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1992/05/28 第123回国会 参議院 参議院会議録情報 第123回国会 労働委員会 第9号
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1992/05/28 第123回国会 参議院

参議院会議録情報 第123回国会 労働委員会 第9号

#1
第123回国会 労働委員会 第9号
平成四年五月二十八日(木曜日)
   午前十時二分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月十九日
    辞任         補欠選任
     成瀬 守重君     岩崎 純三君
     星野 朋市君     平井 卓志君
五月二十日
    辞任         補欠選任
     藤田 雄山君     青木 幹雄君
     渕上 貞雄君     庄司  中君
     吉田 達男君     西野 康雄君
五月二十一日
    辞任         補欠選任
     青木 幹雄君     川原新次郎君
五月二十七日
    辞任         補欠選任
     西野 康雄君     松本 英一君
五月二十八日
    辞任         補欠選任
     岩崎 純三君     狩野  安君
     松本 英一君     堀  利和君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         向山 一人君
    理 事
                田辺 哲夫君
                仲川 幸男君
                細谷 昭雄君
                山中 郁子君
    委 員
                狩野  安君
                佐々木 満君
                山東 昭子君
                清水 澄子君
                庄司  中君
                対馬 孝且君
                西岡瑠璃子君
                堀  利和君
                中西 珠子君
                笹野 貞子君
                橋本孝一郎君
                西川  潔君
   衆議院議員
       労働委員長代理  永井 孝信君
   国務大臣
       労 働 大 臣  近藤 鉄雄君
   政府委員
       労働大臣官房長  齋藤 邦彦君
       労働省労働基準
       局長       佐藤 勝美君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        佐野  厚君
   説明員
       公正取引委員会
       事務局経済部調
       整課長      山田 昭雄君
       中小企業庁計画
       部下請企業課長  柚木 俊二君
       労働省労働基準
       局賃金時間部長  井上 文彦君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法案
 (内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(向山一人君) ただいまから労働委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨日、西野康雄君が委員を辞任され、その補欠として松本英一君が選任されました。
 また、本日、岩崎純三君が委員を辞任され、その補欠として狩野安君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(向山一人君) 労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法案を議題といたします。
 政府から趣旨説明を聴取いたします。近藤労働大臣。
#4
○国務大臣(近藤鉄雄君) ただいま議題となりました労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 労働時間の短縮は、豊かでゆとりある勤労者生活を実現し、生活大国に向けての前進を図るために不可欠な国民的課題であり、また、すべての勤労者にとって働きやすい職場づくり、国際社会との調和のとれた国民経済の発展のためにも重要な課題となっております。
 しかしながら、労働時間の動向を見ますと、昭和六十三年に改正労働基準法が施行されて以来着実に短縮していますが、年間総労働時間を千八百時間程度に向けてきる限り短縮するという政府の目標の達成のためには、より一層の努力が必要であり、完全週休二日制の普及、年次有給休暇の完全取得、所定外労働の削減をさらに推進していく必要があると考えております。
 特に、企業間の競争、同業他社との横並び意識、取引慣行の問題等により、個々の企業の自主的努力だけでは、労働時間の短縮が困難な状況も見られるところでありますので、このような状況にかんがみ、労働時間の短縮を促進するためには、個々の企業による自主的な努力を促進するための特別の措置を講ずること等により、環境整備を図っていくことが重要な課題となっております。
 政府といたしましては、このような課題に適切に対処するため、中央労働基準審議会の建議を踏まえ、労働時間の短縮を円滑に推進するための法律案を作成し、同審議会にお諮りした上で、ここに提出した次第であります。
 次に、この法律案の内容につきまして、概要を御説明いたします。
 第一に、労働大臣が、労働時間短縮の目標、事業主等に対する指導及び援助に関する事項等を定めた計画の案を作成して、閣議の決定を求めることとし、その決定があったときは、これを公表するとともに、必要がある場合には、関係団体に対し、要請をすることができることとしております。
 第二に、事業主は、労使で構成する委員会を設置する等労働時間の短縮を効果的に実施するために必要な体制の整備に努めなければならないこととし、一定の要件を満たす委員会が設置されている場合には、労働基準法の特例を設けることとしております。
 第三に、同一の業種に属する二以上の事業主は、労働時間の短縮の実施に関する計画を作成し、労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣に提出して、その計画が適当である旨の承認を受けることができることとし、計画の承認に際して公正取引委員会と必要な意見調整を行うとともに、計画承認後において公正取引委員会からの独占禁止法に抵触するおそれがある旨の通知に対し必要な意見を述べることとするほか、承認事業主に対して必要な援助を行うこととしております。
 なお、この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとし、この法律の施行の日から五年以内に廃止するものとしております。
 以上、この法律案の提案理由及び内容の概要につきまして御説明申し上げました。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#5
○委員長(向山一人君) この際、本案の衆議院における修正部分について、衆議院労働委員長代理永井孝信君から説明を聴取いたします。永井君。
#6
○衆議院議員(永井孝信君) 労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法案に対する衆議院の修正部分について、その内容を御説明申し上げます。
 修正の要旨は、労働大臣は、労働時間短縮実施計画の承認に当たっては、関係事業場の労働者の意見を聞くように努めるものとすることであります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
#7
○委員長(向山一人君) 以上で趣旨説明及び衆議院における修正部分についての説明聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#8
○庄司中君 ただいま大臣から本案の趣旨の説明がございましたけれども、私は、まずその辺から入っていきたいと思います。
 趣旨の説明にありましたように、幾つかの重点の項目がございます。例えば、国による推進計画の策定であるとか実施体制、企業内労使で委員会をつくる問題であるとか、あるいは同一業種事業者に対する実施計画の策定、それから労働省だけじゃなくて関係省庁との促進の共同部な作業、こういうふうなところがございますけれども、この法律の趣旨は、時短の目標を決めるというよりも促進を図っていく、そういうところにねらいがあるというふうに考えますと、主な項目としましては、大体二つではないだろうか。つまり、企業内労使の協議の場を設けていくということであります。もう一つは、企業の横並び意識がございますので、その行動慣行といいますか、一つの慣行の上に時短促進を乗せていく。この二つが大きな促進の項目ではないかというふうに受け取りますけれども、そういうふうな受け取り方でいいかどうかということをまずお聞かせいただきたいと思います。
#9
○国務大臣(近藤鉄雄君) もう言うまでもないことでございますけれども、勤労者、国民の立場に立って、ゆとりある生活を確保するためには、できるだけ勤労時間を短くして、人間生活のために時間を割けるような状況をつくることでございます。
 そのためには、従来からもいろんなことを政府はやってまいりました。しかし、この法律を改めて、まず政府が基本的な方針を内閣の総意において決めるということが大前提でございまして、それに基づいて、まさに先生おっしゃったように、時間短縮するためには経営者だけで幾ら頑張ったってできないことでございますから、それができるためには経営者の考え方、それから実際働いていらっしゃる立場の皆さんの考え方、協力のあり方について常時話し合いができる、そういう委員会を企業内に設置してこの問題についての労使挙げての取り組みができる体制をつくろうということ。
 それからもう一つは、これも先生御指摘ございましたけれども、なかなかできないのは、日本は極めて競争社会にございまして、横並びで自分だけやったって相手がやらなければということでございますが、そういう横並び意識がございますから、そういう点で横と歩調をとりながら、また下請、元請の関係もございますのでこれも話し合いを進めながら、しかしそういった業界を指導する立場にある官庁もございますので、そういった官庁とも話をしながら総合的な時短ができるような具体的な条件、環境整備を図っていきたい、こういうことでございます。
#10
○庄司中君 そうしますと、今までずっと時間短縮の促進の施策を続けてきたわけでありますけれども、ここに新たな促進の施策を提起していく、こういうことだろうというふうに思います。
 今まで労働省がずっと計画を促進してきた、そしていろんな施策をとってきたわけです。例えば、時短の推進計画というのは既に持っておりますし、さらには連続休暇取得促進要綱というようなものをつくりまして、連続取得の促進を図るという施策もやってまいったわけであります。さらには所定外労働削減要綱というものをつくりました。これは去年でありますけれども、つくってきたわけであります。新たな促進施策をここで行うということは、今まで行ってきた促進の施策では必ずしも十分じゃない、そこで新たな促進策をここで設ける、こういうふうに考えられます。つまり、今までの推進、促進の施策では必ずしも十分じゃない、こんなふうに考えられますけれども、この辺の受けとめ方はどういうふうにお考えでしょうか。
#11
○政府委員(佐藤勝美君) 政府としましては、ただいま御指摘のように、従来から完全週休二日制の普及促進であるとか年次有給休暇の取得の促進、あるいは連続休暇の普及拡大、所定外労働の削減等を中心に監督指導、あるいはその他のあらゆる機会を通じまして労使に対します指導援助の充実に努めてきたわけでございます。
 例えば、時短に伴いますコスト負担の増大につきましては種々の助成金、融資制度、税制で対応してきた。それから、時短のための企業におけるノウハウの不足につきましてはいろんな形での指導、診断サービス事業というものをやってまいりました。それから、親企業や取引先との関係につきましては、親企業、下請企業含めましてのグループに対する指導ということもやってまいりましたけれども、そのほかにやはり同業他社との競争関係というものがございまして、なかなか単独では進めにくいという問題が残るわけでございます。
 今回、御審議をいただいております法案につきましては、そういった同業他社との横並び意識等の問題が労働時間短縮の阻害要因となっているという実態が見られますので、こうした阻害要因を除きまして労働時間の短縮に向けて環境整備を図るためにこの法案を提出したものでございます。
 このような法案に基づきます措置が適切に講じられますれば、週休二日制の普及であるとか所定外労働の削減等への取り組みがさらに事業主によって積極的に行われる、あるいは労使相相談しながら、協議をしながら、こういう問題を進めるための基盤がさらに強くなるというふうに考えておるところでございます。
#12
○庄司中君 今まで労働省が進めてきた施策をずっと追っていきますと、大体大きく二つに分かれるというふうに思います。
 局長、今具体的なことをおっしゃいましたけれども、一つやっぱりかなり力点を置いてきましたのは、国民的なコンセンサスの形成というところがあったんだろうというふうに思います。それからもう一つは、この法案にも関係をしますけれども、具体的な促進策ということだろうというふうに思います。
 まず、国民的コンセンサスの形成の方から見てみますと、例えば広報活動をやってきましたね、ゴールデンウイークに連続休暇をとろう、夏季における連続休暇をとろう、あるいは十一月をゆとり創造月間にしていくとか、あるいはほかにもあるというふうに思います。例えば、ゆとり創造宣言都市奨励事業であるとか、時短の政策会議をやるとか、あるいは地方の時短問題懇談会をつくって地域の合意をつくっていくとか、こういうことをやってきたというふうに思いますけれども、果たしてこの時期になりまして、今までずっと行ってきた施策の成果といいますか効果、それについてはどういうふうな評価をされていらっしゃいますでしょうか。
#13
○政府委員(佐藤勝美君) 労働時間短縮の問題は、単に企業内あるいは労使の問題にとどまらないわけでございまして、家庭生活なりあるいは消費者の利便等国民生活全般にわたっていろんなかかわりを持っている問題でございます。したがいまして、時間短縮を円滑に推進していくというためには、広く国民全般の理解を深め、社会的機運の醸成を図るということが不可欠でございます。
 そういうことで、労働省では、例えばゆとり創造シンポジウムというものを開催するというふうなこととか、あるいは労働時間短縮につきまして積極的な取り組みをしてすぐれた成果を上げておられる企業を表彰するというような労働時間短縮好事例表彰制度というものを実施するというようなこと、あるいは各地域の特性を踏まえました労働時間の短縮の進め方につきまして地域的なコンセンサスの形成を図るために地方労働時間問題懇談会というものを開催してきたところでございます。また、平成二年度からは、市の協力を得まして地域の実情に即した取り組み、広報啓発活動を展開すもゆとり創造宣言都市奨励事業というものも行ってきたところでございます。
 こういったコンセンサスづくりのためのいろんな運動の成果、これを数量的に把握するのはなかなか困難ではございますけれども、私どもが見ておりますところでは、やはりこういった事業を通じまして、国民全般に労働時間短縮が必要である、そのためにはどういうことが必要かというようなことが広く浸透してきたというふうに考えております。こういった機運の醸成が図られることによりまして、今後の労働時間短縮の促進がさらに図られるというふうに考えております。
#14
○庄司中君 国民的コンセンサスの形成につきましては、御承知のとおり昨年の七月に総理府が調査を実施いたしました。これはかなり有名でありますから、もう皆さん御存じだと思います。この調査の結果を見てみますと、かなり大きな変化が出てきている。つまり、この五年間にかなり大きな変動といいますか、意識の変化が生じているということがわかります。
 例えば、収入増より労働時間が短い方が望ましい、収入よりも労働時間を選択する、選好するという、こういう人たちが五年前は二七%だったわけです。非常に少なかったわけです。ところが去年の調査ですと、これが四一%に動いて、国民の半分近くがいわば収入よりも労働時間を選好するというふうに変わってきているということであります。
 それから、この逆でありますけれども、労働時間が長くなっても収入増が望ましいという意見は、今までは三四%あったわけです、五年前には三四%。これが二六%に変わってきています。一つまり、国民の多数派と少数派がここで逆転をしたということになります。この五年間に国民的な時間短縮についてのコンセンサスというのはさま変わりしてきたということがここで示されているというふうに思います。ただ、施策の方が、いわば法整備の方がここまで進んでいないということなんです。国民的コンセンサスと法整備のところのギャップといいますか、ずれというのがここで目立ってきているのではないか、こんなふうに思いますけれども、この辺は大臣どんなふうにお考えでしょう。
#15
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生、率直に言って国民の立場、そして働いている方々のお立場ではまさにコンセンサスが形成されつつある、こういうことだと思うんです。
 一方、そういう方々に働いていただいて経営をする会社の立場は、そうはいったって隣の会社と競争すればそんなものはできないよとか、それからよく言われますけれども、月曜日にこれだけのものを持ってきてくれと、こういうような発注があれば土曜日曜休めない、こういうことがございます。だから、国民的なコンセンサスがあっても、それを受ける企業の側の条件がつくられないとできない。企業経営者はやりたいんだけれどもそれは相手のあるごとだからと、こうなります。そういう点で、そういった国民的なコンセンサスを踏まえながらみんなでできるような体制を具体的につくっていこうというのが今回の法案の趣旨であると御理解いただきたいと思います。
#16
○庄司中君 具体対策のところでいきますと、今度の法律に非常に関係を持つわけでありますが、今までいろんなことをやってきています、さっきも局長おっしゃいましたけれども。
   〔委員長退席、理事仲川幸男君着席〕
例えば、事業主に対する集団的な指導とか説明会であるとか、特に週休二日制で問題を持っている中小企業の時短促進援助事業をつくっていく、あるいは時短のおくれている特定業種、それに対する推進事業をやっていくとか、それから社会的に影響の大きい主要産業の懇談会を持つとか、こういうふうにやってきたわけでありますけれども、いわばこの法律と関係をする具体的な対策のところが今まで十分じゃなかった。さっきも局長はそういうふうにおっしゃいました。つまり、時短のテンポを加速をしていく、こういうふうにしますと、この具体的な対策のところも、例えば関係官庁との関係、今度は閣議で推進計画を決定するということになりますけれども、そういうところをひっくるめて総合的、積極的にもっとやっていかなきゃならない。今までの関係を引き継ぐだけじゃなくて、かなり大規模な時短の展開、事業の展開をやっていかなきゃならない、こんなふうに思いますけれども、例えばこの法律を前にしましてそれに対する心構えとか、そういうところをお聞かせいただきたいと思います。
#17
○説明員(井上文彦君) 今御指摘ございましたように、労働省といたしましては、これまで例えば中小企業等に対しては集団指導できめ細かな指導援助策を行ってまいりました。中小企業時短促進援助事業等がそれでございますし、また時短がおくれてございます建設業等に対しましては、直接その事業の実施のための指導援助とか、それから影響力の大きい主要な業界団体との懇談会を通じで時短に対する取り組みをお願いしてきたところでございます。また、建設省におきましても、公共工事における週休二日制のモデル工事の施行とか、完全週休二日制に対応した工期設定など、労働時間短縮に取り組んできたところでございます。
 こうした施策によりまして、中小企業とか時短が難しい業種におきましても、週四十時間労働制の実現に向けましていろんな努力が重ねられると考えておりますが、今後さらに本法案等の施行を通じまして、こういう難しい業種等に対しましても時短に対する取り組み体制を強化してまいりたい。特に建設省とか関係省庁と十分連携をとるというふうに考えてごぞいます。
#18
○庄司中君 そこで、既に労働基準法の改正問題に中央労働基準審議会が入っているということでありますから、審議会の結論は別にしまして、今までずっといろんなことをやってきたわけですから、法整備の必要性あるいは法整備に対する認識といいますか、審議会の審議の一歩手前のところで問題を考えてみたいというふうに思います。
 時短の長期的な趨勢を見てみますと、これも非常にはっきりしているわけであります。例えば、高度成長期にありました六〇年代から七〇年代の半ばまで、第一次石油危機まででありますけれども、この時期といいますのは総実労働時間あるいは所定内、これが短縮がかなり進んだということが言えます。ところが、第一次石油危機以降八〇年代の前半まで、いわば低成長期に入りますとこの時間短縮の傾向というのが停滞をする、どちらかといいますと入減らしをたくさんやったわけですから、所定外が漸増傾向にあったということも言えるわけであります。そしてさらに、八〇年代の後半、特に八七年に基準法の改正をやった以降時短の促進のテンポというのが非常に速まったわけです。
 例えば、高度成長期一年間の総労働時間の短縮は大体十時間程度であったわけでありますけれども、基準法の改正をやった以降は大体二十時間あるいは三十時間のテンポに変わってきたわけです。つまりテンポが非常に加速をしてきた、こういうふうに見ることができるわけであります。よく大臣は、時短というのを独立変数としてとらえていく、高度成長期は人手不足という従属変数で一年間十時間程度短縮したわけでありますけれども、独立変数としてとらえていく、つまり法の改正を行いますとこれが非常に加速をしていく、こういうふうに考えられますけれども、そういうふうなことをいわば認識上の問題としてどういうふうにお考えになっているのか、まずお聞きしたいと思います。
#19
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生御指摘のとおり、まさに六十三年改正労働基準法のもとで時短が着実に進んだことは事実でございますが、私どもはこの時短をさらに進めて、たびたび御指摘ございますように千八百時間に持っていこう、こういうことでございますので、今のペースを速めていきたい、こういうことでございまして、そのためには、私どもいろんな機会に申し上げておりますように、労働時間を、今までは経済のその活動で従属的に決まる変数から、こっちを先に決めて、具体的なこっちの時間が先に決まっていって、それに応じて会社の経営なり産業のあり方を組み直していく、こういう立場でやらなきゃならないというふうに申し上げたわけであります。まさにそういう方向でしていくためには、今度は労働基準法をさらに改正して、週四十時間ということは終局の目的でございますが、それができるための環境整備がまず大事であって、それをしないでこっちだけ独走しちゃいますと、基準法の改正だけでいきますと多少ぎくしゃくする面もございますので、その間のいわば準備体制をつくるということで今回の法律を提案させていただいた、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
#20
○庄司中君 いわば独立変数の効果というのは、もう大臣がおっしゃるとおりでありまして、時短促進については独立変数の効果、つまり法制度の整備であるとか、あるいはそれ以外の環境も含まれますけれども、やっていく必要があるということだろうというふうに思います。
 それから、最近平成三年度の年間実総労働時間、これが発表されました。二千六時間ということでありますけれども、これも中身をとってみますと、今までの基調と余り変わっていないといいますか、つまり総労働時間をとりますと規模別には変化がないわけです。例えば、所定内は確かに大企業が短いわけでありますけれども、逆に今度は所定外をとりますと大企業が長い。逆に、中小企業でいきますと、所定外は短いけれども所定内の方が長いというふうなことがあります。例えば、これを週休二日制の普及率でとうてみますと、大企業の方は適用労働者ということになりますと六七・四%ということで、千人以上でありますけれども、三分の二が完全週休二日制でカバーをされている。ところが、非常にこれは気が重いわけでありますけれども、三十人から九十九人の規模をとってみますとこれが実は八・二%にしか達しない、つまり一〇%にしかいかないわけです。これはかなり重い課題だろうというふうに思います。
 そういう点では、これからの重点課題としましては、中小企業にどのように完全週休二日制を普及させていくかということ、それからもう一つは大企業の所定外労働時間をどうやって減らしていくかという問題、ある意味では時間短縮の構造問題を考えますとそんなふうに受けとめることができるというふうに思いますけれども、この辺の問題についてはどういうふうにお考えでしょうか。
#21
○説明員(井上文彦君) 労働時間の実態でございますが、御指摘のように規模別の状況を見ますと、大企業につきましては、完全週休二日制がかなり普及しているということを背景に所定内労働時間は短い状況でございます。ただ、御指摘のように所定外労働時間がかなり中小企業に比べて長いというのが実態でございます。また、中小企業におきましては、大企業とは逆に週休二日制の導入等がおくれてございまして、所定内労働時間は長いというのが実態でございまして、大企業に比べますと所定外労働時間は比較的少ないという状況でございます。
 こうした実態を踏まえますと、今御指摘のように中小企業につきましては所定労働時間の削減、特にこれにつきましては週休二日制の導入等を中心にいたしました所定労働時間の削減が重要である。また、大企業につきましては、所定労働時間の短縮は当然でございますが、特に所定外労働時間、残業が長いというふうな状況でございますので、所定外労働時間の削減のための施策が必要であるというふうに考えてございます。
 なお、各部共通しての問題でございますが、年次有給休暇につきましても、企業規模にかかわらずこの取得を促進していただくということも重点課題として我々は取り組んでいきたいというふうに考えてございます。
#22
○庄司中君 今月の二十一日に、新経済五カ年計画を策定しております経済審議会の生活大国部会が報告書を発表いたしました。これを読んでみますと、かなり表現が変わっています。労働時間短縮のところでは、年間総労働時間千八百時間を目標とするというふうに、はっきり条件も何も付さないで、留保条件もなしに提起をしております。現行計画を見ますと、幾つかの留保条件を持っています。例えば「おおむね」であるとか、あるいは週四十時間制の実現を「期し」であるとか、あるいは千八百時間程度に向けてという「程度」がございますね。それからさらに「できる限り」短縮をするとか、できる限りでありまして、できない場合はしょうがないということになると思いますけれども、こういう表現が変わってきたのにはそれなりに理由があるだろうというふうに思います。
 つまり、今の計画では当初のおおむねの千八百時間は達成できないことははっきりしたわけでありますから、新しい経済計画の中ではやはり心構えといいますか、覚悟を決めてといいますか、とにかく一生懸命に、積極的にこれを扱っていかなきゃならない。読んだ側から見ますとこんなふうに受け取りますけれども、実際の当局としてはこれをどういうふうに考えていらっしゃるのか、どういうふうに受けとめていらっしゃるのか、この辺をお聞きしたいというふうに思います。
#23
○国務大臣(近藤鉄雄君) 確かに、現行計画では千八百時間については多少留保をつけた言い方をしてございますけれども、私は当時としてはなかなかこれは野心的な目標であったと思うわけであります。私はその直前の経企庁長官で、準備の作業をした経験や経緯がございますが、ただ当時二千百時間だった。それから千八百時間というと三百時間ですね。三百時間を五年間で割りますと六十時間。六十時間というのは、二千時間をベースにして考えると約三%ぐらいずつ減らさなきゃいけない。当時の実績を見ますと、二十数時間から三十時間ちょっとぐらいなんですね。そうすると、単純割り算いたしますと、五年間で三百時間というのはなかなか難しかったと思うんでありますが、野心的と言うとあれがありますけれども、一応目標を掲げたわけであります。
   〔理事仲川幸男君退席、委員長着席〕
 今度の場合は、先生御案内のように二千時間ちょっとですから、千八百時間となると二百時間、最近は三十数時間ずつ減っておりますから、普通にいってもというとあれでありますが、三十数時間で二百を割れば、六年間で何とか千八百時間に達する、こういうことであります。これを一年間前倒しをするということは、単純計算でございますが、一年間に四十時間ずつ減らしていけば五年間で二百時間減らせる、こういうことでございますので、できないことではないというのが私ども実感でございます。しかし、現行三十数時間を進めるわけでありますから、この時短促進法で、さらにいろんな各界のコンセンサスを得ながら今度は新しい経済計画中には必ず千八百時間の達成をしよう、こういう決意を込めて案をつくらせていただいている。私のところじゃなしに経済審議会がっくったわけでございますが、我々はそういう形でいろんな議論に参画をしている、こういうことでございます。
#24
○庄司中君 よくわかりました。その問題は後でまたもう一度触れたいというふうに思います。
 それから、現行計画の中で、これは労働省のいろんな要綱とか計画の中にもございますけれども、千八百時間モデルというのがございます。これは、現行計画をつくるとき経済審議会の国民生活部会が提起した問題でありますけれども、大体三つの柱をつくっています。一つは、完全週休二日制への移行という問題がございます。それからもう一つは、これも具体的には後で取り上げたいと思いますけれども、年次有給休暇の問題であります。これの付与日数を二十日にする、そして取得も二十日にするという、これはモデルでございますが、こういうふうな提起があります。それから、所定外労働時間を百四十七時間、これはちょっと甘いんじゃないかというふうに私は思いますけれども、この三つの柱を千八百時間モデルとして経済審議会の国民生活部会ですか、そこで提起をしたということであります。労働省の施策の展開、これ以降見ていましても、この千八百時間モデルでずっとやってきたというふうに思います。
 そうしますと、これからの時短の目標といいますか、進める場合に、やはり完全週休二日制、そして今おっしゃいましたように有給休暇の問題あるいは所定外の時間の短縮というこの三つを三本柱として進めていくということはこれからも変わりがない、こういうふうに考えてよろしいでしょうか。
#25
○政府委員(佐藤勝美君) 現在、経済審議会で検討中の新しい経済計画につきましては、労働時間短縮の目標について最終的に決定したわけではございませんし、またそういうことで公表されたものではございません。しかしながら、先ごろ発表されました経済審議会の生活大国部会の報告では、計画期間中に年間総労働時間千八百時間を達成することを目標とするというふうにされております。
 先生、今御指摘のように、現行の経済計画の策定時に国民生活部会報告に盛り込まれておりました千八百時間ケースの中身でございますが、これを達成するための典型的なケースを試算いたしまして、完全週休二日制、年次有給休暇二十日取得、所定外百五十時間程度というふうにしているわけでございますが、新しい計画でもその基本的な考え方は変わらないものというふうに考えております。したがいまして、労働時間短縮の推進に当たりましては、労働省としましては引き続き先ほど来御指摘の三本柱が基本になるものというふうに考えておるところでございます。
#26
○庄司中君 現在、中央労働基準審議会で労働時間の問題の審議が既に行われている、検討項目も明示をされております。そうしますと、この千八百時間モデルというものを具体的な制度というふうな形で展開をしていきますと、週休二日制というのはつまり週四十時間制である、これを制度から見ますとそういうふうに見ることができる。それから、有給休暇の問題でありますが、これは二十日付与で一〇〇%取得という方向が出ているとすれば当然審議会の中ではこの問題は取り上げられるであろう。それから、時間外の問題でいきますと、時間外の短縮を図るためにはどうするのか。例えば、割り増し率の引き上げを行うのか、あるいは三六協定の運用の適正化を図っていくのか、もっと厳しくするべきでございますけれども、こういう方向が当然出てくるだろうというふうに思います。それはもう審議会の結論がどうなるかわかりませんけれども、当局として、労働省としていわば経済計画もそっちの方向に向かっているわけでありますから、そういう問題意識を持って審議会に対応していく、こういうことは言えるだろうというふうに思いますけれども、その辺はどういうふうにお考えでしょうか。
#27
○政府委員(佐藤勝美君) 今後の労働時間短縮の推進に当たりましては、完全週休二日制の普及促進、年次有給休暇の取得促進、それから所定外労働の削減が重点的課題でございますけれども、現在進められております労働基準法の見直しの検討に当たりましてもこれらを具体的にどうやってやったらいいのかというところがやはり検討の中心になるわけでございます。
 いずれにしましても、現在こういった観点から中基審で御検討いただいておるところでございます。
#28
○庄司中君 それとは関係をするわけでありますけれども、審議の方向、つまり方向についてめ認識というところでございます。例えば、今月から国家公務員が完全週休二日制になりました。それから、地方自治体もできるだけ早い時期に完全週休二日制に移る、そういう準備が進められているわけであります。基準法レベルで考えてみますと、八七年に改正をされまして八八年に施行されたわけでありますけれども、本則には週四十時間というのは入りましたね。ところが、段階的に政令で四十六時間、現在は四十四時間でありますが、こういうふうに移行をしていくというふうになっております。
 公務員あるいは地方自治体が既に完全週休二日制を実施あるいは実施しようとする方向だというふうに考えますと、例えば政令で本則を目指していくためには、二時間二時間というふうに短縮をしてきましたけれども、公務員の短縮の方向から見まして、これからは当然二時間、つまり四十二時間を飛び越えて四十時間にいくのが普通、いわば常識だというふうに考えられますけれども、行政としてはそうするとはとても、これから審議会でやっていくわけでこれは言えませんけれども、そういう社会的な動向、それについての認識ということについてはどういうふうに受けとめていらっしゃいますでしょうか。
#29
○政府委員(佐藤勝美君) 週四十時間制、名実ともに週四十時間制への移行という問題でございますけれども、確かに公務員につきまして完全週休二日制が実施をされたというのは大変重要なステップであろうと思います。一方におきまして、民間企業の実態を見ますと規模別なり業種別なり大変格差があるということもまた事実でございます。したがいまして、実効のある労働基準法の改正を行うという観点からはこういった実態をどう考えたらいいのか、またどういう措置をとるべきかということも考えなければいけませんし、また法律改正によって実態を進めるという観点も必要でございます。
 いずれにしましても、公務員につきまして、あるいはこれから地方公務員についても週休二日制がとられることと思いますけれども、今後労働基準法の改正によります四十時間労働制への移行につきましては、こういったものは大変重要なステップであるという認識を持っておるところでございます。
#30
○庄司中君 ついでにちょっとお聞きしておきたいんですが、現在中央労働基準審議会で基準法の問題を審議しておりますけれども、これは結論が出るのはことしいっぱいという話を聞いておりますが、そういうふうに受けとめてよろしいでしょうか。
#31
○政府委員(佐藤勝美君) 労働省当局からは、中央労働基準審議会に対しまして、ことしじゅうに結論を出していただきたいというお願いをいたしております。
#32
○庄司中君 ことしじゅうに結論が出るということを一方で押さえていきますと、例えば一定の規模、業種についての猶予措置というのがございますね。現在、四十六時間の猶予措置が行われておりまして、この猶予措置が完了しますのが来年の三月の末、それ以降は全部いわば四十四時間制になる。つまり、これで足並みがそろうわけです。次のステップの土台ができるというふうになると思います。基準法の結論がことしいっぱいに出る、そして猶予制度がなくなりまして、一つの次のジャンプの土台ができるということになりますと、つまり法制度、法律が改正をされるのは恐らく次の通常国会ではないだろうかというふうに予測をされますけれども、そういうふうに私たちは予測をしておいていいのか。今のスケジュールがこのままでいきますとそういうふうになるだろうというふうに思っておりますけれども、その辺はどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。
#33
○政府委員(佐藤勝美君) 先ほどお答え申し上げましたように、ことしじゅうに審議会の結論をいただきたいということでやっておりますから、ことしじゅうに結論をいただけますと、私どもとしては鋭意その結論の内容を踏まえまして準備を進めるということになりますと、一番近い国会は次の通常国会ということでございますので、スケジュールとしてはそういうことを考えておるところでございます。
#34
○庄司中君 わかりました。さっきも言いましたように国民的コンセンサスができているわけでありますから、できるだけ早い機会に基準法の改正を行っていただきたいというふうに思います。
 次の問題は、時短を進める上での考え方の問題でございます。といいますのは、労働時間といいますのは、賃金と並びまして労働条件の決定的な要件だろうというふうに思います。それから、国際的にも労働条件を比較する場合には、やはり労働時間が第一になってくる、こういうふうに考えることができますし、事実そうだというふうに思います。いわばこの労働時間、重要な労働条件である労働時間の短縮を進めていくためにはいろんな議論があるだろうというふうに思います。
 一番大きな議論といいますのは、労働条件だから労使の自主的な協議で行うべきであって、それにいろんな制約を加えるべきじゃないという意見はかなり有力な意見としてあるだろうというふうに思います。ところが、さっきも言いましたように、労働時間というのは国際的な比較の最も指標になりやすい。しかも片方では、例えば日米の間でいいますと、貿易問題を中心にしまして構造協議の問題が出ていまして、そしてアメリカだけ優遇するんじゃないかということで、今度はECが同じような要求をしてくるということで、非常に一国の条件というものは国際的な関係を持ってきている条件であります。
 しかも、注目をしなきゃならないと思いますのは、最近よく言われているわけでありますけれども、労働条件を競争の条件にしないということ、これが先進国間の不文律の合意である、こういうことが最近言われております。明示的には示されていないけれども、途上国ではありませんよ、先進国間では労働条件が均質化されていなければいけない。例えば、競争条件を低賃金で強めていくとか、長い労働時間で強めていくことは許されない。主として、最近ECの方からそういう要求が出ているわけであります。
 こういうふうに考えてみますと、やはりこういうふうな条件の中では、労使の自主的な協議といっても、その協議の土台の中にはこういうふうな条件を考えていかざるを得ない。このような条件を考えていきませんと問題が起こる。つまり、労使の協議というのは、国際的なルールに参加する土台の上で行われていかなきゃいけない、ある意味ではそういう制約を持っているんしゃないだろうか、こんなふうに思います。労働条件は労使の協議で行うのが当たり前ですけれども、その土台自身を考える必要がある、こういうふうに私たちは認識をいたしますけれども、どういうふうにこの辺の事情はお考えでしょうか。
#35
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生も御指摘がございましたように、我が国の労働条件、労働時間というのは、もうまさにひとり国内の問題だけではなしに、国際的な大きな関心を集めている問題でございまして、我が国は国際マーケットでいい物を安くつくって売って何が悪いんだと、こういうことを言いましても、いい物を安くつくる条件に労働時間、超勤、長い労働時間があるじゃないかということが国際的批判になっているわけでございます。
 私はよく言うんですけれども、私も下手なゴルフをやりますが、我が国が例えばシングルプレーヤーだと言っても、OBは還付しませんと、バンカーに落っこったって手で引き出してまたプレーし直す。それで、おれはシングルプレーヤーだと言ったってだれも評価しませんね。ですから、同じ共通なルールでOBはOBとしてカウントする、バンカーへ落っこったらまた上がるまで何回も打つ。全部カウントして、それでシングルプレーヤーなら向こうも評価してくれる、こういうことであります。
 まさに、国際的な共通の労働時間体制で物をつくって国際市場に売るべきだと、こう思うわけであります。問題は、国内市場も競争で激しく競り合っていますけれども、国際市場も日本の企業が競争で激しく競り合っていますから、だからおれのところだけではだめだと、やっぱりみんな横並びで同じ条件で物をつくって、そして国内的にも国際的にも物を売る、こういうことでございますので、そういう点について、実際に労働者の方々の御関心もあって、それはそれなんだけれども経営者が具体的に会社を窓口にしておりますから、まさに労使で話し合いながらこれを現実的に進めていく体制がどうしても必要だと、こういうことだと思います。
#36
○庄司中君 例えば市場経済にしましても、これを有効に機能させるためには独禁政策が要るんです。市場といってもコストがないわけではなく、大変なコストをかけないと市場の活性化というのはできないわけです。自由にやっちゃいますと、これはもう不公正な取引がどんどん出てくるわけでありまして、そういう意味では労使の自主交渉といいますのはある意味では取引でありますから、そういう点では、その取引の前提自身を整理をするといいますか、注目をするといいますか、それがなければ動かないわけです。やったとしても非難の対象になる。日本は不文律を侵しているじゃないか、長時間労働で競争しているじゃないか、あるいは低賃金で競争をしているじゃないかということになりまして、いわば自主的な労使の協議のコストに当たるもの、市場メカニズムでいきますと独禁法みたいなもの、つっかえ棒ですね、これが僕は国際的なルールだろうというふうに思いますので、そういう点をこれから強調していく必要があるだろう。自主交渉、これはもう大事です。これを除いてはいけません、これは市場メカニズムに一致をしますから。そういう点では必要でありますけれども、やはりそれにはコストがかかる、条件がある。こういう考え方を今後も進めていただきたいということをお願いしまして、次の問題に入りたいと思います。
 国際的な問題が出てきましたから、それについて二、三申し上げます。
 国際的な条件をずっと見ていますと、週の労働時間というのは、先進工業国の中では日本は非常におくれているといいますか、長いということが言えます。法制度の面から見てみますと、例えばアメリカの公正労働基準法は割り増し率の計算は週四十時間になっています。それから、カナダの連邦法ははっきりと週四十時間になっております。そして、フランスは一時間短くて三十九時間になっているというふうに思います。ドイツの場合には、法制度の方はかなりおくれておりますけれども、労働協約で現場が決めちゃうということになるわけです。ですから、代表的な金属の組合の労働協約では九五年に三十五時間に移行するということになってます。
 こういうふうに見ていますと、大臣は最終目標が四十時間というふうに言われましたけれども、国際的な動向というのはもう四十時間を超えて、むしろどちらかといえば四十時間以下のところに向かっているというふうに言えるわけでありまして、そういうことでは、私たちは先進国並みということは、四十時間はクリアしなきゃいけませんけれども、その先もにらんでいく必要があるんじゃないだろうかというふうに思いますけれども、この辺はどういうふうに認識されていらっしゃいますでしょうか。
#37
○国務大臣(近藤鉄雄君) 私の場合は、当面は週休二日、週四十時間、一日八時間労働、あと有給休暇等々目標にしているわけでありますが、どうも私もワーカホリックがしみついているせいか知りませんが、大体そのあたりが一つの基準ではないかなと、週休三日までになってくるとどうかなという感じが、率直に今の私の感覚ではいたします。
 これは、私の全く個人的な考え方を申し上げれば、今の千八百時間、週四十倍間というのが組織的な会社、工場とかオフィスで働く人たちの一つの基準的な労働時間といいますか、体制であって、これはこれとして、今度はもっといろんな形のパートだとかフレックスだとかそういうものが入ってきて、これはこれなりの存在意義を持ってくるんじゃないでしょうか。だから、よく言うんだけれども、こっちが主流で第一軍で、パート、家内その他は二軍、三軍だという発想じゃなしに、やはり人によっては、きちっとパートというか、短い時間でいろいろな仕事をするとか、そういったことがあっていいわけです。ですから、組織的な労働の形態としては千八百時間という一つの基準で、何年先かはともかくとして、どうも当面はそういうことではないかな。あといろいろな形の、さっき言ったパートといいますか、時間を切っての労働のありようというのは私はもっとふえてくるというふうに考えております。
#38
○庄司中君 先進国の傾向でありますけれども、特に時短先進国でありますECですね、その辺がもう四十時間を超えて次の段階に移行している。恐らく共通の目標というのは、三十五時間ぐらいがこれからの課題になってくるだろうというふうに思います。やはり世界の時短の動向ということを、何も最先端に行く必要はないと思いますけれども、やっぱりちゃんと押さえて対策を立てていく必要があるというふうに思います。
 次の問題は、時間短縮が国民経済に与える影響ということであります。時間短縮が国民経済に対してマイナスになるということになりましたら、これはもう時短というものは進まないだろうというふうに思います。例えば、労働省が日本能率協会の総合研究所に委託をしまして、そして時短先進企業百社、中小企業をとりましてヒアリングをやった結果が出ています。
 これによりますと、時短の短縮率以上に生産性が向上をしたというのが七九%なんです、約八〇%。そして、大体時短の短縮率と同程度といいますのが八%というふうになりますと、もう九〇%近いところが時短によって生産性が向上する余地がある、実際向上したというふうに出ているわけであります。ただ、これは時短の先進企業であるということ、既に時短をやったところであるということでありまして、国民経済全般、つまりマクロモデルとしては必ずしもこのとおりにいくとは限らない。しかし、やればこういう結果が出るということは、もうこれは明らかであります。マクロデータでも製造業の場合に、同じ推計の中で時短を一%したら生産性が三・七%上がったというふうなマクロモデルがあるわけでありますけれども、ただその後いろんなシミュレーションが行われています。例えば、慶応大学であるとか、あるいは企画庁を呼んで聞きましたら、今度は新しい経済計画をつくるので時短のシミュレーションを行ったと、発表されていないけれどもあるんだというふうな話をされておりました。
 それで、国民経済といいますと生産性だけではないわけです。いろいろなところにやっぱり問題が出てくる。例えば、慶応大学のシミュレーションであるとか、そういうのを見ていますとプラス面は非常に大きいですね。確かに、労働の限界生産性が上がるという、恐らく省力化投資が進んで投資の需要が膨らむであろう。それから、余暇需要が膨らんで、余暇需要を満たすために投資が拡大をするだろう。それから、通産省なんかが特に重視をしておりますのは、付加価値の低い分野で輸入の代替が起こるといいますか、国内ではつくらないで外から輸入をするという効果が期待できると思います。ただ、共通して問題としておりますのは物価が上がりはしないかということなんです。
 例えば、時短をしてそのままにしますと、時間当たりのコストは膨らむわけですから、それは物価に影響をするということがございますし、それから時間短縮を行いますと、新たに労働力の需要ができるということで、これが物価引き上げの要因になりはしないか。物価引き上げ、物価が上がるということは、これは需要を抑制することになりますし、成長を抑制することになるわけですから、決していいことではないわけです。その後出たシミュレーションでは、共通的にやっぱりその問題が出ております。そういうことがあるけれども、企画庁は時短の効果というのは効果としては中立的だというふうなことを言っておりますけれども、この辺の認識、例えば既に委託調査をやってからいろいろなシミュレーションの関係が出ておりますけれども、国民経済に与える影響という点で現在時点でどう受けとめていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。
#39
○国務大臣(近藤鉄雄君) これは事務方が答えることかどうかであれですが、私も元経企庁長官でございますので、一言私の考え方を述べさせていただきます。
 先生、私はまさにまだまだ生産性向上の余地があると思います、企業の中に。ただ、これは経済学的に言うと、一種の限界生産力逓減ということで、だんだん頭打ちになってきます。だから、まだ私はあるとは思いますけれども、ある程度の限度があるかなという面が一つあります。ただ、今度は産業間のシフトがございまして、いわゆる低生産性分野から高生産性へ移る形で産業全体としての生産性が上がる。しかし、そう言っても限度があって、限度を超えて賃金を上げれば物価に影響するというお話でございますが、それは国内経済だけ見ていればそうなんですね。だけど、開放経済を見て、そういうことで今度は安い物は入れてくる。国内的な産業構造として生産性の高い物を日本がつくって、そして安い物を輸入してくるとなれば、部分的にはこっちの物が高くなったって安く入ってくる、平均的には物価に影響はしないということがあって、あえて突っ込んで申しますと、今の我が国のような経常収支黒字が国際問題になるぐらい年間一千億ドルなんていう経済は、まさに時短をやって、生産構造を変えて、そして輸入を拡大していく余裕があるわけですね。経常収支の黒字がない国が時短をやると経済がまいってしまうわけです。私は、経常収支の黒字のある日本だからこそ時短をやって輸入拡大するということで、まさに国内的な時短と国際経済調整というものが同時並行的にできる、こういうことを考えておりますが、間違いでしょうか。
#40
○庄司中君 大臣おっしゃいましたように、時短と並行しまして構造改善といいますか、今までの雇用システムであるとか業務システムであるとかをもう一度そこで見直してみる。そういうことによって物価に影響する部分を抑えていくということがやっぱり必要だろうというふうに思います。共通的に一番心配があるのが物価に対する影響だろうと思います。例えば、輸入効果も大臣がおっしゃるようにありますけれども。
 そういう点で、今度の経済審議会の生活大国部会では、構造改善というふうに私たちは今まで言ってきたわけでありますけれども、構造調整ということをはっきりと提起しております。今度の促進法が労働省だけじゃなくて、関係各省の共同作業というふうに提起をされたわけでありますから、時短と並行しまして、いわば構造改善なり構造調整ができる総合的な施策を積極的にやっていく必要があるだろう。そして、成長の制約条件にならないだけじゃなくて、成長の促進要件にしていく必要があるだろうというふうに思いますので、この点は改めてお願いをしておきたいというふうに思います。
 さて、次の問題に移りたいというふうに思います。次の問題といいますのは、先ほども言いましたように、千八百時間のモデルになっておりますのがいわば週休二日制、週四十時間問題、それからもう一つは有給休暇の問題、そして所定外の問題というふうになっているわけであります。ここで有給休暇の問題を取り上げてみたいといいますのは、有給休暇の問題に対する発想が時短先進国とはかなり違うんじゃないかというふうにいろいろ調べておりまして感じましたので、特に三本柱の一つの年次有給休暇の問題を取り上げてみたいと思います。
 八七年、八八年施行の基準法改正では、有給休暇の最低付与日数を六日から十日にいたしました、現在は猶予措置がありますから三百人以下で八日というふうになっておりますけれども。それから、勤続日数の少ない人に比例付与制度を入れました。そしてさらに、五日を超える部分については計画的な付与ができるような措置を講ずる、こういうふうになったわけであります。
 それで、さっきも国際的な問題が出ましたから国際的な問題で問題の所在をつかんでみたいというふうに思います。実は、平成三年の労働白書で非常に便利な資料が出ております。その中で「労働時間等の国際比較」というのがありまして、私が便利だなと思いましたのは要因別の寄与度が出ているわけです。何については何時間日本は長い、向こうが短いということになっておりますけれども、これをとってみますと、一番資料が整備されておりますのがドイツでありまして、かなり進んだところでありますが、これは製造業の八九年のデータを使ってやっていらっしゃいます。
 要因別の寄与度をとってみますと、例えば三本柱をとってみますと、いわば週休日の寄与度というものが日本が百五十七時間長い、ドイツは百五十七時間日本と比較すると短いということになります。それから年次有給休暇をとってみますと、これが百六十五時間になっておるわけです。週休二日制の問題よりも実は有給休暇の問題の方が大きいという結果がここには出ているわけなんです。所定外労働時間は百三十二時間でありますから、この所定外あるいは週休二日制を超えたそれ以上の格差といいますか、日本の方がドイツと比べて長い、ドイツが日本と比べて短い、これが実は年次有給休暇にあるわけです。つまり、時短の問題の対応の仕方がやっぱり違うんじゃないだろうか、こういうふうに感じたわけであります。
 そこで、こういう差が出てくる背景といいますのは、ある意味では文化的な背景が大きいんじゃないだろうか。我が国の場合には、週休二日制の方が重要視されまして有給休暇の方は軽く見られている。ところが、ヨーロッパの時短の進め方というのは休暇でずっと押していくというタイプがある、そういう方向があるわけです。そうしますと、この背景には恐らく文化的な背景があるかもしれません。キリスト教文化と我が国の文化の間の考え方の違いというのはあるかもしれませんけれども、いわばヨーロッパ型の休暇を先行させて時短を前進させていく、こういう方向についてまずどういうふうな認識をお持ちでしょうか。その辺からお伺いしたいというふうに思います。
#41
○国務大臣(近藤鉄雄君) 大変先生から大事な点の御指摘あったのであります。
 私、実は今度の運休、初めて一週間近くぽんやりいたしまして、そして改めていいものだと思いました。日本人の休みというのは、たまにしか休まないから一点豪華ではっとどこかの温泉へでも行って金を使って遊んじゃう。私は、今の休暇の過ごし方を、そういうどこか金のかかるところに行ってはっと金を使って休むということじゃなしに、金をかけないそ一週間でも二週間でも休めるようなそういうレジャーの過ごし方の言ってみれば文化革命をしないと、これは長期有給休暇をもらったってやはり行きようがないです。逆に、従来のパターンで一晩泊まりで温泉へ行く感覚で一週間、十日やっちゃったらもう破産しちゃいますよね。
 ですから、私も実はアメリカで三年生活した経験がございますけれども、家族ぐるみで車に全部一切合財積み込んじゃって非常に安く一週間なり十日遊んでこれるわけですから、そういう余暇の過ごし方についての根本的な考え方の改革ということも、まさにドイツと日本の違い、いみじくも先生御指摘ありましたけれども、これからやっていくために必要なんじゃないかな。やはりある程度そういう余暇の過ごし方も文化的な、社会的な習慣ということまで入っていかないとこれからいけないのかなという感じを先生の御質問を受けながら感じた次第でございます。
#42
○庄司中君 そして、まず有給休暇の国際比較を単純にしてみますと、スウェーデンが七七年で五週間です。つまり、向こうの表示がみんな週間なんです、大臣おっしゃったように連続して休暇をとりますから、みんな何週間という表示になるわけですね。スウェーデンが七七年で五週間で、フランスが同じようにやっぱり五週間、バカンスを組んでやりますから。それからドイツが、これはかなり古いですね、六三年で三週間というふうになっています。
 ただ、ここで私は注目をしなければならないと思うのは、有給休暇の数字の長さ以上にほかの要件がある。つまり、例えば日本なら一年勤続で十日からスタートするという一年勤続というところをとっています、発生要件というふうに普通言われておりますけれども。ドイツは六カ月の勤務でこの資格が取れるというふうになっています。フランスはさらに最小限一カ月の実労働でいいということになっています。だから、有給休暇の取得要件というところが、つまり発生要件がまるで違うわけです。
 それからもう一つは、一律さということです。日本の場合には、勤続に対応してということがございます月かつて、これは国際的にもそういう傾向にあったわけでありますけれども、やっぱり発生要件を満たすとできるだけ一律にというのがございます。日本の場合には最低付与日数を十日に上げましたけれども、最高のところは二十日で一年について一日ずつふやしていく、こういうふうになっていますけれども、このパターンはだんだん消えてきているということです。一律付与の方式が主流になってきているというふうに感じます。
 そうしますと、有給休暇の数字的な長さだけじゃなくて、発生要件であるとか、いわば一律に付与をしていくとか、こういうことを考えていかないといけないんじゃないだろうか。つまり、先ほども言いましたように有給休暇をふやすことで時短を先行させるヨーロッパのタイプというのを私たちが学ぶとすれば、有給休暇自身の数字的な長さだけじゃなくて、実際には資格を早く取れるであるとか、勤続に関係しないで一律に取れるであるとか、こういうことを考えていかなきゃいけないんじゃないのか、こういうふうに思いますけれども、どんなふうにこの点については認識していらっしゃいますでしょうか。
#43
○説明員(井上文彦君) 年次有給休暇の発生要件の問題でございますが、これは先生御指摘のように現在日本では一年間継続勤務し八割以上出勤した場合には十労働日ということになってございます。諸外国の例を見ますと、先ほど御指摘がありましたように、ドイツでは六カ月、フランスでは一カ月の継続勤務というような要件がございます。労働省といたしましては、平成二年七月に策定いたしました連続休暇取得促進要綱におきまして、年休の付与日数の計画的な増加などを現在呼びかけているところでございます。
 なお、労働法制、基準法の改正の問題でございますが、年休の発生要件とか継続勤務一律の問題等につきましては、現在中央労働基準審議会で議論されておるところでございまして、その発生要件等につきましても、今いろいろ議論の最中でございますので、私どもといたしましては中基審の結論を得次第所要の措置をとりたいというふうに考えてございます。
#44
○庄司中君 今お聞きしていますのは、世界的な動向に対する認識在どうお持ちかということで、基準法の結論について聞いておるわけじゃありません。やっぱり前提となる、今までずっと推進をされてきているわけですから、それについて国際的な動向との関係でどんな認識を持っているかということをずっとお尋ねいたしますので、今もそういうつもりで言ったわけであります。
 もう一つ先へ進みますと、国際化の条件の中で、私たちがやっぱりクリアしなきゃならない最低の条件というのはあるだろうというふうに思います。それは何と言ってもやっぱりILOの条約だろうというふうに思います。ILOの条約が一九七〇年に年次有給休暇に関する条約ということで改定をされたわけです。それまでの条約から考え方がかなり変わっております。水準もかなり上がってきております。第百三十二号というふうに呼んでおりますけれども、これを見てみますと、年休を受ける資格の最低の勤務、つまり発生要件、これは六カ月を超えないというのがあるわけです。日本は大体一年です。それから、最低付与日数というのが一年勤務で三週間ということになります。一年勤務で三週間でありますから、我が国は十日でございますから、つまり一律付与の条件というのはここにはっきり濃厚に出てきているというふうに思います。
 それから、もう一つの条件というのが、僕は余暇の使い方、自由時間の使い方について非常に大事だと思いますのは、分割の一部です。有給休暇というのは分割してとりますけれども、分割の一部は少なくとも中断されないで連続するのを二週間とするというのがあるわけです。つまり、三週間の休暇はあるけれども、そのうち二週間は中断しちゃいけない、まとめてとらなきゃいけない、こういうのがあると思います。
 大臣が先ほどアメリカの経験を踏まえながらおっしゃいましたのが、法制度として出てきている。日本は当然距離があるわけでありますから、まだこの条約は批准をしておりませんけれども、実はこの条約ができましたのは、一九七〇年でございますから、二十年以上前の話です。そういう点ではいつまでもほうっておくわけにはいかない。いわばILOの条約というものは労働条件における先進国入りするある意味では最低の切符だというふうに思いますので、このILO条約についてどういうふうに今受けとめていらっしゃるのか、お聞きをしたいと思います。
#45
○政府委員(佐藤勝美君) ILO条約の中には、先生が今触れられましたように労働時間に関係をする条約が幾つかあるわけでございます。特に、最近条約の数が増加をする割合には批准が進まないということがILOでも問題になっているわけでございますけれども、この労働時間関係の条約もどうも我が国のみならず批准が進まないうちの一つになっているというふうに思います。
 今、先生が挙げられました百三十二号条約は、一九七〇年の改正条約でございます。内容は年次有給休暇は最低六カ月の勤務期間を条件として、一年について三労働週以上とする、あるいは年次有給休暇の分割された部分の一つは少なくとも中断されない二労働週から成るものとすべきことというようなことを規定しているわけでございます。したがいまして、先ほどちょっと部長から現在の我が国の制度についての御説明を申し上げましたけれども、甚だ開きが大きいというわけでございまして、とりわけ先ほど先生も触れられましたように、現在六十二年の基準法改正の中での中小企業におきます有給休暇の付与日数の経過措置のまさに最中にあるということも考えますと、なかなかこの条約のレベルになるというのは、もう何といいますか、非常に革命的な変更をやらないと追っつかないというふうに正直言って感ずるわけでございます。
 したがいまして、現在労働省あるいは審議会におきまして進めております労働時間法制全般についての検討におきましても、この条約を批准するというようなところには私は率直に言っていかないと思いますけれども、ただこういった問題も含めまして、有給休暇のあり方、特に取得の促進のためにどういう具体的な改正をするのが適当なのかどうかという点も含めまして、現在検討中でございます。そういう検討を踏まえまして少しずつ進んでいきたいと、少しずっというのはちょっと不穏当かもしれませんけれども、現実的かつ効果があるような進め方をとっていきたいと、こういうふうに思っておるところでございます。
#46
○庄司中君 これは国際条約ですから、経済大国日本が二十年たってもまだ距離があり過ぎるという状態は非常に恥ずかしいことだというふうに思います。いわば、条約を批准するということを射程の中に入れておかなきゃいけない。例えば、基準法を検討するのであれば、射程の中に入れた検討をしていかなきゃいけない、こういうふうに思いますので、これ以上言いましてもいかがかと思いますので、特にこの点は要望をしておきたい。先進国の最低の切符だというふうに考えておかないといけないというふうに思います。
 実際的な問題について二、三触れておきたいというふうに思います。
 さっきも申し上げましたように、千八百時間のモデルというのがございまして、このモデルは端的に言いますと付与が二十日であって取得が二十日である。つまり取得が一〇〇%、こういうふうなモデルになっているわけであります。ただ、実際をとってみますとこういうふうになっております。例えば、平成二年、九〇年度でありますけれども、労働省が調査をした平均的な付与日数をとってみますと十五・五日です。ですから、時短モデルでは二十日付与して二十日取得をするということでありますから、付与が十五日では二十日はとりようがないという、こういう勘定になるわけであります。
 それから、有給休暇の繰越制度が認められておりまして、そして平成二年度の労働省の労働時間総合実態調査によりますと、一年間繰り越しを認めるというのが大体力〇%の企業でございます。そうしますと、十五日の付与で取得率が五〇%でありますから、繰り越しをひっくるめてどのぐらいになるかということになりますと、繰り越しか取得率五〇%として七・五日ということになりますと、両方合わせましても二十三日でしかないわけです。二十三日であって、二十日の取得というのは恐らく難しいだろう。取得をする阻害要因というのはかなり根強いものがありますからなかなか難しい、こういうふうになっていくというふうに思います。
 そういうふうに考えてみますと、やっぱりその条件、千八百時間のモデルをクリアするためには、一つは労働基準法が二十日以上は求めないというのがございますけれども、これにそろそろ手をつけていかなきゃいけないんじゃないだろうか。これは当然そうだろうというふうに思います。
 それから、最低付与日数が十日ということでありますけれども、ヨーロッパの実情、ILO条約を見ましても、これもうんと引き上げていかなきゃいけない。世界は一律付与の方向に変わってきているわけでありますから、両方のレベルを上げていかないといつまでも条約の批准ができない、こういうふうに思います。千八百時間モデルとの関係ではこういう問題があるんじゃないかという指摘をいたしましたけれども、その問題についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、これをお聞きしたいと思います。
#47
○説明員(井上文彦君) 御指摘のように、千八百時間のモデルでは二十日付与の二十日取得というふうな状況でございます。ただ、現状を見ますと、今御指摘のありましたように、年次有給休暇につきましては十五・五日で大体取得率が五〇%というふうな状況でございます。私どもといたしましては、やはり千八百のモデルの実現のためには、この年休の増加と、もう一方では取得率の向上がぜひ必要だというふうに考えているところでございます。その一環といたしまして、取得率の向上につきましては連続休暇等、特にゴールデンウイークとか、とりやすい時期に連続休暇等をとっていただいて、取得率の上昇があるようにいろいろ周知徹底を図っているところでございます。
 また、先ほども申し上げました年休の発生条件とか付与条件、そういう問題につきましては中央労働基準審議会で年休の取得促進の観点から、今いろいろ議論されているところでございます。私どもといたしましても、こういう問題について前向きにぜひ取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。
#48
○庄司中君 さらに、付与条件については非常に大変な問題を持っている。千八百時間からいっても、実際にはそれに適応しないような条件を実は日本の制度というか現状というものは持っているということを指摘しましたけれども、阻害要因というのを労働省は八九年の十月に時短に関する意識調査という形で実施いたしました。これを見てみますと、一〇%以上の上位の項目をとってみますと、個人的な理由と企業的な理由といいますか、この二つに分けてみますと、個人的な理由というのは、「病気等有事への備え」が二七・八%、順位からいきますと二番目ということになります。それ以外の阻害要因というのは、企業とか職場に関係する要因が非常に多いわけです。
 そして、個人要因というふうに考えてみますと、完全に年休を取得するということになりますと、病気になったときどうしようかな、家族が何かになったときにどうしようかなということは当然残るわけでありますから、つまり年休の取得を促進するためには、ヨーロッパでかなり普及をしておりますように、病気休暇ということを補完的な制度として考えていくべきじゃないだろうか。今度の生活大国部会の文章の中にも、病気休暇という明示がございますけれども、やはり休暇の取得を促進するためには、病気休暇みたいな補完的な制度を考えていかないと個人的な阻害要因をなくすことは恐らくできないんじゃないだろうか、こんなふうに思いますけれども、その辺は今までずっと行政の方で推進をされておりまして、どんなふうにお考えでしょうか。
#49
○説明員(井上文彦君) 御指摘のように、年次有給休暇の取得促進につきましては、企業内で年休を完全に取得するという意識といいますか、そういう慣行をやはり築き上げていくこと。また、個々の勤労者の方々が気兼ねなく取得できるような環境整備、これが非常に私ども重要だというふうに考えてございます。
 御指摘の病気休暇制度の問題でございますが、今回の経済計画におきましても年休の取得率の上昇、年休の増加という観点から、いろんな形の制度といいますか、仕組みを普及さすべきだというような観点から、例えば病気休暇とかリフレッシュ休暇とか、いろんな多様な休暇制度を進めていくべきだという御提言が出るやに聞いてございます。
 私どもといたしましても、そういう年休の取得率の向上という観点から、その企業の実態に合いましたような、そういう多様な形の利用しやすい休暇制度が企業で普及していくということを大いに期待しているところでございまして、私どももそういう方面で努力してまいりたいというふうに考えてございます。
#50
○庄司中君 今度、阻害要因の職場、一部触れられましたけれども、企業側の要因といいますか、これが圧倒的に多いわけですね、実際には。まず一位がそうです。それから、ずっとそれが並んでいくというふうな状況になっています。労働省がそれを何とかしていくためには、計画的な取得ということがやっぱり一番大きい。日本の場合には、企業だけが横並びじゃなくて、労働者もこれは横並び意識がかなり強いわけでありますから、そういう点では計画的取得、これをかなり積極的に進めていくということだろうというふうに思います。
 私は、ちょうど十年ぐらい前ですか、ヨーロッパへ行ってフランスの労働組合の幹部に会ったときに、例の有名なフランスのバカンスというのはいつごろ決まるのだというふうに話をしましたら、年が明けたらもう決まっているという話です。七月、八月の休暇、バカンスは一月にはもう全部決まっちゃっている。そして、その決まり方は企業の中で役職を持たないところから決めていく、そこに優先順位があるのだと。だから、幹部は一番後から決まっていくというふうに言っておりました。
 例えば、連続取得の労働省の要綱によりますと日本は逆でありまして、企業の幹部が率先垂範をするというところから始めるというふうになっておりまして、実は道なんです。これは、権利としては下から決めていくというのがヨーロッパ、フランスのようでありますけれども。そういう点では計画的取得、さっきもILOの条約にありましたように、三週間の休暇のうち二週間は連続しなきゃいけないという方法ですね、これをやはり法整備の方向で何とかしていく必要があるんじゃないだろうか、こんなふうに思いますけれども、認識としてはどんな認識をお持ちでしょうか。
#51
○説明員(井上文彦君) 御指摘のように、年休の取得がなかなか進まない理由といたしまして、例えば同僚の方へ迷惑をかけるとか、職場の雰囲気の問題とか、いろいろ挙げられたわけでございます。そういう雰囲気等を克服いたしまして年休の取得促進をするということを考えますと、御指摘のようにやはり計画的取得の促進ということが非常に大事になろうかというふうに考えてございます。
 労働省といたしましては、こうした観点から、先生今御指摘になりましたような連続休暇取得促進要綱等を定めまして、労使に対しまして計画的取得につきまして、その趣旨の周知啓発を行っているところでございます。最近、多くの企業の側におきましても、やはり有給休暇取得促進の観点から、計画的付与の制度を活用する企業もふえてございまして、最近一番新しいあれを見ますと、平成三年夏の連続休暇につきまして年休の計画的付与制度の活用について調べてみますと、約三割弱の企業が計画的付与制度を利用して連続休暇等を行っているというふうに考えてございます。
 私どもといたしましては、いろんな機会を通じまして計画的取得の促進が図られるよう努力してまいりたいというふうに考えてございます。
#52
○庄司中君 日本の場合には、もう一歩やっぱり年次有給休暇の考え方の発想の転換が要るように思います。
 例えば、ECが昨年の暮れに例の基本法であるローマ条約の改正を行いまして、単一通貨の問題であるとか共通外交とか安保政策まで共通性を持とうということで、そのときに非常に大きな問題になったのが労働社会政策、社会憲章というのが前にありますけれども、労働社会政策が非常に大きな問題になった。そして、これにはイギリスはついに署名をしなかった。残りの十一カ国がこれに署名をしてそれがスタートしたというふうになるわけです。
 こういう状況を考えてみますと、共通の労働社会政策というのがヨーロッパでは、もちろんECですから国を越えましてやってきた。そして、既にECの理事会では労働時間の組織化に関する指令の修正というのが理事会で検討されまして、これには有給休暇最低四週間という目標が掲げられています。ILOは三週間ですけれども、EC全体のレベルとしては四週間、こういうふうに労働社会政策の一番のポイントが、実はヨーロッパにおいても時短にある。しかも休暇制度にあるということが起きみわけでありまして、私たちは千八百時間、一生懸命に到達目標としておりますけれども、実は事態はどんどん先に進んでいるように思います。
 そういうことを考えてみますと、時短全体に対する問題意識といいますか、特に私は、日本の場合には時短三本柱のうちの年次有給休暇の問題について新しい発想が要るんじゃないか。さっきも申し上げましたように、例えばILOでいきますと、三週間の休暇を出すけれども二週間は連続しなきゃいけないという条約です。つまり、一つの法律の制度としてそう決めちゃうというわけです。個別の選択は一週間だけ、あと二週間は連続休暇、しかも一律付与ですね、勤続によらないで。というふうになってきますと、私たちの現状、とても距離が離れて条約は批准できないという局長の指摘がございましたけれども、こういうふうにとってみますと、私たちの余暇の使い方といいますか、大臣がおっしゃいましたように、つまり余暇の使い方、自由時間の使い方に豊かな使い方と貧しい使い方がある、どうしてもそういうふうに考えざるを得ないわけです。
 有給休暇に対する発想がまるで違うわけでありますけれども、そういうことを考えまして、そしてヨーロッパが有給休暇を先頭にして時短を進めていくというタイプをとっているということになりますと、やっぱり私たちの余暇の考え方、自由時間の考え方、そして豊かなとり方と貧しいとり方が実はある。つまり、先進国型のとり方と途上国型のとり方があるんじゃないだろうか、こういうふうに思います。
 時間が参りましたから終わりますけれども、私たちは時間短縮に当たって、単なる数字合わせじゃなくて豊かな自由時間の選択、そこの中心になっているのは恐らく年次有給休暇の問題だろう、こういうふうに考えますので、最後にいわば時短の発想の転換をしていく必要ということで、大臣のお考え方をお聞きしたいというふうに思います。
#53
○国務大臣(近藤鉄雄君) まさに先生御指摘ございましたように、我が国の勤労者の労働条件、労働時間というのは国際問題でございます。国際的に熱い関心が注がれていると言っても言い過ぎじゃないわけでございますから、私たちはそのために千八百時間という目標を掲げまして、これをまず実現していただく。それが達成して後どうするか、さらに有給休暇をふやしていくのかどうかというようなことにつきましては、その段階でいろいろ前向きに検討させていただきたいと思います。
 さっき申しましたように、休暇があってもやりようがないというのがございました。小さなアパートに親子が住んでいて、二カ月間どうするんだろうなんてことになって困りますから。だから、我々国民の余暇の使い方、そしてレジャーのあり方、それこそ観光地のあり方から含めて、今の状況じゃもう処置ない。逆に私なんか、そんなに休んだって金ばかりかかって仕方ないという率直な勤労者の方々のお声も地方ではあるわけでございますので、政治としてそういうことに総合的に今後取り組んでいかなければならぬと思うわけでありますが、まず千八百時間を何とか実現させていただきたいという思いでございますので、よろしくお願いいたします。
#54
○庄司中君 どうもありがとうございました。
    ―――――――――――――
#55
○委員長(向山一人君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、松本英一君が委員を辞任され、その補欠として堀利和君が選任されました。
    ―――――――――――――
#56
○中西珠子君 労働省は、一九八七年に週四十時間労働制をうたいました労働基準法の改正をされました。そして、それが明くも年の四月から実施されたわけでございます。労働省としては、非常な努力をされて週休二日制の普及だとか時間外労働の削減だとかサービス残業をなくすこととか、また年次有給休暇の取得日数が依然として少ないし、また取得率が少ないということのために本当に苦労を重ねてこられたわけでございますけれども、今回この労働時間短縮促進臨時措置法というものをお出しになりました理由というのはどこにございますんでしょうか。大臣にお願いいたします。
#57
○国務大臣(近藤鉄雄君) 勤労者の方々に豊かな生活を過ごしていただくためには、単に働いて賃金が多く得られるというだけじゃなしに、十分な休暇もとっていただく。また、毎晩残業で家庭で食事もできない状況じゃなしに、家庭で食事ができるような、そういう就業条件というものを当然選んだり、こういうことでございますので、賃金も大事だけれども労働時間も大事だという国民的なコンセンサスが相当高まりを見せております。
 しかし、それが実現するためには、単に一企業が、また一企業の中の労働者の方々がお考えになっただけではできない問題もございますので、国として大きな政策をまず決めて、閣議決定をする。そして、企業ごとに労使でお話し合いをしていただくような体制をつくっていく。また、横並びでいろいろ制約もある、できないような条件もございますので、横並びで、また下請、元請の関係も整備しながら、具体的にこれが実現するような条件を整備して、そして豊かで生きがいのある生活を国民の皆さんにエンジョイしていただくということをぜひ実現していきたいというのが、今回この法案を出す趣旨でございます。
#58
○中西珠子君 労働時間短縮推進計画というものを労働大臣が策定されて、それをその事業の属する所管の大臣の協議を経て、また閣議決定をもってそれを推進していくということになすったことは、政府一体となって時短に取り組んでいくという姿勢を示したものとして評価をいたします。それからまた、企業間の競争とか同業他社との横並び意識というものが大変強い日本の事情ということをお考えになって、同一の業種に属する二つ以上の事業主に対して、労働大臣が労働時間短縮実施計画を承認なすって、そして大いに援助もなさり指導もなさっていくという、これも日本としては非常に必要なことではないかと思うのでございます。
 私が大変心配していることが一つございます。それは企業内の労働時間短縮推進体制についてでございますけれども、とにかく時間短縮をするということで、最近の傾向として時間短縮のためにはやっぱり労働時間どんどん減らしていかなくちゃいけないから、仕事の準備時間とか後始未の時間というものを外に出していく傾向があるのではないか。それで、早出とか残業というものを含めて労働時間は労働者が自主管理をする。それは大変結構なんですけれども、その反面労働者側の意識としては余り早出や残業申告をやるのは控えなきゃいけないというふうな、そういう空気が職場にあって、そして形式的には時短が進む。数字合わせみたいに時短が進んでいっても、実態は労働時間がちっとも短くなっていなくてむしろ長くなる傾向がある。
 サービス残業がその大きな例だと思うんですけれども、例えば金融・保険業、ここにはサービス残業が多いと聞いておりますし、金融・保険業に対して労働省はやはり是正勧告とまでいかなくても指導をなすったというふうなことも聞いているのでございますけれども、御承知のように金融・保険業というのは、いわば時短の模範的な産業と言われるほど統計の上では非常に少ないんです。毎年毎年、昭和六十二年以来平成三年まで年間総労働時間というものも、年間の所定内労働時間も減少を続けている。例えば平成二年は千八百三十二時間ですし、三年は千七百九十六時間と、こういうふうな状況の中でサービス残業が非常に多くあって、実質的には労働時間が長くなっている。
 こういうことはもちろん労働省としてはお気づきになっていて、いろいろ是正勧告のような形で指導もなすっていると思います。所定外労働削減要綱の中にもサービス残業をなくしていくということをはっきりおっしゃっていて、サービス残業が生まれてくる土壌というものもなくしていかなくちゃいけないとおっしゃっているわけですけれども、そういうサービス残業をなくしていくということについてはどのようにこれからまた対策を進めていらっしゃるのか、この点についてちょっとお伺いしたいんです。
#59
○政府委員(佐藤勝美君) まず、サービス残業ということでございますけれども、サービス残業の定義というのもこれまたちょっと難しいと思うんですが、私どもが考えますに、労働基準法の観点からいいますと、使用者が明示にせよ黙示にせよ労働することを命じている。その時間を故意に把握しない、あるいは把握しにくい、あるいは申告しにくいような条件をつくる。そのことによってそれに対応する賃金を払わないものであるというふうに理解をいたしますと、大体大部分は労働基準法に違反をするケースであろうというふうに思っております。そういうケースにつきましては、それぞれ地域によっても事情が違うわけでございますけれども、適時適切な計画を立てまして監督指導をやる。その場合に、そういう実態を確認すればそれは是正を命ずるというようなことをやっていくのが一つの方法でございます。
 しかしながら、単なる法違反というだけにとどまりませんで、こういったサービス残業なりあるいは早出、あるいは居残り、あるいは準備時間といったものを何となくあいまいにしておるというようなことになりますと、これは法違反だと言ってそれを見つけるたびに処置をしておったということだけではなくならない問題であろうかと思います。やはり企業は企業としてきちんと時間管理をする責任があるわけですし、それから労働者の側も、これは不本意かもしれませんが、何となくそういうものを許容するような雰囲気がある場合もあるということでございますので、そういった意味でこういうものを生むような土壌をなくしていく必要があるということを昨年まとめました所定外労働削減要綱での内容にしておるわけです。
 こういうことを通じまして、労使あるいは広く社会一般にそういうことから起こってくるサービス残業というような問題をなくしていこうという啓発がやはりその法違反の措置とともに重要なものであるというふうに考えておりますので、この点につきましては今後とも私どもとしてはさらに力を入れていきたい、こういうふうに思っております。
#60
○中西珠子君 サービス残業は、とにかく時間外労働割り増し賃金率が一応小さいながらも二五%ということで存在しているにもかかわらず、払われていないということですから、法違反であるわけです。ですから、東京労働基準局長の名前で金融機関におけるサービス残業是正勧告が一九九二年の一月二十八日付で出されたと聞いているんですけれども、これは事実ではないんですか、出してないわけですか。
#61
○政府委員(佐藤勝美君) 東京労働基準局のことでございますが、平成三年度に都内の金融機関に対しまして、監督指導を実施いたしました。その対象となりました事業場におきまして、労働時間に関する違反あるいは時間外労働の割り増し賃金に関する違反がかなり見られたところでございます。サービス労働というようなことで報じた新聞もございますけれども、そういったことがあったわけでございます。
 この監督指導結果に基づきまして、東京の労働基準局におきましては、平成四年の三月に社団法人東京銀行協会、それから社団法人東京都信用金庫協会に対しまして、労働時間管理の適正な実施について傘下会員企業への指導の強化を図るように文書をもって要請いたしました。この東京の局の要請を受けまして、東京銀行協会、それから東京都信用金庫協会では、この四月中でございますけれども、それぞれの会員の事業場に対しまして、今後労働時間の適正な管理を行うようにというふうな指導を行ったというふうに東京労働基準局に対して報告を行っているというふうに承知いたしております。
#62
○中西珠子君 これは同じ業種に属している人たちがほかもやっているからということでやっていらっしゃるのだと思いますけれども、その新しい法案の中にございます労働時間短縮実施計画を同一の業種に属する二以上の事業主がつくりまして、労働大臣の承認を得ていろいろアドバイスや援助をしていただくということは、サービス残業をなくすのに役に立つとお思いになりますか。
#63
○政府委員(佐藤勝美君) ただいま御審議をいただいております法案では、事業主の労働時間の計画もございますけれども、それからまた事業内、企業内に労使が日常的に労働時間の問題を話し合う場を設けるということを規定しているわけでございまして、そういう体制が整いますれば、こういったルーズな時間管理の問題ということを解決する上では非常に大きな力になると思いますし、またこの事業主の労働時間短縮計画の内容、これはそれぞれの業種の実態に応じていろんなものが出てくると思いますけれども、必要に応じて先生が今お触れになりましたような問題を取り扱うところが出てくるというふうに思います。
#64
○中西珠子君 いずれにしても、統計と実態との背離というか乖離というか起きているわけですから、形式的な時短だけがある業種で進んでいるというふうなことで安心なさらないで、実態を大いによく見てやっていただきたいと思います。これは御要望でございます。
 今、企業内の労働時間短縮推進体制が整備されていけばサービス残業もなくなっていくのではないかということでございましたけれども、私はちょっとこれまた心配なことがあるんです。というのは一定の要件を満たしている企業内の労働時間短縮推進委員会の全員の合意を得た決議をもって労使協定にかえる、こういう点です。
 これは、労働組合があるときは労働組合代表、また過半数労働者の意見というものが必ずしもこの委員会に反映されないのではないかという心配もあるわけで、一たん選ばれてしまうと任期が何年なんですか、この法案からはわかりませんけれども、五年の臨時措置法ですから、五年間ずっとその委員会にいるのかどうか、それからまた運営はどのようにするのかというふうなことで、経営者側が指名権があって、労働者の過半数を代表する組合もしくは過半数から選ばれた代表者、そういう推薦に基づくということだけれども、指名権は労働側ではなくて、結局委員会のメンバーに正式に指名、任命するのは使用者側なんでしょう。そうすると、やっぱり労働側の本当に多数の意見が反映されるかどうかということと、また逆に少数の意見、反対派の意見というものがちゃんと反映されるかどうかということについて大変心配があるわけでございます。
 労使協定の場合は、一つずつの項目、例えば三カ月単位の変形労働時間についての労使協定というものをつくりますね。そして基準監督署に届け出られると、こういうことになるわけですけれども、その変形労働時間の中でも三カ月単位、それから一週間の非定型的変形労働時間、それからみなし労働時間、時間外のみなし労働時間とか裁量労働のみなし労働時間とかこういうものに関するものはもう協定で決めてしまってそして届け出もしなくてよろしいと、こういうことになさるわけで、一応時間外労働、休日労働そういったものについては届け出は決議としても必要ということになるんでしょうけれども、果たしてそれでいいのだろうかと思うわけです。ですから、こういうことになすった理由を御説明いただきたいと思います。
#65
○説明員(井上文彦君) 御指摘の労働時間短縮推進委員会の問題でございますが、やはりこれは企業内で労働時間の短縮に向けまして積極的に話し合いがなされるということが必要だと考えます。そのような話し合いの成果をその事業場の労働時間の制度の中に生かしていくことが労働時間を短縮する上で非常に重要だと考えます。
 そこで、労働時間短縮推進委員会の決議によりまして、今御指摘の三カ月単位の変形労働時間制やフレックスタイムなどの実施方法などにつきまして、その委員会で決定ができることにしたわけでございます。これらのことによりまして、これらのいろんな企業内の労働時間の諸制度が、労働時間短縮推進委員会の話し合いを十分踏まえまして決定されるというふうに考えているところでございます。
 また、労働時間短縮推進委員会の決議が労働基準法上の労使協定と同等の効力を持つということといたしまして、労使協定と同視し得るだけの要件が必要だというふうに考えてございます。その場合、委員の半数が労働者の過半数を代表する労働組合の推薦を受けた者であること、決議は委員全員の合意により行われること、委員会の設置につきましては労働基準監督署に届け出ていること、また委員会の議事について議事録が作成、保存されているというような厳格な要件を課すことにしてございますので、事業場内の状況につきまして、推進委員会で決議が十分有効にできるというふうに考えているところでございます。
 また、委員の任期とか委員の運営方法につきましては、事業場内ではっきりとした規定を整備するよう、私どもとしては事業主を指導することにいたすこととしてございます。例えば、御指摘のような労働者の信任を失った委員が労働者代表として活動するというような、そういうことがないように我々としては対処してまいりたいというふうに考えてございます。
#66
○中西珠子君 今労働組合の推薦でと言われましたけれども、しかし労働組合の推定組織率は今どんどん下がっていますね。全体では二一・四%、九十九人以下は一・八%です。それで、労働組合のないところでは、過半数労働者というものの意見を代表して、そしてその人たちから推薦された人が出てくると、こういうことです。だけど、果たして本当に労働者の意見を代表した人が民主的に選出されてくるかということはちょっとわからないわけです。どこにもその保証はないわけです。そして、とにかく議事録がとってある。そして、出てきた委員が、その半数ずつから構成されている委員が全員がこれは合意した決議であるから、だからこれは労使協定を変えてもいいんだと。また、届け出も変形労働時間やなんかに関してはしなくてもいいんだと。これはちょっと危険なことではないかと思いますね、労働基準法の特例をこの委員会設置によって設けちゃったわけですから。
 ですから、非常にこれは慎重に指導していただいて、そしてどのように運営されていくか、どのように決議がなされるかということについても、もちろん議事録がとってあるから大丈夫とおっしゃるかもしれないけれども、議事録をとっておくだけではどのような議事録だってつくられるんですから、やっぱり労働省はちゃんとこれは指導監督していかれなきゃならない委員会だと思うんです。それで、とにかく形式的な時短というものが進むと、実態はそうではないのに、形式的に労働時間は所定外も所定内も短くしましたよという報告だけが労働省に行くということを私は恐れているんです。というのは、この統計とさっき申し上げた実態との乖離ということで、金融業界がそういうサービス残業を大いにやらせているということもあるわけですから、これをなくしていくのはとても大変なんですね。それで、労働省の御指導というのに大いに期待しているわけですから、この点は本当に慎重にやっていただきたいと思うんです。
 それから、時間外労働の削減の要綱をお書きになっていて、それもずっと実施していらっしゃるんだけれども、サービス残業をなくすことばかりじゃなくて、所定外労働を三年間毎年毎年一〇%ずつ削減していく、また休日労働もやめさせる、こういったことを考えていらっしゃるわけですが、これは具体的な目標を掲げられて大変結構なことだと思うんですけれども、これをやっぱりなすっていくには大変御苦労があるんじゃないかと思います。
 というのは、まず時間外労働の賃金率がとても日本は低いですね。とにかく一・二五ということで、大変低い。この賃金率を上げたらどうかという考え方があちらこちらから上がっているわけでございまして、例えば平成四年四月十五日の経済審議会運営委員会、ここで「新しい経済計画策定の基本的考え方」とか「新しい経済計画の基本的課題」とかいうテーマをお出しになって、また「地球社会と共存する生活大国への重点課題」、このテーマの下に「生活大国への変革」「個人の尊重」というところがありまして、そこにはやはり「所定外労働の削減を図るため法定割増賃金率の引上げについて具体的に検討する。」、こう書いてあるわけです。それから、通産省はちょっと否定していらっしゃるし、労働省も否定していらっしゃいますけれども、昨年日経新聞が、通産省はやっぱり時間外労働賃金の割り増し率を五〇%に引き上げねばならないという考えなのだということを書いているわけでございますが、こういう要請は労働省に対しては実際にはなかったということだそうですけれども、こういう考え方の人が通産省の中にはいるということは明らかです。
 それで、労働省としては五〇%ぐらいに引き上げるということについてはどのようにお考えですか。ほかの先進国の割り増し率を一々私が申し上げるまでもなく、五〇%のところが大変多いし、なぜそういうふうに五〇%にしているかといいますと、時間外労働を使用者側に安易にさせないようにというのが目的であって、一種のペナルティーという考え方、罰金を払わなければ時間外労働は労働者にさせられないという考え方に基づいているということがよく言われるわけですね。ですから、そういう面でとにかく時間外労働で景気の調整弁的に扱うというのではなく、そういうやっぱり時間外労働をさせるには労働者に対する補償、そして一種の罰金的にちゃんと高い時間外労働割り増し賃金率を払わなくちゃいけないというふうにしなくちゃいけないのではないか。それで、とにかく労働者側は、この時間外労働割り増し賃金率がたった一・二五であっても、長時間所定外労働をすることによってそれを生計費の中に組み入れている、それを生活の本当に資に、足しにしているわけです。
 そういうことでございますので、やっぱりこれは引き上げていかなければ、両方の立場から考えても、一九四七年の労働基準法施行以来全然変わっていない賃金率というのはちょっと国際的に見てもおかしいし、また労使双方の時間短縮努力というものを助成していくためにはこれは必要なんじゃないかと思いますが、労働省の御意見はいかがですか。
#67
○政府委員(佐藤勝美君) まず、所定外労働時間は、先生が今ちょっとお触れになりましたように、日本の場合に、景気がよくなると所定外時間でカバーをする。そのかわり、景気が悪くなってもできるだけ解雇をしないというようなことで、所定外時間が景気の調整弁というか、あるいは雇用にできるだけ影響を及ぼさないための調整弁になっていることがございますので、その点はいわゆる先進国と言われている国とはちょっと違う点があろうかと思います。しかしながら、そういった景気に関係のない所定外労働時間の部分もかなり多いということもまた事実でございまして、そういう部分につきましては、できるだけこれを削減していくということが労働時間短縮を進めていく上での大変大きな要素になるわけでございます。
 それで、割り増し賃金率でございますけれども、これは先生は国際比較についてはもう十分御承知なんで詳しくは申し上げませんが、二五%というのは労働基準法あるいはそれに相当する法律で決めている例としては普通のところで、これより多いところもありますし、低いところはありませんが、何も決めてないところもある。ILOも二五%ということでございますが、ただ実態としては労働協約で例えば五〇%というふうな率を全国的に決めている国も多いわけでございます。その中で我が国の問題をどう考えるかということでございますけれども、おっしゃるように割り増し率を上げることによりまして、事業主に対しますコスト負担をふやすということによって所定外労働あるいは休日労働を減らすことができると、大変有力な御意見がございます。
 一方におきまして、特に中小企業におきましては、時間短縮をやること自体が大変な負担になる上に、割り増し率を上げるとダブルパンチになりゃせぬかというようなこととか、あるいは現在中小企業ではほとんど全部が法定の二五%でやっておるという実態があるというようなこと。それから、最近は収入増加よりも労働時間の短縮を望む人が非常に多くなってきておるという調査もあるんですが、しかしながら、なおかつ時間よりも所得を選好するという方も少なからずいる中で、その率を上げた場合に一体どういうふうに働くかというようなことを考える必要もございます。
 こういったいろんな点についての考慮を踏まえながら、現在労働省内部におきましても、それから労働省からお願いをしまして中央労働基準審議会の中でも労使が真剣に検討されている最中でございますので、私どもとしてはこういった検討の経過を踏まえまして必要な措置をとりたいと、こういうふうに考えている次第でございます。
#68
○中西珠子君 私の時間がきょうはもう終わっちゃったんですけれども、大臣はどうお考えでいらっしゃいますか。余り御答弁が詳しくて長過ぎたものだから、時間オーバーで大臣の御意見が聞けなくなっちゃったので、最後に済みません、大臣。
#69
○国務大臣(近藤鉄雄君) 割り増し料金の問題は、今局長からいろいろ議論がございました。方向としてはこれを上げていく方向ではないかと思いますが、これまたいろいろの経営がという話がございますので、私どもの考えは、まず千八百時間を達成してそれから先にまたいろんなことをこれから御相談してまいりたい、こういうことでございます。
#70
○委員長(向山一人君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時二十分まで休憩いたします。
   午後零時十四分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三十四分開会
#71
○委員長(向山一人君) ただいまから労働委員会を再開いたします。
 午前に引き続き、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#72
○山中郁子君 きょうは、いろいろな事情で大変限られた時間でございますので、中心的に大臣の御答弁をちょうだいしたいと思います。
   〔委員長退席、理事仲川幸男君着席〕
 時短促進臨時措置法でありますけれども、先般、経済審議会生活大国部会の報告が出ましたが、ここの中で、時短につきまして労働時間の短縮は生活大国の実現にとって最重要課題の一つである、また国際協調を図るためにもぜひとも実現しなくてはならない課題である、さらに完全週休二日制の普及を促進するため、労働基準法の改正により早期に週四十時間労働制に移行する、それから時短に関して中小企業への支援措置を積極的に推進する、さらに計画期間中に大部分の業種において週四十時間労働制を実現する、また時間外、休日労働の法定割り増し賃金率の引き上げの具体的な検討、さらにはサービス残業や持ち帰り残業などをなくすための指導等々が示されています。
 これらの施策や方針は、私自身もまた我が党も一貫して国会の内外で長年にわたり問題点や具体例を出して提起してきたところでありますので、これが実現するならまことに結構なことだという受けとめ方をしておりますが、問題は、果たしてこれが実現できる保証があるのかというところに大きな一つの焦点があります。私は、それらのことについて、きょう二、三大臣のお考えをただしたいと思います。一つは、今まで一九八八年五月に発表された経済運営五カ年計画やこれに基づく第六次雇用対策基本計画、こうしたものの中で、年間総労働時間を千八百時間程度に向けて努力するという政策を提起されてきました。私は、これは先般の予算委員会でもこの問題について取り上げまして、大臣も覚えていらっしゃると思いますけれども、今回のこの新経済五カ年計画とでも言うのでしょうか、これによりますと、現行の経済運営五カ年計画では、約束が来年の三月末には千八百時間ということの目標を示されていたわけですけれども、これが結局動くわけですね。約束が変わってくるということになるんです。初めに確認をしておきたいんですが、今回お出しになるこの生活大国部会に出た内容によって出る新経済五カ年計画とでも言うのでしょうか、同じくやはり千八百時間となるわけかんですけれども、これはいっどのように達成するという、そういう意味合いを持つものかということが一つ。
 それから、新たに経済審議会の生活大国部会の報告が出た段階でのこの問題に関する大臣の所見をお伺いしたい。
#73
○国務大臣(近藤鉄雄君) 現行五カ年計画は、私も実は、その前の経企庁長官として、前川レポートに基づく経済構造調整そして長期計画というので準備に当たった一人でございますけれども、当時二千百時間でした。そして、五年間で千八百時間ということは三百時間減らそうということでありますから、単純計算いたしますと一年に六十時間ずつ時間を減らしていけば五年間で三百時間ということでございますが、実績は三十時間前後で、したがって予定の六十時間が半分前後しか達成できなかったということで、大変に残念に思うわけでございます。
 今度の新しい計画は、今の段階で二千時間ちょっとになっておりますので、これを五年間で千八百時間と、二百時間ですから、大体一年で四十時間減らせばいいということでございます。最近の実績は、三十数時間ずつ減っておりますので、今度の時短促進法を通していただいて環境整備をすることで、三十数時間を四十時間まで平均で持っていけば五年間で達成ができるということでございますので、今度の五カ年計画では千八百時間を必ず達成するように政府としてもぜひ努力してまいらなきゃならない。労働省としては、まさにその新しい計画の主役でございますので、ひとつ大いに努力してまいりたいと考えております。
#74
○山中郁子君 五カ年計画ですから、四年後というふうに考えてよろしいわけですか。四年後の三月末が目標になるというように考えてよろしいか。
#75
○国務大臣(近藤鉄雄君) 五カ年計画は今年度からの計画でございますから、今年度を含めての五年でございます。
#76
○山中郁子君 今労働省が到達点として示される時間というのも、サービス残業その他についてが全然把握されていない等々の問題点は既に予算委員会で指摘をしたところであります。ですから、きょうはその点については深入りはいたしません。
 問題は、いかに実効ある時間短縮、本当にできるのか、本当にやれるのかというこの問題なんです。国民は政府のバラ色の千八百時間というのに一回だまされたわけだから、もう一回まただまされたらかなわない。そういうことであってはならないということなんですけれども、現在の経済運営五カ年計画が達成できなかった、その真の原因は何なのか。これは政府がみずから閣議決定したことであります。それが未達成に終わるわけで、そういうことに対する原因とそれから反省、この問題がはっきりしないと、私は、やっぱり今度新しいものを立てたとしたってまた同じ轍を繰り返すということはないという保証にはならない、ここのところを明確にしていただきたい。
#77
○国務大臣(近藤鉄雄君) 現行計画で達成できなかったのはいろんな理由がございますが、まさに今度の時短促進法でお願いしているわけでございますけれども、我が国経済は極めて競争的な経済でございまして、そのことが日本経済の生産力を高め、国際的競争力を高めてまいったわけでございます。いわば横並び意識が強くて、そして時間短縮を目標としても、隣の企業が頑張っているならおれも頑張る、こういう形でなかなかできなかった面が非常に強八と思います。また、これもよく言われますが、下請、元請の関係で、これも下請企業としては元請企業側に納期で仕事を持っていかなきゃならない、そんなこともある。
 ただ私は、この新しい計画で必ず達成できると確信を持っておりますのは、今国民的なコンセンサスが時短に向かって形成されておりますし、しかもそれが国際的な問題にもなっている。かてて加えてまさに労働力不足状況がございます。私は、労働大臣が労働力不足の中で時短をするというのはおかしいじゃないか、逆じゃないか、人が足りなけりゃ頑張って働くということじゃないかとよく言われるのだけれども、逆に私は、労働力不足だから、時間短縮をしなければもう人材の確保ができないという状況まで経済が進んできちゃっているわけでございますので、そうした客観的に時短が達成できるような状況は現計画時期と比較して相当変わってきた、こういうふうに理解をしております。ただそうは言っても、いろんな競争条件だとか下請、元請のしがらみもございますので、これを一つ一つ解きながら時短が達成、現実化できるためのまさにフレームワークづくりをこの法案でぜひさせていただきたい、こういうことでございます。
#78
○山中郁子君 私も納得し得るものではありませんし、国民、勤労者も納得し得ないわけであります。重要な問題は、労働時間の短縮のためには労使はもとより国民各層の理解と協力は不可欠です。だから、政府が労使の協力を求めるとしばしは口にされることは、それはそれで必要なんですけれども、労使の自治にゆだねるということだけではだめなんです。だから、ここのところをはっきりしてほしいんですけれども、政府がきちんと法律によってこれを位置づける、そしてそれに対して協力を求めるということがあるわけなんで、そこのところは態度を明確にしていただきたい。
 これは釈迦に説法になりますが、労働基準法の労働法コンメンタール、もちろん労働省の労働基準局で編さんされたものでありますけれども、「日本国憲法第二七条第二項は、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」と規定している。憲法にこのような規定があることは、単に労働基準法制定の根拠を与えるにとどまらず、我が国の労働関係において契約自由の原則を修正していくという、つまり、世界の労働法の流れをしっかりと見極めて日本の法秩序の新しいあり方を宣言していることに他ならないのである。このことは、昭和二二年第九二帝国議会における労働基準法案提案理由のなかからも十分読みとることができる。」、これが要するに憲法第二十七条の第二項、この第二十七条の第二項はさらに憲法第二十五条から引き継がれる精神であります。こういう問題、こういうところから労働基準法ができている。ですから、基本的に、ゆだねるのではなくて協力を求めるというそういう立場でなければならない。ここはちょっとはっきりしておいてほしいと思うんですが、いかがでしょうか。
#79
○国務大臣(近藤鉄雄君) 労働時間の短縮を実際進めていくのは個々の企業め経営の中ででございますから、したがって個々の企業の経営、生産活動に直接責任を持っているのは経営者であり、そして現場の労働者の方々でありますから、まさに労使間の話し合い、相互理解、協力がなければ時短め実行はできない、これが前提でございます。
 しかし、そう言ったってミクロの企業でできることとそれからマクロの体制とやはり違いがございますので、そこでもうこの法律の中でも、時間短縮計画をきちっと内閣でつくるということは、それぞれ関係各省との話し合いも十分詰めてやるわけであります。例えば、建設業の時短を推進するためには、納期の問題一つとってみてもちゃんとしていかなければ時短なんかできないわけでございますから、そういった関係、運輸行政や建設行政やその他いろんな行政の相互の話し合いをしながらそれができるような体制をきちっとつくるというのが大前提で、そのもとで労使の自主的な努力ができる、また横並びでもできるような体制をつくる、こういう三段の構えてこの問題に努力しておる、こういうことでございます。
#80
○山中郁子君 労働基準法が憲法第二十七条の二項に基づく法律であり、それが必要であるということが労働省のコンメンタールにも明らかにされているという、そういうことが基本にあってこそ労使の協力を求めるという立場が出てくるのであって、労使の協力にゆだねるとか決議にゆだねるとか協議にゆだねるとか、そういうことであってはならないということを私は申し上げている。
 つまり、今まで結局五カ年計画が成功しなかった、とてもそれに達しなかった、達しない程度というのは、諸外国と比べて非常におくれをとっているということはもう国際問題でもあるし、日本のマスコミの中でも、大きく西ドイツなどの具体的な最近の例などと比較されて報道されています。そこのところの問題点が、私は政府のそういう甘さが、労使の自主的努力に任せるという、あるいはそれぞれの事業のところでやらなければだめなんだというところが一番最初に来て、本当に政府としての責任を、労働基準法に基づく法律でもって、きちんと労働者保護というそういう姿勢でもって臨むという立場が希薄であるから、そこに問題があるから五カ年計画も達成できなかった。だから、そのことについての明確なきちんとした姿勢が確立されなければ、また新たな五カ年計画をつくっても同じ轍を繰り返すと言わざるを得ないし、またそこの危惧は大いにあるということを私は改めて指摘をしておきます。
 同時に、法案の問題の重要な二、三の点について具体的にお伺いをしたいと思います。
 主として、六条、七条関係になるわけでありますけれども、まず時短委員会の委員は過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者の推薦が必要とされているけれども、委員の指名権が事業主にあるということで労使が対等とはとても言えないという問題だとか、あるいは第七条は、時短委員会の合意で労基法上の労使協定にかわるものとして取り扱われることになっていて、このような措置は労使対等の機関ではなく事業主に偏ったものであり、民主主義に反するばかりか少数組合の排除につながるものでもある等々、今私は自由法曹団の方々の意見書、私どももちょうだいいたしました。それからまた、民主法律協会の方々の意見書などの文脈もあわせて引用して申し上げたんですけれども、こうして時短委員会の決議が労使協定にかわる効力を与えられて、そして監督署への届け出義務を免除している。
 このようなやり方は、労働基準法の重大な後退ないしは改悪だと言わざるを得ないという点が非常に各専門家の間でも、また労働運動の面でも、私どもが理解する上でも大きな問題点だと思いますが、この点についての御見解を伺うということと、あわせて監督署に届け出がなければ監督行政ができなくなるというか、監督行政の放棄だという言葉さえ出ていますが、監督行政の大きな後退というものだけでなくて、企業の実態を監督署がつかめなくなるわけです。そうすると、労働基準法等が適正に執行されているのか、あるいは監督行政に支障を来すというようなことが生み出されないか、これらの問題についての御所見をお伺いいたしたい。簡潔にお願いします。
#81
○説明員(井上文彦君) 労働時間短縮推進委員会の問題でございますが、これは御指摘のように、この委員会で変形労働時間とかフレックスタイム等について決議ができるということにしてございます。この委員の選出等につきましては、労働基準法上の労使協定と同等の効力を持つということを前提にいたしまして、労使協定と同視し得るだけの要件が必要だと考えでございます。委員の半数が労働者の過半数を代表する労働組合の推薦を受けた者であること、決議は委員全員の合意により行われるものであること、委員会の設置について監督署に届け出ていること、議事録が作成、保存されていること等厳格な要件を付しているところでございます。
 なお、この委員会が万一適正な運営がなされていない疑いがある場合につきましては、委員会の設置については労働基準監督署への届け出を義務づける等の要件を付しているところでございますので、監督行政上問題が生じることがないと。また、我々としてはこれを厳正に運用してまいりたいというふうに考えてございます。
#82
○山中郁子君 今の御答弁は、私が指摘しまた問いただしたことについての部分的な触れ方しかされていませんが、私が申し上げたのは、今繰り返す時間がありませんけれども、労働基準法の改悪の問題を指摘いたしました。
 それから、政府の審議会でも労基法の改正が必要だということが言われていますのに、一体今の時期にこの時短促進臨時措置法というものがなぜ出されたのか。そして、この法案にはどういう政治的な位置づけがされているのか。趣旨説明を繰り返して伺うつもりではないんですよ、実際のところ、今私はほんの限られた問題点しか申し上げられないんですが、そういう重大な問題点があるにもかかわらず、どうして今こういうものしか出せないのか。これはまあ新聞論評などもありますけれども、対外的な諸外国向けの一生懸命やっているんだということのポーズ、あるいはまた労基法の真の抜本的改正のめどが立たないために、何かやっているんですよということでやっているという論評さえ生まれているわけなのですけれども、ここのところは大臣の御所見をちょっとフランクにというか、率直にお伺いしたい。
#83
○国務大臣(近藤鉄雄君) 労働基準法の改正につきましては、今御案内のように中央労働基準審議会で議論をしていただいているところでございますが、方向としては具体的に週四十時間という方向で検討を進められているのではないかと私は見ているわけでございます。
 ただ、それが実際に実行できるために具体的な状況を着実につくっていく必要があるということでございまして、先生のお言葉でございますが、何かやっているんだということを外に向かって言うようなことじゃないんで、まさに我が国労働者の労働時間というのは人様からどうこう言われる前に我が国の問題でございますので、それが実現できるために具体的な措置を今講じておって、そして基準審議会の結論が出て、労基法を改正するときには、それが文字どおり実行できる条件を今からつくっていくということでなければならないと考えております。
#84
○山中郁子君 よく新聞の論調なんかでも、毒にも薬にもならないという表現がありますけれども、私は毒にも薬にもならないというところでとまればまだよくて、毒が作用したらこれは重大だというふうに考えています。つまり、事業者が今まで届け出なければいけなかったものが届けなくてもいいようになるということ自体一つとっても、基準監督行政の大きな後退につながる問題が出てまいりますし、そういうことを私どもは非常に重視しております。
 最後に取りまとめて一括して大臣の御所見を伺うということで結構でございますが、私どもは、今申し上げました点も含めて幾つかの重要な問題意識を持っておりますので、労働時間の短縮については労働基準法の抜本的改正によって行うべきであるという立場に立ちつつ、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法案についても、それが労働時間の短縮促進を目的とする以上、その目標と計画を明確にすることが大事であるなどの内容で、以下数点の内容で衆議院において修正案を提出いたしました。残念ながらこれは否決されましたけれども、私どもはこの考え方について労働大臣の御所見をきょうの機会に伺っておきたいと思います。
 以下、簡単に申し上げます。
 最小限の具体的な目標は明示すべきである。一は、一日拘束八時間、完全週休二日、週四十時間労働制を実現する。また具体的目標の二番目としては、時間外労働の上限を一日二時間、月二十時間、年間百二十時間とする。具体的目標の三点目は、年次有給休暇を最低二十日とする。そして大きな二番目としては、労働時間短縮推進委員会は今のような具体的目標を達成することを目的として、その構成の半数を占める労働者代表には同事業場におけるすべての労働組合の代表を含むこと。また、労働組合がない場合においては、労働者の過半数を代表する者をもってこれに充てる。つまり少数組合を排除するようなことがあってはならないということがこの内容に含まれております。それから大きな三点目としては、時短推進委員会が設置されている事業場においても三カ月単位の変形労働時間制、一週間単位の非定型的変形労働時間制及びみなし労働時間制にかかわるものについては、現行労働基準法どおり労働基準監督署への届け出を要するものとすること。労働基準行政の後退は許さないという立場であります。それから四点目として、中小企業への助成についての義務づけを明確にする。
 以上、ごく柱だけを申し上げましたけれども、私どもはそういう観点に立って衆議院において修正案を提出した次第でありますが、法案にかかわる修正云々という問題を離れて、この私どもの考え方について労働大臣の御所見を一括してで結構でございますから、伺いたい。
#85
○国務大臣(近藤鉄雄君) 中小企業が労働時間を短縮できるためにいろんな指導、助成を行うこと。例えば融資なんかについても便宜を図ることについては、これは既に現在でも中小企業労働者確保法を積極的に広範に活用していただくことで対応してまいりたいと思っているわけでございますが、具体的な数字を挙げての御指摘につきましては、これは衆議院の労働委員会でもいろいろ議論していただいたわけでございますけれども、今度の法律は千八百時間と片一方では目標にしながら、それができるようないろいろ条件づくりを志向しているわけでございますので、特定の時間をきちっと目標として示すということは、今度の法律の性格上なじまないのではないかというふうに考えておりますし、その他せっかく先生のお考えでございますけれども、現段階で共産党さんの修正を受け入れることは困難であると私どもは考えております。
#86
○山中郁子君 もう一言だけ。私は修正案云々ということで申し上げているんじゃなくて、私どもが今このことで御紹介しました考え方について、そんなのはとんでもない話だとか、基本的にそれはできれば結構なことだとか、その御所見を伺っておりますので、一言で結構です。
#87
○国務大臣(近藤鉄雄君) お考えの方向で理解できるものもございます。
#88
○山中郁子君 終わります。
#89
○笹野貞子君 日本の憲法というのはどちらかというと無味乾燥な条文ですけれども、日本の国の一般的な国民の生活するある程度の基準というか、イメージを出しているのが二十五条で、二十五条の条文を見ますと、「健康で文化的な」という言葉が、これが生活には欠かせない一つのイメージとして出ております。私は、生きるということに文化的という言葉がつけられているというのはとってもすばらしいことですし、生きるということは、まさに文化的に生きなければ人間として生きられないという基本的人権の具体的な表現だというふうに思います。
 さて、きょうこの時短の法律を審議するに当たりまして、大臣とひとつ文化論についてお話をし合いたいというふうに思っております。
 というのは、文化というと大変膨大な一つの概念ですけれども、私たち連合がこれをゆとり、豊かさという表現をとりました。大変いい表現じゃないかというふうに思います。ゆとりのない生活というのはまさに文化のない生活の代弁であって、人間のゆとりというのは、そこから優しさとか思いやりだとか創造性だとかいろんなものが出てくる。それで、文化のない人間というのはまさにゆとりも創造性もなくなるわけですから、そういう点ではこの委員会も大いに文化的な審議をしたいというつもりで、きょうはメルヘンの世界に大臣をお誘いしようと、こういうことです。
 さて、メルヘンの世界というのは、ミヒャエル・エンデというドイツの児童作家が書きました「モモ」という児童文学なんですが、私が娘に随分前に、いい本ができたから読みなさいと、こう言われたんですけれども、私はまさにそれだけのゆとりもなく、娘の言うことなんか余り意に介さないような大変な生活をしていたものですから、ちょっと無視したんですが、この法律が出てふっとそのことを思い出しまして、急に「モモ」を読むことにいたしました。童話ですけれども、しかし読んでいるうちに、今私たちがまさに時短という文化を語るべく最も重要な問題を審議する上には、これは物すごくいい示唆を与えてくれるものだというふうに思ってこの「モモ」を読んだわけです。
 大臣を童話の世界に無理やりにというのは大変恐縮ですが、ちょっとモモという子供のことをお話をしますと、これは年齢もそして性格も何もわからない子供なんです。なぜこのモモという年齢もいろんなこともわからない子供を主人公にしたかというと、つまりこれは今日本の最も代表的な生活というか、枠組みというんでしょうか、組織人間、管理人間、一つの枠組みの中に入れられてしまったそういう窮屈な人間じゃない人間を想定したこのモモという子供、これからあらゆる可能性、あらゆる創造性をこの子供からつくり出そうという主人公のモモという子供で、私はこれを読んでいるうちに、本当に真理は単純なところにあるという格言どおりで、童話の世界から私たちが今ぎゅうぎゅう審議しているヒントがあるような気がいたしました。
 そこで、この「モモ」という小説、ミヒャエル・エンデという人が今の現代社会を実に風刺し、そして我々の間違いをこれによって直そうとしたこの小説について、まず大臣に御感想をお伺いしたいと思います。
#90
○国務大臣(近藤鉄雄君) どうも私は無学でございまして、「モモ」という小説を知らなかったのでありますけれども、先生の御質問があるということで労働省に照会しました。労働省はさすが、これは賃金時間部長のところで買っておったんですかな、先生の御質問の前からちゃんとこれを買って、これだけいろんなのが入っていますが、大いに勉強しておったようでございます。私は、またこれを全部読んでないんですが、要点だけここでメモってもらってありますけれども、大変示唆に富む童話ではないか、こう考えて、ぜひひとつ全部読んでみたい、こう思っております。
#91
○笹野貞子君 この「モモ」の中に出てくる示唆というのは、忙しい忙しいとみんなが言う。そして、忙しい忙しい、だからもう大変なんだという効率性ばかりを口にする。この主人公にタイム・イズ・マネー、タイム・イズ・マネーと、こう言わせるくだりがたくさん出てまいります。考えてみましたら、私たちもよくタイム・イズ・マネーと言うんですが、ある市場経済からいうと、確かにタイム・イズ・マネーというのは一つの真理かもしれません。しかし、マネーの中に一体私たちは何を求めているんだろうかということが大変大きな、重要な問題になってくると思います。お金だけ持っていても使い道がわからない人間になってしまうということなんで、まさに休暇をとってもどうして使っていいかわからなくなってしまうという、こういう感じが今の日本の社会の現状じゃないかというふうに思います。
 そういうときにこの「モモ」というのは、人間の時間をどう大切に過ごしたらいいかということをこの中で本当にわかりやすく言われているんです。その中に時間泥棒という、これは時間泥棒という表現じゃなくて時間貯蓄銀行という、そういう銀行が出てきて、その銀行屋さん、これがつまり時間泥棒なんですけれども、盛んにむだを省きなさい、効率の悪いことはやめなさいと言ってその時間をどんどん取り上げていくという話なわけです。
 私は、読んでいて大変おもしろかったんですが、この中で作者はこのように言っています。「人間はじぶんの時間をどうするかは、じぶんじしんできめなくてはならないからだよ。だから時間をぬすまれないように守ることだって、じぶんでやらなくてはいけない。」というくだりがあります。これが私は、きょうこの法律を審議する最も重大なポイントだというふうに思います。つまり、時間をとられないようにするのを自分たちでやらなければいけないという、こういうことなんですね。そこで、人間の時間の過ごし方を有効に過ごすということもやっぱり自分たちでやらなければいけない。その自分たちというのは、これは何かという問題になってくるわけです。
 そこで、自分たちで時間を守るということも、自分たちでとられないようにするのも自分たちでやらなければいけないというこの文言に対して、どういう方法を今やったら、この作者が言っているように、時間を盗まれないようにするためにも自分たちがやらなければいけない示唆だというふうに大臣はお考えでしょうか。
#92
○国務大臣(近藤鉄雄君) 私は、今度の法律といいますか、時短促進という考え方は、いわばこの小説、童話の中の時間泥棒が私たちの人間生活の中で、生活のために、生活の糧を得るために必要な労働時間というのを例えば年間二千五百時間も奪っておったというのから、逆に百時間でも二百時間でも三百時間でも奪い返してあげる。私たちが生活に必要なための時間はもう千八百時間なんですよと、ここでやってください、あとの残りはまさに豊かなゆとりある人生を過ごすために残しておくんですと、こういうことでありますから、言ってみれば、時間泥棒対策といいますか、時間泥棒から我々の時間を奪い返すための措置が今度の時短促進だと、こう考えているんですが、どうでしょうか。
#93
○笹野貞子君 童話の世界で、私はこういう言葉を大変示唆に富んだ言葉だというふうに思いますが、自分だちで時間泥棒から自分たちを守らなきゃいけないというのは、これはつまり、一つの社会機構というんでしょうかね、その一つの大きな社会、その社会機構の中にもちろん政府、そして労働省が入っているわけですけれども、時間泥棒というのは、この作家の中では非常に悪い人なんです、悪なんですね。悪と闘わなければいけないということですから、時間泥棒というのは悪だというこの作者の言葉を、私は、労働省がしっかり悪を退治する重大な役目をこれからするんだというふうにとっていただければ、私がきょうはメルヘンの紹介をした一つの大きな示唆になるというふうに思いますので、そういう御認識で時短の方向を進めていっていただきたいというふうに思います。
 さて、話題を変えまして、これで大臣はメルヘンの世界で豊かになっていただいたというふうに思いますので、次に質問を変えさせていただきます。
 ことしの春闘を目の前にして、ソニーの盛田さんと永野論争というのが華々しく展開されまして、ことしの春闘はこの問題についていろいろな話題を提供いたしました。盛田さんという方は、日本の経営のあり方というんでしょうか、日本の今の経済のあり方というのは、国際社会の中にあって日本の経営方針というのはこれから考えなければいけない、つまり国際経済の中では日本のような経営方針では摩擦を起こすだけじゃないかという認識のもとで、経営者側から見た日本の経営のあり方というのを投げかけたというふうに思います。せっかく経営者としての論理を展開したんですが、私から言わせると何が何だかわからないところで決着がついちゃっておもしろくなかったなと、本当はもっとちょうちょうはっしやっていただくと大変おもしろかったというふうに思うんですが、私は大変残念に思っております。この考え方というのは、経営者というその本質論から始まった時短の問題、つまりどういうふうに日本が国際社会の中で経営するかというあり方から時短という問題を投げかけた論文だったというふうに思います。
 しかし、私は時短という問題は、先ほどから何度も出ていますように、これは経営者の側から一方的に出されるべきものではなくて、さっきの「モモ」の言うように時間というのは悪に対する人類の闘いなんだというこの発想からしますと、大臣はどうでしょうね、経営者側のこういう発想は。一方では、別にこれは経営者としての考え方はいいんですけれども、また「モモ」に返りますけれども、何度も言うように人類全体が悪に対して闘わなければならないというこのときに、経営者もやっぱり労働者というものの立場を考慮しながら時短というのを考えるべきだという、経営者側の指導というんでしょうか、助言というんでしょうか、そんなのも必要だというふうに思うんですが、大臣はその点、経営者に対してどのような指導、助言をするという、そういう御計画はあるでしょうか。
#94
○国務大臣(近藤鉄雄君) 私は盛田さんも永野さんも個人的によく存じております。盛田さんの論文、文芸春秋を私も読ませていただきましたけれども、非常に示唆に富む、そう思うんでありますが、端的に言いまして私はやっぱりソニーの代表だと思うんです。というのは、ソニーのような優良な会社だから、だからちゃんと賃金を払って、もう時短もやって、そしてそういったコストを全部上積みして売っても、国内的にも国際的にも高品質の製品ですからよく売れるということの自信に裏づけられた発言である面があると思うんです。
 それから、永野さんの場合は、三菱マテリアルという会社は立派な会社だけれども、日経連の会長さんですから、そうすると数多くの企業の代弁ですね。全部ソニーのような会社だったらコストアップしても売れる。だけれども、日経連の傘下のいろんな企業、必ずしも生産性が高くない企業もありますから、だからそういう立場で物を言うとそう簡単にきれいごとじゃ済まないよということで、多少盛田さんに対して反対をしていらっしゃったと、そういうお立場の違いで。ただ、あり得べき方向を言えば、ソニーのようにいい物をつくってそしてちゃんと賃金を払って高くなったら高くなった分だけ国内、国際で堂々と売るというのが正しいことである。ですから、やっぱりそういう方向に今後経営も労使が話し合いをしながら努力していくことじゃないかと思います。
 そこで、この「モモ」の話に戻りますが、私は、会社というのは時間を泥棒するんだというだけでも率直に言って一方的かなと。やはり働くことは、貴重な我々の人生の時間をただとられちゃってあとは無意味にやっているんだということでもないんであって、働くこと自体の中にそういう喜びとか生きがいとかもありますから、だからそういう形で、働くことも全部これは泥棒にとられた時間で無味乾燥だから少ないなら少ないだけいいというわけでもないかもしれませんね。
 それで、労働省はまさにこれから職場の環境をよくするために、例えば今度も快適な職場をつくるための法案を提案させていただいて御審議いただいたわけでございます。ただ、そうはいっても、やはり経済優先でいっちゃいますとややもすれば生活が犠牲になってしまうという面もございますから、そういう点で時短促進法というものがあって、ちゃんとした仕事以外の時間を確保するということがとても大事だと考えるわけでございます。
#95
○笹野貞子君 私は経営者の方、働くことが悪いことだというふうには決して言っておりません。つまり、こういう考え方というのは経営者じゃなくてみんな人類全部が考えることだ、だからどこか一つだけがそれを考えるというそういうやり方じゃなくて、人類全部が考えようということですから、大臣の言われたこととは本質論は一緒でして、働くことが悪いことだとは決して言っておりませんので、その点は御理解をいただきたいと思います。
 続きまして、大臣の独立変数論のことでちょっとお聞きをしたいというふうに思います。
 何度も言っておりますように、独立変数論というのは働く者にとっては大変心強い、力強い議論なわけです。そういう意味で、この独立変数論からいいますと、先に生産性ばっかり考えることはよくないことだ、ですからゆとり、豊かさのために大臣の持論であります独立変数論によって時間というのを割り出していかなければいけない、こういうことになるというふうに思いますので、生産性を先に出していろんな議論をするんではなくて、大臣の言われる独立変数論を出して、そしてそれによって何時間にすると一番効率的にも生産性にも合うかという論法になるというふうに思います。
 そういう意味で、大臣がいつでも言っております独立変数論というものを一番先に考えますと、これからの人類がゆとり、豊かさ、文化というものを感じながら働く時間数というのは、大臣独自はどのくらいの時間数が大臣が独立変数と言っているその大理論に最もかなうものか。今千八百時間というのが出されていますが、大臣が言う独立変数論からいうと千八百時間が最もその論理を裏づける時間になるのか、それとも違うのがあるのか、ちょっとそこをお尋ねします。
#96
○国務大臣(近藤鉄雄君) 今度の春闘でも、労使の中で千八百時間をいつまでに達成するんだということについて話し合いができた企業もあれば、また産業別組合もございますが、私が申し上げているのは、千八百時間というのを目標にして、それを例えば二年後に達成するならことしは千九百時間、来年は千八百時間とし、四年後だったら二千時間から千九百五十時間、千九百時間、こういうふうに切っていこう。だから、そういうふうに労働時間を先に決めて、それでできるような経営を考えてください、考えようということでございます。
 さて、千八百時間を達成したらそこから先はどうするんだということにつきましては、私もこの段階で明確な数字を持っていないわけでございますが、ここまでくると、多少日本人的なワーカホリック症になっているのか、週休三日までいっちゃうとあと今度は四日間でどっちが先かわからない、多少そんな心配もありますので、私は、まず千八百時間を達成していただいた後でいろんな状況を見ながら、さあその次をどうするんだと。ただ、いたずらに総労働時間を減らすことばかりでもないのかもしれませんね。千八百時間はともかくきちっと計画をつくって達成していこう、こういう考えでございます。
#97
○笹野貞子君 最後になりますけれども、今私たちは時短時短と盛んに言っております。しかし、私たちが生活にゆとり、豊かさ、文化というものを考えるときには時短が目的ではなくて、時短というのは、どう人間が人間らしく生きるかというそのために時短というのがあるわけですから、つまりその目的と主客が転倒してしまうと、私は大変妙な議論になるというふうに思っているわけです。ですから、千八百時間を達成することが何か目的のようにとるというのは大変間違いだというふうに思いますので、先ほどから大臣、このように一生懸今お話をしているわけです。
 そこで、大臣に最後のお尋ねになりますけれども、私たちはどう生きるかという時間の過ごし方、そして働く時間のあり方、その働く時間のあり方の具体的にできるゆとりの時間というようなもの、先に人間が人間として生きる働き方というのをある程度決めておきながらそれに合わせて時短をするというそういうやり方、これが難しい言葉で言うと基本的人権の追求になっていくだろうというふうに思います。そういう意味では、今ちょっと私はそういう考え方じゃなくて、何か生産性とか効率性とか人手不足になっているからとか、そういうもののために時短を声高に言っているような感じがするわけですけれども、大臣どうでしょうか、これから人間が働くということの目的と主語と目的格というものの考え方についてちょっとお話をいただきたいと思います。
#98
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生が文化論とおっしゃったから多少文化論的なことをあえて申しますが、当初私は仕事以外の内容のある多様な人生を国民が送れるためにいわゆる勤労時間は減らしていこうというのが一つの大きな方向であると思います。しかし同時に、あえて文化論と申し上げるわけだけれども、どうでしょうか。やっている仕事はつまらなくて一分一秒でも早くやめて家へ帰りたいというような仕事をしょせんは一生やられる、そういう人生がいいかどうか。私はそういう仕事自身が、これまた誤解されたら困るけれども、一分でも一秒でも長くやって楽しいんだという仕事もないと、これは嫌だけれども食うためにやっている、こっちから先が自由で豊かな人生だという割り切り方がどうか。そうでもないようなんです。ですから、あえて理想論を申し上げれば、一応そういう形で時間短縮しながら、しかし同時にこの仕事は楽しくて仕方がなくて、できれば時短なんか無視してもやってみたい、これは言い過ぎると労働大臣怒られちゃうからここはあえて文化論と申し上げたわけであります。そういう仕事の内容を上げることがこれからの労働行政でございまして、山中先生の議論にちょっと戻るわけじゃありませんけれども、労働基準法という法律も最低賃金制というミニマムの生活、労働条件を確保するという状態から、私は時間を減らすだとかいろんなことを、一段アップした形の労働基準といいますか、労働条件の改善ということをこれから目指すのが新しい労働基準法ではないかなと文化論的に考えているわけでございます。
#99
○笹野貞子君 全くそのとおりなんです。つまり、仕事がおもしろくて仕方がないというのは仕事に対する情熱とか創造性とかそういうものがあるから仕事がおもしろくなるという、言っていることは同じなんですけれども、やっぱり仕事がおもしろくなるようなゆとりのある社会をつくっていただくようにひとつ御努力いただきたいというふうに思います。
 終わります。
#100
○橋本孝一郎君 重複するかもわかりませんけれども、千八百時間の基本的な問題について一言だけ確認の意味でお尋ねしておきたいと思います。
 千八百時間、御案内のように六十三年に決定されておりまして、一九九二年末が一つの期限といいましょうか、目標期限にされておるわけであります。その間、当初は二千百時間程度であったのがずっと減りまして、平均して大体年三十時間の短縮が達成されてきておりまして、平成三年度は二千六時間程度に進んでおるという状況であります。
 さて、労働省として現在千八百時間達成時期の見通しというのを、これは非常に酷な言い方ですけれども、どう考えられてみえるのか、確認の意味でお尋ねしておきたいと思います。
#101
○国務大臣(近藤鉄雄君) 御指摘のとおり、平成三年度で二千時間ちょっとでございます。そして、最近三十数時間ずつ減っておりますので、この調子で行きますと、これから六年あれば千八百時間になるということでございますから、これを前倒しするために今度の法案でいろいろ体制をつくってまいるということでございます。
#102
○橋本孝一郎君 わかりました。
 そこで、現在審議中でありますが、新経済五カ年計画との関連なんでありますけれども、政府は六月下旬に新経済五カ年計画をまとめることになると思いますけれども、当然千八百時間の達成時期も明記されることになると考えられます。二十一日に出された経済審議会の報告では、期間中、つまり九二年から九六年ですね、九六年度の達成を目指すとしていますけれども、毎年三十時間ずつ短縮が仮に進んでいくとすれば、これはほっておいても期間内の達成は当然できるわけでありまして、その場合、九六年度の最終年度に目標を置くのではなく、なるべく早い時期を達成時期として明記すべきではないかと思うんですけれども、大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
#103
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先ほど申しましたように、現在三十数時間ずつでありますから、これは六年かかりますので、新しい経済計画はことしからスタートでございますから、そうなると六年ではみ出ちゃいますので、一年前倒しをしようということでありますから、先生御指摘のとおり、早いほどいいというお気持ちもわかりますが、今回は政府の責任において目標を達成するということであるとすれば、九六年とおっしゃいましたが、ちょうど五年に達成しようということで、しかしここから一歩も引かないということではないかと思います。
#104
○橋本孝一郎君 その御決意によって、また五年先になったら結局だめになったというようなことにならないようにお願いしておきたいと思うんです。
 というのは、私どもかねがね申し上げていますように、時間短縮というものは労使間の基本的問題であります。第三者と言ったらおかしいんですけれども、どれほど外から、外部からワーワー言っても、当事者間において合意しない限りにおいては成立しないという基本的な問題ですから、それは法律によって最低を押さえて、上限は全然これはもうばらなんですから、最低を犯した場合に最賃法のように法律によってある程度拘束することはできますけれども、目標というふうにしてしまえば、これは全然法律的効果がないわけであります。あくまでも労使間の合意が真理でありますから。
 そこで問題は、この審議会でも当然人間の知恵を出して、日本においてどういうふうにすれば労働短縮できるかということはいろいろと議論されていることとは思います。いわゆる週休二日制の制度を施行するとか、あるいは長期休暇をとらすとか、いろいろな手法があるわけです。ヨーロッパあたりの長期休暇というのは、先ほどどなたか午前中にも文化的違い云々と言いましたけれども、私は自然条件が日本の場合と違っておると思うんです。ヨーロッパの場合は、逆に言うならば、北欧あたりですと日照時間が非常に年間短い、ヨーロッパそのものでも年間どんと曇った日が多くて、人間が生きていく上において、あるいは生命を保持し健康的にしていくためにおいて太陽の熱が大事である、それを求めて長期のバカンスというのは自然条件の中から生まれてき、そこに一つの文化として長期休暇は当たり前だというものは出ておるわけです。それをそっくり持ってきてまねして日本でやろうというのは、私は非常に無理があると思う。それはいいことですからいいんですが、私は日本ではもっと違う視点でそういうことを助成していけば幾分たりとも可能性があるんじゃないか。
 例えば、日本の場合ですと、何しろ太陽を求めて海岸へ行くといってもものの二時間もあればどこからでも行けるわけですね、スキーをしたいと思えば三時間もかければすぐ行けるんです、冬は。こんな国は日本だけですよ、恐らく。ヨーロッパではそんなことはある程度時間を持たないとできませんからね。アメリカだってそうだと思うんです。たまたまこういう温帯におってそういう自然条件下における非常に豊かな面があるものですから、なかなかそっくり持ってきたってうまくいかない。そうすると、逆にそれをいかに利用するかという面でのバカンスのいわゆる設備にしても、これは労働省だけの問題ではないけれども、リゾート問題にしても緑とか――もっと私は緑というものについては医学との連携が必要だと思うんです。
 人間一生働く、そして六十歳、六十五歳で定年になる。今日本は世界の長寿国だと言っておるけれども、長寿国は裏返せばぼけが一番多いということです。ぼけにならないために今のうちからどうするか。それはやっぱり労働、勤労している間から自分が一生友達になれる労働以外のものを持つべきだ、趣味でもいい、何でもいい、例えばお茶でもお花でも何でもいいんですけれども。そのときになって、七十になってから慌てて老人の手習いでやったってそんなものはぼけ防止にならぬから、もっと若いうちからそういうものを持てるような余裕、時間を与える、そして持つように労働者自身、労働組合としてもそういう方向である程度労働者をリードしていく、あるいは国もそれに対してある程度援助をしていく。話はずれるんですけれども、いわば労働時間短縮対策とぼけ防止というやつですね、将来の。これはみんなだれだって心配しておるんですから、ぼけてまで生きていたくないんですから。だから私は、そういうふうな全然角度の違うものが何かあれば、そしてそれがなるほどというふうに医学的にも解明されてそれはいいぞよということになれば、これこそまさに日本らしい長期休暇取得の一つの大きな要件をつくってあげることになると思うんです。
 そういう指導をするのとあわせていろいろなこういう細かい施策を実行されれば、もう永野さんは早々とこんなものだめだとは言っていますけれども、説得力もあるし、そしてそういう国際的な長時間労働に対する非難も受けないと僕は思いますけれども、その点について大臣の御所見を聞きたいと思います。
#105
○国務大臣(近藤鉄雄君) 我が国の労働時間の短縮がなぜされないかという理由に、さきに庄司先生から御指摘もあったと思うのでありますけれども、長期休暇の面において欧米と断然差がある、こういうことでございますし、おっしゃるように長期休暇をどうしたらよくとれるかということを考えないといけないということは私も賛成でございます。
 しかし同時に、長期休暇の過ごし方についてどうも我々はなれていませんよね。たまの休みだから温泉旅館に行ってだんとやるとか、それから高い金を払ってゴルフをやるということになっちゃうんであって、これで一週間、一カ月温泉旅館へ入っておったら一年分の給料が吹っ飛んじゃうわけであります。だから、アメリカやヨーロッパ的に、家族で全部食料を積み込んでキャンプして歩くだとか、そういうもっと金をかけない健全な余暇の過ごし方というものを同時にやっていかないと、あえて言えば今の環境行政とかレジャー行政というものを根本的に変えていくということも、長期休暇というものを勤労者にとってもらうためには案外大事な社会的基盤整備かもしれませんね。私は、そのあたりのことをひとつこれから労働省で考えながら進めていきたいと思います。
#106
○橋本孝一郎君 これは、そういう意味では非常に厚生省の問題やら農水省の問題やらいろいろかかわっできますので、全体的な問題としてとらえていくということが大事だと思います。したがいまして、私は千八百時間を目標に置いて、それを達成したとかせぬとかいう問題で労働省をぎゅうぎゅうやってもとても問題の解決にはならぬとむしろ思っておるわけであります。
 そこで、ちょっと細かくなりますが、時短の実施計画の問題に入ります。
 業種ごとの時短承認制度について伺いたいわけですけれども、ことしの一月に提出されました建議の中では、一定の業種のほかに地域にかかわる事業団体も計画の承認を受けることができるようになっていたように拝見いたします。しかし、法案では業種のみで地域にかかわるものが入っていないわけでありますが、商店街とか工業団地とかについても幅を持たせて広義に解釈するという政府の回答でありましたけれども、こういった二足のまとまりのあるもの、競争関係にあるものこそ必要と思いますが、なぜ明文化されなかったのか、お伺いしたいと思います。
#107
○説明員(井上文彦君) 労働時間短縮実施計画の承認制度でございますが、これは、我が国では過当競争のもとで各企業の横並び意識が強いことなどから企業がなかなか単独では時短が進みにくいという事情がございます。そういうことを勘案いたしまして、この趣旨は、業界一体となりました自主的取り組みを促進したいということから生まれたものでございます。こうした競争関係や横並び意識は、同一の業種に属する事業主の間から生じやすいわけでございまして、この点に注目して考えたわけでございます。
 ただ、全く異なる業種に属する事業主の集まりについては対象としにくい面がございますが、同一の業種の判断に当たりましては法の目的に照らしまして、実態として競争関係や横並び意識の生じている事業主の集まりでございます団体、例えば商店街とか工業団地等についてはその実態を見て幅広く適用してまいりたいと考えでございます。
#108
○橋本孝一郎君 次に、これは独禁法にも関係すると思うんですけれども、同一業種の中で共同で労働時間短縮の実施計画に参加した事業主と計画に参加していない事業主が出てくると考えられますが、参加しない事業主が多い場合にはもう当然これは効果は薄いということは明らかであります。
 こうした場合、なるべく多くの参加者を募る必要があると考えますけれども、労働省としてどのような指導をされるのか。またその場合、ある程度強制を行うことは問題があると思います。強制ということになればこれは独禁法と相反ずみ問題であるというふうに言わざるを得ないと思いますけれども、労働省としては独禁法との関係についてどう考えられるか、こういういわゆるはぐれをどう引っ張っていくかということですね。
#109
○政府委員(佐藤勝美君) 御指摘のように、この労働時間短縮実施計画に参加する事業主ができるだけ多い方が効果があるわけでございます。そういった観点から、この法律が成立をいたしまして運用いたします場合に、業界団体等に広く呼びかけましてできるだけ広い範囲で計画をつくっていただけるように極力努力をいたすつもりでございます。
 ただ、強制ということになりますと、もちろんこの法律ではそういう形になっておりませんし、それからおっしゃいますように独禁法その他の関係でそういう計画に参加をすることを希望しない事業主に強制するということはできませんが、そういった方法ではなくて、広くこの制度が活用できるように指導啓発に努めたいと思っております。
#110
○橋本孝一郎君 次に、独禁法との関係で公取の人がお見えになるのでちょっとお尋ねしたいんですけれども、労働時間短縮実施計画の作成に当たって、一般消費者あるいは関連事業主の利益を不当に害するものではないこと、また計画の実施への参加、脱退を不当に制限するものではないという規定があるが、ここで言う不当とはどの程度のものを言うのか、ある程度計画に強制力を持たせないと実効が上がらないと考えられますのでこの兼ね合いをどう考えるのか、お尋ねしたいと思います。
#111
○説明員(山田昭雄君) 労働時間短縮実施計画の仕組みは、先ほど労働省の方から御説明があったようなものであるということで、業界の自主的な取り組みを促進するということでございますので、私どもといたしましても事業者が相互理解のもとに自主的に時短を進めていくということが効果的であるというふうに考えておるわけでございます。
 ただ、労働時間短縮促進措置の中身といたしましては、労働時間だけではなくして、やはり営業時間であるとか休業日というようなこともその計画の中に入ってくるわけでございます。そうしますと、事業者のそれぞれの事業活動も制約するというようなことになりますので、不当に制限することなく事業者によって自主的な努力を促進していく、そういうための仕組みにしていくという必要があると思っておるわけでございます。
 独占禁止法の立場からいいますと、先生今御質問がありましたように、例えば脱退者には過大な違約金を課すというように過度な制限を行いますと、これは事業活動を不当に制限し問題となるおそれもあるわけでございます。しかし、実際問題といたしましては、この計画は時短を促進しようとする事業者が任意に作成してこれを実施しようとするものでございますし、仮に脱退をしようとする者がいた場合に、他の参加者が当該事業者に計画にとどまるよう説得を行ったといたしましても、それは独禁法上問題になるわけではございませんし、また所管官庁もそのようにいろいろ慫慂等行ってきたと思います。適切な措置をとるかと思います。こういったことから、御懸念のようなケースというのは余り発生しないのではないか、このように考えておる次第でございます。
#112
○橋本孝一郎君 起こらなければ結構なんでありますけれども、ヨーロッパの労働時間の短縮の歴史を見てもあれはギルド制度から出ておるんです。守らぬやつはもう村八分ところじゃないんです。完全追放なんです。そのくらい厳しい歴史の中から労働時間というものは守られてきていまして、それを緩めたらそんなものは意味がないと思うんです。そもそも労働時間の問題については、もう今やそういう意味で国際的なあるいはまた国民的なコンセンサスも非常に得られておる問題でありますから、労働時間に関する協定締結は独禁法の適用から除外してもいいと考えるんですが、いかがでしょうか。
#113
○説明員(山田昭雄君) 私どもといたしまして、従来業界団体による時短促進についての相談事例、非常に多く受けているわけでございまして、そういうような経験から申しまして、この八条に基づいて作成されます営業時間でありますとか休業日に関する計画が同条の要件に合致するものでありますならば、これは独禁法上の問題が生ずるものではないというふうに考えております。
 他方、事業者が独禁法上の関係はどうかということが不安であるということでございますので、そういった不安を解消いたしまして計画を実施するようにするためには、この計画の承認について主務大臣に対し独禁法上問題がないということを事前に個別に確認するという規定がここに置かれているわけでございまして、一件一件きめ細かくこたえてやるということの方が事業者の不安を解消するためにより有効であるというように思っているわけでございます。
 したがいまして、そもそも独禁法上違反ということでないわけですから、独禁法の適用除外規定を設けなくても、この法案によりまして時短の推進が十分図られる、このように考えておるわけでございます。
#114
○橋本孝一郎君 ありがとうございました。
#115
○西川潔君 最後でございます。よろしくお願いいたします。
 労働時間短縮の法律でございますが、この法案には私自身も本当に大いに期待するところでありますけれども、時短が進むと人手不足の中で特に中小零細企業において企業経営に支障を来したり、またこれまで勤労を美徳として懸命に働いてきた労働者のモラルを低下させたりしないかなというところもちょっと心配をするところでありますが、労働時間短縮はこうした問題の解決を図りながら進めていただきたいな、こういうふうに思うわけでありますが、労働時間短縮は我が国にとってどうして必要なのか。また、労働時間短縮によって実現しようとするその社会、それが実現されたときには、自分たちの住んでいる町が、会社が、家庭が、また労使が、どういうふうにこの世の中が変わっていくのかなというのを、もう一度改めて大臣にお伺いしたいんですが。
#116
○国務大臣(近藤鉄雄君) 労働時間の短縮は、私たちが生活に必要な糧を得るために必要とする労働時間をできるだけ減らして、そして職場以外の人生を豊かにし、ゆとりを与えるための条件である、こういうふうにまず考えるわけであります。
 第二点として、よく私なんか聞かれるんですけれども、しからばみんな働くなということかと、遊べということかと、こういうことを言われますが、そうではなしに、今まで土曜日曜ともに働いておったのを週休二日で五日間仕事と、こうすることは土曜日曜をまんべんなく働くよりも、もっともっと五日間頭を使いそして努力をしなければできません。ですから、労働時間短縮というのは怠け者をつくるというような誤解がありますが、とんでもないことなんです。まさに、労働時間短縮はこれまで以上に日本の勤労者の方々に、ある意味では勤勉になっていただく、努力をしていただく、経営者も従来以上に頭を使っていただく、こういうことじゃないか。
 ですから、整理いたしますと、与えられた限られた時間で生産性を上げ、そして従来と同じような物的な生産を確保すると同時に、今度はそれをエンジョイする時間的な余裕を同時につくらせていただくためにこれはどうしてもやらせていただきたい、やっていただきたい措置だと、かように考えております。
#117
○西川潔君 経済が一流になりまして、でもその実感がないというのが国民の調査にも出ているわけですけれども、そのあたりが本当に難しいんではないかなと思うんです。
 労働大臣にお尋ねしたいんですが、奈良時代のお役人の年間労働時間は何時間ぐらいだったか、先ほどの「モモ」にちょっと続くようですけれども。
#118
○国務大臣(近藤鉄雄君) 私はどうも余り歴史に深い理解がなくてよくわかりませんが、新聞にも出ておったようで、その資料によりますと、何か当時の下級役人の勤務は、月に日勤が二十六日か二十七日ですか、そして夜勤が十四、五日あったと。したがって、一カ月に昼夜勤務が半月以上もあるなど昼夜働きづめであったというような情報もありますし、また片方では、日の出から正午までが所定労働時間であったと、だから午後は自由だった、こういうようなことを言われており、実際はよくわからない、しかしいろんなことが最近調べられている、こういう状況でございます。
#119
○西川潔君 余分に勉強させて申しわけないんですけれども、実は昭和六十三年九月に奈良市の建設現場で千二百年前の奈良時代の長屋王の宮殿から木簡が見つかったわけです。その中から当時の下級役人の勤務評定用の木簡が出てきたわけですけれども、当時のお役人さんの勤務状況を知る興味深い記録があったものですから大臣にお尋ねしたんです。当時のお役人の年間の労働時間は千八百時間ということでございますので、まさしく今日の政府が目標にしている時間でございます。
 現在、我が国の労働時間の現状は、平成三年度で二千六時間、政府の目標である平成四年度千八百時間達成は困難な状況にあるわけです。規模別で見ますと、五百人以上の大企業では所定内労働時間が千七百九十八時間と短いわけですが、所定外の時間が二百十九時間とこれは長い。これに対して三十人から九十九人の中小企業では、所定内労働時間は千八百六十二時間と長いわけですが、所定外が今度は百四十二時間と短くなっているわけです。このことは、大企業では週休二日制が普及しているものの残業が多く、中小企業では残業は少ないけれども週休二日制が進んでいないというわけです。労働省として労働時間短縮対策を初めて打ち出されたのはいつのことでしょうか。また、そのときの労働時間短縮の目標と具体的な施策はどのようなものであったかお伺いしたいと思います。
#120
○政府委員(佐藤勝美君) 労働省としての労働時間短縮政策ということでございますが、さかのぼれば労働省ができましたのは昭和二十四年でございましたが、労働基準法が昭和二十二年にできております。実は、この労働基準法がつまり労働時間短縮の始まりでございまして、それまでは工場法でごく限られた範囲、女子それから十六歳未満の児童について十一時間という長い法定時間が決まっていたにとどまったわけでございますが、労働基準法とともに原則全事業につきまして週四十八時間、一日八時間ということが決められたわけで、言ってみればそれがそもそも時短の始まりであったと言えないこともないと思います。ただ、当時としてはまことに革命的な法律であったために、しばらくは昭和三十年代に入りましても週休制、つまり週休一日を確保するのに大変汗をかいて行政がやってきたという歴史がございます。
 そういう歴史を経まして、労働時間短縮計画というような形で議論が始まっておりますのが、いろいろさかのぼれば切りがないんですが、比較的明確な時点として申し上げられるのは、昭和四十四年に労働基準法研究会というものを労働省内に設置いたしました。四十六年にその報告が出たわけですが、その中で所定内労働時間の短縮を基本とし、週休二日制の普及、年次有給休暇の完全消化等が提唱されたと、これがまとまった意味での労働時間短縮の計画といいますか、施策が報告をされた最初であろうかと思います、したがって、昭和四十六年からそれが始まっていたと。さらに昭和四十六年になりますと一労働者生活ビジョン懇談会というものも発足をさせまして、翌四十七年にその中間報告が出されておるわけでございますが、この中では、週休二日制もそうでございますが、完全週休二日、それから週四十時間労働制というのが既にうたわれておるわけでございます。
 そういうことで、この労働時間短縮の政策あるいは計画の歴史ということになると、かなり長い歴史があるというふうに申し上げられると思います。
#121
○西川潔君 それだけ長い歴史で週休二日制の普及を含めた労働時間短縮対策が行われてきたわけですけれども、いまだに週休二日制の完全実施が達成されてないわけです。労働省といたしましては、例えばその原因はどのあたりにあると思うのでしょうか。
#122
○政府委員(佐藤勝美君) 週休二日制の普及がおくれているという原因、遠因近因いろいろあると思いますけれども、やはりそもそもが週休も行われていなかったような状況から出発をしたということもございますし、それからやはり中小企業におきましては大企業に比べて非常に経営基盤が弱いということで、特に中小企業でなかなかその普及が進まなかったというのが全体のおくれに大変響いているというふうに思っております。
#123
○西川潔君 国民の六割以上が労働時間の短縮を望みまして、収入と労働時間の関係でも、収入増より時間短縮を優先する人が四割を超すという調査結果も出ておるわけです。今回の法案では、労働大臣が労働時間短縮推進計画を作成し、閣議決定を求めることになっておるわけです。政府全体で労働時間短縮に取り組んでいかれることですが、これは大いに期待します。
 企業種、全事業が労働時間短縮に取り組むわけですが、最も時間短縮が難しいのは、人手不足などが深刻で、そのために倒産に追い込まれることもまれではない中小零細企業ではないかと思うわけです。我が国の従業者の八割が中小零細企業で働いております。この方々が本当に豊かになったと思えるような国をつくっていかなければならないわけで、中小零細企業で働く方々の時間短縮対策はどのようになっているのか、また現在の労働時間の実態とあわせてお伺いしたいと思います。
#124
○政府委員(佐藤勝美君) 中小零細企業ということでございますが、先ほど先生もお触れになりましたように、所定内労働時間ということになりますと、大企業が短く中小企業が長い、ただし所定外労働時間を加えますと余り違いがないようなことになっております。ただ、やはり基本は所定内時間を減らすというところが大事でございまして、その面での中小企業対策が大変必要なわけでございます。
 これまで労働省として進めてまいりましたのは、やはり中小企業におきましては単独の企業ということではなくて集団、グループとして取り組んでいただくということが有効であるという観点から、同じ業種の集団あるいは同じ地域の集団を対象にしまして指導援助をしてきたわけでございます。それから、中小企業労働力確保法に基づきまして、労働時間短縮に取り組む中小企業の集団に対する指導援助も行ってきておるわけでございます。その中にはもちろん財政的あるいは税制の面での援助もございますけれども、さらには診断、助言指導というような、どういうふうにすれば時短ができるかというような相談、診断も行ってきているところでございます。
 また、現在審議をしていただいておりますこの法案におきましては、これは同一業種の事業主というところに着目をしておりますが、やはり主体として考えておりますのは中小企業が集団で時短に取り組むことが容易になるような体制をつくりたい、こういうことでございます。
#125
○西川潔君 中小零細企業の週休二日制ですが、労使の取り組みだけではなくて、法制度の抜本的な改革も本当に必要であると思うんですけれども、いかがでしょうか。
#126
○政府委員(佐藤勝美君) 週休二日制というのは週の労働時間に焼き直して申しますれば、一日八時間とすれば週四十時間ということで、現在の労働基準法がそれに到達する過程にあると言っていいと思います。昭和六十三年から従来の四十八時間を四十六時間に短縮し、さらに平成三年度からはこれが週四十四時間になったわけでございます。
 今後の問題につきましては、最終的に週四十時間というふうに名実ともにいたすためには、これは法改正が必要なわけでございまして、その法改正のあり方につきましては、現在審議会におきまして公労使三者構成で大変熱心な議論をしていただいておりますしまたこの五月、六月には全国的な実態調査を行いまして、それを踏まえましてさらに論議が進められるというふうに私どもは考えております。とにかく、労働省としてはことしじゅうにひとつこの審議会の結論を出していただくようにというふうにお願いしているところでございます。
#127
○西川潔君 私の地元大阪の話ですが、友人がプレス工場を経営しているわけです。時短についていろんな方々にお話をお伺いするんですが、友達は六人程度の町工場でございますが、短縮なんかできないと言うわけです。初めは弟さんと二人で仕事を始めたわけですけれども、いろいろなところへ頭を下げてやっと仕事がふえて、そして信用もできた。ここに任せれば納期にもちゃんと間に合わせてくれる。仕事が欲しいために今まで回ったわけですから、最近やっと親会社との間に信用、いわゆる信頼関係も生まれて、無理のきく工場だということで徐々に徐々に注文がふえてきて軌道に乗っていると。今では六人と兄弟で八人程度ということでございますが、うちが今月から土曜日曜は休みますというようなことになったら、やっぱり西川君、飯の食い上げになると、実際にこういうお話を聞くわけです。そして、仕事はすぐによそに持っていかれてしまう。
 労働基準法では、十人未満の事業所では就業規則の作成について義務づけがありません。彼の考え一つでみんなに働いてもらっているわけですから、本当は従業員のためにも、また自分の家族のためにも人並みに休みもとって、働く時間もきちんと決めたいけれども、そうすることによって得意先を失うてしまうんやと、こういうふうに言っています。そして、下請単価が安いために長時間働くしかないと。この声はこの町工場だけではなくいろいろな分野の零細企業で耳にすることですけれども、この現実の姿を労働大臣、いかがでしょうか。
#128
○国務大臣(近藤鉄雄君) まさに先生がおっしゃるふうなことは全国各地であると思います。ですから、これは個別対策ではどうしてもできないわけでございますので、そういう地域関係の全体の雰囲気づくり、また下請、元請の関係をきちっとして、やはりこれからは週休二日で仕事をするんだからということで、もう地域全部がそういうことだということで元請の方にも御理解をいただく、こういうことでなければとってもできませんね。それがまさに今度の法案の趣旨でございますので、ひとつ御理解いただきたいと思うわけであります。
 さっき公取の方がおられたけれども、私は、下請の方々が週休二日、労働時間短縮、それをあえて破ってまでしなければできないような取引条件を元請の人が下請に出したときには、むしろそれこそ不公正取引であるということで公取が入ったっていいんじゃないかというぐらいの気持ちで、先日も実は公取委員長と話をしたこともございます。
#129
○西川潔君 この法案の一つの柱といたしまして業種ごとの実情に応じた取り組みの推進があるわけですけれども、これは同一業種に属する二つ以上の事業主が共同で労働時間短縮実施計画をつくり労働時間の短縮を進めていこうということですが、従業員の少ない零細企業では、事業主同士で幾ら労働時間の短縮をしようとしても、少なくとも零細企業同士では解決しにくい困難な問題ではないか、こういうふうに思うわけです。むしろ、仕事を回してもらっている親会社と労働時間短縮実施計画をつくりまして、上から下への流れの中での労働時間短縮を進める方が解決がしやすいというふうに思うわけです。
 例えば、一番上の大企業がまず労働時間短縮実施計画をつくり実施します。そして、その計画の中にすぐ下の企業の労働時間短縮を阻むことのないように配慮することを盛り込みます。それを受けたその下の下請企業の労働時間短縮を配慮して発注や納期を決める。この縦の流れでピラミッド型に労働時間の短縮を促進していくというような考えはいかがなものでしょうか。
#130
○国務大臣(近藤鉄雄君) 先生、私は全く同じようなことを逆の面で考えています。むしろボトムアップですね。一番末端の中小企業が時間短縮をしますね、そうするとこれぐらいのお金がかかって、これくらいの納期になっていく、それを受けて次がまた積み上げていく、こういうんです。私は、たびたび労働時間は独立変数だということを申し上げたけれども、まさに上からおろしてくるとだんだんしわ寄せになっちゃいますよね。ですから、私はむしろ下からボトムアップしていって、そしてこういう形で元請と下請からまず変えなさいと、それを拒絶するような元請は、さっき言いましたように公正取引委員長が調べに入れと、これは不公正取引じゃないかと。時短ができないような条件のものはおかしいというくらいのことをやったらどうだろうという話を実はしているわけです。
#131
○西川潔君 ぜひよろしくお願いいたします。
 次に、中小零細企業の時間短縮のネックになっているのは休日前の発注、朝からも出ておりますが、休日直後の納入などの親会社の無理な発注・納入システムに問題がかなりあると思うわけですけれども、中小企業庁は、昨年の二月ですか、下請振興基準を改め、発注・納入方式の改善を指導してきております。その後、同庁の調査によってもなかなか改善が進んでいないように思われるわけですが、この実態と今後の実効ある対策についてぜひお伺いしたいと思います。通産省にきょうはお越しいただいておりますが、よろしくお願いいたします。
#132
○説明員(柚木俊二君) お答えいたします。
 昨年二月に下請中小企業におきます時短推進を目的といたしまして下請中小企業振興法の振興基準というものを改正いたしました。その後、昨年の秋でございますが、親企業の発注方式等取引条件の改善状況の実態を調査したわけでございます。その結果がことしの二月にまとまったわけでございます。
 その結果は、一部につきましては改善傾向が見られますものの、振興基準改正後日の浅いこともございまして、御指摘のあったとおり、全体的に見ますと改善が進んでいない、そういう結果が判明したわけでございます。
 少し具体的に申し上げますと、納期について親企業と協議して決める、こう答えられた下請の方が、その前の年は五五・三%であったものが昨年の秋になりますと五八・八と、三・五ポイントでございますが、やや改善しておるという結果でございます。しかしながら、下請中小企業におきます時短を阻むと言われている無理な発注の典型でございます休日前発注・休日明け納入というようなこういう発注につきましては、しばしばあるいは時々ある、こういったものを含めまして四一・三%というようなところで、ほとんど前年と変わっておりません。こういう結果でございます。
 こういった結果を私どもとしまして真剣に受けとめておるところでございまして、先般、この振興基準の遵守等につきまして、親事業者団体に対しまして中小企業庁長官それから関係局長名で通達を出したところでございます。
 今後は、さらに全国各地で発注担当者を集めました講習会を行いまして教育をしてまいりたいと思っておりますし、各種広報等を通じましてこの振興基準の普及啓発に努めてまいりたいと思っております。それとともに、下請代金支払遅延等防止法という法律がございます。この法律に基づきます検査を一層強化いたしまして、下請取引適正化を通じた下請中小企業の時短促進のために全力を尽くしてまいりたいと思っております。
#133
○西川潔君 ありがとうございました。
 何事も一朝一夕にはいきませんが、本当に息長く、よろしくお願いいたします。
 これは素人の発想と言われるかもしれませんが、今の日本の経済構造から考えますと、大企業と中小零細企業の関係はそう簡単には変えられないと思います。すなわち、こなさなければならない仕事の量を減らさずにいかにして一人一人の労働者の労働時間短縮を進めていくかを考えますと、二つの考え方があると思うわけです。一つは仕事の効率化を進めるための設備を整えるということと、もう一つは人手をふやすということではないかと思います。
 いずれにいたしましても、大変な経費が必要となるわけです。しかも人手不足と言われている折から、人手を集めることは極めて大変なことだと思います。人手をふやしたからといって今度は給料を減らすわけにはいきません。
 そこでひとつ提案をしたいのですが、国や地方自治体に労働時間短縮基金のようなものをおつくりいただきまして、それをもとにして中小零細企業の労働時間短縮促進に対してさらに充実した助成を行うような仕組みをつくっていただけないものかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。
#134
○国務大臣(近藤鉄雄君) 中小企業の時短促進のためには、まさに人手不足対策としての合理化投資、ロボット化投資、重要でございますので、現在の中小企業労働力確保法の中でそうした省力化投資に対しての融資措置がございますので、これはグループでやる場合には五・五%、まさに財投金利でそのまま貸すという非常に低利の融資でございますし、個別の場合も五・九%ですか、相当市場金利より安い条件で貸しておりますので、これを積極的に活用していただきたい。
 先生の御指摘の特別助成基金というお話も、お気持ちはわかりますが、現在この制度がございますので、実は私、全国労働基準監督署にそういう時短関連融資をPRするようなパンフレットをつくって配ろうと思っているんです。そして、中小企業の方がいらっしゃったら、こういう融資がございますからぜひ活用してくださいと。労働基準監督署が融資のお手伝いをするのは史上初めてのようでございますが、いろんな形で中小企業の方々が人手不足に適切に対応できるように私どももこの協力に対しては考えております。
#135
○西川潔君 大臣のおっしゃる内容もよくわかるんですけれども、ここへきてこんな大きい法律が出ているわけですから、先ほどのプレス工場のお話にもありましたですけれども、やはり中小零細企業というのはとにかく人手はもとよりお金やと。こういうことをやれやれ言われてもお金の問題がと。そういうふうに特別な時短の助成をしていただけないかということですけれども、もう一度お伺いしたいんですが、だめなものでしょうか。
#136
○国務大臣(近藤鉄雄君) 御要望はよくわかりますが、助成となるとなかなかこれは難しいんですね。ですから、多少これは労働力確保についての助成措置もありますけれども、限られておりますので、やはり金利が安いから借りていただいて、そして御努力いただくということで何とか頑張っていただきたい、こういうことでございます。
#137
○西川潔君 期待をしながら、終わらせていただきます。
#138
○理事(仲川幸男君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時十分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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