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1992/04/17 第123回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第123回国会 本会議 第20号
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1992/04/17 第123回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第123回国会 本会議 第20号

#1
第123回国会 本会議 第20号
平成四年四月十七日(金曜日)
    ―――――――――――――
  平成四年四月十七日
    午後一時 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 山口鶴男君の故議員中島源太郎君に対する追悼
  演説
 外国人登録法の一部を成正する法律案(内閣提
  出)
 農業協同組合法の一部を改正する法律案(内閣
  提出)の趣旨説明及び質疑
    午後一時二分開議
#2
○議長(櫻内義雄君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(櫻内義雄君) 御報告いたすことがあります。
 議員中島源太郎君は、去る二月七日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 同君に対する弔詞は、議長において去る二月二十一日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
    〔総員起立〕
 衆議院は 多年憲政のために尽力し さきに
 外務委員長内閣委員長の要職につき また国
 務大臣の重任にあたられた議員従三位勲一等
 中島源太郎君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞
 をささげます
    ―――――――――――――
 故議員中島源太郎君に対する追悼演説
#4
○議長(櫻内義雄君) この際、弔意を表するため、山口鶴男君から発言を求められております。これを許します。山口鶴男君。
    〔山口鶴男君登壇〕
#5
○山口鶴男君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員中島源太郎君は、去る二月七日、急性肝不全のため、慶応大学病院において逝去されました。まことに痛惜の念にたえません。
 中島君とは、同じ群馬県選出の議員として、内外の政情あるいは郷土の将来についてともに議論し、ともに語り合ううち、私は、君の豊かな学識と清廉潔白でさわやかなお人柄に深く魅せられ、また、君の政治に対する真摯な姿勢に心から敬服いたしておったところであります。
 今国会の召集日には、元気な姿をこの本会議場でお見かけしましたのに、前橋で君の突然の訃報に接し、ただただ驚愕するばかりでありました。翌八日、駒場の御自宅に駆けつけましたが、「ちょっと検査に行ってくるよと申しておりましたのに、それがこんなことになってしまうとは。一日も休みなく働いてきた人でした。」と御遺体のまくら元で言葉を詰まらせる奥様のお姿に、いかに政治に携わる者の常とは申せ、世の無常、人の今のほかなさを感ぜずにはいられなかったのであります。
 私は、ここに、諸君め御同意を得て、議員一同を代表し、謹んで哀悼の言葉を申し述べたいと存じます。(拍手)
 君は、昭和四年二月、中島知久平氏の長男として群馬県新田郡尾島町にお生まれになりました。御尊父は、昭和の初期に衆議院議員として在職され、鉄道、軍需、商工の各大臣を歴任し、さらには立憲政友会の総裁を務め、また、今日の富士重工の前身であります民間航空機産業中島飛行機を創設されるなど、政財界において大いに活躍された方であります。
 君は、生後間もなく、御尊父の政務の都合で東京に彩られ、昭和十六年、戦時一色の時代に慶応義塾普通部に入学されました。戦局の悪化とともに勤労動員の生活に明け暮れ、予科一年の十六歳のとき終戦を迎えられました。暗く荒廃した戦後の混乱期にあって、鮮やかな色彩と精緻なディズニーのアニメに出会い、そのすばらしさに深く感動された君は、戦後の孤立した日本が世界と交流していくためには、国境を越えて多くの人々と対話できるアニメーションの世界こそ、将来自分が進むべき道であると心に決めて、学業の傍ら、芸術院会員の中村研一氏にデッサンを学ぶなど、映画人としての研さんを積まれたのであります。
 昭和二十六年、慶応義塾大学経済学部を卒業された君は、迷うことなく大映に入社、豊かな感性と独創的発想をもって、産業スパイ映画「黒の試走車」を初め、我が国初のSF映画を制作するなど、その異才ぶりを発揮されたのであります。
 昭和三十七年、同社を退き、日本動画製作会社を設立した君は、かねて宿願のアニメの制作にかかり、栃木に伝わる民話を題材にして「九尾の狐と飛丸」を完成させ、ここに長年の夢をついに現実のものといたしたのであります。(拍手)文部省選定となったこの映画が、君を政治の舞台に立たせる大きな契機ともなるのであります。
 地元栃木の民話とあって興味を持たれ、国会での試写会に見えられた船田中元衆議院議長は、君が多年にわたり盟友であった知久平氏の御子息と知るや、その場で、政界への転身を強く勧められたのであります。「かつて政治は国境の壁を越えられず、世界からの孤立を招いてしまった。私は映画を通して世界の人々と対話をしていきたい。」と渋る君に船田元議長は、「今や我が国は、世界と直接対話していくときだ、君のその意欲を政治の場で発揮させたらどうか。」とさらに強く決断を促されたのであります。
 折しも郷土太田においては、中島待望の声が高まり、さらに「四十になったら太田に帰り地元のために尽くせ」との亡き御尊父の言葉も思い出され、それまで政治の道を歩むことなど夢想だにしなかった君ですが、ここにみずからの生涯を政治にささげる決意を固められたのであります。(拍手)
 かくして君は、昭和四十四年の第三十二回衆議院議員総選挙に群馬県第二区から勇躍立候補、「中央への新しいかけ橋」をスローガンに初陣に臨み、見事当選の栄冠をから取られたのであります。(拍手)
 本院に議席を得られてからの君は、社会労働、大蔵の各委員を初め、商工委員会、予算委員会の理事として卓越した識見と豊富な経験を生かして国政の審議に当たられました。また、与野党伯仲下の昭和五十八年に外務委員長、翌五十九年には内閣委員長の要職につかれ、お人柄そのままの誠実にして公正な委員会運営の衝に当たり、よくその重責を果たされたのであります。
 君はまた、自由民主党にあっては、調査局長、副幹事長、経理局長あるいは中小企業調査会長等を歴任し、党務の処理や国会対策に尽力され、また、君の本領とする政策の立案にその手腕、力量を遺憾なく発揮せられたのであります。
 この間、政府においては通商産業、経済企画の両政務次官を務められるなど幅広く着実に実績を積み重ね、昭和六十二年十一月、竹下内閣の文部大臣として晴れて入閣されたのであります。(拍手)
 時に、我が国における国際化、情報化の進展、科学技術の進歩に対応し、さらには人生八十年の長寿社会の到来に向けて、創造的で活力ある社会を築くための教育改革は、重要な政治課題でありました。
 君は、「二十一世紀は青い鳥を求めて再出発する時代。つまり人間の豊かさを求める心をもう一度見直そうという時代」と語り、人々がより豊かな充実した人生を送ることができるように、いつでも、どこでも生涯を通じて学べる「生涯学習」を教育改革の基本に据え、全精力を傾けて取り組まれ、文部省に生涯学習局を設置するなどの改革を断行、生涯学習制度の基礎を確立せられたのであります。(拍手)
 君が先鞭をつけられた「生涯学習」は、今日、国はもちろん、地方においても教育行政の最重要課題として位置づけられ、多様な施策が講ぜられ、若者がち老人に至る数多くの方々が、さまざまな学習や文化、スポーツに積極的に親しむようになってきております。また、オペラ、ミュージカルなど現代舞台芸術のセンターとなる第二国立劇場の設立促進等に力を尽くされました。
 このように君が文教行政に残された功績は、まことに大きなものがあります。
 君の御活躍は多岐にわたるものがありますが、とりわけ、中小企業問題には深い関心を寄せられておりました。国民の大多数の人々が生活の基盤としている中小企業の健全な発展なくして我が国国民経済の発展はあり得ないとの信念から、その育成と振興に終始力を注いでこられました。
 中小企業の事業分野への大企業の進出を調整する中小企業事業分野法の制定、大規模小売店舗法及び商調法の改正を初め、数多くの中小企業関連法の立案成立に尽力され、その識見と業績は、党派を超えて高く評価されたところであります。(拍手)大企業の名門の出身でありながら、君はひたすら経済的、社会的弱者の立場に立って政治の光を当てる政治姿勢を貫き通されたのであります。
 君はまた、こよなく郷土群馬を愛し、ふるさとの発展のために心を砕かれました。海のない内陸県群馬の産業経済の活性化を図るためには、交通網の整備は不可欠な課題であって、「群馬に海を」、これが君の初当選以来訴え続けられた夢の一つであります。茨城の港と結ぶ北関東横断道路の建設構想を、当時、首都圏整備特別委員でもあった私に熱っぽく語りかけたものでございました。あのころは夢のまた夢と受け取られていましたが、今や現実のものとなろうといたしております。
 また、東もの表玄関上武国道も、君がその建設に精魂を傾けられました。去る二月二十日、上武国道の開通式が多くの関係者を迎え盛大に挙行されましたが、群馬の社会経済発展に大きく寄与する新動脈上武国道は、地元に残された大きな遺産として君の名は後々まで語り継がれるでありましょう。(拍手)
 また、私たちのふるさと群馬は、石器時代の岩宿遺跡や弥生後期の日高遺跡等、数多くの貴重な文化遺産が散在いたしております。君は、このような群馬こそ国立考古学博物館の最適地として、県選出国会議員の先頭に立ち、その誘致に向け大いに尽力されていたところであります。
 かくして中島君は、本院議員に当選すること七回、在職十八年三カ月の長きにわたり、我が国国政の進展に寄与された功績は、まことに偉大なものがあります。(拍手)
 思えば君は、紺の背広のよく似合う英国型の紳士でした。おごらず、おもねず、いかなる困難に直面されてもにこやかな笑顔を絶やすことなく、周辺に常にさわやかさを漂わせておりました。政策の研究を怠らない勉強家であるとともに、多忙な政務の中に暇を見つけてはピアノを弾き、絵筆もとられる心豊かな方であり、町づくりのエッセイを著す文筆にもすぐれた才能をお持ちでありました。文人政治家と言われるゆえんがここにあります。(拍手)
 また君は、請われると、論語の言葉である「和而不同」また「和而不流」と揮毫されました。何事をなすにも、和を念頭に置きつつも、いたずらに譲歩を重ねることなく、守るべきことは守るとの。姿勢を堅持された純一な政治家であります。
 十年前、日米間が自動車問題で紛糾、事態解決の適任者として訪米を勧められたとき、今政治家が動きべきではない、問題処理はまだ経済人のレベルにあると判断、訪米を固辞されたのであります。実は、行くだけで政治家として点数が稼げるのではないかという含みもあったと言われるだけに、邪道を嫌い、政治家としてとるべき大道とは何かを問い、それを実践された希有の人でもありました。(拍手)
 そしてまた、人間味あふれる人でもあります。小児がんにむしばまれた子供がいると、いち早く見舞いに訪れ、医療費の問題について助言し、輸血を必要とする青年には献血に奔走するなど、親身になって手を差し伸べられました。まさに生命のとうとさを説く人間愛に徹した姿がしのばれるのであります。
 このような君が、政界の紳士として人望を集め、また郷土の人たちから信頼され、限りなく敬愛されたのも、けだし当然と申せましょう。(拍手)
 君の足跡を顧みるに、時に思わぬ苦杯を喫し、雌伏を余儀なくされた時期がありました。たね子夫人は、捲土重来を期する君とともに、選挙区をくまなく回り、この試練を乗り越えられたのであります。ここに今、君との二人三脚で苦楽をともに歩んでこられた奥様の御心中を察するとき、私はお慰めの言葉を知らず、万感胸の詰まる思いであります。
 享年六十二歳、政治家としてまずまずの御活躍が期待されるとき、中島君は志半ばにして忽然として去っていかれました。もはやこの議場で、君のあの温容、あの朗々たる立室戸に接することはできません。ひとしお哀惜の念を禁じ得ないものがあります。
 今日、我が国をめぐる内外の諸情勢は極めて厳しく、解決すべき課題が山積をいたしております。とりわけ政治に対する信頼の回復のため、政治倫理の確立、政治改革の実現はまさに急務であります。
 このときに当たり、清廉潔白、人格、識見ともにすぐれた前途有為の政治家中島君を失いましたことは、返す返すも残念であり、ひとり自由民主党のみならず、本院にとりましても、我が国にとりましても、まことに大きな損失であると申さなければなりません。(拍手)
 ところで、去る三月末、郷土の人たちは、君への思いを御子息洋次郎君に託し、本院の議席を与えられたのであります。君の志は、洋次郎君によって立派に受け継がれることでありましょう。
 ここに、謹んで中島源太郎君の御遺徳をしのび、生別の御功績をたたえ、心から御冥福をお祈りいたしまして、追悼の言葉といたします。(拍手)。
     ――――◇―――――
#6
○木村義雄君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。
 内閣提出、外国人登録法の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。
#7
○議長(櫻内義雄君) 木村義雄君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。
    ―――――――――――――
 外国人登録法の一部を改正する法律案(内閣
  提出)
#9
○議長(櫻内義雄君) 外国人登録法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。法務委員長浜田卓二郎君。
    ―――――――――――――
 外国人登録法の一部を改正する法律案及び同報
  告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔浜田卓二郎君登壇〕
#10
○浜田卓二郎君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 外国人登録法に基づく指紋押捺制度については、昭和六十二年第百九回国会における外国人登録法の一部を改正する法律案の審議の際、本委員会並びに参議院法務委員会において、附帯決議を付し、指紋押捺制度にかわる同一性を確認する手段の開発を政府に求めてまいったのであります。
 他方、昨年一月、海部前内閣総理大臣の訪韓の際に、日韓法的地位協定に基づく韓国政府との協議が決着し、日韓両国外務大臣により、在日韓国人の指紋押捺の廃止を含む覚書が取り交わされたのであります。
 本案は、以上述べました経緯を踏まえ、我が国の社会で長年にわたり生活し、本邦への定着性を深めた永住者及び特別永住者については、このたび指紋押捺の代替手段として開発を見た鮮明な写真、署名及び一定の家族事項の登録をもって同一性の確認手段とするという制度を導入しようとするもので、その主な内容は、
 第一に、永住者及び特別永住者については、指紋の押捺を廃止し、新規登録の申請の際、本邦にある父母及び配偶者の氏名等を家族事項として登録するとともに、十六歳以上の者は、登録原票及び署名原紙に署名するものとすること、
 第二に、永住者及び特別永住者から新規登録等の申請があった場合における登録原票への登録、登録事項の確認、新たな登録証明書の交付等に関する手続規定を整備するとともに、登録証明書には、署名を転写するものとすること、
 第三に、新たに永住許可または特別永住許可を受けた者が、登録事項の確認を受けた場合における次回確認申請の時期に関する規定を整備するものとすること、
 第四に、不署名罪の規定を設けるなど罰則その他の関連規定を整備するものとすること等であります。
 本案は、二月七日内閣から提出され、三月三日本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託されました。
 本委員会においては、三月二十七日田原法務大臣から提案理由の説明を聴取した後、参考人の意見を聴取する等慎重な審査を重ね、本日質疑を終了したところ、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党から四派共同提案により、居住地等の変更登録義務違反に係る罰則について、その法定刑のうち自由刑を廃止し罰金刑のみとするとともに、この法律の公布の日から施行日の前日までの間に十六歳に達した永住者及び特別永住者については、指紋の押捺を要しないこととする旨の経過措置を設ける等を内容とする修正案が、また、日本共産党から登録証明書制度の全廃等を内容とする修正案が、それぞれ提出されました。
 次いで、採決の結果、日本共産党提出の修正案は賛成少数をもって否決され、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党の四派共同提案に係る修正案及び修正部分を除く原案はいずれも全会一致をもって可決され、よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。
     ――――◇―――――
 農業協同組合法の一部を改正する法律案(内
  閣提出)の趣旨説明
#13
○議長(櫻内義雄君) この際、内閣提出、農業協同組合法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。農林水産大臣田名部匡省君。
    〔国務大臣田名部匡省君登壇〕
#14
○国務大臣(田名部匡省君) 農業協同組合法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨の御説明を申し上げます。
 農業協同組合法は、昭和二十二年に、農民の自主的協同組織としての農業協同組合の発達を促進し、農業生産力の増進と農民の経済的、社会的地位の向上を図ることを目的として制定されました。以来、経済環境や農業及び農村をめぐる情勢の変化に対応して、農協の健全な育成を通じ農業振興や地域の発展に寄与し得るよう、所要の制度改正を行ってきております。最近では、昭和五十七年に、信用農協連合会の員外貸付制限の緩和、内国為替取引に係る員外利用制限の廃止等の改正措置を講じたところであります。
 しかしながら、その後の社会経済情勢の変化には著しいものがあり、とりわけ近年の我が国農業及び農村をめぐる状況を見ると、農業の担い手不足の顕在化や農村の高齢化の進行等さまざまな課題に直面しており、このような状況のもとで、農協の事業、組織についても、営農、生活両面での組合員ニーズの多様化や金融自由化等への的確な対応が求められているところであります。
 今後とも、情勢変化に対応し、農協が本来の使命を果たしていくためには、その自主的努力にまつところが大きいことはもとよりでありますが、制度面においても、農協の行うことができる事業の内容を充実するとともに、執行体制の強化を図る等の改善を進めていくことが緊要となっております。
 このため、今般、農業協同組合法の一部改正を提案することとした次第であります。
 次に、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
 まず第一に、組合の事業内容の充実を図ることとしており、農業経営の効率化等の見地から、受託農業経営を連合会も行うことができることとしております。また、高齢化社会に対応して組合が老人の福祉に関する事業を行うことができる旨を法律上明らかにすることとしております。さらに、農協資金の地域での活用を図るため、特定の農協について員外貸付制限を緩和することとしております。
 第二に、組合の執行体制を強化するため、理事会及び代表理事を法律上設置することとするとともに、学識経験者等の理事への登用の観点から正組合員以外の理事の枠を拡大することとしております。また、内部牽制による的確な業務運営を確保するため、監事の業務・会計監査機能の拡充等を図ることとしております。
 第三に、農協の組織整備の円滑な推進に資するため、農協組織の各段階等において活用し得る事業譲渡等の規定を整備することとしております。
 第四に、農事組合法人の活性化を図る観点から、その設立のために必要な発起人の数の要件を緩和する等の改善を行うこととしております。
 以上がこの法律案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 農業協同組合法の一部を改正する法律案(内
  閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#15
○議長(櫻内義雄君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。目黒吉之助君。
    〔目黒吉之助君登壇〕
#16
○目黒吉之助君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました農業協同組合法の一部を改正する法律案に対し、宮澤総理並びに田名部農水大臣に質問をいたします。
 まず最初に、本題に入る前に、宮澤総理は、我が国農業の現状をどのように認識しておられるのかについて質問をいたします。
 今日、農業従事者の高齢化が進む中で、一昨年の新規学卒就農者はわずか千八百人と、大手企業一社の新規採用者数よりも少なく、将来の農業生産に重大な支障を及ぼすおそれが出てまいっております。また、中山間地域の過疎化や高齢化が一段と進み、担い手不足による耕作放棄地は今日二十数万ヘクタールに及んでおり、農業・農村社会の維持に重大な懸念を投げかけております。宮澤総理は、このような我が国農業、農村の危機的な状況をどのように認識しておられるのか、御所見を承りたいと存じます。(拍手)
 総理、このような危機的状況を招いた原因は一体どこにあったでありましょう。
 私は、結論から先に申し上げますと、現行農業基本法には、制定当初から見通しの甘さが指摘されてまいりましたが、農業の近代化、合理化を目指した基本法と相反する農政を政府みずからがとり続け、今日なおその延長線上で農政が展開されておりますことを御指摘を申し上げなければなりません。(拍手)
 すなわち、米の過剰を抑えるための一時的な緊急避難措置として始められました減反政策は二十年余に及び、この間、工業立国を目指す立場から、輸出した工業製品の見返りに農産物の輸入自由化政策を拡大し、今では世界一の食糧輸入国となってしまっておるのであります。これは、農業基本法に定める「輸入に係る農産物との関係の調整」を定めた条項に反しており、この結果、国内農産物の価格政策、選択的拡大生産政策は、大きくねじ曲げられてしまったのでございます。また、基本法が目指した自立経営農家の育成は、いつの間にか中核農家育成政策に変更され、現在では九〇%の農家が兼業化し、農業所得率は何と一七%にまで落ち込んでしまっておるのでございます。
 以上のような政府の基本法と相反するこれまでの農政が、今日の我が国農業を危機的状況に追い込んだ最大の要因となっていると考えます。(拍手)この点について、総理はどのように見ておられるのか、御所見を賜っておきたいと存じます。
 このような中で、農林水産省におきましても、昨年五月、新しい食料・農業・農村政策に関する検討本部を設置し、農政の抜本改革に向けて幅広い分野の検討を行っており、近いうちに報告書が提出されると聞いております。総理、私は、これらの検討結果も踏まえて、現行農基法にかわる新しい食料・農業・農村政策を定めた基本法の制定が我が国農業を再建するために不可欠となっていると考えます。
 新しい農業基本法では、第一に、農業や化学肥料などによる土壌の汚染、水質の汚染を未然に防止するなど環境に優しい農業、第二に、農業の有する国土保全、環境保全機能等を活用する農業、第三に、地域社会を維持し発展させる農業、そして第四に、爆発的にふえると予測をされております世界人口増加にも対応した国際社会で貢献する農業等々を視野に入れて策定をされなければならないと存じます。(拍手)
 具体的には、若者が働きがいを感じ、希望を託すことのできる農業であり、条件不利地域の所得政策や、農業の公益的機能を重視した環境保全型家族農業の確立が新しい農政の基本理念に据えられなければならないと考えます。その中で、農協の果たすべき役割も明確にし、我が国農業の再建に役立てていかなければならないと存じます。
 以上、私は、新農業基本法の制定について述べてまいりましたが、この点について総理の御所見をしかと伺っておきたいと存じます。
 次に、日本農業の将来に重大な影響を及ぼすガット農業交渉と米の市場開放問題について、再びお伺いをいたします。
 現在、ガット農業交渉は、アメリカ・EC間の輸出補助金などを中心とした対立て、先行きが不透明な状態になっております。このような中で、今月十三日に開かれたガット非公式貿易交渉委員会では、新ラウンドの交渉をさらに継続する方向を打ち出したと伝えられ、事実上、十一月のアメリカ大統領選挙後の最終決着になるのではないかという見方も出てまいっておりますが、ガット農業交渉の今後の見通しについて総理にお伺いをいたします。
 政府は去る三月四日、ガット事務局に対し、農業保護削減国別リストを提出し、米を初め乳製品、でん粉などの関税率を明記せず、基礎的食糧の包括関税化に反対の姿勢を打ち出してきておりますが、総理は、この基本方針を今後とも堅持される方針に変わりはないのかどうか、改めて決意のほどをお伺いいたしたいと存じます。(拍手)
 次に、本題であります農業協同組合法の一部改正に対する問題について、政府の基本的な考え方を伺いたいと存じます。
 農協法は、戦後の農地改革の成果を踏まえ、農業者の自主的な協同組合の健全な育成を図ることを目的として制定されたものであり、また、そのため、行う事業の目的についても、組合は、その組合員のために「最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその事業を打ってはならない。」このように定めておりまして、農協事業活動の基本的な理念といたしてまいっておるところであります。
 しかしながら、最近の農協の実態について見れば、一部の農協において、信用事業等収益が上がる事業のみに傾斜した運営が行われ、組織活動の原点とも言える営農指導事業等が十分に行われていないこと、あるいは金融事業等にかかわる不祥事により、組合の健全な運営に支障を来す事態が発生しているなど、多くの問題点が指摘をされております。
 また、こうしたことから、専業農家の農協離れ、あるいは優秀な農協職員の中途退職が増加しておりますことは、まことに憂慮すべき事態と申さねばなりません。特に、農家の農協離れは深刻であり、これは、農産物の農協取り扱い率が全国で六〇%を切っておることなどからも明らかであります。また、年代的には三十代から四十代の青壮年層に農協離れが多いという現状は、農業のあすを担う青年農業者の要求に農協がこたえていないことを物語っておるのではないでしょうか。(拍手)農林水産大臣は、この点についてどう見ておられるのか、お伺いをしておきたいと存じます。
 現在、農協系統組織においては、昨年、全国農業協同組合連合会が打ち出した「二十一世紀への挑戦と改革の考え方」に基づき、農協の現行三段階制度を、近い将来、原則二段階にしていくことと、単協の大型合併を進めていこうという組織改革に取り組もうといたしております。問題は、いかなるスタンスで取り組むかであります。改革がただ単に農協組織の強化に終わるだけではなく、あくまでも組合員のニーズにこたえ得る機能の充実が図られなければなりません。言いかえますれば、農協は、今こそ原点に立ち返った組織の整備と事業機能の拡充を行い、組合員の信頼を取り戻し、負託にこたえる運営が必要になっていると考えます。農林水産大臣はどのように見ておられるのか、明確にお答えをいただきたいと存じます。(拍手)
 また、今回の農協法改正では、特に農業の担い手不足や耕作放棄地の増加問題などを重視し、連合会への受託農業経営の事業能力を付与し、農事組合法人の要件緩和などを打ち出し、企業的農業経営傾向がますます強まってまいっておりますが、これが最後に残されました株式会社の農業参入などへの引き金にならないかどうか。また、農協の老人福祉事業が新たに法文化されようといたしておりますが、これは一体何を意味しているのでありましょう。私は、福祉行政の貧困を代行する以外の何物でもないと思うのでありますが、あわせて農水大臣の御所見を承りたいと存じます。(拍手)
 また、農協のあり方とその存在意義について、政府はどのように考えているのか、また、今後の農協改革に当たり、どのような指導方針をもって臨まれるのか、農林水産大臣に明確な御答弁を求める次第でございます。
 最後になりましたが、政治倫理、政治改革に取り組む総理の決意について、改めてお伺いいたしたいと存じます。
 最近の新聞の世論調査によれば、宮澤内閣を「支持する」が二二%、「支持しない」が四九%となっており、政権末期の様相と報じております。この原因は、政治改革に対する取り組み姿勢、指導力などが問われた結果と見られております。
 政治は、国民の信頼があって初めて実効性を伴うものであることは言うまでもございません。農協法の改正など、いかに立派な制度をつくりましても、政治に信頼がなければ、それを実施することはできないのでありまして、総理は、失われた政治に対する信頼を取り戻し、議会制民主主義の権威を回復させるため、一連の政治腐敗を早急に解明し、政治倫理、政治改革の確立に向けて、今こそ強い指導力を発揮されなくてはならないと考えますが、決意のほどをお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣宮澤喜一君登壇〕
#17
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 農業は、食糧の安定供給はもちろんでございますが、地域社会の維持、国土・自然環境の保全など多くの面で、もとより重要な役割を果たしております。また、その中にあって、農村は、いわゆる緑豊かな自然と伝統文化に裏づけられたゆとりのある生活・余暇空間を提供するなどの大切な機能を持っておるものと考えております。こうした使命、機能を持ちます我が国の農業、農村がその担い手不足、高齢化の進行、農耕放棄地の増加などによって今大きな節目を迎えており、このような事態に対処して、農家におられる方々が将来を見通しながら、誇りと希望を持って農業を営める環境をつくり上げることが、ただいまの重要な課題であるというふうに認識をいたしております。
 農業基本法は、農業の生産性の向上及び農業従事者の生活の他産業従事者との均衡を国の農業に関する政策の目標として制定したものであることは、御承知のとおりでございますが、政府としては、この法律に基づき、過去、各般の施策を展開してまいりました。これによって、畜産や施設園芸の分野を中心に生産性向上が進むなど、一定の成果を上げてまいったものと考えております。
 農業の生産性の向上及び農業従事者の生活の他産業従事者との均衡という農業基本法の政策目標は、もとより今日においても妥当であると考えております。今後においては、経営管理能力にすぐれた担い手を育成確保すること、また道路、下水道の整備の促進、美しい村づくりの推進、多様な就業機会の確保等により、活力に満ち、快適な生活を享受できる農村をつくり上げていくことが極めて大切であると考えます。
 次に、新たな基本法の制定をどう考えるかということでございますが、農林水産省におけるただいま諸般の事情の検討の結果と、今後の政策の方向を踏まえまして、関係方面の御意見を伺いながら検討してまいりたいと思っております。
 ウルグアイ・ラウンドにつきましてですが、我が国としましては、現在出されておりますいわゆるダンケル合意案の農業部分につきましては、輸出補助金に比べまして、国境措置の取り扱いにバランスを欠いている点などいろいろの問題があるものと考えております。したがって、ダンケル合意案の農業部分についての修正の考え方を示しながら、これまでの基本的方針のもとに、食糧輸入国としての我が国の立場を踏まえた国別の約束表を先般提出したところであります。我が国としては、これまでの基本的方針のもとに、食糧輸入国としての我が国の立場が確保されるよう、最大限の努力を傾注してまいりたいと思っております。
 今後の見通しでございますが、四月十三日に非公式貿易交渉委員会が開催され、各交渉分野の進捗状況の報告がなされました。と同時に、交渉については、今後とも引き続き行っていこうということになったところでございます。
 なお、今月二十二日にアメリカ・ECの首脳会談が行われる予定でありますが、今後の農業交渉の成り行きにつきましては、各国ともいろいろ困難な問題を抱えておる現状から判断をいたしますと、今後の見通しは必ずしも明らかでない、不透明な状況と考えております。
 最後に、政治に対する信頼を確固としたものにいたしますために、政治倫理の確立とあわせて、現行の政治資金制度や選挙制度をめぐるさまざまな問題を解決し得る具体的な方策を見出したいと考えておりまして、各党からもいろいろな御提案がなされております。既に政治改革協議会において、各党間の御協議が進められているところでございますが、御協議をいただきました末に合意に達しましたものから、必要に応じて法制化をしていただきまして、今国会中に成立することを念願をいたしますし、政府といたしましても、その実現に向けて最善の努力を図ってまいる決心でございます。
 残りの問題は、農林水産大臣からお答えを申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣田名部匡省君登壇〕
#18
○国務大臣(田名部匡省君) お答え申し上げます。
 農協の現状については、農協は農業者の自主的な協同組織でありますから、その行う事業は、組合員の営農と生活の向上のために行われるということが基本であると考えております。このため、営農指導の充実を初めとして、農協の本旨に沿った事業運営が行われるよう十分指導を行ってまいりたいと考えております。また、婦人、青年層を含めた組合員のニーズに的確にこたえ得る取り組みや、農協の経営基盤の強化を通じた有能な人材の確保も必要である、そういうことにも努めてまいりたいと考えております。
 次に、農協系統の組織改革に関するお尋ねでありますが、このことは現在の農業、農村をめぐる状況の変化と農協を取り巻く諸課題に対応していくために、系統組織みずから事業、組織の改革を図る必要があるとして、二十一世紀までに千農協を目指すことといたしておりまして、原則として事業二段、組織二段に取り組んでいく決議をいたしたところでありますので、農林水産省としても、地域農業の振興と農村の活性化のため、その内容が具体化され、組織改革が着実に実行に移されることを期待するものであります。
 次に、連合会への受託農業経営のことでありますが、連合会にも受託農業経営を行うことができることとするのは、担い手の育成、規模拡大の促進の観点から、連合会が畜産等の分野で果たしておる機能を活用していこうとするものであります。また、農事組合法人の要件緩和は、担い手の減少、耕作放棄地の増加等に対処し、その一層の活用を図ろうとするものであります。いずれもいあくまでも農家の協同組織による営農体制の整備を図っていこうとするものであります。
 次に、農協の老人福祉事業のことでありますが、農村社会の高齢化に伴い、農家組合員が行う介護活動等の量が増大していることと、それに合わせて、協同組織である農協がこれを支援していく必要があるとの観点から、農協にも老人福祉事業を行うことができる旨を法文上明記したものであります。もちろん、農協がこの事業を行うに当たっては、市町村との緊密な連携を保ちながら実施されるよう、適切に指導してまいりたいと考えております。
 農協のあり方、存在意義、改革についてでありますが、農協のあり方と存在意義につきましては、農協は農業者の自主的協同組織で、地域農業の振興や地域の活性化に大きな役割を果たしてきており、農業、農村をめぐる状況が大きく変化する中で、多様化する組合員ニーズに一層的確に対応していく必要があります。このような中で、農協系統においては、みずから事業、組織の見直しを行うこととしており、農林水産省としても、このような自己改革努力に対し、適切に対応してまいる所存であります。
 以上であります。(拍手)
#19
○議長(櫻内義雄君) これにて質疑は終了いたしました。
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#20
○議長(櫻内義雄君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後一時五十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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