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1992/04/23 第123回国会 参議院 参議院会議録情報 第123回国会 外務委員会 第7号
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1992/04/23 第123回国会 参議院

参議院会議録情報 第123回国会 外務委員会 第7号

#1
第123回国会 外務委員会 第7号
平成四年四月二十三日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月二十二日
    辞任         補欠選任
     大島 慶久君     岡部 三郎君
     宮澤  弘君     石渡 清元君
     堀  利和君     矢田部 理君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         大鷹 淑子君
    理 事
                成瀬 守重君
                山岡 賢次君
                松前 達郎君
                高井 和伸君
    委 員
                石渡 清元君
                岡部 三郎君
                久世 公堯君
                原 文兵衛君
                久保田真苗君
                田  英夫君
                堂本 暁子君
                矢田部 理君
                黒柳  明君
                立木  洋君
                猪木 寛至君
   国務大臣
       外 務 大 臣  渡辺美智雄君
   政府委員
       外務大臣官房審
       議官       川島  裕君
       外務大臣官房審
       議官       畠中  篤君
       外務省アジア局
       長        谷野作太郎君
       外務省中南米局
       長        寺田 輝介君
       外務省欧亜局長  兵藤 長雄君
       外務省中近東ア
       フリカ局長    小原  武君
       外務省経済協力
       局長       川上 隆朗君
       外務省条約局長  柳井 俊二君
       外務省国際連合
       局長       丹波  實君
       水産庁長官    鶴岡 俊彦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        辻  啓明君
   説明員
       外務大臣官房審
       議官       野村 一成君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○北太平洋における溯(さく)河性魚類の系群の
 保存のだめの条約の締結について承認を求める
 の件(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(大鷹淑子君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨二十二日、大島慶久君、宮澤弘君、堀利和君が委員を辞任され、その補欠として岡部三郎君、石渡清元君、矢田部理君がそれぞれ選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(大鷹淑子君) 北太平洋における湖河性魚類の系群の保存のための条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○松前達郎君 サケ・マスの漁獲の問題については、以前から特に北太平洋のサケ・マス漁業についていろいろと問題が多かったわけでありますが、これに関しても実はこの法案の内容の質問に入る前にその前段として私ども関係しておりましたシンポジウムがずっと行われてきたのです。これは資源減少の問題とその減少をどう防ぐか、増殖を大いにやりながら資源をとっていく、そういう意味のシンポジウムであったわけですが、このシンポジウム、実を言いますと日ソ間といいますか学者間で既に日ソ培養殖シンポジウム、こういうタイトルで八回ほど行われてきたわけです。
 その中でいろいろと議論されたのは、サケ・マスの培養殖の問題だったわけなのですが、その後その日ソ間のシンポジウム、学者間のシンポジウムがさらに発展をいたしまして北太平洋水産増殖シンポジウム、こういうふうに発展をしてまいりまして、一九八〇年八月に第一回のシンポジウムが行われたわけであります。場所はアラスカのアンカレジ、それからオレゴン州のニューポート、さらにワシントン州のシアトル、ここで開催をされました。参加したのは日米加ソの四カ国ですから、まさに今回のこの条約の対象国ということになるわけであります。
 日本以外からはアラスカ大学ですとかあるいはオレゴン大学、ワシントン大学、そういう大学の学者、特に海洋関係の学者、漁業関係の学者が集まりました。カナダ漁業海洋省も出席をしましたし、またソ連の漁業省、今はもうソ連の漁業省はないのですけれども、こういうところから約百二十名ぐらい集まったシンポジウムですから、シンポジウムとしては非常に大きなシンポジウムだったと思います。そのほかワシントン州の漁業局あるいはサハリンのカリニンスキーふ化場というのがありますが、そこからも参加しましたし、アラスカ州の漁業局からも参加しました。いろいろな面で総合的なシンポジウムだったのじゃないかと。これは実は一回で終わったのじゃなくて第二回も行いました。その後、ソ連邦が崩壊をしましたので相手がどうもどこだかわからなくなってくる、特にロシアの場合。そういうことで今のところ中断をされているのですが、そういったようなことも含めて今回の条約というのがある程度進行した面もあるのではないか、こういうふうに私は思っておるわけであります。
 ですからサケ・マスに関しては、とりわけ最近はどうもサケ・マスが相当漁獲量が多い、そしてしかも倉庫に眠っている分も大分ある、そういう状況にまでなってきまして、全般的に言うとサケ・マスの資源というのはどんどん減っているということはないのですね、増殖、養殖が盛んに行われるようになりましたから。そういうものを含めていわゆる母川国という問題が非常に重要になってきたということだろうと私思うわけであります。そういうことを踏まえてきょうの条約について質問をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、全般的な問題として我が国の漁業の動向、それから外交面で漁業をどういうふうに位置づけていくかという面、この二つについて質問させていただきますが、一九九一年度の漁業白書によりますと、我が国は一九八九年に漁獲量世界一の座を中国に明け渡した。一九九〇年には旧ソ連にも抜かれて世界第三位に転落した。これは漁獲量が多いから何も自慢するわけじゃないのですが、そういうふうな状況だという報告が行われております。この背景を見ますと、我が国近海での漁業資源が最近とみに減少している、そしてまた同時に環境保護の問題あるいは資源保護、こう
いった問題を基本とする公海での操業規制が一段と強化されてきた、こういうことがある程度影響しているのじゃないかというふうに思うわけであります。
 本日議題となっています北太平洋の資源保護条約、溯河性魚類、これはサケ・マスということになろうと思いますが、これについては大正初期以来八十年にわたって、先ほど申し上げたように、いろいろ問題があった。我が国が開拓してきた北洋サケ・マス漁業、なかんずく公海での漁業、沖取りといいますか、これに終止符を打つような内容のものであると思います。環境保護ですとか資源保護の問題、これは非常に重要な問題ですが、これらの国際的な機運も高まってきております。これらを考えますときに、この条約が今後どういう役割を果たしていくかというものもおのずから鮮明になってくるのじゃないか、こういうふうに思います。
 先ほど挙げました漁業白書では、遠洋漁業の存続を図るためには公海漁業資源の適正な管理それから合理的な利用、こういったものが図られなければならない、こういうふうに指摘しているわけですが、政府としては、遠洋漁業の現状、特に我が国の遠洋漁業の現状、動向をどういうふうに把握されているのか、また認識をされているのか。さらに近年の漁業外交等も含めてどういう方針で今後臨まれようとしているのか。これについてまずお伺いしたいと思います。
#5
○政府委員(鶴岡俊彦君) 日本の漁業は、御案内のように、技術の発達に従いまして沿岸から沖合、沖合から遠洋ということで発展してまいりまして世界に冠たる漁業国ということになっていたわけでございます。ところが、今、先生御指摘のように、五十年前後から二百海里体制が世界的にしかれたという中で外国沿岸水域でやっておりました漁業につきましては撤退を余儀なくされたわけであります。そういう中で我が国周辺水域の資源の開発に全力を挙げてやってまいりましたし、また公海漁業につきまして、我々の調査機関を動員しまして新しい漁場の開発でありますとか新しい漁港の開発ということに努めてまいりまして、五十二年の二百海里制定以後も一千万トン台を超える漁獲を上げてきたわけでございます。
 ただ、最近になりまして、サケ・マスの問題あるいは公海におきます漁獲努力量が資源を上回るというようなことから、底魚についての漁獲が減少する、あるいはまたそれ以外の我が国周辺水域におきますイワシ等の多獲性魚種の生産が漸減するというようなことで、残念ながら内水面漁業その他において漁獲量を伸ばしてきた中国に座を明け渡したということは事実でございます。
 我々といたしましても、我が国周辺水域というのは世界に冠たる漁場でありますので、それを最大限に利用するために漁場の整備でありますとかあるいは栽培漁業、養殖漁業、そういうものにつきまして技術開発その他をやりながら周辺水域の高度利用ということに努めていくのがまず第一かと思います。
 第二番目は、残されております公海におきます漁業を安定させていく。これは資源に見合って各国の漁獲努力量が増加しているという現実を踏まえますと、やはり国際的に漁業国の間あるいは沿岸国との間で協調しながら国際的な漁業の管理を行って安定的な漁業を進めていくということが基本でなかろうかと思います。そういう点、それからまた相手の二百海里内につきましては合弁その他によりまして入漁等を、あるいは合弁を確保していくということから漁業協力を進めていく必要があろうかと思います。
 そういう公海におきます漁業の新しい枠組みの設定でありますとか相手の二百海里内における協力事業を通じまして、入漁とか合弁とか、そういうことでできるだけ我が国漁業の安定的な漁場の確保あるいは漁業生産の維持ということに努めていきたいというふうに考えております。
#6
○松前達郎君 それでは、今回の条約作成の交渉経過についてお伺いしたいのですが、一九九〇年十月カナダのオタワにおける第一回会合からスタートした、こういうふうに伺っているのですが、既にソ連は一九八八年日ソ漁業合同委員会で、サケ・マス沖取りの禁止を一九九二年からやるということで表明をしてきたのですね。同じく一九八八年に米ソ包括的漁業協定の締結、そしてまた米ソ両国が今回の条約作成を中心となって進めてきた、こういうふうに聞いているのです。
 交渉がどうも米ソ主導のペースで行われてきたような感じがするわけですが、最初の米ソ作成の条約草案、これは公海のみではなくて二百海里水域内でのサケ・マスの漁獲規制まで盛り込まれていたというふうに聞いておりますけれども、米ソの提案というのは最初の原案としての提案は一体どういうものであったのか、また我が国がそれに対してどういうふうに対応してきたのか。これは交渉の経過になりますけれども、この点について説明をお願いしたいと思います。
#7
○政府委員(川島裕君) お答え申し上げます。
 公海におきますサケ・マス漁業は、御承知のとおり、日米加の漁業条約とそれから日ソ漁業協力協定、この二つの枠組みの中で従来行ってきて、そして実態的にはロシア系、前のソ連系でございますが、のサケ・マスを漁獲してきたわけでございます。しかしながら、最近の漁業資源の保存という国際的な高まりがございまして、特に今まさに先生が御指摘になりましたように、ソ連が年々我が国に対するサケ・マスの漁獲割り当てを減少させて、九二年以降つまりことしからは公海におけるサケ・マスの漁獲は認めないという立場を明らかにしてきたわけでございます。こういう中で、それでは北太平洋の公海におけるサケ・マスの保存をどういうふうに新たな枠組みでやるかという動きが出てきたわけでございます。
 御指摘のとおり、米ソが最初一緒になっていろいろな考え方を出してきたわけでございます。その時点では実は二百海里の中でもサケ・マスの混獲を防ぐために、つまりよその国から泳いできたサケ・マスが他の国の二百海里の中へ入ってきたときもそれをとらないようにする、なるべく川のそばでとれば混獲がないわけですから、そういう二百海里の中、具体的に申しますと五十海里から外側ではサケ・マスの漁獲はやめようではないかという案が出てきたわけでございます。これに対しまして私どもは、引き続いて二百海里の中でサケ・マス漁業をどうやって存続させるかということを念頭に置いていろいろ対応いたしまして、そして日米加ソ、今はロシアになりましたけれども、何回か交渉が行われまして、その結果できたのが今の条約でございます。
 そのポイントは、二百海里の中でも規制をするということはこれは断固断る、どのみちこの条約の有無にかかわらず公海におけるサケ・マスの漁獲というものがことしからなくなるのが見えてきたものですから。それからもう一つ、他方これも先生御存じのとおり、日本のサケ・マス、日本から出ているサケ・マスが相当公海にも出ているので、これをとらせないという意味で母川国としての意義はあろうかということ等を考えまして、二百海里の外側つまり公海においては漁獲禁止に応ずる、こういう枠組みに合意するに至った次第でございます。
#8
○松前達郎君 今回の条約が発効した場合、これは発効するでしょうけれども、これと従来の条約との関係ですが、漁業に関する条約をずっと調べてみますと四つぐらいあるのですね、もう既に失効したのも含めて。
 米国その米国地先沖合漁業協定、これはもう今ないですね。これはいかがでしょうか。一九九一年十二月三十一日までと書いてありますから恐らく今はなくなって失効していると。それからソ連邦との日ソ地先沖合漁業協定、これは一九八七年の十二月三十一日までですからこれもまた失効しているということですね。
#9
○説明員(野村一成君) 御指摘の地先沖合のソ連邦との間の協定については、現在も存続をしております。
#10
○松前達郎君 それからソ連邦との漁業協力協定、さらに日米加漁業条約の改正議定書といろい
ろありますね。こういったものと今回の北太平洋溯河性の条約、サケ・マスの条約との関係。日米漁業協定は昨年末で失効したということだと思うのですが、そうなりますと米国との漁業に関する二国間の関係、これについては今後どういうふうに規律されていくであろうかという問題。また、日米協議が今後また行われると思いますけれども、そういったような場についてどういうふうに設定されていくのか。こういった今まである協定との関連、これは一体どうなるのでしょうか。
#11
○説明員(野村一成君) お答えいたします。
 今回御審議いただいておりますこの条約、我が国の漁船によります公海のサケ・マスの漁業に関係するものでございまして、それにつきましては日米加漁業条約とそれから先生今御指摘の日ソ漁業協力協定、その二つの枠組みのもとでソ連系のサケ・マスを日本の漁船が捕獲してきたと、そういうことでございます。したがいまして、その二つの条約との関係について御説明させていただきたいと存じます。
 まず日米加漁業条約でございますが、この条約によりまして設立されておりました北太平洋漁業国際委員会というのがございます。この委員会が、もしこの条約が発効するという段取りになりますと新しい条約のもとで設立されます北太平洋溯河性魚類委員会というのが出てくるわけでございますが、その任務、目的とするところが重複することに相なります。したがいまして、この日米加漁業条約に基づく委員会というのが北太平洋溯河性魚類委員会によってとってかわられるというそういう関係に相なるわけでございまして、そういうことからアメリカが、ことしの二月二十一日でございますが、日米加漁業条約の十二条に基づきまして終了の通告を行っております。この日米加漁業条約、一カ国でもそういう終了通告を行いますと終了するという仕組みになっておりますので、厳密に申しますと来年、平成五年二月二十一日をもって終了するということに相なります。
 次に、日ソ漁業協力協定でございますが、この協定の主な目的は、御案内のとおり、北太平洋の公海におきます我が国漁船によるロシア系サケ・マスの漁獲の確保にあるということでございます。したがいまして、今御審議いただいております条約の発効の後は、今までの日ソ漁業協力協定が果たしてまいりました非常に大きな意義と申しますか意味の一つが失われることになるというのは否めない事実でございます。
 他方、この日ソ漁業協力協定を読みますと、それ以外つまり北太平洋の公海におきますサケ・マスの漁獲以外についての条項も幾つかございまして、例えば自分の二百海里内に回遊いたします相手国の起源のサケ・マスの保存、管理についての協力ということで二条の六項が設けられておりますし、また科学的調査等についての一般的な協力の規定もございます。そういったことからこの日ソ漁業協力協定につきましては、もしこれを存続させるということになったといたしましてもかなりの大きな意義は失われてはおりますけれども、一定の役割を果たし得るものかなというふうにも考えられます。
 いずれにしましても、今回御承認をお願いいたしております条約が発効する段階になりますと、この日ソ漁業協力協定、今後どういうふうにこれを取り扱っていくかにつきましてはロシア側の意見も聞きながら検討していく、そういうことに相なろうかと思っております。
#12
○松前達郎君 これは二国間の協定ですから、それぞれいろいろな面について今後両国間で検討していくということに理解していいと思います。
 我が国の二百海里内におけるロシア系サケ・マスの漁獲ですね、魚は動くものですからなかなかはっきりしたあれがよくわからないのですけれども、その捕獲と、それからロシアの二百海里内での我が国のサケ・マス漁船の操業問題、さらに日ロの合弁事業、こういうものが恐らく今後今おっしゃったような中でまた改めて討議されていく、そう思うのです。ロシア二百海里内におけるサケ・マスの漁獲合弁事業というのはこれは今後継続されると思いますが、漁業協力費というのを必ず要求してくるのですね、必ず問題になってくる。それから合弁事業の安定性等の問題いろいろあると思うのですけれども、こういう課題が大きな課題としてまだあるのじゃないか。
 日ロのサケ・マス合弁事業の現状というのは一体どういう状況なのか、おわかりになっている範囲で結構ですが、お答えいただきたいと思います。
#13
○政府委員(鶴岡俊彦君) 今、日ロ間の協力協定に基づきます事業につきましては外務省からお話があったわけでございますけれども、公海部分についての協議はなくなったわけでございますが、日本の二百海里の中に来遊しますロシア系のマスの漁獲につきましては、これは去る三月に行われました日ソの合同委員会の中で、ことしの漁獲量につきまして二千八百十九トン、それから漁業協力費につきましては四億四千四百万ということで協議ができたわけでございます。
 また、ロシアの二百海里内におきます入漁につきましては、これはあわせてその委員会におきまして一万五千五百トンの数量につきまして妥結を見まして、それに基づきまして民間ベースで入漁料その他につきましての協議を行って、既にそれを終えております。
 それからこの協力協定と関係はございませんけれども、日ソ間の合弁事業につきましては、現在私どもが把握しておりますのは約十六ケースぐらいの事例がございます。大別しますと、サケ・マスふ化場等を建設しましてふ化放流事業を実施する、それに見合ってそれに出資しています日本側の業者が漁獲の割り当て量をもらうというようなケースの合弁企業が三企業ございます。また、ニシンとかかずのこ等ソ連水域におきます水産物の加工販売等を行いますような形の合弁企業が六ケースございます。それからまた、毛ガニとかエビとかタラとかソ連水域におきます水産物を直接漁獲する形の合弁会社が六ほどございます。
 いろいろな資源の状態その他、こちらの経営状況その他を見ながら、民間ベースでそれぞれ話し合いを行ってそういう合弁企業をつくって対応しているわけでございますけれども、私ども水産庁といたしましてもできるだけ操業が円滑にいくように対応していきたいというふうに考えております。
#14
○松前達郎君 今おっしゃいました合弁事業の展開されている地域、場所はどの辺が多いのでしょうか。
#15
○政府委員(鶴岡俊彦君) ちょっと今、全部どこというのは申し上げられませんけれども、サケ・マスふ化場の建設、ふ化放流事業を実施しているのはカムチャツカ半島の周辺、カムチャツカ半島に多いというふうに理解しております。
#16
○松前達郎君 サハリンといいますか樺太ですかね、その辺にはないのですか。それとあと北方領土あたりはそういう可能性あるのですか。その辺はどうでしょうか。
#17
○政府委員(鶴岡俊彦君) サハリンにもピレンガ合同ということで、ここのふ化場の建設につきまして二カ所ございます。それからあと、スケトウダラの加工販売等の合弁会社もサハリンにあります。それから北方四島周辺水域ではそういう形態は認めておりません。
#18
○松前達郎君 日ロの合弁事業というのは非常に大きな意味があるような気がするのです。サケ・マス漁業者だけの問題ではなくて、日ロ間の友好関係、協力関係を推進するための一つの大きな目玉にもなるだろう。それが直接ではないかもしれませんが、北方領土の問題の早期解決にも一つの問題として提起されていくはずですから、漁業先進国である我が国としまして、技術的に非常にすぐれているこういった培養殖関係の技術というものを生かしながら、漁業分野におけるロシア連邦に対する協力、これを展開しながら日ロ関係の進展を図るというのも一つの問題点であり一つのテーマである、こういうふうに思うのですが、この辺、外務大臣、どういうふうにお思いでしょうか。
#19
○政府委員(鶴岡俊彦君) 確かにソ連水域、資源
的に日本にとって関心がある水域であることは事実でございます。
 こういう格好で合弁事業につきましてお互いの間で納得できるような話し合いになればそれを進めていきたいと思いますけれども、ただ経済的な物の見方といいますか、例えば販売その他、魚の価値の評価とか、いろいろ今までの経済的な仕組みの違いからなかなか折り合えないところがございます。そういうところを徐々にほぐしながら、資源の実態に見合った、あるいはこちらとしても採算ベースに乗っていく、それがまた日ロの関係の友好関係を促進していくということであれば、そういう方向で進めていくことが重要なことではないかというふうに考えております。
#20
○松前達郎君 漁獲問題だけじゃなくて加工もあるのですね。特にロシアの加工技術というのはそんなに上手じゃないですね。缶詰にして出したりいろいろやっていますけれども、そういったようなことでの協力体制、それを日本が今度食料として買うという問題もあるでしょうし、そういった経済的な面も今後出てくると思いますので、何かそういうふうなものもひとつ考えながら、いずれ展開されていくであろう、外務大臣が今度ソ連へ行かれて展開されるであろう北方領土の問題でこれを少し頭に置いておいていただければいいのではないか、そういう意味で質問させていただいたのです。
 さて、そこで条約の中身ですが、第三条で資源保護という問題が挙げられているわけです。資源保護の観点からサケ・マスの混獲を可能な限り最小のものにしていきたい、こういうふうなことがこの三条にあるのですね。漁業白書によれば、その混獲ということを全くなくすのは不可能であるということが述べられているのです。科学的な論議がなくて漁業規制を実施する場合には漁業の存続を否定することにもなりかねない、こういうふうに記載されているのです。これはイルカとか海の鳥などを念頭に置いたのじゃないかと思うのですが、サケ・マスの混獲の問題についても恐らく似たような指摘が行われているのじゃないか。国連決議では公海流し網漁の規制が行われる。
 今回の条約ではサケ・マスの混獲の最小化のためにどのような方法をとるのかというのが一つ問題になってくると思うのです。聞くところによりますと、混獲して、混獲の結果として揚がってくるサケ・マスを死んでいても生きていてもとにかく海に戻すのだというふうな話も伺ったのですが、そうなのですか。
#21
○政府委員(鶴岡俊彦君) 私どもの漁業白書をよく読んでいただいておりますことをまず感謝申し上げたいと思います。
 サケ・マスの混獲は、私どもの白書だけでなくて、漁業国は網漁業につきまして主たる魚が回遊しているところで漁業を行うわけでございますけれども、どうしても混獲避けられない。これは日本だけではなくて、アメリカ、ソ連、いずれの国もそういうものについて理解があるわけであります。だから三条におきましては、混獲はやむを得ないということが前提で、「可能な最大限度まで最小のものにとどめる」というふうにされていると理解しております。
 我が国がこの条約区域で行っております漁業のうち、サケ・マスを混獲する可能性のある漁業としましてはイカ流し網漁業が考えられるわけでございますけれども、イカ流し網漁業につきましてはサケ・マスの採捕を禁止しているというようなことでございまして、サケ・マスの回遊状況に応じましてサケ・マスを混獲しないように時期によりまして操業区域を変更しているということでございます。
 それからなお、公海のイカ流し網漁業につきましては、御案内と思いますけれども、国連総会の決議に基づきまして本年末で停止するということにいたしております。それからその他の漁業につきましてはサケ・マスの混獲はほとんどないと思いますけれども、混獲の可能性が否定できないのがベーリング公海におきますスケトウダラ漁業等において考えられるわけでございますが、これらにつきましても採捕を禁止しております。
 これらの措置によりましてサケ・マスの混獲を最小化にし得る、よその国から批判を受けるようなことはないというふうに承知しているところでございます。
#22
○松前達郎君 混獲の問題は、非常に厳密に規制といいますか、なかなか難しいと思うのです。
 今回の条約については、べーリング海の公海におけるサケ・マスの沖取りから撤退するという結果になると思うのですね。それでまた同時に、他の魚種についても米国から規制強化策が出ているというふうに聞いているのですが、とりわけベーリング海におけるスケトウダラの漁などの規制を強化する、これはアメリカ側がそういうことをどうも言っているようであります。このような状況についての政府の今後の見通しというのはございますか。
#23
○政府委員(鶴岡俊彦君) 水産資源は、資源の再生産に見合って保続する限り永続して漁獲ができるわけでございます。漁業の安定のためには日本の周辺水域あるいは公海あるいは相手の二百海里内を問わず資源調査をきちんとやって、それに見合って漁業活動を行っていくということが肝心だと思っております。
 昭和五十二年ごろから二百海里体制がしかれ各国の二百海里の中から遠洋漁業が締め出されたというふうなことで、残されております公海を目指して各国がいろいろな調査その他で漁業活動を展開したわけでございますが、ベーリング公海におきますスケトウダラ漁業につきましては、一九八六年ごろから本格的に開始されまして、日本は比較的早く行ったわけでございますが、韓国その他の漁業国の漁船が多数参入したというようなことで、一九八八年には全体で百五十万トン近くの漁獲が行われたわけでございますけれども、その後急激に漁獲量が減少したわけでございます。
 これは米ソの沿岸国がそういうことを踏まえまして極めて危機感に立って、一九九一年ごろからこの漁場での漁獲を制限すべきであると。その後の推移が百五十万トンから九十万トン、さらに四十万トンということで急激に漁獲が減少した、今後もその回復が望めずに、さらに今のまま続ければ減少の方向をたどるのではないかということで、米ロ、沿岸国は、東亜海域のスケトウダラ漁業につきましてモラトリアムにすべきではないかということで、昨年、沿岸国、漁業国が集まって数回にわたって論議を行ったわけでございます。
 我々漁業国側は、資源に見合って漁獲努力量を削減することが必要であろうが、モラトリアムというのはいささか問題ではなかろうかというようなことで論議を重ねたわけでございます。また、ことし四月になりましてもさらに議論したわけでございますけれども、沿岸国、漁業国側の具体的な結論を得ずに、さらに八月に第五回の関係国会議を開催するということになっておるわけでございます。
 いずれにしましても、あそこの資源量の急減というのは、これは沿岸国側ではなくて我々漁業国側にとりましてもあそこで永続的に漁業生産を続けていく場合に考えるべき重要なことであろうということで、沿岸国と漁業国の間で共通の認識に立って資源管理を行っていく必要があるのではなかろうかという立場に立って論議を進めているわけでございますけれども、資源の急激な減少ということを踏まえまして米ロのモラトリアムに固執する意向というのは強くて、今後とも話し合いというものはそう容易ではないというふうに理解しておるわけでございます。
 ただ、冒頭申し上げましたように、やっぱり資源に見合った漁業をやっていくというのがこれはいずれにしましても基本であろうかと思います。そういうふうなことで今後とも対応をしていきたいというように考えております。
#24
○松前達郎君 今まで日本の漁業に関する政府の対応というのは、どうもよその国から非常に厳しいことを言われるとそれを何とか緩和しながら一つ一つ乗り越えてきている。それでもだんだんと後退せざるを得ない。これは資源の保護から言え
ば当然そういうことになるのですけれども、もうちょっと科学的な調査を進めてちゃんとした論拠を持ちながら交渉に当たるようなことをやりませんとなかなか交渉のイニシアチブもとれないような感じがするのです。その辺はひとつしっかりやっていただきたいと思うのです。
 ここで、ちょうど大西洋におけるクロマグロの例が全く同じですね。そういうようなことなので、そういったようなこともこれから大いにやってもらう。そうしないと最後になるともう全然漁業がなくなっちゃうのじゃないですかね、このままいくと。そうなると困りますから、やはりつくればいいのですね。資源を保護してそれを再生産ができるシステムがどういうふうなシステムかも考えて、資源保護あるいは資源保護のもとにおける漁獲というものをバランスとれたものにしていけば私は説得性があるのじゃないか、こういうふうに思うので、これには科学的な調査というのがどうしても必要になってくると思いますので、これらをひとつ今後大いに力を入れていただきたいと思うのです。
 そこで、ベーリング公海では台湾ですとかポーランドの漁船がスケトウダラの漁に従事している。これも知られておりますし、溯河性の魚類といいますか、これについても中国、韓国、北朝鮮などもそれに該当、たくさんの量じゃないかもしれませんが、多少該当している。
 今回の条約は四カ国での締結ですが、これに対して今申し上げたような国々を何とか勧誘しなきゃいけない、そういうことになろうと思います。ですから、締約国になっていない関係諸国に対して今後大いに働きかけなきゃいけないと思うのですね。そうしないと、四カ国だけが一生懸命やったって横から来てぼんぼんとられたのでは話にならない。だから、こういうふうなことで注意を喚起していくということと、条約に入ってもらえばなおいいのでしょうけれども、これらに対してどういうふうに働きかけるおつもりなのか、この点、計画がありましたらひとつお聞かせいただきたい。
#25
○政府委員(川島裕君) 先生御指摘の点、まさに交渉の過程で各国の念頭に非常に強くあった点でございます。
 中国、韓国等はこれは母川国として、量的にはよくわからないのですけれども、サケがさかのぼっている川があるという意味では母川国でございます。それからそういう母川国の立場の国のみならず、今おっしゃいましたポーランドとかそれ以外の国が公海に入ってきてサケ・マスをとるということになったら何のためにこれをつくったかわからないわけですから、行く行くはこの四カ国以外にいろいろな国に公海でのサケ・マスの漁獲停止、混獲を最小限度にとどめるという枠組みに入ってもらわなきゃならぬという強い問題意識がございます。これは行く行くこれが発効いたしましてからの四カ国共通の課題になろうかと思っております。
#26
○松前達郎君 これも日本だけじゃないわけですから、これに加入している条約締約国共同してひとつなるべくそういうことを積極的に展開していただきたいと思います。
 それから今回の条約の中に北太平洋溯河性魚類委員会というのが大分たくさんのページを割いて記載されているわけです。この委員会についてお伺いしたいのですが、この委員会の活動及びこの委員会に我が国がどういうふうに参加していくのか、その点を簡単でいいですから御説明いただきたい。
#27
○政府委員(川島裕君) 条約の第九条に委員会の設置及び権限がまさにいろいろ書いてございます。情報交換とか、特に科学的なデータの交換とそれによる保存措置というものが中心になろうかと思います。
 それで、この委員会の活動自体は実は母川国、日本を含めまして母川国についてはいわば拒否権が認められておりまして、重要な事項につきましては日本を含めましての母川国の意向に反しては決定はなされないという仕組みになっております。何が重要かということについても、母川国の一つがこれが重要だと言えばそれが重要になるということで、行く行く母川国以外の国も入ることは想定しているわけでございますけれども、母川国に関しては一義的な拒否権のもとで重要事項を決定していく。その背景としては、母川国が責任と一義的な利益があるという考え方でございます。
 日本といたしましては、条約を実態的に動かしていくにはこの委員会の場というものが非常に重要だと思いますので、積極的に参加することだと思います。
#28
○松前達郎君 今ちょっとおっしゃいましたけれども、第八条で「すべての重要事項に関する委員会の決定」、これについては母川国のすべての締約国が全会一致で行うのだ、こういうことが書いてあるのですが、どうも「すべての重要事項」というだけで内容的にさっぱりわからないのです。何か一つか二つでいいですからどういう例が実際にあるのでしょうか。
#29
○政府委員(川島裕君) むしろその重要事項に関する限りは母川国の意向は無視されないというところを確保する、その意思決定のメカニズムとしてつくったものですから、何が重要事項かということは保存措置に関する重要な事項とか思い浮かびますけれども、実態的には母川国の一カ国がこれが重要だと考えればそれが重要事項になるという枠組みでございます。そういう意味で、これとこれとこれと例示という感じではないのでございます。
#30
○松前達郎君 一つ一つの具体的な例というよりも、どういうレベルの問題がということでちょっとお伺いしたかったのです。
 例えばこの条約の内容を変えようとかそういうことなのか、それとも一つ一つ例えば違反操業がどうのこうのとありますね、そういう問題の重要な部分をやるのかとかいろいろレベルの問題はあると思いますが、何かその辺がよくわからないので。
#31
○政府委員(川島裕君) お答え申し上げます。
 例えば九条にいろいろ決定事項がある中で、それの一にございます「条約区域における溯河性魚類の系群及び生態学上関連する種の保存のための措置」、こういうのが当然のことながら重要事項だろうと考えております。
#32
○松前達郎君 わかりました。
 次に、協定締結に伴いまして北洋サケ・マス漁業関係者には少なからず影響を与える、こういうふうに思います。このサケ・マス漁業関係者に対して政府としてどういうふうな対策を考えているのか。補償というか、すぐお金で解決するということになるかもしれませんが、あるいは何らかの方策があるのかどうか。それについて一言お伺いしたいと思います。
#33
○政府委員(鶴岡俊彦君) 確かに本年漁期から公海におけるサケ・マスの沖取りは行わないことになったわけでございますけれども、しかし昨年六月の日ソ漁業大臣間協議によりまして、日ソ双方の二百海里水域内におきますロシア系サケ・マスの操業機会の確保につきまして一定の合意が得られたわけでございます。これに基づきまして本年三月十六日に妥結しました日ロ漁業合同委員会第八回会議におきまして、日本二百海里内におきますロシア系マスのクォータを二千八百十九トンとする、それからロシア二百海里内におきますクォータを一万五千トン、合計一万七千八百十九トンということで前年並みのクォータを一応確保することができたわけでございます。
 それからその政府間の話し合いに基づきまして四月六日から十六日にかけましてウラジオストクで行われましたロシア二百海里内操業に関します民間協議の場におきまして、調査用の枠を含めましてさらに二千三百トンが追加されたわけでございます。ロシア二百海里内の合計一万七千三百トンというふうに確保されているわけでございます。
 私どもとしましては、今後とも田口の漁業合同委員会の政府間協議の場等を通じましてロシア系
サケ・マスのロシア二百海里内あるいは日本二百海里内におきます安定的な操業の確保を図ることがまず基本であるということで、それに全力を傾けていきたいというふうに考えております。
 ただ、不幸にして漁業の減船対策を実施しなければいけない課題につきましては、国際漁業再編対策に基づきまして平成二年度から三カ月計画で実施しておりますので、もし減船せざるを得ないというような考え方につきましてはそれに基づきまして対応して、漁業者に対する影響を最小限度にとどめたいというふうに考えておるわけでございます。
#34
○松前達郎君 最後に、さっき私がちょっとお願い申し上げたように、とるばかりじゃ話にならない、やっぱりつくらなければいけない。そして、そのバランスを常に保っていくというのが交渉の段階でも説得力を持つのだと、こういうことを申し上げたのですが、つくり育てる漁業といいますか、これをやはり特にこの海域においては関係ある漁業に対して行う必要があるのじゃないかと思うので、その対策としてはいろいろあると思いますが、ふ化養殖事業というのが一般的に考えられるわけです。
 これは我が国でも一生懸命やっておるのでしょうが、これに対して政府として今後積極的に拡充するような方策で支援していかれるのかどうか、その辺をひとつ最後にお伺いしたいと思います。
#35
○政府委員(鶴岡俊彦君) 日本系のサケ・マスにつきましては一時壊滅的な状況になったわけでございますけれども、北海道におきましては国営のサケ・マスふ化場が中心になりますし、また本州におきましては民間のふ化場に助成するというような格好でふ化放流事業を拡充し現在に至っております。
 今のところ量的には海面のサケで約十八万トン、それに内水面を入れますと二十万トンを超える漁獲を上げる状況になっているわけです。現在やや価格が、各国ともかなりサケ・マス漁に力を入れておるということがありまして世界的に需給が緩和しておるということで、価格は若干低迷しておるというのが実態でございます。それから日本の放流事業の回帰率、回帰の状況を見ましても、かなり地域間にバランスを欠くというようなことも見受けられるわけでございます。
 今後は、需要の動向に即しまして品質のいいものの技術開発に努めましてその支援の増大を図るとかあるいは地域間にバランスを欠いております回帰率の向上を図っていくというようなことで、需給の動向その他を見合わせながらこの事業の振興といいますか対応に努めていきたい、私どもは全くこれがサケ・マス事業の基本であるという認識で対応していきたいというように思っております。
#36
○松前達郎君 最後に大臣にちょっとお伺いしたいのは、またロシアに行かれますけれども、北方領土の交渉段階について一々ここではもうお尋ねいたしません、交渉する前からそれがわかったのじゃ交渉になりませんので。
 しかし今、漁業の問題、特に北太平洋における漁業、この問題で恐らく北方領土の交渉進展いかんによってはいわゆる生産的な面での何らかの共同作業というのが提案の一つに入るのじゃないかと思うのですね。そのときに恐らく、漁獲はもちろんですが、漁獲以外の加工、こういう問題が必ず出てくるのじゃないか。そのときのいわゆる合弁といいますか協力といいますか、こういうものをやはり念頭に置いた方がいいのじゃないかと私は思うのです。その点について大臣はどういう御感想でしょうか。
#37
○国務大臣(渡辺美智雄君) 今、松前委員のいろいろな御意見を拝聴いたしまして、非常に現実的であり実務的であり、しかもまだ科学的な根拠に基づいた御発言で、もっともと思うところが非常に多いわけであります。したがいまして、そういう意見を踏まえまして、今後とも日ソの交渉等に当たりましてはそれらの問題がうまく活用できるように念頭に置きながらやってまいりたいと存じます。
#38
○松前達郎君 終わります。
#39
○田英夫君 予定しました質問に入ります前に、一つけさモスクワからの時事通信の報道で、たった今私も読んだばかりですが、新しい報道がありますので大臣に伺いたいと思います。大変短い記事ですから読み上げてみます。
  ロシア外務省当局者は二十二日、北方領土問
 題でロシアが日本の主権を認めれば、一時的に
 ロシアの施政権を容認するとの渡辺外相の提案
 について、「新味はない」と述べ、拒否する姿勢
 を鮮明にした。
  同当局者は「四島返還という日本の基本姿勢
 に何ら変化はみられない。単に返還の手続き問
 題を提起しただけで、日本側の譲歩とはいえな
 い」と強調、「本格交渉の前から四島の主権は日
 本のものと前提条件をつけようとするものだ」
 と批判した。
  同当局者はまた、四島の潜在主権と施政権の
 切り離しは沖縄返還方式を意図したものだと論
 評したうえで、「沖縄と違って四島には日本人
 は居住しておらず、状況は全く異なる」と沖縄
 方式の適用を拒否した。
  これにより、モスクワで月末に開かれる日ロ
 外相会談で、渡辺外相が同提案を正式に提起し
 ても、ロシアは受け入れないことが確実になっ
 た。
  同当局者は「日本側が明確な譲歩案を提示す
 れば、ロシアも譲歩で応じる」と述べるこうありますが、いきなりのことで外務大臣としてもお答えにくいかもしれませんが、御感想を伺っておきたいと思います。
#40
○国務大臣(渡辺美智雄君) 予想される論評だろうと存じますが、そういうことを本当に言ったかどうかは新聞の限りですから真意を確かめてみないと何とも申し上げられません。
 我々といたしましては、北方四島は法と正義に基づいて解決しようということでありまして、そういうような延長線上からいって北方四島の主権は日本にあるということは、これはずっと言い続けておるわけであります。その表現の仕方その他はどうであるか知りませんが、いずれにいたしましても、これは法と正義のもとで、しかも現実的に対応しながら解決していこうということであります。
#41
○田英夫君 北方領土問題の歴史のようなことをこの間ここで私も述べましたけれども、近くロシアを訪問されるということの中で、ぜひひとつ日本の立場を明快に主張されていい方向に進むことを期待しておきたいと思います。
 本日の議題である溯河性魚類の条約ですけれども、今、松前委員が詳しくいろいろ質問をいたしましたので、私はこの問題については触れません。
 ただ一つ、副総理でもある渡辺外務大臣にお願いという意味を込めてお聞きしたいのですけれども、突然これも外交問題とは関係のない言葉が出てくるのですが、渡辺外務大臣はサツキマスという魚のことを御存じでしょうか。
#42
○国務大臣(渡辺美智雄君) まことに不勉強で、よくわかりません。
#43
○田英夫君 いや私も実は知らなかったのです。長良川に河口ぜきができるということで現地へ行ってみたりしているうちにこの魚のことを知ったわけですが、サツキマスというのもマスという名前がついているわけで、まさに溯河性の魚類だそうであります。これは大変不思議な魚であって、今も松前委員の質問で出てきましたように、いわゆる母川国というようなことが出てくる。つまりサケ・マスは生まれた川へ帰ってくるというまことに不思議な習性を持っているわけで、これが一体なぜそういうことができるのか実はまだ定かでないという部分があるそうであります。
 本当にこれは考えてみると不思議なことであります。日本に戻ってくるというならまだわかりますけれども、自分の生まれた川に戻ってくるという。実は長良川は今や世界でサツキマスがすんでいる本当に数少ない川の一つと言っていい。日本では一つとも、もとは日本だけでも三十ぐらいの
川にいたそうでありますが、現在はサツキマスは長良川にしかいないと言う人もいるほどのことになっているそうです。
 アマゴ上いう十センチちょっとぐらいの大きさの魚が川にいて、これがそのまま川に居づけば一生川で過ごしてアマゴという名前のままで済むのが、その一部が海に下っていわゆる溯河性魚類という習性を発揮いたしますと、これがサツキマスという名前になって二十センチぐらいのほとんど倍ぐらいの大きさの、しかも姿かたちが全く違ったものになって長良川に帰ってくる、こういうことだそうであります。なぜ一部が川に残って一部が海に下るのか、その区別は一体何が原因で区別されるのかというようなこともすべてわかってない。こういう大変貴重な魚で、食べてみればマスの一種で非常に淡白でおいしいということでありますが、今は食べるどころではなくて大変数が少なくなった。
 問題は、私がこのことを知ったのは、河口ぜきができるとサツキマスが長良川に上れなくなってやがて絶滅するのではないかということを心配して、自民党の元環境庁長官というようなそういう問題に関心のある皆さんと建設省と今いろいろ話をしている、こういう中で出てきたことなのであります。これは外交とは全く関係のないことなのでありまして申しわけありませんが、しかし副総理として、今そういう問題が起こっている、建設省はこれを推進しようとしてもう半分近くの工事が進んでいる、急遽をつくるから大丈夫だと言っておられるけれども、それが本当に大丈夫なのかどうか専門の学者の間でも定かではないようでありますので、ひとつ頭の中にお入れいただいて、この問題にも関心を持っていただきたい。これはお願いであります。
 そこで、質問に入りますけれども、きょうのこの条約がアメリカに関係があるからというわけではありませんけれども、実はこのところ続いて外務委員会が開かれているわけですけれども、残念ながら、アメリカとの問題、特に一時非常に注目を集めた日米安保条約、安全保障というような問題について触れる機会が全くありません。
 これは委員長にこの機会にお願いをしておきたいのですけれども、私も長い間この外務委員会におりますけれども、大体、条約の審議と一般国際情勢の審議というのをできれば半々ぐらいにやりたいというのがいつもの願いで、しかし通常国会の場合に、特に条約が提案されてまいりますと参議院の場合は残念ながら一カ月という期間が区切られるものですから条約の審議が優先をする。そういうことで、今回も条約がかなり多く出てきているために毎回条約審議ということになって一般国際情勢についての審議ができないでいることは私も事情はよくわかりますけれども、ぜひ連休明けのこの通常国会の中でそういう機会をおつくりいただきたい。
 また、通常国会では必ず一回は総理大臣の御出席を願って、まさに国際情勢全般についての総理のお考えをただすというのがこの参議院外務委員会のいわば長い間の慣例のようになってまいりました。最近それが必ずしも守られていないように思いますので、その点についてもぜひ理事会にお諮りいただいて御協議いただきたい。この機会にお願いをしておきたいと思います。
#44
○委員長(大鷹淑子君) 御意見、承っておきます。
#45
○田英夫君 そこで、アメリカとの特に安全保障の問題に関連をして、たしか三月だったと思いますが、アメリカの国防総省が国防計画指針というものをまとめました。これは報道機関がそれを入手して報道しましたので、発表したわけではないようでありますけれども、もちろん外務省はこれを御存じと思いますが、この国防計画指針というものを外務省はどういうふうに受けとめておられますか。
#46
○政府委員(川島裕君) 三月の八日にニューヨーク・タイムズが国防計画指針案という米国防省の内部文書の内容を報道したわけでございます。ただ、これはあくまで部内の文書でございまして最終的なものではないということでございますので、その内容について日本政府としてコメントする立場にないわけでございます。
 ブッシュ大統領自身、このニューヨーク・タイムズの報道があったのを受けましてホワイトハウスでの記者会見におきまして、これが国防省の公式の立場ならば国防長官がこのことについて話をしにくるはずである、リークされたような文書を余り重視しないでもらいたい、私自身も見ていない文書についてコメントはできないというようなことを言っておりまして、その意味で部内文書で、それもいろいろ報道によりますと、部内の作業の過程で、こういうものをまとめるに当たってはむしろ公開の議論をすべきであるという考え方の人がリークをしたというようなことも報道されておりますけれども、いずれにいたしましても、こういう報道されたような内容で米側の考え方が固まっているというふうには承知しておりません。
#47
○田英夫君 私もこの内容を読んだときにかなり驚きましたね。しかし、アメリカの国防総省ないし外部の学者とかあるいは議会人とかという中の一部の意見であるということは言えるのではないか。これが全部の意見であったらそれは大変なことだと思うわけですが、しかし考えてみますと、アメリカの側が、例に挙げては失礼ですけれども、小沢調査会と言われるあの小沢一郎さん中心の調査会の考え方を即日本の考え方だ、日本全体の考え方だというふうに受けとめられたらこれは大変なことになるのではないかというのと裏返してはないか。しかし、そういう考えがあることは事実だと言わざるを得ないと思います。
 外務省はもう当然御存じのとおりですけれども、つまり一言で言ってしまえば、冷戦が終結した以後の世界ではアメリカが唯一の超大国だと。それで、これは中に書いてある表現でいくと、国際秩序はアメリカが維持する、つまりアメリカこそ世界の秩序を維持する唯一の国なのだ、ほかの国は黙っていろというくらいの調子の内容に一言で言ってしまえばなっているわけですけれども、そういう新しい世界秩序をつくっていくという観点からすれば、日本にもさまざまな考えがなければならないし、また政府、特に外務省を中心として新しい世界の枠組みの中で日本がどういう役割を果たしていったらいいのかというようなことを当然お考えだろうと思うのですね。
 それは一つは、例えば国際貢献ということをもっと積極的にやらなければいけない。それでPKO問題というようなことも今出てきているわけで、そのやり方については議論がありますけれども、国際貢献というのは当然日本の場合一つの重要な柱になってきていると思います。また、日米関係というのはそういう中で特に依然として重要な意味を持っている。
 こういうことからしますと、たとえアメリカの一部、しかも国防総省というある意味では特殊な立場といいましょうか、そういう役割を果たすお役所の中の意見ということでありますから、今、川島さん言われたとおり、アメリカの全体の意見だとはもちろん言いませんけれども、そういう意味で考えたときに、黙って見過ごしているというのは表面はいいのですけれども、もう一つ突っ込んだ外務省としてのこの問題についての考え方を述べていただきたいと思います。
#48
○政府委員(川島裕君) 内部にいろいろな考え方があるかという点については、それはアメリカというのはある意味で開かれた国ですしいろいろな考え方あるかもしれませんけれども、御指摘のアメリカだけがやるのだというようなトーンで報道されたのに対してまさに物議を醸した次第でございまして、その後でブッシュ大統領がそういうことに関連して、いや我々は多数国間組織を通じて効果的にやってきた、しかし米国はリーダーであり引き続きリードして積極的に関与をし続けなければならない、これはどっちをとるかということではなくて、多数国間の国際機関との緊密な協力を排除するものではないと。
 それから国防省の報道官自身が、これはそうい
う報道はあったけれども、我々は集団主義、コレクティビズムと書いてございますが、そういうことを放棄するというような予定はないと。国防報告等でもそういうことは全く述べておりません。従来より、将来の米国の国防のために集団主義及び同盟諸国が非常に重要であるということは極めて明確にしてまいりましたと、こういうふうに述べておりまして、ですから集団でやっていくということが米国の方針であろうということに変わりはないと思っております。
#49
○田英夫君 私も全くそれは同感なのですが、ずっと以前から、特にレーガン政権当時かなり表に出た部分があったように思います。国防総省と国務省とに象徴されるようなそういう意見の違いというのはあったと思いますから、そう驚くことでもないと言えばそれまでですけれども、例えば国連との関係というようなところで、湾岸戦争のときのことは大変我々の記憶に新しいわけです。多国籍軍という従来になかった形を強引に押し通し、そのための費用を日本に支出させるということまでやりながら、この多国籍軍、その中心はもちろんアメリカ軍でありますけれども、そしてその頭に国連というものを冠して、国連軍ではないけれども実質的な国連という冠をかぶったアメリカ軍中心の多国籍軍、こういうものをあのときやったわけですね。
 ところが今回の指針によると、そういうものすらも否定するというか乗り越えるというか、アメリカがもう単独ででもこの秩序を、緊急の場合は秩序維持のために米軍が出動するという意味のことが出ていると思います。そういう国連との関係についてはこれはどういうふうに読まれていますか。
#50
○政府委員(川島裕君) これはチェイニー国防長官がことしの二月に明確にした発言がございます。
 要は、大統領は常に多国籍による戦略を追求するであろうし、国連を通ずるかあるいは他の適切な機関を通じて対応する道を選択するであろう。それからできる限り国際機関を通じて問題の解決をしたいと考えておる。ただ、究極的に米国民の生命と米国の利益を守るのは米国の大統領の責任であって、それが唯一の選択であると考えるときには大統領はそれを実行に移す権限を憲法のもとで有している。こういうふうに言っておりまして、一義的には多数国間と申しますか国連を含めたものでやるという姿勢は明確にしておる次第でございます。
#51
○田英夫君 そういうことだと思うのですが、そうなればなるほどやはり日本も、表立ってこの指針を相手に議論をすることはもちろん必要はないしやってはならないことだとは思いますけれども、アメリカの国防総省というそういうところを中心にして一部に、今述べたようなチェイニー国防長官も否定するようなそういうものが考えられているとすれば、日本にとっては無関心ではいられないわけですね。ですから、表へ出していろいろやる必要はもちろんないしやってはならないと思いますが、例えば私はあれを読みながら考えたときに、そういう考えのアメリカの一部からすれば日本に対してどういう要求をしてくるだろうか、どういう接し方をしてくるだろうか。これは一部とは言いながらあるわけですから、それに対する日本の対応というものも考えておかなければならないと感じたのですね川
 逆の意味で言えば、どういう人を例にとったらいいか、例えばマンスフィールド前駐日大使のような考え方そして対日観を持っている方、これもアメリカのかなり、一部というよりももう少し多い方々の中に共通してある考え方だと思います。そういう方々とだったらこれはそうこっちが構えていなくても非常に円滑に進んでいくわけで、この指針に出てくるような考え方だと心の中で構えてこの対応を持っていないといけないのじゃないか。
 そんな気持ちで考えてみた一つは、例えば日本と中国との関係、これは我々からすれば長い歴史があり、天安門などで一時的に冷え、また今それが復活しようと、いい方向へ進もうとしているというようなことを見てみると、ちょうどことし日中国交回復二十年という節目でもありますし、いい方向へ行く、またよくならなければならないなと当然思うわけですが、アメリカのこういう考えの人たちからすると、日本と中国は余り親しくなってもらいたくない、こう考えるのじゃないでしょうか。そのために事実こういう人たち、指針を考えるような人たちでなくても、今のアメリカの政権、ブッシュ政権全体も日本の政府とは中国に対する考え方は違いますね。特に人権問題というようなことで違うと思いますね。
 そういう意味からすると、アジア局長、今の川島さんの言われたようなことと関連をして、アメリカは日中間が余り親しくなることを好まないというようなこと、可能性はあると思いますか。
#52
○政府委員(谷野作太郎君) 川島審議官から御説明しておりますように、もとよりアメリカの中にはいろいろな考え方があって不思議はないわけでございますけれども、私どもは天安門事件以来の日中関係の進め方につきましても、アメリカのホワイトハウス、国務省、国防省といろいろなレベルで十分な協議を重ねてきております。そういう過程で考え方のすり合わせもしておりますけれども、安定した良好な日中関係が存在するということがアジア・太平洋の平和と安定のために大変重要なことであるということ、そして今、中国が天安門事件はございましたものの懸命に進めておる改革・開放への努力、これに対して中国を孤立化させることなく精いっぱいの支援をしていくべきではなかろうかというようなことについては日米の間に全くそごはございませんし、そういう前提で良好な安定したよい日中関係の存在というものについて、今の政権の中枢部がこれに対して異を唱えるということは全くないと思います。
 それから人権のお話がございましたけれども、私どもも別にこの問題を避けて通っておるわけではございません。もとよりアメリカの政府の物の言い方と私どもの物の言い方については若干のニュアンスの違いはあるいはあるかもしれませんが、私どもも中国の民主化の問題、人権の問題は非常に大切なことだと思っておりまして、先般も宮澤総理もこの点を提起されましたし、大臣も事あるごとに中国との会談においてこれは申されておるわけでございまして、その意味においてアメリカとこの点において姿勢が大きく違うということではないと思います。
#53
○田英夫君 同じような意味で朝鮮半島の問題、特に朝鮮民主主義人民共和国いわゆる北朝鮮と日本との関係といいましょうか北朝鮮に対する対応というのも、おのずからアメリカ政府全体と日本政府とも違うし、いわんや一部の指針をまとめたような人たちと我々日本とは違うと言わざるを得ないと思うのです。
 今、特に日本は日朝交渉が行われておりますからいろいろな意味で直接的に対話しているわけで、アメリカはそうではありませんから突き放した感じになるのはこれは当然かもしれませんけれども、その中で特に極端な考え方を持つ指針のようなそういう考えの人たちからすると、日朝交渉というのはまとまってほしくない、それから南北朝鮮は統一してほしくないということになるのじゃないでしょうか。
#54
○政府委員(谷野作太郎君) アメリカと北朝鮮の関係、日本と北朝鮮の関係で違うところがあるとすれば、日本の場合は北朝鮮との関係におきましても早さに及んで清算すべき過去を持っているということだと思います。もとよりアメリカにつきましても朝鮮戦争というのがございましたけれども、いわゆる三十六年に及ぶ植民地統治、それから出てくるいろいろな問題、このようなことは米朝関係にはないわけ、でございます。
 いずれにいたしましても、当面アメリカも日本も北朝鮮との関係で深刻に心配しておりますのは御案内の核の問題でございまして、これにつきましては私どもは米国とも十分な協議、意思疎通をして、共通の問題として北朝鮮に日本の立場、考え方を累次伝えてきておるわけでございます。
 日朝が進んでほしくないという考え方も、これもアメリカいろいろなところを当たってみればそういう考えを持つ方もなくはないと思いますけれども、今の政府に関する限り、日本が北朝鮮との正常化交渉において核の問題も含めて守るべき立場をきちんと守りながらこれを進めるということについては安心して見ておるのではないかと思いますし、私はアメリカと北朝鮮の場合におきましても、核の問題がトンネルを抜ければいずれ米朝の正常化に向けての話し合いも始まるのではないかと思っております。
#55
○田英夫君 この指針は本当に極端なので余り真っ向から取り上げる必要はないのかもしれませんが、例えばこの中に、西ヨーロッパ、アジア、旧ソ連を通じてアメリカと競合し得るいかなる大国も台頭をしてはならない、これは阻止するという意味の部分があるのですね。世界の秩序はアメリカが守るというのがそれに続いて出てくるわけで、そういう論理からしますと日本の自衛隊がこれ以上大きくなることはもちろん反対だということにもなりますし、日本がアジアのリーダーになることも好まない。さらにもっと具体的にその論理を延長していくと、現在問題のカンボジア、ここに日本の自衛隊が出ていくということもこの人たちからすると好ましくない。何か結果的に私どもの自衛隊派遣反対というのと結論だけ共通になっちゃうのですけれども、そういうことにまでつながってくるのじゃないだろうか。しかも、その指針の一部には特に国の名前を挙げて、日本とドイツ、これが核武装を含めて強大な軍事力を持つことに警戒を表明している、こういう部分があるわけですね。
 こういう考え方は、自衛隊の問題を含めて日本がアジアのリーダーになることは好ましくないという考えだと。こういうことはアジア局長はどういうふうに受けとめられますか。アメリカの一部は少なくともそう言っているわけでございます。
#56
○政府委員(谷野作太郎君) アメリカの話でございますから、川島審議官からお答えした方がよろしいかと思います。
#57
○政府委員(川島裕君) お答え申し上げます。
 ニューヨーク・タイムズに出たいわゆる指針と言われる文書の中に、環太平洋地域、この地域でございますけれども、米国がバランサーとして行動することによって力の真空と地域的派遣国の出現を防止する云々という記述があるようでございますけれども、まずアジアのリーダーになることを好まないというところまでは書いてないと承知しております。ただ、そういうふうな感じを持っている人間が一人でもいるのかいないのかといえば、その点は別だと思います。
 これはアジア局長からも話がございましたけれども、アジアにおける日本の位置づけというものは、アメリカの指導的な立場ないし現政権に関します限りむしろ日本との緊密な協調によってアジアの平和とか繁栄とかを一緒にやっていこうではないか、それはまさにことしの一月ブッシュ大統領が訪日しましたときグローバルパートナーシップということで打ち出したわけでございますけれども、それの非常に重要な部分でございますし、その意味で一緒にやっていこうというのが基本的な考え方だろうと私どもは受けとめております。
#58
○田英夫君 もちろん基本的な考え方、日米政府間そういう意味で一致していなければ困るわけです。
 またその指針に戻るのですが、指針のような考え方でいきますと日米安保条約というものについての考え方も違ってくるのじゃないだろうか。つまり私は持論として、日米安保条約は軍事的な側面を薄めていって友好条約的な側面を強めていく、経済を含めて、経済ということはもちろん第二条に書いてありますけれども、それをもっと強めていく、経済を含めて友好条約的なものに変えていくべきではないかというのが私の持論ですけれども、この人たちからするとそうではなくて、日米安保条約は、アメリカが世界のリーダーであってその支配下に日本を置く一つの道具としてまことに有効だという考え方になってしまうのじゃないだろうか。そして、在日米軍基地というものもそういう意味では非常に重要だ、こういうことになってしまうのじゃないだろうか。
 私は、これまた持論として、ブッシュ大統領に手紙を出したこともあるのですが、一九九五年という第二次世界大戦が終わって五十年目というところを目指して、アメリカとソ連、当時のソ連は、二年前ですからゴルバチョフ大統領ですが、自分たちの世界に駐留させている自国の駐留軍及び基地を一九九五年までに撤去すべきだという主張をしたわけです。逆に在日米軍基地ということについては、この指針の人たちは、まことに重要な役割、日本を抑えておくために必要なものだと。米軍のプレゼンスが日本を抑えるために必要だ、またアメリカがアジアでもリーダーで日本がリーダーじゃないということのためにも非常に重要だ、こういう論理につながってくるのじゃないかと思うわけです。これはどうですか、川島さん。
#59
○政府委員(川島裕君) これも米国政府全体としてどう考えているかということになりますと、それは安保条約でもって米国の支配下に日本を置いておくというような考え方でやっているとは私どもは考えておりません。現に本年一月ブッシュ大統領が訪日いたしましたときに、東京宣言で一つの重要な柱といたしまして、日米安保条約は日米関係の中核をなし、アジア・太平洋地域の平和と安定のために引き続き重要であると認識しておるという一項を設けたわけでございます。
 日本にとりましての安保条約の重要性、これは申すまでもないと思いますけれども、日本の安全のためという観点から、さらに日米間のきずなの基礎であるという観点、それからアジア・太平洋地域の平和と安定に寄与するという観点等からこの重要性というものは私どもは変わっていないという認識でございますし、その点について米政府の責任ある立場の人たちも同じ考え方を分かち合っていると認識しております。
 支配下とかそういうふうな考え方をどうかと言われますと、そういう人がいるかどうかと言われればそれはいるのかもしれませんけれども、少なくともそれを米側の政策であるという前提に立って云々ということは私どもとしてはなし得ない次第でございます。
#60
○田英夫君 時間が中途半端になりますので、さっきも委員長にお願いいたしましたが、日米問題、特にきょう安全保障の問題突っ込んで議論ができませんでした。こういうことはまた十分時間をとってゆっくり各党の皆さんともまた政府とも議論をする場をつくらなければならないと思いますので、残念ながらきょうはこの程度にいたします。
 最後に、PKOの法案の審議がいよいよ始まるということになりました。そこで、外務大臣にこの機会に伺っておくというかお願いしておきたいことなのですが、今、外務大臣御自身も政府原案を修正するということで柔軟な発言をしておられる。大体四月に入ってから何回かいろいろな表現で言っておられると思います。テレビの中で若葉マークでやるのがいいのじゃないかというような、受けとり方はどういうふうに受けとったらいいかはわかりませんが、つまり自動車の初心者のようにゆっくりと危なくないようにやっていったらいいという意味から考えると、修正ということ、あるいは公明党さんが主張しておられるPKFの凍結というようなことを意味しておられるのかなと伺ったのです。あるいは宮澤総理大臣自身も自民党の婦人の集まりで柔軟な姿勢を表明される。
 それから各党も、公明党さんは今申し上げたようにPKFの凍結と言われるし、民社党さんは国会の事前承認ということを強く主張しておられる。連合参議院は三原則というようなことを打ち出しておられる。政府原案に対していろいろな意思表示があるし、また政府の中で総理、外務大臣という最高の責任者がそういう意味で修正を受け入れてもいいというような意味のことを言っておられる。
 審議を再開するに当たってこの問題についての
責任者である外務大臣に伺いたいのですが、この場で改めて修正ということについての外務大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
#61
○国務大臣(渡辺美智雄君) 私どもは、原案を苦労してつくって提案をしたわけでございますから、原案どおり通していただきたいというのはこれは一貫して変わらないわけです。しかし、現実の問題として参議院の現状を見た場合においてそれで成立するのかどうか。非常に日数も限られている。そういう中で各党の態度が具体的にいろいろわかってきたということになれば、これは原案でなければ絶対のめませんということでオール・オア・ナッシングということがいいのか、それとも話し合いの中で、国対ベースで、原案の精神が守られしかも国際的にも貢献ができるということであるならば、それは国対ベースでまとまったことに我々としては困る困るといつまでも言ってはいられないのかなという程度の感じでございます。
#62
○田英夫君 外務省のこの問題の現場の責任者の国連局長に伺いたいのですが、審議が始まるということになれば私もPKO特別委員の一人ですから心の準備をしなくちゃいかぬ、勉強もしなくちゃいかぬわけですが、その審議の対象になるのは政府原案とあくまでも言われますか。
#63
○政府委員(丹波實君) ただいまの外務大臣の御説明につけ加えることは私はございません。
#64
○田英夫君 私は、丹波国連局長はもう少し強烈に自分たちは最高のものと思ってつくったのだからこれが審議の対象ですという答弁をされるのかと思っていたのですが。
 実は、国会法第五十九条というところに「内閣が」という書き出しで、前段を省略すると「但し」というところから後段の方で、つまり政府は「一の議院で議決した後は、修正し、又は撤回することはできない」という規定があるのはご存じのとおりでありますから、既に衆議院でこのPKO法案は議決されているわけですから政府としてこれを修正したり撤回することはできないというのは当たり前のことなのですね。ですから、さっきも外務大臣は国対レベルでとちゃんと言われたわけで、これからの話は各党間の話、政党間の話にならなければならない。
 そうすると私どものように、この法案の特にPKF、自衛隊じゃなければならない部分、自衛隊を派遣するという部分ですね、部隊として。この部分に非常に問題ありと考えている立場からしますと、一生懸命に政府原案を対象にしてこの部分はどうだこの部分はどうだといって審議をこれから進めていくうちに、一部の政党間の間で突然PKFは凍結だというふうなことを決めてしまわれると、振り上げたこぶしのおろしどころがなくなるといいますか目標を見失うといいますか、一生懸命に努力したものが全くばかみたいなことになるのですね。
 凍結ということなら原案は残りますから必ずしも姿が見えなくなるわけじゃありませんけれども、それならば率直に私なんかの気持ちを申し上げれば、修正なさるなら修正話を政党間でお進めになって修正案をまとめてそれを出してきてくださいよ、それから議論しましょう、それまでは審議できませんよということを言ってもこれは不思議でないのじゃないですか。
 私も想定するのですけれども、PKO特別委員会が始まって丹波さん相手に大激論をして、PKFのこういうのはおかしいじゃないか、自衛隊を出すのはおかしいじゃないかということを一生懸命やったら、凍結ですから永遠になくなっちゃうわけじゃない、いつかは解けるかもしれませんけれども、解けてなくなるならいいのですけれども、解けて姿が復活するわけですから、それはむだとは言わないけれども、少なくとも私どもが審議するのに対して失礼じゃないかなと思いますよ。
   〔委員長退席、理事山岡賢次君着席〕
修正修正と各党の責任者や政府の責任者の方が国会の場じゃないところ、国会の場でも言っておられるけれども、あっちこっちで発言をされていて、それで何か修正されそうな空気が強い中で、しかし審議の対象は政府原案ですというのではこれは失礼じゃないか。外務大臣、どうですか。
#65
○国務大臣(渡辺美智雄君) 私どもは、先ほど言ったとおりでありまして、原案を出しておるのですから原案でぜひやっていただきたい。しかしながら、政府・与党一体でございますので、それで何か相談があれば政府から何か言わなきゃならぬこともあるでしょう。我々は、仮に修正というような問題があっても原案から全くかけ離れたようなことで使いものにならないようなことは困る、絶対に困りますと。だけれども、再検討も原案に近いようなことでおやりになることについては、やはり国会に預けられたことでございますから、それにどうこうという異議を差し挟むということはなかなか難しいのかなという感じなのです。
#66
○田英夫君 終わります。
#67
○黒柳明君 大臣、けさブッシュ大統領とドロールEC委員長との会談が報道されておりますが、結論としては、早期妥結に対して今後も話し合っていこう、ただしその過程において新しい提案も出した、それについて合意する点もあり得る、こんなコメントもついておりました。
 外務大臣として、このドロール・ブッシュ会談が終わった後どのような感想を持たれたか、これが一点。
 それから報道によりますと、何か七日付で外務大臣がヒルズ・アメリカ通商代表とECの副委員長に、このウルグアイ・ラウンドの進展しないさまというのですか、子細は出ておりませんでしたけれども、それについて強力な、強烈なといいますか、EC、アメリカについての意見書を出したと。それについてイギリスのフィナンシャル・タイムズやあるいはアメリカのエイシアン・ウォール・ストリート・ジャーナルですか、非常に高い評価をした。アメリカ、ECに対してこんな痛烈な書簡を出すとは立派な外務大臣である、大したものだと。この次の総理には間違いないだろうと、そこまで書いてあったかどうかわかりませんけれども、非常に評価していた、こんなことを書いてありました。
 ただ、その報道の中の二項目目に、アメリカとECの農業問題、これで解決合意を見たならば我が国も米の問題で譲歩する、こういう可能性がある。この点がちょっと気にかかるのです。これはどういうふうにECとアメリカのトップ会談がさらに進展するのかわかりませんが、もしこれが合意しますと、大臣はその米の関税化、あるいは前からも若干の柔軟姿勢を出していましたですね、米の開放問題について大臣の発言の中において。そうすると、この関税化について何らか認める、あるいは部分輸入に対して認めるようなことも条件としてやむを得ない、こういうことを前提にした書簡を出したのでしょうか。その二点。
 前から大臣はお米の問題で若干柔軟な発言をしていましたね。部分開放あるいは関税受け入れだということじゃなくしても、いつまでもそんな日本だけが一粒も輸入しないなんてできるかと、こんな発言もしていらっしゃいました。
 書簡としてECやアメリカに強烈なクレームをつけながら、各国だって約束の時期に約束のものを提出していないじゃないか、こういうことを踏まえながら、要するに、ただしECとアメリカが農業問題で妥結すれば我が国でもその米問題で前向きな考えがある、こういうことは柔軟姿勢で発言してきた大臣の考え、部分開放なり関税の一部受け入れ、こんなことを前提にしての書簡でしょうか、この二点です。
#68
○国務大臣(渡辺美智雄君) 我々はこの農産品等について具体的なオファーをしないということの非難を受けておりますが、工業製品、サービス、海運その他についてはかなり具体的な提案をしておる。しかしながら、EC及びアメリカにおいてはそこらのところが出てこない。それじゃ困るじゃありませんかという意味で早くにそういうものも出していただきたいということを言ったのは事実でございます。
 これはともかく交渉事でございますから、自分
ばかり言われっぱなしで向こうの言うなりというわけにもなかなかいかないのでありまして、それはみんなきついところはあるわけでございます。だから、ウルグアイ・ラウンドをまとめていくためにはみんなが少しずつ我が身を削っていかなければまとまらない。どの国もウルグアイ・ラウンドは成功させまいという国は一つもないのだから、みんなでやりましょうと言っているのですから、そういう背景のもとで実は手紙を出したと。
 ECとアメリカとのトップ会談が行われて注意深く我々は見守っておったのですが、遺憾ながらどうも具体的な進展はなかったのじゃないかというように予想をされています。
 以上です。
#69
○黒柳明君 それと二点目、要するにアメリカとECが農業問題で妥結するならば我が国の米の問題も見直す用意があると、書簡の中で。これは新聞報道ですからそのとおりかどうかわかりませんよ。ということは、妥結するという前提であるけれども、何か部分輸入とか関税が若干どうなるか、話し合いですから。受け入れというものもバーターでやっぱり提案したのかな、こういう意思あるのかなと、こういう質問ですけれどもね。
#70
○国務大臣(渡辺美智雄君) アメリカとECの間で例外というものができれば、我々も例外は認めてもらうということです。
#71
○黒柳明君 時間が限られていますので。
 昨日といってもこれはアメリカと日本と時差があるのですが、アメリカの議員から電話がありました。黒柳さん、小錦のこと、あなたお相撲のこととしてこれをネグると大変ですよ、こちらは人種問題というのは非常に厳しいのですよと。これはもうこっちは夜中の二時で向こうは十二時でお昼飯ですから、こっちは寝てる最中です。いつもそういう電話のやりとりをやっているのですけれども、もしかするとこれはもう議会に発展する可能性ありますよと、こんなことも出てきました。
 それで私、けさの一斉のこの報道、いわゆるテビット・サンガーさんというニューヨーク・タイムズの私もよく知っている人で、この人にいろいろ電話ですけれども聞きもしました。
   〔理事山岡賢次君退席、委員長着席〕
 小錦にすれば、人種差別、私はアメリカ人だから横綱になれないのだ、こういう発言をしたと。高砂親方は、そんなことを小錦はしていないと言ったと。これはもうじかにしたことは間違いない。そばにいた人も聞いていた。小錦に電話したら間違いなくそういうことをコメントした。だから高砂親方も、言ったと言ったらうまくないので言わないと、こう言わざるを得ないのだろう、こういうことでした。
 私はこの外務委員会でこんなのを突然持ち出すつもりないのです。一つはやっぱりその中にバイオフィシャル・オブ・フォーリン・ミニストリーと、これは私も名前聞きました、サンガーさんに。ここでだれであるなんて言っても別にその人も、往々にしてこういう取材というのは取材された認識がない場合でひょこっと言う人がいますからね。私もそういう経験があります。これはもう名前を、固有名詞を言ってもしょうがないのですけれども、いわゆる相撲協会はみずから貿易障害があることを知らないのじゃないか、気づかないのじゃないかと、こういう発言もそのニューヨーク・タイムズにしている。
 しかも、さらに私が取り上げたいのは、プロスポーツで総理大臣杯を出しているのは相撲しかないのですね。これはもう副総理も御存じかと思うのです。内閣の規定によってプロスポーツにはそういう総理大臣杯、大臣の杯を出しちゃいけないのです。アマに限られているのです。だけれども、相撲は伝統がある、明治以来のものであるということでこれは容認されているのです。ですから、こういう意味で内閣としても副総理としてもこれは無視できない。
 しかも、この人種問題というのは、もう先般の怠け問題とか、あるいは議長の発言がありましたし、あるいは人種問題で二月、三月に向こうで非常に反感買ったばかりですから、向こうではただ単に相撲とか一小錦とか一外務省高官の発言と受け取ってないです。また日本が人種問題と、こういう受け取り方をしている一部もある。公器であるタイムズもそれで出している。私はうまくないなと、根幹はどこにあれ。小錦がどういうふうにして横綱になれたとかなれないとかそんなこと問題じゃないのです。アメリカがそういう受けとめ方をして、有力なアメリカのニューヨーク・タイムズの、あれは日本で言うとフォースかサードですね、取り上げ方は。非常に大きな取り上げ方をしているわけですよ。そういう取り上げ方をされるような原因というものについて、うまくないなと。
 これは相撲協会が悪いとか小錦が誤った発言したのだとか誤解だとか、外務省の高官がちょっと口が滑ったのだと、こんな意味で私一つ一つ取り上げたくないのです。大きくやっぱりアメリカのそういう有力紙に取り上げられた、また日本の問題として。人種差別していると、こういうことです。中見出しには「An American is denied the topranking.」、アメリカ人はトップ、横綱になれないのだと、こういう見出しも中に入っているわけですね。
 こういう問題があった。外務大臣、こういうことについて、きのうの夕刊、きのうの夜にもちょっとテレビでありましたかな、朝刊が主ですが、ごらんになったか、朝刊を見れば全紙に出ていましたから御存じかと思いますが、どうですか、こういう人種問題的なものがまたぞろアメリカで批判の的になっている、またそれが議会までも延長する可能性がある、こういう問題についてまずどのような感想をお持ちでしょうか。
#72
○国務大臣(渡辺美智雄君) 私はそれをまだ見てもおらないので、事実関係ですので川島審議官からちょっとお答えさせます。
#73
○政府委員(川島裕君) 突然の御質問でございますので、事実関係と申しましてもそんなに……
#74
○黒柳明君 別に事実関係なんかね。
#75
○政府委員(川島裕君) ただ、確かに先生御指摘のとおり、火がつきやすい問題でありましょうし、その意味ではちょっと心配はしなくちゃならないかなと思っております。
 ただ、これは北米局として知っているという話ではないのですけれども、たしか横綱昇進は優勝ないし準優勝二場所ということで、それをまだ満たしてはいないというのが事実関係の基本ではないかと思うのです。ただ、その辺は私存じませんが、そういう人種のゆえにあるいは差別のゆえにというような話があるのかどうか、私はないのではないかと思いますけれども、その辺が理解を得ると申しますか広めていくポイントだろうと考えております。
#76
○黒柳明君 ですから、私は別に相撲協会を批判したりとか星取りがどうであるとか、こんなものをここで論議したいわけじゃない。それを言ったことがすぐ、今までやっぱりそういう要素が日米間においてあったから、現に要素じゃない、批判が出てきたわけですよ。こちらも謝らなきゃならないような局面がつい冬から春にかけてあったわけですよ。
 さらに問題なのは、何か今言いますように、唯一の総理大臣杯を出しているプロスポーツなのです、これが。そうなりますと、協会が言う品格を持った横綱を決めると、非常に東洋的というか日本の伝統的なものというか、合理主義のアメリカ、欧米人にはわからないようなものがあるのです、星取りだけで済まないような問題が。星取りでは確かに満たされないようなものがあっても、品格とは何だ、人格とは何だと、こういう問題でクレームをつけるとこれはもうつけられやすい一つの点でもあるのですが、だから相撲協会がそういう項目を出していることがいいとか悪いとか、私はそんなこと論議したってしょうがないし、ただ日米間の問題として非常にまずい問題を提起したなど、今、審議官がおっしゃるように。
 事実関係も何もないの、大臣。だけど、伝統伝統で済まされないことも一つあるのですね。だから、もうちょっと合理的にこうしてこうなれば横
綱になれるのだと。大関は二場所負け越せば関脇になるのだ、降格するのだとこれはっきりしているわけですよ、大関まで。横綱になると非常に東洋的というか伝統的というか日本的というか相撲協会的な哲学が入っちゃいまして、星取り勘定だけじゃ済まされない問題になっている。
 さらに私が言いたいのは、そこに唯一総理大臣杯のプロスポーツである。プロスポーツに対してそれがいい悪いなんて私は言っているのじゃないですよ。結構なことでしょう。伝統的でこれだけ国民に人気があるスポーツですからね。だけれども、逆に言うとただ一つ総理大臣杯。そして天皇賜杯。天皇賜杯が出ているのは競馬と相撲なのです。こんなことは結構でしょう。総理大臣杯が出ているプロスポーツですよ。
 そうなると、これはただ単なるプロというわけにいかないのですね。相撲のことだから関知しませんというわけにもいかなくなる接点が、副総理、あるわけですよ。プロスポーツに出しているという伝統がありますのでね。そうなると、これは文部省も若干、八百長なんていうことも国会で取り上げられたことがありますわね、文部省もこれについて答弁せざるを得ないという局面があったわけですけれども、そんなことがあります。
 副総理、ひとつ議会に発展しないように私は願いたい。さらにニューヨーク・タイムズの二十二日の報道がそれっきりでしりすぼみになることを願いたい。後を引かないことを願いたい。けれども、ちょっとアメリカの雰囲気はそんな雰囲気じゃないぞと、私はそんな感触をきのうの夜の電話では受けたわけです。だから相撲協会にどう言えと私は要望しません。言ってもらいたいと、こんな気持ち全くありません。協会は協会なりのひとつ伝統もこれは尊重しなきゃならない。ただし、小錦が言っていることもうそではないのではなかろうか。
 ひとつやっぱりアメリカ、人種的な排除、こうなると今度は相撲も相当いろんな国から今どんどんどんどん新しい血を注ぎ込んでいるわけですから、これについて果たしてそのままでいいのかと、こんなことも心配していますよ。何かハワイばかりが強いですからね、最近。ランクはもう日本人がどんどんどんどん外国人に食われているし、ましてや横綱というのが全く影も姿もないわけでありますから、だから非常に今の時期といいますかタイミングといいますか、これはただ単に一人の発言とかなんとかいうわけにいかないという私は感じをしていまして発言させていただいた。
 それに加えて、そういう一議員であるのかわかりません、あくまでも私は一議員の発言と、こう受け取っただけでありまして、それでネグりたいのですけれども、ちょこっとそういう感触を、電話の向こうから耳に響いてくる感じがそういう感触に受けとめなかったものですから、まあ老婆心であるか、あればいいのだがと、こんなことです、大臣。事実関係も何もないのです、別に。そういう発言があってそういう否定をした。だけど、これは否定できません。高砂親方は否定したけれども、否定できません。これは否定せざるを得ないでしょう。ありましたか、ありましたなんと言ったら大変なことになっちゃいますからね。
 だけど、事実関係は明瞭であります。明らかに小錦とデビッドさんとのやりとりの中でそれははっきりそういう発言がありましたと。発言ありましたって、あったから書いたのでしょう。もう小錦が直であることは間違いありません。赤の他人じゃありません。勘違いでもない。ですから、これが尾を引かなきゃいいがな、タイムズがまた何か事実のことをそうじゃないなんて言わなきゃいいがな、それがまたアメリカにさらに輪を広げなきゃいいがな、してもらいたくない、こういうふうに思いつつ、その前に日本としても北米局なり審議官なり、今の発言は非常にやっぱり重きをなすのです。
 大臣ね、大臣はここで発言するとかえってうまくないのかな、沈思黙考して一言も語らず、日本的哲学でこれでけりをつけたと、こういう記事もそれで一つの記事がなと、こんなふうにも感ずるのですけれども、ひとつあと二分三十秒時間がありますので、大臣、何かコメントがあったらひとつコメントしてください。
#77
○国務大臣(渡辺美智雄君) 私は、今言ったようなことを一切今まで知らないのですよ、初めて聞いたことですから。そういうふうなことで果たして小錦がそういうことを言ったのを言わないのか、あるいは優勝回数とかいろんな横綱の条件があるのでしょう。それにかなっているのかいないのか、そういうことはわからないから何ともコメントしなかっただけです。
 ただ、本当にちょっとしたことで誤解に基づいて大騒ぎになるということは本当に困ったことだ、そういうような騒ぎにならないように十分に注意する必要があると、そう思っております。
#78
○黒柳明君 結構です。
#79
○委員長(大鷹淑子君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。
   午前十一時五十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後二時開会
#80
○委員長(大鷹淑子君) ただいまから外務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#81
○立木洋君 条約についてのお尋ねですが、サケ・マスの漁業についての沖取りの全面禁止ということが私はやっぱり問題だと思うのです。この点、本当に全面禁止を行う科学的な根拠があるのかどうなのか、あるいは今の国際的な趨勢から見て整合性があるのかどうかという問題が考えられるだろうと思うのです。
 もちろん私たちの主張としても、資源の保存、これは非常に重要な問題ですし、資源を保存し再生産をしながら、しかもこの資源については最適利用というふうなことも考え方としては明確にされているわけですから、そういう点は当然のことだと思うのですね。それから母川主義の問題についてももちろんこれは否定するものではありません。しかし問題は、この条約自身の内容で見てみますと、確かに日本も母川国ですから母川国としてのもちろん考え方や立場というものも当然でしょうが、しかし一方で言うならば漁業国でもあるわけですね。だからその点について、今のこういう状況の中で、つまり漁業国としての立場をこの条約の締結の中でどういうふうに主張してきたのか、その点をまず最初にお伺いしたい。
#82
○政府委員(川島裕君) お答え申し上げます。
 公海のサケ・マスにつきましては、これまで日米加漁業条約とそれから日ソ漁業協力協定どこの二つ、これのどちらも母川国の一義的な利益と申しますか権利が強く反映される中での枠組みでもございます。その中で実態的にはソ連系のサケ・マスをとってきたということでございます。
 ただ、そういう母川国の権利というものが国際的な趨勢といたしましてだんだん定着してきた中で、その中でこの二つの枠組み、条約及び協定の中でソ連のサケ・マスをとってきたけれども、やはりおのずからその割り当て量が減ってきた。これは何と申しますか、納得ずくでとる枠組みでございますので、それは次第に減ってきたという現実にどう対応するかというのが遺憾ながらこれまでの推移だったわけでございます。そして、それの行き着く姿として本年からは日ソの協定につきましてはもうゼロになるということが見えてきた段階で、その四か国が集まりましてむしろ公海における沖取り禁止という新たな枠組みをつくったわけでございます。その際には、今、先生も御指摘になりましたけれども、とる立場に加えてこちらの日本の川から出ていくサケ、これの公海における保存という意味では利益があるだろうということも考えた次第でございます。
 そういうことで、公海におけるサケ・マス資源の保存という観点から私どもといたしましては今般のこの条約を作成した次第でございます。
#83
○立木洋君 この問題について例えば漁業国とし
ての主張が国際法上全く認められていない。日本が主張するならばそれは不当な主張になるということであるならば別だけれども、国連海洋法条約、これはもう世界の趨勢になっている条約ですが、この中でも六十六条の三項(a)、(b)、その漁業国としての主張を述べる権利というのが当然認められているわけですね。
 ここで言われているのを見ますと、結局、「排他的経済水域の外側の限界を超える水域における溯河性資源の漁業に関しては」、つまり公海の漁業に関しては、「関係国は、当該湖河性資源の保存上の要請」、これが一つですな。それからもう一つは、「母川国の必要に妥当な考慮を払って当該漁業の条件に関する合意に達するため協議を行う」、この二つの問題が挙げられている。公海上でもとることがある意味では可能だということが三の(a)で述べられているわけですね。
 それから(b)に至るならば、「母川国は、溯河性資源の漁獲を打っている他の国の通常の漁獲量」、これが一つですな。「及び操業の形態並びに当該漁業が行われてきたすべての水域」、「漁業が行われてきたすべての水域」というのは二百海里以内だけではないのです。公海上も含めてです。「水域を考慮して、当該他の国の経済的混乱を最小にするために協力する」。だから国際的な法上も認められているのですよ、漁業国が主張するという立場、権利というのは。
 だから、その交渉をやるのに、一方的にそういう趨勢になったと、もう全面的な公海上の漁獲は禁止になったというふうなことをこちらが認めて、そして相手に妥協して、はい大変です、いろいろな経済的な問題が起こっても結構ですというふうに引き下がる必要は全くないわけです。主張することは主張できるのです。国際法上も認められているのです。その点とういうふうに主張したかということをお聞きしているのです。
#84
○政府委員(川島裕君) 御指摘のとおり、海洋法条約六十六条三項(b)の経済的混乱を最小限にするという条項があるわけでございます。ある意味で、これをよすがといたしまして従来沖取りを公海においてやってきたと。ただ、それはやはり母川国側との納得ずくの話でございますし、そこは合意が得られるなら当然とっていいのだというふうにはなかなかなし得ないわけでございまして、それ自体、日ソ両国間のやりとりでも漁獲量が少なくならざるを得なかったということはあるわけでございます。
 そういう背景の行き着く姿としてこの条約をつくったというわけでございますので、その経済条項にもかかわらず、それを使わないで公海のサケを放棄したというようなことでは全くないわけでございます。
#85
○立木洋君 だから問題は、資源の保存上その必要性、つまりその資源の保存上の要請というのが客観的にあるのならばこれは一定の根拠を持ち得ると思うのですよ、その沖取りを削減するだとか禁止するだとかが。ところが、今回のこのサケ・マス漁の禁止、これが公海におけるサケ・マス漁業資源の科学的な調査や研究をした結果、こういう状況になっているから禁止しなければならないという結論が出たのですか。そうじゃないじゃないですか。どうですか。その点は。
#86
○政府委員(鶴岡俊彦君) 御案内のように、サケ・マスは溯河性魚類でございまして、それぞれの国の母川に起源を有する魚が公海域を回遊してまた母なる川に帰ってくる。そのためにそれぞれの沿岸国がいろんな努力を行っているわけです。
 もう御案内のとおりでございますが、日本の場合、日本沿岸に回帰するサケは全量人工ふ化放流したものによっておるわけでございます。ほかのアメリカ、ソ連等におきましても、そのためにサケ・マスふ化場を造成するとかあるいは河川の環境を維持するとか、そういうサケ・マス資源の増大のためにそれぞれの国が多大の人的あるいは物的な投資をやっておるわけであります。そういうことを根拠にしまして、母川国がサケ・マスについては公海といえども第一義的なあれを有するというような立場に立って今回のものができたわけでございます。そういうサケ・マスをめぐる情勢によって今回の条約はできたということでございます。
#87
○立木洋君 だけれども、問題は、つまり資源についての科学的な研究調査の結果というものではないわけですよね。簡単で結構です。
#88
○政府委員(鶴岡俊彦君) 資源についての実態もあるわけでございますけれども、公海におきますいろいろな魚の問題というのは、一般にカツオ、マグロみたいな形態のものあるいはまた底魚みたいに沿岸域と公海域に住むものそれから今回みたいなものがあるわけでございまして、専らその魚の特性に合った対応をしたということだと思います。
#89
○立木洋君 長官は答弁されていませんけれども、科学的な調査研究の結果、資源の状態はこういう状態になっているから、これ以上公海上の漁業を進めていくことはやはり大変保存上問題があると、そういう調査研究の結果ではないということが言えると思うのです。
 それで問題は、四カ国でこの条約を結んだわけですけれども、それならばこの条約にかかわっていない第三国、これは公海におけるサケ・マスの漁獲は何ら規制されていないわけですよね、川島さん。
#90
○政府委員(川島裕君) 御指摘のとおりでございまして、この条約の交渉の過程で非常に四カ国の間の念頭にありましたのは、四カ国だけでやめてもほかの国の漁船が来て跳梁ばっこと申しますか、大いにとったりしたら何の意味もなくなるわけですから、行く行くはこの条約にほかの国がなるべく多く参加してもらうことが非常に重要であろうというのが交渉の過程での共通の認識でございました。ただ、これは条約ができてからの宿題ということになろうかと思います。
#91
○立木洋君 それも、だから私は先ほど国際的な整合性がないと言ったのですよ。
 問題は、日本の漁民は一定のそういう公海での漁業を続けてきたのです。漁業を続けていかなければさまざまな意味で経済上大きな混乱が生じる。だから、それについては一定の量の沖取りができるように今までも主張してきたし、今の状況のもとでもそれを主張することが私は正当だと思っているのです。
 問題は何かというと、そういうふうに沖取りを続けたいと願っている日本が禁止される。沖取りをしていないという国もあるわけです、三カ国はしていないわけですから。ところが、第三国は禁止されていない。そして、結局入ってきて公海上でサケ・マスの漁獲を行う。これはもう新聞報道でも去年あたりから報道されていますが、近年、台湾、韓国などが公海サケ・マス漁に参入し、日本の資源自体が脅かされる事態が生じていたと新聞で現に報道されているのです。台湾や韓国が公海上のサケ・マスの全面禁止に参加するという保証が一体あるのですか。ないじゃないですか。そういう整合性もないのに、日本だけが漁業を続けてきて、今、漁業国としての当然主張する権利があるにもかかわらずそれを主張しないで、相手の主張に同調してそういう事態になって、この問題というのは結局残されるわけです。
 とれる国、とりたいと思っている国がとれなくなった。現に禁止されていない国では公海上でサケ・マス漁を続けることができるという状態が現状としてあるわけですから、どうですか、この点は。
#92
○政府委員(川島裕君) ほかの国がとっているのではないかという今の御指摘でございますが、中国、韓国等の名前がありましたけれども、いずれの国ともこの条約対象国水域、つまり公海でサケ・マスを対象とする漁業を行っているとは私どもは承知しておりません。ベーリング海の公海におきまして中国、韓国それからポーランド等の漁船がスケトウダラを対象としたトロール漁業を行っているわけでございますけれども、いずれの国もその国の漁船が万一サケ・マスを混獲した場合には直ちに海に戻す処置を自主的にとりますということを国際会議等の場で言っているわけでござ
いまして、そういうことではないかと思います。
 いずれにいたしましても、サケ・マスだけをとりに来ているのは今のところないというのが私どもの認識でございます。
#93
○立木洋君 長官、サケ・マスをそういう台湾、中国、朝鮮、韓国等々が全くとっていないのかどうか。そういう問題が漁民の中では問題にされており新聞でも既に報道されておるわけですが、この事実を外務省が知らないかどうかわかりませんけれども、水産庁の方としてはどういうふうに把握していますか、実態は。
#94
○政府委員(鶴岡俊彦君) 正確に私どもが承知しておるわけではございませんけれども、サケ・マス漁業、今、外務省から答弁ありましたように、サケ・マスを主としてねらいとする漁業は行われていない、これは事実だと思います。
 ただ、網漁業でほかのものについて、あるいは網漁業に混獲は避けられないものですからある程度混獲はあるかどうか、その辺はちょっと不分明でございます。ただ、サケ・マスの流通経路が大体わかっていますので、その辺は避けてほかの網漁業をやっているというふうに承知しております。
#95
○立木洋君 何ぼ避けようとしても混獲はあるわけですからね。
 ですから、このサケ・マス漁について参入したということが新聞で報道され漁民の間でも問題になっているということについて、事実を十分に把握していないということが前提であるならば、この問題についてはやっぱり国際上、不平等性というのが残るわけですよ、この条約では。つまり、サケ・マスを公海でとってきた日本の国が全面禁止を四カ国との間で行う。だから、漁業国としての日本の当然国際法上も容認され得る状況を他の三カ国に同調することによって母川国としての立場だけで漁業国としての立場を放棄するということは問題があるということだけは指摘しておきたいと思うのです。
 それにあわせて指摘したい点は、先ほども言ったように、他の国の経済的混乱を最小限にするために協力をするということ、母川国に対しても協力の要請ということが六十六条で明確に記入されているわけですね。この問題について言えば、例えば確かに二百海里以内のロシア領の中での操業が一定量できて、八千万トンですか、何ぼになるかわかりませんけれども、一定の漁獲量としては確保ができている。これは漁民の要請によって政府側がそういう努力をしたということを私たちは何も認めていないわけじゃありません。しかし問題は、それができたからといっていわゆる魚の質、味、これは二百海里内でとるならば公海上でとるのと違って非常に落ちる。だから魚価は公海のものより三〇%程度安くなる。マスなどが主体となるためにこの問題でも採算が合わなくなるという状況が出されております。
 特に根室市ではこのサケ・マス漁に封ずる依存度というのは最高時は六〇%以上もあったわけですが、かつて五万人だった根室市、これが現在では三万七千人、さらに近々には三万人を割るだろうと言われるような重大な経済的な打撃が現に生じているということなのですね。
 こういう問題についてもきちっと主張をして漁業国としてこういう混乱が急激に生じるような事態を避けるということは国際的な法上も認められてきた漁業国の権利なのですから、そういうことを十分に見ないままでこういう形で沖取りの全面禁止を容認してしまうということは、先ほどの科学的な根拠を十分に示されていないという問題と同時に、第三国で漁獲することがすべて禁止されているわけではないというふうな問題点とあわせて問題があるのではないかと思うのですが、この点についてはどういうふうにお考えですか。
#96
○政府委員(鶴岡俊彦君) 先ほどの最初の御質問の質の問題でございますけれども、私どもの知見によりますと、ロシア二百海里と公海とではそれほど魚種組成に変わりはないというふうに承知しておるわけでございます。品質面では公海のサケ・マスに比べまして若干落ちるということはあるいは考えられますけれども、溯上河川に近い沿岸漁獲でない沖合で漁獲するということから、品質低下の心配というのはそれほどないのではないかと思っております。
 それからサケ・マス漁業につきましては、こういう母川国主義というようなことで今回沖取りが禁止になったわけでございますけれども、量的にはソ連二百海里の中での操業あるいは日本二百海里の中のサケ・マス、主としてマスですけれども、についてのクオータにつきまして過去と同じような水準のクオータが確保できておるわけでございますから、そういう点で今後とも安定的な操業の確保に努めていきたいというように思っております。
 それから地域に与える影響、これは私どもも承知しておるわけでございまして、地域の振興上どういうことが考えられるのか地元の意向をお聞きして、私どもが地域振興上お手伝いができるということがありますればそういう点で努力をしていきたいというように考えております。
#97
○立木洋君 最後なので、渡辺大臣、一言コメントをいただきたいのですが、沖取りの全面的な禁止という問題については、さっき申し上げましたように、科学的ないわゆる調査研究が十分になされた結果ではない、同時に第三国ですべての公海上のサケ・マス漁が禁止されている状況になっているわけではないわけですから、そういう問題点があるのと同時に、もう一つは、今このサケ・マス漁を基幹産業としてきた地元において抜本的な地域の振興対策というのが求められているわけで、こうした事態になった結果生じる困難な状態に追い込まれている関連産業に対しての救済措置等々どういうふうにお考えになるか。
 それから今問題になるこれは再生産の問題もあるので、ことしの場合にはサハリン州とカムチャツカ州のふ化場を日本側の民間サイドで建設するというふうなことが問題にされていますが、これに対しては政府はどういう支援策を考えておられるのか。これらの問題についてお答えいただいて、質問を終わります。
#98
○国務大臣(渡辺美智雄君) 資源保護の問題は重要であると、これは大体皆さん御認識になられると思うのです。これは科学的根拠に基づいてやる以外にはないであろう。皆さんで合意を得た上である程度の規制はやむを得ないと思いますが、そのためのいろいろなふ化場の問題とかこういうようなものも今後お互いに、魚は天然のやつをとるだけじゃなしに自分でも養殖をしたりあるいは放流したり栽培したり、そういうようなこともやっていかなきゃなるまい。それから関連業者の問題その他は、通産省、農林省、主管官庁がよく打ち合わせをして適切な措置を講じていっていただきたい、そう思っております。
#99
○高井和伸君 外務大臣にお尋ねしますが、私がこの外務委員会に所属するようになりまして条約案件の審議をするについて思う一番初めの印象は、やたらと条約の名前が難しいというのですか長ったらしいというのですか、例えば「千九百六十八年二月二十三日の議定書によって改正された千九百二十四年八月二十五日の船荷証券に関するある」、「ある」というのを強調しておるのですが、「ある規則の統一のための国際条約を改正する議定書」というようなこんな長い名前、この世の中にちょっと合わないと思うのですよ。
 そして、もう一つの今回の条約によりますと、略称はどうやら北太平洋サケ・マス保存条約、これはよくわかるのですが、他方では「溯河性」などというどの辞書を見てもないような言葉を使ってやってある。これはもう六法全書を編さんするときにフルに載せるのか略称を載せるのか、省略は正式名なのか、正式略称などということはないだろうと思うのですが、そういったことでインデックスでとても外務省の条約局しかわからぬような名前がいつも出てくるということは、これは日本の国会の審議においてもいろんなインデックスの面でも大変混乱を生じさせる、そういう印象が非常に強いのです。外務大臣の今後の方針を含めてどうお考えでございますか。
#100
○説明員(野村一成君) 何分、条約の名称につきましては条約の目的、趣旨をできる限り反映させるという一つの大きな要請がございまして、その結果、先生御指摘のような長い題名になっているのがございます。特に多数国間条約でございますので、これはそういうことで長いけれども、このつくろうとしている条約の目的、趣旨を反映するのにしては一番それが最大限に短い呼称であるという、そういうふうな理解ででき上がっているものだと私どもは理解しております。
 同時に、先生御指摘のように、やはりそれなりの略称というのも一般的に使われているのも事実でございます。また、むしろ条約というのはタイトルであろうときちっと正式につくらなきゃいけないわけですけれども、同時に、一般に条約を現実の必要に応じてお互いに呼び合うというときにはむしろ略称で呼び合っているというのも実態でございまして、この辺ぜひ御理解いただけたらと思っております。
#101
○高井和伸君 大臣、いかがでございますか。
#102
○国務大臣(渡辺美智雄君) 私も感じとしてはちょっと長過ぎるのじゃないか、幾ら何でももう少し短くできないかというのは同じ感じでございます。しかし、日本だけが名前をつけるわけじゃなくて相手国もつけるのでしょうから、そういうのに引っ張られて長くなっているのかどうかも含めまして、もう少しいい知恵を出すように考えてもらいたいと思っております。
#103
○高井和伸君 そのようにお願いいたします。
 続きまして、この条約の一番基礎的なところで母川国という概念がありまして四カ国があらわれております。ところが、そのほかには韓国、北朝鮮、中国もこの地域において母川国だというようなことになっておりますが、この母川国という概念、今度の北太平洋地域において割り振ると大体何%ずつ各国に割り振られるのでしょうか。
#104
○政府委員(鶴岡俊彦君) これは実際に回帰している量を正確に私どもつかんでおりませんが、サケ・マスの漁獲量は、これも各国によって統計の取り方が違いますので正確かどうかその辺はありますけれども、尾数で申し上げて恐縮でございますが、一九八九年の各母川国におきますサケ・マスの漁獲量は、アメリカの場合は一億六千四百万尾、ソ連が一億三千四百万尾、日本が六千七百万尾、カナダが三千七百万尾というのが私どもの今、手元にある資料でございます。これで母川国全部を割り振るというわけではありません。
#105
○高井和伸君 この条約の基本的な原点が漁業資源の保存、確保というふうなことからスタートしているにしては今のデータはお粗末に過ぎるというのか、そんなところなのかというイメージがあったりしましてそういう印象なのですが、さらに条約外の国というのはどのくらいとっているのかわかっているのですか。
#106
○政府委員(鶴岡俊彦君) 今わかっていますのは、韓国が同しベースで見ますと二万二千尾、それから中国につきましては八〇年から放流試験研究中でございますので、同じベースで統計は出てきておりません。約四年ぐらいを中心に沿岸国に帰っできますので、中国についての数字は今のところございません。
#107
○高井和伸君 今のは、自国の二百海里内における漁獲高から見ればそういった母川の割合というのはわかると思うのです。私が先ほど質問したのは、北太平洋地域における従前の漁獲も入っているだろうと思うのですが、さっきのデータはどういうデータなのですか。
#108
○政府委員(鶴岡俊彦君) この数字は、公海ではなくて沿岸及び内水面における漁獲量の数字でござい、ます。
#109
○高井和伸君 そうしますと再生産という概念を持ち込んだ場合、今の条約で全面的に四カ国がこの地域で漁獲をしないということになりますと、いつかこの条約が要らなくなる、あるいはまた沖取りができるようになる時期というのはこの条約ではどんなふうに科学的ベースを持って考えておられるのですか。
#110
○政府委員(鶴岡俊彦君) この条約は資源がどういう状況になっておるかということによってできた条約でございませんで、それぞれの公海を利用している魚の生態といいますか、それが例えばマグロでありますとかあるいはサケ・マスでありますとかスケソウとかその他いろいろ違う形態でございまして、それの魚種の生態の実態に合わせたものでございますので、資源がどうなった場合にどういうとり方をするのかというのはまた別のことだと思います。この条約がいつどうなるかということとは関係ないことだと理解しております。
#111
○高井和伸君 そうしますとこの条約の目的は、もう一回繰り返しますが、何なのですか。
#112
○政府委員(鶴岡俊彦君) 私どもが理解していますのは、サケ・マスというのは溯河性魚類でございまして、それぞれの母川、母なる川で放流しました稚魚が三、四、五年ぐらい公海部分を回遊して帰ってくる。その間、母川国が一義的な権利を有するという立場に立っておるわけでございまして、せっかく放流した魚のそれぞれの母川国の権利を公海上で阻害されない。日本も一つの母川国でございますので、そういう点でそれぞれの母川国が公海においてサケ・マスを成長させて自分たちで利用する、そういうふうに水産の立場からは理解しております。
#113
○高井和伸君 そうしますと今までの沖取りという概念は、今の母川における漁獲という概念とはある意味では矛盾していたというか対立していたというか好ましくなかったというか、過去の沖取りをどう評価したらいいのですか、そういう概念からいうと。
#114
○政府委員(鶴岡俊彦君) 私は、漁業の発展段階によると思います。
 今、日本に回帰しておりますサケ・マスはもうほとんど人工ふ化したものでございます。各国ともふ化場をつくりそれで放流し、あるいは河川をきれいにしてそこで産卵場を整備するというような投資をしてやってきたわけでございますけれども、それ以前はそういうことがなかったというごとで、多分母川国自身がそういう関心がなかったのじゃないか。そういうふ化放流技術の進展とかいわゆる投資とか、そういうものが逐次ふえてきたというようになってこういうことが出てきたと思っているわけでございます。
 かつてのやり方と今とが矛盾しておるとは思いません。発展段階に応じた対応になってきたのじゃないか、そういうふうに理解しております。
#115
○高井和伸君 この締結四カ国全部同じですか、そういう事情は。
#116
○政府委員(鶴岡俊彦君) これはそれぞれ置かれている立場によりまして、河川の長さとか広さとか、魚をとる場合でも日本の場合にはもう河口に全部網かけてもとれるわけですけれども、ソ連のような大きい川ではそうはいかぬわけです。
 それぞれの国の置かれている立場、技術の発展段階とか資本の蓄積とかいろいろによって違うと思いますけれども、いずれにせよ、今の技術の発展段階で自分たちの川を最大限に利用していこう、そういう基盤は同じだと思います。やり方自身はそれぞれ置かれている自然条件その他発展段階によって違うと思います。
#117
○高井和伸君 そうすると、先ほどの質問に戻りますけれども、この条約はずっと未来永劫続く可能性が高い条約というふうに考えたらよろしいですか。
#118
○政府委員(鶴岡俊彦君) 先のことを言われても私もはっきりお答えできるかわかりませんけれども、今の段階ではこういうことが適切なのではなかろうかというふうに思っております。
#119
○高井和伸君 この条約違反の国がというか、日本の漁船がこの北太平洋地域においてサケ・マスを沖取りしたというときの措置、それを見つけたカナダの船が臨検拿捕したというときの措置、その後をシミュレーションするとどうなりますか。
#120
○政府委員(鶴岡俊彦君) これはいずれの締約国も公務員がその違反した場合に船に乗り込んで調査をし、違反していれば拿捕できるわけでございますけれども、拿捕した場合には、これは何条かちょっと私、今、正確に言えませんけれども、そ
れぞれの船の所属する国に通告して引き渡すということになっておりますので、その引き渡しを適切な場所で受け取って、それぞれ国内法に基づいた手続を進めていくというふうになるのではないかと思っております。
#121
○高井和伸君 この場所が条約によるとある程度限定され特定されるような条項になっているようですけれども、これは外務省でも結構ですが、もし日本で引き渡しするようなそういった場所は、例えば根室だとか釧路だとか、そんなところですか。決まっているのですか。
#122
○説明員(野村一成君) ただいまの指摘の点は、この条約の第五条の二項の(b)で「いずれかの適当な港」ということで触れられているところだと思うのでございます。要するにここで指摘しておりますのはどこでもいいというわけではないという趣旨でございまして、一般合理的に考えまして、やはり何と申しますか、合理的妥当なところというそういう趣旨で書いているつもりでございます。
#123
○高井和伸君 その第五条二項(a)に「締約国の正当に権限を有する公務員」と、日本の場合は司法警察員、特別司法警察員だろうと思いますが、具体的に言うとどこの官庁のどういう人でどんな船に乗ってだれが巡航して見張っている一のかということになると、現状はどうなりますか。
#124
○政府委員(鶴岡俊彦君) 日本の場合を申し上げますと、保安庁職員あるいは私どもの方で漁業取締官がおるわけですけれども、そういう職員になろうかと思います。
#125
○高井和伸君 この条約を実効あらしめるために自国がそんなことをしちゃいけないということで漁業法に基づいて処罰されるのだろうと思いますけれども、この域内において違反漁船があるかないかということを積極的にチェックするのか何もしないのか、ほんのちょっとやるのか、そういう質問をするとどうなりますか。
#126
○政府委員(鶴岡俊彦君) 私ども、保安庁と連携しながら最善を尽くしたいと思っております。
#127
○高井和伸君 もうちょっと具体的に、週一回ぐらい回ってくるだとか、それは有限の人材ですから程度の差はあると思うのですが、もう少し具体的にイメージアップしてほしいのですが。
#128
○政府委員(鶴岡俊彦君) 今、トランスポンダーその他機器がございましてどの辺に船が行っておるというのはわかるわけでございますので、適切な対応はできると思っております。
#129
○高井和伸君 この北太平洋地域において日本の船が違法な操業をした場合はこれは何条の何に当たるかということをお尋ねしますが、どういう罪になるのですか。
#130
○政府委員(鶴岡俊彦君) これは漁業法六十五条に基づくものになろうかと思います。
#131
○高井和伸君 具体的な条項は何条ですか、そうすると。
#132
○政府委員(鶴岡俊彦君) 失礼しました。今のは間違いでございまして、これは適法な許可を受けたものがやるわけで、今回は公海については漁業許可はしないわけでございますので、五十二条の「許可を受けなければならない」という規定の違反になろうかと思います。
#133
○高井和伸君 あと外務省にお尋ねしますけれども、先ほど立木委員からも御質問ありましたが、本来入ってもらいたい国が入っていない、そういったもとでまず合意。できる国から四カ国でやっていこう、それで条約をオープンにしていこうというときの働きかけだとか、国際的なある種の力関係が加わっていくのだろうと思うのですね。こういった国に入らない国はある意味では先進諸国と呼ばれないと、法的に言って。
 先ほどから外務大臣が法と正義に基づいていろいろやるとおっしゃるけれども、未締結国は締結していないわけですから義務を負わないことはもちろんですが、こういった国際条約を結ぶ慣行の中においては現に未締結国はどんな実質的なペナルティーを受けるかと言ったらどういう答えになりますか。
#134
○説明員(野村一成君) この条約に基づく何と申しますか、締約国としての権利義務関係というのはあくまでこの条約を締結しているというのが大前提でございます。その点は御理解いただきたいと思います。
 したがいまして、まさにそういう見地からこの第四条の第一項で書いてございますように、そういう場合に注意の喚起、それは締約国同士でそういう場合にやっていこうということ。さらには、先ほど来御答弁させていただいておりますけれども、やはりできるだけこの条約締約国の中に入っていただくようにするという、そういう努力というのがなし得ることであろうというふうに理解しております。
#135
○高井和伸君 あと水産庁にお尋ねしますけれども、先ほど母川国の割合を聞いたときのお答えの様子を見ていますと、どうも基礎的データは科学的には余り大し光データじゃないということを自認しながら、自白しながらおっしゃっておられましたけれども、私たちがこれから漁獲量だとかそういったものを見るときにそんなところで見てもらうよりほかはないと、こういうのが率直な御意見なのですか。
 先ほどから言うように、資源の確保だとかいろいろな科学的データがあるのかないのか、それから情報公開するしないだとか、そういった情報を持ち寄ろうじゃないか、交換しようじゃないかということがこの条約にも書いてあります。そういった漁獲量だとか魚に関する情報というかデータというのはどのぐらいファジーなのか、科学的に見た場合に。そんなのつかまえっこないとは思いながらも、科学的統計手法というのはあるのでしょうか、ないのでしょうか。そこらのことをまず先輩としてお教え願って、私の質問を終わります。
#136
○政府委員(鶴岡俊彦君) サケ・マスは母川に帰って産卵しますと母親はもう死ぬわけでございます。それを全部つかまえられるかどうか、その辺の誤差はあろうかと思いますけれども、現段階の資料としては我々は今の段階で十分議論にたえ得るものだと思います。一匹一匹というわけではございませんので、十分資源的な議論にたえ得るようなデータは現段階の水準としてはそれぞれ持っておるわけでございますので、十分論議はできると思います。
#137
○高井和伸君 一点だけ。
 それはサケ・マスに限ってですね。
#138
○政府委員(鶴岡俊彦君) これは魚はいろいろございまして、海の中というのは陸の上と違いましてまだ未知な分野がいろいろあります。これは私は未知な分野があるからこれからおもしろいし、いろいろやりがいがある分野だと思っておりますので、それが悪いというのじゃなくて、乱そういうものがいいというふうに思っています。
#139
○高井和伸君 終わります。
#140
○猪木寛至君 今回の条約と直接には関係ありませんが、昨日、ビザなし渡航ということで四島の住民がいらっしゃったと。これは漁業問題と大変かかわってくる問題で、今回の団長さんでミハイル・テレシコさん、この方は漁業の一番のあちら側におけるエキスパートというか、そういうごとできのうテレビにも出ておりましたが、そういう漁業の関係も視察したいということがありました。実際には非常に手続上まだ難しいということがいっぱいありまして、すぐにはこのビザなし渡航が一般人に及ぶことはないということも出ております。
 この住民十九人こちらに来られまして、これから本当に我々もぜひそういう島民との交流をしていきたい、スポーツあるいは文化交流もしていきたいと思っておるのですが、今後この見通しというか、第一陣が来られまして、また日本から第一陣が向こうへ行かれるそうですが、そこらについてちょっとお話を伺っておきます。
#141
○政府委員(兵藤長雄君) この四島無査証交流は、ゴルバチョフ大統領が昨年訪日されたときに基本的に合意されるに至ったことでありますけれども、基本的な考え方は、北方四島に現在居住しておられるロシアの国民の方と日本側の旧島民を
中心とされる関係者、この間の無査証交流を実現していこうということであったわけでございます。あくまでもその本趣旨にのっとりました形で今後四島交流をさらに進めてまいりたいと思っておるわけでございますが、さしあたり日本側からはそういうことで北方四島の旧住民を中心といたしました北方四島の関係者の、第一回目でございますからかなり指導的な立場におられる方々を中心とした訪問団をこちらから派遣するということを考えております。これは五月に実現をいたす方向で、今、具体的な細目の詰めを行っております。
 そのさらに後に、できますればロシア側から第二陣をお迎えしたいわけでございますし、こちらからは旧島民、本当にあそこで長い間住んでおられた方々の第二陣をお送りしたいと思っておりますが、それとあわせて日本の国民の皆様にもその実情をお知らせする必要があるということで、報道関係者を中心とした訪問団も遠からず派遣することを検討いたしたいというふうに考えているところでございます。
#142
○猪木寛至君 先ほどからこの条約の成立経緯あるいは締結の意義というようなこと、それからいろいろここな問題がもう出ておりますので、一つ私の方は、去年アラスカの方からいきなり電話がかかってきまして漁民の騒動があったということで、それを新聞でごらんになっているかどうかわかりませんが、当時たしか例年だとキロあたり一ドル二十セントとかいったのが四十セントに下がってしまった、これじゃ島民が漁に出て働く意味がないということで、漁に出る出ないということで何か暴力さだが起きたという記事が出ておりました。そこで、日本は一体どうなっているのだというので依頼があったので、私は日本の事情を調べまして向こうに伝えたのです。
 一つは、やっぱり先ほどから話があります日ロの関係のサケ・マスの問題について、今のアラスカの問題は後でまたお話ししますが、いろいろ資料を集めてまいりましたが、二百海里というところの線引きが非常にあいまいというか、これは三十三度になるのですか、二百海里の下。
#143
○説明員(野村一成君) 北緯三十三度以北ということでこの条約の区域というのを書いてございます。これは条約区域の一番南、南限と申しますか、南の線をそこで切っている、そういう趣旨でございます。
#144
○猪木寛至君 これは北方領土が将来帰ってくれば、あるいは二島返還論とかいろいろあるわけで、そのときに予想される線引きということで示してあるのですが、私も見てもあるいは話を聞いてもよくわからないのですが、納沙布岬と国後どの幅が何十キロですか、これは。私も昔行ったことがありますが、天気のいい日にはよく見えるのですね。そこのところでこの二百海里の線引きというのはよくわからないのですけれども。
#145
○説明員(野村一成君) 納沙布岬云々と今おっしゃいましたけれども、これはいずれにしましても日本の領海の部分でございまして、二百海里と申しますのは、距岸、それから二百海里にわたって伸びているという漁業専管水域のことでございますので領海部分ということになろうかと思います。
#146
○猪木寛至君 その線引きですね。例えば国後から二百海里あるいはこちらの方から、日本の一番最北端から二百海里というと当然ダブってくるわけですけれども、そのダブったところをどういう線引きをこれはされているのでしょうかね。
#147
○説明員(野村一成君) これはこの条約の第一条で書いてございまして、先ほど申しましたように、南限、南の限は「北緯三十三度以北の北太平洋及び接続する諸海の水域」ということで、それから「領海の幅を測定するための基線から二百海里の外側に位置する水域」ということでございますので、いずれにしましても、陸地、島も含めましてそれから二百海里を引きまして、その外側についてこの条約を適用すると、そういう関係になるわけでございます。
#148
○猪木寛至君 それからまた、先ほど漁獲量に関して安定的問題、地元の声を聞いてというお答えが同僚議員の質問に対してありましたけれども、ひとつ漁民の声を代表してというか聞いていただきたい。
 一番ロシアと今やられているのが、これは何というのですかね、ロシア政府が援助をしているダリバとかベリーマとかという向こうの会社がありますが、そこが要するに漁獲量を持っておりまして、日本の日鮭連とか全鮭連という大手が逆にそこから割り当て量を分けてもらうというか、買うのでしょうかね、それでやるのですが、大変高い料金を払うということで、大変安定した漁業はできるのですが、とても採算が合わない、現状は赤字だというのが漁民の人たちの声なのです。
 ちょっと一例を挙げますと、一トン二十四万ということで、それがどのぐらいのあれだか私はわからないのですが、その中で先ほど味の問題も出ておりましたので、ちょっとここにあるシロザケ、ギンザケ、カラフトマス、ベニザケ、マスノスケ、サクラマス、それからスチールヘッドというのですか、私ども割と口がうるさいというか、できるだけおいしいものが食べたいと思うのですが、この中で一番おいしいのは何なのでしょうか。
#149
○政府委員(鶴岡俊彦君) 魚は好みがあって何とも申し上げにくいのですけれども、ベニザケとかサクラマスとかいうのは普通おいしいというふうに聞いております。
#150
○猪木寛至君 私も自分自身はベニザケが一番。一応高価なものだと思いますし、それからもう一つはギンザケというのが二番目で、あとほかのものはちょっとやっぱり味が落ちると。
 もう一つ、味の問題と関連するのですが、やはり公海上でとった魚というのですか、これは沖合でとれるサケ・マスが一般に脂がのって美味であり日本人の嗜好に合っているというので、先ほど味の問題が出ておりましたけれども、漁民に聞いてまいりましたら、いやそんなことはありませんよ、やはり公海上の魚の方がずっと味がいいのですということを聞いてまいりましたが、どうですか。
#151
○政府委員(鶴岡俊彦君) サケは漁獲が公海での春先のやつ、日本の場合には九月ぐらいから北海道、それから十二月にかけて内地まで来るわけですけれども、河川水の影響を受ける場所に来ますと産卵準備に入るものですから色が変わったりして、何かブナとか、ひどいのがホッチャレとかいうようなことで、かなり身を利用するというのは、加工用は別にしまして鮮魚のまま利用するというのは味の点で問題があるというようなことは言われておるわけです。ただ、もう少し前の段階の河川水の影響がない段階でとる場合には、春先のサケに比べて問題があるかもわかりませんけれども、そう生食用としても問題はないのではないかなと思います。
 それからまた、卵の場合にはむしろ近づいてきた方があるいは、イクラですか、あれはいいのではないかというふうに私なりに理解しております。
#152
○猪木寛至君 もう一つ、サケとマスが価格が同じであるということを言われておりましたね。実際には価格が別々になっていないためにマスがうんととれ過ぎると大変値崩れが起きるとか、先ほどもアラスカの話をちょっとさせていただきましたが、そういうような漁師にとって不安定な状況というのはどうなのでしょうか。
#153
○政府委員(鶴岡俊彦君) 確かにサケも、先ほどベニザケ、シロザケ、値段も違うと思いますし、日本の市場価格ではマスはまた一段違うと思います、
 今回の日ロの第八回の委員会におきまして、ソ連系のマス、日本の二百海里を利用していますマスについての協力費につきましては、協力費の単価を従来から大幅にダウンした対応をしているわけです。それからまた、ロシア水域に入漁する場合の入漁料につきましても、民間協議におきまして昨年に比べまして水準はかなり下げた格好で話をまとめてもらっております。
#154
○猪木寛至君 先ほどのアラスカの話ですが、要
するにほとんどのサケ・マスに関しては日本は輸入するというのでしょうかね。先ほどのアラスカの問題も、自国で食べるのでなくて日本向け輸出のために漁師がとっている、そういうことから日本の在庫がふえてしまって結果的には半分以下の値段になってしまうようなことが起きているのですが、これは商社との関係ですから政府は関与していないかもしれませんが、実際にはそういう毎年毎年の値段が不安定であるということですね。外国がそれによって大変被害をこうむったということでアラスカの方から話があったわけです。
 実際マスは今、余っているのですが、サケの方はもう在庫が大変少ないということを聞いてまいりましたが、それはどうでしょうか。
#155
○政府委員(鶴岡俊彦君) 大体サケの需要の最盛期は、最近変わってきていましたけれども、新巻中心で十二月前後が一番最盛期でございます。ところが漁獲は、沖取りは春先でございますし日本の沿岸に入ってくるのは九月で、かなり最盛期の需要に向けてどういう供給になるのか、その辺はこれは自由化している物資でございますし、それぞれの仲買とかが値段をつけているために若干その需給の見通しに間違いがあったりなんかして狂いが起きるのはやむを得ない事実だと思うのです。
 たまたま平成二年というのは最近では一番最高の総供給量、在庫量がふえまして五十五万トンになったというようなことで、平成三年にもかなりこういう傾向は続くのではないかというのが業界の大方の人の考えだったと思います。そういう需給を想定してアラスカ産の買い付けとかあったために御指摘のような格好で過去に比べましてポンド当たり七十セントですか、これは一たん決めますとそれで通年走るそうでございますので、そういうような状況になったのは事実でございます。これは何もアラスカだけじゃなくて、日本の場合にも北海道へ行きますと、はしりの九月ごろの価格はかなり去年に比べて下がったわけです。ところが、ふたをあけてみますと生産量、輸入量とも去年に比べまして一割ぐらい低かったというようなことで、在庫もそれに応じて減ってきたということで、後半には若干値段が持ちまして一昨年ぐらいの水準になったわけです。
 今、そういう水準で来ておるわけですけれども、我々もなかなかこの予測自身、供給量の予測は難しいわけですが、できるだけ専門家の意見を徴してそういう需給予測につきましてできるだけ精度を高めて、価格の安定に向けて努力をしたいと思っております。
#156
○猪木寛至君 これから日ロの合弁事業というようなことがどんどん進んでいくと思うのですが、今月十六日に、これは海上保安庁が拿捕したというのか逮捕したというのか、十年がかりの裁判の判決が一つおりたのですが、六カ月の懲役で三年の執行猶予という。これから合弁事業というものがもっと進んでいくでしょうし、それから同時に違反行為をする人たちというのは、先ほども質問がありましたけれども、大変この辺の国内法におけるというか、例えば合弁事業でやった場合に反則行為を犯したときにどちらに裁判権があるのかというような問題、まだまだ整備されてない部分もあると思うのです。この辺についての見通し、簡単で結構です。
#157
○政府委員(鶴岡俊彦君) 私どもは、多くの国と入漁交渉、民間の応援をする場合もありますし政府間でやる場合もあるわけですけれども、その場合に一番問題になりますのは違反問題でございます。私どもは、そういうどちらこちらという先に漁業者みずからも自分の首を絞めないように違反をしないような指導をやっていくのがまず第一かというふうに思っております。
 拿捕とかなんとかありますと、今回の法律で決められたような格好で公海上はなると思いますし、相手の二百海里の中であれば向こう側の権限のもとに許可の条件のもとにやるわけですけれども、ぜひ違反をしないように対応していくのが基本だと思っています。
#158
○猪木寛至君 紳士ばかりならいいと思うのですが、やはり商売というものがかかってくると必ずしもルールどおりにいかないと思います。
 時間がなくなりましたので、ひとつ前回の委員会でも質問いたしましたアフガン問題と、同時にペルーの問題、非常にここのところ日に日に状況が変わってきていると思いますので。
 簡単で結構ですが、アフガン問題。パキスタンが仲介に入るとか、いろいろパキスタンの影響力が強いと思うのですが。
#159
○政府委員(小原武君) アフガニスタンでございますが、御承知のように十四日以来、反政府ムジャヒディンゲリラの攻勢が強まりまして、二十二日現在ではカブール市はムジャヒディン勢力に包囲された状況になっているということでございますけれども、現在までのところ大規模な戦闘が行われているというような状況ではないと承知しております。他方、地方のほとんどの主要都市がムジャヒディン側の支配のもとに入っているという状況のようでございます。
 そういう中で、二十一日のカブール政府側の発表によりますと、カブール現政府はムジャヒテイン側に政権を移譲する用意があるということを明らかにしているようでありまして、現在この反政府ゲリラ各派が暫定政権樹立に向かって協議を行っているという状況のようでございますが、まだまとまっていない。一部の中には武力による政権奪取の意向を表明しているということでありまして、その意味で情勢は依然として極めて流動的であると承知しております。
 そういう中で、国連のセバン事務総長個人代表がゲリラ側の有力者と会ったりあるいはまた近くガリ事務総長がパキスタンヘ向かうということでありまして、国連のいろいろの調停活動が早く実を結ぶことを期待しているところでございます。
#160
○猪木寛至君 終わります。
#161
○委員長(大鷹淑子君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#162
○委員長(大鷹淑子君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#163
○立木洋君 私は、日本共産党を代表して、北太平洋における溯河性魚類の系群の保存のための条約についての反対討論を行います。
 この条約は資源保護を基本とするものですが、米ロ加が母川国の立場に基づき一方的に沖取りを禁止することを決め、政府もそれを受け入れたものであります。沖取り禁止は関係者や地域に大きな影響があります。締約国の二百海里内での操業が可能となったことは、これまで漁民や関係者が政府に働きかけてきた一定の成果であると言えますが、それでもなおサケ・マスを基幹産業としてきた地方経済や関係者の生活を守る上で十分とは言えません。これに対する政府の救援対策も不十分であります。激甚災害にも相当するとの声が上がるほどの経済的混乱が予想されているにもかかわらず、科学的調査を行うことなく公海でのサケ・マス漁を全面禁止することは認められません。
 今日の世界の趨勢となっている海洋法条約はその六十六条三(a)項で、「排他的経済水域の外側の限界を超える水域における溯河性資源の漁業に関しては、関係国は、当該溯河性資源の保存上の要請及び母川国の必要に妥当な考慮を払って当該漁業の条件に関する合意に達するため協議を行う」と定めており、(b)項では、「母川国は、溯河性質源の漁獲を打っている他の国の通常の漁獲量及び操業の形態並びに当該漁業が行われてきたすべての水域を考慮して、当該他の国の経済的混乱を最小にするために協力する」となっております。漁業国としての立場は国際的にも認められているわけであります。
 我が党は、資源の保存を基本にして再生産を進めつつ、海洋資源の全人類的な最適利用を目指す立場から北洋漁業問題は解決すべきものと考えます。科学的根拠もなく全面禁止を強いることは漁
業国である我が国の経済的混乱についての考慮に欠けるものであり、この乱用は認められないものであります。また、この条約は四カ国だけでなく他の関係国も含めた対応が必要であり、検討が求められているものでもあります。
 二百海里時代を迎えたときからの政府の漁業政策のおくれもあわせて指摘して、反対討論を終わります。
#164
○委員長(大鷹淑子君) 他に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#165
○委員長(大鷹淑子君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより採決に入ります。
 北太平洋における溯河性魚類の系群の保存のための条約の締結について承認を求めるの件を承認することに賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
#166
○委員長(大鷹淑子君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、本件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#167
○委員長(大鷹淑子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五分散会
ソース: 国立国会図書館
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