がだんだんなくなるので、それでは、変形労働の問題で、これは豊田さんに伺いたいと思います。
 非常に率直に、正直に物を言われたと思うのですね。三カ月では十分使えないから一年になったことは非常にいいことだ、しかし、厳格ないろいろの規制があるとメリットがなくなるということも言われました。これはやはり企業の立場からいえば、非常に正直な、率直なことだと思いますよ。しかし、変形労働時間制というのは、根本から考えれば、一つは、八時間労働制というものを崩す、もう一つは、企業の側にとっては残業手当の削減になる、それから第三点は、一年という期間を区切りますと、企業の都合によって所定内労働時間を、自由とは言わない、労働者の了解を得なければいけないわけですけれども、伸びたり縮めたり、短縮したり、そういう自由を持つことになる、こういう点が基本だと思うのですね。
 そういう中で、これはもう抽象的なものでなくて、今度一年間に延長するという改正案が出ているわけですが、具体的に去年一年間に日本の労働者が受け取った全国の残業代はどのくらいのものか、掌握されていますか。
#309
○豊田伸治君 平均でございますか。
#310
○金子(満)委員 総額です。それは平均は掛ければ答えは出ますよ。
#311
○豊田伸治君 出ますが、勤労者の数をどう見るかということによっても違ってきましょうし、私も赤旗を拝見しておりますが、たしかパーヘッドにいたしますと、六万四千円程度ではなかったかと記憶しておりますが……。
#312
○金子(満)委員 これは毎月勤労統計で去年の一月から十二月の間の推定は約十兆円なんですね。十兆円の残業手当が去年支払われた。しかも、その解説の中で八割が恒常的な残業になっている。八割が恒常的ということになりますと、三カ月では波が出ないが、一年になりますと、どの時期に残業が大きいかというのはわかってくるわけです。ここに今度変形労働時間制一年を入れると、企業の側にとっては大幅な残業手当の削減になるのです。
 その点で、御存じだと私は思いますが、豊田さん、労働問題の専門家で牧野富夫さんという日大の教授がおります。この方が三月に出した本なんですけれども、「日本型企業社会の神話」というのがあります。この中に大阪の関西経営者協会の問題が出ているのです。非常に興味があるので、ちょっと紹介しておきたいと思います。
 変形一年というのは八七年の法改正のときも財界からかなり希望が出されておった。そのことを踏まえてこの牧野教授は書いているのですが、「すでに八七年段階に財界の一部で主張されていた(当時、筆者が関西経営者協会で聞き取り調査をおこなったさい、もっとも有力な理事がくりかえし」これが豊田さんであるかどうか私はわかりませんよ。「もっとも有力な理事がくりかえし「一年単位の変形労働時間制」の必要を主張していた)が、その段階では、」つまり八七年段階では、「かれらも「(資本にとって)理想的過ぎて」実現できるとは思っていなかったようだ。」つまり、のどから手が出るほど欲しい一年に延長だけれども、これは理想的過ぎてだめだという意味のことが書いてあるわけですね。そして次に「それがいまや、「労基研報告」にもりこまれ、それが中央労働基準審議会の建議として「公式な見解」となり、いまや法案になろうとしているのである。」と書いておりますけれども、私は確かにそういう点はあると思うのです。
 先ほど説明を聞きながらなるほどと思いましたけれども、そういう点で、私は、やはり変形三カ月というのを一年に延長した、これで豊田さんの意見はわかりましたけれども、そこで柴田さんの意見をお伺いしたいのです。
 これは結論で結構ですから、つまり、八七年に三カ月に延長するというときに、これは労働組合が意思表示するように採決は国会でしますけれども、当時社会党は反対したわけです。我々も反対しました。八七年は三カ月で反対したけれども、今度は改正では一年という導入になったわけです。その一年に大阪の皆さん、連合としては賛成するというのか、賛成はするけれども、そこに、経営者協会の方は認めないんだが、何か一定の制限みたいなものがあればそれでよろしいということになるか、もしそうだとすると八七年と相当違ってくるので、この辺を伺っておきたいと思うのです。
#313
○柴田範幸君 これは冒頭ちょっと申し上げたつもりなんですが、今日の変形制は、もともとは四週間平均で四十八時間という三十二条の第二項ですか、これから始まりまして、これをもとにある程度時間外労働を含めながら交代制が進んだというようなことがあるわけでございますが、いずれにしても、これは一週間の幅の中での変形制、それから一月、それから三カ月、こういうふうに設けられてきて、かつ今回一年ということですから、確かに論点としては非常に重要なポイントだ、こういうことをまず認識しています。
 そこで、私が申し上げましたように、従来三カ月のときは繁閑を配慮して変形時間制というのが前面に出ておったわけですね。ところが、今回の提案説明、これは衆議院から送っていただいて初めて見たのでございますが、提案説明の中に明確に言われておるのは、年間を通じて休日増をしていこう、このためなんだということが入っておって、かつ三カ月のところもこの一年の中に包含されてきておる、こういう立場から、当然休日増は業務の繁閑に照らしてどこに増加をさせるかというような判断は出てくるけれども、目的は、時間外労働を手当を払わないために公認するような意味での繁閑に応じてというのが主体じゃなしに、休日増ということで提案をされておると素直に理解した立場なんです。もしもそうでないとすれば、これは問題があると思います。だから、休日増を目的としておるということを明確にしてもらう、そういう意味で、私は、これはあくまで週休二日を法律で明確にしていく上での一つの過渡的な措置じゃないかということを前提に申し上げたわけでございます。
 そういう立場から考えますと、先ほども言いましたように、上限を八時間、一週を今日五十二時間というのを四十八時間、こういうことを初め、連続した週に一日じゃ困るのですね、連続した労働日の上限を六日にする、こういうふうにしてもらわないと、二日の休みを二週間の後ろにつけたり前のところにつけたり、そういうふうになりますから、連続労働日の上限を決める、個々の労働者にきちんと周知をする、これが十分行われていない嫌いがございます。さらにまた、一月単位の変形制と同様に就業規則、これも一年にもなるのですから当然ながらきちんとしてもらって、就業規則を五人以上のところに広げてもらいたい、こういうことを申し上げたつもりなんでございます。
#314
○永井座長代理 以上で金子満広君の質疑は終了いたしました。
 次に、柳田稔君。
#315
○柳田委員 きょうは、陳述人の皆様大変御苦労さまであります。
 まず冒頭に、豊田専務理事にお伺いしたいのであります。
 宮澤総理が総理になられたときに生活大国を発表いたしました。その中で、年間総労働時間千八百時間を目指すというのがありましたけれども、お話を聞いておりますと大分否定的な御意見をお持ちなのかなと思うのですが、この宮澤総理の千八百時間を目指すということについて、御意見があればお聞かせ願いたいと思います。
#316
○豊田伸治君 私は、千八百を問題にしているわけではなくて、計画期間中の千八百時間の達成は困難ではないかと申し上げたわけであります。
 ただ、千八百という数字に関係をいたしまして、経営側にこの数字の理解が非常にしにくかったのは、なぜ千八百なのかということが具体的に示されなかったところにある。それが経営側の理解が得にくかったところではないか。特に中小企業の経営者の方々は一様に今日まで疑問を持ってこられたのはその点にあるわけです。
 したがいまして、「生活大国五か年計画」については承知をしておるつもりでございますし、千八百時間が政策目標であるということは理解しているつもりでございます。ただ、現実に計画期間中に千八百になるかどうかということになれば、これはかなり困難ではないかということを申し上げたわけであります。
#317
○柳田委員 政府というと自民党でありますけれども、では、経済界として、千八百時間は無理だよ、総理、直せよというふうな御意見は出ないわけでありますか。
#318
○豊田伸治君 政策目標でありますから、民間企業はそこに向けて着実に努力をしてまいると思います。ただ、結果として年間の総労働時間が千八百になるかどうか、これはわからないことではないでしょうか。あくまでも年間の総労働時間というのは一年を締めてみませんとカウントできないわけでございますから。したがって、結果としての時間であると申し上げたのはそこにあるわけでございます。
#319
○柳田委員 宮澤総理が発表されてからもう一年以上経過しましたので、その意図は大分御理解をされているかと思うのです。理解がされていなければ、自民党なり政府なりになぜだと問い合わせれば済むことなんですけれども、そういうことをお話ししてもあれでございますが、ただ、去年の貿易収支を見ますと一千億ドルを超えましたね、一千数百億でしたか。この世界の状況を見た場合に、日米構造摩擦もこれしかり、ヨーロッパの関係もこれしかりで、なし遂げなければならないというのが日本に課された命題であろう、そういうふうに思いまして自民党・政府としても千八百時間を掲げたのではないか。これを達成しなければ逆に欧米の各国から、日本は何だ、もうこれ以上は貿易もやっていけない、日本は勝手に生きていけ、そういうふうなことの危惧があって、しなければならない目標だと定めたのだと思います。
 日本の企業は原料を輸入して、加工して、輸出をして成り立っておる国だ、これは従来から変わりはないかと思うのですが、となりますと、やはり日本の将来を、二十一世紀を見据えた場合には何としてもなし遂げなければならないテーマだ、困難だというのはよくわかるのでありますけれども、最大限の努力を政府も我々も財界も、そして働く皆さんも一丸となってなし遂げなければならない目標だ、私は自分の立場ではそう思うのでありますが、財界の立場を離れてとは言いませんけれども、欧米に行っていろいろと御見識がある観点から、その辺の、私の今言った感じに対してどのような御意見をお持ちでありましょうか。豊田専務理事、お願いします。
#320
○豊田伸治君 繰り返しになりますが、私は、千八百時間というものと週四十時間というものとの間には直接的関連はないと理解をしております。
 なぜかと申しますと、暦の上で単純に計算をいたしますと、年間五十二週でございますから、週四十時間労働が完全に実現したと仮定いたしましても、五十二掛ける四十でございますから二千八十時間という時間になってまいります。これは週休制が二日であるということが前提でございますが、この時間と国民の祝日とをどう関係させるのか、あるいは、年次有給休暇の取得率は私はこれから伸びてくると考えておりますが、年次有給休暇の消化日数をどう考えるか、さらには、メーデーの休みでありますとか、創立記念日の休みでありますとか、お盆の休みといったような休みをどうかかわらせるのかということになってまいりますから、その結果として、一体、年間総労働時間が残業時間も含めてどうなるのかということを見なければいけないのだろう。したがって、私が、具体的な政策のあり方は少なくとも週四十時間制にどれだけ早く近づけるか、その確実なステップは何だろうかということを申し上げたのはそういう意味でございます。
#321
○柳田委員 確実なステップをどういうふうにするか、では何をどういうふうにするかという問題があるかと思うのです。
 従来から、前の社労委員会でも今の労働委員会でも議論になっていることだと思うのですが、政府の方からは、所定内の労働時間を短縮します、これが一つです。そして、残業を極力少なくいたします、年二百時間以下だったかと思うのですが。さらに、有給休暇を完全取得といいますか、それを目指す。これが三本柱である。この三本柱を進めていけば千八百時間達成可能だというふうなお話もありまして、労働省のこれから進むステップといいますか、これまで進んできたステップというのは、それなりに方針を決めてやってきたのではないかなと思っております。肩を持つわけではありませんけれども、評価をしております。
 私の持ち時間は余りないのでありますけれども、先ほどもお話が出ましたが、中小企業が今回は大変この法案の対象になるというお話もありましたけれども、なぜ中小企業で時短が進まないのだろうか。私もいろいろと聞いて回りますと、横並びをまずおっしゃるのですね。あそこの企業がこれだけやっていて、うちだけがそうしたのでは競争力がなくなる、だから横並びにしてくれというのをよく聞くのですよ。先ほど法律というのは最低基準だというお話がありましたけれども、最低基準にはやっておるのを、皆さん、中小企業の経営者もよく御存じなんですが、そうではなくて横並びにしてくれればできるんだ、そういうふうによく聞くのですよ。
 この横並びをするためにも私は今回の法案の改正をして、できればもっと進めてほしい面もあるのですけれども、これが中小企業の実情に合うかと思うのですが、こういう中小企業の意見をいろいろと聞いていらっしゃる豊田専務理事さん、再度ですけれどもどう思われますか。
#322
○豊田伸治君 先生も御存じのとおり、平成四年の労働省の労働時間調査によりますと、総労働時間が千九百七十二時間であったと思います。その中に占める時間外労働時間、所定外労働時間でございますが、これが百四十五時間か百四十七時間であったと記憶しております。つまり、ここ数年の動きというのは確実に年間四、五十時間ずつ減ってきて今日に来ているということだろうと思うのです。
 ところが、大企業と中小企業とを比較してみますと、平均の総労働時間はほぼ一緒になるのでありますが、その中身が御案内のとおり違うわけでありまして、大企業は所定内労働時間が短くて所定外が長い、中小企業は所定内は長いけれども所定外が少ない、奇妙なことに、平均するとほぼ同じような年間の総労働時間になるという特色がございます。
 そこで、中小企業の労働時間短縮問題を考えるときに、企業経営者の横並び意識があると御指摘になることは、私はすべてがそうだとは思いませんけれども、そういう意識があることは否定できません。ただ、私は、現実に昨年の九月から施行されました時短促進法は、ある意味でそういう横並び意識をうまく活用できる一つの制度、仕組みができたのかなと評価をいたしております。
#323
○柳田委員 下請振興基準というものもありまして、先ほど議論にもなりましたけれども、余り知らない人がいらっしゃる。そして、知っていても活用しない人が大分いらっしゃるということなので、行政はもとよりですけれども、我々議員も一生懸命地方に帰ったりしたらお話をするわけですが、経営者の方も労働組合の方も一生懸命啓蒙して努力をしてもらえればなと思います。
 残された時間で今度は門間先生に質問なんですけれども、割り増し賃金率、今回、命令で定めるということでありました。これは憲法二十七条の二項に「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」というのが書いてあるのですが、この割り増し賃金率は法案に明記しなくて憲法に違反しないのでありましょうか。
#324
○門間進君 憲法に違反というところまでいくのかどうか、私は若干疑問には思うのですが、ただ、本来の基本的な労働条件、細かい問題は別でございますが、割り増し率というようなものは相当重要な問題ではなかろうかと思うわけでございます。したがって、基本的な問題点についてはやはり法律の方が妥当だろうとは思います。ただ、一挙に二割五分から例えば五割ということになりますと相当の混乱も起こしますし、法律にそういう数値を一遍記載いたしますと、なかなかその法律改正というのは難しいという現実の問題もございます。したがって、そこらの弾力的な扱いという形で命令という形に持っていらっしゃったのだろうとは思うのです。
 これが基本的というか重要なことはわかるのですけれども、先生のおっしゃるように憲法違反と言われると、そこまで私はちょっと考えておりません。
#325
○柳田委員 私は、そのまま素直に読みますと、法律に明記をすべきだと思うのです。
 もう一つなんですが、門間先生、猶予措置がありますね。これは、憲法の十四条に、法のもとには国民はすべて平等だというのがあるのですが、この観点からいくといかがでしょうか。
#326
○門間進君 法のもとの平等は確かでございますが、ただ、この法のもとの平等というのは決して機械的平等を指しているのではないのではなかろうかと思います。合理的な理由があるならば、そこにある程度の、これはあらゆる問題についてそうでございますが、差があってもしかるべきでございます。したがいまして、いろいろの現在までの情勢を踏まえて一挙に持っていくということよりも、徐々にといいますか、ソフトランディングさせるための措置ということの場合には、法のもとの平等に反するとまで言い切れるのかどうか、ある程度の合理性というものもやはりそこに実態を見詰める場合に存在するのでなかろうかと思っております。
#327
○柳田委員 先ほど門間先生の方から法律というのは最低基準にというお話がありましたけれども、いろいろな法案を読んでおりますと、最低基準でないものも多いのですね。今、国会で議論されております道路交通法、あれを読んでおりますと、例えば事故に遭った場合、相手のけがをした人の治療をしなければならないと書いてあるのですね。ただ、解釈は、そう言ってもできないから警察に、病院に通報しなさい、そういう程度のものだという解釈もあります。さらに、今度の法案の改正で、車の車輪に輪っかをつけて駐車違反を減らすんだというのがあるのですけれども、現状を考えてみれば、駐車場がないから路上駐車が多いんだ、ならば、そこまでする必要はないじゃないか、もっと国民の良識に訴えるべきではないかと常識では思うのですが法律でもそうなっているというものがありますので、ちょっと解釈の仕方の違いかもわかりませんけれども、やはりこの水準まですべきだというものはするべきなのが法律ではないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
#328
○門間進君 法律の中にもいろいろな法律がございまして、おっしゃるようなところも必要かとは思いますけれども、少なくとも本件の労働基準法とか労働関係法規、特に労働条件を定める問題というのは、本来は余り上で旗を振ってここまで来い、ここまで来いという形で進めるべき問題ではない。あくまでも自主的な労使間の交渉で、そこで労働条件の相場というものがつくられて法律の方が後追いするというのが本来の立場ではないか。民法とか刑法とか一般法におきましてはあくまでも最低の問題として理解されているわけでございます。そういう意味で、特別な交通事故法規の違反を撲滅するためという問題とはちょっと違うのではなかろうかと私は思っております。
#329
○柳田委員 もう時間ですから終わります。
 ありがとうございました。
#330
○永井座長代理 以上で柳田稔君の質疑は終了いたしました。
 これにて委員よりの質疑はすべて終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 意見陳述の方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。
 拝聴いたしました御意見は、本案の審査に資するところ極めて大なるものがあると信じております。
 厚く御礼を申し上げます。
 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係御各位に対しまして心より感謝を申し上げ、御礼を申し上げます。
 これにて散会いたします。
    午後四時十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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