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1992/04/23 第123回国会 参議院 参議院会議録情報 第123回国会 法務委員会 第7号
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1992/04/23 第123回国会 参議院

参議院会議録情報 第123回国会 法務委員会 第7号

#1
第123回国会 法務委員会 第7号
平成四年四月二十三日(木曜日)
   午前十時開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         鶴岡  洋君
    理 事
                野村 五男君
                林田悠紀夫君
                北村 哲男君
                中野 鉄造君
    委 員
                斎藤 十朗君
                下稲葉耕吉君
                中西 一郎君
                福田 宏一君
                山本 富雄君
                糸久八重子君
                深田  肇君
                橋本  敦君
                萩野 浩基君
                紀平 悌子君
   衆議院議員
       法務委員長    浜田卓二郎君
   国務大臣
       法 務 大 臣  田原  隆君
   政府委員
       法務大臣官房長  則定  衛君
       法務大臣官房審
       議官       本間 達三君
       法務省民事局長  清水  湛君
       法務省入国管理
       局長       高橋 雅二君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        播磨 益夫君
    説明員
       警察庁警備局外
       事第一課長    奥村萬壽雄君
       法務省入国管理
       局登録課長    山崎 哲夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○外国人登録法の一部を改正する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
    ―――――――――――――
#2
○委員長(鶴岡洋君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 外国人登録法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。田原法務大臣。
#3
○国務大臣(田原隆君) 外国人登録法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 外国人登録法に基づく指紋押捺制度については、昭和六十二年第百九回国会における外国人登録法の一部を改正する法律案の御審議の際、衆参両院の法務委員会においてこれにかわる同一性を確認する手段の開発が求められたところでありますが、正確な外国人登録制度を維持することは、外国人の出入国及び在留管理の根幹にかかわるものでありますので、その確認の手段につきましては、慎重に検討を進めてまいった次第であります。他方、昨年一月の海部前内閣総理大臣の訪韓の際に、日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定に基づく韓国政府との協議が決着し、在日韓国人についての指紋押捺の廃止を含むその内容を取りまとめた覚書に日韓両国の外務大臣が署名いたしたところであります。
 この法律案は、右に述べた経緯を踏まえ、指紋押捺にかわる手段を中心に検討を進めた結果、我が国の社会で長年にわたり生活し、本邦への定着性を深めた永住者及び特別永住者については、鮮明な写真、署名及び一定の家族事項の登録をもって指紋押捺にかえ得るとの結論に達したため、外国人登録法の一部を改正しようとするものであり、その改正の要点は、次のとおりであります。
 その第一は、永住者及び特別永住者について、指紋の押捺を廃止し、写真、署名及び一定の家族事項の登録をもって、同一性の確認手段とするものであります。すなわち、新規登録の申請の際、これらの者は、本邦にある父母及び配偶者の氏名等を家族事項として登録することとするとともに、十六歳以上の者は、登録原票及び署名原紙に署名することとするものであります。
 その第二は、永住者及び特別永住者について、登録の手続及び登録証明書の様式に関する規定を整備することであります。すなわち、これらの者から新規登録等の申請があった場合における登録原票への登録、登録事項の確認、新たな登録証明書の交付等に関する手続規定を整備するとともに、登録証明書には、署名を転写することとするものであります。
 その第三は、登録の確認申請の時期に関する規定を整備することであります。新たに永住許可または特別永住許可を受けた者が、登録事項の確認を受けた場合における次回確認申請の時期は、その後の五回目の誕生日から三十日以内とするとともに、署名をしていない者の次回確認申請の時期は、新規登録等を受けた日から一年以上五年未満の範囲内において市町村の長が指定する日から三十日以内とするものであります。
 その第四は、不署名罪の規定を設けるなど罰則その他の関連規定を整備するものであります。
 以上がこの法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
#4
○委員長(鶴岡洋君) この際、本案の衆議院における修正部分について、衆議院法務委員長浜田卓二郎君から説明を聴取いたします。衆議院法務委員長浜田卓二郎君。
#5
○衆議院議員(浜田卓二郎君) 外国人登録法の一部を改正する法律案に対する衆議院における修正部分について、その趣旨を御説明いたします。
 政府提出の本法律案は、永住者及び特別永住者について指紋押捺制度を廃止しようとするもので、一歩前進と評価されるものの、外国人登録制度のより一層の改善を図るため、衆議院においては、さらに居住地等の変更登録義務違反に係る罰則について、その法定刑のうち自由刑を廃止するとともに、この法律の公布の日から施行日の前日までの間に十六歳に達した永住者及び特別永住者については指紋の押捺を要しないこととする旨の経過措置を設けるほか、所要の規定の整備を行う等の修正を行ったものであります。
 以上が政府提出の本法律案に対する衆議院における修正部分の趣旨であります。
 何とぞ本修正に御賛同くださいますようお願いいたします。
#6
○委員長(鶴岡洋君) 以上で趣旨説明並びに衆議院における修正部分の説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#7
○糸久八重子君 外国人登録法がいよいよ本院で審査されることになりました。
 御案内のように、私ども社会党は衆議院に対案を提出いたしましたが、ただいま説明がございました衆議院修正部分に対しまして共同提案をいた
し政府原案を修正議決したために、対案は撤回いたしました。しかしながら、先日の本会議で三石議員が述べましたように、本院で私ども、党本来の考え方の実現を図るための努力は続けたいと思っております。
 参考までに我が党の対案と政府原案との主な相違点の骨子を申し上げたいと思います。
 一番目、登録事項から職業、勤務所または事務所の名称及び所在地を除く。二、指紋押捺制度を廃止し、本邦に一年以上滞在することのできる外国人について署名及び家族事項の登録を本人確認手段として導入する。三、登録証明書の常時携帯義務を廃止し、一定の方法で保管していればよいこととする。登録証明書の提示を求められた場合、遅滞なく提示すればよいものとする。四、罰則を刑罰から過料にする。五、公布の日から施行日の前日までの間に十六歳となることによって指紋の押捺をしなければならなくなる者について、押捺を要しないものとする。
 以上五点ですが、いずれも人権尊重を求める国際的潮流を考慮し、我が国が主体的な立場から在日外国人の人権状況をどのように改善していくかという視点から提案したものでございます。このうち、四の一部と五については修正議決されましたが、残された課題はまだたくさんございます。大臣は、衆議院での答弁で、純粋な法律問題であって人権問題として取り上げていないというお答えから、世界情勢もどんどん変わる、将来のステップを検討するのは当然の責務だと変わってまいりました。また、宮澤総理も我が党の三石議員に対して、今後とも検討を続ける必要があると答弁をなさいました。社会党は、対案を提示したからといって政府と対決するのが目的ではございません。共通の認識に立って在留外国人の人権を尊重していこうという基盤づくりが必要であり、そのための対案提出なのでございます。
 ただ、提案理由の中で述べておりますとおり、政府案は、指紋押捺制度について日韓両国で合意をした事項を、永住者、特別永住者に押し広げる内容にとどまっており、人権尊重を求める国際的潮流を考慮し、我が国が主体的な立場から在日韓国人の人権状況をどのように改善していくかという視点に欠けるということでございます。
 人権擁護の任に当たっていらっしゃる大臣として、当然このような観点から本院の審査に臨んでいただけると思いますけれども、大臣の認識と決意のほどをまずお伺いをさせていただきます。
#8
○国務大臣(田原隆君) 本法案は、昭和六十二年の外国人登録法改正の際の衆参両院法務委員会の附帯決議及び日韓法的地位協定に基づく韓国政府との協議の結果を踏まえ、内外の諸情勢の変化や在留外国人の立場にも配慮しつつ、検討し提出したものでありますが、先ほど糸久委員からお話がありましたように、審議の過程で私の答弁が確かに、変化したつもりはございませんが、現時点ではこの法案を最良のものとして出させていただいておるが、時がたつと社会情勢も変わってくるし、外国人の方もふえてくるし、いろいろ多様化もしてくるだろうし、それからこの法律が提案されて実施されているいろな情報も入ってくるだろう、それを資料にして今後適切に対応しなければいかぬというような趣旨のことを申し上げたと思いますが、その中には当然人権も含まれておるわけでございまして、どうかその点を御認識くださいまして、きょうから十分な御審議をいただいて、なるべく早く本案を通していただくことをお願い申し上げる次第でございます。
#9
○糸久八重子君 さて、ただいま提案理由の説明をお聞きしましたけれども、その中に、このたびの改正については、一九八七年百九国会での附帯決議及び日韓覚書が挙げられておりましたが、簡単に提出の経緯とか目的とかを御説明願いたいと思います。
#10
○政府委員(高橋雅二君) この改正案作成の経緯及び改正案立案の趣旨等について簡単にということでございますので、お答え申し上げます。
 この指紋押捺制度を含む外国人登録制度につきましては、今、先生御指摘のとおり、昭和六十二年第百九回国会における外国人登録法一部改正案審議に際しまして附帯決議がされておりまして、また平成三年一月に当時の海部総理の訪韓に際して、日韓両国両外相の署名した覚書において、在日韓国人について指紋押捺を行わないこととする政府方針を明らかにしている、こういうことを踏まえまして指紋押捺にかわる同一人性確認手段の研究開発を進めてきたところでございます。
 その結果、永住者及び特別永住者、この特別永住者と申しますのは一言で申しますと戦前から日本に居住される朝鮮半島出身者、台湾の出身者の方でございまして、戦後講和条約により日本の国籍を離脱した方及びその子孫でございますが、こういう特別永住者及び永住者につきましては、写真、署名及び一定の家族事項の登録をもって指紋押捺にかえ得るという結論に達したため、外国人登録法の一部を改正するということとしたことでございます。今回の改正の趣旨は、これは趣旨説明の中にもあることでございますが、我が国の社会で長年にわたり生活し、本邦への定着性を深めている永住者及び特別永住者について外国人登録の同一人性確認の手段としての指紋押捺を廃止いたしまして、写真、署名及び一定の家族事項の登録をもってこれにかえることとするとともに、これに関連いたしまして、登録証明書の様式の変更、切替交付、その他の所要の関連規定の整備を図ろうとしたものでございます。
#11
○糸久八重子君 百九回国会の改正のときの附帯決議を見てみますと、衆参ともに外国人登録制度のあり方そのものの検討を求めておるわけでございます。しかし、本改正案は制度の根本的な改正にはなっておりません。指紋が全廃とならずに一部になぜ残ったのか、また、外登証の常時携帯義務についても義務規定の堅持になぜこだわるのか、そして、それらの維持と署名義務の徹底のために罰則をもって臨むというのはなぜなのか、疑問はたくさんございます。
 以下、順にお伺いをしていきたいと思います。
 法務省の一九八八年度予算には、諸外国における外国人登録制度調査研究外国旅費が新規に百八十二万四千円計上されております。また、一九九一年度予算には、外国人登録制度の改善合理化に係る予算として新規に四千四百三十一万五千円計上されておりますが、これらによってどのような検討が行われたのでしょうか。
#12
○説明員(山崎哲夫君) 昭和六十三年度予算においては、諸外国における外国人登録制度調査研究のため、外国旅費を委員御指摘のとおり計上しておりますが、平成元年二月、スペイン、ベルギー、フランスヘ赴き、それぞれの国における外国人登録制度に関し、実施機関、外国人関係記録の管理、証明書の種類、指紋押捺制度、申請義務、携帯制度について現地調査を行っております。
 また、平成三年度予算においては、外国人登録法改正に係る経費として外国人登録制度合理化経費を計上、例えば、外国人登録制度懇談会を開催し各界の有識者から意見を徴し、また諸外国における外国人登録制度の実情等の調査などを実施しております。
#13
○糸久八重子君 一九八八年度の予算の中でスペインとベルギーとフランスの三カ国にいらしたようですが、何かその三カ国を選んだ理由というのはございますか。
#14
○説明員(山崎哲夫君) 私ども、諸外国につきましては、それまでも各国を調査してきているわけでございますが、スペイン、ベルギー等というのは調査がされていなかったということから選んだわけでございます。
#15
○糸久八重子君 一九八六年度には諸外国における指紋押捺の実施状況、翌年八七年度には諸外国における外国人登録証明書携帯等の現状について調査をしていらっしゃるようですね。その後も同じような調査を行っておりましたら御説明願いたいと思います。
#16
○説明員(山崎哲夫君) 常時携帯制度につきましては、外務省を通じまして平成二年度に調査を行っております。外務省を通じましては、アジ
ア、ヨーロッパ、南北アメリカの計四十六カ国について各国における外国人登録の方式、外国人登録における同一人性の確認の手段等に関しまして調査を実施しております。また、平成三年度には、入国管理局職員をヨーロッパ及び東南アジアに派遣しまして、現地における各国の登録制度の運用の実態等について調査を行っております。
#17
○糸久八重子君 次に、法務省の内部諮問機関として出入国管理政策懇談会、指紋押捺に関する有識者懇談会とかあるようでございますが、このたびの改正案提出に当たってこれらの懇談会からどのような結論を得ておるのでしょうか。
#18
○政府委員(本間達三君) お答え申し上げます。
 出入国管理政策懇談会と申しますのがございますが、これは入管法第六十一条の九に規定いたしております出入国管理基本計画の策定に関連しまして各界の有識者の方々から意見をちょうだいしたい、こういうことで設けられたものでございまして、特に外国人登録制度に関しては個別、具体的な意見交換あるいは意見聴取等は行われておりません。
 それから、外国人登録制度懇談会でございますが、これは昨年四月から開催いたしまして、本年三月までの間に六回開催いたしました。指紋押捺制度を初めといたしまして、その代替措置あるいは登録証明書の常時携帯制度など広く外国人登録制度全般につきまして各界の有識者から意見をちょうだいいたした次第でございます。
#19
○糸久八重子君 内容についてはわかりましたが、その中で大方どんな御意見が多かったのかということはいかがでしょうか。
#20
○政府委員(本間達三君) 懇談の中身といたしましては、先ほど申し上げたとおりでございますが、指紋押捺制度を例にとって申し上げますと、多くの方々の御意見としては、指紋押捺制度の廃止につきましてできればすべての外国人に対して廃止してはどうかというような意見がございました。これはいろんな留保等もつけて述べられた先生方もおられまして、やはり同一人性確認の手段一ということの重要性を指摘されて、代替手段として適当なものがあればという条件つきで指紋押捺全廃の方向で検討されてはどうか、そういうような御意見とか、あるいは思い切って管理の程度を緩めるといいますか、という方向でもいいんじゃないかというような御意見とか、いろんな意見がございました。
 また、登録証明書の常時携帯制度については、基本的にはこれを維持すべきであるという意見が大勢を占めたといいますか、大多数の御意見だったと承知しておりますが、その運用の仕方につきましてはやはり常識的、弾力的といいますか、十分適正なやり方というものが必要だというような御指摘もございました。
#21
○糸久八重子君 今回の改正によって事務量が増加するであろう地方自治体とはどのような協議をなさっておりますか。
#22
○説明員(山崎哲夫君) 地方公共団体につきましては、昨年五月以来、都道府県、十一政令指定都市、全国の外国人登録事務協議会などから外国人登録法の改正に関する意見聴取を実施しております。
#23
○糸久八重子君 地方議会やまた地方の自治体からこの外国人登録法の抜本改正を求める決議や要請書が送られてきていると伺っておりますけれども、どのくらいの数で、主な内容というのはどういうことなのでしょうか。
#24
○説明員(山崎哲夫君) 保管の記録によりますと、昭和六十三年から平成四年までの過去五年間に、市区町村長等地方公共団体から外国人登録事務に関する法務大臣あての要望書が送られてきた件数は、計十七件でございます。その内容は、在日外国人の負担軽減、市区町村における事務の簡素化、外国人等の観点からすべての外国人についてできるならば指紋押捺制度を廃止してほしいという趣旨の要望がございました。
#25
○糸久八重子君 地方議会の決議の数というのはおわかりですか。
#26
○説明員(山崎哲夫君) 今、手元には資料はございませんが、前回の改正後、地方議会の決議というのはそう多い数はないというように承知をしております。
#27
○糸久八重子君 在日本朝鮮人総連合会がことしの二月二十一日に外国人登録証常時携帯義務の撤廃を求めて法務省に文書で要請した旨の報道を拝見しています。それらのいわゆる関係諸団体との事前の折衝等はどうなされたのでしょうか。
#28
○説明員(山崎哲夫君) 外国人関係団体等とはこれまで民団、在日居留民団ですか、また朝鮮総連等の関係者と意見交換、また要望等を賜る機会を設けて話し合いを行ってきております。
#29
○糸久八重子君 これまでの経緯の中で、日韓覚書によって改正をまとめたとあるのですが、世界では百カ国以上の国があり、現に資料によりますと、その他というところでまとまっておりますからどのぐらいの外国人が日本に来ていらっしゃるかわかりませんけれども、恐らく何十カ国の外国人が在留していらっしゃると思うのですが、韓国との話し合いだけで改正案を決めたというのはちょっとおかしいのじゃないかなというふうに考えるのですね。在日外国人の六〇%を占めるのは韓国、朝鮮の方だとはそれはわかるのですけれども、残りの三〇%の人たちの意見を聞く機会というのは持たなかったのでしょうか、その辺はいかがでしょうか。
#30
○政府委員(本間達三君) このたびの法改正案をまとめるに際しまして、諸外国の意見といいますか、意向というものによってこの内容を決めたというばかりではございません。もちろん、先ほど大臣からも御答弁ありましたとおり、韓国との法的地位協定に基づく覚書の内容、これは踏まえていることは間違いございません。何と申しましても、昭和六十二年の法改正のときの附帯決議というのがございまして、そのときの審議の過程で種々御議論がありましたこの指紋押捺制度の廃止問題というものについて、指紋押捺にかわる代替手段の開発あるいは制度の改善ということが附帯決議の中で盛られたわけでございまして、政府としましては、その代替手段の開発ということにずっと努めてまいった。そういう経過の中で対韓国との覚書というものができてきたという経過がございます。したがいまして、韓国との覚書の中身というものは、それまで法務省において種々検討してきました開発研究の成果といいますか、その経過というものを一応踏まえたものとして中身ができているわけでございます。
 したがいまして、韓国との覚書等を踏まえてといいますと韓国の意見に従ってやったと、こういうふうな御印象を受けるかもしれませんけれども、必ずしもそればかりじゃなくて、法務省としてのこれまでの研究の成果というものの中にひとつそういう韓国との関係が入ってきた、こういうことでございます。法改正に当たりまして諸外国の御意見を聞きながら決めるべきだという基本的な御主張だとは思いますけれども、私どもは日本国の制度をつくるに当たりましては、やはり日本国家として外国人の公正な管理のためにどういう制度があるかという視点から検討してきたということでございます。
#31
○糸久八重子君 さて、次に外国人登録法の制定目的はどこにあるのかお伺いをしたいと思います。
#32
○政府委員(高橋雅二君) 外国人登録法の目的といいますのは、この登録法の第一条にございますように、「外国人の公正な管理に資する」ということでございまして、これはそれぞれの法律において外国人の管理に関する規定がございますけれども、外国人登録法といいますのは、登録を実施することによりまして外国人の居住関係及び身分関係を明確ならしめまして、出入国管理行政を初め、労働、教育、福祉その他いろいろな各般の分野における在留外国人にかかわる行政において必要とされる資料、情報を提供することによって、それぞれの関係法令に基づいて行われます在留外国人の公正な管理のために役立たせる、要するにそういう管理に資すると、そういうことが基本的
な目的というふうに規定されていると考えております。
#33
○糸久八重子君 在日外国人の身分、居住関係を明らかにする法律であれば、日本国民に適用されます住民基本台帳法と類似の範崎に入る法律と理解してよろしいですか。
#34
○政府委員(高橋雅二君) これは、外国人にかかわるいろいろな行政に資するための資料を提供するという法律でございますけれども、他面、外国人と日本人というのは基本的に差異がございまして、外国人が日本に居住するためには基本的には日本国の許可を必要とするということでございまして、そこに基本的な違いがございます。そういうことで、居住関係を明らかにすることにより公正な管理に資するということから、確かに住民基本台帳法、そういうようなものに似た面もございますけれども、必ずしもそれと同じ役割を果たしているということじゃございません。確かにそういう面もございます。しかし、同じということではないということは、日本人と外国人との基本的な違いから出てきておると、そういうふうに考えております。
#35
○糸久八重子君 今の御答弁をお伺いしてみても、基本的には差異があるということはそれはわかりますけれども、しかし身分、居住関係を明らかにするということならば、在日外国人が登録すべき事項が余りにも煩雑で、かつ在日外国人が果たさなければならない義務は非常に過重過ぎるのじゃないかと思うのですね。どうして日本人と比べてそういう大きな差異を設けなければならないのか、その辺の根拠は一体何なんでしょうか。
#36
○政府委員(本間達三君) 局長がお答え申し上げましたとおり、日本人は日本国家の構成員でございますから、その居住あるいは活動というものに何らの制限がございません。要するに、日本人であるということが明らかになれば、それはそれで十分目的は、目的といいますか、行政上はそれを把握し、その人の居住関係というのはまた別な行政目的から一定の制度のもとに把握するということで、戸籍関係、居住関係というのはそれぞれ別の制度として成り立ちがあるというふうに考えます。
 ただ、これに対しまして外国人と申しますのは、日本における在留というものが基本的に日本国家の許可のもとに行われておりまして、その在留活動はもちろん在留期限というものについても制限が加えられているものでございます。いかなる国家におきましても、外国人をそこに住まわせるか、どのようにそれを管理していくかということはその国家の主権の問題でございます。したがいまして、そのような外国人の法的地位というものが日本人と根本的に異なるところから、外国人の管理ということにつきましては、本国人といいますか自国民と違った方式をとるというのがいずれの国家においてもとられている制度でございます。
 それで、外国人につきましては、外国人登録法にありますとおり、やはり公正な管理を行うという必要がありますところから、その戸籍的な事項あるいは住居的な事項というものをすべて一体としてこれを把握して、その者が適法に在留している者であるかどうかということを正確に把握しておく制度というのが必要でございまして、これは単に、日本人における住民基本台帳法の目的とするような、どこに住居があるかということを確認するだけで目的が達せられるものではない。そういう意味で、その制度の目的というものが若干違うわけでございます。そういう観点から、別な制度をとっておくということが必要だということでございます。
#37
○糸久八重子君 日本以外の他の国で外国人として処遇する場合と、それから日本の場合の例えば特別永住者、この方たちはやはり日本人と同じ生活圏で半ば日本人として生活をしていらっしゃる方なんですね。ですから、その方も一緒にして、たくさんの煩雑な登録事項だとか、それから義務を課せられるということはおかしいのじゃないかなと思いますが、それはまた議論は先に譲っていきたいと思います。
 先ほども御説明がございましたその目的の第一条に、確かに「居住関係及び身分関係を明確ならしめ、もって在留外国人の公正な管理に資することを目的とする。」というふうに書かれておるわけなのですが、「管理」というのは一体どういうことなのかなと思ってゆうべ辞書を引いてみました。管理とは管轄して処理すること、取り締まることというふうに辞書に書いてございます。外国人管理を目的としてつくられた法律というのは別にあるわけですね。どういうものがございますか。
#38
○政府委員(高橋雅二君) 外国人の管理ということを直接目的としているということにつきましては、いわゆる出入国管理法がございます。これは日本人にもそうですけれども、外国人を主としての出入国・在留等につきまして規定しているものでございます。他方、この外国人登録法は、そういう入管法を含めまして、外国人の管理に資するための法律、こういうふうにお考えいただければと思っております。
#39
○糸久八重子君 出入国管理及び難民認定法と違って外国人管理を目的としてつくられたものでないとおっしゃるようですけれども、そうおっしゃりながら、管理するために登録証の常時携帯義務を継続しているのじゃないかそれから法律違反に対して刑罰を科しているのではないか、そういう疑問がしきりとしてならないのですね。
 ですから、私はこの目的の「公正な管理に資する」という部分は外国人登録法の目的の中では問題だと思います。本来ならば、今度の改正では根本的に見直すというようなことがあったわけですから、この目的の部分をやはり直していかなければならなかったのではないかなというふうに考えておるわけですけれども、衆議院の附帯決議の一の部分で、外登法の目的を明確にするとともに、五年経過した後に適切な措置をと書かれておるわけですが、五年後の見直しではこの目的条文なども検討をなさいますか。
#40
○政府委員(高橋雅二君) この法律の目的で言います「公正な管理に資する」という場合の「管理」というのは、何か今先生、字引で引用されましたように非常にきついような印象を受けますが、法令の中では必ずしもそうきつくない意味で使われることもございますし、それから実態といたしまして、かなりこの管理というその内容も実態的には在留外国人に対する利益配分というようなものの面がふえていることは事実でございまして、そういう意味で管理という言葉から印象を受けるものよりは非常に広い役割を果たしているというふうに考えております。
 ただし、衆議院での附帯決議でこの外国人登録制度の目的を明らかにするということが一つの検討の内容といたしまして求められていることでございますので、私たちといたしましても、この検討に当たってはそういう面も含めまして十分慎重に検討していきたいというふうに考えております。
#41
○糸久八重子君 それでは続いて、同一人性の確認の問題に参りたいと思います。
 改正案では、永住者及び特別永住者については指紋押捺の義務を廃止し、同一人性確認の代替手段として写真と署名と家族事項の登録制度を新たに導入するとしておりますが、この三点で同一性の確認が可能だとする根拠はどこにありますか。
#42
○政府委員(高橋雅二君) 今まで同一人性の確認というのは指紋ということが一番正確である、これは万人不同・終生不変と、こういうことできたわけでございますが、この指紋押捺ということについては心理的な抵抗を感ずるということもございまして、先般の外登法改正の際も両院の法務委員会で附帯決議がございました。この指紋押捺にかわる制度を開発せよという附帯決議の内容は、指紋押捺を求められる方々の心理的負担というようなことが念頭にあったというふうに私たちも理解しております。
 そういうことを踏まえましてこれまでいろいろ種々検討した結果、一つの手段で指紋よりも心理
的負担が少なくかつ指紋と同じ程度に人物の同一人性を確認できる手段がなかなかないということで、今回、写真、署名、さらに一定の家族事項の登録という現時点で最も有効と考えられる複合手段を開発したものでございます。この複合手段を長年本邦に在留し定着性の高い永住者及び特別永住者について採用した場合、これら永住者等は一般に家族、親族及び知人等人的な情報源というものが豊富にあると考えられますので、外国人登録の同一人性確認手段としては指紋押捺にかわるものとして十分に有効であるという結論に達し、このような改正案を御提出申し上げたところでございます。
#43
○糸久八重子君 日本社会に密着した生活をして、そして家族、友人関係が多いから周囲に尋ねても同一人性の確認が容易だと、そういうことだからこれは指紋の代替になるという意味にとってよろしゅうございますね。
#44
○政府委員(高橋雅二君) そういうことでよろしいかと思います。
#45
○糸久八重子君 永住者、特別永住者はこの三点で同一人性の確認が可能とするならば、一年以上の在留者についてもこの三点ではだめだという理由は出てこないのではないかなというふうに感じます。
 指紋押捺の代替手段として写真とか署名とか家族事項を新たに導入するということは、指紋が同一人性確認の絶対的手段ではないということを意味するのではないのでしょうか、その辺のところはどうなんでしょうか。
#46
○政府委員(本間達三君) 外国人登録制度における同一人性確認手段というのは制度の根幹をなすわけでございますので、この点については絶対的な方策というものが最も望ましいことは言うまでもないわけでございます。
 それで、確実であると同時にまた簡便なものがいいということで、指紋押捺制度が採用されたというのもまたその面で非常にすぐれた手段であるということにあったわけでございます。ただ、指紋押捺という手段は、他に同様の有効性を備えた手段がもしあるとするならば必ずしも指紋押捺による必要はないわけでございます。そういう指紋押捺だけというその単独の手段に限らず、今回三つの方法を複合的手段とするという方法をとりましたが、こういう制度をとりましても、指紋押捺にかわり得る確実な同一人性確認手段であるならば、その手段を採用することは制度を作成する場合には十分とり得る方途であるということで、今回の改正はまさにそういう手段が開発されたということで改正法案の内容に盛り込んだという次第でございます。
#47
○糸久八重子君 短期在留者の問題なんですよね。恐らく短期在留者の場合には家族事項もわからないし、単身で来る方も多いのじゃないかというようなことで、結局無理なんじゃないかなというふうにお考えなんだろうと思います、定着性がないということでね。しかし、定着性というのは、同一性の確認の有力な手段であってもこれは絶対的なものじゃないと思うのですね。ですから、在留資格にこだわっているのはやはり問題じゃないかな、そして、在留資格によってその指紋押捺義務を残しておくというのは大変私は疑問に思うわけです。永住者以外の在日朝鮮人、それから在日外国人の押捺義務はこれは残るわけですよね。そうすると、外国人登録制度というのは二本立てになっちゃうわけです。入国管理局はこのことに対して反対していたのじゃないですか。その辺はどうでしょうか。
#48
○政府委員(高橋雅二君) 確かに、特別永住者を含みました永住者等と、そうでない短期の滞在者、一年以上、今まで指紋を押捺していた人たちにつきましては二本立てになるということは確かでございます。
 反対していたかどうかという御質問でございますが、いろいろ検討した結果、新しい手段というものが指紋押捺にかわるものとしては永住者等には有効であるけれども、そうじゃない人には有効とは言えないということなのでこういう結果になったわけでございます。
#49
○糸久八重子君 指紋押捺制度については、日韓覚書で永住者、特別永住者については廃止をする、それから永住者以外の在日朝鮮人は押捺義務は残ると。そうすると、同じ国の人たちの中でもこれは新たな差別が生じるわけですね。その辺の見解はいかがですか。
#50
○政府委員(高橋雅二君) 今御指摘の点で、同じ日本におられる韓国人の方でも、特別永住者あるいは永住者としての資格を持っておられる韓国人の方と、それから一時的に滞在される韓国人の方との間に取り扱いの差ができることは確かでございます。しかし、この差と申しますのは、我が国の社会への定着性ということの差異に基づいた同一人性確認手段の有効性の違いによるものであって、これは特に不当な差別とかそういうことには当たらないというふうに考えております。
#51
○糸久八重子君 修正によって、施行までに十六歳になる永住者は写真だけの確認でよしとされたことになったわけですね。新法になって初めての登録申請時に永住者それから特別永住者の方たちが窓口に見えたときに、その人が本当に原票に登録された人かどうかをどのように確認するのですか。十四条五項の指紋再押捺、これは永住者、特別永住者の方はもうできなくなったわけですね。だから、これによっては確認できない。それから、署名、家族事項というのは新規に登録するのですからこれも照合できないわけですね。どうやって確認なさいますか。
#52
○説明員(山崎哲夫君) 十六歳になった者は法の規定に基づきまして確認申請をしに来るわけなんですが、その際には、法律に基づきまして写真、それと身分事項を届け出ることになるわけですが、今回は、法改正によりましてさらに家族事項に関することを届け出ることになっております。その際、これまで本人は出生とともに外国人登録をしており、本人に交付されております登録証明書がございますから、それを持参してまいるわけでございまして、それに基づきまして届け出た身分事項、家族事項等を確認の上、同一人性を確認しているわけで、さらにそれでも不明な場合には、市区町村長が事実関係の調査ということで関係者等に質問をするということで同一人性の確認をするということにしております。
#53
○糸久八重子君 新規登録時になりますとかなり窓口も混雑するので、そんなに一人に対して長い時間の確認はできないから、大体原票に張ってある写真で本人じゃないかなということを認定するというのが普通じゃないかと思うのですね。そうしますと、そういう初の登録申請時に写真のみでするということならば、同一人性確認は写真だけで十分じゃないかなという気がするのですけれども、その辺はどうなんでしょう。
#54
○政府委員(本間達三君) 初の登録申請とおっしゃいましたけれども、例えば在日韓国人の方々、こちらでお生まれになったというときは出生の日から六十日以内に新規登録をいたしますから、初めてという御趣旨がちょっと理解できなかったんですけれども。
#55
○糸久八重子君 改正になって新しく登録、例えば家族事項とか署名とかというのをしに来るわけでしょう。十六歳にはこだわっていないのですよ。永住者とか特別永住者の方たちが窓口に来るわけですね。その場合に、確かに原票にある本人とそれから来た人とが同一人かなというのを確認するのにはどうするのですかという、そういう質問だったのです。
#56
○政府委員(本間達三君) 一般的に申し上げますと、既に登録をされていて、それで新制度に切りかわったというときの確認のことを御質問かなと思いますので、それでお答えいたします。
 まず、もう既に登録をされておりますので指紋押捺をされているのが通常でございますから、指紋押捺のある登録証明書を御持参になっているわけです。ですから、おいでになったときには、写真はもちろん提出いたしますから写真によって御本人かどうかを確認し、それが登録原票あるいは登録証明書というものと同一であるかと、これで
多くの場合は同一人性が確認できるかと思いますけれども、さらにどうしてもわからない場合には、事実調査という権限も市区町村の職員にございますのでいろいろ調査をいたします。それから、最終的にはどうしても確認がとれないということになれば指紋ということになりますけれども、新しい制度は指紋がもうなくなりますので、そこはやはり事実調査権というものによって調査をするということに相なります。
#57
○糸久八重子君 ですから、窓口では写真が同一人性の確認の一番簡便な手段だというふうに私は先ほど申し上げたのです。
 それから、指紋のことなんですけれども、法務省自身が一定期間ごとに繰り返しとらなければ意味がないと主張していらっしゃったわけですが、その指紋制度が八七年の改正で一回指紋になった時点で実際的にこの指紋制度というのは機能していないと言えるのではないのですか、その辺はいかがでしょうか。
#58
○説明員(山崎哲夫君) 確かに、前回の法改正で指紋押捺は原則として一回ということに改正をされたわけでございますが、同時にその際に法改正を行いまして、申請者と本人の同一人性が確認できないときには市区町村は指紋の押捺を命令することができるという規定が置かれているわけでございまして、一回だけにしたということではございません。
#59
○糸久八重子君 必要なときには再押捺命令を出すんだからやはり合理的だというおっしゃりようなんですが、それではその再押捺命令、十四条五項一号ですか、それによる自治体の長による再押捺命令は今まで何件ぐらいありましたでしょうか。
#60
○説明員(山崎哲夫君) 昭和六十二年に法改正後、指紋によらなければ人物の同一人性の確認ができないとして外国人登録法第十四条第五項第一号の規定によりまして指紋押捺命令を発したという事例の報告は受けておりません。
#61
○糸久八重子君 ないのならば、やはり指紋制度は登録の正確性を担保する方法としては全く機能していないと言えるのじゃないでしょうかね。いかがですか。
#62
○説明員(山崎哲夫君) 指紋押捺は、確かに今申し上げましたように、これまで再押捺命令というのを発したという事例の報告は受けておらないわけなんですが、法務省におきましてはこれまで送られてきております指紋原紙に基づきまして同一人性を確認しているほか、関係機関等からいわゆる入れかわり事案というんですか、入管法、外登法違反等で不法入国者等が外国人登録証を不正入手して他人のものを使っておるというような事例につきまして、指紋によらなければ同一人性の確認ができないという場合には照会に応じまして、それによりまして同一人性の確認が行われているということでございます。
#63
○糸久八重子君 法務省がなぜ指紋押捺にこだわるのか私は本当にわからないのですが、指紋の問題で、大臣も指紋を大変気持ちよくとられた経験がおありなんだそうですけれども、私も生まれてこの方二回指紋をとられた経験があるわけです。一度は、私が働いておりました職場に泥棒が入りまして、そしてその捜査に協力するということで警察官に十本の指の指紋をとられたわけです。二度目は、六年くらい前だったと思いますが、時間制限のある進入禁止の道路、それを私見落としましてそこにうっかり入ってしまったのですね。たまたまそこに警察官がおりまして、そして指紋をそこでとられたのです。和しつこくなぜここで指紋とるんだと理由を聞いたのですが、規則だと押し切られたわけなんですね。特に事故を起こしたわけでもないのになぜ指紋をとるのか、きょうは警察庁お呼びしてないからお尋ねができないわけですけれども、私なりに考えれば、違反で事故のおそれのある人物ということなのかなということを私は考えました。
 そもそも指紋制度というのは犯罪捜査の歴史とともにあるものだと思います。指紋押捺を義務づけられて強要される在日外国人の方たちは犯罪予備軍と位置づけられているというふうにおっしゃっておりますけれども、やはりそれも私自分自身の経験としてよくわかります。
 大臣、指紋押捺が屈辱的かどうかは人によって違うかもしれませんけれども、少なからず屈辱感を訴える方が圧倒的だと思います。政府自身が押捺方式を変える努力をしてきたのはそういった感情をおもんぱかってのことであろうと理解しておりますが、一部対象者が存続するデメリットについて大臣の御見解を承りたいと思います。
#64
○国務大臣(田原隆君) 最後の言葉、もう一度ちょっと。
#65
○糸久八重子君 一部対象者が、指紋押捺しなければならないという人たちが残っているということのデメリットについて大臣の御認識を伺いたいと思います。
#66
○国務大臣(田原隆君) 先生から今指紋を押捺された御経験のお話がありましたが、私も何回かございます。何のときに何だったかという具体的な記憶はありませんが、非常に若いときに一度と、それから昔運転免許証を取ったときに一度親指でとられたことと、それから指十本、手の平までとられた記憶がございます。確かに、みんな並んでいてぽんぽんつきますから何の気なしについたし、自分は悪いことをした覚えはないし、犯罪のためでないということですから、後で洗うことを考えたら不愉快だなと思ったことはありますが、それでも手を持ってこう押さえてくれるけれども、何となく考え方が二つあるのだろうな、屈辱的な人とそうでない人とあるのだろうなというふうに思いました。
 それはさておきまして、私はこういう外国人の方の同一人性確認ということは、これは管理という解釈の幅が広がろうと狭かろうととにかく日本人でない方の同一人性確認ということは必ず必要なんだろうと思います。どこの国でも同じだろうと思います。その手段として最も一〇〇%いいのは非常に悪弊があると言われておる指紋押捺だろうと、これは不変、変わらないという、人によって違うというものでありますから、これが一番いいと思いますが、これを一〇〇%と見たときに他の手段は何かということで今法務省で開発しておりますのが三点セットであります。
 まず、写真というのは顔かたちが大体わかる、それから署名というのはその人の持っている字の書き方の癖で、これが特徴がありますので、これでもう一つ補完できる、それから家族事項というバウンダリーで補完する、そのバウンダリーの条件がどの程度あるかということでその情報量が多ければ多いほど私は指紋に近い効果を持つと思うのですね。そこで、永住性がある、定着性があるということが非常に統計学的にみてバウンダリーの情報が多いということからこういうふうになったわけでありますから、それに満たない、これはどこかで割り切るしかありませんが、今の一年から三年の方々はそういうバウンダリー情報が少なくとも永住者よりも少ないというふうに統計的に見られる。そこで、この方たちは指紋という手段で今回は解決しようということになったと私は私なりに、これは全面的な解釈というか私なりの解釈でありますが、そういうふうに考えております。
#67
○糸久八重子君 指紋の押捺義務を課せられる一年以上の短期在留者の多くは、留学生とか研究者とか芸術家とか宗教家とか、大変多種多様の方たちなんですね。しかし、共通的にこの人たちに言えることは、この人たちは帰国後、自分の国に帰って重要ポストにつくなりそれから指導的な立場に立つであろう人材だと思うのです。将来は親日家として直接、間接我が国のためにプラスになるような方が指紋押捺によって日本嫌いになってしまったら大変なマイナスだと私は思うのですけれども、その辺いかがですか。
#68
○国務大臣(田原隆君) 確かに、一年ないし三年の方には商社の勤務の方とか学者さんとか留学生の方とか、言うならばもう一度自国にお帰りになったときにすばらしい立場に立つ方々が多いと
思います。そういう方々に、先ほど私が申し上げたような情報量の関係から今回残したとすることは、デメリットは考えられないこともございませんが、しかし指紋をやたらみだりに何度も何度もとるということでなくて、一回とにかくとらせていただいて同一人性確認の手段にさせていただくということで御協力をいただくということをこれはよく理解してもらいながらやらなければいかぬことだと思いますが、そのことは、先生のおっしゃるような気持ちもよくわかりますけれども、我が国の入国管理の立場といいますか、そういう法律に定められた事項をやっていただくということで御理解いただけるのではないか、そういうふうに考えております。
#69
○糸久八重子君 今回の改正の目的、趣旨を制度改正の基本として、指紋押捺廃止において、例えば不法残留者に対しては別に考えるというのならばわかるのですけれども、制度の基本として指紋制度を残した、そして永住者、特別永住者の方々は例外的に廃止というのでは、やはり私は納得できませんですね。一年以上在留する人たちは全面廃止をして、不法残留云々という問題に関しては、これはその辺に問題があるというふうにお考えかもしれませんけれども、入管法によってこれは処理すべきことであって、本来外登法で処理するものではない、そう思うわけです。衆議院の附帯決議では、五年後に指紋押捺全廃というところまでは読み取れないのですけれども、私はこの辺のところも加えて衆議院の附帯決議があるのではないかなというふうに期待をしたいと思いますし、また、それについての大臣の前向きな答弁をいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
#70
○国務大臣(田原隆君) 院の御決議に対して御批判申し上げる立場にはございませんが、ただ私が審議の最中にいろんな御質問が出たときにお答えした答弁を思い出してみますと、現時点ではこれを最良のものとして出させていただいているが、将来にわたっては外国人もふえてくるし、いろんな問題が多様化してくるし、そしてこの制度をやってみていろんないい点その他出てくるだろう、いろんなことがわかるだろう、それに従って五年後に――五年後という表現は使いませんでしたが、将来検討をしなければならないというような感じの御答弁を申し上げたのでありますが、今、院のあれを読み直してみますと、五年を経た後に速やかに適切な措置をとるというふうに書かれておりますが、私この決議は国会の御決議でございますから重大に受けとめておりますので御理解いただきたいと思います。
#71
○糸久八重子君 五年後の見直しの衆議院の附帯決議なんですが、私が考えますには、ここの部分は当然法律の附則の部分に加えるべきものだ、そう思っておりますことをつけ加えておきたいと思います。
 それから、参考までに外国人登録制度のない国はどういうところがありますか。そしてまた、それらの国はどのようにして同一人性の確認をしておるのでしょうね。
#72
○説明員(山崎哲夫君) 私ども平成二年にアジア、ヨーロッパ、南北アメリカの国々等世界各国につきまして外国人登録制度につきまして調査した結果によりますと、移民国であるオーストラリア、ニュージーランド及びカナダの三カ国では外国人登録制度というものは採用しておりません。ただ、これら三カ国はいずれも移民国でございまして、いわゆる移民受け入れ国でございます。
 これらの国では、観光客など短期の滞在者につきましては、それらの者が所持する旅券上の写真及び署名によりまして同一人性の確認を行っておりますが、移民などで入国してくる者につきましては、それらの者が将来は自国民になるものであることから、入国前の査証申請の段階におきまして、写真を初め、たしか百項目以上にわたる詳細な本人の身分事項とか家族関係事項、本人の特技とか技術等を記載して申請されることとしておりまして、審査の結果入国を認める場合は、その居住地、つく職業があらかじめ決められておりまして、その者の身分事項については移民局を初め関係機関が詳細かつ確実に把握するシステムとなっております。したがいまして、外国人が入国後に外国人登録を行い、これによりまして同一人性を確認するという方式は必要がないという考えによるものと思われます。
#73
○糸久八重子君 それでは、次に制度改正に伴う市町村窓口の対応についてお伺いをしたいと思います。
 私は、市町村窓口で実際の外国人登録事務に当たっている担当者から運営の一端を伺ったのですけれども、大変問題点が多いということを再認識いたしました。永住者、特別永住者の指紋押捺制度が廃止されることで二本立ての制度になるということは前にも申し上げましたけれども、そのことによって機関委任事務としての市町村窓口事務がより複雑化する結果となるわけですね。
 衆議院におきまして我が党の谷村議員に対する答弁、それからさきの本院の三石議員に対する本会議の答弁でも、要は、市町村窓口での対応を含めた事務処理マニュアルを法務省で作成すること、市区町村の職員に対し事前に十分改正法の説明を行うとともに事務取り扱いの指導を行う、可能な限り事務の合理化を行うということにとどまっておるわけでございます。
 マニュアルといってもどの程度なのかも不明ですし、説明、指導といっても極めて抽象的で何をされるのか全くわかりません。法務省及び自治省は、第一線窓口の実態を十分に承知してこのような答弁を行っているのかなと大変私は疑問に思ったのです。また、百九回国会における当委員会の附帯決議で、「法執行に当たっては、関係地方自治団体の意見を十分に尊重すること。」との趣旨が決議をされておるわけですけれども、そういう趣旨を十分尊重して今回の立案に当たったのかどうか。何かいずれもその辺のところは大変疑問に思うわけなんです。
 そこでお伺いいたしますけれども、まず、改めて外国人登録事務を市区町村が行わなければならない法的根拠は一体どういうことなんでしょうか。
#74
○政府委員(本間達三君) 先生御承知のとおり、外国人登録事務は市区町村に対して国から機関委任している事務でございます。機関委任の法律上の根拠といたしましては、法務省設置法の第三条におきまして外国人の登録に関する事項を法務省の事務として定めておりますが、他方、地方自治法の百四十八条第三項別表第四の二の(七)等におきまして、市区町村長が管理し、執行しなければならない事務として外国人登録に関する事務を掲げております。また、外国人登録法において、外国人が外国人登録に係る各種申請を市区町村長に提出し、当該市区町村長が当該外国人の身分関係、居住関係を把握、管理して法務大臣へ報告すべきことが定められておるところでございます。こういう外国人登録事務が機関委任事務とされておりますのは、行政事務の能率的な遂行及び外国人登録法上の各種申請をする者の便宜というものを考慮したことによるものでございます。
#75
○糸久八重子君 機関委任事務は、本来国の負担において賄われるべきだと思います。本年度の法務省予算では、制度改革に伴いまして新規に二十億六千七百九十五万円計上されております。ところが、署名方式、家族事項の記載、原票書きかえ等は市区町村のコストアップの要因になるにもかかわらず、本年度の市区町村委託費というのは一億三千三百十九万円で前年度と同額だと。その地方公共団体への財源の措置は一体どうなっておるのでしょうか。
#76
○説明員(山崎哲夫君) 平成四年度と平成三年度の外国人登録事務委託費は同額ではございません。外国人登録事務委託費につきましては、人件費単価の改定とか件数増等によりその額は毎年ふえておりまして、特に平成四年度の事務委託費の予算は三十八億六千万円でございまして、平成三年度予算に比べまして約九億二千二百万円の増額となっております。
#77
○糸久八重子君 今回の改正に当たっては、当委員会の附帯決議、先ほど申し上げましたけれども、その趣旨を踏まえて自治省とはどのような協議をなされたのでしょうか。
 私は、自治省の見解が出されないうちに今回の改正案が提出されたと聞いておるのです。そうだとすると、百九回国会における当委員会での附帯決議の趣旨が生かされないばかりでなく、法施行に当たっての問題点の詰めが十分なされないままに制度改正が先行しているということではないかと思うのです。その辺はどうでしょうか。
#78
○政府委員(高橋雅二君) 法案を出す前には全省庁と協議をいたすわけでございますが、外国人登録法の実施に当たっては、市区町村にお願いしている結果、これは当然自治省とは密接に協議をしなければならないというふうに考えておりまして、現実に自治省とはこの外国人登録事務の運用については常に緊密な連絡調整を図ってきているところでございます。
 今回の改正法案の作成に当たりましても、私たちとしても新しい制度ができるだけ行政目的を達する上で必要最小限の負担増になる、あるいは負担増になるとすればできるだけ最小限にする、それから先ほど先生御指摘ありましたように、新しい制度を導入するわけでございますので、できるだけ混乱が起きないように、それから市区町村の職員がわかりやすいものにするということで、そういう観点からも自治省とは十分に協議してきたところでございます。
#79
○糸久八重子君 現行法改正の際にも十分に意思疎通が図れないままに進められたということで、結果として市区町村の窓口担当者が大変な精神的な負担とか、それから事務量の増加につながって窓口でのトラブルとか混乱が生じたというふうに伺いました。
 そういう今回も同じ轍を踏まないように、マニュアルの作成とか、それから説明とか指導の具体的内容、それから関係自治団体の意見の尊重等、そういう関係についてはどうなさるのか御説明ください。
#80
○政府委員(高橋雅二君) 新しい法律をつくりまして新しい制度を導入しても、その実施に当たる人たちが負担に感じ、または混乱するようでは新しい制度の趣旨に合いませんので、これは十分に準備をして、それで市区町村における事務が混乱なく円滑に行われる必要があるというふうに考えております。
 したがいまして、事務の執行に当たる市区町村の職員に、例えば研修の機会を設けるというようなことも考えております。また、具体的には適正な事務処理が図れるように、先ほどからございましたけれども、マニュアルといいますか、事務取り扱い要領を作成することにいたしまして、これに基づきまして市区町村に対して都道府県及び全国の外国人登録事務協議会主催の研修会等の場で説明し、指導するべく計画しております。そういうことによりまして、現実の窓口において迷うことがなく、スムーズに事務の新しい制度の実施が図られるようにいたしたいと思います。
 それから事務取り扱い要領、マニュアルと言いますかの配付につきましては、この改正法案が成立する時期とも関連してまだ決まっているわけでございませんが、できるだけ時間的な余裕を持って配付して、よくその内容を熟知していただいて、その上で説明会とか研修会とか、そういうことをやって円滑に導入実施に移したい、こういうふうに考えております。
#81
○糸久八重子君 マニュアル配付の時期とか、説明、指導の具体的予定はまだ立っておりませんか。
#82
○政府委員(高橋雅二君) 法案の成立時期というものにも関連いたしますので、具体的にいつというふうにはまだ決まってはおりませんけれども、できるだけ早い時期に作成し、配付したいというふうに考えております。
 特に、今回衆議院におきまして、法律が公布後、施行までに十六歳になる方について指紋押捺の義務を免除するという新たな修正案が出ましたので、そういうこともございまして、できるだけ早くそういう内容を含めまして取り扱い要領等を早急に作成して各市区町村に連絡して円滑な実施を図りたい、こういうふうに考えております。
#83
○糸久八重子君 日韓覚書によって来年の一月には法施行だというふうに言われておるわけですから、大体見通しは立てていかないとまた窓口が大変混乱するのじゃないかと私大変心配いたします。
 具体的にお伺いいたしますが、外国人登録証明書は従来は冊子だったわけですね。手書き方式でしたから即日その発行ができたわけですけれども、それが現行のラミネートカードになって、今度はプラスチックカードにしようとしていらっしゃるようですね。ラミネートカードにしろプラスチックカードにしろ調製機を必要とするようですが、今自治体には配備されていないですね。自治体はその証明書発行のために地方入管局の手を煩わせるということのようなんですが、その辺はどうなっておりますか。
#84
○政府委員(本間達三君) このたび、もし改正になりますると、先生御指摘のとおり、カードをプラスチック製のものにいたすわけでございまして、そのための調製機器の配備ということを考えておりますが、この機器、価格が割合に高いものでございまして、財政上の問題もありますし、また設置の場所、要員確保等いろいろ問題もございます。したがいまして、全国三千五百余りの市区町村の窓口がございますが、ここにすべてを配備する等の措置をとることは非常に困難でございます。したがいまして、今の計画といたしましては、地方入国管理局及び支局にこれを設置して、市区町村長の調製依頼に応じてカードを調製するということを考えているわけでございます。
 今後の計画というのは具体的にはございませんけれども、費用対効果の面あるいは設置場所、要員の確保等、いろいろ問題が解決できるものであれば、自治体において登録証明書を調製するということについても将来的には検討してまいりたいというふうに考えております。
#85
○糸久八重子君 登録証は即日交付の原則があるわけですが、こういう調製機が地方入管局にしかないということになりますと、一度申請に来て、それを窓口が地方入管局に出して、そして地方入管局からそれが戻されてということになりますと、登録者は最低二回は窓口に出頭しなければ目的を達せられないということになりますね。そうすると、大変煩わしいわけですけれども、登録者の負担軽減のための代理申請等についてはどうなっておりますか。代理申請できるのですか。
#86
○政府委員(本間達三君) 代理申請につきましては受領の方でございましたでしょうか。
#87
○糸久八重子君 受領です。
#88
○政府委員(本間達三君) 調製したカード、あるいは登録証の受領代理という問題でございます。
 一般的な代理申請の御質問と伺ってよろしいですか。ちょっともう一度確認だけさせていただきます。
#89
○糸久八重子君 今の地方入管局との関係で、結局二回出頭しなければならないと、出頭というのはおかしいですか、窓口へ行かなければならない。そうすると、本人がいろいろ都合があって二回も窓口に行けないと、そういった場合に、受領のときには代理でもよろしいのですか、そう伺ったのです。
#90
○政府委員(本間達三君) わかりました。失礼しました。
 代理受領につきましては、御本人が十六歳に満たない場合または疾病その他身体の故障がある場合のほかに、修学上その他やむを得ない事情があるときには、本人と同居する方がかわって受領するということが法律で定められております。
 また、昭和六十二年の外国人登録法の一部改正法において、登録証の受領の場合に限って、身体の故障以外の事情であってもやむを得ない事情があれば、本人と同居する者に受領ができるように規定を新設したという経緯がございまして、代理受領については当局としてもそれなりの手当てを
してまいった次第でございます。
#91
○糸久八重子君 結果として、地方入国管理局の手を煩わせなければ証明書がとれないというその現状は、機関委任事務のあり方としては甚だ疑問だと思うのですね。
 それで、今の調製機の問題によって、いや応なしに地方入国管理局の手を煩わせるというそのことによって、この証明書の発行は事実上法務省が直接所管する地方入国管理局で作製させるという意図なのではないのですか、違いますか。
#92
○政府委員(高橋雅二君) この調製機の価格は非常に高価なものでございまして、財政面からの問題のみならず、設置の場所あるいは要員の確保等問題がございまして、これらの機器を全国三千五百カ所以上ございます市区町村の窓口に配備するというのは困難な点がございます。
 そういうことから、地方入国管理局官署において調製を行うということにしたわけでございまして、そういう観点からやったものでございます。
#93
○糸久八重子君 今回も法文上は「当分の間」ということにしておるようですけれども、やはり具体的その期限についてめどを明示して、自治体の権限を尊重すべきだと思うのですね。当分の間というのは、法律の中にたくさんありますけれども、当分の間というのは単なる法律上の用語の使い方の問題であって、本当はこのことは恒久化して、また地方入管局みずからの仕事をねらっているわけではないのでしょうね。
#94
○政府委員(本間達三君) 先ほどもお答えいたしましたけれども、現在地方入国管理局あるいは支局において外国人登録証を作製しておりますということは、あくまでもその調製機の配備に関連するところの財政的な問題あるいは要員的な問題によるものでございまして、それ以上に外国人の登録事務のうちの一部の部分について特に法務省が直接にこれをやらなければこの事務が円滑に運営されないという性質のものではございません。
#95
○糸久八重子君 プラスチックカード化は、大変高価な機械が必要だから、実際には当面地方入管局でしか処理できないということのようですけれども、登録者のその負担軽減のためには、カード調製機の市区町村の配備というのは不可欠だと思いますね。
 本年度予算による配備計画とか次年度以降の予定、それから市区町村の配備の考え方についてはどうなっているのですか。
#96
○政府委員(高橋雅二君) この証明書の調製と申しますのは、従来と同様地方入国管理官署で行う予定でございまして、平成四年度予算におきまして十七台の予算措置を受けておりまして、これらを八地方入国管理局及び三支局に配置、設置する予定でございます。なお、来年度以降どうするかにつきましては、業務量の推移等を踏まえまして検討いたしたいと思います。
 それから、先ほど先生の御指摘のございました、できる限り外国人の申請に来る人の立場を考えてということについては、私たちも十分そういうことを念頭に置いて、市区町村の職員のみならず、外国人の人たちにとっても負担にならないように持っていきたいというふうに考えております。
#97
○糸久八重子君 現在のラミネートカードからプラスチックカードに変えるという、その理由は何ですか。
#98
○政府委員(高橋雅二君) 六十二年に改正を行いましたときに冊子型からラミネート型に変えたわけでございますが、これによって持ち運びが非常に簡便になりまして、かつ偽変造が非常に難しいという、こういう見通しのもとにやってきたわけでございまして、非常に改善されたというふうに考えております。
 しかしながら、最近、やはりこのラミネートというのも簡単にできるようになりまして、かつコピーの機械が改善されまして、コピーが非常に精巧なものができるようになりまして、人のものを使って偽変造してコピーをとって、それを今度自分でラミネートするというようなケースも出てきておりますので、今回これを改めることにいたしまして、偽変造が極めて困難であるプラスチックカード化し、かつサイズも小型化いたしまして、テレホンカードあるいはキャッシュカード並みと同じ大きさにして携帯に便利なものにすると、そういう考えでございます。
#99
○糸久八重子君 これは質問通告をしていなかったのですけれども、最近の偽造、変造の件数というのはおわかりですか。
#100
○政府委員(高橋雅二君) 具体的に偽変造の件数が何件あったかというのはちょっと手元に持ち合わせておりませんが、最近そういうものが出てきたという通報は受けております。
#101
○糸久八重子君 そういう通報を受けておりますということですから、大変多くはないわけですよね。そうすると、先ほど局長が目的について、非常にテレホンカードのような小さいものだから持ち運びに便利になったということをおっしゃったのですけれども、結局、やはり携帯が非常にしやすくなったとか、それから、しやすくなったと同時に、その提示義務が、簡単に提示できるというような、そのためにプラスチックカードの小っちゃなものにしたのじゃないかなというような気持ちもしないわけではないのです、私は。それは私の気持ちでございますのでね。
 続いて、家族事項が今度追加されたわけですが、それによって登録原票というのはこれは全面的に書きかえをするのでしょうか。
#102
○政府委員(本間達三君) 新しい制度になりますと、家族事項もそうでございますが、署名というものが新たに加わります。したがいまして、様式はこれを改定するという計画でおります。
#103
○糸久八重子君 私は、この原票を市役所からもらってきたのですけれども、確かにここには署名の欄もないし、家族欄もないということですから、これを全面的に書きかえとなると窓口は大変ですね、事務量としては。その辺どう対応なさるのでしょうか。
#104
○政府委員(本間達三君) 一斉書きかえという運用は行わないことにしております。すなわち、外国人の方から登録証明書の交付を伴う申請があった場合、その登録原票に新たに家族事項の登録をしていただき、また署名をしていただくということになりますが、その際に登録原票を新しい様式のものにしていただく、こういうことで順次切りかえていきたいというふうに考えております。
#105
○糸久八重子君 その家族事項の追加によって、登録原票というのは単票から複票にならざるを得ないと思うのです。指紋押捺廃止の代替措置としての面からのみそのように措置されることというのは、市区町村レベルでやはり確認義務の増加のみにつながって、事務の負担増になるだけで何のメリットもない、窓口の方たちはそうおっしゃっておられます。ですから、市区町村の委託費の据え置きのままで、原票の保管にしろ家族事項の確認にしろ市区町村はどのように対応するのか大変困ると。だから、そういう意味では、マニュアルや説明や指導、そのくらいで済む問題じゃないのだということも言っているわけで、やはり市区町村の窓口では真に住民行政に役立つ制度改正にはなっていないのだと、根本的におかしいということを担当者はおっしゃっておられました。
 したがって、我が国では近代的な戸籍制度というのが一八九八年の戸籍法から数えて九十四年、今や三世、四世を数える在日韓国人はほぼそれに近い時間的経過がたっておりまして、日本人に匹敵する係累把握が可能な状況になっている。現在でも、市区町村には在留外国人から家族証明等のため外国人登録済証明書に基づいた書類の要求が相当あると聞いておるわけですね。そうすると、現状では一枚の書式ではとても証明が不可能だと、今の現状では。一枚ではとても不可能で、大変事務煩雑になってしまうし、また大変本人も、それから市区町村も非常に不便を感じていると聞いておるわけです。
 それで、先ほども私ちょっと申し上げたのですけれども、やはり家族事項の登録というような市区町村の負担増になるだけの事務の追加よりも、この際、特別永住者等については戸籍法に類似し
た独自の制度とか、それから住民基本台帳に似たような制度を創設して当該者の便宜を図る方が、当事者にしても、それから市区町村にしてもメリットがあることだと思うのですけれども、その辺の御見解だけ伺っておきます。
#106
○政府委員(高橋雅二君) 特別永住者の方々は、歴史的にも特別な経緯がございまして、限りなく日本人に近い存在でございまして、日本社会にも定着しているという方で、我が国の経済社会発展にも寄与されている方でございます。こういう方々に対する取り扱いといたしましては、入管法の特例法というようなものでもって配慮してきているところでございますけれども、しかしながら、日本国家の構成員である日本人とそうでない外国人の方というのには、やはりどうしても法的な地位が違うということから差異が出てくるやむを得ない点がございます。
 したがって、外国人につきましては、その身分関係、居住環境を一体として把握する制度というものをとることが必要でございまして、日本人の居住環境を把握することを目的とする住民登録制度とは異なる制度によることが適当であるというふうに考えておるところでございます。
#107
○糸久八重子君 指紋押捺拒否者が、一九八八年には十六人、八九年には二十六人、九〇年二十七人、それから九一年五十六人と増加をしておるようです。ただでさえ窓口トラブルが多い登録制度が、今度の改正によって二本立て、三本立てになったら窓口事務は本当に混乱するばかりだと思いますね。人間相手の行政なんですから、幾らマニュアルや説明や指導があっても、最終的には窓口担当者の対応に頼らざるを得ないことになるわけです。
 指紋押捺の必要な者と不必要な者の違い、それからその理由説明を一つ取り上げてみても、登録者から説明を求められた場合に、三千三百ある市区町村の担当者すべてが登録者に対して十分納得のいく説明と了解が得られるのかどうか、不可能だと思うのですけれども、国としてはこれについてどのように対処していこうとしていらっしゃるのでしょうか。
#108
○政府委員(高橋雅二君) 確かに、この法律を制定いたしまして新しいシステムを導入したときに、実際にこれを実施するのは、全国三千五百カ所にございます市区町村の窓口におられる職員の方がこれを実施されるわけでございまして、こういう方々の対応でこの制度がうまくいくかうまくいかないかということが大きく影響を受けることは先生御指摘のとおりでございまして、そういう方々が混乱なくかつ外国人の方に適切に説明をし、それに協力していただく、こういうことは必要不可欠のことであるというふうに認識しているのは、私たちも同じでございます。
 そういうことでございますので、混乱が起きないように市区町村に対して、事前に改正法の説明及び事務の取り扱いの指導を行いまして、登録手続が適正円滑に実施されるよう努めてまいりたいと思います。私たちもいろいろな機会を使いまして、現場の方々の意見を聞いて、そういうものがトラブルのもとにならないようにいろいろ指導をしたりしているところでございますので、今後ともそういう点に気を使いまして、一層努力していきたいと思います。
 それから、同一人性確認の手段が永住者、特別永住者とそうでないことに分かれることについては、窓口の人が説明をどうやってするのかという御指摘がございましたが、それにつきましても説明の仕方といいますか、この法案の趣旨等を十分に説明して御協力、御理解を得られるようなマニュアルといいますか、そういうものを作成するように努力していきたいというふうに考えております。
 また、一般の外国人に対しましては政府広報とか新聞広告とか、そういう広報活動を実施することによりまして広く在留外国人に今般の法改正による新制度について周知を図るということも考えていることをつけ加えさせていただきたいと思います。
#109
○糸久八重子君 最後になりますが、問題の根幹は、近年大変ふえてまいりました我が国への外国人の出入国に対して、先ほどもお話し申し上げましたけれども、外登法と入管法、この両者の境界が非常にあいまいになってきているというふうに私は思います。
 大臣、最後になりますが、今回の改正案でも、依然指紋押捺を義務づけられる一年以上の短期の在留者は入管で十分チェックされているわけですから、外登法ではその仕組みを永住者等を中心とした法律に変えていくことも必要なのではないかと、私はそう思います。
 先ほど、在日韓国人に対する戸籍類似の独自制度創設の必要性についても申し上げましたけれども、日本で生まれ、日本で一生を全うするだろう在日韓国人の実態は、ほとんど私たち日本人と変わらない固有の歴史的事実を有しているわけでありますから、依然十把一からげで外登法で規制するということは再検討する余地があるのではないかというふうに考えますけれども、最後に大臣の御所見を伺わせてください。
#110
○国務大臣(田原隆君) ただいまの御意見、まことに貴重な御意見でありますが、今回の法律は、これを提案させていただいて、御審議の過程のいろいろな事情をよく腹の中に入れておいて、運用等で誤りのないように期していきたいし、それから、これから先の社会情勢の変化とか、法を適用してからのいろんな運営上の問題点とか、そういうものがだんだんわかってまいると思いますので、先ほども御議論いただきましたように、五年後のことが衆議院の附帯決議で書かれておりますが、そういう御趣旨を踏まえて速やかに適切な対処をしていかなければいかぬなと、こういうふうに考えております。
#111
○糸久八重子君 ありがとうございました。
 終わります。
#112
○委員長(鶴岡洋君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。
   午前十一時五十七分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時開会
#113
○委員長(鶴岡洋君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、外国人登録法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#114
○中西一郎君 まず初めに、御提案になった趣旨説明を伺いました。御苦心の上の策だと思います。
 そこで、よかれと思っておやりになったことでしょうから、改めて立法理由など聞く必要もないかと思いますが、それはそれとして、今後の問題もあると思いますので若干の質問をさせていただきたいと思います。朝の糸久先生のお話を伺っておって少しダブる点もあるんですけれども、お許しいただきたいと思います。
 まず申し上げたいのは、この三つのグループ、一年未満と一年――二年未満、それから三年以上、この三つのグループがどういう理由で筋が引かれているのかということなんですが、短期滞在、日本人が観光で外国行っていろんな批判を受けたりもしておるんですけれども、短く行く人と長くおる人とは、やはり何といいますか気持ちの上で差があるだろうと思うんです。相手国に溶け込んで、そこで仕事もしなきゃいかぬし社会的な貢献もしなきゃいかぬということを考えて行く人と、ちょっと遊びに行こうかというのでは大分差があると思いますね。その間に一年――三年未満というのが置いてあるわけですよね。その部分について指紋、こういう話なんです。
 外国から来る人、こちらから外国へ行く人も含めて考えまして、短期の人と長期の人はわかるんですけれども、この真ん中というのは一体どういうふうに考えたらいいのか。これは、ややあいまいなゾーンだからやっぱり置いておこうかということで三区分になっているのかなとも思うんです
けれども、この三区分になった基本的な認識といいますか理由は何でございましょうか。
#115
○政府委員(高橋雅二君) 外国人の日本に滞在している方々をいろいろな分類の仕方がございますけれども、滞在期間ということで外国人登録法との関係で申し上げますと、まず一年未満の方のグループがございます。こういう方々は、今これは九十日以上滞在される方は外国人登録していただくということで、同一人性確認手段という関連で言いますと写真だけというカテゴリーの方でございます。一年から三年という方は、これは定住の方とかあるいは教授、投資経営とかあるいは留学とか、そういうことで滞在される方でございまして、一定の在留資格を持って日本に滞在し、相当程度我が国のいろいろな行政上、社会上に関連を持ってくる方でございます。それから、もう一つのカテゴリーは永住のカテゴリーでございますけれども、こういう方々の中には特別永住者というような極めて日本人に近いというカテゴリーの方々がおられまして、日本の社会と極めて密着した関係にある、私たちこれを定着性が強い方々と言っておりますが、こういう三つのカテゴリーがあるんじゃないかと思われます。
 それで、第一のカテゴリーの一年未満の方々は日本との行政的な、あるいは社会との関連が余り強くないということで、外国人登録との関係では写真だけということで指紋の押捺は要求しておりませんけれども、一年以上滞在される方は、日本の社会との、あるいは日本の行政上との関連が非常に強いということで、同一人性確認というものを確実なものにするということで指紋押捺制度をとっているわけでございます。
 今般、新しく制度を設けましたのは、この指紋押捺という同一入性確認の手段によりましてより心理的負担の少ないもので代替し得るものはないかということを検討しまして、それで永住者については定着性があるということで新しいものを採用した、こういうことでございます。
#116
○中西一郎君 答弁はなるべく簡単にしてもらいたい。
 今の三つの分け方というのは、諸外国の例を大分御勉強になっておるようですけれども、諸外国ではそれが通例なんでしょうか。諸外国それぞれもうばらばらなんでしょうか。
#117
○政府委員(高橋雅二君) 外国人登録制度というのは、その国の成り立ち、地理的な条件、歴史とかいろいろの違いによりまして世界に共通した制度というものはございません。
 先ほど糸久議員の御質問のときにお答えしましたように、そういう外国人登録制度のない国もございます。大体、長期と短期ということで分けている例が多いようでございますけれども、特に永住者というようなことでシステムをとっている国は、米国などはございます。しかし、日本と同じような制度をほかにとっている国があるかといいますと、ちょっと全く同じようなシステムをとっている国は余りないんじゃないかと思います。
#118
○中西一郎君 次に、三年以上と、それから一年未満ですね。先ほど来のお話を聞いていまして、写真と署名と家族事項ですか、というようなお話があった。片方に指紋というのがあったわけですよね。ある意味ではイコールのごとく、ある意味では違うんだというような御説明なんですね。すると、その差は何なんだということなんですけれども、審議会ですか、有識者の懇談会などがあったとお聞きしたんですが、そういう場で、入国してくる人、それから国の側、両方の調整が必要だという意味で公正な管理ですか、そういう言葉が使われておると思うんですが、だとすれば一体どこに差があるんだ、その署名と写真と、片方の指紋と。これは理屈だけで考えるわけにもいかない点もあろうかと思います。というのは、受け取る側の心理状態がありますからね。
 そういうことで、どっちだとはっきり言いかねる点はあるんだと思いますが、御説明を聞いておると、この分野ではイコールなんだ、こっちの分野ではイコールではないんだ、こう聞こえるわけなんですよね。そこのところをどう理解したらいいんでしょう。
#119
○政府委員(本間達三君) お答えいたします。
 指紋押捺問題についての御質問と理解させていただきまして、今の在留者の在留期間との関係で、こういうカテゴリー別というのが生じたゆえんのものは何かというふうにお伺いいたしました。外国人登録制度の基本といたしまして、身分関係及び居住関係を把握して外国人の公正な管理に資するということでございますから、その基本となるのは、当該外国人がその者本人であるかということをまず確定してかかるということが制度の基本になるわけでございます。
 そういう手段として何があるかということで、一番最初には指紋押捺というのがなかった時代がございましたけれども、昭和二十七年の法律で外国人登録義務のある者すべてについて指紋押捺制度というものを採用いたしまして、それをもって同一人性の確認の手段として採用したということでございます。その後、昭和三十三年でございますが、短期の滞在者、すなわち一年未満の方々については、まあこれにはいろいろ事情がございました。あの当時、中国との関係等もございまして、中国の見本市の開催というようなことで中国人の方がこちらへ来られるのに指紋押捺をしなければ入国させないというような問題があって、ちょっと国際的に摩擦が生じたこともございました。それから、その当時の一般的な考え方として、貿易とか文化とかそういう短期で入ってこられる方についてはできるだけ入りやすいようにしようではないかという考え方がございました。そういうところから、一年未満の方については指紋押捺をしなくてもいいんではないかということで一年未満の方は指紋押捺義務を廃止ということに相なったわけでございます。すなわち、写真だけになったということでございます。その後に現在の指紋押捺制度がずっときまして、まあ一回制といいますか、確認の都度じゃなくて一回やればいいという制度にもなりましたけれども。
 それから、このたび特別永住者、永住者という範疇につきましては、先ほど局長からお答え申し上げましたとおり、その方々の社会への定着性ということに着目しますと、あえて指紋押捺制度によらなくても、その同一人性の確認の方法が家族事項の登録あるいは署名とかそういうことによって十分なし得るということで新しくその制度を採用した。その結果として外国人登録法の中で三つの違う同一人性確認の手法ができ上がることになると、こういうことでございます。
#120
○中西一郎君 次の問題は、この指紋ということと人権というのが絡んで取り扱われることで問題が出てくる。そこで、韓国は指紋は国民全部にやっているようですけれども、日本は我々やってない。それで、韓国が日本にいろんなことを申し入れしてきたのはどう理解したらいいのかということなんですけれども、これは人権の問題じゃなしに内国人扱いしろというようなことなんだろうかと思うんですね。すると平等ということなんですよね、人権の話じゃなしに。
 そこで、外国人登録制度というようなことに平等というような物の考え方がすぱっと当てはまるのかどうか。それぞれ国の事情があると先ほどもおっしゃいましたよね。そういうことを考えると、この指紋の問題に平等という観点を持ち込んでくるのはちょっと筋違いじゃないかという感じがするんですが、いかがでしょうか。
#121
○政府委員(高橋雅二君) 確かに指紋押捺を強制されない、みだりに指紋をとられないというのは、これは人権の一つではないかという考え方は、今国際社会といいますかそういう中では定着しつつある考えではないかという意見が非常に強うございまして、そういう考えが日本にも広がっていることは確かでございます。しかし、ここで言われているもう一つの人権上の問題というのは平等の問題でございまして、これは韓国が問題にしているのはむしろ平等という、日本人と同じような扱いにすべきだということではないかという観点からの御質問でございますが、確かに、
いわゆる在日韓国人の方というのは日本の社会に極めて深い定着性を持って生活されておられる方でございまして、歴史的な関係からいいましても日本人に極めて近い存在であるというそういうことから、韓国の政府はこういう人たちを日本人並みに扱ってほしいという観点から要求してきたということは、それも一つの背景としてあるかもしれません。
 その関連で、それでは外国人に対する指紋押捺制度というのが内国民待遇といいますか、内国民と同じような待遇にするべきであるという平等の原則になじむかなじまないかという話でございますが、人権といいますか、そういう制度というものはできる限り内外人等しくした方がいいということは一般的に言えるかと思います、国際的に開かれた社会においては。しかしながら、日本人というものは、先ほどから御説明申し上げましたように、何の許可もなくして日本に居住することができ仕事ができるわけでございますけれども、外国人はやはり日本に居住すること自体が許可の対象になるという、そういう意味で日本人と外国人については根本的なといいますか基本的な差異がございます。そういう差異から生じてくる違った取り扱い、すなわち外国人には指紋押捺を求めるということは必ずしも法のもとの平等といいますか、そういうものに反しているというふうには言えない、したがってそういうような取り扱いをしても法のもとの平等といいますか、そういうものに反している、それで国際的な批判に法的にたえられないということではないというふうに考えておるところでございます。
#122
○中西一郎君 以上、外国人登録法の関連なんですけれども、実はこの問題は、人間といいますか人格を中心にした話、また国と国との関係ということでのテーマだと思うんです。それで、少し時間がありますので恐縮なんですけれども、これは質問というよりも考え方を申し上げて、むしろ皆さんの批判を仰ぎたい点なんです。
 最近目に入ったのはドイツ民法の改正なんですよ。これは日本文で二行ですけれども、まず、動物は物でないと書いてある。あとつけたりは申し上げませんが、実はどうしてこういう改正が行われたのかということを知りたいんです。
 というのは、あの国は御承知のように酸性雨で森が大変な被害を受けていますし、チェルノブイリの問題もあったし、環境問題大変やかましい。そこで、ローマ法と言っていいのかな、ずっと長い千何百年の法体系の中で人間を中心にして、その関係あるいは人格と人格、国と国、そういう法体系になっている。ところがここで、動物というのは人間と同類であると翻訳ですけれども書いてある。ということは、何か人間と環境といいますか、人間と自然というのかな、そういうもののかかわりを意識して法体系に取り込まざるを得ないような何か時代が始まっておるのかもしれない、私はそういう受け取り方をしているんですよ。そのことは、人間は人間中心で、物は物で使うんだと、どう加工してもいいんだとか、資源は収奪していいんだとかというような近代文明の流れがありますので、それでは人類に未来がないという議論が今出始めているということで、ドイツのこの立法の趣旨はよくわからないんですけれども、皆さんこれはおかしいぞというんで、まず動物を人並みに扱うというようなことから始まったのかなということが一つ。
 それともう一つは、これは民事局に聞くことでないのかもしれませんが、しかし念頭に置いておいてもらって、また機会があれば勉強させていただきたいんですが、要するに、環境というものを考えると、人間は生かされておるという関係でもあるし、環境もある意味で生き物である、植物もね。そういうことを考えると、この北川善太郎先生の書いておられる本ではDNAまで言っているんです。全部生き物じゃないかというような言い方なんですが、もうそこまで今ここで踏み切る意識変革というのはとても一般的なものにならないと私は思いますが。そこで、この動物というのを取っかかりにして、次は植物、次は環境、そういうものに人格権というとおかしいですけれども、それに被害を与えれば向こうから仕返しかあるんだというような意味も含めて、お互いに生きていくという、共生というんでしょうかね、共生というようなものを踏まえた法体系というものが、いつできるのか知りませんよ、しかし、そういう時代の入り口としてこの民法改正があったんじゃないのかなという感じがしているんです。
 それからもう一つは、これは去年の四月九日、ここで私、これまた余計な話なんですけれども、憲法前文を改正して一人間と人間、人間社会のことが書いてある、平和とか民主主義とか自由とか書いてあるんですが、自然の中で生かされておるという理念を前文に入れるべきじゃないかというようなことを申し上げたことがあるんです。この民法改正見ましてそれをちょっと思い出したんで、そこできょうこんな話になったんですけれども、前段の話、外国人登録法の問題は、言ってみれば人と人の分野の、在来の法体系の話。しかしここで、ドイツ国民が何を考えているのか知りませんが、意識の変革があれば、人と自然というものについてもやっぱり法がカバーせにゃいかぬというようなことが問われているのかなという気もしますんでね。
 そんなことで、これは答弁してくださいとは言えないんだけれども、法制審議会の話なのか、これもちょっと疑問があるんですが、念頭に置いていただいて、きょう何かおっしゃっていただけるんなら大臣からでもお聞きしたいんですけれども、後々また何かありましたら、そんなことについて勉強する機会をお与えいただきたいと思います。非常に簡単に申し上げましたので、御理解いただけたかどうか疑問がありますけれども、一言申し上げたわけでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
#123
○国務大臣(田原隆君) 大変貴重な興味ある御意見いただきましたけれども、どうも、私も今立場は法務大臣でございまして、法務省だけで考える枠を超えた範囲のような気もしますので、非常に答弁に苦しんでおるわけです。ただ、人間が動物と対等であるという、つまるところそういうお考えのような気がしましたけれども、動物同士はどうかというと、お互い食い合いしたりしながら生態系を維持しているということになると、人間もその生態系の一環であるということは間違いないわけです。人間自分がその生態系を滅ぼせば自分が滅びるという観点から環境保全をし、そういう生態系の保全をしなければいかぬ。だから法体系の中に取り込むというような論理ではないかと思いますが、御意見非常に興味深くお聞きしましたので、承っておきながら、そういう行動といいますか、人権の問題の中に啓発という言葉がありますけれども、気持ちの問題として啓発にこれ努めなければいかぬなと、そういう気持ちでおります。
#124
○中西一郎君 今作業中なんですけれども、参議院に外交安全保障調査会というのがあり、不肖私が会長として預かっているんですけれども、作業をやっているんです。こういう動きがあるんですよ、人間と人間、国家と国家の共生、ともに生きる、ここも大事なんですが、同時に人間と自然と両方とも、何というのかな、どっちが優位ということでなしに、ともに生きるということが必要なんじゃないかと。これは京都におられる梅原猛さんが来られまして、約二時間我々とディスカッションしたんですが、そのときのメーンテーマ、もう一つあるんですけれども、それは省略します。
 そういう意味で、外国人登録法の問題も、地球上の各国、国民というか国家がともに生きていくということの仕組みの一つだろうと思いますし、それと、人と人とのほかに人と物という関係も、これからは法律だけでなしに、政治の場でも柱を掲げて取り組まないといかぬ。まさに環境というのはそういう問題でございますから、そういう意味できょうは二つ申し上げたわけでございます。
 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
#125
○中野鉄造君 ただいまは中西先生から極めて高い次元の示唆に富んだお話が出ておりましたけれども、私は、極めて現実的な質問をいたしたいと思います。
 今回の法改正については、午前中からいろいろと質疑が行われております。重複するところもあるかと思いますが、改めて御答弁をお願いいたしたいと思います。
 一年以上の在留外国人のうち、永住者及び特別永住者について指紋押捺を廃止し、これにかわる同一人性の確認手段を採用することをポイントとしておるというわけですが、そこでお尋ねいたしますけれども、この平和条約国籍離脱着及びその子孫について指紋押捺を廃止することとしたその経緯について御説明いただきたい、これがまず一点。それから、これらの人たち以外の一般永住者についても指紋押捺を廃止することとした理由は何であるのか。この二点をお願いいたします。
#126
○政府委員(高橋雅二君) お答えいたします。
 今回の改正は、昭和六十二年の外国人登録法改正の際の衆参両院法務委員会におきます附帯決議及び日韓法的地位協定に基づく韓国政府との協議の結果を踏まえて行うものでございます。今回、開発され、採用することといたしました指紋押捺にかわる同一人性確認手段である写真、署名及び家族事項の登録による複合手段というのは、特別永住者に極めて有効な手段ということでございます。ただ、これは参議院の法務委員会の決議にございました長年我が国に在留する外国人のこともよく考えて新しい指紋押捺にかわる手段を開発すべしという趣旨を踏まえた結果、このような手段を開発したわけでございます。
 それで、この開発された手段を見てみますと、これは我が国の社会に定着している似たような環境にあるそういう外国人の方、すなわち特別永住者じゃなくても法務大臣から永住の資格を得ている永住者の方々についても、新しく開発した手段というのは指紋にかわる同一人性確認の手段になり得るという結論に達しましたので、韓国との話はいわゆる特別永住者、そのうちの在日韓国人の方々だけでございますけれども、これを特別永住者、さらに同じような社会的に定着性の強い一般の永住者についても指紋押捺制度を廃止して新しい制度を適用する、こういうことにしたわけでございます。
#127
○中野鉄造君 この改正の動機として衆参両院の附帯決議並びに日韓覚書を挙げておられるんですが、外国人登録法の基本問題についてはどういうような事項をどのように検討されてきたのか。今回の改正は日韓覚書という国際公約の履行という面に重点が置かれる余り基本的人権尊重の観点からの改正とはなっていないのじゃないかなという、こういう見方も出てくるんですけれども、いかがでしょうか。
#128
○政府委員(高橋雅二君) 今回の改正は、先ほど申しましたとおり、昭和六十二年の衆参両法務委員会における附帯決議とそれから日韓間の覚書に基づいているものでございます。
 しかしながら、その経緯を見てみますと、六十二年の衆参法務委員会におきまして附帯決議がなされた背景には、指紋押捺を求められる人の心理的抵抗感、あるいはこれは人権の侵害に当たるんではないかと言っている人がいるという認識があって、こういう附帯決議が出てきたというふうに認識しておりますし、またこの法案の改正に当たりましては、私たちといたしましても、日本国憲法また日本国政府が締結しております国際人権規約の関連規定を十分に考慮いたしまして、人権という観点からも検討を加え配慮してきたということでございますので、この日韓に引っ張られて人権の観点が抜けているのではないかという御質問に対しては、十分その辺は考慮して行いましたというふうにお答えさせていただきたいと思います。
#129
○中野鉄造君 今、憲法のお話が出てきましたが、この個人の尊厳を規定した憲法十三条その他の規定でもこれは保障されていると理解しておりますけれども、外国人登録におけるその指紋押捺と憲法の関係についてはどのようにお考えでしょうか。
#130
○政府委員(高橋雅二君) 我が国に在留する外国人につきましても、日本国憲法で保障された基本的人権というものが尊重されるべきことは当然でございまして、私たちこの改正案を作成するに当たりましても、その点は十分考慮して改正案の作成に当たったわけでございます。
 しかし、こういう基本的な人権が外国人についても保障されるべきであるという憲法の規定、精神にかんがみましても、同時に人権というものは無制限に保障されるわけではなくて、公共の福祉のため必要ある場合には相応の制限もやむを得ないということが言われております。
 みだりに指紋を採取されないという自由は、憲法の保障する私生活上の自由の一つとされておりまして、外国人についても保障されるものでございますが、外国人登録の指紋押捺というものは、正確な外国人登録を維持するために必要なものとして外国人登録法に定められた制度でございまして、このような合理的な必要性に基づいて自由の一部が法律によって制限されても、かかる制約が人権の侵害に当たらないというふうに考えているところでございます。
#131
○中野鉄造君 午前中も質疑があっておりましたけれども、一年以上の在留者で永住者等でない者には指紋押捺義務というのが残されておりますが、その理由については、午前中も御答弁があっておりました。
 ところで、今回のこういう一部そうした残された人たちがいる、残されたままになった改正であるということでございますが、今回の改正、これも一つの今後に対する全廃へのいわば一里塚と、こういうように理解してもいいんでしょうか。将来は全廃ということになっていくんでしょうか。
#132
○政府委員(高橋雅二君) 今回の改正で指紋押捺にかわる外国人の同一人性確認手段として採用することといたしました写真、署名及び家族事項の登録という複合的な手段は、長年本邦に在留し、我が国社会への定着性の高い永住者及び特別永住者については有効と言えるわけでございますが、それ以外の外国人については類型的に我が国社会への定着性が認められないということで新しい同一人性確認が有効に機能しない、そういう考えから現行の押捺制度を維持することとしたものでございます。
 しかし、指紋押捺については、心理的な負担を伴うところがございますので、将来これらの者についても指紋押捺よりも心理的な負担が少なくてかつ確実なものがあれば、これは変わっていくのが望ましいというのが、従来、この前の衆参法務委員会の附帯決議の趣旨ではないかと思うわけです。
 私といたしましては、今ここで、私といいますか法務省入管当局といたしましては、現在におきましてはこの案が一番最高、現時点における最善のものでございますので、これが全廃へ向けての一歩かどうかということについてはここで申し上げるわけにはいきませんけれども、今申し上げましたように、指紋押捺にかわる手段が心理的な抵抗感の少ないものが開発されるならばそれが望ましいというのがこの附帯決議の趣旨であり、これは私たちとしても念頭に置いて今後検討を進めていかなければならないものであるというふうに考えておるところでございます。
#133
○中野鉄造君 ただいまの私の質問に対して、大臣はいかがお考えでしょうか。
#134
○国務大臣(田原隆君) ただいま政府委員から、最後のところで御答弁申し上げておりましたが、現時点、ただいまの時点ではこの方法が最高であるという選択をさせていただいたわけでありますが、ただ将来、社会情勢が変わってくるだろうし、国際化の進展等を踏まえましてですね。それから、この制度を運用してみて、その実績もいろいろわかってくるだろうし、また技術の進歩がこれは必ずあるはずだ。そういうこと等を土台にしましてこの制度の研究、検討を続けていかなけれ
ばならないというのは私たちの使命であります、当然提案省としての使命であります。
 そこで、この前の衆議院のときにおきましても附帯決議がつけられましたが、これは我々院の決議でございますから、衆参どこでつけられてもこれは尊重してまいらなければなりませんが、制度の検討と将来における適切な措置というのを施行後五年後にやれというような意味の決議がつけられてありますが、この問題について真剣に検討してまいりたい、そういうふうに考えておる次第であります。
#135
○中野鉄造君 今回、指紋にかわるものとして、先ほどからお話があっておりますように、鮮明な写真、署名、一定の家族事項の登録が求められておりますけれども、このうち新たに登録事項とされた家族事項がどのような理由で採用されたのか。また、国内に在留する父母及び配偶者の氏名等を登録事項としたことによって、同一人性の確認の手段としてこれがどのように機能を果たすのか、その辺のところを御説明いただきたいと思います。
#136
○政府委員(高橋雅二君) 同一人性の確認のために、従来使っておりました指紋押捺制度にかわるものにつきましていろいろ検討を加えました。より心理的負担の少ないもの、より簡便なもの、より採用しやすくかつ効果的なものにどういうものがあるかということで、ほかの国の例など、それから我が国の社会情勢等をいろいろ勘案いたしまして、今採用しております写真に加えまして署名、これは最近日本におきましてもアジアの諸国におきましても署名というのがだんだん定着しつつございます。それと家族事項の登録、その三つを組み合わせることによりまして指紋押捺にかわる、それとほぼ同じ程度の正確性を持って同一人性が確認できるのではないかという結論を得たわけでございます。その手段を採用することによって、外国人登録の目的である在留外国人の公正な管理に資するという、この目的が達成できるというふうに考えた次第でございます。
 次の御質問で、では家族事項を登録することによってどうやって同一人性が確認できるのかということでございますが、写真や署名によってどうしても同一人性が確認し得ないときは、すなわち人物の同一人性にどうも疑いが生じたような場合は、登録されている人の家族に照会することによりまして同一人性を確認することが可能になるというふうに考えるわけでございます。
 こういうことから、外国人登録に家族事項を記載することは人物の同一人性の確認に十分役立つものであり、この三つを組み合わせることによって指紋押捺に十分がわる有効な手段となり得る、こういう考え方でございます。
#137
○中野鉄造君 今おっしゃったようないろいろな確認事務というようなことは、しょせんは市町村の窓口で行われるということになると思いますが、写真だとか署名にやや疑わしい点があるというようなときにこれが必要になってくるんだというお答えですけれども、そういうときに、いろいろなことを照会するというような場合に、仮に職場等に照会をすることについて、これはやっぱり今度はプライバシーへの配慮も必要になってくるんじゃないかということが予想されます。そういうことをいわゆる地方の窓口への機関委任事務として、実際の窓口を担当する市町村へのそうした非常に細かな、下手をすれば大きな国際間の問題にもなってくるというような大事なことなんですけれども、そこらのところへどういうような指導を予定されておりますか。
#138
○政府委員(高橋雅二君) 指紋押捺ということにかわる手段でございますので、指紋押捺を命じるよりはもっと心理的負担あるいは仕事の負担が少ないようなものが望ましいわけでございまして、今回この指紋押捺にかわる手段として採用したものは、これを受け取るといいますか、実施する市区町村の窓口の職員及びその対象となる外国人にとっても指紋押捺よりはより負担の少ないものであるということが望ましいわけでございまして、せっかく新しい制度を導入したにもかかわらず、かえって心理的にもまた負担になり、仕事の上でも過重になり、あるいはまた混乱するということになってはせっかく新しい制度を導入しても元も子もございませんので、この辺は十分にそういうことが起きないようにやっていきたいというふうに考えております。
 通常の場合は、写真とそれから署名ということで同一人性が確認できると思いますけれども、どうしてもそれでできない場合は、今先生がこういう場合があるんじゃないかと御指摘になったように、親戚の人、親戚といいますか、家族の人に電話したり、あるいはほかのところに照会などをして同一人性の確認ということが行われるわけでございますが、その際は、確かにプライバシーとかいろいろ問題がございますので、その辺はせっかくの新しい制度の趣旨が無にならないように気を配ってやっていただきたいというふうに考えております。
 そのためには、先ほどの委員の御質問にございましたときにもお答え申しましたけれども、事務取り扱い要領といいますか、マニュアルを作成するとか、市区町村の職員に対し法務省主催の研修会を初め、都道府県及び全国の外国人登録事務協議会主催の研修会などを通じまして指導する所存でございますが、それと同時に、いろいろ経験を積んだこういう市区町村の方々の話も聞きながら、そういう経験をみんなでシェアするような形でスムーズに実施に移していきたい、こういうふうに考えているところでございます。
#139
○中野鉄造君 これはもう既に衆議院でもいろいろ聞かれたことと思いますけれども、署名できない人にはどういうふうにするんですか。
#140
○政府委員(本間達三君) 署名できない方というのはいろんな理由がございますと思います。例えば字が書けないという方とか、それから身体の故障であるとか、あるいは病気の方とか、いろんな理由によって署名ができないという方もおられます。また、署名をあえて拒否するという方も考えられないわけではございません。
 いずれにしましても、そのように署名がないという状態になりますと、これらの人についてのその次の登録の確認申請までの時期、これを短縮するという措置をとるように改正法の十一条の第三項に規定を設けた次第でございます。すなわち、現在ですと、指紋押捺を拒否した場合に次回までの登録確認申請期間、原則は五年でございますが、これを一年以上五年未満の範囲内で市区町村長が指定した期間に短縮する、そういう措置をとることになっておりますが、これと同様の措置をとるということにいたしたいと考えております。
#141
○中野鉄造君 先ほどから申しておりますように、従来指紋押捺を求めるということは、同一人性の確認手段としての機能のほかに、不法入国者等による正規在留外国人へのいわゆる成りかわりを防ぐ効果があると説明されてきましたけれども、今回は永住者等についてはその心配は全くなくなったのか、もしそうであるならば一年以上の在留期間を決定された外国人についても指紋押捺を廃止することは可能じゃないのか、こういう考え方にもなってくるんです。一年以上の在留者は定着性がないとたとえ言っても、本人の知人、職場の同僚等が全くないということは考えにくいんじゃないかと思うんですが、この点いかがでしょうか。
#142
○政府委員(本間達三君) 指紋押捺が同一人性確認の絶対的な手段であることは疑いのないところでございます。それにかわる同一人性の確認手段としてこのたび採用いたしました制度は、永住者、特別永住者のように、社会との定着性があるということによって初めて有効に作用するということで、先生御指摘のような人と人が成りかわるというような場合にも新しい制度が有効に作用して同一人性が確認できるということでございます。
 それでは一年以上の方はどうかということになりますと、先ほど来局長の方からも答弁ございましたけれども、一般的に言えば、永住者、特別永住者と異なりまして、家族等からの人的情報が不十分であるというふうに考えられますので、その
新しい方式はとりにくい、いわゆる十分に機能しにくいというふうに判断して指紋押捺制度を従来どおり維持したいということでございます。要するに、家族事項という登録事項が十分に機能しない範購の方々として我々は一年以上の中期の滞在者の方々を考えているわけでございます。
 これらの方々に仮に指紋押捺を廃止するということに相なりますと、極端な例は写真と署名ということが残る、家族事項がきかないということになりますと写真の持つ問題点、例えば容貌の変化であるとかあるいは他人のそら似であるとかということで、写真それ自体はそれだけで完全な同一人性確認の手段としては十分に機能しない場面がある上に、また署名というものもやはり経時的な変動というものは個人によって多少出てくるという問題とか、あるいは偽造のおそれもないわけではないというようなことで、その残った二つの手段をもっては指紋押捺に代替する手段としては不十分ではないだろうか、そういうことで、成りかわり事案を防止するという観点からいきますと、永住者等の場合にとった手段を一年以上の方にとることによってはその成りかわり防止ということに十分対処し得ないというふうに考えているわけでございます。
#143
○中野鉄造君 今回の改正に当たっていろいろ巷間耳にすることは、指紋押捺全廃というような事柄についてはやはり警察庁の方でもうかなりのいろいろな抵抗というか反対があったというようなことも聞き及んでおりますけれども、もしそうだとすれば警察庁の方ではどういう点を一番問題視されたのか、その辺お尋ねをします。
#144
○説明員(奥村萬壽雄君) お答えをいたします。
 今回の外国人登録法の一部改正につきましては、主管の法務省を中心といたしまして制度面、運用面の各般の観点から鋭意検討されまして成案ができたものと承知をしております。警察庁といたしましては、犯罪捜査あるいは職務質問等の各種の警察活動を行います上で外国人登録の正確性が保たれ、外国人の身分関係、居住関係が明確になっている必要があると考えているところでございまして、そうした観点から必要な意見を申し出てきたところでございます。
 今回の改正では、在留期間が一年以上の長期滞在者には従来どおり指紋押捺制度を適用し、また永住者につきましては写真、署名並びに家族事項の登録を複合的に組み合わせることによりまして人物の同一人性の確認を行いまして身分関係等の明確性を維持する、そういう機能が果たせるものというふうに理解をしておるところでございます。
#145
○中野鉄造君 今の済みません、ちょっと最後の部分をもう一度。
#146
○説明員(奥村萬壽雄君) 今回の改正では、在留期間が一年以上の長期滞在者、これにつきましては従来どおり指紋押捺制度が適用される、それから、永住者につきましては写真、署名、家族事項の登録を複合的に組み合わせる制度を適用されることによりまして人物の同一人性の確認を行う、そうしたことによりまして身分関係等の明確性を維持する機能が果たされるというふうに私どもは理解をしておるところでございます。
#147
○中野鉄造君 ちょっと変なお尋ねをするわけですが、参考までに聞かせていただきたいんですが、自動車の免許を取った人たちは運転する場合は常時免許証を携行しなくちゃいけないということが規定されておりますね。それと今回の外国人登録証はこれまた常時携行しなくてはいけない、こういうことになっておるんですけれども、ここはどういうような違いがあるんですか。どういうふうに理解したらいいのか。
#148
○政府委員(本間達三君) どういうふうに違うかという御質問でございますけれども、申すまでもございませんが、運転免許証というのは運転行為を行うためにはそれを携帯するということが義務づけられているわけでございますから、ある人が外へ出ていくのに常時携帯するといういわゆる外国人登録法上の携帯とはちょっと違います。特定の活動をする場合にだけ必要とする。ところが、外国人登録法上の携帯義務は、常時携帯という言葉のとおりでございまして、常にこれを身につけて社会に出ていただきたい、こういうことでございます。いわゆる特定の活動をするときにだけとかいうことでなくて、一般的に義務づけられているというふうなそういう違いがございますけれども、ちょっと御質問の趣旨にお答えできたのかどうかわかりませんので、さらに御質問があればいただきたいと思います。
#149
○中野鉄造君 終わります。
#150
○橋本敦君 私ども共産党としては、指紋の全廃ということで衆議院で修正案の提起をいたしました。外国人に対する治安対策あるいは管理という考え方を基本的に改めて、合理的な、近代的な体制にこの際移行すべきだというのがその考え方の基本でありました。具体的には、外国人登録証明書の制度を廃止して、一定事項を登録票に登録するということで事足りるという改正を目指したわけでございます。
 そういう立場で質問をするわけですが、指紋の登録という問題について、果たしてこれが今日の民主的な、国際的な潮流ということが言えるのかどうかということで、まず第一の大きな疑問があるわけでございます。
 そこで伺いますが、こうした外国人登録上の指紋採取制度をとっている国は今日どういう国があるのか。その中で特に厳密に答えていただきたいのは、国際人権規約を批准している国の中で指紋採取制度を採用している国があるのかどうか、この点区分けをしてお答えいただければと思いますが、いかがでしょうか。
#151
○政府委員(高橋雅二君) 外国人登録制度の関係で指紋押捺制度を採用している国は、私どもの平成二年の調査によりますと十九カ国ございます。その中で人権規約を批准している国はどういう国があるかという御質問でございますが、ちょっと今手元にその資料がございませんので、そのうちのいずれの国が人権規約に入っているかということは今ここではお答えできませんので、申しわけございません。
#152
○橋本敦君 それでは後日また審議がございますから、それまでにお調べおきください。
 そこで、外国人登録制度で指紋押捺を採用している国が十九カ国ということですが、採用していない重立った国の国名を挙げていただけますか。
#153
○政府委員(高橋雅二君) 外国人登録制度を実施している国で指紋押捺制度を採用している国といたしましては、例えば、アジアで申しますとインドネシア、韓国、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ等がございます。ヨーロッパでは、ポルトガル、スペイン等がございます。米州では、アメリカ、メキシコ、アルゼンチン、ブラジル等で、十九カ国でございます。
 なお、アメリカにつきましては永住者についてのみ指紋押捺を実施していると承知しております。そのほか、シンガポール、タイにつきましても永住者についてのみ実施している、そういうふうに承知しております。
 採用していない国について申し上げますと、アジアの国といたしましては、中国、インド、イラン、パキスタン等ございまして、ヨーロッパではフランス、イギリス、ドイツ、オーストリア、スイス、ベルギー、イタリア等、調査四十六カ国中二十七カ国が指紋押捺制度を採用していない国でございます。
#154
○橋本敦君 総体的には指紋押捺制度を採用していない国の方が大勢といいますか数が多いということはわかります。
 それから、いわゆるサミット参加先進諸国の中で指紋押捺制度を採用しているのはアメリカだけということになりますか。
#155
○政府委員(高橋雅二君) サミット参加国で指紋押捺制度を採用しているのは、日本以外にはアメリカだけということになります。
#156
○橋本敦君 しかも、そのアメリカも、アメリカは国籍取得については出生地主義をとりますから、だからアメリカで生まれた人はアメリカ国籍を取得するという、そういう権利性を持っている
わけですね。だからしたがって、外国人として指紋押捺を適用する対象ということになりますと、そういうアメリカの特殊な国籍条項の関係もあって対象は非常に少ないというように私ども聞いておるんですが、その点、実情を御存じですか。
#157
○政府委員(高橋雅二君) 永住者というのは、これはいわゆるグリーンカードを保持している人でございまして、これは毎年かなりの数に上るというふうに承知していますけれども、具体的に何名というデータは持っておりませんので、これが多いのか少ないのかちょっとここでは申しかねますけれども。
#158
○橋本敦君 要するに、私がまず指摘したのは、指紋押捺制度をとっている国というのは、今日のいわゆる先進資本主義国を中心とする、あるいは旧ソ連もとっていませんけれども、先進諸国の中では少ない例になっているということを明らかにしたかったわけですね。だからしたがって、我が国でもこの問題がいろいろ議論されてまいりましたが、在日韓国人、朝鮮人の皆さんの権利という問題だけではなくて、今日この問題を議論するスタンスとしては、まさに国際社会に我が国がその一員として入っていくという大きな観点から、今日の世界のそういった流れを目指しながらこの問題を考えていかねばならぬというところに今きていると思うんですね。
 そういう点から考えますと、指紋押捺制度を全面的に廃止していくという方向こそが今後我々のとるべき方向だということを基本的には政府も認識をしておく必要があるのではないか、こう思っておりますが、大臣の所見はいかがでしょうか。
#159
○国務大臣(田原隆君) 先ほども別の委員の御質問にお答えしましたけれども、現時点では、いろいろ協議し、ディスカッションし、こういう提案にさせていただいておりますが、国際情勢、社会情勢、これはどんどん変わっていくと思います。それから、同一人性の確認というのはどこの国も必要だと思います。その手段が最も簡便で最も完璧だったのが指紋だ、だけれども代替手段として三点セットができたのだ、それはほかの情報の補完によって代替している、その補完の度合いが少ないものについてはまだ今残しておるということで、技術の進歩によってその補完の度合いが非常に小さくなるかもしれないし、その辺は見守っていかなければならない。それから、この制度をアプライすることによっていろんなことがわかってくると思うのです。その結果も参考にしなければならないということで、当然提案者としては、時代の推移に合う体制づくりのための検討をしなければならぬというふうに思っておりましたところ、衆議院の方でも附帯決議で五年後の適切な見直しをしなさいというような意味の決議をいただいております。これは重大に受けとめておるわけであります。
#160
○橋本敦君 今大臣から衆議院における附帯決議、五年後の抜本的な見直しに通ずる問題は重く受けとめるという御答弁をいただいたわけですが、それは私が指摘した今後の国際社会の展望ということも踏まえて、民主的な世界の人権擁護の潮流に即して検討しなきゃならぬということも認識の上では大臣もお持ちだというように私は理解して、次の質問に行きたいと思います。
 この問題については、現時点でも私は憲法問題に深くかかわっているというように思っているわけでありますが、その問題を私の考えということで言うのではなくて、現に裁判所でもその考え方が明白にされている判例があるわ。であります。
 きょう法務省からいただいた資料にもあるんですが、具体的に言いますと、東京地裁の判決がございまして、再入国不許可処分取り消し請求事件の平成元年四月二十八日の判決であります。この中で、裁判所が判断を示した理由の中で、「みだりに指紋押なつを強制されない自由と憲法第一三条」という項目の中でどう言っているかということであります。憲法十三条は言うまでもありませんが、「すべて国民は、個人として尊重される。」という基本的人権擁護の一つの核心をなすわけでありますが、これに関連をして裁判所は、
 指紋を採取された人間は犯罪者扱いされたよう
 な不快感、屈辱感を抱くことを勘案すれば、人
 は、個人の私生活上の自由の一つとして、承諾
 なしにみだりに指紋押なつを強制されない自由
 を有するものというべきであり、国家権力が正
 当な理由がないのに指紋の押なつを強制するこ
 とは、憲法一三条の趣旨に反し許されないもの
 といわなければならない。
 こう判断しているわけです。だから、正当な理由がないのに指紋の押捺を強制するということは、憲法一三条に反するということをまず原則としてうたっているわけです。
 この考え方、基本的には今の問題についても将来の問題についても大事な憲法的視野だと私は思っておりますが、局長はこの考え方いかがお考えですか。
#161
○政府委員(高橋雅二君) 日本国民にかかわらず何人もみだりに指紋を強制されない権利といいますか、そういうことは基本的人権の一つであるという考え方は我が国におきましてもだんだん定着しつつございまして、この考え方かごの判例にも反映されているわけでございますので、私たちも改正法案の作成に当たりましてはこういうような考え方も念頭に置きながら作業を進めてきたところでございます。
 また今後とも、この運営、この法律に基づきますシステムの実施に当たり、また今後行います検討に当たりましても、今のような考え方を十分念頭に置いてやっていきたいということでございます。
#162
○橋本敦君 したがって、この問題はまさに憲法にかかわる基本的人権上の重大問題だということであることは今の御答弁のとおりです。
 そういたしますと、まさに指紋押捺にかわる合理的な方法がある限りにおいては、指紋押捺制度はこれは全廃をしていくというのが基本的な考え方として合理性を持ってくるわけです。
 そこで、法務省も指紋押捺にかわる方法ということをいろいろ検討されて、今度の写真と署名とそれから家族状況の登録ということの三つの点で永住者についてはかわり得るものと、こうされたわけです。そうなると、同じ外国人でありながら一年以上の日本に滞在する外国人について、永住者以外ですね、依然として指紋を残しておくということは、これは憲法上非常に大きな問題として浮かび上がってくる、この法案によって逆に、ということに私はなると思う。
 具体的に言いますと、憲法十四条の関係なんです。同じ外国人でありながら、一方は指紋押捺制度がなくなった、それはまさに憲法上重大な問題として、かわり得る方法としてこういうことがあるということでなくなってきた。一方、同じ憲法上重大な問題である指紋押捺制度が外国人という同じ立場にありながら残されている。これはまさに私は、憲法十四条の法のもとの平等に違反するという新たな問題を今度の改正法案は具体的に提起していると言わざるを得ないと思うんです。
 そこのところの関係はどうお考えですか。
#163
○政府委員(高橋雅二君) まず、十三条との関係につきましては、先ほど申し上げました考え方がございまして、それを念頭に置いて検討したわけでございますが、私たちといたしましても指紋押捺というものは、基本的にはこの取り扱いにつきましてみだりに指紋を強制するものではない、正当な合理的な理由があるということでこれは違反はしてないという前提で考えていたわけでございます。
 それから、委員御指摘の点は永住者等から指紋押捺の義務を外すことによって、新しい制度をしくことによって今度は新しい憲法上の問題が、すなわち十四条の法のもとの平等という新しい問題が出てきたんじゃないか。すなわち、外国人の中で差別をするということになって、これは法のもとの平等という憲法十四条の新しい問題が出てきておるんじゃないか。そういう問題について一体どういうふうに考えるのかということが御質問の趣旨がと思います。
 これについて私たちの考えを申し上げますと、
今回の改正案というのは外国人の同一人性の確認の手段としての指紋押捺を永住者及び特別永住者については廃止して、写真、署名及び家族事項の登録による複合的手段をもってこれにかえるというものでございますが、この指紋押捺の廃止対象を永住者等に限りましたのは、指紋押捺にかわる新しい複合的手段の有効性というものが長年本邦に在留し、我が国社会への定着性が高い外国人に限られるという、そういう結論によるものでございます。したがって、今回の改正によりまして永住者と非永住者とで複合的手段と指紋押捺という二つの制度ができる、二つの同一人性確認手段が併存することになりますが、これは外国人の……
#164
○橋本敦君 なるべく簡単に。
#165
○政府委員(高橋雅二君) これは定着性の違いによるものであって、これは理にかなったといいますか、合理的な説明ではないか、こういうふうに考えておるところでございます。
#166
○橋本敦君 写真は同じなんですよね、そうでしょう。永住者もそうでない外国人も写真にとってかわりはないし、それから署名も、これはまた次の機会に触れますけれども、署名には問題があるとしても、署名もそれ自体署名はかわりないんです、どっちもちゃんとできる。それから家族事項の登録も同じなんですよ。問題は、それらの事項の同一性識別に関する有効性とおっしゃいましたが、その有効性に違いがある。その違いはどこにあるかというと定着性だとおっしゃる。ところが、一年以上の外国人の方でも日本に研究のために長年在住する、留学のために在住する、ビジネスや研究で在住する、あるいは牧師さんでいらっしゃるというふうに五年、六年、七年、十年という長い定住性を持っている場合があるでしょう。こういう場合は定住性がありますよ、職業もちゃんとしている、仕事もちゃんとしている。定住性があって定着性があるということもあります。
 例えば国籍法から言えば、日本国籍の取得を許す要件として五年以上日本に在住するということがありますね。これは何かというと、五年日本に在住していればそれなりの定着性、定住性があるということを法は要件として認めているわけですよ。だから、そういう意味で言うならば、定着性とおっしゃったけれども、この定着性は永住許可を受けた外国人だけに限らず、長年日本に合法的に在留をしている外国人の方についても定着性あるいは定住性ということは出てくるんですよ、出てこないということはどこにもない。だから、そういう意味で有効性ということをおっしゃるけれども、これは明確に差別をする合理的基準たり得ない、実際問題として。私はそう思わざるを得ない。その点どうお考えですか。同じように定着性、定住性を持つ外国人の方がいらっしゃる事実は客観的に存在することをお認めになるでしょう。
#167
○政府委員(高橋雅二君) 定住外国人の中にも、中には永住外国人とほぼ同じ程度の定着性といいますか、そういうものがある方がおられるというケースはあり得ると思います。ただ、私たちといたしましては、このシステムの導入という点から考えますと、やはり類型的に有効であると言えるのは定着性の極めて強い特別永住者、永住者の方ではないかという考え方に基づいているものでございます。
#168
○橋本敦君 非常にその点の答弁は、私は理論的には弱いと思いますよ。類型的にというのは、それは観念的にそういう類型を法体系としてあなたの方は立てているからで、客観的状況としては、同じ外国人でありながら同じような定着性、定住性を持つ方がいらっしゃることは、局長も認めざるを得ないこれは事実なんですよね。だから、それを差別する合理的理由はない。こういうことを合理的理由なしに差別することが憲法十四条の違反であり、そしてまた国際人権規約Bですか、あそこで内外人の差別をしちゃならぬという、我が国は批准していますよね、その規約の精神からいっても問題が起こってくるわけですね。
 これまで在日朝鮮人の皆さんの指紋押捺問題について、指紋押捺を強制することは、在日朝鮮人の皆さんの日本における、日本が朝鮮を侵略しましたから、その犠牲になられたということを含めての特殊な地位に考えて、在日朝鮮人の人に特別に指紋押捺をやめるということをするならば、それはほかの外国人の方と比べて法のもとの平等に違反するじゃないか。こういうことで、在日朝鮮人の皆さんの指紋押捺をやめるべきだということを、そういう理由で排斥した裁判所の判決があったというふうに聞いておりますが、御存じですか。
#169
○政府委員(高橋雅二君) そのような判決があったことは承知しておりません。具体的にどういうものであったのか承知しておりません。
#170
○橋本敦君 聞いたことはありますか、そういう趣旨の判決があったことは知っていますか。
#171
○政府委員(高橋雅二君) 承知しておりません。
#172
○橋本敦君 それじゃ、この次のときまでに調べておいてください。私も調べて、きょうは何月何日というのを持ってきていませんから。
 要するに私が言いたいのは、この法律によって一定の改善と前進ということで私どもも賛成ということにしておりますが、基本的には私どもの方が提起をした指紋の全廃ということがやっぱり基本であって、これが今日の人権尊重の国際的潮流に沿う道であると同時に、新たに憲法十四条違反という重大な問題を起こしかねない内容を持っている。憲法十四条違反の批判をこれを完全になくすためには、やはり差別なしに指紋押捺制度の全廃に向けて一刻も早く努力をする必要があるということを申し上げたわけですね。
 そういう意味で、私はこの憲法十四条問題というのは、今度の法案の審議において、政府としても真剣にもっと取り組んで検討を深めてほしい課題だということをきょうは申し上げておきたいわけであります。
 それで、もう一つ最後にお聞きしたいのは、写真が鮮明な写真と、こうなっておりますが、鮮明なというのは、これは主観的判断が入りやすい要素がございまして、客観的に鮮明な写真というのは一体どこでどういう方法できちっと争いがないようになさる予定なのか、政令委任事項でもいろいろありますし、そうじゃなくて、具体的な規則、要綱でなさるのか、その点を伺っておきたいと思います。
#173
○政府委員(高橋雅二君) これにつきましては、先ほど来からいろいろございましたように、現場で混乱の起きないように法務省の方で、法務省令等できちっと大きさとか、それから正面で無帽だとか、そういうような規格を決めまして、それをもって鮮明な写真とはどういうものかということがだれにでもわかる透明性のあるような、そういうものを定めまして告示していきたい、こういうふうに考えております。
#174
○橋本敦君 今、定めているのがあったら説明してください、今ないんですか。
#175
○説明員(山崎哲夫君) 現行制度におきましては、外国人登録法における提出写真の規格というのは、施行規則二条二項に「写真は、提出の日前六月以内に撮影された縦四センチメートル、横三センチメートルの無帽かつ正面上半身のもので裏面に氏名を記入したものとする。」というように規定されております。
#176
○橋本敦君 もう時間ありませんから、それでいいんじゃなくて、今度きちっとやるというんでしょう。きちんとやったものが今あるんなら、それを説明してくれと、こう言ったんですよ。今の規則ならもう聞かなくてもわかっている。
#177
○政府委員(本間達三君) 先生御指摘の写真の規格等の問題につきましては、今後法務省令の中で決めてまいりたい、こういうふうに思っております。
 今の登録課長が読み上げました規定内容でございますけれども、なかなかこれは文字で書いてわかりにくいといいますか、窓口において確かに無帽正面とか、そういうところまではわかりますけれども、どの程度までが許容範囲なのかということについて非常に迷う事例が出てくるんではないかということは十分に私どもも予想はしておりま
す。
 したがいまして、まず第一に、鮮明な写真の確保ということで、地方入国管理局官署で無料で希望があれば鮮明な写真を撮ってあげるというサービスをするとともに、例えばここまでは鮮明と認める、こういう例は悪い例であるというようなサンプルの、一日見てわかるようなものを窓口に備えて、現場職員の執務の参考に資するというようなことを今考えております。
#178
○橋本敦君 今、具体的にわからぬわけだね。
#179
○政府委員(本間達三君) そういう例が外国にもございますので、そういう方途を今検討してできれば実現したいというふうに考えております。
#180
○橋本敦君 続きは次の機会にやります。
 終わります。
#181
○萩野浩基君 午前中来、諸先輩委員の質問なり、また当局の答弁を聞いておりまして、今回の外登法は衆議院で修正案をもって全員一致ということで可決された。それで我々連合としましては、衆議院の方に議員がおりませんので、また私は少しアングルを変えて質問をいたしたいと思います。
 まず、禁固刑をなくすということ、これは十分理解できますが、きょうは時間が少ないので、また次のときにお聞きいたしたいと思います。
 それから、指紋押捺制度の存続のこれを念頭に置き、五年後の速やかな時期までに適切な措置を講ずると衆議院の附帯決議にありますが、実にこれはファジーな表現ではないかと私は考えます。これはできますれば、もう少し速やかに適切な措置を講ずるということに、これは附帯決議の方でございますから、当局に具体的な答弁を求めるというのは難しいかもわかりませんけれども、これをまず一点。具体的な面をもし示せたら示していただきたいと思います。
#182
○政府委員(高橋雅二君) 衆議院の法務委員会の附帯決議で、「この法律の施行後五年を経た後の速やかな時期までに適切な措置を講ずること。」ということでございまして、この内容につきましては、委員会の委員の方々が全会一致でお決めになって決議されたものでございますので、私たちとしては、この中に盛られていることを我々なりに精いっぱい実現していきたいということでございます。
 その関連で、じゃ具体的に適切な措置というものは一体どういうことを考えているのかということでございますが、現在、改正法案を御提出申し上げて、この実現をすることに私たちの頭の中はいっぱいでございまして、具体的にそれじゃ五年後どうかと言われると、なかなか申し上げがたいところがございます。先ほど大臣からも御説明申し上げましたとおり、五年たちますと新しい制度に全部切りかわるわけでございまして、その五年の間に世の中も変わりますでしょうし、それから技術的な進歩もございますでしょうし、それからこの五年間に積み重ねたいろいろな我々の指紋押捺にかわる新しい手段に関するノウハウといいますか、経験も蓄積されてくる、そういうことから、場合によっては我々の新しい手段がまた見出されるかもしれないし、それによって指紋押捺にかわる新しいものを導入できるかもしれませんし、それに基づいてあるいはまた法律の改正とか、そういうことも生ずるかもしれませんが、いろいろな可能性が考えられるわけでございまして、私たちといたしましても引き続きこれを検討していきたい、こういうことでございます。
#183
○萩野浩基君 これは私の希望でありますが、五年後速やかにというのは速やかに全廃、指紋押捺を廃止していくというように私は理解したいんですけれども、この辺について御答弁は結構でございます。
 それで、私どうも、この韓国、朝鮮、台湾人を除く他の外国人に指紋押捺を強制する、このことに関して午前中、午後と質疑を聞いておりまして、非常に合理的根拠に乏しいように思うんですね。それからまた、聞いておりまして、自治体の事務が煩瑣になると、このことについては法務委員の皆さん方のところにも行ったと思いますが、政令都市の私の仙台の方からも来ておりますし、だから同じやるんでしたら撤廃と。これも質問にありましたけれども、法務省が関係するある庁の方からいろいろと意見があったというのは、これは新聞でも出ておりましたが、今回のいろんなところを調整しながらバランスをとって政府案となったんだと思いますけれども。
 私はこれから質問いたしたいのは、先ほども出ておりましたが、外国人に対する指紋押捺及び登録証明書の常時携帯ということについて、これは憲法十四条、しかも税金を払っておられる外国の人と、こういうふうなことを考えますと、憲法第十四条において法のもとでの平等とか、それから国際人権規約のB規約の二条とそれから二十六条、この国籍による差別の禁止ということに対して、今回のこの法律案というものが反する疑いが非常に強いんじゃないか、私はそう考えております。
 そこで、まず日本国憲法の前文で国際社会で名誉ある地位を占めたい、このように表明し、さらに国際協調主義といいますか、また、そのもとで言われております政治道徳の法則、こういう法則に従うことを各国の責務であるとしておる。こういう点から考えましても、今回この法律は一歩前進とはいうけれども、やはり問題を残しておる、そのように私は考えております。
 それから、九十八条におきまして、「条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」、これは御案内のとおりです。ですから、先ほど申し上げました国際人権規約のB規約二条というものとの関係におきまして、この九十八条においても私は問題じゃないかと思います。
 それからまた、同じく今申し上げました国際人権規約のB規約の二条、二十六条は、御案内のとおり人権、言語、宗教、政治的意見、こういうことで差別してはならないと、このように言っておるわけでございます。
 以上の主に三点、憲法の前文、それから九十八条、それから国際人権規約、この辺から考えましても、憲法十四条にもう一度それを照らし合わせてみますと、私は、外国人に対する今回の措置というのは合理的整合性ある区別として容認し得る限度を逸脱している、この疑いが十分あると思われますが、いかがでしょうか。これは十分答えてください。
#184
○政府委員(高橋雅二君) まず、この改正法案を提出するに当たりまして、私たちはこの法案のもたらす改正の新しいシステムにつきまして検討した際、日本国憲法の規定に照らして果たしてこれが適当と言えるのか、日本国憲法との関係で問題はないか。
 具体的に言いますと、十四条の規定に違反することはないかということが一つ。それから、日本国が締結しております国際条約、特に国際人権規約、今先生御指摘になりました二条、この規定との関係で問題はないかということを十分に吟味いたしました。それで、もちろん日本国憲法の九十八条によれば、条約を誠実に遵守しなければならないということになっておりますので、そういう観点からも国際人権規約との関係は十分に吟味する必要があったわけでございます。法のもとの平等という観点から申しますと、憲法第十四条は「すべて国民はことなっておりますが、これは外国人にもできる限り等しく適用すべきであるというのが、憲法の全体の精神からそう言えるというのが通説ではないかという観点からも検討したところでございます。
 それで、法のもとの平等という観点から検討いたしますと、二つ問題点がございます。
 これは先生が御指摘されたところでございますが、一つは、日本人と外国人との間に差異を設けることについて憲法十四条の規定、それから国際人権規約の規定に反するかどうかということでございます。これにつきましては、できる限り日本人と外国人とは同じ扱いができればそれにこしたことはございませんけれども、日本人と外国人との基本的な差異というものに基づく取り扱いの
差異というものは合理的な理由があるものとして許されるというふうに考えていたところでございます。したがって、外国人に対して指紋押捺制度を維持していくということについては、憲法第十四条の規定、それから国際人権規約の規定についても抵触しないというふうに結論づけたわけでございます。
 そこで、第二点でございますが、今度外国人の中に永住者とそうでない者と差を設ける、そういう差を設けて区別して別の取り扱いをすることは、これはまた憲法第十四条、人権規約の規定に照らして抵触するのではないかと、これが先生の第二の御指摘の点でございます。これにつきましても、指紋押捺という、なぜそういうものをとっているかと申しますと、外国人の同一人性確認の手段としてとっているわけでございまして、これが定着性のある方については新しい手段が有効であり、その新しい手段は定着性のない、永住者ではない方々については有効ではないということなので、そういうことから生ずる取り扱いの差異に基づくものであるので、憲法第十四条の規定に照らしても、人権規約の第二条の規定に照らしても、これは抵触をするというものに当たらないという結論を出したわけでございます。
#185
○萩野浩基君 これは法律論争になりますので、その見解の違いで、やはり非常に合理的、整合性ある区別として容認し得る範囲の点においては私はいささか意見を異にしますが、時間もありませんので、これはまた次にもう少し詳しく議論したい点でございます。
 次に、ちょっと各論に入りますけれども、法務省で同一人性の確認として指紋の照合というものの要求が過去とのぐらいございましたか。もしあれだったら最近の例でいいですけれども、先ほどちょっとそういう質問に答弁あったかと思いますが、簡単に。
#186
○説明員(山崎哲夫君) 警察等関係機関から同一人性確認、いわゆる不法入国とか外国人登録の不正事件等で照会があった件数は、昭和六十三年は二十一件、平成元年十三件、平成二年一件、平成三年十一件というようになっております。
#187
○萩野浩基君 今回その対象になる方ではないのもそれは含んでいるんではないですか、御答弁願います。
#188
○説明員(山崎哲夫君) 詳細にただいま分析はしてございませんが、中には昨年の事例としまして、名古屋に入ってきた事案でございますが、中国人がペルーの人に成りかわって入ってきたという、最近の事例もございます。
#189
○萩野浩基君 私がここで申し上げたいのは、どうしても同一人性の確認として指紋照合の必要性のある重大な犯罪だとか、そういうものに関しては、私が知る限りはほとんどないわけでございます。ですから、今回このような法律をもし出すのであるならば、私は指紋押捺は全面廃止するという方向で出ることを期待しておったのでございますけれども、この辺はどうしても疑問が残ります。これは答弁いいです。同じことの繰り返しになると思いますから。
 それで、次に移りますが、三点セットということで写真、署名、それから家族事項、こう言われておりますけれども、この署名は一体何語でもってやるのかということ。先ほどの質疑応答の中でできない人ということでありましたが、これはちょっと私加えさせていただきます。例えば体が不自由でできない人、それから書けない人、これもありますし、そういうのに対しては先ほど答弁がなかったようであります。それも加えて、一体何語で記載するのか。我々としましたら、例えばアラビア語だとかハングル語なんかでもなかなかすぐ判断はできないのではないか、これが一般社会通念ではなかろうかと思いますが、この辺についてはこの前の大臣の提案理由説明でも明確でありませんでしたし、答えも明確ではなかったので、その辺は明確にひとつお答えいただきたいと思います。
#190
○政府委員(本間達三君) 署名の方式等につきましては今後政令の中で決めてまいりたいと思っておりますが、現在考えておりますのは、外国人の方が旅券に署名をする場合が多うございますから、旅券にした署名と同じものということを一応原則といたしまして、その他旅券を持っていない方につきましては、最も書きなれている文字というものを一応標準として考えていきたいというふうに考えております。詳細は今後また検討していきたいと思います。
 書けない方につきましては、これはやむを得ませんから署名がないという扱いでございまして、その取り扱いにつきましては、先ほども答弁申し上げましたが、次の確認の期間の短縮という措置によっていきたい、これは三本柱の一本が欠けるということでございますので、その確認の回数をふやすという方向でいく、こういうことでございます。
#191
○萩野浩基君 そうなりますと、例えば私など福祉をやっている関係で考えますと、非常にそういう人は不利益をこうむるということになるので、これはやはり重大な問題だろうと私は思いますけれども、いかがですか。
#192
○政府委員(本間達三君) その点につきましては、法律の規定によって一年以上五年未満の範囲で市区町村長が期間を指定するわけでございます。その指定の基準というのは省令において決めるということにいたしております。
 ですから、先生御指摘のような非常にお気の毒な方ということにつきましてはその点の事情も十分勘案し、基準の中でできるだけ確認期間の適正な決定ができるように配慮をするつもりでございます。
#193
○萩野浩基君 もう時間もなくなってきましたが、私も海外生活を、客員教授で出かけておりまして、ヨーロッパを主にアメリカにも行ったわけでございますけれども、そこでは指紋というような目には遭っていないわけでございます。
 それで、これも同僚委員の人から質問がございましたけれども、少なくともヨーロッパでは、ディベロップドした国においてはもうこういうものはとっていないわけです。ですから、私は日本が国際社会へと入っていくこの大事なときに、先ほども話に出ておりましたが、私、具体的な例では、私のところの大学の教授等におきましては最もそれに当たるわけです。こういう方たちに不愉快な思いをさせるということは、日本にとってのデメリットはもうはかり知れないものがあるだろうと思うんです。
 ですから、私はそういう面におきまして、将来にわたって少し希望的な、望みを持てるような答弁を、局長並びに、もしあれでしたら大臣から言いただきたいんですけれども。
#194
○国務大臣(田原隆君) 先ほどから他の委員の方々に何度がお答えしましたが、現時点ではいろいろディスカッションし協議してこういう提案をさせていただいておりますが、将来、時がたてば社会情勢や国際情勢がだんだん変わってきていろんなエレメントが入ってくる、それから技術も進歩して代替性がもう少し確保できるようなものができてくるかもしれない、それからこの制度をアプライすることによっていろんな問題点、情報が集まってくる、そういうものを整理して適切な対応をするのは我々提案者として当然であろうと思っておりますが、衆議院におきましても附帯決議をつけていただきましたので拳々服膺して誠実に勉強してまいりたいと思っております。
#195
○萩野浩基君 時間が来ましたので終わりますけれども、せっかくこういう法案が出された以上、少しでも国際社会に存在する日本としてのやはり意義を高めるような形で改正をされるということが非常に重要ではないかと思いますが、また次回に質問は譲らせていただきます。
 以上で終わります。
#196
○紀平悌子君 今回の外国人登録法の一部を改正する法律案の審議におきましては、事が永住者及び特別永住者、いわゆる永住者等についての指紋押捺を廃止することが中心になるだけに、いわゆる内国人、外国人の人権の調整という基本的人権上の視点が必要であるというふうに思います。す
なわち、外国人についての同一人性確認の手段を確保するという外国人行政の的確な遂行上からくる必要性と、外国人ももとより人である以上その基本的人権の確保につき国、行政は敏感であらねばならないという人権上の要請とのバランスが本法律案の審議においては問われなければならないと考えております。
 さて、まず本法案の提案理由を拝見いたしますに、人権の文字が見当たりませんが、指紋押捺が外国人の人権を抑圧する手段であるという認識は前提としておありになるのでしょうか、あるいはないのでしょうか。日本人が指紋押捺を余儀なくされる局面というのものは、主として彼疑者として身柄を押さえられた際であるということを考えますと、外国人に対する指紋押捺の強制は強度の人権抑圧ではないかとの声や気持ちも無理からぬことと考えます。改正案の中での基本的人権の位置づけについて御説明をいただきたいと思います。恐縮でございますが、簡潔に私にわかるようにお願いをいたします。
#197
○政府委員(高橋雅二君) 今回の改正は、昭和六十二年の外国人登録法改正の際の衆参両院法務委員会における附帯決議及び日韓法的地位協定に基づく韓国政府との協議の結果等を踏まえまして、永住者及び特別永住者について指紋押捺を廃止いたしまして、写真、署名及び一定の家族事項の登録をもってこれにかえることとしまして、これに関連した所要の整備を行うものでございます。
 今回の改正作業に際しましては、附帯決議に言及されております多年にわたり本邦に在留する外国人の立場を配慮いたしまして、日本国憲法また日本国が批准しております国際人権規約の人権関係規定との関係についても十分検討したところでございます。そういうことで人権という観点も念頭に置いて改正作業を行ったということを申し上げたいと思います。
#198
○紀平悌子君 衆議院の法務委員会での御答弁でも、今の問題、一つの問題としては国際人権規約B規約の第二条、二十六条の規定につきましても、あるいは憲法上の関係につきましては本委員会で同僚の議員が次々とお聞きになって、これは整合性ありというふうに承ったところでございます。
 ところで、もう一つ、間違っているかもしれませんが、こういうことを伺っているんです。一九七〇年以来、指紋照合を同一人性確認の手段として使用していないという話も聞くわけですが、もし使用してないということでしたらば、法に定めるいわゆる用途上の、使い道の少ないというかメリットの少ない指紋押捺を一部分の外国人について維持するという合理性はどこに求められるんでしょうか。
#199
○政府委員(本間達三君) 指紋押捺制度導入のいきさつというのは、これは昭和二十七年から導入したわけでございますが、その際には多くの不正入国者あるいは不法滞在者といった人たちが外国人登録証を、他人の登録証を入手して成りかわって登録し、あるいはそれをもとに配給通知を受ける等いろいろ問題が生じました。これは、当時は指紋押捺というのがなくて写真だけによっていたわけでございますけれども、同一人が何回も登録に来て登録証交付を受けるというようなことで、管理が十分でなかったということで、そういう反省から指紋押捺制度というのが採用されたわけであります。その採用によりましてそういう不正行為は抑止され、外国人登録制度というのは円滑な運営が図られて今日まで来ているわけでございます。
 指紋押捺というのは、あくまでも同一人性確認の絶対的な手段であると言われておりますとおり、究極的には当該本人が確認の場面で指紋の照合ということによって確認し得るという担保が法律上残っている限りにおいて同一人性確認の手段として有効性を保持し得るものであると私どもは考えておるわけでございます。先生御指摘のように、具体的に、例えば市区町村の窓口におきまして登録の確認等に来た人が果たして既に登録していた人と同一であるかどうかということがはっきりしないので、指紋を命ずることによって、それによって初めて明らかになった、そういった事案はないわけでございますが、しかしそういう制度が残っているということによって、結局はそういう成りかわり事案も防がれているという抑止的な効果というのもあるんではないかと我々は考えているわけでございます。
 そういう意味におきまして、事例がないということと指紋制度が無効になっているということとは関係がない問題である、依然として有効性があるというふうに我々は考えているわけでございまして、その他の照会があった場合にそれに応じて役立っている事例は幾つもございます。警察等の照会の場合もございますし、市区町村から法務省への照会の場合に指紋原紙との照合によって事務を遂行しているという場面もございますので、指紋は依然として有効に作用しているというふうに私どもは考えております。
#200
○紀平悌子君 警察庁にお伺いいたしますけれども、押捺された指紋について犯罪捜査上どういう意義というか意味合いを認めていらっしゃいますか。また、外国人の指紋について、これは法務省の方でございますが、コンピューター資料化は行っておられますでしょうか。
#201
○説明員(奥村萬壽雄君) お答えをいたします。
 警察といたしましては、犯罪捜査を行います上で外国人の同一人性について疑いが生じる場合がございます。例えば、外国人の被疑者が自分は何国の何某であると言いました場合に、本当にそうなのかどうか、私どもは成りかわりと言っておりますけれども、他人がその者に成りかわっているということがあるわけでございます。それからまた、死体の場合には身元確認をしなくちゃいかぬわけでありますけれども、外国人の場合はなかなか身元確認が難しいということがございまして、そうした場合におきまして確実な同一人性確認の手段として指紋が必要であるというふうに考えておるところでございます。
#202
○説明員(山崎哲夫君) 法務省におきましては市区町村から送られてきました指紋の押捺されております指紋原紙は登録番号順に分類保管しておりまして、コンピューターによる処理は行っておりません。
#203
○紀平悌子君 外登法上要求される鮮明な写真及び署名もまた同一人性確認の手段であろうと考えますが、なぜその上に永住資格のない長期滞在者については指紋押捺を強制されるのか。特に指紋も署名もともに鑑定によって同一人性を確認することができると考えれば、署名で同一人性は十分確認できると考えるのが筋じゃないかと思います。本来の法制定趣旨との整合性ある御説明をお聞かせいただきたいと思います。どのような場合に指紋が同一人性確認に必要とされるのでしょうか。これは法務省にお伺いします。
#204
○政府委員(本間達三君) 永住資格のない方の場合になぜ写真あるいは署名ということで代替できないのかという御趣旨がと思いますけれども、写真につきましては他人のそら似とかあるいは容貌の変化というのがございまして、なかなかそれのみでは同一人性確認手段としては不十分でございます。また署名というのも、これは恒常性というものもある程度認められるからこそ同一人性確認手段として採用されているわけではございますけれども、経時的な変動というのはやはり免れない面がございますし、偽造のおそれというものも必ずしも否定できないというもので、必ずしもこれが完全な手段ではないと思います。したがいまして、この二つの手段だけで一般的にその同一人性を確認するということについては外国人登録制度上やはり不安を我々は持っているわけでございます。
 したがって、このたび代替手段として採用しましたところのこれに家族事項を加えたということは、局長からも御説明申し上げましたとおり、永住者、特別永住者といった社会との定着性が極めて明白かつ強いというふうに認められた者については人的情報源の豊富なゆえんをもって同一人性
確認が確保できるということで採用したわけでございまして、それ以外の方々というものにつきましては今申し上げたように、写真、署名だけではなかなか代替できない。したがって、先ほども御答弁申し上げましたが、絶対的な手段であるところの指紋押捺というものによってこれを同一人性確認として残していきたいというのが今の案でございます。
 どういう場合にその指紋押捺を採用しているのか、こういう御質問もございましたけれども、それは先ほどお答え申し上げたようなものでございまして、その確認の機会に窓口でさらに命ずるという法的な措置というものもとり得るようになっているわけでございますので、それによって十分機能し得るのではないかと我々は考えております。また、外国人登録証の上に指紋押捺が転写してありますので、提示を求めた場面におきまして本人であるかどうかということについて種々質問をして、疑義があった場合には御本人の協力を得て指紋押捺をしていただいて、そして登録証上の指紋と照合をいたしまして同一人かどうかを確認するという、そういう機能もやはり持っているわけでございますので、そういう意味で指紋押捺制度を現行どおり存置するということにいたした次第でございます。
#205
○紀平悌子君 続いて法務省にお伺いいたしますが、これは参考までに承って次の質問というか次回の質問につなげたいと思うんですが、在留一年未満の在留外国人と一年以上の在留外国人との業務上過失犯を除く犯罪の発生数、あるいは率がわかれば結構ですが、どのくらいでしょうか。
#206
○政府委員(本間達三君) 私どもが通常つくっております、私どもというのは法務省でございますけれども、つくっております統計の中で、先生御指摘になりました在留資格、在留期間別の統計というものはございませんが、このたび、平成三年一月から同年六月までに全国の検察庁で受理いたしました外国人を被疑者とする事件、これは業務上過失致死傷事件を除いておりますが、これらのうちの約三千名分につきまして、上陸後罪を犯すまでの期間はどのぐらいであったかということについて当局において調べましたところ、入国してから先生の御質問になりました一年以内で罪を犯したという者が全体の約一九%でございまして、他の約八一%というのは一年を超えてから罪を犯しているという結果が出ております。
 また、在留資格別の統計、集計結果というのは非常に手間がかかりましてまだ調査結果が出ておりません。
#207
○紀平悌子君 今回の法改正が通った場合でございますけれども、指紋押捺が廃止される外国人につきまして、指紋押捺が廃止された後、既に保管されている採取指紋資料というものはどういうふうに扱われるのでしょうか。その外国人については同一人性確認のための資料としての必要性が消滅する以上、その資料についてもその外国人の心理負担を軽減するために廃棄すべきと考えますが、どのように予定をされておりますか。
#208
○政府委員(高橋雅二君) お答えいたします。
 登録原票は市区町村において保管し、指紋原紙は法務省において保管しておりますが、外国人登録法改正後におきましても永住者及び特別永住者が新制度に移行するまでの間はこれは保存が必要となります。ただこれは、五年たちますと永住者及び特別永住者の方全員が新制度に移行いたしますので、その後における登録原票及び指紋原紙の取り扱いについては今検討中でございますが、法務省が保管しております指紋原紙というものは同一人性確認のために保管しているものでございますので、五年後これは全部変わってしまいますとその目的上必要なくなるわけでございます。そうしますと、持っていてもごれは役に立たないといいますか、使い道がございませんので、これは廃棄する方向で検討したい、こういうふうに考えているところでございます。
#209
○紀平悌子君 現在係属中の指紋押捺拒否裁判は何件ありますでしょうか。
 また、不署名罪によって懲役刑をもって署名を強制しようという本法案の中身でございますが、指紋押捺拒否と同様の刑罰的評価によるものでしょうか。そのような刑罰的な強制は過度に及ぶものではないかと思います。それがないと署名がとれないというような具体的な事情でもお考えなのでしょうか。これは六十二年の当法務委員会の附帯決議の中で「拒否者に対する行政上、刑事上の措置」というものがございましたけれども、いかがなものでしょうか。
#210
○政府委員(本間達三君) 現在、指紋押捺拒否により刑事裁判にかかって公判係属中のものといたしましては、最高裁判所に係属しております米国籍の被告人に関するものが一件あるだけでございます。
 それから、署名を拒否した場合の罰則の件でございますけれども、このたびの改正法案におきましては、指紋押捺を拒否した場合と同様の罰則を規定することにいたしております。これは外国人の居住関係及び身分関係を明確ならしめ、在留外国人の公正な管理に資するという法目的を達成する上におきまして、各違反行為の悪質性とかあるいは違反行為抑止の程度、必要性等を勘案して罰則が定められるものであります。
 不署名罪につきましては、署名が指紋押捺にかわる同一人性を確認する手段として登録制度上重要なものでございますので、意図的にこれを拒否したりあるいは妨害するような行為はこれは何としても抑止する必要がございます。そのためには刑罰をもって臨むということが相当でありますし、その法定刑についても指紋押捺拒否の場合と同程度の評価をするということにいたしましたが、これをもって特に重過ぎるとは私どもは考えていないところでございます。
#211
○紀平悌子君 時間もなくなってまいりましたので、まず法務大臣に時間のある限りお伺いしたいと思います。
 今後の外登法上の指紋押捺についての将来的な見通しですけれども、法務大臣としてはどのような方向性を考えておられますでしょうか。
 それからいま一つ、これはこの外登法に限りませんが、法案の文面をもう少しわかりやすくしていただけないかということなんです。これは前にも連合の山田委員がそれに似た申し入れをなさっておられますが、例えば法案のあれでいきますと、刑罰がつく条項がございますが、不署名罪、第十八条一項八号のこというところなんですが、第十四条の二の署名義務違反との関連において、第十四条の二のみを見た場合はその罰則がすぐそばについていないんですね。それで、ちょっと長目になっちゃうかと思うんですけれども、どんな罰則があるのかというのを近くに置いてくださいますと、国民が最終的にはこれを見ていくわけで、また外国人も見ていくわけでしょうが、その辺のところを、何か法文そのものを読んだときに見落としとか、それからよくわからないというところがあるんですが、こんなふうな難しくなっている法案というもの、もう少しわかりやすくしていただけないかということをお願いしたいと思います。
#212
○国務大臣(田原隆君) ただいまの紀平先生の御質問は大きく分けて二点あったと思います。一つは指紋の問題、一つは法律の構造の問題でございます。
 後者からお答えしますと、私も法律家じゃございませんので特に先生と同じようなことを感じますけれども、ただし、私も国家公務員をした経験がございましていろいろ法律に定められたことをやりましたが、特にこの刑罰にかかわるものとか税金などのように、争い事になったときに正確無比でなければいかぬというものについては、その表現上どうしてもそういう引用文を使っていかないと、演繹的にずっと表現していきますとなかなか正確が期せられないし、同一のものであるという判断もできないというふうなことがありまして、この辺が専門的でありますので。ただし、その法文そのものはそうであっても、わかりやすい言葉で説明するとかわかりやすい絵をかいて説明するとか、概念をはっきりつかむような方法を提
案者の方、担当者の方で考えていただいて国民一般に周知していただくということが大事じゃないか、そういうふうに思うのです。
 それから、最初の点の指紋でございますけれども、外国人の同一人性の確認というのはこれはもう必要不可欠のことでありますが、その手段として何が過去において一番よかったか、現在でも一番いいかというと、これは人権問題その他いろんなことを抜きに考えると、指紋が一番万古不変であり、同一人性の確認のためには最高のものであるということは経験上わかっておるわけです。
 それで、指紋にかわるものとして開発されたというのはサインですけれども、サインなんかは個人の癖があって、非常に確率的にある一人に特定するのに近いけれども、確率は一〇〇%じゃございません。それからもう一つ、写真ですか、写真もさっきだれかが他人のそら似という言葉も使いましたし、それからダイエットしたら十日ぐらいでもう変わってしまうということもありますから、これも確率的に一〇〇%じゃない。しかし、二つの確率を掛け算すると、非常にまた確率は高くなってくる。そのほかに家族関係という確率を加えていって、それでもまだ一にならない、ニアリーイコールーであるから他の情報を加える。その情報を加えるのに一番便利なのは、永住者の方がたくさんの情報を持っておられるということで、指紋の一という前提があってこうやっておるのです。ですから、これから同一人性確認のための技術が発達したりして他の方法が開発されるならば、先生おっしゃるようなことは当然望ましいこととしてあり得ると私は思っております。
#213
○紀平悌子君 終わりますけれども、文部省、外務省に来ていただいていて、時間切れで申しわけございません。次回に繰り延べさせていただきますのでよろしくお願いいたします。
#214
○委員長(鶴岡洋君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。
#215
○委員長(鶴岡洋君) この際、参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 外国人登録法の一部を改正する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#216
○委員長(鶴岡洋君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#217
○委員長(鶴岡洋君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後三時十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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