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1992/03/12 第123回国会 参議院 参議院会議録情報 第123回国会 法務委員会 第2号
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1992/03/12 第123回国会 参議院

参議院会議録情報 第123回国会 法務委員会 第2号

#1
第123回国会 法務委員会 第2号
平成四年三月十二日(木曜日)
   午前十時三分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 三月十一日
    選任          萩野 浩基君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         鶴岡  洋君
    理 事
                野村 五男君
                林田悠紀夫君
                北村 哲男君
                中野 鉄造君
    委 員
                加藤 武徳君
                斎藤 十朗君
                下稲葉耕吉君
                中西 一郎君
                福田 宏一君
                山本 富雄君
                糸久八重子君
                瀬谷 英行君
                橋本  敦君
                萩野 浩基君
                紀平 悌子君
   国務大臣
       法 務 大 臣  田原  隆君
   政府委員
       法務大臣官房長  則定  衛君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  濱崎 恭生君
       法務省民事局長  清水  湛君
       法務省刑事局長  濱  邦久君
       法務省矯正局長  飛田 清弘君
       法務省保護局長  古畑 恒雄君
       法務省訟務局長  加藤 和夫君
       法務省人権擁護
       局長       篠田 省二君
       法務省入国管理
       局長       高橋 雅二君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局経理局長   仁田 陸郎君
       最高裁判所事務
       総局民事局長 
       兼最高裁判所事
       務総局行政局長  今井  功君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        播磨 益夫君
   説明員
       警察庁警備局外
       事第一課長    奥村萬壽雄君
       大蔵省銀行局保
       険部保険第一課
       長        北村 歳治君
       農林水産省構造
       改善局農政部農
       政課長      上木 嘉郎君
       運輸省自動車交
       通局貨物課長   石井 幸男君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (法務行政の基本方針に関する件)
○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
 閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(鶴岡洋君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本委員会は、果付和夫君の逝去に伴い一名の欠員となっておりましたが、昨十一日、萩野浩基君が本委員会委員に選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(鶴岡洋君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題とし、法務行政の基本方針に関する件について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#4
○糸久八重子君 それでは、質問に先駆けまして一言申し上げたいことがございます。
 というのは、阿部文男代議士証人喚問についての法務省の行動は、国会議員の国政調査権を無視する行為と甚だ遺憾に存ずるわけでございます。この件では後ほど同僚議員から指摘があるはずですから細かいことは譲りますけれども、冒頭一言苦言を申し上げておきたいと存じます。
 それでは、先般六項目にわたる法務行政の重要施策について大臣の所信をお伺いいたしましたが、具体的内容について二、三お伺いをしたいと思います。
 まず最初に、治安の確保及び法秩序の維持の問題なのですが、「各種犯罪事象に的確に対処するため、検察態勢の一層の整備充実を図り」とおっしゃっておられますけれども、具体的にどんなことを大臣は考えておられるのでしょうか。
#5
○国務大臣(田原隆君) お答えします。
 御承知のように、最近の犯罪情勢は、従来にも増して悪質化したり複雑化、多様化しておりまして、しかもそれが広域化しております。そこで、このような状況に対処して適切な検察権を行使するためにはいろいろと工夫しなければならぬ、人的、物的両面において態勢を整えなければならぬ、そういう意味でありまして、具体的には検察官及び検察事務官の研修をしたり研究活動等の充実による専門的知識の一層の涵養、あるいは士気の高揚、検察機動力の強化、検察事務の科学化、いわゆる設備の充実というような点等を頭に置いて申し上げたわけでございまして、しかもそれを効率的に運用し、犯罪情報の収集管理態勢を充実したりして検察活動が国民の信頼を受けるように、迅速かつ的確に行われるような態勢をつくるということが念頭にあったわけであります。
#6
○糸久八重子君 検事の定員の問題についてですけれども、昨年の暮れの育児休業法のときに質問をいたしましたが、検事の定員というのは千百八十四名で、現在員が千九十七名、欠員が八十七名という御報告があったわけでございます。百名近い欠員を抱えている状態ですけれども、非常に忙しい部門への重点配置を行うにしても、数の絶対的な不足を補うことはできないのではないか。四月の新規任官者はどのくらいで、欠員はどのくらい埋まるのか。そして、それを補うには具体的にどうなさろうとしていらっしゃるのか、伺わさせてください。
#7
○政府委員(則定衛君) この四月に司法研修所を巣立ちます修習生の中から検事を志望する人の数でございますが、希望といたしましては約五十名の志望者がございます。ただ、御案内のとおり、まだ司法研修所を巣立ちますためのいわゆる二回試験等も終了しておりませんので確定的ではございませんけれども、卒業を無事遂げられるということを考えますと五十名は確保できるだろうと思っております。
 ただしかしながら、その五十名を迎えましてもなお御指摘の欠員をすべて埋めるというわけにはまいりませんので、検察活動の重点的な活動ができますように地域的な現実の配分を若干この際見直させていただきまして、特に検察力を強化すべき地域、具体的には東京あるいは大阪といった地域に、欠員の中ではございますけれども、現在よりも濃い人の配置を考えてまいりたいと思っているわけでございます。
#8
○糸久八重子君 経済の国際化に伴いまして、このような事犯も国際化をしております。東海銀行詐欺事件の容疑者がタイに逃亡したのは記憶に新しいことでありますし、犯罪によって生じた資金を海外へ逃避させる例も大変多くなっております。「刑事司法に関する国際協力の促進」とおっしゃっておられますけれども、具体的にどのように進めていらっしゃるおつもりですか。
#9
○政府委員(濱邦久君) 今委員お尋ねの刑事司法に関する国際協力の促進というものの具体的内容はどういうことを考えているかという御趣旨のお尋ねだと思いますのでお答えさせていただきます。
 今、委員御指摘のとおり、近時、犯罪が著しく国際化しております。薬物等の密輸入事犯のように二カ国以上の国にまたがって行われる事犯とか、あるいは犯人が我が国から外国に逃亡する事犯、それから外国から我が国に逃亡してくる事犯、それから参考人その他の証拠が数カ国に散在するような事犯、こういうような適正な捜査処理のために国際的な協力が必要になってくる事犯というのが少なからず発生していることはもう御案内のとおりでございまして、今後もますますこの種の事犯が増加の一途をたどるであろうということは十分予想されるわけでございます。
 そこで、こういうような状況にかんがみまして、法務省の刑事局といたしましては、外務省当局等の御協力を得ながら、事件処理の必要に応じまして積極的に捜査官を関係諸国に派遣するとか、あるいは主要国の法律制度及びその運用の実情等を随時調査するとか、あるいはいろんな機会を通じまして外国の関係機関との相互理解を深めるというようなことによりまして刑事に関する国際協力の円滑な実現に努めているところでございまして、今後もこれらの措置を一層充実してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
#10
○糸久八重子君 両罰規定の強化、それから法人への罰金重科に関する法務省の見解をお尋ねしたいと思います。
#11
○政府委員(濱邦久君) もうこれも委員御案内のとおり、各種の行政法規には法人等の業務主に対する処罰規定として両罰規定が設けられているわけでございます。
 平成三年十二月二日に開催されました法制審議会の刑事法部会におきまして、法人等の業務活動に関連して引き起こされる不法事犯に対する有効な抑止力を期待できる刑罰を科する必要があるという趣旨から、法人等の業務主に対する罰金刑の多額、上限の額でございますが、多額と、それから従業者に対する罰金刑の多額の連動を切り離すということは理論的に可能であるということ、それから、切り離した場合における適正な罰金額の水準を決めるに当たって考慮すべき事項ということにつきまして指針が示されたところでございます。従来、これも委員御案内のとおり、法人等業務主に対する罰金刑の多額というのは、従業者、行為者に対する罰金刑の多額と連動するというか、同じ位置で決められておったわけでございますけれども、そういう連動を断ち切ることも理論的に可能であるという指針を示していただいたわけでございます。
 そういうことを踏まえまして、各省庁の法律案等に設けられました罰則に関して協議を受ける立場にございます法務省の刑事局といたしまして、今申し上げました刑事法部会で示された指針を踏まえて今後の罰則協議に当たってまいりたい、このように考えているわけでございます。
#12
○糸久八重子君 それでは、出入国管理行政の充実強化の面でお伺いをいたします。
 要員及び施設の確保を図るとされておりますけれども、新東京国際空港の二期施設とか関西国際空港などの新規の施設向けがほとんどで、既存の施設も大変繁忙をきわめているのに業務体制の整備まではなかなか手が回らないのではないかと思われますけれども、その辺はいかがでございましょうか。
#13
○政府委員(高橋雅二君) 確かに、最近の地方の国際化に伴いまして、過去十年を見ましても、東京、大阪以外の地方におきます空港、海港、特に空港におきます出入国者数が三倍以上にふえているという状況にございます。それで、各関係地方公共団体からも、地方における出入国管理行政の強化と施設、体制の強化という要望を受けております。そういうこともございまして、当局におきましては、委員御指摘の既存の空港を含めましてこのふうな地方空港の国際化等に対応するため、関係省庁の協力を得まして施設の確保、体制の整備に積極的に取り組んでいるところでございます。また、今後とも出入国審査体制の充実強化について努力していく所存でございます。
#14
○糸久八重子君 不法就労を目的とする外国人をチェックするために厳正な入国審査を行うことはいいわけですけれども、そのために審査の手続が長くなりまして一般の外国人に迷惑をかけているというような現状があるわけですが、その辺をどう改善していらっしやるおつもりでしょうか。
#15
○政府委員(高橋雅二君) 一般的に外国人の入国者数がここ最近非常にふえております。それに伴いまして、不法就労等を意図して本邦に上陸しようとする外国人もふえている現状にございます。それで、そういう入国目的に疑義の持たれる者に対しましては厳正な審査を実施しているところでございますが、今、委員御指摘にございましたように、ほとんどの外国人は正規の目的を持って来られる方でございます。そういう人たちが入国の際に日本に着いて最初の印象が悪いということになりますと我が国にとっても好ましいことではないわけでございますので、そういう方はできるだけ迅速にスピードをもって審査をしなければいけないというように考えております。その関連からも、来年度の予算におきましても入国審査官の増員のお願いをしているところでございます。それから、電算機による審査のスピードアップというような処理体制の拡充等の整備を図っております。
 そういうことで、今後とも業務処理の適正、迅速化に努めていきたいというふうに考えておるところでございます。
#16
○糸久八重子君 不法就労悪質事犯に重点を置いた摘発実施に伴って、特にそのかなめとなっておりますブローカーとか暴力団の介在をどう防止していくおつもりですか。
#17
○政府委員(高橋雅二君) 悪徳ブローカーや暴力団というものが外国人の不法就労を助長しまして、売春の強要とか賃金の搾取というような人権侵害事件を起こしているというケースがあることは御指摘のとおりでございます。
 当局といたしましては、警察等関係機関との情報交換を密にしてこれらの悪徳ブローカーや暴力団等が絡む事案を重点的に合同摘発するなど、種々対策を講じているところでございます。
#18
○糸久八重子君 不法就労の外国人も、景気の減速に伴って危険、劣悪な環境のもとで働かざるを得ない場合とか、あるいは職にあぶれてしまってホームレス化してしまう場合がふえているようです。このような外国人の人権の確保とか、それから周辺住民の不安感等々についてどのように解消しようとしていらっしゃるのでしょうか。
#19
○政府委員(篠田省二君) 外国人につきましても、原則的にその基本的人権が尊重されなければいけないということは当然のことでございます。法務省の人権擁護機関といたしましては、昭和六十三年度から社会の国際化と人権、あるいは国際化時代にふさわしい人権意識を育てようということを啓発活動重点目標に掲げまして、外国人の人権擁護も含めた啓発活動を積極的に展開してまいっております。
 具体的な対応といたしましては、外国人のための人権相談所を東京、名古屋、大阪などに開設して常時相談に応じておりますし、またさらに、十二月の人権週間には、特設人権相談所を地方法務局においても設けたりして相談に応じております。さらに、基本的人権の侵害が具体的に起こった場合には、人権侵犯事件として所要の調査を行い、適切に対処するなど、外国人の人権擁護のために取り組んできているところでございます。
 なお、外国人の人権相談におきましては、相談者が不法在留、資格外活動等に当たることが判明いたしました場合でも、人権相談の趣旨、目的に照らして、国家公務員法百条の守秘義務を優先させまして、入国管理官署への通報というようなことはとらないようにして配慮しております。
#20
○糸久八重子君 外国人に対する問題は非常に多岐にわたっておりますけれども、特に不法就労とそれから研修生にかかわる点に限って、関係省庁との協力関係をどのように推進していくのか、またどういう機関でどんな機関をつくって検討、協力をしておるのか、御説明をいただきたいと思います。
#21
○政府委員(高橋雅二君) 今お尋ねの外国人研修生の入国等につきましては、これが研修の目的にかなった研修をやっておるのか、そのプログラムはどういうものであるのかという、そういう研修状況の把握と、それから適切かつ効果的な研修実施の確保を目的といたしました財団法人国際研修協力機構というものを法務省、外務省、通商産業省及び労働省の共管として昨年九月設立したところでございますが、ほかの外国人研修関係省庁とも連絡をとりつつ、この機構の事業運営を推進していく所存でございます。
 また、お尋ねの不法就労対策についてでございますが、これは委員御指摘のとおり、いろいろな関係機関が密接に連携して行うということが必要不可欠でございますので、先般、警察庁、労働省、それと法務省との間で局長クラスの不法就労外国人対策等関係局長連絡会議、それから本省の課長クラスで不法就労外国人対策等協議会をそれぞれ発足いたさせまして、定期的に不法就労対策等に関する情報交換や意見の交換等を実施しております。さらに、地方レベルにおいても関係機関の定期的な協議会を設置するなど、種々努力を重ねているところでございます。また、具体的な不法就労のケースがあった場合には、合同で摘発するというような措置もとっておるところでございます。
#22
○糸久八重子君 それでは次に、人権擁護行政についてお伺いいたします。
 子供の権利条約の国内法整備のための立法作業についてどうなっておるのか、お伺いしたいと思いますが、例えば法務省に関係のあるものというのは権利条約の二条、七条、九条、十二条、二十一条等々が関連あるんじゃないかなと思うんですけれども、その辺はどういうような状況になっておるのか、またどういう見解をお持ちなのか、お伺いいたします。
#23
○政府委員(則定衛君) 最初に総括的にお答えさせていただきますけれども、委員御指摘のとおり、法務省所管法令との関係では、この児童の権利条約の何項目かが検討を要するというところになるわけでございます。結論的に申しますと、今回この児童の権利条約を批准いたしましても、それに伴って法務省所管の法令について新たな立法措置を講ずる必要が生ずることとはならないというふうに考えておるわけでございまして、個々的な条項につきましてはそれぞれの所管の部局から御指摘に沿いまして御答弁させていただくことにしたいと思います。
#24
○政府委員(濱邦久君) 特に、刑事法制との観点から若干の御説明を申し上げさせていただきたいと思います。
 児童の権利条約と現行法制との関係について見ますると、条約十二条の児童の意見表明権、あるいは三十七条(c)の児童と成人との分離、それから三十七条及び四十条の児童に関する刑事手続及び少年審判手続上の諸権利の保障、これらの各点を中心に検討老進めてまいっているところでございますが、おおむね現行刑事訴訟法あるいは刑事訴訟規則、少年法及び少年審判規則等におきまして、またはこれらの法令等に基づく実務上の運用によって実質的には保障されているというふうに考えているどころでございます。
#25
○政府委員(清水湛君) 児童の権利条約の批准に伴う民事局関係の法令につきましても、種々の御指摘がされたこともあるわけでございますけれども、結論的に申しますと、私どもといたしましては、現段階におきましてはこれを批准するために民事法関係について所要の法律改正をするというようなところはないというふうに考えている次第でございます。
 また、委員、後で御質問があるのかもしれませんが、例えば児童の権利条約第二条の関係で出生による差別の禁止の条項がございますけれども、これが例えば民法の規定によります相続分、嫡出子と非嫡出子の相続分が平等でないというような現在の民法の規定と抵触するのではないかというような御指摘、あるいは戸籍で嫡出子の場合と非嫡出子の場合の記載の形式が異なっておるというようなことがこの条約に抵触するのではないかという御指摘が一部にございましたけれども、この非嫡出子の問題につきましては、相続につきましては本条約に掲げる権利に当たらない上、実質的にもこのような区別を設ける合理性があるというわけでございまして、条約には反しないというふうに私どもは現段階において考えているわけでございます。
 そのほか、第七条の国籍を取得する権利との関係におきましても、現行の国籍法は抵触する点はないというふうに考えている次第でございます。
 また、条約第十二条の司法手続等における児童の意見表明の問題、これは民事訴訟とか人事訴訟の関係におきまして問題になる点があるかどうかという点も検討したわけでございますけれども、現行法上これに抵触する部分はない、こういうふうな結論に到達いたしている次第でございます。
#26
○政府委員(則定衛君) 付加的に二点ほど御説明させていただきたいと思いますが、一つは、児童の権利条約の第九条で親子が分離されない権利というのがございます。それから第十条に、家族の再統合のための入国の配慮というのがございます。これらにつきましては、入国管理行政上の強制退去あるいは入国の際の許可等につきまして、場合によってはこの新条約、児童の権利条約の当該条項が問題になるのじゃないかという観点で検討いたしました結果、これらにつきましてはその条約の条文が策定されます経過等にかんがみまして、入国管理行政には及ぶものではないということが判明しております。
 しかし、条文上は必ずしも明確ではございませんので、今申しました二点につきましては、解釈宣言といたしまして、日本国政府としては入国管理行政上、当該条項が適用されるものではない、あるいは拘束的な効果、つまり親子が統合するという場合にそれが入国管理の審査にかかわります場合に結論的にそれを許可する義務が生ずるというものではない、そういう解釈宣言をさせていただくという点が一点ございます。
 それからもう一点は、刑事上の面でございますけれども、条約の第三十七条の(c)項に自由を奪われた児童と成人との分離ということが規定されておりまして、この条約におきます児童と申しますのは十八歳未満の者ということになっております。一方、我が国の少年法等におきますいわゆる少年といいますのは、御案内のとおり、二十歳未満ということになりますので、十八歳を超え二十歳に満たない者につきましては、例えば少年院で十八歳以下の者と一緒に収容され改善教育を受けるという場合がございますので、この条文につきましては批准に際しまして留保をさせていただくという措置をとることといたしております。
#27
○糸久八重子君 権利条約についての法務省の見解はわかりましたが、現行法のままでいいという観点ですけれども、これから私が質問する内容によってまた変えざるを得ないような状況もあるのかもしれませんが、それはまた後に譲っておきたいと思います。
 それでは、次の問題に入らせていただきたいと思います。
 最近、結婚しても昔の名前のままの女性が非常にふえ続けております。特に働く女性たちの中で、結婚しても旧姓のまま働きたいという人たちがふえているわけです。職場では男性と対等に働くようになるにつれて姓を変えるということが仕事を続ける上でも不利と感じているからでございます。民法七百五十条は、夫婦同氏、同姓の強制を規定しておるわけですけれども、この夫婦同氏の強制によりましていろいろ問題を生じております。
 まず第一に、結婚するとどちらか一方が必ず氏を変えなければならないということは、それを望まない人にとって著しい苦痛となります。
 第二に、氏を変えることが不便、不利益につながることがあるわけです。例えば、職業を持っている人、あるいは社会的活動を続けてきた人にとっては結婚前の信用や実績が断絶されてしまうなど著しい不利益が生ずるわけです。また、氏の変更に伴って、例えば運転免許証とか健康保険証等、多くの書類について変更の手続が必要となります。
 三番目に、民法七百五十条は、夫の氏、妻の氏のいずれを選択してもよいという一見中立的なものとなっておるわけですけれども、現実は、一九八七年度の人口動態調査の結果を見ましても九七・八%の女性が結婚の際に氏を変えているという現状があります。このように女性のほとんどが結婚により氏を改めていることは、戦前から家意識が国民の中に根強く残っている結果であろうと思いますし、また女性が夫や夫の家族と対等な関係を築いていくことを困難にし、そして女性差別を助長することにもつながっている、そう思うわけです。
 この夫婦別姓、氏を変えるということですね。昨年三月、久保田委員の質問に対しまして民事局長から、法制審議会民法部会身分法小委員会で今後の検討課題として夫婦別姓制度の問題点も含めて婚姻あるいは離婚に関する問題が論議されるであろうと答弁をされていらっしゃいます。その後一年を経過しているわけでありますけれども、現在の審議の状況とか今後の見通しについてどう把握していらっしゃいますか、お伺いいたします。
#28
○政府委員(清水湛君) 夫婦の氏の問題につきましては、先生御指摘のとおり、現在は七百五十条という規定で婚姻の際に夫の氏にするか妻の氏にするかどちらかを選ぶということになっておるわけでございます。恐らく、この規定は昭和二十二年からでございますけれども、新憲法の施行に伴い、当時における社会の実態というものを踏まえてこのような規定にされたというふうに考えているわけでございますパ
 その後、御指摘のようなこれだけにとらわれずに婚姻の際に夫婦が別氏であってもいいのではないかというような、あるいはそういう制度も導入すべきであるというような御意見が各方面から出てまいったわけでございます。そこで、法制審議会におきましては、昨年の一月以来、これは法制審議会の中に設けられております民法部会の身分法小委員会というところでございますけれども、民法中の婚姻及び離婚に関する規定の見直し作業というものを進めてまいりました。検討の対象範囲はとりあえず民法第四編第二章婚姻という章があるわけでございますけれども、具体的には七百三十一条から七百七十一条までの規定全部につきまして、この民法、戦後の新憲法を受けての民法制定後のいろんな問題点を洗い出してみるということをいたしているわけでございます。
 現在、この作業を継続中でございまして、婚姻の要件、効力の問題、この中には婚姻年齢の問題とか、あるいは待婚期間についての問題、それから夫婦の氏の問題、こういうような問題も当然入るわけでございますけれども、そういった問題、それから離婚の要件とか効力の問題、夫婦財産制の問題、それから離婚に伴う子の監護、扶養の問題、こういうような問題につきまして問題点を整理いたしております。
 私どもの現在の希望といたしましては、今年じゅうにそれぞれについての問題点を整理いたしまして、これを外部に公表いたしまして関係方面の御意見をいただくということを考えております。そういう意見をいただきまして、それを踏まえましてさらに審議を続けまして具体案を作成する、こういうことにいたしたいというふうに考えている次第でございます。
#29
○糸久八重子君 夫婦別姓問題は過去三回ほど法制審議会で検討の俎上に上ったと承知をしております。
 一九五五年、五九年の審議では、夫婦異姓を認めるべきか否かについてはなお検討の必要があるとして留保している。それから、一九七五年の論議では時期尚早とされたと伺っております。法制審の過去のそういう経過があるわけですが、とにかくこの夫婦別姓の問題については非常に要求している人もふえているという現状の中で、今年じゅうにはいろいろ問題点を整理してということなんですが、やはり早くにこの問題は整理をし、そして結論をつけていただきたい、そのように思っております。
 一九五〇年代から婚姻によって夫婦いずれか一方の氏が当然に変更という現行制度に不便を感じでいる人が次第に多くなってきているという、そういう認識が法務省側にもあるようですが、その後四十年近い年月が経過しておりまして、この間国民の意識、それから女性を取り巻く社会環境も大きく変化をいたしました。特に女性の社会進出は非常に目覚ましくて、今や女性の労働力なしには日本の経済社会は成り立っていかないという状況でございます。そして、労働の担い手としての働く女性の地位は社会的にも大変高まってきております。それだけにこの姓の問題は、今や社会的に個人を特定する手段として単なる戸籍編さんの便宜的な法律的必要性の観点からだけではなくて、男性でも女性でも一人の社会人として生活を全うしていくための個人の固有の権利の問題として対応が求められる時代になっていると思うのです。したがって、この氏の問題も社会経済的変化に伴って当然速やかに検討されるべき問題だと思います。
 女性を取り巻く経済社会の変化について、大臣の御認識を伺わせていただきたいと思います。
#30
○国務大臣(田原隆君) お答えします。
 ただいまのお話は身分法のことだと思いますが、これは要するに夫婦、親子等の関係の問題でありまして、非常に感情的な問題を取り上げなければいかぬわけで、ただ一律に理屈だけでなかなか論じられないという面がありますので非常に難しい問題だと思いますけれども、基本的には男女の平等とか個人の尊重という日本国憲法の理念に従って適切に対処するのが一番いいことである、またそうしなければならない、そういうふうに孝之ております。
#31
○糸久八重子君 法制審議会についてお伺いをいたします。
 法制審は合議体である以上、その構成メンバーは審議の動向に大きな影響があると思います。そこでお伺いいたしますけれども、法制審議会の委員数とそのうち女性委員はどのくらいおいでになるのか、それから民法部会の委員数と女性委員はどのくらいおいでになるのか、それから身分法小委員会の委員の数と女性の委員の数はどのくらいになるのか、お伺いをさせてください。
#32
○政府委員(濱崎恭生君) まず、法制審議会、これは全体会議のことを総会というふうに呼んでおりますので総会というふうに説明させていただきますが、総会の委員の数は現在総数が二十七名でございまして、女性委員は二名でございます。
 なお、経過を申し上げますと、平成元年までは女性委員はおられなかったのでありますが、平成二年に一名、平成三年に一名お願いをいたしまして、現在二名になっているわけでございます。
 それから、民法部会の委員の数でございますが、総数が三十二名でございまして、そのうち女性委員は三名でございます。
 なお、小委員会につきましては、これはちょっとあらかじめ付言させておいていただきたいんですが、総会、部会は法制審議会令に根拠を持つ正規の組織でございますが、小委員会というのは、これはあくまでも部会の審議の御都合によりまして部会の御判断で設置され、その構成メンバーについても、その小委員会のテーマとか、それから部会のときどきの御事情等によって部会の御判断で示されるものでございまして、極めてそういう意味では流動的なものであるということをあらかじめ申し上げておきたいと思いますが、民法部会の身分法小委員会の委員は現時点で二十名でございまして、先ほど申し上げました民法部会の女性委員三名はすべてこの身分法小委員会に属しておられます。
#33
○糸久八重子君 審議会で重要なことは公平な審議そのものですけれども、やはり男女の構成比も大切な要素だと思います。女性委員数が二十七名中二名、三十二名中三名、二十名中三名と非常に少ないこのような実態では、ほとんど改姓を余儀なくされている女性の意見や立場、それから実態が審議会に反映されるのかどうか大変心配をしてしまうわけでございます。
 審議会で参考人の意見聴取等も行われるでしょう、それも必要でしょうけれども、この際審議会と並行して大がかりな世論調査等を行って今後の対応を考えるその基盤づくりを行っていただきたいと思いますが、そういうお考えはおありになるでしょうか。
#34
○政府委員(清水湛君) この身分法の問題につきましては、これは先ほど大臣からも御答弁ございましたように、社会の現状とか習俗とか国民感情というものと非常に密接に結びついているわけでございます。そこで、先ほど申しましたように、問題点を公表して国民各界各層の意見を広く求めるということをこれからの作業として予定しているわけでございます。
 また、それと並行いたしまして、例えばこの夫婦の氏の問題につきましては、平成二年でございましたか、総理府で世論調査をしていただいております。そのときの結果で申しますと、こういう別姓制度を導入するのは反対であるというのは五二%でしたかございまして、賛成であるというのは三〇%ぐらいだったかと思いますけれども、そういうような数字も平成二年度の世論調査では出ているわけでございます。
 世の中が非常な勢いで変貌を遂げておるという状況もございますので、その後の状況というものがまた変わってくるということは当然あるわけでございますから、私どもといたしましては、そういう問題点が整理された段階でそれぞれの問題を明確にして、また改めて何らかの方法で国民一般の方々の御意見も広く聞くというような機会を設けたいというふうに考えている次第でございます。
#35
○糸久八重子君 かつての国会審議の中で、国民の、仮に女性の一割がそうしたいということにな札ばこれは無視できない数字だというような御答弁も実はいただいておるんですね。そういうことから言えば、今の三割の人たちがそういう気持ちを持っているということは、これは大変な数字だ、そのように思うところです。
 そこで、昨年の五月に政府の婦人問題企画推進本部が、我が国の婦人政策の指針となっております「西暦二〇〇〇年に向けての新国内行動計画」の第一次の報告の中で、「社会情勢の変化に対応して、婚姻、離婚及び親子に関する法制の見直しについて検討をする」として、一九九五年までには「男女平等の見地から、夫婦の氏や待婚期間の在り方等を含めた婚姻及び離婚に関する法制の見直しを行う」というふうにされておるわけですけれども、これと法制審の動きとの関係などはいかがでしょうね。
#36
○政府委員(清水湛君) 法制審議会におきましても、婚姻法、婚姻の要件、効力、離婚の要件、効力、離婚の手続等の問題でございますけれども、これが昭和二十二年に改められて以来、一部の手直しは若干その過程において行われておりますけれども、基本的な見直しがされていない、こういうことから今回の見直し作業に入ったわけでございます。その前提には、やはり先生御指摘のように、社会経済情勢が大きく変動しておる、そういう変動の実態というものを正確に把握して、それを法制に反映させる必要があるということでございます。
 少なくとも男女の平等という観点から、現在の民法、親族・相続法というものは戦後全部改められたわけでございますけれども、しかしながら、その後またいろんな考え方が男女の平等ということについてもあらわれてきているわけでございまして、そういうものを踏まえましてこの法律の見直し作業をしようということでございます。
 先ほどのこの行動計画につきましても、もちろんそういうものと軌を一にすることができるように法制審議会の審議も進めてまいりたい、こういうふうに思っている次第でございます。
#37
○糸久八重子君 この夫婦の姓について、外国の法律というのはどうなっておるんでしょうか。夫婦同姓を法律で強制している国というのは、日本以外にございますか。
#38
○政府委員(清水湛君) この夫婦の姓の問題は、本当に社会の習俗、歴史、伝統というものが背後にあるわけでございまして、それぞれいろんな法制をとっております。具体的な中身を見ますと、またそれぞれ若干ニュアンスが違う、同じような法制でありながらニュアンスが違うというようなとごろもあるわけでございます。
 一般的に申しますと、欧米諸国では婚姻によりまして妻が夫の氏を称しておるというのが普通でございますが、妻が婚姻以前の氏をそのまま使用することも認めて、同姓とするか、あるいは別姓とするか、その選択を認めているという法制の国が多いというふうに言っていいと思います。イギリス、アメリカ、フランスがその主な例でございます。それから、これらの国では夫の氏と妻の氏を結合した氏を氏として用いる、妻の氏と夫の氏を一緒に一個の氏として用いるというようなこともできるというふうにされております。また、イタリアとかブラジルなどのように、婚姻によって夫の氏には変更がない、しかし妻は自己の氏と夫の氏を結合した氏を使用する、こういうようなことになっている国もあるわけでございます。
 それから中国、韓国等は、これは婚姻によって夫婦とも氏が変更することがない。ある意味においては夫婦は別氏である。別氏強制ということでございまして、例えば韓国でございますと、妻が夫の氏を称したい、夫の氏に変えたいと思ってもこれは変えることができない、こういうような法制になっているようでございます。
 それから、夫婦は同姓でなければならないというような国といたしましてはスイスとかインドがございます。これらの国では夫婦は夫の氏を称するというのが通常でございますけれども、スイスにつきましては妻が自己の氏を夫の氏の前に置いて用いることもできるというようなことになっているわけでございます。
 それぞれのお国柄と申しますか、それぞれの国の歴史、伝統というものが背後にありまして、いろんなさまざまな形のものになっているということが言えるのではないかという気がいたします。
#39
○糸久八重子君 お話によりますと、夫婦同姓を法律で強制している国というのはどうも日本だけらしい、そんな感じがいたします。日本もいろいろ調べてみますと、もともと夫婦別姓の国であったようですね。例えば、北条時政の娘政子が源頼朝のところにお嫁に行った、結婚したけれども、結局北条政子という形で通していたということもありますね。
 そういうこともありまして、いろいろ要求が出ている状況があることは今お話を申し上げたわけですが、現行法のもとで夫婦別姓を実践するには、旧姓を通称として使用するいわゆる通称方式ですか、それと婚姻届を提出しない事実婚方式しかないわけですね。これらの実態について法務省はどの程度把握していらっしゃいますか。
#40
○政府委員(清水湛君) 先生御指摘のように、婚姻届をして戸籍上はどちらかの氏になっているわけでございますけれども、通称として婚姻前の氏を称するというようなケースもかなりある。それから、氏が変わるということを避けるために事実婚という状況で過ごしておるというようなことがあるというようなことを私どもいろんな機会に人から聞いたり、あるいは新聞、雑誌等にもそのような記事が出ておるということは承知しているわけでございます。
 ただしかし、事実婚の方はこれは届け出がないわけでございますから、これを統計的に把握するということは不可能でございます。それから通称につきましても、これは一種のペンネームというわけではないと思いますけれども、そういう事実上の使用の問題でございますので、これも私どもとして統計的に把握するということは困難でございます。しかし、そういう事実があるというような話はいろんな機会に私ども聞かされているところでございます。
#41
○糸久八重子君 最近、企業の中に結婚した女性社員の旧姓使用を社内規定に盛り込むところが出始めておるようです。自分の名前を大切にして旧姓を通称として使用を申し出る人が大変多くなった。これに対して、社会の決まりを理由にあえて本人の希望を拒否して戸籍上の姓の使用を強制することのおかしさを指摘する声も企業の中で出てきている。
 ここ数年、いろいろな職場や職種で通称使用を認めるところが出ておりまして、私もちょっと調べてみましたら、例えば朝日新聞社とか富士ゼロックス、それから丸井、ソニー、日本アイ・ビー・エム、リクルート、沖電気等々が挙げられております。企業内の旧姓使用というのは時代の波としてますます広がりそうな雲行きがありますね。この事実について法務省はどういう御見解をお持ちですか。
#42
○政府委員(清水湛君) 企業内における通称使用と申しますか、戸籍上の氏とは違う従前の婚姻前の氏を通称として使用するという例がふえているという御指摘でございますが、私どもそういうようなことについても確かにおっしゃるような話は聞いているわけでございます。恐らくそういうようなことが背後にあって、それが夫婦の選択的別姓制度の導入というものを押し上げると申しますか、そういうものの実現を要求する一つの社会的な背景になっておるんではないかというふうに推測はいたすわけでございますけれども、具体的にどの程度、どのような状況であるかということはちょっと私どもとしては把握できない状況にあるわけでございます。
#43
○糸久八重子君 通称方式を認めた場合に、法務省当局としてどういう点が一番ネックになると考えられますか。
#44
○政府委員(清水湛君) 通称を認めましても、それで一つの社会の中で混乱が生じないということであれば、私はそれはそれで差し支えないのではないか。法律的にはきちんとした婚姻届を出しておりますので、法律上の氏あるいは子の氏、親子の氏というようなものはきちんと法律で整備をされますので、そのこと自体、通称を使用しているということから問題を生ずることは全くないというふうに思うわけでございます。
 ただ、事実婚でということになりますと、ちょっとお話にはございませんでしたけれども、これは法律婚ではございませんからいろいろ法律関係は全く違ったものになるということは、これは先生御承知のことだと思います。
#45
○糸久八重子君 仮に、夫婦別氏の選択を法律上規定した場合に、現在法務省が所管している法律のうち、どのような手直しが必要になりますか。
#46
○政府委員(清水湛君) この夫婦別氏制度、つまり選択的別姓制度の導入ということにつきましては、その導入の仕方につきましていろんな意見があるわけでございます。何と申しますか、軽いというとちょっと語弊があると思いますが、非常に簡単な形で導入するという考え方、あみいは民法の定める氏というものの根幹に触れるような形での導入の仕方と、いろいろな段階があるわけでございまして、そのような考え方のうちのどれをとるかということによって、また民法の規定をどういうふうにするかということも変わってくるわけでございますけれども、私ども一応、例えば先ほど御指摘の民法の七百五十条、これはもう当然改正しなければならないということになるのではないか。
 それから、離婚をした場合に復氏をするという、これについては先般一部の修正的な改正はございますけれども、七百六十七条の規定とか、あるいは子の氏をどうするかというようなことについての民法の規定をどうするかという問題。それから、さらに波及して養子の氏をどうするか、例えば別姓の夫婦が養子をした場合に、その養子の氏はどちらに奉るのかというような問題。いろいろ細かく検討してまいりますと、相当広範囲にわたる氏に関する規定の改正が必要になるんではないか。さらに引き続いて、戸籍につきましても所要の改正ということがやはり問題になり得るであろうというふうに考えているわけでございます。
#47
○糸久八重子君 最近、この法務委員会にかかる請願としては、夫婦別姓の選択制を求めるものが一番数が多いわけですね。法制審の結論が早く出るようこれを期待したいのですが、なかなか進まない感が否めない状況でございます。
 今局長お話しのとおり、一九七六年の婚氏続称を認める改正が行われまして、離婚の際には氏を維持することと、もとの姓に変えることの選択が設けられたわけでございます。結婚の出口でこのような選択肢が認められるのであれば、そもそも結婚の入り口でもやはり氏を変えることとか、それから維持をすることとかの選択ができるようにすることは合理的な考え方なんじゃないかというふうに思うところでございます。特に、現代は家族とか結婚、夫婦などについて多様化した価値観があるんですね。法律はその多様な価値観の存立を認めるものであることが必要ではないかというふうに考えます。
 私ども社会党は、今国会中に夫婦別氏のための法律案要綱を提出すべく現在準備中でございます。法制定を早めるため、それから夫婦別姓の今までの論議について大臣の御所見をお伺いいたしまして、質問を終わらせていただきます。
#48
○国務大臣(田原隆君) お答えします。
 この問題は今るる御議論を聞いておりまして、理論的にはいろいろ詰めができそうな感じがしますが、やはり感情が非常に絡む問題と私ざっき申し上げましたけれども、例えば結婚の入り口で、なぜ同姓にならないのだろうとかいうときに感情が絡まないかという問題等がありますので、なお一層深く結婚問題等を含めて身分法の関係は早急に勉強しなければいかぬことだと思います。
#49
○糸久八重子君 ありがとうございました。
#50
○瀬谷英行君 今の糸久議員の質問の最後に、夫婦別姓の問題について大臣のお答えがございました。何か感情が伴う、だからいろいろと検討するというふうな御答弁だったのですが、夫婦の別姓という問題は、これの改廃について、あるいは法律問題として取り上げるのについて、感情がやはり伴っていろいろと支障があるということになるものかどうか。私なんか考える場合には、これは具体的には夫婦が同姓であろうと別姓になろうと痛くもかゆくもないことなんだ、どうでもいいじゃないかという気がするんですよ。一体どういうふうな感情が伴うのか、どこに支障があるのか、感情が伴うという後の大臣の話尾の方がどうもはっきりしないんですよね。
 だからその点もう一度、どこに問題があるのか、何か障害があるならあると、こういう点がいろいろと難しいと言われることがあったら、その点を突っ込んで御答弁願いたいと思います。
#51
○国務大臣(田原隆君) 感情の問題ですからなかなかそれも整理して申し上げにくい問題だと思いますが、理論的に理屈だけでいかないという意味で感情と申し上げた意味もあるし、また確かに感情そのものであるというものもあって、私は法律家ではございませんから、余り深く突っ込まれると答弁も少しなにでございますが、ただ先ほど一例として申し上げましたように、結婚するときに、当然同姓になってくれると思っていた片っ方の親が、別姓を希望したら何かちょっと白けた気持ちになるような場合もあるのではないか、何も思わない人もおるのではないか、世の中多種多様の方が多うございますから、そういう意味で申し上げたわけでございまして、理屈だけではいかない面があるので今困っておるのじゃないかというのが説明の趣旨でございます。
#52
○瀬谷英行君 別姓にしようと言ったら白けたなんということだったら、そんな白けるような相手と結婚しなきゃいいんですよ。そんなに難しい問題じゃながろうという気がするんですよね。
 だから、法律家じゃないけれどもというふうに大臣言われたが、法律家じゃなくたって法律家の上の政治家なんですからね。これは姓なんというのは社会生活上の便宜のためについている符号なんですから、そんなにこだわることはなかろうという気がするんですよ。だから、世間一般別姓の方が便利でいいじゃないか、離婚のときに簡単だというのは話は別ですけれども、いろいろと考えてみて差しさわりがないということだったら法律的な検討をさせてもいいだろうというふうに私は思います。その点、どうですか。
#53
○国務大臣(田原隆君) 繰り返すようでございますけれども、理屈でいかない面があるから今日まで長引いておるというのが実情であり、法制審議会等でもやはりそういう問題を考慮されているのではないかと私は思うのですが、しかし時代の方向はそっちへ向いているのじゃないか、そのように考えます。
#54
○瀬谷英行君 その話はこのくらいにしまして、指紋制度の問題について私ちょっと質問したいと思います。
 前々から問題になっているんですけれども、外国人登録法の問題で指紋が随分前から問題になっています。私は今さら指紋なんか押させてどうするんだろう、こういう気がするんですよ。聞くところによりますと、法務省と警察庁でもって意見が違っておったと、どちらかというと警察庁の方がこの指紋制度には固執をしているというふうに聞いているわけなんです。
 そこで、これらの問題に決断を下す立場にあるのはやっぱり今のところは法務大臣じゃなかろうかという気がするんですね。何も、ごく一部の犯罪者の捜査のために指紋制度をいつまでも維持していく必要はないという気がするのでありますけれども、この指紋制度についてどのようにお考えになっているか、どのように問題があるとすればあるのか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
#55
○政府委員(高橋雅二君) まず、私からお答えいたします。
 指紋押捺制度は、今先生御指摘のとおり、外国人登録法におきまして登録しなければならないごとになっておる外国人のうち一年以上滞在する方について適用される制度でございますが、これは、指紋が人物の同一人性を確認する上で最も有効な手段であるということにかんがみまして採用されているところでございます。それで、登録の正確性を維持するとともに、指紋を外国人登録証明書に転写することによりまして登録証明書の不正使用や偽造を防止するということにしたものでございまして、現時点においてもその有効性と必要性は変わりないというふうに考えているところでございます。
#56
○瀬谷英行君 現時点においてもその必要性は変わりないということを言われましたんですけれども、今度は大臣にお聞きします。
 現時点においてその必要性というものを法務大臣としてはあるというふうにお考えになるのか、あるとすれば具体的にどういう点についてあるというふうにお考えになるのか、お聞きしたいと思います。
#57
○国務大臣(田原隆君) 私も、同一人を確認する手段が必要としたら、指紋が今までの経験上と申しますか何というか、例えば捜査などにおいて指紋をとることが一番同一人の確認の簡単な手段であり正確な手段であるというふうに聞いております。私もそのとおりだと考えております。
#58
○瀬谷英行君 そんなことを言うなら日本人全部の指紋とれば一番犯罪捜査上は便利だということになっちまう。在日朝鮮人とか台湾人とか一部の人に限ってなぜこの制度を維持しなきゃならぬのかということの理屈が立たないような気がするんですが、その点どうですか。
#59
○政府委員(高橋雅二君) 今、先生御指摘の点に関しましては、いわゆる特別永住者及び永住者につきましては指紋押捺にかわる新しい制度を設けることといたしまして、外国人登録法の一部を改正する法律案を提出したところでございます。
 この法律案の考え方の新しいシステムと申しますのは、鮮明な写真と署名、それから一定の家族事項を登録していただくことによって指紋にかえるということでございます。それにつきましては、日本の社会に定着性の強い永住者、特別永住者、今先生おっしゃいましたいわゆる在日韓国人とかそういう方々でございますが、そういう方々には有効であると。しかし、定着性が認められない方々については、やはり今申しましたように、この指紋押捺制度を適用していくということでございます。
#60
○瀬谷英行君 定着性が認められるとか認められないとかというお話がありましたけれども、もう国際化時代でもっていろんな人が最近は日本に入ってくるようになったんです。昔は外国人というと英語を使う人、英語が通用する人というふうに大体限られていた。近ごろは外国人といったっていろいろな人が入ってきておりますからね。
 例えば、電車の中で最近はよく見かけるんですけれども、鼻が高くて面長で色が浅黒いという人で英語は使っていない、こういう人が随分多くなりましたね。それから、東京周辺だって、国籍がわからないんです、我々には、どこの国の人だか。それから、女の人だって、ついこの間も私は駅でチラシをもらったんですね。何のチラシだと思ったら、何かクラブだかキャバレーたかのチラシなんです。フィリピンの女性が皆さんをサービスしますというようなことが書いてある。それで、ああなるほどこの人はフィリピンかなと。要するに小柄で丸顔の女性が今度は駅でチラシをまいている。車内では面長で鼻の高い外国人がたくさん乗っておられる。全然国籍がわからないんですね。一体この人たちは何の目的で日本に来て何をやって生活しているんだろうか、見当がつかないということがあるんです。そういう人たちがふえているということは現実の問題なんですよ。
 そうすると、その人たちもちゃんと指紋をとっているんですか。
#61
○政府委員(高橋雅二君) 我が国に在留する人たちで外国人登録をしなければならない人は、九十日を超えて三カ月以上滞在する人たちでございますが、指紋の押捺を求められている人たちは一年以上滞在する人たちでございます。したがいまして、観光とかそういう目的で短期の滞在の人たちからは指紋もとっておりませんし、外国人登録の必要もございません。
#62
○瀬谷英行君 観光ビザで来でずっと長く滞在するというケースも多いように聞いているんですが、その点どうですか。
#63
○政府委員(高橋雅二君) 不法残留の場合で多くの摘発したケースを見ますと、観光といいますか、短期滞在で来てそのまま残っているというのが非常に多いということは事実でございます。
#64
○瀬谷英行君 そういう人たちは、要するに指紋なんかとってないんでしょう。
#65
○政府委員(高橋雅二君) そういう人たちは指紋をとっておらないのがほとんどでございます。
#66
○瀬谷英行君 そういうふうに指紋をとらない外国人がいっぱいいて、しかも数がどんどんふえて、いるわけです。それなのに、永住をして日本人と同じような生活をしている在日の韓国・朝鮮あるいは台湾の人たちからは指紋をとるなんというのは、これは不合理だというような気がしますね。その点、別に矛盾は感じないんですか。
#67
○政府委員(高橋雅二君) 今回、国会に提出いたしました外国人登録法の一部を改正する法律案におきましては、こういういわゆる在日韓国人、朝鮮人の方々を含めました特別永住者及び永住者につきましては、指紋の押捺にかわる新しい制度を適用するということとしておるところでございます。
#68
○瀬谷英行君 新しい方法があるんなら指紋というふうな古めかしいやり方をいつまでも存続させておく必要はなかろうという気がするんですよ。特に、これは在日の朝鮮・韓国の人たちからも強い要望があるし、何かこれは有形無形の差別をしているような感じがしないでもない。だから、なくても済む問題、必要のない問題をいつまでも存続をするということはどうかという気がするんですね。こういう問題についてはやはり大臣が決断をして、そしてこれは要らないというふうに認められるものはやめてしまうということの方がいいだろうという気がするんですね。
 これは、役人は従来の法律にしがみつくという人たちがかなり多いからこういう問題が残っているんで、その上に立つ政治家としては要らないものは要らないでやめてしまうという方向に行った方が私はさっばりしていいと思うんですがね。そこら辺の決断ができるかできないかということが大臣が大物かどうかということの判断にもなるんですからね。どうですか、大臣。
#69
○国務大臣(田原隆君) 大臣といえども、やはり法律で定めることでありますから法理論的にいろいろ詰め、各省間の協議がなされてしかる後に決断を下さないと、いろいろ論点が分かれておるままで結論は下せないわけでございますし、法律を定める手順からいきましても、事務次官会議があったり、閣議があったりするときに、そこで結局私一人の判断で決まらない場合が恐らく多いだろうと思いますので、やはり通常こういう行政的な法律については専門家同士で話し合って、納得がいって、そして決断を下すのが私の仕事ではないかと思っております。
#70
○瀬谷英行君 例えば、外務省と警察庁と意見が対立したというようなことがある。そういう場合には、大臣の方でやはりどちらの意見がいいかということを考えて、相撲じゃないけれども軍配をどっちかに上げなきゃいかぬ。その場合に、要らないものはこれはもうやめだ、要るという主張についてもちょっとこじつけがましいと。しかも新しい方法がある、写真にしても署名にしても。私は写真とか署名の方がはるかにこれは方法としては新しいなと思いましたよ。
 指紋なんというものは、これを何かのときに、よく今でも犯罪事件があると警察官が一生懸命に指紋をとっている写真がニュースなんかに出てきますけれども、あれをとって、いろいろと照合するなんというのは大変なことだと思いますよ。写真の方がよっぽど手っ取り早いものですから。だから、古い制度というものは、私は指紋なんというのは、これは昔からの制度だろうと思うんです。今のように署名なんということまで考えつかない時代のことじゃないかという気もするんですけれども、それを考えるならば指紋にこだわるというのはもう既に時代おくれた、こういう気がいたします。したがって、時代おくれであると判断をした以上は廃止の方向に向かうということの方がいいという気がするんですけれども、私の今言ったことについての大臣の見解はどのようなものかお伺いしたいと思います。
#71
○国務大臣(田原隆君) 今先生のおっしゃったことも一つの見識であり、御立派な意見であろうかと思いますが、私は、人を特定するのに一番簡単で一番正確で一番確実な方法はやはり指紋であろうと思います。
 写真の場合を例にとりますと、永久不変の写真というのはなかなか技術的にも困難なことでありますし、また筆跡といいましても、これはなかなか微妙な変化があって、専門家が相当それに取り組んで鑑定しても間違う確率が少しはあるというようなこと等をかんがみた場合に、指紋にまさるものは今の技術上はないだろうと思いますが、ただ、どちらがいいかというときに法務大臣が結論を下せということも少し酷ではないかなと。それぞれの、外務省にもその他にも大臣がいて、それぞれが一致して事務的討論の後に大臣の討論まで持ち越されて、そこで結論を出すということになればそれは三人で話し合っていかなければいかぬし、その三人がなかなか一つの意見にならないときは総理が結論を下すかというようなことになると、法律実務上やはり実務家がしっかり話し合う、そして今日のようにこういう結論が出た方がよほど私は将来の運営についてもうまくいくのではないか、そういうふうに考えております。
#72
○瀬谷英行君 指紋が一番いいと言うけれども、近ごろテレビの犯罪物がよく出てきますが、気のきいたやつは手袋をはめてやりますよ。手袋をはめるというと指紋が残らないんです。顔は年がら年じゅう覆面して歩くわけにはいかないですから、これは。そうすると、どっちの方がやりやすいかというと、やっぱり写真の方が判定しやすいですよね。そのうち変わるといったってそう簡単に変わるものじゃないですよ。しわだって十年以上かからなきゃふえないですからね。
 そういう点を考えると、私は指紋というのが昔ながらのやり方であってもう古いと思うんです。外務大臣とも相談しなきゃいかぬというけれども、今の外務大臣なんていうのはそんなことにこだわりそうな人じゃないような気がするんですがね。それは別としまして、ともかくこれらの問題、古いしきたりというものは私は改めていって、やめた方がいい、やめても構わないというものはどんどんやめていくということを希望したいと思います。
 それから、非常に大臣は答弁に慎重だけれども、自分の意見だって思い切って出していいんですよ、あんたの首には影響しないから。だから、さっきの夫婦別姓の問題だってそうですよね。こんなことはそんなに難しいことでもないし、感情問題なんていったってたかが知れているし、結婚をして昔の名前で――昔の名前で出ていますなんていう歌もあったですね。こんなことはこだわることじゃないというふうに思います。
 そこで、どうもいろいろと古いしきたりやら何やらにこだわっておられるようなので、古いしきたりといいますか、感覚がもう既に昔と今じゃ違っておるという問題についてちょっと触れてみたいと思うんですが、少年法なんですよね。
 少年法というのは、この法律の二条でもって二十歳に満たない者を少年だというんですね。二十歳を超えるというと成人だと。これなんか現実に合わないという気がしませんか。少年というのは、大臣なんかの年配の人は覚えておると思うんだけれども、昔少年というのは中学生ぐらいの者を言っ沈んですよ。雑誌にだって「少年倶楽部」なんていうのがあった、これは大人の読む本じゃながったんです。したがって、少年法が二十歳というところで区切っているというのは非現実的だというふうに私は思うんですが、その点はどうですか。
#73
○政府委員(濱邦久君) 若干法律論も含めて具体的な問題になるかと思いますので、私の方からお答えさせていただきたいと思います。
 委員おっしゃいましたように、現行の少年法は二十歳未満を少年としているわけでございまして、この点だけではもちろんございませんけれども、少年法改正の問題につきましては、今、委員御指摘の点を含めましていろんな御意見があることは仰せのとおりでございます。
 これも委員もう十分御存じのとおり、少年法の改正につきましては昭和五十二年六月の法制審議会の答申を受けまして、関係機関等との意見の調整を続けてきたところでございます。ただ、その間に少年非行の情勢に相当の変化が見られるということも事実でございますし、また、少年法の改正は次の時代を担う少年の健全育成の上で極めて重要なことであることは申すまでもないことでございまして、できるだけその改正の方向を決めるに当たっては大方の合意を得てこれを実現することが望ましいということも申すまでもないところでございまして、この具体的な改正の問題点等につきましてもしお尋ねがございましたら、また後ほどお時間があれば御説明させていただきます。
 いずれにいたしましても、各般の御意見についても十分な考慮を払いながら検討を今後とも進めてまいりたいというふうに考えておるのが実情でございます。
#74
○瀬谷英行君 この法律制定のころだって、既に二十歳でもって区切るということについてはいろいろ意見があったんじゃないかという気がするんですけれども、最近の犯罪の中で十九歳でもって殺人、強盗、放火、こんなことをやっているのが出てきます。しかも全く例の少ないことじゃない。結構この十九歳だの十八歳だのという未成年の者で犯罪の点では一人前以上のことをやっているんです。こういうのが少年法の適用だなんというのはばかばかしい話だという気がするんですよ。
 だから、そういう社会全般の事例を考えてみた場合、未成年者というのは悪いことをしないというふうに決まっていて、事実そうならば話は別だけれども、今のようにこんな法律の存在の有無にかかわらず悪いことをするやつはどんどん悪いことをするというふうになったら、少年法自体の年齢制限というのは妥当であるかどうかということを検討してもいい時期ではないかという気がいたしますが、その点はどうですか。
#75
○政府委員(濱邦久君) 今委員お触れになりました少年犯罪が凶悪化しているのではないかという御指摘でございます。
 この点も含めまして少年非行の動向を全体的に見てみました場合に、一つは凶悪犯の全体的な動向はどうかということを見てみますると、これは昭和四十一年以降五十三年ころまで急激に減少いたしまして、以後多少の増減はあるものの、全体としましては減少傾向にある。平成二年の検挙人員は、数字で申しますと千百九十四人ということで前年に比べまして百八十九人の減少となっておるわけでございまして、必ずしも少年犯罪が凶悪化の傾向にあるというふうには言えないと思うわけでございます。
 ただ、委員御指摘のように、最近の少年犯罪の中には短絡的に犯行に及んだりあるいはその手段、方法が極めて残虐であるというような事案も見られることは、もうおっしゃるとおりでございます。それともう一つは、少年犯罪の若年化と申しますか、低年齢化という傾向もこれは依然として続いているというような状況にあるわけでございます。したがいまして、先ほど申しましたように、少年法改正について法制審議会の御答申を受けた時点に比べますと、少年犯罪、少年非行の動向がかなり変わってきているということは事実でございます。
 それとの関連で、先ほど委員御指摘になられましたように、確かに先ほど申し上げました法制審議会の答申のあった改正内容の中には、十八歳以上の年長少年の事件については、少年審判の手続上、十八歳未満の中間あるいは年少少年の事件とはある程度異なる特別の取り扱いをしてもいいのではないかということも一つ含まれていたことは事実でございます。そのほか、数点にわたりまして少年法の改正について御答申があったわけでございます。
 ただ、先ほど来申し上げましたように、近年の少年犯罪の動向が量的にも質的にもかなり変わってきている。特に指摘申し上げたいのは、殺人、強盗等の凶悪事犯は量的には先ほど申しましたように大幅に減少している。それにかわって窃盗とか遺失物横領等のような初発型と申しますか、初めての非行と申しますか、そういう型の非行がむしろ多くなっているというような状況。あるいは先ほど申し上げましたように、犯罪年齢の低年齢化傾向というようなこともうかがわれるわけでございます。
 このようなことをいろいろ考えてさらに加えて申しますと、先ほど申しました年長少年を中間あるいは年少少年と同じ扱いをしている現行の少年法の点を改めるかどうかをも含めまして、少年法の改正の答申のあった点につきましてもいろいろ根強い反対の御意見等もございまして、少年法改正作業自体はそういう状況から現在早期には実現しがたいというような状況になっているわけでございます。
#76
○瀬谷英行君 どうも奥歯に物の挟まったような御答弁ばっかりで現実的じゃないですよ。この少年法があるから犯罪件数が減ったとかふえたとかということ関係ないでしょう、第一ね。凶悪犯罪は年齢に関係なくどんどん若年化していますよね。先ごろは、小学生中学生が車かっぱらって盗みを働いたとか何をやったとか、こういうニュースが出ていましたね。これは驚くべきことですよ。それから、いじめでもって仲間を殺したり、こんな話も出ています。これは決して少年法をはみ出した連中のやっていることじゃないんです。それを考えたならば、少年法の年齢というものが果たして妥当かどうかということを考えたっていいと思うんです。
 私は、中学生のころにひいおじいさんが亡くなったんですけれども、そのひいおじいさんが昔の話をして、おれは十五の年に元服をした、十八の年に戊辰の戦争へ出た、こういう話を聞いて、大したものだなと思って感心したことがある。元服をするというと一人前に扱ってもらえたというんですね、侍として。それを考えると、今の少年法なんというのはおかしいなということになっちまうんですよね。四十七士だって未成年だからといって討ち入りに参加させないなんということなかったんです。今だってそうでしょう。貴花田なんというのはあれ未成年だけれども、優勝したり大関をねらったり、今場所の成績あんまりよくないけれども、活躍をしていますよ。優勝したら未成年だから酒飲ませちゃいけないとかくだらない話があるんですけれども、あの貴花田にかなうような体格の人はここにはいませんよね。考えて見ると、もはや彼が少年法の該当者、該当者というのはおかしいけれども、少年の中に入るかどうかというのは、私は現実的じゃないと思うんですね。
 それから、国会見学で小学生がよく来ますよね。昔は小学生でもって先生よりでかい小学生はいなかった。最近、国会見学でたくさん来る小学生というのは、中に大きいのは先生より大きいのがいますよ。我々より大きいやつがいっぱいいます。これは驚いたものだなと思いますよ。つまり心身ともに昔に比べてどんどん発育してるんです。だから犯罪もやはり一人前以上のことをやるようになっちゃった。
 それで、この少年法の三条で、十四歳に満たない者がこうしたああしたということが細かに書いてあります。例えば「保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。」だとか、「正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。」だとか、あるいは「犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。」なんて書いてあります。いかがわしい場所に出入するのを一々監視して見ていられないだろうという気がするんですよね。こういう条項そのものがもう死文化しちゃっていると思うんです。
 そうすると、こういう犯罪の若年化傾向に対してはどういうふうに対処するかということは根本的に考えなきゃならぬという気がするんですね。その点もはやこの少年法自体がもう時代おくれになってしまっているんだということを認識されますか、どうですか、大臣。
#77
○国務大臣(田原隆君) そういう面もあるかもしれませんが、そうでない面も相当あるので、必ずしも一概に古くなっているとは言えないと思うのです。
 私は少年犯罪を見まして、確かに犯罪の質が変わってきておるけれども、これは情報化の影響であって必ずしも精神的に大人に近づいたからそういう犯罪をしておるとは限らないと思いますし、それから個人差が、先ほど貴花田の例が出ましたけれども、確かに人間には個人差があってばらつきがありますから、平均的に物を考えなければいけないと思うのです。これは、反対に翻って老人問題を見ましても、老人の定義が年齢で決められますように、個人差はあってもそういうふうに一般的に決めていきますから、私は少年犯罪の最近の傾向を見て少年と大人の区別を必ずしもできないと思うのです。少年と大人の区別を法律上しているのは、後で先生の御質問の中に何か精神病の話もあったようでありますが、要するにその人に能力があるかどうかということが重大な影響があることであって、能力が必ずしも大人に近づいていると言えないかもしれないという気がいたすわけであります。
 それで、法律というのは本来、こういう基本法的なものが先に進んでしまって後から引っ張っていくというのはいかがなものかと思うので、慎重審議、やはり大方の意見をまとめて世の中のコンセンサスを得て変えるべきではないかなと私自身考える次第であります。
#78
○瀬谷英行君 私は、最近の未成年者のいろいろな凶悪犯罪、未成年者どころかもう小学生、中学生といったような、こういう連中の犯罪といったようなことが、昔はかつて聞いたこともないようなことなんですよね。中学生とか高校生ぐらいの年齢の者がこういう悪いことをするということは。最近はそういうのが続発をしているという事例から考えるならば、法律が悪事の防波堤になっちゃいかぬ、こういう気がするんですよ。おれはまだ悪いことをやったって少年法の範囲内だというようなことで、悪いことをしてもこの法律がある以上は多少は大目に見てもらえるといったような意識を持たしたらかえってよくないと思う。
 そういう意味で私は、少年法についても現実的にどうしたらいいかということ。これはもう法律だけでは解決のできない問題ですね、少年非行なんということは。法務省だけの仕事じゃ間に合わないことは間違いないですよ。それだけに社会問題として一体どうすべきかということは真剣に考えるべきだという気がいたします。その意味で私は、法務省だけで解決できることじゃないから、それなりに政治的にいかにすべきかということを考えるべきだ、それが政治家の仕事じゃないかという気がするんです。
 それから、社会一般の現象からすると、そういう少年犯罪のほかに、今もちょっと大臣も触れられましたけれども、最近の凶悪犯罪からどうしたら善良な一般市民を巻き添えにしないようにできるがということを考慮する必要があると思うんですが、その点はどうですか。
#79
○政府委員(濱邦久君) まず、前段でお触れになられました少年犯罪対策につきましては、委員もおっしゃいましたとおり、これは刑罰法令のみによってよく対応し得るものでないことはおっしゃるとおりでございまして、家庭内教育あるいは学校教育、社会環境、マスコミのあり方等に深くかかわっておるわけでございまして、これらの面からの総合的対策が講じられるべきであるということは全く同感でございます。少年法の改正の問題につきましても、委員から今お話しのありました貴重なお考えを支えとさせていただきまして、今後十分検討させていただきたいと思っております。
 それから、後段でお触れになられました精神障害者の犯罪についてでございますが、これも委員御案内のとおり、我が国におきましては刑法三十九条一項の心神喪失者に該当するときには責任能力がないということで処罰されないこととなっているわけでございます。
 西欧諸国におきましても心神喪失者に該当するときには責任能力がないとして処罰されないこととなっているようでございますけれども、ただ諸外国の多くでは刑事責任を問うことのできない精神障害者に対しては、裁判所の言い渡しによりまして当該精神障害者をその治療等のために一定期間精神病院等の施設に強制収容するといういわゆる治療処分制度を採用しておるわけでございまして、その主な国としては、例えばドイツとかイギリス、オーストリア、イタリア、デンマーク等の諸国があるわけでございます。
 我が国におきましても、これも委員十分御案内のとおり、昭和四十九年に発表されました改正刑法草案におきましては同様の保安処分、これはその後昭和五十六年に治療処分ということに変更しておりますけれども、この種の治療処分の導入を試みようとしているわけでございますが、いまだこの点につきましても大方の意見の御一致ということが見られないために実現されていない状態でございます。
#80
○瀬谷英行君 最後に、阿部代議士の問題についてちょっと聞いておきたいと思うんです。
 共和、佐川事件というのは非常に大きな問題で、日本国じゅうのだれしもがこの問題についてもう知らない人はいなくなっています。一体どこに原因があるのかといったようなことがいつまでも雲の上の出来事として隠されていってはいけないと思うんですね。
 それで、阿部代議士の証人問題について、これは刑事訴訟法の条項で一体何条に該当するのか。ともかく保釈をされるということは問題なんですよね。五千万だのあるいは億の金を出して芸能人が保釈で出てきたという例がありますけれども、一般の人にとってみては保釈金を五千万だの一億だのというものは出せるものじゃないですね。そういう金が出せる人が保釈によってのうのうとしゃばへ出てくるということだけでも国民には納得しがたいものがある。だけれども、出てきた以上は、外国へ行ったり遊びに行ったりするわけにいかないんだから。かといって阿部さんの場合は登院をして国会の審議に参画しておるわけでもないんですからね。家でもって暇をもてあましているだろうと思うんです。それならば、証人喚問に応じて事の真相を明らかにするということをやってもらったっていいじゃないかという気がします。
 これは裁判所任せでいいという問題じゃないでしょう。こういう問題についてやはりはっきりさせなきゃいかぬ。一番肝心のかぎを握っている人がいつまでも世間の目に触れないようにされているという状況は不自然だと思いませんか。こういう場合には、与野党同じように罪をなすりつけておいた方がいいというようないろいろな思惑があるかどうかわかりませんけれども、野党の中にだれが何百万もらったの何だのかんだのこんな話が出てきます。しかし、この職務権限というものは全然違うんですからね。何百万の話と何億あるいは何十億、何千億の金の動きとは全然性格が違います。
 先般の宮城県の補欠選挙で萩野さんが当選をされました。この選挙についても自民党の方は、これはやっぱり共和、佐川事件が影響したなんというようなことを言っている人はおりますよ。それだけ問題の根本をなすこの阿部さんが黙って自宅で待機しておるだけということはどうあっても納得しがたい。
 法務省の方が証人喚問なんていうのは言わないでもらいたいという意味のことをいろいろと運動したということも聞きましたよ、衆議院の予算委員のメンバーに対して。こんなことは余計なことだと思うんですね。やはり一刻も早く問題の真相を明らかにするという必要があるというふうに思いますが、これこそ法務大臣としても、やはりまごまごすると指揮権発動を考えているんじゃないかなんということを言われますからね。そんなことを言われないように対応する必要があると私は思うんですが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
#81
○国務大臣(田原隆君) 先般のお説のような事柄につきましては、事務当局が本来の公判維持というものをまじめに考えて、そのときに裁判官に予断を与えるとか、あるいは被告人であってもまだ推定の状態でありますから、起訴された状態でありますから人権の問題が起こるというようなことから、純粋な気持ちでまじめに御説明に上がり陳情を申し上げたというのが実情だというふうに私は思っております。
 しかし、国政調査権が優先するというのはあくまで承知の上であったと思いますし、もし国政調査権を発動されてこうしなさいと言われれば喜んでするという姿勢の上で御説明に上がっておるわけでありまして、その点は私も、特に先生のおっしゃる意味はわからないことはないのですけれども、事務当局がとった態度も真摯な気持ちからやったというふうに判断しております。
#82
○瀬谷英行君 事摯な気持ちでやったふりをして実際は肝心なところに触れないというのは、世間から見れば、これはもう呑舟の大魚を保護しているというふうに見えますよ。鯨の方を一生懸命に保護して、それでパーティー券を幾ら買ってもらったとか何だとかかんだとかいう、こんなのはメダカかドジョウみたいなものですよね。メダカをさらったりドジョウすくいをやって、鯨の方に手を触れないようにするというようなことは間違いだと私は思うんですよ。国民はそういう間違いをやっているなという認識をすれば選挙のときに厳しい審判を下すんです。単なる法律論でもってごまかしがつく問題じゃないと思います。
 一体、刑事訴訟法の第何条、どういうところでもって阿部さんの証人喚問といったようなことは伏せておきたいというのか、それらのことについてもお聞きしたいと思いますけれども、まあ時間も時間ですから同僚議員にあとは譲ることにいたしまして、その点についてもう一度大臣の見解をお伺いして、私の質問を終わります。
#83
○国務大臣(田原隆君) 先ほどふりをしてと言われましたけれども、そんなことはございません。
 それから、私は姿勢として、検察に不当な制約を加えて検察が正しい動きができないようなことを今日までしたこともないし、今後もそういうことは考えておりませんが、このたび言われておるような事柄に対しましては、これは先ほど私が申したのが実情でございまして、御理解いただきたい。
 ただし、時間が少なくて、手分けして同時に数カ所へ行ったということで目立った感じがしたかもしれませんが、私は後で報告を受けて、なるほどな、捜査というものはそういうものだろう、公判維持というものはそういうものだろうなと思った次第であります。
#84
○委員長(鶴岡洋君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十二分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時一分開会
#85
○委員長(鶴岡洋君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題とし、法務行政の基本方針に関する件について質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#86
○北村哲男君 私は、先般の法務大臣所信表明に対して順次聞いていく予定でございますが、その前に二点だけ法務大臣並びに関係の方々にお伺いしたいことがございます。一つは死刑廃止の問題、二つは先般から問題になっております阿部証人喚問の問題でございます。
 まず、死刑廃止の問題について法務大臣の考え方をお聞きしたのんですが、先般フランスの元法相のバダンテール氏が来日され、七日には日比谷公会堂における死刑廃止条約の批准を求めるフォーラムで、フランスにおける死刑廃止の経験を紹介されたと聞いております。フランスでは既に十一年前、当時の国民世論の反対をあえて抑えて一九八一年に死刑の廃止をしております。今や先進民主主義国では、死刑を存置しておる国はアメリカの一部の州、十三州と聞いておりますけれども、十三州と日本だけだとも言われております。世界的に見ても約半数の八十カ国は既に死刑廃止に踏み切っておるといいますし、また国連総会でも死刑廃止条約を採択され、昨年七月に発効しております。今また日本でも、国連の死刑廃止条約の批准を求めて死刑制度を廃止する世論は高まっていると思います。
 また、さきの法務大臣であられた左藤氏も、個人的思想、信条の問題に基づくとは言われながらも、死刑の執行はその在任中一回もされなかったということです。そして、ここ二年以上、これは日本の近代行刑史上初めての長期間と言われる長い間、死刑の執行が行われておりません。
 そこで、法務大臣に対して大臣のお考えを聞くとともに、死刑廃止または死刑問題について何らかの国民的コンセンサスを得るような方策をとるおつもりであるかどうか、またとっておられるかどうかをお伺いしたいと存じます。
#87
○国務大臣(田原隆君) お答えいたします。
 この問題につきましては、現行法を尊重してやっているところでありまして、特に特別な行動をとっておることはいたしておりません。
#88
○北村哲男君 ただいま非常にそっけないお言葉でございますが、それは大臣にまた聞ければ結構でございます。
 現在二年間も死刑執行していないという状態でありますが、今現在、死刑執行判決が確定をして、死刑を待つばかりという言葉はおかしいかもしれませんが、法務大臣の執行許可ですか、でもあればすぐにでも執行できる人はどのくらいいるのでしょうか。
#89
○政府委員(濱邦久君) 今委員のお尋ねは、死刑の判決が確定して未執行の者の数についてのお尋ねと理解いたしましたが、昨年末現在で五十一名でございます。
#90
○北村哲男君 そのうちに、冤罪の主張等あるいはそのほかの理由で再審請求などをして争っておられる人はどのくらいおられるのでしょうか。
#91
○政府委員(濱邦久君) 死刑未執行者のうち、現在再審の請求をしている者の数は、昨年末現在で九名でございます。
#92
○北村哲男君 わかりました。
 それから、五十名、九名を除くにされても、死刑執行の順序と申しますか、これは例えば年齢順とか、あるいは犯罪確定の日が古い者順とか、あるいは冤罪を争っている、あるいは別の理由で何かをしておる、確定後ですけれども、そういう人たちを含めて五十名の人たちにもしするとすると、どういう順序でおやりになるのが法務省のいわゆる習慣というか、あるいは実務なんでしょうか。
#93
○政府委員(濱邦久君) 今委員お尋ねの点につきましてはちょっとお答えはいたしかねるわけでございますけれども、ただ死刑の執行、死刑が確定いたしましてから死刑執行命令が出るまでにどのような手続がとられているかということを御説明申し上げて御理解をいただくよりほかないと思うのでございますが、死刑の判決が確定いたしますと、関係検察庁の長からの死刑執行に関する上申を待って確定記録を取り寄せます。それで、省内関係各部局をして判決あるいは確定記録の内容を十分精査いたしまして、また必要に応じてこの記録をみずから精読する等の方法によりまして、刑の執行停止、再審、非常上告の事由あるいは恩赦を相当とする情状の有無等につきまして慎重に検討して、これらの事由ないし情状が存在しないことが確認された場合に初めて死刑執行命令を発するという手順になっているわけでございます。
 なお、検討の過程におきまして再審の申し立てあるいは恩赦の出願等がなされている場合には、それらの当否につきまして十分勘案するということは申すまでもないことでございます。したがいまして、先ほど死刑確定者の死刑執行の順序等についてお尋ねでございますけれども、これは例えばその確定者から再審の請求が出ている場合とか、あるいは恩赦の出願がある場合とか、いろんな事情もございますし、これは一概には申せないわけでございます。
#94
○北村哲男君 大体今のことから私ども何とか理解したいと思います。
 死刑制度につきましては、一挙に死刑制度を廃止するということもありますし、あるいは今現状のように執行停止をしてしばらく世論を見定めるというふうな方法もあると思うのですけれども、そういう形の何らかの、先ほどちょっと申しましたが、合せっかくここ二年間も死刑の執行がなされていないという状態を踏まえて、今ここで国民の世論、しかも世論といっても単に感情ではなくて、死刑に対するいわゆる法的世論という言葉も必ずしも正確じゃないかもしれませんが、果たしてそれが法律として正義かどうかという、いわゆる世論を正確にはかるような形の研究、あるいは法制審議会にかけて一回真剣に検討するというような方法、あるいはそういう準備というものはないのでしょうか。
#95
○政府委員(濱邦久君) 今の委員のお尋ねは、一番最初に委員からお話がございました世界の死刑存廃についての流れを踏まえてのお尋ねだと思うわけでございます。
 この死刑存廃の問題につきましては、国民世論の動向に十分注意を払いながら、国家社会における正義の維持等、種々の観点から慎重に検討しなければならないことであることはもう改めて申し上げるまでもないわけでございますが、世論調査にょりましても、日本の国民の大多数は、極度に凶悪な犯罪を犯した者に死刑を科することは正当であるというふうに考えており、しかも死刑に凶悪犯罪を抑制する特別の効果があるというふうに信じているというふうに思われるわけでございます。また、現に、重大、凶悪事犯がなお後を絶にないことを考えますと、死刑制度を廃止した国があるといたしましても、我が国におきましては死刑制度を廃止することは適当でないというふうに考えているわけでございまして、先ほど大臣が現在検討していないというふうにお答えになられたのもそういう趣旨でお答えになられたものと思うわけでございます。
 今、委員御指摘になられました死刑執行を一時停止して死刑制度存廃の論議をするのも一つの方法ではないかというお尋ねでございますけれども、我が国におきましては、今申しましたように、現在なお大多数の国民は極度に凶悪な犯罪を犯した者に死刑を科することは正当であるというふうに考えておると思われるわけでございますレ、また、現実に凶悪、重大犯罪が後を絶たない、こういう現状にかんがみますと、裁判で死刑が確定した者につきましてはその執行を停止すべき状況にはないのではないかというふうに考えているわけでございます。
#96
○北村哲男君 今のお話もある程度わかるのですが、今、日本国民の大多数が死刑存置に賛成というふうなお答えがありましたけれども、私はそのことについては異論がございます。必ずしもどういうやり方で調査をされたかは知りませんが、大多数ということが、ほとんどという意味なのか、半数をちょっと超えたという意味なのか、その辺も問題であろうかと思います。これは一つの確かに資料もありますけれども、その資料のとり方については、いわゆる冤罪があったことについて知らせてないとか、あるいは凶悪犯罪があった直後に世論調査をしたという問題があったので、あえてそれについて云々申しません。
 しかし、一つだけ。フランスが廃止したときには、世論は反対であったと、六二%は反対であったけれども、ミッテラン大統領のもとに、先ほどのバダンテール氏が法務大臣になったときにあえてこれを法の正義という名前で、国論が反対であってもするのだという強い決意でやられたことを申し添えておきたいと思います。
 最後に、法務大臣、さきの左藤法務大臣は死刑執行について一回も署名をされなかったとおっしゃいますけれども、大臣のお考えはいかがでしょうか。
#97
○国務大臣(田原隆君) さきの左藤法務大臣のいろんな場所における答弁は、左藤大臣個人の問題でありますから、私がここで批評したりコメントしたりすることは差し控えるべきであろうと思っております。
 私は、現在こういう法律制度があるし、国民世論が相当高いパーセンテージで支持しておるというわけでありますから、これは尊重しなければならないという気持ちでおります。
 一方、おっしゃるように、国際的に死刑廃止の国があることも存じておりますが、しかし我が国には我が国の法があり、しかもこういう基本的な法が大臣一人の個人の考えで世論を引っ張って、世論に逆らって後で世論を形成させるというようなことは、私自身は少しいかがなものかと、そういうふうに考えております。したがって、私は現在の制度を尊重しつつ進むしかないと考えております。
#98
○北村哲男君 お答えはお答えとしましても、私どもの強い希望としましては、せっかくここまである程度の素地ができているという気持ちがありますので、その辺は慎重にお考えの上、この死刑制度の廃止問題について取り組んでいただきたいと存じます。
 次に、第二点目の問題ですけれども、先般の大臣の所信表明の第一に、治安の確保及び法秩序の維持ということにつきましてるる述べておられます。
 いわゆるバブルの破綻に伴って大規模な事件が起こっているということを言っておられますが、この中に欠けている部分があると思うのです。というのは政治家の犯罪が抜けています。これはバブル経済の破綻に伴って、一番今国民が関心を持ち、そして新聞を毎日にぎわしているのは、これはまさに脱税の犯罪でも株式操作の犯罪でもなければ、公務員による涜職罪でもないと思うのです。政治家の犯罪こそが今国民に問わている問題だと思うのですけれども、そういうことで、まず大臣に、今問題になっている政治家の犯罪に対して、法務大臣として、あるいは法務当局として、どういうお考えを持って対処をしようとしておられるのかお伺いしたいと存じます。
#99
○国務大臣(田原隆君) 今起訴されております阿部さんの問題を中心にして考えてみますと、まことに遺憾なことだと思いますが、私の所信の中に政治家がないというのは、公務員という中にひっくるめて考えておったものですから御容赦を願いたいと思いますが、やはり国民の信頼を受けて出てきた我々でありますから、誤解を招いたり、あるいはこういう濱職になるようなことはよく頭の中で考えれば大体わかる筋合いのものですから気をつけていかなければならない、こういうふうに考えております。
#100
○北村哲男君 確かに、国会あるいは政府、また自民党でも政治家の倫理の問題とかそういう問題については取り組んでおられると思うのですが、私ここに、公務員による濱職犯罪の中に、もちろん政治家も公務員ではありますけれども、政治家の犯罪をこういう中に特に入れられるというよりも、やはり大きな問題として挙げられて、それに対する法務省当局が毅然とした態度、検察庁はそういうふうにとっておられますけれども、そういうものも大きな特徴であろうと思いますし、それが一つ所信表明の中にあらわれてしかるべきだと思うのです。
 そして、それに関連して聞くのですけれども、そういう政治家の濱職犯罪に対しての国民の要望を担った国会における審議、これに水を差すような事件が起きた、これが一番責任を負っている法務当局によってなされたというのがまさに阿部喚問問題ではないかと思うのです。これは一つずつ順序立てて聞いていきたいと思うのですけれども、私はそういう評価をしております。本当にこういう真剣なときにどうもやるべき目的が違うのじゃないか、反対に水を差してごまかしてしまうのじゃないかというふうな気持ちが酌み取れますので、ここではっきりしておきたいと思います。
 まず、法務省が国政調査権、先ほど午前中も大臣が国政調査権は刑事司法に優先するというふうな言葉をちょっと言われましたけれども、私それについては若干問題があると思うのですが、国政調査権と、その一環として行われる証人喚問に対してどのような考えを持っておられるのか、まず大臣にお伺いしたいと思います。
#101
○国務大臣(田原隆君) 私は、民主主義の一つの典型的なパターンとして三権分立というのは皆さんとともによく知っていることであると思いますが、その中でも憲法で定められている国政調査権というのが一番優先するものであると思います。したがいまして、喚問問題でいろいろありましたが、喚問問題を行政側で論ずることもそれは当然可能でありますから、行政の実務屋として、事務屋として当然いろんなことを論ずるでありましょうが、国政調査権を無視して論じているのじゃなくて、国政調査権が国会がお決めになって発動されればそれは尊重するという前提のもとにやってきたものと考えております。
#102
○北村哲男君 どなたか法律の専門家の御意見として、国政調査権と刑事司法との関快、その中での証人喚問との、いわゆる証人喚問と言いますが証人喚問にもさまざまあると思います。特に刑事被告人との関係を述べていただきたいと思います。
#103
○政府委員(濱邦久君) 国会が持っておられる国政調査権の機能、これは私どもも最大限に尊重すべき事柄であるというふうに思っておりますし、国会が国政調査権の行使として、例えばどなたを証人として喚問されるか、あるいは参考人として招致されるかということをお決めになられることは、これはもう国会が独自の御良識に基づかれた御判断でお決めになられることでございますから、ほかの行政府あるいは司法府の者がとやかく言うべき事柄ではないということは、もう異論がないところでございます。したがいまして、繰り返すようでございますが、どなたを国会に証人として喚問されるか、あるいは参考人として招致されるかどうかということは国会が国会の御良識で御判断されることでございまして、その御判断に対しては私どももこれを尊重して従わなければならないということはもう当然のことでございます。
 ただ、一つだけ正確に御理解いただきたいと思いますので御説明申し上げるわけでございますが、先ほど委員から御指摘のありました証人喚問の問題について、法務省の方でやったことについてのお話がございましたので一言御説明させていただくわけでございますが、これは要するに裁判係属中の刑事被告人を証人として喚問するという問題につきましては、裁判係属中の公判の審理との関係を十分御考慮いただきたいということを御説明したいということで御説明に上がったつもりでございます。したがいまして、最終的に国会がどなたを証人喚問されるかどうか、あるいは参考人として招致されるかどうかということは、もう国会が御良識で御判断されることでございますし、そういう御判断につきましては、私どももこれを尊重して従わなければならない、こういうふうに考えているわけでございます。
#104
○北村哲男君 二つ問題がございます。
 一つは、刑事被告人あるいは被疑者を証人として呼ぶかどうかという問題については、取り調べ中に勾留されている人を国会に引っ張ってくる、これは確かに司法権あるいは捜査と抵触するので自粛しなくてはいけない。しかし、保釈されて自由の身になっている場合は、これは自由に呼んでもいいという、そういうふうな差はあっていいのを、ただ刑事被告人は云々と。公判係属中に被告人として出廷している、裁判の取り調べがある、そのときにそれと抵触する形で強制的に呼んでくる、これはまずいと思うのですけれども、そういうものと今裁判が始まる前に自由になっている身の者を呼ぶということについて、刑事被告人一般という形でそれをひっくるめてよくないよという形の、いわば陳情なら陳情でも結構ですけれども、そういう意見を吐かれるのはどうかと思う点が一つ。
 それからもう一つは、ではなぜこの時期に阿部代議士の証人喚問について反対の陳情を行ったか、一般論として言われたとおっしゃいますけれども、一般論は結構です、昔からそういう議論は続いてありますけれどもね。今陳情を行うというのは、阿部をやるなということじゃないのでしょうか。そういう論評もいっぱいあります。阿部をやってくれるなという法務省当局の、しかもしかるべき人たちが国会に来て言って回るということは、単なる一般の国民の陳情、そして司法権と行政権との関係を一般論として述べますというのとはわけが違うと思うのですけれども、その辺の二点についてはいかがでしょうか。
#105
○政府委員(濱邦久君) まず、最初の委員お尋ねの刑事被告人が保釈された場合とそうでない場合とは違うのではないかという御趣旨のお尋ねがあったかと思うわけでございます。
 これは裁判係属中の刑事被告人ということになりますと、これは保釈で釈放された者であろうと、あるいは保釈されずに勾留中のままの刑事被告人であろうと同じことであろうと思うわけでございますが、要するに刑事被告人を証人として国会にお呼びになられていろいろ御質問なさる場合に、裁判係属中の事件の内容に触れることも予想されるのではないか。そうなりますと、公訴事実の存否について、本来司法の行うべき事実認定、裁判所の判断に先立って国会が御判断をされるという印象を当該刑事被告人のみならず国民一般に与えるおそれがあるのではないかという点から司法の公正に対する国民の信頼あるいは司法の公正自体に対する信頼を損なうおそれが出てくるのではないかということが一つ。
 それから、本来刑事被告人というのは法廷で、司法の場で裁判を受ける場合には、もうこれも委員御案内のとおり、黙秘権という広い形の保障がなされているわけでございますけれども、国会の場で証人として喚問されることになりますと、刑事被告人の権利に対して侵害が及ぶおそれも場合によってはあるのではないか。もう少し詳しく申しますと、法廷ではかなり広い範囲で黙秘権の形で被告人に認められております権利が、やはり事実上制約されることになってしまうのではないかという観点から、裁判係属中の刑事被告人を国会で証人として喚問されるについてはそういう意味の問題があるのではないか。
 整理して申し上げますと、要するに、司法の公正あるいは司法の公正に対する信頼の問題と、それから刑事被告人の人権保障上の問題という面から問題があるのではないかということを申し上げているわけでございまして、そういう意味でこれは保釈になっているかなっていないかにかかわらず、裁判係属中の刑事被告人一般について申し上げられることだろうと思いますし、従来も国政調査権と刑事被告人の証人喚問の問題について論じられてきております事柄は、今申し上げたような経緯でございます。
 それから、先ほど後段で委員お触れになりました時期の問題でございますけれども、これは阿部被告人だけにもちろん限りませんが、要するに刑事被告人を証人として喚問されるという問題が論じられているという時期でございましたので、先ほど申しましたように、最終的にはもちろん国会が御判断されることでございますけれども、その国会が御判断されるについて、今申しました刑事被告人を証人として喚問されることの問題について十分御考慮の上、ひとつ御判断い尤だきたいということを御説明させていただきたかったわけでございます。
#106
○北村哲男君 確かに繰り返しいろんなところで抗弁しておられまして、「あくまで刑事被告人の証人喚問についての一般論」という弁解をしておられますが、実際そのほかの新聞によりますと、法務省は陳情だといって被告人の阿部氏を喚問しないでくれと直接言った、あるいは直接名指しで、今出席しておられませんが、則定官房長は、政治家の喚問は前例がないと言ったというふうに新聞に当時報道されておりますが、それは本当でしょうか。直接、阿部さんを呼ばないでくれ、あるいは政治家の喚問は前例がないというお言葉は本当でしょうか。
#107
○政府委員(濱邦久君) 今、委員問題にしておられます法務省の幹部が国会の委員の方々のとこみに御説明に上がったというのは、これは私のほかに数名の者がおるわけでございまして、今委員御指摘になられた則定官房長もそのうちの一人でございます。
 ただ、私ども寄り寄り協議いたしましたのは、今申しましたように、現に裁判係属中の刑事被告人を証人として喚問される場合には、先ほど来申し上げておりますように、裁判係属中の公判の審理との関係を十分御考慮された上で御判断いただきたいという形で御説明に上がったということでございます。
#108
○北村哲男君 いや、私そういう一般論を聞いているのじゃないのです。
 確かに、当時は阿部さんとそれから森口さん、二人おられるのですけれども、しかしこれはいつですか、二月十三日の毎日によりますと、「また、則定官房長は同日夕、民社党の神田国対委員長、中野予算委理事にも「政治家の刑事被告人喚問は前例がない」と述べたという」というふうに書いてあります。これはまさに、政治家はいかぬ、政治家は勘弁してくれと。あるいは別のところでも、阿部さんの証人喚問は勘弁してくれと直接言っておられるじゃありませんか。これはまさに、政治家だからだめだということに受け取らざるを得ないと思うのですけれども、その辺はいかがなんですか。
 また事実それは、則定さんはまあおられないから直接聞くわけにいきませんが、あなた方が理解している限りでは、則定さんがそう言ったかどうかということをっきりしてください。
#109
○政府委員(濱邦久君) 則定官房長が実際にどういう言葉でおっしゃったかということは、私そこの現場におりませんからわかりませんけれども、ただこういうことは申し上げられると思うんです。
 当時、刑事被告人として起訴されておりましたのは阿部文男議員とそれから森口五郎の両名がそれぞれ受託収賄罪及び贈賄罪の被告人として公判請求されて、刑事被告人という立場にあったはずでございます。したがいまして、私どもの方はどなたをということではなしに、刑事被告人を証人喚問する問題について御説明に上がったというふうに理解しているわけでございます。
#110
○北村哲男君 現実に法務省当局で直接行かれた方、そして、どこに行ったかをはっきり言ってください。どこのだれのところに行かれたのか、お名前並びに場所。
#111
○政府委員(濱邦久君) ちょっと私、必ずしも正確でないかもしれませんが、私の記憶に誤りがなければ次のとおりだと思うわけでございます。
 私が参りましたのは、公明党の国対委員長さんのところ、それから公明党の予算委員会の筆頭理事をしておられる方、これはもちろん全部衆議院でございますが、それから社会党の予算委員会の理事をしておられる方のところに、これは私が参りましたので間違いございません。
 そのほか、ちょっと正確でございませんが、社会党の国対委員の方、それから民社党の国対委員の方と予算委員の方のところにもどなたかが伺っていると思います。それから共産党の、これはちょっと定かでございませんが、国対委員の方と予算委員の方だと記憶いたしております。
#112
○北村哲男君 法務省側で行かれた人の名前を挙げてください。
#113
○政府委員(濱邦久君) どうも失礼しました。
 法務省の方で御説明に参ったのは根來事務次官、則定官房長、それから刑事局の但木刑事課長、それと私の四名のはずでございます。
#114
○北村哲男君 この陳情と称するものは、この四名の方で協議をされたのでしょうか、あるいは言葉の中には、私たちは東京地検の代弁者でもあるというふうなお話もあるようですが、東京地検との協議をされたのか、さらに上司の方、上司というのは大臣あるいは政務次官がいらっしゃいます。どういう方々と事前の協議をされて行かれたのでしょうか。
#115
○政府委員(濱邦久君) 協議いたしましたのは、今の四名の間で協議したというか、むしろ非常に細かくなりますけれども、根來次官と則定官房長と私で協議をして、刑事課長はさらにその意を受けて行ったということになりましょうか、ということになると思います。
 それから、従来申し上げておりますように、そういう御説明を申し上げるにつきましては検察当局の意向も踏まえてというふうに申し上げておりますけれども、これはもちろん御説明に回ることについて検察当局の者と協議をしたということは全くございません。
 ただ、検察当局の意向を踏まえてと申しておりますのは、従来からこの点は、刑事被告人を証人喚問することについては御議論のあるところでございまして、先ほど来るる申し上げておりますように、現在裁判係属中の刑事被告人を証人喚問する問題について、その刑事裁判にかかわりを持ちます検察当局の意向も同じ意向であるということで、それを踏まえて御説明に上がったということでございます。
#116
○北村哲男君 この問題は、確かに政治家でなければ大した問題じゃなかったと思うのです。言われたかもしれませんが、ほとんど問題ないかもしれません。しかし、政治家であるがゆえに、しかもそのほかの参考人あるいは証人の方々が、鈴木さんあるいは塩崎さんが余りはっきり言われなかったがゆえに証人喚問をしようとしているということで、まさに政治家が問題であったということは確かだと思うのです。ですから、方々に政治家の前例がないとか、あるいは阿部さんをしないでくれと。森口さんをしないでく札なんて言葉は出てませんよね、その資料を見ても。
 それで、そういうことがいずれは、検察庁との間では以心伝心でも結構でしょう。あるいは、政府・与党との間でも別に意向があったか直接言われたかは別にしましょう。しかし、こういうふうなやり方が政治問題になることは、それぞれベテランの方でありますから事前にわかったはずなんです、ただ済むわけはないと思われたと思うのです。それを大臣は確かに何度も、私知りませんでしたというふうに言われたのですけれどもね。政務次官がいらっしゃいますよね、法務省にも。その方にもとにかく政治向き、いわゆる政府の関係者には何にも相談なしにやられたのか、その辺を確認しておきたいと思うのです。本当になかったのか。
#117
○政府委員(濱邦久君) 先ほどお答え申し上げましたように、事務当局で寄り寄り協議しただけのことでございます。
#118
○北村哲男君 それから、報道されたいわゆる法務省のメモというのがあります。これがまた奇妙であって、さる政党には行っているけれどもほかのところには行かないというもので、これも新聞紙上に全文が発表してあります。
 この中に、「国会における証人喚問について、法務省、検察庁は、国会の良識を信頼して、従来特に意見を申し述べないこととしている」と。いわゆる」つの方針であるわけですよね、こういう言い方は。単にしていなかったということじゃなくて、「従来特に意見を申し述べないこととしている」というふうに言っている。そして「しかしながら」として、今回についてこうこうこうと言っておられるのですが、今までは確かに刑事被告人を証人喚問した例はありますけれども、今回あえてこれを行った理由はどういうところにあるのですか。しかも、方針を変えられたという点についてはいかがなんですか。
#119
○政府委員(濱邦久君) 今委員お尋ねでございますが、法務当局が特に方針を変えたということではないと思うのでございます。
 それは御理解をいただきたいということでもう少し御説明申し上げますと、例えば過去におきまして刑事被告人を証人として喚問するということが問題になりましたときに、非公式に例えば御意見を聞かれたとかというようなこともあったと記憶するわけでございます。そういう意味で、今回は法務当局の方から先ほど御説明申し上げましたように御説明に伺ったわけでございますけれども、従来も同じような刑事被告人を国会に証人喚問するという問題が起こりましたときにはいろいろ御意見も申し上げたこともございますし、国会で御議論をいただいたこともあるはずでございます。当参議院の法務委員会におきましても、この問題が前に御議論されたこともございます。
#120
○北村哲男君 そうすると、このメモの中の「意見を申し述べないこととしている」というのはどういうことなんですか。確かに国会では議論されております。前に稻葉法務大臣なんかのこの問題についての議事録もあります。しかし、これは国会の中で議論されるのであって、法務当局、特に事務当局がおえて政界に対してあるいは国会に対して言うかどうかというのはかなり重大な問題だと思うのですよ。私が先ほど言ったように、単なる国民の陳情とはもう立場も違うし力も違うし影響力も違う、しかもプロの集団としての力も違うから、確かに普通の議員の人だったら、ああ、そうかなところっと参っちゃうと思うのですよね。だから、「申し述べないこととしている」というのは、やっぱりそれだけのけじめを持ってそういう方針を持っておられたと思う。その辺をあえてこう言っておられることの意味がはっきりしません。
#121
○政府委員(濱邦久君) 先ほど私お答え申し上げましたように、過去の事例としましても、刑事被告人を証人として喚問する問題が起こったときに、例えば法務当局はどう考えるかということを非公式に聞かれて御意見を申し上げたということはあったと思うわけでございます。そういう意味で、もちろん今回は今、委員御指摘のように、聞きもしないのに法務当局の方から意見をというか説明に回ったじゃないかという御指摘だと思いますが、そういうことであればその方法等について十分心しなければならないことであると、その影響の度合い等について気配りが足らなかったという御指摘を受ければ、それはもう甘んじて受けなければならないと思いますけれども、特に今回今までと違ったことをやろうということで御説明に伺ったつもりはないわけでございます。
 これはもう一つ申し上げますと、国会の委員の方々に、法案の説明あるいはそのほかの案件、例えば具体的事件の内容について説明を求められるとかというようなことで、あるいは先ほど申しました法案の説明等も含めまして委員の先生方の御協力をいただかなければならないというときには、積極的に法務当局の方から御説明に伺って御理解を得ようとする努力を従来もやってきたこともございますし、そういう意味で一つの、陳情という言葉が適切かどうかわかりませんけれども、御説明に上がらせていただいたというつもりでおるわけでございます。
#122
○北村哲男君 たくさんの質問を用意しておったのですが、もう時間がわずかになりましたので、この問題について最後に若干伺ってやめたいと思います。
 今も濱刑事局長が時期的に適当であったかどうかというお言葉を言われましたが、極めてまずいことであったことはもう当然だと私は思います。しかも私が、日ごろ余り大きい声も出ないのですけれども、これだけ言えるというのは、いわゆる私どもの後ろにいる国民が本当にやっぱり阿部さんを国会に呼んで聞きたかった、聞くべきだというふうなものを感じるからこういうふうに長々と言えるのであって、極めてまずい措置であったと思うのです。
 ところで、大臣にお聞きしますが、二月二十六日、衆議院の法務委員会で、小森さんという私どもの同僚議員がいるのですが、その方がこの問題について言われたときに、大臣はこういうふうに答弁しておられます。法務省の実務者がまじめな気持ちで陳情を行ったと思っていると。「ただ、妙な誤解を受けたとしたら、進め方が適切でなかったんではないかという感じでおります」という答弁をしておられます。与党の方々がどうかは私も確かめたことはないのですけれども、全野党の人たちはこぞって、誤解か正解かはともかくとして、もうひどい干渉をしたという評価をしているのは事実であります。「誤解を受けたとしたら」というふうな問題ではなくて、やっぱりこの間多くの時間を割いて問題にしているということは、これは事実であります。とすると、この「進め方が適切でなかった」という評価は今でも変わらないと思うのですけれども、大臣は同じようにここでも思っておられますか。あるいは、先ほどの答弁を聞いていると、何が悪いというふうなことをちらちらと感じるところがあるのですけれども、その辺については政治家としての大臣はどういうふうに考えておられますか。
#123
○国務大臣(田原隆君) 私は、時の大臣として後から聞いてそうかというふうに答えただけでありましたが、実務者がまじめな気持ちで自分たちの実務上の話をして回った、しかし御存じのような状況でありますが、その進め方が時間が短かった等の関係もあったようでありますが、一斉にそろって行ってというような印象を与えたりしたそういうやり方が余っ上手ではなかったのではないか、やはり実務的にじゅんじゅんと御説明申し上げるのが筋ではなかったかというふうに考えたりしております。
 ただ、あくまでもそのときに国政調査権は立法府と行政府を監督する調査権として優先するということが前提で、検察といえども行政でありますから、院がお決めになったらそれは何でもないのだという、そのとおりに従うのだということを前提にしてやっておりますから、私自身は別にそのときには奇異に感じたりはいたしませんでした。それがそのときの実感であります。
 ただ後から振り返って、小森先生の御質問にあったように、そういう反響があるとしたら、やり方、進め方はもう少し事務的に誤解を招かないようにやる方法があったのではないかというふうに思っております。
#124
○北村哲男君 もう一点、大臣は法務省に対する監督者として、あるいは最高の責任者として、多くの人たちが誤解をしているとすれば誤解を解き、その措置の不適切さに対してどのような善後策をとり、みずからどのような責任をとられ、あるいは実行行為者に対してどのような責任をとらせようとしておられるのか、その点について最後にお伺いしたいと思います。
#125
○国務大臣(田原隆君) 私は確かに最高責任者でございますが、大臣が議院内閣制でいるというのはやはり政治的判断をするということが主だろうと思いますが、これは実務的な判断のもとに行われたものであって、その進め方に余り上手でなかった点があったとしてもそれをとがめる気はいたさないわけでありまして、ただ、今後はこういうことがないように私自身も気をつけなければいかぬなと思っております。
 しかし、私がこれに干渉してこういうことをさぜたりそうしたりすることがあるとすればそれはもう困ったことであって、やはり実務は実務でやってもらわないと、いわゆるよく言われる指揮権云々の問題にもなるわけでございますから、私は実務の問題は実務の問題としてそのまま進めていくのが至当ではないかと考えております。
#126
○北村哲男君 今の問題については一応終えたいと思います。
 次に、もうほとんど時間がなくなりましたので、また後に聞く機会もあると思いますが、一点だけ、裁判所が来ておられますので法務省も含めてお伺いしたいと思います。
 法曹養成制度について所信では特に言っておられますが、それがどのように成果があったのかということは、去年一回司法試験があってその後どういうことがあるかということもあるのですが、時間の関係で一つ、司法研修所は今湯島にあるんですが、そこでは大体五百人の修習生を対象として施設があります。それだと新しい司法試験改正によって数年のうちには九百人になるのでとても器が間に合わないということで練馬の方に移るという話があったようなんですが、それが非常に練馬区と国との間で交渉が難航しておるという記事もあります。また先般は、何かこれが地下鉄を通すことによってうまくいったのだという話も新聞に載っております。
 そういうことを含めて、司法研修所の移転問題がどのように進み、そして目的とする九四年には完成をする予測を持っておられるかどうか、この点についてお伺いをしたいと思います。
#127
○最高裁判所長官代理者(仁田陸郎君) 司法試験制度改革を機会にしまして司法研修所を現在地の湯島から別地に移転をして建てかえたい、そして私どもの研修の充実を図るということで今作業を進めておるところでございますけれども、移転先はキャンプ朝霞跡地の留保地の一部、和光市と今、委員御指摘の練馬区にまたがります六・五ヘクタールのところに移転をする予定でございます。
 いろいろ今御指摘のような難航をいたしましたけれども、折しも今週の月曜日、三月九日の国有財産関東地方審議会におきまして司法研修所の敷地とすることが適当である旨の答申を得ました。したがいまして、和光市及び練馬区の地元の御了解も得て研修所の移転計画は具体的に進むことになりましたので、その具体的な整備計画を今進めているところでございます。
 現在の研修施設は約一万平方メートル、合宿舎が約五千平方メートルでございますけれども、これを集約いたしまして延べで約五万一千平米の庁舎、合宿舎を平成四年度、五年度の二カ年で工事を進めまして、平成六年四月には開所できるよう鋭意作業を進めたい、このように考えておるところでございます。
#128
○北村哲男君 寮のようなものはどうなっているのですか。
#129
○最高裁判所長官代理者(仁田陸郎君) 今、松戸に寮を持っております。これが約二百人収容できるわけでございますけれども、この先七百人を超える修習生を迎えるということになりますと、この合宿舎では賄い切れません。そこで、今申し上げました土地に研修をやるところと合宿舎をあわせてつくりたい、このように考えておるところでございます。
#130
○北村哲男君 いろんな方々をお呼びしまして質問ができなくて申しわけありませんでした。私の持ち時間が大体来ましたのですが、あと二、三分ありますので一点だけ。
 昨年の司法試験法の改正で従来より二百人、まあわずかでありますけれども合格者がふえたということでありますが、その第一回の司法試験法改正後の第一年目の成果といいますか、あるいは今までと変わった点と申しますか、あるいは将来の見通しといいますか、その点について今わかっている範囲のことで結構ですから御説明を願いたいと存じます。
#131
○政府委員(濱崎恭生君) 今御指摘いただきましたように、平成三年の司法試験の合格者は六百五人ということになりました。平成二年の合格者は四百九十九人でございますので百六人増加したということでございますが、これは先般の法改正を含む司法試験改革における法曹三者の合意、まず平成三年及び平成四年は百人程度増加させるという合意を踏まえまして、司法試験管理委員会及び司法試験考査委員会議の御理解を得て実現を見たものでございます。
 その結果どういう変化が生じたかということでございますが、まず平均年齢について見ますと、平成二年は二十八・六五歳でございましたが、平成三年は二十八・六四歳でございまして、この点においてはほとんど変化があらわれておりません。
 それから、御案内のとおり、平成七年までに行う検証の関係で基準として位置づけられておりますのは、初めての受験から三年以内に合格した者、あるいは五年以内に合格した者の数の推移を見ようということでございますので、この点について申し上げますと、三年以内の合格者の割合は、平成二年が一七・四%でございましたが、平成三年は二〇・八%ということで三・四ポイント上昇しております。それから五年以内の合格者の割合は、平成二年が四〇・三%でありましたが、平成三年は四三・三%で、これも三%上昇しております。ただ、この辺の割合というのは、実は過去においても年ごとに数%程度の出入りがあるものでございますので、この三年以内の合格者、五年以内の合格者の増が合格者を約百人増加させたことによる効果であるかどうかということは、これはさらに今後の推移を見なければ何とも申し上げられないことであろうと思っております。
 今後さらに、ことしは百人程度、来年からは二百人程度の増加を予定しておりますので、その推移を検証という形で見守っていきたいと思っているところでございます。
#132
○北村哲男君 終わります。
#133
○中野鉄造君 私は、前回の委員会で聴取いたしました法務大臣の所信に対して幾つかお尋ねいたします。
   〔委員長退席、理事北村哲男君着席〕
 既に冒頭から同僚委員の指摘もございましたが、先月十三日に法務省幹部が阿部文男衆議院議員の証人喚問に関して与野党議員に異例の陳情を行いましたことは、これは他院のこととはいえ、やっぱり看過すべき問題ではない、そうした極めて遺憾の意を抱いてお尋ねいたしますが、先ほどから言われているように、申し上げるまでもなく、国政調査権というのは憲法第六十二条で定められておりまして、証人の出頭及び証言について明文化されております。
 先ほど来大臣からも政府委員からもいろいろお答えがあっておりますし、御説明もあっております。しかし、それはあくまでも法務省側の理論であって、このようなときにこのような形でこういう陳情を行ったときに国民がどういうような感じまするだろうかというようなこと、国民感情というような点についてお考えになった上でなされたことかどうか、その点いかがでしょうか。
#134
○政府委員(濱邦久君) 先ほど北村委員の御質問の際にもお答え申し上げたつもりでございますが、刑事被告人を証人として喚問する問題につきましては、現に裁判進行中の係属中の公判の審理との関係を十分御考慮いただいた上で国会において御判断いただきたいということを御説明申し上げたいという一心と申しますか、一念で御説明に伺ったつもりでございます。
 ただ、今、委員御指摘のように、その時期あるいは方法等について十分考慮を働かせるべきであるという御指摘につきましては、今後とも今の委員のお言葉を十分かみしめて努力させていただきたいというふうに思っております。
#135
○中野鉄造君 国民の素朴な感情から申しますならば、どんなに職務に忠実であるがゆえの御説明をいろいろいただいたとしてみても、やはりこれはもう弁解にしか聞こえない。また、これだけ政治に対する不信感が強まっている中では、むしろ法務省もぐるではないか、そういう声さえ聞こえてくるくらいのときなんですから、したがって今回の件は、これは余りにも国民感情というものを度外視した、無視した、極めて無神経で配慮に欠けておったということではなかったかと私は思います。
 改めてお尋ねいたしますが、今日なお、やはり自分たちのやった今回の件についてはいささかも間違いはなかったとお思いでしょうか。
#136
○政府委員(濱邦久君) 先ほど北村委員の御質問に対してお答え申し上げたときにも申し上げたつもりでございますが、私をも含めまして法務省の職員が御説明に上がったその本意は、裁判係属中の刑事被告人を証人喚問されるについては、裁判係属中の公判の審理との関係を十分御考慮いただいた上で御判断いただきたいということを御説明したつもりでございまして、特定の証人を喚問するしないということについて御意見を申し上げたつもりは全くないわけでございます。
 ただ、これも、私どもがそういう御説明に上がったこと自体は、先ほど来申し上げておりますように、国政調査権に口を挟もうとかいうような気持ちは全くないことは御理解いただきたいと思うわけでございまして、国会が国政調査権の行使としてどなたを証人喚問されるとかあるいは参考人として招致されるかというようなことをお決めになるにつきましては、これは国会が国会の御良識で御判断されることでございまして、そういう御判断がありますれば私どもは当然それを尊重しなければならないということは、もうその当時も今も全く気持ちとしては変わりないわけでございます。
#137
○中野鉄造君 先ほどから申しておりますように、あなた方の極めて職務に忠実なそういう思いの余りになされたということについてはよく私も理解できますけれども、何回も申し上げるようですが、こういうときだけに国民がどういうように感じるだろうかということをいまひとつ配慮に入れていただきたかったということを重ねて申し上げて、今回のことについてこれを今後のあれとして、さらにこういうことについては慎重の上にも慎重を期してひとつ当たっていただきたいということを強く要望しておきます。
 さて、法務大臣は所信においてバブル経済の破綻に伴う昨今の犯罪情勢に言及されて、このような情勢下での検察態勢の一層の整備充実にお触れになっておりますけれども、具体的にいろいろ計画されていることがあったならばお聞かせいただきたいと思いますし、また、昨年司法試験法が改正されましたけれども、この平成四年度の検察官への任官希望状況がどのようになっているのか、その辺のところもお尋ねいたします。
#138
○国務大臣(田原隆君) 御質問の後段の司法試験のことにつきましては後ほど政府委員からお答えさせていただきますが、私が所信表明でこういうふうに申しましたのは、最近の犯罪情勢は従来以上に悪質化してきたりあるいは複雑多様化してきておる、そして交通通信の発達に伴いまして広域化してきておるというようなことを判断しまして、このような情勢に対処して適切な検察行政を構築するにはどうしたらいいかということが念頭にあったわけであります。
 それには人の問題、それから設備の問題あるいは予算の問題とかいろいろありますが、それをもうちょっと細かく申しますと、慢性的な、慢性的と言ったら怒られるかもしれませんが、非常に空席が今のところ定数の割にありますね。こういう問題も頭に置きながら、人的、物的両面において一層充実したい。そういうことで、研修あるいは研究活動の充実、専門知識の涵養のための行動、それから検察の機動力を強化するというこういう設備その他の問題、それから検察事務がやはり旧態依然では効率が悪いということで、これの科学化あるいは効率化を図る。それから犯罪情報を、今は情報化社会ですが、これは検察といえども、特に検察こそこの情報の把握あるいは情報を正確につかむということが大事である。そのために必要な教育訓練並びに施設の充実というようなことが念頭にあったわけでありますが、要するに検察活動に対する国民の御協力をいただきたいということが念頭にあったわけでございます。
 後段につきましては、政府委員から答えさせます。
#139
○政府委員(則定衛君) 司法試験改革と検事任官予定者との関係でございますが、委員御案内のとおり、昨年の養いわゆる司法試験法の改正も行われましたし、その昨年の秋の司法試験の最終合格者の時点におきまして、その前の年に比べまして約百名の合格者増になったわけでございます。この増員の関係につきましては、この春研修所にフレッシュマンとして司法修習生が入るわけでございまして、この人たちが巣立ちますのはなお二年後ということになります。また一方、法律改正の一つでございました受験科目の一部削減、つまり教養選択科目の削減につきましては本年度の試験から行わさせていただく、こうなっておるわけでございます。そういう意味で、いまだその結果が任官、採用の面に反映する段階には至っていないわけでございまして、私どもとしましてはそれらの効果が検事任官確保の面でプラスになるように期待しているというところでございます。
 ところで、この司法修習終了者の数がこれまでと同様の約五百名ということで、この四月期に新たな任官候補者群が出るわけでございますが、その中で現在検事任官を希望しております人の数は五十名程度ということになっておりまして、これはここ数年見ますと比較的多うございます。そういうような状況でございます。
#140
○中野鉄造君 次に、外国人就労問題についてお尋ねしたいと思います。
 出入国管理行政の充実強化について大臣もお触れになっておりますけれども、詳細は今後行われる外登法一部改正案のときに触れたいと思いますが、きょうは今まで何回も問題にされておる外国人労働者問題についてお尋ねいたしたいと思います。
 最近、テレビあるいは新聞をにぎわしておりますいわゆる原宿だとか上野公園のあの一帯にたむろしている外国人の労働者の方々、そういったような人たちの問題が大きく取り上げられておりますけれども、法務省推計でも、昨年五月までの外国人不法就労者は十六万を超えようとしている。実際には二十六万人を超えているというような推計もあるようです。このことについて、関係省庁はもとより、第三次行革審の答申あるいは昨年十二月二十一日の新ラウンド包括協定案でもこの件については取り上げられておりますけれども、こうした内外両面から外国人労働者に対する我が国の対応が求められているところでございます。
 この件については、もう今やただ検討、検討では済まなくなってきているんじゃないかと思いますし、このままいけば本当にこうした東京あるいは大阪といったような大都会は治安、風紀ともに日々にこれはもう乱れに乱れてくるんじゃないかということを憂慮しているわけですけれども、この際、出入国管理行政を所管しておられる立場の法務大臣の所見を伺っておきたい、こう思います。
#141
○国務大臣(田原隆君) お答えいたします。
 今日の我が国を取り巻く国際環境は大いに変化してまいりまして、我が国の国際社会における地位は非常に高まっておりますが、これに伴いまして我が国が国際社会において果たすべき役割が非常に大きくなると認識しております。したがいまして、お説のように、出入国管理行政というのは非常に重大な問題になってくるわけであります。
 確かに、おっしゃるように、不法滞在者と申しますか、さっき不法就労とおっしゃいましたけれども、わかっている数字は約十六万でございますが、不法滞在でございまして、この大半が不法就労者だと思いますけれども、そういう膨大な数字になっております。
 そこで、社会問題等いろいろ起こっておりますが、基本的には法務省といたしましては、細かい点は後ほど政府委員が答弁しますけれども、国際協調、国際交流の増進への寄与という基本方針がなければならない。それから、我が国社会の健全な発展の確保の理念が必要と考えておる。この二つの理念のもとで、留学生、研修生、技術者等を幅広く受け入れなければならない。それで、研修制度についても今までと違った新たな制度を設けて、一度研修を受けて、そしてある程度技術力がついた人が就職した段階を実習と称するというような、そういう制度の創設とか、そういうことも検討中であります。
 それで、不法残留者の問題につきましては、これはもうゆゆしい問題でございますので、入国管理局のみならず、法務省挙げてこれに取り組んでおるわけであります。
 自民党のことを申して恐縮でございますが、自民党におきましても外国人問題研究会というのを先日つくりまして、関係省庁が非常に多岐に及びますし、関係部会も多岐に及びますが、私も出てあいさつさせられましたけれども、非常に今真剣に取り組む姿勢を見せておる次第であります。
 細かい点については、政府委員から答弁させます。
#142
○政府委員(高橋雅二君) ただいま委員の御質問にございました外国人労働の受け入れ問題についての点でございますけれども、基本的には、専門的技術・技能、知識等を持って我が国で就労しようとする外国人は幅広く受け入れることができるように入管法の在留資格を整備したところでございます。いわゆる単純労働者に関しましては、我が国の経済社会全般に影響を及ぼすところが大でございまして、受け入れの是非に関するいろいろな意見がございまして、まだ国民的なコンセンサスというものが存在していない状況でございます。しかしながら、これらの問題にどう対処するかにつきましては、政府部内においても引き続き検討しているという状況でございます。
#143
○中野鉄造君 次に、登記事件への対応について所信でお触れになっておりますけれども、この登記事務のコンピューター化の推進状況について現況をお知らせいただきますと同時に、戸籍事務のコンピューター化への取り組みについて御説明をいただきたいと思います。
#144
○政府委員(清水湛君) 登記事務のコンピューター化につきましては、委員既に御承知のとおり、戦後急増した登記事件を適正かつ迅速に処理するためのいわば抜本的な方策として長年にわたって研究開発を続けてきたものでございます。
 平成二年度から現実に全国の登記所にこれを本格的に導入するという作業を展開してきたわけでございますが、平成四年三月十二日現在、八法務局、五地方法務局の三十八の登記所におきまして、コンピューターで登記事務を処理するいわゆるブックレスシステムを稼動させているところでございます。また、このコンピューター化の前提作業である移行作業と申しますか、つまり現在、紙の登記簿に必要な事項が記載されているわけでございますけれども、コンピューター化するためにはその紙の登記簿の記載事項をコンピューターに移しかえるという作業が必要になるわけでございまして、これが大変膨大な作業になるわけでございますけれども、こういった移行作業を現在二十二の登記所において実施いたしておるわけでございます。さらに、平成四年度予算が認められた場合には、この移行作業庁を拡大するとともに、移行作業が終わった登記所につきましてはコンピューターを本格的に稼働させる、こういうことになるわけでございます。
 全国の登記所、これは現在千百余り、職員がたった一人しかいないというような登記所を含めまして千百余りあるわけでございまして、これをすべてコンピューター化するということになりますと、相当長期の時間とそれから経費を必要とするということになるわけでございますけれども、できるだけ着実にこの登記のコンピューター化を進めてまいりたいというふうに考え、目下私どもの取り組むべき登記行政面における最大の懸案事項としてこれを推進しておるところでございます。
 それから、戸籍事務のコンピューター化についてでございますけれども、戸籍は法務大臣の監督のもとに全国の各市町村が具体的に戸籍事務を行っているという状況にあるわけでございます。この戸籍事務のコンピューター化につきましても、市町村の戸籍事務担当者からかねてよりコンピューターの導入についての要請がされてきたわけでございます。そこで、法務省としては、そもそも戸籍事務がコンピューターになじむものであるかどうかというような研究を従来続けてまいりまして、これは昨年でしたか、戸籍事務をコンピューターによって処理することができるという結論をいただいたわけでございます。
 そこで、現在は、それではどういうプログラムでコンピューター化をするのがよろしいかということで、今具体的なプログラムの作成の研究、検討を依頼しているところでございます。戸籍事務は各市町村で行うことになりますので、それぞれの市町村でコンピューターを入れるということになりますが、やはりプログラム等は統一された形でありませんといろんな支障が生じるということになりますので、それについては法務省の方で統一した形のものをつくって各市町村を指導いたしたい、こういうふうに考えている次第でございます。
#145
○中野鉄造君 所信に対する質問の終わりになりますが、今期国会提出の予定法案につきましては、当委員会では七件、別途衆議院で前国会からの継続法案二件と比較的多数の法律案が当委員会に付託されることになっておりますが、今期国会では本院先議法案も考慮されるなど政府側の柔軟な対応もうかがえるのは、参議院重視の立場からもこれは評価できるところでございます。私は、殊さらこの現在のねじれ現象を強調するつもりはございませんけれども、委員会審査を通じて問題ありとされる事項については、野党の意見も十分反映された結果になるように政府としても対応していただきたいと思うわけです。その辺のところについて大臣の決意をお聞かせいただきたいと思います。
#146
○国務大臣(田原隆君) この国会に提出申し上げております、そして御審議をお願いすることにしております法務省関係の法律案は、ただいま先生がおっしゃいましたように、新しく七本とそれから継続二本ということになっております。その七本の中で、外国人登録法の一部を改正する法律案とそれから刑事施設法案というのは特にいろいろ議論のある法案ではなかろうかと思いますが、いずれにしましても、全法案につきまして御審議をいただき、御指摘の事項がありましたらその御趣旨を踏まえまして誠実に検討してまいるという所存でおりますので、どうぞ御指導のほどよろしくお願いします。
#147
○中野鉄造君 次に、私は、もう前々回から引き続いて当委員会でそのたびごとに取り上げております人事訴訟手続法の一部改正の問題について、きょうもまたお尋ねいたしたいと思います。
 今まで何回も当委員会においてこれは言い続けてまいりました。昨日も通告で、きょうは大臣にお尋ねしますのでひとつ大臣によく私の質問の趣旨をお伝えいただきたいということを言っておきました。私は一番当初にこの件について事例を挙げて詳細にお尋ねしたわけですけれども、今日までの経緯、大臣は御存じになっておりましょうか。
#148
○国務大臣(田原隆君) 担当者からお話を聞きまして、それなりに理解しておるつもりでございます。
#149
○中野鉄造君 私がなぜしつこくこの件を取り上げるかといえば、現在の人事訴訟手続法というのが全く不意打ち判決である。いわば寝耳に水的な判決であって、それに対して全く国民が保護を受けられないという現状にあるということを私は非常に重視しているわけでございます。
 申し上げるまでもなく、人事訴訟手続法においては、当事者以外の第三者に対する既判力の拡張すなわち対世効が十八条一項、二十六条、三十二条において認められております。その結果、自分が全く知らない間に確定した他人相互間の訴訟の判決の効力が自分に及んでくる、これがいわゆる全く寝耳に水的な不意打ち判決だということを私は繰り返し繰り返し言っているわけなんです。しかも、このことについては、確定したこの不意打ち判決に対する救済措置を最高裁判所は認めない。これは平成元年十一月十日の最高裁の判決がまさにそれでございます。
 それに対して、過去何回かの私の質問に対して民事局長あたりからも、そのために補助参加というものが設けられている、認められているということを何回もお聞きしておりますけれども、補助参加というのはいわばこれはバイパス的なもので、しかも国民周知のものではない。六法全書にさえもこの補助参加なんていう条文はないわけなんでして、よほど法律に明るい人かあるいは専門家でなければこういうことがあるということさえも知らないわけなんです。ですから、補助参加、補助参加と言われても、それはいわば第三者がそういうものがあるということを知っておるということが大前提になるわけでして、第三者としては、自分の知らないところで知らないうちにそういう訴訟事件が起きているということさえもわからないわけなんです。まして、そういう補助参加というような方法があるということさえも知らないわけなんです。
 要するに、国民周知の法律ではない、こういうところから、私はこの人事訴訟手続法には欠陥があるんじゃないか、こういうことを繰り返し繰り返し言っておるのでして、そしてそれに対して、さきの左藤法務大臣は私のこの質問、要望に対して、早速それは検討し、これを改正するということを言っていただきました。このことについては法務大臣、引き継いで承知しておられますか。
#150
○国務大臣(田原隆君) 左藤大臣のお言葉から、口から耳へというふうに直接には聞いておりませんが、政府委員であります民事局長を通じてそのことについては聞いております。
#151
○中野鉄造君 この法律は、御承知のように、明治三十一年制定のものでございまして、それから今日までずっとそのままになっておる。いろいろ聞くところによると、近く民事訴訟法が全部改正になるというところから、この民事訴訟法の全部改正と同時に並行して人事訴訟手続法もひとつ改正していこうというような、こういうお話があっております。私も聞いております。
 しかし、私が申し上げるのは、この人事訴訟手続法というのは非常に欠陥法律であり、しかもこれは緊急を要するものである、改正が緊急性を帯びているというところから私はこれを強調しているわけです。そこへいきますと今の民事訴訟法というのは、いろいろ改正する点は、この時代の流れと社会情勢が変化したということから改正する点はあるかと思いますけれども、少なくとも欠陥というものはない。完全に機能しているわけなんです。そこへいくと人事訴訟手続法というのは、今申し上げるように救済措置がない、欠陥法律である。私は、そういう意味から、民事訴訟法の全部改正はこれは当然のことながら、それと並行してやっていきますということではなしに、人事訴訟手続法はそういう欠陥がある、非常に緊急を要するものでもあるというところから、これは分離して早くやるべきじゃないかということを再三申し上げているわけなんです。
 参考までに申しますと、当法務委員会において昨年四月九日に同僚議員から、最高裁判決があったことを契機に少年法及び刑事補償法の欠陥問題が指摘されまして、それに対する質問がなされて、法務大臣は問題点のあることを認めて、これを検討すると答弁されました。それを受けて、法務省の刑事局としては迅速かつ誠実に作業されました。そして、今国会に少年の保護事件に係る補償に関する法律案を提出されております。ところが、人事訴訟手続法についてこの少年法及び刑事補償法に関する質問の一カ月前に私は言っているんです。昨年の三月七日にこれは質問しました。そして、さきの法務大臣がこれをやると約束してくれました。私よりも一月後に言った同僚議員の少年の保護事件に係る問題は、今回、日の目を見るようになっている。どうして私の言ったのはそういう後回しにされるのか、どうしても私は釈然としない。非常に不満なんです。その点いかがでしょうか。
#152
○政府委員(清水湛君) 御指摘のように、昨年の三月七日の当委員会におきまして中野先生から質問がございまして、人事訴訟の判決の効力を受ける第三者の再審問題、非常に重要な問題であるからという御指摘をいただいたわけでございます。
 そこで、私どもといたしましても、この問題は人事訴訟のあり方というものをめぐりましてかなり基本的な問題を含んでおるということから、これは至急真剣に検討しなければならないということを私及び当時の左藤大臣もお答えになったというふうに承知いたしておるわけでございます。
 私どもは、すぐそれを踏まえまして法制審議会に、当時民事訴訟法の全面改定作業というような作業もしておりましたところでございますので、調査審議をお願いいたしました。この三月七日のすぐ後の小委員会におきまして、本件の経緯等を説明いたしまして委員の先生方の御意見を求め、また公明党からこの人事訴訟手続法の一部を改正する法律案要綱というものが出されておりますので、これもお配りして公明党のそのお考えを説明するということをいたしたわけでございます。
 そういうことをいたしたところ、この民事訴訟法部会では数回にわたって議論をしたわけでございますけれども、確かにこの人事訴訟については問題があると。しかし、先生の欠陥という言葉がどういうお言葉なのか、具体的に法律的にどういう意味を持たれるのかちょっと定かではございませんけれども、現在の人事訴訟手続というものを前提にしてどういうふうに改めたらよいか、あるいはどういうふうな改め方がよいかというようなことになりますと、これはいろいろまた議論があるわけでございまして、やはり根本的には人訴の再審あるいは民事訴訟の再審制度というような問題とも絡んでくるというようなことから、この問題について民事訴訟法の検討項目の中に加えて、そして各方面の意見を伺うのが相当ではないかということになったわけでございます。そこで、昨年の十二月に検討事項が取りまとめられましたのでこれを公表いたしまして、ことしの六月十五日まで関係方面の御意見を伺いたいということにいたしているわけでございます。
 ただ、そういう御意見の中で、中野先生がおっしゃるように、非常に緊急だという意見ももちろんあることは私も承知しているわけでございますけれども、いろんな意見の中で、例えばこれだけは切り離して早く対処すべきではないかというようなことでございますと、私どもはまたそれなりの対応はいたしたいというふうに考えているわけでございます。
 今国会には少年補償の関係の法律案が出ておりますが、その問題とはちょっと性格が違うのではないかなという感じを私は持っておりますけれども、私どもといたしましても、法制審議会という場ではございますが、真剣に現在議論を重ねておるということで御理解をいただきたいと思う次第でございます。
#153
○中野鉄造君 私が欠陥法律だと申しましたけれども、どこが欠陥と言われるかその意味がちょっとわからないというようなことをおっしゃいました。私は、要するに国民はひとしく裁判を受ける権利を有しているということが憲法で保障されているんですけれども、その点がこの人事訴訟手続法では欠けているじゃないか、したがってこれは欠陥だ、私はこのように理解しているんです。
 そういう意味で申し上げますけれども、今局長も御答弁いただきましたが、これは今まで何回も私の質問に対するたびごとにお答えになっているそれと大体同じようなことの繰り返しじゃないかというように私は受けとめざるを得ないわけです。ということは、私が言っている、何回も聞いておるそのたびごとに一つも前向きに、本当に一歩も前進していないじゃないかというような感を強くするんですが、これは民事訴訟法の全部改正の作業と切り離してやることはできませんか。
#154
○政府委員(清水湛君) そういう方法と申しますか、可能性も多分にある問題領域であろうというふうに思うわけでございます。ただ、私どもは六月十五日まで私どもの意見とか考え方ということは一切白紙の状態で関係方面の意見を求めている状況でございます。それを踏まえた上で、また先生の御意見も踏まえた上で対応する必要があるのではないかというふうに考えている次第でございます。
#155
○中野鉄造君 やはり六月十五日までのそういったようなところへのいろいろな検討方を依頼しているということ、それはわかりますけれども、それはそれとして法務省自身がもっともっと前向きな姿勢であったならばその結果も違うと思うんです。こういうことを言われておりますからどうぞ御検討ください的なことでは、これはやっぱり成り行きに任せるしかない、こういうことになってくるわけでして、もっともっとこれは法務省自身がもう本気で前向きに取り組んでいただきたい。
 確かに、少年法の改正とかなんとかということとは事件の件数なんかは違うと思いますけれども、たとえ二件か三件の件数であっても、やはり一人一人の国民の生命、財産を守るという意味からはこれは軽視できないことじゃないかと思いますので、どうかひとつ法務省また民事局長また法務大臣、この件についてせっかく真剣に取り組んでいただきたいことを重ねて強く要望いたしておきます。
 次に、最近の保険金殺人疑惑事件についてお尋ねいたします。
 ここ十年来、妻とか子供あるいは第三者を被保険者として、その妻、子供または第三者が死んだときに自分または個人会社が保険金を受理する、あるいはそれをもらおうとして保険会社が支払いを拒絶した、こういったいわゆる保険金殺人疑惑の死亡事故がいろいろなマスコミ等の記事をにぎわしております。近くはもう皆さん御承知のように、大分県の、これはもう既に死刑判決が出て獄死しましたけれども、あの荒木虎美事件だとか、モルジブにおける新妻水死事件だとか、ロサンゼルスの三浦事件だとか、沖縄のトリカブト事件だとか、同じこれも外国の問題ですが、タイにおける日本人の乗用車運河飛び込み水死事件、福岡における乗用車もろとも二人焼き殺し事件だとか、フィリピンのマニラにおける日本人射殺事件、もうまるでテレビのドラマみたいなそういう事件がメジロ押しに続いております。全部これは保険金が絡んでいるわけなんですね。
 こういうようなことが、一つの事件が起こるとそれにヒントを得て連鎖的にこういう事件が起こってくる、こういうことについて大蔵省としてはどういう取り組み方、どういうお考えをお持ちですか。
#156
○説明員(北村歳治君) 今御指摘の保険金殺人事件等を含みますモラルリスク、保険関係者はこれをモラルリスクというふうに呼んでおりますけれども、こういうふうな問題が御指摘のように新しい手法等を含めましていろいろな形で出てくることについて、私どもは非常に憂慮しているわけでございます。
 これまでも生命保険、損害保険双方につきまして、私どもといたしましては、保険金の詐取を目的としたような殺人事件に及ぶようないわゆるモラルリスク問題、これは善良な契約者を保護する、そしてまた国民の信頼の上に営まれるべき保険事業というふうな観点から極めて遺憾な問題というふうに認識しておりまして、その意味で業界を指導してきているところでございます。そしてまた、昨今のいずれの件につきましても、さまざまな情報を集めながら慎重に見守っている、そして必要に応じ業界に対し指導を行っていきたい、こういうふうに考えておる状況でございます。
#157
○中野鉄造君 つまり、自分以外の者、すなわち他人の生命に保険を掛けて、そしてその人が死んだときに自分が保険金を受領する、これを内容とする生命保険契約手続には、これは商法六百七十四条の一項で「他人ノ死亡ニ因リテ保険金額ノ支払ヲ為スヘキコトヲ定ムル保険契約ニハ其者ノ同意アルコトヲ要ス」云々ということが書かれております。ところが、現実にはこの被保険者となる他人の同意、承諾をとらないで保険契約を契約しているのがむしろ通例なんですね。
 私も何店かの保険会社を訪ねて実際をずっと調査してみましたけれども、外交員さんたちが保険を契約してとってくる、そして営業課長なら営業課長にそれを報告する。そのときに営業課長さんがその被保険者の承諾は受けていますねなんていうことは問い合わせもしない。またその外交員さんも被保険者の承諾をとっている人もいるだろうし、とっていない人もいるだろうし、そういったようなことを一々チェックはしない。ただし、保険会社にはそれぞれそういう被保険者の同意を要すという規定はあるというんですね。だけれども、現実にそういったようなものは空文化している。これが現状のようです。
 そこで、大蔵省にお尋ねいたしますけれども、大蔵省が保険業法に基づいて認可している生命保険約款ではどうなっているのか。その保険金額の多寡あるいは保険契約者である保険金受取人と被保険者である第三者との身分関係、あるいは親族関係、第三者の年齢のいかん等によって、これも先ほどの商法六百七十四条一項の被保険者である第三者の同意を不要としているのかどうか、不要としているならばそれはなぜか、そこのところをお尋ねしたいと思います。
#158
○説明員(北村歳治君) まず、生命保険につきまして申し上げたいと思いますが、生命保険業界におきましては、これまで契約申し込み時に被保険者の加入同意を確認すること、それから契約内容、申し込み内容、例えば職業、年齢、関係者との関係、保険金額との関係等につきましてチェックをする、あるいはまた災害死亡保険金額の上限を設定するというふうなことで対策を講じているわけでございます。
 私どもといたしましては、御指摘のようなモラルリスク問題を防止するために、何よりも契約締結の際の確認手続を徹底して行う。これによりまして、加入者の選択を行うことが重要と考えているわけでございます。これが励行されるように、私ども引き続き指導してまいりたいと思っているわけでございます。また、損害保険につきましても、これまで契約申し込み時に被保険者の同意を確認する、それからまた契約申し込みの内容をチェックする、あるいはまた傷害死亡保険金額に上限を設定すること等の対策を講じて、その徹底に努めてきているところでございます。
 今後とも、このような契約締結の際の確認手続の徹底が図られるように私どもといたしましても十分監督、指導を行っていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
#159
○中野鉄造君 多額の保険金を掛けようとする場合には、本人のいろいろな健康状態のチェック、診査というものを行いますけれども、少額のものであればいわゆる無診査という形で、そういう本人のいろいろな健康状態の診査だとかそういうものはいたしませんね。だから、そういう少額のものを数多くに分散して保険会社に掛けておけば、こういうような本人の知らない間に保険が掛けられているということは容易にできることでして、この間もあった事件なんですが、小企業のある社長が自分の社員におためごかしに保険金を掛けて、そしてその社員を殺して保険金を受領したというような事件がありました。
 こういうようなことから考えても、今大蔵省がいろいろ対策は講じられていると思いますけれども、やはり、あなたにだれそれがこういう保険を掛けましたよという通知をする必要があるんじゃないかと私は思うんです。例えば、これは保険とは違うんですけれども、印鑑証明をとりに行く場合でも、私は九州ですけれども、私のところの自治体あたりでは、自分が行けないでほかの人が印鑑証明をとりに行ったときには、必ず本人の私に、いつ幾日だれそれがあなたの印鑑証明をとりに来ましたという通知が来るようになっております。そういうように、印鑑証明とはちょっと違うと思いますけれども、保険の場合も、契約したときにあなたに対してだれそれがこれこれだけの保険を掛けようとしていますよと、掛けましたじゃなくて掛けようとしていますよということで、本人の承諾を受けた後初めて契約ができるというような、そういう方法をとられたらどうだろうか。ただ強力に指導するということだけじゃ、実際問題として外交員の人たちなんかは、とにかく何でも一生懸命契約をとるというのが精いっぱいで、なかなかそこまでは保険会社としても外交員さんに対する指導徹底というのは無理じゃないかと思うんですけれども、その点いかがですか。
#160
○説明員(北村歳治君) まず、御指摘の少額の保険の関係でございますが、例えば生命保険の場合、通常一千万円以下の保険金契約につきましては、御指摘のとおり、医師の診査を行わない場合でありましても契約が可能になっている状況でございます。しかしながら、実際の契約締結に際しましては、被保険者が所属する団体の健康管理資料、あるいは被保険者が記載する告知書によりまして加入者を診査しているわけでございます。いずれの場合におきましても、契約申し込み時に被保険者の加入についての同意の確認を行っている、こういう形になっているわけでございます。
 それから、企業の関係の保険の御指摘がございましたか、生命保険の場合、企業の福利厚生制度の一環といたしまして、企業を契約者とし従業員を被保険者とする団体定期保険につきましてはこれまでもいろいろな措置がとられたわけでございますけれども、昨年十二月に生命保険業界におきまして、従来から実施されてきた従業員に対して支払われる弔慰金等の規定の内容を確認する、並びに被保険者の同意確認等を一層強化する措置を講じ始めたところでございます。
 それから、契約に際しまして、契約書におきまして被保険者の同意というふうなところで自署捺印、特に第三者が保険金を受け取る場合にはその被保険者の自署捺印が行われるよう、そこを指導してきているわけでございますが、今後とも御指摘のような問題が起こることのないように私どもとしては監督指導をさらに強めていきたいというふうに考えております。
#161
○中野鉄造君 今申されましたようなことは、何もここのところにわかにやられ始めたということではなくて、以前からそういう指導はやられておると思うんですけれども、しかし現にそういうようなものが最近とみに多発している。こういうところから、今までみたいなそういっただ強力に指導するといったようなことで果たしていいのかなという懸念があるので私は申し上げているわけです。
 法務省にお尋ねしますけれども、こういう件については法務省としてはどのようにお考えなんですか。
#162
○政府委員(清水湛君) 先生御指摘のように、他人の生命の保険につきましては商法の第六百七十四条という規定がございまして、被保険者の同意が必要であるということになっております。この同意がありませんと保険契約は効力を生じない、つまり効力要件になっているわけでございます。
 問題は、そういう重要な同意というものを現実の大量の――大量と思いますけれども、保険契約締結実務の中で間違いなく同意を取りつけるということをどのようにして担保するかということだろうと思うわけでございまして、この点につきましては、先ほど来大蔵省の担当の方からお答えがございましたように、大蔵省は監督官庁として確実に同意を取りつけるように指導されているということでございます。
 私どもといたしましては、実体法の要件として同意が有効要件であるということは商法ではっきりしているわけでございますから、あとは現実の保険業務の上できちっとした同意をとっていただく、あるいはそういう同意を確保するためのシステムをお考えいただくということに尽きるのではないか。この点については大蔵省は十分におやりになっていると、先ほどの答弁を拝聴しておりまして私どもも考えているわけでございます。
#163
○中野鉄造君 商法では、確かにそういうふうな条文が法文化されている。しかしながら、それがなかなか、今や空文化したような実情にあるということもこれまた現実なんです。
 それで、法務省にもう一つお尋ねしますけれども、例えば不動産取引の場合のいわゆる不動産登記法四十四条ノ二の条文が新設されましたけれども、なぜ新設されたのか。そして、新設をして果たしてそれは効力があったのかどうか、そこのところをお聞かせいただきたいと思います。
#164
○政府委員(清水湛君) 先生御指摘の不動産登記法四十四条ノ二という規定は、昭和三十五年に設けられた規定でございます。その後、昭和三十九年に一部改正はされておりますけれども、基本的には起草の中身は変わってないという規定でございます。
 この規定が設けられた趣旨と申しますのは、例えば土地を売買するということで登記をする必要があるわけでございます。その場合に、売り主と買い主双方が共同で所有権移転の登記を申請するわけでありますけれども、登記所の方としては、売り主として登記所にあらわれた人間が間違いなく所有者である売り主であるということを確認しなければならないわけでございます。確認の手段が、いわゆる俗に言われております権利証というものでございまして、権利証がないと登記の申請ができない、こういうことになるわけでございます。
 ところが、権利証というのは、これは紙でつくられているものでございますから、火事その他、盗難等で紛失するということもないわけではない。そういう場合には権利証はございませんから登記はできないということになりますと、これまた非常に問題でございますので、権利証にかわるものとして保証人を二人立てまして、この保証人の保証書をつけて登記を申請するということになるわけでございます。
 そういうような権利証でない保証人の保証書をつけて登記の申請がございました場合には、登記所の方では登記をする前に、こういう形で登記の申請があったけれども間違いなくあなたは登記を申請していますかということを、土地なら土地の登記簿上の所有者の住所にあててそういう手紙を出す。その手紙に対しまして所有者の方で、登記申請書に押してある判こあるいは委任状に押してある判こと同じ判こで間違いがないということを折り返し登記所の方に返事をしていただく。そういうことになりますと、これは間違いなく本当の所有者が売り主であり、登記の申請義務者として登記所にあらわれておるということが担保されますので、そこの段階で初めて登記官としては申請に基づく所有権移転の登記をする、こういう形になっているわけでございます。
 このような制度が設けられましたのは、土地、建物の所有権というのは非常に大事な財産でございますので、これが勝手に所有者でない第三者によって売られてしまうというようなことを防ごうという趣旨のものでございまして、現実に全国でこういった形でこの登記の申請がされたものをちょっと数字で調べてみましたところ、年間十九万ないし二十万件程度あるようでございます。ただしかし、登記の申請件数は全国で年間二千七百万ございますので、その全体の数から比べますとごくわずかではございますけれども、そういうものがございます。
 また、現実にこういう保証書による登記の申請がございまして、登記所の方で郵便で通知をしたところ、いや私はそういう登記の申請はしていないということが事前に発覚した事例も現実にあるわけでございまして、ただそういうような事例が統計的に何件あるかというようなことにつきましては、申しわけございませんけれども正確には把握していない、こういう状況であります。
#165
○中野鉄造君 今大蔵省もお聞き及びのように、やはりそういうようなものが新設されたがゆえに未然に多少なりとも防ぐことができたというような事例もあるようでございますし、どうか大蔵省、また法務省もですけれども、こういう保険金をめぐるいろいろな事件が頻発しないように、私が先ほどから提案したようなことをしたとしても悪い人はもうどんなにしてでもそれをかいくぐっていろいろなことをやらかすわけでして、これが万全、一〇〇%とは申せませんでしょうけれども、ひとつ何とかやはりこういうようなことを少しでも未然に防ぐような方法を考えていただきたい、早く対応していただきたい、こう思うわけでございます。この点を強く要望しておきたいと思います。
#166
○政府委員(清水湛君) 先ほど中野委員の質問に対して、私、数字を間違えて答弁いたしましたので訂正させていただきます。
 戸籍のコンピューター化の問題でございますけれども、平成元年度までの研究でコンピューター化が可能であるという結論に到達し、平成二年度から実用化のための具体的な作業を進めておる、こういうふうに訂正させていただきたいと思います。
 どうも失礼いたしました。
#167
○中野鉄造君 終わります。
#168
○橋本敦君 リクルート、共和に続きまして、佐川急便事件が重要な国会の疑惑解明の課題になっておるさなかでございますが、私はきょうはその中の一つの問題として、山梨佐川急便の土地取得に関する重大な疑惑について質問をしたいと思います。
 質問するに当たって、答弁者に資料の配付をお願いしておきましたので手元に行っておると思います。
 まず、山梨佐川急便という会社でありますが、運輸省に確認をしたいんですが、この山梨佐川急便という会社がさきに有限会社甲東運輸という会社から山梨県下一帯の一般区域運送の事業免許、これの譲渡を受けて山梨佐川急便として事業を開始するわけですが、それが昭和五十三年十二月十五日であったということは間違いありませんか。
#169
○説明員(石井幸男君) ただいま先生御指摘のとおり、山梨佐川急便の免許につきましては、まずその前身が御指摘のように有限会社甲東運輸ということでございます。これが昭和三十八年二月十六日に甲府市を事業区域とする一般区域貨物自動車運送事業という免許を取得してございます。四十六年一月十一日には事業区域を山梨県全域に拡張する免許を取得しております。その後、御指摘のとおり、五十三年の十二月十五日、この日の認可によりまして甲東運輸からその行っておる事業を山梨佐川急便が譲り受けた、こういうことになってございます。
#170
○橋本敦君 この山梨佐川急便の会社の社長は市川春樹という方でありますが、この会社の登記謄本で調べてみますと、昭和五十八年五月二十六日付で、今逮捕され起訴されております東京佐川急便の渡辺広康、早乙女潤氏が取締役に加わるのであります。そして、この二人は、問題の告発がなされ、東京佐川で解任された後の平成三年八月二日付でいずれも解任をされるその間、取締役を務めていたようであります。そして、その後は現在の東京佐川急便の新しい社長になりました湊川氏あるいは取締役の栗和田氏がこの会社の取締役にも就任をしておるわけであります。
 一方、この山梨佐川急便が営業所を設け、車庫あるいは建物を設置しております昭和町の土地、これを調べてみますと、これはいずれも山梨佐川急便の所有ではなくて東京佐川急便の所有であることが明白であります。建物も同様であります。その土地の所有関係については、お手元の資料Dの土地登記謄本が明確になっているわけであります。
 そこで言いたいのは、この山梨佐川急便という会社は今佐川事件の疑惑の中核になっております東京佐川急便とまさに一心同体と言ってもいい、佐川グループの中ではいろいろな佐川急便の会社があるわけですが、東京佐川と一心同体と言ってもいい、そういう会社であるということをまず冒頭に明らかにして、具体的な質問に入りたいと思うのであります。
 農水省にお伺いするわけでありますが、資料の@で登記謄本を提出しております石和町の沢添八百六十二番の一という土地であります。この土地はもともと山林であったようでありますが、これがその後地目が畑になっております。これはその資料の@の所有者欄のところでおわかりのとおりに、山梨県の農地開発公社が所有をしていた土地でありますが、この土地は同時に、八代町増田地区の土地改良区による農業構造改善事業に加えられまして、国の補助金五〇%をつぎ込んで土地整備が行われて、文字どおり優良農地、第一種農地という優良農地であったことが明白な土地でありますが、この点は農水省間違いありませんね。
#171
○説明員(上木嘉郎君) お答え申し上げます。
 ただいま御指摘のとおり、石和町砂原字沢添の八百六十二の一の土地というものが山梨県の農地開発公社の所有地だったときがございました。かつ、第二次農業構造改善事業によって事業がなされたという意味合いにおきまして、第一種農地であるというふうに推定されます。
#172
○橋本敦君 私どもの調査によりますと、同時にこの土地は農業振興地域に指定をされておりまして、この農振地域の指定が県の許可で解除されるのが昭和六十年六月一日に、なってからのことでありますから、昭和五十五年、五十六年、そういった当時は同時に農振地域の指定を受けていた土地でもあったということも明白でありますが、間違いありませんね。
#173
○説明員(上木嘉郎君) ただいま御指摘の点につきましては山梨県に照会しましたところ、そのとおりであるということでございます。
#174
○橋本敦君 そこで、このような農地はこれの所有権の移転あるいはこれの現状変更ということについては、農地法を基本として厳しい制限が課せられていることは言うまでもない。簡単に言えば、佐川急便のような運送営業を主体とする会社がこのような制限枠の厳しくかかっている土地を取得するということは法律上可能ですか。
#175
○説明員(上木嘉郎君) これは状況のいかんによって異なってまいると思いますが、一般論として申し上げますと、先ほど申し上げましたように、農業構造改善事業によりまして公共投資を行った土地でございますし、かっ農用地区域内の土地でございまして、農用地区域である限りにおいては農地転用の許可が行われ得ない、こういう性格のものであるというふうに言えようかと思います。
 ただ、状況の変化によりましてやむを得ないというふうに認められる場合には、所定の手続を経まして農用地区域から除外することによって転用許可が行われるという場合はあり得ることではございます。
   〔理事北村哲男君退席、理事中野鉄造君着
   席〕
#176
○橋本敦君 農用地区からの除外なんという手続がない限りだめだということははっきりしました。
 ところが、山梨県の農地開発公社は、昭和五十五年のことでありますけれども、九月ごろに石和町の農業委員会に、実は佐川急便がこの土地を買収したいという話があるのだがどうかという内々の意向が申し入れられたというのが私どもが調査した一つの事実であります。山梨県の農地開発公社ともあろうものが、今答弁があったように佐川急便にまともに売り渡すことなんて法律上できないような話をなぜ持ってきたのか全く疑問でありますが、そういう話があったということでありまして、石和町の農業委員会はもちろんこの農地は農地として守らねばならぬということで反対を表明いたしました。そうすると、山梨県の農地開発公社が農業委員会に説明書と称して、五十六年の六月というように私どもは見ておりますが、一通の文書を持ってきたのであります。それが資料Aであります。
 これによりますと、佐川急便は全く消えて、「分譲計画」のところをごらんいただくとわかりますが、今般八代町に住んでいる、本人の名前は黒で消してありますが、この方はか三名から、これは農民であります、この土地全部について買い受けたいという申し出があった。佐川にかわって四名の農民が出てくるのであります。そして、この四名の農民の人は、次に書いてありますように、別紙に見るとおり果樹専業農家であり、若手の中堅担い手農家と判断できるから、公社としては売り渡し相手として適当と認められるので売り渡したい。しかも御丁寧なことに、これらの人たちは親戚でも何でもないのに共有を希望しておりますから、そのようにしてやりたいと。売り渡し価格は総額九千八百二十八万五千円程度に見込んでおって、売買契約は六月末日までに行いたいと、そこまで言って、そして許可申請については七月の委員会で審議していただくことになると思いますという文書をよこしてきました。
 そこで、石和町の農業委員会は本当かどうか疑ったんですが、佐川ではなくて果樹専業の農家が果樹栽培をやるというのであればそれはやむを得ないだろうということで了解をしたという経過があるのであります。
 そこで農水省に伺いますが、この土地は資料@の登記簿謄本のとおりに、中区・所有権をごらんいただくとわかりますが、開発公社から昭和五十六年九月十八日、売買を原因として五十六年十月一日付で四名の農民にそれぞれ四分の一の共有区分として所有権移転登記がなされる、こうなったのであります。これは県知事の許可がそういうことで出たということであります。
 そこで、農水省に伺いますが、現在この農地は果樹栽培が行われておりますか。それとも、どのような形状でだれがどういうふうに使用しておりますか、お調べになっておりますか。
#177
○説明員(上木嘉郎君) お答え申し上げます。
 ただいま御指摘の土地につきましては、山梨県からの報告によりますと、現在スポーツ広場として使用されておるというふうに聞いております。
#178
○橋本敦君 一回も果樹栽培など行われたことはないんです。これが現場の写真です。(写真を示す)ちょっと遠くてわかりにくいと思いますが、まさに農地ところではなくて、立派な宅地化されたグラウンドであります。しかも、ここに立て看板が張りつけてありますが、「石和・佐川急便グランド使用者必要事項」とこう書いて、公然と「山梨佐川急便株式会社」、電話番号まで入れて名前が掲示されているわけであります。文字どおり、これは山梨佐川急便がこの土地を所有していることを一つは明白に物語る客観的状況であります。
 このことをさらに裏づけるために私たちが調査をいたしますと、四人の農民のいわば名をかたって農地を取得したという、そういう経過の中で念書が取り交わされていることがわかりました。これがお手元の資料のBであります。この念書によりますと、土地を表示した後、山梨佐川急便の代表取締役市川さんの判こがあるわけです。あて名は四人の農民の一人ですが、名前を秘すためにこれは消しました。「右土地は事実上当社」、つまり佐川急便「に所有権があったものですが、手続上当社名義にならなかったので、貴殿等の協力を得て一旦は貴殿等の共有名義になし、其の後当社名義になしたことに相違ありません」と。つまり、当社名義にする手続にもう移っているということの一つの証明であります。あなた方四人の名前にしたけれども、実は佐川のものだということを確認をさせているわけです。
 そして、それだけではないのであります。それだけではなくて、次の資料Cの土地使用契約書を見ていただきますと、佐川急便がこういうグラウンドをつくって、その使用契約書をどういう形で結んでおるかといいますと、黒く消してある甲というのが四人の農民の方、そして石和町を乙として、山梨佐川急便を丙としてこのグラウンドの使用契約を結んでおります。特に注意して見ていただきたいのは、第二条の二に、この使用期間は第一項で十年としますが、土地所有権が丙、つまり山梨佐川急便に移転後においても有効とする。つまり、公然と土地の所有権移転をそのうちにやりますよと、佐川ははっきり言っているわけであります。
 そして、それだけではありません。それだけではなくて、第五条でこの使用許可業務を石和町が行うということになって、公的装いをしているわけでありますけれども、しかし、実際は山梨佐川急便、つまり丙がこの土地については全面的な管理をするということを第六条で確認をさせるわけであります。ですから、言ってみればまさに山梨佐川急便はいつでもこの運動場用地に、約束の期限が済んだら倉庫を建てようが、車両置き場にしようが、何しようが、何でもできるという構えであるということであります。
 こういう四人の農民の名前をいわばかたって、この第一種優良農振地域の農地をこのようにして佐川急便が手に入れるという、そのこと自体、私は重大な農地関係諸法の潜脱行為であり、まさに許されない違法な土地取得行為だと思いますが、これについて、農水省は農地をしっかり守る立場で、農地法を厳格に守る立場からどうお考えですか。
#179
○説明員(上木嘉郎君) かつて第二次農業構造改善事業によって造成整備された農地が、現在スポーツ広場として利用されているという状況になっていることにつきましては、その後の構造改善事業実施後の情勢の変化がどういうものであったのか、あるいはそういう使用に至った経緯というのはどういうものであったのか、私どもその辺のところを現段階ではつまびらかにいたしておりません。現在広場として利用されている事実そのものを見ますと、農業の振興のために投資をやってきたものでございますので、非常に寂しい残念な気がいたしますが、そういう広場としての使用に至りました事実関係につきまして、現在、県におきましては調査中と、こう承知しております。調査結果を待ちまして適切な対処をするように指導してまいりたい、こういうふうに考えております。
#180
○橋本敦君 私が指摘したのは運動場広場として使用している経過というより、むしろ佐川がこういうやり方で所有権を取得したというそのことを徹底究明すべきだということで、その点も視点に置いて厳格な調査をするということは約束しますか。
#181
○説明員(上木嘉郎君) 今御指摘の点につきましても、調査の中で明らかになるように努力をしてまいりたいと思っております。
#182
○橋本敦君 悪質なのは、運動場広場用地にするというのがその後の経過でどうこうという程度のことじゃないんです。事実を調べてみますと、佐川急便はこの土地を、優良な農地であったのを、宅地化工事を昭和五十七年秋ごろから強行するんです。それは農地をつぶすという大変なことですから、石和町の農業委員会はやめろと勧告しました。石和町の農民もそんなことを許すわけにいかぬじゃないかというので、石和町農業委員の皆さんと一緒に県に、山梨県農地開発公社を含めて抗議に行って、直ちにこれをやめさせよと抗議しました。これが昭和五十七年秋のことであります。ところが、県は全然何の対応もしない、公社も何の対応もしない。
 そこで、農水省に伺いますが、本来なら農地が目の前で何の許可手続もなしに、あるいはさっきあなたがおっしゃった農振地域から外すというような手続もなしに目の前でつぶされるという状況があるならば、直ちにその工事を中止させる、そういう措置をとるべきである。そして、それを中止しなければ、農地法に基づいて罰則の制裁、懲役三年以下があるわけですから、これに基づいて告発するなり違法行為を取り締まる措置をするのが私は行政のすべき措置だと思いますが、どうですか。
#183
○説明員(上木嘉郎君) ただいま御指摘の点につきましては、農地法の遵守励行という観点から、そういう事実が明らかになれば工事の中止を勧告をするということは必要な措置だと思いますし、また、それでなおかつその勧告に従わない場合には工事中止命令を法律に基づきまして発するということも必要な措置だと、一般論としてそういうことが言えようかと思います。
 ただ、事実関係については私どももつまびらかにいたしておりませんので、その点について本件がまさにそういう事態であったのかどうかということに即した判断というのが当然別途なされるべきではないかと思います。
#184
○橋本敦君 実際は県も開発公社も何の措置もとらなかったから、工事は強行されてこのようなグラウンドになっているんですよ。佐川がどうしてこんなむちゃくちゃなことが山梨でできるのかということが問題なんです。
 それで、佐川急便が山梨で一体どういう状況かということを調べてみますと、運輸省に聞きますが、道路運送法違反で処分をされたことがある、いつですか、どういう処分ですか。
#185
○説明員(石井幸男君) お答えいたします。
 山梨佐川急便に対しましては昭和六十二年五月二十九日付で二十日車、一日一両車をとめますと一日車と申しますが、二十日車の事業用車両の使用停止処分を行ってございます。これは、当時特別監査を佐川グループに対して行いまして、その結果、山梨佐川急便におきましては運転者の過労防止に関する措置が不適切であったとか、あるいは乗務記録が事実に基づいてなされていなかったとか、幾つかの点が発見されたことによるものでございます。
#186
○橋本敦君 もう一つ運輸省に伺います。
 この山梨佐川急便が甲東運輸から免許譲渡を受けて買収をしたのが昭和五十三年末であったのですが、昭和五十三年の保有台数は十九両です。ところが、平成二年度には百十両に急激に増車の認可がふえている。この数字は間違いありませんか。
#187
○説明員(石井幸男君) 委員御指摘のとおりでございます。
#188
○橋本敦君 今言った六十二年に処分があったときはその年度末で前年度の七十五車両から八十三車両にふえ、六十三年には九十三車両にふえておる、これは運輸省の資料です。間違いありませんね。
#189
○説明員(石井幸男君) 間違いございません。
#190
○橋本敦君 このような処分を受けながらどんどん車両の認可が進められていって、そういう認可を受けて山梨佐川急便は今や山梨県下で最大の大手運送会社に実はなっておるわけです。
 そういうような山梨佐川が、今私が指摘したように、元来この土地は中央道のインターチェンジが八代町の近くにできるという構想があったということから、その付近に土地を得たいという思惑もあって土地の買収にかかったと我々の調査では聞いております。本来なら手に入ることができない土地を四人の農家の方に名をかりて、農民は私は犠牲者だと思いますが、こういうことをやっている。これ普通じゃできないですよ。そして、その結果、現在どうなっているかということにも問題があって、この土地は正式の県知事の転用許可や地目変更等の手続一切なしにして、資料の@−2の地目のところを見ていただきますとわかりますけれども、昭和六十年八月五日付で国土法に基づく国土調査による結果として雑種地に地目が変更されておるのであります。
 つまり、わかりやすく言いかえますと、農地を農地以外の土地に事実上強行突破をして転用して、正式の許可も何にも受けないのに後になって、先ほども言いましたが、農振地域から昭和六十年に解除をし、国土調査によって雑種地ということで地目を認定してもらって、今や公然と運動場として使い、そしてこの契約が済んだら、いつ売ろうがあるいは何を建てようが自由という、そういう土地に仕上げてしまった。まさに違法行為の追認をやっておるわけであります。こういうことを県も開発公社も百も二百も承知の上でやったとしたならば、これはまさに重大な疑惑のあることではないのかという問題であります。
 佐川がこの土地を買収にかかったときに、公然と買えないということから四人の農民に協力を求めに行った。その協力を求めに行ったのは、私どもの調査では当時八代町の公明党の町会議員の方が奔走された。この方にも私ども調査をいたしました。事実ははっきりしております。
 そしてもう一つ、山梨に株式会社甲斐延運輸という会社がありまして、その社長は宮川という方ですが、この方も四人の農民の方に町の発展になるからということで説得して奔走してこれを買わせた。この甲斐延運輸は、今私が指摘した宅地化工事を山梨佐川から請け負って強行した会社なのであります。そして、この宮川さんという人は地元の中尾栄一代議士の後援会長をしている方であります。
 そして、もう一つの人脈をたどってみますと、当時山梨農地開発公社の監事であった日原政秀という方があって、県の出納長から開発公社の監事になっておられた方でありますが、この方は今何をしておられるか調べてみますと、政治団体山梨ふるさと政治連盟、代表は金丸信さん、この会計責任者をしておられる。いろんなところで政治家との糸が見えてくるわけであります。
 そこで、この問題については農水省は調査をするということでありますが、なぜこのような無法な農地取得が佐川が可能になったのか、そこで政治家やあるいは政界工作というものが行われたのか行われなかったのかという問題について、私は重大な疑惑があると、こう見ておるわけであります。こういった経過について、今東京佐川急便の渡辺、早乙女氏等を取り調べ、一部起訴したわけでありますが、その東京佐川急便と密接なかかわりがあるこの会社の問題について、この点も視野に入れて私は徹底解明のために調査をすべきであると思うのであります。
 そして一つの事実を申し上げますと、私どもの調査では、この四人の農民の名で佐川が開発公社から土地を買う代金約一億円、この代金は東京から早乙女常務がみずから運んできて、そして八代農協に振り込んで支払ったという事実も我々の調査で明白になっているのであります。
 こういうところで、私はこの佐川急便をめぐる疑惑の一つの重要な問題として山梨問題を取り上げましたが、こういったことについて、単なる農地法違反というだけではなくて、そしてまた運輸行政上の監督というだけではなくて、今の佐川急便と政界とのかかわりを含む重要な疑惑として、私は法務省としてもこの点に重大な関心を持って調査をしてもらう必要があると思いますが、刑事局長、法務大臣の考えはいかがですか。
#191
○政府委員(濱邦久君) 今橋本委員がいろいろ御指摘になられました事実関係をも含めまして、国会において御議論のある事柄あるいはマスコミ等で報道されている事柄、これらの事柄についてはもとより検察当局においても十分これを承知しておるというふうに思うわけでございます。
 東京地検におきます東京佐川急便株式会社をめぐる事件につきましては、これはもう改めてここで申し上げるまでもなく委員十分御承知と思いますけれども、去る三月六日に東京佐川急便株式会社の前代表者はか三名を特別背任罪により東京地方裁判所に公判請求したところでございます。現在、東京地検におきまして、この公訴提起をした事件の公訴維持あるいは昨年八月に告訴を受理しております特別背任の事実等につきましてなお捜査を続けているというふうに承知をいたしております。
#192
○橋本敦君 ちょっと最後聞き取りにくかったんですが、起訴したという事実の公判維持のための調査はもちろんですが、告訴された特別背任その他の問題についても引き続き捜査を続行しておる、したがって、その捜査の結果によっては追起訴ということで事実を解明していくということももちろんあり得ると、こう伺っていいわけですね。
#193
○政府委員(濱邦久君) 先ほど私申し上げた言葉が少しあるいは不明確だったかもしれませんので、もう一度後半部分のところを申し上げますけれども、三月六日に公訴提起をいたしました事実についての公訴の維持に当たることはもちろんでございますが、さらには昨年八月に実は告訴を受理しております特別背任の事実もございます。これらの点を含めて現在捜査を続けているというふうに聞いております。
#194
○橋本敦君 時間がありませんのであと一、二問ですけれども、今後の捜査については、きょう私山梨佐川を中心に問題を提起したんですが、先ほど刑事局長おっしゃったように、国会での論議あるいは各報道で言われているようなこともいろいろと関心を寄せながら、莫大な金の流れ、言われております政界へのルート、暴力団へのルート、こういったことも含めて検察庁としてはやるべき厳正な調査はこれはやり抜くという決意だと伺ってよろしいですか。
#195
○政府委員(濱邦久君) もちろん今橋本委員おっしゃいましたように、検察当局におきましては、犯罪に当たる事実があると思料いたします場合には適時適切な捜査をして厳正に事件を処理するというふうに考えております。
#196
○橋本敦君 最後に、農水省にもう一点伺います。
 資料の一番最後のD−3を見ていただきたい。山梨佐川急便の営業所のある東京佐川急便所有の土地について農林中央金庫は、壱から四まで合計いたしまして十六億円の根抵当による融資をしているわけです。農林中央金庫の融資がこれは法律の乱用だと思っておりまして適正な融資ではない、私はこう考えておりますが、その点はもうおきまして、一番最後を見てください、農林中央金庫がした三億円の融資、平成三年九月二十七日ですよ。今刑事局長がおっしゃった告訴があり、渡辺が解任をされて記者会見をして、新しい社長が就任をして、佐川急便の疑惑が大きく沸き上がった、その直後にまた三億円も農林中金ともあろうものが佐川に融資をしておる。
 一体何事か。こういう佐川に対する融資が何に使われたか。暴力団への融資に流れていったかもしれない、あるいは平和堂グループやらあるいはその他株の仕手戦に流れていったかもしれない。佐川急便のこういった状況から見て、農林中金がいやしくもこういう会社に融資をするということは適切さを欠くが、とりわけ事態が発覚をした以後もなおかつ三億円も融資をするというこういう姿勢は、これは厳しくチェックされねばならぬというように思うわけであります。この点についてはもう時間がありませんから議論をいたしませんが、指摘をして私の質問を終わります。
#197
○紀平悌子君 大臣所信に基づいて御質問を申し上げます前に、法務省に午前中から午後にかけて同僚議員がそれぞれ申されたことではございますけれども、共和疑獄の国会証人喚問に際しまして法務省幹部の皆様が、名目はともかくとして、喚問に否定的な御意見をそれぞれ組織的になされたことについてはまことに遺憾なことだと思います。このようなことは国会軽視ということにもちろんなりますけれども、国民に対するやはり不信をますます助長させたというふうなことにつながると思いますので、一言申し上げておきます。納得できることではないと思います。
 さて、大臣所信に基づいて御質問を申し上げますが、大臣所信の中にバブル経済の崩壊に伴い、脱税、株式相場の不法操作、公務員の濱職事件などが相次いで発覚したとありますけれども、この中には銀行、証券会社に絡む事件など、国民がただでさえ政治不信を持っております上に日本経済のシステムに対する信頼を大きく失わせるに至った大きな事件が当然含まれると考えます。
 こうした事件が発生しました原因、背景、法務大臣はどんな御認識でこれに対処していらっしゃいますか。また、再発防止のため、先ほど中野委員の御質問と重なるところがあるかもしれませんけれども、どんな対策をお持ちか、簡単で結構でございますので、法務省そして大臣にお伺いをしたいというふうに思います。
#198
○国務大臣(田原隆君) お答えします。
 御指摘のような事犯は、近年における飛躍的な経済の発展と国民の生活水準の向上に伴い一部の国民の意識の中に醸成されつつあるやに懸念される物質万能、金もうけ主義の風潮等を反映しているかと思いますが、これらの事犯の再発防止については法令の改正を検討するなどそれぞれ所管の省庁で種々対策を講じておられるところと承知しているし、法務省としてもこれら各省と密接に連絡をとり、各種取り締まり法令の立案作業に協力してきたところであります。健全かつ公正な経済活動を侵害するような経済関係事犯に対する時宜を得た摘発、解明の重要性にも思いをいたし、今後とも必要な対策を各省庁連携のもとに進めてまいりたいと考えております。
#199
○政府委員(濱邦久君) 今大臣がお答えになられたとおりでございまして、さらに事務当局の方から具体的に例えばどういうことがあるかということについてお答えを申し上げたいと思うわけでございますが、今、委員御指摘のこういう最近の事件を見ておりますと、これはやはり例えば法人等の社会経済活動が個人の活動範囲をはるかに超えて国民生活上も多大な影響力を持つに至っておる、その法人等の業務活動に伴って惹起される犯罪が極めて多発しておるというふうに思われるわけでございまして、そういう犯罪をいかに防止するかということが現下の大きな社会的関心事にもなっているというふうに思うわけでございます。
 そういう観点から、法人に係る刑事罰包強化するというようなことも一つの方法として考えていかねばならないことであるということで、例えば法務省が個々の罰則法令の改正等の協議に当たりましてはそういう観点から刑事罰則の見直し等も含めて検討していきたいというふうに思っているわけでございます。
#200
○紀平悌子君 さまざまな事犯をそれぞれ見ますのに、これらの事犯というものほかなり長期間にわたって行われてきたものというふうに見られます。バブルの崩壊を確かに機縁として発覚したわけなんですが、検察当局としてはこれらの犯罪はバブル経済の盛んな時点である程度把握をされていたのではないでしょうか。特に巨額の資金移動などを捜査の糸口としてもう少し早期に取り締まりをすべきだったんではないかと思います。その点が非常に気になりますが、いかがでしょうか。
 佐川急便も、今お話がこもごもございましたので簡単にいたしますけれども、金融機関から四百三十億円などを借り入れる一方で、平和堂の名で不動産売買に三百億円近く、株の仕手戦で三百億、さらに政界へ合計数百億円あるいは一千億、百三十人余りに流されたという過去の疑獄事件を質的、量的に大きく上回っております。この事件についても国民は断片的な報道しか与えられておりません。一日も早く事件の全面解明というのを国民にお示しいただきたいと思いますので、これは法務大臣もあわせお答えをいただきたいと思います。
#201
○政府委員(濱邦久君) ただいまの委員の御質問に対するお答えになるかどうかわかりませんが、一般的に申しまして、最近の犯罪は、よく言われますように、悪質化あるいは巧妙化してきているわけでございます。したがいまして、この犯罪捜査の端緒というものが極めて得られにくくなっているということは一般に言えるのではないか。逆に申しますと、犯罪が極めて潜在化していると申しましょうか、捜査機関において捜査の端緒をつかみにくくなっているということが一般的に言えるのではないかと思うわけでございます。
 例えば、詐欺事件、横領事件等の捜査をしている過程で別のそれに伏在している大きな犯罪の捜査の端緒をつかむということもよくあることでございますが、いずれにしましても、今、委員御指摘のように、もっと前からあったはずの犯罪の検挙、摘発が時期的に遅いのではないかという御指摘の点につきましては、今申し上げましたように、検察当局を含めまして捜査機関におきましては犯罪の嫌疑があると思料する場合には適時適切に捜査を行うわけでございますが、最近の犯罪の悪質化、巧妙化ということもございまして、なかなか犯罪捜査の端緒を得にくくなっているということもひとつ御理解をいただきたいというふうに思うわけでございます。
#202
○国務大臣(田原隆君) ただいまの刑事局長の答弁でほとんど尽きていると思いますけれども、佐川急便のことが出ましたので、私に佐川急便のことでどう思うかという御質問だと思います。
 私は、現在東京地検で捜査中でございますから余り感想を述べることは差し控えた方がいいと思いますが、ただ、検察は一般に厳正、公平、不偏不党の立場から犯罪の嫌疑がある場合には適時適切に捜査を遂げていくものと思いますし、また公訴を提起した事件についてはその公訴の維持に万全を尽くすものと思う、こういうふうに申し上げるわけであります。
#203
○紀平悌子君 重ねて大臣、法務省にお伺いします。
 今、非常に濱職事犯も巧妙、悪質になったということにかけて伺っていいと思いますけれども、比較的古くから行われている実質的な違法献金の方法がございます。議員の私設秘書、運転手、職員などの月給、雇用保険などを企業が丸抱えして負担する方法、こういうこともございます。こういう手段はどんな法規に触れるというふうにお考えになっていらっしゃいますか。政規法ですとか所得税法、この辺のことまではわかるんですけれども、どういう法規に触れますでしょうか。
#204
○政府委員(濱邦久君) 今、委員御指摘のように、法務当局からどういう法規違反になるかどうかということを申し上げる立場にはないかと思うわけでございますけれども、いずれにいたしましても、刑法を初めとする刑罰法令に触れる事実があるかどうかということは、これは捜査機関が法律に定められた手続に基づいて証拠を収集いたしまして、その収集した証拠に基づいて具体的事実を確定し、その確定した事実について初めて今申しましたように刑罰法令に触れるかどうかということを判断するわけでございまして、法務当局としては現段階ではそれ以上のことはちょっとお答えいたしかねるかと思うわけでございます。
 いずれにいたしましても、捜査当局において証拠を収集し、その収集した証拠に基づいて事実を確定し、その上でいかなる刑罰法令に触れるか、いかなる犯罪が成立するかということを判断することになるわけでございます。
#205
○国務大臣(田原隆君) 刑事局長の答弁に尽きると思うわけであります。法務省がすべての法規について法規違反の有無を論ずる立場にないと思いますので、刑事局長の答弁で御判断いただきたいと思います。
#206
○紀平悌子君 もう少し突っ込んだお答えもいただきたかったんですけれども、検察当局が国民の信頼に足る姿勢を示すということは本当に今をおいてないというほどいろんなケースが一斉に芽を出してきているわけです。三年ごと五年ごとにこういったケースが出ますけれども、今度のほかってのロッキード、グラマンあるいはリクルートにも倍増すいろいろな中央だけでなくて地方自治体にもかかわる問題だと思いますので、その御決意を一言、何とか巧妙かつ悪質というところに対処する何らかのやはり御姿勢を示していただきたい。一言で結構でございます。
#207
○政府委員(濱邦久君) きょうの午前中からいろいろ御質疑をいただいておりますが、その前提として大臣から所信表明がございまして、その中でも申し上げておるわけでございますが、検察態勢の一層の充実強化ということは、これはとりもなおさず、犯罪の嫌疑が認められる事実については時を置かず適時適切に捜査を遂げて厳正に事件を処理する、そのための検察態勢の充実強化であるというふうに御理解いただきたいと思うわけでございます。
#208
○紀平悌子君 じゃ少し先を急ぎますので、この件はこの辺で一応終わらせていただきたいと思いますけれども、出入国管理体制の充実強化の面に関して御質問申し上げます。
 新東京国際空港の二期施設、関西空港完成はそれぞれいつごろで、どれほどの業務量の増加が予想されますでしょうか。また、それらの対応はいかに考えておられるか御説明をいただきたいと思います。
 さらに、不法入国者、就労者について過去三年間の実態、これは簡略で結構でございますので御説明いただきたいと思います。
#209
○政府委員(高橋雅二君) 新東京国際空港の第二旅客ターミナルビルの供用開始時期につきましては、平成四年十二月ごろと予定されておりまして、これに対応する人員等の手当てについては平成四年度の予算案において行っているわけでございますが、第二期工事全体の完成時期ということになりますと現段階において私どもとしては確として承知してないところでございます。また、関西国際空港の完成時期は運輸省の発表によれば平成六年夏ごろというふうに伺っております。
 これらに伴う両空港の業務量増につきましては、乗り入れ便数等が明らかにされてないため現時点で予測することは困難な状況にございます。両空港の開港等に当たっては関係省庁の御理解と御協力を得て施設の整備、要員確保等、所要の体制整備を図るため努力してまいる所存でございます。
 それから、お尋ねの不法入国者数及び不法就労者数についての最近三年間の実態というお尋ねでございます。
 簡単に申し上げますと、昭和六十三年に摘発いたしました不法入国者等入管法違反者は一万七千八百五十四人でございまして、そのうち不法就労者は一万四千三百十四人、不法就労者の国籍別順でいきますと、フィリピン五千三百八十六人、次いでバングラデシュ、パキスタンとなっております。平成元年に摘発いたしました不法入国者等入管法違反者は二万二千六百二十六人で、そのうち不法就労者は一万六千六百八人、不法就労者の国籍別順でいきますと、フィリピンが三千七百四十人、次いでパキスタン、韓国となっております。平成二年に摘発いたしました不法入国者等入管法違反者について申しますと、三万六千二百六十四人となっておりまして、そのうち不法就労者は二万九千八百八十四人、その国籍別順で言いますと、バングラデシュ五千九百二十五人、次いで韓国、マレーシアとなっております。平成三年につきましてはまだ全体の統計はございませんけれども、上半期、一月から六月までに摘発いたしました不法入国者等の入管法違反者について申し上げますと、六カ月で一万三千六百人、そのうち不法就労者は一万二千二百六十五名、不法就労者の国籍別としては、韓国、イラン、フィリピン、こうなっております。
 これら不法就労者の職種は、男性のほぼ八割が建設作業員、工員、女性の約半数がホステスとして稼働しておりますけれども、近年男女とも雑用、飲食店従業員等に及び、職種が多様化する傾向がうかがわれるというのが実態でございます。
#210
○紀平悌子君 伺っておりましても、ふえこそすれ減ることはないというふうなデータが両三年でも出ておるようでございますし、私ども日々見聞きします。その実態としても、不法就労者あるいは不法入国者でホームレスその地目に余る状況は日に日に増してくると思います。
 この法律ができましたのが三年前でございますか、平成元年、私法務委員にならせていただいてから初めての法案審議でございましたので非常に印象の深いところでございましたが、さまざま議論がございました。参考人の御意見もさまざまでしたけれども反対の御意見もございました。しかし、これは開かれた入管行政ということで法務省の御意見が通ったわけでございますけれども、不法入国者あるいは就労者の数が今後も、中小零細企業の方の動向を見ましても人手不足、三K労働などに日本の若い人がつかないというようなことで、ますます国内の労働力不足に対するニーズも増してくるという中でどのようにコントロールされていかれるでしょうか。
 それで、基本計画というのを法務省一省でなくて、法務省が中心になって外務省その他各省間で基本計画というのをおつくりになるということが先々々大臣から二代にわたりましてこの委員会で御質問を申し上げて、お約束がございましたけれども、法務省内の先ほどの事務的な打ち合わせ、検討委員会ですか、その話はちらっと伺いましたけれども、基本的な方向としてどういうふうになっておりますか。そして、大臣はそのころの大臣ではいらっしゃいませんでしたけれども、今の改正出入国管理法についてのコメントというか、御意見を承りたいと思います。
#211
○政府委員(高橋雅二君) 改正入管法の施行後も、今御指摘のとおり、不法入国者等入管法違反者が増加傾向にございまして、非常に遺憾なことと思っております。今後とも厳格な上陸審査、改正入管法で新設されました不法就労助長罪の積極的運用、それから警察等関係機関との連携による摘発活動等効果的な対策を進めていきたいと思っております。
 それから、先生が御指摘になりました基本計画でございますが、改正入管法に基づきまして法務大臣が入国、在留に関する施策の基本となるべき出入国管理基本計画を関係機関の長と協議の上、策定、公表すべき旨定めてございます。それに従いまして関係省庁と今協議して、基本的な事項を盛った計画を策定して公表を進める段階にございます。
#212
○国務大臣(田原隆君) 改正入管法についての感想という御意見でございましたけれども、今入管局長が申しましたように、法律は改正されましたが増加傾向にあることは事実でございまして、これはもう大変なことでありますので、上陸審査、いわゆる入り口の問題でまず厳格な審査をし、その他この法律で新たに設けられたいろいろな規定を適用しながら、厳格な運用によってできるだけそういう増加を抑えていく、むしろ減少する方向に持っていかなければならぬ、そういうふうに思っております。
#213
○紀平悌子君 お言葉を返すようで申しわけございませんが、厳格な審査その他はやっておられると思いますし、今後もおやりになると思います。ただ、とうとうとしてそういった不法就労あるいは正規の滞在でない外国人がふえていくという事実、これは法律とかそれから厳格にやるということでは抑えられないものがございます。そういうことを含めての基本的な対策というものをどうなさいますかいろいろと御検討いただきたい。これは希望をいたすことでお返事はよろしゅうございます。――お返事いただけますか。
#214
○政府委員(高橋雅二君) 不法滞在がふえ、不法就労がふえるということは、我が国の健全な社会の発展にとりましても、また国際的にも好ましいことではございませんので、これはできるだけ減らしていくという基本的な方針のもとに各種の政策的努力をしていきたいと思っております。
 特に法務省入国管理局といたしましては、まず不法就労を目的とする外国人の入国を未然に水際で防止するということで、査証発給の事務の厳格化ということにつきまして外務省の協力を得ているところでございますが、特に不法就労に流れやすい観光目的の短期滞在、そういう人たちの上陸審査に当たっては旅券査証の偽変造の有無、入国目的の真偽等を確認するなど、厳格な審査を実施しておるところでございます。コンピューターに前にそういう経歴のあるような人たちのデータを入れまして、これが日本各地の主要な港でオンラインでチェックできるようなそういう体制も今とっておるところでございます。
 それから、中に入ってきた時点におきましては、不法就労者の積極的な摘発を、これはいろいろな関係機関と共同して協力を得て、摘発を通じて不法入国の防止をさらに図っていきたいと考えております。
 なお、入国するほとんどの外国人、多くの人は不法就労の目的ではなく正当な目的で来られる方でございますので、厳格な審査はやりますけれども、そういうまじめな善意の人たちに不愉快な念を与えないように、またそちらの方面にも気を配りながらやらなきゃいけないというふうに考えているところでございます。
#215
○国務大臣(田原隆君) 高橋局長の答弁でよかったのですが、私も、確かに入管局を持った省でありますから非常に大きい責任を持っておりますけれども、これは法務省だけで解決できる問題ではありませんので、各省と協議しながらということが必要だろうと思うのです。
 というのは、不法就労が発生する原因を調べてみると、近隣アジア諸国との経済格差による出稼ぎ志向とか一部産業の人手不足感からくる、悪い言葉かもしれませんが、安価な労働力を得ようとする俗に言ううまみ感とか、そのほか近隣アジア諸国で雇用の機会が少ないために求めてくるとか、いろんなことがありますから、そのほかブローカーの問題もございますし、すべてにわたってやはり解決していかなければ取り締まりだけでは解決しない問題だろうと思いますので、その辺やはり各省庁と手を組んでやっていきたい思います。
#216
○紀平悌子君 国際的な開かれた入管行政というのはいろいろなとり方がございますけれども、私などはやはり労働市場の自由化、それは全面的に開けという日本の労働事情というものを根底から覆すというようなことではなくて、二国間協定などでいわゆる単純労働と言われる方々もあるルートを決めて交流した方がいいんじゃないかというふうな考えを持っておりますので、これは法務省に伺うことではないかと思いますけれども、その点もあわせ御考慮をいただきたいというふうに思っております。そういうことがやはり国際的にも要求をされるという時期になってきていると思いますので、それで各省間の基本的な計画というのは今こそなさっていただきたいなというふうに思うわけでございます。
 外国人労働者に対してやはり取り締まるというか、入管というのはどうしても取り締まるということになるんですが、日本に入っていらした方は、皆さんこれはどういう形で入っていらしたにしろ人である、人間であるということに変わりはございません。ですから、その意味において仮に不法滞在の方々であっても、なかなか対応する警察のお役目というものは難しいものがあると思います。審議の過程でいわゆる外国人の方々に対する対策の一つとして、マニュアルを警察庁の方でおつくりになってということがあったと思いますので、その復そういった面でどんなふうな御進展があるか、伺わせていただきたいと思います。
#217
○説明員(奥村萬壽雄君) 在日外国人がふえておりますことに伴いまして、一線の警察署に外国人が来られてこれに警察署の方が対応するという例がふえておりますけれども、警察といたしましてはその対応の適正を期するためにいろんな方策を講じているところでございます。
 具体的には、今お話がありましたように、困り事相談とか、事件、事故等の届け出等で警察署へ来られる外国人のために各国の言語、例えばまあ三十カ国以上の言語で書かれました。件確認用の冊子、これをつくりましたり、それから交通ルールを外国語で解説をいたしました冊子等を作成をしています。それからまた、外国人を対象とした交通事故防止のための研修会といったものも警察署によりましては開催をしているところでございます。
#218
○紀平悌子君 次に、人権擁護行政についてお伺いしたいと思います。時間があと八分ぐらいしかございませんので、それ以内の中で、まだたくさん伺いたいことがあるんですが、お答えいただく皆様方も、恐縮ですが簡潔にどうぞわかるように教えていただきたいと思います。
 第一点は、大臣の所信の中に人権侵犯の事件で被害者を救済するというお言葉がございます。この被害者を救済するということは具体的にどういうふうなことか。まず、救済の実態というか、それをお伺いしたいと思うんです。これはとても長くなると思いますので、次のを続けてちょっと伺ってしまいます。
 次に、子供の問題です。子供をめぐるいじめとか体罰、それからチャイルドアビュース、これは近親者というより親権者による児童虐待の問題が日本でも随分出てきているようでございます。法務省はこの問題についてどのように対応されるか、その人権被害者を救うということで、なかなかこれは難しい問題でございますけれども、それをまず伺いたいと思います。
 それかも、これはいじめの原因としては、子供たちにたまったいろいろな意味でのストレスが原因になっているとも考えられますけれども、法務省が文部省とそのことについて協議を重ねられておられますでしょうか。また、なさったとすればどのようなお話し合いになりましたか、続けて伺いたいと思います。
#219
○政府委員(篠田省二君) 人権擁護機関による被害者の救済と申しますのは、司法機関、あるいはその他の行政機関のように強制力によって具体的権利の存否を公権的に確定したり、あるいは権利の実現を図るというようなものではなくて、専ら具体的な事件の調査、処理を通じまして、加害者等を十分に説得した上で、現に侵害が行われているときにはそれを自主的に排除させ、既に侵害が終わっているときには加害者に強く反省を求めるとともに、将来の再発を防止させ、それを通じて個別的に人権思想を啓発する、そういうことでございます。したがいまして、その処置は、加害者の責任追及というよりも啓発という点に重点が置かれている、そういことで行っております。したがいまして、強制力を伴った処置が必要なものにつきましては、やはり司法機関、あるいはその他の強制権限を持った行政機関による救済方法が講じられるべきであるというふうに考えております。
 それから次に、子供をめぐるいじめ、体罰の問題ですけれども、いじめ、体罰の問題は心身ともに健全に育成されるべき児童生徒の人権擁護にかかわる重大な問題でございまして、法務省の人権擁護機関といたしましてもこの問題の解決に向けて積極的に取り組んできているところでございます。特に、昭和六十年以降いじめの問題を重要な人権問題として取り上げ、そのために啓発活動を展開してきたわけでございますが、具体的な事案につきましては、人権相談あるいは人権侵犯事件として対処しているところでございます。
 また、親権者による児童の虐待につきましては、いじめや体罰と同様に、やはり児童の人権擁護上看過できない問題でございますので、法務省の人権擁護機関としては積極的にこれを取り上げ、親権者等に対して人権尊重の意識を広めるとともに、その解決に努力をしているところでございます。
 それから、いじめの原因の解明の問題でございますけれども、いじめの問題は、学校教育を初め家庭での子供の教育、あるいは社会環境などが複雑に絡み合っている問題でございますので、その解決のためには家庭や学校、教育委員会、警察等関係機関との緊密な連携をとって対応する必要があるわけでございます。そういった観点で、いじめ問題の解決のために人権擁護機関としてはこれらの関係機関と協力しながら問題解決に取り組んでいるところでございますけれども、いじめの原因の解明というそれだけにつきまして特に文部省と協議をしているというようなところではございません。
#220
○紀平悌子君 子供の問題をもう少しお伺いしたいんですけれども、時間も参りましたので、最後の一つ前でございますが、お年寄りの人権問題にこれは非常に大事な問題が生じていると思いますのでお伺いいたします。
 高齢化社会の中でのお年寄りの人権というのは、さまざまな福祉あるいは医療の面での充実、それからお年寄りの生きがいの問題もございますけれども、それとまた全く違う被害にお遭いになるということが具体的に続発しているように思われます。特にお年寄りの資産をねらっての財産犯が著しくふえているように思われます。
 特に、身近に身寄りのいないお年寄りのところにいろいろな意図を持った方が入り込んで、そして甚大な被害に遭う。時には今まで奪われて、財産もだれがどこへあれしたかわからないということになっていくという事態が実は私の身辺にも二、三ございまして、これはなかなか隣近所で物が申せるという状態でございません。何か変だなと思ってもどこへどう申し上げていいのか。それも家の中へ入っての他人様の懐まで口は出せないという、そういった悩みもございます。
 ですから、お互い隣近所が地域として気をつけてあげるということももちろん基本的な問題として必要だと思いますけれども、こういったお年寄り、特に老年期痴呆と言われるような、そういった高齢者の権利をどうやって守っていくか。人権、特に生命、健康、財産ですね、そういうふうなことで格別のシステムをおつくりになる必要があるように思われます。法務省としてはどうお考えになっていらっしゃるかということをぜひお伺いしたい。
#221
○政府委員(清水湛君) 老人になられましてから判断能力が低下をするというようなことで自分の財産が十分に管理ができない。その結果として財産をいわばだまし取られるとか、そういうような現象が最近多くあらわれているというようなことを私どももいろんな新聞、雑誌等を通じて知っているわけでございます。
 現在の民法の建前から申しますと、そういう判断能力、つまり法的に申しますと意思能力が十分ではないというようなことになりますと、法律行為の無効取り消しというような問題、あるいはさらにそれが進みますと、禁治産宣告とかあるいは準禁治産宣告というような制度によって保護されるということも制度としてあるわけでございます。それからまた、訪問販売法みたいないろんな特別法でいわゆるクーリングオフの権利を認めるというような形で、一応それなりに判断能力が十分でない人たちの法律行為についての権利の保護というようなことが図られてはいるわけでございます。
 しかしながら、先生御指摘のように、そういうような個別の問題ではなく、高齢化社会というものを迎えまして、一体年をとって十分に自分の財産を管理することができない、そういう人たちについての何か抜本的な法律制度を考えたらどうかという御意見、これがいわゆる成年者後見、後見制度というのは未成年について未成年者後見制度というのがございますし、あるいは禁治産の宣告を受けた者につきまして後見制度があるわけでございますけれども、そういう現在の制度ではなくて、高齢になった成年者についての後見制度というようなものを考えたらどうかというような御議論が最近学会の中でもされているというふうに私ども承知しているわけでございます。現に、諸外国におきましても、ドイツですと例えば一九九〇年に成年者世話法という成年者を世話をするという法律が民法の中に組み込まれて規定をされたというようなことを聞いているわけでございます。
 そういうような例もあるわけでございますけれども、より基本的にそういう老年者の権利、財産をどうやって保護するかということになりますと、単に法律をつくればいいということではございませんで、じゃそういう老年になった成年者にかわって、その人たちの権利を保護する任務に当たる具体的な人は一体どういう人たちが充てられるべきなのか、あるいはそういう人たちが、いろんな費用を伴うわけでございますけれども、そういう費用を一体だれが負担するのかというような具体的な制度ということになりますと非常に大きな問題があるわけでございます。そういうような問題を含めて、そもそもこれは民法の面からのアプローチということも当然必要かと思いますけれども、福祉その他いろんな社会政策立法というようなものを絡めてやはり検討すべき問題ではないかなというふうに私どもは考えているわけでございます。
 現段階においてまだそういうような成年者後見という言葉、これは学者の間で使われている言葉でございますけれども、そういうようなものを具体的な形で立法の検討課題とするという段階にはまだなってはおりませんけれども、私どもといたしましても、それから民法の諸学者の間におかれましても、そういうような問題について最近関心が集まりつつあるという事実もございますので、私どもといたしましても関心を持って見守ってまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
#222
○紀平悌子君 ありがとうございます。
 終わります。
#223
○理事(中野鉄造君) 本日の調査はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#224
○理事(中野鉄造君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。田原法務大臣。
#225
○国務大臣(田原隆君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図る等のため、裁判所の職員の員数を増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。
 第一点は、裁判官の員数の増加であります。これは、地方裁判所における民事訴訟事件の適正迅速な処理を図るため、判事補の員数を七人増加しようとするものであります。
 第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数の増加であります。これは、一方において、地方裁判所における民事訴訟事件及び民事執行法に基づく執行事件の適正迅速な処理を図る等のため、裁判官以外の裁判所の職員を五十六人増員するとともに、他方において、裁判所の司法行政事務を簡素化し、能率化すること等に伴い、裁判官以外の裁判所の職員を三十三入減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を二十三人増加しようとするものであります。
 以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
#226
○理事(中野鉄造君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。
    午後四時二十六分散会
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ソース: 国立国会図書館
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