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1992/04/23 第123回国会 参議院 参議院会議録情報 第123回国会 農林水産委員会 第7号
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1992/04/23 第123回国会 参議院

参議院会議録情報 第123回国会 農林水産委員会 第7号

#1
第123回国会 農林水産委員会 第7号
平成四年四月二十三日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月十七日
    辞任         補欠選任
     中川 嘉美君     猪熊 重二君
 四月二十二日
    辞任         補欠選任
     谷本  巍君     國弘 正雄君
     井上 哲夫君     山田耕三郎君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         永田 良雄君
    理 事
                鎌田 要人君
                北  修二君
                菅野 久光君
                三上 隆雄君
    委 員
                大塚清次郎君
                高木 正明君
                初村滝一郎君
                星野 朋市君
                大渕 絹子君
                國弘 正雄君
                村沢  牧君
                猪熊 重二君
                刈田 貞子君
                林  紀子君
                山田耕三郎君
                喜屋武眞榮君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        片岡  光君
   参考人
       東京大学農学部
       教授       竹内  啓君
       社団法人家畜改
       良事業団理事   長岡 正二君
       社団法人鹿児島
       県獣医師会会長  楠元 薩男君
       北海道農業共済
       組合連合会参事  森田  彰君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○獣医師法の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
○獣医療法案(内閣提出、衆議院送付)
○家畜改良増殖法の一部を改正する法律案(内閣
 提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(永田良雄君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨二十二日、谷本巍君及び井上哲夫君が委員を辞任され、その補欠として國弘正雄君及び山田耕三郎君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(永田良雄君) 獣医師法の一部を改正する法律案、獣医療法案、家畜改良増殖法の一部を改正する法律案、以上三案を便宜一括して議題といたします。
 本日は、三案につきまして、お手元の名簿にございます参考人の方々から御意見を拝聴いたしたいと存じます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところを本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 三法案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお伺いいたしまして、今後の法案審査の参考にさせていただきたいと存じます。よろしくお願いを申し上げます。
 それでは、これより御意見をお述べいただきますが、あらかじめ議事の進め方について申し上げます。
 御意見をお述べいただく時間は、議事の都合上、お一人十五分以内とし、その順序は、竹内参考人、長岡参考人、楠元参考人、森田参考人といたします。参考人の御意見の開陳が一応済みました後で、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 それでは、竹内参考人からお願いをいたします。竹内参考人。
#4
○参考人(竹内啓君) おはようございます。ただいま御紹介いただきました竹内でございます。
 きょうはこのような席にお呼びいただきまして、少しお話をする機会を与えていただきましたことを大変光栄に存じております。ありがとうございました。
 最初に、今回の法律の改正あるいは新法の制定、それはいずれにしましても獣医業と大変関係があるわけでございますが、この獣医業とそれから私自身との絡み合うところをごく簡単にちょっとお話をしたいと思います。
 私の本業は大学で獣医学を教えておりますが、それも臨床獣医学、もっと細かく申しますと臨床獣医学がいろいろ分かれておりまして、その中の獣医外科学と申します外科の方をやっておりますが、実際の臨床では余り細かく分けるわけにもいきませんのでいろいろな病気を診ております。あるいは大学の家畜病院長として臨床教育全般にかかわり合っておりますので、どちらかと申しますと臨床獣医学にかかわり合っている人間と思っていただいて結構かと存じます。
 また、農林水産省に関しましては、本省でやっております獣医師免許審議会のお手伝いをして獣医師の国家試験を実施するようなことのお手伝いをしております。それから、またさらに、日本獣医師会におきましては学術担当の理事といたしまして、卒業した後の獣医師の卒後教育あるいは学術活動のお手伝いをしております。
 したがいまして、このような日ごろの活動を通じまして、私自身も私どもの業界をよくするために、あるいはさらに社会に貢献するためにいろいろな問題点を感じておりますが、きょうはその中で今回の法の改正あるいは新法の制定と絡み合うような部分を幾つか取り上げて私見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、今回の法改正の中で獣医師の非常に広い範囲の活動が獣医師の任務として明記されているということについて一言触れさせていただきたいと思います。
 恐らく獣医業のそもそもの起こりというのは、家畜の病気を診療、治療するということだったと思います。しかしながら、それにはいろいろな学問や知識、技術が必要でございます。病気のことだけではなくて、病気の起こり方に関して、家畜の体の解剖であるとか、あるいは生理であるとか、生化学であるとか、遺伝であるとか、そういういろいろな学問が必要ですし、さらに近年では、生態とか行動とか、そういうことも必要です。
 そうしますと、そういう分野の知識というのが、実は家畜の診療ということだけにとどまらず、世の中のいろんな分野で専門的知識として必要だということになりまして、近年では大変広い範囲に獣医業あるいは獣医学的知識あるいは獣医師が使われるようになってまいりました。
 例えば、食品の衛生でございますとか、あるいは防疫もそうでございますし、さらにはいろいろな広い意味の医薬品の開発であるとか、そういうかなり広い範囲になりましたし、また対象とします動物も、狭義の家畜から人間と動物の絡み合いがいろいろ変わるに従いまして、随分広い範囲の動物を診るようになってまいりました。
 そういたしますと、かなり仕事の範囲が広くなっているわけでございますけれども、実はこの傾向というのは、世界的な傾向でもあると同時に、日本では特にこの傾向が強いんですね。もちろん動物の病気を診る獣医師もたくさんおりますが、それ以外の分野で獣医師の知識、技術というのが非常に高く評価されているというのが、恐らく外国に比べると日本の獣医界の一つの特徴がと思います。
 そういうことを考えますと、今回の法改正に際して、御存じのように、「その他の獣医事をつかさどる」という表現で非常に広い範囲の獣医師の職域というのが明記されているということは、まさに近年の動き、さらには将来の動きを大変見据えたことではないかと思いまして、私どもそういうところに関係する人間としては、大変当を得た表現ではないかというふうに考えております。
 さらに、この任務に関する規定の中で、もう一つ私は注目したい表現があるわけですが、それは動物の「保健衛生の向上」ということがやはり獣医師の仕事として明記されている点でございます。実はこの言葉は、私ども現場にいる人間としては、非常に含みの多い言葉だと思います。
 いろんな含みがありますが、例えばその一つを申し上げますと、近年、産業動物の分野で働く獣医師の不足がいろいう言われておりますけれども、産業動物の病気を診る場合というのは、もちろん病気になった個々の動物を手厚く看護するということも大事ではございますけれども、経済動物であるということを考えますと、そういうことだけで人間や犬や猫を診ると同じような感覚だけでは問題は解決しないと思うんですね。やはりそれも大事ではございますけれども、なぜ病気が起こるかということを十分解析して、そしてその病気の起こる要因というものを除去する、言うなれば予防する、あるいは病気の発生を未然に防ぐ、あるいは軽いうちにそれを処置するということがあってこそ、経済動物としてその経済性を失わないような形で病気を防ぐことができるんだと思うんですね。
 ですから、ということになりますと、今回書かれております「保健衛生の向上」というのはまさにそういうことでありまして、日ごろのえさの与え方あるいは飼育環境の問題、そういうことを含めてやることこそ非常に大事なことだと思います。
 実は、これは簡単なようで大変高度の知識、経験を必要とします。したがって、こういうことが明記されたということは、治療などと違って目立たない部分でありますが、十分な専門的な知識、技術を身につけるということが必要だということが明記されたことになりまして、これが恐らく産業動物獣医師が胸を張って日ごろの勉強をそこに生かせる、言うなれば、ちょっと話が飛びますが、産業動物の獣医師のなり手が少ないということの原因の一つは、待遇改善などのほかにこういう職業人としての満足度ということにもあるわけでございますから、少しうがった考えかもしれませんが、そういうところにも通じる部分ではないかというふうに考えております。
 また、見方をもう少し変えてみますと、この動物の「保健衛生の向上」というのは、近年、獣医師のかかわり合う部分として大変関心を呼んでおります動物愛護の問題にも通じると思います。これは、この狭い地球で動物とそれから人間が一緒にすむわけですから、どうしてもそこにいろんな葛藤が生じてまいります。それをやはり感情的に処理するんではなくて、科学的に、お互いが利用し合いながら一緒に生きていくということをするためには、獣医師の身につけている知識、技術というものが大変重要だというのが世界的な認識でございます。
 一体それでは獣医師がどういう部分を通じて動物愛護に貢献するかということになりますが、それは世界の獣医師界の中にそういう部分の委員会がございまして、その中で言われておりますのは、動物の飢餓、飢えですね、あるいは渇きというようなものを防いてやる、あるいは痛みや苦悩を取り除いてやる、さらには不安とか恐怖を取り除く、そして病気やけがを適切に治療していく、そして非常に大事なことは動物の本来の行動様式というものを考慮した飼い方を指導する、こういうことが大事だと言われているわけでございまして、これは実は一言で言いますと動物の「保健衛生の向上」ということになります。したがって、この言葉は裏を返しますとそういう部分にも通じるわけでございまして、まさに世界的なコンセンサスを得ている獣医師の広い職域というものをあらわすのに大変適切な表現が随所に見られまして、それにかかわり合う人間としては大変期待を持っております。
 次に獣医師の卒後研修について申し上げたいと思いますけれども、このような広い範囲をカバーする獣医師をつくるわけでございますから、学校でもそれなりの教育をしなきゃなりませんが、その件につきましては、おかげさまで六年制教育というものが実施されておりまして、その中でかなり昔に比べますと広い分野の教育ができるようになりました。これは教育をする現場にいる人間としては大変満足をしております。しかしながら、獣医師の職業を考えましたときに、免許証のない状態で学生の段階で教育をするということにはどうしても完全でない部分というのが残ります。
 その部分の一つが臨床獣医師の教育という部分ですね。これは免許証がないわけですから、卒業したからといって、もうそこで一人前の人間として、社会のといいますか、市民の所有物である動物を全幅の信頼を受けて一人で診られるというわけになかなかまいりません。そういう教育をやるのはどうしても免許証を取った後で、現場でマン・ツー・マンで教えを請うという必要がございます、これは医師の教育をごらんになればそのとおりでございますけれども。したがいまして、その部分がどうしても欲しいと私たちは思っておりました。
 昔は、実は獣医学ではそういうところは人間と違って心配がないんだというのが私たちの誇りでございました。それは、牛を診る人なら牛を、犬を診る人なら犬を、実習用の動物としてたくさん使って免許を取る前にさんざん練習をして、そして一人前の獣医師をかなりつくることができたということがあります。人間ではもちろんそれはできませんです。
 しかしながら、先ほどもお話ししましたように、動物愛護の観念が世界的に高まってまいりましたので、こういうことは現在は許されないというのが一般的な考え方でございます。そうしますと、やはり免許を取った後で、動物を助けながらそこでだんだんと腕を磨いていくという部分がどうしても必要でございます。したがって、この卒後研修というものは、六年制あるいはそれ以上の教育を昔からやっております西欧諸国ではどこでももう常識化しておりまして、何らかの形の卒後研修制度がございます。日本でも臨床教育をやっております教官の間にいろんな会議がございまして、そこではもう大分前から、一句とかして卒後研修制度を大学の附属家畜病院でもやりたいという結論が出ておりまして、文部省にもお願いをしたことがございます。
 したがいまして、今回、努力目標とは言いながらも卒後研修制度が法の改正を契機に明記されたということは、教育の現場にいる人間としまして、この六年制教育がより社会に役立つように最後のまとめをするという段階でも非常にいいことじゃないかと思いまして、大変私たちはそれに期待をしております。
 さらに、日本の国内だけじゃなくてちょっと海外に目を向けますと、最近は非常に外国の人たちあるいは外国の獣医師が日本に入ってまいります。これは私どもの教室を見ましても、大学院の学生が九人おりますが四人は留学生でございます。こういう傾向はこれからも続くでしょうし、あるいは増加するかもしれません。そういう場合、どうしても外国人で日本の獣医師の免許を取りたいという人も出てきて当然でございます。従来もそういう方はいらっしゃいまして、そういう場合は免許審議会で審議いたしまして、日本の卒業生と同等以上の学力がある場合には受験を許可しておりました。それは審議会の審議の結果です。
 ところが、近年いろいろな国から人がやってまいりますと、そこの教育年限も違いますし単位の計算方法も違います。そうしますと、非常に判定がしにくいボーダーラインの方が多くなってしまうんですね。そうすると、国際化というものをきちんと考える場合に、いろんな原則がございますが、そのうちの大事なものの一つは公平であるということだと思います。そういうことを考えますと、今回のように外国人の受験者に対して、特にボーダーラインで判定しにくいような人に関して予備試験制度が設けられたということは、まさに公平に、しかも能力のある人にはちゃんと門戸を閉ざさないという意味で、大変今まで免許審議会のこういうことにかかわり合っておりました人間としては、これで一つ問題が解決したな、するんじゃないかというふうに喜んでおります。
 最後に設備の問題についてお話をしたいと思いますが、今回、獣医療法の中で診療施設の基準が設けられることになりました。特にこの中で、エックス線に関しては省令で細かいところが決められていくわけでございます。
 これは、やはりエックス線の場合は、御承知のように、獣医師の間でも非常に広く使われる技術でございますし、また使い方をもし間違えますとこれは近隣の市民にも非常に影響の出る問題でございますから、そういうような部分の基準をきちんと定めて、そして高度の医療を安心して世の中に提供できるというふうになることは、多少の制限を伴うとは言いながらも信頼される獣医業として確立するためにも大変大事なことではないかというふうに考えております。
 以上、時間の関係もありまして少し突っ走りましたけれども、基本的には幾つかの私たちの問題点を改善する上で今回の法改正というものが大変うまく作用するんではないかというふうに考えまして、この法の改正、制定に御努力なさいました関係者の方々に敬意を表しますとともに、ここでお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
#5
○委員長(永田良雄君) ありがとうございました。
 それでは、次に長岡参考人にお願いいたします。長岡参考人。
#6
○参考人(長岡正二君) 御紹介いただきました長岡でございます。
 本委員会におきまして、体外授精にかかわりましてお話をさせていただく機会を与えていただきましたことに対して、大変光栄に思いますとともに、大変責めの大きさを感じているものでございます。なれないことでございますので、大変失礼でございますが、メモを持ってまいりましたので、このメモに基づきましてお話をさせていただきたいと思います。よろしく御了承をお願いいたします。
 牛の体外受精卵移植技術でございますが、大変耳なれない新しい技術でございます。これにつきましてのお話をさせていただきますが、話の順序を三つに分けさせていただきたいと思います。
 一つは、牛の繁殖技術発達史上における体外受精卵移植技術の歴史的な位置づけについてであります。二つ目は、この牛の体外授精技術の持つ技術的特性についてであります。三つ目は、この技術の普及上の課題とでも言うべき事柄についてお話をいたします。
 まず最初に、牛の繁殖技術発達史上における体外受精卵移植技術の歴史的な位置づけについてお話を申し上げます。
 昭和二十五年、国は家畜の改良増殖を促進するため、家畜改良増殖法を制定いたしました。家畜人工授精技術に関する規定を整備するとともに、人工授精の組織的な普及に入りました。液状精液で始まりました人工授精の分野では、その後の技術開発の成果として、凍結精液技術が利用可能な段階に達しました。
 そこで、国は昭和三十六年、凍結精液技術の発達に即しまして、家畜改良増殖法の改正を行いました。その後十年を経まして、昭和四十六年、我が国の乳牛の人工授精はほとんど凍結精液に変わりました。四、五年たちまして、肉牛も同じように変わりました。
 他方、受精卵移植技術は、昭和三十九年、畜産試験場において初の子牛が誕生するという結果があって以来、苦しい地道な研究が各地で続けられました。その結果、昭和五十四年、国立種畜牧場における実用化技術の開発を契機として、急速な普及の兆しか見えてまいりました。
 そこで、国は昭和五十八年、受精卵移植技術の発達に即しまして、家畜改良増殖法の改正をいたしました。したがいまして、現在は全国各地の農村の隅々でこの技術が使われるようになってまいっております。
 このような状況の中で、体外受精卵移植技術が畜産試験場において開発されまして、種畜牧場の協力によりまして、昭和六十年、初の子牛が誕生するという歴史的な快挙がございました。
 液状精液で始まりました人工授精は、二十年後には凍結精液に変わり、また体内受精卵移植技術が開発され、これがまた体外受精卵移植技術を派生的に生み出してきたわけでございます。このような家畜繁殖技術は、その発達変遷の過程で常に重要な基本技術を取り入れ、次代技術へと引き継いでまいりました。
 受精卵移植技術が人工授精とは比べものにならない重要な基本技術として取り入れたのは、徹底した無菌操作の技術でございます。この無菌操作の技術はさらに徹底した形で体外授精技術に引き継がれております。と申しますのは、昭和三十九年、受精卵移植による初の子牛が誕生じ、昭和五十四年、種畜牧場において無菌操作を具体的な手法として開発し、その効果を実証するまで実に十五年の歳月を要したのであります。
 体外授精技術が今までの先行技術にはなかった技術で、しかも重要な基本技術として取り入れたのは細胞培養、いわゆる徹底した無菌条件下での組織培養の技術でございます。この技術はクローン、遺伝子組みかえなど、ニューバイオテクノロジーの今後の基本技術となっていくものと思われます。
 体内受精卵は移植の場面で、体外受精卵はそれに加えまして、申し上げましたように受精卵の培養の場面で、いずれも先行技術になかった徹底した無菌操作を取り入れることによって実用可能な段階に達したわけであります。
 以上、申し上げましたように、体外授精技術は先行する繁殖技術の歴史的な蓄積の上に成り立ち、また今後発達が予想されるニューバイオテクノロジーの基盤技術でもございます。
 さて、次に第二のテーマとして、体外授精技術なるものの持つ技術的特性とその機能について申し上げます。
 まず、特徴として申し上げねばなりませんのは、何と申しましてもこれまで特に用途のなかった牛の屠体卵巣を用いて子牛を生産するということでございます。
 次に、この技術に期待される機能について申し上げます。
 一つ目は、肉質が明らかになった雌牛の卵巣から受精卵をつくって子牛を生産できるということでございます。
 一般に家畜は血統、能力、体型を指標として交配と選抜を繰り返すことによって進められます。乳牛においては改良の指標となる泌乳能力はいわゆる半群検定によって雌牛ごとに確実に記録されております。肉牛にあっては改良上重要な指標である産肉形質、例えば枝肉形質等については繁殖牛自身の能力を調べることはできません。解体して肉質を調べようものなら子牛を生産することができないからであります。
 体外受精卵移植技術は、肉牛改良の持つこの大きな欠陥を補うことが可能でございます。それは、解体されると、屠体形質はその枝肉に記録をとどめ、その遺伝子は卵子に入り、卵巣に蓄積されているからであります。ここに着目をして、この遺伝子を有効に使おうとする体外授精の持つこの機能は肉牛の肉質改良の面で大きな役割を果たすものと考えられます。
 二つ目は、屠体の卵巣を使いますことから受精卵を比較的大量に生産することができるということでございます。
 したがいまして、肉牛資源拡大の観点に立ちますと、乳牛を借り膜として使う限り肉牛の効率的な増産ができるだろうということであります。
 三つ目は、乳牛及び肉牛についても能力の高い、俗に功労牛と呼ばれる名牛が事故などで死んだときに、その卵巣から体外受精卵をつくることによって貴重な子孫を残すことが可能となります。
 四つ目は、申し上げましたように、今後に期待されるニューバイオテクノロジーに必要な高度な技術の基礎になるものと考えられます。
 さて、次に第三のテーマでありますこの技術普及上の課題について申し上げます。
 この技術の成否のかぎを握る要素は、体外受精卵をつくる技術と移植する技術に加えまして、牛を飼ういわゆる飼養管理技術の三つに分けることができます。
 体外受精卵をつくる技術についてでございますが、この技術の開発当初は受精卵の発生が八分割、およそ三日ほどでございますが、ここまで進んだところでいわゆる獣医学的な外科手術によりまして、ウサギ卵管への仮移植を行うということがどうしても必要でございました。それが今では完全体外培養系が確立いたしましたので、外科手術の必要はございません。その手法は実用化技術として格段の進歩を遂げてまいっております。しかし、かなり高度な技術を必要とすることもまた事実でございます。やはり一定の技術を持っている者でなければ良好な成果を上げることは難しいのではないかと思います。とはいいましても、優秀な技術者の場合、優良な体外受精卵の生産にかなり高い成果を上げるようになってきております。
 体外受精卵を移植する技術についてでございますが、これは体内受精卵とほぼ同じような技術でございますので、既に体内受精卵移植のできる家畜人工授精師なら十分使いこなせる技術だろうと思います。したがいまして、技術面での成果から見ますと、体外受精卵移植の技術はもう既に普及の見通しは立ったと判断してよろしいのではないかと思います。
 次に、体外受精卵を移植する牛の発情発見を含む飼養管理技術でございますが、これは体内受精卵を含め生理的により良好な管理が必要であろうと思います。良質な体外受精卵をつくる技術者、移植するすぐれた技術者、牛を飼う人のすぐれた飼養管理技術が三位一体となって、この体外授精技術は我が国の牛の改良増殖に大きく貢献するものと期待をしております。
 最後になりますが、受精卵移植は、昭和五十八年の家畜改良増殖法の改正以来、生産者からの要望も高まりまして、各地で着実に普及をしておりまして、乳用年及び肉用牛の改良増殖に大きく貢献するところとなっています。
 また、新しい技術である体外受精卵移植につきましても、体外受精卵の生産に取り組む機関が年々増加するに伴いまして、体外受精卵の供給を望む農家の声が既に高まってまいっております。
 今回の家畜改良増殖法の改正を契機といたしまして、体外受精卵移植の方法等について一定の方向づけがされたわけでございますので、農家も安心して体外受精卵を利用することができます。体外受精卵の流通もまた円滑に行われるでございましょうから、この技術はこの法改正を契機にいたしまして大きく普及するものと、期待をいたしております。
 この技術開発にかかわります技術者は、実験室であるいは農家の牛小屋で日夜この技術の開発と普及に取り組んでおりますので、温かい御支援をお願いいたしたいと思います。
 家畜改良増殖法が、この体外授精技術の発達に伴いまして、今回改正が審議されておりますことはまことに時宜を得たものと思います。
 以上、甚だ雑駁でございますが、時間の都合がございますので、ここらでとめたいと思います。どうもありがとうございました。
#7
○委員長(永田良雄君) ありがとうございました。
 それでは、次に楠元参考人にお願いいたします。楠元参考人。
#8
○参考人(楠元薩男君) ただいま御紹介いただきました鹿児島県獣医師会会長の楠元薩男でございます。
 このたびは、獣医師法の一部を改正する法律案、また獣医療法案、また家畜改良増殖法の一部を改正する法律案等の御審議に当たりまして、参考人として私に意見を述べさせていただく機会を与えていただきましたことはまことに光栄に存じておる次第でございます。
 まず、メモによって鹿児島県における獣医師の現状について御説明申し上げたいと思っております。
 現在、鹿児島県獣医師会の会員である獣医師の数は約八百三十名でございます。そのうち、農林水産行政及び公衆衛生行政等に従事する公務員の獣医師は三百二十名ほどでございまして、公務員だけで全体の約三九%を占めております。次いで、動物病院の開業者が産業動物、小動物合わせまして約二百名います。また、開業獣医師と申し上げましても、畜産県である鹿児島県の場合は、東京や大阪等の都市部と異なりまして、主として産業動物診療に従事する開業獣医師が百四十五名でございます。残りの二七%、約五十八名が小動物開業獣医師でございます。このほかに、動物病院に勤務している獣医師が十二名おります。次に、家畜共済団体等に勤務する獣医師は約百六十名でございます。このうち、診療業務に従事している獣医師は百三十三名でございます。
 飼料会社、製薬会社等の民間企業に勤務する獣医師は約六十名で、そのほかにその他の獣医事従事者及び獣医事に従事しない者両者合わせますと約八十名という構成になっております。
 会員獣医師の平均年齢を見ますと、全体では平均四十八歳でございますが、産業動物開業獣医師の場合は六十一歳と高齢化が進んでまいっております。これに対しまして、同じ産業動物診療分野でも農業共済団体に勤務する獣医師の平均年齢は三十九歳でございますが、産業動物開業獣医師、共済診療所獣医師さんのいずれの平均年齢におきましても大体全国平均と同様でございます。小動物開業獣医師の場合は四十五歳でございますが、これは全国平均の四十八歳よりも若干下回っておりまして、鹿児島県におきましても若手獣医師の小動物診療分野への参入がふえてまいっております。
 鹿児島県における産業動物診療体制は、北海道のように農業共済団体の家畜診療所を主体としたものではなく、開業獣医師数が共済団体の診療獣医師数をやや上回っておりまして、両者で産業動物診療業務を分担しているのが現状でございます。
 このような中で、現在、鹿児島県で問題になっておりますことは、公務員志望者及び産業動物臨床分野への新規参入者が減少してきていることでございます。本年四月に、獣医職の県職員を畜産分野並びに公衆衛生分野合わせまして約二十名採用する予定でございましたが、実際に採用できましたのはわずか五名ということでございまして、今後引き続き獣医師の確保に努力をいたしているところでございます。
 四月から、食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律に基づきまして食鳥検査が実施されておりますが、鹿児島県におきましても県及び団体の定年退職者を活用するなどして何とか対応している状況でございます。
 一方、県の農業共済団体における獣医師の確保状況について申し上げますと、平成三年度におきましては、家畜診療所の獣医師二十四名の不足に対しまして、採用できました新規卒業者はわずかに六名でございました。さらに平成四年度におきましては、二十一名の不足のところ七名しか新規採用ができないという、これまた厳しい状況でございました。
 このようなことから、共済団体におきましては、定年退職した獣医師を嘱託として再雇用し、少しでもその確保に努力いたしてまいっておりますが、何しろ産業動物診療につきましては体力の要ることでございまして、やはり若い獣医師の確保が必要でございます。このようなことは、鹿児島県に限らず、多かれ少なかれ他県でも共通の問題であると承知いたしておりますが、いずれにいたしましても、産業動物診療を志向する新卒獣医師の減少、産業動物開業獣医師の高齢化は、畜産農家の経営安定の阻害要因の一つとして深刻な問題として顕在化いたしているところでございます。
 次に、鹿児島県には獣医学科を設置している鹿児島大学がございますが、平成四年四月現在の鹿児島大学獣医学科在学生の総数は百九十七名で、そのうち女子が七十三名、三七%を占めてまいっております。全国的な傾向とはいえ、畜産県に設置されている国立の鹿児島大学においてさえ最近では女子の比率が増加傾向にございます。
 獣医学科卒業生の就職状況を見てまいりますと、平成三年度の卒業生は総数で二十六名でございました。その中で公務員になった者が九名、産業動物診療に従事した者が五名、小動物診療に従事した者が五名、進学した者が四名、民間会社に就職した者が二名、その他一名となっております。最近の就職状況の特徴といたしましては、先ほどから申し上げましたように、公務員や産業動物診療を志望する者が減少しているのに対しまして、小動物診療を志望する者、また大学院等の研究生として進学する者が増加する傾向にあることでございます。
 以上のように、鹿児島大学の場合は卒業生総数が二十六名と少なかったことから、鹿児島大学の卒業生のみで県や共済団体の定員割れを満たすことはできないのが実情でございます。したがいまして、他の大学の新卒獣医師をいかに確保していくかが課題となっておりますが、一方、女子学生が増加している現状にかんがみ、また、女子学生の中には少数ながら積極的に産業動物分野を志向し、また産業動物分野で活躍している方もおります。このようなことからいたしまして、今後は女性獣医師の受け入れ態勢の整備を積極的に図っていくことも考えなければならないと思っておる次第でございます。
 ちなみに、最近の鹿児島大学の新卒獣医師の考え方につきましてお聞きいたしますと、一つは、やりがいのある生活を求めたい。二つ目には、六年制教育に見合った待遇を求める意識が非常に強いことでございます。三つ目には、技術研さんの機会にめぐまれないという理由で離島の診療所勤務を敬遠する傾向が見られることでございます。
 以上、鹿児島県における獣医師を取り巻く大まかな現況につきまして地元の獣医師会会長の立場で御説明申し上げましたが、こうした情勢の中で、このたびの獣医師法の一部を改正する法律案及び獣医療法案、家畜改良増殖法の一部を改正する法律案につきまして私見の一端を申し述べさせていただきたいと思います。
 獣医師法の改正につきましては、全国の獣医師、獣医師会の長年の悲願として日本獣医師会を窓口といたしまして要望いたしてきたところでございますが、このたび本委員会を初め関係国会議員の諸先生方の絶大なるお力添えをいただき、また、農林水産省御当局の並み並みならぬ御尽力と全国の獣医師会を代表する日本獣医師会の不断の努力によりまして、こうして獣医師法の改正法案のみならず、獣医療法案、家畜改良増殖法の一部改正案が国会審議に付されるに至りましたことは、まことにうれしく、心から感謝をいたしている次第でございます。
 特に、獣医師法の改正によりまして、第一条がこれまでの法の目的規定から明確に獣医師の任務規定に改められることにつきましては、獣医師の社会的使命が明確にされ、しかも今後ますます小動物診療や野生動物保護等の分野の比重が高まっていくであろう二十一世紀をある程度展望した内容になっておりますことを高く評価いたしているところでございます。
 とは申しましても、一方ではこれにより獣医師の社会的責務が一層重大なものになるわけでございますので、私ども獣医師といたしましては、社会の要請にこたえ、法に恥じぬよう諸業務に邁進していかなければならないと決意を新たにいたしているところでございます。
 また、臨床研修制度が努力規定とはいえ法案に盛り込まれましたことは、大変に意義あることと思っております。臨床研修の期間、実施場所、研修内容等のその具体的内容につきましては獣医事審議会の意見も聞いて決定されるようでございますが、この制度が産業動物臨床及び小動物臨床に従事する獣医師の期待にこたえられるものとなるように念願をいたしているものでございます。
 一方、獣医療法につきましては、日本獣医師会がかつてその制定を要望していた経緯がございますが、このたびの獣医師法の改正とあわせて新法として制定される運びとなりましたことは私どもといたしましても思いもかけないことであったわけでございます。
 今日、獣医学の発展とともに獣医療の高度化が進展している中で、獣医療法が制定され、エックス線の取り扱い基準を含めまして診療施設の基準等が定められることは、衛生上また保安上の観点からいたしまして当然のことと認識をいたしております。
 また、獣医療法を制定することになった大きな理由の一つと伺っておりますが、産業動物診療体制確保のための計画制度がございます。先ほど来申し上げましたように、産業動物臨床獣医師の確保が困難になってきている折、この制度の円滑なる活用に大いなる期待を持っております。加えまして、産業動物診療施設に対する資金融資制度が法案に盛り込まれましたことも産業動物開業獣医師を誘導する上で有効な対策の一つになり得るものと思っておるわけでございます。
 ただ、実際問題といたしまして、これによりどれほどの効果が得られるかという点につきましては、取り組んでみなけりゃわからない部分もございますが、少なくとも、都道府県計画を策定する段階におきましては、自治体のみならず、私ども獣医師会や農業共済団体等の意見、考え方を十分に聞いていただきまして、関係者が十分協議し、コンセンサスを得ながら、それぞれの地域の実態に合った総合的かつきめ細かい施策を展開していくことが肝要ではないかと思っております。
 いずれにいたしましても、今回の法制定によりまして諸般の環境整備が図られることになりますので、これが円滑に作動するには、国、県、日本獣医師会、さらには私ども地方獣医師会、農業共済団体等の関係団体、大学関係者が一丸となって産業動物開業獣医師の誘導対策に取り組んでいかなければならないと痛感いたしているところでございます。
 また、家畜改良増殖法の一部改正につきましての家畜体外受精卵移植技術でございますが、この点につきまして先ほども御説明ございましたが、現在私ども実施いたしております。さらに、この法案の可決成立によってこの技術が定着いたしまして、家畜改良増殖が促進されることはまことにありがたいことだと思っております。
 最後に、産業動物獣医師の待遇改善ができますように、予算措置を含めた具体的な対策を強くお
願い申し上げまして、私の参考人としての意見開陳を終わらせていただきます。まことにありがとうございました。
#9
○委員長(永田良雄君) ありがとうございました。
 それでは、次に森田参考人にお願いいたします。森田参考人。
#10
○参考人(森田彰君) ただいま御指名いただきました北海道農業共済組合連合会参事の森田彰でございます。
 このたび当委員会で獣医師法の改正並びに獣医療法制定等の審議に当たり、参考人の一人として意見を述べさせていただく機会を与えられましたことは大変光栄に存じます。
 まず、北海道における産業動物の実態を申し上げ、産業動物獣医師の実情を御理解いただきたいと存じます。
 もとより、北海道は家畜資源に恵まれ、我が国の畜産業の基地として、国民に安全で良質な乳肉食品を供給する立場にあり、全国的視点から見て恵まれている面も多いと思いますが、その点御了承願いたいと思います。
 北海道の家畜診療は主として私ども農業共済団体の家畜診療所が担当しております。当然開業獣医師の方々も活躍しておりますが、共済団体の診療のシェアは九五%近くを占めておりますので、共済団体の家畜診療所を中心に述べさせていただきます。
 北海道には農業共済組合が三十二組合あります。広域合併が進み、一支庁一組合のところもあり、二支庁にまたがっている大型組合もあります。それぞれの組合が直営の家畜診療所を持っております。家畜診療所の数は全道で百三十二カ所、七百七十五名の獣医師が所属しておりますが、実際に診療現場で活躍している獣医師は七百名前後でございます。家畜共済加入書百二十三万頭の健康を守って日夜活躍しております。家畜診療所の業務は、家畜共済の加入畜、乳牛が八十八万頭、肉用牛二十万頭、馬三万頭、豚は肉豚を含めまして十二万頭の診療を中心に、乳牛の子牛など加入資格のない家畜の診療も行っております。
 最近、特に乳牛の死亡や廃用による事故がふえており、中でも産後起立不能や脱臼、関節炎など代謝機能障害の病気が非常に多くなっております。その原因としては、牛肉自由化の影響による乳牛の老廃牛やぬれ子の価格が下落したことによる酪農収入の落ち込みを乳の生産でカバーすべく、濃厚飼料の多給など無理して搾っているのが実情で、牛の健康状態も生理的に限界に来ているためと思っております。これらの事故を防ぐため損害防止事業にも積極的に取り組んでおります。事故による損失を最小限にとどめるための事故拡大防止や、病気の発生を未然に防ぐ繁殖障害や乳房炎の定期検診や、家畜診療巡回車による人間ドックのような健康検査も定期的に実施し、群及び農家単位に集団予防や飼養管理指導に力を入れております。
 また、家畜の改良増殖、受胎率向上のため、家畜人工授精業務も担当しておりますほか、家畜伝染病予防法に基づく防疫事業の支援並びに地域の畜産諸施策への参加協力など、広い範囲にわたり畜産業の中核となり、地域の畜産振興あるいは生産性の向上に寄与しており、農家経営の安定向上に大きく貢献しつつ、酪農・畜産農家とともに歩んできております。
 近時、家畜の飼養頭数規模も拡大され、それに伴い飼養管理の省力化が進むなど、飼養形態も変化しており、家畜の病気も多様化、複雑化してございます。獣医技術もこれらの変化に合わせまして、検査機械の進歩など、診断治療技術も高度化し、大きく変わってきました。
 これらに対応すべく、我々団体では獣医師に対する研修教育に力を注いできました。社会的要請にこたえ得る獣医技術のレベルアップが必須の課題でもあります。このたび獣医師法の改正で、免許を受けた後も診療施設で臨床研修に努めるなど、臨床研修の充実をうたっておりますが、まことに時宜を得たものと歓迎しております。
 私ども団体でも卒業後の臨床教育に力を入れております。学卒採用獣医師に対し、採用後一定期間私どもの江別市の連合会家畜臨床講習所で、学校教育で不足していると思われる臨床実技を中心とした研修を行い、臨床の基礎技術はもとより、高度な技術を必要とする外科手術などの実技を身につけさせまして、安心して現場で働けるよう教育しております。
 本年度は、組合等で新規に採用した獣医師四十二名に対しまして、六班に分けまして、一班七名から八名編成でそれぞれ八週間マン・ツー・マン方式で研修教育を行っております。また、既に現場で活躍している獣医師に対しましても、最新の獣医技術や情報を付与するため、計画的な研修カリキュラムをつくり、生涯教育の一環として再教育を行い、好評を得ております。
 また、北海道には三つの獣医系大学がありますが、これら大学と連携を密にしまして、研究生などとして学校や職場などで新しい獣医学の研究を行っており、既に現場の臨床獣医師四名が獣医学博士号を取っております。これらの教育は団体でなければできない面もありますが、さらに施設、教育体制の充実を図り、獣医技術のレベルアップを図っていきまして、地域社会に還元していきたく存じます。
 しかし、教育体制の確立や、施設、検査診療器具機械の充実を図っていくには、団体としても財政上の限界があります。この機会に、先生方の御理解を得て、助成等何らかの措置をお願い申し上げます。
 今回の獣医師法改正で新たに義務づけられた保健衛生の指導ですが、診療したとき、その飼養者に対し保健衛生の向上に必要な指導をしなければならないとされたことは、従来とも私どもには診療時には看護の方法や飼養管理、飼料の給与法、さらには病気の予防などの指導を行っておりましたが、法改正を機会により一層の保健衛生、飼養管理指導が強化され、家畜飼養者の予防、衛生思想の向上が図られるものと期待されます。
 次に、獣医療法に関してですが、獣医療を提供する体制の整備のため、基本方針を定めることは、産業動物診療のビジョンを描くもので、診療体制のあり方や施設の計画的な設置、強化、獣医師の確保など、国、都道府県、関係機関、団体、開業者など一体となって協議、支援し合うもので、大いに期待しております。
 北海道は、幸い家畜の資源にも恵まれ、大方の家畜診療所の経営は安定しておりますが、診療所をより健全的に経営していくためには、獣医師の待遇を改善し、獣医師を確保することが大きな課題です。それと同時に、それに対する収入財源の確保が大切でございます。
 家畜の診療は、御承知のとおり、往診が主体で宅診はほとんどございません。したがって、非常に診療効率も悪く、一日の診療頭数にも限界がありまして、診療収入もおのずと決まってくるわけでございます。それに獣医師は、診療のみならず車の運転も行い、一人何役もこなさなければならず、精神的にも肉体的にも大変な仕事でございます。
 診療所経営のもう一つの条件に家畜資源の分布状況と地理的条件がございます。
 家畜の過疎、希薄地帯や都市近郊等、家畜を飼養する農家が分散され、往診に予想を超える時間がかかるなど診療効率の悪い診療所などの経営は大変です。診療所経営には一定の資源の頭数と条件がよくなければ容易ではありません。このような地域は、家畜保健衛生所、農業共済組合、開業獣医師など獣医療に関連する施設を相互に活用し、業務の連携を密にすることが極めて有効であると思います。
 幸い、国では無獣医地域パトロール事業や、農業共済地域対応強化総合対策として、家畜移動診療所導入促進事業など予算化していただいていることは、当該地域の畜産振興に大きく貢献することと思います。
 畜産経営をめぐる情勢も厳しくなっている今日、安易な農家負担の増は慎まなければならないと思います。共済団体としましても、診療所経営の安定を図るため、今まで診療所の統廃合や業務の見直し、診療内容の工夫など企業努力により吸収してきました。そのような中で、診療所の整備、施設の充実を図り、職場環境の改善に努力し、獣医師の業務量の均てん化、休日の確保、待遇改善、研修教育の充実など獣医師の確保に努力しているところでございます。このたびの獣医師法関連三法により、産業動物獣医師確保に展望が持てるものと期待しているわけでございます。
 産業動物臨床は、仕事がきついとか休みがない、待遇が悪い、畜産の先行きが暗いなどのイメージがどうも先行しているような嫌いが多分にあると思います。待遇については満足はしておりませんが、家畜保健衛生所の獣医さんと比較しましてもそれ相応の水準になっておりますし、仕事はきついですが、休日も週休二日制とまではいかなくても人並みにとっておりますし、また、診療施設や診療検査機械も逐次整備しておりますし、教育研修の機会も多く、十分配意しながら対応しております。
 本日、このような機会を与えられまして、大変感謝しているところでございます。この機会に先生方にもお願いがございますのが、我が国の畜産も農業産出額の十一兆円の三割近くを占め、重要な基幹部門へと成長してきました。特に北海道では畜産のウエートも高く、農業生産の四割強を占めるに至っております。ここに至る間、我々獣医師関係者の果たした役割は大きなものがあったと自負しております。
 今後、産業動物臨床獣医師確保のため、また現場で働いている獣医師が安心して活躍できるよう、将来に希望の持てる農政の確立を農家ともども期待しております。私ども産業動物獣医師は、家畜を愛し、農家を愛し、使命と誇りを持って日夜頑張っております。どうかよろしくお願い申し上げ、私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。
#11
○委員長(永田良雄君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
 それでは、これより参考人の方々に対して質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#12
○三上隆雄君 それぞれの先生方から短い時間ながら適切に要領よく御説明をいただきまして、ありがとうございました。
 それでは、私ども質問の時間も短い関係上、それぞれ要領を得ながら質問を繰り返してまいりたいと思います。
 まず、東大の竹内先生にお願い申し上げたいと思います。
 竹内先生は、日本の獣医学界の権威者である立場で、今回の獣医師法の改正で、従来の産業動物、いわゆる畜産動物から飼育する動物へと範囲を拡大したわけでありますけれども、飼育されてない動物についてはどういう扱いになるのか、その応招の必要が出たときにはどういう対応をしたらいいのか、その点についての御見解をいただきたいと思います。
 それから、質問の関係で竹内先生の関係全部質問申し上げたいと思います。
 次に、企業診療についてのあり方と、一人獣医療法人も認めてほしいという声もあるわけですけれども、それについての御見解をいただきたいと思います。
 次に、三番目でございますけれども、先ほど来それぞれの先生方から言われましたとおり、なかなか畜産産業と同じく獣医師業界も若手の従事者が少ないという、そういう御懸念もあります。そこで、先生の大学で獣医系の大学生が産業動物臨床にどのような考え方を持っておられるのか、そしてまた、その分野を志向する学生がいるのかどうか、そしてまた、先生御自身のこれに対する考え方をお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いします。
#13
○参考人(竹内啓君) お答え申し上げます。
 飼育動物でない、例えば野生動物とかそういうものに対してどうするかというお話でございますけれども、これは獣医師あるいはそれをつくるための学校の中では、広い意味ではいろんな動物が対象になっております。したがいまして、獣医師というのは本来はいろんな動物に対応できるものでございますけれども、今回飼育動物というふうになっておりますのは、主として飼育下にある動物ということでございまして、非飼育下でも人によっては当然対応できると思います。
 ただ、全部の動物というふうになりますと際限がございませんので、恐らく法の案をおつくりになった方の状況を私どもが推測いたしますと、例えば野生動物であっても、これが今御存じのように絶滅の危機に瀕しているわけですが、そういうものを実際には人間の環境下に置いて飼育下で増殖をする、そしてまた実際外へ放してやるということをやるわけですが、そういうふうに飼育下に置いたものは、結局人間がそこでそれを取り扱うわけですから、そこに獣医業というものがあるいは獣医術がかなり使えます。そういう意味で恐らく飼育動物というふうな言葉を使われたんではないかというふうに考えております。
 したがいまして、獣医師の中には、飼育下にないような野生動物、殊に昨今でございますと環境保全という立場から、そういうところに入っていきたいあるいは実際に入っている人というのはたくさんございますけれども、多くの獣医師がカバーできる範囲としてこの飼育下の動物というふうな表現がされたのではないかと私は考えております。
 それから、一人法人というふうにさっきおっしゃいましたですか、御質問の中で。恐らく、企業が行う診療所との関係でございましょうか、ちょっと御質問の意図がはっきりしなかったんですが。
#14
○三上隆雄君 企業診療が今はとんと重点的にやられているということでしょう。それは共済関係の診療ということになるのか、私もその辺は完全に定かではないけれども、そしてまた一人獣医療法人を認めてほしいという声もいろいろあるようですけれども、その辺の兼ね合いというか、弊害というか、それぞれの弊害というか。
#15
○参考人(竹内啓君) ちょっとまだ実は御質問の御趣旨を、申しわけありませんが、聞き取れませんが。そうすると先生の、私は本当は質問をしてはいけないんだということになっておりますが、ちょっと御質問の理解をさせていただきたいものですから伺いたいんですが、今おっしゃいましたのは産業動物に関してでございますか、小動物に関して、あるいは全般的な話でございましょうか。ちょっと今共済組合というお話がちょっと出てまいりましたけれども。
#16
○菅野久光君 ちょっと済みません、同じ党なものですから。
 医者の場合には医療法人というのは一人でもできるんですが、何かお話を聞きますと、獣医師の場合には一人では獣医療法人というものがつくれないというようなお話なんですね。その辺のところをちょっとお聞きしたい、こういうことでございます。
#17
○参考人(竹内啓君) これはまさに私の専門外でございますが、私どもの知っている常識の範囲のお答えにさせていただきたいと思いますけれども。確かに獣医業では医師のような医療法人という、あるいはそれ的なものはございませんですね。法人資格を取るとしますと営利法人ということになってしまうわけですけれども、これは確かに事実でございまして、獣医界の中にも、医師のような医療法人あるいはそれ的なものが欲しいという声があることは事実だと思います。
 ただ、その声がどれぐらい大きいかということは私も知る由はございませんけれども、私は、そういう声を聞きながらふだん感じておりますのは、なぜそれじゃ医者の場合に医療法人という特例が設けられているか。あるいは税制上の特典もございます。それはやはり、人の命というものがこの世の中では絶対であるという部分がございますですね。ですから、そういうことがあるがためにああいう医療法人という制度も認められているし、それからまた、医療を行った場合の、もし、ミスがありますとそれに対しての責任も大変厳しいものがございます。恐らくそういうこともあって医療法人という特例が認められているんじゃないのかなと素人ながら思うのでございます。
 もしそうでありますと、獣医療の場合に医療法と同じような意味で獣医療法人をつくるんだという場合に、それでは動物の命というものをどういうふうに考えていくのかというかなり大事な問題が出てくると思うんです。動物の命はもちろん。非常に大事なものでございますけれども、人間の命と本当に同じように考えていいのか。だとすると、それを傷つけた場合には殺人罪が当てはまるのかという極論にまで行ってしまいますので、そういうふうに考えますと、税制上の特典その他では獣医療法人というものができますと大変いいと思いますが、そういう場合には、今の部分というものをかなりクリアに整理しておかないといけないんじゃないか。それがクリアに整理できれば、それはそれで世の中が認めてくだされば恐らく評価する人はたくさんいるんじゃないかというふうに考えております。
 それから、三番目の御質問でございますが、大学の中の学生の動向でございますが、これは大学で随分違うと思います。全国に獣医系の大学が十六ございます。国立が十、それから府立が一つ、それから私立が五つございます。私立の方は定員が多いものですから、大体全体の三分の二は私立の学生でございまして、国立、公立は三分の一ぐらいです。したがいまして、国公立と私立の間でも随分傾向が違いますのでなかなか一概には申せませんが、先ほど御質問で私の大学のことをお聞きになりましたのでお答えをいたしますと、私どもの大学はもともと、いい悪いは別といたしまして、臨床の方に行く学生は極めて少のうございます。やはり官公庁であるとか、あるいは近年でございますとかなりバイオメディカルと申しますか、広い意味の医療産業、医薬の開発とか、基礎研究も含めてでございますが、そういうところに行く学生が非常に多いわけです。
 ただ、これは決して全国的な平均ではございませんで、全国的にはやはり臨床関係に行く学生が非常に多くなっているというのが一つの特徴ですし、その中でも小動物の臨床、いわゆる犬や猫の臨床に行きたいという学生がふえていることは大きな特徴だと思います。したがいまして、産業動物の方に行く学生が非常に少ないということも事実ですけれども、これはなぜ産業動物の方に学生が行かないかというのは、学校で産業動物のことを教えないからじゃないかという御批判がよくあるんですが、これは学校の教師が集まった段階ではみんな顔を見合わせながら、これは全然違うけれどもねという話が出ます。実際に私どもの半分以上は年とか馬とか豚とかいうものの講義をしておりますが、そういうことだけで学生が産業動物の方に行かないということではなくて、先ほど来お話が出ておりました、やはりその受け皿の部分というものにも大きな問題があるのではないかと思います。これについては後ほどまた御質問があったときにということにいたしまして、大学の現状についてはそんなところでございます。
#18
○三上隆雄君 それでは、次に長岡先生にお願いしたいと思います。
 それぞれの先生方、今回の改正を評価されて、それに対する効果を期待しているという、そういうお話でございましたけれども、長岡先生は、今回の家畜人工授精師と獣医師を同格に扱うことが若い獣医師の産業動物分野への意欲を失わせているという、そういう意見もあるわけですけれども、そのことに対するメリット・デメリットはいかがお考えでしょうか。
#19
○参考人(長岡正二君) お答えいたします。
 体外受精卵移植技術につきまして、人工授精師がこれを生産し、あるいは移植するということが法で決められることにつきまして、産業獣医師として獣医師が新たに参入する意欲を阻害しておるというお話は、実は私、今初めて聞かせていただいたわけでございますが、自来、繁殖技術は、その発達の過程におきまして、牛の精液から凍結精液技術が生まれ、さらに受精卵移植技術が生まれ、さらに体外受精卵移植技術が生まれてきたことは、先ほど申し上げたとおりでございますが、これらの技術は、生まれました当初はどちらかといいますと大変難しい技術としていつも生まれてまいります。
 凍結精液技術が最初日本に紹介されましたのは昭和二十七年でございますが、イギリスのケンブリッジ大学のポルジーさん、ドクター・ポルジーでございますが、この方はこの二十七日に日本国際賞を、日本賞と言われるものだそうでございますが、受賞される方でございますけれども、この方が最初に発表されましたときにも、ドライアイスでございまして、マイナス七十九度、なかなか実用化の域に達しなかったわけでございますけれども、それが昭和三十年代半ば、液体窒素、マイナス百九十六度の冷媒を使うことによって実用化に入ってきたわけでございますが、この開発の当初、なかなか十分な受胎率が上がらない当時は、人工授精では使いこなせないのではないかというふうなことが盛んに言われておったわけでございますが、これがこの液体窒素を使うことによって一気に実用化に入ったわけでございまして、獣医でないと使えないじゃないかと言いながら、人工授精師も使うようになった、こういうことによって初めて実用化の域に達したわけでございます。
 それから、受精卵移植でございますが、これも昭和三十九年、畜産試験場において開発されましたのは頸管迂回法、子宮頸管を迂回いたしまして移植するという極めて厄介な技術でございまして、これはまさに獣医技術の独壇場の技術でございました。これは畜産試験場の杉江博士によって開発されたものでございますが、これをこなせる人はまず当時なかなかいなかった。
 本日お見えかと思いますが、説明員で菱沼家畜生産課長いらっしゃっておるかと思いますが、岩手種畜牧場においてこの方が日本でまず最初に現場において子牛を生産された方だと私は記憶しておりますが、こういうふうに獣医でないとできなかった技術、これが昭和五十四年日高種畜牧場におきまして子宮頸管経由法、人工授精とほぼ同じような技術でやれる実用化技術を開発いたしました。このことは、申し上げましたように、大変な移植時における徹底した無菌操作を行うことによって移植ができるようになったわけでございます。
 それから、今度は体外受精卵でございますか、これも四十年に試験場で開発され、今度は福島種畜牧場で移植に成功して子牛を生産するというとこみまで持ってきたわけでございますが、この技術も、先ほど申し上げましたように、受精卵が二つ、四つ、八つとほぼ一日に一回程度の細胞周期で分割してまいりますが、三日たちまして八分割以降はなかなか体外では培養できないということから、ウサギ卵管への仮移植ということで、大変ウサギには申しわけないことでございましたが、ほぼ五日間ウサギの輸卵管で培養するという方法でございました。これまた獣医学的外科手術を使わないとできない技術でございました。
 これが、完全体外培養系が確立いたしまして、それで人工授精師も使えるようになったということから、今回の改正が企画されたと思うのでございますが、でございますから、申し上げましたように、繁殖の分野におきましては、獣医技術をもってまず開発される技術が限りなく現場の人工授精師が使えるようにすることによって初めて農家が裨益する。一般の人工授精師が使えないと、いわゆる精子を入れるかあるいは受精卵を入れるか、何かを入れてやらなければ子牛は生まれないわけでございますが、精液のかわりに受精卵を入れるということでございますので、これは繁殖の分野の最前線におります人工授精師が使わなければとても繁殖に使えないわけでございますので、限りなく人工授精師が使える実用化技術の開発を目指して多くの研究者たちが研究に携わった結果、成果でございます。
 獣医師はこういう場面でどういう役割を果たすかと申しますと、何と申しましても大学六年におきまして広範な獣医教育を受けるわけでございます。その応用分野の一つでございますので、第一線におきましては、人工授精師と競合するということではなくて、産業獣医師の方々はその上に立って人工授精師に対してきめ細かな教育をされるということだろうと私は思います。
 で、従来なかなか受精卵移植あるいは体外受精卵というものがうまくいかないうまくいかないというのが長く続いたわけでございますが、それは従来の臨床繁殖の、従来といいますか古い臨床繁殖の技術だけをもってやろうとしておったという大きな反省がございますが、ところが今の技術、これからのバイオテクノロジー技術もそうでございますが、これは大学教育におけるどの分野かと申しますと、細菌免疫学の研究室、あるいは微生物を研究する研究室、そこが落下細菌の怖さを十分何かわきまえながらといいますかやるあの操作が必要であるということがわかって、初めてこういう技術が実用化技術になる。
 ですから、基礎になるものはあくまでも獣医の技術でございますし、現場においては獣医師の方々の指導がどうしても必要である。ただ、普通のルーチンとしては、人工授精師がこなせる技術まで持ってきて初めて実用化になるということでございますので、私は現場におきまして競合ということはないのではないか。産業獣医師の方々は大変なプライドと見識、技術を持って御指導いただけるので、むしろ活動分野が広くなったという御理解をいただいたらよろしいのではないかというふうに思います。
#20
○三上隆雄君 そこで、大変な技術を駆使して、いわば経済性、合理化、いいものをという、そういう視点から改良しているわけですけれども、倫理的な面でどんなものでしょう。先生のお考え、簡単にお聞かせいただければと思います。
#21
○参考人(長岡正二君) お答えいたします。
 倫理の面でございますが、何と申しますか、家畜に対して人間として倫理上いかがなものかということと、人間同士の中でこういうことをやることがモラルとしていかがなものかというふうに分けますと、私自身も若いときに牛の精液から凍結にかけて人工授精に携わったことがございますが、そのときに、学校で習うときは真剣でございますし、やるときも真剣でございますが、ふと気がついたときに、いわゆる精液の採取というのは一瞬でございます。こういう場で申し上げるのは失礼かと思いますが、まさに牛の一突きでございまして、一瞬のことでございますが、そういうことで精液を採取する、そのことが何か、何と申しましょうか、いささか悪いことをしているようなですね、多分こういうことに携わった多くの技術者が冗談とも本気ともつかずにいつも思いますのは、こんなことをしておったら余りいい来世は迎えられないなとかいうふうなことをよく言ったりするものでございますが、そうは言いましても、産業に非常に大きな貢献をしているものでございますので、それはいたし方ないことでございます。
 この対外授精につきましても、申し上げましたように、この技術の開発当初はウサギ卵管への仮移植をするということがございまして、開発当初は受精卵が片方でつくれるたびに何頭かのウサギをあの世に送ってきたということがございます。この技術が恐らくこの水準でとどまっておれば、先生のおっしゃるように倫理上いかがなものかとあるいは問われる場面もあったかもしれませんけれども、そこは多くの技術者の努力によりまして完全体外培養系が確立いたしましたので、ウサギをつぶすことなくやれるところまで持ってまいりました。
 それから今度は、生命の根源と申しますか、そこを操作するのが人間としていかがなものかということかと思いますが、牛が屠場で、食肉処理場で屠殺されますが、卵巣は屠殺された牛の母体とともに死の一途をたどるわけでございますが、この技術によってその大事な生命を再びインキュベーターの中で育て上げていく。育て上げていくといいますが、それは単純に一週間とか十日インキュベーターの中に放置するのではなくて、実は今、共培養という方法をとっております。ですが、朝昼晩と一個ずつの細胞を丁寧に、それは細かいことは申し上げませんが、お守りをしながら育て上げてまいります。受精後ほぼ七日たちまして百二十八種の細胞を持ちます胚盤胞へと成長していくわけでございますが、それを育て上げたときの技術者の感動は、よく育ってくれたなという感動とともに、牛にまで育ってくれよという思いを込めながらストローに入れて送り出します。
 ですから、外から見ますといかがなものかと批判される場面があるいはあるのかもしれませんけれども、携わっている者は、死に行く生命をここでまた新しくよみがえらせていくという感動を覚えながらこの研究に携わっております。
#22
○三上隆雄君 せっかく竹内先生もお見えですから、竹内先生、これに対する御見解、残された時間、私あと三分よりございませんので、ひとつ……。
#23
○参考人(竹内啓君) ただいまと同じ御質問と思ってよろしいですか。
#24
○三上隆雄君 はい。
#25
○参考人(竹内啓君) 私も、今、長岡参考人がおっしゃいました御意見とほぼ同じでございます。
 倫理上というのは、まあいろんな考え方がございますけれども、例えば非常に急進的な動物愛護推進派が口にしておりますような動物を一切犠牲にしないという観点に立ちますと、これは非常にまた難しくなってくると思うんです。その人たちはほとんどがベジタリアン、菜食主義者でございますので、動物は利用しないという立場でございますが、そうでなければやはり動物を利用しなけりゃならない。そうしますと、多少なりの犠牲を問わなきゃなりませんし、最終的には動物を処分しなきゃなりません。したがいまして、そこのところは許してもらうことにして、最後の処分の仕方というものをできるだけ苦痛のないようにする、あるいは生きている間できるだけ、産業動物であれば生産性を傷つけない範囲で動物の本来の行動様式を尊重しながらの飼い方をしてやるというふうにしていくことが一つ。そして処分した後はできるだけそれを有効利用させてもらうということだと思います。
 そういう観点からしますと、まあいろんな考え方があると思いますが、私はそういうふうに自分の考えを整理したいと思いますし、私が想像しますのに、これは決して余り特異な考え方ではないと思うんですけれども、もしこの考え方が受け入れられれば、この方法というのはそれほど動物愛護あるいは倫理、そういうものに反した方法ではないんじゃないんだろうかと思います。そして動物に接している人間というのは多くの人間が動物が好きです。ですから、動物を傷つける、そういうことについては非常に嫌だと思いながらも、社会に置かれている自分たちの立場を考えて動いている人間が多いと思います。
 実際、学生を見ておりますと、いろんな学生教育の中で血を見たりする実習もございます。そういうときにかなりやはり抵抗を感じる人もいるわけですけれども、その中で自分なりの哲学といいましょうか、そういうものを持ってそして社会に出ておりますので、いろんな意味で動物の痛みが最もよくわかるのが私は獣医師じゃないかと思っておりますから、何も獣医師の弁護をするわけじゃございませんが、この方法というのは、そういう意味でそれほど倫理に反するような方法ではないんじゃないかというふうに考えております。
#26
○三上隆雄君 終わります。
#27
○菅野久光君 参考人の皆さん方には本当にお忙しいところを貴重な御意見を賜りまして、私どもの法案審査に資していただきまして、心から厚くお礼を申し上げます。
 十二時までという時間でございますので、私もできるだけ簡潔に御質問申し上げたいと思いますので、お答えの方もできるだけひとつ簡潔に要領よくお願いを申し上げたいと思います。
 初めに、今回の法案が出されてきた、それはやっぱり産業用の獣医師を何としても確保しなくちゃいけないということが一つの大きな理由であったというふうに思うんです。そういう意味で、先ほどの意見を申された中で、今回の法案が出されたということは非常にいいことだし、年来の課題がこれによってある程度解決されるのではないかというような期待を持たれたお話がございました。
 今回の改正に当たりまして、いろんな方々からの御意見をいただきながら農林水産省として法案を出してまいりましたが、皆さん方の立場から、今回出された法案ではすべてを網羅したものではないというふうにお考えの向きもあるのではないかというふうに思うんですが、今後まだ、こういう点について検討していくべきではないかというような、そういう今後の検討課題といいますか、そのことについてまずそれぞれの方々からお聞きをしたい、このように思います。よろしくお願いいたします。
#28
○委員長(永田良雄君) 簡潔にお願いいたします。
#29
○参考人(竹内啓君) はい。
 いろんなことが考えられると思いますが、今回盛られてない部分ということでございますから、そこに絞りたいと思います。
 一つは、こういう法律でございますから当然盛り込めないわけでございまして、書いてございませんが、よく言われるのは待遇改善の問題があると思います。しかしながら、例えば公務員の給与とかそういうものと比べてみますと、産業動物獣医師の給与が特に低いという証拠は余りないんだと思います。大体並んでいるとかそういうものに近いところにあると思います。
 よく待遇が悪いと言われる原因はやはり仕事の内容にあると思います。仕事の内容あるいは拘束時間、それから職域の環境、そういうことを考えますと、もう少し改善をしてもらわないと困るという要求が大分強いんだと思いますので、これは産業動物獣医師に行く人が少ない、特に学生側から申しますとそちらに食指が動かない理由の一つだろうとは思います。したがいまして、その部分というのは、法律の問題ではないと思いますが、給与体系の問題もございましょう、そういう中で、ぜひ改善していただきたい部分だというふうには思います。
 それから、そういう給与あるいは職域環境の改善とともに大事なことは、獣医師は技術者でございますので、技術者として仕事をする場合は、自分たちが世の中で高く評価されている、それから自分たちも自分の技術に非常に満足している、そういう部分が非常に大事だと思うんですね。そういうものがありますと、もちろん給与だけに走る人もいるでしょうけれども、たとえ給与が多少悪くともそういう満足感を求めて行く人間というのは、ありがたいことにたくさんいると思います。実際に私ども学生を扱っておりまして、そういう学生に随分会います。
 ところが、残念ながら従来の環境ですとそういう部分が必ずしも満足できない。そういうようなことで産業動物獣医師に行かないというのを私は相当経験しております。これは、実は学生が入ってきたときには、女性を含めて産業動物の方に行きたいという人は結構いるんですね。で、実際に今度は教育で現場に連れていきますと、現場を見た後で悪い方に働いてしまう場合があるんですね。これに一生かけたんではということになる。せっかく勉強した成果がどうも生かされるようなところではないんじゃないか。
 そういうこともありますし、それから今度は農家の人に接しますと、農家の人は牛を大事にしている人もありますけれども、そうでない方も随分ある。せっかく一生懸命泥まみれになりながらこちらは牛を診ておりましても、牛のことはちっとも農家の人は考えてなくてというような部分があって、何かやはり一生をそこにつき込むのには逡巡があるということもあるように思います。したがいまして、そういうことを考えますと、これは改善をしなきゃならないなと思うことの一つは、獣医師が技術者として十分に技術を発揮できる、あるいはそういう技術を習得できるというような職場環境であってほしいということでございまして、これは今回の率後研修その他の制度でかなり生かされると大いに期待しているわけです。
 もう一つ、農家の人を含めて市民の産業動物に対する重要性の認識ですね。この部分というのは非常に難しい問題ですけれども、幼児教育のときから、自分たちの食べている肉はあるいは牛乳はこれだけの人が努力をしてつくってくれなきゃできないんだというようなそういう、音ありましたと言うと年寄りになってしまいますが、お百姓さんありがとうというようなそういう部分というのが現在の初等教育に大変欠けていると思うんですね。
 そういうところからずっと社会の考え方をもう一遍戻す、あるいは変えていかないと、そこに獣医師として大いに田舎で活躍しようという人が多少少なくなってもしょうがないんじゃないか。そういうような部分も、別に法律でということじゃありませんが、ぜひ改善してもらえ、またそういう社会になってほしいというふうに考えております。
#30
○参考人(長岡正二君) 御指名でございますが、獣医師法につきましては私が申し上げる立場でないかと思いますので、御遠慮させていただきたいと思います。
#31
○参考人(楠元薩男君) 私からざっくばらんに申し上げますと、まず第一点は、今の獣医学科に入っておる学生の出身校を見てまいりますと、これは鹿児島大学でございますけれども、私なんかの時代は高等農林の時代でございますが、やはり小さいときから家畜との触れ合いの中で育った農家の方が獣医学科に入ってくる、こういう方でございましたが、現在は都市の進学校の生徒が主として入ってまいりまして、本当に畜産地帯の家畜との触れ合いの中で育った方々はなかなか試験が難しくて合格できないという事情でございます。そういう点等からいたしまして、先ほど竹内先生からございましたが、もう少し初中等教育において家畜との触れ合いというものをやはり教育の場で取り上げて、そしてそういうことによって、うん、自分は家畜の生命を守ってやろう、そのためには獣医学科に行って産業動物獣医師になろう、こういう雰囲気を教育の中でもつくっていただきたいということが第一点でございます。
 第二点は、私も地方自治体に育った男でございますけれども、獣医師という資格を持っておりましても、昇進がなかなか上までいけない。今の学生に言わせますと、実際は自分は県庁に入って、また市に入って最終的にはどのクラスまでいけるのか、いやそれは課長までだ、次長までだと、こう言いますと、それはせめて部長クラスまではいくような形をとらぬとそれはちょっと魅力がないよと、こういう一つの昇進の問題もございます。
 もう一つは、私のところは非常に離島が多うございまして、二十九共済組合ございますけれども、十四が広域共済組合でございます。これは本土でございます。十五組合がこれは離島の単一組合でございます。また、離島の単一組合におきましては、大体獣医師を一人賄うためには、肉用牛に換算をいたしますと千五百頭ぐらいの数がいないとなかなか一人は貯えません。そういう点で、実は役場の方で、経済課の方で家畜共済業務をやっておる役場もございます。
 そういうことを含めますと、離島の場合は物価も高いし、また中年階級になりますと、子供と家族は都会に置いて自分が単身赴任するということになってまいりますと、こういう離島の場合の、私のところで牛の生産頭数が現在一番伸びつつあるのは離島なんです。そういう点で、例えば熊毛、大島を例にとりますと、肉用牛とサトウキビと園芸という、こういう複合経営でやっているのが実態でございます。そういうことで、離島につきましては離島の特別な方法で何とか獣医師を交付金制度なら交付金の対象にして、そしてうんと力を入れてもらいたい、こういうのが私の気持ちでございます。
#32
○参考人(森田彰君) このたび、獣医師法の改正によりまして直ちに産業動物の獣医師が確保されるとは、即効薬になるとは思っておりません。ただ、長い目で見ますと、研修教育とかいろいろな面で期待されますので、そういう面で大いに期待しておりますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
#33
○菅野久光君 それじゃ、竹内参考人にちょっとお尋ねいたしたいと思いますが、今日の産業動物行政について、例えば多頭化だとか集約飼育というんでしょうか、例えばブロイラーなどはもう身動きできないような形にして、そしていかに少ないえさで太らせるかというようなことなどがなされているということを私ども聞いておりますし、実際に見てもきました。
 それから、どうしてもそういう集約した飼育というんでしょうか、そういうことになると、病気にやっぱりなりやすいということから、薬をかなり投与するというようなそういう状況などがあるわけですが、こういったような今日の状況、これについて大学にいらっしゃるという立場でどのようにお考えか、承りたいと思います。
#34
○参考人(竹内啓君) 大変難しい問題だと思います。
 当然、経済効率を上げますためには多頭羽飼育というものが大事になってまいります。それからできるだけ画一的な飼育方法をとらなきゃなりませんし、それから飼料にしましても、できるだけ生産性の高い飼料ということになります。そうしますと、家畜が本来すんでいた環境あるいは食べていたものとは当然違ってまいりますので、生体側からしますといろいろな病気が出てまいります。
 そういうものを実は生産病というふうに言っております。生産性を上げるためにやむを得ず出てくる病気で、本来ある病気ではないんですね。ですから、私どもは、まあ音といいますか私どもが学生のころ習ったときは、多くの産業家畜の病気の治療法としては、広く牧野に放牧しというのがありまして、一遍牧場に、広いところに置けば大体みんな元気になる。そんなことを今はしていられないので、そうすると、動物はかわいそうですが何とかして生産性を上げなきゃならない。そこに病気というものがどうしてもつきものになってくるわけですね。
 ですから、それを一つの方法は薬でという方法があるかもしれません。あるいは生産性を上げるために薬を多用するという、そういう考えがありますけれども、基本的にはそれはできるだけ避けていこうという方向にあるわけでして、教育の現場でもそういうものを推奨するというようなことはやっておりません。むしろ現状としてはそういうことがあるので、その場合にどういうような障害が起こりやすいかというようなことを中心に教育をしております。
 したがって、できれば経済効率との兼ね合いの上で、先ほどもちょっとお話しいたしましたけれども、病気を未然に予防するためにはどういうような飼い方をするのが一番得であるかということが中心になります。したがいまして、昔なかった教育科目で国家試験の中にも入っております科目の一つは、家畜衛生という科目がございますが、そういうふうにいろんな病気の起こるもとを教えながら、できるだけ予防していく、しかも家畜の場合は生産性も考えていかなきゃならない。これはそう簡単に解決法があるわけじゃないんですけれども、やはりそこを志向していこうということだと思うんですね。
 ですから、例えば、これは少し先の話になりますが、遺伝子操作のような話もよく出ておりますが、そういう場合でも、家畜の場合にはそういう耐病性に強いような遺伝子を入れていくとか、そういうような特化ができますと、生産性を上げるような環境に置きながら、しかも病気にならないで済む。病気にならないで済むということは、家畜が苦しまないで済むということにもなるわけですから、そして、しかも結果としては人間の方に役立つということになりますので、やはりそういう動きを志向しながら進んでおりますが、現状の段階では確かにおっしゃるように薬が多用されている部分というのはまだあることは事実です。ただ、私はそれが世界的にどんどん進むというよりは、だんだん軽減されていくという方向にあるんではないかというふうに考えております。
#35
○菅野久光君 世界的にだんだん軽減されていく方向にあるのではないかというお考えを承りまして、そういう方向に行かなければ人間の健康そのものにも非常に影響してくるのではないか。今日、子供における成人病が非常にふえているだとか、いろいろそういうようなことを考えていきますと、私どもも農林水産委員会に所属をしておりまして、安全な食糧をいかに安定的に供給するかという、そういう立場から考えていきますと、経済効率だとかあるいは内外価格差とか、そういうことの名のもとに国民の健康に影響するようなそういう飼育のあり方、そういうものを正していかなくちゃいけないし、また、そういう面での獣医師の持つ役割というんでしょうか、これは海の養殖ですね、あれなんかにも当てはまることではないかというふうに思うんです。
 そういう点をこれから私どもも真剣に考えていかないと、食糧の方から健康を損ねるということになっていって、本来の動物の保健衛生の向上をさせていくことがまた国民の健康の上にも非常に大事なことではないかというふうに私は思っておるものですから、今の状況は困ったことだなと、そういうふうに思って今お尋ねしたわけでございます。
 それから、そういう意味からいきますと、つい先日、三月には、畜産価格のときに、今の酪農の状況が危機的な状況だということを通り越して、もはや酪農は壊滅してしまうんではないか、そんな意味で何とか乳価を上げろということでやったんですけれども、残念ながら乳価そのものは上げませんでしたが、周辺対策で手取りをまあちょっと上げたというんですか、上げたというよりもちょっと多くしたということで一応畜産価格の問題は終わりましたが、そのときにも私もいろんな資料を見たりしまして、乳牛の死廃事故というのが大変多いわけです。そんな意味で、私もちょっときょう資料をもらったんですが、死廃事故、乳用牛が昭和六十二年には九万三千頭、六十三年には九万五千頭、それが元年には十万三千頭、二年には十二万頭と急激にふえてきております。
 こういうような状況から、きょうは北海道からの森田参考人、本当に遠いところをありがとうございますが、共済の関係で直接お仕事をなさっておられますので、共済の現在の北海道の収支の状況といいますか、それはどんな状況になっておりますでしょうか。
#36
○参考人(森田彰君) 共済関係の現状を申し上げます。
 ただいま先生から指摘されましたとおり、非常に家畜の事故はふえてございます。特に乳牛がふえてございまして、原因としましてはいろいろあるわけでございますが、端的に酪農経営が厳しいという面もありまして乳を無理して搾っているという実態もございますし、さらに、多頭化になりましてどうしても飼養管理が粗放になるという場面、省力化が重点になりましてそういう場面もございます。
 そういう意味で、昨年度は、通常百億の死廃の共済金を払っでございますが、百二十億支払いまして、保険関係で申し上げますと二十億が赤字になりました。それは結果的には国、連合会、組合がそれぞれ負担割合で持っているわけでございますが、むしろ農家の立場から言いますと、非常にそれだけ還元されたといいますか、肉価格の下がった分をある程度共済金で補ったという形の中で、家畜共済そのものは今農家には還元されているわけでございますが、保険としまして見ますとやはりいろいろな問題がございますので、事故対策というか、そういう場面では真剣に取り組んでございます。結果的に、事故をたくさん出しますと農家も経済的に損失になりますし、生産性の向上、先生指摘されました安全食品の供給という面でもいろんな面で問題がございますので、事故低下にさらに一層努力して、現在頑張っているところでございます。
 ただ、ことしの状況を見ましても、肉価格、老廃牛の価格がなかなか回復しないとか、ぬれ子がなかなか高くならないという背景もございまして、どうしても共済に依存する度合いが高いのかなという感じは多少持ってございますが、さらに事故を下げることがやはり保険業務としても当然のことでございますので、そういう方向で努力しているところでございます。
#37
○菅野久光君 そこで、牛なんですけれども、やっぱり胃袋が四つあるということは、粗飼料ですね、これを食べるということが牛の健康にとってとても私は大事なことだというふうに思っているんですよ。そういう点で粗飼料を果たして十分に牛に食べさせているのかどうか。粗飼料よりもむしろ濃厚飼料をたくさん食べさせ過ぎているのではないか、そんなようなことが牛の死廃の事故につながっていっているのではないかなというような感じも持つんですが、三・二%から三・五%になりましたが、実際品種改良その他で乳脂肪率が上がってきているということは私もわかっているんですが、実際普通のように粗飼料を食べさせて、そしてほどほどの濃厚飼料を食べさせたときにどのぐらい、やっぱり三・五%以上になるんでしょうか、その辺はどのようにお考えでしょうか。これは森田参考人の方が一番いいのかもしれませんが。
#38
○参考人(森田彰君) 飼料形態ですが、やはり北海道の場合は、草地農業というか草地酪農がまだ中心でございますが、最近特に牛乳の生産は飲用乳の伸びからいいまして生産をむしろ促進している場面でございまして、濃厚飼料の給与量も相当上がってございます。
 例えば石狩にしましても、宗谷地区とか根室地区の本当の草地酪農地帯におきましても濃厚飼料が七キロぐらいあってございますので、相当上がってきているわけでございます。ただ、牛乳の脂肪分そのものは、平成三年度の全道平均の乳脂肪率は三・七九です。三・八に近い状態になってございます。これは改良のせいもございますが、乳量の方が七千キロを当然オーバーしてございますので、この脂肪率というのを三・二から三・五に上げたことは、逆に言いますとおいしい牛乳を提供したということで需要が非常にふえまして、北海道としてはむしろそっちのメリットの方がずっと大きいんじゃないか。
 事故そのものに結びついてきたのは、むしろ乳量そのものの増加と上手な飼い方をしてないんじゃないか、乳量に見合った飼養管理がされてないんじゃないかというところに若干問題があるんじゃないかという見方をしてございますので、全般的に見ますと、今の牛そのものが無理しているのかなという感じはしますけれども、乳脂肪そのものによってどうのこうのじゃないと思ってございます。
#39
○菅野久光君 長岡参考人にお尋ねしたいと思いますが、今のお話を聞きまして、乳脂肪率よりもむしろ乳量を余計搾っていることによって無理が来ているんじゃないかというようなお話がございましたが、それでは乳量を上げるためには、これはどういう飼い方をすればいいんでしょうか。
#40
○参考人(長岡正二君) 乳脂率との関係でございますが、乳脂率を上げるためには、先生が先ほどからおっしゃっておりますように、濃厚飼料多給では上がってまいりません。粗飼料で、特に良質でかための粗飼料、やや粗剛と申しましょうか、腰の強い、例えば乾燥で言いますと二番乾燥よりも一番乾燥ということではないかと思います。
 それから、例えば西南暖地で言いますと、イタリアンよりもオーチャード、オーチャードよりもチモシー、チモシーよりもスーダンとか、そういうふうな従来はやや嫌っておったといいますか、かた目の粗飼料を与えることによって、牛の胃、特に第二胃でございますが、食道口から第二胃への刺激が強くなりまして、連続発酵タンクである第一胃の恒常性の確保ができますので、三・二から三・五に上がったことによりまして、牛の健康状態といいますか、むしろ胃の状態は多分ノーマルになっていったのではないかなというふうに私は思っております。
 ただ、ホルスタインの三・五%は、自給飼料、特に青刈りだとか放牧で夏搾るのはやや無理があるのかもしれません。そういう状況があるかと思いますが、年間を通じますと、今申し上げましたような良質でかた目の長目の乾燥の粗飼料の高い給与ということを心がけますことによって、十分に確保できる乳脂率ではないかなというふうに思います。
 先ほど森田参考人がおっしゃいましたように、まさに飼養管理の改善によってそこのところは十分にカバーできるのではないかなというふうに思います。
#41
○菅野久光君 先ほど私もちょっと言いましたが、遺伝的に改良してだんだん乳脂肪率の高い牛をつくってきているというような状況はあるのでしょうか。
#42
○参考人(長岡正二君) 従来は牛の特に後代検定によって、検定済み種雄牛を選抜するというときに、指標となります乳量、乳脂率、無脂固形分等ございますが、乳量に重きを置きながら選択をしてまいりました。それは、まず取引の基準がそうでございましたので、勢い農家の需要もそういうところにあるものでございますから、そういう牛を選択してまいりましたが、現在は農家が乳成分の高い牛を求めてまいりますので、雄牛の選抜に当たりましてもそのような乳成分の高い雄牛を選択し、かつそれらの需要にこたえるように人工授精事業体としては努力をしておるところでございます。多分遺伝的な改良の効果はこれからどんどん出てまいるだろうというふうに思います。
#43
○菅野久光君 一般的には乳脂肪率を上げるためにはもっと濃厚飼料を食べさせなくちゃいけないということでやっている部分が私はあるんじゃないかなとは思うんですけれども、その辺について、獣医師という立場で楠元参考人にその辺のことがないかどうか、ちょっとお尋ねしたいと思います。
#44
○参考人(楠元薩男君) 実は私は畜産試験場で十五年間牛と一緒に生活いたしてきたわけでございますが、乳牛の場合の脂肪の含有量と乳量との問題でございますが、今、長岡参考人の方からお話がございましたように、脂肪率というものは濃厚飼料だけでは解決できなくて、やはり良質の粗飼料を給与するということが乳脂率の安定した向上になっていくんじゃないか、私はこういうふうに理解をいたしております。
#45
○菅野久光君 どうもありがとうございました。
#46
○委員長(永田良雄君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十九分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時開会
#47
○委員長(永田良雄君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、獣医師法の一部を改正する法律案、獣医療法案、家畜改良増殖法の一部を改正する法律案、以上三案を便宜一括して議題とし、参考人の方々に対して質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#48
○星野朋市君 ちょっと午前中失礼をいたしましたんですが、私、難しい法律関係の問題はちょっと省きまして、市民レベルでお尋ねしたいと思っております。実は立ってやるのもちょっと問題なんで、本当は座ってやりたいんですけれども、この委員会の形式でやっぱり立ってやらなくちゃならないということで御勘弁願います。
 竹内先生は、失礼ですけれども何か小動物の御研究に関しては第一任者だと承っておりますので、最初に飼育動物といいますかいわゆるペットのことでお尋ねしたいんですが、私、法案を見たときに、獣医師法の中で追加事項に「うずら」というふうに書いてあったんですね。だから、農水省のお役人に対しまして、ウズラを追加して、おまえ、だけれども今は猿飼っているやつが多いだろう、猿はどうするんだと言ったんですよ。そうしたら、猿はどうなんでしょうね、獣医が診られないんじゃないか、こういうようなことだったんです。
 要するに、最近のペットもいろいろな種類が出てきまして、これは、アメリカなんかじゃ例のミニブタなんというのが大流行です。日本でも、いわゆるOLを中心にして、うるさくない、汚くないというようなことで最近爬虫類が非常に人気を得ている。デパートなんかでも相当高額な爬虫類までいる。この爬虫類は、こいつもストレスを感じるんだそうですね。ストレスを感じるんで、じゃ、そういうやつはどうやって診てもらうのかと聞いたら、あれは薬も与えないし注射もするわけじゃないので、これは獣医の範囲に入らない、こんな話を聞いているんですけれども、いわゆるペットの多様化に対しまして獣医というのがどうあるべきか、御意見があったらお聞かせ願いたいと思います。
#49
○参考人(竹内啓君) お答えいたします。
 今ペットというお言葉を使われましたけれども、ちょっとこれに関係して一言つけ加えさせていただきますと、例えば世界保健機構、WHO、そういうところでもペットという呼び名はよそうではないかというのがもう大分昔から言われていることです。結局、ペットと言われていた代表は犬や猫であったわけですが、これの人間の生活の中における位置づけというのは、まあ暇があるからかわいがってやろうという、もうそういう位置づけではない。一緒に暮らしていかなきゃならない仲間だというふうに変わってきたわけですね。
 したがって、人間というのは、衣食住が満ちても、それだけでは楽しいわけではなくて、やはり精神生活をエンジョイできなきゃいけないし、それから仲間意識といいますか、ほかの人との関係というものが非常に大事である。犬や猫の位置づけはそういう意味では人と同じような関係であるというところから、ペットにかわりましてコンパニオンアニマルスという、いろんな展覧会をやるときのコンパニオンではありませんで、仲間という意味ですけれども、そういう言葉を使おうというふうに大分前にWHOで言い出しまして、今ではそういう言葉が定着しております。
 したがいまして、そういう観点からするといろんな動物が人間社会に入ってくるという可能性は十分に考えられるわけですね。ですから、今お話がありました爬虫類とかいうものも十分あり得ると思います、人間がそこに仲間意識を感ずればいいわけですから。そういうふうに考えますと、獣医師の対象とする動物というのは非常に広がりを持つわけですが、いかな六年間の教育になったからといって、すべての動物に全部精通するという教育を大学で与えるわけにはまいりません。
 御承知のように、医師は人間だけという一種の動物で六年間やっているわけでありまして、獣医師の方は、解剖から生理から全部違うのをそれだけたくさんというのはカバーできません。したがって、今回の今おっしゃいましたウズラが入った部分というのは、いわゆる獣医師の専管業務の部分ですね、獣医師でなければ診てはいけないという部分ですから、そういう部分については、大学でも教育をしなきゃなりませんし、獣医師の国家試験の場合にも、そういう専門的知識があるかどうかをちゃんと見なきゃいけません。
 そういう領域としてウズラが入っているというわけでありまして、決して獣医師であればほかの動物を診てはいけないということは全然ありませんで、すべての動物を診て差し支えない。ただ、獣医師でない人が診てもそれは構わないという分野ではあるわけです。ですから、先ほどのウズラの話とは切り離しまして、これから人間の社会で飼われる、家庭で飼われる動物の種類が広がれば、それに応じて獣医界としては対応していかなきゃなりませんし、例えば今度の法律の中に書いてはございませんけれども、小鳥などについては、獣医師会を中心として非常にたくさんの数の講習会が開かれて、そして多くの開業獣医師が参加しております。
 ですから、そういう形で社会で飼われている動物をカバーするということに関しては獣医師は範囲を広げていきますけれども、それがすべてこの専管領域でなきゃならないというわけでもありませんので、私はそういうふうに理解しております。
#50
○星野朋市君 今、小鳥の話が出まして、恐らく家庭で飼っている小動物ということになると、一番数が多いのは犬、猫、どうですか、小鳥も相当な数に上ると思うんですね。小鳥に関しては昔からオウム病の問題がございましたけれども、実は私ごとになって大変恐縮なんですが、私の家の庭にえさ台を二カ所置いておきまして、一つはインコのえさなんかを置く、片方はいわゆるリンゴだとかそれからバナナを置いておきますと、いろんな鳥が次々に来て食べている。そんな状態を見ていまして、だんだんいろんな鳥を今飼っているんです。
 これは、もちろん飼ってはならない野鳥類がありますから、そこら辺の名前は申し上げませんけれども、相当な種類がいるわけなんですよ。その中で、例えば庭に来るメジロなんかが、突然いわゆるツバキであるとか洋ランのみつなんかを吸っているのを見まして、国産のメジロは許可を得なきゃだめなので、輸入メジロというのがいるわけですな。輸入メジロというのは、確かにこれは、私もオーストラリアなんかに行ったときに、高じゅうメジロだらけなんというところがありますから、そういうのを飼って、じゃ、普通のすりえだけでなくて、これにハチみつをぶっ込んでやろう、そうすりゃよく食うだろうと。そうしたら確かによく食べますね。
 それで、輸入メジロというのは大体細長いんですけれども、だんだんだんだん日本のメジロの体型に近づいてくるんですね。それで、うちの家内が、そんなことをやっているとメジロが糖尿病になるよと言うから、それで鳥の専門家に聞いたんですよ。そうしたら、それは先生、やっぱりそういうものだけでなくて昆虫類を少し食べさせなさいということで、これはそういうことではドイツが非常に発達しているそうなんですが、私のところはクラウスというドイツから取り寄せたえさを使って両方やっているわけです。
 ところが、やっぱりみつが入っている方がおいしいから、そっちを食べちゃうんですね。それで、だんだん体型が太ってきて、日本のメジロみたいになるんですけれども、あるときになると、こいつがころっとおっこって死ぬんですね。それで、本当に糖尿病にかかったかなと言って笑っているんですけれども。
 それで、鳥のいろんな種類によって、例えば風邪ぎみになるんですか、ぐあいが悪いやつが出てくる。こういうのはなかなか鳥の専門家に聞いてもわからない。そうしたら、これは筑波の林業研究所におられた野鳥の研究家がおりまして、先生、これはこういう文献があるからごらんになってください、大正時代の元公爵か伯爵が、昔はそういう趣味のものというのは大体そういう方がおやりになっていたから、やはりいろんな研究をなされていて、大正時代にこんなに輸入鳥まで含めていろんなものを飼っておられたのかなと思う中に、例えば、鳥は金属の要するにとまり木みたいのをやっちゃいけません、必ず木でやりなさい。それから、少しおかしくなってきたら温度を上げなさい。それから、きわめつけはブランデーを飲ませると言うんですね。で、私も実際にブランデーをやってみたんですよ。そうしたら、最初はうまくいきましたけれども、二度目と三度目は一気飲みをさせちゃったんで、これはやっぱりアルコール中毒で一発で死にましたがね。
 こういうようなことがあるんですけれども、家庭でたくさん飼われているようなインコとかそういうようなもの、こういうものがぐあいが悪くなったときになかなか相談する場所というのが、もちろん小鳥の単価が低いものですから、なかなかそれに見合うような報酬との問題で相談できるというようなところがないんじゃないかと思うんですけれども、こういうような問題というものがこれから出てまいりませんと、病気になった、直ちに捨てちゃうというような、こういうことになりかねないと私は思うんですけれども、そこら辺について先生とういうように思われますか。
#51
○参考人(竹内啓君) 先生の鳥の博学ぶりを十分拝聴させていただきましたけれども、先ほども申しましたように、実際には小鳥を飼っている人が非常に昔からというか近年多いわけですね。獣医師の世界、特に小動物、犬や猫を対象にして開業していらっしゃる方々の中ではもうそこは十分認識しておりまして、それに対して適切な対処をしなきゃいけない。そこで、公的、私的、いろんな種類の小鳥に関する、特に小鳥の病気に関する講習会が開かれておりまして、恐らく日本じゅうで、正確な数はわかりませんけれども、かなりの小動物獣医師が現在鳥に対応できるような知識や技術を持っていらっしゃると思います。
 それからまた、大きい都会などになりますと、例えば東京ですと何カ所かに主として鳥だけを診ていらっしゃる獣医師というのも出ておりまして、それは獣医師仲間では情報がわかっておりますから、もし鳥をお持ちになって、その方が余り鳥にお詳しくない場合というのは、先生によっては恐らく鳥に詳しい先生を紹介してくださるということもあろうかと思います。
 ですから、やはり鳥には独特の病気がたくさんございまして、もともと哺乳類ではございませんから犬や猫とは違う病気がたくさんあります。飼い方も違いますし治療の仕方も違います。ですから、それについては獣医師の世界ではかなりもうそれを意識して対応しようとしているんだと思いますけれども、特に鳥に関しては、先ほどおっしゃいましたオウム病ですね、こういう形で人間に来る病気もございますので、そういう意味からも小鳥の病気に対しては適切な対処を獣医師が最前線でやらなきゃいけないという認識を多くの獣医師が持っているんじゃないかと思います。
#52
○星野朋市君 ありがとうごさしました
 それから、次は長岡さんにちょっとお尋ねしたいんですけれども、私はいわゆる家畜改良ということに関しまして、昨年、競馬法の改正のときにも申し上げたんですけれども、どちらかというと、いわゆる今までの改良というのは雄を重視しているんじゃないか、雄の重視し過ぎじゃないかということで、実は母体としての雌のことをもう少し真剣に研究すべきだという主張を言ったんです。
 家畜改良といいますか、動物の改良については、一番真剣に、しかも長期に、早くからやっておったというのはやっぱりサラブレッドの改良だったと思うんですね。これも実はどちらかというと非常に好成績を残した雄馬中心でありまして、今でも、今ごろがシーズンですが、種つけに関しましては、一日のうちに何頭種つけして、一頭当たりのあれが何十万または百万超えるような場合もございますけれども、そのときに実は受胎する母馬の方も相当これはいい母体でないと血統的にはいいのが出ないんじゃないか。
 しかも、私の知識の範囲内では、母馬というのは出産後丸二週間ですか、丸二週間のときに実は種つけすると受胎率が高い。それから、人間と違って、競走場の場合は大体馬齢が八歳から十歳ですか、このときが一番実はいい小馬が生まれるという伝統的な経験があるはずなんです。八歳から十歳というと、人間で言うとどうなんでしょうね、もう年増のあれに入るんですけれども、ここら辺がちょっと違うところだということで、この母体の問題がかなり重要なポイントだと思うんですが、その辺については長岡さんはどういうふうにお考えでしょうか。
#53
○参考人(長岡正二君) お答えいたします。
 午前中申し上げましたのは、繁殖技術の発達の中で人工授精が主導的な役割を果してまいりましたが、それは人工授精の普及に伴いまして雄牛の利用効率が自然交配に比べて格段に高まる、また、凍結精液によってさらにまたけた違いな大きさになってまいるわけでございますから、及ぼす影響の大きさから、改良増殖法の前身の種畜法でもそうでございましたし、あるいは種馬統制法等も皆そうでございましたが、雄を中心にした制度のもとに改良が進められてきたわけでございますが、受精卵移植技術が出てまいりまして、雌牛の利用効率がまた非常に高まってまいるという昨今の技術的な環境が生まれてまいったわけでございます。
 この技術と相前後しましてといいますか、先立ちまして、国は昭和四十九年度から乳用牛群改良推進事業というのを始めました。半群検定でございますが、これは各農家の飼っていらっしゃる雌牛につきまして、月一度でございますけれども、乳量、乳成分等を記録いたしまして、農家に分析してお返しするということをいたしておるわけでございます。このことが乳牛の改良に非常に大きな効果をあらわしてきております。
 午前中、乳量あるいは乳成分の改良につきまして飼養管理の改良の観点からるる御質問いただきました。さらに、量的な改良を果たすようにというところで北先生からまた御指摘もございましたが、そういう面で、先生おっしゃいますように、雄牛だけじゃなくて雌牛の改良に、選択に非常に力を入れなければいけないという状況も生まれてまいっておりますので、それに対応する施策として申し上げましたような半群検定事業が普及してまいっております。
 ただ、これも今のところ四二%程度の普及率でございます。ですから、これの普及率を国の方針としては六〇%に持っていこうというふうな方針で鋭意この施策の充実に国、団体、農家ともども今励んでおるところでございます。恐らく、今度の三・二%から三・五%に取引義務が改正されたときに最も敏感に反応して対応することができたのは半群検定参加農家ではなかったかなと思いますのでございますから、そういう点でこれらの施策が充実されてまいりますと、先生のおっしゃいますように、雌牛の改良の方から飛躍的に日本牛の改良が進んでいくのではないかというふうに思います。
#54
○星野朋市君 それに関連しまして例の、御質問あったかと思うんですが、例えば「紋次郎」の精液なんというのが非常にもてはやされまして、当然そこら辺は一つの縛りがあると思うんですけれども、こういう優秀な牛の子供が実はたくさんできてくる。そうすると、だんだんだんだん将来にわたっては近親交配になるおそれがあるんじゃないか。もう一方では、精液そのものがひそかに密輸されまして、多分これから問題になるだろうと思われるいわゆる外国産和牛なんていうものの存在が重要な問題にたってくると思うんですけれども、そこら辺についてはどういうふうにお考えになりますか。
#55
○参考人(長岡正二君) お答えいたします。
 確かに、先生おっしゃいますように、近親交配が進んでまいりますと、繁殖率の低下あるいは強健性の低下等をもたらしまして、経済的にも有利ではございません。でございますが、凍結精液によりまして種雄牛の利用効率を拡大できるという技術的な側面から言いますと非常に進んでまいりましたし、また情報も非常に濃密になってまいりましたし、また伝達も非常に活発になってまいりましたので、そういう面ではうっかりするとそういうことになりかねませんけれども、そこはまたよくしたものでございまして、人工授精事業の中で、近親交配の回避をするための指導を大変徹底してやってまいっておりますので、そのことは実態としてはそれほどではないのではないか。
 ただ、「紋次郎」のお話がございましたが、ああいう大変な不祥事もございましたけれども、それらにつきましても、また片方で家畜の血液型検査体制というものもきちんとできておりまして、これは大変きめ細かく検査する技術でございますが、これらによって血統の混乱というものも回避できる技術的な担保はできております。
 それから、黒毛和牛の輸出のことをおっしゃったんでしょうか。
#56
○星野朋市君 輸入ですね。外国産和牛というのが誕生するわけですわね。
#57
○参考人(長岡正二君) はい。それにつきましては、新聞等で、既に出たものについて入ってくることにつきましての問題と、それがまた出ていって入ってくるのではないかという心配と二つマスコミを通じて種々議論されております。私も十分承知しておりませんが、既に出たものにつきまして、大変累進繁殖を進めまして、六十四分の六十三と言ったと思いますが、そういうものがかの国で使われていて入ってくるがいかがなものかというふうなお話がございますが、これについてはまだ専門の先生方が検討されたところ、今のところそれほどこちらが負けるような肉質のものはまだ出てないというふうに私は理解しております。
 今後、出ていって入ってくるおそれはないかという点でございますが、このことにつきましては、受精卵移植技術あるいは体外授精技術もそうでございますが、これらの技術につきまして、我々これにかかわっておる者は、とにかくこの技術をもって日本の肉牛生産に有効に生かして、他の国との競争に負けるような年産業であってはまずいので、我が国の消費者ニーズに合った質の高い牛をつくるために精いっぱいこの技術は使わねばならぬというふうに思っております。
 また、それが恐らく乳牛、肉牛を含めた――乳牛は世界的にもう均等に流通しておりますから問題ございませんが、少なくとも肉牛につきましては、それが肉牛の生産にかかわる人たちの合意であり、また世論は恐らくそういうふうに動いていくであろうというふうに思っております。
#58
○星野朋市君 時間がありませんので、最後に、これはむしろ先生方にお聞きするというよりも農林水産省に実は要望したいことでありますけれども、いわゆる改良技術の極致という中に、たしかデンマークの養豚で、イギリスのベーコン需要に対応するために豚の胴体をだんだんだんだん長く改良していって、最後にいわゆる豚のダックスフントができちゃって、これはダックスフントならそれなりに体を支えられるんですけれども、豚の足は意外に細いですから、ついに四つ足で立てなくなったという、こういう話が現実にあるわけでございます。
 それに対応して、成育は遅いんですけれども、多頭産のいわゆる中国からのメイシャントンと言いましたか、その原種を実は輸入しようと思うんだけれども中国はなかなか出さない。一番最初にあれを入れたのはたしかフランスだったと思うんですね、日本も今何頭か入っていると思うんですけれども。いわゆる原種にもう一回戻っていろんなことを考えていくということが技術の進化の中で必ず繰り返されると思うんですけれども、これからはだんだん各国が原種そのものを自国の固有の財産として出しにくくなるんではないかと私は思っているわけです。
 植物の問題も含めて、日本は意外に種の保存に関しては後進国である。これは農水委にデータをはっきり出させればわかると思うんですけれども、種の保存に関しては非常に後進国である。これは動植物を含めて種の獲得を今のうちにやっておかないと、やがて各国が出さなくなるということで、その分野での研究のおくれというのを私は心配しておるのでございますけれども、竹内先生、最後にもし御意見があったらお聞かせいただきたいと思います。
#59
○参考人(竹内啓君) おっしゃるとおり、こうやって家畜の改良が進んでまいりますと、やはり耐病性だとかそういうものを強くするために在来種をもう一遍入れるということはよくやられる方法ですね。そして、各国ともそれは非常に大事にしていると思います。
 豚について申しますと、私も二十何年前、まだ毛沢東、周恩来がお元気なころ、中国でまる三週間以上、北から南まで随分見せていただきました。そのときに、豚に関しては何と在来種の多いということに驚いて非常にうらやましく思いましたけれども、そのときも在来種をうまく改良種に入れていって、そして生産性の高い、在来種というのは一般に生産性はそう高くございませんので、それに今度は耐病性を加えていくということを盛んに自慢されまして、そのとき、じゃ日本でどうなるだろうかと考えてみると、豚に関しては日本在来種というのは中国に比べればほとんどないような感じになるものですから、これはやはり日本の国の中だけでやるということになると大変難しい問題だなというふうに感じたことがございます。
 したがって、直接のお答えではございませんが、日本の場合も、こういうふうに国際的にそれぞれが自分たちの国のところで、何といいますか、自分たちの文化的遺産を出すことに制約を加えてくるということになりますと、それに対して外交ルートも含めて国策上はやはり対策をとっていただくのは確かに大切なことかとは思いますけれども、何分にもこの分野は私の本来の専門ではございませんので、一市民としての感覚だというふうにお受け取りいただければ結構でございます。
#60
○星野朋市君 終わります。
#61
○刈田貞子君 参考人の皆様方きょうは大変お忙しいところ、また御遠方をおいでいただきまして、ありがとうございます。
 私は質問時間を二十分しか持っておりませんものですから、最初に各先生方に質問を並べて申し上げてしまいますので、その後順次お答えいただきたいと思います。
 まず、竹内先生にお伺いいたしますが、先ほどから卒後研修について大変このたびの法改正に当たっては喜ばしいことであるというお話がございましたが、基本的に考えますのに、卒後研修とはいうものの、どんな期間、どんな地域、どんな施設で具体的にどんなふうな形の受け入れを考えるべきなのか、考えられるのか、そういうまだ具体的な問題はたくさんあろうかと思います。
 昨日も御案内いただいて麻布大学に行ってまいりましたが、麻布大学ではそういう御指示があれば受け入れ態勢は考えておるというようなことのお話でございましたけれども、例えばこの卒後研修というのはどんなふうなあり方が一番好ましいのかということを一点お伺いしたいと思います。
 それからもう一つは、畜産の技術進歩というのは日進月歩の感があるわけでございますが、こうした畜産業の一つの動きの中で私はある論文を一つ読んだときに、ふとメモっておいたものがございます。それは、畜産業の進展の中で今後考えていかなければならないソフトな要因の三つということで、一点が安全性に対する課題、それからもう一点が環境問題との課題、それから第三点目が動物愛護思想の普及の課題ということのソフトの三点の要素をこれからの課題として考えていくべきではなかろうかという論文を読みました。
 そこで、先ほどから先生から動物愛護の問題についていささか先生のお考えが出ているやに思いますので、ここではその環境問題との関係で今後の畜産のあり方というものをひとつお伺いできれば大変ありがたいというふうに思っております。
 ちなみに、昨日勉強させていただいた麻布大学では、ふん尿のコンポスト化みたいなものも含めて、こういう問題もかなり研究教材として入れていたように私は見てまいりました。
 二番目に、長岡参考人には先ほどから大変専門的なお話を伺っておりまして、勉強になりましたが、一つだけ我が国の家畜改良技術の水準というのは諸外国に比べてどんな水準にあるのかをお伺いしたいと思います。
 それから、三番目の楠元参考人には、今回の改正案についての問題の一つに広告の制限についての二十三条に関する件があるわけでございます。これは、獣医師会の方の要望事項の中にもこのことが書かれておりますけれども、農林水産省省令が規定するその広告の内容ということになっておりまして、私どもは、一体どんな広告事例が今後出てくるのか、実は予想というか想像ができないので、できるとすればどんなことを今後お書きになりたいのかということを具体的にお教えいただければ明日からの質疑の中で生かせるのではないかというふうに思います。私の問題意識の中には医師法との絡みもございますので、いかがなものだろうかという問題意識がございますので、この点を一点お伺いします。
 それから二点目は、先ほどから産業動物にかかわる獣医師の不足の問題がずっと出ておりましたが、そこで先ほど楠元参考人は、したがって鹿児島県においては女性重視の対策をとっていくしかないのではなかろうかというようなお話をなさいまして、女性獣医師に対する期待を述べられていたというふうに思います。
 しかし、現場ではかなりこの女性獣医師に対する評価というものが厳しくありまして、牛は難産が多いよとか、あるいはまた子宮脱のときはどうするのというようなおどしもあるやで、なかなか女性獣医師が現場に入るのが難しい話も昨日聞いてまいりました。しかし、鹿児島県では女性重視の対策がこれから必要だというふうにおっしゃっておられますので、こういう問題について具体的にはどんな策をおとりになろうとしているのか、この点と二点お伺いしたいと思います。
 それから森田参考人には、先ほどの意見陳述の中で獣医師の業務というのは、いわゆる往診主体の獣医事になるんだ、したがって診療効率の悪い地域もある、そういうところに対してはむしろ何らかの形で財政的助成が必要ではなかろうかというふうなお話がありまして、大変御意見かと思い、書きとめてございます。これは、今決められておりますところの手当の引き上げのことをおっしゃるのか、それとも診療報酬のことをおっしゃるのか、この辺のことも含めてぜひ具体的にお教えいただければ明日の質疑に生かせるというふうに思っております。
 それからもう一つは、今回の獣医事の業務の中に、先ほど来お話がございますように、保健衛生という概念を取り入れた形のものとなって出てまいりました。しかし、獣医師、特に産業動物というものに関する獣医さんが足りない現状の中で、こうした業務までも取り入れていく余裕というか、余力があるんだろうかどうなんだろうか。しかし、いわゆる飼養管理教育指導、こんなものが今一番大きな課題になっているというふうに思いますので、現場の状況も含めてこの辺に関する御意見を例えれば大変幸せに思います。
 以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
#62
○参考人(竹内啓君) それでは、私からお答えをいたします。
 卒後研修というのも、これから細かいところをどういうふうに農林水産省でお考えになるか、これはちょっとわかりませんけれども、大きく分けますと二つあると思うんですね。一つは、卒業してすぐの学生に対して技術的な研修をするというところが一つあると思います。それからもう一つは、この日進月歩の世の中でございますので、実際に大動物診療に従事してある程度たった人たちに対してさらにその先のより高度な研修をするということがあろうかと思います。あるいはほかの分野、例えば行政とかそういうところにタッチしていた方が途中からまた診療活動に加わるというような場合に対しての研修も入るかもしれませんので、それによってなかなか内容を一括してお話しすることは難しいと思いますが、やはりそれに応じての研修内容ということになりますので、研修期間も恐らくは変わってくるであろうというふうに思います。
 ただ、学校でまず教えているやり方というのは、基本的には学問体系という形で教えます。これは日本の大学がすべてそうですが、欧米の、特にアメリカのように技術教育ということに偏重していないのが日本の大学教育の特徴だと思うんですね。基本的な知識というものを十分教え込むということがございますので、したがって大体学問体系にのっとることが多い。しかし、今度は現場に行きますと、現場のいろんな対象とする事象ごとに知識を整理しておかなきゃなりませんから、そういうふうにもう一遍知識を整理し直して、すぐに現場で要求されたものに対して知識が出てくるというようなふうに整理をし直すというようなことも基本的には大事です。
 加えて、技術教育ということになると思います。技術教育に関しては、けさほど申しましたように、ライセンスのない状態で教え込むのに限界がございますので、どうしても獣医師の免許を取った後で現場で診療活動を通じて教え込んであげなきゃならないということになりますと、マスプロ教育というのはちょっと無理でございまして、やはり経験豊かな方がマン・ツー・マン方式でずっと教え込んでいくということになりますから、どうしてもある期間は必要だと思います。そう短期の、数週間とかいうオーダーでは恐らく私は無理だろうと思いますし、そういう意味では、長ければ長いほどいいに決まっておりますけれども、現場の受け入れ態勢とか職場の問題とかもございますから、ミニマム六カ月以上というものは恐らく欲しいんではないか。もちろんこれは職種によっても随分違うと思いますので、一概には申せませんが。
 それから、時間が余り超過するといけませんので今のような概論でとめさせていただきますが、環境問題はおっしゃるとおり非常に大事だと思います。もともと獣医師の職域としてかなり大事だと言われているのが、環境保全にも獣医学というものは役立つんだということにあるわけですが、一方畜産業が盛んになりますと環境に影響を与える部分もございます。
 それについてはやはりかなり最大の関心事でございまして、もう既にお調べのことですから御存じのとおりで、いろいろな新しい技術、例えばバイオテクノロジーの技術などを使ってこのふん尿処理をきちんとしていこうという研究がいろんなところで進んでおります。ですから、そういうことはまだまだ問題を解決するのに十分じゃございませんけれども、今後ともそういうところに国として力を注いでいただければ大変ありがたいと思いますし、それがまた畜産が社会に広く受け入れられるというためにも必要なことだろうと思います。
 時間がありませんが、私への御質問じゃないんですが、一言だけちょっとほかの方への御質問で発言させていただきたいのは、女性獣医師の問題でございます。
 大学では今女性獣医師をたくさんつくっておりますので、女性獣医師が多過ぎると言われますと、こちらもぎくっとくるわけですけれども、私は今のように半分ぐらいの女性獣医科学生になるというのは当然だと思います。欧米では国によっては八〇%が女子学生というところもありまして、なぜか大変人気のある領域です。これをもう否定することはできないわけでして、私どもはやはり女性はどんどんと今まで男性獣医師が働いていたところへ出ていってほしい。
 今、何となく女性獣医師の行けるところは小動物領域だとか言っておりますが、それはその小動物の開業領域だけがオープンなんですね。ほかがまだまだクローズドなんです。ですからそう行くわけでして、実際の女子学生の中にはもういろんなあらゆる職業につきたいという要望がありますし、またそれをお受けになったところが女性だから困るということもあったかもしれませんが、一般にはかなり満足していらっしゃるところが多い。
 欧米でも女性獣医師が大動物の畑では非常によく活躍しておりますので、むしろ受け皿の問題だと思いますので、ほかの領域もそうでしょうけれども、新しい技術を使いながら、女性の力でも働けるような道具をつくるとかいろんな方法があるわけですから、そうやって受け入れていただけるのがいいんではないかというふうに思います。
#63
○参考人(長岡正二君) お答えいたします。
 家畜の改良技術が国際的にどのような水準にあるかというお尋ねでございますが、家畜の改良は、午前中申し上げましたように、血統、能力、体型を目安として交配と選抜を繰り返すということでございますが、この分野を担当するものが血統登録事業であり能力検定事業でございますが、血統登録事業につきましては、乳牛にあっても肉牛にあっても、恐らく先進国では最も高い普及率、登録率だろうと思います。
 能力検定事業は、乳牛につきましては先ほど申し上げましたような普及率でございますが、これについては、ヨーロッパ等では六〇、七〇%以上の普及率を見ているところがございますので、必ずしもまだ十分な普及率にはなっておりません。登録事業も普及率は高こうございますが、昨今の情勢下におきましてこの事業は大変難渋をしておるところでございますので、今後このまま推移いたしますと、我が国の遺伝子が十分に担保できるか、確保できるか非常に難しい、懸念されるところでございますが、いずれにいたしましても、熱心な農家の努力によってかなり高い水準にあるということを申し上げておきたいと思います。
 それから、交配と選抜と申し上げましたが、交配の分野がまさに午前中から申し上げております繁殖の分野でございます。これは人工授精でございますが、これも申し上げましたように、二十五年から始まった人工授精は三十年には既に九〇%を超える普及率に一挙に上がってまいりました。この普及の水準は国際的にも群を抜いた水準でございますし、今では乳牛、肉牛とも九五%以上、九七、八%の普及率を見ております。これは国際的にも非常に高い水準でございますので、それを支援いたします繁殖のまさに技術そのものでございますが、これは、申し上げましたように、受精卵移植で非外科的方法によって昭和三十九年初の子牛が誕生するというのは国際的な最初の快挙でございましたし、体外授精によって子牛を生産したというのも、またこれは世界初の快挙でございました。
 それで、今度の法律改正の大きなテーマでございます体外授精技術でございますが、この技術水準でございますけれども、私も海外で十分に学会等に出たことございませんのでわかりませんけれども、私が聞いておるところでは、海外においては、この技術が我が国において最初にウサギ卵管への仮移植を行っておったということを申し上げたんですが、海外ではいまだに綿羊の輸卵管への仮移植が行われておる、完全体外培養系がまだできていない国なり地域がかなりあるというふうにも聞いておりますし、体外授精がまだ緒についたばかりの国もあるようでございます。
 こういう状況の中で、我が国の体外授精技術は、既に完全体外培養系が確立いたしまして、凍結卵におきましても、これは詳しいことは省きますが、最も人工授精の手法に近いダイレクト法におきましても七〇%ぐらいの受胎率を上げたケースもございますので、そういう面から見ますとかなり高い水準に来ておるのではないか。それにかかわる者がこういうことを申し上げますと大変自画自賛めいた後ろめたさを感ずるものでございますけれども。
 ただ、申し上げましたように、この技術は、今このままの技術で使うだけではなくて、将来のバイオテクノロジーの基盤になる技術でございますので、ここらについては今国際的にも激しい研究の競争場裏に置かれております。この分野では畜産試験場あるいは大学、県の試験場等々で非常に精力的な研究が行われておりますが、これも国際競争に負けることのないように関係の技術者が頑張っておるというのが状況でございます、
#64
○参考人(楠元薩男君) 刈田先生にお答え申し上げます。
 第一点の広告の制限の問題でございます。広告というものは、私どもが考えておりますのは、使用者が不測の被害をこうむることを防止する観点から考えていかなくちゃならぬのではないかということでございます。そういう観点に立って考えてまいりますと、先ほど先生の方からお医者さんのことの話がございましたが、学位なり称号というものは、これは不利益を拡大させるようなことにはならないんじゃなかろうか、こういう考え方を持っております。
 第二点の、産業動物獣医師の不足の問題で、女性獣医師の活用を考えるべきじゃなかろうか、こういう私の説に対する御質問でございますが、現在、鹿児島県の家畜共済診療所には二名の女性獣医師が勤務いたしております。この二名の方々に直接会ってお話を聞くし、また広域の地区共済組合長さんと会って、この問題についていろいろ意見交換したことがございます。
 その中から申し上げますと、広域の共済組合でございますと、獣医師の数が十名とか二十名どおります。そういうところに参りますと、男性の獣医師が往診をして、そして血液を採取したり、また尿を採取したり、いろんなものを持ってまいります。そしてまたみずから、女性がおりませんので、自分がその血液の分析をし、尿の分析をし、すなわち生化学的な検査をやって、そして一つの病気の原因を探究していくと、こういうことでございますので、そういう広域的な共済組合下におきましては、やはり一割か二割の女性の獣医師をかえって入れた方が、そういう生化学的な検査の方についてはむしろそっちの方が効率的じゃなかろうかと、こういうふうな御意見等もございます。
 また、いろいろ機器が大分発達してまいっておりますので、そういう機器を使っていきますと、女性獣医師の方々の活用の場がまだまだ余裕があるんじゃなかろうかと、こういう点で。こうなってまいりますと、これはなかなか都道府県段階の共済組合ではいけませんので、国の方でこのようなことにつきましてはいろいろ検討していただきたいというふうに思います。
 実は先般、ドイツのハノーバー大学の先生をお呼びいたしまして、そして研修会をやったわけでございます。ハノーバー大学では一学年獣医師の定員が二百五十名、そのうちの八割が女性だと、こういうことを聞きまして、そういう八割の女性の中でも二〇%は産業動物分野で活躍していると、こういうことをお聞きいたしたわけでございますので、そこらあたりは我々ももっと勉強いたしまして、そして今後検討してまいりたい、かように考えております。
#65
○参考人(森田彰君) お答えを申し上げます。
 まず、第一点の診療所経営の問題でございますが、診療所経営の基本は、やはり家畜がいなければとても食べていけないものでございますから、それをどういうふうに対応するかということでございます。
 また、もう一つは地理的条件、非常に往診とか何かで条件の悪いところはなかなか時間もかかりますので、そういう問題につきましては、開業者の方々とか団体では経営はできない問題もございますので、行政的な面で何らかの措置を考えていただきたい。例えば市町村で獣医さんを置いていただくとか、家畜保健衛生所の活用とか、いろいろあると思います。
 もう一つ、お話にありました雇い上げ獣医師料が、今、獣医師の雇い上げは一万二千七十円でございますが、これは安いか高いかという問題でございまして、これは額だけ見れば安いような感じもします。ただ、比較論としましては、お医者さんの雇い上げが一万三千円でございますので、その辺から比較して御判断いただきたいと思います。
 また、家畜診療の報酬でございますけれども、御承知のとおり、家畜共済の中で診療点数で決められてございます。この診療費は、点数の中では客観的に評価して、保険給付という形の中で公平に給付しなきゃいけないということになりまして、その技術料の基本的な考え方は、獣医師に近い、当面としましては、地方公務員ですか、家畜保健衛生所の先生方の給与を基準に今の技術料を算定してございます。そういう意味ではある程度の水準は保ってございますけれども、果たして現場の診療獣医師がそれでいいのか悪いのか。六年制になりましたし、現場は非常にシビアな場面もありますし、危険な場面もございますので、その辺の評価の価値としましては、私どもとしてはまだ多少は満足してないということでございます。
 それからもう一つ、保健予防の衛生問題でございますが、これは当面私ども獣医師としましては、現場では病気になったものをいかに早く回復させるか、治癒させるかが問題でございまして、むしろ家畜、それから管理者を側面から支援する、応援する形でございます。したがいまして、基本的には管理者が看護、それから予防措置を講じなければ、これはなかなか解決しない問題でございますので、そういう意味で家畜の管理者に十分指導すること、現在やってございますけれども、まだ足りない面がございます。そういう面に、損害防止事業として私どももやってございますけれども、より一層力を入れていく場面でございますので、非常にいい方向じゃないかと。ただ、忙しさも当面はふえますけれども、将来これが徹底しますと、やはり病気も減っできますので、そういう面で解決つくんじゃないかと思っでございます。
 以上でございます。
#66
○林紀子君 きょうは、参考人の皆様には、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。私に与えられている時間が十分間とますます少なくなっておりますので、申しわけありませんが、全部の参考人の方に御質問できないことをお許しいただきたいと思います。
 私も初めにそれぞれ御質問させていただきますので、後ほど順次お答えいただけたらと思います。
 まず竹内参考人ですが、今、刈田委員から質問がございましたが、獣医師の卒後教育、生涯教育ですが、先ほど竹内先生が挙げられた二番目の現在の開業獣医師、それに対する講習会ですね、受講率が非常に悪いというようなことも伺っているわけですが、そうした問題に対する対策、取り組みというのはどうしたらいいとお考えかということです。
 次に長岡参考人にお伺いいたしますが、家畜改良事業団が発行しております「ETニュースレター」という雑誌を私も拝見いたしました。その中で長岡参考人が書いていらっしゃる論文、九〇年の三月号ですけれども、ここに、家畜改良事業団は、今後、受精卵の広域供給の任に当たらなければならないということで、各機関とその機能を挙げていらっしゃいますね。
 体外受精卵移植に関しましては、牛肉の輸入自由化に伴って畜産経営が深刻なことから、特に酪農家では移植する和牛の受精卵のうち市場評価の高い系統のものをと希望していると思います。一方、乳業メーカーや飼料メーカーでは、アメリカやイギリスの研究機関などと共同して、受精卵の凍結技術の開発なども図りまして、受精卵の製造、販売、そして肥育までを含めた企業化を推し進めようとしているのではないかと思います。事業団として、希望する農家に受精卵をどのように供給していくのか。これは質、量、そして価格の部分も非常に重要な問題だと思いますが、これをどのように安定的に供給していくのかということについてお伺いしたいと思います。
 それから、森田参考人にお伺いいたしますが、これも「臨床獣医」という雑誌のアンケートを拝見させていただきましたが、その中で、産業動物の獣医師のなり手が少なくなっている、その理由はという問いかけに、「待遇が良くない」という項目を選ばれた人が最も多い。その中で、勤務時間は適当かという設問には、共済組合の獣医師の六五%が適当ではないと答え、また「現在の収入に満足しているか」という問いには、共済組合の獣医師の三分の二が「いいえ」と答えていらっしゃる。
 先ほどもお話にありましたが、獣医学六年制になったにもかかわらず、獣医師給料表の根本的な改善がいまだになされていないという声もあるわけですが、どうした獣医師の待遇改善に関して国に要望すべき点がありましたらお聞かせいただきたいと思います。
 また、転職を考えているかという設問に対しましては、共済組合の獣医師さんが一番多くて、三割弱が転職を考えていると。それも小動物の開業獣医師として転職を考えているのではないかと思いますけれども、これについてもどう思うか、お聞かせいただきたいと思います。
#67
○参考人(竹内啓君) お答え申し上げます。
 既に臨床に従事しております獣医師、特に開業獣医師の卒後研修でございますが、これにつきましては、私、実は冒頭にも申しましたが、日本獣医師会の理事としてそういうことにも関与しておりますが、こちらでも、かなり社会への責任の上から、一人でも多くの獣医師がそういういろいろなプログラムを受けてもらいたい、そういうふうに考えております。
 そこで、今作業しておりますのは、医師、歯科医師と同じように生涯教育プログラムを日本獣医師会として考えようというふうに考えております。これは、医師、歯科医師も既にそれを始めておりますが、ある期間、例えば五年なら五年にどれだけの講習を受けた場合に、ある証明書を発行するというような形で、強制ではございませんけれども、一つの努力目標を与えているというやり方がございます。
 これによりまして、調べてみますとかなり受講者の数が上がっているんですね。ですから、現在、小動物獣医師だけではなくて、産業動物獣医師あるいは公衆衛生のために働く獣医師、そういうところのことをいろいろやっております部会が日本獣医師会の中にございますので、そういう三部会と全部連絡をとりながら、できるだけ早いうちに生涯教育プログラムというものをつくり上げて、そして従来から行われておりますたくさんの講習会というようなもの、あるいは研修会がより有効に獣医師の技術向上、知識向上に役立つようにというふうに考えておりますので、私自身もそういう考えで協力をしておりますので、希望としてはこれができるだけ早く実現して動くようになってほしいというふうに思っております。
#68
○参考人(長岡正二君) お答えいたします。
 家畜改良事業団は、凍結精液技術の普及に対応いたしまして、従来都道府県ごとに設置されておりました種雄牛センターが、都道府県ごとに設置、運営することの不合理さが技術の普及とともに出てまいりましたので、むしろこれは県域を越えて広域的に精液を配付するのがよろしかろうし、そこでつなぐ種雄牛も、後代検定によってきちんとした検定済み種雄牛を効率的に、広域的に利用すべきだということで、都道府県の出資を受ける、都道府県を会員とする社団法人でございます。
 それで、体外受精卵でございますが、これは御承知のように、肥育された牛は多くの場合大都市の食肉処理場に出荷、屠殺されるものが多うございますが、これらにつきまして、大都市の都だとか府だとか県だとかいうところが、おのおの当該県の自治体の運営によって体外受精卵処理施設をつくることは当該県をカバーするだけでございますので、これは不合理だ、むしろその県域を越えて、広域的に産地、農村に還元するのがより合理的であろうというふうな話が出てまいります。
 そういうことがありまして、私の方にむしろ食肉処理場の方からそういうお誘いがございます。それは、牛肉の輸入自由化に伴いまして、農村の肉牛生産農家ももちろん大変な脅威を感じているわけでございますが、食肉処理場の皆さん方もまた同じように大変な心配をしておられまして、早く体外受精卵をつくって、早く子牛を食肉処理場に還元するようにというふうに聞いておりますが、そういうお誘いの言葉がございますものですから、それで先生のお目にとまりましたようなものに書いたような次第でございます。
 それで、質的にあるいは量的にというお話でございますが、遺伝的にもすぐれたものといいますのは、血統が明らかで、あるいは枝肉形質がよりすぐれたものでというものを、また生物学的にすぐれたものというのは、受胎率がより高い充実した受精卵をつくるべく、今研究に没頭しているようなわけでございます。
 そういう状況でございますものですから、ルーチン的に今どれだけの量が生産してこなせるのか、あるいはその場合に価格はどうなるのかというふうなことについて、私たちはまだ十分なものを持ち合わせていませんものですから、大変申しわけございませんが、いずれにいたしましても、農家の採算が十分とれ、農家にメリットのあるような価格にしなければならぬ。そのために今精いっぱい研究をして技術向上に努めているというのが現状でございます。
#69
○参考人(森田彰君) お答えします。
 まず、第一点の待遇が悪いという問題でございますけれども、全国的に見ますとそういう声が大きいわけでございますが、私ども北海道に限ってしかわかりませんので、北海道に限って申し上げますと、初任給は道の家畜保健衛生所の獣医さんの一号から二号俸上をとってございます。全道平均の共済団体の獣医さんの給料、平均年齢が三十八歳で八百万以上になっておりますので、まあまあほどほどじゃないかなという感じはしてございます。
 ただ、第二点の勤務時間、これは非常に厳しいのが実態でございますし、また一人当たりの獣医さんの頭数もふえてきまして、その辺で診療の合理化を図っているわけでございますけれども、ただ、休日等につきましては、全道平均の獣医さん八十八・五日とってございますので、これもまあまあじゃないかなと思っでございます。
 収入に満足しているかどうか。これは、満足する方がなかなかそれはいらっしゃらないんじゃないかと思いまして、このアンケート程度じゃないかなと思っでございます。
 さらに、獣医師法の給与の改善で国に要望するものがあるかということでございますが、診療点数の引き上げは別に置きまして、私どもの獣医師の格付、国家公務員の給与表にもございませんし地方公務員の給与表にもございませんで、近いということで医療職(二)に準拠しているのが実態でございます。そういう意味では、獣医師独自の給与表をつくっていただければ、これまた獣医師の評価がさせていただけるんじゃないかと思ってございますので、その辺のお願いが一つございます。
 転職を考えているのが多いじゃないかという実態でございますが、北海道で七百七十五名の獣医がございまして、平成二年度にやめた方が三十六名ございました。定年の方が九名、道内で組合間の異動が七名、道外にお帰りになった方は十名でございます。あと道内で大動物、小動物開業が六名でございます。亡くなった方もいらっしゃいます。そのほか海外協力隊に行った方もございますので、実際には余りその余動いてはいないんじゃないか、むしろ定着している。私もずっと就職の方の担当も経験しているわけでございますけれども、最近むしろ落ちついているのが実態じゃないかということで、北海道の実情でございますので、そういう意味で御報告申し上げます。
 以上でございます。
#70
○喜屋武眞榮君 御四名の今御意見を承りまして、私はこの三法が実現しましたら皆さんの御苦労が報われる、のみならず皆さんの希望と夢が実現するんだ、こういう御期待を持っていらっしゃるということがお聞きした私の結論でございます。
 まず、そのことを申し上げまして、私も十分しかございませんので、御四名にお聞きする時間を持ちませんので、特に私がこれからお聞きしたい問題と結びつけて、御関係が深い方は長岡参考人と森田参考人じゃないかなと私は判断しましてお聞きするわけです。もしその内容が、ということは皆さんのお話にはございませんでしたので、もしこのお二人以外の適当な方がということでありますならば、どうぞまたお答えいただけば大変ありがたいと思っています。
 まず第一点は、今回の法改正によって、家畜の改良増殖ですね、その内容としまして体外受精卵の技術の開発で実用化が急速に進展しておる、こういうことをお聞きしておりますが、その体外授精の技術が今はまだ緒についたばかりだと私は受けとめておりますが、これが普遍化していきますと、日本の家畜の今後は、増殖は体外授精の技術をどんどん広げていって家畜の発展に寄与されるのであるか、それは試験的にという意味であるのか、この点お聞きいたしたい。
 第二点は、第一点は長岡参考人ということに私はしておりますが、次は森田参考人にお聞きしたいことは、家畜の盛衰はよくするのも壁にぶつかるのも飼料の問題であるということをよく聞かされ、また私もそう理解しております。
 その飼料には大きく分けて粗飼料と濃厚飼料があるわけですが、その粗飼料と濃厚飼料で養った場合に、その結果として家畜の健康と発育の面から粗飼料と濃厚飼料がどのように影響しているのであるか、どっちがいいのであるか、どうなっておるのであるかという点を、実際の衝にタッチしておられる権威ある皆さんでございますので、ひとつお聞かせいただけたらと、こう思っておりますので、よろしくお願いいたします。
#71
○参考人(長岡正二君) お答えいたします。
 この法律の改正が、体外授精技術の発達に伴いまして、体外授精技術が使えるような規定をつくるということでございますので、私が朝来体外授精に非常な力を入れて説明をさせていただいておるわけでございますが、ただ繁殖の方法が体外受精卵の移植に取ってかわるということにはならないのではないかなというふうに思います。多分、人工授精があくまでも主流をなすものでございますし、それから体内受精卵もまたその特質がございますから、恐らく体内受精卵が乳牛、肉牛とも使われていくでございましょうし、体外受精卵は、何と申しましても雌牛が屠殺されるということが前提でございますので、これもまた老齢牛になりましてから出てまいりましたのでは卵巣がほとんど機能が終わっているものでございますから、未熟卵しかとれてまいらないということもございますので、今のところとれます受精卵が新鮮な正常卵でせいぜい二個程度でございますが、この技術が発達してまいるという片方に期待もございますけれども、また片方では、夏季あるいは地域によっては十分に卵巣が働いていない状況で屠殺されることもございますし、それから成熟しないまま肥育に入る年もございますので、正常卵がそれほどにとれない個体もまたございますのでございますから、総量としてそれほど大きな量は出てこないのではないかなという感じ丸いたします。
 ただ、技術でございますので、どの程度発展するか予測しがたいところもございますが、現状の水準から考えますと、恐らく人工授精があくまでも主流であって、体内受精卵がそれを補い、かつ体外受精卵は、申し上げましたように捨てられておった資源がもう一回活用できる、その活用できる技術がまた申し上げましたような特性を持っておるということでございますので、その有効利用をするためにということでございますが、あくまでもこれは第三の技術ではないかというふうに私は思っております。
#72
○参考人(森田彰君) 私は、飼料の方の専門じゃございませんので余り詳しくわかりませんが、牛は四つの胃があって、やはり生理的にも粗飼料で賄うのが一番いいと思います。
 ただ、良質の粗飼料を確保するということは大変今のときに難しいもので、天候の問題もございますし、土地面積の問題もございまして、それで十分賄い切れないのが実態じゃないかと思います。その分を濃厚飼料で補っているんじゃないかと思っでございます。濃厚飼料を多給しますと無理が来ているのが実態でございますので、その辺は楠元先生の方がむしろ詳しいんじゃないかと思いますので、大変申しわけないんですけれども、楠元先生に……。
#73
○喜屋武眞榮君 よろしく。
#74
○参考人(楠元薩男君) お答え申し上げます。
 私もなかなか勉強不足でございますが、先ほど申し上げましたとおり、一応畜産試験場、種畜場を含めまして十五年間牛と一緒に生活をいたしましたので、そういうところでの一つの感想的なものとして申し上げますならば、やはり草食動物でございます。また、草食動物でございまして、草を食べて、それを胃の中で反すうし、それで胃の中のバクテリア、微生物ができまして、それがたんぱく質に変わって肉になり乳になる。こういうことでございますので、先ほど申し上げました健康的という点から申し上げますと、これがまた草食動物本来に帰るということは極めていいと思いますけれども、今度は発育という点で見ますと、私どもがいろいろ試験研究の段階で比較試験をやってみますと、カロリー計算、またたんぱく計算、それをいたしますと、それだけの養分を粗飼料だけで食べてもらうということはとても牛が困難でございます。そういう点で、やはり草を主体にして、穀物、またそういう濃厚飼料を従にする、そういうふうな行き方というものは特に家畜の場合の繁殖牛については必要じゃなかろうか、かように考えております。
#75
○委員長(永田良雄君) 以上をもちまして参考人の方々に対する質疑は終わります。
 参考人の方々に一言御礼を申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席いただき、長時間にわたり有意義な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。
 本日の審査はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時十七分散会
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ソース: 国立国会図書館
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