くにさくロゴ
1992/01/24 第123回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第123回国会 本会議 第1号
姉妹サイト
 
1992/01/24 第123回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第123回国会 本会議 第1号

#1
第123回国会 本会議 第1号
平成四年一月二十四日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第一号
  平成四年一月二十四日
    午前十時開議
 第一 議席の指定
    …………………………………
  一 国務大臣の演説
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 日程第一 議席の指定
 災害対策を樹立するため委員四十人よりなる特
  別委員会、公職選挙法改正に関する調査を行
  うため委員二十五人よりなる特別委員会、石
  炭に関する対策を樹立するため委員二十五人
  よりなる特別委員会、物価問題等に関する対
  策を樹立するため委員二十五人よりなる特別
  委員会、交通安全に関する総合対策樹立のだ
  め委員二十五人よりなる特別委員会、沖縄及
  び北方問題に関する対策樹立のため委員二十
  五人よりなる特別委員会及び土地問題及び国
  土の利用に関する対策を樹立するため委員四
  十人よりなる土地問題等に関する特別委員会
  を設置するの件(議長発議)
 国会等の移転に関する調査を行うため委員二十
  五人よりなる国会等の移転に関する特別委員
  会及び国際平和協力及び国際緊急援助活動に
  関する対策を樹立するため委員五十人よりな
  る国際平和協力等に関する特別委員会を設置
  するの件(議長発議)
 宮澤内閣総理大臣の施政方針に関する演説
 渡辺外務大臣の外交に関する演説
 羽田大蔵大臣の財政に関する演説
 野田国務大臣の経済に関する演説
    午後零時二分開議
#2
○議長(櫻内義雄君) 諸君、第百二十三回国会は本日をもって召集されました。
 これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 議席の指定
#3
○議長(櫻内義雄君) 衆議院規則第十四条によりまして、諸君の議席は、議長において、ただいまの仮議席のとおりに指定いたします。
     ――――◇―――――
 特別委員会設置の件
#4
○議長(櫻内義雄君) 特別委員会の設置につきお諮りいたします。
 災害対策を樹立するため委員四十人よりなる特別委員会
 公職選挙法改正に関する調査を行うため委員二十五人よりなる特別委員会
 石炭に関する対策を樹立するため委員二十五人よりなる特別委員会
 物価問題等に関する対策を樹立するため委員二十五人よりなる特別委員会
 交通安全に関する総合対策樹立のため委員二十五人よりなる特別委員会
 沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる特別委員会及び
 土地問題及び国土の利用に関する対策を樹立するため委員四十人よりなる土地問題等に関する特別委員会を設置いたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。
 次に、
 国会等の移転に関する調査を行うため委員二十五人よりなる国会等の移転に関する特別委員会及び
 国際平和協力及び国際緊急援助活動に関する対策を樹立するため委員五十人よりなる国際平和協力等に関する特別委員会
を設置いたしたいと存じます。これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#6
○議長(櫻内義雄君) 起立多数。よって、そのとおり決しました。
 ただいま議決されました九特別委員会の委員は追って指名いたします。
     ――――◇―――――
#7
○議長(櫻内義雄君) この際、暫時休憩いたします。
    午後零時五分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時二分開議
#8
○議長(櫻内義雄君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説
#9
○議長(櫻内義雄君) 内閣総理大臣から施政方針に関する演説、外務大臣から外交に関する演説、大蔵大臣から財政に関する演説、野田国務大臣から経済に関する演説のため、発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣宮澤喜一君。
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
#10
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 平成四年を迎えた我が国は、激動する国際情勢に適切に対応する必要に迫られ、また処理すべき内政の課題も山積しております。
 このような年の幕あけに当たり、私は、ブッシュ大統領を我が国に迎え、また、初の外遊先である韓国で盧泰愚大統領と会談いたしました。米国とは、同国が今後も世界の秩序構築のリーダーとしてその役割を果たしていくことが必要であり、我が国もそれに全面的に協力し共同の責任を担っていくことで合意をいたしました。韓国においては、「アジアの中、世界の中の日韓関係」という視点から、アジア・太平洋の、ひいては世界の諸問題解決のために、ともに協力していくことで一致いたしました。
 私は、両大統領との話し合いを通じて、これらの指導者と国民がいかに世界平和を切望しているかを確認すると同時に、我が国への強い期待と担うべき重責に思いをいたし、改めて、身を引き締めて国政に臨む決意を新たにしたところであります。
 このように、内外ともに極めて重要なときに当たり、かつて国務大臣の職にあった同僚議員が収賄容疑で逮捕されたことは、まことに遺憾なことであります。この事件は、目下司直の手によって究明が進められておりますが、このようなことが生じたことについて、国民の皆様に対し、深くおわびいたします。
 将来に向けて対処しなければならない問題を多く抱えている今日、政治がこのような事態によって停滞することのないよう、政治倫理の確立を期するとともに、政治改革の実現に全力を挙げて取り組む決心であります。何とぞ各党各会派、そして国民の皆様の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。(拍手)
 歴史は今、第二次世界大戦後の世界の構図を大きく塗りかえようとしております。世界を二分してきた冷戦構造に終止符が打たれ、ソ連邦が解体し、朝鮮半島の南北対立も緩和の方向に急速に動き出しております。欧州では統合への歴史的作業が着々と進められ、中東やカンボジアでは和平への動きが現実のものとなっています。
 その一方で、イデオロギーの対立と核による対峙を背景とした秩序が崩壊した後、かえって民族紛争や核拡散への懸念が高まっているように、世界は、不確実化、不安定化の様相も強めております。また、地球環境の悪化を初め、難民や麻薬、人口やテロの問題など、人類が共同で取り組まなければならない深刻な課題も増大しております。
 このように来るべき秩序の姿はいまだ明確ではありませんが、大きな流れとして世界は、平和を求める人類の願いがかなう方向に進みつつあることは間違いありません。さきの所信表明演説で私が、冷戦後の時代を「新しい世界平和の秩序を構築する時代の始まり」ととらえたのも、まさにこのような認識に基づくものであります。我々は、このような流れを確実なものとし、人類の幸福と繁栄、そして地球の将来をかけて、新しい時代にふさわしい世界の平和秩序をつくり出すことに成功しなければなりません。各国がそれぞれその国情と国力に相応した責任を引き受けながら、手を携えてこの問題に取り組むことが必要な時代が到来したのであります。
 その中で我が国が、大きな経済力とこれを背景とする影響力に見合って、どのような責任と役割を果たすかに国際社会の注目が集まっております。そしてことし、平成四年こそは、我が国がこの点で真価を問われる年であります。英知を結集して、積極的、主体的、創造的に、新しい平和秩序の構築に参画し、この光栄ある時代的使命を全うしていかなければなりません。
 新しい世界平和の秩序づくりを進めるに当たって、世界の人々とともに追求すべき目標として、私は、平和と自由と繁栄を挙げたいと思います。このような目標が一体的なものとして追求されてこそ、個人の尊厳が保たれ、真の人間的価値が保障されるのだと思います。私は、このような考え方に立って、我が国の担うべき責任と役割を、外に対しては、国際貢献、内にあっては、生活大国の実現を通じて果たしていく決意であります。
 平和は、新しい国際秩序の基本であります。
 冷戦後の国際社会において、国連の果たすべき役割はますます大きくなっております。国連中心外交を展開してきた我が国としては、国連の行財政改革や紛争予防制度の確立などを通じて、その活性化を図るとともに、安保理の非常任理事国という立場からさまざまな地域問題などに政治的役割を果たし、国際社会からの期待にこたえてまいります。この意味からも、今月末の安保理首脳会議には、国会のお許しを得て私自身が出席し、理事国首脳と直接話し合ってまいりたいと思います。(拍手)また、国連平和維持活動などに対して十分な人的貢献を行う見地から、いわゆるPKO法案を、国際緊急援助隊法の改正案とともに、今国会においてできるだけ速やかに成立させていただくようお願いを申し上げます。(拍手)
 平和を担保する軍備管理・軍縮の動きは大きく進みましたが、ソ連邦の解体に伴う核管理問題や核拡散への懸念が生じております。核の究極的廃絶を願う我が国としては、関係各国と協力して、核軍縮のための国際的努力の促進や化学兵器禁止条約の本年中の妥結に積極的に取り組み、さらに、核、生物・化学兵器やミサイルの拡散防止の徹底を図ってまいります。また、昨年、我が国などの提案で創設された通常兵器の国連登録制度は、通常兵器の国際移転の透明性の増大と自主規制の強化を図る上で画期的なものであり、我が国としては、その効果的運用に努めてまいります。
 日米安保体制は、アジア・太平洋地域の平和と繁栄に不可欠の枠組みであり、我が国としては、今後ともこの体制を堅持してまいります。
 また、平和憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないという基本理念に従い、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、引き続き節度ある防衛力の整備に努めます。現行の中期防衛力整備計画は一昨年末に策定されましたが、その後の国際情勢はソ連邦の解体に見られるように激動しつつあります。政府としては、このような大きな情勢の変化などを見きわめつつ、中期防の修正について前広に所要の検討を行ってまいります。
 真の平和とは、単に戦禍がないというにとどまらず、人々に幸福を保障するものでなければなりません。したがって、私の言う新しい世界平和秩序が目指すところは、自由と民主主義が尊重され、市場経済の原理に基づく繁栄が享受される国際社会の構築であります。
 この意味で、旧ソ連邦、東欧諸国、さらに多くの開発途上国がこの方向に沿った改革を進めることは、これらの価値が国際社会の中でより広く受け入れられ、新しい国際秩序の基礎となるために極めて重要でございます。我が国としても、その支援に適切な役割を果たしていく考えであります。経済協力の実施に当たっても、このような観点に配慮してまいります。また、我が国がかつて先進諸国から学び、あるいは努力して蓄積してきた経済などに関するノウハウの提供など知的支援の展開に努めます。
 繁栄の原動力である世界経済は、依然として多くの問題を抱えております。世界の繁栄の恩恵を最も多く享受してきた我が国としては、持てる経済力、技術力などを積極的に活用し、また、我が国の経済を世界経済と一層調和のとれた構造に転換し、世界の繁栄と発展に貢献していく考えであります。
 このため、経常収支の動向などを注視しつつ、一層の輸入拡大を図るとともに、外資系企業や外国製品の我が国市場への参入を促進するなど、幅広い投資、産業分野の国際交流に努め、調和ある対外経済関係の形成に努めます。
 ウルグアイ・ラウンド交渉を、早期に、かつ成功裏に終結させることは、多角的な自由貿易体制の維持強化、さらには世界の繁栄のために重要な課題です。昨年末にはダンケル提案も出され、交渉は最終段階を迎えております。我が国としては、他の主要国とともに、引き続き交渉の成功に向け努力する決意であります。なお、農業については、各国ともそれぞれ困難な問題を抱えておりますが、我が国の米についてはこれまでの基本的方針のもと、相互の協力による解決に向けて最大限の努力を傾注してまいります。
 また、我々は、世界平和への流れを将来にわたって確実なものとし、その結果生ずる「平和の配当」を、全人類、とりわけ、飢餓や貧困、疾病などに悩む「南」の国の人々に振り向けていかなければなりません。我が国としても、政府開発援助の拡充などにより開発途上国の自助努力を支援し、南北格差の是正に努めてまいります。
 さらに、我々は、地球環境、難民や麻薬、人口やテロの問題など、人類共通の課題に真剣に取り組んでいかなければなりません。我が国としては、技術や経験の蓄積を生かしつつ、国連などの国際機関の場において積極的な役割を果たしてまいります。
 特に、地球環境の悪化は人類の生存基盤を脅かしています。有限な環境と資源の中で、持続可能な開発を目指す経済社会を形成していかなければなりません。このため、六月に予定されている国連環境開発会議、いわゆる地球サミットの成功に向け、我が国としても、各国と協調しつつ率先して努力してまいります。
 また、相互理解促進のための文化の交流や教育問題、宇宙や地球そのものについての科学技術の振興や国際協力についても積極的に取り組んでまいります。
 日米関係は、我が国外交の基軸であります。日本の戦後の繁栄は、米国からの善意に満ちた支援なしには実現できなかったと言っても過言ではありません。また米国は、戦後世界の平和を支えるため、多くの犠牲を払ってきました。その米国は今、少なからぬ困難に直面しており、我が国としては、その苦境克服の努力にできる限り協力すべきであります。そして、両国が力を合わせ、世界平和秩序の構築に向けて、地球的な規模の責任を共同で果たしていくこと、私は、それこそが真の両国間のグローバルパートナーシップだと考えます。(拍手)
 このような認識に立って、私は、先般、ブッシュ大統領と会談し、その成果を東京宣言や行動計画として発表いたしました。我が国と米国は、共通の価値観を基盤として、日米安保体制のもと、緊密な相互依存関係を発展させてきております。このような堅固な関係の上に立って、世界の平和と繁栄のための協力と、地球環境を初め幅広い分野の人類共通課題への共同取り組みについて合意することができました。二国間関係についても、経済問題を初め、双方の努力を通じ、友好協力関係を深めていく考えであります。もとより、こうした協力関係を維持発展させていくためには、両国の相互理解をさらに進めることが重要であることは言うまでもありません。
 アジア・太平洋地域の平和と繁栄を図るには、この地域の持つ多様性や活力ある経済を十分に生かすことが大切であります。我が国は、域内諸国との緊密な協力のもと、ASEAN拡大外相会議やアジア・太平洋経済協力閣僚会議などの国際協力の場を通じて、経済、政治の両面で積極的な役割を担ってまいります。
 我が国が、このような役割を果たすに当たり、留意すべきことは過去の歴史認識の問題であります。アジア・太平洋地域の人々は、過去の一時期、我が国の行為により耐えがたい苦しみと悲しみを体験されました。私は、ここに改めて深い反省と遺憾の意を表します。我々は、過去の事実を直視し、歴史を正しく伝え、二度とこのような過ちは繰り返さないという戒めの心をさらに培って、国際社会の一員としての責務を果たしていかなければなりません。
 朝鮮半島では、非核化に向け大きな前進が見られるなど緊張緩和に向かう新たな動きが生じています。我が国の朝鮮半島政策の基本は、日韓友好協力関係の強化にあります。今般の私の韓国訪問では、二十一世紀に向けた未来志向的な協力関係を具体化していくため、両国国民の深い相互理解と幅広い交流の促進を図り、経済問題も率直な話し合いによって協調を旨とする解決を図っていくことで認識が一致いたしました。北朝鮮とは、関係諸国と緊密な連携をとりつつ、朝鮮半島の平和と安定に資する形で、引き続き国交正常化交渉に臨んでまいります。
 カンボジアでは、国際社会の共同作業により、和平と復興のための画期的な試みが行われております。我が国としても、インドシナ全体の平和と繁栄への協力を行い、特に、カンボジアの復興については、そのための国際会議を今年我が国で開催したいと考えております。また、今年で国交正常化二十周年を迎える中国については、政治、経済両面にわたる改革・開放政策への支援を行うとともに、間断のない対話を通じ、同国の国際社会との一層の協調を促していきたいと考えます。さらに、ASEAN、南西アジア、大洋州諸国との一層の関係強化などを進めてまいります。
 冷戦後の国際秩序を考える場合、その帰趨に重大な影響を及ぼすのが旧ソ連邦諸国の動向であります。
 我が国としては、これら各国が、内政、外交両面にわたる改革路線を推し進めるとともに、条約その他の国際約束に基づく義務の誠実な遵守、核兵器の一元的かつ厳格な管理、旧ソ連邦の債務の承継などを確保するよう期待いたします。このような正しい方向に沿った改革努力に対しては、国際社会とも協力して適切な支援を実施してまいります。
 我が国は、独立国家共同体の参加各国との新しい関係を発展させていきたいと考えております。特に、我が国の隣国であるロシア連邦との関係については、法と正義に立脚して、北方領土問題の解決と平和条約の締結が一日も早く実現し、日ロ関係が抜本的に改善されることを強く期待いたします。
 欧州諸国は、米国と同様、共通の価値を分かち合う重要な友人であります。本年は、ECにおいて市場統合が完成し、その後の政治、経済・通貨統合の拡大のための基礎となるべき歴史的な年であります。我が国は、昨年七月、このように欧州の中核としての役割を高めているECと、日・EC共同宣言を発表いたしました。私は、その趣旨を踏まえ、双方の間の包括的な協力関係を促進していく考えであります。
 中東地域では、アラブ・イスラエル間の中東和平問題の解決に向けて新たな展開が見られ始めています。我が国としても、近く開催される地域の諸問題解決に向けた多国間会議などを通じて、湾岸危機後の中東の真の安定のための国際努力に参画し、これを支援してまいります。
 二十一世紀には、我が国も本格的な高齢化社会を迎えます。世の中に余力があるうちにできるだけ社会の基盤を強めていくことが、今を生きる我々の責務であると考えます。また、生産者中心の視点から消費者や生活者を重視し、効率優先から公正にも十分配慮した社会への転換を図らなければなりません。
 これらの課題にこたえるため、私は、内政の最重要課題として、「生活大国への前進」を掲げたいと思います。国民一人一人が豊かさとゆとりを日々の生活の中で実感でき、多様な価値観を実現できる、努力すれば報われる公正な社会、私は、こういう社会をはぐくむ国家を生活大国と呼び、その実現を目指してまいります。(拍手)
 私の描く生活大国とは、
 第一に、住宅や生活関連を中心とする社会資本の整備により、環境保全も図られ、快適で安全な質の高い生活環境をはぐくむ社会であります。
 第二に、労働時間や通勤時間の短縮により、個人が自己実現を図るため、自由時間、余暇時間を十分活用することのできる社会であります。
 第三に、高齢者や障害者が、就業機会の整備などを通じ社会参加が適切に保障され、生きがいを持って安心して暮らせる社会であります。
 第四に、女性が、男性とともに社会でも家庭でも自己実現を図ることのできる社会であります。今や女性の社会進出は当然のことでありますが、その能力と経験を生かすことのできる条件を一層整備していく必要があります。
 第五に、国土の均衡ある発展が図られ、中央も地方も、ゆとりある生活空間や高度な交通、情報サービスなどを享受できる社会であります。
 第六に、創造性、国際性を重んじる教育が普及し、国民が芸術、スポーツに親しみ、豊かな個性や香り高い文化が花開く社会であります。
 私は、このように、国民生活の隅々に至るまで、活力と潤いに満ちた社会を建設していきたいと考えます。なお、この生活大国の実現などに向けて、先般、新しい経済五カ年計画の策定を経済審議会に諮問いたしました。夏ごろをめどに一つの方向を得たいと考えております。
 国民が快適な暮らしを営むために、下水道、環境衛生、都市公園などの社会資本を計画的に整備することが重要になっております。このため、昨年、公共投資基本計画を踏まえて策定した住宅、下水道など八分野の五カ年計画では、直接的に国民生活の質の向上に結びつくように十分配慮をいたしました。平成四年度予算においても生活関連分野の社会資本の充実に重点を置いているところであります。
 また、きれいな空気と水と緑に囲まれた美しい生活環境づくりや、廃棄物の減量、再生、自然還元などのシステムの確立に取り組み、環境保全型社会の形成に努めてまいります。
 豊かな住宅水準を確保するためにも、社会の公正さを保つためにも、土地神話を打破し、二度と地価高騰を生じさせないことが必要であります。監視区域の運用の強化、土地税制の総合的見直し、土地関連融資の総量規制などの対策により、既に東京や大阪などにおいては地価の鎮静化の兆しか見えてきておりますが、政府としては、土地基本法の理念を踏まえ、引き続き、総合土地政策推進要綱に基づき、需給両面にわたる構造的かつ総合的な土地対策を講じてまいります。また、特に、大都市地域における住宅・宅地の供給に努め、良質な住宅ストックや良好な住環境の形成を図ってまいります。
 なお、総量規制は今年から解除いたしましたが、今後とも、金融機関に対して、投機的土地取引などに係る融資は厳に排除するよう指導するとともに、地価高騰のおそれが生じた場合には総量規制を臨機に発動することにいたしております。
 労働時間の短縮や快適な職場づくりは、ゆとりある勤労者生活の実現のため、ぜひとも達成しなければならない国民的課題であります。労使の自主的努力を一層支援するための仕組みを整備することなどにより、完全週休二日制の普及促進、所定外労働時間の削減などを推進してまいります。なお、国家公務員の完全週休二日制については、平成四年度のできるだけ早い時点での実施が可能となりますよう、所要の法律案を今国会に提出することといたしております。
 我が国の人口は今後急速に高齢化に向かい、三十年後には国民の四人に一人が高齢者という本格的な高齢化社会となることが予測されます。「少しのことにも、先達はあらまほしき事なり。」と申しますが、高齢者の豊富な人生経験や知識は、我々の社会にとって貴重な財産であります。私は、高齢者の方々がこれを社会で生かしつつ、生き生きと安心してその人生を送ることができるような社会をつくりたいと考えます。このため、雇用・就業環境の整備などにより社会参加を促進するとともに、揺るぎない年金制度を確立し、また、適時に適切な保健、医療、介護が安心して受けられるような社会の実現に向けて真剣に努力してまいります。特に、今後一層困難になると見込まれる看護職員、福祉施設職員、ホームヘルパーなどの確保は重要な課題であり、その勤務条件の改善、養成の強化などに総合的な対策を講じてまいります。
 次代を担う子供たちを取り巻く環境も、出生率の低下や女性の社会進出などにより大きな変化が生じております。引き続き、子供たちが健やかに生まれ育つための環境づくりに取り組んでまいります。
 本年は、「国連障害者の十年」の最終年に当たります。障害を持つ人々が家庭や地域で安心して暮らすことができるよう、完全参加と平等の理念に沿ってきめ細かな施策を講じてまいります。
 また、女性が男性とともに、あらゆる分野で平等に活躍できる社会の実現を目指して、「西暦二〇〇〇年に向けての新国内行動計画」に基づき、女性の地位向上のための施策を鋭意推進してまいります。
 東京一極集中を是正し、多極分散型の均衡ある国土の発展を図るため、国の行政機関などの移転や首都機能移転問題の検討に加え、都市・産業機能の地方分散を進め、特に、来年度からは、地方の自立的成長を牽引し、地方定住の核となるべき地方拠点都市地域の整備や産業の業務施設の再配置を促進してまいります。また、基幹的な高速交通網の整備など快適な交通体系の構築、生活や地域に密着した高度な情報・通信網の整備、高規格幹線道路を初めとする道路網の体系的整備などを行い、人、物、情報の流れが全国的に及ぶ、いわば国土のネットワークの形成に努めてまいります。
 また、地方の創意工夫に基づく地域づくりを図るため、国から地方への権限委譲を図るとともに、ふるさと創生を契機として高まってきた自主的、主体的な動きをさらに支援し、住民が誇りと愛着を持ち得る地域づくりを推進いたします。北海道の総合開発と復帰二十周年を迎える沖縄の振興開発に、引き続き積極的に取り組んでまいります。
 農林水産業は、国民生活に一日も欠かせない食糧の安定供給という重要な使命を担っています。また、国土の広範な部分を占め、国民のふるさとの地である農山漁村は、緑豊かな自然と伝統文化に裏づけられた、ゆとりある生活・余暇空間を提供するなどの機能もあわせ有しております。
 こうした使命、機能を持つ我が国の農業、農村が今、担い手不足、高齢化、国際化などの進行により大きな節目を迎えています。私は、このような事態に対応して、農業を営む方々が、生産活動を活性化し、魅力と誇りを持って農業に従事し農村地域に定住できるよう、その基本的条件を整備することが特に重要であると考えます。このため、経済社会の中長期の展望を踏まえ、食糧、農業、農村をめぐる施策について、二十一世紀という新しい時代にふさわしいものとするよう努めてまいります。また、林業、水産業については、国土・環境保全など緑と水の源泉としての森林の働きを増進させる森林づくり、恵まれた海の幸を生かした水産業の振興などに努めてまいります。
 教育や芸術文化、科学技術は、国家、社会のあらゆる分野の発展基盤です。
 学校教育においては、個性や創造性を伸ばし、日本人としての自覚に立って国際社会で活躍し貢献できる、心豊かなたくましい国民を育成する教育に努めます。また、生涯にわたる学習機会を整備するとともに、スポーツや芸術文化の振興を図ってまいります。
 さらに、人類全体の知的資産を創出し、国際的責務を果たしていくためにも、独創的、先端的な学術研究や科学技術の推進を図ることが必要です。高等教育機関の教育・研究環境の抜本的な改善や研究開発基盤の整備、研究交流や国際協力の一層の促進などを図るとともに、宇宙、海洋、原子力などの開発利用を推進してまいります。
 市場における公正かつ自由な競争の維持、促進については、今後とも、独占禁止法違反行為に対して厳正に対処するとともに、その運用の透明性を高めてまいります。
 証券・金融をめぐる一連の問題については、既に損失補てんの禁止などを内容とする証券取引法の改正、金融機関の内部管理体制の総点検などの対応策を講じました。今後、さらに、利用者のため、証券、金融市場における適正な競争を促進するとともに、問題の再発を防止し、市場に対する信頼を回復するため、今国会に必要な改正法案を提出するなど、法制上、行政上の総合的な対策に取り組んでまいる決意であります。
 さらに、国民が安全で豊かな消費生活を営むことができるよう、消費者の被害防止・救済のあり方の検討など、総合的な消費者行政を推進してまいります。
 なお、行政手続法制の整備に取り組むなど、公正、透明で信頼される行政を目指します。
 昨年、我が国は、雲仙岳の噴火、相次ぐ台風の襲来など数多くの災害に見舞われました。とうとい生命を失われた方々やその御遺族に対し、深く哀悼の意を表するとともに、住居を失い、農作物に壊滅的な打撃を受けた方々に、心からお見舞いを申し上げます。
 これらの災害による被災者の救済については万全を期するとともに、雲仙岳噴火災害については、これに加え、将来の防災地域づくりと地域の振興、活性化に向けて、現在、必要な調査検討を進めております。私は、今後とも、生活大国にふさわしい災害に負けない国土づくりを進めてまいります。
 最近の治安情勢は、広域にわたる凶悪犯罪の多発、暴力団の市民への脅威、薬物乱用の深刻化など厳しさを増しております。私は、治安の確保は法治国家の根幹であるとの認識に立って、今後とも安全な国民生活の確保に万全を期してまいります。また、交通事故による死者の数が高水準で推移していることから、交通安全に努めてまいります。
 世界の平和秩序の構築に貢献していくためにも、また、生活大国の実現を図っていくためにも、我が国の経済が健全に発展し続けることが不可欠の条件であります。政府としては、今後とも内需を中心とするインフレなき持続可能な成長を図ってまいります。
 我が国経済は、住宅投資の減少などに見られるように、このところ拡大テンポが減速しております。したがって、こうした状況が企業家や消費者の心理を大きく冷え込ませないよう、内需を中心に景気に十分配慮した経済運営を行う必要があります。
 平成四年度の予算編成においては、税収の鈍化など極めて厳しい財政事情のもと、歳出の徹底した見直しに努めるとともに、建設公債の発行額の増加や税制面での所要の措置により財源を確保した上で、予算の重点的、効率的配分を図り、景気にも十分配慮した予算といたしました。特に公共投資については、生活関連分野を中心に、一般歳出や財政投融資、地方単独事業において思い切った拡充を図っております。これは、公定歩合の引き下げなどの施策とあわせ、今後の内需を中心とするインフレなき持続可能な成長の確保に十分に資するものと考えております。
 我が国の財政は、公債残高が平成四年度末に約百七十四兆円にも達する見込みであり、依然として構造的に厳しい状況にあります。後世代に多大の負担を残すことなく、再び特例公債を発行しないことを基本として、公債残高が累増しないような財政体質の確立に向けて努力を重ね、来るべき高齢化社会においても経済社会の活力を維持し、また、国際貢献を初めとする内外の諸要請に適切に対応できるようにいたさなければなりません。
 地方財政についても、その円滑な運営を図ってまいります。
 また、行革審の答申などを最大限に尊重し、規制緩和の推進などに努力するとともに、国・地方を通じた行財政改革を引き続き推進してまいります。
 最近の物価動向を見ますと、その基調は安定した動きを示しております。今後とも、原油価格、為替レート、国内需給などの動向を十分注視しつつ、物価の安定に最善の努力を尽くしてまいります。また、内外価格差の是正、縮小を引き続き図ってまいります。
 雇用に関しては、中小企業や地域における人材の確保や定着などのための施策を推進するとともに、障害者雇用対策の充実強化、職業能力開発の積極的促進などを図ってまいります。
 中小企業は、我が国経済の活力の源泉であります。厳しい環境の変化に柔軟に対応できる創意と活力に満ちた中小企業の育成を目指し、創造的な事業展開への支援や伝統的工芸品産業の振興だと中小企業施策の充実強化に努めてまいります。
 エネルギーについては、環境調和型の需給構造への転換を図り、需要面ではあらゆる部門における抜本的な省エネルギーを推進するとともに、供給面では、石油の安定供給の確保に万全を期する一方、原子力や再生可能なエネルギーなどの開発導入により、石油依存度の低減に努めてまいります。原子力発電については、一層の安全性を確保しつつ、立地を促進し、国民の皆様の信頼感を醸成するよう最大限努力してまいります。
 以上、第百二十三回国会の開会に当たり、内外の情勢を展望して施政の方針を明らかにいたしました。冒頭に申し上げたとおり、我が国が激動する諸情勢に機敏に対応し、国政が的確に遂行されるためには、政治が国民の信頼に支えられて、その機能を十分に発揮することが必要不可欠であります。
 政治改革の実現には、まず何よりも政治倫理の確立を図ることが重要であります。しかし、個々の議員の意識、行動とは別に、国民の政治不信の根底には、制度上解決を要する問題が横たわっていることも事実であり、金のかからない政治活動や政策を中心とした選挙が実現できる仕組みをつくる必要があります。このため、政治資金制度や選挙制度の改革が急務であります。また、投票価値の格差是正の要請にもこたえられるよう努力しなければなりません。政治改革協議会における各党間の御議論を早急に深めていただき、実りある合意が得られ、国民の理解を得て改革が実現できることを心から期待するとともに、政府としても最大限の努力を払ってまいります。(拍手)
 私は、このような改革を通じて政治が国民の信頼を回復し、国家国民のため、また世界人類のため、時代の負託にこたえ、よくその使命を全うできるよう、真剣に努力してまいりたいと考えております。
 重ねて、議員各位、国民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(櫻内義雄君) 外務大臣渡辺美智雄君。
    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇〕
#12
○国務大臣(渡辺美智雄君) 第百二十三回国会が開かれるに当たり、我が国の外交の基本方針につき所信を申し述べます。
 国際社会は今日、世界史上にほとんど例を見ない、大きな変革を経験しつつあります。東欧諸国に続いてソ連においても、共産主義体制は崩壊し、ソ連邦は今や存在しておりません。東西間の冷戦は終わり、多くの国々が、民主主義と市場経済の導入に取り組んでいます。その一方で、西欧諸国は、統合に向かって協力を深めつつあります。
 アジア・太平洋地域でも、国家関係が、政治体制の違いを乗り越えて正常化しつつあり、経済面で市場原理に基づいた改革、開放が進められています。カンボジアや朝鮮半島においては、和解と安定に向けて具体的な措置がとられ始めております。
 東西間の冷戦を背景にした地域紛争は、アフリカにおいても、中米においても、急速に終わりつつあります。また、イスラエルとアラブとの間の対立抗争についても、すべての当事者が参加する話し合いが始まりました。軍縮の分野でも進展が見られています。
 これらの動きは世界人類の未来に明るい展望を開くものであります。
 しかし同時に、今日の世界は多くの困難な問題を抱えています。かつてのソ連や東欧諸国は、既に、失業、日常品の不足、インフレといった深刻な経済困難に直面しています。また、旧ソ連邦は、民族、宗教などによる対立や新旧の権力闘争を抱え、極めて不安定な状況にあります。さらに、旧ソ連邦内の混乱によって、核兵器などの大量破壊兵器やその関連技術の国外への流出や、チェルノブイリで起きたような原子力発電所における事故といった極めて危険な事態が起こる可能性も強く懸念されているところであります。
 世界的に見て、今後も、民族や宗教に起因する対立、経済的な権益や領土をめぐる抗争などが地域的な武力紛争に発展する危険性は、引き続き遺憾ながら存在しております。むしろ、古い体制の崩壊が、ユーゴスラビアに見られるように、それまで抑圧されていた対立抗争を激化させるという面も少なくありません。
 さらに、世界は、地球環境を初めとする国境を越えた問題や、開発途上国における貧困の問題に対する取り組みを迫られています。
 しかるに、頼りにされるべき多くの先進工業国では、自国の経済成長の減速、根強い保護主義圧力の台頭などが深刻になってきつつあります。
 このように大きく、かつ、激しく変わりつつある国際社会の中にあって、日本はいかに行動すべきか。今、我々はこの問いに対して、みずから答えを出さなければなりません。なぜならば、我が国の対応が新しい国際秩序の形成に、直接、間接に大きな影響を及ぼすようになってきたからであります。
 しかも、我が国は昨年末の国連総会において、安全保障理事会の非常任理事国に選ばれました。今回の選出に当たって国連加盟国の圧倒的多数が日本に寄せた期待を十分に認識しておかなければなりません。
 第二次世界大戦における敗戦から約半世紀がたった今日、日本は、世界第二の経済大国となるに至りました。しかしながら、我が国の戦後の復興と発展は、国民の英知と努力、市場経済と自由貿易という歴代政府の基本政策のもとで、米国を初めとする友好国の援助と協力があって初めて可能になったものであります。このことを思うとき、これからの日本が国際社会に対してなすべきことはおのずから明らかであります。それはすなわち、国際協調の精神のもとで、我が国の持てる力、すなわち経済力、技術力を活用することはもとより、さまざまな人的貢献や知恵をもって、新しい世界平和の秩序の構築に貢献することであると私は信じます。(拍手)世界の国々における相互依存関係が深まっている今日、このような貢献を行っていくことは、我が国自身の平和と繁栄を確保していく上でも不可欠であります。
 新しい世界平和秩序を構築するための国際協力を進めるに当たっては、これまでにも増して日本の特色を生かした外交を展開することが重要であることは言うまでもありません。このような観点から、我が国は、世界平和のための国際貢献を重視し、世界各地の地域紛争の解決や地域的安定への協力、軍備管理・軍縮の促進に取り組んでまいります。それとともに国境を越えた問題の解決や文化、科学技術に関する協力などにも力を入れてまいります。
 また、我が国は、人類普遍の原理である個人の自由、民主主義、基本的人権に配慮していかなければなりません。我が国がこのような外交を展開することは、また、国際社会の期待にこたえることになると私は考えております。
 さらに、我が国が行う国際貢献は、単に資金面での協力にとどまらず、国連憲章の精神を酌んだ我が国の憲法のもとで、最大限の人的協力を行うべきであります。我が国が、額に汚した人的な貢献を含め、幅の広い国際貢献を行うことこそが、「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてみる国際社会において、名誉ある地位を占めたい」という平和憲法の理想を実現していくことなのであります。(拍手)
 国連の平和維持活動は、国連憲章の精神にのっとり、平和を守るため、国連が実績を積み上げてきた活動であり、これまでに世界の八十以上の国が参加した国際社会に対する汗をかく人的貢献であります。継続審議をお願いしているいわゆるPKO法案は、まさにこのような活動に我が国が積極的に参加できる体制を整備しようとするものであります。(拍手)国民の皆様の理解のもとに、この法案を今国会においてぜひとも成立させ、国際社会における我が国の責任の一端を果たそうではありませんか。(拍手)また、同じ観点から、国際緊急援助隊法改正法案についても、今国会における成立をお願いするものであります。
 冷戦後の世界平和を一層確かなものとするための重要な課題は、軍備管理・軍縮であります。そうした中で、我が国が、原爆体験を持つ世界唯一の国家として、核兵器の廃絶を究極の目標とし、そしてまた、政府が、武器やその製造に関連する設備の輸出を慎むという極めて先進的な政策をとっていることは、国際的に誇りとすべきところであります。それだけに、世界の国々の関心が、大量破壊兵器の拡散防止や通常兵器の移転問題に向けられている今日、日本がこの分野で指導的な役割を果たしていくことが、国際的にも大きく期待されているところであります。日本が昨年、通常兵器の移転に関する国連登録制度の実現に大きな役割を果たしてきたこと、そしてまた、他の国に先駆けて、いわゆるODA四指針を決定し、政府開発援助の実施に当たって、被援助国の軍事支出の動向や大量破壊兵器やミサイルの開発及び製造の動向、そして武器の輸出入の動向などを考慮に入れることを明らかにしたことが、国際的に高く評価されたのは、その証拠であります。
 冷戦が終わったこの機会をとらえて、政府といたしましては、国際的な核軍縮に関し、一層の貢献を行うとともに、大量破壊兵器及びミサイルの不拡散体制の強化、並びに通常兵器の移転問題等の分野で、一層積極的な役割を果たしていく方針であります。特に我が国といたしましては、核兵器不拡散の分野で、現行の保障措置制度を抜本的に強化するために努力をするとともに、化学兵器禁止条約の交渉を本年中に妥結に導くよう一層尽力をしてまいります。
 北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国の核兵器開発問題は、我が国のみならず、アジア・太平洋、ひいては世界の安全を脅かす重大な事態であります。このような認識に立って、政府は、北朝鮮との国交正常化交渉に当たり、北朝鮮が国際原子力機関との保障措置協定を締結し、無条件、かつ、速やかに査察を受け入れるよう強く求めてまいりました。また、もし再処理施設があるとすれば、それを撤去することも引き続き求めてまいる心算であります。このような見地から、我が国は、朝鮮半島における核兵器の不存在の確認を可能としたブッシュ大統領の核軍縮措置、そして、将来にわたって核兵器及びその関連設備の不保持を宣言した盧泰愚大統領の決断を高く評価するものであります。また、韓国と北朝鮮が朝鮮半島の非核化に関する共同宣言に署名したことは大きな前進であります。
 旧ソ連邦における核兵器の管理は、世界の平和と安全に極めて大きな影響を及ぼす問題であります。我が国は、核兵器が厳格な一元的管理のもとに置かれること、及びロシア以外の新しい独立国が速やかに非核兵器国として核不拡散条約を締結し、また、そこに存在する核兵器を一日も早く廃棄し、あるいは撤去することを強く求め続けていく方針であります。
 国際社会が大きく変化をしておるときだけに、世界経済のインフレなき持続的成長を確保することは、これまで以上に重要であります。我が国といたしましても、そのために進んで積極的な役割を果たしていかなければなりません。また、ブレトンウッズ体制のもとで、戦後の復興をなし遂げ、世界第二位の経済大国と称されるまでに至った日本としては、多角的自由貿易体制の維持強化に積極的な役割を果たしていく責務があります。ウルグアイ・ラウンド交渉の成功に寄与することは、その重要な第一歩であります。多角的自由貿易体制の維持強化にとり極めて重要なこの交渉は、昨年暮れに最終合意文書案が提示されるという新たな展開を経て、現在最終段階にあります。仮にこの交渉が失敗するというようなことになれば、国際経済及び我が国経済に多大な悪影響を与えるものと考えられます。我が国といたしましては、この交渉が早期に成功裏に終結するよう引き続き最大限の努力を払っていく方針であります。
 自由貿易体制下で相互依存関係が強まる中で、一国だけの繁栄を長続きさせることは困難であります。そこで、開発途上国に対する支援に取り組んでいくことも極めて重要であります。特に、日本は、開発途上国が多いアジア・太平洋地域に位置しております。また、日本自身、欧米の先進諸国から技術や知識を学び、その支援、協力も受けて、近代国家として発展を遂げてきたという経験を持っております。それだけに開発途上国の発展を支援することは、国際社会における日本の使命でもあります。
 今国会で審議をお願いする平成四年度の政府開発援助予算について、厳しい財政事情のもとで、第四次中期目標の達成に向けて九千五百二十二億円の一般会計予算を計上いたしましたのも、このような認識に立つものであります。
 今後、政府開発援助の活用に当たりましては、地球環境、難民、麻薬などの国境を越えた新しい課題に対応する努力を行っていくことが重要であります。また、第四次中期目標に沿って、援助のハード面のみならず、ソフト面も重視し、質の改善を図るほか、その一層、効果的、効率的な実施についても引き続き十分な配慮を払っていく方針であります。
 以上のような外交を進めていくに当たりまして、我が国が、自由、民主主義、市場経済といった価値を共有する先進民主主義諸国との協調を図っていくことが重要であります。
 中でも、米国との緊密な協力関係は我が国の外交の基本であります。日米安全保障体制に裏づけされた強固で広範な両国の協力関係は、アジア・太平洋地域の平和と安定を確保し、また、他国に脅威を与えるような軍事大国にはならないという日本の立場の国際的信頼性を高めるためにも役立っています。したがって、日米間の各種の摩擦、対立が伝えられる中でも、日米安保体制を中心とした両国の協力関係を一層強化するよう努力しなければなりません。
 今回、ブッシュ大統領の訪日を期して、日米両国が東京宣言を発表して、二十一世紀に向けて日米のグローバルパートナーシップのもとで、地球的、世界的な責任と役割を果たしていく決意を表明したことは、時宜を得たものであります。また、日米両国が、世界経済の安定的発展のために、できる限り協力し合うことは当然であります。我が国は、日米の行動計画にあるとおり、自由貿易の原則に立ち、一層の市場開放を含めた種々の措置を決定したところであり、今後その着実な実施に努めてまいります。
 我が国は米国のみならず、西欧諸国とも価値観を共有しており、これらの諸国とも関係を一層強化していく必要があります。特にEC諸国は、市場統合に続いて、経済・通貨統合及び政治統合に向けてさらに歩みを進めることによって、ますます一体性を強めようとしております。このように国際社会における影響力が増大しつつあるEC諸国との間で、政策協議と政策調整の緊密化を図っていくことは、我が国の外交の重要な柱でもあります。このような観点から我が国は、昨年七月に日欧関係にとって歴史的意義を持つ日本・EC共同宣言に合意いたしました。今後この宣言に基づいて、EC加盟各国との二国間関係の強化に加えて、一体としてのECとの間でグローバルな観点から幅広い協力を推進していく方針であります。
 アジア・太平洋諸国との関係について申し上げます。
 韓国、ASEAN諸国、豪州を初めとするアジア・太平洋諸国との間で、地域の安定、発展にかかわる政治、経済両面の課題や世界的な問題について、二国間、多数国間でともに考え、相協力して、問題の解決に当たっていくことも、これからますます重要になってまいります。また、日本が二国間のみならず、ASEAN拡大外相会議やAPECといった多数国間の協議や協力の場に積極的に参加することは、アジア・太平洋地域の国々と日本との間の相互信頼関係を高めるためにも重要であります。この地域の国々には、過去の歴史や日本の存在感の大きさに根差す不安感が依然として残りております。それだけに、将来に向かって日本は、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないという基本方針を堅持していかなければなりません。
 朝鮮半島については、北東アジアの長期的な安定を確保するという見地から、韓国、米国、さらには中国などとも十分な連携をとりつつ、政治、経済両面において積極的な外交を展開していく方針であります。宮澤総理大臣が今般韓国を訪問したのも、このような方針のもとで、日韓両国関係の一層の強化を図るためでありました。
 また、日韓友好関係を基本としながら、朝鮮半島の平和と安定に資するような形で、引き続き日朝国交正常化交渉に誠意を持って臨んでまいります。
 東南アジア全体の安定と発展を確保していく上で、インドシナ半島をアジア・太平洋の活力ある経済発展の枠組みに取り込んでいくことが重要であります。このような観点からも、カンボジア及びベトナムの復興と発展を図っていかなければなりません。我が国といたしましては、カンボジアの和平協定を真に実効あるものとするため、その安定と復興の面で国連の活動に積極的に協力するとともに、本年、日本で、カンボジア復興のための国際会議を主催してまいりたいと考えております。
 アジア・太平洋地域の安定と発展のために重要なもう一つの課題は、アジアの友邦としての立場から、十一億余の人口を有する中国の政治と経済の両面にわたる改革、開放に積極的に協力していくことであります。本年は、日中国交正常化二十周年に当たります。これを契機に、日中間の協力関係を、二十一世紀に向けてアジア・太平洋地域の安定や世界の平和に資するものとしていくことが重要であります。私も、このような立場から先般中国を訪問し、二国間関係のみならず、軍備管理・軍縮、地域情勢、地球環境問題等各般にわたって中国の指導層と腹蔵のない意見の交換を行ってきたところであります。
 さらに、民主主義と市場経済に基づく改革を進めつつあるモンゴルや南西アジア諸国に対する支援やこれらの諸国との関係強化にも努めてまいるとともに、豪州、ニュージーランドなどとの協力関係を発展させてまいります。
 旧ソ連邦の国々の国内的な混乱を回避し、その民主化、市場経済導入のための努力を、これを支援し、成功に導くことは、国際政治の当面の重要な課題であります。このような認識に立って、私は、各国による対ソ支援を調整するため、去る二十二日よりワシントンで開かれた閣僚会議に出席し、これらの独立国の抱える問題の克服のために、日本が適切なる役割を果たす用意があることを明らかにしてきた次第であります。
 また、我が国は、旧ソ連邦の対外的権利義務を継続するというロシア連邦との間で、法と正義に基づいて一日も早く北方領土問題を解決し、平和条約を締結し、日本とロシアとの関係を長期的に発展させる基礎をつくっていかなければなりません。このような認識に立って政府は、民主化と市場経済の導入を定着させる方向でロシアにおける変革を安定的に促進することと、北方領土問題を解決することという二つの政策目標をともに達成すべく、最大限の努力を傾注してまいる方針であります。
 東欧諸国は、深刻な経済状況に直面しつつも民主主義と市場経済の導入に努力しており、我が国としても引き続き積極的に支援してまいりたいと存じます。
 中東諸国との関係強化は、我が国にとりて引き続き重要な課題であります。それだけに、中東の長期的安定の確保には、日本も重大な関心を持っております。来週モスクワで開かれる中東和平問題に関する閣僚レベルの国際会議にも、国会のお許しを得て、私みずから出席し、日本の考え方を伝えたいと考えております。
 アフリカでは、多くの国が困難な状況の中で民主化や経済構造調整に取り組んでおります。我が国はこのような努力を可能な限り支援してまいりたいと存じます。先般、我が国は、南アフリカとの間で外交関係を再開しましたが、同国に自由で民主的な体制が早期に確立されるよう、働きかけを一層強化してまいります。
 中南米でも、多くの国が民主主義と市場経済に基づく改革を進めており、我が国はこれらの改革を可能な限り支援してまいります。また、我が国は、最近のエルサルバドルの和平合意を歓迎し、今後とも、中米地域の安定のために努力する所存であります。
 第二次世界大戦の反省の上に立って、恒久の世界平和を求めて、国際連合憲章が生まれ、国連が誕生しました。しかし、イデオロギーの異なる超大国の対立によって、その機能は必ずしも目的どおりには動きませんでした。しかし、ソ連邦の崩壊と政策の革命的大転換により、国連はその原点に立ち返って、活動しやすくなったと言うことができましょう。超大国間の軍縮や核不拡散が進んだとしても、残念ながら地域紛争は絶えません。難民、テロ、麻薬、地球環境汚染など、世界は克服しなければならない多くの問題を抱えています。今や、国連は見直され、大きな役割が期待されています。
 このような中で、安全保障理事会の非常任理事国に選ばれた我が国は、国際の平和と安全のために中心的な役割を果たしていくべき立場にあることを肝に銘じつつ、国連外交を強化してまいります。その際、国連が新しい時代に対応できますふう、その機能強化と機構改革を促していく方針であります。
 さらに、国際社会は、地球環境、難民、麻薬、テロなどの国境を越えたさまざまの問題を抱えており、我が国はその解決のために努力していかなければなりません。特に地球環境問題については、本年六月に、気候変動に関する枠組み条約や地球憲章の採択を目指す国連環境開発会議が開催される予定であります。政府といたしましても、公害対策などに関する我が国の経験と技術をも生かしつつ、この問題に対する国際的取り組みにおいて積極的な役割を果たしていく方針であります。
 また、全世界で千七百万人を超すと言われる難民の存在は、開発途土地域の安定に大きな影響を及ぼす深刻な問題であります。我が国としては、カンボジア避難民の帰還の促進を初めとする世界各地の難民問題について、国連難民高等弁務官事務所などの国際機関を中心とする国際協力の一層の推進を図るべく、積極的な役割を果たしていく方針であります。
 これからの外交においては、文化や科学技術の分野における交流の促進を図ることも重要であります。文化交流は、諸国民の間の相互理解を深め、信頼関係を助長し、安定的な国際関係の確立に資するものであります。政府としては、長期的な視野に立った文化交流の拡大に努めていく方針であります。また、世界の文化財の保護や伝統文化の保存等の分野でも積極的な協力を行っていく考えであります。さらに、科学技術の分野では、外国人研究者の受け入れや国際的な各種研究プロジェクトを着実に進めていくことが重要であります。
 以上に申し述べましたように、我が国が国際社会において果たすべき役割は飛躍的に欠きくなっております。激動する国際情勢に的確に対応し、機動的な外交活動を展開していくためには、それを支える体制の強化が必要であります。私は、臨時行政改革推進審議会の第一次答申を受けて、国民の皆様の御理解をも得つつ、外交実施体制の強化に努めていく決意であります。
 新しい世界平和の秩序を構築していく上で、我が国は今までになく幅広い役割を果たしていかなければなりません。そのような外交の展開は、内政に直接影響をもたらすものであります。
 それゆえに、現在の国際環境における我が国の立場と果たすべき役割の必要性を国民の皆様が御認識いただけるかどうかが、与野党の外交に対する共通の立場ができるかどうかという分岐点になろうかと私は考えております。
 私は、外交を極力わかりやすいものとして国民各位に訴え、世界とともに生きるしかない我が国の国益を守ってまいる決意であります。(拍手)
 道は近くにあります。誠意を持って実行していけば、至誠天に通ずといいますが、私はそれをやり遂げる決意であります。何とぞ国民各位の絶大なる御支援をお願い申し上げる次第であります。
 以上であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○議長(櫻内義雄君) 大蔵大臣羽田孜君。
    〔国務大臣羽田孜君登壇〕
#14
○国務大臣(羽田孜君) 平成四年度予算の御審議をお願いするに当たり、今後の財政金融政策の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大綱を御説明いたします。
 戦後四十年余の間に、我が国経済は、国民のすぐれた英知とたゆみない努力により、二次にわたる石油危機など幾多の試練を乗り越え、世界にもまれに見る目覚ましい発展を遂げてまいりました。
 この間、国際社会における我が国の地位は急速に向上し、今や、激動が続く国際情勢のもとで、その地位にふさわしい役割を果たしていくことを強く期待されております。
 今後、我が国の進むべき道は、これまでに達成した経済的成果を生かしながら、国内的には、国民の一人一人が生活面での豊かさを実感できるよう、国民生活の一層の質的向上を実現していくとともに、対外的には、世界経済の安定的発展のために我が国にふさわしい貢献をしていくことにあると考えます。
 最近の内外経済情勢について見ますと、我が国経済は、個人消費や設備投資に依然底がたさが見られるものの、住宅建設の減少などに見られるように、このところ拡大テンポが減速しつつあります。しかしながら、雇用情勢については、有効求人倍率が高い水準にあるたど、依然引き締まり基調で推移しております。また、物価の動向を見ますと、国内卸売物価は引き続き落ちついており、消費者物価についても、その騰勢は鈍化しつつあります。このような状況から判断すれば、我が国経済は、いわば完全雇用を維持しながらインフレなき持続可能な成長に移行する過程にあるものと考えられます。
 国際経済情勢を見ますと、先進国は、全体として景気の減速局面からの回復の過程にあり、本年は昨年よりも高い成長が見込まれております。しかしながら、依然米国経済の景気回復の足取りが重いことなどから、全体の回復のテンポも緩やかなものとなると見込まれております。他方、今後の世界的な資金需要の高まりへの対処は引き続き重要な課題であり、このためには世界的な貯蓄増大が重要であると指摘されております。また、累積債務問題につきましては、引き続き解決に向けての努力を必要といたしております。旧ソ連につきましては、昨年末で連邦が消滅し、各共和国による独立国家共同体がスタートしておりますが、経済・金融などの面で深刻な問題に直面しており、国際金融機関の協力を得て適切な調整・改革政策を実施していくことが重要であると認識しております。
 私は、今後の財政金融政策の運営に当たり、このような最近の内外経済情勢を踏まえ、二十一世紀に向けて我が国が進むべき道を展望しつつ、以下に申し述べる諸課題に全力を挙げて取り組んでまいる所存であります。
 第一の課題は、内需を中心としたインフレなき持続可能な成長への円滑な移行を図ることであります。このような観点から、景気には十分配慮した施策を実施することといたしております。
 平成四年度予算編成に当たりましては、こうした見地から、極めて厳しい財政事情のもとでありますが、時代の要請に的確に対応した財源の重点的、効率的な配分を図り、特に公共投資については、国・地方を通じ最大限の努力を払っております。すなわち、まず一般歳出における公共事業関係費について五・三%の伸びを確保するとともに、財政投融資計画においても、公共事業実施機関について一〇・八%の伸びとしております。さらに、地方単独事業についても、一一・五%と高い伸びを見込んでおります。
 一方、金融面では、昨年七月、十一月、さらに十二月末と三度にわたって公定歩合の引き下げが行われたところであります。この間、市場金利は低下を続け、これを受けて金融機関の貸出金利も低下してきております。さらに、最近の地価の鎮静化傾向等にかんがみ、昨年末をもって金融機関の不動産業向け貸し出しに係る総量規制を解除いたしましたが、これは宅地供給や住宅建設の適切な促進等に必要な資金の円滑な供給に資するものと考えられます。
 また、今後とも、主要国との政策協調及び為替市場における協力を通じ、為替相場の安定を期してまいりたいと存じます。
 国民各位におかれましては、我が国経済の先行きに自信を持って経済活動に取り組まれますことを期待いたしておるところであります。
 第二の課題は、財政改革を引き続き強力に推進することであります。
 平成四年度予算においては、財政改革を推進する等の観点から、まず既存の制度、施策について見直しを行うなど歳出の徹底した節減合理化に努め、一般歳出についてはその増加額を前年度同額以下とするなど、可能な限りの努力を払ったところでありますが、当面の厳しい税収動向、財政事情に対応するため、建設公債の発行額を増加させることといたしました。
 この結果、我が国財政は、公債残高が平成四年度末には約百七十四兆円にも達する見込みであり、また、国債費についても歳出予算の二割を超えて政策的経費を圧迫するなど構造的な厳しさが続いております。
 財政改革の目的は、本格的な高齢化社会が到来する二十一世紀に向けて一日も早く財政が本来の対応力を回復することにより、今後の財政に対する内外の諸要請に適切に対応し、豊かで活力ある経済社会の建設を進めていくことにあります。
 したがって、今後の財政運営に当たっても、後世代に多大の負担を残すことなく、二度と特例公債を発行しないことを基本として、公債依存度の引き下げ等により、公債残高が累増しないような財政体質をつくり上げていかなければなりません。このため、引き続き財政改革の推進に全力を傾けてまいる所存であります。
 第三の課題は、調和ある対外経済関係の形成と世界経済発展への貢献に努めることであります。
 世界経済は、貿易や直接投資の拡大とともに相互依存関係をさらに深めつつあり、もはや、一国の経済は、他国との円滑な経済関係なしには成り立たないという状況にあります。このような状況のもとで、国際社会において重要な地位を占める我が国は、調和ある対外経済関係の形成に努めるとともに、世界経済の発展のために積極的に貢献していく必要があろうと考えます。
 先般の日米首脳会談におきましては、日米両国が、他の先進諸国とともに、今後とも物価安定を伴った持続的成長に資するよう協調的努力を続けていくことの重要性が再確認されたところであります。
 保護主義的な動きを回避し、多角的自由貿易体制を維持強化することは、世界各国の経済発展と国民生活向上の基礎であります。このような観点から、ウルグアイ・ラウンドにつきましては、各国と協調しつつ、成功裏に終結するよう努力することが重要であると考えます。
 関税制度につきましては、市場アクセスの一層の改善を図る等の見地から、保税地域制度の改善、石油関係の関税率の引き下げ等の措置を講ずることといたしております。
 経済協力につきましては、開発途上国の自助勢力を支援するため、政府開発援助の着実な拡充と資金還流措置の実施に努めているところであります。
 累積債務問題につきましては、新債務戦略を積極的に支持し、所要の協力を行っていく考えであります。
 旧ソ連地域に対する支援につきましては、新しい体制のもとで市場経済への移行を促進し、種々の改革を支援するため、他の先進主要国とも協調しつつ、適切な支援を進めていくことといたしております。
 第四の課題は、金融・資本市場の自由化、国際化を着実に進展させるとともに、証券及び金融をめぐる諸問題に適切に対応することであります。
 金融・資本市場の自由化、国際化は、国民の金融に対するニーズにこたえるとともに、我が国経済の発展に寄与するものであります。また、金融に関する制度等について国際的な調和を図っていくことは、世界経済において期待される我が国の役割を果たす上でも大きな意義を有するものと考えられます。
 このような観点から、これまでも逐次各種の措置を講じてきており、特に、預金金利の自由化につきましては、遅くとも平成六年中に自由化を完了すべく努力いたしているところであります。
 また、我が国の金融制度及び証券取引制度につきましては、有効かつ適正な競争の促進を通じ、内外の利用者の利便性の向上をもたらすとともに、国際的にも通用する金融制度及び証券取引制度を構築することが極めて重要であり、このため、金融制度調査会答申、証券取引審議会報告等を踏まえ、金融・資本市場における各種の業務分野への参入等を含む金融制度改革を推進する必要があると考えます。
 こうした中で昨年、証券及び金融をめぐる一連の不祥事が発生し、我が国の証券市場や金融機関に対する内外の信頼が大きく損なわれたことはまことに遺憾なことであり、極めて深刻に受けとめたところであります。
 これまでも、一連の不祥事の実態解明、再発防止策等について検討を行い、昨年の臨時国会においては、緊急に措置すべき事項として損失補てんめ禁止等を内容とする証券取引法等の改正案を成立させていただくとともに、金融機関の内部管理体制の総点検を早急に行うことなどを内容とする対応策を講じたところでありますが、その際、これらの問題に関し、臨時行政改革推進審議会及び国会の特別委員会より、制度、行政の各般にわたる総合的な対応策を講ずべきであるとの御指摘をいただいたところでございます。
 政府といたしましては、これらの答申及び諸決議を最大限に尊重するとの基本的考え方のもと、このような不祥事の再発防止及び我が国の金融・資本市場に対する内外の信頼回復を図るため、法制上、行政上の総合的な対策に取り組んでまいる考えであります。すなわち、より公正で透明な証券市場等の実現に向け、新しい検査監視体制の創設を含む所要の措置を講ずるとともに、金融・資本市場における有効かつ適正な競争を促進すること等を目的とした金融制度改革を進めることとし、所要の法律案を今国会に提出すべく、現在鋭意準備を進めておるところでございます。
 次に、平成四年度予算の大要について御説明いたします。
 平成四年度予算は、極めて厳しい財政事情のもとで、歳出の徹底した節減合理化や税外収入の確保に努めるほか、建設公債の発行額を増加させ、税制面においても所要の措置を講ずることといたしました。またその中にあって、社会資本整備の着実な推進や国際社会への貢献を初め、時代の要請に応じ、限られた財源を重点的、効率的に配分するよう努めることとして編成いたしたところであります。
 歳出面につきましては、一般歳出の規模は三十八兆六千九百八十八億円となっており、これに、地方交付税交付金、国債費等を加えた一般会計予算規模は七十二兆二千百八十億円となっております。
 国家公務員の定員につきましては、第八次定員削減計画を着実に実施するとともに、増員は厳に抑制し、一千三百七十二人に上る行政機関職員の定員の縮減を図っております。
 次に、歳入面について申し述べます。
 税制面では、まず、土地の相続税評価の適正化に伴う相続税の負担調整として課税最低限の引き上げや税率区分の幅の拡大等を行うことといたしております。
 また、課税の適正公平の確保を推進する等の観点から、企業関係租税特別措置の一層の整理合理化、みなし法人課税制度の廃止、赤字法人の欠損金の繰り戻し還付制度の適用の停止、海外関係会社からの過大借り入れへの対応措置としての過小資本税制の導入等の措置を講じる考えであります。
 さらに、当面の厳しい税収動向、財政事情に対応するため、国民生活、国民経済に配慮しつつ、新たに必要最小限の措置として、法人特別税の創設及び普通乗用自動車に係る消費税の税率を四・五%とする特例措置をお願いすることといたしております。なお、湾岸支援のための法人臨時特別税及び石油臨時特別税並びに普通乗用自動車に係る消費税六%の経過措置は、平成三年度末に失効させることといたしております。
 税の執行につきましては、今後とも国民の信頼と協力を得て、一層適正公平に実施するよう努力してまいる所存であります。
 公債発行予定額は七兆二千八百億円としております。なお、借換債を含めた公債の総発行予定額は二十八兆七千七百八十億円となります。
 財政投融資計画につきましては、現下の経済情勢も踏まえ、社会資本の整備、国際社会への貢献、地域の活性化等の政策的要請に積極的にこたえ、資金の重点的、効率的な配分を図ったところであります。
 この結果、財政投融資計画の規模は四十兆八千二十二億円、前年度当初計画に対し一〇・九%の増加となっており、また、資金運用事業を除いた一般財投の規模は三十二兆二千六百二十二億円、一〇・八%の増加となっております。
 次に、主要な経費について申し述べます。
 公共事業関係費につきましては、社会資本の整備の重要性にかんがみ、また、あわせて景気にも配慮することとして、その拡充を図るとともに、これまでNTT株式売り払い収入の活用によって行ってきた社会資本の整備の促進を図るための事業につきましても、これを確保することといたしております。公共事業の配分に当たっては、生活関連重点化枠などを通じて、環境衛生、住宅、下水道、公園など国民生活の質の向上に資する分野に重点を置くとともに、地域の実情に十分な配慮がなされるよう対処してまいる所存であります。特に、住宅対策については、住宅金融公庫における貸付限度額等の引き上げ、地域活性化住宅の供給、公共賃貸住宅の建てかえの推進など施策の拡充を図っております。なお、平成三年度末に期限の到来する治水治山の各五カ年計画及び新たに策定される森林整備事業計画については、おのおの適切に計画を策定することといたしております。
 社会保障関係費につきましては、二十一世紀に向かって活力ある福祉社会を形成していくことが重要な課題であります。このため、将来にわたって安定的かつ有効に機能する制度を構築していく必要があり、このような観点から政府管掌健康保険制度、雇用保険制度の見直し等を行うことといたしております。また、すべての国民が安心してその老後を送ることができるよう「高齢者保健福祉推進十か年戦略」を着実に推進するとともに、保健医療、福祉関係の人材確保方策を講じるなど、国民に身近な施策についてきめ細かな配慮を行っております。
 文教及び科学振興費につきましては、教育行政に係る国と地方の役割分担の見直しを通じた初等中等教育と高等教育との間での財源配分の見直しを進め、高等教育、学術研究の改善充実、公立学校施設整備事業費の確保、生涯学習の推進、芸術、文化、スポーツの振興などの施策の充実に努めるとともに、基礎的、創造的研究を初めとする科学技術の振興のための施策を推進することといたしております。
 中小企業対策費につきましては、地域中小企業の創造的発展支援、中小企業の物流共同化、効率化への支援などの施策の内容の充実を図ることといたしております。
 農林水産関係予算につきましては、農業を取り巻く内外の諸情勢を踏まえ、生産性の向上等を基本とする農業の展開を図り、我が国農業の産業としての自立性を高め、あわせて農山漁村の活性化に資するための施策を推進することといたしております。
 経済協力費につきましては、第四次中期目標、他の経費とのバランス等を総合勘案し、政府開発援助予算について七・八%増といたしており、また、効果的、効率的な援助とするため適正な評価やその内容の一層の改善を図ることといたしております。
 防衛関係費につきましては、中期防衛力整備計画のもと、現下の厳しい財政事情や国際関係安定化に向けてさらに動きつつある国際情勢等を踏まえ、極力その抑制を図るとともに、その中にあって後方分野の充実に努めるなど防衛力全体としての均衡がとれる態勢の維持整備を推進することといたしております。
 エネルギー対策費につきましては、地球環境保全及びエネルギー関係での国際協力の重要性を踏まえつつ、中長期的観点に立った総合的なエネルギー政策を着実に推進することといたしております。
 地方財政につきましては、中期的な地方財政の健全化策を講じつつ円滑な地方財政運営のため所要の地方交付税総額を確保した上で、地方交付税の年度間調整としての特例措置等を行うことといたしております。なお、地方公共団体におかれましても、歳出の節減合理化をさらに推進し、より一層効率的な財源配分を行われますことを要請するものであります。
 以上、平成四年度予算の大要について御説明いたしました。本予算が現下の諸情勢に果たす役割に御理解を賜り、何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願いを申し上げます。(拍手)
 我が国は、二十一世紀には、世界にも例を見ない本格的な高齢化社会を迎えることとなります。こうした時代においても、国民の一人一人が、また、その子供たちが幸せを感じることができるような、真に豊かで活力に富み、国際的にもふさわしい役割を果たし得る経済社会を創造していかなければなりません。そのためには、今世紀の残された期間に、しっかりとした礎を築いておくことが必要であります。
 ただいま申し述べました諸課題を一歩一歩着実に解決することにより、来るべき二十一世紀に向けて私たちに課せられた責任を精いっぱい果たしてまいりたいと思います。こうした今日の地道な努力は、必ずや新時代の一層の発展と繁栄につながるものと確信をいたしております。
 国民各位の一層の御理解と御協力を切にお願いを申し上げる次第であります。以上であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#15
○議長(櫻内義雄君) 国務大臣野田毅君。
    〔国務大臣野田毅君登壇〕
#16
○国務大臣(野田毅君) 我が国経済の当面する課題と経済運営の基本的考え方について所信を申し述べたいと存じます。
 国際社会の動きを見ると、昨年は、湾岸における武力行使を初めとしてソ連邦の解体など激動の年でありましたが、一方では、ECが統合への動きを強めるとともに、アジア・太平洋地域における協力の進展も見られました。本年は、これらの動きを踏まえて、新しい国際的秩序の形成に向かって前進していくべき年であります。
 特に、経済面について見ると、地球環境、資源エネルギー、人口問題など地球的規模の課題に対処し、持続可能な発展の基礎条件を整えつつ、市場経済と自由貿易を基軸とした世界経済の安定的発展の枠組みを確立していく必要があります。
 こうした中で、貿易、投資、人、情報などさまざまな面で国際社会とのつながりをますます強めてきている我が国は、その国際社会へ及ぼす影響力の増大を十分に踏まえ、地球市民としてその責任を果たしていく必要があります。その際、国際社会の新たなルールづくりの中で、その経済規模に見合ったリーダーシップを発揮していくことが必要であります。
 他方、我が国経済は、着実な経済発展の結果、今や、一人当たり国民所得は世界の最高水準にありますが、その成果が国民生活の豊かさに結びついているとは必ずしも言えません。このため、経済社会のあり方を、生産や効率優先の企業中心的なものから消費者や国民生活を重視したものへと転換すると上もに、質の高い生活環境の創造や潤いのある生活の実現を図り、国民一人一人が豊かさとゆとりを実感でき、多様な価値観を実現できる公正な社会としての生活大国の実現を目指す必要があります。
 その際には、今後の人口の急速な高齢化への対応を進めるとともに、労働力供給制約への対応など内需拡大の中長期的持続のための基礎条件整備や、国民生活の質的向上のための構造調整を一層積極的に推進していくことが必要であります。特に、世界的に市場経済が経済活動の基本原理となりつつある現在、経済のグローバル化に対応した、より透明、公正な市場メカニズムの確立の重要性は従来以上に高まっており、一層の規制緩和等により、公正で開かれた経済社会構造をつくり上げていかねばなりません。このように生活大国づくりを目指すことは、決して我が国が自国のみに関心を向けていくことを意味するものではなく、経済社会をより公正で開かれたものとすることなどを通じ、我が国が調和のとれた対外経済関係を形成し、さらには世界経済の発展にもつながっていくものであります。
 次に、内外の経済の現状と平成四年度の経済運営の基本方針について申し述べたいと存じます。
 まず、世界経済の動向を見ますと、先進諸国では、アメリカは、景気は回復はしているものの、そのテンポは依然緩やかであり、このところやや停滞感があらわれております。西欧は、ドイツでは金融引き締め等を背景とする内需の鈍化などから、このところ景気は調整局面に入っている一方、フランスでは景気は緩やかに拡大し、イギリスでは緩やかに回復に転じつつあります。アジア・太平洋地域においては、一部景気の基調が弱い国もあるものの、総じて拡大を続けております。旧ソ連邦・東欧諸国では、市場経済への移行を目指す中、生産の減少、失業の増大、インフレ加速の懸念などの問題が一層深刻化しております。
 しかしながら、先進諸国では、アメリカ、イギリスなどを中心に、今後、景気が総じて緩やかに回復するものと見られることなどから、本年の世界経済は全体として昨年よりも高い成長が見込まれます。
 一方、保護主義的な動きには根強いものがあるとともに、発展途上国の中には多額の累積債務を抱え依然困難な状況にある国があるなど、さまざまな課題が残されており、これらに対し、引き続き適切に対処していかねばなりません。特に、世界経済の再編成の中で、今後世界的な資金需要の高まりも予想される中で、世界的に貯蓄を増大することが重要であります。
 次に、我が国経済の動向を見ますと、住宅建設が減少傾向を続けてきたことなどに見られるように、このところ拡大テンポが減速しつつある中、失業率は低く、労働力需給は引き締まり基調で推移しており、個人消費は堅調であります。また、物価の基調は安定しております。このように我が国経済は、これまでのやや過熱ぎみの高い成長から、堅実な消費、健全な企業行動に支えられた、インフレなき持続可能な成長経路に移行する過程にあると言えます。
 これらの内外の経済動向を勘案しますと、平成三年度の実質経済成長率は、三・七%程度になるものと見込まれます。また、物価については、卸売物価は〇・四%程度の下落、消費者物価は二・九%程度の上昇になるものと見込まれます。
 以上のような状況を踏まえ、私は、平成四年度の経済運営に当たりましては、特に次の諸点を基本的な柱としてまいりたいと考えております。
 第一の柱は、内需を中心とするインフレなき持続可能な成長を図ることであります。
 政府としては、このような成長経路への円滑な移行を図るため、減速により企業家等の心理が大きく冷え込まないよう、景気に十分配慮した施策を行うことが必要であると考えております。
 平成四年度の予算編成は、近年にない厳しい財政事情のもと、このような認識を踏まえて行われたところであり、特に公共投資については、公共投資基本計画の着実な実施にも資するよう、国・地方を通じ最大限の努力を払っております。すなわち、一般会計予算の一般歳出における公共事業関係費について五・三%の伸びを確保するとともに、財政投融資計画においても公共事業実施機関について一〇・八%の伸びとしているほか、地方財政においては、地方単独事業について一一・五%の伸びが見込まれております。これらは、昨年行われた三次にわたる公定歩合の引き下げなどの施策とあわせて、現下の要請に十分こたえるものであります。また、昨年末の不動産融資の総量規制の解除が住宅供給などのための円滑な資金供給に資するものと考えられ、これらの諸措置により、内需主導型の景気の持続的拡大のための財政金融面からの必要な条件は十分整ったものと考えております。
 国民各位におかれましては、一層の自信と活力を持って経済活動に当たられることを強く期待をいたしております。
 政府といたしましては、今後とも、物価と雇用の安定を図ることを基礎とし、主要国との経済政策の協調にも配慮しつつ、適切かつ機動的な経済運営に努めてまいります。
 物価の安定は国民生活安定の基本要件であり、経済運営の基盤となるものであります。平成四年度についても、物価は引き続き安定的に推移し、卸売物価は〇・二%程度の下落、消費者物価は二・三%程度の上昇になるものと見込まれます。今後とも、原油価格、為替レート、国内需給等の動向を十分注視しつつ、物価の安定に最善の努力を尽くしてまいります。
 金融政策については、内外経済動向及び国際通貨情勢を注視しつつ、適切かつ機動的な運営を図る必要があると考えております。
 また、中小企業対策を円滑に推進するとともに、高年齢者の雇用就業機会の確保等各種の労働力需給の不均衡の改善に努めてまいります。
 平成四年度の我が国経済は、以上のような政府の施策と民間経済の活力が相まって、個人消費が着実に増加すると考えられるほか、設備投資も総じて底がたく推移すると見込まれるなど、引き続き内需を中心としたインフレなき持続的成長を実現し得るものと考えられます。この結果、平成四年度の実質経済成長率は三・五%程度になるものと見込まれます。
 第二の柱は、経済発展の成果を生活の分野に配分し、豊かさを一層実感できる多様な国民生活の実現を図り、生活大国の形成を目指すことであります。
 まず、国民生活の基盤をより一層充実させるために公共投資基本計画等を踏まえ、国民生活の質の向上に重点を置いた社会資本の整備に努めてまいります。
 また、近年の地価高騰により、大都市において一般の勤労者が住宅を取得することが著しく困難となるなど、地価水準の適正化は現下の最重要課題の一つであり、住宅・社会資本の着実な整備、内外価格差の是正、対日直接投資の促進等のためにも極めて重要であります。このため、土地基本法の理念のもとに、地価税を初め土地税制の適正な運用に努めるとともに、土地利用計画の整備充実等の構造的な土地対策を進める一方、金融面においては、地価高騰のおそれが生じた場合に不動産融資の総量規制が時期を逸することなく効果的に発動される仕組みを設けております。これらに加え、居住水準の向上等のため、大都市地域における住宅・宅地供給を促進してまいります。同時に、東京一極集中の是正と魅力ある地域づくりを図るため、東京からの諸機能の分散、地方都市の整備、農山漁村の活性化等に努めてまいります。
 次に、労働時間の短縮に向けて、国民的コンセンサスの形成と労使の自主的努力に対する指導、援助等を通じ、完全週休二日制の普及を図るとともに、連続休暇の普及拡大、所定外労働時間の削減等を図ってまいります。
 さらに、我が国の生活関連の物価水準を見ますと、諸外国と比べて依然として割高であり、このことが国民生活の豊かさを実感できない要因の一つとなっております。この内外価格差問題については、政府・与党内外価格差対策推進本部の決定に基づき、各般の施策が着実に実施されておりますが、引き続きその是正・縮小を囲ってまいります。
 消費者行政につきましては、消費者を取り巻く環境の変化に対応し、消費者がより安全かつ豊かな消費生活を営むことができますよう、消費者保護会議で決定した施策の積極的かつ総合的な推進を図ってまいります。特に、製造物責任制度については、経済社会の変化に対応した被害者救済の実効性確保等の観点から総合的な検討を行うことが緊急の課題であり、国民生活審議会において引き続き精力的な検討をお願いしているところであります。また、消費者教育の一層の充実や国民生活センター等を通じた情報提供などを積極的に推進してまいります。
 また、中長期的なエネルギー需給の動向等を踏まえ、地球環境問題等に留意しつつ、省エネルギー・省資源の一層の推進を図り、資源やエネルギーを大切にする社会の構築を図ってまいります。
 第三の柱は、国際協調型経済構造への変革を推進し、保護貿易主義の抑止と自由貿易体制の維持強化に向け率先して努力するとともに、調和ある対外経済関係の形成と世界経済活性化への積極的貢献を行っていくことであります。
 このため、OTOすなわち市場開放問題苦情処理推進本部の活動等を通じて市場アクセスの改善を図るとともに、輸入品の我が国市場への定着などを図り、貿易の拡大均衡による国際的に調和のとれた対外均衡を目指してまいります。
 また、対日直接投資を促進するとともに、投資受け入れ国との調和に配慮した海外直接投資を推進し、直接投資についても拡大均衡に資するよう一層の環境整備に努めてまいります。
 さらに、ウルグアイ・ラウンド交渉の成功に向けて一層の貢献を行い、交渉が成功裏に終結した後はその成果の着実な実施に努力をしてまいります。
 日米関係については、我が国にとって最も重要な二国間関係であります。先般のブッシュ大統領訪日の際にまとめられた東京宣言においても、両国間で一層緊密なパートナーシップを構築することといたしておりますが、今後とも、日米の良好な経済関係の維持発展のために努力してまいります。また、欧州諸国との関係につきましても、日・EC共同宣言等を踏まえ、その協力関係の強化に努めてまいります。
 発展途上国への経済協力については、援助に対する国民の理解をより深めるとともに、諸外国に対しても我が国の援助政策を明らかにするため、援助の基本理念、考え方を一層明確にしてまいります。また、政府開発援助の第四次中期目標に基づき、経済協力の拡充と効率的かつ効果的な推進を図るとともに、累積債務国等に対する資金還流を促進してまいります。さらに、政府開発援助の実施に際し、引き続き環境面への配慮に努めてまいります。
 アジア・太平洋地域については、その力強い成長の持続が世界経済の発展にとって重要であることから、経済、貿易、投資、人づくり等さまざまな分野での協力を一層推進するとともに、域内の経済情勢、政策課題等についての対話を進めてまいります。
 旧ソ連邦地域については、その経済の安定及び市場経済への円滑な移行を促進することが、世界経済の安定にとって極めて重要でありますことから、今後の各共和国の経済改革の方向等をも踏まえ、適切な知的支援等を進めてまいります。東欧諸国についても、適切に市場経済への円滑な移行を支援してまいります。
 地球環境については、その維持改善が世界経済の持続的発展にとって不可欠であります。このため、我が国としては、環境の保全と経済の安定的発展との両立を図ることを基本とし、その知識経験や技術力、研究開発力を駆使して、国際的協調のもと、問題の解明と解決に貢献してまいります。
 以上、我が国経済が当面する主な課題と経済運営の基本的方向について申し述べてきましたが、これらの諸施策を進めていくに当たっては、中長期的な展望が必要なことは言うまでもありません。
 我が国経済社会を取り巻く情勢は、ここ数年の間、冷戦体制の終結を初めとして大きく変化しており、内閣の基本方針を新たな経済計画として速やかに国民にお示しする必要があると考えております。このため、政府は、去る一月十四日、新しい経済計画の策定について経済審議会に諮問を行ったところであります。計画の主要な課題については、第一に、国民一人一人が豊かさとゆとりを実感でき、多様な価値観を実現できる公正な社会としての生活大国の実現を目指すこと、第二に、二十一世紀を展望し、生活大国の基礎となる活力ある我が国経済社会の発展基盤を整備すること、第三に、地球的規模の課題への取り組みを通じ、地球の平和と繁栄に積極的な役割を果たすこと、この三点であり、今後、経済審議会においてこれらを中心に精力的に御議論いただく予定であります。
 冒頭にも述べましたとおり、我が国は、その国際社会における地位にふさわしい役割と責任を積極的に果たし、世界経済活性化に積極的に貢献していくことが必要となっております。
 また、今後の我が国の経済運営に当たっては、生活大国づくりを目指し、中長期的に持続可能な内需主導のインフレなき成長を続けていくことが極めて重要であり、我が国経済が世界経済の中で占めるウエートの大きさを踏まえると、それが結果としても世界経済の安定的発展にも資することとなると考えております。
 こうした生活大国づくりを目指す際には、個人、企業、社会の間のよりよい関係を確立しつつ、男性、女性を問わず国民一人一人の多様性に満ちた生き方、個性や持ち味が尊重されるとともに、高齢者や障害者が生き生きと暮らせるような社会をつくり上げていくことが大切であります。
 私は、このような多様なライフスタイルの自由な選択を可能とするような、豊かで、潤いのある、公正で開かれた経済社会づくりを目指して努力していくつもりであります。
 これらの内外の諸課題に対処していくためには、これまでの制度、考え方などを大きく変化させるとともに、それに伴い痛みや負担を負うことが必要となる場合もありましょう。また、我々にとって経験の乏しい仕事に敢然と立ち向かわざるを得ない場合もあるでしょう。しかし、我が国が、国際社会の中でその能力にふさわしい地位を占めるとともに、国民一人一人が生き生きと暮らせるような社会をつくり上げていくためには、困難があっても、これらの諸課題に力強く取り組んでいくことが必要であります。
 国民の皆様の御支援と御協力を切にお願い申し上げる次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
#17
○木村義雄君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、来る二十八日午後一時から本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会されることを望みます。
#18
○議長(櫻内義雄君) 木村義雄君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#19
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十七分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト