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1992/02/26 第123回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第123回国会 労働委員会 第1号
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1992/02/26 第123回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第123回国会 労働委員会 第1号

#1
第123回国会 労働委員会 第1号
本国会召集日(平成四年一月二十四日)(金曜日
)(午前零時現在)における本委員は、次のとお
りである。
  委員長 川崎 寛治君
   理事 愛野興一郎君 理事 大野 功統君
   理事 住  博司君 理事 長勢 甚遠君
   理事 三原 朝彦君 理事 岩田 順介君
   理事 永井 孝信君 理事 河上 覃雄君
      赤城 徳彦君    池田 行彦君
      小泉純一郎君    佐藤 孝行君
      齋藤 邦吉君    田澤 吉郎君
      野呂田芳成君    平田辰一郎君
      平沼 赳夫君    船田  元君
      池端 清一君    岡崎 宏美君
      五島 正規君    鈴木  久君
      外口 玉子君    井上 義久君
      中村  巖君    金子 満広君
      伊藤 英成君    徳田 虎雄君
―――――――――――――――――――――
平成四年二月二十六日(水曜日)
    午前十時開議
出席委員
  委員長 川崎 寛治君
   理事 大野 功統君 理事 住  博司君
   理事 長勢 甚遠君 理事 三原 朝彦君
   理事 岩田 順介君 理事 永井 孝信君
   理事 河上 覃雄君
      赤城 徳彦君    平田辰一郎君
      平沼 赳夫君    船田  元君
      岡崎 宏美君    川俣健二郎君
      五島 正規君    鈴木  久君
      外口 玉子君    井上 義久君
      中村  巖君    金子 満広君
      伊藤 英成君    柳田  稔君
      徳田 虎雄君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 近藤 鉄雄君
 出席政府委員
        労働大臣官房長 齋藤 邦彦君
        労働大臣官房審
        議官      岡山  茂君
        労働大臣官房会
        計課長     坂根 俊孝君
        労働省労政局長 清水 傳雄君
        労働省労働基準
        局長      佐藤 勝美君
        労働省労働基準
        局安全衛生部長 北山 宏幸君
        労働省婦人局長 松原 亘子君
        労働省職業安定
        局長      若林 之矩君
        労働省職業安定
        局高齢・障害者
        対策部長    征矢 紀臣君
 委員外の出席者
        防衛施設庁建設
        部建設企画課長 田中 幹雄君
        防衛施設庁建設
        部建築課長   五十嵐善紀君
        建設大臣官房地
        方厚生課長   峰久 幸義君
        労働委員会調査
        室長      下野 一則君
    ―――――――――――――
委員の異動
一月三十日
 辞任         補欠選任
  赤城 徳彦君     相沢 英之君
  池田 行彦君     林  義郎君
  平田辰一郎君     越智 伊平君
  船田  元君     越智 通雄君
同日
 辞任         補欠選任
  相沢 英之君     赤城 徳彦君
  越智 伊平君     平田辰一郎君
  越智 通雄君     船田  元君
二月二十六日
 辞任         補欠選任
  池端 清一君     川俣健二郎君
  伊藤 英成君     柳田  稔君
同日
 辞任         補欠選任
  川俣健二郎君     池端 清一君
  柳田  稔君     伊藤 英成君
    ―――――――――――――
二月十八日
 労働安全衛生法及び労働災害防止団体法の一部
 を改正する法律案(内閣提出第三二号)
 介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律案
 (内閣提出第三三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国政調査承認要求に関する件
 労働関係の基本施策に関する件
     ――――◇―――――
#2
○川崎委員長 これより会議を開きます。
 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。
 労働関係の基本施策に関する事項
 労使関係、労働基準及び雇用・失業対策に関す
  る事項以上の事項について、その実情を調査し、対策を樹立するため、小委員会の設置、関係各方面からの説明聴取及び資料の要求等の方法により、本会期中調査を進めたいと存じます。
 つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長の承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○川崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
     ――――◇―――――
#4
○川崎委員長 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、労働大臣から所信を聴取いたします。近藤労働大臣。
#5
○近藤国務大臣 労働大臣の近藤鉄雄でございます。
 労働委員会の御審議に先立ち、今後の労働行政についての所信を申し述べ、委員各位を初め、国民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。
 我が国は、世界有数の高い経済的水準に達し、国際社会においても大きな地位を占めるに至っておりますが、これは、まさに勤労者一人一人の努力のたまものであります。私は、この高い経済力をすべての勤労者と家族の方々に還元し、ゆとりある豊かな暮らしを実現することが生活大国づくりの基盤であり、労働行政の使命であると考えております。
 このような観点から、我が国の経済的地位にふさわしいゆとりある勤労者生活を実現するため、次の事項に重点を置きつつ積極的に労働行政を推進してまいります。
 第一は、人間尊重の時代にふさわしい労働行政の推進であります。
 今や雇用問題は国民生活や社会そのもののあり方と深いかかわりを持つ幅広い問題となってお
り、人間中心の経済社会システム構築に向けた国民的コンセンサスの形成が不可欠となっております。
 先般、労使を初めとする各界のトップクラスで構成される雇用問題政策会議から「人間尊重の時代にふさわしい新たな社会システムの構築に向けて」と題する提言が出されたところであり、労働省としては関係省庁と一体となって、この提言の趣旨に沿った政策運営に努めていく考えであります。さらに、最近の経済社会の変化への的確な対応を図るため、経済計画の見直しとあわせて、新しい雇用対策基本計画の策定に取り組むこととしております。
 また、労働力不足問題への的確な対応は、産業経済の活力を維持し、国民生活の安定を図るために不可欠であります。
 特に、高齢化社会の進展等に伴い必要となる看護・介護労働力の確保については、厚生省とも連携しつつ総合的な対策を講ずることが必要であり、介護労働者に係る雇用管理改善等計画の策定、雇用管理の改善に取り組む事業主に対する助成、援助などを内容とする法律案を今国会に提出いたしましたので、よろしく御審議をお願いいたします。
 さらに、労働者の職業生活の安定、充実と産業経済の発展を進めていくためには、労働者の職業能力が十分に発揮できるようにすることが重要であり、職業能力開発の一層の促進を図るため、公共部門の教育訓練体制の整備充実、技能を尊重する社会を形成するための施策の推進などを内容とする法律案を今国会に提出することとしておりますので、よろしく御審議をお願いいたします。
 これらの施策に加え、首都圏への一極集中の是正を図り、国土の均衡ある発展に資するため、総合的な地域雇用対策を引き続き推進してまいります。
 第二は、ゆとりある豊かな勤労者生活と人間中心の健康で快適な職場の実現であります。
 労働時間の短縮は、豊かでゆとりある勤労者生活を実現し、生活大国に向けての前進を図るために不可欠な国民的課題であり、年間総労働時間千八百時間という目標の達成のためには、一層の労働時間の短縮が必要となっております。
 このため、完全週休二日制の普及促進、所定外労働の削減等により労働時間の短縮を進めることとし、その環境整備を図るため、業種・地域ごとに労使が労働時間の短縮に向けての自主的努力を行うことを援助することなどを内容とする法律案を今国会に提出することとしておりますので、よろしく御審議をお願いいたします。
 一方、労働災害は、いかなる社会経済情勢にあろうとも本来あってはならないものであり、心身ともに健康で安全な勤労者生活の実現は労働福祉の基本であります。
 労働災害の発生状況を見ますと、近年、死亡災害に増加傾向が認められるなどまことに憂慮すべき状況が続いております。このため、特に死亡災害に占める割合の高い建設業に関して総合的な災害防止対策を強力に推進するとともに、人間中心の健康で快適な職場づくりを推進するための法律案を今国会に提出いたしましたので、よろしく御審議をお願いいたします。
 なお、不幸にして労働災害をこうむられた勤労者やその御家族に対しては、必要な保険給付を迅速かつ適正に行ってまいります。
 また、勤労者の福祉の向上のために総合的な勤労者福祉対策に取り組んでまいります。
 第三は、多様な個性、能力が発揮される社会の実現であります。
 我が国においては、諸外国に例を見ない速度で高齢化が進展していますが、高齢者の雇用の場が確保され、高齢者が長年にわたり培ってきた知識、経験を発揮できることが必要であります。このため、六十歳定年の平成五年度完全定着を図りつつ、六十五歳までの継続雇用を積極的に推進するための施策の一層の充実を図ってまいります。
 また、女性がその意欲と能力を十分発揮することができるように、男女の雇用機会均等の確保に努めるとともに、家庭責任を持つ労働者が職業生活と家庭生活の調和を図り、働きやすい環境を整備するために、育児休業法の円滑な施行、総合的パートタイム労働対策を推進してまいります。
 第四は、障害者雇用対策の推進であります。
 本年は国連障害者の十年の最終年に当たりますが、障害者の雇用については、なお重度障害者を中心に立ちおくれが見られます。このため、重度障害者対策の充実、精神薄弱者、精神障害者に対する施策の推進などを内容とする法律案を今国会に提出することとしておりますので、よろしく御審議をお願いいたします。
 なお、障害者雇用対策の近年の充実を踏まえ、障害者の職業リハビリテーション及び雇用に関するILO第百五十九号条約の批准についての承認案件を今国会に提出したところであります。
 以上のような各般の施策の展開に加え、外国人労働者問題への適切な対応を図るとともに、外国人研修について、その国際的な意義にかんがみ、より実効ある技能移転の観点からその充実を図るなど国際化の進展に対応した労働行政の展開を図ってまいります。
 さらに、良好で安定した労使関係の維持発展を図るための環境づくりに努めてまいる所存であります。
 また、今国会には、雇用保険の保険料率及び国庫負担率の暫定的な引き下げ、失業給付の改善等を内容とすみ法律案を提出いたしましたほか、レディス・ハローワークを増設する等のため、公共職業安定所の出張所の設置に関する承認案件を提出することとしておりますので、よろしく御審議をお願いいたします。
 以上、当面する労働行政の重点事項について私の所信の一端を申し述べました。委員長初め、委員各位の一層の御理解と御協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
 ありがとうございました。(拍手)
#6
○川崎委員長 これにて大臣の所信表明は終わりました。
 次に、平成四年度労働省関係予算の概要について説明を聴取いたします。坂根労働大臣官房会計課長。
#7
○坂根政府委員 お手元の資料に従いまして、平成四年度労働省関係予算案の概要について御説明申し上げます。
 初めに一ページ目でございますが、全体の予算規模について御説明申し上げます。
 労働省所管の一般会計は四千八百七十一億円で、前年度とほぼ同額となっております。労働保険特別会計につきましては全体で四兆八千六百九十三億円で、前年度に対し千二百九十二億円の減となっております。これを勘定別に申し上げますと、労災勘定は二兆四千二十九億円で、前年度に対し五十五億円の増となっております。他方、雇用勘定は二兆四千六百六十四億円で、前年度に対し千三百四十七億円の減となっておりますが、これは欄外の注一にございますように、主として雇用保険制度の改正による保険料率の引き下げ等によるものでございます。次に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計の石炭勘定でございますが、労働省関係分は百六十二億円で、前年度に対し二十五億円の減となっております。
 これを主要事項別に見てみますと、二ページにございますとおり、大きく分けて六本の柱から成っております。
 以下、その主要な内容につきまして、新規事項を中心に御説明申し上げます。
 まず、三ページでございますが、第一は、労働力尊重の時代にふさわしい労働政策の推進でございまして、その一は、二十一世紀に向けた総合的な労働政策の展開でございます。今後労働力供給の伸びが鈍化することが見込まれる中で、労働者の意欲や能力が有効に発揮されるような人間を中心とした経済社会を実現していくことが重要な課題となっております。このため、第七次雇用対策基本計画の策定に取り組むとともに、労働力尊重の時代にふさわしい人間を中心とした経済社会の構築に向けたコンセンサスの形成などに努めるこ
ととしております。
 その二は、労働力不足基調下の雇用情勢に対応した労働力確保対策の推進でございます。労働力不足問題に的確に対応し、経済、産業の活力の維持、国民生活の安定に寄与することが重要な課題となっております。このため、速やかな対応が求められている看護・介護労働力の確保につきまして、介護労働者の福祉の増進を図るための介護労働者福祉基金の創設を図るほか、雇用管理改善等のための援助事業などを実施することといたしております。また、四ページになりますが、福祉重点ハローワークを指定し、看護・介護労働力確保に向けて公共職業安定所の機能を抜本的に強化することとしております。そのほか、中小企業人材確保推進事業助成金の拡充や、五ページの上段にございます地域雇用環境整備援助事業の拡充などによりまして、各分野における労働力確保対策を一層強力に推進することとしております。
 その三は、経済社会の発展を担う人材の育成でございます。経済社会の発展等時代の要請に応じて多様かつ高度な能力開発を実施していくことが重要となっております。このため、経済社会の変化に対応した公共職業訓練体系への刷新などを図ることとし、六ページにございますように、職業訓練短期大学校における在職者訓練実施のための施設整備、都道府県立職業訓練短期大学校の設置に対する新たな財政援助などを実施することとしております。また、技能を尊重する社会の形成のための技能振興の推進に努めることとしております。
 第二は、七ページにございますゆとりある豊かな勤労者生活と人間中心の健康・快適職場の実現であり、その一は、ゆとり創造社会の実現に向けた労働時間短縮対策の推進でございます。労働時間の短縮は、ゆとりある豊かな勤労者生活を実現していく上で不可決の課題であります。このため、週四十時間労働制実現等に向けての労使の自主的取り組みを支援する労働時間適正化促進事業の創設、取引慣行など労働時間短縮の阻害要因の解消に向けた取り組みの推進等を行うこととしております。また、次の八ページにございます所定外労働削減推進事業の実施など、各般の対策を一層充実強化することとしております。
 その二は、安全の確保と健康で快適な職場づくりの推進でございます。このため、快適職場形成促進事業の創設などにより快適な職場の形成を推進するとともに、死亡災害の多い建設業について店社安全衛生活動活性化事業の実施等により労働災害防止対策の一層の推進を図ることとしております。
 また、九ページにございますように、勤労者福祉対策あるいは労災補償及び労働条件改善対策についてもそれぞれ内容を充実しつつ推進していくこととしております。
 次は、十ページでございますが、第三、多様な個性、能力が発揮される社会の実現であり、その一は、女性が働きやすく、能力の発揮できる環境の整備でございます。このため、育児休業等に関する法律の円滑な施行に向けまして、育児休業者の円滑な職場復帰を図るため一定の措置を講ずる事業主に対する奨励金や、適用猶予企業に対する育児休業奨励金の創設等を図るとともに、レディス・ハローワークの増設等の総合的な女子就業援助対策を推進することとしております。また、十一ページにございますように、パートバンク、パートサテライトの増設を図るなど、パートタイム労働対策の一層の推進を図ることとしております。
 その二は、十二ページにございます本格的な高齢化社会の到来に向けた高齢者対策の推進でございます。このため、高年齢者の雇用を阻害している要因を把握、分析し必要な援助を行う総合的雇用環境整備事業の実施、高年齢者のニーズに対応した継続雇用を図るための奨励金の創設等により、六十歳定年を基盤とした六十五歳までの雇用の場の確保に努めるほか、シルバー人材センターの増設等、高齢者対策の一層の推進を図ることとしております。
 また、十三ページにございますように、若年者の職業生活の充実に向けた対策も推進していくこととしております。
 第四は、十四ページにございます国際社会への積極的貢献であり、その一は、我が国の国際的地位にふさわしい国際協力の展開であり、旧ソ連邦に対する技術支援などの国際協力あるいは国際交流などを積極的に展開することとしております。
 その二は、十五ページにございます外国人研修生受け入れへの総合的対応であり、企業等における外国人研修の実施に対する支援事業の充実を図るとともに、今後の外国人研修制度のあり方についての検討等を行うこととしております。
 その三は、外国人労働者問題への適切な対応等であり、現地相談窓口の開設など、日系人の就労適正化に向けた体制の整備等を図ることとしております。
 次は、十六ページでございます。第五は、障害者雇用対策等の推進であり、その一は、障害者雇用対策の積極的な推進でございます。このため、重度障害者である短時間労働者等に対する雇用助成措置の適用拡大、さらには、十七ページにございます精神障害回復者に対する職業訓練の実施など、対策の充実強化を図ることとしております。
 その二は、炭鉱労働者雇用対策の推進でございますが、石炭企業の経営多角化等に対応して炭鉱労働者雇用安定助成金を創設し、配置転換、職業転換訓練等を行う場合の助成措置を講ずるなどの対策を推進することとしております。
 その三は、特別な配慮を必要とする人々に対する職業生活援助等対策であり、十七ページから十九ページにかけてございますように、対象に応じそれぞれきめ細かな対策を引き続き推進することとしております。
 なお、十九ページにございます雇用保険制度の改正につきましては、近時における雇用保険の失業給付に係る収支状況にかんがみ、今後当分の間失業給付費の負担者である労使、国庫の負担をそれぞれ軽減することとし、あわせて失業給付の改善を行うこととしております。
 以上をもちまして、労働省関係予算案の概要の説明とさせていただきます。何とぞよろしくお願い申し上げます。
#8
○川崎委員長 以上で、労働省の平成四年度予算の概要についての説明は終わりました。
    ―――――――――――――
#9
○川崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野功統君。
#10
○大野(功)委員 自由民主党の大野功統でございます。
 近藤労働大臣は、海外で留学の御経験もあり、勤務の御経験もある大変国際的な経験に富んだ方でいらっしゃいますし、また、経企庁長官ということで大変幅広い視野の持ち主でいらっしゃいます。加えて、ナイスハートの持ち主でございますので、近藤労働大臣の大きな胸をおかりして質問をさしていただきたいと思います。
 まず第一に、労働力の国際比較の問題でございます。
 近藤大臣は、所信表明の中でも「我が国は、世界有数の高い経済的水準に達し、国際社会においても大きな地位を占めるに至っておりますが、これは、まさに勤労者一人一人の努力のたまものであります。」こういうふうにおっしゃっています。私どもは、やはり今日日本が経済的に世界一になってきたのは、勤労者、我々が一生懸命額に汗して働いてきた、そしてまた教育水準が高い、このことを誇りに思っているところでございます。
 しかしながら、一方において労働の生産性という観点から労働力を見てみますと、まだまだ日本の労働生産性は低い、これはだれしも認めるところでございます。近藤労働大臣御自身がそのようなことをおっしゃっていまして、そのことが国際的に、特にアメリカの新聞に大きく報道されている。しかも、アメリカの一流高級紙ワシントン・ポスト、これには二月八日付に載っておりますし、同じ日付でアンカレッジ・タイムズあるいは
アンカレッジ・デーリー・ニューズ、二月十日付ではザ・ジャーナル・オブ・コマース、我々の知り得るところだけでも四紙に載っておるところであります。しかも、大臣の大きな写真入りでありまして、日本の新聞でもこれだけ大きな大臣の顔写真が出るということはまずめったにないことじゃないかと思うのでありますが、これほど大きく取り上げられているわけでありまして、記事を読んでみますと、労働大臣の指示で労働生産性の勉強を労働省が行ってそれを発表した、こういうことが書いてあるわけであります。
 大臣にお伺いしたいのですが、こういう労働生産性に着目して特に勉強をしろと指示されたその意図は何であったのか、そしてまた、労働生産性を分析されて、その結果をどのように評価されているか、お考えを聞かしてください。
#11
○近藤国務大臣 大野先生からいろいろ貴重な御指摘があったわけでございますが、実は我が国の労働者の生活、生産性さらには勤労意欲、こういったものが近年国内の問題でとどまらないで、今やもう国際的な関心が高まっているわけでございます。特に最近、いろいろ我が国の勤労者の勤労観をほかの国の労働者の勤労観と比較して、これが国際的な話題にもなり、日米間の一つのイシューにすらなっている面もございます。それぞれの御発言にはそれぞれの理由があってのことでございますが、実は労働省は、労働行政の責任官庁として、我が国の勤労者の生産性や生活について従来からも客観的なデータをもとに分析をしておったところでございます。
 こういう時期でございますので、勤労観とは何かということは、これはいろいろな価値判断の問題でありますから客観的には表現することは難しいけれども、いわゆる物的な生産性については欧米と比較して一体どういうようなことになっているのであろうか、さらには一人当たり生産性もありますが、今度は時間当たりですね。よく言われますように、日本の労働者は年間労働時間は長いわけでありますから、生産性が高くたって余計な時間働いて上げたのであればこれは問題でしょうし、さらに、これはまさに国際金融の専門家の大野先生に釈迦に説法でございますけれども、為替レートというのは貿易されている商品の間のいわば均衡レートでありますから、実際、生活実感に即してどうかといえば為替レートよりは購買力平価で比較した方がいいだろう。そんなことで、一人当たりを今度は時間に直してみて、さらには購買力平価で計算してどうなるかということを指示いたしました。統計をまとめてみたわけでございます。先生には先ほどお渡ししたわけでありますが、委員の先生方にもできれば皆さんにお配りしていいと思うわけであります。
 この我々の調査によりますと、我が国の就業者一人当たりの生産性というのは、実は製造業でいうと、我が国を一〇〇としますとアメリカが八〇、ドイツ、これは西ドイツが七七、フランスが八〇、イギリスが五二、こうなりますけれども、時間当たりにいたしますと、今度は日本の一〇〇に対してアメリカ八八、ドイツは一〇三、フランスは一〇五と上がってまいりまして、さらに、時間当たり購買力で比較いたしますと、アメリカ一三〇、ドイツ一二〇、フランス一三二、こうなっていくわけです。ただ、これは製造業だけ抜いた場合でありますけれども、全体の国民経済生産性ということで見ますと、日本一〇〇に対してアメリカ九五、ドイツ九三、フランス九五ですが、時間当たりで見ますと、日本一〇〇に対してアメリカ一〇九、ドイツ一一九、フランス一一六、購買力でいいますと、アメリカ一六二、ドイツ一三九、フランス一四六と、残念ながら産業全体、しかも購買力平価で計算いたしますと、日本よりもアメリカの産業全体の生産性が六割も高い、こういう結果になっているわけでございます。
 こういったことを踏まえて、ひとつ私たちもこれからの労働行政を進めていかなければならないのではないかと思っておる次第であります。
#12
○川崎委員長 ちょっと待ってください。今の資料は、労働大臣も言われたように、委員に配ってください。
#13
○近藤国務大臣 皆さんに全部お配りいたします。
#14
○大野(功)委員 近藤大臣の御説明を伺いまして、安心すると同時にがっかりしたのであります。安心の方は、これで国際的な日米間の友好な関係が保たれる、こういうことでありますけれども、一方がっかりしたのは、日本の労働力についてまだいろいろ問題があるな、また、非常に示唆に富むお話でございました。第一に、購買力平価で考えると格差が大きくなる。このことはやはり日本の物価が高いということであります。それからもう一つは、労働時間で見るとさらに格差が大きくなる。これは日本の労働時間がかなり長引いていて、しかも効率の悪い労働をやっている、つまり、かなりの部分でだらだら働きがあるのではないか。もう一つの問題として、産業の部門別に見ますと相当ばらつきがある。まさに、近藤大臣のおっしゃっていたことは日本経済の根本的な問題点に迫るようなお話でございました。
 生活大国への道を着実に歩むためには、やはり問題点である物価の問題、労働時間の問題、そしてまた住宅、資産格差の問題、いろいろありますけれども、その中で労働行政がとにかく真剣に取り組んでいかなければいけないのは物価の問題、そしてまた労働時間の問題等であると思います。どうぞひとつ大いにこれから御検討くださいますようにお願いいたします。
 次に、経済の構造変化の中での労働市場の問題であります。
 ただいま日本の経済というのは大きな変革期にあります。例えばよく言われることでありますけれども、サービス化であります。一九六五年にはGDPのシェアが第三次産業は五〇%であったものがもはや六四%になっている。サービス化の問題、それから国際化の問題、ストック化の問題、ハイテク化の問題、そしてまた労働市場も大きく変わってきております。生産年齢人口に占める五十五歳以上の方々のシェアを見ますと、一九六五年では一八・五%であったのが今二九%になってきています。高齢者の問題であります。それから、女子の雇用化率を見てみますと、二三・二%が今もう三五・四%になっている。一説にはもう五〇%になっているのではないか、こういう説もあるわけであります。また、雇用者に占めるパート比率でありますけれども、パート労働者、これは一九六五年には六%であったものが今一五・一%、パートが労働市場を支えている、このように大きく変化してきているわけであります。
 そこで、お尋ねしたいのでありますが、今大変な人手不足の時代になっている。ところが、一方においては時短という要望が強く出てきております。労働時間を短くしてもっともっとゆとりの時間で生活を享受していきたい、エンジョイしていきたい、これは当然の流れでございます。しかし、この二つの流れというのはまさに相反する問題でありまして、経営者から見ればもう猫の手も借りたいような人手不足、一方、働き手の方はなるべく多くの時間をゆとりに充てたい、こういう相反する問題点でございます。このギャップを埋めていくのはやはり労働大臣のお仕事でございます。今申し上げましたように、労働市場は大きく変化しております。一つは高齢者の問題、一つは女子の労働力の問題、もう一つはパートの問題、こういう問題が出てきておりますけれども、この三点についてお考えを伺いたいと思います。
 まず、女子労働力の問題でありますけれども、育児休業法ができておりますが、これをぜひとも円滑に執行して実施していってもらいたい。それと同時に、やはり女性の場合は育児の問題がありますから、例えば会社、工場等において託児所をつくる、そういうことについて政府の救いの手を差し伸べていくべきではないか、この点についてお尋ね申し上げたいと思います。
 それから二番目、高齢者の場合は有効求人倍数で見ますと、普通平均いたしますと一・四か五くらいのところでありますけれども、高齢者、ここで言う高齢者とは六十歳から六十四歳までの方で
ありますが、ちょうど会社を引退して第二の人生に入るにしては少しまだ元気がある、働きたい、こういうような年齢層でございますけれども、この場合は有効求人倍数が〇・一か〇・二にしかすぎない。つまり、十人のお年寄りの方が働きたいと言っていながら実際に雇ってもらえるのは一人か二人にすぎない、こういう状態であります。もっともっとこの高齢者の雇用、労働力を活用していく必要があるのじゃないか。それについてどのような解決策があるのか。具体的にこれまでシルバー人材センターがありましたが、実際活用されているのかどうか。そしてまたシルバーワークプラザという構想もありますけれども、今後どのように活用されていくのか。
 第三点はパートタイムの問題であります。パートタイム求人倍数は四・〇。パートで人を雇うというのはもう大変難しい状況になってきているわけでありますけれども、まさに女子労働力を引き出すことと相関連してこのパート労働力を引き出していくことが今後の大きな問題ではないか、このように思っているところであります。
 今、パート減税につきましては百万円が限度となっておりまして、きのうも本会議で御質問が出ていたようでございますけれども、百万円という限度でありますとやはりどうしても二つの問題があるのじゃないか。一つは、百万円まで働いて、後それ以上働きますと御主人の月給にも影響してきますから、もうそこでやめてしまう、せっかくの労働力がそこで活用できなくなってしまう、このような問題点があると思います。もう一つは、他人の名義を利用して、働いているんだけれども働いていない方の名義を利用して、そして税金逃れをしている、このような問題点が出てくるわけでありまして、どうしたってこれは経済の実態にそぐってお刀ません。もっともっとこのパート減税の限度額を引き上げていかなければいけない。きのう総理のお答えでは課税の公平の観点からそれは今できない、こういうお話でありましたけれども、しからば、給与所得控除あるいは基礎控除等を引き上げてその辺もうまくやっていく。そうしないと、これはもう日本の経済がもちません。労働力をもっともっと引き出していくためには、女性の労働力、パートタイムの労働力を引き出していくためには、このようなパート減税の限度額を例えば百五十万円くらいにまで引き上げてもらいたい。この点についてぜひ大臣の御所見を伺いたいと思います。
#15
○近藤国務大臣 先生からいろいろ多岐にわたる御質問がございました。基本的な考えは私が申し上げて、あとは事務局に説明をさせます。
 第一点として、基本的な認識ですけれども、労働力が不足、片方で時短。本来は、足りなければ時短をすべきじゃない、こういうお話、議論もあり得るわけであります。もう釈迦に説法だと思いますが、今労働力不足だから時短ができる。すなわち、もう人が足りないから時短をしなければ人が集まらないのですね。ですから私は、まさに前向きに取り組んで、人が足りないからこの際時短をやって、そしてそれを確保する、こういう発想で会社の皆さんに取り組んでいただきたいと申し上げているわけであります。
 第二点として、じゃどうするんだということであります。持論なんですが、日本の国で何でもかんでも物をつくって、そして消費できない、輸出をする、さあ人が足りない、人を呼んできて物をつくってまた輸出する、また足りない、また人を、これをやっている限りまさに日本は世界の経済を破壊してしまう、言葉はオーバーでございますが。ですから、日本人の労働力が足りないのであれば、日本でつくるものはこれだという、これは難しいのですが、何でもかんでもつくらないで、ここは日本でつくる、これは国際分業に任せてほかの国につくっていただいて輸入して使わせていただく。だから、そういう国内の労働力適正配置と国際分業というものを同時並行的に進めるという形がマクロにおける労働力不足対策である、こういうように私は考えているわけであります。私はかつて経済企画庁長官をしたときに、円高不況で、まずは産業構造調整したわけでありますけれども、まさに労働力不足からくる産業構造調整というものが今最大の経済政策の課題だと思っているわけであります。
 第三点、そういった上でさあ今度は、御婦人の方もいらっしゃるから、お年寄りもいらっしゃるから、こういう話をしたけれども、これも先生、私が思っているのは、人が足りないからあそこの奥さん働きにいらっしゃい、あそこのおじいさんも遊んでいるからいらっしゃい、人手が足りないから御婦人の方もお年寄りの方もさあいらっしゃい、いらっしゃいといって生産過程に投入するということは、これは考えてみれば経済重点主義、生産第一主義であって、私は、必ずしもそういうことじゃないのじゃないか。そういう、もう豊かになったといっていながら奥さんが働かなければ、おじいさんが働かなければということも、これもおかしな話なんであって、ですから私は、婦人労働力に対する考え方というのは、そういう労働力不足からじゃないだろうというのです。労働力不足は別途対応する。しかし、これだけ生活が豊かになったら、例えば家事労働から御婦人が解放されるからパートなど積極的にお仕事に出られる。だから、豊かだから御婦人の方々が積極的に自分の能力を発揮して生産活動、社会に参加される。お年寄りについても私はそう思うのです。豊かになったから、お年寄りが働いていただくような職場を整備して積極的に経験を生かしていただく、こういうことではないかというふうに考えておりますので、だから、御婦人に働きに来ていただく場合もお年寄りに来ていただく場合にも、その人間生活、家庭生活との調和をどう図るかということが大事であって、御婦人に来ていただいてお仕事についたけれども家庭は破壊されてしまった、育児なんかとんでもないということじゃ困るから、育児休業法というものを国会で御審議いただいて、この四月から施行をしていただくということでございますし、同時に、その後の育児に当たっても、先生おっしゃったような保育だとかそういういろいろな託児施設について国がお手伝いできることがあれば、それは融資なり税制なり、できれば助成、いろいろな面で総合的に考えていただいて、家庭生活と職場というものの調和をどう図るかということについて、私たちは従来やってきましたけれども、これまで以上に真剣にやらなきゃならぬというふうに思っているわけであります。
 高齢者についてもそういうことでいろいろ、後で御説明させますが、パートについてもそんな観点から我々も前向きに取り組んできたわけでございます。いわゆるパート減税限度額については、いろいろな議論をいたしまして、百万までいたしたのですが、またいろいろなことでひとつこれを上げたらどうかという御指摘でございますが、御案内のように、いろいろな横並びの議論もございますから、先生の御趣旨を踏まえてさらにいろいろな角度から検討してまいりたい、こういうふうに思っております。
#16
○大野(功)委員 近藤大臣の基本的なお話を伺いましたので、細かな説明は結構でございます。
 基本的な御説明を伺いまして、豊かだからかえっていろいろなことができるのだ、豊かだからパートで働くのだ、大変楽しいお話でございましたけれども、一方において、一体この労働力不足というのが日本経済の成長の足を引っ張らないかどうか、こういう問題もあるわけでございまして、そういう観点から外国人労働者問題もいろいろ真剣に議論されているわけでございます。豊かだから、あるいは労働力不足だから時短もできるのだ、こういう観点、大変そのとおりだと思いますけれども、どうぞその労働力不足という観点からもいろいろ御検討をいただきたい、このようにお願いしまして、時間の関係でもう一問、ぜひとも大臣のお話を承りたいことがありますので、そのことに移らせていただきます。
 それは何かといいますと、人間中心の健康で快適な職場づくりの話であります。大臣の所信表明の中でも、「人間中心の健康で快適な職場づくり」
という言葉が二回使われております。労働省がいかにこの点に力を入れているか、これも大変すばらしいことでありまして、大いに進めてほしい、このように思うわけでありますけれども、ちょっと待て。なぜ待てと言いますかといいますと、今、日本人は会社人間に過ぎるのじゃないか。つまり、つき合い仲間も会社の同僚である。そうなりますと、もう会社が人生のすべてでありまして、退職すると何もすることがなくなって、男はぬれ落ち葉と言われるような状態になっている。子供に将来何になりたいかと聞きますと、例えばコンピューターの技師とかいう答えじゃなくて、むしろ、どっちかというとサラリーマンになりたい、こういうような答えをする子供が多くなっております。まさに、一億日本人すべて会社人間になってしまう。このことは大いに反省しなければいけない。
 すなわち、高齢化社会を迎えまして、趣味の仲間とつき合っていかなければならない、地域の仲間とつき合っていかなければならない、大臣おっしゃったとおり家族とのつき合いはもっともっと密にしていかなければならない、このようなことを考えますと、今一番大事なことは、視点を変えますと、見方を変えますと、非会社人間をつくっていくことじゃないか。ところが、快適な職場をつくっていきますと、どうも会社にいた方が家へ帰るより楽しい、こうなりますと、だらだら働きがますます助長されるのじゃないか、時短が進まないのじゃないか、会社人間をつくっていって本当に人生を楽しむ生活ができなくなるのじゃないか。ですから、こういう観点から快適な職場づくりを進めていただきたいのでありますが、この点、コメントがあればよろしくお願いします。
 それからもう一つ、快適といいますと必要最小限の安全とか衛生、法律の名前を一々挙げませんけれども、例えば照明にかかわる規制、いろいろありますね。そういう最低の安全、衛生という問題が一つあると思います。それから、それに加えて快適ということを考えますと、例えば事務所、オフィスでもコンクリート張りよりもじゅうたんを敷いている方が快適なわけでありますから、その限度たるやどこまでいくのかわかりませんけれども、そういう快適度を加えていきますと、そこにはコストがかかってくる。そのコストを政府が負担しない限り、企業が負担していく限り、物価が上昇するという問題もありますけれども、労働者、働き手の方から見ると、この快適のコスト、新たにつけ加わる快適コストを、むしろ、そうじゃなくて、賃金でもらいたい、このように考えるかもしれません。その辺の調和をどうしていくのか、こういう問題が出てくると思うのでありますが、御所見があれば承りたいと思います。私は、これは快適に対して反対しているわけでありませんので、どんどん進めていただきたいのですが、どうしてもそういう問題を念頭に置きながらやらなければならない、こういうことであります。
 それで、快適ということを進めていくに当たりまして大臣にひとつお願いを申し上げたいのでありますが、今までも、例えば全国安全週間労働大臣表彰あるいは中小企業労務改善優良団体等の労働大臣表彰、障害者雇用優良事業所等表彰とかいろいろ大臣に表彰していただいて、それが企業にとっても働く者にとっても大いに励みになっていると思うのであります。そこで、この新しい施策を実行していくに当たりまして、快適指数、いわばアメニティー指数というものでもつくっていただいて、その中身をどのようなものにするか、例えばその企業が体育施設を持っている、あるいは託児施設を持っているとか食堂がすばらしいとか庭に緑とか、いろいろな考え方があると思いますけれども、その快適指数の条件をつくっていただいて、その快適指数のいい企業はぜひともひとつ労働大臣に表彰していただいて、そしてこの施策を現実に本当に労働者、働く者にとってすばらしい考え方にしていただきますようにお願い申し上げたいと思います。
 以上、初めの二つの問題点については、コメントがあればよろしくお願いいたします。最後については、労働大臣表彰でありますが、ぜひとも実行していただきたいということをお願い申し上げます。
#17
○近藤国務大臣 先生御指摘のとおりでございますが、実は本年一月に中央労働基準審議会から快適職場形成促進に関する建議を受けまして、これに基づいて私たち労働安全衛生法を改正をいたしまして、快適職場づくりに労働省としてもお手伝いいたします。具体的には、指針を策定いたしまして、これに基づいていろいろな整備をしていただく。労働行政は従来は安全と衛生に重点を置いておったわけですけれども、そういう安全ももちろん大事、衛生ももちろん大事でありますが、もっと一歩進んで、快適というものを我々の労働行政の大きな柱にこれからしていくということが新しい時代の労働行政であると思っておるわけであります。
 先生御指摘の労働大臣表彰をしたらどうだ、こういうことでございますので、これは大変御示唆に富む御提言でございますが、どういう形でこれを表彰するかどうか、いろいろ技術的な問題はあるかもしれませんが、貴重なお考えとして受けとめさせていただきたいと思います。
#18
○佐藤(勝)政府委員 今大臣からお答え申し上げました点に加えまして補足させていただきますが、会社が非常に快適だ、会社だけにいることを好むというようなことになるほど快適になればいいわけでございますが、私どもが考えておりますのは、最近の技術変化に伴います職場環境の変化によりましてストレスや疲労を感ずる労働者の割合が非常に高くなっている、言ってみれば職場生活だけでもういっぱいである、地域との触れ合いなり、家庭生活をエンジョイするということが非常に難しくなってきているという実態を踏まえまして、そういう状態にならないような快適な職場で、かつ時間短縮を進めながらそういう職場を形成していく、ゆとりを持ってその分地域活動に参加するあるいは家庭生活を充実させていく、こういう発想で進めておりますので、御心配のようなことにならないように、この運用については十分気をつけてまいりたいと思っております。
#19
○大野(功)委員 ありがとうございました。これからも大臣、そして労働省の皆さんが真に働く者の味方として頑張ってくださいますようにお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
#20
○川崎委員長 五島正規君。
#21
○五島委員 去る二月十四日、バレンタインの日でございますが、海上自衛隊の厚木基地におきまして非常に重大な事故が発生いたしました。近年、労働災害全体としては低下してきている中におきまして、土木、建設関係において重大事故というのは相変わらず非常に多いわけでございますが、とりわけ今回起こりました事故、一挙に七名のとうとい人命が失われ、十三名の重軽傷者が発生するという事故でございます。ちょうど十一カ月前、昨年の三月十四日にも、広島におきまして公共事業の中において重大事故が発生いたしております。
 大臣は、この事故発生後、直ちに現場に視察に赴かれたということでございます。私ども社会党の方も、シャドーキャビネットといたしまして、川俣健二郎厚生労働委員長を団長といたしまして調査団を派遣いたしました。私もそのお供をいたしたわけでございますが、見れば見るほど、聞けば聞くほど、非常に問題を含んだ重大な事故であったというふうに感じております。
 大臣もそこに視察に赴かれたわけでございますが、まず最初に、大臣、この事故についての御感想なり御所見をお伺いしたいと思います。
#22
○近藤国務大臣 実は、私は労働大臣就任以来、労働災害の防止が労働行政の最重要課題である、こういうふうに認識をいたしまして、機会あるごとに労働省の関係者に対して災害防止の必要性を訴えてきた、話をしてまいったわけでございます。したがいまして、今回の事故は大変残念なことでございました。
 私も、予算委員会がとまっておったものですから、これを利用させていただきまして現地に飛んでまいって、私自身の目でこの災害の現場を見て、先生のお話にもございましたけれどもまさに惨たんたる事情であって、改めて亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げると同時に、傷害を受けられた方々に対しても大変御同情申し上げ、労災その他いろいろな対応については、保険その他の対応については速やかに行えるように言ったわけでございますが、同時に、事故の現場でいろいろ関係者の話を聞きました。聞きましたが、こういうことは前にもやったことで、こういう事故は初めてですというようなお話もあったわけですけれども、私は、そうはいっても現実に事故が起こったわけでありますし、起こるには起こるなりの原因があって起こったことでありますから、早速、所轄局署の調査とあわせて、技術面からの十分な検討を行うため産業安全研究所長を主査とする特別技術調査チームを設けて徹底的にこの原因の究明に当たることにいたしました。また、労働省といたしましても、関係団体に対して早急に建築工事現場の安全点検を、これはここだけでなしに全体に安全点検を再度徹底するように要請したところでございます。
 いずれにいたしましても、大変な深刻な事故でございますし、こういうことが二度と起こらないようにさらに効果的な再発防止対策をつくってその徹底を図ってまいりたいと考えております。
#23
○五島委員 重大な事故が発生いたしまして、犠牲となられた方々の御冥福を祈る上においても、この事故の原因究明、そして再発の防止ということが何よりも大切であるだろうというふうに考えます。この点につきましては、現在、労働省及び警察においても調査なさっておられることと存じますが、この場におきましても明らかにすることはして、再発の防止に資していきたいというふうに考えます。
 そこで、お尋ねするわけでございますが、この体育館の建設に当たりまして、建設指名競争入札が昨年の三月、十の共同企業体によって行われた。しかし、予定価格が非常に低いために落札ができずに、入札が四回行われたものの、それでも決まらなかった。結局最後まで入札に残った銭高組と佐伯建設の共同企業体との間において一期工事分を約五億九千四百万で随意契約したというふうに言われております。しかも、この金額は、この共同体が最終的に提示した金額との間に六千万円程度の開きがあったというふうにも報じられているわけでございます。
 きょう施設庁の方お見えだと思いますが、そのことは間違いないでしょうか。
#24
○田中説明員 お答え申し上げます。
 去る二月の十四日、神奈川県の大和市の海上自衛隊厚木基地内で建設しておりました体育館、プール等でございますが、これにつきまして多数の死傷者が出るような大きな事故が起きたということは、まことに遺憾でございます。お亡くなりになられた七名の方々の御冥福を心よりお祈り申し上げるとともに、御遺族の皆様には謹んでお悔やみ申し上げる次第でございます。また、負傷された方々の一日も早い回復をお祈り申し上げる次第でございます。
 先生の御質問でございますけれども、本件工事の契約手続でございますが、指名競争入札を行ったところ落札者がおりませんでしたので、そこで、発注者の横浜防衛施設局は、最低入札金額を提示しました銭高組それから佐伯建設共同企業体と随意契約を行うこととしまして再度見積もりを徴収しましたところ、見積金額が予定価格の範囲内であったということから、当該企業体と随意契約を締結したところでございます。
 この契約金額と最終入札金額との差でございますけれども、指名競争入札の段階では、請負者が提示しました入札価格と契約額の差は、先生の御指摘のとおり約六千万円ほど差がございました。この六千万円の開きにつきましては、入札金額が請負者の見積もりであると同時に、契約金額も請負者の最終的な見積金額でございますことから、この見積もりの差につきましては当庁としては判断しかねるところでございます。
 なお、請負者が適正な履行が確保せられないような見積もりを提出するということは考えられませんので、契約金額は適正なものであると考えております。
#25
○五島委員 最終見積金額とそれから随契によって契約された金額との間に一割以上の価格差があった、こうした価格差、これが合理的であるとおっしゃるわけでございますが、そうしたことが結局今回の事故の原因になりました安全対策その他に対する手抜きになったのではないかという疑いもあるわけでございます。
 そういう意味で、きょう建設省の方にもおいでいただいているわけでございますが、建設省が公共事業を発注される場合に、こうした入札価格の最低価格、それを約一割を超えて差額が出る、五億九千四百万に対して六千万も差が出てくるというふうな入札ということは通常よくあることなのかどうか、建設省の方にお伺いしたいと思います。
#26
○峰久説明員 建設省におきましては、入札の執行回数は原則として三回行っております。その中で、落札者がないときには予定価格と最低入札価格の差をかんがみまして、随契が可能であるなと思われる場合については不落随契でやりますし、それが困難であると判断されます場合は指名がえ等を行ってやっておるところでございます。
 それで、先生の御指摘のように、建設省におきましては不落随契に移行した場合、予定価格と最低の入札価格の差が大部分の場合は少ないということでございまして、少額でございまして、その少額の場合が大部分でございます。ただ、入札時の最低価格と随意契約の金額との差が一割を超えているようなものも、若干ではありますけれども、例としてはございます。――ちょっと今資料は持ち合わせておりませんがごく少数、三%か四%ぐらいではないかと思います。
#27
○五島委員 今の建設省の方のお話でも、今回の施設庁の入札と落札の価格差、これを随契で埋めるというのは例外であった。また、建設省の場合は入札も三回程度とおっしゃっておられます。今回は四回も入札してそれでも決まらなかったということの中には、そもそも発注金額に無理があったのではないかというふうにも考えるわけでございますが、その点の問題につきましては改めてまた質問していきたいと思うわけでございます。
 あわせまして、この着工の許可は、昨年の三月にあれになったわけでございますが、着工の許可がおりたのは結果としては昨年の七月、当初予定していなかった埋蔵文化財の調査といったような問題、あるいは地下のコンクリート片の除去といったようなことに予定外の日数がかかってしまい、非常に作業工程が緊迫してしまったという話もあるわけでございますが、その点について施設庁の方、事実関係はどうなんでございましょうか。
#28
○田中説明員 先生御指摘の埋蔵文化財の件でございますけれども、埋蔵文化財は、本工事を発注後、建設地に埋蔵文化財の存否の可能性があるということが判明しまして、神奈川県教育委員会におきまして埋蔵文化財の存否の確認調査を実施したということでございます。
 なお、確認調査は平成三年の六月まで期間を要しまして、その結果、埋蔵文化財は確認されなかったということで、これが確認された後に直ちに土工事等に着手したところでございます。
#29
○五島委員 その結果、工期はその契約時より延長させたわけですか。納期ですね。
#30
○田中説明員 工期はその時点では当然おくれたということでございますので、延ばす予定でおりました。
#31
○五島委員 予定がございましたということは、企業体の方にその完成納期については変更を通知していたわけでございますか。
#32
○田中説明員 それは業者の方とで合意されております。
#33
○五島委員 続いてお伺いしたいわけですが、こ
の体育館の設計に関しまして、設計については施設庁の方で直接になされたというふうに聞いております。構造計算であるとかそういうものに基づきましてこの体育館の設計は施設庁が行われ、そして施工についてはこの共同体がするという形になったというふうに聞いているわけでございますが、そのことはそのとおりかどうか。あわせまして、設計書をつくられたということからしますと、当然仕様書の作成も施設庁の方がおつくりになったんだと思うわけですが、その点についてはどうなのか、あるいは施工管理はどこがやられたのか、お伺いします。
#34
○五十嵐説明員 お答えします。
 設計につきましては横浜防衛施設局が行っております。工事の実施に当たっての施工計画、安全管理、工程管理、品質管理等のいわゆる施工全般を管理するのは請負業者の責任において実施されております。
#35
○五島委員 この設計は防衛施設庁でおやりになられたということで、当然それに伴う仕様書も施設庁でおつくりになられたと思うわけですが、当初やられたのは一般工法による建造の設計であったわけでございます。この工事が途中でいわゆるビルトスラブ工法に変更がなされた、
 このビルトスラブ工法への変更については、請負者の側からの提案に基づいて変更したというふうに現地でもおっしゃっておられたわけですが、そういたしますと、このビルトスラブ工法への変更、変更することによる設計変更をも施設庁で行われたわけですね。その点お伺いします。
#36
○五十嵐説明員 お答えします。
 平成三年九月下旬、請負者の方から工場製品を多様化するということにより現場作業省力化を図りたく、かつ契約額の範囲内において床構造の変更をしたい旨の申し出がありました。発注者といたしましては、この申し出に対し、変更する床構造が関連法規を満足し、かつ当初の設計と同程度以上の荷重に耐えるものであることを確認し、平成三年十月下旬、設計変更をしたものであります。
 設計変更に伴う契約変更手続は、平成三年度末にほかの変更とあわせて行う予定でございました。
#37
○五島委員 契約変更はまだできていなかったということなんですが、ビルトスラブ工法に変えることによって当然設計図も変更しなければいけないわけでございますが、その設計書の作成、変更作成はどなたがされたわけですか。
#38
○五十嵐説明員 お答えします。
 請負業者から提出された床構造の変更願い書に添付されて、図面構造計算書及び仕様書が提出されております。横浜防衛施設局は、この提出された図面構造計算書及び仕様が関係法令を満足していること、かつ当初の設計と同等以上の荷重に耐えられるものであることを確認し、変更を承認したものでございます。
#39
○五島委員 設計は施設庁が行っておりながら、こうした構造上の重要な変更に関しては施工者の側が引いた設計図を審査して、それをそのまま認めたということでございますので、これは一体どうなっているのか、非常に問題があることじゃないかというふうに思います。
 それで、その点についてあわせて、じゃ、このビルトスラブ工法に変えることによる具体的なメリットは何だったのか。工期がおくれていたために、これをやることによって工期が早まるというふうに判断したのか、あるいは企業体の方が人員が確保できないという状況の中でこういう願いが出てお認めになったのか、あるいはこの工法を採用することによって建築単価はどうなったのか、その点について明確にお答えいただきたいと思います。
#40
○田中説明員 お答え申し上げます。
 これは、業者の方の申し出によりまして現場の作業を省力化しようということであったわけでございます。
 それで、金額の件でございますけれども、官側の方で積算しますと高くなるということでございます。
#41
○五島委員 いいですか。入札最低価格よりも六千万も提示価格が低い。提示価格とそれから決められた価格とに六千万も差があるということで、入札が落ちずに随契にされた。そして工事の工期については延期している。しかし省力化、すなわち人手がいなかったんだろうと思いますよ、省力化ということは。人手がいないということが理由で業者の方から設計図を添えて、いわゆる請負側の方から構造変更を願い出られた。そのことについて、単価は高くなるけれどもそのまま認めた、これはどう考えても理屈に合わないんじゃないですか。もしこのビルトスラブ工法を採用していないとすると、工期はどの程度延びたんですか、あるいは現実に工事を中断せざるを得ないというふうな状況があったわけですか。工費が高くなるにもかかわらずあえてこの工法を認められた理由は何なんですか。
#42
○田中説明員 先ほど申し上げましたように、これは請負業者の方からの申し出によりまして、構造的にいろいろチェックしまして、それを承認したということでございます。
 それで、工期の件でございますけれども、先ほど申し上げましたように、工期は文化財等の関係でおくれたということでございまして、ビルトスラブ工法によってそれを取り返すとかそういうことではございません。
#43
○五島委員 だから、ビルトスラブ工法に変えることによって非常に安く抑えようとしておられた建設費が高くなる、工期が別に短縮するわけでもないとすれば、なぜその工法への変更を認められたのかというその理由をお伺いしているわけです。
#44
○田中説明員 これは、先ほどもお話ししましたように、非常に労務不足ということでございまして、工場製品を使うことによって現場での作業量を少なくするということで、一般的なあれで変えたということでございます。
#45
○五島委員 結局、人手が不足している中で人件費が上がってくる、だから当初の契約価格ではこの体育館の建設ができない、そのことは最初からわかっていたわけでしょう。だから、途中でこういうビルトスラブ工法というものを提案された場合にそれを認めざるを得なかったわけでしょう。結果としてそのことによって建設単価は高くなったとしても、省力化でこういうふうな形で変えざるを得ないということになってしまった、そういうことじゃないんですか。
#46
○川崎委員長 ちょっと待ってください。
 ちょっと速記とめて。
    〔速記中止〕
#47
○川崎委員長 速記を始めてください。
 五島君。
#48
○五島委員 私が今質問した点につきましては、どうも今の御回答では明確になりません。そういう意味では、改めまして、この契約の経過及びビルトスラブ工法に変更された理由について明確に後日知らせていただきたいと思います。
 質問を続行したいと思います。
 このビルトスラブ工法に変更する場合には、労基署に対して、労安衛法に基づく設計変更に伴う届け出が必要なはずでございますが、この届け出はいつ提出されたのか、お伺いしたいと思います。
#49
○佐藤(勝)政府委員 御質問のとおり、この計画の提出を労働基準監督署にいたすわけでございますが、この災害の起きました建設工事現場に設置をされます型枠支保工の計画につきましては、平成三年の十一月二十二日、これはこの部分の工期のもちろん前でございますが、所轄の監督署に提出されております。そのときの届け出の内容は既にビルトスラブ工法になっております。ビルトスラブ工法を用いる際の型枠支保工についての計画ということで届け出がなされております。
#50
○五島委員 それは、届け出者はどなたでございますか。
#51
○佐藤(勝)政府委員 届け出の名義者は、この災害で亡くなられました銭高組の現場所長でありま
す。
#52
○五島委員 この二月十四日の事故が発生する二日前に、防衛施設庁はこの現場の中で検査を実施しておられるわけでございますが、その検査におきましてどのような内容について検査を行われたのか、お知らせいただきたいと思います。
#53
○田中説明員 お答え申し上げます。
 コンクリートの打設に先立ちまして、鉄筋及び型枠の検査を実施しております。これは鉄筋の寸法あるいは設置場所、それから型枠の寸法等が設計どおりに確保されているかを確認したものでございます。
#54
○五島委員 そのときは既に支保工が設置されていたはずでございますが、支保工の検査は行われたのでしょうか。
#55
○田中説明員 支保工は契約上請負者の責任においてなされるということでございますので、その段階では当然安全性については請負者が行うべきと承知しております。
#56
○五島委員 この工事では支保工が当然使われるわけでございますが、この工事の型枠支保工作業主任者、これは労安衛法で支保工を使う場合は作業主任者の設置が義務づけられておりますが、この型枠支保工の作業主任者はどなたであったのか、お知らせいただきたいと思います。
#57
○佐藤(勝)政府委員 お尋ねの主任者は任命をされておりましたけれども、その具体的な名前はちょっと今ここで手元にございません。
#58
○五島委員 名前が手元にないというのは、労働省に対して不信を持たざるを得ないわけで、これは作業許可を出される段階で、その型枠支保工作業主任者の届け出はあるはずでございます。
 問題は、その型枠支保工作業主任者というのは、ビルトスラブに限った問題なんではなくてこういう工事全般にやられる、作業主任者がこのビルトスラブ工法について熟知していたかどうかということがこの問題で重要なんですよね。だから、名前はすぐにでも調べていただきたいと思います。
#59
○佐藤(勝)政府委員 先ほどの答弁間違えまして大変失礼をいたしました。
 主任者は先ほども出てまいりました福地、つまり銭高組の現場所長の下におりました福地という方でありました。
#60
○五島委員 間違いないですね。福地組の福地さんですね。間違いないですね。
#61
○佐藤(勝)政府委員 そのようにただいま理解をいたしております。
#62
○五島委員 これは大変な問題だと思うのですね。福地組の福地さんがもし型枠支保工の作業主任者であったとした場合に、このビルトスラブ工法というものの建設経験、現場で私どもが聞いた限りにおきましては佐伯組も経験がない、経験があるのは銭高組のお亡くなりになられた平野さんがかつてこのビルトスラブ工法について経験があった、その方一人であったというふうに聞いております。
 その点についてはもう既にお調べになっていると思うわけですが、この型枠支保工作業主任者の場合に、一般工法であればその経験があるわけでしょうが、ビルトスラブ工法においてこの型枠支保工、これは当然受ける重量も全然違いますし、本数も違ってまいります。それはもう皆さんよく御承知のことですね。それを全く経験したことのない人に作業主任者として命じていたということになるわけなんですが、その点についてはどうお考えですか。
#63
○北山政府委員 ビルトスラブ工法というのはいわゆる床を打設する際の型枠の工法でございまして、型枠支保工ではないわけでございます。型枠支保工というのは、下でビルトの型枠を支えているいわゆる支柱を型枠支保工と言っておりまして、この型枠支保工につきましては、組み立て鋼柱という形で組み立てていたわけでございますけれども、この組み立て鋼柱についてはそんなに新しい工法でもないということでございまして、作業主任者につきましても労働基準局長またはその指定する者が行う技能講習を修了した者でございますので、そういう意味では、型枠支保工については経験があったのではないかなというふうに考えております。
#64
○五島委員 安全部長がそのようなとぼけたことを言っておられたのでは困るわけですよね。確かに型枠支保工というのはビルトスラブに固有のものではなくて、一般的にそういう型枠作業の中において組まれるものですね。しかし、ビルトスラブ工法という、建設大臣が五十四年に認可になったといってもまだ全国でも三百例ぐらいという新しい建設技術でございます。今は建設現場におきましても省力化の関係でさまざま新しいそういう建築方法、技術が導入されてきている。そういう導入の中において、それまで型枠支保工としてやってこられたその作業とは違った、さまざまに配慮しなければいけないものがある。例えば、支保工が受けとめる重力、圧力ですね、これはもう全然違いますよね。あるいは、そうなれば支保工の使用頻度、これだって当然違ってくる。もうそれは常識だと思うんですね。そういうふうな知識が必要なのかどうなのか。これはまさに労働省の所管の問題なんですよね。
 支保工の資格を持っておるというのはそのとおりだろう。しかし、その支保工の資格を持っている人がそういう建設を経験したことがない、その人に支保工を組ませていた、これは請負者の責任でしょう。また、安全部長がそれでいいわと問題点を感じてないとすれば、これは労働省の姿勢の問題ですよ。どうですか。
#65
○北山政府委員 ビルトスラブ工法は昭和五十四年ごろから実施をされているというふうに聞いております。この工法で行った現場において災害が発生したわけでございますけれども、この工法が今回の事故にどういうふうにかかわっていたかというようなことにつきましては、現在鋭意技術的に調査をしているところでございます。
 また新しい工法を採用するときに、例えば作業主任者に対しましていろいろ教育をするということが必要ではないかということは御指摘のとおりでございまして、労働安全衛生法の第十九条の二の方に、そういった作業主任者等に対していろいろ技能向上教育を実施するようにしなければならないという規定がございまして、今後ともそういった形で技術の進歩とかそういうものに応じたそういった人々に対する教育、再教育といいますか、そういうものに十分徹底を図ってまいりたいというふうには思っております。
#66
○五島委員 そういう一般論の話ではなくて、現実に事故が起こったわけですよね。そして、原因については今調査中である、だからその原因は、何が原因であるかということは断定できない、それは私の方も質問の当初に言っているわけです。しかし問題は、そういうコンクリート、はりを支えていた支保工そのものを設置していく作業主任者が全くこのビルトスラブという工法については経験のない人だ。例えばビルトスラブで使った場合と一般工法でやる場合と支保工の使用頻度はどうなんですか、一緒なんですか。回数違うんですか。
 それはお答えは後でいただくとして、例えば二十二日の朝日新聞の夕刊の中に、「しかし、銭高組が請け負った工事でこの工法を使った例はほとんどなく、今回の現場でも経験者は作業所長一人だけだった。「ビルトスラブ工法」の発案会社に鉄筋の組み方の指導を受け、あとはマニュアルを見て作業した」というふうに書いております。そして「神奈川労働基準局などのこれまでの調べでは、@床板を支える大梁への生コンの注入量が少なかったA床への生コンの敷き方の向きが違っていたB生コンを流し込む際に型枠の横ぶれを防ぐための揺れ止め材の本数の不足など」これは支保工のことですが、「マニュアル通りでない点が確認されている。」というふうに書かれています。これはマスコミの情報ですから事実かどうかわかりません。
 しかし、少なくともこうした問題について、現場の作業所長一人だけがビルトスラブ工法について過去に経験があって、あとは全く経験がない
人、しかも、安全の上においても当然重要である支保工の作業主任者が全くそういうことについて経験のない人に組ましている、そのことについて労働省としてはどのようにお考えですか。法的に作業主任者がいたんだから問題ないわということでは済まないんじゃないですか。これは、そのような工事に突然変わっていくとするならば、少なくともそのビルトスラブ工法になれた作業主任者をもって据えていくということが当然なされるべきではないんですか。その点どうお考えですか。
#67
○佐藤(勝)政府委員 ただいまの御指摘、単に作業主任者が選任をされているというだけでなくて、その作業に通暁した者を選任すべきであるという、大変ごもっともな御意見であろうかと思います。
 今回の場合に御指摘のようなことがあった、つまり、この作業工法になれていない者が作業主任者になっている、そのことが災害の原因になったのかどうかということにつきましてはさらに調べていかなければならない問題ではございますけれども、今後、作業主任者のあり方というようなものにつきましては、今の御指摘のような点も踏まえまして十分考える必要があろうか、こういうふうに思っております。
#68
○五島委員 ビルトスラブ工法で支保工を組んでいく場合、常識的には、この支保工設定のために足場ステージを組むのが常識であるというふうにも聞いたわけでございますが、今回の工事の中では、足場ステージが組まれていたとするならばあのような形での事故になっていなかったはずでございます。そういう意味では、足場ステージも組まないままに七メートルに及ぶ支保工を従来の感覚でもって設置された、これは明らかなんです。これはビルトスラブになれていないということであり、また、マニュアルと称するのはパンフレットみたいなものですが、その中でもそういう足場を組んだ作業の図もありますが、そういうふうなことがやられていなかった。全く本当にこの作業に熟知していなかったということが明らかになっています。
 さらに、今回の事故の発生というのは、実は一時三十分ぐらいに三番目の型枠が抜け落ち、三メートル掛ける二メートルぐらいの長方形の型枠が抜け落ちてしまって、そしてそれが下へ落下した、間違いないですね。
#69
○北山政府委員 そのように聞いております。
#70
○五島委員 最初にこういう型枠が下へ抜け落ちるように落下した、その事故の後、この落ちたコンクリートの型枠の整理にすぐに労働者を投入しています。そしてそれだけでなく、それから数分後に、この落ちたのが三番目の型枠でございますが、四番目を飛ばしまして五番目にコンクリートの流入を始めた。そして、このコンクリートの打設が始まったときに全体の事故が起こった。起こったのは一時四十五分ぐらい。一回目の事故が起こってからわずか十五分ぐらい間を置いてあの大事故が起こった。突然そういう考えられないような、そういう型枠が下に落下して抜けてしまうという事故があったにもかかわらず、そこで作業を中止して安全を確認する、あるいは原因を究明するという作業をやらずに、そのまま一列飛ばしてコンクリートの流入というものをやっている。そこにはもう本当に安全対策というのは全く感覚になかったとしか言いようのない、そういうむちゃなことが行われているわけですが、そういうふうなことが報道されたり、また現地でもお聞きしたわけですが、そのことについて、まず間違いがないかどうかお伺いします。
#71
○北山政府委員 あの事故は一時四十五分に発生をしたわけでございますけれども、御指摘のとおり、一時三十分ごろにいわゆるはりの一部が脱落をいたしましてコンクリートが流出をしたという一次の事故がございました。それに関して、亡くなられた現場の所長を中心にその点検、そういったことについて相談をしているときに二次崩落が起こってああいう災害になったというふうに聞いておりますけれども、その二階の床が崩落をしたときに一階部分でどういう作業が行われて、どういう方々が配置をされていたか、そういうことにつきましても現在鋭意調査をしているところでございます。
#72
○五島委員 どの人がどういう作業をしていたかということは調査していただければいいんですが、最初落下事故が起こって、そしてそれから十五分ぐらいした後に大きな落下事故が起こった。しかもその間に、落下したにもかかわらず一列目を飛ばして五列目にコンクリートの流入作業を開始した。このことはもう既にNHK等でも報道されたことでございますね。そのことは確認しておられますか。
#73
○北山政府委員 そこまでは聞いてはおりません。
#74
○五島委員 聞いていないということであれば、朝日新聞やNHKにまで報道されている事実が確認していないわけがないんで、間違っていたんであれば非常に不正確な情報がマスコミを通じて流れているということですので、聞いていないということでは困るわけで、早急に確認していただきたい。
 しかし、少なくとも現場で働いておられた労働者の証言によると、こういうふうに書いています。最初「長さ三メートル、幅二メートルくらいの長方形の穴があきました。四、五人が手をやすめ、「どうしたんだ、おかしい」といって穴をのぞいたりしていました。ぼくが穴をのぞくと、落ちたプラスチックとパネルがネットにひっかかっていました。一階では亡くなられた福地一彦さんたちが、いやそうな顔をして、落ちた機材を片づけているのがみえました。」 「しばらくして穴のあいた横の仕切り、四列目をとばし、五列のコンクリート流しが始まった時、ずるっと足から引きこまれるように落ちた。とっさに、鉄筋に片手でぶらさがっていました」、これはその事故に遭われた方の証言でございます。そういうふうな現場の労働者のそのときの状況というのをまだ聞いておられないということは、これはもう時間もたっておりますので、怠慢ではないかというふうに考えます。
 また、同じくその福地組の方々の人あるいは第二次下請の新日本工業さん、そういうふうな人たちがビルトスラブ工法というものについて「「こんなものでだいじょうぶか、あぶないんじゃないのか」と不安がひろがっていました」「新日本工業でさえ、「この工法は初めての施工。経験していたのは銭高組の平野現場所長だけであった」」この方がおっしゃるところでは、型枠支保工の主任者だったと思われるわけですが、「私は変更された図面ももらっていなかった。事故が起る一週間前も、「みんな不安がるのでなんとかしてほしい」と何回も平野さんに頼みましたが、平野さんは「心配ない。だいじょうぶだ」の一点張りでした。」というふうに、福地組の福地六郎さんですか、とおっしゃる方が言っておられます。型枠支保工作業主任者が変更された図面ももらっていなかったという状況の中で安全な作業が行われるはずがないではないか。
 その点について、元請に対する現場へのそういう安全面での、どういいますか、監視あるいは体制づくり、義務づけ、この点をやはり労働省はもっときちっと強く要請していくべきではないかというふうに思うんですが、その辺どうお考えでしょうか。
#75
○佐藤(勝)政府委員 今先生いろいろ報道で伝えられておりますところの災害の発生のときの状況あるいは原因、あるいはそれに類するものについて述べられましたけれども、私どもといたしましては、現場の調査と関係者からの事情聴取によります原因の究明を鋭意行っている最中でございます。報道の中にはなるほどと思われるものがございますが、あくまでも私どもは今申し上げましたような方法で事実の確認を鋭意できるだけ速やかに行いたいというふうに思っておりますことがまず一つ。
 それからもう一つ、現在一定規模以上の現場におきましてはいわゆる総括安全衛生管理体制というものがとられておるわけでございますが、今回
事故が発生した現場の規模の事業所におきましては、そのような体制が法令上は義務づけられておりません。このことが小規模事業所におきます災害、特に死亡災害がなかなか減らないという一つの原因であろうかというふうに考えまして、先年以来審議会におきましても検討をお願いし、今国会に既に提出しております安全衛生法等の一部改正におきましては、そのような小規模の事業所におきます安全管理体制を充実するという観点からの改正が含まれておるわけでございます。私どもは今後そういった点を充実いたしまして災害の防止に努めていきたい、こういうふうに思っております。
#76
○五島委員 今回お亡くなりになられた方もたしか岩手からの出稼ぎ労働者も多数入っておられます。今日の建設あるいは土木作業の高度化といいますか技術の革新に対して、一方で労働力不足という中で、それに対する熟練度という意味においては乖離が非常にひどくなっている。その乖離をそのままに放置しておくと、そこには重大事故を発生させる原因というのは無数にあるんではないか。これが地下工事における大きな事故であったり、あるいは昨年の未成年者を含む広島での事故であったり、今回の事故であったりするんではないかというふうに考えるわけですが、そういうふうな状況になればなるほど元請の企業が作業の安全管理全体について直接的に技術指導を行っていく、その義務づけというものをきちっとしていかないとこうした事故は今後もなくならないんではないか、そのように心配するわけでございます。
 そのあたりについての事実関係、すなわち、労基局として労安衛法違反があったかどうかの調査、これは皆さん方の責務としてやってもらわないといけません。どこに、だれに責任があったかということはやっていただかなければい付ません。しかし、再発防止という観点からいうならば、そういう全体的な流れの中において今回の事故の何に大きな問題があったのか、これはもう皆さん、安全部長なんか当然つかまえておられないと困るわけですよ。具体的にどこのだれべえがどういうミスをしたかという問題じゃない。全体の流れの中で、今回の事故について、どういうふうに今後の再発防止を考えようとしておられるのか、その点について大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
#77
○近藤国務大臣 先生から今いろいろな御指摘がございました。冒頭申し上げましたように、こうした深刻な事故が起こったことは冷厳な事実でございます。そして、なぜこの事故が起きたかということについてのいろいろな技術的な面についても、専門家の中で徹底的な原因の追及をしてもらわなきゃならない、こう思っておりまして、先ほど申しましたように特別なプロジェクトチームを産業安全研究所長を主査として労働省が発足させたことがございますが、同時に、先生の御指摘がございましたようなこの工期との関係、労働力不足に対する対応の仕方とか、今の入札の価格の問題もございましたが、実際、人命を含む事故が出ているのは建設現場が相対的に多いわけでございますので、そういう技術的な問題の徹底的な原因究明と同時に、そういう工期だとか建設単価だとか、そういったものが適正であって、そして過重な負担がかからない、こういうことも職場の安全の確保のために大変重要な視点であるというふうに私は考えております。
 そういう面からも、今後労働省が労働安全衛生という観点から、発注官庁やまた発注業者に対してもいろいろ助言といいますか十分な配慮をしていただけるように、労働行政の面からも発言を積極的にしていくように、私は労働大臣として指導してまいりたい、かように考えております。
#78
○五島委員 時間も近づいてまいりましたので最後にまた御要望したいと思うわけです。
 今大臣もおっしゃいました人手不足という状況の中で、また、建設業界のこれまでの慣例といたしましていわゆる下請、孫請、ひ孫請という非常に複雑なそういう請負構造の中において、事故の防止、安全対策という問題について第一義的にどこが責任を持たないといけないのか、最終的にどこが責任を持たないといけないのか、これは非常に大事な問題であるというふうに考えます。まして今回のように現場で働いている人たちにとって全く非熟練な、したことのないような作業に従事をするといった場合、当然個人であろうと下請の企業であろうと、その人たちの作業管理、あわせて安全管理の責任は元請が持つべきである、当然元請の責任であるというふうに考えられるわけでございます。その点について労働省の方は今後厳しく指導していただくことをお願いをしておきたいと思うわけです。
 あわせまして、今大臣も申されましたように、やはり請負単価の問題あるいは工期の問題、そういうふうなものが結果としては下請業者、二次下請、三次下請といったところに対して非常な犠牲を強要することになる。よくある事例でございます。そういう意味で施設庁に対しまして、今回の事故の原因について施設庁の方からもその原因の究明をぜひ徹底的にしていただいて、そして施設庁の発注工事の中でこのような災害の発生、再発がないように防止策というものをぜひお立ていただきたい、そのことを強くお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
#79
○川崎委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十四分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
#80
○川崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。岡崎宏美君。
#81
○岡崎(宏)委員 大臣の所信を伺いまして、ぜひその具体の中身についてお尋ねをしていきたいと思うわけです。
 所信の中でも、高い経済力、これをすべての勤労者と家族の方々に還元をする、ゆとりある豊かな暮らしを実現をすることが生活大国づくりの基盤である、そしてそれが労働行政の使命であるというふうにお考えを述べていらっしゃいますし、また、人間尊重あるいは人間中心の経済社会システムの構築あるいは人間中心の、それこそ午前中もお話しになっておりましたが、健康で快適な職場の実現、本当に随所に人間中心という言葉が出てくるわけです。伺って、これは大変結構なことだ、ぜひ人間中心であってほしい、そういうふうに思うわけですけれども、それは働いている人一人一人にとってそうでなければならない、こういうふうに受けとめておりまして、それがなければ、ああ非常にきれいな言葉が並んだな、こういうふうになってしまいますので、ぜひ具体的に進めていただきたい、そういう思いを込めてきょうは幾つか質問をさせていただきたいと思っております。
 まず、雇用の問題が、特に労働力が不足をしているということが念頭に置かれて取り上げられているというふうに思うわけです。
 ところで、労働力への需要ですね。求める側に合わせる形で、これはある一面では供給の側といいますか、今の社会のいろんな条件の整備とも関連してくると思うんですけれども、実にさまざまな雇用の形態というのが出てきていると思います。私も一体どん有形があるんだろうというふうに見てみたんですが、労働省が出していらっしゃるこの分厚い「労働問題のしおり」、この中にも派遣、パート、臨時、日雇いあるいはシルバー、こういった形まで実にさまざまです。
 ところが、大変種類がふえてきている形態の中で、労働者としては扱われていない、働く人ではあるけれども労働者という概念ではない人たち、あるいは労働基準法が適用されない人たちというものも含まれてきていると思いますね。そこに随分いろんな問題が出てきているんじゃないかと思います。きょう午前中、私ども社会党の五島委員が質問をさせていただいたあの厚木の事故で犠牲になられた方は、これは出稼ぎの労働者の皆さんです。
 雇用の形態がふえればふえるほど、実に不安定な労働者というものが一方でどんどん生まれてくるわけでして、その不安定であるがゆえに労働力の不足というものもまた生む構造がある。不足と言われている面は、どこもが不足しているのではなくて、たどりたどっていくと俗に三Kと言われているような職場に顕著だということを見てみても、結局不安定な、保護されない労働者というものがふえる構造をつくり続けることによってさらにある意味で労働力の不足も生む、それがさらにまた不安定なものも生むというそういう欠陥があるのではないかというふうに思うわけです。
 大臣に、ぜひこの現実に目を向けていただきたい、この現実を認識をしていただきたいということをまず第一にお伺いをしたいと思います。
#82
○近藤国務大臣 私、労働大臣になったときに、おまえは大変難しい時期に労働大臣になった、この労働力不足をどうするんだとか外人労働者をどうするんだとか、そういうことをいろんな先輩の皆さんから言われたわけでございます。実はこの間パリのOECD労働大臣会議に出席いたしましたが、日本は労働力不足、まさに完全失業率二%だけれども、OECD加盟国の中でアメリカが七%だとか、イギリスやその他になるともう一〇%前後の失業率であります。OECD全部合わせてみると三十万を超える失業者がいる。ですから、日本は労働力不足だけれども、OECDに代表される欧米先進国ではいわば大きな失業問題を抱えているわけであります。
 私は、これは結論的に申しますが、先生、我が国の労働力不足というのはいわば日本経済のダイナミズムの一つのあらわれだと思うのですね。だから、やはり労働力不足ぐらいでいいと私は今思い直しておりまして、そして、先生からいろいろ御指摘がございましたけれども、労働力不足経済の状況というものをいわばてこにして、我が国の労働者がより充実した生活ができ、より安全で豊かで快適な職場についていただけるようなことにしたい。先ほどもちょっと申しましたけれども、労働時間短縮という問題についても、それをしなければ人が集まらないというのも事実ですから、そういうことで、むしろ労働時間短縮も足りないからこそできるんだということでございます。
 それから、パートの話がございました。私も山形の代議士でございますが、山形県も婦人労働の問題がありまして、そして大勢がパートをしていらっしゃる。御指摘のような問題もございますが、やはりパート労働というものも新しい角度から見ていって、そして、いつでもそれこそやめていただけるような状況では定着していかないということで、パートの方々の労働条件についても従来よりもっと踏み込んで安定した雇用環境をつくっていこうだとか、そういうことで、繰り返しますが、労働力不足経済というものを一つのてこにしながら、本当に働く人たちが豊かで快適な仕事をしていただける、生活をしていただけることにひとつこれから労働省を挙げて取り組んでまいりたい、先生から御指導を受けていきたい、こう思っておりますので、よろしくお願い、いたします。
#83
○岡崎(宏)委員 大臣がおっしゃった経済のダイナミズム、その陰で実に多種多様な不安定な形態の労働者が一方で生まれてきた、これはある意味では、経済大国で豊かな生活大国、豊かになったと言われている陰で決して豊かではない一面を持っている。今回の出稼ぎの皆さんの事故というのは、結局そういうところで生まれてきていることだということだけは私は大臣にぜひ認識をいただきたいと思います。だから、労働行政の中でこの不安定な労働者を生まないための政策というものをきちんと出していく、今そういう時期だと思っておりますし、それが大臣のおっしゃるところの労働力の不足をてことしてよくしていきたいということでなければならないというふうに思うのです、きょうはそのことは余り長くやりとりしている時間もありませんから、ぜひこの認識を持っていただきたいということを最初に申し上げておきたいと思います。
 今も出ましたパートの労働者の問題なんですけれども、昨年六月に総務庁が婦人の就業対策等に関する行政監察結果に基づく勧告というものを出していますね。その中で、特に「パートタイム労働者の処遇や労働条件等については、雇入れに際して労働条件が不明確」あるいは「就業の実態に配慮した雇用管理が行われていない」など問題があり、「労働条件の改善等総合的かつ体系的な諸対策の推進が必要」だというふうに指摘をしているわけです。特に「パートタイム労働者の処遇及び労働条件等について考慮すべき事項に関する指針」、これは労働省が出しておられる文ですが、これが周知されていなくてそういう状態が起こっている場合もあるし、知っているけれども指摘をされるような事項が生まれているケースも多いということもこの勧告の中で指摘されているわけなんですね。この間、何の罰則もない、守ってもらいたいという指針というものがあって、知らないからそれができなかったのだというのは、まだ知っていけば守る可能性があるとしても、知っていても守らないというふうに指摘をされている事態が非常に多いということについて、これは働く人に結局しわ寄せがきているわけですから、指導されてきた労働省としてどういうふうに受けとめていらっしゃるのか、これをお尋ねしたいと思います。
#84
○松原政府委員 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、昨年出されました総務庁の勧告の中で、「パートタイム労働指針」が周知されているかどうか総務庁自体が調査をしているわけでございますが、指針を知っているというふうに答えたのが約八割、知らないというのが約二割というような状況になっております。
 この「パートタイム労働指針」は、御承知のとおり平成元年に定めたものでございます。そういう意味では、私ども及ばずながらいろいろな折を見てこの周知徹底を図っておりまして、もちろんまだ不十分であるのはそのとおりですけれども、かなり周知は図られてきておる。ただ、もちろん、知らないという事業所もあるわけでございますので、そういったところには周知を図っていかなければいけないというふうに思っているのが第一点でございます。
 それから「パートタイム労働指針」には、パートタイム労働者の処遇や労働条件についていろいろなことを企業に努力を促すことが書いてあるわけでございます。それを個々に見てみますと、そういったことが守られている、守られてない、さまざまございますけれども、私ども、婦人少年室を中心といたしまして、労働基準監督機関、職業安定機関等と連携をとりまして、さらに一層この周知徹底を図り、遵守を促すように努力をいたしたいというふうに思っている次第でございます。
#85
○岡崎(宏)委員 あえてお尋ねして恐縮ですが、知っているのに守らない、ここへの指導、なぜそういう事態になっているかということについて、問題点ほどこにあるかというふうにお考えでしょうか。
#86
○松原政府委員 今申し上げた、知っているという事業所のうちどのくらいが守っているか、ちょっと今私が手元にある資料で、知っているところの遵守状況ということは十分わかっておらないのですけれども、パートタイム労働者が就労している分野、さまざまあるわけでございまして、産業、企業の実態によってなかなかこの「パートタイム労働指針」に盛られていることが直ちに実施できないところがあるというのが実態でございます。これにつきましては、特に中小企業についてどうやったら指針が守れるかというようなことを、単に守ってくださいと言うだけではなくて、全体的な雇用管理を見直す中でそういったものをやっていただく必要があるわけでございますので、集団として取り組んでいただくというようなことも新たに事業として取り込みましてやっていきたいというふうに思っておりますし、そういった集団ごとに取り組んだ成果をさらに今後の行政展開に反映させていくというような形で、一気がせいにいかないというもどかしさは私どもも感じ
ているわけではございますけれども、そういう着実な行政努力を積み重ねていきたいというふうに思っているわけでございます。
#87
○岡崎(宏)委員 決して努力されているのを否定するわけではないのですけれども、じゃ、少しお尋ねしていきますが、今パートタイマーというふうにくくられる人たちというのはどれぐらいあって、これは労働省としては今後減る傾向にあるというふうにお考えなのか、あるいは増加していくだろうというふうにお考えなのか、まずお聞かせいただきたいと思います。
#88
○松原政府委員 パートタイム労働者としてくくられるのがどれぐらいというのは、実は物すごく難しいことでございまして、パートタイム労働者と企業の中で称されて、扱いをされている人たちをいうという場合と、それから、実際に一般の労働者よりは所定労働時間が短い労働者をいう、いろいろ概念が難しいのでございますが、今ちなみに総務庁の労働力調査がございますけれども、ここで非農林業で週三十五時間未満のいわば短時間働いている人たちがどれくらいいるかという数字を申し上げますと、平成三年で八百二万人ということでございます。そのうち女子が五百五十万人を占めておりまして、主として家庭の主婦の方が多いというのが実態でございます。
 また、これからふえるか減るかということでございますが、長期的に見ましてこの今申し上げたいわゆる短時間就業者の数は非常にふえてきておるわけでございまして、それから、女性自身の意識といたしましても、家庭生活と両立させながら働きたいという意識は非常に強いわけでございます。そういう意味では、これから傾向的にパートタイム労働者として働きたいという方がふえてくる傾向にあるのではないかというふうには考えております。
#89
○岡崎(宏)委員 結局これからどんどんふえていく傾向の中で、周知徹底を一方でしつつ、しかし、かなりの勢いでふえていっているという面からいけば、働く人自身が知って、そこで例えば自分の意思を明確にするということもあるでしょう。しかし、前にもお話ししたことがあるかと思いますが、例えば私たちがやっておりますパート一一〇番、こういうものを集中的に期間を設けてやりますと本当にたくさんの相談が出てくるわけです。税金の問題はさておきましても、突然もうあなた来なくていいというふうに言われたとか、知っていれば当然起こり得ない、あるいは企業の側がきちんと誠実な態度で接すれば起こり得ない事態が実はたくさんある。結局ここを乗り越えていかないと、ふえる労働者にとって問題はさらに大きくなるわけです。
 企業に対して指導してこられた側として、どこに守れない大きな原因があるというふうに考えていらっしゃるのか、これはそこが明らかにならないと私たちは次の対策というのは立てられないと思うのです。今現在でどういうふうに分析していらっしゃるのかということについてお尋ねします。
#90
○松原政府委員 パートタイム労働者といいますと、これまで企業の雇用管理の中でフルに働く労働者と比べてやはり別の扱いといいますか、そういう目で見られてきたということはあるのではないかというふうに、率直に申し上げて思います。一方、働く女性の側にも、調査などを見ますと、職業生活を家庭生活と両立させたいという意識はいいのですけれども、例えば自分の都合のいい時間帯に働けるからパートを選ぶとか、通勤時間が短いということを職業を選ぶ非常に重要なメルクマールにしておられるとか、そういった面もある意味では影響している面もあるのではないかというふうに思います。特に女性の場合に、いろいろな家庭生活上の問題があものできちっと縛られてやるということではなかなか働きにくいという、実際の私どもに届いておる声でもそういうことを言っておられる方がありまして、そういうことも企業におけるパートタイマーをいわば正規労働力といいますか、パートタイマー以外の労働力と同じように、まさに中核をなす労働力として位置づけるということになかなかいかないということの原因になっているのではないかというふうには思う次第です。
#91
○岡崎(宏)委員 今女性の側にも問題があるのじゃないか、こんなふうなお話があったと思うのです。ただ、私自身も働いてきて、確かに子育てをしながら働くには働きづらい条件というのは、企業の中でもあるいは社会においてもたくさんあるわけで、乗り越えられる人は働き続けてきたけれども、そのもろもろの条件が乗り越え切れない問題を抱えた人はやめざるを得ないという、これは個人の責任ではなくて、私は整備しなければいけない問題があったがために起こってきた問題だというふうに思っているわけです。だから、育児休業の整備だとか介護休業の整備だとかいうのが労働省の方でも考えられていると思うのです。
 今はパートが別扱いされてきたというふうなこともおっしゃっておられるわけですが、婦人局が去年の暮れに出されている平成三年版の「婦人労働の実情」を読んでみましたら、今後「パートタイム労働者を基幹的な労働力として活用する傾向が強まっている。」こういうふうに分析されているわけですね。とすれば、不安定な条件で働く人が基幹的な労働力としてあり続けるということについては、これはやはり人間中心、快適な職場ということにはなかなかならないのではないか。働く時間が、これは私最初にも申し上げましたけれども、社会整備の問題も含めて、供給の側からも、つまり、働く側からも一定必要の度合いがあって短時間の労働というものが出てきたけれども、しかし違いは時間が短いということだけである。それ以外は、やはり労働者としてきちんとした条件のもとで働くことができる、こういう状態でなければいけないというふうに思うわけですよね。
 そこで、私は、労働者の保護をきちんとする、そういう体系が今不可欠になってきていると思いますし、特にパートの労働者というのはかなりの勢いでふえているということを考えても、やはり特別に対策をしなければいけない。私たちはパート労働法というものも提起をして、ぜひきちんとこの時期に整備をしようということを申し上げているわけですけれども、ぜひこれに対する大臣からの決意をいただきたいと思います。
 それともう一点、この労働委員会の場というのは、そういう意味では今極めて重大な委員会だと思うのですよ。ですから、特にパートのこの問題について、やはりかなり積極的に、そして集中的に審議をする場としてぜひ受けとめていっていただきたい、そういう場にしていただきたいということを要望いたします。
#92
○近藤国務大臣 先生御指摘のように、これからこれまで以上にいわゆるパート労働力というのが我が国産業の発展に大きな役割を示していくでしょうし、また同時に、パートという形で仕事に出られる方々が、単に御婦人だけじゃなしに男性の中でも多くなってくるのではないかということでございます。
 そこで、そうしたいわゆるパート労働者というものの待遇といいますか雇用形態とか、そういったものを今後どう確保していくかということでありますが、野党の先生方からパート労働法をつくったらどうだ、こういうような御示唆があることも私十分存じ上げておりまして、今勉強させていただいております。
 ただ、これは私の個人的な考えをあえて今申し上げますと、労働基準法という法律があっていろいろな労働関係の法律がありますが、パートという形を特定して、そこで別建ての法体系、法律で考えるのか、それとも先生がお話しのように、単に時間が短いだけじゃないか、一日八時間だったら六時間やる、あとはみんな変わりないじゃないか、こういうような御指摘もありますね。そうすると、それだけ特別に考えて法律をつくるのがいいのか、それとも、例えば労働基準法の中の時間の差としてそれを考えていくのがいいのか、そのあたりについても私実は個人的に今いろいろ思いをめぐらしておりまして、どういう結論になるの
か、まだ結論に達していないことを率直に申し上げます。ただ、先生の御指摘の点は十分に私も理解しているつもりでございますし、いろいろ勉強させていただきたい。
 そして、私も労働大臣になりまして労働委員会のこの場で先生方にいろいろ御指導賜るわけでありますが、今我が国政治の最大の問題がまさに労働問題であり、人間生活の問題であり、宮澤内閣も生活大国へと言っているのでありますから、その生活大国をつくるための最も重要な立法の場がこの委員会だ、私はこういうふうに理解しておりますので、ひとつよろしく御指導を願いたい、こういうことでございます。
#93
○岡崎(宏)委員 この問題については引き続きこの委員会で積極的に取り上げていっていただくということで、ぜひお願いしておきたいと思います。
 次に、JRの採用差別の問題についてお尋ねをしたいと思います。
 分割・民営化の際にJRに採用されなかった、清算事業団に回されて、さらに清算事業団から解雇をされた、こういう皆さんが一千四十七名いらっしゃいます。この一千四十七名の皆さんの中には、大臣御存じかどうかはあれですが、十一名の女性の皆さんもいらっしゃいます。きょうこの委員会に、その女性を支えながら二度目の冬を一生懸命乗り切ろうとしている仲間たちも実は傍聴においでなんですけれども、この十一名の女性は、国鉄の時代、国労の組合員である、あるいは女性である、こういう二重の差別を受けてきた。その皆さんの仕事は、電話の交換をされていた方、あるいはバスの車掌をしていらっしゃった方、あるいは自動車の関係の方の事務をしていらっしゃる方、いろいろ職種はあるわけですが、その中には、同じ国鉄の職場で御主人と共働きをしてきて、結局、民営化の直前に御主人が病気で亡くなられて、三人のお子さんを抱えてどうしようか、そういうふうに途方に暮れているときに、みずからもJRに採用されない、なおかつ解雇、こういうふうに、本当に働く人がより豊かにということからいけば、どうやってあしたから生活をしょうかというふうに追い込まれた仲間も含まれているわけですね。
 私は、この一千四十七名の皆さん方というのは、そのほかにも国鉄の職場で働いてきた方みんなそうだと思うけれども、国鉄を懸命に支えて働いてきた人たちであり、そして、その人たちを支えた家族の皆さんである、こういうふうに思うわけです。結局、今大臣が労働行政のあり方ということをずっと述べてこられましたけれども、その中で、ある意味では国の責任の中で生まれたこの皆さん、この皆さんに対してぜひ誠意を持った答えをこれからいただきたいと思うわけです。
 この差別事件には、全国の地方労働委員会から百本を超える救済命令が出されています。これはもう大臣も御承知のとおりなんですね。特に採用の差別に関するものについては、そのすべてに救済命令が出ております。この重みというものを大臣はどういうふうに受けとめていらっしゃるか、まずお聞かせをいただきたいと思います。
#94
○近藤国務大臣 JRの民営化に伴って生じました労使問題、労働問題、解雇問題、いまだに尾を引いているわけでございまして、実は私も労働大臣になりまして以来、この問題についてはいろいろ頭を痛めておりまして、何とか早期に円満に解決ができないかと思っているわけでございます。
 ただ、先生十分御案内のように、JR各社のいわゆる不当労働行為問題につきましては、現在中労委において採用事件について関係当事者からの事情聴取が行われているところでございまして、実は昨年末に中労委委員長も、何とか労使合意の目標を平成三年度末としたい、こういうことを言われ、現在中労委において精力的に問題解決に向け懸命の努力が続けられているところでございます。
 このように、独立した行政委員会である中労委で当事者間の話し合いを基本とした円満な解決に向けての懸命な努力がなされているところでございますので、私としては、今後、本問題解決に向けての労使の積極的な取り組みを強く期待をしております。何とか解決を見たいと思っておりますので、中労委が精力的に労使を呼んで話し合っているわけでございますが、あえて一言申し上げれば、年度末には何とか打開したい、解決したい、こういうふうに中労委会長もおっしゃっておりますので、その結論が出ましたら関係者、労使両方でこの線に沿って合意をしていただく、こういうことをお願いいたしたい、こういう気持ちで今いろいろ解決に向けての環境の整備と申しますか、努力しているところでございます。
#95
○岡崎(宏)委員 大臣、昨年の予算委員会で我が党の新盛議員の質問に答えられてこんなふうにおっしゃっておられますね。中労委においてなされている努力を見守りつつ、円満な解決を期待すると同時に、解決に向けての環境の整備のためにはできるだけの努力をしたい。その大臣の御決意の後、年末に中労委の会長の発言というものがあったわけでして、今おっしゃったように、平成三年度末ということを一つのめどとして中労委の中で随分動きがあるわけですね。当然大臣はその中労委の発言を評価をされる、評価をして、だからこそ見守って環境整備をされる、こういう立場でいらっしゃるんだろうと思うので、あえて確認をさせていただきたいと思うわけです。
 当然中労委はこれまでの地労委の命令、これまで全国の地労委が出してきた、もう結論としてはほとんど同じなわけですから、こういうことを受けて議論がされてきた、その一つの今の段階としての中労委の昨年暮れの会長発言だと思いますから、それは行政の側の責任者としてはきちんと受けとめていただける、こういうことである、そして環境整備に十分努めていただく、これで間違いないわけですね。
#96
○近藤国務大臣 私も石川中労委会長にはお会いをしてお話をする機会もございまして、会長御自身が非常な熱意、いわば真情を傾けてこの問題に努力しておられることを知っておりまして、先ほども申しましたように、何とか年度末までに円満な解決のための案が中労委会長の方から出していただけるのではないか、こう思って期待しているわけでございます。
#97
○岡崎(宏)委員 その際に、私、大臣にぜひお願いをしたいと思うわけです。
 随分長引いてまいりました。結局、労使紛争の際に解決の成否のかぎを握る、今回の場合にもそうですが、使用者側の姿勢というものが一つあるだろうと思うのです。これまで出されてきた地方労働委員会の命令について、この間、使用者側であるJRは全く履行していないわけですね。これは普通考えて、正常な労使関係を形づくっていきたい、そういう真摯な態度であれば、出された命令を全く履行しない状態がずっと続いているというのは極めて異常な事態である、私はこういうふうに思うわけですね。特にJRの場合は、単に一民間企業、こういうふうにも位置づけられない性格を持っていると思います。地方労働委員会の命令というのは、これはその地域の、特に中小の労働者の皆さんにとっては非常な重みのあるものであって、救済機関として信頼をしてきたものであるわけで、ここが出した命令が全く履行されないでずっと続く状態というのは、この人たちにとっても信頼関係を失っていくものになるのではないか、そういう危倶を持ちます。これは本当に労働行政にとっても大変大きな問題だというふうに考えますので、使用者の側に、とにかくこれまで出されている地方労働委員会の命令については遵守をしなさい、こういう指導は行政の責任者として、特に今回は国がずっと絡んできた問題ですから、私はぜひ指導をいただきたい。JRが模範的な企業であるように、これは労働大臣としてぜひ指導をいただきたい、こう思いますが、いかがでしょうか。大臣にお答えいただきたいと思います。
#98
○近藤国務大臣 中労委の会長も、今先生御指摘のようなことを十分に踏まえながら日夜努力をしていらっしゃいますし、それは労働側のいわゆる
言い分、それから経営側の言い分、両者の言い分を十分に聞いて、そして何とか打開しようと努力していらっしゃるわけでございますし、JRも民営になってもう相当たっているわけですね。こういうような状況が今後続くことは決していいことじゃないと思うのです、先延ばしになることは。ですから、先ほど申しましたように、中労委員会で一生懸命やって、何とか言い分を聞きながらこのあたりでどうがという案をお出しになると思いますので、その案が出た際は、いろいろ御意見もあると思いますけれども、ぜひひとつ双方がその点で納得をしていただくといいますか、合意に達していただくといいますか、何とかそういう形になってこの問題の解決を見たい、こういうふうに考えております。
#99
○清水(傳)政府委員 基本的に大臣がお答え申し上げたとおりでございますが、地労委の命令は当然にそういう紛争解決のために重要な役割を果たしているわけでございますけれども、今の紛争解決の制度の仕組みといたしまして、それに不服がある場合には中労委の方にまた申し立てていく、こういうふうな形になっておるわけでございまして、行政サイドとして、その過程の段階でそれについての評価をするということは、これは立場上当然差し控えさせていただいておるところでございます。基本的にはそうした労働委員会における解決を見守る、こういう姿勢にはなるわけでございますが、ただいま大臣からお答え申し上げましたように、円満な解決が図られるよう、大臣を含めましてそのための環境整備のために我々としてもできる限りの努力をしていく、こういう姿勢であるということをひとつ御理解をいただきたいと思います。
#100
○岡崎(宏)委員 環境整備のために大臣がこれからも努力をしてくださる、これは結構なことだと思います。ただ、大臣後半におっしゃった、中労委の命令が出てそれをお互いに話し合って何とかしてほしい、こういうふうにおっしゃったことは、これは今ここで討論をする問題ではないというふうに思います。お互い当事者間がその命令を受けてどういうふうに結論を出すかということは残っておりますからね。
 それで、それこそ私が大臣に申し上げたいのは、清水労政局長が今おっしゃったけれども、不服があれば中労委へ、こういうものが確かにある、それはそのとおりです。けれども、まだその中労委から何の命令というものも出ていない段階では、これまで地方労働委員会が出した命令というものは、これはもう間違いなく効力があるわけですから、それは出されてからもう大変な期間がたっているわけですから、まずそれを守るということは使用者の一つの責務ではないのか、こういうことを大臣に申し上げたわけでして、そういうことも含めて、環境の整備ということで引き続き御努力をいただきたいと思います。もう日が追ってきているわけですから、ぜひこの間、大臣が年末の予算委員会、そしてきょうも改めて決意をいただいたことをこれから誠実に御努力いただきますことを最後に要請を申し上げたいと思います。
 それでは、障害者の雇用の問題についてお尋ねをしたいと思います。
 今回の所信の中でも、社会への完全参加と平等、これをテーマにした国連障害者の十年が最終年を迎えるのでさらに努力をする、こういうことが言われているわけです。一段と積極的な取り組みがなされていくだろうと思うのですが、昨年六月、雇用率の未達成の企業に対して指導をしていく、特に大企業がどうも達成の状況がよくないということで特に強化をした指導をする、こういう通達が出されていると思うわけです。これはたしか前々回私どもの岩田議員の方からも指摘をしていると思うのですが、その通達以降どういう指導がなされてきたのか、それについてお伺いをしたいと思います。
#101
○若林政府委員 障害者の雇用率の問題につきましては、労働省といたしましても障害者の雇用問題は極めて重要な課題でございますし、わけても雇用率の達成というものはその大きな柱でございます。そういった意味で、これまでも雇用率の未達成企業に対しまして指導を続けてまいったわけでございますけれども、御承知のとおり一・六という雇用率なのに一・三二というのが現状でございますし、千人以上ということをとりますと一・一六という現状でございます。これは私ども大変憂うべき現状であるというふうに認識をいたしまして、昨年の結果を受けましてこの雇用率の指導について一段と強化をしたわけでございます。
 この雇用率の指導につきましては、御承知のとおり計画作成命令の発出、適正実施勧告、そしてさらに公表という制度が法律上定められているわけでございます。もとより公表が目的ではございませんけれども、どうしても努力をしていただけないというところにつきましては、最後は公表ということで指導を強力に進めるということでございまして、昨年そういった基本的な方針で進めてまいったところでございます。
 それで、このような指導を行っておりますにもかかわらず雇用改善が見られない企業があり、雇用率も停滞しているというところで雇用率達成に向けての適正実施勧告が出されておりますにもかかわらず、つまり、計画作成命令、その次の段階、適正実施勧告でございますけれども、この二段目の適正実施勧告が出されているにもかかわらず具体的な取り組みが見られない企業百十三につきまして、公表を前提とした強力な指導を行ってきているところでございます。さらに、適正実施勧告の対象とはならないわけでありますけれども、つまり、雇用率としては一定の基準を超えているわけでございますけれども、特に不足する障害者の数が多い大企業、これは百二の会社でございますけれども、大企業百二社に対しまして労働省から特別指導を実施いたしまして、企業のトップに対しまして直接障害者雇用の要請を行っているところでございます。
 現在このような、一つは公表を前提とした指導、一つは不足数の多い大企業のトップに対する指導、これを進めているところでございます。
#102
○岡崎(宏)委員 今もおっしゃったようにかなり集中的に指導をされた。さっき一・六%という法定の雇用率に対して一・三二%、これは調べてみると三年連続一・三二%という状態が続いているわけですね。この間も多分指導はずっと続けられてきた、しかし、その結果としてのこういう数字であろうと思うのです。特に未達成の企業の率というものを規模別にずっと出されているものがあるはずですね。それを見せていただいたのですが、大きな企業といいますか一千人以上の規模の企業ほど未達成の率が非常に高い。八割を超えているのですね。八割を超える大きな企業が全くどうも努力が足らないようだ、こういうことが数字になって出ております。
 今回指導をされてきて、なぜそういうふうになっているのか、その原因のところですね。企業から言わせれば多分いろいろな言い分を出すのだろうと思いますが、そういったことも含めて、どこに横ばいの状態が続いている原因があるのかということについてお聞かせをいただきたいと思います。
#103
○若林政府委員 ただいま先生御指摘のように、雇用率の達成状況は、千人以上で申しますと一・一六%、未達成の企業の割合が八二・一%ということでございます。御指摘のとおりでございます。
 このような大企業に対しましては個別の指導を進めてまいっておるわけでございますけれども、共通して申し上げられますことは、障害者雇用を推進いたします社内体制の整備がおくれておるということでございます。非常に大きな組織のものでございますけれども、そういった中での社内体制の整備がおくれていることが一つございます。また、障害者を雇用するわけでございますけれども、離職する障害者もかなり多いという問題もございます。また、障害者の職域の開発、これについても十分でないという点もございます。
 そのほかに、雇用改善がおくれております理由として非常に大事なことは、企業のトップの方の
理解の不足ということも挙げられようかと思うのでございます。今回私どもは、こういった観点に立ちまして、企業のトップの方々に対する指導を随分進めてまいりました。そういった面での企業のトップの障害者雇用に対する理解は相当進んできていると認識をいたしております。今後ともそういった努力を進めてまいりたいと考えております。
#104
○岡崎(宏)委員 今回の指導の最終的な結果については公表も辞さずということで今回は取り組みを始められているわけです。公表自体が目的ではないとおっしゃっているわけですけれども、今いろいろおっしゃいましたね。社内体制の整備がなかなか整わないこと、あるいは職域の開発が進まないこと、あるいは企業のトップの理解の不足というふうなことが挙げられているわけですが、対象になった百十三の企業あるいは百二の大きな企業、ここに限定をして当てはめた場合、今回の指導の結果、大体どれくらいの解消といいますか、かなり積極的な動きが見えましたか。
#105
○若林政府委員 私どもまだ指導を進めておる段階でございますので、具体的なことは差し控えさせていただきたいと存じますけれども、相当強い手ごたえがあった、御理解が深まったというふうに思っております。例えば大企業につきましても、本店あるいは本社から各営業所に雇用をするようにというような指示が飛びまして、そういったような出先機関がそれぞれ出先の所在しておりますところの私どもの安定所、ハローワークにおいでになって求人を出され、非常に強力な求人活動を続けられる、こういったようなケースはあちこちにあるわけでございまして、そういった面で、今回の指導を通して相当理解が深まり、また雇用も進んでいるというふうに全般としては認識をしておるところでございます。
#106
○岡崎(宏)委員 今おっしゃった結果として多分こういう新聞の記事などが出てくるのだろうと思うのですが、企業が大慌てをしている、日が実際迫ってきていますから、公表されるとイメージダウンにつながるということで、ハローワークに駆け込むというふうなところもふえている。非常に露骨な言い方だなと思うのですが、金で済むのならできるだけやりたくない、こういうふうに言っている企業があるとか、そうしたことも新聞の記事としては出てくるわけですが、私は、今回労働省が随分指導をされて、企業のトップの理解というものが多分この記事になって出てくるようなところにあるんだろうと思うのですね。
    〔委員長退席、永井委員長代理着席〕
 指導の結果が非常に進んだということは非常にいいことだと思いますが、しかし、集中的な期間が過ぎればまたもとに戻った。例えば地方の自治体が絡んで第三セクターというようなものをこしらえて雇用の達成率を上げていく、いろいろな努力があるわけですけれども、しかし、第三セクター自体も経営ということになってきたら非常に大きな問題を抱えているところもあります。利益が上がらない仕組みで進んでいるところもあるわけです。これは本当に社会に完全参加、平等に参加をするということから考えていけば、一つの過程として、例えば第三セクターの方式だとか子会社をつくるとかいろいろあるというのは、これは一つやむを得なかったと思います。しかし、地域のいろいろな形の企業で障害を持つ人も同じように働いていくことができる、ごく普通にそこに参加をできる事態というものが生まれない限りは新たな問題もまた出てくると思いますので、ぜひ大きな努力を、これは労働省の強い姿勢が求められていると思いますから、要請をしたいと思います。
 それで、今回公表が目的ではない、ある程度実効が上がったということですが、しかし私は、今回の指導の成果そのものは本来公表されるべきものである、だから、よかったというところも含めて、あるいはいけなかったというところも含めて、対象になった企業について全部公表することが必要じゃないかと思うのですが、これはどうでしょうか。
#107
○若林政府委員 先ほど来申し上げておりますように、障害者雇用促進法におきましては計画作成命令の発出、それから適正実施勧告、そして公表という制度が認められておりまして、私ども、いわばこの手順に沿って指導を続けておるわけでございます。そして、こういった手順の中で、どうしてもやはり改善をしていただけなくて公表はやむを得ないというところは、当然公表するということになるわけでございます。
 そういう手順でございますので、先生御指摘の、その指導内容を明らかにするというのはどういう形かわかりませんけれども、これまでも指導しており、また、それだけの理解をいただいてきていると私どもは認識しておるわけでございますから、そういったものは何かの格好で明らかにできるものなら明らかにしたいと思いますが、どういう形になるのか少し研究させていただきたいと思います。
 いずれにしても、企業名の公表というものはそういった手順に沿っていくものでございますので、いいところでございましても私どもは公にすることはできないということは御理解いただきたいと存じます。
#108
○岡崎(宏)委員 これは地域の段階でも非常に努力が続けられております。一つ要望を申し上げたいのですが、結局、日常的な指導、あるいはもっと言えば、努力の足らないところには勧告をするというふうなことも、かなり日常的に続けていくことが必要だと思うのです。
 そこで、地方の自治体の段階でそういったことが効果的に行われていくためにも、今回は労働省がということでやっていらっしゃるけれども、地方の段階でそういう努力が足らないところ、いろいろな基準があるでしょうけれども、努力がどうしても不足をしているというところについて、自治体の段階で例えば公表をするというふうなことができないだろうか、お尋ねします。
#109
○若林政府委員 ただいま申し上げましたように、障害者雇用促進法というものに基づきまして、一定の国としての手続を踏んでいくということが定められているわけでございますし、一つ、例えば企業名の公表、これは労働大臣が公表するものでございますけれども、企業名の公表というものをとりましても、これは一つの社会的な制裁でございます。したがいまして、それにつきまして、私ども、全国で十分公平、公正を期せるものでなければならないというふうに考えておるわけでございまして、そういった観点で統一的な基準に基づいてこの法の施行を行っておるわけでございまして、そういった意味でやはり国において一元的に実施すべきものというふうに考えておるところでございます。
 また、技術的に申しましても、例えばこれは企業ベースで把握をいたしております。したがいまして、各地域に事業所がございましても、それを束ねる企業の雇用率がどうかということでこの制度を進めているわけでございます。そういった意味でも、やはりこれは国が一元的に管理して指導をしていくべきものだというふうに考えております。
#110
○岡崎(宏)委員 今あえてそれ以上申し上げませんけれども、ただ、地方の自治体の段階では大変な努力がされております。特に自治体が絡んだ第三セクターというふうなこともあって本当に大変な努力がありますので、そこに国として一定の基準があるわけですから、それを勝手に大きく踏み越えるということはあり得ないわけですから、いろいろな日常の努力の中でそういう権限の移譲というふうなものも検討に値するのではないか、これだけは申し上げておきたいと思います。
 最後に、今回の指導の結果、三月末が一つのめどになるのだろう、こう思うわけですが、その一定の基準がどこにあるかということと、そして、その基準を超えられない企業があったときに、公表は必ず行われるのかどうかということを最後にお尋ねをしたいと思います。
#111
○若林政府委員 これは私ども、百十三社につきまして改善をしていただけない場合には公表する
という前提で指導を進めてまいっておるわけでございまして、これにつきましては一定の基準を設けて進めてまいっております。
 現在、最終的な指導段階に入っているわけでございますけれども、この基準にどうしても達していただくことができないということでございますれば、それは公表ということになろうかと存じます。
#112
○岡崎(宏)委員 終わります。
#113
○永井委員長代理 岩田順介君。
#114
○岩田委員 今回崎委員が労働省にお尋ねになりました点で、重複しますけれども一つお願いをしておきたいと思うことがあります。
 それは、国鉄の清算事業団の問題にかかわって質問がありましたが、大臣や局長の方からも御答弁がありましたように、第三者機関である中労委で今扱われているという問題、それについて環境整備には留意するというか努力するというような御発言がありました。私の地元でも比較的事業団の職員が皆さん肩を寄せ合って、ラーメンを売ったり、物販をしたりして生活をしておりますけれども、こういう状況を見ますと、重ねてのお願いになりますけれども、労働省の責任はやはり少なくないだろうというふうに思います。
 その一つは、この問題は発生して随分時間がたちますけれども、遅々として進まない。今どういうことが水面下で行われているかということは、私は知る由はありませんが、新聞などにも比較的出なくなりました。そういう状況であるだけに、御本人たちは一生懸命この火を消すまいと思って努力をされているに違いないと思います。この努力が実ることを心から期待をするわけですが、しかし、この二年間を考えますと、事業団を取り巻く情勢も変わっております。例えばその一つは、JR各社における労働組合の状況が変わっていますね。また、非常に流動的ということがありますね。これを所管する運輸省や、この労働省だって第三者機関に挙げられていますからそうは手が出せないと思うんですけれども、ますます複雑になっているということを考えれば、やはりその環境の整備には政府はより努力をしてほしいというふうに思います。
 さらに、労働力不足の問題等最近の労働情勢の変化からいきましても、それから、かつての対立と分裂の時代じゃなくて連合の時代とも言われておりますが、しかも、労働問題が国際化の問題ということ等を考えますと、私はこの問題は恥部だと思います。やがて外国の新聞にこれらの問題が取り上げられるということはやはり好ましいことではありません。また、そういうことがあってはならぬわけでありますが、そういった観点でも日本としては早急に解決しなければならぬ一大問題だというふうに思っておりますけれども、何とぞ全力を挙げて環境整備に御努力いただきたいと要望しておきたいと思います。
 それから、先般の労働委員会で私は差別問題、地対協問題についてお尋ねをしておりましたので、ここで確認の意味も含めまして幾つか御質問をしておきたいと思います。
 期限切れを迎えます地対財特法が一体どうなるかということで、全国の関係者は何波にもわたる全国行動を組みまして、各省庁への交渉や要請行動を展開されました。最終的には、昨年の十二月十一日だったと思いますけれども、地対協の意見具申というものが出されまして、五年間の単純延長としてこの残存事業を解消するという方向になったわけであります。これは事業が残っているという状況や、さらにまた関係者のこういった人権問題を訴える声が地対協の方々に届いた、これは届くように大臣にも協議会に出ておられる次官への要請も乱やっておったわけでありますが、五年間単純延長ということにつきましては、私も大いにその努力を感謝申し上げますし、中身についても一定評価をしたい、こういうふうに思っておるわけであります。
 しかし、手放しで喜べるような状況かというと、やはりそうでないというふうに指摘をせざるを得ないと思います。
 まず一つは、同対審答申から始まって特別措置法、いわゆる事業法として発展をして今日までやってきているわけでありますが、今回のこの単純延長ということは、やはり事業をどうするかということでの延長になっているわけですね。しかし、この部落差別の問題、人権の問題を考えますと、目に見える事業、物理的な事業を完成させれば済むという問題でないことは、再三政府は首相の答弁を初め言われていることなんですよ。しかし、評価はするんだけれども、やはりこの事業法の範囲で延長せざるを得なかったことに私は一つ不満というか大きな問題を含んでいるのではないかというふうに思うわけですね。
 それからもう一つの問題は、これは労働省の予算の問題でありますが、平成四年は百三十億程度の事業になるように見込まれておりますけれども、その中で労働省にかかわる予算というのは一%の十二億五、六千万円ぐらいだったと思いますね。かつて五つの事業があったのが四事業になっておりますけれども、年々予算は低下していますね。今回も企業の啓発活動に対する予算は若干伸びたというふうに聞いておりますけれども、予算だけを見てみましても、一体この程度のことで果たして――同対審答申以降地対協の具申も言っておりますように、労働省が担うこの問題解決への課題というのは、内面的、精神的な問題を含めて、他の省庁とは違う極めて憂慮すべき問題を抱えている、こういうことからすれば、一体これで解決するのかという疑問を持っているわけであります。
 そこで、最初に確認の意味でお伺いをしておきたいと思いますのは、地対協の意見具申について、就労対策について労働省は一体どういう決意でこの解消に向けて取り組まれていくのか。それからまた、労働省は差別がある限りこの施策は必要だということも再三見解として述べられておりますけれども、このことについての確認をしておきたいと思います。
#115
○近藤国務大臣 先生御指摘もございましたが、昨年十二月に行われました地域改善対策協議会の意見具申及びこれを受けて決定されました政府の「今後の地域改善対策に関する大綱」では、今後の重要課題に就労対策や啓発が大きく取り上げられておりまして、労働省としては、この意見具申及び大綱の趣旨を十分に踏まえ、今後とも差別のない公正な採用・選考システムを確立するため、企業内同和問題研修推進員制度や企業トップクラスに対する研修会の効果的な運用を図ること等により、企業に対する啓発、指導をさらに積極的に進めてまいる所存でございます。
#116
○岩田委員 ぜひ積極的な推進方をお願いしたいと思います。
 大臣の御出身地は山形県でありまして、いわゆる同和部落という地域が存在をしていないやに聞いております。したがって、全国的に見ますと全体的な問題ではないということもありまして、各省庁の皆さんで知らない方もたくさんおられるわけで、そういった点では認識に濃淡があるのですね。ある人なんかは、こういう差別が一体あるのかというふうに思われる方だって不思議じゃないほどおられるのですよ。したがって、これがまた一部の問題である、特定の問題であるというふうに認識をされているところにも取り組みの遅さ、相次ぐ事件が発生をするという現状を支えているのではないかというふうに思いますけれども、それであるだけに、やはり政府のこの問題に対する心身にわたる施策の展開といわゆる行政指導をもって万般を処するというのが極めて重要な時期になっていると思うわけですね。
    〔永井委員長代理退席、委員長着席〕
 次に、この実態調査についてお尋ねをしたいと思います。
 政府はこれまで、昭和五十年、昭和六十年、全国実態調査をされたと思いますが、どういう程度かというのは私もよく知りませんけれども、恐らくしかるべき時期に全国調査をされるのではないかと思います。その際にお願いしたい問題でありますけれども、この調査結果の客観性を保証でき
る実態調査でなければならぬというふうに思いますね。これが一つ。したがって、そのための方法等については慎重にかつ早期に、五年間といったってあっという間にたつわけですから、早期に体制を整えていただいて、これは建設省がやるとかいう場合と違いまして、労働省の場合非常に難しいと思いますね、実態調査そのものが難しいと思いますが、その方法等について慎重に、早期に計画を立てていただきたいというふうに思うのです。また、この実態調査の中でも、就労対策というのは極めて重要な問題です。
 さらに、もう一つぜひこれはやっていただきたいというのは、事業の未実施地区が一千カ所もあるのではないかということが出ておりますが、これは幾らあるかというのは今から調査をしていただくことになるわけでありますけれども、ぜひお願いをしたい。各県の取り組みもまちまちだろうと思いますね。この理由は申し上げませんけれども、それは私、実感でそういうふうに感じております。しかし、この間の地対財特法の取り組みはかなり実績が上がっていることは当然私も認めるわけでありますけれども、とりわけ残された未実施地区の調査と問題解決のために御努力いただきたい、この点についてお伺いしたいと思います。
#117
○若林政府委員 実態調査の問題につきましては先生かねてから御指摘の問題でございますが、昨年十二月二十日に決定されました政府の「今後の地域改善対策に関する大綱」におきまして、「これまでの地域改善対策の効果を測定し、同和地区の実態や国民の意識等について把握するため、しかるべき時期に全国的規模の調査を行うこととし、調査結果の客観性を保証できる実施体制、方法等について慎重かつ早期に検討する。」ということが述べられているわけでございまして、今後総務庁を中心に具体的な検討が行われることになるわけでございますけれども、その際、労働省といたしましても、同和関係住民の雇用の促進と職業の安定を図るという観点から必要な意見を述べてまいりたいというふうに思っております。
 それから第二点でございますが、これは未指定地区の調査の問題というふうに理解をいたしておりますけれども、この問題につきましては、相当長い期間対象地区の確認が進められてまいっておりまして、私どもは対象地区として事業実施の希望のあるものにつきましては十分確認されていると判断して差し支えないというふうに聞いてきておるわけでございます。いずれにいたしましても、労働省といたしまして就労の問題について対策を進めていく資料という観点からいたしますと、これまでの、現在の地区の調査というものをベースにいたしまして対策は講ぜられると考えられますし、それに基づいてのいろいろな意見も述べてまいられるというふうに思っているところでございます。
#118
○岩田委員 もともと、政府がこの問題についてどうするかということについては、一般事業への移行、一般対策への移行というふうに言われておったのです。一般対策への移行は、将来、近い方がいいと思いますね。しかし、差別の実態が極めて顕著である、しかも、差別事件の事象が非常にいびつであったり、さらに人権を侵すものであったりということが想像以上にあるということで、政府も一般対策への移行ができなかったのでしょう。その中で最も人間の尊厳というか人権といいますか、これにかかわる問題を持っている省庁の一つが労働省だというふうに思います。そういった意味で、この実態調査につきましては非常に難しい点がありますね。A地区とB地区は生活環境についてはどう違うかなんていう見えないところでかなり苦労が要る調査でもありますから、ぜひお願いをしておきたいというふうに言っているわけです。
 それから、就職の機会均等、さらには就職差別撤廃について意見具申では、公正な採用・選考システム、これを確立するよう啓発、指導に一層取り組んでいくことが必要である、こういうふうに言っていますね。労働省のこれに対する見解をひとつ聞いておきたいと思います。本来ならばこれは文部省等も来てもらっておきたかったのですが、きょうは時間がありませんから、まず今の問題についてお伺いしておきたい。
 それから、研修推進員制度というのがございますね。研修推進員制度の活動強化と制度の充実について、この必要性も私は強く実感をするわけです。盛んに活動がされておるわけでありますけれども、しかし、何回も言いますが、依然として就職差別にかかわる事件というのは後を絶たない。ここ数年横ばいということは余りいいことじゃないですね。やはり継続して事件が発生をしている。それから職場内の差別事件、これも多いのですよね。そのために職場を退職せざるを得ない。それから、離転職の原因になったという事例も極めて多いのです。これはまさに労働省の大きな任務だろうというふうに思います。したがって、このためにはどうするかというのはいろいろと方法があるでしょうが、今とられている内容でいきますと、いわゆる推進員、これをこのままでいいかどうかということについてはちょっと議論があるのじゃないか。例えば資格要件を与えた者をどうするとか、もっと指導を充実するために教育する、いろいろありましょう。私、今案があるわけではありませんけれども、推進員制度の充実、これがぜひ必要だと思いますけれども、いかがでしょう。
#119
○若林政府委員 まず、公正な採用・選考の問題、これが一番指導の中心でございます。これを繰り返し繰り返し進めてまいっておりますけれどもなお年間八百ぐらいの事象が出てきているわけでございまして、まことに残念なことでございますけれども、それがやはり採用の段階における問題でございます。今後ともこういう事態が起こらないように徹底的な指導を進めてまいりたいと考えております。
 職場の中における差別という問題につきましては、ただいま御指摘の研修推進員制度等を活用いたしまして職場の一人一人にそういった趣旨を徹底していくことが必要でございます。昨年の予算の段階で、百人以上の企業に置かれております推進員につきまして、できる限り百人未満につきましても置いていくようにという御指摘がございまして、その後通達を出しまして、現在百人未満につきましてもできる限り設置するようにその指導を進めておるところでございます。
 さらに、この研修推進員につきましても、相当の権限を有する人の中から選ぶということ、つまり、推進する人が相当の権限を持っているということが重要でございますので、これにつきましてはさらに私ども、権限のある人をそういった推進員に任命していただくということをお願いをしていきたいというふうに思っておりますし、ただいま先生御指摘のように、この研修推進員制度のいろいろな充実というものを図りまして、職場段階での末端に至るまでの差別の撤廃ということについての意識の徹底というものを図っていきたいというふうに思っております。
#120
○岩田委員 本来ならば、権限を強化するとか力を持たせるとかということをやっていかなければならぬというのはおかしなことでありまして、しかし、現在は過渡期というか、どうしても私はそういったことも必要であろうということでお願いをしておりますが、積極的な対応をお願いしておきたい、こういうように思います。
 最後に、先ほども申し上げましたが、地対協の限界というのは、意見具申の限界というのは、やはり事業法から出てない、事業法の特別措置としての範囲がら出てないというのが一番問題じゃないでしょうか。いろいろ取り組みを強化すること等も含めて御努力を約束していただきましたけれども、一体、労働省にかかわる問題だけを取り上げましても、五年間でこれが解消するかというふうにお尋ねすると、それは確たる御答弁ができないのはそのとおりなんですね。それほど根が深い問題です。この日本という国で、一民族でこういう部落差別などというのがあっていいかどうか、これはもう大変な問題ですから、大臣、ひとつその辺は腹を据えてお取り組みを願いたいというふ
うに思います。
 しかし、いずれにしましても、地対協がそのまま五年、事業法としてまた延長するということになったわけでありますが、私の希望としては、先般の委員会でも申し上げておきましたけれども、私の質問や要請している問題は、差別部落に予算をつけろとか事業をよこせとかというふうに言っているわけじゃ決してない。むしろ、こういう状況を考えれば、既にいち早く政府としては何らかの人権にかかわる基本法を制定するべきではないかというのが私の意見だったのですよ。しかし、昨年の十二月十一日をもって地対協の意見具申が出て、大きな山は越えたのですね。ですから、このことについてこれ以上言いませんけれども、しかし、残された課題をどうするかというのは、今まで歩んできた事業法の実績を上げるよりももっと難しいだろうというふうに思いますね。これは難しいと思いますよ。そのために、地対協の今の体制で議論をすべきかどうかという問題について最後にお聞きをしたいと思うのです。
 これは本当は総務庁への御質問で、大臣、お答えはなかなかしにくい点があろうかと思いますけれども、地対協のメンバーの皆さんはとても立派でいい方々ばかりなんでありますけれども、しかし、残念ながら、差別の実態をよく御存じのその意味での専門家というのはおられないというふうに思いますね。今までの取り組みの中で地対協を審議会にどうするかという問題もありましたが、このことは私は一応けりがつきましたのでこれ以上は申し上げませんけれども、労働省は労働省の立場でいろいろ考えると、一番大きな心の問題とか就職差別の問題等がある省庁でもありますので、ぜひ理解を示していただいて積極努力の御答弁をいただきたいと思いますのは、いわゆる委員の中に専門家を入れる、これは極めて重要な問題ではないかというふうに思いますが、いかがでしょう。
#121
○若林政府委員 地対協の場に関係の方の御意見を十分に反映していくということは、もとより大変重要なことでございます。私ども、就労対策、雇用の安定を進めるという立場からいいましても、御指摘のとおりだと存じます。ただ、その構成をどうするかという問題につきましては、先生御承知のとおりいろいろ団体間等の問題もあるように私どもは聞いているところでございます。いずれにしても、私どもといたしましては、いろいろな形で関係の方々の意見が反映されるように私どもも努力をしてまいりたいというふうに考えております。
#122
○岩田委員 御努力いただきたいと思いますが、五年間たってみたらやはり事業が残ったということで、またどうしょうかということはよくないと思うのですよ。五年間でどうするかという――これは関係団体の皆さんもそうだと思いますよ。決して五年をあと十年延ばして満足するという問題ではないと思いますね。したがって、各方面のいろいろな調整も要るでしょう、御相談も要りますが、私が言っているのは、やはり部落の実態を専門的に知っている方々がいない、比較的いないのではないかというふうに私は申し上げているわけです。他の差別はたくさんありますよ。しかし、今、当面焦点になっているのは被差別部落の問題、同和問題ですから。そして、五年後には一般対策に移行した方がいいのですよ。そのためにそれぐらいの努力はしてほしいと思っておりますので、重ねて要望しておきたいというふうに思います。
 それから、労働大臣の所信を先ほども聞かせていただきましたが、まさに大変な時代に労働省を背負われておられまして感謝申し上げますが、一層の御努力をお願いしたいというふうに思います。
 この所信を見てみまして幾つか感じる点があるのです。例えば首都圏への一極集中の問題、大変な問題ですね。しかし、たしか経企庁長官のときに、労働者はセカンドハウスを持って週末は東京からどこかに帰って休んだ方がいい、こういうふうに言われたのは労働大臣でしたね。もうあの時代ではないのではないかと思います。これまで随分、新全総初めいろいろな、国土利用計画法が出されましたね、新産都法も出されました、それから工業再配置法のような法律も出されましたけれども、やはり一極集中にどんどん進んできて今日に至っているわけですね。だから、このくだりでいいますとやはり大臣、どうでしょうね、東京に住宅を、地方に雇用を、産業を、これをどうしていくかということが大変だなというふうに一つは思ったわけですね。
 それから、生活大国というのが出ていますね。後ほどこれも聞きたいと思いますが、経済大国に対する一定の批判。政治家も、それから企業も、一般の国民も、どんどん一生懸命走り続けてきた結果経済大国になったけれども、今ちょっと踏みとどまってバックしてみようじゃないかというようなことだと思うのですけれども、生活大国という問題が出ましたね。生活大国というのも私は余り響きはよくないと思いますね。経済大国が国際的に批判されたわけでしょう。大事に調和のとれた生活大国をつくっていかないと、地球の、世界の地域社会においてまた格差を生みますね。また批判をすぐ受けますよ。これはもう目に見えているわけですよ。一体、こういう視点を置いてどう日本のいわゆる新しい二十一世紀をつくっていくのかということ、大臣もそういうことを考えておられたのかなということでこれを聞かせていただいたのでありますが、そういったことを申し上げて幾つか質問をしたいと思います。
 まず最初は、経済見通しの問題も出ましたけれども、改めて聞きたいと思いますのは、民間の調査機関の九二年度の経済見通し、大体出そろったというふうに言われておりますが、それらを単純平均しますと二・九%ぐらいの成長だというふうに言っていますね。国の方は三・五%を見込んでおりまして、それ自体かなりの格差があるわけですね。しかも、三%を切って二・九%を維持できるかどうかというのは今後の東欧情勢にもがかわるだろうし、先ほどもお話がありましたように、ソビエトの市場経済への移行が失敗をするのか成功をするのか、どういうふうに推移するのか、その結果によってはもっと割り込むのではないかという見通しがありますね。株価も今の状況でありますけれども、そうしますと、例えば労働問題に限っていいますと、外国人労働者問題も非常に問題を抱えて、むしろ整理しなければならない問題の方が山積をしている状況ですね。中小零細が地方から崩れ出していくのではないかという気もするのです。したがって、そういった状況を考えますと、労働省は雇用情勢は当面堅調で変化がないとは言っておられますけれども、果たしてそうであるかどうか。これから先の経済状況の見通しと労働問題、雇用問題についての見通しを若干お聞かせをいただきたいと思います。
#123
○近藤国務大臣 実は先生御指摘のとおり、私は中曽根内閣の最後の経企庁長官でございまして、円高不況のさなかに何とか日本経済の立て直しをしろということで努力した経験がございますが、政府の経済見通し三・五%が達成できるかどうかという御質問がございましたけれども、私はまず申し上げたいことは、三・五%の経済成長が達成できても、それが従来のように輸出拡大によって三・五%の経済成長を仮に達成したとすれば、それはむしろ、今世界において日本たたきがアメリカその他であるわけでありますから、こういった問題をさらに激化するおそれすらなしとしない。ですから、三・五%の経済成長率は私は達成できると思いますが、どういう形にするかということが大きな問題でございます。結論を申しますと、日銀総裁の三重野さんが一月十七日に経済倶楽部で講演をされました。その講演を、日銀の調査月報が送られてきてたまたま私は読んで、日銀総裁いいこと言っているなと思って、昨日、月例経済報告関係閣僚会議というのがございまして、経済関係閣僚と党の四役が一緒になって月例報告を聞く会合のときにも三重野さんがいらっしゃったものですから、大体ああいうときは日銀総裁は金融のお話だけをされるのですが、ただ、あえて私が
問題提起をしまして、総裁が労働力不足下の景気調整について大変いいお話をしておられたようなのでもう一回お話をしてくださいと申し上げたのですが、ポイントは二つです。
 まず、労働力不足ですから、そのことが企業の省力化投資、合理化投資、ロボット化投資、まさに片方で時短を進めるわけでありますから時短推進投資、こういうものをする。かつては研究開発投資というものが日本経済を支えてきた時代から、今度は労働力不足対策投資というものが民間の設備投資の底流にある。だからこれが衰えないのが一つとおっしゃる。第二点としては、労働力不足でありますので、従来景気が悪くなると人手減らしで解雇するようなことがあるわけでありますけれども、今基本的に有効求人倍率は一・三であるし、失業率は二%、依然として労働力は貴重でありますから、企業としても、仮に今、当面景気が悪いからといって解雇なんということはできない。それどころか、むしろ時短を進めるとなるとある程度人数を確保しなければならない、こういうことで雇用を確保する。ですから、現実に雇用数も前年より伸びておりますし、したがって、時短は進んでも、頭数掛ける労働時間でいきますと労働時間も全体としてふえていて、したがって賃金支払い額もむしろふえている。高級品の売り上げは多少頭打ちになっておって、むしろ下がっておっても、スーパーだとかそういったマーケット関係の一般消費物資は伸びているわけです。それが消費を支えている、こういうことでありますし、プラス公共事業が、これは予算を早く通していただければ出てくるわけでありますので、公共事業に民間設備投資、そして消費需要、この二つの方はむしろ労働力不足が支えていて、日銀総裁の話の中では、それが今度の景気のユニークな特徴、こういう言い方をしている。私は、これは我が意を得たり、労働大臣が言うよりも日銀総裁が言ってくれた方が迫力がある、こう思って、あえて経済関係閣僚会議でも日銀総裁の口から言ってもらったわけであります。
 ですから、ちょっと前置きが長くなりましたけれども一内需拡大、公共投資と、そして雇用者の増加という形、時短と頭数とがふえるという形と、そしてそのための省力化投資、後の二つの民間の需要要因を進める。具体的に言いますと、これも私は閣議で発言してまいったわけでありますけれども、そういったロボット化、合理化、時短推進投資、特にこれから中小企業に時短を進めてまいりますと、一番困ってくるのは中小企業ですから、そういう人たちに対しては、実はもう既に労働省が中心になって通産省と話し合って、昨年から中小企業労働力確保法という法律ができて、これに基づいてその辺のいろいろな資金手当てもしておりますけれども、私は、閣僚の一人として、もう一つ時短推進、省力化のための投資が中小企業を中心として一歩も二歩も前に出てくるような形の促進策が考えられないか、こんなことで、現在通産大臣や大蔵大臣ともいろいろ話を進めている。そういう形でことしは何とか三・五%の経済成長、内需によって達成する方向で努力していきたいと考えております。
#124
○岩田委員 御専門の経済問題や労働問題に関連をしたことになりますと、大臣、なかなか答弁が長くなりますので、あともう少しはしょって、幾つかまとめて質問を簡単にしていきたいと思います。
 内需拡大で三・五%の維持は可能であろう、それに対して、中小企業を含めた企業の方もどうするかというお話がございましたが、先ほど五島委員が言いましたように、機械化を進めると、一方では労働者の教育をちゃんとしないとああいう問題も起こってくるということもありますので心配をするわけであります。
 いろいろ言われましたけれども、大臣、生活大国というふうに先ほども触れましたが、言われている意味は私もよくわかります。今国会の冒頭に宮澤総理が力点を置かれたこともわかりますが、内容的には余り具体的なことはなかったと思いますね。ただ、その説明の項で、平均的な勤労者が五年働けばマイホームが持てるという一つの夢を与えていただきましたが、しかし、これはまた到底できると思っている人はいないのです。そういう意味で生活大国が来るとは、大臣、これは勤労者は余り思っていないのじゃないですかね。余り思っていないと思いますね。生活大国というのは、国際批判が一方では出てきた、したがって、経済大国だ、大国だと言われている、これに呼応する意味でも出てきたのですが、それだけに抽象的な問題も多かったのじゃないかと思いますね。
 今のお話も参考になりますけれども、大臣の任期というのは残念ながら大体そう長くないのですね。したがってようやく、今のお話もされまして、労働省が関連予算、新しいものも含めていろいろ出していますけれども、冒頭に課長から説明を受けましたが、労働省が生活大国の建設のために進めていくという問題は総じてそういうことだろうと思いますけれども、これはなかなか難しいと思います。何と何を当面やるというような御決意があれば、まず聞いておきたいというふうに思います。
#125
○近藤国務大臣 もう短くいたします。
 私は、労働省行政の中の生活大国のポイントは時間短縮だと思うんです。千八百時間、来年度末までにはどうも達成できない状況になっておりますので、これを何とか次の五カ年計画の中でちゃんと達成できるために、これを先ほど言いましたいろいろな形の総合的な政策、パッケージを考えてぜひ実行させていただきたいと思っております。
#126
○岩田委員 今言われましたように、経済五カ年計画は、労働時間問題にとってみると達成は絶望的だ、千八百時間達成が絶望的だ。これは記憶にありませんが、どこかの調査機関がとったところによれば、労使とも二〇〇〇年の間近、一九九〇年代の終わりに達成するのが好ましいというようなことも言っていますね。さらに、一部上場企業の労働組合の委員長二百名、それから企業の方の労務人事担当の重役二百十五名ですか、それに学者、あわせて聞いておりますが、総じて労使が一致しているのは千八百時間達成は一九九〇年代後半であろう、こういうふうに言っていますね。それはなぜかというと、当然、企業の方は、急激な労働時間の短縮というのは生産性を落とすことになる、これはできない、明確にそれに集約されていると思いますね。労働者の方も、組合の方も決して早く達成することは望まないというような傾向もあるんだというふうに僕はあの数字を読みましたけれども、今の長時間労働を急速に縮めることは好ましくないという意向が出ていますね。これはやはり労働組合も、いわゆる本工の方の労働組合があるし下請もたくさんあるんでしょうけれども、賃金の方も幾重にも重構造になっているわけですよ。ジャスト・イン・タイムなんというのがまだまだ横行している状況ですからね。したがって、そういうことを考えると、比較的、中小零細下請の皆さんの労働者というのは長時間労働で食っているという実態があるんじゃないかということがその数字から読み取れるんですね。
 そういう状況でありますが、しかし大臣もおっしゃっていましたけれども、私もこう思うんです。時短を促進すれば人が足りない、人が足りなければどうするかという、人がまた足りないという悪循環になるという気がするんですけれども、今の時期踏ん張らないと、これは次の経済五カ年計画というふうに言われましても、またまた大きな下方修正をして大臣として申しわけなかったというふうに言わざるを得ないような状況があっても困ると思いますね。しかし、頑張らないとそういう事態が来ないとは限らないというふうに思いますので、ぜひとも御努力をお願いをしておきたいというふうに思うんです。
 それから次に、これはちょっと外国からのプレッシャーというかいろんな注文や批判が相次いでいますね。時短を初め、先進諸国に比べて日本の勤労者の処遇の低さというのはずっと指摘をされてきたんですね。これは連合初め労働組合も指摘をしてきたところなんです。しかし、ここに来
てようやく人間尊重だとか労働力尊重ということが本当にすべからく言われるようになったわけなんですよ。
 それで、この時期やはり対外的な批判も考慮せざるを得ない、生活大国をどうするかということになってきたのでありますが、日経新聞が連載で「世界に迫る」ということでインタビューした人の中に旧西ドイツ元首相のシュミットさんのインタビューがずっと出ていましたけれども、例えば、いわゆるアメリカ、旧ソ連、それから中国の戦略的な緊張が緩和をしたというときに、日本の軍備が過大に見えるようになってきたというふうにずばっと指摘をしていますね。これもやはりそうだと思いますか、引き続いて彼は、日本は孤立をすることを何としても避けなきゃならぬというふうに言っています。話は飛びますけれども、いわゆる自民党の小沢調査会が出したあの答申、小沢元幹事長が出された答申、まあすぐに多国籍軍にいくとは言ってませんけれども、将来いくのじゃないかという思惑はもう関係各国が心配をしているわけですよ。とりわけ第二次世界大戦の歴史的な過去を思えば、日本が対外的な問題で一番心配しなければならないのは、アジアからのまなざしをどういうふうに受けとめてやっていくかということじゃないかと思います。シュミットさんはアジアを特定して孤立化をすることを指摘されております。それから、日本の経済状況はよ過ぎるぐらいいい、したがって、日本は世界の唯一の債権国、アメリカは債務国に転落をした、こういうときに戦略的な目標はやはり日本は孤立化を避けることであって、ここに来て思い上がりはどうかというふうにきっちり言っていますね。日本とドイツが戦後とってきた戦後責任の問題を含めて経済政策も際立って違った点があるのですが、しかし、シュミット元首相の言われる指摘というのは、彼個人の哲学や情勢判断に基づいてやられたものではなくて、相対的に見て西側からもこういう目で往々にして見られているという意味では代表的な意見ではないかというふうに思いますね。
 これにつきまして、国際的感覚豊かな大臣の所見をお伺いしておきたいと思います。
#127
○近藤国務大臣 先生御指摘のシュミットさんの論説、私も拝読いたしました。私、よくわかります。
 私たち日本人はこれまで、我々はいい物を非常に効率的につくって、そして相対的に安く売って、皆さん喜んで買ってくれるんだから何が悪いんだ、こういう言い方を実はしておったわけでございますが、私、実はこの間パリのOECD労働大臣会議に行きまして、その前後にチェコとハンガリーに寄ってきたのでありますけれども、そこで工場を見てきました。そしてあらっと思ったのでありますけれども、向こうは一生懸命やっておっても、今の生産施設では、日本の物が行ったらもうだめですね。ですから、いい物をつくって安く売って喜ばれて何が悪いんだというのは一つの理屈だけれども、これをずっとやっていくと、シュミットさんじゃないけれども、場合によっては世界じゅうの産業を、日本がいい物をつくって安く売るがゆえに破壊してしまう、こういうことにもなりかねない。これは軍事的帝国主義じゃないけれども、経済的帝国主義じゃないかというようなことを言われる。こっちは悪意じゃない、いい物をつくって何が悪いんだだけれども、向こうから見れば何だ、こういうことになりますので、先ほど言いましたように、まず、我が国の場合は時間短縮をできるだけ早めて、そして我々の努力目標の千八百時間に早く到達する。そして、そのことの結果、日本の輸出する製品の値段がよしんば上がっても、それはそれでもう仕方がないではないか、そのことによって日本の輸出が減るというようなことがあっても、ある意味では国際経済調整にもなるんではないが、こういうことでありますので、やはり日本のGNPが世界の数%はいざ知らず、今やもう十数%、ひょっとしたら二割にもなるような大きなシェアを世界で日本経済は占めているわけでありますから、その点はいろいろな事情を配慮した形の経済運営がこれから必要ではないか。労働行政はまさにその基礎づくりを担うものだと私は考えております。
#128
○岩田委員 そうですね。やはり軍国主義になるんではないか、軍事大国になるんではないかという芽があるわけですから、これは日本人の感覚でもそうなんですが、経済大国、大国と言うのはやめた方がいいというふうに私は思うんです。
 それはさておきまして、今大臣からも御答弁がありましたように、過日雑誌の論文でソニーの盛田会長も同じようなことを発表されていますね。世界のソニーですから、欧米の各国のエコノミストや企業人と話をしていて、どうしても日本の企業というのはアンフェアであるというふうに言われた、言われる理由がわからないということでいろいろ議論をしているうちにようやくわかったというようなこと、その結果、六つの提言をされていますよね、内容は言いませんけれども。まず、労働時間が長い、それから働く人が企業に貢献をした分だけ果たして賃金をもらっているかどうか、いろいろあります。そして今や日本の企業が環境や資源問題を考慮して活動していかなければ二十一世紀に到達できないだろうということで提案されていますね。
 その意味でもう一点、時間がなくなりますからもう一項目だけ御質問をしておきたいと思います。
 一月の二十日に大内力先生の雇用問題政策会議の提言、これも所信表明の中で触れられていますね。これをどうするかという各省庁間、労働省が中心になっていこうという決意だと思いますけれども、これは十項目にわたる提言がされておりますね。例えば、労働力多消費型から脱却せよとか、個性を尊重せよだとか三つの視点にわたって十項目にわたってやられております。簡単に御質問をいたしたいと思いますが、やはり産業に合わせて労働力を移動させるなんという時代じゃなくなったんですね。私も筑豊産炭地の出身でありまして、一つの山がつぶれると何千人かの職員と鉱員、それからその三倍ぐらいの家族がどっと路頭に迷う、大移動をするという、これはもうとにかく大変な状況を私は目の当たりに、少年のときに見たんですが、まあ悲惨なことをしたものだというふうに思っておりますけれども、ようやくここに来てそういう時代から脱却、こう言われておりますが、問題は、この提言を具体的にするに当たっては、障害とは言いませんが既にいろんな議論がある、ホットな論争があっているということを聞きます。各省庁にお願いする前に各省庁からのクレームや障害になる部分も出てくるんじゃないかと思いますが、これはもうとにかく命をかけてやるぐらい大臣にやってもらわなければなりませんけれども、一体これをどういうふうに進めていくのかお伺いをしたいと思います。
#129
○近藤国務大臣 まさに人間尊重時代にふさわしい雇用関係をつくり、勤労者の生活の向上を何としても実現をしたい、こういうことでございますので、私は、先生お話しのように、いろんな各省庁との調整が必要だと思います。現に先生冒頭に、東京一極集中を廃止してとお話しになりました。できるかというお話もありましたが、私がいろんな意見を申し上げておりますのは、今のような東京一極集中を続ける限り、本当に豊かでゆとりのある生活は日本の国民は享受するわけにはいかないだろう、したがって、これまでの政策は工場の地方分散を考えておったけれども、工場だけじゃなしに労働者も一緒に行くような、そういう工場も人も地方に行くような政策をしなければならない。そこで、従来の工業再配置政策は、通産省が中心になって、地方に行く企業には固定資産税を減免するとか不動産取得税は多少やるだとかいろんなことがありましたけれども、ついていく人のことを考えていないんですね。だから、私は山形の人間だから山形がいいと思っていますけれども、東京の人があの雪の深い山形くんだりへなぜ行くんだ、会社は税金が安くなるからいいけれどもおれは行かないよ、こうなったら終わりですから、したがって、来られる方々に魅力あるようなそういう政策を考える。具体的には私は持ち家
政策だと思うんです。
 したがって、もうはしょりますが、そういう住宅政策、それから通産省の工業再配置政策、それから、地方に行ったら教育がおくれるなんということも思っていらっしゃる方が多いのでありますから、地方の中学、高校教育を改善するだとか、何かそういうことで関係各省にまたがることが非常に多い。そこで、実はもう既に、例えば国土庁と労働省が官房長官を中心としてこういう労働力の地方分散についての政策調整をしようと言っておりますし、また、通産次官と労働次官と経企庁の次官に寄ってもらいまして、こういう構造政策について関係各省が一致して力を出せ、知恵を出せ、また、先般も私と労働省の幹部、建設相と建設省の幹部が朝飯会をいたしまして、労働、建設両省で、まあ建設、労働にかかわる問題もございますし、それから職場の安全衛生もありますが、地方分散をどうするんだという話をしております。
 私は、そういうことで、これから労働省がもっともっと労働者の生活という視点で関係各省との政策調整を積極的に進めていくべきだと思っておりますし、既にこれまでやってきている次第であります。
#130
○岩田委員 なかなか難しいとは思いますけれども、やはりここに来て人間尊重、労働力尊重ということを基軸に据えて労働省としては踏ん張っていただかないと、労働時間短縮一つとってみても、ちょっとした現象で後退をする。後退をするとこれは取り返しかつかない、これを今の時期私は心配をしておるわけです。
 それから、一極集中の問題で、これはここで議論をするつもりはありませんが、例えばこの国会でいわゆる拠点都市構想なるものが出るやに聞いています。これは労働省は入っていませんね。建設省が中心ですね。たしか五省庁が入っていると思いますが、これなども、大臣、やはり新産都市構想とどこが違うかという疑問だってあるんですよ。それから、自治分権をどうするかということを抜きに拠点都市をつくっていけば――いや、賛成か反対か、これはいろいろあっていいんですけれども、例えば地域における一極集中を加速しはしないかという問題もあるわけですよ。したがって、大臣が言われるように、人を中心に産業を考えていく、これをひとつ推し進めていただきたいということを重ねて言っているわけであります。
 それから、最後の質問でありますが、そのいわゆる十項目の提言の中で一点だけ触れておきたいと思います。
 かって広告会社の戦略十訓というのがあった。大臣御記憶があるでしょう。例えば、もっと使用させろ、捨てさせる、むだ遣いをもっとさせろ、それから、季節を忘れさせる、贈り物にさせる、コンビナートで使わせろ、きっかけを投じろ、流行おくれにさせろ、気安く買わせろ、それから、混乱をつくり出せ、十訓があるんだそうですね。かつていろいろ使われた言葉なんですよ。そして、この提言のこれは七にあるんですか、いわゆる過剰サービスのことが提起をされていましたね。結局こういうふうになってきたんですよ。日本産業はこういうことを重点に、赴くままにやってきた結果、こういう過剰サービスの状況になったんです。使い捨ての時代になったんですね。労働力も、使い捨てとは言いませんけれども、そういう時代になろうとしている。まさに便利になったんです。便利がよ過ぎるようになった。実態ですね。これが経済大国の中でも問われている一つの問題ではないかというふうに思うんですね。
 人間にとって一番豊かさとは何なのか、それから人間にとって何が一番幸せなのかというのは、それはいろいろありましょうけれども、一家団らんで晩飯が食える家庭なんというのは一つの基準というか価値でありましょうけれども、それすらもできなくなっている。とにかく、二十四時間営業のセブン・イレブンだとかなんとか今ありますよね、便利になっている。話は飛びますけれども、そういう生活の便利さは一体子供たちに便利かというと、そうではなくなっている面もあるのです。これは別の角度から見なきゃならぬ問題でしょうけれども、ハンバーガーを食卓で子供と一緒に夕食をするなんということが言われる時代なんですが、こんなに急がなきゃならぬのか、ちょっとやはり一回今立ちどまって考えてみる時期ではないかと思います。しかも、二十四時間営業あるいは学生アルバイトは相当な問題ですが、これに対する問題が起きはしないか、労働安全の面ではどうなのか、ますます労働力不足を加速化することについてどういう対応をするのか。この提言七についての感想を二言だけお願いしたいと思います。
#131
○若林政府委員 ただいま先生御指摘のように、雇用問題政策会議の提言の中で過剰サービスについての見直しというのがうたわれております。そこで例示されておりますのは、今御指摘の年中無休二十四時間営業、あるいは関係企業に業務の一時的集中をもたらす過度のジャスト・イン・タイム・サービス、あるいは過剰包装サービスといったようなものが挙げられております。
 こういったものは雇用の面から見れば過大な労働投入をもたらすという結果になっているわけでございまして、そういった面で、労働節約の観点からこういった過度のサービスの見直しというのは必要性が指摘されているわけでございます。そして、それはやはり国民一般、消費者の意識を変えていかなければならないということでございますので、私どもこの提言に沿いましてそういった意識の見直しと申しましょうか、そういったものについての啓発活動を進めていくべきであるというふうに考えております。
#132
○岩田委員 ありがとうございました。
#133
○川崎委員長 河上覃雄君。
#134
○河上委員 午前中に質問が同僚議員から出ましたが、厚木の海上自衛隊体育館における建設現場の事故について御質問をしたいと思います。
 働く者にとりまして、職場で生命の安全が確保されるということは極めて重要なことであろうと思います。昨年、広島の橋げた落下事故、松戸の隧道水没事故あるいは移動式クレーンにかかわる事故等、一度に多数の死傷者を出す重大な災害が多発したわけであります。こうしたやさき、極めて残念なことでありますけれども、去る二月の十四日、海上自衛隊厚木基地の体育館建設現場におきまして、死者七名、当時聞くところによりますと出稼ぎの方がお二人いらっしゃった、負傷者十三名に及ぶ痛ましい事故が発生したわけであります。何物にもかえがたいとうとい生命を失われた方々の御冥福を祈るとともに、負傷された方々の一日も早い全快を御祈念したいと思いますし、また、残されました御遺族に対して心からお悔やみを申し上げる次第でございます。
 さて、大臣は本件事故発生に当たりましていち早く現地視察に臨まれたそうでございますが、この事故につきましての大臣の御所見を伺いたいと思います。
#135
○近藤国務大臣 職場における労働者の方々の安全と衛生の確保が労働行政の最重要課題の一つであると私はかねてから思っておったやさきでございましたので、あの事故を聞きまして、月曜日に飛んでまいったわけでございます。テレビや新聞で報道されておりましたけれども、改めて現場へ立ってみますと、その惨たんたる惨状に私も非常に胸を打たれたといいますか、残念に思いまして、亡くなられた方々の御冥福をお祈りすると同時に、どうしてこれが起こったか、これは現場の御説明ではちゃんとやっておったのだがなというお話であったけれども、しかし、これだけの大災害が起こったことは事実ですから、原因があっての話でありますから、なぜ起こったのか、防げなかったのか、早急に関係者に原因を究明せよ、こういうことで、労働省としても特別な調査チームをつくりまして今鋭意原因究明に当たっておりますし、できるだけ速やかにこの調査を進めてもらい、そして原因を究明し、どうしたらこういった事故が二度と起こらないか、これらについて万全の策を講じてまいりたいと考えております。
#136
○河上委員 実は大臣、私も大臣の視察の数時間
前に現地を視察してまいりました。関係者から事情を伺ったわけでありますけれども、ちょうど事故発生の前に、今国会に提出されました労働安全衛生法等の改正案の説明を受けた直後でもありました。私にとっては極めて印象に残るところとなったわけであります。詳細につきましては本法案の審議の際に私は改めて議論をしたいと思っておりますけれども、きょうは数点にわたりまして基本的なことを確認をさせていただきたい、こう思っております。
 まず一つ、設計それから施行管理、これはだれだったのか、お示しいただきたい。
#137
○北山政府委員 この工事現場の施工業者につきましては、株式会社銭高組・株式会社佐伯建設共同企業体が工事を請け負っているところでございます。
 なお、設計につきましては、横浜防衛施設局が発注者でございますので、発注の立場で設計をしているのではないかというふうに思います。
#138
○河上委員 株式会社政所建築設計事務所というのは御存じですか。
#139
○北山政府委員 私は、今のところ聞いてはおりません。
#140
○河上委員 次に、労働者死傷病報告、これは労働安全衛生法上、災害、事故発生の場合に日時、場所、状況等を事業主から報告されることになっていると思われますが、この労働者死傷病報告は、いつ、だれから提出されましたでしょうか。
#141
○北山政府委員 こういった工事現場で事故が発生した場合には速やかに労働者死傷病報告を提出することになっておりますけれども、この事故に関しまして労働者死傷病報告が提出されているかどうかにつきましては、まだ確認はしておりません。
#142
○河上委員 御確認願いたいと思います。
 続きまして、この現場におきます統括安全衛生責任者はだれでしょうか、これも五十名以上の現場につきましては統括安全衛生責任者の選任が義務づけられておると思われます。責任者の企業名、役職、そして氏名を示していただきたい。
#143
○北山政府委員 御指摘のとおり、下請の労働者を含めまして常時五十人以上の労働者を使用する現場におきましては、元方事業者が統括安全衛生責任者を選任することが労働安全衛生法により義務づけられているところでございます。
 今回事故の発生した現場につきましては、これに該当する現場ではなかったというふうに考えられておりますけれども、現在なお調査を進めているところでございます。
 なお、今回事故が発生した現場におきましては、統括安全衛生責任者を選任すべき法的義務というのは御指摘のとおり五十人以上ということでございますが、現在のところ、一応四十名ということで届け出がございました。ただ、四十名未満の場合であっても、統括安全衛生責任者の欄には、銭高組出身の現場所長の氏名が統括安全衛生責任者として記載はされております。
#144
○河上委員 亡くなられました平野さんですね、その名前でございますね。私が、視察の際に関係者から伺いますと、事故当日においては五十名以上いました、このような話も承っております。あえて付記しておきたいと思います。
 続きまして、統括安全衛生責任者の役割、機能並びにその責任について、一般的にはどのようなお考えなんでしょうか。
#145
○北山政府委員 統括安全衛生責任者の職務につきましては、混在作業における労働災害を防止するため、労働安全衛生法上の第三十条第一項各号に規定をされておりまして、協議組織の設置及び運営、作業間の連絡調整等の特定元方事業者が講ずべき措置を統括管理するということが統括安全衛生責任者の責任であるということでございます。
#146
○河上委員 当初の設計を一部変更したと承りました。変更は元請からでしょうか、あるいは発注者の施設局からでしょうか。
#147
○北山政府委員 本工事現場におきましてはビルトスラブ工法によるコンクリート打設作業を行っていたものでございますけれども、この工法を採用することになった経緯その他につきましては、現在調査中でございます。
#148
○河上委員 設計変更はいつ、具体的に何月何日になさったのでしょうか。
#149
○佐藤(勝)政府委員 恐らく労働基準監督署に届け出られた計画のことをお尋ねかと思いますけれども、労働基準監督署への届け出は十一月の二十二日に、その工事開始に先立ちまして、既に変更後の計画、つまり、十一月二十二日にビルトスラブ工法によって行うという内容の計画として届けられております。したがいまして、監督署に届けた後の変更というのは私どもの方では受けていない、当初からビルトスラブ工法でやるというふうに受けております。
#150
○河上委員 続きまして、工期はいつからいつまでの何日間でありましたか。また、事故発生時点では、その工期に照らして予定どおり進捗していたのでしょうか、あるいはおくれていたのでしょうか。
#151
○北山政府委員 この災害が発生をしました建築工事は、鉄骨鉄筋コンクリートづくり、一部鉄筋コンクリートづくり、二階建て、延べ面積が四千三百四十五平米の体育館、プールの新築工事でありまして、工期は平成三年三月二十一日から平成四年十月二十日となっております。事故直前までに一階側壁部分のコンクリートの打設が終わり、二階スラブコンクリート打設中にこの災害が発生したものでございます。
#152
○河上委員 事故発生以前、予定どおり進んでいたのですが。工期のままですか。
#153
○北山政府委員 予定どおりに進んでいたかどうかということにつきましても、現在調査をしているところでございます。
#154
○河上委員 これらの亡くなられた方、あるいは負傷者の方以外の作業員の方の中に、外国人労働者はいらっしゃいましたか。
#155
○北山政府委員 関係者の中に外国人労働者がいたということについては、私ども把握はしておりません。
#156
○河上委員 これは教えていただきたいわけですが、一定規模以上の現場は、現行で、基準局が工事期間中に一定の検査を行うようなシステム、これはあるんですか、ないんですか。
#157
○佐藤(勝)政府委員 労働基準監督官が工事の安全の確保のために調査、監督に現場に行く場合がありますが、それは、必ず何回行く、少なくとも一回行かなければいけないという義務は特にございません。必要に応じて安全確保のために監督に行く、こういう仕組みでございます。
#158
○河上委員 本現場においては基準監督官は行かれましたか、行かれておりませんか。
#159
○佐藤(勝)政府委員 この現場には労働基準監督官が監督に行った実績はございません。
#160
○河上委員 この事故原因、最終結果はいつごろはっきりいたしますでしょう。
#161
○佐藤(勝)政府委員 原因の究明はできるだけ早くするのが望ましいことは当然でございますが、何しろ、崩壊したコンクリートが固まった状態でございますので、なかなか調査にも時間がかかるであろうというふうに見ております。今のところ、いつごろということをここで責任を持って言える状態にはございませんが、我々としても鋭意できるだけ早く結論を得たいというふうに考えております。
#162
○河上委員 いずれにいたしましても、建設業におきます労働災害というのは非常に多発しているわけでありまして、また、大きな社会問題となっているわけであります。亡くなられた方あるいは負傷された方々への対応のためにも、速やかな原因解明を強く求めまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 次に、昨年の九月、当委員会で私、医療、福祉分野で働く看護婦等の労働条件改善等の問題について質問いたしました。引き続きその観点から何点か御質問を、確認を含めてさせていただきたいわけであります。
 質問の後現在に至る間に、昨年の十一月に、看
護婦不足に伴いまして川崎市の市立病院の一病棟閉鎖という事態が発生いたしました。私どもも事態を重視いたしまして、すぐさま現地を視察し、病院当局からも種々話を伺ってまいりました。
 ちなみに、これが川崎市立病院病棟閉鎖の記事でございますが、病床数六百九十三床、ところが、昨年四月から十月までの間に看護婦二十二人が退職をなさった。産休、育児休業を含めますと、現在二十六人欠員が出ておる。中途補充のめどは全く立っていない状況でありますけれども、さらに六人がボーナス時期の十二月に退職する強い意思を持っている、こういう中身でございます。そうしますと、夜勤のローテーションを組むことが難しくなる、そして逆に労働条件の悪化が退職者の増加を招く、このような悪循環も懸念されるところから、とうとうやむなく病棟閉鎖、こういう事態になっているわけであります。さらに、この川崎市立病院以外に市内の病院七割以上が看護要員の不足に悩んでいる。診療所では看護婦ゼロのところが二百六十二カ所もある。さらに准看、看護助手などの看護要員が一人もいないところが五十三カ所もあるということも市当局は認識をしているわけでございまして、私も大変厳しい実態にあるということを改めて感じたわけであります。
 この問題について、視察をしてさまざまな方の意見を伺いましたし、協議もいたしました。と思うやさき、本年の二月、つい先日でありますが、今度は横須賀市で再び、これは二カ月間でありますけれども病棟閉鎖という事態がまた出てまいりました。私も記事が出ました当日、すぐさま病院の関係者とお話をしてまいりました。川崎の市立病院の実態と全く同じような現象でございますが、ここでは、今二カ月間何とか手当てをしてしのぎたいけれども、来年のこの時期になるとまた同じような事態になるのではないか。これは確保できるのかどうか甚だ心配です。イタチごっこのような悪循環を繰り返しているようなのが実態にあると思っております。
 まず、こうした事態について労働省としてはどのような御感想をお持ちなのか、これは大臣にお伺いしたいと思いますが、いかがでしょう。
#163
○近藤国務大臣 先生御指摘の病院の病棟閉鎖の記事は私も読ませていただきました。これからは人口の高齢化、医療の高度化、専門化等によって看護婦さんに対する需要が増大する一方、特に若手の方々がむしろ看護婦を希望されないような面も出ておりまして、まさに看護労働力の確保というのは現下最大問題の一つだ、かように私どもは考えております。
 そのような認識に立ちまして、看護婦の確保、定着のために、いろいろ病院等における事業主の実質的な雇用管理の改善を促進し、看護婦にとって魅力のある職場づくりを図っていきたい、こういう考え方で、今般労働省としては厚生省と共同で看護婦等の人材確保の促進に関する法案を今国会に提出をすることにしております。看護婦等の雇用管理の改善、潜在看護婦の登録による再就職の援助等職業紹介の充実等を図って、その確保及び定着を図ってまいりたいと考えております。
#164
○河上委員 極めて厳しい労働条件下にございますし、具体的に週休二日制、夜勤の問題等子育ての上からも大変ながら、大臣がおっしゃったように若い方々の離職も大変高うなっておりまして、こうした問題を一つ一つ的確に解決いたしませんと、先ほど申し上げた事例はなかなが解消でき得ないのではないか、この実感をさらに強く深めるわけでございます。
 そこで、昨年の九月私は完全週休二日制の問題につきまして当委員会で、これは国立病院でございましたが、国立病院の完全週休二日制、週四十時間労働制について、人勧に基づいて平成四年度から直ちに実施すべきではないか、こう主張をさせていただきました。基準局長からは九月から、これは昨年の九月になるわけですが、一部施設で試行いたします、早期の導入が期待されます、もちろん昨年九月以前でございますのでこのような御答弁となったと踏まえております。
 そこで、約半年間経過をするわけでありまして、私もこの実態がどこまでどう進んだのか厚生省に確認いたしました。そうしますと、確かに全国二百五十の病院の中の一割程度、二十五施設において試行的にこの二日制を導入し、開始をいたしておりますのでは、これが終わったらどうなるんだ。この試行期間終了後、本格実施の前日までこれを継続いたします、この二十五施設については九月二十九日から昨年の十二月二十一日まで、あとの残りの二百二十五施設につきましては本年の一月十九日から三月十四日まで試行期間として導入をする。この二百二十五施設につきましては、特別な問題がなければ、先行の二十五施設と同様に、試行期間終了後本格実施の前日までこれを継続したい、今週中だそうですが、今週中にその状況をしっかり判断をしたい、このようなお話をいただきました。継続するかどうかについての判断の基準はどうなんだ、こうお伺いしますと、特別にはございません、いろいろな要望をくみ上げてとかいろいろとお話をなさっておりましたが、よくわからない話でありました。やるのかやらないのか、余り明確にならないお話が出てまいりまして、なかなか厳しいな、こう思っておりますが、総務庁では三月半はいっぱいまでで何とかこれをまとめたい、こんなことも言っておりました。
 これは国立病院関係でございますけれども、では、民間病院の方の完全週休二日制の問題について、いつごろまでに、また、労働省としてはどういう御見解をお持ちになりながら推進していくのか、この点についてお尋ねをしたいと思います。
#165
○佐藤(勝)政府委員 労働省としましては、病院に限らず、全体的に週休二日制の普及に向けて各般の指導、援助をしているわけでございまして、病院につきましてもその中で行われるわけでございます。今先生がおっしゃいましたように国公立病院、特に国立病院につきましては、試行という形でございますけれども、現在、土曜休診制を含みます週四十時間制への取り組みが行われているということで、労働省としては、こういった国立病院の動きが民間病院の週休二日制の普及促進にいい影響を与えるのではないかというふうに期待をいたしているところでございます。
 労働省としましては、中小企業時短促進事業という中で、地域の医師会を幾つか選定をいたしまして四十四時間への指導、あるいは、さらに進んで四十時間への指導ということをきめ細かくやっておるところでございますが、こういった方策を今後とも進めてまいりたいというふうに考えております。
 なお、全体としての週四十時間労働の問題につきましては、現在、労働時間法制全体を含めまして、中央労働基準審議会で昨年来基準法におきます労働時間法制全体の見直しをしていただいている最中でございまして、労働省としましては、この検討結果に基づきまして必要な措置を講じたい、こういうふうに考えております。
#166
○河上委員 これも昨年九月、私の質問で基準局長が、病院における労働基準法違反の状況の部分についてお触れになりました。その趣旨は、深夜業の回数が多いこと自体は法違反の問題とは違うけれども、深夜業が多い結果、法定労働時間、労働時間に関する法に違反するケースが間々出てきている、病院における基準法の違反率は他の産業に比べてかなり高い、このように御答弁をいただきました。
 そこで、ここ数年の病院等における労働時間に関する違反の実態を全産業別と比較しながら示していただきたい。
#167
○佐藤(勝)政府委員 病院におきます労働基準法違反の実態、全産業と比較してどうかということでございますが、事業の内容あるいは事業の規模等がそれぞれ違うわけでございますので、そのまま比較をすることでどのぐらい実態が明らかになるかという問題はありますが、単純に監督を実施した事業場に対します違反事業場の割合を見てみますと、男女を問わず労働時間に関する規定の違反が病院につきましては企業種に比べまして相当
に高いということが言えるかと思います。
 ちなみに、平成二年の場合ですが、労働時間に関しまして、具体的にいいますと、男子について三十六条協定がないままに所定外労働をこなしている、あるいはその限度を超えてやらせているというものでございますけれども、企業種では一二%程度であるのに対して病院では三五%ぐらいの違反率が見受けられる。女子についてもほぼ同様の傾向がある。それからまた、所定外労働に対します割り増し賃金の支給に関します違反も、全産業で四%台でありますけれども病院につきましては一〇%以上の違反が見られるということで、なべて労働時間関係の違反が全産業に比べますとかなり目立つという実態がございます。
#168
○河上委員 ここに女子の労働時間に関する労基法違反件数のデータがあるわけでありますけれども、一九八〇年で女子の違反件数が一万一千五百八十五、六・九%、病院等はと申し上げますと三五・八%、こっちの方が若干上回っているわけでありますけれども、大体先ほどおっしゃった数字だ。また一九九〇年、女子の違反件数が八千六百二十八、五・五%に対しまして病院等が三四・八%、これは全産業と比較しますと六・三倍、この十年間の流れの中におきましても五倍から六倍強、一般とは比べものにならないほど違反件数が多いわけであります。これは私は大いなる問題の一つじゃないかと指摘をするところであります。
 また、今八〇年と九〇年、十年間をお示ししたわけでありますが、この実態の中から、違反件数が十年間何にも変わっていない。これもまた問題ではないのか。何も変わっていない、その傾向がそのまま十年間継続している、私は大変憂慮するわけでございます。
 こうした事例を通しますと、医療機関に対する労働省としての監督に甘さがあるのではないか、また、それならばどのような監督指導を行ってきたのか、ここでお尋ねしたいと思います。
#169
○佐藤(勝)政府委員 病院等の医療機関で働く看護婦等の労働条件の問題でございますけれども、こういった職種につきましては、労働時間管理等につきまして基準法等の関係法令上問題が認められることが多いということで、病院等につきましては労働時間の問題を中心に重点的な監督指導をしているところでございます。
 ちなみに、これは平成二年の定期監督の件数でございますが、医療機関につきましては千四百二十五事業場につきまして監督をいたしております。今後とも、問題のあるところにできるだけ重点を置きながら、法定労働条件が確実に守られるように監督指導をすることによってその履行確保に努めてまいりたい、かように思います。
#170
○河上委員 問題のあるところすべてが問題なわけでありまして、その中でもとりわけ厳しいところもたくさんある。私はそれを事例で先ほど示したわけでありますので、やはり一つ一つ的確に手を打ってまいりませんと、本当に事態は進みませんね。私は、大変な問題であろうと思っております。
 それで、二・八体制でございますが、二・八体制は昭和四十年にできました。かなり古い、二十七年前ぐらいになるわけでありますが、現在では夜勤の状況がどんなふうになっているのか、この点いかがでしょうか、お伺いしたい。
#171
○佐藤(勝)政府委員 労働省が調べましたものといたしましては、平成元年に日本病院会に委託をして夜勤の回数を調査したものがございます。これの結果によりますと、看護婦さん一人当たりの一カ月の平均夜勤回数が、準夜勤と言っております夕方から夜中までのものが四・五回、それから深夜勤、つまり夜中から朝までが四・四回、合計しまして平均九回弱というような結果が出ておるところでございます。
#172
○河上委員 看護婦さんにお伺いしますと、勤務終了後看護日誌等を作成するために一時間半ないし二時間ぐらいの時間がかかる、これが専らだそうでございます。
 この勤務終了後の業務については、労働省といたしましては、これは残業に当たるとお考えですか。
#173
○佐藤(勝)政府委員 看護婦さんの仕事の内容におっしゃるようなことがあるかと思います。そういった活動といいますか業務といいますか、これは、黙示であっても明示であってもこれが使用者の指揮命令によって行われるものであれば労働時間になるわけでございまして、仮にこれが法定労働時間を超えて行われるということになりますと、時間外労働協定の締結が必要である、こういう扱いになります。
#174
○河上委員 それでは、今、後の話を聞きましたが、前の話をします。
 引き継ぎのために早く出勤をするそうでございまして、また、具体的に申しますと、看護婦さんのお休みの日もございます、お休みの日で翌日が深夜勤入りする場合には、本来ですと勤務時間は十二時となるわけであります。ところが、十時に行かなくてはならない。かなり早く引き継ぎのために出ていかなければならないというのが実態なんですね。
 では、この引き継ぎ等のために要する時間は労働省としては残業に当たるとお考えでしょうか。
#175
○佐藤(勝)政府委員 これも先ほどの後の場合と同じでございまして、やはり使用者の指揮命令下によって行われるということになりますと労働時間になるわけで、これが法定労働時間を超えれば先ほどと同様に時間外協定の締結が必要、その範囲内でやる、こういうことになろうかと思います。
#176
○河上委員 実際はいろいろやりくりしているそうでございまして、三十分程度はつけるがあとは全部ない、こんなようなのが実態でありまして、現実的には残った時間はすべてサービス残業、これでは定着しませんね。
 今の看護婦不足の問題で一番大事な視点の一つに、定着問題というのがあると私は思っております。しかし、今申し上げましたように、一つ一つの事例をとりましてもこうした実態では、定着といってもなかなか不可能でございまして、大臣も先ほど、厚生省との共管によりましてその確保の問題について真剣に取り組まれる、こういうお話をいただきましたが、定着あって初めて確保が果たされる、これが今の看護婦不足の現状と実態ではないだろうかと私は思うわけです。その意味では、定着は、労働条件の改善を速やかにそして具体的に進めていきませんと、まあ難しい問題もあること十分承知しておりますが、全体としてなかなか進んでいかない、このことをあえて強く申し上げておきたいと思っております。
 看護婦さんは、私たちの将来は余り夢がないと言う。確かにこうした実態では夢を持てません。命を預かる大切な職業という使命感の上から選択をしたわけでありますけれども、これではすり切れるまで働き続けることを要求されるわけでありまして、こうした実態を踏んまえながら大胆に発想いたしまして、一定期間勤務なさった看護婦さんは長期間のリフレッシュ休暇ぐらいどんと与えるような施策を講じたらいかがなものか、そういった側面も一助にしてはいかがか、私はこう思うんですが、これはいかがでしょう、大臣。
#177
○近藤国務大臣 先生の御指摘、私も大変熱心に伺わさせていただいているわけでございますが、人手不足だから人が来ないといっても、今先生御指摘のように処遇、待遇といいますか、それの問題がやはり大きいと思うんですね。ですから、看護労働は大事だから皆さんいらっしゃいと言っても、今の勤務条件だとか給与だとかそういう面がほかの女性の仕事と比較して割が悪いな、こういうふうに皆さんが思われたら、幾ら私どもがお願いしてもなかなか人が集まっていただけないということも事実だと思います。ただ、具体的に先生おっしゃったように、どんとまとめて休暇を与えたらいいとかいろいろなお話はありますが、いろいろ御指導賜りながら、大事な看護労働というものに必要な人が集まってくるような体制は真剣に考えていかなきゃならないと私は思っております。
#178
○河上委員 私がいろいろお話を伺った方は、賃
金の低さももちろんあります、もちろん低いと私自身も思っております、もっと高くすべきだと思っておりますが、余り話は出ないんですね。ある意味では本当に使命感をお持ちになってやられている方で、もちろんそればかりではないかもしれません、そうした事実もあるかもしれませんが、今私がずっと申し上げた側面、この点がやはり将来に危倶を抱かざるを得ない大きな視点であろうと思っております。通常の職場ではない、かなり変則的で、しかもそれが非常に大事な職場であるというこの事実、ポイントと的を外さず、どうかしっかりとした方向づけをお願いしたい、このように思っております。
 次に、もう少し何点がお話をいただきたいわけです。
 看護婦さんに係る労働力の需給調整システムの問題、公共職業安定所や民営職業紹介所、人材銀行など看護労働力の需給調整を行っている各機関の一元化、そして求人求職情報等しっかりとまとめ上げて、このシステムの機能強化を図るべきであろう、私はこう思っております。
 これらについて今お取り組みになっていることと思いますが、この視点についていかがでしょう。
#179
○若林政府委員 看護婦さんの職業紹介機関といたしましては、従来から公共職業安定所におきまして年間二万人程度の看護婦さんの就職を進めております。また、昭和五十一年以降ナースバンクとして各都道府県の看護協会に対しまして看護婦等に係る無料職業紹介の許可を行っておりまして、これで年間約一万人の就職が進められておるわけでございまして、こういった形で看護婦さんの確保に努めてまいったわけでございますけれども、約四十三万人と言われます退職した看護婦さんの再就職ということが大きな問題でございまして、こういった分野におきます公共職業安定所の機能強化が必要と考えております。このため、各都道府県に一カ所、看護婦さん等の確保の拠点となります公共職業安定所を福祉ハローワークというふうに指定いたしまして、ここに退職した看護婦さんの登録制度を導入いたしまして、専門官の配置による専門的な職業相談、職業紹介の実施あるいは看護知識等のリフレッシュのための講習の開催等を通じまして、看護婦さんの再就職の促進というものを図ってまいりたい、そういった関係の予算を計上させていただいているところでございます。
 また、ただいま申し上げましたナースバンクにつきましても、その機能が発揮されますように、重点ハローワークとナースバンクが相連携をいたしまして看護婦さんの再就職の促進を円滑に進めていきたい、ここのところを厚生省、労働省が相携えて進めていきたいということでただいま準備を進めているところでございます。
#180
○河上委員 さらに出産、育児等で一時離職しました看護婦さんの再就業、また短時間就労を希望する者も多くございます。その意味では、そうしたニーズに対応できるような雇用形態、労働時間の管理という側面が今後必要になってくるのではないかと思われます。さらにまた、中小の医療機関を中心に雇用管理の改善に向けた努力、これが必要であろうと思っております。これらに対する指導、援助についてどのようにお取り組みになる御決意でございますか。
#181
○若林政府委員 医療機関におきます看護婦さんの雇用管理の改善を推進いたしましてその定着、確保を図るために、このたび厚生省と労働省が共同で法案を提出するということで現在準備を進めているところでございますが、具体的には、公共職業安定所におきまして、医療機関の事業主に対しまして雇用管理研修に対する助成等、看護婦さんの雇用管理の改善に係ります指導、援助を積極的に実施していきますほか、医療機関の事業主に対しまして看護婦さんの確保に関する情報の提供、相談その他の援助を行います都道府県ナースセンターとも十分連携、協力を保ちながら、今先生御指摘の中小の医療機関におきます看護婦さんの定着、確保を図ってまいりたいと考えております。
#182
○河上委員 看護婦不足問題の最後でありますが、この施策を講じますと、局長どうですか、看護婦不足は解消しますか、大丈夫ですか、御決意を。
#183
○若林政府委員 先ほど先生が御指摘になりましたような、看護婦さんの不足によって病棟が閉鎖されるというような事態をこれまでも伺ってまいったわけでございます。そして、先ほども申し上げましたけれども、雇用問題政策会議におきまして提言がなされておるわけでございますけれども、その中でも、これからは一定の労働力供給制約のもとにおきまして国民生活のためにぜひとも労働力が必要な分野というものがあるわけでございまして、こういったところにできるだけ労働力が円滑に流れていくようにするということが国民生活のためにぜひとも必要でございますし、ただいま御指摘の看護・介護労働力というものはその最たるものであるというふうに考えております。
 そういった観点から、この看護・介護労働力の確保、定着ということのために全力を注いでまいりたいと思いますし、そのために今回介護労働力の法案もお願いをいたしておりますし、また、ただいま看護人材の確保の法律につきましても準備を進めさせていただいているわけでございまして、こういったことを契機にいたしまして、私ども最大の努力を払ってまいりたいと考えているところでございます。
#184
○河上委員 時間が大分迫ってまいりました。私は、あと介護の問題と過労死の問題を取り上げたかったわけでありますが、介護の問題のみに限りまして質問さしていただきたい。
 核家族化の進展あるいは女性の社会進出、それによる共働き世帯の増加、高齢化社会の進行による老人や痴呆性老人の増加、病気の近親者の介護というのが今後ますます重要な問題であることは、だれも異論のないところであろうと思っております。介護を要する老人と同居する家族の多くは勤労世帯でありまして、要介護者の増加が今後労働市場やあるいは勤労者の就労活動に与える影響は大きい、私はこう思っております。
 そこで、まず、こうした状況の上から労働市場に与える影響について労働省はどうお考えか、御質問をしたい。
#185
○若林政府委員 これまでいろいろ御議論がございましたように、今後の日本の労働力の需給というものは、基本的に労働力の供給が制約されていくような構造であろうというふうに考えております。一方におきましては、女性の方々を中心として社会参加が進んでいくという状況でございます。そしてまた、ただいま御指摘のように、大変な高齢化が進んでまいりまして、それぞれの御家庭で介護を要する方々がふえてくるということでございます。労働力の供給が一方で制約される中で、なかなか働きに出にくい状況というものができてくる。しかし、なおそういう中で社会に参加したいという意欲は大変強くなってくるということでございますので、そういった観点から、そういったための社会参加をなされやすい条件を整備していくということが、やはり今後のそれぞれの方々の幸せということもございますし、また、日本の労働力の需給という面からも大変に重要な課題であるというふうに考える次第でございます。
#186
○河上委員 大変申しわけないのですが、簡潔にお答えいただければありがたいと思っております。
 次に、例えば寝たきり老人や痴呆性の老人を抱える勤労者の経済的、精神的、そしてまた肉体的負担は深刻でございます。特に介護が長期間にわたる場合、失業あるいは転職、働く場所の環境変化が余儀なくされてしまう。それに伴って所得の減少の問題やら介護負担による家族共倒れの問題やら、ひいては家庭崩壊を招いた、こういう問題までさまざまでございますけれども、基本的に勤労者の職場と家庭というこの調和が根底的に脅かされる、こうした事態もありまして、大きな社会問題となってくるのではないかと思います。
 そうした点で、これらの問題が勤労者の就労活
動に与える影響につきまして労働省の認識はいかなるものか、お尋ねしたい。
#187
○松原政府委員 先生御指摘のとおり、高齢化社会が進行しましていわゆる要介護老人がふえてくるということは、ひいてはその介護に携わる方の負担がふえてくるということにもなるわけでございます。そういう意味では、職業生活を続けながらそういう介護もやっていくということになりますと、その調和をどう図っていくか、そういった問題にどう対応していくかということは非常に重要な問題である、今後ますます重要になってくるのではないかという認識をもっているところでございます。
#188
○河上委員 六十五歳以上の人口が平成二年で一二・五、十二年には一六・九、二十二年には二一・一、三十一年には四人に一人の二五・一、こうして変化をしていく。六十五歳以上を抱える世帯、これは平成元年で一千七十七万四千、全体の世帯に対して二七・三%ある。寝たきり老人はと申し上げると、平成元年で七十万、うち在宅が二十六万と指摘されておりますが、これが二十年後には百四十万になる。そして核家族化でございますが、昭和二十八年には五・〇〇だったそうでございます。四十年には三・七四、そして平成元年では三・一〇と、ずっと落ちてきております。独居そして老人夫婦のみの家族が増大しているというのがこうした実態の中にもあらわれていると思いますが、これは何とかしなければならないと思うのですね。
 そう予測されるわけでありますから、手をこまねいていてはどうにもならない。しかも、要介護者の介護というのは、これはある意味ではすべての人にとって共通問題でございます。また、いつ、どこで私どもにも訪れるかもしれない大事な問題でございます。自分を襲うから大切だと申し上げているわけでは決してございませんが……。
 そこで、労働省としては、「支えたい家族 続けたい仕事」をスローガンにしながら介護休業制度の導入について腐心をなさっていらっしゃると思います。しかし、その実はまだまだ十分とは言えない実態にあるわけでございまして、ちなみに、日本におきますこの介護休業制度の普及率は、昭和六十年には一一・四、六十三年に一三・六と上がりました。しかし、平成二年一三・七と、育児休業の普及率から見てもかなり低いわけでありますが、もちろんそれはそれなりの理由と根拠があると思います。特に六十三年から平成二年にかけましては全く伸びてない。六十三年一三・六に対して平成二年一三・七です。ほとんど伸びがない。この伸びなかった要因は一体何にあるとお考えでございましょうか。
#189
○松原政府委員 伸びなかった理由は、なかなか難しい問題でございますが、労働省としても介護休業制度の普及について、今先生がおっしゃいましたように、こういうパンフレットをつくって指導し始めだというのは実はごく最近でございまして、いわば政策課題として中心的に取り上げてきたという意味でもまだ日が浅いというのは事実でございます。
 また、介護の問題は育児と違いまして、要介護の方の状況がどうなっているのかということによって必要な介護の実態も違うわけでございますし、したがって、当然、期間としても必要となる期間というのはさまざまであって、一概に介護休業といっても、育児休業のようにすべての人に、ああ、こういうものが介護休業だというイメージがすぐわくという性格でもないという点もあろうかと思います。そういう点もありまして、私ども行政指導をやります場合に、介護休業を普及しましょうというだけでなく、もう少し具体的にPRができないものだろうかということで、実は現在、この介護休業を初めとします介護についての企業内の福祉制度についてのガイドラインというものを検討いたしておりまして、このガイドラインを策定いたしましたら、それに基づいたより具体的な指導をやっていきたいというふうに思っているところでございます。
#190
○河上委員 松原局長の理由等を挙げられてのお話をお聞きしておりますと、だんだん寂しくなってまいりました。介護はこれ以上進まないのかな、そのように印象として今私は思ったわけであります。現実の伸びが、もちろん導入し始めてまだ短時日であるとかさまざまな問題がおありになると思います。しかし、先ほど申し上げましたように、これは間違いなく必要な状況が毎日毎日、何年何年なんて申し上げる前に日々進んでいっているわけでありまして、これはやはり大切だと思います。現実と実態とかなり落差があるのではないか、これではなかなか溝は埋まっていかないのではないのか、私は、率直にそう思うわけでございます。
 ちなみに、外国はやはりかなり進んでいるのではないかと思っておりますが、この点についてもお尋ねをしたいわけでございます。
 ILOでは、一九八一年に介護・看護に関する勧告を採択いたしました。御承知であると思いますが、一つは「被扶養者である子について家族的責任を有する男女労働者は、当該子が病気である場合には、休暇をとることができるべきである。」また二つ目に「家族的責任を有する労働者は、被扶養者である近親の家族であって保護又は援助を必要とするものが病気である場合には、休暇をとることができるべきである。」このような勧告は既に御承知だと思います。EC諸国におきましても、一九八三年に介護に関しますEC指令案を採択している。
 これら国際的な動向を踏まえましても、現在、日本では余り進んでおりませんが、それでは、介護・看護制度等を導入しております国はどのぐらいおありでしょうか。
#191
○松原政府委員 私どもすべてを調べたわけではございませんので、介護休業制度が国際的に見てどの程度普及しているのかということはなかなか言いがたいわけでございますが、法律で介護休業を規定をしております国は、私どもが把握している限りでは、とりあえず五カ国程度ございます。そのうちの大部分は、子供が病気の場合の介護または看護の休暇ということで、例えば年間一週間とかそういった短いものを決めておるのが多いわけでございまして、今おっしゃいました老親の介護のための休暇といったものは、例えばスウェーデンではそういうものが規定されておりますけれども、年間三十日というふうに規定されているといったような実態にございます。
 ただ、これにつきましては、社会的背景といいますかそういうものがありまして、家族に対する考え方とか、こういった介護についての社会的な施設の整備状況というふうなこともあわせて考えなければいけないのではないかというふうに思いますが、いずれにしても、私ども把握している限りでは余り多くの国がこれを法制化しているという実態にはないというのが実情でございます。
#192
○河上委員 もう一点、女子労働者は一千七百四十九万人、三七・四%と大変高い比率を占めておるわけであります。それに比して、介護者の九〇%、これは在宅介護に専らなるわけでありますが、九〇%が女性というのが実態であります。働く女性にとりまして、しかも、女性の社会進出が高まります中でこうした事態、大変であると思っております。
 女子労働者のこうした事実を踏まえた上での労働市場に与える影響について労働省としての御見解をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
#193
○松原政府委員 幾つかの調査を見ますと、女性が働き続けるための困難につきましては、育児とともに老人や病人の世話というのが多く挙げられております。また、別の調査によりますと、介護について主に責任を持っていた人で、仕事をしていた人たちのうち介護のために仕事をやめたり勤務先や勤務条件を変更した人というのは四割くらいいるというような実態も出ております。そういうことから、介護のために一定期間休業できる介護休業制度というのは、こういったものがなければ仕事をやめざるを得ない労働者がこの制度によってやめずに雇用を継続できるという意味においては女子労働者、女子だけではないのですけれ
ども、実際にはかなり多くの場合女子が介護を担っているということから、女子労働者にとりましては、特に雇用の継続には資する制度であるというふうに私どもは考えているわけでございます。
#194
○河上委員 以上で終わります。ありがとうございました。
#195
○川崎委員長 金子満広君。
#196
○金子(満)委員 私は、主として労働時間の短縮の問題について率直に質問させていただきます。
 近藤大臣は労働時間の短縮問題について触れました。豊かでゆとりある勤労者生活を実現し生活大国に向けて努力するんだということも言われました。これはそのとおりのことを私も願いますが、生活大国に向けてだから、今生活大国にはなっていないということだと思うのです。ところが、経済の方は大国になっています。経済は大国で生活は小国、そういう中でどんな現象が起きているだろう。一つは、日本の大企業というのは、貿易摩擦を起こしてあちこちから苦情を言われるくらい利益を上げていることは事実ですよ。ところが他方、こういう中で労働者は長時間の過密労働。ヨーロッパのそれに比して非常に長時間労働だ。これはもう天下周知のことで、各界ともこれは現実ですからみんな認めている。日本の場合は、そういう先が過労死問題になって出てくる。これも指摘されているとおりですね。
 大臣が言われる千八百時間、これは言葉では随分前から聞くわけです。しかしなかなかそこへいかない。
 この千八百時間というのを出してきたのは、一九八八年六月の閣議決定による雇用対策基本計画の中で出されているのです。これは労働省が発行しているこの本の中にもあります。これでは、昭和六十三年度から平成四年度に週四十時間労働ということと同時に、「年間総労働時間を計画期間中に千八百時間程度に向けてきる限り短縮する。」こういうように明記されているのです。あと一年しかないわけですよ。あと一年しかないのですけれども現在の到達点はどういうものなのか、残る一年でどのくらいできるのか。これは基本的にこうだということを具体的には示されないと思いますし、難しい計算ですから、今どんな状況にあるのかという点を一つ考えとしてお聞きしたいと思います。
#197
○近藤国務大臣 先生御指摘のとおり、現行の経済五カ年計画で、平成四年度に千八百時間に達するように努力する、こういうことをうたって閣議決定までしたわけでございますが、現時点で申し上げますと、平成二年度で二千四十四時間ですか、それで三年、暦年で二千十六ですか十八だったか、まあ大体毎年三十時間か四十時間、三十時間くらい減ってきておりますので、この率でまいりますと来年度末に千八百時間を達成するにはちょっと足りないかな、こういうことでございます。
 そこで、結論を急いで申しますと、現実に二千時間から千九百時間にまでするので百時間、二千時間ベースでいきますと五%労働時間がカットですね。ですから、千八百時間にするためには二百時間労働時間カット。ということは、それが生産にどういう影響を与えるかという問題が一つあります。労働者の側で同じように一〇%の労働時間カットでそれが賃金にどうはね返るかという問題がありますから、数字で千八百時間といっても、具体的に各企業、各産業ごとにそれを実行するためには経営者の立場、会社の立場、それから労働者の立場、両方でいろいろ問題がございますので、それが実現するための具体的な方策も考えると同時に、日本の場合には非常に競争社会でございまして、それから横並びでありますので、そういったことも見ながら、コンセンサスをつくりながら具体的に達成するような措置をぜひ講じていきたい。今度の国会で労働時間短縮促進法をぜひひとつ我々提案いたして皆さんに御審議いただいて通していただきたいと思うゆえんもそこにあるわけでございます。
    〔委員長退席、岩田委員長代理着席〕
#198
○金子(満)委員 だんだん短くなってきていると言いますけれども、これは去年の八月一日に労働省が発表した労働省労働基準局賃金時間部の「「所定外労働削減要綱」の策定について」というものなんですが、その中で「所定外労働時間は依然高い水準にあり、特にこの削減が求められている。特に近年、景気の変動にかかわらない恒常的残業が増えている。」これは労働省の公式に発表した文書なんですね。
 確かにヨーロッパのそれに比べて少ないところで二百時間、普通五百時間、日本の方が長いというのはもう常識のように言われているわけですね。しかも、これはサービス残業は入っていないわけですよ。したがって、サービス残業というものを加えれば、この五百時間をはるかに上回ることは間違いないのですね。この正確な数字はもちろんないから比べようがありません。残業でいえばドイツと比べて――ドイツは一日二時間が限度で年間を通じて三十日以内ということになっているわけです。ところが、日本では事実上青天井ですよ。制限がないわけです。三六協定があっても、その三六協定で労使合意すれば幾らやってもいいように仕掛けはなっているのですね。そういうところにもってきて、有給休暇という点でいえばドイツ十八日、日本は十日。それもまだとり切れなくて余しちゃう。さらに、こういう中でどういう状態が起きるかというと、残業にかかわる賃金の割り増し、これもヨーロッパに比べて非常に低い。これが現実なんですね。
 そこで、労働時間の短縮の問題に限定して短かくお答え願いたいのですが、言われるとおり、あと一年しかないのになかなか進まない。進まない原因は、労働者の側にあるのか使用者の側にあるのか、労働省を含めた政府の主導性にあるのか、ほかを探したってこの三つしかないのですよ。これはどこに一番責任があると思いますか。
#199
○佐藤(勝)政府委員 なかなか難しい御質問なんですが、国は労働基準法等で最低基準を定めまして、また、労働時間の短縮が進みやすくなるためのいろいろ施策を講ずるわけですが、実際に労働時間の短縮をするのは、これはもう労使であることは間違いないわけです。
 その場合にどちらに責任があるかということですが、これは労働時間の短縮に伴いますいろいろな企業経営上のインパクトもあるわけでございますし、労働者の側にも何らかの影響があるというようなことになりますと、やはりその辺は労使でよく話し合いをしながらやっていく、これが筋であろうかと思います。それで、どちらに責任があるということはなかなか言いがたいところでございますので……(金子(満)委員「責任じゃなくて、そういう障害です」と呼ぶ)障害は、まあ両者にあるのではないか、こういうふうに考えます。
#200
○金子(満)委員 両者と言えば何か痛み分けみたいになって自然現象みたいに聞こえますけれども、労働省はこれを提唱して、率先指導していかなくちゃならない。今までのことは近藤さんには責任ないんですよ、前の人がやったんだから。
 そこで聞きたいんだが、残業を少なくするという点だったら、労働省がほかの省庁に先駆けて、おれのところはこういうふうに短くする、どうやという姿勢くらい見せなかったら、あと一年しかないのに、うたにうたってばかりいて結局は終わりですよ。それで痛み分けで、お互い責任が重かったけれどもしょうがないということになるんで、これはひとつ後で聞きますから答えてください。
 そこで、私は思うんですけれども、先ほど申し上げた千八百時間にするという計画ができたのは八八年ですね。ところが、労働省は今こういうのを各労働基準局に置いているのですよ。「時間外労働協定を結ぶに当たって 労働省・都道府県労働基準局・労働基準監督署」という名前で出しています。その中には、「三六協定を結ぶに当たっては、以下に示す指針を十分考慮して下さい」という中で、チェックポイント4に「延長時間の目安」というのが書いてあります。これは細かく言うと時間がなくなりますから、一週間の場合十五
時間以内という目安、それから一カ月は五十時間という目安、それで一年間四百五十時間という目安。この目標は千八百時間を打ち出した翌年の計画だと思うのですが、この目安は八九年のものだと思いますが、どうですか。
#201
○佐藤(勝)政府委員 所定外時間の上限の目安でございますが、最初にできましたのが昭和五十七年でございまして、その後平成元年に改定をいたしておるものでございます。
#202
○金子(満)委員 年間四百五十時間なんてやったら、千八百時間になりやしないですよ。まあよくものんきなものを無神経にやったものだと私は思いますよ。これはきょうも日本じゅうの基準局や監督署に置いてあるのです。何ですね、これは。だれが見ても、ちょっと物を考える人だったら、あれ、これは近藤大臣の所信表明と全然違うじゃないか、ようまたこんなことをと、だれもが言うと思うのですね。
 しかも、どういうことがあるかというと、チェックポイント5、いいですか、「臨時的に目安時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合に、次のような特別条項付き協定を結べば目安時間を超える時間を一定期間についての延長時間とすることができます。」例として「一定期間についての延長時間は」、プラスですよ、プラスするんですが、「一か月四十時間とする。ただし、納期が集中し生産が間に合わないときは、労使の協議を経て、一か月六十時間までこれを延長することができる。」。何ですね、これは。これは残業の督励ですよ。奨励しているんです。そして、こういうふうにすればできますという手口まで教えているんです。どなたが書いてだれがサインして出したか知らぬですよ。こんなの出したら、これは大変なことですよ、政府として。だって、生活大国どころの話ではないのです。こんなことをやっていれば夜家へ帰れないんだ。しかも労働省がちゃんと公式に出している文書なんですね。大臣、今これを言えといったら言えないですよ。何ぼ度胸がよくてもこんなことを言えるはずがないのですね。ましてやこういうことを強行するなんというのは無神経のそしりを免れないと思うのです。
 結論的に言って、さっき労働省は率先して残業を少なくしてみろということを言いましたが、これは直ちに撤回してやり直すべきだ。千八百時間にするためには時間外労働についてはこういう制限をすべきだ、努力せよというぐらいのことを出さなかったらだめですよ。そうでなかったら示しもつかないし、てんやわんやの大混乱を起こすと思いますよ。この点について伺います。
#203
○佐藤(勝)政府委員 これは、現在、時間外労働、特に恒常的な時間外労働が非常に長い実態の中で三十六条協定の届け出があったときに指導するためのものでございまして、実態を踏まえて、決して少なくはない時間が定められているということは御指摘のとおりですけれども、これは実態の中で、できるだけ三六協定によって定められる時間の厳守を図るということで定められているものでございまして、決してそれをふやすという観点からやったものではございません。
 今御指摘のところ、お読みになりましたところにしましても、非常に長い実態にあるところがすぐここまで圧縮するということで、実際にできるかどうかということを考慮しながら、できるだけステディーに減らしていくという工夫の産物でございますので、そういうふうに御理解をいただきたいと思います。
#204
○金子(満)委員 その姿勢が悪いのですよ。言いわけするからだめなんです。これは大問題になりますよ。これは必ず大問題になります。春闘の中だって、こんなのを労働省がまいたらとんでもないですよ。時間を少なくするためにこういう例も挙げたと皆さん言いますけれども、「目安」のところでは「一か月」として「五十時間」と書いてある。いいですか、「五十時間」と書いてあるのを、忙しいときにはプラス四十時間いいですと書いてある、労使が協定すれば。しかも、納期が間に合わなかったらそれを六十時間にふやしていいというのです。百十時間になるのですよ、ある期間。これを機械的に延長していったら年間千三百二十時間余分に働くのですよ。そうしますと、どういうことになるか、二千九百七十四時間になりますよ。ヨーロッパに比べて、皆さん、一千時間も多くなるのですよ。だから、これは言いわけでなくて――常に悪いのは、官庁というのは何とか合理化して言いわけするのです。率直に言って、だれが見てもまずいのは手直しする、見直しする、変えるということを大胆に言わなかったら、直らないのですよ。私は、これは悪弊だと思うのですね。
 そういう点で、まだ、あしたもあさっても、一カ月たってもこれを置いておくつもりですか、どうですか。これだけ聞きます。
#205
○佐藤(勝)政府委員 このリーフレットは、現在の労働大臣告示の周知を図る、または、それを守るために現実の中でどういうふうに進めていったらいいかということを事業主あるいは労使にわかりやすく説明するために置いてあるものでございまして、これを引っ込めるというようなことは考えておりません。
#206
○金子(満)委員 大問題です。これは大問題にします。引っ込めないとあなたはおっしゃるけれども、労働大臣は新任ですから、これはあなたの前に出ているわけですから、しかも四年もたっているんだ。これを見直すべきだと思うのです。
 これはひとつ労働大臣、これを胸に置いてどうするか。あしたもあさっても一カ月後も、一年間これをつるしておいたら、これは大問題になりますよ。全国で、春闘の中で、これをみんなもらいにいって、どんなことを書いてありますかと絶対に始まるのですがら。こういうことをしたら、基準局長、あなた気安く言うけれども、本当に重大な国政上の問題、ここまで来ているんだから。大臣、一言だけ、これをひとつ見直すのなら見直す、検討するなら検討する、短く答えてください。
#207
○近藤国務大臣 私も不勉強で、今先生からの御指摘で知ったわけであります。ただ、恐らく例外的な措置として、中小企業などの場合には、やむを得ない場合には例外的にはこういうこともできるんだよ。ただ、これでだあっと一年間やるということは基準局の側には全くないので、たまたまその一つの例外的な事例としてはこういうこともできる、中小企業の皆さんの場合いろいろ心配がありますから。
 実は山形県は、残念ながら全国で最も労働時間の長い県なんです。私も今度は、選挙区へ帰りましたら組合の方がいらっしゃって、何だおまえ、労働大臣でもっと短くしろ、こういう話がありました。私は、全くそうですが、中小企業の場合には会社の経営もあるから、これは社長の責任だと言わないで、組合の方々も一緒になってどうしたら時短ができるかということで取り組んでいただきたい、こういう話を実は申し上げてまいりましたし、また、会社の経営者の方々にはそのとき、先ほど言いました時短措置等についての必要な優遇措置みたいなこともこれから我々考えてまいりましょう、こういうことで、具体的に労働時間の短縮ができるような措置をこれまで以上に真剣に我々は取り組んでいこうと思っております。
#208
○金子(満)委員 検討ぐらいするでしょう。見てみなくちゃ始まらないまだ見ていないと言うのだから、見て検討してください。
#209
○近藤国務大臣 よく読ませていただきます。
#210
○金子(満)委員 次に、これまでの労働省の姿勢の中に、いろいろなことがありますが、言っていることとやっていることの違い、例えば先ほど申し上げた去年の八月一日に発表された「「所定外労働削減要綱」の策定について」の中の「ゆとりある勤労者生活を実現するためには、労働時間を短縮していかなければならず、そのためには完全週休二日制の普及促進、年次有給休暇の取得促進、連続休暇の普及・拡大に加えて所定外労働を削減していく必要がある。」これはこのとおりで、私も賛成です。また、労働省はこのために動かなければならぬ、これはもうはっきりしているので
すね。ところが、やっていることが大体どういう形で下の方で、地方で具体的に進むかという、これは一つの事例です。
 これは、去年の七月十九日に、賃金昇格差別を受けた東京の大日本印刷の労働者が東京地方労働委員会に提訴して、これが議論になったわけですね。それが先ほど申し上げた七月十九日に東京の地労委で審問されたのですが、その速記録がこれであります。こういう中で、申立人の一人が差別を受けた高井秀忠さんという方で、その賃金昇格差別問題です。この方は先月死亡されました。この地労委で、大日本印刷市ケ谷工場の製版第三課課長の相川政夫さんという人が証人として出ていろいろ聞かれているわけですね。
 非常に長いので省略いたしますが、高井氏に対する賃金差別、残業、有給休暇の取り方、消化の仕方について会社側証人はどういうことを言っているか。「「仕事の成果」「積極性・執着力」「責任感・信頼度」「協調性」、これらが他よりも劣っていた」これが一つですね。それからその次に「残業をしないということが基本的にございますが、頼まれた仕事も、いわゆる残業をしなければならなくなるというようなことで、拒否することがございました。」これが一つ。こういうことの中で、さらに「「責任感・信頼度」については、かってな年休の取得というか、そういうようなことで、責任感・信頼度は薄れていました。」だから、取りたい、取りたいというので薄れている。「海外旅行と称しまして、年休を含めて休みを入れた、まあ、十日間ぐらいですか、会社をあけることがありました。」「年に一回ぐらいですね。」こういうわけですね。そして問題は、そういう中で最後にどういうことを言うか。これは製版の職場にいる人ですね。「製版者というのは、時期は別として、たとえば十日とか、七日とか、職場をあけていくことは可能なのですか。」という質問に対して、この証人、課長さんは「いいえ、十日とか、そういうような長期で休むのは、おりません。」ヨーロッパでは一週間、十日じゃないんですよ、一カ月も休んでいるんだから。ここは休むことを極端な悪い言葉で言えば犯罪視しているんです。それは悪いことです。こういうようなことを平気でやっているんですね。
    〔岩田委員長代理退席、委員長着席〕
 そして、先ほど大臣は、答弁の中で人間尊重ということは大事だということを何回か言いました。私もそうだと思う。これは人間尊重じゃないですよ。悪く言えば、会社奴隷になるということです。会社の企画、計画、それがあるから、おまえ自由はだめです。一週間、とんでもない話だ、勝手に休まれては困る。残業拒否、そんなことを言ったら会社がつぶれてしまうじゃないか。これは会社人間にどんどんしていくことなんですね。
 これも政府の諮問機関ですよ、第十三次国民生活審議会総合政策部会基本政策委員会中間報告「個人生活優先社会をめざして」、去年の十一月に出されたものです。この中にも「企業中心社会を変える」 「「企業中心社会」とは、さしあたり、「企業をはじめとする組織の存在が拡大しすぎ、その目的や行動原理が、個人や社会のそれに優先し、個人生活の自由度が制約された社会」と規定することができる」大日本の企業者の考え方はそれですよ。だから、国際的にも非難される日本の経営のあり方だと思うんですね。
 私は、先ほど時間短縮ができないのは労使が両方と言われたが、相打ちじゃないんです。労働組合にいろいろな種類の労働組合があるけれども、時間短縮しろという要求は全部そろっているんです、その幅は別として。これを拒んでいるのは経営者であることは間違いないんです。それを両方だなどと言う。これは第三者、公平な政府の立場というものではないんです。こういうことだから、あと一年たっても大臣が言われるとおり千八百時間にならないことは目に見えている。これはいかに度胸よくても言えないです。やりますというのは絶対言えない。目標です、頑張りますということしか出ないと思うんです。私は、こういうような労使というより使の態度というのは、労働省は本省ばかりじゃなくてそれぞれの地方に指導機関を持っているわけですから、こういう点についても指導は徹底して行うべきである、「生活優先社会をめざして」と答申まで出ているんだから。こういう点で、大臣、どうですか。
#211
○近藤国務大臣 先生の御指摘の趣旨はわかりますが、ただ、歴代内閣の中で宮澤内閣ほど時間短縮を掲げて、そして熱心な内閣はない。総理も本会議や予算委員会でたびたび言っておられますし、私も言っておる。そして、今や春闘に当たっても労働時間短縮は、もちろん労働組合側からの要求もございますが、日経連も、経団連まで労働時間の短縮は賛成だ、やりたい、こう言っているわけでございますので、ひとつこれからは積極的な労働時間短縮が進むものと私たちは確信をしております。
#212
○金子(満)委員 宮澤さんは別として、大臣の午前中の所信表明では相当はっきり物を言っているから、そして答弁の中でも人間尊重も言っているし、千八百時間のために努力するも言っているから、こういうような労使の中の使の姿勢では絶対だめだということですよね。これは明らかに差別なんですよ。労働者に対する資本の側の差別なんです。そういう差別があるからこそ、八七年の九月に労基法を改正したんですよ。
 その労基法の中では、御承知のように、どこでもそうですけれども、附則の百三十四条というのを新設したんです。そして「使用者は、第三十九条第一項から第三項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。」これは解釈の違いはないんです。こういうのが徹底しているかどうか、徹底していないんです。だから大臣、労働省はこれを徹底してやる、本当に末端まで人間が足らなかったら増員要求したらどうですか。これもなかなか行政改革によってできないとか、小さな政府で大きな仕事とかいったって、どんどん小さくしてしまったら仕事もろくにできなくなっているのが現状だと私は思いますよ。どんどんいろいろの建設現場での事故が起こる。起こった後で、じゃ監督署は行きましたか、行けなかった。何で、人が足らぬ、みんな決まっているんです。それを日本じゅうほじくり返してこうしてやっているんだから、もう危険は目の前にある。それでも足らない。そして、労使関係でも基準法違反やっているんだから、差別で。それを指摘もしない。こういうような状態が続くということは、結局は、いいことは演説ではやる、うたにはうたう、しかし現実は、きのうもきょうもあしたも変わらない。だから、ここのところを変えるというのが今だと私は思うのですね。
 ですから、時間短縮ということを言った場合に、これはいろいろの答申は決まっているのです。八時間労働です、週四十時間です、週休二日です、そして有給休暇はふやしてほしい、そして残業も上限を決めて本人の了解をとってやるようにしてほしい。これは世界じゅうがやっていることで、こういうことをしないと、経済は大国だか知らぬけれども、労使関係は極めて前時代的なものになる、徒弟制度じゃないんですから。こういう点、今立っている我々の時点というのがきのうと同じようじゃ困るのだ。こういう点ははっきりさせなければならぬ。
 そういう点で、ひとつ時間短縮について積極的にそういう障害を乗り越えてやるという大臣の所信をもう一度伺って、私の質問を終わりにしたいと思います。
#213
○近藤国務大臣 生活大国を目指して政府が行う政策の中で、労働省が取り組まなければならぬ最大の政策は労働時間短縮である、こういうことで私たちはこれからも頑張ってまいる決心でございます。
#214
○金子(満)委員 終わります。
#215
○川崎委員長 伊藤英成君。
#216
○伊藤(英)委員 大臣は、「我が国は、世界有数の高い経済的水準に達し、」「この高い経済力をすべての勤労者と家族の方々に還元し、ゆとりある豊かな暮らしを実現することが生活大国づくり
の基盤であり、労働行政の使命であると考えております。」と所信の中で表明をされました。
 言わんとするところは非常にいい話だと私は思っているのですが、まず最初に、これは言葉の問題なんですが、生活大国という言葉ですね。これは宮澤総理も所信表明演説やらあるいは予算委員会等でもいろいろ話をされたりしておりましたけれども、私は、言葉は余り適切な言葉ではないな、こう思っております。民社党は生活先進国という言葉を使っております。私は、これは総理なんかにもよく言うのですが、いわゆる経済大国というふうになったんだけれども日本の生活そのものをよくしなければいけないんであって、要するに、量だけじゃなくて質をよくしなければいけない、そういう意識改革をしなければいけない、発想の転換をしなければならぬ、こう言ってきております。
 しかし、生活大国というのはいかにも大国意識というのでしょうか、生活の中身をという意識は極めて薄いんだろうと私は思うのですね。ひょっとして宮澤総理も、あるいはこの言葉を使われた大臣も、本当にどういうものにしようかという意識改革が実は余りされていないということを意味してはせぬかというぐらいに思うのですが、いかがでしょうかね。
#217
○近藤国務大臣 実は私、経企庁長官のときに内需拡大で経済を発展させる、そのときに私のつくったキャッチフレーズは日本経済の国民生活化、もう簡単に日本経済の国民化と言ったのです。日本経済の持っている力を国民の生活の中に取り込んでいく、国民生活のものにする。ですから、国民生活化、国民化という言葉を使って、これは英語でもいい英語がないものだから強引に訳しちゃって、近藤英語なんですがピープライゼーション、こう言ったのですが、解説をしないとよくわからぬ。
 経済大国という言葉の持つ意味について先生のお気持ちもわかりますが、経済大国とか軍事大国だとか、最近は環境大国だとか福祉大国、日本語だけの言い方でありましてなかなか英語にしにくいのですけれども、みんな大国大国と言っているから、その中で、まさに生活の内容で充実するんだという意味を一言で、簡単にこの言い方に倣って言ったのが生活大国という言葉であると思いますので、そこは御理解いただきたいと思います。
#218
○伊藤(英)委員 中身のことあるいは意図するところはそういうことでありますので、いずれにしても中身を本当によくするようにしたい、このように思います。
 そこで、そうした経済水準に見合った、本当に生活水準をよくしようと考えたときに、いかにも今はスローガンだけ、言葉だけという感じがいたします。それで、労働行政として具体的な目標を明確にするということが私はやはり重要だと思うのです。それぞれ、例えば労働時間はどうするあるいは賃金はどう、あるいは土地や住宅はどうする等々、そうした具体的な目標を明確にすることが重要だと思うのですが、いかがですか。
#219
○近藤国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、さしあたって、まず、労働条件については時短を進める、そして、職場の安全衛生はもちろん大事でありますけれども、一歩進んで快適職場づくりをやろう、いろいろなことが必要でありますが、まず時間を短縮して、そして、安全でなおかつ快適な職場にするというのが生活大国化政策の大きな柱だ、私は、こういうふうに考えております。
#220
○伊藤(英)委員 いろいろなことがあるのですけれども、例えば、こうしたことに関連して、去年の暮れに土地融資に関する総量規制の解除の問題がありました。これは私は予算委員会でもいろいろ話をしたのですが、労働省から見て、労働行政上この総量規制の解除についてまだ早いとかあるいはもう解除してもいいんだとかいうような意見は余りなかったように私は記憶するのです。
 それで、こういういわゆる土地問題等については、勤労者から見ますと極めて重大な問題ですよ。こうした問題について、もしも余り労働省として発言をされていなかったのなら、なぜなのだろうか、いかがですか。
#221
○近藤国務大臣 先生、実は私は労働大臣になる前に自民党の金融問題調査会の会長をしておりまして、そして、まさに昨今の土地バブル、株式バブルを金融制度面、政策面で何としても抑えようということで、ノンバンクの規制を考えたわけです。それから、総量規制を応援しておった一人ですから、労働大臣になってからもその趣旨が変わったわけではありません。
 実は、閣議で総量規制を外す議論があったときも、私は一貫して今の土地の値段は労働者が働いて買える水準にはないということを言い続けて、総量規制を外すこと時期尚早と言っておったわけであります。最後に閣議で決めたときも私はだめ押しをいたしました、二点。宮澤内閣としては、現在の土地の価格は勤労者の買えるような水準より高い、こういう認識を持つ。したがって、総量規制が外れても、もしも地価が再び上がるようなときには早速総量規制を再度発動する、この二つをきちっとだめ押しして閣議で了解をいたしました。
#222
○伊藤(英)委員 今後も声高らかに労働行政の一環としてもいろいろな場で主張をしていただきたい、こういうふうに思います。
 そこで、きょうのこの委員会での大臣の発言からも思ったのですが、日本のこれからの企業行動といいましょうか、そういうようなことに関連して、いいものを安くつくるのは、あるいはいいものを安く売るのは間違いであるかのごとき発言があったように私は思うのですね。これは時々そういう話があったりいたしております。私は、これは違うのだと思うのです。そんなことを言っていたら、これはいわゆる市場経済なり自由主義経済の基本的な部分を失ってしまうかもしれないと私は思いますね。
 そうじゃなくて、いいものを安くつくったり、いいものを安く売ることができることは極めて重要な話なんだけれども、じゃ、いいものを安くといったときのそのコストは本当に適切なんだろうかというふうに、厳格に物を考えて言葉を使わないといけないのだろうと思いますね。だから、じゃ今、日本のコストは本当に適切なんだろうかと考えて、例えば、労働時間はどうなんだろうか、残業時間はどうなんだろうか、休日はどうなんだろうか、あるいは割り増し賃率はどうなんだろうかというふうに考えなくてはなりませんし、ましていわんや、この間も例えば金融機関等で報告されておりましたけれども、サービス残業が極めて多いような話が起こっていた。ということは、これは先ほど言ったコストという概念の中に重大なものが含まれていないということですね。これを明確にしないと、具体的にどういうふうに何をやっていくかということが不明確になるということだと私は思うのですが、いかがですか。
#223
○近藤国務大臣 私、ちょっと言葉足らずだったと思ったのでありますが、外国に対して我々が言ってきたことは、日本はいいものをつくって、そして、安いから皆さんに喜んで買っていただける、ほかの国によくないものを高く売れば売れないじゃないか、こういうことを言ってきたのですけれども、ただ、いいものを安くつくって売れればそれでいいのだということは、国際的な日本の経済のあり方を考えた場合に、必ずしもそれだけで貫いていいものではないなということを、ちょっと反省の気持ちで申し上げたのであって、おっしゃるように、能率悪くていいということは全くないのであって、むしろ私、先生の御指摘が正しいと思いますのは、今労働時間千八百時間、そしてまさに労働者がせいぜい一時間ぐらいの通勤距離の中にちゃんとした立派な家が持てる、そういった基礎的なコストというものをきちっと取り込んだ上で改めて日本の製品のコスト計算をし直してみる、そして、そのかかった分で国内的にも国際的にも買っていただくということにきちっともう一回価格構造を積み直していくという時代が今ではないか、国内的にも国際的にもそういう時代だということを私は申し上げたかったわけで
あります。
#224
○伊藤(英)委員 私も全くそうだと思いますし、そのことはいわゆる国際公正労働基準というものに、いかにそれに合った状況に日本も持っていくかというふうに言えると思います。
 そういう意味でお伺いするのですが、我が国のILOの条約なり勧告の批准の問題について、現在、第七十八回の総会までに百七十二の条約が採択をされていると思うのですが、日本のその批准の状況はどうなっていますか。
#225
○齋藤(邦)政府委員 我が国が現在まで批准しましたILO条約は、たしか三十九と記憶しております。
#226
○伊藤(英)委員 じゃ、残りの件数のうちで今後日本が批准すべきだと思われるものは何件ありますか。
#227
○齋藤(邦)政府委員 従来からILO条約をできるだけ数多く批准したいということで、国内法との関係をいろいろ慎重に検討してきたわけでございますが、とりあえず今国会に一つ条約批准をお願いをいたしたいということで、既に国会に御提出をしたところでございます。これからも引き続きまして、国内法等の問題点その他を慎重に検討いたしまして、できるだけ数多く批准していきたい、こういう方針でおります。
#228
○伊藤(英)委員 そうしますと、さっきの数字からいきますと、百七十二件から三十九件引くと百三十三件になりますね。今度一件やりますと、あと百三十二件は遠からず日本はすべて批准すべきものだというふうに考えておられるわけですか。
#229
○齋藤(邦)政府委員 ILO条約、非常に数多くございまして、中にはそれほど重要でないといいますか、実質的な効果のないというような条約も多々ございます。現在の私どもの国の立場あるいは国際貢献という観点、種々な観点から見まして、できるだけ数多くということを今考えておる次第でございます。
#230
○伊藤(英)委員 できるだけ多くということなんですが、最初に申し上げたように、日本が、国際公正労働基準というような意味で考えたときに、国際的に見てまだ非常に不十分な状況になっている。要するに、これは勧告の批准の状況を見ても日本がこういう面でもおくれているということだと私は思うのです。
 これから鋭意取り組んでいくんだと思いますが、そこでお伺いしますけれども、先ほど大臣も労働時間の問題が最優先課題ということを言われました。労働時間等に関する条約の中で、今早急に取り組んだ方がいいと私が思うのは、時間、休日関係で五件あるのです。ILO第十四号条約、それから百六号条約、四十七号条約、亘三十二号条約、百四十号条約、それぞれ五件についてなぜ今批准されていないのか、これからどういうふうにしようとするのか、どういう問題があると思われるのか、お願いします。
#231
○佐藤(勝)政府委員 五件それぞれ国内法との関係で問題点が違うと思いますので、別々にお答えすることになると思います。
 まず、十四号と百六号、これは国内法との関係で問題点は大体同じだと思いますのでまとめますが、この二つの条約では、原則として七日の期間ごとに、つまり一週間ごとにということですが、二十四時間以上の中断されない週休をすべての労働者に対してきる限り同じに与えるべきであるというような規定があります。我が国の労働基準法では、原則として毎週一回の休日というところはいいのですが、そのほかに、四週四日であれば一週一日ずつでなくてもいいというような規定がございます。それから、休日をできる限りその事業所の労働者全員に同時に与えるべしというような規定もございませんので、そういう点で条約と国内法との違いがございます。
 それから四十七号は、生活水準の低下を来さないようにしつつ一週四十時間制の原則を採用するということを定めているのですが、六十二年の基準法改正によりまして、我が国では四十時間労働制を法定労働時間短縮の目標として定めておりますけれども、現在、そこに向かっている途上でございまして、四十時間制そのものではないという点で問題があろうかというふうに思われます。
 それから百三十二号条約、これは年次有給休暇に関する条約でございますが、これにつきましては、年次有給休暇の付与日数あるいは付与要件につきましては現在の我が国の労働基準法とは非常に大きな違いが。ございます。
 それから百四十号条約、これは有給教育休暇に関する条約でありますけれども、実はこの中身としましてどの程度の施策を実施する必要があるかということについてはもう少し検討しないと解釈がなかなか難しいという問題がございます。ただ、有給教育訓練休暇そのものは現在の能開法、職業能力開発促進法に明確に位置づけられておりまして、その普及を目指しているわけでございます。しかしながら、細部にわたりましてはいろいろ問題があるということで、これにつきましてもなお検討を要する、こういう状況にございます。
#232
○伊藤(英)委員 それで、これからの日程的といいましょうか、スケジュール的にはどういうふうに考えておられますか。
#233
○佐藤(勝)政府委員 率直に申しまして、現在の基準法との関係ではかなり開きがあるということで、これを早急に、いつまでに条約に合わせるというようなことをここで申し上げるのは非常に困難であろうかと思っております。
#234
○伊藤(英)委員 生活大国にしなければならぬ、労働時間が最大のテーマだよと大臣も言っておられました。その意識と局長の今言われた話は大体合っていらっしゃいますか。
#235
○近藤国務大臣 私は、先生と問題意識を共有すると思います。日本の労働条件というのは、単に国内問題ではない、今や国際的な問題になってしまった。ですから、ILO条約の中で三十九というのはまだ少ないと思っておりますが、今局長や官房長から説明がありましたように国内の法体系との調整の問題がありまして、やはり国内の法的な体制を整えないで安易に批准はできないというのが私どもの考えでございますけれども、率直に言いまして、私、大臣になりまして、ILO条約についてもう一回自分の頭で考え直してみたい、少し勉強させていただきたい、こう思っております。
#236
○伊藤(英)委員 ぜひみんなでこれは取り組むべき問題だと思っています。
 そこで、今のような大臣の意識にも沿ってといいましょうか、去年の年末には臨時行革審の答申でも、「週四十時間労働制に向けた労働基準法の見直しを進める」ということが言われております。そして、現在も中央労働基準審議会で審議をされているというふうに聞いておりますが、この労働基準法改正の今後のスケジュールと、そして、それを一刻も早める、見直しを早めて、できればことしじゅうにも法改正をしようというくらいのつもりはありますか。
#237
○近藤国務大臣 現行労働基準法が施行されて三年たちまして見直しの時期ということでございますので、現在、中央労働基準審議会において検討していただいております。ただ、現行で既にもう四十時間を附則で、政令で決めているわけでございますので、四十時間については現行の体制の中でできるだけ実現する方向で進めていくことで、なお、労働基準法全体の体系、体制につきましては、これは今審議会で御審議いただいているわけでございますので、いろいろな角度からひとつ総合的に検討させていただいて、審議会の答申を得た上でいろいろまた考えさせていただくことではないかと思います。
#238
○伊藤(英)委員 今のスケジュールはどうなっておりますか。
#239
○佐藤(勝)政府委員 六十二年改正法の附則の規定によりまして、三年経過後ということで、平成三年度に入りまして中央労働基準審議会で検討を始めていただいているわけでございます。現在のスケジュールといたしましては、本年中には結論をいただきまして、それに基づきまして必要な措置をとりたい、かように考えております。
#240
○伊藤(英)委員 国際的な視点でいろいろなもの
を考えるときに、こういうことも重要かなというふうに思うのは、日本が他の国に技術移転といいましょうか、いろいろ指導するというような話もありますね。
 この間資料を見ておりましたら、労働災害を見ますと、例えば日米で労働災害の比較をいたしますと、全産業で見るとアメリカの方が日本よりも労働災害率というのは五倍ぐらい高いですね。アメリカの方が高いのですね。それを各産業別に見ても、ほとんどがアメリカの方が災害率が高い。日本の方が低いですね。例えば自動車及び同附属品なんか見ますと、日本の二十八倍から二十九倍というアメリカの高さなんですね。こういうのを見ますと、逆に日本がいろいろと指導することができるのかなと思ったりするのですが、いかがですか。
#241
○佐藤(勝)政府委員 今のお話のように、なかなか国際評価は難しい数字なのですが、日米比較ができるような形になっておりますのでそれを見ますと、昭和四十五年を境にしまして、それまで日本の方が高かった災害率がアメリカよりそれ以降すっと低くなって、今のお話のように日本が五分の一ぐらいになってきているわけでございます。これはもちろん、労働災害防止のために官民一体となりまして、また労使の協力によりまして、真剣な努力を積み重ねてきた結果でございます。
 そういう過程で、安全衛生に係るいろんな技術、ノウハウが日本国内で蓄積をされてきておりまして、こういった労働安全衛生の技術、ノウハウにつきましては、特にアジアの開発途上国の、こういう国は工業化の進展が著しいわけでございますけれども、こういった国々の関心を非常に集めておりまして、近年、労働安全衛生分野における国際協力を要請をされるというケースが非常に多くなってきておるところでございます。現に、フィリピンでは労働安全センターのプロジェクト方式による協力が行われておりますし、あるいはその他幾つかの風に労働省の労働安全衛生の専門家を派遣をする、あるいはILOといった国際機関にも人を派遣をしておりまして、そういった国際機関を通じまして発展途上国のこういった分野での技術移転に協力をしているということを現在既にしておりますし、また、外国から日本に研修生あるいは視察団としてこういう分野の勉強に来られる方も非常にふえてきております。こういったことは、御指摘のように大変大事な問題でございますので、我々としても国際協力の非常に実質的に重要な分野として一生懸命やっていきたい、こういうふうに考えております。
#242
○伊藤(英)委員 次に、婦人就業対策についてお伺いいたします。
 昭和六十一年の四月に施行された男女雇用機会均等法も五年を経過することになるわけでありますが、去年の六月の総務庁の行政監察の報告を見ますと、この法律の趣旨が徹底されていないために違法行為が多いというふうにいろいろ言われております。
 例えば、婦人少年室が郵送した自主点検表の回収率というのはどのくらいですか。
#243
○松原政府委員 御指摘の総務庁の行政監察結果によりますと、自主点検表の回収率は四五・一%ということになっております。
 私ども、男女雇用機会均等法が施行されまして、とにかくこの法律を周知しなければいけないということで集団指導、個別指導等をやってきたわけでございますが、これらの指導を補完するものとして、企業に対して、みずから雇用管理の状況を点検し、その結果をもとに雇用管理の改善を進めていただくことが必要だということで、自主点検促進事業というのを始めたわけでございます。
 したがいまして、この事業は、各事業所において自主的に雇用管理の進捗状況を点検する、そしてその点検をきっかけとして雇用管理を見直すということを目的としているものでございまして、そういう趣旨から、この自主点検表の回収率が四五・一%ではございますけれども、この回収率が高い、低いということからこれをどうかという評価は、一概にしにくいのではないかというふうに思っております。
 ただ、この自主点検事業というのは先ほど申し上げたようなことを目的としてやっており、行政指導をいわば補完するという意味では非常に有効な施策であると思っておりますので、私どもとしてはさらに一層関係機関との連携も強力にしながら、この事業を推進していきたいというふうに思っている次第でございます。
#244
○伊藤(英)委員 総務庁の調べたのでは四五%だったでしょうかね。それから婦人局の方でやられたのは二十何%じゃなかったかと思いますが、私は、そんなことでいいのかな、もしも重要な柱としてこの自主点検促進事業というのを考えるならば、本当にそんなことでいいのかなというふうに思います。
 そこで、この行政監察の報告書ではこういうふうに書いていますね。「婦人少年室における事業所等に対する啓発、指導、調査等の実施に当たっては、婦人少年室及び労働省の他の地方支分部局が一体となって取り組むよう、連携協力システムの確立を図ること。」と書いてあります。この種の文章はほかのところにもいっぱい、まあいっぱいと言ったらちょっと誇張であるかもしれませんが、たびたび出てまいります。
 そこで、こういう勧告を受けでどのようにアクションをとっておられますか。
#245
○松原政府委員 勧告を受ける前から、私ども婦人行政というのは、御承知のとおり、各県婦人少年室がございますけれども、各室の定員というのは非常に少ないものでございまして、いわば行政組織としては非常に力不足ということも認識しておりまして、施行当初から、婦人行政機関だけではなく労働基準監督機関や職業安定機関との連携をとりながらこの行政を進めていく必要があるということで、先ほど来申し上げておりますように、地方の機関に対してそういう通達を出し、そういうやり方でやるようにということでやってまいったわけでございます。
 ただ、行政監察結果で先生御指摘のように指摘をされたわけでございまして、そういうことから、幾つかやっておりますけれども、一つは、昨年改めまして都道府県婦人少年室と労働関係の行政機関がいわば定期的に女子労働問題について連絡をする会議を持つようにということを指示をいたしたところでございます。
 それから、もう少しさかのぼりますけれども、先ほど御指摘がございました自主点検事業に関連いたしました部内の行政連絡会議におきまして、この事業を推進するために各労働関係行政機関の協力を得るようにということを再度また指示をいたしましたし、特に長期にわたりまして指導したにもかかわらずなかなか直っていない点も実はこの行政監察結果の中でも指摘をされておりますが、そういったものに対しましては必要に応じて連携をさらに強化するようにという指示を改めてしたという次第でございます。
#246
○伊藤(英)委員 時間も参りましたので最後にいたしますけれども、これを見ていましてもう一つ気になりましたのは、男女別の定年制に関してなんです。
 均等法に違反しているにもかかわらず事業主が改善しなくて長期化しているとありますね。その理由として、安定所との連携による事業所の指導が行われていないこと、それから、監督署は労基法第九十二条第二項に基づき就業規則の変更を命ずることができるのに、婦人少年室では監督署に要請した実績がないとなっておりますが、これはどうしてでしょうか。
#247
○松原政府委員 先ほど来申し上げておりますように、関係機関との連携をとってこの行政を進めるようにということで指示をいたしたにもかかわらずそういう結果が出ているというのは、私ども残念な点はございます。
 そういうこともございまして、先ほどちょっと申し上げましたように、昨年の七月に開催いたしました部内の連絡会議におきまして、特に長期未解決事案につきましては、これに定年制の関係が
多いわけでございますけれども、監督署や安定所など関連するところと連携をとることが効果的だというふうに考えられる場合には、そういう連携協力を積極的に行って事案解決に努めるようにということを改めて指示をしたわけでございまして、今後とも努力をいたしてまいりたいというふうに思う次第でございます。
#248
○伊藤(英)委員 実は私は今幾つかの問題についても触れましたけれども、やはりこれからの日本の労働の状況を国際的に上質的な形にするために、言いかえれば国際公正労働基準にするためには、民間の責任もあったのでしょうが、立法府なり行政府の中央の責任というのは非常に大きかったのじゃないかと私は思うのですね。そういう意味ではこれから、これはともに立法府も行政府もそうですが、全力で取り組まなければならぬ、こういうふうに思います。
 そういう意味で、最後に大臣のそうした意味でのお気持ちをお伺いして、終わります。
#249
○近藤国務大臣 再三申しておりますように、まさに我が国の労働条件というものは、国際問題にもなって、国際的な関心を集めているわけでございますので、これまでもやってきたわけでありますが、ひとつ新しい決意と意欲でこれから労働条件の改善、充実、向上に労働省としては全力を挙げて取り組んでまいります。
#250
○伊藤(英)委員 どうもありがとうございました。
#251
○川崎委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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