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1993/04/06 第126回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第126回国会 商工委員会 第8号
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1993/04/06 第126回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第126回国会 商工委員会 第8号

#1
第126回国会 商工委員会 第8号
平成五年四月六日(火曜日)
    午前十時三分開議
 出席委員
  委員長 井上 普方君
   理事 新井 将敬君 理事 井出 正一君
   理事 金子 一義君 理事 額賀福志郎君
   理事 山本  拓君 理事 竹村 幸雄君
   理事 安田  範君 理事 遠藤 乙彦君
      甘利  明君    岩村卯一郎君
      尾身 幸次君    奥田 幹生君
      古賀 一成君    古賀 正浩君
      佐藤 信二君    谷川 和穗君
      真鍋 光広君    増岡 博之君
      増田 敏男君    村田 吉隆君
      江田 五月君    大畠 章宏君
      菅  直人君    後藤  茂君
      清水  勇君    鈴木  久君
      武藤 山治君    安田 修三君
      吉田 和子君    和田 貞夫君
      長田 武士君    権藤 恒夫君
      春田 重昭君    小沢 和秋君
      川端 達夫君
 出席国務大臣
        通商産業 大臣 森  喜朗君
 出席政府委員
        通商産業大臣官 江崎  格君
        房総務審議官
        特許庁長官   麻生  渡君
        特許庁特許技監 辻  信吾君
        特許庁総務部長 姉崎 直己君
 委員外の出席者
        商工委員会調査 山下 弘文君
        室長
    ―――――――――――――
委員の異動
四月五日
 辞任         補欠選任
  山口 敏夫君     甘利  明君
同月六日
 辞任         補欠選任
  江田 五月君     菅  直人君
同日
 辞任         補欠選任
  菅  直人君     江田 五月君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出第
 一八号)
     ――――◇―――――
#2
○井上委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田和子君。
#3
○吉田(和)委員 近年の大量出願に加えまして、先端産業分野における技術競争の激化を反映しているということで、大変その大量に加えて内容が高度化、複雑化をしているということを、この法案を取り組まさせていただき、勉強させていただいているうちに、大変難しい状況をそれでも懸命にこなしておられるという印象を受けたわけでございます。特許の今法案の改正では、審査処理期間を現状平均三十カ月を何とか二十四カ月に減じて出願者の利便にこたえよう、そしてまた国際的な調和の必要性にこたえていこうというふうな背景があるというふうに聞いております。短縮をする、処理期間を短くするというふうなことに対しまして、法の大切な、重要な規定である創作性のある発明は保護するという特許法中大事な点が今度の改正で十分その中でも守られていくように、保護されるようにということで各種の質問をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、主要国の制度と比べると、補正を自由に認めている国の方が少ないというふうに聞いております。我が国初め少数であるということでございますけれども、アメリカやドイツなどで二回目の補正以降でも創作性を保護するその配慮などがいろいろとされているというふうに聞いておりますけれども、どういうふうな内容があるんでしょうか。そして、今改正をした後、我が国ではどのような創作性に対する保護というふうな配慮をなされるんでしょうか。最初にそのことをお伺いをしたいと思います。
#4
○麻生政府委員 今回の私どもお願いを申し上げております補正の適正化でございますけれども、これは我が国の制度では、要旨の変更に当たらない範囲内で自由に補正を認めるというやり方をいたしておるわけであります。これに対しまして欧米の方は、最初の拒絶通知理由に応答するまでの間は補正は自由でありますけれども、二回目の拒絶理由通知以降はこれは請求範囲の実質的な変更は認めないというような形でございまして、欧米の方がその意味では厳しいというような内容になっておるわけであります。
 今回このようなお願いをしておりますのは、私ども、何回も補正を繰り返されますと審査のおくれが生じるとかあるいはこれを何回もやっておる人とやっていない人との間でいろんな形での不公平が生じるというようなことがありますし、また一方で、日本の場合にはずっと単項制をとっておりましたけれども、六十三年から多項制を採用いたしておりまして、これにも日本の関係者、出願者は習熟してきておるというような状況でございまして、補正の適正化を行うという環境も整ってきたというふうに判断をされますものですから、補正の適正化をやろうということでございます。このようなことをやりました場合に御指摘のような創作の保護が十分行われるかどうかということでございますが、これは主としてこの運用の問題になってくるというふうに認識をいたしております。一つは、何といいましても拒絶をします場合にどういう理由で拒絶をしたかということでございまして、これを非常に正確に、かつわかりやすく書くということが必要であります。この点欧米では非常に丁寧な請求項ごとの拒絶を指摘しておるということがございます。また面接ということもいろんな形で活用されておるということでございます。さらに、場合によりましては審査官の方でこのような補正をすればというようなことで補正案の示唆をするというような運用がなされておりまして、このようなことを通じまして発明の思想を十分正確に酌み取ってこれを保護するということでございます。その結果、御承知のとおり、欧米におきましては非常に幅広い基本特許というようなものも得られておるという状況でございます。こういう状況でございますものですから、今回の改正がなされました後でございますけれども、我が国におきましても欧米と同じように請求項ごとの拒絶通知理由をちゃんと示す、あるいは面接を活用する、あるいは審査官が必要に応じまして補正案を示すというような形の運用を行いまして、実質的な保護の面におきましても欧米と劣らないという形に持っていきたいと考えておる次第でございます。
#5
○吉田(和)委員 今改正は不公平が生じる点を正していくんだというふうなお答え、そして改正後は正確な拒否理由を明示をし、そして面接をし、時には示唆もするというふうなお答えだったろうと思います。事前調査の点で大企業と中小企業、零細との力量の差が大変あるということが言われておりまして、そういう点では、一挙に不公平が生じるからといって補正の二回目以降を切るというふうなことであるわけであって、運用の点で正していくというところなのでしょうけれども、そういう中小零細に対する事前調査の点で力量の不足を補うということは、どうでしょうか、こういう運用で賄えるでしょうか。
#6
○麻生政府委員 事前の先行技術の調査の問題でございますけれども、これは今回の補正の適正化ということによりましても重要性が増してくるわけでありますが、それ以上に、最近のように、特許が非常に重要性を増しておりまして、その財産的価値あるいは市場における意義というのが非常に大きくなったといういわゆるプロパテントの時代におきましては、有効な特許を持つということは非常に大事でございまして、そのためにはやはりこの事前の調査を十分やりまして立派ないい特許を取るということが非常に重要になってきておるということであります。
 その意味で、御指摘のように中小企業あるいは個人の皆さんが十分に先行技術の調査ができるかということでございますが、これはやはり大企業と比べましていろいろな面で十分な調査ができにくい環境にあるということは事実でございます。したがいまして、そのような点を補完するということが必要であると考えておりまして、この補完のための先行技術調査を支援するという事業を中小企業対策の一つとしてやっていきたいと考えておる次第でございます。
#7
○吉田(和)委員 今改正で規定ぶりが変わる内容があるようでございますけれども、今まででは許されていた補正が変わるというふうな、内容が変わるということはあるのでしょうか。
#8
○辻政府委員 お答え申し上げます。
 まず、今回改正でどのように変わるかということについて申し上げます。従来はどうであったかと申し上げますと、明細書または図面の補正につきまして、要旨変更にならない限り出願当初に記載されていない事項を追加する補正が可能でございました。しかしながら、従来のこのような制度では要旨変更か否かの解釈には幅がございます。これは実体判断を要しますために、補正を認めるか認めないかにつきましての判断に多くの時間を要しておりました。これがひいては迅速な権利付与を妨げる要因となっていたわけでございますが、さらにこれに加えまして、権利付与後におきましても要旨変更か否かをめぐる判断の抵触が生ずることもあったわけでございます。
 これに対しまして今回の改正法でございますが、補正の範囲につきましては、「明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない。」というふうに規定されております。これは出願当初の記載から一義的に決定できるもの、言葉をかえて申しますと、明細書または図面に明示されている、明らかに示されている事項についてはこの規定により補正可能な範囲に該当する、こういうことになっております。したがいまして、そうでないものは該当しない、このように改正いたしますことによりまして補正についての判断を画一的かつ容易に行うことが可能になります。このような考え方によりますと、何人も、だれでも簡単、明瞭な基準となりますので迅速な権利付与にも役立つということが言えますし、また主要国の制度、運用との調和が達成するわけでございます。
 このような制度になりますので、従来、現行制度におきまして要旨変更となっていませんものが新規事項の追加に該当する場合もあり得るわけでございますが、このように、要旨変更にならないということで従来許されていましたものもそもそも当然権利範囲に含まれるものと解されますので、この特許取得という点では影響はないものと考えております。したがいまして出願には不利益となるものではない、かように考えております。
#9
○吉田(和)委員 なかなか複雑でここら辺のところの理解をするのにちょっと手間取っているのですけれども、そもそも特許出願をして権利を付与されるまでに大変長い時間が今までかかっていたわけでございますけれども、認めるか認めないかというところでも結構がかっていたというふうに考えていいのでしょうか。要するに、これまでの長い、平均三十カ月かかっていたところで一番時間がかかっていたのはどこら辺なんでしょうか。権利付与に際してもその判断で大変手間取るというふうに御答弁が今あったわけでございますけれども、ちょっとわかりやすくそこら辺のところを、どこら辺に時間がかかっていたのかお答えいただけますでしょうか。
#10
○麻生政府委員 審査にいろいろ時間がかかっておるわけでございますが、これは大きく二つの要因があるわけでございます。
 一つは、申請されました技術思想、これがこれまでの発明とどういう関係になっているか、抵触しているかしていないかということをずっと文献を当たりまして調べ上げていかなければいかぬということであります。
 もう一つは、この要旨変更の関連に伴う補正の問題でございまして、途中で出願者は中身を変えたいということがあるわけでございますが、その場合にどこまでの変更を認めるかということで、要旨変更に当たらなければ認めるということになっておったわけであります。そうなりますと、今度は要旨変更とは何かということがございまして、そこでもう一つまた争いが起こるというようなことでありまして、場合によりましては、この要旨変更に当たるかどうかということで審判まで持ち込まれている、その間はまた審査できないというようなことがあるわけでございます。したがいまして、第二番目の要素を今回はもっと明確にしようということでございます。
#11
○吉田(和)委員 付与までの期間を短くするということは本当に前々から努力義務が課せられていたわけでございますので、そういうふうな欧米並みの、国際調和という意味でもここら辺でやはり制度を変えていかなければならないのではないかなというふうに思うわけでございますけれども、出願人にとっては不安が大変多いのじゃないかと思います。そして、本当にその後の運用の点できちっと保護されるのだろうかというふうな疑問、疑念も持っているというふうに思います。
 いろいろな御意見を聞きますと、やはり時期がまだ適当ではないのじゃないか、もう少し話し合いをして、そして十分な運用の相談も出願者からも聞くというふうな時間が必要なのではないかという声が大変多く出されているところも事実でございます。
 繰り返してお伺いすることになりますけれども、本当に大事なことは、出願人に拒絶、そして理由通知を徹底して知らせる。内容を事細かに知らせて、どこをどういうふうに直せば認められるかというか、内容について、これまでのようなものではなくて正確に伝えていくということが大切というふうに、海外の、欧米の例などでも見られるわけでございますけれども、この時期にそういう利用者からの声が多くある中で、出願者にきちっと創作性のある発明を保護するというふうな形で、拒絶理由通知をどういうふうな形で明記をして、どういうふうな手続で知らせるかということを再度お伺いをしたいと思います。
#12
○辻政府委員 お答え申し上げます。
 運用に際しましては、欧米並みの遜色のない運用を考えております。具体的に申し上げますと、拒絶理由起案に当たりましては、丁寧な起案を考えております。さらに、出願人の方が補正をしやすいように補正案の示唆ということも先ほど長官の答弁にありましたように、そういう運用を考えております。
 さらに、これらの運用に関する事項を決めるに当たりましては、出願人、代理人等の方々の意見を十分尊重いたしまして、これらの意見を踏まえつつこの運用について決めていきたいと思います。また、その運用基準を早期に作成し、公表し、出願人の方々に周知徹底をするよう努力してまいりたい、かように考えております。
#13
○吉田(和)委員 その拒絶の後の理由通知を徹底をさせるべきであるというふうに再度お願いをしておきたいというふうに思います。
 次に、ちょっと実用新案制度の方でお伺いをしていきたいというふうに思います。
 まず最初に、今改正で事前の審査がなくなって、必要により評価書が出されるというふうな改正であります。先ほどの特許法の改正でも同様だと思いますけれども、利用者は制度の変更で大変不安を抱くのではないかというふうに思います。取得をした権利の権威や威力が変わらないのだろうか、登録だけで万全なのだろうか、必要なときだけの評価書で大丈夫なのだろうか、そういうふうな不安が募っているというふうに思います。そういう点で、事前の審査がなくなり評価書だけになるということに関して、権利の内容に変わりはないのでしょうか。
#14
○姉崎政府委員 お答え申し上げます。
 改正後の実用新案権の内容でございますが、現行法と同様でございまして、一定期間の独占排他権を付与される。その間第三者が権利を侵害した場合に差しとめ請求権あるいは損害賠償請求権の行使が可能であるということでございまして、新しい実用新案権が、この権利の内容が従来に比べて落ちるとかあるいは権威がなくなるということはないと考えております。
 また、この評価書でございますが、審査と同様に、関連する先行技術文献から見ました権利の有効性に関する評価を示すものでございまして、これによりまして適切な権利行使が可能でありまして、また権利の乱用も防止ができるというふうに考えております。
 さらに、紛争の問題でございますが、特許庁といたしましては、無効審判の早期処理ということで万全の対応をいたしたいと考えております。
#15
○吉田(和)委員 ちょっと考えますと似たようなものがどんどん出てきて、保護が軽視されて係争が大変多くなるのではないかというふうな印象を受けるわけでございますけれども、その点に関してはどうでしょうか。
#16
○麻生政府委員 実体審査をしなくなるという結果、今言われたような疑問が出されるということは十分理解できるわけでございますが、出願人という立場から考えます場合に、現在のような実体審査をしておりますと、どうしても審査に三年とか、長い場合には六年ということを要するわけであります。そのような審査を経まして権利を与えられますと、そのときには、最近のようにライフサイクルが非常に短い、製品の移り変わりが激しいという時期では、せっかく権利をもらってもマーケットではもう意味がないという状態になっておるということになるわけでございまして、その意味では早く権利をもらいたいということがあるわけでございます。今回は、そのような需要に的確にこたえようということでございまして、出願人の本来の技術思想の保護という点ではこちらの方が的確にこたえ得るというふうに考えておるわけでございます。
 類似した技術が多く出されたり、あるいは保護が軽視されるという点の問題につきましては、確かに類似した技術が出るかもわかりませんけれども、それが創造性、新規性を持たない場合には、これは実際に権利を行使する段階におきまして、この評価書をもらってやらなければいかぬという形になっておりますから、評価書でその権利の進歩性、新規性ということが判断をされるということになるわけでございますから、本当に立派な技術はこのシステムのもとで早くかつ立派に保護されるというふうに考えておるわけでございます。
#17
○吉田(和)委員 今のお話の中で、ライフサイクルの短い新案に関するということでございましたけれども、実用新案制度というのは、どちらかといえば特許に比べれば小発明保護を目的としているというふうに聞いております。ライフサイクルが短くなってきているというものもあるけれども、依然としてライフサイクルの長い実用新案というのもあろうかというふうに考えますけれども、どうでしょうかライフサイクルの長い新案に関しては、むしろこの改正では切り捨てられるというふうな方向になるのではないでしょうか。
#18
○麻生政府委員 現在の特許法とそれから実用新案におきます審査、新規性の判断の基準でございますけれども、確かに小発明、大発明というふうに考えておりますが、実際の判断基準はほとんど変わりないというのが運用の実態でございます。したがいまして、現在まで実用新案という形で長いライフサイクルのものがありました場合に、そのようなものにつきましては、これは今後は特許の方に申請をしていただきますと、特許の方で十分保護できるというふうに考えておるわけでございます。
 したがいまして、短期ライフサイクルのものはこの新しい実用新案のもとで早く保護をし、長期的にわたるものは、これは特許で保護するという機能分担をしていけるというふうに思うわけでございます。
#19
○吉田(和)委員 保護期間が六年、短縮をして六年というふうな期間が設定をされているわけでございますけれども、この六年という期間の妥当性というか、その長さというのはどういうもので決められたのでしょうか。
#20
○姉崎政府委員 御説明を申し上げます。
 先ほど長官がお答えいたしましたように、近年、とりわけ技術革新の成果として新しい技術、商品が市場にどんどん出ていく、そのスピードが加速化いたしておるわけでございます。
 ちなみに、実態調査が幾つか行われておりますのを御紹介いたしますと、特許庁で行いました調査によりますと、実用新案対象技術の三分の二につきましては五年以内にライフサイクルが終了しているという事実がございます。また、通産省が行いました家電製品の平均モデル周期に関する調査によりますと、おおむね一年から一年半ぐらいでモデルチェンジが行われるということになっております。
 また、玩具の分野でございますが、これは製品安全法に基づきまして二年ごとに更新登録をするのでありますが、それに基づくデータによりますと、平均的には大体二年半で玩具のライフサイクルは終わっている、こういった実態にございます。したがいまして、この権利期間六年という制度のもとで、実用新案対象技術につきましては適切に保護ができるというふうに考えております。
 また、工業所有権制度の目的と申しますのは、一方で権利者に一定期間の独占権を与えると同時に、他方、一定期間の経過後には公衆の自由な発明の利用ということが産業の発展に寄与するということで、言うならば二つの法益があるわけでございます。したがいまして、必要以上に独占期間を与えるということは、公衆によるさらなる技術利用を制約することになりかねないということで、近年の技術革新の加速化という実態を踏まえまして、私どもといたしましては、六年という権利期間は妥当なものだというふうに考えておる次第でございます。
#21
○吉田(和)委員 保護期間が短くなりますと、例えば、侵害差しとめの判決を、あれをしていて得た時点ではもう既に権利が消滅するということがあり得るのでしょうか。
#22
○姉崎政府委員 権利期間の終了後に差しとめ請求権というのを行使することは、実態上は権利が終了いたしておりますので、差しとめはできないわけでありますが、損害賠償請求の権利行使はもちろんできるわけでございます。したがいまして、先生今御指摘の、短過ぎるのではないかという御懸念についてはその心配はないというふうに申し上げることができるかと思います。
#23
○吉田(和)委員 中小企業の皆さんが利用している、自由に発明をする、そういう力をそぐことになってはむしろマイナスではないかというふうに考えているわけでございますけれども、そもそも実用新案制度というのは世界ではどういうふうになっておりますでしょうか。制度を採用している国がこのごろむしろふえているというふうなこと
も読ませていただいておりますけれども、その点に関してはどうでしょうか。
#24
○麻生政府委員 実用新案制度はアメリカにはございませんで、主要先進国ではドイツ、フランスというようなところで普及をいたしております。御指摘のように、最近、実用新案制度が、特にヨーロッパの国々において検討され、一部の北欧の国では新たに導入されることが起こっております。
 これは、ヨーロッパの特許条約の関係が非常に大きく影響しているわけでございまして、ヨーロッパではEC統合に伴いまして、ヨーロッパ全域の特許はヨーロッパ特許庁で審査をし、権利を付与するという形になってまいりまして、そうなりますと、各国の特許庁の仕事というのがずっと減ってまいっております。一方では、日本でも当面しておりますような、特許ではなかなか対応できない短ライフの技術はどういうふうに保護するかという問題がありますものですから、各国の方ではむしろこの実用新案制度を導入して、特許の方はヨーロッパ特許庁で、各国の方では実用新案制度をむしろうまくつくり上げていこうというような動きに流れがなっておるという状況でございます。
#25
○吉田(和)委員 ドイツ、フランスなどが採用しているというふうに聞きますけれども、保護期間というのは、ドイツはどのぐらいでしょうか、フランスはどのぐらいでしょうか。
#26
○麻生政府委員 フランスは保護期間は六年でございます。それからドイツでございますが、現在は十年でございます。一八九一年に導入されましてずっと六年間を維持しておりましたが、八六年に延長されまして、現在十年になっておるという状況でございます。
#27
○吉田(和)委員 実用新案制度の法の目的というふうな点からいけば、やはり小発明の保護、利用というものを第一優先に考えなければならないわけでございます。そういう意味で、その保護期間が六年が妥当であるかどうかということの問題なんですけれども、六年では、六年として改正をするには、ちょっといろいろな角度からの審議が足りないんではないかなというふうに思うんですけれども、やはりこれまでのように十年というふうに保護期間というのが必要なんではないかというふうに、私は法の内容を読ませていただき、皆さんの御意見を聞きながら考えているわけでございます。
 この法の改正によって保護期間が単に短くされたというふうな印象を受けるということもあろうかと思いますけれども、保護期間が単に短縮をされたのではない、この改正によって実用新案制度がもっとこういうところで出願者に大変有利になっているということをちょっと提示をしていただきながら、六年という期間に対しての御見解をもう一度、再度伺いたいと思います。
#28
○麻生政府委員 今回の改正を行いますと、実用新案権が非常に早く付与されるということになるわけでございまするる申し上げておりますように、今の制度ではどうしても権利の付与がおくれて、権利をもらったときにはもう実質的な意味がない、マーケットの状況から考えまして意味がない、権利を侵害したといっても、もう相手もいなくなっておるというようなことでございまして、ともかく早く権利をもらわなければ意味がないという声が非常に強いわけであります。今回の制度は、その意味では、そのような出願者、発明者の希望に的確に沿えるという非常に大きなメリットを持つというふうに考えておるわけであります。
 それからもう一つ、六年の問題でございますが、先ほど総務部長から御説明申し上げましたように、私ども、いろいろな調査をいたしました。玩具とか、いわゆるライフサイクルが早いと言われる分野の実施状況はどうか、あるいは実用新案の実施状況はどうかということでございますが、先ほどのように大体四年ないし五年ぐらいで実施が終了されておるということでございますものですから、そうしますと、この権利期間というのは六年あれば十分やっていけるのではないかというふうに考えるわけであります。
 一方でこの権利をどんどん長くするということはどういうことを意味するかといいますと、もちろん権利者がずっと長く独占権を持つわけであります。この独占権を持つということと、それのメリットと、それが公開をするということ、それから、権利が切れたら今度は一般的な利用ができるということ、それとの社会的、一般的なメリットのバランスをどこにとるかということでございます。確かに権利をどんどん長くすれば権利者は非常に有利になるわけでございますけれども、そのように非常にライフサイクルが短いものについていつまでも長く権利を与えますと、今度は独占権が強くなり過ぎるということでございまして、一般的な利用という社会的なメリットとのバランスを欠くのじゃないかということがございますものですから、実態面あるいはそのようなバランス面を考えて、この六年ということにしたわけでございます。
#29
○吉田(和)委員 特許法と同時に、この実用新案制度の改正に関しましても、広報を徹底するということが、利用者にとってはこれからの制度利用についての間違いがない、不安を解消する意味でも大きいものがあろうと思いますけれども、広報の徹底ということに関してはどういうことをおやりになろうとしておりますでしょうか。
#30
○麻生政府委員 この新しい制度を関係の皆さんによく知っていただくということは非常に重要でございます。特に、中小企業あるいは個人の発明家の皆さんによく制度を知っていただきまして、うまく利用していただくということが非常に大切でありまして、そのような努力をいろいろな形でやりたいと思います。
 私ども、通産局、全国にございますが、通産局を通じ、あるいは発明協会、これもいろいろな中小企業、各地の発明関係の皆様が集まりまして、各県に組織がございますが、この発明協会の組織を使う。さらに、商工会議所あるいは商工会というもの、これもいろいろな形で組織を持っておりまして、発明奨励の仕事をしております。したがいまして、このような団体を通じ、あるいは各地で説明会を開く、あるいは通産局を活用するというような形で周知徹底を図っていきたいと考えておる次第でございます。
#31
○吉田(和)委員 次に、特許料の値上げについて御質問したいと思います。
 ぺーパーレス計画に伴う機械化の費用がおよそ二百四十八億円に達しているというふうに聞いております。そもそもペーパーレス計画に伴う経費というのが、どうなんでしょうか、予想以上に増大をしているというふうなことはないんでしょうか。今回の特許料の値上げとペーパーレス計画に関して、どういうふうな関係にあるのか、お伺いをしたいと思います。
#32
○麻生政府委員 特許の特別会計が昭和五十九年にできたわけでございますが、そのときには、いわゆるペーパーレス計画を十年かけて開発し、また導入しようということでございました。これをやらなければ、当時、放置いたしますと審査期間は七年にもなってしまうということでございまして、審査期間を短縮するためにどうしても必要であるということでスタートしたわけであります。このペーパーレスの経費というのは、六十二年で若干修正されましたが、当時は、十年間で約千五百億円程度かかるのじゃないかということで予定をいたしておったわけでございます。本年度の予算を入れますと、いわゆるぺーパーレス計画の予算というのは累計いたしますと千五百億円を若干下回るというような状況でございまして、ペーパーレス計画が当初の予想より非常に上回りまして今回の値上げをお願いするということではないわけでございます。
 今回の値上げは二つの大きな要因がございます。一つは、先ほども申しましたが、審査促進をやるわけでございますが、審査促進をもっと加速しなければいけないというような事態が、特に日米構造協議で非常に審査期間の問題が両国間で問題になりまして、一段と速めようということになったわけでありまして、それをやるために投資をふやさなければいかぬということになった点と、もう一つは、これはペーパーレス計画も含めまして特許庁全体、いろいろな経費がかかるわけでありますが、これもやはり毎年物価上昇分ぐらいはどうしてもふえていくというのはやむを得ないといいましょうか、避けられないわけでございまして、この物価上昇分をひとつお認めいただきたいということ、この二つの要因が重なりまして値上げをお願いいたしておるということでございます。
#33
○吉田(和)委員 一日に事務処理をするのに約一億円が必要というふうにされております。何にかかるのだろうかと考えますと、ペーパーレス計画のコンピューター、さまざまな管理費もいろいろ要るだろうと思いますし、さらにいろいろな事務にかかる費用もあろうかというふうに思うのですけれども、何にどれほどかかっているのか。何を伺いたいかというと、事務合理化というふうなことに結びつけて、どのように今合理化を考えておられるのか、そういうことをお伺いしたいわけでございますけれども、まず最初に、一日約一億円がかかるという内容はどういったものでしょうか。
#34
○姉崎政府委員 特許庁の一日当たり歳出がどうなっているのかという御質問でございますが、平成四年度の年間の歳出予算は七百二十一億円ということになっております。この内訳は、人件費がおおむね三分の一の二百三十八億円、それからぺーパーレス計画ということで、機械処理関係がやはり三分の一の二百四十二億円、それ以外の各種審査処理促進のための民間委託費等々、それが残りの三分の一でございます。
 これらの経費、いずれもペーパーレス計画のシステム開発でありますとか、審査処理の促進あるいは特許情報の提供といった業務に必須のものでございまして、私どもとしては、この予算の内容は必要不可欠、私どもの行政を運営する最低のラインであるというふうに考えております。
#35
○吉田(和)委員 予算の事務経費の中に公報の発行料というのが随分大きなウエートを占めているなというふうな印象がございます。ほかの国を見ますと、公報の発行料などを発明家の皆さんに費用として負担してもらっているというふうな、ドイツ、アメリカ、フランスなどの例があると思いますけれども、公報の発行状況というのは、経費的にはどのくらいのウエートを占めているのでしょうか。
#36
○姉崎政府委員 ただいま御指摘ございました公報の発行費用でございますが、私ども年間で百三十五億円の経費がかかっております。これは膨大な紙の印刷の費用に相当部分が充てられている、しかもこの公報の料金というのは、もちろん設定してございますが、残念ながら、なかなか値上げが利用者の方々の便宜も考えますと思うようにいかずということもございまして、原価をもちろん割り込んでおるわけでございます。したがいまして、相当この出費がかさんでおります。
 一方、外国の例でございますが、出願の料金の中でこの公報の費用を徴収しているというふうに伺っているところでございます。私どもといたしまして、公報の発行費用につきましては、今後逐次ペーパーレス計画の成果といたしまして電子化を進めております。ことしの一月から公開公報につきましてCD−ROMという形で公報の発行をすることになったわけでございます。今後徐々にCD−ROM化を進めまして、紙公報の印刷のための膨大なコストをできるだけ合理化し、節減をしていきたいというふうに考えている次第でございます。
#37
○吉田(和)委員 経費の中の人件費、審査官について、審査を促進をさせるには、さまざまな改正が出されているけれども、むしろ審査官をふやすということをもっと進めるべきなのではないかというふうな御意見が多く出されているわけでございますけれども、審査官を増員をするというふうな考えについて、どのような御見解がありますでしょうか。
#38
○姉崎政府委員 私どもといたしましても、審査処理の促進のためには審査の中核であります判断業務を行う審査官の増員ということがとりわけ重要であるというふうに認識いたしておりまして、このような考え方に基づきまして、厳しい行財政改革の中ではございますが、平成元年度から五年間で百七十七人という異例の数の審査官の増員を確保してまいりました。今後とも、所要の増員の確保ということで、先生御指摘の方向で私ども最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。
#39
○吉田(和)委員 要するに、今回の特許料の値上げが一部五〇%にも及ぶ率の値上げになるということで、大変その率が高い、妥当性があるのかどうかということで多くの御意見が出ております。事務合理化でやれるのではないか、事務の簡素化、合理化、サーチ機関をもっと利用する、さまざまなことによって合理化ができるのではないかというふうに御意見が出ている声に対して、今ほどは公報の発行料金なども電子化をして削減をしていきたいというふうな御意見がありましたけれども、どれとどれとどれにどういうふうな形で進めていくという考えがあるか、もう一度お尋ねをいたします。
#40
○麻生政府委員 私どものいろんな経費の中で非常に大きなウエイトを占めていますのは今御指摘がございまざいましたような公報発行経費、これは百三十億円を超えておるわけでございますが、これは、今総務部長が申しましたようにCDIROMの公報をいよいよことしから発行いたしておりますから、これが定着するに従いまして、公報費が非常にかかっておる原因が、紙で公報を出しておるわけでありますが、紙公報、これのあり方を再検討いたしまして、この分野で一つは大きな費用の削減を図っていきたいというのが第一でございます。
 第二番目は、コンピューター関係の経費でございます。ペーパーレス計画では、もちろん非常に大きなコンピューターを使って電算機化をやっておるわけでございますが、私どものシステムは、今までどこでもそうでございましたけれども、中央演算装置に非常に大きな電算機を持っておりましてそこですべての処理を行うというシステム、中央集中型のシステムでございます。御承知のように、最近は端末のいろいろな機能が発達をしてまいりまして、電算機をいわゆるダウンサイジングで使っていくという技術がだんだん発達し、定着をしてまいりました。私ども、今、このダウンサイジングの技術を採用するということによって経費の削減が相当図れるのではないかということでございまして、具体的なシステムを現在検討中でございます。そのようなことでございまして、二つ目の大きな合理化のポイントはコンピューターのダウンサイジング化ということであると考えておりまして、その努力を重ねていきたいと思います。
 そのほか、いろいろな形での諸経費、いろいろな細々したものがありますけれども、これはもちろんできるだけの節約をしながら、私ども庁を運営していくということでやってまいりたいと思います。
#41
○吉田(和)委員 今回の値上げが大変率が高いのではないかという御指摘があります。高いだけではなくて、こうたびたび、たび重なる値上げが続くということがこれからもあってはたまらないのではないかというふうな声がございます。今後、またすぐに上げるというふうな要素が考えられるのかどうか。どういう場合にあるのか。すぐに上げるようなことはしないというふうなことは言い切れるでしょうか。
#42
○麻生政府委員 今回の改定でございますけれども、将来どこまで見通すかという点はなかなか難しいわけでございますが、私どもは今後五年間、いろいろな計算をいたしまして、この値上げを認めていただければ十分やっていけるという見通しを持っております。
 新しい値上げ要因は何かということでございますが、ずっと年がたっていきますといわゆるインフレ、物価上昇要因というのは、これは徐々にいろいろな、人件費初め諸コストが上がっていくわけでございまして、これはじりじり進行する一般的にある要因でございます。
 そのほか、私どもの特許庁として特別な要因ということになりますと、今考えられますのは、世界知的所有権機構で今進行いたしております特許の調和条約の問題がございます。この調和条約は、いろいろな事項で交渉をいたしておりますが、その中には、公開時にサーチレポート、先行技術調査書をつけろということが議論をされております。もしこのようなアメリカの主張が最終的に入ってまいるということになりますと、これは相当大きなコスト要因になるわけでございますが、この点につきましては、私どもは合理性がないのではないかということで非常に厳しくアメリカなんかと話をし、また各国の理解を求めておるということでございます。
 そういう意味では、一つの要素といたしましては特許ハーモナイゼーションの条約の問題がありますが、これを除きますと、今申し上げたようなことであるというふうに考えておるわけでございます。
#43
○吉田(和)委員 時間が迫ってきているわけでございますけれども、これまでの経過そして今度の値上げ、そもそも特別会計では無理なんではないだろうか。出願者、発明者の皆さんに負担をさせるというのがちょっと大き過ぎるのではないかというふうな御意見がありますけれども、どうでございましょうか。ちょっと、そこら辺を含めまして、今度の法の改正で国際的な調和がとれるのだろうかどうか。そして、今申し上げました、そういうふうな背景の中での特許行政の特別会計で本当にこれから先大丈夫なんだろうか。そういうところを含めまして、最後に大臣にお伺いをしたいと思います。
#44
○森国務大臣 御熱心な御論議をいただいておりまして、大変ありがたく存じております。
 今吉田委員から各方面にわたりましていろいろと御意見もちょうだいをいたしました。御承知のように、近年の経済活動のグローバリゼーション化といいましょうか、あるいは技術革新の進展に対応していくためには、各国の特許制度をやはりどうしても調和させていく必要性が高まってきておるわけでございます。世界知的所有権機関、WIPOにおきましても、先願主義への移行あるいは出願公開制度の導入など特許制度の国際的なルールづくりを目指しまして、各国におきまして条約案の内容について今活発な交渉が行われているところでございます。しかしながら、ことしの七月に予定をされておりました条約採択のための第二回の外交会議につきましては、御承知のように新政権がアメリカにできましてまだ特許商標庁の長官の指名も実は行われていないという実情でございまして、準備が間に合わないということがございまして、ちょうど昨日のパリ同盟臨時総会におきまして延期やむなしに至ったということでございます。
 我が国といたしましても、難しい対応を迫られている部分がございますものの、特許制度の国際的な調和を達成させるということが国際特許紛争の緩和、そして世界経済の発展につながるという大局的な観点に立ちまして、条約交渉が成功するようにこれからも積極的に努力してまいりたいと考えております。特に米国の積極的姿勢が不可欠でございますので、先般私が渡米をいたしました際にもブラウン新商務長官に対しまして直接に、条約成立に向けてぜひアメリカのイニシアチブを発揮してもらいたいというふうに要請をいたしましたところでございます。
 いろいろと御提言ございましたり、また御疑念ございました点なども十分に踏まえて対処してまいりたいと考えています。
 なお、特別会計ですべてを賄うことは無理なのではないかという御質問でございますが、これは従来の経緯もございますので、長官からお答えをさせていただきます。
#45
○麻生政府委員 特別会計は五十九年にできたわけでありますが、そのときにこのあり方というのはいろいろな議論がされ、会計法ができたということでございます。私どもが行っています特許庁の業務というのは、つまるところいろいろな形で手続あるいは審査をいたしまして、特許権という非常に財産的価値のある独占権を出願者に与えるということになるわけでございます。したがいまして、その業務の結果受益する人というのは非常にはっきりいたしておるわけでございます。このように受益との関係が明確な場合はどうかということで議論の結果、この必要な費用は受益者に賄ってもらうという形で考え方が統一されて特別会計ができたということでございます。
 したがいまして、それでずっとやってきたわけでございますが、現在の状況におきましてこのような考え方を変えるという特別な事情はないのじゃないか、やはりこの特別会計ができたときの考え方に従いまして、必要な経費を受益者負担、収支相償するという原則のもとで運営をしてまいりたいと考えておるわけであります。こうなりましても、私どもはいろいろな形で経費の削減努力をいたしまして、できるだけ低廉な価格でいろいろな業務を行っていく、それによって発明の保護を図っていくという努力は当然やらなければいけないと考えておる次第でございます。
#46
○吉田(和)委員 終わります。ありがとうございました。
#47
○井上委員長 次に、安田範君。
#48
○安田(範)委員 今日、国際間の特許競争というものは大変な激化の一途をたどっている、こういう状況の中でありますが、ここに来まして、特に基本的なルールの国際的標準化、このことを求められる時代、こういう状況になってきていると思うのであります。今回のこの法律の一部改正もその一環だ、こういうようなことで受けとめてまいりたい。そういうことからしますると、その趣旨についてはおおむね理解ができるような気がするわけでありますけれども、さらに公正な競争ルールを確立するということになりますると幾つか問題を指摘をして明らかにしてもらいたい、かようなことを考えるわけでございますので、そのことをひとつ御理解いただいて御答弁を願いたいと思います。
 初めに、法改正の中身以前の問題といたしまして、ただいまも若干吉田委員の発言にもありましたけれども、アメリカの特許法の改正の動向、これは日本の今日の特許法とのかかわりにつきまして非常に深いものがある、こういうふうに考えているわけでございますので、まずは、今回の特許制度の改革におきましてその契機となっているのはアメリカの動向ではないのかな、こういう気を持つものですから、さようなことについて、まず第一は、昨年九月十四日付のアメリカの商務長官へ提出されました特許制度改正に係る諮問委員会の勧告において、日欧が米国の望む制度改正を実施するのであればアメリカも先願主義に転換すべきであるとのグランドパッケージ方式となっていると思います。こういうことであります。ただ一方、アメリカから日本に対する要求といたしましては六つの項目が提示されていると思うのですね。その一つはサーチリポートの義務づけ、さらにまた審査期間の短縮、原語出願の許容の問題、あるいは付与前の異議の禁止、さらにはクレーム解釈の弾力化、さらに六番目といたしましてはグレースピリオド、発明の開示が特許の新規性あるいは進歩性に影響を与えない猶予期間の拡張、六項目だというふうに聞いておるわけでありますけれども、この今回の法改正及び実務によりましてアメリカのグランドパッケージ方式を充足することができるのかどうか、こういうことが私どもわかりませんものですから、これについて、長官ですか、まずは御答弁をいただきたいと思います。
#49
○麻生政府委員 昨年の九月の商務長官あての諮問委員会のレポートは、御指摘のようにグランドパッケージ方式をとって、国際的な制度調整にアメリカとして応じていこうということでございました。その場合のグランドパッケージの中身でございますが、これは今先生が御指摘されたとおりでございまして、アメリカ側からは日本に、指摘された六項目、これをぜひやってもらいたいのだという立場でございます。
 一万日本側でございますが、日本側は今度はアメリカの制度をぜひ変えてもらいたいということでございまして、日本からアメリカ側に要請をしております項目はいろいろございますが、主要な点は、アメリカが非常に特異な先発明主義をとっておりますが、これを先願主義へ移行してもらいたい、あるいは出願公開制度がないということでございますから公開制度を導入する、あるいは特許の期間、これが出願日を起算点としていないということのために、いわゆる潜水艦特許というような非常に厄介な問題を引き起こしている。したがいまして、起算日を出願日をもって始めるというふうにしてもらいたいというような形になっておるわけであります。それで、このようなお互いの要求を持ちながら、現在いわゆるハーモ条約ではそれぞれの要求が満たされるような条約内容にしたいということでいろいろな交渉を繰り返しているというのが現状であります。
 こういう状況でございまして、今回の法律改正とこのグランドパッケージとの関係でございますが、グランドパッケージの中身が、まだこの条約が固まっておりませんものですから最終的にどうなるかということが確定いたしておりません。したがいまして、今回の改正はグランドパッケージを前提として、アメリカから要求されておるような項目を法律的に満足させるというような改正内容になっておるわけではございませんで、このパッケージの問題は、条約ができ上がり、かつアメリカがその条約に従ってアメリカも法律改正をするということを見きわめて、それと並行して日本もそのパッケージ内容に従った法律改正を将来やっていくというふうに考えておるわけであります。
 ただ、今回の改正は、グランドパッケージなり制度の国際調和と無関係がというと、決してそうではございません。一つは、今回の改正のねらいは、審査を促進する、権利の早期付与ということが大きなねらいになっておるわけでございますが、このグランドパッケージを将来やっていきます場合に、日本の最大の非常に難しい問題は審査期間の短縮でございまして、ここのところがめどがつかなければパッケージに応じられないという状況でございます。その意味で、今回の改正は非常に重要な審査期間の短縮の具体的な方策を提供するものであるということでございます。
 もう一つ、補正の適正化でございますが、これは現在、特許の調和条約の内容の一項目に入っております。ただ、これはパッケージ項目というよりも、既にもう各国とも今回やりますような補正の適正化をやるのが当然であるということで異論のないところでございますから、その意味では、この部分は条約内容の先取りになっておるという関係になっておるわけでございます。
#50
○安田(範)委員 詳細な答弁をいただいたわけなんですけれども、引き続きまして、アメリカの特許制度は、今お話にございましたように、先進国といたしましては唯一、先発明主義という形をとっているわけでありますけれども、権利期間についても、出願日からのシーリングが欠如している。特許発効から十七年となっておりまして、ハイアット特許あるいはレメルソン特許のように二十年から三十年、それほど前に出願をされておりまして、既に大変陳腐だな、こういうふうになっている技術というものも突然、特許だ、こういうことで成立をしている状況があるようであります。
 こういうことになりますると、当然のことといたしまして、日本企業にとりましてもこれは大変ゆゆしき問題、しょっちゅう新聞等でも報道されておりますけれども、企業にとっては戦々恐々と言っては言い過ぎかどうかわかりませんけれども、いつどうなるかわからない、こういう不安が絶えずつきまとっている、こういうことは事実だと思うのであります。そういう意味もありますし、さらにまた出願公開制度がないために出願内容が特許付与されるまで外から知り得ない、わからない、こういう状況、今もちょっとお話がありましたけれども、そういう状況がある、こういうので、グローバル化の中で特に非常に大きな問題を残しているのだろう、こんなふうに実は私どもも認識いたしておるわけでございます。
 先ほどのアメリカ商務長官への特許制度改正に係る諮問委員会の勧告では、グランドパッケージ方式の問題は別といたしまして、これらの問題点の解消が図られているが、努力はいろいろされているようでありますけれども、ただ、新聞報道なんかによりますると、先願主義に移行するということにつきまして、例えばアメリカの弁護士会だとかその他の団体等においても相当反対だ、こういう意見が強いように受けとめているわけなんですけれども、この辺につきましては、今アメリカの状況、こういうものをちょっと把握しにくいわけでありますが、これらの弁護士会なんかが反対だというような状況等も踏まえて、どういうふうに把握をしておられるのか、これをひとつお聞かせいただきたいと思うわけであります。
 そういうことなどから考えますると、今改正法案が出されておりますように、何か日本だけが先行して、先走りをして、言うならばどんどん整備はしているというような状況と大分ちぐはぐな感じを受けるわけなんですけれども、言うならばハーモナイゼーションといいますかそういう関係におきましても、ちょっとすとんと胸に落ちないな、こんなふうな印象も受けるのですけれども、そういう意味でアメリカの今日の状況、とりわけ先願主義に移行する、こういうことについてどうも一生懸命になっていないといいますか積極的でない、こういうふうな状況があるようですから、その辺についての説明をちょっとお願いしたいと思うのです。
#51
○麻生政府委員 今先生から御指摘もございましたように、アメリカの特許制度は、日本その他の先進国と比べますと、非常に特異な制度でございまして、今の三点、先発明主義あるいは権利期間の問題あるいは公開制度の問題、これが日本あるいはヨーロッパの制度とことごとく違っておるということであります。その結果、まさに御指摘がございましたハイアット特許あるいはレメルソンの特許というような、いわゆる潜水艦特許が突然浮上いたしまして、非常に大きな混乱あるいはコスト増をもたらすということでございまして、世界の制度の調整ということを考えます場合には、どうしてもこの際、アメリカにみずからの制度の根本的な改革をやってもらわなければ、本当の意味での制度の調和はできないというふうに私どもは考え、その線で強くアメリカに働きかけておるという状況であります。
 そういうことでございますが、一方、アメリカの国内の模様でございますが、これは、いわゆる先発明主義という考え方が非常に根強いわけでございます。アメリカは特許制度採用以来、先発明主義が強いわけでございます。先発明主義をずっととってきて、現に世界一の技術大国ではないかというようなことに加えまして、特に国内での中小企業あるいは個人発明家などでは、先発明主義の支持というのが強いのが現実でございます。
 したがいまして、今回の特許の制度調和につきましても、アメリカの国内でいろいろな議論が行われ、先願派、先発明派ということで論争が行われているというのが率直な状況でございます。しかし、実体の経済は、先ほどの大臣のお話にございましたように、どんどんボーダーレス化、国際化いたしておりますし、また、技術革新もどんどん進んでおるという状況では、アメリカだけがこのような制度をいつまでもとったのではアメリカの利益にもならないし、あるいは世界経済の発展にもならないというような議論が近年とみに高まり、先願主義への移行という議論が強くなっておるというのが現状でございます。前のブッシュ政権のときには、先ほどのような商務長官の諮問機関が、パッケージでございますけれども、ともかく先願主義へ移行しようということで報告を出したわけでございますが、新政権になってその態度
がどうなるかというのがまだはっきりしないという状況でございます。
 ただ、大統領の新しい政策といたしまして、技術開発の強化あるいはアメリカの産業競争力の強化ということを非常に強く政策目標といたしておりまして、その際にいろいろな発言を見ますと、その有力な手段として知的所有権の保護ということ、あるいはいわゆる知的所有権戦略ということを非常に重視するという立場であるようでございますから、そうなりますと、やはりこの調和ということに積極的に取り組むのではないかということが期待され得るのではないかというふうに思っておるわけであります。
 そのような状況でございまして、もう少し様子を見る必要がございますが、日本といたしましては二つの点が大事であると思っております。一つは、今大臣からもございましたように、アメリカと強く交渉し、アメリカの制度の転換を促すということが第一であります。第二番目は、やはり将来、こうやってアメリカがいいますようなパッケージに日本が応じないといいますと、アメリカも転換をしないということになりますから、応じられるような準備を十分しておくということが必要でありますし、特に審査期間の短縮問題については、いろいろな形で努力を重ねておくということが必要であります。
 その意味で、今回の改正もそうでございますけれども、将来を見通して、今からパッケージでも応じられる、応じるだけの準備をするということを心がけていく必要があるというふうに考えております。パッケージ事項そのものはアメリカとの見合いでやるわけでございまして、日本だけやるわけではございません。その意味で今回は入れていないということでございます。
#52
○安田(範)委員 御答弁のとおりかと思うのですが、ただ、この先発明主義にとらわれているということになりますると、いつも日本企業は脅かされている、こういう状況だと思いますから、いろいろな難しい交渉はあろうかと思います。今日までアメリカも制度が根づいているということからしますると移行が簡単にいかないということについてもわかりますけれども、しかし、やはり日本の実情なりヨーロッパの状況、こういうものも勘案して、特にアメリカのみがということでそのまま通ずるということは何としても考え直してもらわなければいけないのではないかと思うのですね。精いっぱい強い姿勢で交渉をしていただいて、特にそのことはイコール国内企業も守る、こういう状況になると思いますから、待っていたのではなかなか来ませんから、十分攻める形で御努力をいただく、このことだけを申し上げておきたいと思うのであります。
 次いで、特許法の改正について質問させていただきます。
 我が国の特許審査期間の短縮という至上命令に対応するために今回の改正法案ができたということはわかるわけでありますけれども、審査期間の短縮を優先する余り、出願人、特に中小企業にとって困難な、実質的には不可能な改正法案になっているのではないかな、こういう心配があるわけであります。また、従来の取り扱い、例えば趣旨の変更に該当しない新規事項追加による補正などになれている企業において、改正法案の条項を読んだだけでは不明確なところが非常に多い、こういう印象を持つものでありまして、解釈上無用な混乱を生ずるのはどうかということで危惧をしているものですから、そのところを含めて以下質問を申し上げたい、かように思います。
 一つは、先ほどの吉田委員との質疑応答の中でありましたけれども、補正の制限として、改正法案第十七条の二項に「明細書又は図面について補正をするときは、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない。」つまり、新規事項追加の禁止ということであろうと思うのですね。「明細書又は図面に記載した事項の範囲」の解釈につきましては、どのような場合に該当する、どのような場合には非該当なのか、新規事項を追加する不適法な補正、こういうことになるのか、具体的な事例でわかりやすくお示しをいただきたいと思うのであります。
 例えば、当初明細書から見て直接的、一義的に認められることは追加できると説明されましても、何が直接的なのか、何が一義的保なのか、こういうことについて極めて不明確だ、こういう印象であります。したがいまして、よりわかりやすく御答弁を賜りたい、かように思います。
#53
○辻政府委員 お答え申し上げます。
 改正法におきましては、補正の範囲につきましては、「明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない。」と規定しておりますが、これはどういうことかといいますと、出願当初の記載から直接的、一義的に決定されるもの、つまり明細書または図面に明示されている事項については、この規定により補正可能である、こういう趣旨でございます。
 そこで、具体的にはどういうことかと申し上げますと、今回の補正によりますと、例えば出願当初の明細書に弾力性のある支持基盤、物を支持する支持体という記載がなされていた場合、これに対して、図面には実際にその弾力性のあるものとしましてはねが記載されていたとします。そうしますと、最初の記載の弾力性支持体という記載を図面に書いてありますようなばねに補正する場合、このような場合は補正は許されるということでございます。他方、このような図面には具体的な記載がございませんで、当初の明細書には弾力性のある支持体という記載がなされているのみの場合でございますが、このような記載から、この弾力性支持体を実際の例えはゴムでありますとかエアクッションでございますとか、弾力性のある具体的なものに記載をしようとしても、これは許されないということであります。
 つまり、先ほど先生の御指摘のございました直接的、一義的ということはどういうことかと申しますと、先ほどの許される場合でございますが、弾力性支持体というものから図面に具体的に示されておるばねというのはもうこれしかない、これは直接的、ここで言う弾力性支持体というものは図面に示されておる具体的なばねを含むということで許されるという趣旨でございます。
 このような制度をとります趣旨は、何人にも簡明な基準となるということでございます。こういうことで迅速な権利付与にも資するとともに、先ほど申し上げました主要国の制度、運用との調和も達成される、こういうことでございます。
#54
○安田(範)委員 今御説明いただきましたけれども、私も極めて素人なものですから説明がすんなりわかりましたという話になりませんで、これは専門的に特許関係の事務をやっておられる方についてはおわかりかなとは思うのですが、やはり広くわからないと困るわけですね、専門的な企業だけではありませんから。一般の中小企業はあるし、あるいは個人もあるわけですから、そういう意味におきましては、一義的だとか直接的だとかいろいろな言葉が使われておりましても、そのことが素直に受け入れられる、解釈ができる、こういうことでないと困るのではないか。特に法律というのはわかりやすくなければいけない話なんで、そういう面からしますると、法律ができ上がりましても、実際に運用していく中で十分このことが理解され得る条件をつくっていかなければいけないと思うのです。したがって、この辺につきましては、今後の運用の中でだれにもわかりやすいというような形で、後で出てきますけれども、ガイドラインなんかで十分理解してもらえるような条件整備をやってもらいたいということを特に申し加えておきたい、かように思います。
 二番目に質問いたしますが、第一回目の拒絶理由通知に対しては、新規事項を追加しない限り、拡張・変更を含め外的付加、これは実は外的付加というのは、あるいは内的付加とか、そういう定義もちょっと不明確ではないかと考えているのですけれども、外的付加は可能であるが、二回目の補正は、改正法第十七条の二第三項第二号で、最初に受けた拒絶理由通知に係る特許請求の範囲についてする補正は、特許請求の範囲の減縮に限るとしているわけですね。「請求項に記載された発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定するものに限る。」となっております。
 特許庁の考え方といたしまして、いわゆる内的付加だけを認めて、明細書に記載している事項であって特許請求の範囲上はその上位置念の発明としてクレームしていた場合、その上位置念が先行技術の引用で拒絶された場合に、当該明細書記載の下位置念で補正する従来の実務として多く行われている、かつ認められていた外的付加による減縮はできなくなったと聞いておるわけであります。一方、欧米における補正の通例といたしましては外的付加をも認めている事例が多い、こんなふうに聞いているわけでありますが、この辺についてはいかがでしょう。
#55
○辻政府委員 お答え申し上げます。
 今回の改正でこの二回目以降の拒絶理由通知に対する補正の考えでございますが、迅速的確かっ公平な権利付与の観点から、補正のたびごとに審査のやり直しを回避するという趣旨がございます。これはどういうことかと申しますと、先ほど先生御指摘の内的付加、外的付加という言葉もあるわけですが、これは言いかえますと、どういう場合に認めてどういう場合に認めないかということを申しますと、発明の解決しようという技術的課題を変更せずに特許請求の範囲を技術的に限定する補正はこれは再審査を要しませんので、つまり課題を変更しておりませんので、通常こういう場合には再審査を要しないわけでございますが、これをいわゆる内的付加と呼んでいるわけでございますが、このような補正は認めようなおこれは欧米についても同じでございます。
 それから、技術的に異なる課題の解決を新たにつけ加えるという補正は、これは通常もう一度それについての審査が必要でございますから、こういう場合は制限しよう、こういう考え方に立っているわけでございます。
 なお、先ほど申しましたように、欧米におきましては、第二回目の拒絶理由通知後にいわゆる外的付加、すなわち新たな争点を提起する補正を行うことは審査のやり直しを要しますので、権利付与の遅延をもたらすという意味で認められておりません。この点については今回我が国の補正もこういうことになっております。
#56
○安田(範)委員 この内的付加と外的付加、これについてもなかなか容易に理解しにくい話だというふうに思うんですが、今の御説明でおおむね理解はいたしますけれども、まだまだ何かちょっと十分わかったというわけにいかないような気がいたしております。
 そこで、引き続いてなんですけれども、さきの審査結果を活用できる範囲内に補正を限定する趣旨のようでありますね、今の説明は。そういう説明というふうに承りました。補正が二回に制限されていることを考えますると、最終の拒絶理由通知に対する補正においても明細書に記載されている内容である外的付加による減縮を認めるべきではないのかな、こういう声も実はあるわけなんですが、この辺についてはどのようにお考えになりますか。
#57
○辻政府委員 外的付加についてでございますが、例えば当初の明細書には記載されているけれども、審査の対象に新たになるという部分についてはどのような道があるかという御質問と受け取りますが、これにつきましては非常に専門的になりますかもしれませんが、我が国におきましては分割の出願という制度が存在しておりまして、この分割、新たにその部分を分割出願いたしますればその点についてまた特許の付与が可能となる場合もあるわけでございます。
#58
○安田(範)委員 それで引き続いてなんですけれども、この改正法案によりますると補正を二回に限定をする、かつ我が国の従来からの取り扱いでは分割の基準が非常に厳しい、こういう指摘があります。アメリカではCA、継続出願ですかな、さらに基準が我が国の分割の基準よりも相当緩やかだ、こういうふうにも言われております。この継続出願、CAですか、CAとCIPというのがありますね、一部継続出願ですかな、の繰り返しによりまして基本特許など有用な特許が取得されていると聞いておるわけでありますけれども、改正案のように補正を制限してかつ分割の基準を厳しくすると重要な特許の取得が非常に困難になるんではないか、こういうふうに言われておりますけれども、この辺についてのお考えはいかがでしょうか。
#59
○辻政府委員 分割の運用につきまして非常に改善が必要であるという指摘があることは承知しております。したがいまして、今回の補正の適正化に際しましてこの分割出願の要件の運用基準についても、もとの出願から分割する場合の判断基準あるいは判断時点につきまして見直しを行うことにより、先ほど申しました出願人の方々の要望にこたえていくよう努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
#60
○安田(範)委員 ただいまの分割につきましては改正法案では全く触れてないわけですね。そこで、補正と抱き合わせて考えた場合に諸外国とのバランスがとられていない、こういうふうにも考えられると思うんです。欧米と調和した分割の基準を検討すべきだ、このように考えるわけでありますが、具体的考え方をひとつお聞かせいただきたいと思います。要はよい発明が生まれても特許成立を阻害することのないように十分配慮してもらわなきゃ困る、こういうことですね、その辺を踏まえてひとつ御答弁いただけませんか。
#61
○辻政府委員 今回の法改正につきましていろいろガイドラインをつくりまして出願人の方々に周知徹底していただきたいと思っておりますが、先生御指摘のように、補正の制度が変わりますことによりましてこの分割出願の運用基準についても非常に重要性を帯びてくるわけでございまして、今回のガイドラインの作成作業の一環といたしまして、これの運用基準について出願人の要望にできるだけおこたえすべく検討を進めてまいりたいと思います。
 具体的にはこのようなガイドラインは九月くらいまでにはできるだけ作成しまして、この過程では出願人の方々の御意見もいただきます、また時間をかけて全国に説明をする機会もつくっていきたい、かように考えております。
#62
○安田(範)委員 改正法案の補正の制限を考えると出願に先立ち綿密な公知例調査を実施することが前提となっているわけですね。公知例調査は諸外国の文献調査を含めて非常に多くの時間と金がかかる、こういう状況だと思います。それで、大企業でも公知例調査は非常に大変だというふうにお聞きをしているわけでありますけれども、いわんや個人、中小企業ということになりますると、これはまさに不可能に近いような状況もこれあり、こんなふうに考えられると思うのです。そういう面からしまして、これは、経済的な弱者という表現がいいかどうかは別にしまして、中小企業なり個人、こういう人たちを結局締め出すことになってしまうのじゃないかな、こういうふうな懸念もされるわけであります。したがいまして、この辺についてどのような考え方なのか。また、政府としましては、安い費用で容易に公知例調査をすることができるようなシステムを提供することが必要なのではないか、かようにも思いますけれども、この辺についてお考えをお聞きいたしたいと思います。
#63
○麻生政府委員 公知例の調査の問題でございますが、これは今後いい特許を得るというために非常に重要になってくるものと考えております。と申しますのは、日本の現在の出願の状況を見ますと、実際に出願された中で権利になるものが三〇%でございまして、結局七割は権利にならない、結果として見ますとむだな出願になっておるということでございます。ヨーロッパはこの点は七〇%でありますし、アメリカの場合には六〇%ということであります。これはなぜそうなっておるかということでございますけれども、いろいろな原因がありますが、結局、出願の前によく公知例調査をやって本当に権利になるかどうか、むだな出願じゃないかというような検討が十分なされていないままに、これは大企業、中小企業を問わず、日本の場合には出願が多くなされておるということであろうと思っております。
 それで、今後の問題でございますが、やはりむだな出願をやめて、強いしっかりした権利を得るというためには、この公知例をよく調べて特許申請をする、明細書を書くということが必要でございまして、その意味では、特に中小企業の先行技術、公知例調査をどうやって補完していくかということが非常に重要になっておるというふうに認識をいたしております。このような認識のもとに、本年度から中小企業の皆さんの先行技術調査、公知例調査を補完するように支援事業を新たに実施したいと考えておる次第でございます。
#64
○安田(範)委員 この辺についてはしっかりこれから御努力をいただきたいと存じます。
 次に、実用新案の改正についてお伺いをいたします。
 現行の実用新案権の存続期間は出願公告の日から十年、ただし出願の日から十五年を超えることができないようになっておるわけです。改正法案では、実体審査を伴わない方式審査になったからといいまして即存続期間を出願の日から六年と、先ほども大分議論がありましたけれども、六年に短縮するということはいかがなものかな。これは率直に申し上げまして、先ほどの答弁も聞いておりまして、商品のサイクルが非常に短くなった、こういうことが主な理由ということになっていると思うのですね。さらにまた、長時間を要する審判との関係から見て、実効性としてはどうなのか、こういう問題もあろうかと思うのです。こういうことから、この六年についてもう一遍考え方をお聞きしておきたいと思います。
#65
○姉崎政府委員 お答えを申し上げます。
 私ども今回御提案申し上げております実用新案制度の改正のポイントが二点あろうかと思うのでありますが、一つは先生御指摘の権利期間の長さの問題であります。それからもう一つは、早期の登録制度という新しい考え方を採用したという点でございます。
 この背景としては、昨今の技術革新の中でライフサイクルが非常に短くなってきているという商品の実態がございます。それからもう一つは、発明が極めて早期に実施される、次々に早く実施されて次々に新しい商品に切りかわっていく、その意味で極めて実体経済のテンポが速くなっているということがこの背景にあるわけでございます。先ほどちょっと実情を私どもが調査した状況を御報告をいたしましたが、現在既に実用新案制度を使っております技術の大部分が、五年以下のライフサイクルのものが多くなっているということになっております。かつ、それが極めて早期に実施されているというのがまた実態でございます。
 それで、現行の制度では、御案内のとおり出願いたしましてから審査請求をし、そしてそれに基づいて審査をするという手順を踏んで、その上で権利が与えられるということになるものでございますので、結果的に権利が付与された段階では市場において商品が陳腐化している、あるいは製品寿命が終了してもう次の商品が市場に出回っているというのが多くなってきているのが現状であるということでありまして、この技術革新のテンポに現在の制度が既に追いつかなくなっておるということがあるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、早期登録をするという前提のもとで、かつライフサイクルの短い技術について保護を十分に行うという観点から、この権利期間につきましても六年というのが妥当な線ではないか。先ほど申し上げましたように、不必要に長い権利期間を与えますということになりますと、独占と公共の技術の利用と二つの法益のバランスを失う危険があるということでございまして、その意味で六年というのが実態を踏まえて妥当な線ではなかろうかというふうに考えたわけでございます。
 また、先生、審判の期間が長期にかかるということがあるのではないかという点も御指摘ございましたが、私どもといたしましては、極力無効審判の処理につきましては運用面の改善によりまして処理の促進を行いたい、原則半年程度で審理を行うというようなことに持っていきたいというふうに考えておる次第でございます。
#66
○安田(範)委員 近年とみに実用新案の出願件数が減少している、大体十万台でしょうかな、そういうのが現況だというふうに聞いているわけでありますが、この年々減少している内容というのは大企業に比較的多い、こういうふうにも聞いているわけであります。中小企業、個人におきましてはやはり精いっぱいやりまして従来の出願件数は保持している、こういうようなことも聞いておるわけでありまして、そういう意味からしますると、今日までそれぞれ中小企業や個人が努力をして実用新案を獲得したというような状況のもの、同時にまたそれがずっとやはり永続しているということがよく言われております。大企業の場合はライフサイクルが速い、しかし中小企業とか個人の実用新案は割合に下の方で定着をしているといいますかな、よく利用されているというようなことなども聞かされているわけであります。そういう面からすると、大企業と中小企業、個人を一緒にしてしまって六年ということでやってしまうということになりますると、やはり問題が起きやしないか、中小企業やあるいは個人に大変冷たいといいますかな、冷遇の結果になってしまうのじゃないかという心配も実はあるわけなのですが、この辺についてのお考えはありますかね。
#67
○姉崎政府委員 私ども、この実用新案制度の改正を行うに当たりまして、二年近くかけまして審議会でいろいろと御議論をいただいたわけでございます。また、この間、各方面のいろいろな声を伺うとともに実態調査もやってまいりました。その過程で中小企業の方々の声も伺ったわけであります。
 例えば玩具協会の代表の方々は、もうぜひとも早期登録にしてほしい、それで権利期間は六年で十分である。例えば玩具につきましては、二年半で大体もうサイクルは終わっているというようなことをおっしゃっておりました。つまり、今の制度におきましては、ある意味で十分な審査を行った上で権利が与えられるけれども、権利保護という実態が既に空洞化しちゃっている、これを何とかしてほしいという声が中小企業の代表の方々から多く聞かれたということでございまして、私どもといたしまして、そういった実態を踏まえながらこの新しい制度のあり方をこのような形で検討し、御提案を申し上げたという次第でございます。
#68
○安田(範)委員 説明の内容についてわからないわけじゃありませんけれども、やはりいろいろ審議会で中小企業の意見も聞いたよという話だとは思いますけれども、しかし、実体をきちんとやはり把握をしませんと、審議会で物を聞いたからいいやというような話じゃありませんで、今日の実用新案の流れといいますか大企業の分野とあるいは中小零細あるいは個人、こういうものの持てる実用新案、言うならば小発明ですね、そういうものの実体というのはやはりきちんと把握をしませんと、いつも二年半か三年のサイクルでもういいんだよということで視点をそれにだけ集中してしまいますと、なかなか中小あるいは個人の利益を保証するというわけにいかなくなってしまうのじゃないか、こういう心配もあるものですから、この辺につきましては指摘だけいたしておきますが、ひとつ御留意をいただきたいと思います。
 それで、次に料金の関係に入らせていただきます。
 今回、料金の大幅改定、率直に言ってそういう状況ですね。五〇%あるいは二五%ということでありますから、まさに大幅だと思います。こういう大幅の改定をしていかなければ今後特許特別会計が成り立っていかない、あるいは審査の期間短縮もできない、いろいろな側面があることも十分承知であります。
 そういうことを踏まえてあえて申し上げたいと思うのですけれども、やはり特許特別会計、さっき見直すことは必要でないみたいな答弁が吉田委員にされておりましたけれども、本当にそうなのかなと思って実は考えるわけなのです。やはり、今日特許権を獲得するということは、言うならばそれぞれの企業努力あるいはその企業の将来の利益、こういうものもあろうかと思うのですが、ある反面は、今日の先端技術等々の問題を含め日本の経済をどうしていくかという、そういうもうちょっと視野を広げた形で物を考えてみた場合、やはり特許の持つ意味というものは、個人の資産だとか個人の財産が大変大きいのですよという視点だけでいいのかどうか、これについてもやはり考えてみていいのじゃないかと私は思っているのですよ。まあ一つの国策的な意味も含めてこの特許については理解をする必要があるのではないかな。こういうことになれば、やはり、特別会計だからすべて受益者負担あるいはまた独立採算制、こういうものだけを念頭に置いて特許事務を運営していくということでよいのかどうか。これはどうでしょうか、やはり議論の余地があるのじゃないかと思うのですが、長官、いかがですか。
#69
○麻生政府委員 御指摘のように、特許権が成立するという場合に、特許権を得た人そのものはもちろん大きな利益を得るわけでありますが、その特許権が利用されているいろな社会に役立つものが送り出されていくということで経済あるいは社会全体の大きな利益になるということはまさにそのとおりでございまして、また特許制度そのものの目的もそこにあるということでございます。
 そういうことと、それからこの特別会計を第一義的な受益者負担でいくのか、あるいはそういう次の間接的な幅広い、社会的な利益が生まれてくるということに着目して、受益者負担に限らずもっと一般的な財源を求めるかというのは非常に大きな論点であるわけでございましたが、結局この点については、いわゆる特別会計というものが、特定の行政目的を達成するために特定の受益者から歳入をもって充てるということが適当であるということで、現在の特別会計制度が特許の場合にはできておるということでございまして、私どもとしましては、御指摘の点は十分あるわけでございますし、私どもにとりまして非常にありがたいお言葉でありますけれども、特会の運営ということにつきましては、今のこの直接受益者をもって必要な経費を賄うということの運営をやはり貫いていくのが現実的な特許庁の運営の財源の確保になるのではないかと考えておる次第でございます。
#70
○安田(範)委員 この問題については幾つかの視点があろうかと思うのですね。言うならば、料金が高額過ぎて出願をできるだけ絞ろうという考え方が起こるかもわかりません。そういう意味では、これはもう大企業も中小企業、個人もみんな同じですから、そういう意味では特に個人、中小企業の場合には相当痛く響くかな、こういうような印象を強く持つわけなんですよ。そういう意味で、新しいいい発明、そういうものはなかなか表に出なくなってしまうという、言うならば絞られるといいますか、そういう心配が私どもにわいてくる、こういうふうにひとつ言っておきたいと思うのです。
 そういう面と、もう一つは、先ほど、冒頭でも申し上げましたけれども、今日の特許競争といいますか、これは国際的には大変な事態になっているわけですね。とりわけ、日本のこれからの経済の成長なり、あるいは日本全体の経済的運営なりということになりますれば、やはりこの特許にかかわる部分というものは相当重要な部分というふうにも言えると思うのですね。ただ単に個人の財産だ、こういうふうに割り切っでいいのかどうか。この辺について、これは認識の違いかどうかわかりませんけれども、もうちょっとやはり国自身の財産という形で物を見てもよろしいのじゃないかと思うのですね。そういう面からすると、自前の特許庁の運営といいますか、特会でやりなさいよということだけで、一般会計とは全くかかわりはありませんよという形でもし考えるとすれば、やはりどこか不足をしているというふうに思わざるを得ません。
 というのは、特許会計のみではなくして、いずれの特別会計も、なるべくそれぞれの特別会計だけで円満に運営していきたいという気持ちは、これはどれもあるでしょう。多分それはわかりますよね。そういう中で、一般会計からこれを繰り出してもらうというのは、こっちは繰り入れてもらうのですが、そういうことについての努力というのはなかなか非常に言いにくい話、格好いい形で言えば、それぞれの特会で十分やっていますよというのが一番いい。しかし、その結果はどうなるかということになれば、高い料金、やはり受益者負担ということで押しつけてまいる、こういうことに通ずるわけですよね。この辺は、これは大臣にも聞いておいていただきたいとは思うのですが、とにかくこの特別会計、法律ありますよね、特許特別会計。この中だって「歳入及び歳出」これは第三条、あるいは第七条の「一般会計からの繰入れ」こういうものもきちんとあるわけでして、何も独算制でやらなければ絶対だめなんだ、こういうふうに断定することもありませんし、そういうグローバルといいますか広い意味で特許というものを認識した場合には、国においても、やはり可能な限り財政支出はしていくというくらいの考え方になってもらわないと、これからどういう形で進展するかわかりませんけれども、財政事情の変化あるいは経済状況の変化等にきちんと対応していく、こういうことが可能なのかどうかちょっと心配はあるわけです。
 さっき話が出ておりましたが、例えば五年あるいは十年という将来を見越して特許会計をどう運営していくか、その財源はどうなのかということについても、本来ならば、やはり五年ぐらいはきちんと出してもらって、そういうようなことは心配はかけません、もしあった場合には別の次元で財政対応はいたしますよという形になればそれなりの理解はできると思うのですけれども、なかなかその辺が明確でありませんものですから、時間がありませんから多くを申し上げませんけれども、その辺についての考え方をやはりちょっと変えてもらわないといけないかな。今回の大幅料金値上げというものを契機にして、私はそのような実感をいたしているわけでありまして、そういう面で、とりあえず長官からひとつ答弁をお伺いしましょう。
#71
○麻生政府委員 私ども、特会は特別会計の受益者負担原則で運営するわけであります。料金が余り高くなりますと、御指摘のように、発明保護ということも全うできないということでありますし、ひいては社会全体に非常にマイナスの影響を及ぼすということになります。したがいまして、料金はできるだけ低廉にしなければいけませんし、また、そうしなければ、これで発明がうまくいかないということになりますと、私どもの会計の一番重要な基盤が覆ってくるということになります。
 したがいまして、現在の特会制度の考え方のもとでは、この受益無負担のもとにやっていくわけでありますが、できるだけこの料金を低廉に持っていくという努力、これは私どもの歳出合理化努力ということが非常に大事であるというふうに認識をいたしておりまして、このための努力をいろいろな形で強化をしていきたいと考えておる次第でございます。
#72
○安田(範)委員 この問題はいろいろ議論が尽きないわけなんですけれども、言うならば、今回の特許特別会計以外の、例えば郵政事業だとかあるいは国立学校の特別会計だとか、国立病院の特会あるいは印刷局の特会、さらには法務省の登記特会、自動車検査登録特会、幾つかあるわけですよね。そういう中で一般会計からの繰り入れのないのは郵政省の郵政事業ともう一つは大蔵省の印刷特会だけですね。あとは一般会計からの繰り入れをどんどんやっているわけですよ、どんどんかどうかわかりませんけれどもね。そういう実績は確かにあるわけでして、そういう面から考えますると、やはり広い視野で特許を見詰める、同時にまた、これから新しい優秀な発明をどんどんやってもらう。それをやはり経済の成長やあるいは経済の、これは国際貢献もしなくちゃなりませんからね、そういうものに大変役立っているという意味からしますると、国における費用支出といいますか、国庫支出も、これは当然あってもいいなというふうな印象を非常に強く持っているわけですから、そういうものもひとつ視野に入れて今後特会の安定的な財政確保、こういうものに、受益者負担ばかり考えないで、こういうところでひとつ努力をしてもらいたい、このことを申し上げておきたいと思います。これは今長官から話がありましたし、ちょうど時間も終了したものですから、大臣の方からひとつ所信を表明していただきまして、質問を終わらせたいと思います。
#73
○森国務大臣 いろいろと御指摘もいただきました。また、特別会計につきましても、確かに幅広く検討していかなければならぬこともございます。御指摘のとおり、料金ができ得る限り長期にわたって安定することがやはり重要であろうと認識をいたしております。今後とも引き続き歳出の削減などに十分に努めてまいりたい、このように考えています。
 なおまた、今回のこの法改正は、先ほども申し上げましたが、各国の特許制度を見ておりますと、アメリカだけが先発明主義等の、他の主要国と異なった制度をとっておりますので、このことが近年の国際特許紛争激化の一つの大きな原因となっていると認識をいたしております。したがいまして、現在WIPOの特許制度のハーモナイゼーションの条約の交渉でも、我が国の制度も変えますけれども、同時にアメリカも先願主義へと移行していただきたい、制度改正を行うべしという立場を強く主張してまいりたい、このように考えております。
 先ほど吉田委員にも申し上げましたように、昨日、残念でございましたが、WIPOの外交会議が本年七月に予定されておりましたが、アメリカの事情等によりまして延期されることが決定をされております。これはアメリカの特許商標庁の長官がまだ任命されていないということで準備が間に合わないというようなことでございましたが、この条約成立のためにはアメリカの積極的な姿勢がぜひとも不可欠でございますので、私も先般ブラウン長官にも直接申し上げましたが、今後とも我が国といたしましては、さらにこのような努力を強めてこの条約の交渉をぜひ成功させたい、このように考えておるところでございます。
#74
○安田(範)委員 質問を終わります。
#75
○井上委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時六分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時開議
#76
○井上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。菅直人君。
#77
○菅委員 特許法等の一部を改正する法律案がきょう朝から議論が始まっているわけですけれども、今回の改正は、かなり大幅な改正でもあると同時に、非常に実務的な部分もかなり盛り込まれているように思います。そういった点で、若干細かい問題にも立ち入るかもしれませんが、まず、今回の特許法等の改正の内容について、幾つかの点について質疑を行いたいと思います。
 きょう、朝来の質疑の中で、補正の範囲の適正化という問題がいろいろと議論されておりました。これはかなり専門的な分野なので、特許庁の答弁を聞いていても、なかなか理解するのが難しいところもあったわけですが、幾つかの点で確認をしておきたいと思います。
 今回の補正の範囲の適正化というのは、一つには、原則として、新規事項、つまりは願書に最初に添付した明細書または図面に記載した事項以外の新規事項を加える補正ができないという原則を導入したことと、さらには、第二回目という言い方がいいのかあるいは最終拒絶理由通知という言い方がいいのかわかりませんが、そこにおける補正をさらに狭く、特許請求の範囲の特定の減縮というふうに限定をした、その点が非常に大きな要素だと思いますが、基本的な認識としてそれでいいのかどうか、まずお聞きしておきたいと思います。
#78
○辻政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。
#79
○菅委員 そこで、特に最終拒絶理由通知の場合の特許請求の範囲の特定の減縮という問題、これが、条文を見ても表現が非常に難しいわけですけれども、この拒絶理由通知というものが、一回目、二回目という表現は法律ではされていないわけですが、最終の拒絶理由通知というのは、何らかの形で出願人がこれが最終であるということがわかるようにする、明示するということも言われておりますが、まずこの点を確認しておきたいと思います。つまりは、受け取った拒絶理由通知が最終のものなのかどうかが何かわかるようにするのか、するとすればどういう形になるのかわかる範囲で述べていただきたいと思います。
#80
○辻政府委員 お答え申し上げます。
 最終の拒絶理由通知につきましては、出願人の方がこれがはっきりわかるように、その理由と、この拒絶理由が最後である旨明示することになっております。
#81
○菅委員 そうすると、今回の法律改正では、最初一度拒絶理由通知を受け取る。考え方としては、少なくとも最初の拒絶理由通知と、二度目というのかファイナルというのか、最終の拒絶理由通知の二度が最低の回数と考えてまずいいわけですか。
#82
○辻政府委員 最初の拒絶理由通知と最終の拒絶理由通知の二回ということになります。先生のおっしゃるとおりでございます。
#83
○菅委員 そうすると、今は、中には第一回目の拒絶理由通知の後拒絶査定が出る例がありますが、そういうケースはなくなると理解していいんですか。
#84
○辻政府委員 ちょっと言葉を補足いたしますと、最初の拒絶理由でそのまま拒絶査定される場合もございます。さらに、その最初の拒絶理由に基づいて、出願人の方で明細書を補正されるケースがございます。そして、その補正に基づいて拒絶理由通知がある場合には最終の拒絶理由通知を差し上げる、こういうことでございます。
#85
○菅委員 ちょっと最初の答弁と若干食い違っているのですけれども、きちんと確認をしてもらいたいのですが、最終の拒絶理由通知は明示すると言われましたね。二度目の答弁では、一回の拒絶理由通知の後に拒絶査定が出ることがあり得るとすると、一回目の拒絶理由通知が最終の拒絶理由通知になることがあるということですかまたそれは明示されるということですか。
    〔委員長退席、竹村委員長代理着席〕
#86
○辻政府委員 最初にお答えしましたのは、二度目の拒絶理由通知については、これが最後であるということを明示するというふうに申し上げたわけでございます。したがいまして、特に最終であるということが明示していない拒絶理由通知と、これが最終であるというふうに明示した拒絶理由通知、この二種類があるということになります。
#87
○菅委員 どういうことになるんでしょうね。そうすると、最初の拒絶理由通知を出して、出願人側の対応によって、場合によったら査定が直接出る場合もあるし、出願人側の対応によって、例えば補正書が出た場合などは、それを最後とはしないで、もう一度最後の拒絶理由通知を明示して出していく。つまりは、出願人側の対応によっては一度目が最終になる場合もあるけれども、その場合は明示をしない、まあできないわけでしょうが、しない。二度目以降で最終の場合は明示をする。もっと別な言い方をすると、二度目でも最終でないこともあり得るわけですから、二度目で最終の明示をする、あるいは場合によっては二度目でも明示をしないで、三度目、四度目に明示をする、そういうこともあるということですか。
#88
○辻政府委員 第一回の拒絶理由通知、最初の拒絶理由通知ということでございますが、これについては自由な補正が認められるわけでございます。それで、実際、手続としましては二回目の拒絶理由通知ということがないわけでございます。これは、例えば新たな引用例が出てきたというような場合が、これは物理的には二回目の拒絶理由通知でございますが、これは、いわゆるこれが最後であるということは明示いたしません。
 最終の拒絶理由通知と申しますのは、先ほど申し上げましたように、第一回の拒絶理由通知によって出願人の方がそれに対応して補正をされます、その今までの積み上げたところに基づいてさらに拒絶理由通知がある場合は、これが最終であるということを明示して、非常に範囲は限られておりますが、もう一度補正の機会を与える、あるいは意見書提出の機会を与える、こういう趣旨でございます。
#89
○菅委員 では、第二回目以降でも明示されない拒絶理由通知が出て、その後拒絶査定にぽんとなることもあり得るということですか。
#90
○辻政府委員 物理的には第二回目でございますが、最終でない性格を持つ第二回目の拒絶理由通知が出まして、これについて、意見書を見ても補正書を見ても特に理由を撤回する必要が認められないときは、第一回の拒絶理由通知と同様、それをもって拒絶査定をすることがあるわけでございます。
#91
○菅委員 そうすると、あれですか、最後の拒絶理由通知を明示をするということは、逆に言えば特許請求の範囲の特定の減縮を行えば特許になり得る可能性があるときにそういう拒絶理由通知を、いわゆる明示した拒絶理由通知を出す、そう理解していいのですか。
#92
○辻政府委員 最後の拒絶理由通知を出す場合には、いろいろなケースが考えられると思います。拒絶理由通知をあえてもう一度こちらから通知する場合には、例えばこれを補正すれば特許の見込みがあるというような場合もあろうかと思いますが、そういう場合にはその旨を示唆する場合もございますし、その第二回目の拒絶理由通知を差し上げましてそれに基づいて拒絶理由が依然として解消されない場合は、第二回目の拒絶理由通知に基づいて拒絶査定される場合もあるわけでございます。あるいは、第二回、最終の拒絶理由通知に対しましては、補正の範囲が極めて限られております。こういう場合は、補正は却下されますが、それによって最終的に拒絶査定される場合もあるわけでございます。いろいろなケースが考えられます。
#93
○菅委員 この制度がこれから導入された場合、実際の運用の中で今言われたような問題が混乱を起こさないようにきちんとした対応を特にお願いしておきたい。
 今の答弁を伺っても、まあおおよそのことはわかるのですが、必ずしもファイナルである、最終の拒絶理由通知であるということが明示されないまま拒絶査定が出るケースもあるというふうに今技監は言われたわけでして、国によって違うのでしょうけれども、たしかアメリカなどはファイナルを必ず出してから拒絶査定が出ているようにも、これは必ずしも私も確かではありませんが、思いましたから、ちょっとそのあたりのルールをきちんとしていただかないと、今の答弁を伺っても、こういう場合には明示されていない拒絶理由通知、一回目か二回目かは別として、すとんと拒絶査定になる場合もあり、あるいは明示されたものがあった上で拒絶査定になる場合もありという二種類があるとなると、かなり気をつけないと混乱するのじゃないかと思いますが、そのあたりは大丈夫ですか。
#94
○辻政府委員 今回の法改正の、具体的にどうやって運用をしていくかにつきましては、その運用基準につきまして早急にこれを作成いたしまして公表をいたしまして、出願人あるいは内部の審査官に周知徹底を図っていきたい、かように考えております。
#95
○菅委員 それに合わせて審査をする側、つまり庁側の方も、これまでは、例えば新しい引例なども本来一回目の拒絶査定で出すべきものが二回目、三回目になったり、中には拒絶査定の中で周知例という形で実質的に新しい引例を引くようなケースも見受けられたわけですが、そういうことは今後なくなると考えていいわけですね。つまりは引例の出し方と対応した形でこの補正の範囲の適正化がきちんと行われないと、新しい引例を周知例のような形で引いておいて、そして査定だということになるとそういうチャンスが与えられなくなる、単に狭くなるだけではなくて非常におかしなことになる危険性があるわけですが、そこは大丈夫ですか。
    〔竹村委員長代理退席、委員長着席〕
#96
○辻政府委員 お答え申し上げます。
 拒絶査定の場合に文献を引く場合でございますが、これは拒絶理由通知に対しまして補正がされました場合に、補正後の発明と拒絶理由通知で示した先行技術との差異が、まあ周知技術でありますとか、慣用技術にすぎないというような場合もあるわけでございますが、このような場合には、拒絶査定をすると同時に、その周知技術や慣用技術の具体的に根拠を示すために、この拒絶査定時に追加の参考文献を引用することが実務上慣行となっております。しかしながら、その差異が周知技術や慣用技術でない場合に、再度拒絶理由通知を出すことなくいきなり拒絶査定するというようなことはあってはならないと考えておりまして、今後も御指摘のような事態が生じないように適正な運用に努めてまいりたい、かように考えております。
#97
○菅委員 最後に、そういう例がないようにということだったのでこれ以上この問題は詰めませんが、周知とか慣用といっても、どこまでが周知で、どこまでが慣用がというのがわかりにくいというのはもちろん皆さんもよく御承知のとおりのことでありますので、基本的には、特許庁として、周知とか慣用とかという言い方をしないで、面倒でももう一回必要なら拒絶理由通知で引例に引けばいいわけですから、そこのところはそういう出願人の補正などのチャンスがなくならないような運用を特にお願いしておきたいと思います。
 それからもう一点。きょうも他の委員の質疑の中で一部ありましたが、外的付加というのですか、つまり、特許請求の範囲の特定の減縮で行われるのは、内的付加は認められるけれども外的付加は認められない。その場合には、実際上は分割という手続で、外的付加をどうしてもしたければ付加したクレームをつくって分割出願すればいいというような趣旨のことが答弁されておりましたが、その点を確認をしておきたいと思います。つまりは、そういうやり方で、当初の明細書に入っている内容で特許請求の範囲の中には入っていないものを外的に付加する場合、今回は補正が、まあ二度目以降というのでしょうか、認められなくなるケースが出るわけでございますが、そういう場合には分割によって対応ができるというふうに理解していいのか、その点を確認しておきたいと思います。
#98
○辻政府委員 我が国は分割出願制度があるわけでございますが、これはいろいろな利用の形態があるわけでございます。先生御指摘のとおり、今度の改正法におきまして、最終拒絶理由通知後に補正をすることができない事項については分割出願をして剔出願とすることが可能でございます。また、これに加えまして、拒絶査定不服審判請求時にも分割出願が可能でありますので、このような制度を利用することができる、かように考えております。
#99
○菅委員 よくアメリカの制度との比較があるわけですが、いわゆる継続出願に当たるようなものは、そうすると、日本の制度でいえば分割をすればいいというふうに今技監の答弁で理解できるわけですが、アメリカにあるいわゆる一部継続出願、CIPとの比較でいいますと、この補正の範囲が適正化されると実質的にニューマターが加えられなくなるので、CIP的な対応が、やる手だてがなくなるように思うわけです。これはそのCIP自体が本来、何といいましょうか、アメリカの制度でありますが、国際的に見て適切なのかどうかという判断もあると思いますが、この点とういうふうに認識をされているのか。つまりは、そのアメリカのCIPそのものを場合によったら日米の協議の中で廃止を求めるなどをして日本の制度との調和を図っていくという考えなのか、あるいは、アメリカの制度がもし意味があるというふうな認識があるならば、それに対応する日本の制度というものが実質上難しくなることについてどういうふうに認識しているのか、その点をお聞きしておきたいと思います。
#100
○姉崎政府委員 御説明いたします。
 アメリカにございます先生御指摘の一部継続出願でございますが、これは、もとの出願に新規事項を加えて別途出願できる制度でございます。これに対しまして我が国では、もとの出願に新規事項を加えて、まとめて出願できる国内優先権制度が設けられてございます。したがいまして、この制度を利用すれば、アメリカと同様に新規事項の追加は可能ではないかというふうに考えている次第でございます。
#101
○菅委員 国内優先権は期限があるでしょう。CIPは期限がないんじゃないですか。
#102
○姉崎政府委員 確かに先生御指摘のとおりでございまして、我が国の国内優先権制度を利用して出願可能な時期は、もとの出願から一年以内に限られております。
 しかしながら、我が国の、出願から十八カ月経過後の公開制度ということを考えますと、仮に我が国の一年という時期的な制約を撤廃いたしましたとしましても、通常、既に公開されまして公知になったもとの出願が先行技術になるわけでございまして、新規事項を加えた新たな出願というのは、結局特許を受けることができなくなってしまうということでございますので、事実上意味がないということになるわけでございます。言いかえますと、一部継続出願というアメリカにある制度というのは、結局アメリカのように出願公開制度がない国の特定の制度のもとでしか機能しない制度ではないかというふうに考えておる次第であります。
#103
○菅委員 必ずしも今の答弁、果たしてそうなのかというのはちょっと疑問があります。
 つまり、ニューマターを加えるということで、公開されていても、そのニューマターそのものは必ずしも公開されていないわけですから、前の明細書に入っていないわけでしょうから、それが進歩性、新規性との関係でどうなるかというのはあるにしても。ですから、最初の質問に対して若干別の答え方をされたわけですが、日本の制度との比較でいえば、アメリカの制度そのものが、もし問題がCIP制度にあるとすれば、それはそれとして問題にすればいいのであって、何か、日本の制度で何とか同じようなことができるという答弁は若干疑問が残るということだけ申し上げておきたいと思います。
 それからもう一つ、特に特許庁の審査のあり方について要請をしておきたいのですが、特許制度がどんどん変わってきまして、いわゆる特許請求の範囲が多項制になり、特許請求の範囲の一項ごとの審査というものが前提となっていろいろな制度が積み上げられているわけですが、実務的に見ると、特許請求の範囲第一項から第十何項までについてなどという形で、いわば一つのものとして審査をされているようなケースもまだ多々あって、必ずしも項目ごとに、つまりクレームごとの審査が徹底していないようなケースも若干見受けられるように思うわけですが、今後、クレームごとの審査の徹底ということをぜひ、これは制度の前提でしょうから特にそれが重要ではないかと思いますが、その点の認識だけ一応聞いておきたいと思います。
#104
○辻政府委員 お答え申し上げます。
 今回の制度改正において補正の適正化を図るに当たりましては、特許庁といたしましても、出願人の方々の対応が容易になるように審査を行っていかなければならない、かように考えております。
 具体的には、拒絶理由通知におきましては請求項ごとに、判断できないようなケースを除きまして、これはどういう場合かといいますと、明細書全体が不備で全く不明瞭である、そういったような例外を除きますと原則各請求項ごとにすべての拒絶理由通知を開示する、第一回の拒絶理由通知で差し上げる、このような運用をしてまいりたいと存じております。
#105
○菅委員 それでは、もう一つの大きな改正である実用新案の早期登録について話を進めたいと思います。
 この中で、同日出願の場合に、同日に二以上の同じ考案についての出願があった場合は登録を受けることができないというふうに規定をされたわけですね。従来はたしか協議ということになっていたわけですが、いろいろ話を聞きますと、実際は訂正手続等によって一方が請求項を削除するなどして同一の考案でない形をとれば一方が生きるといった手続もあるということの説明を若干受けたのですが、まず、こうした理由と、今言いました何らかの形で当事者が一万を残すということを考えたときにやるやり方が先ほど言ったようなやり方であるのかどうか、その点を端的にお答えいただきたいと思います。
#106
○姉崎政府委員 お答えいたします。
 現在の制度では、一つの技術思想には一つの権利、いわゆるダブルパテントの排除という原則がございます。したがいまして、仮に同日出願に係る特許権と実用新案権が存在した場合には、無効審判等において当事者間で調整が図られ、ダブルパテント排除が貫かれることになるわけであります。そして、審査の段階で同日出願の存在が明らかになる場合には、これを踏まえまして協議指令が行われるということになっております。
 今回の改正におきましても、このダブルパテント排除の原則自体は維持することにいたしました。実体審査を経ないで登録が行われます実用新案制度のもとで、仮に同じ日に別の人が同じ発明を出願した場合には、形の上で両出願とも登録されるわけでございますが、両者ともに無効理由を有することになるわけであります。しかしながら、登録後でありましても、どちらかの実用新案権につきまして請求項の削除といった訂正を行うことによりまして無効理由を回避することは可能でございます。
 また、同日に同じ内容の特許の出願と実用新案の出願がなされたケース、これにつきましては、特許の審査の段階で同日出願の存在が明らかになるわけでございますので、その場合には、従来どおり協議指令を行い、当事者間で調整を行ってどちらかの権利を生かすということに相なろうかと考えております。
#107
○菅委員 ダブルパテントを防ぐ、これは制度的には一つの基本であることはもちろん理解できますが、逆に言えば、発明者あるいは考案者にとって、偶然同日に他の人が出願をしていたら権利が取得できないというのは、もっと本質的な特許を受ける権利を奪っていると思うわけです。ですから、例えば無効になる、ならない、あるいは何らかの権利実施の場合にそういうものを当事者同士が協議する機会というのは、無審査だからチャンスがないというふうに必ずしも決めつけなくてもあり得るのではないかとも思われますし、最後に訂正手続ということで当事者間で何らかの回避の話し合いができればやれるということですので、この問題はこの程度にとどめておきますが、ちょっとその議論の立て方が、ダブルパテントを防ぐために両方とも権利が取れないというのは、特許や考案をした人に対しての基本的な権利が制度的な理由からやや抑えられるのじゃないかという感じもしますので、特に、運用上においてそのことが当事者同士で話し合いによって回避できるのだということをきちんと、本来なら条文上でも明示されるべきかなとも思うのですが、ではもう一回この点答弁をいただいておきましょうか。どう考えられます。
#108
○姉崎政府委員 この点につきましては、この制度の改正の趣旨について出願人あるいは代理人、関係者に十分周知徹底をいたして混乱を防止いた
したいと考えております。
#109
○菅委員 そこで、新しい実用新案制度の存続期間、今回は出願日から六年というふうに決められたわけです。従来は公告制度があったわけですが、シーリングは従来の法律でも出願日からたしか十五年でしたか、決まっていたわけですけれども、今回は登録日から何年、出願日から何年という言い方をしないで出願日だけが起算日になったというのは、これまでの制度からすると変わってきたというふうに思えるわけですが、この理由を端的に説明いただきたいと思います。
#110
○姉崎政府委員 お答えいたします。
 今回の制度改正におきまして権利期間の起算日を登録日でなく出願日といたしましたが、これは昨今の制度の国際的な調和という観点を踏まえたものでございます。権利期間の起算日を登録日からといたしますと、例えば従来の特許出願から新しい実用新案出願へ変更される場合、あるいは現行の実用新案法に基づく実用新案から新しい改正後の実用新案へ出願変更される場合等がございますので、その場合には権利の設定まで大変長引いてしまうことになるわけであります。そういたしますと、出願から長期間を経過した後、権利付与の後に起算日になってくる、権利が発生するといういわゆるサブマリン特許の問題が生じてまいります。したがいまして、このような問題を選けるという観点から起算日を出願からといたしたわけでございます。
 なお、現行制度のように権利の発生日を起算日とし、かつ出願日からのシーリングを設けるということも考え方としてはあり得たわけでございますが、今回の改正に基づく出願については、まあ出願から原則おおむね半年以内には登録されるということにしておりますので、このようなシーリングを設けるという形にす谷実体的な意味はございませんものですから、権利期間の起算日を簡明な形で出願日から六年ということにさせていただいた次第でございます。
#111
○菅委員 半年程度で権利付与ということですので、これが崩れてしまうと、一年とか一年半とかかかればまた問題が起きると思いますので、そのことを前提として理解をしておきたいと思います。
 ところで、技術評価という問題が新たに制度として盛り込まれたわけです。まず、この技術評価というもの、これは出願と同時にもできるしその後でも、登録になってからもできるようですが、どのくらいで出せることを見通されているのか、その点をお聞きしておきたいと思います。
#112
○姉崎政府委員 お答えいたします。
 私ども一応、今いろいろな準備をいたしておりますが、現在のところ出願と同時に評価書の請求がなされた場合にはおおむね登録と同じ時期、すなわち六カ月程度以内には評価書の作成が可能だろう、それから登録後に請求がございました場合には、私どもできるだけ早期に作成をするということで考えておりますが、三カ月ぐらいを目途といたしたいというふうに考えておるところでございます。
#113
○菅委員 私は、この期間の問題はかなり重要であると同時に、どのくらい技術評価の申請が出るかわかりませんが、申請によってはかなり審査の負担というのか、労働が相当かかる可能性もあるのじゃないか、出願から六カ月といえば相当短期間ですから、一斉にもしそういう形が出れば、かなり負担がかかる問題でもあるので、そこの見通しは一応お聞きして、そういうふうにうまくいくのかどうか、よく見ておきたいと思っております。
 それで、この技術評価が、この条文等によると、権利行使をするときにはこの技術評価書を提示して警告した後でなければ権利行使をすることができないというふうに新しい法律ではなるわけですが、つまりはこの技術評価書が権利行使の条件、あるいは裁判を受ける権利との関係でいえば裁判を起こす上での条件というふうに理解をすべきなのか、あるいはそうではない何らかの別の形なのか、どういう位置づけか、まずお聞きしておきたいと思います。
#114
○姉崎政府委員 技術評価書の法的な性格といたしましては、私どもは先行文献あるいは先行技術に関する客観的な判断基準を示すものであり、権利の有効性に関する評価をするものというふうに考えておりまして、それ自身が権利の消長を左右するいわゆる行政処分性を有するものではなく、法的にはいわゆる鑑定に近いような位置づけであるというふうに考えております。
#115
○菅委員 そうすると、警告そのものはできると考えていいわけですか。つまり技術評価書がなくても、ある実施についてこれは自分の実用新案権に抵触すると考える、直ちにやめてもらいたいと、そういう警告はできる、それ自体はできると考えていいわけですか、その技術評価書がなくても。
#116
○姉崎政府委員 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、この改正案では評価書を提示して警告した後でなければ権利行使ができないというふうに規定いたしております。これは、この警告をする際には評価書の提示を義務づけるということによって、権利行使に先立って自分の権利の有効性について客観的な評価を権利者自身が十分に認識してもらうということで権利の乱用を防止するということとともに、権利行使を受けた第三者の過度な調査負担を防いで適切な権利行使を担保するという趣旨でございます。したがいまして、仮に評価書を提示しないで警告をする、これは事実上、そういう警告をすることは一向に、あり得るわけでございますが、事実上の警告を行ったといたしましても、それ自身は法的には意味のある警告ということにはならないというふうに考えております。したがいまして、事実上の、評価書を提示しない警告をもとに、その後の行為について例えば損害賠償請求をいたしたといたしましても、相手方に過失があるということにはならないものと考えております。
 なお、この規定は、侵害訴訟におきます適正な権利行使を担保するという目的で置かれておるものでございますので、例えば、実施権を設定するといったような当事者間で行う協議についてまで評価書の提示を義務づけているというものではないことだけつけ加えさせていただきます。
#117
○菅委員 そうすると、例えば権利書を提示した警告を行わないで、あるいは権利書なしの警告なりで訴訟を起こした場合、これは裁判所はどういう扱いになるのですか、この規定からいうと。門前払いなんですか、それとも評価書を出せという指導になる、どういうような見通しですか。
#118
○姉崎政府委員 先生御指摘の、言うならば後者の方でございまして、評価書の提示をして訴訟を提起するということを求めることになろうかと思います。
#119
○菅委員 この技術評価書を権利行使の条件にしたのは、私は、いろいろ聞くところによると、裁判所に最初から技術的な判断をどんどん持ち込まれるのは、裁判所としてもかなり判断が難しいということで、これを前提条件にしたというふうなことが言われているようですし、それはそれとして理解はできるのですが、今のいろいろな質疑の中でも行政処分性を有するものとは理解しない。しかし、実際上は、これがなければ裁判も実質上、何といいますか、有効な裁判として進めることができないとなれば、これには、ある種の処分にかなり近い性格も持っているわけですから、この点も、何といいましょうか、関係者の理解が十分得られるようなことが必要なのではないか。新しい制度ですので、その点を特に申し上げておきたいと思います。
 大分時間が過ぎましたが、少し問題を移していきたいと思います。
 今回の改正の中でいろいろ盛り込まれているわけですが、逆に言うと審議会などの答申では含まれていて、今回の法改正に入らなかった問題も幾つかあるように理解しております。特に、特許異議申し立て制度の改革といいますか、登録後にするといったような問題について、審議会の答申にはたしか盛り込まれていたはずですが、法案の中に盛り込まれなかった、この理由が何かあればお聞かせいただいておきたいと思います。
    〔委員長退席、竹村委員長代理着席〕
#120
○麻生政府委員 御指摘の登録への異議申し立て制度の改正ということは審議会ではずっと議論をいたしました。最終的には、今回の改正には盛り込んでおりませんが、これは現在進められておりますWIPOの特許調和条約、この成り行きをもう少し見る必要があるというふうに考えたからでございます。
 特に昨年の九月のアメリカの商務長官の諮問機関の答申ではパッケージというような考え方が非常に強く出ておりまして、このような考え方のもとでその特許調和条約をやっていこうという立場でございますものですから、しかも、このパッケージというものの中に、この異議申し立て制度の改革も含まれるというような点もございますものですから、もう少し条約締結の状況を見きわめる必要があるというような配慮も働きまして、今回は見送った次第でございます。
#121
○菅委員 WIPOの問題は時間があれば後ほどまたちょっと触れたいと思いますが、もう一点、この制度の中で、この間、ペーパーレス計画が順次実行されていて、それに費用がかかるということで料金改正も提案されているわけですが、ペーパーレスの事業の進展状況について、一、二点お伺いをしておきたいと思います。
 いろいろ報告を見ますと、電子出願が九五%になったとか比較的順調に進んでいるというところがいろいろ報告されておりますが、もう一つの大きな目標でありました、特許庁が持っているいろいろな技術情報なりあるいは出願の審査状況などの情報あるいは商標などの情報をユーザーといいますか、必要な人に提供するという情報公開という面で、その情報公開の中身が若干薄いというか、不十分なんじゃないかというふうな声も一、二聞くわけであります。
 例えば、現在JAPIOを通して行われているいろいろな審査の進捗状況を端末で取り出す場合も、必ずしもごく最近の手続が載っていない、あるいは数カ月以前までしか載っていないとか、中には、商標などは方式のデータは出るけれども、商標見本等が、そういうところで取り出すのが相当時間が経過した後でなければなかなかできない、こんな指摘もあるわけですが、こういった点について特許庁としてはどういうふうに認識をされていますか。
#122
○姉崎政府委員 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、情報公開というのは、ペーパーレス計画の一つの目標でもございましたし、また、成果の一つでもございます。したがいまして、特許庁といたしましては、このサービスをできるだけ出願人等関係者の方々に有効に提供するように積極的にこれを推進してまいる所存でございます。具体的には、昭和六十一年、いわゆる総合データベースのオンライン閲覧サービスというのを各地域で開始いたしましたし、また、平成二年からは、先生御指摘のようなJAPIOを通じていわゆる特許のFタームの検索もできるようにいたしてまいったところでございます。さらに、ことしの一月からは電子出願の成果をCD−ROMという形で公開をいたしたところでございます。
 先ほど御指摘ございましたJAPIOの問題でございますが、私どもといたしましては、まさにこの情報公開を逐次進めている、いろいろと体制整備をし、データベースを蓄積し、今進行形であるということから、いろいろなまだ不備な点が多々あることは重々承知いたしておりますが、ひとつ出願者あるいは代理人の方々の利用の便を考えまして、最大限私どもとしてこれから努力を続けてまいりたいというふうに考えております。
#123
○菅委員 もう一点、これもかなり細かい問題になりますが、外国から日本へ出願される場合の優先権証明書、これはなかなか電子化しにくい中身で、現在も文書で提出をされていると理解しています。しかも、当初の国の代行出願から一年四カ月以内ということが、提出を義務づけられているとたしか条文に書いてありますが、優先権証明書が実際どうしても必要になる場合というのは、その優先期間の間の、何といいましょうか、その間に先行技術などがあるといった場合に限られて、必ずしもすべての出願に提出をさせる必要はないのではないか。ある段階で必要になれば提出を求める、あるいは第三者が必要だと思えば提出をさせるような申し出をする、そういう制度でもいいのではないかというように考えられますが、特にいわゆるペーパーレスの中でぺ−パーに頼らなければならない残された問題として、この点、どのように考えておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
#124
○姉崎政府委員 お答えいたします。
 確かに先生御指摘のとおり、現在パリ条約に基づく優先権を主張するためには優先日から十六カ月以内に証明書を提出していただくということになっておりますが、この手続の必要性あるいはこの運用につきまして、先生御指摘のようなぺーパーレスシステムの今後の展開、あるいは現在検討されておりますWIPOのハーモナイゼーションの条約の中での手続的な規定の動向、さらには、私ども、ヨーロッパ特許庁、アメリカ特許庁とやっております三極のデータ交換、このような協力関係の動向、これらをにらみながら、先生御指摘のような重要な課題でございますので、ひとつ今後鋭意検討させていただきたいと考えております。
#125
○菅委員 少し話を進めまして、先ほどWIPOの話が長官の方からも少し出ましたが、いろいろきょうの朝以来の議論を聞いておりましても、何か日米間の協議が延びたとかいろいろ言われております。
 そういう中で、たしか商標についても簡素化に関するハーモナイゼーションの協議が進んでいるように聞いておりますが、これの進展状況なりあるいは見通しなりがわかれば、端的にお答えをいただきたいと思います。
#126
○麻生政府委員 商標制度につきましても現在WIPOでハーモナイゼーションの条約づくりのための交渉が始まっております。一九八九年から始まっておりまして、政府の専門家から成ります専門家会合、これが四回開かれております。初めは特許と同じように実体面の調和を目指すということでやっておりましたけれども、各国の商標制度の中身が非常に隔たりがまだあるということでございまして、現時点で実体規定の方を調和するというのは非常に難しいということでございまして、むしろ行政手続面、これの簡素化をするということを中心とした標準化あるいは調和をやろうという線で現在検討を進めております。
 今後の予定でございますが、一九九三年、ことし、二回専門家会議を開催をする。それで詳細を詰めまして、九四年以降できるだけ早い時期で外交会議に持ち込もうというような見通しのもとに、話し合いが行われているということでございます。         。
#127
○菅委員 大臣には、きょう朝からずっと議論を聞いていただいたり、あるいは幾つか重要な面では、各委員、答弁をお願いをしているわけであります。
 あるいはお手元に行っているか行ってないかわかりませんが、今ここに私は、キルビーという人が発明したいわゆるキルビー特許というものを持っております。事前に言っておりましたので、あるいは大臣にも説明があったかと思います。この特許はある方面ではなかなか有名であることは、特許庁の皆さんはもちろんよく御承知のとおりでありますが、たしか昭和で言うと三十五年の二月六日が最初の出願、アメリカの出願は一九五九年であるわけですが、日本で登録になったのが一九八九年。アメリカの出願からいうとちょうど三十年後に登録になったというケースであるわけです。これは、きょう朝以来のサブマリン特許とかいろいろな制度上の問題があって、日本でも当時はシーリングがなかった。つまり、出願から何年というシーリングがなかった関係でここまで延びたわけですが、同時に、この特許が半導体の非
常に基礎的な部分の特許になっているので相当のロイヤルティーを日本の企業は取られるのじゃないだろうか、そういうこともかなり言われているケースであります。また、最近見ますと、新聞紙上などでミノルタなどがかなり巨額の特許料を請求されて、そのことだけであるかどうかは別として、経営がかなり苦しくなっている、こういう報道もなされております。そういう点で、特許制度、工業所有権制度というものが日本の産業に与える影響というのは、従来から大きなものがありましたけれども、特に最近のアメリカの政策といいましょうか、あるいはアメリカのスタンスといいましょうか、そういうものから見ると、産業政策的にも一歩間違うとかなり厳しい面が出てきているのではないかというように思っております。
 そういう中にあって、いろいろとハーモナイゼーションの問題が議論をされているわけですが、この進展の展望も含めて、大臣に、こういった特許制度あるいは工業所有権制度の国際的な調和の問題について基本的な認識なり今後の展開についてのお考えを聞かせていただきたいと思います。
    〔竹村委員長代理退席、安田(範)委員長
    代理着席〕
#128
○森国務大臣 キルビー特許のようなこうした問題は、御指摘のようにアメリカの特異な制度から発生しております非常に難しい問題の一つであるというふうに認識をしております。
 現在、WIPOで特許制度調和条約の交渉が行われておりますが、その重要なポイントは、先発明主義から先願主義への移行など、米国の他国と大きく異なった制度の是正を求めることと認識をいたしております。これがなされなければ、技術革新あるいは近年の経済活動のグローバル化等が円滑に進まないことになる、このように考えております。したがいまして、我が国といたしましては、難しい対応を迫られている部分があるものの、特許制度の国際的な調和を達成することが国際特許紛争の緩和、世界経済の発展につながるとの大局的な観点に立ちまして、条約交渉が成功するよう積極的に努力してまいりたいと考えております。
 特に、たびたび申し上げて恐縮でございますが、アメリカの積極的な姿勢が不可欠なところでございまして、そういった意味で、先般私からブラウン新商務長官に対しまして、条約成立に向けたアメリカのイニシアチブを発揮していただくように要請をいたしたところでございます。いろいろと委員御専門の立場から御指摘をいただきましたことも十分踏まえながら対応していかなければならぬと考えております。
#129
○菅委員 あとわずかの時間ですので、最後に、今回の料金の改正がいろいろ提案されております。これについても他の委員からもかなり議論がありましたので、私の方は一つだけ申し上げておきたいのですが、新しいぺーパーレスシステムを構築する上で大きなコンピューターを使う、あるいはそれに伴うソフトの開発などでかなりの費用がかかるということは理解できるわけですが、最近、銀行などでも従来のように大きなコンピューターを中央に置いて全支店をネットワークするという考え方から、いわゆるダウンサイジングと称せられるような、もっとネットワークの単位ごとに、何と言いましょうか重要な機能を持たせるという形で、簡素化と言っていいのか少し考え方が変わってきているようにも思うわけであります。
 そういう点で、特許庁が合理的な形でそういう費用がかかるとすれば、それはそれなりに理解できるわけですが、その点、行政改革という言い方がいいのか、あるいはそういうシステムに関する必要な見直しを常に行いつつ進めるべきだと思っておりますが、こういう点について、最後に序としての考え方を伺っておきたいと思います。
    〔安田(範)委員長代理退席、竹村委員長
    代理着席〕
#130
○麻生政府委員 御指摘のとおり、今特許庁で使っておるシステムは、大型コンピューターを使った中央集中処理型でございます。最近のように、コンピューターの機能が非常に進歩いたしまして、分散処理型の方が効率的である、いわゆるダウンサイジングの方が効率的であるというふうな事態になってまいりましたものですから、私どものシステムもダウンサイジングに合った形で切りかえるということをしなければいけない、また、それがコストの低減になるというふうに認識いたしておりまして、現在具体的なシステムの研究をやっておる最中でございます。御指摘の方向で、このダウンサイジングを私どもやっていきたいというふうに考えているわけでございます。
#131
○菅委員 終わります。
#132
○竹村委員長代理 権藤恒夫君。
#133
○権藤委員 初めに一般論としてお伺いしますけれども、経済活動のボーダーレス化と技術革新が急速に進んでおるわけでありますが、そのような中で知的所有権制度というものは国際化、特に日米貿易交渉の中で大きな問題として取り上げられております。我が国が、世界に支持され貿易立国として生き残っていくには、この量的な拡大を図っていくことも必要でございますけれども、外国にない技術の製品、広くて強い特許権利を兼ね備えた交易製品の質的方向を一層目指していく必要があると思うわけであります。
 言うまでもなく、工業所有権制度は、産業経済構造を支える基盤でありますが、そのような中で特許、実用新案の出願は非常に多いと聞いております。また、登録まではどうなのかという疑問も一方であるわけでありますが、基礎技術研究のおくれや特許の質的面でどうなのかお伺いします。
 また、我が国が先端技術によって新しい市場を創造していくことは、先進諸国間の国際競争にも生き残るだけではなく、発展途上国の知的所有権制度の運用や整備に協力しながら、要望の強い成熟した産業分野を譲り渡していくことによりまして、より国際貢献に通じる、こういうふうにも考えられます。
 このような観点から、特許の保護の強化を図りながら、我が国も欧米並みに強力な権利を取得することができるよう変革が必要でありますが、制度の面からもこのような変革をいろいろな立場からサポートするべきではないかというふうに思われますので、これに対して見解を承りたいと思います。
#134
○麻生政府委員 特許を中心といたしました知的所有権制度、これは現在の製造業を初め産業経済の非常に重要な発展を支えますインフラストラクチャーであると考えております。その重要性あるいは現在におきます権利の変化というものにつきましては、今先生が御指摘になったとおりであると私どもも認識いたしております。
 特に八〇年代に入りまして、アメリカを震源地といたしましていわゆるプロパテントの時代に入ってまいりましたものですから、いい特許を持つかどうかということが会社の経営上非常に大きな影響を持つ、ひいては国民経済上も非常に大きな影響を持つという事態になっているわけでございます。
 一方、私ども日本の特許の状況でございますが、特許の出願状況は、御承知のとおり大変に多いわけでございまして、アメリカの三倍あるいはヨーロッパの九倍というようなものでございますけれども、しかし、出願されたものの中で実際に権利になるということになりますと、アメリカ、欧州は七割程度でございますが、日本は三割ということで大変に低いという状態になっております。その意味では、私どもの出願というのは、やはり質の問題においてまだまだ問題があるわけでございます。
 一方、世界的には基本特許というものの役割が非常に重要になっております。したがいまして、日本の企業あるいは発明家がもう少し質の高い強い権利を持つということを制度的に支援するということが非常に大切になってきておる状況でございます。このために、これまでは昭和六十三年に多項制というものを導入いたしまして、広くて強い権利を制度的にとれるというような保証をしておりますし、支援もしておるという状態でございます。
 さらに、今回の補正の適正化というものも、これを行いますと、やはりヨーロッパなりアメリカと同じように出願当初から非常に質の高い明細書をつくるということが求められるわけでございまして、これも強い権利を日本で取得していくという一つのインセンティブになっていくのじゃないかと思っておるわけでございます。また、運用面におきましても、このような権利の取得を支援するようないろいろな運用改善をしていきたいと考えておる次第でございます。
#135
○権藤委員 相当の改正でありますから、それぞれ戸惑いもあるのではないかというふうに心配もしておるわけでございますが、この権利の取得がスムーズにいくようにできるだけのサポートをやるべきだろう、こういうふうに思っております。
 次に、制度改正でございますが、経済活動がグローバルに行われております。そのような中で、各国間の特許の出願というのも大幅に増加しておるのが実情でございます。そのためにも今度改正をしなければならぬという理由があるわけですが、各国の出願人が相手国に出願をする場合、同等の手続によりましてしかも同等の保護を受けることができる、いわゆるもっと普遍性を持ったものが求められてくるわけであります。
 今回の改正も含め、またその足らざるところがあるわけでありましょうから、今後の改正努力がWIPOハーモ条約等を通じて国際調和を促進していく上でどのような役割を果たしていくのか、所見をお伺いしたいと思います。
#136
○麻生政府委員 現在のように産業活動、経済活動がボーダーレスという形でどんどんグローバリゼーション化していく状況のもとでは、特許もお互いの国に相互に出願をし合うということがどんどんふえております。日本からアメリカへの出願もふえておりますし、またアメリカ企業の日本に対する出願もふえておるというような状況であります。そうなってまいりますと、制度が同じような制度であるということでないとこのような国際化というのがなかなかうまく進まないということでございます。特に現在の世界の特許制度を見ました場合には、アメリカが非常に特異でございまして、アメリカは先進国の中では唯一、先発明制度を持っておる、あるいは特許期間あるいは公開制度というような点におきましても日本とかヨーロッパ勢とは違った制度をとっておるということであります。
 こういうことでございますものですから、現在WIPOの方でこの特許のハーモナイゼーションの条約交渉がずっと進められておるということでございます。この交渉自体は大変難しい交渉でございまして、特にアメリカに対しましては、私どもは先発明主義を放棄いたしまして先願主義へ転換する、あるいは公開制度をとるというような非常に根本的な制度改革を迫る、それを内容とした条約の締結に向けて努力をいたしておりますが、同時にアメリカ側も、そういうことであれば日本その他の国もアメリカが望むような制度改正を並行的にやってもらうということが必要だというようなことであります。その意味で、アメリカの言うパッケージという形で条約が進んでいくということでございます。いろいろ難しい点はございますけれども、しかしやはりこれをやらなければ産業活動の国際化ということ、あるいは特許紛争の解決ということにも問題が生じるわけでございますものですから、私どもとしましては、鋭意先ほど大臣が答弁されたような積極的な努力を進めてまいりたいと思うわけであります。この条約がうまくいき、条約ができてまいりますと、それに従ってまた国内の制度の改革が必要になってくるわけでありますが、その場合もアメリカにおきます制度改革、具体的な立法化というものを見きわめながら将来やっていく必要があると考えている次第でございます。
#137
○権藤委員 今度の改正案の内容を見ますと、審査を早くやろう、審査処理期間を短縮することになっております。そうすることによりまして国際水準に一歩も二歩も近づくことになるのかな、こういうふうに考えるわけでありますが、これはWIPOハーモ条約や日米構造協議の対米公約の履行にいい影響を与えていくものだというふうには思われますが、この日米構造協議で約束しております二十四カ月の審査というのは、これはまあ可能にしなきゃなりませんけれども、現時点においてはどのように推移していくんでしょうか。
#138
○姉崎政府委員 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、我が国では世界の約四割という大量の出願を抱えておりまして、審査処理期間が大変長期化している。これを、審査の遅延を改善するというのは日米構造協議でも指摘されておりますように大変重要な課題であると認識しております。今回の改正は、こういった状況のもとで、先ほど御指摘ありましたような制度の国際的な調和という観点とあわせまして、迅速な権利付与を図るということを一つの旗印に掲げております。
 具体的に申しますと、今回の補正の範囲の適正化によりまして、補正のやり直しを繰り返すといったようなことで審査の遅延があった事態が改善されるということが期待できるわけでございます。ただ、今回の補正の適正化によります処理の促進効果が実際に出てまいりますのは、法律改正が施行されました後に出願されたものが実際に審査に着手された時期以降に効果があらわれてくるということになるわけでございますが、それ以前も含めまして私どもといたしましては、平成二年六月の日米構造協議の報告書を踏まえまして、審査官の大量の増員あるいは民間能力の活用といったような総合的な処理促進策を講じてまいりましたが、今後ともこの対策を強化させていただきたい。そのために私どもとしては料金の改正等もお願いをいたしておるわけでございますが、これらを通じまして平成七年には、現在約三十カ月かかっております処理期間を二十四カ月に短縮できるものと私どもは考えておりまして、このためこの公約の達成を確実にするよう一層の努力を重ねてまいりたいと考えております。
#139
○権藤委員 早期の権利の保護を目的とするものでありますから出願する人に対しましても内容の充実したものを当然要求されると思うわけでありますが、この出願人の質の高い内容を提出するその努力とあわせまして、行政サイドにおきましても早期に権利保護が求められてくると思うんです。今二、三具体的なことをおっしゃいましたけれども、もう少し詳しくこの運用上の手だてなどについて所見をお聞かせ願いたいと思います。
#140
○辻政府委員 お答え申し上げます。
 まず特許制度の改正について申し上げますと、今回の補正の範囲の適正化に関連しまして、特許庁といたしましても出願人の方々が適切に対応しやすいように運用の改善を図っていく所存でございます。
 具体的に申し上げますと、明瞭かつ丁寧な拒絶理由通知、これは審査官が発するものでございますが、審査に際しまして明瞭かつ丁寧な拒絶理由通知のあり方でありますとか、出願人の方々と審査官が面接することにより意思の疎通を図っていくとか、両者の関係をより緊密化するといったようなこと、さらには出願人の方々が具体的に補正をしやすいように審査官の方から補正案の示唆を行う等につきまして、欧米の審査の運用なども参考にしつつ以上のことについて一層の充実に努めてまいりたいと考えております。
 また、今回の実用新案制度の改正についてでございますが、行政サイドにおける努力といたしましては何よりも早期権利付与が肝要でありますので、特許庁といたしましても極力早期に登録が行われるよう運用方針を確立してまいりたいと考えております。
    〔竹村委員長代理退席、委員長着席〕
#141
○権藤委員 拒絶理由通知書ですか、今まで以上に懇切丁寧にいたしましょうということでございますが、この二回の拒絶理由通知書を受けました後は、補正の範囲は削除だとか誤記の訂正だけに限られるわけですね。この補正が制限されるということで、先ほどから何回も申しておりますが、質の高い出願が要求されてくるわけでございますけれども、事前にサーチ等につきましても資料等を提出するということも一つの方法だろうと思うのです。特に、サーチ能力が劣ると言えば失礼になるかわかりませんけれども、中小企業の方々とか個人で出願をされる方には、格段の、特別の配慮は必要だろうと思いますが、いかがでしょうか。
#142
○麻生政府委員 今回のような形で補正の適正化が行われますと、御指摘がございましたように、当初の出願のときからいろいろな先行技術をよく調査しまして、そのような先行技術、発明との関係で、新しい発明出願がどのような関係になるのかということを十分考えて明細書を書くということが必要になってまいります。その意味で、御指摘のように、質の高い明細書をつくっていくということが必要になってまいります。
 こうなりますと、御指摘のような中小企業あるいは個人の皆さんの先行技術の調査能力という点は大丈夫かということが問題になるわけでございます。この点につきましては、私どもも何とかこの調査能力の補完ということをやらなければいけないというふうに考えているわけでございまして、本年度の予算におきましても、この補完をするための調査予算、これを確保いたしております。
 具体的には、私どもペーパーレス計画のもとでずっと、先行技術を調査いたしますためのデータベースを蓄積をいたしております。これをJAPIOという特許情報機構を通じて使えるような状況にだんだんなっておりますけれども、この先行技術調査データベースを各地の発明協会を通じまして検索できるようにするということでございます。中小企業の皆さんあるいは個人の皆さんが先行技術調査をしたいという場合には、各地の発明協会に参りましてその旨申し出られ、相談をされますと、その相談員が具体的な技術内容に応じまして各地の端末を使って技術調査を行い、これを差し上げるという形にしてまいりたいと考えておるわけでございます。
#143
○権藤委員 実用新案制度でございますが、この中に無審査主義を導入するようになっておるようでございますが、過渡的に三種類の実用新案権が存在することになると思います。つまり、実体審査を経て登録された権利、それから改正により方式審査で登録された権利と、旧実用新案法のときに出願されてきたが実体審査抜きで登録された権利、この三つであろうと思いますが、従来どおり審査を経て付与される実用新案権と無審査で付与される実用新案制度とでは、この権利の安定性に違いは出てこないかという心配があります。その結果、権利者の間で無用のいざこざ、混乱が起こるのではないか、こう心配するわけでありますが、いかがでございましょう。
#144
○麻生政府委員 新しい実用新案制度が導入されますと、いわゆる新実用新案と、それから従来どおりの旧実用新案と、それから新しい制度ができますと旧実用新案からそれに移行していく出願と三種類できてくるというのは御指摘のとおりでございます。そのようなことになってまいるわけでございますが、その結果といたしまして権利の性格なり安定性に違いがあるかどうかということでございますが、これはいずれの実用新案、新旧あるいは乗り移ったものを含めまして、いずれも権利の基本的性格は独占的権利、排他的独占権でございます。具体的に申しますと、権利が侵害されますと差しとめ請求権あるいは損害賠償請求権が認められるということでございまして、権利の内容という点ではこれは変わりがないわけでございます。
 また、実体審査をしてないということから権利の有効性という点に問題が生ずるのではないかという御指摘でございますが、この点につきましては、今回の新しい制度ではいわゆる技術評価書というのを特許庁の方が発行するということでございます。もし具体的に自分が取得しました権利、これを実行する、あるいは他人に対しまして権利の行使をするという際には、評価書の請求を特許庁にいたしますと、特許庁の方でその権利が従前の発明との関係で新規性があるのかないのかという評価をするわけでございます。したがいまして、権利の有効性、内容につきましては、これによって十分判断ができるということでございますものですから、権利の安定性あるいはこのような制度をとることによって混乱が起こるということはないというふうに判断をいたしております。
#145
○権藤委員 WIPO条約それからガットTRIP交渉、日米欧三極特許庁会合などにおきまして、いろいろと交渉をされるわけでありますが、日本としてどのようにリーダーシップを発揮していかれるのか。また、現状ではウルグアイ・ラウンド交渉がアメリカの国内事情によりまして凍結をされておるというふうに聞いておるわけでございますが、今後のWIPO条約交渉にどのような影響を与えていくのか、まあ、相手があることですから、ここで私、明確には述べられないと思いますが、その見通しについてお伺いしたいと思います。
#146
○麻生政府委員 今、広くは知的所有権それから特許の問題につきましては、御指摘がございましたように二つの大きな国際交渉が進行中でございます。
 一つは、ウルグアイ・ラウンドの中で行われております貿易関理知的所有権に係る交渉、通常TRIPと言っている交渉でございます。もう一つは、先ほどから出ておりますが、WIPOの特許の調和条約ということでございます。
 第一の、ウルグアイ・ラウンドの知的所有権交渉でございますが、これは、いわゆる現在の交渉の最終的な産物でございますダンケル・ペーパーの中にもちろんあるわけでございますが、こちらの方は随分交渉が進んでおりまして、まだアメリカは不満足な点があって再交渉はしたいと言っておりますけれども、大きなところではほとんどもう関係国の間では異論がないという状況になっております。したがいまして、このウルグアイ・ラウンド交渉全体が動き始めますと、知的所有権交渉も自動的に動き始めまして、恐らく全体の交渉よりも早いペースで最終的に妥結ができるという状態まで来ておるということであると考えております。
 このガットのTRIP交渉でございますが、こちらの方は、性格から申しますと特許のみならず知的所有権一般、例えば著作権とか企業秘密、トレードシークレットとか、あるいは半導体の回路の設計図の権利、そういうようなものにつきまして、それぞれの知的所有権を定義し、その知的所有権について最低限どれだけの保護を与えるべきかということについて各国で合意しようということでございまして、こちらはどちらかといいますと、先進国と後進国との関係で非常に大きな問題になっておったわけでございますが、先ほど申し上げたような形で、ほとんどでき上がっておるという状態でございます。
 一方、WIPOの方は特許の条約でございますが、ガットのウルグアイ・ラウンド交渉のTRIPとWIPOの条約交渉、これは実は項目がダブっておりました。特許の場合には、特許の対象をどうするかとか、挙証責任の問題とか、あるいは特許期間の問題というようなことがWIPO条約でも条約項目に入っており、TRIPでも入っておったわけでございますが、実は、昨年の九月のWIPO総会におきまして、TRIPと重複しております項目につきましては、これはウルグアイ・ラウンドの方に完全に任せようということで、WIPO条約から削除をいたしております。その意味で、現状はウルグアイ・ラウンドの交渉とWIPOの交渉は全く分かれるという形で、それぞれに交渉ができる状況になっておるわけであります。
 それでは、WIPOの交渉はどうなるかということでございます。
 先ほど大臣からもお話がございましたように、本来はことしの七月に外交交渉を最終的に開きまして、条約を採択しようということで準備を進めておったわけでございますが、アメリカの方が新政権下で、特許庁長官もいまだ決まっていないという状況で、七月の交渉ができないということになってまいりました。
 まず、私どもは、早くアメリカが体制を整えてもらいたいということを強く希望をいたしております。また、内容の面につきましては、何といいましてもアメリカが変わるということがこの条約交渉が成功する一番重要な点でございますから、アメリカに強く先願主義への移行その他を迫っていきたいと考えておる次第でございます。
#147
○権藤委員 できればことしの七月ごろに、このWIPO特許調和条約の採択に向けて交渉していきたい、こうおっしゃっておるようでございますが、アメリカから日本に対する要求項目がございます。このうち、受け入れられる要求というのはどこまでか、また、この国際交渉等をにらみまして、今後予定される改正としてはどのような問題が上っておるのか、このスケジュールと内容についてお聞かせいただければと思います。
#148
○麻生政府委員 このWIPO条約の交渉でございますが、形は、ヨーロッパあるいは発展途上国も含めて世界じゅうの交渉ということになっておりますけれども、実質的には日米間での交渉という側面が相当大きいわけでございます。つまり、日本はこの条約の中に先願主義を原則にするということを盛り込めと言っておりますが、それはとりもなおさずアメリカが先発明から先願主義へ転換をすることを国際的に約束しろということを言っておるわけでありますし、あるいは出願公開制度をとれと言っておりますが、これもアメリカの制度の本質的な変化でございます。また、特許期間の起算日、これを出願から計算するんだということも求めておりますが、これも、今非常に問題になっております、いわゆる潜水艦特許を防止するためにぜひともアメリカの制度を変えなければいかぬという点でございます。
 そういうことでございますが、同時に、日本に対しましてアメリカも並行していろいろな要求をしてまいっております。七項目ございますが、一つは出願公開時のサーチレポートの義務づけ、それから審査請求期間の短縮、日本が非常におくれています審査期間、これをもっと短縮してもらいたい、原語出願の問題、それから異議申し立て制度の変更、クレームの解釈、あるいはグレースピリオドというような諸点でございます。
 この項目の中でどれが日本としてのめるかということでございますが、これはいずれも日本にとって非常に難しい問題であります。ただ、私どもは、アメリカが本気で先願主義なりに移るということでありますと、少々の犠牲を払っても日本も変えなければいかぬと思っておる次第でございます。
 そうは申しましても、例えば出願公開時のサーチレポートの義務づけというようなことになりますと、これは日本が非常に出願件数が多いということでございますから、これを実際にやりますと、日本は非常に大きな費用がかかっていく、また人材も投入しなければいかぬということで、非常に難しいというようなこともございますものですから、そういう点につきましては非常に強く交渉して、是正すべきは是正するということでやってまいりたいと思っておる次第でございます。
 また、今後のスケジュールでございますが、先ほど申しましたように、七月の会合がアメリカの事情で延びたということでございまして、アメリカがいつ交渉に臨める体制をつくり、また国内でのコンセンサスをつくり切るかということをもう少し様子を見る必要があると思っております。
 いずれにしましても、この交渉のモメンタムを失わないように、アメリカとはよく話をしていきたいと思っておる次第でございます。
#149
○権藤委員 詳しいことは定かではございませんけれども、クリントン政権以後、この両条約の交渉というのが厳しいのじゃないか、こういうふうにアメリカの姿勢をいろいろと危惧する人もございます。
 そこで、今、日米で特許の争いがいろいろ起こっておりますが、そのもとになっておりますのは日本の先願主義とアメリカの先発明主義の違いであるわけであります。解決されたことは結構でございますけれども、今新たにそういう争いがあるならば、一、二例を挙げて教えてもらいたいと思います。
#150
○麻生政府委員 近年、特に日米間で特許紛争が多発しておりますし、また損害賠償も非常に多額になっておるということであります。
 損害賠償額が非常に多額であるというようなケースといたしましては、ミノルタのケースが典型でございますし、またセガのケース、それぞれ百数十億円あるいは数十億円というような補償金を払うというようなことになっております。
 そのほかに、いわゆる潜水艦特許というようなことがございまして、先ほどのようなテキサス・インスツルメンツの特許というようなことがございます。これは、その審査期間が非常に長くかかった結果、日本ではほとんどもう公知と皆さんが思って使っておる技術、それが突然権利となっていくということでございまして、最近では、非常に大きな問題になっていますのは工場の生産方式をコンピューターによって管理するシステム、フレキシブル・マニュファクチュアリング・システムと言われておりますが、こういうものが、ほとんど公知と思ったのがアメリカで特許になってしまって、今後相当大きな実質上の支払いを迫られるというようなことになっておるわけでございます。
 こういう点は、やはりアメリカの制度と日本の制度が非常に違っておる。その結果、特にアメリカで出願をします場合に、日本の企業はアメリカの企業と先発明主義、先願主義の関係で不利な扱いを受けておるというようなことが一つの原因になっておるという状況でございます。
#151
○権藤委員 今後もそういう紛争、争いをなくしていくように法の改正をしなければならぬと思うわけでございますけれども、そういうところも十分考慮して対応していく必要があろうかということを申し上げておきたいと思います。
 それから、知的所有権の分野でございますが、日本が発展途上国にどういうふうに対応していくかという国際協力の状況についてお伺いしたいと思います。
 発展途上国に日本として貢献をしよう、また、日本の技術を移転してくれ、そういう要望が非常に強いことも御承知のとおりでございます。しかしながら、そういう途上国に知的所有権の適切な保護がなければ先進国からの技術の移転はなかなか難しいというのが現状でありますが、またそうするだけではみずからの技術発展も望めないわけでございます。したがって、発展途上国の特許制度といいますか、これはどういうふうにあるべきかということについてお伺いしたいと思います。
#152
○姉崎政府委員 お答えいたします。
 発展途上国におきます工業所有権制度でございますが、国によりましていろいろと経済レベル、あるいは技術レベルが大変違っております、格差がございます。したがいまして、制度の整備状況というのも国によって大変まちまちというのが実態でございます。総じて申しますと、法制面については、かなり基本的な法律については形の上ではおおむね整備をされているものが多い。しかしながら実態としては、例えばASEAN諸国の実態でありますが、特許の審査官がせいぜい十名、あるいは多いところでも七十名ぐらいにすぎないといったようなことで、工業所有権行政を実施いたします体制それ自身が極めて脆弱、そういうことの結果、運用面あるいは権利の行使の面で問題があり、結果的に工業所有権については保護水準がまだ極めて低いレベルにとどまっているというのが実態でございます。
 我が国といたしましては、これら途上国について先生御指摘のようにいろいろと支援をしていくということが重要であるというふうに考えておりまして、特許庁は今まで研修生の受け入れ、あるいは専門家の派遣、政策対話、あるいはセミナー、ワークショップといったようなさまざまな機会を通じて協力を実施いたしてまいりました。ちなみに、研修生の受け入れでございますが、昨年までの累計で途上国から三百五十八人、年間おおむね二十人ぐらいずつ受け入れております。また専門家派遣も、年数人ずつ派遣をいたしておりますし、最近では途上国の主要な国の長官クラスを招請いたしまして政策対話を実施する、あるいは専門的な分野について年二回程度セミナーあるいはワークショップを開催するといったようなことをやってまいりました。
 こういった状況の中で、確かに特にアジア各国から日本に寄せられる期待は大変高まっておりまして、昨年十月、日本・ASEAN産業貿易大臣会合というのが開かれました際に、ASEAN各国から我が国に対しまして、ASEAN諸国の知的所有権保護を改善するため抜本的なプログラムを創設してほしいという強い要望が出されたところでございます。我が国といたしましては、これらの要望にこたえるため、今後各国の工業所有権庁に専門家を長期派遣をし、これらの専門家を中核といたしまして、単に工業所有権庁のみならず、代理人でありますとか関係する産業界を含む広範な関係方面を含めた組織的かつ包括的な形の協力をつくり上げたい。現在その方向で鋭意検討しているところでございまして、今後これらの協力を早期に強力に実施をいたしたいというふうに考えている次第でございます。
#153
○権藤委員 特許庁の方で御苦労されておることは十分に理解しておるつもりでございますけれども、いずれにしても、各議連なんかで訪問しますと議員同士で会合をやりますね。そのときに、貿易不均衡とあわせてけしからぬじゃないかこれだけのアジアならアジアの我々に技術移転をしろということはわかっておりながら、そういう要求は非常に強くあるわけでございますので、そういう点も含めて、技術者の養成であるとかさらに一段と御努力をしてほしい、こういうふうに要望しておきます。
 それから次に、料金問題です。
 過去の国会答弁の中でこのペーパーレス計画が十分に浸透していくだろう、そういう予測もしてあります。したがって、料金の値上げは大きな変化がない限りは予定していない、こういうふうに過去に答えてあるわけでありますが、今後料金水準の維持のために特許庁としていろいろと御努力もなさると思いますが、その見通しはいかがでございましょうか。あればひとつ聞かせてください。
#154
○麻生政府委員 今回料金の改定をお願い申し上げておるわけでございますが、今後の見通しでございます。今回お願いするに当たりまして将来の見通しをいろいろな形で行ったわけでございますが、余り長期の見通しということになりますと、なかなかいろいろな要素がありまして確たることを言うことは非常に難しくなってまいります。私どもは、今後五年間ということでどういう状態になるかということをいろいろシミュレーションをいたしましてこの改定をお願いいたしておるわけでございます。先ほど申し上げましたように、WIPOの条約交渉がどうなるかというようなことによりましてまた制度の手直しということが必要になってくるというような不確定要因はございますけれども、そういうことを除きますと、特段の事情がない限り、これは今回の値上げで平成九年までは十分やっていけると思いますし、またその後につきましても、いろいろな形で歳出削減の努力をいたしまして、できるだけ長期にわたりましてこの水準が維持できるように努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
 この料金水準を維持いたしますために具体的にいろいろな歳出、経費削減の努力をするわけでございますが、今特に考えておりますのは大きく二つでございます。
 一つはコンピューターシステムでございます。ぺーパーレスシステム、非常に大きなコンピューターを使いながら運行いたしておりますけれども、この今やっておりますような中央に大きなコンピューターを集中して、すべてを中央演算システムで処理をしていくというやり方は、どうも最近の技術進歩から見ますと、コンピューターが小型のものが非常に発達したということで分散型システムに変えた方が安く上がるということがだんだん実証されてきております。したがいまして、いわゆる分散型システム、ダウンサイジングというものを今後導入をいたしまして、それによって電算機借料というものを思い切って減らすという対策を講じてまいりたいということでございます。
 また二番目は公報の問題でございます。特許庁の昨年度の予算は七百二十一億でございましたけれども、そのうち百三十億強がこの公報発行の費用でございまして、今公報を紙の形で、本の形で出しておりますので非常に大きなお金がかかっております。一方でペーパーレスシステムがどんどん進んでまいりました結果、いよいよ電子出願されたものをCD−ROMに移しかえまして公報を発行していくということが可能になってまいりまして、ことしよりCD−ROMによりまして公報発行をするということでスタートをいたしました。これがだんだん定着をいたしますと、CD−ROMの場今いろいろな形で検索が可能になるということで、紙による、本による公報よりもずっと便利になるはずでございますから、CD−ROMに基づきます電子公報が徐々に定着するに従いまして紙公報の発行も見直していきたい。それによりまして非常に大きな支出削減項目になるのではないかと思って、その移行体制を今進めておるという状況でございます。
 そのほかの諸経費もいろいろな形で削減努力はいたしたいと考えております。
 一方、歳入面でありますけれども、歳入につきましては、私どもの収入は出願料、審査料のほかにもう一つ、特許料という特許登録料があるわけでございます。登録料の方は、私どもがどんどん審査を進め権利付与をやっていきますとふえてくるという関係になってまいるわけでございます。したがいまして、今考えておりますような審査促進、これにも鋭意努めまして、処理をする件数をふやし、登録件数をふやす、それによりまして特許料収入もふやすというような努力も並行してやっていきたいと考えております。
 このように、歳出面、歳入面でのそれぞれの努力を行いまして、できるだけの料金水準の維持に努めてまいりたいと思うわけでございます。
#155
○権藤委員 強力な権利を付与するのだから、その権利によって利益も上がるということでございますけれども、言いかえれば、そういう研究開発者の方々の努力によって社会資本が蓄積されていくわけでありますから、大きな意味で貢献をしておるということになりますので、あらゆる努力をする必要があろうかと思います。
 そういう中でございますけれども、今非常に不況で困っておるわけでありますが、特に中小企業への影響、個人への影響も少なくないのではないかというふうに思います。アメリカでは、アメリカだけを引き合いに出してはちょっとなんでございますが、中小企業に対して特別料金制度があるように聞いておりますが、ここでは中小企業であるとか町の発明家に対しましては何らかの形で負担が軽減されるような、そういうことが考えられないのか。これも長官のお考えがあればお聞かせください。
#156
○麻生政府委員 御指摘のように、今の不況のもとで今回のような料金の改定をお願いするということは大変申しわけないことでございますし、特に中小企業への影響が少なくないという点は私ども非常に考えなければいけないと思っておるわけでございます。
 アメリカにおきましては、今お話がございましたように、中小企業につきましては別料金体系をとっております。これは歴史的に言いますと、八三年に非常に大幅な料金改定を行っておりまして、手数料では四倍、それから特許の日本の登録料に当たる部分につきましては二十倍ということでございまして、こうなりますと中小企業への影響、激変緩和ということが必要だということで中小企業につきましての料金体系が導入された経緯があるようでございます。
 私どもの特許庁では特別会計、受益者負担という考え方でございまして、権利を得るということは大企業であれ中小企業であれ非常に大きな経営的、財産的な価値をもたらすわけでございまして、そういうことに着目いたしますと、やはり料金面で差をつけるというのはなかなか、我が国におきましていろいろな料金がございますけれどもそのような料金差をつけていないという状況のもとで、特許の方で差をつけるというのは理屈の上でも、また実態面でも非常に難しいというふうに判断をいたしております。
 ただ、御指摘のありましたように、中小企業に対する影響が非常に大きいということを何とか少しでも緩和することは、料金面ではなくて、いわば広い意味の中小企業対策という形でやっていく必要があるということでございます。
 このためにどうすればいいかということをいろいろ考えたわけでございますが、これも先ほど申し上げましたように、今後の中小企業のいろいろな負担というものを考えます場合には、やはり先行技術調査を補完することによって行うというのが最も実質的かつ効果的ではないかと考えたわけでございます。先行技術調査を十分にやって出願をするということになりますと、まず何よりもむだな出願、出願しましても権利にならない、しかしいろいろなお金をかけて出願をするというようなものがずっと減ることになってまいります。その意味で、大いに出願料の節約になるはずでございます。また、これを十分やっておきますと、いろいろ製品開発、製品を市場に出す、あるいは研究開発を行う場合におきましても、どういう発明があるかということがわかるわけでございますから、効率的な研究開発になっていくことも十分期待できるということでございます。そういうことでございますから、先行技術の補完をやっていこうということでございます。
 先ほどもちょっと申し上げましたが、これをやりますためのデータベースの蓄積というのは、ペーパーレス計画のもとで随分進んでまいっております。これを効果的に使うということで需要に十分対応できるのではないかと考えておるわけでございます。
 具体的には、先ほどもちょっと申し上げましたが、全国にございます発明協会、これは各県に支部が設けられております。そこを窓口に、さらに通産局あるいは商工会議所というものを使いまして、そこに中小企業の皆様方がこういう発明について先行技術がどうなっておるかということで調査依頼あるいは相談に来られますと、この窓口で中央にございますデータベースを使いましてチェックをする、そして先行技術として、先行発明としてこういうものがありますよということをお示しすることにいたしたいと思っておるわけでございます。これを行いますための予算につきましても、今年度予算で確保しておるという状況でございます。
#157
○権藤委員 専門家の話によりますと、中小企業それから個人にも影響が多いということでございますから重ねて質問したわけでございますけれども、周知徹底して、そういう制度があるのだから十分に活用できるような徹底方も入念にやる必要があるのではないかというふうに思っております。
 それから、コンピューター化やソフト化を反映いたしまして、ソフトウエア関連の特許の出願が非常に増加していると聞いております。その実情はどうなのか。それから、このソフトウェアは今後の日本の経済を支える技術分野であると思いますが、この審査につきましては極めて専門的な内容の出願であります。したがいまして、出願件数の状況いかんでは審査官の増員や質の向上というものが問われるのではないかと思いますけれども、これらについての対応はいかがなものでしょう。
#158
○辻政府委員 先生御指摘のように、近年経済のソフト化に伴いまして、コンピューターソフトウエア関連の出願が急増していることは事実でございます。具体的な出願件数につきましては、コンピューター技術が発達いたしまして実に多くの技術分野に普及いたしました結果、実際にソフトウエア関連発明がいろいろな分野から、多方面から広く出願されておりますために全体の具体的な件数の把握は困難でございます。しかしながら、特許庁といたしましては、この分野において迅速かつ的確な権利付与を行うことが重要な課題であることを強く認識しておりまして、特にこの分野におきまして審査官を重点的に増員いたしますとともに、これらのコンピューター関連の技術分野の審査基準の改定及び整備を、ことしの春の公表を目途といたしまして行ってきているところでございます。さらに、これらに加えまして、大学等の教育機関に実際に審査官を派遣いたしまして先端技術分野における審査官の審査能力の向上も図ってきております。今後ともこのような施策を引き続き推進いたしますことにより、ソフトウエア技術の適切な保護を図ってまいりたいと考えている次第でございます。
#159
○権藤委員 最近のことですけれども、アメリカで人の遺伝子が大量に特許出願されて論議になったということを聞いております。日本でもこのような出願があるようでございますが、このような人ならだれでも持っておる遺伝子が果たして特許になるのかという疑問があるわけでありますけれども、特許庁としての見解はいかがでしょうか。また、このような人の遺伝子を特許することによりまして、人の遺伝子の研究や開発が阻害されるのではないか、こういうふうにも考えられますけれども、見解をお伺いしたいと思います。
#160
○辻政府委員 お答えいたします。
 遺伝子は人ならばだれでも持っている物質ではございますが、通常の人の体内に含まれているそのままの状態では、それがたとえ有用な医薬、具体的に医薬を製造するためにそのまま用いるということは不可能でございます。しかしながら、特定の遺伝子を純粋に取り出しましてその有用な機能を解明いたしますと、医薬の製造などにおける利用が可能でございます。このような純粋かっ有用な形態の遺伝子は、実質には人が初めてつくったということが言えますし、これは発明であると考えられております。人の遺伝子、これをDNAと申しておりますが、ちょっと専門用語で恐縮でございますけれども、デオキシリボ核酸という化学物質でございますが、したがいまして、通常の化学物質と同様に、産業上の利用性でありますとか新規性、進歩性などの特許要件を満たしました場合は特許がされるということになっております。同じような考え方は、もともと生物が持っております抗生物質でありますとか酵素などの物質が同じような考えで従来からも特許をされてきております。なお、この点につきましては、私どもは欧米先進国においても同様の運用がなされているというふうに認識しております。
 次に、特許権の効力は試験研究のための特許発明の実施には及ばないということになっております。したがいまして、遺伝子の特許によって研究開発が阻害されることにはなりません。また一方、このような新規で有用な遺伝子を開発するためには多額の研究開発投資が必要でございまして、この遺伝子の分野の研究開発をより進展させるためには、研究開発の成果を適切に保護することによりまして投資の回収が行われる必要がございます。産業上の利用性、新規性、進歩性などの特許要件を満たす遺伝子の発明を保護いたしますことは、技術開発にインセンティブを与えまして産業の発達に寄与するものと考えております。
 なお、アメリカで最近話題になっております人の遺伝子の出願につきましては、遺伝子についてのどのような有用な機能があるかということについて解明がされていないなどの理由によりまして、現在拒絶理由通知が発せられているというふうに聞いております。
#161
○権藤委員 最後に通産大臣に総括してお伺いしたいことがございます。
 西沢先生がある人との対談で、二十世紀は経済が牛耳ってきたのじゃないか、二十一世紀は科学技術がヘゲモニーを握るのではないか、そういう御発言がございました。半導体の権威がおっしゃることですから、その発言には非常に重みがあると思うわけでございますけれども、技術の革新の進展のためにも、国際的な特許摩擦の解消のためにもやはり調和が必要である、今後科学技術の発達と合わせてより必要になってくるというふうに認識をいたしております。政府としての対応、それから、くどいようですが、長官から先ほどお答えのありました、料金改正に伴う中小企業の支援策はいろいろと御答弁いただきましたけれども、この問題も非常に大事なことだろうと思っておりますので、大臣の見解と決意を最後にお伺いしたいと思います。
#162
○森国務大臣 今委員から御指摘ございましたように、近年日米間で特許紛争が激化いたしておりまして、多額の損害賠償金が支払われる事例が多くなっておりますことは御指摘のとおりでございます。
 この背景には、本日たびたび申し上げておりますが、日本は先願主義、米国は先発明主義といった両国間の特許制度の根本的な違いがある、このため、紛争を緩和するには特許制度の調整を急ぐ必要があるというふうに認識をいたしております。特許制度の調和を考えた場合、主要先進国の中では米国だけが先発明主義を採用しており、これの先願主義への移行等米国の制度変革が極めて重要であると認識をいたしております。このような観点に立ちまして、我が国といたしましては、条約交渉が成功するよう積極的に努力してまいりたいと考えております。
 特にアメリカの積極的姿勢が不可欠なところでございまして、これも各委員の御質問にたびたび申し上げておりますが、先般渡米をいたしました際に、ブラウン新商務長官に対しまして、直接、条約成立に向けてアメリカのイニシアチブをぜひ発揮していただきたいと要請をいたしたところでございます。
 今後ともいろいろと、今委員から御指摘ありましたことなども十分踏まえて、これからの科学技術革新の時代にふさわしい特許制度というものをさらに前向きに考えていかなければならぬ、永遠のこれからのテーマだなというふうな、今委員の御質問を受けながら、そんな印象を持った次第でございます。
 さらに、もう一つ、今回の料金改定に伴いまして、中小企業や個人の円滑な対応を確保する必要性につきましては、十分認識をいたしております。このため、中小企業、個人の依頼に応じまして、先行技術調査を実施することによりまして、権利化する見込みのないむだな出願を回避して中小企業の負担軽減を図ることとし、中小企業の研究開発に資するものといたしたいと考えております。
 こうした支援事業に加えまして、指導、相談事業の強化拡充も行うとともに、新制度の普及啓蒙を行いまして、円滑な対応が図られるように十分留意してまいりたいと存じます。
#163
○権藤委員 質問を終わります。ありがとうございました。
#164
○井上委員長 川端達夫君。
#165
○川端委員 大臣、長官、よろしくお願いいたします。
 今回の特許法改正の大きなポイントの一つに、補正の範囲の適正化という点が挙げられております。今までのように、何度も自由に補正をさせているということになっておりますと、その都度審査をやり直さなければいけなくて非常に時間がかかる。また、事前にしっかり検討せずにとにかく出して、補正を受けながらそれを狭めて適正なものにしていけばいいという前提で、非常にアバウトなものも出てしまう。一方で、非常に厳密にきちっと調査をし、出したものと、出願の段階で非常に公平さを欠くというふうなことも理由に挙げておられると思います。私は、一々ごもっともなことだと思いますし、諸外国とのバランスの上からも非常に大事なことだというふうに認識をいたしております。
 そういう認識に立つ中で、ひとつお尋ねをしたいのですが、現在、出願に対して拒絶通知というのがしばしば出るわけですが、この拒絶通知の実態というのですか、どういう程度の、どういう内容で出されているのか、受け取った側から見て出願人として拒絶通知をいただいたときに、なるほどそういうことで拒絶をされたのかという最低限の補正で済むような拒絶通知が出されていると認識されているかどうかについてまずお伺いをしたいと思います。
#166
○辻政府委員 我が国におきましては、従来より拒絶理由通知の懇切丁寧な通知をするように努めてまいっております。
 具体的には、昭和六十三年に改善多項制を導入いたしました際にも、請求項ごとに拒絶理由を通知することなど、改善多項制下における運用基準の作成、公表を行いまして、欧米と同様の運用を行ってきたというふうに認識しております。
#167
○川端委員 今、懇切丁寧に拒絶のときにいろいろな項目を分けて記述するように指導してきたとおっしゃったのですが、そういう御指導のもっと前の時期に、私は何件か特許出願したことがあります。そして、最近はどうなのかなと思ってちょっといろいろ調べてみました。
 私の手元に、三件の拒絶理由通知書というのを手に入れてみたのですが、一つは、おっしゃるように、非常に丁寧に、紙でいいますと三枚、項目にして五項目まで、こういう特許で先願がありますよ、そして、クレームの中身はこういうところで抵触していますよということで拒絶、これはおっしゃるとおりだと思うのですね。ところが、あと二枚の分は、例えば「特公昭 昭和何年の公報、上記のものに」云々で「特に新規性が認められない」。もう一つの方は、引用文献ということで二つの特許の名前が書いて、拒絶で終わりですね。この、二つあるよということで終わりということでは、先ほど御答弁の分と実態は若干違う部分もあるということではないかな。ということは、逆に言いますと、審査官の個人差というんですかね、ということもかなりこういう部分に出ているのではないかなというふうに思います。
 それで、今回の改正のときに、特許及び実用新案法の改正に関する答申の中では、この部分に関して「主要国における規定・運用に留意しつつ、補正に関する規定について制度改正を図る必要がある。」こういうふうに書いておられる。これを受けての改正ですね。ということで、規定の制度改正は確かにそういう主要国におけるものとほぼ同じように変えられる。しかし、これはセットとして「規定・運用に留意しつつこというふうに記載をされているという意味では、この部分がついてこなければ、何か今までどおりの拒絶理由というか、そういうもののやり方の中で、回数だけ少なくなれば出願者にとっては大変困る事態になる。
 アメリカやヨーロッパの拒絶理由の通知書というものも調べてみたんですが、非常に丁寧なんですね。アメリカの場合はマニュアルをつくって、こういう項目に関してどのクレームを審査したか、どのクレームを許可するか、指示に従って補正すればどのクレームを許可するか、どのクレームを拒絶するか、どのクレームを形式不備で拒絶するか、どのクレームを限定要求あるいは選択要求の対象にするか等々の、こういうことを書きなさいというマニュアルもつくってある。場合によっては、はっきりと、このクレームは許可できる、あるいはこういうふうに直せば許可しますよというふうなところまで踏み込んで、現物も見たんですが、アメリカの場合でもやはり、枚数で評価するのはいかがかと思いますが、先ほど私は日本の場合、一行の例があると言いましたけれども、言わばこれ、四枚とか、ヨーロッパの場合でも五枚ですね。非常に細かく丁寧に、クレームーに関してはああだこうだということが書いてあるという部分で、こういうふうな審査と拒絶通知というものの運用をされる中で、一回きりですよというふうな制度というのはついてくるものだと私は思うんですね。
 その分で、そういうマニュアルみたいなものが現在あるのかどうかも含めて、これからそういうことを、どういうふうに出願者と審査の特許庁の立場との意思疎通というのをきっちり図っていかれようとしているのか。私は、今までどおりではだめだと思うんですね。その分はどういうお考えを持っておられるか、確認をしておきたいと思います。
#168
○辻政府委員 お答えいたします。
 先ほど申し上げましたように、昭和六十三年にいわゆる改善多項制、これは欧米に比べて遜色のない制度でございますが、いろいろな角度から権利が主張できるという趣旨でございますが、この制度導入に伴いまして運用基準を作成いたしておりまして、その中で、請求項ごとに拒絶理由を通知するというふうな運用を現在行っているわけでございます。今回の法改正に当たりましては、私どもといたしましては、新たな審査のガイドラインを策定する予定でございます。内容的には先生先ほど御指摘ありましたように欧米並みのサーチ手法を採用、すなわち、請求項ごとに一項ずつ審査をいたしまして、その各項目ごとに考えられるすべてのあらゆる従来技術、引用例を発見すべく、最初の拒絶理由通知の段階で極力努めてまいりたいということと、それから先ほどおっしゃいました補正案につきましても極力示唆をしてまいりたい、このような内容をもとにガイドラインを策定いたしまして、今までの運用基準を一層充実させるということを考えている次第でございます。これによりまして出願人の方々がより少ない回数の補正でも容易に特許が取得できるようにしたい、かように考えております。
#169
○川端委員 確かに従前に比べれば、この出願は丸印を付した理由によって拒絶すべきものと認めるということの中で、理由として一、二、三、四のどれかに丸をつけて、そして引用文献一行書いて終わりというのではいけないという部分の御認識は持っていただいていると理解をいたします。形式的にはアメリカの場合もそこまでは同じなんですね。その後ちゃんと、要するに文章をきっちりといろいろと書いて、こういう部分はこうだという解説もしてあるということで、これは結果的に補正の回数を少なくし、そして実のあるものになっていく原点だというふうに思います。
 特許庁の本来の役割は申すまでもなく、工業所有権制度を通じて産業の健全な発展に寄与するというのがベースでありまして、特許庁が、審査期間を短くするため、あるいはは特別会計を健全に維持するために存在するのではないというふうに思います。これまた、実行されますと姿として見えてまいることでありますので、ぜひともにひとつ充実した審査のやりとりが出願者とできるように強く御要請を申し上げておきたいと思います。
 そういう中で、同じ補正に関してあと一点お尋ねしますと、補正の回数が限られているということでは、当然ながら申請者側は事前に相当な調査をするということが必要になってくるというふうに思います。そういう部分で、大きな企業とか、スタッフを十分抱えているようなところというのはそういう調査能力が十分にあるということになると思いますが、個人あるいは中小企業というのは必ずしもそういう状況でない部分もたくさんあります。そういう部分で、こういう個人申請者あるいは中小企業に対して、補正の制限に見合った支援策というのを行政サイドとして今回の改正に伴って何かお考えいただいているのかどうか。とりわけ事前調査手段の公開等々も私は大事なことではないかなというふうに思うのですけれども、データベース等々の公開等々も含めて、今回改正に伴ってのそういう事前調査能力のバックアップということに関して、お尋ねをしておきたいと思います。
#170
○麻生政府委員 今回の補正の適正化も一つ大きく関係いたしておりますが、現在のように特許というものの役割が非常に大きくなっております時代におきまして、非常に効果的な特許を取る、質の高い、強い特許を取るということは、経営上非常に大きな課題になってきております。そういう意味で、そのために必要な先行技術の調査、これが中小企業におきましても、的確に、あるいは手軽に行われるということの条件を整えていくということは非常に重要なことであるというふうに考えております。
 今回の制度改正あるいは料金値上げということに対応いたしまして、中小企業の皆さんの先行技術調査能力を補完するということによりまして、この補正の問題あるいは負担の問題を少しでも緩和するということが必要であるという判断をいたしておりまして、必要な予算も確保し、この法律ができました暁には、速やかにそのような体制を全国ベースでとっていきたいと考えておるわけでございます。
 具体的には、この先行技術調査に必要なデータベースは、今御指摘がございましたように、ぺーパーレスシステムの中でいわゆるFターム検索ということで先行技術をいろいろ分類した検索をつけるという作業が進んでまいりましたものですから、これを民間側に公開するということが逐次進んでおります。このFタームデータベースを中心に検索をしていく。中小企業の皆さんの方からこのような発明を申請したいという場合に、これが今までの先行技術との関係でどうなっておるかということを要請に応じまして調べていくという体制をつくろうということでございます。
 具体的には、現在発明協会というのがございますが、こちらの方でいろいろな中小企業の発明振興あるいは発明相談という事業をずっと長年やっておりますが、この発明協会の全国の支部で、このような先行技術調査の依頼に応じて先行技術調査をやっていくという制度を確立をいたしたいと思います。また同時に、この協会はいろいろな形で専門家の相談員を置いておりますけれども、この相談員の方々が、単に、先行技術の調査をするあるいは成果を説明するということに加えまして、今回のいろいろな制度改正につきましても十分に関係の皆さんに理解をしていただくというためのPRの先端にも立っていただきたいということで準備を進めておる状況でございます。
#171
○川端委員 ぜひともに積極的にそういうバックアップ体制をおとりいただくと同時に、PRの方もひとつ十分によろしくお願いしたいと思います。
 次に参りまして、意匠法について若干のお尋ねをしたいと思います。
 特許法あるいは実用新案法における訂正審判というのがありますね。これは無効審判に対抗して、権利者が無効を免れようとして請求する救済手段と位置づけてもいいのではないかというふうに思います。そういう意味で、紛争中の権利の有効性を正し、かつ権利の範囲を明確にするためには、今回の改正による制度はよい方法だというふうに思っております。この訂正審判と無効審判、いわゆる両審判制度は、概して権利侵害事件、何か権利侵害ですということの事件があったときに、それに対抗して権利を守るために訂正審判を求める、一方は無効審判を求めるということが実質的には多いと思います。そういう中で、訂正請求が無効審判の審理の中で同時に審理されるということは、当事者の紛争解決のためにも有効に機能するのではないかというふうに認識をいたしております。
 さて、そこで、この特許法あるいは実用新案法と法的には同じ範疇に意匠法というのが位置づけられていると思います。これはいわゆる特許法、実用新案法と同じように産業法であると思います。そういう中で、この意匠法には無効審判制度はあっても訂正審判制度というのがありません。同じように特許法あるいは実用新案法、そして意匠法というものがありながら、意匠法にだけ、無効審判制度はあるけれども訂正審判制度がないというのは均衡を欠くのではないか。なぜこの意匠法には訂正審判制度というのが法的に位置づけられておらないのかということをまずお尋ねをしたいと思います。
#172
○姉崎政府委員 意匠制度の中になぜ訂正審判制度がないのかという御質問でございます。
 確かに、図面等誤った部分について、本来であれば審査の段階で補正ができたのにその機会を審査官が見逃したために、結果的に権利者がその後の救済の手続を受けられないというのは均衡を欠くのではないかという御指摘かと理解いたします。大変御示唆に富む御質問だと思うのでありますが、制度がない理由というのは、実は明治三十二年に意匠法ができまして以来ずっとないものでございますので、各種解説書を見ましてもその理由というのがございません。
 私ども、解釈として考えられますのは、意匠というのは権利の客体が具体的な形、形態としてあらわされておるわけでございまして、意匠の登録、すなわち権利が確定いたした後に特許あるいは実用新案と同じように権利の範囲を減縮という形で訂正を行いますと、結果的に形、つまり意匠の形態それ自身を変える、すなわち権利の内容それ自身を変えてしまうことになるものでございますので、その結果第三者に不測の影響を与えるということが考えられるのではないか。それが恐らく意匠制度に訂正審判制度がない理由ではないかというふうに解釈いたしている次第でございます。
#173
○川端委員 明治三十二年以来ないということは、ないのでしょうが、今おっしゃった、意匠だから権利の内容が変わるのではないかということでありますが、たまたま意匠法というのは図面がすべてだということでありますが、特許でも実葉でも、ある意味でいえば、訂正請求、訂正審判というのは権利の内容が変わるわけですね。権利の内容が縮小されるか、何らかの形では変更されるということであります。そういう部分では、これは明治三十二年以来とはいえ法的に不備があるのではないか。
 それで、特に御専門のお立場ですから御承知だと思いますが、これから聞こうとするものにも踏み込んで今お答えをいただきましたけれども、本来意匠法では、審査の過程で、工業上利用することができる意匠でないと拒絶を受けるという項目があります。だからそういう部分で、本来であれば拒絶を受けているものが図面上審査官がその誤りを見逃したことによって権利化されてしまったという実例がかなり大きな事件として実は既にあるわけですね。
 それがいろいろ紹介されていますから申し上げますと、意匠の中で、フィリップス社のシェーバー、要するに電気かみそりの刃ですね。刃の図面でこういうものをというので意匠登録した。ところが、刃の正面図はよかったのだけれども、側面図を右側側面図と書いて出したものが実は左側側面図であったのですね。だから構造上、右側からどう見てもこの絵にはなり得ない。しかし、これはたまたま右と左を書き間違えただけ、図面を逆に裏返して出せばそれで通っていた。これを審査官が見逃して権利化した。それで、国内のある社がそれを、同じようなものをつくったということで、フィリップス社が権利侵害だということで訴えを起こした。訴えられた方がいろいろ探したら、よく見つけたですね、この図面は裏返っている、だからこれは工業上つくれないものだということで無効審判を訴えた。結果的に、この意匠公報は無効であるという審判を受けた。
 これは審査の段階で本来なら審査官が拒絶していなければいけないものを、見落として通してしまった。拒絶して間違いですよと言われたら、右と左が間違っていたということで修正すればこれは正式に通っていた。そうすれば、無効審判を受けてもこれは当然権利として認められているということになったのではないか、これは裁判ですからわかりませんが。そうすると、審査官にオーケーと言われたばかりに、これは権利としてなくなってしまったのですね。このときにもしも訂正審判制度が特許や実用新案と同じように法的に位置づけられていれば、こういう結果にはならなかったと思います。
 そういう意味では、これは、いろいろなこういう特許の専門の雑誌に紹介されている部分でも一九八七年ですね。だから、今回の改正などでも、そういうことでいえば視野に入れておくべき問題ではなかったのかな。明治三十二年以来変わっていないといっても変えてはいけないことではないわけですから、そういう部分で、この問題は本来的にこういう制度を考えていかなければいけないのではないかというふうに私は考えているのですが、いかがでしょうか。
#174
○姉崎政府委員 ただいまフィリップス事件のケースを例に引かれまして、無効の理由とされた図面の不一致といったような事例を御指摘になりました。確かに権利者の救済の観点ということから申しますと、いろいろな瑕疵があるわけでございますが、例えば図面の不一致といったような瑕疵があった場合に、それで直ちにこれが無効の理由となって権利が認められないかというと必ずしもそうではない。すなわち、無効審判あるいは侵害訴訟において、それぞれ個別具体的に判断されることになるのではないかというふうに考えております。
 御指摘のフィリップス事件それ自身について最高裁の判決が出ておりますが、これについて私は今コメントいたす立場にございませんけれども、一般論として申しますならば、瑕疵の内容、例えば図面の不一致が極めて顕著である場合、あるいは登録要件でございます工業上の利用可能性にかかわる形態の特定性を欠くといったような場合には確かに無効理由に該当することになるのではないかと考えられますが、いずれにいたしましても、それぞれ個別具体的なケースで判断されるべきことかと考えております。あらかじめいかなる瑕疵について、それがすべて無効理由になって権利者が救済されないというわけではないと考えておるわけでございます。
 ただ、先生御指摘がございましたように、まさに本来補正の段階で手を加えれば救済されたかもしれないのに、これが見過ごされたために救済されないのはおかしいという点については、確かに立法論としては議論の余地があり得るのではないかというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、これは意匠制度の全体を通ずる将来の検討課題ということにさせていただきたいと考えております。
#175
○川端委員 こういうケースがあったときにどういう審判になるかというのは、おっしゃるとおりいろいろなケースが考えられる。しかし、現実にこのケースでは図面の各回が一致しないから工業上利用することができる意匠とは言えないというので無効審判が出たのは間違いない事実なんですね。それと、その部分で審査訂正請求というふうな仕組みがあればそういう理由は回避できたことも、類推としては正しいことではないかというふうに思います。しかも、審査官の時点で、何らかのうっかりとか誤りと言ったら語弊がありますが、そういうものは完璧には回避できないものだと思います、人間がやることですから。だからこそ、特許法であれ実葉法であれ、そういう仕組みがつくられている。
 ですから、私は、これからいろいろ見直していかれるときに、例えば工業所有権審議会等々にそういう問題提起をしていただいて、こういうものはどう考えたらいいかということを真正面から一度議論をしていただきたい、そして、そういう中で必要であれば法改正をしていくということをやるべきではないかというふうに私は思うのですが、いま一度簡単に御所見を伺いたいと思います。
#176
○姉崎政府委員 ただいま御指摘ございましたフィリップス・シェーバー事件の件につきましては、出願それ自身内容的に不明確な図面が含まれていた、欠陥がもともとあったという事情にあったというふうに私どもは理解いたしておりますが、御指摘のような意匠制度における訂正審判の是非ということにつきましては、意匠制度の中で特許と実用新案制度にございますような請求項の制度の取り入れが一体可能なのであるかどうかといったことと実は密接に絡んでおります。したがいまして、まさに訂正の段階で特許と同じように請求項を削除するといったような形での訂正が今の意匠制度の中ではできない、つまり意匠制度そ
れ自身の特性から由来して訂正審判制度がないというふうに解釈されることから、意匠制度それ自身について見直しを行うということが今先生の御指摘の御示唆にこたえることになるのではないかということでございまして、先ほど申し上げましたように、将来の意匠制度の改正の見直しの中で一つの検討課題とさせていただきたいというふうに考えております。
#177
○川端委員 ぜひともよろしくお願いしたいと思います。まあ余計なことですが、いいかげんな図面が出ていたということではないと私は思っております。ちょっと違うと思いますよ。右と左という文字をかえていれば通っていたはずですよ、こんなこと。そんないいかげんなことを言われたら困る。
 次に、今度は特許料の引き上げがされるわけですが、前の長官の御発言とか、いろいろお聞きしたいこともあるのですが、時間もありませんので、先ほど来の議論でもありましたけれども、今大変景気が悪いという中で、やはり産業界、とりわけ中小、個人の申請者に対してこういう値上げというのは相当こたえるのではないかという危惧を持っております。
 同時に、発明王国日本と言われることもあるような今までの日本のこういう特許の歴史の中で、個人発明というのはどういう位置づけであったのだろうか。
 工業所有権百周年委員会というのが我が国の十大発明というのを選定されました。百年の日本の特許の歴史の中で十大発明ということが発表されました。どんなものかなと見ますと、一つは豊田佐吉氏によるいわゆる織機、豊田織機ですね。個人発明です。それから高峰譲吉氏のジアスターゼ、これも個人発明です。御木本幸吉氏の真珠、これも個人ですね。池田菊苗氏のグルタミン酸ソーダを主要成分とする調味料製造法、これも個人ですね。それから鈴木梅太郎氏の、これはビタミンB1の発明、それから杉本京太氏の和文タイプライター、それから八木秀次氏の電波指向方式、いわゆる八木アンテナ、三島徳七氏のニッケル及びアルミニウムを含む磁石鋼、いわゆるMK鋼。工業所有権百周年委員会が選定した我が国十大発明のうち八件は個人発明なんですね。ちなみにあと二つというのが、特許権者として住友鋳鋼所のいわゆるKS鋼、それから日本電気株式会社のテレビですね。もう我々素人目に、感覚としては、日本の特許の件数等々を含めてはもちろん企業が出された出願件数が圧倒的に多いということは承知をしておりますが、十大発明のうち八件が個人で発明をされている。そういう部分ではやはり相当な個人に対するいろいろなバックアップ、先ほどの情報の問題もそうなんですけれども、と同時に、いろいろなそういう個人の発明の奨励という部分は非常に大事なことではないのかな。アメリカ、カナダなどは個人の部分でこれは半額という制度になっていますね。そういう部分を含めてこういう個人発明に対してのどういうふうな支援策、優遇策というのをお考えになっているのか、お答えをいただきたいと思います。
#178
○麻生政府委員 我が国の発明におきまして個人発明家の占める役割というのは、御指摘のように非常に大きいものがございます。出願件数の中に占める割合はそれほど大きくないわけでございますけれども、しかし発明の内容という点では非常にいい発明が個人の発明からなされておるということでございます。その意味で、私どもは個人発明家をいろいろな形で大事にしなければいけないというふうに思っておるわけでございます。
 今回の値上げとの関係で個人発明家あるいは中小企業の皆さんに対してどういうような配慮をするのかということでございます。アメリカのように、そもそも料金制度で二段階を設けるという案もないかという議論もあるわけでございますが、これは日本の特許特別会計制度、これは受益者負担で賄うという大原則でございまして、受益者ということになりますと、中小企業、大企業、個人という点で得られた権利に差があるわけでございませんで、権利の価値ということは同等でございますから、料金の体系の中でいろいろなことを考えるというのは難しいと思います。したがいまして中小企業対策ということで考えるわけでございますが、これも先ほど申し上げましたように、今の状況の中でどのような対策が効果的な対策であるかということになりますと、やはり先行技術調査負担をできるだけ軽減し、補完をするということがいろいろな意味で助けになるというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、中小企業あるいは個人の皆さんの事前、先行技術調査能力を補完するということに思い切った予算あるいはシステムを組み上げるということによりまして、このような配慮を具体化いたしたいと考えるわけでございます。
 具体的な仕組みは先ほど申し上げたことと同じでございますけれども、今、積み上げてきました特許庁のデータベースを民間に開放する、それをうまく使えるということで、発明協会のいろいろな組織あるいは日本商工会議所、商工会の組織、通産局の組織を使いまして、そこに、要請があればこの端末を使いまして先行技術の調査分析を行って、これに基づいて中小企業の皆さんあるいは個人の皆さんが出願なりあるいは発明活動をしていただくということにいたしたいと考えるわけでございます。
#179
○川端委員 次に、もう時間がなくなってしまいましたので確認だけしたいと思うのですが、今回の改正で、従来は同一の発明、考案が同日に出願された場合に、特許庁長官の協議命令によって両出願人が協議し、いずれか一方は特許または実用新案を受けることができる、こういうことに、今まで三十九条でなっております。この三十九条の四項で、「特許出願に係る発明と実用新案登録出願に係る考案とが同一である場合において、その特許出願及び実用新案登録出願が同日にされたものであるときは、出願人の協議により定めた一の出願人のみが特許又は実用新案登録を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、特許出願人は、その発明について特許を受けることができない。」こういう条文があるのですが、今回の法改正で、実用新案登録は、出したらすぐ登録されるのですね。この場合に、今後ともこういう協議命令で出願人が協議されるようになるのかどうかということを確認をしておきたいのと、法案自体は、改正のときにどうして修正を加えられなかったのか。文言的には「特許又は実用新案登録を受けることができる。」というのは、両方出願して、これから審査があるという時点をとらえているわけで、実用新案の場合今度から即登録となると、法文的に若干おかしいことになっているのではないかというふうに私は考えますので、この点これからどう運用されるのかということと、なぜこの法案は修正されなかったのかを確認をしておきたいと思います。
#180
○姉崎政府委員 お答えを申し上げます。
 先生御案内のとおり、現行法で、一つの技術思想には一つの権利という、いわゆるダブルパテント排除の原則がございます。この改正法のもとにおきましても、この原則自体は維持をするということが必要であろうというふうに考えておりまして、したがいまして、同日に同一内容の特許出願及び実用新案出願が出された場合、実用新案の方はすぐに登録されるわけでございますが、特許出願を審査する段階で同日出願の存在が明らかになりますので、その段階で、従来どおり協議指令を行うということで当事者間の調整を図ることを考えております。
 それではもう一つ、なぜ今回特許法第三十九条四項の規定を修正しなかったかということでございます。現行法の三十九条四項では、特許出願と実用新案出願が同日出願であった場合に、出願人の間の協議により定めた一人の方の出願人のみが特許または実用新案登録を受けるという旨を規定いたしております。この規定に反しまして同日出願が登録された場合には、その権利は無効理由を有するということになっているわけでございます。このダブルパテント排除という趣旨を含む規範と、それから、この規範に違反して登録された場合の効果というのはそれぞれ別に規定されておりますために、今回実体審査を経ないで登録された改正後の実用新案制度におきましても、この規範に違反した場合にはすべて無効理由を有することになるということで足りるわけでございまして、同日出願について定めました三十九条四項の規定それ自身は修正する必要がないということで、今回手を加えなかった次第でございます。
#181
○川端委員 運用に関しては理解いたしましたが、最後の方の説明はちょっとよく理解できなかったんですが、実用新案登録を受けることができるという部分はやはり今言われたので意味はよくわかるんですが、ちょっと無理があるんではないかなという感じを受けました。
 次に大臣にと思っていたんですが、時間が来てしまいました。特許の問題は、日本の産業を支える分で実に大切なものだと思いました。先ほど御紹介しましたように、意外にと言ったら恐縮ですが、本当に個人の方が私財をなげうって発明をして、日本の産業の発展に大変な貢献をされたという例は枚挙にいとまがないことでございます。そういう分で、産業界全体としての特段の御支援を大臣のお立場でぜひともによろしくお願いをしたいと思います。これで終わります。
#182
○井上委員長 次回は、明七日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時五十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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