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1992/10/30 第125回国会 参議院 参議院会議録情報 第125回国会 本会議 第1号
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1992/10/30 第125回国会 参議院

参議院会議録情報 第125回国会 本会議 第1号

#1
第125回国会 本会議 第1号
平成四年十月三十日(金曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
○議事日程第一号
  平成四年十月三十日
   午前十時開議
 第一 議席の指定
 第二 会期の件
 第三 国務大臣の演説に関する件
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一
 一、特別委員会設置の件
 一、日程第二
 一、国家公務員等の任命に関する件
 一、日程第三
     ―――――・―――――
#2
○議長(原文兵衛君) これより会議を開きます。
 日程第一 議席の指定
 議長は、本院規則第十四条の規定により、諸君の議席をただいまの仮議席のとおりに指定いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(原文兵衛君) この際、特別委員会の設置についてお諮りいたします。
 科学技術振興に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名から成る科学技術特別委員会を、
 公害及び環境保全に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名から成る環境特別委員会を、
 災害に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名から成る災害対策特別委員会を、
 選挙制度に関する調査のため、委員二十五名から成る選挙制度に関する特別委員会を、
 沖縄及び北方問題に関する対策樹立に資するため、委員二十名から成る沖縄及び北方問題に関する特別委員会を、
 土地問題及び国土利用に関する対策樹立に資するため、委員三十名から成る土地問題等に関する特別委員会を、
 また、国会等の移転に関する調査を行うため、委員十名から成る国会等の移転に関する特別委員会を、それぞれ設置いたしたいと存じます。
 まず、科学技術特別委員会、環境特別委員会、災害対策特別委員会、選挙制度に関する特別委員会、沖縄及び北方問題に関する特別委員会並びに土地問題等に関する特別委員会を設置することについて採決をいたします。
 以上の六特別委員会を設置することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(原文兵衛君) 御異議ないと認めます。
 よって、科学技術特別委員会外五特別委員会を設置することに決しました。
 次に、国会等の移転に関する特別委員会を設置することについて採決をいたします。
 本特別委員会を設置することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#5
○議長(原文兵衛君) 過半数と認めます。
 よって、本特別委員会を設置することに決しました。
 本院規則第三十条の規定により、議長は、議席に配付いたしました氏名表のとおり特別委員を指名いたします。
    ―――――――――――――
#6
○議長(原文兵衛君) これにて午後三時まで休憩いたします。
   午前十時五分休憩
     ―――――・―――――
   午後三時一分開議
#7
○議長(原文兵衛君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 日程第二 会期の件
 議長は、会期の件について議院運営委員会に諮りましたところ、会期を五十日間とすべきであるとの決定がございました。
 会期を五十日間とすることに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#8
○議長(原文兵衛君) 過半数と認めます。
 よって、会期は五十日間とすることに決しました。
    ―――――――――――――
#9
○議長(原文兵衛君) この際、申し上げます。
 衆議院は会期を四十日間と議決したとの通知がございました。
 よって、両議院の議決が一致いたしませんので、国会法第十三条の規定により、会期は衆議院の議決したところによることとなります。
     ―――――・―――――
#10
○議長(原文兵衛君) この際、国家公務員等の任命に関する件についてお諮りいたします。
 内閣から、
 検査官に疋田周朗君を、
 公安審査委員会委員長に堀田勝二君を、同委員に末松謙一君、中谷瑾子君、柳瀬隆次君及び山崎敏夫君を、
 また、中央労働委員会委員に青木勇之助君、川口實君、北川俊夫君、神代和俊君、鈴木重信君、高梨昌君、萩澤清彦君、花見忠君、福田平君、舟橋尚道君、細野正君、山口浩一郎君及び山口俊夫君を任命したことについて、それぞれ本院の承認を求めてまいりました。
 また、公害健康被害補償不服審査会委員に伊藤卓雄君及び玉木武君を、
 運輸審議会委員に植木光教君及び吉武秀夫君を任命することについて、それぞれ本院の同意を求めてまいりました。
 まず、検査官、中央労働委員会委員のうち川口貴君、神代和俊君、鈴木重信君、福田平君、舟橋尚道君及び山口俊夫君並びに公害健康被害補償不服審査会委員の任命について採決をいたします。
 内閣申し出のとおり、いずれも承認または同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#11
○議長(原文兵衛君) 総員起立と認めます。
 よって、全会一致をもっていずれも承認または同意することに決しました。
 次に、公安審査委員会委員長、同委員、中央労働委員会委員のうち青木勇之助君、北川俊夫君、高梨昌君、萩澤清彦君、花見忠君、細野正君及び山口浩一郎君並びに運輸審議会委員の任命について採決をいたします。
 内閣申し出のとおり、いずれも承認または同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#12
○議長(原文兵衛君) 過半数と認めます。
 よって、いずれも承認または同意することに決しました。
     ―――――・―――――
#13
○議長(原文兵衛君) 日程第三 国務大臣の演説に関する件
 内閣総理大臣から所信に関し、大蔵大臣から財政に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。宮澤内閣総理大臣。
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(宮澤喜一君) 第百二十五回国会の開会に臨み、当面する諸問題につき所信を申し述べ、国民の皆様の御理解と御協力を得たいと存じます。
 天皇皇后両陛下には、去る十月二十三日、中国御訪問の途につかれ、二十八日、つつがなく御帰国になられました。まことに慶賀にたえません。両陛下の中国御訪問は、両国の長い交流の歴史の中で今回が初めてのことであり、これが日中国交正常化二十周年という両国間の友好関係を象徴する重要な時期に行われましたことは、極めて意義深いものと存じます。御訪問先での人々の温かい歓迎ぶりと、これににこやかにおこたえになる両陛下のお姿は、まさに日中両国民の心の交流を強く印象づけるものでございました。国民相互間での友好親善こそが両国関係の今後の発展の礎となるものであります。
 私は、両陛下の御訪中を契機として、これまで培われてきた両国間の友好関係を将来に向けてさらに強化発展させるよう、一層の努力を傾けてまいりたいと思います。
 何世紀に一度という歴史的な転換点にあって、世界も日本も、かつてない変革を迫られております。今ほど政治が大きな役割を期待されているときはありません。
 このようなときに、いわゆる東京佐川急便事件のような政治と金をめぐる問題や政治家のあり方の問題に関して国民の不信を招く事態が生じたことはまことに残念なことであります。私は、今日の国民の政治不信は、かつて経験したことのないほど深刻なものと痛切に感じており、政治家の一人として、また国政を預かる立場にある者として、国民の皆様に対し深くおわびをいたします。
 国民の政治に対する信頼は、議会制民主主義の基本であります。今ここで国民の疑念が解消され、政治への信頼が回復されなければ、我が国の将来に大きな禍根を残すことになりかねません。
 国民の信頼回復のためには、まず第一に、政治に携わる者一人一人が国民の不信、不満を謙虚に受けとめ、みずから襟を正し、自粛自戒して日々の政治活動に当たることが肝要であります。このたびの事態に関連して、政治家と暴力団との関係について指摘がなされておりますが、およそ政治家がこのような集団とかかわりを持つべきでないことは申すまでもありません。
 第二に、政治は国民のためにあるという民主政治の原点を片時も忘れることなく、かりそめにも一党一派の利害にとらわれて行動しているとの批判を受けることのないよう心がけていかなければなりません。
 第三に、再びこのたびのような事態が起こらないようにするため、政治構造に立ち入った制度面の見直しを行うことが不可欠であります。私は、政治資金の透明性の確保、金のかからない政治活動や政策を中心とした選挙の実現など、今日の政治不信を招来した根本的要因にさかのぼった思い切った政治改革を実現するため、不退転の覚悟で取り組んでまいります。
 政治改革実現のための具体的方策については、政治改革協議会において、各党間で熱心な御協議をいただいてきているところであります。これまで、衆議院議員の定数是正を行うことを初めとして、政治倫理審査会の機能強化、すべての国会議員及び政治団体の資産公開、違法な寄附金の没収など、いわゆる緊急改革の実施について与党と大方の野党の間で合意が得られております。一日でも早く改革の実を上げるため、その第一歩として、緊急改革が今国会で早急に実現されることを念願いたします。さらに、国民の期待にこたえるためには、抜本的な政治改革が必要であります。選挙制度や政治資金問題を含めた抜本改革についても、引き続き与野党間で十分な御協議をいただき、国民の納得が得られる政治改革をできるだけ早く実現していかなければなりません。このため、政府といたしましても最大限の努力を払ってまいります。
 政治改革は政治家にとって痛みを伴うものでありますが、それを克服して初めて国民の信頼と負託に基づいた国政運営が可能になると信ずるものであります。引き続き各党各会派の御理解と御協力をお願い申し上げます。
 時代の変化に柔軟に対応し得る経済社会基盤を構築していくためには、今後とも我が国経済の健全な発展を確保していかなければなりません。現在、我が国経済は引き続き低迷しており、資産価格の下落もあって厳しい状況に直面しております。このため、政府としては、景気の低迷がこれ以上国民経済に悪影響を及ぼすことがないよう、史上最大規模の十兆七千億円に上る総合的な経済対策を決定いたしました。
 この対策においては、公共用地の先行取得、地方単独事業の推進を含む公共投資等の拡大、民間設備投資の促進、中小企業の省力化・合理化支援などにより内需の拡大を図るとともに、雇用面への配慮や輸入促進などの措置を講ずることといたしました。また、いわゆるバブル経済の崩壊により生じた問題を是正して景気回復を確実なものとするため、金融・証券業界の徹底した合理化努力を前提として、金融システムの安定性の確保や証券市場活性化のための措置などを積極的に講ずることといたしました。
 我が国は、これまで何回か深刻な経済的苦境に見舞われてまいりましたが、そのたびに国民が困難を克服し、より強靱な経済構造を実現してきました。生活大国を実現するためには、社会資本の整備を初めとしてやらなければならないことが多く残されており、また、世界じゅうから国際貢献の責任を果たすことを期待されております。
 私は、我が国経済にはこれらにこたえる十分な潜在力が備わっていると考えております。バブル経済への逆戻りを回避しつつ、今回の総合経済対策を着実に推進することは、民間部門の活力を引き出し、必ずや我が国経済を内需を中心とするインフレなき持続的な成長経路へと円滑に移行させるものと確信いたします。七月のミュンヘン・サミットでは、世界経済のより力強い持続的な成長を実現するための政策協調の重要性について合意を見ましたが、今回の対策はこうした国際的要請にもこたえるものであり、各国から高い評価をもって迎えられております。
 今回の対策のうち、公共投資の拡大や政府関係金融機関による融資制度の拡充などの実行可能な分野については既に実施に移しておりますが、本対策の着実な実施を確保するとともに、人事院勧告の完全実施などのための補正予算を今国会に提出したところであります。補正予算の速やかな成立を切望いたします。
 我が国は、戦後半世紀にわたる国民のたゆまぬ努力により、世界有数の経済大国にまで発展いたしました。しかしながら、労働時間や住宅事情、社会資本の整備状況などは他の先進国と比較しても見劣りするものが多く、国民生活の質的側面が必ずしも国力に見合ったものになっておりません。これからは、経済成長のあり方やその成果の活用に対する考え方の転換を図り、政府はもとより、企業や個人の意識や行動を生活者・消費者重視へと変革していくことが必要であります。
 私は、このような考えから、総理就任以来、生活大国の実現を内閣の最重要課題の一つとして掲げてまいりました。先日、住宅団地、福祉施設、教育文化施設、農村地域などにおいて、そこで生活する方々の心の豊かさや生活の質の向上、さらには不安のない老後を願う声を開き、生活大国を実現することの重要性を改めて痛感いたしました。
 もとより、生活大国の実現は一朝一夕にできるものではなく、長期的な取り組みが必要であります。我が国の人口が今後急速に本格的な高齢化に向かい、労働力供給の伸びも鈍化すると予測されることを考えるならば、我が国経済に潜在力が十分に備わっている今のうちにどれだけ前進できるかが生活大国実現のかぎを握っております。
 こうした認識のもとに、先般、今後の政策運営の長期的な指針として生活大国五カ年計画を策定いたしました。この計画においては、生活者や利用者の視点に立った具体的な目標値を掲げ、事業の進みぐあいが国民の目にも明らかになるようにするとともに、政府が一丸となってその目標の達成に努力することといたしました。
 二十一世紀を展望して、年間総労働時間を千八百時間に短縮すること、大都市圏においても良質な住宅を勤労者世帯の平均年収の五倍程度で取得できるようにすること、下水道普及率を七割程度にまで引き上げること、中学校区に一カ所程度の割合でデイサービスセンターを設置することなどを目指してまいります。既に今回の総合経済対策においても生活関連社会資本の整備や住宅建設の促進などに十分配慮しているところであり、今後とも生活大国の着実な実現に努力してまいります。
 生活大国づくりを進めるに当たっては、地球社会との共存を図るという観点からの取り組みも忘れてはなりません。中でも、地球環境問題に対する関心が高まる中、環境と調和した持続可能な経済社会の構築が求められております。そのためには、国、地方自治体、企業、国民一人一人が幅広い分野において環境問題克服のための努力を払っていかなければなりません。政府としては、環境基本法制など法制度の整備も含め、こうした努力を方向づけ、促進する方策について検討を進めていく考えであります。
 また、社会の安全確保なくして生活大国の実現はあり得ません。暴力団の民事介入による市民被害は改善されつつありますが、暴力団は依然として市民生活に重大な脅威となっております。このほか、けん銃の一般国民への拡散傾向や過激派のテロ、ゲリラ事件などの凶悪事件の多発、交通事故の大幅な増加など、国民の日常生活に不安をもたらすような事態が目につきます。私は、国民生活の安全確保のための対策に万全を期してまいります。
 生活大国を着実に実現していくためにも、財政の健全性を確保し、政府が一体となって整合性のとれた政策展開を図っていくことが重要であります。現在、我が国の財政は、巨額の公債残高に加えて税収の大幅な減少が見込まれるなど容易ならざる状況にあります。再び特例公債を発行しないことを基本とし、公債残高が累増しないような財政体質をつくり上げることを目指して、引き続き制度や歳出の徹底した見直しを図るなど財政改革の推進に取り組んでまいります。
 また、簡素で効率的な行政を実現するという行政改革の目的を実現するため、行革審の答申などを最大限に尊重し、今後とも規制緩和や地方分権などを積極的に進めてまいります。さらに、幅広く政府部門の役割を再検討するとともに、いわゆる縦割り行政の弊害にメスを入れ、真に対応力に富み、総合的な政策展開が可能となる行政システムを構築していきたいと考えております。
 ソ連邦が解体して冷戦構造の中での力と力の対立の時代が終わりを告げ、世界の構図は、今、大きく塗りかえられようとしております。
 歴史の大きな流れが平和へと向かっていることは間違いありませんが、民族や宗教に根差した対立の激化などに見られるように、今、世界は冷戦後の新たな秩序を模索して、産みの苦しみとも言うべき深い悩みの中にあります。世界が再び混乱の荒波に見舞われることなく、新たな平和秩序を構築していくためには、各国が平和と自由と繁栄という共通の目標に向かって、これまで以上に緊密な協調関係を築いていかなければなりません。私は、今こそ、戦後一貫して平和主義、国連中心主義を堅持してきた我が国が、世界平和秩序の構築に向けて国力にふさわしい役割を果たしていくときだと考えております。
 さきの通常国会において成立した国際平和協力法は、こうした我が国の対応を世界に示す重要な取り組みの一つであります。既に九月にはアンゴラの選挙監視に協力を行い、現在カンボジアにおいて派遣隊員の諸君が、国連の旗のもと、この国の復興を目指して停戦監視や警察行政の指導、道路や橋などの修理といった平和協力業務に汗を流しているところであります。こうした我が国隊員の活動は現地の人々からも温かく受け入れられており、大きな期待が寄せられております。このような実情を見るにつけ、私は、今後とも世界平和秩序構築のための国際的な努力に対し、資金面の協力のみならず、人的な貢献や我が国が蓄積してきた技術、ノウハウなどを活用した知的支援をより積極的に進めていかなければならないとの思いを新たにいたしました。
 また、世界の平和を確保するためには、国連自身が時代の変化に適合して変革していくことが必要であります。私は、各国とも協力しつつ、国連の平和維持機能の中核を担う安全保障理事会の信頼性と実効性の向上など、国連の機能強化のために積極的に努力する考えであります。
 地球環境問題を初め、難民、人口、エイズ、麻薬の問題など世界がその解決を心から願っている人類共通の課題に積極的に取り組み、また飢餓や貧困に悩む開発途上国の経済的自立を支援することは、将来にわたり世界の平和を確保し、世界全体の繁栄を揺るぎないものとする上で極めて重要であります。今や世界最大級の援助国となった我が国としては、これらの問題に率先して取り組んでいくことが求められております。私は、問題解決に向けた国際的な枠組みづくりに主体的に取り組んでいくとともに、先般策定した政府開発援助大綱のもと、環境保全や相手国の軍事支出動向などにも十分配慮しつつ、途上国援助をさらに拡充するとともに、より効果的、効率的な実施に努めてまいります。
 現在、ウルグアイ・ラウンド交渉は最終段階を迎えておりますが、自由貿易体制を維持強化し、二十一世紀に向けた世界の経済的繁栄を確保していくためには、交渉を早期かつ成功裏に終結させなければなりません。我が国としては、他の主要国とともに、交渉の成功に向け努力を行っていく決意であります。なお、農業については、各国ともそれぞれ困難な問題を抱えておりますが、我が国としても、これまでの基本的方針のもと、相互の協力による解決に向けて最大限努力してまいります。
 東西対立が消滅し、大きく浮かび上がってきたのは、国際社会におけるアジア・太平洋地域の重要性であります。この地域の経済的な活力は二十一世紀に向かって世界経済の拡大を促す大きな原動力であり、その安定的発展が今後の世界の平和を左右すると言っても過言ではありません。私はこのことをミュンヘン・サミットにおいて強く主張し、その結果、政治宣言にも大きく取り上げられることとなりました。この地域の活力が多様性を前提とした密接な相互依存関係の中に生じてきたことを考えるならば、この地域の国々が域内の対話と協力を一層進めるとともに、他の地域と開かれた協力関係を形成していくことが極めて重要であります。
 今後、我が国が世界平和秩序の構築に参画していくに当たっては、アジアの中の日本という基本的な立場に基づいて新たな外交を展開していくことが重要であります。そのためには、近隣諸国はもとより、アジア・太平洋地域の国々とより緊密な協力関係を築き上げていかなければなりません。現在、我が国の途上国援助の半分以上をこの地域の国々に振り向けておりますが、今後は、経済的な協力にとどまらず、地域内の対立や紛争を解決するための協議や政治対話を積極的に進めていきたいと思います。私は、これまで述べてきたとおり、過去の歴史に対する深い反省の上に立って、将来に向けて我が国がこの地域の平和と繁栄のためにさらに何をなすべきかについて真剣に検討してまいります。
 目まぐるしく変化する国際環境の中で、アジア・太平洋地域の平和と繁栄にとって、米国の存在、米国の関与が今後とも不可欠であります。また、日米安保体制を初めとする米国との緊密な協力関係は、我が国がこの地域で積極的な役割を果たすための重要な前提であります。
 日米関係は日本外交の基軸であり、私は、引き続き日米両国が共通の価値観を基盤として、世界平和秩序の構築のために地球的規模の責任を共同して果たしていくべきだと信じております。
 冷戦後の世界において、統合を目指す欧州はますます重要な役割を果たしつつあります。我が国としては、今後とも昨年の日・EC共同宣言にのっとり、基本的な価値観を分かち合いながら、国際関係の新たな枠組みを構築していくパートナーとして、貿易・産業協力などに限らず、政治面、文化面を含む広い分野での一層の関係強化を図ってまいります。
 我が国は、領土問題を含む日ロ関係の正常化が法と正義に基づいて実現されてこそ、ロシアを我々と価値観を同じくする真のパートナーとして迎えることができるとの考え方を従来から主張してまいりました。ミュンヘン・サミットにおいても、このような我が国の考え方は参加各国の共通の認識となりました。この意味で、エリツィン・ロシア大統領の訪日は、日ロ間の相互理解を深め、両国関係に新たな第一歩をしるすものと考えておりましただけに、その延期はまことに遺憾なことでありました。政府としては、領土問題の解決と日ロ平和条約の締結に向けて、一貫した姿勢で粘り強く対ロ外交を進めてまいりたいと思います。
 一方、ロシアを初めとする旧ソ連邦、中・東欧諸国などにおける民主主義と市場経済導入のための改革の支援は、今後の世界の平和と繁栄を確保する上で重要な課題であります。このことは、旧ソ連支援東京会議においても各国共通の認識でありました。我が国としても、国際社会と協調して、人道的援助や改革努力の支援に適切な役割を果たしてまいります。
 総理に就任して以来この一年の間、私は、新しい世界平和の秩序を構築する時代の始まりにふさわしい国際貢献と二十一世紀をにらんだ生活大国の実現に心血を注いでまいりました。我々の進むべき道の険しきを思い、みずからに課せられた責任の重さを改めて痛感いたしております。
 日本が我々の子供たちの誇れる国になれるかどうかは、我々が時代の要請を見きわめ、世界的な視点に立ってこの国が進むべき方向を明確にし、それに向かって全力を尽くしていけるかどうかにかかっております。私は、このことを深く心にとどめ、引き続き国政全般に取り組んでまいります。
 国の将来を左右する重要な時期に、国民の政治不信によって国政が滞るようなことがあってはなりません。政治倫理の確立を急ぎ、政治改革をやり遂げることは現下の急務であります。一日も早く政治に対する国民の信頼を回復するとともに、国民一人一人の意見や選択が正確に国政に反映されるような政治システムを築き上げていかなければなりません。「志は易きを求めず、事は難きを避けず」と申します。私は、どんな困難に直面しようとも、政治改革の実現に一身をささげて取り組んでいく決意であります。
 ここに重ねて、議員各位、国民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#15
○議長(原文兵衛君) 羽田大蔵大臣。
   〔国務大臣羽田孜君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(羽田孜君) 平成四年度補正予算の御審議をお願いするに当たり、当面の財政金融政策の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、補正予算の大要を御説明申し上げます。
 まず、最近の経済情勢について申し述べさせていただきます。
 我が国経済は現在調整過程にありますが、住宅投資には回復の動きが見られ、また公共投資も順調に伸びております。今回の調整局面においては、従来と異なり、資産価格の急激な低下を背景に、金融システムの安定性に問題が生じているのではないかとの懸念とその実体経済への影響が種々論議されており、私はこのような状況を「複雑骨折」と申し上げてまいりました。
 金利動向を見ますと、本年七月に行われた公定歩合の引き下げを含め五次にわたる引き下げの効果などにより市場金利は低下し、これを受けて金融機関の貸出金利も低下してきております。
 また、為替動向につきましては、先般、欧州市場を中心として不安定な状況となり、こうした中で円高の動きも見られましたが、為替相場が思惑等により不安定な動きを示すことは好ましくなく、今後とも為替相場の推移を注視しつつ、市場の安定を図ってまいりたいと考えております。
 政府は、去る八月二十八日に、十兆七千億円に上る過去最大規模の公共投資の拡大等を中心とする内需拡大策や、金融システムの安定性の確保のための施策及び証券市場の活性化等のための施策を含む総合経済対策を決定いたしました。
 この対策のうち、公共事業関係費の追加等につきましては今般御審議をお願いしている平成四年度補正予算に盛り込んでおりますが、その実行について補正予算を必要としない諸施策につきましては既に着実な実施を図っているところであります。
 すなわち、財政投融資につきましては、住宅金融公庫等に対し弾力条項の発動による所要の追加措置を行ったところであり、中小企業対策としては、国民金融公庫、中小企業金融公庫等の貸付限度額を大幅に増加させるなど、所要の措置を講じたところであります。また、民間設備投資の促進に関する税制上の措置につきましては、省力化、合理化関連等の民間設備投資を促進するため、投資促進税制の対象設備の追加を実施いたしました。なお、公共事業等の施行につきましては、その促進に努め、既に所期の成果を上げているところでありますが、引き続き、対策により新たに追加されることとなった分も含めて、全体として円滑に実施されるよう下半期も含めた施行の促進を図ることといたしております。
 金融システムの安定性の確保につきましては、金融機関の自助努力を基本としつつ、政府としても金融システムに対する国民の信頼が損なわれないよう最大限の努力を払っているところであります。
 金融機関の不良資産につきましては、処理方針を早期に確定するとともに、計画的、段階的な処理を図っていくことが重要であり、この観点から個別問題の早期処理が進められております。また、不良資産のディスクロージャーの充実を図り、不良資産についての税務上の取り扱いに係る所要の措置を講じたほか、担保不動産の流動化を図るための仕組みについて民間金融機関による検討が行われるなど、必要な環境整備に努めているところであります。さらに、対策に盛り込まれた新たな自己資本充実策も着実に実施されており、経済活動に必要な資金の円滑な供給が図られるような金融機関の融資対応力の確保が図られております。
 証券市場の活性化等のための施策につきましては、本年度における公的資金の簡易保険福祉事業団等を通じる単独運用指定金銭信託、いわゆる指定単への運用に関して、株式組み入れ比率を制限しない新たな指定単を設けることといたしました。そのうち、本年度財政投融資計画からの運用分については既に所要の貸し付けを実施したところでありますが、さらに財政投融資資金を新たに追加するため、補正予算において所要の措置を講じております。また、貸付信託の運用対象に株式を追加したほか、個人投資家の株式保有の促進策等につきましても現在検討を行っているところであります。
 この総合経済対策を着実に実施していくことが、我が国経済の内需を中心とする持続的な成長の実現に大きく貢献するものと確信をいたしております。
 次に、財政改革について申し述べます。
 我が国財政は、平成四年度末の公債残高が約百七十六兆円程度にも達する見込みであり、国債費が政策的経費を圧迫するなど、依然として構造的に厳しい状況が続いております。このような状況のもとで、財政運営の基本的方向は、今後の社会経済情勢の変化に財政が弾力的に対応していくために、高齢化社会に多大な負担を残さず、再び特例公債を発行しないことを基本とし、公債残高が累増しないような財政体質をつくり上げていくことであり、このため今後ともたゆまぬ努力を続けていく必要があります。
 海外におきましても、このように財政に厳しい節度を求めることが重要であるという認識が高まってまいりました。先般ワシントンにおいて開催されましたIMF・世銀総会など一連の国際会議の場におきましても、我が国が現下の困難な財政事情にもかかわらず過去最大規模の経済対策を策定したことに対し高い評価が与えられるとともに、これとの関連において、我が国が長年にわたり行ってまいりました真剣な財政改革努力が評価されたところであります。
 ところで、先ほど申し上げましたような財政構造の問題に加えまして、最近の経済情勢を反映し平成四年度の税収は当初見積もりに比べ大幅な減収を生ずるものと見込まれ、また平成五年度の税収も引き続き厳しい状況が継続するものと考えられるなど、我が国財政は近年になく容易ならざる状況に立ち至っております。しかしながら、このような状況のもとにあっても、財政運営の基本的方向を踏まえ、特例公債を再び発行するような事態は厳にこれを回避しなければなりません。このため、平成五年度の予算編成に当たりましても、引き続き徹底した制度、施策の見直しや歳出の節減合理化を図るなど、財政改革を強力に推進していく必要があろうと考えます。
 次に、今国会に提出いたしました平成四年度補正予算の大要について申し上げさせていただきます。
 平成四年度一般会計補正予算におきましては、さきに御説明いたしました総合経済対策を実施するために必要な公共事業関係費等の追加、人事院勧告の実施に伴う国家公務員等の給与の改善に要する経費等を計上するとともに、税収の大幅な減収に対処するための措置を講ずることといたしております。
 今回の一般会計補正予算につきましては、歳出面において、総合経済対策における各般の施策を実施するため、公共事業関係費の追加として、一般公共事業関係費一兆三千億円、災害復旧等事業費三千七百二十二億円を計上するとともに、一般公共事業に係る所要の国庫債務負担行為の追加を行い、また、文教施設、研究施設等を初めとする各種の施設整備費等の追加として二千九百億円を計上することといたしております。さらに、中小企業等特別対策費八百八十五億円等を計上いたしております。このほか、給与改善費、義務的経費の追加など、特に緊要となったやむを得ない事項について措置を講ずることといたしております。
 他方、歳入面におきましては、税収が、最近までの収入実績等を勘案すると、当初予算に対し四兆八千七百三十億円の大幅な減収となることが避けられない見通しとなってまいりました。このような異例の事態に対処するため、まず既定経費の徹底した節減、予備費の減額、税外収入の確保及び追加財政需要の圧縮を行ったところであります。また、所得税及び法人税の収入見込額が減少すること等に伴い地方交付税交付金を一兆五千六百八十二億円減額するとともに、建設公債につきましては、やむを得ざる措置として、公共事業関係費の追加に対応するもの等について追加発行することといたしております。
 しかしながら、これらをもってしてもなお財源が不足することから、臨時異例の措置ではございますけれども、前年度の決算上の純剰余金一兆五千三百十八億円について、その全額を不足財源に充当するとともに、一般会計において承継した債務等の資金運用部に対する償還を延期することにより、当該債務の償還財源の予算繰り入れ五千五百八十六億円を行わないことといたしました。なお、この剰余金の処理等につきましては、別途、平成三年度歳入歳出の決算上の剰余金の処理の特例等に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。
 これらの結果、平成四年度一般会計補正後予算の総額は、歳入歳出とも当初予算に対しまして七千二百八十三億円減少して七十一兆四千八百九十七億円となっております。
 地方財政につきましては、一般会計からの地方交付税交付金が減額されますが、地方団体の円滑な財政運営を確保するため、交付税及び譲与税配付金特別会計において所要の借り入れを行うことにより、当初予算額どおりの地方交付税総額を確保することといたしております。
 以上の一般会計予算補正等に関連して、特別会計予算及び政府関係機関予算につきましても所要の補正を行うことといたしております。
 財政投融資計画につきましては、総合経済対策の実施等のため、今回の補正予算におきましても、日本開発銀行、国民金融公庫等に対し所要の追加を行うことといたしております。これに伴い、日本開発銀行につきましては、日本開発銀行法の一部を改正する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。
 以上、平成四年度の補正予算の大要について御説明いたしました。何とぞ、関係の法律案とともに、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願いを申し上げます。
 以上であります。(拍手)
#17
○議長(原文兵衛君) ただいまの演説に対する質疑は次会に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#18
○議長(原文兵衛君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時四十三分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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