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1992/05/14 第123回国会 参議院 参議院会議録情報 第123回国会 労働委員会 第7号
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1992/05/14 第123回国会 参議院

参議院会議録情報 第123回国会 労働委員会 第7号

#1
第123回国会 労働委員会 第7号
平成四年五月十四日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月二十四日
    辞任         補欠選任
     鹿熊 安正君     平井 卓志君
     真島 一男君     岩崎 純三君
     堀  利和君     対馬 孝且君
 五月十三日
    辞任         補欠選任
     岩崎 純三君     石渡 清元君
 五月十四日
    辞任         補欠選任
     川原新次郎君     石川  弘君
     平井 卓志君     岡部 三郎君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         向山 一人君
    理 事
                田辺 哲夫君
                仲川 幸男君
                細谷 昭雄君
                山中 郁子君
    委 員
                石川  弘君
                石渡 清元君
                岡部 三郎君
                佐々木 満君
                山東 昭子君
                清水 澄子君
                庄司  中君
                対馬 孝且君
                西岡瑠璃子君
                西野 康雄君
                中西 珠子君
                笹野 貞子君
                橋本孝一郎君
                西川  潔君
   国務大臣
       労 働 大 臣  近藤 鉄雄君
   政府委員
       労働大臣官房長  齋藤 邦彦君
       労働省労働基準
       局長       佐藤 勝美君
       労働省労働基準
       局安全衛生部長  北山 宏幸君
       労働省職業安定
       局長       若林 之矩君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        佐野  厚君
   説明員
       労働省労働基準
       局職業病認定対
       策室長      明石 智成君
       労働省労働基準
       局安全衛生部労
       働衛生課長    下田 智久君
       建設大臣官房審
       議官       小野 邦久君
       建設大臣官房技
       術建設業課長   青山 俊樹君
       建設省建設経済
       局建設業課長   風岡 典之君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○労働安全衛生法及び労働災害防止団体法の一部
 を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(向山一人君) ただいまから労働委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨日、岩崎純三君が委員を辞任され、その補欠として石渡清元君が選任されました。
#3
○委員長(向山一人君) 労働安全衛生法及び労働災害防止団体法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#4
○西野康雄君 よろしくお願いいたします。
 大臣にお伺いをいたしますが、大臣は東京へは奥様も御家族も御一緒でございますか、それとも単身赴任でございますか。
#5
○国務大臣(近藤鉄雄君) 私は国会に参りまして二十年でございますが、前半は女房、家族を山形へ置きまして単身赴任だったわけでございますが、子供たちが高校を出まして、そしておかげさまでもう大学、社会人になっておりますので、今は家内、子供も東京が従でもって主でございます。しかし、しょっちゅう交代交代で選挙区に帰っておりますので、単身赴任というか、両方単身赴任しているような、そんなあいまいな状況でございます。
#6
○西野康雄君 今回、法案をいろいろどんな角度で質問しようかと、サラリーマンの皆さんの実態だとかそういうふうなことを調べているうちに、単身赴任だとかそういう問題が非常に過労死だとかそういうところにつながっているということがよくわかってきたんです。西川潔先生も私も、愛妻を大阪あるいは西宮に置いてこちらに単身赴任でございます。月曜日の晩に来てそして金曜日に帰ると、こういうことでございます。
 大阪で単身赴任の問題点を考える、そういうシンポジウムが開かれました。その中で田尻俊一郎というお医者さんが、「単身赴任では家の喪失ということがストレスになり、疲労に結び付く。現代の神経を使う労働の疲れをいやすには、家庭的な心のなごみや通い合いが不可欠。特に中高年者の場合、外的条件の変化に対する適応能力が下がり、また、疲労回復力が低下するから、単身赴任は望ましくない」、こういうふうなことをお述べになっていらっしゃいます。私は、そういうところがやっぱり労働災害だとかそういう部分にもつながっていくんじゃないだろうか、こんな気もいたしました。
 そしてさらに、「単身赴任者はそれ以外の労働者より退社時間が早いが、帰宅時間は遅いというデータがある。」、ここが少し問題だとは思うんですが、「つまり、寄り道時間が長いわけで、生活のリズムが狂うし、また、飲み屋などに通うようになると、アルコール依存症になったり、栄養の偏りがでてくる」、こういうふうな注意を医師の立場からお述べになっておられます。つまり、労働時間が単身赴任者の場合、会社にいたり工事現場にいたりする時間は短くても、後の家庭喪失という部分で非常に問題部分があるんじゃないだろうか、そんな気もいたします。私も清水谷宿舎に、六時ごろ終わって宿舎バスで来ても、本当に寝るまでの時間が手持ちぶさたになるんですね。ついついやはり近所の飲み屋さんへ行ったりと、そういうふうなことになるわけでございます。
 どうですかね。この単身赴任の問題だとか、あるいは異常なほどの転勤の多さ、こういうふうなものに対して、労働省自身これはやはり戒めていくべきことじゃないだろうかと、かように思うんですが、大臣はどうでしょうか。
#7
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生のお話よくわかるわけであります。私は、単身赴任については私みずからの経験に即しましていいことじゃないと、全く同じ考えでございます。
 ただ、あえてこれは労働行政の分野であるかどうかでありますが、私は労働大臣になって以来というか、その前からの持論でございますけれども、まさに東京都と大阪への一極集中、二極集中といいますか、大都市集中を続けている限り、結局いい生活、ゆとりある健康な生活はできない。だから、産業とかいろいろな事業、研究所、大学を含めてもう積極的に地方に分散する。そうすれば、そこで豊かでゆとりのある生活ができる。しかも通勤時間も、山形なんかでは例えば車で三十分というのはもう大変なところまで行くわけですね。だから、三十分以内の通勤で十分可能だと、こういうことでございます。しかし同時に、実は山形なんかでは例えば銀行の支店長さんとか会社の工場長さん、みんな単身赴任なんです。なぜ単身赴任かというと、今度は教育問題です。やっぱり支店長さんとか工場長さんというのは、みんな子供は高校ですよ。そうすると、高校までは東京とか大阪の高校じゃないといい大学に入れない。だから、もう単身赴任でまさにヤマチョンしだしちゃうわけです。
 ですから、私は県の知事さんや幹部にもよく話をして、文部省にも言っているんだけれども、もっとこれから地方の高等学校のレベルアップを、今の進学競争がいいかどうかは別として、事実としてやはり地方の教育水準をレベルアップする。あわせて、文化事業など地方のレベルアップをすることが企業の分散になり、そして単身赴任をなくする道じゃないか。かように考えて、労働行政の面からも地方分散を推進してまいりたいと、省内でもいろいろな検討をしておる次第でございます。
#8
○西野康雄君 転勤が異常に多い、そしてその転勤の向こうに単身赴任があり、その向こうに過労死だとか労働災害がある。こういうふうな意味においては、労働行政の立場から企業に対して転勤というものをどうとらえているのか。日本が異常なほど多いというふうな報告もこのシンポジウムの中で行われております。鈴木さんを初め多くの官僚の皆さんもそういうふうなことを経験はなさっておられるだろうと思いますが、やはり転勤問題だとかそういうことも視野に入れて労働行政はしていかなきゃならぬのじゃないかなと思います。
 そしてまた、もう一つは、快適職場というのは単に職場内だけにとどまらないと思います。長い通勤時間、こういうことも、ラッシュアワーのそういうふうなこともつながってくるかと思います。通勤ラッシュ緩和に対して、私自身は、私鉄に対してピークロード・プライシング、こういうふうな制度を導入させたりするのも一案ではないかなと思うんです。フレックスタイム制を企業に勧めていく。これはいいことなんですが、さらにもう一歩、企業がフレックスタイム制度を導入する、そういうふうなものをアクセレートさすためにもこういうのがいいんじゃないかなと。
   〔委員長退席、理事仲川幸男君着席〕
 さまざまな選択肢にあふれた料金システムを導入する環境というのは、フレックスタイム制度の導入が企業の側で行われておりますからいいんじゃないかなと、環境は整いつつあるんじゃないかと思うんですが、JR西日本では既に昼間特割きっぷ制というのを導入しております。昼間への乗客のシフトがこれで進んだわけですね。JR東日本でもストアードフエアシステムというプリペイドカードで、時間帯によって違った運賃体系のものを徴収できる、そういうふうなことも可能にしております。阪急電鉄も来年から同じシステムの導入を決めております。
 ですから、ラッシュの時間帯の運賃を、通勤定期を含めて、思い切って上げる。かわりにフレックス帯というのですか、オフロードの運賃は下げて、そして価格のメカニズムによって通勤客の分散、そういうふうなものを分散誘導する。そういうことも私は考えていいんじゃないだろうか。労災の適用が通勤時間の通勤途上にまで及んでいるならば、そういうふうなことを労働行政の立場から考えてもいいんじゃないかなと思うんですが、大臣の御所見はいかがでしょうか。
#9
○国務大臣(近藤鉄雄君) まさに先生御指摘のようにピーク時の混雑というのは大変なものでございますので、通勤時間等をならしていくということは非常に大事なことでございます。例えば、電力料金なんかでもピーク時の電力料金と深夜、電話でもそうですし、いろんなそういうそれなりの需給バランスをとりながら格差をつけている例があるわけでございますので、JRその他私鉄を含めまして、交通機関においてもそういったことを積極的にお考えいただくということは大変必要なことではないか、こう考えております。
#10
○西野康雄君 それでは、快適職場形成の促進についてお伺いをしてまいります。
 現行労働安全衛生法の第二十八条第四項に、望ましい作業環境の標準に関する規定があります。調べたところ今までこの標準が公表されたことがないように思うんですが、今度は標準については指針に、そしてまた公表については「することができる。」から「するものとする。」というふうに改められております。この点について、指針はきっちりと公表されるのでしょうか。
#11
○政府委員(佐藤勝美君) ただいま先生が御指摘になりましたように、現行の労働安全衛生法では、二十八条四項で「望ましい作業環境の標準を公表することができる。」ということになっておりますけれども、これまでは作業環境改善対策につきましては、作業環境測定を実施する、あるいは局所排気装置を設置するといったような有害因子を取り除くということを中心にして職業性疾病予防対策の充実を図るということを優先して行ってきたわけでございます。こういったことはもちろんただいまでも、あるいは今後とも非常に重要なものでございますが、そういうところを優先して対策を講じてきたために「望ましい作業環境の標準を公表する」というところまで至っていなかったわけでございます。
 しかし、今回のただいま御審議をいただいております法案によります改正では、最近の技術の進展によりまして労働態様の変化があります中で労働者の中に疲労、ストレスを感じる者が高い割合に達しているというようなことで、働きやすい職場づくりが大変重要となっているということで、事業者が作業環境を含めました快適な職場環境形成のための措置を有効に、また適切にできるようにするために事業者が実施すべき措置の内容を指針として公表することといたしたものでございます。
 この指針につきましては、中央労働基準審議会の意見を聞きながら定めることになるわけですが、法案成立の暁にはできるだけ早い時期に作成をして公表いたしたいというふうに考えているところでございます。
#12
○西野康雄君 「公表するものとする。」ということですから、ぜひとも公表をしていただきたいと思います。
 次に、安全衛生法は安全衛生の基準を罰則をもって事業者等に実施させ、そして必要に応じて監督を、するという、それがもう従来の枠組みであったと思うんです。しかし、快適な職場形成の促進というのには強制色もなければ監督色もない、少し従来の枠組みと異なった制度だなということを感じたわけですが、どうしてこんな枠組みを導入なさったのか、そこをお伺いしたいと思います。
#13
○政府委員(佐藤勝美君) 「快適な職場環境の形成のための措置」の趣旨につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、こういった措置は、労働者の危険あるいは健康障害を防止するための最低限必要な措置が実施をされているということを前提にして、その上でさらに一歩進んだより安全衛生水準の高い職場環境の形成を目指すというものでございますので、そういった意味で事業者が自主的に取り組むべき措置であるということで努力義務という規定にいたしたものでございます。
#14
○西野康雄君 努力義務というんですか、そういうふうなことで監督色や強制色がないということになるとちょっと実効性が危ないなという感じもするわけですが、それを補う意味もあってか、いろいろな融資制度だとか融資の条件等を定めてきたんじゃないかなと思うんですが、その融資制度の概要あるいは融資条件等を詳しく御説明ください。
#15
○政府委員(北山宏幸君) 快適な職場環境の形成につきましては、これは本来事業者の自主的な努力によって推進されるべきものであるというふうに考えているところではございますけれども、国といたしましてもこのような事業者の努力を側面から支援するための指針の策定であるとか、あるいは職場環境の改善に資する各種融資制度の紹介であるとか、あるいは快適な職場環境についての相談等の援助を行うこと等をしているところでございます。
 また、快適な職場環境の形成のための投資というのは直ちに収益の向上に結びつくものではないため、企業としては職場環境改善の意向は持ちつつもこのような投資のプライオリティーは低くなりがちな面があるというふうに思います。そういうことから、快適職場の意義を十分理解しつつも、そのための資金の確保に困難を来す企業も相当数あるんではないかなというふうに思っているところでございまして、日本開発銀行による低利融資制度を創設することとしたものでございます。
 日本開発銀行の融資制度につきましては、労働大臣が公表する快適な職場環境に関する指針、この指針に適合するように職場環境の改善を進める事業者に対しまして必要な資金を長期かつ低利で融資するというものでございまして、融資条件としては、まず第一に金利は現在の時点で五・九%でございます。融資比率は四〇%。それから融資対象といたしましては、工場における作業環境の改善のための施設であるとか設備の整備などの措置、またその措置に伴い必要となる建物の増設、建物内部の改造などの措置、それから福利厚生施設の新設、増設、改造などの措置並びにこれらの措置に必要な土地の取得、こういったものに必要な資金を融資対象として考えているところでございまして、融資枠は生活・都市基盤整備の項目、環境対策の中に含まれておりまして、七百二十億円を予定しているところでございます。
 以上でございます。
#16
○西野康雄君 大臣、突然の質問ですが、ふろしき残業という言葉を御存じでしょうか。
#17
○国務大臣(近藤鉄雄君) 存じております。
#18
○西野康雄君 要するに、残業の時間に入らないで、おうちへ仕事をふろしきに包んで持って帰って家でする、そういうふうな意味がふろしき残業には加わっております。労働省もいろいろと時短だとかそういうことに取り組んでおられることはよくわかるんですけれども、ところが逆に過労死の問題が随分とクローズアップされてまいりました。
 読売新聞がことしの一月二十五日、二十六日に実施した全国世論調査、これを見ましても、「日本人の労働時間は七割近くの人が短くなったと思っているのに、自分自身や家族については過労死の不安を感じる人が四八%、国民の二人に一人に上っている」というふうなことで、八割が過労死に関心があるというふうな世論調査が出ておりました。
 そして、この間朝日新聞を読んでおりますと、「ひととき」という欄にこんな手記が投稿されておりました。
  夫三十八歳、ある都市銀行の銀行員。勤続十五年。一日平均就労時間十四時間、通勤三時間余り。サービス残業月百時間以上。ふとんを温めることなく毎日が仮眠。毎日睡眠不足と闘っている。疲れている。お酒とゴルフのおつきあいのないだけが救い。完全週休二日制とはいえ、土、日曜日は乳児のように眠っている。会社だけに体力と精神力を使い、家庭生活は体力の回復にのみ時間を費やす。寝て過ごす。いったい何のための会社、だれのための人生なのだろうか。七歳の長女は「お父さんは金曜日の夜に帰ってくるんだよね」と言う。土、日以外は、お父さんのふとんはいつも空だから仕方のない言葉かもしれない。次女が入院した時、手続き等で半日休んだが「そんなことで半日も休むのか」とは上司の言葉。夫はそんな会社に就職している。行員一万人の銀行。毎日銀行内で歩く歩数二万歩余り。「健康のために歩こう」という調査で測ったら、あまりの多さに驚いて、通勤途上の歩数をはぶいて報告。いくら食べても太れない。中旬過ぎるとお客様の応対で昼食もよく。抜く。朝食と夕食の食間は十七時間にもなる。健康のためには、万歩計より昼食の確保を望む。時短とかサービス残業廃止より、睡眠時間を削る持ち帰り残業だけは、せめて廃止してほしい。
これは先ほど言ったふろしき残業につながるんですが、
 人も金も物も増やせないなら、少しぐらい収益が減っても、行員の活力が戻るようにゆとりの時間を与えてほしい。夫を見ていると、壮年期の突然死や過労死が他人事とは思えない。妻は黙って見守るしかないのだろうか。
こういう手記でございます。やっぱり働き盛りのだんなさんを持っている奥さんは、本当にそういうふうなことが非常に気がかりなわけなんです。
 そういう中で今回の法案を見ているというと、快適な職場形成と相反するというのですか、そういうふうな長時間過密労働だとか、数字にあらわれてこないサービス残業、ふろしき残業がある。その果てが過労死問題に行き着くわけでございますが、今回の改正案では過労死対策、そういうものには触れてないように思うんですが、どうしてなのかなという疑問がわいてまいりました。この過労死問題に触れてないのはなぜなのか、ちょっとお尋ねをいたします。
#19
○政府委員(佐藤勝美君) 先生、ただいま新聞の世論調査なりあるいは新聞に報道されました手記などを引用されました。こういった問題に対します。般社会といいますか、国民の関心が大変高くなっているということをよく承知しておりますが、原因が何であれ、家族の死が大変な不幸であることは言うまでもございません。
 ただいま御質問のいわゆる過労死につきましては、成人病等に由来します基礎疾患がその原因のもとにあるわけでございますが、それに加えて過重な業務の負荷が加わる、そしてそういうことが起こるということでございます。この問題につきましては、やはり労働時間の短縮等、過重な業務負担がかからないような方策を講ずることも必要でございます。また他面におきまして、成人病を含みます健康診断あるいは健康指導等が適切に行われるということによって基礎疾患が起こらないようにする、あるいは基礎疾患が重くならないようにするというようなところが基本的な問題であろうかと思います。このため、現在の労働安全衛生法におきましては、健康診断あるいは健康指導を義務づけておるわけでございますが、その中で成人病につきましての健康診断項目も加えたところでございますし、また心身両面にわたる健康づくりのための施策も鋭意進めているところでございます。
 しかしながら、最近こういった問題は、業務が原因になって起こるのではないが、しかし業務がその推移に非常に影響のある疾患として、WHOなりあるいはILOでも作業関連疾患という名前で呼ぶようになって、これに対する関心が強くなっているところでもございます。労働省としましても、現在五カ年計画でこういった問題に関します医学的な研究を進めながら、現在の安全衛生法に基づきます健康保持、増進関係の施策とあわせまして、今後のこういった問題に対する対処の方策を見出すべく、現在鋭意研究中であるということを申し上げたいと思います。
#20
○西野康雄君 過労死の問題について、私も本を読ませていただきました。「日本は幸福か」という題名で、「過労死・残された五十人の妻たちの手記」、こういうことなんですが、それを読んでおりますと、少し気になることがございました。労働基準監督署、ここの非常に対応に対しての不満というのが随分と出てきております。一部読ませていただきますと、
  そして、労働基準局監督署。体の不自由な夫と二人で、無理しながら、どんな思いで行ったか……。担当の人は、「なぜ、もっと早く来なかったのか」と相手にもしてくれませんでした。用紙を持っていけば、「会社の印がなければだめだ」とつっけんどんで、取りつくしまもない冷たい態度でした。でも、市議会の方にお願いしてついていってもらったところ、掌を返したように丁寧になり、簡単に手続きは終わりました。このような事態になって、なんて世の中は弱いものに対して冷たいのだろう、矛盾だらけなのだろうと、初めて気づきました。
こういう手記がございます。
 また、
  一九八八年十二月、横浜西労働基準監督署へ、労災の申請をしました。翌三月には事情聴取がありました。夫を失い、悲しみにうちひしかれている私に、係官のS氏は「過労死なんて言葉は、あんたたちが勝手に作った言葉だから」と、冷たく言い放ちました。そして、公務員である彼は、私がいくら夫の長時間労働を訴えても、中小企業の労働状況のことなど理解しようとはしませんでした。本来労基署は、私たち労働者側にあって、私たちを守ってくれるものと確信していたのに、あまりにもひどい対応です。申請から二年半が経過しても、結果は出ません。
  夫はこのような過酷な職場で倒れたのに、労働基準署のとった態度は、あまりにもひどいものでした。西宮労働基準署は、ほとんどなんの調査も行なわず、資料も請求せず、労働組合の人がまだ来ていないのをよいことに、二カ月で不支給の決定を送ってきました。
  品川労働基準監督署に労災申請をし、一年以上すぎた一九九〇年三月三十一日、一枚の紙が郵送されてきました。それには、「障害(補償)」給付等不支給決定について」との四行が書かれていました。「決定理由の詳細について聞きたい点があれば、当署まで照会してください」とも書かれていたので、弁護士さんたちと出向きました。そこで国会った労働基準監督署の対応は、いま思い出しても許せないほど腹立たしいものでした。応対に当たった署員(三人)は、何を考え、あるいは何も考えていないのか、「不支給」の理由を聞きにわざわざやって来ているのに、それにはまったく答えようとはせず、押し問答が続き、あげくのはて、窮するとそのつど席を立って、別室でどうやら上司にお伺いをたてているようすなのです。私たちのイライラ、怒りはつのるばかりでした。自分で決定したことの理由をなぜ答えられないのか。そのつど上司に聞きにいくのなら、説明のできる人物がなぜ直接応対し、納得のいくような説明をしないのか。それでよく、仕事として成り立つものだとあきれてしまいます。
  警察の方でさえ、「この人は過酷な労働をしてきた人なんじゃないか」と言っていたのに。基準署へ行くたびに、「病気だから、労災にはなりません」と言われ、それでもなお、お願いに行きました。あからさまに「なんだ、また来たのか」という顔をされました。「国のお金を簡単には出せない」とも言われました。私たちの辛い気持ちなど、とうていわかってもらえません。
  二十二日、私は吹雪のなかを、朝九時の汽車に乗りました。労基署で名前を言ったら、頭ごなしに「駄目だ」と言われ、話も聞いてくれませんでした。私は泣いてそこへ座りこみました。すると、審査官は、「駄目だと思うが話だけは聞いてやる」と言いました。あまりの冷たさに、涙が止まりませんでした。帰りの駅でも一人で泣いていました。
こういうふうな手記が連綿として続きます。
 なるほど、労災の基準の認定というものは厳しいものだということもよくわかります。しかし、大変つらい気持ちで労働基準監督署へ行っておられるんですね。そういうときになぜ温かい対応をしてやれないんだろうか、そういうことを非常に疑問に思うんです。この手記の中でだった一人だけ労基署の人が親切であったということを書いておられる方もございます。それはもう本当にたった一人だけでございました。そういうことを考えますというと、家族を失ったつらさ、まさに会社に殺されたと言ってもいいような悔しさ、そういうふうなものを思いながら行っておられるわけですね。それに対して、非常にこの手記を見る限り冷たい対応がまことに多いという、これはやはり少し労働行政の中で考えていくべきことじゃないかなと思うんですが、大臣、御所見とうでしょうか。局長でも結構ですが。
#21
○政府委員(佐藤勝美君) 先生、いろんな例についてただいまお読みになりましたけれども、私ども考えますに、第一線の職員、大変忙しい中で大部分は適切な対応をしていると思います。私どももできるだけ窓口のサービス、労使の方々あるいは一般の方々に対する対応が適切に、親切に行われるようにということは常に心がけているわけでございます。その中で、こういったいわゆる過労死というようなもの、あるいは一般に労働災害もそうですけれども、お亡くなりになった、あるいはけがをされた方の御家族の気持ちというものもそういう場面で十分考えながも対応しなければいけないという点について、場合によって若干その辺が欠けるといった点もあったのかと思います。そういうものが先生がお読みになったものに出てきたと思います。
 我々としては、窓口の対応については相手の立場を十分考えながら親切に対応するというように今後も一生懸命指導してまいりたいと思いますが、一つには、特に今いわゆる過労死の問題につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、もともとの原因が必ずしも業務と関係がない、年を経るに従って生じてくるいろんな身体的な問題がその基礎にあって、それと業務がそれにどういうふうにかかわるかということが問題になるわけで、そういう意味では判断もなかなか複雑になるというようなこと、あるいはなかなか労災補償制度との関連においてそういうものがどういう問題であるのかということについての一般の方々の正しい理解をしていただくための努力について、これからもっとやっていかなければいけない面があるというようなことがあろうかと思います。
 そういうようなことを含めまして、私どもとしましても、もちろん労災の補償の申請があった場合には適切な対応をすることが必要でございますし、またそういうものと離れまして、一般的に労災補償制度あるいはその中でのこういった問題はどういうふうに取り扱われるのかということについての理解をしてもらうための努力をもっとやっていかなければいけないというふうに思うわけでございます。
 それから、なかなかこういった問題につきまして、例えば労基署の判断が一体どういう根拠で行われたかというようなことにつきまして、ただいま御指摘のように、実際に労基署の窓口でやりとりが行われる場面も非常に多いわけでございます。そういう場合に、必ずしも遺族方だけでなくていろんな形で来署をされるという場合に、問題によってはプライバシーの問題とか、そういうことがかかわりが出てくる場合もございますので、そこからまたいろんなトラブルが起きるということもありがちでございますが、私どもとしてはできるだけ誠意を持って、かつ相手のそういう場面に置かれた御家族、御遺族の方々の気持ちも察しながら対応するようにということをこれからも十分に気をつけてまいりたいというふうに思います。
#22
○西野康雄君 この手記の中でだった一人だけが基準局の対応は悪くありませんでした、その他は全部本当に――恐らくつらい立場もあるから余計に冷たく感じるんだろうと思いますけれども、そういうふうなことでいい応対をしていただきたいなと思うわけでございます。
 それで、今ちょっと話の中にありましたけれども、労災、過労死の認定が厳し過ぎるんだろうか、そんなことも随分と出ておりますが、平成二年度以来作業関連疾患等に関する調査研究というのが進められておるかと思いますが、その進捗状況はどうなっておりますか。
#23
○説明員(下田智久君) 作業関連疾患等に関します調査研究につきましては、先ほど局長から申されましたように、高血圧性疾患あるいは虚血性心疾患、肝疾患、糖尿病等を指しておりますけれども、こういった疾病につきましては平成二年度より研究を開始いたしております。
 具体的には、全国におきます医科系大学及び主要医療機関に対しまして医学研究者を公募いたし、学識経験者から成ります研究企画評価委員会におきまして審査をお願いした上で研究を開始いたしております。現実的には、五班にわたりまして二十八名の研究者が参画をいたしまして、五年計画で実施をいたしております。業務と作業関連疾患との関連性あるいは作業関連疾患の発症、誘発メカニズム、こういったものを研究いたしております。この成果をもとにいたしまして、五年後にそれぞれの疾患に対する予防マニュアル、こういったものを作成いたしたいというふうに考えておるところでございます。
#24
○西野康雄君 五年後、そういうふうなことになるということですけれども、その調査研究の結果を受けて認定基準の見直しはなさるんでしょうか、どうでしょうか。
#25
○政府委員(佐藤勝美君) 現行の認定基準そのものは、これを策定いたしましたときに、専門の医師で構成されました専門家会議におきまして、医学的知見を踏まえて十分に検討していただいた結果をもとにでき上がっているものでございますので、これは現時点において妥当なものと考えております。
 ただ、御質問の調査研究、今下田衛生課長から御説明申し上げましたけれども、作業関連疾患を予防する観点からの研究でありまして、認定基準の見直しを前提に行っているものではございません。けれども、今後ともこういった研究の結果も含めまして、医学研究の動向を見守りまして、その成果の収集及び分析に努めてまいりたいというふうに考えております。
#26
○西野康雄君 「九一年十二月三日、栃木県の鬼怒川温泉で開かれた全労働省労働組合主催の行政研究会全国大会で、労働基準監督署の担当者から「今の認定基準は厳しすぎる。これ以上現場ではやっていけない」「我々だって超過勤務を強いられている。それなのに労働省自身が過労死を認めないとはどういうことだ」という声が相次いだ。」というのが本に載っております。
 私、ひょっとしたら無愛想な原因はここの超過労働だとか、人間が足らぬというふうなことがあるんじゃないだろうか、そんな気もするわけでございますが、あちらこちらでどうやら人手不足だな、こういうふうなことに対応していく部分において、もう少し人員をふやす努力というものが必要なんじゃないかなと思うわけです。
 不服審査も滞留をしております。審査に要する期間は一件平均三百九十三日、新規審査件数は約千件と言われております。審査官や労使の労災保険審査参与が不足をしておるんじゃないだろうか、あるいは労災保険審査会委員や労使の労災保険審査会参与も、これは増員する必要があるんではないか、増員できるように財政努力をすべきであるかと思うんですが、この点どうでしょうか。
#27
○政府委員(佐藤勝美君) 労災補償の請求の事案につきましては、複雑困難な事案がふえてきているという実態にございますけれども、私ども上してはこういった事案をできるだけ早くかつ適切に処理するように努めているところでございます。
 第一審の不服審査機関と申しますと労災保険審査官になるわけでございますが、これにつきましても毎年増員を図っておりまして、平成四年度におきましても四名を増員し、現在全国に八十二名が配置をされているという状況でございます。それから、その上の段階の第二審の不服審査機関でございますが、これは労働保険審査会でございますが、ここでも再審査請求の事案をできるだけ早く処理をするということで、審査に関する事務を行います労働保険専門調査官の増員を図っております。そういうことによりまして、事務処理体制を充実をいたしまして迅速な処理に努めているところでございますが、こういった努力は今後とも全力を挙げてやっていきたいというふうに思います。
 なお、先生ただいま労使の審査参与の方の問題にも触れられましたけれども、ただこの御指摘の参与は、労使の代表として労使の実情、慣行等につき意見を述べるものでございまして、これによって審理が一層公平、的確なものになるということをねらっているものでございます。現在のところその機能を十分に果たしていただいているというふうに考えておるところでございます。
#28
○西野康雄君 私は、佐藤さんにも大いに頑張っていただいて、大蔵省相手に、うちは人間が足らぬからどっと予算を組んでほしいというふうに交渉もしていただきたいと思います。
 大臣、どうでしょうか。先ほどの労基署の対応のまずさというものがございまして、手記を読みましたけれども、その辺の所見、感想を少しお聞かせ願えればと思うんですが。
#29
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生がここでお読みになったものをこうして伺っておりますと、やっぱり問題だなという感じがいたします。ただ、これが過労死かどうかということの認定についてはなかなか難しい問題も一つあると思いますし、そういうことの中でできるだけ丁寧に対応させているケースが、私は多少手前みそかしれませんが、多いのじゃないかなと。それは極端な場合があってそういうふうになっている面もあるのじゃなかろうかと思います。
 ただ、まさに基準監督署職員自身が大変勤務状況が厳しいじゃないかということについては、私も立場でいろいろ現場の基準監督署を見てまいっておりますけれども、例えば山形基準監督署の管内は税務署が二つあるんです、山形署と天童署が。それから警察署は上山署、寒河江署、天童署など四つありますからね。だから、そういうことを考えると、同じ管内であっても労働基準監督署はほかの署と比較して非常に守備範囲が広い、こういうことで多少人員的にも事務処理上においていろいろ足りない点があるのかなということも理解できます。これは、国全体の行政機関の定員の問題はこれはもう厳しくやっておりまして、なかなか増員は簡単でありませんが、適切な労働基準行政ができるようにやはり必要な人員についても、これまでもやってまいりましたけれどもこれからもひとつ努力してまいりたいと、かように考えております。
#30
○西野康雄君 やっぱり冷たくなみ、事務的になるというのは、これはその人が悪いんではなくて、ならざるを得ないような仕事の量の多さだとか、そういうことにも原因してくるんじゃないだろうか。僕はその係官を責めているんではなくて、そういうふうなゆとりがないぐらいの仕事量の多さというところが問題ではないだろうか。また、大半の人はなるべく親切に対応しよう、そういうふうに努力をなさっておられる、僕はそれも十二分に理解できるんですね。でも、やはり仕事量が多いとついいらいらとなってきたりとか、あなただけ相手にしているわけにいかぬのだ、またほかの人も待っているんだというふうなことにもなってくるんじゃないかなと思います。そういう意味において人員の増員というものがいろいろな面で必要じゃないかなと、ごう思った次第でございます。
 少し角度を変えて別の質問をいたします。
 第三十八条関係ですが、製造時等検査等ですね、この製造時等検査は今まで都道府県労働基準局長の検査となっておりました。今度からは労働大臣の指定する者、つまり検査代行機関に行わせてもよいというふうになりました。その理由を少しお伺いしたいと思います。
#31
○政府委員(北山宏幸君) いわゆる保安四法に関連しまして、労働安全衛生法、消防法、それから高圧ガス取締法に基づきまして、労働省、消防庁及び通産省がそれぞれの立場からボイラー、圧力容器等に関しまして所定の検査を行っているわけでございますけれども、そういうものにつきまして、一定の機関が複数の法律に基づく検査もあわせて行うことがより合理的であるというようなことから、指定検査機関等による相互乗り入れができるように、今回製造時等検査について指定機関が行うことができるようにしたいというふうに考えているところでございます。
#32
○西野康雄君 車検を例にしていいのか悪いのかわかりませんけれども、民間の業者に、大半はそれはそのとおり守っておるわけでございますが、中には違反をしている、そういうふうなものも見られますし、検査そのものの質的な低下というんですか、そういうふうなものも見受けられます。そういう危険性が今回のこの検査代行機関に行わせてもよいという部分において含まれてくるんじゃないだろうか、そんな懸念が私自身するわけでございます。車検と一緒にせんといてくれと、こう言われればそれまでかもしれませんけれども、やはり若干検査水準の低下等問題が生ずるおそれがあるかと思います。その点についての対策、歯どめ、どのように考えておられますか。
#33
○政府委員(北山宏幸君) 労働省におきましては、指定機関が行う製造時等検査の検査水準を確保するため、指定機関は一定の資格を有する検査員を選任していること、それから必要な検査機器が整備されていること、それから検査に関する技術研修等が確実に行われていること、それから検査実施のための組織が整っていること、こういったことを指定の条件といたしますとともに、検査員の選任等につきましても労働大臣の認可等を求めるということにしたいと考えております。
 また、こういった指定機関に対しましては、労働省が監督、指導を行うことによりまして検査水準の確保及び向上を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
#34
○西野康雄君 最初はそういうふうに思うわけですよね。車両でもそうでございますけれども、だんだんどこかで気の緩みというんですか、たるみというんですか、そういうふうなものが出てくるようにも思います。緊張感を持ってしっかりとやっていただきたい、かように思うわけでございます。
 続いて、一九九〇年にILO第百七十号条約、職場における化学物資の使用の安全に関する条約が採択され、同条約において化学物資の安全データシートの導入等について定められております。我が国においても化学物資に係る災害の発生が後を絶ちません。欧米諸国で定着している安全データシート等の表示制度の導入が私は急務だと考えるわけでございますが、労働省ではこの制度の導入について中央労働基準審議会の意見を聞いて、三月四日諮問、四月十四日答申ですが、検討を進めているようですが、どのような制度とする予定なのか、またそれはILO条約が求めているものとなっているのかどうか、この点少しお聞きしたいと思います。
#35
○政府委員(佐藤勝美君) ただいまのこのILO百七十号条約の内容になっております化学物質の安全データシートの導入等でございますが、この制度は、化学物質を譲渡するあるいは提供する者が、その譲渡、提供に際しまして化学物質の危険有害性等の情報を表示する、その情報を化学物質を取り扱う事業者それからその労働者が活用することによってこの化学物質の取り扱いから生ずる災害を防ごう、こういうことでございます。
 具体的には、化学物質のメーカー等の譲渡、提供者に対しましては、まず危険有害性を有する化学物質について、安全データシートを交付すること、それから容器等に危険有害性等の主要な情報を記載したラベルを張りつけるということ、それから危険有害性を有しない化学物質につきましてはその容器等に名称を表示すること、これを求めているわけでございます。これが譲渡、提供者に対するものでございます。
 それから、化学物質を取り扱う事業者に対しましては、労働者が化学物質の危険有害性、それから取り扱いの留意事項等を把握できるように安全データシートを常時備えつけるというようなこと等の措置を講ずるということが一つでございます。それから、安全データシートを活用して安全衛生教育を行うこと、それから同じく安全データシートを活用して労働災害防止措置を講ずることを求めることにしているわけでございます。
 この制度につきましては、労働省としましても、四月の十四日に中央労働基準審議会において私どもが計画をしております制度の内容について了承する旨の答申を既に得ておりまして、近く労働大臣告示として公表する予定でございます。その暁には、平成四年度を一応準備期間とする、そして平成五年度から実施をしたいと思っております。
 この制度の内容は、ILO百七十号条約の内容を踏まえたものでございまして、この制度が実施をされますと、この条約が求めている内容は実態上確保されるというふうに考えております。
#36
○西野康雄君 職場で使用されている化学物質は大変に多うございます。しかし、そこの現場で働いている人がそれに対して正しい知識を持っていない。あるいは中小の工場なんか行きますというと、そこの経営者自身がそういうふうな知識を持っていないというふうなことが多うございます。
 これは、例に引くと違うのかもしれませんが、あるプラスチックだとかそういうふうな化学物質をこしらえているあるいは加工している工場で随分と歯の悪い人が多い。原因が調べてもわからない。歯医者さんへ行ってもわからない。歯医者さんはそれの治療をするんですけれども、やはり歯が欠けてきたりする、おかしいなと思っていたら、作業工程に出てくる有毒ガスが歯の腐食を進めていたというふうな例がございました。
 いろんな面で、職場でそういう化学物質に対しての知識というものを普及しておく必要があるかと思うわけでございます。職場で使用されている化学物質の数は非常に多うございますが、これらのすべてについて適切な安全データシートが作成され、まさに普及されるようにする必要があるかと思います。
 これは本来、化学物質を製造するメーカーの責任であると思うわけですが、その普及に当たって国が果たすべき役割、これも大きいと考えます。労働省は、一体どのようにして適切な安全データシートの普及、そしてまた定着を図っていかれるのかお聞きします。
#37
○政府委員(北山宏幸君) 労働省といたしましては、本制度の推進のためには、化学物質のメーカー等関係者の方々の本制度についての理解が非常に重要であるというふうに考えているわけでございます。それで、制度についてのパンフレットの作成、配布であるとか、あるいは関係業界団体の協力要請等によりまして、本制度の周知を図っていきたいというふうに考えているところでございます。特に、化学物質のメーカーであるとか輸入業者につきましては、これは安全データシートを交付する立場にあるわけでございますので、本制度において非常に重要な役割を果たすことになるわけでございますので、適正な安全データシートの作成、交付について行政指導を進めていきたいというふうに考えているところでございます。
 また、適正な安全データシートの流通の促進の観点から、本年度、主要な化学物質についての標準安全データシートの作成のために予算措置を講じているところでございまして、そういったことで、今後ともその普及、定着に努力をしていきたいというふうに考えているところでございます。
#38
○西野康雄君 具体的な定着方法等はどうでしょうか。どのように実施なさいますか。
#39
○政府委員(北山宏幸君) 本制度の推進のための経費といたしまして、今年度およそ二千万の予算を計上しております。本制度の周知のために化学物質等のメーカー約五千、それからユーザー九千四百、そういったものを対象とした集団指導という形で周知徹底を図っていきたいというふうに考えております。
#40
○西野康雄君 私、少し時間が余りましたけれども、これで終えさせていただきます。
#41
○細谷昭雄君 私は、主として建設現場における労働安全衛生に視点を置きまして、このたびの法改正について若干の質問をしたいというように考えております。
 まず、大臣にお伺いしたいと思います。
 平成二年度において、建設業における死亡災害というのは全職種、企業種の労災死亡者が二千五百五十人、その中で四三%に上るそうでありますが、千七十五人というとうとい人命が建設現場で亡くなっておるわけであります。実に、一日当たりざっと三人の方が毎日どこかで亡くなっておるというふうになっておるわけでありまして、大変な悲しい現実でございます。しかも、平成三年以降だけでも、私たちの記憶にあります広島、松戸、そしてせんだっての厚木の重大事故、これが相次いでおるわけでありまして、労働災害の防止というものは大変な重大な問題、社会問題になってきている。その防止の総本山の立場にあられる近藤労働大臣、どういう御所見と、それに対して臨む御決意を持っておるのか、最初にお伺いしたいと思います。
#42
○国務大臣(近藤鉄雄君) 労働災害の防止ということは、私ども労働行政の最大の課題でございまして、私どもこれまでも非常に努力をしてまいったところでございます。いろいろ関係の方々の御協力、御努力もございまして、諸外国に比較していいとは言えないでしょうが、いわば欧米諸国と比較いたしまして我が国の労働災害の発生率はむしろ総体的に改善をされている、こう思います。
 ただ、その中の最大の問題は、先生御指摘のまさに建設現場における災害の事故、これが相当大きなものでございまして、私も実は厚木の事故も早速現場に参りまして、その惨状を見てまいりまして、何でこういったことが未然に防げなかったのかなと、胸を傷め、また関係者に厳しく注意をしてまいった経緯もございます。そんなことでございますので、昨年、専門家の方々に建設業における総合的な労働災害防止対策について検討をお願いいたしまして、その検討結果を踏まえまして、今般御審議をいただいております労働安全衛生法の改正法案を作成したところでございます。ぜひひとつこの法案、御審議によって御採択があって、私ども労働災害防止行政が一歩二歩前進ができるようにひとつ御理解を賜りたい、こういうことでございます。
#43
○細谷昭雄君 大臣の並み並みならぬ労災事故防止の思いというものがわかるわけであります。
 問題は、建設業関係でもう随分前からこういう災害が絶えない、一体どこにその原因があるのか、建設業の持っておる特殊ないろんな性格からこういうふうに多いと思うんですね。労働省はどういう分析をされておるのか、お伺いしたいと思います。
#44
○政府委員(北山宏幸君) 建設業はほかの産業に比べましていろいろと特殊要因を抱えているわけでございます。一つは、自然条件の影響を受けやすい環境での作業が多いこと。それから、高所作業であるとか掘削作業等の危険な作業が非常に多いということ。それから、注文生産が原則でありますために、工事ごとに作業場所であるとか作業内容が異なりまして、かつ短時間作業であるとかあるいは臨時の作業が多いというようなこともございます。また、重層下請構造寺異なる企業に属する労働者による混在作業が非常に多いというようなこともございます。それから、労働者の移動性、これも高いこと。それから、工期の設定であるとかあるいは工事費の積算等請負契約におきまして発注者側の意向も強く反映されるというような建設業特有の特殊要因を抱えているわけでございまして、特に高所作業であるとか掘削作業等の作業における墜落災害あるいは土砂崩壊災害、こういった死亡災害につながりやすい災害が生じる非常に危険の高い作業が多いということが建設業において死亡災害が多い原因ではないかというふうに考えているところでございます。
#45
○細谷昭雄君 きょうは、一方の当事者であります建設省の方々からもおいで願っております。大臣のかわりに小野審議官、それから豊田技術審議官その他の方々でございますが、きょうはぜひひとつ山崎建設大臣と思ってしっかりした答弁をお願いしたい、こんなふうに思っております。
 最初にお伺いしますけれども、建設業界の労働安全ないしは労働衛生、労働福祉、こういった改善について、三月二十三日に私は予算委員会で、一連の重層下請構造の問題から元請や下請の関係というのを非常に重視しておる、安全の関係で。そこで、一連の協会に対するいろんな要望、そして建設省や労働省の皆さん方のそういう点での指導という点についてお話をしたわけであります。できれば協会の代表を参考人として招致したい、こう思ってやったんですが、建設省に努力していただきましたが、結局断られました。そこで、私は山崎建設大臣にしかときょうの論議をお伝えいただきたい、このことをお願いしました。山崎さんも快諾をされたわけです。しかし結果の報告もありませんし、聞いておりませんので、どういうふうにお伝えし、具体的にどういう反応があったのか、この点についてまず最初に小野審議官に大臣にかわってお聞きしたいと思います。
#46
○説明員(小野邦久君) ただいま先生から御質疑をいただきましたけれども、三月二十三日に予算委員会におきまして先生から、建設業界の労働安全問題を初め、いろいろな労働条件の問題について御質疑をいただいたわけでございます。
 私どもの山崎建設大臣あるいは建設経済局長が先生の御質問にお答えをいたしましたけれども、私どもでは御指摘の事項につきましては、建設大臣の指示によりまして、平成四年三月二十三日の議事録そのものを全国中小建設業協会あるいは全国建設業協会、二つの建設業団体に送付をいたしまして、この議事録の趣旨を踏まえ、今後建設生産システムの合理化に努めるとか、あるいは安全対策に万全を期すようにお伝えをしたところでございます。これにつきましては、各協会の事務局を通じまして傘下の建設業者にもその趣旨の周知が図られた、こういうような報告を受けております。
 以上でございます。
#47
○細谷昭雄君 ありがとうございました。
 それで、またこの機会にお願いしたいんですが、議事録を送付する、文章でやる、それはいいわけですよ。しかし、やっぱり血が通っておらない。人間というのは、対面しまして初めていろんな表情とかそういうことでわかるということで、お互いの信頼関係というのが非常に必要なわけであります。私は、機会を見まして日建連ないしは全国建設業協会、その事務局なり会長さん方にぜひお会いしたいと思うんですよ。その点の仲介をとっていただきたいというふうに思うんですが、ひとつ努力をお願いしたいんですが、どうです。
#48
○説明員(小野邦久君) 前回、先生の方から参考人としてぜひ来てもらいたい、こういうお話を私どもは政府委員室を通じていただきました。ただ、年度末ということもございまして、あるいは全国中小建設業協会の会長は今名古屋に住んでいると申しますか、活動の拠点があるというようなこと、いろいろな要件により参考人としては出席をできかねるということで、先生にもその旨をお答えしたとおりでございます。先生の二十三日の予算委員会の御質疑の要点というのは大体四点ぐらいあると思っております。
 一つは、現場の下請の実態というものを元請はもっとよく把握するべきではないか、こういうことを第一点先生はよく御質問になっておられます。それからもう一つは、公共の発注者も単に発注をするだけということだけではなくて、建設労働者の雇用の労働条件とか労働福祉の状況とか、その他いろいろな条件をなるべく的確につかむように努力すべきではないか、これが二点であったと思います。それから三番目は、事故防止の一つの方法として総合元請業者の責任の明確化を図るべきではないか。これは今回の法改正にもその趣旨のあれがあるわけでございます。それから四番目に、先生が従来から言っておられます、現場におけるいろいろな事故防止対策とか、あるいは他産業に比べて大変労働条件が落ちる、これを何とか三種の神器でも他産業に負けないように改善をしていくべきではないか、こういうようなことではなかったかと思います。
 こういう先生の御質疑の具体的な点につきましては、先ほど私が全国中小建設業協会あるいは全国建設業協会と申し上げましたけれども、これ以外の団体にも、例えば定期的にございます専務理事会あるいは役員会等を通じていろいろな場でお伝えをしているわけでございます。ただ、なお具体的に委員の方からお話をしたいということであれば、どういう場があるのか、やはり全国建設業協会初め各産業団体の長というのはそれなりに大変多忙な身でもございますので、そういう中で可能性があるかどうか、今後十分検討してまいりたい、こういうふうに思っております。
 以上でございます。
#49
○細谷昭雄君 よろしくお願いします。
 次に、具体的な内容についてちょっとお伺いしたいんですが、四月十五日の本法案の衆議院の労働委員会がございました。私もここに議事録を持っております良重複すると思いますが、この中でなお確かめたい点、詰めていきたいというふうな点がございますので、質問したいと思います。
 まず、建設省の労働安全衛生の基本姿勢というものに関して、ここに大変立派な文書がございます。「建設省の工事安全対策」、平成四年の一月二十九日に建設省が記者会見をして世間に公表したという点で、これはもちろん非常に事故が多いということにかんがみてこういうふうにやったことだと思いますので、それ自体は評価できるわけです。ただ、その意気込みはわかりますけれども、問題点は何かといいますと、この事故多発の原因というものに対して、ここを開きますとすぐ目につくのがあるんです。
 冒頭にこう書いてあるんです。「建設工事における施工の安全確保については、作業員の不注意による事故、第三者による工事現場への侵入事故等」と、書き出しかこうなっているわけです。中の方の統計を見はすと、それが全体の事故の四八%、つまり四八%に上る事故がいわゆる労働者の自己過失であるというふうな断定の仕方をしておるということで、衆議院の労働委員会でも同僚の議員がこれを厳しく追及したわけです。ただ、どうもその回答が私はぴんとこないんです。
 そこで、今もう一度確かめたいと思うんですが、これは私は、建設省の労働災害に対する基本的な認識や姿勢の根底にかかわる問題だというふうに思っているわけです。つまり、この多発する労働災害というのが、果たして労働者といいますか、作業員の不注意なんというそんな簡単なことで括弧にくくられたんでは、こんな法律なんか要らないわけですよ、本当は。私は、そこにやっぱり非常に問題があるというふうに思いますし、同僚の岩田議員もそのことをついておるわけでありますが、どうもその点がはっきりしない。
 その原本は何かと見ますとこれなんですね、原本は。四八%の原本。そして、いわゆる労働者の過失責任みたいなのをこの中から拾っておるというふうに言うんですが、これはどこを見ても労働省の皆さん方に探してもらってもその結論は出ないんです。四八%も出ないし、労働者の過失責任みたいなことも出てこないんです。全く誤った認識で誤ったことを世間に公表してもらっては困るというふうに思うんです。私はそこが一番問題だと。
 もうしかと、小野審議官からでも結構ですし豊田審議官からでも結構ですが、大臣にかわってこの点はすかっとした弁明をしていただきたいと、こう思います。
#50
○説明員(青山俊樹君) ただいまお話ございました衆議院で御説明申し上げましたのがちょうど私でございますので、私の方から御説明をさせていただきたいと思います。
 「建設省の工事安全対策」での本人の不注意という記述は非常におかしいではないかという御指摘でございますが、先生おっしゃいました四八%という数字は、これは添付資料の事故原因別死亡者率の分類ということでやったわけでございます。これは、建設省におきます工事の安全対策を検討するための本当の基礎データとしまして、労働災害の原因につきまして入手した資料、これがこの「労働安全衛生年鑑」でございますが、この入手した資料について内部で議論しながらその分類を試みたものでございます。事故は私どもも幾つかの要因が影響し合って発生する事例が多いという、十分承知いたしておりまして、この分類はあくまで千という非常に多い事例があるわけでございまして、この千の事例を大まかにグループ分けするというための分類でございまして、事故原因ということを断定したものではなく、対策に結びつく真の原因であるという認識は一切いたしておりません。
 作業員の転落や車両運転ミスなどの事例の多い事故につきまして、その状況を把握して対策を検討するために分類したものでございますが、この状況だけでは詳しいことはわからないのも事実でございます。このような事故についてもっと突っ込んだ分析をしまして、具体的な原因を追求して再発防止の対策を講じ、たとえ万が一事故が起きてもそれが重大事故、死亡事故にならないような対策について検討していかなければならない、このように考えております。
#51
○細谷昭雄君 意気込みは私も評価するし、だれも疑わないとは思うんです。これはもう記者会見までして、しかも世間の皆さん方に、事故をこうして防止するんだという意気込みを見せるということだと思うんです。だとすれば、極めて科学的でなくちゃいけないし、担当の労働省とも十分協議した上でこれは発表しなくちゃいけないというふうに思うんです。それがなされないというところに建設省のいわゆる安全対策に対する何か傍観的な、そういう役人的なところが私は見えてしょうがないんです。
 今の室長のいろんなお話でも、やっぱりこれは誤ったイメージを与えるんです。作業員が不注意でけがしているんだから、我々はちゃんと注意しているんだけれども、勝手にすぐけがするんだというふうに言わんばかりに聞こえるわけ。これは責任転嫁だと思うんです。ですから、この一月二十九日のいわゆる安全対策の中にいろいろ書いているんです。基本的に認識が誤っているとすれば、この対策は撤回して書き直すべきだというふうにさえ思っているんです。この点についてはどうですか。
#52
○説明員(青山俊樹君) 繰り返しになりますが、先ほどお話し申し上げましたように、事故の発生には幾つかの要因が影響し合って発生する事例が多いという認識を私どももいたしておりまして、事故原因別死亡者率の分類というのは、工事安全対策を検討するために約千の事例を大まかにグループ分けしたものでございまして、対策に結びつく真の原因であるという認識はいたしておりません。
 大切なことは、墜落等の事故が発生した場合にでも、本人の不注意であったということで済ますことなく、一つ一つ事故原因を丁寧に分析して、具体的な安全対策に結びつくような原因を追求し、設計、積算等にフィードバックする努力をすることであると思っておりまして、このような経験の積み重ねによりまして、「建設省の工事安全対策」をより充実したものにしてまいりたい、かように考えております。
#53
○細谷昭雄君 しかと今のお話を承っておきたいと思います。
 次に、これは全言ったような認識なり、ないしは考え方の出発点ですから、これはもうぜひ訂正していただきたい。そして、やっぱり世間に公表する場合は、皆さん方が正確な公正な判断ができるような発表の仕方そして対策を立てることを再度要請をし、今後至急なるべく早い機会にこの工事安全対策の改訂版を出していただきたい。建設省でありますが、我々のこの労働委員会にも配付をしていただきたいというふうにお願いします。
 次に、ここにも資料ありますが、建設産業における総合的な安全確保に関する研究会、これをつくったそうでございます。これの目的、それから趣旨、構成メンバー、これについて大略で結構ですから、私はわかっていますが、ほかの委員の皆さん方がおわかりにならないと思いますから、簡単に説明願いたいと思います。
#54
○説明員(風岡典之君) お答えをさせていただきたいと思います。
 先生御指摘になられました建設産業における総合的な安全確保に関する研究会、これは昨年の十一月二十五日に設置をいたしております。先ほど労働省の方からもお話がありましたように、建設業においてはいろいろな厳しい環境がありまして、ぜひこの際総合的な安全対策を確立していきたいということで、この委員会を建設省としても設置をし、スタートをしたわけでございます。
 構成のメンバーでございますけれども、全体としまして学識経験者の方、それから業界の代表の方、それから行政担当者等から成りまして、全体として三十四名で構成をしておりまして、委員長は早稲田大学の吉川先生にお願いをしているところであります。これまで、昨年以来本委員会は三回ほど会合を開いておりまして、またその下にワーキンググループというのを設置しましてこれを数回開催いたしまして、安全対策につきましての基本的な方向あるいは具体的な対策について御議論をしていただいているところでありまして、近々中間的な取りまとめを公表していただく予定にしております。
#55
○細谷昭雄君 意欲は私も買います。問題点は先ほどと同じだと思うんです。大体、労働災害というのはだれが災害を受けるのかというと働いている労働者なんです。にもかかわらず、このメンバー、そうそうたるメンバーだと思うんですが、もう半分以上が学者の先生方とか各企業の社長とか、そういう人力です。そしてあとは小野さん以下ずっとお役人です。一人も労働組合の代表も入っておらなければ働いている労働者の代表が入っていない。一体これで研究になりますか。しかも、建設産業における総合的な安全確保、学者が安全確保を考えたり社長が考えたりするのはこれはもちろんそうでしょうが、一番身近に危ないと思っているのは労働者なんですっそれを入れておらないというところの感覚が、先ほどのようにいわば自己責任みたいなことで押しつけていくということに通じているんじゃないかというように思うんです。この点、これはもう絶対承服できないと思うんです。
 しかも、研究会は皆さん方のポケットマネーでやっているんじゃないんでしょう、公費でしょうが。公費でやりながら、今どこの審議会だってそうです、三者構成です。特に労働関係、こういう関係はもう三者構成です。これは常識なんです。その研究会をつくる基本が間違っているんじゃないか、こんなふうに思えてしょうがないんですが、その点どうですか。
#56
○説明員(風岡典之君) この研究会でございますが、建設省に直接置いているわけではございませんでして、財団法人の建設業振興基金というところに設置をしていただいております。ただ、公的な団体でございますので、先生御指摘の趣旨というのはもちろんそのとおりだというふうに考えております。
 私どもといたしましては、この研究会の考え方でございますけれども、実際に建設工事を担っていただくのは総合工事業者、いわゆるゼネコンと専門工事業者、そのサブコン、それぞれの方々が一定の役割分担のもとに実施をしていただいておりますので、業界の関係につきましてはそういった方々をメンバーにさせていただいております。
 先生御指摘になられましたように、直接の労働者が入ってないじゃないかという点でございますけれども、私どもこのメンバー構成を検討するに当たりましては、特に現場に近い専門工事業者の方々、これは直接施工をされているわけでございますが、そういった方々は日ごろから労働者の方々と直接日々接触をしているわけでございまして、私どもとしてはそういった現場の実情に十分精通している専門工事業者の方に入っていただいて、それを通じまして実際に働く人々の意向、御意見、そういったものも反映できるのではないかということでスタートをさせていただいたわけでございます。
#57
○細谷昭雄君 今働いている人を直接審議会に呼べと私は言っているんじゃないんです。私だって出稼ぎ関係の全国組織の責任者です。私だって十分入れると思うんです。二十数年間この事故問題については取り組んできました。そのほかに連合もあります。全建総連もあるんです。なぜそういう代表を入れないのか。すぐ皆さん方はこういう研究会は直接建設省でやっておらない、私金協会だと言うんですが、それは全部公金でやっているんです。即刻私はメンバーの差しかえといいますか追加、これをすべきだというふうに思うんですが、いかがでしょうか。これはもう小野審議官だと思うんです。
#58
○説明員(小野邦久君) 今私どもでやっております安全対策委員会のメンバー構成の問題でございますけれども、考えました趣旨は、先ほど建設業課長の方からお答えをしたとおりでございます。やはり繰り返しになりますけれども、直接人を使っておられる専門工事業の方々から御意見を十分聞くことによって実際に衝かれる建設労働者のお声は十分反映できる、こういうふうに考えたわけでございます。
 それと同時に、これは決して私言いわけを申し上げるわけではございませんけれども、例えば私どもの中央建設業審議会、これは元請とそれから発注者、建設業者と発注者というのは大変利害が対立をするわけでございます。そういうこともございまして発注側と受注側を必ず同数、それを上回って学識経験者を置いて審議をしろ、こういうようなことが中央建設業審議会の考え方の基本にございます。そういったような流れの中で、建設産業政策としての安全対策を考えていくという場合には、現場でやはり公共的な発注者としての行政側あるいは受注者としての総合工事業者と専門工事業者の方々、こういう方々に入っていただいて、それから学識経験者にももちろんお入りいただいて議論をしていこう、こういうことで考えた次第でございます。
 確かに、建設労働者の方々が今の委員会の中に入っていないではないかというのは御指摘のとおりだと思います。それにつきましては、先ほど申し上げましたようなより以上に反映されるような方法がないかどうか、今後も十分引き続き検討していくというふうにしたいと思っております。
 きのうは、先生におかれましても私どもの関東地建の直轄の現場を御視察をいただきまして安全対策についていろいろ御教示を賜ったわけでございます。大変熱心に先生は建設工事の安全対策に取り組んでいただいているわけでございます。私どもも建設工事の安全をどう確保していくか、事故をどう少なくしていくかというのがこれからの建設産業にとって最大の課題で値ないか。公共投資基本計画ではございませんが、これなくして四百三十兆の、あるいは豊かな住宅、社会資本の整備はできないというふうに考えております。一方で、大変マイナスの要因と申しますか、例えば高齢化が進展をするとか、現在の全体の建設業雇用者の中で建設業に従事される方々の比率がどんどん低下をしてくる、こういう中で大変思い悩んでいるわけでございます。
 今の先生の御指摘を踏まえて、個々の現場で働かれる労働者の御意見というものが的確に反映されるような、そういう具体的な方法を今後考えてまいりたい、こういうふうに思っております。
#59
○細谷昭雄君 ぜひ御検討をお願いしたいというように思います。
 それで、私はきのうも皆様方の直接の現場に見学に行ってまいりました。お伺いしますと笹野先生もこの前お伺いしたそうでございます、その現場を。いろいろ現場では皆さん方が頑張っておるわけでありますが、私は毎年冬二カ月ぐらい関東、関西それから東海の三地区をそれぞれ回ってまいります。そのときにもよく感ずることなんですが、今ちょっとお話がありました、建設省は発注者の立場でもあるわけですが、同時に全建設業関係における統括する役所でもあるわけです。それぞれ両面を持っているわけです。
 そういう意味では、今回の法律改正の趣旨にもございますが、何といっても安全対策、いろんな発注の段階、計画の段階から十二分に安全対策についてはもう力を入れなくちゃいけない、こういう趣旨での改正でございますので、そういう意味においては建設省は何か発注者、従来の発注者という立場、監督する立場というところに立っておるんじゃないか。労働省はそうじゃなくて、労働省は完全に労働安全衛生の当事者という立場でやらざるを得ないしやらせられておるわけです。問題は、建設省には当事者意識というのがどうもまだ、希薄とまでは言わないけれども、労働省と同じような立場で、自分のものとしてはとらえておらない、こんな感じがするんです、ずっと回ってみて。そのことが基本的に私はやっぱり問題だというように思うんです。
 小野審議官に再度お聞きしますが、きょうは山崎建設大臣にかわっての話なんですが、そういう全省挙げて、そして各地建、各出張所、事務所、この段階で本当に労働省と一体になって、労働省と同じような立場で、当事者という意識でやらせるようにするためには一体どうしたらいいのか、このことを所見で結構ですから、これは大臣にもきちっと伝えていただきたいと思うんですけれども、当事者になるというその気持ちを第一線の皆さん方に出させるんです。これがやっぱり事故を防ぎ得る決め手じゃないのか、私はこんなふうに思うんですよ。このことについて小野審議官の御所見を伺いたいと思います。
#60
○説明員(小野邦久君) ただいまの、私どもの各地方建設局あるいは事務所がどちらかというと発注者の立場で、当事者の立場と申しますか、スタンスの置き方「これがもうちょっと当事者寄りと申しますか、そういう点を含めて考えるべきじゃないか、こういう御指摘でございますが、私どもの地方建設局あるいは各工事事務所は具体的な直轄の工事の施工を担当いたしておりまして、これは公共工事でございますので原資はすべて税金、こういうことになるわけでございます。効率性あるいは安全性を含めまして、効率的に事業を実施していくということは最大の課題でございます。したがいまして、ある意味では発注者の立場、良好な住宅社会資本の整備を進めていくという、そういう発注者の立場と申しますか、全体の調整者の立場みたいなものがどうしても前面に出る、こういうことはあろうかと思います。ただ、これはそれぞれの立場立場でどこに基本的な視点を置くかということでございますので、ある程度やはりやむを得ないことではないか、こういうふうに思うわけでございます。
 ただ、今先生の御指摘の当事者の立場と申しますか、恐らくは具体的な工事をやっていく場合に、現場で働かれる労働者の方々、あるいは総合的な安全対策のあり方、あるいは地域とのかかわり合いとか、そういったようなことも含めて当事者として本当に考えていくべきではないかということももっともな御指摘でございます。私どもは、建設産業政策という立場だけじゃなくて、全体の住宅社会資本をより効率的に円滑に問題なくどう進めていくのかということを従来省内ではいろいろ議論をいたしております。御指摘のとおりうまくいかないという面もあるいはあろうかと思いますが、従来いろいろな場で議論をし、努力をしてまいりましたけれども、なお今後とも引き続きより一層努力をしていきたい、こういうふうに考えております。
#61
○細谷昭雄君 ぜひお願いしたいと思います。
 それで、法案について労働省にお尋ねしたいと思うんですが、労働省の統計によりますと、建設業における十人未満の事業所、零細でしょうね、この零細事業所における死傷者数、これは負傷者も含めて全死傷者の五五・三%に上っておる。つまり、圧倒的に零細企業が多いという統計でございます。しかも、昭和五十一年度から十年間、この十年間の労働災害発生率が、百人以上という大規模なゼネコンでしょうね、この企業で六〇・八%下がっております、百人以上の大企業、ゼネコンでの災害は。それに比べて、四人以下の零細企業ではわずかに二〇・六%しか減少しておらない、これが労働省の統計でございます。つまり、企業の規模によって労働災害死傷事故が大きく左右される、これが具体的に出ておるわけであります。
 今回、この法律改正に当たって、中央労働基準審議会の建議がございます。この中に、中小規模の建設現場の状況を踏まえながら、規模三十人以上の現場については現場ごとに統括安全衛生責任者、この選任をすること、そして規模十人以上の現場については新たに店社安全衛生管理者、これを配置して巡回指導をさせることが必要である、このように提言をされております。
 そこでお尋ねするんですが、店社安全衛生管理者の対象になる現場は、中央労働基準審議会の建議では規模十人以上となっているのに対し、改正案では二十大規模となって大幅に後退をしております。なぜ建議を生かせなかったのか、端的に率直にその理由を示していただきたいと思います。
#62
○政府委員(佐藤勝美君) 今回、この法案で新設を予定しております店社安全衛生管理者制度でございますけれども、これは言うまでもなく、中小規模の建設現場におきます統括安全衛生管理が適切に行われるようにするために新たに設けられるものでございます。したがいまして、私どもとしてはこの新しい制度を実効あるものとして定着させていくことがまず重要であるというふうに考えております。
 今御指摘のように、建議では十人以上の現場を対象とするということになっておるところでございますけれども、一挙に規模十人以上の現場を対象とするということになりますと、主として規模十人未満の現場を施工していて規模十人以上の現場が一つ二つしかないような小さな建設会社についてまで店社安全衛生管理者の選任を要するということになるわけでございます。新たに店社安全衛生管理者を雇用したりしなければならない場合も考えられるなど過大な負担を課すおそれもございますので、そういった場合には円滑に制度を実施することが困難になるのではないかというふうに考えたものでございます。そのために、店社安全衛生管理者制度の対象は規模二十人以上で災害発生の危険性の高い現場とすることとしておるところでございます。
#63
○細谷昭雄君 いろいろ配慮があって、建議があったんだけれども、提言があったんだけれども、法案文には盛ることができなかったと率直に我々にも明かすべきなんですよ。いろいろな点を我々も推測はし、理解はできるんですけれども、やっぱりこれは根幹に触れる問題でございますので、後ほど大臣にお聞きするんですけれども、今回の法改正を契機にして、中小規模、特に零細現場、これがさっき言ったように大半の死傷事故を出しておるということにかんがみ、放置するというわけにはまいらないわけであります。
 それで、この零細企業の労働災害の防止対策というのを一体どう取り組むつもりなのか。私は、建議したよりも十人以下についても本当は必要だというふうに思うんですけれども、いわゆる法令上は対象とならなかった現場を含めてどのように今後その実効を上げていくのか、この対策を明らかにしてもらいたい。例えば通達を出して、その通達の中にマニュアルを全部示すんだというのでも結構ですよ。やっぱり提言が生かされなかったということですので、これは重大な問題ですから、その点で明らかにしていただきたいと思います。
#64
○政府委員(佐藤勝美君) ただいまの御質問でございますけれども、特に中小零細の現場についてどういう具体的な対策を実効が上がるようにとるかということでございます。
 まず、中基審、中央労働基準審議会の建議に沿いまして、店社安全衛生管理者の選任を要する店社につきましては、当該店社安全衛生管理者に、規模二十人未満の現場も含めまして統括安全衛生管理の指導を行わせるよう指導すること、それから店社安全衛生管理者の選任を要しない店社であっても規模十人以上の現場があるものについては、店社に安全担当者を選任するように指導すること、それから規模三十人以上の現場につきましては、法令上統括安全衛生責任者等の選任を義務づけられていないものであってもできる限り現場ごとに統括安全衛生管理体制が設けられるよう指導すること、こういった内容を盛り込みました指導要綱を策定いたしまして、これに基づきまして中小規模現場において統括安全衛生管理体制の整備充実が図られるよう事業者に対しまして強力に指導してまいりたいというふうに考えております。
 それから、店社安全衛生管理者の選任を要しない店社で規模十人以上の現場を有するものに置かれる安全担当者につきましても、本年十月から実施いたします店社安全衛生管理者レベルアップ研修の対象に加える、それから建設業労働災害防止協会に委託して新たに配置をするアドバイザーに店社安全衛生管理者の選任を要しない中小規模の建設現場を含めまして統括安全衛生管理の手法等についての指導、援助を行わせることによりまして、統括安全衛生管理体制の整備が円滑に進むよう援助を行ってまいりたいと存じます。
#65
○細谷昭雄君 統括安全衛生管理体制というものを充実させるために、今指導要綱というふうにおっしゃいましたが、具体的な問題、これをつくって、建設省の皆さん方とも連携をしながら、これが現場に生かされるようにぜひ零細企業のいわば労災をなくしていくという観点で取り組んでいただきたい。血の通ったそういう行政をお願いしたい。再度お願いしたいと思います。
 そこで、近藤労働大臣に確認をしておきたいと思いますのは、今一連の議論がありました、これからもするわけですが。公的な審議会、これは労働大臣の諮問機関でございます中央労働基準審議会、この審議会をわざわざ開きまして今回の法律改正、これを諮問した。中身については本当はいろいろ問題があるんですが、非常に拙速だったというふうには思うんですね。しかし、いずれにしましても建議をされた、提案をされた。これを今局長の御答弁がありましたが、いろんな配慮からそれが生かされなかった。落としたのがたくさんあるわけです、これから指摘しますが。これは言うなれば審議会に対する答申をいわば受けながらそれを生かさなかったということは根幹に触れる問題だと思うんです。したがって、これは大変重大な問題だと思うんですけれども、なぜ入れられなかったということは、審議会を十分やれば、ああそうかというふうにそれは余り理想的なのは落とすはずないんです、本当は。私はそういう観点で極めて不十分だったんじゃないのかというふうな疑いさえ持っているんです。
 いずれにしましても、審議会に諮問をし、建議された、それは生かされなかった、法案としては出てこない。そして、指導要領なり通達なりマニュアルなりでそれを補足していくという格好をとるわけですね。私はこれは問題だと思うんです。ですから、今回の法案提出を含めまして、こういう問題に対する近藤大臣の基本的な考え方、これを確認しておきたいと思うんです。今後またあるんです。来年のいわゆる労働基準法改正という本番に向けてまたあるんですから、その点を確かめておきたいと思います。
#66
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先ほども申しましたように、労働災害の防止というのは私ども労働行政の最大の課題でございまして、これに十分を期したい、こういうことで中央労働基準審議会にいろいろ御検討をお願いいたしました。その建議に沿ってまずできるものから実現をしてまいる、こういうことでございます。
 さしあたって、建設現場の中、特に中小規模の建設現場の中で労働災害の発生が残念ながら多い、こういうことでございますので、今度の法律も新たに店社安全衛生管理者制度というものをつくりまして、そして従来以上に中小企業の末端まで衛生、特に安全管理が行き届くように措置しているわけでございますから、まずこの法律を通していただいて、これに基づいて従来以上に監督指導体制を強化して確立していくということでございます。
 先生の御指摘のいろんな問題についての建議といいますか、御提言があったじゃないか、こういうことでございますが、こういった問題につきましても逐次いろいろ内部で検討して、具体的に実行できるものから取り上げさせていただいて施策の充実を図っていきたい。建設現場の安全確保というのは大きな問題でございまして、今いろいろ議論がございましたけれども、これは例えば発注から単価から時期から設計からいろんな問題、これはある意味では総合的な体制の中で初めて建設現場の安全というのが確保できるわけでございますので、先ほど言いましたように、まず一つ一つ具体的にできるものから実現をさせていただきたい、こういうことでございますし、また、きょうは建設省からも見えておりますけれども、建設行政の現場の皆さんの御意見というものも十分承りながらやらせていただきたい、こういう考えでございます。
#67
○細谷昭雄君 具体的な法案の中身にまた戻りたいと思いますが、労働災害の防止の責任は何といっても私考えるにやっぱり総合工事業者といいますか元請ですね、元請側が決まらないという部分が一番大きいんじゃないか、こんなふうに常々思っておるんです。
 法文では、安全衛生法の第二十九条というのがございますが、ここには元請の責任というのが明示されております。しかし、責任があるというふうに明示されておりましても、この二十九条は残念ながら罰則規定がございません。罰則がないんですよ。具体的には、現場の安全衛生管理のもとで労災事故が起こった場合、労働者が亡くなったとかないしはけがをしたというふうな場合には、この条文のもとでは元請は責任があっても形としては全く何らの処分も受けません。不思議なんですね。
 そして、実際処分をされるのはだれかといいますと下請なんです。下請が送検され、そして罰金を取られ、さらには指名のいわば取り消し、契約の破棄、そして倒産に追い込まれる場合もあります。つまり、罰金なんというのは三十万程度ですから痛くもかゆくもないんですよ。そんなものはもう何でもないんだけれども、罰金に処せられるということ自体が看板に傷がついて指名権の取り消し、それから契約の破棄、つまり商売にならないということなんです。二十九条というのはこういうふうにまことに抜け穴のある極めて不平等な、弱きを助けじゃなくて、強きを助け弱きをくじく悪法なんですね、この条文は。
 もう私は、年来二十九条は改正しなさいというふうに言ってきたんです。しかし、幾らたっても、今回の改正で多分罰則つくだろうと思ったらまだつかないんです。皆さんおわかりでしょう。こんなばかげた条文によってぬくぬくとゼネコン、大企業の元請は常に責任を免れているんです。そして、いつも泣くのは下請なんです。これは全く社会主義に反すると思うんです。この二十九条というのは、その意味で元請の事実上の責任を放免するという条項なんです。私は許せないと思うんです。反面、下請の事業主というのは非常に気の毒なんです。
 そこで、二十九条にも元請の責任を裏づけるための例示、罰則、これを設けるべきだと思うんですが、局長、どうでしょう、これは年来私が主張していることなんですが、きょうはきちっとした前向きの所見と答弁をお願いしたいと思います。
#68
○政府委員(佐藤勝美君) 労働安全衛生法では、請負人におきます労働災害を防止する上で元方事業者が適切に関係請負人を指導することが大変重要でございます。ただいま御指摘の二十九条におきまして、元方事業者に対して関係請負人が労働安全衛生法令に違反しないように指導すること、それから関係請負人が違反をしていると認めるときは是正のための指示を行うことが義務づけられているわけでございます。
 しかしながら、元方事業者が請負人に対して行うべき指導、指示の内容は現場の状況等に応じまして多岐にわたるものでございます。罰則を適用する上でどこまで指導等を行えばその義務を果たしたことになるのか甚だ特定しがたい面があるために、第二十九条には罰則を設けていないものでございます。
 しかしながら、今後とも元方事業者に対しましては、この第二十九条の措置が徹底されるよう指導していくこととしておりますけれども、今回の改正において元方事業者によります安全管理体制の強化を図ることといたしておりますので、これによりまして元方事業者の関係請負人に対する指導等も充実されるものというふうに考えておるところでございます。
#69
○細谷昭雄君 これは特定できない、これはもう何回も聞きました。いろんな場所によってその事業、工事の態様によってもう無数にある、だから特定できない。特定できるものから特定していくべきだというふうに思うんです。部内の研究会なんかはそのためにつくるべきだと思うし、長い経験がありまして蓄積があると思うんです。そういう点を補足していく、そして逃げ道をふさいでいくという努力をやらなくちゃいけないと思うんです。私は非常にこの点は憤慨にたえません。
 今回、新たに元請事業主と注文主に対しまして、作業場所の安全確保のための措置を義務づけられることにされた規定がありました。例えば十五条の三、それから二十九条の二、三十一条の三、これがそうなんですが、いずれも元方事業主や注文主に対する責任の明示、これは評価できます。そこまで評価できるんですよ。さっき言ったように二十九条と同じなんです。責任はあるといいながら罰則がない。これが問題だというように思うんです。したがって、この罰則を免れないように元方事業者ないしは注文者に罰則適用、これを今後二十九条の改正と同様に検討すべきじゃないか、こんなふうに思うんです。一連のそういう将来の問題としてこれは補足していく、対象を。これはやっぱり努力をしていただきたいと思うんですが、どうでしょうか、局長。
#70
○政府委員(佐藤勝美君) 今回の改正で罰則を設けなかった理由につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますけれども、いずれにしましても現在御審議をいただいております改正法案の中身は、災害発生の現状を踏まえてのものでございますから、今後の災害発生の状況に即していろんな検討を行うということは当然でございます。そういうことの一部として研究をしてまいりたいというふうに思います。
#71
○細谷昭雄君 建設省の皆さん方、どうでしょう。先ほど挙げられましたが、重層下請構造という日本独特の建設現場における構造というのがこういう事故を多発させている原因の一つだというふうに私は思っているんです。
 それで、重層下請構造、それをやらないとなかなか日本の建設業というのは成り立たない、それはもうそのとおりなんです。常に下請にだけ、いじめるというのは語弊がありますけれども、元請はのうのうと何をやっても罰せられない、そしてもうけはたっぷりもらう、これは統計ではっきりしているんです。ゼネコンのもうけというのは今まで大変でございました。恐らくことしも公共事業の前倒しで一番もうかるのはゼネコン、そしてピンはねという言葉はここでは妥当じゃないと思うんですが、結局下の方は本当にわずかの経費で一生懸命やって、事故が起きると一遍に処分される。やっぱり重層下請構造の改善、合理化、これは非常に重要だと思うんです。
 これは、後ほどまたやりますけれども、率直に言ってこういうふうな問題が事故多発の原因だと思うんですが、この点について建設省は業者をどういうふうに指導するか、そのポイントは何なのかということをお知らせ願いたいと思います。
#72
○説明員(風岡典之君) 個別の事故につきましての原因、もちろんケース・バイ・ケースでございますが、非常に一般的に申し上げますと、先生御指摘のように、不必要な重層下請、こういったものが適切な施工体制の確保の面からも非常に問題が多くて、事故の原因の一つにつながる可能性というのは御指摘のとおりだと思っております。
 私ども建設工事、これは総合工事業者と専門工事業者、両者がやはり適切な役割を持って実施をするということは、これは建設業としてどうしてもそういう生産形態というのは残っております。私どもとしては、そういった元請、下請関係というのにつきましては建設生産システム合理化指針というのをつくりまして、できるだけ不必要な重層化を避けるとか、あるいは施工の責任の不明確さ、そういったものを明らかにしていくというようなことで、いろいろな改善を指導しているところであります。
 今後とも、そういった指針等によりまして、業者に対する指導というのを一層強めてまいりたいと思っております。
#73
○細谷昭雄君 大臣に午前中のまとめ、締めくくりとしてお願いしたいんですが、これまで議論をいたしましたとおり、お聞きのとおり建設業の現場の労災というのは、これは大変に複雑だというふうに言わざるを得ないわけです。実際は、元請が大きな責任を持ちながら処分されることもない、そして常に下請が、乏しい資力で技術力もない、そして非常に前近代的な機構の中で労災に遭う、こういうふうなことを放置するということになりますと、これはどんな法律をつくってもなかなか実効が上がらないと思うんです。
 今回の法改正の目指すものも、ここに手をかけないとやっぱりだめだと。私は元請責任を明確にすることが先決だというふうに主張しているわけですけれども、ひとつ可及的速やかに抜本的な元請責任を明らかにするような、私が主張するようなそういう法改正をするべきだというふうに私は思うんですが、大臣いかがでしょうか。
#74
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生からいろいろこの委員会におきましてもございますように、建設現場の安全確保のためには、当然元請による下請業者の指導や監督やまた協力、こういったことが必要であることはまさに論をまたないことでございます。
 その中で、今回は二十九条の二の規定を新たに加えまして、そういった元請の側の責任についてもきちっと法文で示したわけでございます。
 ただ、そういうことでございますけれども、しかし実際の事故は現場で起こるわけでありますので、現場の請負の責任が最終的には大事でございますから、これについてはきちっとした罰則体制強化ということを考えているわけでございますが、そういった現場の責任者についての元請側の責任は、それなりに十分に考えなきゃならないことでございますし、私は元請といっても建設現場で事故が起こることについては従来とも非常に慎重であったとは思います。思いますが、こういう形で一つの指導、配慮というものを義務化してございますから、直接刑事罰としての責任は、現場であっても総合的な責任というものは避けることができないわけでございますので、やはり重大な事故が起こったような場合に、元請がどういうようなことを下請にやったかということについては当然調査の対象になって、まさにそういったことでしかるべき指導が欠けたというようなことがあれば、私はそれなりの責任はおのずからとってもらわなきゃならないことになる、かように考えております。
#75
○理事(仲川幸男君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午後零時一分休憩
   午後一時開会
   〔理事仲川幸男君委員長席に着く〕
#76
○理事(仲川幸男君) ただいまから労働委員会を再開いたします。
 午前に引き続き、労働安全衛生法及び労働災害防止団体法の一部を改正すみ法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#77
○細谷昭雄君 午後の質問を始めたいと思います。
 労働省は昨年の十二月、労働安全衛生法の百条に基づいて労働災害の報告書を提出せずに、俗に言う労災隠し、これを締め出すための通達を出したというふうに伺っておりますけれども、その趣旨と内容、そして結果はどうなっておったのか。それに対して局長は厳しく対処するというふうに衆議院の労働委員会でお答えしておるようでありますが、その後余り変わった情勢はないと思うんですけれども、もう一度確認のために質問したいと思います。
#78
○政府委員(佐藤勝美君) ただいまのいわゆる労災隠しに関します通達でございますけれども、今おっしゃいますように、労働安全衛生法の百条に基づきまして定められております規則の九十七条で労働者死傷病報告書を監督署に提出する義務を定めているわけでございます。
 いわゆる労災隠しと言われておりますものは、労働災害等の発生事実を故意に隠す目的で労働者死傷病報告書の提出を行わないもの、あるいはまた提出はしておりますけれども虚偽の発生事実を記載して提出するものを言っておるわけでございます。こういったいわゆる労災隠しを行う事実があるという旨の指摘が最近特にいろんな方面からなされるような状況が見受けられるところであります。
 労働基準監督機関といたしましては、このような労災隠しか横行するということになりますと、労働基準行政の大きな柱でございます労働災害防止対策の的確な推進を危うくするということになりますので、こういった労災隠しの事案の排除の徹底を期する必要があるというふうに考えたわけでございます。もとより、通達を出さなくてもこれが適正な届け出をしないということはそれ自体も違法なわけでございますが、こういう状況にかんがみまして昨年十二月に通達を発出いたしたところでございます。
 この通達におきましては、臨検監督、集団指導等あらゆる機会を通じまして、事業者等に対しまして労働者死傷病報告書の提出を適正に行うよう指導を徹底するということと、それから労働者死傷病報告書が提出された場合におきましても虚偽の記載がないかどうかについてその内容を十分審査する、労災隠し事案の発見に努めるというものでございます。万一、労災隠しの存在が明らかになった場合には、その再発防止の徹底を図るために厳正な処置を講ずること等を主な内容といたしております。
 監督機関といたしましては、今後とも労災隠しか行われないよう的確な監督指導を実施するとともに、万一そうした事案を発見した場合には厳正に対処する、そういうことによりまして労災隠しの排除に努めてまいりたいと思っておりますが、昨年十二月にこの通達を発しまして以降、その前と具体的にどう変わったのかという点につきましては、まだそう長い時日がたっておりませんので、特段ここで御報告申し上げるようなものは出てきておりません。
#79
○細谷昭雄君 私の経験でも、通院できる程度のけが、こういった場合はほとんど職場ぐるみ、小さな企業でも企業ぐるみでいわば一般の健康保険で済ましてしまう。かかった費用は全部会社持ちという形でやっているというのがしばしば見受けられます。私にもそういう点を訴える人が多いわけですが、通達行政に頼らざるを得ないという監督官の臨検体制の弱さというのもやっぱりそこにあるんじゃないか、こんなふうに思うんです。
 今局長から労災隠しの摘発、それからそれに対するいろんな処分ということをお聞きしましたが、監督官の臨検監督、つまり現場に行って監督するという実施率を見ますと、逐年低下の一途をたどっているというふうに言えます。
 例えば、ここに統計ありますけれども、昭和三十五年、これは二一%であった。これは労働省の統計です。それが昭和六十二年ですから約三十年後ですね、六十二年度の実施は五・四%。一二%から五・四%に三十年間で下がっているわけです。
 一方、その原因を調べてみますと、監督官の実数といいますか定数ですね、この定数も出していただきましたが、この定数を見ますと、昭和五十四年度で監督官の人員が全国で三千百六十人。それに対して事業所の数は三百二十二万一千カ所。昭和六十二年ですからそれから何年か後ですが、昭和六十二年度の定数が三千二百三十七人。若干ふえております。そして、事業所の数は三百七十一万九千カ所とさらに伸びております。これを一人の監督官の担当事業所数を出しますと、一人で千百四十六カ所、これは全国平均です。千百四十六カ所を担当する。一年は残念ながら三百六十五日しかありません。そして、さっき西野委員からお話がありましたとおり、やっぱり労働省だってちゃんと休まなくちゃいけない。週休二日入れますとほとんど稼働するというのはないわけなんです。
 私が回っていく大阪や名古屋の監督官の皆さん方から聞きますと、これは天文学的な数字になるわけです。一人で大体二千三百カ所から二千五百カ所。これは臨検体制は不可能なんです。これでは通達に頼らざるを得ない、労災隠しも。現場の点検も不可能なんです。こういうのを放置しておくということ自体が労災隠しや労基法違反ないしは法令無視、これをいわば野放しにしておるということになろうかと思うんです。
 そこで、大臣、現在の一律のシーリング方式の定員、これでは与えられた労働行政の職員というものを果たすことはできないじゃないか、こんなふうに思うんです。若干統計を見ましても、まことにこれはもう寒い気持ちがするんです。
 きのういただきました「労働基準監督官、安全専門官、衛生専門官等労働基準行政職員の推移」、これは基準局の職員だと思います。六十三年から平成四年までの数でふえたのが全体で五十七名です、五年間で。ところが、これもこちらの方がふえると別の方を減らされるという仕組みになっておるんです。それで、「最近五年間の職員の推移」を見ますと、労働省全体が昭和六十三年から平成四年まで、同じように五年間ですが、五年間で総定員はたった六人ふえたばかりなんです。したがって、基準局がふえると別の方が減らされるという相関関係なんです。これはもう完全に一律シーリング方式、先ほど西野委員から指摘されたとおりでございます。これでは到底、どんな立派な法律をつくりましても通達しか出せない、そして後追い行政ということしかできません。大臣、これに対する率直な御所見、そして労働省みたいな本当にこれからますます行政需要が多くなってくる、こういうところでは一律シーリングではだめだということを身をもって大臣が閣議の中で発言するとか、そういうふうにやらなくちゃいけないんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
#80
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生から大変大事な点の指摘があったわけでございます。
 御案内のように、定員削減を、これは歴代内閣がずっと実行してございまして、しかしそれにしても一律削減ではなしに、重要なところに必要な増員をあわせ図っておるんだ、こういうことでございますので、私ども労働省としては毎年しかるべき定員増をお願いしてまいっておるわけでございますが、なかなか思うようにいかないというのが現状でございます。ただ、その中でも基準行政、安全衛生確保につきましては、これも本当にわずかでございますが、六十三年、平成元年、二年、三年、四年とふえておるわけでございますが、その分はどこかがへこんでふえているというような面もございまして、残念でございます。
 我々は、やらなければならない仕事の重要さの認識は、先生の御指摘をまつまでもなく十分自覚してやっているわけでございまして、今後とも必要な定員は確保していく、増員は確保していくということで、これから省を挙げて取り組んでまいりたいと思います。同時に私は、労働省として人材の有効活用というものを一つの大きな課題にしておりますので、限られた定員であってもいかに効果的に事務の管理ができるか、そういった事務管理体制の効率化についても同時にこれから努力をしてまいりたいと考えております。
#81
○細谷昭雄君 ぜひお願いしたいと思います。
 私たちももちろんですが、建設省の皆さん方も、先ほど申し上げましたとおり労働省と一体になって、当事者という意識を持ってやってもらうということもこれからますます必要じゃないのか、こんなふうに思っておる次第でございます。
 また、内容に触れたいと思いますが、建設工事における安全確保という点で、施工計画というものが実情に合うように計画をされるということが非常に重要だと思うわけです。中央労働基準審議会の建議でもこのことが非常に重要視されまして、二つのことがいわば提言されておるようであります。その第一は、発注者が安全衛生上配慮すべき事項に関する指針。二つ目が、事業者が事前に安全性を評価するための指針、この二つを設ける必要があると提言されております。これも今回の法律改正では没になっております。その理由と、これをどのように生かすかということも含めて御回答をお願いします。
#82
○政府委員(佐藤勝美君) 建設工事の施工時の安全が確保されるためには、発注者が安全衛生に配慮しました発注を行うというようなこと、それから施工業者が施工計画の計画段階におきまして安全衛生面についての検討を行い、所要の対策を講ずるということが必要でございます。こういうこともございまして、中央労働基準審議会の建議におきましては、ただいま御質問にありましたように、発注者が安全衛生上配慮すべき事項に関する指針、それから工事計画の危険性及び有害性を事前評価するための指針、こういったものを労働大臣が策定をすべきことが提言をされていたところでございます。
 しかしながら、このうち、発注者が安全衛生上配慮すべき事項に関する指針につきましては、建設工事の発注条件は建設の場所、建設する対象物等によりまして大変違っております。それを一つの指針として示すということは大変難しいことでございます。むしろそれぞれの発注者がその状況に応じた配慮を行うことが適切であることから、法律には指針に関する規定を設けないということにしたものでございます。
 それから、工事計画の危険性及び有害性を事前評価するための指針、これにつきましては事前評価の手法は必ずしも一つに限られるものではないというようなこと、それから建設技術の進展に伴いまして絶えず見直していく必要があるというようなことで、一つの手法に限定をして指針を法律に基づき示すことが必ずしも適当ではないというふうに考えたところでございます。
 ただ、労働省ではこれまでも工事の計画段階において安全衛生面についての検討が適切に行われるようにセーフティ・アセスメント指針を通達によって示しております。事業者に対しましてはその実施を指導してきたところでございますけれども、今後ともこういったセーフティ・アセスメント、現在工事の種類に応じまして幾つかの指針をつくっておるわけでございますが、こういったセーフティ・アセスメントの実施の促進を図るとともに、新たなセーフティ・アセスメント指針についても、関係の省庁と連携をとりながらその手法等についてさらに検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。
#83
○細谷昭雄君 このことに関連しまして、発注者という立場から建設省にお伺いしたいと思うんです。
 公共事業の発注者の立場ということを建設省は持っているわけでありますが、請負側からの発注者へのいろんな注文というのが多いわけでございます。いろいろ出ておるようですが、これを見ますといろんな苦情がありますが、まず問題点、要望を持っている割合は八九%、づまり八九%の請負業者が発注者に対して不満を持っているということだと思うんです。何が不満なのかというのは、第一位が工期、工法等の発注条件の適正な算定の調整が困難というのが最高で七三%、それから二番目が設計積算額を低く抑えるため安全衛生対策費にしわ寄せが行きやすい、これが六五・八%、以下五〇%、四八%、さまざまあるんですが、こういうふうないろんな請負側からの発注者への不満というものは、これは工期と施工方法、これを含む施工条件の要望が多いということが言えるわけであります。直接に安全に関係するというふうにこれは思いますので、どんな配慮を公共事業の発注に対して行っておるのか、その場合に工事費の積算に当たって労働安全対策費、それから労働福祉費、これは全工事経費に対してどのような割合なり配慮で配分されておるのか、これが第一点。
 第二点は、いつも私たち問題にするんですが、建設業の退職金共済制度がございます。これに対しては、政府が一定の加入促進のための経費を工事費に積算をしているわけでありますが、これがどうもはっきりしない。そこで公共事業、これは市町村や公団も含めて、公共事業に対してもう一度一貫した方針をきちっと出していただきたい。そうしないと、せっかくこういうふうに出しておりましても色をつけてやっているわけではありませんから、実際に働いている労働者はほとんど恩恵を受けてはいないという実態なんです。したがって、私はよく聞きますが、労働福祉費の中に入っていますというんですが、もうきちっとした割合、そういう配慮をされておるのかどうか、これをここで明確にお答え願いたいと思います。
#84
○説明員(青山俊樹君) 今お話しのあったことについて御説明させていただきたいと思います。
 まず、安全対策費を公共工事の発注に当たって積算単価にどれぐらい見込んでいるかという点でございますが、公共工事の発注に際しましては会計法令により予定価格というものを定めるように定められておるわけでございますが、この予定価格につきましては、工事施工に必要な材料費、労務費、及び直接経費から成ります直接工事費と共通仮設費及び現場管理費から成る間接工事費及び一般管理費等を合計した積算額をもとに総額で定めるということになっておるわけでございます。
 労働安全に要する費用といたしましては、今申し上げました中で直接工事費、共通仮設費及び現場管理費のそれぞれに計上される性格のものでございます。具体的に言いますと、直接工事費に計上する費用としましては構造物施工のための足場工だとか支保工の設置、撤去の費用及び損料などがございます。また、これらは工事の内容等に応じて数字を上げて計上しておるわけでございます。共通仮設費に計上いたします費用といたしましては安全標識類等のようなもの、それから交通整理員のようなもの、トンネル工事における照明設備等のようなもの、こんなようなものが共通仮設費に計上されるわけでございます。
 また、作業員の安全に関する研修訓練に要する費用につきましては現場管理費に計上するというようなことにしておるわけでございます。特に、平成四年度におきましては施工実態の現状に基づきまして十五年ぶりに積算基準の大幅な改定を行いました。この中で、通常行っております安全ミーティングに加えまして安全に関する定期的な研修訓練を実施することとするための費用を新たに計上したところでございます。厚生年金、健康保険料等の法定福利費や慰安、娯楽、医療等の福利厚生費につきましては、実態調査に基づきまして現場管理費及び一般管理費にそれぞれ計上しておるわけでございます。
 先生お尋ねの安全に関する費用の率は何%かというお尋ねでございますが、これらの経費につきましては、工種だとか工事規模及び工事の現場の施工条件によりまして大きく異なりますために、請負工事費に対する割合を一律に示すことはできないということでございます。私どもも、発注者からの予定価格の算定におきましてこれらの品目について適正な積算を行うことが必要であると強く認識いたしております。
 また、建設業退職金共済制度について公共工事の発注者としてどのような対応をしているかというお尋ねでございますが、今申し上げましたように、予定価格の中に適切に計上するということは当然でございます。具体的に申し上げますと、工事の積算におきまして請負業者が共済組合に掛金を納付するための費用を現場管理費に含めて計上するという措置をとっております。また、これを確認と申しますかフォローアップするという観点から、工事を受注した建訓繋者に対しましては、掛金収納書の提出をするようにという指導をしておるところでございます。
 以上、二点についての御説明をいたしました。
#85
○細谷昭雄君 そういうふうな中身については、もう一度確認をしながら、やっぱりきちっと末端まで通るようにしていくべきじゃないのか、こういうふうに思うんです。我々もその点はその都度聞いてはおるんですけれども、どうも末端までそれがちゃんと達しておらない、こんな嫌いがありますので、ぜひひとつ努力を願いたいというふうに思います。
 それから労働福祉の面で、実は私、きのう大宮の、建設産業における生産システム合理化指針によるところの関東地建内におけるモデル事業を拝見してきました。これは御案内のように、おととしから発足しておる事業で、土建の現場、建設現場においても週休二日制をどう完全実施できるのかというモデル事業であります。大変御厄介になってきましたが、現場ではドーピー建設工業株式会社、ここがキャップで、下請の皆さん方といっしょになって建設省の支援でモデル事業をやっているということのようです。
 地建の出先の副所長や会社の責任者、それから働いておる労働者も含めた下請の皆さん方、この方々からもいろいろお聞きしました。このモデル事業は、労働者にとってはすごく喜んでおる事業なわけです。今までは六日間、ともすれば恐らく私の知っておるところではモデル事業は別としまして、一般では下請は一カ月二日しか休んでいない。第一日曜日と第三日曜日。これはもうはっきりしているんです。たった二日なんですよ、時短なんという時代に。ところが、モデル事業は週休二日制なんですから、しかも働いておる人力が、今まで六日間働いておるのと同じ賃金を、収入をもらえるというのですからこれほどいいことはない。モデル事業ですからこれができるわけです。非常に喜んでおりました。年配の人ほど喜んでいる、非常に助かると。問題は、こんなモデル事業を早く、要するに一般化させていくということが待ち遠しいわけであります。これをやらないと二十一世紀の企業には残れないと私は思っておるんです。
 問題は、こういう一般化できる見通しがどうなのかという問題と、親の心予知らずという言葉がありますが、建設省がそう思っておりましても、一般の建設企業というのは、相も変わらずどんぶり勘定で、土方を殺すには刃物は要らぬ、雨の三日も降ればいいという程度の非近代的な状況に置かれているというふうに言っても過言でないと思うんです。したがって、建設省の親の心はなかなか企業がくんでくれない。何とかしてこれを近代化し、合理化していくのかということは、まさに二十一世紀に生きるための課題だと思うんです。そのことを踏まえて、せっかくきのう見てきまして感謝しておりますが、問題は一般化できるめどをどこに置いているのか、週休二日制の創出のための事業なんですが、これについてのめどを、簡単でいいですからひとつ聞かせていただきたい、こういうように思っております。
#86
○説明員(青山俊樹君) 週休二日制の導入等のお話でございますが、こういった労働時間の短縮問題は、労働環境を改善し施工体制の確保を図るために必要な課題である、極めて重要な課題であると認識をいたしておりまして、建設省では、平成二年度から週休二日制の試行としてのモデル工事を実施してきたところでございます。
 まず、直轄から始めるということで、平成二年度は関東地方建設局管内、それから平成三年度には同種のモデル工事を全国的に実施しているところでございます。私どもも建設現場における労働時間短縮に対しては、こういった週休二日制モデル工事が先導的な役割を果たすという認識を持っておりまして、平成三年度は全国で九十カ所に上る箇所になっているわけでございますが、平成四年度も引き続き全国的に直轄事業で実施していきたいと思っております。こういった直轄で実施しましたモデル工事の実施状況を踏まえまして、いろんな課題、問題点等も出てきておりますが、こういったものに対する対応策を考えつつ全国的にさらに広げていきたいというふうに考えております。
#87
○細谷昭雄君 ぜひひとつ努力していただきたいというふうに思っております。私たちも応援したいと思います。
 大手のゼネコンの日建連は、昨年の四月から完全週休二日制、これをやろうということでやっておるんです。大手のゼネコンは確かに休んでいるんです、私どもも回ってみますと。ところが、同じ現場におります下請以下はせっせせっせと働いておる。これはやっぱり変なものがあるんですね。自分たちだけはもう週休二日、しかし末端はそうじゃない。これはひとつ問題点として指摘しておきたいというふうに思います。
 なお、地方の建設業協会も週休二日制の促進、これをうたっておるんですが、これまた旧態依然、先ほど私の言ったとおりであります。建設省は何とか近代化のために、やっぱりゼネコンばかりじゃありません、一次下請、二次下請の皆さん方も同様に、少なくとも週休二日まではいかないにしても、一カ月日曜日だけは休むというこれだけは最低ひとつ時間短縮のいわば来年度までの目標にしていただきたいと、こう思うんです。これはもう指摘だけ。
 そこで、時間がございませんので大急ぎで残っておる法案の内容についてもう一度戻ってやってみたいと思います。
 まず、工事の発注者に対する建設工事の安全の問題ですが、これはどうしても事前の指針が必要である。今回の改正でもその指針が入れられておったわけですが、これまたばっさりとなくなっておるんです。これは、提言された指針のかわりに通達で、しかもマニュアルを示して対応をすべきものであるというふうに私は思うんですが、この点はいかがでしょうか。
#88
○政府委員(佐藤勝美君) 発注者に関します指針でございますが、今回の法案ではそのことが入っていないわけでございます。建設工事につきましては、発注者の安全施工についての配慮が工事の安全に大きな影響を与えるということはおっしゃるとおりでございまして、労働省におきましては、本省それから地方労働基準局あるいは署の段階におきまして、建設省等の国及び地方公共団体の発注官庁あるいは大規模な工事を発注する公団等の発注者との間で労働災害防止に関します連絡協議会を持っております。そういうところで施工時の安全に配慮した発注の実施、発注者としての立場からの安全施工に関しての施工業者に対する指導、こういったものについての協議を進めてきたところでございます。
 それから、前回六十三年の法改正の際に、建設工事の安全施工に関しまして発注者に問題があると認められた場合には、労働大臣または労働基準監督署長が労働災害の発生の防止に関する事項について必要な勧告あるいは要請を行うことができることといたして、いることは御承知のとおりだと思います。
 今後とも、発注機関との連絡を一層密にいたしまして、発注者に対します勧告、要請制度の適正な運用を通じまして施工時の安全に配慮した発注が行われるように努めてまいりたいというふうに思います。
#89
○細谷昭雄君 同様に、事業者による事前の安全性の評価、これも全く同じなんです。今局長のお話のとおり、この指針にかわるそういう措置というのを講じますね。これはもう確認だけ。
#90
○政府委員(佐藤勝美君) そのような措置を講じます。
#91
○細谷昭雄君 労働省はこれまで、さっき局長からもちょっとお話がございましたが、セーフティ・アセスメント指針、これを公表してまいりました。大変分厚い立派なものでした。私も拝見しました。問題は、どの程度に現場でこれが活用されておるのか。これが活用されると恐らく事故はもう半減するんじゃないかというふうに思うんですが、余り立派で分厚いものですからかえって利用しないということもあるんじゃないかと思うんです。重大事故の防止のためにはぜひこれは活用させてもらいたいというふうに思うんですが、活用の方策、これを伺いたいと思います。短くお願いします。
#92
○政府委員(北山宏幸君) 御指摘のとおり、労働災害を未然に防止するためには工事の計画段階において十分な安全性の評価を行うことが非常に重要であるというふうに考えているところでございまして、私ども、これまでも関係業界団体等に対してセーフティ・アセスメント指針の活用につきまして要請をしたり、あるいは計画の届け出の審査の際にその辺のところを指導してきたところでございます。
 今後とも、発注者等の御協力も得ながら、事業者において事前の安全性の評価が確実に実施されるように強力に指導していきたいというふうに考えております。
#93
○細谷昭雄君 今後、事業者に事前の安全評価、これをどのように行っていくつもりなのか、これについての方策もあわせてお伺いしたいと思います。
#94
○政府委員(北山宏幸君) 事業者に対する活用につきましては従来も、先ほどお話しいたしましたように、関係業界団体等に対して集団指導を実施する、あるいは現在安全衛生法の八十八条で計画の届け出制度がございます。この届け出を審査する段階におきまして、そういった私どもが公表をしておりますセーフティ・アセスメント指針を活用したかどうかというようなことについても具体的に指導をしていくというようなことで、なお一層の活用を事業者に指導してまいりたいというふうに思っております。
#95
○細谷昭雄君 最後に、大臣に要望もあわせまして締めくくりの質問をしたいと思うんです。
 今回の改正は、来年度本格的に取り組もうとされております労働基準法改正、これの本番に向けての私はやっぱり条件整備だろう、その一環だろうというふうに受けとめております。それだけに幾つかの点で中央労働基準審議会の建議や提言が本法改正に欠けておるという点では大変遺憾であるというふうに私は思っておるわけです。
 そこで、大臣に要望しておきたいと思うんですが、第一に、今回の改正だけで事故の撲滅は期せられないと思います。したがいまして、不備な点の補完対策を十二分にやってもらいたいということが第一。第二は、職員定数の充実、これがどうしても必要だということ。第三は、建設省との提携、これによって建設業界全体の積極的な合理化と近代化、これを行うことによってやはり労働環境の整備向上、これに努力をしてもらうことが先決だと、こういうふうに三つ思うわけであります。それで、この骨子を踏まえまして、万全の事故防止はもちろんのこと、いわゆる今言われております三K職場、これの汚名を一日も早く返上することが必要なのではないか、こんなふうに思っております。
 さらに私は、来年の労働基準法改正に向けて部内の研究会、それから中央労働基準審議会、これの諮問に対しまして、恵まれない立場で働いておる例えば出稼ぎ労働者ないしは底辺と言われるところで働く多くの名もない労働者、この八万の有給休暇制度、これは今度の改正では、来年の改正ではどうしても実現しなくちゃいけないというふうに思うんです。
 したがって、以上の点につきまして大臣を含めまして労働省全体で取り組んでいただぎたいということを要望して、最後に大臣の御決意を、御所見をいただきまして終わりたいと思います。
#96
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生からいろいろ貴重な御示唆、御指摘をいただいたわけでございます。
 たびたび申しておりますように、職場の安全衛生の確保、これは我々労働行政の最大の課題でございまして、今回の審議会の建議を踏まえまして、これに基づいてさらに安全衛生の確保が一歩を踏み出す気持ちでございますが、今回の法改正に盛り込まれなかった面につきましてもいろいろ今後検討をし具体化してまいりたいと考えております。そのために、必要な人員につきましても大変な御心配いただきました。ふやしておりますけれども十分ではない。私も職場のいろんな現場を見て知っておりますので何とか充足してまい力だいし、またこれも申しましたけれども、御指摘もございましたが、やはり発注者側、まあ建設省は最大の発注者の一つでございますし、また発注者を指導する立場にあるわけでございます。ですから、建設省といろんな面での情報交換、意見の交換をしながら努力をしてまいりたいと思っているわけであります。
 出稼ぎ問題、先生は秋田で私は山形で、もう昔から出稼ぎ問題については先生からいろいろ御指導を賜っているわけでございます。ひところよりは山形なんかの場合は出稼ぎが減っておりますけれども、まだあることは事実でございまして、そういった方々、出稼ぎそして底辺労働者、これは御指摘がございましたけれども、こういった方々の職場の安全からさらには所得のいわば保障といいますか向上、例えば有給休暇をどうするんだというお話がございます。
 有給休暇という制度自身は、ある程度一年間継続雇用されてどうごう、そういう条件もございますけれども、例えば私どもは出稼ぎ労働者指針の中においてもいろいろこういったことについても配慮していただくように申し上げてございますので、そういった出稼ぎを含めての底辺労働者の方々の職場の安全化さらには生活の改善に向けて私たちもこれまでも努力してまいりましたが、そこを一層これからも努力を続けてまいりたい、この決意でございます。
#97
○細谷昭雄君 終わります。
 ありがとうございました。
#98
○中西珠子君 建設業における死亡災害は依然として多くて、平成二年においては千七十五人、平成三年の速報値でも千四十七人、ともに全産業における死亡災害の四割以上を占めているわけでございまして、殊に規模五十人未満の中小規模の現場での災害が多いというのが実情であります。建設業の特殊性の一つである重層下請構造から来る災害の防止には店社安全衛生管理者の選任などを含む今回の法改正は緊急の必要事と思うのでございますが、法案の中身について少しお聞きいたします。
 第十五条の三に「店社安全衛生管理者」、「労働省令で定める資格を有する者のうちから、労働省令で定めるところによりこ行うということになっておりますが、どのような資格を持った者からどのような選任方法で選ぶかということをお考えなのか、お聞かせください。
#99
○政府委員(北山宏幸君) 店社安全衛生管理者制度が実効を上げるためには、十分な知識、経験を有する者が選任されることが必要であります。このため、店社安全衛生管理者の資格要件として、一つには大学卒業後三年以上建設工事の施工における安全衛生の実務に従事した経験を有すること、それから二つには、高校卒業後五年以上建設工事の施工における安全衛生の実務に従事した経験のあること、三つ目に、八年以上建設工事の施工における安全衛生の実務に従事した経験、こういったことを省令で規定するように現在考えているところでございます。
#100
○中西珠子君 選任方法はそういう資格に適合した人をそれぞれの店社から推薦されてくる、それを認定なさるということですか。
#101
○政府委員(北山宏幸君) これは事業者において選任をしていただくということでございまして、特に行政等に報告とかそういうものについては考えてございません。
#102
○中西珠子君 二十九条の二というのが付け加わりまして、そして建設業の元方事業者というものの責任が一層強化されたわけでございます。今回の改正では罰則がついていないということがまだ非常に残念な点なんでございますけれども、まあ一歩前進ではないかと思うわけです。
 この二十九条の二に「土砂等が崩壊するおそれのある場所、機械等が転倒するおそれのある場所その他の労働省令で定める場所において」と、こう労働省令がうんと出てくるんですね。この「労働省令で定める場所」というのはどのようにお考えでいらっしゃいますか。
#103
○政府委員(北山宏幸君) 労働省令で定める場所といたしましては、工事現場全体を見まして請負人のみでは十分な安全措置を講じることが期待できない、そういった危険を有している場所について定めたいというふうに思っておりまして、具体的には、建設機械等が転倒するおそれのある場所であるとか、それから架空電線、いわゆる感電防止のための架空電線に接触することにより感電するおそれのある場所、それから御指摘のような土砂崩壊のおそれのある場所、それからコンクリートブロック塀、そういうものの損壊によ力危険を及ぼすおそれがある場所、そういったものを考えているところでございます。
#104
○中西珠子君 先ほどいわゆる労災隠しの通達についての御質問がありましたけれども、もう少しお聞きしたいと思うんですが、今いわゆる労災隠し、労働災害の発生に関して発生の事実を隠ぺいしたりまた虚偽の内容を記載して労働者死傷病報告書というものを出すケースがふえているそうでございまして、その業種別の件数は建設業が最も多い。建設業が過半数を占めている。次いで多いのは製造業、殊に外国人労働者を多く使用している金属製品の製造業が多いと聞いております。
 平成三年十二月五日基発六八七号という通達をお出しになりましていろいろこういった労災隠しを排除するように御努力になっているわけでございますが、労災隠しの動機というのはどのように把握していらっしゃいますか。
#105
○政府委員(北山宏幸君) 先生御指摘のとおり、建設業における労災隠しというのが問題になっているわけでございますけれども、労災隠しをする動機といたしましては、例えば労働災害が発生した関係請負人の元方事業者に対する気遣いからの隠ぺいであるとか、あるいは元方事業者の無災害記録が中断するといいますか、そういうことも考えられるのではないかなというふうに思っているところでございます。
#106
○中西珠子君 ついでにお聞きしますけれども、製造業では殊に外国人を多く使用している金属製品製造業、そういったところでは結局外国人労働者を不法に使っているというふうなことを隠したいためというそういう動機もあるでしょうか。
#107
○政府委員(北山宏幸君) 外国人労働者の災害を隠したいためという御指摘でございますけれども、その辺のところにつきましては、私ども外国人労働者の労働災害につきまして何件か把握はしておりますけれども、その動機として外国人労働者の災害を隠すためということについては私ども明確な動機として現在のところ把握はしてございません。
#108
○中西珠子君 いわゆる労災隠しの排除通達の中で、こういう労災隠しかあるということは非常に労働基準行政の上からゆゆしき問題であるから何とか徹底的にこれを排除していくようにと、いろいろ方法をお考えになってそれを通達の中身としてこういうふうに処置するようにという指示をなすっていますね。大変御苦労なことで、いろんな書類を突き合わせてみたり、時間もかかるし、労力も大変なのではないかと思うわけでございます。
 労働者死傷病報告書の様式がございます。死亡の場合、または休業四日以上の療養を必要とする場合の様式は二十三号様式です。それから休業四日以下の療養というような場合にはいわゆる二十四号様式というのがございます。これを拝見いたしますと、詳しくいろいろ災害の発生状況とか、被災した労働者の年齢、その他いろいろ詳しく書くようになっておりますが、報告書を作成した人の職名と氏名だけしか書かないでよくて、労働者の方の関係者、殊に死亡の場合は遺族だとか家族だとか、それから被災した労働者の代理を務められる人、それからまた被災者がそんなにひどいあれではなくて、自分自身で確認をすることができるというふうなケースもないわけではないと思いますが、いずれにいたしましても労働者側の確認というものを書く欄が全然ないわけです。こういう確認をさせる欄というのをおつくりになったらばもっと早く労災隠しかわかるのではないでしょうか。
#109
○政府委員(北山宏幸君) 事業場におきまして万一労働災害が発生した場合には、事業者は災害の発生状況であるとか、あるいは発生原因等の把握をすることによりまして災害の再発を防止する必要があるというふうに思うわけでございます。こういった観点から、事業者がその責任において具体的な事実を労働者死傷病報告として所轄労働基準監督署長に提出をするという仕組みが現在の安全衛生法上の仕組みであるわけでございます。これまでも、労働省といたしましては、事業者に対しまして同死傷病報告の提出を迅速、適正に行うように指導してきたところでございますけれども、さらにこの徹底に努めるとともに、万一労災隠し事案を発見した場合には、これに厳正に対処をしていくこととしているところでございます。
#110
○中西珠子君 事業者の責任においてやらせているとおっしゃいますけれども、事業者そのものが故意に報告をしなかったり、また虚偽の報告内容を持った様式で報告をしてくる。二十三号様式、二十四号様式いずれにしても、労働者側のと言っているんです、労働者その人じゃないんです。労働者側の関係者の証言という、労働組合の同僚であってもいい、代理者であってもいい、死亡者である場合はその遺族であってもいい、何か労働者側の確認を全然しないというのは、事業者側の責任と。いうのはわかりますよ、だけれども責任を負うべき事業者が虚偽の報告をしたり、また故意に報告をしないという場合はどうするかということをお考えいただいた方がいいんじゃないか。また、確認欄を設けて確認させるということが非常に難しければしょうがないかもしれませんけれども、一応それは考えていただきたいと思う。
 また、提出された報告書というものは果たして正しい記載がされているか、本当に出されたかどうかということをチェックするために労働者側の代表なりなんなりが行きましたときに、労働者死傷病報告書は二十三号であっても二十四号であってもお見せにならないそうですね。ですから、ちょっと不審な点があるから見せていただきたいというふうなことを言ってきた場合に見せる。それからまたコピーもとらせてやる、そういうことをお考えいただいたらどうかなと思うわけなんです。この点はいかがでしょうか。
#111
○政府委員(佐藤勝美君) 労働者死傷病報告は、労働安全衛生法の百条に基づきまして事業者に提出を義務づけているものでございますので、これはほかの者に閲覧をさせることはできないわけですけれども、ただ被災した労働者あるいは遺族が労働災害の発生に関し疑義のある場合には、監督署等に御相談をいただければ必要に応じて調査を実施するというようなことで、その内容についての確認等の適切な措置を講ずるということになっております。
 したがいまして、そういう方法によって今の御質問のような問題については解決を図りたいというふうに思っております。
#112
○中西珠子君 労働安全衛生規則九十七条一項によって様式二十三号の報告書は出すことになっていまして、それも遅滞なく出すとなっていまして、具体的にいつまでに出すという期限は明示していないわけです。ですけれども、これは具体的に期限を明示して、期限内に提出されていない場合にはやはり違反として厳しく取り扱うというふうなことをなすったらいかがでしょうか。
#113
○政府委員(佐藤勝美君) ただいま仰せのように、この報告は遅滞なく提出する、こういうことになっているわけでございます。期限を具体的に定めればもちろん明確になるという点ではそのとおりであると思いますが、ただ労働災害が発生した事業場におきましては、労働災害の発生状況それから原因などを把握した上この報告書を提出することになっておりますので、そういうことから帳発給数ベース的に見ますと七、八万、月によって大分変動しますので、ここも労働力調査ベースの百二十一万人ということになりますと、かなりの乖離がございます。それから、あと臨時的な雇われ方をしている方がやはり平成二年の労働力調査年報で三百八十九万という数字が出ておりますが、これが一年未満の雇用ということなものですから必ずしも適用除外に該当するわけでもない。
 そうしまして、千数百万の乖離分のうち十分御説明できる数字としてはっきり申し上げられるのは、公務員関係の五百万人ほどの公務員、これははっきり何といいますか適用除外ということで御説明できるわけでございますが、いずれにいたしましても、一千万人ほどの漏れの部分からはじいていく部分を相当引きましても差が残るのは事実でございます。それから、今十分厳密な意味で差し引きが困難と申し上げておりますのは、例えば雇用者といいましても役員まがいの雇用者というようなものも統計数字に入っている場合もございますので、そこら辺がいろいろ問題でございます。
 いずれにしましても、その差分、残る分につきましては、非常に恐縮でございますが、いわば法律上は強制適用でございますので観念的には適用されているけれども手続がとられていない部分というものが現実に残っているものと思っております。
#114
○山中郁子君 第七条によれば、これは届け出を義務づけ、しなかった場合は罰則が適用されるということになっておりますから、当然強制加入の保険であります。今細かい数字については繰り返し確かめる時間がありませんので、後ほどまた資料としてちょうだいできればありがたいんですが、いずれにしてもかなりな数の違いがある、把握し得ていない部分ですね。加入するべき人が加入されていない数がある程度というか、相当程度あるということは労働省はお認めになるわけで、それはやはり把握しなければならないことと同時に、それは加入してもらわなければならない、加入させなければいけない、事業者をしてですね、ある意味では。そういうことは労働行政の上の重要な柱であると思いますが、その辺についての労働省の見解というよりは努力ですね。その辺をお伺いしておきたいと思います。
#115
○政府委員(若林之矩君) 労働保険、保険料は労働保険としていただいておるわけでございますけれども、労働保険の加入促進ということは常に各方面から御指摘を受けておるところでございまして、私どもも徴収関係職員が中心になりまして非常な努力を続けておるところでございます。そしてまた、その成果があらわれまして年々加入はふえてきておるわけでございますけれども、なおただいま御指摘のような未加入の点があるわけでございまして、この点につきましては、今後とも一層の努力を払いまして加入の促進を図ってまいりたいというふうに考えております。
#116
○山中郁子君 では、今回の本法律察でございますけれども、私どもはこの法案に衆議院でも修正案を提出いたしまして否決された上で反対をしたわけでございますが、問題は、やはり何といっても雇用保険の国庫負担の削減の問題です。先ほど仲川委員から政府にしては珍しく引き下げる法律であるというお話がありまして、私どももそのことについて異議を唱えるものじゃないんですけれども、むしろその中身、そういう状態があるにもかかわらず、何で国庫負担の削減をこのときにしなきゃいけないのか。私はこれは何の根拠もないというふうに思うんですね。それで、労働大臣の提案理由の説明をもう一度よく読み直してみても、全然理由になっていないのよね。ただそうするよというだけの話であって、なぜそうするのかということは何にも理由は言われていないというのが実際です。
 それで、保険財政が大幅に黒字だからといって、それは法定されている、法律で決められている国庫負担が財政状況に連動するものでないということはもう明らかなことだと思うんです。給付額について国の責任を法が認めているというのが、この法律の国の負担額を決めている根拠であり、むしろ理念と言っていいと思います。減る分だけ結局事業主負担とそれから労働者負担の割合がふえることになるわけでしょう、国の負担が減ることは。これはやはり国の責任回避につながるものであります。だからこそ中央職業安定審議会でも必ずしもこの点についてはそう簡単にいいよというふうにはおっしゃっていないというのが実情で、私がここで御紹介するまでもないと思いますが、このように述べられています。
 国庫負担率の引下げについては、労働側委員
 は、福祉の水準の確保の観点から十分慎重に対
 処すべきであるとの見解であった。使用者側委
 員は、将来における福祉の水準の低下を招かな
 いよう国として一層の努力をすべきものである
 との見解であった。したがって、この点に関し
 て労働省の十分な配慮を求めたい。ということで求めておられるわけです。
 国庫負担の削減を安易に受け入れてはならないと思うのですが、いろんな背景があるでしょう。いろいろ取りざたされているように、税収不足を補うためにいろんなところに目をつけて、大蔵省からお金を出してくれと、こういうふうにして召し上げられていく中にこういうものが入ってきているのかどうかというようなこともいろいろ取りざたされているけれども、私はこの法で定めている国の責任ということに照らして雇用保険法についての今回の国の負担分の引き下げ、削減ですね、この問題は安易にそのように受け入れるべきものではないという立場に立っておりますが、そこのところはぜひ労働大臣の御見解をお伺いしたい。
#117
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生たびたび申し上げておりますように、この雇用保険というものはもともとは失業保険ということでスタートしたわけでございます。
 失業が起こった場合の保険は、やはり直接の当事者である会社、経営側と、それから労働側でお金を積み立てて、そして失業という事態が起こった場合にはそれで保障してもらう、これは建前でありますけれども、それに対して、そうはいっても国の政策の責任もあれば、そういった失業対策というものもこれは失業中の所得保障というのも国がしかるべき責任をとるべきだ、こういうことで国庫負担というのが出て、要するに労使それに国と三者でこの失業保険制度、そして現在の雇用保険制度を資金的にサポートしてきたわけでございます。
 そこで、たびたび申し上げておりますように、収支のバランスにおいて積立金と保険料収入から考えて、現在のところは黒字基調であります、収支が。したがって、さしあたってこれをある程度バランスを維持しよう。そのときには会社、そして労働者双方の料率も減ずるけれども、国の方は従来どおりよということでもないのかなと。だから、三者でサポートしてきたわけですから、三者それなりの負担率を軽減させていただいて、そしてすっきりした形の雇用保険会計というものをこれから維持していこう、これが今度料率改正をお願いするゆえんでございます。
 しかし、いろいろお話をしてございますが、これから雇用保険というものが果たすべき役割というのがもっとあるじゃないか。こういうこともやらなきゃいかぬ、こういうことも考えろということをまさに中央職業安定審議会その他で御議論していただいて、それに対して関係者の皆さん、国民の皆さんの御同意が得られれば、その場合に必要な経費はしからばどういう形で調達するか。また、まさに労使、国ということで三者によってこの新しい仕事に必要な経費の分担はまたそこでお願いする、こういう形じゃないか。ですから、まだこれから仕事がありそうだから、多少余裕があるけれども今積み上げておけということよりも、一回ここですっきりして、そして新たな仕事はまた新たな御了解を得てサポートしていただくということではないかと私どもは考えて今お願いしている次第でございます。現いたしたい、こういうことでございます。
#118
○中西珠子君 労働災害を防ぐばかりでなく、積極的に快適な職場環境をつくっていくことが労働者の安全衛生それから福祉というものにつながっていく。生活大国実現のために大いにやっていただきたいとお願い申し上げます。
 ちょっと、法案の中身についてお聞きいたします。
 七十一条の二に、「事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、次の措置を継続的かつ計画的に講ずることにより、快適な職場環境を形成するように努めなければならない。」、こうなっておりますね、努力義務でございますが。ここに一、二、三と出ているわけです。「作業環境を快適な状態に維持管理するための措置」、「労働者の従事する作業について、その方法を改善するための措置」、「作業に従事することによる労働者の疲労を回復するための施設又は設備の設置又は整備」、これは非常に大事なことでぜひやっていただかなくてはならないことでございますし、これから労働力不足、また高齢者の労働力がふえるというふうな面、また女性の労働力も必要とされている面から考えましてもこの三つは絶対必要なのでございますが、第四番目に「前三号に掲げるもののほか、快適な職場環境を形成するため必要な措置」と書いてありますが、これまた労働省令がなんかでお決めになるわけですか。どういう意味でしょうか、そのほかというのは。
#119
○政府委員(佐藤勝美君) 仰せのように、現在御審議をいただいております法案によって第七十一条の二というのが安全衛生法に新設をされるわけです。
 そこで、ただいま先生がおっしゃられました一号から三号までで快適な職場づくりのための、言ってみれば典型的な要素を三つ具体的に法律上決めまして、それ以外のもので快適職場を形成するための措置というのがあり得るわけですから、それを四号で包括的に、指針で定めるべくそのための根拠をこの四号に置いておるわけでございます。
 しからば、この四号の措置として具体的にどんなものが内容になるのかということでございますけれども、考えられますことは、例えば洗面所の改善であるとか更衣室等の改善あるいは談話室等の設置、食堂を清潔で労働者が使いやすい状態に整備することなど、つまり一号から三号までに該当するもの以外で快適職場形成に必要な措置、こういうものを考えておるわけでございます。
#120
○中西珠子君 大変結構だと思いますが、第七十一条の三で指針のことが出ておりますね。快適な職場環境形成のための指針を労働大臣が策定し公表なさるということになっておりますけれども、平成三年十二月に出ました中央労働基準審議会の意見、その中央労働基準審議会の殊に労働災害防止部会の報告書の中には、中央労働基準審議会の意見をまず聞いて、そして策定し公表するというふうに一応なっているわけですね。この点はいかがなんでしょうか。一応案をおつくりになって中央労働基準審議会の意見をお聞きになってそれから公表なさると、こういうことになりましょうか。これは法案に書いてないものですから。
#121
○政府委員(佐藤勝美君) 仰せのように、この指針の策定に当たっては、審議会の建議で審議会の意見を聞くこととしておるわけでございますが、これを受けまして、労働基準法第九十八条第二項に安全衛生法の施行に関する事項について審議会の意見を聞くというふうに審議会の機能が書かれておりますけれども、それに基づきまして審議会に諮って策定をし公表する、こういうことになるわけでございます。
#122
○中西珠子君 とにかく、労働省はやはり労働者の福祉のため、それから災害の防止、快適な職場環境の形成、そして労働条件、賃金、労働環境の改善のためにやっていただく省だと多くの労働者が、日本じゅうの労働者が御期待申し上げているわけでございますので、労働大臣にひとつ御決意のほどをお聞かせいただきまして、私の質問を終わります。
#123
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先ほど来申しておりますように、労働行政の最大の課題は職場の安全であり衛生であり、そして最低の労働条件の確保であるわけでございますけれども、その上にさらに一歩進んで、働きやすい職場だとか家庭と職場の調整の問題だとか、それからレジャーとかそういったいろいみな問題、まさに勤労者、人間としてトータルにこれをとらえて、そして実質的な作業状況、生活状況の改善を図るということにこれから労働省としては全力を傾けてまいりたい。
 今回の法案の改正をお願いする趣旨もその大きな政策の一環でございますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
#124
○中西珠子君 大臣、お願いいたします。
 どうもありがとうございました。
#125
○山中郁子君 本法案の提出の背景には、申し上げるまでもなく、例えば広島市における橋げた落下事故、あるいは私ども当委員会でも視察に参りましたけれども松戸市におけるトンネル水没事故、それからさらにことしに入りましてから綾瀬市の自衛隊の厚木基地の体育館工事での事故等々、そうした貴重な、そして悲惨な経験が背景になっているということは既に指摘がありました。
 けさほど来からの審議の中での問題と若干重複することがあるのですが、御答弁が明確に承れなかった点、十分聞き取れなかったところもありますので、重複するところは事前に御了解をいただきたいと思います。
 初めに、私どもも視察に参りまして、私も痛感したんですが、松戸のトンネルの水没事故のとき、現場を見ていろいろ説明も聞いたり、労働省の見解、その時点での一応の御説明はいろいろ伺ったんですが、先端で仕事をしていらっしゃる方たちに外の危険な状況を知らせてとにかく緊急に避難をするというために、例えば電話などがあっても役に立たないという事態があるんですね、実際現地で御説明を伺ってわかったんですけれども。
 私が素人なりにそのときにも疑問も呈し、質問もしたんですが、例えばサイレンを鳴らすとか、それから強烈なライトでフラッシュをたいて、音は聞こえなくても切り羽というんですか、最先端で仕事をしている方たちがとにかく外の状況がわからないわけだから、だからこういう危険な状況にあるんだからすぐに避難してくれということを知らせることがサイレンを一つ鳴らすことでできたんじゃないんですかということを仏そのときにも現地でお伺いしたりしたんですけれども、どうもその辺がどうだったのかということがもう一つはっきりされないままに、私自身が納得できないままに、今私もいろいろ勉強もしているんですが、そこら辺のところを一つお伺いしたい。それから、すべての事故について伺いたいわけですけれども、時間の限りもありますから、私どもが視察をいたしました松戸の事故の調査の経過が現在どういう状況になっているかをお示しいただきたい。
 初めにちょっとお願いしたいんですが、ちょっと距離がありますので、皆さんどうぞ少し声を大きく、元気に答えていただきたい。
#126
○政府委員(北山宏幸君) 松戸のトンネルの水没事故につきましては、九月十九日の事故の発生後、労働省におきましては直ちに千葉労働基準局に災害対策本部を設置するとともに、千葉労働基準局及び所轄の労働基準監督署による災害調査を繰り返し実施してきているところでございます。
 また、本件事故の重大性にかんがみまして、事故原因について専門的な立場からの検討が必要であるということから、労働省の産業安全研究所の研究者を現地に派遣しまして事故原因の調査を行ってきているところでございます。
 現在までのこれらの調査結果によりますと、隧道の上流の端に接している調整池にはんらんした水が流入しまして、水位上昇に伴う水圧の上昇によってトンネルと調整池を仕切っていた仮り締め切り部分が決壊したため、坑内にいた掘削作業員と避難連絡のため坑内に入った作業員八名が被災したということが判明しているところでございます。
 今後、さらに警報設備の設置の問題であるとか、それから工事の設計、施工の問題等も含め、幅広く調査を継続して行っていくこととしているところでございますが、本件につきましては現在、事故の原因の調査と並行いたしまして、所轄の労働基準監督署におきまして労働安全衛生法違反の疑いで捜査を進めているという段階でございますので、詳細にわたってのコメントは事の性格上差し控えさせていただきたいというふうに思っております。
#127
○山中郁子君 差し控えられちゃうと困るんですけれども、私が伺っているのは、まずはサイレンとか強烈なライトとかフラッシュとか、そういうことでとにもかくにも現場の人に危険だよと知らせるということはできると素人考えでは思いますけれども、そういうことはできるんでしょう。できるし、またやらなきゃいけないことなんだと思うけれども、どうしてそういうことがされなかったのかということを、そういう経過なんかを知りたいということなんです。
#128
○政府委員(北山宏幸君) 労働安全衛生規則の第三百八十九条の九という規定がございますけれども、この規定は隧道等の建設の作業を行うときは事業者に対し緊急時に備えてサイレン等の警報設備の備えつけ措置等を講ずべき旨規定しているところでございます。
 現在、調査を進めている内容といたしましては、こういった警報装置等の設置であるとか、あるいは避難連絡等が適切であったかどうかとか、先ほど申しましたように、仮り締め切り部の設計、施工に問題がなかったかどうか、それから河川の水位の監視体制とか緊急時の通報体制等に問題がなかったかどうかということを現在調査しているわけでございますけれども、緊急時に備えるサイレン等の警報設備の設置につきまして、現在その他の点も含めまして所轄の労働基準監督署において労働安全衛生法等の違反の疑いで捜査を進めておりますので、その詳細については説明を差し控えさせていただきたいというふうに思います。
#129
○山中郁子君 要するに、サイレンが取りつけてあったのかなかったのか。サイレンが鳴らなかったことは事実なんですね、あなたのおっしゃった三百八十九条ですか、それがあるにもかかわらず。だから、それはどうだったんですかというのを伺っているんで、ちょっと簡単に答えていただけばいいの。そういうことは取りつけてもなかったし、実際に鳴らなかったわけだから、手落ちとかいろんなものがあったわけでしょう。それでああいう本当痛ましい犠牲が出る事故になったわけなんだから、そこのところはどうだったのかということを伺っているんで、私どもが質問できる時間というのは非常に限られているんで、大変恐縮ですが、中身がわかるように端的に答えていただきたい。
#130
○政府委員(北山宏幸君) 坑内にいた方は全員死亡しているわけでございます。その辺のところ、警報装置、サイレンが鳴ったかどうかということも含めまして現在捜査を進めている段階でございます。
#131
○山中郁子君 そこのところのしっかりした労働省の労働安全ということに対する姿勢というものが、今の調査とか捜査とかそういうことに深入りして議論する暇が今ありません、余裕がありません。ですから、私は今ここでそのことであなたとの論争の深入りはいたしませんが、要は私たちが視察に行ってみても、大臣も労働省もよく御存じたとは思うんだけれども、あそこでたくさんの方が本当にとうとい生命を犠牲にされたというのは、危険だからとにかく避難しなさいということが伝われば避けられた、そういう犠牲ですよね。それをなくすための努力をしなければ、まずそこのところが出発点だと。私はそういう観点からお伺いしていますので、もうこれ以上深入りしないということは、大臣としてのお考えだけちょっと聞かせてください。
 私が今申し上げていることについて、労働省は最先端の責任を持つ官庁なんだから、省庁なんだから、ぜひそこのところは、私だけの意見というよりはそれはもう本当に犠牲者の家族、すべての働く人たちの率直な疑問でもあるし、また解明してもらいたい点でもあるし、改善してもらいたい点でもあるわけなので、そこのところをぜひお示しいただきたい。
#132
○国務大臣(近藤鉄雄君) 大変痛ましい事故が起こったことは事実でございますから、その事故が起こったのは原因があって起こったわけでございますので、どうしたらその事故を防げたかということも、これはきちっと調査をしていかなきゃならないと思います。
 ただ、部長が多少差し控えておりますのは、これはまさに労災事故の責任がどこにあるかという問題絡みということでありますので、この場でこの段階で正確な判断といいますか説明は差し控えさせていただきたい。まさにいろいろ意見の分かれる責任の所在の関連の問題でありますので、控えていることだと思います。
 いずれにしても、責任の所在、またどうしたら防げるか、再発がどうしたら防止できるかについては、もうまさに我々の全知恵を絞ってこれに対して究明をしていかなきゃならないと考えておりますし、また責任の所在がはっきりした場合には厳正な対処を行う、こういうことでなければならないと思います。
#133
○山中郁子君 みんな亡くなったからわからないみたいな、今の大臣の御答弁じゃないですよ、その前の御答弁ですけれども、そんなことは本当におっしゃらないでいただきたい。つまり、サイレンが鳴って危険だから避難しなさいと言われてわかっていながら、あるいは何らかのそういう緊急の指示があってわかっていながら、あえて命を落とすなどということがあり得ないじゃないですか。そういうところが問題なんだから、だからそこのところを私は申し上げています。そのためにこそこの労働安全衛生法というのがあって、それをやっぱり改正していくという問題が出てきているんだというその原点をあなた方はしっかり踏まえていただかなければ困る。
 それで、これは先ほどもたしか細谷理事からだと思いますが御質問があって、私も一点だげちょっとお伺いしたいんですが、建設業界の場合には、元請、下請、一次下請、二次下請、通称、言葉としては孫請、ひ孫請みたいな、そういう言葉もあるぐらいに重層的なというんですか、そういう体制があるんですね。その議論のよしあしはともかくとして、私も長いこと逓信委員会で議論している中で、やはりNTTの工事に関しての下請問題ですね、それを大分いろいろ研究もし、状況も調べて委員会でも明らかにしてまいりましたが、ピンはねというのか、そういう問題がその中で出てきている。これは常識的にみんながもうお互いに知っていることなんで、そうするとやっぱり安全対策というもののコストが下まで届かないわけね。手抜きがそういうところへいくわけです安全対策のところに。
 それは物の道理というか、成り行きもそうだし、現実にもそうなわけて、そこのところをやはりきっかりと保障するために、例えば最低でも公共事業、つまり国や地方自治体の事業、そういう場合に、何段もの重層的な業者がかかわっていっても現実に現場で仕事をする最終のところの事業者が、安全対策についての経費、それをコストの中にきっかりと保障するということを公共事業であるから国あるいは地方自治体としてきちんと最後まで責任を持つということが保障されなければいけないというふうに思うので、その点について建設省の方のお考えというよりも今どうなっているのか、そこのところの保障がどういうふうにされているのかということを端的に伺います。
#134
○説明員(青山俊樹君) 公共事業を発注する場合における安全衛生に対するコストがどの程度元請、下請の関係まで発注者として関与しているのかというお尋ねだと思いますが、公共土木工事の発注に際しましては、会計法令により予定価格を定めることにいたしておりまして、この予定価格は、工事施工に必要な材料費、労務費、及び直接経費から成る直接工事費と、共通仮設費及び現場管理費から成る間接工事費及び一般管理費等を合計した積算額をもとにしたものでございまして、総額で定めているわけでございます。
 発注者としましては、総合工事業者と申しますか、元請と総枠において契約をするという形になっております。その総枠において契約したものできちっとした品質のものが施工されるということを契約するわけでございます。
#135
○山中郁子君 少なくとも国が発注する事業、地方自治体が発注する事業が今のそういう仕組みになっているということは大まかにわかりました。それがとにかく具体的に実際に仕事に携わるところで保障されなければならないわけですね。そこのところが、保障させるという責任が国にもあるし地方自治体にもあると思うんですね。
 実際問題としては、一番下のところまでいくとやっぱりコストをたたかれてくるから結局安全対策のところは何にもお金が使えない、充てないままに作業をする。したがってこういう事故が出てくるという、そういうことが背景にあるわけです。そこのところを明らかにし、国や地方自治体の責任で実際に作業するところが安全対策についてお金をきちんとかけることができるという、仕組みもそうですし、行政指導の上でも明確な方針が持たれなければならないと思っておりますが、その点はいかがでしょうか。
#136
○説明員(青山俊樹君) 国及び地方公共団体等の公共工事の発注者が契約を交わしますのは、先ほど申し上げました元請と申しますか、総合工事業者との間で契約を交わすわけでございまして、その総合工事業者がどんな例えば下請の方を使うかとか幾ら下請の方に支払うとか、そういった取り決めは発注者と総合工事業者との間ではございません。
#137
○山中郁子君 そうだということはわかったけれども、そうではいけないんじゃないですかということを私は申し上げているんであって、労働省にお伺いいたします。
 つまり、そのように下へいけばいくほどそこのところが、発注者とは元請のところだけなんだから、その下の方は元請全体が責任持つような仕組みになっていると言うけれども、こういう事故が次々に起こるような状況のもとで、労働行政としてやっぱりそういうものがきちんと下まで保障されるということが貫かれなければいけないという指導なり姿勢ですね、そういうものはお示しいただかなきゃいけないと思っておりますが、いかがでしょうか。大臣にお伺いできれば結構ですが。
#138
○国務大臣(近藤鉄雄君) まさにそういうことでございまして、従来安全の観点から十分じゃなかった小規模の現場についても、監督が行き届くように店社管理者制度をこの際確立していきたい、こういうことでございますので、できるだけ末端まで、現場に近いところまで安全の配慮等をしてまいりたいということでございます。
#139
○山中郁子君 次に、私は過労死の問題についてこの機会にお伺いをいたします。
 具体的には、事前に若干労働省の方にお示しはしてありますけれども、愛知県にある大同特殊鋼といういわゆる大企業、ここでの過労死問題について伺います。
 私の調査では、この会社だけで五件のいわゆる過労死の申請がされています。そのうち一件の松永安弘さんという方についての裁決が四月十七日にございました。半田労基署です。そして、これがいわゆる業務外ということで裁決があったわけです。
 私がこれをあえてここで提起いたしますのは、遺族の方もそうですし職場の皆さん方もそうですし、現地において幾ら何でも余りにも業務外とするのは不当であるという強い意見もありますし、またさまざまな新聞や雑誌などでも報じられているので御承知かと思います。そういう意味で、ここであえて問題にするわけですが、これが業務外という認定がされた中身について、その柱のみ簡潔で結構でございますからお示しください。
#140
○政府委員(佐藤勝美君) ただいま御質問の事案の労災の認定でございますけれども、所轄の署、つまり半田署におきまして業務量、業務内容、作業環境等を詳細に調査いたしまして、それから専門医等の意見も徴した上で認定基準に照らして総合的に判断した結果、業務に起因するものとは認められないということで業務外の決定を行ったものであるというふうに承知をいたしております。
#141
○山中郁子君 どういう裁決が出たかということは、私も持っておりますから、いわゆる不支給決定通知ですね。だから、そういうことが書いてあるということは知っております。ですから、私が事前に申し上げたのは、争いがあるわけです。したがって、私の方から今若干申し上げます。そういうことについてどういうふうな経過でもって不支給、つまり業務外となったのかということを伺いたいということで御質問申し上げているわけです。
 この方の場合は、入社以来、知多工場でクレーンの運転の仕事に従事をされた、そしてこれは台車で運ばれてきた鋼塊、つまり鉄の塊をストリッパークレーンというので一個ずつ高炉に入れて加熱して、さらに取り出して台車に載せて圧延機へ送り出す仕事、これは普通のクレーンと異なって補助者もないし、また鉄の塊を落とすなどの失敗をすればラインが止まってしまうという、そういう失敗が絶対に許されないという非常に精神的な緊張を要求される仕事だと。この仕事が、六十三年の当時三直二交代というふうになりました、それまでは四直三交代だったんですけれども。だから、余計ハードになってきたわけです。
 実際に線表を調べてみますと、日勤四日、公休二日、夜勤四日、公休二日というサイクルで動いているんですが、日勤の時間帯が八時三十分から午後五時四十分、それから夜勤の時間帯が十時から午前七時三十分、こうなっているわけね。そうすると、これは間があいていますでしょう。例えば、日勤が五時四十分までだと夜勤の人は十時から出てくるわけです。五時四十分から十時までの間はどうなのかというと、これは別に休んでいるわけじゃなくて、こういう職場ですから当然のことながら二十四時間操業です。これはみんな残業でやっているんです。残業だとか早出、結局オーバーワーク、そういうもので働いているという職場なんです。こういうのは別に大同特殊鋼だけじゃありません。いろいろ同様の職場であります。ありますけれども、松永さんという方が死亡した状況というのはそういう状況であったということをまず私はお示しをしておきたいと思うのです。
 この方は、平成二年一月二十六日に死亡されている。急性心不全ということです。三十八歳でした。一月二十二日から夜勤に入って、死亡当日は夜勤の四日目だった。だから、朝は超勤になるわけですけれども、二十二日は三時間、二十四日は二時間、二十五日は早出一時間、そういう残業をしているんですね。死亡当日も相当疲労がたまっている様子で出勤している。これは奥さんの陳述書もあります、御紹介している時間がないのが残念ですが。夜勤中、午前二時四十五分に仕事中に倒れられた。クレーンからおりて部品を取りかえに行く最中だったということです。工場内は吹きさらしで、冬はとても寒い。当日は非常に寒くて、新幹線も雪でおくれたという、そういう状況のもとだったということです。
 一方、ストリッパークレーンというのは、中はヒーターがきいて暑い。しかし、そこから非常に寒い外へ出て重い物を持ったために心臓に過重の負担がかかったという疑いがある。そういう状況で、この方は前に心臓について社内の大同病院の検診でもって心臓が悪いということで診断を受けた経過があるんです。それだったら、当然のことながら、労安法の規定もありますけれども、要するに軽作業にかえるとか、仕事を休ませるとか、そういうことをしなきゃいけないのにそういうこともさせないままにこういうハードな状況のところで働いている。そういう過程でもって亡くなったわけです。心臓死ですね。
 それに対して、これが業務と関係ないというそういう認定を出す、半田の労基署です。それを出すということは、私は事情をいろいろ細かく調査しました。ちょっとあり得ないことなんですね。今局長は、通り一遍の通知書の中身をお述べになって、そういう経過だったとおっしゃったけれども、その具体的な中身は、今私が申し上げましたようないろんな実情、どういう状況のもとの職場でもってこうした事故が起こったのか、死亡されたのかということをあなた方はもう少し身を入れて調査していただかなきゃいけないし、そのこともお願いを申し上げておきました。そういうことについては、いかがでしょうか。
#142
○説明員(明石智成君) 本件につきましては、労働本省に正式に事前に稟伺等で協議されている事案ではございませんので、ただいまのところ詳細な具体的な内容を把握しておりませんけれども、今先生御指摘のように、私どもは労災請求を受けましたならば、所轄の労働基準監督署の方におきましては、調査担当者その他の関係職員が十二分にいろんな角度から調査をいたしまして、それで専門医の意見などもきっちり医証という形でとりまして、慎重に検討した上で適正に業務起因性の判断をしている、こういうふうに私どもは理解しておりまして、本件につきましてもそのような形できちんとした手続を踏んでなされたものというふうに理解をしております。
 以上でございます。
#143
○山中郁子君 時短ないしはまた時短促進法という法律が衆議院でかかっているわけですけれども、ぜひ労働省の方々、もちろん当然第一義的に労働大臣に耳を傾けていただきたいのですけれども、このケースの場合、奥さんが労災認定申請をするに際して、会社にどういう勤務状況であったのか、健康状況がどうだったのかということについて出してくれというふうにして、教えてほしいと協力要請しているんです。それに対して、会社側はこれを拒否しているわけですね、出さないの。出さないために裁判に訴えたんです。そして、名古屋地裁で、出さなきゃいけませんということで遺族の方の主張が通ったわけですね。そうしたら会社側は、それが不当だといって、今度名古屋高裁に抗告したんです。名古屋高裁では、またさらに遺族の主張の方が正しいということで抗告棄却したんです。つまり、そのくらい会社のやり方はえげつなくて、本当に会社のために一生懸命やってそれで亡くなったわけでしょう、命を落としたわけでしょう。それだったらそういうものぐらい出したらいいというのよね。それも出さないで、裁判に訴えて二度までやって、それで出したそうですよ。そうしたら、今度はちゃんと決められている。
 それは、そちらの方が御承知だと思いますので細かいことは申し上げませんけれども、労働基準監督署で、医者の意見が異なる場合には再度各都道府県の基準局労災医員協議会に諮りそこで審査するというそういう一つの手続がありますね、そのこともやってないんです。それもやってなくて、それで個人的に、恣意的に、署長が恣意的にだれかの意見を聞いた、医者の意見を聞きました、それで判定したと、こういう結果になっているんです。この間には、だから奥さんがほかの病院へ行って裁判でもって出させた資料に基づいて判定をしてもらっているんです。それは実に詳細な医者の立場からの判定があります。それは当然のことながら業務に起因する、業務と無縁だなんということはないと、そういう判断が出ているんです。そういう医者のいろいろな違った判断がある場合には、今ここで言う局内、基準局労災医員協議会ですね、こういうものに語らなきゃいけないのにこれも諮ってないという事実があります。
 これについては、そういう事実があるかないかということは、関係者の人たちが半田の労基署と話し合いをしているんです。ことしの四月二十七日です。それで、それについて半田署の説明を受けているんです。これは半田労基署の署長の承認も得てテープレコーダーをとってそしてやりとりしているんです。それを全部ここに起こしてあるものがあるんです。その中で明らかに署長はそういう医員協議会には語らなかったということを明言しているの。語らなかったし、自分の任意の医者の意見を聞いてそういうふうに決めたと、こう言うんです。一つの死に対して二つの医者の意見があるんだから、だからそれを労基署の署長がどうして判断できるのか。そういうところに遺族の方や関係者の人たち、また働く人たちの怒りもあるし、それはもうどうしても解明してもらわなきゃならない。私は、だからここで労働省のイニシアチブによって再調査をするということを要求いたします。
 もう私に与えられた時間がありませんので、基本的なことで結構です。基本的なことで結構ですので、中身のさらに突っ込んだことは次の機会にさらに引き続きいたしますので、ぜひここの問題についての、労働省としてそういう労働者の亡くなった方たちの無念と遺族の悲しみと職場のこれからの基本的な問題、それを本当に解決する立場での調査をなさるというお約束をしていただきたい。これはもうぜひ大臣から例えばそれで結構です。引き続き次の機会に申し上げます。
#144
○政府委員(佐藤勝美君) 本件につきましては、事実関係を十分調査の上で認定基準に照らして適正に判断されたものというふうに承知をいたしているところでございます。
#145
○山中郁子君 大臣、どうぞ私の申し上げたことに対してお答えをいただきたい。
#146
○国務大臣(近藤鉄雄君) ただいま局長が申し上げたとおり、労働省としての判断は、客観的な事実に基づいて、そして医学的な検討の結果にも基づいて決めたものと、私は直接当たっておりませんが、そのように考えております。
#147
○山中郁子君 再調査してくださるんですね。調査してくださるんですね。調査を要望しています。
#148
○政府委員(佐藤勝美君) 監督署長の判断について争う場合にはそれなりの手続がございますので、そういう手続に従って審査なら審査が行われるというふうに承知をいたしているところでございます。
#149
○山中郁子君 一言。きょうはもう時間がありません。次の機会にまたさらに引き続きこの問題については私は解明をいたします。
 いずれにいたしましても、そういう立場から労働省としてのイニシアチブを発揮して調査すると。認定基準そのものにも問題はありますよ。だから、そのことは認定基準に合っている合っていないという私はこそくな議論はしたくないんです。働く人たちの命をどう考えるのかという、あなた方が今言っている時間短縮だとかあるいは生活大国だとかと言っていることは具体的にどういうことなのかということを、そういう立場に立って対応していただきたい。このことについては、次の機会にまた引き続き解明を図っていきたいと思います。
 終わります。
#150
○笹野貞子君 先日、大関安全課長にお世話になりまして、私もこの法案の審議をする上で安全とか衛生とかというものが現実にどうなっているかということで現場を視察に参りました。大関課長、大変ありがとうございました。
 オーバーなことを言いますと、私たち人類の歴史というのはまさに働くということに対してどう安全で衛生で、そして今度の法律はそれに増して快適という価値観が入っておりますけれども、それを求めるための悪戦苦闘であったかということです。特に、女性の歴史を見ますと女工哀史というような毅然とした過去を持っているわけですから、そういう点では視察をして私はその感想としては、人類の努力というのは本当に歩みは遅いかもしれませんけれども、とにかく一歩一歩前進をした。なぜかといいますと、私たちが調査に行ったときは、一週間も前でしたのでその間多分現場ではいいところを見せようと頑張ったのかもしれません。しかし、まあいろいろなところに配慮をしていた具体的な例を拝見し、特に労働省の大関課長ですけれども、非常に毅然たる態度で現場と接しているというのが、これは癒着をしていないんだなということを暗に安心したりしながら帰ってまいりました。
 そして、この法律を読んでいるうちに、快適な職場というところで、これはちょっと冗談で申しわけないんですけれども、私たちの議員会館も快適な職場にしてもらうように私もこれからは努力をしなきゃいけないと、こう思いながら、しかしこうやって一歩一歩近づけていく努力というのは今後とも怠ってはいけないというような感慨を持ちました。
 さてそこで、このごろは何か憲法の話をすみと古い人間のような印象をつけられるんですけれども、しかし私は、労働行政というのはまさに憲法の二十七条の勤労権というものをいかに具体化するかということなわけですから、憲法を抜かしての議論はあり得ないというふうに思います。そこで、安全とか衛生というのは、二十五条に認められておりますところの生存権のもっと具体的に、もっと突っ込んだ権利が勤労権だというふうに私は思っております。そして、この勤労権という権利も、そのときの生活状態、生活実態というその問題に対して量と質と的確にはかりながらこの勤労権の内容というのを変えていかなければいけないと思うんです。それが二十七条の第二項だというふうに思っております。そういう意味で私は、生活という問題の中の勤労権という権利は常に歴史の発展性をしっかりと具体的に実現していく、そういう権利の一つであるというふうに認識しております。
 そこで、大臣にお伺いいたしますけれども、特に私たち連合というのは働くということが最大の価値観になり、働くということが安全で衛生で安心で、しかもそこにゆとり、豊かさ、快適という要素を求めている、そういう組合の団体ですので、この勤労権の把握の仕方が労働省の上で間違っていると議論がかみ合わなくなるというふうに思います。
 そこで、釈迦に説法かもしれませんが、大臣は勤労権というものを私と同じような認識であるかどうか、まずもってお伺いしたいと思います。
#151
○国務大臣(近藤鉄雄君) 我が国の国民がひとしく仕事について、そして生活を立派に維持できるというのが先生おっしゃるようないわゆる憲法に基づいて保障された勤労権の基礎的なコンセプトではないかと思うわけであります。
 したがって、勤労権があるんだから失業している人に対しては職業紹介して仕事についていただこう、またそのために必要な職業訓練もしよう、こういうことであると思うんであります。そういう基礎的な勤労権のコンセプトから、現在のように経済がよくなってまさに生活大国を志向する、こういうような状況の中で、私はこれはいろんな会合の場でもたびたび申し上げてまいったわけでありますけれども、そういう勤労権はありながらも、その働く人の条件とか収入だとかそういったものはやはり経済があってのことであり、会社があってのことだから、経済が発展し、会社が繁栄して、そして賃金や労働条件が決まってくる。私は、このことを労働条件が会社経済の従属変数であった、こう言ったわけであります。
 そういう状況から、ここまでまいりますと、今度はむしろ勤労者の働く条件がこうで、労働時間がこうで、賃金がこうで、そういったものをこっちを先に決めていくというか、こっちが決まってそしてそういった勤労条件を基礎にした労働者のセットとして会社の経営を考える、また産業のことを考えると。私は、これからは労働条件を独立変数にして、こっちを決めてそして会社の経営や産業のあり方を考えていく、こういうふうに従属変数型から独立変数型に切り変えていくんだ、こういうことをいろいろな場で申し上げたわけであります。そういう意味で、むしろ勤労者の生活条件、雇用条件というものをこっちを決めて、そして一歩でも前進していこう。
 今度の法律で、安全衛生ということで安全については零細な現場までも安全の配慮が行き届くようにしようということと並行しながら快適な職場づくり、こういう二つの目標を掲げて法改正をお願いしているゆえんも、安全は安全でミニマムな条件でありますけれども、しかし快適な職場という従来のベーシックなコンセプトを一歩踏み込んだ、先生のおっしゃるような新しい勤労権の確保というふうに理解していただいてもいいのじゃないかと考える次第でございます。
#152
○笹野貞子君 大臣の独立変数論という議論は、大変私たち働く者にとっては力強いすばらしい議論だというふうに思っております。
 そこで、午前中からあるいは今の御議論でもあったように、かつて勤労権というのはそういう非常にシビアなぎりぎりの限界を常に引き上げるというそういう考え方、ましてそれは常に不断の努力でしなければいけないことは当然なんですけれども、しかし一方ではそういうぎりぎりの限界点をどこまで、理想像に近づくためにはどういう手段、方法があるかというその研究もあわせてしなければいけません。そういう意味で、私は二十世紀という世紀はとりあえずそのぎりぎりの線を一生懸命やってきた。足りない部分は物すごくあるような状態はこれは歴然としておりますけれども、今二十一世紀に向けて、私たち連合はゆとり、豊かさという表現でもって働くということをより楽しいものにしようという表現を使うような時代にまでなりました。
 そこで、二十一世紀までもうあと何年かしかありません。私たちはここら辺で勤労権というのは二十七条二項によって変えていくんだ、それは先ほど大臣と私と一緒だという認識がありますので、大臣の独立変数論によって将来労働行政というのは二十一世紀に向けてどのような働くということに対する理想像を掲げていて、この勤労権というのは希望ある勤労権、太陽の輝きを持った勤労権とするためには、大臣のお考えとして二十一世紀にまず何をどう変えることが一番理想の生活大国になる第一位のステップだというふうにお考えか、大臣にちょっとお聞きしたい。
#153
○国務大臣(近藤鉄雄君) 大変大事な御質問でございます。
 ただ私は、二十一世紀の前にまず今度の法案を通じて、快適な職場をつくるためには例えば各工場に休養施設があるとか、それから明るい雰囲気も向上するだとか、防臭、防音というふうなことはもちろんとして、そういうことをするためには、さっきのこっちが先だよ、勤労者が先だよ、こう申し上げても、やっぱり会社と経営があるわけでありますから、それをできるように助成金だとかそれから低利融資を考えるということも大事な手段であるし、片方で労働時間短縮を進めよう、こういうことでありますけれども、これもそう言ったって目標の生産ができないよ、こういう工場があることはわかっています。ロボット化を進めて、そして労働時間短縮したけれども従来どおり生産が確保できる、そういったまさにベーシックな勤労権から拡大というんですか、レベルアップした勤労権が実現できるようなそういういろんな諸般の政策について会社側にも協力していただき、会社もマネージのできるような体制をつくろう。これが今度の改正のポイントであり、御審議いただく時短促進法の中でもそういうことを考え、そういったことをまずべーシックに持ち上げた上で、さあ二十一世紀、これはまさに価値観の多様の時代でございますから、私たち政治家やお役人がこれが理想的な勤労者像だよというふうに押しつけることではないかもしれません。
 皆さんが多様にいろんな将来設計を、人生設計をお持ちなことだと思いますが、ただ私は、やはり快適な職場で、時短が進んで、そしてそう言ったって通勤に二時間も満員電車で来るなんということは困るから、これは非常に単純化して言えば、三十分以内にマイホームがあって、そしてそこで家族で安心した生活ができる。快適な職場と快適な労働条件、そして通勤が可能なところのいわばマイホームというのが一つの基礎であって、それぞれまさに多価値時代でございますから、そこから先はいろんなことをお考えいただくことではないかな、かように考えております。
#154
○笹野貞子君 私は、大臣のお考えは大変結構だと思うんです。しかし、現状の日本を見ると、理想像は掲げていてもそれになかなかほど遠い現状があるということもまた事実なんです。例えば午前中からやりましたように、過労死の問題、単身赴任の問題、それから住宅の問題、通勤のラッシュ、一極集中の問題あるいは教育の問題、老親の介護、もう数え上げると切りがありません。こういうゆとり、豊かさ、理想の職場像と二十一世紀を見据えた現状を見ると、その二十一世紀に対して非常に矛盾、そして悲劇、怒りというのが今もう混然としているわけです。
 私が何をここで言いたいかといいますと、つまり労働行政というのは急がなければいけないという、非常にのんきなことを言っていられない行政であるということ、労働省の皆さん方が大臣を初め解決しなければならない問題がたくさんあって、理想宣言うのは一向に構わないんですけれども、二十世紀はともかく一番過酷なことを引き上げようというこういう現状であったわけですが、今度は快適と言うならば、非常に急いでやらなければいけない問題がたくさんあるという御認識をいただきたい。そのためには財政もしっかりしなければいけないわけですから、大臣は自信を持ってやっぱり働くという価値観がこれから二十一世紀に対して大変重大なんだということを大蔵省に真剣に言っていただきたい。そのためにも午前中から出ている御議論というのは非常に私は重大な議論だったというふうに思います。そういうことを早く解決しながら、やっぱり二十一世紀の理想像を求めるようなそういう行政になっていただきたいと思います。
 そこで、ちょっと具体的な質問に入らせていただきますけれども、日本の現状を国際比較してみますと非常な違いが出てまいります。例えば、午前中、建築関係の事故死というのを細谷先生から非常に具体的に御指摘いただきましたけれども、この建築業の事故死の国際比較をしてみますと歴然と違うんです。ちょっと数字がありますので読んでみますが、一九八九年をとりますと、アメリカでは二二・二%、イギリスでは二八・〇%、フランスでは二七・五%、西ドイツ、これは一九八六年ですが、一五・八%です。では日本は何%かといいますと、一九八九年の統計では四二%と、諸外国に比べると倍も高い率になっているわけです。
 経済大国とか生活大国と言われる日本が、外国と比較すると事故死が倍ぐらい高いという原因は何にあると大臣は思いますでしょうか。そして、どうしたらいいでしょうか。ここのところの御見解をちょっとお聞きしたいと思います。
#155
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生の御指摘にもございますけれども、死亡者数の国際比較は、資料によりますと、人口比で考えますと褒められた状況ではないけれども、私はそんなに悪くはないのかなという感じがいたします。その中で建設業の死亡が比較的大きいじゃないかということでございますが、まさに今度の法案を御審議いただいている趣旨もそこにあるわけでございます。
 これは、私の全く個人的な考えでございますけれども、途上国は別として、先進国と比較して日本の建設業というのはまだまだ手作業のウエートが高いのじゃないかなと。先進欧米各国と比較して、機械化をし、ロボット化していく余地がもっとあって、そういったことが進んでまいりますと、建設業に由来する死亡事故というのはこれから相当軽減されるのではないか。私は、かねてからそういうふうに思っておったわけでありますが、こういう数字を見せていただいてそんな感じがいたします。
#156
○笹野貞子君 数字というのは割と説得力がありまして、私などは、日本は相当技術が進んでいるんじゃないかという間違った認識を持っておりました。今大臣も言ったように、手作業が多かったりするという盲点がまだすごくあるんですね。それが午前中からの議論の中でもあったと思います。労働行政として、国際比較によるこの驚くような数字というのは、これは余り名誉あることではないと思いますので、真剣に取り組まなければいけない問題だというふうに思っております。
 そこで、この安全に対しては、午前中の御議論では非常にいろいろありましたので、そういうことを踏まえて、それ以外に私見といたしましてこんなふうに思っているんです。
 イギリスを見ますと、イギリスは二八・〇%。日本の約半分ですけれども、イギリスの安全対策の取り組みを見ますと、職場ごとに安全代表者というのをつくって職場の安全を守っているわけです。そして、安全代表者というのは大変訓練を受けて職場の中を見守っている。ところが、この代表者の中にはそういう訓練を受けた労働組合の人が必ず入っていて、職場の中で労働者が非常にこれはきついとか、これは危ないとか、ここは不衛生だというようなことを直接聞いて、それを会社と話し合いながら安全対策を考えているという現状があります。
 しかし一方、日本の職場を見ますと、労働組合の人を入れてそういうことをするなんということは私の知る限りではあり得ませんし、またそんなことをすると非常に嫌うと思うんです。大臣の理想とはまさにかけ離れた現状が職場の中ではあるとと思います。そういう意味で、このイギリスの例、労働組合の安全代表者という人が入って、そして安全を確保しているということに対して大臣はどうでしょうか。これはイギリスの例に倣って見習うべきだと思うでしょうか、それともそんなのはやらないと言うでしょうか。もし見習うべきだと言うのでしたら、私たち連合はすぐにでもこういういい施策は取り上げていただきたいと思うんですが、大臣のお考えを聞かせてください。
#157
○国務大臣(近藤鉄雄君) 私は、立場上経営者の方々ともお会いする機会も多いし、また組合の幹部の方々ともお会いする機会がございます。
 例えば、安全とか衛生という経営サイドから見る立場、これはわかりやすく言えばトップダウンだと思うんですね。それから組合の立場から物を見るのはボトムアップという、下からくみ上げる。役所全体の中でも、建設省はマネジメントサイド、いわば発注者側で物を見ているし、労働省はいわば勤労者側に立って物を見ている。だから個人の労働者を中心に行政を考える。したがって、片や建設省がやる、片や労働省がやるという、わかりやすく言うとトップダウンとボトムアップで両方から見ながら大体いい線にいくのかなと、こう思って、役所間の調整、協力が非常に大事だと思っておるのでございます。そういう観点から見てまいりますと、先生の御指摘にございましたように、職場の安全と衛生という点においての組合の果たすべき役割は極めて大きいのじゃないか、かように考えます。
 ただ、私も詳しいことはよくわかりませんが、イギリスなんかの場合には末端まで全部組合組織になっていて、そういう組合の機能が働いておって、我が国の場合には、建設現場ということになるとまさに元請から下請と入ってきますと、そういう意味の組織としての組合のチェック機能というものが必ずしもないというか、むしろ存在していないというのが実情でございます。そう考えてくると、今度の法律の中でも店社安全衛生管理者を配置して、そして末端まで会社が責任を持って見るということをまず徹底していく必要がある、かように考えているわけでございます。
#158
○笹野貞子君 今度の改正ではそういうチェック機能を強化する、これはそれなりにいいと思うんですが、午前中のお話の中でも、つまり建議する側にそういう現場の人がいないとか、あるいは今度のこの快適職場のガイドラインが出ております。「快適職場の実現に向けて」という懇談会の報告書を拝見いたしましたけれども、この懇談会のメンバーを見ましても組合からたった一人しか入っていない。あとはこういう職場ではなくて学者とか経営者の方からしか入っていない。そうすると、どうも日本は、先ほどの午前中からの議論を見ましても、本当に働く人の安全とか衛生とか快適というと机上の空論ばかりというのが、私が先ほどからしていた感想なんです。
 そういう意味では、これからの安全というのは机上の空論ではなくて、労働省といたしましては、本当にその場にいていろんなことをわかっている人の意見を吸い上げるというそういう体質がない限り、ただ法律で練ればいいんだとかそういう安易な考え方になってしまうんじゃないかと思うんですが、その点だけどうでしょうか。
#159
○政府委員(佐藤勝美君) まず、先ほどの御質問に若干補足をさせていただきます。
 イギリスの例を御紹介いただきましたけれども、イギリスの場合は、大臣からもお答えがありましたように、労働組合の組織率等について日本と大変違いがあるということがありますが、我が国の安全衛生法におきましても、事業内に安全委員会あるいは衛生委員会、場合によっては安全衛生委員会ということになるんですが、そういうところに労働者代表も加わって職場の安全問題について協議をする場というものが設けられておるわけでございます。これはイギリスの場合とどういうふうな違いがあり、あるいはどういう点で同じであるかということは私詳しく申し上げる知識がございませんけれども、一応そういうようなことで労働者の意見が職場の安全衛生の問題に反映されるような仕組みも設けられておるところでございます。
 それから、ただいまの快適職場の懇談会でございますけれども、昨年、これは審議会とは別に私ども行政当局の案をつくる上での参考にさせていただくために有識者の方に集まっていただいたわけで、その中には労働団体の方も加わっていただいておりますけれども、さらにその懇談会での結論をもとにして中央労働基準審議会でいろいろ御議論をいただいたわけですが、この中央労働基準審議会には、申すまでもなくこれは三者構成ということで労働者の代表にも参加をしていただいていろいろ御議論いただいてきたところでございます。
 私どもとしましては、労使それぞれの意見が私どものやる施策に十分に反映をされますように、今後とも留意をしてまいりたいというふうに思っております。
#160
○笹野貞子君 せいぜいそういう意味でひとつ御努力いただきまして、働く者の意見、女性の意見、大変女性なんかも少ないものですから、そういう点では審議会の中とか懇談会に女性の意見も入れていただきたいというふうに思います。
 それでは、時間もありませんのでちょっと具体的なことをお尋ねいたしますけれども、今回の改正の中でクレーンとかそういう特殊な運転をする人が事故を起こした場合には講習をする、そしてその職場の安全管理者にも講習をするということになっておりますけれども、これは当然と言えば当然で、今までやっていなかったこと自身が不思議なんですが、ちょっとこの条文を見ますと有給か無給か何も書いておりませんが、講習するときにはこれは当然有給で講習するんですね。有給というのは休むわけですけれども、有給でという意味ですね。
#161
○政府委員(北山宏幸君) 安全衛生教育につきましては、労働者がその業務に従事する場合の労働災害の防止を図るため、事業者の責任において実施されなければならないものであるというふうに思っております。したがいまして、所定労働時間内に行うことを原則としておりまして、また安全衛生教育の実施に要する時間は労働時間というふうに解されると思いますので、この教育が法定時間外に行われた場合には当然割り増し賃金が支払われなければならない。また、企業外で行う場合には、講習会費であるとか講習旅費等につきましても事業者が負担をすべきということを通達で示しているところでございます。
 さらに、能力向上教育等につきましても、労働災害防止対策を円滑に進めるため、労働者の負担なく実施されるように今後とも指導をしてまいりたいというふうに思っております。
#162
○笹野貞子君 それならば安心いたしました。
 私が今度の改正で一番興味を持ったのは快適な職場という言葉でした。快適な作業所から職場という言葉に変えだというのは、これは先ほど大臣がお話ししたように、非常に働くということをグローバルにとらえて言ったんじゃないかというふうに私は解釈しておるわけです。私は経験がないので余り大きな声で言えないんですが、セクシュアルハラスメントという問題が今女性の中で非常に大きな問題になっておりまして、快適という言葉を使うならば、これから労働省もそういうところもやっぱり対象にしていかなければいけないというふうに思いますので、いずれそういうこともお考えいただきたいと思います。
 さて最後に、私はきょうは二十一世紀へ向けての労働行政というふうにお聞きをいたしましたので、最後大臣にちょっと奇想天外なことをお話をして私の質問を終えさせていただきたいと思います。
 今私たち働く者が一番しなければいけないし、一番困っているというのは、やっぱり文化の面だと思うんです。これから文化というものを勤労というものの中に入れていかなきゃいけない。そのためには、私たち働く者が今直接困っているのは自分の子供の教育ということだと思うんです。二人大学に入れるということは、親はもうひいひい言わなきゃいけない。しかし、これは何も学歴をつけるという意味では私はもちろんないと思います。
 そこで、私が労働委員になってまだ浅いのですけれども、そういう行政を積極的にやるためには労働省というのは二十一世紀に何をやるか。これは企業からだけお金を取ったりあるいは働く人からお金を取るという、そういう消極的な行政じゃなくて、両方から文化のために拠出してもらい、そして労働省もそういうために多額のお金を取って、まあ連合労働大学とでも言うんでしょうか、高い能力、高い技術、高い働くという喜びをするという大きな発想というのが必要じゃないかと思うんですが、これは私自身も二十一世紀に向けての話ですので、そういうような考え方というのは大臣はいかがなものでしょうか。
#163
○国務大臣(近藤鉄雄君) 大変大きな問題を提起されたわけでございます。
 私は、前も言ったかもしれませんが、本当に働く国民が豊かで健やかでゆとりのある生活ができるためには東京一極集中では絶対だめだと、こう確信を持っております。山形でも大分でも鳥取でもどこでもいいわけでありますけれども、地方に行けばまだまだ我が国に豊かな自然が残っておりますし、それで土地もバブルとは関係なしに非常に安いわけでございますから、単に工場だけじゃなしに、人と工場と分散いたし、工場と従業員が地方に一緒に行って、そしてまさに新しい工場で快適な職場を確保して、そして通勤もそれこそ車でなくたって自転車で十五分も走れば相当走れますから、そこで極めでしょうしゃな、デラックスでなくてもいいけれどもしかるべきマイホームを持つと、これが私は人間の生活のあるべき姿と一貫して思っているわけでございます。労働大臣としてもそういう形で、企業も勤労者も一緒に地方に分散できる、そのかわり企業が一緒に行ったときは固定資産税を減免するだとか、従業員も一緒にいらしたときには従業員についても固定資産税を減免するだとか、そういう措置を講ずるようにいろいろ考えてまいりたい。労働省も今検討しております。
 そこで、先ほどちょっと申しましたけれども、なぜいらっしゃらないかというと、理屈はわかっておるけれども嫌だと、子供の教育ですね、それから文化。文化といっても、私はもう東京に二十年おりますけれども、およそ歌舞伎に行ったことは一回か二回あるのかな。音楽会なんかにはほとんど行ったことがないんです、二十年間。ただ、やはり歌舞伎が見られたり国際音楽会に出かけたり、アクセスがあるということが不思議と何か文化的な気になっちゃうんです、実際は行かないんだけれども。だから、地方のそういった大学、学校それから美術館だとか図書館だとかそれからコンサートホールだとか、そういったものの整備にも、これは労働省だけの問題じゃありませんけれども、労働省もそういったことを多少できる力もございますので、まず労働省が先駆けて各省を引っ張っていこうということをぜひやってみたい、こういうふうに思うわけであります。
 まさに、一極集中を排して、日本の勤労者がこの美しい国土めどこにでも出ていってそれだけの生活ができるようなそういう枠組みつくり、あえて二十一世紀にどうだとおっしゃるなら、新しい二十一世紀の労働行政の方向ではないか。私は労働大臣でございますが、労働行政からもこれはぜひ進めてまいりたい、かように考えております。
#164
○笹野貞子君 ひとつ大臣、頑張って二十一世紀に向けてやっていただきます。
 終わります。
#165
○西川潔君 どうぞよろしくお願いいたします。
 重複するところはお許しいただきたいと思います。
 労働災害によります平成二年の休業四日以上の死傷者は約二十一万人で、前年より三・六パー減りましたが、死亡者は二千五百五十人で、逆に前年より五・四パーふえております。三人以上の死傷者が出た労働災害を重大災害と、こう言うわけですが、近年重大災害がふえております。先生方からいろいろお話も出ましたが、我が地元大阪でも泉佐野市の食品のコンビナートでの製油工場の爆破事故、二月には海上自衛隊厚木基地内の体育館の事故などいろいろ出ております。
 死亡災害の規模別発生状況を見てみますと、四割が十人未満の小さな事業場で起こっております。次いで十人から二十九人、三十人から四十九人の事業場の順に多いわけですが、全体の八割が五十人未満の事業場で発生しております。
 このような状況から、今回の法改正が行われると思うんですが、この中でも高年齢者の労働災害が相変わらず多いわけです。休業四日以上の労働災害について見ますと、五十歳以上の被害者の労働災害全体に占める割合は四〇パーを超えております。その割合は増加傾向にあるということでございまして、高年齢者の災害の状況についてどのような認識を持っておられるのか、また原因をどういうふうに分析されておられるのか、それに対する労働省のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
#166
○政府委員(佐藤勝美君) 御指摘のとおり、五十歳以上の高年齢者といいますか、こういう方々の被災率は若年齢者に比して大変高くなっておるところでございます。かつ、その占める割合も年々高くなってきている、こういう傾向にあるわけでございますが、平成二年度について見ますと、ただいまおっしゃいましたように、労働災害に占める傘としても四三%、こういうことになっておるわけでございます。その原因でございますけれども、高年齢労働者は年を加えることによりまして身体機能が低下をしているということ、それから高年齢労働者数が増加しているというようなことがあると考えております。
 そのために、労働省といたしましては、労働災害を防止する観点から高年齢労働者の安全衛生対策の充実が必要であるというふうに考えております。こういったことから事業者に対しまして、高年齢者が安全に就業できるよう明るさ、あるいは床面の段差の改善等の対応が進められるように啓発をしているところでございます。それから、平成三年度におきましては、高年齢者を対象とした安全衛生改善事例の収集を行いまして、こういった事例を事業者の方々に提供をするというようなこと、それから機械設備や作業方法の改善について調査研究を行いまして、これらを高年齢労働者の災害防止のためのガイドラインとして取りまとめ、関係者の参考にしていただきたい、こういうふうに考えております。
#167
○西川潔君 安全衛生法第六十二条には、「事業者は、中高年齢者その他労働災害の防止上その就業に当たって特に配慮を必要とする者については、これらの者の心身の条件に応じて適正な配置を行なうように努めなければならない。」という定めがあるわけですけれども、高年齢者の方々への対応として大切なことは、仕事に人を合わせるということではなく、人に仕事を合わせるということが僕は基本だと思います。
 労働災害の防止あるいは健康管理を進めていくためには、働き盛りのころから対応が必要だと思うわけですけれども、昨年の五月に厚生省の平成元年度人口動態社会経済面調査が発表されたわけですが、それによりますと、働き盛りの死者の八人に一人は発病後一週間以内に急死をしております。つまり、突然死ということでございますが、こういうニュースをお伺いして、大臣はどのように思われますか。
#168
○国務大臣(近藤鉄雄君) これは八人に一人というのは大変大きな数字でございます。やはりそういう突然死というのはまさに脳疾患とか心臓だとか、極端に言えばがんで手おくれだとか、主として脳と心臓が突然死の大きな原因だと思うわけであります。
 実は、労働災害保険という制度がございますが、これは災害が起こってから保険でやるわけだけれども、私はこれからこの労働災害保険というコンセプトを少し検討し直して、新しいコンセプトでまさに勤労者健康管理保険みたいな形にこれは考えることができないかなと、私的に、プライベートに、ひそかに思っておるわけでございます。やはりこういった突然死で死んでしまったらもう労災保険も何もないわけだから、事前にチェックする、そのためには人間ドックだとかそういう簡単な健康検査を常時やっていくと。ですから、起こってしまってからの保険じゃなしに、起こらないための防御的な保険といいますか、保障といいますか、そういったことについて一歩これからの我々の労働健康管理、労働災害保険というものをひとつコンセプトを広げていくことかな、こういうことも実は内々考え始めているところでございます。
#169
○西川潔君 続いて大臣にお伺いしたいんですが、国民の意識というのは変わってきておりまして、労働者の意識も変わってきているわけです。単に給料が高いからいいというわけではなく、時短の問題もありますけれども、こうした労働者の意識の変化には、健康に対する強い関心とゆとりあるライフスタイルを求めるという大きな流れがあると思います。
 労働省の調査によりますと、仕事に伴う疲労やストレスを感じている労働者の割合が増加をしている。身体的疲労を感じている労働者が七割ほどいらっしゃる。仕事などで強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者が五五%、過半数を超えているわけですけれども、例えば大臣のお仕事も大変だと思いますけれども、ストレス解消というのはどういうことをしておられるんでしょうか。
#170
○国務大臣(近藤鉄雄君) 私は余りストレスを感じない方かもしれませんが、余り過去のことにこだわらないんです、前しか見ないものですから。余りこだわらないんだけれども、もう一つ寝るのが得意でございまして、バタンキューで朝まで眠りちゃうと大体すっきりしちゃうんで、その点は非常に体の構造が単純にできているわけでございます。
 それから、あと私は東京で仕事がなければ選挙区に帰ります。そうすると、東京は九段の議員宿舎の三LDKに女房と子供二人でがしゃがしゃやっておりますが、田舎に帰れば曲がりなりにも我が家でございますから、多少大きな家があって、そこで緑に囲まれていますから、やはり一週間に一遍田舎に帰って山形の山に接しないとどうも調子がおかしい。
 偉そうなことを言う割には大変素朴で原始的な生活をしておりますので、余り皆さんの御参考にならおいんじゃないかと思いますけれども、大変単純な生活をしております。
#171
○西川潔君 今大臣のお話をお伺いいたしまして、過去のことを余りくよくよと思わない、我々もそうしたいんですけれども、委員会があるといいますと何日も前から問題もつくらなければいけないわけです。政治家というのは過去そして現在を大切にし、未来、国民のために一生懸命頑張らなければいけないと思うんですけれども、大臣のお話、そういうストレスの解消法をなぜお伺いしたかと申し上げますと、次にお伺いしたいことにつながるわけです。
 労働省が取り組まれております、僕も随分前から皆さん方に随分PRをさせていただいておりますが、どうもこれが広まっていかない。労働省のPR不足もあるんでしょうけれども、トータル・ヘルス・プロモーション、THPという運動をもっともっと広めていってもらいたいなということをお願いしたいんですけれども、改めてTHPというこの運動について御説明いただきたいんですが。
#172
○政府委員(北山宏幸君) 昭和六十三年に改正をされました労働安全衛生法第七十条の二の第一項の規定に基づきまして、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」というのを労働省で公表したわけでございます。
 この指針では、労働者の健康保持増進対策の基本的な考え方及び事業者が行う健康保持増進措置の原則的な実施方法が定められているわけでございます。
   〔理事仲川幸男君退席、委員長着席〕
 労働省では、これに基づきまして、心と体の健康づくり、御指摘のトータル・ヘルス・プロモーションプラン、THPと言っておりますけれども、その普及を推進しているところでございます。
 このTHPは、日常生活状況調査であるとかあるいは医学的検査、運動機能検査などの健康測定を実施いたしまして、その結果に基づいて産業医が中心となってほかの健康づくり、いろんなスタッフがおりますけれども、そのスタッフとともに労働者に対しまして心身両面からの健康指導を行うものでございます。
 健康測定の項目は、一つは問診ということで既往歴、業務歴、家族歴、自覚症状等を問診でやる。それから、生活状況調査ということで、仕事の内容であるとかあるいは通勤方法、生活のリズム、趣味、嗜好、運動習慣、運動歴、食生活、メンタルヘルス等、それから具体的な診察、それから医学的な検査であるとか運動機能検査、これは筋力であるとか筋持久力、柔軟性、敏捷性、平衡性、全身持久力、そういったことから成っているわけでございますけれども、そういった運動機能検査ということが健康測定の項目になっているわけでございます。
 健康づくりのスタッフの養成につきましては、健康測定研修、それからヘルスケアトレーナー、それからヘルスケアリーダー、心理相談員、産業栄養指導者、産業保健指導者等の六種類の健康づくりスタッフについて実施をされているところでございまして、THPというのはこういう運動でございます。
#173
○西川潔君 今お伺いしただけでも本当にすばらしいメニューだと思うんですけれども、本当に助成金も一千五百万円とか二千万円とか高額なお金をお借りしてそういうことができるわけですから、今日の経済環境の厳しい変化、著しい技術革新の進む中で、社員の健康を保つためにはどのようにすればよいのか。また、企業にとって、企業経営の基本的な問題といたしまして、社員を大切にすることへの認識が高まり企業福祉が大きな柱として重要な問題になると思います。THP運動によりまして、心と体の両面にわたる健康的な生活慣習が身につくことは大変よいことだと思います。
 企業におけるTHP運動の取り組み状況、そしてまた普及はどのようになっているのか、経営者や労働者の間でTHPの運動についてはどのような評価をされているのかというのを現時点でお伺いしたいんですが。
#174
○政府委員(北山宏幸君) 労働者の健康保持増進することは事業者の義務であるというふうに考えております。
 THPを推進するための健康づくりスタッフは、原則としましては各事業場に配置をされるべきではないかというふうに思っています。しかしながら、事業場がこれらのスタッフのすべてを確保することができない場合には、企業外の適当な労働者健康保持増進サービス機関等に委託をしましてTHPを実施するように、また行政としても各事業場を指導しているところでございます。
 この労働者健康保持増進サービス機関は、平成四年三月三十一日現在で百六十九機関でございまして、全国各地に設置をされております。これらの機関を利用してTHP制度の助成を受けて健康測定を実施した企業数は、平成三年度においては千五百六十五社であったわけでございます。
 それから、平成三年三月に実施をいたしました労働力尊重時代の人事施策に関する調査及び働き盛りの勤労者の意識に関する調査において、企業が従業員の福祉向上のために今後重点を置いていきたいという施策について問うたのに対しまして、従業員の心身の健康づくりという回答が四三・八%とトップになっているわけでございます。また、勤労者が会社に対して今後充実してほしいという福利厚生施策は、やはり従業員の心身の健康づくりがトップであったというような調査結果もございました。この調査から見ましても、THPに対して労使の関心の高さがうかがえるわけでございまして、THPが普及する機運が形成されつつあるというふうに思っているところでございます。
 先生にもTHPの普及促進についていろいろと御指導、御協力をいただいていることにつきまして心から感謝を申し上げますとともに、労働省としましても、THPの普及を行政の重点としまして、今後とも積極的に推進をしていきたいというふうに考えているところでございます。
#175
○西川潔君 心と体の健康づくり運動、THPがもっと本当に浸透していってもらいたいと思います。
 少し気になることがありまして、これは労働省の平成二年に行われました労働者福祉施設制度等調査によりますと、企業に健康増進施策があるかないのか、大企業ではほとんど健康増進施策があるのに対しまして、三十人から九十九大規模の中小企業では、四七・三%健康増進施策に取り組んでいない状況にあるわけです。THP運動の考え方や事業は大変いいものですから、中小企業ではまだまだ浸透していないわけですけれども、中小企業の方では人手不足でもありますので、社員がこの運動に参加するために会社を休んだ場合なんかは生産性が落ち込んで実施がなかなか困難というのが現状ではないかなと思うわけですけれども、中小企業への普及や促進策についてはどのように今後取り組んでいかれるのか。
 こうして質問することは、聞くのは簡単ですけれども本当に難しい問題であると思うんですが、いかがでしょうか。
#176
○政府委員(佐藤勝美君) 御指摘のように、大きな企業では自分のところでいろいろ施設を持ってやっているという実績があるわけでございますが、中小企業におきましてはなかなかそういうぐあいにいかないということで、今後は中小企業におきますTHPの普及促進を図ることが重要であるというふうに思っております。
 そのために、PRといいますか周知徹底を図ることはもちろん必要でございますけれども、それとともに一つの助成策を講じておるわけでございます。つまり、THP制度によりまして、労働者健康保持増進サービス機関で健康測定それから健康指導を受けた場合に、労働者の数が三百人を超える事業者、言ってみれば大きな事業所でございますが、そういうところに対しましてはかかる費用の三分の一を助成する。これに対しまして、労働者の数が三百人以下の中小企業事業者に対しましては、三分の一ではなくてかかる費用の三分の二を助成しているというような制度をとっておるわけでございます。
 こういう制度のあること、あるいはこの制度の利用を勧奨するというようなことで中小企業にこの制度が普及していくように今後も努めたいというふうに思っております。
#177
○西川潔君 次に、産業別の状況を見てみますと、健康増進施策がない企業の割合が五〇パーを超える産業は、卸売・小売業、飲食店が五二・四%です。運輸・通信業が五一・二%です。サービス業が五〇・二%、こうなっておりますが、今度は産業別の取り組みについてどういうふうに御指導されていかれるのかというのもきょうお伺いしておきたいと思います。
#178
○政府委員(佐藤勝美君) この健康増進施策への取り組み状況、確かに産業によって大変状況が違うわけでございます。それは平成三年一月に実施をいたしました調査でも、ただいま先生から御指摘がありましたような状況であるというふうに承知をいたしております。
 そういう状況を改善するための方策でございますけれども、THPの普及を図るために、労働省では各種の大会、会議を開催いたしまして、事業者の理解を求めるとともに、実施を委託しております中央労働災害防止協会でございますけれども、この団体に対しましてTHPのリーフレット等を作成し、THPの広報、それから普及を図るように依頼いたしておるところでございます。
 また、地方におきましては、各都道府県労働基準局におきましても、地域の実情に応じまして、THPの推進要綱・指針を策定する、あるいはTHP連絡協議会を設置して健康づくりイベントの開催をする等いろいろな施策を講じてこの制度の周知、普及に努めておるところでございます。
#179
○西川潔君 次に、THP運動では、心理相談員がメンタルヘルスケアを行うと、こう記されておりますが、中小企業では健康保持増進のためのスタッフを置くことはかなり難しいと思われます。
 お伺いいたしますと、人の問題、お金の問題ということでございまして、手軽な料金で委託できる外部機関があればということですが、これは現状はいかがでしょうか。
#180
○政府委員(北山宏幸君) 昭和六十三年に労働省が実施をいたしました労働者の健康状況調査によりますと、仕事や職業生活に関することで強い不安あるいは悩み、ストレスを感じている労働者が五五%もいるという、半数を超えている状況でございまして、こうした状況を踏まえまして、労働者のストレスを軽減するために、THPの中にメンタルヘルスケアを取り入れられているところでございます。
 THPにおきましては、事業場に専門家がいない場合には、労働者健康保持増進サービス機関の心理相談員が、医師の作成した健康指導表に基づいてメンタルヘルスケアを行うということにしているわけでございます。労働者健康保持増進サービス機関というのは、まだ全国で百六十九機関ということで少ないわけでございます。今後その増設にも努めまして、メンタルヘルスケアが手軽に行えるようにしていきたいというふうに考えているところでございます。
#181
○西川潔君 言うまでもなく、人、物、金、情報は、企業経営のための四大資源でありますが、しかし、物、金、情報を動かすのはやっぱり人であります。その人間が心身ともにはつらつとしていないのでは企業の発展はあり得ないということですから、人を大切にする人間的な温かみのある職場づくりが大切であると思います。働く人すべてを対象とする心と体の健康づくり運動の実施そのものが医療費の減少、そしてまた労働災害の減少にもつながると思います。
 このTHP運動をもっと普及させるためには、中小企業の事業主への積極的な助成、また中小企業労働者が気軽にこの運動に参加できるように、実施のための受け皿づくりというのが、一層進まなければいけないと思うんですけれども、大臣いかがでございましょうか。
#182
○国務大臣(近藤鉄雄君) まさに先生の御指摘のとおりだと思います。
 率直に言って、大企業の場合にはそういったいろいろな余力もあれば施設もあるし、普及が進んでおるわけでございますが、御指摘の中小企業においてはまだまだ余儀なしの感がございます。私は、やはりこれは横並びで、地域ぐるみとか、業界ぐるみで一斉にいくということがどうしても必要かなと。そうなると、一種のファッション化していきますから、だからそういうムードづくりに、地域地域の例えば商工会議所とか商工会とか、また織物同業組合だとか建設組合だとか、そういった地域の業界団体を通じて一斉にみんなでやろうと、そういう雰囲気をつくって、その場合にはこういった助成の措置がありますよということを積極的に労働省の出先の機関がPRに相努める、そういうことでぜひひとつこういういい計画を速やかにさらに一層普及させてまいりたいと考えております。
#183
○西川潔君 次に、快適職場の形成促進についてお伺いしたいと思います。
 提案の趣旨の一つといたしまして、これから就業者の割合が高くなるお年寄りや女性にとっても働きやすい職場環境の形成が必要であることは挙げられているわけですけれども、快適職場形成について指針を労働大臣が定めることとなっておるわけですが、お年寄りや女性にとってどのような内容となるのか、見通しをお尋ねしたいと思います。
#184
○政府委員(佐藤勝美君) 昨年、快適職場形成についての懇談会を労働省で開きましたときにも、女性の方をメンバーにお願いしまして、大変有益な御意見もいただきまして感銘をしたところでございますけれども、これからつくります指針におきましては、温度、湿度、照度等を適切に保つというようなこと、それから重量物の運搬などの心身の負担の大きい作業の作業方法を改善するというようなこと、それから清潔で使いやすいシャワー設備を設置することというような点で高齢者や女性にも働きやすい職場環境を形成するための必要な措置を定めたいというふうに思っておりますし、こういうことが快適職場形成の内容を実効あらしめるための大事な観点であろうというふうに認識をいたしております。
#185
○西川潔君 快適職場の形成に関する調査によりますと、作業のしやすさに対する高齢者への配慮を行っている事業は全体の四四・七パー、特別の配慮はしていないものが五一・七パーという数字が出ているわけですけれども、高齢者に対する快適な職場形成がおくれている実態がある程度推測されるわけです。
 具体的に見てみますと、この調査では高齢者への配慮の内容といたしましては、照明の改善、表示等の拡大という作業する上で安全衛生上重要な部分に対する配慮が少し欠けているようにも思われるわけですけれども、作業環境を快適な状態にするためにはかなり努力が必要な事業所が多いのではないかと思うわけです。高齢者にとって働きやすい作業環境とは何か、指針その他これから具体的に事業者に示していかなければならないと思うわけですけれども、実態は厳しいものだと思うわけです。
 今後、この事業を推進していく上で、高年齢労働者に快適な職場を形成する対策は特別に力を入れるべきだと思うわけですが、どういうふうな課題を考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
#186
○政府委員(佐藤勝美君) 御指摘のように、快適な職場環境の形成に当たりましては、高齢者等にとって作業のしやすい配慮がなされていることが大変大事であるというふうに考えております。多くの企業が重量物の運搬などの心身に負担の大きい作業を解消するために設備の改善あるいは照明の改善等によりまして、高齢者に作業しやすい配慮をして快適な職場環境を形成するよう労働省としても必要な援助に努めてまいります。
#187
○西川潔君 時間で最後になりますが、次に快適職場推進アドバイザーについてお伺いをいたします。
 事業者に対する相談、援助として快適職場推進アドバイザーを置かれるということでございますが、具体的にどのようなノウハウを持つ方がどのような活動をされるのかというのを最後にお尋ねして、終わりたいと思います。
#188
○政府委員(北山宏幸君) 御指摘の快適職場推進アドバイザーにつきましては、各都道府県に一名ずつ配置をすることとしているところでございます。快適職場推進アドバイザー等につきましては、事業者が行う快適な職場環境の形成に当たっての助言を行うということでございますので、職場改善にかかわる知識を有する者の中から選任したいというふうに考えているところでございます。
 快適職場推進アドバイザー等の職務といたしましては、一つには快適な職場環境の形成にかかわる普及、啓発活動の実施、二つには快適な職場環境の形成の手法についての技術上の助言、相談及び職場環境改善にかかわる融資であるとか、助成制度などの支援制度の紹介、そういったことを実施することを予定しているところでございます。
#189
○西川潔君 終わります。
#190
○委員長(向山一人君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、川原新次郎君及び平井卓志君が委員を辞任され、その補欠として石川弘君及び岡部三郎君が選任されました。
#191
○委員長(向山一人君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#192
○委員長(向山一人君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより採決に入ります。
 労働安全衛生法及び労働災害防止団体法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#193
○委員長(向山一人君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、細谷昭雄君から発言を求められておりますので、これを許します。細谷君。
#194
○細谷昭雄君 私は、ただいま可決されました労働安全衛生法及び労働災害防止団体法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、連合参議院、民社党・スポーツ・国民連合及び参院クラブ、各会派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    労働安全衛生法及び労働災害防止団体法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
   政府は、次の事項について、適切な措置を講ずべきである。
 一、元方事業者による安全衛生確保措置が適切に講じられるよう指導を強化するとともに、特に中小規模建設現場について、統括安全衛生責任者及び店社安全衛生管理者の選任を含め、安全衛生管理体制の整備充実を図ること。
 二、建設工事の事前審査制度を効果的に運用するとともに、事前安全衛生評価のための指針を策定する等により、施工計画の策定段階における事業者の安全衛生確保対策の促進を図ること。
 三、施工技術の機械化、高度化の進展及び建設・災害の発生状況を踏まえ、安全基準を見直すとともに、危険予知活動の充実その他関係者に対する安全教育の徹底を図ること。
 四、公共工事における工期の設定、施工計画の策定等が労働災害の防止に十分配慮されたものとなるよう、関係省庁は格段の努力を払うこと。
 五、快適な職場環境の形成の促進が実効あるものとなるよう、改正法の施行に関し労使関係者の意向が十分反映されるよう配慮すること。
 六、産業医確保のための積極的対策を講ずるとともに、産業医制度の充実を促進する具体的方策を拡充強化すること。
 七、業務に起因する脳・心疾患による突然死を予防する観点から、業務との関連について医学的な調査・研究を進めるとともに、職場における健康管理施策及び労働時間の短縮を積極的に推進すること。また、脳・心疾患に係る突然死等の業務上外の認定については、医学的知見の動向に十分注意を払いつつ適切な運用に努めるとともに、認定及び不服審査の迅速な処理に努めること。
 八、本改正法の円滑な施行と被災者に対する迅速な労働災害補償を確保するため、労働基準監督官、安全・衛生専門官、労働災害補償保険審査官等の増員と、労働安全衛生等を担当する行政体制の整備拡充を図り、労働災害の防止等に即応できる態勢を確立すること。
  右決議する。
 以上です。
#195
○委員長(向山一人君) ただいま細谷君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#196
○委員長(向山一人君) 全会一致と認めます。よって、細谷君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、近藤労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。近藤労働大臣。
#197
○国務大臣(近藤鉄雄君) ただいま決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存でございます。
#198
○委員長(向山一人君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#199
○委員長(向山一人君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
#200
○委員長(向山一人君) 次に、介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律案を議題とし、まず政府より趣旨説明を聴取いたします。近藤労働大臣。
#201
○国務大臣(近藤鉄雄君) ただいま議題となりました介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 二十一世紀に向けて我が国における人口の高齢化が急速に進展すること等に伴い、寝たきり老人、在宅痴呆性老人等の要介護者の数は著しく増加し、これに伴いこれらの方々に対する介護の需要が増大することが見込まれております。
 こうした状況の中で、介護労働力の供給を見ますと、最近における労働力需給が引き締まり基調で推移する中で、依然として人手不足感は根強く、介護分野における労働力の確保は難しくなってきております。
 また、近年の出生数の減少等に伴い、我が国の生産年齢人口は一九九五年をピークとして減少に転ずるなど、我が国が戦後初めて経験する状況となることが予想されており、介護労働力の確保は、中長期的かつ構造的な課題として対応していかなければならない問題であります。
 このような状況に対処し、介護労働力を確保するためには、事業主がその雇用する介護労働者について行う労働環境の改善、教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善に係る措置を促進するとともに、介護労働者の能力の開発及び向上等を進めることにより、介護労働者の福祉の増進を図る必要があり、そのための支援策を総合的、体系的に進めていくことが重要な課題となっております。
 政府といたしましては、このような課題に適切に対処するため、中央職業安定審議会の建議を踏まえ、介護労働力の確保に資するとともに、介護労働者の福祉の増進を図るための施策を推進するための法律案を作成し、同審議会にお諮りした上、ここに提出した次第であります。
 次に、この法律案の内容につきまして、概要を御説明いたします。
 第一に、労働大臣が、介護労働者の雇用管理の改善、能力の開発及び向上等に関し重要な事項を定めた計画を策定し、これに基づき、事業主、職業紹介事業者その他の関係者に対して必要な要請を行うこととしております。
 第二に、その雇用する介護労働者の福祉の増進を図るために実施する雇用管理の改善に関する措置についての計画を作成し、都道府県知事の認定を受けた事業主に対して、雇用保険法の雇用福祉事業としての助成及び援助を行うこととしております。
 第三に、労働大臣が、公益法人を介護労働安定センターとして指定し、介護労働者に対する研修等介護労働者の福祉の増進を図るために必要な業務を行わせることとしております。
 第四に、雇用促進事業団に、介護労働者の福祉の増進を図るための施設や設備を設置する事業主、職業紹介事業者等に対する必要な資金の借り入れに係る債務の保証等の業務を行わせることとしております。
 なお、この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
 以上、この法律案の提案理由及び内容の概要につきまして御説明申し上げました。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#202
○委員長(向山一人君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ります。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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