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1992/12/08 第125回国会 参議院 参議院会議録情報 第125回国会 商工委員会 第2号
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1992/12/08 第125回国会 参議院

参議院会議録情報 第125回国会 商工委員会 第2号

#1
第125回国会 商工委員会 第2号
平成四年十二月八日(火曜日)
   午前十時二分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         斎藤 文夫君
    理 事
                合馬  敬君
                松尾 官平君
                土田 達男君
                井上  計君
    委 員
                倉田 寛之君
                前田 勲男君
                松谷蒼一郎君
                吉村剛太郎君
                谷畑  孝君
                峰崎 直樹君
                村田 誠醇君
                藁科 滿治君
                浜四津敏子君
                和田 教美君
                市川 正一君
                古川太三郎君
                小池百合子君
   国務大臣
       国務大臣     加藤 紘一君
       (内閣官房長官)
   政府委員
       公正取引委員会  小粥 正巳君
       委員長
       公正取引委員会  地頭所五男君
       事務局長
       公正取引委員会
       事務局官房審議  塩田 薫範君
       官
       公正取引委員会  矢部丈太郎君
       事務局経済部長
       公正取引委員会  植松  勲君
       事務局取引部長  
       公正取引委員会  糸田 省吾君
       事務局審査部長
       法務大臣官房審
       議官       山本 和昭君
       通商産業省産業  熊野 英昭君
       政策局長
       中小企業庁次長  土居 征夫君
   事務局側
       常任委員会専門  小野 博行君
       員
   説明員
       外務省経済局外  美根 慶樹君
       務参事官
       社会保険庁総務  池田  登君
       部経理課長
   参考人
       北海道大学法学  実方 謙二君
       部教授
       慶應義塾大学法  金子  晃君
       学部教授
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法
 律の一部を改正する法律案(第百二十三回国会
 内閣提出、第百二十五回国会衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(斎藤文夫君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
 公正取引委員会委員長から発言を求められておりますので、この際、これを許します。小粥公正取引委員会委員長。
#3
○政府委員(小粥正巳君) 先般、公正取引委員会委員長を拝命いたしました小粥正巳でございます。
 申し上げるまでもなく、独占禁止法は、自由経済社会の基本的ルールを定めたものであり、自由経済社会の長所を生かし、我が国経済の民主的な発展を促進していく上で極めて大きな役割を果たしているところでございます。また、我が国の経済力が世界有数のものとなった今日、これに見合った豊かな国民生活を実現していくとともに、我が国市場を国際的により開かれたものにしていくことが重要な課題であり、かかる観点から内外の事業者の公正かつ自由な競争を促進し、消費者利益を確保するため、独占禁止法並びにその運用に当たる公正取引委員会の果たすべき役割は、従来にも増して一層大きくなっていくものと考えております。
 このような折から、本職を仰せつかりました責任の重大さを痛感しており、独占禁止法の厳正かつ適正な運用に努め、新任務に全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。
 もとより大変未熟な者でございますが、商工委員会の皆様方の御鞭撻、御支援を賜りましてこの職責を果たしたいと存じます。
 なお、政府におきましては、独占禁止法違反行為に対する抑止力強化のため、カルテル等の違反行為について、事業者、事業者団体に対する罰金額の引き上げを内容とする独占禁止法改正法案を提出しているところであり、公正取引委員会といたしましても、これを御審議の上、ぜひとも速やかに実現させていただきたいと考えている次第でございます。
 何とぞ、よろしくお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#4
○委員長(斎藤文夫君) 次に、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日、参考人として、北海道大学法学部教授実方謙二君及び慶応義塾大学法学部教授金子晃君、以上二名の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○委員長(斎藤文夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#6
○委員長(斎藤文夫君) 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。加藤内閣官房長官。
#7
○国務大臣(加藤紘一君) ただいま議題となりました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 独占禁止法は、公正かつ自由な競争を維持、促進することにより、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発展を図るものであります。政府は、国民生活を一層充実し、我が国経済を国際的により開かれたものとするため、独占禁止法違反行為に対する抑止力の強化を図ることを重要課題の一つと位置づけております。その一環として、独占禁止法の刑事罰規定について、事業者等に対する罰金刑を強化することとし、ここにこの法律案を提出した次第であります。
 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。
 私的独占、不当な取引制限等の独占禁止法第八十九条の罪について、事業者及び事業者団体に対する罰金の最高限度額を現行の五百万円から一億円に引き上げることとしております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同いただきますようにお願いいたします。
#8
○委員長(斎藤文夫君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#9
○谷畑孝君 今回提案されました政府案、すなわち刑事罰強化を盛り込んだ独占禁止法案について順次質問をさせていただきます。
 社会党におきましては、この法案に重大な関心を持ち、検討を重ねてまいりました。衆議院におきましては、政府案をより強化する立場で刑事罰の強化ということで、上限の罰金刑五億円、こういうことを中心としたこの対案も提起して法案の審議に当たってきたところでございます。私も、その趣旨を踏まえまして質問をさせていただきたい、このように思っています。
 我が国は、敗戦後の焦土の中から経済と社会の再建を進め、今日では世界有数の経済大国となるに至りました。この戦後の経済発展を支えてきたものが何よりも勤勉な国民の努力であることは申すまでもございませんが、加えて通産省に代表される産業政策の展開が重要な役割を果たしてきた、こういうことも真実であり、また大事なことである、このように私は思っています。同時に、通産省のそういう産業政策が一方では、逆に言えば、消費者の立場から見ると独禁法を骨抜きにしていく、そういう一つの紆余曲折の改正でもあったのではないかそのように思っているところでございます。
 いずれにしましても、紆余曲折があったにせよ、財閥解体を出発とする経済の民主化、そして独占禁止政策なくしては今日の繁栄は決してなかったのではないか。そういう意味では、独占禁止法というもの自身が経済のいわゆる憲法ということで果たした役割が非常に大きかったのではないか、私はこのように考えておるところでございます。
 近年、世界的に市場経済の有効性が再評価され、各国における政府規制分野の見直しや独占禁止法の適用、執行力の強化が図られておるところでございますが、特に我が国におきましては、世界有数の経済力に見合う豊かな国民生活を実現するとともに、我が国の市場を国際的に開かれたものにしようという面からも、独占禁止政策の果たすべき役割が従来に増して大きくなっておる、こういう認識のもとで質問をさせていただきたい、このように思っています。
 さて、きょうは加藤内閣官房長官が三十分ほどおられるということでございますので、せっかくのことですので、順序を加藤官房長官に合わせて少し質問をしたい、このように思っています。
 過日のアメリカの大統領選挙で、弱冠四十六歳のクリントン政権が生まれました。これは、冷戦構造の崩壊の中でいわゆるアメリカの国民の世論が変化を求めた、そういう結果の中で四十六歳のクリントン政権が出現した、このように実は思っているわけです。ゴア副大統領になりますと四十五歳、私と全く同じ年で副大統領ということですから、もう大変な変化だな、日本では考えられない。こんなことで、本当に私どもとしても驚きとあこがれのことになっておるところでございます。
 さてそこで、加藤内閣官房長官にお聞きするんですが、私ども日本も経済発展の中で、経済においても国際的な一員として平準的な国際協調、そういう責任もあるわけでありますけれども、クリントン政権が出現してきた中で、日米とりわけ通商にかかわることでどういうような変化が起こり得るのか、その点は非常に大事だし、また私ども、経済界あるいは勤労国民にとってみても非常に大きな関心事であると思いますので、その点一つお伺いをしたいと思います。
 最近のウルグアイ・ラウンドの問題で、アメリカとECとの関係で農業問題も合意に達したということで、とりわけまたウルグアイ問題も日本においても大きな問題になってくる、そういうことも含んでお話をいただけたらありがたい、こう思います。よろしくお願いいたします。
#10
○国務大臣(加藤紘一君) 大変大きな問題でございますし、幾つかの側面を含んでおるように思います。
 今、谷畑先生おっしゃいましたような問題点というのは、実は我々、政府自身もどういうような変化がこれからあり得るか、我々はどう対応しなきゃならぬのか、私たち自身も今いろいろ情報収集したり模索している段階でありまして、またクリントン政権もいよいよ政権の座につくということになって、どういった政策を国際的にまた対日的にとろうかということを今形成中の時期で、まだ決まっていないんじゃないだろうかなというのが第一の点ではないかと思います。
 しかし、双方の国は、いずれにしましても国際政治及び国際経済の中で大変大きな位置を占めているという自覚を持たなければならない、認識を持たなければならない国だと思います。特に、経済の面からいえば、双方のGNPを足すと世界のGNPの四割にも達するという事実は非常に大きくて、我々自身が、ともすれば日本というのは小さな国だというふうに思いがちな習性を戦後ずっとまだ消せないで持っていると思うんです。
 しかし、我が国がとります経済政策、例えば総合経済対策十兆七千億のものを出しましたけれども、あれが世界の中で大変大きなインパクトを持つということであり、またそれが効果を持たなければグローバル経済に対しても大変失望を与えるという種類のものであるという認識を持たなければならないと思っております。
 したがって、クリントン政権になって対日政策がどう変わるかという面について申しますと、第一の政治、安全保障の面についての政策はそんなに大きく変化はしないだろうし、日米安全保障関係はその一つの基軸になっておりますけれども、従来どおり維持されると思います。
 アメリカは、世界における大きな軍事パワーとしての力を維持するということはクリントン氏も言っておりますし、またそれぞれの国とのコミットメントは守ると言っておりますので、そこは変わりはないんじゃないか。さあ、そこで次は経済ですけれども、例えば在米の日本企業に対して厳しくなってくるのではないかとか、いろいろ議論がありますけれども、私たちは、これは日本の出方にもよりますけれども、基本的に大きく変わりはないんではないだろうかなと思います。
 ただ、クリントン政権になって一番最初に取り組む可能性がありますのは、国内問題であります。特に、米国経済自身を力強く再建していこうとする動きでありましょうから、実は我々の国はそれに十分呼応した協力体制をとっていかなければいけない。そういうことが今後の日米経済関係で非常に重要になってくると思います。
 それから、ウルグアイ・ラウンドについてどうなるのか。特に、クリントン民主党政権というのはより保護主義的になるではないだろうかなという感じの懸念が時々新聞等で見られますけれども、この点につきましてもそう大きく変化しないのではないか。ともすれば、選挙のときというのは差を際立たせるためにいろんなことを言う場合がありますけれども、現実に政権につきますと、その修正はかなり行われるというのがどこの国でもよくある話なのではないか。特に、アメリカの場合には、共和、民主で重要な外交政策については日ごろから指導者同士が話し合って決めているところがありますので、そう大きく変化はないのではないかと思います。
 ウルグアイ・ラウンドにつきましては、積極的にアメリカは推進してくるだろうと思っておりまして、我が国もこのウルグアイ・ラウンドの決着、それが成功裏に終わるように国際的な責任を強く有することになるだろうと思います。
#11
○谷畑孝君 どうもありがとうございました。
 安全保障の問題についても、あるいは経済の問題あるいはウルグアイの問題につきましてもそう変化はないだろう、そういうことであろうと思うんです。しかし、いずれにしましてもアメリカ自身が内政問題で経済を立て直していくという非常に大きな課題がありますし、同時にまた世界を見回していきますと、環境の問題であろうとあるいは安全保障の問題でありましても、各地域の紛争も民族紛争が絶えないし、あるいはまた宗教に絡んでくる問題でいわゆる内政問題も絶えない。そういうことの中で、国連の強化策だとか、そういうことでアメリカ自身の従来の強いアメリカというよりも、ECであったり、日本であったり、それぞれとよく協議をしたりいろいろしながら、集団的に世界というもの、いわゆる冷戦構造が終わった中で、いわゆるこまを進めていくという、そういう時代に入ったとも思うわけであります。
 そこで、やはり日本政府も従来の日米間の状況からもう少し積極的に、ちょうど今政策をどうしていくかという、そういう大事な時期には大いに議員間交流を展開したり、あるいは政府も出かけていったり、あるいはまた来ていただいたり、さまざまな形で日米の問題も多面的な状況の中で意思統一をしていく必要があるのではないか、そう思うわけでありますが、いかがでしょうか。
#12
○国務大臣(加藤紘一君) 御指摘のとおりでございます。
 かつて、マンスフィールド在日米大使が、日米関係というのは世界の中の二国関係の中で最も重要な関係であるということをおっしゃいましたけれども、これだけの安全保障、政治そして経済の関係になりますと、本当にお互いに話し合って、事前に問題が起きそうだったらアーリーウォーニングでもしながら、お互いに問題点を早く解決する努力をしていかなければならないと思います。それは単に政府レベルだけではなくて、民間はもちろんのこと、それからまた議員の間でも、そして望むらくは超党派議員で日米の間で話し合っていただくということが今や必要なんでないかなというふうに強く思います。
 それから、御質問になかった点ですけれども、冒頭谷畑先生が、独禁法を今度審議するに際して、独禁法の位置づけというものを国際的な側面からちょっと論じられた部分がございましたけれども、私たちもそういう点は非常に重要な御指摘であると考えながらこの法律をつくってまいりました。不十分だというふうにおっしゃるかもしれませんが、そういうふうにつくってまいりましたし、今後ともその運用には注意していかなければならない、こう思っております。
#13
○谷畑孝君 わかりました。
 官房長官、最後まで質問して申しわけなく思っていますけれども、あと二つほど独禁法の改正にかかわることで御質問をさせていただきたいと思います。
 独禁法という法律をイメージしますと、一つはいわゆるかみつかぬ番犬、こういうことがよく言われる。ニックネームですね、かみつかぬ番犬と。あるいは独占の友、また逆に消費者の味方独禁法と。あるいは、いわゆる経済の基本法という形におけるそういう役割、こういうようないろいろなイメージが実はあると思うんですね。そんなことを思う中で、公正取引委員会というもの自身はもちろん内閣官房長官のもとにあるわけでありますけれども、しかしまた通産省とかさまざまな他の行政庁とはまた少し違ったものも私はあると思うんですね。
 それで、官房長官の方から、公正取引委員会というものは一体行政ではどういう位置づけになっておるのか、どういうまた性格のものなのか、その点ひとつお聞きしたいと思います。
#14
○国務大臣(加藤紘一君) 公正取引委員会というのは、政府の行政機関の一つでございます。しかし、法律をよく見ますと、その第二十八条に「独立してその職権を行う。」というふうに書いてありまして、だからこそ在任中の身分を保障されている、これは三十一条ですけれども。こうありますように、普通人事とか給料だとか予算だとか、それから服務規律だとか、これはやはり行政の一つとして官房長官、私が所管大臣ですが、官房長官の指揮下に入りますけれども、具体的な運用、具体的な事件の取り扱い等につきましては独立して職務を行う、こういう種類のものではないだろうかなと思っております。ですから、具体的な事件について上の方からああしろこうしろということは一切行っていませんし、またやらないで独立してやってもらうという種類の独立行政機関と認識しております。
#15
○谷畑孝君 そうすると、加藤内閣官房長官、公正取引委員会というのは、もちろん行政の一環でもありますけれども、すぐれて独立性の高いものである、いわゆる公取自身が大きな権限も持っておりますし、刑事告発をしていく、そういうものもあるわけですから、ぜひその点はひとつ私どもの認識も位置づけをしておく必要があるのではないか、こう思うわけであります。
 つきましては、これは後ほどにまた総理府の方に、とりわけ公正取引委員会における人事の問題についてお聞きをしたいんです。そういう独立性を保っていくという観点に立っても、また公取委員会の人事というものはそういう趣旨でされなきゃならないと思うんです。これは一言で結構ですから、公正取引委員会の人事というものは一体どうあるべきなのか、官房長官としてどういう所見を持たれるか、お聞きします。
#16
○国務大臣(加藤紘一君) そういうある種の、ひとつ独立して職務を行う裁判官みたいなところもございますので、法律についての知識がなきゃいけない、それから経済の実務についての知識がなければいけない、しっかりとした判断力、見識がなければいけない、こういう条件が要るんではないだろうかな、こう思っております。
#17
○谷畑孝君 ということは、ある一つの団体を代表したり、あるいはまたある一つの業界を代表したり、またある一つの消費者なりそういう形だけの代表というもの、これもまたそれだけではいかぬということですね。少なくとも公平でなきゃならぬということですね。それはどうなんですか、しつこいようですけれども。
#18
○国務大臣(加藤紘一君) 全体で五人おりますが、各分野からということをいろいろ総合バランスして考えるわけです。これは国民から見ての信頼感、つまり消費者からも生産者の方からもいろんなところから見ても信頼感を持たれるという意味では、余り特定のにおいがつくということですとよくないんじゃないかと思うんですね。ですから、公正な感覚を持っている人という点は非常に重要な御指摘だと思います。
#19
○谷畑孝君 加藤官房長官におきましては退席されるということなので、これで質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、小粥公正取引委員長、御就任おめでとうございます。ぜひひとつ独禁法執行のために頑張っていただきたい、このように思っています。
 そこで、委員長にまず質問をしたいと思います。
 法人等の罰金の上限額の引き上げに見られる今回の独禁法の改正はどのような概要を持つものなのか。とりわけ、昨年四月に行われた課徴金の引き上げの法改正など、一連の違反行為に対する抑止力強化方針の中でどのように位置づけられるのか。昨年四月改正、そして七月に課徴金を引き上げました。その中で、一年もたたないで刑事罰強化ということで五百万円を一億円に引き上げる、こういうことについての位置づけと背景についてひとつ詳しくお聞きをいたします。
#20
○政府委員(小粥正巳君) ただいま谷畑先生から、昨年の課徴金の引き上げ、その直後と申しますか次の年に、先ほど官房長官から御説明を申し上げましたような理由で、今回独占禁止法違反行為についての法人についての刑事罰、罰金刑の上限の引き上げを内容とする法律案を提出したわけでございます。特にお尋ねの御趣旨は、課徴金の引き上げとの関連を主体としながらその背景はどうか、こういうお尋ねでございます。
 先ほど、私のごあいさつにも申し上げましたとおり、内外の情勢、特に国内におきましては消費者利益を念頭に置きながら政府の諸施策を進めていく、その中で独占禁止法違反行為に対する総合的な抑止力の強化を図っていく、このことは独占禁止政策あるいは競争政策を推進する上での実効のある手段をいわば担保するという趣旨でございますから、大変に重要な政策課題でございまして、この点は内外に宣明をしているところでございます。
 そこで、昨年課徴金を引き上げたてばないか、まずそういうお尋ねでございます。
 昨年、課徴金につきましては御案内のとおり、原則課徴金の率を四倍に引き上げるという大幅な引き上げを行いました。したがいまして、この点でまず独占禁止法における違反行為の抑止力の強化として大変大きな措置を実施したということになるわけでございます。
 ただ、御存じのとおり課徴金と申しますのは、カルテル行為によりまして、そのカルテルを行った企業側がいわば不当なあるいは不法な利益を得るということでございます。その行政処分といたしまして不当利得相当分を徴収する、いわば不当にもうけた分を吐き出させるということがこの課徴金制度の趣旨でございます。
 したがいまして、昨年、根拠を持ちまして原則四倍という大変大幅な課徴金制度の強化をいたしたわけでございますけれども、実はそれだけでは抑止力の総合的な強化という意味では十分ではない。今回お願いしておりますのは、課徴金とはまた別に、違法行為を行った事業主に対する制裁としての刑事罰でございます。
 この制裁としての刑事罰は、現行法では、違法行為を行った行為者個人並びに両罰規定によりましてその行為者の属する企業、事業主に対して、ともに罰金刑で上限額五百万円という規定があるところは御案内のとおりでございますが、最近の内外の動向といたしまして、いわゆる企業の行う犯罪、企業犯罪の問題に関連いたしまして企業処罰を強化すべきではないか、こういう声が内外から高まっているのがこの背景でございます。
 その背景のもとで考えますと、独占禁止法違反行為、とりわけその中でも最も違法性が高いと考えられておりますカルテル等の典型的な企業犯罪、この点につきましては、現行法の両罰規定による個人行為と同じ上限五百万円という罰金では、端的に申しまして軽過ぎるのではないか、そういう問題意識でございます。
 現在の経済社会の中で、一般的に申せば、企業はかなり巨大な資力を有しているわけでございます。その企業が経済社会のいわば基本的なルールであります独占禁止法に違反する、その中でも特に悪質と考えられるカルテル行為によって不法な利得を得る。これに対して、先ほど申しましたように、課徴金の大幅引き上げということで不法な利得の吐き出しというところまではほぼ十分に抑えたというところでございますけれども、それにとどまらず、いわば刑事法制における刑事罰、制裁として五百万円では水準としていかにも低過ぎる、これを大幅に引き上げてはどうかと。これが今回の御提案申し上げております独占禁止法改正案の骨子でございます。
 しかも、これも御案内のように、先ほど両罰規定と申し上げましたが、違反行為を行った行為者個人と、その個人の属する企業、事業主とについて両罰規定でいわば罰金額の上限というものが連動しております。つまり、行為者個人も企業も同じというのが現在の法制度でございます。これはまた独占禁止法に限りません。現在の我が国の刑事法制におきましては、法人を罰する場合には、一般的に両罰規定の規定によって行われているところも御存じのとおりでございます。
 しかし、この点につきましては、さきに法制審議会の刑事法部会で慎重な御議論をいただきまして、その結果、連動規定についていわゆる切り離し、この方向がはっきりと了承されたわけであります。これを踏まえますと、行為者個人と切り離して企業に対する刑事罰の引き上げを行うといういわば背景もできてきたわけでございますから、先ほど来申し上げております独占禁止法違反行為に対する抑止力の文字どおり総合的な強化を図るために、今回、制裁としての刑事罰、罰金刑の上限を企業について、事業主について大幅に引き上げたという内容の御提案を申し上げたわけでございます。
#21
○谷畑孝君 そうすると、今回の独占禁止法の改正は、昨年の課徴金の引き上げということの抑止力にプラスしていわゆる刑事罰の強化、こういう二つの抑止力をもって独占禁止法を施行していく、そういう強化の一環である、そういうお話であった、こう思うんですね。
 それはまた、言いかえれば、いわゆる日米構造協議の中でも、とりわけ独占禁止法にかかわる点についてアメリカ側からの要請も非常に強いものがあると私は思うんですね。アメリカのウィリアムズ通商代表部次席代表が、日米構造協議の中で、日本の独占禁止法は有効に機能していないと。その原因は、まずカルテルなど違法行為に対する罰金が低過ぎるんだと。そして、これでは談合、価格協定、競争制限などをやった方が得だと。そういうような趣旨の発言があった。こういうふうに私どもは聞いておるわけでございます。
 そういうことから見れば、この課徴金も結局やみカルテルで不当に上げた利益を返す、こういうことですから、それ以上に取るというわけではありませんから、だからその利益のうちの何ほかを払うということになれば、払ってもまだ利益があるということになれば、これはやり得ということになってきますね。そして、厳密にやみカルテルがすべて摘発されていくわけではないですから、やっぱりすれすれのところもあるし、ほとんどはやみに葬ったままになってしまうという、こういうところはよくあると私は思うんです。それで、課徴金も傾向としては業界も大体決まっておるというような状況もあると思うんです。また、過去の刑事告発した場合もそうだと思うんです。
 これは委員長、過去、独占禁止法が施行されて、刑事罰というのは何回告発されたんですか。独占禁止法が施行されて何回刑事告発されましたか。
#22
○政府委員(糸田省吾君) 独占禁止法違反で刑事告発を行ったケースでございますけれども、例えばカルテルについて申し上げれば、第一次石油危機の際のいわゆる石油やみカルテル事件、それから昨年のいわゆるラップのカルテル事件、この二件でございます。その他、手続違反というようなことでの告発というのが過去にあったのは事実でございます。
#23
○谷畑孝君 いや、刑事告発は独占禁止法が施行されて何回しましたか。三回ですか。
#24
○政府委員(糸田省吾君) いわゆる独占禁止法の実体規定違反ということで、カルテルを例にとって今申し上げているわけでございますけれども、カルテルに関して申し上げれば、石油やみカルテル事件、それから昨年のいわゆるラップの価格カルテル事件、この二件がございます。
#25
○谷畑孝君 いずれにしても、日米構造協議の中で、そのように談合、価格協定、競争制限など、やり得な状況があるという非常にきつい要請がある、こういうように聞いておるわけでありますけれども、今回のこの法改正に基づいて、いわゆる課徴金制度と刑事罰の強化ということの中で抑止力をさらに強化していく必要があるんじゃないか、こういう立場で私どもはおるわけでございます。
 そういう意味では、刑事罰研究会等の報告も含めて後ほどまた質問しますけれども、さらに私ども社会党としては、政策を強化していく中で、衆議院においてはいわゆる対案を出して審議を図ってきたところである、こういうように申し上げておきたいと思います。
 次に、角度を変えまして、公取委員長にお聞きするんですが、昨年の課徴金の引き上げに続く今回の法改正をしていくわけですが、一昨年六月に刑事告発への積極的な方針というものが公取の方で出された、このように聞いております。そしてまた、昨年一月には、検察庁との間で告発問題協議会というのが設置されて、そして、そういう結果の中で昨年十一月、石油カルテル以来十七年ぶりに刑事告発を実施した、こういうように私どもは見ておるわけであります。最近の一連の流れを見ていく中で、従来の行政処分中心であった独禁法の運用に今後アメリカ型のような刑事罰の運用も積極的に取り入れていく姿勢なのかどうか、その点ひとつ公取委員長の方からお聞きしたいと思います。
#26
○政府委員(小粥正巳君) ただいまのお尋ねでございますけれども、御案内のように、先ほど来御議論になっております課徴金制度でございますが、これは御承知のとおり昭和五十二年の独占禁止法改正で導入されました。それ以来、実は公正取引委員会といたしましては、独占禁止法違反行為の抑止につきましては専らこの課徴金の納付を命ずる、カルテル行為等に対してでありますけれども、これによっていわば抑止を図ってきた、これが運用の実態でございました。それは事実でございます。
 しかし、ただいまも御指摘ございました、実は一昨年でございますけれども平成二年六月二十日、「独占禁止法違反に対する刑事告発に関する公正取引委員会の方針」というものを公表いたしました。この内容につきましてはもうつとに御案内のとおりでございますけれども、特にその「一定の取引分野における競争を実質的に制限する価格カルテル、供給量制限カルテル、市場分割協定、入札談合」等の「違反行為であって国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案」等につきまして、今後は「積極的に刑事処罰を求めて告発を行う方針である。」、これを内外に宣明したところでございます。
 したがいまして、この告発方針公表以後におきまして、公正取引委員会といたしまして、犯罪ありと思料するに足る具体的事実があり、かつ今申し上げましたいわゆる告発方針に該当する事案につきましては積極的に刑事告発を行ってまいる所存でございます。したがいまして、その意味では従来の法運用の実態を、刑事告発を必要に応じて積極的に運用していく、こういう方針をさらに明らかにしたところでございます。
 ただし、一言つけ加えますれば、刑事告発は行政機関であります公正取引委員会が独禁法違反行為に対して用い得るいわばある意味では最後の手段である、そういうことでもございますから、運用の方針として基本的に行政処分でこれは排除措置、そしてカルテル等につきましては課徴金納付を命ずる、こういう内容でございますが、基本的に行政処分で対応可能なものにつきましては当然これまでと同様に行政処分にとどまる。その運用につきましては特に変更はございませんけれども、従来の運用の実態にさらにつけ加えまして、特に先ほど申し上げました国民生活に広い影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案等につきましては積極的にその告発を行ってまいる、そういう方針を新たに宣明したということでございます。
#27
○谷畑孝君 いわゆる従来の行政処分というのか、課徴金を通じてあるいは排除していくという行政指導というのか、さらにそれを強化しながら、同時に国民生活に影響を与える悪質なものについては刑事罰の告発も辞さない、そういうことについては大いに従来よりも積極的にやっていく、こういうことですね、間違いないですね、確認しておきます。
#28
○政府委員(小粥正巳君) ただいま谷畑委員の御指摘のとおりでございます。
#29
○谷畑孝君 確かに、独占禁止法は戦後数回改正をしているわけなんですけれども、これも戦後の日本の国民生活あるいは経済という状況にもちろん影響を受けながら、またそういう状況の中で改正をしてきたと思うんです。
 戦後間もないころではもちろんアメリカによる独占の解体ということから始まっていくわけなんですけれども、同時にまた、焼け野原から日本の今日の経済発展を達成していくに当たっては通商政策なり、あるいは産業政策いろいろ含めまして、あるときには企業自身の育成といいましょうか、そういうことの中で雇用を拡大し高度経済成長を発展させていく、そういうときには独占禁止法を文字どおりそのまま厳密にやっていきますと、これやはり大きく心臓をえぐり裂いていくといういわゆる両刃の剣という点もございますから、そういう要素もあったと思うんです。
 しかし今日、例えばバブル経済の問題で法人等含めてが土地そのもの自身も投機の対象にしてしまったり、いわゆる企業に対する犯罪、例えば過日の株の補てんに対しても、これも厳密に言えば公正取引ということから見たら、損失すれば補てんしますよと、しかもそれも大企業と大事業団だけが補てんされて、個人が買ったNTT株、大蔵省が放出した株をなけなしの金で買ったものが下がりまくってけしからぬという、こういう国民の怒りというのがありますね。
 そういう消費者の怒りだとかそういう状況の中で、今日企業も企業市民社会というようにして少しずつ変わりつつあるんですね。企業だってもう今は利潤追求だけではだめだ、やはり市民社会というのか皆さんと一緒になって、ボランティアのために有給休暇をもっとやろうじゃないかと、企業自身も社会に尊敬される、そういう企業にならなければならぬ、こう大きく変わってきたんじゃないかと私は思うんです。
 あるいはまた、私前々回ですか通産のときにもお話しさせてもらったんですが、例えばかんばん方式と言われるもので、もちろん日本の今日を豊かにしてきた。ねじ一本何時何分に持ってこいと。そしたら確かにその企業は倉庫を持たなくていいですから、その分だけ経費は浮く。ベルトが回っている。しかし、倉庫は路上にあふれまくって、皆車に乗ってCO2を放出しながらねじ一本のために企業へ行かなければならない。企業の合理性にとっては正義だと思うんですね、コストを低くし国際競争に勝っていく。これは紛れもなく日本を今日の豊かな国に仕上げてきた根源であると私は思うんです。
 しかし今日、それは企業にとっては合理的かもわからぬけれども、生活者から見たら余りにもいかぬじゃないか、こういう時代に来たと思うんです。そういうことですから、独禁法もこの時代に合わして、やっぱり企業市民社会と同じように独禁法だってもう少し消費者の立場に立っていく、そういう形をとらないと私は納得できないと思うんです。そういう意味では、ぜひひとつ刑事罰の強化ということと、従来の課徴金含めての行政指導、こういうことを上手に組み合わせながら強化していただきたい。こういうことを再度公取委員長にお願いを含めて、私の意見として申し上げておきたいと思います。
 次に、観点を変えまして法務省に少しお聞きしたいんです。
 最近、企業犯罪が非常に大きくなってきておりますし、また多発してきておる、こう思うんです。そこで、企業自身を罰するという方法は、私も専門家じゃないので余り深くわかりませんが、刑法の両罰規定ということによって、いわゆる企業自身が自然人じゃございませんので、犯罪だということで刑罰を与えてそして刑務所に拘束すみというこんなことはできないわけで、やっぱり犯罪はまず自然人であるだれがやったかという確定をしないと、企業自身に対してもお前が悪いんだと、こういうことになかなかならない。こういうことは刑法としては私はあると思うんですね。
 しかし最近は、先ほど言いましたように、個人に対して、自然人に対して犯罪の構成を固めることがなかなかできなかった。しかし、あの企業がやみカルテルした、あの企業が談合した、こういうことは皆わかっておるわけで、何でその場合企業をもっと罰則してくれないのか。強いて言えば、企業を刑務所にほうり込んでくれないのか、こういうような気持ちが我々国民としてはあると思うんですね。そこで、今回の独禁法の改正においては、とりわけ両罰規定のとらえ方、そういうことが大きな一つの柱になってきます。
 そこで、法務省にお聞きするんですが、法制審議会刑事法部会の中で、両罰規定の見直しということについてどういうような経緯と、またどういうような結論になって今日の独占禁止法のいわゆる両罰規定の見直しということに連動してくるのか、その点、法務省の立場からお聞きしたいと思います。
#30
○政府委員(山本和昭君) 両罰規定におきます業務主に対する罰金の上限と、それから行為者の罰金の上限の切り離しの問題についてどういう経緯でそうなったのかということについてまず申し上げますと、平成二年十二月の法制審議会の刑事法部会におきまして、この問題について四項目のうちの一つとして検討しようということになったわけでございます。平成三年夏にいわゆる証券不祥事というものが起こりまして、法人等業務主に対して十分な抑止力を持った制裁というものが必要ではないかということが持ち上がりまして、そしてこの両罰規定切り離しの問題が緊急の課題だということで、昨年十二月二日に刑事法部会におきまして、現行の両罰規定における法人等業務主に対する罰金額と行為者に対する罰金額の連動を切り離すことの可否について検討を加えました結果、両罰規定の沿革、法人等の処罰根拠、行為者に対する法定刑等の比較から見て、切り離しは理論的に可能であるという結論に至ったのでございます。
 その根拠として一番大きいものは、罰金刑が財産的不利益による制裁であって、その制裁としての効果はこれを受ける者の資力に応じて異なる性格を有するということで、当該罰則が対象としている法人等業務主の規模によっては資力において個人を大幅に上回るものがあって、このような法人等に対する制裁としての効果を十分ならしめるには、両者を切り離して法人等業務主に対する罰金額を大幅に引き上げる必要があるという意見が大勢を占めまして、法制審議会の結論に至ったわけでございます。
 これを受けまして、先国会で証券取引法におきまして、この切り離しということの第一号の実現を見たわけでございますが、今回の独禁法改正ということもこの法制審議会の考え方の延長線上にあるものとして評価しております。
#31
○谷畑孝君 今のお話で、両罰規定の切り離しが可能である、そういう結論に達したということですね。
 そこで、公正取引委員会にお聞きするわけですが、このように両罰規定が切り離しをされるということは非常に僕は画期的なことだと思うんです。というのは、今までだったら連動するわけですから、どうしても犯罪は自然人である個人に、犯罪の構成要件、証拠固めをして、それを犯罪ということに確定して、それで刑事告発ということにしていくんですね。しかし、連動する場合は、それを決定しても企業者は、五百万円の罰金であれば企業も五百万円の罰金で、それ以上企業に対して刑事の罰金を科すことができない。これは運動の欠点だと思うんです。
 切り離しによってそういうことは可能になった、私はそう思うんです。だから、公正委員会としては、この切り離しという問題をもっと積極的に応用する意思があるのかないのか。また同時に、例えば両罰規定という問題はせっかく切り離しを得たわけでありますから、例えば共同ボイコットの問題だけじゃなくて、再販価格維持行為だとか、その他の形においても両罰規定の対象というのか、そういうことに広げていく、そういう所存であるのかどうか。いわゆる両罰規定について公正委員会としてどういうような所存であるのか、これらの所見をお聞きいたします。
#32
○政府委員(小粥正巳君) ただいまのお尋ねは、既に法制審議会においても、現在の刑事法制におきまして一般的な考え方になっております両罰規定の切り離しが可能である、そういう御了承が得られた。その前提で、しからば独占禁止法においてその切り離しをどこまで行うべきかという点についてのお尋ねであろうかと存じます。
 そこで、政府がこのたび御提案申し上げております両罰規定を切り離して事業者に対する罰金刑の上限を大幅に引き上げるべし、こう主張しておりますいわば違法行為の範囲は、独占禁止法の第八十九条、この対象になる私的独占と不当な取引制限、それから事業者団体の不当な取引制限に係る行為、こういうことに実は限っているわけでございます。
 ただいまのお尋ねのように、両罰規定は独占禁止法上その他の罪についてもございます。したがいまして、なぜ政府案でこの八十九条だけに限るのか、その他の点についてはどう考えているのか、こういうお尋ねであろうかと存じます。
 一般的に考えまして、両罰規定を切り離す場合に、それではどの罪について引き上げを行い、どの罪はそのままにしておくかという点は、当然のことながらそれぞれの罪の重大性、それから刑事処罰規定でございますから、いわば構成要件的な特質、それに刑事政策上の必要性、こういうものを総合的に勘案いたしまして、結果的に独禁法違反事業者に科せられる罰金刑が、先ほど来申し上げております抑止力として十分機能するものかどうか、そういう観点から個別に決められるべきものである。したがいまして、切り離しが了承された以上、今度は両罰規定が対象とする罪すべてを一律に引き上げるということが必ずしも妥当であるとは言えないのではないか、おのずからその罪の違法行為についての軽重の差というものがあろうか、こういうことでございます。
 そこで、ただいま法務省の方から御説明がありました法制審議会刑事法部会における御了承を踏まえながら、独占禁止法に関する刑事罰研究会報告書というものが先般公表されたわけでございますけれども、その中でも、どの罪に対して切り離して罰金刑を引き上げるべきかという問題についでは、第八十九条の対象となる私的独占及び不当な取引制限、この行為は言うまでもなく、市場における競争の実質的制限をもたらすいわば典型的な、そしてまた重大な独占禁止法違反行為である。先ほど来委員も強調なさいましたように、これは一般消費者の利益を甚だしく害するものである。ほかの両罰規定の対象になっております独禁法上の罪というものはいろいろございますけれども、これに比べてやはり侵害の程度、非難さるべき度合いが著しく高いであろう。したがいまして、国民経済に与える影響も重大である、社会的にも強い非難に値するということであれば、その両罰規定の対象になっている幾つかの行為の中でも、特にこの点に着目して刑事罰を強化することが妥当ではないか、そういう考え方に立ったわけでございます。
 そのようなことで、八十九条の対象に限って今回の両罰規定の切り離しを前提として、事業主に対する罰金刑の上限を行為者等と区別いたしまして大幅に引き上げる、こういう内容の御提案を申し上げたわけでございます。
#33
○谷畑孝君 結局は、委員長、こういうことですね。両罰規定の運動の切り離しによって、企業においては資金力だとか資本力だとか、そういうことの考慮によって、あるいはまたその悪質さの度合いとか、そういうことによって大きく罰金をかけることができる、こういうことですね。これはケース・バイ・ケースに基づいて応用していくんだ、こういうことですね。だから、今法制の方からも説明がございましたように、両罰規定がすべて切り離しじゃなくて、時には連動ももちろん従来どおりあるし切り離しもある、こういうことですから、それはあくまでもさまざまのその事案の経緯によって判断をしていく、こういうことだと今私は思ったわけですが、それでいいわけですね。
#34
○政府委員(小粥正巳君) 谷畑委員のおっしゃるとおりでございます。
#35
○谷畑孝君 そこで、企業といっても株式会社といっても、家族だけでの株式会社もあれば本当に大独占の会社もある、こういうことであります。しかし、独占禁止法にうたっているところの違反行為というのは基本的には私的独占ですからね。これはやっぱり基本的には大企業であらなきゃならぬわけであります。しかし、時たま刑事告発のされたところを見てみますと、世間話に聞くところでは、いや、もう小さなところばっかし告発されて、大きいところは一つも引っかかってこない、こういう話もよくあります。この両罰規定の切り離しの中で、その点ひとつ個別に応用をしながら、庶民がああようやったなと、こういうようにぜひしていただくことを私どもは再度強く申し入れておきます。
 次に、もうこれで両罰規定についてはこの質問で終わりたいと思うんですが、法務省と公取に、僕らはもう素人で本当に申しわけないと思うんですけれども、公取の方で率直に言って、この企業は確実にやみカルテルもやったあるいは談合もやっている、自然人である個人についてはなかなか証拠を固めることができなかった。過日、埼玉県公共工事入札談合事件の問題で告発を断念した、こういう話があるんですが、この断念をしたというところにおいて、やはり個人の証拠固めが非常に不十分の中で、残念ながら告発を断念したんだ、こうなっておるんです。
 例えば九十五条の両罰規定の中では、個人の行為を確定せずとも企業に対して刑事罰を科することができるという、公取の方でそういう方法というのはないものでしょうかね。法的には難しいんだろうとは思うんですが、そのあたり、公取と法務省と両方からひとつ答えていただけたら、どうなんですかね。
#36
○政府委員(山本和昭君) 理論的に申しますと、法人そのものの行為を認めみかどうかとか、あるいは両罰規定をどうとらえるかというようなことをめぐりましていろいろ学説上の対立もあるわけでございます。
 一般論として申し上げますと、具体的な違反行為は実際上個々の自然人が行うものでございます。法人の活動といいましても具体的には個々の自然人が行うものである。そこで、だれがいつどこでどのような行為をしたかということが証拠上特定できなければ、法人等の違反事実の内容も立証が困難であるというのが通常であるというぐあいに理解しております。
#37
○谷畑孝君 公取の方で、いわゆる企業だけ独禁法の法律に基づいて罰金を科するという方法はあるんですかないんですか。
#38
○政府委員(小粥正巳君) ただいまお尋ねの点につきましては、先ほど法務省の方からお答えがありましたとおりであろうかと思います。結局、この独占禁止法を含めまして広く我が国の企業刑事法制全般の枠組みの中で検討されるべき問題であろうかと思いますので、独占禁止法を直接所管しております私どもの法のいわば解釈、運用ということで、ただいまお尋ねのように個人の行為者の違反行為が特定できなくとも直接事業者、企業そのものを処罰するということは現行法制の枠組みではできない。これは広く一般的に検討されるべき問題だろうかと心得ております。
 ただ、一言つけ加えさせていただきますれば、ただいまのお尋ねは刑事罰の範疇の問題でございますけれども、私ども行政官庁としての公正取引委員会として、例えば典型的なカルテルのように企業の違法行為であるということで、いわば行政庁といたしましてこれに対して適切な排除措置をとる。そしてカルテルであれば、先ほど申しましたように、昨年大幅に引き上げられました課徴金の納付命令を行うこともケースによっては十分あり得るわけでありますから、独占禁止法の運用において、行政処分として企業に対して従来も公正取引委員会としては適切な対応をしてきたと考えておりますし、これからもその点は変わりないわけでございます。この点をつけ加えさせていただきます。
#39
○谷畑孝君 わかりました。
 今の、企業を刑事罰で罰していくということは現行法の中ではなかなか難しい、そうだろうと思います。これは一つの大きな課題として、今後の長い将来の中で企業犯罪が頻発してくるわけですから、そういう点についてひとつまたぜひ研究をしていく必要があるんじゃないかな、こういうふうに思っております。
 次に、公取の方にお聞きをしたいんですが、いわゆる刑事罰研究会が持たれて、今回の刑事罰強化の法改正がなされていくわけですが、とりわけ罰金の数値というか、数億円という報告があった。私もその報告書を読んでおるわけですが、そこらの点、刑事罰研究会の罰金の数値に対しての報告というのはどういう報告だったのか、確認のためにお聞きをいたします。
#40
○政府委員(小粥正巳君) ただいまのお尋ねは、独占禁止法に関する刑事罰研究会のこれはことしの三月に公表されたものでございますが、そのいわば結論として、企業に対する八十九条違反の行為についての罰金刑の上限引き上げの水準についてどのような考え方をお示しかというところをかいつまんで申し上げたいと思います。
 刑事罰研究会の報告によりますと、企業に対する罰金刑の水準は独占禁止法の趣旨、目的、違反行為の性質などを踏まえ、企業と個人の資力の格差、諸外国の法制との比較、さらに課徴金制度の存在等の諸点を総合的に勘案して決定する必要がある。そしてその結果、先ほど申し上げました独占禁止法八十九条違反、私的独占及びカルテルについて水準としては数億円程度の水準に引き上げることが必要である、このような御提言をいただいているところでございます。
#41
○谷畑孝君 そこで、「罰金刑の法定刑である五百万円を数億円程度の水準に引き上げることが必要である。」、このように刑事罰研究会が報告をしたということですね。そうすると、本来ならさまざまの慎重審議をし、各方面の専門家の意見の中でそういう報告書が出されたわけですから、しかも先ほど公取委員長のお話にもありましたように、これからは刑事罰を強化していくんだ、抑止力としてそういうものを強化していくんだ、こういう発言からいえば、数億円という限りは最低三億から五億の間だ。私ども社会党は衆議院におきましては五億円が妥当である、こういうようにして対案を出したわけなんですけれども、数億円ということと一億円と、これ大分違うと思うんですが、その点どうなんですか。
#42
○政府委員(小粥正巳君) ただいまのお尋ねは、刑事罰研究会の御報告では、結論として「数億円程度の水準」、こういうお示しであるわけでございます。
 この数億円という表現でございますけれども、先ほど刑事罰研究会の御報告の結論として、この水準を考えるについて勘案すべき諸点というものを私がいつまんで申し上げたわけであります。これをどのように勘案するかということについては当然さまざまな意見があり得るわけでありますが、研究会の方も明示的に確定した数字ではお示しになっておられません、数億円ということでございます。
 あえて申せば、一義的には決定しがたい、あるいは研究会におかれても必ずしも決定する必要がない、数億円という表現によりましていずれにしても大幅な引き上げが必要である。それから、その引き上げのめどとして数億円程度という表現をお使いになっていらっしゃるわけでございますけれども、研究会において一義的には御決定をなさらないで、いわば政府においてその点をよく考えて研究会の報告書を踏まえて対応してほしい、そういう御趣旨がと私ども考えたわけでございます。
 そこで、このような研究会の御報告をいただきまして、これを踏まえながら今回の独占禁止法の改正案の作業に入ったわけでございますけれども、端的に申せば、私どもせっかく有識者の先生方によってこのような立派な御報告書をいただいたわけでございますから、この報告書の基本的な方向を踏まえなければいけないことは当然でございます。
 その上で御提案申し上げます罰金刑の引き上げ水準につきましては、この法律を作成いたしました時点でいわば社会の大方の理解が得られるということがどうしても必要であろう、そしてまたその理解を得るために、私ども政府部内の作業でございますけれども、調整過程を経まして、その結果、御提案申し上げておりますように、事業者に対する罰金刑の上限を現行の五百万円から二十倍の一億円とするのが結論として適当と考えたわけでございます。
 ただいま、研究会御報告の基本的方向を踏まえながらさらに法案作成作業の過程で大方の理解を得るということを申し上げましたが、その点を簡単に補足をさせていただきますと、申すまでもなく独占禁止法は我が国経済のいわば基本的な法律でございます。したがいまして、これを改正するという場合には当然広く各界、とりわけ経済社会に及ぼす影響は大変大きいわけでございます。したがいまして、法案作成の過程におきましては経済界を初めといたしまして、あるいは各産業を所掌する関係省庁等、広く各界のいろいろ御意見も伺い、調整過程を経ながら、最終的に現時点では、申し上げましたような大方の理解がこれでよろしいということではなくても、あえて申せばやむを得ない、そういういわばぎりぎりの水準として、研究会の報告の基本的方向に沿って大幅な引き上げという意味で一億円という水準を結論としては適当と考えて御提案申し上げた次第でございます。
#43
○谷畑孝君 この一億円ということなんですが、外国との比較をしましたら、アメリカでは一千万ドル、日本円で十三から十四億円、カナダではこれも一千万ドルで、日本円では十一億から十二億円、ECの百万ECUということになりますと、日本円で一億六千六百万円、こういうふうにして各国と比較しますと非常に高いものになっている。
 それで、上限の刑事罰一億円の罰金ですけれども、すべての違反に対して刑事罰、告発されたところに対してすべて一億円じゃないですね、一万円から一億円の間ですから、しかもそれぞれの事案によっていわば判断していくわけですから。しかも、法務省等の話では運動というものもあるし、切り離しもある、こういうことです。だから、その一番上のてっぺんが一億ということですから、私はこれは低いと思うんです。
 バブルで、土地三百坪が今まで一億円であったものが今やもう十億になったりして、本当にそんなに上がってきた状況で、今はそれも大分下がったということでありますけれども、私的独占の悪質な、しかもやみカルテルを含めて不当に価格をつり上げてきた、それで不当に利益を得た。こういうことですから、これに対する最高の抑止力は刑事罰でしょう、刑事告発でしょう、委員長。
 そういう点から見たらどうですか。世界の水準から見ても、これは刑事罰研究会が報告した数億円ということであれば数億円にする方がいいんじゃないですか、その点どうなんですか。
#44
○政府委員(小粥正巳君) ただいまの研究会の御報告にも数億円というお示しがございます。
 谷畑委員御指摘のように、外国の法制、端的に罰金額の上限という点で比較をいたしますと、確かにアメリカ、カナダ等、今回政府が御提案申し上げております一億円という水準よりもはるかに高い罰金刑の上限を法制上有している他の先進国もあるという御指摘は全くそのとおりでございます。そのようなことを、私どももこの改正法案を作成いたします過程ではそれなりに考慮したところでございます。先ほど、今回の引き上げにつきまして社会の大方の理解を得ることが必要であったと申し上げましたが、その点をもう少し申し上げさせていただきます。
 先ほど法務省の方から御説明がありました、罰金刑の上限を従業員等行為者個人と事業主、企業との間で連動してきた、これが長い間我が国刑事法制上の基本的な考え方であったことは先ほど来御議論にあったとおりでございます。そして昨年、証券取引法の改正によってこの連動の切り離しの第一号が見られだということも、先ほど法務省から御説明がありました。
 今回、この独占禁止法改正案を成立させていただけるとすればこれが第二号ということになりますが、いずれにしましても従来になかったいわば企業法制の枠組みをかなり思い切って変更するということには間違いございません。このような長年にわたる企業刑事法制の枠組みを変えるというこの意味は非常に大きい、あるいはこの改正がもたらす企業に対する影響というものの大きさをやはり十分考慮する必要があるであろう、こういうことが一つでございます。
 それから二つ目に、先ほど外国の例をお引きになりました。ただ、カルテル等の独占禁止法違反行為で最も本質的なものに対します広い意味での制裁のあり方は、御存じのように国によってかなり違っております。そして、先ほど来お話がございましたように、昨年大幅に引き上げました課徴金という制度、カルテルによる不当な利得を徴収するという課徴金制度は、実は我が国の独占禁止法にのみ認められているいわば我が国固有の制度でございます。
 課徴金制度は、先ほど申し上げましたように、カルテルによる不当な利得を返還させるということでありますから、言ってみれば現状回復にとどまるということではございますけれども、しかし、これは違反行為を行いました企業に対していわば金銭的、財産的な負担を課するという意味で企業にとって非常に大きな負担であることは間違いはございません。そこに、今回引き上げを御提案申し上げております罰金刑がいわば加重されるということになりますから、課徴金を大幅に引き上げたばかりという、いわば我が国における独禁法違反行為に対する法の枠組みの最近の変更と申しますか、この点をやはり今回どうしても勘案する必要があったということでございます。
 私ども、今回の罰金刑の上限引き上げがまだ不十分であるという谷畑委員の御指摘も謙虚に承りますけれども、ただ、今るる申し上げました、我が国の独占禁止法が違反行為に対して、特にカルテル行為については課徴金制度を持っており、これが大幅に引き上げられたばかりという点は、今回の罰金刑の上限引き上げにはどうしても考慮されるべき重要な点であろうかと思います。
 このような企業刑事法制上のいわば基本的事項の変更ということについて、関係者、経済社会においても企業に負担を課す問題でございますから、それで結構だというお答えはなかなか出てこないでございましょうけれども、先ほど来谷畑委員も御指摘の内外の諸情勢からしまして、このようないわば一般的な意味での違反行為に対する制裁が、課徴金も刑事罰も両々相まって大幅に強化されるということはやむを得ないんだ、こういうコンセンサスを得られなければなかなか政府の立法作業は円滑にまいらない、こういうことにつきましてはぜひ御理解を賜りたいと存じます。
 なお、もう一言つけ加えさせていただきますと、これも谷畑委員がただいま御指摘なさいましたように、これはあくまで罰金額の上限でございます。したがいまして、具体的にこの罰金額の上限が法律として成立をさせていただきまして、これが実際に適用される場合のことを考えてみますと、これは検察庁が求刑をされる、それからそれに基づいて裁判が行われまして、結論的に裁判所がどのように量刑をされるか。この求刑あるいは量刑の考え方の中で、当然に上限一億円から一万円の間というお話でございますが、全くその間で検察庁の求刑、そして裁判所の量刑が行われるわけでございます。
 ただし、申すまでもなく、我が国の企業には数といたしますと中小事業者が圧倒的に多いわけでございます。この中小企業の方々からは、私どもの法改正作業の過程で、罰金刑の上限が一挙に二十倍に引き上げられると非常に大幅な引き上げで、いかにこれが上限であるということを申し上げましても、中小事業者の方々とされますと、規模、資力に比して何か非常に過酷な罰金が科せられるのではないか、そういう不安感がかなり私どもの方にも寄せられたこと、これも事実でございます。
 以上、多少重複して申し上げましたけれども、このような諸点を勘案いたしまして、今、谷畑委員の御指摘も十分承りながら、政府の今回の改正作業といたしましては、結論として法改正についてのコンセンサスを得られるぎりぎりの限度としての一億円、これは先生は御不満でございましょうけれども、大幅な引き上げであるという点はぜひひとつお認めをいただければというふうに思います。
#45
○谷畑孝君 委員長、そんななまぬるいことではだめなんですよ。きょう加藤内閣官房長官にもお聞きしたように、公正取引委員会というのは行政の一員でもあるけれども、しかし独立性の高いものだと。いわゆる経済憲法の頂点に立つ委員長なんですよ。堂々と富士さんのようにそびえ立ってぐっとしていただかないと、公取の行政は運営はできないんじゃないかこう私は思うんです。
   〔委員長退席、理事松尾官平君着席〕
 例えば、確かに罰則金を引き上げるに当たっては、おっしゃるとおり中小企業もありますし、さまざまな業界もあります。いや、それでは困ると。それは当然理解しないことではございません。それは一万円から一億円があるわけなんですから、その間の中でやって、抑止力ということの中で、どういう圧力があろうと、どういう声があろうと、やっぱり公取の独立性ということの中で強い意志が必要であったのではないか。そういう意味で、五億円の罰金刑にすべきだ、こういうのが私ども社会党の考えであり態度である。こういうことを申し上げて、ぜひそういう独立性をひとつ強く持っていただきたいということを申し上げて、次の問題に移ってまいりたいと思います。
 これも公取にお聞きしたいんですが、衆議院の議事録あるいは新聞記事とかいろいろ見ておりましたら、とりわけ最近、談合の問題で非常に紙面をにぎわしております。談合というのはこれまた世界語になるぐらいに、いわゆる密室の中で、しかもお互いが決めて、次はあなたの番というようなことで、入札を含めての価格をつり上げていくという非常に悪質なものである、そういうように感じるんです。
 埼玉県の公共工事入札談合事件で、公取の告発断念と、こういうことについてなぜ告発ができないのか、そういうことに怒りを持つ者なんです。また片方では、この法改正によって刑事罰の告発を強化していくんだと、きょうの私の質問の中で、公取委員長の方から強い決意もお聞きしました。そしてまた、昨年十一月には、石油カルテル以来十七年ぶりにいわゆる業務用ラップメーカーへの刑事告発を実施した。こういうことを見ますと、刑事罰告発というものが強化されてきているのかなと。片方では告発とりやめということ。これは一体どういうスタンスなのか。私どもも非常に不可解になってくるわけなんです。
 そこで、何を告発して何を告発しないのか。時間がありませんから非常に簡単でいいですから、公取の方からひとつ簡潔に答えていただきたいと思います。
#46
○政府委員(糸田省吾君) 先ほど来公正取引委員会委員長が申し上げておりますとおり、平成二年六月に私どもは、積極的に刑事処罰を含めて告発をする方針であるという趣旨のことを発表したところでございます。以後その方針に基づきまして、その方針に該当するということ、あるいはもともと独占禁止法に違反する犯罪ありと思料する事実につきまして積極的に告発を行っていくということでございます。
#47
○谷畑孝君 そうすると、たび重なる悪質なものについては独禁法の改正に基づいて、それを施行するに当たって刑事罰の告発をも強化していくんだ、こういうことですね。
#48
○政府委員(糸田省吾君) 独占禁止法に違反する犯罪ありと思料する事実につきまして、平成二年六月に発表いたしました告発方針、これに相当すると認められるものにつきまして告発を行っていくということでございます。
#49
○谷畑孝君 それでは、法務省にお聞きするんですが、ことしの十一月に東京地検特捜部は、社会保険庁発注の年金通知用シールの入札談合事件で、印刷業界最大手の大日本印刷と大手のトッパン・ムーアの幹部ら八人を刑法の談合罪で逮捕しておりますね。また、別の談合罪で起訴している三人を同容疑で再逮捕した、こういうように新聞では報じられておるわけでありますが、法務省にこの事件についての概要、現在の状況ということについてひとつ詳しく教えていただきたいと思うんです。
#50
○政府委員(山本和昭君) いわゆる社会保険庁発注の印刷物調達に関する入札談合事件につきましては、東京地検が本年十月十二日に強制捜査に着手し、以後所要の捜査を遂げまして、十一月二日に小林記録紙株式会社東京支店の営業部長ら五名を競売入札妨害罪により公判請求し、さらに十一月二十五日に同営業部長ら八名を競売入札妨害罪により公判請求しております。
 公訴事実の概要でございますが、大日本印刷株式会社ほか四社の課長らが共謀の上、社会保険庁発注に係る支払い通知書等貼付用のシールの印刷納入に関する指名競争入札に参加するに当たり、平成二年四月上旬ごろから同四年八月下旬ごろまでの間四回にわたり公正な価格を害し、かつ不正の利益を得る目的で談合した、こういう公訴事実で公判請求をしたところでございます。
#51
○谷畑孝君 この社会保険庁発注の年金通知用シールの入札談合というのは、時効の平成元年分を含めると何と不当利益は十九億円になるというんです。
   〔理事松尾官平君退席、委員長着席〕
 しかも、社会保険庁発注というのは国民の税金ですわな、これ国民が十九億円も不当利益によって損害をこうむっているんです。大変な問題だと私は思うんです。これを法務省としてはいわゆる談合罪ということで起訴した、こういうことだろうと思うんです。
 それで、法務省さん、引き続いてこの談合は一体いつからいつまで行われておったのか、それだけ明確に答えていただけますか。
#52
○政府委員(山本和昭君) 公訴事実によりますと、平成二年四月上旬ころから同四年八月下旬ごろまでの間談合したものでございます。
#53
○谷畑孝君 二年から四年八月まではいわゆる談合の事実がある、こういうことになってきますと、これ非常に重大な問題を抱えておると私は思うんですよ。
 公取委員長にお聞きするんですが、ことしの五月あるいは九月に行っておるということになりますと、別の高速道路通行券などの印刷受注で、同じ印刷業界の同じく告発、起訴されている大手業者が、この四月にも談合で公取の方が排除勧告をやりましたね。そうして違反事実を認めたばかりだと思うんですが、これはどうなんですか、高速道路券についての。お願いします。
#54
○政府委員(糸田省吾君) 委員御指摘のとおり、本年四月二十一日に、日本道路公団が行っております指名競争入札において談合行為が行われたということ、それから首都高速道路公団におきます指名競争入札における談合行為、この両件につきまして独占禁止法違反であるということで、その排除の措置を求める勧告を行ったところでございます。
 委員御指摘のとおり、このケースにつきましては相手方印刷業界の企業、実数で申し上げますと十五社になりますけれども、それぞれこの勧告を応諾したということで、翌五月に私ども審決を行ったところでございます。またさらに、本件は課徴金の対象になるケースでもございましたので、これ二つの事件合わせました意味での総額でございますけれども、九月に総額で二億五千万円余りの課徴金の納付命令を出したところでございます。
#55
○谷畑孝君 そんな悠長な認識では困るんですよ。先ほど言いましたように、高速道路通行券におけるいわゆる談合は八九年四月から始まりまして十五社が参画をした、そして今年四月には公取が排除勧告をしたわけです。そしてもちろん十五社が謝罪した。そうでしょう。そういうことでこの問題は終わっているわけです。
 ところが、先ほど言いましたように、年金シールの談合は五月からずっと引き続いて行われているわけでしょう。公取で排除命令を出して行政処分をして、謝罪をしたにもかかわらず、ずっとそれが引き続いて、同じ会社がですよ、今度は年金シールの方で談合やっている。それを刑事罰で談合罪で起訴した、こういうことなんですから、これはまさしく公取自身が甘いというのか、そこらの点は言葉を大阪流に言うたらなめられているというのか、あるいはそんな談合というのはもう当たり前なんだと。たまたまそれは見つかったから課徴金払うたんやから、そんなものはもう前から決まっていることやから、今さらやめることできんのやと。そんなことで引き続いてきているということですから、この問題一体どう考えるんですか。これひとつ委員長きちっと答えていただきたいと思います。
#56
○政府委員(小粥正巳君) ただいまおしかりをいただきましたけれども、先ほど法務省の方から御説明のございました、今回検察庁が起訴をされた社会保険庁のシール入札談合、そこに違法行為者として起訴の対象となっております行為者が属する会社と、私どもがただいま事務局の方からお答え申し上げましたように、道路公団あるいは首都高速道路公団発注による磁気カード通行券の入札談合事件、ここに登場します違反企業とは確かに一部同じ会社が含まれている、その意味では重なっているということは事実でございます。
 ただ、私どもはあくまで道路公団等の発注する磁気カード通行券の入札談合事件を公正取引委員会として適切に、先ほど申し上げましたように排除措置をとり、さらに課徴金の納付命令を発したところでございます。今回、社会保険庁のシール入札談合につきまして検察庁の方が刑法上の談合罪として起訴をなさった、これはただいま谷畑委員から強く御指摘がありましたように、この件はもちろんこれから公判が行われるわけでございますけれども、私どもも当然のことながらこの件が独禁法上問題となる行為であるかどうか、これは重大な関心を持っております。
 ただ、現在のところ、本件は検察庁が起訴をされてこれから公判が行われるという事案でございますから、私どもとしましてこの社会保険庁のシール入札談合事案についての資料と申しますか、これは現在のところ持ち合わせがないわけでございます。したがいまして、今後法令の許す範囲で検察当局と密接な連絡をとりながら、この事案の内容を私どもが公正取引委員会として検討をし得る段階になりましたら、当然のことながら十分検討し吟味して、文字どおり適切に対応してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
#57
○谷畑孝君 委員長、そのとおりもっときつくやってほしいんですが、これは後ほどもう少しお願いしたいと思うんです。
 いずれにしても、検察の方としては証拠を固めて、そして証拠物件の押収はもちろん皆しておりますし、そういうことで起訴したわけです。しかも聞きますと、もう釈放が始まっている、こういうことなので、私ははっきり言って委員長、時間がないと思うんです。公取としても独禁法違反という疑いがあるというそんな悠長なことじゃなくて、もっと疑いが強い、こういうことの中で私はこの問題について早く取り組んでいく必要がある、こう思うんです。
 そこで、法務省、とりわけ公取と検察というのはいわゆる情報交換を密にしていこう、こういうことでこの間話をされていますね。そしてまた、公取が刑事告発をするに当たっては検察と公取が告発問題協議会というものを設置できることになっていますね。これはもちろん公取の方が告発をして連絡なりができるのだけれども、しかしそれ以外に疑わしきものがあれば検察がどんどん公取に情報を提供する、こういうことは独禁法七十四条によって決まっていると思うんです。その点はどうですか、もしも公取の方から要請がありましたら情報を大いに提供する意思があるかないか、どうなんですか。
#58
○政府委員(山本和昭君) 平成二年十二月に、公正取引委員会との間で検察当局から公正取引委員会への通報ということに関しまして合意しまして、その旨につきましては各検察庁に対して周知徹底しているところでございます。
 独禁法違反というものは、一定の取引分野における競争を制限するというのが犯罪構成要件でございまして、談合罪とは若干のずれがございます。その辺の事実関係の把握あるいは証拠関係ということにつきましては、当該事件を捜査している検察庁が承知しているわけでございますので、御指摘の、具体的事件についての通報を行うか否かは当該事件を捜査している検察において判断すべき事柄であり、法務当局としてはお答えいたしかねるところでございます。
 あくまで一般論として申し上げますと、先ほど委員長がおっしゃいましたように、公正取引委員会の審査に資するという観点から、事案に応じて法令の許す範囲内で通報を行うものというぐあいに承知しております。
#59
○谷畑孝君 法務省さん、そんな余り生っちょろいことでは困ると思うんです。社会保険庁の談合で起訴しておるんでしょう。これから公判が始まっていきます。何回も言いますけれども、これは税金ですね。談合によって国民が損害を受けておるわけなんですよ、これは。そうでしょう。我々自身が告訴をしたいぐらいです。
 だから、そういうことになるのだったら、これから独禁法も改正をして抑止力を強化していこう、そして国際的な問題と水準を合わせていこう、公取委員長もこのことは質問の中でもるる答弁をしていただきました。そういう決意もいただきました。
 だから、これはもう具体的なことなんですから、この具体的なことにどう対応するかということをきちっとしない限りは、幾らここで議論したって結局絵にかいたもちで、法案審議しているときだけは、いや、もうともかく抑止力を強化します、こういうことを百遍聞いたって、埼玉の事件のように告発を見送ったという、こんなことが続くようでは信用できないということになるんです。この事件については具体的に私は今話をしておるんですから、抽象的じゃなくて具体的に言うべきだと思うんです。
 そういう意味で、公取の方からこの問題については独禁法違反の疑いが強いと、公取委員長も今言いました。そういうことですから、ぜひ積極的に検察としても情報を提供すべきだと私は思うんですが、もう一度簡単にひとつ。
#60
○政府委員(山本和昭君) 先ほど申しましたように、具体的事実関係を承知しているのは当該事件を捜査しております東京地検でございますので、東京地検に対しましては公正取引委員会とこういう合意に達しているということは十分伝えてございますので、それに基づいて適切な措置が行われるものというぐあいに考えております。
#61
○谷畑孝君 その前に、せっかく来ていただいておりますので社会保険庁の方にお聞きするんですが、社会保険庁では損害賠償請求をされたと、こう言うんですが、それは事実なんですか、お聞きしたいと思います。
#62
○説明員(池田登君) お答えいたします。
 社会保険庁といたしましては、この事件の重大性にかんがみまして、今回のシール談合事件に関し関係業者が得た不正な利益を返還していただくという考えでございます。
 この基本的な考えでございますが、契約の当事者の協議に基づいて返還してもらうということを現段階では基本としておりまして、若干説明をさせていただきますと、平成四年九月一日に入札をいたしましたけれども、この件はまだ支払いはされておりません。この件につきましては、契約の価格の変更を求めるということといたします。
 それから、既に平成元年度から契約が完結しておりますほかのものにつきましては、不正な利益の返還を求めることということにしておりまして、この件につきまして既に十二月四日に関係業者三社でございますが、大日本印刷、トッパン・ムーア、小林記録紙、この三社と具体的な協議に入ったところでございます。
#63
○谷畑孝君 社会保険庁さん、その損害賠償というのは民事でやるんですね。それで、独占禁止法に損害賠償の規定がありますね。だから、そういう状況になれば、独占禁止法二十五条に基づくところの権利行使をする意思はありますか、そういうことになってくれば。
#64
○説明員(池田登君) 私どもといたしましては、現段階では先ほど申し上げたような考え方を基本にしておりますので、法的な具体的な根拠等について、正直に申し上げでまた十分に詰めてはおりません。仮に協議が整わないというような場合もございますので、そういった場合につきましては、民法あるいはただいまの独禁法等に基づく損害賠償請求につきまして、関係省庁とも十分協議をさせていただきながら進めてまいりたい、かように考えております。
#65
○谷畑孝君 独占禁止法にかかわる問題だとか、談合問題でもそうですけれども、もちろん刑事罰ということで個人に対して罰則を与えるということもさることながら、やっぱり独占禁止法に基づいて公取自身が専属告発というものを持っておるわけです。これは専属告発ですから、私はそういう意味では、言いかえれば誠実にそういう点について施行しないと信頼というのは非常に薄まると私は思うんです。
 そういうことで社会保険庁においても、基本的には専属告発ということと絡み合わせていく方が、すべての証拠だとかさまざまなものを提供するという、公取の方としてはそういう方針を打ち出していますから、公取自身が持っているいろんな資料を損害賠償に当たっては提供するということになっていますから、そうした方が早く概要を明らかにできるし、そういうことで知り得たもので損害賠償が容易にできると私は思うんですね。
 そういうことであるので、公取委員長、これ非常に大事な問題なんですね。公取委員長は、この社会保険庁の談合問題において早々にも独禁法の事件としての調査を始める用意があるのかどうか、いわゆる刑事告発も含めてそういう意思があるのかどうか、その点についてもう一度明確にひとつ答えていただきたいと思います。
#66
○政府委員(小粥正巳君) 再度のお尋ねでございますけれども、先ほどお答え申し上げましたように、ただいま御議論になりました社会保険庁のいわゆるシール入札談合事件について、現在、事案は検察庁の手で起訴された直後でございます。
 当然のことながら、私ども本件について独占禁止法上問題があるのではないかという意味で重大な関心を持っていることは事実でございます。ただ、現在のところ、私どもこの事案について検討すべき十分な資料を入手していない段階でございますから、先ほどもお答え申し上げましたように、今後法令の許す範囲で、検察当局と密接な連絡をとりながら、必要に応じて本件につきまして文字どおり適切に対応してまいりたいということを申し上げさせていただきます。
#67
○谷畑孝君 そうすると、この問題は公取の方が具体的に動かないと検察を含めての情報収集もできませんし、またそういうことから発展して独禁法違反ということになってきますと告発問題協議会ということになってきます。いずれにしても、独禁法の改正ということでこの委員会においても審議をしておるさなかでありますし、そういうさなかで起こっている事件である。そういうことでありますから、ただ単なる絵にかいたもちにするんじゃなくて、具体的な事例において公取としてどういう姿勢を持っていくのか、こういうことは非常に大事だと思いますので、公取委員長、今申し上げたように厳正な立場でこの点についてぜひ調査を始めていただきたい、こういうことを申し上げておきたいと思います。
 時間がちょっと中途半端になってしまってあれなんですが、これで私の独占禁止法にかかわる質問は一応切り上げさせてもらいます。そして、理事にもお願いをしておったんですけれども、一般質問がないということなので、無理を申しまして中小企業庁を呼んでおりますので、もう一言、二言、時間内で終わりますので、ひとつ委員長許可をいただきたい、こう思いますのでよろしくお願いをいたします。
 公取の皆さん、本当に御苦労さまでした。これで独占禁止法については終わっておきたいと思います。
 中小企業庁にお伺いするんですが、今回の不景気の奥というものが思った以上に非常に深いといいましょうか、私も過日、社会党の経済委員会のシャドーキャビネットということで北海道の経済人との懇談もさせていただいたり、あるいはまた東北経済界の代表の皆さんともお話をさせていただきました。その場合でも、やはり今回の景気対策については半年おくれておる。特に、北海道などはもう今や雪が降ってきて、十兆七千億円といったって、雪が降って公共事業の前倒しといってもなかなかできない。また、東北の経済界の皆さんもそういう話でございました。そういう意味では半年半年政策がおくれておるんじゃないか、こういうような怒りの声もいただきました。私どもも非常に微力でありますが、十兆七千億円がこの国会に提案され、景気の浮揚ということにとっても国民生活にとってみても非常に大事なことだ、そのように思っているわけであります。
 そこで、とりわけバブルにも関係がなく、あるいは日本の経済をずっと支えてこられた中小企業におきましては、三Kとも言われたり後継者もいない、しかもハイテクの高技術の流れにはなかなかついていけない、そういう中でしこしこと一生懸命に生業をやっておられる方がバブルの影響でじわじわと受注が少なくなってきたりして、実は今大変な状況になってきておるんです。そこで、景気のいいときには、民間の金融機関というのは手続も非常に簡単だし、うちの銀行からぜひひとつ借りてほしい、こういうことで幾らでも誘いがあったりしてよかったらしいですけれども、最近景気が悪くなってきて、公的資金、国金であるとかあるいは保証協会であるとか、そういうものに対する期待が非常に高まってきておるんですね。
 そういうことについて質問しますが、民間金融も貸付基準が最近非常に厳しくなってきて、貸し渋りというのか状況については、私どもたくさんの苦情を聞いておるんですね。まず、そういう事実があるのかないのか。また、これは大蔵省であろうけれども、中小企業庁としてはどういうふうに考えておられるのか、その点について少しお聞きをしておきたいと思います。
#68
○政府委員(土居征夫君) 中小企業に対します金融につきまして、特に市中金融機関の金融態度についての御質問が第一点だと思いますが、これにつきましては先生御指摘のように、バブル期におきます過剰融資等の反省で市中金融機関の審査姿勢が非常に過度に消極的になっているという例もあるというふうに我々は考えております。
 ただ、中小企業向けの金融につきましては、市中金融機関の金融を補完する意味で、政府系の三機関の融資あるいは信用補完制度ということで全体の事業資金の一割を超える部分につきまして中小企業対策として金融を補完しておるという面がございまして、我々としては、こういった政府系三機関を通ずる融資あるいは信用補完制度を通じて中小企業の金融に対する施策に遺憾なきを期していきたいというふうに考えております。
#69
○谷畑孝君 私は、こういう不況になってきたら中小企業庁の出番というのか、割と好況のときにはなかなか出番が少ないというのか、そういう意味では中小企業庁を中心にして、今それぞれが金融で、ぜひひとつ回転資金が欲しいんだ、あるいは一時金がいわば回転をしていくためにはどうしても必要なんだ、こういうようなことの案件はたくさんあると思うんですね。
 そこで、例えば中小企業を対象にした金融一一○番だ上が、そういうようなものをも含めてする用意がないですか。何か目玉的なこうだということがありましたら、私は一一〇番などをつくって、そういう点についてぜひきめ細かくできないかどうかということをお聞きしたいんですがね。
#70
○政府委員(土居征夫君) 今、御指摘ありました中小企業者が金融で非常に困っておられる場合の相談窓口ということにつきましては、この三月の経済対策あるいは八月の総合経済対策におきまして、そういったことに対応する体制を整備するということで、第一点は三月におきましては通産局、それから各都道府県に経済対策関係の中小企業相談窓口というものを設定しております。
 それから、各金融機関に対しましては、こういう景気情勢でもございますので、特にきめ細かい対応をするようにということでございまして、例えば政府系の金融機関におきましても、各支店ごとに現在相談窓口を設けて融資審査とは別に中小企業に対する相談に応じているという体制でございますし、あるいは商工会、商工会議所におきましても経営指導員が金融を含めて中小企業の経営の相談に対応するという状況になっておるわけでございます。
#71
○谷畑孝君 各自治体ではそれぞれ独自の中小企業に対する緊急融資というのか、そういうことを行っておるわけなんですが、例えば大阪でもこの十月一日から受け付けをやりまして、わずか二十日間で目標額の三百億円を突破して、一カ月半で一千億円を突破しておるんですね。それぞれの自治体が緊急の融資枠を決めてやっています。しかも、その各自治体もいわゆる貸し渋り、出し渋りをしないように、例えば三カ月商売り上げが少し落ちているとかいろいろな基準をつくって、そして貸し出しをしている、こういうことなんですね。
 だから、ただ単に今国金だとか政府系の公的融資の機関もあるわけなんですけれども、むしろ自治体が中小企業に対して行っていくことについて中小企業庁としてもう少し温かい補助なり、あるいはそういうことをする用意があるのかどうか、そこらもう少し詳しくひとつお伺いしたいと思います。
#72
○政府委員(土居征夫君) 中小企業者に対する金融措置につきましては、国の中小企業対策としましては先ほど来御説明しています中小公庫、国民金融公庫、商工中金等を通じます政府系金融機関による資金供給をやっておるわけでございます。それとあわせまして、自治体を窓口といたしました中小企業体質強化資金助成制度というものがございまして、これは今先生御指摘になりました県の単独の制度融資、形としてはそれとは別のものになりますけれども、県と一緒になって県の窓口でそういう制度を実施しておりまして、今回補正でお願いしております総合経済対策の中でも緊急経営支援貸付制度を創設するということになっております。
 そういった国の制度と県の制度は相補完する関係にあるわけでございまして、国の県に対する助成制度を通じまして、今御指摘になりましたような県単制度の足りない部分を補完していくということを考えておる次第でございます。
#73
○谷畑孝君 時間の関係でこれで最後にしたいんですが、結局国金もそうなんですけれども、先ほど言いましたように、不況になればやっぱり公的資金が非常に頼りになる。そこで殺到するんですね。ところが、やっぱり出し渋り、民間はもちろん厳しく出し渋りですわね。だから、そういうことの中で当てにすべき公的資金までが出し渋りということになってきますと非常に困った問題があるんですね。
 そこで各自治体が、例えば大阪などがやっているように、最近三カ月の売り上げが一〇%以上減少した企業とかそういういろんな規定をつくって、そうしてこういうことに当てはまったものについてはどんどん貸し出していきましょう、こういうことができないでしょうか。今までの貸し出しの基準というのはあるわけですけれども、今日の状況に合わせたような基準をさらに強化して、皆が借りやすいようなことはできないんですか。その点とうなんですか。
#74
○政府委員(土居征夫君) 今、御指摘がありました県の緊急融資制度につきましても、御指摘のように一〇%の売り上げ減少という基準は公表されておりますけれども、実はこれだけではございませんで、やはり県の制度融資といえども所要の金融審査を行っているわけでございます。
 この金融審査につきましては、市中金融機関の金融審査あるいは政府系金融機関の金融審査に比べて県の制度融資の審査の度合いがどのくらい弾力的かという問題がありますけれども、そういったことからいいますと、むしろ県の制度融資は要件を加重しているわけでございまして、いずれにしても政府系三機関の金融審査あるいは県の制度融資の金融審査につきましても、こういう景気状況でございますので、相当に柔軟、弾力的な対応をお願いするということで今措置しておるところでございます。
#75
○谷畑孝君 もう時間が来ましたので、この不況のときこそ中小企業庁としてぜひひとつ全力を挙げて中小企業のために行政施策を推進していただくことを強く申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
#76
○委員長(斎藤文夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時四分休憩
     ――――◇―――――
   午後一時一分開会
#77
○委員長(斎藤文夫君) ただいまから商工委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、お手元に配付いたしております名簿の二名の方々に参考人として御出席を願っております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございました。ただいま議題となっております本案につきまして、先生方から忌憚のない御意見を承りたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 なお、議事の進め方でございますが、まず参考人の方々から御意見をそれぞれ十分程度お述べいただいた後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。また、発言の際は、その都度委員長の許可を受けることになっておりますので、あらかじめ御承知おきください。
 それでは、まず実方参考人にお願いを申し上げます。実方参考人。
#78
○参考人(実方謙二君) 御紹介をいただきました実方でございます。
 このたび、提出されております政府提案の独占禁止法改正案は、独占禁止法八十九条で刑事処罰の対象となっている行為、具体的にはカルテル及び私的独占、これは他の事業者を抑圧する行為でございますが、これらの行為に対する刑事罰について、事業者に対する罰金刑を上限一億円に引き上げるというものでございます。ここで対象となっている行為は、独占禁止法違反行為の中でも特に市民社会の基本的な倫理に反する行為でございますから、刑事罰による制裁を厳しく定めるのが当然ということになります。
 これらの行為の経済的性格を見ましても、企業の事業活動そのものとして行われ、利得も企業に帰属する典型的な企業犯罪であり、かつ国民経済に与える影響が重大で社会的にも不当性が極めて強いものであります。さらに、これらの行為に対する制裁を飛躍的に強化するのが国際社会での常識となっておりますが、特に経済活動の国際化に伴い、日本市場を開放的にするためにも独占禁止法の実効性の確保が強く望まれている点から見ましても、事業者に対して十分な抑止力を持つ罰金刑の水準を定めることが必要でございます。
 ただ、この際考えるべきことは、自然人行為者に対して過大な罰金刑を定めるのは過酷に過ぎるということにもなりますが、一方事業者の方は、支払い能力の点から見ると自然人の違反行為者に比べて大きな格差がありますので、違反行為者に対する罰金刑と事業者に対する罰金刑とは別個に定めるのが適当でございます。
 この考え方は、これまでの伝統的な法制度ではとられておりませんでしたが、御案内のとおり法務省の諮問機関でございます法制審議会の刑事法部会でも、昨年の十二月、この考え方をとる必要があることが了承されておりまして、それを前提として、さきの証券取引法の改正に当たって、その罰金刑の引き上げが既に実現しているところでございます。今回の独占禁止法改正案は、さきの証券取引法の改正に引き続いてこの考え方を採用するものでございまして、国民権済や国民生活に対する影響の大きい事業者の経済犯罪に対する刑事罰を強化して違反行為の抑止を図るという点から見ますと、画期的な意義を持つものと評価できます。
 ところで、ここで主たる対象となっているカルテルでございますが、カルテルに対する経済的不利益を強化する措置としては、御案内のとおり昨年の独占禁止法改正で一定のカルテルに対する課徴金の算定基準が引き上げられたところでございます。一応、原則で言えば四倍ということでございます。ただ、この算定基準の引き上げに当たりましては、課徴金と刑事罰が併存しているという制度の趣旨を考慮して、その引き上げ幅は最小限度のものにとどめられるというのが理論的な説明でございます。そこで、課徴金だけではまだ足りないということで、主として法人事業者を対象として今回の事業者に対する罰金刑の引き上げが求められた、そういう経緯でございます。それは、日米構造協議等でもそういう流れになっております。
 ところで、今度は罰金刑の水準でございますが、事業者に対して違反行為の有効な抑止力を持つ罰金刑の水準を決定するに当たりましては、それぞれの法律の目的、規制の趣旨から見た規制強化の必要性、諸外国の立法例との均衡などの点を総合的に考量することになりますが、一つの重要な要因としては罰金刑を科されることによって違反行為者が打撃を受ける程度を考慮することが適切でございます。具体的には、当該刑事罰規定の対象となる自然人の支払い能力と法人事業者の支払い能力の格差を勘案するということになります。この考え方も、先ほど述べました法制審議会の刑事法部会の報告書でも採用されておるわけでございます。
 ところで、独占禁止法の事業者に対する罰金刑の水準を定めるに当たっては、支払い能力の格差は一応百倍程度ということで言われておりますが、これを機械的に適用するのではなくて、以上の総合考量に加えまして独占禁止法には一定のカルテルに対する課徴金制度があることを考慮する必要がございます。
 そこで、今回の政府提案で言えば、事業者に対する罰金刑の上限を一億円に引き上げるということが提案されているわけでございますが、これまで述べましたような抑止力の強化の必要性という考え方にこれも対応するものでございまして、特に昨年の独占禁止法改正で課徴金の算定基準が四倍ということで大幅に引き上げられたことに引き続いて独占禁止法の強化、改正が行われるということを考えますと、これは妥当なものではないか。政府案での罰金刑の引き上げ幅は、これまでは五百万でございましたから二十倍でございますし、単位としても目の子的な感じになりますが、億円の水準に乗ったということでございます。
 この水準の問題もいろいろ御議論があろうと思いますが、私の考えでは、今回の独占禁止法改正で罰金が億円の水準に乗るという改正が昨年の課徴金強化のための改正に引き続いて成立するということは、独占禁止法違反行為に対して刑事罰を強化して厳しくそれに臨むという姿勢を国会、国としても明らかにするという点で非常に大きな意味がありまして、そしてこれまでもカルテルが犯罪でおるということに対する企業の認識が必ずしも明らかではないという感じがいたしますので、その点を企業に認識してもらうためにも、改正案がここで成立するということ自体が非常に大きな意味を持っていると私は考えております。
 それから、先ほど申しましたように、従来の法体系でとられていなかった法人別建ての理論を証券取引法に引き続いて取り入れる、そういう点でも画期的な意義を持つものと考えております。
 以上の点から、今回の政府案を大きく評価するものでございます。
 以上をもって終わらせていただきます。
#79
○委員長(斎藤文夫君) ありがとうございました。
 次に、金子参考人にお願い申し上げます。金子参考人。
#80
○参考人(金子晃君) 金子でございます。
 今回提出されております独占禁止法の一部を改正する法律案につきまして、この法律案提出の前提となりました公正取引委員会の刑事罰研究会に参加した者といたしまして、また独占禁止法を研究の対象としております学者の立場として、本改正案について意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず最初に、本改正案に賛成であることを明らかにしておきたいと思います。以下、その理由を申し述べます。
 独占禁止法あるいは競争法の国際的調和及びその厳正な運用ということは、今日国際的にもまた国内的にも各国に要請されているものであるということは申すまでもないことと存じます。公正取引委員会におきましても、我が国独占禁止法の厳正な運用を行うということが明らかにされ、独占禁止法違反の事前予防及び規制の強化に当たっているということは御承知のとおりであります。しかしながら、独占禁止法違反行為は依然として減少せず、独占禁止法の抑止力を強化するということが必要となってきているということは、皆さん方、同じ認識ではないかというふうに思います。こういうことから、昨年課徴金の引き上げがなされたわけでございます。
 しかしながら、課徴金につきましてはその法的性格、すなわち違法な行為によって得た企業の不当な利益を国家が徴収する、それによって社会的公正を図るというのが制度の目的であるわけです。したがいまして、違反行為者に対して法的な意味で制裁を科するものではないわけです。とはいいましても、一定の金額を徴収するものでありますから、事実上企業に対して抑止力として作用するということは否定することはできないわけです。しかしながら、今申し述べましたように違法な行為によって得た不当な利益を徴収するものでありますから、当然その抑止力には限界があるということは言うまでもないことであります。
 昨年改正されました課徴金の引き上げは、これは不当な利得を従来必ずしも完全に取り切っていないという認識のもとに、不当な利得を徴収するためにより完全を期す方式を採用したということでありまして、それ以上のものではないということで課徴金の性格は変わってはいないということを申し添えておきたいと思います。したがいまして、独占禁止法違反事件に対する制裁措置として、現在刑事制裁それから民事上の責任の追及があるわけでありますけれども、最も抑止力の働くものとしては刑事制裁が考えられるわけでございます。
 ところが、現在独占禁止法違反行為について考えてみますと、例えば最も競争制限的効果を持ちますカルテルを考えました場合に、八十九条により三年以下の懲役または五百万円以下の罰金ということになっているわけでございます。さらに、九十五条の両罰規定によりまして、行為者のほかに事業者に対しても罰金が科されるという制度になっております。
 しかしながら、企業に対して科される五百万円という罰金額が抑止力として働くものであるかどうかということにつきましては、これが抑止力として働くものではないということはだれもが否定することができないだろうと思います。独占禁止法の抑止力を高め、国際的な要請であり、また国内的な要請である公正かつ自由な競争を維持し国民経済の健全な発達を確保するためには、事業者に対する罰金額を抑止力が働く額に大幅に引き上げることが今日必要であるというふうに考えております。
 ところで、先ほど申しました両罰規定におきましては、事業者に対する罰金額の上限はこれまで行為者の罰金額の上限と連動をしてまいりました。したがいまして、事業者に対して抑止力の働く罰金額の上限を定めるためにはこの両者の連動を切り離すということがなされなければならないわけです。
 この点につきましては、研究会及び法制審議会刑事法部会で議論がなされまして、事業者に対する罰金額の上限を行為者に対する罰金額の上限から切り離すことが理論的に可能であるという結論が出されたわけでございます。これに基づきまして、研究会報告では事業者に対する罰金額の上限について大幅な引き上げを提言したわけでございます。これに基づいて今回の法案が出されているわけでございまして、この点は今回の法案について高く評価されなければならない点であるというふうに思います。
 現在、既に証券取引法の改正がなされこの両者の切り離しがなされていますけれども、独占禁止法においてこのことがなされるということの意味は、これからの企業犯罪に対する関係で非常に大きな意味を持つものであるということを強調しておきたいと思います。
 今回の改正案では、八十九条一項一号の罪、すなわちカルテル及び私的独占に対する刑事罰の強化を提言しているわけでありますけれども、これらの行為は競争制限的影響が最も大きいものであり、なおかつ現在、独占禁止法違反行為の中の大半を占める違反行為であるということであります。したがって、これらの違反行為について抑止力が働く金額に罰金額を引き上げるということは妥当な結論であるというふうに思っております。
 なお、罰金額の上限が一億円ということになっております。この点についてはいろいろ御議論があろうかと思いますけれども、研究会報告の数億円という援言からいたしますと低いという印象もあるわけでございますけれども、今回の改正案の意味というのは、単に金額の問題だけではなくて、両罰規定における運動の切り離しという非常に大きな意味があるわけでございます。なおかつ、一億という金額について考えてみましても、従来の五百万円から大幅な引き上げであるということを考えれば、この一億という金額は評価できるものであるというふうに私自身は考えております。
 以上の点を考えまして、私は今回の改正案について賛成の意見を持つものでございます。
 以上でございます。
#81
○委員長(斎藤文夫君) ありがとうございました。
 以上で両参考人の御意見の開陳は終了いたしました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#82
○吉田達男君 参考人の両先生には刑事罰研究会のメンバーとして、独占禁止法について格別に御研さんの上、また国に対しましても大きいアドバイスを与えていただきましてありがとうございました。きょうはまたこうしてその碩学の蓄積をおかしいただいて、よりいいものを私どもでつくり上げたいという法律の作成の場でまたお力を賜りますようにお願いする次第でございます。
 先生方がおっしゃいましたように、独占禁止法を強化することによって市場機能そのものによる経済秩序と活動を保障する、こういうことが今経済の主流、大きい流れになっておりまして、その意味において私どもは、独占禁止法を強化するという方向で全力を挙げるという時期にございます。御報告をいただきました研究会の御提言をもとに、手続を経て今日の法の原案が示されたのでございますが、その過程におきます若干についてこれからお尋ねをいたしたいと思うのでございます。
 先ほどお話しいただきましたように、独占禁止法を強化するということは法の抑止力を強める、こういう方向の中で昨年四月に課徴金の制度を改善いたしまして、算定方法を変更したり、また算定の率を変えたりいたしまして、結果的には四倍ぐらいの課徴金の額を国の方が不当利得した者に対して徴収する、こういうことに相なりました。
 このことの評価について、どのくらいの抑止力がありということにお考えなのか、またこの抑止力というものが及ぶ範囲が全面的に独占禁止法違反にかかわる件に及んでいないのではないかという思いがするのでございますが、実方先生に先に御見解を聞かせていただきたいと思います。
#83
○参考人(実方謙二君) 御質問の趣旨は、昨年度の改正による課徴金の引き上げによる抑止力の強化が十分であるかどうかという点でございますが、これは結論は、この課徴金の引き上げに関する内閣官房長官の諮問機関である、細かい名前は忘れましたが、課徴金に関する検討委員会にも参加させていただきましたので、そこでの議論の経過等も踏まえまして御説明いたしますが、これははっきり申しまして、カルテルによって得られると考えられる利得の最小限、最小公約数の部分だけを課徴金として徴収するという趣旨でございます。
 カルテルによる利得はさまざま事案ごとにございまして、値上げカルテル等の場合では売上高の一五%から二〇%ぐらいを超過利得として得る場合も数々ございますし、アメリカの実態等を司法省の調査等で調べてみれば、少なくとも大体一〇%以上は超過利潤を得ているというのが実態でございます。
 しかし、これは個別に超過利潤の額を調査して課徴金をかけるということは、行政機関である公正取引委員会が取るという点から見ても望ましい方法ではございませんし、またその抑止力という点から見ますと、一定額の全員、かなり巨額の全員でございますが、これがカルテルが摘発されますと自動的に取られる。企業の方が苦しかったからやむを得ないんだという申し開きは全くできない、必ず取られる。カルテルがばれれば必ず取られるというところに抑止力の大きさというのがある。自動的に取られる。しかし、その金額は最低限度の、皆さん御案内のように法人統計の平均からとったものでございます。したがって、これは最低限度の利得ということで、カルテルは最低限度の利得の維持を、利潤の維持を目的とするものであろうという議論から出てきたものでございます。
 したがって、はっきり申しますと、課徴金というのはカルテルによるやり得を防ぐと言われております。やり得を防ぐということではあるんですけれども、逆に申しますと、カルテルでもうけた分のその最小限度を吐き出せばいい、ばれてもともと、ばれたらそのお金を返せばいい。泥棒をやりまして、ばれたら盗んだものを返せばそれでチョン、そういうことになります。そうすると、バレモトでは困る。バレモトに対して、悪質なものについてはその事情等を勘案いたしまして、告発をいたしまして、検察庁、裁判所の御判断をいただきまして、悪質なものに対しては制裁を加えるというのが刑事制裁の趣旨でございますから、課徴金だけではどうしても不足であるということでございます。
#84
○吉田達男君 課徴金を増額しているんだから過重な違法者に対する制裁があるんじゃないかという一万の御議論があったものですからお伺いいたしましたら、抑止力としての内容について独占禁止法の全般にわたるものに対してはなくて、一部分の価格に影響を及ぼすカルテル、この範囲にしかないし、また算定方式からしても制裁的なものでないので抑止力としては不十分だ、こういうことで受けとらせて、まあ竹下流に言うと察知させていただきたい。
 そうしますと、金子先生にお尋ねいたしますが、先ほどの御提言の中で、研究会の答申としての抑止力のある金額を数億円と明示したことについて、現在の一億円は少ないのではないかと思うけれども、また一つの両罰規定の切り離しとか方向性とかにおいて意義深いものだというお話をいただきました。金額的だけについて先にお尋ねいたしますが、数億日という表現の中身は、本当は想定されるところ幾らということで先生はお考えでございましたか。
#85
○参考人(金子晃君) 切り離して金額だけを評価するということはなかなか難しい問題だと思います。
 私自身は、既に書いたものがございまして、法人企業に対しても行為者に対して与えられる痛みと同じ痛みが考えられなければいけないであろう。そういう同じ痛みという観点からいえば、最低五億くらいが必要ではないかということを書いたことがございます。しかし、これはあくまでも学会で報告するための論文でありまして、理論的な観点から書いたものでございます。
 したがいまして、実際にどのくらいにするかという問題はさまざまな要因を考慮の上で決定されるということになると思いますし、また研究会に参加していた人たちがどういう数字を頭の中に描いたのかということにつきましては、私と同じ金額を描いたというふうには必ずしも言えないだろうというふうに思います。私は今申し上げたとおりであります。
 しかし、最初にも申し上げましたように、金額だけで評価することはできないということで、今回の問題につきましては総合的に判断する必要があるということと、それから理論は別としまして、各方面の意見を聴取してどのあたりで合意が得られるのか、その合意の範囲内で決定されるということだろうと思います。
 なお、一億以下であれば私はこの案に賛成はいたしません。一億に乗っているということがやはり大きな意味を持つというふうに考えております。
 以上です。
#86
○吉田達男君 先生の経済法学会議で御発表の論文を読ませていただいて、結語の辺に五億と明示してございましたので、ほっとしながら、一億円は先生の御見解ではまずはクリア、最低は合格していると、こういう御見解と今は伺いました。
 それで、抑止力があるかないかということの判断がそれぞれに進むわけでございますが、その根拠となります積み上げについてでございます。
 国際的な情勢の中で日本が注視されていて、そして日本の商慣習についても透明度をもってやるべしという大きい期待もございまして、これにこたえなければならぬということから見ますと、国際的な環境における比較法学的な金額というものについて日本はどのような位置にございますか。お示しいただけますでしょうか。
#87
○参考人(金子晃君) 御承知のように、独占禁止法違反行為に対してどういう制裁措置をとるかということにつきましては、アメリカにおきましては刑事罰を科するという方式をとっているわけですし、またEC及びEC諸国においては行政罰という形でこれに対処するということをしているわけです。それぞれの金額につきまして、これも既に先生方御承知のところであると思いますけれども、高いところで十億を超える十三億というようなところもあるわけで、国際的に見て一億から十億の間の中に入っているというふうに申し上げていいかと思います。
 ECの場合あるいはEC諸国における行政罰を考えてみる場合には、これは単に不当利得を徴収するということだけではなくて、制裁的な意味をも含めているわけでございます。アメリカの場合について言えば、これは刑事制裁ということですので、不当利得の徴収という形ではないわけです。我が国の場合を考えてみた場合には、不当利得の徴収と刑事罰ということになりますので、EC及びEC諸国に比較をするとすれば、ほぼEC諸国の考え方、ECでとっている刑事罰の中には不当利得を含め制裁的な意味をも含めるということになりますので、日本の場合を考える場合にはこの両者を含めて比較していいであろうというふうに思います。
 ただし、これは先ほど御議論がありましたように、価格に関するものに限られるわけでございますので、その点で若干比較がそれでいいかという問題はあるかと思いますけれども、我が国におけるカルテルの大部分は価格に関するカルテルであるということを前提にして考えれば、これは比較してもそれほど大きな間違いはないであろう。そうしますと、今回の改正によって一億の大台に乗せた上で従来の約四倍の課徴金が課せられるということを考えますと、国際的に見ても評価される金額、制裁になっているのではないかというふうに評価していいだろうというふうに思います。
#88
○吉田達男君 また、国際的な関係についてお尋ねいたしたいんですが、実方先生に。
 抑止力ということで、国内の事業者あるいはそれに従事する者が厳しい法を見てこれは犯しては大変なことになると、こういうふうに感ずる金額としての積算の国内法としての比較。折しも有価証券取引法等についても同様な時期にこの国会に提起された経過等もございまして、その辺を私どもも注目をしておるんです。それらの関係者のいわば経営を続ける上での相関的な判断の材料になる収益力とかあるいは資産力とかそういうようなものを先生方の判断で見ながら、これであれば抑止力が働くんだという金額を数億円とされるに至った数字的な経過といいますか、根拠のようなものをお示しいただけたらと思います。
#89
○参考人(実方謙二君) まず、計算の初めになりますのは、現行の自然人行為者、例えば営業部長がそれに参加しておったということであれば営業部長ないし営業担当の取締役等が違反行為者になるわけですが、そういう自然人行為者に対する現行の罰金刑というのは五百万円でございます。それに対して何倍掛けるかというのが手順ということになります。
 それで、まず最初の五百万円の方でございますが、今回のは先ほど申しましたようにとりあえず自然人と法人を別建てにする体系を導入しようということで、自然人に対する罰金刑はとりあえずいじらない。それで、これを見直すということであれば法律の体系を全部見直さなければいけないのでこれは大変だ。それから、五百万円という水準は、覚醒剤と麻薬に関するものでは一千万円というのがございますが、それに次いで五百万円というのは非常に大きいということでございます。一応、五百万円を掛ける、もとにする。
 幾ら掛けるかということでございますが、これはもう御案内のとおり報告書も公表されておりますので、その中にも数字がございますけれども、主として独禁法違反の対象となる大企業、たしか資本金十億円以上の企業とそれからそこでの肩書のついた執行に当たる取締役を比較したわけでございます。
 それで収入の点、フローの点とストック、企業でいえば総所得、利益ということになりますが、それとそれから資産の点を考慮いたしまして、資産は企業の場合はこれは簿価というのは取得価格でございますから時価にかえる調整を加えまして、それで比較をいたしましたところ、これも報告書にございますように収入で企業の方が九十倍、資産で約百七十倍という数字が出たわけでございます。それで、これを大体ならしますと目の子で百倍というのが一応の参考資料と、こういうことになるわけでございます。ただ、この百倍を自動的に掛けるということも適切ではございませんので、これは先ほどから何遍も引用しております法相の諮問機関である法制審議会の刑事法部会の報告書でも、立法の趣旨その他を総合的に考慮するということでございます。
 したがって、御指摘のとおり課徴金は価格に関するカルテルだけでございまして、それ以外は対象になりませんけれども、とりあえずこれから刑事規制の対象となるのは主としてカルテルであろうということでございまして、その中でも特に価格に関するカルテルというのは、価格に関するカルテルといっても話が長くなりますが、解釈のしようによってはかなり広い範囲が入るわけで、共同ボイコット等もこれも入るというのが今回の一昨年出されました指針の中にも書いてあります。
 そういうことですと、一方で課徴金で少なくともバレモト程度までは取るということにすると、話が前後いたしますが、単純に五百万円に百倍を掛けると五億円ということになるわけで、それで証券取引法の場合は三百万円を三億円にした。百倍という数字が出てくるわけでございますけれども、そこら辺が非常に微妙なところでございまして、百倍というのは証券取引法の場合はいろいろ、これは直接タッチしたわけではございませんから拝察するより仕方がございませんが、かなりの悪質性とか、それから課徴金制度がないとか、そういう点を考慮した。特に、証券取引法の場合は、そういう相場操縦等ができるのは四大証券等の非常に巨大な企業に限られるということも考慮したのではないかと思います。そういたしますと、百倍から二十倍に落ちたのほかなり劇的に下がったのではないかという感じはいたします。
 御質問の趣旨はどういう経過かということでございますが、これでお答えは終わりなんですけれども、要するに総合考量ということになりますと、最終的には立法府の先生方の御判断を仰ぐ。その前提として政府の方でも御考慮いただくということでございますので、課徴金の持つ役割、それからその他のいろいろな総合的な制度、それから独禁法違反はこれまで大手を振ってまかり通っていた。それは、制裁は三年間社長さんが勲章をもらえないだけだという状態から、少なくとも国会が一億円まで上げるということを示すことが非常に大きな意味を持っているというようなことも考えますと、最終的には先生方の御判断を仰ぐということで、一応は数億円といいますと、常識でいいますと数というのは一は数には入りませんから二億円以上ということになるんですけれども、総合的な判断ということであれば一億円というのも考えられる最小限度の範囲内には入るのではないか、大体そういう道順でございます。
#90
○吉田達男君 国会も正さなければなりませんが、五億円もらって二十万円で済むかということが世論の政治に対する不信でもあるわけでございますから、私どももそれは厳しく受けとめて、独禁法もやっぱり悪いことをしても上前だけを返せばいいのか、五百万円で済むのか、こういうことになるので、そこを厳しくして抑止力を働かせよ、こうしている次第でございまして、先生の御見解と流れとしては合致するのでございますが、ずばり理想的におっしゃいましたら、やっぱり数億というのは日本語に倣えば五億ということに相なりましょうか。先生の率直なところをお聞かせください。
#91
○参考人(実方謙二君) 率直なところを言えば、目の子でつかみ金みたいな感じもありますけれども、百倍で五億と、これは昨年度でございましたですか、セメントの事件でしたか、二つの事件に分かれておりますけれども、合わせて百数十億の課徴金が取られたということがございます。これは、悪いことをやったので法の規定どおり取られるのは当たり前だということでございます。
 それで、そこら辺も考えまして、ずばり申しますと数億、それも考えると単純に五億から下げていくと、目の子になりますけれども偶数でもおさまりが悪いので三億ぐらいかなという感じもいたしますけれども、あとは諸先生の御判断の範囲内ということでございます。
#92
○吉田達男君 大体先生方の御判断は、本来は日本語の解釈をするところを含んでいるけれども、本案でもっても最低限はクリアしている、こういう御見解のようにずばり受けとめて伺いました。
 しかし、理想的なところを求めて報告書をつくられて、それをお示しになったところ、担当の者が政界、財界等々と協議をいたしまして、担当の者というのは政府の方でございますが、それが一億になったと巷間ではかなり厳しいことを言われているんです。その一億になった経過に、また埼玉の土曜会の談合事件があって、これの扱いについて告発をしない、こういうような巷間のうわさもあったりしたということも衆議院の議事録にも出ていますし、週刊誌等にも出ておるわけです。そういうようなことであると、私どもはせっかく先生方の真摯な御研さんのところを示していただいたのが曲がってしまったんじゃないかというおそれをしておるんです。
 そういうことで、率直に公正取引委員会がそれを受ければ先生の理想的な数字が出たと思うのに、そこの途中で曲がったということになれば、その扱いをした公正取引委員会は不公正取引委員会のそしりを受けてしまうんじゃないかと思うんです。せっかく先生方が報告をされたものの扱いについて、若干私が巷間ということで機微に触れたことを言いましたけれども、こうなったことについて、クリアしたとはおっしゃいますけれども、当初御報告いただいたときの印象からいうといかがでございましょうか、両先生に率直にずばりお伺いしたいと思います。
#93
○参考人(実方謙二君) 率直に申しますと、それは例えばの仮定の話でございますが、三億円ということで大方の御了承がいただければ、これはまたそれはそれとして非常に大きなインパクトを持つものではないかと考えております。
 ただ私、会員の一人として参加しておりました私どもの研究会の報告は、さまざまな事情を考慮しまして理論的な立場から御提案を申し上げたということで、それで本年の三月十一日に最終報告が一般に公表されたわけでございますが、それと同時に刑事罰強化のための独占禁止法改正案に対する研究会の考え方というのが公表されておりまして、その中で刑事罰の強化が緊急の課題であることにかんがみ、当面実現可能なものとしてやむを得ざるものと受けとめるというのが正直な感想でございます。そういうことでございます。
#94
○参考人(金子晃君) それでは、端的にお答えしたいと思います。
 いろいろな研究会、審議会に参加しておりますけれども、理論的に検討したものが必ずしも実際の社会の中であるいは政策の中で実現するものではない、そういう意味で今回の研究会においても一定の方向を理論的に示した、そういう方向で政策決定の場あるいは立法の場において御努力いただきたいという趣旨であるというふうに私は理解しております。
 今回の改正案につきましては、私は曲がったというふうには考えておりません。先ほど申したような理由で、我々が示した方向についてかなりの努力をしてくださった。さらに努力をしていただければ、それに増したことはありませんけれども、私としては必ずしも曲がったというふうには理解しておりません。
 以上でございます。
#95
○吉田達男君 いま一つ心配なことは、先ほど金子先生は、国際的に見ても先般の課徴金の比率等の改善、それからこのたびの罰金の上限の増額によっておおむねのコンセンサスを得られるんじゃないか、こういう御判断でありましたが、私は、非常にその辺は経過の中でも厳しいものがあるんではないかという見方をしておるんです。
 大統領もかわりまして、アメリカの判断がどう動くかもわかりませんが、最近の経済行為に対して、例えば特許の問題とか製造物責任とか、あるいは経営者責任、ガット等々に及んで、アメリカは特に国内法の域外適用まで考えるプレッシャーを与えるぐらいの厳しいものを背景にして、いろいろ日本の経済行為に対して過ちあらば正そう、足らざるものあらば正そうという姿勢が緩められる様相は発見できませんし、またこのたびが過少に過ぎてさらに構造協議等のフォローアップで指摘を受けるようなことあらば、またそれに対してどうこたえるかが次の課題になるようなことではいかぬ。このためにきちっと私はけりをつけて、日本の姿を国際的な社会に通用する経済行為をやる国ということで印象を明確にしたいと思うのでございますが、この点について金子先生からもう一度お答えをいただけますか。
#96
○参考人(金子晃君) 私は、一連のプロセスの中で考えてみるということが必要ではないだろうか。単に課徴金それから刑事罰の問題だけではなく、ここ数年にわたって公正取引委員会では、民事責任の追及を容易にするために損害賠償制度についての研究及び損害賠償が有効に機能するような措置をとるということで進んでおります。
 それから、規制緩和という関係の中で適用除外制度の見直しということも行い、できる限り適用除外制度を少なくするという努力も行ってきております。また、市場開放という観点で外国から見た場合に、我が国へ市場参入するためにハードルになっているような点がないかどうかということについての検討も加え、これは流通制度、それから慣行に関する独占禁止法のガイドラインということで従来に比較しましてかなり厳しい解釈をとり、厳しく対応するという内容の措置をとっております。また、企業に対してもコンプライアンス・プログラム、独禁法遵守マニュアルをつくるという指導も進めておりますし、また相談制度もとっている。
 そういう一連の中で課徴金の計算方式の改善を行い、そして今回の刑事罰の強化。先ほど申し上げましたように、従来の五百万から一億円の大台に乗せた。それから切り離しを行った。切り離しを行ったということは、将来もしこの一億円が抑止力として働かなければ当然上げることは理論的には可能となってきているということであります。
 そういう一連の流れを見た場合に、私はアメリカ側から事この分野に関しては高く評価されてしかるべきである、また高く評価するというふうに私自身は確信をしております。
#97
○吉田達男君 現在の法をまずはクリアさせてということのお気持ちを伺いました。
 損害賠償ということについては、課徴金、罰金、損害賠償ということが仕組みでは抑止力になっておる三本柱で、損害賠償は時間がなくて言えませんでしたが、三倍賠償というようなことでアメリカは厳しいものがあったりして、そういう民事訴訟はまた具体的には起こり得ると思います。
 日本に対してさらなるものがあれば、先生はこのたびの法改正の中で切り離しをしたことによってまた上限を対応して上げるという一つの道が開けたという意味の御発言もあって、それはまた漸進的な一つのステップである、こういうことで伺ったんですが、さすればこの金額について、さらに実施の上様子を見れば柔軟な対応をやる構えになったというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
#98
○参考人(金子晃君) それは立法府の問題ですので、立法府がさらに上げようということは理論的には可能であるということを申し上げておきます。
#99
○吉田達男君 はい、わかりました。
 それでは、時間も最後になりましたので、この法の厳正な運用をしなければ本当はいけないのでございますが、たまたま証券取引法、ことしの初めに同じタイミングで両方出されて、片方は走り出すし片方は今審議しているということの中で、証券取引法はきのうの新聞で見ましても、強制調査を開始して証券取引監視委員会がもう実際に動き出した、こういうことでございます。
 この公正取引委員会の機構の中でそのような権限、調査の権限あるいは機構あるいは人員、陣容、こういうものについて私は足らざるものが多いんじゃないかという印象をこの問題に足を踏み入れてから持っているのでございますけれども、この点について先生方として、これを運用するに当たって、あるいは将来の改正を目指して問題点ありとお考えでございましたら御指摘を願いたいと思いますが、実方先生にお願いいたします。
#100
○参考人(実方謙二君) おっしゃるとおりでございまして、法の枠組みを幾ら強化しても実際にそれが適用されなければ、これは絵にかいたもちということになります。
 それで、ちょっと学問的に申しますといろいろ難しいことになりますが、詳細は有斐閣から出しております「独占禁止法」というところのカルテルのところに書いてございますので、お暇があればごらんくださればと思います。カルテルと申しますのは、いろんな人が、他人が集まってそこでみんな話し合いをしてそれで意見が一致して、それをみんなで足並みをそろえて守る、こういうものでございます、これは主たる対象であるカルテルについて申しますと。そうすると、カルテルをやるためにいろいろ手間がかかるということも言えます。
 そうして今度はカルテルをやってうまくいくとかなり大幅に値上げができる。これは予想利益ですね、こっちは便益の方です。コストの方はカルテルをつくるためのいろんなコスト、プラスもしばれたときの不利益というのがマイナスの方にかかります。この不利益というのは単に最高限度が罰金の一億円、それで課徴金が一〇〇%とかそういうことだけではなくて、それに摘発の可能性というものが乗じられたものが経済学的に申しますと予測される不利益ということになります。
 予測される不利益と予測される利益というものを比べてみて、予測される利益の方が大きければやってみようということになるんです。予測される不利益の方が大きければ、やめた方が得だ。やめた方が得だからみんなやらないということになれば、公正取引委員会が国の税金を使って厳しく取り締まらないでも、自発的にやらないで済む。しかし、それはまた難しいところで、ばれる確率が大きければ自発的にやめるということです。
 そうすると、ばれる確率を大きくするためには公正取引委員会の陣容を強化し、なおかつその運用面で積極的にこれは排除措置を命ずる面でも課徴金でも、これは両方セットになりますか、それからさらに告発を行うという面でも非常に積極的な姿勢があるとばれる率というのが大きくなりますから、そうすると予測される不利益というのが大きくなります。これは、もっといろいろ何遍もやってなれてくるとカルテルやるのが上手になって困るという話もあるんですけれども。それはおいておきまして、しょっちゅう捕まえられるということになるとカルテルやるのがふなれになりまして、みんなで話し合うのも、皆さんはお話し合いをなさるのがお上手でしょうけれども、私なんかは不得意でして、厳しくやればやるほどカルテルはやりにくくなるということもございます。
 したがって、おっしゃるとおり単に罰金の上限を引き上げるということだけではなくて、いわゆる告発というものは刑事罰を伴いますから、一度告発をした後で検察官がそれを維持できないということでもまた困りますので、一応公判等を維持できるという見通しがおおよそある程度立ったところで告発するということになると思いますけれども、そういうことが可能になるように陣容、それからあるいはまた権限等も、これは立法の問題もございますけれども強化する。特に、陣容についてももっと今より飛躍的に強化する。そして、最近公正取引委員会も前向きに活動しているところでございますが、この姿勢を継続され、独禁法は厳しいものである、これを考えに入れて企業活動を行わなくてはいけないという自覚を皆さん持っていただくようにということで、そのためには国会の諸先生方も公取行政ないし独禁法の運用の強化について積極的な御支援をお願いできればと、私は独占禁止法を勉強している者の立場からお願いするわけでございます。
 以上でございます。
#101
○吉田達男君 終わります。ありがとうございました。
#102
○合馬敬君 きょうは実方先生、金子先生、御多忙なところをおいでいただきまして、御高説を賜ることになりまして大変ありがとうございます。
 私は思うのでございますが、どの国でもそれぞれ固有の経済活動形態あるいは商取引、商慣行いろいろございまして、日本は大変すばらしい経済成長をやったせいか、ある意味では羨望と嫉妬の念で見られておるということもございまして、日本特殊論といったようなものも出ておるわけでございます。いいところはもちろん生かして、これからも経済の発展を図っていかなければならないわけでございます。
 いずれにしましても、我が国は今アメリカに次ぎまして国民所得の世界の一四%を握っておる、二位の規模を持っておる、それに見合った豊かな国民生活も実現していかなければいかぬ。あるいは我が国経済を国際的により開かれたものにしていく、こういう重要な課題があるわけでございまして、そういう中で競争政策、独占禁止法の役割というものはますますこの重要性を増してきておるというように思っております。
 このような状況のもとで、公正取引委員会の審査体制の強化あるいは昨年行われました課徴金の率の引き上げ、こういった施策がとられておりまして、今回のいわゆる事業者等に対します刑事罰の引き上げといったような措置はこういった措置の一環として大変意義があるというように思っておるわけでございます。
 そういった立場から、本日お越しいただきました実方先生、金子先生に今回の刑事罰の引き上げについてお伺いをさせていただきたいと思います。
 両先生がメンバーとしてまとめました独占禁止法に関する刑事罰研究会の報告書におきまして、事業者に対して定められている罰金刑の法定刑、これを数億円程度の水準に引き上げるということが必要とされておるわけでございます。政府案では一億円ということになっておりまして、この点につきましてどのような感想をお持ちか。
 特に、審議の過程で私もいろいろ読ませていただきましたけれども、いわゆる抑止力としての効果だとか、あるいは企業に対して脱税なんかで法人税の罰則なんかでは今億円単位のものが課されておるとか、そういったようなことの並びだとか、あるいは今五百万円を一遍に一億円に引き上げる、特に中小業者にとりましては上限とはいえ五百万円が一億円になるとこれは大変だ、こういったような反感、これも大変なものでございまして、私どもも党内で議論しましたときには猛反対がごうごうと起こったわけでございます。そういったような社会的な理解の問題だとか、あるいはもう既に個人に対しては両罰規定の結果三年以下の懲役でございますか、そういったような規定まであるじゃないかとか、運用よろしきを得ればあえて金だけで刑罰を科するというのも少し行き過ぎではないかと、いろいろ意見があったわけでございますが、この点につきまして両先生の率直な御見解をお伺いいたしたいと思います。
#103
○参考人(実方謙二君) おっしゃるとおりでございまして、数億円が一億円に下がったのは下げられて残念じゃないかといえばそういう側面もございますけれども、また逆に申しますと、今合馬先生の方から御指摘がありましたように、昨年の課徴金の大幅な引き上げに引き続いてさらに億円台まで刑事罰を引き上げるというのは、ちょっと日本の実情にそぐわないのではないかという御意見も多々あるということは巷間伺いまして承知しております。
 したがって、率直な感想を申しますと両面ございますわけで、よく一億円の線でまとまったなと。これは、自民党の諸先生方及びその御折衝の担当にあられました政府関係者の方々のその御努力を非常に多とするところでございまして、これが一億円も行かずに全部チャラになるということであればもう残念無念至極ということでございますが、とにかく最低限の、何とか国際的にも顔の立つような恥ずかしくない範囲で成立の運びとなるということであれば、これは独禁法を研究している者としては非常に欣快のきわみである。そういう両面で、先ほど申しました一億円の線でもおまとめいただくのには非常に御苦労があったのではないかという点は拝察いたしております。そういうことでございます。
#104
○参考人(金子晃君) 数億円が一億円になったという点については、既にお答え申し上げておりますのでそこのところから御理解いただければというふうに思います。
 ただいまの中小企業の問題であるとか、あるいは行為者が処罰されるということで十分対応できるのではないかというような趣旨の御質問があったかと思いますけれども、その点につきまして簡単に意見を述べさせていただきたいと思います。
 先ほど申し上げましたように、独占禁止法違反行為というのは大企業によって行われる。その意味ではほとんどが資本金一億円以上の企業によって違反行為が占められているという事実があるわけでございます。なおかつ、今回の一億円というのはこれはあくまで上限でございまして、一億円というのがすべての事業者に対して科されるというものでないことは当然のことでありまして、その行われた行為の社会的な影響、それから消費者に与える影響等々を考慮した上で実際には量刑がなされるわけでありまして、企業規模の問題、資力の問題というのも当然量刑の中に含まれてくる事柄であるというふうに理解をしております。
 それから、個人が処罰されればそれで抑止力が働くのではないかということでございますけれども、この点については、残念ながらそうはなかなか考えられない。企業というのが社会的な存在としてあり、そして企業という形で事業活動が行われ、その事業活動が独占禁止法違反行為というものとして不適切なものがとらえられるという形になってくるわけで、その中で事業活動の意思決定にかかわる音あるいは事業活動の一部を担う者が個人としてかかわり合いを持つわけですけれども、しかしながら企業の一員としてあるいは企業の一部としてかかわるわけであって、それは単なる個人としての行動とは切り離されたものである。したがって、企業それ自体に対して制裁を科さなければ独占禁止法違反というのはなくならないのだろうというふうに考えます。
 その意味で、行為者を処罰するということではなくて、むしろ企業そのものに対して抑止力が働くようなことを考えてみなければいけないのではないか。事実、独占禁止法は事業者に対して違反行為を禁止しているわけで、事業者が責任をとらなければいけないというのが建前であろうというふうに思います。
 以上でございます。
#105
○合馬敬君 ありがとうございました。
 次に、また両先生にお伺いしたいのでございますが、独禁法を持っております先進諸国ですね、これはアメリカの刑事罰中心型、それからヨーロッパの行政的な制裁金中心型、それに日本は課徴金と刑事罰とを併存させる非常に独特なまた一つのやり方であるというように承知しております。
 競争政策の国際的なハーモナイゼーションという観点から見ましたとき、やり方は違うけれども独禁法の精神はアメリカでもヨーロッパでも日本でも同じように守られるんだ。そういったような観点から、我が国の独禁法の将来のあるべき姿について先生方はどのようにお考えなのか、お伺いさせていただければ幸せでございます。
#106
○参考人(実方謙二君) 各国のシステムの違いというのは合馬先生のおっしゃったとおりでございまして、アメリカは刑事罰中心ということで、そのほかに連邦取引委員会の命令違反に対しては一日に幾らといういわゆるシビルペナルティー、過料的なものがございますけれども、そのほかに連邦取引委員会が名義人となって不当利得を返還させる訴訟というような制度もございます。いずれにせよアメリカは刑事罰中心です。
 それから、ヨーロッパはいわゆる課徴金中心型、日本は両方併存型ということを言われますが、これは文化的な違いとか、それから社会の許容度とかいろいろな要素がございまして、これはおっしゃるとおり違いがあるということを前提にして、可能な範囲で全部合わせて一本としてトータルとしての抑止力が国際的水準までに達していればよいのだというぐあいに考えております。それで、無理にそのシステムを統一させるというのはかえって不可能ではないか。おっしゃるようにそれぞれのよさを生かしながら制度を求めていく。
 アメリカの場合でございますが、皆さん御存じのようにシャーマン法ができましたのが一八九〇年ですけれども、これは刑事規定というのが最初の規定の体裁からいっても当時は軽罪として処分する。それから順次重罪に変更になりましたけれども、ミスティミーナ、フェロニーという言葉でございますが、最近の改正でフェロニーの方になったわけですけれども、もともと刑事罰から沿革的に発足したものでございます。それで、DOJ、司法省が捜査しますときはFBIを使ってやるということで十分できるわけでございます。沿革的に、アメリカの場合はとにかくカルテルでやるのは非常に汚い。それで、黒い三角帽子をかぶりまして、何か悪党が暗い墓場に集まりましてぼそぼそ相談をして、ダーティーなことをやってこっそりと相談して消費者からだましとるという、こういうイメージがもう定着しておるわけです。したがって、刑事罰を中心とした運用が可能なわけです。
 欧州の場合は、むしろ戦前はある程度カルテルというのも許容される雰囲気というのもありました。したがって、ドイツの競争制限防止法ではそれまでいわゆる秩序罰という制度がございましたからそれを適用する。秩序罰というのは行政措置と刑事罰の中間的なものでございまして、ECの場合はいわゆるファインですか、ファインというのは直訳すれば罰金になるのですけれども、制裁金的な要素を持っている。もちろん制裁でございますから裁量があるということでございます。
 そういうことですが、アメリカの場合は特に抑止力の点からいえば損害賠償が非常にやりやすくなっている。これは三倍賠償で、そのおまけの二倍の分はばれる確率のところを掛けたんだという話もありますし、民事訴訟による制裁でもあるということになっています。それから、クラスアクションというのがございますから、まとめて全部取れるというのがございますけれども、アメリカの場合は非常にそれが強い効果を持っている。ただ、日本の場合は刑事制裁をもちろん活用しなきゃいけないのは当然でございますけれども、アメリカほどどんどん全部何もかも刑事制裁でやるというわけにもなかなかまいりませんので、課徴金も先ほど申しましたように自動的に取られるということで、計算に入れていただくということで置いておく必要があろうということでございます。
 そういうことで、それぞれのシステムは違いますけれども、全体としてできる範囲内で工夫して、合わせて一本で抑止力を国際的な水準、何とか恥ずかしくない程度まで持っていこう。御指摘のように、これから国際化の時代になりますと、やはり独占禁止法を強化しなきゃますます相手に意地悪をされるということでございます。
 これはどういう点かというと、二つの側面がありまして、日本では独禁法が甘い。企業が甘やかされている。おっしゃるように非常に日本人はよく働きまして、経営者も先見性がある。非常にうまい経営をやるということもございますけれども、向こうから見ると独禁法が甘いんで、うまい汁を吸ってそれで外でがんがんやるのではないか、こういうぐあいに言われているわけですね。
 それから今度は、アメリカの場合は昔は独禁法が厳しかったですから市場が割合にオープンだった。自動車が出ていった場合も、ディーラーを探せばすぐ見つかった。日本の場合はいろいろ沿革がございますけれども、全部専売店なんてなかなかつかまらない。そうすると、来るときはうまいことをしておいて、行ったら意地悪されるんじゃこれはたまらぬわという話になりまして、そこら辺、事の実態とか評価は別にいたしまして、これからみんなと仲よくしていくためには独禁法を少なくともきちんとやっているという姿勢を示すことが国際社会で孤立しないためにも御指摘のように必要であるというぐあいに考えております。
#107
○参考人(金子晃君) これからの独禁政策のあり方としては、今実方先生のお話もありましたけれども、ボーダーレスエコノミーの時代で国際的な市場で競争するという場合において、それぞれの国における独占禁止法が反競争的な行為を同じように規制の対象にする。ある国では規制の対象に入れ、ある国では規制の対象に入れていないということがあってはいけないと思うんですね。その意味で規制の対象について調和がちゃんと保たれていなければいけないということ。
 それからもう一つは、違反行為に対する措置がそれぞれの国でやはり均衡がとれているということが必要であろう。そうでありませんと、国際市場で競争する場合において軽く処罰される国の方が有利ではないか、当然そういう問題が出てくる。したがって、違反行為に対する措置というものが各国で均衡がとれている必要があるだろう。
 それから第三番目に、違反行為に対する法の適用が厳正に各国でなされている、これがばらばらであるということであっては困る、この三つの点がこれから守られていかなければいけないであろう。
 その場合に、違反行為に対してどういう措置がとられるか、どういう手法がとられるかということは、それぞれの国が最も有効な方法を採用する、それでそれを模索してきているわけです。したがって、アメリカの場合には刑事制裁という形で伝統的にやってきている。ヨーロッパ諸国においては行政罰というような形でやってきている。我が国の場合には、排除措置を中心としながら課徴金という制度を新たに導入し、そして刑事罰という制度も背後に置く。また、二十五条で独禁法違反行為に対する損害賠償制度をより行いやすくするという制度も設けているという形で来ているわけで、我が国の場合にもこれらを総合して先進諸国と均衡がとれた形で措置がとられているということが必要であろう。刑事罰であるということが必要であるということではなくて、我が国なりの措置がとれる、均衡がとれているということが大切であろうというふうに思います。
#108
○合馬敬君 ありがとうございました。私は人が悪いせいか、諸外国はいろんな法律をつくっておりますけれども、本当に日本並みに法律を守っているのかどうか、ある意味では非常に疑いの念を持っております。
 しかし、それはともかくといたしまして、事業主に対する罰金の上限を今回引き上げる、それから昨年七月から課徴金の率も引き上げた、大変な抑止力の強化になっておると私は思います。経済規模がどんどん拡大していく、それから経済もグローバル化していくということで、今回これを担保する公正取引委員会も五百人しか人がいない。本当に十分な活動ができるんだろうかという懸念があるわけでございまして、経済法の専門家であります両先生方に、公正取引委員会の機能強化について、時間がありませんので一言でもお答えいただければ幸いでございます。
#109
○参考人(実方謙二君) これまでの経緯を見てみますと、カルテルというのはどれだけあるかわかりませんけれども、もう無数に行われているんじゃないかという感じもいたしますけれども、その中で一番多い年で六十ぐらいでございますね、例の狂乱物価のとき。ということになりますと、見つかったのは交通事故で、これはたまたま見つけられた方という感じかもしれません。
 いずれにせよ、今の五百人というのでは諸外国の規模に比べるとまだまだ不十分という感じがいたしますので、人員の面それから執行予算の面等でも諸先生の御支援があって飛躍的に拡張されれば大変結構なのではないかと私は個人として考えておる次第でございます。
#110
○参考人(金子晃君) ないものねだりはできませんので、できる範囲の中で先生方の御理解が得られて人員の強化ということができれば大変結構なことであるというふうに思っております。
#111
○合馬敬君 終わります。
#112
○和田教美君 本日は、お忙しい中を我々の審議に御協力をいただきましてありがとうございます。もう大分質問も出ておりますので、私の質問は多少重複する点があるかもしれませんけれども御了承願いたいと思います。
 まず、両先生にお伺いしたいのでございますけれども、我が国の独占禁止法は違反行為に対する抑止力として刑事罰と課徴金という二つの制度を持っておることは先ほどからの論議のとおりでございます。諸外国では刑事罰あるいは制裁金のいずれかによっている国が多いように承知しておりますけれども、我が国の独禁法における刑事罰、課徴金の法的性格、位置づけのそれぞれの違い、相違点というふうなものはどういうふうなものがあるのか。それからまた、この両立てと申しますか二本立ては日本の現状に適合しているというふうにお考えなのかどうか、その点について御両人の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
#113
○参考人(実方謙二君) ただいま御指摘のありました課徴金と刑事罰の両立てでございますが、課徴金の制度は昭和五十二年、一九七七年の改正で新しく導入されたものでございます。御案内のとおり、日本の独占禁止法はアメリカ軍の占領下においてアメリカ軍の直接の命令でつくられたような次第で、アメリカの体系というのを受け入れまして、強制手段としては行政上の排除措置と並んで制裁措置として刑事罰規定が置かれている、こういう体系になっております。
 したがって、システムとしてはアメリカ型なわけですけれども、実際に刑事罰を活用いたしまして十分な抑止力を持たせるという点から見ますと、やはり違法性の認識というのがある程度社会的に浸透していなければ刑事罰の発動がしづらいという点があります。例えば、当時諸悪の根源と言われました石油カルテルにつきましても、生産調整事件の方は違法性の認識、合理的な可能性がないので無罪、それから価格カルテルの方は行政指導に対する協力措置という側面もあったので執行猶予がついている、こういうことでございます。
 いずれにせよ、刑事罰による自由刑、特に行為者に自由刑を科するということはその法律に対する社会的な認識が高まらなければできないわけで、アメリカでも執行猶予のつかない実刑が科せられましたのは一九六〇年以降、発電所の発電機の有名な共謀があった以降でございます。
 そうなりますと、日本のその当時の経緯を申しますと、価格引き下げ命令をやったらいいんじゃないかという議論もございまして、それでたしか参議院だったと思いますが、物価問題の、例の石油二法というのが通ったときの附帯決議で、価格引き下げ命令それから分割命令、これを検討せよという御指示が出たわけでございます。その後で公正取引委員会で改正案を審議いたしまして、その準備をした研究会にも私は若輩ながら参加しておったんですが、価格引き下げ命令等はこれはちょっと自由経済のシステムから見ておかしい。
 やはりカルテルといいますのは、これはやってしまえばうまいこといった、それで話し合って市場で売ってみる。例えば、百円のものを百二十円に上げる、百二十円で売るとうまくだれも損をしないでできた。こうなると、カルテルをやめると言っても値段は下がらないわけです。そうなると、後でカルテルをやめると言ってもだめで、これはやらないようなシステムにしておかなきゃいけないということでございます。そのやらないシステムというので刑事罰があったわけですが、刑事罰は現在もあるわけでございますけれども、なかなか刑事罰というのもそんなにもしょっちゅう毎月一遍という感じでやるわけにもまいりませんで、これはある程度、特に日本の企業犯罪に関する刑事法のシステムというのは企業自体の行為というよりも自然人の行為を特定してから制裁を科するということになっておりまして、なかなかその刑事罰が発動しづらいという側面があります。
 とりあえず、抑止力を高めるという点から公正取引委員会が無条件で取るというものとして、先ほど金子参考人からも御指摘がありましたように、不当利得を社会的公正という側面から国が徴収する行政措置として課徴金を位置づける、それを大きな意味で抑止力の一環に置いておる、こういうシステムでございます。
 したがって、これはやはりなかなか理論的にはどちらか一方の方がいいのかもしれませんけれども、できる範囲内で各国の違法行為に対する認識度の方の違い等も踏まえまして、現実に実効性のある制度を考えていこうということで二本立てになったものと承知しております。
#114
○和田教美君 私の時間が限られておりますので簡単にお願いしたいと思います。
#115
○参考人(金子晃君) それでは、端的に申し上げます。
 課徴金は、法的な意味で制裁措置ではございません。違法な行為によって得た利益を国家が徴収し、社会的な公正を図るという制度でございます。刑事罰の方は反社会的な行為であるということで刑事責任を追及するという制度であって、二つの制度は基本的に異なる。ただ事実上、抑止力として働くという意味合いを課徴金は持っているということは最初に申し上げたとおりでございます。それから、課徴金は価格に関するカルテルについてのみ課されるものであるということです。刑事罰の方は価格であろうと何であろうとカルテルに対しては科されるということになりますので、オーバーラップするものではないということでございます。
 それから、二本立ては有効かということですが、過去の経験の中から課徴金という制度を生み出してきたものであるわけで、その意味で現在この両制度によって有効に機能が果たされているというふうに言っていいだろう。しかし、完全であるかというとそれは時代とともに変わっていくわけですから、よりすぐれた制度にこれから向けていかなければいけないということになると思いますが、過去の反省の上にでき上がったものであり、有効に機能することが期待され、また機能しているというふうに私は評価しております。
 以上です。
#116
○和田教美君 もう一つ金子先生にお尋ねをしたいんですけれども、先ほど金子先生は罰金の上限額が一億円の大台に乗ったということですれすれセーフ、すれすれ合格というふうな点数をつけられたように私は受け取ったのでございますけれども、しかし五億円と一億円というのを比べてみますとやはり相当大きな違いではないかというふうにも思われるわけなんです。とにかく、罰金の金額そのものよりもいろいろな総合的な判断が重要だというようなお話もあったわけでございますが、その辺のところをもう一度ひとつ御説明を願いたいと思います。
#117
○参考人(金子晃君) 金額だけを比較されますと、五億と一億は非常に大きな差があるわけでございます。
 しかしながら、今回の改正法の一番大切な点は、従来行為者である自然人と、それからその行為者が所属する事業者の罰金刑の上限が運動していたという点にあるわけです。これはすべての両罰規定において、行為者と行為者が属する事業者の罰金刑の上限が同じレベルにあったわけです。しかしながら、今回企業に対して抑止力を働かせるということで、事業者に対する罰金刑の上限を引き上げることができないかどうかということを議論いたしまして、理論的にその点が可能であるという結論を得たわけで、その結論に基づきまして今回の改正案が出ているわけです。その点で、今回の独禁法改正は画期的なものであるというふうに評価することができるわけです。
 たまたま同時に提出されましたけれども、証券取引法の改正法案の方が一足先に法律になりましたので、既にその点については切り離しということは立法的になされているわけですけれども、経済の基本的な法である独占禁止法においてこの切り離しが実現するということは非常に大きな意味を持つ、その点を高く評価するということ。
 それから、五百万円が一億円になるということはこれはもう大幅な引き上げ、これはどなたも否定されないだろう。一億がそれでは十分であるかということになるといろいろ御議論はあると思いますけれども、大幅な引き上げである、億に乗ったということも評価できる。その点を総合的に考えまして、今回の改正案について賛成度の高い評価を与えるということを申し上げたわけでございます。
#118
○和田教美君 次に、実方先生にお伺いをいたします。
 刑事罰研究会の報告書では、罰金の上限額を数億円程度に引き上げることが適当というふうに言っておりますけれども、今のお話のとおり今度の改正案では上限額は一億円となっております。刑事罰研究会では、「主要先進国の刑事罰又は制裁金制度との間で、ある程度の整合性が保たれるようにする配慮が必要である。」というふうに言っております。そこで数億円という数字が出てきたとも解釈できるわけですが、この上限額が一億円であっても主要先進国の制度から見てそんなに遜色はないというふうに先ほど金子先生は評価されましたけれども、実方先生も同じような評価でございますか。特に、先進国と比べても劣るところはないというふうにお考えでございますか。
#119
○参考人(実方謙二君) 厳密に比較いたしまして劣るところはないかどうかということですが、上限だけではなくて運用の実際で大体どのくらいの制裁、経済的な不利益が課せられているかというところを見なきゃわからないわけでございます。
 例えば、アメリカの場合は、ごく最近の改正によりまして企業に対しては最高が一千万ドルでございますから十三億。今ですと十二億五千万ぐらいで、これは高い例でございます。それで、ECの場合は百万ECUまたは前年度売上高の一〇%のいずれか高い方ということになりますが、低い方を見れば一億円ぐらいで、目安のところは一億円という数字がとられております。ドイツの場合は百万マルクまたは超過受取額の三倍ということで、超過受取額の三倍ということになるともっと高くなる可能性がございます。数字を並べますとそういうことで、厳密に申しまして、遜色がないかどうかというと明白な結論というのは出ないわけでございます。
 課徴金の場合は、数字を見ても六%ということで、これは低いとも高い保とも言えますけれども、実例を見ますと、先ほど申しましたように高いので一件当たりでございますが百億円を超えた。だから、一企業当たり数十億のラインに乗った例があるということ等を総合的に勘案しますと、上限だけを見ると多少足りないような感じもないわけではありませんけれども、ほぼ同等の水準に近づいていると言って間違いはないのではないか。何かあいまいなことを申しましたが、そういう感じを持ちます。
#120
○和田教美君 あと四、五分しかございませんので簡単にお願いしたいんですけれども、両先生の御見解を簡単にお願いいたします。
 これは個人事業者に対する刑事罰の問題でございますけれども、独禁法改正案では、法人でない個人事業者が違反した場合でも罰金の上限額は一億円となっております。そして、法人企業が違反した場合と同じ扱いになっておるわけでございます。しかし、法人企業と個人企業では資力にかなりの差があるというふうなことから、個人企業に対して最高一億円というのは少し過酷ではないかというような見解も一部にあるわけでございます。
 先般改正されました証券取引法では、罰金の引き上げが行われたのは法人企業に対してのみだというふうに私は理解をしているわけですけれども、独禁法でも同じように法人企業と個人企業とで差をつけるというふうなことは実際的でないのかどうか、その辺についての御見解をお聞かせ願います。
#121
○参考人(金子晃君) 証取法の方の改正の問題が今お話に出ましたけれども、そちらの方では特に行為者限定がされていないわけで、すべての人が違反行為を行えば処罰の対象になるという形の中で法人企業に対する処罰を強化するということを行ったわけです。独占禁止法の場合については、これは事業者に対して一定の行為を禁止しているわけです。事業者が独占禁止法の行為規制の対象になっているわけです。事業者については、個人事業者であるか法人事業者であるかということを区別していないわけです。なおかつ、その行為は競争に対して影響を及ぼす行為を規制の対象にしているわけで、個人事業者であっても競争に対して影響を及ぼすものであれば規制の対象にするという建前になっているわけです。
 したがいまして、競争との関係で大企業であろうと中小企業であろうと個人事業者であろうと影響を及ぼす行為をすれば独禁法上規制の対象になってくるわけです。これに対して、抑止力を働かせるという観点から特に差別をすべき理由というのは見出せないというふうに思います。
 あとは、先ほどお答えしましたように、量刑の問題として考慮の対象になるであろう。個人事業者であるから競争に対して重大な影響を及ぼしながら刑事責任の追及においてまけられるということは、これはおかしいだろうというふうに思います。あとは、量刑の問題として資力その他も一つとして考慮の対象にはなってくるということで処理されるのが妥当なところであろうというふうに私は思っております。
#122
○参考人(実方謙二君) 基本的なことは金子参考人が述べられたとおりでございますが、これも御案内のところかと思いますが、念のため申しておきます。
 今回の改正案というのは、両罰規定に関する九十五条の改正で、九十五条をまって初めて罰金刑が事業者に科せられる場合について、八十九条所定の罪については一億円にする、こういう趣旨でございます。ということはどういうことかと申しますと、事業者の中には個人事業者もございます。個人事業者というのはいわゆる法律で言えば商人でありまして、その企業に関する法律関係上全部その人の名義になる、財産もその人の名義になる、こういう趣旨でございます。そうすると、個人事業者の中でもかなり大きな形態があって、なおかつ会社形態をとらないで個人所有の形態をとっている場合と、本当に個人の事業者がみずから働いているという場合がございます。
 それで、その後者の方の事業者がなおかつ自然人行為者であるという場合では、九十五条に行かないで八十九条で直に処罰の対象になります。そうすると、九十五条に参りません。したがって、行為者が事業者である場合には、八十九条によって「三年以下の懲役又は五百万円以下の罰金」ということでそこでとまってしまうわけなんです。罰金刑については五百万円、それで懲役は三年以下ということで、これは三年以下の懲役が科せられるということで、酷のようでございますが、法人の場合でも自然人行為者に対してはそれは科せられるということになる。
 したがって、本当に典型的な、もう事業主が事業者であり、かつ自分もやっているという場合には八十九条に参りませんので、それは引き上げの対象にならない。それで、個人事業形態をとっていても非常に大きな企業で実際にやった人と名義人とが違う場合には九十五条に行って初めて一億円かかる、こういう趣旨になっておりますので、その点を御了解いただければと思います。
#123
○和田教美君 ありがとうございました。
#124
○井上計君 両先生には、お忙しい中お越しいただきましてありがとうございます。
 大分質問は出尽くしております。また、私も持ち時間が十分でありますから端的にお尋ねをいたしたい、かように思います。
 罰金刑の一億円につきましては、現在の情勢から考えますと妥当であると考えておりますから、あえてこの点についてはお尋ねを省略いたします。
 そこで、お尋ねをしたいのでありますけれども、独禁法の精神からまいりますと、事業者は不公正な取引方法を用いてはならないということ、これは主眼であろうと思います。ところが、独禁法の問題になりますと、常に不公正というのは、端的に言いますとカルテルを結んで料金を上げる、価格を上げることが不公正だ、こういうふうに常識化されております。しかし、中には不当廉売による不公正取引も実は随所にあるわけであります。
 ところが、現実の問題としては大分前から方々で問題になりますけれども、不当廉売による独禁法の処罰はほとんどない。若干ありますがほとんどない、こう言っていいと思うのであります。これが、一つは予算決算会計令との関連からして、予算決算会計令の中の入札の項目では最低価格に落札をしない場合というふうな項目があります。時間がありませんから詳しく申し上げません、もう先生は十分御承知のことでありますが。ところが、それらのものについては予定価格の一番近いものを落札だとするということについては限られた物件だけでありまして、ほとんどのものは最低価格入札ということが原則になっておりますから、したがっていろんな入札の場合に、特に大企業あたりは他の同業者、競争業者を排除するために不当廉売、それこそもう常識外れの不当な価格で入札をするという事例が随所にあるわけです。ところが、それについては事実上これは独禁法違反に問われないというふうなケースが多いわけであります。
 研究会では、この不当廉売・入札等々についての論議は全くなかったのでありますか。これをひとつ両先生から簡単にお答えをいただきたいと思います。
#125
○参考人(金子晃君) それでは、最初に私の方からお答えを申し上げます。
 独占禁止法で禁止されている行為につきまして、一つは私的独占と呼ばれる行為、それからもう一つは不当な取引制限、これは一般にカルテルというふうに呼ばれている行為であるわけです。それからもう一つ、不公正な取引方法、今先生が述べられました不当廉売は、この不公正な取引方法の中の一つの行為というふうにとらえられているわけです。簡単に申し上げますけれども、この中で私的独占と不当な取引制限が刑事罰の対象となっているわけでございます。したがいまして、不公正な取引方法については刑事罰の対象と現在法律の上でなっておりません。
 今回の研究会で議論いたしましたのは、独占禁止法で刑事責任が追及される行為についての刑事罰の引き上げということが中心として議論をされたわけです。その中でも、特に競争制限的な効果の強い私的独占及び不当な取引制限、これとの関係で事業者団体の行為の一部というものを強化の対象にするという結論をしたわけでございまして、今先生の触れられた点については、実は刑事罰の対象に現在の法制度上なっていないということで考慮の対象から外されていたというふうに申し上げていいかと思います。
 以上でございます。
#126
○参考人(実方謙二君) 基本的には金子参考人の述べられたとおりでございますが、不当廉売を用いまして競争業者を市場から駆逐する、駆逐するというよりも完全に追い出すのじゃなくて、その事業活動がうまくいかないようにさせる程度でもいいわけですけれども、大きな事業者が競争事業者を市場から駆逐するような場合には、私的独占が成立いたします。
 これまで、不当廉売で違法とされた例は日本ではございませんけれども、アメリカでは地域的に競争者のいるところだけをねらい撃ちにして廉売をかけて追い出したりとか、そういう例はたくさんございまして、理論的には、非常に大きな企業が小さな競争企業をねらい撃ちにして不当廉売をかける、こういう場合は私的独占に該当する。これまで日本の例はございませんけれども、該当してそして今申しました八十九条の対象になる。それで、それに対する罰金は事業者に対しては一億円だと、そういう可能性はございます。
 それからもう一つ、この研究会につきましては、刑事罰体系の全体の見直しというのは、今回は大変で諸先生の御了解というのもなかなかいただけないだろうということで、全部の見直しは長期的課題ということで、とにかく事業者に対する罰金、その中でも特に悪性の強い私的独占、不当な取引制限、それからもう一つカルテルの中で事業者団体がやることもございますが、それを対象にした八十九条について限定いたしまして、それの事業者と行為者との処罰の別建てというのを中心にして議論したわけでございまして、不当廉売も含めて独禁法全体の処罰の見直しというのはしておりません。
 それから、不当廉売の規制一般でございますが、これは不当廉売については経済学者の間でもいろいろ議論がございまして、非常に効率のいい企業が安く売れるので、ほかの企業が負けるという場合と、それからよそであくどいことをしてもうけて、それを原資にして競争者を追い出す場合と二つございます。両方とも同じように見えてなかなか区別がつかないわけですが、後の方はこれは独占禁止法で厳正に対処するということになっております。
 漏れ伝わるところでは、不当廉売に関する申し立てというのは公正取引委員会では非常に多くある。例えば、隣のスーパーで安売りしていて困るから何とかしてくれないか。そうすると、公正取引委員会の事務所の方が、こういうクレームが入っているのだけれどもおまえのところはどうかと言うと、すぐやめますと。実際上の指導で不当廉売に対する規制というのはかなり大幅に行われているような感じがいたします。したがって、正式の事件としてはなかなかございませんけれども、後者の、ほかでもうけたのを使って汚い手段で安売りをかけてつぶすというのは、厳正に取り締まるということになっております。
 しかし、効率がよくて安く売るために効率の悪い企業が負けるのは、これはちょっと冷酷な言い方かもしれませんが、自由競争原理でやむを得ないところで、それまで余り厳しくやるとかえって社会全体としての効率の増進というのが阻まれるので、形として不当廉売に見えても、そこら辺はきちんと分ける必要があるのではないかというのが大方の意見でございます。
#127
○市川正一君 私は、日本共産党の市川でございます。両参考人に時間の関係でまとめて御質問いたしますので、よろしくお願いします。
 独禁法の罰則規定のうち、課徴金はあくまでもカルテルで得た不当利益を徴収する制度であり、損害賠償は消費者への被害救済であります。他方刑事罰は、独禁法違反に対する制裁であることはもう言うまでもございません。
 とすれば、独禁法違反をなくすための抑止力を果たすという本来の意味を持たすためには、少なくとも参考人側自身も御同意なさった刑事罰研究会報告の数億円の罰則金が必要であろうということを前提に、しかしそのことはもう繰り返すことは避けまして、仮に罰則が一億円になったとしても、九十六条の公取委員会の告発がなければ事は動きません。
 刑事告発第一号は、御承知のように七四年の石油やみカルテルでした。第二号は、十七年後の九一年の業務用ラップ、この二件しかないわけです。確かに公取は、九〇年六月二十日に独禁法違反に対する刑事告発に関する公取委員会の方針で告発することを決めております。ところが、セメント業界のカルテルについては実行行為がそれ以前だったということで、また埼玉県発注の土木工事の入札談合については、談合の行為者が特定できないということでそれぞれ告発を見送っております。
 公取には犯罪に対する捜査権、これがありません。だとすれば、犯罪の事実はあるが犯人が特定できないという場合、そのことを理由に九十六条の専属告発をしないというのは、独禁法七十二条での告発権を公取みずからが放棄することになるのじゃないかこう思うんですが、公取の告発権について両参考人がどうお考えなのかをまずお伺いいたしたいと思います。
#128
○参考人(実方謙二君) 公正取引委員会で告発した場合に、初めて検察官が独禁法違反の罪を問い得るという体系は御指摘になったとおりでございます。御指摘になったとおり、公正取引委員会は違反行為の調査のための強制調査権限というのが四十六条に定めてありまして、それに対する措置というのは四十六条と五十一条の二でございます。それから九十四条、これは自由刑も入りますが、それから九十四の二は罰金刑だけですが、その罰則規定で担保するということになっているわけでございます。
 それで、御指摘ように、今の刑事実務の実際、これは刑法の専門家ではございませんのでそれほど詳しくございませんが、やはりその自然人の行為があって初めて事業者、法人の処罰ができるという基本的な両罰規定の運動関係、これは額を別にするかどうかは別にしまして、罪の成立というのを刑事手続の上で立証していくためにはそういう段取りが必要であろうと言われております。
 それで、もう一つ御指摘がありましたように、今度はそれが違法行為があったということが立証されましても、それに対して罰を科する場合に、社会の当該違反行為に対する関心の成熟度というのがやはり実際には裁判の上では影響してくるというようなことも考えられます。それは、先ほど申しましたように、何遍も告発をして、刑事訴追がたくさん積み重なっていけば犯罪意識というのも強まって、これでまたそれがやりやすくなるということもございます。基本的にはそういうことが前提になりますので、先ほどもちょっと申しましたけれども、公正取引委員会の告発権というのは、これまたちょっと余計になりますけれども、一応公正取引委員会が主として行政処分によって独禁法の運用を図る重要な主体であるということを考えて、さまざまな総合考量をした上で告発するという立場を決めたものだと思います。
 したがって、その専属告発制度の是非についてはいろんなことを申しませんけれども、それについては理論的には一般人も告発できるとか、あるいは検察審査会的なものをつくってそれを通れば公正取引委員会の告発がなくてもできるということも改正案としては考えられるところですが、これはもう私個人の見解でございまして、この罰金の上限を上げるということとは直接関係ございません。
 それで、公正取引委員会が告発権限を持っているという制度を前提にいたしまして、刑事手続における実際の実務の流れというものを前提にいたしますと、先ほど申しましたように、やはり完全に公正取引委員会が個人の行為を特定できたという場合でなくても、ある程度検察官にきちんと調べていただけば公判が維持できるというような、ある程度の目安がついたときに告発ができるということにならざるを得ないんじゃないかと思っております。
#129
○参考人(金子晃君) 公正取引委員会の方が積極的に告発をするという態度を表明しております。また、今回刑事罰の強化ということも公取の方で要請をしているものであるわけです。幾ら刑事罰を強化しても、告発をしなければこれは何にもならないことであるわけですので、公取の告発をするという姿勢をもう少し長期で見てみたいというふうに考えております。
 それから、理論的な点ですけれども、七十二条で「犯罪があると思料するとき」ということになっておりますので、公取が犯罪があるというふうに思料して告発をするということになるわけで、この「思料するとき」ということについてどういう場合に独禁法違反の犯罪があるというふうに考えるか。この点については、現在の検察実務、それから刑法の理論というのが非常に大きく作用してくるということは、これは否定できないだろうと思います。現在の検察実務、それから刑法の方の理論を前提とする限りにおいては、個人を特定するということをして犯罪事実を構成するということがないと、犯罪があるというふうに思料しないということになると思います。そういう点については、独占禁止法を学ぶ立場としていろいろ疑問を提示しております。
 なおかつ、その点について現在、企業犯罪についてどういう取り扱いをするかということは法制審議会の刑事法部会の方で鋭意議論をしていると聞いておりますので、そちらの結果を待ってみたい。我々の方では疑問を提示し、そして検察実務の上でもまた刑法理論の上でも我々の見解に耳を傾け、刑法理論の修正ということが将来なされていけば望ましいというふうに考えておりますけれども、現在の状況下ではやむを得ないところであろう。そのことは、必ずしも告発権限を放棄するものではないというふうに私は思います。たまたま今回特定できなかった。過去の事例を見ましても、特定をして勧告しておりますので、私はもう少し公正取引委員会の今後を見てみたいというふうに思っております。
#130
○市川正一君 懇切な御答弁ありがとうございました。
 私も長い目で期待はいたしたいんですけれども、もう辛抱できませんので、やっぱり公取が国民に対する責任を果たすために専属告発権を活用するということを申し述べて質問は終わりたいと思います。
#131
○古川太三郎君 連合の古川でございます。まず、金子参考人からお聞きしたいと思いますが、金子参考人の先ほど出ました論文、「刑事罰の強化」という論文でございますが、これはことしお書きになったもののように考えますので、既に課徴金の改善が行われた後のことであろうと思うんですが、そういう中で五億というのが正しいんだというように理解していいでしょうか。
 それといま一つは、政治的にはどうのこうの別としまして、学者としてのお考えをお聞きしたい、こう思っております。
#132
○参考人(金子晃君) 正しいというふうに言われますと困る、何が正しいかということは一概に言えませんので。私が論文の中で書きましたのは、個人に対する痛み、それが五百万円であるということであるとすれば、違反行為を行った事業者に対しても同じ痛みが課される必要があるであろう。何をもって同じ痛みとするかということは問題があるわけですけれども、一応算定の基準として、公正取引委員会の研究会では、個人の資産、資力、ストックの面とフローの面で見て、そして両者を比較するという方法をとったわけでございます。その点で言いますと、まあ大まかに言って百倍という金額、数値が出てくる。そういうことであるとすれば、同じ痛みということで考えれば五億という数字が出るだろう。
 それから、五百万円という金額は個人にとってどういう数値であるかということを考えてみますと、個人の平均所得、約五百万円というふうに言われております。役員の場合でその倍、一千ちょっとという数字が出ているようですけれども、五百万円というのはその意味で言えば個人にとってはかなり痛みのある金額である。そういうことを考えますと、企業にとって同じような痛みということを考えれば最低五億ということは考えられるであろう、それが正しいということではありませんで、同じ痛みということであればそういう数字が出てくるであろうということを書いたわけでございます。
 なお、その他の点については既にいろいろとお答えしておりますので、つけ加えません。
 以上でございます。
#133
○古川太三郎君 先ほどから罰金は行政罰ではないんだということでのお話もありましたが、確かに罰金は公取が告発権を行使して、後に裁判所で決めることなんです。この量刑に当たってはいろいろの事案を加味して量刑を決定するだろう、こう思うんですが、本当にその幅を少なくするというよりも多くするという方が第三者の判断としては理屈としては通るんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。お二人に聞かせていただきたいと思います。
#134
○参考人(実方謙二君) 先ほど先生からの御質問もありましたけれども、中小企業にとってみれば一億円上限でも一億円上限が科せられればえらく大変だということでございます。おっしゃるとおり、裁判所の量刑によってさまざまな事情を勘案するので上限は高く定めておいた方がいいのではないかということも考えられますけれども、いろいろまた諸法制との整合性とかさまざま考えますと、余り過大なところで上限を定めるということもなかなか難しいということになるわけでございます。
 したがって、先ほどからの繰り返しになりますけれども、一億円よりももう少し上の方がよかったのではないかということも一つの可能性としては考えられますが、一億円でもそのほかの点も考えれば大きく評価できる案であるということは先ほどから述べてきたわけであります。さまざまなほかの同じような諸制度との整合性等々も考えれば、それから課徴金制度もあるということも考えれば五億円というのは無理で、一億円より少し上がることもあるいは可能であったかもしれないけれども、一億円でも妥当かな、こういうことでございます。
#135
○参考人(金子晃君) 幅という点であれば一億円より三億円の方が幅があるかもわかりませんけれども、私は問題は幅の問題ではないというふうに考えます。
 それから一億円というのは、これは各方面との折衝の結果ということを言われておりますので、一億円というところで皆さんが合意をされるということであれば、私は一億円ならばまあ納得できるということで申し上げているわけで、単なる幅の問題というふうには考えておりません。
#136
○古川太三郎君 もう時間もありませんが、今までは低い水準であった、だけれども今度は高い水準になった、これだけ高くなったから抑止力があるんだというんじゃなくて、今の経済事情に合わせてこれではやはり合わないなという問題と、それからこういったことをやったらこれだけの罰金、重い犯罪なんだ、これ本当に社会的な犯罪なんだという意味での抑止力、後者から考えれば、経済事情から考えればどのようにお考えになるかお聞かせいただきまして、終わりたいと思います。
#137
○参考人(実方謙二君) 先ほどから何遍も申しておりますように、それから私の意見陳述のところでも最初に申しましたが、特に八十九条で対象となっている行為というのは、これは社会的に非常に非難をすべきその性格の強いものでございます。カルテルというのは、これまで一部では日本的な和の精神に合致するものであるという議論も昔はございましたけれども、これはアメリカでは全体的に、言われましたように陰でこそこそやって人をだまし討ちにするという非常に汚い行為である。それでこれは、要するに泥棒というのは物理的強制力を使う、すりというのはわからないようにすっとこう持っていきますけれども、これが銀行に行って包丁突きつけて十万円持ってくると非常に重大な犯罪になるわけですが、企業がカルテルを結べば、これは会社のために尽くしたということでかえって出世するというのが現状でございまして、それでは非常におかしいと。カルテルというのはもう社会的な非常に忌むべき汚い行為であるということを認識してもらいたいということが、私の昔から論じているところでございます。
 したがって、そういう点からいえば、まず一つは事業者に対する刑事罰を強化する。これは理論的には経済的不利益を課することによって、先ほど申しましたような意思決定のメカニズムを通じて予防するということにもなりますけれども、もう一つは、そういう改正を実現させることはそれが社会的な犯罪であるということを国会でみずから明らかになさるという点で大きな意味があります。したがって、できれば三億円で通ればもっといいのかもしれませんが、いずれにせよとにかく常識から見れば大幅な範囲で刑事罰を強化するという姿勢をここで国会でおとりになるということは、そのカルテル行為、それから私的独占の対象となっているのはほかの事業者を抑圧していじめる行為ですから、強者が弱者をいじめる行為ですからこれはもう非常に汚い、だから独禁法違反というのは単なる経済事犯ではなくて、これはもう自然犯的な悪い行為であるということをはっきりしてもらうために今回の刑事罰の強化の法案が通るという、そういう方向に向けて一歩前進するために非常に大きな意味があると考えております。
#138
○小池百合子君 日本新党の小池でございます。
 長期にわたります研究会での御検討、敬意を表したいと思います。
 何よりも九十五条の両罰規定の切り離しということ、これが実現するということでございますが、非常に大きい成果ではなかろうかと思っております。なぜならば、これまでの企業犯罪では自然人というんでしょうか、個人がトカゲのしっぽ切りとなって一件落着するという、そういった悲劇が続いてきたことを考えますと、そういう会社もしくは産業優先から個人の生活等の優先といったようなこれからの大きな流れに一歩を築かれるものではないかと考えております。
 とにかくトリのトリなのでアプローチをちょっと変えなくちゃいけないかなというふうに思うので、ひとつお伺いをしたいんですが、先ほど来出ております一億円か五億円かもしくは三億円かという、そういう議論もさることながら、とにかく最終的な目的は独禁法についての意識をさらに高めて、そしてそういった不公正な取引、独占等を避けるということが何よりもこの抑止力を求めての刑事罰の強化だというふうに考えるわけでございますが、法律もしくは独禁法用語になれない私から申しますと、この排除命令とか排除勧告とか警告とか除外とか、こういった法律的な言葉というのは一般の方々にとりましては非常にインパクトが、つまり一言で言うとわかりにくいということになるのではないかというふうに思います。
 先ほど来金額の問題だけではないというふうにおっしゃっておられますことから、こういった面での法律用語に、これは公取の方でいろいろとまたアイデアを出していただくようなことかもしれませんけれども、皆様方のような御専門の方からこういった法律用語についてももう一度改めて考え直してみるとかというようなアプローチがあってもよかったのではないかと思いますが、こういった点のアプローチというのは全くなかったのでしょうか。お二方に伺います。
#139
○参考人(金子晃君) 独占禁止法の執行力を強めるということは、今御指摘になられましたように、国民的な合意を形成していく、国民の中に独占禁止法を守るということが国民生活において非常に大切なことだということを強めていくということは、おっしゃるとおりであります。
 今までにも公正取引委員会がそういった活動をしてきたということを私は存じておりますし、また我々独占禁止法を学ぶ者、それから独占禁止法との関係で消費者問題に関心を持っている者はそういった方面の活動もしてまいりました。その点で、消費者運動をなさっている方々も独占禁止法についてはよく勉強され、また独占禁止法を支える力になってくれております。そういう点では、我々今までかなり学界としては、学界の中ではむしろ積極的にそうした活動にかかわってきたのではないかというふうに思っております。
#140
○参考人(実方謙二君) おっしゃいましたように、独占禁止法に対する理解というものが非常に広い範囲で広まるということが必要でございまして、そのためには用語等もわかりやすくということでございます。
 この研究会では特にその点については議論しておりませんが、例えば私の陳述の中で違反行為者あるいは事業者にとって経済的に打撃となる程度という、こういう表現をいたしましたが、これは例えば芝原参考人が衆議院でおっしゃったかもしれませんが、これを刑法学上の術語では感銘力と申しまして、私この研究会に出まして感銘力という言葉がぽんぽん刑法学者から出まして、私もすぐ専門用語を飛び交わして人をたぶらかすということを多少はやりますけれども、刑法学者から感銘力という言葉が出てびっくりしまして、これ何ですかと聞いたら打撃になる程度だと。そういう点につきましても、できるだけわかりやすくということを考えております。
 それからこれは余談になりますが、独占禁止法を一般の国民の方に御理解を深めていただくというのは、一つは今回のように、例えば政府・与党の御関係者の方で今回の独占禁止法をまとめるまで中の御説得に当たっていただいた。ということは、御反対の立場いろいろあろうと思いますが、その反対の向きにも大所高所から考えればこういう独占禁止法の強化が必要だということを認識していただいたという面で非常に大きな意味があったと考えております。
 それから、例えば消費者運動の中でも、私個人的には例えば損害賠償制度の請求訴訟等にもかかわっておりまして、これは個人の宣伝になりますけれども、石油カルテル訴訟では証人として出ていっていろいろ請求者側の活動を支援するということもしておりますけれども、いろんな損害賠償制度についてはもう時間がないので申しませんが、そういうのも積極的に利用されるようになって、広く国民の方あるいは例えば一般消費者の方もそれからあるいはいろいろな企業の方も含めて、フェアなルールで自分の努力によって公正な活動をやればそれが報いられるという社会が本当に豊かな社会ではないか。
 えらくきれいごとを申しますが、そういうような社会に向かって進んでいくようにということで独占禁止法の勉強をしてきた次第でございまして、今回の法案についてもこの成立を心から希求しているところでございます。
#141
○小池百合子君 私自身はつい昨年まで公正取引委員会の方の独禁法を広めるということのポスターのモデルをやっていた者でございますけれども、しかしながらやはり先ほどおっしゃいましたように広く知られているといった、そういった排除勧告であるとか、その意味ではなかなか一般の方々にはやはりインパクトがまだまだ少ないと言わざるを得ないと思います。また、わかりやすい言葉と同時に抑止力につながるような、いわゆる恐れをなす言葉、その両面を備えたような、そういう告知がさらに必要じゃないかと思います。
 最後にずばり伺いたいと思いますが、金子先生に伺います。
 先ほど上限五億円という話を出しておられましたし、また金額だけではなく、理論的な数値ということ、理論的な問題等もあるというふうにおっしゃいましたが、先ほど実方先生も非常にきれいな話とおっしゃいましたが、富士山のてっぺんを、清くそして透明で公正で自由な競争が行われている、それを頂点といたしますと今回の法案というのは河合目なんでしょうか、イメージでお答えください。
#142
○参考人(金子晃君) なかなか答えにくい問題ですけれども、まあ七合目か八合目くらいにいっているんじゃないかというふうに私自身は思っています。ただ、登れば登るほどまだ高くなるので、その意味では公正かつ自由な競争というのは必ずしもここということではなくて、やっぱり時代の変動に伴ってそれもまた変わっていく、その意味では富士山の高さも変わっていく可能性がありますので、常に高い方向へと向かっていかなければいけないんだろうというふうに思います。ただ、理屈の問題じゃなくて感じで申しましたので、そういうことで御理解をいただければというふうに思います。
#143
○参考人(実方謙二君) 富士山の比喩でございますが、富士山というのは少なくとも天気が晴れていれば非常に遠くから見えて美しい。前に私千葉に住んでおりましたけれども、正月は千葉からでも見えました。ということは、社会全体が透明になれば、それほど大きなこけおどしをしないでも遠くから見えるということでございますが、今の状態はまだ完全にクリア、正月で自動車も全然走ってないというところまではいきません。実際の社会というのもいろいろございますから、我々学者が考えているようなモデルどおりにはまいりませんですけれども、薄曇りの春がすみの中でなおかつ富士山がくっきり見える、これは感じでございますが、冬の春がすみというとちょっとあれかな、冬のきれいな空気の中で雪を冠にいただいて遠くから見える七合目までぐらいはいっているという感じでございます。どうも印象的なことを申しました。
#144
○小池百合子君 ありがとうございました。
#145
○委員長(斎藤文夫君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終わります。
 実方参考人、金子参考人両先生におかれましては、大変お忙しいところ長時間御出席をいただき、その上貴重な御意見を拝聴させていただきました。まことに得るところ大きなものがございました。心から厚くお礼を申し上げます。委員会を代表し、一言お礼のごあいさつといたします。(拍手)
 速記をちょっととめてください。
   〔速記中止〕
#146
○委員長(斎藤文夫君) 速記を起こしてください。
 引き続き、本案に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#147
○和田教美君 議題となっております独禁法改正案についての内容の質問をする前に、まず最近の独禁政策一般及びそれに関連する若干の問題について公取委員会及び政府当局の見解をお聞きしたいと思います。なお、官房長官が御退席になりましたので、官房長官に対する質問は後回しにしたいと思います。
 まず、小粥公正取引委員会委員長にお聞きしたいんですけれども、委員長は交代して初めての国会でもありますので、先ほどごあいさつがございましたけれども、もう少し具体的にこれからの独禁政策の運用についてどういう具体的な取り組みをしていかれるのか、特に最も重点を置くのはどういうことなのかというふうな点について御見解をお聞かせ願いたいと思います。
#148
○政府委員(小粥正巳君) 独占禁止法は、申すまでもなく自由経済社会の基本的なルールでございます。すなわち、公正で自由な競争秩序の維持、確立を図ることが私ども公正取引委員会に課せられた基本的な役割であると認識をしておりまして、経済社会の構造変化に的確に対応していかなければならないと考えている次第でございます。
 我が国経済力が現在世界有数のものとなった段階におきまして、これに見合った豊かな国民生活を実現してまいりますとともに、我が国の市場を国際的により開かれたものにしていくことが重要な課題となっております。内外の事業者の公正かつ自由な競争を促進し消費者利益を確保する観点から、競争政策の果たすべき役割は従来にも増して一層大きくなっていると考えている次第でございます。このような観点から、公正取引委員会が近年重点的に行ってまいりました施策を一層推し進め、今後とも厳正かつ適正な競争政策の運営に努めてまいる所存でございますが、お尋ねでございますので、特に具体的にもう少し補足をさせていただきます。
 具体的には、独占禁止法の違反行為とりわけカルテル、入札談合、共同ボイコットあるいは再販売価格維持行為等のそれぞれ国民生活に重大な影響を及ぼす事案への取り組みの一層の強化及び刑事告発制度の活用を含めました違反行為の積極的かつ厳正な排除、これにまず取り組んでまいりました。
 続きまして、課徴金引き上げ、これは御案内のとおり昨年国会で法律をお通しいただいたわけでございますけれども、この引き上げ等による抑止力の一層の強化、さらにガイドラインの作成等によります独占禁止法運用のいわゆる透明性の確保、さらに政府規制制度あるいは独占禁止法適用除外制度の見直しによりまして、競争条件の一層の整備等を推進することが必要であると考えているわけでございます。
 このほか、企業における独占禁止法遵守マニュアルの作成あるいは企業内における法務部門の充実、社員教育といった独占禁止法遵守体制の整備、コンプライアンス・プログラムというような言葉が使われておりますけれども、これに関する取り組みに対して、この独禁法遵守体制の整備はそのままこの違反行為の未然防止につながるところが大きいわけでございまして、最近、企業あるいは各業界におきましてこのような整備に積極的な取り組みが見られてきているところでありますけれども、当委員会といたしましても、積極的にこのような動きを支援、助力をしてまいる所存でございます。
 なお、当面特に何を一番重要と考えているかというお尋ねかと存じますけれども、やはり本日ここで御審議をいただいております、今国会に御提案させていただきました企業に対する罰金刑上限の大幅引き上げによります刑事罰の強化、これによりましていわゆる違反行為に対する抑止力というものを総合的に強化いたしまして、先ほど来申し上げました近年における独禁法の執行体制の格段の強化をさらに一層推し進める、そのためのよすがとしたい。その意味でも、御提案申し上げております独禁法改正案の早期成立というものをぜひお願いしたいと考えておる次第でございます。
#149
○和田教美君 次に、外務省にお尋ねしますけれども、カルテル等の独禁法違反行為に対する刑事罰の強化ということが今議論の対象となっているわけですが、これは国内的な要請からも必要な措置であるけれども、日米構造問題協議の対象ともなっていることは皆さん御承知のとおりでございます。
 日米構造問題協議というのは申し上げるまでもなくブッシュ大統領のもとで始まったものでありますが、米政権が共和党から民主党に移ってクリントン大統領になっても同じような形で日米構造問題協議が継続されるのかどうか、この点について外務省の見通しをお聞かせ願いたい。仮に、クリントン大統領になって日米間の協議のあり方が変化したとしても、日米構造問題協議で約束した事項についてはこれを誠実に実行することが我が国政府の責務だと私は考えますけれども、この点についての外務省の見解もあわせてお聞かせ願いたいと思います。
#150
○説明員(美根慶樹君) 日米構造協議につきましては、平成二年六月に最終報告と呼んでおりますが報告書が作成されまして、その報告に基づきまして毎年一回フォローアップをする、それから三年後には改めて検討するということになっております。そのプログラムに従いますと、来年、三年目の検討をするという段取りになるわけでございます。
 一方、アメリカにおきましては、ただいま先生からもお話がございましたように先般の大統領選挙で政権が新たにかわるということになりまして、一月二十日に新しい政権になるわけでございます。新しい政権になった場合にどういう政策になるかにつきましては、まだまだ不明な点がございます。私どもとしましては、引き続き情報収集等に努めておるところでございますけれども、特に日米構造協議がどうなるかということについてはまだ考え方ははっきりいたしておりません。しかしながら、先生もおっしゃいましたように、新しい政権にかわっても、また新しい政権がどういう考え方で臨んでこようとも、日米間で約束したものについては日米双方とも実行していくということは当然でございます。
#151
○和田教美君 もう一つ、アメリカ関連の問題で御質問したいんです。
 先般、アメリカの司法長官がアンチトラスト法の新しい運用方針を発表して、域外においても積極的に同法の適用を行っていくということを明らかにしました。この発表について我が国の関係当局はかなり強く反発して、特に通産省は英国などの例に沿った対抗措置まで検討し始めたとも伝えられております。
 しかし、国際的な経済取引が緊密化する中で、相手国における国内企業のカルテル等、不公正な行為が相手国の国民のみならず自国の企業、国民にも悪影響を及ぼすことは今後も十分考えられることであります。それだけに、単に主権侵害の問題というのみでこの域外適用の是非を云々するわけにもいかないようにも思われるわけであります。ECもその点について、EC裁判所判例に示されるように、従来の域外適用の姿勢を緩和し始めているとも言われております。
 域外適用に対する通産省公取の考え方と対応策などについての御見解を聞かせていただきたい。
#152
○政府委員(熊野英昭君) ただいま御指摘のように、去る四月、アメリカの司法省が米国の消費者に損害を与えるような行為のみならず、アメリカの企業の輸出を制限する行為にも反トラスト法の域外適用を行うとの方針を発表したことは、我々も大変遺憾に思っております。
 アメリカの反トラスト法の域外適用問題につきましては、従来から国家主権の侵害のおそれがあるのではないかということで、国際的にもいろいろ問題とされてきているところでございます。域外適用の是非を含めまして、国際的なコンセンサスが得られていない状況にあると思います。我が国といたしましても、日米構造協議の場等におきましてもアメリカ側にこういった懸念を表明するとともに、慎重な対応を要請してきているところでございます。このアメリカ司法省の新方針におきましては、アメリカ司法省は、実際の反トラスト法の適用に際しましては国際礼譲を考慮すること、また外国政府に通報、協議を実施することというふうに言っておりますので、私どもといたしましてもアメリカ司法省のこういった観点からの慎重な対応を期待しているものでございます。
 いずれにいたしましても、域外適用問題につきましては、独占禁止法及びその運用の国際的ハーモナイゼーションを図っていくという観点から国際的なコンセンサスを形成することが極めて重要であると考えておりまして、OECD等のいろいろマルチの場で議論を進めていく必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。
#153
○政府委員(小粥正巳君) ただいま和田委員からお尋ねがございましたアメリカの反トラスト法の執行についてのいわゆる新方針でございますけれども、ただいま通産御当局から御答弁もありましたように、私どもといたしましても、これはそれぞれ競争法を有しております我が国を含む各国の考え方、その中でもその競争法の管轄権に関する考え方に基本的に抵触するおそれがあるのではないか、そのことは国際法上の問題を引き起こしかねないということがまず懸念をされております。
 それからまた、これは事はアメリカの輸出業者の保護を目的として法の執行が行われることになる、こういう問題も含まれているわけでございますから、私どもはこの問題を大変重要な問題と認識をいたしまして、本年四月三日に米国の司法省がこの方針を発表したわけでございますけれども、私どもはアメリカ司法省に対しまして当方が重大な懸念を持っているということを方針発表後直ちに表明いたしまして、先方に対して慎重な対応を要請したところでございます。
 公正取引委員会といたしましては、今回の米国の方針で言われております米国の輸出業者の利益を損なうような反競争的行為、これが米国にとって外国の市場で行われている場合の問題でございますが、それはそのような行為が行われている国の競争当局がその国の競争法に基づいて適切に対処する、これがあくまで基本であろうかと思っております。ですから、このような行為がもし我が国の市場で行われている、そのような場合には当然のことながら我が国の公正取引委員会が我が国の独占禁止法に基づいて厳正に排除していく、そういう方針でございます。
 なお、通産省からもお答えがありましたように、米国側も国際礼譲あるいは外国政府に対する通報、協議の点は用意がある、そう表明もしておりますので、今後とも米国当局側に対しましてはこの原則にのっとって慎重な対応をとるように引き続いて要請をしていくつもりでございます。
#154
○和田教美君 昨年の独禁法改正で課徴金が引き上げられて、独禁法違反行為に対する抑止力が強化されたと言われております。また、今回の独禁法改正が成立して事業者に対する刑事罰が引き上げられるということになれば、独禁法違反行為に対する抑止力はさらに強化されるということになるはずであります。また、公正取引委員会の審査部門の人員増などはまだ十分とは言えませんけれども漸次強化されていっておるということで、独禁法違反行為の摘発体制も徐々に進みつつあるというふうに見ていいかと思います。しかし、独禁法の適用除外カルテルが数多く認められていては、このような措置も結局片手落ちとなるのではないかと私は思うわけでございます。
 まず、独禁法の適用除外カルテルは現在どのぐらいあるのか、その点について公取委員会の見解をお示し願いたいと思います。
#155
○政府委員(矢部丈太郎君) 独占禁止法の適用除外制度でございますけれども、本年十一月末現在で、許容している四十一の法律に六十七の制度がございまして、これらの制度に基づきまして公正取引委員会が所管省庁から協議を受けたり通知を受けたりするなどしまして実態を把握している適用除外カルテルの数は、これも同じく平成四年十一月末現在でございますが百六十二ございます。なお、この適用除外カルテルの件数は、一番多かった昭和四十年度には千七十九件ございました。漸減しておりまして、現在では百六十二件となっておるわけでございます。
#156
○和田教美君 平成四年六月に行革審の第三次答申が行われましたけれども、独禁法の適用除外カルテルについては、市場メカニズムを制限している独禁法の適用除外制度についてその抜本的な見直しが必要である、また個別の法律に基づく適用除外のカルテル等制度については、これを必要最小限にとどめるとの観点から対処すべきである、見直しについては平成七年度末までに結論を得ることとして、所管官庁と公正取引委員会は十分協議するというふうに述べられております。
 また、日米構造問題協議では独禁法の適用除外カルテルについて、日本政府は一九九五年度末までに個別の法律のもとで独禁法の適用を除外されたカルテル制度について広範な見直しを行う、この見直しにおいてその必要性や実質的な意味がなくなっているもの、弊害を生じさせているもの等については、原則として制度の廃止、ないしは対象範囲の縮減の方向で速やかに検討を進めるというふうにされております。
 公正取引委員会は、行革審の第三次答申やこの日米構造問題協議を受けて適用除外カルテルの見直しにどういう方針で取り組んでいくのか、お答え願いたいと思います。
#157
○政府委員(小粥正巳君) ただいま和田委員から、行革審の第三次答申あるいは日米構造問題協議フォローアップ報告等をお引きになりまして、独占禁止法の適用除外カルテルは見直すべきであるが公正取引委員会はどのように取り組んでいくか、こういうお尋ねでございます。
 私どももただいまお引きになりました行革審答申あるいは日米構造問題協議で合意された基本的な方針、すなわち自由経済体制をよりどころとする我が国の経済運営にありて公正かつ自由な競争の維持、促進を図ることが基本でございますから、独占禁止法の禁止規定の適用を例外的に除外する適用除外制度はこの経済体制のもとでは必要最小限度のものにとどめる必要がある、このように基本的に認識をしております。したがいまして、このような観点から適用除外制度の見直しにつきましては、公正取引委員会といたしまして従来から中長期的な政策課題として取り組んできたところでございます。
 さらに、行革審答申あるいは日米構造問題を契機とする内外の近年の物の考え方、これを背景といたしまして、具体的には個別の法律に基づく独占禁止法適用除外カルテル制度の見直しにつきましては、ただいま御引用になりましたように、平成七年度末までにそれぞれの所管官庁が結論を得ることとされておりますが、当然のことながらその結論を得るに際しまして当公正取引委員会と十分協議をする、こういうことになっているわけでございますし、私どももそれぞれの適用除外制度所管省庁と七年度末という目標年次に向かいまして精力的に協議を進めてまいりたいと考えております。
 いずれにいたしましても、適用除外制度は先ほど来申し上げておりますような競争政策の基本的な考え方から必要なものであっても最小限にとどめる、それから既に除外制度が存在しておりますものにつきましても常にその必要性について検討を行っていく、この基本的な態度を堅持してまいりたいと考えております。
#158
○和田教美君 それでは、提案になっております法律案の内容についての質問に移りたいと思います。
 今回の改正案は、私的独占及び違法なカルテルなどに関し、事業者等の刑事罰の強化などを問題とするものであります。公取委の独占禁止法に関する刑事罰研究会の報告書では、罰金の上限を数億円程度に引き上げることが適当とされていましたけれども、今回の改正案では罰金の上限が一億円、つまり現行の五百万円から一億円に引き上げるということになっているわけですが、これはなぜそういうことになったのか、それのいきさつを説明していただきたい。政治的な圧力が加わったのか、それともいろいろな意見を聞いてそういうことになったのか、その辺の点についてなるべく具体的に御説明を願いたいと思います。
#159
○政府委員(小粥正巳君) ただいまの和田委員のお尋ねは、今回の御提案申し上げております政府提出の独占禁止法改正案を作成いたします前提といたしまして独占禁止法に関する刑事罰研究会の報告書が提出をされたわけでありますが、確かにこの報告書の結論といたしまして、法制審議会の、企業についての処罰に関するいわゆる両罰規定の切り離しという了承事項を前提といたしまして、独占禁止法違反行為について過去の違反事件の実態あるいはこの独禁法違反行為に特有のさまざまな事情を考慮いたしまして、企業と行為者個人の資力の格差、諸外国の法制比較、そして我が国独禁法に特有の制度であります課徴金制度の存在などの諸点を総合的に勘案いたしまして、現行の罰金刑を企業につきまして大幅、抜本的に引き上げる、その水準を数億円程度にする、これが刑事罰研究会の御報告の結論でございます。
 ただ、数億円という表現でございますが、この点は先ほど申し上げましたような種々の配慮すべき事項、これをどのように配慮、勘案するかにつきまして、いわば一義的には決めがたい。したがいまして、研究会におかれましても必ずしもこれを一義的に明確な数字として示す必要はない、こういうことで基本的な方向は大幅な引き上げは必要であるという御趣旨を数億円程度と、このように御報告をいただいたものと理解をしております。
 そして、私ども政府の一員といたしまして、この報告書の基本的なお考えの方向を踏まえて具体的な検討に入ったわけでございますが、何分この経済秩序、経済社会の基本法と言われます独占禁止法の改正でございますから、その影響するところは企業社会にとって非常に大きいものがございます。したがいまして、私ども関係者の御意見も伺い、全体として現時点におきまして社会の大方の理解が得られる、あるいは少なくとも内外の情勢を踏まえてこのように大幅な罰金刑上限の引き上げを行うことはやむを得ない、そのようなコンセンサスを何とか取りつけるということを念頭に置いて調整を図ったわけでございます。
 その際に、恐らく三つばかりの問題があったわけでございます。その一つは、先ほどもちょっと触れましたように、今回の改正が我が国の刑事法制におきまして長年定着をしておりました違反行為者本人とその所属する企業、この両者につきまして両罰規定という規定の仕方で罰金刑の上限の引き上げにつきまして……
#160
○和田教美君 質問時間が限られているので簡単に願います。
#161
○政府委員(小粥正巳君) はい。
 連動の制度があるわけでございますが、この連動を切り離し、そして事業者に対して大幅に罰金刑を引き上げるという、そういう意味で企業法制のいわば基本的な変革、新たな制度の導入であるということ、それから我が国の独禁法制度の特色と申しました課徴金の存在、しかもその課徴金につきまして昨年、一年前に大幅に引き上げたばかりという、そういう事情がございました。
 さらにつけ加えますれば、今回の引き上げはあくまで罰金刑の上限の引き上げでございますけれども、特に企業の中でも多数を占めます中小事業者の方々の中では、この上限の大幅引き上げによりまして、結果として刑事罰に問われた場合それぞれの企業規模、資力に比して過大な罰金が科せられるのではないかという、そのような不安があったことも事実でございます。
 そのような事情を考慮いたしまして、結論といたしまして政府案としては、関係者、社会の大方の理解が得られるぎりぎりの線として一億円という水準に決定したものでございます。
 なお、触れましたように、昨年課徴金の大幅引き上げを国会で成立をさせていただきました。そして、現在御提案申し上げております罰金額の上限の引き上げ、この法改正が成立をいたしますと、罰金刑の引き上げ、課徴金の既に行われている引き上げ、両々相まって独禁法違反行為に対する抑止力としては十分国際的にも評価されるような水準、内容のものになる、このように考えておる次第でございます。
#162
○和田教美君 次に、証券取引法の刑事罰の引き上げはもう先日既に成立をしまして実施されておりますけれども、同法では罰金の上限額が百倍に引き上げられております。つまり、証取法の第百二十五条、相場操縦などの罪については、三百万円だったのが最高三億円ということになっております。また、第五十条の二の損失補てんなんかについては、百万円だったのが一億円ということになっております。ところが、独禁法の場合には二十倍ということで、現行の五百万円が一億円になったということでございます。法人に対する刑事罰の強化というふうな流れの中で出てきた法律としては大体時期を同じくするもので、いろいろ似通った性格のものがたくさんあると思うんですけれども、しかし結果的にはかなり違うわけでございますが、なぜそういうことになったのか、均衡を欠くのではないかというふうな意見がありますが、その点どうお考えですか。
 また、証券取引法では法人に対する罰金のみが引き上げられたわけですけれども、独禁法ではすべての事業者を対象として、つまり個人事業者に対する罰金も引き上げるということになっておりますけれども、これはどういう理由によるのかお答え願いたい。
#163
○政府委員(小粥正巳君) まず、前段についてお答えを申し上げます。
 確かに昨年、罰金刑の事業者と行為者本人についてのいわゆる連動規定切り離しの第一号例といたしましてお示しの証券取引法の改正が行われたわけでございますが、この罰金刑の連動規定、その切り離しについては、先ほど来お話がありましたように、法制審議会刑事法部会で了承をされたわけでございますが、その中で事業主に対する抑止力として期待できる金額は幾らかという点を考察することが基本である、こういうふうに述べられておりまして、したがいましてこの罰金刑の引き上げに当たりまして必ずしも個別法ごとにそれがすべて同一の基準による必要はない、そういう考え方が示されていると理解をしております。
 したがいまして、独占禁止法につきましての刑事罰研究会ではこのような法制審議会の了承事項も踏まえながら、独禁法違反行為についての過去の例あるいは特有の事情などを考慮し、その上で企業と行為者個人の資力の格差、外国法制の比較、そして我が国特有の課徴金制度の存在、こういうものの諸点を総合的に勘案して、この水準についての御意見がなされたわけでございます。
 そこで、証取法と独禁法につきまして、これは私どももちろん証取法について有権的な見解を申し上げる立場ではございませんけれども、その両者を比較してみますのに、もちろんこの趣旨、目的はそれぞれ違うわけでございますが、特にこの証取法の刑事罰の対象は有価証券の発行、流通にかかわるいわば比較的限られた分野でございます。ところが、独占禁止法では御案内のように原則としてすべての経済社会における事業活動が対象になっている、その対象の違いということがございます。
 それからまた、何度も触れておりますけれども、我が国の独禁法におきましては、違反行為に対する抑止措置の一環として証券取引法にもない課徴金制度というものがございまして、しかもこの課徴金制度が昨年大幅にその算定率を引き上げたばかり、このような特別の事情もあったわけでございます。
 そのようなことを考えますと、御指摘でございますけれども、証取法は今回の独禁法の改正と同じように運動規定を切り離した法人についての罰金額上限の引き上げでありますが、それが同様でなければならないという必要性は必ずしもないのではないか、こんなふうに考え、先ほどの御答弁で申し上げましたように、結論として政府案として一億円という二十倍の引き上げを御提案申し上げているわけでございます。
 お尋ねの二番目の点でございますけれども、同じくこの証取法改正との比較で、御指摘のように証取法改正では確かに法人だけが刑事罰引き上げの対象でございます。ところが、ただいま御提案申し上げております政府案では、法人のほかに個人事業者も引き上げの対象に入っております。その点の違いはどのような理由が、こういうことでございますけれども、この点も先ほどの法制審議会刑事法部会の了承事項の中で述べられております考え方を見てまいりますと、結局自然人事業者と法人事業者とを一律に、例えばその資力の大小で区別をすべきである、そのような一律区別の考え方はとっていない。あくまでそれぞれの法令が規制の対象としている企業業務主の種類はどうか、あるいはこの自然人事業者に対して高額罰金を科する必要があるかどうか、それぞれの法令の趣旨、性質に従って勘案すべきである、このような考え方に従っていると承知をしております。
 そこで、この独占禁止法におきましてひとしく事業主として法人と個人があるわけでございますけれども、独占禁止法上はあくまで市場における経済活動の主体として競争の実質的制限というような競争制限行為を行うという、こういう行為を対象とするわけでございますから、いわばこの事業者としての性格については法人であれ個人であれその点においては変わりはない、こういう事情がございます。これは私どもが取り扱っております具体的な事案につきましても、例えばカルテルにつきまして自然人事業者がそのカルテルの中に加わっている、そんな事例もあったわけであります。
 それからまた、特に今回の引き上げの対象は法八十九条の罪を対象としておりますけれども、その構成要件は御案内のとおり一定の取引分野における競争の実質的制限でございますが、このような実質的制限を行う事業者はたとえ自然人であってもそれなりの市場支配力を行使する、それだけのいわば資力なり規模なりを持っているということが想定されるわけであります。したがいまして、その罰金刑の引き上げに当たってこの両者を区別して取り扱うことは実際上も妥当ではないであろう、こんな考え方で法人事業主と自然人事業主の区別なしに今回はともに罰金額の上限引き上げの対象としたわけでございます。
 他方、証取法につきましては、先ほど申しましたように私どもが責任を持ってお答えする立場にはないわけでございますけれども、証取法におきましては独禁法のように両者をひとしく事業主として取り扱っているということではないと考えております。
#164
○和田教美君 もう時間がなくなりましたから、きょう最後の質問です。
 罰金額における諸外国との比較ですけれども、先ほどの参考人の意見聴取でも出た問題ですけれども、今お話にありました法制審議会の刑事法部会報告、両罰規定のあり方について、昨年十二月ですけれども、罰金額の決定に当たっては、個人と法人の資産格差に加え、諸外国における同種行為に対する刑事罰制裁金の内容等も考慮すべきであるというふうに言っております。
 法人に対する刑事罰制裁金に関しては、アメリカは制裁金等行政罰はないけれども刑事罰については最高一千万ドル、十三億一千万円もの罰金を科せることとしております。日本に比べて非常に厳しい内容となっております。日本の独禁法においては行政罰としての課徴金があるとはいえ、刑事罰、行政罰を合わせても額にしてなおアメリカに比べるとかなり少ないということで、かねがねアメリカは日本に対して独禁法の厳格な運用ひいては罰則の強化を要求してきておるところであります。諸外国、特に米国との比較という観点から、本改正案の罰金額の一億円を公取委はどのように考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
#165
○政府委員(小粥正巳君) ただいま和田委員御指摘のように、確かに米国の独禁法制におきましては、特にこの刑事罰につきまして一千万ドル、我が国の為替レート換算をいたしますと、今回御提案申し上げております一億円より十倍以上という大変高い水準にあることは、それは御指摘のとおりでございます。
 ただ、私が再三御答弁申し上げておりますように、我が国のアメリカにはない制度の特色といたしまして、課徴金制度がいわば併置されているということはたびたび申し上げたとおりでございます。この課徴金制度は申すまでもなく、カルテルによる経済的な、いわば不当な利得を徴収してカルテルにおけるもうけをすべて吐き出させる、こういう趣旨から成っているものでございまして、この課徴金につきましては、刑事罰の罰金と違いまして売上高の一定割合、これは法律で法定をされておりますし、しかも先ほども触れましたように、昨年その算定率を原則として四倍という大変大幅な引き上げを行ったばかりでございますが、これは必ずこの一定割合を徴収するわけでございます。
 罰金につきましては、あくまでアメリカの場合も我が国の場合も法に規定されております罰金額は上限でございますから、その上限を前提として具体的にどのような求刑あるいは量刑が行われるかということは、それぞれ個々の事案によって異なるわけでございます。そのような意味で、課徴金が課される場合には必ずこの法定の割合で徴収をしなければいけないものという、そういう性格の制度でございます。
 これを考慮いたしますと、刑事罰と課徴金による総合的な抑止力という観点からは、少なくとも従来に比べますと、我が国の独禁法制におきましてその強化は格段に行われたと申し上げてよろしいかと思います。アメリカはどのように評価するかというお尋ねでございますけれども、私どももこれまでアメリカの独禁当局といろいろ折衝してまいりました感触から申しましても、それなりにアメリカ側もこのような総合的な抑止力の強化ということを評価するものと考えておるところでございます。
#166
○市川正一君 昨年十二月十八日の独禁法に関する刑事罰研究会報告は、罰金は数億円でした。
 広辞苑によりますと、数十とか数億とかという概念は「三、四または五、六の程度の不確定数を示す」、こうなっております。数億と一億とは単に算数的に異質であるだけでなしに、政治的な意味合いも違います。なぜ一億円になったのか。同様な両罰規定がある証券取引法では、罰金三百万円を百倍の三億円に引き上げております。
 午前の小粥委員長の答弁では、社会の大方の理解を得る、こう言われました。証券取引法の方は、ある程度大方の理解を得るものだと言えましょう。しかし、この独禁法が数億円が一億円になったというのは、財界や産業界の理解は得られるかもしれをせんが、国民的理解は得がたいものであると思います。その認識についてはいかがでしょうか。簡潔に時間をとらずにお答えを賜りたい。
#167
○政府委員(小粥正巳君) ただいまのお尋ねは、刑事罰研究会の御報告は確かに結論は数億円程度という表現でございます。そして、これを前提とし、その基本的方向を踏まえながら政府案として作成をいたしました引き上げの水準は結論として一億円でございますから、その点は確かに同じではない、違っているではないかという御指摘は、これは私どもそのとおりという感じをせざるを得ないわけでございます。
 ただ、あえて申し上げたいのは、この刑事罰研究会の基本的なお考えは、もう背景はあえて省略させていただきますけれども、内外の情勢から独禁法違反行為に対する特に企業に対する制裁、罰則というものを強化しなければいけない、そのためにはいわゆる連動規定を切り離して大幅な罰金額の上限の引き上げが必要であるという、その点が実は一番大事な点であろうと私ども理解をしたわけでございます。
 したがいまして、数億円という御報告をいただき、その基本的方向を踏まえて私ども政府部内で法案を作成いたします過程で、これは先ほども答弁で申し上げたところでございますけれども、これは何分、経済社会の基本的なルールである独禁法についての重要な改正でございます。その意味でも、やはり関係者の大方の理解、特にあえてつけ加えますならば、これは企業に対する罰則の大幅強化でございますから、これで結構だということを言ってもらえる代物ではなかなかないと思っております。したがいまして、内外の諸情勢からこのような罰則の引き上げ、抑止力の強化が行われることはやむを得ないという、その程度の最小限の大方の理解はいただきませんと、やはり政府案として法律を提出するまでにはなかなか熟さないわけでございまして、そのような配慮から結論として一億円ということで、これがいわばぎりぎりの政府案としての調整の結果である。しかし、現行のものに比べれば大幅であるという点は、何とぞ御理解を賜りたいと思います。
#168
○市川正一君 今、小粥委員長が法案を作成する過程と言われたが、まさにそこにかぎがあるわけです。そもそも改正案の提出が非常におくれました。かつ、数億円が一億円になったのは、違法カルテル行為者に対して課徴金、刑事罰、民事賠償という、いわば三重罰を科することができる厳しい体系だという産業界からの猛烈な反発。それに加えて「山崎建設大臣をはじめ建設、商工族議員らが、課徴金を前年に四倍へ引き上げたばかりで、そこへ罰金の大幅引き上げはけしからん、と強く反対、公取委は一時断念を覚悟した。」、これは東洋経済五月二十三日付ですが、そういう種の圧力があったということじゃないんですか、
#169
○政府委員(小粥正巳君) 政府部内で法案を作成いたします過程で関係者の意見を徴するということは、これはもう当然にあるわけでございます。したがいまして、反対論、批判、いろいろあったことも事実かと存じます。しかし、私どもは法案を作成いたすに当たりまして、ただいま御指摘でございますけれども、その不当な圧力を受けたというようなことは全くないと考えております。
 ただ、各方面の意見を十分聞きながら最終的には大幅な引き上げ、これは決して企業側にとって歓迎すべき方向でないことは当然でございますけれども、しかしそれでもやむを得ないという、少なくとも最終的に政府部内の合意を得るという、そのような調整は必要であると。したがいまして、これはやはり昨年の課徴金の大幅引き上げとあわせまして、企業にとりましては実は非常に大きな金銭的負担を課する制度の改革でございますから、私ども、御指摘ではございますけれども、決して圧力を受けて考えを変えたというようなことは全くございません。
#170
○市川正一君 ここに私持ってきたのは東京新聞でありますが、その「産業界 自民党と共闘へ」というふうに報道されております。こういうことは天下周知の事実です。朝日新聞の四月二十七日付によりますと、公取は「自民党、特に建設族議員の強い反対で、一時は断念を覚悟する事態も。」、そうでしょう。「自民党幹部や商工、」、これは我が方とも関係しそうですが、「建設部会への根回しの末、ようやく今年三月に「一億円」で内諾をもらい、今国会に改正案を出した。」、こう報じております。これが真相じゃないんですか。一時は断念しかけたんでしょう、どうなの。
#171
○政府委員(小粥正巳君) 断念をしかけたということは私はないと考えております。
 繰り返してございますけれども、政府部内の法案作成の過程ではいろいろな意見がふくそうするということは当然あるわけでございますけれども、そのような意見を十分聞きながら、しかし基本的に大幅な引き上げ、抑止力の格段の強化という基本的な方向は貫き、その結果このような法案の御審議をお願いしている、そのように御理解をいただきたいと思います。
#172
○市川正一君 私は、そういう大幅な引き上げをなすったことについて、それはそれとして認めた上で、なぜこういうようにおくれ、そして数億が一億になったのかという、そこをやっぱり国会としてははっきりさせたいという意味からなんです。
 というのは、もともと今回の改正は九〇年の日米構造協議以来の対米公約に端を発しております。政府は、この日米構造協議をにしきの御旗にして国民に犠牲を強いる。例えば、大店法の改悪などは時を移さず具体化し執行いたしました。しかし、財界が抵抗するものについては、これを骨抜きにしてしまおうという姿勢を示しております。そこに問題の核心があると思うんです。独禁法に関する刑事罰研究会が十二月十八日に報告書を提出したのにこれが公表されず、翌年の二月に衆議院の予算委員会で追及され、三月になってやっと公表されたという経過にも見られるところであります。
 私は、公取の資料でも、資本金一億円以上の法人企業とその役員との資力比較において、経常利益対給与で九十二倍、純資産と個人の正味資産で時価換算で約百七十倍にもなっております。アメリカの罰金は十三億円強であるということからしても、私はこれは財界の圧力に屈したものとしか言いようがないんです。課徴金は、あくまでもカルテルで得た不当利益を徴収する制度であります。刑事罰は独禁法違反をなくすための抑止力を持っ金額でなければ本来の抑止力や制裁の意味を持たないということを、私は声を大にして委員長に指摘しておきたいと思うのであります。
 ところで伺いますが、この法人や事業者への罰則が一億円になったとしても、これが活用されなければ意味がありません。公取委員会の告発がなければ事は動かぬのです。公取の告発は今日まで、刑事告発第一号の七四年の石油やみカルテルがありました。第二号はそれから十七年後の九一年の業務用ラップ、この二件だけなんです。九〇年六月二十日に、確かに独禁法違反に対する刑事告発に関する公正取引委員会の方針で告発することを決めていらっしゃいます。
 それ以降どうかと見ますと、摘発されたセメント業界のカルテルについては実行行為が九〇年六月以前だからという理由で、さらにまた埼玉県発注の土木工事の入札談合については、三条違反行為があり排除措置、課徴金は取りましたけれども、談合の行為者が特定できないために告発しなかったという経過になっておりますが、この二件についてそういう経過であったということの事実確認を求めたいと思います。そうであるかないかを伺います。
#173
○政府委員(糸田省吾君) 委員御案内のように、昭和五十二年に課徴金制度が導入されたわけでございまして、それ以降公正取引委員会としては違反行為の抑止力を図っていくということのためには課徴金納付命令制度、これの活用によってこれを行い、またこれによってこの制度の定着を図っていくということに全力を注いできたわけでございます。その後、違反行為の抑止力を一層強化するという観点で、委員御指摘のように、平成二年六月二十日に積極的に刑事処罰を求めて告発を行う方針であるといったポリシーステートメントを出しているところ。でもございます。
 一方で、今委員御指摘のセメントカルテル事件あるいは埼玉県における入札談合事件の扱いの点でございますけれども、前者のセメントカルテル事件につきましては、違反行為に対する審査の着手が、言ってみればこの平成二年の方針を発表する以前に行い、また本件違反行為が同様に平成二年の方針の発表以前のことであるということで、そういう告発をするには至らなかったということでございます。
 それから、埼玉県の入札談合事件ということについて申し上げれば、これまた平成二年六月以降につきましてこれも検察当局ともいろいろと協議をした上のことでもございますけれども、刑事処罰を求めて告発するということをするに足るだけの法律的あるいは具体的な事実について認められなかったということで、告発をいたさなかったということでございます。
#174
○市川正一君 そうすると、埼玉のことで重ねて聞きたいんですが、だれがやったか特定できないために犯罪ありと思料するに至らなかったということで告発しなかった。私はこれは公取の怠慢やと思うんです。犯罪の実態があったからこそ勧告もし、また審決があり、排除措置や課徴金徴収命令を出したわけでしょう。ところが、犯罪に対する捜査権がない公取です、これはようわかっております。しかし、犯罪の事実があるけれども、犯人が特定できないから告発をしないというんでは、独禁法七十三条での告発権を公取みずからが放棄したことにならぬのですか、どうですか。
#175
○政府委員(小粥正巳君) ただいまの御指摘でございますけれども、おしかりもいただきましたが、私ども……
#176
○市川正一君 激励でもあるんですよ。
#177
○政府委員(小粥正巳君) 公取の決して怠慢で参るとは思っておりません。
 ただいま審査部長からもお答え申し上げましたように、埼玉の事案につきましても、結論として私どもが平成二年六月に公表いたしました刑事告発に関する方針に照らしまして、犯罪があり告発を相当とすると認定できるだけの資料が整わなかったということが唯一告発をなさなかった理由でございます。
 したがいまして、私ども、ただいま御激励もいただいたということでございますから、これは既に告発方針を明確にしているところでもございます。今後とも独禁法違反行為についての情報収集、審査活動あるいはその体制の充実に一層努力をしながら、検察当局とも十分に意見、情報を交換した上で、先ほど申し上げました告発方針に基づきまして積極的にこの方針を推し進めてまいる、そのような所存でございます。
#178
○市川正一君 基本的姿勢は、私は激励であり鞭撻なんです。さっきも参考人に意見を聞きまして、そのときにもこの問題出しました。参考人は長い目で見たいと言って、期待を表明されました。私もそうやと思う。しかし、国民の方はもう我慢ができないという状況なんです。
 そこで重ねて聞きますけれども、公取の権限は第四十六条の事件に対する調査のための強制処分であり犯罪捜査のためではありませんが、しかし八十九条から九十一条の罰則については九十六条で公取の専属告発権をうたっております。しかし、七十三条でも「この法律の規定に違反する犯罪があると思料するときは検事総長に告発しなければならない。」と、いわば公取に義務づけているわけですね。ですから、私はこの権限を積極的に活用なさるべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
#179
○政府委員(小粥正巳君) 確かに委員御指摘のとおり、この独占禁止法違反事件の刑事罰を求めますには公正取引委員会が専属告発権を持つ、このような法律上制度になっておるわけでございます。したがって私どもは、ただいま仰せられましたように、これは公取の義務でもありまた同時に大変重い責任を伴う義務である、そんなふうに考えているわけでございます。
 したがいまして、私ども告発をいたしますからには、これはやはりそのことは対象となっております企業にとっても大変重大なことでございますから、それだけに告発をした後の手続において、これは検察当局の業務になるわけでございますけれども、公訴の提起あるいは公訴維持につきましてこれを専担いたします検察当局ともその意味でも特に十分な意見交換、情報の交換が必要であると思いますし、公訴提起、公訴維持についての相当程度の可能性、そういうものをやはり持つ事案について告発をする。それによって検察当局との間の非常にしっかりした告発についての関係が築かれていくと思いますし、また御指摘のようにこの制度に対する国民一般のいわば御支援あるいはその信用を得るゆえんでもあろうかと、このように考えております。
#180
○市川正一君 検事総長が不起訴のときは、御承知のように理由を内閣総理大臣に報告することになっています。また、起訴するときは公取に調査とその報告の結果を求めることになっております。ですから、告発について公取自身がみずからの手を縛る必要はないし、そうあってはならぬと思うんです。
 そこで、時間が参りましたので最後に伺いますが、埼玉の土曜会の談合も、調べてみると業界団体をつくり、マルAの大企業六十六社が八四年の公共工事に係るガイドラインの、一定のルールを定める等により受注予定者または入札価格を決定するようなことがない限り独禁法に違反することにならないというこの条項を悪用して、そして業界団体である土曜会が受注計画や情報交換をやっていたというのが事実なんですね。
 最近また、水道メーターあるいは道路標識など、公共事業の分野での談合がずっと広がっております。したがって、この八四年の公共工事に係るガイドライン、この見直しもやるべきである。そういうことも含めて談合抑止のための毅然とした措置をとるべき決意のほどを委員長に伺って私の質問を終わりたいと思いますが、この見直しの問題もあわせてよろしくお願いします。
#181
○委員長(斎藤文夫君) 時間をオーバーしておりますから、簡潔にお願いします。
#182
○政府委員(小粥正巳君) ただいまのお尋ねは、昭和五十四年に作成されました一般ガイドラインを踏まえまして、特にその中小企業者が大部分であります建設業者に対するガイドラインを五十九年に作成いたしました。この点についてのお尋ねであろうかと存じます。
 この建設業ガイドラインの内容は、競争入札に際しましてどのような行為が独禁法違反となるかあるいは違反とならないか、これを具体的にわかりやすく取りまとめたものでございまして、当然でございますけれども、一般ガイドラインを前提として、競争入札においてただいま御指摘のような受注予定者あるいは入札価格を決定する、そのような談合行為は当然のことながら独禁法違反になることを明示しているわけでございまして、これは入札談合の防止に役に立つ手引書である、こんなふうに考えているわけでございます。
 したがいまして、これは独禁法の関係者についての正しい理解を求めるためにつくられたものでございまして、この内容は、今の御指摘でございますけれども、これを私ども見直すということは必要ではなく、むしろこのガイドラインを、その前提となっております一般ガイドライン、事業者団体の活動に関する独禁法上の指針、これは昭和五十四年八月に作成したものでございますが、これとあわせて一層の正しい理解を求め、談合防止に万全を期することがより重要であると考えている次第でございます。
#183
○市川正一君 終わります。
#184
○古川太三郎君 今まで話がありましたように、法律をどういじってもこれはやっぱり公取が行動しない限りは本当に何にもならないということがはっきりしたわけなんですけれども、五百万円を一億円に上げたところで本当に抑止力があるかということもその面から考えてみなきゃならぬと思うんです。これが十億円に上がっても抑止力があるかどうか、公取委員会、本当にそういった専属で持っている告発権を行使しない限りはまさに絵にかいたもちなんですね。そういう意味で、五百万を一億だとか十億あるいは五億だと言っているのは非常にむなしい感じもしないではないんですけれども、今のお話ですと今後は大いに期待できるという気持ちでおりますので、その面について本当に我々の期待を裏切らないように頑張っていただきたいというようにまずもって申し上げたいと思います。
 罰金は行政罰ではございませんから、これは告発された後に裁判所が量刑を考えることなんです。そういう意味から、私としては独禁法違反が起こらないように、これもし告発された場合には大変だという意味ではやはり金額が多い方がいいと、これはもう参考人もおっしゃっていたところですし、きょういらっしゃったお二人の参考人も一億円がベストだということは決して言っておられなかった。ましてや、著書には五億円が妥当だという方もいらっしゃいました。
 そういうようなことで、今国民が一億円だけじゃまたこれはそのままになってしまうんじゃないか、本当に公取委員会動いてくれるんだろうか、むしろ五億円になる方が本当にこれからやるぞという期待が持てるんじゃないか、こう思うんですけれども、公取委員会の委員長の考え方としてはいかがなものですか。
#185
○政府委員(小粥正巳君) ただいまのお尋ねでございますけれども、これまでの連動規定のもとに置かれた企業に対する罰金刑、現行五百万円でございますが、これを大幅に引き上げるとしてどのような水準が適当であるかという件に関しまして先ほど来御質問いただき、私もお答え申し上げているわけでございますが、現時点におきましては、私今まで繰り返し述べておりますのであえて結論だけ申し上げますと、この一億円という現行に比しまして二十倍の大幅な引き上げということが政府案としては現在法改正をお願いするぎりぎりの水準であろう、私はこんなことを申し上げてまいったわけでございます。
 確かに、それは御指摘のとおり抑止力という点を考えますと罰金刑の上限は高い方が抑止力がより大きいのではないか、こういう御指摘でございますけれども、ただやはりこれは先ほど来お答え申し上げておりますように、現行からどのくらい大幅な割合で引き上げるかということ、現行との比較それから諸外国との法制比較ももちろん重要な要素でございますけれども、やはり我が国の独禁法の仕組みの中には、これは行政措置としての課徴金の納付命令という特有の制度がございます。何遍も申し上げて恐縮でございますけれども、この課徴金制度は、実は上限を決めそして実際の求刑、量刑においてはその上限の範囲内でそれぞれのケースに妥当する罰金額を定めるあるいは求めるという、そういう性質のものではないわけでございまして、納付金を徴求いたしますには法律で決められました定率をそのまま適用してこれを徴収しなければならない、そういうものでございます。その納付金を昨年、率にいたしまして原則四倍という、これも大変大幅な引き上げでございます。これを行った直後という、今回の罰金額上限の引き上げを御提案申し上げております現在の時点では、そのような状況もやはり大変大きな考慮すべき要素であろうかと存じます。
 したがいまして、中小企業に対する考え方、これは繰り返しになりますので省略をいたしますが、私は現時点で政府が法律案として調整をし結論を得るには、そして国会にお諮りをするにはこの一億円という罰金額の水準というものは大変大幅であり、課徴金と相まってこれは外国と比較をいたしましても決して総体としては遜色のない抑止力の大幅な強化である、こう申し上げて差し支えないと思っております。
#186
○古川太三郎君 委員長がそうおっしゃるなら仕方ないですけれども、委員会の独立性とかあるいは信頼性を確保する意味ではやはりもう少し努力してみるというような気合いが欲しい、私はそう思っております。
 また、課徴金のことをおっしゃいましたけれども、課徴金そのものは、これは利得したものを全額吐き出すという制度でもございません。ある程度吐き出せるというようなものだと思います。あるいは、利得したものの何倍も取れるというものでもないと思います。それは間違いないでしょう。
#187
○政府委員(小粥正巳君) ただいま課徴金制度の性格についてのお尋ねがございました。課徴金というのは、端的に申せばカルテル行為を行った企業がそのカルテルによって得た不法あるいは不当な利益を徴収する、その結果原状回復をする、そういう性格のものでございますから、カルテル行為によって得たと考えられる利得以上に徴求できる性格のものではない、それは御指摘のとおりでございます。
#188
○古川太三郎君 経済犯罪というのは、これはとにかくやり得というものがあれば必ず出てくるんです。だから、本当にもうこれはしてはえらい損だというような、そういう経済効果というものも大きな要素だと私は思っているんです。そういう意味で、得したものが後で課徴金で取られ、そしてまた罰金で多く取られ、もう会社が成り立たない、二度とはこれはできない、また見ている人もああいったことをしたら本当にこれは大変だと、一罰百戎でなければ抑止力というのはないと思うんです。
 そういう意味では、課徴金があるから罰金一億でいいんだというのならば、今の経済の事情からしまして何十億、何百億カルテルでもうけることは楽なんです。そういうようなことを許さないというのが委員会の仕事だと私は思うんです。だとすれば、そういうことを二度と起こしてはまずい、損だというよりもそれは本当に社会での大きな犯罪だということをやっぱり日本の国民にも植えつけていくためには、今のところは本当にそのような感覚というのはないことも事実です。また、そういうことをいいことに公取委員会もなかなか仕事をなさらなかったことも事実だと思う。
 だけれども、もう社会は変わってきた。これはもうアメリカからも言われ、日本人もまた経済人も日本の会社もほとんど外国へ行っています。そういったことの経験もだんだん積んできました。そういう意味から、独禁法違反というのは大変な犯罪なんだということの認識は徐々にではあるけれども高まってきたことは事実なんです。そのようなことを考えると、やはりいま一度日本人の意識をもう少し高めるためにもどうしても抑止力をもっともっと高めていかなきゃならぬと私は思うんですけれども、その件に関しての御意見を伺いたい。
#189
○政府委員(小粥正巳君) ただいま御指摘いただきましたように、独占禁止法違反行為、これは経済社会の基本に触れる大変悪質な違法行為であるという、そういう認識はただいまの御指摘にもありましたように昨今急速に我が国の企業社会の中でも定着をしつつあると私は思っております。独占禁止法あるいは競争政策につきましての一般の認識、理解が急速に広まっている。そのことは、比較的最近行われました公正取引協議会の調査などによりましても、業界あるいは企業におきまして独占禁止法遵守体制の整備をいろいろな形で行おうとしている、あるいは現に行っている、そういう企業が急速にふえていることからもうかがえると思います。
 公正取引委員会の活動の一環といたしまして、そのような企業に対するあるいは業界に対する独禁法遵守体制の整備にいろいろな形で協力をするという仕事がございますけれども、これも今御指摘のように独占禁止法の違反行為を未然に防止するという意味では十分意味がある行為であろうと、我々はそういう点でも努力を積み重ねてきているつもりでございます。
 お尋ねの最初の点にもう一度戻らせていただければ、私どもが現在御提案申し上げております結論として一億円という従来に比べれば大幅な罰金額の上限の引き上げ、昨年実現しました課徴金の大幅な引き上げ、さらにもう一点加えますれば、企業が仮にカルテル行為を行ってそれが公取の行政処分の対象になりますと、先ほど来申し上げております課徴金の対象になり、また場合によっては刑事処分、今回もし引き上げを実現させていただければ上限が大幅に引き上げられた罰金刑の対象にもなるわけでありますが、さらにそれにとどまらず、これは独占禁止法の中にも規定がございますけれども、独占禁止法違反行為によって損害をこうむった私人がその違反行為を行った企業に対して損害賠償を請求できるという規定がございます。
 そして私どもは、特に昨年来この法律の規定に基づきまして、損害賠償請求訴訟における原告の立証負担の軽減に資するために、裁判所から資料請求があった場合、あるいは原告からの公正取引委員会に対する資料の要求に対しても法令の範囲内でできるだけ協力をしていく、こういうことも新たに基準を設け、あるいはそのような方針をはっきりさせまして、この損害賠償請求制度の活用という点にもそれなりに努力をしているつもりでございます。
 したがいまして、このような金額上限の引き上げ、課徴金の大幅な引き上げ、そして損害賠償請求制度の活用など、現在独禁法に定められております種々の仕組み、制度をいわば動員する形で御指摘のような抑止力の総合的な強化という大きな目標に私どもは実績を積み上げていきたい。その一環としての今回の法律改正の御提案でございますので、その点はひとつ何とぞ御理解を賜りたいと思います。
#190
○古川太三郎君 そういういろいろのもろもろの活動の仕方、活動と言っちゃ語弊がありますけれども、公取の努力の仕方、これはよくわかります。しかし、それが本当に国民に通じるのは、少なくとも研究会で数億と言われていたものが一億になってしまった、やっぱりその力に対する何といいますか、不満というのが非常に大きい。
 また、これはやり得だというようなことになりますと、午前中も話がありましたが、金丸さんのようにああいう違反のやり得だというようなこと、これ質の問題が違いますけれども、ましてや経済界ではやり得というのはこれはあり得ることなんですね。したがって、何回やっても一回見つかればそれでいいじゃないかというようなことだったら幾らでもやる会社が出てくるだろう。そしてまた、日本の会社というのはそんなに紳士的なものじゃなくて、そういった網の目をくぐり抜けている活動も大いにあると思うんです。そういうようなもので、これは大きな会社になればなるほど一回やったらこれは大変だというようなものを示さなければならぬ。
 しかし、大きな会社になればなるほど一億円というのは本当にわずかなものなんです。課徴金だって、これは全額の徴収ができるものではないんです。カルテルやって一〇%余分の利益率をつくった場合、本当にそれが全額取られるとかというようなことであればまた別ですけれども、その算定も非常に難しいということになれば、やっぱりこれは隠れて必ずやらせる人が出てくる場合があり得ると思うんです。
 そういうようなことの事実からして、今後本当に金額を上げて、そして抑止力をつけられるような方向で研究を重ねてほしい、こう思っております。
 最後になりましたので終わります。
#191
○小池百合子君 お尋ねいたします。
 私はよく外国の友人から、日本の企業や個人の横並び意識であるとか、それから集中豪雨的な製品の輸出、さらに集中豪雨的な海外の不動産の買いあさりといったような、そういった問題についての背景について聞かれることがございまして、そのとき一言で説明がついて彼らを納得させることのできる言葉というのは「赤信号みんなで渡れば怖くない」というこの新しい言葉でございます。直訳は難しいんですけれども、その意味を説明いたしますと彼らは大変大きくうなずく。つまり、それがかなり日本の企業のもしくは個人の体質を言いあらわしているからではなかろうかというふうに思うわけでございます。証券会社の損失補てん問題しかり、そして異常なバブル経済の膨張とそれに続く崩壊といったことも、こういった体質の原因と結果のあらわれではなかろうかというふうに考えているわけでございます。
 しかしながら、その実態でございますけれども、従業員の過労死、そしてサービス残業もいとわないようなハードな仕事ぶりであったり、お互いに気をつけたいと思いますけれども、そしてまた国際的なルールでは許されないけれども業界の常識だからといったようななあなあがはびこっていたり、そして談合という言葉もございます。
 過労死とか談合というのは最近のビジネスウイークであるとかエコノミストなどの英文の雑誌を見ておりますと、もうイタリックの字体でそのまま日本語で書かれている。ということは、すなわちそれだけ翻訳しづらい日本的なものであるということが理解できるのではないかというふうに感じております。
 中でも談合でございますけれども、日本の独禁法の取り組みのこれまでの甘さであるとか独禁法違反行為への見くびり、やり得であるとか、ばれてもともとといったような大変甘い考えというのをはびこらせてきてしまったという過去の反省もあるでしょうし、また公取に対しましては、かみつかない番犬という言葉が先ほど来しょっちゅう使われてきてもいるわけでございます。
 この独禁法の刑事罰の強化ということでございますが、その対象となる日本企業の体質、特徴といったような点では、委員長はどのような御認識がございますでしょうか。短くお願いいたします。
#192
○政府委員(小粥正巳君) 大変難しいお尋ねでございまして、私の素養、知識ではなかなか的確なお答えができないかもしれませんが、小池委員御指摘のように、談合的体質と申しますか、そういうものが日本の企業社会に何か固有の雰囲気としてあるのではないか、あるいはそういう御指摘かと思います。その点について私も十分お答えできる用意はございませんが、一つ申し上げたいのは、確かに日本の経済の規模がこれだけ大きくなり、それからまた国際的にも日本の企業の活動が非常に国際的な広がりを急速に増してきていることは、これはもう申し上げるまでもないことでありますけれども、そうなってまいりますと、例えば自由経済社会の基本ルールと言われます独占禁止法、これはもう先進国はすべていわば共有のルールと言ってもよろしいかと思います。もちろん、国によってそれぞれ仕組みその他は違いますけれども、自由公正な競争を促進するという考え方は共通であろうかと思います。そして、国際的にも独占禁止政策の調和、ハーモナイゼーションと申しますか、それが大変重要な課題となっていることも御存じのとおりでございます。
 したがいまして、もし御指摘のように日本の企業があるいは企業社会が何か日本にだけ通用するような体質を持っているといたしますと、これはもう現在のように国際的にも極めて大きな規模の経済を持ち、かつ国際的に企業の活動が多岐にわたっております現状では、そのようなことであれば実は日本の経済社会というのは成り行くはずがない、こういうふうに考えております。
 したがいまして、独禁法遵守あるいは競争政策についての認識につきましても、例えば従来ややもすれば見られたような認識の低さと申しますか、独禁法マインドの低さ、そういう体質をいつまでも持っていたのでは、とてもこれからの日本の経済社会は国際的に大きな存在となり得るはずがない。それでありますからこそ、先ほども申し上げましたけれども、急速に最近日本の企業社会あるいは個々の企業におきまして独禁法遵守体制というものにいわば本気で積極的な取り組みが行われているというのも、そのようないや応なしの日本経済の国際化のしからしむる帰結ではないか、こんなふうに考えております。
 したがいまして私は、御指摘ではございますけれども、日本の企業社会あるいは個々の企業につきまして独占禁止法がそれほど実はないがしろにされているとかあるいは独占禁止法を無視して企業行動が行われているとか、そのような心配はもう現段階においては持つ必要はないんじゃないか。急速に企業の意識も変わってきているのではないかと思いますし、また私ども公正取引委員会の仕事といたしましても、そのように企業の意識を変えていくということについて積極的に協力をしていきたい。
 それからまた、先ほど来違反行為に対する抑止力ということを再三申し上げておりますけれども、これもまたもし違反行為が行われればそれは極めて厳しい制裁を経済的にもあるいは社会的にも受けざるを得ないんだということをよく個々の企業あるいは企業社会に熟知させていくことが、私は違反行為の未然防止に非常に大事なことだと思っております。
 つけ加えますれば、先ほどの抑止力の中で、幾つかの仕組みとしてこのようなことになっておりますといったことを申し上げましたけれども、公正取引委員会が行政処分として行っております排除措置、あるいは排除措置に至らない違反のおそれがあるということでいわゆる警告をいたしますが、これにつきましても実は原則としてその内容を公表しております。公表すると申しますと、この対象になりました企業にとってはこれはやはり社会的に非常に不名誉なことでありますし、また恐らく企業活動にとりましても大変不利益になるだろうと思います。そういうこともやはり広い意味の抑止力の強化につながっているのではないか、こう考えておるところでございます。
#193
○小池百合子君 先ほど来出ております論議でございますけれども、一億円なのか五億円なのかといったような金額の面で改めて伺わせていただきたいと思いますが、過去の新聞の例などをひもといてみますと、公取側とすれば三億円あたりを考えていたというような報道が多数されております。そういった面でやはり一億円というのは公取としては本音は物足りないというふうにお考えになっているのではないか、そして一億円で抑止力の効果が望めなかったときには再引き上げのお考えはあるのかどうか、その辺伺います。
#194
○政府委員(小粥正巳君) 刑事罰研究会の御報告、結論として数億円程度の水準をお示しいただいたわけであります。これを踏まえて私どもが政府案を作成いたします過程でもちろんいろいろな議論がございましたが、結論として私どもは政府案といたしまして一億円という水準が先ほど来申し上げておりますように現時点でぎりぎりの水準である、そしてまた政府案としてお諮りいたします以上、現時点でこれがベストであると私ども考えているわけでございますから、その法案作成の過程でいろいろな意見が存在し議論も行われたということはこれは私は否定いたしませんけれども、法案をこうして御審議をお願いしております現在では、私どもは一億円が現時点で考えられる最上の案である、こういうことを申し上げたいと存じます。
 次のお尋ねでございました今後の問題、この水準について今後どう考えていくのか。これが幸い今国会で成立をさせていただければ、大幅な罰金額の上限引き上げという新しい体制で抑止力の大幅強化という背景のもとに私ども日々の業務を着実に進めてまいる所存でございますけれども、現在法律案を提出しております立場でございますから、将来またこの水準について変更を考えるというようなことは、これは現在もちろん考えているわけではございません。やはり私どもは何よりも、繰り返しで恐縮でございますけれども、現状よりも相当に大幅な引き上げという、これをぜひ実現させていただきたい、そこからスタートさせていただきたい、こういうことで御提案を申し上げているわけでございます。
#195
○小池百合子君 昨年、平成二年度の年次報告でございますけれども、独禁法違反事件に対します勧告、前年度比で約三倍に増加したというふうに発表されております。平成四年度の年次報告もう出ておりますでしょうか。
#196
○政府委員(糸田省吾君) これから出ます年次報告は平成三年度分についてでございまして、予定では恐らく今月中に国会の方に御提出できるということだと聞いております。
#197
○小池百合子君 そして、最近の例を見ますと、ラップ材メーカーのやみカルテル問題であるとか、それから年金関係ですけれども入札のシール談合であるとか、それからこれも審査中と聞いております水道メーターなどといったような例が出てきています。けさほども委員の方が御指摘なさいましたように、非常にまずつかみやすいところといいますか、大体三百億、四百億ぐらいの業界規模の分野というのがこれまで、網にかかったという言葉は不適当かもしれませんが、結果的に出てきているというふうに思います。私は最大の標的はやはり、先ほど来埼玉の問題も出ておりましたけれども、建設談合ではなかろうかというふうに思うわけでございます。
 建設業界の規模、民間工事を含めますと七十二兆円ということでございますし、また今回の十兆七千億に上ります総合経済対策の大型補正予算につきましても景気浮揚策として待望されてはおりますけれども、建設予算の場合も財政投融資を含めまして税金から支払われるということでございます。この談合的な体質を持ちました建設業界へ私たちの税金が談合によって流れるということになりますと、これはやはり納税者としてはゆゆしき問題ではなかろうかというふうに思うわけでございます。
 一方で、日本の公共事業費でございますけれども、金額ベースでも対GNP比といたしましても世界最高という数字がございます。ちょっと古いんですけれども、八九年度で日本は六・五%、一万アメリカでは八八年に一・六%、これも低過ぎるのかもしれませんけれども。ちなみに、イギリスが八七年の数字で一・七%、旧西ドイツで二・三%、フランスもおよそ三・二%ということで、こういった諸外国と比べますと日本の公共事業費がいかに突出しているかということがわかるわけでございます。
 しかしながら、現状を考えますとこういった社会資本の蓄積というのは、こういった国々と比べますと非常に貧しいと言わざるを得ないわけでございます。そういった建設業界の談合体質が社会に有効な投資を妨げているのではないかというふうにも考えられるわけでございまして、これまでのようなまずは摘発できるようなところだけでなく、こういった大きな問題に取り組んでいただかなければ、刑事罰を上げました、毅然として取り組みますというふうにおっしゃっていても、なかなか公取は非常に怖い存在であるという、まさにそれ自体が最大の抑止力だと思うんですけれども、それにつながらないのではないかというふうに思うわけでございます。
 こういった建設談合への今後の公取の取り組みにつきまして伺わせていただきたいと思います。
#198
○政府委員(小粥正巳君) ただいま特に、建設業界における談合についての御指摘がございました。
 先ほども年次報告に私どもが行政処分として排除措置をとります最も重い処分であります勧告の件数についての御指摘がございましたけれども、例えば元年度に比較いたしまして二年度、三年度とこの勧告件数が審査体制の充実と相まって増加をしているということも御指摘のとおりでございます。特に最近になりまして、今お尋ねの建設を含めますカルテルの中でも談合事案についての私どもの排除措置をとった件数がふえていることも実は事実でございます。
 具体的な件数はまた必要であればお答え申し上げますけれども、先ほど捕まえやすいところだけをというような御指摘かと思いますけれども、決して私ども捕まえやすいところだけを取り上げているつもりはございません。私どもが違反行為についての何らかの端緒を得れば、これは私どもとして最大の努力を払って違反行為についての調査、審査を進めていく、こういうことで日常業務を行っているわけでございますが、その中で今申し上げましたように、談合事案についての摘発件数が最近全体の違反摘発件数の中でも大変増加しておるということを一つ申し上げておきたいと存じます。
 そして、お示しのように、我が国の諸外国に比べでもいろいろな意味でフローとしてもウエートの大変大きな公共事業に関しましてもしも御指摘のように談合行為が行われているといたしますと、これは申すまでもないわけでありますけれども、その損失はすべて国民に帰するわけでございますから、そういうことがあってはならないのは当然でございますし、私どももその点については今後とも特に意を用いながら公正取引委員会本来の仕事を着実に的確に進めていきたいと考えております。
#199
○小池百合子君 今後の談合の摘発、刑事告発に結びつく方法といたしましては、現在の公取の人員ではなかなか手薄になってしまうとか、そういった現実面を抱えていらっしゃることはよくわかります。ただ、人員をふやすだけでなくて、審査能力といったような量だけではなくて質の問題を高めなければ、例えば警察と比べると調べが公取の場合にはアンケート調査を受けているようだったというような指摘なども出てきているわけでございます。ですから、人員の拡充とともにそういった質的な向上というのをぜひお願いしたいと思いますし、またこの談合等のやみカルテルにいたしましてもこれからますます巧妙になっていくということが考えられます。例えば電話などで済ますとか、テレビ電話とかテレビ会議とか、これからの新しいメディアを使ってのということも十分考えられます。
 そういった意味で、もう時間がなくなってしまいましたのでこの辺でやめさせていただきたいと思いますが、最後に、かつてアメリカに参りましたときにゴルフ場でSECの委員長と私出くわすことがございました。そのときのアメリカ人の反応というのがその方になかなか近寄りがたいといったようなそういう恐れをなしておられるというその姿を見まして、アメリカの場合にはSECの威力というのはその方の存在がすべてを物語っているような感じがいたしました。そういった意味でも、これからも毅然としてそして実際の効力を上げていただきたいというふうに思いまして、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
#200
○委員長(斎藤文夫君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後五時三分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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