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1993/04/06 第126回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第126回国会 本会議 第16号
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1993/04/06 第126回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第126回国会 本会議 第16号

#1
第126回国会 本会議 第16号
平成五年四月六日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十一号
  平成五年四月六日
    午後一時開議
 第一 駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際
    協定の締結等に伴う漁業離職者に関する
    臨時措置法の一部を改正する法律案(内
    閣提出)
 第二 薬事法及び医薬品副作用被害救済・研究
    振興基金法の一部を改正する法律案(内
    閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 日程第一 駐留軍関係離職者等臨時措置法及び
  国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する
  臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提
  出)
 日程第二 薬事法及び医薬品副作用被害救済・
  研究振興基金法の一部を改正する法律案(内
  閣提出)
 労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する
  臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提
  出)の趣旨説明及び質疑
    午後一時二分開議
#2
○議長(櫻内義雄君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 駐留章関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業難聴者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
#3
○議長(櫻内義雄君) 日程第一、駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。労働委員長岡田利春君。
    ―――――――――――――
 駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔岡田利春君登壇〕
#4
○岡田利春君 ただいま議題となりました駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、駐留軍関係離職者及び漁業離職者の発生が今後においても引き続き予想される状況にかんがみ、駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の有効期限を、それぞれ五年延長しようとするものであります。
 本案は、去る二月十五日に付託となり、同月二十三日村上労働大臣から提案理由の説明を聴取し、四月二日の委員会において質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#5
○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 薬事法及び医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の一部を改正する法律法(内閣提出)
#7
○議長(櫻内義雄君) 日程第二、薬事法及び医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。厚生委員長浦野烋興君。
    ―――――――――――――
 薬事法及び医薬品副作用被害救済。研究振興基
  金法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔浦野烋興君登壇〕
#8
○浦野烋興君 ただいま議題となりました薬事法及び医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の一部を改正する法律案について、厚生委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、希少疾病用医薬品等の試験研究を促進し、医薬品等の品質、有効性及び安全性確保のための措置として、
 第一に、希少疾病用医薬品等の指定制度を創設し、その試験研究に必要な資金の確保、税制上の特例、優先審査等の措置を講ずること、
 第二に、医薬品副作用被害救済・研究振興基金の業務として、希少疾病用医薬品等に関する試験研究に充てるための助成金の交付等の業務を追加すること、
 第三に、法律の題名を、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法に改めること等であります。
 本案は、去る二月二十二日付託となり、三月二十五日に丹羽厚生大臣から提案理由の説明を聴取し、四月二日の委員会において質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関す
  る臨時措置法の一部を改正する法律案(内
  閣提出)の趣旨説明
#11
○議長(櫻内義雄君) この際、内閣提出、労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。労働大臣村上正邦君。
    〔国務大臣村上正邦君登壇〕
#12
○国務大臣(村上正邦君) 労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 今日の我が国の経済的発展は、長い間に培われてきた国民の勤勉、実直、すぐれた創意工夫、そして働くことをとうとぶ精神に支えられており、こうした日本人の持つ伝統的な価値観を大切にしつつ、労働時間の短縮を推進していきたいと考えております。
 衣食足りて礼節を知ると言われてきましたが、我が国の経済力が相当の水準となり、衣食がある程度満足できるところまで来ている今日では、生活の豊かさやゆとりを実感するためには、「住」と「時」のゆとりが求められているところであります。
 労働時間の短縮は、働く人々が時間的余裕を持ち、家族とのコミュニケーションや健康の増進により、心身を健全にし、能率的でよりよい仕事をするための大きな課題であり、「時」のゆとりを実感することのできる生活大国実現のための大きな柱であります。
 このため、政府といたしましては、労働時間の短縮、中でも完全週休二日制の定着に向けて取り組んできたところであります。特に、昭和六十二年の労働基準法の改正により、完全週休二日制に相当する週四十時間労働制を法定労働時間の目標とし、段階的にその短縮を進めてまいりましたが、既に十分な年月を経ており、週四十時間労働制の実施を図ることが求められているところであります。また、労働時間の短縮が難しい中小企業に対する支援措置の充実が必要となっております。
 政府といたしましては、このような課題に適切に対処するため、中央労働基準審議会の建議を踏まえ、法律案を作成し、同審議会にお諮りした上、ここに提出した次第であります。
 次に、この法律案の内客の概要を御説明申し上げます。
 第一に、労働基準法第三十二条第一項に明記されている週四十時間労働制を平成六年四月より実施することにするとともに、中小企業等の実情に配慮して、平成九年三月三十一日までの間、必要な猶予措置を講ずることとしております。
 第二に、年間単位での休日増を図るために、現行の三カ月単位の変形制を最長一年単位の変形制に改正することとしております。
 第三に、時間外及び休日労働に係る法定割り増し賃金率について、二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ命令で定めることとしております。
 第四に、年次有給休暇について、継続勤務要件を六カ月に短縮し、出勤率の算定に当たって育児休業について出勤したものとみなすこととしております。
 第五に、労働時間短縮を進めにくい中小企業等に対する支援を行うため、労働時間短縮支援センターを指定し、労働省令で定める助成金の支給等を行わせることとしております。
 その他、裁量労働制の対象業務の範囲を具体的に命令で定めることとし、また、林業について労働時間法制の適用対象事業に加えることとしております。
 なお、この法律の施行期日は、労働基準法の改正部分については平成六年四月一日、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の改正部分については公布の日としております。
 以上が労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関す
  る臨時措置法の一部を改正する法律案(内
  閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#13
○議長(櫻内義雄君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。永井孝信君。
    〔永井孝信君登壇〕
#14
○永井孝信君 私は、日本社会党・護憲民主連合を代表し、ただいま議題となりました労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係各大臣に対して質問をいたします。
 総理、ドイツやフランスなどと比べ、年間三カ月分ほども長い日本の労働時間の現状を改善することが国民的緊急課題となって久しいことは、改めて指摘するまでもありません。政府の一九八八年策定の経済五カ年計画では、年間千八百時間程。度に向けてでき得る限り短縮するとされ、週四十時間労働制を目標に段階的に短縮することとした改正労働基準法が施行されましたが、昨年までにその計画の半分も実現していないのであります。
 そして、昨年六月末に宮澤内閣が閣議決定した新経済五カ年計画、いわゆる「生活大国五か年計画」では、年間千八百時間の達成が目標とされ、昨年五月から、国の行政機関の完全土曜閉庁の実施、全国の自治体もことし五月中には八、九割が完全週休二日制、土曜閉庁を実施する状況となっており、昨年九月からは月一回の学校五日制も実施されています。
 そして今日、労働基準法の再改正が焦点となっているわけでありまして、本法案の審議については、国の内外から注目され、国会がこれに適切な回答を示すよう期待されていることを、これまでの日本における労働時間短縮問題の経過とともに、我々は強く銘記しなければなりません。
 そこで総理、私は、まず、年間千八百時間という目標について質問をいたします。
 この目標は五年前に掲げられたものでありますが、この間、ヨーロッパ諸国の労働時間短縮が足踏みしていたわけではなく、ドイツやフランスなど先進諸国は、千五百時間に向かって着実に進んでいるのであります。たとすれば、千八百時間というのは、二十一世紀に向けた日本の労働時間短縮の最終目標というよりも、むしろ中間目標というべきではないか。したがって、日本は当然この千八百時間をできるだけ早く実現をして、さらに次の目標に向けて進むことこそ、ことしサミットの主催国となる我が国のとるべき不可欠の道だと考えますが、総理の御見解をお伺いしたいのであります。(拍手)
 さて、次に、この千八百時間という当面の目標と改正法案の内容について質問をいたします。
 政府が掲げる「年間総実労働時間千八百時間」の内訳として想定されているのは、完全週休二日、週四十時間労働制、所定外労働年間百五十時間程度、年次有給休暇二十日完全消化などであり、これについては、我々も全く異論がないところであります。だからこそ、今度の労働基準法改正では、週四十時間労働制の実施のほか、時間外・休日労働縮減のための上限規制、または割り増し賃金率の引き上げや、年休付与日数を少なくともILO百三十二号条約の最低限の要請である三労働週、つまり、週休二日制を前提として十五日に引き上げることなどが求められていたはずであります。しかしながら、政府案の内客を見ますと、これらの要請にこたえるものになっているとは到底言えないのであって、断じて納得できないのであります。
 政府案が、一定の規模、業種の事業場について三年間の経過措置を設けつつも、来年四月から週四十時間労働制を実施することとしていること、また、この改正案とセットで時短に取り組む中小企業への援助措置を拡充するとしていることなどについては、評価するにやぶさかではありません。
 しかし、時間外・休日労働の縮減については、その上限規制が見送られ、割り増し賃金率を二五%以上五〇%以下の範囲内で命令で定めることにはするが、当面、時間外労働の割り増し率は引き上げないとするなど、縮減の余りにも弱腰であり、年次有給休暇の付与日数増加が見送られるなど、これでは千八百時間という目標の達成は初めから不可能とさえ思われるのであります。
 年休については、その消化率が五割程度に推移していることも問題であり、完全消化を図るには、病気休暇や家族看護休暇の法制化、年度初めの取得計画とまとめ取りの推進などの措置も必要ではないかと思うのであります。
 政府案は、このような不十分さを抱える半面、生活リズムを崩し、健康や家族の団らんを脅かすおそれのある一年単位の変形労働時間制を導入しようとしており、また、裁量労働制の対象を拡大する動きがあることも見逃すことはできないのであります。これらの懸念が現実のものとならないよう、厳格な規制措置が必要であります。
 以上指摘した点について、労働大臣のお考えをお尋ねいたします。
 さらに、以上のような政府案によって、労働大臣、あなたは、一体どの程度の労働時間の短縮を見込んでおられるのか。私は、今度の政府案では、到底千八百時間の達成はできないと思うのでありますが、それこそ不退転の決意で取り組むべきでありましょう。宮澤内閣の生活大国論に言う、豊かさとゆとりある暮らしの柱ともいうべき千八百時間達成の公約はどうなるのか、総理のお考えもあわせてお聞きいたしたいと思うわけであります。(拍手)
 政府案に関連をして、学校五日制についてもお尋ねいたします。
 官公庁はほぼ完全に土曜閉庁となり、来年から週四十時間労働制が施行されようとしているとき、学校だけは別ですよということは常識的に通らないことであります。大人は完全週休二日制、子供は土曜も休めない、まさかこれが日本型ゆとり社会とは言わないと思うのですが、総理に御所見を承りたいと思うのであります。
 第三に、中小零細企業、特に下請企業に対する支援策についてであります。
 改正下請振興基準に基づく行政指導が行われていますが、親企業、発注元による短納期発注などは一向に後を絶っていないのであります。これでは下請企業が労働時間短縮に取り組もうにも取り組むことはできません。やはり思い切った法的規制を考えなければならないと思いますが、通産大臣、いかがでしょうか、お尋ねをいたします。
 また、労働時間短縮に取り組む中小企業に対しては、労働時間短縮助成金の拡充と効果的活用の促進などの指導・援助に、より一層積極的に取り組むべきであると考えますが、労働大臣、現状で十分とお考えでしょうか。
 また、トラック運送業など、特に労働時間が長い業種については、物流システムを含めて特別な対策が必要であると考えますが、運輸大臣及び労働大臣の所見をお伺いいたします。(拍手)
 さて、ここで私は、今回の法改正案と関連して、現行法に基づく週法定労働時間の暫定措置に係る政令の改正問題について質問しないわけにはまいらないのであります。
 政府は、先般、この三月末で期限切れを迎えることになっていた週四十四時間制の適用猶予措置を、百人以下の事業場に限り一年間延長する、つまり週四十六時間制をさらに一年間継続するという週法定労働時間に係る暫定措置政令の改正を強行したのであります。中央労働基準審議会の労働側委員が全員欠席するという異常事態も起きたのであります。
 労働時間短縮に逆行するのはもちろんでありますが、問題はそれだけにとどまらず、法令の趣旨を受けとめて懸命に努力してきた猶予対象中小企業の労使にとっては、まじめな者が損をするということで容認しがたいだろうし、労働行政への信頼を損ない、政府の方針に基づき行政指導に当たってきた第一線の監督官も戸惑い、職務遂行意欲がそがれる結果となったことは明らかであって、将来に重大な禍根を残したと言わざるを得ません。労働大臣のみならず、政府の最高責任者である総理の責任も極めて重大であります。
 今回の措置によって、全体としての労働時間短縮計画が後退するようなことがあってはならないし、猶予期間を延長された企業においても、一日も早く本来の四十四時間が実施されるよう、政府として最大限の努力をすべきであります。私は、この際、政府に反省を促すとともに、今回の措置に関し、納得できる善後策を講じるよう強く要求するものであります。総理並びに労働大臣の明確な答弁を求めます。(拍手)
 総理、あなたも御存じのように、労働時間短縮問題は、長い経過があります。一九七一年夏のドルショックの後の円高の中で、当時の田中内閣は、内需拡大と週休二日制の推進を打ち出し、大平内閣では、一九七九年八月に策定した新経済社会七カ年計画で、一九八五年までに我が国の労働時間水準を欧米諸国並みの水準に近づけることが目標に掲げられ、行政指導が行われたのでありますが、石油ショックなどもあって新計画は進まなかったのであります。そして、一九八五年秋のニューヨークにおけるG5、そのG5の合意に基づく急速な円高進展の中で、当時の中曽根内閣は、経済構造調整と内需拡大を打ち出し、週四十時間労働制を目指す労働基準法の改正に踏み切り、その後、官公庁の土曜閉庁も順次実施の運びとなったのであります。そして今日、日本が空前の黒字大国となる中で、宮澤内閣は、生活大国を掲げつつ、今回の労働基準法等改正案を提出するに至ったのでありますが、労働時間の短縮に情熱を注いできた私としては、まことに感慨深いものがあります。
 しかしながら、総理、私は六年前にもこの壇上に立ち、当時の中曽根内閣が提出した労働基準法改正案に対する代表質問の中で指摘したのと同様に、今回もまた、あなたの内閣が提出した改正法案に対して、先ほど述べてきましたように、その不十分さを厳しく指摘せざるを得ないのであります。
 そこで、最後にお尋ねするのでありますが、総理、まさかあなたは、政府案が絶対であるというような態度はとられないと思いますが、いかがですか。千八百時間という目標は、待ったなし、必ず実現しなければならないのであります。
 また、冒頭においても指摘しましたように、本改正案について国会がどのような回答を示すかは、国内に限らず、国外からも重大な関心を持って注目されているのであります。それは、昨年の秋に来日したEC議会の代表団が、公正な貿易関係を確立するためには、市場開放のみならず日本の長時間労働の是正が不可欠であり、国会においてその是正の法改正が行われることに深い関心を持っていると述べていることにも言えるのであります。
 国民的課題である労働時間短縮に、関係各方面の意見や要望に十分に耳を傾けながら、大方の納得できる適切妥当な結論を追求すべきであります。この点について、総理並びに関係大臣の注意を喚起しつつ、労働時間の短縮に積極的な答弁を重ねて要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
#15
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 豊かでゆとりのある国民生活を実現したいということから、年間総労働時間千八百時間という目標を達成をいたしたい、そのために全力を挙げて努力をいたしたいとただいま考えておるところでございます。週四十時間制への移行等を内容といたしております労働基準法の改正は、この目標を達成いたしますために欠かせない重要な方途である、方法であるというふうに考えております。
 もとより、この千八百時間の達成のためには、労働時間法制の改正だけで進められるというわけではございません。そのための労使の積極的な努力が必要でありますことは申すまでもないところでございます。そこで、この法案の速やかな成立をお願いを申し上げますとともに、政府といたしましては、労使の時間短縮に対する取り組みに対しましてもより積極的な支援を行わなければならないと考えておりまして、目標を達成いたしますために全力を尽くす所存でございます。
 それから、学校の週五日制の導入についてお尋ねがございました。
 学校、家庭及び地域社会の教育全体のあり方を見直しまして、子供の望ましい人間形成を図ることを目標としまして、昨年九月から月一回実施をいたしておるところでございます。しかしながら、この学校週五日制につきましては、あらかじめ一定のスケジュールを決めて実施するという性格のものではなく、教育目的がどの程度実現できるかによりまして次の段階に進んでいくべき問題だと思っております。このために、今後、実施の過程において出された課題を一つ一つ解決しながら、次の段階へ進める状況ができましたら、なるべく早くそれに向かって進んでいく、こういうことにいたしたいと思っております。
 なお、現在文部省におきまして月二回の実践研究を行っておりますが、現時点で学校週五日制の完全な実施ということになりますと、その具体なスケジュールを書きますことはまだ困難な状況ではないかと思っております。
 それから、いわゆる猶予措置の延長についてお尋ねがございましたが、猶予措置を延長するということはやむを得ないと考えましたが、これによって労働時間短縮が停滞をするというようなことはあってならないことだと思います。したがいまして、積極的に中小企業の労働時間短縮対策を政府としても講じていく考えでございます。猶予期間を延長された企業におかれましても、一日も早く週四十四時間制に移行するように政府として集中的な指導・援助に努めてまいりたいと存じます。
 それから労基法の改正、これは御指摘のように国民的課題でございます。国民各層の御意見を十分承りながら対処していくことが必要と従来から考えておりまして、今回の改正法案につきましては、関係審議会等で十分に議論を尽くしていただきました上で作成をし、提案をしたものでございますが、国会におかれましても、何とぞ十分に御議論、御審議を賜りたいというふうに存じます。
 残余のお尋ねにつきましては、関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣村上正邦君登壇〕
#16
○国務大臣(村上正邦君) 私への質問は五問であろうと整理をいたしました。
 その第一問でございますが、今回の法律案は千八百時間という目標達成の要請にこたえていないのではないかということでありますが、今回の法案は、御指摘のような点も含め、中央労働基準審議会において十分な御議論を行っていただいた上で作成したものでありますが、平成六年四月から原則週四十時間労働制への移行を決めたこと、割り増し賃金率を二割五分以上五割以下の範囲内で命令で定めることとしたことなど、政府の目標である千八百時間の基盤をなす重要な内容を盛り込んだものであり、これをもとに目標の達成に向けて大きく前進を図ることができるものであると考えております。
 もちろん、千八百時間という目標達成には、政府における労働時間法制の整備とともに、時短促進法に基づく支援措置の活用などによる労使の積極的な取り組みが不可欠であり、そのために指導・援助に努めていく考えでございます。
 第二問でございますが、労働時間短縮に取り組む中小企業に対しての指導・援助により一層積極的に取り組むべきであるということでございますが、中小企業の労働時間の短縮については、きめ細かな指導・援助を行っていく必要があると考えており、今般御審議をお願いする労働基準法等の改正案においても、省力化投資などを通じて労働時間の短縮を行った中小企業に対する助成金制度を創設することとしております。この時短に対する助成金は初めてのものであり、その積極的な活用促進等、実効ある措置となるよう努めていく考えでおります。
 また、中小企業労働力確保法などに基づき、労働時間の短縮のための設備投資に対する助成措置が設けられていますので、関係機関と連携をとりつつ、これらの活用促進を図るとともに、中小企業の労働時間の短縮を妨げている取引慣行については、その是正につき指導を進めてまいりたいと考えております。
 次でございますが、トラック運送業などの問題でございますが、トラック運送業の労働時間は、最近では着実に短縮しているものの、他の産業に比べると相当に長い実態があります。このため、労働省では、トラック運転者などの自動車運転者について、始業から終業までの時間である拘束時間の上限に関する基準を定め、その遵守について指導を行うなど、労働時間対策を講じております。また、建設業、印刷産業等他産業に比べて労働時間が長い業種については、当面の労働時間短縮の目標や労働時間短縮のために取り組むべき課題を内容とした労働時間短縮指針を策定し、業界団体に対して指導を進めているところであります。
 猶予措置の延長についてでございますが、今回の措置は、最近の深刻な景気の低迷の中で、特に中小企業では売上高が減少するなど大変厳しい事態に直面しており、こうしたことから緊急避難的やむを得ない措置として決定したものであります。もとより、今回の措置によって、時短の流れに水を差すようなことがあってはならないと考えております。労働省としては、この措置の対象となる事業場について、計画的かつ組織的な指導を行うなど、早期に実質的な週四十四時間労働制が実現できるよう、引き続き積極的に中小企業の労働時間短縮対策を進めていく考えでおります。
 最後、五問でございますが、労働時間短縮は、関係各方面の意見や要望を踏まえ適切妥当な結論を追求すべきであるという御意見に対しまして、今回の改正法案は、公労使三者構成の中央労働基準審議会において、平成三年四月以降、熱心な御討議を重ねていただき、昨年十二月に取りまとめていただいた建議に基づいた内容となっておりますので、私としては、関係各方面の意見や要望には十分配慮したものとなっていると考えております。国会の場においても、今後関係委員会において真摯な御議論をいただきたいと考えております。
 以上であります。(拍手)
    〔国務大臣森喜朗君登壇〕
#17
○国務大臣(森喜朗君) 永井先生から御指摘ございました振興基準の法的規制の点につきましては、下請中小企業振興法の振興基準は、下請中小企業の振興を図るため下請事業者及び親事業者のよるべき一般的な基準でございまして、その内容は、御承知のとおり、下請事業者及び親事業者双方の努力目標を定めたものでございます。このため、こうした努力目標に法的な規制を付することは、振興基準の性質から見てなじまないものと考えます。
 しかしながら、振興基準に盛り込まれております事項、例えば時短の推進を妨げる発注の抑制について申し上げれば、親事業者が費用増を考慮しない単価で短納期発注を押しつけるなど、下請中小企業に過度な負担を強いるような悪質なケースにつきましては、下請代金支払遅延等防止法による規制の対象となるような制度となっているところでございます。
 今後とも、通商産業省といたしましては、下請中小企業振興法の振興基準の普及啓発に努めるとともに、下請代金支払遅延等防止法に基づく検査を強化し、下請取引の適正化に全力を尽くす考えでございます。(拍手)
    〔国務大臣越智伊平君登壇〕
#18
○国務大臣(越智伊平君) 御指摘のトラック運送業の労働時間の短縮を進めるためには、まずトラック事業者がみずからの努力により生産性を向上させることはもちろんでありますが、これに加えて、モーダルシフトや共国運送の推進等を通じて物流の効率化を図ってまいりたいと考えております。労働時間の短縮によるコスト増加分については、荷主の理解と協力を得て適正に負担していただくことも必要と考えております。
 運輸省といたしましては、このような考えに基づき、今後発力をしてまいりたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#19
○議長(櫻内義雄君) 河上覃雄君。
    〔河上覃雄君登壇〕
#20
○河上覃雄君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 戦後の復興期から今日に至るまで、一貫して長時間労働政策をとり続けてきた我が国は、経済的な豊かさを得た反面、国民一人一人の生活にゆとりと豊かさが失われてきたと言わざるを得ません。これまで我が国の経済を支えてきた長時間労働が、人間らしい生活の阻害要因となっていることが指摘されるとともに、日本人は働くために生きている、仕事に始まり仕事に終わる日本人など、日本人の生き方そのものが問われているのであります。今や我が国は、内外から時短に対する真摯な取り組みが求められております。
 以上の点から、労働時間の短縮は、国内的には、経済大国日本にふさわしいゆとりや豊かさのある国民生活を実現するための不可欠の課題であるとともに、国際社会においては、調和のとれた経済的発展のための重要課題であると言っても過言ではありません。
 そこで私は、宮澤総理の労働時間短縮に取り組む決意についてお尋ねをいたします。
 宮澤内閣は、昨年六月、「生活大国五か年計画」を閣議決定いたしました。その中で、労働時間の短縮については、この計画期間中の平成八年度までに年間総実労働時間を一千八百時間にすることを明記いたしました。
 振り返ると、一千八百時間の目標達成は、既に一九八八年の経済運営五カ年計画に盛り込まれたものでありました。しかも、達成目標年度は、平成四年度、すなわち本年の三月末日とされておりました。総理、目標達成は完全に破綻いたしました。総理はこの破綻要因をどう分析されているか、あわせて、一千八百時間達成への総理の確たる御決意をまずお伺いしておきたいと思います。
 次に、労働時間短縮に対する政府のリーダーシップについてお尋ねいたします。
 長時間労働が国際的にも批判される中で、国の経済計画に時短目標を明記したからには、それは国際的公約であり、その推進についても当然政府が責任を負わなければならないと考えます。
 ところで、最近、使用者団体の一部には、当面の年間総実労働時間は一千九百時間台でよいのではないかとの消極的発言も出てきているようであります。こうした発言を放置し、成り行きに任せた場合、さきの目標の達成は到底おぼつかないことは言うまでもありません。今や時短は時代の要請であり、国民的課題であります。したがって、政府はこれを、労使間の問題と逃げることなく、その推進に対して強いリーダーシップを発揮すべきであると思いますが、この点についての総理の見解をお伺いしたいと思います。
 次に、労基法改正案の問題点について、労働大臣にお伺いいたします。
 まず、本改正案は、労働時間の短縮を図るとしながら、時短の阻害要因になっている時間外労働の制限に着手しなかったことに問題が残ると指摘せねばなりません。私は、所定外労働時間への規制を放置したまま、年間総実労働時間の短縮を期待しても、再び計画倒れになるのではないかと考えるのであります。
 御承知のとおり、労基法第三十六条では、労使の協定を行い労働基準監督署長に届け出をすれば、例外として残業ができるとしています。しかも、この残業をどの程度にするかは、大臣告示による時間外労働の適正化指針、いわゆる目安時間によって指導しているのであります。
 ところが、この目安時間は、休日労働の上限がないこと、臨時的業務で忙しいときは、特別の労使協定を結べば目安時間を超えて残業ができること、目安時間から適用除外の事業は青天井で残業ができること、目安時間を超えても罰則はないこと等、数々の欠陥を内蔵しているのであります。
 このように、労基法では、労働時間の定めはあっても、時間外労働については例外規定の中で、実質的には長時間労働を放置しているのであります。
 そこで私は、労働大臣に次の提案を行い、あわせてその見解を求めたいと思います。
 現在、女子労働者に対しては、法律によって時間外労働の上限を規定しております。この考え方を労働者全般に適用し、たとえ労使協定を結んだとしても、一週及び一年の所定外労働の上限を明示する法改正を行うべきであると考えますが、いかがでしょうか。もしこの提案が直ちには困難であるならば、現行の三百六十時間の目安時間を年間百五十時間ないし二百時間程度に改め、しかも拘束力のあるものにすべきであると考えるものでありますが、労働大臣の見解を伺います。
 次に、猶予措置についてお尋ねします。
 本改正案において、命令で定める一定の規模以下または一定の業種については、平成九年三月三十一日までの間、週四十四時間とする猶予措置を認め、平成九年四月一日から週四十時間制に移行するということであります。
 労基法は、御承知のように、労働条件の最低基準を定めた法律であります。本来、規模あるいは業種によって格差を設けることは、法のもとの平等の上から決して好ましくないことであり、中小企業に働く労働者の時短促進の観点からすれば、基本的に廃止するのがその精神であると考えるものであります。現在、猶予措置及び特例措置が適用対象とされる事業所に勤める労働者は二千七百万人を超え、全労働者のおよそ六四%に及ぶとされています。
 このような実態を踏まえるならば、今回の改正に当たって、猶予措置が適用される事業所の規模、業種の範囲は極力縮小すべきであると考えますが、労働大臣の見解を求めます。
 次に、時間外及び休日労働についての割り増し賃金についてお尋ねします。
 労働基準法の時間外及び休日労働等に対する割り増し賃金規定は、超過労働の抑制と、精神的、肉体的負荷の高い超過労働に対する補償機能を背景とするものであります。その趣旨からすれば、現行の二割五分という水準は余りにも低いと言わざるを得ません。先進諸国の例に照らしても明らかであります。しかも、現行の二割五分の時間外割り増し率は、労働基準法が制定された昭和二十二年以来、全く変わっておらず今日に至っているのであります。本改正案は、時間外及び休日労働について二割五分から五割の範囲内で誘導する方向を示しました。しかし、本則に定めず命令にゆだねるのでは、果たしてどこまで実行効果が上がるかは甚だ疑問であります。
 我が党はこれまで、時間外割り増し賃金率は五割、休日労働については十割にすべきであると主張しております。割り増し率の低さが企業の時短に対する取り組みをおくらせているとの多くの指摘もあります。この際、割り増し率は五割以上に引き上げ、本則に定めるべきであると考えますが、通産、労働両大臣の見解をお尋ねいたします。さらに、なぜ二割五分から五割以内の範囲となったのか、あわせて労働大臣に見解を求めるものであります。
 次に、中小企業の時短促進に対する援助・助成措置の拡充についてお尋ねいたします。
 今回の改正案には、中小企業に対する支援措置として、助成制度を創設し、その助成金支給業務を労働時間短縮支援センターに行わせることとされています。しかし、中小企業の時短促進については、雇用事情と労働力確保あるいは企業の生産性や成長性、さらに地域、業界の横並び意識等々、数多くの障害があることも否定できません。
 今後の時短促進を図る上から、最大の課題は、中小企業の時短をどのように進めるかにあると思うのであります。今回の改正案には助成制度の創設が盛り込まれていますが、規模、内容は明らかではありません。私は、中小企業に対する助成措置は思い切った拡充策をもって臨むべきであると考えますが、労働大臣の見解を伺いたい。
 さらに、中小企業における時短促進の阻害要因の一つとして、親企業からの受発注システムのあり方が指摘されております。一昨年、中小企業庁は、改正下請振興基準を定め、発注・納入方式の改善を指導してまいりました。しかし、調査結果に明らかなように、改善の実態はいまだ十分ではありません。中小企業の時短に対する援助・助成の拡充とあわせ、改正下請振興基準の遵守と徹底は不可欠な要因であると考えます。通産省は今後どのように取り組まれるか、その認識と具体的な措置について、通産大臣の見解を求めるものであります。
 最後に、一年単位の変形労働時間制と年次有給休暇についてお尋ねいたします。
 本改正案においては、年間休日の増加を図るため、現行三カ月単位の変形制を一年単位にするとしています。しかし、これを採用した場合の一週、一日の上限時間が明文化されておらず、命令で定めることができるとしています。変形労働時間制は、その乱用を防ぐためにも、厳格な要件を付する必要があります。少なくとも、労働者の健康を配慮し、現行の三カ月単位の変形制で用いられている一日十時間、一週五十二時間を下回る厳しい要件が必要であり、また、変形労働制を導入できる事業所は、季節によって繁閑差のある事業に特定する等々の措置が必要であると考えます。この点について明確な答弁を求めるものであります。
 あわせて、年次有給休暇の取得要件を緩和したことは評価するものでありますが、取得率はここ十数年間五〇%台で推移し、一向に変わっておりません。時短促進のためには、さらに年次有給休暇の完全取得の法的措置と付与日数の引き上げを検討すべきと考えますが、労働大臣の見解を伺います。
 なお、この際、今回の労基法改正案を国会へ提出するに当たり、労働省が本年三月末日をもって終了する週四十六時間の猶予措置の一年間延長を審議会に諮問したことは、時短促進に逆行するものであり、国際的視点からしても全く理解しがたい行為であることを強く指摘しておくものであります。
 いずれにしても、生活大国を我が国の方針と掲げた宮澤内閣の公約である「国民一人一人が豊かさとゆとりを日々の生活の中で実感できる社会」の実現にとって、労働時間の短縮は緊急の課題であります。私は、政府に重ねて年間総実労働時間一千八百時間の早期達成を強く要請し、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
#21
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 千八百時間達成がこれだけおくれているのはどうしたことかという最初のお尋ねでございました。
 現実の問題といたしまして、中小企業におきましてやはり完全週休二日制の普及がなかなか思うように進んでいかないということ、あるいは年次有給休暇の取得が十分に進んでいないといったようなことから、平成四年の年間総労働時間は千九百七十二時間でございます。したがいまして、千八百時間の達成には一層の努力が必要であるということになります。今後こうした問題を解決いたしますために、労働時間短縮を取り巻く環境整備を各面から図っていかなければならないと思っておりまして、この目標達成に向けまして全力を尽くさなければならないと思います。
 労働時間の短縮は、労使の理解、取り組みを基本とするものであります。しかしながら、ただいま申しましたような事情がございます。政府としても、年間総労働時間千八百時間に向けて労使の取り組みをいろいろな意味で勧奨し促進をいたしたい、また、そのために必要な指導・援助は積極的にいたさなければならないと思います。このたび労働基準法の改正案によりまして、週四十時間労働制への移行を実現いたしますとともに、労働時間短縮に取り組む中小企業に対するいろいろな助成制度を創設をいたしました。目標達成に向けて労使の取り組みが一層促進されますように、政府としても努力をいたしていきたいと思っておるところでございます。
 残りのお尋ねにつきましては、関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣村上正邦君登壇〕
#22
○国務大臣(村上正邦君) お答えいたします。
 三六協定について上限規制を設けるべきではないか。
 時間外・休日労働については、終身雇用のもとで景気変動に対する雇用調整機能を有している面もあり、法律上、上限を規定することは困難な面が多いと考えます。時間外及び休日労働については、労使協定について、その上限を年間三百六十時間とすることなどを内容とする目安時間の指針を労働大臣が告示し、これに基づき指導を行っているところであります。
 次の、目安指針を実効あるものとするため、拘束力のあるものとすべきではないか、お尋ねでございます。
 目安指針の内容については、本年一月から年間四百五十時間を年間三百六十時間に短縮するなどの改正を行ったところでありますので、当面、この新しい指針の周知に努めつつ、その内容に基づき時間外・休日労働の適正化に向けた指導に努めてまいりたいと思います。この指針につきましては、昭和五十七年の制定以来指導に努めてきており、既に定着し、効果を上げてきていると考えていますが、この指針に拘束力を持たせることについては、我が国の労働慣行になじむかどうか、慎重な検討が必要と考えます。
 次の、猶予措置に対する考え方についてのお尋ねでございます。
 労働基準法の改正法案では、一定の規模以下または一定の業種について、平成九年三月三十一日までの間、法定労働時間に関する猶予措置を講ずることとしております。この猶予措置は、中小企業の実情等に配慮しつつ円滑に週四十時間労働制に移行するために講ずる措置でありますが、その具体的な範囲については、今後実施することとしている実態調査の結果を踏まえ、本年秋以降、中央労働基準審議会で十分御議論をいただいた上で決定したいと考えております。
 割り増し賃金率は本則に定めるべきではないかということでございますが、割り増し賃金率については、恒常的な時間外労働、休日労働を削減するため、基本的にはその見直しを図っていくべきであると考えていますが、大部分の企業における割り増し賃金率が二五%にとどまっている現状を踏まえ、今後の経済動向、週四十時間制への移行スケジュール、労使の取り組み、企業における実態等を総合的に勘案しながら段階的に対処していくため、二五%から五〇%の間で命令で定めることとしたものであります。
 具体的には、当面、まず休日労働の割り増し賃金率についてこれを引き上げることとし、その具体的な率については、本年秋以降、中央労働基準審議会で十分御議論いただいた上で決定していく考えでおります。
 中小企業の時短について、思い切った助成措置の拡充を必要とするが、どうかということであります。
 中小企業の労働時間の短縮については、きめ細かな指導・援助を行っていく必要があると考えており、今般御審議をお願いする労働基準法等の改正案においても、省力化投資などを通じて労働時間の短縮を行った中小企業に対する助成金制度を創設することとしております。この時短に対する助成金は初めてのものであり、その積極的な活用促進等、実効ある措置となるよう努めてまいる考えでございます。
 また、中小企業労働力確保法などに基づき、労働時間の短縮のための設備投資に対する助成措置が設けられていますので、関係機関と連携をとりつつ、これらの活用促進を図ってまいりたいと考えております。
 一年単位の変形制について。
 一年単位の変形労働時間制については、長時間労働が長期にわたって行われることのないよう、現行の三カ月単位の場合と同様、労働省令において具体的に一日及び一週の上限を定めることとしています。現行の三カ月単位の変形労働時間制の上限については、一日十時間、一週五十二時間とされていますが、これを最長一年までの変形労働時間制に対応するよう、縮小の方向で、本年秋以降中央労働基準審議会で十分御議論いただいた上で決定していく考えでおります。
 また、この制度は年単位で休日増を図ることをその趣旨とするものでありますので、対象事業を限定することは適当でないと考えます。
 最後でございますが、年休の完全取得を義務づけるべきではないかという御質問でございます。
 年休の最低付与日数の引き上げについては、中。小企業については段階的引き上げの過程で、平成六年三月末までは八日、その後十日に引き上げられることとなっており、重ねて引き上げを行うことは困難であり、今後の検討課題と考えております。
 使用者に対して年休の付与義務を課すことについては、年次有給休暇を労働者が自由に請求できるという我が国の法制からして無理があると考えますが、今後とも、年次有給休暇の完全取得の促進のため、労使の年次有給休暇に対する意識の改革を図るとともに、職場における年次有給休暇の取得を容易にするような取り組みを行うよう啓蒙に努めてまいりたいと思います。
 以上であります。(拍手)
    〔国務大臣森喜朗君登壇〕
#23
○国務大臣(森喜朗君) 河上先生御指摘の第一点、時間外・休日労働に対する割り増し賃金率の引き上げは、コストアップによります企業の所定外労働削減のインセンティブを与える手段の一つであると考えられます。他方、割り増し率の引き上げは、企業の経済的負担を増すこととなり、現在の経済状況下におきましては経営圧迫要因となることは事実でございます。
 このため、今後具体的な政令を定めるに当たりましては、労働省等関係省庁とも連携を図りつつ、以上のような諸事情を踏まえて慎重に検討してまいりたい所存でございます。
 御指摘の二つ目、中小企業におきます時短促進につきましては、ゆとりある生活の実現、労働力の確保の観点から極めて重要な課題と認識をいたしております。このため、通商産業省といたしましても、中小企業労働力確保法を柱とする各種支援措置、下請中小企業の時短促進策、省力化投資促進のための金融・税制上の措置などを引き続き講ずることといたしております。また、本年度予算におきましても、中小企業の時短支援施策の一層の拡充を図っているところでございます。
 特に、下請中小企業の時短推進のためには、親企業の発注方式の改善が極めて重要な課題でありますため、平成三年二月には下請中小企業振興法の振興基準を改正し、時短の妨げとなる発注の抑制等を親企業の協力事項として追加する措置を講じたところでございます。さらに、昨年末には、親企業団体に対しまして振興基準の遵守方再徹底を図るとともに、今年度におきましては、振興基準の一層の徹底のため、親企業に対する講習会の拡充強化、社内教育用VTRの作成などを行うことといたしております。
 今後とも、これらの措置を着実に講じていくことによりまして、中小企業の時短推進に万全を期してまいりたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#24
○議長(櫻内義雄君) 小沢和秋君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔小沢和秋君登壇〕
#25
○小沢和秋君 私は、日本共産党を代表して、労働基準法及び労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 総理、労働基準法が制定されてから既に四十六年が経過しております。今や日本は世界第二の経済大国になりましたが、この急激な経済成長を支えてきた我が国の労働者の非人間的な長時間・低賃金労働の改善は、残念ながら今も遅々として進んでおりません。総理は、我が国の労働時間法制と実態が他の先進国に比して大きく立ちおくれており、これを克服することが今回の法改正の課題であると考えておられるのかどうか、まずお尋ねいたします。
 次の問題は、政府のこれに取り組む姿勢であります。
 政府は、これまで労働時間短縮についての目標を何回も掲げましたが、一度としてそれを達成したことはありませんでした。昨年も政府は、一九九二年千八百時間達成という目標をいち早く放棄し、一九九六年へと目標を四年も先送りしたばかりであります。今度の改正案を見れば、私は、四年先も達成できないのではないかと言わざるを得ません。
 ここ数年、時短は毎年二十数時間程度にすぎず、今ようやく年間二千時間を切ったばかりであり、これを四年先に千八百時間にしようとすれば、時短のテンポを二倍に引き上げなければなりませんが、この改正案にはそのような姿勢を全く感ずることはできません。実際には、長時間労働を放置しながら、労働時間が短縮したかのごとき外観をつくり出そうとしているだけではありませんか。我が国の労働時間はパート労働者を含めて計算されるので、パートがふえればその分だけ統計上の労働時間は短縮されるとよく言われますが、総理が考えておられるのは、このたぐいのことではないのか、明確にしていただきたいのであります。(拍手)
 次に、改正案の具体的内容についてお尋ねいたします。
 第一に、改正案では週四十時間制を来年四月から実施することにしていますが、この本則がそのまま適用される労働者は全体のわずか三十数%にすぎず、しかも、既にほとんどが所定内は四十時間以下となっているのであります。残り六十数%、二千百六十万人への本則の適用こそ必要であるにもかかわらず、それを猶予と称して四年後まで四十四時間制を温存し、さらに、零細企業には四十八時間制の特例さえ残したのであります。これでは、附則を廃止したとしても全く見せかけだけではありませんか。(拍手)
 今必要なことは、下請・中小企業などにも本則を直ちに適用できるよう、必要な援助を国として行うことであります。大企業の下請単価を引き上げさせ、一方的な短い納期の押しつけを厳しく規制する等の措置をとれば、直ちに全労働者に週四十時間を適用できることは明らかではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。(拍手)
 第二に、今回の最大の改悪点である一年単位の変形労働時間制の導入についてであります。これは現行の三カ月単位をさらに拡大し、事実上、無制限、野放しにするもので、断じて認めることのできない重大な改悪であります。
 言うまでもなく、人間は一日単位で生活しており、寝だめや休みだめをすることなどできません。ところが、変形労働時間制は、時期によって繁閑の差が大きい企業の場合、忙しいときは連日八時間をはるかに超える長時間労働を所定内として押しつけ、一たんピークを過ぎるや、今度は時間を短縮したり休暇をとらせるなど、企業の都合で勝手きわまる労働時間を強制するものであります。これによって本人の健康が損なわれることはもちろん、家族との団らん時間も奪われ、社会活動への参加もできなくなります。
 このような大きな犠牲を労働者に押しつけながら、これがすべて所定内とされ、一切時間外手当が支払われなくなるため、賃金も大幅な減収となります。まさに労働者には二重の打撃であります。これを一年単位に拡大すれば、その弊害がさらに何倍にも拡大することは明らかではないでしょうか。このような一年単位の変形労働時間制の導入は到底認められず、削除すべきであります。総理の明確な答弁を求めます。(拍手)
 次に、文部大臣、所定内、つまり義務的な労働時間がこのように一年じゅう変動し続けることになれば、育児や介護など家庭生活に責任を持つ女性はフルタイムで働き続けることができません。勤労学生が高校や大学など夜間の学校に通うこともできなくなります。最近は生涯学習が盛んになり、夜間に英会話、パソコン、お茶などを習得する労働者が非常にふえておりますが、それも重大な危機にさらされます。
 文部大臣、あなたは女性として、また教育行政の責任者として、このような変形労働時間制に断固反対すべきではありませんか。答弁を求めます。
 第三に、裁量みなし労働について質問いたします。
 みなし労働とは、これだけの仕事が八時間でできるはずだというノルマを労使間で協定さえすれば、それが実際に何時間かかろうと八時間労働したとみなす制度であります。ですから、そのノルマを高目に設定すれば、十時間働いても十二時間働いてもそれだけ労働したとは認められない、ただ働きを公認することになりかねない危険な制度であります。
 法案では、現行法の研究開発その他という例示が削除されますから、一挙にホワイトカラー労働者全体に適用が拡大される方向に踏み出すことになり、対象者が二十倍にも広がります。これは、財界のホワイトカラーの合理化、生産性向上の要求とも一致するものであります。我が党は、みなし労働の拡大を絶対に認めることはできません。総理の責任ある答弁をいただきたい。(拍手)
 第四に、時間外・休日労働の問題であります。
 我が国では、多くの企業が時間外労働を生産体制の中に組み込んでおります。ですから、その強力な規制なしに時間短縮は進みません。現に、好況のときは政府が幾ら時短、時短と言っても、労働時間はふえ続けました。この時短にとって決定的な時間外の規制を今回も見送ったのはなぜか。その上、割り増し牽引き上げの要求もほとんど無視されました。これでどうして時間外や休日労働を規制することができるのか。
 ドイツでは、時間外は一日二時間、年間六十時間、フランスでは年間百三十時間以下と規制しております。時間外割り増し率は、先進国だけでなく、南朝鮮やインドネシアでも五〇%以上であります。少なくとも時間外の上限を一日二時間、月二十時間、年百二十時間と法定し、割り増し率を時間外五〇%、深夜、休日を一〇〇%に引き上げるのが当然ではありませんか。総理の見解をお伺いいたします。
 第五に、年次有給休暇であります。
 我が国の年休付与日数がわずか年間十日にすぎず、国際水準の半分程度の極めて低いものであるにもかかわらず、その増加が見送られたのはなぜか。また、年次休暇はその取得率がわずか五割程度というひどい状態が続いております。この際、企業に対し、休暇の完全消化を義務づけるべきではないか、労働大臣にお尋ねをいたします。
 最後に、ILO条約の批准問題について総理にお伺いいたします。
 八時間労働制をうたった歴史的なILO第一号条約が採択されてから既に七十四年たっておりますが、我が国は今なお批准しておりません。今回も、時間外労働の上限規制を行わなかったために批准することができません。それだけでなく、一九三五年の週四十時間制を定めたILO第四十七号条約など、労働時間の改善に関する二十五本の条約をただの一本も批准していません。これで経済大国として国際的に貢献するとか生活大国を目指すなどとどうして言うことができましょうか。
 ILO一号条約を採択した七十四年前の第一回総会で、日本代表団の使用者代表であった武藤山治氏は何と言ったか。「日本職工ハ欧米職工ノ如ク自ラ修養シ且ツ運動遊戯スル等ノ習慣乏シキヲ以テ時間短縮ニ依リテ得タル時間ヲ利用スルコト能ハス却ッテ悪結果ヲ来スノ因トナルヘシ」と八時間労働制に反対し、各国代表から、日本は軍備では一等国だと主張しながら、労働時間はみずから三等国でよいと言うのかと笑い物にされた話は余りにも有名であります。日本政府の立場は、その当時とほとんど変わっておらないではありませんか。政府は、この国際的にも恥ずべき状態を今後も続けるのか、総理にお尋ねいたします。
 総理、最近円高が急激に進行していますが、これは日本に対し、これ以上長時間の超過密労働を武器にして輸出を続けることは許さないという世界的な厳しい意思表示であります。総理が国際国家として日本を誤りなく導こうとするのであれば、国際水準にも合った改正案を提出し直す以外にありません。
 我が党は、既に昨年二月、抜本的な労働基準法改正提案を発表しております。今国会にも抜本的な修正案を提出し、その実現のため徹底的に闘い抜く決意を申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
#26
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 劣悪な労働条件云々というお話でしたが、今回の法改正も労働条件の改善を目指したものでありますし、完全週休二日制に相当する週四十時間労働制を平成六年酒用から導入するなど、これは国際的な水準も踏まえた内容のものでございます。
 それから、猶予措置、特例措置を廃止すべきだというお話でしたが、我が国においては、規模による労働時間の格差が大きゅうございますから、労働時間の実態に立ちおくれが見られる中小規模あるいは特定の業種の事業場において一定の猶予措置を設け、必要な援助を行いつつ、週四十時間労働制への円滑な移行を図ることが必要と思います。また、小規模の商業あるいはサービス業について設けております特例措置ですが、これはいわゆる手持ちの時間が長い、こういう業種でございますから、それらの特殊性がございます。基本的に継続したいと思います。
 それから、一年単位の変形労働時間制でございますが、年単位の休日増を図っていく趣旨でありまして、労使の取り組みによって効率的な労働時間短縮が可能になると思います。労働者の福祉が損なわれることがありませんように、一日及び一週の労働時間の上限を設けるなど、適切な措置を講ずることといたします。
 それから、企業の中には、仕事の内容や時間が本人の裁量にゆだねられている業務がございます。例えば研究開発の業務などがそうですが、今回の改正においては、これらの業務のうち、みなし労働時間制の対象になじむ業務の具体的な範囲をはっきりいたしたい、労働者の保護に欠けることのないようにするため、労働省令で定めることといたしたのであります。
 なお、時間外労働について、その時間の上限を法律上設定するということは、我が国の労働慣行の実情に沿わないと思います。
 それから、割り増し賃金率につきましては、二五%以上五〇%以下の範囲で政令で定めることとしております。
 ILO条約につきましては、もちろん、ただ条約は批准すればいいというわけではありませんで、誠実にこれが国内法によって実行されなければなりませんので、国内法制との整合性を確保した上で批准すべきものと考えております。細部の点で一致しない点があるものがございますので、そういうものは批准していないという、これが政府の立場でございます。(拍手)
    〔国務大臣村上正邦君登壇〕
#27
○国務大臣(村上正邦君) (発言する者あり)答弁をしたとおりでございますが、改めて、最低付与日数を引き上げるべきではないか、また、企業に完全取得義務を課すべきではないかということでございます。
 年休の最低付与日数の引き上げについては、中小企業について段階的引き上げの過程で、平成六年三月末までは八日、その後十日に引き上げられることになっておりまして、重ねて引き上げを行うことは困難であると考えております。
 使用者に対して年休の付与義務を課すべきではないかということにつきましては、年次有給休暇を労働者が自由に請求できるという我が国の法制からして無理があると考えております。今後とも、年次有給休暇の完全取得の促進のため、労使の年次有給休暇に対する意識の改革を図るとともに、職場における年次有給休暇の取得を容易にするような取り組みを行うよう啓発してまいりたいと思います。
 以上です。(拍手)
    〔国務大臣森山眞弓君登壇〕
#28
○国務大臣(森山眞弓君) 一年単位の変形労働時間制に関連いたしまして、家庭責任を持つ女性の労働の問題、勤労学生の問題、専修学校等における学習活動の問題の三点についてお尋ねがあったと存じます。
 まず、女性の労働にかかわる点につきまして、近年、経済社会の変化、女性の意識や教育水準の向上、ライフスタイルの変化などを背景にいたしまして、職業や地域活動等に参加する女性が増加し、それに伴って家庭のあり方に対する考え方も変化してきていると存じます。
 すなわち、家庭生活につきましては、女性が責任を持つべきであるという考え方から、男女両性が共同して担うべきものであるという考え方に転換されるべきではないかと思うのでございます。
 このような観点から、文部省といたしましては、男女の固定的な役割分担意識の解消と、家庭生活における男女の共同参画を促進するために、男女両性を対象といたしまして各般にわたる学習機会の充実に努め、女性の就労機会の充実に資するよう配慮してまいりたいと考えます。
 次に、勤労学生にかかわるお尋ねにつきましては、社会の各分野におきまして生涯学習への関心が高まる中で、文部省としては、社会人が高等教育を受ける機会を拡大する等の観点から、大学の夜間課程の充実に意を用いてまいりました。
 中でも、近年の生活形態や就業形態の多様化傾向などを踏まえまして、大学における履修形態の一つといたしまして、夜間の授業を主としつつ昼間の授業にも参加できる昼夜開議制の実施を促進するなど、学生の種々の生活実態に応じた履修をより容易にするよう努力いたしております。
 また、このほかにも、放送大学の充実など、通信教育による大学教育の実施、大学教育の履修形態の柔軟化を図るための科目登録制、コース登録制の導入など、社会人に対してより開かれた大学教育のための施策を進めているところでございまして、今後ともこれらの推進に努力をいたしますとともに、各大学に対して、社会人が大学教育を受ける機会への配慮をさらに促してまいりたいと思います。
 勤労者の就学につきましては、一方におきまして、おのおのの勤務先において勤務時間などの面での御理解と御配慮が大変重要なことは申すまでもございませんで、今後とも各関係者の御協力を期待したいと思っております。
 第三の、専修学校及び各種学校についてでありますが、文部省といたしましては、かねてから専修学校教育の充実を図るべく専修学校設置基準の改正について検討を進めてまいりました。その検討の中におきまして、社会人に対する学習機会の拡充についても配慮いたしまして、例えば昼夜間にわたって弾力的に授業を受講できる昼夜開議制について所要の措置を講ずべく検討しているところでございます。専修学校や各種学校の関係者に対しましても、社会人に対する学習機会の拡充に配慮するよう一層促してまいりたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#29
○副議長(村山喜一君) 柳田稔君。
    〔柳田稔君登壇〕
#30
○柳田稔君 「民意が国政に反映されていない」、総理府の社会意識調査の中で国民の七割以上がそう答えております。その民意の一つが労働時間短縮であります。
 私は、民社党を代表して、ただいま提案されましたいわゆる労基法の改正について質問を行います。民意が国政に反映される御答弁をまずお願いしておきたいと思います。
 労働時間の短縮は、総理の公約である「生活大国五か年計画」でも最重要な課題として取り上げられています。今回の労働基準法改正は、その計画で掲げられた計画期間中、すなわち平成九年度までに年間総実労働時間を千八百時間にするという目標達成のための具体的な制度改正の第一歩として位置づけられているものであります。
 今日の日本で、労働時間の短縮は、次の三点から必要とされています。第一は、もとより勤労者にゆとりを保障するということです。第二に、労働時間の短縮によって生じた自由な時間を家庭生活の充実、地域・社会活動への参加、あるいは自己啓発の時間に用いることが可能になります。第三は、国際的に公正な労働条件を確立するという観点です。
 具体的な質問に入る前に、今回とられた猶予措置の延長は、本年三月末で猶予期限が切れることを前提に、時短にまじめに取り組んできた事業主、労働者及び労働行政の第一線で時短指導に取り組んできた行政官自身をも労働行政に対する深い不信に陥れるものであったことを強く指摘しておくものであります。
 以下、本法案に対して具体的な質問を行います。
 質問の第一は、前回計画に対する評価についてです。
 前回経済計画である「世界とともに生きる日本」でも、労働時間短縮は勤労者にゆとりを保障する重要な柱として位置づけられ、平成四年度までに年間総実労働時間をできる限り千八百時間に近づけることが目標として掲げられていました。昨年の総実労働時間は、暦年の速報で千九百七十二時間であったことが公表されています。五年前の二千百十一時間と比較して百三十九時間の短縮であり、一年ごとの短縮幅の平均は約二十八時間となっております。
 もちろん我が国の経済計画は指針的なものですが、目標を掲げるだけでなく、その成果に対する正確な分析と評価なくして、さらなる前進はあり得ません。前回計画の目標設定が過大であったのか、それとも行政の取り組みが不十分であったのか、前回計画が達成できなかった原因についてお伺いします。
 第二は、法定労働時間の段階的短縮の方針についてです。
 前回改正で本則に週四十時間制の原則は盛り込まれたものの、法定労働時間は段階的に短縮されてきました。本改正案に来年四月から週四十時間制に移行することが明記されたことは、おくれたものの、一応評価いたします。
 問題は、過半数を超える労働者が猶予・特例措置の対象とされていることであります。改正案に「生活大国五か年計画」の最終年度である平成九年三月末までと猶予措置に期限が明記されたものの、今回の突然の延長措置のように、この期間が遵守されるのかどうか、深い不信を抱かざるを得ません。
 まじめに時短に取り組んだ者が、まじめに取り組まなかった者よりも不利益をこうむるような事態があってはなりません。計画期間中に年間総実労働時間千八百時間を達成するためには、計画年度のできる限り早い時期に猶予対象事業・規模を縮小し、全体の労働時間の短縮をしていかなければならないのであります。来年四月以降の猶予措置のあり方については、詳細な労働時間の実態調査に基づき、現在の業種、規模の見直しを進め、できる限りその範囲を縮小していくべきであります。政府の見解を伺いたい。
 第三は、割り増し賃金率の引き上げについてです。
 周知のとおり、諸外国では既に割り増し賃金率は最低でも五〇%以上となっており、このことは既に国際的に公正な労働条件として確立されています。改正案では、二五%以上五〇%以下の範囲内で命令で定めるとされておりますが、法定労働時間の規定に続いて重要な労働条件の規定が次々に政省令に委任されていくことは、「勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」とした憲法保の理念に明らかに反します。「生活大国五か年計画」では、「割増賃金率の引上げについて具体的に検討する。」とされております。今回なぜ引き上げ率が法律に明記されなかったのか、その理由についてお尋ねします。
 第四は、中小企業への助成策についてです。
 時短の進みにくい中小企業が時短を進めるには、行政のバックアップが必要です。今回同時に提案されている時短促進法改正案でも若干の援助策が盛り込まれていますが、極めて不十分であると言わざるを得ません。時短を進める事業主に対し、時短のために新たに人を雇い入れた場合の賃金助成、時短を目的とした省力化投資に関する減税など、強力な、実効性のある対策を講じていくことが必要であります。
 さらに、我が国の取引慣行、特に発注方式の改善が中小企業の時短を進める上で不可欠です。昨年十二月の中小企業庁の発注方式に関する実態調査では、休日直前発注、休日直後納入という発注方式があるとする下請企業は四五%にも達しています。下請企業の時短を進めるためには、現行の下請振興基準の一層の遵守徹底を図るべきであると考えますが、政府の御見解をお伺いいたします。
 大正五年の第一回工場監督年報は、我が国で最初の労働者保護立法である工場法の施行による好影響として、就業時間の制限が欠勤者の減少とともに作業に規律と活気をもたらし、生産効率を増進させたことを挙げています。
 さらに、労働省が平成三年に行った調査でも、労働時間短縮を行った中小企業のうち、約八割の企業が、労働時間短縮率以上に生産性が向上したと答えております。労働時間を短縮すれば、その分生産が低下し賃金コストは上昇するという単純化された図式から今こそ脱却しなければなりません。
 政府が労働時間短縮を進める労使の自主的な努力を制度面から援助し、計画期間中の時短目標達成に最大限努力することを強く要請するとともに、総理の決意を伺いまして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
#31
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 「生活大国五か年計画」におきまして、年間総労働時間千八百時間の達成ということを目標としておるわけでございますが、それで週四十時間労働制の実現等を図ろうとしておるわけでございます。もちろん、このためには労使の自主的な努力が大切でございますけれども、中小企業の時間短縮ということには、いろいろ御承知のように問題がございますので、政府としても極力その支援を図ろうと考えております。
 同時に、週四十時間労働制への移行を実現いたしますために、労働基準法の改正をお願いいたしているところでございます。この目標達成に向けまして、最大限の努力を政府としてもいたしてまいらなければならないと思います。
 なお、今回の法案は、平成六年四月から原則週四十時間労働制に移行することを内容としておるものでございまして、政府目標であります千八百時間のいわば基盤をなします重要な内容を盛り込んだものでございます。この千八百時間という目標の達成には、このような法制の整備がもとより必要でございますけれども、労使間の積極的な取り組みが何としても不可欠でございますので、政府としては、そのための指導・援助にこれからも努めてまいりたいと考えておるところでございます。
 なお、その他のお尋ねにつきましては、関係大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣村上正邦君登壇〕
#32
○国務大臣(村上正邦君) お答えいたします。
 千八百時間が達成できなかった原因と、計画に関する評価いかん、こういうことでありますが、平成四年の年間総労働時間は千九百七十二時間と、政府が年間総労働時間千八百時間という目標を掲げる前年の昭和六十二年に比べ、百三十九時間の短縮となっております。このように年間総労働時間が五年間で百三十九時間短縮されたことについては、労使や行政の努力の成果として評価しております。
 しかしながら、千八百時間の目標の達成には至りませんでした。その原因としては、中小企業では完全週休二日制の普及がおくれていること、その二つといたしまして残業が高水準で推移していたこと、また三つ目の原因といたしまして年次有給休暇の取得が五割程度と進まなかったことが挙げられます。このような原因の背景には、中小企業における生産性の向上の難しさや、労働時間の短縮を妨げるような取引慣行の存在、企業内における労使の取り組み体制の未整備などの問題があると考えられます。
 次に、猶予措置について、実態調査に基づき見直しを進め、範囲を縮小していくべきではないかというお尋ねでございます。
 労働基準法改正案では、週四十時間労働制に円滑に移行するための措置として、一定の規模以下または一定の業種の事業について、平成九年三月三十一日までの間、猶予措置を講ずることとしており、その具体的な範囲については政令で定めることとしております。労働省といたしましては、今後速やかに実態調査を実施し、その結果を踏まえ、本年秋以降、業種等の見直しの問題も含め、中央労働基準審議会で十分御議論をいただく考えております。
 それから、今回なぜ割り増し賃金の引き上げ率が法律に明記されなかったか、その理由について説明をしろ、こういうことであります。
 割り増し賃金率については、恒常的な時間外労働、休日労働を削減するため、基本的にはその見直しを図っていくべきであると考えますが、大部分の企業における割り増し賃金率が二五%にとどまっている現状から見て、今後実態等を見きわめ、時間外労働、休日労働に対する労働者の意識なども踏まえて、的確に対応していくことが必要であると考えております。こうしたことから、法律案では、割り増し賃金率を政令で定めることとしましたが、その一、二割五分以上五割以下の範囲内と限定をつけていること、その二、命令を定める場合の考慮事項を法定していることなどから、憲法上の問題はないと考えております。
 それから、最後でございますが、時短を進める事業主に対し実効のある対策を講じていくことが必要であると思うが見解はどうだ、こういうことであります。
 中小企業の労働時間の短縮については、きめ細かな指導・援助を行っていく必要があると考えており、今般御審議をお願いする労働基準法等の改正案においても、省力化投資などを通じて労働時間の短縮を行った中小企業に対する助成金制度を創設するなどとしております。この時短に対する助成金は初めてのものであり、その積極的な活用促進等、実効ある措置となるよう努めてまいりたいと考えております。
 また、中小企業労働力確保法等に基づき、労働時間の短縮のための設備投資に対しては、税制上の優遇措置や低利融資制度が設けられており、関係機関と連携をとりつつ、これらの活用促進にも努めてまいりたいと考えております。
 以上であります。(拍手)
    〔国務大臣森喜朗君登壇〕
#33
○国務大臣(森喜朗君) 柳田議員御指摘の下請中小企業の時短の推進のためには、親企業の発注方式の改善が極めて重要な課題であると認識をいたしております。このため、平成三年二月には下請中小企業振興法の振興基準を改正し、時短の妨げとなる発注の抑制等を親企業の協力事項として追加する措置を講じたところでございます。
 その改善実態を把握するため昨年行った調査結果によりますと、改善の兆しが認められるものの、なお一層の改善が必要な状況となっております。このため、昨年末には親企業団体に対して振興基準の遵守方再徹底を図るとともに、今年度の予算におきましては、親企業に対する講習会の拡充強化、社内教育用VTRの作成などを行うことといたしております。
 今後とも、振興基準の一層の遵守徹底を図ることなどによりまして、下請中小企業の時短推進を支援してまいりたいと考えております。(拍手)
#34
○副議長(村山喜一君) これにて質疑は終了いたしました。
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#35
○副議長(村山喜一君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時四十五分散会
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ソース: 国立国会図書館
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