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1993/02/18 第126回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第126回国会 本会議 第6号
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1993/02/18 第126回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第126回国会 本会議 第6号

#1
第126回国会 本会議 第6号
平成五年二月十八日(木曜日)
    ―――――――――――――
  平成五年二月十八日
   午後一時 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
  提出)の趣旨説明及び質疑
    午後一時二分開議
#2
○議長(櫻内義雄君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内
  閣提出)の趣旨説明
#3
○議長(櫻内義雄君) この際、内閣提出、租税特別措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣林義郎君。
    〔国務大臣林義郎君登壇〕
#4
○国務大臣(林義郎君) ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
 本法律案は、現下の厳しい財政状況及び最近の社会経済情勢の変化に顧み、課税の適正公平を確保する観点から、租税特別措置の整理合理化を行うほか、当面早急に実施すべき所要の措置を講ずるものであります。
 以下、その大要を申し上げます。
 第一に、課税の適正公平の確保を推進する観点から、企業関係の租税特別措置等につきまして、平成五年度におきましても、特別償却制度等の整理合理化を行うことといたしております。
 一方、農業経営の基盤の強化を推進する等のため、農用地利用集積準備金及び営農の規模を拡大した場合の割り増し償却制度の創設等の措置を講ずるとともに、環境保全・資源エネルギー対策に資するため、エネルギー使用の合理化等の技術に係る試験研究費に関する特例措置、再生資源利用促進準備金の創設等の措置を講ずることといたしております。
 第二に、土地税制につきまして、土地政策との整合性を図りつつ、住みかえによる居住水準の向上を図る等のため、特定の居住用財産の買いかえ等の場合の長期譲渡所得の課税の特例の創設等を行うことといたしております。
 第三に、老人等の利子非課税制度及び勤労者財産形成住宅・年金貯蓄非課税制度の非課税限度額の引き上げを行うことといたしております。
 第四に、第十一次道路整備五カ年計画に必要な財源確保等の観点から、揮発油税及び地方道路税の税率の改正等を行うことといたしております。
 その他、法人税における源泉所得税額の控除不足額の還付に関する特例措置の創設、不動産等に係る相続税の延納利子税の引き下げ等の措置を講ずるとともに、中小企業者等の機械の特別償却制度、住宅用家屋の所有権の保存登記に対する登録免許税の特例等適用期限の到来する特別措置について、実情に応じその適用期限を延長する等の措置を講ずることといたしております。
 以上、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を申し上げた次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内
  閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#5
○議長(櫻内義雄君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。山内弘君。
    〔山内弘君登壇〕
#6
○山内弘君 私は、日本社会党・護憲民主連合を代表し、ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に対し質問をさせていただきたいと思います。
 政府は、現下の厳しい財政状況及び社会経済状況の変化にかんがみ、課税の適正公平を確保する観点から本改正案が必要であると説明されています。しかし、宮澤内閣が担わなければならない税制改正が、この視点にのみとどまったのでは不十分なことは、総理みずからよくおわかりのはずであります。総理の最大の公約であり、その意味で宮澤政権の生命ともいうべき生活大国づくりにいかに寄与し得るのか、もう一つの別の角度からもこの提案に対する光と影を求め、本案の妥当性を論ずる必要があると思うのであります。総理の御所見をお伺いするとともに、今改正のどの部分が生活大国実現の手助けとなっているのか、納得できる明快な答弁もあわせてお聞かせいただきたいと思うのであります。(拍手)
 私が今回の改正でまず不満を覚えるのは、八八年の制度改正以来の懸案であった利子や株式譲渡益等の総合課税化などがなぜまた先送りされたのかということであります。国民の理解が得られていないなどという口上は、この五年間に政府として果たすべき仕事を放棄してきたことの裏返しにすぎないのであり、言いわけ以外の何物でもないと思うのでございます。この怠慢により、勤労所得に比べ、資産性所得の優遇、有利性は依然として温存される結果になったのであります。政府の言う、現下の厳しい財政状況及び社会経済状況の変化に対応し、課税の適正公平を図る条件を満たすためにも、総合課税化こそ最優先課題として盛り込まれるべきであったと考えるのでありますが、総理の率直な御見解をお示しいただきたいと存じます。(拍手)
 法案に則して今回の改正をとらえ返すならば、居住用財産の買いかえ特例復活に代表されるように、恩恵の及ぶ範囲が極めて限定的となる一方、財形貯蓄等の非課税限度額のお情け程度の引き上げに見られるがごとく、制度の趣旨を生かそうとしない、国民不在、庶民の暮らし向きに冷淡な後
ろ向きの手直しに終始していると断ぜざるを得ないのであります。
 本改正が、国民の期待からほど遠いものであることを如実に示しているのが買いかえ特例の復活でありましょう。都市部だけでなく、周辺地域にまで地価高騰を波及させたバブルの一因として廃止されたのが記憶に新しい八八年。それを、地価が適正水準まで下がり切ったとは到底思えないこの時期に、条件つきとはいえ、突如復活しようというのは、疑問を感ぜざるを得ないのであります。九日に国土庁が発表した短期地価動向からも、東京、大阪などの三大都市圏では、年率二けた以上の地価下落傾向が続いていることが明らかになったばかりであります。
 生活大国のかなえの軽重を問う具体的な指針として、京浜地区の平均的な勤労者の年収の五倍程度での持ち家を設定するなら、地価下落の一層の進展にこそ意を用いるべきであり、地価の下支えの可能性を持つ買いかえ特例の復活に策を弄するのは、政策上の整合性を著しく欠くのではありませんか。
 さらには、この間、政府みずからが、土地税制は安定的であるべきと力説したにもかかわらず、二年間の暫定措置となっている自家撞着をどう解きほぐすおつもりなのか。生活大国の一環なのか、あるいは景気浮揚に絡めた、不況にあえぐ不動産業等の救済対策としてか、どちらに政策的な力点を置いているのかも含めて、林大蔵大臣の明快な答弁を求めたいと存じます。
 また、言うまでもありませんが、この特例は、資産所有者が再度居住用財産を購入するときに適用される優遇制度であり、マイホームを初めて持とうとする人には恩恵は及びません。結果として、資産格差をさらに増幅させかねないのであります。通常の買いかえなら、現行の三千万円の特別控除で十分なのは、九一年度実績で、資産譲渡者の八七%がこの枠内におさまっていることからも明白であります。今、何ゆえにこの時期に買いかえ特例復活なのか、大蔵大臣のお考えをお聞かせください。(拍手)
 政策的な整合性の観点からすれば一層意味不明、不可解なのが、老人等マル優と勤労者の財形貯蓄の非課税限度額の上げ幅が五十万にとどまった問題であります。社会党は、老人等マル優については、三百万円の非課税限度額が設定されてから十九年間が経過し、消費者物価が二・四倍上昇していること、また、労働省の調査から、退職金は一千百六十二万円から二千百七十九万円程度となっていることなどを根拠に、限度額の七百万円への引き上げを求めてまいりました。ところが、政府案の上げ幅は五十万円。なぜ五十万円なのか、理由は明らかにされていませんが、恐らく、マル優は金持ちを利するだけであり、高齢者対策は社会保障の拡充で対応すべきなどの考えに影響されていることは想像にかたくありません。しかし、このもっともらしい理屈立てには、看過し得ない論理の飛躍があると思うのであります。まず老後を不安なく過ごせる福祉施策の実現が前提となるべきなのに、その日の目も見ないうちにマル優は不必要だとする。これは、後先を故意に無視し、白を黒と言うに等しいと私は理解するのでありますが、総理の御所見をお伺いするとともに、なぜ五十万円の上げ幅となったのか、五という中途半端な数字で、割り切れない、思いやりも何もない、乾いた砂漠のような心をかいま見る思いがするのであります。今こそ、マル優制度の意義を、来るべき超高齢化社会においてどう位置づけるべきとお考えなのか、明快なる答弁をあわせて賜りたいと思うのでございます。(拍手)
 財形貯蓄がマル優と同額の引き上げ幅となったことは、霞が関の悪しき横並び意識が露骨に出たものと批判せざるを得ません。しかし、マル優総計の限度額が一千五十万円となっているのに比べて、財形は五百五十万円。この差を埋める努力にこそ横並び意識は活用されるべきではありませんか。勤労者の持ち家取得や財産形成を促進しようという明確な政策目的を持つ財形貯蓄の限度額を一千万円程度に引き上げるぐらいは、生活大国に向けた実のある取り組みの一つとして、厳しい財政事情を差しおいてもなされてしかるべきだと考えるところでありますが、村上労働大臣の御決意のほどをお聞かせ願いたいと思うのであります。(拍手)
 平成五年度予算は、景気浮揚を最大の目標に置いているのですから、政府の経済見通しで掲げたGNP実質成長率三・三%の達成が格別の重みを帯びてくることは異論の余地はないはずであります。にもかかわらず、今においてなお政府の景気対策が、公共投資の拡大と公定歩合の二・五%という過去最低水準への引き下げに見られるように、企業対策に偏っていることを一体どう理解すればよいのか、普通の感覚では混乱を深めるばかりであります。
 平成不況の長期化は、在庫調整、設備投資の縮減や消費者の節約という、それ自体、経済的合理性を持つ、ミクロの不況対策が、マクロ的にはかえって不況を深化させる、いわゆる複合の誤謬から抜け出せる処方せんを、財政政策として描き切れないがゆえに生じていると思うのであります。
 経済のソフト化、ハイテク化に伴った産業構造の転換により、公共投資の乗数効果が政府モデルよりも低下していることは、多くのエコノミストの指摘するところでもあります。実際、GNPの七%にすぎない公共事業がひとり気を吐く形で予算に仕込まれたとしても、その限界は、三%の経済成長を見込んだにもかかわらず、約半分の一・六%に下方修正せざるを得なくなったという九二年度の例を持ち出すまでもなく明らかであります。残された唯一の財政政策でもあり、かつまたGNPの大宗を占める個人消費の活性化に有効な所得税減税を実施することなく、三・三%の達成は可能なのかどうか、船田経済企画庁長官の率直な御見解を求めるものであります。(拍手)
 減税の必要性は、景気対策の観点からだけではなく、税構造のゆがみを正すという観点からも説得力を持ちます。何よりも、八八年の制度改正以降、ほとんど手つかずのまま放置されてきたことから派生じた実質増税の構造、今国民の中にそこはかとなく漂い始めてきた生活の疲れ、政府による家計いじめそのものと言えるのではないでしょうか。八九年から据え置かれてきた課税最低限は、平均国民所得比で見て、八九年の三〇・八%から九二年には二六・二%にまで落ち、抜本改革以前の八六年水準にまで下がっています。また、国税に占める給与所得税の割合も、八九年度の二六・八%……
#7
○議長(櫻内義雄君) 山内弘君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
#8
○山内弘君(続) このような不況下の中で、減税の実行に向けた総理の明快な答弁を求めるものであります。
 政策不況の中におけるこの状況において、財政計画を立てるべき場合、不況期には減税を、加熱期には増税によって、景気の安定と財政の健全化を図るのが財政を預かる政府の責任であります。
 宮澤総理の御所見をあわせてお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
#9
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 経済は不況の中にございますが、いわゆる生活大国の実現は、この不況脱出の努力を契機としてこれを進めていきたいと考えておりまして、したがいまして、このたびの租税特別措置の一部改正案におきましても、生活大国づくりに関連して具体的な施策を幾つか盛り込んでおります。例えば、環境・資源エネルギー対策といたしまして、試験研究費に関する特例措置あるいは再生資源利用促進準備金など、農林水産業で申せば、準備金、割り増し償却制度の創設、土地住宅対策につきましては、居住水準の向上に資しますために買いかえ特例の新設、ある
いは障害者対策等に資するものとして、障害者多数雇用事業所や老人性痴呆疾患療養病棟等についての割り増し償却の拡充など、これらはすべて生活大国づくりに役立つ施策として御審議をお願いいたすわけでございます。
 それから、今回の改正案で利子あるいは株式譲渡益の総合課税をどうして盛り込まなかったかというお尋ねでございました。
 これにつきましては、過般の税制改正以来いろいろ議論があったところでございますが、その後、税制調査会で十分御審議をいただきました。そのただいまの結論といたしましては、いわゆる総合課税制度との関連で、納税者番号制度あるいは中長期的に見た所得課税をどのように考えるか等々、それらの問題と切り離すことが事実上できない、片や、現行の分離課税制度も十分評価し得る理由があるという結論でございましたので、したがって、現行の課税制度の基本的な枠組みを当面維持することが適当であるとの答申に基づきまして、御提案をいたしておるわけでございます。
 マル優制度についてお尋ねがございました。
 利子に関する課税制度につきましては、昭和六十三年の抜本改正におきまして、課税ベースの拡大、負担の公平等の観点から、一般の預貯金利子が、これは課税が原則でございますが、例外的に、所得を得られる能力が減退をされた老人についての貯蓄、それから勤労者の住宅貯蓄と年金貯蓄に限定をして非課税といたしたところであります。
 これは例外的な措置ではございますが、このたび、諸般の事情から、老人等に対する特別の配慮として、非課税限度額を現行の九百万円から一千五十万円に、財形の方は五百万円から五百五十万円にすることといたしたわけでございます。この点、御理解をお願いいたしたいと存じますが、高齢化社会のもとにおける税制のあり方につきましては、一般論として申しますなら、世代間の負担の公平の問題、あるいは国民の負担水準、税体系のあり方、いろいろ総合的な見地から今後とも検討を重ねていかなければならない問題であるというふうに考えております。
 それから、所得税減税等につきましてお尋ねがございまして、これは何度か本会議で申し上げておりますとおり、このたびの平成五年度予算におきまして、公共事業を中心にかなり大きな景気刺激策を盛り込んでおります。財投につきましては一二%、一二・四%でございますか、地方単独も一二%ぐらいの増を見込んでおりますし、全体としての政府投資額は、平成四年度で大きな補正をいたしましたが、その補正を加えましてもなお九・五%の大きな伸びでございます。私どもとしては、財政負担をいたします場合に、減税がより有効であるか、あるいは公共投資の方が不況脱出に有効であるかということを考えまして、公共投資を中心に行うことの方がより有効であるというふうに判断をいたしたわけでございます。
 なお、せんだっても申し上げましたが、現在の景気動向は極めて注意を要しますので、怠りなく動向を見ながら機動的に対処をしてまいりたいと考えておりますことに変わりはございません。
 残りの問題につきましては、関係閣僚からお答えを申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣林義郎君登壇〕
#10
○国務大臣(林義郎君) 山内議員の御質問に対しまして、お答えを申し上げます。
 御質問は、地価の下支えの可能性を持つ買いかえ特例の復活をまたするのは、生活大国のメルクマールとして、例えば京浜地区の平均的な勤労者の年収の五倍程度での持ち家を設定するということがありましたが、政策上、それとの整合性を欠くのではないか。また、買いかえ特例の復活が二年間の暫定措置となっていることは、政府は、土地税制は安定的であるべきであると言っているのに矛盾をしないか。また、本措置は生活大国実現の一環ではなく、不動産業の、業者の救済対策ではないか。三番目といたしまして、資産譲渡者の大部分は現在の三千万円の特別控除の枠内におさまっているのに、なぜ今買いかえ特例を復活させるのか、この三つの点が御指摘のところだと思います。
 これにつきましては、居住用財産の譲渡益課税につきましては、御指摘の三千万円の特別控除制度がありますけれども、例えば通常の宅地でも、長期間保有していることによりまして譲渡益が大きくなることが予想されますから、この制度のもとでも、かなり大きな税負担が生じる場合もあるということが考えられます。
 このような事情なども考えまして、居住用財産の買いかえにつきましては、一般のサラリーマンを初めとする国民の住みかえによる居住水準の向上を図る等のため一定の措置を講ずることとしたが、その際には、議員も御懸念の土地政策との整合性を図る点にも十分に配慮いたしまして、土地の対価が適正であること、譲渡資産の所有期間が十年を超えるものであること、譲渡価格が一億円以下であること、譲渡者の居住期間が十年以上であることなどの厳しい適用要件を設けたととろであります。
 さらに、御指摘の適用期間の問題につきましては、今申し上げました適用要件のもとであっても、仮に地価に対して何らかの影響があった場合のことも想定して、二年間の時限措置としたという点も御理解いただきたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣村上正邦君登壇〕
#11
○国務大臣(村上正邦君) 参議院出身の労働大臣であります。
 財形貯蓄の非課税限度額の引き上げについては、労働省といたしましては、御承知の一千万円への引き上げを要求しておりました。関係者の御理解によって五百五十万円への引き上げを見たところであります。
 財形貯蓄は、御指摘のとおり、勤労者がマイホームを手に入れるための資金づくり、安定した老後生活を送るための資金づくりとして重要な制度であると考えておりますので、さらに引き続き、その実現に向けて努力してまいる決意でおります。(拍手)
    〔国務大臣船田元君登壇〕
#12
○国務大臣(船田元君) 山内議員の、GNPの大宗を占める個人消費の活性化に有効な所得税減税を実施することなく、実質経済成長率三・三%の達成は可能か、こういうお尋ねでございました。
 我が国経済は、御承知のように、現在、引き続き低迷をしておりまして、資産価格の下落もあって、厳しい状況に直面をしております。
 このため、昨年八月には、総額十兆七千億円に上る総合経済対策を決定し、昨年暮れの補正予算の成立によって本格的な実施に移ったところでございます。また、平成五年度の予算におきましても、公共投資等について、国の公共事業のほか、財政投融資計画やあるいは地方単独事業等についても近年にない高い伸び率を確保するなど、国・地方を通じて景気に十分配慮いたしております。
 こうした施策によりまして、切れ目なく公共投資が執行され、政府投資額も、平成五年度も、四年度補正後の実績見込み額に対しまして九・五%増と相当の伸びと見込まれております。
 また、金融面では、御承知のように先般、第六次の公定歩合の引き下げが行われまして、市中金利に加えまして貸出金利の低下が今後一層促進されることを期待をいたしております。
 こうした財政・金融両面からの措置の効果を踏まえますれば、公共投資や住宅投資が成長を牽引する中で、個人消費や設備投資も徐々に回復に向かうものと期待をされまして、我が国経済は、民間部門の自助努力とも相まって、内需を中心とするインフレなき持続可能な成長経路への円滑に移行していくものと考えられます。こうしたことから、政府経済見通しでお示しした平成五年度の
三・三%程度の実質経済成長率は達成可能である、こう考えております。
 なお、政府の景気対策は企業対策に偏っているという御質問についてお答え申し上げますと、公共投資は、直接的あるいは間接的に雇用者所得の伸びを高め、個人消費にも好影響を与えることが期待できるものでありまして、また、累次の金融緩和は既に住宅投資にも好ましい効果を及ぼしていることにかんがみれば、これまでの施策が企業対策に偏ったものであるとは考えておりません。
 以上でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○議長(櫻内義雄君) 井上義久君。
    〔井上義久君登壇〕
#14
○井上義久君 私は、ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案に対し、公明党。国民会議を代表し、総理並びに関係大臣に質問を行います。
 施政方針演説で、総理は、我が国経済が厳しい不況下にあるとの認識とともに、成長主義、効率主義から、ゆとりある公平、公正な経済社会へ変革する必要性を訴えられました。極めて厳しい状況にある日本経済の活性化のため、また我が国経済社会システム全体の変革のために、総理は強いリーダーシップを発揮し、明確なビジョンに基づく万全の施策を講ずべきでありました。しかし、示された平成五年度予算案やその他の施策は、公共事業を中心とした従来の景気対策の域を出ておらず、そうした意気込みの全く感じられない内容と言わざるを得ません。
 私は、今日において景気回復に果たす税制上の役割は極めて重いと考えております。まず、この点について総理の見解を伺いつつ、以下、当面する不況克服に対する措置、税制における問題点等につき重点的に質問をいたします。
 第一に、不況克服及び実質増税解消のための所得税減税についてであります。
 景気低迷は、底の見えない状況が依然続いております。先般の予算委員会における我が党の市川書記長の指摘に対し、総理は、バブル崩壊による資産価値の大幅下落と、その結果としての金融収縮や、過剰な設備投資による負担増などの不況要因を見誤り、複合不況の認識を欠いたまま適切な対策を打たずに来たことをお認めになりました。楽観的な対応を二度と繰り返すことのないよう、「きょうの後にきょうなし」との総理の言葉のままに、後顧の憂いなぎ対策をとっていくべきと考えます。
 公定歩合の再引き下げがなされ、二・五%という史上最低の金利となった現在、さらなる景気刺激のための追加策として所得税減税を望む声が日増しに大きくなっております。所得税減税に対する総理の基本的な考えをまず伺いたいと思います。
 不況による雇用状況の悪化から、残業やパート労働の削減などにより可処分所得の減少は大きくなっております。これらの所得要因に加え、地価の下落や株価低迷による個人資産の目減りなどから消費マインドの冷え込みは大きく、今春闘の賃上げの状況によっては、さらに消費の落ち込みに拍車がかかることは明白であります。不振をきわめる個人消費の回復を図るため、可処分所得の向上とともに、心理的な浮揚効果をもたらす意味からも、思い切った所得税減税を実施すべきであります。
 その実施に際しては、幅広く相当な規模があり、かつ機動的に対応できるものとすべきであります。GNPの六割を占める個人消費を手厚くカバーするため、減税の恩恵が一部の層に偏らないためには、一律戻し税が適当であり、規模として総額四兆円以上の所得減税を効果的かつ速やかに実施すべきと考えます。昭和五十三年度に行った方式等を踏まえ、福祉一時金の支給もあわせて実施すべきであります。我が党は、こうした観点から、政府に予算修正を強く要求するものであり、これらに対する総理の決断を求めるものであります。お答えをいただきたいと思います。
 財源につきましては、防衛費、予備費や不要不急経費の削減、租税特別措置など不公平税制の是正や徹底した行財政改革をまず行い、どうしても不足する分については特例公債の発行によって補うのもやむを得ないと考えます。その場合、景気上昇による増収を見込み、五年間程度の償還計画を立て、決算剰余金の優先繰り入れ等の原則を明確にした確実な返済計画を策定すべきであります。
 特例公債の一番の問題は、財政の規律が緩み、むだ遣いが出やすいことにあります。つまり、問題は、財政が厳しいときよりも余裕のあるときの財政の運営態度なのであります。これは、バブルの時代の二十兆円近い自然増収を財政構造の転換に振り向けず、歳出の膨張を招いたことを見れば明白であります。経済の拡大均衡を図る中で、歳出膨張に歯どめをかける方途を再検討すべきであります。経済の縮小均衡を招きかねない硬直した財政運営の姿勢から脱皮し、特例公債の発行に関してはフレキシブルな対応を望むものでありますが、この点についても、総理の御見解を伺いたいと思います。
 次に、政策減税についてお伺いをいたします。
 住宅建設はすそ野の広い産業であり、景気に対する波及効果も大きいため、積極的に推進すべきであります。地価の再高騰を引き起こさないよう十分配慮した上で、第一次住宅取得者の住宅取得に資する税制上の積極的な措置を講ずるべきであります。いわゆる買いかえ特例の復活も、第一次取得者との課税の公平が図られてこそ税制上のバランスを保つのであります。住宅取得促進税制については、現行の住宅ローン減税の控除額を年末残高の二%に引き上げ、地方税にも導入するなど制度の拡充を行うことにより、初めてのマイホームが取得しやすい方向へ誘導できるものと考えます。また、賃貸住宅居住者の家賃負担軽減のため、一定の所得水準の借家世帯に対し、控除と手当を併用した家賃補助制度の創設も前向きに取り組むべきであります。
 また、家計における教育費負担を緩和するために、私どもは、特定扶養控除の引き上げや、大学入学金の二重払いに対する寄附金控除の適用を訴えてまいりました。可処分所得の向上の意味からも重要と考えます。
 教育、住宅等の政策減税についての総理の考えはいかがか、お伺いをいたします。
 次に、本租税特別措置法案の改正点の具体的項目に関して質問をいたします。
 土地住宅関連では、買いかえ特例の条件つき復活が盛り込まれております。これは地価高騰を招
いた一因として過去に廃止されたものでありますが、地価再高騰のきっかけとなりかねない懸念をどう克服されたのか、住宅価格が限度額に張りつくことはないのか、また、第一次取得者との課税の公平をどう考えておられるのか、お答えいただきたいのであります。
 本法案では、不公平税制の是正が不十分だと言わなければなりません。企業の各種引当金や、ふえている法人の課税逃れなど、実態に即して見直すとともに、各種の特別措置についても、長期間続き、役割を終えたものは原則廃止するなど、全面的な見直しを行うべきであります。
 今回、高齢者マル優非課税限度額については小幅の引き上げとなりましたが、このいわゆるマル優枠は長期にわたり引き上げておらず、公定歩合の引き下げに伴って、老後に必要な貯蓄額がふえていることなどからも必要な措置と考えております。また、年金・住宅財形貯蓄の非課税限度額は一層引き上げるべきであり、教育型の創設とあわせて、勤労者の資産形成のために非課税限度額を一千万円までとするべきでありますが、御見解を伺いたいのであります。
 今回見送られた利子配当所得、株等のキャピタルゲインの総合課税については、税制の公平を図る観点から、本来当然必要な措置であります。プライバシー保護等慎重に行っていかなければならないことは当然でありますが、納税者番号制度の導入へ一歩踏み出すべきであります。これら総合課税化、納税者番号制度の導入について総理の考えをお伺いしたいと思います。
 次に、ゆとりある公正、公平な経済社会の実現のために、法人と個人の、特に税制上における格差についても申し上げておきたいと思います。
 それは、資産課税の面に端的にあらわれております。例えば不動産を取得する際、通常借金をいたしますが、その借入金利子等の経費算入が法人には認められております。しかし、個人には認められておりません。資産の管理費用等も同様であり、資産の評価についても、法人は売却しない限り帳簿上の価値は変わらず、個人は相続のときに必ず再評価されます。現在の税制上の仕組みは、法人に資産が集中せざるを得ない制度となっております。この仕組みを変えない限り、生活大国の実現などおぼつかず、会社中心の呪縛から個人は逃れられないのではないかと思います。いかがお考えか、お伺いしたいと思います。
 相続税についても申し上げたい。
 去る二月十五日、東京・田園調布に住む初老の夫婦が相続税の重圧に耐えかね自殺をしたという事件がありました。父親の死による相続税一億九千万円を払うため、評価額三億二千万円の自宅を売りに出し、二億四千万円まで値を下げたが結局売れなかった。当局からの催告書は延滞税を入れて二億三百万円になり、気疲れもあり、痛ましくも服毒されたということであります。後からでは延納も認められず、物納も無理という事例でした。たまたま町工場をしていた土地を追い立てられ、気の毒なことになった、まことに胸の痛む事件であります。バブル破綻後は、このように土地の実勢価格が路線価を割り込み、相続税の重圧感がより大きくなっているケースがふえております。こうした事態を避けるためにも、小規模宅地課税の特例等の一層の拡充や、土地の実勢価格と相続税評価額との逆転現象について早急な対策が必要と考えます。見解をお伺いしたいと思います。
 最後に、不況対策と関連して、我が国経済の基盤を支えている中小企業の事業承継についてであります。中小企業経営者にとって、いわゆる事業承継税制の拡充は、税制上の最大願望の一つであります。事業承継税制について必要な措置をどう考えているか、御見解をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
#15
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 減税につきましては、たびたび本議場においても申し上げました。先ほどもまたお答え申し上げましたが、昨年の八月に総合経済対策をいたしました。また、その延長線上で平成五年度の予算の編成をいたしておりまして、財投につきましても一二%余り、地方単独事業につきましても一二%と相当大きな公共投資を積み上げておりまして、平成五年度の政府投資額は補正後の四年度よりもなお九・五%増ということで、私どもとしては、財政支出をいたしますときに、景気回復の立場からは、減税よりも公共投資の方が効率的だろうという判断をいたしてまいりましたことは、以前にも申し上げたとおりでございます。
 そこで、今戻し税についてお尋ねがございまして、昭和五十二年、五十三年にもやったではないかということでございます。確かにそういうことを過去にやっておりますけれども、まあ一応申せることは、やはり戻し税というのは、その年度に関して税体系をある意味でゆがめることになるわけでございます。それから、いかなる規模でありましても翌年はもとに戻るということでございますので、翌年度にはむしろ増税感がある、一過性の税負担の軽減であるというような性格を持っております。それから、このごろは、殊にもう給与所得は御承知のように銀行振り込みになってまいりましたので、戻し税がございましても、その月の源泉分が控除額が少なくなっているということが銀行の勘定でわかるだけでございまして、これをキャッシュで一人一人源泉所得者に渡すということは、これはなかなか大変なことになります。そういう問題もあるということを一言申し上げておきたいと思います。
 それから、社会保障給付を一時金についてということは、できるならば、社会保障給付はときどきの事情で追加したり減額したりすることは、本来好ましくないのではないかというふうに思います。
 それから、特例公債のことについてもお尋ねがありまして、御承知のようにかつて特例公債を発行いたしました後、脱却するのに十五年余りかかりました。国債残高がふえておることは御承知のとおりでございますが、二十一世紀に入りますと高齢化がかなり急激に進みますので、できるならば大きな負担を後に残したくない。五年間という今短期の特例公債ならどうだということですが、短期間に償還するという、その財源をどのように確実に確保するかということは、湾岸戦争のときのようなことでございますと別でございますけれども、やはり非常に問題がある。そういう点では通常の赤字公債に変わらないことになるのではないかということを心配をいたします。
 それから、住宅ローン減税についてのお話がございました。これは御承知のとおり、現在の制度
がかなり大きな減税になっておりまして、最高限税額控除で二十五万円でございますから、しかもそれを六年間重ねることができる。二十五万円の税額と申しますと、勤労所得者で申しますと大体六百五十万円でございましょうか、そのぐらいのサラリーマンの標準世帯の所得、その税額が二十五万円でございますから、これはかなり大きな現実に行われている今の制度でございます。この歳入滅はたしか五千数百億、五千六、七百億円といったと思いますが、かなり大きなものでございます、現実にやっておりますのが。したがいまして、これをさらに拡充するということはどんなものであろうか。住宅は無論取得しない人もたくさんおりますから、そういう点の権衡はどうであろうかとかいう問題を考えてみる必要があろうかと思います。
 それから、教育費控除のことも、これもしばしば御指摘のあるところですが、今十六歳から二十二歳までですか、の扶養親族について、いわゆる割り増し扶養控除をやっております。これはもとよりその年齢層で親の教育費負担が多いということを考えてやっておる、そういう配慮をしておりますことはぜひ御理解をいただきたいと思います。
 それから、入学金の寄附金、これはいわゆる寄附金という、公益のための寄附金とは性格が違うわけでございますが、したがって、寄附金控除の対象とすることはいかがなものであろうかと思います。
 それから、買いかえ制度でございますが、これは地価高騰の懸念等々のお話があったわけですが、この際、土地政策との整合性も十分に考えたつもりでございます。また、現実に譲渡価格一億円以下といたしましたので、大邸宅の譲渡や投機的な譲渡は排除されるものというふうに思います。
 それから、法人課税と個人課税の問題について、法人の事業の遂行に伴い支出する借入金の利子は、これは無論経費でございますが、個人の場合におきましても、事業の遂行に必要な経費は、これは当然所得から控除される。そういう点では、基本的には私は差別をしていないというふうに申し上げてよろしいのではないかと思います。
 それから、マル優非課税の限度額でございますが、昭和六十二年の税制改正をいたしましたときに、例外的に御老人と勤労者の住宅貯蓄、年金貯蓄の利子を非課税にいたしました。これをこの際五十万円引き上げる、あるいは財形につきましても引き上げをするということをいたしましたので、ある意味で今回特別の配慮をいたしたものというふうに御理解をいただきたいと思います。
 それから、教育型の財形貯蓄は財形教育融資制度がございますので、この利用を皆さんにしていただきたいと思っております。
 それから、納税者番号制度でございをする。それは、利子配当所得の総合課税との関連でのお尋ねであったわけですが、前回の、昭和六十二、三年の税制抜本改革をいたしましたときからこの問題は残っておりまして、税制調査会で長いこと検討をいただいておりました。しかし、昨年の暮れに、納税者番号についてはやはり検討すべき課題が残っている、また、国民的にこれについてはいろいろ疑問を持っておられる方、あるいはむしろ疑い、何と申しますか、問題があると言われる議論が多い等々から、なお今後議論を深めていく必要があるだろうということから、この際、採用をいたしませんでした。
 したがいまして、また他方で、税制調査会から、この問題と切り離し、あるいは税制全体のあるべき姿と切り離して、この利子、株式の総合課税というのはやはり問題がある、今の分離課税もそれ相当の理由があるということから、当面これを維持することが適当だという答申がございましたので、それに従いまして政府の方針を決定いたしたわけでございます。
 それから、小規模宅地課税の特例ですが、相続税につきましては、昭和六十三年に抜本改正をいたしました。それから平成四年度でも改正をいたしました。事業用の小規模宅地課税の特例、これも平成四年度でさらに改めておりまして、中小企業の事業承継の円滑化に資そうという目的でございます。
 相続税評価における路線価格は、納税者の申告の便宜及び課税の公平を図る観点から、なるべくわかりやすいように土地の評価額を算定ができるように定めているわけですが、路線価格の評価時点、それは一月一日ですが、その後地価が下がった、課税時期、相続開始時期において逆転現象が起こった、そのときにはもちろん路線価格をそのまま適用するということは適当でございませんから、具体的に個別に課税関係のあり方を判断いたしまして適切に対応をいたさせておるところでございます。
 大変お尋ねが多うございました。大体お答えを申し上げたと思いますが、残りの問題は大蔵大臣からお答えをいたします。(拍手)
    〔国務大臣林義郎君登壇〕
#16
○国務大臣(林義郎君) 井上議員の御質問にお答えいたします。
 私もずっと聞いておりましたのですが、総理から非常に細かい点まで全部お答えをいただいたのでございまして、私が具体的な問題でお答えをするような話はございません。
 ただ、強いて申し上げますならば、不公平税制の是正をやっていけというふうな御質問がありました。税負担の公平確保は、税制に対する納税者の信頼を得るために最も重要な問題だろうと私は思っています。この点につきましては、従来からも努力を続けてきているところでございますし、今後とも社会経済情勢の変化に即応して見直しを進めていかなければならない、こういうことを申し上げて終わりたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
#17
○議長(櫻内義雄君) 伊藤英成君。
    〔伊藤英成君登壇〕
#18
○伊藤英成君 私は、民社党を代表して、ただいま提案のありました租税特別措置法の一部を改正する法律案について、宮澤総理及び林大蔵大臣に質問を行います。
 質問の第一は、所得減税実施についてであります。
 宮澤内閣が甘い経済分析を続け、対策を後手後手に回してきた結果、日本経済は深刻な不況に直面しております。実質経済成長率は、昨年四月から六月は〇%、七−九月はマイナス〇・四%となり、最悪の事態に陥っております。昨年十月以降、有効求人倍率は一を下回り、大量の従業員、パート・内職者が職を失っております。
 また、この不況はこれまでにない深刻な消費不況となっています。乗用車や家電製品などの耐久消費財を中心に消費が低迷する異常事態が生じております。百貨店販売額の伸びは、昨年三月以来マイナスを続けております。
 言うまでもなく、今日の最大の政治課題は不況の克服であります。これまで政府は、公共投資拡大、公定歩合引き下げなどの対策が行われてきましたが、もはや限界に達しています。今、GNPの約六割を占める消費が著しく落ち込んでおります。政府は、九二年度の民間最終消費支出の実質伸び率について、当初見通し三・七%を大幅に下方修正し、一・五%に改めました。昨年一月から十一月までの全世帯の実質消費支出は、前年比わずか〇・五%の増加にとどまっています。こうした状況において、残された手段は消費拡大策としての所得減税実施しかありません。
 しかも、サラリーマン、パート労働者の税負担も年々高くなっています。ある試算によれば、中堅勤労者の場合、八八年から九二年にかけて賃金は二三・五%しか伸びていないのに、所得税は五六。六%も増加しています。サラリーマンの所得はガラス張りで、所得がふえると税率も高くなり、自動的に増税となります。
 この考え方に立って、民社党は、中堅サラリーマンやパート・内職者に重点を置いた二兆円以上の所得減税、さらに住宅減税を柱に二兆円の政策減税の実施を提唱してきました。しかし、政府は、今までの対策で十分だ、財源がないなどの理由を挙げ、減税実施を拒否し続けております。所得減税実施は、国民生活に関する緊急かつ不可欠の課題であり、何にも増して重要なものであります。平成五年度予算案の総額は約七十二兆円ですが、その全体の中で政策の優先順位を明確にし、政府が減税実施を最優先させる政策判断を行うべきだと考えます。
 特に、宮澤内閣が、減税は公共投資に比べて効果が著しく小さいと宣伝していることは、悪質な情報操作と受けとめざるを得ません。政府は、減税の乗数効果は〇・五三しかないのに対し、公共投資の乗数効果は一・三九であると試算しています。しかし、ある民間機関のデータでは、乗数効果について、公共投資が一・五六、減税一・四三と余り差がないと試算をされております。かつて、政府は、売上税導入、マル優制度廃止と所得減税を柱とする改革案について、法人税減税が全額個人に還元されるなどというあり得ない前提を置いて、減税額を作為的に膨らませた前科があります。この試算は学者グループからも厳しい批判を受け、国民の前に政府による情報操作がさらけ出されました。
 所得減税の効果が小さいとの政府試算も信頼できるものではないと私は考えます。円高不況時の一九八七年、政府は五兆円の公共投資と一兆円の減税を柱とした六兆円の経済対策を決定をいたしました。最終的には所得税減税の規模は一兆五千億円となり、後に行われた住民税減税を入れて約二兆二千億円の規模の減税が行われました。この減税により、日本経済は早期に円高不況から脱出することができたわけであります。民間最終消費支出の実質伸び率も、八五年度、八六年度と三・六%、三・八%と低迷していましたが、所得減税が功を奏して、八七年度、八八年度は四・一%、五・五%となりました。八六年度、二・九%に落ち込んだ実質GNP成長率も、八七年度、八八年度は四・九%、六・〇%にはね上がりました。過去に所得減税を実施して不況を克服した自民党政府が、どうして今回、手のひらを返したように減税を拒否するのか全く理解できません。
 本予算成立後あるいは補正予算で景気対策を追加すればよいとの悠長な声が政府・与党内にありますが、無責任きわまるものと断ぜざるを得ません。総理、昨日も予算委員会で証人喚問が行われましたが、国民の政治に対する不信感はますます高まっております。政治に対する信頼を取り戻すためにも、タイムリーな政策決定が絶対に必要であります。景気対策は一刻の猶予もならぬ緊急課題であります。まず、平成五年度の当初予算案を修正し、早期に所得減税を実施すべきと考えますが、総理及び大蔵大臣にこの場で約束をしていただきたい。
 第二に、住宅など政策減税についてお尋ねいたします。
 民社党は、一九八七年以来、生活先進国づくりに取り組んでまいりました。遅きに失したとはいえ、宮澤内閣が生活大国建設を打ち出し、年収五倍での住宅取得などを公約していることは当然のことと考えます。しかし、政府が実効ある住宅政策を実施していないために、大都市圏を中心に平均的なサラリーマンのマイホーム取得は依然として困難な状況にあります。日本が世界の経済大国となっても国民の日常生活にゆとりや潤いが感じられない最大の原因は、衣食住のうち住宅について環境が悪いことに尽きると考えます。住宅対策は約二・一二倍の生産誘発効果があるとの分析もあり、景気対策としても大きな効果があります。今こそ本腰を入れて抜本的な住宅政策に取り組むべきだと考えます。
 まず、サラリーマンのマイホーム取得を全面的に支援することが基本です。将来的には、住宅ローンの利子を全期間にわたって所得控除する制度を創設することを視野に入れながら、当面、住宅取得促進税制を拡充するよう提唱いたします。
 さらに、大都市圏農地の宅地転用を進めるため、必要な施策を講じるべきだと考えます。政府は、三大都市圏特定市街化区域内農地について、農業に専念する生産緑地と宅地並み課税が行われる土地を明確に区分しました。これにより生産緑地以外の土地の宅地転用が促進され、大都市圏のサラリーマンは住宅取得が容易になるはずだと聞いておりました。しかし、効果は十分にあらわれていないようであります。ある調査によれば、宅地並み課税を受け入れてでも農業を続けると答えた人が四二・一%にも達しています。政府は、ほかにもさまざまな特例措置を講じているとしていますが、この現状をどう釈明するのでしょうか。大都市圏の農地の宅地転用を積極的に進めるため、時限措置として、生産緑地指定を受けない農地を売却した場合は、譲渡課税を思い切って軽減すべきだと考えますが、総理、大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
 政策減税のもう一つの柱は教育減税です。
 今や住宅と並んで教育費が中堅勤労者の家計を大きく圧迫しています。平成四年度国民生活白書によれば、子供が私立大学に入り下宿生活をした場合、初年度は親の年収七百五十二万円の三四・四%に当たる二百五十九万円もの費用を払わなければならないとのモデル計算が行われておりま
す。重い教育負担を軽減するため、高校、大学などの入学金、授業料を所得控除することを提言いたします。そうすれば、家計にも余裕が生まれ、耐久消費財などに対する購買意欲を高め、景気回復にもつながるものと考えますが、総理及び大蔵大臣の答弁を求めます。
 最後に、行財政改革について質問をいたします。
 所得減税を実施するため、まず取り組まなければならない課題は行革の断行であります。政府・自民党は、国鉄、電電公社、専売公社の民営化などを除いて、成果を全く残しておりません。許認可数は、八五年末一万五十四件だったのに、九二年末は一万九百四十二件、省庁の官房局の数も七九年以来百二十八のままと、政府は行政改革どころか、行政の肥大化を放置していると批判せざるを得ません。
 さて、一月二十九日に行われた本院予算委員会において、我が党の米沢書記長の質問に対し、林大蔵大臣は、行政改革と財源は別の話だと答弁していますが、重大な発言と受けとめざるを得ません。不況のあおりを受けた家庭や企業では、みんな必死の思いでやりくりし、経費を節減しているというのに、財政の責任者たる大蔵大臣がこのような認識を持っていることに対して憤りを感じます。
 こうした中、米国のクリントン大統領は、二月九日、ホワイトハウス職員を約二五%削減するほか、一部職員の公用車通勤の廃止、組織の改編などのホワイトハウス改革を発表いたしました。さらに、大統領は十日、向こう四年間で約二百十万人の連邦政府の文民職員のうち十万人の削減を軸とする行政改革を発表いたしました。政府機関の抱える諮問機関の三分の一を整理するほか、行政事務経費の一二%削減を断行する大統領命令に署名したことも明らかにし、こうした改革で九十億ドルの節約を目指すと述べました。大統領は、あわせて、政府高官の公用車使用を約半分に削減するほか、高官専用の食堂の一部閉鎖、連邦政府所有機の使用の大幅制限など、政治不信の一因にもなっている高官の特権の廃止にも触れ、より少ない経費で多くの仕事をする政府をつくると強調いたしました。そして本日、クリントン大統領は、史上最大規模の歳出削減策を発表をしております。
 行革を後退させ、放漫財政を続けてきた過去を反省し、米国のように歳出削減目標額を明らかにし、具体的な内容を盛り込んだ新行財政改革五カ年計画を策定、実施するように宮澤内閣に提唱するものであります。
 総理及び大蔵大臣の答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
#19
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 経済の現状において減税が必要であるということについて、いろいろな面から御指摘をいただきました。問題点は、したがいまして、繰り返し言いませんが、政府としましては、公共事業を中心に、大きな昨年以来の補正、また平成五年度の予算を編成いたしておりますが、同時に、このたびの不況の一つの特色が資産価格の下落にあるということも考えまして、金融システムの健全化であるとか、あるいは証券の活性化等についても国としても努力をいたしておるわけでございます。そういう中から景気の回復を、殊に住宅建設などはかなり順調でございますので、この予算をできるだけ年度が始まりましたら早く施行をさせていただきたい、そういうふうに考えておりまして、もとよりこの数カ月の景気の動向は非常に大切でございますから、よく注意をいたしまして、機を失せないように対応してまいりたいというふうに考えております。
 政策減税につきましていろいろお尋ねがございました中で、農地の譲渡課税に関してですが、御指摘の生産緑地の指定を受けない農地を含めまして優良住宅地供給のための軽減税率を適用し、住宅地供給の促進のための税制上の優遇措置を講じておるところでございます。それから、生産緑地指定を受けない農地を含めまして、先般大内委員長から御質問がございました三大都市圏の特定市内の土地等につきましては、平成五年度の改正におきまして、今申し上げました軽減税率が適用されることとなる開発許可対象の土地についてその範囲を広げたいと考えておりまして、先般御答弁を申し上げましたが、その作業を今いたしておるところでございます。
 それから、教育費の控除につきましては、割り増し扶養控除につきまして先ほどお答えをいたしました。さらにこれを増大するということになりますと、教育に対する財政助成の基本的なあり方とも関係をいたしますので、慎重を要すると存じます。
 それから、行財政改革について、これは一遍限りのことではなくて五カ年計画のようなものを考えろということは前からの御主張でございますが、例えばこの平成五年度の行革大綱につきましても、その中身は中長期にわたって取り組むべき課題を盛り込んでおります。五年度は五年度だけということではございませんので、答申そのものを中長期にお願いをしておる、またその実行を中長期にわたって計画しておるという意味におきまして、御指摘の御趣旨は、私どももそれに従って実行しておるものというふうに考えております。
 なお、残余のお尋ねにつきまして、関係大臣からお答え申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣林義郎君登壇〕
#20
○国務大臣(林義郎君) 伊藤議員の御質問にお答え申し上げます。
 質問が五項目ぐらいございまして、すべて総理からお答えをいただいておりますし、私から二度とまたお答え申すのもどうかと思いますが、若干付言をさせていただきますならば、所得減税の問題につきましては、私は率直に申しまして、消費のための減税というような話になりますと、現在の消費の動向から見ますと、やはり減税をした効果というものを考えていかなければならない。昨年の総合経済対策で私たちがとってきたのは、やはり公共事業をやっていこう、それによって景気回復を図っていこうという考え方、それは理論的にもそういうことだ、こういうことでございまして、今でも私はそういうふうに考えているところでございます。消費の刺激策としての効果はそう大きなものではないのではないかということと、それから、その財源をどうするかという問題がございます。仮に赤字公債を充てるということになりますと、現世代は減税という利益を受けるけれども、後世代には元利払いという大きな負担を強いるということになるのでありまして、それが果たして責任ある態度と言えるかというのは極めて
疑問なところではないかと思っておるところでございます。
 そのほか、住宅取得促進税制、農地の宅地転用税制、入学金、授業料等につきましては、総理からお答えありました。また、あのとおりでございますが、最後に、私のことを引かれまして、行財政改革をやれ、こういうふうなお話、五カ年計画ということがございました。民社党の方から、前から新行財政計画、五カ年計画というお話があります。これも私も承知しておりますが、私たちは、臨調答申その他を中心といたしまして、不断に行政改革というものを考えてやっているところでございますし、また、財政といたしましては、公債残高が異常にかさんできておる、そういったものについて、公債残高が少なくとも累増していかないような財政体質をつくり上げていかなければならない。こういうふうな考え方で財政改革も推進しているところでございます。
 以上、つけ加えて申し上げました。(拍手)
#21
○議長(櫻内義雄君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#22
○議長(櫻内義雄君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時二十分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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