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1992/12/07 第125回国会 参議院 参議院会議録情報 第125回国会 法務委員会 第1号
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1992/12/07 第125回国会 参議院

参議院会議録情報 第125回国会 法務委員会 第1号

#1
第125回国会 法務委員会 第1号
平成四年十二月七日(月曜日)
   午後一時一分開会
    ―――――――――――――
  委員氏名
    委員長         片上 公人君
    理 事         下稲葉耕吉君
    理 事         真島 一男君
    理 事         竹村 泰子君
    理 事         猪熊 重二君
                井上  孝君
                斎藤 十朗君
                鈴木 省吾君
                服部三男雄君
                山本 富雄君
                大脇 雅子君
                角田 義一君
                深田  肇君
                矢田部 理君
                石原健太郎君
                紀平 悌子君
                原 文兵衛君
                平野 貞夫君
                安恒 良一君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         片上 公人君
    理 事
                下稲葉耕吉君
                真島 一男君
                竹村 泰子君
                猪熊 重二君
    委 員
                井上  孝君
                斎藤 十朗君
                鈴木 省吾君
                服部三男雄君
                大脇 雅子君
                角田 義一君
                深田  肇君
                矢田部 理君
                石原健太郎君
                紀平 悌子君
                平野 貞夫君
   国務大臣
       法 務 大 臣  田原  隆君
   政府委員
       人事院事務総局  山崎宏一郎君
       職員局長
       法務大臣官房長  則定  衛君
       法務大臣官房司  濱崎 恭生君
       法法制調査部長
       法務省刑事局長  濱  邦久君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務  上田 豊三君
       総局総務局長
       最高裁判所事務  泉  コ治君
       総局人事局長
       最高裁判所事務  島田 仁郎君
       総局刑事局長
   事務局側
       常任委員会専門  播磨 益夫君
       員
   説明員
       警察庁警備局公  中村 正則君
       安第二課長
       大蔵省主計局給  金田 勝年君
       与課長
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○国政調査に関する件
○裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する
 法律案(内閣提出、衆議院送付)
○検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する
 法律案(内閣提出、衆議院送付)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (東京佐川問題に関する件)
 (派遣委員の報告)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(片上公人君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 国政調査に関する件についてお諮りいたします。
 本委員会は、今期国会におきましても、検察及び裁判の運営等に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(片上公人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#4
○委員長(片上公人君) 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、以上両案を便宜一括して議題といたします。
 まず、政府から両案について趣旨説明を聴取いたします。田原法務大臣。
#5
○国務大臣(田原隆君) 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して御説明いたします。
 政府においては、人事院勧告の趣旨等にかんがみ、一般の政府職員の給与を改善する必要を認め、今国会に一般職の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を提出いたしました。そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般の政府職員の例に準じて、その給与を改善する措置を講ずるため、この両法律案を提出した次第でありまして、改正の内容は、次のとおりであります。
 第一に、最高裁判所長官、最高裁判所判事及び高等裁判所長官の報酬並びに検事総長、次長検事及び検事長の俸給は、従来、特別職の職員の給与に関する法律の適用を受ける内閣総理大臣その他の特別職の職員の俸給に準じて定められておりますところ、今回、内閣総理大臣その他の特別職の職員について、その俸給を増額することとしておりますので、おおむねこれに準じて、これらの報酬または俸給を増額することといたしております。
 第二に、判事、判事補及び簡易裁判所判事の報酬並びに検事及び副検事の俸給につきましては、おおむねその額においてこれに対応する一般職の職員の給与等に関する法律の適用を受ける職員の俸給の増額に準じて、いずれもこれを増額することといたしております。
 これらの給与の改定は、一般の政府職員の場合と同様に、平成四年四月一日にさかのぼってこれを行うことといたしております。
 以上が裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますよう、お願いいたします。
#6
○委員長(片上公人君) 以上で両案の趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより両案に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#7
○竹村泰子君 私はこの裁判官、検察官の報酬、俸給等について質問をいたしますのは初めてでございますので、あるいはお耳ざわりなことがあるかもしれませんけれども、お教えをいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 質疑時間が限られておりますので幾つかお尋ねしてまいります。
 裁判官の報酬、検察官の俸給を改定する場合には法改正の措置が必要となります。一般職給与法の改正とも関連する問題ですけれども、衆議院内閣委員会の附帯決議をまつまでもなく、政府としても、人事院の勧告が行われた場合、少なくとも翌年一月召集の常会の前に必ず臨時国会を召集して給与改善を早期処理する方針を明確にしていただきたい。その辺につきまして政府の御決意、いかがでしょうか。
#8
○国務大臣(田原隆君) お答えします。
 今、裁判官と検察官と一緒に質問されたと思うんですが、御承知のとおり、裁判所については最高裁が取り扱うのが本当だと思いますけれども、内閣として一番近い立場にある私ですから、一括してお答えさせていただきます。
 裁判官及び検察官が我が国の司法制度の中に占める地位及び現実に果たしている職責は大変格調の高い、公平、厳正なものでございますから、それにふさわしい給与を受けることができるように、これは何はさておいても必要な予算措置等に関して法務省としては、法務大臣としては今後とも努力してまいりたい、こう考えております。
#9
○竹村泰子君 ここでもちろんそういたしますというふうにお答えになることはできないと思いますけれども、一月常会開会ということになりましたので、やはり早期に給与改善を実施するためにはそのような御決意をいただかなければならないのではないかと要望を申し上げておきたいと思います。一月召集では遅過ぎるということでございます。
 私は過去十数年分の衆参両院における法務委員会の給与論議を読んでみました。それから、昭和三十九年の臨時司法制度調査会意見書というのも拝見させていただきました。判事、検事の給与につきましては、これらを踏まえて改善された事項も多数承知しておりますけれども、いまだに繰り返し繰り返し同じような議論がされている事項も多数ございます。長年にわたって、もう二十年も三十年にもわたって同じようなことが繰り返し繰り返し言われている。改善されない問題の多くは、つまるところ公務員制度としての位置づけの問題と、それから財政の問題とによるということを思うのです。
 そこで、少なくとも判事、検事の給与につきましては、今後財源がネックとなって改善できないようなことがあってはならない、必要な予算措置については大臣として格段の努力を改めて求めておきたいというふうに思います。これは、ひいては「相当額の報酬」を保障した憲法の趣旨にも沿うことになると思いますが、法務大臣の御所見と御決意のほど、それから大蔵省との折衝はどういうふうにしておられるのか、それから大蔵省の御所見も伺いたいと思います。
#10
○国務大臣(田原隆君) お答えします。
 先ほどのお答えと重複するかもしれませんが、裁判官あるいは検察官の地位及び現に果たしている職責にふさわしい給与が受けられるように、必要な予算措置等に関して一生懸命頑張ってまいりたいと思います。
#11
○説明員(金田勝年君) お答えさせていただきます。
 ただいま先生から御指摘ございました裁判官、検察官を含めました公務員の給与改定につきまして、私どもも財政事情等総合的に勘案しながら、従来からよく検討の上、決定してきた次第でございます。
#12
○竹村泰子君 大蔵省との折衝はどのようになさるんですかと質問したんですが、どなたがお答えくださるんでしょうか。
#13
○政府委員(濱崎恭生君) 給与法改正法案を提出するまでのプロセスとして大蔵省とどういう折衝をされるかという御質問かと存じますが、その点について私の方から一括してお答え申し上げます。
 人事院において八月ころに一般職給与法の適用を受ける国家公務員の給与の改定を勧告するのが通例でございますが、その後に、裁判官の給与の改定につきましては、これはまず最高裁当局におかれて予算措置を伴うものでございますので大蔵省と協議をされる。それから検察官の給与の改定につきましては、法務省におきまして総務庁との間で協議を行いまして、さらに総務庁を通じて大蔵省と協議を行うわけでございます。同時に、最高裁と法務省の間でも、これは裁判官と検察官の給与のバランスを図るという観点から協議を行うわけでございます。そういった協議の結果を受けまして、法務省の私どもの方におきまして法案の準備をするという経緯をたどるわけでございます。
 なお、検察官につきまして総務庁と協議をしておりますのは、検察官はその地位は一般職の国家公務員ということで行政府に属しておりますので、行政府に属しておる国家公務員の給与制度全般を所管しておられる総務庁と協議を行うということでございます。
#14
○竹村泰子君 私、初めての給与法質疑ですので、簡単に裁判官、検察官の給与法の仕組みについて伺いたいというふうに思いまして次に私がお聞きしようと思っていた質問を先に今答えてくださったんですけれどもね。
 一般職と異なりまして、裁判官、検察官の給与は直接人事院勧告とは関係がありませんね。しかし、両者は例年一般の政府職員の改定に伴いというふうなことが必ずついている。一般職に伴い改定するというふうにして改定が行われているわけですけれども、なぜ総務庁などと協議して改定するのですかというのを次にお聞きしようと思っていたんですけれども今お答えいただきましたが、裁判官、検察官の給与引き上げ提出までのプロセスをどんなふうに、どんな仕組みになってお決めになるのか、なぜ総務庁と御相談なさるのか、もう一度お答えいただけますでしょうか。
#15
○政府委員(濱崎恭生君) ただいま申しましたように、裁判官の給与の関係につきましては、最高裁におかれて大蔵当局と御協議されるということでございまして、総務庁は関係しておらないというふうに聞いております。総務庁が関係するのは検察官の給与の方でございます。
 なぜ総務庁と協議するのかということにつきましては、ただいま申しましたように検察官は国家公務員法上一般職の国家公務員でございますし、国家公務員全般の給与制度は総務庁において所管されておる。それから、給与の改定は当然に予算措置を伴いますので大蔵省とも協議する必要があるわけでございますが、その大蔵省との協議というのは、これは総務庁の方で法務省との協議をも踏まえて一括して協議される、こういうことでございます。そういう必要もございまして総務庁と協議をさせていただくということであると承知しております。
#16
○竹村泰子君 それでは、裁判官の報酬法のみ単独立法をして、他の裁判所職員の給与はいつまでも裁判所職員臨時措置法によって一般職給与法の規定を準用している理由、それは何なんでしょうか。
 それから、早急に法整備をするお考えはございますでしょうか。昭和二十六年に公布されました臨時措置法は「当分の間」とされていると思いますけれども、お伺いいたします。
#17
○最高裁判所長官代理者(泉コ治君) お答え申し上げます。
 裁判所職員は、国家公務員法上は特別職の職員として位置づけられております。その関係で国家公務員法の適用はなく、行政庁における一般職の職員との取り扱いを異にしているわけでございます。
 しかしながら、裁判所の一般職員もその任用の状況でありますとか勤務の形態を見ますと、これは一般の行政庁の国家公務員とほぼ同じでございます。そういったところから、裁判所職員臨時措置法によりまして、一般職の職員の給与等に関する法律を準用いたしておるものでございます。現在のような裁判所職員の任用それから勤務の形態からいたしますと、現在の取り扱いで私どもとしては満足すべきものと考えている次第でございます。
#18
○竹村泰子君 満足するべきとお考えになっているからこの「当分の間こというのはずっともっと継続していくべきものということでしょうか。
#19
○最高裁判所長官代理者(泉コ治君) そのとおりでございます。
#20
○竹村泰子君 今回、一般職では医師などに対する初任給の調整手当、これを改正することとしておりますね。ところが、判事補などに対する初任給調整手当というのは、平成元年改正のまま今回も据え置きとなっているわけなんですけれども、両者は必ず一緒に、パラレルにということではないと思いますが、その後の弁護士報酬との均衡、あるいは判事、検事任官の動向などを勘案しますと、そろそろ引き上げる時期になっているのではないか。つまり、後でもまた出てきますが、弁護士の方へ流れる人たちが八割方ですか、そういうことで常時欠員になっているような状態をどのようにお考えになっているか、今後の取り組みについてお伺いいたします。これは最高裁と、それから大臣にもお伺いしたいと思います。
#21
○政府委員(濱崎恭生君) まず、事務当局の方から裁判官、検察官の初任給調整手当、あわせて一括してお答えを申し上げたいと存じます。
 初任給調整手当につきましては、任官者の確保という観点から、昭和四十六年に裁判官あるいは検察官につきましても最高裁判所規則あるいは法務大臣の準則を定めて導入をしたわけでございます。その後、昭和六十一年と平成元年とにそれぞれ額の増額という改定をして今日に至っているわけでございます。
 初任給調整手当の趣旨は、委員も御指摘のとおり、裁判官、検察官の給源が司法修習を修了した者ということで、弁護士、裁判官、検察官の道を選ぶに当たって、弁護士との給与の格差が余りに大き過ぎるということになると任官者を確保することが困難であるという観点から導入されたものでございまして、それぞれ四十六年導入、六十一年、平成元年の改正、それぞれの時点におきまして、その確保の見地からその必要があるということで導入し、あるいは増額をしてきたものでございます。
 この改定に当たりましては、弁護士の収入、とりわけ修習生を卒業して初めて勤務弁護士、いわゆるいそ弁と呼ばれておりますが、そういういそ弁として勤務する者の給与との比較ということをやらなければならないわけでございますけれども、弁護士の収入というのは法務省も最高裁もそれぞれ所管しておりません。そのために、特に全国的にそういった初任の弁護士の給与実態を調査するということが必要でございます。平成元年の改正に当たりましても、その直前の昭和六十三年に特に日弁連にお願いして調査をしていただきまして、その時点の初任のいそ弁の給与の実態を把握して改定したということでございます。そういうことでございますので、これを改定するに当たってはそういう特別の調査をする必要もあるということでございますが、その調査を必ずしも頻繁に行うわけにもまいらない。
 それから、その増額、その改定の効果として任官者がどの程度確保されているかということの推移を見なければならないわけでございますけれども、その後若干の増減はございますけれども、一応前回、平成元年の増額の効果もあらわれているということで、なおその推移を見守るのが適当ではないかというふうに考えておりまして、法務省といたしましても今直ちにその増額をするということは考えておりませんし、最高裁当局におかれてもそういうことであるというふうに承知しております。御指摘の任官者の確保という状況等を見守りながら、その増額については今後とも鋭意検討していきたいというふうに思っているところでございます。
#22
○竹村泰子君 その調査されたのがお出しいただけるといいんですが、どのくらいの格差がありましたですか、今言えますか。
#23
○政府委員(濱崎恭生君) 昭和六十三年当時の調査では、初任のいわゆるいそ弁の平均月収が約三十五万円程度であったというふうに承知しております。初任の裁判官、検察官の給与、これは本俸だけでございませんで、調整手当とか、それからそのほかの手当の問題もございますので必ずしも正確ではございませんが、当時約七、八万円程度の格差があったというふうに記憶しております。それを完全に埋めるということではございませんけれども、その格差を少しでも減少させるということで、初任の手当について平成元年の改定によって一万四千円程度の増額をしたということでございます。
#24
○竹村泰子君 七、八万の格差でも若い人たちの生活にとっては大変大きなものだと思いますけれども、これは平均して弁護士さんのそのころの三十五万円というのは少し、平均すればそうなるのかもしれませんが、本当はもう少し高いのではないかと思いますともっと差が広がるわけでして、これはやっぱり無理ないんですね、弁護士にみんななりたがるということがあるんじゃないですか。だからこれは考えなければならない問題だと思いますけれども、検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#25
○政府委員(濱崎恭生君) 先ほど申しましたように、今後鋭意そういった任官者の数あるいは給与格差といったものに注意を払って検討をしてまいりたいと思っております。
#26
○竹村泰子君 服務制度の問題でちょっとお伺いいたしますが、本年の給与勧告では、人事院は、勤務時間、休暇等に関する法整備の必要性を報告しております。
 確かに判事、検事の給与や服務等については人事院の所管ではありませんが、一般職についてこれらが整備される場合を含めて、国家公務員制度内部の問題として極端な不整合性は改められるべきではないかと思うんですけれども、特に裁判官については現在原則的には何の法規もない、専ら自覚にゆだねているというふうなあり方、これはなぜ明文化されていないのでしょうか。どうお考えになりますでしょうか。
#27
○最高裁判所長官代理者(泉コ治君) お答えいたします。
 ただいま委員の方でお尋ねの件は、休暇の問題と勤務時間の問題、両方含んでいるのではないかと思いますけれども、裁判官の休暇につきましては、裁判官及び裁判官の秘書官の休暇に関する規程というものがございまして、「裁判官等以外の裁判所職員の例による。」、こういうことになっております。したがいまして、休暇については結局のところ一般の行政庁の国家公務員と同じ定めがなされているというわけでございます。
 ただ、ただいま御指摘のありましたとおり、裁判官につきましては勤務時間の定めというものはございません。これは、戦前の官吏がその職務は無定量であるという考え方がございまして、そういった考え方を引きずっている点もございます。それから、今日におきましても裁判官の職務を時間で管理するということはもう極めて困難であります。そういったところから勤務時間の定めがないことの一番の理由になっている、このように考えております。
#28
○竹村泰子君 納税者、すなわち我々国民の目から見れば、これはちょっと理解できないのではないかと思うんですね。
 確かに裁判官というのはどこにでもそんなに一般的にいらっしゃるわけじゃないかもしれない。しかし、少なくとも判事補や再任前の判事の服務については何らかの明文の規定が必要ではないのでしょうか。裁判の仕事は請負的で勤務時間の規定を設けることはなじまないというふうに従来お答えになっておりまして、私も大分前の議事録を拝見いたしましたけれども、場合によっては国民の代表者たる国会が法的に整備を促すようなことが必要になってくるのかもしれないと思うんですね。そのようなことがなくても済むように、一般職の動向を見ながら今から裁判所当局の自発的な努力といいますか、規則制定等の検討を期待したいと思いますが、人事局長、いかがでございますか。
#29
○最高裁判所長官代理者(泉コ治君) ただいま申しましたように、裁判官の職務の遂行は、やはり裁判官の自覚にまたなきゃならないという部分がございます。それからもう一つ、裁判官一人で常時三百件程度の事件を持っているわけでございまして、一定時間働けばそれでよしというわけにはまいらないわけでございます。自宅に帰ってからも、あるいは土曜日でありますとか日曜日の相当部分も仕事に充てなければ事件が回転いたしていかないというのが現実でございます。そのほか、御承知のように裁判官には緊急の業務といたしまして、令状事務でありますとか保全の事務でありますとか、そういった一般の執務時間外での職務も背負っているわけでございます。それからまた、裁判官の仕事といいますものは、常時思考をめぐらせて、思考がまとまり次第これを決定書にまとめていくという過程がございまして、外からこれを時間的に管理するということはもう極めて困難でございます。今言いましたような事情からいたしまして、裁判官について勤務時間を定めるということは、これはなかなか困難であろうと思います。
 ただ、御指摘のございましたように、国民の皆さんから疑念を持たれるというようなことはあってはならないことは当然でございまして、その点につきましては我々お互いに戒め合っていきたい、このように考えているところでございます。
#30
○竹村泰子君 同じく服務規定なんですけれども、週休二日制、それから育児休業制、裁判所職員に対する定年制などが導入されて、一般職職員に対する人事院の勧告ないしは制度改正に伴って裁判所職員にも導入されたと思います。
 ところで、最高裁の人事局長にお伺いいたしますが、裁判官の分限、服務はどのように規制されているんでしょうか。
#31
○最高裁判所長官代理者(泉コ治君) 分限、服務に関しまして、基本的には裁判官の場合には裁判所法に定めがございます。裁判所法の四十九条で、職務上の義務に違反した場合、あるいは職務を懈怠した場合、あるいは品位を辱める行状があった場合には懲戒に処するという規定がございますが、これを裏返しに申しますと、そういうようなことのないようにということを裁判所法で規定しております。それから、同じく裁判所法五十二条で、政治活動の禁止でありますとか、あるいは兼業の制限、営利事業の禁止といったことを定めております。
 もう一つございまして、裁判官弾劾法というのがございます。これには、職務上の義務に著しく違反した場合、あるいは職務を甚だしく怠ったときには罷免をする、その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があった場合には罷免を行う、こういった規定を置いているわけでございます。
 裁判官の分限、服務に関する基本的な規定というものは今申しましたものでございます。
#32
○竹村泰子君 例えば休暇については、裁判官の不祥事を反省して昭和六十年にようやく裁判官及び裁判官の秘書官の休暇に関する規程、ゴルフ事件とかいろいろあってそういうのが定められた。勤務時間についてはまだ明文の規定さえも決まっていないというか整備されていない。
 憲法によって厚い身分保障が与えられているといっても、しょせん裁判官も一国家公務員です。国民の租税によって賄われているということを忘れてはならないと思うのです。わずか最高裁判所裁判官は十四名ですね。そして、司法修習が終わって任官したばかりの二十歳代前半の若い裁判官も十把一からげで、二千七百名を超えるという大変な数の裁判官グループに分限、服務規定が整備されていないということは大変私は問題であると思います。年齢層もこんなに開きがある。家族構成も違えばいろいろな物の考え方も違う。ジェネレーションが違う。そういういろんなことを考えますと、やはりこれは一緒くたではちょっといけないのじゃないかと思いますが、いかがですか。
#33
○最高裁判所長官代理者(泉コ治君) ただいま分限、服務に関する規定が整備されていないというふうにおっしゃられましたんですけれども、確かに勤務時間についてはそのとおりでございますけれども、このほかの部分につきましては、先ほど御説明しましたように法規としては整備されているわけでございます。この勤務時間、先ほどの繰り返しになりますけれども、裁判官の先ほど申しましたような職務の遂行のあり方からいたしますと、これをもって時間で区切るということは、管理するということは非常に困難でございます。
 それから、納税者の方々の目から見てどうかという御指摘がございましたが、私どももその点に関しましては、裁判官二千八百人おりますけれども、その職務に関して一般の行政庁の方々と比べまして勤務時間がルーズであるということは決してないというふうに思っております。
 ちょっと口はばったいようでございますけれども、裁判所には地方自治体といったそういう組織はございません。全国の裁判所の事務をわずか二千八百人ぐらいで遂行しているものでございまして、これは若手の判事補も含めまして一般の勤務時間内で処理してそれで済むというものではございませんで、残業もございますし、それから先ほど申しましたように土曜日、日曜日の相当部分もこれに割いてやっているという実態でございます。この点についてはぜひ御理解を賜りたいと、このように考えます。
#34
○竹村泰子君 人事院からもおいでいただいておりますけれども、ことしの八月に、人事院は職員の勤務時間等について報告をしておられますね。ここで人事院は勤務時間、休暇等に関する法整備の必要性というのを出しておられますが、この報告に至る背景、趣旨についての人事院当局の御説明をお願いいたします。
#35
○政府委員(山崎宏一郎君) 勤務時間なり休暇の根拠規定といいますか、現在一般職の給与等に関する法律というものの中で基本的には決められておりますが、その他たくさんの人事院規則あるいは他の法律の中にも規定がございます。非常に複雑になっておりまして、職員自身からもわかりにくい、あるいは国民の目から見てもはっきりしないというようなことで、かねてから法制の整備というのが課題であったわけですけれども、人事院としまして週休制の整備等ずっと力を入れてまいりまして、それがおかげさまで今年の五月に週休制の完全実施の施行ということで一段落をしましたので、この際かねてからの懸案事項に着手したいということで意見表明をしたわけでございます。
#36
○竹村泰子君 人事院のそういうお勧めもございますけれども、どうなんでしょうか、三権分立ということがありますのでそれを尊重なさる観点からなんでしょうか、裁判所の休日とか裁判官の育児休業とか、おおむね服務に関する法律は政府職員のそれとは別個に定められておりますね。仮に今回の人事院の報告のように、一般職の職員に対して勤務時間、休暇等に関する新法を制定するというような場合、政府職員以外に、裁判官を含めた司法職員並びに国会職員をも一律に同一の法規で規定するということは、私はこれは法理論的には可能であると思うんですね。むしろ望ましいとも考えられますけれども、その辺は全く別にやっぱりお考えになるんでしょうか、どうなんでしょうか。
 また、仮に国会が裁判官などに対する勤務時間、休暇などに関する明文の規定が必要であると考えて、そのための単独法を制定することは、裁判所の休日あるいは育児休業などに関する立法例に照らしても問題ないと思うのですけれども、どうですか。
#37
○最高裁判所長官代理者(泉コ治君) 裁判所職員の中にも裁判官とそれ以外の一般職員がございますけれども、裁判官以外の一般職員は、先ほども申しましたように、その勤務の形態というものは行政庁の一般の職員の方々とそれほど変わるものではございませんので、裁判所職員臨時措置法でもって大部分の規定を準用いたしております。したがいまして、現在休暇についても準用しているわけでございますけれども、休暇あるいは勤務時間等についてこれを準用していくということは今後とも可能であろうと、このように考えております。ただ、裁判官ということになりますと、先ほどからるる御説明いたしておりますが、その勤務の形態が行政官庁におきます勤務の形態と異なっておりますので、これを一般の国家公務員と横並びで同一に定めるということは、これは無理な点があろうと思います。
 それから、これを国会でもって定めることはどうかという御指摘でございますが、国会の方でそういうふうにお定めになる場合には、これは法制的にはもちろん可能であると考えますけれども、私どもといたしましては、時間でもって管理するという考え方はなじみにくい部分があるということを御理解いただきたい、このように考えます。
#38
○竹村泰子君 そうなんですね。そういうふうにずっと答えておられるんですね。昨年、裁判官の勤務時間等に関する規定の整備の必要性を指摘した同僚議員の質問に対しても、規則でもって定めることはなじまない、そういう趣旨の答弁が行われております。
 しかし、今回人事院が一般職について言っている、国民に対して勤務条件の基本を明確に示す観点からも問題があるというふうに言っていらっしゃる指摘、これは裁判官に対しても当てはまろうかと思いますけれども、いかがですか、人事院の方は。どうお思いになりますか。
#39
○政府委員(山崎宏一郎君) 具体的にどういう方向で答えが出てくるかというのは今検討中ですのでまだはっきりいたしませんが、一番の基本は、先ほど申し上げましたように、今非常に複雑になり過ぎていまして、しかも給与法に間借りしているような形になっていますので、現行の中身を変えるというよりも、それを再編整備といいますか、わかりやすく整備するというのが基本でございます。
 ただ、社会経済情勢がいろいろ動いておりまして、勤務時間なり休暇をめぐる情勢も変動しつつあります。そういう流れを見ながら、そういう流れで国家公務員が現時点で対応すべき枠組みとして対応をつくっておく必要があるものがあればそれも検討したいと思っております。
 その中で勤務時間なり休暇にどういう流れがあるかということですけれども、勤務時間の多様化といいますか、あるいは弾力化といいますか、そういう流れも一つの流れとしてはあるということで、そういう全体の流れを見ながら今後検討していきたいと思っております。
#40
○竹村泰子君 昨年の答弁のように、家に持って帰って仕事をすることが多いというような理屈づけ、これはしかし国民に対して理解されないのではないでしょうか。自宅に仕事を持ち帰らざるを得ない公務員の職種などはもう枚挙にいとまがないわけでして、裁判官だけではない。
 それから、宅調というような庁舎が不備なころに行われた既得権をいつまでも守るような、そういう最高裁当局の姿勢はもう時代には合わないんじゃないかと私は思います。もう少しお聞きしたいのですがちょっと時間の都合もありますので、裁判所みずからが規則を制定して自主的に規律を検討することの方が国民の信頼にもつながっていくと思うんですね。矢口元最高裁長官は、宅調制度を廃止しようとしたけれども現場裁判官の抵抗が強くてできなかったと「私の履歴書」でおっしゃっておられますけれども、その辺もなぜなのだということをお伺いしたいと思いますが、ぜひこの検討を願いたい。裁判官を特に聖域に押し込めるというか、私たちの、国民の感情からいいますと、何か非常に特殊な侵してはならないような職種のように思えてならないんですね、そういうところへ祭り上げておくということで。もう少し人間的な血の通った一般的な感覚で働いていただく、しかもよく働いていただくことができるように、人事院の勧告もございますからぜひ検討していただきたいと強く要望しておきます。
 次に、裁判官の報酬について、憲法で「相当額の報酬」が保障されておりますね、七十九条、八十条。その職務の特殊性と裁判官の重責と使命にかんがみまして、一般の政府職員に相当額優位した水準で給与法とは別個の給与法体系として確立されていると思います。また、検察官も準司法的性格を有するということで裁判官と同様の給与体系がつくられているところであります。これにより裁判官と検察官の身分が保障され、司法権の独立が担保されていると思います。
 ところで、十一月五日の佐川事件の公判で検事調書が朗読されまして、褒め殺しの中止要請にかかわったとされる自民党大物議員の名前が公表されますと、自民党幹部から担当検事の告訴の検討、裁判官の訴訟指揮批判、裁判官弾劾裁判所、裁判官訴追委員会、検察官適格審査会などの活用、さらには国会に検察官適格審査会の開会の必要性を叫ぶなど、司法への介入、挑戦、統制ともとれる発言が続出いたしました。この件に関しまして法務大臣としての御所感をお伺いしたいと思います。
#41
○国務大臣(田原隆君) 今、先生が御指摘のように、検察官については、準司法的性格が非常に強いわけでありますから、裁判官に準じた法体系が、給与体系が定められておるわけであります。したがって、一般の国家公務員に比べて厚い身分保障が与えられているのは御承知のとおりであります。
 今回の検事調書の問題でございますけれども、検事調書の法廷での朗読について検察官を告訴することなどが直ちに司法権に介入し、またはこれを侵害するものとは直接的には私は考えられないんじゃないかと思います。しかし、現時点でそういうことがややおさまってまいりまして、検察官に対して告訴等をしたという事実はありませんし、今まだなされていない、そういうふうに考えておりますわけでございます。
#42
○竹村泰子君 ちょっとお答えがよくわからないんですが、なされなかったんですね、実際にはされなかったけれども、これは所管の法務大臣としてはこういうことは司法権の独立を侵されたということだと、そういうふうにはお思いにならないんでしょうか。どういうお気持ちでしょうかとお伺いしております。
#43
○国務大臣(田原隆君) 公判の現場でやられたことですから、それも訴訟指揮に従ってやられたことですから、それをそのまま批判するとすればそういう可能性があるわけでありますけれども、ただ、あのときにそういう立場にあった人たちが確かにいろんなことを言ったということは報道にありましたが、その後おさまってまいりまして、現在訴訟を起こしたとか告訴したとかそういうこと等はなされておらないので、今のところ私としては、実際は裁判に関する問題であるわけでありますから、コメントは差し控えたい、これが趣旨でございます。
#44
○竹村泰子君 よくわからないですね。
 それでは、結果的には今実行されたわけではないけれども、司法への介入だというふうにはお思いにならないわけですね、こういうことは。
#45
○国務大臣(田原隆君) あのときに読まれた人たちが騒いだということは報道等で存じておりますけれども、もし一般の人がそういう地位とかいろんな権限のない人たちが、一般の非常にか弱い人たちがもしそういうことがあったとしたら、本当に法に定められた検事調書の朗読であっても人権侵害等があり得るんではないかという気持ちは持ちましたが、そのこと自体に関しては、今度のこと自体に関しては具体的な裁判の現場における事柄でございますのでコメントは差し控えさせていただきたいけれども、一般論としては私は謙虚に冷静に考えてみる必要がある点はあるんではないかと、そういうふうに考えております。
#46
○竹村泰子君 法務大臣のお言葉ですね、私ちょっとよく理解できないんですけれどもね。
 人権侵害が公判の中であったかもしれないから、だからそれはむしろ司法への介入ではない、そういうことを自民党の幹部の方たちがいろいろおっしゃったけれども、それは司法への介入、挑戦、統制ではない、そういうふうに今のお答えは、大臣はお考えになっていると見ていいわけですか。
#47
○国務大臣(田原隆君) ちょっと私もそのニュアンス違うんですが、私は、裁判官も検察官も法律に従っておやりになったことでありますが、立場は一般論、特殊の個々の裁判でなくて、一般にこういうことを一般的な問題として取り上げてみた場合に、人権侵害等はあり得るなと、そのときはやはりそれでいいんだろうかという気を持ったわけでありまして、実際に今度のことで仮に告訴すると騒いだとしても、告訴そのものは検察当局と裁判所の判断にゆだねるということのあらわれでありますから、私は直ちに司法に行政が介入したとは言いがたいんではないかな、そういうふうに考えたわけです。
#48
○竹村泰子君 それでは、最後の質問になってしまいました。もう少し残しているんですが、時間がなくなってしまいましたので、もう一問大臣にお聞きして終わりたいと思います。
 人事院、ありがとうございました。結構でございます。
 検察官はやりがいのある職場なんだろうかということなんですね。
 中途退職者の推移、過去五年間お知らせいただきたいと思います。その原因もわかっていらっしゃったら教えてください。
 それから、上からの圧力とかそういうことでやめているのではないだろうかということですね。
 もう一つ、最後に大臣ですが、九月二十九日の札幌高等検察庁佐藤検事長の論文、「検察官の役割とは何か」という朝日新聞の「論壇」に投稿されましたことが大変皆さんの話題になりました。
 大変立派な文章で、私どもはこれを見てごくごく当たり前のことを言っていらっしゃると思うんですね。「国民に代わって、国民が知りたい、聞きたいと思っていることを尋ねる、そういう仕事をしている」、「歴代の検事総長は、検察官の心構えの基本として「厳正公平」「真相の徹底究明」を声高に叫んできている。」、「地位、職業のいかんにかかわらず、どんな人でも同じに扱われてきている。」、「権力に屈せず、権勢を恐れず」、「そのことをすべての検察官がどんなに誇りに思っていることか。このシンの疲れるシンドイ仕事を支えているのは、その気概だけといってもいい。」。
 大変すばらしい文章を投稿しておられるんですけれども、これに対して何か口頭で注意をなさったんですか、法務省は、大臣。この辺の大臣の御所感と今後を聞いて質問を終わらせていただきたいと思います。
 三つ質問ございます。
#49
○政府委員(則定衛君) まず最初に、検事の中途退官者の関係でございますけれども、過去五年間、一々数字を挙げますと細かいわけでございますが、平均いたしまして約五十名退職しております。ただ、そのうち五十歳以上、つまり検察庁勤務が二十数年といいましょうか相当長期にわたって勤務され、一定の地位に上り詰めたといいましょうか、そういった方が三十数名、過半数以上がそういう方でございまして、もちろん三十代あるいは四十代前半の人も一部いるわけでございますけれども、それぞれの退職理由というのはこれをつまびらかにするのは困難でございますが、いわゆる一身上の都合ということでございまして、これを推測いたしますに、いわゆる学齢期になっております子弟の教育問題であるとか、あるいはその年代になりますと両親の扶養の問題というのがございます。
 御案内のとおり、検察官の場合には全国に均質の職員、検事を派遣する必要上から転勤が避けられないといったことから、今申し上げましたような問題に対処する年代におきましてこの転勤問題がネックになり、進路を変更するために退官するというケースが相当あるのではないかと考えております。したがいまして、今後人事政策といたしまして、そういった年代の方々にきめ細かな配慮を注いでいく必要があろうかと思っております。
 お尋ねのように、その中でいわゆる圧力によって退職に追い込んだようなこともあるのではないかという点につきましては、これは全くそういう事実はないと断言させていただきたい、こう思っておるわけでございます。
#50
○国務大臣(田原隆君) 佐藤検事長の「論壇」といいますか、あれについて御質問がございましたが、お尋ねの投稿文については、東京地検による金丸前議員に対する政治資金規正法違反事件の捜査処理を批判したものと私はあれを見て思いました。私はちょうど大臣になって十三カ月目でございますが、法務省に参りまして検察というものを従来よりは身近に見る立場になりましたけれども、非常に独立性の強い、極めて厳正、公平を守るようにできた組織でございます。こういうところでは具体的事件の捜査処理は個々の検察官が直接決裁上の系列にある上司の指導監督を受けつつその権限と責任において行う、そのことは一般の官庁でも同じでありますが、より強いというふうに感じました。これはよく検察官独立の原則と言われておるものだと思います。
 したがって、言うならば今度の場合、具体的な事件に参画してない検察官が「論壇」に書かれたわけでありますが、その検察官が捜査の処理に関して批判的な意見を公表することは、あの時期にあの時点で組織の一員として問題があるのではないかな、また具体的事実、事情を正確に把握しておられたんだろうかな、そういう立場にはないはずだ、誤った批判となるのみならず、一般人には具体的事情に即した批判であるかのように非常に誤解を受けるおそれもあるのではないかな、そういうふうに感じました。したがって、私はあれは望ましいことではなかったんではないかなというふうに考えておりました。
 同時にまた、今、口頭で注意の話が出ましたけれども、これは独立性の強い検察庁で検事総長がみずからの発想でみずからの手続に従って口頭の注意をされたのであって、私は事前に相談も受けていないし、事後そういうことがあったということを間接的に報告を事務局を通じて受けたわけであります。私は、そういう点で検察庁の独立性、特殊性を考慮したやり方であるということで、いわゆる一般の役所で一般の仕事に対して注意を与えた場合とはかなり違うということで、それでいいんではないかなというふうに考えております。
#51
○竹村泰子君 終わらなくてはいけませんが、最後に、この論文に対してどれだけ多くの国民が賛意を覚え、声援を送ったか御存じですか。この方はもう自宅を閉めて電話も受けられないほど多くの国民がこの文章に感激をし、そしてそのとおりだと賛意を表明したということを大臣は御存じだと思いますが、こういう国民の声をやはり聞いていただきたい、強くそう望んで終わらせていただきます。
#52
○猪熊重二君 私は、きょうは裁判官、検察官の給与に関する法案に関しては格別の意見がございませんので、質疑がございませんので、それについての質問は省略させていただきます。
 今、裁判所、検察庁を取り巻く世間の評価の中で非常に大きな問題となっている佐川事件に関する金丸信前衆議院議員に対する略式命令の件に関してお伺いいたします。
 金丸信前議員に対しては、東京地検が捜査した結果に基づき東京区検に事件を移送して、東京区検で本年九月二十八日、政治資金規正法違反で公訴を提起し、略式命令を請求した。これに対して東京簡易裁判所は、同日、検察官請求のとおりに略式命令を発しました。
 そこで、この略式命令の発行手続について、法律上非常に疑義があるということをもとにしてお伺いいたします。
 まず、裁判所に伺う。
 平成三年一月発行の裁判所書記官研修所研修教材第七九号「略式手続(五訂版)」には、二十二ぺ−ジに「検察官が被疑者を取り調べもせず、単に説明書を被疑者に送付して略式手続の趣旨を告知し、略式手続によることについて異議がない旨の書面を提出させることは、許されないものと解したい」、このように書いてあります。
 この裁判所書記官研修所における教材の裁判所における意義というか効用というか、お伺いしたい。
#53
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) これは書記官研修所で用いておる教材でございますので、一般的に実務の運用がどのようになされておるか、実務の原則的な姿を紹介し、教えをしておるものということでございます。
#54
○猪熊重二君 この本は五訂版ということになっておりますが、一体いつからこういう記載がある教材を使っているのか、いつからですか。
#55
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) この教材そのものは、昭和三十八年十月に刊行されたものでございます。刊行当時から、増刷する機会には若干の補正が加わっておるもののようでございますが、今のくだりにつきましては、詳細を私ども把握しておりませんで申しわけございませんが、当初のころからあったのではないかというふうに思われます。
#56
○猪熊重二君 そうすると、裁判所においてはこういうふうに略式手続を告知するに際しては、不出頭で書面告知じゃなくて、出頭して取り調べてその上でちゃんと告知しなさいということを書記官研修所で昭和三十八年からずっとやっているんです。三十年間やっているんです。その裁判所書記官がそういう実務を取り扱うのと同じように、裁判官もそれに従ってずっと今日までやってきた。少なくとも三十年間そういう手続をとってきたということはお認めになりますか。
#57
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 先ほど申し上げましたように、この教材に書いてあることが実務の運用のあらかたでございます。要するに、運用の原則的なやり方はここに書いてあるとおりでございます。
 ただし、原則もあれば必ず例外というものもございますわけでして、今、委員が問題にされております今回の略式命令の発行、この手続におきましては私どもとしてはまさにその原則に対する例外的な手続と理解しておるわけでございますが、どういう場合にその例外があり得るかということになります。
 そういたしますと、告知の方法といたしましては、まさにここに書いてあるように被疑者に直接面接して告知するのが原則形態であり、通常であろうと思います。ただ、被疑者が病気等により検察庁に出頭するのが非常に困難な事情があるような場合に、略式手続を説明した書面を添えて略式手続に異議がない旨の申述書を送付した上、例えばこれに署名捺印したものの送付を受けた上、さらに電話によりこれを確認するというように、実質的に見れば告知の手続を直接行ったと同様に評価できるような方法は許容されるものというふうに考えておりますので、これはまさにそのような場合として扱われたんだろうというふうに理解しております。
#58
○猪熊重二君 あなたの今の答弁は二つ問題がある。
 まず一つは、この教材の記載自体から、これが原則論であって例外規定もときによってあるなんということはこの文章からはどこからも出てこない。今回たまたま取りつけただけの理屈にすぎない。これが第一点。
 第二点。そういう例外的取り扱いをする場合がある、いろんな場合があるとかどうとか今おっしゃいましたけれども、それであるならば今までそういう例外的な取り扱いをした具体的事例がどの程度あるのか教えていただきたい。
#59
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 先ほども申し上げましたように、御指摘になった資料は書記官研修所の教材であり、あくまでも実務の基本形を示しているものでございます。特別な事情がある場合の例外的な措置云々につきましては、御指摘にありましたように、この教材には特に説明が明記されてはおりませんが、しかしこの教材に書いてある趣旨を読み取れば、私どもとしては、被疑者に一切接することなく真に異議がないことを十分確認しないままで単に書面によるやりとりのみで済ませるようなことは許されないというふうに言っておるにすぎないと理解しておるわけでございます
 それから御質問の二番目でございますが、例外的な取り扱いが過去にどのぐらいあったかという点でございます。これは御承知のように略式手続は非常に多うございまして、一年間では百二、三十万件というものがございます。その略式手続の逐一について、どのような形でその異議がない旨の確認がなされておるかということを私ども十分把握いたしておりませんので、どの程度の例外的な扱いがあるかということはお答えしかねるわけでございます。
#60
○猪熊重二君 あなたの個人的ないろんな思いつきをここで言ってもらっても困るんだ。要するに、事務の取り扱いは三十年間そういうふうなことは違法であるという取り扱いをしてきているんだ。これに対してあなたは今、幾つあるかわからぬと、そういうふうな例外的取り扱いをしたのは幾つあるかわからぬけれどもこういう場合があると。そういうふうな例外に該当する場合を勝手にあなたが決めるわけにはいかぬでしょう。そういうことでないからここで、この教材で不出頭告知は違法だと言っているんだ。もしこれが原則論であって例外があるというんだったら、例外を書いておかなかったら教材の意味なんかありゃしません、ないじゃないですか。そんな、あなたがここへ来て適当に言った、こういうのが例外だなんて言うのが例外だったら、あなたが法規そのものになってしまう。
 それで、もしあなたが今おっしゃるように、この文章は原則論であって例外は別だというんだったら、今度は例外をいろいろ検討してここへ書き込むんですか、どうするんですか。
#61
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) まず、今御質問の中にありました先の方のくだりでございますが、委員は違法という言い方をされましたけれども、例えば例外的な取り扱いをしたことによりこの略式手続が違法であるというような裁判例があったということは今までございませんし、この書面あるいは先ほど申しました書面によるやりとりプラス電話による確認が違法であるかどうかということは、過去において違法とされた例は一件もございません。
 それから、この教材の改訂の問題でございますけれども、先ほど来申し上げましておるように、あくまで教材としては基本形を教えるものでございます。また、今回のような取り扱いを全く排斥する趣旨のものと私どもは読み込んでおりません。したがって、必ずしもこの段階でこの記述の変更が必要であるとも考えていないわけでございます。
#62
○猪熊重二君 不出頭告知が違法であるという取り扱いがなされたことはないとあなたはおっしゃる。それはそうだ、不出頭告知によって略式命令を今までやったことがないんだから。だからそれについて違法だ合法だなんていう判断が出てきっこないじゃないですか。それが一点。
 次に、私がこういう取り扱いは違法だと言ったのに対して、あなたは違法だというふうなことはないとおっしゃる。しかし、この本に、「同旨」として、昭和三十五年一月刑事裁判資料一四〇号を参照しろと書いてある。この参照しろという刑事裁判資料によれば、全国次席検事会同において、法務省刑事局の見解としてどういうことがあるかといえば、問いとして「検察官が被疑者を取り調べないで、書面を送付して略式手続の趣旨を告知し、かつ、略式手続による旨の同意書を徴することは、違法か。」と書いてあるんです。そして、答えは「許されないもの」と書いてあるんです。あなた、こっちの検察官会同における、こっちは違法だと書いてあるじゃないか。しかも「同旨」だといってここに書いてある。要するに、便法によって事を処理したという事実を認めたらどうですか。
#63
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 何といいますか、書いてあることの解釈が委員の解釈と私どもの理解と食い違いがあるわけでございますが、同じことを蒸し返すようで恐縮でございますが、私どもとして、例えば現在の書記官研修所の教材では、単に説明書を送付して趣旨を告知し、書面を提出させるだけで略式手続を発することは許されないというふうに読んでいるわけでございまして、この旨、例えば書面のやりとりだけでございますと、仮に例えば別人に渡った、あるいは別人に渡らなくても当人が十分説明書の内容を理解しないままで書面によるやりとりでやってしまうと後々とんでもないことになる。やはり略式手続によることについては、被疑者が十分に略式手続の何であるかを理解して、かりそめにも誤解に基づいてそれに同意をすることのないようにという、慎重にやれという趣旨に受け取っておるわけでございますので、その辺のところはこれの読み方が委員と私どもと違う読み方になっておるということになろうかと思います。
#64
○猪熊重二君 それじゃ、あなたに伺う。
 今回の不出頭略式告知は、報道陣に取り囲まれていて出頭するのに支障があるということが金丸前議員の弁護人から検察庁に上申されて、それで検察庁はうん、そうだということでこの不出頭略式告知を認めた。裁判所としても、その法務省のやった処置をそのとおりだと言うんだから、報道陣に取り囲まれているということが不出頭の根拠になるということをお認めになることになるだろうと思う。すべての法律に対して例外があるということは私もわかりますよ。しかし、それじゃその例外をどのようにするのか。例えば、体のぐあいがちょっと悪いとか、風邪を引いてちょっと熱があるとか、商売が忙しくて今書き入れどきで当然出ていくわけにはいかぬとか、サラリーマンでいえば、そんなやたら休んだらボーナスにも影響するからわしは出ていけぬと言って、それでもいいんですか。どこに基準を置くんですか、それじゃ。
#65
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 委員の御質問の点が初めから今回の具体的な略式手続の件で始まったものですから私どもも具体例に即して今まで御答弁申し上げてまいりましたけれども、さて、今の御質問のように、さらに具体的に突っ込んで、例えば特別の事情として新聞記者等に取り囲まれ、そのために出頭ができかねるような状況にあったことが果たしてどう評価すべきかというような点にまでなりますと、非常に事具体的になります。そのような場合、私どもの立場といたしまして、それは現になされたその当該裁判の当否、適否をそういう具体的な事情にまで立ち入って判断する立場にはございませんので、その点のお答えは差し控えさせていただかなければいけないことになるわけでございますが、御理解いただきたいのは、裁判所といたしましては、あくまで条件として略式手続について被疑者が真にその何であるかを理解し、そして心からの同意があったか否かということを判断するのが裁判所の役割でございまして、裁判所としてはその要件があるという判断に達した場合には、これはその法律の要件が備わっている限り略式命令を出すのが裁判所の役割であるということで、その点は御理解いただきたいと存じます。
#66
○猪熊重二君 要するに、私が聞いたのは、裁判所で原則論としては不出頭告知は違法だけれども、しかし例外的にそういう場合があるとおっしゃるから、じゃこういうふうに具体的な場合はどうするんだと。物差しがないじゃないですか。刑事局長が自分勝手にその物差しをつくるわけにはいかぬでしょう。その物差しを今後つくるのか、つくらぬのか、だれがつくるんだということを聞いているんです。
#67
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 私、原則としてそのようなことが違法だということを申し上げたつもりはございませんで、私の言い方が誤解されたのであれば訂正させていただきますが、私の申し上げましたのは、そのような形態でなされる略式手続は数が少のうございますと、したがって数が少ないという意味で例外的な取り扱いであるという言い方をしたにすぎないつもりで申し上げたのでございます。
#68
○猪熊重二君 少し揚げ足取りになるけれども、調べてもいないのに数が少ないとか多いとかわかるんですか、あなた。どうなんですか。
#69
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 先ほども申し上げましたように、略式自体は年に百二、三十万件もあるものでございますので、あるかないかについては把握しておりません。ただ、私どもが経験上言えることは、運用上の多くの場合には直接取り調べをやっておられると、だから今回のようなやりとりで出される場合は数としては非常に少ないだろうということは言えるという意味だけでございます。
#70
○猪熊重二君 これは本来最高裁に言うことじゃなくて法務省に言うことの――最初にちょっと裁判所に言おうと思ったら時間が来ちゃった。
 私が言いたいのは、法務大臣、要するに国民は、今回法務当局のとった処置、そしてそのしり馬にくっついてただ略式命令を出した裁判所の処置に対して不公平であると。政治家である、その政治家の中でも非常に大物政治家である、こういう金丸信前議員に対する処置は一般国民に対して適用する法と別個の法を適用しているということで国民は非常に憤激しているんです。こういうふうに国民が誤解していると言うなら誤解かもしれぬ、私は国民の言っている方が正しいと思うけれども。いずれにせよ、平等取り扱いというのは民主主義の原点なんです。自由と平等というのはフランス革命から近代国家における基本原則なんです。その平等の取り扱いを政治家であるがゆえに、大物であるがゆえに差別して有利に取り扱うというようなことがあったら民主主義は根底から崩れるんです。国民はそう思っているんです。
 私の質問時間は十九分までしかないから短くていいけれども、法務大臣、こういう国民の考えていることが間違いなら、間違っている、ばかな国民だとおっしゃってくださいよ。そうじゃない、国民がもし本当に今回の取り扱いを怒っているんだったら、それに対する法務大臣の所見を伺いたい。
#71
○国務大臣(田原隆君) 私は法律的な細かい理論的な話はできませんが、私は、検察はいつも厳正、公平にやってきているものと信じておりましたし、法務大臣になってからもそれを信じております。今回の件につきましても、私どもこれに対して一切関与せずにまいりましたし、検察がみずからの手で厳正、公平にやってきたわけでありまして、何の理由で検察がそれを特別扱いしなければならないかということなんか考え当たりませんので、私は、厳正、公平にやってきたが、何かのところで誤解があるんだなというふうに感じておる次第であります。
#72
○猪熊重二君 終わります。
#73
○紀平悌子君 まず、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、時間が非常に短うございますので、お返事の方は簡潔かつ具体的にお願いをしたいと思います。
 九二年十二月、きょうの法務委員会、ちょっと申し上げますと、大変開催を待ちに待っておりましたけれどもなかなかこういった機会が回ってこなかったということ、後段の方で、一般質疑の方で申し上げますけれども、やはり佐川疑惑の徹底追及ということ、このことがどうしてもされなければならないことであると同時に、やはり国民に必要なさまざまのほかの法案、条約等に非常に影響があったなということをまず感じているわけでございます。
 さて、今回の給与法の改正による給与アップのほかに、衣食住のかなめと言える裁判官、検察官の住まいについて質問をしたいと思っております。
   〔委員長退席、理事猪熊重二君着席〕
 現在、裁判官、検察官は、持ち家、官舎の州もありましょうけれども、どういう住環境のもとにあるのか、また通勤時間の状況はどうなっているか、法務省、最高裁、お伺いしたいと思います。
#74
○政府委員(則定衛君) 検察官についてということでお答えさせていただきますけれども、全国に検事及び副検事、現実にその職にある者、合計約二千二十名でございます。そのうち国家公務員の宿舎に入居しておりますのが約七割の千四百名でございます。したがいまして、検察官につきましては約七割の者が、持ち家の有無は別といたしまして、公務員宿舎に入っているという状況でございます。
 通勤時間がどれぐらいになるかという点については、必ずしも全国的に均一に割り出しているわけではございませんが、最も通勤事情の厳しいと言われます東京におきましては公務員宿舎は大体近いところに配置しておりまして、そこへ優先的に検事を入居させていくという取り扱いでございます。遠いものといたしましても一時間程度ということで御理解いただきたいと思います。
#75
○最高裁判所長官代理者(泉コ治君) 裁判官について申し上げます。
 裁判官のうち、自宅等を持ちまして住居が安定いたしております者が約八百名でございます。それから約二千名の者が宿舎に入っております。宿舎を希望する者は全員入れる状態になっております。
 それから通勤時間でございますけれども、都会地におきましては一時間前後でございますが、地方にまいりますと三十分前後で通えるところに配置されているのが普通でございます。
#76
○紀平悌子君 ちょっと問題を変えてお伺いしたいと思います。
 現在、陪審制度の復活についての御研究をされておられると伺っております。その御研究とその展開につきまして、日本人の法意識のリサーチをなさっておるやに伺いますけれども、その結果を含めてどういう現状というか、どういうふうな答えが出ておりますでしょうか。これは最高裁にお伺いいたします。
#77
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 私どものその陪審制度、参審制度に関する調査研究でございますけれども、これは現在までの研究状況を申し上げますと、国内において文献等により基礎的な研究をしておる、それから欧米諸国に裁判官を派遣して、その諸国の陪審制度、参審制度の内容や実情を調査しておるという状況でございます。
 今、委員のおっしゃった、日本人の法意識あるいは国民性に関してどうだという点についてのリサーチとおっしゃいましたけれども、その辺は最高裁判所として現在はまだ、まだというか最高裁判所としては行っておりません。
 私どもがただいろいろな文献等で承知しておるところでございますと、日本人は例えば議論が苦手だから他人に意見を合わせる傾向もあるし議論も苦手である、したがって陪審制度が向かないとか、あるいは専門家に対する信頼が強くて素人に裁かれることは好まないといった意見があるという、そういった面の指摘がございます反面、昔と違って今の日本人の場合にはそのようなことはないから陪審制度を取り入れても大いにやっていけるんだという意見もあるというふうに承知しておりまして、そのどちらが正しいかということは一概に判断しがたいところであると思いますし、私どもとしてはむしろその辺のところは最終的には国民一般、またその代表である国会においていろいろ議論していただき、お決めいただくべき事項である。裁判所としてはむしろ客観的な諸外国の制度の実情や問題点について正確な知識を把握することに努めてまいろうというつもりで今調査研究を続けておるところでございます。
   〔理事猪熊重二君退席、委員長着席〕
#78
○紀平悌子君 できれば文献を二、三お挙げいただきますと参考になりますが。
#79
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) ちょっと手前みそみたいな感じになりますけれども、実は私ども、この調査研究について各種の文献等あるいはまた欧米諸国に行ってまいった裁判官方の研究の成果を踏まえて、このたび一つの文献、「陪審・参審制度 米国編I」という形でこの間刊行いたしましたが、こういった資料を今後順次公刊していくつもりでやっております。
 私どもの出した資料の中には最近の文献がいろいろ挙がっておりまして、二、三と申しますと、例えば丸田隆さんが書かれた「アメリカ陪審制度研究」法律文化社、それからアメリカの法学者でローク・M・リードさんと日本の学者の井上正仁、それから裁判官の山室恵、この三人の共著による「アメリカの刑事手続」、その他もろもろの文献を研究、調査しておるところでございます。
#80
○紀平悌子君 ありがとうございました。
 私は、昨年十二月十七日の当法務委員会で裁判官の育児休業法についての御質問を申し上げました。それに関連しまして、本年度の裁判官の育児休業の請求の現状、まず数、それから承認されなかった例があればそれ、それから男女比、それからどんな評判かという言い方は適当でないかもしれませんけれども、受け方をしているかということをお伺いしたいと思います。特に小規模庁の現状等お伺いできますとありがたいと思います。
#81
○最高裁判所長官代理者(泉コ治君) 裁判官の育児休業制度が発足いたしましてから私どもの方で請求がありましたのは六人でございまして、そのすべてについて承認が行われております。請求さ。れた六人の方はすべて女性の裁判官でございます。
 それから、請求された六人の方は比較的大きな裁判所に所属しておりまして、小さな裁判所におきます請求というのはちょっと例がないわけでございますけれども、それは出産適齢期の女性は大きな裁判所に配属されている例が多うございます。小さい裁判所に配属された方でも妊娠がわかりますと大きな裁判所に移ってもらっております。それができない場合には応援の裁判官を送り込むといった措置も考えております。出産の予定というものは早目にわかるものでございますので、そのような措置をとることが可能でございます。
 いずれにいたしましても、私どもとしては遠慮なく育児休業制度をとってくださいというふうに折に触れてPRいたしておりまして、女性裁判官の中におきましてもこの制度を非常に喜んでいる次第でございます。
#82
○紀平悌子君 まだお伺いしたいことさまざまございますけれども、何せ限定された時間の中でございますので、きょうはこの程度でやめさせていただきます。
#83
○委員長(片上公人君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。
    ―――――――――――――
#84
○委員長(片上公人君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#85
○大脇雅子君 私は、佐川事件をめぐる検察と法務の姿勢についてお尋ねをいたします。
 渡邉被告人からの金丸氏に対する五億円の授受が上申書提出、略式命令という経過をたどって二十万円の罰金で決着したことについて、国民は本来適正であるべき検察の取り調べ手段が一般国民と政治家のダブルスタンダード、二重の基準であると批判しております。
 刑事訴訟法により取り調べにかえて上申書の提出をしたということにつきましては、先回衆議院の法務委員会で刑事局長は上申書の決着は地検側の判断によるというふうにお答えになりましたが、安部昌博弁護士は九月二十一日、五十嵐特捜部長から上申書の提出を求められたと言われております。金丸氏に対して検察庁は何回事情聴取のための呼び出しをされたのか、呼び出し状の回数、電話など、当然記録が残っているはずと思われますが、お答えいただきたいと思います。
#86
○政府委員(濱邦久君) 今、委員がお尋ねになられましたように、金丸前議員の政治資金規正法違反の事件の捜査の過程におきまして、検察官の方から弁護人を通じて金丸前議員に対して出頭の上取り調べに応ずるよう求めたことは事実でございます。
 その回数についてお尋ねでございますけれども、これは捜査の過程、捜査の方法と捜査の秘密に属することでございますので何回ということは申し上げられませんけれども、複数回ということで御理解をいただきたいと思います。
#87
○大脇雅子君 何らかの記録にとどめられておりますか。
#88
○政府委員(濱邦久君) もちろん、検察官の方で被疑者に対して取り調べに応ずるよう出頭を求めた場合に、その捜査の経過等につきましては担当検察官においてもメモを残したり記憶に残したりしていることは当然でございます。これは一般論として申し上げますけれども、後日例えばその捜査の過程に関して裁判所の法廷で、例えばその取り調べ状況等がその取り調べの結果作成された供述調書等の任意性、信用性が問題になることがあるわけでございますから、捜査の過程の事象につきましてはメモを残したり記憶をとどめたりすることは、これは当然のことでございます。
#89
○大脇雅子君 金丸氏の秘書の生原正久氏及び政治資金を金丸氏に渡したと言われる渡邉廣康氏については起訴猶予処分としたというふうに中間報告で述べておられましたが、起訴猶予処分にした理由を明らかにしてください。
#90
○政府委員(濱邦久君) まず、渡邉元社長を起訴猶予にいたしましたのは、本件が渡邉元社長に対しましては起訴済みの特別背任事件の余罪であり、被害総額約四百億円に上る特別背任事件について刑事責任を問えば刑政の目的を達成できるということなどの理由によるものでございます。
 また、生原秘書につきましては、金丸前議員の秘書として五億円の授受に関与したにすぎない、受領の決定も金丸前議員によってなされたということなど、寄附受領における関与の度合いが低いということなどの理由によるものであるというふうに報告を受けているわけでございます。
#91
○大脇雅子君 渡邉廣康氏については四百億の特別背任の余罪ということで起訴猶予処分にされたと言われましたが、特別背任罪と政治資金規正法は罪質も保護法益も違うわけですが、通常はほとんど併合罪として起訴されますが、なぜ本件については余罪として落とされたんでしょうか。
#92
○政府委員(濱邦久君) まず、一般的に申しまして、法定刑の重い罪が起訴されている被告人について、余罪として極めて法定刑の軽い罪が発覚した場合に、その法定刑の軽い罪については起訴猶予にして、法定刑の重い罪だけを公訴提起するということはよくあることでございます。
 渡邉元社長に対する特別背任事件と申しますのは、先ほど申しましたように被害総額が約四百億円に上る極めて巨額の特別背任事件でございまして、この事件について、この重い罪について刑事責任を問えば刑政の目的は達成できるという理由によるわけでございまして、特に異例の扱いと申しますか、ということではないというふうに理解しているわけでございます。
#93
○大脇雅子君 そうしますと、その論理でいきますと、生原秘書については金丸氏の公訴事実では共犯とされておりますし、金丸氏はほとんど自分はお金はさわったこともなくて、すべて生原に任せてあるというようなことを言われているときに、関与の度合いで起訴猶予ということはいかがなものでしょうか。
#94
○政府委員(濱邦久君) 先ほど申し上げましたように、生原秘書の場合には、今、委員が御指摘になられましたように、金丸前議員と共謀の上政治資金規正法上の量的制限違反の罪を犯したという事実が認定されたわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、この五億円の授受につきましては、御理解いただけると思いますが、金丸前議員の要するに秘書という立場で、従的にという言葉が適切かどうかわかりませんけれども、実質的には秘書という立場で関与したにすぎない、受領の決定も金丸前議員によってなされたという意味合いから関与の度合いが低いということを理由にして起訴猶予処分に付したものというふうに報告を受けているわけでございます。
#95
○大脇雅子君 私は、ここに巧妙な事件をやみに葬る構図を見ざるを得ないのであります。二人を起訴猶予にし、金丸を略式手続で起訴することによって、事実は公開の法廷に出ることはなくなったわけであります。公開しない手続という利益の誘導で金丸に上申書を提出、上申書というのはつまりは自白でありますが、そして起訴猶予にすることによって喚問に対しては、起訴猶予がいまだ法的に確定処分でないということから処罰のおそれがあるということでみずから黙秘権を正当に行使させる、これでいいのかと私は言いたいのであります。しかし、唯一の方法としては国民の側からの検察審査会への申し立てという形で検察官の専権とされる起訴、不起訴の処分に対しては異議の申し立てがあるわけですが、現在その検察審査会への申し立てはありますでしょうか。
#96
○政府委員(濱邦久君) 現時点におきましては、検察審査会に対する審査の申し立てがあったというふうには報告を受けておりません。
#97
○大脇雅子君 金丸氏から五億円の配付先の捜査に関しましてはさまざまな告発がなされております。
 通常、どのような罪でもどのような原資で何に使ったかという出し入れは法律を適正に適用する場合の必要不可欠の条件だと思いますが、なぜ取り調べをされなかったのでしょうか。
#98
○政府委員(濱邦久君) 今、委員がお触れになられました五億円の配付先等の問題につきましては、委員も今御指摘になられましたように政治資金規正法違反あるいは所得税法違反等の告発を受けて、東京地検におきましてこれまでの捜査結果を踏まえながら引き続き捜査を行っているところでございます。したがって、検察当局はその捜査の過程におきまして必要な関係者の取り調べ、その他の所要の捜査を尽くすものと思うわけでございます。
#99
○大脇雅子君 憲法の三十一条は、犯罪と刑罰の具体化には必ず一定の法定の手続によることを定めておりまして、刑事事件では必ず刑事訴訟法の定める手続によると定めてあります。取り調べが最も重要なのは、黙秘の権利を告知いたしまして、問答様式で検察官が取り調べ、そして陳述を読み聞かせて、署名捺印する。ここに人権保障の構造の上に最も真実究明のシステムが訴訟法として確立しているわけです。私はこの観点から、やはり上申書の提出問題というのは、検察官は大きな誤りを犯されたのではないかというふうに考えますが、いかがなものでしょうか。
#100
○政府委員(濱邦久君) 今、委員が御指摘になられましたように、検察官を含めまして捜査機関の捜査というものは、刑事訴訟法に定められた手続によって厳正、厳格に行われなければならないということはまことに仰せのとおりでございます。刑事訴訟法百九十八条一項にございますように、「犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。」というふうに規定してあるわけでございまして、この被疑者の取り調べという手続自体は、被疑者に被疑事実についての弁明の機会を与えるとともに、捜査機関が必要な証拠を収拾するための手続であるわけでございます。もとより、被疑者の方からいたしますれば、その出頭の求めに応じて出頭するかどうか、取り調べに応ずるかどうかということは、これは被疑者の方の任意に任されているわけでございますし、また、捜査機関の方からいたしますると、被疑者の取り調べをする必要があるかどうかという必要性の観点から被疑者の出頭を求めるかどうかということを決めていくわけでございます。
 したがって、この金丸前議員に対する政治資金規正法違反事件につきましては、この当該事件の具体的事情、例えばこの事件に適用しようとしております罰則の法定刑が、例えば罰金二十万円の軽いものであるということとか、あるいはそれまでの証拠の集まりぐあいがどうであったかとか、あるいは捜査の進展状況がどうであるかというようないろいろな当該事件の具体的事情を考慮勘案いたしまして、被疑者の出頭を求めて取り調べることがなお必要かどうかということを考えるわけでございまして、本件では検察官が、金丸前議員の方から上申書が提出されて、しかもその上申書の内容が自己の刑事責任を認める内容のものであって、しかもその上申書を含めてそれまでに収集された証拠を全部総合勘案した結果、捜査の目的は十分達し得たものというふうに判断して、それ以上被疑者本人の出頭を求めないで終局処理をしたということであると理解しているわけでございます。
#101
○大脇雅子君 人権保障の点から私はお聞きしているのでありまして、その点でお答えは納得できませんが、法律論をここでやっておりましても日が暮れますので、ただ一点疑問を提起させていただきたいのは、法定刑が政治資金規正法は低いということを常々検察官はおっしゃっておられますが、社会的な影響における罪ということは法定刑ではないと思いますね。だから、そういう意味で政治資金規正法ということが法定刑が軽いからそのような処置をするということには国民は納得しないのではないか。この点について、今の質疑のやりとりをお聞きになって法務大臣、いかなる御感想をお持ちでしょうか。
#102
○国務大臣(田原隆君) 非常に法律技術的なところがございますので、政府委員から先にお答えします。
#103
○政府委員(濱邦久君) まず法定刑の点について、私先ほど法定刑が軽いと申し上げたのは、例えばこの政治資金規正法の量的制限違反の罪については最高刑が二十万円の罰金だけであるから法定刑が低いということでございまして、政治資金規正法上のほかの罪につきましては、例えば収支報告書の不記載とか虚偽記入というような罪は五年以下の禁錮または三十万円以下の罰金ということで、法定刑の重い罪もあるわけでございます。
#104
○大脇雅子君 もうどうぞ簡単におっしゃってください。
#105
○政府委員(濱邦久君) 私が先ほど申し上げようといたしましたのは、要するに検察官が事件を処理する場合には、その罰則に定められた法定刑の枠内でその事案のそれぞれの犯情、情状等を勘案して最も適切な処理が何であるかという判断をして最終処理を行うわけでございまして、そういう意味で法定刑の枠内で処理をするということを申し上げたかったわけでございます。
#106
○大脇雅子君 それでは、畑時夫という皇民党後見人を名のる人と法務事務次官根來泰周氏の書簡の交信についてお尋ねいたします。
 私は、根來法務事務次官に、御当人でもありますし、ここに来ていただけるようにとお願いをいたしましたが、なぜ来られていないのでしょうか、お尋ねいたします。
#107
○政府委員(則定衛君) 従来から、各省のそれぞれの職員等にかかわります問題等につきましてはそれぞれの政府委員から答弁させていただくことで対応できると、そういうお取り扱いを国会で認めていただいておりますし、現に各省とも事務次官というのは政府委員になっておりませんので、私ども政府委員の方で十分対応させていただくつもりでございますことをここで申し上げます。
#108
○大脇雅子君 それでは、法務省の根來泰周氏の書簡について、資料の配付をお願いいたします。
   〔資料配付〕
#109
○大脇雅子君 私は、この書簡を法務省という肩書のもとに書かれた根來氏に対して、どういういきさつで書かれたのかということを直接お尋ねしたいということを申し上げたわけですが、政府委員で対応できるというお答えには納得できませんので、根來事務次官をどうぞお呼びいただくようにお願いいたします。そうでないと質問がフェアではないということで質問が続行できません。
 委員長、よろしくお願いします。
#110
○委員長(片上公人君) 速記をとめてください。
   〔速記中止〕
#111
○委員長(片上公人君) 速記を起こしてください。
 ただいまの件につきましては、政府委員の方で答弁よろしくお願いいたします。
#112
○大脇雅子君 私の方としては質問を続けますが、必要が残るようでしたら、説明員なりなんなり、何らかの形で次の機会に質問させていただきたいと思います。
#113
○委員長(片上公人君) じゃ、政府委員の方で答弁お願いします。
#114
○大脇雅子君 それでは、今お配りいたしました「前略」で始まる法務省根來泰周氏の書かれた書簡の名あて人、「畑時夫様」となっておりますが、この畑晴夫という人は、私の知る限りでは反論社の会長、麦の会主管というようなこと、あるいは皇民党の後見人ということですけれども、警察庁としてはどのような形でこの団体ないしは活動をとらえておられるでしょうか。
#115
○説明員(中村正則君) お答えいたします。
 お尋ねの反論社でございますが、これは昭和三十八年十一月ごろ結成された右翼団体で、事務所を大阪市内に置き、主に右翼思想の啓蒙活動を行っている畑時夫主管の一人一党的なものと見ております。次にお尋ねの麦の会でございますが、これは反論社の畑主管が平成元年に組織した右翼思想や時局問題に関する右翼活動家の個人参加の勉強会的なものと見ております。
#116
○大脇雅子君 そうしますと、右翼のいわば団体であると、団体と何らかのかかわりのある人であるということが明快な場合に、なぜ法務省の根來氏はこのような書類をお書きになったのでしょうか。
#117
○政府委員(則定衛君) 事実関係について若干敷衍してお答えしたいと思うのでございますけれども、御指摘の畑氏からの書簡が法務省の根來事務次官あてに到着いたしましたのが十月三日ごろでございまして、先ほど配付されました返書にございますように、十月六日に事務次官から返書が発送された、こういうことでございます。
 そのころはこの麦の会とかあるいは反論社といったものは一般的にそれほど名前の知られているものではなかったわけでございまして、委員御指摘のように、いわゆる皇民党名づけの親といったたぐいの話が一般的に紹介されるようになりましたのは十一月の中旬に入ってからであろうと私どもの調査では考えております。
 根來事務次官といたしましては、御案内のとおり、そのころ、現在もそうでございますけれども、いろんな方面から今回の佐川急便事件に係ります法務、検察の姿勢等について批判的意見が集中しておったわけでございまして、一部には誤解に基づく前提での厳しい批判が集まっていたわけでございます。この畑氏から所属の、何といいましょうか、機関の名前及び御本人の本名等を書かれた書簡が参りまして、その内容がまさに事務次官から見まして誤解に基づく検察あるいは法務幹部への批判というものでございましたので、極力その誤解を解くために返書をしたためた、こういうことでございます。
#118
○大脇雅子君 根來氏はこの畑時夫氏のいわば経歴とか活動について御承知の上この書簡を出されたのでしょうか。
#119
○政府委員(則定衛君) 今申し上げたつもりでございましたけれども、全く詳しい、何といいましょうか、経歴あるいは所属団体の性格、こういったものを知らないで返事を出した、こういうことでございます。
#120
○大脇雅子君 しかし、この返事を出される前の書簡というのは、私の手元にありますのは岡村検事総長あての「法務意見書」と題する書面がございますが、これは一見するとそういった右翼系の思想の活動家であるということは当然わかるわけでありますが、そういう点は法務省のトップに近い方ですからおわかりにならなかったはずはないと思うわけです。いかがでしょうか、重ねてお尋ねします。
#121
○政府委員(則定衛君) 文体から推して、何といいましょうか、民族思想的、国家主義的発想に近い人というふうな推測が立つのではないかとおっしゃれば、あるいはそういう可能性があったかもしれませんが、先ほど申しましたように、この麦の金なり反論社というものが法務省幹部の認識に上るほど大きな、あるいは有名な組織ではないという点につきまして御理解いただきたい、こう思っております。
#122
○大脇雅子君 この書かれた日にちは平成四年十月六日になっておりまして、これは金丸氏が上申書を提出して罰金二十万の略式命令が出た後で、全国の自治体議会で事件解明などの決議が相次いでおりました時期でありまして、そういうときに、この時期にこういった時点でこういう書簡を出されることというのはいかがなものか。とりわけ、法務省という肩書つきで出されているということについてお尋ねしたいと思います。
#123
○政府委員(則定衛君) 何といいましょうか、先ほど申しましたように、大変厳しい非難の声といいましょうか、こういったものが、いわば正確な御理解に基づく場合はもとよりでございますけれども、いささかその前提事実を誤って非難をされているというふうに考えられるところもあったわけでございます。
 したがいまして、法務省といたしましては、一般広報的に本来ですと広くその所管の業務について正しい理解を得るよう広報活動をすべきだということになるわけでございますが、この具体的な検察処理につきましてなかなかそういったところをやりにくいという点もございます。しかしながら、親書といいましょうか、それなりの方がみずから書簡を送って、法務幹部について、その一連の問題について質問をするといったことがございました場合に、いわば誠実に返書をしたためて、もし誤解を解く一助としていただければと、こういう気持ちであったかと推測するわけでございまして、それはそれとして、私どもとしては、何といいましょうか、仮にその対象者が右翼思想の持ち主であるといたしましても、あえてこれを非難されるべきものではないというふうに考えておるわけでございます。
#124
○大脇雅子君 一つお聞きしたいのですが、これは法務省という肩書がありますが、これは法務省として出されたんでしょうかね。
#125
○政府委員(則定衛君) その点大変こだわっておられるようでございますけれども、何と申しましょうか、法務省の根來、こういう程度の意味であろうと理解しておりまして、私どもも、いろんな方から手紙をいただきましたときに必要に応じて返事を書きますが、個人名だけではどこのだれだかわからないというときにその所属の機関名を書く、これは一般的によくある例ではないかと考えております。したがいまして、法務省として公式に、こういう前提でのお尋ねでございますと、そういうものではないと申し上げたいと思います。
#126
○大脇雅子君 それでは、その点は御本人にまたいつかお尋ねしたいとしまして、誠実に対処すると先ほど言われましたけれども、法務省に来るすべての質問その他の手紙に大体何通ぐらい根來氏は返答をお書きになっているんでしょうか。
#127
○政府委員(則定衛君) 私ども必要な範囲において事実を把握した上でお答えするわけでございますが、今回の一連の佐川関係事件の捜査処理に関しまして、根來法務事務次官のところに実名入りで批判あるいは支援等の手紙が十数通参ったと承知しております。そのうち、住所、氏名が明記され、文面がいわばまじめに書かれておるものにつきましては基本的に返書を出された、こういうふうに承知しております。
#128
○大脇雅子君 裁判官は判決でのみ語る、弁明せずと言われておりますが、私は検察官も毅然として厳正かつ公平な事件の捜査と立件でその態度を示すべきだというふうに考えます。法務省として、そうした検察のやり方に対してこのような形で弁明されるということはいかがかと思いますが、その点についての御反省あるいは御意見がないんでしょうか。法務大臣、お願いいたします。
#129
○国務大臣(田原隆君) 私も、時々私信でいろんな陳情めいたことやら来ますが、何%かの確率でちゃんとしたものについてはお書きした方がいい、ということで返事を差し上げることはございます。これはちょっと結果論ですけれども、根來さんのこの文書を見ましても、非常に検察が誤解を受けておるということで、さっき官房長が申しましたように、日ごろPRしなければならないという気持ちもこれはあってお答えということでしたためたものと思って、私他意なく受け取っておったわけでありますが、その点私は大臣として自分自身に振り返ってみたときに、ああそういう誤解もあるのかなというふうに感じている次第であります。
#130
○大脇雅子君 佐藤道夫札幌高検検事長に対しましては注意処分ということで、私はあの投稿は一般的な意見の陳述だと思っているわけですが、今回この法務省の根來氏が畑時夫という、そういった事件の関係者、これは後にわかったことにせよ、そういった方にこういう手紙を出されたことにつきまして、法務大臣としては何らかの処置をされるのでしょうか、お尋ねいたします。
#131
○国務大臣(田原隆君) 佐藤検事長の場合には、同じ検察庁の独立した非常に厳しい組織の中にあって、先ほどの御質問にお答えしましたように、検察官が事件を検察一体性の原理でいわゆる一つの決裁組織の範囲内でいろいろやっておるわけでありますが、その具体的なことに関係のない検察の幹部があの時期にああいうことをしたことが余りいいことではなかったという判断で、検事総長がみずからの判断で私に、大臣に事前に打ち合わせることなくやられた自発的な一つの行為でありますが、先ほど私も申し上げましたように、根來次官の場合には、言うならば一般のお役所と同じ法務省というその組織は、検察庁よりももう少し一般の組織に非常に近い組織でございますから、いろんなことがあった場合に外部からの文書などが来たときに、当然一般的に大衆の皆さんにわかるように広報するものと個々のものにお答えすることによってわかっていただくものとがあると思いますので、この文章を見ましてもそうですが、むしろ丁寧にお書きしてわかっていただこうとしたことなんであって、佐藤さんの場合と比較して私が根來さんに注意を与えなければならないという感じは持っておりません。
#132
○大脇雅子君 国民に対してこのような行為が検察の厳正さに対する疑惑を生むというふうにお感じにならないのでしょうか。
 とりわけ、畑時夫氏がこの法務省の根來氏の手紙に対して手紙を返しておられまして、そこでこのように言われております。
  小生は現在、所謂、右翼の智内向上と資質の清潔化を期して、平成元年十月、「麦の会」を設立、以来、八十六才の馬齢に鞭打って努力を重ね、全国の右翼大手一〇〇余組織の参加を得て、効果を結びつつあります。
 その為に月に二、三度は上京致しますので、拝眉の栄を賜り、御高説を拝聴致し度く存じ上げております。何卆宣しく御願い申し上げます。
こういう返事が返ってきている。こういう態度は、やはり国民の側に立って見た場合に、清廉であるべき検察を指導する法務、検察を含む法務、そして法務大臣のお立場からして、やはり国民に疑惑を生む行為だということを強く申し上げたいと思います。
 最後に、時間がありませんので……
#133
○委員長(片上公人君) 過ぎました。
#134
○大脇雅子君 最後に一点だけお許しいただきたいんですが、検察の国民に対する信頼を回復するために、検察官に対する一般指揮権をお持ちの法務大臣、いかなる所信で事に当たられるかお答えいただきたいと思います。
#135
○国務大臣(田原隆君) 検察官に対して一般的指揮権と十四条にいういわゆる検事総長を通じて事件に対して個別に指揮する権と両方あるのは存じております。一般的指揮権にも何か二種類ほどあって、いろんな事務手続、事務の効率化とかそういうことを言うこと等がございますが、しかし私は、この場合、非常に現在の事件があっている最中に私がいろいろそういうことを言うこと自体はいかがなものかなと。要するに、やるなというマイナス方向の指揮権とやれというプラス方向の指揮権はどちらも指揮権でありますが、みだりに抜くべき指揮権ではないと。むしろ検察官が自分の意思で自分で判断してやることこそほど一番重要なことであって、周りからいろいろ指揮、指導することは、特に政治家たる私どもがすることは望ましくないと、よほどのことでなければできないということで私は着任以来沈黙を守り、ほとんど検察官が自分の意思でやれるように図ってまいりました。したがって、今お説のことでありますが、私は現在の沈黙で守り通したい、そのように考えております。
#136
○大脇雅子君 一点ちょっと。質問の趣旨が違いますが、私は、現場で頑張っている検察官に対してエールを送られる気持ちがあるかということであります。
#137
○国務大臣(田原隆君) 私は、そういうことも含めて沈黙の方がザ・ベストであるというふうに考えております。
#138
○大脇雅子君 終わります。
#139
○服部三男雄君 最高裁にお尋ねしたいんですが、今回の東京佐川急便事件の特別背任事件の公判の過程におきまして、いわゆる右翼団体日本皇民党の大島の検事調書が検察官請求資料として証拠調べがなされ、裁判長の指揮によりその大島の検事調書を朗読された経緯についてお尋ねしたいわけでございますが、まず、これは簡易公判決定手続の事件でございましょうか。
#140
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 簡易公判ではございません。
#141
○服部三男雄君 一部の報道によりますと、その大島調書、検事調書の取り調べが行われて弁護人の同意書面となって公判担当検事が要旨の告知を行ったと。その後にいわゆる朗読がなされたと。証拠調べが二度なされたような新聞報道がありましたが、その経緯についてお尋ねしたいんですがね。
#142
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 御指摘のいわゆる大島調書でございますが、十一月二日の第三回公判で要旨の告知で取り調べられました。続いて十一月五日、第四回公判におきまして全文の朗読を裁判長が指示し、検察官においてその指示に従い全文の朗読をしたと、こういう経緯でございます。
#143
○服部三男雄君 そのいわゆる大島調書、検事調書の中に、衆参の国会議員七名が、いわゆる日本皇民党による褒め殺し街宣活動の中止工作と受け取れるような内容の朗読があったわけですが、その十一月二日の第三回公判での要旨の告知に当たって、証拠調べを要旨の告知で行うということについて弁護側は同意したんでしょうか。
#144
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 刑事訴訟規則によりますと、要旨の告知は、裁判長が訴訟関係人の意見を聞いて相当と認めるときに朗読にかえて要旨の告知を行うと、こうなっておりますので、訴訟関係人の意見を聞いたんだと思います。
#145
○服部三男雄君 要旨の告知も証拠調べとして一万法でございまして、それが終わった後、もっと簡単に言えば要旨の告知によって同意書面として検察官の手元から裁判所に証拠調べ決定して終わった証拠として法廷に願出されているわけですね。その次回期日、第四回期日に同じ証拠調べが終わった大島の供述調書を再度裁判官が朗読させたのは何か事情があったんでしょうか。
#146
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) その点は、具体的な事件の裁判長の訴訟指揮にかかわる問題でございますので、私どもとしてはちょっとここで御答弁は差し控えさせていただきとう存じます。
#147
○服部三男雄君 通常の刑事訴訟の、特に公判手続で一回証拠調べの終わったものを裁判長が訴訟指揮権に基づいて再度の証拠調べを行うということは余り例のないことではないかと思うんですが、最高裁の御意見はどうでしょうか。
#148
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) 裁判官に提出された証拠書類を裁判官が法廷でその場で見まして、行われた要旨の告知が若干不十分であったというふうに考えた場合に、全文を朗読せい、あるいは部分を特定してこの部分を朗読しろというふうに命ずることはあることでございますけれども、日を改めて別の期日に朗読させるということになりますと、私どもの経験に徹すれば比較的少ないのじゃないかというふうに思います。
#149
○服部三男雄君 今のお答えの前提としましては、検察官の要旨の告知が不十分だと裁判所が判断するのは、いわゆる証拠請求目録の立証趣旨の項目と照らして、しかもそれがいわゆる公訴事実及びそれに密接関連する要証事実に関する証拠の内容について不十分だと判断する場合はあると思いますが、明らかなごとく、この特別背任事件で今の大島調書はどう考えても公訴事実及びそれに重大な関連性を有する部分とは考えられない部分の供述調書でありますから、ましてや期日を変えて再度朗読するというのは極めて特異な例ではありませんか。
#150
○最高裁判所長官代理者(島田仁郎君) その辺のところになりますと、私どもとしてはこの調書がその訴訟においてどの程度の重要性があり、被告人に全文を公判で読み聞かせて被告人にもその趣旨を徹底させた上で被告人の弁解を聞く必要がどこまであったものかどうか、そのあたりのことにつきましては、どうも個々の裁判長の具体的な事件の訴訟指揮の当否にかかわる問題でございますので、答弁は差し控えさせていただきとう存じます。
#151
○服部三男雄君 次に法務省にお尋ねしたいわけでございますが、刑事訴訟法の三百二十条以下に伝聞証拠について種々の規定をいたしております。
 刑事訴訟法の基本理念として、伝聞証拠は危険である、まず証拠能力を制限しようというのが三百二十条以下の規定であろうかと思うわけでありますが、しかし伝聞証拠といえども同意書面であれば問題はないわけであります。しかし、同意書面といえども、「その書面が作成され又は供述のされたときの情況を考慮し相当と認めるときに限りことありますから、いわゆる証明力の担保をこの三百二十六条で刑事訴訟法は厳しく規定しているんだと思いますが、この解釈に間違いございませんか。
#152
○政府委員(濱邦久君) 仰せのとおりだと理解しております。
#153
○服部三男雄君 そして先ほどの日本皇民党の大島の検事調書の問題に戻るのでありますが、いわゆる褒め殺し街宣活動の中止工作を行った衆参議員として、梶山現国会対策委員長、小渕元幹事長、森政調会長、金丸前自民党副総裁、浦田参議院議員、浜田幸一広報委員長、魚住衆議院議員の七名の名前が出されたことは間違いございませんか。
#154
○政府委員(濱邦久君) そのとおりでございますが、その名前の出方はちょっと違う部分があるわけでございます。
#155
○服部三男雄君 伝え聞くところによりますと、その大島の検事調書の内容を分析いたしますと、大島が直接交渉に当たったのは浜田幸一衆議院議員と魚住衆議院議員であり、ほかの五名、今、名前を挙げました梶山、小渕、森、金丸、浦田各氏は大島の前任者から聞いたいわゆる伝聞内容であるというふうに把握してよろしいでしょうか。
#156
○政府委員(濱邦久君) 先ほど私、名前の出方が違うというふうに申し上げましたのは、もう少し正確に申し上げますと、今、委員がお尋ねになっておられます本件調書の中で、稲本総裁を初めとする日本皇民党側がだれが要請してきても街宣活動を中止しないという強い態度、意向を示す言動を行っていたという記載に関しまして、その中に金丸前議員、小湖議員、梶山議員、森議員、浜田議員、浦田議員及び魚住議員の七名の名前が挙げられておるわけでございますが、そのうち金丸前議員、小湖議員及び梶山議員につきましてはその代理人が関与したと日本皇民党側が述べているということはそのとおりでございます。このうち金丸前議員、小渕議員及び梶山議員の代理人、それから森議員並びに浦田議員に係る部分は大島が稲本総裁等から伝え聞いた伝聞として調書に記載されているものと承知しているわけでございます。
#157
○服部三男雄君 先ほど最高裁にお尋ねしたときに申し上げたとおりでございまして、この大島の調書の記載内容、証拠としての価値は、いわゆる特別背任事件の要証事実に絡む問題ではなくて、その縁由というんでしょうか、それに至るについてのいわゆる褒め殺しに関する部分でありますから、文字どおり刑事訴訟法にいう三百二十条以下の伝聞の証拠能力、あるいは特信情況による証明力といったフィルターはかからない部分でございます。ましてや同意書面でありますから、弁護人が証拠として法廷に願出することを同意した書面でありますから、そういう意味で刑事訴訟法にいう伝聞法則のフィルターはかからないんですが、しかし伝聞という事実は変わりはないわけでございまして、そういった非常に誤った情報が入りやすい伝聞という危険性を考えた場合に、取り調べ担当の検察官として十分注意を要して大島から供述を録取する必要があったのではありませんか。
#158
○政府委員(濱邦久君) 刑事裁判におきましては、もう改めて申し上げるまでもないことでございますが、実体的真実を明らかにするために捜査、公判の過程で数多くの人の実名等が出てまいることは、これはある程度やむを得ない面があるわけでございます。また、証拠の立証趣旨が正しく理解されますならば、第三者の名誉が無用に侵害されるという事態も生じないものと考えるわけでございます。
 ただ、今、委員御指摘になっておられますように、訴訟の場を離れて見ました場合に、第三者の名前が公になることによりまして世間一般に無用の誤解を与えるということもあり得るわけでございますから、このことは十分に念頭に入れて、第三者の名誉や人権にも配慮して捜査あるいは公判活動を行うべきであるという声は、これは謙虚に耳を傾けるべきものがあるというふうに考えているわけでございます。
#159
○服部三男雄君 同じ観点について、ちょっとくどいんですが、もう一点お尋ねしたいんですが、きょうの予算委員会で竹下喚問が行われまして、その中で、これは今の大島皇民党の問題とは直接は離れますけれども、昭和六十二年の十月五日段階では総裁公選で竹下、安倍、宮澤三氏がくつわをそろえて立候補する段階でありまして、総裁公選規程に従ってやるべき時期だったというのが客観的事実であります。ところが、渡邉東京佐川の元社長の供述内容は、当時竹下側及び経世会がこの褒め殺しでおたおたしておった、中曽根総裁の指名に絡む問題だ、こういう供述内容が出ているわけです。今度の大島のいわゆる先ほどの朗読された供述調書の中身を見ますと、おおよそ政界の当時の政治の状況をよく知っている者ならばやや理解しがたい、経世会のメンバーでない人の名前が出てきたりしている。
 こういうことを考えますと、重ねて検察当局にお願いしたいんですが、もうちょっと当時の政治状況というもの、それから政界における人脈分布というものをもう少し注意する要があったのではなかろうか。別に政治家だから特に配慮してくれということを言っているんではないんですけれども、他の会社事犯あるいは暴力団抗争事件、どこの事件でもその住む社会の登場人物の人間関係とか、当時の個々の動きというものをもう少し正確に把握して調べる要があったのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
#160
○政府委員(濱邦久君) ちょっとお尋ねに対する答えとしてかみ合っているかどうかわかりませんが、もしかみ合っていなければ御指摘いただきたいと思うわけでございますが、先ほど申しましたように、大島のこの調書はそこに記載された特定の政治家あるいはその代理人が関与したという事実を立証しようとするものではないわけでございまして、当時の稲本日本皇民党総裁が街宣活動を中止しないという強い意向を示す言動を行っていたことなどの事実を立証するとともに、これはもう委員先ほどから十分御承知の上お尋ねになっておられるわけでございますが、渡邉元社長の供述を裏づけることによりまして特別背任の動機を明らかにすることを目的として取り調べをし、また証拠調べを請求されたものでございます。
 そういう調書でございますので、これは本来は直接証拠ということからしますと、当時の稲本日本皇民党総裁の意向を直接本人から聴取できればもちろん一番最良の証拠であると思うわけでございますが、当時捜査の段階におきましては既に稲本日本皇民党総裁は故人になっていたわけでございまして、その本人に一番近い立場にあった大島から取り調べをして供述調書をとった、そしてまたその供述調書で今先ほど私るる申し上げたような立証趣旨のもとに証拠調べ請求をしたという経緯でございます。したがって、その間の経緯を十分ひとつ御理解いただきたいと思うわけでございます。
#161
○服部三男雄君 今回の金丸前自由民主党副総裁の政治資金規正法違反事件に絡みまして、連日国会においてその事件処理についての検察批判が巻き起こっておるわけでございますが、その点について法務省当局にお尋ねいたします。
 まず、政治資金規正法ができてから、衆参国会議員にこの政治資金規正法が適用された例はこの金丸事件が最初でございましょうか。
#162
○政府委員(濱邦久君) 国会議員に対して政治資金規正法違反で公訴が提起され、処罰された事例は今回が初めてというふうに承知しております。
#163
○服部三男雄君 日本の検察について、今まで国民の間には、政界に対するいわゆるメスというものを振るうのは東京地検もしくは大阪地検特捜部だけだという強い信頼感と期待感があったわけでございます。事実、検察は常に厳正、公平、不偏不党の精神でやってこられましたが、こういう地検特捜部に対する国民の期待について法務省はどのようにお考えですか。
#164
○政府委員(濱邦久君) これはもう委員今御指摘になられましたように、検察は犯罪について捜査をし、公訴を行い、裁判所に対して法の正当な適用を請求するという重要な職責を担っているわけでございまして、これまでもそうであったと思いますし、今後もそうあらねばならないと思うわけでございますが、この職責を行使するために、法律と証拠に照らして厳正、公平に事件の捜査をし、処理をしなければならないというふうに思っているわけでございます。
#165
○服部三男雄君 私個人としましても、いわゆる独裁国家においては、これは法体系が異なるわけでありますし、政治システムが異なるわけでありますから別といたしまして、独裁国家ならば政敵に対する司法の乱用というものがよく見られた例は世界の常識になっておりますけれども、我が日本のように、自由民主主義国家体制をとり、法治国家において政治家に対し果断な追及を行ったのは、世界の文明国家を見渡して、我が日本の地検特捜部ぐらいではないかと常に敬意を表しておる一人でございます。
 ところで、法務省から平成四年十一月三十日に東京佐川急便事件の捜査処理に関する中間報告というものが提出されましたが、その四枚目のところに、ちょっと読んでみますが、金丸前副総裁の上申書の受理に関するところで、「本件違反に係る法定刑が二十万円以下の罰金とされていることに伴う捜査処理上の制約があること等をも考慮しこと、このような記載がありますが、非常に簡略な文章でありまして、舌足らずという、あるいは誤解も受けかねない文章でありますので、法務省の真意をお尋ねしたいと思います。
#166
○政府委員(濱邦久君) 刑事訴訟法の明文上の制約、中間報告で申し上げている捜査処理上の制約について、その内容を御説明させていただくわけでございますが、刑事訴訟法の明文上の制約といたしましては、まず、通常逮捕や現行犯逮捕の場合、三十万円以下の罰金、拘留または科料に当たる罪につきましては、一般的な逮捕の理由及び必要性があることに加えまして、被疑者が正当な理由なく取り調べのための出頭に応じないこと、またはその住居が不定であることという要件がなければ逮捕することができないものとされているところでございます。勾留につきましても同様の制約があるものと理解いたしております。
 ただ、この三十万円以下という点につきましては、これは刑法、暴力行為等処罰ニ関スル法律及び経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律以外の罪の場合は当分の間二万円以下というふうに読みかえられることとされていることは委員もう御案内のとおりでございます。
 これは、そのような罪の中には、戦後期に定められたまま罰金額が引き上げられていないものが相当あるわけでございまして、これらを平成三年改正の際に罰金額の見直しが行われた刑法等の罪と同様に扱うのは適当でないという判断に基づくものでございます。刑法等の罪以外の罪でありましても、比較的近年において罰金額の定められたものにつきましては、罰金三十万円以下の刑法等の罪について逮捕の許容性が制約されているということの趣旨を尊重すべきものと考えているわけでございます。
 したがいまして、今問題になっております政治資金規正法の寄附の量的規制違反の罪のように、これは昭和五十年代に制定されたものでございますが、こういう罪につきましては、その運用に当たりまして、刑事訴訟法百九十九条一項ただし書きにあるような、今申し上げたような事由が認められなければ被疑者を逮捕するのは適当ではないと。そのような罪については、特に被疑者が刑事責任を認めている場合には、そのような被疑者の逮捕はそのほかに罪証隠滅とかあるいは逃亡のおそれを生じさせる極めて顕著な事由がある場合に限られるのではないかと思うわけでございます。
 そのほか、明文上の制約ではございませんけれども、強制捜査手段その他の捜査手段におきまして、その対象となるものに何らかの制約とか不利益を課するものにありましては、そのような捜査を行う必要性を判断する場合において、捜査対象とされている罪の法定刑を勘案するのも捜査機関として適正かつ自然なことではないかというふうに考えているわけでございます。
#167
○服部三男雄君 今の刑事局長の御答弁は、いわゆる庶民の間に、道交法違反でも逮捕されているのがあるのに五億円もの政治資金を受け取ったことはなぜ逮捕しないんだと、取り調べをしなかったんだという、いわゆる市民の素朴な感情に対する法律上の制約をおっしゃったものと理解しているわけであります。端的に申し上げれば、金丸前議員は自白しておりますし、逃走のおそれは全くないわけであり、しかもこの種の社会の耳目を集めた事案でありますから、証拠上認められる範囲内において早急な処理をしなければならない要請が検察庁に課されておったわけでありまして、そういう状況において、逃走のおそれがない、罪証隠滅のおそれがなければ逮捕できないと、ましてや法定刑が三十万円以下の制約が入るわけでありますから、そういうことで逮捕しなかったんだという趣旨に理解したいと思います。
 続きまして、国政調査権と検察との関係について予算委員会等で野党の先生方は一生懸命質問されましたが、どうも国会の国権の最高機関性を誇大に理解されたり、あるいは誤解に基づく質問であったり、あるいは検察の機能に対する非常に難しい刑事司法の規定の理解が要りますから、その誤解に基づくような質問が多くあったように見受けられたわけであります。一方、しかし、市民の素朴な感情というものを検察当局としては理解していただかなければならないと思います。
 その意味で非常に素朴な質問ですけれども、金丸前副総裁の上申書は国会に提出されない、しかし渡邉被告人の供述調書は国会に提出されている。何となく素人の感覚で見ますと、それじゃ両方とも出せばいいじゃないかというふうに考えるのが庶民の素朴な感情であろうと思います。しかし、日本は法治国家であり、まして検察権という強権を発動するところでありまして、人権の観点から考えて、あるいは種々の法律の規定の趣旨から考えて金丸上申書を出せない理由があろうかと思いますが、簡単に説明していただきたいと思います。
#168
○政府委員(濱邦久君) 法務当局が、渡邉元社長らに対する特別背任事件の公判において検察官が朗読いたしました冒頭陳述とか、あるいは今御指摘になられましたこの公判で朗読または要旨の告知によって取り調べられました渡邉元社長らの供述調書につきまして、その要旨を提出したことは事実でございます。
 法務省当局としては、例えば渡邉元社長らの供述調書の原本またはその写しにつきましては、取り調べ済みの供述調書は、これはもう御案内のとおり裁判所が保管するものでございまして、検察官や弁護人以外の者が閲覧、謄写したり、あるいは検察官、弁護人でありましても公判審理の準備以外の目的で閲覧、謄写することは、これは認められていないわけでございます。これを国会に提出することはできないために、今回、国会から具体的に対象事項を特定して要旨を提出しろとの委員会の正式の御要請がありましたので、国政調査権の行使に法令の許す範囲で最大限の御協力をするという観点に立って、朗読または要旨の告知がなされた供述調書につきましては、公判公開の原則も踏まえまして、先ほど申しました朗読または要旨の告知がなされた範囲で検察当局に報告を求めて、その要旨を提出したという経緯になるわけでございます。
 他方、これに対しまして金丸前議員に対する政治資金規正法違反事件の略式命令確定記録は、これは現在継続中の関連事件の捜査に支障があるという理由で検察官が閲覧を拒否いたしまして、もちろん、この拒否処分に対しましては抗告審を経て現在最高裁の特別抗告審に係属中でございますが、いずれにいたしましても、いまだ公になっていないわけでございますから、公開の公判で朗読または要旨の告知によって取り調べられることによりましてその限度で公になった渡邉元社長らの供述調書とは同じに論じ得ないところがあるということは御理解いただけると思うわけでございます。
#169
○服部三男雄君 最後の一点、確認でございます。
 金丸上申書の問題について、念のために確認いたしますが、刑事訴訟法第五十三条に訴訟記録の公開の規定がありまして、原則として閲覧になっているんですが、ただし書きがありまして、「裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるときは、この限りでない。」、このような記載があるんですが、今、局長の答弁の別の告発事件という点でというのは、その検察庁の五十三条のただし書きの「検察庁の事務に支障のある」のに該当するんでしょうか。
#170
○政府委員(濱邦久君) 今、委員仰せになられましたとおり、刑事訴訟法五十三条一項ただし書きの「検察庁の事務に支障のあるとき」の中には、関連事件の捜査に支障がある場合を含むという裁判例が確立されているものというふうに理解しております。
#171
○服部三男雄君 終わります。
#172
○猪熊重二君 先ほど金丸前議員に対する略式命令の手続的な側面についてお伺いしました。引き続いて、これの内容的な側面について一、二点伺いたいと思います。
 金丸前議員に対する政治資金規正法違反事件において、授受された五億円がなぜ政治資金と認定されたのかということは非常に重要なことなんです。衆議院の予算委員会においても我が党の市川書記長が、この五億円を政治資金と認定した根拠は何であるかということを随分質問しましたが、法務省から刑事局長がいろいろお答えになったけれども、全然聞いていてわからない。
 端的に伺いますが、この五億円が政治資金であるというふうに認定した証拠はどういうものがあるんでしょうか。
#173
○政府委員(濱邦久君) 検察当局におきましては、一連の特別背任事件の捜査の過程で、渡邉元社長から金丸前議員に対して五億円が提供されている事実を把握いたしまして、さらに渡邉元社長や松澤平和堂グループ代表、それから生原秘書あるいは金丸前議員の指定団体の会計責任者その他の事件関係者の取り調べや、渡邉元社長の行動記録その他の物証の検討を行うことによりまして、これが金丸前議員個人に対して供与された政治活動に関する寄附であって、金丸前議員の刑事責任は免れないと思料したことから、九月十日以降、金丸前議員に対して出頭の上取り調べに応ずるよう求め、その結果、金丸前議員から提出された上申書とそれまでに収集した証拠関係とを総合勘案した結果、御指摘の事実を認定し、また証拠上この点について合理的な疑いを入れないということにつきましては裁判所もこれを認めたものというふうに理解しているわけでございます。
 これ以上の証拠関係の内容や詳細につきましては、確定記録が公にされていないことでもございますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。
#174
○猪熊重二君 今、刑事局長がいろいろ言われるんだけれども、いろいろ言えば言うほど、どの証拠に基づいて政治資金と認定したんだということが全然ぼやけていってわからなくなってしまう。これは政治資金規正法違反なんです、この金丸さんの事件は。政治資金がどうかというのはこの犯罪の成否の中核問題なんです。
 なぜ私がこんなことを申し上げるかというと、金を出す方が政治資金ですと言って、金を受け取る方がはい政治資金として受け取りますと、これで政治資金になるんだったら、私も政治資金をいっぱいもらいたい。税金はかからないし、脱税の問題もないし、収賄の問題もなくなってしまう。これが政治資金であるかどうかということは、単に出す方が政治資金でどうぞ、受ける方が政治資金ではいありがとう、これで政治資金と認定されたんじゃ困るんです。結局、この政治資金と認定し得るためには、その金がどういうふうに出たか、支出されたか、これがポイントであるはずなんです。だから、金丸さんのところに行った五億円はどういうふうに支出されたから政治資金だと認定したんですか。
#175
○政府委員(濱邦久君) 特定の寄附が政治資金規正法上の政治活動に関する寄附に当たるか否かということは、寄附者と寄附を受ける者との間で交わされた、今委員がお触れになったような言葉だけで決まるものではもちろんないことは、そのとおりでございます。
 一方、政治資金規正法上の政治活動に関する寄附に当たるか否かということは、現金等の授受の時点におきましてその寄附に係る金銭等が今後の政治活動に用いられる趣旨のもとで供与されたものであるかどうかということで決まるものでございまして、授受の後における金銭等の支出状況というものは、これは授受前における当事者の言動と同じように寄附の趣旨を推認させるものにはなり得るわけでございますけれども、それ単独で寄附が政治活動に関する寄附に当たるかどうかということを決するものとは言えないと思うわけでございます。
 一般論として申し上げますれば、寄附の帰属先、趣旨等の認定は、これは関係者の認識のほかに寄附者と受領者との関係、当該寄附に係る金銭の保管、管理状況、当該金銭の使途等のもろもろの事情をも十分勘案して判断すべきものであることは、今委員も御指摘になられたとおりだと思うわけでございます。
 検察当局が本件五億円の寄附を政治活動に関する寄附と認定いたしました理由は先ほど法令の許す範囲でできる限りのお答えをしたつもりでございますが、お尋ねの五億円の使途につきましては現在継続中の捜査ともかかわる事柄でもございますので、この程度のお答えでひとつ御理解をいただきたいと思うわけであります。
#176
○猪熊重二君 刑事局長、何を言っているんですか。
 あなたの方で、法務省が衆議院の予算委員会に十月三十日に出した東京佐川急便事件捜査中間報告書にはこう書いてある。「本件処理の段階では、金丸前議員が受領した本件五億円は、その後指定団体に対する寄附として取り扱われたものとみられる」、こういうふうに書いてある。だから私は、ああ金丸さんはいただいたけれども、いただいたものを指定団体に対する寄附としてやったんだなと、だから政治資金だと認定したんだろうと思うんです。
 ところが、金丸前議員の平成二年の指定団体に対する寄附には五億円なんて金は全然出てきていないんです。金丸議員の指定団体は、新国土開発研究会という団体が一つだけなんです。この団体の平成二年の収入総額は一億八千八百七十八万七千百八十二円で、五億円なんという金額には到底なっていない。この指定団体である新国土開発研究会は、だれからもらったにしろ一億八千万しかないんです。にもかかわらず、本件五億円はその後指定団体に対する寄附として取り扱われたなんというのは、どこからこんなことが出てくるんですか。
#177
○政府委員(濱邦久君) 金丸前議員の指定団体の収支報告書に御指摘の記載がないことは、もちろん検察当局も十分捜査をして承知しているところであるわけでございます。
 しかしながら、政治団体の収支報告書に寄附の受領に関する記載がないということと、現実にそのような寄附があったということとは、これはおのずから別の問題でございまして、収支報告書にそのような記載がないということをも踏まえた上で検察当局は、先ほど御説明申し上げたような証拠関係から、金丸前議員が受領した本件五億円はその後指定団体に対する寄附として取り扱われたものと見られるという判断をしたものと考えるわけでございます。
#178
○猪熊重二君 金丸さんが指定団体に五億円を寄附した、こう検察庁じゃ認定したのかもしれぬけれども、出した方の金丸さんの方にも、五億円を出しましたという保有金の報告なんかないんです。ですから、まず、ないことは認めますね。金丸さんの保有金報告があったかないか知らぬけれども、仮にあったとして、指定団体に五億円を回したという記載がないことは認めるでしょう、まず。
#179
○政府委員(濱邦久君) 今、委員御指摘のように収支の記載がないことは、そのとおりでございます。
#180
○猪熊重二君 そうすると、金丸さんの方も保有金報告として五億円を新国土開発研究会という指定団体に出したということは影も形もないんだ。今度はもらったという方の新国土開発研究会の方にも、年間で一億八千万しかもらっていない、五億円なんていう記載が何もない。それにもかかわらず何で指定団体にやったという認定ができるのか。これが指定団体に寄附したかせぬかということは、六十何人の、自民党だけかどうか知らぬけれども、ともかく六十何人の人に分けた分けないという問題が違法であるか適法であるかの重大な分かれ目なんです。出した方の報告もない、もらった方の報告もない、何にもないのに、どこからそんなことを見つけてきたんですか。
#181
○政府委員(濱邦久君) 今、委員お尋ねになっておられます、この金丸前議員の方に、保有金の帳簿ないしその報告に五億円の入金あるいは指定団体への支出が記載されていないではないかという関連でお尋ねになっておられると思うわけでございます。
 検察当局の捜査の経緯につきましては先ほど以上のことはお答えいたしかねるわけでございますけれども、当然のことながら、検察当局におきましては、今委員が御指摘になられました保有金としての報告がないことも十分考慮して証拠を検討したものと考えているわけでございます。
 なお、一般論として申し上げますれば、政治資金規正法上保有金は、これはもう釈迦に説法かと思いますが、国会議員等の特定公職の候補者に対する政治活動に関する寄附からその特定公職の候補者がした指定団体に対する寄附を差し引いたものというふうに定義されているところでございまして、本件五億円が指定団体に対する寄附になったものとすれば、これはそもそも金丸前議員の保有金を構成しないものというふうに理解されるわけでございます。
#182
○猪熊重二君 だから、金丸議員の保有金に関する報告の問題と保有金に対する記帳の問題とは別の問題なんだ。時間がないから次の問題。
 要するに、もしこれを指定団体に対する寄附だと認めなければ、金丸さんが出した六十人に対する問題については金丸さん自身において個人の百五十万超過の六十数個の犯罪が成立するんだ。だから、指定団体に対する寄附だということになるとそういう問題がずつ飛んじゃう。もしそうじゃなくて六十人にはいはいなんて言って、一千万もらった人、八百万もらった人もいるとすれば、六十何個の百五十万円の制限超過犯罪が金丸さんに成立するんですよ。だから、そのこともよく、成立しないというだけの認定をするんだったらそれなりにきちんと捜査しなきゃならぬ。
 もっといろいろ聞きたいんだけれども、九分が私の持ち時間だから、私は時間超過するのは嫌だから終わります。
#183
○紀平悌子君 今、猪熊委員が指摘をされました点は非常に重要な視点だと思って、九分の発言時間ではもう本当に何も伺えない。私は七分と伺っていますが、七分でしょうか。
#184
○委員長(片上公人君) 七分です。
#185
○紀平悌子君 それでは七分の限りにおいて、今いろいろ伺いたくて心は千々に乱れますけれども、非常に具体的なことで、今の続きといたしまして、今、六十人余と言われております金丸信氏から分配されたと言われる国会議員、これについての刑事告発がされております。
 一番皮切りにいたしましたのが、昭和三十五年以来政治資金というものについて調査をしてまいりました市川房枝政治資金調査室室長の近藤千浪と申しますが、私も運営委員の一人をやっておりますが、この行方をぜひ調べていただきたいということで地検特捜部に対して告発を申し上げでございます。それを皮切りにいたしまして、弁護士の集団の方々、あるいは市民運動をしていらっしゃる方々から次々政治資金規正法、少なくとも法律がある以上、ざる法であっても法は法ですから、ですからそれにのっとって年間百五十万円以上の政治献金のやりとりを禁じている法の趣旨に違反したというケースを徹底的に突きとめてほしいということを要請しております。どうなっておりますでしょうか。
#186
○政府委員(濱邦久君) 今、委員が御指摘になられましたように、金丸前議員が約六十名の国会議員に政治活動に関する寄附をしたという前提での告発が東京地検になされておりまして、東京地検におきましてこれまでの捜査結果をも踏まえつつ捜査を継続しているところでございます。
#187
○紀平悌子君 これは継続してお伺いをしていきたいことと思っておりますけれども、それ以上のお答えはないわけでございますね。――そうですか。これは、証人喚問がされている最中にそういうことがもう少しはっきりしてくればと何回も思ったことでございますが、大変残念でございます。
 次は、法務大臣にお伺いいたします。
 法務大臣に私は非常に期待をいたしておりまして、沈黙は金なりというふうな、沈黙は金というのはほかの方がおっしゃったかもしれませんけれども、大変意義深い意味合いの沈黙であったかもしれません。私もなかなか難しいお立場にあるとは思いますけれども、今回の金丸事件と申し上げていいでしょうか、それに際して内閣首班の宮澤首相は、政治家のけじめについて、事件当初は副総裁をやめないでください、これは金丸さんはというのがつきますが、そういう趣旨の発言、さらに十月に入りましても、政治家にはつき合いがあると、これは新聞からの引用で恐縮でございますが、派閥間の金貝授受による結びつきを肯定するコメントをしておられます。金丸氏の辞任まで国民におわび申し上げる旨の発言は、おわびの言葉というのは出てこなかったわけなんですね。そして閣僚でも、奥田運輸相が九月二十五日に、ざる法と言われている政規法に問われるのは残念、同じ日に鳩山文部大臣も金丸氏は男の中の男などと問題の本質を、重要性を真摯に受けとめていらっしゃらないと思われるような御発言が多かったんです。こうした中で私は法務大臣の御発言が欲しいなというふうに期待をしておったわけなんですけれども、指揮権発動のような措置はとらないという基本的な態度のほか、検察当局の捜査に関して、政治改革、政治浄化の断行というお立場から国民に対してどんな責任をとらなきゃならないか、あるいはとろうとしているとお考えか明らかにしていただきたいと思います。
#188
○国務大臣(田原隆君) お答えします。
 私の立場は、まあいろいろ考えはあるかもしれませんが、私自身は文部大臣や運輸大臣と違って直接検察庁を所管しておる大臣でございますから、私が検事を信じ、検察官を信じ、検察官が不偏不党、厳正にやれるようにその雰囲気づくりこそ大事であって、私がいろいろ発言するのは望ましくないという信念に基づいておるわけでございます。
 検察官は、疑わしきがあればそれを追及する、それが任務であって、公訴を提起するというのが任務であって、政治的な浄化とか、そういうことをすることを任務とはしていないと私は肌で感じておりますので、検察官がやりやすいような雰囲気づくりが一番大事であって、それに努めてきたところであると自分に言い聞かせておるし、私も私自身そういうふうにやってきたと信じております。
#189
○紀平悌子君 もう十六分までというきちんとメモが回ってまいりましたので、私は時間超過をしないでやっていく方針でございますのでやめさせていただきますが、三点ほど、これは今お答えいただく時間はもうないと思いますので、後からぜひできれば書面でお答えいただきたいと思うことを大急ぎで読みます。
 一つは、例の裁判長の訴訟指揮に関することでございますが、それがなければ国民には政治改革の根幹にかかわる情報が得られなかったということが事実あったと思います。国会議員は憲法上特別の地位を有し、これは憲法第四十三条、全国民を代表するべき存在であり、政治資金規正法、公選法などによる国会議員に対する捜査や公判における証拠調べのあり方を再度問い直す、あるいは問い直さなければならないような、そういうふうな必要が出てきているように思うんです。この憲法上の地位と涜職罪等による政治家の取り調べの必要性との関係といつものをどういうふうに判断なさっていらっしゃいますか。私は、政治家の特別扱いということはあってはならないという立場に立って伺っております。
 また二番目は、第三者の刑事事件手続の中で国会議員が関与をしているということが仮に出てきた場合、国民の前にそれを明示すべきであると私は思っております。しかし、政治家のプライバシーの問題が論じられております。私は、政治家というものにこのような場合プライバシーというものは、ないとは言いませんけれども、一歩引くべきだというふうに考えているものでございますが、その点はいかがでしょうか。
 それから三点目は、自民党御自身だったと思いますが、検察官調書の朗読に関して、名前の挙がった政治家に対しての侮辱罪である、名誉棄損罪であるというふうな犯罪、不法行為ということで告発の気勢が上がりました。それがもし実際に行われた場合、これは成立する余地があったのでしょうか、なかったのでしょうか、お伺いします。
 以上、終わります。
#190
○委員長(片上公人君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#191
○委員長(片上公人君) 次に、去る九月十六日から十八日まで本委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員の報告を聴取いたします。下稲葉耕吉君。
#192
○下稲葉耕吉君 去る九月十六日から九月十八日までの三日間、片上委員長、真島理事、竹村理事、猪熊理事、鈴木委員、深田委員、紀平委員と私、下稲葉は、検察及び裁判に関する調査の一環として、最近における司法行政及び法務行政に関する調査のため北海道に行ってまいりました。
 第一日は、札幌高等裁判所において、札幌高等裁判所、札幌地方裁判所、札幌家庭裁判所、札幌高等検察庁、札幌地方検察庁、札幌法務局、札幌矯正管区、北海道地方更生保護委員会及び札幌入国管理局の各機関から管内概況について説明を聞きました。
 第二日は、釧路地方・家庭裁判所網走支部、網走刑務所の実情を視察いたしました。
 第一に、司法行政及び法務行政に関する概況について申し上げます。
 まず、裁判所関係の概況について申し述べます。
 平成元年から平成三年度までの三年間における各裁判所の事件処理の概要について申しますと、民事事件におきましては、近年減少傾向にありましたが、このうち訴訟事件及び調停事件は、平成二年度を底に平成三年度から漸増の傾向に転じております。刑事事件におきましては、平成三年度はほぼ減少傾向にあります。家事事件及び少年事件については、家事事件の新受件数はほぼ横ばい状態であり、少年事件は漸減傾向にあります。
 なお、いずれの裁判所におきましても、事件処理の状況は順調に進んでいるということであります。
 次に、法務省関係の概況について申し述べます。
 まず、検察当局の刑事事件処理の状況について申し上げますと、最近の犯罪動向は、全般的には平穏に推移しており、受理状況はほぼ横ばい状態にありますが、依然として凶悪事件が後を絶っておりません。また、覚せい剤・少年犯罪は減少傾向にあるものの、覚せい剤の所持、使用が一般人にまで浸透してきたこと、暴走族による非行が続いていることなど、その動向は注目されるところであります。
 次に、法務局関係について申し上げますが、札幌法務局管内における登記事件数は、昭和四十年代後半から、不動産取引が特に活発となって急増し、その事務量は現在も高水準を維持しております。また、登記事務のコンピューター化を順次進めてまいっておりますが、その移行作業等に正規職員の確保が必要不可欠であり、当面の重要課題となっております。
 次に、矯正管区関係でありますが、当管内の行刑施設においては、受刑者の約三五%が管外から移入した受刑者であり、暴力団関係受刑者は全体の六割前後を占めております。また、網走刑務所を視察してまいりましたが、ここはB級施設として犯罪傾向の進んだ者が主体を占めており、職員は厳正な規律のもとに、その更生改善のため、日夜御苦労を重ねておられます。なお、網走刑務所の旧建物を移築した博物館網走監獄も視察してまいりました。
 次に、北海道地方更生保護委員会の関係について申し述べますが、保護観察では、シンナー乱用少年、暴走族等、保護観察事件の八〇%を少年事件が占めております。処遇が特に困難である暴力団関係者については、本年三月からいわゆる暴力団対策法が施行されたことに伴い、警察との連携を強化し、暴力団からの離脱の促進に努めているところであります。
 次に、入国管理局関係について申し述べますが、札幌入国管理局管内においては、出入国者数が新千歳空港における国際定期便の増便等により激増しており、審査関係諸申請件数も増加しております。当管内は、地方入管局の中でも最も広い管轄地域を有しているため、本局、出張所間で相互に応援態勢をとっておりますが、遠距離の応援も多く、相当な時間と経費を要しております。
 第二に、庁舎施設及び宿舎の営繕状況について申し上げます。まず、庁舎施設でありますが、札幌第三地方合同庁舎が、新営中でありまして、平成六年一月に完成後、札幌家庭裁判所、札幌高等検察庁などが入居する予定になっております。法務局におきましては、老朽した庁舎について、登記事件の急増によって事務室、書庫ともに極度の狭隘となっていることに加え、登記簿のコンピューター化に対応した庁舎設備が必要となってきております。矯正施設におきましては、網走刑務所の全面改築が平成二年に完成しております。宿舎につきましては、一部老朽住宅、狭隘住宅があり、寒冷地である北海道の特殊事情等に照らし、改善が必要と見受けられます。
 第三に、関係諸機関から管内状況等を伺った際、派遣委員の方からも熱心に質問その他がなされましたが、その項目の概要について申し上げます。カード破産の増加に対する事件処理態勢、暴力団対策、北方領土の不動産登記台帳の保管状況、人権擁護委員の活動、行刑施設の収容定員、女性裁判官の数、裁判所と弁護士会との連絡態勢等の問題が取り上げられました。
 第四に、本委員会に対する要望事項について申し上げます。特に、札幌法務局から、増員、施設の整備等について強い要望がございました。その状況については既に触れたところであり、相当の要望ではなかろうかと存ずる次第であります。
 以上で概要の報告を終わりますが、私ども直接に現地の関係部局の方々にお目にかかり、種々勉強させていただきました。特に、人を収容して処遇するという困難なお仕事などは御心労もひとしおかと存じ、皆様の御健勝を祈念いたします。
 また、調査に当たっては、現地関係機関から御懇篤な御協力をいただきましたこと、並びに最高裁判所及び法務省当局から手厚い御便宜をお図りいただきましたことを、この席をおかりして厚く御礼申し上げます。
 以上でございます。
#193
○委員長(片上公人君) 以上で派遣委員の報告は終了いたしました。
 本日の調査はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。
   午後四時二十六分散会
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ソース: 国立国会図書館
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