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1992/05/20 第123回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第123回国会 法務委員会 第12号
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1992/05/20 第123回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第123回国会 法務委員会 第12号

#1
第123回国会 法務委員会 第12号
平成四年五月二十日(水曜日)
    午前十時開議
出席委員
  委員長 浜田卓二郎君
   理事 鈴木 俊一君 理事 田辺 広雄君
   理事 津島 雄二君 理事 星野 行男君
   理事 小森 龍邦君 理事 鈴木喜久子君
   理事 冬柴 鐵三君
      石川 要三君    坂本三十次君
      武部  勤君    長谷川 峻君
      小澤 克介君    沢田  広君
      谷村 啓介君    松原 脩雄君
      倉田 栄喜君    中村  巖君
      木島日出夫君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 田原  隆君
 出席政府委員
        公正取引委員会
        事務局審査部長 地頭所五男君
        法務大臣官房長 則定  衛君
        法務省民事局長 清水  湛君
        法務省刑事局長 濱  邦久君
        法務省矯正局長 飛田 清弘君
        法務省人権擁護
        局長      篠田 省二君
        法務省入国管理
        局長      高橋 雅二君
 委員外の出席者
        衆議院法制局第
        一部長     内田 正文君
        警察庁刑事局刑
        事企画課長   泉  幸伸君
        外務大臣官房領
        事移住部外務参
        事官      服部 則夫君
        国税庁課税部法
        人税課長    濱田 明正君
        文部省学術国際
        局国際企画課長 牛尾 郁夫君
        文部省体育局体
        育課長     石川  晋君
        厚生省健康政策
        局総務課長   伊原 正躬君
        社会保険庁運営
        部保険指導課長 中田  悟君
        農林水産省構造
        改善局農政部農
        政課長     上木 嘉郎君
        運輸省鉄道局都
        市鉄道課長   安富 正文君
        高等海難審判庁
        総務課長    田中 高男君
        労働省職業安定
        局外国人雇用対
        策室長     新島 良夫君
        労働省職業能力
        開発局海外協力
        課長      南本 禎亮君
        建設省住宅局建
        築指導課建築物
        防災対策室長  蔵  真人君
        自治省財政局地
        方債課長    嶋津  昭君
        消防庁予防課長 次郎丸誠男君
        最高裁判所事務
        総局民事局長
        兼最高裁判所事
        務総局行政局長 今井  功君
        最高裁判所事務
        総局刑事局長  島田 仁郎君
        法務委員会調査
        室長      小柳 泰治君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 裁判所の司法行政、法務行政、検察行政、国内
 治安、人権擁護に関する件
     ――――◇―――――
#2
○浜田委員長 これより会議を開きます。
 お諮りいたします。
 本日、最高裁判所島田刑事局長、今井民事局長兼行政局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。
     ――――◇―――――
#4
○浜田委員長 裁判所の司法行政、法務行政、検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田辺広雄君。
#5
○田辺(広)委員 自民党の田辺広雄でございますが、一番に御指名をいただきましてありがたく思います。
 きょうは、特に大臣時間がないようでございますので、大臣に最初にお尋ねをさしていただきます。
 その一つといたしまして、現在一番問題になっております外国人労務者の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。
 御承知のように、外国人の労務者というのは日系二世、三世の、世に言う出稼ぎと言われる方々やら、またその他合法的な就労者、また一面においては観光ビザで入国して不法就労してみえる方々と、二手に分かれておると思います。法務省、労働省、通産省等政府関係がその対策には大変力を入れていただいております。しかし、私どもが見ておる範囲内におきましては、合法的な部分につきましては大変な力を入れておみえになりますが、不法就労につきましては、その実態、現状の把握も困難でありますが、ややなおざりではないか、こう考えております。特に、不法就労されてみえる方々は、大企業へ就職をするというよりか、むしろ中小零細企業において働いてみえると私は思います。しかも、それは単純労働でありまして、不法労働者として私どもが見逃すことができないものであります。外国人の受け入れは、人づくり、技術移転を通じて国際社会に貢献するという大きな意義がありますが、現実は労働者不足対策として重きをなしております。これも見逃すことができないと思います。
 私はどういう立場で御質問申し上げるかというと、この問題は非常に難しくて質問のしにくい点がありますが、私ども零細企業にとりましては、労働力不足というのがますます大きな足かせになっております。そういう中から、この不法就労の皆さん方をどうして我々が合法的にして、安心をして使い、そしてまたその方々の生活も保障することができるか、このことが基本でお尋ねをいたしておりますが、大臣はこれからその外国人労働者の対策をどういうふうにされるか、基本的な御姿勢をお聞かせいただきたいと思います。
#6
○田原国務大臣 ただいま田辺先生から外国人労働者問題についていろいろ御質問ございましたが、まず最初に、基本の基本を申し上げたいと思います。
 当然、日本も国際化してまいっておりますから、外国人労働者がふえてきておるというのはみんな御承知のとおりなんでありまして、その考え方として、専門的技術を有する労働者については可能な限り受け入れるというのが一点と、いわゆる単純労働者の受け入れについては多様な角度から慎重に検討するという考え方が二つ目、そういうのが法務省の基本であり、私もそうあるべきだと思っております。
 その技術のない、いわゆる単純労務の方はなぜ多様な角度から慎重に検討しなければならないかと申しますと、単純労務者の方を多数受け入れた場合に我が国の社会にどんな影響を及ぼすだろうかということを考えてみますと、これは諸外国の例を見てもそうですが、それが定着化していって将来問題を起こすということが一つと、労働市場が二層化する、それから景気後退期において失業発生がむしろ外国人の単純労働者の方に集中して大きな問題になるのではないか。それから、産業構造の問題があります。省力化とかそういう産業分野の方が考えておるあるいは産業政策上考えておる問題と矛盾する問題が出てくるとか、もう一つ大事なことで余り知られてないのですけれどもへ外国人を受け入れた場合に受け入れに対する社会的コストが相当かかっておるはずであります。一見安く中小企業の方が受け入れられたとしても、御自分で負担される以上の相当のコストがいろいろな面でかかる。それから生活習慣や宗教等の違いを原因とする社会摩擦の発生、これは外国の例で見たことを申し上げておるわけですが、そういうことを誘発するおそれもあるというようなこと等が考えられるものですから単純労務者については慎重に検討する、こう申しておるわけでありますが、ただいま申されたような不法労務者も、通常、単純労務者の中から発生していったり単純労務の方の一分野に入る者が非常に多いと思うのです。
 不法就労を分析してみますと、三種類あるだろうと思うのです。不法入国による就労と不法残留と不法上陸、あるいは合法在留であっても合法入国であっても資格外活動というようないろいろなものを寄せ集めたのが不法就労になってくるという複雑な問題がございます。そこで、不法就労の対策としては、まず一番多いのは何といっても不法入国でありますから、入国審査を一層厳格にしなければいかぬとか、これは入り口作戦でございますが、水際作戦と申しますが、あるいは在留審査、実態調査を一層厳格にしていかなければいかぬとか、関係省庁とよく連絡をとりながら摘発をきっちりやるとか、広報活動を強化して不法就労のいかなるものかをよくわかっていただくとか、そういうことが大事ではないかというふうに私は考えておりまして、そのように対処してまいりたいと思っておるわけであります。
 いずれにしましても、外国人の方が多数我が国においでになると、それを国際化の立場から日本が経済大国として受け入れて喜んでもらえるのが一番いいわけでありますから、以上のような観点を念頭に置いてこれから対処していかなければならぬ、私はそういうふうに考えておるわけであります。単純労務の方を受け入れる側にも、安易な気持ちで受け入れていただくことは広報活動によって何とかしなければいかぬし、また、単純に言えばブローカーと称される方がおっていろいろやっておられることについても承知しておりますが、これらの対策についても立てなければいかぬということで、関係する省庁も非常に多いし、これは本当に最重要課題として各省庁と協議の上体制づくりをしていかなければいかぬ、こういうふうに思っております。何といっても中心は入国管理局、法務省の問題ではありますが、以上申し上げたような点を踏まえて各省庁と協力してやっていく方針であります。
#7
○田辺(広)委員 大臣にお尋ねをいたしまして、いろいろお答えをいただきまして大変感じたわけです。
 ただ、大臣にはこれで最後にしますが、大臣が考えてみえることと法務省が考えていることと、労働、通産、各省庁の考えておられることと考え方にやや誤差があるわけなんですね。例えば研修制度につきましても、法務省の考えておることと労働省の考えておること、そういう誤差についてはこれを整合しなければならぬ。これは一体だれが中心になるかといったら、法務省ですか、どこですか。私は大臣に、ひとつ整合性を求めてすり合わせをして、一日も早くこの問題の進むべき道といいますかそれを示していただきたい、こう思っておりますが、いかがですか。
#8
○田原国務大臣 おっしゃるとおりで、一生懸命やるつもりでありますが、先ほどのお言葉の中に私と法務省に食い違いが多少あるようなお話だったようですが、私はそれはないと思っておりますし、あればすぐすり寄せますが、確かに各省庁との整合性のない部分がまだあるかもしれません。各省庁で協議会を持ってやっておりましても、それは先ほど申しましたように、入国管理の問題であり外国人問題でありますから法務省が中心でありますが、一方、産業界がその実態をつかんでおられますから、労働省等との関係は極めて密接でありますので、どちらが主とも言えないほど重要でありますから、よく協議しながら、最近は本当にその協議はしばしば行っておりまして随分ムードが変わってきておると思いますけれども、今後とも一層よくやってまいりたいと思います。
#9
○田辺(広)委員 ただいま御答弁いただきましてもう大臣には……。ありがとうございました。
 それでは、引き続いて今の不法就労の問題ですが、現在十六万人と言われております。そして、日系二世の労働者、研修生等合わせまして、はっきりした数字はわかりませんが、日系の二世、三世の方々が十数万人だと思います、それから研修生が三万八千人という方々が日本で働いてみえます。一つは、我が国と開発途上国との間の賃金の格差がだんだん開いております。それはまた、我が国の産業界の人手不足などを反映して、どうしても不法就労が日に日にふえでおるわけなんです。平成二年七月に十万人であったものが、不法就労でその年中に強制退去をさせた者が三万六千人、それでもなお平成三年の五月には十六万人と言われております。
 単純労働者は受け入れないという基本原則は政府方針として私は認めざるを得ません。納得はいたします。しかし、大量の不法就労という現実との食い逢いを生じております。行革審の答申にもありますが、私が一番心配をしておりますのは、劣悪な条件下で人権をも侵害しておるというような形になってきておるのではないかと思います。昨晩もちょっとテレビを見ておりましたら、イランの方々が四人で働いておって、一人が国へ帰る、その国へ帰る人は、途中で事故を起こして帰るんだ、何が一番つらいかといったら、住宅もつらいけれども、サラリーの安いこともつらいけれども、社長がばかにする、なぜ私はばかにされなければならぬのか、それを一遍聞いて国へ帰るんだというようなことを言っておりました。
 我々一般の人にとってみれば、テレビに出ますのはそういうものでありまして、まじめというか正規のルートで入ってみえた方々の写真は出なくて、不法就労の方々が多い。そうしますと、日本人はそういう方々の写真を見ながら、ああ、こういう生活をしているんだなということから、だんだん日本人が外国人に対する一つの何といいますかべっ視、そういう気持ちも出てくると思うわけでございまして、その不法就労者、外国人の実態について、法務省、労働省の両省からひとつお答えをいただきたいと思います。
#10
○高橋政府委員 お答えいたします。
 不法就労の実態につきましては、これはその性格上正確に把握するというのは困難でございますが、当局の電算統計に基づく推計によりますと、平成三年五月一日現在、十五万九千八百二十八人、約十六万人が不法残留者として国内に潜在しているということで、このほとんどは不法就労しているものと認められております。ちなみに、平成三年の一月から六月までの間、当局が入管法違反で摘発した外国人は一万三千六百人ございますが、このうち不法就労外国人は一万二千二百六十五人ということで、ほとんどが不法就労していたということでございます。
 この不法就労対策というのは世界の多くの国が非常に悩んでいるところでございまして、今先生おっしゃいましたように、これは人間でございますので、不法就労者、不法滞在者とはいえ人権の問題がございます。そういうことで、物を扱うようにはいかない。特に人権の意識が非常に高まっている今日において、取り扱いについては非常な気を使わなければならないということで、先進国各国いずれも大きな悩みでございますが、基本的には、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、この不法就労を放置しておくということは、まじめにやっている人、これは雇用者及び被雇用者も含めましてそういう人が損をするという結果にもなりかねませんし、いろいろな社会的な問題もございますので、そういうものはできるだけ排除していくということで対処していきたいというふうに考えておるところでございます。一応、現状はそういうところでございます。
#11
○新島説明員 外国人労働者の就労実態についてでございますが、不法就労だけの調査ということになりますといろいろ技術的な問題がございまして把握に難しいということがございますが、労働省としましては、安定所の窓口におきまして事業主から情報収集に努める、あるいは労働基準監督官が工場の監督に行った際に調べるということで対応しております。
 ちなみに、平成二年十一月に行われた監督の状況でございますが、事業所数約一万二千事業所を監督しましたところ、その中で働いていた外国人労働者の数が六百九名という数字が出ております。また、平成二年十月、これは別の労働省関係の研究会でございますが、そこで中小企業を対象に調査した結果によりますと、生産工程で作業あるいは土木建設、ウエートレス等の単純就労分野で九割の方が就労しているということで、労働条件の面では格差がないという企業もありますし、あるいは賞与、退職金等において差があるというような実態が出ております。
 労働省としましても、外国人対策の基本となるデータでございますので、今後とも適切な把握に努めてまいりたいと思っております。
#12
○田辺(広)委員 それでは引き続いて労働省の方にお尋ねをしますが、今の労働力不足という現状を踏まえてこの問題を解決しなければいけないと思いますが、中小企業の労働力確保法というものが制定されて、もちろん私どもも期待はいたしております。しかし、いろいろ調べてみますと、来る二〇〇〇年の長期労働需給見通しというのを調べてみると、約八十六万人が不足するのだ、またそれに加えて労働時間の短縮問題それから経済のサービス化の進展等がありましたら百万人以上が不足すると言われております。特にその職種におきましても、土木建設だとかまた農林水産業、ビルメンテナンスだとか病院、福祉施設、看護、介護サービス等々たくさんあります。同時にまた、だんだん若年労働者が減少してまいりますと、高齢者による仕事だけではなりませんので、そういうことの不足をどうしていくか。また一面でいえば、三Kともいい、六Kともいい、十八Kともいい、だんだん嫌われておる職種がふえてきております。そうした問題について、これは私はどうしてもいつかの時点には外国人労働者に頼らざるを得ないんじゃないだろうかというような気もいたしますが、そうした労働力不足の現状等を踏まえて、考え方をひとつお聞かせいただぎたいと思います。
#13
○新島説明員 お答えします。
 将来の労働力人口の見通してございますが、先生先ほど御指摘のございましたとおり、基調としては減少ということになっております。正確に申し上げますと、最近の労働力人口は前年比で見まして百万人程度年間ふえているという動きでございますが、ちなみに一九九一年平均で見ますと六千五百五万人ということになっております。しかしながら、今後については、出生率の低下などを原因としまして、二〇〇〇年までは労働力人口はこれからも少しずつ増加はしますが、その増加の伸びは鈍化をするということでございまして、二〇〇〇年になりまして六千六百九十七万人をピークにしまして、二〇〇〇年以降減少していくという推計が労働省の方でなされております。
 それで、こういった労働力不足の中でこれからの労働力をどのように確保していくかということでございますが、単純労働者も含めて外国人を受け入れるという問題について、特に単純労働者の問題につきましては、先ほど法務大臣からも御説明がありましたとおり、やはり労働市場に与える影響が非常に大きいというふうに我々も考えておりまして、この分についてはなお慎重に検討する必要があるだろうということでございます。
 したがいまして、労働力不足対策として、今後高齢者の活用あるいは女子労働力の活用というような点で努力を進めていく必要があるということと、それから労働時間の短縮あるいは職場環境を改善していく、あるいは企業における福利厚生を充実していくというような面で、雇用面での改善をすることによって労働力を確保していくということがぜひとも必要ではないかというふうに考えております。
#14
○田辺(広)委員 引き続いて、先回行革審の答申で提言がありました外国人の技能実習制度というものが言われておりますが、この検討はどこまでされておりますか、労働省からお聞かせをいただきたいと思います。
#15
○南本説明員 お答えさせていただきます。
 先生御指摘のとおり、昨年十二月に行革審の答申が出されまして、現行制度の各種基準についてその合理性を検討した上で、一定の条件のもとに技能の移転と適正な収入を確保する技能実習制度の創設を図るべきだ。もう少し具体的に同答申は定義をいたしておりまして、この実習制度というのは、一定の期間の研修を経た上で技能評価を行いまして、その結果一定の水準に達したこと等の要件を満たした場合にその後雇用関係のもとで技能実習を認める、こういう従来の研修から見ますと相当思い切った提言になっております。
 御案内のとおり、この問題につきましては、技術移転といいますか研修といいますか、これは、外国人でありますが、態様としましては職業能力の付与の問題でもございます。それから、日本人と同じような待遇ということでございますので労働法の適用をするということでもございまして、労働政策とのかかわりは非常に従前以上に深くなってくる、こういう観点から、前置きが長くなりましたが、労働省の中に早速プロジェクトチームを編成いたしまして、その実現に向けて検討してきておりまして、四月の十日でございましたか、そのころに一応労働省が考えます検討結果につきまして技能実習制度の骨格案というのを取りまとめまして御提言を申し上げて、いろいろ御審議をいただいているという段階でございます。
 この問題については、行政レベルでもさらに詰めなければいけない問題もございますので、法務省を中心といたしまして現在鋭意協議を行いたい、そういうような状況にございます。
#16
○田辺(広)委員 引き続いて、今の外国人の労働者に対する行政サービスについてお尋ねをいたします。
 先ほども少し触れましたが、我々の目から見ますと、どうしても外国人労働者、これは適法不法にかかわらず決してすぐれた環境とは言えない、むしろ私は劣悪というような感じをするわけでございます。そこで、一つの問題は、今外国人労働者の賃金、給料の実態はどうなっておるか、また引き続いて、今回の不況によって失業して国へ帰った人またはその状況など、どんな状況かお教えいただきたいと思います。
#17
○新島説明員 お答えします。
 外国人労働者の賃金の状況でございますが、これは企業によって取り扱いはかなりばらつきがございます。例えば日系人等の賃金の状況につきましては、時間給あるいは日給等で見ますと、むしろ日本人労働者よりも高いという例も見られます。さらに、不法の部分につきましては、正確なところはわかりませんが、多分平均以下ということであろうと思われます。
 それから、失業の問題でございますが、最近の景気後退の状況の中で少しずつ出始めているというふうに我々は聞いております。これは、一つに日系人を中心としまして契約期間の満了に伴いまして雇用契約を更新しないというような例が出始めてきているということでございまして、我々と
しましては、雇用の場の確保、安易な解雇が行われないように地方の安定機関に対して指導を行っておる状況でございます。
 以上でございます。
#18
○田辺(広)委員 それでは、厚生省の方に引き続いてお尋ねを申し上げます。
 医療の問題でございますが、現在厚生省の方で考えてみえる医療、不法就労の方々の緊急医療の問題等をときどき耳にするのですが、一方、治療を受けようと思いましても、肝心な本人が不法就労だということで正規な病院へ行くこともできない、かといって緊急に入ればそれは診療は受けられるけれども、後の決済をどうするか、またそれによって不法就労がばれてしまう、いろいろな問題が出てきておるようですが、そのことについてどう思われますか。
 それから、健康保険というものは一体どうなっておるだろうかと思います。クリスチャン・サイエンス・モニターという新聞がありますが、これが今年の一月に、日本で激増している不法就労者に対しては労働災害や疾病への保険が適用されていない、これらの問題は日本人自身が解決しなければならない問題であると書いております。
 どこの国から見ても、日本における十六万人の不法就労者の方々というのは最悪の状態で働いておるんだという受け取り方をされてみえますが、医療の問題について特に厚生省の方からお伺いをしたいと思います。
#19
○伊原説明員 お答えを申し上げます。
 外国人の労働者に対する医療サービスの点でございますが、日本国内に居住する者につきましては、内外人平等の原則に立ちまして、国籍を問わずに所要の負担のもとに必要な医療が行われるという仕組みになっておりまして、医師法、歯科医師法の上で、正当事由がなければ医師、歯科医師は患者からの診療の求めを拒んではならないという形になっております。
 この点につきまして、正当の事由という点では外国人が不法就労者であるか否かということは問いませんので、そういった意味で受診の機会ということにつきましては開かれておるということでございますが、実際問題として、先生御指摘のように、経済的な負担の問題とかあるいは言葉とか、もちろんそういういろいろな問題はございます。そういった点につきまして、総務庁の方からも行政監察に基づく勧告というものをいただいております。
 これは不法就労だけというわけじゃないのですが、一般に外国人に対する医療サービスについて、例えば外国語の通ずる病院を紹介するパンフレットをつくるとか、あるいは外国人を積極的に受け入れる医療機関を紹介するとか、そういった情報提供をやるべきであるというふうな勧告も受けておりまして、こういったものに基づきまして、私どもも、国としてどういう対策がとれるか、地方公共団体等との間でどういうことをやっていくかということを今後検討していかねばならないと思っております。
 さらに、先生お尋ねの保険の適用、これにつきましては、総務庁の方での適用の調べがございまして、公的医療保険の適用者数、これは調査対象病院五十五病院について千四百人近くの受診患者を対象に調査したものでございますが、その中の約四六・七%の者が公的医療保険の適用対象者になっておる。また、国民健康保険の適用者数につきましても、平成二年度現在で四十七万二千人余りというふうな数字が出ておるところでございます。
 以上でございます。
#20
○田辺(広)委員 今お話しのとおりですが、実際はやはり不法就労という立場がありますので、なかなか診療を受けるところまでいかないと思うのです。また、診療を受けて、そのためにおっしゃってみえましたように医療費の未収という問題も出てくるわけです。こういう場合に、やはり国からそうしたものを扶助する、医療だけは面倒見るというような今後の対策というものはないですか。
#21
○伊原説明員 お答え申し上げます。
 医療費の未収の問題につきましては、私ども医療機関側からいろいろとそういうお話を承っておるところでございますが、現在のところ、これに対して国が公的に未収分を補てんするという制度はございません。この問題につきましてはいろいろ検討すべき点がございまして、未収を補てんするということによってかえって医療目的の入国を招くとかさまざまな問題を考慮しなければならないと思います。現在のところ、そういったところから財政的な措置は講じられておりませんが、税制上貸倒引当金について医療機関において損金算入をする、この制度を活用していただくということをお願いしておるわけでございます。
#22
○田辺(広)委員 答弁の中に一つ一つ出てくる感じは、やはり不法だからこれはだめだ、まあ合法だからやりましょうというようなことで、法務省以下全部が逃げを打ったような感じでございますし、また不法なものに手当てをすることは大変難しいと思いますが、これはあくまで人道的なものでございますから、今後ますます前向きにひとつ御検討いただきますようにお願いをいたします。命に関係することですから、特にお願いを申し上げます。
 引き続いて、四月に私の地元の中学校で入学式がございました。そこへ参りましたら、今までなかったのですが、一人父兄が出てみえまして、頭のもの色が違うので、大丈夫かと言いましたら、先生、大丈夫ですからという話ですが、子供さんの教育状態等聞いてみますと、そんなに大変ではないけれども、先生にとってみれば負担になるであろうし、そういう方々が間々地元でも出てきますから、全国的に見たら大変な数であろうというようなことも思いましてちょっと調べてみましたら、外国人の子弟が一人在学しておるという学校が全国で五百七十二校、二人在学しておるというのが三百七十六校、そして三人在学しておるというのが百七十九校で、ほとんどの方々が、九〇%までがこの部類に入るわけです。日本語の教育の問題等いろいろ難しさはあろうかと思いますが、やはり日本へお見えになりましたら、その子弟も家族もやはりいい国だなという感じを持って帰ってもらいたいと私は思っておりますが、その基本的な対応はどうされてみえますか、お聞き善したい。
#23
○牛尾説明員 ただいまお尋ねのありましたように、近年、いわゆる国際化の進展ということで、我が国の学校に就学をいたします外国人の児童生徒の数が急増する傾向にございます。特に平成二年六月の入管法の改正以来、ブラジルやペルーなど南米からの日系移住者の子女が我が国の公立の小中学校に在学をする数が急増しているわけでございます。文部省といたしましては、昨年の九月でございますが、こうした外国人児童生徒の実態につきまして調査をいたしたわけでございますけれども、その結果、外国人児童生徒のうち、日本語の理解力が十分でなくて日本語教育が必要な児童生徒は、公立の小中学校合わせましておよそ五千五百人に上るという結果がわかったわけでございます。
 これらの外国人の児童生徒につきましては、文部省といたしましては、できる限り早く我が国の学校生活に適応できるようにしていくことが必要である、そのためには特に日本語指導を中心とした適切な指導を行っていく必要があるというふうに考えているわけでございまして、このため、平成四年度におきましては、一つにはこれらの外国人児童生徒の日本語指導のための教材を作成する、二つにはこれらの外国人児童生徒の指導に専念する教員を加配する、三つ目にはこれらの外国人子女の受け入れに当たって指導のあり方につきましていろいろとその課題を研究をいたします調査研究協力校、従来五校指定しておりましたけれども、これを十校にふやしてさらに実践的な研究を深めていくというふうな措置を講ずることとしているわけでございます。
 この問題につきましては、今後とも、今申し上げましたような施策を中心に推進してまいりまし
て、適切な対応をしてまいりたいというふうに考えております。
#24
○田辺(広)委員 重ねてお尋ねしますが、それで、日本語と今の南米の言葉の違いというものを是正するために、特に愛知県、岐阜、静岡ですか、それから関東方面だとか、外国人労務者の多い地域にそれぞれ県単位だとかなんかで日本語を教える先生というものを配置するとか、そういうことは今検討されてみえますか。
 それから、今お話ありましたように、調査研究協力校、これは五校から十校ということですが、地域的な配分はどうなっていますか、お聞かせをいただけますか。
#25
○牛尾説明員 ただいまお尋ねになりましたように、外国人の児童生徒の多いのは東京や神奈川、さらに愛知、静岡等、関東から東海、関西にかけての地域でございます。
 これらの外国人の児童生徒を指導するための教員でございますけれども、ただいま申し上げましたように加配という形で特別に数をふやして配置することにいたしておるわけでございますけれども、これらの教員が必ずしも児童生徒の母国語でありますポルトガル語やスペイン語が理解できるわけではございません。このあたりにつきましては、日本語の指導教材などの工夫によりまして、日本語でもって日本語を十分指導できるような教材を作成してこれらの先生方に使っていただく。と同時に、これは実態といたしまして見られるわけでございますけれども、関係の教育委員会におかれましては、例えば外国で教えたことのある先生方、あるいは留学生でございますとか、そのほか民間のボランティアでそれぞれの国の言葉を理解することのできる人を非常勤の講師などに任命してこれらの外国人の児童生徒の指導に充てているということがございます。文部省といたしましては、こうした措置が地方の教育委員会において積極的に講ぜられることを期待いたしておるところでございます。
 それから、研究協力校でございますけれども、平成三年度から四年度にかけましての研究協力校のうち、東海地方につきましては静岡県浜松の小学校が指定をされておるわけでございますし、平成四年、五年度にかけての調査研究協力校の中で東海地方について申し上げますと、愛知県豊田市にある小学校が指定をされておる、こういう状況であります。
#26
○田辺(広)委員 いろいろお答えをいただきました。大変なことでございますが、絶えず前進、前進、前向きに御検討いただいて、子供たちの将来のためにひとつ頑張っていただきたいと思います。
 それから、今不法就労ということでこれを除去しよう、そしてまた全面的に強制送還してしまうということになりますと、これは不可能なことでございますが、そのことが行われるとどうなるかといいますと、中小企業の立場からすれば生産に非常に大きな影響を与えてくる、また働いてみえる方は、せっかく就業していたその労働者は収入の道が閉ざされるということになるわけです。ひいては帰国に追いやられるということを心配いたしております。
 そこで、現在、非合法、不法就労者を合法的な立場にして、そして中小零細企業の労働者として働いてもらったらどうかということから、私は、研修制度を二段階にしまして、一つは従来の研修制度、行革審の言われている研修制度。今労働省の方からお話がありましたように研修制度がどんどん高度になり、また制限が非常に厳しくなってまいりますと、なかなかこの研修制度に受け入れるわけにいかないと思いますから、もし母国へ帰って自分の国の産業のために役立つという方々はそのような研修でも結構ですが、もう一つの研修は、現在不法就労しておる単純労働者に簡易な研修をさして、それを軽技能者として合法化させる、追い返すのでなしに、ここの中で取り上げて、それで中小企業者の労働力の不足を補っていくというようなことでどうかと思います。
 しかし、これはかってドイツでそのことが実施されたためにまずい結果になった。不法に入っておれば必ずまた合法化されるんだという前提をつくり上げるためにいけないということが言われておりますが、今後のことにつきましては、二度とそういうことをしない。今回の十六万人の中で、十六万人の中といいましても十六万人全部がそうじゃないので、例えばサービス業にみえる方々は幾ら研修をしても軽技能者にはなり得ないわけでございますから、中小企業のそうした生産に携わってみえる方々の不法就労者を救い上げていく、そしてその方々に手を差し伸べていくということはどうだろうかと思いますが、いかがでございますか。法務省と両方でお答えをください。
#27
○高橋政府委員 不法就労者の取り扱いをどうするかということは、先ほど申し上げましたように日本を含め多くの国で非常な問題になっておりまして、頭を悩ませておるところでございます。
 その一つの解決方法として、特に人権の観点からいっても、この不法就労がなくせない以上は何かの措置をとって、これの全部なり一部なりを何かの理由がある者については合法化したらどうかという議論、御意見はいろいろなところで聞かれますし、今先生御指摘になりましたように、現にそういうことをドイツでも、ほかのイタリアとかそういうところでも実施したケースがございます。そういうことで、いわゆるアムネスティーといいますか、そういう合法化の考え方ということが一つにはあるわけでございますが、現在、法務省といたしましては、このように潜在している不法就労者を救済し、合法化する目的で何らかの新しい制度を創設することは、また新たな不法就労者の流入を助長することになるのではないかということから適当ではないと考えておるところでございます。
#28
○南本説明員 お答えいたします。
 不法就労者の制度化について、今法務省の入管局長がお答えになったことと労働省も同感でございます。先ほど先生のお話の中に、技能実習制度につきまして、これが非常に高度なものではないかという御指摘もあったわけです。従来の研修というのはそういう性格が非常に強かったわけでございますが、この技能実習制度につきましては、国際協力という観点から実施するわけでございますけれども、途上国の民族系資本といいますか、現状に合ったような技術移転をしようとしますと、むしろ日本の中小企業に蓄積されているような技能を身につけていただくことが非常に必要だ、途上国からもそういう要望もございまして、そういう点で、今後は、中小企業の労働者対策ではないのでございますけれども、中小企業でそういう技能、技術を持っておられる企業に広く受け入れていただいて、実際に就労という形態もとりつつ技術を確実に身につけていただけるような御指導をいただくようなことを考えてはどうか、そういう制度もこの技能実習制度の中で考えておりまして、先ほど私がお答え申し上げましたように、労働省が四月に骨格案を取りまとめまして、各方面に今お諮りをしているわけでございますが、その中でも、研修に参加するといいますか、行う企業の規模を今よりももっと弾力化してはどうか、あるいは来られる研修生も今どちらかというと日系企業の職員にかなり傾斜しておるわけでありますが、それをもう少し広い方で、日本に来て高い技術を身につけることだけを考えておられるのではなくて、むしろ日本の中小企業にあるような技術を学んで帰られる、そういうニーズのある、もちろんその途上国のニーズによるわけでございますが、そういう層も考えてはどうかというように考えているところでございます。
#29
○田辺(広)委員 今お答えいただきましたが、結論はそうなるであろうと思っておりました。しかし、労働省の方からお話がありましたように、研修制度につきましては、今東京商工会議所におきまして、外国人労働者熟練形成制度ですか、こういうものも提案をされておりますので、ここらもひとつ含めながら今後の対策を御検討いただきたいと思います。
 それから、中小企業の労働力不足解消ということが私の言わんとするところでございますが、外国人の研修制度、研修生を受け入れるのに今の状態では大変難しいという現状であります。そこで、これは全国の商工会連合会の方から出されておる要望でございますが、一つ、規模要件の見直し。今まで一つの企業で常勤の方二十名に対して一名は研修生の受け入れを認めるというような規定がありましたが、これを、実際は五人に一人ぐらい不法就労がおるというぐらいですから、五分の一ぐらいまでひとつ下げてもらえないだろうかという希望。
 二つ目には、座学の研修割合の引き下げ、座学の時間を少なくしてくれということですね。
 それから三番目には、受け入れ期間を二年にしていただきたい。二年以上と言っておりますが、私は、二年以上は無理だろう、二年でとどめるべきであろうということをお願いしたいと思っております。
 それからまた、帰国をするその担保のためにやはり基金をつくっていって帰るときの費用に充てたらどうだろうというようなことも要望が出ておるわけでございますが、それについてお伺いをいたします。
#30
○高橋政府委員 中小企業が行っております研修の問題でございますが、これは、国際的にも日本の技術、技能を移転してその国の人材育成に資するという非常に重要な役割を果たしているということが大きな柱でございますので、これはぜひ育成といいますか、エンカレッジしていきたいものと思っております。
 それで、この規模について、余りにも今現在厳し過ぎてなかなかうまく動かないというのでもう少し緩和してほしいという御意向があることは承知しておりまして、現在におきましても、平成二年八月に行われました研修等の告示によりまして研修の基準の一部を緩和する特例措置を講じているところでございますが、さらに今先生御指摘になりました座学の点、これは例えばほかの出発前に行った研修、座学を含めるとかいろいろなことが考えられますし、今一律に座学のあり方というものを決めておりますが、研修の内容によっては座学がそんなに必要ない場合もあるかと思いますので、そういう点もまた見直す必要があるかと思います。
 さらに、帰国の担保ということにつきましては、これはせっかく終わっても帰国がうまくいかないということになると問題でございますので、帰国をどういうふうに担保するかということも十分検討しなければならないと思っておりますので、そういう点も含めまして今関係省庁ともに鋭意検討を進めていこうというところでございます。
#31
○田辺(広)委員 それでは、最後に外務省の方にお尋ねをしたいと思います。
 開発途上国への技術移転とか国際貢献、私は、この問題は大きな課題だろうと思いますし、そのことが本当の外交の基本になる、こう考えております。国内における今の不法就労の問題、外国人労働者の環境の悪さ、そういうもの一つ一つが、外国人不法就労者が自分の国へ、母国へ帰る都度、その実感がその国の国民に与える影響というのは大きいと私は思うのです。
 私はかつて事業をやっておりましたが、四国なら四国地方から従業員を連れてまいりまして仕事をしてもらう。それで、夏、冬にまた帰りますときにボーナスをたくさん出せばうまく帰ってきてくれますし、出さなかったら地元へ行って悪口を言いますので、明くる年はそこから採用できない、そういうような状態。これは本当に我々の感じでございますが、私は、それと外国人の問題も一緒だと思うのです。
 ですから、今毎日マスコミが伝えておるような外国人というのは、日本へ行ったら本当にひどい目に遭っているんだぞと言う、そんな感じを受けますね。このまま帰っていったら、幾らいろいろなことをして技能を身につけても、また私どもが努力しましても、親善あるいはその国に対する貢献という言葉はきれいですが、実際はそこで全部なくなってしまう、意味が崩れてしまうという大きなことですから、なるほどいろいろな面で国際貢献を我々日本はしなければなりませんが、このことについての決意を、外務大臣に聞くわけでもございませんので、大変申しわけないのですけれども、外務省としての考え方をひとつお聞かせいただきたい。それが将来基本になるように私も話をしていきたいと思います。
#32
○服部説明員 お答え申し上げます。
 先ほど来の御議論、拝聴させていただきまして、先生の御質問の趣旨、御指摘のありました点、一々私ども全くそのとおりであると御同感の意をまず表させていただきたいと思います。
 外国人労働者の問題は、我が国国内の問題であると同時に、我が国と外国人労働者を送り出している国との経済格差というか賃金格差というか、そういう問題、それからそういう国々の人口増加圧力というような非常に大きな問題のもとで発生している一つの現象だろうと思うのです。したがって、この問題を解決するに際しましては、我が国の経済問題、社会問題等々を第一義的に考えることは当たり前でありますけれども、ただいま先生御指摘になりましたように、せっかく我が国に来てくれている人たちが、本来なら日本を好きになりまして当該国に帰って日本とのかけ橋になってくれるということが大いに期待されるわけでございますが、往々にしてその逆のケースが生じておることは、我々としては非常に憂慮している次第であります。したがいまして、技術移転、人材育成等は我が国が国際社会に対して果たしていかなければならない最大の責務であるわけでありますけれども、同時に、この外国人労働者の問題は、その点を中心にしながらも、当該国における対日観のいい面での育成ということにも十分配慮してぜひ対応していかなければならない問題だろうと思います。
 外務省といたしましても、法務省、労働省等関係各省と十分に御相談いたしまして、この問題は早期に解決をしなければならない問題だろうというふうに認識しております。今後とも先生方の御助力、御協力を我々としてもぜひお願いしたいというふうに考えております。
#33
○田辺(広)委員 今お答えをいただきまして、これから果たしてどうなるか、まだまだ大変な課題でございます。
 そこで、最後に、不法就労者をなくする方法、先ほど大臣からもお話ありましたが、国内の管理体制の強化をすべきである、それから水際審査の徹底をする、それから不法就労者の摘発を強化すべきだというようなことでございます。しかし、法務省の関係、警察にとりましても人員の問題が出てまいりまして、今後その人員をどういうふうに確保して、言葉でなしに実際の行動を起こすことができるであろうかということが心配です。これが一つの質問。
 それからもう一つはお願いですが、不法就労者の助長罪というのをひとつ厳正にやっていただきたい。この人たちは、本当にまじめに働こうとしておる外国人労務者、不法労務者であるが、その中に入っていろいろな立場で、何といいますか私は悪を働いておるように思いますので、このことをひとつ徹底してもらいたいと思いますし、最後の、人員をどうするのだということにお答えをいただきたいと思います。
#34
○高橋政府委員 不法就労助長罪の摘発につきましては、法務省といたしましても、せっかく法律が改正されてそういうものができたわけでございますので、これは厳正に、特に人権違反といいますか、そういう悪質なものを重点的に強化していきたいと思っております。
 それから、人員といたしましては、地方入国管理官署の増員といたしまして、近年の業務量の増大に伴い、平成二年度六十六名、平成三年度四十八名、今年度の予算におきまして九十七名増員をいただいておるところでございますが、将来ますます。務量が増大しできますので、体制の整備を図っていきたいと考えております。
#35
○田辺(広)委員 以上で終わります。
#36
○浜田委員長 松原脩雄君。
#37
○松原委員 当委員会でも既に何度も議論されておりますが、去る二月十二日から十三日にかけまして、法務省が刑事被告人の国会への証人喚問について要請行動をされたという点についてお伺いをしたいと思います。
 これは、議院が持っております国政調査権と三権分立の関係として提起をされてきたものと私もとらえておりますので、まず国政調査権の性質についてお伺いをしたいと思うのです。
 国政調査権というのは、憲法六十二条に認められたものでありますから、極めて重要な憲法上の権利であります。そこで、お伺いをいたしますが、国政調査権の行使はまた一方でもう一つ、憲法上の権利でもあります国民の知る権利、既に裁判によって確定しておりますが、国民の知る権利というものにも奉仕するという側面を持っているものだと私は考えますが、法務省の方はこの点についてはどうお考えになりますか。
#38
○濱政府委員 国政調査権は、今委員おっしゃいましたとおり憲法六十二条に由来するものでございます。国会が立法権や行政府に対する監督権等の権限を適正に行使できるようにするため認められた制度であるというふうに考えておるところでございまして、極めて重要なものとしてこれを尊重しなければならないと考えておるわけでございます。
#39
○松原委員 刑事局長、私が聞いたのは、国政調査権の行使には、国民の知る権利、こういう一万の憲法上の権利に関してもそれに奉仕するという側面を持っている、これは学説としてあるわけですけれども、法務省としては知る権利に奉仕するのだという点についてはどのような見解をお持ちですか。
#40
○濱政府委員 委員今御指摘になられたようなお考えももちろんあると思うわけでございますけれども、一般的には国政調査権は、議院がその機能を有効かつ適切に行い得るための手段として認められる機能であるというふうに理解しているわけでございます。
#41
○松原委員 どうも答弁があったとは思えませんが、先へ進めましょう。
 そこで、先ほど指摘しました法務省の要請行動については、与党にメモを渡しておる。メモの中身については、前回の当委員会で小澤委員の質問に対して確認をされております。したがって、今後はそれをメモと申し上げますが、このメモの内容については、いわゆる議院証言法、正確には議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律、この法律の趣旨からしまして、私は大変問題のある中身になっておると思います。
 以下その点についてお伺いをしますが、まず最初に衆議院の法制局の方にお伺いをします。
 この議院証言法というのは議員立法でできたものでありますので衆議院の法制局にお伺いするわけですが、この法律は昭和二十二年に最初にでき上がった。そして、昭和六十三年に相当大幅な改正をされております。
 その改正の趣旨は、従来のものに比べまして、国会での証人喚問があったときに従来は証人の権利保護という点についていささか不十分なところがあったので、今回の法律は、証人の権利の保護という点を考慮して種々の改正をなしたというのがいわば立法の理由になっていると私は理解いたしますが、その点は確認はできますでしょうか。
#42
○内田法制局参事 そのとおりでございます。
#43
○松原委員 これは法務大臣にお聞きします。大変一般的な質問です。
 こういうふうにして議院証言法ができました。このでき上がった議院証言法、法務省としてこの法をしっかり守って行動する、全力を挙げて行動する、こういうことはもちろん確認はできますよね。
#44
○田原国務大臣 法務省に限らず国民は、特に公務員は現行で定められておる法律には従わなければならない、こう思っておりますので、そういう意味から当然従うつもりであります。
#45
○松原委員 そこで、法務省の要請で行われたメモ、大変わかりにくい形になっているけれども、このメモの中身を見ていると、一般に刑事被告人を国会に証人喚問するについては、もうネガティブでだめだという印象としてこれはとらえることができます。
 そこで、議院証言法では刑事被告人は証人喚問をすることができないというふうになっているのでしょうか、それとも証人喚問をすることができるというふうになっているのでしょうか、どちらでしょうか。
#46
○濱政府委員 もちろん、国会、議院におかれまして証人喚問の必要性、相当性があると考えられて、国会が御良識に基づいて御判断された場合には、それは当然この議院証言法によって証人として喚問することができるということであろうと思います。
#47
○松原委員 具体的には議院証言法の第四条の第一項「証人は、自己又は次に掲げる者が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのあるときは、宣誓、証言又は書類の提出を拒むことができる。」こうなっています。ですから、ここで言う「有罪判決を受けるおそれのあるとき」ということは、当然裁判所において刑事訴追を受けておる、つまり刑事被告人であることを前提にした規定になっていると私は思いますが、法務省はその点はどのようにお考えになりますか。
#48
○濱政府委員 今御指摘の議院証言法の第四条一項には、今委員が御指摘のとおり「有罪判決を受けるおそれのあるときは、宣誓、証言又は書類の提出を拒むことができる。」というふうに規定されております。したがいまして、現に刑事被告人の身分を有するか否かにかかわらず、有罪判決を受けるおそれのあるときは証言を拒否することができるということであろうと理解いたしております。
#49
○松原委員 第四条についておっしゃるように有罪判決を受けるおそれがあるとあるのですから、当然この中には刑事被告人を含む、こういうふうに解釈をすべきだと思います。
 ところで、この議院証言法ですが、これは議員立法でありますので、衆議院法制局についても、刑事被告人を国会に証人喚問することについては第四条の解釈上刑事被告人は当然に含む、こう考えてよろしいかどうか、ついでに確認をしておきたいと思います。
#50
○内田法制局参事 そのとおりだと思います。
#51
○松原委員 そこで、この第四条についてさらにもう一度衆議院法制局の方にお伺いをいたします。
 昭和六十三年のこの法改正に際しまして、この第四条は従来民事訴訟法における規定になっておったものを改めるに際して刑事訴訟法の規定を準用する、こういうことで立法がなされたはずでありますが、この点も確認をできますか。
#52
○内田法制局参事 先生のおっしゃるとおりでございます。
#53
○松原委員 そうすると、証言法の第四条の解釈については、私もちょっとこれは調べてみたのですけれども、いわゆる証言法それ自体のコンメンタールのようなものは余り出ていない、調べたけれどもない。そうすると、結局刑事訴訟法で規定された同種の規定の準用ということですから、刑事訴訟法の規定をいわば解釈の第一基準にする、そういう形でこれは解釈をしていくべきものだと思いますが、この点、衆議院法制局のお考え、いかがですか。
#54
○内田法制局参事 刑事訴訟法の規定の解釈はそのまま証言法の解釈と同一になるかどうかということには疑問があると思いますけれども、その規定によったということから非常に参考になるとは思っております。
#55
○松原委員 そこで、今回のメモに戻りますが、法務省のメモによりますとこういう事項があるのです。「一般に刑事被告人を証人として喚問するとなれば、被告事件の内容についても質問が及ぶことが予想されるが、その結果として公訴事実の存否について論じたのと同様の結果を生じせしめることとなる場合には、国会が、本来これを使命とする司法に先立って公訴事実についての判断をしたとの印象を、当該被告人のみならずマスコミや国民一般にも与えてしまい、刑事裁判の公正と司法に対する信頼を確保する上で問題がある」、こうなっているのです。ここでは、要するに「被告事件の内容についても質問が及ぶことが予想される」、それが出たときに問題が生じるという言い方をしております。
 しかし、どうなんでしょうか。この議院証言法の仕組みからいいまして、果たして被告事件の内容についても質問が及ぶことが予想されるという仕組みにこれはなっているのでしょうか。法務省の方にお伺いしたいと思う。
#56
○濱政府委員 国会が国政調査権の行使として刑事被告人を証人として喚問されるかどうか、あるいは喚問された場合にどういう事項についてどのような御尋問をなさるかということは、これは国会がその都度御判断されることでありましょうから一概には言えないことではないかというふうに思うわけでございます。
#57
○松原委員 証言法の第一条の三第二項によりますと、議院が国会に証人を呼ぶ場合には「具体的に記載された証言を求める事項」、これをあらかじめ通知しておかなければならない、こうなっております。「具体的に記載された証言を求める事項」となっているわけですから、既にここの段階で国会が何を聞きたいかということを最初にまず枠をはめてしまうわけですね。
 では、その枠をはめたときに、仮にその枠はめの中に被告事件について記載がない場合には、これは法務省がお考えになっておる被告事件の内容についても質問が及ぶことが予想されるということからは、その予想ということが全然関係のない、あなた方の心配が全く関係のないということが既に議院証言法の中に予定をされていると私は思うのですが、この点については法務省のお考え、いかがですか。
#58
○濱政府委員 今委員御指摘になられましたように、議院証言法の一条の三第二項には「通知をする場合には、具体的に記載された証言を求める事項」を「併せて通知するものとする。」という規定になっております。
 国会において、この議院証言法一条の三第二項に基づいて証言を求める事項について通知をされる際に、どのような方式というかどの程度の詳しさというか、どういうふうな形で通知されるのか私必ずしもつまびらかでございませんけれども、私どもの方で今問題になっておりますメモを作成した時点で考えておりましたのは、要するに、刑事被告人を証人として喚問するということになりますると、当然現在裁判係属中の被告事件の内容についても質問が及ぶのではないかということを懸念したということでございます。したがいまして、その結果として公訴事実の存否について論じたのと同様の結果を生ぜしめることになるのではないかということを考えたわけでございます。したがいまして、もう少し言葉をかえて申しますと、公訴事実との関連性と申しましょうか、そういう問題になってくるのではなかろうかというふうに思うわけでございます。
#59
○松原委員 つまり、今回の場合は、私どもの党は受託収賄罪で起訴された阿部議員を証人喚問しようという要求をいたしました。そこで、法務省の議論からして、例えばの話ですよ、受託収賄の公訴事実を外して、なぜ阿部議員は共和という会社に食らいついていかなければいけなかったのか。それは、自分が上のポストに上がるためには与党内でいろいろな工作が必要だとかどうだこうだという話がいろいろあった。結局、政治家とお金の問題について構造的に解明をして、これからの政治改革の資料として我々がそれを使うんだという視点だって十分あり得るわけです。つまり、公訴事実を、受託収賄罪の問題を除いたところで仮に議院が証人として呼ぶというふうになった場合、法務省の説明では、受託収賄の公訴事実についてまでこの国会の場で証言を求められるおそれがあるからまずいのですというふうに私なんかはとらえるのですが、大体そんなところでよろしいのですか。
#60
○濱政府委員 まず先にお断り申し上げなければならないと思いますが、一等最初から松原委員御指摘になられましたように、このメモにもあらわれておりますように、一般に刑事被告人を証人として喚問する場合の問題点について記載したわけでございまして、また、そういう考えを申し述べたわけでございます。
 今、委員は特定の具体的事件を挙げてお尋ねでございますけれども、具体的事件との関連でお答え申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、一般に刑事被告人を証人として喚問する場合、国会において御質問になられる場合に、公訴事実あるいはこれに関連する事実について質問がおよぶことも当然考えられるのではないかということは私どもの念頭にはあったわけでございます。
#61
○松原委員 それじゃ、答えてもらえないけれども、今の刑事局長の話で先へ進めてみましょう。
 そうすると、公訴事実以外の件で国会証人喚問をした場合、実際証人に呼ばれてきたら、公訴事実についてあるいはそれに関連する事実について聞くおそれがあるということが前提になっている。しかし、議院証言法の場合は、そういう公訴事実について質問があったときに証人がそれに対して必ず答えなければならないのか、もしそれに答えなければ証言拒否罪とか、そういうふうな証言を強制されているかということになると、実は違いますよね。
 議院証言法の中には、自分が有罪判決を受けるおそれがあるときには証言を拒絶することができるという規定が第四条にしっかりと書いてあります。しかも、法改正ではその場合補佐人をつける。第一条の四で補佐人をつける。補佐人とは弁護士だ。しかも、弁護士は第一条の四の三項で「宣誓及び証言の拒絶に関する事項に関し、助言することができる。」こうなっている。したがって、専門家もちゃんとつけてこれは証言拒絶ができるんだ。証人の権利保護、人権保護の規定まできちんと入れてあるのです、六十三年に。先ほど確認したように、まさに議院証言法は証人の人権を保護するという規定でいわゆる議員立法がされたものですよ。そういう仕組みができている。
 ですから、刑事局長、公訴事実及びそれに関連する事実について質問があったときに、証人にはそれを拒否する権利、憲法三十八条に根拠を置く、自分にとって不利益な証言について拒否する権利を議院証言法でちゃんと認めているのですから、したがって証人の権利保護については、まさに呼ばれた時点で証人のいわば自由に任されておるのではありませんか。そういう議院証言法が証言拒絶まで予定しているということを考えると、公訴事実について証人がしゃべるおそれがあるからやめてほしいという法務省の議論の立て方は、証言法の趣旨を無視した越権の行動であったのではないかと私は思うのですが、刑事局長、いかがですか。
#62
○濱政府委員 まず明確にさせていただきたいと思いますのは、この「刑事被告人の証人喚問について」というメモの中で問題点として指摘しておりますことは、大きく分けて二つあるわけでございます。一つは、「刑事裁判の公正と司法に対する信頼を確保する上で問題がある」という前段の事柄と、「偽証罪の制裁の下で刑事被告人に証言を求めた場合こ「黙秘権保障の観点のみならず、法廷における被告人の防御一般の観点からも、人権保障上の問題を生じるおそれがある。」という二つの点を指摘しているわけでございます。
 委員御指摘になっておられます議院証言法における自己負罪拒否特権との関係で申しますと、後段の問題点について私どもは人権保障上の問題を生じるおそれがあるということを申し上げたつもりでございます。
#63
○松原委員 一番最初に私が確認したじゃありませんか。議院証言法の規定では第四条で刑事被告人をちゃんと呼べることになっているのです。そうしますと、この法をつくった国会の、これは全党だったか議員立法ですよね、そういうものがきちっと証人の権利保護も考えながら入れて、刑事被告人も当然呼び得るんだという規定をしたことが、今の刑事局長の説明によれば全く意味がなくなってしまうのじゃないですか。そうしたら、さっき大臣に議院証言法もちゃんと法務省は守るのですねというふうに確認していただいたのに随分と乖離、距離が生じてしまっている、そういう意味で私はこのメモは大問題だと思います。
 時間が限られておりますので少し確認をしておきますが、いわゆるメモの中に何か「刑事裁判の公正と司法に対する信頼を確保する上で問題がある」という形になっているけれども、しかし、実際準用すべき刑事訴訟法の証言拒否等の規定からいいますと、A裁判所で刑事被告人になっている、それがB裁判所で別の事件で証人に呼ばれたときに、実際証言等をさせることもある、しかし、それはさせることについては証言拒否権がある。しかし、証言拒否権を使わないでそのまま公訴事実についてB裁判所で証人が認めてしまったらそれはそれでよろしいんです、それは十分A裁判所の証拠にもなります、しかもA裁判所の裁判官に別に予断と偏見を与えることがないという規定が刑事訴訟法にあるわけです。刑事訴訟法を準用するといいながら、その趣旨や仕組みと違う解釈をこの議院証言法に関して法務省はやってしまったというふうに私は考えざるを得ません。
 そこで、いま一つ皆さんの説明でよくわからないのがある。法務省の考えでは、仮にあなた方の立論のとおりだとしたら、一体いつの時期になったら刑事被告人を国会に証人に呼べるのですか、それをお聞きしたいと思います。
#64
○濱政府委員 今の委員のお尋ねの点につきましては、これは当然国会あるいは議院におかれて御判断されることではなかろうかというふうに思うわけでございます。
 それは、もう少し刑事被告事件との関係で申しますと、刑事被告事件がどの程度進行しているか、あるいは国会で刑事被告人を証人として喚問される場合に、どういう時期に喚問され、またどういう事項について尋問されるのかというようなことは、国会においてその刑事被告事件との関係をにらみながら御判断されるのであろうというふうに思うわけでございます。
#65
○松原委員 そんなことは確かに国会が決めることですよ。しかし、メモまで出して、陳情行動まで起こしたわけですよ。行政府が立法府に介入してきて、それで問題になっている。だから、あなた方は一体何を考えているのですかということをはっきりさせたい意味で聞いているのです。
 そうしたら、刑事局長、例えば森口被告、もう一回呼ばれた森口さんの場合に、どうも公訴事実が国会で先にやられては困るんだというあなた方の議論からいうと、裁判が全部終わってしまって、これはもし最高裁まで争っていただくならば三審まで行きますからえらい長い時間がかかりますが、裁判が全部終わった後でないと刑事被告人に立った者は呼べないということを言っておるのではないというふうに私も思うのです。そうすると、例えば森口さんの場合は、聞くところによると、公訴された事実について認めて、そして検察官証拠についても証拠を採用されたと聞いています。そうすると、森口さんはどういう段階になっているのかちょっと説明していただいて、この人の場合は、公訴事実については既に本人も認めておる、検察官の証拠も出ておるということですから、あなた方の言う危倶というのは既にこのメモからしても解消しているのではないかと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
#66
○濱政府委員 まず、委員のお尋ねの中の森口被告人の刑事裁判の進行状況についてのお尋ねでございますが、この点につきましては、私が承知している限りでは、森口被告人につきましては、委員も御案内のとおり、贈賄の事実以外にもそれまでに起訴されている詐欺の事実等がございますから、それに引き続いての公判審理が行われておるはずでございまして、現在、贈賄の事実につきましては証拠調べの段階であるというふうに理解しております。
 それから、国会が証人として刑事被告人を喚問される時期の問題についてのお尋ねでございますが、これは今の森口被告人の刑事事件という特定の具体的事件を離れて一般論としてお答えせざるを得ないと思いますが、この点につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、事案の内容あるいは刑事裁判の進行状況等に即しまして、先ほど来申し上げておりますように、司法の公正あるいは刑事被告人の人権保障といった観点からの問題を生じるおそれはないという判断に立たれて、そういう方法で尋問されるということは、恐らく国会が御判断されることだろうというふうに思うわけでございます。
#67
○松原委員 法務省答弁、私は全く承服しかねますが、時間が参りましたので終わります。
#68
○浜田委員長 鈴木喜久子君。
#69
○鈴木(喜)委員 今、同僚議員の質問がありました。国政調査権の問題、私も今の答弁を聞いておりまして疑問がなおさらわいてきたと言った方がいいかもしれないと思います。これからまた機会があれば私も質問をしたいというような気になってまいりました。法務省におかれましては、このことについてぜひとも誠意ある御答弁をこれからもしていただきたいと思います。
 私は、今回、たまたま幾つかの事象の中で告発ということがいろいろ問題に取り上げられてきておりますので、そのことについて幾つかの事例について伺っていきたいと思います。
 告発は捜査の端緒として刑事訴訟法にも定められているところで、だれでも犯罪があるというふうに思料するときには告発することができるという形になっておりますし、公務員に関しては、その職務に関しての場合にやはりそういったことが思料されるときには告発しなければならないという一つの義務としてのものも課せられているものでございます。この告発に関して、今月の十五日に埼玉県の土木工事業者に対する独占禁止法に違反するという被疑事件について公正取引委員会が発表されて、このことについては告発をしないというふうに決せられたという件について、まずいろいろとお聞きしていきたいというふうに思います。
 この公正取引委員会の発表では、六十六社の人に対して排除の勧告はするけれども告発はしないということでございますけれども、この勧告書というものを見ますと、この中に書かれている事実では、これらの六十六社について埼玉土曜会というものを設けていて、そしてそれぞれの格付が、入札参加を希望する業者を審査してA級、B級、C級とかD級まで格付をしている。そして、その業者についての受注価格の低落防止を図るためにさまざまな形での希望を出して、これこれに割り当てるというようなことが具体的にイ、ロ、ハ、ニ、ホというふうに書かれております。
 そして、そういった事実を踏まえて、こういう事実については「六六社は、共同して、埼玉県発注の特定土木工事について、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにすることにより、公共の利益に反して、埼玉県発注の特定土木工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって、これは、独占禁止法第二条第六項に規定する不当な取引制限に該当し、同法第三条の規定に違反するものである。」こういうふうに結んでいるわけです。そうしますと、これは勧告書の中身でございますけれども、これを読んだだけでも、一応ここに書かれていることを言えば、独占禁止法の第三条の規定に違反するのだ、犯罪行為ありと思料するというふうに考えられるのではないかというふうに私は思うわけです。
 そして、勧告にとどまり、告発はしないというふうにした理由として発表された新聞発表の内容によりますと、検察当局とも意見交換を行って決めたところが、この「独占禁止法の規定に違反する犯罪ありと思料し告発を相当とする具体的事実を認めるに至らなかった。」こういった理由で発表をされているわけです。
 私は、二つの点について非常におかしいなというふうに思いました。まず、検察との意見交換の部分です。なぜ意見交換というものをするのかという点でございますけれども、検察庁と意見交換をするということについて、なぜするのかという理由を取引委員会の方にまずお聞かせいただきたいと思います。
#70
○地頭所政府委員 お答えいたします。
 公正取引委員会では、平成二年の六月にいわゆる刑事告発に関する方針を一般に公表いたしたわけでございますが、平成三年一月に告発問題協議会というものを検察当局と公正取引委の間に設けたわけでございます。
 この理由は、刑事制裁を求めて公正取引委員会が告発をする業務、これは当然受けた方の検察庁におかれましては起訴、公訴の維持といった業務につながっていくわけでございますので、こういった起訴ないしは公訴の維持に当たる立場にある専門機関である検察庁の意見も踏まえて、あくまでも公正取引委員会の判断において独禁法七十三条に言うところの犯罪があると思料し得るや否やという点については判断するわけでございますが、そういった専門機関の意見を踏まえるということが全体として刑事制裁を求めて独禁法の抑止力を強化していくという業務を効率的かつ円滑に運営するために極めて肝要であるというふうに判断して、このような協議会を設置した次第でございます。
#71
○鈴木(喜)委員 公正取引委員会がこういうことでもってこれを実効あらしめるために、しかもその告発を円滑にする、そしてその後の捜査というものとの連携を保っていくために告発問題協議会の設置とかそれから連絡協議会の設置とかいうことをされたんだと思うのです。告発をするという形での場合には、これが前提となってそれをやっていくのは確かに、円滑な業務の連携を保ちながらこういうところを一応調べたりなんかしてこういう資料があった方がいいとかいうことを決めたり、または法的にはこういう問題があるからそこを詰めたらいいというふうなアドバイスを受けるなりなんなりされるというのは一応わかるんですけれども、今回のように告発をせずという、しないでもいいよという形の方に今の検察の意見やら何やらというものがその連絡協議会の中で使われる、マイナスの方向に使われることになると、これはちょっと問題があるんじゃないかと思うのです。
 そもそも告発というのは、こういう犯罪があると思料するときのもので、何もこれによって起訴し、有罪が確定できるかというところまで専門的に詰める必要もなければ、証拠を整える必要もないんだと思うのです。これはまさに捜査の端緒になるべきものなんですから、そこまでのことについて検察の意見をいろいろと聞いて勘案した上で告発せずとなりましたというふうな発表をされるということになると、非常に国民はびっくりしてしまうと思うのですね。ここから告発をして検察の方に行くはずなのに、既に検察と相談してやはりしない方がいいんでしょうかなんて決めちゃったということになったら、これは公正取引委員会の存在自体についても非常に不信感を持ってしまうと思うのですが、その点はどのようにお考えでしょうか。
#72
○地頭所政府委員 私ども、昨年五月に本件についての審査を開始したわけでございますが、全国の代表的な建設業者が多数参加している事件でございますし、埼玉県という地域的な範囲ではございましても、官公庁の調達手続の公正を害し、かつ納税者の利益を害することになる談合事件というものが国民経済に重大な影響を与え得るということで、私どもは重大な関心を持ってこの審査を進めてきたわけでございます。その審査の結果に基づきまして、事実上、法律上の問題につき検察庁と協議をいたしたわけで、そのしないことの理由をつくるためにしたということではございませんで、私どもは当然に、犯罪ありと思料できるや否やについての検討を進めたわけでございます。
 先ほど、勧告では認定しているはずであるという御指摘でございますが、私ども確かに、昭和六十三年四月以降平成三年六月に土曜会が解散されるまでの間において、企業レベルにおきましては一定の談合ルールに基づく受注調整行為があったということは証拠上認定しておりまして、したがって勧告の措置をとったわけでございますが、個人レベルで、特定個人のいかなる行為が不当な取引制限をもたらす行為として犯罪を構成するものであるかという点につきまして、残念ながら十分な判断資料を得ることができなかったということでございます。
#73
○鈴木(喜)委員 時間の関係でお答えを簡潔にしていただきたいと思うのですけれども、そもそもどこまでの資料を得なければ告発できないかという問題で、原則として、これだけのことがわかっている場合には資料を得る得ないにかかわらず告発をするという原則から出発すべきではないか。こういう問題のときに、ここで本当にこういった談合というものをこれから根絶やしにしようとしていく意気込みがおありならば、告発はすべきじゃないか。取り調べの方法が、検察の、司直の手に渡ってからの取り調べと公正取引委員会が調査されるのとでは方法その他について権限にもかなりの差があるわけでございますから、今全部そういうものをつかまえて、はいどうぞと検察にお渡しするということではそもそもないことだろうと思うのですね。新聞では、私、その切り抜いたところだけのコピーを持ってきたのですが、同じ日にいろいろな論評がされていました。
 その中で、検察に伺いたいのですけれども、この問題を引き受けるとして、特捜の陣容というのは二十四名しかいないんだ、六十六社もあったら、一人一社ずつやったって六十六人必要なのに、そもそもそういうことがとても特捜の中でもできないのだというような書き方が一つされていたこと、それからもう一つ、しかし検察と取引委員会との間では余り緊密な連絡がとられていなくて、その判断をするときには余り相談も受けていなかったというようなこと、この二つは別々のところに書かれていたのですけれども、事実、一体この問題については、陣容その他についてどのようになっているのか、お知らせいただきたいと思います。
#74
○濱政府委員 まず、一般的に申し上げまして、東京地検において、例えば公正取引委員会その他の官公庁から、あるいは一般私人から告発がありました場合に、その告発を受理した東京地検におきましてどの部が捜査をするかということは、必ずしも決まっているわけではないわけでございます。今例として挙げられた東京地検特捜部の場合でございますと、検事がほぼ三十名ぐらいの陣容でございます。従来も、規模の大きい事件につきましても十分その陣容で捜査をして、事件の処理についても適正にやってきたものと承知しているわけでございまして、今委員がお尋ねになられましたように陣容の不足があるのではないかということにつきましては、そういうことはないということをまず申し上げたいと思うわけでございます。
 それから、これは私の方に対するお尋ねではなかったかもしれませんが、公正取引委員会で勧告処分をされるかあるいは告発をされるかということは、もちろん公正取引委員会が御判断なされることでございますけれども、法務当局から考えまして刑事責任を問う場合と行政処分を行う場合とでは、例えば刑事処分を行って刑事責任を問うためには、行為者を特定して、業務主との関係から業務主の責任が問えるかどうかというようなことをも証拠の上で判断しなければならないわけでございますから、その判断の基準も違いましょうし、それにその判断のもととなる証拠資料にも違いがあるということは御理解いただきたいと思っております。
#75
○鈴木(喜)委員 今濱局長の方から言われましたのは、確かにそのとおりだと思うんです。それぞれ行政処分と刑事処分では違うわけですから、それはよくわかっているんですが、今問題にしているのは告発ということなんですね。告発ということと起訴とは違うわけですから、起訴されるときには、それは検察の御判断で、この場合だったら起訴すべきか否かということは十分にいろいろな配慮をされて判断されればいいわけでございます
けれども、しかし告発をするということの中にそういったことを入れるかどうかということについて、公取委のやり方というのは、検察の判断まで踏み込んだ形で告発せずとかいうことを決めてしまうというのは問題ではないかというふうに私は先ほど申し上げたし、今もそういう意見を持っているわけです。
 この点についてはいろいろな批判やらまたその他の論評もありますけれども、私は、告発をする場合に、仮に今濱局長の言われたようなところまで公正取引委員会が判断をし、そこまでなければこれから先も告発ができないということになると、今後のいろいろなそういった問題についても大きく影響をもたらしてしまうのではないかということで、私は非常に危惧感を持つわけです。今度の事件で、ほかの面でも、ここまでやっても告発しないんだなということが見えてしまうんじゃないか、その点がこれから先非常に思いやられる点なので申し上げているわけでございます。
 もう一つ、この問題については、今までこういった問題については告発をし、起訴をし、裁判を受けということがなかった、まだ判決が出るところまでは行っていないような事例の中で出てきている問題ですけれども、この法三条とそれから九十五条での構成要件ということになりますと、これは例えば個人的にどこまでのものがなくてはいけないというようなことは決めて、要するに会社の中で個人的なことが具体的にここまで決まっていなければならないとかいうようなことについて、どういう形で解釈されているんでしょうか。ちょっと言っている意味がとりにくいかな。要するに、法三条の中で構成要件というのはこれこれこういうものであるというようなことについては、どこから御判断をされているんでしょうか、公取委の方。
#76
○地頭所政府委員 本件に照らして申し上げますと、六十六社が土曜会の場を通じまして、一定のルールのもとに埼玉県発注の特定土木工事につきまして受注予定者を決定し受注予定者が受注できるようにしていたということは、法三条の不当な取引制限を禁止する規定に該当するというふうに判断しておるわけでございますが、犯罪はあくまでも特定の自然人を前提といたしますので、その自然人をある程度特定し、かつそれぞれの自然人のいかなる行為、事実をもって犯罪ありと思料するかということにつきまして権限ある当局が判断をするという場合には、個別具体的な事実関係の特定が必要であるというふうに私ども考えておるわけでございます。
 それで、先ほども御指摘ございましたように、本件の処理に対する世論の非常に厳しい批判があるということは私ども承知をしておりますし、本件の経験を踏まえまして、今後そういった犯罪ありと自然人の行為を思料するについてどのような審査手法がなければいけないかといったことについても研究をし、今後談合事件については厳しい姿勢で臨む覚悟でございます。
#77
○鈴木(喜)委員 時間がありませんのでまたの機会にいろいろそのほかのことについて聞きたいのですが、こういった組織というのは、新聞によりますと東北にも関西にも九州にもあるというふうに言われています。そういうものについて、前がこうであったから今回はこうだというようなことをすぐ言われてしまいかねないし、前例がこうであったから、これはそれよりももう少し悪性が弱いんだから当然告発せずではないかというような形で、これが一つのあしき慣例になってしまうことのないように、次のときにも皆の疑問にふたをしてしまうというようなことがないように、ぜひ今回このことについてもさまざまな形でいろいろな発表をしながら、これからも取り組んでいっていただきたいと思います。
 次の問題に移ります。
 これも告発に関してなんですけれども、潜水艦の「なだしお」と第一富士丸という民間の船が衝突した事件がありました。これは今それぞれの法廷で審理されているわけですけれども、その中に潜水艦の艦長とその下の航海科員の人を対象として、航泊日誌が改ざんされたのではないかという告発がなされたという事件がありました。この告発について横浜地検では、平成二年八月二十一日、不起訴ということを決めた。その後横浜の検察審査会の方に、これはおかしいということで検察審査の申し立てをした。その申し立て書記載の罪名としては、艦長に対しては虚偽公文書作成罪の教唆、公文書投棄教唆、証拠隠滅教唆、それについて実行した方が虚偽公文書作成、公文書投棄、証拠隠滅。航泊日誌というのを一枚その部分を切り取って、それをシュレッダーか何かにかけて廃棄してしまって、そこに新しい予備の紙を、違うことを書き入れて、そしてそこに差し込んだという、そういった内容で、事実は一応みんな認めている事実らしいのですけれども、そのほかの点でどこかこれを起訴としない部分があったという判断を横浜の地検ではされたということなんです。そして、検察審査会で審査をした後、不起訴不当という結論が出た、これをもう一回検察にやったのですけれども、再度不起訴ということになってしまった、こういった事件があったというふうに聞いたのです。ここでもまた告発ということに絡んでの問題なものですから、これを伺ってみたいと思うのです。
 この場合に、検察審査会の制度というものにここのところ裁判所も非常に熱を入れられまして、ハンドブックやパンフレットをつくり、そして最近の新聞によりますと検察審査会というものについてのビデオもっくってアピールをされているということなんですが、検察審査会で不起訴不当という結論が出ても、これについてはまだ再度の不起訴になってしまう、こういうことでは検察審査会というものの存在意義がPRされるほどのことがなくなってしまうのではないかというふうに思います。
 そこで伺いますけれども、起訴相当とかまたは不起訴不当というふうに検察審査会で申し立てられました事件について、過去どのくらいの起訴率があるのかということを裁判所にお答えいただきたいと思います。
#78
○島田最高裁判所長官代理者 ただいま御質問のあった点につきまして過去五年間について申しますと、起訴相当及び不起訴不当の議決があった事件について検察官が起訴したものは三十八件、一三%、不起訴を維持したものは二百五十四件、八七%であります。そのうち、起訴相当の議決があった事件について起訴したものが二件、一五・四%、不起訴を維持したものは十一件、八四・六%であり、不起訴不当の議決があった事件について起訴したものは三十六件、一二・九%、不起訴を維持したものは二百四十三件、八七・一%でございます。
#79
○鈴木(喜)委員 検察審査会の意見というのはかなり入れられていないのだという感じがします。八七%が入れられていない、不起訴維持だということになりますと、そういうことによってまた起訴されるということはないのかなというふうに思います。
 検察に伺いますけれども、こういった検察審査会の意見が出たときに、その後はどういうふうな扱いをされるのでしょうか。
#80
○濱政府委員 検察審査会から不起訴不当または起訴相当の議決書を受領いたしました場合には、検事正の指揮によりまして直ちにその事件の立件手続をとります。その上で原処分をした検察官以外の、より経験豊富なベテラン検察官を担当検察官に指名いたします。その上で議決内容を尊重した再捜査を遂げさせているというのが実情でございます。さらに、その処分に当たりましては上級庁の指揮を受けることとしておりまして、そういう方法で適正妥当な処理を図っているというのが実情でございます。
#81
○鈴木(喜)委員 私が疑問に思いましたこの航海日誌の改ざん事件というものについて言いますと、不起訴不当ということが送付されたのが平成三年四月二十四日、そしてその後検事正が不起訴維持だというふうに出てきましたのがやはり平成三年七月十八日。要するに三カ月ぐらいなんです
ね。そこで審査をした、より慎重な審査をしとおっしゃるけれども、そこの中身は三カ月しかないということです。ですから、今まである取り調べの証拠か何かで見てしまわれたのではないのだろうか。いかに経験豊富な方がその次やられるとしましても、そこではきちんとした調べがされていないのじゃないか、そういった疑いがわいてくるわけです。
 そして、これについての回答の仕方なんですけれども、理由については、不起訴とか、または、その中に括弧して、例えば嫌疑なしみたいなのがあるのでしょうけれども、ここでは嫌疑不十分という回答がされたそうですが、それよりももっと細かい理由みたいなものは告発人ないし検察審査会の方に行くということはないのでしょうか。
#82
○濱政府委員 再捜査した結果不起訴処分を維持することとなった場合のことでございますが、検察審査会に対しましては処分結果をもちろん通知いたします。検察審査会から御要望があった場合には適宜書面または口頭で不起訴理由の告知を行っているのが実情でございます。
#83
○鈴木(喜)委員 その書面または口頭での内容を聞きたいのです。どういうことを言うのでしょうか。具体的におっしゃっていただきたいのですけれども、こういうところがこうでこうでこうだから嫌疑不十分だとか、そういうことまで言われるということなんでしょうか。
#84
○濱政府委員 各高検単位で多少違いはあるようでございますけれども、結果とその主文それから詳細な理由を書面で通知しているところもございます。それから、口頭で対応しているところもある。もちろんこれは検察審査会から御要望があったのに対する対応の状況でございます。
#85
○鈴木(喜)委員 検察審査会に対するそういった詳細な文書とかいうものについては、どこでも出しているわけではなくて、それぞれの検察庁のそれぞれの対応ということで、裁量で決まるものなんですか。
#86
○濱政府委員 先ほど申し上げましたように検察審査会の御要望があった場合にそれに対応するわけでございますが、例えば口頭あるいは書面で結果あるいは主文を通知するという場合に、それに対してさらに検察審査会の方から重ねてその詳細について御要望があれば、その際に必要な限度でその御要望に対応するということで、検察庁によって若干の違いはあるように聞いております。
#87
○鈴木(喜)委員 もう一つ。告発人にはどうなんでしょうか。検察審査会と同じことができるのでしょうか。
#88
○濱政府委員 告訴、告発人に対する通知のお尋ねかと思いますが、これは、刑事訴訟法の規定に基づきまして処分結果の通知を行いまして、その請求に応じてさらに不起訴理由の告知をしているというものでございます。
#89
○鈴木(喜)委員 これは、刑訴法の規定には、二百六十一条で不起訴の理由は開示するということになっているわけですね。しかし、その運用は、それだけしか書いてないわけですから、どういう形でもできるはずなんですね。さっきおっしゃった検察審査会には、検察審査会の方からなお、これの理由をもっと詳しく知らせてほしい、不起訴にした理由を知らせてほしいと言ったときには知らせるというのが原則のようにおっしゃったわけです。私はそういうふうに聞いたのです。もし間違っていたら、お答えのときに間違っていると言ってください。
 それぞれの検察庁によってそう対応が違うということではまたこれは非常に困るわけで、市民が司法に参加するという数少ない場面であるところの検察審査会に対する対応が各検察庁によってそれぞれ違うということではこれは非常に困るわけですから、そうした詳細な説明をしてくださるとするならば、その詳細な説明というものを告発人やら告訴人にもやはりするのが当然であり、それをしてはいけないとか、またはただ単に不起訴とか嫌疑不十分とか、そういうふうな形だけで理由を開示するということは、刑訴法の二百六十一条を読む限りはそうはできないと私は思うのです。ですから、そこについてもう少し、特に検察審査会で一応起訴相当とか不起訴不相当というような形での答えが出た場合には、ぜひとも運用の上からもそういった対応をしていただきたいと思うのですが、その点、いかがでしょうか。
#90
○濱政府委員 先ほど私のお答え若干舌足らずの点があったかもしれませんのでつけ加えて申し上げますが、検察審査会への通知、処分した時点での通知は、各検察庁とも結果及び主文を書面で通知するということでございます。さらに、その理由について要望があった場合に先ほど申しましたように若干取り扱いが違う、こういうことでございます。
 それから、今お尋ねの、不起訴の理由の告知の点だと思うのですが、刑訴法の二百六十一条で要請されております一不起訴理由の告知」につきましては、通常は今委員御指摘になられたように不起訴の主文を通知していると思いますけれども、ただ事犯によりましては、例えば告訴、告発人がその理由を聞きたいということで、その処分をした検察官が会って口頭で納得のいくような説明をしたりしていることは、運用としてはあるのではないかというふうに思います。
#91
○鈴木(喜)委員 あるのではないか、こういう運用も数少なくあるのではないかということではなく、一般的にそうするような形を運用の上で考えていただきたいというふうに思います。
 たくさん聞きたいことがあるのですが、この点について、法務大臣、いかがでしょうか。こういった告発ということがされた場合の理由の開示ということについて、ある程度の具体的なものについての運用をもう少し考えられるか否か。
#92
○田原国務大臣 検察審査会の制度があるということは私も存じておりますが、これは民意の反映の手段として非常に大事な手段であろうと思うのです。その出たときの手続その他については刑事局長から御答弁申し上げたとおりでございますが、結果についてのいろいろな場合の開示ということについてでございますが、先ほどの答弁にありましたように検察審査会に対して文書で答弁しておる。さらに細かい点について云々というときに、人権、プライバシーその他に関することもあるかもしれませんので、その辺はやはり一律に云々とはいかないのではないか。やはり何度か問い合わせやらお答えをするという形をとらざるを得ないのではないかなと私はちょっと感じたところであります。
#93
○鈴木(喜)委員 何だかちょっとよくわからない御答弁ではございますけれども、一律にはいかないけれどもいく場合もあるんだ、それから、いく場合といかない場合との区別とかその他についてはまだこの次の機会にぜひ伺いたいと思います。
 検察審査会で不起訴不相当とか起訴相当と出た事由について、その後の有罪率を見ますと、やはり九〇%以上のものが有罪になっているわけでございますから、これを余りたくさん、自分たちは法律の専門家なんだから、起訴の専門家なんだから、どうやってもいいんだ、任せなさいというような形でやるのではなくて、やはり市民が司法に参加しているという重要な場面なので、この点の尊重ということを、これからも捜査機関に、検察に対しては強く申し上げておきたいと思います。
 この「なだしお」の問題についてはもう一つ、海難審判庁の中の審判官または理事官という検察のような役割をした方が裁判所の中に出てこられて、東京高等裁判所での調査官をされている、一名されているということを聞きますが、これについて、裁判所の中でこの調査官はどのような役割を果たされているのか、簡単にお知らせをいただきたいと思います。
#94
○今井最高裁判所長官代理者 裁判所調査官でございますが、委員御承知のとおり裁判所法の五十七条に規定がございまして、一裁判官の命を受けて、事件の審理及び裁判に関して必要な調査を掌る。」こういうことでございます。これを少し具体的に申し上げますと、裁判所が審理、裁判をする前提としまして参考にすべき資料、こういうものを収集整理するということになります。
海難事件、お話でございましたが、これについて具体的に申しますと、裁判官の命によりまして、海難事件、船の航行とか航路というような技術的な事項でございますので、そのような事項についで当事者がいろいろな主張をするあるいは証拠が出てくるということがございますが、それについて専門用語の解説をするとかあるいは船の構造だとか航法というような専門技術的な事項について文献を収集したり整理する、こういうようなことをやっておるわけでございます。
#95
○鈴木(喜)委員 海難審判庁の方に伺いますけれども、この場合に、調査官として出される方が、当該、具体的にその前にでもかかわった事件についての調査を高等裁判所で調査官としてするというようなことのないような御配慮はいつもいただいているのでしょうか。それからまた、ここから引き揚げられてまた海難審判庁の方に戻られることがあると思うのですが、そのあたりは、その裁量は海難審判庁に任されているとお聞きしているのですけれども、その場合にも、調査官としての行動のあったその内容がその後のいわゆる処遇とか昇進とかそういうことに影響を与えるようなことは金輪際ないと理解してよろしいのでしょうか。
#96
○田中説明員 お答えいたします。
 私ども、審判官あるいは理事官の中から調査官を推薦しておるわけでございますが、その推薦に当たっては、その時点時点で必要な場合には最高裁判所側の御意向を酌んでするということでございます。
 調査官が審判庁在職中に関与した事件が提訴された場合でございますけれども、これまで実例は見当たりませんが、もし今後そのような例が生じますれば、裁判所の御意向も酌んで、必要があれば検討してまいりたいというふうに考えております。
 また、調査官の大事については、通常の当庁の人事管理に従ってまいっているところでございます。また、退職後については、海事補佐人ということで登録している例が多うございます。
 こういうことで、私どもとしては調査官については進めているということでございます。
#97
○鈴木(喜)委員 時間が来たのでこれで終わらしていただきますけれども、くれぐれも検察の方々それから公取の方々、国民の利益ということの観点からぜひこれからも取り組んでいただきたいと思います。
#98
○浜田委員長 午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時二十分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
#99
○浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。小森龍邦君。
#100
○小森委員 まず、最高裁の方にお尋ねをいたしたいと思います。
 先日、裁判というものは事実の認定において厳密の上にも厳密な調べをする必要があるというような意味のことを申しました。きょうは一般質問でありますのであれこれ飛びながらの話になると思いますけれども、とりあえずその厳密性ということにつきまして、ある一つの事実、殺人なら殺人という事実が起きた、それをもちろん調べるわけでありますが、疑わしきこともあったり全く疑わしいとは思われないようなこともあったりして、私は、素人の言葉を使うのでありますが、疑わしきことを一つ一つ、これはやっているかな、これは犯人かなということの犯人たる可能性というものを一つ一つ点検をしていかなければいかぬと思うのであります。
 その場合に、この程度の厳密性ということで私も感心をしたのでありますが、島田事件の再審の判決が出たときに、何か衣類かあるいは寝具かに血がついておった、その血は犯人と思われる被告の血液型と同じだ、そうすると、普通の場合はこれくらいで、これはもう間違いないな、しかもそれが寝具ということになれば間違いないなと思うのだが、裁判長は、同じ血液型の者は方とおる、だからそれだけで断定できない、これくらいの厳密性をあのときには求めた、厳密性を考慮した判決であったと思うのであります。そういう場合に、現在の裁判というものがおおむね皆そういう厳密性でいっておるのか、それとも、何かちょっとの可能性があったらすぐそれを論理的に結びつけておるのか。私は後者の場合もかなりあるように思います。なかなか答えにくいかもわかりませんけれども、一般論で結構ですが、可能性というものをことごとく点検する必要があると私は思うのですが、その点はどうでしょうか。最高裁島田刑事局長の考え方、どう思われますか。
#101
○島田最高裁判所長官代理者 一般論としてお答えいたしますが、可能性としてあるいはこれは違うんじゃないかというような疑いがあった場合には、その疑いがある以上は疑わしきは被告人の利益にということで判断しておるというふうに私は理解しておりまして、したがって有罪の心証をとり、有罪判決を出すためには、そういった合理的な疑いが一切なくなった段階で出すというふうに理解しております。
#102
○小森委員 今から申しますことは、以前にも私は事例として挙げたことがあると思いますが、例えば狭山事件の場合の、かもいの上に万年筆があった。一メーター七十センチぐらいのところに、低い建ちの家ですから、私も行ってみましたが、かもいの上に万年筆があった。それは中田善枝ちゃんの持っておった万年筆だ、そして脅迫状を書いたとされている万年筆でありますが、一回家に入っただけでも捜査に入ったんだからそれに気づかないはずはないが、一回、二回とそこに万年筆があったと発見した者はいなくて、三回目に発見した。ところが、その数日前に警察官が、何か持っていってやる物はないかといってその家を訪ねてきた。家にはそんなにたくさん人がいないから、我々の方からすると、万年筆はどうも警察官がそこへ置いたんじゃないか、だから三回目にあった、こういうことになりまして、一回、二回目の捜査をしたその当時の警察官も証言をしておりますが、でもわしらは一生懸命調べたがそのときにはなかったがな、こういうようなことがあるわけですね。
 これは、国会と裁判所の関係だから、今ここでそれを事実としての応答は難しいと思いますね。私が言っておることを事実として応答することは難しいと思いますが、こんなことがあって、しかもその押収した万年筆に対して何の疑いも抱かず、殺された中田善枝ちゃんの持っておった万年筆を被告人は持っていた、こういうことになると国民はなかなか納得をしないのじゃないかと思いますね。
 それから、犯行があったと言われる場所で、この前も払お尋ねしましたらルミノールの反応をやっていないということなんで、本当はやっておるんじゃないかと思うのです。なぜかというと、この法務委員会で、それはルミノール反応の検査書というか調書がありますので次の折にお見せしますとか、それを答弁しますとか言うたことがあったのに、その次の法務委員会で、それはありませんでした、何年か前の話でありますが、ありませんでしたと言って、裁判所なのか、恐らく法務省刑事局だと思うが、答えているのですね。
 本人にはとって不利益な唯一の証拠が自白である場合には、これを有罪とし、刑在科すことはできないという憲法上の原則というものは、ここで殺したんですという、その殺したという場所が、ほかに何も物的証拠がないという場合には、現在の刑事訴訟法で場所がそこで特定できるのですか。その点はどうでしょうか。
#103
○島田最高裁判所長官代理者 あくまで具体的な事件とは全く離れた一般論としてお答えいたしますが、今委員の御質問の趣意でありますが、御趣旨は・殺害をしたことについて自白もあれば補強証拠もあって、その点は心証はとれる、ただ場所がどこだかわからないという事案でございましょうか。(小森委員「そうです」と呼ぶ)その場合には、場所がわからないということから、多くの事案ではその人間が果たして殺害したという有罪の心証がなかなかとり得ないと思いますけれども、しかし他の証拠によって、どこか場所はわからぬが殺害はしたということの心証がとれれば、場所不明でも有罪の判決は出し得るケースはあると思います。
#104
○小森委員 その場合に、場所を特定しようと思えば物的に特定できるのに犯罪捜査の段階で特定をしないということになると、それはどうですか、やはり捜査のミスということになるのですか、その点は刑事局長。
#105
○濱政府委員 これも一般論としてお答えすることになるわけでありますけれども、犯行場所の特定が、結局、最終的に公訴を提起するまでの段階で特定できなかったという場合もあり得るかと思うわけですが、先ほど最高裁の刑事局長からもお答えがございましたように、犯行場所は特定できないけれども、その犯行を当該被告人というか被疑者が行ったということについては合理的な疑いを超える程度に心証がとれるという場合には公訴を提起することになると考えるわけでございます。もちろん、犯行場所を特定するための努力を最後まで捜査機関としては続けると思いますけれども、証拠の制約からそれが結局公訴提起に至るまでできないで終わったということも場合によってはあり得るかもしれない。それは必ずしも捜査がずさんであったということを決めつけるまでできるかどうかというのは、事案事案によって違うのではないかなというふうに思うわけでございます。
#106
○小森委員 本人もあそこでやったと、こう言っているんですからね。あそこでやったという、その場所を特定したことを言っておるのですから、それなら本人の自白が物的証拠として要するに証明できるかどうかということをやるのは、これはもう捜査のイロハのイの字じゃないですか。
 それで、ちょっと長くなりますけれども、今度はそこから二百何十メートルか離れた芋穴に体を逆さづりにしたんだという自白があの裁判の中で生きておるわけなんですが、そこはルミノール検査をした、ところがそれは陰性であった。陰性と陽性を私は言葉を間違って使っているかもわからぬが、そこではやはり反応は出なかった。その理由は、私は判決書を読んでみたら、それはもう血が固まっておったんであろうと。じゃ、血が固まっていない、殺した場所という――もう体が冷えて、死体が冷えて逆さづりにしても血が滴り落ちなかったんであろうというような意味のことを言っておるのでありますが、そこはルミノールの反応をした。犯行現場と特定できないんじゃなくて、しようと思えばできる、つまり証明しようと思えばうそかほんまかがわかるところになぜしなかったかということについては、これは合理的疑いを我々は差し挟みます。それで捜査がずさんであったとは言いがたいということにはならぬと思いますが。なかなか具体の問題と結びつくから難しいことなんですけれども。
 だから、問題は、あの事件から離れて、頭を割っておるわけです。骨が折れて陥没して、お医者さんが言うのは、普通二百CCぐらいの血は流れておるだろう、牛乳瓶一本ぐらいは流れておるだろう、こう言われるくらいの大きい傷を殺された人がしておる、その場所をなぜ特定しないんだろうか。それは、それをやるとすぐそこでないということがばれるからではないのか。私もあれから十年の上もたってあの雑木林のところへ行って遠くから見ましたけれども、幾らでも透けて見えるんですからね、木と木の間が。もう二十年たつと大分大きくなりますけれども、しかし幾らでも透けて見える。そこらには農家もあれば、それからウサギ道、けもの道というのかがありまして、どんどんその雑木林の中をその近所の人が奪っておる。そこで犯行をしたというんだから、ルミノールの反応をしたらもし陰性として出たら、あるいはここじゃないということになって全部が御破算になるからしなかったんじゃないのか。あるいは、しておってもそれを隠し持っているのではないか。刑事局長、そうでなかったら、ここであるとは言わないでしょう。というような疑いを持つんですが。
#107
○濱政府委員 これも一般論としてお答えさせていただきますが、前にも委員からお尋ねがあってお答えしたかと思うんですが、犯行場所の特定の方法としましてはいろいろな方法があるのだろうというふうに思うわけでございます。例えば被疑者が犯行を自白しているその自白の内容の中で、その犯行現場に至るまでの状況あるいは犯行後犯行現場から移動した後の状況あるいは犯行現場の客観的な状況と申しますか、そういうことについて供述がある場合に、そういう供述と現場の客観的な地形とかいろんな状況が合致するというような場合には、そういうものから供述の信用性を判断するということもあり得るのではなかろうかというふうに思うわけでございます。
#108
○小森委員 ここだけ堂々めぐりしてもいけませんから次に移りますけれども、しかし、例えば君は凶器をどこに捨てたかと言って問い詰めたら、隅田川のどこやらの橋のところから落としたと言うたら、そこへ捜査に行って船を浮かべて何十人もの者が捜して、あったということになれば、彼の自白は、彼以外に知り得る者はいないことについてそういう自白をしたんだからこれは間違いなかろうということで、相当心証が固まりますな。ところが、あの木へ縛ってあそこで殺したんだというのに、なぜルミノールの反応をしないかということは、刑事局長、ここであんまりこだわりませんけれども、時間が限られておるから前へ行きますけれども、それは合理的疑いを抱きますよ、法律学者ならずとも。
 それから今度は、雨がびしょびしょ降る日に関東ローム層といって、私も雨の降る日に歩いてみたけれども、自分の体だけでもずるずるするようなところを、六十キロの女の子を抱いて二百何十メートル、そこまで連れていけるのか。その二百何十メートルの間にだれかと会う蓋然性というものは非常に大きいわけなんで、みんな作り話作り話がずっと固まっていっておるように私は思います。
 あなた、六十キロの物を提げて二百何十メートル、足元がずるずるするようなところを普通の体力で歩けると思いますか。私は、前にも言ったかもしれませんけれども、昔セメントが一俵五十キロの時代があったのです。今は四十キロ袋ですよ。今はもう生コンがあれしてサイロみたいなものの中に入れてやるのが多い。法務大臣がよく知っているわな。五十キロを自分でこうやって抱え上げることは私の体力でできるのですよ。しかし、私は青年団時分に、手を綱へかけて六十キロの米俵を上げる競技がありますけれども、これは私らの同級生五十人のうちで五人ぐらいしか六十キロはよう上げない。五十キロは、私はセメントは上げるのです。
 しかし、石川君はどう言っておるかといったら、君が言っている女の子をそういうように提げてあそこまでよう歩いでいったなといったら、いえ、それは大丈夫ですよ、私はセメントを二俵平気で提げて歩きよったんですからと、裁判の記録を読んでみると、それをそのまま信用して書いている。できないことを信用して書いているのです。だから、それだけでもその自白はうそということははっきりわかるのです。
 だから、あれじゃないですか、一番原点のところを下手をやると、次から次へ全部うそになるんじゃないですか。私の息子が身長一メートル七十八か何ぼかあって体重八十何キロ、ちょっと見たら巨漢に見えるのですけれども、これがこの間ちょうど同じ大きさの人形をつくって、みんなの前で歩いてみたのですよ。十五メートルぐらい歩いたところで手の力が尽きて落としたのですよ。そんなことがあって、合理的疑いを挟むなといってもそれはちょっと無理なんじゃないでしょうか。これも答弁はよろしいです。
 私が問いたいのは、この法務委員会であると言ったものが後にないということになったり、それから東京高等裁判所は、私はあの事件の終わりごろ三回か四回連続して傍聴に入りました。大方終わりごろでしたけれども、地下足袋の大きさが違うではないかと、これはマスコミも騒いたのです。毎日グラフか何かも地下足袋と石こうの大きさが違うということで騒いだのでありますが、裁判長が、それじゃ次に地下足袋とその石こうを証拠として出すかと言ったら、検察側は出しますと言って、これは大変じゃ、実際私も傍聴席から実物を見なければいかぬと思っていたら、次に来たときには、いや、あれはいろいろ捜したけれどもわかりませんので、廃棄処分にしておるのだろうと思います。こんな奇怪千万なことがずっと続くのです。
 法務省の刑事局長、そういう証拠なんかの保存というのはどうなるのですか。現に係争中の、しかも死刑とか無期とかという大変な問題でしょう。一つの証拠たりともゆるがせにできないでしょう。そういう証拠の保存はどうなるのですか。
#109
○濱政府委員 一般的に、検察庁におきまして押収した証拠品の保存、保管につきましては、これは改めて申し上げるまでもなく、刑事訴訟法にも規定してございますように、証拠が散逸しないようにするのが検察官としての責務でございますから、その証拠物に応じて最も適切な方法で保存、保管をするということは当然のことでございます。
 先ほど狭山事件との関係で足型についてお触れになられたわけでございますが、具体的事件に立ち入ってのお答えは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、現在、第二次再審請求事件が係属している東京高等裁判所に、御指摘の石こう、足型というのは保管されているというふうに聞いております。
#110
○小森委員 法廷に関係を持たない私のことですから、運動的には頭へ入れておきましょう。もしそういうものが本当にあるならなぜそのときに出さなかったかという問題が今度は出てくるわけですから、運動的には頭へ入れさせておいていただきたいと思います。
 それで、実は地下足袋の問題について、ちょうどその人のお兄さんがとび職をやっておるので地下足袋を履く。おまえが自白しないのなら兄貴だな、それなら兄貴の方へ行こうか、こうやられると、この前も、院内の方の四十人委員会ができる、あそこで質問したことがありますけれども、おまえが白状せぬのだったらあしたおまえの家の前へパトカーが行くよ、孫が学校へ行くのに、うちのおじいさん何したのだろうかということになるよ、それてもいいか、こうやられると、軽い罪だったら、おじいさんは孫にそういうところを見せたくないから、それじゃ判を押して帰りますと言って次々に百何十人がうその自白をして、とうとう百何十人まとめてうそだったということがばれて無罪判決になったという事件があったですね。あれと同じように、つまり取り調べのときに、おまえ、これ言わぬのならこうだぞと言って相手に非常に精神的な打撃を与えるようなことをやったら大概往生するのですよ。
 だけれども、この場合は死刑とか無期とかになりそうな事件であるのに、どうして地下足袋のことも、いや、兄貴の地下足袋を履きましたというようなことを言ったのかというと、それは兄貴に罪を着せたくないということと、もう一つは、おまえこれを自白したら、おまえが若いときにけんかをしてどこかで何かやったとか、あるいは酒を飲むなり近所の鶏をせしめてきて、若い者がよくやることですわな、鶏を絞めて殺して食べたとか、傘やあるいはジャンパーを借ったのをおまえは友達に返しておらないなとかさまざまなことを言って、これを全部合わせたら十年以上になるんだよ、それよりはこれ一件で十年にしたらいいじゃないか。法律的知識も何も、小学校三年生ぐらいの学力しかないのだから、ごまかしほうだいにごまかされるわけですね。そういうことで自白をしたと我々は見ています。そうしたら、その自白が非常にあいまいなんだから、客観的な証拠というものを一つ一つ積み上げて判断をしてもらわなければならぬけれども、今の、女の子を抱えるといったって、雨のしょぼしょぼ降る日に関東ローム層というずるずるするところでできないですよ。
 それから、今回は幸いにして法務大臣が建設関係の技術者でありますので私はちょうどよいと思うのですけれども、ある死体を埋めた、つまり土を掘った場所とその大きさというのは、細かい数字は私は持ってきていないけれども、人間を埋めるのだから、大体二メートルぐらい、ここを一メートル五十ぐらい、深さを一メートルぐらい掘っておるわけですね。そうすると、立方積を出すと、二メートルの一メートル五十で三平米を一メートル掘るのですから、三立米ということになりますわな。それで、割合やわらかい土地ですから能率的に掘れると思うのですけれども、雨の降っていた日なんですからスコップについてどうもならぬと私は思うのです。それがどれくらいの時間帯に掘られたのかというようなことも裁判官は考えていないですよ、記録を読んでみると。掘れた言うから掘れた、掘った言うから掘ったんだろう、こう言うけれども、脅迫状を持っていった時間、殺害の時間、うろうろした時間、あれやこれや全部署り出しておるのですから、それが本当にできるかできぬかということだって考えようと思えば考えられるでしょう。
 同じ建設関係いいましても、法務大臣は工学博士で、私はスコップを持った人間です。つるはしを使わずに、スコップへ足をかけてずっと入るような土地を掘るのに、つぼ掘りといいまして、一人前の土方仕事のできる、つまり労働者という意味。昔は人夫と言っておりましたが、丈夫というような意味で丈夫と言っていた。あれは丈夫やと。丈夫というのは、朝から晩まで一立坪、だから大立米掘るのですよ。しかし実際は、単価表へ入れるときには、大臣、あなたも専門家ですから御承知だと思いますけれども、大概三立米くらいしか掘らぬような歩掛かり表になっているでしょう。三立米の歩掛かりで請け負った請負師が六立米掘ってくれたらもうけなんですね。だから、大立米掘ったら、二時半に済もうがあるいは四時半に済もうが、きょうは帰れ、出面は一人前つける。これが要するに我々備後の方では小間割りと言って、単純な請負、その日の仕事の請負ということでやっておりましたが、それが掘れるかという問題も一つありますわな。ずっと判決書を読んでみたら、いろいろ疑問な点はあるが、しかし総じてやったと思われる、これしかないよ。一つ一つ答えてないよ。
 殺し方も、警察の方の鑑定、それはありますけれども、ほかの人は、ほとんどの人がそれとは違う、扼殺ではないと言っておるわけでしょう。それを扼殺。するとずっとずれていって、しまいに扼殺と絞殺の併用であるというように判決の中身もずれていますわな。こうなるとこれは信用のおきようがないと思いますが、どうして一つ一つの事実を厳密にできないのですかな。
 例えば地下足袋は、桑畑のところを犯人が遁走したということに筋書きからなっていますわな。身の代金二十万円を要求した者がおったということは事実で、警察官が何十人か張り込んでおったけれども逃げられた。その足跡を石こうでとったのですけれども、それと石川一雄の兄貴の地下足袋とは大きさが違うということで問題になった。ところが、駆けて逃げよるときにずっずっとずる、ずったら石こうの型をとるのは大きくなる、こんなことを言っておるわけです。それは確かにそうでしょう。私らもそんなことは経験則で幾らでも経験しております。しかし、そうしたら、裏の山型もついて、福助足袋なら福助足袋、月星なら月星、裏の型までそれと同じように動いておるかどうかということまで検討しておるのでしょうかね。もうさまざまな疑問点が出てくるのです。
 これは刑事補償法に大きな関係を持つが、人を死刑にするとか無期の判決をするようなことについては特に厳密の上にも厳密を期さなければいかぬと思うが、どうして、いやこれはこう思う、ああ思う言って裁判官の心証にだけ逃げるのでしょうかね。その前に捜査の問題があるわけだが、捜査はどうしてそこらを厳密にしなかったのでしょうか。現に判決の中でも言っていますよ。捜査がずさんであったという非難は免れないと言っておるでしょう。寺尾裁判長、そう言っておるでしょう。その辺のことをちょっと聞かせてください。
#111
○濱政府委員 具体的事件の内容について御意見を申し上げることは差し控えさせていただきますが、ただ客観的な事実だけをお答えさせていただきたいと思います。
 第一次再審請求審、今委員が御指摘になっておられる事件の第一次再審請求審におきまして、今委員が御指摘になっておられるような、例えば万年筆の問題、あるいは脅迫状の筆跡の問題、あるいは全員持参指定場所から採取された足跡の問題、さらには、自白が客観的事実、例えば委員が先ほどからおっしゃっておられる殺害場所、死体の処置等の客観的事実と相違するのではないかというようなことについて主張が請求人の方からなされておりまして、これらの主張は東京高裁、最高裁においてすべて否定されたというふうに承知いたしております。
#112
○小森委員 それは否定するのは勝手ですけれども、その否定の仕方が、やはり公正な裁判ということで、否定の仕方の中に合理性がなければいかぬわけよね。そこを今問題としておるわけです。だから、ここは裁判所じゃないのだから、私が最後の結論として聞きたいのは、そういう疑問としておることには、大変な重罪を科しておるその相手に対する問題だから、疑問については合理的に、どういうか、疑いを差し挟む余地のない判決でないといかぬと思うのですけれどもね。
 だから、私はこの前、再審請求を門前で書類だけで却下するのではなくて、再審請求が必要かどうかということについて公判ということもあり得るかと言うたら、あり得るという答弁があったわけですが、これは相当の国民が関心を持っているのですよ。恐らく、日本のこれまでの裁判の歴史では一番大きな広がりを持った関心事だと思います。それについてはやはりきちっと、我が国の制度が今日持っておる、裁判上の制度の持っておる、最大限オープンというか、みんなにわかってもらえるような裁判をするのが妥当じゃないかと思いますが、最高裁島田局長、どうでしょうか。
#113
○島田最高裁判所長官代理者 答弁するに当たって、何遍もお断りするようで申しわけないのですが、具体的、個別的な事件については何とも申し上げられませんので御了承いただきまして、ただ一般論として言えば、私ども、国民にわかりやすく、納得していただける裁判というものを目指して、判決のあり方なり、審理のあり方なり、その辺のところは努力してまいってきておるつもりでございます。
#114
○小森委員 まあそれは、一般論には触れないと言いながら、そういう言い切り方だったら現状は全部正しいということになってしまうわけで、いやそれは、事がどうあろうが、どの事件ということでないが、徹底的に物を明らかにするようにするのが裁判の使命です、こういう答弁なら私はわかるのですけれどもね。今までもそうやっていますと言うのだったら今までが全部正しいということになる。ちょっと私は納得いかないのですね、それは。
 もう裁判の問題については、答えは一般論しか出ないし、およそ個々の議論の限界があるということは私も承知してやっておりますので、きょうはもう時間が半分以上たっておりますからこの程度にさせてもらいますが、先般問題にいたしました山本老、九十四歳の広島県高野町奥門田の山本という老人のことに関係して、私はあれには自白以外に物証はないと思います。いや、その事件は細かく通告されておらなかったからと言われればそれまでですけれども、話の順序として、私はそういうふうに思っておるのですが、それはどうでしょうかな。物証というものは私はなかったと思いますが。つまり、殺したという自白だけで、本当に殺したか殺さぬか、何の物証もない。これは古い事件だから、昔の刑事訴訟法ではそれでよかったのでしょうか。
#115
○濱政府委員 今委員御指摘の事件は、本年四月二十四日付で第二次再審請求が申し立てられているというふうに承知しているわけでございます。その第二次再審請求審において、請求人の方の主張も審理されるものと思いますので、今私の方から御意見を申し上げることはいたしかねるわけでございます。
#116
○小森委員 それで、九十四歳という年齢を考慮して、どうでしょうかね、早くその問題は白黒をつけるという言葉が適当かどうか知りませんけれども、私らは、無罪ならば生きておる間に無罪ということを、そういう名誉を回復したいですわな。九十四歳という年齢からいうと、前回の第一次再審からいって数年かかって棄却しているのですからね。だから、こういうようなものは裁判所の方は早く問題を、事を運ぶというお気持ちはあるのですか。
#117
○島田最高裁判所長官代理者 被告人が非常に老齢であるというようなことを考えますと、それは裁判所としても早くやろうという気持ちになる、これもあくまでしかし一般論としてお答えさせていただきたいと思います。一方において、十分慎重な審理も必要でありましょうし、その他、個々の裁判所のそれぞれの事情もあると思います。それらの諸般の事情を踏まえて、なるべく早くやろうという精神においては、どこの裁判所においても同様ではないかというふうに思われます。
#118
○小森委員 警察庁の方へ尋ねようと思っておったことなんですけれども、こういうことはあったかという歴史的事実ですから、同じ捜査線上にいる法務省刑事局に尋ねてもよいと思うのでありますが、あの人が逮捕されて、三日間拷問されて、あの拷問された三日間以外は自白をしていないので、後は全部自白を返しておるのですが、そんな場合に、ちょうど前の亡くなった昭和天皇の即柿の礼、御大典のある時期とがっちんこしておりまして、あの時期、一時期特別に警察が、言葉はちょっと適当でないかもわかりませんが、少々荒っぽい調べ方や、言うならば拷問とかあるいはうそとか、それよりはとにかく国内治安というものの方が第一義的だというようなことがあった時期なのかどうなのか。その点はどうでしょうか。
#119
○濱政府委員 私からお答えする資格があるかどうかわかりませんが、具体的事件における事実関係についてのお尋ねだといたしますと、ちょっと私からお答えいたしかねるわけでございます。
#120
○小森委員 これはまた、私も今調べつつありますので、その時期の法律とか命令とかというもの、あるいは勅令とかいうものがどんなになっているかということは調べつつありますが、どうもその疑いが濃いですね。それから、本人が言うには、これ見い、秘密の警察の指令が出ておって、証拠がのうても葬り去ろうと思えば葬り去ることができるように通達が来たんしゃ、だからおまえを葬ろうと思えば葬れるぞ、おまえの女房も一緒に葬るぞ、それよりはおまえがかぶった方がよかろうがというようなことを言っておると本人は言っておるのですね。
 だから、ここで言うたことが直接裁判所にこたえるわけではない。それは直接直ちにこたえるようでは三権分立もないけれども。しかし、そういうようなものを疑問に思う者が相当おるということは、それは裁判所は国民に白黒を明らかにつけるという意味で外で何やろうがかにやろうが関係ない。しかし、訴訟指揮とかそういうものは、これは民主主義が編み出した一つの裁判の形式といいますか、そんなものについては大いに気にかけてやってもらう必要があろう、私はこう思いますが、そういう意味ではどうですか、最高裁局長。
#121
○島田最高裁判所長官代理者 個々の裁判長が訴訟指揮をするに当たり、今委員が御指摘のような点も一つの考慮の判断材料として考えてやっておられることと思います。
#122
○小森委員 自分の味方の方はすべていいようにやっておると言わざるを得ぬのだろうと思うけれども、その言葉の中にいいようにやってくれよということがにじんでおるというふうに思う以外にないですね。国会でこういう議論になったんだから、多少は法務委員会のやりとりなんか裁判官も参考のために読まれるでしょうから、そういう気持ちがにじみ出ておるというふうに受けとめておきましょう。
 さて、時間が大分なくなりました。
 先般、石川君の仮釈の問題について、我が党の谷村委員の方からるるお尋ねをいたしました。その際に、以前、どなたがお答えになったか私も覚えていないけれども、私の質問に対して、未決勾留の期間というものは仮釈を決める場合の考慮事項の中身の一つだ、こういう意味のことが答えられております。考慮事項ということになると、例えばこれまで仮釈になった人に対してそんなことが数量的にわかるような形で考慮事項として処理されたものがあるのでしょうか。
#123
○飛田政府委員 突然のお尋ねなものですから調べてまいりませんでしたが、恐らくは数量的には処理されたというようなことはないと思います。
#124
○小森委員 それではここで本音を言いよるやらごまかしを言いよるやらわかりませんね。今のあなたの答弁がごまかしたと言うのじゃないのですよ。
 要するに、前々から言っておる、それは条件のうちの一つなのです、これは条件のうちの一つだから、したがって四百日のうち恐らく三十日ぐらいは計算に入れておるはずじゃありませんか、今までのいろいろな人の分もずっとこういう統計的な数字になりますよ、こうなれば私はよく納得いくのだけれども、そうじゃなくて数量的には出ないということになったら、言ってみるだけでしょう。自治省に私がよく言う特別交付税みたいなものですよ。計算式あるんかいと言うたら、ある。あるならどういう計算式になるんだと言ったら、いや、それはちょっと言われません。何ぼふえたんだ、いや、それも言われません。あれと同じじゃないですか。これはすぐれて国民の権利義務に関する問題なのですからね。
 では、何のために裁判所は未決勾留の期間を算入するといって無期へ、無限大のものへわずかな数字をつけるのですかな。その点もちょっと答えてみてください。
#125
○島田最高裁判所長官代理者 無期懲役刑の場合でも、一般恩赦がございますと減刑されまして無期から有期刑に変更されることがございます。その場合、有期刑に変更された場合にはこの未決勾留の算入というのが意味を持ってまいりますので、その場合のこともおもんぱかって未決の算入をいたしておるということでございます。
#126
○小森委員 私、そのことは、この前もちょっと答弁をいただいたと思うめですが、そういう場合に限ってだけしかこれは効果のないものなのですか。そこまでまた詰めると、いや、それは仮釈の折の判断の条件の一つだ、こうなってきて、判断の条件だというならこれまでのいろいろな人の統計的なものの中に何らかの法則性があるかと今のような問い方をしたら、いや、それは数字的にはないでしょう、こうなるので、そこになるともう将棋の千日手みたいになってくるわけですね。
 矯正局長、今まで一つの法則性みたいなものはどうですか、例えばおおむねこれぐらいはそのときに考慮されておるというようなことはありませんか。
#127
○飛田政府委員 そのような法則性についても私はちょっと存じていないというか、そういう例と申しますか、そういう法則性を使って処理したというような明確な事例はないと思っております。
#128
○小森委員 法則性を使ってでなくて、ずっとやってみて幾つかの類型が五つとか七つとか十とか出てきたら、図らずもこれぐらいは考慮しておるということが素人目にもわかるというようなそういう法則性はないかということ、どうでしょうかね。
#129
○飛田政府委員 無期懲役の受刑者の中で未決勾留が格段に長かったという先例というのは余りなかったこともあるのだろうと思います。ですから、その中でも未決勾留が比較的長い者は、受刑期間はこれぐらいだけれどもほかのこととあわせて、四つの条件がありますが、その四つの条件とあわせて考慮して、まあ未決がこれだけ長いからそろそろというような話は恐らく実務上はあると思いますが、そういうことが数量的とか法則とかということでは余り確定していない、こういうふうに御承知いただければと思います。
#130
○小森委員 次のような資料が出せるか出せないかというお答えをいただきたいのであります。
 それは、もちろん名前はA、B、Cでよろしいが、ここしばらくの間の全国的な各刑務所の仮釈になった、無期刑を受けて仮釈になった者で、その人の未決勾留期間がどれぐらいあったかということの資料はお出しいただけるものでしょうか。
#131
○飛田政府委員 今すぐさあどうだと言われるとちょっと……(小森委員「いや、今すぐじゃなくていいですよ」と呼ぶ)検討させていただくということで御了承いただきたいと思います。
#132
○小森委員 もしこれを拒絶されたら、図書館へ行って新聞を全部ひっくり返して、それでおよその推測は立つのです。事件が起きた、判決があった、仮釈になった、それは調べることはできますが、それは物すごい労力がかかってとても現実の間には合いませんので、できればひとつ、これはプライバシーという意味で名前なんかは要らないわけですから、努力をしてみていただきたいと思います。
 さて、その次にまた仮釈の具体論に入るのですけれども、具体論といいましても論理が具体的なんですが、この間矯正局長の谷村委員に対する答弁の中で、私は何カ所かちょっと腑に落ちないところがあったのです。けれども、それを一々言うわけにはいきませんから一つだけ申し上げておきたいと思います。
 私は、同じ国の同じ法律の適用だからわずかな差は各刑務所であってよいと思うけれども、幾ら刑務所長の判断だといっても、そこに十一年の者もおる、十二年の者もおるが、二十何年の者もおる。しかし、それは服役態度が悪いというようなことがあってそうなる場合はやむを得ないとしても、通常了とされるような服役態度の者についてそれだけの差があるということは、私は刑務所長の恣意だと思うのですね。それから、そんなことを許しておる権力構造の全体の恣意だと思うのですね。私はそんなことは納得がいかない。ただ、私が言いたいのは、例えば千葉刑務所と福岡刑務所と東京の府中刑務所に差があるということも今のような論理でなかなか納得がいかないのですけれども、千葉刑務所なら千葉刑務所の中にあって、今覚せい剤の服役者が多いから、これはつまり再犯の危険性がある、これはよくわかりますよ。そういう者がおるから、覚せい剤の常習者でない者もそれとの平等、均衡があるからなかなかできないんだというのは理屈に合わぬのじゃないですか。その点が聞いておったうちの私の最も大きい疑問点なんです。それはどうでしょうか。
#133
○飛田政府委員 まず二つの御質問がありますので、順次お答えさせていただきます。
 受刑者の仮釈放の申請というのは刑務所長の専権事項とされておりまして、その申請に当たっては、刑務所内に設けた仮釈放審査会というのがございまして、そこで本人の処遇関係、身上関係、犯罪関係及び保護関係を総合的、客観的に審査して、その結論をもとにして所長が申請を行うかどうか最終的に判断しているわけでございますから、刑務所長が全くの恣意でやっているわけじゃございませんで、仮釈放審査会で刑務所の処遇に当たっている者が十人以上関与していろいろ協議して決定しているわけでございます。ですから、その点で御理解いただきたいと思うわけです。
 その審査会で決定したのは、あくまで仮釈放というのは個人個人のいろいろな処遇関係、身上関係、犯罪関係、保護関係を審査するわけでございますから、それは各個人によって全部別でございます。ですから、同じぐらいのとおっしゃいますけれども、同じというのは実際はほとんどないわけでございまして、個人個人について、同じ無期懲役になった者でも処遇関係、身上関係、犯罪関係、保護関係はみんな異なるわけですから、それを審査した結果ばらつきが出るのはやむを得ないし、また、むしろその方が当然であろうかと思うわけでございます。
 刑務所で例えば府中と千葉で違うかといっても、刑務所の場合には、私どもはいろいろな有罪になった者を分類いたしまして、犯罪傾向の進んでいない人はこういう刑務所、犯罪傾向の進んでいる人はこういう刑務所というふうに分けてやっておりますから、個人個人でもばらつきがある上に刑務所に入るいろいろな犯罪者の傾向がまた違っておりますから、刑務所においてばらつきが出るのもやむを得ないことだというふうに考えておりまして、その点は御理解いただきたいと思うわけでございます。
 それからもう一点、覚せい剤の受刑者がいて、それが仮釈放がなかなかできないから、それに引きずられてほかの者が仮釈放がなかなかできないでいるというふうに私が答弁したという御質問の趣旨でございましたけれども、私といたしましては、あの委員会の議事録を読んでいただければ御理解いただけるかと思いますが、五月十二日の法務委員会において答弁したのは、そういうつもりで答弁したわけではございませんでした。
 もともと仮釈放というのは個別的なものですから、具体的な個別的な話になれば、それは全部個別的に審査して決定されるということが前提でございますが、御質問が非常にお上手な御質問でございまして、一般論のようなお尋ねの仕方をされたり、急に個別のお尋ねになったりというふうな非常に巧みな御質問でございまして、それで私が答弁したときの御質問の趣旨は、昔十六年ではなかったかというふうな一般論の御質問でございましたので、一般論として私は答弁したつもりでございまして、全国的に見た場合に、一時期は執行期間が十五、六年ぐらいで刑務所長から申請がなされた例がかなり多かったこともありましたけれども、最近は十九年ぐらいになっておりますという実情と、その理由を御説明したわけでございます。しかしながら、それは何も個別的なことを言ったわけじゃございませんで、一般的な傾向を申し上げたわけで、また私は、その答弁の際の別の御質問のところではそういうふうな趣旨のことも御答弁申し上げているつもりでございます。
#134
○小森委員 ついに時間がせっぱ詰まってまいりまして、裁判所の中で仮釈の審査というか服役態度の審査を検討されておられるのだろうと思いますが、それは多くの目で見る方が客観性があることは事実ですけれども、そういう組織そのものが丸ごと恣意を発揮するというような場合だって世の中には往々にしてあるのですね。例えばこの間のアメリカの黒人の騒動だって、あれは陪審がそろってへいちゃらであんなことをやったわけですからね、たくさんの人が。だから、恣意というのは必ずしも、個人的恣意といえばそれは個人の恣意ですけれども、恣意といえば、権力の場合厳にこれを慎まなければならぬ問題として私が言っているわけですから。ほかのことも反論したいことがいっぱいだけれども、時間がありませんから、仕方がないので……。
 最後に、法務大臣、話はちょっと変わりますけれども、これはどうせ問題が歴史的に片づくまでは尾を引く問題なんです、こういう問題は。山本老の問題だってそうなんですね。やがて歴史が証明したときには、何のためにこの世に生まれてきたのかわからないというような、命を失ってしまうというような場合だってあるわけです。しかし、それだからといってあきらめてはならぬ問題でありますから、私のような立場の者はこれは言い続けますけれども、最後に法務大臣、人権擁護局長もせっかく来てもらったんだけれども時間がなくなったから法務大臣にお尋ねしますが、地域改善対策協議会に法務省は法務事務次官が内閣総理大臣から任命されておるのです。にもかかわらず、私が知っておる範囲では、法務事務次官は出たことがないのじゃないかと思うのですね。その事実は、恐らく私の方が八割も九割も正しいと思います、私の事実の認識は。いや、あれでも一回出ておるとかいうようなことがあったとしても、おおむね私の認識は正しいと思うのです。
 これは大臣どうでしょうか。ほかの委員会とか審議会とかいろいろあるでしょう。あれは皆代理は出ていないと思うのです。ところが、これだけは代理が出る。例えば文部省なんかだったら臨時教育審議会とか教育課程審議会とか大学設置。学校法人審議会とかいうようなものがありまして、これには任命された者がまじめに出ると私は思うのですが、次官が任命されても出ないで、ほかの看が出て勝手なことを言っておるので、この間自治大臣に聞いたら、それは代理だから仕方がないのじゃないですか。それじゃ、ほかの人が代理で出てもいいですかと言ったら、それはそうじゃないですかと答えられた。ほかの人が代理でいい。代理でいいんだったら、内閣総理大臣が辞令を出す必要も何もない。変な話になるのですが、法務大臣はその点をどう思われますか。
#135
○田原国務大臣 私にとっては初めての突然の質問でしたので、その前にちょっと、事実関係を含んだ固有名詞の問題でもありますので、政府委員からまず答えてもらいます。
#136
○篠田政府委員 事実関係といたしましては、事務次官が出席したことはございません。全部代理が出ております。
#137
○田原国務大臣 私は官吏の経験がございますけれども、残念ながら事務次官の経験はございませんが、上に行けば行くほどいろいろ役職も多うございますし、なかなか全部に出席というのは不可能だろうと思います。だから代理ということであったと思うのですが、ただ、もう少し他の者とのバランスの関係等も調べさせていただいて、後日の問題にしていただければありがたいと思います。
#138
○小森委員 では、これで終わります。
#139
○浜田委員長 沢田広君。
#140
○沢田委員 最高裁の方にお伺いいたしますが、子供に対する親のしっけとか、子供がどの程度の危険に対応できるかということについて勉強会とか、裁判所の関係の人はどういう勉強の仕方をしているのか、ちょっとお聞かせください。
#141
○今井最高裁判所長官代理者 裁判官は、具体的な事件が参りますと、その事件に関連しましていろいろなことを勉強するわけでございます。主として法律の文献でございますが、判例だとかいろいろな論文ということでございます。そのほかにも一般的な、事件とは離れましてもいろいろな形で勉強をしております。主として本を読んだり、あるいは裁判官同士でいろいろな研究会をしたりということでございます。また、そういう裁判所の研修の機関といたしまして司法研修所というのがございますけれども、その中でも裁判官のいろいろな形での研究会というようなものを持たれております。その中で今おっしゃったようなことも勉強するというチャンスがあるわけでございます。
#142
○沢田委員 私が聞く質問は、主としてボランティアの活動とかあるいは養護学校の判決等の前提となる問題についてお伺いするわけです。
 一つの判例によれば、小学校六年生が結局、ボランティアで行った、その場合に、判決では事前調査ということを非常に厳しく言っているのですね。事前調査というのは金かかるのですよ。そこへ行くところまでの費用、その前に行ってなければならない。注意と指導の徹底、これはだれがやるんですか。あるいは児童の監視、救助体制、こう羅列して一々こういうボランティアが成り立つと思いますか。言うならこれは言いがかりですよ。水泳、海水浴へ行くのに前もってボランティアの親たちが行って、どの区域と決めたってほかの団体が来ちゃうようなものはそこはだめなんですから、専有しているものじゃないんですから、そんな言うべくしてできないことがなぜ判決に出てくるのでしょう。自分でやってみたらいいよ、こういうものを出した裁判官が。前もって行って事前調査をしろと言ったって、その場所がとれるかとれないかおんというのは結果論でしょう。また、その金はだれが出すのですか、言ってみてください。
#143
○今井最高裁判所長官代理者 今の御質問でございますが、一般論としまして、ボランティア活動でいろいろな事故が起きるといった場合に、そういうボランティア活動の責任のある人がどういう責任を負うのか、こういう問題ではなかろうかと思います。
 それにつきましては、それぞれの事件、事件に応じましていろいろな事実関係がございます。そのような事実関係を当事者が主張し、あるいは証拠を出していろいろな訴訟活動をするわけでございます。その上で明らかになりました事実関係に基づきまして、裁判官としましては法律、具体的には民法の七百九条の不法行為というようなことになろうかと思いますが、そのような法律の条文に照らしまして、果たしてそういう責任があるのかどうかという判断をするわけでございます。裁判官といたしましては、当該事件について、今申し上げましたような主張、立証を踏まえて自分が最も妥当であるというような結論を判決において示す、こういうふうに理解をしておるわけでございます。
#144
○沢田委員 ちっとも質問に答えてない。これは判決文なんです。言うならば一つの法律なんです。だから、その判決文の中に、もしこれが今後の判例になっていくとすれば、全国のボランティア活動の人は事前に全部行ってなければ、しかも小学校六年生から中学生に至るまでの範囲をここでは出している。だから、時間ないから結論的に言えば、中学生ぐらいになるまで親は泳ぎを教えなかったのか、川遊びはさせなかったのか、あるいはそういうことに全然タッチさせなかったのか、その方が問われるべきじゃないですか。善意のために子供を連れていって偶然そこで起きた、そうしたら八割はまけてやるけれども二割の責任があるなんていう判決で、昔こんなことは出たことないですよね。
 我々が子供の時分の状態を考えていけば、海に行くにしても川に行って泳ぐにしても、みんな自分でひとりで行って、死んだら死に損、こういうことで割り切ってしまったんだよね。なぜこうなるか。これは親がしなければならぬ基礎的な教育の基本を度外視して、偶然連れていった者が事故を起こせば責任がある、こういう形にしていったらいわゆる善意の運動というのは芽を摘まれてしまいますよね、そうは思いませんか。
#145
○今井最高裁判所長官代理者 今御質問ございましたのは、恐らく具体的な事案における判決を踏まえての御質問だろうと思います。
 申すまでもないことでございますけれども、具体的な事案につきましては、それぞれの裁判官がそれぞれの事案に即して判断をするということでございまして、それについてはいろいろな立場からの批判というのはあるであろうと思いますけれども、私どもといたしましては、特に事務当局としましてそれについてどうこうと言うことはできないわけでございます。
 ただ、一点申し上げておきたいのは、そういう事件を担当した裁判官と申しますのは、その事案の事実関係に応じまして、裁判所法あるいは憲法に定められておりますように、その法律と良心に従って最も適切である、こういうことで判決をしておるものだというふうに理解をしておるわけでございます。
#146
○沢田委員 ですから、法務大臣にお伺いをすることは、これからこういう人を採用していく場合に、試験問題にもっと配慮していかなければならぬのじゃないか。もう一つの自閉症の子供の問題もそうなんですが、えてして結果に対する追及ばかりはしているけれども、善意の行動に対して――これは社会的に見れば当然無罪です。無罪だし、賠償金だって払う義務ないですよ。こんなことをやっていたらだれも手を出さなくなります。だれも出さない。ボーイスカウトも、私らちょっと関係しているけれども、そんなもの連れていけなくなっちゃう。連れていってけがされたら、年じゅう損害賠償払っていたというような日には、とてもじゃないけれどもたまらない。だから、おっかなくなってくるから学校の先生も全部手を出さなくなってくる。日本の教育なり日本のモラルなり日本の家庭のしつけなり教育がだんだんだめになっていくという判決ばかりなんだ。
 そういうことに結局親が、小学校行くまでには泳ぎなら海なんかに連れていくとか、これには細かいことが一つの判例に出ているのです。海に行った判例の中には「潮の流れや海底の深度を十分に調査せずここんなことをやれと言ったって、前に行ってできるわけがないですよね。こんなものを前々に、ボランティア活動で行って調査なんか常識的にできるわけないでしょう。そういうことをやったら、その費用はだれが負担するのかといったら、そんな会合の中の費用は出しょうがないでしょう。常識では、一般論ではどうですか。一般論で答えてください。僕は判例の中から物を言っているけれども、その判例に答えるという意味ではなくて、一般論で、あなた方が今の生活をやっている環境の中にこういうことは可能ですか。あるいは皆さんが部下を連れてどこかへ旅行に行くのに、事前調査していったら、費用ばっかりかかっちゃってしょうがないでしょう。どうですか、一般論でいって答えてみてください。
#147
○今井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 一般論ということでございますけれども、あくまでもこれは具体的な事件が前提になっておることでございますし、またその具体的な事件の事実関係は各事件によってそれぞれ千差万別でございます。一般論としてどうかと言われましても、ちょっとお答えは難しいと言わざるを得ないと思います。
 当該具体的な事件につきましては、その当事者の方でもしそれに対して不満があるということでございますと、上訴というような訴訟法で定められた手続によりまして是正されるべきものだというふうに考えておるわけでございます。
#148
○沢田委員 これは大臣に聞きますが、これも一般論、具体的なものじゃない。
 「小学生を海岸で遊ばせる場合、引率者としては、児童が海で溺れることのないよう、海の深さ、海底の起伏、潮の流れの向き及び強弱等につき事前に十分な調査をし、その調査結果を踏まえて児童に対する注意と指導を徹底しておくこと及び児童が危険な行動に出ることのないよう常に監視と救助の体制を整えておくべき注意義務がある」これはどうですか。これは一般の学校とかあれじゃないのですよ。こういうことで、一般の市民が善意の行動はみんな縛られてしまうという感じがする。こういう判例によってはもう何も手が出せなくなっちゃう。一週間も泊まって調べてこなかったら連れていけないということになっちゃう。
 大臣があれだったら刑事局長の方で答えてもらおうかな。刑事局長は、こういうのを起訴していった経過があるわけだから、こういうことが実際に可能なのか。これは皆さんの子供で可能ですか、親であったって可能じゃないでしょう。やはり夏休みぐらいは民間企業へ行ったり、民間の町内会へ行ったり、民間のところへ全部行って体験しながら判決を出せるようなものをつくっていかなかったら、こういう非常識なものができてきてしまう。あえて私は非常識と言う。こんなこと言うべくしてできっこないですよ。こんなことできたらお目にかかる、全国でこんなことやったら金縛りになっちゃって動けなくなっちゃう、またやってもいないでしょう。感想でいいですから答えてみてください。こんな非常識がまかり通ってはたまったものじゃない。
#149
○濱政府委員 今委員御指摘の、具体的事件についてということではなしに一般的にどう思うかというお尋ねだと思うわけでございます。結局私の方からお答え申し上げますことは、そういう子供を引率した人なりの刑事責任という側面からどういうふうに考えるかということになろうかと思うわけでございます。
 これは一般的に申しますと、過失犯の認定に当たりましては、結果を発生させた行為者に注意義務があるということ、行為者がその注意義務を怠ったということ、それから行為当時、行為者が注意義務を履行することが可能な状況にあったということが必要になるわけでございまして、これらの要件の存在が認められた場合において初めて過失犯の成立が認められることになるわけでございます。したがいまして、個々具体的のケースにおいて今申し上げたような過失犯の要件が認定されるかどうかということにかかってくるというお答えしか申し上げられないわけでございます。
#150
○沢田委員 そういうことを聞いているわけじゃないのです。こういう認識に立つことが一般社会に通用する論理がどうかということを聞いているのですよ。そこまで社会にあるいはボランティアに求めることは過度ではなさ過ぎるのかと、一般論として常識論として、そこまでやらせていくというものがルールでつくられていくことは、それは極めて活動を抑制する効果にしかなっていかないのじゃないかということを言っているわけです。
 これを参考にして考えてみると、これはとてもじゃない、人を連れていったら大変なことになる。これは民事の場合はもう補償料を払っているのですからね、刑事は一応無罪になっているようですが。そういうことで、それでも裁判所へ連れていかれるだけでもう二度とそういうのにはかかわりたくない、こうなっていくだろうと思うのです。裁判官が来ていればその人と向かい合ってやりたいのだけれども、そうはいかないでしょう。だけれども、今後はひとつそういう、これは私は常識の議論を言っているのですよ、一般論として。あなたの子供をだれかが連れていった場合に、そういうことが起こったときに親は親の権利として訴訟を起こすかもしれない。それは親の方が平素の訓練を怠っていたのであって、泳ぎを教えなかったとか。それが連れていった人の責任だというのも、これは余りにも裁判上の――だから頭のいい人は象牙の塔に立てこもって、昔はお蔵の中へ入って勉強したそうですが、一般の常識が通用しない。こんなことが通っていったら、よその子供を連れていく人は一人もいなくなっちゃいますよ。そう思いませんか、大臣。これは一般論ですよ。連れていったら、けがしたから損害賠償だと言われて、連れていきますか。
#151
○田原国務大臣 個別論であれ一般論であれ、私の立場としては、幾ら尊敬する先生の御質問であっても、ちょっと裁判の批判と言われそうなことはお答えできませんが、今起訴をするという立場からは刑事局長がお答えしたあれで、例外的なことがあったのだろうと思うわけでございまして、それ以上はひとつ御勘弁をお願いします。
#152
○沢田委員 レクチャーするとこういうことになるからあれなんだね。判決に基づいて聞くということになるから、結果的には何か判決に水をかけるようなことになってはいけないと気にするのですが、私は一般の社会の中に日常行われておる行事について言っている。ただ、それを持ってきたのはここから言葉は持ってきたのだけれども、そうでないと正確性を欠くからということなんですね。それが社会的に規制をしていくことは世の中の正常な発展のためにプラスかマイナスか、これは大臣答えられるでしょう。こういう判例に基づいてだんだんそういうことに手を出さなくなっていくということが世の中の正常な発展にプラスですか。
#153
○田原国務大臣 私もいつかは終わりが来て法務大臣をやめるときが来ると思いますが、その後先生と酒を酌み交わしながらでもいろいろ意見を交わしたいと思いますので、それまではお許しを賜りたいと思います。
#154
○沢田委員 大臣が法務省という立場を持っているからなんでしょうが、だから文部省にも来てもらっています。文部省としては以上のような経過について、引率者を指揮する立場というような意味から見ると、先生だってこのごろは裁判になって負けて損害賠償をとられる例があるから、びんたはしない。暴力は下手に使うと負けちゃうでしょうからね、体も相手がでかいから。だから使えないということもあるでしょうが、何も言えなくなってきてとにかく放任主義になる、規制をしようとすれば逆にやられてしまう、こういうようなことになっているわけでありますが、そういう現状に対してこういう判決がプラスで響いていますか、マイナスで響いていますか、それだけ答えてください。
#155
○石川説明員 お答えいたします。
 私ども、一般論といいますか、司法の判決があるということになりますとこれに服するという立場で仕事を進めなければいけないわけでございますが、先生御指摘のとおり、子供たちのスポーツ活動、こういったことは多くの部分でボランティアに依存しながら仕事が進められている、こういう現状でございますので、私どもといたしましては、指導者を含めたスポーツ活動あるいは子供会活動などに係るいわゆる損害保険でありますけれども、こういったものの充実をすること、それから指導書等におきまして事故の発生を防ぐための事前の手だて等について指導する、こういう形で、なるべくスポーツ活動等が盛んに行われるように、かつ問題が生じないようにということに努めて仕事を進めてきているところでございます。
#156
○沢田委員 答えになんかなっていないよね。
 やはり全国の青少年の育成というものを心がけ、二十一世紀を支える子供たちが、たくましく、しかも老齢化社会を迎えて、それぞれ負担も多くしなければならないし活動力も非常に高くなければならぬという子供たちがつくられていかなければならぬし、また育てていかなければならぬ。こういう状況の中にこういう発想が生まれていって、これはあとは答えにくいのでしょうからいいですけれども、こういう発想は、とにかく、その後ろにいると思う裁判官とも、よく聞いて、あえて私はそういうことを言うが、こういう非常識なものがまかり通るようなことであってはだめだ。
 ボランティア活動で事前に一々調査してやっていけるものがどこにありますか。旅行社に頼んで行ったやつもだめだったけれどもね。そういうことができるはずはないんだ。そんなむだな暇も今はないんだ。そういうことに対して事前の調査をこう厳格に追求するということは、これはあらゆるボランティア活動に非常な負担もかけることだし犠牲を負わせることであるということを特に銘記しておいてもらいたいと思うのです。
 八十キングに行った例について言うと、小学校一年生から六年生までだった。しかも、これは子供会の関係なんですが、三十人に十一人が行っているんですか、児童が三十名でOBの中学生が六名、引率者十一名。保育園よりもずっと保護基準は高い。それで行って、子供が川の中で死んだ。川の中で死んだのに当たって、「監視体制を整えて事故を未然に防止すべき義務がある。」しかも、「川遊びの場所の選定に当たっては、実施区域の危険性の有無を十分に調査する」、それから、「児童に対して実施区域を明確に指示しこ川遊びに行って一々そんなことできるわけないです、大勢、その人たちだけのものじゃないんですから。「児童の年齢構成、行動特徴などからみてこれも理屈だ。上・下流の深みに入りこむことのないよう監視体制を整えるということで、後も細かいこと書いてありますが、行っているときに、みんなが、これはだれが指揮者でだれがどういう任務だなんて分担まで全部決めなかったら、とてもじゃないが普通の常識だ。それで、この子は岩の上から落っこって、川ですから深いところもあれば浅いところもある、その深いところへ入って死んだ、こういうことなんです。
 確かに、子供を亡くした親の立場に立ては私も十分その事情はわかる。しかし、こういう判決によって、八割は免責になったとしても、二割の色担であっても社会的な抑制力というものが働いてくることは間違いないんだ。ですから、そういう点に対する、文部省としては、今のような答弁ではこれからボランティア活動はどんどん衰退しでしまうし、いい青年や大人が生まれてこない、こういうことにもつながるわけでありますから、もっと自信と勇気を持っていかなければいかぬ、こういうことです。
 それからもう一つ、時間の関係で、養護学校。
これは養護学校だから二千八百六十万払えるので、県だから、税金から払うのだから痛くはないでしょう。しかし、私立だったら大変ですね、同じ問題であっても。
 自閉症の子供も、親に全然責任ないかといったらそうでないですね。自閉症の子供を持っている親ばと普通学級に入れたがる。普通学級に入れて教育してもらうことを期待する。養護学校に行きなさいと言ってみても普通学校へ行きたがる。それは精神的なものもありますけれども、普通の人とつき合ったりけんかをしたりすることが成長を高める、こういう説もありますから、刺激を与えるということもあるのでそういうことがあるのだと思うのです。しかしそれでも、教師の過失を認めた上で――水は二十センチかな、これは数字が間違ったらあれですが。「国家賠償法の規定から損害賠償は公務員個人に請求できず、県が負担すべきである。」こうなって、約二千八百万の支払い命令を出した、こういうことだ。水を怖がって暴れたために、頭を数回水の中に押し込んだ。それでまたたくさん水を飲んで、間もなく死んだ。これは神奈川県の事件ですね。
 こういうことも、結果的には今後はこういう行動には全然出られなくなってしまう。これが県立じゃなく私立の高校であったら、とても払えるようなものじゃないですね。どうです、文部省。こういうことについて、補償の問題はいいですけれども、そういう責任体制というものがつくられていくことが学校教育の場では望ましいのかどうか。答えてくだい。
#157
○石川説明員 お答えいたします。
 今先生がお話しになったのは、神奈川県の伊勢原の養護学校で起きた水泳の授業中の事故のことかと思うわけでございますが、こういった事件が起きたことについては、まず何よりもまことに残念なことであると認識しているわけであります。
 私ども、水泳指導というのは一般的に小学校でいえば四年から、そういう中で一定程度泳げるようにということで指導しているのですが、養護学校の場合につきましては程度というものが千差万別でありますので、児童生徒の心身の発達程度あるいは障害の程度を十分配慮しながら指導をしていくようにということで行っているわけでございまして、今後とも子供たちのためのこういった水泳指導は大変必要なことである。また一方、こういった事故が起きないようにということで、指導書等で指導をしているところでありますが、今回の事故等を踏まえて、現在指導書の改定中でもありますので、さらにこういった点の指導が十分行き届くようにしていきたいと考えている次第であります。
#158
○沢田委員 よく文部大臣に言ってください。前に「なだしお」の事件のときに、潜水艦に乗っていた水兵――水兵じゃない、あれは陸兵が。これは皮肉で言っているわけですが、おれは泳げないから飛び込めないと言ったという有名な話がありますが、これは大臣との禅問答みたいなものだ。そういう人間が幾らどんどん日本に生まれてきても正常な日本の国の発展にプラスにならぬ。潜水艦に乗っている正規の人間が、おれは海で泳げないからと、おぼれようとしている人間をほったらかして逃げちゃったというのは、これだって許されることじゃないでしょう。
 これは答えられるでしょう。あと三十秒ぐらいですが、どうですか。
#159
○田原国務大臣 一般論として、船に乗るのを職業とする人は泳げた方がいいと思います。
#160
○沢田委員 ぜひこれをこのままで終わらせることなく、ひとつそれぞれの部署に行って、こういう口の悪い男もいるんだということを、これは世間の声ですからね。沢田広の問題だけじゃなくて世間の声としてよく訴えて、夏なんか夏休みで休んでないで、それこそ暑い海にでも行って、本当にそれが事前調査をしてやれるかどうか自分で確かめてみてもらいたい、こういうことを要望して終わります。
#161
○浜田委員長 谷村啓介君。
#162
○谷村委員 質問をいたしたいと思います。質問の趣旨は、仮処分が行われた場合、例えばそれが賃金を支払えというような決定であるとか、それから解雇された場合でもそういうケースがあるわけでありますが、そういう場合に社会保険の適用がどうかという問題について質問をいたしたいというふうに思うわけであります。
 まず、最高裁判所の方にお尋ねいたしますが、具体の問題として質問をいたしてみたいと思うわけでありますけれども、昭和六十三年十一月に岡山地裁の(ヨ)第三二一号配転命令無効仮処分申請、こういうのが一つあります。それからもう一つは、同じ会社で起きております問題で、平成二年(ヨ)第三二五号地位保全等仮処分申請事件、平成三年(ラ)第二六号地位保全等仮処分申請一部却下決定に対する抗告事件。こういう三つの問題、同じ会社で起きているわけでありますけれども、概要について御説明願いたいと思います。
#163
○今井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
 まず、岡山地裁の昭和六三年(ヨ)第三二一号配転命令無効仮処分申請事件でございます。この事件は、ある会社がございまして、その会社の従業員でございますが、これがある工場に勤めておったわけでございます。その方が配置転換をされた。二人の方はある別の工場へ配置転換をされた。それからもう一人の方は東京支店へ配置転換された。こういう事件でございます。
 この配置転換が労働協約に違反するとか不当労働行為であるということで無効だ、こういうことで新しい配置転換先での勤務をする義務がないということについて仮の地位を定めてほしい、それから同時に、その配置転換後は賃金が支払われなかったものですから、賃金を払ってくれ、こういう仮処分でございます。
 これにつきまして平成元年五月十七日に岡山地裁で決定がございました。この決定の内容を概略申しますと、この二人の債権者、二人の従業員でございますが、それについては申請をほぼ認めまして、新しい配置転換先で勤務する義務のないことを仮に定める、それから賃金に相当する全員を第一審の判決言い渡しまで仮に支払え、こういう仮処分決定がされたわけでございます。それからもう一人の方については申請が却下された、こういうことでございます。
 それからもう一件でございますが、これは岡山地裁の平成二年(ヨ)第三二五号地位保全等仮処分申請事件でございます。これも債務者の会社は先ほどの事件と同じ会社でございます。債権者である労働者は別の方で、二人でございます。これにつきましては、この会社の方が債権者二人を懲戒解雇ということにしたわけでございます。
 これについて労働者の方から、その解雇については根拠がない、あるいは不当労働行為であるとか人事権の乱用だ、こういうことで無効だ、こういうことを主張しました。そして仮処分申請としましては、会社の従業員である地位を仮に定める、それから解雇後の賃金を本案判決確定まで仮に支払え、こういう申請をしたわけでございます。
 これにつきまして、一審の岡山地裁でございますが、平成三年五月二十一日に決定がございまして、この決定の内容は、解雇されたとき以降平成四年六月まで毎月金三十万円を仮に支払え、それからその余の申請を却下する、こういうことでございます。その余の申請といいますのは、従業員たる地位を仮に定める、こういうことが主な内容でございます。
 これにつきましてこの債権者である労働者の方から抗告をいたしました。これが先ほど言われました平成三年(ラ)第二六号という事件であります。これにつきましては広島高裁の岡山支部で平成四年二月二十四日に決定がございまして、この決定は「原決定を次のとおり変更する。」ということでございます。その要旨は、抗告人ら、これは労働者でございますが、抗告人らが会社の従業員の地位にあることを仮に定めるというのが一つでございます。それからもう一つは、解雇後本案判決の確定に至るまで毎月賃金相当額を支払え、こういうことでございます。
#164
○谷村委員 ここで社会保険庁の方にちょっとお尋ねいたします。
 まず第一の事件の場合でありますが、社会保険の方はどうなっておるのか。そして、社会保険の権利といいますか、どういう場合に社会保険が得られるのか。そういう点についてちょっとお尋ねしておきたいと思うわけであります。
#165
○中田説明員 お答え申し上げます。
 まず、先ほどお尋ねの前の方の事件でございますが、現在係争中でございまして、地位の保全に関する裁判所の判定がなされていないという現段階におきましては、解雇の効力の有無を保険者が一方的に判断するということは極めて困難でございますし、不適当であると考えております。そのようなことから、事業主から提出されました資格喪失届を受理したまま本日に至っております。
 それから第二点の、一般的なこういう解雇の効力について係争中の資格関係はどうなっているかということでございますが、係争中の被保険者に係ります資格喪失届が事業主から社会保険事務所に提出されました場合におきましては、労働法規でございますとか協約違反の有無につきまして、健康保険、厚生年金保険の保険者が一方的にこれを認定するということは、先ほど申し上げましたように甚だ困難かつ不当でありますので、一応資格喪失届を受理するということにいたしているところでございます。その後この係争事件に対しまして裁判所の仮処分の決定でありますとか判決によりまして解雇無効の判定がなされて、その効力が発生いたしましたときにはそれに従いまして、遡及をいたしまして被保険者資格の喪失の処理を取り消すということにいたしまして、被保険者資格を存続させるという取り扱いにいたしているところでございます。
#166
○谷村委員 問いに正確に答えてもらいたいのです。つまり、社会保険を有する資格といいますか、この事件とは離れて、どういう人の場合に社会保険が適用されるのかということを今尋ねたのですよ。
#167
○中田説明員 お答えいたします。
 社会保険の被保険者資格の取得につきましては、事業主と従業員との間に雇用の契約に基づきまして報酬等の支払いがされるという雇用の実態があれば、雇用されるに至りましたときから資格を取得するということにいたしまして、事業主からの資格取得届の届け出に基づきまして資格を確認することによりまして被保険者となっていただいているわけでございます。
#168
○谷村委員 そこで先ほどの質問に返りますが、小野、萩原という二人の事件と、向井、太田という二人の事件の二つがありますが、この決定の要旨を見ますと、一つは配転が無効でありますということで賃金を払いなさいという命令をしていますね。同時に、もう一つの裁判、仮処分では、これは解雇無効ということで、これもまた賃金を払いなさいとなっているのですね。これは裁判所の方へ聞くのですよ。さっき御説明があったように、いずれにしても配転は無効でありますという決定が出されて、そして賃金は一審判決が出るまで払いなさいとなっていますね。現に払われているのです、まだ一審判決が出ませんから。二件目も同じようなことでございます。全員を払いなさい、賃金として払いなさいとなっていますね。これは裁判所の「保全の必要性」という主張の中にちゃんと書いてありますが、その場合の全員、お金ですね、私は当然これは両者とも賃金だと思っておるのですが、そういう点はいかがでしょう。
#169
○今井最高裁判所長官代理者 この二つの事件はいずれも仮処分事件でございます。詳しく言いますと、仮の地位を定める仮処分ということで、例えば労働者が解雇をされた場合に賃金をもらえないのではその日の生活にも困るというようなことで、緊急の必要があるということで賃金の仮払いを命ずるということでございまして、この性格がどうかということはいろいろ非常に難しい議論のある問題でございます。
 本案判決をもちまして賃金の支払いをしろということに決まりますと、これは賃金であるということがはっきりするわけでございますけれども、仮処分の場合はそういうことではなくて、今申しましたように、労働者が解雇されて、解雇が無効であるのに賃金が支払われないというときに、その日の生活にも困るようなことがあるではないか、それでは気の毒といいましょうか非常に酷でございますので、そういうような必要に備えて賃金の相当額を払えということでございますので、その性格が賃金であるというのかあるいは仮処分でもって支払われる金額ということになるのか、そのあたりは非常に難しいといいましょうか議論があるところだというふうに考えておるわけでございます。
#170
○谷村委員 第二件目の広島高裁抗告に対する主張の中を見ますと「本件賃金の一部仮払いについても、緊急性があり、その保全の必要性がある」ということを指摘されまして、主文は具体的に金幾らを払いなさいとなっていますね。こういうふうに見ますと、私どもが見る場合に、その際に払われるものは給料相当分ですから、金額も非常にきちっとしているのですね。過去の賃金相当分が払われているのですから、今の御説明ではございますが、私どもはこれは賃金として当然支給されると理解をしておるわけですが、ただ第一件について、小野秀夫、萩原さんの件については、さっきも説明がありましたけれども、これは無効ですよ、賃金を払いなさいよという決定が出る直前に解雇されているのです。しかも、その主たる理由は配転命令拒否なんです。それで解雇されている。その解雇の時点から、さっき社会保険庁お答えのように、保険が打ち切られたのです。
 ただ、問題は、配転無効になったという仮処分について、これはずっといまだに賃金の仮払いが行われているのです。解雇しますよという通知が平成元年四月二十七日に来ているのですが、この配転命令無効判決はその後の五月十七日にあったわけですけれども、しかし解雇通知なるものが出ても、これは今解雇については争いが行われておりますけれども、しかし一番最初の分の一審判決が出るまでずっと払いなさいよとなっているものですから、会社はそれを争わずに現にずっと賃金が払われているのですね。そういう場合に、解雇通知が簡単に出されて、そして手続がとられたから喪失したんだという理屈は合わないのじゃないか。現にお金が払われている、給与相当分が払われているのです。例えば、もう一方の仮処分申請については、現にこれも払われているのですね。つまり、向井さんの事件については払われているのですよ。しかも、社会保険はちゃんとつながっているんだ。片方は解雇であり、片方は配転拒否であるけれども、払われている賃金相当分の性質は一緒なんですね。社会保険庁、その点の考え方はどうなんですか。
#171
○中田説明員 お答えいたします。
 まず地位保全仮処分と賃金を払うことの仮処分が両方仮処分決定されておりますのは、決定されました段階で資格喪失届の取り消し居を受理いたしまして被保険者資格を継続しているのは今申し上げたとおりでございますが、これは、先ほどからお話がありますように、地位にあることを仮に定めるという裁判所の判断に基づきまして資格の存続を行っているものでございますが、さきの方の事件につきましては、仮処分で給与相当額が仮に支払われていることになっております事件と解雇に基づきます事件とは別の事件でございまして、その地位の保全に関する判断がいまだなされていないという相違がございまして、その判断がなされるまで資格の喪失の受理を続けているということになっているものでございます。
#172
○谷村委員 国税庁は見えていらっしゃいますね。今言った、解雇になったんだけれども、いまだに配転命令が無効であるということでずっと賃金が支払われているという第一のケースは、給料として国税庁の方はちゃんと源泉徴収されているのですね。それはどういうことなんでしょう。
#173
○濱田説明員 お答え申し上げます。
 個別にわたる事項につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。一般論で申し上げますと、居住者に対しまして国内で所得税法第二十八条に規定する給与を支払う場合には、支払い者は所得税を源泉徴収してこれを国に納付する義務を有することになっております。
 以上でございます。
#174
○谷村委員 私の手元に日本説経研究会発行の「源泉所得税の取扱」という中に「懲戒解雇した従業員に対して、地位保全の仮処分判決があり、当社では従前の給与の額の九〇%に相当する金額を毎月支払っていますが、この金額については、給与所得として所得税を源泉徴収することになりますか。」という問いに対して「給与相当額として支払うものであり、通常の給与と同様に所得税を源泉徴収する」、今御説明になったとおりだと思うのでありますけれども、その際は、片方の保険は切られるけれども国税の方は給与としてちゃんと源泉徴収されておる。この事実を見ましても、社会保険庁、やはりこれは今の扱いが大変問題があるというふうに私は思えてなりません。
 なぜなら、「健康保険等の取扱いについて」という昭和二十五年十月、厚生省保険局長の通達がございますが、この中に「解雇行為」つまり不当労働行為でもいいのですが、あるいは配転無効でもいいと思うのですが、そういうことが「労働法規又は労働協約に違反することが明かな場合を除いてこそういう処置をすべきである、打ち切るというのです。こういうふうにきちっとなっておるのですね。そして、最後の方を見ますと「右労働法規又は協約違反の有無について、各保険者が一方的にこれを認定することは困難且つ不適当であるから、当該保険者においては、労働関係主管当局の意見を聞く等により、事件結着の見透しを慎重検討の上処理すること。」こうなっていますね。これはお持ちでしょう。そうすると、この事件の場合は、解雇されたから社会保険を切ったんだとあなたはおっしゃるけれども、これを機械的にやらずに、ちゃんと突っ込んでこの事件について親切に処理されようと思えば、その解雇なるものがどういう状況の中で出てきたかということははっきりしているのですね。
 例えば「保全の必要性」というところの裁判所の主張の中に「本件疎明資料及び審尋の結果によれば、債権者らがこつまり労働者ですね、「いずれも賃金労働者であり、他の生活上の手段たる資産、資力を有しないこと、債務者が、債権者らの従前の職場での就労を拒否し、これに対し警告を繰り返し」つまり債務者、会社側は就労しないことについて非常に警告を発しておるというふうな状況があるから「こままでは債権者らは懲戒解雇されることが予想されることが一応認められる。」というふうにちゃんと見通しているのです、次の解雇処置を。会社が解雇で来るだろうということを実はその配転命令無効の仮処分の決定をする際の裁判所の見解としてちゃんと示してあるのですね、保全の必要性の一つとして。だから、あなた方がおっしゃるように、そういう流れがあって、その途中で、まさに配転無効の命令が出る直前に解雇で会社側がまた来た、そういう意図というものが明らかにこの配転無効の決定の中に見られるのですね。
 そういうふうに考えてくると、機械的に、解雇されたから、したがってそのことが会社から連絡があったから、そういう手続がとられたから法に従ってやったんだということだけで足りるのかどうか。つまり、先ほど言いました二十五年の通達を見ましても、「解雇行為が労働法規又は労働協約に違反することが明かな場合」は除かれるのだ。しかも、この後半にありますように「右労働法規又は協約違反の有無について、各保険者が一方的にこれを認定することは困難且つ不適当であるから、当該保険者においては、労働関係主管当局の意見を聞く等によりこということになっている。「等」とありますね。この「等」なんというものの解釈は、やはりこの事件そのもの、解雇そのものがどういうところで起きたかという点についての判断ができる非常にいい材料が実は裁判所の決定文にあるんですから、そこまで突っ込みなさい、もしそういうことがあるならやはりちゃんと調査しなさいよということがちゃんとあなた方の通達に載っている。その調査も何もせずに、機械的にそれを切ってしまう。しかも、給与相当分は解雇通知が来てもいまだにずっと支払われておる。もっとも、このケースはまれなケースだと思うのですよ。しかし、私は、通達の趣旨というものはそこまで見通した内容も持っておるぞ、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
#175
○中田説明員 お答えいたします。
 先ほどから申し上げておりますように、この事件につきましては、仮処分のほかに解雇無効の訴えがなされておりまして、労使で係争中の事件でございます。それで、その事件につきましてはいまだに裁判所で解雇無効の判定がなされていないということでございますので、私どもがこの個別の解雇行為につきまして労働法規とか労働協約に違反するか否かについて判断するのは極めて困難でございます。裁判所の判断をお待ちしているというのが実態でございます。
#176
○谷村委員 問題をそらしたらいかぬよ。さっき言っているように、配転無効の決定の内容には、やがて会社側は解雇してくるでしょう、したがって地位保全をしておかなければなりませんということでその給与の支払い命令をやっているのです。そのことが実は明確に書いてあるのです。普通の事件とは違うのですね。そこまで社会保険庁なるものは、やはりこの通達によって踏み込めるところは踏み込んで、調査すべきところは調査して、続けられるものは続けていくという立場の方が私は正しいのではないか、こう思うのです。それが一つ。
 それからもう一つは、第二件目の向井、太田という訴訟を見てみますと、社会保険そのものに対する裁判所の考え方等非常にシビアに考えておるのですね。この事件は、先ほども説明があったように、解雇になった、それは不当解雇だということで身分保全と給与支払い命令の二つの要求をしておったのだけれども、一審では身分保全の方は「その余の」ということで片づけられてしまった。ところが、給与の方は払いなさい、しかもそれが期限つきだというようなことであったわけですが、したがって抗告をした。それで、それに対して、原審が実は間違いであった、一部足らざるところがあったということで全面的に認めて、しかもその中に「当裁判所の判断」としては「本件抗告の理由として抗告人らは、抗告人らが相手方の従業員たる地位の保全が認められないと、内山工業労働組合の委員長、書記長として相手方会社構内への立ち入り、相手方との交渉、相手方との各種委員会・協議会への出席の拒否等の不利益が大きく、また、健康保険、厚生年金加入等において不利益な取扱を受けることになり、これを仮に定める緊急性があり、その保全の必要性があるこというふうに決定の中では健康保険の問題についてもきっちり触れて、そして原決定を直したのですよ。これほど実はあなた方が取り扱っている保険というものは働く者にとっては大事なのですよ。
 その大事なものをあなたは守らなければならぬ。しかも、さっきの話に戻りますけれども、賃金はずっと払われている、解雇されようが会社は払っているのです。しかも、国税当局はそこから源泉徴収している。賃金ということは、明らかにこれは雇用契約があるということですよ。ですから、極めてそれは希有なケースだけれども、私が今指摘したような問題について、希有な問題だけに、今までの判断をしてまいったいろいろなケースがあるけれども、それとはちょっと違ったケースであるということをあなた方は認められて、これをここでせっかく取り上げたわけですから、このケースはケースとしてやはり検討していく、そして経営者を指導していくということになりませんか。
#177
○中田説明員 重ねて同じようなことを言って申しわけございませんですが、その解雇の効力につきまして争われておりますときに、保険者の方でそういう労働法規とか協約違反の有無について判断することは極めて困難であるということでございまして、その地位保全に関します裁判所の判定がなされるということを待ってその資格の存続を判断するということにさせていただきたいと思います。
#178
○谷村委員 全然わかってないじゃないですか、それは。解雇の問題はあるよ、あるけれども賃金がずっと現に払われているのだよ。やはりそこのところまで踏み込んで判断すべきだということ、私はその根拠はこの通達に、あなた方厚生省が出しておる通連の中にその根拠があるぞという主張をしているのです。なぜなら、先ほども読み上げたように、時間がありませんから繰り返しませんけれども、そこにやはり根拠を求めている。少なくとも社会保険庁なるものは、そういう働く皆さんの側に立って健康を守るということが主眼じゃありませんか。非常に形式的にそんなことをおやりになるということについては、非常に問題があるというふうに思いますよ。しかも、極めてまれなケースだ。賃金が支払われながら、なおその途中で嫌がらせて不当解雇をしてきた。しかも、現に一審判決がおりるまでずっと賃金が払われておる。何らその賃金に対しては会社側は異議を申し立てずに、唯々諾々と実はお金を払い続けておるのです。そういうケースなのです。もう一回、いかがですか。時間がありません。
#179
○中田説明員 二月の段階で社会保険の重要性というようなことも、仮処分の決定の際に話がありました。それから、今先生のおっしゃいましたような労働者保護の立場で取り組んでいくのは我々の責務であると認識しておりまして、この件につきましてもさらに事情等を調査させていただきたいと思っております。
#180
○谷村委員 終わります。
#181
○浜田委員長 冬柴鐵三君。
#182
○冬柴委員 公明党・国民会議の冬柴鐵三でございます。本日は久しぶりに一般質疑の機会をいただきましたので、当法務委員会で扱うことが必ずしもふさわしくないかもわかりませんけれども、直接人の生命や身体にかかわる事項でございますので、行政全般に対し最高責任を負担される内閣の構成員である法務大臣にこの点について御認識をいただき、その改善に所管を越えて御努力をいただきたい、このような期待と思いで最初二つの問題を取り上げ、それぞれ所管の説明員の方に伺ってまいりたい、このように思います。
 まず、火災時に内から外せる面格子の設置推進という問題を取り上げてみたいと思います。
 昭和六十三年九月四日未明、私の選挙区内にあります西宮市の共同住宅で発生した火災で、出火住居の居住者三名が焼死するという痛ましい事故が発生いたしました。この火災で悔やまれますのは、共同廊下に面した窓の鉄製の面格子が障害とならなければ、三名が焼死することはなかったという点でございます。この火災時に駆けつけた隣人は、廊下に面した面格子の間から女の人が必死に手を伸ばして助けてと泣き叫び、それに対して頑張れ、まだ生きとんねから頑張れとその手を握って力尽きるまで励ましたというのです。そして、その面格子を力いっぱい揺すぶって外そうとしたけれどもびくともしなかった、残念無念であるということの現場の状況を語っていられるわけでございます。
 この事故を契機といたしまして、西宮市では内から外せる面格子の開発を推進するとともに、非常時開放機能を有する格子等に関する西宮市火災防止条例、こういうものの改正を行いまして、「防火対象物の開口部で消防長が定めるものに、格子その他これに類するものを設ける場合は、火災等の際に内部からの操作により容易に開放できる構造その他避難に支障を及ぼさないものとするよう努めなければならない。」という規定を置きまして、平成元年七月一日施行したわけでございます。自来今日まで市内の公営団地住居四百二十七戸にそういう内部からの操作で容易に取り外しかできる面格子を従来のものにかえて取りつける工事を施工しているわけでありまして、その後の新築はもとより増改築についても改善指導が行われているものでございます。
 そこで、きょうは消防庁からお越しいただいておりますのでお尋ねしたいわけですが、昨年中で結構です、もし資料がなければその前年でも結構ですが、全国の火災統計による焼死者の数、そして焼死原因別の死者数がわかれば教えてほしい、もしわかれば逃げおくれて亡くなったというような方があればその数を教えてほしい、このように思います。
#183
○次郎丸説明員 ただいま先生からの御質問の件でございますが、平成三年中は残念ながら現在のところまだ統計がまとまっていませんので、平成二年中の数字についてお答えを申しよげたいと思います。
 平成二年中のすべての火災による総死者数は千八百二十八名でございまして、この中には放火自殺者七百二十名も含まれております。火災の原因としましては、放火によるものが六百八十一名、それからたばこが百六十一名、ストーブ百二十九名、放火の疑いが八十四名などとなっております。その死者のうち逃げおくれによるものが七百六十七名ございますけれども、この中で特に私どもが心配しています病気あるいは身体不自由者というようなことで逃げられないとか、あるいは熟睡中で火災を知ってもそのときは火の回りが早かったということで逃げられないとか、あるいは泥酔をしていて逃げられない、こういったような方々の統計が五百十七名となっております。
 以上でございます。
    〔委員長退席、星野委員長代理着席〕
#184
○冬柴委員 過去における新聞記事の見出しから面格子が障害となって焼死者が出たという事例をちょっと拾ってみたわけですが、高松市の「鉄格子救出はばみ窒息死」、東京都港区の「安全無視の無窓ビル装飾用の鉄格子」という見出し、沼津市の「また雑居ビル密室酒場惨事 有毒ガス、目隠し窓、逃げられず」それから半田市の「格子たたき助けてと 炎と白煙逃げ場なししそれから加古川市の「格子窓に阻まれ焼死 女子学生アパート全焼」、そういう非常にショッキングな見出しのもとに、拾えば枚挙にいとまはないわけであります。こういう西宮市が努力をしたように、既に開発されているわけでして、この非常時開放機能を持つ面格子の推進についてどう取り組んでいられるのか、また取り組まれるおつもりなのか。
 時間がありませんからちょっとはしょりますと、今お答えの中で、病気や身体障害者の方が一年間で五百十七名逃げおくれて亡くなったという、そういうことは長寿社会への急速な傾斜あるいは都市部における核家族の増加、それから非常時に対応のおくれがちな老人や幼少児のみのかぎっ子世帯の増加ということも考えられるわけでありますから、このような弱い立場にある人たちを犠牲者としないためにも、面格子を外す機能を持つようなものに取りかえていく、あるいはこれから新築するものについては少なくともそういうような配慮をする、こういうことはいかがか。消防庁からお伺いしたいと思います。
#185
○次郎丸説明員 ただいま先生御指摘のように、火災による死者を一人でも少なくしていかなければいけないというように考えておるわけでありますが、ただいま御指摘の非常時の開放機能つきの面格子、これらにつきましては、私どもはできるだけ火災が起こらないようにするということが基本でございますが、火災が発生しでもできるだけ幾つかの複数の非難路で逃げられるようにするということが必要だということで、現在、共同住宅などでは二方向の非難路が確保できるように、このような指導をし、関係者に対しても指導をしておるところでございます。
 また、今御指摘の非常時開放機能つきの面格子の開発につきましては、現在のところ消防庁としては特に指導しておりませんけれども、現在、開発の状況を聞いてみますと、十数社ほど製造、開発されているということでございまして、特に今申し上げましたように、非難経路をより多く確保していくということから考えますと、有効な措置の一つだというように考えております。
#186
○冬柴委員 同じ質問を建設省の方にお尋ねしたいと思います。
 公営住宅あるいは民間でもアパートとか集合住宅の場合に、そういうような配慮をされてはどうかというふうに思うわけですが、いかがですか。
#187
○蔵説明員 お答え申し上げます。
 建築基準法におきましては、防火規定の中で、共同住宅等の各居室からの避難は、通常の出入口から行うか、あるいはバルコニーがある場合にはバルコニーを使用するように考えておりまして、窓を通常の避難経路として利用することまでは想定しておらない状況でございます。
 しかしながら、先生御指摘のとおり、火災の発生場所によっては通常の出入口やバルコニーが避難路として使用できなくなり、やむなく窓を使用することも考えられるわけでございまして、その場合、非常時開放式の面格子であれば避難経路を確保する観点からは有効であると考えております。
#188
○冬柴委員 大臣、一言。有効だとお二人とも言われたのですよ。だけれども、有効だと言いっ放しで、だからどうするということはなかったのですけれども、閣僚の一人としてそういうものについて御認識をいただきたいことと、権限の域を出て、そういうものについて、やはり閣僚として、内閣の一員としてのお考えを、そういうものを、よければ、費用もかかるんだろうと思うのですけれども、今後広めていただきたい、このように思うのですが、御感想を伺いたいと思います。
#189
○田原国務大臣 お答えしますが、内閣の一員ではありますが所管の違うことに余り詳しく触れるわけにはいかぬと思いますので、一般論的に私の感じを申し上げさせていただきたいと思います。
 確かに今先生のおっしゃったような事件は時々起こる事件でありますし、みすみす人の命を失っている悲惨な事件ですから、それが起こらないようにするのは、平素の出火上の注意とか消防庁が考えておるような救済上の注意とかいろいろあると思うのですけれども、人が入る入れ物としての建物自体の構造上にも平素から気をつけておくべきだろうと思いますので、そのような立派なものが発明されておるとすれば、やはりうまく利用していただきたいと思うのです。
 こういうことを言っては差しさわりがありますけれども、時にそういう建物に携わる人は見よう見ばえとかそういうことが先になる場合がありまして、安全性がその次になるということがあり得ますので、そのことがないようにしなければいかぬし、私、立場は違いますが、個人的にも建設省の出身でございますので、建設省の人に会ったときに、冬柴先生からそういう御発言があったということも申し伝えておきたいと思います。
#190
○冬柴委員 すばらしい答弁をいただきまして、ありがとうございました。
 次に、これも法務委員会にふさわしくないかもわかりませんが、自転車の駐車場、駐輪場というのですか、設置をめぐる問題なのでございます。
 全国における自転車保有台数は、実に六千九百万台に達しているそうでございます。国民一・八人に一台、こういう割合で普及しているようでございます。こういうようにあらゆる世代の人たちに愛され、日常生活に欠くことのできない自転車も、都心の大型店舗の周辺あるいは特に駅前周辺における放置自転車というのは、都市の景観を害するだけではなく、交通障害、交通事故の原因ともなっています。また、特に火災や災害時の消防自動車や救急車の通路妨害要因になっている。早急な解決が望まれると思うわけであります。消防庁からこれがどう障害になっているかということはあえて答弁は求めませんけれども、大変、国においても機敏な対応をしていくテーマじゃないかというふうに私は思っているわけでございます。
 まず、そういうことを考える上で最も問題だなということがあるわけですが、それは、放置自転車の原因者と言えると思うわけですけれども、あえて言うならばJRなどの鉄道事業者が、駐輪場をつくることについて、土地が高いからかもわかりませんけれども、協力姿勢が非常に消極的であるということが指摘をされているわけです。諸所において指摘されています。
 自治省にも伺っておきたいのですけれども、本当に各地方自治体は駐輪場をつくるために御苦労されています。そのときに、大型店舗などはどうも積極的協力義務がうたい込まれているようなんですが、鉄道事業者には書き込まれてないのですね。ですけれども、鉄道に乗る人は朝通勤のときに自転章で駅まで行ってそこへ置いて、そして働いて、夜それに乗ってまた帰るということですから、その間ずっと置いてあるわけですね。だから、やはり都市の景観からもあるいは危険回避の面からも整理をしなければいけないわけで、これはあらゆる人が協力してこういうものを克服していかなければいけないと思うわけですけれども、まず運輸省、私が指摘したような消極姿勢というものはあると認識しておられるのかどうか、その点について伺っておきたいと思います。
#191
○安富説明員 お答えいたします。
 自転車駐輪場の設置につきましては、先生御指摘のように、最近、駅前広場等で放置自転車の問題が社会問題化しております。これにつきまして、運輸省としても今後いろいろ検討していかなければいけないと思っておりますが、基本的には駐輪場の整備がなかなか追いついてないという点があろうかと思います。
 自転車駐輪場の設置につきましては、自転車の安全利用の促進及び自転車駐車場の整備に関する法律というのがございまして、この法律の第五条で、地方公共団体からあるいは道路管理者から鉄道用地の提供について申し入れがあったときには、その事業の調整に努めて、積極的に協力するようにという規定がございます。これに基づきまして運輸省としても鉄道事業者を指導してきておりまして、現在、平成三年三月末でございますが、JR、大手民鉄、それから清算事業団、合計で二千四百カ所、全体の駐輪場の約三〇%に相当しますが、面積にして七十三万平米について現在積極的に協力しているところでございます。そうは言いながらもまだ自治体からもっと協力してほしいというものがございますので、我々としても今後ともさらに必要な指導をしていきたいというふうに考えております。
#192
○冬柴委員 それ以上はもうお尋ねするのはやめますけれども、これは多くの市民、国民が痛切に感じていることだろうと思うわけです。したがって、運輸省としてはぜひ鉄道事業者に、この法に基づく協力というものを積極的に行われるように強く御指導いただきたいというふうに要望をしておきたいと思います。
 自治省にも来ていただいていたのですけれども、御苦労さまですということだけ申し上げて、次に移りたいと思います。
 さて、法務委員会ですから、法に直接関する問題に移らせていただきたいと思います。それは、当番弁護士制度の問題でございます。
 平成三年、去年の十一月二十一付朝日新聞、最高裁判所が日弁連の当番弁護士制度を評価した上で、全国五十二単位会の実施状況を見ながら協力していく方針を決めたとの報道がされ、それからまた、ことし、平成四年三月十四日の日刊各紙では、これを受けて最高裁は全国の五土地裁に対し四月から勾留質問で当番弁護士制度の告知を指示された旨の報道がされておりますが、簡単に、この報道が正確なのかどうかだけまずお尋ねをしていきたいと思います。
#193
○島田最高裁判所長官代理者 報道にあったとおりでございます。
#194
○冬柴委員 この日弁連の当番弁護士制度の概要について、最高裁から伺うというのはおかしいのですけれども、理解されるところを簡単で結構ですが説明をいただきたいと思います。
#195
○島田最高裁判所長官代理者 私どもの理解しておるところによりますと、当番弁護士制とは被疑者の弁護人選任権の行使を実質的に保障すること等を目的として創設された制度であり、身柄拘束中の被疑者等からの申し出を受けて当番弁護士が速やかに被疑者のところへ接見に赴き、弁護人の選任手続等の説明を含む被疑者の権利保護の手続をとるというものであり、また初回の接見については被疑者に費用を負担させないこととしているというふうに理解しておるところでございます。
#196
○冬柴委員 正確に説明いただいたわけですが、最高裁はその制度を評価した、いい方に評価していただいたと思うのですが、どのような点を評価していらっしゃるのか。
 それから重ねて、刑事訴訟法七十八条という規定がありますね。これは「勾引又は勾留された被告人は、裁判所又は監獄の長若しくはその代理者に弁護士又は弁護士会を指定して弁護人の選任を申し出ることができる。」云々、こういうような一項、二項がありますけれども、この二項には、この申し出を受けた裁判所等は「直ちに被告人の指定した弁護士又は弁護士会にその旨を通知しなければならない。」云々、そのような規定との関係はどうお考えなのか。評価とその関係についてお尋ねしたいと思います。
#197
○島田最高裁判所長官代理者 私どもといたしましては、この当番弁護士制度については、被疑者段階の弁護の充実に寄与するものである、それがひいては適正裁判の実現につながるものであり、刑事司法全体のために好ましいものというふうに評価いたしております。
 それで、もう一つの七十八条との関係でございますけれども、当番弁護士制は、この七十八条に定めますところの被疑者からの申し出があった場合に、待機している当番弁護士が直ちにこれに応じて接見に赴くというものでありますので、被疑者の弁護人選任権を実質的に保障しようという同条の趣旨を受けまして、これをさらに具体化し実質化することを目指したものというふうに考えておるところでございます。
    〔星野委員長代理退席、委員長着席〕
#198
○冬柴委員 続けて、ことし、平成四年五月現在、全国には五十二単位弁護士会がありますが、そのうち四十八単位弁護士会におきまして、本年の七月末までには当番弁護士制度が実施できる体制を整える、こういう実態にあるようです。なお、福井、旭川、釧路、三重、この四単位弁護士会につきましては現在検討中で、実施時期が未定という状態にあるようでございます。
 そういうことから、全国一律にこういうことはやられるべきだし、やるのがいいと思うのですけれども、最高裁判所としてはもうここまで来ればやろうじゃないかということで踏み切っていただいたと思うのですが、その心情なり、この四弁護士会についての対応する地方裁判所に対する御指導なり、どういうふうに思っていらっしゃるのか、そこら辺の趣旨もお伺いしてみたいと思います。
#199
○島田最高裁判所長官代理者 もともと当番弁護士制度それ自体につきましては、先ほど申し上げましたような観点から高く評価してまいったわけでございますけれども、昨年の秒あたりですとまだごく一部の弁護士会でのみ実施という段階でございましたので、しばらくその全国的な実績を見届ける必要もある、全国的にできるだけ均質化した司法サービスを図るという観点から、まだ時期尚早であるというふうに考えていた段階もあったわけでございます。しかし、委員が今仰せのように、本年三月の段階になりますと全国四十数弁護士会において当番弁護士制を実施されるという状況に至りましたところから、ほぼ全国的な制度であると評価できると考えまして、先ほどの三月十三日付書簡を出したわけでございます。
 なお、まだ実施が予定されてない幾つかの、四つばかりの単位弁護士会があるということではございますが、この点は、本来弁護士会の制度でございますし、各単位会それぞれの御事情等もおありと思いますので、その辺のところ、私どもとしては一応この段階では協力する方へ踏み切ったということでございます。
#200
○冬柴委員 裁判所の協力ということがこれによって相当弾みがついて、全国で当番弁護士制度というものが動き出したといいますか生き生きと活動を始めているようでございまして、非常に喜ばしい現象だと私は思っているわけです。この協力というのは、具体的にどういう事項についてどのように協力をされるということなのか、その点についてできるだけ具体的にお知らせいただきたいと思います。
#201
○島田最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げました本年三月十三日付の書簡で、全国の地方裁判所に対し、勾留質問の控室等に当番弁護士制の説明文を掲示する方向で制度の告知を要望しておる各単位弁護士会と協議を進めるようにという旨の書簡を発出したわけでございます。この書簡を受けまして、本日現在では九地方裁判所において既に勾留質問控室等に当番弁藩士制度の説明文の掲示が実施されております。その他の裁判所におきましても、今後、弁護士会との協議が進み、制度の実績をも見た上でおいおい掲示が実施されていくことになろうかと思われます。
 また、最高裁といたしましてはそのほかに、例えば協議会等の席上で当番弁護士制を取り上げたり、あるいはまた裁判所の中立、公正的な立場には配慮しつつ、司法行政の範囲内でできる限りの協力をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
#202
○冬柴委員 当番弁護士制度というものは非常に評価をしていただいているわけでございますけれども、そうであれば研修所の中で、刑事裁判手続ですか、刑事弁護の方はやられると思うのですが、そういうところでもカリキュラムの中に積極的に取り入れられてしかるべきではないか、こんなことも思うのです。これは今後の検討だろうと思うのですが、その方向等について伺いたいと思います。
#203
○島田最高裁判所長官代理者 司法研修所におきましては、既に刑事弁護の科目におきまして、捜査段階の弁護活動の重要な柱の一つとして当番弁護士制を取り上げて講義を行っているところである由でございます。また、刑事裁判の科目におきましても、今後、令状等に関する講義の際に当番弁護士制に関する説明を行ってまいる予定であると聞いております。
#204
○冬柴委員 非常に短期間の間にいわば燎原の火のごとくこの制度が広がっているという実感を、ただいまのやりとりで感ずるわけです。
 私も、去年でしたか、イギリスの方へ法律扶助の関係で視察に個人で参りました。そのときに気がついたのは、非常に当番弁護士制度というものを力を入れてやっているなということを、予算のことは、人権局長がいられますけれども、ここで申しませんけれども、随分やっていられる。それは、例えば逮捕のときなんですが、セルロイドの中の赤い紙に告知する事項が印刷してありまして、逮捕とか身柄を拘束する場合にはこれを読み上げなければならないことになっていて、その中に、当番弁護士、希望するならば待機している弁護士に電話をすぐかけて来てもらうことができる、あるいはカードがありまして、その中からあなたの好まれる弁護士を選ぶことができる、こういうようなことを告知しないと身柄拘束できないというようなこともやっていらっしゃる。それから、今言うように、当番弁護士制度の告知書というのですか、宣伝みたいなものがありまして、それに電話機がばんと真ん中に写っているのです。ほぼ大きさが同じくらいの公衆電話が写っておりまして、身柄を拘束されるときにはまず電話をかけたらいかがですかというようなことが大きく書いてあるのですね。そういうことで、これは全部国費でやっておりまして、随分のお金をこれにつき込んでいまして、現在の悩みといいますか、イギリスどこでも均質のそういうサービスを受けられるようにするために、弁護士を待機させるあるいは名簿をちゃんと整えるということを推し進めているのだということで随分頑張っていました。
 そういうことを見まして、日本にもこういうものができたんだなということで非常にうれしいわけでございますけれども、例えば待機制あるいは名範制あるいはその混合制とかいろいろあると承知するわけですけれども、その選択は、地域の特性、弁護士の数が多いとか少ないとかあるいは勾
留される場所と弁護士事務所との位置関係とかいろいろあると思うのですけれども、それぞれの単位会が実情に即して決していいのではないか、すなわち全国一律にする必要はないのではないか、ただ大事なのは、全国どこでも均質のサービスを受けられるというその一点が大事なのであって、それに至る制度は地域の特性に応じてやってもいいのではないかと思うわけですが、最高裁として、いろいろ協力をしていただく上において、こうでなければならないとかいう意見が出るといけませんので、そういう点についてもお考えを伺っておきたいと思います。
#205
○島田最高裁判所長官代理者 もともとこの制度は弁護士会の制度でございますし、また委員御指摘のように、各単位会それぞれの御事情等もおありと思います。そこで、例えば会員の員数がそれほど多くない弁護士会におきましては、当番待機制ではなく名簿推薦制をとらざるを得ないというような事情があることもよく理解しておるつもりでございます。私どもとしては、そのような点も踏まえまして今後とも対処してまいりたいと考えますが、先ほど委員も仰せのように、均一のサービス、そして裁判所が間に入って責任を持って例えば掲示板を掲げてその趣意を説明する以上は、その内容が確実に実現する、要するに裁判所の方で弁護士会の方に連絡をした場合に、確実、速やかに当番弁護士の方が、名簿推薦制であれ待機制であれ、ともかく駆けつけてくださるという実績、これが確実に実績があるという運用実績を見た上で協力をしてまいろう、こういうことで進めてまいりたいと思っております。
#206
○冬柴委員 弁護士会等に伺いますと、一番最初にいろいろ、地域がばらばらなんですけれども、非常に協力していただいたのは警察庁だと聞きました。きょうは警察庁も来ていただいていると思うのですが、日弁連の当番弁護士制度についての評価、そして協力についてどういうようなお考えにあられるのか、最高裁に今るる伺ってきたことを警察庁にもお伺いしたいので、答弁をいただきたいと思います。
#207
○泉説明員 当番弁護士制度につきましては、ただいま最高裁の方からも御答弁がございましたように、弁護人選任権を実質的に保障するための制度だということで、このことは、私ども捜査に当たる者にとりましても、捜査手続を円滑に進める上では非常に大事なことであるという評価をいたしております。
 昨年、日弁連からこの制度につきまして警察に協力方について御要請をいただきまして、いろいろお話しいたしまして、早速、各都道府県警察に対しましてこの制度の周知徹底を図りまして、その取り扱いに間違いのないような指導をしておるところでございます。都道府県警察におきましては、対応する弁護士会と協議の上、同制度のポスター、チラシ類を警察署内の施設に掲示する、それから弁護人選任のための連絡を、この当番弁護士制度のために設けられた特別の弁護士センターと言っておるようですが、弁護士センターに弁護人選任のための連絡を行うというような形で、いろいろ協議をしながら可能な協力をいたしておる状況でございます。
#208
○冬柴委員 最高裁と警察庁から力強い御答弁をいただいたのですが、刑事訴訟は対立当事者という構造になっておりますけれども、法務省刑事局からもこういう問題についての評価なりをお伺いしておきたいと思います。
#209
○濱政府委員 先ほどから御議論のございますこの当番弁護士制度は、その前に日弁連で積極的に推進しておられました弁護人推薦制度あるいは弁護人援助制度の実施に連なるものと理解しているわけでございます。これらの制度につきましては、先ほどから御議論がございますように、被疑者の弁護人依頼権の保障を十分なものとするという観点から、法務当局といたしましても、検察庁を所管している立場からその周知徹底に努めてきたところでございます。
 当番弁護士制度自体につきましては、そういう意味で法務当局といたしましても大きな関心を持っているところでございまして、ただその制度自体は、それぞれ各単位弁護士会が独自に創設しあるいは創設されようとしている制度であるというふうに承知しているわけでございます。仄聞する限りでも、先ほどから御議論がございますように、待機制をとるのかあるいは名簿制をとっているのか、それから当番弁護士への連絡は弁護士会経由なのか否か、あるいは弁護人選任権者以外の者からの要請により接見に赴くことを予定しているのかどうかというような、いろいろな問題点があろうかと思うわけでございまして、その内容が各単位弁護士会の制度の中でも違っているのではなかろうか。最初につくられましてからまだおよそ一年半余でございますか、の歴史と理解しているわけでございまして、その実績等が必ずしもはっきりしないところもございます。いずれにいたしましても、各単位弁護士会のそれぞれの制度に共通する問題点もありましょうし、それから各単位会の実情に対応する検察庁で違ってくる面もあるであろうかというふうに思うわけでございまして、今後、各地における当番弁護士制度の実態と実績につきまして十分把握した上で対応を検討していきたいというふうに思っているわけでございます。
#210
○冬柴委員 対立当事者ですから若干時差があっていいと思うのですが、頑張ってほしいと思います。
 いろいろと聞きたいのですが、時間が限られておりますので、問題の指摘をしたいと思うのですけれども、この当番弁護士制度を開始して今日まで得た体験の中から、これはやはり早急に解決していかなければならない問題だなと思う一つに、外国人の被拘禁者というものがあるわけですけれども、この通訳を得ることが非常に難しい。通訳なしで接見しても、これはどうにもなりません。そういう意味で、やはり逮捕、勾留の段階から十分に弁護権が行使されるような、そういうふうに憲法三十一条は私は読み込んでいくべきであろうというふうに思うわけであります。勾留を実際にする裁判所もそうでしょうし、弁護士会もそうですけれども、関係する例えば法務省の人権擁護局もそうだと思いますけれども、外国人といいましても英語圏だけじゃなしに、もう今やいろいろな言葉の人が日本に来て、そしてこういう不幸にして拘禁されたということがあるわけですけれども、その人たちに十分な弁明の機会が与えられるように、また弁護を依頼する弁護士に十分自分の言わんとすることが伝えられるようにするために、通訳というものをやはり関係者一同、我々、司法全体として考えていかなければならない問題だろう、こういうふうに問題の所在だけを指摘させていただきたい、このように思います。
 それから次に、余り細かくなり過ぎかもわかりませんけれども、このようにして起訴前の弁護士をいわば私選という形で行った場合に、これは公判手続をとられた場合に、国選に切りかえるときに同じ人を弁護人につけるという要請は非常に強いと思うし、私はやはりそうあるべきだろうと思うわけでございます。先ほどちょっと刑事局長もおっしゃいました法律扶助協会の行う被疑者の援助制度というものも同じ問題を抱えていると思うのですけれども、このようなニーズに対して最高裁はどういうふうに対応されたり協力していただけるのか、その点についてもコメントをいただいておきたいと思います。
#211
○島田最高裁判所長官代理者 被疑者弁護人援助制度によってその弁護人が選任されている事件につきましては、目下各地方の単位弁護士会そして法律扶助協会、そこと裁判所との間の協議を進めまして、既に多くの裁判所におきまして、起訴段階でその弁護士を国選弁護人に選任するという運用に持ってまいるように図ってきておるわけでございます。したがって、当番弁護士が選任されてそれが被疑者弁護人援助制度に乗っかった場合には、こういう運用によりまして起訴後の国選弁護人へリンクしていくということになるわけでございます。
#212
○冬柴委員 ぜひそのように御配慮いただきたいし、協力をいただきたいと思います。
 そこで、こういうふうにどんどん起訴前の弁護人がいろいろな面でついてくる場合に、今の被疑者援助制度というものが必然的に必要になってくるだろう。要するに、弁護費用をみずから出捐できない、一回来ていただくのはただだけれども次からは有料だということになって、その有料の部分を負担できない被拘禁者についてこれをほっておくのかとなりますと、そうはいかない。そうすると、被疑者援助制度というものを法律扶助協会等でやっていく、これについては国からは予算はもちろんついてないと思うわけですね。今のように、最高裁あるいは警察庁等の御協力によって照会の電話がどんどんかかってくるようになって、各地とも事件がウナギ登りに増加してくるということになると、これは非常に大きな問題になるのではないかと思うわけでございます。あといろいろと人権擁護局長に聞きたいのですけれども、この問題、どう考えられますか。それとも、所管が違えばほかのところで結構ですけれども。
#213
○濱政府委員 起訴前の国選弁護人制度の問題ということについて、私の方から一応考え方をお答えさせていただきたいと思うわけでございます。
 今委員御指摘になられましたように、被疑者に対しても国選弁護人を付する制度を設けるべきであるという御意見があることはもちろん承知しているわけでございます。ただ、現在の刑事訴訟法の体系と申しますか、そのもとで考えますると、一応捜査というのは職権主義的なものあるいは合目的なものと申しましょうか、そういう性格のものであろう、そういうふうに位置づけられると思うわけでございまして、捜査段階で被疑者に国選弁議人を付する制度を設けるということになりますと、捜査構造を含めて、捜査手続全般にいろいろの問題点が連なって出てくることになるのではないかというふうに思うわけでございます。
 仮に逮捕、勾留の段階で国選弁護人を付すると仮定した場合に、現実の問題として、弁護士の首都圏集中の現状等に照らして、果たして全国のいずれの地域においても即時に国選弁護人を付することが可能かというような問題も一つあると思いますし、国の財政能力との関係も一つあるかと思われるわけでございます。また、被疑者段階において、国選弁護人制度を設けることにつきましては、そのことだけを取り上げてその採用の当否を考えるということではなしに、真実の究明と被疑者の権利保障との調和を保つという観点から、司法手続全体、先ほども申し上げた捜査の構造をも含めて刑事司法手続全体の構造との関連を考慮して考えていかなければならない問題であろうというふうに思っているわけでございまして、いろいろな方法をも含めて、御指摘になられた実施方法寺含めて、慎重に検討していかなければならない問題だなというふうに思っているわけでございます。
#214
○冬柴委員 従来の流れからいけばそうなんですけれども、現実に動き出しまして、当番弁護士制度というのは本当にこのように全国的に燎原の火のように広がりつつある。こういう中で、慎重に審議します、慎重に考えますではもう間に合わなくなるのではないかというふうに私は思っております。
 刑事事件だけじゃなしに民事の問題、これは私何回も取り上げて申し上げているわけですけれども、朝日新聞の論説委員に佐柄木さんという方がいらっしゃいますけれども、法律扶助等については非常に関心をお持ちの方でございますが、朝日新聞で何回かアンケート調査してみても、もし問題が起こったら裁判ざたにしますか、こういう問いに対して、現在までに十数%を超えて肯定した結果はない、それからまた弁護士さんに頼みますかという問いに対しても十数%を超えてこれを肯定した例がない、こういうふうに日本の司法というのはいわゆる二割司法、要するに八割までが司法というものの外で、はみ出しているのだということを指摘しておられるわけであります。大問題だと思うのですね。これについてはだれが責任があるとかどうかということじゃなしに、市民の法意識自身を変えていくための努力がされなければならない、こういうふうに思うわけでございます。
 その中で、今の当番弁護士制度も非常に大きく裨益して、現にまだ日が浅いのにその事例報告たるやもう立派なものが出ているわけですね。その当番弁護士がから取ったといいますか、その結果例えば勾留決定を取り消したとか、いろいろな面が出ているわけでございます。半面、民事の紛争につきましても、私は同じように無料法律相談をもっと拡充してほしい。そうすれば、一般国民と弁護士との間の垣根を低くすることができるのではないか。すなわち、二割司法というものがそういうところからやはり改められていくのではないか、こういうふうに思うわけでございます。
 大臣、三権分立ですね。ですけれども、司法に割かれている国家予算の中の費用というのはもうごくごくわずかですね。私はもっと遠慮せずに、例えば無料法律相談にしてもあるいは今の当番弁護士制度にしても、お金のある人までつける必要はありません、けれども、お金がなくて弁護士をつけられないという人が存在することはやはり許されないわけでありまして、そういう面で大臣にその観点からの努力をぜひしていただきたいというふうに思うわけであります。
 それで、時間が迫ってきましたが人権擁護局長にお伺いしたいのですけれども、私はこういう観点から、法務委員会はもとより予算委員会でも、法律扶助制度の充実とか扶助基本法の制定とか、あるいは無料法律相談の拡充ということを随分取り上げてきたと思います。その中で法務大臣から、今無料法律相談だけで結構ですけれども、非常に積極的な答弁をいただいたと私は理解しているのですけれども、その要旨をお教えいただけますか。
#215
○篠田政府委員 お答えいたします。
 これはいずれも委員からの御質問に対するお答えですけれども、平成三年九月十八日の衆議院法務委員会において左藤前法務大臣は、無料法律相談に対して「もう少し何か応援できないかということを、当然国庫から補助するとかいうようなことも含めまして検討して、この拡充を図って、もっと利用していただきやすい形を考えるべきではなかろうかこという趣旨の答弁がございます。それから、昨年の十二月十六日の同じく衆議院法務委員会で田原現法務大臣は、そういう「御指摘を踏まえて法律相談についても十分勉強してまいりたい。」そういう趣旨の答弁がございます。
#216
○冬柴委員 これを踏まえて、この言葉をほごにしないためにもやはり局長随分努力していただかなければならないと思うわけですが、具体的に、平成五年度の予算の概算要求というのは刻々と近づいできますね。このときに、無料法律相談についてたとえちょっとでも予算要求して実現をしていこう、ちょっとじゃなくたっていいのですよ、大きくてもいいのですけれども、その御決意等はどうですか。
#217
○篠田政府委員 裁判を受ける権利を実質的に保障するという意味におきまして、法律扶助制度あるいは無料法律相談といった制度が重要であることはよく理解しているつもりでございますけれども、平成五年度予算の概算要求につきましては現在勉強中ということでございますので、この段階での答弁はちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
#218
○冬柴委員 どの段階か私わかりませんけれどもまた質問いたしますので、まず田原法務大臣のときにこれはぜひ実現をしていただいて、これは将来十分検討しながら拡充をしていくべきテーマだと思うのです。これは何も日本だけじゃなしに、もう諸外国どこでもやっていることです。ですから、経済大国日本、先進国あるいは誇るべき成文法を持つ我が日本として誇るためには、やはりこういうものをきちっと整備しておかなければ、我々よりもずっと後からスタートした、むしろ我々の勉強した成果を踏襲されたというかそういう国が近隣にありますが、そこはもう非常に大きい予算を割いて基本法を持ってやっていられるわけです。来年ということがもしパスしますと再来年になります。ですから、このような積極的なすばらしい答弁をしていただいた左藤法務大臣は更迭されて現法務大臣ですから、その引き継ぎを受けたというふうに述べていられるわけでございまして、ぜひ実現していただきたいな、このように思うのですが、ちょっと一言だけで結構です。
#219
○田原国務大臣 ただいま担当局長から勉強しておるという言葉がありましたが、私も聞きましたら、本当に勉強しているようでございます。ただ、今私の経験からいくと、まだ現時点では予算がどうこうという時期に、まだ概算要求のあれには入っておりませんので、もう少し勉強を続けたいと思います。
#220
○冬柴委員 予算委員会では橋本大蔵大臣、それから今の羽田大蔵大臣からすこぶる前向きの答弁をいただいております。そういう意味で、それは議事録に明らかでありますので、これは法務省から予算要求しなければ向こうからつけてくれるわけはありませんので、ぜひこれはやっていただきたいな、国民のためですので御努力をいただきたいと私は思います。
 最後になりますが、法律扶助基本法の制定について、大臣、これも何回も言っていることですけれども、来年の、すなわち五年度の予算の中で調査費、しかるべき諮問機関に我が国の法律扶助制度の基本はどうあるべきかということを聞いて調査をしていただく、こういうことをぜひお願いしたい。
 我が公明党は、年末の総理に対する委員長の予算案に対する要望の中にもわざわざ一項目を入れて、このことを去年もお願いしたのですが、つきませんでした。わずかでもいいですから調査費をつけていただき、かつそういう諮問をしていただいて、これには相当な調査期間が要るだろうと思います、ぜひそういうものを踏まえて前進をしていただきたいと思うわけであります。大臣のお考えを伺いたいと思います。
#221
○田原国務大臣 法律扶助については、大分、財団法人法律扶助協会が歴史を持ってまいりまして、定着してまいっておりますし、これをこのままにして新たなものを考えるということは何かもったいないような気がしますので、これの一層の充実を当面は期待しなければいかぬのじゃないかと思っております。
 先ほど、ちょっと先生誤解があったんじゃないかと思いますけれども、来年度予算の、各省を通じてですが、実務の問題はちょっと今まだ早い、そういう意味で、もうちょっと勉強させていただきたいと思います。
#222
○冬柴委員 終わります。ありがとうございました。
#223
○浜田委員長 木島日出夫君。
#224
○木島委員 私は、きょうは佐川急便の問題、山梨県内での違法な農地取得の問題についてお聞きをしようと思っているのですが、その前に法務大臣、一言ちょっとお聞きしたいのですが、昨日の毎日新聞の一面トップに、御存じの参議院の安恒議員が佐川問題で質問しているんですが、その時期に、答弁者である大野運輸大臣を都内の料亭で接待していたという大きな記事が出ているわけです。お読みになっているでしょうか。政治倫理の上でゆゆしい事態だと私は思っているんですが、御所見をまず、簡潔で結構ですからお伺いをしたいと思います。
#225
○田原国務大臣 このごろ毎日、委員会で缶詰でございますので、きのうは、タイトル、ヘッドラインは読ませていただきましたが、詳細については、はっきり申しまして一字一句読んではおりません。
#226
○木島委員 細かいことはいいですが、質問する議員から質問を受ける大臣が接待を受けていた、そういう趣旨なんですが、これは大臣も答弁に立たれる地位に今あるわけなので、どういう御所見が、それだけで結構です。
#227
○田原国務大臣 先ほど申し上げましたように、新聞の内容についても正確に突き詰めて読んでおりませんし、また事実関係を調べておりませんので、今ここでコメントはちょっとできかねます。
#228
○木島委員 コメントいただけないのは大変残念ですが、政治倫理の上で大変ゆゆしいことだと思うわけであります。
 時間がありませんので本題に入りたいと思うのですが、きょう私は、山梨佐川急便が、山梨県東八代郡石和町砂原字沢添八百六十二番の一の畑一万二千四百五十平方メートルを八代町の四名の農家をいわゆるダミーとして取得して、その後、農地法の許可も受けずに不法に農地をつぶして、現在もグラウンドとして占有管理を続けている、この問題について質問したいと思います。
 この問題については、去る三月十二日に我が党の橋本敦議員が参議院法務委員会で取り上げて、農水省も事実を調査する、そして適切に対処すると答弁をしておりますので、まず最初に農水省にお伺いしたいのですが、山梨県農地開発公社から農家四名への本件農地の売り渡し、それからそれに対する昭和五十六年九月二日付農地法三条による山梨県知事による許可に関して、売買代金九千八百二十八万四千六百八十円の支払い状況、買い入れ者、四名の農家の名前でありますが、これの適格性、営農の意思の有無、山梨佐川急便の意図、問に入った町会議員がいるわけですが、その果たした役割等についての調査結果を明らかにしていただきたい。
#229
○上木説明員 お答え申し上げます。
 山梨県からの調査結果の報告によりますと、御指摘の山梨県農地開発公社から四名の農家への売り渡し代金、買い入れ代金ですね、の支払い状況につきましては、山梨佐川急便からある元八代町町会議員を経て、山梨県農地開発公社に入金されたということが報告されております。
 それから、第二点の買い入れた農家の適格性についてでございますが、山梨県農地開発公社は、提出書類等から、取得後の四人の農家の経営面積あるいは農業従事日数、年齢、こういうものを考慮いたしまして、四名の買い入れ農家を、当時、農地保有合理化促進事業の売り渡しの適格者として判断したということでございます。しかしながら、山梨県の調査によりますと、四名の買い入れ農家の話といたしますと、そのとき提出されました営農計画書のうち本人でなければわからない事項の記入と署名捺印をしただけで、その他の事項につきましてはだれかが書いたもので自分たちは知らない、こういうようなことであったということでございます。また、名前は申し上げませんが、八代町のある元町会議員の話によりますと、今申し上げました営農計画書は自分がつくったもので、四名の買い入れ農家は署名捺印をしただけというふうに話していたということでございます。
 それから、第三点の四人の農家の営農の意思についてでございますが、山梨県農地開発公社は、当時提出書類等から四名の買い入れ農家が耕作するというふうに判断したわけでございますが、実際には、四名の買い入れ農家は当時その土地の所在場所も知らなかったということでございまして、現時点に立って考えますと、営農の意思があったとは考えにくいということでございます。
 それから、第四点目の山梨佐川急便とある元八代町町会議員との関係につきましては、その町会議員の話によりますと、山梨佐川急便の社長とは友人関係であるということでございまして、当時手狭になった青葉町からの移転先を探していた山梨佐川急便の事情を知っておりまして、八代町の活性化のために誘致しようとした、こういうことでございます。
 なお、山梨佐川急便社長の話によりますと、ターミナル及びグラウンド用地の取得については元八代町町会議員にすべてを任せていたというふうに言っておる、そういう報告を受けております。
#230
○木島委員 法務省に、民事法上の売買契約の法的効力について、まず基本をお伺いしたいのです。
 農地法第三条による農地買い受け資格がない、あるいは農地法第五条による農地転用許可を受ける見通しが全く立たない、そういう状況なので、真実買い受け意思がない第三者をいわゆるダミーとして農地売買契約がなされた場合、その第三者と売り主との間で締結された売買契約の法的効力はいかなるものか、まず解釈をお伺いしたい。
#231
○清水(湛)政府委員 お答えいたします。
 結局、真実の買い主のほかにダミーというのが仮にいるという前提のお話でございますけれども、法的評価としての売買契約がだれとだれとの間にあったと見得るかということ、それからまた農地法三条なり五条の許可が法的な評価としてだれとだれとの間にあったと見得るかということ、そういうことによってすべてが決まるのではないかというふうに思うわけでございます。一般論として申しますと、そういうことではないかというふうに思います。
#232
○木島委員 形式的には、買い主は農家です。それで、いわゆるダミーとして、買い主として表に出てくるのは農地買い受け資格のある農家なのですね。しかし、実際にはそれは買う意思もない、耕作する意思も全然ない。実際には別の目的で、買い受け資格のない者が実質上金も調達し、支払い、占有もする。しかし、表向きは売買契約は買い受け資格がある者が買い主として登場する。農地法三条の許可の申請もする、許可も受ける。そういう場合です。その場合に、そのダミーになったいわゆる第三者、買い受け資格のある第三者と売り主との間で形の上では売買契約がつくられるわけでしょう。当然ですね、ダミーなのですから。その場合に、その意思が全然ないのに締結された売買契約の法的効力をお伺いしているのです。端的にちょっと答えてください。
#233
○清水(湛)政府委員 これはあくまでも事実認定に属する問題だと思いますけれども、内心の意思としては買う意思もないし営農の意思もないし自分が利用する意思もないということでございましても、外形的に買い主として振る舞うということを承知して契約をするということがあった場合に、果たしてその外形の方から判断するのか内心の方から判断するのか、こういう難しい問題になるのではないかというふうに思うわけでございます。最終的には裁判所の判断ということになろうかと思いますけれども、少なくとも、例えば代金の負担はしてないとか営農の意思は全くないとか、あるいはそこを利用する意思もないし占有する意思もない等々のいろいろなそのような事情が具体的に出てまいりますと、裁判所としては実質的な買い主との間に売買があったものと見得るというふうな判断をすることもあり得ることであろうと思います。
 ただしかし、ただいま御問題とされております土地の売買については私ども詳細は全く承知しておりませんので、これがどうであるかということは申し上げることはできません。あくまでもこれは一般論としてのお話でございます。
#234
○木島委員 ですから、一般論でいいのですよ。本件を離れて、今民事局長がお話しになったようないろいろなファクターを判断した結果、仮に買い主において真実買い受ける意思がないと認定された場合に、その売り主と買い主との売買契約は民事法上どういう効力になるのか。
#235
○清水(湛)政府委員 農地については知事の許可が条件でございまして、これは一種の法定条件で、許可がないと所有権移転の効力は生じないということになっております。
 お尋ねの場合に、仮にいわゆるダミー、形式的な買い主との間の売買契約ではなくて、実質的な買い主というのが別途おって、法的な評価としては、その実質的な買い主が法律的にも買い主であるというふうに評価されたといたしますと、知事の許可はその者との間にはございませんので売買契約の効力は生ずる余地がない、こういうことになるのではないかというふうに思います。
#236
○木島委員 ちょっと答弁をそらさないでくださいよ。真実買い主として表面上あらわれた契約当事者が、いろいろなもろもろのファクターの判断の結果買い受ける意思が全くない、そういう仮定の質問なのですよ。そうしたときに、その民事上の売買契約というものは今の日本の民事法の体系上有効なのか無効なのかということですよ。意思がない場合に契約書が締結された場合の設問ですよ。だから、余分なことをいろいろ考えないで、そういう仮定の質問に答えてください。
#237
○清水(湛)政府委員 一般論として申しますと、そういう契約があったにもかかわらず買う意思が全くないわけですから、契約としては外形上成立しておりますけれども効力は生じない、こういうことになろうかと思います。
#238
○木島委員 そういうことを最初から言ってくれればいいのですよ。要するに、日本の民法上の、契約法上の体系は意思主義ですね。だから、外形上の形態があっても意思が全くないということが認定されればその契約は無効であるということなのですね。単純なことだと思うのですよ。
 そこで、今度は農水省の方に質問が移りますけれども、既に本件農地の売り渡しか、今答弁にありましたように農地保有合理化促進事業としてなされたという事実、それから本件農地は第二次農業構造改善事業の対象地であって、国庫補助が行われたいわゆる第一種農地であるという事実、それから本件農地は農業振興地域の整備に関する法律の農用地区域内の農地であったという事実、これはもう客観的な公知の事実なのです。これらの事実に加えて、先ほど農水省から調査の結果が報告されましたが、それらを勘案した場合に、そうしたことを前提としますと、この売買契約に対して行われた昭和六十二年九月二日の農地法三条の山梨県知事が行った許可は、行政法上どう評価されるべきものと農水省はお考えですか。
#239
○上木説明員 調査の結果、買い受け農家は農地法三条の規定に基づくところの許可の申請時点火おきまして買い受け農家には営農の意思があったとは考えにくい、かつ、許可後も一度も耕作を行った事実もないということを考えますと、これは農地法第三条第二項第二号の権利を取得しようとする者が農地について耕作を行うとは認められない場合ということになりまして、瑕疵を含んだ行政処分であったと考えます。
#240
○木島委員 農地法三条の許可は、農地法三条二項二号に反する許可であったというふうに御答弁です。瑕疵ある行政処分だという判断でありますね。瑕疵ある行政処分であったという評価、農水省の現時点での調査の結果で結構なんですが、いつの時点でそういう評価ができたかという時点について調査結果を報告してほしい。
#241
○上木説明員 県の調査結果によりますと、転用工事が行われまして、それを是正するために、山梨県と石和町と石和町農業委員会が買い受け農家から昭和五十八年八月三日に事情聴取を行っております。その事情聴取の中におきまして、買い受け農家には当初から営農の意思がなかったということが明らかになったということでございます。
#242
○木島委員 そうすると、少なくともその時点で、行政処分は瑕疵のある行政処分であることが判明したと伺っていいですね。
#243
○上木説明員 そのとおりでございます。
#244
○木島委員 続いてその次の質問に移りますが、農地法三条による許可が行われ、移転登記が行われたのは昭和五十六年十月一日付なんですけれども、その後、本件農地が農地法の許可なく盛り土され、グラウンドとして造成された、バックネットも設置されてしまったということは、今公知の事実であります。
 そこで、端的で結構ですが、その行為をした老はだれなのか、その時期はいつか、及び、それらの行為が農地法あるいは農振法何条に違反すると農水省は調査の結果把握しているのか、答弁願いたい。
#245
○上木説明員 転用工事を行った者は山梨佐川急便であるということでございます。また、その行為は農地法との関係で申し上げますと、農地を農地以外のものに許可を受けることなく行ったという事実行為でございますので、農地法第四条の違反であるということでございます。なお、農振法との関係につきましては、これは農用地区域内の土地につきましては開発行為の許可を要することになっておりますので、農地法の四条の違反だけではなくて、農振法の十五条の十五の規定にも違反するということになります。
 時期につきましては、詳細な時日、日時は明らかになっておりません。五十七年秋に最初転用行為が行われたということと、五十八年七月末の時点で転用行為が再開された、それから八月の初めの時点でその転用行為は中止勧告に従って中止がなされたということは明らかになっております。
#246
○木島委員 この農地を盛り土してつぶした件については既に山梨県の調査で明らかなんですが、五十八年八月三日には、石和町役場の会議室で、地権者代表及び山梨佐川急便と工事請負者同席で事情聴取が山梨県と石和町と石和町農業委員会によって行われているわけであります。重大な農地法違反でありましたから、当然これらの記録はすべて残っていると考えているわけでありまして、当国会にも提出していただきたいと思っているわけでありますが、その調査結果の記録についてはどうなんでしょうか、出していただけるのでしょうか。
#247
○上木説明員 御指摘の昭和五十八年八月三日の事情聴取の際の記録をしたためた書類等につきましては、山梨県の調査によりますと残っていないということでございます。
#248
○木島委員 とんでもないことだと思うのですね。これは重大な農地法違反の事案に関して、許可を発した山梨県当局が事実調査に乗り出して調査したわけですね。山梨県からその記録が残っていないという農水省への回答だということなんですが、農水省はそんなことを信じるのですか。農水省は、その調査記録があるのかないのか、あるいはどうして紛失したのか、あるいはわざと段滅してしまったのか、その辺について本気になって調査しましたか。
#249
○上木説明員 ただいまの点につきましては、私どもとしましても、できるだけ本件事案についての事実関係を明らかにするという観点からそういう資料の提出も求めたわけでございますが、ないということでございますので、山梨県を信用するほかはないと思っております。
#250
○木島委員 私は全く不可解だと思うのです。
 時間がないから質問を続けますが、昭和五十八年八月に今私が質問した調査がなされた後、本件に関しては、昭和六十年六月一日に農振法上の農用地区域除外処分が行われる、昭和六十年十月十一日に国土調査法に基づく地籍調査の結果が認証されて、登記簿上の地目が畑から雑種地に変更された、そういうことが二つだけあるわけであります。
 そこで、農水省にお伺いしますが、農地法三条による許可が瑕疵がある、あるいは農地法四条違反であるという事実が残ったまま地目が雑種地に変更された、そのことによってこれらの農地法、農振法違反という事実がどうなるのでしょうか、法的見解をお伺いします。
#251
○上木説明員 ただいま御指摘のように、その後農振法の農用地区域からの除外手続あるいは国土調査法に基づきますところの地籍調査による地目の変更ということが行われておるわけでございますが、農地法の違反事実そのものにつきましては、その後原状回復が行われたということはございませんし、また追認的な許可が行われたという事実はございませんので、違反事実というものは治癒されてない状態に現在はあるということだと思います。
#252
○木島委員 わかりました。そうしますと、前回の橋本議員に対する答弁、適切な措置をとりたいという答弁ですが、農水省としていまだに違反状態が続いていると考えているわけですが、どのように適切な措置をとりましたか、あるいはとろうとしているのですか。
#253
○上木説明員 ただいま申し上げましたように違反事実は治癒されてない状態が現在あるわけでございますので、私どもといたしましては、転用行為が行われるに至った事実関係ということにつきましてさらに明らかにする点が幾つかあろうかと思いますが、そういうものを明らかにした上で、一方において昭和六十年以来長年にわたって町民多数の方々によって運動広場として活用されてきておるという利用の実態を踏まえる必要もございますし、また他方におきましては原状回復をして農業的な土地利用を的確にやっていく可能性というものをきちっと追求することも必要でございます。そういうようなもろもろの点を十分勘案した上で適切な善後策を講ずるように、山梨県に対しまして指導しておるところでございます。
#254
○木島委員 時間が来たから最後の質問になりますが、実は五十八年の八月に農地法違反の事実について調査が行われていながら、今御答弁にあったように、その後も主たる当事者である山梨佐川急便に対して何らの農地法上の処分が行われてない、告発も行われてないという状況が続いているわけです。それどころか、今答弁のように、事実上山梨佐川急便に所有権があることを前提として、グラウンド造成が既成事実として放任されている。私はまことに不可解だと思うのです。
 なぜそのようななまぬるい状況が続いているのか、政治家からの介入がなかったのかと疑わざるを得ないわけであります。
 実は私、最近発行されたある週刊誌に、昭和五十八年の秋、五十八年の八月に違反の調査が行われたわけですからその年の秋、佐川会長がパレロワイヤルの金丸信事務所に現金一億円を持っていったと載っているのを見ました。その週刊誌の中には、佐川会長からそのとき金丸信氏に対して、山梨で困っているという話が出されたということも記載されております。私ども日本共産党は、この週刊誌に記載された一億円を渡したという事実については、裏づけ調査をしてこの記事のとおりであるという確認もしています。もし佐川会長がそこで述べた山梨で困っているという具体的な内容の一つとしてこの農地法違反の問題も含まれていたとすれば、これは重大なことになるわけであります。農水省は、この農地法違反の件について政治家からの何らかの介入、要請がその後の処分等についてあったかどうか、どうつかんでいますか、これをお聞きして終わりにしたいと思います。
#255
○上木説明員 県からの報告によりますと、政治家からの何らかの介入があったということは一切聞いておりません。
#256
○木島委員 私の質問に対する農水省のきょうの御答弁は、農水省みずから調査に乗り出しているのではなくて、すべて山梨県が調査したその県当局の調査結果を報告させて、それを今私に答弁しているにすぎないわけですね。そういう重大な問題がこの件についてはあるわけでありますし、御答弁のようにいまだに農地法三条あるいは四条に違反するという状態が厳然としてあるわけですから、その面も含めて徹底して農水省本省におかれてもこの問題について調査していただきたい、そしてその結果をまたしかるべきときに国会に報告していただきたいと要望をしたいと思います。どうですか。そこだけ答弁願って、終わります。
#257
○上木説明員 何せ随分前のことでございますので限界はあろうかと思いますが、私どもとしてもできるだけ事実関係の究明に努めたいと思います。
#258
○木島委員 終わります。
#259
○浜田委員長 次回は、来る二十二日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時三十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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