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1993/04/27 第126回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第126回国会 本会議 第23号
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1993/04/27 第126回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第126回国会 本会議 第23号

#1
第126回国会 本会議 第23号
平成五年四月二十七日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十七号
  平成五年四月二十七日
    午後一時開議
 第 一 地方交付税法等の一部を改正する法律
     案(内閣提出)
 第 二 平成二年度一般会計予備費使用総調書
     及び各省各庁所管使用調書(その2)
     (承諾を求めるの件)(第百二十三回
     国会、内閣提出)
 第 三 平成二年度特別会計予備費使用総調書
     及び各省各庁所管使用調書(承諾を求
     めるの件)(第百二十三回国会、内閣
     提出)
 第 四 平成二年度特別会計予算総則第十一条
     に基づく経費増額総調書及び各省各庁
     所管経費増額調書(承諾を求めるの件
     )(第百二十三回国会、内閣提出)
 第 五 平成二年度特別会計予算総則第十二条
     に基づく経費増額総調書及び各省各庁
     所管経費増額調書(その2)(承諾を
     求めるの件)(第百二十三回国会、内
     閣提出)
 第 六 平成三年度一般会計予備費使用総調書
     及び各省各庁所管使用調書(その1)
     (承諾を求めるの件)(第百二十三回
     国会、内閣提出)
 第 七 平成三年度特別会計予備費使用総調書
     及び各省各庁所管使用調書(その1)
     (承諾を求めるの件)(第百二十三回
     国会、内閣提出)
 第 八 平成三年度特別会計予算総則第十三条
     に基づく経費増額総調書及び各省各庁
     所管経費増額調書(その1)(承諾を
     求めるの件)(第百二十三回国会、内
     閣提出)
 第 九 平成三年度一般会計予備費使用総調書
     及び各省各庁所管使用調書(その2)
     (承諾を求めるの件)
 第 十 平成三年度特別会計予備費使用総調書
     及び各省各庁所管使用調書(その2)
     (承諾を求めるの件)
 第十一 平成三年度特別会計予算総則第十三条
     に基づく経費増額総調書及び各省各庁
     所管経費増額調書(その2)(承諾を
     求めるの件)
 第十二 平成四年度一般会計予備費使用総調書
     及び各省各庁所管使用調書(その1)
     (承諾を求めるの件)
 第十三 平成四年度特別会計予算総則第十四条
     に基づく経費増額総調書及び各省各庁
     所管経費増額調書(その1)(承諾を
     求めるの件)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 日程第一 地方交付税法等の一部を改正する法
  律案(内閣提出)
 日程第二 平成二年度一般会計予備費使用総調
  書及び各省各庁所管使用調書(その2)(承
  諾を求めるの件)(第百二十三回国会、内閣
  提出)
日程第三 平成二年度特別会計予備費使用総調
 書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求める
 の件)(第百二十三回国会、内閣提出)
日程第四 平成二年度特別会計予算総則第十一
 条に基づく経費増額総調書及び各省各庁所管
 経費増額調書(承諾を求めるの件)(第百二十
 三回国会、内閣提出)
日程第五 平成二年度特別会計予算総則第十二
 条に基づく経費増額総調書及び各省各庁所管
 経費増額調書(その2)(承諾を求めるの件)
 (第百二十三回国会、内閣提出)
日程第六 平成三年度一般会計予備費使用総調
 書及び各省各庁所管使用調書(その1)(承諾
 を求めるの件)(第百二十三回国会、内閣提
 出)
日程第七 平成三年度特別会計予備費使用総調
 書及び各省各庁所管使用調書(その一)(承諾
 を求めるの件)(第百二十三回国会、内閣提出
 )
日程第八 平成三年度特別会計予算総則第十二
 条に基づく経費増額総調書及び各省各庁所管
 経費増額調書(その1)(承諾を求めるの件
 )(第百二十三回国会、内閣提出)
日程第九 平成三年度一般会計予備費使用総調
 書及び各省各庁所管使用調書(その2)(承
 諾を求めるの件)
日程第十 平成三年度特別会計予備費使用総調
 書及び各省各庁所管使用調書(その2)(承諾
 を求めるの件)
日程第十一 平成三年度特別会計予算総則第十
 三条に基づく経費増額総調書及び各省各庁所
 管経費増額調書(その2)(承諾を求めるの件
 )
日程第十二 平成四年度一般会計予備費使用総
 調書及び各省各庁所管使用調書(その1)(承
 諾を求めるの件)
日程第十三 平成四年度特別会計予算総則第十
 四条に基づく経費増額総調書及び各省各庁所
 管経費増額調書(その1)(承諾を求めるの件
 )
自衛隊法の一部を改正する法律案(第百二十三
 回国会、内閣提出)の趣旨説明及び質疑
    午後一時三分開議
#2
○議長(櫻内義雄君) これより会議を開きます

     ――――◇―――――
 日程第一 地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
#3
○議長(櫻内義雄君) 日程第一、地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。地方行政委員長中馬弘毅君。
    ―――――――――――――
 地方交付税法等の一部を改正する法律案及び同
  報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔中馬弘毅君登壇〕
#4
○中馬弘毅君 ただいま議題となりました地方交付税法等の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、地方財政の状況等にかんがみ、地方交付税について所要の措置を講じようとするものであります。
 その内容は、第一に、平成五年度分の地方交付税の総額については、地方交付税法第六条第二項の額に三百七十億円を加算した額から、特例措置額四千億円及び交付税特別会計借入金元利償還額千八百二十四億円を控除した額とすることとし、地方団体に、十五兆四千三百五十一億円を交付することといたしております。
 また、特例措置額四千億円に相当する額等については、後年度の地方交付税の総額に加算することといたしております。
 第二に、平成五年度分の普通交付税の算定については、自主的な地域づくりの推進、高齢者の保健福祉の増進、森林・山村対策等のため地方団体が必要とする経費の財源を措置するため、単位費用の改正等を行うことといたしております。
 本案は、二月二十五日に本委員会に付託され、同日村田自治大臣から提案理由の説明を聴取した後、参考人から意見を聴取するなど慎重に審査を行いました。
 質疑におきましては、地方交付税の減額問題、地域づくり、森林・山村対策、環境保全、地域文化振興等の経費の充実の必要、補助金等の一般財源化、景気対策と地方財政措置など、地方行財政全般にわたって論議が行われました。
 去る二十二日質疑を終了し、討論を行いましたところ、自由民主党、日本社会党・護憲民主連合、公明党・国民会議及び民社党から賛成、日本共産党から反対の意見がそれぞれ述べられました。
 次いで、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案採決終了後、地方財政の拡充強化に関する件について決議が行われたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#5
○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#6
○議長(櫻内義雄君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 平成二年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その2)(承諾を求めるの件)(第百二十三回国会、内閣提出)
 日程第三 平成二年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第百二十三回国会、内閣提出)
 日程第四 平成二年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(承諾を求めるの件)(第百二十三回国会、内閣提出)
 日程第五 平成二年度特別会計予算総則第十二条に基づく経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(その2)(承諾を求めるの件)(第百二十三回国会、内閣提出)
 日程第六 平成三年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その1)(承諾を求めるの件)(第百二十三回国会、内閣提出)
 日程第七 平成三年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その1)(承諾を求めるの件)(第百二十三回国会、内閣提出)
 日程第八 平成三年度特別会計予算総則第十三条に基づく経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(その1)(承諾を求めるの件)(第百二十三回国会、内閣提出)
 日程第九 平成三年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その2)(承諾を求めるの件)
 日程第十 平成三年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その2)(承諾を求めるの件)
 日程第十一 平成三年度特別会計予算総則第十三条に基づく経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(その2)(承諾を求めるの件)
 日程第十二 平成四年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その1)(承諾を求めるの件)
 日程第十三 平成四年度特別会計予算総則第十四条に基づく経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(その1)(承諾を求めるの件)
#7
○議長(櫻内義雄君) 日程第二ないし第十三に掲げました平成二年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その2)(承諾を求めるの件)外(承諾を求めるの件)十一件を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。決算委員長貝沼次郎君。
    ―――――――――――――
    〔報告書は本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔貝沼次郎君登壇〕
#8
○貝沼次郎君 ただいま議題となりました各件につきまして、決算委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 これらの各件は、財政法の規定に基づき、国会の事後承諾を求めるため提出されたものであります。
 まず、平成二年度の予備費等でありますが、一般会計予備費(その2)は、義務教育費国庫負担金の不足を補うために必要な経費等十六件で、その使用総額は六百七十一億三千六百万円余であります。
 また、特別会計予備費は、郵政事業特別会計における仲裁裁定の実施等に伴う職員基本給等に必要な経費等七特別会計の八件で、その使用総額は三百二十七億七千六百万円余であります。
 また、特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額は、郵政事業特別会計における業績賞与に必要な経費の増額で、その経費増額は二百八十三億九千三百万円余であります。
 また、特別会計予算総則第十二条に基づく経費増額(その2)は、交付税及び譲与税配付金特別会計における交通安全対策特別交付金に必要な経費の増額等の二件で、その経費増額の総額は百五十九億二千四百万円余であります。
 次に、平成三年度の予備費等でありますが、一般会計予備費(その1)は、湾岸地域における平和と安定の回復のための活動に対する支援に必要な経費等二十二件で、その使用総額は千一億四千二百万円余であり、(その2)は、義務教育費国庫負担金の不足を補うために必要な経費等十六件で、その使用総額は四百四十三億六千九百万円余であります。
 また、特別会計予備費(その1)は、国営土地改良事業特別会計における直轄農業用施設災害復旧事業に必要な経費で、その使用総額は八千四百万円余であり、(その2)は、食糧管理特別会計における業務費の業務勘定へ繰り入れに必要な経費で、その使用総額は四十五億八千三百万円余であります。
 また、特別会計予算総則第十三条に基づく経費増額(その1)は、道路整備特別会計における道路事業の調整に必要な経費の増額等四特別会計の六件で、その経費増額の総額は百一億六千四百万円余であり、(その2)は、交付税及び譲与税配付金特別会計における交通安全対策特別交付金に必要な経費の増額等二特別会計の二件で、その経費増額の総額は百九十六億四千万円余であります。
 次に、平成四年度の予備費等でありますが、一般会計予備費(その1)は、ソマリア民主共和国における人道救援活動の安全な環境を確立するための活動に対する協力に必要な経費等十一件で、その使用総額は二百九十七億五千五百万円余であります。
 また、特別会計予算総則第十四条に基づく経費増額(その1)は、治水特別会計における河川事業及び砂防事業の調整に必要な経費の増額等三特別会計の五件で、その経費増額の総額は百二十二億二千百万円余であります。
 委員会におきましては、去る二十三日これらの各件について林大蔵大臣から説明を聴取し、質疑終了後、討論を行い、採決の結果、平成二年度一般会計予備費(その2)、平成二年度特別会計予備費、平成三年度一般会計予備費(その1)、(その2)及び平成四年度一般会計予備費(その1)の五件は、多数をもって承諾を与えるべきものと議決いたしました。
 次に、平成二年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額外六件は、全会一致をもって承諾を与えるべきものと議決いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(櫻内義雄君) これより採決に入ります。
 まず、日程第二、第三及び第九の三件を一括して採決いたします。
 三件は委員長報告のとおり承諾を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#10
○議長(櫻内義雄君) 起立多数。よって、三件とも委員長報告のとおり承諾を与えるに決しました。
 次に、日程第四、第五、第七、第八、第十、第十一及び第十三の七件を一括して採決いたします。
 七件は委員長報告のとおり承諾を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、七件とも委員長報告のとおり承諾を与えるに決しました。
 次に、日程第六及び第十二の両件を一括して採決いたします。
 両件は委員長報告のとおり承諾を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#12
○議長(櫻内義雄君) 起立多数。よって、両件とも委員長報告のとおり承諾を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 自衛隊法の一部を改正する法律案(第百二十
  三回国会、内閣提出)の趣旨説明
#13
○議長(櫻内義雄君) この際、第百二十三回国会、内閣提出、自衛隊法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣中山利生君。
    〔国務大臣中山利生君登壇〕
#14
○国務大臣(中山利生君) 自衛隊法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。平成三年十月、政府専用機検討委員会において、政府専用機の防衛庁への所属がえ、使用目的等が決定されました。この使用目的に関し、緊急時における在外邦人救出のための輸送が現行法上自衛隊の一般的、恒常的な権限として規定されていませんので、この輸送を自衛隊が行うことができることとするため、自衛隊法の改正を行うことが必要となったところであります。
 この法律案は、外国における緊急事態に際して生命等の保護を要することとなった邦人について外務大臣から輸送の依頼があった場合に、防衛庁長官が政府専用機を含む自衛隊の保有する航空機により輸送することができることとすること等を内容とするものであります。
 以上が、自衛隊法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)
     ――――◇―――――
 自衛隊法の一部を改正する法律案(第百二十
  三回国会、内閣提出)の趣旨説明に対する
  質疑
#15
○議長(櫻内義雄君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。江口一雄君。
    〔江口一雄君登壇〕
#16
○江口一雄君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました自衛隊法の一部を改正する法律案につきまして、総理大臣及び関係の大臣に対しまして若干の質問を行い、その御所見をお伺いしたいと思います。
 近年、国際化ということが言われて久しいわけでございますが、これに伴いまして、海外で活躍され、海外に住んでいる邦人の方々の数もふえてまいりました。異国で生活しておられるいわゆる海外在留邦人の数は六十万人を超え、また、年間一千万人を超える日本人が海外に出かける、このような時代となったのであります。特に、海外で生活しておられる邦人の多くの方々は、経済活動に従事し、まさに日本経済の下支えになっていると言っても過言ではないと思います。貿易立国たる我が国が、今日、経済大国として他国から頼られるまでになったのも、まさにこのような方々の日々の努力のおかげではないか、このように思うのであります。商社や銀行、保険会社の方々、またプラント輸出などの現場で働いておられる技術者の方々、各種ボランティアの方々、ほかにも多くの日本人が世界じゅうで活躍されておられます。今の日本で、たとえ自分は海外に行っていなくとも、親戚まで含めまして自分の身の回りで海外にだれも行っていないということはほとんど考えられない。これほど海外で働く人々、日本の活動の規模が広がってきているのであります。
 しかしながら、一言で海外と申しましても、必ずしも日本のような国ばかりではございません。さまざまなごたごたが起こっている国も数多くあります。また、大きな災害に巻き込まれることもあるでしょう。異国でのそのような事態に巻き込まれた方々、また、日本にいるそれらの方々の御家族の不安は察するに余りあると考えるわけでございます。例えば、さきに湾岸危機がございました。平成二年八月、イラクが突如クウエート領内に侵攻したことから始まったこの湾岸危機において、日本人を含む在留外国人の身柄が拘束されるという事態が起こったのであります。
 このように、海外の同胞を取り巻く海外の情勢は決して安定しているわけではなく、残念ながら、災害や騒乱に巻き込まれるおそれはないとはとても言えないのではないでしょうか。このような万が一のときに、我が国といたしまして万全の措置をとる、そういう体制が整備されてこそ、在留邦人の方々に安んじて働いていただけることとなると考えるのであります。
 このように、海外における邦人の安全確保は、政府が従来にも増して力を入れて取り組むべき重要な課題となっているのではないかと思いますが、この点について、総理の基本的なお考え方をお伺いしたいと思います。
 次に、緊急事態における在外邦人の方々の安全の確保につきまして、従来、政府はどのように対処してきたのか、また、その際、困ったことはないのか、このような点についてお伺いしたいと思います。
 海外において災害、騒乱などの緊急事態が発生した場合、在外公館の方々が、在外邦人の安否の確認あるいは現地情勢に関する情報の提供など、現地の邦人と密接に連絡をとり合い、また現地の当局と交渉しつつ、それこそみずからの身を顧みず、在外邦人の安全確保に努められています。このような在外公館の方々、または日本にいる御家族との連絡に携わっておられる外務省の職員の方々は、大変な御苦労、御努力をなさっておるものと思います。
 ただ、この緊急事態における在外邦人の安全確保の体制に関しまして、安全な地域への避難のための輸送体制が残念ながらいまだ整備されておらない、この点が従来より問題となっているのではないか、このように思うものであります。
 在外邦人の生命、身体に危険が及ぶような状況となった場合、このような方々を安全な地域に避難をさせることが必要となるのでありますが、今どのような手段によってこの輸送を行っておるのか。この場合、特に航空機による輸送が一番必要なわけでありますが、政府独自の輸送手段が整備されていなかったため、民間機のチャーターという手段によらざるを得なかったのであります。我が国の同胞が海外で緊急事態に遭遇し、生命、身体に危険が及んでいる、この同胞を安全な地域に輸送する必要がある、このようなときに、政府みずからの輸送手段によるのではなく、民間機のチャーターという手段に依存するということで本当によいのか。それに加え、この民間機のチャーターにつきましては、航空会社も飛行機を遊ばせておくようなぜいたくなことはできないのでありますから、何かあったときに常に対応できるとは限らない、結果として、民間会社との調整に手間取る、即座の対応がとれない、このような問題があったのではないかと思うのでございます。
 例えば、一九八五年三月、イラン・イラク紛争の際、在イランの邦人出国のため、日本国政府として救援機の派遣を準備いたしましたが、民間航空会社との調整に手間取るなどにより、関係者の尽力にもかかわらず、残念ながら結局間に合わず、大多数の邦人がトルコ航空機で脱出せざるを得なかったという事例があったと承知しています。我が国の同胞を安全な地域に輸送するのに、外国の航空会社に依存するといったことで果たしてよいのか。何かあったとき、都合がつけばお助けします、このようなことでは、海外で働いておる方々に申しわけない。また他の国々からは、日本は結局またよそに頼って日本人を助けてもらったのですかねと言われかねない。このようなことでは国際貢献を語る資格があると言えるのか、このような疑問も出てくるわけであります。
 在外邦人の安全を確保する上で、政府独自の輸送体制を有すれば、今後より適切な措置がとれるのではないか。この点につきまして、在外邦人の安全確保を所管されておられます外務大臣にお考えをお伺いしたいと思います。
 さて、最近の国際化の進展に伴いまして、総理初め閣僚等の海外出張の機会もふえてまいりました。各国はといえば、そのような場合、要人輸送のための専用機を持っていて、それを使用する。我が国としてもこれを持つ必要があるのではといったことで、ボーイング747−400という飛行機を導入されました。
 ただ、せっかくこのような飛行機を持ったのだから、総理の御出張のような際にだけ使用するというのでは、いかにももったいない。先ほど趣旨説明の中で政府専用機検討委員会の話がありましたが、この政府専用機をどのようにお使いになろうとしているのかについて、防衛庁長官にお伺いをいたします。
 この政府専用機は大型で、多くの乗客を乗せて長い距離を飛ぶことができると伺っておりますが、政府専用機が防衛庁に移管され、総理は先般の訪米の際にも使用されましたけれども、現実に飛ぶようになったわけであります。
 他方、先ほど述べましたように、在留邦人の安全確保のための輸送体制を整備しなければならないという必要性は前々からありました。そこで、在外邦人の輸送に使える政府専用機が防衛庁に移管されたことを機にこの法案ができた、このように理解するわけであります。
 一部には、自衛隊が海外に行けば、何かその場で紛争が起こるかのような御意見もあります。自衛隊の存在そのものを認めない人たちは別に置くといたしましても、自衛隊の方々は、国際平和協力業務は言うまでもなく、南極観測など海外において地道な努力を行っていることを私は存じているわけでございます。
 我が国防衛という本来的な任務とは別に、自衛隊が国際平和協力業務、あるいは今回提案された在外邦人輸送業務に従事するということは、私としては、自衛隊の有する能力を活用するという点において意義のあることではないかと思うわけでありますが、この点について、防衛庁長官のお考えをお伺いいたします。
 なお、今回の法律案に関し、在外邦人の輸送に使用することができる航空機を政府専用機に限定すべきではないか、戦闘機まで使用しようとしているのではないかといった意見が一部にあるやに聞いております。しかしながら、使用することができる航空機を政府専用機に限定した場合、これが他の目的に使用中である、例えば総理が使用中であるといったようなとき、他に使用できる航空機を有するにもかかわらず、いや現在使用中ですといったことで在外邦人の輸送ができないというようなことではいかがなものかといった気がするわけでございます。また、戦闘機により邦人を輸送するというようなことは、その性能上、戦闘機に一般の方々が乗ることは物理的に不可能である以上、およそ考えられないことであります。
 そこで、本法案が、使用機種を政府専用機に限定しない理由及び政府専用機以外に具体的にどのような航空機の使用が想定されるのかについて、本法案の所管大臣であります、実際に輸送を担当される防衛庁長官のお考えをお伺いしたいと思います。
 今回の法律案は、国家として当然行わなければならない義務であり、行為であります。外国で緊急事態に際し、生命、身体の保護を要することとなった邦人を適時適切に安全な地域に輸送することができる体制を整備するため、ぜひとも必要なものと考えます。
 海外に在留する我が国同胞にとって、緊急事態が発生した場合の安全確保措置は、まさに重大な関心事項であり、一刻も早い政府独自の輸送体制の整備が望まれているのではないでしょうか。
 このような国民の声にこたえるためにも、本法案の速やかな成立が必要と考える次第でありますが、最後に、この点について総理のお考えをお伺いし、以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
#17
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 先般の湾岸危機に代表されますように、国際秩序が今日のように大きく流動化してまいりますと、いろいろな緊急事態が世界各地で多発する傾向にございます。そういう事態に対処いたしまして、邦人の安全の確保のために適時適切に対応することは、もとより政府の重要な責務と考えております。
 政府といたしまして、常に、在外公館を中心といたしまして、通信、輸送、緊急時の備蓄の整備など、いろいろな安全対策の強化に心がけておりますけれども、同時に、御指摘のように、商社を初めとしてたくさんの在留邦人が組織のもとに外国に行っておられますので、それらのいわゆる民間の方々との情報提供、連絡の緊密化など、内外における官民の協力体制に現実に取り組んでいるところでございます。
 しかし、実際に緊急事態が起こりましたときに在外の邦人の生命等の保護をするという必要が起こりますと、政府は従来、最初に事態の状況に応じまして、邦人を安全な地域へ移ってもらう、あるいは本邦に早く帰ってもらうというようなこともいたします。また、早く民間定期便を利用して自発的に隣へ退避してほしい、それが困難になりますと、政府として民間機をチャーターするというようなことで対処をしてきておるのでありますけれども、御指摘のように、実際に困ったことはなかったのかとおっしゃいますので、実は実際に困った例がございました。
 それは、サイゴンが陥落いたしましたのは、一九七五年のちょうどこの季節で、四月の終わりでございましたけれども、状況が悪くなってまいりましたので、何とか邦人を退避をしてもらいたいと、私は外務大臣でございましたのですが、考えまして、当時、このような法律はもとよりございませんので、いろいろ交渉いたしまして、民間機をようやく民間会社を説得いたしまして救援のために出てもらったのでありますけれども、マニラで待機をいたしました。
 そこまでは話ができましたのですけれども、事態がいよいよ急迫して救援が必要になりましたときに、パイロットそれからクルーが、そういう危険なところに行くことについて、まあ当然でございますけれども、どうしても同意が得られないという事態が起こりまして、同時に、実は保険料が禁止的に高くなってしまいまして、私企業として到底そのような保険料を支払えないというような事態になりまして、結局四月二十九日にサイゴンが陥落いたしましたときに、まことに申しわけないのですけれども、邦人の救出に政府は自力で何もできなくて、撤退をする米国にできる限りの依頼をしたという、まことに邦人に対しても相済まぬことでございましたし、当時かなりの経済大国であった我が国としては、まことにそういう意味で、いかにも十分でなかったという経験をいたしております。
 そういう経験が実際にございましたので、何とかこういうときにならないかと私は当時から今日まで考えてまいりましたが、今回、政府専用機が防衛庁に移管をされることになりましたので、このような法案、法律によりまして、在外邦人保護のための輸送のできる体制を、その権限を防衛庁長官にお与えをいただきたいというふうに考えておるわけでございます。
 こういうことは、今後たびたび起こってはならないことでございますけれども、しかし、万一の備えはいたしておかなければなりませんので、どうぞこの法律を速やかに成立させていただきますようにお願いを申し上げます。
 残りの問題につきましては、関係大臣からお答えをいたします。(拍手)
    〔国務大臣武藤嘉文君登壇〕
#18
○国務大臣(武藤嘉文君) 江口議員にお答えをいたします。
 今たまたま総理から、外務大臣時代の経験をお話をいただきました。
 今御指摘をいただきましたが、在外邦人の安全を確保する上で、政府独自の輸送体制を整備すれば、今後、より適切な措置をとれるのではないか、こういう御指摘でございます。
 政府は、これまで海外で緊急事態が発生し、邦人の退避が必要になった際、可能な範囲で民間航空機をチャーターの上派遣し、これに対応してまいりました。しかしながら、過去において、民間機の派遣に当たっては、短時間のうちに機材を確保することが困難であったり、航空会社との調整に時間を要するなどの理由により、適切なタイミングで対応できない場合もありました。
 このような点からも、政府専用機ないし自衛隊機による邦人輸送が実現すれば、緊急時に適時適切な措置をとることができ、緊急事態下の邦人保護活動に遺漏なきを期することができると考えます。
 また、過去の事例においては、商業便の運航が停止され、軍用機または政府専用機のみ飛行可能という事態が見受けられました。このような場合に、我が国政府として独自の輸送体制が整っておれば、速やかに退避を実施することができたわけであります。
 なお、欧米主要国では、政府の判断により、政府専用機ないし軍用機を用いて緊急時の在外自国民輸送を行える体制が確立をしております。在外邦人の安全確保を所管する立場として、我が国としても、同様の輸送手段を確保しておくことは急務であると考えております。(拍手)
    〔国務大臣中山利生君登壇〕
#19
○国務大臣(中山利生君) 私に対する幾つかの御質問がございましたが、順次お答えを申し上げたいと思います。
 まず、政府専用機の使用目的についてでありますが、政府専用機につきましては、近年の国際化の進展に伴い、内閣総理大臣等の海外出張等の機会が非常に多くなってまいりました。これに対処するとともに、政府として緊急に対処すべき事態が惹起した場合に際し、適時適切な措置を講ずるための一手段として専用の航空機を保有することとしたわけであります。
 政府専用機の使用目的につきましては、平成三年十月十八日の政府専用機検討委員会の決定に基づき、主として総理大臣等の輸送のほか、必要に応じ、国際緊急援助活動及び国際平和協力業務の実施のための輸送の用に供することとし、さらには、今回お願いをしております自衛隊法の一部を改正する法律案において、緊急時における在外邦人の保護のための輸送の用に供することができる、そういうことをお願いを申し上げているところでございます。
 次に、国際平和協力業務や在外邦人の輸送への自衛隊の能力の活用についてでありますが、まず、自衛隊の部隊等に国際平和協力業務や国際緊急援助活動を行わせることは、自衛隊が長年にわたって蓄積してまいりました技能、経験、組織などのいろいろな機能の活用を図るものであります。
 また、在外邦人の輸送につきましては、政府専用機の管理、運用を含めて自衛隊の有する組織的な機能、経験等を活用することが適切との観点から、自衛隊法を改正しようとするものでございます。
 このように、ただいま申し上げたような業務は、自衛隊が保有する能力を活用するものであり、御指摘のとおり自衛隊にとって意義深いものと考えております。
 次に、在外邦人保護のための輸送の手段につきましては、主として政府専用機が想定されますが、政府専用機が他の目的で使用中または整備中等のため使用できない場合、在外邦人保護のための輸送ができないとすることは不合理であること、また、飛行場など被派遣国の受け入れ能力等により、適切な輸送手段を使用することが当該輸送を最も効率的に実施できることから、法案では政府専用機に限定しなかったものであります。
 具体的に在外邦人等の輸送に使用する航空機としては、航続距離、搭載能力等を考慮すれば、主として政府専用機が考えられるわけでありますが、政府専用機が今述べたような理由により使用できない場合には、C130を使用するということを考えておるところでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#20
○議長(櫻内義雄君) 山中邦紀君。
    〔山中邦紀君登壇〕
#21
○山中邦紀君 私は、ただいま議題となりました自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、日本社会党・護憲民主連合を代表して、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 近年、邦人の海外活動が急増している一方、地域紛争や騒乱の多発している中で、在外邦人の安全確保が重要な課題となってきました。民間法人などの自助努力を促すとともに、国としても的確かつ迅速に対応する体制を整えるのは当然であります。我が党も、在外公館の機能強化を求めるなど、国会を通じた努力をしてきたところであり、緊急時の邦人の輸送の問題についても真剣に考えるべきものであります。
 しかしながら、本法案は、この緊急事態における在外邦人の輸送について、自衛隊がその航空機、すなわち軍用機によって当たろうとするものであります。過去の実績を見れば、緊急事態に際して、在外邦人は民間定期便や政府チャーター機によって多数が退避いたしております。この実績にかんがみ、今新たに国の航空機、しかも自衛隊機によって在外邦人の輸送を行うこととする理由を改めて総理に伺いたいのであります。
 次に、本法案は、自衛隊の付随的任務を新たに追加しようとするものであります。さきに、総理は、冷戦解消後の国際情勢の変化を理由に、政府の自衛隊関係諸施策の基本をなす防衛計画の大綱の見直しを表明し、自衛官の定数を含む自衛隊全体の編成、主要装備等の規模を定めた大綱別表の見直しに至ることを認めたのであります。すなわち、国際情勢の変化に基づく軍縮の必然性、必要性を承認したのでありますしからば、政府が自衛隊に関する施策として第一になすべきことは、見直しの考え方の提示を行うことであります。本体のあり方の基本が問われているときに、これをなおざりにして付随的任務を新設することは本末転倒であります。現に、自衛官の定数を八百五十一名増加する等を内容とする防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案は、平成二年三月十三日本院に提出されながらそのままになっていることは、自衛隊のあり方の根本が問われているがためであります。
 本末転倒のあしき例は、ペルシャ湾への掃海艇派遣に見られました。政府は、実質的な国会審議もなしに、我が国近海の機雷等除去を規定した自衛隊法九十九条を根拠に強行いたしました。今や、これがより大型の掃海艦艇整備の要求につながっているのであります。
 本法案も、やがて航続距離の長大な大型軍用機の多数配備の要求につながりかねません。また、輸送任務の観点からだけ考えれば、容易に、航空機だけでなしに海上自衛隊の艦艇の利用に拡張する方向が出てくるでありましょう。単なる輸送任務だけでなく、実力による救出任務に拡大する議論も懸念されるのであります。
 総理は、大綱の考え方が、仮想敵を置かず、最小限何が入り月かをつくり上げようとするものと言っていますが、八〇年代には、旧ソ連を潜在的脅威と考え、自衛隊の実態が大綱の限界を大きく超えたことは明らかであります。政府は、軍縮を前提にした自衛隊の縮小、再編についての考え方を明示すべきであります。
 総理並びに防衛庁長官に伺います。そもそも大綱見直しの理由はどこに置いているのか、改めてこの際お伺いをしたいと思います。見直しに関する基本的な考え方は何か。情報を公開し、国民的論議が必要でないかと思われますが、いかなる手続でいつごろまでに見直しを行うのかを明示をしていただきたいのであります。
 第三に、本法案に言う邦人輸送を行う場合の「その他の緊急事態」とはどのような状況を想定しているのでしょうか。当該国の内乱や武力紛争が含まれるのか。また、我が国に対して邦人を輸送することを許可し、航空機の自国領空進入及び着陸の許可を与える主体としてどのような地位の者を想定しているのか。当該国の混乱状態において、輸送に係る地域を実効支配する政権が不安定であったり、その所在が不明であったりした場合でも、自衛隊機は輸送を行うのですか。それとも、安全な輸送ができないような危険なところには行かないのか。外務大臣及び防衛庁長官の答弁を求めます。
 第四に、邦人の輸送の任務に当たる自衛隊機は、国際法上どのような地位を与えられるのでしょうか。軍用機と認定されるのか。また、仮に防衛庁以外の国の機関が所管する航空機が輸送に当たる場合、これはどうか。軍用機として認定されることによって、かえって避難、搭乗した民間人たる邦人に危険を生ずることがあるのではないかと考えられます。外務大臣及び防衛庁長官の答弁を求めます。
 第五に、邦人輸送に当たる自衛隊の航空機にはどのような種類のものが使用されるのでしょうか。専用機や輸送機が含まれるのは当然でありましょうが、条文上は制限がありません。緊急事態という状況にある外国への部隊の派遣であり、誤解や疑念があってはならないはずであります。法文上、明記すべきでありましょう。防衛庁長官の答弁を求めます。
 第六に、この自衛隊の任務が、単なる邦人の輸送なのか、それとも、それを出て救出の性格をもあわせ持つのか、明確にしていただきたい。また、この任務に当たる部隊は武器を携行するのでしょうか。武器を携行するとすれば、その種類、どのような目的に使用することができるか。空港あるいは自衛隊機の周辺において武器使用はあり得るのか。自衛隊機の外において邦人の生命または身体を防護するために武器を使用することがあるのか。武器携行、武器使用の限界及び根拠を明らかにすべきであります。緊急事態にある外国において、突然の混乱も予想される中、国際法上軍人たる自衛官による武器使用も予想されるといった輸送方法は、邦人の安全な輸送という観点からは問題がないのでしょうか。防衛庁長官の答弁を求めます。
 第七に、自衛隊海外派兵禁止の国会決議との関連についてであります。
 政府は、邦人輸送は武力行使の目的を持ったものではなく、海外派兵に当たらないと言うでありましょう。政府は、かつて、自衛権発動の三要件、すなわち、我が国に対する急迫不正な侵害があること、他に適当な手段がないこと、必要最小限度の実力行使にとどまるべきことに該当すれば、憲法上は、海外において武力行動をとることが許されないわけではないという趣旨の見解を示しました。外国で、もしこの邦人輸送に当たっている輸送部隊あるいは輸送機に対する急迫不正な侵害があった場合、それは我が国に対する急迫不正な侵害とみなすのか。その場合、自衛隊はどのように対処するのか。政府の見解では、他に手段がない場合として、必要最小限度の武力行動を認めることにならないのか。防衛庁長官の明確な答弁を求めます。
 最後にお尋ねします。
 政府専用機、アメリカのボーイング747型機二機の導入決定は昭和六十二年五月でありました。そうして、当初、総理府の所属とされていたのであります。四年半を経て、平成三年十月、政府は防衛庁に所属がえを行い、使用目的として、内閣総理大臣等の輸送のほか、邦人救出のための輸送等も含めたのであります。ところが、本法案は、専用機に限らず、広く自衛隊機に邦人輸送の任務を与えようとするものであります。専用機に事寄せて任務拡張を図るのは問題であります。
 かつて政府は、湾岸戦争の際、避難民救出・輸送のため自衛隊機の派遣を強行しようとし、特例政令を発したことがあります。しかし、関係国の政府は軍用機受け入れに難色を示し、不発に終わりました。かえって、民間の主導で、民間機のチャーターにより避難民の輸送が実現したのであります。政府の言う、自衛隊機でなければ機敏な対応が確保できないという主張には根拠がありません。
 日本国憲法のもと、初めに自衛隊機の派遣ありきの発想を捨てなければなりません。平和憲法の精神の尊重と、邦人及び外国人救出体制の整備とのバランスのとれた対応策は、自衛隊とは別の「非軍事、文民、民生」の原則に基づいた組織の保有する航空機等の活用にあります。これこそが邦人輸送に向けた施策のあるべき姿だと考えますが、この点に関する総理並びに防衛庁長官の見解を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
#22
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 外国におきまして災害、騒乱等の緊急事態がありましたときに、在留邦人につきまして、政府としましては、そういう事情が差し迫ったことをできるだけ早く探知をいたしまして、不要不急の人にはその土地を離れてもらうことを在外公館を中心に勧告をいたしておりますけれども、現実に避難をする事態が生じましたときには、最初には民間定期便を使ってもらうということでございますけれども、それが困難になってまいりますと、民間機をチャーターしてみんな一緒に避難をしてもらうというようなことを従来やってまいりました。
 しかし、それで十分か、それでいいではないかというお尋ねでございましたけれども、現実にお互いが経験いたしましたように、一九七五年にサイゴンの陥落いたしましたときにはそれができなかったわけでございます。
 これは詳しくはもう、先ほど江口議員に申し上げましたので繰り返しませんが、結局このチャーターした民間機はマニラまで行ってサイゴンに入れなかったということを考えてみますと、やはりパイロットやクルーがそのような危険な業務を拒否をする、現実に拒否をしたわけです、ということがある。あるいは、その民間機そのものが任務につくのに非常に保険料が高くなって、禁止的に高くなって、実際、私企業にはその負担ができなかった。ですから、事の性質上、民間企業にそれをやってもらうということが現実に無理だということを、我々は一九七五年に現実に体験をしたわけでございますから、民間でできるではないかということにはならないので、それで万一のときを思いまして、このような法案の御審議を願っておるわけでございます。
 それから、防衛計画の大綱の見直しについてお尋ねがございました。このような国際情勢の急激な変化でございますし、また、我が国でもだんだん若い人の数が少なくなるという問題もございますから、この中期防の期間中に、やはりこの防衛計画の大綱をどうするかということを再検討いたすべきだというふうに考えております。
 我が国は、この防衛計画の大綱をつくりましたのは一九七六年でございますから、昭和五十一年でございますからかなりの日がたっておりますけれども、しかし、もともとこの大綱は、仮想敵を置かずに基盤的防衛力を整備するという考えに基づいておりますから、そのこと自身は、私は、今日でも基本的には変わらないだろうというふうに思います。
 けれども、しかし、おっしゃるように国際情勢がこれだけ動いておるのでございますから、結論は仮に同じようなところになるかもしれません、しかし、やはりもう長い時間もたちますから、根本的に一度見直してみた方がいいではないかというのが私の考えでございます。この中期防の期間中にはこれを完了いたしたいというふうに思っております。
 最後のところで、しかし「非軍事、文民、民生」の原則に基づくならば、政府専用機、こういうことをしないで済むのではないかというお尋ねがございまして、民間企業にはできないということを先ほど申し上げましたが、その「非軍事、文民、民生」ということの枠組みがちょっと具体的に私に十分に浮かびませんので、満足なお答えができません。政府といたしましては、防衛庁長官にこの航空機による在外邦人の輸送の権限を付与しておきますことが、万一の場合に邦人保護のために大切なのではないかという判断をいたしております。
 残りの問題につきましては、関係閣僚からお答えをいたします。(拍手)
    〔国務大臣中山利生君登壇〕
#23
○国務大臣(中山利生君) 私に対する山中先生の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、防衛計画の大綱でございますが、ただいま総理から御答弁がございまして、そのとおりでありますけれども、御質問でございますので、私から若干敷衍して申し上げたいと思います。
 最近の国際情勢には大きな変化が生じており、特にソ連の解体により東西冷戦が名実ともに終結したことの結果として、総じて言えば、好ましい方向への流れがさらに進行しつつある。また、人的資源、特に若年人口の動向について申し上げますれば、現中期防が終了する段階以降において急激に減少するものと見込まれております。
 我が国の防衛力のあり方につきましては、こうした国際情勢の変化や、将来における人的資源の制約の増大等に的確に対応するために、引き続き精力的に検討を行い、現中期防期間中に結論を得ることとしております。
 本検討は、自衛隊の組織、編成、配置、装備体系等防衛力全般を対象として中長期的視点から行うべきものであり、検討の結果によっては、大綱別表等の変更にもつながることはあり得ると考えております。
 しかしながら、検討に当たっては、国際情勢の変化を今後なお慎重に見きわめる必要があることや、考慮すべき要素も多様であること等の事情もあることから、短期間で結論を得られるものではなく、また、現段階で今後の手続、スケジュールについて具体的に決まったものがあるわけではありません。
 いずれにいたしましても、大綱は独立国として必要最小限の基盤的な防衛力を整備しようとするものであり、かかる大綱の基本的考え方は今日もなお妥当であると考えております。
 次に、改正後の自衛隊法百一条の「緊急事態」がいかなる状況を想定しているのかという点についてでございますが、これは、治安や秩序が乱れ、人の生命及び身体に対し危険が存在する状態を考えており、内乱や紛争により、このような状態がもたらされることも排除することはできないわけであります。
 次に、自衛隊機による輸送の安全の問題についてお答えいたします。
 改正後の自衛隊法に基づき、自衛隊が在外邦人等を輸送するに当たりましては、派遣先国の空港及び航空機の飛行経路において、派遣先国政府等の措置によっては在外邦人、航空機等の安全が確保されないと認められるときには、安全に在外邦人等の輸送の目的を達成することが困難であると考えられるために、民間機チャーターの場合と同様、自衛隊機による在外邦人の輸送を行うことはあり得ないところであります。在外邦人の輸送に当たりましては、その安全の確保について、今回の法改正においてもこのような考え方を前提としており、また、実際の派遣に際しましても十分な配慮をしてまいりたいと思っております。
 次に、軍用機として認定されることにより、搭乗した邦人に危険を生ずるのではないかとの御指摘でございますが、まず、政府専用機を含め、在外邦人の輸送に当たる自衛隊の航空機は、一般的に言えば、国際法上は軍用機として取り扱われるものと承知しております。しかしながら、既に申し上げたとおり、安全に在外邦人等の輸送の目的を達成することが困難であると考えられる場合には、民間機チャーターの場合と同様に、自衛隊機による在外邦人の輸送を行うことはあり得ないところであり、御指摘は当たらないものと思っております。
 次に、在外邦人等の輸送に使用する航空機の種類の御質問でございますが、航続距離、搭載能力等を考慮いたしますれば、主として政府専用機が考えられるところでありますけれども、政府専用機が他の目的で使用中または整備中の理由により使用できないといった場合には、C130を使用することを考えておるところでございます。
 また、使用機種を法文上明記すべきではないかとの御質問につきましては、在外邦人等の輸送を自衛隊の権限として付与する以上、これを最も適切に行われるようにしておくことが不可欠であり、あえて使用機種を法文上明記する積極的理由がなく、また実際の運用に当たって、一定の機種の航空機が使用されている自衛隊法の他の規定、すなわち、自衛隊法百条の五の「国賓等の輸送」においても、法文上、使用機種を明記していないことから、使用機種を法文上明記する必要がないというふうに考えております。
 次に、この法案による自衛隊の任務の性格及び武器の携行、使用に関連する御質問にお答え申し上げます。
 まず、本法案に基づき自衛隊が行うこととなるのは、あくまで邦人等の輸送であります。また、この法案に基づき安全に在外邦人等の輸送の目的を達成するには、派遣先国の空港及び航空機の飛行経路において航空機等の安全が確保されることが前提であります。したがって、安全が確保されない場合には、自衛隊機により在外邦人等の輸送を行うことはあり得ない、先ほど申し上げたところでございます。このため、派遣が可能である状況においては、派遣先国内で、航空機外における在外邦人等を防護するために、航空機外において自衛隊員が武器を携行し、使用することが必要となる事態は全く想定しておりません。
 他方、在外邦人等を輸送する自衛隊の航空機内におきましては、ハイジャック等の不測の事態が全く想定されないわけではなく、セキュリティーチェックなどの措置によっては十分に防止できないと考えられる場合もあり得ると考えられることから、かかる不測の事態に備え、必要な場合には、自衛隊法第九十六条の規定に基づき、警務官が武器を携行することもあり得ると考えております。この規定に基づき携行する武器は、自衛隊の航空機内の秩序維持という警務官の職務の性質にかんがみれば、けん銃が考えられるところでございます。
 いずれにしても、武器の携行、使用につきましては以上のような考え方をとっており、自衛官が国際法上、軍人として取り扱われるからといって、これが邦人の安全な輸送という観点から問題があるとは考えておりません。
 次に、輸送部隊あるいは輸送機に対する急迫不正の侵害についてのお尋ねでありますが、既に述べましたとおり、航空機等の安全が確保されない場合には、自衛隊機により在外邦人等の輸送を行うことはあり得ず、御質問のような事態は想定しがたいと考えております。したがって、かかる事態への対処といった点につきましてお答えすることは困難だと考えております。
 最後に、自衛隊とは別の組織の航空機の活用について、先ほど総理からもお答えがありましたが、私からもお答えを申し上げたいと思います。
 政府は従来、外国における災害、騒乱等の緊急事態に際し、生命等の保護を要する邦人については、民間機をチャーターすることによりその対処を図ってまいりました。しかしながら、民間機チャーターという手段については、例えば民間航空会社の調整に手間取るなどにより、適時適切に対応することが困難な場合があるなどの問題がありました。御指摘の「非軍事、文民、民生」の原則に基づく組織というものがいかなるものか、必ずしも明らかでありませんが、さきに述べました問題点を改善するためには、政府専用機の管理、運用を含め、自衛隊の有する組織的な機能、経験等を活用することが適切との観点から、防衛庁長官に航空機による在外邦人の輸送の権限を付与するということといたしたわけでございます。以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣武藤嘉文君登壇〕
#24
○国務大臣(武藤嘉文君) 山中議員にお答えをいたします。
 一つは、邦人輸送を行う際、当該国の政権が不安定であったり、所在が不明であるような困難な状態の場合の御質問であったと存じます。国際法上、ある国の航空機が他国の領空を通過したり着陸する場合には、基本的には当該国の同意が必要であり、本件輸送を実施する際にも、原則として、外交チャネルを通じ、輸送機の派遣先国あるいは飛行経路国の許可を取りつけた上で実施することとしております。
 しかし、派遣先国の空港及び航空機の飛行経路において、派遣先国の政府などの措置によって航空機の安全が十分確保されていることが実施の前提でありまして、このような前提が確保されていない状況の場合には、自衛隊機による在外邦人等の輸送は行うことはあり得ないと思っております。
 第二点の、邦人の輸送の任務に当たる自衛隊機は、国際法上どのような地位を与えられているのだろうか、こういう御趣旨の御質問でございました。
 自衛隊は、憲法上、必要最小限を超える実力を保持し得ない等の厳しい制約を課せられておりまして、通常の観念で考えられる軍隊ではないと思いますが、一般的に言えば、国際法上は軍隊として取り扱われ、したがって、自衛隊機も、国際法上は軍用機に該当いたすと思います。
 本法案のもとでは、自衛隊の航空機を輸送手段としており、それ以外の国の機関が所管する航空機が輸送に当たることは想定しておりません。改正後の自衛隊法に基づき、自衛隊が在外邦人等を輸送するに当たっては、当該派遣先国等から、領空通過、着陸の許可を得ることとなっており、航空機等の安全が確保されないと認められるときには、在外邦人の輸送を行うことはあり得ないと思います。したがって、自衛隊機が軍用機の地位を有することにより、国際法上特別の保護を享受することになっても、そのために危険が生ずるということはないと思っております。(拍手)
    ―――――――――――――
#25
○議長(櫻内義雄君) 山口那津男君。
    〔山口那津男君登壇〕
#26
○山口那津男君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、ただいま政府より提案のありました自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、若干の質問を行うものであります。
 この法案は、海外における災害及び紛争などの緊急事態の発生に伴い、生命、身体の保護が必要となった在外邦人の救出を行うため、自衛隊が政府専用機などの自衛隊機による邦人の輸送が行えるよう法改正しようというものであります。
 近年、国際化の著しい進展に伴い、海外で活躍する邦人も六十万人を超え、また青年海外協力隊、国際ボランティア活動あるいはPKOへの参加など、我が国の国際的な人的貢献活動もようやく広がってまいりました。
 他方、世界は冷戦の終結に伴って、これまで抑制されてきた民族問題、領土問題、ナショナリズム、宗教上の対立などによる紛争が各地で表面化し、今後も地域的な不安定状況が続くものと考えられます。
 我が国は、昨年のPKO協力法の成立によって、こうした地域紛争等によって被害を受けた人やそのおそれのある住民などへの人道的救援活動を行うことが可能となりました。
 このような状況の中で、海外の緊急事態において生命、身体の保護を必要とする邦人の救出に当たって、その輸送任務を行うため自衛隊機を派遣することについては、その趣旨、目的自体は基本的に理解できるものであります。しかし、自衛隊の海外派遣であることに変わりない以上、派遣に際しての基本的な原則を明らかにし、運用に当たっても慎重な配慮が必要なことは当然であります。私は、そうした観点から、自衛隊機の派遣に関連して、以下の重要な諸点について政府の明確な答弁を求めるものであります。
 初めに、政府は一昨年一月、湾岸危機に伴う避難民輸送のために、現行の自衛隊法に明確な規定がないにもかかわらず、自衛隊法第百条の五第一項に規定する「国賓等の輸送」の「等」に難民も含まれるとして強引に特例政令を定め、政府の独断で中東への自衛隊のC130輸送機の派遣を決定いたしました。
 公明党は、難民救出という目的はともかくとしても、自衛隊法上明確な規定がないまま、特例政令というまことにこそくな手段で、なし崩し的に自衛隊を海外に派遣しようとすることに強く反対いたしました。
 結局、中東への自衛隊機の派遣は、国民の強い批判と、避難民をめぐる客観情勢の変化等によって、政府は自衛隊機の派遣を断念したのであります。
 今回、在外邦人の輸送任務の追加に当たって、特例政令ではなく、自衛隊法改正という手続をとったことは、一昨年の反省の上からも当然の措置であります。
 総理並びに防衛庁長官は、一昨年の特例政令による自衛隊機の派遣決定について、現在どういう見解をお持ちか。また、自衛隊の任務の法的根拠の重要性についてどう認識しておられるのか、まず明確な所見を伺いたいのであります。
 質問の第二は、在外邦人の救出について、我が国はこれまで、「在外邦人の救出または在外財産の保護のため、武力行使を目的として外国に派遣することは許されないが、武力行使を目的としない、避難民を輸送するという、全く平和的な目的に限定すれば憲法上許される」としつつも、自衛隊法上規定がないとして、むしろ在外邦人の救出のための自衛隊派遣には消極的で、民間等の輸送手段に頼ってきたのが実情でありました。今回、方針を変更し、自衛隊による在外邦人の救出輸送を行おうとする理由について説明願いたいと思います。
 また、過去の緊急事態に際して、邦人輸送に自衛隊機を使用すればより適切な措置がとれたと考えられるケースがあったのか。あれば、具体的に伺いたいのであります。
 第三は、使用する航空機についてであります。
 法案では、「航空機による当該邦人の輸送」とあり、航空機は主として政府専用機の使用を政府は考えているようでありますが、法文上の限定はありません。
 現在二機ある政府専用機は、平成三年十月十八日の政府専用機検討委員会において、防衛庁に所属することが決定したわけでありますが、防衛庁所属とした理由及び法案においてなぜ政府専用機だけに限定しなかったのか、お答えいただきたいのであります。
 さらに、護衛のための戦闘機等の派遣も将来想定しているのか、また、憲法上、護衛のための戦闘機の派遣も許されると考えているのか、この際、明確な答弁を求めるものであります。
 第四に、自衛隊機の実際の派遣に当たっては、現地において予想を超える事態や各種のトラブルが起こり得る可能性がありますが、場合によっては紛争等に巻き込まれるのではないかとの危惧もあります。
 昭和五十三年六月六日の衆議院内閣委員会における政府答弁では、派遣の前提として、当該外国の同意の必要性を述べておりますが、政府は、自衛隊機の派遣に当たっては、当該外国の要請あるいは同意を得なければ派遣しないのかどうか、また、相手国から仮に安全の保障がなくても、場合によっては派遣するのかどうか伺いたいのであります。政府のこれまでの説明では、危険なところには派遣しない旨説明しておりますが、具体的な派遣の原則をどこに置くのか、明らかにしていただきたいのであります。
 また、政府専用機の最大搭乗人数は三百五十人程度と言われておりますが、輸送対象者は数名程度でも派遣されるのか、派遣の具体的基準があるのか、伺いたいのであります。
 さらに、自衛隊機の派遣の最終決定者は外務大臣か、防衛庁長官が、あるいは総理大臣か、不明確であります。仮に国連等の要請により難民輸送の任務を政府専用機で行う必要が出てくる場合、邦人輸送と競合する場合が考えられ、その場合、防衛庁だけでなく、政府として統一した方針が必要になることもあり、私は、派遣の決定に当たっては、緊急の安全保障会議や閣議を開き、政府全体の責任において決定すべきであり、また、速やかに国会にも報告すべきであると考えますが、総理の所見を伺うものであります。
 第五に、武器の携行についてであります。
 邦人救出輸送に当たり、基本的には武器を携行するのかどうか、もし武器を携行するとすれば、その目的、武器の範囲はどこまでか、また、武器の使用はいかなる状況下で許されるのかについても明らかにしていただきたいのであります。
 第六に、法案では、「外務大臣から当該緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する外国人として同乗させることを依頼された者を同乗させることができる。」とし、外国人の同乗を認めております。しかし、この外国人には相手国政府の要人等も含まれると考えられ、その亡命等に協力することにもつながりかねず、日本政府の紛争介入といった新たな政治問題にも発展するおそれもあり得ると考えるのであります。その意味で、この外国人の同乗については、政治的に慎重な対応が必要であると考えますが、政府の所見を伺いたいのであります。
 次に、現在我が国は、昨年の通常国会において成立したPKO協力法に基づき、カンボジアのUNTACへの参加をいたしておりますが、PKOへの参加に対する国民とアジア周辺諸国の一層の理解を得る観点から、PKOへの参加や国際的な災害・人道救援活動、海外における邦人輸送などの海外での平和任務については、通常の自衛隊組織と区別された専門組織を設置し、日ごろより専門の教育訓練等を行っていくべきであると考えるのであります。
 現在、防衛庁は防衛大綱の見直し作業を行っておりますが、新しい防衛大綱の中に、こうした国際貢献のための新組織の設置を盛り込む考えはないか、伺うものであります。
 最後に、朝鮮半島の情勢について伺います。
 北朝鮮は三月十二日、核兵器の拡散の防止を求める国際社会の意思に背を向け、核拡散防止条約、いわゆるNPTの脱退を宣言いたしました。北朝鮮の核開発の疑惑は深まるばかりであり、我が国の安全にも脅威を与えるものと強く憂慮せざるを得ません。
 こうした中、去る二十一日、在韓米軍ロバート・リスカシ司令官は上院軍事委員会の公聴会において、朝鮮半島情勢について、北朝鮮の経済危機を説明した上で「北朝鮮は、万策尽き絶望にかられて自己抑制がきかなくなったうえ、攻撃に走る可能性があり、米軍は懸念を強めている」と述べたと報道されております。
 政府は今日の北朝鮮の現状をどう認識しているのか、また現在、米国を初めとする関係各国の説得が続けられておりますが、今後の見通し及び我が国としてこの問題にどう対応する考えか、総理並びに外務大臣の所見を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
#27
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 一昨年の湾岸危機に際しまして、政府は政令を制定いたしました。湾岸危機に伴う避難民の輸送に関する暫定措置に関する政令でございましたが、湾岸危機という、我が国にとりましても、世界にとりましても重大な緊急事態に伴いまして避難民の問題が生じました。そして、国連の委任を受けて、国際移住機構、国連の避難民の支援機構である国際移住機構から、人道的見地から臨時応急の措置としてこれに対して対応するようにという要請を受けました。したがいまして、そのような人道的見地からの臨時緊急の措置として、当時、政令を決定いたしたものでございます。
 他方、そういうような緊急事態としてでなく、自衛隊の一般的な権限として、在外邦人の、いざという場合の輸送を行わせるということは、これは恒常的な物の考え方といたしまして、当然法律上の規定が要るであろうと考えましたので、政令ではなく、このたび法の改正をお願いいたしているところでございます。
 次に、自衛隊が邦人救出のために自衛隊機を派遣するというようなそういう事態の中で、政府はどのような意思決定をするかということでございますけれども、もちろんそのような事態は異常な事態でございます。正常な事態ではございませんので、政府といたしまして、政府の行うべき他の任務との関係を含めまして、統一的な方針を定めましてこれを行うべきことは当然であると思います。また、もちろん国会のそのような場合に、御審議に対しまして、政府として全面的な御協力を申し上げることは申すまでもないところでございます。
 それから、北朝鮮の、朝鮮民主主義人民共和国のNPT脱退に関してのお尋ねが最後にございましたが、察しまするに、朝鮮民主主義人民共和国は、国内におきましてかなりの思想の引き締めあるいは対外的には強硬姿勢をとっておりまして、先月、NPTからの脱退の決定を発表いたしました。
 しかし、このような北朝鮮の決定、政策は、結果的には朝鮮自身を一層深刻な状態に追い込むのではないかというふうに考えるところでございまして、殊にNPTを脱退するということは、核兵器開発についての北朝鮮に対する国際的な疑惑を一層深める結果になるのではないかということを恐れます。
 したがいまして、我が国としては、そのような恐らく百害あって一利なしと申しますか、そのような決定については北朝鮮が再考をされて、政策転換をして、国際社会の一員として責任行動をとられることが望ましいのではないか、それを強く説得すべき立場に我が国はあるというふうに考えます。NPT脱退を最終的に決めるということは、核不拡散体制そのものに対するいわば挑戦でございますし、我が国にとっても等閑視できるところではございません。
 したがいまして、我が国としては、関係諸国とも協力しつつ、いろいろな方法をもちまして北朝鮮に脱退の撤回を求めたいと思いますが、それはあくまで、圧迫する、あるいは制裁をするということが目的ではなくて、そのような状況の中で北朝鮮に脱退の撤回を求める、そういう目的のもとに対応してまいるべきものというふうに考えております。(拍手)
    〔国務大臣中山利生君登壇〕
#28
○国務大臣(中山利生君) 山口那津男先生の御質問にお答えを申し上げます。特例政令についてでございますが、ただいま総理から詳しく御答弁がありましたように、湾岸危機という、我が国にとっても重大な緊急事態に伴って生じた避難民について、人道的見地から臨時応急の措置として決定されたものであります。
 他方、今回の法案に基づく在外邦人の輸送は、今述べましたような個別具体的な事態に対する臨時応急の措置として行うものではなく、自衛隊に一般的な権限として恒常的に在外邦人の輸送を行わせようとするものであります。このような権限を自衛隊に付与するには、法律上明確な規定が必要と考えられることから、自衛隊の任務、権限等を定める自衛隊法の改正をお願いをしているところでございます。
 次に、自衛隊機による在外邦人救出の輸送を行おうとする理由についてでありますが、外国における災害、騒乱等の緊急事態に際し、生命等の保護を要する邦人については、政府は従来、これら邦人を本邦等の安全な地域へ避難させる必要が生じた場合、民間定期便による自発的な避難を促すとともに、民間定期便等の利用が困難な場合には、民間機をチャーターすることによりその対処を図ってまいりました。しかしながら、民間機チャーターという手段については、例えば民間航空会社との調整に手間取るなどにより、適時適切に対応することが困難な場合があるなどの問題があったところであります。
 このような問題点を改善するため、在外邦人の輸送の用に供することが可能な政府専用機が防衛庁へ移管されたことを機に、自衛隊法を改正して、在外邦人の保護のための輸送を行うことのできる権限を防衛庁長官に付与することにしたわけでございます。
 次に、政府専用機が防衛庁に所属がえされた理由についてでございますが、政府専用機につきましては、昭和六十二年五月、国際社会における我が国の果たすべき役割にかんがみ、国際化の一層の進展に寄与するため、各国の例に倣い、我が国としても保有することを決定したものであり、当初、総理府において当機の購入及び所要の基盤整備が行われてきました。
 その後、所要の運用基盤が整備されつつある状況を踏まえ、政府専用機検討委員会で検討した結果、政府専用機のような大型機の管理、運用は、専門的な技術基盤及び組織的な支援体制等を必要とすることから、政府部内では防衛庁のみが、要員の確保を含め、これらの体制を長期的かつ効率的に整備し得る能力を有するとの判断から、平成四年四月一日より防衛庁に所属がえすることが決定されたものであります。
 また、在外邦人保護のための輸送の手段については、政府専用機が他の目的で使用中または整備中等のため使用できない場合、在外邦人保護のための輸送ができないとすることは不合理であること、被派遣国の受け入れ能力等により最適な輸送手段を使用することが、当該輸送を最も効率的に実施できるというようなことから、政府専用機に限定しなかったものであります。
 次に、戦闘機等による護衛についてでありますが、派遣先国の空港及び航空機の飛行経路において、派遣先国政府等の措置によって航空機等の安全が確保されないと認められるときには、安全に在外邦人等の輸送の目的を達成することが困難であると考えられるため、自衛隊による在外邦人等の輸送を行うことは、そもそもあり得ないと考えております。したがいまして、御指摘のような護衛のための戦闘機等の派遣ということは想定しておりません。
 なお、憲法上の問題につきましては、従来から申し上げているとおり、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国領域に派遣することは、一般的に自衛のための必要最小限を超えるものであって、憲法上許されないと考えております。
 次に、派遣先国との関係等についての御質問でありますが、自衛隊機により在外邦人等を輸送するに当たりましては、国際法上、当該派遣先国等から領空通過、着陸の許可を得ることが必要となります。また、輸送機及び邦人の安全確保は、派遣先国等政府が第一義的に責任を有しており、派遣先国等政府は、空港及び飛行経路の安全を確認した上で着陸や領空通過の許可を行うものと承知しておりますが、いずれにせよ、輸送の安全の確保については、最終的には外務大臣及び防衛庁長官が判断することとなるわけであります。
 次に、輸送対象者数による派遣の具体的基準についてでございますが、まず、生命等の保護を要する邦人であるか否かを外務大臣が判断した上で、防衛庁長官に輸送を依頼することとなっており、依頼があった場合、防衛庁長官は、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、被派遣国の受け入れ能力等をも考慮し、最適な輸送手段を使用して邦人の輸送を行わせることとなるものでありまして、輸送対象者数による基準があるわけではありません。
 また、この法案による在外邦人等の輸送に当たっての武器の携行、使用に関連する御質問でございますが、自衛隊機により在外邦人等の輸送を行うに当たっては、派遣先国の空港及び飛行経路において安全が確保されることが前提となっております。このため、派遣が可能である状況においては、派遣先国内で、航空機外において自衛隊員が武器を携行し、使用するということが必要な事態は想定しておりません。
 他方、航空機内においては、ハイジャック等の不測の事態が全く想定されていないわけではなく、セキュリティーチェックなどの措置によっては十分に防止できないと考えられる場合もあり得ると考えますことから、諸般の事情を考慮し、不測の事態に備え、必要な場合には、自衛隊法第九十六条の規定に基づき、警務官が武器を携行することもあり得ると考えております。この場合、同条の規定に基づき携行する武器は、自衛隊の航空機内における秩序維持という警務官の職務の性質にかんがみれば、けん銃が考えられるわけでありますが、その際の武器使用の基準といたしましては、自衛隊法第九十六条三項に基づき、警察官職務執行法第七条の規定が準用されることになっております。
 最後に、国連平和維持活動に係る御質問がありました。
 我が国が国連平和維持活動に貢献するに当たり、また、国際緊急援助活動の一層の充実を図るに当たり、自衛隊の部隊を活用することとしたのは、かかる活動に適切かつ迅速に協力し、我が国の協力を効果あるものとするためには、自衛隊が長年にわたって蓄積してきた技能、経験、組織などの機能が不可欠であるとの判断に基づくものであります。
 一方、国連平和維持活動等には、自衛隊の本来任務である我が国の防衛には見られない専門的な部分のあることは御指摘のとおりであります。今後、防衛力のあり方の検討においては、国連平和維持活動等についても、自衛隊がどのような形で業務を行うのが最も適切であるのか、組織面等を含めて十分に検討をしてまいりたいと思っております。(拍手)
    〔国務大臣武藤嘉文君登壇〕
#29
○国務大臣(武藤嘉文君) 山口議員にお答えをいたします。
 まず、過去の在外邦人の緊急事態に際して、邦人輸送に自衛隊機を使用すればより適切な措置がとれたと考えるケースがあったのかという御質問でございます。
 二つの例を申し上げさせていただきますが、緊急に派遣する必要があった事例といたしましては、イラン・イラク紛争時、イラクがイラン上空を飛行禁止地域とする旨の警告発出後、定期便のキャンセルが相次ぎました。日本の民間航空機の派遣も検討しましたが、同社側には派遣に当たって時間的要素等前提条件がありまして、結局間に合わず、たまたま余席のあったトルコ航空機などにてイランの在留邦人、約二百六十人がテヘランから脱出をいたしました。
 その次に、軍用機または政府機のみ飛行可能であったときの事例でございますけれども、これはハイチのクーデター時、商業便の運行停止時にメキシコが軍用機を派遣した際、七名の邦人が同乗させていただきましたが、その他の邦人は残念ながら商業便の再開まで残留を余儀なくされました。
 次に、外国人の同乗については慎重に配慮すべきだという御指摘でございますが、本法案は、緊急事態における邦人の退避手段の一層の充実を図るものでありまして、その趣旨から、輸送の対象者はあくまでも邦人を優先するものであります。しかしながら、政府としましては、人道上の見地から、邦人と同様の状況下で退避を必要とする外国人についても、余席がある限り搭乗させたいと考えており、過去において、民間航空機のチャーターにより邦人の輸送を行った際にも、外国人を同乗させたケースはありました。
 この場合、退避を必要とする外国人には、通常派遣先国の国民は含まれない場合が多いと思いますが、いずれにしましても、今後、本法案に基づき外国人を同乗させる場合にも、従来同様、当該外国人の母国の政府等から日本国政府に対し、当該外国人の輸送につき要請があることを原則としており、御指摘のような政治問題に発展するといったような事態が生じないよう、十分配慮していきたいと考えております。
 次に、北朝鮮の現状認識についてでございますが、東西冷戦の構造が崩壊したこともありまして、北朝鮮は現在、外交的孤立感を深めるとともに、国内では深刻な経済の困難を抱えております。そのため北朝鮮は、国内においては思想引き締めを、また対外的には強硬な姿勢をとっております。
 しかし、このような北朝鮮の政策は、結果的に北朝鮮の抱えておる諸困難を一層深刻なものにするのみかと思います。北朝鮮が国際社会の責任ある一員として行動するならば、国際社会には北朝鮮を迎え入れる用意があります。この点を北朝鮮がよく理解することを強く期待いたしております。
 いずれにいたしましても、今後の北朝鮮の動向は、北東アジア地域の平和と安定に大きな影響を与えるものであり、我が国としては、これを引き続き注視してまいります。
 次に、最後に、北朝鮮のNPT脱退問題についてでございますが、総理からも御答弁がございました。私から簡単にお答えをさせていただきます。
 当面は、北朝鮮に対して確固とした姿勢を示す一方、我が国といたしましても、できる限りの説得の努力を行ってまいります。今後の具体的な対応ぶりにつきましては、関係諸国及び国際機関の動向や北朝鮮の出方も踏まえながら、さらに慎重に検討してまいりたいと考えております。(拍手)
#30
○議長(櫻内義雄君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#31
○議長(櫻内義雄君) 本日は、これにて散会いたします。
   午後二時四十分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
       内閣総理大臣宮澤喜一君
       外 務 大 臣 武藤 嘉文君
       大蔵大臣林 義郎君
       自治大臣村田敬次郎君
       国 務 大 臣 中山 利生君
 出席政府委員
       防衛庁長官官房 村田直昭君
     ――――◇―――――
○朗読を省略した議長の報告
  (法律公布奏上及び通知)
一、去る二十二日、次の法律の公布を奏上し、その旨参議院に通知した。
 診療放射線技師法の一部を改正する法律
 視能訓練士法の一部を改正する法律
  (報告書及び文書受領)
一、去る二十三日、内閣から次の報告書及び文書を受領した。
 中小企業基本法第八条第一項の規定に基づく平成四年度中小企業の動向に関する年次報告
 中小企業基本法第八条第二項の規定に基づく平成五年度において講じようとする中小企業施策についての文書
一、昨二十六日、内閣から次の報告書を受領した。
ソース: 国立国会図書館
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